1 :
名無しさん@ピンキー:
>>3 ”さ”が抜けてる・・・
ちょっくら逝ってくる
>>1 乙。
……実はちょっと前このスレを知ったんだが、よくある単発スレだと思ってスルーしてたんだ。
前スレを読んで悶え転げてるので許してくれると非常に嬉しいと思う。
>>6 いらっしゃい。そんな場合は、前スレの気に入ったものを
一個二個チョイスして感想なぞをつけてみたりすると、
雑談のねたにもなり、更なる降臨が期待できたりもして、
ディモールトかもしれんよ。
>>8 「素直クール」でスレッドタイトル検索したからだな。
すまなかった。
お詫びに、…どうすればいい?
ついでなので、前スレのハンドブック(不完全版)だ。
どれも職人様による素晴らしい作品ばかり。スレの歴史に乾杯。
※敬称略、漏れがあったら切腹します。申し訳ない。
--------------------------------------------------
【素直クールでエロパロPART1ハンドブック(不完全版)】
19-25:◆GkRPJL.Q4U/
68:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6/
78-81:お魚 ◆5Z5MAAHNQ6/
85-89:
117-124:適当 ◆iQ7ROqrUTo/僕と素直でクールな後輩(前編)
270-274:適当 ◆iQ7ROqrUTo/僕と素直でクールな後輩(後編)
160-175:キュンキュン◆4hcHBs40RQ/赤い首輪(前編)
380-386:キュンキュン◆4hcHBs40RQ/赤い首輪(後編)
198:適当 ◆iQ7ROqrUTo/
202-208:/もし男も女も素直クールだったら
236-241:/
280-285:/
247-252:/
263-267:/ふたりで
308-312:/
362-368:/
392-394:/
413-417:/
423-424:/
429-430:/
436-437:/
450-456:ゲーパロ専用 ◆0q9CaywhJ6/クールでウェット
467-481:356/
490-496:wkz ◆5bXzwvtu./司と梓緒(前編)
507-516:wkz ◆5bXzwvtu./司と梓緒(中篇)
525-540:wkz ◆5bXzwvtu./司と梓緒(後編)
582-583:/素直クール×素直クール
596-603:554/お弁当
616-623:◆DppZDahiPc/アイとユーキの物語
646-648:/飴玉
654-670:/「彼」と「彼女」完結編
689-707:◆DppZDahiPc/アイとユーキの物語<改>(前編)
>>1 遅くなってしまったが、ありがとう。
君と一緒に歩んでいくと誓ったのに君には迷惑をかけてばかりだな。
答えはいつも同じだけど訊こう。この借りはどう返せばいい?
>>10 フフフ、やはり一回分の投下量だけは私が‘とっぷくらす’だな。
所で、後前スレには何レス分くらい書けるんだろうか?
馬鹿だから、よく分からないんだが。教えてくれるとありがたい。
前スレは現在494KB。あと6KBだ。
単純に6000バイトと考えると全角文字で3000文字ぶん残っていることになる。
なんか、ずいぶん残ってる気がするな。
一行が35文字として85行、
1レス30行くらいが読みやすいから約3レス。
雑談で埋めるにはしんどいけれど
SS投下するには厳しい量でもある。
それに埋めるとすぐに落ちるからこっちに投下したほうがいいよ。
16 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 06:01:54 ID:Yqrk2aOb
ところで保管庫はつくらないのか?
とりあえず読める程度なら、保管庫製作請け負っても構わないよ
今のところスペース十分の一も使ってないし
……というか、エロパロ板全体の保管庫のぐらいのなら作ろうと思えば1時間かからないんだが
SSだけ抽出して作品別、作者別に並べてコピペしてったらけっこう時間かかるよ。
>……というか、エロパロ板全体の保管庫のぐらいのなら作ろうと思えば1時間かからないんだが
何か誤解を招くような書き方になってしまったが
「ぐらい」ってのは規模じゃなくて掲載形式のことね
一応念のため
>>18 抽出に関しては
>>10氏がかなりまとめてくれたし、コピペはメモ帳だとやり辛いけど
火狐でソースを見ると一行1レスになってるから結構やりやすい
作者とか内容属性とか、SS同士の関連に踏み込むと結構面倒なんだよな。
段落調整もやるともっと面倒。
でもやって頂けるならぜひともお願いしたい。
とりあえず試作してみる
何か希望があるならその時に見るよ
25 :
17:2006/06/26(月) 22:29:34 ID:jtPhX5ZY
>>17氏
乙です。ただ出来れば、
作者名・作品名・素クルの性別・ジャンル&備考
くらい載せてほしいかも。
27 :
17:2006/06/26(月) 22:49:07 ID:jtPhX5ZY
作者名、作品名については名無しだったりタイトルが付いてない作品が結構あるんだわ
性別は特に何も書いてない場合は女性側が素クールのはず
ジャンル……どんな風に分けたらいいものかね? 殆どが学園物だけど
備考はエロの有り無しぐらいは入れようかと思うんだが
死亡ありとか話に関わる部分の備考はそれだけでネタバレになるかも知れないし(つД`)
28 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 12:44:59 ID:rjY4OSkg
ラブコメ系
ほのぼの系
学校生活系
泣ける系
ギャグ系
みたいなジャンルでお願いしまつ
段落はこれから調整ということだけど、左に詰めすぎじゃね?
文章の左に少し余白ないと見づらい・・・。
30 :
17:2006/06/27(火) 22:19:09 ID:xRbaFf+x
>>29 確かにまあそんな気もする
というわけで20ピクセルぐらい空けてみたが、どうだろう
よいと思うのだけど、どうせだからトップページも左側に空白が欲しいと思う。
32 :
17:2006/06/28(水) 00:40:18 ID:KxIixb0M
>>31 すっかり忘れてた……>トップ
ジャンル分けについては見送る方向で行くつもり
元々備考欄は投下直前の前置きに注意書きを入れるような感じで使う予定だったし
例えば、猟奇やら排泄やら近親みたいな明らかな性倒錯ならともかく
2〜3回読み返したり流し読みしたりして、ざっと全作品に目を通した印象では
わざわざ注意書き添える必要があるほど人を選ぶ作品は殆ど無かったように思う
実を言うと、保管庫の立場から作品の中身に言及すること自体、気が引けるんだけどね
面倒くさい連中に噛み付かれると、色々と面倒で……
>>32 おつかれ!
ジャンルわけについては見送る方向で良いんじゃないかな。
ただ、表でタイトルランと名前欄は、たとえ空欄になっても
一応分けておく方が良いかもしれない。
あと、ジャンルではなくて、エロのアリナシ判定はいるかも。
何はともあれお疲れさまっす!
34 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 02:48:43 ID:jOf+hzjH
とりあえず保守
>>32(
>>17)
お疲れ様。
ま、おいおい充実していけばいいですよ。
何はともあれ、最初は作ることに意義がある。
さて、誰もいない……って、またこんな時間だよ、おい。
いいですか? 投下しますぜ。
そんじゃ、新作。GO!
……まいったなァ。
頬杖を付きながら、少年は思考を巡らせる。
「――で、あるからして、この訳文は……」
さて、これからどうするべきか。
窓の外を見る。晴天の日差しが目に痛い。
「――注意すべきは、関係代名詞の使い方です。この場合……」
まずは、はっきりと伝えること。これは絶対条件だ。そして当然、気迫に呑まれてもいけない。
風に流れる白い雲。のんびりとしたその様子が羨ましい。
「――あー、では次の段落を訳して。えっと……そうだな、笹山」
「はい。ええっと……『今日、彼らの生活は』……あー、『その伝統的な技術によって……』」
初手は譲るしかないが、追撃の隙を与えてはいけない。全てはタイミングが命。腰を折って、一気に畳み掛ける。
燦々と輝く太陽は、勝利の為の激励をしてくれているようだ。いや、実際は関係なくても、そうと信じることが大事だ。うん。
「はい、そこまで。それじゃ次は――」
そうだ。次も考えておかなければ。予想外の事態になっても、しっかり対応できなければならない。
「――ほら、後ろ。早くしなさい」
そうだ。早く策を完璧なものにしなければ。
「聞こえないのか? 次の段落から――」
そうだ。ヤツは、何も聞こえていない。そのガードを突き破れるか否か……。
「こら、いい加減にしろ。おい!」
そうだ。いい加減にしてもらわなければ。俺の日常が危うい。
「瀬川! おい、瀬川ー! せ・が・わ! 瀬川浩毅!」
「――って、うるせえぇ! 人が考え事してんの……に?」
浩樹にクラス中の視線が集中する。
目を引ん剥いて驚く者から、無関心にただ目を向けた者、呆れた顔をしている者。
そして、
「ほほーう。瀬川、俺の授業はそんなに下らないモンなのか。そうかそうか。勉強になったよ、ありがとう」
額に青筋を立て、怒りを隠そうとしない者まで。
……気まずい。
「は、はは、ははは……あー、廊下に――」
「待て」
英語教師に呼び止められた。
「逃がしゃしないぞ」
「はははは。にしても、さっきの浩毅は傑作だったな!」
「へいへい、そりゃよござんしたね」
「自業自得だよ、瀬川くん。あれはキミが悪い」
「わぁってンだよ、そんなコト」
「ま、でもお前のおかげで自習になったわけだし」
「そうだね。その辺は感謝してるよ」
あの後、教員室に連行されてお説教を受ける破目になった。
報酬は、クラスメイトからの歓声。さすがに嬉しくない。
そして現在。教室への帰路の途中、賑わいもそこそこの廊下。
昼休みに突入したのに加え、そろそろお説教にも満足しただろうことを見計らって、親友二人が救出に来てくれたわけだ。
持つべきものは友である。
「で、何を考えていたワケ?」
「馬っ鹿。コイツが頭悩ませる問題なんて、アレに決まってんだろ」
「ああ、確かにアレくらいしかないね」
勝手に得心するな、と言いたいが、浩毅は飲み込んだ。
これ以上ないほどの図星である以上、じゃあ何なのと返されるのは目に見えている。
「ちっ、勝手に言ってろよ」
少しだけふてくされて、足を速める。
友人二人は、示し合わせたように小さく笑ってから追いかけてくる。
無言の早足で進むこと一分。教室が目に入るが……、
「おーおー浩毅、悩みの種のご登場だ」
意地悪な声と共に、左肩を叩かれる。
足を止めて考えること数秒。
「モテる男は辛いよね?」
もう一度、今度は右肩を叩かれる。
左右より親友二人からのホールド。逃げられない。
多分に嫉妬混じりなのだろう。掴まれる肩に指が食い込んで、とても痛い。
……さては、これを狙って迎えに来たな、てめえら。
「…………」
教室の戸の前には、布袋を下げて佇む人影一つ。
黒髪の少女だ。長身、長髪、白磁の肌。人を突き刺すクールな瞳。
「――ハァ」
意を決し、足を前に出す。
授業中に考えていたことだって、所詮、焼け石に水にすぎない。対策にもならないのだ。そんなのは、数多の敗北経験から解っていた。
しかし、意地ってものはある。
無言で対峙する。
目線が近い。
浩毅とて、そう背が低いほうではない。それでも近い。一七〇センチはオーバーしてるだろう。
「ンの用だよ、藤宮珠樹」
解りきった質問を投げかけてみると、そっと布袋を目の前に差し出してきた。
四角い箱が二つばかし入っているらしいことが、外見から確認できる。
時間と荷物の形状から判断すれば、答えは明白だ。
「昼飯か……」
珠樹は小さく頷く。
二人分の弁当を用意してくれたということだろう。
戸の隙間から教室の中を覗いてみると、気配でも察知されたか、半数以上がこちらの動向を窺っているようだ。
いい気なモンですね、アンタら。
「あのな。今日はパンを買ってきてあるか……うっ!?」
僅かに眉尻を下げて、浩毅を見つめる。
「うう……」
どことなく悲しそうに見つめる。
「ううぅ〜……」
見つめる。
「く、う、うう……」
周囲からも、見つめられてる。
「わ、わかったよ……食やいーんだろ食やあよ」
浩毅撃沈。
がっくり項垂れて、敗北宣言する。
これだ。男というものは、得てしてこれに弱いのだ。
浩毅の席に移動して、弁当を広げる。
気は乗らなくても腹は減る。育ち盛りの高校生なら尚のこと。
「……相変わらず凄えな、おい」
コロッケ、一口ハンバーグ、エビフライ、金平、ひじきの煮物、特製ドレッシングのサラダetcetc……。
明らかに出来合いではない。誠心誠意、真心込めた手作り弁当であるのは、誰の目にも見て取れるだろう。
だが、たとえ腹は鳴っても、意地でも美味そうだなとは言ってやらない。
「はい。んじゃ、いただかせてもらいますよ――って、何してんだよ?」
手を合わせたところを珠樹に制された。
箸を抜き取られ、珠樹の手に収まる。そして弘樹の弁当に伸ばされ――、
「ま、まさか……」
弘樹の顔の前へ。
挟んだエビフライとこんにちは。
暫しの睨めっこ。
「?」
冷や汗を流す以外反応の無い浩毅に、珠樹は首を傾げる。
「勘弁してくれよ……」
頭を抱える浩毅。
そこに、クラスメイト(と書いて野次馬と読む)の女子が数人寄ってきた。
「どうした、お前ら。何か用?」
ぶっきらぼうな浩毅の質問は無視し、珠樹に詰め寄る。
「ねえねえ。ぶっちゃけ、二人はどんな関係なの?」
「おい……俺は別に」
「アンタには訊いてない」
見事に封殺。女に囲まれると、あらゆる意味で男は弱い。
珠樹は顎先に手をやり、答えを探す。
やがて、そっと白くて細い指を立てた。
小指を。
「待てコラ!」
「ひゅー、大っ胆!」「やっぱねえ。そうだよねえ」「珠樹は尽くす女だもんね」「じゃなきゃ、こんなお弁当作らないよね」
「そこ、勝手に結論付けンじゃねえ!」
浩毅の反論も意味を成さない。彼女達の中では、結論ありきのことである。
「いいか? 俺達は別に、付・き・合・っ・て・る・わ・け・じゃ・ね・え・の・!」
それでも大声をあげ、断固として主張する。
が、
「へえー……それじゃ、彼女でもない相手にお弁当作ってもらってるんだ」
「いや、そりゃソイツが勝手に……」
「勝手に作ってくるにしても、ハッキリ断らないんだ」
「でもな、周囲からのプレッシャーが……」
「周りの所為にして、女のコを傷つけたとしても気にしないんだ」
「そんなつもりは……」
「つもりはなくても、尽くさせるだけ尽くさせて、ポイするんだ」
「うううう……」
女子ABCDの連続攻撃に、思わず泣きたくなる。
目頭を押さえる浩毅を慰めるように、よしよしと頭を撫でてくれる珠樹。
ありがとう。でも、原因はお前さんなんだ。
「さて、KOしたところで、も一つ質問。藤宮珠樹さん、瀬川浩毅相手に今後の目標は?」
女子Aが、インタビュアーの真似をして、マイクを向けるジェスチャーをする。
珠樹は再び顎に手をやり、
やがて、
そっと指を出した。
握り拳の、人差し指と中指の間から。
「羞恥プレエェェエェェェ!?」
きっとこの瞬間、学校中に弘樹による魂の叫びが響き渡った。
藤宮珠樹は、美人である。
無口であるが、顔もスタイルも抜群であるし、クールな印象があるにもかかわらず、他人を寄せ付けない雰囲気というものもない。
外見に似合わず、いかにも純真無垢、というか幼いという雰囲気を漂わせ、この小さな学校の皆から可愛がられている人気者だ。なんでも、ギャップがたまらないらしい。
そして、そんな少女に何故か好かれているのが、瀬川浩毅その人である。
一年前、家庭の事情で引っ越してきて以来、ほぼ同時期からあの様を晒しまくっている。
珠樹の精神が純粋に幼いのであるならば、何とかあしらうこともできるかもしれない。
しかし、彼女には年齢相応の知識をしっかりと持っている。そのため、正直浩毅の手に負えない。
目下の悩みは、一人の少女に集中している。このままだと、神経を磨り減らしてしまいそうだ。
「ハァ……」
小さく溜め息。
母方の実家があるこの小さな村の、のどかな空気は気に入っているのだが……。
今のご時世、贅沢言わなければ、生活にもそれほど不便はないし。
「ったく、どうするよ……」
グラスから離したストローを、口先で弄ぶ。
放課後、小さな喫茶店のカウンター席で悩み続ける弘樹がいた。
この時間、まだ客は少ない。店内には、自分を含めてちらほらと数人いるだけだ。
最早万策尽き果てた。こうなれば、誰か相談に乗ってもらえないものかと、密かな期待を込めた独り言を洩らす。
「アイツ、何が面白くて俺に付きまとうんだかね」
「珠樹ちゃんのコトでお悩みですか、少年」
「お悩みなんですよ、マスター――っと、ありがと」
サービスとして、女店主からアイスコーヒーのおかわりが出された。
店主は落ち着いた感じの美人で、このように気前もいい。給仕服も似合っている。
早速、ミルクだけを投入し、咥えていたストローでかき混ぜる。
「あんな可愛いコ相手で、嬉しくないの?」
「そりゃまあ……見た目は。でも、理由も解らず振り回されるのも、釈然としないモンがあるし」
「理由って……好きだからに決まってるじゃない」
何、当たり前のコトを。
磨いたカップを、棚に戻す。
「ん。だから、その好きになった理由ってのが解ンねえってワケでして」
「そんなの――」
「あーー!!」
会話を遮り、けたたましい叫び声が店内に響いた。
「ひろきおにいちゃーん!」
店の奥から顔を出した五歳くらいの女の子が、浩毅に飛びついてきた。
「おわっとと、一奈ちゃんか。こら、店ン中で暴れたら危ねえぞ」
「えへへへ。ごめんなさい」
コツンと頭を叩かれ、素直に謝る。
可愛いもんだと、ちょっと乱暴に頭を撫でる。
店主の娘である一奈は、浩毅に懐いている。存外子供好きな浩毅は、満更でもないようだ。ちょくちょく顔を出しては、一緒に遊んでくれている。
一奈も一奈で、「かずな、おおきくなったら、ひろきおにいちゃんのおよめさんになる」と、公言して憚らない。
さすがに本気にこそしないものの、浩毅は、子供の戯言と馬鹿にしたりはしない。純粋に嬉しく思うだけだ。
(……こういう所を、好きになったと思うんだけどな)
店主は、心中苦笑する。
「にしても、改めて見るとでっかくなったよな。一奈ちゃん、いくつになった?」
「んー? ごさいだよ」
と、手をパーにする。自信満々に繰り出す姿が可愛い。
「んじゃ、お母さんは?」
「えっとね……」
「浩毅くん。コーヒー一杯、特別価格五千円ね」
「高っ!」
こういう所は、直したほうがいいだろう。
気を取り直し、話を元に戻す。
「でもさ、他に好きなコがいるわけじゃないんでしょ? だったら、付き合っちゃってもいいんじゃない?」
浩毅の服が、がっちり掴まれた。
膝上の一奈の「おにいちゃんは、あたしとつきあうの!」との言は、取り敢えずなだめ落ち着かせる。
「そこなんだけどね。どうせなら、やっぱこっちも好きになった相手と付き合いたいし」
「そんなコト言ってると、チャンス逃すわよ。悪いコじゃないのに、勿体無いじゃない。若いんだから、火傷くらい恐れずいきなさい」
「ははは……そういうそちらは、どうなんスか? 再婚しないの?」
「いいのいいの。あたしは、死んだ旦那に操を立ててるんだから」
にこやかに笑う。
悲しみは、とうの昔に振り切った。
「あの人以上に、いい男にも出会ってないしね」
田舎だしなあ。
とは口にしない。どうせ有象無象では、歯牙にもかけないのならば、都会も田舎も同じことだ。
「そ・れ・に……」
おいでおいでと、手招き。一奈が、カウンターの中へ行く。
「あたしには、一奈がいるから」
「あややや、くすぐったいよ」
しっかり抱きしめて、頬擦りをする。一奈は、少し迷惑そうに笑っている。
夫の忘れ形見は、彼女の希望であり、未来の象徴である。大切だからこそ、死はそう何年も引き摺れるはずがない。
「ひゃっひゃっひゃ、勿体無いのはどっちかのぅ?」
一部始終を聞いていたらしい老人が、テーブル席から口を挟んできた。
長く伸びた白い髭が目立つ。本人曰く、チャームポイントらしい。
品の無い仕種で、わざとらしく指先を蠢かせる。
「熟れた身体を、持て余したりせんのんか?」
「下品だぞ、爺さん」
「げひんだぞー」
「喧しい、若造は黙っておれ。一奈ちゃんは、十年くらい待っておれ。で、どうじゃ? 何なら、わしの後妻にでもならんか?」
「遠慮しとくわ。スケベじじい」
「ひひひ。キッツいのう」
お互い、気にした様子はない。こんなやりとりも日常茶飯事だ。
この老人、オープンなスケベである分、かえっていやらしさがない。執拗さもないので、生理的嫌悪感が湧かないのだ。
本人も、そこら辺を割り切って、コミュニケーションに使っている節がある。
「やれやれ。一番のお得意さんが、アレだものね」
呆れ混じりの息を吐く。
こんなボヤキも慣れたもの。テキパキと、残った仕事を片付ける。
夫の縁を頼り、引っ越してきて五年。店を開いて、三年近く。土地を提供してくれた義父には、頭が上がらない。
そこそこ繁盛し、二人が生活する分には困らない収入もある。
環境にも慣れ、土地に愛着もできた。軽口が叩き合えるのは、地元民として認められた証拠だろう。
それはそれとして。
「で、また話が逸れたケド、いずれにせよ問題は浩毅くん次第でしょ?」
「なの?」
「珠樹ちゃん、諦めると思う?」
「…………思いません」
有り得ない。イメージが湧かない。想像力の限界を超えている。
「たまねーちゃん、がんこだもんねえ」
一奈ちゃん、よく見てるなあ。子供の観察眼は、侮れないものだ。
「満場一致でしょ。結局どうするの?」
「どうするもこうするも……なんつーか、このまま押し切られそうで怖いンですよねえ」
一口、ちょっと薄くなったアイスコーヒーを啜る。
「ま……実を言うと嫌いじゃないから、それでもいいっちゃいいんですけど。なし崩し的にってのは、自分的に無しにしたいし」
「つまり?」
「どうにか、気持ちに決着だけはつけたいな、と」
「だって。もう一押しみたいよ」
「へ? ……おわぁっ!?」
慌てて飛び退く。
いつの間にか、珠樹が横にいた。
意に介すことなく、片手で挨拶をしてくる。
「お、お、おおお前、何時から?」
「今さっきから。ね?」
「そーっとはいってきたよね?」
二人にあわせ、親指を立てて肯定。
本当にいつの間にかだ。アイスコーヒー(ミルク入り。ガムシロップ無し)まで飲んでいる。
「あーびっくりした……」
浩毅は深呼吸し、息を整える。まだ心臓がバクバクいっている。
まるで気配が無かった。神出鬼没なヤツめ。
ふと、珠樹の傍らにあるモノが目に入る。
壁掛けの時計を見れば、すでにかなりの時間が経っている。
「部活終わったんか」
あまり口に合わないのだろうか。
眉に皺を寄せつつ、ストローを咥えながら珠樹は頷く。
(ったく。意外とお子様な舌してんだよなぁ)
何でわざわざ無理してるんだか。
出てくる答えは、頭の隅に追いやる。
「あー。一奈ちゃん、好きなジュースは何だ?」
「んう? オレンジ」
店のテレビでアニメを観ていた一奈が、画面から目を逸らさずに応える。
それにしても、コロコロ行動が変わるものだ。
「じゃ、それ二つお願い」
「!?」
「はいはい」
珠樹の反応は、見てみぬフリ。それ以上何も言わず、店主はオレンジジュースを三つグラスに注ぐ。
浩毅は、暇つぶしにアニメに目を向ける。
久々に観てみると、意外と面白い。
かなりの長寿番組だ。昔、幼稚園の頃観ていた記憶がある。国民的な、ほのぼのヒーローものだ。
「声、変わってねえんだな」
無難な感想を述べたりしてみる。
こちらの様子を窺う老人の含み笑いなど聞こえない。
断じて、そんなものは聞こえない。
タイミングを見計らって、席を立つ。ほとんど口をつけてなかったジュースを、一気に飲み干す。
「ごちそうさま。勘定お願い」
「全部で、五千六百円ね」
「冗談じゃなかったの!?」
冗談でした。
「んじゃ、帰るか。またな、一奈ちゃん」
「うん。バイバイ、ひろきおにいちゃん。たまねーちゃん」
手を振って、店を出る。
珠樹も、小さく手を振る。
ドアベルを鳴らして、閉じる。ジジイの笑い声なんか、本当に聞こえない。幻聴に決まってる。
「…………」
「…………」
二人何も言わず、人通りの少ない田舎道を歩く。
夕陽に照らされ、細長く伸びた影が二人を先導する。
特に何か話さなければならないでもなし。それでも、いつまでも黙ったままでは、落ち着かない。
浩毅がそれを口にしたのは、単に他の話題が思い浮かばなかっただけだ。
「なあ。そういや、そろそろ試合だって話だろ。自信はあるのか?」
無言で、弘樹に掌を見せる。
パッと見は、白くて小さいだけの手だ。けれど、よく見れば所々皮膚が硬質化している。
「そか。ま、頑張れや」
珠樹は小さく頷き、袋を担ぐ手に、ほんの少しだけ力を込める。
長細い袋に入れられたモノは、それこそ何十万、何百万回と振られただろう。
珠樹は掛け値なしに強い。自信があるというのなら、本当にあるに違いない。
やがて、分かれ道に差し掛かる。
ここで別れて、また明日。
きっと明日も、変わり映えのない日常が来る。
悩んで、からかわれて、叫んで、泣きたくなって、ぼやいて……珠樹に振り回される、当たり前の日々。
「そんじゃ、また明日な」
道を曲がり、背中を向けながら告げる。
これもいつもの挨拶。
けど、今日は……。
「待って」
不意に呼び止められ、思わず振り向く。
「ん? ――ッ!?」
視線が近い。近すぎる。
僅か数秒、時間が止まった。
重なっていた影が離れる。
けど、今日は、
「ちょっとだけ進展……ね?」
それだけ言い残して、珠樹は帰路についた。
小さくなる背中を、呆然と見送る。
「――あンの、馬鹿!」
我に返り悪態を吐く。
が、
「そう簡単に、お前のモンになってやるかってんだ」
口の端を吊り上げて。
どこか楽しそうに、独り言を洩らす。
この感触は、さっさと忘れてやろうじゃないか。
――また明日。
以上。
やっぱ相方はツンデレが似合うな。
さて、朝一で仕事だ。
そろそろ寝ないと、さすがに差し支える。
それでは、おやすみなさい。
GJ!!
無口だが行動が素直というのも趣深いな。
GJ
なんだか、なんていうのか、萌えた。
>>43 GUNGRAVEを思い出すな。無口だが実直で、一度決めた事は何が何でも貫き通す。そんな感じの主人公。
キャラに魅力があって面白いです。
未亡人マスターも一奈ちゃんも、オープンスケベジジイも良いキャラだ。
ぜひ続きを。
かなりキました。
続編を待ちます
ツンデレ男と素直クール女の組み合わせは、
モッツアレラチーズとトマトの組み合わせより強力だな
何だか久しぶりにぐっときた…
ツンデレと素クールは対極に近いから、バランスが取りやすいのかもね
野郎の属性など心の底からどうでもE
続き期待
53 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 15:36:41 ID:J1tG9igW
土日にVIPの素直クールスレでSS祭りやるってさ
やめとけ。
VIPと関わると工作員に荒らされるぞ。
関連スレも荒らされてる。
>>54 普段からVIPの素直クールスレも覗いているが、あそこには荒らすような
奴はいないぞ?
シベリアやもてない男性板ではVIPからの工作員というのがよく来る。
それに釣られて反応して悪い連鎖がおこってることがある。
今のVIPは荒れてないが、終了スレというスレが工作員に立てられてるし、
前はかなりひどかった。
工作員と一口にいっても、煽り立てるだけのヤツとそうでないやつがいることを知っていて欲しいな。
終了スレはなかなかポジティブな話し合いの場として活用してるし。
でもVIPの話題が出ると工作員が来るってことだし、関わりたくないな
VIPを知りもせずに悪く言うと、じゃないのか?
ちゃんと相互理解があればいたずらに手を出すような連中ばかりじゃないさ。同じ素直クールスレ住人ならなおさら、な
違う。
VIPのスレの人が悪いとかそういうことじゃなくて、
VIPの話題が出るとVIPのことを悪く言いに来る工作員も来るでしょってこと。
工作員に来るなって言っても来なくなるわけじゃないんだから、悪いけど
いまのところVIPの人には来てほしくないってこと。
あぼーんだらけです><
54から流れがおかしくなってないかい?
多分53は単に報告してくれただけだと思うがどうだろう?
素直クールだからこそ自粛や思慮深さが求められると思う今日この頃
情報は素直に受け取り、クールに対応!! ・・・ってことだな。
54が工作員じゃないのか
まあまあ、みんな落ち着けよ。
冷たいミルクティなんてどうだ?
酒をよこせって?
そいつは夜までとっときな。
まあ、そいつを飲んで一息ついていけよ。
66 :
53:2006/07/01(土) 16:27:44 ID:YbJQDc6q
俺のせいで荒れてごめん(´・ω・`)
こんどからは自粛するよ…
>>48ちばてつや原作に対するあしたのジョーとかよりもか。
ウッチャンに対するナンチャンよりもさ。
>>67-68 そして、【類人猿ターザン】の主演女優にボー・デレクを起用するよりもだな。
70 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 04:33:10 ID:aXAhAFnm
保守
ほしゅ
閑古鳥が鳴いてるな
たかが一週間投下が途絶えただけで閑古鳥とは、余程にぎやかな住人だったの
……というわけでまだまだ待っている
いやネタがふれれば良いんだがなぁ
ネタもあって文も出来て、いざPCに打ち込むぞ、という段になると、
何故か他のスレ用のものを書いている不思議。
もうちょっと待っててくれたら、何か投下出来ると思う。
ウホッ
もう・・・中毒で・・・・
素直クールがないと・・・・・・
ついでにエロもないと・・・・・・・
前スレ554だが見切り投下しようと思うがどうか
前回お弁当の二人の出会い編その@
正直後半鬱になってきからそっちはあまりおすすめしない
81 :
君に感謝を:2006/07/07(金) 21:06:17 ID:6jiD6h28
見切り投下すまぬ
この世の根底は悪意で形成されている
道徳や倫理はこの悪意に落ち込まないための薄氷だ。その上でないと永遠に沈み込んでしまう。
だが、薄氷は誰の足元にあるわけでもなく、たやすく割れる代物でもある。
ならばどうするか。
それは自らも悪意をふりまくことである。
悪意は内からなる同等以上の悪意をぶつけることで防ぐことができる。
そしてもう一つ目を多い耳を塞ぎ何も感じなくなること。
悪意は感じなければ悪意ではない。
悪意を振りまきつつも目をそむけて何も感じないように生きていく。
溺れていてもそれすら知らずに。
そうして僕という一生物の一生は過ぎてゆくものだとそのときは思っていた。
82 :
君に感謝を:2006/07/07(金) 21:07:14 ID:6jiD6h28
静まり返った教室の中
「君に感謝を」
彼女は
「君がこの世に生まれてきたことに感謝を」
ゆっくりと言葉を紡ぎ
「君が健やかに今日まで成長してきたことに感謝を」
僕に向かって
「君が君であることに感謝を」
この世のものとは思えない
「君が私に出会ってくれたことに感謝を」
美しい笑みを浮かべた
「君に会えたことが私の最大の財産だ」
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
僕の目の前でその女はそういった。
わからない、全てがわからない。
彼女が誰なのかも、どうしてそんなことを言われるのかも
ここは教室。その休み時間だったはずだ。
それがどうしてこうなったかのか。その答えに思野は答えてくれない
彼女の瞳に見入っていたからだ。
深い漆黒。それは夜の海を思い出させる。
全てを内包しそこに強烈な存在感を残す。厳しさと慈しみの混在。
強い意志を感じさせるその瞳は僕を真っ直ぐに見ている
まるで、そんな疑問を持つことの方がおかしいと言わんばかりに。
傲慢!
内側から危険信号が出る。この女は侵すものだと。
人の領域に勝手に入り込み無自覚に蹂躙していくのだ。
今までの経験則からそう判断する。
「そう。それはそれはよかったですねっ!」
「ああ、それとこれは今気付いたことなのだが・・・・・・。どこに行くのかい?鞄なんか持って。
もうすぐ休み時間も終了するよ」
「体調が思わしくないんで早退する。
急に反吐が出そうになった」
「・・・そうか。お大事にガゴンッ!
遮るように教室の扉を叩き閉めた
83 :
君に感謝を:2006/07/07(金) 21:08:05 ID:6jiD6h28
築15年の集合住宅。いわゆる団地。それが僕の住所になっている。
その廊下を歩いていると前方から女が歩いてきた
見た目は二十台後半ともすれば三十路まで行きそうだ。化粧が濃く香水が5m先まで漂ってくる。
身に着けてるものはブランド物で固めているが、それぞれ違う。それ故かどこかアンバランスに見える。
こういうのはセンスがないと言うらしい。気を遣う人間は同じブランドでコーディネイトするらしいから。
「あらー、シュン君。今帰りー?」
こっちの不機嫌さも察せず話しかけてきた
「・・・・・・ちっ」
「うわ、舌打ちだよ。ママに向かってそういう態度はないんじゃないの?」
「どこからここはキャバクラになったんだよ。朱美さん」
「いや、ママってそういう意味じゃなくてね」
「・・・・・・。下種、いるんだな。」
「お父さん?「あいつは親父なんかじゃねぇ!」
「・・・・・・ふぅー、相変わらず仲悪いんだね。私としては親子は仲良くしてほしいけどな」
「・・・・・・。」
顔を近づけてくる。
朱美は元々童顔だ。それを無理やり化粧でけバくしてる。正直その行為に理解できない。
「思ってないこと言うなよ。あんたがアイツを誑かすには俺は邪魔だろうが」
「誑かすだなんてー♪私はあの人を愛してるのよ?」
「よく言う。そのコーディネイトが悪い格好もアイツに買わせたんだろうが。そういうのはパトロンつうだよ」
「あーこれはね。別のお客さんにもらった奴。ほら、使ってあげないと悪いじゃない。おかげでバラバラ、そのうち売るけど」
「・・・・・・。」
「あ、水商売だと思って馬鹿にしたでしょ。世の中私たちみたいな人がいるからうまく回ってるんだよ?」
「だとしても、それを誇りに思ってるわけじゃないだろうが。せいぜい、いいパパを見つけられるといいな。」
「あの人みたいな?」
「アレに投資しても将来性は全くないぜ。
俺は邪魔する気ないからせいぜい吸い取れるだけ吸い取ってやれ。
そのあと保証人にでもしてバイバイが一番いい手だぜ」
「それもそだねぇ・・・・・・。そしたらシュン君がパパになってくれる?」ギュッ
「・・・な、なっ・・・・・・化粧くせぇんだよっ!離れろ!」
「シュン君、悪ぶってる振りして純情っぽいからねぇー
教え込むっていうのも楽しそうだしー」
「お、おい、どこ触ってる?!」
「何して欲しい?シュン君ならお口も後ろもオッケーだよん♪」
「なっ?!手を入れるなっ!」
「生ぁ?うーん、そうねぇシュン君だしちゃんと最後まで世話してくれるならいいっか♪よろしくねぇん」
「ぐっ、駄目だ。そこは駄目だって・・・あぁっ」
「ふふっ硬くなってきたよ。うわ、やっぱり親子だね。そっちの素質もありそ」
「なっ?!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・離れろ。」
「・・・あ、ごめん・・・。怒った・・・?」
「・・・・・・俺をアイツと一緒にするなっ!!!!!」
「そっちか、ごめんね・・・」
「あんたがアイツをどうしようが知ったことじゃないが俺まで巻き込もうとするな」
「本当、ごめんね。私、そんなつもりじゃなくって・・・ええと」
「・・・・・・いや、もういい。頼むから早く帰ってくれ」
「うん、ごめんねごめんね・・・」
結局最後まで彼女は謝りながら帰っていった。最初溌剌とは言わないが快調だったのが帰り際にはおどおど怯えていた。
傷つけたのだろうか。
けれど僕は・・・・・・。
84 :
君に感謝を:2006/07/07(金) 21:08:55 ID:6jiD6h28
ガチャ・・・・・・バタン
相変わらずくせぇ、酒と煙草だけじゃないなこれは。
居間を抜けて自分の部屋へ向かう。居間には酒瓶・山盛りの灰皿・使用済みのティッシュ・食べ残した弁当・汚れたコンドーム等ゴミクズが散らばっている
「おい・・・帰ったらただいまぐらい言え」
クズが口を聞く
「・・・必要ないです」
「なっ」
「大体、誰に言うって言うんですか?」
「親に決まってるだろうが!」
「親ぁ?・・・・・・ああ、そうでしたね」
「おい、どこへ行くんだよ。おいっ?!」
シュッ・・・ボッ・・・・・・チンチーン
仏壇の前に座り両手を合わせる
「ただいま帰りました。お母さん・・・」
「・・・・・・ちっ」諦めたかのような舌打ちが聞こえる。
「そしてお父さん」
ガゴンッ!背後から物が飛んでくる。危ないな、まずは火を消さないと。
周囲の物を手当たりしだい投げつけてくる。だが、酔ってるのか運動後なのか狙いが甘い。落ち着いて火を消した。
背中に酒瓶をいくつか喰らった。まあ大して威力はなかったが
僕はゆっくりと立ち上がった。
アイツはこっちを見て真っ赤になり鼻息を粗くしている。少々過呼吸気味か。
「お、おま、おま、親をなんだと思っている?!」
ああ、またか。こんなやり取りも何度目だろう。学習能力がないな
「故人です。両親ともに」
いや、僕も同じか
「ぐぁっ?お前舐めるのもいいかげんにしろよ」
「・・・はぁ。その握った拳をどうするつもりですか?当方が黙って殴られるとお思いですか?」
「・・・ぐぅ」
「あんたは俺が反抗できない歳のうちに俺の腕をへし折っておくべきだったですね。
もっともそんなことが出来ないからこそあんたなんでしょうが」
「だ、だ、誰のおかげで生活できると思ってるんだ!」
「母と母方の祖父である重里さんのおかげです。」
「ぐっ」
「事業再開のために重里さんから受け取った資金で女買ってるなんてどうかと思いますが」
もっともそんなことおじいちゃんにはとっくに知られてるだろうな
「なっ?!おま、そ、それ、それを言言い、クゥハァ、ハヒュ、ヒュッ、ヒュッ、ヒュー、ヒュー」
グラリと体が揺れてひざまづく。
興奮のし過ぎで呼吸が難しくなったんだろ
戸棚の中から紙袋を出し投げつける
それは無様に転げながら紙袋に頭を突っ込んだ
「フゥフゥフゥ・・・・」
紙袋はペコペコと膨らんではへこむ
「くそ、世話かけさせるなよ」
ヒューペコ・・・ヒューペコ・・・ヒューペコ・・・
返事はない。
自分のことも満足に世話できない。こいつも僕も。
僕もこんな醜い姿をさらしているのか?
違う!違うはずだ・・・。
だが、こいつもそんな自覚はないはずだ。
僕も気付かないうちに・・・。
ガンッ!「違ぁうっ!」
ここは駄目だ。心がやられていく。
離れよう。
どこでもいい。
ここからできるだけ遠い所へ・・・
85 :
君に感謝を:2006/07/07(金) 21:12:52 ID:6jiD6h28
素直クールを期待してた人すまないな
次回は素直クールパートになるので期待しておいてくれ
今回はツンデレ男編だ
正直書いててあまりいい気分じゃなかったが必要なことなので書いてみた
目標は前スレ幼馴染が駄目だと言っていた君に
「これは別腹」と言わせることさ
よくわからんが、俺は嫌いじゃないぞ、こういうのも。
続きに期待してる。
最近素直クール分ひでりで飢えが募ってきた。
俺はこう言うの感じの話しも好きだな
素直クールパートも期待してます
主人公は欝系か?まぁ、ヒロインが素クールならば野郎はたいして関係ないんだけどね。続き期待してます。
欝系とか親父がどうとかはきつい・・・けど素クールなヒロインに期待。
ポエムかと思った
もうちょっとで完成……なんとか今週中には……
その言葉を信じよう
>>91 私が君のことを信じない訳がないだろう?
もし仮に君が遅れようとも、そんな事で君のことを嫌いになりはしない
君が遅くなろうとも、来てくれる人だとわかっているから私は君を信じて待つことができる
こうやって待っている時間もいいものだよ
こうやって保守をすることもできるからね
94 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 12:23:00 ID:XRTqCSCU
(゚ー゚*)もえた
ある晴れた日の午後 ― 昼休みの教室にて
「ちょっといいかな恭助クン」
おや、怜華さんか。なにか用?
「いや、ちょっとね。映画にでも誘おうとおもってね。どうかな明日。
良い映画なんだ。恋愛物でね。ガン=カタを駆使して戦いまくるんだ。革命を起こすために」
それって恋愛物じゃないよね。ってゆうかゴメン。明日は未希と約束があるんだ。
「……未希というのはアレか? 君と幼稚園の頃から同じクラスで、おせっかい焼きで、朝部屋まで起こしにきて、
お弁当を欠かさず作ってきて、でも恥ずかしいから家の前で渡して、いっしょに登校してきて、たまにお昼もいっしょして、
おかずの感想きいたりなんかして、恥ずかしそうに笑ったりして、でも人前ではツンツンして、仲悪そうに装って、
いつもいつもワタシの恭助にベタベタベタベタしている、最悪のストーカー女、久坂未希のことかい?」
まあ、そうなんだけど。なんか知りすぎだよね。こわいよ。さりげに呼び捨てにしてるし。ワタシの恭助とか。まあいいけど。
「……デートなのか?」
まあ、デートかな。微妙だけど。なんか、アタシね見たい映画があるのぉ♪ とかいってた。ゴメンね。せっかく誘ってくれたのに。
「そうか、わかった。じゃあその約束を破棄してワタシとデートしよう。ワタシね見たい映画があるのぉ♪」
わかってないよね。言い方は若干カワイイけど。こわいよ。カワイイけど。
「いこう♪ いこう♪ ホテルも予約してるしぃ♪」
ホテルは関係ないよね。つーかホテルて。こわいよ。カワイイけどこわすぎだよ。なにすんのよ。まあいいけど。
あのね、ムリなんだ。ことわれないのよ。あいつ約束破るとおこるから。琉球空手つかってくるし。
ってゆーか隣の未希にまる聞こえだよね。すごいよ。いまオレすごい緊張してるよ。こわくて。
『………………どうも、怜華さん。ストーカー女の久坂未希でぇ〜〜す。』
「どうもご丁寧に。気がつかなくて申し訳ない。流石ストーカー女、影が薄い。まあいい。聞こえていたなら話は早い。
明日恭助はワタシとデートすることになったから。キミは自宅でゆっくりと特攻野郎A-teamの再放送でも見ていてくれ。」
『ねぇ恭助ぇ、この娘なにいっちゃってくれてんのぉ? なぁんか、かなり電波はいっちゃってる感じ? 何言ってるかわっけわかんないや。
それともアタシがおかしいのかなぁ〜〜? あ〜〜。なぁんか熱くなってるわ、アタシ。ちょい、マヂギレぎみ か・も』
あ、あのね。ガラわるいよ。やめようよ未希ちゃ
「簡単な日本語でしゃべっているのだが、な。どうやらキミのような人種にはわかりにくいのかもしれん。
その言葉使いからも知性が感じられないし、な。もう一度わかりやすく、かんたんに、キミでもわかるように説明しよう」
ちょ、怜華さ、おさえ
「 き え な この メス豚ッ!! 」
あぁぁあのっあのっ! あのですねっ! ふたりと
『 糞 電波ァァァァッッ!!! 表でろコラァァァッ!!』
あぁ! いや、あのっ、ふたりとも、だめです! けんか、その、だめで
「『すぐもどるからまってて (ニッコリ) 』」
はい。
ある晴れた日の午後 ― 所により、血の雨
>>95 GODJOB
やべ、テラ萌ス
こういうラブコメ大好き
二人してあっちの世界へ逝っちゃってるのが難だがな
はっきりいうと、こんなヴァイオレンスな人間が近くにいると心が休まらないとおもふ
だがそれが(ry
はっはっは。キミたちは何を言っているんだ?
疲弊しきったところが狙い目だぞ。そこでパクッとヤってしまえば、それだけでオちる。
ついでにここぞとばかりに母性的な包容力を見せれば、もう完全に虜じゃないか。
こういう殺伐としたラブコメの皮を被ったマゾプレイから逃れたくて、
素直クールへ転進した俺が間違っていたというのか……
Mな素直クール・・・・・・・・・・・・・・・・・みなぎってきたw
104 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 10:29:29 ID:FqJMxjRm
昨日VIPで毒デレっていうジャンルでSS書いたんだけど、素直クールでも書いてみようかと……
Vipperなんだけど、いいのかなぁ
ていうか、ここの文章レベル高いなぁとビビリ気味……
('A`)すいません、ageちゃいました……
ROMに戻ります……
>>104 何?vipperだと!?
だ か ら ど う し た ?
そんなことは関係ない!素直クールが好きならそれでヨシ!
気兼ねせずにガンガン投下してくれ。
108 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 12:34:43 ID:zKeh811m
110 :
17:2006/07/15(土) 16:44:48 ID:Yi9Px9cV
>>109 中の人の都合で申し訳ないんだが、すごい長編で容量をスレを圧迫し過ぎるとか
そういう止むを得ない事情が無い限りはうpろだはやめて欲しいんだ
というのも、スレ落ちで回収し損なった作品ならサルベージすればいいけど
うpろだから流れちまったファイルはなかなか回収出来ないんだよね
……あと3日うpが遅かったら、確実に流してたわ(こっちの都合だが)
おk
エロパロにも程遠いみたいなんで、vipに帰ります
>>91 解ってるとは思うが俺はもうスタンバイしてるからな?
「俺は……俺は、運命に――勝つ!」
少年の魂からの叫びは響いた。
胸を抉る言葉。突き付けられた残酷な結末。
少年は、男の――人としての尊厳を賭けて、戦う道を選んだ。
「大丈夫、安心して。……私がいるから」
この後、すぐ!
降りしきる雨の中、店内に客の姿は無い。
時刻は午前十時過ぎ。
気儘な自営業だ。やることやった後は、待ちの一手のみ。
「…………暇」
「おきゃくさん、だれもこないねぇ」
付けっぱなしのテレビの音が、虚しいことこの上ない。
一奈も退屈そうに、椅子に座っては足をブラブラさせている。
日曜日だというのにこれでは、商売上がったりだ。
「まあ、たまにはこんな日もいいかもしれないけど」
「ぶー。つまんなーい」
頬を膨らませても、状況は変わらない。
ついでにこの雨模様では、外へ遊びに行くこともままならない。
明け方より降り出した雨は、時間を追うごとに雨足を強めている。このままの調子が続くなら、土砂降りになるのも時間の問題だろう。
「一奈、ちょっと番組変えて。お母さん、天気予報観たいわ」
「や」
「もう。仕方ないわね。えっと、新聞は……」
常備してある客用を広げる。結果は無残。夜中まで大雨。
ちらりと。
一応、窓から外を見てみる。大当たりしそうだ。
雨は弱まるどころか、さらに勢いを増す。少なくとも、数時間はこの調子をキープしてくれるだろう。
「うーん、開店休業かな。でも、誰か一人くらいは――」
「うっへぇ、ひっでぇ雨だなこりゃ」
「……噂をすれば影が差す、と。よく言ったものね」
「ん?」
ドアを乱暴に開けて店に入ってきたのは、足元をずぶ濡れにした浩毅だ。
傘を差してたらしき右手も、しっかり濡れ鼠。風が無いだけマシといったところだろう。
「ひろきおにいちゃん、いらっしゃーい」
「おう。っとと、まだあんま近づくなよ。濡れるからな」
「はーい」
「お気遣いどうも。タオルは要る?」
「いんや、大丈夫っす」
おしぼりだけ貰い、手を拭いてカウンターに座る。
そして隣に、ちょこんと一奈。
「今日は、珠樹ちゃんと一緒じゃないの?」
「なーんでアイツの名前が出てきますか」
「いつもたまねーちゃんといっしょにくるくせに」
「うお! 痛いトコ突くな、一奈ちゃん」
店主は小さく笑う。
事実その通り。一人で来店しても、しばらく待てば後から珠樹がやってくる。十中八九、二人はセットになっているのだ。
「でも残念でした。今日はアイツ大会の試合なんでね。俺は遅めの朝飯を食いに来ただけ」
「こんな日に大変ね」
「ひひ、いい気味だね。精々苦労すりゃいいんだ」
「はいはい。ところで、ご両親は?」
一人暮らしでもない少年だ。わざわざ休日の朝食をこんな場所で採るのも疑問がある。
「金曜(おととい)の夜から旅行。久しぶりに纏まった休みが取れたからって、水曜まで帰ってこないすよ」
ちゃんと金を置いていってくれたのはありがたい。余れば、自分の小遣いにできるし。無ければ、後で請求していたところだ。
がめついと言うなかれ。懐具合は、割りと切実なのだ。
「そう、成る程ね。ところで、ご注文は?」
お冷を一口飲んで、
「カツカレー」
本当、素直じゃない。
「ご馳走さん」
小銭を置いて、席を立つ。
「あ、ちょっと待って。はい、これ」
店主から、やたらとデカイビニール袋を渡された。
まだ温かい。食べ物か何かだろうか。中身を見ても、雨対策にビニールで包まれていてよくわからない。
「何スか、コレ?」
「差し入れ。持って行ってあげなさい」
「…………」
見抜かれてる。完全に。
「こんなサービスして……採算合うの?」
「たかが高校生が、そんなこと気にしなくていいの」
なけなしのプライドを賭けた精一杯の抵抗も、まるで通用しない。
浩毅は思う。
ひょっとして、女に振り回されやすい性質なのだろうか。
「ね?」
「……うっす」
「おにいちゃん、げんきないね。カレー、おいしくなかった?」
「いや、美味かったよ。ちょっと自信失くしただけさ。ふふふふふ」
「ふーん?」
さすがに、これは一奈には理解できなかったらしい。
神様、ありがとう。
こんなチビッ子にまで見透かされてたら、立ち直れないくらいのダメージを受けていました。
「はは……じゃ、いってきます」
「はい。よろしくね」
力なく、浩毅は店を後にした。
「? へんなの。いってきますだって」
「一奈も、そのうちわかるわよ」
「そう? おとなってむずかしいね」
「でもないわ。浩毅くんは、まだ子供だからよ」
「?」
そう。ある意味、人生で一番難しい時期だ。一番単純で、一番複雑な時期。
で、
「蒸し暑っ! もっと空調効かせろよ」
昼過ぎ、隣町の市民体育館に到着した。
「えっと、ウチの学校は……っと。あ、いたいた」
大規模な大会でもないし、この天気だ。思ったほど人は多くなかったので、あっさり見つかった。
空き時間なのか、男女入り混じった袴姿の集団――剣道部が、中心から外れ部員揃ってのんびりとしていた。
というよりも、
「昼休みか」
試合はしてないし、他の学校含めて多くの面子が食事をしている。
放り出された竹刀が無残。ちゃんと纏めて置きましょう。
「…………よ」
声に反応し、珠樹がこっちを向いた。ジッと、様子を窺うように見つめてくる。
まるで猫みたいだな。
浩毅はさらに近づく。
「どうよ、調子は。ちっとは良い成績出したか?」
「珠樹、旦那さんが様子見に来たよ」「もうちょっと早く来なさいよねえ」「うわ、ずぶ濡れ。珠樹、ポイント稼ぎのチャンス!」「ホラホラ。タオル貸したげるから、拭いたりんさい」
「聞けやてめぇら」
クラスメイト兼部活仲間の女子ABCD、相変わらずの調子である。尚、彼女ら+珠樹が女子部員の全メンバーとなる。
珠樹は珠樹で、渡されたタオルを手に、素直に寄ってくる。
「いいって、近寄んな。タオルだけ寄越しゃいい」
手渡されたタオルで、手足を拭く。珠樹は拭き終わるのを横で待つ。
「亭主関白だ」「亭主関白だね」「でも、それも珠樹の手の内」「精々踊るがいいわ」
「差し入れやるの止めようかな、俺」
差し入れ。その言葉を発した一秒後には、浩毅の手から奪取された。
とっても現金ですね、アンタら。
了解を取ることもなく、勝手に開けてみんなで回している。ちなみに中身はカツサンド。折角なので、とことんまで縁起を担ぐべし。
とはいえ、いかに美味かろうがなんだろうが、たかがサンドイッチに負けた事実。
そりゃあ、確認してきたって別に文句なんか言うつもりはないし、結果も同じだけど、
「本っ当、俺の立場って……」
男が泣いたっていいこともあるはずだよね。
そんな浩毅を慰めるかのように、頭を撫でてくる珠樹。
「おう。サンキュ」
今度ばかりは、素直に受け取らせていただきます。
「珠樹ー。そんなのほっといて、アンタも食べなさい」
「……ぁ、っと」
「いいよ。オロオロすんな、みっともない。全員の口に入らなきゃ、作ってくれた人に悪ぃだろうが」
「――うん」
小さく笑顔を見せる珠樹を、しっし、っと追い払う。
「やれやれ、だ」
コイツに関わると、気の休まる暇が無い。
昼休み終了五分前、珠樹がやってきた。
きっとまた何か、
「ね」
「あんだよ?」
「優勝したらご褒美」
ほらきた。人の都合を考えないで、自分勝手な要求。
「ヤだよ。何でまたこんな程度の大会で……つーか、何故俺がやらにゃなんねぇンだよ」
「ならいい」
「へ?」
何とも拍子抜けなことを言って、試合の準備に向かう珠樹。
ポカンと間抜けな顔を晒す浩毅。しみじみ呟く。
「ああ、成る程――」
すごく納得した。
「…………だから大雨なのか」
午後のスケジュールは、個人戦の決勝・準決勝と、団体戦だ。
我が校で残っているのは、藤宮珠樹ただ一人。男子は全滅。
「参加人数少ねえのに、情けねえな」
「うるさいよ。お前が言うことか」
「事実を言っただけさ。発言は個人の自由です」
浩毅の態度に、男子部員がむくれる。
参加校数は、近隣十校に満たない。当然人数も知れたもの。それなり程度の実力さえ備えていれば、このあたりは充分に射程圏内のはずだ。
ちなみに、女子の団体戦は端から準決勝というステキ仕様。
男子は男子で、六校しか参加しないために変則トーナメント。こちらも我が校は、一回勝てば決勝だ。
「瀬川が入部してりゃ、地区予選突破、いや県大会くらいは……」
「個人戦はな。団体戦は無理だ」
そろそろ珠樹の試合開始だ。
話し相手もそこそこに、体育館の中央を見る。
防具と面を着けた二人。竹刀を構えてしゃがみ、切っ先を合わせる。
「さて」
ボーっと観戦させて頂こうか。
『始めっ!』
合図と同時に動き出すが、珠樹は竹刀を振らない。されるがままになっている。
有効打突は、捌くか避けるか。いくら打たれても、ポイントは取られない。
「うわ、ありゃダメだ。完全に遊ばれてる」
「なぬ! 敵はそんなに強いのか!? さっきまでと変わらないように見えるけどなぁ」
「ほう……」
見当違いの意見は取り合わず、試合経過を見守る。
勿論、実際には逆。珠樹が遊んでいる。
殆ど掛かり稽古をさせているようなものだ。反則を取られそうになれば、それを見計らって攻めに切り替えたりする始末。
せめてコレくらいのハンデを自分でつけなければ、面白くないのだろう。
「実力差がありすぎるなァ」
素直な感想。
それ以外の見所もなく、さくっと優勝してしまった。
「ひょっとして、全国でも結構通用するんじゃねえか?」
どんな競技でもそうだが、レベルが低いとはいえ、経験者を軽くあしらうには相当の差を要する。
相対的に表すなら、並みの選手には相手がド素人であるというくらいの条件付けが好ましい。
「勿体無えなぁ。もっと環境のいいトコなら、それこそ全国優勝も夢じゃないかもしんねえのに」
だがまあ、何を選ぶか、何に価値を見出すかは個人の自由か。
「でもなァ……」
何はともあれ、お疲れさん。
と、言ってやりたいところだが……。
団体戦もあっさり終了。
「ぃよっしゃ! 男女共に、準・優・勝・!」
「ははは。相手に欠員が出たための不戦勝でも、自慢になるのか?」
女子は女子で、二勝一敗ニ引き分け(内一勝は、対戦校の人数不足による不戦勝)で、二回勝ったのは珠樹だけである。
「瀬川ぁ、一々茶々入れないで、響きに酔わせてくれよぉ」
「現実的と言って頂戴」
泣き崩れる男子部員。浩毅は生温かい目で見守る。
こうやって一皮剥けるのを繰り返して、人は成長していくのだ。三日後には頑張って刮目しよう。
それはそれとして、
「ンで、だ。ちょいと藤宮珠樹さんよ」
「?」
「な・ん・で・! 人に勝手に抱きついてきてるのかな!?」
「ご褒美」
「やらんっつったろが!」
「だから自分への」
「うっわー……そうきたかぁ。そいつぁ誤算だったな、俺ぁ」
結局、今日の天気は、お天道様の気紛れに過ぎなかったわけだ。所詮、普通の人間が天候に影響を与えるなどあるはずもなく。
「そりゃそうだよなぁ……」
珠樹を甘く見ていた自分が嫌になる。
女子ABCDを筆頭に、ニヤニヤしながら眺めてくるは、ヒソヒソ話してたりするは、居心地悪いったらありゃしない。
浩毅は自問する。
何故、俺はここに来てしまったのだろう、と。
そして周囲に人がいるなら、こういうこともされるわけで。
「せ、瀬川。お、おお……女、女の子にだ抱き付かれる、気分はどうだ?」
「どもるなよ、当事者でもねえのに」
さっきとは別の男子部員が、興味津々、挙動不審に訊いてくる。そして他は、目を輝かせたりダンボになったり。
嗚呼、男の子。
「珠樹はどんな気分?」
抱きついている側は、マイペースなものだ。
女子部員の問い掛けに、親指を立てて応える。
「いや、この際そっちはどうでもいい! 男が! 女に! 抱き付かれる気分はどうなんだ、瀬川!?」
どもらなくなったのはいいが、眼を血走らせてまで訊くようなコトだろうか。
「そうだな。敢えて言うなら……」
「言うなら?」
咽喉を鳴らして息を呑む。頬を伝った汗が、顎から落ちた。
うん、いいから落ち着け。
「敢えて言うなら、気持ち良くもなんともねえな」
「ナズェ!?」
「暑いし……ただでさえ蒸し暑いのに。しかも汗臭いし」
女子ABCDの罵倒は無視。男子総勢のブーイングも無視。
「てかな、珠樹。せめて防具外せや」
試合終了から間を置かずに、おざなりな表彰式。その後そのままこれである。
面を外しただけのフル装備だ。せめて柔らかさを感じられれば、楽しみがあるものを。
「あ」
と、自分の状態に今気付いたらしい。
らしいと言えばらしいが、もう少し早く気付いてもいいだろう。
ご褒美に頭が一杯になっていた、というあたりだろうか。
「ったく、負けたよ。そこまで熱を上げてるたあね。ほれ、仕方ねえ。褒美やるから、ちと離れろ」
「!?」
素直に一歩下がる。
動作は少ないくせに、はしゃぎっぷりは見てて嫌でも伝わってくる。
もし尻尾があったならば、団扇が要らないくらいの勢いで、左右を行ったり来たりしていただろう。
珠樹顔を両手で掴み、浩毅は自分の顔と向き合わせる。少しだけ、珠樹の頬が熱を持った。
「眼、瞑れ」
「ン」
珠樹が目蓋を閉じた。何かを期待し、極僅かに唇を突き出す。
多分、もう周囲の冷やかしは耳に入っていないだろう。
「じゃ、いくぞ」
沈黙で返す珠樹。
そして、二人の顔の距離が縮まり――、
「――フンッ!」
勢いを持って、額同士がぶつかった。
「〜〜〜っ……ッ!?」
目の前に火花の散った珠樹は、頭を押さえて蹲る。
不意を打たれたので、涙目で痛みに耐える。
周囲の面子は、突然の出来事に言葉を失う。
「っの馬鹿が、あんな試合しやがって!」
「?」
「手加減するのはいいけど、ちゃんと迎え撃ってやれ!」
厳しく諭すように語る。
「たった一年で強くなったからってのぼせるな!」
勝負するからには、相手に敬意を持って。それが、浩毅の拘りであり、意地だった。
今回の珠樹のやり方は、相手を侮蔑したに等しい。たとえ自覚が無くてもだ。
練習、稽古ならば文句は無い。しかし、レベルは低いといっても、きちんとした規則に則った試合。ならば、真っ向勝負するのが礼儀であろう。
「あ。それは……」
「まだ解ってないな? なら、もう一発――!」
音を立て、
再び額同士がぶつかった。
珠樹の面との。
「お――おおぉおぉ……う、おお! き、金属……ガスッ……ガスッって」
痛みにのた打ち回る浩毅と、手にした面をあえて構えなおす珠樹。
「えい」
「遅ぇよ、掛け声!」
今度は浩毅が涙目で抗議する。
見事なカウンターだった。
二度は喰わないということか。いつの間にか顔の間に構えていた。色んな意味で、恐ろしい女だ。
衝突事故は、格子状の金属相手に。力が集中して、とにかく痛い。
珠樹は悪びれもせず、自分の言葉を補足する。
「『それは忘れてた。ごめんなさい。もうしません』です」
「…………OK、早とちりして悪かったよ」
言って解らぬ相手じゃない。もっと冷静になるべきだった。
良い教訓だ。文字通り、痛い目を見た。
痣にでもなってないかと、額をこする。まだ触るだけでヒリヒリしている。
すると、珠樹が浩毅の頭を両手で挟んだ。
少しずつ距離が縮まり、三度額同士がぶつかる。
今度は、こつんと。
暫し珠樹は瞳を閉じる。
何かを、しっかり感じ取れるように。たとえ、こんな下らないことでも。
ゆっくり目蓋を開くと、珠樹はそのまま、
「お揃い」
と、微笑を浮かべた。
浩毅の視界は、その美人と称される類でありながら、それで尚、可愛いと思わせる笑顔で埋められた。
「ったく、どんな神経してンだお前さんは」
こんなことが嬉しいなんて。
何やら照れくさくなって、珠樹を引き剥がす。
たとえこんな下らないことでも、小さな絆として積み重ねているつもりなのだろう。
しかし、それは些細なことだ。特殊な趣味をしていることなど、この一年付きまとわれて理解しないはずもない。
そんなことよりも。
目下のところ、問題は――、
「ああ、畜生……!」
そんなことより、問題は。
『ヒューヒューッ!』
「揃って黙れや、手前ぇらッ!!」
ベタなフレーズでハモりやがって。
「そう。そんなコトがね」
「あったんですよ、マスター」
その日の夕方。少しだけ小降りになった時間、浩毅は定位置のカウンターに腰を下ろしていた。
「よかったわね、珠樹ちゃん」
「ぶー。たまねーちゃんずるい……」
浩毅の横と膝の上。それぞれの定位置にはまた、それぞれの主人が。
膝を占拠する人物は頬を膨らまし、横を占拠する人物は、どこか勝ち誇ったように店主の言葉に頷く。
「にしても――」
わいわいがやがや。
午前中は閑古鳥が鳴いていた店内も、今や二桁を数える人数からなる喧騒で埋まっている。
無論、剣道部の面々である。
そして何処から噂を聞きつけたか、女子目当てのジジイも一人混じっている。
「何で此処で打ち上げなんだ?」
「あ。差し入れに割引券入れておいたから」
マスター、さらっと。
「うわぁ」
「浩毅くん、どうせ何かあって此処に愚痴りに来るでしょう?」
「…………」
当たっているだけに、何も言い返せない。
「浩毅くんが来れば、珠樹ちゃんも来る。勝利の立役者になるだろう珠樹ちゃんが来るってことは、部員たちも来る。割引券入れておけば、儲けた気がして足も向きやすくなる」
「凄え。採算取ったよ、この人。見事に利用されてるよ、俺」
「計画通りにね」
ウィンクする仕種が、若々しく魅力的だ。
男としては、騙されたり利用されたりしてもいいかなという気分になる。悪人じゃなくて、本当に良かった。
とはいえ、ここまで事が上手く運ぶと、男として以前に人として不安になるのも事実。
「なァ、一奈ちゃん。俺の行動パターンって、そんな読みやすい?」
「うん」
即答。当然でしょ、と言わんばかり。
人選を間違えた。将来の小悪魔相手に訊いてもしょうがない。
ならば、横は――論外。
店内は――敵だらけ。
「なんてこった。味方どころか中立もいねえ」
改めて気付いてみれば、正に四面楚歌。
「諦めが肝心よ、浩毅くん」
「かんじんだよ、ひろきおにいちゃん」
「肝心です、浩毅」
店主、一奈、珠樹の三連撃。
「あー、何かもうどーでもいいや」
悔しいが、ここは納得しておく。
どうせこの数相手に勝てやしないのだ。無駄に抗うこともあるまい。
「ところでさあ、瀬川ぁ」
「あん?」
テーブル席の男子部員から声が掛かった。
「お前さ、何で藤宮と付き合わんの?」
「何か、前にも訊かれた覚えあるな……。ま、いいや。ともかく、そんなん俺の勝手だろ」
「いや、でもさ、藤宮って美人だし。それに、ホレ。アレだ……な?」
「解んねえって。ハッキリ言え」
男子部員は、少し恥ずかしそうに胸のところに手の平をやって、上下に揺らす仕種をする。
「コレ、モノにしたくないん?」
「……本人の前で言うか?」
「欲しい?」
「お前、女なんだからさぁ!」
当の本人である珠樹は、特に気にした様子もなく。本物を手で持ち上げ、強調して浩毅に訊ねる。
強い存在感を放っているそれは、確かに大きい。しかし、大きすぎるということもなく。
正直、浩毅好みの大きさだ。惑わされたくなったことも何度かある。
しかし。
しかし、だ。浩毅にとっては、そこに負けるわけにはいかない。
「他にもさ、袴姿とか防具着けてない時の襟元とか、そそられん?」
「俺はお前の学校生活が心配だよ」
「いいからさっさと答えろよ!」
「逆ギレすんな!」
「るせー! それとも何か、特殊な趣味でもあるのか!? 例えば、制服じゃないと萌えないクチか。もちょっとマニアックにメイド服とかナース服とか、それとももっとアブノーマルな領域か!?」
「喧しいのは手前ぇだ! わかったよ、じゃあ答えてやるよ。いいか? 俺は服そのものにゃ興味ねえの。重要なのは色気だ色気。服で引き立つ中身の色気が重要なんだよ!」
勢いに乗ってしまい、浩毅は気付かない。
「大体な。その中身にしたって、胸より重要な部分があるンだよ。腰からケツにかけてさ。細い腰とむっちりしたケツの描くS字ライン、これだね!」
ビシッと人差し指を突き出したところで、はたと気付く。
…………随分と店内が静かだ。
固まって微動だにしない浩毅の服を、つんつんと指先で引っ張る珠樹。
「将来」
と、店の一角を指差す。
油の切れたブリキ人形のように、首を動かす浩毅。
そこには、
「HeyHeyカモ〜ン♪」
きっと仲間候補を見つけて嬉しいのだろう。怪しげに踊りながら手招きするジジイがいた。
あまりの不気味さに、何か吸い取られそうな気がしてくる。
あんまりにもあんまりな言葉に、絶句しつつ脂汗を流す浩毅。
珠樹は、慈愛の瞳で見つめる。
「大丈夫、安心して。……私がいるから。どんなになっても、嫌いにならない」
「確定かよッ!?」
ショックだ。たった一回の失態で、何たること。
「あたしもきらいにならないであげるから、あんしんして」
「か、一奈ちゃんまで……」
「諦めが肝心よ、浩毅くん」
「かんじんだよ、ひろきおにいちゃん」
「肝心です、浩毅」
三連撃、再び。
心中涙しながら、浩毅は誓う。
たとえ、この世に誰一人味方がいなかったとしても。
たとえ、それが本当に未来の姿であったとしても。
「俺は……俺は、運命に――勝つ!」
宣言高らかに。
けど、これはこれで楽しいのかもしれない。
長い時間をかけて到達する先。それは、一人だけの旅路ではない。
鍵を握るのは――その答えを見るのはきっと――。
自分だけではない。もう一人の、誰か――。
「うしゃしゃしゃ! その結果を眼に焼き付けてやるぞい」
「爺さん……俺がジジイになっても、本当に生きてそうでヤだなァ……」
「僕は――あの人に勝ちたい!」
少年と少女の前に姿を見せた青年は語った。
その願いは、純粋で……しかし、決して届かぬ想い。
「瀬川浩毅、俺と勝負しろ。勝った方が――藤宮珠樹を手に入れる!」
少年と少女の前に姿を見せた謎の人物は語った。
あまりに強烈な敵は、少年少女の心を乱す。
次回! 「男、三人」
P.S エロあり。
たまには、もうちょっと早い時間に投下出来ないもんかね、俺。
では、おやすみなさい。
>>125 待ってたよw
今回もGJです
次回も、かなり期待してパンツ下げてまってますw
>>125 じゃあ次回まで全裸で土下座して待ってますね。
そういえば、ここの保管庫は存続してる?
>>17氏が提示してくれたURLに行けないのだが。
行けた、イケた。
すみませんでした。
おかげでスッキリしました。
>>125 GJ!
テンポがよくていいよ。
これからもヨロシクね。
125氏は剣道経験者?
白胴着、白袴に萌えたくちですか?
もしそうならなかーま。
俺自身は、大した成績残せなかったけどね。
まあ、浩毅にはああ言わせたものの……、
袴姿の武道少女って、萌えて燃えるよね?
てか、下手に露出度高いより、かえってエロい気がするんだ。
さすがにフル装備されちゃ、燃え一辺倒になるけど。
虎眼流はまだ出てこないの?
防具の『小手』の匂いに萎えた。
だけど
『面』には その娘の香りが残ってた。
むしろどちらも好き
胴着の袴って、横から手が入るんだよな・・・・たしか。
>139
剣道着の袴だったら横から手をいれれるぞ。
でも胴着の前はスナップで止めてることが多いので
合わせ目から手を入れて乳を揉むのは難しい
>>140 おまえ胴着と袴を混同してるよ
袴の脇から手を入れてどうやって胸をもむんだ?
袴の脇から手を入れて下を弄るのなら、右からなら可能だと思うが。
読み違えてるぞ。
袴の脇から手を突っ込んで(下を)弄る→可能
胴着の合わせ目から手を突っ込んで(乳を)弄る→難しい
「でも」で話が変わってる。ただそれだけのことだ。
一本書きましたので投下します。
素直クール娘の一人称。
正直ちょっと天然っぽくなりすぎた感もありますが、まあいいや(←投げやり)
ではいきます。
「おはよう、翔平」
恋人の姿を見つけ、私は寄っていってその腕をぎゅっと抱きしめた。
「柴倉っ!? 待てっ、頼むから待て」
私の胸元から腕を抜こうともがく彼。
その手には今脱いだばかりだろう靴がつかまれ揺れている。
翔平の腕の触感をじゅうぶんに堪能してから、私は腕を解いた。
なぜか翔平の頬は赤くなり、息も荒くしている。
「頼むから、せめて靴をしまうあいだぐらい待ってくれ。ホント頼む」
「翔平の腕が私を呼んだから。あ、耳赤いね、かわいい」
私は翔平の両方の耳たぶをつまむ。
「だーかーらっ、やめてくれーっ、痛っ」
翔平が逃げようとでもいうのか、顔を振るものだから、耳たぶがきゅっと伸びる。
それがまたおもしろくて、しばらくそのままつまんでいた。
まわりではほかの生徒たちが次々に靴をはきかえ昇降口を抜けていく。
こちらをチラチラと見る人は多かったが、誰も声をかけてはいかなかった。
挨拶くらいしていくべきだと思った。
私と翔平がつきあいだしたのは先週の水曜日だ。
私が翔平を好きになったので告白した。
教室での告白だったが、顔を真っ赤にした彼がすぐ私を引っ張って
ひと気のない渡り廊下まで連れ出してしまった。
後で尋ねると、どうやらほかの人に聞かれるのが嫌だったらしい。
壁を足で蹴りながら、私の好きなぶっきらぼうな口調で翔平は告白に応じてくれた。
翔平の、男の子らしいところが好きだった。
お弁当をおいしそうにもりもり食べる翔平。
男の子どうしで小突きあい笑いあっている翔平。
掃除のとき、じゃまな机や椅子を蹴ってどかす翔平。
新米の先生のぎこちない授業中、先生に気さくにしゃべりかけて場をなごませた翔平。
眉毛が太くて濃い翔平。
サッカー部に入った翔平の練習風景を放課後ずっと眺めていたこともある。
私は翔平を好きなんだと思った。
好きだと思ったら、独り占めしたくなった。
翔平の身体をほかの人にとられたくない。
だから、翔平とつきあおうと思った。
クラスメイトには、一年初のカップル誕生だよ、などと言われた。
確かに、私たちがこの高校に入学してまだひと月くらいだ。
告白に応じてもらえた私は幸せものなんだな、と思う。
そして、これからもっとたくさんの幸せが待っているんだと、今日も朝から嬉しい気分になるのだった。
昼休み、私はお弁当を持って翔平の前の席に向かい、机を動かして翔平の席にぴったりくっつけた。
つきあいはじめてから、お昼は一緒にお弁当を食べることにしている。
「そのコロッケ半分ちょうだい。玉子焼きも半分。あとひじきを半分とミニトマトが一つほしい」
翔平のお弁当箱をのぞきこんでそう言い、お皿がわりにお弁当箱のふたを差し出す。
翔平は「ああ」と答えてそれらのおかずを載せてくれた。
お返しに私もおかずをいくつか選んで翔平にあげる。
おかずの交換は、恋人関係の証だ。
告白した当日はなぜか嫌がっていた翔平も、今ではちゃんと応じてくれる。
自分のお弁当を食べながら、翔平の食べる様子を見ていた私は、それを見つけた。
翔平の口元についたご飯つぶ。
気づかずお弁当を頬張っている顔に、チャームポイントを添えている。
「翔平かわいい」
私は立ち上がり、机をすばやくまわりこむ。
焦ったようにこちらを見て椅子を退きかける翔平。
その頭に手をまわし、かがみこんで、すばやく顔を近づける。
「ま、待てっ……!」
せっぱつまった声の響きを耳にしながら、翔平の口元のご飯つぶを、唇で拾った。
肌のぬくもりを唇に感じた――その次の瞬間、私の身体は力強い手によって押しのけられていた。
バランスを崩し、おしりからストンと床に落ちる。
「翔平?」
「あ……あ、わりぃ……」
私を押しのけたのは翔平の手だった。
そんなことをされる覚えがないので、ちょっとショックを受ける。
翔平は狼狽したように口のあたりをもごもごさせ、手を出して私を起こしてくれた。
「あ……あの、な……。せめて、いきなりはやめてくれ」
私から目をそらしたまま、真っ赤な顔でそうつぶやく。
かわいいな、とあらためて思いながら、私は口に含んだご飯つぶをごくんと飲みこんだ。
「翔平、今日の放課後セックスしよう」
私がそう声をかけたのは、午後の休み時間のことだった。
身体がムズムズしていた。
肌が人肌と触れあうことを求めていた。
こんなことは、翔平とつきあいだしてから初めてだ。
今すぐどうにかしたいと思ったが、さすがに学校でセックスをしようとするほど私は思い切りが良くはない。
それに、そういうことは落ち着ける場所でしたいのだ。
諾か否か、すぐ答えが返ってくると思っていたが、翔平は私の言葉に、
なぜか顔を真っ赤にして唇を震わせている。
そして気がつくとまわりが静まりかえっていて、「柴倉さんが」「おい、柴倉が」といったひそひそ声が
そこかしこから聞こえてきた。
なぜか注目されているようだ。
「しばくらぁっ……!」
やっと翔平が言葉を発した。
そして私の腕をつかむと教室の外へ引っ張り出す。
私は翔平の意図がわからないまま、おとなしく廊下を引っ張られていった。
「柴倉、頼むから、ホントに頼むから、まわりを見てからしゃべってくれ」
ひと気のない渡り廊下まで来て、ようやく翔平はつかんだ腕を離してくれた。
「つーかあのときもそうだったじゃねーか。先週の。
柴倉マジでやってんのか。なあ、あんなこと言ってまわり気にならねぇ?」
翔平の顔はまだ真っ赤だった。
「何を言ってるの? 私はただ今日の放課後の約束をとりつけようとしただけだよ」
「だーかーら、セ、セックスとか、人前で言う言葉じゃねーだろ」
そう口にして足で校舎の壁を蹴った。
サッカー部だからか、翔平はよく物を蹴る。
そこが私の好きなところのひとつだ。
「そうかな。で、今日の放課後セックスの相手になってくれる?」
翔平は足元に視線を落としたまま、しばらく沈黙した。
「迷ってるの? 嫌ならあきらめるけど」
悪い答えを覚悟して私は答えをうながす。
「……嫌じゃねーよ。わかったよ。相手になるよ」
「ありがとう」
喜びが胸の中にあふれる。
翔平といっぱい触りあえるんだ。
翔平と裸の肌を触れあわせることができるんだ。
私は翔平にきゅっと抱きつき、その肩口に顔をこすりつけた。
「放課後、楽しみにしてるね」
「ここ寄ってこーぜ」
そう言われて帰りに立ち寄ったのはコンビニだった。
部活を休むと連絡を入れた翔平と待ち合わせての一緒の帰り道だ。
なにか買いたいものでもあるんだろうか。
疑問に思う私をよそに、翔平はまずペットボトルの紅茶を手にする。
そして日用品の棚のあたりをうろうろしていたかと思うと、意を決したかのように小さな箱をつかみ、
まっすぐレジへと向かう。
「これ何?」
私は興味を覚えて、その箱を翔平の手から奪った。
「ちょ、待てっ」
「ええと、ゴムじゃないコンドーム……」
「バカっ、なに読んでんだっ!」
翔平が腕をつかみ、箱を無理やりもぎとる。
「痛いよ、翔平」
「バカっ、名前呼ぶなっ!」
レジの前に立った翔平の耳が赤くなっている。
それよりも。
「ね、コンドームって何だっけ?」
どこかで聞いた気がするのに思い出せない。
だから尋ねたのに。
私の問いに、翔平は答えてはくれなかった。
お会計を済ませ、コンビニを後にする。
そこでようやく思い出した。
「コンドームって、避妊するときに使うものだよね。良かった、やっと思い出せた」
「今まで考えてたのかよ」
「ね、それって必要なの?」
翔平の歩みが止まった。
「な、何言ってんだよ。必要かって。柴倉、その、ちゃんと考えて言ってるか?」
「何を?」
「何をって……だから、そういうことするんなら必要だろ」
翔平が声を荒らげる。
手にしたコンビニの袋が揺れる。
「あー、もういい。てか、うちに帰ってから話そうぜ」
私は釈然としない思いで、翔平の隣に並んだ。
「あがって。今誰もいないから」
翔平の家は、よくある普通の一軒家だった。
二階へ上がり、翔平の部屋に通される。
ひと目見て、男の子っぽい部屋だと思った。
壁に何枚も貼られた、知らないミュージシャンのポスターが目を引く。
床に散らばった雑誌やマンガ。
机の上に積み上げられたCD。
「そのへん、適当に座っといて」
そう言い残して、翔平は階下に下りていった。
一人になった部屋で息を吐く。
そして身体を抱いて身震いする。
胸の高ぶりはさっきよりさらに強まっていた。
翔平に触りたい。
翔平と肌をこすりあわせて、ままならないこの気持ちを甘やかに静めたい。
「さあ」
私はカーテンを閉めると、制服に手をかけ、おもむろに脱ぎはじめる。
このままじっと待ってはいられないから。
ブラを取り、ショーツを下ろし、靴下も脱いで。
私は裸の肌をさらして、愛しい恋人を待った。
「柴倉、待たせた――な、なに脱いでんだよおまえ」
小さなお盆にコップとお菓子をのせて戻ってきた翔平は、ドアを開けたところで凍りついたように動きを止めた。
震えているのか、コップがカタカタ揺れている。
「コップ落ちるよ。ちょうだい」
立ち上がってお盆を手に取る。
小さなテーブルにそれを置いても、翔平はまだ部屋の入り口で立ちつくしていた。
「翔平?」
「あ、あの、……あのな。なんで脱いでんだよ」
赤らめた顔を私からそらして、ぶっきらぼうな口調で問うてくる。
「なんでって、早く翔平と触りあいたいから」
私の答えを聞いているのかいないのか、横を向いたまま、翔平は腰を下ろした。
「……とりあえず紅茶飲もうぜ。柴倉、なんか羽織ってくれ」
私が口にしたことを、翔平はわかってくれていない。
こんなにも触りたくて触りたくてしかたがないのに。
私はもう待てなかった。
「翔平も脱いで」
紅茶のペットボトルを開けようとする手をつかんで思いきり引っ張る。
引き寄せた身体の重みにゾクリと胸のうちを震わせながら、制服のボタンに手をかける。
「ま、待て、落ち着け、柴倉、落ち着けって」
狼狽した声が耳元で響く。
落ち着いていないのは翔平のほうなのに。
でも、そんなあたふたするところが翔平のかわいいところ。
「わ、わかった、脱ぐ、脱ぐから、自分で脱ぐから、だから、手はなせって、頼む」
愛しい翔平。
私の愛しい恋人。
私は翔平から手をはなすと、喉の渇きを覚え、紅茶を注いで一息に飲みほした。
「こ、これで、いいか……?」
羞恥心をにじませたような口調で、翔平が問うてくる。
その身体には、もう何ひとつ纏われていない。
片膝を立てた脚に沿うように、大人のなりをしたおちんちんがそそり立っているのを見てとれる。
「うん。ね、こっちに来て」
私はベッドの端に腰かけた。
翔平が無言で歩み寄ってくる。
「翔平、好きだよ」
少し距離をあけて座った恋人の裸の肌に擦り寄り、腕をまわして上体をこすりつける。
「大好きだよ、翔平」
そしてそのまま寄りかかり、ベッドの上に押し倒す。
なおも上体をすりあわせると、こすれた乳首に感覚が集中して、どんどん高ぶってくるのがわかった。
心臓が、ドキドキいってる。
呼吸が荒くなる。
「翔平、翔平、翔平……」
手をとって、私の胸に押し当ててやる。
「こんなに、ドキドキしてるよ。翔平のことが、好きだから」
「柴倉ぁ、ちょっと、恥ずかしくねーか」
私の胸に手をおいたまま、翔平はそんなことを聞いてくる。
「何が? 裸でいるのは恥ずかしいけど、セックスしてるんだから当然でしょ」
「そりゃそうだけど、そうじゃなくて、なんつーか……」
「それより」
はっきりしない翔平の顔を上向かせ、目をあわせて言う。
「私のこと、名前で呼んで。せっかくセックスしてるんだから」
「う……。り……理緒……」
「うん、翔平」
「は、恥ずかしいって言ってるだろ。つーか名前で呼ぶのはじめてじゃねーか俺。
心の準備ってものが……あ、おい、胸さわるな」
「翔平の乳首小さいね」
「そりゃそうだ。だからさわるなって。くすぐったいだろ」
「さわりたいから」
「ちくしょう、俺もさわるぞ」
「どうぞ」
私たちはお互いの胸をさわりあった。
翔平の手は私の胸をやさしく揉みしだき、乳首をつまんでは控えめにこすりたてる。
胸の内の高ぶりはさらに強まり、私は思わず翔平の胸に口を押し当て、しゃぶりついた。
小さな声があがる。
「柴倉、やめてくれ!」
「名前で呼んで」
口を離し、それだけ言うと、また乳首を舌で転がす。
「り……理緒、舐めるのは、やめてくれ」
せっぱつまったような口調。
でも、やめたくはない。
小さな乳首を吸いたてる。
胸をもまれ、さすられ、いじられる。
愛しい人をさわって、愛しい人にさわられてるということに、胸がいっぱいになって、
せつない疼きが、あとからあとから湧き出てくる。
けれど、それをどう解消したらいいのかわからなくて。
「翔平、せつないよ。どうしたらいいんだろう」
胸元から上目づかいに顔を見つめる。
翔平の顔もなんだか苦しそうだ。
「あー……じゃあ、下も、さわっていいか?」
「下?」
なんのことを言ってるんだろう。
「だから、ここのことだよ!」
大きな男の子の手が、指の背で私の股間を撫であげる。
「ひぅっ」
なにかがぞくぞくっと背筋を駆け上がった気がした。
「なんで、そこ、さわるの?」
「なんでって、そこさわんねーとセックスにならねーだろ」
「そうなの?」
知らなかった。
セックスって、裸で抱きあってお互いが幸せになることだって思ってた。
こんな、おしっこの出るあたりをさわるとか、全然考えていなかった。
翔平は頼りになる。
こんなことを思ったのは初めてかもしれない。
翔平がますます愛しく思えてくる。
「おまえって、実はなんにも知らないとか?」
「そうかもしれない」
「まあいいけど……さわるぞ」
また、股間をなぞられる。
指がそこに埋められたのを感じる。
そして中で動き出す。
「翔平、なんていっていいのかわからないけど、なんだか我慢できなくなりそう……」
腰が逃げようとするかのように動いてしまう。
こすれるたびにうずうずした気分が高まって。
荒い息がもれる。
とろりと何かが溢れだす。
「柴倉ぁ、すげー濡れてる……」
「ん……はぁ……名前で呼んでってば」
「理緒、おまえ、なんでこんなに濡れるんだ?」
「わからない。翔平のほうが詳しいでしょ、そういうことは」
「わかんねーって。しば――理緒のからだのことだろ」
私はもう、翔平の指に意識を集中して、与えられる感覚を余さず得ようとしていた。
翔平の肩につかまって、柔らかい中で蠢く指に腰を震わせる。
「理緒、気持ちいいか?」
いつの間にか、私のほうが下になって、覆いかぶさる翔平にさわられている。
小さく尖ったところをさすられて、思わず息をつめる。
「っ……気持ち、いいかって、わからない。ただ、すごく、敏感になってる」
呼吸が浅くなって、うまいことしゃべれない。
腰の奥がじんわりと熱くなって、とろとろ、とろとろと生温かい液体が洩れ出してる感じがする。
「俺のも、さわってくれるか?」
翔平の手が私の手をつかむ。
それが下へとおろされ、お腹の下のあたりで熱くて硬いものに手が触れる。
「なに、これ?」
おそるおそるつかむと、それはびくっと動いた。
「なにって、だから俺の……ああ、見ればわかるだろ」
言葉に従ってよく見てみる。
「あ、おちんちんかぁ。初めてさわったからわからなかった。こんなに熱いんだ、翔平のおちんちん」
「言うな。恥ずかしいだろ!」
「さわるってどうしたらいいの?」
「どうって……その、俺がおまえにしてるようにすればいいんじゃねーか」
よくわからなかったけど、おちんちんをゆっくりとさすってみる。
外側を覆った皮がくにゅくにゅと動いて、ちょっとおもしろい。
「ん……そう、そんな感じで……」
翔平がかすれた声で言う。
私の股間では、小さな尖りが集中的にいじられている。
なんでこんなに、と思うくらい敏感で、どんどん刺激がほしくてたまらなくなる。
「翔平、そこ、もっと、もっとさわって……」
重ねた身体が汗ばんで熱い。
翔平の荒い息づかいがはっきり聞こえる。
身体中の神経が股間に集まって、ビリビリしびれているみたい。
不意に、自分がどこかへ行ってしまいそうな不安を覚えた。
いじられ続けている突起に引っ張られて、身体が浮いていくみたいな、そのままどこかへ達してしまいそうな、
せつなくて狂おしい感じ。
「翔平、私をつかまえて」
翔平の腕を求めた。
抱きしめていてもらわないと、おかしくなってしまいそうで。
指が小さな尖りをはじいた。
その瞬間、私は震えた。
意識がぐうっと持ち上げられて、白く明るくなって、背筋を走る甘い信号に身体中がわなないた。
なにか叫んだような気もする。
しだいに身体が重くなっていき、やがてたくましい腕の中にいることがわかるようになってからも、
私はしばらく何も言えないまま、ただただぼうっとしていた。
「イッたのか?」
私を抱いたまま、翔平が問いかけてくる。
まだけだるくて、私は答えないまま翔平の胸板をゆっくりとさすっていた。
「おまえ、感じやすいんだな」
やっと意識がはっきりとしてくる。
「感じる……って、今みたいなののこと?」
「ああ。すっげー感じてるように見えた」
翔平の手が、私の胸をやわやわと揉む。
私の身体はまだ敏感なままで、そんな何気ない接触にさえ声を洩らしてしまう。
もっとさわってほしい。
翔平の手をつかむと、下のほうにもっていく。
「さっきのところ、またさわって。あんなふうな感じ、初めてだった。もっと感じたい」
「柴倉――あ、理緒」
翔平が低い声で呼ぶ。
指が私の中を舐めるように探る。
「おまえが、見た目だけじゃなくて、こんなエロい身体してて、すごい嬉しい。
ただ、俺も、もう……。いいだろ、理緒」
「何が?」
翔平はときどきこういう物言いをする。
「ぼかして言わないで。はっきり言って」
「だから!」
怒ったように声を荒らげる。
「悪りぃ。だから、その、セックスしようってことだ」
「セックスならもうしてるでしょ」
「だからそうじゃなくて! 入れてもいいかってことだよ!」
「何を?」
「だーかーら! その、ち……ペニスを、膣に入れてもいいかってこと!」
目をそらして、真っ赤な顔で、翔平はそう言い切った。
「つまり、子どもをつくるってこと?」
「いや、だからコンドーム買ってきてあるだろ。おまえほんとにわかってないのか?」
そこまで聞いて、やっと話がつながった気がした。
「つまり、子どもをつくらないでおちんちんを膣に入れるのがセックスってこと?」
「いや、子どもをつくるかどうかは関係ないんだけどな。まあそんなとこだ。
でもなんでそこらへんの知識が全然ないんだ?」
「いままでセックスしたことがなかったから」
そう答えると、翔平はあきれたように大きな吐息をついた。
にちゅ、くちゅ、と水っぽい音が聞こえる。
私の股間が翔平の指に掻きまわされているのだ。
指は襞をこすり、小さな突起にときどき触れて、膣の入り口をなぞりあげる。
私はじっとしていられないような感覚に襲われて腰を震わせ、ときおり翔平の名を呼ぶ。
とろとろと液体のあふれてくるのを感じ、それが翔平の指を濡らしていることを知ってぞくっとする。
「指、入れるぞ」
その声に続いて、いままで何も入ったことのなかった場所へ指が割り入ってきた。
通路を穿つきつい感触に、息をつめ、耐える。
それでも愛しい人の指が入っているのだと思うと、湧きおこる嬉しさは否定のしようもなかった。
「翔平、翔平……」
顔をあげ、恋人の姿を見やる。
私の好きな太い眉毛の下で、真剣な目が、私の身体の中心を脇目もふらず見つめている。
指が、私の中を行き来する。
痛みはじきに薄れて、翔平の指にからみつく私のそこが、じんじんと熱を帯びてくるのを感じる。
もどかしくてたまらない。
「指をもっと早く動かして」
発した自分の声がひどくかすれて耳に響く。
早まる指の抽送に、おさまるはずだったもどかしさがさらに煽りたてられる。
気持ちいい、とはっきり自覚した。
「気持ちいいよ、翔平……」
私のそこは、もう目いっぱいの熱をたたえて、翔平の指に喘いでいる。
されればされるだけ、求める気持ちがあふれにあふれて。
私は、自分の身体が何をほしがっているのか、はっきりと知った。
「おちんちん、翔平のおちんちんがほしい。セックスしよう」
コンドームをおちんちんにかぶせるところを間近で見た。
翔平は恥ずかしがって背中を向けたけれど、肩越しにのぞきこんだ。
翔平が好きだから、翔平のおちんちんも好き。
これが私の中に入ってくるのだと思うと、興奮で胸がざわめいた。
ベッドの上で目を合わせる。
翔平の目は心なしか潤んでいるようだった。
軽くくちづけを交わして、翔平が私を組み敷く。
足がいっぱいに広げられる。
「セックスってこうやってするんだ……」
おちんちんが開いた股間にあてがわれる。
「いくぞ」
ゆっくりと、翔平が侵入してくる。
身体を割り裂かれるような痛み。
ものを狭い中にいっぱい詰め込まれたような充満感。
「全部、入ったぞ」
翔平のおちんちんが私の中にある。
それはなんだかとても幸せな気分で、でもそれだけでは全然足りない気がして。
もどかしさに腰をよじる。
「あんんっ」
中がこすれて、思わず声を洩らした。
「痛いか?」
「そうでもない」
入ってしまうと、きつい感じはあったが、痛みはあまりない。
それよりも、いまのこすれる感じのほうが気になって。
腰を動かしてみる。
「あ、ふあぁっ」
じわりじわりと膣の壁にもたらされる刺激。
腰の奥がきゅうんとなって、もどかしさが熱を帯びて高まる。
「理緒、おまえ声がエロい……」
「なにそれ。それより翔平動いて。私だけじゃうまく動けない」
腰をぐねぐね動かしてみる。
「あ、あっ、あん、はああぁ……」
おちんちんが私の中でこすれてる。
「い、痛くないのか、大丈夫か?」
「いいから動いて。おちんちん動かして」
もっともっと感じたい。
もっともっとエッチになりたい。
翔平が腰をひく。
襞がおちんちんに追いすがり絡みつく。
腰が深く戻ってくる。
襞が巻き込まれ潜り込む。
「翔平、もっと動いて、激しく突いて」
私は声を震わせる。
「ふあぁ、いい、しょーへい、おちんちん気持ちいいよ、ああぁっ」
翔平の息づかいが耳元で響く。
頬をくすぐる荒い吐息がたまらない。
「しょーへい、しょーへいっ、あんっ、ああぁ、もっと、もっとぉ」
深く突き込まれ息がつまる。
浅くかきまわされて甘い蠕動に声を洩らす。
翔平の肌は熱くて。
私の肌も熱くて。
つながった二人の身体が世界の全てになる。
「あっ、ああ、んああっ、しょーへいっ、すごい、ああっ、きもち、いいよぉ」
これがセックスなんだ。
私はこれをしたかったんだ。
気持ちよくて。
あまりに気持ちよくて。
頭がぐちゃぐちゃになって。
とろける。
「しょーへい、わたっ、わたしっ、おかしく、なるっ、ふああぁ、ああっ」
翔平が私の中にいる。
翔平の全てが私と融けあう。
お腹の奥が疼く。
「しょーへい、しょーへいっ」
もっと来て。
もっと中へ、もっと奥へ。
「ああ、んっ、きゃうっ、きゃあぁ、ふあああああっ」
はじけた。
膣だけが別の生き物のように、喘ぎながら、受け入れて。
あとの部分は、溶けて、はじけて、四散して、ばらばらになって。
私は愛しい肌にぎゅっとしがみついた。
熱い身体。
大切な人。
快感のかたまりみたいな腰の奥から、感覚がしだいに身体に、頭に戻ってきて。
余韻に身体を震わせながら、私は翔平の腕がしっかりと自分を抱きしめてくれているのを感じた。
「セックスって、すごいね」
息を整えながら、私はつぶやく。
「こんなに気持ちいいものだったんだね」
翔平は私の横でやはり仰向けになって目を閉じている。
上体を起こして、そっと口づけをした。
「翔平も、セックス、気持ちよかった?」
問いかけに、けだるげに「ああ」と返事がかえる。
「またセックスしようね。したくなったら言うから」
その言葉に翔平が目を開ける。
「学校では言うなよ。頼むから」
「なんで? 学校で会うんだから学校で言うよ。それとも翔平はセックスしたくないの?」
「いや、だから、人に聞かれるだろ」
「聞かれちゃダメなの? 聞かれたくないことなの、セックスって」
「当たり前だろ」
「なんで?」
「……恥ずかしいだろ。おまえもあんまり、その、セックスとか言うなよ」
「恥ずかしくないと思うんだけど」
翔平の言うことは、やっぱりよくわからない。
けれど。
「おまえって、ほんと変な奴だな……」
呆れたようなその口調がなんだかとてもかわいくて、世界中のなにもかもを好きになりそうな、
そんな満ち足りた気分を私は覚えた。
「翔平、好きだよ、ずっとずっと好きだよ。またセックスしようね」
以上です。
素クール一人称、楽しいことは楽しいけど、けっこう書きにくかったです。
でも書き上げられて良かった。
読んでくれた方、ありがとうございました。
GJ!! よくよく考えてみたら一人称は珍しい気がした。
gj!
スゲーなあ、こんなん絶対書けねーや。一人称レベル高すぎ。
つか今自分のワードで打ってる拙作と比べると投下する気が失せてきた。
でなんでいちいちやる気なくしたとかここに書く必要があるのか
誉め言葉の一つでしょ。コミュニケーションとらないと。
そんなわけで、とても良かったです。
164 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 15:34:52 ID:burtLK0U
GJ!!
理緒があまりにも可愛くて萌え死ぬかと思ったぜ
続編期待してもいいですよね?w
さて、そろそろ袴でエロエロかな。
パンツsageて待ってようかな。
そんなプレッシャーを!!w
167 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/27(木) 09:17:37 ID:tUcu3PLV
このプレッシャー…
シャアかッ!!!
プレッシャーキューブとは懐かしいねたですね。
>>◆uW6wAi1FeE氏
剣道経験者なら誰しもが抱く感情だよな。
フル装備から面とったときは萌える。
後は練習後に雑談してるとき
たまに胴着の隙間からスポーツブラ(?)が見えそうになるのは萌える
さぁ、私は「黒紫雁正宗」を抜いているぞ!
どこからでも来い!
なに?その粗チン。
ごめん。
まだ半分程度しか完成していない……OTL
前半だけでよければ、明日にでも投下できるが?
173 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 22:37:37 ID:NoRWpCoS
楽しみです。でも、書き手の納得いくようにしてください。
174 :
名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 00:59:13 ID:Q/4sYdiQ
期待
おおぅっ! 手直ししてたら、またもこんな時間!
仕方ないじゃないか、何故かこの時間が一番頭働くんだから!
ってわけで、前半いくよー。
さて、そんなことがあった翌日、事件は起こった。
例によって例の如く、昼休みに浩毅と珠樹が格闘していると、
「藤宮――珠樹はいるかな?」
どばん、と。けたたましく扉を開けて謎の人物が現れた。
跳ね返ってきた引き戸を受け止め、何事も無かったようにきちんと端に止める。
見た目は、美少年の部類に入るだろう。長身痩躯。自信に溢れた態度。そして、どこか気取った……というより、どこか自分に酔ったポーズ。
そのまま突っ立っているなら、絵になるのだろう。
「…………」
ここが街角でなら。
そして黙っていたのなら。
(何なんだ、この馬鹿は?)
教室内で時間を過ごしていた全てのメンツの意思が一つになった。
奇異の視線も気に留めず、目敏く目的の人物を発見し、接触を図ろうと……。
「ふふん。この俺が迎えに……ちょ、ちょっと待て! 俺は! 俺は怪しい者じゃな――あああああ!!」
したところを、駆けつけた教師陣によって連行されていった。
後にはただ、静寂を残す教室のみ。
あの珠樹でさえ、眼を丸くして呆然とソレが居た場所へと視線を固めたままだった。
「…………アレ、知り合いか?」
逸早く我に返った浩毅が、珠樹へと確認を求める。
答えはノー。首を横に振られた。
「いやでも、お前の名前……」
「初対面」
珠樹は猛烈な勢いで首を振り、全力で否定する。
眼がマジだ。本当に知らないのだろう。鬼気迫る否定の意思を感じる。
お願いだから、あんなのと知り合いと思わないで。
「あ、そう。んじゃ、そっちは? 知らない? 知らないな? 当たり前? だよね?」
女子ABCD一人一人を指差しながら確認するも、頭を振ることしかリアクションはない。
「他に知ってる人は? 居たら手ェ挙げて」
部屋全体に聞こえるよう訊ねるが、友人二人を含む全員よりリアクション無し。
教室は、一様に困惑の渦に包まれたままだった。
「つまり――」
あれは、
「なんだな。にしても、毎度毎度よくこんなに弁当作ってくるもんだな」
気にするなというコトで。
白昼夢でも見たのだろうか。さっさと日常に帰ろう。
浩毅の姿を合図に、全ては無かったものとして、全員の脳裏から処理された。
しかし平穏も束の間。
「HAHAHA! ハッロォゥォエェッベリバァディ!」
「…………」
また馬鹿が来た。
「やは、先程は済まなかったね! やはり、まずはお友達か……あああ! 畜生、親しみ込めても――おおおおお!!」
担任クラスを持っていない教師陣に連行される馬鹿。
「先生、続き」
沈黙もそこそこに、クラス委員が促す。
あの後、五時限終了後の休み時間にも出没している。皆、いい加減、スルーの仕方も慣れてきていた。
「……おう。HRを続けるぞ」
担任も流す。
「結局何だったンだ、あの白昼夢は……」
「へへへ。そこはバッチリ調べがついてますぜ、旦那」
「こういうコトは、僕達の得意分野だからね」
掃除時間、浩毅の親友二人が気を利かせて――片方は揉み手をしながら――やってきた。
箒で部屋の隅っこを掃いていたところに近寄ってくる。
残った昼休みと、合間の休み時間。三十分に満たない時間で答えを割り出したらしい。
「好きだねえ、お前ら」
「折角身につけたスキルだからな。使える時に使わにゃ損だ」
元々、女の子のデータを調べるために身につけたという理由は、彼らの名誉のために黙っておこう。
特に片方は、データがあっても、女の子相手に勝利した経験が皆無というのは、あまりに悲しい。
どちらが負け越してるのかも、名誉のために黙っておく。
「で? 勿体ぶらず、さっさと教えろよ」
「いくら出す? 俺としては、せめて……」
人差し指を立てる。
「これくらい欲しいんだけど」
「あ、僕は要らないからね。そっちの独断」
端から助け舟を出す気はない。ステキな友情だ。
「レートはいくらだ? 拳に換算すりゃ、十発くらいにはなると思うんだが」
「OK。友情に換算すれば、当然ロハだよな」
だったら言わなければいいのに。
じゃれ合いはここまで。ポーズで振り上げた拳を下ろす。
「そんでさ……っと。いい加減本題に入ってくんねえ?」
後ろに下げていた机を元の位置に戻し、全部揃え終えたところで、三人揃って机の上に腰掛ける。
「あいよ。あの馬鹿の名前は、合川好生。今日から転校してきた。一応、一つ上の先輩で、地元の名士の息子だとさ」
「町の学校に通ってたらしいんだけど、つい最近戻ってきたんだって」
「そのヨシオくんとやらは、何でまたこの時期に……」
「親父さんが病気だかで寝込んで、跡継ぎも一人だけだから不安になったとかなんとか」
「で、何時何処で何があったかは知らないけど……」
「珠樹を見初めて、あの奇行に及んだ、と。成る程ね」
何とも馬鹿らしい話だ。
大方、タイムラグの期間に珠樹のことでも調べたのだろう。ストーカー一歩手前ご苦労様。
一人息子が色恋に狂った挙句にアレでは、親御さんも安心できまい。
むしろ不安要素が増えていることだろう。気の毒な話である。
「気をつけろよ、浩毅。わざわざ言うまでもないかもしんないけどな」
浩毅は大きく溜め息を吐く。
「迷惑な野郎だ」
「転校初日に昼休みから登校してくるは、言うこと聞かず好き勝手消えるはで、先生方も苦労してるみたいだよ」
「ちなみに、あの言動はデフォで装備してるらしい」
「……マジ?」
大丈夫なのか、この村?
そろそろ帰ろうかと下駄箱へ向かった浩毅を、一つの人影が待ち受けていた。
一瞬だけ目が合うが、完全に無視する。
そのまま通り過ぎ、
「ふふふ。待っていたぞ、瀬川浩毅!」
蓋を開けて、靴を履き替える。
二度三度、爪先を叩いて校門へと足を運ぶ。
「いや。晴れたなぁ……」
空を見上げ、しみじみ呟く。
朝は曇天。昨日の趣を残していたが、今は晴天。雲はすっかり、湿気と共に何処かへ持っていかれたようだ。
「……待っていたぞ、瀬川浩毅!」
びしっと、浩毅の背中に人差し指を突きつける。先程無視されたのと同じように。
「あー……でも、やっぱ地面はまだ乾いちゃいないな。気をつけねえと」
軽く地面を足先で突付きながら、浩毅は歩を進めた。
この陽気なら、一日置けばすっかり乾くだろう。暫くは、雨に悩まされなくて済みそうだ。
「だ」
しかし、現在は梅雨時。――駆け足の音が後ろから聞こえる。
「か」
何時天気が崩れることになるかは、予想がつきにくい。――足音は背中に追いつき。
「ら」
朝の天気予報を信じ、対策を取って……念を入れて、置き傘でもしておいたほうが確実だろうか。――追い越し、そのまま駆け抜けた。
「待っていたぞ! 瀬川浩毅!!」
「ンだよ。さっきから、他人の名前連呼して」
「聞こえているンじゃないかっ!」
校門のところで、三度同じポーズをとる馬鹿がいた。
無論、聞こえなかったわけじゃない。係わり合いになりたくなかっただけだ。
「――まぁ、早いか遅いかの違いだけなんだろうけどな」
浩毅はぼやく。
相手の狙いが珠樹である以上、自分へ何がしかの関わりがあることは避けられないだろう。それくらいの諦めはついているのだ。
人生、諦めが肝心なこともある。
「いいか、瀬川浩毅!」
だからわざわざ名前を呼ぶな。
「瀬川浩毅、俺と勝負しろ。勝った方が――藤宮珠樹を手に入れる!」
「やなこった」
「少しは考えてからものを喋れよ!」
それはお互い様。
要するに、外堀も埋めてかかりたいということだろう。そして当面にして唯一無二の敵に選ばれたというわけだ。
実に光栄な話である。
解りやすい要求、結構なことだ。しかし、だからといって意味の無い勝負などする必要は無い。
何故なら――。
「そんじゃ、さようなら。合川好生先輩」
「おい! まだ話は――」
何故なら――。
わざわざ説明してやることもないか。
背中向きで手を振る。
まだ何か喚いているが、今度こそ完全に無視して家路につく。
「……やれやれ。また大変なことになりそうだ」
「や」
「おう。珠樹は上手く捕まらないで逃げられたらしいな」
道すがら、珠樹と合流した。
極々当たり前に。視線を交わすこともなく、浩毅は迎える。
二人並んだいつもの光景。
わざわざ何かを話題に持ち出すこともないのだ。
学校にいると、ゆっくりできる時間が無い。登下校時は、静かな雰囲気を堪能できる、貴重な一時だ。
時々、間を保たせるために、一言二言話せば事は足りる。
だから、
「ありがと」
「何が?」
珠樹の言にもそっけなく。
そんな他愛も無い言葉だけで充分。
明日を思うと、気分が沈む。せめて今は晴れやかに。
そして予感は的中した。
――朝のHR前。
「藤宮珠樹、俺と付き合ってくれ! それがダメなら、まず……瀬川浩毅! 俺と勝負しろ!」
――一限終了後。
「マドモアゼル珠樹、お迎えに上がりました。……ダメ? 勝負だ、瀬川浩毅!」
――ニ限終了後。
「ラブレターを渡すのは、まずお前を倒してからだ、瀬川浩毅!」
――三限終了後。
「教室移動したいなら、まず俺を退けてからにしろ!」
――昼休み。
「おっぜうさん。ランチをご一緒しませんか? あ、勝負? 腹が減っては戦は出来ないって言うし」
――五限終了後。
「瀬川浩毅ー。いい加減、勝負しろよ。藤宮珠樹を賭けてさぁ」
――放課後。
「ふ。ようやく思う存分……って、もういない!?」
「っだあぁあぁぁぁ……ウゼぇー、しつけえー、キャラ掴めねえー……」
授業終了と同時に走り去った浩毅は、定番の席でぐったりとしていた。
HRには参加せず。担任黙認だ。
「お疲れね、浩毅くん」
「お疲れなんですよ、マスター」
憔悴しきったという感じで、カウンターに顔を突っ伏す。
「珠樹ちゃん、そんなに凄いの?」
マスターの言葉に、無言で頷く。
珠樹も浩毅同様、即行で逃げ出したクチだ。表面上涼しげな顔こそしていたものの、流石に辟易していたらしい。浩毅の隣で脱力している。
強烈な敵のターゲットとなった二人は、わずか一日で音を上げかけている。
恐ろしい消耗戦だ。こちらは着実に精神を擦り減らされるが、相手の弾はほぼ無尽蔵。
早急に対処しなければ……。
少女は横でだれている少年に目を馳せ、脳裏に浮かぶ言葉を紡ぐ。
「浩毅」
「ストップ、珠樹。……言っておくが、ヤだからな」
「じゃあ――」
「そっちも断る」
珠樹の提案は、口にする前ににべもなく却下された。小さく頬を膨らます。
(これだものね)
店主が苦笑する。
この二人の関係が、事態を面倒にしている最大の要因だということに、気付いているのかいないのか。
いや、考えるのも野暮な話だろう。
「で、何が嫌で何を断るの?」
「ああ。それぞれ、敵の要求を呑むかどうかっすね」
「前者は話題の主で、後者は私です」
得心する。
手っ取り早く状況を変える手段を提示したというわけだ。
前者は勝負に乗ることとすると、後者は……。
つまり、どこまでも素直じゃない少年ご苦労様。
「珠樹ちゃんはともかく、あっちは別にいいんじゃない?」
「一回でケリがついてくれるならいいんスけど……」
「しつこそう」
「なんだよなァ。問答無用で納得させないと……んっとに、どうにかなんねえか」
「ははは。悩め悩め、少年よ」
店の奥から顔を出し、会話に割って入ってきたのは、二十代半ばの青年だった。
「あ、眞吾くん。一奈は?」
「お昼寝中。起こしますか?」
「いいわ。昨日は夜更かししてたみたいだし」
上條眞吾。
店主の夫の友人にして、元後輩。家が遠いのに、月に一度は通ってくるマメな男だ。
「あれ? そういや眞吾さん、この時期に珍しいね」
「今月は、都合悪くてね。休み取れるのが、少し遅くなったんだ」
「毎月大変だから、そこまで気を使わなくていいって言ってるんだけど」
「悪いけど、聞き入れませんよ。先輩には世話になりましたから、これは欠かしたくないんです」
少しも悪びれず、大きく笑顔を見せる。
この行事は、眞吾にとって、そう簡単に譲れるものではない。
「二十五日……でしたっけ?」
おずおずと、腫れ物に触るように珠樹が問う。
「そ。でも珠樹ちゃん、今更気にしないでもいいわよ」
「もう五年以上ですからね」
店主にとっても眞吾にとっても、既に過去の話だ。それぞれの胸の内で、感情に決着はつけ、答えを出している。
悲しかったはずのことも、ものによっては笑い話として語ることだって出来る。
笑えること全てを笑い飛ばしてやることこそが礼儀だと、彼らは考えている。
「あの……眞吾さん」
「何? 珠樹ちゃん」
「前からお話したかったコトが……あるんです、ケド……その……」
ちらりと、横目で浩毅を見る。
僅かな目配せで、凡その内容は察したらしい。
眞吾は納得し、二つ三つ小さく頷く。
「ふぅん……解った。ちょっと――」
親指で、窓の外を指す。
「外で話そうか」
店の前。
窓から中の様子が窺える位置に立つ。
「それで。話っていうのは?」
「毎月来る理由、です」
珠樹は、軽く店内の様子を見る。
「さっきのだけじゃ、ありませんよね?」
気付いてるのは――多分、まだ私だけですけど。
「まァね。で、それが本題?」
「いえ……」
正直、興味はある。
しかしそれよりも本音としては、自分達の参考になる話が聞ければいいと思っている。
なかなか進展しない現状に、少々不満を持ちつつあるのは事実なのだ。しかも、昨日からはあんなのが出てきたもので、些細なことにもストレスを感じている。
そんな微妙な不安定さを見たのか、
「はは。ちょっと、昔話をしようか?」
眞吾は、訥々と語りだした。
先輩との出会い。
まだ学生だった頃の店主との出会い。
抱いた淡い想い。
祝福。
穏やかな日々。
そして別れ。
「――それからだね。先輩の後を継ぐって、勝手に決めたのは」
「それで、毎月?」
「ああ。これでとりあえずは満足してるんだから、何時までもガキのまんまだよ。だから、相手にされないのかな?」
「だったら――」
「いいのさ、今は。先輩に勝とうなんて思ってないし」
「え――?」
思いもよらなかった言葉に、珠樹は言葉を失う。
対して、思い通りの反応に、眞吾は含み笑いをする。
自分も昔はそうだった。焦がれている時期は、どうしても視野が狭くなりがちになる。
感情に身を任せるのが正しいと思ってしまう。
(とはいえ、このコの場合はちょっと違うかな)
他に表現を知らないと見たほうがいいだろう。
だから、少々お節介を焼きたくなる。
彼ら二人は、そろそろ次のステップに移ってもいいはずだ。やり取りを見ていても、それには充分すぎるほどの繋がりがあるのは一目瞭然。
問題は、互いの性格面により、一歩を踏み出せないことか。
周囲は、見守ることに慣れすぎているようだ。ならば、背中を押す役目を買って出よう。
眞吾は拳を握り締め、瞳を燃やして叫ぶ。
「僕は――あの人に勝ちたい!」
「は?」
「とでも言えば満足?」
珠樹は言葉に詰まる。
どうしたらいいのか、そして何と答えたらいいのかわからない。
「勝ち目なんて、もう誰にもないのさ。だから、僕はゆっくり焦らず攻めるだけ。あの人に勝つんじゃなく、両立するためにね」
「はあ……」
「ところでね――」
ずいっと、顔を近づける。
若干仰け反る珠樹。
「珠樹ちゃんも、真っ向からだけじゃなく、ちょっと別角度から攻めてみな。意外と、効果的かもよ」
「押してダメなら?」
「だと、対策取ってるんじゃないかな。たとえば――」
要は同じ攻め方ばかりだから意固地になるのだ。耳に口を寄せ、いくつか作戦を伝える。
珠樹、暫し熟考。
「難しいです」
「結局、本人達とシチュエーションの問題だからね。例を示しただけだからさ」
ま、お互い頑張ろうよ。
両手を珠樹の肩に置き、優しく告げる。そしてそのまま、回れ右。
「え? え?」
「さ、そろそろ中に入ろうか」
珠樹と眞吾が外に出て五分。
会話を聞き取れない傍目には、楽しげに話す二人の姿が目に映る。
トントンと、浩毅はカウンターを指先で叩く。
店主は、そのことに口出ししない。
「――――ッ!」
顔を寄せたのを見て、数センチ腰を浮かせたことも指摘しない。
実は、店主も眞吾と同じ考えを持っていた。
今まで相談役として部外者を決め込んでいたが、折を見て背中を押すつもりだった。
いい機会なので、これを利用させてもらうとしよう。
今までは口出ししていた。しかし、ある時からそれは逆効果になり、周囲の言葉に対して意地を張るようになった少年。
「!?」
肩に手を置いた一瞬、さらに腰を浮かせたことも、当然指摘しない。
今日は特に何も言わず、徹底的に黙っていよう。
疲れて不安定になった状態ならば、きっと効果的だ。
やがて、二人が店内に戻ってきた。
「ただいま」
「………………おう」
いつもと違う様子で出迎えられたのに、珠樹は気付いた。
何か知らないが、やたらイライラしている。そんなに長く待たせたつもりはないのだが。
そこで、先程のアドバイスを思い出す。
(別角度……)
こんな時、いつも自分ならどうしていたか。
また逆に、周囲は――、
(逆に?)
はたと思い至る。
別角度といっても、難しいものは自分には無理だ。ならば、単純に逆に攻めたらどうだろう。
周囲が浩毅相手に言っていたことを、当事者である自分がやってみる。
いつもと違い、一つ間を空けてカウンターテーブルにつく。
「……どうしたンだよ?」
「別に」
「別にってこたねえだろ。いつもだったら――」
不安になる。いつもは、他人のことなどお構いなしでなかったか。
「いつもだったら、その――もっと、な」
「嫉妬?」
「ンな!?」
大きくバランスを崩し、危うく椅子から落ちそうになった。
珠樹は、いつも黙って横に陣取るだけだ。時々、手を握ってきたり、背中を合わせて座ったり、そういう態度を取ることが常だった。
それが珠樹だったはずだ。
こんな、他人の感情を計算に入れるような言動は初めてだった。
「ジェラシー?」
「言い方変えただけじゃねえか! ああもう! いいからいつもみたいに、こっち寄って来いよ!」
調子が狂う。
言って、浩毅は背中を向けてふてくされる。
一つ横に移動した珠樹が、その背中に軽く覆いかぶさった。
「ヤキモチ焼いたんだ?」
「るせ、そんなんじゃねえ。ああ畜生、なんでこんなイライラしてるかな、俺は!」
自分の口で言った言葉。そして忌々しげに頭を掻く浩毅の反応を見て、さすがの珠樹も気付いた。
そう。ようやく気付いた。本心を口にしないのも、ただ自分に気を使っていただけではないらしいことに。
今の今まで、常々感じていた不安が消えていく。
周囲の口にしていた理解不能な言葉の意味は、こんな簡単なことなのかと、目から鱗が落ちる思いだ。
「ふふ……」
「ンだよ、気味悪ぃ」
「気付いちゃった」
「何が……つーか今更かよ、バカが」
「うん。思ってた以上にバカだった」
二人を見て、無言で親指を立て合う眞吾と店主。
まさかここまで上手くいくとは思わなかった。実に簡単なことだった。
全力で鍔迫り合いをしているのなら、片方を引かせれば転びやすくなると踏んでいたが……。
そして、そこに足をかける役目でもしようかと思っていたのだが……。
果てしなく盛大にスッ転んでくれた。それも物凄く気持ちよく、しかも頭から。
眞吾と店主は、互いに目配せをする。
この一歩を進んだのなら、後はトントン拍子で話は進むだろう。
若いっていいな、と二人が頷いていると、
「はっはっはっは! ここかぁ! やぁっと見つけた!!」
馬鹿が出没した。
前半終了。
後半、馬鹿VSツンデレ。
激突! 色々と。
珠樹とも激突。
こっちも色々と。
さあ、アレやコレやな描写頑張るぞー。
>>◆uW6wAi1FeE氏
乙です。
ここは素直クールのスレですよね?馬鹿のほうがかわいく見える私は異常でしょうかw
馬鹿カワイイよね馬鹿。おちょくっていじりてぇw
そして別角度ナイス。軽く悶えた。
同じお邪魔キャラでも報われないお馬鹿キャラと言うのはマスコットキャラとして酷く可愛く感じるものだ
そして主人公。ちょっと弄られただけであっさりいっちゃうところが実にイイvv
馬鹿とツンデレと素直クールとエロ爺
超カオス!!超GJ!!超ガンバレ!!
最後はエロ爺がおいしいとこを持ってくんだな
>>192 >ちょっと弄られただけであっさりいっちゃう
ここだけ読むと酷くヒワイだwww
>>188 GJ!
キャラが生き生きとしていて蝶サイコー。
色恋沙汰に免疫0の純情熱血バカなキャラがいても盛り上がりそうな気がします。
目の前でイチャつく浩毅と珠樹を見て
「は、破廉恥だ!」
みたいな。
>馬鹿が出没した。
あまりのベタさに吹いた。
ムードぶち壊しの馬鹿カワ(・∀・)イイ!!
GJ
馬鹿男とくっつく馬鹿女希望
二人で共同画策してたらいつの間にか鯉が・・・
池の中で……
跳ねた…
そのまま空高く飛び上がり…
龍に姿を変え…
天へと昇った……
これが昇龍拳の由来である……
なんだこれ('A`)……
なんだよこれw
レス数増えてるから「後半」が投入されたのかと期待に胸膨らませて
やってきたのに…
鯉が・・・
期待を裏切って・・・
生け作り
ペンペン…
アンタら、そんなに俺にネタを仕込ませたいのか?w
後半はもちっと待ってね。
週末にはなんとかしてみせるから。
つか、それ越えたらちょっと早めの盆休みで、一週間くらいPC触れねえ。
自分のペースで頑張ってくだせぇ
>>◆uW6wAi1FeE氏
無理して体壊したり予定崩すのはいけないです
まず自分のことを…
小説は二番目くらいだと嬉しいな。
素直クールは大好きだが素直ヒートって新ジャンルあるんだなwwwwwwwww
さっきまとめサイトみたいなの見てきたんだが笑いすぎで腹いてぇwwww
なぜそれをここで言うのか
まとめサイトあるの?
upお願いします兄貴。
ググレカス
219 :
17:2006/08/03(木) 23:15:07 ID:r/DDG0xQ
>>217 ロボットはタグで弾いてるから、グーグルの巡回弾いちゃってるかも。
誰か前スレのdatください
迸ってるなww
ツンバカが可愛いと思うんだ。
|ω・`)……保守
226 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:16:18 ID:4lPzq7E2
>>225 保守なのにsageになってる
かわりに保守しておく
sageても落ちやしないぜ。
結局完成したのは、後半の前半まで。
一週間以上いなくなるので、せめてそれだけでも。
そんじゃ、いきますよー。
「ふふふふふ……まさか、昨日に続いて今日も部活が休みだとは……」
馬鹿が来る。
息を切らし、フラフラと歩み寄ってくる。
「思わず……思わず学校中探し回っちゃったじゃないかっ!」
試合直後。そして程なく期末試験となるため、いっそ少し長めの試験休みとした。期間にして、他の部活より三日ほど長い十日間である。
昨日珠樹が逃げられた理由もそれだ。
他が部活に勤しんでいるので、普通に部活動をしているものと勘違いしたのだろう。
その後、以前調べた心当たりを一つずつ廻った、といったところか。
「待てど暮らせど、体育館に剣道部は誰も来ないし……ちょっと泣きたくなったぞ、俺は!!」
多分、知らせなければ明日こそ半泣きになる。
呆然とする店主と眞吾とは対称的に、冷静にその光景が思い浮かべられる浩毅と珠樹。
――そこまで慣れてしまった自分が嫌だ。
今、二人の心が一つになった。
「って、何イチャイチャしてンだ、キミたちはぁっ!? 離れろよぉ!」
浩毅の背に覆いかぶさったままの珠樹。そんな二人を、震える手で指差す馬鹿。
「あー、そうだな。珠樹」
「うん」
ムードもへったくれもない。何となく白けてしまい、お互い素直に離れる。
馬鹿は満足気に、腕組みしながらそれを確認する。
「よしよし。それじゃ改めて――」
「あ。ウチ、喫茶店なんだけど。それと……」
我に返った店主が、すかさず口を挟むついでに、店の奥へ視線を促す。
「小さな子が寝てるから」
「あ、これはどうもすいません」
声を抑える。
黙ったままカウンター席――珠樹の横。浩毅と二人で間に挟む形――に腰を落ち着かせる。
「えと……カルボナーラとシーザーサラダ、それとレモンティー。デザートにレアチーズケーキ」
「はい。承りました」
メニューを取り、いそいそと作り始める店主。
眞吾は、手伝いとしてドリンクと食器の用意をする。
「……喰うなァ。晩飯前だろ?」
「育ち盛りだもんね。走り回って、腹減ったんだ」
「あ、そ」
「それより瀬川浩毅。俺は、お前と馴れ合う気はない!」
「いいね、同感だ。それはそうと、しょっちゅう指差すの止めれ」
あと、わざわざ名指しするのも。
「うむ。そこだ、瀬川浩毅。止めなきゃいけないなと思いつつ、止めることの出来ない世の不思議」
つまり、所謂悪い癖。
そういうこと、誰にでもあるだろ?
馬鹿は浩毅に問う。
「さて、ね」
心当たりは……ある。
あるにはあるが、わざわざそれをどうにかしようと思うかは別問題。
「…………」
「ンだよ、珠樹。その目は」
「別に」
「チッ」
しかし、浩毅は絶対口には出さない。これもまた、悪い癖。
「む、気のせいか。何やら疎外感……ま、いいや」
出されたレモンティーを口に含む。
馬鹿は呟く。気のせいではないということに、気付くことは出来ない。
馬鹿であるが故に。
それが馬鹿のアイデンティティー。レゾンデートル。
そうこうしているうちに、サラダ登場。
「いただきます」
行儀良く、手を合わせて頭を下げる。
口に運んでいる間に、パスタも茹で上がったようだ。
順次出される皿を、黙々と片付ける。口にモノ入れて喋るなんて下品な真似は致しません。
「ご馳走様でした」
皿を重ねて、手を合わせお辞儀をする。
眞吾が皿を回収し、流しへ持っていく。
「さて。続きをしようか、藤宮珠樹、瀬川浩毅」
「しまったなァ……逃げりゃ良かった……」
「迂闊」
意外に常識的な対応するので、思わず食べ終わるまで待ってしまった。
もう、このままばっくれることは適うまい。
後悔先に立たず。千載一遇のチャンスは、既に遥か遠くに。
「ふふん。いよいよ逃げることは諦めたようだな」
「いやホントだよ。何で逃げなかったんだろうな、俺」
「まあ、今回瀬川浩毅は後回しだ。俺の目的はただ一つ……!」
ぐぐっ、と拳を握り締める。
「後回しで構わねえから、二度と俺に波及しないでくれると有難い」
「何てヤツだ! 貴様、それでも男か!?」
「声、声」
「むむ……」
言われて、声量を抑える。
浩毅もやっと扱い方が解ってきたようだ。
いいとこの坊ちゃんというのは確からしい。一応礼儀も身につけているらしく、常識面で攻めると意外と弱い。
馬鹿本人を攻めても効果は薄い。暴走しがちな分、気をつけるようにしているのだろう。多少なりとも、自分の馬鹿さ加減は自覚しているようだ。
しかし自制は出来ない。
浩毅から珠樹へと向き直り……、
「藤宮珠樹! こんなヤツより俺と――」
珠樹は息を呑む。
「ロマンティックな夜を過ごしませんか?」
「…………」
「あら? 藤宮珠樹さん?」
「…………本当の勇気見せてくれたら」
「ぃよしっ! 一歩前進!」
自信満々に、浩毅を指差す。
「どうだ。熱意はちゃんと伝わると思い知ったか!」
「……あー、ウン。ソウダネ……」
どうにも、反応に困る。
指摘すべきか、せざるべきか。
珠樹は、縋るように視線を向ける。
「――どうしよう……浩毅ぃ」
「俺に振るンじゃないっ。自分で切り返せないようなボケかますんじゃありませんっ……!」
なんてこった。
浩毅は、ある種の絶望に打ちひしがれる。
珠樹が初めて他人にかましたボケが、まさか通じないどころか言葉そのまま受け止められるとは。
珠樹の肩に手をかけ、真摯な瞳で騙りかける浩毅。
「俺たち、リアルタイム最終世代なんだぞ。そりゃ通じないヤツだっているさ」
「見極めが甘かった……」
「それにアイツってば、一応大真面目なんだからな。時と場合と相手を選べよ。な?」
「ぬぬぬ。ひょっとして、馬鹿にされてる? 俺相手ならまだいいが、ダメだぞ、他人の悪口は」
諭された。論点がズレてはいるものの。
しかし、馬鹿は気にしない。
「というわけで、瀬川浩毅。勝負しよう。負ければこの場はスッパリ諦めようじゃないか。見せるぜ、勇気」
「ヤダ」
「臆病者め!」
「勝手に言ってろって。俺にゃ関係ねえコトなんだから」
「なっ!?」
馬鹿――好生は、カウンターに手を着き、腰を浮かす。
憤りと軽蔑すら込めた形相で睨まれても、浩毅は意に介さない。本心である以上、恥じることはない。
しかしそれでも、一応補足くらいしておくべきだろうか。
「落ち着け。いいか、お前の目的は珠樹だろ? だから、本質的な問題としては、俺には関係ないんだ」
「??」
「つまりな。選択権があるのは、あくまで珠樹なんだから、俺に勝ってどうなるってワケでもない」
「むぅ……」
どうやら、浩毅の答えは不服のようだ。腕を組んで、考え込んでしまった。
考えを纏めること数秒。
「でも――それでも、だ。瀬川浩毅」
どうしても納得のいかない部分がある。
確かに浩毅の言うこと自体は正しい。正しいが、腑に落ちない。
ならば何故、瀬川浩毅という少年は……。
「何故、藤宮珠樹を無下にする?」
「それこそ俺の勝手だ」
「いいや、納得いかん。いくらなんでも、藤宮珠樹がお前に惹かれていることくらい解る。選択権という意味では、お前も同じはずだ」
よって、何らかのアプローチにより自分へ関心を向けなければならない。
互いの選択権という意味では、両立し得る。なのに、浩毅はそれを行使しようとしない。権利を捨てようともしない。一方的に、珠樹からの選択を受け止めるだけだ。
なのに、こうベタベタとくっつく二人がもどかしい。
それが馬鹿に思いつく唯一の勝機。未だ付き合っていないというこの状況を、逃すわけにはいかない。
だが、納得はしていたい。勝つにせよ負けるにせよ、視界が不透明ではスッキリしない。
「もう一度訊く。何故、藤宮珠樹を袖にし続けるんだ? 瀬川浩毅」
「もう一度言う。そんなん俺の勝手だ」
「くそっ、男の風上にも置けないヤツだな」
「るせェなァ……」
浩毅のフラストレーションが溜まっていく。
元々それほど気が長くない。加えて、ここ数日はストレスの溜まり具合が激しい。
先程のこともあるだろう。
(そろそろ爆発する頃かな……)
店主は、フォローへ回る心構えを決める。
「――――ふぅ……」
(あら?)
しかし、浩毅は抑える。
大きく息を吐き、呼吸を整える。冷静さを失ってはダメだ。
「浩毅、成長した?」
「黙らっしゃい」
二人の様子を見て、店主はフォローの準備を取り下げる。
歯車が噛合い、思った以上に結束は固くなった。どうやら、浩毅にも精神安定の効果はあった。二人の間に問題はないだろう。
今までは、動作不良が起こっていたが、ちょっとしたメンテでそれも解消された。
口ではどう言おうと、あとは若さに任せて突っ走る。間違いない。
あとは、馬鹿がどう出るか。
(絶対に報われないのも、ちょっと不憫だけど……)
店主は少しだけ同情する。
とはいえ、今まで見守ってきた二人。しかもステップアップのチャンスだ。可哀想だが、ポッと出の男に協力する義理はない。
「……ともかく、俺は別にいいんだ。いっつも珠樹に迷惑かけられてんだ。せめて俺も、これくらいかけてやらにゃ割りに合わん」
浩毅は、馬鹿に答えを告げる。
「ふん。そうやって、いつか藤宮珠樹を泣かせる気か?」
「――だな。そのつもりだ」
「ぐぐぐ……! 藤宮珠樹、悪いことは言わない。コイツと縁を切るんだ」
「有り得ません」
「くうぅぅ〜〜! 骨の髄まで毒に侵されているというのか? でも安心してくれ。必ず救い出してみせるからな!」
涙を堪えながら、拳を握り締める。
……酷い言われようだな。
浩毅は呆れるものの、言葉尻を捉えるだけならば、そういう感想も仕方のないところか。
馬鹿は席を立ち、芝居がかった仕種で珠樹に向き直る。
大仰な身振り手振りを交え、どこか自分に酔いながらの言葉は続く。
観客はたったの三人。されど、今の彼にとって、一も百も同じ。転がっている芋の数が、多いか少ないかという程度の問題に近い。
「俺ならば、絶対に泣かせることはしない。そのためにも、藤宮珠樹。共に歩んで生きて欲しい!」
冷や汗を浮かべ、半眼で馬鹿を見る珠樹と、
「………………」
「どうしました?」
「同じような言葉でも、使う人によって印象って変わるものね」
どこか複雑そうに、しみじみ呟く店主。
「へぇ」
眞吾は素直に感心する。
先輩、貴方は間違いなく勇者だ。
そんな反応は露とも知らず、
「どうだ、瀬川浩毅。目の前でここまで言われて、まだ逃げるか?」
今度こそ、とばかりに。勝ち誇った笑顔で、指を突きつけてくる。
言葉を失う浩毅の服の袖を、小さく二、三度引く力があった。
「……浩毅」
「仕方ねえな。一回だけだぞ」
珠樹にせがまれ、頭を垂れる。
この執念には恐れ入る。何とかの一念、岩をも通す。
勝負後数日間は大人しくなることを祈って、受けて立つことにしよう。
「よろしい。敬意を表して、お前の得意分野――剣道で勝負しよう」
「本気かよ?」
「ああ。勿論だとも――」
跪き、珠樹の手を取り、キスのポーズ。口付け本番は、勝利してからだ。
「待っていてくれ、藤宮珠樹。さっきの言葉を嘘にしないよう、俺は頑張るからな!」
「嘘も何も」
頬を人差し指で掻きつつ。
油断した浩毅が、口を滑らせる。
「そもそも……嘘にしたかったら、まず俺を通してもらわないと困るんだが」
「……………………」
場を支配するのは、数秒の沈黙。
そして、意味を理解するのに遅れた浩毅。
「俺の――負けだ……ッ!」
馬鹿が地に崩れ落ちた。
「また――墓穴った……ッ!」
何気に結構なうっかりさんが、頭を抱えた。
少女が小さくガッツポーズをとるのを、大人二人は黙って見守った。
以上です。
後半の後半は、何故か行われるツンデレと馬鹿の試合。
そして、珠樹との別の意味での試合。
ええ、次回は……次回こそは……っ!
>>233 GJ!
浩毅のツンデレ+ウッカリ具合とか馬鹿の馬鹿っぷりとか珠樹のボケがスルーされたところとか
すごくツボりました!
続き楽しみにしています!!
GJ!!
自分の読解力が少ないので、最後の墓穴を掘った辺りの雰囲気が微妙にわかりにくかったけど(おバカでスイマセン…)
続き楽しみに待ってます!
236 :
235:2006/08/07(月) 10:15:26 ID:rQaj15/U
スイマセン
理解した
付き合うか決めかねて、関係を保留してきたのに自分で進めてしまった事ですね…
ゴメンなさい…
ごめんなさい。俺もおバカなんでどこで分からないのでお教え下せぇ…
それにしても村の喫茶店にしては洒落たメニュー置いてますなw
色々な試合を楽しみにしてます!俺は盆休みは来週の火曜日だけだorz
訂正orz
ごめんなさい。俺もおバカなんでどこで墓穴ったのか分からないのでお教え下せぇ…
それにしても村の喫茶店にしては洒落たメニュー置いてますなw
色々な試合を楽しみにしてます!俺は盆休みは来週の火曜日だけだorz
ハイ、僕もおバカなので教えて下さいエロい人
話の流れで主人公の
「そもそも……嘘にしたかったら、まず俺を通してもらわないと困るんだが」
って台詞が何かすごいこと言ってて思いっきり墓穴ったってのはわかるのですが
どの言葉を嘘にするするのにどうして主人公を通さないと困るというのがどう墓穴なのかが…
理解力足りなくてすみません
>>233 GJです。
ツンデレ、ついに素直になりましたね。デレデレモード突入でしょうかw
>>239 (「共に歩む」という言葉を)嘘にする。
↓
バカと素直クールが共に歩めない。
↓
誰かが邪魔をするから歩めない。
↓
バカ以外の誰かと素直クールが、らぶらぶな状態が邪魔。
↓
「俺に話を通せ」の発言から『バカ以外の誰か』にツンデレは立候補したと考えられる。
↓
素直クールの本命が本腰を上げ、バカ惨敗は火を見るより明らか。
ツンデレのほうは
>>236参照でいいと思う。
バカの言葉
↓
異次元
↓
嘘になる
(`・ω・)ナルホド!!
う〜ん、分かったような分からんような…
俺は意味を瞬時に捉えられる馬鹿よりも馬鹿ですorz
>>240 こうじゃない?
「絶対に泣かせることはしない」を嘘にする
↓
素直クールが悲しむことをする。
↓
素直クールの思い通りにならない。
↓
素直クールがツンデレとくっつけない。
↓
「俺に話を通してもらう」=「俺を蹴落としたら素直クールが泣くぞ」
or
「お前がどうだろうと俺が泣かさないから、泣かしたければ俺をどうにかしろ」
「泣かせる事をしない」と言ってるのに、浩毅を倒したら素直クールが泣くから?
つまり素直クールを泣かせるには
最愛のツン男を倒すくらいしか方法がないということかな。
素直クールを泣かせられるのはツンデレだけだから
嘘にしたかったらツンデレを通すしかない、とか?
次回ツンデレの虎眼流が炸裂
(ホテルにPC設置されてた)
えーっと、やっぱ説明不足な部分があったかな。
とりあえず、ツンデレの言葉には色々意味を持たせたつもりです。
だもんで、そっちは好き好きに取ってくださいな。
今の所
>>236のような意味さえ伝わってれば、それでOK。
>>242 馬鹿が読んだのは、言葉の意味じゃなくて空気なので、あまり落ち込まないようにw
端的に表すなら、こう。
ツンデレ→言っちまった……orz
馬鹿→あれ? ぞんざいに扱ってたわけじゃなくて、ひょっとして相思相愛?
互いにベタ惚れですか? 勝てるか、そんなん……orz
馬鹿はやっぱり馬鹿ということで。
馬鹿には馬鹿なりの戦いかたがある。
弱者には弱者なりの戦い方がある
開始直後の担ぎ小手とか抜き胴とかで意外と一本とれたり
そして後は鍔迫り合いで時間切れに持ち込む(反則ぎりぎりの)
確実に勝ちが欲しい時のえげつない戦い方です。
監督>よくやった。
仲間>まぁ勝利は勝利か…
敵>あいつ、次の練成会で殺す。
そんな馬鹿の戦い方が楽しみな一人です。
気長に待ちます。
>>249 いたいたw
絶対に『負けない』奴。
団体戦には欠かせない存在さww
勝負は非情だよな。
>>250 剣道は一勝や一本がとてつもなく大きいからな
あー久しぶりに剣道やりて
252 :
242:2006/08/11(金) 07:27:20 ID:Po2KjgKC
作者さん、乙でした。一言。
ありがとうございますorz
>>249-250 俺のこと話してるのかい、お前さん達。
俺の場合は剣道じゃなくて銃剣道の話だが。
(*´∀`)じゃあぼくはガンカタを使うよ。
冬は寒くて夏は暑い
顔が痒くてもかけないもどかしさ
考えだけで鬱になるから剣道はもう勘弁だな
あれこれやったが、一番涼しかったのは相撲か空手だなぁ……
素クールに似合う武道って何だろう。
剣道や薙刀みたいな武器系だろうか。
俺としては空手や合気も捨てがたいところなんだが。
相撲はギャグにしかならんつーか、
むしろ素クールとがっぷり四つに組みたい。
素クールには弓道が似合うとおもう
しかし武器を持ったおにゃのこって良いな
そしてそれが素クールとなればなおさら
>>256 空手だろ。
素クールには空手!!根拠ないけど空手!!
練習で女子と当たったときはうれしかったがそれ以上に困ったな。
つ【陸上】
女子選手と銃剣道の練習試合やった時に、
銃剣で喉元突かれて一瞬で一本取られた。
その時、俺が咳き込んで蹲ってたら、何とその選手が
「すまない、打ち込める所がここしかなかったんだ……大丈夫か?」
と素クールな口調で心配してくれた。
いや、別にその後は何もなかったんだけどね。
素クールっぽい女の子が実在するというだけの話。
>>256 「相撲とはキミと好きなだけ抱き合ったり押し倒したり押し倒されたり出来る格闘技の事を言っているのか?
よし、今から相撲をしよう。土俵の変わりにベットを使うが別に問題はないな?」
こんなん?
卓球はダメだね。熱くてかなわん。
やっぱ武道系が一番素クール多いのかな
気が強いってものもあるし口調が毅然としているのが要因か
>>263 男の部屋にて
男「なぁくー、好きなスポーツってなんだ?」
く「私の好きなスポーツ?ふむ、そうだな。私は今すぐ相撲がやりたい」
男「相撲!?てか今やりたいスポーツじゃなくて好きなスポーツ…ってくー何で服を脱いでるんだ」
く「男よ、何を言っている。相撲は裸でやるものだろ?
それに相撲とはキミと好きなだけ抱き合って押し倒したり押し倒されたり出来るスポーツだろ?
男「いや、それ絶対違う」
く「土俵がないからベッドで代用するか。男よ早く脱げ。それとも私に脱がして欲しいのか?」
もう無理orz
なんかそのテンション、某板の素クールスレに似てるな
スレタイ確認して海に飛び込め
柔術なんかは三角締めなんていうのも一般的だよ?
上四方固めとか肩固めとか素クールが喜びそうな組み技が沢山ある
何となく書いてみた上四方固め
男「ちょ・・・クー・・・息が・・・胸っ・・・」
く「ふふ・・いつもと違う体勢で抱き合うのも新鮮で良いな。んっ…男の臭い…いつ嗅いでもゾクゾクする・・
そうだ。男よ、このまま子作りでもしないか?なに、ここは私の部屋だ。いくら汚しても片づけをするのは私だ君が遠慮する理由などどこにもない。」
男「それどころじゃ・・・な・・・・(ガクッ)」
く「気を失ってしまったか。少しやり過ぎたな。まぁ、そのうち目を覚ますだろう。
く(・・・・・・しかし男の寝顔がこんなに魅力的とは。正直、少し濡れてしまった。…ふむ。寝込みを襲うのは・・・いや、ダメだ。
そんなことをしたら嫌われてしまうかもしれない。ダメだダメだ絶対にダメだ。男の居ない世界なんて考えられない。
でも・・・・・・・
ここから先はみなさんのご想像にお任せします。てかエロいシーンまでもってけねぇorz
素クールの空手少女と言えば
氷川雫かね?
>>271正解w
銃剣道より銃剣格闘の方が面白いよ。
まあ、突きが基本だから上達すると殴打や斬撃なしで
試合終わっちゃうから、実質銃剣道なんだがw
エロさっぱり無しの短編書いてみました。
題名は特にありません。
このあとの皆さんの反応によって続編書こうか書くまいか決めようかと思います。
平和でうららかな午後、昼休み。学食にて突然、友人その1が聞いてきた。
「オイ浩輔、お前好きな人とかいないの?」
お前はどうなんだよ?
「俺?英語クラスの篠原さんだっけ?かわいいし、俺好きだけどなー。……お前の番だぞ。」
特にはいないな。
「嘘つけよ、気になる奴くらいはいるだろ?誰だよ。」
……確かに気になる奴ならいる。
途端に目を輝かせて、食いついてきた。
「どんな奴だよ、当然男なんだよな?」
俺はホモじゃない、そんなキャラに仕立て上げるな。ちゃんとした女性だ。
「どんな人?どんな人?」
一応美人の部類には入ると思う。ウチのお隣さんだ。
「おお〜、幼馴染萌え〜!」
死んでくれ。話の腰を折るなら続きは話さないぞ。
「……ごめんなさい、続き話してくださいお願いします。」
小さくしぼんだそいつに免じて続きを話してやる。
「で、どういう風に気になるんだよ?」
気になるというか、気にならざるを得ないというか。
「だからどんな風に?」
朝、我が家に不法侵入して俺を叩き起こしたり、同じくいつの間にか台所で飯作ってたり、休みの日に出かける予定を立てるとなぜかついてきたり……
「いいなあ〜、俺と代わってくれよ〜。」
是非代わってやりたいよ。うっとうしい事この上ないんだから。
「今の話聞いてる限り、不法侵入以外は別にうっとうしくは無いと思うんだけどな。」
不法侵入がうっとうしいんだ。その上、人前で俺のこと好きだの何だの真顔でぬかしやがる。
友人その1は目を丸くして口をアングリと開けたままで呟いた。
「なにそれ、告白されてんじゃん。」
幼稚園の頃から言い続けられてんだ。たちの悪い病気にかかってるようなもんだと思ってるよ。
「その子、一途にもほどがあるんじゃねーか?」
口癖だろ?もう挨拶代わりになってるぞ。『おはよう、君は今日も素敵だ。付き合ってくれ。』とか言うんだぜ、毎日。
友人その1は両手で頭を抱え込んで突然立ち上がった。
「何でこんな奴に春が訪れて俺には来ないんだあぁぁ〜〜〜!!」
絶叫が食堂にこだました。俺は顔をしかめ、とりあえず周囲の注目を集めた男を座らせる。
「何でこんな奴に……。」
落ち着け。何を勘違いしてるのかは分からないが……。
「何が勘違いだ!目の前に宝石が転がってるのにお前は15年以上スルーしてきたのか!?なあ!?」
俺、宝石に興味ないんだがな。
「もったいねえ〜。」
いや、それだけの分量で短編とか言われても困る。
一つの作品として完結しているから短編なんだから。
それはただの冒頭でしかない。どういう話かもわからないから
反応のしようがない。第一、素クール出てないし。
反応が欲しいならせめて話に一区切りつけて欲しい。
割り込み失敬。
『すみません。』
聞き覚えのある声が俺たちの間に割って入ってきた。
『やはり君だったか、一発で分かったよ。浩輔、君は素敵過ぎる。……ハイ、お弁当忘れていったよね。』
……なんで学校まで来たんですか?
『最寄り駅から電車で14分、徒歩で8分で来た。』
いや移動方法聞いたわけじゃなくてですね。来ないで欲しいと言ったはずなんですけど。
『君が困った目に遭うのは耐えられないんだ。』
それくらい耐えてください。
『うん、分かった。じゃあ、帰る。』
彼女は後ろを向くと、カツカツとパンプスを鳴らしながら帰っていった。友人その1が呟いた。
「……特上の美人じゃないか。なんで申し出受けないんだよ。」
……もし申し出受けたら、今より絶対激しくなるだろうからな。
「お前自身はあの人のこと好きなの?」
嫌いじゃないがうっとうしい。
「俺にくれよ、彼女。」
好きにしてくれ。いや、本当に。
本当に誰か引き取ってくれないものだろうか。
とまあ以上です。
素クールって行き過ぎるとただのストーカーになるよね、という発想から
ちょっとべったり目、ストーカー気味の素クール書いてみようかなと。
そんなべったりしたら素クールじゃ無いと批判受けそうですが……
>>279 べったり?ストーカー?
どんと来いYA!!
内容はいいと思うけど、ちょっと読みづらいかな
主人公の実際に喋ってる声と心の声の区別がしづらいので、そこら辺をなんとかしてくれると嬉しいです
まあとりあえずGJですよ!
なんか素直ヒートの女との似てる・・・
文の書き方がラノベ作家の谷川流に似てるなぁとおもた
あと続きは期待してもかまわんのだろう?w
284 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/17(木) 20:24:57 ID:yfNIZZ6c
>>273 友人が自衛官で柔剣道初段取ったと喜んでいたのを覚えてた。
俺も色覚異常さえなければッ!
>>279 イイヨイイヨー。
続きを期待したい。
285 :
279:2006/08/19(土) 01:11:18 ID:mdaCcrnW
ちょいとパソコンに触れない日々を過ごしておりました。
反響があったようなので、携帯でセコセコ打ってた続きを投下しようかと思います。
送信メールトレイに保存しつつ打ってたんですが、間違えて親に送信したらどうなるだろうか?
なんて恐怖と戦いつつ仕上げた作品です。
今日は日曜日。
学校の講義も無く、出かける予定も無い。そのため今日は不法侵入してきた誰かに起こされる事も無く、
カーテンから漏れてくるやわらかな光に目を覚ました。
大きく伸びをして、今何時ごろかなあ、なんて独り言を呟く。
『8時31分だ』
―そーか、あと1時間位寝てても……!
『おはよう。いつも思うのだが君の寝顔はかわいいな。』
寝返りを打つと目と鼻の先に彼女の顔があった。
―……なんでいるんですか?
『愛し合う二人が同じベッドで眠るのは当然じゃないか。』
―誰と誰が愛し合ってるんですか!?寝言は寝てから言ってください!
―……そもそも昨日は寝る前に戸締りの確認をしたはずなんですが、どうやって中に入り込んだんですか?
『簡単だ、愛の力だよ。……すまない、冗談だ。そんなに睨まないでくれ。格好良すぎて痺れてしまいそうだ。』
―今すぐ出て行ってもらえますか?
『誠に不本意だが、君がそう言うなら仕方ないな。』
言ってベッドから這い出していく。その後姿を見て唖然とした。
―なんでそんな格好になってんですか!?
彼女は何も、下着さえ着ていなかった。
窓から差し込む朝日にきらめくような白い肌が映える。セミロングの髪は彼女の肩を撫で、
くびれたウエストからヒップにかけてのラインは美しいS字を描いていた。
『何故と聞かれても……大人の男女はベッドの上では裸でいるものだろう?』
こちらを振り向いてさも当然のように言い放つ。……当然ツンとそそり立った乳首やその……大事なところとかが見える。
思わず俯いて彼女の裸体から視線を逸らす。……何故こんなにも恥ずかしく感じるのだろうか?
『急にどうしたんだ?どこか調子が悪いのか?……ああ、この格好について君が気に掛ける必要は無い。
それどころかこの姿に君が欲情してくれたのなら私はとても嬉しい。』
―……今すぐ出て行ってもらえますか?
正気に返った俺はやっとの事で先程と同じ言葉を搾り出した。
都心から1時間ほど電車に揺られて到着する地方都市。そこに彼の家があった。
彼に兄弟はなく、父はこの春、東北地方に3年間の転勤が決まり、母はそれについていった。
―なにも大学決まってから転勤しなくても。わざわざ家から通える距離の学校選んだのに。
「仕方ないじゃないか、長期出張を決めたのは会社なんだから。」
そうして彼は、祖父の代からの持ち家だったこの家に残り、一人暮らしをはじめた。
―……我が家の台所で何をしてるんですか。さっき、出て行け、と言った筈なんですが?
『だから“君の部屋”を出たじゃないか。……君と一緒に朝食をとろうと思ってな。』
食卓にはご飯、味噌汁、塩鮭、漬物、納豆、卵が二組、向かい合わせに並べられていた。
いつの間にか作られていたそれらは彼の鼻腔をくすぐり、寝起きの胃を刺激する。
『やはり朝食は一日の活力源だ。しかもそれを好きな人と一緒に食べられるとなれば、一日を気持ちよく過ごせるじゃないか。』
―ああそうですか。じゃあその格好はなんなんですか?
彼女は先程の見事な肢体にエプロン1枚を羽織った姿――俗に言う裸エプロンだ――だった。
『うむ、君の好みを私なりに研究した結果、こういった格好の女性を君が好きなようだったのでな、少し恥ずかしいが頑張ってみた。』
―確かにそういう格好をした女性は好きというかど真ん中ですが、何故そんなことまでご存知なのか是非教えていただけますか?
『昨日君はファーストフードのアルバイトに出かけたな?うんそうだ、君の部屋に上がった。
マットレスの下においてあった雑誌はとても参考になったぞ。』
自分でも顔に血が集まっていくのが分かる。握り締めたこぶしがフルフルと震える。
『お腹が空いたろう。食べようか。』
―……食欲がなくなりました。お一人でどうぞ。
『そんなことを言うな。身体を壊してしまうぞ。』
―身体よりも先に心の心配をしてください。朝からボロボロです。
『何か気に入らないところでもあったのか?……そうか、あの雑誌にあったような台詞が無いから怒っているのだな。
えっと確か「あぁっ、イイの、奥の方にっもっとしてっ……」だったか。』
―出て行け、今すぐに!
さすがに今回は頭にきているのが分かったのだろう、彼女はすぐに帰り支度を始めた。
そのまま外に出て行こうと玄関へ向かう。
―ちょ、ちょっと待って!
『何だ?……確かにこのまま外へ出るのは賢明ではないな。』
彼女は裸エプロン姿で帰ろうとしていた。
―外に出られないような格好、しなきゃいいでしょう。
『他の誰かに見られるのは恥ずかしいが、君になら見られても平気なんだ。』
―ああそうですか、もう好きにしてくだ……
言いかけてハタ、と気が付いた。こんな事を口走れば、これから毎日裸エプロン姿の新旧者と戦う事になる。
正直彼女は素晴らしいプロポーションをしており、もし毎日迫られようものなら……我慢が続く俺ではないだろう。
―前言撤回です。そんな格好しないでください。
……小さく舌打ちの音が聞こえたのは気のせいだろう。
数日後。
―一つ聞きたいのですが。
『なんだ?』
―今度はどんな研究したんですか?
『人前に出ても恥ずかしくなく、なおかつ君の嗜好に合った服を、と思ってな。』
―それでこの格好ですか。
身体のラインにぴったりと張り付くようなピンクのナース服。
―……勘弁してください。
こんな生活を続けてたらそのうち禅僧になれそうです。
番外編
―ところでなんで僕の事が好きになったんですか?
『好きになった理由か。君が物を大切にする優しい人だからだ。』
『例えばそうだな、いつか私が朝食を作ったまま家を追い出されたときがあったろう?
あのとき残った二人分の朝食、ちゃんと食べてくれたようじゃないか。』
―……恥ずかしいんでそのエピソードは封印してください。
と、以上です。
>>276 時間が時間なもんで誰も見ちゃいないだろうとゆっくり投下しており、勘違いさせてしまいすみませんでした。
>>281 主人公の台詞の最初に“―”つけてみました。読みやすくなれば幸いです。
>>283 アニメしか見たことございません。あのノリは好きです。
もし次があれば男に少しくらい手を出させてやりたいなぁ。
ああミスタイプ発見orz
>>289 >これから毎日裸エプロン姿の新旧者と戦う事になる
↓
侵入者
に脳内変換してくださいです……
GJ
続き頼む。
なんかいいな。こういうのも
今北
GJ!
こういう素直クールもいいなww
首を伸ばせばグラウンドに舞い踊る彼女たちを観る事も可能なはずだが、僕はテキストから目を上げなかった。
チアリーダーは見上げるもので、四階の教室から見下ろすものじゃない。それに、練習中はジャージだ。
小教室の椅子は二つしか埋まっていない。
出席をとらないのでいつもがらんとした印象のある講義だが、今日が一番出席率が悪い。
そもそも教壇にさえ人がいないのだから。
僕は顔を上げて右斜め前の席を占めているもう一人の出席者をうかがった。
いつもと変わりなく伸びた背筋。
形の良い耳の上に眼鏡のつるが無い事を除けば、講義を受けている時となんら変わらない後ろ姿。
「眼鏡がない」
思った事がそのまま口に出てしまった。
彼女は振り向いてけげんそうに眉を寄せる。
「今日は板書の必要がないから、かけてこなかった。」
そう言って、僕の顔をじっと見る。
いつもと同じ表情の乏しい顔なのに、今日はそこに反射率の高いテクスチャでも貼られたような、
しっとりとした輝きがある。
「眼鏡をかけていた方が良かったか?」
あまりに何気なく投げられた言葉であった為、そうだねー自分眼鏡っ娘大好きだから
フレームによってひきしまった印象の普段の顔も好きだけど
今日みたいな無防備さを感じさせる素顔もそそられるねー、とナチュラルに返しそうになって踏みとどまる。
「眼鏡がないのも似合うね」と無難な文章を練りあげた時には、既に彼女の目は資料とレポート用紙に移っていた。
それが20分前の会話。
窓の外からは、相変わらず黄色い歓声と暖かな日差しが差し込んでくる。
部屋の中に漂うのは相変わらずの沈黙、
いやシャーペンが走る音と紙をめくる音がするので全くの沈黙とは言えないが―
その間、沈黙を破るための様々な言葉「今日は暑いね」「この後予定ある?」「冷房のある所に行かない?」
等をシミュレートして、どれも実用に耐えないだろうという結果を出している自分はとんだチキン野郎だと思った。
しかし「暑いね」と言えば彼女は「そうだな」というだろうし、
「どこかに行かない?」と言えば「動くつもりはない」というだろうし、
「予定ある?」と言えば「ある」にせよ「ない」にせよ、
今までの経験から言ってそれ以上長い言葉が返ってくるとはとても思えない。
二十五分前の会話が今日どころか、同じ教室で授業を受けるようになってから最も長い会話だ。
ちなみに25分前の会話は―
「5分遅刻している」
後ろの戸をそうっと開けて入った僕に彼女はそんな言葉を投げ掛けた。
特に感情のこもっていない、淡々とした一言だったが、下手な講師に言われるより堪える。
思わず深々と頭を下げて謝る僕を困ったような顔で見る。「私に謝る必要はない」
それはそうだけど、と教壇を見て、それから教室を見渡す。
「誰もいない」
「そのつもりで来たのではなかったのか?」
「そのつもり、って?」
「休講である事を踏まえて、という意味だ」
「…それを踏まえていたら、ここに来ないよ」
「では君は、授業がやっているのを期待して、ここに来たのか」
真剣な眼差しで僕を見る。
思えばこの時点で眼鏡の有無に気付くべきなのだが、
初めて目を合わせたという衝撃と気迫で気付く所ではなかった。
ここで「面倒くさいなあ、休講だったらいいのに」と思っていた事を正直に言えば、かなりの勢いで怒られそうだ。
「ま、まあそうかな」
彼女が持ちなおすまでしばらくかかり、その間僕は彼女に詰問される女教師プレイという
幸せな夢想をもてあそぶ事が出来た。
彼女が宙に彷徨わせていた視線を再び僕の顔に合わせた。
「すまない。授業はやっていない」
見れば解る上に僕に謝る必要は皆無なのだが、
心の底からすまなそうな顔をしている彼女につっこみを入れる事は憚られた。
「その、授業をするのは無理だが、課題を出すくらいなら何とか…」
「いや、お気持ちだけで結構です」
優等生の彼女が出す課題は本物の講師が出すものより厳しいものになるだろう。
「……教員棟に行って暇そうなのを二、三人捕まえて来ようか」
「いや本当にお気持ちだけで」
話題をそらす必要がある。
「えーと、何で休講だって知ってたのに教室に来たの? 図書館の方が自習には向いていると思うけど…」
その問いに彼女の顔は一瞬赤らむ。
「生活のテンポが保てないのだ」「テンポ?」
「毎週この時間はこの教室で過ごす習慣がついてしまったので、今更変えられない。恥ずかしい話だが」
彼女は目をそらし少し早口でそう言った。
「うーん、多かれ少なかれ誰にでもある事だし…」
この自分以外誰もいない状態でフォローが有効なのか迷う所だ。
「自分でも度を越している事は自覚しているつもりだ」やはり無理だったか。
「どんなに体調が悪くてもいつも通りの行動を取らないと調子が悪くなる気がして…
君が先程入ってきた時は私と同じ悪癖を持っているのかと内心驚いていた」
そう語りながら彼女は僅かに視線を落としていた。
僕は自分が彼女と同じ“悪癖”の持ち主だったら、と少し考えた。
返事の滞りを会話の終わりと判断したのか、彼女の目は資料とレポート用紙に戻った。
僕は惰性でテキストを広げながら彼女との会話を思い返した。
このやりとりを級友の誰かに話せば、彼女の奇人伝説を彩る1エピソードとして場の中心になる事が出来るだろう。
だけど僕はそうする気になれなかった。
それまで笑い話としてしか受け取ってこなかった彼女の奇行は、本人を目の前にすると
“知り合いの女の子が馬鹿にされている”という状況に変化してしまっていた。
それも“かわいい”女の子だ。
そんな風に彼女の後頭部を眺めながら25分が過ぎた。
外光が教室に舞う埃と彼女の黒髪をきらきらと輝かせる。
その頭が微妙に傾いでいるのに気付いたのは27分頃だった。
それまで定規を入れたように真っすぐだった背筋が前のめりになっている。
机の上に置かれていた左手は脇腹に添えられているようだ。時折ペンを持つ手が額を拭っている。
「ねえ」教室に響いた声に彼女の身体がびくっと震えた。「どこか調子悪いの?」
やや間があった。
「大したことは、ない」
押し殺したような声だった。言葉の間に「はあっ」という小さな息がはさまる。
「……あまり大丈夫そうに見えないけど」
しばらく待っても返事がなかったので、僕は立ち上がって彼女に近づいた。
彼女はちらっと僕を見上げるとすぐ視線を落とした。
普段は血が通っていないようにさえ見える白い顔が、赤く色づいている。
潤んだ瞳に思わず不謹慎な事を想像しかけて頭から振り払う。
「熱があるんじゃない?」僕が手を伸ばすと彼女は身体を小さく震わせた。
汗ばんだ額に手を当てた所で、自分の行為が無神経な事に気付く。
「ご、ごめん」離そうとした僕の手の上に彼女の手が重なった。熱く柔らかい手の平。
「…触っていてくれ」「いいの?」「…君の手が気持ちいい」
その言葉を脳内フォルダに保存して今夜辺り再び開く事を考えつつ、彼女の額を撫でる。
本来なら不快に思いそうな肌の湿り気も、潤滑油のように自分の中に染みこんでいくように感じられる。
当たり前であるが、この汗も彼女の身体から分泌される体液という事になるな、と考えると腹の奥がぞわっとした。
まずい。
このまま汗で、柔らかな唇や細い首筋、シャツの向こうにかすかに覗くその先にまで手を滑らせてしまいそうだ。
目蓋を閉じた彼女はいつもの怜悧さの代わりに子供のような柔らかさを備えていた。
「や、やっぱり保健室に行った方がいいよ」
そうでないと彼女をどうにかしてしまいそうで怖かった。彼女は熱で潤んだ目で僕を見つめる。
「いつもの事だから、しばらく休めば落ち着く」「でも…」
「別に病気ではないんだ。生理前というだけだから」
僕の顔は彼女より赤くなっていたと思う。と同時に非常な罪悪感に襲われた。
僕がいかに異性と付き合った事がないとはいえ、生理の際に体調を崩す事くらいは知識としてある。
そんな状態の彼女を見て妄想していたなんて人としておしまいだ。
じゃあ、ただ風邪なら欲情の対象としていいのか、というのは置くとして。
「痛いの?」口に出してから気が利かないにも程がある質問だと思った。
「そんな、でもない。先端がひりひりする、感じだ」
彼女はとぎれとぎれに言葉を出した。
先端? 僕は自分にない器官の痛みを想像しようとしたが、巧くいかなかった。
「すごく」彼女はかすれた声で続ける。「すごくずきずきして」
うながした訳ではないのに彼女の口は止まらなかった。
「ずきんずきんと大きく身体の中に響くような感じが、止まらないんだ。
その振動が中心から外側に伝わって、ふとももがぶるぶるぶるぶるして、
力がぬけて、全部の神経が中心に集中、した、みたいな」
僕は短く息つぎしながら言葉を絞りだす彼女の顔を出来るだけ見ないよう目を逸らしていた。
彼女は眉を寄せ、身体の中で暴れ回る感覚を押さえこんでいるようだった。
歪んだ口元は喜悦の表情になる寸前でストップモーションをかけたようにも見える。
このままではまた変な事を考えてしまう。
「生理でも、保健室に行った方がいいんじゃない?」
「…生理ではなく生理前だ。そんな理由で保健室に行く訳にはいかないだろう」
「どう違うの?」僕は困惑した。生理が始まっている/いないでそれ程差が生じるのだろうか?
「…男性にはないか」「いや、そりゃ…ないよ」
「個人差はあるが」深く息をつく。
「生理の際にあらわれる症状は頭痛や腹痛、発熱などだ。
私は下痢をもよおすが、便秘になるという人もいるようだ」
普段は人形のような彼女が“下痢”などと口にするのも衝撃的だったが、
赤い頬や何かを堪えるような表情を見ていると、
トイレの中の彼女もこれと同じ顔をしているのだろうかとか考えてしまう。
「あの、無理して話さなくても…」
「は、話していないと、理性が、負けそうになる」
理性? 彼女を止めた方がいいと思いがよぎったが、ではどう止めるのかという疑問の前に立ち消えになった。
髪を振り乱した彼女を押さえこんでいる画像が頭の中に浮かぶ。
「生理の前後に発情する症状を示す人もいる。私はそれが重いらしい」
何か今、すごい単語を聞き流した気がする。
「快感によって月経時の苦痛を和らげている、という説もある」
「…ストップ。発情ってあの発情?」
「君の言う発情の定義は解らないが」彼女は目を細めて僕を見上げる。
「私は今、身体が性交を求めて正常な意識を保てなくなる、みたいな状態だ」
「…恐くないの?」
「何がだ」
「その…僕だって、男なんだけど…」
このまま彼女を押し倒したい。汗で湿ったおっぱいをぐちゃぐちゃに触診したい。
彼女の言葉のままならずきずきと脈うつ彼女の中心から身体中に振動を伝えて、
足の小指の先までぶるぶると震わせたい。
「怖い」彼女のかすれた声も僕の正気の助けにはならない。
「このままでは君にとんでもない事をしてしまいそうで怖い。
君の汗の味を知りたい。男でも乳首を噛むと感じるのか知りたいし、
君の身体のごつごつした所全部に私の身体を擦り合わせたい。
君の迷惑などお構いなしで独りでよがり狂ってしまいそうな自分が嫌だ。
私は、君を、目茶苦茶にしてしまいたい」
口の中をざらざらしたものが蠢いている。身体中を熱く湿った膜が包みこんでいる。
その膜を破ろうとして、僕は両手の中にあるものを引き裂こうとする。
顔の零距離から「んうっ」という呻きが発せられて初めて、
僕は両手の中にあるのが彼女の身体で、
僕の口の中にあるのが彼女の舌だというのに気付いた。
あれほど妄想すると同時に、自分は一生出来ないかも知れないとまで思っていた初キスを
あっさりと行なっているばかりか、その瞬間を憶えていないという事実に衝撃を受ける。
僕が彼女を抱えあげたのか、それとも彼女が僕にのしかかったのかも解らない。
はっきりしているのは、今の僕が机に座ってバランスを崩さないように必死になっている事と、
彼女のおなかに突き刺さらんばかりに固くなったペニスを押し当てている事だけだ。
自分の口の中に動いているものがある、というのは今まで体験した事のない異様な感覚だった。
自分の歯茎をなぞり、上顎の裏をヤスリがける彼女の舌に驚き、口を閉じようとする。
「あ……んむぅ」
その声には確かに甘みが混じっていた。
そのまま自分の舌と挟んで締め上げる。
「っ、んんんんうっ」
声が激しかったので、ちょっと心配になる。
下目使いに見ると彼女はぎゅっと目を閉じていたが、僕の視線に気付いたのか、うっすらと目蓋を開けた。
涙の浮かぶ瞳がじっと僕を見つめる。
次の瞬間、彼女の舌はちぎれたトカゲの尻尾のような激しさで動き始めた。
身長差を埋めようと伸ばされた身体は僕の身体に密着し、柔らかな胸が擦り付けられる。
台の上のパン生地みたいに、丸くて、柔らかくて、粘ついたものが僕の胸の上で捏ね上げられていく。
僕は下半身の刺激にくぐもった息を彼女の口に吹き込んでしまった。
それまで彼女の腹に当たっていたペニスは彼女のふとももに擦り上げられて、
もぎ取られるかとさえ思える痛みと快美感に腫れあがっている。
スカートは既にまくれあがって僕の身体の間で皺になっていた。
ジーパンの厚い生地の向こうには、彼女の生足があると思うと腹の奥が焼け付くようで、
入るはずもない箇所に腰を突き上げてしまう。
僕の急な動きに驚いたのか、彼女が口を離した。唐突に消えた口腔の愛撫が餓えを駆り立てる。
目の前で輝く彼女の唇を求めて僕は衝突させる程の勢いで顔を近付けた。
想定したのよりは硬い、つるんとぬめった感触。狙いをそれて彼女の下顎に唇を当ててしまっている。
「その、そこは駄目だ」初めて漏れた彼女の拒絶に僕は驚くと共に反発を憶える。
「どうして?こういう事をしたかったんじゃないの?」僕の声は意識せずに険が含まれていたと思う。
「違う…君との行為が嫌なのではなくて…」彼女はそう言いながら顔を逸らそうとした。
僕は我慢出来ずに彼女の後頭部を鷲掴みにする。
こんな乱暴な事がしたい訳ではないのに。彼女に対して罪悪感と征服感という矛盾した感情が広がる。
「そこは本当に、駄目なんだ…私の唾液がついているから」
彼女の顔は今までで一番赤くなっていたかも知れない。視線を落とし早口で喋りだす。
「その……論理的におかしいのは解っているのだが、
さっき君とのキスのときは気にならなかったのに、
私の口から出ているものに君の口が触れているのが……恥ずかしいよ」
僕は思わず吹き出した。羞恥の余り涙ぐんでいる彼女をもっと見たいなんて考えてしまう。
そのまま口づけて、ずずっと、音をたてて啜る。
「だから、駄目だと言っているのにぃっ」
舌を伸ばして彼女の口まわりの唾液を丁寧に舐め広げる。
自分の身体自体が一本の性器になったとしたら、今自分はその先端で彼女を汚しているのだな、
と考えると僕のペニスはますます硬さを増していく。
「私の、が、君の、と混ざり、あって」切れ切れに言葉を吐くその口に舌を侵入させる。
彼女の口の中にはちょっと緑茶の味が残っていた。
緑茶と彼女の唾液が入り交じった味。
今まで彼女自身以外の誰も知らない味が自分の舌にあると思うともっと味わいたくてたまらなくなる。
彼女の頬の裏をなぞり、顔の形を歪ませる。彼女の舌が僕の舌に触れる。
互いに、離れた所から必死に手を伸ばし合っているように、擦れ違って掠め合う舌と舌。
僕は彼女の髪に指を食い込ませ思い切り彼女の口を吸った。
「―――!」
彼女の身体から力がくたっと抜けて僕の身体にもたれかかった。
「え?あ、大丈夫?」やばい、乱暴にしすぎただろうか。
彼女は僕の胸に預けていた顔を上げる。赤い頬、ぼんやりした瞳、顔中を覆う、彼女と僕の唾液。
しばらく酸素を取り込もうと口をぱくぱくさせた後、彼女は泣きそうな形に眉をよせた。
「謝らなければいけない事がある」「な、何?」
「君の服を汚してしまった」
彼女の視線は僕のジーパンの腿に向かっていた。
僕の腿を彼女の細い足がくわえ込んでいる。
彼女のスカートが僕の腹にはさまれてしわになっている。
彼女がゆっくりと身体を離すと、てらてらと光る、透明な粘液がそこに残る。
僕は指ですくってみた。細い糸が伸びる。
「き、汚いから、触っちゃ駄目だ」
顔をますます赤くして制止する彼女を無視し、そのまま口に運ぶ。生臭いような形容しがたい味。
「自分の、って、舐めたことある?」
ふと悪戯心を起こしてそんな事を訊いてみた。
「そんな事はしない!」顔を真っ赤にして叫んだ後、彼女は小さな声で付け加えた。
「…でも、君だけに汚い事をさせるのは嫌だから、私も舐める事にする」
そう言うと彼女は僕の足に絡み付くように屈んだ。
小さな温かな舌が僕の腿を這っていくのが感じられる。快感がそこを中心にひろがり、すぐに僕のものに辿り着く。
「…もう、もう駄目だよ」
自分の声がかすれているのが恥ずかしくてたまらない。
その思いと裏腹に硬くなったものを彼女の顔に押しつけてしまう。
彼女は不思議そうな顔で僕を見上げる。
「勃起してるな」特に動揺してるでもなく淡々と言う。
「どうすればいい?」
もちろんしたい事は一つだった。
いや、そこに至る経路は無数にある。舐めて欲しい、吸って欲しい、裏を指先で撫で上げて欲しい、
髪で、胸で、あそこで、すっぽり包みこんで締めつけて欲しい、
そしてそれら全てに僕のものを吐き出して真っ白に染め上げたい。
だが、ここにきてそんな事を要求していいのか躊躇いが生じる。
僕と彼女は今日初めてキスした仲だ。
それ以前にまともに会話すらした事がなかった。そんな彼女に何をしてもらおうと言うのだろう。
彼女の真っすぐな視線に、思わず目をそらす。
子供の前で勃起してしまったような気まずさと罪悪感。
「……前を開けた方がいいのではないか?」
「いや、いいよ」
彼女は人差し指と中指を揃えてジッパーの根元辺りに添える。
思わぬ刺激に弓なりになり、その姿勢が僕のものを彼女の指に食い込ませる。
「脈拍が高い。服の容量に余裕もないな」彼女は首を傾げながら僕を見上げる。
「男性の服はしたときの為に前部分にゆとりを作って置いたり、
したらすぐが露出したりする設計になっていたりしないのか?」
僕は一瞬想像してすぐに消去した。
今まさにそれが飛び出して彼女の顔にを塗りたくる様を浮かべると我慢出来たものではないからだ。
「開けるぞ。今楽にしてやる」我にかえると彼女は僕のジーパンを脱がせ始めていた。
「……下着の方はすぐに出る構造になっているのだな」
下着の端からちょこんと顔を出した僕のものに彼女は鼻先がつきそうな距離まで近づいている。
「は、早く」
早く“何”なのか、自分でも解らない。
早く“触って”? 早く“舐めて”? 早く“吸って”? それとも早く“入れさせて”?
「解った」
どれに対して“解った”のかは解らないが、彼女は慎重に僕の下着をずらし始めた。
もどかしい程のゆっくりした動きで生地が僕のものの上を滑っていく。
いっそ彼女の手を取って僕のものを鷲掴みにさせ、そのまま目茶苦茶に掻き回したい。
そう思っても神経が全て下半に集中して腰から上はぴくりとも動かせない。
やがて、厚い生地から解放されたものが最前に想像したのと同じ放物線を描いてぶるんと飛び出した。
その線上に、彼女の額があった。つるんとした感触が確かにあった気はする。
だが、その時はそれを自覚する事は出来なかった。
「あ、あああっ」
白濁液があとからあとから吹き出して、自分の意志では止められない。
止める為に腰に意識を集中させようとすると、快感に意識を取られてそのまま前後運動をしてしまう。
そのたびに彼女の黒い髪が白く汚れていく。
「ごご、ごめん」こうしてを垂れ流しにしている状況で謝っても説得力皆無だ。
腰の動きも止められないし、彼女の有様がまた下半身にぞくぞくするような波を起こしているのだから。
彼女は上目遣いに僕を見上げていた。
元から唾液で汚れていた顔が白濁液に覆われて、いつもの冷静な優等生の面影は微塵もない。
視線はとろんとして定まらず、口は半開きで小さく舌が覗いている。
彼女はその舌を僕の鈴口に当てた。
「うあ、あああっ」のけぞる僕の竿を掴み固定する。
彼女の舌が当たる箇所が痛みに感じられる程気持ちいい。
この期に及んで彼女が口に含んでくれたらとか、もっと欲深い事を考えてしまう自分に嫌気がさしても、
腰の動きが止められない。
もっと気持ちよくなりたい、という僕の思いと比例するように、彼女の舌が激しさを増していく。
噴出が収まって僕が理性を取り戻した時、彼女は指についた僕の精液を舐め取っていた。
僕と目が合うと若干気まずそうにする。「嫌だったか?その、舐めたりして」
「いや、全然気持ち良かったよ」
と慌てて答えてから、これ、本来は自分が言わなくちゃいけない事じゃないか?と思う。
「君の方は平気なの?」
「平気だ。その、私は舐めて貰わなくても大丈夫」なぜかそんな事を言いながらあとずさっていく。
「いや、僕のを飲むのとか抵抗あるかなって意味の『平気?』なんだけど…」
彼女はずささっと音が出るようなスピードで戻ってきて息を切らせながら言う。
「平気だ。正直に言えば苦くて喉に引っ掛かり過ぎるがその内慣れると思う。
それに舐めていると君が気持ち良さそうにするし、
自分が君ならそうして欲しいと思う事をするのに抵抗はない」
「……舐めて欲しいんだ」
「そんな事全然思ってない!」
彼女を捕まえてスカートの下から手を入れる。
内股に指が届くとすぐぬるっとした感触に包まれた。
そのまま指を上に滑らせる。
ふにふにとした柔らかな所に突き当たった。
「や、やああっ」
もがく彼女を押さえ付けてなおも指の腹でそこを探る。
そこがびくびくと震え僕の指に絡んでくるのが感じられる。その指を掻き回した。
「あっ、あああ、だめ、わたしの、が、ぐちゃぐちゃになるう」
こっちは子供の泥遊びのような感覚だが、彼女の側は快感で狂いそうになっている、というのが奇妙だ。
「君は嗜虐性が強いと言われた事はないか?」
僕の手が止まってやっと意味のある言葉を出せるようになった彼女が、あえぎあえぎ言う。
「ごめん」僕は反省が微塵もない笑顔で謝る。実際、涙と唾液と駅まみれの彼女が可愛くてそれどころじゃない。
「今度はちゃんと舐めてあげるから」彼女の足元に屈み、スカートの中に首を入れる。むっとした臭気に包まれた。
舌で流れ落ちる小川の源を目指す。
舐めとるたびに新しい雫が身体の震えとあぎ声と共に落ちてくるのが面白くてしょうがない。
鼻先が柔らかな布につき、僕の息づかいと彼女の震えが同調しはじめた時
鐘が鳴った。
彼女がスカートを上げ、突然外の光と音が戻ってくる。
窓の外ではチアリーディング部が終わりのあいさつをしていた。
遠くの教室で机や椅子が動かされる響きと人が移動する気配が伝わってくる。
「どうしよう?」固まってしまう自分が情けない。
彼女はてきぱきと自分の筆記用具をカバンにしまい、代わりに濡れティッシュとジャージらしきものを取り出した。
「私の着替えだが、使ってくれ」
なぜそんなに用意がいいのか?という疑問が顔に出ていたのか、彼女が付け加える。
「自慰行為で汚れるかと思って…持ってきて良かった」
女の子は色々大変なのだな、と納得しかける。
「僕がいなかったら一人で…してたの?」
気が付いたら子供のように彼女に着替えさせられていた。
その気恥ずかしさを紛らわすために口を開く。
「普段はトイレとかで…そこに行くまで我慢出来るのに」
ちらりと濡れティッシュで拭ってた僕自身に目を落とす。
「いつも自慰行為の対象にしていた人と二人きりになったら我慢出来なかった」
僕が何か言う前に彼女はジャージをひっぱり上げ、濡れティッシュで乱暴に僕の顔を拭うと、
そのティッシュごしに一瞬、唇をあわせた。
「来週、この教室で」ティッシュに覆われた僕の目にはそう言った彼女の姿が見えなかった。
気が付いたら自分の部屋で正座していた。
床にテキストや脱いだジーパンが散乱する、いつもの部屋。
間の記憶がまったくない。それ以前にあの教室であった事が現実とは思えない。
だけど、僕は今サイズの合わないジャージを履いている。
更に違和感があったのでジャージを下ろしてみる。
下着が女物だった。
当然勃起した。
最後に素直クールがでてくるのか
しかしラスト2行で主人公は変態になったなw
GJ
最後の弐行でいろいろ台無しだ
でもGJ
これは当然続きがあるんですよね?
勃起しながら待ってるよ
GJ
なんかもうわくてかするしかない
空気読まずに、書き捨て御免。
エロは無いので、合わない人はヌルー推奨。
口調を変えただけで一気に素クールっぽさが消えた気がするが……まあ、気にしない。
「――花火大会?」
「そうそう……って、その口調だと、もしかして知らなかったなんてことは」
くぐもった電話口越しに、ため息が聞こえる。それだけで向こうの表情まで思い浮かびそうだ。
いつもなら聞き間違うなんてことは無い、あいつのはっきりした滑舌。それも寝起きの頭だと、右から左へ流れてしまう。
「いや、一応知っているが。今日の夜にあるやつのことか」
「それよ、それ。まったく、ボケっとしてないで……もう昼過ぎなんだから、いい加減目を覚ましたらどうなの」
「仕方ないだろ、受験生には夏休みだろうと昼も夜も無いんだよ」
というか、お前も受験生じゃ……と言いかけて、止める。
あいつと俺では志望校は同じでも、アタマの出来が違う。勿論あいつが上だ。一回り、もしかしたら二回りかもしれない。
とてもじゃないが真面目に比較する気にはなれない。
「それで、花火大会がどうかしたって?」
「案外つれないね護も。決まってるじゃない。わたしと一緒に、花火大会に来なさい」
「…………」
あっけらかんと、しかも命令口調というのがいかにもあいつらしい。
普通年頃の女の子の誘いとは、たとえ振りでももう少ししおらしくなるものじゃないか……そんな経験あいつ以外に無いから断言は無理だったが。
実を言えば、昨日の夜に春樹達――部活の仲間、だった。今は引退している――が電話をかけてくるまでは花火大会の存在を忘れていたし、
覚えていたとしてもさほどの興味は持たなかっただろう。小さい頃初めて遊園地に行って熱出して倒れて以来、どうも人混みが苦手だった。
どうせ春樹達も花火大会より、それにかこつけて騒ぐのが目当てだろう。
「……何かな、その沈黙は。国際社会では沈黙は了承を意味するけど」
あいつらも気の置けない連中ではあるが、どうも皆で集まって騒ぐような気になれなかったから、電話口で断ってしまった。
そして今度はあいつ、由香までわざわざ電話をかけてきた。
思い返せば、由香の声を聞くのも久し振りな気がする。学校があった内は毎日のように顔をあわせていたが、
夏休みに入ってからは夏期講習やら模試やらで忙しく、こうやって話をすることも――
「まったく、いくら受験生だからって根詰め過ぎよ……いいじゃない、たまには。それじゃあ6時に駅前でね。待ってるから」
「あ、ちょっ、待て由香っ」
話は唐突に終わった。あとには虚しく信号音が響くだけ。さっきのため息が伝染してしまいそうだ。
正直、断ってしまおうかという気持ちも半分くらいあった。けれど言われてみれば確かに、今年の夏は勉強ばかりで彩りがあまりにも少ない。
人混みは嫌いだし花火も特別好きなわけじゃない、しかしこのまま夏が過ぎていくのも惜しい。
もう朝夕にはカナカナゼミの鳴く時期だ。秋、冬になれば出かけるどころじゃないかも知れない。
何より――待ってるから、なんて言われたら行かざるを得ないだろう。ずるい言葉。今に始まったことではないが。
「まあ、いいか」
無機質で耳障りな受話器に向けてひとりごちた。誤魔化すことなんかない、由香が誘ってきた、それでいいじゃないか。
太陽はもう中天、今日も暑くなりそうだった。
駅前はいつもとは違う、どこか異世界じみた空気を孕んでいた。
いつだって、祭りの前にはこんな雰囲気が漂っている。誰も彼もがそわそわしている。
そんな匂いを嗅ぐことも、ここ最近は中々無かった。携帯を見る。画面には、5時半を少し過ぎた時計。
無性に気恥ずかしくなって画面を閉じる。いつもは待たせる側なのに、知らず知らず気が急いているのか。
生温い風が吹く空は、赤紫色に染まっていた。
「何のっと突っ立ってるの。まだ花火が上がるには早いよ」
「ああ、由香か」
「こら、流すなっ……もうちょっと驚いてくれてもいいじゃない」
いきなり後ろからかけられた言葉。不貞腐れたような声の方へ振り向いた時、俺は一瞬絶句した。
肩口で切り揃えた髪が軽く揺れる。それはいつもの通りのはず。けれど俺は由香に目線を縫い止められてしまっていた。
涼しげな青地に花をあしらったシンプルな造形の……そう、浴衣。
「ふ〜ん、あまり乗り気じゃなさそうな素振りしておいて、結構楽しみにしてたんじゃないの?」
ずいっ、と勢いよく寄ってこっちの目を覗き込んでくる由香。鼻を掠める匂い。あれ、こんな匂いしてたっけ。
酸っぱいような甘いような……似た物を探すとしたら柑橘系、ゆずみたいなものだろうか。
真っ直ぐの黒髪に鼻っ柱の強そうな顔立ち、見慣れた映像なのに、周りのせいで別人のように見える。
視線に気づいたのか、由香は両手を広げてポーズをとった。
「どうよ、あまりに素敵で声も出ないって感じでしょ」
「ん、ああ、綺麗だと思う」
「いいぞいいぞ、もっと褒めなさい」
しまった、無防備に返事をしてしまった。しかも図星。得意げな顔が少し腹立たしいが、由香と居るとそういうこともままある。
それほど短い付き合いでもない。
「ところでさ、夕飯はもう食べたの?」
「……いいや、まだ。別に一食ぐらい抜いても死にはしないだろ」
こんなルーズな感覚もメチャクチャな生活習慣の賜物か。すると待ち構えていたように由香は俺を右手を捕らえて引っ張る。
「どうせそんなことだろうと思った。この間いいお店見つけたからさ、ちょっと行ってみよ」
「それ……お前が行きたいだけじゃあ」
「何言ってるの、自分が良いと思うものは人と分かち合うべきなのよ」
取って付けたような理屈を言う顔が、心なしか赧らんでいたのは、気のせいだと思うことにした。
「はい、ほら。あ〜ん」
目の前には、幾分柔らかくなったバニラアイスと生クリームの載ったスプーン。色のアクセントにチョコレートのソースがかかってる。
つまりはよくあるチョコレートパフェの一部だ。さっきからずっと繰り返している。あ〜ん、あ〜ん。
スプーンの柄は由香の細い指が絡んでいる。しかし匙の部分は俺の目の前にあった。
「な ん の 真 似 か な 由 香 く ん」
「決まってるじゃない、定番のアレよ」
不敵な笑みを浮かべつつ擦り寄る由香。燈色の明かりに照らされた姿は、楽しそうなことこの上ない。
「つまりはあの、彼女も居なければ友達と遊びまわる暇も無い、ひとりぼっちの哀れな青春を送る少年を誘い出したからには、
恋人気分くらい味合わせてあげるのが義務であり人情だろうと」
「余計なお世話だっ」
そもそも、恋人同士でもないのに(恋人同士だったら良いという話でもないが)
いい年した学生が公衆の面前でこんなことやってたら、気持ち悪いなんてものじゃない。常識を疑うぞ。
由香に連れ込まれた店は落ち着いた印象を受けるところで、客も割と入っているのに、がやがやと耳障りな騒音もしない。
しかしそれはそれで居辛いものもある。おまけに由香がこの調子だ。料理の味も覚えていない。
値段だけは覚えているが。懐に相当痛かったからな。
「……まったくつれないやつめ、こうなったら実力行使に出るよ」
「やれるものならやってみろ」
正直俺はたかを括っていた。この店の中なら由香の言う実力行使も大したものではない、と。
だが、俺は由香を甘く見ていた。溶けかけたアイスその他の載ったスプーンを引き戻して普通に食べる。
いや、食べたはず……何故か俺の肩に手をかけて、生クリームが端っこに付いたくちびるがどんどん――って、
「うわああぁぁっ! お前今何する気だった!!」
「むっ、用心深いやつめ」
俺の叫びに悪びれもせずパフェを堪能する由香。今お冷のグラスを倒してなかったら、間違いなくやる気だった。
よりにもよって口移しで食わせようとしやがったな……
「お客様……」
「え。……っ、す、すいません」
何食わぬ顔でこちらを見ている。畜生、俺が馬鹿みたいじゃないか。
しかし流石の由香も店員の目の前でこれ以上仕掛ける気は無いようだ。まったく油断も隙も無い。
「しかし、お前も寂しくないか?」
「? ……何が」
「だってさ、折角の花火大会の日に、灰色の青春にしけこんでる奴を引っ張り出して恋人ごっこなんて、もっと他にやること無いのかよ」
店員が何事も無かったように去った後の、何気ない一言だった。俺に構う由香の姿が不可思議だった。
自分で言いたくはないが取り立てて頭が良いわけでもない、顔が良いわけでも、運動が出来るわけでもない。
そんなので遊んで、何が楽しいのやら。まるで物好きだ。
「それじゃ、護が彼氏になればいい。これで立派なひと夏の思い出の出来上がりっと」
「……は――――」
俺の声と、店の中にどん、と弾けたような音が響くのが同時だった。
「……始まったみたいだな」
どうやら店で時間を潰している間に、第一発の花火が過ぎてしまったらしい。
「護、行こ」
やおら立ち上がると、由香は急いで店の外に出ようとする。
「そんな慌てなくても花火は逃げないぞ」
俺はその細い背中を追おうとして、誰かに止められた。
「…………」
あ、勘定忘れてた。
空に咲く大輪の花は、本物よりも尚儚く、そして鮮烈に散っていく。また上がる。
風切り音がする度に俺も由香も空を見上げ、色とりどりの夜空の祭りを眺めていた。
座り込む者、立ったまま見上げる者、歩く者、人混みさえ無ければ花火も悪くない。そのまましばらく、時が経つ。
「ねえ」
いつの間にかテキ屋で買ってきたらしいわたあめ――たかがブドウ糖の塊が、こういう所だと無性に美味く感じられる――を下げながら歩く。
「どうした?」
「手、つなごうか」
ぽつり、とらしくない声音。そして台詞。俺は思わず警戒する。一見大したことのない要求の裏に、何があるか分かったものではない。
それはさっきのスプーンで証明済みだ。
「……つながないと、はぐれちゃうよ」
遠雷のような花火の音がする。気が付けば由香は立ち止まって俺に手を伸ばしていた。
いつもは待ち合わせのときのように強引な手管ばかりなのに、今は違う。
一度そう思うと、目つきや物腰まで違って見えた。
「……手ぐらい、いいか」
右手を伸ばす。由香ははぐれちゃう、とか言ったがここで手をつないでやらなければ、わざとはぐれて俺に探させるぐらいはやりかねない。
柔らかい手。男の俺とはまるで別の生き物みたいだ。俺は部活をやっていた頃に比べれば傷は減っていたが、たかだか一月二月ではそんなに変わらない。
指先が、掌が触れ合う。少し冷たい。まさか。
「由香」
やや肌に張り付き気味な黒い髪。心なしか潤んだ瞳。紅い頬。減った口数。
わたあめを食べ切って空いたほうの掌を額に当てようとして、慌てて身を退かれた――が、俺のまさかは確信に変わった。
「お前、熱あるんだろ」
「そんなわけないでしょ、何言ってるの。それより、知り合いに見頃の場所教えてもらったんだよ、穴場だって話だけど、そろそろ行かないと」
また花火が上がり、周りと同期して由香の顔も明滅する。俺は引っ張られた手を無理やり引き戻した。
「ちょっと護っ」
「夏風邪はこじらせると長引くぞ」
「嫌っ。わたし、まだ帰らないからね」
「何を言って――」
「――だってそうでしょう? せっかくしばらくぶりに会えたのに、たかがちょっとぐらい熱っぽいぐらいで台無しなんてない!」
「いいんだよ花火大会なんかどうだって。そもそも由香に誘われなかったら行くつもりなんて無かった」
事実だった。だから春樹達の誘いも断った。今思えば、待ち合わせのとき顔が赤かったのもこれのせいかも知れない。俺は由香に背を向けた。
「ほら、早く乗れよ」
「……えっ……」
「だから、背負ってやるから早く乗れ。歩いて送れる距離だしな」
どうせ渋るだろうと思っていたが、存外すぐに由香は折れて、俺の肩に手を回した。浴衣姿だから背負いにくいが、それ以外は問題無い。
「……今日だけだからな、こんなのは」
捨て台詞のように言ってみたが、由香は何も答えなかった。
花火大会はそろそろ佳境を迎えたようで、見物人の数も半端ではない。
その中をかい潜りながら、思いの他軽い由香を背負って俺は道を急ぐ。由香はさっきから黙ったまま。珍しいこともあるものだ。
ふと、俺と由香はどんな風に見えるだろうと考えてみる。花火大会の帰りに家まで送っていく。
彼氏とか彼女とか、そう見えなくもない。由香は他人の目なんか気にせずいつだってストレートだ。
その勢いに飲まれて、何となくうやむやの内に話すようになったのだが、俺は由香のことをどう思ってるんだろう。
夏休みが始まってからは由香とはしばらく接点が無かった。いや、外界との接触を出来るだけ絶っていた。
その間にも、由香のことを考えなかったわけじゃない。あいつは今頃、どうしているのやら、とか。
「ねえ」
「……えっ、由香?」
「あれって……春樹君達じゃない?」
由香が指差す方向を見ると、確かに居た。そういえば奴らも来ているんだった。
不味い。何だか気不味い。あまり見られたくなかった。足の運びを速める。
「とっとと帰るぞ……」
「春樹君、春樹君だよね」
「あ? ……って、由香……と、護?」
……遅かった。というか熱出してるんじゃなかったのか、そんな大声出して。おかげで数人でたむろしていた奴ら皆の視線に晒されたぞ。
「お、お前っ、この裏切り者っ! こういうことだったんだなっ」
「抜け駆けしやがってこの野郎ッ」
あーうるさいうるさい、俺だってこんな状況は予想外だ。
いい加減にしてくれ、俺だってお前らにこの姿は見せたくなかったんだ。
「畜生、俺達は野郎同士でむさくるしい青春を謳歌しているってのにこいつは何だ、
受験生のくせに夏休み彼女としっぽり……だなんてどういうことだ、不公平だぞ!」
「……待て、いつから由香が俺の彼女になってそういう展開になるんだよ」
それ以前に春樹、いつからお前はしっぽりだなんてオヤジ臭い表現を会得したんだ。そこに由香、
「そうね、まだそうじゃないけど……でも、今からそうなる予定かな」
その一言で、野郎共(俺含む)は凍りついた。さらにその間隙を縫う由香の追撃。
「ねぇ……いいでしょう? 護……帰ろ、わたしん家」
殺気というものがあるとしたら、それは多分こういうものだろうか。耳たぶにかかる息がくすぐったい。
奴らの表情の変化は見届けず俺は走り出す。断末魔の叫びが後ろから追ってくる。
「お前は大人の階段を上ってしまうのか――――――っ!!」
ああ、聞こえない。断じて、聞こえない。俺には――――
「はぁ……はぁ……くそっ……」
人ひとり担いだ疾走が長続きするわけもなく、すぐに俺は息を切らして走るのを止めた。
奴らが追ってこないのは(あまり嬉しくないが)気を遣ったのか、それとも精神的ダメージのせいか。勝手に曲解してくれやがった。
「護……」
返事をする余裕が無い、というかさっきの発言は。
「寂しい? なんて訊いておいて……なぐさめてくれないなんて、ずるい」
ずるいのはお前だ。
「わたしは、寂しいよ、護がそばにいてくれないと、寂しい」
それがお前の、ひと夏の思い出か。
「やだなあ、それだけで終わらせるわけないじゃない」
「……」
「わたし……わたしはね……護のことが、好きだよ、大好きだよ。だから、護もわたしのこと、好きになって欲しい」
荒くなったままの息。肩口に絡む腕。普段は必要以上に大きな声を出す口から出てきた、掻き消えそうな囁き。
「護っ……」
……ああ、そういうことか。
出会った時からずっとそうだったから、当たり前になっていた。俺と、由香の間では。だけど。
俺は、由香に流されるのが好きなんだ。言い訳垂れながら由香の隣で手を引っ張られて、倒れたときに背を貸してやるのが似合ってるんだ、きっと。
「由香――」
見物人の人混みは、もうまばらになっていた。
「ねえ、護、分かる?」
「……何のことだ」
「当たってるのが、わたしの」
「いや、別に」
「何ですってこの鈍感っ、来年は見てなさいっ」
「……もう来年も行くことになってるのかよ」
「うん……受験、大変だろうけどさ、来年も一緒の学校行ってさ、一緒に帰ったりするの。
花火大会の話、知ってるかな……ラストのスターマインの間、ずっとキスしていたカップルは、幸せになれるんだって」
「誰に聞いたんだよそんなこと。しかももう終わっちゃったじゃないか」
「うん、だから来年、やり直し……くしゅっ」
「ああ、そういえばお前風邪ひいてたんだっけ」
「そういえばって……でも、何だか寒いな。暖めてよ、護でさ」
「ここから投げ落としてやろうか」
「護はそんなことしないよ」
「……くそっ」
翌日。
「もしもし、護? あのね、あれから考えたんだけど、やっぱり塾だけじゃ頼りにならないよね。
だから今からわたしが手取り足取り教えに行くから。どうせ志望校同じだし、やっぱり愛の力が無いと合格……」
「……ぐしゅっ」
「ん? どうしたの、風邪でもひいたの、いけないな。体調管理はしっかりしなきゃ。今わたしが暖めに――」
終わります。
口調が違うのもいいなあ。
で、看病に来た彼女とエチーする続編はまだですか?
おい、誤字があるぞ。
春樹→俺
orz
これは・・・・・・・・
続編に期待大ですなwwwww
続編はもちろんあるんですよね?
いいねいいねー!
GJです!!
331 :
名無しさん@ピンキー:2006/08/29(火) 01:29:22 ID:4x6a8/xJ
保守?
素直に保守
保管庫の管理人さん乙
ホントだ、更新されてる。
保管庫の方乙です。
まあ、個人的嗜好なのだが、
やはり、全裸よりは脱ぎかけというか、何かが身につけられていたほうが
すきだな。
全裸で直立するくらいなら、靴下くらい履けと言いたい。
すまない、誤爆したようだ。
漢の浪漫と信念を感じるいいクールですな
そして自分の欲望に忠実な素直さ。
336は素直クールだな
あまり違和感を感じないのは何故だろうか…
それは違和感は「覚える」ものだからでしょう。
でも、確かに違和感無い。素直クールな娘の告白だと思うと……萌え。
ふむ……やはり行為開始時の服装は、胴着&袴が最適かしらん?w
制服&エプロンって素敵じゃね?
>>547 ありがとう。
いや、随分前に読んだので。
ヒロインは大学院だかの才媛。男の先輩。
自分を無知だと思っていて、だから努力して大学に入った。
男の方から告白してつきあうんだけど、実はそれは罰ゲームだった。
男はそれがとても気に掛けてたんだけど、
なにかの拍子にヒロインが罰ゲームだったを聞いてしまう。
でもヒロインはそれを「男と親密になれた幸運な出来事」としてありがたがっている。
ってな内容。覚えてますか?
申し訳ない、大誤爆。
最近多いな・・・ブラウザ変えるか。
素クール小説の先駆け的存在である
僕の理知的な彼女と酷似していてびびった。
というかそれだろw
後半はひょんな恋人にも似てるよね
大学教授の語りで最後結婚して終わる奴だっけ?
或る一室にて――怜華と恭助の奇妙な(ある意味)冒険
「恭助クン。起きておくれよ、恭助クン。ふふっ」
……ん、ふぅん、んんっ。……ん? んんっ!? ふぁんふぁ!?
「ふふっ、カワイイカワイイ恭助クン。どうだい、びっくりしたかい?」
ふぁんんっ!? ふぁんふぉえ!? ふぇえははん! ふぁっふぁぁっん!?
「それかい? それはね、ギャグボールって言うものだよ。SM用のおもちゃさ。
他の拘束具とセットになって1,9800円。送料込みでお買い得だったよ」
ひあひあ、ふぉ〜ららふぅれ! ふぉろろうふぉう、ろうふぁいっ!
「ああ、その状態か。ッフフ、とってもかわいいよ。裸で、ベッドの上に磔なんてね。
ほらほらっ、そんなに暴れるとお魚みたいだよ。ふふっ、まさにまな板の鯉、だね。
キミの恥ずかしい所が、ンフフッ、まるみえだよ」
ふぁんを……ふぉひへほんら。ほんらふぉふぉを。
「……恭助、キミが好きなんだよ。キミのことが大好きなんだ。死にそうなほど好きなんだよ。
こんな、に。こんなに、こんなにこんなに好きなのにぃ。 すきなのにぃ! あいしてるのにぃ!
愛してる! 誰よりも、この世界の誰よりも。それなのに……それなのにキミはまるで相手にしてくれない。
ゴハンに誘っても、デートに誘っても、電話しても、家に呼んでも、胸を押し当てても家に行っても
待ち伏せしても盗聴しても裸で誘ってもぉぉぉ……ッ! キミの隣には! ワタシじゃない!
キミの隣にはいつもアイツがいる! ワタシじゃなくてアイツが……久坂未希が。ワタシじゃ、ない」
……ふぇえははん。ふぉれはほんふぁんら、みふぃとふぁ
「やめてぇっ!! やめてくれ! いいわけなんて聞きたくない! アイツを守る為のいいわけなんて!
キミはいつだって自分のせいにしてアイツを庇うんだ。……ちがうのに。悪いのは恭助じゃないのに。
悪いのはアイツなのに。未希なのに。ぜんぶぜんぶアイツが悪いのにぃ、未希なのにぃ! 未希がぜんぶ悪いのにぃぃ!」
ふぇ、ふぇえははん、おひふいふぇ。あいふふぉおえふぁ、おえふぁひみのほほを。
「わかってる。全部アイツのせいだ。恭助がワタシを受け入れられないのも、アイツが洗脳したからだ。
アイツは幼馴染なのをいいことに、小さな頃から恭助を洗脳していったんだ。
まるで、母親がお箸の持ち方やエンピツの握り方を教えるように。恭助を洗脳した。自分のモノにするために!
だから恭助はわかってないんだ。アイツといっしょにいることが普通だとおもってる。アイツの言葉は真実だとおもってる」
ほんらわふぇふぁいほ。ひゅーは、ほえふぉっふぇほ。ひゃべえはひふぉ、ふぉっふぇほ。
「恭助。ワタシの恭助。解き放ってあげる。アイツの忌まわしい呪縛から。ワタシの愛で。
二度と、もう二度とアイツの言葉に惑わされないように。愛して愛して、愛してあいしてあいしてあいしくるってぇ!!
ワタシだけの! ワタシしか感じられなくなるまで! 愛しつづけるのっ! ア イ ツ なんか 忘 れ る までぇぇ!!」
ひょっ、ほわいよほわい! おひふいへぇ! はらふぇはわふぁる! ひゅーは、はふへへふらふぁい! ほえふぁいひまひゅ!
「きょうすけはワタシの、ワタシだけの! アイツには……わ た さ な い 」
ひやーー! ひやぁぁっーー! おまはりふぁーーん!! ふぁれはーー! はふへへぇぇ〜〜〜〜!!
或る一室にて――怜華と恭助の奇妙な(ある意味)冒険 〜 恭助クン地獄変〜
GJ。
>>279氏の言う素クールべったりストーカーの極致だなw
これはもはやヤンデレの領域ジャマイカ?
素 直 狂 う
誰がうまいことをwww
素直狂うはvipの方に出てたから
元からある言葉じゃね?
馬鹿来ないかのぉ…
来たよーw
やたら長くなったけど、一ヶ月ぶりの続編。
スタート!
「さぁて。いい加減勝負を始めないとなっ!」
大広間のど真ん中で、元気良く、腰に手を当て馬鹿は叫んだ。
「……道場まで連れてきてなんだけどさ。お前さん、自分で負けを認めなかった?」
「ちっちっち。甘いな。それはそれとして、まだ決着自体はついていない。よって、とことんまで喰らい付く所存也」
「いや、もうとっ――期待した目で見るな、珠樹」
危ういところで言葉を飲み込む。一日にそう何度も同じ轍を踏むわけにはいかない。
残念そうに小さく舌打ちして、少女は指を鳴らした。
「ま、言った手前仕方ないか……そんじゃ、ちゃっちゃとやろう。胴着と袴は、そこの更衣室に適当に転がってんの使ってくれ。ロッカーに入ってないやつな。竹刀と防具は、こっちで用意しとく」
定期的に手入れされてるはずだから、臭いはないはずだぞ。
素人さんの気になりそうな部分は、事前にフォローを入れておく。合川好生という人物は、その類の文句を口にするようには見えないが、一応言っておくに越したことはない。
「了解だ――にしても、瀬川浩毅。連れてこられてなんだが、此処は勝手に使っていいのか? 学校の関係じゃないようだが」
「気にすンな。ウチの道場だ」
「あ、そう。なら遠慮なく使わせてもらうな」
そう言って、ドアの向こうに消える合川好生さん。
「…………こっちが驚かされた」
「だな。つかめんヤツめ」
大抵は、持ち主を聞けば、驚くか感心するかだ。完全にスルーされたのは初めての経験である。地元の有力者というのは、伊達ではないらしい。
田舎。村。――とはいえ、誰しもが大きな土地持ちではない。持っていても、道場なんかに使用しない。
しかも農耕業などで成り立っているわけでもなく、幾つかの観光名所と、年に一度の大きな祭りとで賑わいを見せるような土地柄。
それ以外に特色はなく、のんびりした空気に包まれている。行楽シーズンでもなければ、欠伸が出るくらい暇なものだ。
そして浩毅の母親は、ここの一人娘である。結婚を機に、一旦は都会へ出た。
だが、夫の転勤にかこつけて、位置的に都合が良かったので、馴染みの故郷に出戻りしたという形。
早かれ遅かれ、やがては家族とともに戻ってくるつもりだったが、予想外の事態に予定が数年繰り上がった。
せっかくなので、家賃を払いたくないという母親の思惑もあったのは、旦那には秘密の話だ。おかげでパパさんは、毎朝通勤に難儀している。頑張れ、大黒柱。
「よし、着替えてきたぞ」
「防具の着け方は? 大丈夫なようなら、着けて待ってろ」
引っ張り出してきた予備の防具一式を指差す。
既に浩毅も、自前の物に着替え終わっている。あとは――、
ふと、馬鹿が何やらキョロキョロしているのが浩毅の目に止まった。
「どうした? やっぱ着け方解らないのか?」
「いんや。授業でやったことあるし。……それより、藤宮珠樹は?」
「審判頼んだから、アイツも――ちょっと待て。何処へ行く」
「ちょいと漢の浪漫を求めに」
「そこへ直れ! 今此処で、叩っ斬る……っ!」
「うおっ、危ねぇ! 試合以外で竹刀振り回していいのかよ!?」
「ぃ喧しい!!」
剣を片手に、道場中馬鹿を追い掛け回す。ドタバタと、礼の精神も何もあったものじゃない。
闇雲に空に刻まれる軌跡が、逃げながら器用に避けられる。
「んにゃろっ!」
業を煮やして思い切り振り上げ、
「うひゃー! はははは。ハズレだ」
力任せに振り下ろすも、頭に血が上っていては命中しない。
もっとも、防具も着けてない相手に、本気で殴りかかるようなつもりはない。いざとなれば手加減しよう。そのあたりは、ちゃんと自制している。
「てめ、逃げンな! 地に伏せろ! 血の池に沈め! 潔く散れ!!」
「はははは――無茶言うな!」
はずである。
「…………何してるの?」
二人が息を切らせ、汗を迸らせる中、剣道着に身を包んだ珠樹が戻ってきた。
紺の胴着に同色の袴。長い髪は、ポニーテールに纏めている。
「う、珠樹……?」
「お」
良い感じに熱は引き、珠樹へと意識は注がれる。
状況を理解出来ないとでもいうように、やや混乱した面持ちの珠樹を前に、浩毅は少々の居た堪れなさを覚える。
そして、別の意味で状況を理解出来ない男が一人。
「藤宮珠樹――ッ!!」
「はぃっ!?」
その姿、正に鬼気迫るといった表情。顔を引き締め、血走ったような目を見せる。
音速で珠樹に詰め寄り、両手を取って一言。
「結婚してくれ!」
「はいぃ?」
目まぐるしく勝手に動く状況についていけない。
審判役を頼まれたので着替えてきたら、イキナリ求婚された。もう何が何やら。
一体、何がどうして、この流れになるのか。そもそも、まずこういうことを言う権利を得るための勝負ではなかったのか?
そんな馬鹿の脳天に、スパンッと軽い良い音が響いた。
「ぐ、おおぉぉおおお……っ……」
痛い。物凄く痛い。
痛みの質は、小指を箪笥の角にぶつけたものに近い。地味に痛みが持続するのが、たまらなく辛い。
「血迷うな。勝負じゃなかったのかよ?」
「む、ぅ……魔力に惑わされた……」
ポニーテールの武道少女。
可憐さと凛々しさと勇ましさという、時には矛盾する要素達の同居する姿は、神の与え給うた美の、一つの頂点に立つ。
その独特の魅力は、人によってはえもいわれぬ味となり、逆らい難い魅力を宿す。
棚引く一房の髪。見え隠れするうなじ。珠散る汗。ボディラインを隠す、しかしそれ故に滲み出る色気。
それらは全てが組み合わさり、まるで芸術のように人の心を鷲掴みに――。
「――というわけで、前後不覚になったわけでして……」
「正直で宜しい。んじゃ、さっさと準備しろ」
「いえっさ」
「珠樹?」
「準備出来てる」
目配せに、珠樹が頷く。
「それでは――」
道場の中央で、二人が切っ先を合わせる。
「――始め!」
珠樹による合図で、試合が始まった。
「でいぃぃやぁっ!」
咆哮を上げ、馬鹿――合川好生が突進する。
ルールは単純。有効打突を一本取れば、好生の勝ちが決定する。細かいルールは無用。とにかく、卑怯な手さえ使わずに打ち込めれば良い。
対する浩毅は、経験差を考慮し、三本取らなければならない。
つまり、まともにやっても勝ち目は無いのだから、気迫で押し勝とうというわけだ。
体格は、やや好生に分があり。エンジンの掛かる前ならば、まだ勝機はある。
「ちっ、イキナリ……」
竹刀を弾かれても、怯むことなく身体ごとぶつかっていく。
浩毅が鍔迫り合いを制し、好生を押し退けても、逆に浩毅が退いても、僅かでも間合いが広まればひたすらに突進してくる。
さらに好生は、合間合間に小さく無駄打ちを繰り返す。
駆け引きもなければ、形にもなっていない。ほぼド素人と見て間違いない。ビギナーズラック狙いは確実だ。
浩毅は、軽くあしらってやろうと目論んでいたため、先手を打たれた形になる。
(っの、舐めんな)
しかし、やはり経験の差は大きい。
僅か数合で、天性の身体能力に頼った太刀筋を見切り、浩毅は勝利を確信する。
全体的な身体能力も、日頃鍛えている浩毅が上だ。剣のセンスにおいても同様。最早、負ける要素は無い。
(ここで、一旦大きく退いて……)
間合いは見切った。
意外に瞬発力があったため、小さく退いても追いつかれた。だが、射程距離を測り終えれば、実行は難しくない。
突進してくるにしても、届く前に打ち込める。
一瞬遅れて、狙い通り好生が追いすがろうと突っ込んでくる。
(もらった!)
所詮は素人。少しでも離れてしまえば、隙だらけの獲物に他ならない。
竹刀が弧を描き、ギリギリのところを狙って面が打ち下ろされる――――。
「あら?」
「め――ええぇえ!?」
好生が、袴の裾を踏み付けてつんのめった。
竹刀は命中したものの、頭はもっと鍔元近くに潜り込み、有効とはならない。
さらに、
「ふん……ぬ!」
「ちょ、どわあっ!」
そのまま倒れまいと踏ん張った好生の足が、前方の爪先を踏み付け、浩毅は抵抗する間もなく尻餅をつく。
「あ」
と、二人の声が重なった。
故意ではなく、偶然の結果である。
よって、
「面……っ!」
好生の竹刀が振り下ろされる。
だが、甘い。
「っ……」
軽く首を横に逸らし、肩口を打たせる。
再び振り下ろしてきたところを、今度は竹刀で受け止め、手首のスナップを利かせて、向かって左側に流す。
床に叩きつけられた竹刀を、そのまま上から押さえつけ、そこを支点に一気に立ち上がった。
両者、再び構えて向かい合う。
「良かった……浩毅……」
ほっと胸を撫で下ろし、珠樹は安堵の息を吐く。
「珠樹、黙ってろ。審判は私情を挟むな」
「ふふふふ……」
「?」
「その態度、見事! そうだ、瀬川浩毅。それでこそ、俺のライバルに相応しい……ッ!」
ビシッと一つ、浩毅を――差せないが――指差す。
「手前ぇも黙ってろよ」
その頭を、浩毅が軽く打ち据える。
「あっ!?」
「一本!」
「…………しまった!」
珠樹の声に、一瞬遅れて事態に気付く。これで後二本。
「俺の馬鹿……」
絶好のチャンスを逃したばかりか、敵に塩を贈ってしまったことで、やや自己嫌悪に陥る馬鹿。
「――はぁ」
あまりの馬鹿馬鹿しさに、浩毅は溜め息を吐く。
まだまだ修行が足りないようだ。
油断していたとはいえ、素人相手に思わぬ苦戦を強いられたと思いきや、こんな形で一本取ってしまった。
納得いくいかないではなく、したくない。
「いいよ、別に」
「ど、どうした、瀬川浩毅」
「これはカウントしねえでいいっての。仕切りなおしだ、仕切りなおし」
「敵に塩を……」
「送らん。油断してた詫びだ。次は、初っ端から本気で行く」
互いに道場の中央に立ち、切っ先を合わせる。
「ふん。格好つけたこと、後悔す――」
「黙れ」
低く押し殺した声。射抜かれるような視線が、浩毅から発せられる。
好生は、後退りしそうになる足に力を込め、必死にその場に踏みとどまる。
浩毅は言った。本気で行く、と。
ならば――、
「ああ!」
おちゃらけは無用。
たとえ勝てる気がしなくとも。真剣勝負で応えなければ、男が廃る。
珠樹も雰囲気を感じ取ったのか、黙って二人を見守る。
空気が重い……。
やがて、その静寂を破るかのように、
「――始めッ!」
凛とした声が、道場に響き渡った。
「――面!」
「い?」
「――面!」
「う?」
「――ぇんッ!」
「えぇえぇぇぇぇ……?」
「お〜……合わせて三本。それまで!」
珠樹が感心した声を洩らす。
正に圧勝。流石と言うべきか、本気の有段者相手ではこんなものだろう。
浩毅の腕前は、珠樹以上。ド素人がまともに反応も出来ずに終わるのも、自明の理といったところだ。
なまじっか作戦が成功しかけた――と思えてしまった――ために、かえって実力の差を実感させられてしまった。
「太刀筋が見えなかった……」
「ったり前だ。道場の跡継ぎだぞ。そう簡単に見切られてたまるかっての」
面を外し、落ち込む好生に言う。
そんな浩毅も、祖父にかかっては物の数ではない。達人ともなると、段持ちの学生如きは歯牙にもかけないレベルに達するのだ。
普通の段持ちよりは余程強くても、団栗の背比べ扱い。何より、精神的に未熟なのが露呈してしまった。まだまだ道は険しい。
「むうぅぅ……」
馬鹿は呻き、浩毅を睨む。
「仕方ない。約束だから、今日のところはこれで引き下がるが……」
「何時か必ず、藤宮珠樹は貰い受ける! 覚えてろッ!」
一々格好つけて、道場を後にする。
が、問題は……。
「おいっ! 服と鞄!」
「何時か必ず、藤宮珠樹は貰い受ける! 覚えてろッ!」
ちゃんと着替えて、荷物を手にして。気を取り直し、もう一度。
今度こそ、道場を後にする。
小さくなる背中を、並んで見送る二人。
「……慣れると面白いかも」
「強ち否定しきれねえのが嫌だな」
苦笑を浮かべ、珠樹の頭に手を乗せる。
「さ、今日はこれで終いだ。気ぃつけて帰れ」
「これからどうするの?」
「あン? ま、飯食って風呂入って……後は時間潰してから、寝るだけだな」
「ふゥん……」
…………嫌な予感がする。
「――で、何でこんなことになるかな」
時は夕刻、場所は瀬川邸。テーブルには、腕を組みつつ悩み顔の浩毅。
手持ち無沙汰に、何かを待つ。時折雑誌を捲ったり、垂れ流しのテレビを眺めたり、湯呑みを傾けたり。そわそわと、今一つ落ち着かない。
雑誌やニュースの内容も、ちっとも頭に入ってこない。お茶の味もよく判らない。
「お待たせ」
お盆を手に、珠樹が現れた。私服を用意していなかったため、制服の上にエプロンを着用している。
次々と出される料理。ごはんに汁物、小鉢に焼き魚。大皿にはフライや野菜が盛り付けてあり、おまけにデザートまで用意されている。
あの後浩毅は、材料調達のため、スーパーへの買い物に付き合わされた。
無論のこと、現在と同じ格好である。
どう見ても若奥様です。本当に(以下略)
どこか愉しげな珠樹と、荷物持ちの浩毅。愉しげとはいうものの、そこは珠樹。傍目には判り難い変化だ。惑わされず確実に看破できるのは、家族か浩毅くらいのものだろう。
あるいは若奥様ではなく、兄妹か何かに見えたかもしれない。
まあ、若奥様だろうが兄妹だろうが、浩毅はどっちでも構わない。どうせ微笑ましい視線を浴びるのも、買い物中だけなのだから。その際に我慢をすればいいだけの話だ。
……ここが田舎でなければ。
「気が重い」
きっと明日には、クラス中に広まっていることだろう。
視界の隅に、見知った顔が始終ちらほらと映っていた。逃れようが無い。
どうせなら、おばちゃんの買い物とは時間をずらせばいいのに。
明日の我が身を案じて、箸が進まない。
「…………」
「そんな目で見るな、珠樹。大丈夫、美味いからさ」
「ん」
「…………」
「…………外堀」
「狙っての行動かッ!」
嵌められた。予想しえたことであるにも拘らず、頭が回らなかった。
何のことはない。そのために、態々人目につく時間帯に買い物をしたのだ。
女子ABCDの言葉が脳裏を過ぎる。
所詮は珠樹の手の内。精々踊れ。
今現在、非常に危うい場所に立っているのが自覚できる。差し詰め、足場の悪い崖の上。しかも崩れる寸前だ。
「くそ……っ!」
茶碗の中身を掻っ込む。
「ああ畜生、やってらんね」
悔しいけど、本当に美味いなァ。
食後一時間。
珠樹は洗い物も終え、何とはなしに二人でテレビを眺めている。
会話は無い。浩毅は口を開かない。どこか、怖いことになりそうな予感がする。
しかし、時刻は七時を回り、既に八時近くになっている。
そろそろだんまりも限界だろう。
「なァ、珠樹」
「?」
「時間も時間だしな。そろそろ帰れ。送ってくから」
「何で?」
「何でって、お前……」
いくら勝手を知っているとはいえ、田舎の夜道だ。視界の悪い所も多い。そんなところに、女の子を放り出すわけにもいかないだろう。
「大丈夫」
「や、でも万が一な。遠慮すんなって」
「大丈夫」
「迷惑ってわけじゃないんだから」
「大丈夫」
三度目の正直。焦らしに焦らして、
「友達の家に泊まるって、家に連絡しといた」
爆弾投下。
炎上。
「……………………」
「連絡、しといたから」
固まる浩毅と、微かに頬を朱に染める珠樹。
「ぷ、ぷりーずわんすもあ」
「友達の家に泊まるって、家に連絡しといた」
「…………ぇふっげふッ」
何故かムセた咽喉に、茶を流し込む。
気を取り直し、浩毅は確認を取る。努めて冷静に。
「マジで?」
「マジで」
絶句する。
この女、自分が何を言っているのか解っているのだろうか。状況を知っているのだろうか。
残念ながら、解っているのだろう。そして知っているのだろう。
手にしたチャンスを逃すつもりは無いだけだ。
「一つ、言っておくぞ」
浩毅は、人差し指を立て、告げる。たとえ知っていたとしても、状況はしっかり自分の口で伝えておかねば。
「ウチの親父とお袋は、水入らずの旅行中だ。明日の夜まで帰らない。ってことは、だ」
そして、祖父は別に居を構えている。
ということは。
「その言葉、どういう意味を持つか。当然、解ってンだよな?」
無言で、珠樹は頷く。
浩毅は視線を落とし、額に手を当て呆れ果てる。
そういえば、先程縁側で、携帯相手に声をかけていたような気がする。
あの時は、帰りが遅くなる、程度のことだと思っていたが……。
「冗談じゃねぇよ……」
ちらりと、珠樹の表情を窺う。
小さな期待と、大きな不安の浮かんだ顔。浩毅の答えを、そわそわと身体を震わせて待つ。
(――だよなぁ)
その様子に、予感は的中するだろうとの確信を持つ。
「珠樹」
「っ、……うん」
まるで睨むかのように見据えると、小さな肩が跳ね上がった。
演技なんかじゃない。これはもう、間違いないだろう。
とはいえ、
(ヤだなあ。反則なんだよ、こういうの)
複雑な感情の入り混じった上目遣い。少し恥ずかしそうに、浩毅の様子を窺っている。
こういう態度に、非常に弱い。
しかもこの状況。頼りになるのは、自らの理性のみ。
(惑わされちゃダメだ。惑わされちゃダメだ。惑わされちゃダメだ。惑わされちゃダメだ。惑わされちゃダメだ……!)
必死で自分に言い聞かせる。
(…………よしっ!)
ヘタレの汚名を被る覚悟完了。
「ふぅ」
息を吐き、腰を上げる。部屋を出ようと、足を進ませる。
「客間……用意してやるから、そっちにしとけ」
振り向くことなく。声だけは優しく語り掛ける。
そして、内心拳に力を込める。
(よく我慢した、俺!)
正直、勿体無い。
格好付けてはみたが、血涙の一つも流したいほどの後悔が胸を占めている。なんせ、経験という意味では同レベル。
それでも、情に任せての暴走で得る後悔よりはマシだろう。ヘタレ扱いされたとしても、一生ものの傷を背負うのと比べれば安いもの。
覚悟が出来てないならば、失敗した時、男と女どちらが辛いかは明白だ。
「お前の気持ちは買うけどな。今日のところは――って、た、珠樹!?」
突然、背中に抱きついてきた。前の方まで手を回し、逃げられないように組み付いている。
背中に当たる感触が、着実に理性を奪っていく。本能が、頭を擡げる。
これは不味い。
もがいてみるが、一向に抜け出せない。むしろ、動けば動くだけ、背中が気になってしょうがない。
頭の高さを保っていられるのも時間の問題だ。全ては、漢の哀しさ故に。
浩毅の内面で激戦が繰り広げられる最中、ふと、珠樹の力が緩んだ。
「あ、珠樹?」
浩毅の前方に移動し、そっと体重を預ける。
どうすればいいのか解らない。抱き締めることは簡単だが、果たしてそれでいいのかどうか。むしろこれは、堪えきる最後のチャンスなのではないか。
「電話……」
「へ?」
「嘘は言ってないんだよ……まだ」
「珠樹?」
「ね、浩毅。――――嘘にさせて」
蚊の鳴くような声で。視線を交わさず、顔を浩毅の胸に埋めて。
「あ……」
ダメだ、これは。
心臓を鷲掴みにされた。たとえ自分が奇術師であったとして、たとえどんな手段を講じようとも、決して逃げ出すことは叶うまい。
針の先程の穴が開いてしまえば、堤防の決壊は、驚く間もなく迅速に行われる。
条件が揃いすぎた。後はただ、膨大な水の勢いに流されるのみ。
「ったく。焦ることはねえってのに」
それでも、ただ一言。
「いずれにしても」
こういうことは、
「お前を奪うのは、俺だけなんだからさ」
最後の一線を前に。
ちゃんと自分の口で、伝えておくべきだろう。
「浩毅、上がった」
「お、おう」
「一番風呂、ご馳走様」
「あ、ああ。き、気にすンな」
目の前には、バスタオル一枚で素肌を隠す、湯上りの珠樹。
欲望と理性の狭間で、目のやり場に困る。
「焦らないの」
「誰が……ッ!」
「でも見たい?」
「そりゃも――っざけんな」
威嚇する浩毅と、笑いながら距離を置く珠樹。
「ほら……今度は俺が入るから」
さっさと、部屋で待っていろ。
しっし、と手先で追い払う。
「残り湯で……」
「で?」
「自分で処理しないでね」
「するか、ボケッ!」
再び笑い声を残し、今度こそ浩毅の部屋に引っ込む珠樹。
いつもと、珠樹のテンションが違う。きっと恥ずかしさを誤魔化すためだろう。
やはり、いざとなると勝手が違うものらしい。
「さて……」
あまり待たせるのも悪い。もしも白けてしまえば、気まずい事この上ない。
早いとこ身体を清めて、お姫様に会いに行こう。
しかし、まあ。
風呂の戸を閉めたあたりで、少し冷静になる。
「俺ってヤツは――」
こんなに流されやすく、自分に正直だったのだろうか。
元気一杯の息子が憎い。心中とは裏腹に、ただただ雄雄しくそびえ立つ。
今更ながら、物凄い恥ずかしさに襲われる。シャワーすら浴びていないのに、その姿、茹蛸の如く。
情けなさで、思わず涙しそうだ。
「…………」
「…………えっと」
「うん。ちょっくら訊きたいコトがある」
「どうぞ」
「珠樹さん、ソレは何だ?」
目の前のソレを指す。
ベッドの上に、ちょこんと鎮座していたソレを。
何時までも悩んでいられないと開き直り、勇んで部屋の中に挑んだら、ソレがいた。
この部屋には、上半身裸でスラックス姿の少年と、
「胴着と袴」
に、身を包んだ少女が。しかも何処から用意したのか、上下共に白一色である。
「うん。それは解るんだ。何で、そんなん着てるのかなーって」
「そ・れ・は――」
ゆっくりと立ち上がり、小動物を思わせる雰囲気で歩み寄る。
浩毅に抱きつき、やや強引に口付けをする。腕に力を入れ、舌を絡ませ、より強く身を寄せる。
混乱しながらも、浩毅はその行為に応える。
石鹸の香りと、まだ少し湿り気を残した柔らかい髪が心地よい。
「――ん……ぷぁ」
口を離すと、一本の細い糸が二人を繋いでいた。
「あはは……勝負服、というコトで」
後に浩毅は語る。
「いや、ありゃダメですね。あのはにかんだ笑み、あの態度、どれをとっても反則ですよ。
何て言うか、ツボに嵌る? そんな感じで。恥ずかしいとか何だとか、そういう感情は何処かへすっ飛んでっちゃいましたね。
もうホントに、この女しか……もとい、何が何でも据え膳喰わなきゃ男が廃ると、不覚にも思わされました」
「ひ……っ……ん」
後ろから珠樹を抱き締める。首のところで一つに纏めた髪が、さらさらと気持ち良い。
一頻り堪能した後、胴着の上から大きめの胸を持ち上げる。
押し黙って、声が洩れるのを堪えるような珠樹が、徐々に浩毅の理性を融かしていく。
服越しでも感じるボリュームと柔らかさ。夢にまで見た感触がそこに……、
「うん?」
浩毅が気付くと、頭から湯気を出して珠樹が俯いてしまった。
何というか、柔らかすぎる。そしてよく見れば……よく見なければ気付かなかった、厚い生地を押し上げる小さな膨らみ。
「えっと、珠樹さん?」
「……………………訊かないで」
つまり、そういうコトだ。
お望み通り、何も訊かずに続行する。
「あっ! は……ふあ……っ!」
浩毅が胴着の合わせ目から手を差し込むと、案の定その奥で指先が素肌に触れる。
胴着の内側を押し退け、直接弄りやすくする。上気したキメ細かい肌と、存在を主張する柔らかさ。先端の屹立する突起。全てが浩毅を虜にする。
続いて、袴のスリットから左手を差し込む。手探りすれば、此方には薄布が存在した。
上は指先で突起を確かめ、下は指先で布越しに中心を擦る。
適度と思われるところで布の内部に侵入し、もっとはっきり小さな豆と割れ目の存在を知る。細く揃った茂みは、ジワジワと湿り気を帯びつつある。
あ、こんな風になっていたんだ。
どこか冷静さを残しながら、そんな感想を覚える。
「ぅあ、ちょっ……ふ、ん……もうっ!」
夢中になっていると、珠樹から控えめな抗議の声が上がった。
少し同じコトを続けすぎたかもしれない。
軽く尖った顎を持ち上げ、唇を重ねる。
「んっ……? ふぁ……むぅ、ん」
舌を絡ませ、珠樹の目がとろんとしているうちに、胴着の結び目を解いた。
袴の前も解き、衣擦れの音が耳に入る。
唇を離すと同時に、珠樹をベッドに押し倒す。
「や、ちょっと……っ」
腰の後ろの結び目も解き、布が裸体に絡まっているだけの状態にする。
露わになりそうな胸を、腕を組んで隠す珠樹。
「もう……」
「どうする?」
「も、もうちょっと……」
「ん?」
「ほぐして欲しい……かな」
「あいよ」
袴と下着を下ろし、丹念に愛撫する。
「う、うぅ……ぅあっ、んん……ふう」
時々押し殺した嬌声を上げるが、まだ足りないだろう。体質か、あるいは慣れていないからか、そんなに濡れていない。
経験の乏しい浩毅の目でも、見るからに準備が不足している。
黙って浩毅は続ける。優しく、時間をかけて、少しでも苦痛が和らぐように。
頭がぐるぐる回っている。それでも、どうにか混乱を押さえつけ、思考を保つ。
溜め込んだ知識を総動員し、今は珠樹を安心させることに専念する。
「うう……んんっ、は、あぁ、む……んぅっ!」
やがて、声のトーンが変わった。声を聴き続けたくて、心持ち強めに攻める。
珠樹は、あまり大袈裟に声を荒げたくないらしい。シーツを噛んで、耐え続けている。
いよいよもって、余裕の無くなったところを見計らい、
「っ!?」
クリトリスを弾いた。
「んっ……く――……〜〜〜っっ!!」
珠樹が絶頂に至る。
大きく仰け反らせ、その身体を痙攣させた。
全身を汗で濡らし、息も絶え絶えに、珠樹は白いシーツの上に身体を横たえる。
「お、おい……大丈夫か?」
「ん……」
身を起こし、力無く浩毅に抱きつく。
「……ありがと」
「調子は?」
「ん。いいよ……」
前哨戦は終わり、いよいよ本番が近づく。
「あ、そだ。珠樹」
「ちょっと待って」
取り出したるは、珠樹が準備しておいた紙箱。中身は、ゴムのセットである。
今日、浩毅が覚悟を決めたのも、これがあったことが一因となっている。常備することなど考えてなかった浩毅は、買いに走るコトを心配をしたものだ。
しかし、本日のこの展開は、突発的な要素が大きい。
ということは、
「ところでさ。お前、常備してたの? しかも箱で?」
「何時、浩毅に襲われても良いように」
「俺はケダモノかッ!」
「男はみんなって……。違うの?」
「違う!」
浩毅、ちょっとショック。
ちなみに、購入はネット通販らしい。便利な世の中になったものだ。
ゴムをつけようと、スラックスの腰に手をかけたところを、珠樹が制した。
有無を言わせず、ずり下げようとする。勢い良く、トランクスも一緒に取り払われてしまった。
「わ」
解放されたソレを、ちょっと感心したように見入る。
沈黙すること数秒。
「あ、あのさ」
「こんなになってくれたんだ……」
「恥ずかしいな、おい」
天を目指し、そそり立つヒズ・サン。
何時までも力を失わぬソレを、
「うわ、お前……ちょっと!」
「あむ……ん、んむ。……私、ん……ばかりじゃ……不公、平……んく」
躊躇うことなく、口に含んだ。
拙い舌技だが、今はそのぎこちない様子が、浩毅を興奮させる。珠樹を見れば見るだけ、舌の動きを感じれば感じるだけ、海綿体に血液が注がれる。
「あは。大きくなった」
一端口を離すと、趣向を変えるために動く。
胸の谷間で肉棒を挟み、上下運動させる。さらには、先端の一番敏感なところを、小さく出した舌で舐め上げる。
「ぐぅ……ふう。こりゃ不味い、な」
「声……はむ、我慢……ん……しないでいいのに」
珠樹の攻めは続く。
胸の感触、舌の温かさ、何よりこのシチュエーション。このまま負けると思った時、珠樹の動きが止まった。
攻められ続け、お預けを食らった肉棒に、珠樹がゴムを被せていく。
「続きは……ね?」
液の洩れるスリットを広げ、珠樹が誘った。
珠樹の足を開き、浩毅はその間に身体を潜り込ませる。
先端を押し当て、挿入しようという段になって、最後の確認をする。
「引き返さないぞ?」
「うん」
返事を聞いて。浩毅は体重をかけた。
「ん……んぁっ……んん――――ッ!!」
口を引き締め、珠樹は痛みを堪える。
狭い坑道を無理矢理広げながら、浩毅は進む。それでも抵抗は強く、前進するのは、なかなか簡単な話ではなかった。
ゆっくりと侵入し続け、漸く一番太い部分が収まったところで、珠樹の様子を見る。
目をきつく閉じ、何も言わずに耐えているだけ。このままでは、苦痛の時間ばかりが長くなりそうだ。
浩毅は、そっと珠樹の頬に手を添えた。
静かに目蓋が開かれる。零れそうな涙を溜めた瞳と、視線が重なり合う。
「?」
「珠樹。俺は気にしないでいいからな。思いっ切り来い」
言うが早いか、珠樹の腰と背に手を当て、身体を持ち上げた。
対面座位になったら、そのまま一気に身体を下ろす。
「ひ――――っ!?」
声を上げる前に、すかさず抱き締め、珠樹の顔を肩口へ誘う。
「ん……むぅっ……!?」
「暴れるな。だから気にすんなって。思いっ切り噛め」
浩毅の言葉に従い、歯を食い縛る。手足に力を込め、肌が密着するのが判る。
なかなか進まないのなら、一気に行くしかない。しかしそうなれば、貫かれるほうの痛みは尋常ではないだろう。
ならば浩毅は、せめて自分も痛い手段を選んだ。
まるで子供をあやすように、頭から背中を撫でてやる。
「俺は気持ち良いだけだからな。これくらいしないと、不公平だろ?」
優しい言葉をかけるが、少々の嘘が混じっている。
珠樹の内部は、予想以上に狭く、非常にきつかった。締め付けは強く、浩毅にもかなりの痛みがある。
それでも、余裕を見せて、気取られることなく。
ともかく安心させてやりたかった。
「痛いか?」
珠樹は首を振る。
「こんな時ばっか嘘吐くな。俺の前だけは、泣け」
「ん――ふ……うん。……うん」
閉じてた堰を開いたように、大粒の涙をぼろぼろ零す。しゃくり上げる声だけが、部屋に響いた。
涙が、肩口に沁みる。
「あっ! あぅ……ふああっ……ん!!」
珠樹が少し耐えられるようになったところで、浩毅は腰を動かし始めた。
ゆっくりとしたものから、少しずつ激しいものへ。
動きにあわせて形を変える胸の感触を楽しむ。内圧も、ある程度落ち着けば、快感へ導こうとしてくれる。
「う……あっ、あん! はう、ん……や、ぁん……あぁあ!」
時に強い痛みが襲い、珠樹が噛み付いてくる。
少しは痛みに慣れたのだろう。始終噛み付いたままということはなくなった。
それでも、まだ快感よりも痛みのほうがはるかに大きい。
まあ、それも仕方ない。二人して、一歩ずつ慣れていけば良い。
浩毅は一定のペースから、緩急交えた動きへ変える。
「……は、あぁ、あっ! くぁ……ひゃん! ん〜〜っ! ひろ……きっ!」
「ああ。良いな、気持ちいい」
珠樹が、頬を寄せて甘えてくる。
「う……んっ。浩毅……感じ……っ、る……届いてる……」
「珠樹……そろそろっ」
珠樹を仰向けに横たえ、正常位の姿勢をとる。
「あっん……うん。……お願い、来て……来て、浩毅……ッ!」
「く――珠樹……ッ!」
「は……ぁっ! あ……ぁああ……っ!!」
珠樹は、全身で浩毅に抱きつく。
身体の奥。膜一枚隔てた先に、熱い生命の塊を感じた。
愛しい人の滾りを知って、珠樹は疲れに身を委ねた。
ところで。
浩毅が珠樹から自身を抜こうとすると、両足で押さえられたまま動けない。所謂カニばさみのままである。
「どうした?」
「ん……もうちょっと……感じていたい……です」
様子がおかしい。
エクスタシーの余韻に浸っているというわけでもなさそうだ。そもそも、珠樹はそこまで達していない。
今まで珠樹に振り回され続けた感覚が、何かを企んでいることを告げる。
「…………正直に言え。怒らないから」
「そう? 実は……ゴム、穴開けちゃってた☆」
「待てコラ」
「えへへ」
「一応、訊いておくが……」
「勿論、危険日」
「洒落んなんねえだろ、ソレ! ちゃってた☆ とか、えへへとか笑って誤魔化すな!」
血の気が引いていくとは、正にこのことか。まさか実感するとは思わなかった。
既に後の祭りと解っていても、一応抜こうと無駄な努力をする。
危険日だろうが安全日だろうが、出来る時は出来る。これでは、何の為の避妊具だか解りゃしない。
慌てる浩毅相手に、珠樹が可笑しそうにしながら、唇にキスをする。
「嘘、嘘。洒落にならないし」
「頼むから……こんな時こそ、嘘吐かないでくれ……」
どうやら、これからも振り回されるのは確定のようだ。
小休止中。浩毅の腕枕で息を整える珠樹が、ふと口を開く。
漸く、身も心も通じ合った。しかし、ずっと抱いていた疑問。
「どうして……今まで応えてくれなかったの?」
「恥ずかしいしな。苦手なんだよ、周囲の冷やかしとか」
気まずそうに、一瞬目を逸らす。
この村に来る前。中学生の頃、それで痛い目に遭っている。
悪気の無い、それ故残酷な周囲の幼い嘲笑など、ちょっとしたトラウマに近い。
少しずつ慣れていければいい。そう思って、珠樹の気持ちに甘えて、結論を先延ばしにしていた。
普段は気にならなくとも、いざとなるとどうしても二の足を踏んでしまう。……しまっていた。
「だもんで、こうなったこと、俺以外の居るとこで口にすんなよ?」
そっと、珠樹が視線を下に流す。まだ違和感の残るそこを見て、確認を取る。
「責任は?」
「まだ口にしないなら、取ってやるさ」
「――浩毅っ!」
満面の笑みを湛えた珠樹が、浩毅に覆い被さった。
まだ、夜は長い。
「感じるまで……付き合って」
「後悔するなよ?」
カーテンを開け、まだ日の昇らぬ窓の外を見る。
うっすらと、見える景色の端が色に染められつつある。
「……若さって、素晴らしいなぁ……」
自嘲をも込めて、しみじみ呟く。
心地よくも激しい疲れが、全身を支配しているのがわかる。
傍らを一瞥すれば、横たわる少女。生まれたままの姿で、全身を様々な体液の混合液で汚している。
疲れ果て、言葉も無く、仰向けになって胸を上下させる。
やっとのことで、隅に放り出されていた胴着を手に取った。
上半身と口元を隠しながら、搾り出した一言は、
「…………ケダモノ」
「すまん」
ゴムの箱は空になり、中身と一緒にゴミ箱へと在り処を変えている。
浩毅自身、未だに信じきれない。
半日前までは、こんなことになるなど考えてもいなかったのに、回数だけでも新記録更新。心身ともに、よくぞ持ったものである。
「……淫乱」
「そりゃお互い様」
浩毅は、肩口の歯型を擦る。おかげさまで、なかなか消えてくれそうもないのが幾つかある。
最初こそ痛がったものの、後半ともなれば、珠樹のほうから積極的に求めてきた。
まだ痛みそのものはあるのだろうが、回数を重ねたことによる慣れと、気の高揚による痛覚の麻痺で、相対的に快感の占める割合が増えたらしい。
お互い、脳内物質出まくりだった。今は良いが、後が大変だ。きっと反動が来る。
「さて、と――」
腕を組み、浩毅は思案する。
「まず、何から始めようか」
ぐったりとする珠樹。
汚れたシーツとベッド。
平日の早朝。
夜までには両親が帰還する。
やるべきことは山積みだ。
「取り敢えず……珠樹、起きられるか?」
「無理」
完全に腰が抜けて、力が全く入らない。
どうしたものか。何時までも、ここで寝かせておくわけにもいかないし。
「大丈夫?」
「何……の、これしき!」
踏ん張って、口だけでも強がりを見せる。
あの後、珠樹を風呂に連れ込み、お互い全身の汚れを落とした。
ムラムラときたが、そこは次の機会まで我慢。
身体を拭いたら、昨日の制服に着替えさせた。
幸い、天気は良くなりそうだ。マットはベランダに干した。汚れ物を洗濯機にぶち込んでスタートさせた。
洗い終える前に大仕事を済ませ、再び家に戻らなければならない。
ここで挫けるようでは、今日を乗り切れない。
「顔、赤いよ?」
「胸が当たって……いるから、な」
「……ばか」
無論、理由はそれだけじゃない。
目的は一つ。
腰を抜かしたままの珠樹を背負い、誰かに見つかる前に家まで送り届ける。
自宅に置いておくわけにはいかない。
かといって、一人では帰ることが出来ない。
「大丈夫?」
「日々の……足腰の鍛錬、甘く見るな」
実際のところ、かなりキツイ。今にも腰が抜けそうだ。家に帰って、一日中ダウンしていたい。
珠樹に負けず劣らず、ダメージは蓄積している。しかし、そこは根性でカバーする。
二人して学校を休むわけにはいかない。ただでさえ昨日のことがあるのに、そんなことをすれば、何言われるかわかったもんじゃない。
選択肢は無い。
「ペース早いよ?」
「早めないと……後が怖い」
信じ難いことに、普通に歩くほどのペースを維持している。体力の消耗は、端から計算に入れていない。
何が何でも、見つかるわけにはいかないのだ。
顔見知りばかりの地域だ。存在を認識されれば、噂は光の速さで一人歩きする。
村が目を覚ますまで、そう時間が無い。急がなくては。
そして、
「はあ……はあ……ど、どうだ……辿り……っ、つ、着いた……ぞ」
見事、藤宮家に到着。
残るは、家人に見つからずに、
「階段ヨロシク」
「ま、任せろ」
部屋まで行けるかどうか。
数時間後、教室にて机に突っ伏す浩毅が確認された。
上手いこと珠樹を、部屋に連れて行くことには成功した。
ベッドに寝かせ――着替えは、頑張って自分で全部やってもらった――誰かに見つかる前に、自宅へと急ぐ。勿論、藤宮家を出る時、周囲の警戒も忘れなかった。
帰宅後は、細々とした痕跡の処理。主に、居間とキッチン。そして洗濯物。自室は……換気でもしとけば、後回しでも問題ないだろう。
そこまで済ませて、登校時間となった。
登校したら、案の定質問責め。田舎の情報網、侮り難し。
「ふっふっふ。浩毅ぃ、聞いたぞ。珠樹と夕飯の買い物してたんだってぇ?」
「おう。例の馬鹿と、成り行きで勝負することになってな……その後の流れで、何となく」
「その後は?」
「珠樹といくらか試合して、家に帰した」
「ち、つまらん」
嘘は言っていない。具体的な試合内容と、帰宅時間を述べていないだけだ。
「瀬川君、藤宮さんが休んだのはどういうコト?」
「ああ。朝方、具合が悪いって話がな」
「何で知ってるの?」
「気になるか? だって珠樹だぞ?」
「そうだね。藤宮さんだしねえ」
勝手に自分の中で結論を出してくれた。
流石は藤宮珠樹。1200万パワーの説得力。
主な質問内容は、この二つに集約される。
何度同じようなやり取りを繰り返しただろう。軽く二桁は数えたはずだ。
その上で、腰がヤバイことを気取らせてはならない。疲れる。
どうせなら、まとめてやってきてくれると、まだ楽で良いのだが。
「ん?」
ウトウトしてまどろみに片足突っ込んでいたところを、現実に引き戻される。
浩毅のポケットの中で、振動を感じる。マナーモードにしておいた携帯だ。
振動は、二、三回で止まる。
「メールか……」
開いて差出人を見る。
「珠樹?」
ぽつっと呟いただけのフレーズに、クラスメイトたちの耳が大きくなった。
各々が、何でもありませんよといった感じに、各々の作業を続行するが、バレバレである。出歯亀&野次馬だらけか、このクラスは。
気を取り直して、内容を確認。
「グッモーニン! 良い天気だな!」
確認する前に、展開を無視して表れた馬鹿一人。
露骨に邪魔者を見る目を向けられるが、気にするようなタマではない。
「む? 瀬川浩毅、藤宮珠樹が居ないようだが?」
「何か具合悪いって」
「そうか。お大事にと伝えておいてくれ」
「わかった。それより、約束違反じゃないか?」
「問題ない。暫くは、挨拶しかしないつもりだ」
今も、居るなら間近で挨拶しただけで、教室に帰るつもりだったらしい。
「じゃあな」
言葉通り、それだけで教室を後にする。
最後に、戸から半身を出して、浩毅に指差し告げる。
「次は――勝つ!」
何時ものように自信満々で、合川好生は去っていった。
「やれやれ……負けねえよ、っと」
再び携帯の液晶に目を移す。
『件名:お見舞い』
本文は……。
「は、あのバカが。もう騙されねえぞ」
長々と体調の詳細を書き綴り、ラストに一文添えてある。
『菓子折りヨロシク』
と。
いいだろう。見舞いついでに、珠樹お気に入りのケーキでも持っていってやろう。いつもの喫茶店の、一番人気のヤツを。
テイクアウトする時、ついでにマスター――優希さんに、毎度の如く愚痴でも聞いてもらうか。当然、当たり障りの無い範囲の表現で。
ニヤニヤしながら読んでいると、もう一文あることに気付いた。
長い改行の後で、スクロールさせないとわからなかった。
一笑に付し、携帯を閉じて、元通りポケットに仕舞う。
「くぁああぁ……う〜、眠ぃ」
大欠伸して、全開で居眠りの姿勢をとる。
睡眠不足は、ここで少しでも解消しておこう。
眠りに落ちる直前、声にならない声を、誰にも聞こえない大きさで漏らす。
「俺もだ……。バーカ」
そういえば、アイツの口から一度も聞いたことがない。自分はともかく、意外な話だ。
つまり、アイツも柄にも無く恥ずかしかったということか。
それとも、臆病だった? 怯えていた?
事実はともかく、そういった一面もあったというのは、実に素晴らしい発見だ。
後でからかってやろう。
そう誓って、浩毅は教師に叩き起こされるまでの眠りについた。
『好きです』
以上です。
ラストの言葉を使わずに素クールを表現できるかと始めたこのシリーズ。
二人の物語は、これで一段落かな。
気が向けば、また二人や馬鹿の物語を綴ることもあるでしょう。
全くの新規なら、今までのシリーズとどこかしら繋がりのある、また別の二人の物語になるでしょう。
とにかく、今日のところはこれで。
ではでは。 ノシ
よかった、よかったよ!珠樹さんかわいいよ!!GJ
GJ
381 :
358:2006/09/12(火) 10:59:27 ID:B5kfC5ja
本当にキテタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!
これから読みますよ〜
読後が爽快です。
身も心もスッキリしましたw
読んだ。転がったw
外堀でワロタよ。外堀どころか本丸まで攻略されましたがw
濡れ場でハァハァしますた。しかし浩毅、絶倫すぎ〜
是非バレた時のABCDやマスター、一奈ちゃんの反応見たい。
結局浩毅いじられる事確定だけどな。
バラバラした感想ですまんが、楽しく読ませて貰いました。
お疲れ様でした。続編できれば希望してます!
GJ!! 文章に小気味よさと躍動感があって面白かった。
>>uW6wAi1FeE氏
GJ!です。
捻ってるけど捻りすぎてない表現のおかげもあってか、楽しく読ませていただきました。
実際に田舎の住人の私からすれば、男の心配がリアルでリアルで……w
穴あき最強wwww嘘なのが悔やまれるwww
いっそのこと大丈夫だからとか言いくるめて生で・・・・
388 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/12(火) 23:02:35 ID:yd5e0wbH
おまいら、それがリアルで発生すると
頭の中が奇麗に真っ白になるぞ・・・・
言われた瞬間に血の気引く……
冗談でも引く
冗談と見せかけてマジかもという可能性が拭いきれないからなw
相手が策士だったりすればなおさら……(ガクブル
最後の一文卑怯だよ!
そんなの書かれたら萌え尽きるしかないじゃないかゴロゴロー!
久々に良いの読んだ。
少し保守っておこうか
俺だったら何も言わずに婚姻届もらいに行くけどな
お久しぶりです、279です。
こないだの駄文の続きを考えてきましたので、こちらに投下したいと思います。
相も変わらずエロい部分はありません。題名もありません。
ではではどうぞ。
―いらっしゃいませ。ご注文お決まりでしたらどうぞ。
今日は楽しい楽しいバイトの日だ。ここ最近、コスプレした彼女に誘惑されてばかりだったから、彼女の姿を見ないでいる時間を過ごすのは久しぶりだった。
例の彼女にはバイト先に来ないようにお願いしている。以前一週間ほどの間、毎日来店してはずーっと俺にへばりついていたからだ。あの時は本当に仕事にならなかった。
午後8時。学生街という立地であるにも関わらず、このハンバーガーショップに客はまばらにしかいなかった。
それというのも、東京港の沖合を通過中の超大型の台風の影響で交通機関が麻痺しそうなのだ。そのためメインの客層である大学帰りの学生は、さっさと都内にある実家に帰ってしまったらしい。
俺個人は電車が止まっても最悪歩いて帰れる距離なので、客が少なくて暇な上、給料が貰えて落ち着いた時間が取れると言うのは大きな財産だった。
「てんちょぉ〜、店閉めましょうよぉ〜。こんな日にお客なんて来ないですよぉ〜。」
「ダメだ、うらむんなら今日シフト入れた自分をうらめ。」
「そんなぁ〜。」
裏で言い争っているのはバイトの子とウチの店長だ。
裏から漏れる声を聞いていると、女の子―可奈、と言う子だ―のほうは都心から通っているので家に帰してくれ、と交渉しているが、店長は聞く耳を持とうとしない。
可哀相に。店長、一度決めたことはなかなか曲げないからなあ。
女の子に同情しながら30ほどしかない客席を眺めていると、数少ないお客様が訝しげにこちらを見ている。これはマズイ。深々と一礼してから裏へ引っ込んだ。
―店長、表まで声、聞こえてますよ。
「ん、そうか。とにかく、お前が帰っちまうと人手が足らなくなる。もし帰れないようだったら店に泊まってけ。明日は休みだろ?」
「そんなぁ〜……」
言って、店長は表へ出て行く。今日のシフトは俺と店長、そしてこの可奈ちゃんで接客、調理、雑務すべての仕事を割り振っていたから3人全員がここに集まるのは非常にまずいのだ。
―ま、お疲れ。
「……浩輔さん、私の分も頑張ってくれないですか?」
―くれないですね。可奈ちゃん、自分で頑張ろうね。
可奈ちゃんの瞳が怪しく光るのを見て、あわてて俺も接客に戻る事にした。
―いらっしゃいませ。ご注文お決まりでしたらどうぞ。
今日は楽しい楽しいバイトの日だ。ここ最近、コスプレした彼女に誘惑されてばかりだったから、彼女の姿を見ないでいる時間を過ごすのは久しぶりだった。
例の彼女にはバイト先に来ないようにお願いしている。以前一週間ほどの間、毎日来店してはずーっと俺にへばりついていたからだ。あの時は本当に仕事にならなかった。
午後8時。学生街という立地であるにも関わらず、このハンバーガーショップに客はまばらにしかいなかった。
それというのも、東京港の沖合を通過中の超大型の台風の影響で交通機関が麻痺しそうなのだ。そのためメインの客層である大学帰りの学生は、さっさと都内にある実家に帰ってしまったらしい。
俺個人は電車が止まっても最悪歩いて帰れる距離なので、客が少なくて暇な上、給料が貰えて落ち着いた時間が取れると言うのは大きな財産だった。
「てんちょぉ〜、店閉めましょうよぉ〜。こんな日にお客なんて来ないですよぉ〜。」
「ダメだ、うらむんなら今日シフト入れた自分をうらめ。」
「そんなぁ〜。」
裏で言い争っているのはバイトの子とウチの店長だ。
裏から漏れる声を聞いていると、女の子―可奈、と言う子だ―のほうは都心から通っているので家に帰してくれ、と交渉しているが、店長は聞く耳を持とうとしない。
可哀相に。店長、一度決めたことはなかなか曲げないからなあ。
女の子に同情しながら30ほどしかない客席を眺めていると、数少ないお客様が訝しげにこちらを見ている。これはマズイ。深々と一礼してから裏へ引っ込んだ。
―店長、表まで声、聞こえてますよ。
「ん、そうか。とにかく、お前が帰っちまうと人手が足らなくなる。もし帰れないようだったら店に泊まってけ。明日は休みだろ?」
「そんなぁ〜……」
言って、店長は表へ出て行く。今日のシフトは俺と店長、そしてこの可奈ちゃんで接客、調理、雑務すべての仕事を割り振っていたから3人全員がここに集まるのは非常にまずいのだ。
―ま、お疲れ。
「……浩輔さん、私の分も頑張ってくれないですか?」
―くれないですね。可奈ちゃん、自分で頑張ろうね。
可奈ちゃんの瞳が怪しく光るのを見て、あわてて俺も接客に戻る事にした。
鬼、悪魔という月並みな呪いの言葉を背に受けながらフロアに戻ると、店長は常連さんと軽口をたたきあっていた。ファストフード店とはいえここは店長の個人経営なので、こういったスキンシップが多いのだ。
当然お客の少ない時間帯しか出来ないが、そこらへんのチェーン店に負けないで経営がやっていけるのもこういったサービスの賜物だろう。
正直、“ファスト”を売り物にする店の店長がお客さん一人一人と話し込むのはどうかと思うが、俺はチェーン店にはないこの雰囲気が気に入っている。
外を見ると、風が恐ろしい唸り声をあげながら窓ガラスに雨粒を叩きつけている。
可奈ちゃんじゃないが、もうそろそろ店閉めたほうがいいんじゃないだろうか?今日はこれ以上お客が来ることは考えられないぞ。
そう思っていると誰かが入って来た。
―いらっしゃいま……せ。
『こんばんわ。ん?浩輔、君か。こんなところで何をしているんだ?』
―見ての通り楽しい楽しい労働中ですが、その格好、傘持って……。
『そうだったのか。すまない、ここが君のバイト先か。……確か来て欲しくないのだったな。失礼するとしよう。』
「待った待った嬢ちゃん、全身ズブ濡れじゃないか。」
店長が割って入って来た。
「あんた浩輔の知り合いだったな?おい浩輔、制服一組貸してやるからウチの更衣室使ってもらえ。」
―いいんですか?
「構わん、洗って返せよ。」
『しかしそれでは……』
「若いモンが遠慮するな。……浩輔、案内してやれ。予備は空いたロッカーの中に入ってるからな。」
―分かりました。……ついて来て下さい、こっちです。
俺は彼女をPRIVATEの札のかかった部屋へと案内した。
『いい人だな、あの人。』
―少し頑固なのが玉に瑕、ですけどね。
俺達は更衣室の扉一枚を挟んで話をしている。こんなに落ち着いて彼女と会話するのはいつぶりだろうか?それほどに最近の彼女のスキンシップは暴走気味だったのだ。
確かに以前から恥ずかしい台詞を真顔で吐いたりはしていたが、少なくともこの間のようなあからさまな色仕掛けは今まで無かった。それだけに最近の彼女の行動には面食らってばかりだった。
―あの、聞きたいことがあるんですが。
『君からの質問なら何だって答えるぞ。』
―最近、何かあったんですか?
『何か、とは?』
―いえね、昔は今みたいにべったりして来なかったじゃないですか。それなのに急にどうしたのかな、と。
―……あの、ちょっと?返事くらいしてくれてもいいんじゃないですか?
―開けますよ!?
床に、彼女が倒れていた。
―しっかりして下さい!
彼女の顔を覗き込みながら話し掛ける。頬は真っ赤に染まり、大きく肩で息をしている。どうやら熱もあるようだ。
『君に心配されるなんて、なんて素晴らしいことなんだ。今日は後世まで伝えるべき記念日だな。』
―……それだけ冗談言えてれば大丈夫ですね。
「どうした?……おい、嬢ちゃん大丈夫か!?」
―風邪引いてるみたいです。
「なんだそうか、急に叫び声が聞こえてきたからお前がその子襲ったのかと思ったぞ。……すまん、冗談だ。そんな目で睨むな。浩輔、お前上がる時間は……最後までだったな。仕方ない、今日はもう店閉めるか。」
―え、閉めるんですか?
「さっきニュースで台風は都心を真っ直ぐ北上すると言ってたからな。こんな天気の中外出する奴、いないだろう。お前は彼女を家まで送っていけよ。」
とりあえず彼女を家に送っていこうとタクシーの運転手に住所を告げる。
『浩輔、待った。』
―なんです?
『今日、うちには誰もいないんだ。できれば君の家に泊めてほしい。』
―我が家に泊まろうが、あなたの家に戻ろうが大して変わらないでしょ。家、隣同士なんですから。
浩輔の家と隣り合った豪邸、そこが彼女の家だ。明治時代からの資産家で、彼女曰く、「何もしなくても食っていける」生活をしているらしい。
その家に生まれた一人娘は、幼い頃からよく可愛がられていた。しかし彼女は身体が弱かったので、家から外には殆ど出られなかった。
しかし幼い彼女にも仲良くしていた近所の子供がいた。浩輔だ。家は隣同士だし歳も浩輔のほうが一つ下というだけだ。仲良くならないほうが不思議だった。
『確かに変わらないが、あの広い家に一人というのは少し不安なのでな。』
下から見上げるようにこちらを見つめてくる。潤んだ瞳に負けて、渋々折れた。
『ありがとう。』
一言そう言うと、糸が切れた人形のようにシートにぐったりと横になった。
タクシーの運転手の厚意に甘えて、玄関まで二人で彼女を運ぶ。調子が本当に悪いならちゃんと病院に連れて行きなさいよ、なんて叱られながら。
―立てますか?とりあえず親のベッドルームが空いてますから行きましょう。
『うん。……ん。』
膝を抱えるようにしゃがみ込み、両手を前に突き出して動きを止めている。
……おんぶしろ、ってことだよな……?
『んー。』
―ああもう分かりましたよっ!やればいいんでしょ、やればっ!
俺もしゃがみ込み、彼女と高さを合わせる。
―よい、しょっと。
彼女を持ち上げるようと力を込めると、意外と軽く持ち上がった。高校時代にやらされていた、人を担いでのスクワットの重さを想像していたが重さが全然違う。
背中に当たる膨らみと、両手に感じる彼女の太腿の柔らかさに少し緊張してしまう。
やっぱり女の人なんだなあ。
縁に腰掛けるようにして彼女をベッドに降ろすと、そのまま横向きに倒れてしまった。
紅潮した頬に苦しそうに喘ぐ唇。サイズが大きめのものを選んだのだろうか、乱れた胸元から白い紐が見える。スカートの裾がめくれ、透き通る白さの太腿があらわになる。
……病人相手に何考えてんだ、俺。
しかし本当に苦しそうだ。どれくらいの熱があるのだろう。そう思い、跪いて彼女のおでこに手を当てる。
熱い。
これは大変だ、と濡れタオルを準備するために立ち上がり振りかえ……られない。彼女にシャツの裾を掴まれていた。
『どこに……行くん……!』
急に咳き込み始めた彼女の背をさすりながら言葉をかける。
―落ち着いてください。水やタオル、取りに行かなきゃいけないでしょ?
『そうだな、すまない。早く行ってくれ。』
言葉とは裏腹に、裾を捉えた彼女の手にはさらに力がかかっている。その手をやさしく握って微笑みながら、言った。
―そんなに握り締めてちゃ行けないですよ。あなたが寝るまではここに居ますから、安心して下さい。
『本当にすまない。』
握り締めた指を開いて所在なさげにベッドの上に投げ出す。気付けば俺は、小さく震えるその指を思わず手に取っていた。
―寝るまでこうしてます。
『ありがとう。うれしいよ。』
相変わらず無表情だが、苦しそうな横顔が心なしか和らいだように感じる。そのまま呼吸が落ち着いて眠りに付いた。
しかし今日の彼女は変だ。普段は喜怒哀楽をほとんど見せない彼女が、こんなにも感情をあらわにしている。よほど風邪がつらいのか、それともなにか精神的に参るようなことでもあったのか。
……さて、氷嚢はどこにしまったかな?
起きたときの彼女のために飲み物を用意し、冷凍庫の氷をかき集めて氷枕とした氷嚢を部屋へ持っていく。
なんだかんだと30分ほどかかったが、彼女は部屋を出たときとほとんど変わらない体勢で寝ていた。寝返りも打たないほど熟睡しているのだろう。
枕元のチェストに伏せたグラスと中身の入ったペットボトルを置き、彼女を起こさないように気をつけながら、タオルを巻いた氷枕を少しだけ持ち上げた頭の下に置いた。
目の前に少しだけ開いた肉付きの良い唇がある。柔らかそうだ。欲求のまま人差し指で撫ぜる様にそこに触れた。
見た目のとおりに柔らかい、潤いのある、張りのある唇だった。全神経を人差し指に集中する。
唇を擦っていると急に手首を掴まれた。彼女は起きていたようだ。彼は一瞬にしてパニックに陥った。
―うわわわわわ、ごっ、ごごっごめんなさいっ!
『……浩輔、二つお願いがある。』
―ハイッ、何でしょう!?
『一つ目は耳元でがならないでほしい。頭が痛い。響くんだよ。』
―……すみません。
『二つ目のお願いはな、そこを触るのだったら指じゃなくて、』
言って彼女はグイと俺の手首を引き寄せ……数瞬間を置いて、言った。
『同じところで触れてくれないか?今の様に。』
それだけ言うと彼女は目を瞑り、また規則正しい寝息をたてはじめた。
彼のほうはといえば突然の出来事に一人固まっていた。今までさんざんセクハラを受けては来たが、キス、それも唇と唇を合わせたことは無かった。
そもそもキス自体が初めての経験だ。初めてだったのに、なんてなんだか場違いな台詞が思い浮かんだ。
だが考えてみれば、寝ていた彼女に手を出したのは彼のほうだ。彼女に対して非難の声をあげる権利は無い。
……ちくしょう、やられたなあ。
翌日、完全回復した彼女がいた。
『君のおかげでよく眠れたよ。昨日はひどく倦怠感を覚えていたというのに、今は体中に力が漲るようだ。』
―そうですか、良かったですね。
『あんなにひどい風邪でも一晩で治るとは、やはり愛の力は偉大だな。』
―そうですね。
『どうしたんだ浩輔、いつも以上に私の発言に対して投げ遣りじゃないか。』
―どうもしてないですよ。
『そうか?……まあいい、君も体調には気をつけるんだぞ。』
―ええ。
『それじゃ……ありがとう、さようなら。』
そう言って、彼女は家へと帰っていった。
風邪はうつすと治りが早くなると言うのは、どうやら本当らしい。
そんなことを考えながら、彼は彼女を見送った玄関先で静かに眠りに付いた。
そしてその日から暫く、彼は彼女の姿を見ないようになった。
とこんなもんです。いかがでしょうか。
つ、次こそハァハァできるようなシーンを入れます、入れるかな、入れれたらいいな……
>uW6wAi1FeE氏
楽しみだったシリーズが終わってしまった……と言う気分です。是非一段落させずに続きを書いて欲しいです。
>保管庫の管理人様
いつも乙です。
これは私のわがままなのですが、279(続編)の
「これから毎日裸エプロン姿の新旧者と戦う事になる」とあるところを
「これから毎日裸エプロン姿の侵入者と戦う事になる」としていただけないでしょうか?
お願いします。
最初に同じ文章を送信してしまい、お目汚し申し訳ありませんでした。
GJ! やっぱ風邪引きは王道ですな。
玄関先で昏倒はさすがにちょっと心配になったが……
405 :
◆uW6wAi1FeE :2006/09/18(月) 23:18:46 ID:m9DDpwrX
寝るなー! 寝たら死ぬぞー!!
彼女は、誰も居なくて不安で会いに来てしまったのかな。
えい畜生。風邪引きって、妙にエロいのは何故?(文が繋がってません)
>王道
オチが読めることの安心感っつーか、このオチじゃなきゃ嘘だろっていうか。
現在、超短編をいくつか書いています。
書ききれなかった設定を使って、短くオチをつける練習。
もう少しで完成です。
おっと、sage忘れた。
408 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/18(月) 23:21:50 ID:7Eq/YOPM
保守。素直クールのエロゲってないの?
ゲームにならんな
どの選択肢でも結果は同じになりそうだ
真実www
鍵の坂上智代なんか近いんじゃね?
素直でクールな奥さんが媚薬作って
温泉宿でどーのこーのっていうエロゲが前にVIPのスレだかに貼られてたような
>>414 あ、それ持ってるよ。
何かくれたら上げてもいいぞ。
実際そんなでもない
>>408 素直クールのエロゲね…
CROSS†CHANNELのスーパーくのいち支倉曜子ちゃんなんかは素直クールに分類されるっぽいがどうよ?
普通に見れますよ
見ることができた。何だったんだろうか?すまない、面倒をかけた。
本当はfc2はあまり評判がよくないから使いたくなかったんだ
ここ作る以前はリボンネットワークを使ってたんだけど何故か使えなくなって……(原因不明)
>>420と似たような報告は2つあわせるともう10件近い。・゚・(ノД`)・゚・。ご迷惑変えてすんません
424 :
420:2006/09/21(木) 02:26:12 ID:BVDl7ePc
>>423 いえ、お気になさらず。結局読めましたし。いつもまとめご苦労様です。
hosyu
426 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/23(土) 23:05:15 ID:yJzqlQnw
素直クール妹ver
とりあえず試験的に作ってみた
「兄さん、明日は私の誕生日です」
「そうだな、何だ?プレゼントで何か希望があるのか?」
先月のバイト代もかなり残っている、プレゼントの予算は特に問題ないだろう。
だが、妹の口から出てきた言葉はなんというか予想を120度くらい裏切る言葉だった。
「兄さんが欲しいです」
「・・・は?」
「ですから、兄さんが欲しいです、具体的に言うと以下略」
「お前、俺達は兄妹だぞ?」
「兄さんは覚えていますか?私は忘れたことはありません」
それは多分、ガキの頃こいつが散々口にしていたあの言葉だろう
「大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになる、か?」
「ええ、そうです」
そういえばこいつも明日で16か、今までそんな素振りを見せなかったのは・・・
いやまて、よ〜く考えろ
いくつになっても俺と風呂に入りたがったり
俺が拒否れば無理やり乱入してきたり
朝起きたら同じ布団で寝ていたり
・・・
俺ってもしかし鈍感?
一応続編も製作中
427 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/23(土) 23:34:52 ID:rxkRp679
これは新しい
続きwktk
120度って微妙な角度だなw
まあいいや。続き待ってます。
156度なら消されていたところだ
430 :
426:2006/09/24(日) 21:27:53 ID:733cNF4e
とりあえず続き 稚拙な文ですまん
まぁまて、もちつけ俺
よくよく考えたらその状況で妹に一度も欲情しなかった俺神
つまり、俺が鈍感だったわけじゃない
うん、いやそもそも妹が自分のことを好きだと思う兄とかマジ変態じゃね?
おkおk
何の問題も無いね、うん
・・・現実逃避はこれぐらいにしておこう、今直面しなきゃいけない問題は決して逃げていいものじゃない。
そう決心を固めて、俺は妹に続きを促した。
「私はずっと兄さんが好きでした。姉弟で結婚は出来ない、そういう法律はあります。
でも姉弟で恋愛をしてはいけないという法律はありません」
そして、と一泊おいてから妹は囁くようにに言った
「それだけが私の救いであり、希望でした」
「兄さんは私のことが嫌いですか?」
嫌いか好きかと問われれば、もちろん好きと答えるだろう。けれどそれがこいつの望んでいる好きでないことぐらい俺にもわかる。
これはきっと、冗談抜きで俺達の一生にかかわる問題だ。当たり前だが俺は妹を一人の女性としてみたことなど無かった。
俺達は正真正銘血のつながった姉弟で、遺伝子レベルでそういう感情は抱かないようになっていたのだと思う。
だけど、今この瞬間だけは、少なくともちゃんとした答えを出すまでは、俺は妹を一人の女性としてみなければいけないのだと思う。
妹だからっていうのはきっと最低の言い訳だ。そんなもの、望んでそうなったわけではないのだから。
俺を一人の男として好きになってくれた妹に対して、俺も妹を一人の女性として見た上で答えを返すってのは、
最低限の礼儀だと思う。
だけど、やっぱりそう簡単に答えの出せる問題じゃなくて、
掠れた声で
「ごめん、すぐに答えは出せない。一晩だけ時間をくれ」
やっと、それだけの言葉を搾り出した。
その場のノリと勢いで書いた
今は反省している
でも後悔はしていない
というわけで続きです
冒頭部分は上記の理由でとち狂いました
ごめんなさいエロは無理かもしれないです
120度について
ボケようとして失敗しました
正直すまんかった
ところでみんなは当然
僕の理知的な彼女と押しかけてきた魔女は読んでいるよな?
前のは知ってたけど、後のは知らなかったよ
素直クールものは大概見てたつもりだったけど、まだまだやった
魔女の読み始めた。教えてくれてあんがと
>>430 GJ!続きwktkしてるぜ
>>431 両方知らない俺ダルシム
このスレしか読んでいないんだ、すまない
短編集みたいな感じで、小ネタいくよー。
ちょっと自分の方向性模索中。
番外編
〜人物紹介〜
瀬川浩毅。六月九日生まれ。十七歳。
少々人並み外れた運動能力が自慢の剣道少年。高校入学と同時期に引っ越してきた。東京出身。
現在、家を継ぐために、週三日の頻度で祖父に師事している。修行という名のシゴキを。おかげで、部活でまで剣道をしたくない。
少々精神にムラがあるものの、剣道の腕前は全国レベル。だが、祖父や母は絶好調の浩毅すら軽くあしらう猛者。
この村に住むのは、母方の祖父であり、母は「瀬川神社」の一人娘。跡継ぎは浩毅だけである。
刀を御神体とすることから、この家の者は、剣道ないしはそれに準ずる武道を修めることが義務付けられている。
神社の名前からわかるように、祀られているのはご先祖とされている夫婦神。
ややぶっきらぼうながら、世話焼きの優しい少年。自分も他人も、自然に大事に出来る。
食わなければ食わないで我慢できるが、いざ食うとなれば何処までもという大食漢の一面も。二つの意味で。
勉強はやや苦手だが、頭が悪いわけではない。女難の相あり。
自分から勝負を吹っかけることは滅多にないが、やるとなれば正々堂々としたもの以外を許さぬ好漢。
人当たりも良く、本来はもっとモテてもおかしくないのだが……。
中学の頃、意を決して片思いの相手に告白したが、結果は惨敗。
お友達としか見られないとの、よくある言葉。周囲の笑いと慰めが痛かった。
その後も、相手が普通に接してきたのもさらに痛かった。お断りの言葉は、本音だったらしい。
しかし、それだけなら、よくある思春期の苦い思い出。
何処から聞きつけたのか、初恋相手で二歳年上の、当時お隣のお姉さんからも素直な感想を頂く。
「浩毅くんって、お友達で終わるタイプだよね。これにめげないで、もっともっと頑張らないと!」
悪気は無い。当然、無い。一片たりとも、存在しない。
太陽のような微笑みで、浩毅、ブロークンハート。銀河の弾丸の如く、木っ端微塵に打ち砕いてくれました。心が幻影のように霧散したヨ。
以後、ツンデレ化。
その出来事も、記憶の引き出しの奥に仕舞った頃、田舎へ引越し。一年以上、波乱の日々を送る。
先日、周囲には秘密ながらも、藤宮珠樹と交際を始めた。
だが……。
藤宮珠樹。十二月三日生まれ。十六歳。
碧の黒髪、白磁の肌、白魚のような指、ビードロの瞳、などと形容されそうな、日本的な雰囲気を湛えた美少女。
しかしながら、背は高く、身体の凹凸も上々。加えて、犬猫など、何処か小動物を想起させる仕種をすることがある。
奇妙なアンバランスさが魅力の一つとして、みんなから可愛がられている。
炊事、掃除、洗濯を始めとする、家事全般が特技。
勉強は得意だが、剣道以外のスポーツはやや苦手。ただし運動神経自体は優れている。
基本的に無口であるが、コミュニケーションは問題が無い。むしろ、思ったことは、言動でハッキリ伝えるタイプ。
幼い頃、瀬川神社の境内を遊び場にしていたため、実は浩毅の祖父とは顔見知り。
これが縁で剣道には興味があったが、なかなか機会には恵まれず。
高校入学と同時に、剣道部へ入部。すぐさま期待のホープとしての頭角を現す。
また、入部こそしていなかったものの、この頃はちょくちょく部に顔を出していた浩毅と出会う。
基本練習すら怪しい部の不甲斐なさに業を煮やした浩毅が、徹底的に口出しした。
結果、ある意味で、現在の剣道部は浩毅の弟子。
その毅然とした態度が切欠で、見事に心奪われる。以後、積極的なアプローチを開始。
努力は実り、浩毅を陥落することに成功。
夢にまで見た、幸せな恋人生活を送っている。
現在、その立場を不動のものにしようと画策中……?
馬鹿。本名:合川好生。十月一日生まれ。十七歳。
容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群の高校三年生。
何事にも人並み以上の器用さを発揮し、確固たる意思と美学を持つ、真面目な正義漢。
自分に厳しく、他人に優しい。だが、時として心を鬼にする強さも併せ持つ。
さらに家は金持ちで、親は古くから地域の有力者として頼られる人格者。
完璧(パーフェクト)を超越した、完全無比(コンプリート)馬鹿。
常時が、浩毅以上の大食漢。行儀良し。
転校初期は、そのテンションの高さから邪魔者扱いされたが、徐々に周囲の反応も変化。
やがて、マスコットとしての地位を確立していく。
決して報われることの無いチャレンジャー。
〜白すぎる黒月〜
浩毅と珠樹が、初めて通じ合った日。
初めての行為の――浩毅が肝を冷やした――直後のこと。
珠樹は、とある計画を立てていた。
今回の嘘を布石とした企みを、折を見て実行する。
すなわち、一旦嘘を吐いたことで安心させておき、完全に油断した頃に「嘘を本当にする」ことを。
成功すれば、発覚した時点で勝負は決まる。心優しい浩毅は、口ではどう言おうとも、必ず責任を果たそうとするだろう。
だが、焦ってはならない。あまり大きすぎる迷惑をかけるのは、珠樹にとっても望むところではない。
実行開始は、約一年後。最速で、卒業とほぼ同時期に、愛の結晶が誕生する算段だ。
まだまだハッキリした形とはならないが、おぼろげながら輪郭は見えてきた。
夢にまで見た、幸せな夫婦像。
仲睦まじい若い男女。
幾人かの子供たちに囲まれ、笑顔の絶えない家庭。
外で遊ぶ息子と父親。それを見守る母と娘。
長い休みには、何処か遠くへ旅行をしたり。
時には少し喧嘩をしたり、ちょっと気まずそうに仲直りしたり……。
そんな日々を繰り返しながら、時の流れの見せる姿を、かつての自分達と重ねる。
古臭い――あるいは子供っぽいイメージと、笑いたくば笑え。
手の届く日は、そう遠くないはずだ。
(後ろ盾、噂の流布、一線越え……準備は全て整った。
そして浩毅は、混乱しながらも私の事を受け入れてくれた。
この年齢からなら、結婚可能となるのも時間の問題……。
私は浩毅の妻となる!)
最愛の時が……訪れる……!!
(……何だろね。この、白くて黒い気配は……)
何処からか良からぬものを感じて、浩毅は一度だけ身を振るわせた。
なんてことがあったかどうかは、定かではない。神のみぞ知ることである。
〜魁! 優希さん'sカフェ〜
「最近、あの二人が怪しいと思うんじゃが……」
始まりは、この言葉だった。
世間では夏休みも近くなった頃、近所で有名なカップル――もっとも、男は断固否定しているが――の雰囲気が、微妙に変わったように見て取れた。
「そうなんですよ、お爺ちゃん」「学校でも、何か余所余所しいような」「それでいてラブラブなような」「ぶっちゃけ初々しい」
馴染みの喫茶店で知り合った、年齢差のある友人たちが同意した。
変化は小さい。気をつけていなければ、見落としてしまいそうなもの。しかしそれ故に、親しい人物達には、魚の小骨のように引っ掛かるものがあった。
「お前さんらもか。ちゅーことはじゃ?」
「満を持して」「あの二人、ついに」「次のステップに入ったっていうこと?」「だよね、だよねー!」
意見はやはり、満場一致。
しかしいかにも隠し事してますという感じで、質問するのを戸惑わせていた。ならば、観察して確証を得るのみ。
裏を取り、逃げ場をなくして、お天道様の下で口を割らせる。
出歯亀根性、此処に極まれり。
「ちゅーわけで、今此処に結成を宣言する!」
「瀬川浩毅アーンド」「藤宮珠樹の!」「嬉し恥ずかし」「愛を見守り隊!」
スケベジジイと女子ABCDの手が重ねられ、
「エイエイオー!」
全員の掛け声と共に、勢いを持って離れた。
「……取り敢えず、もう少し静かにしてくれる?」
注文を取りに来た店主――優希が、テンションについていけないまま注意した。
いつもの行動パターンによると、そろそろ二人はやってくるはずだ。
優希に気を許している浩毅は、きっとボロを出すに違いない。
悪乗りの面々は、隅っこの席で、固唾を呑んで入り口を注視する。まるで探偵気分である。
「あら、いらっしゃい」
「ちっす」
程なくして、予想通り、二人がやってきた。
「二人だけ?」
「解って言ってるでしょ、マスター。コイツ、いつだって勝手についてくるんだから」
困り顔で笑う浩毅と、腕にしがみ付きながら親指を立てる珠樹。
やはり、以前と少し違う。浩毅は、もう少し珠樹を邪険に扱ってたはずだ。
「ん?」
「どうかした?」
「いんや、別に……そんじゃ、取り敢えず適当に下さい」
「それじゃ、オススメのを」
殆ど指定席であるカウンターに座る二人。そこに、来客の主を察した一奈が、奥から飛び出してきた。
一瞬、浩毅から店の隅に目を向けられたが……気のせいだったと信じたい。
そしてこの後、五人の意識は一つとなる。
観察結果・1
「珠樹ちゃん、少しくらいは進展した?」
一応、もう一組の客の要望に応えるため、質問しておく。個人的にも興味はあるので、利害関係も一致するし。
「……えー……っと」
「あははは。冗談キツイよ。俺が? 珠樹と? ありえないって!」
言い淀む珠樹と、軽く笑って、珠樹の頭をポンポンと叩く浩毅。
(んなわきゃねーだろ!)
観察結果・2
「む〜!」
「どした、一奈ちゃん?」
「たまねーちゃん、さいきんごきげんすぎ」
「そ、そんなことないよ」
ちょっと気まずそうに、一歩離れる珠樹。
(んなわきゃねーだろ!)
観察――
「逃がさんぞ、瀬川浩毅! 待っててネ、藤宮珠樹☆」
――結果・3
「近頃、どうも様子がおかしいが……いよいよもって、俺の努力が実り始めたかな?」
「いやー、そりゃねえだろうから、安心しろ」
「ん。安心して」
一奈に睨まれるのも構わず、浩毅にしがみ付く珠樹さん。
「フ、そう言っていられるのも……あ、ああ〜〜、も、もしかして、様子がおかしいのって……!?」
(よし、空気を読まない馬鹿がいた! 早く突っ込んでくれ!)
「ま、まさか、もう……こ、ここ、こ――」
(もう一息! 恋び――!)
「この夏の新作メニューが出てるのを、俺に隠してたからかー!?」
(ええー? うそーん)
観察結果・ファイナル
「――っと、こんなトコで。それじゃ、ご馳走さん」
「美味しかった」
浩毅と珠樹はそれぞれモニターした感想を述べ、
「いやはや、満足満足。今日のところは、コレで良し!」
心底美味そうに新作デザートを平らげた馬鹿は、勝負も挑まず去っていった。
「んじゃ、マスター。代金は――」
目を向けることなく、親指で、
「あっちから徴収して」
「お願いします」
店の隅を示した。
「千八百円追加となります」
「じゃあ儂の身体で……ッ!」
甚平の襟に手をかけたところで、五つの拳が叩き込まれた。
観察結果・ピリオド
さらに約一月半後。
「実は――」
「この度、俺と珠樹は……えっと、夏休みの間から、付き合うことになったんだ。うん」
(それはひょっとして、ギャグで言っているのか?)
「……二人とも。みんな、もっと前から、薄々気付いてたんだけど」
「ゲッ、マジっすか!?」
「完璧に演技してたのに……」
(それはひょっとして、ギャグで言っているのか?)
ちなみに。
「え? あ? つ、付き合っ……えぇ?」
間を置いてから、いつものようにポーズを決めて指差す。
「も、勿論知っていたに決まってるさ! だが、俺は諦めないぞ、瀬川浩毅!」
知らぬは当人ばかりなり、とはいかないようで。
〜浩毅と好生〜
一年後、今日も今日とて、男二人は勝負を続けていた。
馬鹿は性懲りも無く、浩毅はいよいよもって開き直って。
「よこせっ!」
「やだっ!」
「藤宮珠樹くれえーーっ!!」
「やーだよ!」
(注:会話内容は意訳しています)
割りと仲良くやっているようです。
〜家族会議〜
卒業の迫ったある日、浩毅は窮地に立たされていた。
部屋の真ん中。畳の上に正座させられ、三人から厳しい視線を浴びている。
男二人と女一人。それぞれ違う年代による、六つの瞳が刺さるようだ。
……痛い。
幻痛を感じ、緊張が走る。全身、特に握った掌に、嫌な汗がじんわりと浮かぶ。
隣には、珠樹。此方は、多少気まずそうにしているだけで、緊張まではしていない。
そして、女の口が開かれた。
「それでは、只今より家族会議を始めます」
家族会議。
読んで字の如く、家族でする会議。当然、今回の議題の中心は、
「浩毅。そして……珠樹さん」
着物の女性――浩毅の母に、名を呼ばれた二人。同席するのは、同じく着物の老人――祖父と、スーツ姿の父。
縮こまった浩毅の肩が跳ね上がる。
「間違いありませんね?」
「う、ぁ、いや……その……」
言いよどむ浩毅に代わって、珠樹が頷く。
その答えに、三者三様の溜め息が漏らされる。
「今更、とやかく言っても、仕方ありませんけれど……どうして、このようなコトになったのです?」
「ど、どど、どうして……と、言われても……」
正に今更である。なんせ、浩毅もつい最近聞かされた。冗談抜きで、呼吸と心臓が止まったと錯覚したものだ。
覚悟だってできていない。
それでも、勇気を振り絞ってこの場を設けたのだ。
家族会議というより、自分の弾劾裁判の場を。
やはり母は苦手だ。丁寧な物腰が、恐ろしい迫力を生み出している。
幼い頃の記憶が、竹刀や薙刀でぶん殴られるのではないかという恐怖を生み出してくれる。
「若いのですし、するなというのも酷でしょう。それに、私も人のことは言えません。けれど……どうして、もっと気を付けなかったのですか?」
「お、おかしいな……。ちゃんと……ちゃんとしてた筈なのに」
震えながらも、弁解する。
勉強もして、万が一のことが起こらないようにもしていた。
それなのに何故、このような、
「本当、おかしいなァ」
子供が出来るような事態に……。
「不備はありませんか。ならば、何がしかのアクシデントがあったのでしょうね。例えば、その……」
咳払いをしてから、続ける。
色々考えられることはあるが、代表例として。
「……コンドーム……が、破けてしまったとか」
「破けて……。――破け……っ!?」
今、一瞬脳裏に浮かんだ考えは……。
横の珠樹を見る。
「?」
伝わらない。首を傾げるだけだ。
(まさか……な)
振り払う。信じてやれないようでどうするのか。
というより、どちらにしても責任の所在は、全て自分に掛かるのだから、深く考えても詮無いことだ。
やるべきことは、結果を受け止め、今後の身の振り方を語るのみ。
「珠樹さんも」
「はい」
目を向ける母と、真摯に受け止める珠樹。
「三ヶ月目……ですか。何故、今になったのです?」
「一ヶ月目は、ただ遅れているだけかと思いました。そして気付けば、浩毅の受験シーズンになって……」
「終わる頃を待っていたら、今になった……と」
首を縦に振り、肯定の意を示す。
異変に気付いて、既に一月以上経っている。現在の浩毅とは、肝の据わり方が違う。
そんな珠樹に、母は問う。
「貴女を信じていないわけではありませんが、一つだけ確認しておきます」
一瞬の沈黙。
それだけで、何を言いたいのかは、全員に伝わる。
珠樹は頷いた。
何処かしら緊張が和らいだように、ほんの少しだけ母の目元が緩む。
「浩毅との間の子で……」
「間違いありません」
ここ数ヶ月、性交はご無沙汰であり、たった一度のタイミングと合致する。そして何より、
「私が身体を預けた男性は、浩毅だけです」
今までも。これからも。
怯むことなく、言い放った。
その、あまりに純粋な言い様に、思わず母と祖父の口元が綻ぶ。浩毅も、漸く肩の力が抜けた。
まだ納得のいかないことも多々あろうが、毒気を抜かれたらしい。
浩毅は安堵する。
今後暫く、肩身の狭い思いをしなければならないだろうが、それは甘んじて受け入れよう。珠樹に悪印象を持ってくれなかっただけで御の字だ。
「それで、浩毅。これからどうするつもりですか?」
「ああ。それは――」
珠樹に目配せをする浩毅。
いいの? と目で返す珠樹に、黙って顎を引く。
二人は胸元に手を伸ばし、服の中に仕舞っていたお揃いのペンダントを取り出す。
銀色のリングに、チェーンを通しただけものだ。少しだけ、珠樹のもののほうが径が大きい。
必死に金を貯めて買ったもの。その片割れは、珠樹に預けた。
誇らしげに手に乗せて見せた後、拳を握って言う。
「ま、安物だけどさ」
「その時になれば、交換するつもりです」
今は、ちょっと気恥ずかしい珠樹のアイディアを、肌身離さず身につけている。
「これから、爺ちゃんの跡を継ぐための、本格的な修行をつけてもらおうと思ってる。……元からそのつもりだったけど」
「…………」
「それで、それなりの目処がついたら……け、け、けけこ」
「ハッキリ仰いなさい」
「ん、む……け、結婚、したい」
母は頷く。
貴方の気持ちは、良く解りました、と。
「しかし、絶対に許しません」
緊張が走る。
「そう言ったら……どうしますか?」
「土下座」
浩毅は、間髪入れずに言い切った。
「駄目でも、折れてくれるまで続ける」
「それでも許さなかったら?」
「友人知人総動員してでも、許してもらうまで強硬手段をとる」
「最後の最後までですか?」
「違う。最初から最後まで。一言、許してくれればそれで終わる」
再度、間髪入れることなく言う。
その瞳に、迷いは無い。
「だから――」
手を地に付け、
「お願いします。お祖父さん、母さん。珠樹を……珠樹との結婚を認めて下さい!」
深々と、頭を地に擦り付けた。
静寂は数十秒。しかし、浩毅にはまるで、悠久の時を刻んだように感じられるほどの長い時間。
その静寂を……さらに数十秒かけて、母は破った。
「顔を上げなさい。男子が簡単に頭を下げるものではありません」
言葉に従い、浩毅は再び母の顔を見る。
「良いでしょう。貴方が約束を守るというのなら、私は認めます。お父様は、いかがですか?」
「貴様らの決めたこと。俺は口出しするつもりはない」
「じゃあ……!」
「うむ」
好々爺は顔を崩し、まるで少年のような笑顔を浩毅に向ける。
「みっちり絞ってやる。今後は手加減せんぞ。今から覚悟しておけ」
「ははは……」
これまで手加減してたのか……。
しかもこれからは、修行の種類も増える。想像するだけで身の毛がよだち、嫌な汗が身体を伝う。
思えば、わりと冗談抜きで川が見えかけたのも、一度や二度ではない。ついでに、その度に首根っこ引っ掴まれて、強引に連れ戻された気もする。
鬼モードに入りさえしなければ、非の打ち所のない人なのだが。
「それにしても……」
「?」
「もし二人で遠くに逃げるなんて答えていたら、それこそ許しませんでしたよ。立派になりましたね」
「あ、あは、あははは」
母の言葉を、空笑いで誤魔化す。
実は、少しそれが頭を過ぎったこともある。若気の至りと言うべきか、そういう姿にちょっとだけ憧れのようなものもあった。
どうにもならない程切羽詰ってない以上、そんな選択をするのは最低だとの考えに至ったわけだが。
良かった。勢い任せで口を滑らさなくて、本当に良かった。
「では、珠樹さん?」
「はい」
「明日にでも、私達がそちらへお伺いに上がります。親御さんのご都合は宜しいでしょうか?」
「いえ、近く顔を出すと言っていましたので。宜しければ、こちらから」
「わかりました。お待ちしていますと、お伝え下さい」
そして母は、三つ指ついて珠樹に頭を下げる。
深い深い、感謝を込めて。
「不肖の息子ですが……どうぞ宜しくお願いします」
「――こちらこそ。不束者ですが、お世話になります」
同じく、珠樹も深々と頭を下げた。
続いて、祖父も語る。
「こんなバカガキだが、何があってもどうか幻滅せんで、好きでいてやっとくれ」
「例えば……格好つけたがるクセに、ちょっと間抜けなところとか?」
「酷いな、珠樹さんよ!」
いつになく饒舌な珠樹を交えて、この一時は笑いが部屋を支配した。
そこに、流れを読まず、口を挟んだのが一人。
大変なところは、いくら頼ってくれても構わないから、と前置きして。
「しかしねえ。二人ともまだ若いんだから、僕としては、もう少し色々遊んだほうがいいん……」
「悪ぃけど、親父はこの件に関しては、少し黙っててくれ」
言葉を紡ぎきることなく、浩毅に制された。
「なっ!? 親に向かって、何て言い草だ! 僕は、親として、そして経験者としてだね――!」
「盛りのついた女ぁ孕ませた、三十六の嫁を持つギリギリ四十代にだけは言われたかねえの!」
「う、洒落の効いた手厳しい口撃……っ!」
浩毅の両親の結婚の経緯は、今回の二人のものに近い。所謂出来ちゃった婚だ。ただし、決定的に違ったものがある。
婚約発表当時、父は同僚数人から「ちょっと表出ろや」という、とても有り難い祝福の言葉を受けたこともあるくらいだ。
その身に浴びた冷たい視線も、浩毅の比ではない。
だからこそ、経験者は語るという意を込めて、口出しをしたというのに、
「そうですね。貴方は、浩毅に言う資格はないかもしれません」
「き、きみまでそういうことを……」
「年端も行かぬ娘を誑かしたこと、忘れたとは言わさぬぞ」
「お義父さぁぁああん!!」
立場が無い。
婿養子は、あまりに肩身が狭い。
「……さて」
言葉を失った父を尻目に、母は浩毅を見る。
取り敢えずの話はついた。あとは仕上げに取り掛かるとしよう。
安心しきってた浩毅は、
「早速、修行してもらいましょうか」
「へ?」
修行。
そこを強調して発せられた言葉の意味を掴みかねる。
「うむ。善は急げと言うしの」
「あ、あれ? ……どしたの、爺ちゃん?」
徐々に。
徐々に嫌な予感が増してくる。
「今日は、私もお父様にお付き合いいたしますわ」――ゆっくりと立ち上がる母。
「はははは。そんなんでは、久方ぶりに張り切ってしまうなあ」――同じく、ゆっくり立ち上がる祖父。
棒読み口調が白々しい。
直感を信じ、腰を浮かそうとした途端、
「!? い、いつの間にッ!?」
両脇を、祖父と母に陣取られていた。
口調と裏腹に、極自然な、気にも留めない動きをされて、浩毅は反応できずに接近を許していた。
立ち上がったことすら気付かず……否、気付いたことに気付かせず、二人は横に居た。達人であるからこその離れ業。
「何年ぶりでしょうね。息子と刃を交えるのは」
「母さん……何で、右腕固めるのかな?」
「この二人組は、そう滅多にあることではないぞ。うわ、ラッキー。凄い豪華ゲストだな」
「爺ちゃん……どーして左腕極めるのさ?」
ははははは、と三人の朗らかな笑い声だけが響く。
「それでは珠樹さん。今日のところはこれで」
「大して構いもせず、すまんかったな」
珠樹に対し――左右の関節を捻り上げながら――其々、極上の笑みで告げる。
「はい。失礼させて頂きます」
藪は突付くまい。
あえて気付かぬふりをして、珠樹はこの状況を流す。二人が、大荷物を引き摺っていくのを目にしながら。
浩毅が、視線を彷徨わせながら呟く。
「ど、何処へ連れて行かれるのかな、俺は……?」
「ドナドナ」
「珠樹ぃーーー!?」
襖は閉ざされ、悲鳴は遠く。
珠樹は、ある晴れた昼下がりに想いを馳せていた。
(……もっと強くならないと)
そう心に誓って。
その日、瀬川の道場で悲鳴が絶えることはなかったという。
〜浩毅と好生・2〜
さらに後。浩毅と珠樹の人生の、新たな門出の日。
何故かスピーチを任された馬鹿は、マイク持って語る。
「頑張れ瀬川浩毅……お前がナンバー1だ!!」
(注:しつこいようですが、内容は意訳しています)
今後一生、何だかんだと仲良くやっていくでしょう。
以上です。
その後のお話っていうことで。
正しく人生の墓穴を掘ったというわけですな。
それでは!
GJ!珠樹可愛いよ珠樹
浩毅は愉快な面々に囲まれて幸せ(?)ですなw
また何か書いてやってください。
>この夏の新作メニュー
飲みかけの麦茶吹いてノートPCが酷い有様に。流石は馬鹿だw
すごくイイ!
ああ、読後が爽やかだ。素っきりしたw
珠樹、ホントにやっちゃたのかよ!w
ああダメだ、ツンデレとバカがグミの取り合いをしている剣道の試合を思い浮かべちまったw
あれ?なんだろう…某ツンデレM字ハゲの顔が頭に浮かぶww
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
この二人キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
ゆっくり読ませてもらいます。ありがたや、ありがたや。
あーもうなんつーか最高だぜ!!!
私も書いてみたので投下します。
とは言え素直クールと言う物が良く掴めてないので
前半部分だけ投下して様子を見ます。
ご意見下さい。
「なるよ……」
周りは霞み掛かった景色に地面さえまともに写っていなかった。
これが夢であると言う事はすぐに理解出来た。安達孝太(あだちこうた)は、
今の状況を夢と判断し、目の前に居る少女に話し始める。
「何を?」
「あの時、約束をした。もしも……なら」
「何だって? 聞こえないよ?」
「私が君の恋人になる」
「ハァ?」
突然の告白に素っ頓狂な声を上げた所で孝太は夢から現実の世界へ引き戻された。
普通なら鼻で笑って済ませる所なのだが、
妙にリアリティのある夢に孝太はそれが出来なかった。気だるい体を起こし、
制服に手を伸ばし着替え始める。
「じゃあ、行って来る」
「うん……」
未だに夢の世界に居る母親に対して孝太は振り返る事無く、ドアを開け出て行った。
この日も孝太は不機嫌であり、
学校に到着しても誰一人として話しかける物は居なかった。約1名を除いて。
「おはよう孝太。今日も良い天気だな」
「だからどうした?」
その少女は整った部類に入る方だが、孝太は不機嫌な態度を崩す事無く返した。
しかし、それでも少女は気にする事無く話を進めた。
「そうカリカリするな。『怒る』と言う行為は体に取ってマイナスしか無いぞ」
「ほっとけ!」
「すいません。星野さん、少し宜しいでしょうか?」
クラスでの学級委員に呼ばれ、星野悠里(ほしのゆうり)は振り返り、
孝太の相手を一旦、中断し学級委員の相手に回った。
悠里は特別な役職に付いている訳ではないが、人望がある為、
クラス内でも頼りにされている存在である。
「済まない。少し助けが必要になったから、此方に回る。又、後でな」
「勝手にやっていろ」
悠里は孝太の事を最後まで気に掛けていたが、孝太の方は気にする事無く、
気の抜けた表情で窓の外を見ていた。
「ざけてんじゃねーぞ! このガキ!」
授業が終わり、放課後となっていた時、
孝太は自分に因縁を付けた不良に対して喧嘩をしており、
馬乗りになって自分の下に居る不良に拳を振り下ろし続けている。
「もう……勘弁して下さ……」
「ざけるな! 上級生舐めやがって! ぶっ殺してやる!」
完全に頭に血が上っている状態の孝太は近くにあった瓦礫を手に取り、
そのまま不良の顔面に振り下ろそうとした。だが間一髪の所でそれは止まり、
一瞬の隙を突いて不良は孝太から抜け出す。
「又お前か!」
「もう止めてくれ十分だろ」
自分を静止した人間は悠里であり、孝太の手を細い手が制していた。
孝太は良い所を邪魔された苛立ちと言う物もあるが、興が冷めた事もあって、
冷静に悠里の相手をし始める。
「もう良いよ。で?」
「保健室に行こう。ケガが心配だ」
悠里の言う通り、孝太の体には所々、細かい傷が付いていた。
制していた手をそのまま繋ぐ形となって2人は保健室へと向かった。
その日、保健室に保険医は不在であったが、
悠里は慣れた手付きで孝太の治療を行った。
孝太はその献身的な行為にも表情1つ変えず悠里に接する。
「言っておくが礼何て言うつもりは無いぞ」
「分かっている」
「喧嘩に関してもあっちから因縁吹っ掛けて来た。俺は寧ろ被害者だ」
「分かっている。君の方からああ言う事はしないと言う事くらい」
孝太は未だに血が上っていた状態であったが、
それでも悠里の柔らかな態度は変わらず落ち着いた対応で孝太に接していた。
治療が全て終わると、悠里は立ち上がり、孝太の手を取った。
「何だよ? 俺はもう帰る!」
「10分で構わない。私に時間をくれ」
孝太は半ば強引に連れて行かれ、嫌々ながら悠里に手を引かれ悠里の後を追う。
「それで何だ話は?」
孝太は悠里に連れられ屋上に居た。
屋上から見える景色はこの辺りを一望する事が出来、眺めが良い事から、
多くの生徒が利用する場所であるが今は2人だけである。
「孝太は覚えているか?」
「何をだよ?」
「私達が始めて会った時の事をだ」
悠里に言われ孝太は渋い表情を浮かべる。その時に頭を過ったのは孝太に取って、
余り良い思い出では無かった。
「忘れるかよ……良い所だったのを邪魔しやがって」
「目の前で犯罪が起ころうとしているのだ。
私の手で止められるのならそうするべきだろ」
孝太と悠里の出会いは最悪な物であった。
その日も孝太は自分に因縁を付けた不良を相手に行き過ぎた防衛行為をして、
相手の顔面を潰れたトマトの様にし、
それでも殴る事を止めなかった孝太を悠里が静止させた。
これが2人の出会いであった。
「あれだって俺が悪いんじゃねー。あの屑野郎が悪いんだ!」
「過ぎた事を言うのは趣味では無い。もう止そう」
「それで何だ。お前が態々、俺を呼び出したのはイライラを再発させる為か?」
「違う。君は半年前、私とした約束を覚えているか?」
「ハァ?」
突然、投げ掛けられた質問に孝太は素っ頓狂な声を上げた。
問い掛けられた質問に対して答えを出そうと孝太は自分の記憶を振り返る。
「又、派手にやったな……」
「ウルセェ! 俺の勝手だ!」
孝太はその日も喧嘩を行い、ケガだらけであった。
ケガの治療を悠里に行ってもらいながらも孝太の苛立ちはピークであり、
悠里も腫れ物を扱う様な態度で接していた。
「どいつもこいつも俺をバカにしやがって!」
「聞きたいが、君自身は喧嘩をやって気持ち良いのか?」
「良い訳ねーだろ!」
苛立っている孝太は悠里に対して乱暴な口調で返した。
その剣幕と口調に普通ならば怯えるのだが、悠里は怯える事無く孝太に接する。
「では何故、喧嘩を行う。孝太の場合は正当防衛を超えた物だぞ」
「仕方ねーだろ……」
「何がだ?」
「他に楽しみ何てねーんだからよ」
「自分の好きな趣味とかは無いのか?」
「そんな物は生活に余裕のある人間だけが持てる物だ!
遺産、食い潰して暮らしている人間にそんな物持てるか!」
「どう言う事だ? 初耳だぞ私は」
孝太は自分が言った軽率な発言を悔いて、顔を歪めた。
悠里を見ると1歩も引かないと言った表情をしており、
観念した様に孝太は話し始めた。
「分かった! 言ってやるよ。俺の家はな親父が勝手な都合で出て行って。
お袋が鬱で引き篭もり。現在、俺の生活費、
その他は分け与えられた遺産で持っている状態だ。
それでも俺が大学出る頃には無くなるし、日々ギリギリの状態だぞ、
こんな状況で趣味何て物持てるか!」
悠里は初めて聞かされた。
孝太の複雑な家庭事情に呆然としていたがすぐに何時もの冷静な調子を取り戻し、
孝太に話す。
「だから日々の苛立ちをそう言う事にぶつけると言う訳か」
「ああ、そうさ! けどな、それの何が悪い?
相手の方から因縁は付けて来たし、死んでも良い様な屑野郎ばっかだ!
俺の方から喧嘩は吹っ掛けないしな。
どうせ、まともな幸せ何て手に入らねーんだ!
目の前のクソガキ。ボコボコに打ん殴って、
屈服させる事だけに喜び感じる事しか出来ねーんだよ!」
「何故、そう断言出来る?」
「ウルセェ! 理由何か必要ねーよ」
「分かった。それなら半年」
「何がだ?」
話して行く内にヒートアップして行く孝太を宥める様に悠里は冷静な口調で話す。
突然の事に孝太もどうして良いか分からず有利の言葉を待った。
「半年は孝太の好きにさせてあげる。
その間に何か夢中になる物が見付かるかも知れないし、
けど、この状況を何時までも続けさせるのは孝太の為にもダメだ。
だから、もし半年経っても何の変化も無ければ……」
「無ければ何だよ?」
「私が君の恋人になる」
「あ!」
記憶を呼び起こし、孝太は思わず叫んだ。あれから半年経っている。
つまり今、悠里が目の前に居る理由は1つである。
「そう、今日から私は君の恋人だ」
「待て! お前、それで良いのか? 好きでもない男とそんな……」
「少なからず君に対して好意は持っている。
それが愛情かどうかは付き合ってお互いが判断すれば良いだろう」
堂々と話す。悠里に孝太は呆然としていたが、
悠里の方は変らず堂々とした態度であった。
それまで携帯の番号も交換していなかった2人だったが、
この日初めて番号とメアドを交換し、この日は解散となった。
帰り道でも孝太は思いもよらなかった告白に呆けた状態から抜け出せないでいた。
前半部分は以上です。ご意見下さい。
何も問題ないと思います〜
462 :
426:2006/09/26(火) 23:26:58 ID:dGwAKF7Z
素直クール妹ver 続き
一晩中殆ど寝ること無しに考えてみた
自分の気持ちについて、そして妹の気持ちを受け入れた場合と
受け入れなかった場合の後のことについて
この答えが正しいかどうかなんてわからない
でも答えは出した
後はこの答えを妹に告げるだけだ
妹の部屋の前に立つ
深呼吸をして気持ちを落ち着かせ
意を決して扉を叩いた
「入っていいか」
「・・・どうぞ」
部屋に入ると妹は正面のベッドに座っていた
その目はしっかりと俺を見つめている
その瞳が心なしか赤いのは俺と同じであまり眠っていないのだろう
「兄さん、覚悟は出来ています。答えを聞かせてください」
暫く無言で見詰めあった後、先に口を開いたのは妹だった
妹の覚悟に答えるために、俺もおもむろに口を開いた
「ごめん、俺はお前の気持ちに答えることは出来ない」
結論だけを短く言う。どんなに言葉を取り繕ってもきっと無駄だろうから
「そう・・・ですか」
妹は俯いてしまい、どんな表情をしているのかわからない。
「なぁ・・・」
「私は・・・」
俺の言葉を遮るように妹が口を開いた
「私は、自分がどれだけ馬鹿なことを望んでいるのかわかっています。だから、兄さんは気にしないで下さい」
馬鹿やろう、そんな泣き顔で気にしないとか言われたって信じられるわけないだろ。
だから俺は、さっき続けられなかった言葉を言う
「馬鹿、俺の話はまだ終わってないぞ」
「・・・え?」
「俺はお前の気持ちにこたえることは出来ない。でも、毎年この日だけは、このお前の誕生日だけは、兄としてじゃなくて一人の男としてお前の隣にいようと思う」
「それじゃ、ダメか?」
結局俺は1/365.25しか妹の望む答えを返してやれなかった。
でも妹は
「いいえ、そんなことありません。それだけでも私には十分です」
そういって、泣きながら俺の胸に飛び込んできた。
俺は妹を優しく抱きしめると、そっとキスをした。
「ん・・・ちゅ・・・はぁ、兄さん」
「ん・・・?」
「私のバージン、もらってください」
俺は無言でうなずくと、妹を抱きかかえてベッドに向かった・・・
あんまり素直クールっぽくない・・・orz
とりあえずこの後頑張ってエロシーンを入れる予定
後1回か2回で完結です
>>457 意見が欲しいということだから言わせて貰う。
少し辛口になるが、気に障っても怒らず無視してくれ。
その方がお互いのためだし、スレのためでもある。
もし君が俺に反論しても俺は再反論はしないし、
君が俺の意見を無視しても俺は気にしない。
そういう風に、大人の態度でお互いにいこう。
文章作法に関して。
「〜する」と「〜した」の使い分けに違和感がある。
一つ一つを指摘するときりがないので省略するが、
基本的にそれぞれの行動にどちらを使った方がしっくりくるかを
吟味して使い分けた方がいいと思う。
キャラ設定に関して。
男がDQN。
なかなか難しい作品に挑戦したものだ。
どんな理由があろうと他人に当り散らして
それを紛らわせるような人間は、基本的に嫌われる。
それを正当化する人間は更に嫌われる。
こういうマイナス要素だらけの男を使う以上は、
何の取り得もない平凡な高校生を主人公にした場合以上に
女に好かれた理由を工夫しないと、
ご都合主義と予定調和の合いの子である駄作で終わる予感がする。
場面転換について。
唐突すぎる。
場面の切れ目は(矢印で示した場所)
> 悠里は孝太の事を最後まで気に掛けていたが、孝太の方は気にする事無く、
> 気の抜けた表情で窓の外を見ていた。
> 「ざけてんじゃねーぞ! このガキ!」 ←たとえばこうする
> 授業が終わり、放課後となっていた時、
> 孝太は自分に因縁を付けた不良に対して喧嘩をしており、
上記のように改行を入れて間を空けるなりして場面転換を示してくれた方が
わかりやすい。とにかく、場面が変わったことを、ある程度読み進める前に、
見た瞬間にわかるように工夫した方がいい。
文庫本ならともかく、横書きのネット上の文章はそういう風にしないと読みづらい。
あれ……何でクッキー残ってるの……?
……orz……
>>463 ドンマイw
>>457 俺も
>>463と同じ事思ってたところだから、そこをちょっとで良いから考えて締めに向かってほしい。
逆に言えばそこさえ出来れば良作認定されると思う。
>>462 wktkwktk。続編期待!
466 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/27(水) 21:33:18 ID:9SnibBjQ
467 :
426:2006/09/27(水) 23:24:32 ID:5ba7qxG5
素直クール妹ver ラスト
俺はベッドに妹をそっと横たえると、その上に覆いかぶさった。
そのまま手をパジャマの上からなでるようにして、腹から胸へと滑らせていく。
妹は
「・・・んっ」
と小さくもらしただけで、ただ俺の行為を見守っている。
妹の胸はお世辞にも大きいとはいえないけど、まるで吸い付くように俺の手のひらにすっぽりと納まった。
パジャマの上からじゃ物足りなくて、
「脱がすよ」
「はい」
妹の許可をもらってからボタンを一つ一つはずしていく。
「乳首、立ってる・・・」
「それは、兄さんが触るからです。兄さんにこうされているだけで、私は・・・」
「感じちゃうんだ?」
そう意地悪っぽく言うと
「はぃ・・・」
妹は羞恥に顔を染めながらそれでもしっかり答えてきた。
乳首をはじいたり、揉みしだくたびに妹の口からかわいい喘ぎ声が漏れてくる
次第にそれだけでは物足りなくなって、俺は妹の胸にしゃぶりついた
乳首を口に含んで転がすと、妹はびくんと震えて背筋を伸ばした
「に、兄さん、は・・・ぁ」
今度は胸だけじゃ足りなくなってあいている手を妹の股間にそっと伸ばした
ショーツの中のそこは既に十分な湿り気を帯びていて
軽く指で撫でるとクチュッっといやらしい音がした
そのまま人差し指を指を第一関節まで入れた、それと同時に親指でその上にある
クリトリスをやさしくこね回す
「ん、はぁ、やっ・・・」
クリトリスをいじるたびに、奥から愛液があふれ出てくる
そのまま暫く愛撫を続けると、妹のそこは十分に濡れていた
「そろそろ、いくよ」
俺の言葉の意図がわかったのだろう、妹は
「はい」
とうなずくと、腰をわずかに上げてショーツを下ろすのを手助けしてくれた
俺の目の前にさらされたそこは、予想通りいやらしく濡れていた
俺は自分のムスコを取り出すと、ゆっくりと妹の秘所にあてがった
俺は勿体つけずに、そのまま一気に妹を貫いた
「ぅ・・・くっ、ぅああああっ」
抵抗は些細なものだった
一瞬止まっただけで、後は根元まで一気に・・・
「はぁ、あ、くっ・・・」
結合部からは、痛々しく血が流れていた
「大丈夫か?」
さすがに、妹の辛そうな顔を見て俺は続けていいかどうか迷った
けれど
「大丈夫です、それにこの痛みも兄さんと繋がってる証だと思えば、なんだか尊いものに思えてきます」
「だから、続けてください」
妹のその言葉を聴いて、俺はもう迷わなかった
せめて妹の苦しみをなるべく早く終わらせるべく
絶頂に向かってスパートをかけた
妹の中は気持ちよすぎて俺はすぐに昇りつめてしまった
「くっ、いくぞ」
「はい、中に、中に出してください」
「あああああっ」
妹のその言葉を合図に、俺は妹の中で果てた
「ん、あ、熱い・・・兄さんのが、私の中に・・・」
468 :
426:2006/09/27(水) 23:25:03 ID:5ba7qxG5
「もうすぐ、私の誕生日も終わりですね」
あれから、俺達は何をするでもなくまどろんでいた
それは夢のように幸せな時間で
けれど、それも終わりに近づいた頃、妹が不意に口を開いた
「そう・・・だな」
俺が妹に掛けた魔法が解けようとしてる、魔法が解ける前に伝えなきゃいけない言葉を伝えるべく俺は口を開いた
「なぁ・・・」
「なんです、兄さん?」
「愛してる」
「っ・・・」
不意打ちだったのだろう、珍しく妹は口をぱくぱくしたまま何も言えないでいる
俺にはそれが少しだけおかしかった
「私もです、愛しています、兄さん」
少ししてから、妹が答えを返してきた
そして、カチッと音を立てて時計が夢の終わりを・・・12時を指した
「今からは、普通の兄妹ですね」
妹は寂しそうに、けれど満足そうにそう言って微笑んだ
それに対して俺は、自分でもわかるぐらいいやらしい笑みを浮かべて
「それは、お前の努力しだいだぞ?」
「・・・え」
「もしかしたら、この先俺の気が変わって、1年に1日が、一月に一日になり、一週間に一日になり、毎日になるかもな?」
妹は暫く、口を開けてぽかんとしていたが、やがて俺の言葉の意味を理解したのだろう
満面の笑みで
「兄さん、覚悟してくださいね?兄さんがその気になるまで、私、頑張りますから」
と言った。
Happy End?
とりあえず完結
参考にしたいので、いろいろと意見をくれるとうれしいでs
批判的なのでもかまわない(むしろその方が勉強になる)ので
よろしく
PS、エロシーンとかマジ無理
一回コテトリ出しちゃったし、もうこのままでいいや。
いい作品だと思う。個人的に壷。
ストーリーや描写も問題ない。むしろエロが少なく心理描写や会話が多い分、
二人の愛情やら何やらの萌え分が醸し出されていて、
エロなしの方向性としてはかなり完成度の高い作品だと思う。
会話もテンポがよく、短い言葉で読者(少なくとも俺)をよく萌えさせている。
エロ小説としては駄目だが、エロ風味の恋愛小説としては「いい」と思う。
ただ、文章作法の問題として、文の結びには「。」をきちんとつけるべきというのがある。
気に障ったらすまんね。
イザークの母
471 :
426:2006/09/29(金) 09:52:55 ID:3QogaN6f
>>469 サンクス
やっぱ文の結びには「。」つけたほうがいいのか、
改行で文を区切れるから、見た目的にどうなのかなって感じでつけなかった、
ここら辺は基本的に俺の知識不足なので指摘してくれて非常に助かった。
番外編やら別の話も考えてるので、それを書くときにはちゃんと直してくるz
>>469 いらぬ批判があなたに向く前に外してはいかがでしょうか?
意見は真っ当なので、読んでて不快は感じませんが、
なんせ、ここは某巨大掲示板ですからwww
いろいろな人がいることですし。
>>426 妹属性の俺には大好物です。
473 :
名無しさん@ピンキー:2006/09/30(土) 23:58:22 ID:OWIxx/tO
age
例の言葉を使わない素クールシリーズ。
ふと思い立って作ってみたが、これでも大丈夫だろうか。
実験なので、短編です。
「や。こんちは」
「…………」
それは、ずっと昔のこと。
「無愛想だなー。笑え笑え」
「…………」
小さな出会い。小さな思い出。
「俺さ、――――ってんだ。お前は?」
「……――」
「ん?」
「――――っていうの」
そこで芽生えた、小さな絆。
「そっか。ヨロシクな、――!」
「……うん」
――初めての笑顔。
「いいか? 今度何かあったら、すぐに俺を呼べ。必ず助けてやるから!」
「……うん!」
――初めての約束。
「…………―――け」
まどろみの中、誰かの呼ぶ声が聞こえる。
優しい女性の声だ。温かい手が身体に添えられ、そっと揺らしてくる。
「……――すけ」
夢見心地は、その声を子守唄の旋律に、与えられる振動を揺り篭に変えてくれる。
まだ朝は早い。
今しばらく、この眠りの中、天上の調べに聞き惚れていたい。
だが、そんな思いは、
「起きろォー! 中原大祐ッ!」
「おぉっ!?」
甲高い怒声によって強制終了させられた。
寝起きの視界に飛び込んできたのは、自分より幾分か年下の女の子。学校の制服に身を包み、腰に手を当てている。
息を荒げ上気した顔は、怒りに満ちている。
それでも取り上げた布団を手に、眉を吊り上げ頬を膨らませる姿は、本人には悪いが可愛らしさが勝っている。
「な、何だ、彩矢か。耳元で怒鳴るなよ……あー、ビックリした」
「今日から学校でしょ。寝坊スケさんなトコは嫌いだよ」
「いや、大学はな……」
「口答えしない」
言い訳もさせてもらえない。
時計を見れば、時刻は七時少し前。少し眠り足りないが、確かに丁度いい時間ではある。
まだ少し耳がキーンとする。違和感の残る耳の穴に、大祐は小指を突っ込んだ。
「あー……んじゃ、起きるか」
「ご飯出来てるから、顔洗ってきて」
「へいへい」
「返事が一回じゃないトコは嫌い」
笑顔を見せてから、ドアを閉めて階段を下りていく。聞こえる足音は、ステップが軽い。
「……機嫌が良いのか悪いのか……」
年頃の女心は解らない。小指の先に、強く息を吹きかけた。
窓の外を見れば、良い天気だ。大祐は、一つ大きな欠伸をして、残った眠気を掃う。
首を鳴らしてから、洗面台へと足を運んだ。
「ごっそさん!」
テーブルの上に積み重ねられた大量の皿を前に、大祐は手を合わせる。
「……毎度のことだけど、もっと味わって食べてほしいな」
「ちゃんと味わってるって」
そうは言うものの、物凄い勢いで目の前から消え失せれば、疑いたくなるのも致し方なし。確かに、本当に美味しそうに食べてはいるのだが。
作り甲斐があるような無いような。
彩矢の朝食は、まだ四分の一も減っていない。
数年経つが、未だこの食事風景には完全に慣れない。
「早食いすぎるトコは……」
「あ、コーヒー飲むだろ? 彩矢の分も淹れるぞ」
既に目の前の椅子には座っていない。皿を片付け、豆の準備を始めている。
鼻唄など唄いながら、テキパキとコーヒーメーカーの準備を進める。フィルターを付け、粉を投入し、スイッチを入れた。
「さぁてさて。新しいのは、お味はどうかな〜っと♪」
「……話を聞かないトコは嫌いだな」
「勝手にミルクと砂糖入れるトコは、嫌い」
カップを手先で回しながら、彩矢は言う。
「だって、どうせ入れるだろ?」
先程と同様、彩矢の真正面に座ってカップを傾ける。
大祐に悪びれた様子はない。何度も確認したこと。今更だし、あくまで好意によるものだから、本気で嫌がられない限り気にしないのだ。
それでも、一言確認くらいは欲しい。
「…………」
無言で一口啜る。
正直美味しい。
ただ美味しいだけでなく、彩矢好みの味を仕立て上げてるのが、ますます気に食わない。
「やっぱり、こういうトコは嫌い」
「嫌い嫌いって、そればっかだなあ」
「仕方ないじゃない。本当なんだから」
彩矢も負けじと、悪びれない。
「そんなに俺が嫌いか」
「いや、別に大祐本人が嫌いなワケじゃなくて。ていうか、嫌いだったら世話焼かない」
「ふぅん……ま、いいか」
確かに。本当に嫌っているなら、わざわざ頼みもしないのに世話を焼くこともないだろう。
妹のような幼馴染の好意は、日々の生活において有り難いことこの上ない。
「ふふ。まったく……そうやって軽いトコは、やっぱりちょっと嫌いかもね」
「いつも『そういうトコは』って、じゃあどんなトコが好きなんだ?」
純粋な疑問を、大祐が投げかけてくる。
他には頭にないといった顔に、彩矢は思わず噴き出す。
「どうしたんだよ?」
「あはは……うん。それが解らないようなら、まだまだわたしの世話が必要だね」
「はあ?」
間抜け面を、また笑われる。
不可解だ。大祐は納得がいかない。
ただ、それもいつものことだと、すぐに流してしまう。
「このままじゃ、一生世話を焼くことになるかな?」
「うわ、そりゃ流石に不味いな」
大祐は顔を歪めた。
好意は有り難いがのだが、自分ばかりにかまけられても、彼女の時間が勿体無いと思っている。
可愛くて器量の良い女の子だ。その気になれば、彼氏の一人や二人簡単に作れるだろうに。
何時までも拘束してしまっては、得られるはずの楽しみを奪ってしまったりしないだろうか。
「彩矢の嫌いなトコ、頑張って直してみるか……?」
口に手を当て、真剣に悩む大祐。
素直で真面目なのはいいが、それはそれで心配になる。年上のくせに、微笑ましくなってしまう。
彩矢は、悩み顔の鼻を指先で摘んだ。
「んが?」
「鈍いトコが一番嫌い。もっと国語を勉強しなさい、わたしのヒーローさん」
出会った頃から変わらぬ、永遠の少年。
図体ばかりが大きくなったこの男の子との時間が、彩矢にとっては最大の潤い。
愛用のフレームなしの眼鏡をかけ、横の椅子に置いておいた鞄を手にし、彩矢は玄関へと向かう。
見送りのため、付き合う大祐。
爪先で地を叩いたら、スカートを翻して大祐に向き直る。
「それじゃ、ちゃんと学校へ行くこと!」
「あ、ああ」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
手を振って送り出す。
戸を閉める前にひょっこりと顔だけ見せ、
「夕食、何がいい?」
「あ、んじゃカレーでも」
「了解」
それだけ確認して、登校していった。
きっと夕方には、買い物籠ぶら下げて家に顔を出す。それがここ数年のパターンだ。
そして、今夜もお姉さんぶられながら食事することになるのだろう。
それにしても……。
大祐は、腕を組みつつ頭を悩ませる。
「最近のアイツは、さっぱり解らん」
唸る。
どこまでいっても、あくまで真剣に頭を悩ませた。
以上です。
相手がとことんニブいなら、ひょっとして逆の言葉使ってもいけるか、と思ったわけですが……。
彩矢(あや)の言葉はアレだけど……別にツンになってない……よね?
悪くない…
…けどこれは素直クールではない気が……
そうか?これは素直クールだろ。
482 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/02(月) 10:24:12 ID:yTImEsQ0
根っ子に素直クールがいるのは判るが、
表面に出てる分が薄い。
あんまり濃くすると
長く続けるのがつらくなるのが
素直クール属性のつらいとこやね
萌えたが、素直クール萌えではない気がする
美味しいコーヒーを入れてもらったら素直に「美味しい」と言うし
「そんなに俺が嫌いか」と聞かれたら「大好きだ」と素で答える
それが俺のイメージする素直クール
>>475-479と俺では、素直クールに対する考え方が違うだけかもしれんが
あー、やはり意見が分かれたかあ。
どのくらいまでOKか、あるいは普通とはちょっと違うタイプがないか探ってみたつもりだけど……。
「好き」を使わず「嫌い」を使うなら、はこんな流れのほうがよかったかな?
「もっと構って欲しいなあ」
「毎日ウチに入り浸って、今更何言ってんだ?」
「もっと遊んで欲しいなあ」
「(ゲームで)対戦しようっつったら、断わったくせに」
「今度デートしよう」
「おお、いいぞ。何処出かける? でも次は彼氏かなんか誘ったら?」
「恋人さんですか?」
「いやー、それが違うんですよ店員さん。幼馴染としては、早いとこちゃんとしたの作って欲しいんだけど」
「コレだからもう……」
「苦労しますね」
「今夜泊めて」
「いいよ。勝手知ってるだろ。好きに使え」
「…………」
「この年齢で、布団に潜り込んでくるなよ。甘えん坊は治らねえなあ」
「結婚して」
「そーいや、ガキの頃よくそんなこと言ってたなあ」
「鈍いのは嫌い」
「???」
>>485を読んで気づいたが、俺の素直クール萌えは
「素直クールに振り回される男のリアクション」を含めての萌えなんだ
だから男側が振り回されてないと、なんか違う、と思ってしまうんだな
>>485 口と腹が一致しているから、素直。
普通は照れが入って尻込みしてしまうことも平然とこなすから、クール。
二つあわせて素直クール。
ぼかしたり仄めかしたり匂わせたりは素直クールとは言わない。
ソレは普通のかわいい女の属性だ。
ソレを踏まえてちょっとこんなのはどう?って聞いてみる。
「もっと構って欲しいなあ」
「毎日ウチに入り浸って、今更何言ってんだ?」
「もっと身体的な接触が欲しいの」
「もっと遊んで欲しいなあ」
「(ゲームで)対戦しようっつったら、断わったくせに」
「お医者さんごっこは嫌い?」
「今度デートしよう」
「おお、いいぞ。何処出かける? でも次は彼氏かなんか誘ったら?」
「だから今、誘ってるの」
「恋人さんですか?」
「いやー、それが違うんですよ店員さん。幼馴染としては、早いとこちゃんとしたの作って欲しいんだけど」
「・・・・・・だから今『作成』中」
「苦労しますね」
「今夜泊めて」
「いいよ。勝手知ってるだろ。好きに使え」
「うん、布団暖めておくから」
「…………」
「この年齢で、布団に潜り込んでくるなよ。甘えん坊は治らねえなあ」
「一生治らないよ」
「結婚して」
「そーいや、ガキの頃よくそんなこと言ってたなあ」
「十年後も言うよ」
「鈍いのは嫌い」
「???」
「嫌いといって嫌われやしないかと怯える自分はもっと嫌い」
こう、オトコの内角を不意に抉るようなエッジを効かせてみたいんだけど,
やっぱむつかしーね。
>>488 最後の一行読んだら腹減ってきた
晩飯作ってくる
>>487 >十年後も言うよ
ということは十年間は結婚できない?
ああ、もう、なんか。
お前ら最高だ。
>>490 世の中には『永遠の十年後』というのがあってだな(ry
まあ、それとは微塵も関係ないのだが、
『あなたがあなたである限り、私が私である限り、いつまでも言い続ける』という意思表示ではないか?
ここは素直な探究心に満ち溢れたインターネットですね。
でも十年後くらいでようやく結婚ってのは多分間違いないw
きっとこんな感じ
「結婚してよ」
「おまえ……いいかげんいい年齢なんだからさ」
びしっ!
「結婚できない原因」
「俺!?」
「責任取れ」
「そーゆーもんなの?」
「そーゆーもんだよ」
「ん〜……ま、いいか」
「じゃ、ケッコンすっか!」
「んだ!」
最後はネタに走った
今は反省している
「結婚して!」
「おまえ、ガキの頃からかわんねーな」
「そうだよ、これからもかわんないよ」
「ふうん、じゃあ仮に俺と結婚してもかわんないの?」
「そのときは変わるよ」
「亭主元気で留守が良いとか? 働け!とか」
「違うよ。早く子作りしよってなるの」
「……いや、その」
「先に子作りでも良いけど?」
「……」
「ねぇ、あなたぁん、結婚を先にしますぅ? それとも子作りにしますぅ?」
「悪かった、俺が悪かったから」
「じゃあ、結婚したら許してあげる」
「……いつまでこの話題を続けるつもりだ?」
「もちろん結婚してくれるまで」
「……さあ、寝るとするか」
「子作りから先かぁ。残念だけど今日安全日なんだよね」
「……助けてくれ」
「結婚してくれたら、もう結婚してって言わないよ」
「……なぁ、頼むから……」
「なになに、頼むから結婚してくれって。あはぁ、プロポーズされちゃったぁ」
ただの積極的な女の子と素直クールの区別がつかなくなってきた
>「結婚してくれたら、もう結婚してって言わないよ」
素で吹いた
いいな、これ
でもなんか素直クールってーか素直バカみたいな希ガス
じゃあ、クール分を補充。
「ところで、いつ私と結婚してくれるのだ?」
「……幼稚園の時の約束を、17歳の秋の朝に持ち出すのはいかがなものかと」
「ふむ、では18歳の誕生日に持ちだそう」
「ちょっと待て。何を企んでいる?」
「知らないのか? 男は18歳で結婚できるのだぞ」
「そうではなくて……。なぜ、結婚なのだ」
「うん、それには深い理由がある」
「……何か知らんが真剣に聞こう」
「そろそろ、おまえを想っての自慰では物足りなくなってきた」
「ふむ、ジイ。ジイ?」
「自分で慰めるってやつだ」
「……、ちょっと待て!」
「いろいろとおまえを誘ってみたのだが、反応も悪い」
「……その誘ってみたって、なにがだ」
「おまえのいやらしい本に私の顔写真を貼ったのだが?」
「……おい、あれはおまえだったのかい!」
「毎年水着も見せたし、おっぱいぽろりも演出してみたのだが?」
「水着で突然入ってきて、俺のゲームの邪魔をしたあれのことか?」
「胸を見せても襲ってこなかったし」
「あれで、俺はSOLGの阻止に失敗……いや、もういい」
「一緒に寝れば、襲われるかもと勝負下着を着ていったこともあった」
「おまえも爆睡して、俺をベッドから蹴落としてくれたけどな」
「……うむ、こういう悲しい失敗を乗り越える一発逆転の秘策として、結婚というわけだ」
「そもそも、俺達は幼馴染みに過ぎないと想うのだが?」
「ラブラブな幼馴染みだ。当然、おまえに来たラブレターと告白は適切に処理した」
「……、ちくしょう、俺の青春を返せ!」
「こんなにおまえを愛していて結婚まで申し込む美人でナイスボディな幼馴染みがいて、まだ不足か?」
「それだけを聞くとすごい俺が幸せ者に聞こえるのはなぜ?」
「結婚したらもっと幸せになれるぞ。ということで誕生日までにお互い結婚の準備を進めようではないか」
「……なにかがおかしいような気がする。何かが……」
「気にするな、マイダーリン」
「そのクールな顔で、ダーリンかよっ」
なかなか良いかも知れん
ああ、これは良い素直クールだ
後輩が結婚した。それ以来後輩はOB会には毎回奥さんを連れてきた。
OB会メンバーでは唯一堅物の後輩と違い、彼女は悪乗り上等の俺達と馬が合った。
あるとき、後輩抜きで奥さんがOB会に顔を出した。頬に痣があったが、
後輩と喧嘩したとだけしか言わないのでそれ以上は追求しなかった。
しかし、そんなことが何度か続いたので、彼女を呼び出し問い詰めてみた。
半ば予想はしていたが、後輩の一方的なDVだった。
「あんたもとんでもない男と結婚しちまったなぁ。」
「うん…… 私は自分が嘘が苦手だから、あんなに表裏があるとは思いもしなかったよ。」
「あんたは素直だもんな。で、どうするんだ?」
「もう少し様子を見るよ。」
「そうか、俺のとこだったらいつ逃げてきてもいいぞ。」
「ん、ありがと。別れたら…いや、なんでもない。あなたはいい人だね。」
そしてついに離婚。後輩はOB会メンバーに何も言わず音信不通に。
「あいつもこれで少しは懲りてくれればいいんだが、逃げるようじゃなぁ。」
「書類が片付いたら、私からの電話にももう出ないんだよ。」
「そうか。ホントに最後まで大変だったな。」
「でも、彼には少しだけ感謝しているんだよ。」
「ん? 少しは楽しい思い出でも残ってるって?」
「あーいや、そんなもん嫌な思い出とセットだから思い出したくもないよ。」
「じゃぁ何に感謝?」
「彼がいなかったら、あなたに会えなかった。だから、それだけは感謝している。」
「俺? 俺なんかあんたに何もしてやれなかったじゃないか。」
「そんなことない。ずっと私のこと気にしててくれたじゃない。今だから言えるけど、あなたのことが好き。」
俺には青天の霹靂だった。
「いや、あの、あんた、だって、そんな素振りも見せなかったじゃないか。」
「んー、私嘘は吐けないけど顔には出ないから♪」と、満面の笑み。
披露宴のとき、後輩に向けた笑顔にときめきそうになったまま封印していた気持ちが溢れてくるようで、
何も言えずに彼女を抱き締めた。
ふと、彼女がしゃくりあげるのに気付いた。
身体を離し、指で彼女の涙を拭いながらわけを尋ねた。
「ん、こんな風に抱き締められたことなかったからびっくりしちゃった。でも嬉しくて嬉しくて……」
勿論、もう一度抱き締め直した。
--
思わず発作的に書いた。この男、結局自分の気持ちを彼女に伝えてない気がするのだが気にしない方向で。
男の一人称視点は難しいなぁ。やっぱり修行しないとダメだなぁ……
あーいかん、肝腎な言葉が抜けた。
長文失敬。スレ違い気味ご寛恕くだされ。
これで処女だったら満点(ヌ
>>499 >俺はSOLGの阻止に失敗
俺だったらその時点で彼女にFOX4
パパ戦略レーザー撃っちゃうぞー
ここはエースなコンバット分が豊富なインターネッツですね
素直クールの人は意外にゲームが下手だと思うんです
……あれ? 僕何か変なことを……?
素直クールな彼女とボンバーマンで対戦したい
絶対負ける
「兄さんはボンバーマンがうまいですね」
「まぁね。こないだも賭けボンバーマンやって、3000円ほどふんだくったぜ」
「私と勝負しませんか?」
「へぇ。 いいぜ。何賭ける?」
「今日の今から寝るまで、何でも言うことを聞く権利です」
「ほう、なんかえらくシビアな条件だけど、おまえホントにいいのか?」
「私はかまいませんよ」
「兄が獣になるかもよ」
「私に負けるのが怖いのですか?」
「良い度胸だ。やってやろうじゃん!」
「てめぇ、やるな! だが、これでどうだ!」
「兄さんもそこそこうまいですね。でも……」
「え、マジ! ちょっとまって、うわぁぁぁ」
「……これで私の勝ちですね」
「……どこで練習積んでた?」
「秘密です。さ、それより兄さん、賭けの精算をしてください」
「く……、何をすればいい?」
「そうですね、男性の体の構造を知りたいので、服を脱いでください」
「!? マジデスカ?」
「脱いでください」
「わかったよ、脱げばいいんだろ。脱げば!」
「……」
「そ、そんなにじろじろ見るな」
「意外と毛が濃いですね」
「言うな。恥ずかしいだろ……ちょっとまて触るな!」
「何でも言うことを聞く約束のはずです。じっとしてください」
「いや、だけど……痛たたた! そこは急所だ! 力入れて握るな!」
「じっとしてたら優しくします」
「……待て、そんな妙な触り方は……」
「兄さん、ひょっとして気持ちいいんですか?」
「……うるさい」
「正直に言わないと、もっとします」
「……」
「そうですか。じゃあ」
「……うわぁぁ、わかった、わかった、気持ちいいから!」
「正直に言わなかったので、最後までします」
「おい、待て。それは、……くぅ」
「!? ……これ、射精なんですね。……これが精液……」
「ちくしょう! うわぁぁん。 おれもう、お婿に行けない!」
「そうです。これで兄さんは私といつまでも兄妹でいられますよ」
「……はぁはぁ……なんだよ、それ」
「兄さん、次の勝負をしましょう」
「まだ、やる気かよ! おれはもう……」
「私は処女をかけます。兄さんは……童貞ですよね?」
「……うるせ、どうせ童貞……はぁ?」
「さ、では次の勝負スタート」
「待て! 服を着させろ!」
「必要ないです。どうせ脱ぎますから」
知能犯w
tdk
>>502 >でも嬉しくて嬉しくて……」
が好き
素直クールにしては感情表現に躊躇いがあるな。
まあ、結婚してDVにあって離婚したら、感情を表すのに少し臆病になるのかなと。
いつまでも天然ではいられんよな。
小ネタ思い浮かんだから保守代わりに投下
「ねぇ、この問題教えてくれないかしら?」
「? いいぞ」
「…とある男の子が、とある女の子とセックスをし、中に射精をしました。しかも5回も」
「…………」
「その一ヶ月後、女の子が妊娠した確率を求めよ」
「……何故、そんなに嬉しそうな顔をして話すのか理由を教えてくれないか…?」
>517
つ シュレーディンガーの猫
>518
妊娠している可能性としていない可能性は産婦人科に行き確認するまでは重なっているって?
>518
それは子宮の中に赤ん坊か死んだ精子がいるかということか?
>519-520
観測するまでは100%できているということで一つw
生理が重く、普段からピルを処方されているため妊娠している可能性は極めて低いが、
既成事実をgetせんが為、そんな事はおくびにも出さない。
こうですか?わ(ry
>>522 >生理が重く
ちょっと前のSS思い出した
wktkしながら待ってるんだがまだなのだろうか・・・
このスレは進んでるときと止まってるときの差が凄いな。
クールだからだろうね。素直に思いをぶつけられる相手を探しているところだ。
SS投下してみたいんだが良いかな?
素クールと言うよりクーデレ(普段はクールだけど時々感情を爆発させちゃう)みたいな感じになりそうなんだが……
許可なんか求める暇があったら練り上げて投下しろよ。
それと、一般論としてなんだが、
「下手ですみません」とか「投下してもいいかな?」
という発言は「そんなことないよ」とか「是非是非」とかの
慰めやマンセーを求めているように思われることが多いからやめた方がいいよ。
スレ違いだと思うなら自重すればいいのだよ。しかし、君の話を読んでみたいという
私のような者がいることを忘れないでくれると、私はとても幸せだな。
>529
あ、あなたは素敵なクールですな!
>>528 言ってることは正論だと思うが言い方というものがあるんじゃないか?
まあ共感できるものではあるが。
俺も同意見でどうせここは匿名巨大掲示板なんだからまず投下してみたほうがいいと思うよ。
誰も来ないね。
保守
うむ、なんだね。ついに君も私に求めるようになったのだね。
嫌という訳では無いよ、それは君の素直な欲求なのであって、それをぶつけられる私は、
君にとってそれを任せるに足ると思われているのだからね。
……焦らしてなどいないよ。ただそう、この空気すらも気持ちいいという感じがしてね。
だからその……あまり焦らせないで欲しいな。何分私も初めてなので、
失敗したくなくて……ってあっ!ちょっと待ってくれたまえ!そう、ゆっくりと、ゆっくりで頼むよ。
保守
ふん、やはりな。上がらせてもらうぞ。
なんと、着替えもせずに。忙しいとは言っていたが…。
どうせ風呂にも入ってないんだろうが、せめて靴下ぐらい脱げ、馬鹿者っ。
携帯は…、マナーモードか。起きないはずだ。
まったく、どうしてくれようか。
その寝顔で、すべてが許されると思ったら大間違いだっ。
…。
…かわいい…。
…。
はぁ、でも久しぶりだな。こういう顔を見るのも。
出かけるだけがデートではない、か…。
ならば…、
おい、もうちょっとそっちにいけ。
ああ、こら、背中を向けるな。それは許さん。
背が高いわけでもないのに、重いな。やはり男の子の身体だ。
これでいい、ふふっ。
あぁ、男のにおい…、いつもより…つよい…。これは、いいな。
よし、今度から会う前日に風呂に入るのを禁止にしよう。
ん?この硬いものは…、これが男子特有の朝の生理現象か。
ふふふ、よもや私が見逃すなどと思ってないだろうな。
こんなにして。
ああ、すごく、熱い。
んん………。
「……うぅ…う…うっ…」
はあぁぁ…。ふふ、感じているのか?ならばこのまま…。
…待て。
これは、生理現象だ。男子の朝のお決まりだ。そう言っていた。
私に欲情してるわけでは、ない…。
だ、だめだだめだ、そんなのは許さんっ。
おい、起きろ!
「………んん…」
おい!
「………く…ぅ…?」
目が覚めたか?
「…あ…え…お…はよ…?」
ああ、おはよう…、じゃないっ。
「な…してる…の…?」
私は怒っている!
「…え?…あ…いま……えっ、ええぇぇ11時!?ご、ごめんっ!」
そんなことはどうでもいいっ!なんだこれは?
私と一切何の関係もなく、こんなにしてんんん………。
「うわっ、ちょっ、く、くぅ、だめっ!」
はあぁぁぁ…、どうだ、私に欲情しているか?私では不足か?
「え?してるっ!してますっ!?」
そうか、話が早いな。寝起きがよくてよかった。
「何で脱ぐのっ」
愚問だ。
「え…お…いきなり、上!?」
いくぞ…。
うぅ…は、はあぁぁぁぁぁぁああああ……。
な、なんで、いつもより…お…大きい…。
「う、そ、そんなの、く、くぅが、したんじゃないかっ」
うっ…うっ…うっ…あっ…うっ…、あっ、そ…そんな…。
あっ、ま、待て…こ、こしを、おさえたら、う、うごけ、ないっ…。
「そう、だね…。僕が、下から突くしか、ないね」
な!?わ、わたしがっ…これじゃ…。
「どうしたの?てか、どうして、欲しいの?」
う…ば…ばか…な…なんで…逆…。
「言ってくれなきゃ、分からないよ?くぅ」
あぁぁ…っ…っぃ…ぁぁぁあああ…そ…そんな…ところ…。
「ここも、好きだよね。で、どう、するの?」
……っ……ついて……ついてっ!好きなように…ついてぇっ!!
「大好きだよ、くぅ…」
あっ…あっ…あっ…あっ…ああっ…ああぁぁぁ……。
………。
……。
…。
「くぅ?」
「なに?」
「遅刻、というか寝坊して、ごめんね」
「ん、許す。なぁ、男」
「なに?」
「今度会うときだが、その前日は風呂に入るな」
「?」
終
GJ!!
素直クールはこうでなくては
久しぶりにオーソドックスなモノを見た気がする。
539 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/13(金) 16:04:03 ID:oU3PXcmD
そう、ここは いまだに初期の頃の素直クールが生きている。
ここに来ると、安心する。
久しぶりに、いろいろ考えたんだけどさ、
くるっと回ってもとに戻っちゃったよ
>>460の続きである、後半部分を投下します。
色々と吟味して作り上げました。
では、失礼します。
孝太と悠里が恋人として付き合う様になってからも、
特に今までの生活に劇的な変化が現れたと言う訳ではなかった。
強いて言うならば喧嘩の回数は常に悠里が隣に居る事から
殆ど無くなったと言う所くらいである。
この日も悠里以外誰も居ない悠里の家で孝太は悠里を相手に日々の愚痴をぶつけていた。
「その……悪いな何時も……」
「何がだ?」
「恋人になると言ったのに、俺はお前に恋人らしい事など何もしてやれなくて……」
「私はそんな事気にしていない」
「けどよ……」
「それよりも私と付き合って、孝太が私を見てくれている、その方が私には嬉しい」
屈託無く笑う、悠里に孝太は頬を染め、思わず反射的に目を反らした。
改めて見て悠里は整っている部類に入る顔だと思う。腰まで長く伸ばされたサラサラの髪。
豊満な部類に入る胸。括れた腰。胸に見合う大きさの尻。
そして凛とした表情で引き締まった顔立ち。
全てに於いて完璧の部類に入っていると思う。
それに比べ、自分は並の下と言った程度の顔立ちに普段の苛立ちが顔に出ているせいか
醜悪な顔付きが染み付いたと言っても良い。
「俺と付き合っていて、お前は何も言われないのか?」
「どう言う事だ?」
「だから陰口とかさ……悪口とか……」
「孝太の心配には及ばない問題無しだ」
「そうか……」
まともに顔が見られない状態であったが、その時にも悠里は笑っており、
孝太に安らぎを与えていた。
普段、無愛想とは言わないが悠里は笑う事が余り無い為、
自分だけの為に笑ってくれている悠里に孝太は感謝の念で一杯であった。
「今日はもう帰る……」
「ああ、又、明日、学校でな」
その場に居るのが居た堪れなくなった孝太はその場から逃げる様に去って行った。
その際も悠里は孝太に対して笑顔で手を振って見送っていた。
この日も授業が終わり、孝太と一緒に帰ろうと悠里は孝太を探していたが、
孝太は既に教室に居なかった。校庭に出て孝太を探していた悠里は、
男子生徒と一緒に居る孝太を見付けると声を掛ける。
「孝太、帰ろう」
「済まないが今日はダメだ。ゴメンな」
孝太は隣で怯えた表情をしている男子生徒の肩に手を置き、
男子生徒の気を静め様としていた。
男子生徒は青白い顔にガリガリに痩せこけた体付き、
常に何かに怯えている表情からまともな状態であるとは言えない状態であった。
「彼は?」
「コイツはA組の柏原(かしわばら)だよ」
「友達か?」
「ああ」
「そうか、なら良い。又、今度な」
「ああ」
悠里が1人家に帰って行くのを見届けると、孝太は柏原を連れ、
人気の居ない所を見付け、腰を下ろし話し始める。
「今日はどうした?」
「又、殴られ……怒鳴られ……」
か細い声で柏原は震えながら話す。孝太は頭を抱いて、
柏原に安堵と言う物を与え様とする。
「大丈夫だよ。俺はA組の連中とは違うからさ」
「でも、安達君は強いし……最近では不良の人達も安達君、避けているし」
「身に振る火の粉を払っただけだ。まぁ払い過ぎるって事もあるけどな」
「何か、それ格好良いね」
ここで初めて柏原は軽く笑みを漏らす。
その様子を見て孝太は一気に畳み掛け様と話し出す。
「まぁ、苛められない為には誰かに助けを求めれば良いさ。
人間、すぐに変れられたら、誰も苦労しねーからよ」
「うん。でも……」
柏原は再び暗い表情に戻り、袖を幕って真新しい傷を孝太に見せた。
「何だよ、お前、その傷?」
「委員長が『苛められるのはお前に原因があるから、今から鍛えなおす!』
って言って空手部で扱かれて……」
「空手部って……お前の所の委員長って安井(やすい)か?」
柏原は震えながら小さく頷いた。
安井は2年生ながら、
空手部の主将を務める程の実力の持ち主で空手の実力だけなら高校生では
上位レベルに入る程である。
その反面、融通も利かず自分の信念に徹底して忠実の為、
今回の様な行き過ぎた指導も少なくなく、学校内でも賛否両論別れる存在である。
「大丈夫なのか、お前?」
「痛いよ……」
空手部の辛い扱きを思い出し、柏原は再び涙し始める。
それを見て孝太は慌てて、柏原の肩に手を置き、赤子をあやす様な調子で話し出す。
「心配ねーよ」
「でも……」
「誰もお前を否定なんてしねーよ」
「けど……」
「少なくとも俺はお前を卑下なんてしねー。お前はがんばっているよ。
只、不器用なだけだ」
「皆『がんばっているだけじゃダメだ!』って……」
様々な苦痛があり、
すっかり畏縮している柏原をどうにかして元気付け様と孝太は1つの決断をして話す。
「自分が出来る事だけを精一杯やればいいさ……」
「良いの?」
「ああ、人の意見ばかり気にしていたら、出来る事何てねーよ」
孝太の意見を聞き、柏原の顔にも赤みが戻り、僅かながらに笑顔と言う物が戻った。
自分で歩ける程度の気力を取り戻すと、
力無く手を振りながら柏原は孝太に別れを告げた。
「畜生……」
翌日、孝太は風邪を惹き、寝込んでいた。携帯の電源を切り、薬を飲み、
只管、眠って体力の回復を図り、現在は若干、
体に若干のダルさが残る程度にまで回復した。
(一旦、寝るか……)
薬による眠気も手伝い、孝太は眠る事を選び、
夢の世界に行くのに時間は必要無かった。
目が覚めると体のダルさは消え、
殆ど回復したと言っても良い状態にまで体調は戻っていた。
体を起こし、メールのチェックをすると思った通り、
悠里から何件かメールが入っていた。
その内容の1つ1つを見ても悠里が自分を心配してくれていると言うのが伝わり、
孝太は暖かな気持ちになっていた。だが次の瞬間、それは打ち破られた。
けたたましい電子音が携帯から響き、着信を知らせる。相手は柏原である。
時計を見ると、もう夜の10時だと言うのに電話をする事に違和感を感じた孝太は慌てて出る。
「どうした柏原?」
「安達……君……痛い……痛いよ……」
声が途切れ途切れで、掠れているのを聞き、
異常事態だという事がすぐに分かった孝太は慌てて家を飛び出し、柏原を探し出す。
孝太は汗だくになって、そこら中を掛け回った。
柏原が居そうな所を片っ端から探したが、何処にもそれらしい人影は無かった。
そして最後に立ち寄った場所は学校であり、閉じられている校門を攀じ登り、
柏原を探すと、倒れている。それらしい人影が目に入り、孝太は慌てて近付く。
「柏原!」
初めは暗くて分からなかったが、柏原は傷だらけであり、
内出血が多々あり、全てがボロボロにされていた状態であった。
「待っていろ! すぐに救急車を呼ぶからな!」
孝太は携帯を取り出し、119番すると、呼吸も途切れ途切れの柏原に話し掛け、
どうにか意識をこちらにいさせる事に徹底する。
「誰にやられた? 何で救急車じゃなく俺を先に呼んだ?」
「もう……」
その声は何時も通りの弱々しい物であったが、
何かを伝えたいと言う決意は十分に伝わり、孝太は柏原の決意を聞き届ける為、
柏原の言葉に耳を傾ける。
「分かるよね?」
「ああ。安井だろ?」
柏原は小さく頷き、再び話し出す。
「もう良いよ……だから……」
「その先は言うな!」
「終わらせ……て……よ……」
その言葉を最後に柏原の意識は途絶えた。
「柏原!」
どうにかして、孝太は柏原の意識を取り戻そうと叫び続けるが、
効果は全く無かった。柏原が意識を無くして、少ししてから救急車は到着し、
柏原を乗せ、動き出した。呆然としている孝太を無視して。
翌日、柏原の事故死は学校に伝えられ、緊急朝礼が開かれたが、
殆どの生徒が柏原の死に対して反応が無く、欠伸をしたり、
携帯を弄っていたりなどでまともに校長の話を聞いている者は殆ど居なかった。
その様子を悠里は何処か悲しげな目付きで見て、
そんな状態でも孝太の事が気掛かりで目で孝太を探したが、
何処にも孝太は居なかった。担任に孝太の事を聞くと、
欠席であると伝えられ、悠里は寂しげな表情を浮かべた。
学校が終わると悠里はすぐに孝太のアパートに出向いたが、
母親の話によると孝太は昨日から帰っていないと言う、
途端に言い様のない不安が悠里を襲う。その時であった。
悠里の携帯にメールが届く、相手は孝太であった。
件名 悪い……
『分かっているよな。少ししなくてはいけない事があるから、暫く会えそうに無い』
孝太のメールを見て、悠里はすぐに返信をする。
件名 分かった
『全て終わったら、私は孝太に会いたい。色々と話したい事があるから』
メールを送ると、悠里は孝太の母に一礼し、その場を去り、
家へと帰った。孝太が帰ってくる日を待って。
それから数日過ぎると、学校は怒涛の変化を起こす。
まず安井が傷害致死により逮捕された。話によると鍛え直す為、
一方的といっても良い指導を柏原に与え、歯止めが効かなくなり、
今回の事態となったと言う。学校は一気にどよめき、
それまで安井を支持していた人達は掌を返した様に冷たくなり、
顔も知らない柏原に対して同情の声も上がった。
だが安井の行動は正しいと支持する生徒も少なくはなく、
学校内で派閥が真っ二つに分かれ、学校は混沌とした状態になっており、
表面上は穏やかに見えても中はドロドロの酷い状態となっていた。
そんな中に孝太は何食わぬ顔で登校し、何時もの様に授業を受け、
放課後になると悠里の前に立った。
「珍しいな。孝太の方から来るなんて」
「話す事がある」
「私もだ」
「行こうぜ」
自分の友達が死んだにも関わらず、孝太は不気味なくらい冷静であり、
2人はゆったりとした足取りで屋上へと向かった。
「まず今まで何をしていたのかだけ、聞かせてくれないか?」
「病院で柏原の死をハッキリと肉眼で確認した」
孝太は目に光の無い状態で、楽しげに遊ぶ生徒を見ながら、
淡々とした口調で答える。話している最中も悠里と目を合わせ様とはしなかった。
「辛くなかったのか?」
「凄かったよ。顔が何倍にも腫れ上がってよ」
「安井は空手の有段者だからな。
そんな彼が本気で一方的に鍛えていない人間を殴り続ければ……」
普段から冷静な悠里でも、この状況にはうろたえるしかなかった。
滅多に見られない状況にも孝太は顔色を変える事無く、話を続ける。
「その後は葬式に出た」
「そうか……死者を弔うのは立派な事だよ」
「そこでも酷かったよ」
「何がだ?」
「家族の対応だよ」
ここで孝太の声色が変り始め、怒気が含まれた声で少しづつ話し始める。
「俺は家族の本音が知りたいと思い、悪いとは思ったが家族だけになった時、
コッソリと聞き耳を立てさせてもらった」
「人間、弱っている時には本音が出る物だからな」
「何を言っていたと思う?」
「私なら現実を受け止められず、呆然としているだろう」
「その方が100倍マシだったよ。
家族なのに言っている事と言ったら最低な内容だったぞ!」
孝太は握り拳を振るわせ、体全体をワナワナと振るわせながら話し出す。
「やの『死んでせーせーしただの』やの『もう肩身が狭い思いしないですむだの』
これが家族の言う事なのか?」
「とてもではないが、16年近く、寝食を共にした人間に対して言うべきセリフではないな……」
「悠里は付き合いが無いから分からないかもしれないけどよ。
決して柏原は堕落した人間ではないぞ。あれはあれでがんばってたんだぞ」
「それは……」
悠里が言葉に詰まっていると、感極まった孝太は震わせながら涙を流し始めていた。
「何なんだよ一体? 久し振りに学校来てみたら。
故人を悲しむ奴なんて1人も居ないぞ!」
「皆の事を悪く言わないで欲しい。皆、自分の事だけで精一杯だから」
「人が殺されたんだぞ! 人が!」
話して行く内に興奮して行った孝太は悠里の方を振り返り、
涙でクシャクシャになった顔で悠里の肩を掴み、振るえながら話す。
「人が死んだにも関わらず、何故、殆どの人間がその死を喜べんだ?
柏原は犯罪をした訳じゃねーだろ!」
「君は……」
「俺だって誉められた人間じゃねーよ。それは分かっているよ。
けどな、どんなに不良を殴っても殺すまではしねーぞ。
所詮は素手での殴り合いだからな。だが、安井の奴は!」
「もう止そう」
静かに一言言うと、悠里は孝太を優しく抱き締め、その頭を穏やかに撫で上げる。
「何の真似だ?」
「君は私と付き合ってから、その問題とされている喧嘩も無くなっている。
もう終わらせ様」
「人がな……人が……」
「思い出にしよう」
意味深な悠里の言葉に孝太は泣く事も忘れ、悠里の言葉を待つ。
「柏原君の事は辛い真実だ。だが、もう終わった事だ。辛いだけの記憶ではなく、
今後の教訓と言う思い出にしよう、それが1番だ」
「終わってなんて……」
「安井は捕まった。人を殺した以上、社会的な制裁を下される事は明らかだ。
出たとしてもそう言う経歴があると言う事でアウトだろう」
「だが、死んだ柏原は……」
「その経験から逃げない事は本当に素晴らしい事だ。
私は孝太のそう言う所が好きだ」
悠里の口から言われた好きと言う言葉に興奮していた孝太も冷静さを取り戻し、
悠里の話を聞く。
「孝太も見た通り、殆どの人は忘れる、
或いは見ない事で今回の件を乗り越え様としている。
しかし孝太は逃げないで真っ直ぐと立ち向かっている。
そう言う人間は普通の人間よりも強くなれるものさ」
「俺は……」
「それにこの所の孝太は良い顔をしている。
只、自棄になって喧嘩に明け暮れていた日々とは大違いだ」
急に自分の事に話を振られ、孝太は頬を赤らめ、俯く。
「孝太は決して逃げなかった。私と付き合うのだって、
断る事だって出来た筈だ。しかし孝太は今、私と関わっている。
それは孝太自身変わりたいと思っていたからだろ?」
「そうなのか?」
「ああ。行き過ぎた所もあるが、孝太の喧嘩が自衛と言うのは本当さ、
それが証拠にこの所は喧嘩を全くしていない」
「相手が因縁吹っ掛けてこねーからだよ」
「それで良いのさ。あのまま暴走していたら君が安井の様になっていたかもしれないからな。
私はそんなのゴメンだ」
「悠里……」
ここで初めて孝太の方から悠里を抱き締め返し、2人の間に暖かい何かが芽生える。
「君の事は私が守る。だから孝太は孝太が壊れない様に自分を守ってくれ。
私が私である為にな」
「悠里……」
「孝太……」
2人の気持ちが通じ合った瞬間、2人はほぼ同時に唇を近付けあい、
口付けを交わした。
この瞬間に孝太の中で何かが芽生えたのを孝太自身も感じていた。
「悠里……俺……」
「大丈夫さ、孝太。君には私が付いている」
悠里はそのまま、孝太を抱き締め、暖かな何かを孝太に与え、
孝太はその何かに身を委ね穏やかな気持ちになっていた。
その時であった悠里が耳元で何かを呟く。
「続きは私の家でな」
その言葉が何を意味しているのか、孝太にはすぐ理解が出来、
孝太は一言では言い表せない複雑な心境になっていた。
すぐ隣の部屋からシャワー音が響き、既にシャワーを終え、
サッパリとした孝太は腰にタオルを巻いた状態で悠里を待った。
これからする事が分かっているとは言え孝太の頭はパニック状態であり、
どう言う風に責めれば良いのか? 避妊具は何時、付ければ良いのか?
自分とこうなる事を本当に悠里は望んでいるのか?
と自問自答だけを繰り返していた。そんな時であった。
体全体にバスタオルを巻き付け悠里は孝太が座っているベッドの隣に腰掛ける。
シャンプーと石鹸の良い臭いが孝太の鼻を擽った。
「待たせて。済まないな」
「いや……別に」
「では始めるか」
「あ、ああ……」
悠里に促され、孝太は悠里のバスタオルを取ってから、
自分のタオルを取って悠里を押し倒した。
体が露になったがまともに見る事が出来ず、
奪う様に悠里の唇に自分の唇を押し当て、そのまま強引に舌を挿入して行く、
孝太の舌が悠里の口内に入って行くと、
悠里も返す様に自身の舌を孝太の口内へと押し込んで行き、
唾液を交換する行為をする。舌のヌメっとした感覚が孝太の下腹部に刺激を与え、
その先を望んでいた。やがて呼吸も苦しくなった頃、
漸く悠里は孝太のキスから解放され、酸素を自分の体に送り込む。
「私は構わないから、進めてくれ」
「行くぞ……」
孝太は顔を真っ赤にさせながら、体を下へと持って行き、
目の前にある悠里の胸に手を伸ばし、そのまま壊れ物を扱う様に揉んで行く。
「む……ふぅ……」
吐息と表情から快楽を感じている事が分かった。
孝太は変化を始めている桃色の突起に手を伸ばし、指で摘んで反応を確かめる。
「ん! そこは……」
普段なら、殆ど聞かない切羽詰った声に驚きを感じるが自分の手で快楽を与えている事が嬉しく、
調子に乗った孝太は隆起しているそれを舌先で弄んだ後、口に含んで、
そのまま音を立て吸い上げる。
「くぅ! こうた……」
悠里は快楽に身を委ねながらも、孝太に安堵感を与え様と手を孝太の頭に伸ばし、
抱き締め頭を撫でて行った。その行為に対して孝太は余り良い感情を持たず、
一旦、悠里の胸から口を離し、それを伝える。
「俺はガキじゃねーよ」
「す、済まない。こう言うのは嫌いか?」
素直に言う悠里に対して、孝太は反射的に顔を赤らめ、
自分も正直に今の気持ちを話す。
「嫌いじゃねーけど。今は止めてくれ」
「そうか……それより……」
悠里が頬を赤らめると、孝太は自分の太腿に熱い何かが伝わるのを感じた。
それは悠里の恥部から出されている愛液であった。
悠里が自分で孝太の太腿にそれを押し当て、
精一杯のメッセージを送っていたのである。
「悪い」
短く言うと、孝太は悠里の恥部に顔を埋め、舌を伸ばし、
思いつく限りの部分を舌で責めて行った。
「いぅ! 孝太の舌が……」
悠里は力の限り、目を閉じ、孝太が与えてくれる快楽に身を任せていた。
孝太の方も口一杯に広がる悠里の味に興奮し、
自分の物を制御出来ない状態に陥っていた。もう制御が不可能だと判断した時、
近くに置いてあった避妊具に手を伸ばし、付け出す。
「はぁ……もう、行くのか?」
「多分、痛いと思うけど、俺にはどうする事も出来ないから勘弁してくれよ」
「ハハ。私は痛いのは苦手だし、嫌いだ。やるのならスッパリと頼むぞ」
「ああ」
ぶっきらぼうな会話であったが、これから2人の絆の深さと言う物が良く分かった。
孝太は避妊具を装着し終えると、悠里の恥部に宛がい、
そのまま強引に押し込んで行く。
「く……」
「ああ……」
悠里は初めて自分の体に男が入って来る感覚に戸惑い、
同時に襲って来る激痛に必死で耐えた。
孝太の方も慣れない事なので若干の痛みはあったが、
悠里とは比べ物にならない物だと瞬時に判断し、そのまま押し込んで行き、
全てを受け入れると悠里に話し出す。
「痛いか? って当たり前か」
「済まないが1つだけ我侭を聞いてくれないか?」
「何だよ?」
「多分、孝太は長い間、私と繋がっていたいだろうが、
私の方は無理だ。出来る限り早く終わらせてくれないか?
とてもではないが漫画の様には行かない。許してくれ」
悠里は両目に涙を溜め込みながら、孝太に懇願をする。
普段の悠里を考えると、相当な物だと言う事が孝太にも伝わり、
孝太は小さく首を縦に振る。
「分かった」
そう言うと孝太は多少、乱暴な位に腰を動かし、
只管、自身の快楽のみを求め動く。その度に悠里は顔を顰め、
痛みに耐えていたが、孝太にはどうする事も出来なかった。
「ゴメンな……けど、もうそろそろだから……」
その言葉の直後に孝太は爆発をし、慌てて自身を悠里から引き抜いた。
抜いた瞬間。物で蓋になっていたのか、悠里の恥部からは血が流れ出し、
孝太に罪悪感と言う物を与えた。
精液で一杯になった避妊具を捨てると荒い呼吸で息を整えている悠里に
慌てて話し出す。
「大丈夫……な訳ねーか」
「そうだな。済まない」
「俺の方こそ悪い」
「そう思うなら、頼む」
「え?」
言葉の意味が分からず。孝太は素っ頓狂な声を上げたが、
唇を突き出している悠里を見て、その意味は分かり、
悠里の唇に触れるだけのキスをし、数秒のキスの後、
離れると悠里は孝太に対し微笑んだ。
「これからもずっと一緒だからな」
「お前なら良いよ。俺の方からお願いしたいくらいだ」
2人は固い約束を結ぶと、再び口付けを交わし、
かけがえのない絆を2人は手に入れた。
それから数日が過ぎ、学校は元の平穏な状態を取り戻し、
孝太も日常を取り戻した。相変わらず孝太は悠里以外に親交は無く、
クラス内でも浮いた存在であったが、孝太にとっては全く苦痛ではなかった。
昼休み、孝太は屋上へと上がり、到着すると既に悠里はそこに居ており、
孝太に対して笑顔で弁当を差し出す。
「今日の分だ」
「うん。ありがと」
「一緒に食べような」
2人は誰も居ない屋上で2人だけの穏やかな時間を過ごしていた。
もう、孝太に嘗ての苛立ちは無かった。悠里が傍に居て自分を見てくれている。
この事実が消えない限り、
2人は何時までも幸せだろうと孝太は思って悠里との幸せな時間を過ごしていた。
以上です。失礼します。
552 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/14(土) 10:58:28 ID:L9C86f5l
GJ!よかったよ!
お久しぶりです279です。
例の奴の続きを仕上げました。楽しんでいただけたら幸いです。
でわでわどうぞ
あの嵐の日から1週間経った。彼女はいまだに彼の前に姿を見せていない。
最初のうちはまた何かの作戦か?と勘繰ったりしたが、どうやらそうではないらしい。これまでだって3日と顔を合わせずに過ごした事は無かったのだ。
「おい浩輔、何してんだ?」
高校からの友達が近寄ってきた。
―何って講義受けてるんだけど。
「その講義とやらは5分ほど前に終わった奴か?」
―あ。
「ハァ……浩輔、お前なぁ、最近間抜けにもほどがあるぞ。1時限ずれた講義受けて出席点逃したり、カレーにソースかけて食ってたり。」
―カレーにソースかけて食べるのは普通だろ。
「ウスターソースならな。……タルタルソースかけてたろ、お前。」
―そういえばそんなこともあったような。あれはあれでおいしかったけどな。
「そういう問題じゃなくて。お前何があったんだ、おかしいぞ。」
―特別何も無いよ。
「……何も無いってんなら別に構わないけどな、ああクソ、もう次の講義始まっちまうじゃないか、じゃあな。」
彼は腕時計をちらりと見ると、あわてて次の教室へと駆け出していった。
……家に帰るか。
彼女が消えたこの1週間は張りが無いの一言に尽きる日々だった。
気の休まる日々と言えば聞こえは良いが、実際は彼女がいないことによりだらけきった生活を送っていた。
居間や台所にはゴミが散乱し、彼女が来ていた頃を考えると信じられない惨状だった。居間の背の低いテーブルにはゴミがうずたかく積まれている。
3日前のおにぎりの袋と5日前の幕の内弁当の箱をフローリングに叩き落しながら、今日のサンドイッチと紙パックのジュースを置きソファーへ体を預けた。
そのままリモコンを手にとって、テレビとエアコンのスイッチを入れる。
―……だりぃ。
ボリュームを絞ったテレビの笑い声を子守唄にうとうとしていると、来客を知らせるチャイムが鳴り響いた。
舌打ちをしながらドアホン越しに相手を確認すると、近所に住む口うるさいおばさんだ。居留守を使って後でいろいろ言われるのも面倒だ。仕方なく玄関へ向かう。
「あら、寝てたの?」
―いえ。(その通りだよクソババア。)
「ホントごめんねぇ、回覧板で来たのよ。ハイこれ。」
―あ、どうも。(それくらいポストに突っ込んどけよ。)
「一応住人同士顔合わせておかないとねぇ。」
―そうですね。(こちとらてめえの〈自主規制〉な顔なんざ見たかねえんだよ。)
と、急に辺りをうかがうようにして少し小さな声になって話し始めた。
「ところでさ、知ってる?」
―なにをですか?(お前が今俺の怒りを買ってるのはよく分かるんだけどな)。
「隣のお宅の娘さん、結婚するらしいわよ。」
―……は。
「いやね、聞いた話なんだけど、もう結納も間近らしいわよ。」
「本人はあまり乗り気じゃなかったらしいんだけど、ホラこの間の台風が来た日があったでしょ、あの日に相手の人と会って決めたらしいわよ。」
「あの子まだ若いでしょ?でもあのお宅の旦那さん、心臓悪くしたらしくて跡継ぎ問題が出てきたそうなの。」
「ああこうやって話し込んでいる暇なんて無かったんだ。もうそろそろ夕飯の準備しないとねぇ。それじゃ、ちゃんと読んでから次の人に回すんだよ。」
去っていくおばさんの背をぼんやりと見ながら頭の中はフル回転していた。
確かにあの夜以来俺の前に彼女は姿を見せていない。約束やけじめについては異常なほど真面目な彼女のことだ、結婚話もあながち嘘と言い切れない。
彼は暫くの間、その場に立ちすくむ事しかできなかった。
ポテトフライを揚げる大きなフライヤーの前でじっと揚がるのを待っていた。
本来、揚がるまでの間は何か他の雑務をしたほうが効率が良いし、実際マニュアルでもそのように指示されていたが、彼女のことを考えていた。
「おい浩輔!」
―うわわわわ、な、なな、なんですか店長!?
「やっぱりな。お前心を地球の裏側に置いたまま仕事できると思ってるのか?」
―どういう意味ですか?
「心ここにあらず。」
―ああなるほど。
「いやなるほどじゃなくてな、ちゃんと仕事しろ。お前最近おかしいぞ?」
―この間学校の友達にも同じ事言われました。
ニヤリと顔を歪ませて、一番聞かれたくないことを聞いてくる。
「恋患いか?」
―冗談で……熱っ!
思いっきり使用中のフライヤーの縁に右手を置いてしまった。見ると指の付け根のところが赤くなっている。火傷してしまったようだ。その部分を口へ持っていき吸い、舐める。
「バカかお前は。……でどうなんだ?その後彼女と何か進展はあったのか?」
―何もありませんよ。あるわけ無いでしょう?
「あの日は彼女、相当参ってたみたいじゃないか。あそこで押し込まずにどうする。」
―相手は病人ですよ!?
「その相手はお前にぞっこんなんだ、多少の無茶は通るだろう。」
―いくら相手がこっちに傾いてても、こっちにその気が無きゃそんなこと起こりませんよ。
「無茶は若いうちにしか出来ないぞ。」
―しなくても構いません。
「ちっ。」
―なんですか今の舌打ち。
「いやな、いつも周りのことしか考えてないお前が自分勝手に動いたらどうなるか見ものだと思ったんだよ。」
―心配しなくてもそんなこと永遠にありませんから大丈夫ですよ。
「分からないぞ、無茶ってのは急にしたくなるもんだ。こと恋愛に関してはその愛が深ければ深いほど、唐突に行動として現れるもんさ。」
―……そんなもんなんですか。
じゃあこの間、彼女に触れたくなったのは……
「何考えてるが知らないがな、ポテトがこげるぞ。」
―うわっ。
慌てて四角いざるを引き上げる。中には真っ黒になったポテトが入っていた。
「減給、だな。」
バイトからの帰り道、自転車にまたがったまま店長の言葉を思い出していた。
〈無茶は若いうちにしか出来ないぞ〉
確かに一つの事実なのだろう。何しろ豪放磊落という言葉がよく似合う人だ。彼自身、若いときには相当な無茶をしてきたのかもしれない。
だが俺は店長とは違うタイプの人間だ。俺は後先考えないような馬鹿な行動はしたくない。
後先を考えない、と言えば最近の彼女の行動もそうだ。裸で擦り寄ってきたりいきなり唇を奪ってきたり、年頃の女性のやることとは思えないぞ、全く。
〈無茶ってのは急にしたくなるものだからな。こと恋愛に関しては。〉
……彼女のあの奇行も、急にしたくなったものなのだろうか。
彼女は俺に関わる事はかなり無茶苦茶な事をしているが、それ以外の部分ではかなりの真人間だ。それが周囲の目もはばからないような行動に出てくる。
それについてはあの夜の俺だって人のことは言えない。そう自嘲して目に付いたコンビニへ立ち寄る。
コンビニで夜食を買ってから家に着くと、カーテン越しに居間の明かりが漏れている。慌てて玄関へ飛び込み、靴を脱ぐのももどかしく居間へ飛び込む。
『やあ、久しぶりだな。』
そこにはいつものように凛とした彼女がいた。もう逢えないのではないかと思っていたのにそこにいた。言葉を失って突っ立っていると、彼女のほうも何か様子がおかしいことに気が付いたらしい。
『どうした浩輔、何か悪いものでも食べたのか?確かにあの部屋の状況では何か腐っていたものを食べていても不思議ではないな、うん。』
どうやら掃除をしてくれたらしい。テーブルの上の小山は平地に戻っており、床の上を飾っていたオブジェ群はその姿を消していた。
『……君に「なに勝手に入ってるんだ!」とか「今すぐ出て行け!」とか言われるのが快感だったのだが、無言で怒っている君もまた良いものだな。』
―なんで……
『ん?』
―なんで来たんですか?
精一杯冷たい声で、精一杯きつく睨みつけて言ってやった。
婚約者がいるくせによく他の男のところに来れたもんだ。
『何故って……君に逢いたかったからに決まってるじゃないか。あ、そうだ、君に話したい事があって……』
―知ってます。だから聞いてるんです。何故来たんですか?
ここで初めて彼女に困惑の表情が見て取れた。何故彼が怒っているのか全く分からないような表情だ。
―ふざけるな。
『ふざけるなと言われても今のところ少しもふざけたところは無いと思うが。』
―どこがだ!
彼女の言葉についにブチ切れた。
―あなたの話は聞いてます。婚約したんですって?おめでとうございます。心から祝福させてもらいますよ。
―でもね、お相手がいる人間がほいほいと他の男のところに来るって言うのはどうなんですか?ちょっと軽率ですよね?
『すまない、何の話をしてるのか分からないのだが。』
―とぼけないでください!そもそもこっちはどれだけ心配したと思ってるんですか!毎日のように来てた人が急に姿を見せなくなったんですよ。何事かと思うでしょう!?
―そうしたら今度結婚するってことは、僕の側から離れるってことですよね。僕に一言も無くそんなこと許しませんよ?
―あなたは僕の側にいるのが普通だと思ってたんですよ!それが本人の口からじゃなく近所の人から聞かされたんですよ!内心穏やかなはず無いでしょう!
―何の話か分からない?ふざけるな!きっちり説明してもらおうじゃないか!
勢いに任せて思いついたことをすべてぶちまけてやった。ハッハッハ、ざまあみやがれ。とんでもない事まで言ったような気がするが、気にするものか。
『………………』
―どうしたんですか、何か言いたい事は無いんですか。
つつっ。
彼女の頬を涙がすべり落ちた。
まずい、言い過ぎたか。
『言いたい、事か。』
―あの、言い過ぎましたっ。ごめんな……
『3つ、言いたい事がある。』
『1つ、昨日まで海外旅行に行っていたんだ。連絡も無かったのは謝る。すまなかった。』
『2つ目は君がどこから聞いたのか分からないが、私に縁談の話なんか持ち上がった事は無い。全くの勘違いだ。』
―か、勘違い?
『そうだ。』
じゃ、じゃあナニか、一人で悩んで一人で突っ走って一人で……
『君の自爆と言えるな。』
……うわぁ……相当恥ずかしいぞ、これ……。
―……すみませんごめんなさい、今の発言は取り消します。
『ダメだ、取り消させない。』
―なっ……
『まだ!まだ3つ目を言っていなかったな。……3つ目は、そんなに心配しなくても私は君の隣にいるつもりだ。君が嫌がろうがずっといさせてもらう。』
言うと彼女が胸に飛び込んで来た。思わず受け止める形になる。
『浩輔、お願いがある。もう一度だけで良いから、さっきの言葉を言ってくれ。』
こうなったらもう腹をくくるしかない。特別大サービスだ。
―分かりました。一度しか言わないですよ。……好きです。
彼女の頬が一目で分かるほど赤く上気し、目は大きく見開かれた。餌を欲しがる鯉のように口をパクパクさせる。
『さ、さっきはそんなこと一言も言わなかったじゃないか!』
―気に入らないなら取り消しましょうか?
『……いい。うれしいから。』
そのまま胸に顔をうずめてくる。
自分に素直になる事、それが、こんなに快い結果になるとは思わなかった。
しばらく経って、彼女がこちらを見上げながら聞いてきた。鼻と鼻とが触れ合うような超至近距離だ。
『この後、どうする?』
―どうするって……どうしたいですか?
『以前から言っているように、私は君の子供が欲しい。』
―……どういうことするか分かって言ってるんですか?
『うん、勉強なら君の部屋のベッドの下に隠してあった雑誌を参考にしたから完璧だ。』
―何が完璧なんですか……。
『君の嗜好に合わせたプレむぐっ、何するんだ。』
小鳥がついばむような軽いキスを浴びせて言葉を遮った。
―キスですよ、知らないんですか?
『知っている。そういうことじゃなくて、何故人が真剣に話しているときに口をふさぐンンッ』
今度は少し大胆に、唇同士を合わせてから彼女の合わせ目を舌でなぞる。そうすると彼女の舌も彼の舌に挨拶をしようと外へと出てきた。
彼らの舌と舌とが絡み合い、唾液が頬を伝う。彼はその唾液の一滴でさえ惜しむように、わざと大きく音を立てて啜り上げる。
『んくっ……ぷはっ……ひ、卑怯だ。今まで、いくらこっちから誘ってもこんなことしてくれなかったくせに。』
―今日は自分の欲望に正直になろうと腹をくくったんですよ。
そう言いながら、彼は彼女の顎に垂れた涎を指ですくい上げながら、首筋にキスの雨を降らせる。彼女の息が荒くなる。
ふと視線を上げると、少し不満そうな目をしていた。
―何か問題でもありますか?
『二つある。』
―なんでしょう?
『一つは少しムードが足りないな。私は初めてするんだぞ。』
味気の無い居間のフローリングの上でつながるよりも、ベッドルームに行きたいという気持ちは女性でなくても分かる。だが……
―聞こえないですね。
彼女の懇願を歯牙にもかけずに愛撫を続ける。首筋から胸へ、だんだんと手のひらが滑るように下りていく。
『あっ……』
数度服の上から膨らみを撫でさすった後いきなりTシャツをめくり、さらにその下の下着の中に手を伸ばす。
熱を持ったマシュマロと、その余熱を持った布地との間に少し無理やりに手のひらまで押し込む。
そのまま指先を支点にして手の甲でブラジャーを押し上げる。
露になった胸の先端を優しく舌で舐めあげると彼女の膝が崩れた。慌てて抱きとめる。
冷たいフローリングに彼女の体を横たえ、胸の先端への愛撫を続行する。
『非道い……人だな、君は……激し……過ぎって……息っ……出来っ……』
そんな息も絶え絶えの彼女の声が彼の理性をさらに吹き飛ばす。
向かって右の乳房には顔を寄せ、左の乳房には指を持っていって乳首を捏ねる。空いた右手はへその当たりを撫でながらジーンズの内側へ手を伸ばしていく。
攻める彼の側は無言を貫いており、少し広めの居間の中には彼女の吐息と嬌声だけが響いている。
『何か、恥ずかっ……しいな。』
胸への愛撫を中止して彼女のほうへ顔を向ける。
―何がですか?
『さっき言った二つ目だ。私ばっかりよくなっても君に悪い。』
―僕にとってはあなたが乱れてるだけで十分です。
『乱れてって……あぁっ!』
無言で乳首を捻り上げると全身が弓なりに反り返った。その隙にジーンズとショーツのわずかな隙間に手を捩じ込む。指先を締め付ける力は先ほどのブラジャーの比ではない。
指先の自由が奪われ難儀していると、彼女の右手がするすると下りてきて前面のボタンを外した。
―やっぱり自分ばっかりよくなりたいんじゃないですか。
『違う!……あの、その……君が困っていたようだったから……』
―それじゃ違うことにしておきましょうか。とりあえず、ありがとうございます。
微笑みながら顔をずらし、彼女とキスをする。と、同時にショーツの奥深くに指をうずめ、谷間を少しえぐるように撫でる。谷間は既にどろりとした液体に満ちていた。
―すごい、ですね。これならすぐにでも目的達成できそうですよ。
『え……?』
―もしかして、まだして欲しいとか?……黙ってちゃ分からないですよ?
『……やっぱり卑怯だ。』
―で、してほしいんですか?
『馬鹿。』
その言葉をきっかけに、今まで受身だった彼女が今度は自分から求めてきた。覆いかぶさっていた彼の唇を更に求めるように背中に腕を回し、引き寄せる。
―重くないですか?
『大、丈夫だ。』
言葉とは裏腹に、押しつぶされた声で答える。彼は腕を突っ張って彼女の体から離れようとしたが、彼女は頑なに回した腕を離さない。
『君から離れるのには許可が要るのだろう?』
いたずらっぽく笑って体の上下を入れ替えた。今度は彼女のほうが上になり、彼の股の上に座るような形になる。
―えっと、これじゃ身動き取れないんですが?
『いいんだ。今度は君が気持ちよくなる番なのだから。』
下から彼女を愛撫しようとする腕を膝で押さえつけながら言うと、先ほど彼が彼女にしたように胸を愛撫し始めた。舌を使って右回り、左回り。丹念に舐めあげていく。
『はぁ……私の下で君のペニスが大きくなってくるのが分かる。もっと、よくなってくれ。』
居間には先ほどまでとは違い、二人分の呼吸で満ちていた。秋の冷えた空気が床を這うように広がってくる。しかし彼らの空間はそれを退けるかのように熱く、激しい。
なんとか膝からの支配を脱した彼の右腕が彼女の膨らみを捉えようと伸びるが、それは彼女の左手に絡めとられた。向かい合わせの手のひらと指が組み合わせるように一つになった。
『ん?どうした、どこか悪いのか?……火傷か。』
わずかにしかめた顔を読み取り、手を開いて手のひらをしげしげと眺めた。その後傷口を口元に寄せて、まるで犬がする様に、しかし官能的に癒した。
ちゅく……ちゅぷっ……
口の中を指が出入りするたび、二人の吐息という主旋律に絶妙なスパイスを効かせるパーカッションの役目を果たす。
―よい、しょっと。
片腕がある程度自由になった事で力技で彼女をどかす事ができるようになった彼は、二度目の体勢入れ替えを行う。
―そろそろ……
『いいぞ、来てくれ。』
彼女は下半身を少し浮かせ、ジーンズとショーツを下ろすように促す。彼は彼女に従った。
シンプルなデザインのショーツに手をかけ一気に引き摺り下ろすと、キラキラと光る粘液が糸を引いた。
―すごい、濡れてる。
『君が相手なんだから当然だ。』
彼はそんな根拠の無い言葉を聞き流しながら、初めて訪れる秘境をじいっと眺めていた。
柔らかな肉で出来た二枚貝はうっすらと開いており、そこからは官能的で蟲惑的な、香りと液体が溢れ出ていた。
『今度は私の番だ。君を見たい。』
先ほどから分厚いデニムの生地を力一杯押し上げているそれを開放してやると、生命の力が漲った肉塊が大きく跳ねた。
『な……これが入るのか?』
―入りますよ。
笑顔を見せて彼女を安心させる。
―相手が僕なんですから当然でしょ?
『その根拠の無い自信は何なんだ。』
―……その言葉、そっくりそのままお返ししますよ。
―さて、と。
彼はヒップポケットに突っ込んだ財布をゴソゴソやって、アルミホイルのようなものに包まれた何かを取り出した。それを破り、中身を取り出す。
あからさまに嫌な顔をした彼女が質問をぶつける。
『それを何に使うつもりなんだ?』
―何って……これからすることには必須でしょう?
『私は構わないと言っているだろうに。』
―僕が構うんですよ。もしデキてしまったらあなたと、あなたの子供を……
『私と浩輔、“君の”子供だ。それ以外の可能性は絶対に無い。』
―……その子を養う事は今の俺には出来ません。だから必要なんです。
二人の間に沈黙が流れる。
『……じゃあ、いつか私と君との間で子供を作っても構わない、という事だな?』
―なんでそこに発想が行くんですか!本当にもう……
『それなら待つよ、君の準備が出来るまで。それまでは我慢する。約束する。だから今は……』
急に口ごもった彼女に彼は先を促す。
『……今は続きをしよう。もしここで止められたら体がうずいたままで壊れてしまいそうだ。』
ゴムをつけて、入り口に彼自身を押し当てる。
『いつでもいいぞ。』
―じゃあ、いきます。
一気に腰を押し進めるが、途中で何かに引っかかったような気がして彼は動きを止めた。
『どう、した?何か問題があっ……たのか?』
初めて自身の体内に侵入されたことによってかなりの痛みがあるだろうに、それを気取られまいと必死に耐えていた。
―何も、無いですよ。
引っかかった壁を破るように前進を続けると、ブツッと体の芯に響くような音がした。それと同時に、それまで動きを止め、痛みに耐えていた彼女が初めて大きく跳ねた。
『っは、はぁっ……はっ……くうぅあぁ!』
眉根に深い皺を刻み、奥歯を噛み締め、手を真っ白になるほど握り締めているが、それでも止めてほしいという言葉を口にしない。
一方彼は初めて訪れた女性の奥底に興奮していた。侵入者を締め出す力と追い返すまいとくわえ込む力。二つの拮抗した力が快感となって彼自身に襲い掛かってくる。
女は痛みに、男は快感に耐え、二人はついに完全に繋がった。
『こ……すけ、全部入……のか?なあ浩輔っ!』
―入っ……てます。……やっぱり、痛いんですよね?
『君が気にするひっ……つようは無い。』
腹の底から絞り出すような声で何とか質問に答えていく。
―そんな声出して気にするなって言うほうが無理ですよ。慣れるまで待ちます。
そう言いながら彼女の右手を両手でしっかりと包み込む。そして彼女から視線は外さない。いや正確には破瓜の痛みに苦しむ彼女から目が離せなかった。
『いい、から、早く動いてくれっ!壊れそうだ、私が私でなくなりそうなんだ!なあ頼むよ浩輔、動いてくれ、動いてくれよっ!』
―落ち着いて。……いきますよ。
床と背中の間に腕を回してしっかりと抱きしめる。そして少しづつ、だんだんと大きく腰をグラインドさせていった。
ぐちゃっぐちゃっぐちゃっ……
愛液と破瓜血が混じりあった液体が腰の動きと共に溢れてくる。
『はっはっ……っくはっは、はぁっくうぅぅっ!』
彼女が背中に回した手が、爪が、彼の背中に食い込んでいる。目尻には大粒の涙が浮かんでいた。
『浩輔、浩輔、浩輔っあぁっう、ああぁぁぁっ』
―俺、もうダメです。いきますっ!
最後に激しい動きを彼女にぶつけ、ゴム越しに彼女の中で果てた。
『こんなに痛いものだったら、一度で済ませたかったな。』
―すみません。激しくしてしまって……
『構わない。最後のほうは少し、よくなってきたからな。もしかしたら次はもっとよくなるかもしれないな。……これからしようか?』
―もうダメです。打ち止めですから。
『何故だ?君はまだ若いだろうに。』
―ゴム、もう無いんですよ。
『じゃあ、今から買いに行こうか。』
―……本当に痛かったんですか?ああコラ、そんな格好で外に出ちゃダメですって!
「結構円満な結婚らしいわよ。よかったわね押し付けで無くて。」
―ええそうですね。
どうやらお隣の一人娘が結婚する、というのは本当らしい。ただし“右”隣のお隣さんだ。家の前で近所のおばさんと話していると“左”の角から彼女がやってくる。
『おはよう浩輔、今日もいい天気だな。』
「あら、お隣のお嬢さんじゃないの。お邪魔かしらね。」
『どちらかというとそうですね。』
―ちょっ、何いってるんですか!
「お邪魔だそうだからこれで失礼するわね。」
―はい、ホントすみません。
これから彼女とは一生付き合っていくことになるだろうが、こうやって尻拭いをしていかなくてはならないのか。ちょっと疲れる人生になりそうだ。
『浩輔。』
彼女が微笑みながらこちらを向いている。
『好きだよ。』
この言葉があれば、疲れなんて吹き飛んでくれるだろうけど。
とこんな感じですがいかがでしたでしょうか。
どう見てもHシーンへの入り方に無理があります。本当に(ry
同じくどう見ても濡れ場にも無理が(ry
書き終えてみて、前回意外にも反響があった男がぶっ倒れたラストの補完をしたほうがしたほうがいいんじゃないか?とか、
あえて女の側の名前を出さなかったんですが、彼女彼女とうるさかったんではなかろうか?とか
改行が少なくて読みにくいのではなかろうか?とかいろいろ反省点がありますが、批判お待ちしておりますです。
>>551 初々しいなあ二人とも。私にそんな時代はいつごろあったろうか……(遠い目
GJです。
>>279 キタ━━━━━━≡゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━━━!!!!!
氏が懸念している処より、むしろ海外旅行の下りが気になった。
はたして彼女は、彼に何も言わずに一週間も空けるかな、と。
>>565 あんまり伏せ字になってないよ。
ここは両親に話を通しにいったと考えるのが自然。
外堀から埋めていく素直クール萌え
「お義父さん、息子さんを私にください」
(無言でチャック下げる)
「その息子ではありません」
(母親大暴走)
とか舞台裏でやってたんだろうか?
なるほど、両親は海外出張中か
いやだから両親は日本の某地方へ出張ですって。
えとですね、最初は女のほうに前回ラストで言わせるつもりだったんです。でも書き忘rゲフンゲフン。
女も風邪でテンパってたということで許してください。
個人的には上に書いた奴で終わらせようかな、と思ってたんですが、続き読みたい方いらっしゃいますでしょうか?
読み直してみてまだまだ書き足りないところとか、親登場させたかったりとかありまして……
一応エロへ全くつながらない読みきりの案とかもあるのですが、ちょっと題材に問題のありそうものしか思いつかなくて。
続きも気になるしエロも欲しい。
という事で折衷案としてエロい続きを希望します。
初投下です。すんません。
掲示板初体験です。すんません。
手違いがあったら御免なさい。
「あー、たまらんな。寒いときに食べるソフトクリームはまた違う趣があるわ」
「全く、この季節になってもソフトクリームか。君の感覚はどうかしている」
駅前広場の片隅にあるベンチに座って、男とクーは休憩していた。。
クーはホットの缶コーヒー(微糖)で指先を暖め、男は反対にソフトクリームを食べていた。
季節的にアイスクリームの時期は過ぎていた。現に男は身を縮こませて食べている。
「やべ、寒くなってきた。あとでそのコーヒーちょうだい?」
「駄目だ。……意地悪で言っているのではない。もうぬるくなっている」
恨みがましそうな男の視線をさらりとかわし、コーヒーの封を切って一口あおる。
実際のところ、コーヒーの味はわからなかった。男の拗ねた目でさえ見てはいなかった。
(誘っているな、男め)
そうだ、男は誘惑しているのだ。
ソフトクリームの山を舐め上げ、唇についたクリームに舌を這わせ、口の中でさんざ堪能した挙句、喉仏を上下させて嚥下する。
私に対する誘惑にほかならない!
普段私には“えっちな行為”を禁止しておきながら、卑怯者め。
とまあ、こんなことで頭がいっぱいのクーさんでした。
隣のクーがそんな葛藤に頭を悩ませているとも知らず、男はソフトクリームを円柱状の形に整え始めた。勿論舌で、である。
缶コーヒーをぎりぎりと締め上げながら、男の口元を見つめるクー。
「クー? ああ、これ、癖でさ」
続けて男はなにやら喋っているようだが、もはやクーには届いていない。
(なるほど、性癖か。良いだろう、そちらがその気ならば)
勝手に一文字追加した上に、追加した漢字単体の意味を重く受け止めている。熱暴走だ。
缶をベンチに置き、一言。
「貸せ」 「え、あ、うん」
ひったくるようにソフトクリームを受け取ったクーは、白い円柱を根元近くまで口に含む。
「ちょ、クー!?」
口いっぱいにクリームをほおばり、コーンを突っ返す。戸惑いながらも受け取る男。
右手を男の後頭部にまわし、左手で空いている右手首を掴む。左手にコーンを持つ男は、もう逃げられまい。
(男め、目に物見せてやる)
すんません、バイトの時間になってしまいました
続きは深夜になると思います。すんません
ちょwwwこれからがいい所なのにバイトとかバロスwwwwww
ある程度文章をまとめてから投下してくれた方が読み手としても助かる。
これだけではもやもやするだけだしな。
このスレ的には男は名無し、女は「クー」がデフォ名なのか?
VIPの1レス会話ネタならともかく、掌編SSにするなら名前くらい付けるか代名詞にして欲しいと思うのは漏れだけ?
>>577 個人的にはデフォの方が好きだけど、職人さんの好き好きでいいんじゃね?
23BxpivjはドS
このスレの存在を知って以来、『終わりのクロニクル』の佐山御言が素直クールに見えて仕方がない
>>581 彼が素直なのは自分の欲望(主に性欲)に対してのみだと思うが……w
>>581 御言のどこがクールだよ。
何時でも脳内新庄君を確かめては確かめては確かめては確かめては確かめt
<<暴走を検知しました。以後の妄想を省略します>>
<<ついでに、私こそが都市における素直クールだと加筆したく存じます>>
(男め、目に物見せてやる)
引きつった男の表情を愉しみながら、男との距離をゼロにする。
触れ合う唇。
男の唇は引きつって固く閉ざされていたが、クーは舌を這わせて無理やりねじ開ける。
観念したのか、意外にもあっさりとクーの舌の侵入を許す男。
霞がかったようにぼんやりとした男の瞳を見ながら、クーは口内のものを注ぎ始めた。
唾液交じりのクリームを男の口腔に送り込む。
男は一生懸命に飲み下しているが、クーが注ぐペースの方が速い。
行き場を失った白い液体は、当然二人の繋がった隙間から流れ出て、男の顎から首筋に白濁の線を作る。
口の中のものを全て注ぎきったクーは、今度は男の唾液の混じったクリームを味わうべく舌を目いっぱいねじ込む。
男の唾液を、クリームを、ついでに舌の感触と歯のエナメル質も心ゆくまで味わう。
十分に堪能し、ゆっくりと舌を抜く。
男は完全に意識を持っていかれている。
潤んだ瞳に、白く汚した口元。
半開きになった唇の奥には、さんざ嬲られた舌がふるふると震えている。
うっすらと白ばんだ舌が中途半端に突き出されている様に、クーはもっと過激な行為を要求しているのかと息巻くが……。
「ち、もうクリームが無いな」
クーが小さく舌打ちすると、それをきっかけに意識を取り戻す男。
「ちょ、おま」
「どうだ、男。美味かったか」
笑顔を向けるクーに、反論する気力が萎える男。
「あの、せめて人前は勘弁して」
「美味かったか、と聞いている」
「ハイ、オイシカッタデス」
こういう風に笑っているときの彼女――微笑みではなく、目を爛々と輝かせて自信たっぷりに笑っているときのクーは、とても逆らえるものじゃない。
「そうかそうか、それは良かった」
自分の口の周りのクリームを舐めとり、熱のこもったため息をつく。
「別にここなら構わないだろう。都会は人は多いが、誰もが誰もに無関心だ。密室とさして変わらない」
男は自信たっぷりのその言葉にうなずいてしまうが、うなずいてから(そんな訳無いじゃん)と突っ込んだ。勿論、心の中で。
幸いなことに、二人の行為を見ていた者はいなかったようだ。駅前で人通りが多いとはいえ、コインロッカーの陰になっていて目立たなかったのが幸いしたのだろう。
「私も十分愉しませてもらった。君の驚いた表情、少し苦しそうな表情、とろけた表情。どの表情も素敵だった。君はいつも新鮮だな」
そりゃどうも、だか何だか呟いてそっぽを向く男。しかしクーは、そうやすやすと彼を逃したりはしない。
「それに、クリームを君に流し込むときと言ったら。例えるなら膣内射精か。無論したことはないが、こういう感じなんだろうか」
頭を抱える男。全くこの娘は。
「クー、いい加減にしとけって! 真昼間から天下の公道でっ」
「ふむ、スラングを使わないよう配慮はしたんだがな。君の意見も一理ある」
そこでクーは男の肩に手をまわし、自分の方に引き寄せた。
「これなら構わないだろう」
周りに聞こえないよう声量を抑えて――つまり、男の耳元で囁いて、続ける。
「“なかだし”した気分は中々のものだったぞ。どうだ、体に直接注がれた気分は」
「イヤ、サレタコトナインデ」
何とか答えるも、耳をくすぐるクーの吐息にそれどころではない。
男の反応に笑みを深めたクーは、更に男に近づいて囁く。
「そうだな。それにしても、自前のもので実際に“なかだし”したら、どれほどの快感なのだろうな。男がうらやましい」
「イヤ、マダドウテイナンデ」
「そうであった、君は貞淑な男であったな。君の美点であり、時に悪趣味だ」
どんどん小さくなっていく男の反応を堪能したクーは、男を解放してやる。これ以上困らせると本格的に拗ねてしまうからだ。
ようやっと解放された男は呼吸を整えつつ、心を落ち着かせる。今までクー相手に主導権を取れたためしがない。クーは基本“攻め”だ。振り回されっぱなしだ。きっと、これからも、ずっと。
男は手に残されたコーンをばりばりと口の中に押し込み、クーの飲みかけ缶コーヒーで流し込んだ。戦略的撤退を選択したのだ。
「さぁクー、このあとはどこへ行きたいかな!?」
「まあ待て、男」
立ち上がろうとする男を引き止めるクー。
おもむろに男のおとがいに手をあて、顎を反らせる。
そこにはクリームが垂れてできた、一筋の白い線。
クーはすっと身を寄せ、首から顎、口元へと続くその線に舌を這わせ、綺麗に舐め取っていった。
「はしたないぞ、男」
勿論男は突っ込むこともできず、ベンチにうずくまって頭を抱えてしまった。
すんません、おそくなりました
以上でとりあえず終了です
ネタとしては古典的かとも思いましたが、とりあえず完成できてほっとしています
批判上等なんで、宜しくお願いします
>>576 本当はもっとさらっと終わらせるつもりでした。バイト前に
が、あれよあれよと……
確かにいけませんでしたね。気をつけます
>>577 二人の登場人物ですが、正直、ちょっと迷いました
結局いい名前が思いつかなかったんで“男”と“クー”にしてしまいましたが
次の機会があったら、良いのを考えてみます
>>580 自分はちょいMです。すんません
良くわからないけど、ID変わっちゃってました
584と585は23Bxpivjの書き込みです。念のため
すんませんでした
初めてなんでトリップの付け方とか分からないんですが
とりあえず一筆したもの投下します。
なにかしら、誤字等あったら申し訳ないですorz
「秋津 絆、君に話がある。」
そう俺の隣で切り出してきたのは
一風変った口調で喋るクラスメイトの唐島 空(からしま くう)だった。
初夏に入りうだるような暑さもなんのその
エアコン完備の教室で魅惑の昼休みを堪能していた時だった。
秋津「ん、今昼飯食べてんすけど・・・・。」
空「ならば、そのまま聴いて欲しい。大事な事なんだ。」
普段から無表情で冷静なイメージの彼女なのだが
今日ばかりは口調の節々に少し緊張感があるようなイントネーションが少し気にかかる。
つややかな黒髪を一撫でし、凛とした目でランチを堪能している俺を見つめる。
秋津「………?」
胸に手を置き一呼吸。
意を決したかのようにその口がゆっくりと開いた。
空「君のことが、好きだ………。愛している。」
秋津「ぶっ!」
空「付き合って欲しい。」
秋津「ちょっ!げほっ!!」
こいつ、TPOってもんを知らないのか………。
空「ほら、絆。あーんをしてくれ。」
秋津「………あの、空さん?」
空「あーん、だ。あーん。」
秋津「いや、そういう事ではなくて。」
空「では、どういうことだというのだ?」
差し出していた箸を引っ込めてこちらの顔をじっと見つめる。
あれから数日たって、周りもそれなりに馴染んできた頃
空の暴走は、日増しにスピードを上げていっている。
秋津「たしかに、俺は認めた。だが、この甘ったるい空間はなんだ!」
空「なんだとは………ひどいな、私と君の間に冷えた空間なんて要らないと思っているのだが?」
秋津「これだけ甘ったるい空間を人様の前で披露するのはどうか?とか思わんのか………」
空「つまり………、二人っきりでなら良いという事なんだな?絆。」
二人っきりといった言葉に周りのクラスメイト、主に女子の間から
「いやぁねぇ・・秋津君って。」
「実はふたりっきりがよかったなんてツンデレもいいところだよね………。」
「いや、あいつはやるときはやる男だから。」
なんて、お情けの欠片も見えない言葉がひそひそと聞こえてくる。
秋津「まぁ、とにかく二人っきり云々は兎も角として、少しは自重してくれると有り難い。」
空「むぅ………、君は案外恥ずかしがりやなのだな?付き合って見える一面もあると聴くが
いやはや、ちょっとばかり可愛いと思ってしまったよ。」
こちらをじぃっと見つめて新たな発見に感動していたところに
空「しかし、二人きりだと私が我慢できなくてエッチしたくなるかもしれない………。」
と、ぐっとスカートを両手で握りながら
こんなストレートな台詞を教室でのたまってくれるので
慌てて口をふさぐのもすでにクラスメイトの間では毎度の事の扱いで。
付き合い始めて自分が振り回されてる現状に納得いかない事実も
今では、当たり前の事かのように容認してしまっている自分がいる。
好きで付き合ったわけではない、成り行き上仕方なく。
そんな言い聞かせてきた物が、好きになりつつある。もしかしたら好きだったのかも?
等といった考えに転換されてきているのも、また事実だったりする。
空「なぁ、絆?」
秋津「ん?どうした空。」
季節はさらに流れて秋も半ばを差し掛かった頃。
空が数歩前にでて声をかけてきた。
帰宅賂は夕日に照らされて鮮やかな橙色の回廊となり
その光に照らされ、こちらを向いた空の表情は見えなくて。
周りの雑音が次第に聞こえなくなっていく………。
現実的にありえないこの感覚は、意図的に作られた空の領域
招かれた俺は、ただ空の次の言葉を待つゲストで
顔が読めないだけに、その言葉がとても気にかかる。
空「君は、私の事が好きか?」
秋津「………?」
空「正直に答えて欲しい。YESかNOかだけでもいい。」
突然の事に驚く。なにかしら俺の態度がいけなかったのだろうか?
今までどおりふざけ合ってワイワイやっていたつもりだったのに。
秋津「ど、どうしたんだよ………。」
空「私は迷惑か?」
秋津「?!」
空「はは、君は正直者だな。口で語らずとも顔で教えてくれる。
故人曰く 顔は口ほどに物を言うとあるが、なるほど確かにそうかもしれないな。」
秋津「ちょっ、ちょっと待て。いきなりの事で驚いただけだって。本当にどうした?」
顔が見えない事が悔やまれる。しかし虚をつかれて好きかどうか即答しろといわれると
一瞬びっくりするのが人の反応としてはもっとも多いのではないのか?
空「今まで、君に告白してから毎日一緒に過していたが
君が心から楽しそうに笑っているのを一度も見たことが無い気がする。言うなれば不安なんだ。」
秋津「心から………。」
空「いきなりの形だったが故に、一枚の壁を隔てて付き合っている。そんな感覚に陥る時がある。
しかし、これは私のミスであり絆に対してどうこう言えるレベルの物ではない。
だが私も好きな人に告白する等といった事は初めてで、尚且つ性格と口調もこのような感じだ。
どうしていいか分からず遂あのような形をとってしまった。」
秋津「…………。」
空「君にとっては、はた迷惑な話であったんだろう。
しかし私にとっては抑えきれない気持ちで、君に知ってもらいたかったんだ。」
秋津「だから、空………それは。」
空「上辺………か?」
秋風が体にかすかな寒さを与えてくる。
二人の間に冷たい空間等ない、そう言ったのは空自身だ。
しかし、実際はどうだろうか?今その空間を作り出し感じさせているのは
言った本人である空自身だ。
秋津「つまりあれなのか?嫌そうな顔ばかりしてるってこと?」
空「すまないが、そういった解釈になってしまうな。」
秋津「嫌ってるって意味だよな?」
空「いや、それは違うっ。」
秋津「いや、だって実際、空は上辺とか俺に言ってるわけだし
たしかに、色々とこうしてくれとかは言ったけどさ
空が今全部いったのまとめると、そういう意味じゃないか?」
空「…………っ!」
秋津「一枚隔てて接してるのは一緒ってことはない?」
空「そんなことは無い!私は絆の事が本当に好きで。」
秋津「だから、空がそれだけ一途に思ってくれてるのが分かるから
俺だって空の事をもっと知りたいし、空の事好きなんだけど。」
空「私は、好きなんだ………絆の事が、凄く………。」
秋津「うん。」
空「二年前に、私の目の前で後輩が落としたプリントを拾って集めて先生の愚痴を聞いていた時から。」
秋津「そんなことあったっけ?」
空「それが、始まりだからな。好きになった人との出会いなんて忘れたくない。
それに、一緒のクラスになったときに声掛けてくれたのも絆が最初だった。」
秋津「それは覚えてるな。空が少しうろたえてたのは覚えてる。」
空「当たり前だ、私の気持ちはすでに絆にあったんだからな。」
秋津「そ、そうだったのか。」
空「大好きなんだ、絆の事が。
ただ、絆の事になると頭が真っ白になって考えられない。
だから迷惑かけているんじゃないか?嫌われているんじゃないか?と思ったんだ。」
秋津「なるほどな、さっきも言ったけど空の事好きだぞ?少しずつだけどな。」
空「少しずつ………。」
秋津「そう、空の事を知るたびに。
俺に告白したやつはこんな子だったんだな?とか新しい発見があってね。」
空「私と同じ発見なわけだな………?」
秋津「ちょっと違う、スタートが100をMAXとして空が10としたら俺なんて0に近い。」
空「0に近い………。」
秋津「あー、だからって嫌いだったわけじゃない。
空が好意を持ってくれていた分の差分なわけだから。」
空「つまりは、温度差というわけか。」
秋津「正解。な?壁なんてないだろ?」
空「………ない。」
秋津「嫌いだと思うか?」
空「うっ………ぁ………思わないっ。」
秋津「俺だって空の事大好きなんだぞ?」
空「でも、不安でたまらなかったんだ……ぅあ……あぁ……。」
秋津「泣くなって。」
空「こんなの初めてだからとまらないんだ。嬉しくて………っ。」
近寄り頭を撫でると、胸元に顔をこすりつけて声を殺しながら
涙をとめようと頑張ってる。
なるほど、お互い初めて同士
壁に見えて不安になるわけだ。
こいつの場合一途でこんな性格だったんだから
その高さも計り知れなかったんだろう。
ひとしきり泣き終えてようやく落ち着きを取り戻した空の顔は
少し目元が赤かったが、いつもの無表情に戻っていた。
空「絆?」
秋津「今度はなんだ?」
空「私たちはまるで線香花火みたいだな?」
秋津「ん?どういう事だそりゃ………。」
空「かすかに感じる想いに二人で火をつけて
激しく燃えた後に落ち往くのは寂しさと静寂
だけど確かにあった出来事とその思い出は心に残り
また新しく芽生えた想いに二人で火をつけて
その火花をそっと見守るんだ。」
秋津「ごめん、意味がよくわからない。」
空「分からないのか?私の気持ちが。」
秋津「い、いや、そうじゃなくてだな?」
空「つまり、私と絆はラブラブだという事だ。」
秋津「ぶっ!」
うん、ラブラブだ。
そんな解釈を垂れた後
無表情のまま隣を歩く空。
だけどなんとなくその顔が晴れ晴れとした感じに見えて
右に習えでそのまま歩き出すと暫くして
また一段と好きになった………。といってキスを迫ってきた空の秋晴れ。
end
個人的に会話文前に名前を入れるのは好きじゃないな。
初めてにしては上手いと思うけど。
あと、トリップは名前欄に半角#と適当な文字列を入れる。
俺のトリップはこんな感じに入れてる。
#123
VIPで出そうと思ったネタだけど、VIP死んでるのでこっちにやらせていただきます。
>>534-536の前スレ429 ◆6ULIlpyaQkさんと若干ネタが被ってしまってるので
(そういうつもりはないけど)二番煎じということでご勘弁。
エロは無いです。
………これを見てる諸君、おはよう。
もっとも、見る人からすればすでに昼かもしれないし夜かもしれないのでこんにちは、そしてこんばんは。
今私は、愛する男のアパートの前に来ている。すごしやすいとはいえこの時間は肌寒い。
彼が外に出てくるまで待つことも出来るが、流石に私も風邪は引きたくないので早速中に入るとする。
…。
……。
………。
鍵が掛かってるな。男め、自分が愛する女が来たというのにそれはないぞ、減点だ。
しかしこの程度の鍵など、開けるのに造作もないな。
私にはこれがある。
*****
(ナレーション:村瀬克輝)
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《いままでいろんなものを試したわ。でもどれも動きが単調で、飽きやすくてどうにもしっくりこなかったけど、
これを使い出してからはもうすっかりハマっちゃって!80キロあった体重も48キロまで落ちちゃってもう最高!》
32歳:アメリカ人女性
《最初は半信半疑だったんです。でもこれを使い出したら恋人が出来るわ、宝くじが当たるわでもうウハウハです》
26歳:イギリス人男性
《この歳になると、白髪が目立つし、なによりボリュームが足りないから、外に出るのも億劫だったんです。
そんなときこの商品にであって、今では毎日が楽しくて、すごく満足です》
65歳:日本人女性
さぁあなたも、充実の合鍵ライフへ!
今ならもう一本お付けします。ご注文はお近くの鍵屋で!
*****
さて、と………よし、開いた。
くっくっく、よく寝てるな。
あぁ寝顔がこの上なく可愛い。犯したい。
「ん…んん……」
そんな可愛い声を出しながら寝返りをするな。鼻血が出るところだったぞ。まったく犯したい。
では起こさないように、蒲団に入ろう。音を立てないように服を脱いで、そろり、そろり、と…。
あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁったかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!
鼻孔に広がる芳しい男のかほり、男の人肌で暖められたやニ○リの蒲団、男の汗がしみこんだシーツ…。
そして何より肌に直接感じる男の温もり!あぁ、子宮が疼く。この上なく犯したい。
「…くぅ……」
!なんと、私の夢を見てるのか男は!ブラボーおぉブラボー!
ご褒美に犯してあげる。
「くぅ……やきにくぅ…」
…。
男よ、それは減点だ。犯すぞ。
しかし、なんだか心地よくて眠くなってきたな。まぁこの中で寝るのも悪くないな。
あぁ、男、男、男、おとこ、おと…こ…、お…と…こ…、お……と……こ……、お………。
ん…朝、か。
「やぁ起きた?いきなり裸で蒲団の中にいるからびっくりしたよ」
『驚かせてしまったならすまない。どうしても会いたくなってな』
「ははは、うれしいこというね」
あぁそんな可愛い笑顔を見せるんじゃない。
それに股間でテント張ってるそれはなんだ?
『犯したくなるじゃないか(ボソ』
「ん?なんか言った?」
『あぁ言った。もう我慢できん、悪いが朝の一番を貰うぞ』
「へ?朝の一番っておわ、ちょ、ちょっとクー」
ふふ、こんなに自己主張しているものを見せられては我慢の限界だ、とりあえず絞らせろ。
「ちょ、ちょっとそんなに握んないで…い、痛いって」
『ふむ、まずは煩い口をふさがなくては…ん……ちゅぅちゅぅ』
「はむ…ん……んちゅ……」
『ん…はぁむ……ぷぁ』
よし、だいぶ大人しくなったな。
「ふ、不意打ちはないよ…」
『男が悪いんだ、こんなに可愛いなんて反則だ』
「く、クーだって…か、可愛いよ」
ぶっは!は、鼻血がっ!さっき寸止めした鼻血がっ!!頬を紅潮させながら言うなんてもう辛抱たまらんっ!
満点だ、男、君は満点だ、減点なんてして悪かった。
『さぁとことん楽しむぞ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
「ちょ、キャラ違う!って、あ、ああぁぁあ、ああぁぁあぁっぁぁぁぁぁぁ………………」
省略されました。エロが読みたい場合は筆者にエロの書き方を伝授してください。
『ふぅ、やっぱり朝は一番搾りに限るな』
「ビールみないたこと言わないでよ」
『だがまだいけそうだな、どれ、もう一発』
「ひぇぇぇぇぇ」
♪ちゃんちゃん♪
GJ
でも別に通販ぽい部分は必要なかった気も…
599 :
597:2006/10/23(月) 12:18:38 ID:Gjsd/aeY
>>598 元々VIP用だったんでその辺はノリが残ってた部分です。はい。
あ、保管はしなくていいですからね。
600 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/26(木) 13:04:20 ID:Y0nzgM+o
保守
保守
604 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/29(日) 22:06:57 ID:mrq2LNtV
ほ
605 :
名無しさん@ピンキー:2006/10/29(日) 22:49:26 ID:mrq2LNtV
し
お久しぶりです279です。
>>571氏のご期待に添えるかどうかありませんか「エロい続き」を書いてきました。
ではどうぞ。
……実は本番描写無いんですけどね(ボソッ
マズイ、これは非常にマズイ。
彼女の凛とした横顔をチラリと見、それから彼女の視線の先をチラリ。
ああ神様、何故ワタクシにこのような苦難をお与えになるのですか。
話は数時間前に遡る。
明日発表のレポートを何とかまとめ上げ、自室のベッドに突っ伏したのは日付変わって3時間程経った頃。
その4時間後にはいつものように彼女が叩き起こしにやって来た。
普段は1時限目に間に合うよう起こしてくれる彼女が天使に見えるのに、
今は牙をむいた悪魔にしか見えないのは人間の悲しい性か。
『おはよう。』
―……うあよーおあいあふ(おはようございます)。
『昨日もレポート作業をしていたのか?』
―うぁい(はい)。ひょうはっひょーの(今日発表の)……
『夜中までか。』
―夜中までというかついさっきまで……くあぁぁ。
大きくあくびをひとつして、起こしていた上半身を再びマットレスへ倒し込む。
『おい、起きろ浩輔。今日は朝から講義があるのだろう?』
―む゛ー。サボるー。
『いや、それは困る。ほら起きるんだ。』
―やーだーねーかーせーてー。
初めて二人が一つになったとき交わした約束、
――いつか彼が彼女を支えられるようになったら一緒になる――
この約束を一日も早く達成する為、彼女は以前にも増して朝の襲撃を敢行するようになっていた。
但し襲撃の目的は変わっており、その<いつか>を最速で訪れさせる為、
彼になるべく多く単位を取得させようと朝一の講義に合わせて起こしてくれるようになったのだ。
……未だに鍵のかかった玄関をどう突破しているのか謎ではあるのだが。
『起きろと言っているんだ。駄々をこねるんじゃない!』
少々語尾に怒気が含まれてきた。感情を表に出すなんて彼女にとっては珍しいことだ。
―大丈夫ですよぉ、出席は十分してますしぃ、単位も卒業まであとちょっとですからぁ〜。
俺のほうは安眠を守るべく、寝ぼけた語尾で反論する。
そんな口調が気に触ったのか、彼女は寝ている俺にグイと顔を寄せて更に非難の言葉を雨あられと降らせる。
耳元でがなりたてられていては流石に二度寝をすることは叶わない。彼女の手首を掴んで布団に引き摺り込む。
少し悪戯を仕掛けようと思いついたのだ。
『何するんだ、遊んでないで起きひゃっ』
最後まで言い切らないうちにブラウスをめくり、脇腹を軽く引っ掻くようにくすぐる。
『ちょっと、くすぐったいじゃなひっ……止めないか!』
―怒った顔もかーわいい。
『もう、浩輔!』
二人分には少し狭いベッドの上、暫く攻防戦が続いていたがついに勝敗が決した。
『もう好きにしろ。昼にまた起こしに来るからな。』
溜息をつきながらベッドから出て行こうとする彼女を捕えて、もう一度ベッドを定員オーバーにする。
―運動して目、冴えちゃった。……久しぶりにしない?
初めてのとき以来、俺達は何度も肌を重ねていた。何度目からか痛みも無くなったらしく、彼女から求めてくることもあった。
しかし最近はゼミの合宿にレポートの提出と忙しく、こうして触れ合うことさえいつ以来だか分からなかった。
『朝からそんなこと……』
―そんなに目潤ませて言われても説得力にかけてるよ。
二人の唇を合わせ、唾液を十分に撹拌する。キスの副産物である蜘蛛の糸を伝って視線が絡み合う。
彼女は甘い溜息をつき今にも泣き出すのではないかというほど瞳に涙を湛えて、しかしまだ抵抗を続けていた。
『ダメだ。そんな元気があるなら学校に……』
―んじゃこのまま止めていいの?
『……それは嫌だ。』
それなら、と俺が彼女に覆いかぶさると同時に災厄が訪れた。
ピンッ………ポーン……
階下で機械的な音が鳴り響く。
『誰か来たようだな。』
―んなモン放っときゃいい。
ピンッポーン、ピンポーン、ピンポン、ピンポンピンポンピンポン………
―だあぁぁもう、うるさい!
毛布をはねのけて、玄関まで駆け降りる。
久しぶりの蜜月だ。邪魔されてはたまらないものがある。
勢いよくドアを開け、怒鳴り付けようと息を大きく吸い込んだ。が、相手の姿に毒気を抜かれた。
「ただいま。」
―なっ……何してんの、母さん。
タクシーを背に、小さな荷物一つ持った母親がいた。
「いや疲れた疲れた。朝一番の電車に乗って来ようとも思ったんだけどねぇ。」
―いやだから何しに来たの。
「我が息子ながら冷たいねぇ。たまには息子の顔、見に来ちゃダメなのかい?」
―誰もダメとは言ってないよ。でも父さんに引っ付いて行った人が何でここにいるの?
母親の顔色がサッと変わる。
「今はあの人の話はしないで頂戴。」
―……また喧嘩したのかよ。
「今回はあっちが悪い。」
(今回“は”?毎回そんなこと言っているだろうに。)
これ以上火に油を注ぎたくない思いから最後の言葉は飲み込んだ。
我が親ながらこの人は子供そのものだと思う。料理の味付けに一喜一憂し、喧嘩をすれば相手が謝るまで口をきかない。
我が家をうまく回すためには、母親という爆弾をいかに破裂させないか、というところに尽きる。
「さてと、朝御飯なんて作る才覚あんたに無いからなぁ。味噌と醤油位はあるでしょ?」
―何する気だよ?
「息子に朝御飯作る母親はそんなにおかしいかい?」
―残念ながら朝飯はもう用意してるよ。
「嘘!?」
嘘ではない筈だ。彼女は1時限目があっても無くても朝食を用意してくれている。
今日も階段を駆け降りキッチンの前を通過したとき、深炒りのコーヒーが香っていた。
母親もその香りに気が付いたようで怪訝な顔をこちらへ向ける。
「あんたがコーヒー、ねぇ。」
―悪いかよ。
「女の子に作ってもらってるんじゃないの?」
相変わらず変なところで勘が利く。
小学校で初恋をしたときも、中学校で大人の世界に目覚めたときも、高校で失恋したときも、全部お見通しだった。
そういう意味では理想の母親なのかもしれない。
そこへ彼女が2階から降りて来た。
「まさか……」
―あれがその女の子。
「お隣の。」
―お隣の。
「よかったわね、逆玉よ。」
―そういう物の見方をするな!
玄関先で親子漫才を展開していると、彼女は母親に気が付いたのか急いで駆け寄ってきた。
『ご無沙汰しております、おばさま。』
「おばさまなんてなんだかくすぐったいわ。昔みたいに<コーちゃんのおばちゃん>でいいのよ。」
『しかしそういう訳にもいきません。』
「いいのよ。私もおばちゃんと呼ばれるくらいの歳だしね。」
―そうだねおばちゃっ……
言い終えないうちに眉間に寸分違わず裏拳が飛んできた。額を押さえてうずくまる。
「さて私の分の朝御飯はあるのかしら?」
俺と彼女、2人分の朝食は当然のように1人の胃袋の中へと消え去った。
食事の間も食後のコーヒーを啜っているときもずっと喋り続けている。よくもまあこんなに話題が尽きないものだ。
ところどころ聞き飛ばしながら聞いた話によると、昨日の夜夫婦喧嘩をしてそのままこっちに来たらしい。
タクシー代が幾らになったのかなんて考えたくも無い。
―で、何が原因で喧嘩になったの?
「父さんがね、疲れたからって私を蔑ろにするのよ。」
―例えば?
「直接の原因は私の料理を食べなかったことね。疲れたから要らないんだって。」
―それは……
父親の性格上当然だ。
一応支社長待遇で出張し、周囲には気心のしれない部下達。息子の俺だっていまだに近寄りがたいのだ、周囲となじむ事はいまだに出来ていないだろう。
残業があれば家に帰る時間も当然遅くなるだろうし、そうなれば母親に気を遣って食事は要らない、と言うに決まっている。我が家の父親はそういう人だ。
どうやら母親は父親のそういう配慮が気に触ったようだ。
「ひどいと思わない?」
―いや……それは……
『思いません。』
それまで沈黙を保っていた彼女が口を開いた。
『私の知る限り、おじさまはおばさまのことを非常に大事にしてらっしゃいますから。』
「でもね、私の手料理より睡眠を優先したのよ。」
―当たり前だろ!誰だって……
「黙りなさい、あなたには聞いていません。……それで?」
『きっとおじさまはおばさまに遠慮があるのだと思います。』
「長年連れ添った夫婦よ、そんなことある訳ないじゃない。」
『いいえ、長年連れ添った夫婦だからこそ遠慮があるはずです。逆に言えば相手に対する遠慮が無ければ長続きしません。』
彼女が言い切ったきり2人共黙って睨み合う形になってしまった。
そのまま既に2時間、2人は視線を外すこと無く見つめあっている。情熱的な恋人達でさえこんなに長い時間見つめあうことは皆無だろう。
もう昼前だ。そろそろ家を出ないとレポートの発表に遅刻する。仕方が無い。椅子から立ち上がる。
「どこに行くつもり?」
―……学校行ってきます。今日レポートの発表担当してるからどうしても休めないんだよ。
「学校と私とどっちが大事なの?」
『当然学校ですよね、おばさま?』
……頼むから火にガソリンをブチ撒けないでくれ!
そのとき静寂を切り裂いて電話のベルが鳴り響いた。これ幸いと一番近い子機までダッシュする。
―はいもしもし!……父さん!?
「それを渡しなさい。」
いつの間にか背後に立っていた母親が低い声で命令する。渡す以外の選択肢は無い。
「もしもし代わりました。……はい私です。……ええ、ええ、そう。うん、分かったわ、そっちに戻ります。」
母親がこっちに振り返って笑顔を見せた。
「じゃ、そういうことで。」
おいちょっと待て。どんな魔法を使ったんだよ、父さん。
家の中を掻き回していった嵐は帰っていった。俺の方は何とか発表に間に合い、そこそこの評価を得たようだ。
何か非常に疲れた1日だった。重い体を引きずるようにして家に帰り着く。
『お帰りなさい。』
玄関先に着物で正座、三ツ指ついてのお出迎えだ。
―……ただいま帰りました。
『私とお風呂?私を食べる?それともワ・タ・シ?』
―それにはフツーにお風呂とかフツーに食事とかの選択肢はないの?
『無いな。さあしよう今しようすぐしよう!』
後ろ手にドアを閉めたと同時に飛び掛かってきた。猿か、あんたは。
朝以上に激しい唾液のやりとりをして一息つく。
―風呂、入ってくる。
『私はすぐしたいんだ。汗くさくても構わないさ。君のにおいも含めて全部が好きなんだから。』
うれしいことを言ってくれる。だがする前に汗を流すのは最低限のエチケットだ。
……まあ、初めてのときは居間で押し倒したんだけどね。
一緒に入ろうとする彼女を追い出して汗を流す。拗ねてしまった彼女は頑としてシャワーを浴びようとしなかった。
仕方が無いのでそのまま2階の俺の部屋に上がり、彼女の体を隅々まで調べ上げる。
毎回肌を重ねる度に思うのだが、俺は自分の指先一つで大きく反応する彼女を見ていると興奮よりも先に嬉しさを覚えるようだ。
自分はSなのかもしれないな、そんなことを考えながら彼女のポイントを攻めていく。
襟を開き、耳たぶ、首筋、臍の横と手を滑らせていくと同時に、もう片方の手で着物の裾を割り聖域に侵入する。
そこはもう手を加える必要は無かった。それどころかもう何度も昇りつめた後のようだった。
―これは……?
『朝、君にキスして貰ってからずっと体が疼いて仕方が無くてな。自分で鎮めようとしたんだが……』
―鎮まらなかった?
『ああ。自分ですればするほど君のことしか考えられないようになってしまった。』
つまり自慰行為をしていたということか。
そんなに俺のテクニックに期待されても困るんだけどなぁ。張り切っちゃうよ?俺。
既に決壊したように愛液が溢れだしている渓谷から小さな蕾を探り当て、押し潰し、すり潰す。
『っくふっ……や、あぁぁぁ!』
すらりと伸びた白い足が反り返り、膣が収縮する。相当感じ易くなっていたらしい。少し触っただけだったがイッてしまったようだ。
彼女は少し焦点の合わない目でこちらを向いて抗議の声をあげる。
『いきなりそんな……強くするなんてひどいぞ。』
―体の疼きは治まった?
『余計に火が付いたよ。……今日はもっとしてくれないと許さないぞ。』
―ご要望とあらば。
目を閉じ、キスを求めるお姫様と唇を合わせる。上質な絹のように滑らかな唇を味わい舐め上げる。そうしておいて突き出された舌も口に含み、啜る。
溢れた愛液に濡れた手指でもう一度下の唇をなぞる。爪の先ほどの深さを中に埋め、入り口もなぞる。もう一方の手では乳首を摘み上げる。
唇を伝わってくぐもった喘ぎ声が響いてくる。息苦しそうに瞼を強く閉じ、そして体中の神経を感じる事に費やしているようだ。
『ぷはっはあっはあっ……はぁっ、さっき昇りつめたばかりなんだ、少しは手加減してくれ。』
塞いだ口を開放するとこんな我侭を言う。もっとしろといったのはそっちだろうに。
―じゃあ今日は挿れないでおこうか?
『意地悪だな、君は。今すぐ欲しいの、分かるだろう?』
―分からないと言ったら?
『分からせるさ。』
彼女は俺のジーンズの前に手を掛け、下着ごと引き摺り下ろした。既にやる気満々の分身が飛び出す。
『ほら、君だって早くしたいんだろうに。……かわいそうに、強情なご主人様は君を使いたくないそうだ。』
―誰が使いたくないと言ったんだよ?
『じゃあ早くしてくれよ。強く、激しく、情熱的に、優しくな。』
―……ちょっと我侭が過ぎるんじゃないかと思うんだけど?
『……したいと思ってるんだったらこれからはもっと早く言ってくれよ。一度にこうもぶつけられると私の体が持たないぞ。』
結局、あれから部屋に置いてあったゴムのストックをすべて使い果たすほど盛り上がった。
久しぶりなのはこっちだって一緒だ。溜まりに溜まった塊をすべて吐き出させてもらった。
まだ大きく波打っている胸をこちらへ向き直し、まだ何か不満があるのかこちらを見つめて言葉を口にする。
『今日はすまなかった。かなり機嫌が悪くて、おばさまにもきつくあたってしまった。』
―何かと思えばそんなことか。構わないよ、あんなのに腹が立たないわけが無いからね。
『いや、将来の義母だぞ。仲良くしないといけないじゃないか。』
―我が家の爆弾だから気にする事は無いよ。家族でさえ扱いに困る人だからね。
『そうか……私もまだ子供だな。久しぶりで嬉しかったのを邪魔されただけで臍を曲げてしまうなんて。』
俺は無言で彼女を抱きしめた。
かわいいじゃないか、畜生。
どうでしたでしょうか。
やりたいことは山ほどあって、でも詰め込みすぎてどれも中途半端になってしまった感が……
最初のキスのみシーンならそこそこよかったんではなかろうかと思うのですがね……
耳に痛いほどの批判、お待ちしております。
男の口調は意識して変えました。いつか気が向けば転機となる話も書きたいなあと思います。
というかこういう「保険」かけてないと次が書けません……
久しぶりの投下キタ━━━━━━≡゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━━━!!!!!
続編もいいできっすね!父親が何を言ったのかとか気になる所も有りますけど次回以降の伏線だといいなと思って更なる作品待ってます!全裸で!
この季節に全裸は体に悪いぞww俺も風邪引きかけたからなw
>>615 GJです!
折衷案キタ━━━━━━≡゚∀゚)≡゚けど色々と折衷されてるみたいなのでGJも半分のGODに略させていただきますよG!
>>607 GJ!やっぱこういう風に自然に書くのは難しい(´・ω・`)
ただ…最初のシーンがどこに繋がってるのかが気になった
ホシュヽ(`Д´)ノ
uW6wAi1FeE氏いないのかな?
おるでよー。
単に近頃忙しかったから、名無しレスが精一杯だっただけ。
そろそろ落ち着いてきたので、近々また何か書きますわ。
>>623 期待してます。
でも性格を素直クールに限定するのはすごくもったいないと思うんだよなあ…
他のスレならともかくここで言うことじゃないよ……
要するに他の性格のキャラの話も書いてほしいってコトだろ。勿論、別スレで
>>626 うん。それが言いたかったんだ。
でもやっぱりこのスレで言うことじゃないよな。スマン。
<騎馬民族素クール>
庁舎から帰ってくると、戸口でディルベルが待っていた。
「お帰り、蘇範。今夜はたくさん、まぐわおう」
頬を染めるわけでも微笑をかわすわけでもなく、
まさに普段の挨拶といった表情で声を掛けてきた女を、私はにらみつけた。
「そういうことは、戸口で言うせりふではない」
私を先導して家の中に入ろうとしていたディルベルは、くるりと振り向いた。
「どうしてだ? ――夫婦ならまぐわうものだし、若い夫婦なら殊更たくさんまぐわうものではないか。
それとも、私とまぐわいたくないのか? 聖なる大河の名にかけて婚礼をしたというのに」
今年十七歳の娘の視線がとがった。
私はちょっと慌てた。
このあたりでディルベルより馬と弓と剣が上手い人間は、彼女の父と兄くらいのものだ。
馬を駆りながら続けざまに放った矢が十二本、ことごとくが敵兵を射抜いたなんていう話は、
ディルベルにとっては日常茶飯事のことだった。
はじめてあった日に、彼女が腰からぶら下げていた毛皮が、
どこぞの猛将の頭の皮という話を聞いた時は、二、三日食欲をはげしく減じられたものだ。
「――私の国では、そういうことは家の中で言う」
「なるほど」
小さく頷いたディルベルは、納得したようだった。
身を翻して家の中に入る。
私はため息をついて、その後ろについていった。
「家の中に入ったぞ。では、あらためて言う。今日はたくさんまぐわおう」
椅子に腰掛けたディルベルは几帳面に繰り返した。
それから、ちょっと首をかしげ、
「お前がいなかった二日間はさみしかった」
と続けた。
「ああ、うん。――そうか」
ぼりぼりと頬をかきながら私は視線をそらした。
私の国では、女性が性的なことを直言する風習はない。
だが、彼女の部族は、そういうものであるらしい。
私も、はやく慣れなくては。
もう私の国──というか私の住むこの一帯──は彼女の部族に征服されたのだし、
彼女も、一生懸命、私側の風習を身に付けようとしている。
交わりたい、と言うのではなく、会えなくて寂しい、という言い回しをするのは
ディルベルの文化圏にはなかったはずのものだ。
「……食事にしよう」
ディルベルは立ち上がって、いくつかの皿と小壺を持ってきた。
羊肉、チーズ、馬乳酒。
麦粥、野菜の煮物、米の酒。
二人の食べてきたものが入り混じった食卓。
ディルベルは、私の小皿の端に羊肉を、自分の小皿の端に野菜の煮物を取り分けた。
互いの好物を我慢しながら食べるようにしてから二月ほど経つが、
これはこれでだいぶなれるものだ。
羊肉は豚肉よりもクセがあるが、最近はその旨みも分かってきた。
「食事と床をいっしょにすれば、すぐに心がつながる」
結婚前に彼女は、大真面目な顔でそう言ったが、たしかにそれは本当かもしれない。
中原の老大国が衰え、辺境にあるこの辺りが、<大王>に率いられた騎馬民族に征服されて何年かになる。
激しく抵抗した都市もあったが、私の街を含めてたいていの都市は彼らにあっさりと膝を屈した。
もう長らく、中央の威光は届いていなかったし、
騎馬民族たちは急速に文明化し、財力を蓄え、このあたりの都市の最大の顧客になっていた。
私も、実家の商売相手に顔見知りの騎馬部族の人間がいたし、
それが、部族の中で<将軍>といわれる有力者の息子で、
征服後、このあたりの長官になったと知っても、別段驚きはしなかった。
しかし、その男の妹が私の嫁になると言い出し、
その話がとんとん拍子に進んだときは、天地がひっくり返るくらい驚いたが。
「<大王>は、平原の人間と、都市の人間との結婚をすすめている」
何度か顔を合わしたことのある娘は、私の顔をしげしげと眺めて、そう切り出した。
たしかに、これまでのように一時的な略奪ではなく、恒久的な支配に乗り出した騎馬民族にとって
手っ取り早い融和策としては、それが一番だろう。
古来、多くの征服者がその手を使った。
結婚した男女が幸せだったかどうかは誰も触れないが、政治的には有効な手であることはたしかだ。
実際、同民族同士だって、好きあって結婚する人間などどれくらいいるものかわからないのだから、
別に気に病むこともあるまい、と思って受け入れたのは、
その前に、想いをよせていた女から裏切られていたからかも知れない。
やや捨て鉢な感じで求婚を受け入れた私に、ディルベルはぱっと瞳を輝かせた。
それは、初めてみる彼女の微笑だった。
こちらのほうがどきまぎしてしまう喜びようは、表情の変化に乏しい彼女の部族の人間にとっては、
一生になんどもあることではないことだった。
私の国の人間――特に私の元恋人などが見せる分厚い修辞に覆われたやり取りでは、
あまり見ることがない、生な感情のほとばしりを見せられて、私は狼狽した。
結婚生活に入ると、私の狼狽は収まるどころか悪化した。
ディルベルの部族は、長年、厳しい自然の中で暮らしてきたせいか、ものごとが万事、直接的だ。
特に、食や性など、生命にかかわることについてが。
「では、まぐわおう」
二人が夫婦になって初めての夜、夕食を片付けたディルベルが言ったことばに、
私は口に含んでいた食後のお茶を盛大に吹き出した。
中原の民ならば、娼婦でもなければ言わないようなことばを、彼女たちは平然と口にする。
「はやく蘇範の子を産みたいから、たくさんまぐわおう」
馬か羊の子でも作るかのような平然とした顔と声で言われたとき、私はなんと答えていいか分からなかった。
「ん……うくっ……」
夜具の上に横たわったディルベルの唇を奪う。
それだけで、異民族の娘は敏感に反応した。
胸乳の部分を服の上から撫で回すと、それはさらに激しくなった。
厳しい自然の中で育った身体は、小さく引き締まっているが、付くべきところには肉がちゃんとついている。
女としての反応も、十分すぎるほどだ。
乗馬用のズボン──彼女の部族は、女でもこの格好だ──の中に手を差し入れると、
ディルベルは、「あっ……」と声をもらした。
もじもじと足を閉じようとするが、私の手は強引にその合わせ目に滑り込んだ。
騎馬の民は、常に騎乗で生活するせいか、馬から下りるとその足の力は意外に弱い。
だが、それでも文弱の徒の私の腕力より弱いと言うことはないだろう。
この美しい娘の抵抗が弱々しいのは、――本心から抵抗する気がないからだ。
ディルベルが足を閉じようとしたのは、羞恥による反射的な抵抗にすぎない。
男女の交わりのことを平気で口にする娘が、意外な恥ずかしがり屋であることに気付いたのは、
彼女と寝るようになって三日目の夜だった。
ちゅく。
ズボン越しでもはっきりと聞こえた自分の女性器が立てた音に、ディルベルが耳まで真っ赤になった。
夫の指を受け入れたそこは、乾いた大地に住む一族のものとは思えぬほどに豊潤な湿地帯だった。
「く……ふうっ……」
「脱がすぞ」
耳元でささやくと、異民族の娘はこくり、とうなずいた。
中原の民は、裸形を他人に見せるという文化がない。
相応な階層に属している人間は、たとえ配偶者にでも裸は見せないのだ。
それはディルベルの部族も同じことで、彼女たちの「掟」には、
「一年中どの季節でも外で沐浴をしてはならない」というものさえあるのだ。
だが、私は、彼女と交わるとき、なぜかその裸を見たいという衝動にかられる。
ディルベルの形のいい乳房や、引き締まった腰や、小ぶりな女性器などをこの目で一つ一つ確かめる。
この女が、私のものであることを脳に刻みつけるためだろうか。
恥ずかしがるディルベルは、しかし、私の性癖にすぐに慣れた。
──気にならないのか、と聞いたことがある。
「そうすれば、蘇範が普段の二倍、まぐわえるようになるのなら、それでいい」と彼女は答えた。
それから、ちょっと考えた後、
「もし、お前以外の男が私の裸を見ても、地の果てまでも追いかけて殺すから、大丈夫だ」
と続けたのは、女に裏切られたことがある私の嫉妬心が強いことを彼女なりに感じた上での配慮だろう。
ことばも思考も物騒だが、ディルベルは、そういうことにはよく気が付く。
「牧羊犬は、よく羊を見る。どんな小さなことも見逃さない。
それと同じで、私もお前のことは、どんな小さなことも見逃さない」
そのことばを最初に聞いたときは、彼女が、異民族の官僚の監視も兼ねていることを言外に警告しているのか、と
心を固くさせたものだったが、彼女たちの犬が羊に対して取る態度を見るにつれ、
ディルベルは、それを愛情や信頼の意味として言っていることに気がついた。
彼女の言うことは、異文化の徒である私にはわかりにくいところもあるが、裏がない。
いつだって、心のままを、ひどく率直にことばにする。
それがこの上ない美徳だということに、修辞の民である私が気付くのに、それほど時間はかからなかった。
ズボンを脱がす。
オンドルと照明の炎のゆらめきの中、か細い柔毛に守られたディルベルの秘所が見えた。
若い女の甘い香りが私の鼻腔をくすぐる
香りには湯の匂いが混じっていた。
「湯浴みをしたのか?」
「今日。――お前が帰ってくる日だから。準備をしておいた」
もともと騎馬の民に、湯浴みという習慣はない。
水が豊富なこの街に常駐するようになっても、
その貴婦人たちは草原での暮らしのまま、湯につかることはなかった。
乾いた風が全てを吹き飛ばす大地では、それで十分清潔だった身体も、
街に定住するようになってからは、さまざまな匂いが身体に染みこむ。
異民族婚をしたこの街の人間が最初に戸惑ったのは、そのあたりでなかっただろうか。
ディルベルは、まっ先に身体を洗う習慣を身に付けた。
――私のために。
やがて、多くの異民族婚者がディルベルの真似するようになり、
それにつれて、夫婦間の仲が急速に進展する者が増えた。
「中原の人は、身体を洗ってからまぐわう。
多くまぐわいたければ、家の中で湯を使え。家の中でする分には、「掟」にそむかない」
私たち夫婦のように、街の上層部の人間と結婚させられた同族から
助言を求められたディルベルは、ことなげにそう言った後、こう続けたという。
「多くまぐわえば、それだけ深くつながる」
あるいは彼女は、鋭い感性を持つ草原の一族のなかでも、もっとも賢明な女性なのかもしれない。
男根がいきり立ってくる。
「大きくなった」
頬を染めた妻の嬉しげなその声に、私の性器は、さらに膨張して固くなる。
首筋や、胸乳や、太ももへの愛撫を続けながら、私は羊毛を編んだ夜具の上に横たわったディルベルに覆いかぶさった。
小柄なディルベルの性器は、とても小ぶりで、とうてい私の物を受け入れられるようには見えない。
実際、はじめは、小指一本を入れるのだってむずかしかった。
それが、今では、楽々とはいかないが、最後まで私を飲み込んでくれる。
男女の体とは、不思議なものだ。
「んふぁっ!」
ディルベルが、のけぞろうとする自分の上体を必死でとどめる。
感度がいいディルベルのるつぼは、蜜で満たされていた。
でなければ、こんなに簡単に奥まで達することはできまい。
若妻の熱い粘膜は、ぴっちりと夫のものをくわえこむ。
「蘇範、……気持ちいい……」
「私もだ、ディルベル」
「嬉しい。今日も、いっぱい精を注いで。――私のここに」
ディルベルは、自分の下腹部の辺りに手を置きながら言った。
それから、その手を私の首にかけて、ぐっと引き寄せた。
口付けを与えながら、私は異民族の娘を突きまくった。
いや──。
「蘇範、蘇範、蘇範……」
私の下で快楽に美貌を歪ませているのは、異民族の娘ではなく──。
「ううっ、ディルベル、果てるぞ……!」
「蘇範っ!! 来てっ!!」
私は、この晩、四度、妻の中で射精した。
「起きたか、蘇範。飯を食べろ」
夜具から起きると、ディルベルは朝食の支度をもう終えていた。
腰の辺りが少し重いが、昨晩とは打って変わってきりりとしたディルベルを見ると、
そんなものも吹き飛んでしゃっきりとしてくるから、不思議だ。
「今日は、街の政庁か」
「うむ。夕方には帰ってくる」
「そうか、では、今夜もたくさんまぐわおう。――今日は、私が上になってしたい」
「……朝からそういうことは言うものではない……」
私は干した羊肉をちぎって粥の中に入れながら答えた。
できるだけしかめ面をしながら──そうでないと、顔がにやけてしまうから。
Fin
>>635 毎度毎度雰囲気を読ませる内容が実に実にGJです
ktkr
民族的に素直クールというのは目からウロコなアイデア。
GJ!
設定からディルベルから、全てに萌えた
相変わらずレベル高いですな〜GJ!
噛み砕けるぐらいGJ!
しかしゴロゴロー!し過ぎてタンスに頭をぶつけたので、慰謝料の代わりにSSを要求する!m9(`Д´)
641 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/13(月) 02:37:26 ID:OwBuc4+H
ちょwwwwwゲーパロ神降臨してるwwwwwwwwww
孕ませスレではお世話になりましたw
お疲れ様です、叔父貴。
オンドルが一瞬オンドゥルに見えてビビったwww
人
( 0w0) ウェ?
人
( 0w0) ウェイウェイ
こんな所に何でオメガ11がwww
>>645 人
いや、( 0w0) ウェイはライダーが先で、オメガ11の方は後付けだよw
ここは一緒にイジェクトしよう、な。
おい、義勇軍の俺にもイジェクトさせろ!
保管庫の方のPC直ったみたいですね。更新もされてるようです。
乙です。
『なぁ、海平くん』
「なに?」
『しないか』
「なにを?」
『SEX』
「いいよ、別に」
『じゃあさっそく……』
「いや、否定の意味で、否定の意味で」
『な、なんでだ? 私では、不服なのか!?』
「いや、智子さん美人だし、良いケツしてるけどさ」
『ではどうして? このバディを好きにしていいのだぞ!?』
「だってさ、地雷女じゃん? 智子さんさ。もう、やばいじゃん?」
『…………そんなことは…………断じてない!!』
「めっちゃ間があったじゃん。自覚あるんじゃん」
『そ、で、でも私は君が好きなんだ、ぐちゃぐちゃにされたいんだ、
ドロドロに絡み合って(中略)そうだな子供の名前は海平と私から一時とって、英気がいいな!!!!!』
「略したけど30分も語ってんじゃん。しかもなにオチつけてんのよ、スタッフ笑いしかもらえないよ、そんなの」
『あ、すまない。ごめん、でもそれくらい君の事を想っているんだ!! たのむ! 抱いてくれ! 嫁にもらってくれ!』
「わかったわかった、じゃあ条件をちょ、条件があるってチンコ揉むなコラ、まて、おい、まだまて話し聞けよおい」
『ああ、すまない、(おおきい♪)、先走ってしまって、(きっと先走り愛液が♪)、
聞くよ聞く何でもいうこと聞くよ、聞く振りしてフェラチオし〜ちゃおっと♪』
「丸聞こえなんだよ、マジ、なんなんだお前は、ったく。まあいいや、君とお付き合いする為の条件はたったひとつ!」
『 (お前っていった お前っていった お前っていった お前っていた♪) 』
「き、聞いてんの? ちゃんと聞いてよ、条件はただ一つ! 今から俺の言うことにすべて『いいえ』で答えること。
もしも『いいえ』以外で答えたら二度と俺にしゃべりかけない! いいね!」
『 は い ! ! 』
「終了ォ!!」
『 あ 』
「はーいはい、じゃ、もう二度と話しかけてこないでね♪」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
――彼、海平はこの日の智子に対する仕打ちを後悔することとなる。
このとき智子の理性は弾け、プライドは打ち砕かれ、心はちぎれ、
海平を追い求める、狂気じみた愛情を宿す、肉人形となってしまったからだ。
「……いやいや、こえーよ、瞳孔開きながら語らないでよ智子さん。マジで。っつーか、冗談、だよねぇ(汗」
『 本気だよ 』
これはいいヤンデレ
これはアレか、素直クールな娘をないがしろに扱うとこんな目に遭うという教訓話か。もったいないおばけみたいな。
>>649 クールじゃない件
でも萌えるよ。素直ヒートのスレないし、もうちょい見てみたい気もする。
>>649 こういうのが素直狂うになっていくんだろうな
将来が楽しみだ
>>652 一応「新ジャンル」スレはある。こないだも素直ヒートが投下されてた。
>>656 素直狂うって言い回しが?
それだったら前スレかどっかに出てた言い回しだから、
>>653のオリジナルというわけじゃないぞ。
干す
お久しぶりです。279です。件のシリーズの新作作ってきました。
前回と同じく本番なし、相変わらずエロ描写は貧弱と皆様の期待に添えるかどうか分かりませんが、少しでもハァハァしていただけたら幸いです。
でわでわどうぞ。
最近浩輔の様子がおかしい。どうも避けられている気がする。
就職活動も早々に終え、ゼミに提出する卒業論文もかなりいい評価を得ていると言っていた。
つまり私と過ごす時間が増えるのだ!……とはいかなかった。神様というものはことごとく私に苦難を与えるようだ。
神様は私を嫌っているのか?私も嫌いだと言い返してやりたい。
浩輔はバイトに勤しんでいる。それも病的な程に殺人的なシフトを組んでいるらしい。私の様々な調査の元判明した、彼のある日の活動記録をご覧にいれよう。
例その1:朝7時起床。9時〜12時前迄バイト。学校に移動した後17時迄受講。18時〜24時迄バイト。25時就寝。
例その2:朝7時起床。9時〜20時迄バイト。帰宅後自室にて27時前迄レポート、卒業論文のまとめ。
今2つ例を挙げたが基本的にこれをローテーションしているようだ。一体いつ寝ているのか私にも分からない。
ううむ、私の情報網をかい潜るとはなかなかやるな。こうなればもう部屋に<自主規制>や<法令違反>や<都条例違反>を仕掛けるしかあるまい。
うん、思い立ったが吉日と昔の人も言っている。早速買ってこよう。
待っていろ秋葉b(ry
よし、これでいいだろう。
これで夜食のポテトチップスの袋の中に携帯テレビを仕込まれようと拾えるぞ。
……深く聞かないでくれ、私にだって趣味くらいある。
さてと、自室に戻ってモニタリングするか。
〜1日目〜
ん、帰ってきたな。……やはりモニターを通してもかっこいいな。うっとりしてしまう。やけに機嫌が良さそうだな。
鞄を置いて……中から何だ?小さな……通帳か?眺めてニヤニヤしている。
おい浩輔、そんなにお金に困っていたのか?目付きが危ない、危な過ぎるぞ。傍目にはただの変態だ。まあそれでも非常にかっこいいのだが。
ん?今日はもう寝るようだな。風呂にも入らないのか。……いい匂いがしそうだ。してこよう。
〜2日目〜
昨日の浩輔はとてもおかしかった。部屋に入ると何かを慌てて隠していた。見ようとしたが全力で拒否された。性交も拒否された。
一体何を隠しているのか。
まあいい、今日もモニタリングだ。何かヒント位は見つかるだろう。
帰宅後1時間経過……パソコンでレポート作成中
帰宅後2時間経過……パソコンでレポート作成中
帰宅後3時間経過……パソコンでレポート作成中
……む、もう寝るようだな。意外と普通だった。
しかし3時間もパソコンのモニターの前で目が悪くならないのだろうか?明日の朝食はブ
ルーベリージャムを添えたトーストで決定だな。
……目がしぱしぱする。
〜3日目〜
浩輔が朝食のとき、兎みたいだね、と言ってくれた。私の可愛らしさを再認識したのか。
嬉しい限りだ。
モニターの中の浩輔はベッドに突っ伏している。調べによれば今日の予定は何も無い。
覚悟しろ浩輔、1日中監視してやる。私に隠し事が出来ると思うなよ。
数時間後。
寝ている。いやそれならそれでいいのだが、昼になろうというのにぴくりとも動かない。
私と過ごすのはそんなに嫌か?今日は休みなんだろ?何故私と過ごさない!?
……と、怒っても仕方無いか。ここ最近の殺人シフトは彼の身体と精神を間違い無く蝕んでいたからな。
私も疲れた。少し休ませて貰おう。
更に数時間後。
いない。浩輔がいない。どういうことだ。
…………………………………………………………………………
お帰り、と満面の笑みで浩輔を出迎える。彼は人と比べてあまり表情が豊かといえない私が笑んでいる事に不気味さを覚えたらしい。
―あの、えっと……?
もう一度お帰りなさいと繰り返す。
―あ、はい、ただいま。
無言のまま夕食が用意してあるダイニングへと背を向ける。
今日の夕食はレーズンパン、ミックスベジタブルを混ぜ込んだハンバーグにコーンポタージュスープだ。
―えーと……
途方にくれている彼を置き去りにして、一人合掌。いただきます。
―あの、この献立は……?
見ての通りだが、と一言置いて以下に自分がこの料理を作るのに苦労したか、という事を口にする。
私は今まで彼に出来合いのものを出した事は殆ど無い。その辺のスーパーの惣菜コーナーに置かれている商品なら大概は作れるし、味も良い自信がある。
何より私以外の誰かの作った料理を浩輔の口に入れるなんて耐えられない。
彼の好みも当然把握している。好きなものは何をおいても肉類。やはり成人して間もない男性はカロリーの高いものを好むようだ。甘いものにも目が無い。
苦手なものは臭いのきつい葉物野菜、トウモロコシ、酢豚の中のパイナップル、干しブドウなどだ。
そう、コーンにレーズンだ。当然今まで食卓に出した事は一度も無い。
レーズンパンの生地との格闘について熱く語っていると、彼はみるみる顔面蒼白になっていく。果たして苦手食材との邂逅に怯えているのか、
静かに怒っている私におののいているのか。
―ゴメンなさい!
急に謝ってきた。
―本当にゴメンなさい!何故怒ってるか分からないけど……
とりあえずで謝られても困る、と呟くと、彼は喉に餅を詰まらせたように目を白黒させる。
―何故怒っているんでしょうか?……心当たり?うーん……最近あんまり<仲良く>してなかったから?
―違う?……じゃあバイトバイトで……違う。……ゴメンなさい分かりません。
私は何時の間にか片付いていた自分の皿に視線を落とすと、囁くようにタイムアップだな、と息を吐き出した。
〜4日目〜
いつものように朝食を作ろうと台所に侵入をすると、そこには浩輔がいた。いつものように朝の挨拶をする。が、返事が無い。
―昨日、昨日の夜いっぱい使って考えてみたけどやっぱり分からない。教えてくれ。何が君の気に触ったんだ?
本当に一晩中考え抜いたようだ。その憔悴しきった顔が物語っている。
その問いに答える代わりに、昨日“どこへ”“誰と”行ってきたのか聞いてみた。するとそれまで合わせていた視線を外し、口ごもる。
昨日、私は見てしまったのだ。女性と親しそうにしていた浩輔を。
姿を消した浩輔を秘かに仕掛けておいた<都条例違反>によってあとをつけた。
電車に1時間ほど揺られて付いたその場所は、日本有数の、いや世界有数の繁華街だった。
ちなみに彼は映画を見に来るくらいしかこの街に足を踏み入れた事はない、と言っている。
なるほど映画館に入るのか、と考えながら改札を出ると、誰かと待ち合わせをしていたのか笑顔で手を挙げ合図を送っている。
相手は、女性だった。
それだけ確認すると私は踵を返した。
彼の隣にいていいのは私だけのはずだ。他の誰かがいるのは見たくない。
―……別に、やましいところに行ったわけじゃないよ。
ようやく口を開いた彼は私からの問いに1つは答えてくれた。だがどうして私の知りたい問いには答えてくれないのだろう?
私はいくら彼に浮気をされても構わない。第一がそもそも私の愛情など彼と一緒に居たい、という一方的な欲求だ。たとえ見返りが無くとも恨み言を言う筋合いは無い。
だが、彼は私に応えてくれた。愛していると言ってくれた。昨日の事が裏切りだとは言わない。一言、言ってくれれば私だって我慢が出来るのに。
―1人で……
嘘をつくな。もし君を尾行していなくてもその顔じゃあバレバレだ。
私は感情が表に出やすくて素直な彼に惚れたのに、今はそれがとても憎たらしい。澄ました顔をして嘘をついてくれたらどんなに救われたか。
―……君にはなにもかもお見通し、みたいだな。だったらこれも知ってるかな?
お手上げ、といった表情をしながらそう言って、彼はポケットから取り出した小さな箱をテーブルの上に放り投げるようにして置いた。
私はそれを手に取り、開けてもいいか?と視線で問いかけた。彼の了承を取って二つ折りのそれを開く。
中には膨れたような布が敷き詰められており、真ん中には環状の金属――指にちょうどはまるくらいの大きさで、小さな鉱石のくっついたものだ――が据えられていた。
―どんなのがいいかわからなかったからさ、一番シンプルなの見繕ってもらったんだ。サイズが分からなかったけど、そこは勘で選んでみた。合わなかったらチェーン通してネックレスにでもしてくれよ。
見たところ30万は下らない金額の指輪だ。そんな店に入るのは1人では少し抵抗があるだろう。もしかしたらデザインについての助言ももらったかもしれない。
―約束だろ?卒業したら俺も就職するわけだし……結婚指輪は無理だろうけど婚約指輪なら今のうちから頑張れば、な。
恥ずかしそうにそっぽを向きながら、一言一言選ぶようにして言葉を紡ぐ。こういうときくらい恥ずかしがらずに正面を向いて言ってほしいというのは我侭か。
不意に私の頬を涙が滑り落ちた。それが引き金となって声をあげて泣き崩れる。ワンワンと泣くことなんて子供のとき以来だ。狼狽した彼が私の肩を抱きしめる。
彼を少しでも疑った私が情けなくて、体重を彼に預けたままひたすらに涙を流し続けた。
暫くして落ち着くと、指輪を手にとってはめてみる。もちろん左手の薬指だ。少しサイズが大きいが扱いに困るほどではない。似合うだろうか?と聞いてみる。
―似合わないと思ったもの、買ってこないよ。
おっしゃるとおり、確かに愚問だ。思わず笑みを漏らす私を見て落ち着いたと判断したのか彼が離れていこうとする。
が、そうは問屋がおろさない、と袖を引っぱって逃がさない。どうしたの?という顔をしてこちらを見ているが構わず押し倒す。床を這う冷気を感じながら彼の胸に顔を埋め、鼻から大きく息を吸い込む。
ああ、この匂いだ。この匂いが私を落ち着かせる。絶対に、どこにも手放すものか。
私と浩輔との間には身長差はそれほど無い。ベッドの上で顔を寄せ合うとき、腰の辺りに彼自身を感じる程度の身長差だ。その感覚が、やはり腰から感じられる。
少しいたずらっぽく、少し抗議の色を混じらせて彼を見つめる。
こめかみの辺りを掻きながら視線を逸らせて、生理現象です、なんて言っている。
いけしゃあしゃあと。「興奮してます」と言え。本当に素直じゃないんだから。
大きくなったそこに手を置いて、スウェットパンツの上からさわさわと撫でさする。
―もう、朝なんですけど……ッ!
あれだけ私をヤキモキさせておいて反抗するなんて生意気だ。真ん中あたりを少し強く握り、ひるんだ隙に彼の下半身を露出させる。見るともう十分に大きくなっていた。
今度は直に掴み、ゆるゆると手を上下させる。彼は眉間に皺を寄せ、快感に身を任せていた。
任せてくれるのなら、と顔を寄せ先端を一舐めする。悲鳴を上げて飛び上がる。
どうした?ただの生理現象なのだろう?だったら、もっと我慢してもらわないとな。
先の少し膨らんで弾力のある部分まで口に含み、たっぷりと唾液をまぶしつけてからズルズルと啜りあげる。浩輔は苦しそうに喘いでいるだけで、もう反抗しようとはしない。
―普段、こんなこと、しないッ……のに……
たしかに、口淫なんて今まで殆どしたことは無い。浩輔は無理に求めなかったし、私も彼の与えてくれる快感を享受するので精一杯だったからだ。
だからこそ今日は疑った事に対するお詫びの意味も込めて彼に満足してもらおう。
愛おしいそれに根元から下を這わせる。汗の匂いがキツイが、それさえも私を燃え上がらせる。
時折大きく震える彼自身はキャンディか何かのように私の唾液まみれになっててかてかと鈍い光を放っている。
もう十分だろう。
そう判断した私は喉の奥に突き刺すように飲み込んだ。
―〜〜〜ッ!
彼の声にならない声を聞きながら、私はそれを飲み干すように吸い上げ、頭を上下させる。くちゅくちゅと私の唾液と、彼からの少量の分泌液が卑猥な音を立てる。
少し呼吸が苦しいが、浩輔の必死に我慢している顔を見ていると不思議となんともないと思えてくる。
ペースを速めたり、今度は止めて口の中で嬲ってみたり。そうしているうちに彼が急に大きくなった。
―ゴメン、も……ダメ……
構わないからこのまま出してくれ、と発音すると、その振動が最後の一撃となったらしい。喉の奥に大量に射精した。
携帯から連投解除
申し訳なさそうに縮こまってしまった彼にやさしくキスをして、口できれいにする。膨らんでくるそれを見ている限り、まだまだ元気はありそうだ。
―俺ばっかりよくなっても……
いいんだ、私がしたかったのだから、と言ってもまだグチグチ言っている。黙らせるために口にもキスをする。こっちは深いキス。
―……ニガ……
顔を歪ませてそんなことを言う。人に飲ませておいて何を言ってるんだ。
―自分から飲んだんじゃないか。
……返す言葉もない。
そうだ、言い忘れていた事がある。浩輔のほうへ向き直り、姿勢を正す。つられて彼も背筋を伸ばした。
『ありがとう、本当に嬉しいよ。』
彼と出会った奇跡を、そして伴侶として選ばれた幸福を、神に感謝しよう。
くっ、たまたま更新に気が付いたら目が離せなくなっちまったよ
エロ書くのって難しいねっ(はぁと
女側からの視点でエロを書いてみようかと思い立ち、筆をとる。……も進まない……orz
結局、前半はギャグ、後半はビール様とウイスキー大明神にお力をお借りして一気に仕上げました。
……なんで素面でエロ書けて、普通のシーンでは飲まないと筆が進まないんでしょうか?
まさか連投に引っかかるとは思いませんでした。初体験です。当然自分で解除するのも初めてでした。いやあ、ビックリしました。
あと訂正。
>>665の
『果たして苦手食材との邂逅に怯えているのか、(改行)静かに怒っている私におののいているのか。』
と改行されている箇所を、
『(改行)果たして……』と脳内変換して下さい……
ポテチの袋の中にテレビ云々はどう見ても私の趣味です、本当にありがとうございました。
駄文を読んで頂きありがとうございました。また何か書いてみたいと思います。
言い忘れていました。
今更ですが保管庫の管理人さんPC復旧おめでとうございます。
また、私の作品のポカも直していただいたようでお手数おかけしました。ありがとうございました。
以前、エロを書いてみたのだが……
どうしても自分の経験で書くものだからorz
案外、つまらないセックスしてることにorz
相手が変わっても、やること変らないことにorz
しかも、歳とともに淡白にorz
最近は勃つことすらorz
だから、エロが上手に書ける人が羨ましい
連投は確か同一IDで8回以上連続で書き込むと食らうんだっけ。
酢豚の中のパイナップルは自分も苦手な口だww
>>662 >>待っていろ秋葉b(ry
これなんかおかしくない?
>>676 そこに<法令違反・都条例(ry>なグッズの買出しに行くぜ!ってことじゃないの?
あー、
>>676は「アキバ」と読んじゃったから違和感があるんだな。
秋<aki>葉<ha>原<bara>だから、特におかしいことはない。
>>677のような意図は汲んでいると思われる。
そういえば、秋葉原はもともとアキバハラと読んでいたらしいな。
>>678 そういうことだったのか。ありがd
そして保管庫どこにあるのか教えて
保守
>>683 おk。いなべたかしごんりはみがにし
さて皆さん、私は今、この間投下した奴のボーイズサイドを書こうか、(時間軸的に)その前の奴を書こうか迷っております。
年末まで少し忙しく、どちらか片方しか書けそうにありません。当然両方書きたいのですが、容量の少ない我が頭脳では忘れそうです。
そこで質問なのですが、どちらを先に読みたいでしょうか?長いのを1つに絞る分、シリーズと関係のない短編を書こうかとも思っています。
図々しい質問かもしれませんが、教えていただければ幸いです。
先に書けたほうでいいよ
>>685 thx。ほんの数行だけですが書いていたほうがあったのでそれを仕上げたいと思います。
短編は……今までと違う感じの奴を出そうかと思ってるので「こんなの素直クールじゃない」と言われそうなものになりそうです。
hoshu
今日発売のチャンピオンに、「彼女の僕」って読み切り載ってるんだが
なんか素直クールっぽい
作中では不思議ちゃんって扱いになってるけど
話の展開がここに投下されてきた作品のに似てる気がする
作者はここの住人か?
689 :
名無しさん@ピンキー:2006/11/30(木) 19:46:16 ID:elcOmmny
hosyu
691 :
野園:2006/12/06(水) 01:55:13 ID:5NX9Awjq
ベタな感じだと思いますが投下します
――――
彼女はクラスでも少し浮いた存在だ
成績優秀で運動神経抜群、容姿淡麗で肩まで掛る黒髪が綺麗で神秘的
難を言えばその何事にも動じない意思により放たれる言葉
彼女の言い方には悪く言えば棘がある、冷静沈着な物腰は
到底高校生には思えない
だからといってクラスの女子からはぶられることはない
友達、とまではいってないようだが絶妙な距離間を保っている
しかも男子にはファンが多いらしい、彼女は全く気にしてないみたいだけど
俺?
俺は昼寝が唯一の楽しみの平平凡凡な高校生さ
なんで彼女について詳しいかって?そりゃ彼女が俺の前の席だからさ
窓際一列目、そこが彼女の居場所、その後ろが俺の居場所、簡単な話だよ
692 :
野園:2006/12/06(水) 01:56:43 ID:5NX9Awjq
高校に入学して初めての冬
クラスも大分落ち着き、色々グループも出来た
クラス内ピラミッドも存在する、せいぜいいじめと判断されないことを祈る
俺に所属するグループはない、たまに話す人間が2、3人いる程度
だがピラミッドでいえば上層にいる、これには自信がある
要は普段の行いが大切なのさ
「おーい、野崎、トランプやらないか〜?」
「悪ぃ、パス、寝る」
「おー」
ほらな、クラスでも中心的なグループから誘われた
孤立と孤高は違うのさ、下らないと思うだろうが俺には大事なことだ
「やっぱり坂西君よね」
「え〜、神田君もなかなかイイよ」
「う〜ん、うちのクラスはなかなかレベル高いからね」
「でも馬鹿だけどね(笑)」
「そうそう、男子なんて下半身でモノ考えてるんだから!」
昼休み恒例の女子の井戸端会議、俺が近くなのに猥談を話すのが最近の悩みの種だ
今日の話題はクラスの男子でもし付き合うなら、だ
ちなみに俺の名前は挙がらない、影が薄いせいだと思いたい
693 :
野園:2006/12/06(水) 01:58:54 ID:5NX9Awjq
「園咲さんは?誰がタイプ」
「私?」
お、珍しく園咲さんに話が振られた
園咲さんとはさっき話した「彼女」のこと、本に栞を挟み井戸端会議に目を向ける
「園咲さんって結構モテるって聞くけど、彼氏いるの?」
「交際している人物はいない」
「でもでも、ファンクラブがあるって噂だよ〜?」
「それは・・・私が変だから、それが若い彼等には珍しく見えるだけだ」
「じゃあ!、好きな人とかいる?」
いつもの癖で寝た振りしながら聞耳立ててたらとんだ展開になった
俺には分かる、さっきの吉井の質問で教室に緊張という物質が撒かれ
談笑したりトランプしたり本読んだり勉強したりしてる奴らの
全神経が耳に集まっているのが分かる
「好きな・・・人?」
園咲さんは眼鏡の位置をゆっくりと直しながら、ゆっくりと口を開く
「私が好きなのは、野崎・・・野崎優士君だ」
え?
「えー!、園咲さんの好きな人って野崎君なの!?」
「まぁ確かに顔は悪くないし、運動もソコソコ・・・でもいつも寝てるし」
「野崎君好きなんだ、いがーい」
「あぁ、彼になら私の全てを捧げてもいい」
ちょっとまて!なんて言った!?
俺?俺が好きだと言ったのか?
694 :
野園:2006/12/06(水) 02:00:25 ID:5NX9Awjq
今日はここまでです
では失礼します
……実にいい所で切れてしまった。これでは嫌でも続きを待たざるを得まい。
少し気になったのだが、地の文に句点は付けたほうがいいぞ。無いと文にぶっきらぼうな印象を与えてしまう。
ただ、敢えてそれを狙っていたと言うのなら……申し訳ないが読まなかったことにしてくれ。
ごめんなさいちょっとふざけてみただけです
696 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 06:29:48 ID:idBTzbjm
>695お前何がしたかったんだw
ともあれ
>>694GJ!
佳境で放置だけど元気に待つよ!
697 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 20:48:51 ID:97+o2+EQ
お、これは期待出来そう。
あーー!!続きが気になる!!
中わけでがんばってくれい
続きwktk
期待
続きをwktkしながら俺も投下。
新作いくよー。
幸せとは何であろうか。
富、名声、権力、経済力……。
そんな即物的な世知辛いものもあれば、オシャレや好奇心・探究心の充足など、ホビーによる満足感もある。
さらには異性との触れ合いなど、種の本能に忠実なものもあるだろう。
家族の笑顔なんていう、ささやかなものだって大切だと言う人は多いはずだ。
僕の場合は、平穏な生活だ。
まだ若いのに、ジジ臭いなどと言うなかれ。余裕があってこそ、気付けるものも多いのだから。
幸せは人それぞれ。それはいい。
だから、人様に迷惑かけないんなら、どんな幸せも肯定しよう。たとえ価値観に相違があったとしても。
「――と、いうわけで。貴方で遊びたいと思います」
頼むから、迷惑かけないで。お願い……いや、本当に。
「あー……取り敢えず、何がというわけなんでしょう?」
「だから。何となく昔のビデオ観てたら、とあるインスパイア受けたの。それで、実演してみようかな、と」
「ほお。休日に一大事だとイキナリ呼び出して、やるコトそれですか」
「天気が良かったからつい。思い立ったが吉日と。……なのに待ち惚けさせて、何様のつもりか?」
「うわ、僕が悪いんだ。キミ、何処のお姫様?」
折角走ってきたのに。
「話も纏まったところで、わたしの家に行こう」
聞いちゃいないし。というか、既に腕引っ張ってるし。いっそのコト、例の園児の真似でもしててくださいよ。
嗚呼、道行く人々は平和だなあ……。
とある冬の日。彼――吾妻勇喜は悩んでいた。傍から見れば羨ましいかぎりだが、本人はいたって真面目に悩んでいた。
何に。
それは愚問。いわずもがな、彼女のことである。
カナという名のこの女と出会って以降、波乱が日常となり、心休まる暇が無い。
いや、それだけならいい。多分。
好かれることに悪い気はしないが、もう少し自分へ向けて協調性というものを発揮して欲しい。
そう、自分に。
勇喜は悩む。何故、自分の言葉だけは届かないのか。というか、意図的に右から左へ抜けていくのか。
しかしとりあえずは……、
「どうした? 恥ずかしそうにして」
「いや……そりゃまあ……」
この状態を何とかしたい。
女に引き摺られる男というのは、お世辞にも格好いいとは言えない姿。好奇の視線に晒されるのもむべなるかな。
勇喜の抵抗も意に介さず、首根っこを捕まえてズルズルと運搬していく。
全て文字通り、である。
「ああ、買ったばかりの靴が……」
踵が物凄い勢いで削れていく。
この怪力女め。
カナ。本名不詳。年齢不詳。本人曰く、謎の美女。
日本以外の血が入っているらしく、若干色素の薄い肌と髪。レザーのジャケットとサングラス(度入り)がトレードマーク。
小柄ながら、その外見と姿勢の良さから格好良い女との印象がある。
事実、経歴不明の一点を除いては、多数の知り合いからもそう認識されている。警察にマークされてなければいいが。
「ふむ。貴方、何か惹かれるモノがありますね」
「…………は?」
この一言が、全ての始まりだった。
特に何か説明があったわけでもない。勝手に納得し、勝手に決定されただけの話だ。
その後の詳しい経緯を語る必要はないだろう。あれよあれよという間に、下僕だか玩具だか――勇喜はあまり認めたくないが――恋人だか、説明しにくい間柄になっていた。
贅沢は言わない。とりあえず、せめて本名くらいは教えて欲しい。
いくらなんでも、そのネーミングはあんまりだ。
何時までも引き摺られているわけにはいかない。
仕方ないので、若干の抵抗の意を込めて、乱暴にカナの手を跳ね除ける。次いで、横に立った。
この通りを目にするのは何度目だろう。何時しか見慣れた場所まで、既に連行されている。地の利はカナにあり。逃げても多分捕まるだろう。
「どうやら、観念したね」
「やっぱり解ってやってたんですか、アンタは」
嫌そうに顔を歪めてみせるが、童顔気味のためかイマイチ決まらない。
「ご褒美に、ジュースを奢ってあげましょう」
別に要らないとの言葉を聴く耳は持たない。
はい、とカナの両手で硬貨を握り締めさせられた。
掌には、冷たい金属の感触。開いてみれば……、
「……いや、いいケドさァ」
色違いの二枚。
当て付けに、複数の自販機巡りを敢行し、意地でも自腹を切らず一本GET。
微笑ましげに見守るお姉様。それに気付かぬ、鈍い少年。
一気に飲み干し、クズカゴへ。
軽く顔を叩いて気を引き締める。
「うし!」
「気合入ってるね。善哉善哉」
「というより、覚悟を決めたっていうか……。今更ジタバタしても、どーにもなりゃしませんしね」
鼻を鳴らし、むくれる勇喜。
どうせ流されやすい性分なのだ。ならば出たとこ勝負。成り行き任せでどうにでもなれ。
……と、毎回この調子で敗北記録を更新しているのだが、改善される様子は無い。
女は強い。一本芯が通っているのなら、男などより遥かに。少年は、それを本能的に理解させられている。している、のではなく。
なので、諦めは良い。絶対に譲れない一つさえ守れれば、後は野となれ山となれ、だ。
抜けるような秋晴れの空を見上げ、勇喜は呟く。
「あーあ。誰か理解者は居ないものかなぁ」
急に冷え込み出した秋の日。その苦悩の言葉は、虚しくも風に溶けて消えた。
「ぅえっくしっ! んあー……」
「…………?」
「鼻がムズムズしただけだよ。ンな目で見るな」
「…………」
「寄るな! 組み付くな! 密着するなッ!」
「暖めたげる」
「風邪じゃねえっつの!」
遠い空の下。田舎の村の少年が、友情を育めそうな誰かの気配を感じていた。
何処かで見知らぬ少年が、延々悪戦苦闘を繰り広げている頃、勇喜とカナは目的地に到着していた。
「相変わらず、でかい家……」
「簡単に相変わったら困るケド」
「いやいや、そうじゃなくてですね」
高い壁に、格子型の大きな門。広い庭を抜けて敷地の中心には、西洋風の館が、その存在感を示している。
何時も思うのだが、まだ若いのに、この日本でこの物件を、どうやって手に入れたのだろうか。
血縁関係からの相続……ではないのだろうな、この人のコトだから。
「今更だけど、カナさんって何歳?」
「まだ二十歳前」
「はた――」
「だったらイイね」
結局いくつさ!
思わずツッコミを入れたくなるが、グッと堪える。こんなことをすれば、カナの思う壺だ。
実際に越えてるのか、越えてないのか。それも不明瞭。ハッキリしてるのは、二十歳前後の若い女性であるというコトのみ。それ以上は、確実にはぐらかされるだろう。
頭を振って、頭を冷やす。次の質問へ。
「……此処の権利関係って、どうなってるんです?」
「ある人から預かったんの。管理人ってコトで」
任せるほうも任せるほうなら、任されるほうも任されるほうだ。豪快な人達である。
維持費だけでも相当なモノになりそうだが、高校生が気にするコトじゃないと一蹴された。
それ以上は、いくら頼んでも教えてもらえなかった。色々と理由があるとのコトだが、はてさて……。
石畳の通路を伝い、二人は館へ。
重い扉を開けると、シンプルな造りのロビーになる。
「――――」
勇喜は息を呑む。何度訪れても、イマイチ慣れない。
特に豪奢な調度品は置かれてないし、煌びやかな装飾が施されているワケでもない。
それでも、どことなくこの館を包む空気が、少年を圧倒する。どうにも落ち着かない。
「さて――と」
今度は、息を吐く。
いざ、戦場へ。
「いらっしゃいませ、勇喜様」
「や、キリちゃん。お邪魔します」
ふと見やれば、
「お、こんにちは。お前もお出迎えしてくれたのか?」
恭しく頭を下げ、客を出迎えたのは一人の少女。そして、その足元には白い猫。
こんな屋敷に住んでいるが、ある意味場違いの素朴な服装。気付きにくいが、整った顔立ち。穏やかで、優しく暖かな笑顔は、日本的な雰囲気を漂わせる。
カナの妹、キリ。
当然のように、義理、ないしは自称である。何しろ、見た目からして、純血の日本人なのだ。
ちなみに、キリは愛称。勇喜も、こちらの本名は知らされている。ただし、姓は依然として教えられていないが。
本当にコイツらは何者なのか。
少年は、ヘンな世界に片足突っ込んだ自分も変人なのかと悩む次第である。本気で逃げ出そうという気が起こらないのも、さらなる不安を煽ってくれる。
足元にまとわり着く屋敷の小さな番人が、今のところは心の慰めだ。
通された客間には、お持て成しの用意が万全にされていた。
「今、お茶を淹れますね」
「どうぞお構いなく」
客用のソファに腰を下ろすと、カナはテーブルを挟み対面に座した。家の中でも、サングラスは滅多に外さないのが気になる。
膝の上には、白猫のアキ。待ち侘びたように飛び乗って、足場を確かめると、そのまま丸くなってしまった。
可愛いし暖かいのは良いのだが、足を動かせないのが辛い。まあいいか、可愛いし。
頭から首筋、そして咽喉を撫でてやると、気持ち良さそうに目を細めて、さらに丸くなる。うん、和む。
テーブルの上には、手作りの和菓子と、凝った茶器。急須から湯呑みに注がれた茶の香りが、鼻孔をくすぐる。
建物には不似合いに思えるが、これはこれで妙に馴染んでいる風景だ。どんな文化も取り入れてしまうのが、日本の良いところです。
何はともあれ、持て成されたのだ。素直に舌鼓を打とう。
お茶請けはドラ焼き。この前は、芋羊羹。その前はきんつば。玄人裸足も度が過ぎている気がするが、まあ美味ければ良し。
大きく齧り付き、数度咀嚼したところを、お茶で流し込む。強い甘みから、程好い甘み。お茶で爽やかな後味へ。
勇喜はこの食べ方を好み、キリはそれに適した甘味を用意する。特に口にしない、小さな心遣い。
「…………」
湯飲みに口を付けつつ、カナは二人の様子を窺う。
仲が良い。
満面の笑みを浮かべながら、味の感想を述べる勇喜。それを熱心に受け止めるキリ。
口元の餡子を指で拭う勇喜。絶妙のタイミングで手拭を渡すキリ。
膝には、鼻をひくひく鳴らすアキ。
「…………」
そして、それらを見ているだけのカナ。
自分には向けない笑顔。
どこか抜けた少年と、世話焼きでしっかりものの少女。
良い雰囲気だ。
見ているほうも、思わず微笑を浮かべてしまいそうな程の。
そして、思わず妬けてしまいそうな程の。
というより、既に熟年夫婦の貫禄を醸し出しつつあるのはいかがなものだろう。
思考を巡らせ、怪しげな笑みを浮かべる。
一時的とはいえ、今のカナは蚊帳の外。気取られる心配はない。
まあ、別の笑顔を向けてくれたりもするから、構わないと言えば構わないのだが。それはまた別の問題。
「さてさて――」
どうしてくれようか。
カナはサングラスの下を光らせた。
「ご馳走様!」
「お粗末様です」
最後に一杯の茶だけ残して、キリは卓上を片付けに入った。テキパキとした動作で、みるみるうちに、余分なものは消えていく。
全てを盆に乗せ、台所へ向かう。
扉が閉じられたところで、勇喜の表情が変わった。明らかに何かを待っている。
「…………」
「…………」
二秒、三秒。僅かな沈黙。冷や汗が浮かぶ。
「あの……」
「ん?」
カナは、わざとらしく小首を傾げる。
怖いなァ。絶対に何か企んでるよ。
無理でも何でも、全力で逃げておけば良かったと後悔する。
これも何時ものコトだ。毎度毎度、似たような感覚を味わっているのに、ちっとも成長しない。学習能力の欠如か、それとも……。
「で、ビデオで思いついたコトって何ですか?」
「ああ、そんなコトもあったね」
言って、カナは優美な仕種で――何とも庶民的なデザインの湯呑みがミスマッチだが――茶を口に運ぶ。
やはり、単なる口実か。
要するに、揃って休日をまったり過ごしたかっただけなのだろう。
だが、この機を逃すワケには……。
「それじゃあ――」
「思い出したところで、当初の予定通り、実演しましょうか。勿論、協力してくれるね?」
「んが!?」
だが当然。この機を逃すワケもなく、カナが先手を打った。
さらに、折角貴方が思い出させてくれたのだし、と駄目押しされる。勇喜、見事に墓穴を掘る。
「そうだね。例えば、こんなのはどう?」
ピッと人差し指を立て、微笑むカナ。
その様子が可愛いのはいいのだが、例えばという部分が気になってしょうがない。
「ダーリンだ〜い好き」
しなを作り、声もキャラも作って勇喜の傍に寄る。
雷娘? ……ではないようだ。ならば一体、何であろうか。何処か覚えのあるフレーズではあるが。
薄れた記憶を探り、答えを出す前に、続きがきた。
「んふ。顔、真っ赤だぞ」
真っ赤じゃない。色っぽく鼻先を突付かれても、断じて真っ赤じゃない。
だがコレは、
「あれ?」
確か……。
「んん〜、ダーリンったらぁ。照れ屋さん」
「よりによってソレですかッ!」
「あはははは。怒った怒ったぁ」
正解とばかりに、抱きついてきた上に、頭をくしゃくしゃと乱暴に撫でられる。
アキは、触らぬ神に祟り無しと、そそくさと寝床を移動。対面のソファで丸くなった。
まるで呆れてるように見えるのは、おそらく気のせいではないだろう。
この後、幾つかの身体を張ったネタに、勇喜は翻弄される。キャラクターの崩壊も何のそのだ。
もう好きにしてください。二面性三面性じゃ収まりませんよ、この人。
「ところで。これ、全部アドリブですよね?」
「当然です」
「…………そですか」
その時、アキの耳がピクンと動いた。
「お待たせしまし――あ」
キリが洗い物を終えて戻ってきた。
ドアを開けた瞬間、キリの目に飛び込んできたのは、
「あの……姉様、勇喜様……?」
紆余曲折の果てに、ソファに押し倒されてる(ように見える)カナの姿。
「え、えっと……コレは、その……ね?」
しどろもどろに弁解しようとするも、この状況はどうにもならないだろう。誤解を解くにも、どれだけのパワーが必要になるか。解けたところで、きっと悪印象は持たれたままだろう。
終わった……。
勇喜は心中で涙する。こういう時、男は悪者にならざるを得ない。
いや、一縷の望みに賭けて、玉砕覚悟の言い訳を続けてみるか。
縋るようにアキを見るが、そっぽを向かれた。尻尾でソファを叩いて、自分を巻き込むなとの意を示す。
足掻くか諦めるか。数秒にも満たない、刹那の逡巡をしていると、納得したようにキリが胸前で両手を打った。
「あ、なるほど。計画成功したんですね、姉様」
解決。
猫が退屈そうに欠伸をした。
つまり、
「もともと揃ってグルになって、僕を玩具にするつもりだったと?」
「もう少し引っ張っていぢめるつもりだったんだケドねえ……」
ちらり、と半目でキリを見る。
「すみません。ついウッカリ」
キリは苦笑で答える。
「でも、あまり長いこと蚊帳の外なのは、やはり良い気がしませんし。ですよね、姉様」
「ん。次はキリに譲る」
「おーい。目の前目の前」
怖いね、何とも。
「まあ、つまり、アタフタ慌てる姿が可愛いので、見てみたくなったというワケだね」
「可愛い……可愛いですかあ……」
「お気に入りの玩具って、何度遊んでも飽きないモノでしょ?」
「泣いていいですか?」
可愛い。
男として、ちょっとショックである。常々気にしているコトだ。贅肉も少なく、身体は筋張っている。四肢も随分伸びたものの、それでも顔付きは如何ともし難い。
引き締めていればそれなりなのだが、やや幼く、迫力が不足しているのは否めない。
もちろん、そこを突いて言っているわけではないのは解る。解るからこそ、一人で腐れるだけだ。
新しく淹れてもらった茶で、気を誤魔化す。
「でもでも、私も可愛いと思いますよ。そんな勇喜様が好きなのですし。悪いコトじゃないし、落ち込まないで下さいな」
「キリちゃんまで……」
とりあえず、コレで終わったと油断していた。
「さて、時に勇喜。貴方――」
「?」
閑話休題、とばかりにカナがトンでもないコトを口にした。
「――キリとシたね?」
「はははははははは。何のコトやら」
「手が凄く震えてますね。お茶、零れてますよ」
当事者なのに、冷静に状況説明をするキリさん。
神経が極太なのか、心臓に剛毛が生えているのか、はたまた天然なのか……。
というより、普通に考えるならば、やはり……。
「申し訳ありません」
目と目で通じ合い、ぺこりと頭を下げられた。
このウッカリもの……!
「そ、その……コレはつまり……」
今度はこちらに言い訳をする番になるのかと思いきや、あっさりとお許しの言葉が出た。
「大丈夫、責めてるワケじゃないよ。ただ――」
少しだけ、カナは頬を染めた。
「わたしの純潔を奪って間もないのに……っていうのは、どうかと思って」
「百戦錬磨なんて言うから……百戦錬磨なんて言うから……」
痛い。言葉が胸に刺さる。
嘘は言っていなかった。ただし、ナンパを追い払うコトに関してだが。
頭を抱え、勇喜は涙する。
純潔を奪われたという点では、勇喜も同じコトである。しかし、そこで感じる責任は、男女では天地の開きがある。
軽く見るつもりはないが、百戦錬磨という響きに安心感があったのも事実だった。
そんな自己嫌悪の渦の中、心を優しく包み込んでくれるキリにコロッとイッてしまったワケで……。
いくら茶を流し込んでも、潤う気がしない。
「それに、あの後来てないから、ちょっと心配だったりするケド」
「いやまあ、流石にそう連続では引っかかりませんよ?」
「でも湯呑みは落とすのですよね」
キリ、ナイスキャッチ。
「嗚呼――僕はどうして、何時頃大人になってしまったんだ……」
「二ヶ月くらい前、雰囲気に流されたからじゃないかな」
「二ヶ月前の秋の夜、貴女は僕に何をした!?」
「ナニ」
「うわ、直球!」
流されやすい自分が憎い。こんなに不誠実な男だったのだろうか。
色々あって、精神的に不安定な時期だったとはいえ、あまりにも迂闊だった。
後悔先に立たずという言葉の意味を、身に染み入るように理解する。先人は、往々にして後の世のための教訓を遺してくれるものなのだ。
「僕ってヤツは……僕ってヤツは……」
何と罪深い。ご先祖様の尊い犠牲を無駄にしてしまった。願わくば、自分の失敗も教訓の礎にならんことを……。
「ま、とにかく。手を出すのが、わたしとキリ限定ならとやかくは言わないよ。キリは?」
「私もそれで問題ありません」
「あ、そう……なの?」
「そりゃ、多少は気になるケド……あれだけ強引に攻めていれば、何処かへ逃げてしまうのも仕方ないかと思う部分もあるよ」
自覚はしていたワケだ。
だからこそ、見ず知らずの相手ではなく、仲良しの姉妹ならば、妥協もできるという理屈だろうか。
取り合えず、改善しようという選択肢は存在しなかろう。
「両手に花なんだから、貴方も不満は無いでしょ?」
「…………」
しかし、こうも簡単に割り切りがいくものなのか。
勇喜は思う。
元々、身内には大らかな人達だ。他の誰でもない、姉妹だからこそ、というのは間違ってはいないだろうが……。
「ん?」
だからこそ。
だからこそ……?
「――――ッ!?」
しまった、これは罠だ。
その瞬間、
「ゲェ――――ッ!?」
ようやく気付いたかといった具合に、二人の目がキラリと光る。うっすらと浮かぶは、悪魔の笑み。
見える。二人の後ろに、三国時代の宰相の姿が見える。
前門の虎、後門の狼とはよく言ったモノ。完全に八方塞である。
「あはははっ気付いたか。それじゃ、これからも貴方で遊ばせてもらうね」
「末永く、お世話させていただきますね」
「は、はははははは……」
ニュートンさんが、何かを発見しそうな具合に頭を落とす。
ウッカリ暴露したのではなかったのか。まさか自分自身を罠の一部とするとは……。
すみませんご先祖様。人は、何時までも過ちを繰り返すモノのようです。
だからこそ、カナとキリ、どちらかが確実に手中に収めた瞬間、片割れにも益が発生する。
手を伸ばせば、何時でも手に届く位置に置かれることになる。というより、所有権の共有が近いか。
無関係の者が介在すれば隙も出来ようが、当事者同士が結託してるとなればその限りではない。狩猟者は、確実に獲物を仕留めるだろう。絆が深ければ尚更だ。
――最初から揃ってグルになって、勇喜をモノにする計画だった、と。
「本当は、気付いた時にはもう遅いところまで追い詰めようと思ったんだけど」
「くそ、まだまだ……」
「そうだね。まだ少しは逃げる気起こるでしょう? ……逃げても捕獲するケド」
「むしろ狩るつもりなので、お覚悟を」
「お覚悟をって――」
言われても。
とっくの昔に覚悟は出来ている。
状況を理解し、受け止めるコトに関してだけは、優れているという自負がある。
「逃げ切ってやる」
そして、いつか立派になって、立場を変えてやる。追い立てられるのではなく、追いかけさせる立場に。
そのためには、一旦逃げ切って、呪縛から解放されることが不可欠なのだ。
「本当に逃げ切れますかね?」
アキを胸に抱きながら、キリが言う。アキはお気に召さないのか、抜け出そうともがいている。
「逃げ切るさ」
「えい☆」
決意を打ち砕くように、キリにより、勇喜の膝上に落とされる白猫。
迷惑そうに睨みつけるものの、すぐさま寝心地を確かめ始めた。欠伸をした後に伸びをして、数十秒で、丸くなり寝転がる。
「寝心地の良いベッドは、逃がさないって」
「ブルータス、お前もか……」
頭から首筋を撫でてやると、アキは気持ち良さそうに目を細める。
それはそうと、
「ところで、晩御飯食べていくでしょ?」
「是非そうして下さい。ちょっと作りすぎちゃいましたから。いつもの倍くらい」
「――その据え膳、食わせていただきます」
ガッチリ射程圏内に捉えられている以上、逃げ出すだけでも多大な労力を必要としよう。
成否は別として、結果が出るにはまだまだ時間が掛かりそうだ。
情けない話だが、今夜は眠れそうにない。迸る若さも大きな障害となっている。
「あーあ、お前だけは味方だと思ってたのにな」
咽喉を撫でていると、指先をアキに噛み付かれた。腕を抱え込まれ、爪を立ててキックされた。
ひょっとして、妬いているのはこいつだけなのかもしれない。
「――ぃっきし!」
「ドリフ?」
「じゃねえって」
「……やっぱり風邪?」
「あー……かもしんね。って、だからくっつくな!」
遠い空の下。田舎の村の少年が、とある一面で自分に匹敵しそうな誰かの気配を感じていた。
以上っす。いや、予想以上に時間が掛かった。
……師走なんか嫌いだ。
先月中に仕上げとくべきだったなあ。
712 :
野園:2006/12/09(土) 05:24:46 ID:h/Wx8v+a
>>692-693の続き
空気が重い、男子達の視線が痛い、頭に乗せられた園咲さんの手が暖かい
そりゃあ、園咲さんは可愛いし何でもこなす完璧人間だ
好かれて悪い気はしない、だけど好かれるほど面識がない
あぁ、園咲さん俺の頭をそんなに優しく撫でないでくれ
しかし、どうしたものだろう
周りの女子達は園咲さんのカミングアウトに盛り上がりまくっている
仕方ない、起きよう
「・・・ん、・・あんまり騒ぐなら向こうでやってくれよ」
よし、動揺は顔に出てないはずだ
「な・・・なんだ?」
これはさすがに驚いた、教室いる生徒がみんな俺を見ている
そして、女子達と一部の男子はニヤニヤと残りの男子達は複雑そうな目を俺に向ける
俺も軽いパニックだったんだろう、あろうことか園咲さんに聞いてしまった
「・・・なにかあった?」
「いや、よくある昼休みの談笑だよ」
「あ、そう」
その会話がまずかった、みんな堰を切ったように笑いだす
しかも、園咲さんは何事もなかったかのように読書を再開した
が、すぐに何かを思い出したように読書の手を止め俺の方を向く
「あ、そうそう」
「はい?」
「野崎優士君」
「はい」
「愛している、付き合ってくれ」
「はい・・・・・・・え?」
713 :
野園:2006/12/09(土) 05:25:59 ID:h/Wx8v+a
シーン、と聞こえてきそうなほどの静寂、そりゃ声もでないって
しかも「好き」ならまだしも「愛してる」なんて数ランク上の愛情表現ですよ
そういやさっき勢いに乗って園咲さんからの告白に即答してしまった気が
「そうか!よかった、相思相愛だったんだな」
「え!?あの、えーっと・・いや、だからその、それはですね・・っつか、うーん」
ヤバイ、頭が回らない
「私が嫌いか?」
そんな悲しそうな顔をされて頭を縦に振れません
「じゃあ好きなんだな!」
なんかもう考えるのメンドクセ
「うおーっ!園咲が野崎に告白したぞ!!」
「しかもOK!?きゃーっ!」
「園咲さん大胆ー!」
「まさか園咲さんに先越されるなんて、良いなぁ彼氏」
「野崎よ、お前ってすげぇよ・・・」
「そんな、有り得ない・・・理論的に僕の理解を越えている」
「野崎君、親友になろう!」
外野がウルセー!、騒ぐな!園咲さんはそんな天使みたいな笑みを向けないで・・・
もう寝よう、起きたら考えよう
「寝るのか?」
どうにでもなれ、だ
「おやすみ、優士君」
714 :
野園:2006/12/09(土) 05:27:12 ID:h/Wx8v+a
きっと夢さ、だってあの園咲さんだぞ?そうさ、起きたらいつも通りなんだ
「優士君、起きるんだ」
「・・・ん・・ふぁあ・・・あ〜?」
ヤベ、寝すぎた、もうHR終ってるぞ、つーか5・6時間目の担任はなにやって・・・
そうか、今日の午後LHRだったっけ
あれ?
俺誰に起こされたんだ?
「フフ・・・よく寝てたな」
夢オチ失敗
「じゃあ、帰ろう」
「え?」
「どうした?恋人同士が一緒に下校するのは普通だろう?」
「そ〜・・・ですね」
これは素直に喜ぶべきだろうか、別に他に好きな人がいるわけじゃないし
向こうから好きだと言ってくれてるんだ、何も問題はない・・・・よな
「うん帰ろう、園咲さん」
「・・・」
「ん、どうしたの?」
「その・・・名前で呼んでくれないか?、雪乃って」
「・・・・・・・・うん、帰ろう雪乃」
「ああ!」
そうさ、これから好きになっていけばいい
俺の考えが甘かったと感じるのは暫く経ってからだった
715 :
野園:2006/12/09(土) 05:30:18 ID:h/Wx8v+a
今日はここまでです
>>711 GJ!
エロまでもう少し掛ると思いますが、出来るだけ急いでみます
では失礼します
二人揃ってひっそりと投下しやがって
GJだぞ
お二方共にGJ!
振り回す彼女も大層魅力的なんだが、振り回される男も微笑ましいw
二人ともGJ
ところで現在485KB
そろそろ次スレ?
二人ともグッジョブ!
>◆uW6wAi1FeE氏
>「ゲェ――――ッ!?」
ジャーンジャーンw
>野園さん
最後の「ああ!」が素クールの喜びが表れているようでいいね。
次スレだけど、テンプレは今の奴からVIPの奴抜いて、保管庫のURL追加くらいのいじり方でいいよな?
/ ̄ ̄ ̄フ\ _ ノ^)
// ̄フ / \ .//\ ./ /
// ∠/ ___\___ __// \ / (___
// ̄ ̄ ̄フ /_ .//_ //_ / \./ (_(__)
// ̄フ / ̄//////////// | (_(__)
/∠_/./ ./∠///∠///∠// ∧ ∧ /) (_(__)
∠___,,,__/ .∠__/∠__/∠__/ (´ー` ( ( (_(___)
\ \ \/ ̄ ̄ ̄フ\ \ \_ \ _ /⌒ `´ 人___ソ
\ \ \フ / ̄\ \ .//\ //\ / 人 l 彡ノ \
\ _ \//___\/∠_ // < Y ヽ ヽ (. \
//\///_ //_ /// 入├'" ヽ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
// //.////////∠/ ヽ-i ヽ__ ヽ
/∠_//./∠///∠// .\\ `リノ ヽ |\ ヽ
∠____/.∠__/∠__/∠フ\.\\ c;_,;....ノ ヾノヽ__ノ
さあこっから埋め〜〜〜。
13キロか……えっと6500文字だっけ?埋めるの結構キツイな。
というわけで埋め
724 :
名無しさん@ピンキー:2006/12/13(水) 03:30:17 ID:WGjDUM9Z
次スレの即死回避にはどれぐらい必要なんでしょうか?
30じゃなかったっけ?
しかしこの板だとそう簡単に即死することはないと思うが
スレ数見ろ、もうすぐ圧縮だ。