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'´ ,、`ヽ
i ,ノノ ))リ
|!il|*゚ヮノl|
ノ,〃ヽy/´!うijニニニニフ
(( 〈__/水トJ
` く/_j|_ゝ
新スレです。楽しく使ってね。仲良く使ってね。
Z
投下します
少女の赤い瞳は見るものを深く吸い込んでしまいそうなほど澄んでいた
その瞳のさきにある物を少女は苦々しい思いを込めて見つめていた
もう少し・・・・・もう少しだ・・・・少女は自分に言い聞かせて今にも噴出しそうな心を鎮めた
鳥たちが舞い飛び歓喜の声がここまで聞こえてくる
少女にはその声は耳障りでしかない
唇を噛み締めて先にそぼえる大国とその中心の真っ白な城を見つめた
鐘の音がここまで響いてくる
口にひろがる血の味を感じながら少女は小さくつぶやいた
「行きます・・・・・」
手に構える剣を振って血を払うと少女は今の外見には似つかわしくない澄みきった声でそう言った
少女の顔はまるで作ったかのように整っている
この世の美をすべて独り占めしたかのようなその外見の少女の容姿は今は赤く染まっている
誰にものかもはや確認できないほどの返り血に染まった少女は唯一色が赤ではない青い髪を掻き分けて微笑した
「・・・・・ゼル」
悲しい旋律があたりに響いた
華が舞い空の鳥も踊る
国中が祝賀ムードの中の中心の男女は前が見えないほどに作られた道を進む
「浮かない顔ですね?」
赤い髪をなびかせて少女は銀髪の少年にそう問う
少年は少し悲しげに微笑むと空を見上げた
自分はなにがしたかったのだろうか・・・・
ダークグリーンの瞳から涙が零れ落ちた
「泣いて・・・・いるのですか?」
少女がまた問うと少年はまた悲しげに笑んだ
悲しげな少年の頬に少女の指が触れる
二人はなにを語るでもなく歓喜に沸き喜びを直接的に表現する民衆に手を振った
美しい旋律があたりに響いた
退屈だ・・・・それが率直な感想だった
周りは盛り上がっているけど私にとってはいつものと変わらぬ光景にしか見えない
闘技場に目線を落ちして私は何度目かのため息を付いた
円状の舞台の上で細身の女性といかつい男が剣を交えている
「・・・・・・」
こんなのいかに彼女が強いかを国や他国にアピールするための行事に過ぎない
勝つのは彼女だ・・・・リルス・レリエル
私を保護する護衛部隊の団長
エイリアはしなやかな動きで男の鈍足な攻撃を回避しその首筋に磨ぎ覚まされた切っ先を向けた
男が恐怖で身を下げるとエイリアはなんのためらいもなく腹を殴りつけた
全身が痙攣したかのように男がビクビクしだす
リルスが男に背を向けると男はまるで地響きをたてるかのよな勢いでその場に大きな身体を横たえた
わかりきっていた結末に私はまたため息をついた
「おお、さすが巨乳怪力魔人プレシア!」
大きな歓声に私は退屈な時間を一瞬で忘れ去った
「うるさい!」
「げふ!」
歓喜の集中する先は若い男女の姿があった
一人はすごく顔立ちの整った少年
そして綺麗な青い髪が印象的な人形のような綺麗な顔立ちの少女だ
少女はなんのためらいもく円状の舞台の淵にいる少年にとび蹴りをかました
その後ろには巨漢が泡を吹いて倒れていた
この少女がリルスの決勝の相手?
私は自嘲気味になりながらも少し楽しみが増えたような気がした
「・・・・・・」
「・・・・・・」
いつになくリルスが本気なのだと感じた
今まで彼女が本気を出したところなんて私は見たことがない
それが今は息を切らし肩を激しく上下させている
「弱ってるぞ〜、短髪のお嬢さん〜、早くその暴力魔人のプレシアを退治してやれ〜」
左目を青くした少年がおどおどしながら淵から声を掛ける
「・・・・誰のために私が戦ってると思ってるんですか!」
「・・・・はて?」
「ゼルが優勝商品のキーオブザトワイライトが欲しいって言うから私は・・・・」
「にやり・・・・」
下品な声を上げて少年が笑んだ
すると少女は顔を真っ赤にして
「ち、違いますから!あなたのためじゃないですから!」
緊張感のかけらもない・・・・呆れてしまいます
現にリルスも呆気にとられて相手が隙だらけにも関らす呆然としている
「いまじゃ!叩けーーーーー!!!!」
少年が大声を上げると少女はハッと息を飲んで攻撃を仕掛けた
逆に隙を取られたリルスの剣が天空に舞いしばらくして円状の舞台に突き刺さった
私は苦々しい思いを押しとどめることなく下に降り円状の舞台の淵に来た
「ずるいではないですか!不意打ちなんて!」
「うるさい!うるさい!勝てばいいんだよーーーーだ!」
子供ですか?あなたは・・・・・
少年が大声を上げて舌を出した
「ゼルが勝ったわけじゃないのに・・・・かっこ悪い」
「俺はお前が俺の為に戦う姿が見たかったんだ・・・・」
また少女が首まで真っ赤に染めて地面をふんずけた
「あなたのためじゃありません!」
「愛を感じたぞプレシア・・・・・お父さんはうれしいぞ」
「だから、私は惚れてもいないし愛してもいませんから!」
「素直じゃないな・・・・プレシア」
また関係ない話を・・・・
「こんな試合無効です!」
私は苛立ちを隠すことなく少年を睨んでそう言った
「そんな〜いけず〜、姉ちゃん・・・・まけてくれよ」
「ダメです!」
「ならどうしたら納得してくれるんだ?」
納得?そうですね・・・・
「あなたがリルスに勝利できたのなら・・・・いいでしょう」
少年は少し不安げな顔をした・・・・当然ですね
正面から戦ってリルスに勝てる分けないものね・・・・
どうやらバカじゃないみたい
「いいよ・・・・なんてったって俺つお〜いし」
しかし軽いのりで舞台に上がると少年はプレシア・・・・そう呼ばれた少女の手の剣を取った
「ゼル・・・・・」
「心配してくれてるのかい?」
「そ、そ、そ・・・・そんなことないじゃないですか!なんで私があなたの心配なんて・・・・しなくちゃいけないんですか!」
「はいはい・・・・心配せずに見ていてくださいませ」
少年がそう言うと今度は少女が淵に下がった
「いいですか・・・・リルス・・・・あなたに敗北は許されません」
「わかっておりますメシアさま・・・・」
リルスは鋭い眼光で少年を睨みつけた
「下がってください・・・・メシアさま」
「ええ・・・・」
私が淵に下がると同時にリルスが剣を下段に構えて少年に向けって行く
少年はどこ吹く風という感じでやる気なさげに剣を構えた
そして目を閉じた
数秒の間のあとに開かれた瞳を確認すると同時に私は自分の目を疑った
気づいたときにはリルスは倒れ少年の剣には鮮血が付いていた
私はまた怒りを抑えることなく舞台に上がり少年の頬を叩いた
「条約を読まなかったのですか?殺してはならぬと・・・・」
「よく見てものを言え・・・・俺が誰を殺したって」
驚くほど冷たい声に私は全身を射抜かれたかのように動けなくなった
な、なに?この感覚は・・・・・
重い動きで私が背後で倒れているリルスのほうへ目をやった
え・・・・血どころか怪我すらしていない
「ご、ごめんなさい・・・・私、あなたの剣に血が付いていたから」
「血・・・・?」
少年は驚きで目を見開いた
なんかなにごとにも動じないって感じだけど
驚いた顔になぜか私は興味を引かれた
ただのギャップだろうけど・・・・
「・・・・?あなたの目・・・・・不思議ですね左右で違う」
「な・・・・・!」
近くで見てその瞳に違和感を感じた
右目の色が赤
左目の色が青
「あんた・・・・見えるのか?色が・・・・・」
「ええ、それがなにか?」
少年はなにを思ったのか私の前に突然ひざまずいた
「あなたを探しておりました・・・・・もう一人の姫君」
少年はすっと立ち上がると私の頬に口付けた
「え・・・・・」
こんなことされたのは初めてだった・・・・・
頬から全身にかけて熱が伝わる
「あなたは・・・・・・いったい」
にっこりと少年が笑むと同時になにかが少年の頭にぶつかった
それでもまたにっこりと笑む・・・・またなにかが少年の頭にぶつかった
「さすがに剣はやめてくれよ・・・・・プレシア」
少年が顔を私から横にずらすとそう言った
私も続くとプレシアと言われた少女の後ろにはどこから持ち出したのか樽と剣が山のように積まれていた
「嫉妬深いな・・・・プレシアは」
「・・・・・っ!」
心なしか投げられる樽の数が増えたような気がする
「誰が嫉妬なんて!してません!してませんから!誰があなたのことで嫉妬なんて!!」
「取り乱すプレシアも可愛いな〜・・・・・ぐへ!」
止めとばかりにモロに顔面に樽を食らい少年は倒れた
これが・・・・私と少年・・・・いえ、ゼルとの出逢いでした
ここまで読んでくださった方、お疲れまです
なんか主人公(ゼル)のせいでラブコメっぽくなっていますが・・・・
ゆくゆくは物悲しい嫉妬劇にしていくつもりです
生きここ同様過程が長くなりますが・・・・
ここでひとつ・・・・悩みを聞いてください
『春の嵐』の続きが気になってしかたがありません・・・・作者様続きをぜひ!
悩み相談終了です
管理人様お疲れ様です
申し訳ありませんがBLOODの一章にサブタイトル付け忘れてしまいました
お手数ですが一章に『青い華』のサブタイトルを付けてください
それと余談ですが生きここの奈々生存ルート書こうと思っているのですが・・・・
できたら投下してもよろしいですか?
すいません、リルスは団長ではなく隊長です
管理人様できれば
『私を保護する護衛部隊の団長』
を
『私を保護する護衛部隊の隊長』
に訂正していただけないでしょうか?
重ね重ね申し訳ありません
水は、廊下を走っていた。進んでいる方向は先程誠が出ていったのとは逆の方向、探し
ている人物は二人居た。一人は誠で、もう一人は華だ。顔に浮かべている表情は暗く、頬
には涙があるものの、しかし速度は最高の速さで走っている。
「どこに行った、あのクソガキ」
壁に手を突いて立ち止まり、周囲を見る。ここに通い始めてまだ数日だが、それでも校
内の仕組みは大体理解していたし、人気の少ないところも調べた。だがそのどこにも華の
姿は見当たらず、水は小さく舌打ちをする。
「まさか」
最悪の答えが思い浮かび、水は眉根を寄せた。
残る部分は屋上で、そこは誰の目にも触れずに人を殺すことが出来る。今の時間なら近
くに誰も居ないから、音が聞こえることもない。何も銃や刃物などの武器を使わなくても、
突き落とすだけで簡単に命を奪うことが出来るのだ。もしかしたら、華とさくらが争って
いるかもしれない。そうだった場合、下手をしたらどちらかが死んでいるかもしれない。
昨日交渉したときの態度からすると、その可能性は充分にありえる話だ。
その思考を振り払い、水は屋上に駆け出した。
「華ちゃん、どこさ」
叫びながら校舎を駆けて階段を上り、屋上の扉を開ける。
「何だ性悪」
そこにはフェンスを背もたれにして、膝を抱えて座っている華が居た。他には人影は見
えず、誰かと争った形跡もない。まずそのことに安堵をしながら、しかし思考を開始する。
「さくらちゃんから連絡か何かあった?」
その質問に答えずに、こちらをただ睨みつけてくる華に舌打ちを一つ。水はそのまま華
に近付いていくと、襟首を掴んで無理矢理に立ち上がらせて視線を合わせて睨みつけた。
「早く答えろ」
「離せ」
叩き付けるように離すと、水は思考を再開させる。
華の口振りや態度からすると、さくらからの連絡は多分来ていない。だとすれば、今一
番の邪魔者である華を考えに入れずに行動している可能性が高い。
「だとすれば、冗談だろ?」
「何があったんだ?」
華の質問は敢えて無視をして、最悪よりもっと酷い可能性が思い浮かんだ。誰かと二人
きりになる方法、二人だけの世界を作る方法は、相手の合意がない場合は大きく分けて二
種類になる。片方は二人以外の邪魔者を全て排除するというもので、今の場合はこちらに
は当て嵌らない。何度も交渉をして明らかに邪魔者であるということが分かっている自分
や、誠の心の大部分を占めている華に何のアプローチも無いからだ。誠に近付く人間を毎
晩殺していたさくらなら、比較的誠に近い位置に居る自分や華をどうにかしようと思うだ
ろう。キスまでした自分や華に対するその思いは強いに違いない。それをしてこないとい
うことは、もう一つの手段を取ることになる。つまり、自分と相手の強制的な隔離。誠の
拉致をしている可能性が高くなってきた。
「何なんだ。答えろ!!」
「うっさい!!」
掴みかかってきた華に怒鳴り返すと、再び襟首を掴んだ。
「大体、何で今華ちゃんがここに居んの。いい加減にしないと旦那に愛想を尽かされるよ」
「もう、尽かされた」
表情を歪めた華の頬に、一筋の滴が流れる。
「うらぎ、られた。みすて、ら、れた。きらわれた」
涙声で途切れ途切れに呟く華を、水は睨みつける。
「お前が、お前のせいだ。お前が悪い、お前が誠を取ったんだ」
「そう思ってる訳?」
小さく呟くと、今度は力無く手を離す。
「そりゃ、旦那も見放すわ」
「なん、だと。お前が悪いんだろ!!」
「だって、華ちゃん。旦那を信じてないじゃん」
水の口から流れる言葉は冷たい。その声に、華は表情を更に歪めると力無く座り込む。
口からは小さく言葉が流れているが、しかし水は気にしない。
不満そうに見下ろすと、
「昨日言った言葉は嘘なの? 旦那を心の底から信じているみたいなこと言って」
「ボクは信じてたんだ」
水は華に背を向けると数歩進み、
「嘘だね」
「違う、なのに誠は裏切った」
「ほんと、いい加減にしてくれない?」
立ち止まり、苛立った様子で水は叫ぶ。
「裏切ったのは華ちゃんだよ。旦那は優しいから、拒絶されて泣いた私を慰めてくれた。
キスをしたのもこっちから。それなのに華ちゃんは旦那を信じないで、拒絶した」
「そん、な」
「旦那が悲しむのを見たくないから、わざわざ恋仇の華ちゃんを探しに来たのに、がっか
りした。旦那を信じられないアンタはもう駄目だ、辛い思いした私が馬鹿みたい」
怒りに任せて屋上の扉を蹴り、その大きな音に再び苛立ちを覚えた。
「ほんとに、旦那がかわいそうだ。もう良い、私は旦那と幸せになる。アンタは来るな、
黙って一人で泣いていろ」
乱暴に涙を拭いながら屋上の扉を開けると、水は階段を駆け降り始めた。頭の中に浮か
んでいるのは先程華へと向けた言葉。誠が自分を拒絶したという事実と、誠と一緒になれ
ないということに改めて悲しくなる。溢れる涙は止まらないし、叫んだ喉は痛くてたまら
ない。そのことでもまた泣けてくる。
「これじゃ、駄目だ」
しかし水はそれを無理に振り払うと、誠のことを考える。階段を降りながら携帯にかけ
てみたが、通話不能のメッセージが返ってきた。さくらの携帯に電話しても、同じく通話
が出来ないようになっている。校舎の中でも電波は届く筈だから、多分電源を切っている
状態。交渉の前に着信があり、そのあと今の状態になったから切る暇など無かった筈だ。
それに今の誠は華の探索で今は情報が欲しいだろうから、切っている筈もない。
そうすれば、答えは自然に浮かび上がってくる。
さくらは既に誠を拉致していて、邪魔が入らないように携帯の電源を切っている。
「畜生」
次にどこに居るかを考える。
誠の向かった先は華を追い駆けてのもの、正確には華が走っていった方向に向かっての
ものだ。今になって、被ると二度手間にならないように反対方向に向かったのを悔やみ、
自分に向かって文句を垂れるが、それは後回しだ。誠が向かった方向は人通りが多く、人
気が無いところは体育館くらいだろう。
考えていると丁度下駄箱の辺りに着き、念の為に靴を調べる。運良く二人は学校から出
ていないらしい。さくらのことだから上履きのまま連れ去った可能性もあるが、まだそれ
なりに人気があることを考えると可能性は低い。
その他にもう一つ。
誠に何かしたあとで自分達に危害を加える可能性もある。
「使わないのが一番だけど」
呟きながら履くのは、鉄板入りの安全ブーツ。廊下に土が付くが非常事態なので仕方な
い、あとで拭けば大丈夫と言い訳のように呟きながら、完全に思考をまとめる。
水は体育館に目算を付けると加速した。
今回はこれで終わりです
そろそろ最終回
あと少しなので頑張りたいと思います
楽しみですたい。
は今、白羊病院に居る。
黒崎先輩のお見舞いをするために。
混沌と言う言葉がある。
今の僕の心境を表すのにここまで適切な言葉は無いだろう。
あれから妙に最上が僕に構ってくるような気がする。
一昨日は人馬遊園地、昨日は双魚商店街。
一度受けた手前、僕は最上に誘われるままに遊びに行った。
まあ、その度にけっこう酷い目にあったような気もするけど、それでも楽しかった。
不覚にも、許される物ならもっと味わっていたいと思ってしまった。
でも許されはしない、人道からも僕の良心からも…きっと黒崎先輩からも。
いや、今のは正確じゃない。
僕の良心は…少しづつ、本当に少しづつ呵責を弱めていた。
それでも僕の良心は今の所は健在だった。
本当は…今日も最上から誘われていた。
けど今日は断った、今日だけは断りきれた。
昨日の夜に黒崎先輩の意識が戻ったと連絡があったからだ。
僕の良心は、黒崎先輩への想いは…まだ完全に死んだ訳でもなかったみたいだ。
最上は少しだけ悲しそうな眼をして…ただ一言、『待ってるから』と言った。
僕の足は…僕の腕は…辛うじて止まってくれた。
いっその事あの時あの場で最上を抱きとめてしまえばどれだけ楽になれただろうか?
でも僕には恋人が居た、どんなに想い離れていても恋人が居た。
曲がりなりにも僕の方から告白して恋人になってくれた人が居た。
そんな訳で僕は今、白羊病院に居る。
黒崎先輩への想いが本当に死んだのかどうかを確かめるために。
良し、考えはまとまった。
僕がここに来た目的も定まった。
もういつまでもドアの前に立っている意味は無い。
僕はもう一度ドアの上に取り付けられたプレートを読む。
『黒崎栞』たしかにそう書いてあった。
ご丁寧な事に個室であった。
僕は軽く深呼吸をして…ドアをノックした。
コンッコンッコンッ…
「はい、どうぞ」
声が聞こえた…何日かぶりに聞く黒崎先輩の声だった。
「黒崎先輩、入りますよ」
「健斗か!?ちょ…ちょっと待ってくれ、まだ髪に寝癖が…」
「怪我人が余計な事を考えないでください、入りますよ」
ガチャッ…
「健斗…」
「おはようございます、先輩」
先輩が居た、頬を赤らめ先輩あからさまに慌ててるが…普段は絶対に見る事のできない慌てている先輩が…
不覚にも…可愛いと感じてしまった。
手の動かせない先輩の代わりに髪を軽く梳かす…
こうやって僕が先輩の世話を焼くのなんていったいどれだけ昔の話だっただろう?
最近はともかく、昔は私生活に関しては限り無くズボラだったな…
…っと、いけない、口元がにやけそうになっていた。
いくらなんでも怪我人の前で妙な顔はできない。
それに…僕の頭に最上の顔が浮かんでいた。
仮にも恋人である人の目の前で、僕は最上の事を考えていた。
だから僕は…僕は思いっきり顔を引き締めて言った。
「黒崎先輩、大丈夫ですか…」
「大丈夫、この位どうって事はないよ」
それはあからさまな強がりだとわかった。
現に先輩の両腕にはギブスが取り付けられているし、先ほどお医者さんからも容態を聞いたばかりだ。
「聞きましたよ、全治一ヶ月じゃないですか」
そう言うと今度はしゅん…とした顔になり、しおれてしまった。
こんなにも弱々しい先輩を見るのは初めてかもしれない。
僕はまた…胸が熱くなるのを感じた。
いつか…そう、いつか感じた感覚を覚えた。
「すまない、君には心配をかけた…」
しゅん…として、顔を下に向けたまま言った。
昔は…先輩と付き合い始めた頃は、こんな顔を頻繁に見ていたような気がする。
もう遥かな昔のように感じる日々が蘇ってきていた。
「別に…良いですよ…」
そう答えるのが精一杯だった。
僕にはそれしかできなかった。
一瞬でも気を抜けば今すぐにでも抱きしめたい衝動があった。
それでも僕の想いがそれを止めていた。
僕が最上に対して抱いている想いが…おそらく昔の黒崎先輩に対して抱いていた物と同質の想いが…僕を拘束していた。
だから逃げた…
「やはり、一人は寂しいよ…」
…先輩がそう訴えた。
僕を必要としているのがわかった。
今更ながら気がついた、僕は誰かから必要とされるのに弱い。
僕は助け舟を求められるのに弱い。
…とても弱い。
最上からも…黒崎先輩からも…これは僕の己惚れなんだろうか?
だから逃げた…
「あの…すいません、この後用事があるんですよ」
「えっ…?」
僕は呆気に取られる先輩にそう言い放ち、逃げた…
「その…先輩、おだいじに」
…ガチャン
逃げた…僕は逃げた…紛れも無く逃げた…
最上を想っていた、黒崎先輩を想っていた…僕にはその違いがわからなかった。
良心が最上への想いを捨てろと言った、良心が先輩への想いを捨てろと言った…僕にはその違いがわからなかった。
「先輩…なんで今更…そんな顔をするんですか…」
僕はそう呟いていた。
君は駄目っ子に萌を感じた事はあるか?
ちなみに私はあります。
保護されるよりも保護したい倉田健斗、さあどうする倉田健斗?
…実はこの先の展開はまだ考えてません。
現恋人の意地を見せるか、幼馴染パワーが炸裂するか、昇龍の麒麟児を絡めて三すくみにするか…
いっその事、黒崎栞とジェンティーレで不屈争奪戦を繰り広げる案もあるのですが…
「はぁはぁ、・・・・・・っクソ」
やばいやばいやばい。とんでもなくやばい!
何がやばいかと言うと、今のこの状況がやばい
何故、俺は全力で走っているのだろうか?
本当なら家でゆっくりとしていたかったのに。余りにも不条理じゃないか?
そもそもの発端は1時間前前に遡る・・・
−1時間前−
「ふぅ〜、やっと帰ってきたな」
ぐったりとした感じで、俺は空港の入り口にいた。
なんだか滅茶苦茶眠い。時差ぼけのせいだろうか。
俺こと「藤田康明」はそこらにいる普通の高校生である。(自分で言って泣けてくる・・)
ただ、神様は何を思ったのか俺に面白いプレゼントをしてくれた。
「留学してみないか?」
は?とその時は冗談かと思ったのだが、事は違った。
親父がアメリカに会社の都合で転勤になってしまったのである。
母も親父に同伴ということだったので、半ば強制だったが、俺は多少迷った末OKした。
理由は簡単である。おもしろそう、だったからだ。(当然、女性関連の事も)
それから2年後の今、俺は再び日本の空港にいる。
「お〜い。康明こっちだ」
親父がクラクションを鳴らしながら車の中でまっている。
ヨシ!懐かしの我が家へいざ帰る。
そして・・・、
「うわ〜、全然変わってないな〜」
2年ぶりに我が家を見たわけだが全くといって良いほど変わっていなかった。
「そりゃそうだろう。健さん達がいるんだから」
「えぇ。桃子さん達に会うのも本当に久しぶりですね」
前者は俺の親父の「藤田康介」、後者は母である「藤田明子」
お互いもう40に成ろうかというのに、未だに年中新婚夫婦状態である。
大体、俺の留学も母が親父の海外転勤に対して、
「一緒に連れて行ってくれないなら殺してやる」
という事からはじまったのだ。バカップルぶりがよくわかる。
「よぉ!康介やっと帰ってきたか!」
「アキちゃんおかえりなさい!」
さて、余談は良いとして、家に入った俺達を笑顔で迎えてくれている人達。
左から「吉川恵二」「吉川桃子」 俺の叔父・叔母だ。
俺の家はちょっと変で、二つの世帯が住んでいて、それが「藤田家」と「吉川家」である。
て、あれ誰か1人足りないような・・・。
5人で居間に入って土産などを出していたとき、
「ああ、康くん。冬なら「プルルルルr」」
突然、家の電話が鳴った。
恵二さんがすぐに電話に出た。他の3人は談笑中。
何か話してるようだが・・・え?俺に代われって?何で、誰?
そう思いながら電話を代わる。
「もしもし、どなたですか?」
「康明か?」
へ?え?女の声?って、このクールボイスはもしかして・・・、
「あの〜・・・もしかしなくても・・・・、冬姉?」
「・・・・・・・・・・・」
あれ、もしかして違ったか?
「5分後に公園」
それだけ相手は伝えると電話をきってしまった。
いや間違いなくさっきの声は冬姉だった。
叔父叔母夫婦の娘で、俺の従姉弟である女性。
そして・・・俺にとっての恐怖と畏怖の象徴。
俺は親達には何も言わずダッシュで家を出た。
記憶が正しければ公園までは走っても10分はかかってしまう。
せっかく家でゆっくりできると思ったのに・・・(涙
このときの俺は、きっとオリンピックにもでられる位の早さだった。
それ位に恐ろしいのだ・・・・冬姉は・・・。
そして、今に至るという訳。
すいません。以前にクーデレ(素直クール)を書くと言っていた者です。
ですが文を書くのが大学のレポート以来と言うことでとんでもない駄文になってしまいました。
というよりヒロインがまだ出てきてすらいません(次こそは・・・
新参者ですがどうかよろしくお願いします。
待ちかねたぞ・・・
し、新作だとぉぉぉおおおおおお!!!!
激しくwktkして待ってます、全裸で。
アビス殿の作品といいといい、このスレはやっぱ姉系キャラが多いんだね。
過保護は個人的に幼馴染を応援してる。
ぜひとも、立派な泥棒猫になってくれ。
そう……みんな……
新作のほうに行っちゃうんだぁ……
いや?怒ってないよ?……でもね……フフッアハハ……
>>28 GJ!!期待!
>>25 駄目っ子すごくいいっす!
保護欲とかそういうのが……!
先の展開は、黒崎栞とジェンティーレで不屈争奪戦を選ぶ……より、全部を読みたいですなw
クーデレキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
どのような嫉妬や修羅場になるか今からwktk
そういや義母モノってこのスレだと少ないね
エロゲーだと義母モノは嫉妬結構あるのに
義母というと、どうしても年増・熟女……
……オバサンというイメージが先行して、萌えにくいってのがあるんじゃないかな?
その点、エロゲなら若さや可愛らしさも含めて「義母の魅力」をビジュアル的に訴求できる。
でもテキストオンリーのSSでは、職人にそれなりの力量が要求されちゃうのかも。
走った。とにかく走った。以外にも春華の足が早く、なかなか追いつかない。ただでさえ病み上がり直後だってのに。
「ま、まてって!春華!」
気付かなかったが、外はもう暗く、雨がフっていた。びしょ濡れだろうと構わん。裸足だろうと気にしない。
このまま逃げ切られたら、嫌な予感がする。だから疲れも無視、痛みも無視。
「いや!追って来ないでください!もう、いや……いやなんです!」
罵倒されようが構わない。追いついてやる。
それから数分走り、たどり着いた場所、そこは………
「春華……」
春華は線路の真ん中に立って居た。
「もう……いいんです。晋也さんがいない世界なんて、無意味です。振り向いてくれなくちゃ駄目なんです……」
「そんなこと……」
「どうしても……絶対あの女が良いって言うんですか!?」
「ああ…」
しっかりと首を振る。
「あいつだけは、悲しませられないんだ。昔、約束したんだよ。」
「そんな……私は、私はいつまでも、晋也さんにとって後輩でしかないんですか?それいじょうは……認められないんですか!?」
ダメだ。だめなんだ。……あの娘との約束だから、俺は志穂しか愛せないから。
「やめろ……戻ってこいよ。」
でも、春華は大切な人なわけで。大切な………
「嫌なんです……自分の願いがかなわないなんて……」
遠くから電車の走る音が聞こえる。春華は動こうとしない。
「春華!!」
ダメだ。あきらめるな。
『後悔しない様にしてくださいね。』
はるか昔に言われた様な言葉が思い出される。もう片方だけ、自分が良いと思う方だけだなんて嫌だ。
俺は……わがままなんだよ!!
「はるかぁ!!」
「私が死ぬのを…見てくださいね。」
電車のライトに照らされる春華。一歩、また一歩、春華に近付く。とどけ!間に合え!!
「うおぁぁぁぁ!!!!!」
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「…晋也さん?」
俺は泣いていた。線路から外れたところで押し倒す形で抱き締めていた。
「間に…あった…」
「なんで……なんでたすけたんですか?……余計つらくなるだけなのに。」
「馬鹿野郎!!」
春華の体がビクッと一瞬堅くなる。いきなり叫ばれて驚いたようだ。
「俺は…お前が居なくなって欲しいなんて思わないよ。何時もみたいに馬鹿やって……笑って……そんな生活がいいんだ……心地良いんだよ。」
「……うぐ…ひっく…」
春華の目からも涙が溢れる。雨とは違う、きれいな涙が。
「…俺にとって、お前は後輩だ……でも、誰よりも大切な後輩なんだ………それに、俺を『せんぱい』って呼んでいいのもお前だけなんだよ………」
「うぅ……せん……ぱい……ひくっ」
とても懐かしい様な響き。『せんぱい』。これが俺だ。
「せんぱい…せんぱい!」
何度も叫びながら、力強く抱き締められる。それに答えるように、もう逃がさない様に、俺も力強く抱き返した……
・
・
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・
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・
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・
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「せんぱい?」
「ん?」
帰り道。二人でずぶ濡れになりながら、志穂の所まで戻る途中。
「あの、その…最後に、わがままというか、お願いがあるんですけど……」
「おう!言ってみな。出来る限りの事はするぜ!」
ビシッと指を立てる。
「あのじゃ、じゃあ、私の……私の処女をもらってください!」
「へあ?」
予想外のことに困惑。
「せんぱいに処女をいただいてもらえば、私死ぬまで貞操を守り切れる自信があります。うーん、けっなげ〜」
「……前向きに善処します。」
「あ、政治家的発言は禁止ですよ。」
「うーん、それは俺の一存で決められないからなぁ………」
「却下。」
志穂の答えは速攻だった。
「ええ!?た、頼むって!そうすれば、後腐れなく解決なんだよ!」
「あ、あんたねぇ、あんな目にあっといて、それはないでしょ?私が許すと思う?他の女とHを認めるほど、放任しないわよ。」
くっ!やはり志穂の壁は厚かった。春華と土下座してみたものの、一向に良い返事は貰えない。
男と女が土下座し、こんな事を頼む構図は、ハタからみればかなり滑稽だが……しかたない、こうなりゃ最終兵器……この鉄壁、崩してみせる!
すっと近寄り、志穂の耳元で呟く。
「…………」
ボッ、と音が聞こえるぐらいに、急に志穂の顔が湯で上がる。…勝機はみえた!
「な?悪くはないと思うぜ?」
「うぅぅ〜。ひ、卑怯よぉ……」
下を俯きながらぶつぶつ言っている。そして……
「わかったわよ……OK。ただし、これっきりだけよ。それに……私も、えっど……同伴した、3Pなら……」
「(^∀^)」
「うわ、露骨に嬉しそうな顔したわね……」
「ありがとうございます!志穂先輩。伊達に胸は小さくないですね!」
「胸は関係……きゃぁ!」
喧嘩しそうな二人をヒョイと抱き上げ、颯爽とベットに向かった。
志穂って結局レイプされたの?
>>41 GJ!3P突入ktkrwww
でも……なんというか、されたかどうかわからんけど、
レイプしかけた本人の春華を普通志穂が許すかどうかって言ったら……許さないと思うし、
しかもさっきまで必死に春華に会いに行くの止めてたのに……
なんか気持ちがよくわからん……って感じです。これから心情の説明入るならスマソ。
晋也の友人某が救出したんじゃなかったけか?
ついにハーレムktkr
前作では状況が悪すぎて、さすがの晋也でも不可能だったが遂にやったか
修羅場の後のこういうラブコメみたいなのもいいなw
晋也の喜んだ顔ワロスwwwwwwwww
558 名前:名無したちの午後[sage] 投稿日:2006/06/03(土) 00:11:06 ID:lrqAPPG50
まあ、姉妹と主人公が居候という設定が一番萌える・・
甘えん坊の姉、やきもち焼きの妹・・
の二人で主人公を独占する甘い生活の日々を送っていたが
しかし。
いつも、冗談半分で主人公に早く彼女を作りなさいと言いつつ、
彼女とデートの練習だから、デートを楽しんでいた姉妹。
そんな、鈍感な主人公に告白する可愛い女の子が・・。
優しい主人公はその女の子と付き合うことに
その件を姉妹に報告すると
姉はボロボロと涙を流して、妹は発狂するという今まで家族として
見せなかった顔に驚く主人公。
すでに交際している彼女を裏切れず、報告してから病んでゆく大切な家族の姉妹を見捨てることができずに
主人公は苦悩する。
だが、交際相手の彼女は冷酷にも。弟、兄離れもできない姉と妹から距離を置いた方がいいと
家に出て行くことを薦める。彼女の親戚が運営しているアパートに空きがあるから、そこで暮らすべきかと。
主人公は彼女の言葉通りに従い、姉妹に家を出てゆくことを報告するが
姉妹は・・。
必死になって、主人公の体にしがみつく。
出て行かないで・・。私たちを捨てないで!!
わたしたち、○○がいないと生きていけないんだよ
この↑のプロットで誰か書いてwww テラ萌えるw
>>47 アビスの中の人です
最後までのプロットを誰かが書いてくれれば自分が書きますよ?
いまの時点で書こうと思えば書きますがこの先を構想する時間がないので・・・・
と、言う訳で自分の文でいい(これが一番の障害かも)プロットを最後まで書いていただければ
ブラッドと交互か同時に書きますよ
>>49 神すぎw でもそんなあなたに多大な感謝を送ります。
>>47は嫉妬本スレで書かれたプロットだよな・・。
確か、朝倉姉妹をモデルにしたんじゃないのか・・
前後の会話の内容がダ・カーポネタのように気もするしww
>>49 とりあえず、応援します・・。
本当に神すぎるわwwww
452 名前:名無したちの午後[sage] 投稿日:2006/05/24(水) 22:08:33 ID:WCeA5VRT0
例えば、主人公が交通事故を起こす。その被害者は同じ年頃の女性で家族の身寄りがないため
主人公が彼女が入院している間に身の回りの手続きを行い、罪の重さから懸命に看病する
今まで孤独だった彼女は一緒にいてくれて看病してくれる主人公に惹かれつつ、依存してゆく
彼女が退院するまで体は良くなって、別れの時がやってくる。
というネタからどうやって修羅場に展開するのかよくわからなくなってきたそ
453 名前:名無したちの午後[sage] 投稿日:2006/05/24(水) 22:45:26 ID:+gdskWs80
>452
フムン、展開を先延ばしにするならもう一回怪我だ。故意が事故かはご自由に。
そこでヒロインではなく主人公を怪我させることによりポジション入れ替えという手段もありだ。
ライバル役として投入するなら主人公の知人側からなら「いいかげん彼に迷惑かけないでくれる」
お見舞いに来たヒロインの知人「あのさ、彼ってカノジョとかいるのかな?」
一人の男に二人以上の女がいれば生まれるのが修羅の道。続きは下で
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 監禁七日目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148113935/l50 面白半分に向こうに張られたプロットをコピペをする
このネタを元にして書いてくれる神を随時募集しておりますwww
このスレとヤンデレスレをずっと見てて、嫉妬とヤンデレの味を知ってしまってもう普通じゃ満足できなくなっちまったよ…
そういや最近本スレ行かないなぁ……。
ほとんど此処オンリー。
では作品を投下致します・・
第3話『壊れる心』
猫崎猫乃の交際を始めてからすでに一週間も経っていた。
恋人というよりは仲のいい友達同士って感じだが、徐々にお互いの距離は縮まっているように思える。
昨日は、俺が一人暮らしと聞いて、猫乃は「じゃあ、わたしが夕食作ります。一緒に食べましょうね」と言って、
見事な料理がテーブル上に並んだ。あの梓とは劣るとも勝らない料理は全て俺の腹の中に収まった。
今日は、朝から迎えに行くと断言していた猫乃がやってくる。
それまでにちゃんと歯を磨いて、朝ご飯を食べなきゃ。
学校の制服を身に纏い、鞄に教科書の代わりに暇つぶしの漫画を押し込んでいるとインターホンが鳴り響く
案外、早い時間だな。
俺は急いで玄関に向かって、ドアを開けると驚愕した。
そこにいたのは、幼なじみの梓がニコニコと笑顔で立っているのだから。
「おはよう。翔太君」
「お、おはよう」
さすがにこの事態は予測不可能であった。梓が家に迎えに来るのは日常茶飯事だったが、
俺が断固に梓を拒否し続けたおかげで、ここ最近来ることはなかった。
「どうしたの、翔太君。さっきから、おかしいよ」
おかしいのはおまえだっての。
脳裏に恋人である猫乃の姿が浮かんだ。迎えにやってくるという、
猫乃と梓が鉢合わせするという最悪の悲劇を防げるかどうかが俺の生命線を握っているだろう。
1・梓と猫乃の運命の鉢合わせ。誤解した猫乃は泣きながら、俺をフッてしまう。
現実的にありえるってか、何もしなければ最悪の修羅場を迎えるパターン。
あれ? これは確か梓の彼氏が誤解する時の状況と物凄く似ている感じが。
2・ここはなにがなんでも梓にお帰りいただいてもらう。
直情で思い込みが激しく頑固である梓を説得させる材料がない。
俺を迎えに来るのが最優先のため、何が何でもやり抜くことだろう。
3・猫乃の携帯に電話して、今日の送り迎えはやめてもらう。
付き合っている彼氏がいきなり、今日は送り迎えはいいわ。
と、言ったら、フツ−に彼女は傷つくぞ。理由は特にないわけだし。
あう−。どうすれば。
4・正直に梓に事情を説明して、俺と猫乃の恋の行く末を応援してもらう。
昨日のホームルーム後に咄嗟に現われた猫乃のおかげで、
クラスの空気が10ぐらい下がった気もしなくはないが。そのおかげでさすがに鈍い人間でも、
猫乃と俺が付き合っているのが梓にもわかっているはずだ。優しいから、丁寧に説明したら
きっと……。
「梓。お願いだから、俺の話をよく聞いてくれ」
「うん? 何かな?」
「俺はあの昨日のホームルームに現われた女の子と交際している。
そう、今から一週間前ぐらいにな。その子が迎えにやってくるんだよ。
もし、お前と鉢合わせしてしまうとその子が誤解するかもしれないだろ?」
「だから、何かな?」
いや、お前。その辺はいろいろ気を遣う場面じゃないかな。
「今すぐ帰ってくれないか?」
「嫌だと言ったら?」
梓が優しく微笑して言う。
俺の頼みを最初から聞く気はないらしい。
更に、俺が梓を強制的に追い出そうともしないことも計算済みであるようだ。
そんなやり取りを繰り返しているうちに、最悪はやってきた。
「先輩。おはようございま、す?」
滑らかな可愛らしい声と共に現われたのは、恋人の猫乃である。
戸惑いながらも、視線は真っすぐに俺の方を向いていた。
「先輩。この人誰なんですか?」
「あ、あ、」
想像していた最悪な場面に俺は声を出すことができない。
幼なじみの梓と恋人の猫乃が遭遇するという絶対的な状況に追い込まれて、普段なら冷静に立ち回ることができるのに。
今はオロオロと二人のご機嫌をうかがうのが精一杯であった。
「私は翔太君の幼なじみの風椿梓って言います。あなたは?」
この冷たい声を聞いただけで、男の諸君は誰もが背筋に悪寒を走らせるだろう。
女の殺気は声だけで男を脅かせることができる。野蛮な男の暴力よりも数十倍の効果があり、その威力は絶大だ。
そのような殺気を向けられても、猫乃は表面上では笑顔を絶やせない。
「そうですか。先輩の幼なじみさんですか。私は水野先輩の恋人の猫崎猫乃と言います。よろしくお願いしますね」
と、猫乃は梓に握手を求めるかのように手を差し出してきた。
梓と猫乃の両者は笑顔だけど、目が全く笑っていないまま、がっちしと握手を交わした。
余計に力が入っているように思うけど。
たぶん、気のせいだ。うんうん。
「じゃあ、さっさと行きましょうよ。先輩。遅れちゃうよ」
「ああ、そうだな」
表面上の社交辞令が終わって、梓の存在を無視してせがむように猫乃は俺の腕を引っ張っている。
まだ、学校の仕度ができてないんだが……。
あっ。
梓がジト目でこちらを睨んでいる。嫉妬する女の子は可愛いんだけど、それは梓の彼氏にみせてあげてくれ。
って、なんで、梓は俺に嫉妬してるんだ?
そんな事を思いながら、俺の部屋に鞄を取りに戻ってきた時には、すでに梓の姿は消え去っていた。
昼休み。
猫乃が作っていたお弁当をごちそうになるために待ち合わせしていた屋上の階段を登っていた。
相変わらず、この階段を登ると梓と彼氏がキスをしていた嫌な記憶が脳裏に蘇るが、
その痛みはどんどん小さく鈍い痛みと変わりつつある。
心地良い風が吹き、猫乃は長い猫のような髪型がゆらゆらと揺れているのが見えた。
「よぉ。待ったか」
「ううん。今、来たとこですから」
嬉しそうな笑顔を浮かべる度に俺はこそばゆい気持ちになってゆく。
彼氏彼女の関係になるのはこれほど心が癒される物とは、猫乃と付き合うまでは何にも知らなかった。
少なくても、梓に彼氏ができたと知ってからは情緒不安定になっていた分、今はとても幸せのような気がします。
作ってくれたお弁当を受け取ると、無我夢中に食べる。その姿をずっと見つめている猫乃。
他人が彼氏が自分の作ったお弁当を食べてくれるのは純粋に喜ばしいことだ。頬を赤くして、猫乃が
「先輩。は−い。あーん」
恋人の王道パターン。彼女の手作りお弁当を彼女の手で食べさせてもらうという常套な手段。これで参らない男の子はいない。
「まだまだ、一杯ありますから。味わって食べてくださいね」
果たして、俺は正気を失わずに昼休みを乗り越えて行けるのか……。
そんな感じに昼休みを過ごした俺は心と気力と腹の中身は最高潮になっていた。
梓について、あれこれと考えていた頃が嘘のように心身とも軽い。人生は苦もあれば、楽もあるって言葉は現実にあるんだなと一人で納得しながらも、
我が教室の前に辿り着く。
中が騒動しいが、気にすることなくドアを開ける。
「………」
俺が教室に入った途端にクラスにいる生徒全員が急に静まり返った。
これは新手の苛めか? 重々しい空気の中、自分の席に辿り着くと携帯のメールチェックを見る。
着信が一件。
あ、猫乃からだ。
愛しい愛しい水野先輩へ。
今日、一緒に帰ると約束していましたが、
美術の課題が終わらずに居残決定していたのを忘れてしまいました。
遅くなるかもしれないので、先輩はもう帰ってくださいね。
PS
幼なじみの梓さんと浮気したらダメですよ。そんなことしたら、先輩の胸の中で泣きますから。
OK。
了解と返信メールを送ると周囲の異変に気が付いた。
まだ、クラス内の空気は冷たく沈黙していた。しかも、愛すべきクラスメイトの視線が見事に俺に向けられている。うーん。俺は何かしたんだろうか?
やっぱり、虐めかな? これ。
冷静に状況を把握してみた。
悪友の山田は梓の友人グループに入って、俺なんかヤバいこと言ったよという感じに額から汗が一杯流れているのを確認できた。
また、あの阿呆は女子相手に何かをやらかしたんだろうか? 肝心な梓は真剣な眼差しでこちらを見つめている。
その瞳は何を訴えているのか、俺にはもうわかることができない。
ただ、幼なじみとして過ごしてきた俺が全く見せたことがない真面目な表情を浮かべていた。
だが、状況を理解する前にチャイムの音が鳴り響いた。
本玲のチャイムと同時に担当教科の先生が入ってきた。
おかげでこの昼休みに何が起こったのか、さっぱりとわからずじまいであった。
そして、放課後。
猫乃は居残りの課題で一緒に帰れなかったので、俺は夕食のおかずを買うためスーパーに寄って帰っていた。
一人暮らしは何でもかんでも俺一人の力でやらないといけない。食料の買い出しや生活品を買うのに、
一度家に帰ってから、また出掛けるのは正直めんどうだった。
買い出しを終わらせてから帰るとそれなりの時間になっていた。
家に帰って、夕食の仕度に取り掛からなければならない。ポケットに入れている鍵を穴に差し込む。
ここで異変に気付く。
ドアが開いている……。
家を出る前にちゃんと鍵をかけたので、ドアが開いてるはずはないのだが。
恋人の猫乃には、まだ家の合鍵を渡してはいない。唯一、持っているのは梓だけ。
そこで閃いてしまった。
この家の中にいるのは、梓だと。
最大の警戒心で恐る恐る静かにドアを開くと、玄関に見慣れている梓の靴が置いてあった。
やはり、来ているのだ梓が。
もう、以前のような幼なじみの関係ではいられない。
おとなしく、合鍵を没収するか、鍵を変えてしまえば良かった。
前は家に上がって、夕食を作ってくれたことが嬉しいと感じた事もあったけど、今となっては、不気味に思えてしまった。
リビングに近付かずに階段を忍び足で登る。とりあえず、俺の部屋で作戦会議を開かないと梓を撃退することは無理だ。
だが、その判断はまちがっていた。
俺の部屋に、俺のベットの上で梓は電気もつけずに待っていた。
「翔太君。翔太君。翔太君。翔太君」
俺の名前を連呼して、どこか虚ろな瞳で上目遣いで見ている。
それは、今まで見知っていた梓はどこにもなく。
目の前にいる少女は、ただ壊れていた。
俺は恐怖で足が震えているのを抑えていた。
一体、何があったんだよ。梓!!
本格的に梓のヤンデレ化が次回で明きからにwww
でも、今週の月曜日に投下したというのに執筆するスピードが尋常ない程が上がってます
すでに6話まで書き上げました。近いうちにスレの方へ投下する予定です・・。
これもこのスレの魔力のおかげでしょうかねww
梓ヤンデレ化キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
トライデント氏、GJ!!
投下します
GJ!!
早めの投下お願いしますよ
窓から日差しが差し込む・・・・
僕は空気を思い切り吸い込んで深呼吸した
「起きろ〜!!!!」
布団を剥ぎ取る
「涼ちゃ〜んもう少し寝かせて・・・・涼ちゃんも一緒に♪」
甘ったるい声を出して僕のお姉ちゃんの夏美が僕の首に両手を回した
そして思い切り引き寄せると頬をすりすりしてきた
「ああ〜涼ちゃんだ〜♪」
「は、恥ずかしいからやめてよ・・・・」
でも僕がいくら拒絶しても夏姉ちゃんは離してくれない
いつもかんな感じ・・・・いつもどうやってこの抱きつき攻撃から開放されてるかって?
「こら〜、またか〜!!!!」
大声をあげて部屋に入ってきたのは妹の冬香だ
布団の中でもぞもぞ動く僕たちを強引に引き離して夏姉ちゃんを睨み付けた
「あ〜ん涼ちゃ〜ん離れないで〜♪」
「姉さん!速くしないと遅刻するよ!」
強引に夏姉さんを立たせると冬香は僕の手を引いた
「どうしたの?」
「姉さんの着替え・・・・みたいわけ・・・・・」
妙に声が低い冬香に圧倒されて僕はその部屋を出た
「あ〜〜〜涼ちゃ〜ん」
猫撫で声で夏姉ちゃんが僕を呼んだけど冬香の威圧感に僕は勝つことができなかった
「いただきます・・・・」
「いっただっきま〜す!」
「ふか〜」
僕と冬香それとまだ覚醒していない夏姉ちゃんの三人で朝ごはん手を付ける
「あ、お兄ちゃん・・・・口にご飯が付いてるよ・・・・」
冬香が僕の口からご飯を取るとなんのためらいもなしにそれを自らの口に運んだ
「もう、こんなんじゃ彼女の一人もできないよ?もっとシャキっとして!」
「う、うるさいな・・・・」
妹のくせに生意気な・・・・でも冬香のほうが精神年齢は上か・・・・悔しい
「仕方ないな〜涼ちゃんは〜・・・・ここはお姉ちゃんが人肌脱いであげる」
ようやく覚醒したのか夏姉ちゃんがニコニコしながらそう言った
「今度の日曜日・・・・彼女ができたときにおどおどしないように姉ちゃんとデート♪」
これで何度目かな?・・・・僕が中二の時からだから・・・・もう二年か
「あ、ずるい!今週は私の番!」
土日のどちらかは二人のどちらかとデートに出掛けている
二人曰く僕に彼女ができた時の予行練習らしい
そんなこんなで僕は毎日を楽しく生きています
「あの・・・・神坂くん・・・・」
放課後僕が帰ろうと身支度をしているろ後ろからか弱い声がした
振り返るとそこには一人の女の子・・・・・
この子は南条秋乃さん・・・・この学校に入学したときすぐに話題になった子だ
確か成績優秀で品行旺盛・・・・これが重要なんだけどすっごく可愛い
しかも!すごく大人しくて古きよき時代の女性って感じ
まだ僕と同じ一年生なのにもう学校ではアイドル化されている
実は僕も憧れてたりして・・・・・
「な、な、なにか・・・・・な」
明らかに動揺している僕に秋乃さんはくすくすと笑んだ
「神坂くんって面白いですね・・・・ふふ」
あれ?もしかして僕って子ども扱い?ちょっとショック
「あ、いけない・・・・私ったら・・・・あの・・・・その」
急におどおどして身体をくねくねさせた
か、か・・・・・・可愛い!!!!!
その可愛さときたらもう・・・・
普段可愛い姉妹に囲まれて免疫は付いてるはずだけど・・・・これはすさまじい破壊力です母さん・・・・
「ここではちょっと・・・・」
人目を気にして秋乃さんは俺の裾を引っ張って教室から出るようにただしている
「わ、わかったよ・・・・えと・・・・屋上かな?」
秋乃さんはこくんとうなずいた
僕は微妙に触れる彼女の温かみにどきどきしながら屋上に向かった
「あの・・・・」
またもじもじし出した・・・・
可愛い・・・・
「わ、私・・・・・ずっと・・・・その!」
勢いで秋乃さんは僕の手を握ってきた
あ、わわ・・・・どうなってるの?今の状況・・・・
「す・・・・す・・・・・す・・・・・」
え・・・・・なに?
期待で胸が高鳴っていくのを感じる
「隙です!じゃなくて・・・・その・・・・・す、好きです!」
時間が止まった・・・・
「私と・・・・付き合ってください!」
原作者のかた勝手にお知恵を拝借してすいませんでした
人様のプロットで書いてみるのも面白かったですね
自分はどうも同じ展開を書いてしまう癖があるので・・・・
こんな感じでどうでしょうか?
でも問題が・・・・
この先はプロットどおりにやって行って・・・そこからは・・・・
自分なりに考えてみましたが・・・・レスでこういう展開がいいなど書いていただいて
その中から自分の独断と偏見で決めると・・・・
ごめんなさい・・・・書いておいてこんなことを・・・・
あとできればタイトルも・・・・皆様のお知恵でお助けを・・・・
オークニーの街。主に交易で栄えた街だ。南に広がる大海や、東に存在する帝国領から珍しい物品を輸入している。
中でも最も盛んなのが“火薬”と呼ばれる魔法の粉だ。火を付けるだけで膨大な熱と衝撃が発生する。
火薬を利用した代表的な兵器に銃と呼ばれる長筒―――――マスケット銃があるのだが。
アリマテアで戦争してた頃に一度それを見たことがある。
新兵器だけあって確かに脅威だった。だがそのくせ致命的な欠点がある。
命中すればほぼ確実に相手を無力化できるが如何せん精度が悪い。おまけに次射が撃てるまでのスキも長い。
その間に白兵戦に持ち込めば難なく片がつく。せいぜい物量で以って相手の戦意を削ぐ程度にしか役に立たない代物だ。
だから戦時中に見かけることは殆どなかった。特に単独での仕事もこなす傭兵や冒険者の類の連中には頗る不評だ。
そういうわけで。
「なんで、わざわざマスケットなんて面倒臭い武器選んだんだよ」
マローネがいつも背負っている長筒。まごうことなきマスケット銃だ。
「何?お兄ちゃん、今さら」
街を案内している最中、いきなり脈絡のない話題をされたせいか目をパチクリさせた。
「いや、だってさ。マスケットって手入れの手間かかるし、命中精度だって弓より低いだろ?
なのに数ある武器からどうして銃を選んだのかなぁ・・っと」
俺の問いにマローネは自分の指を絡ませながら。
「んー…あたし、剣とか槍って苦手だし…かと言って弓を使えるほど豪腕でもないし」
「何言ってるんだよ、そんな重い長筒しょってるだけで充分ごう…むごっ」
拳を口に突っ込まれた。何故かマローネはいつもこうやって俺の口を塞ぐ。
「女の子にそんなこと言っちゃダメだよ、お兄ちゃん。
で話を戻すけど、あたしこういう複雑な道具、結構好きだから手入れもそんなに苦じゃないんだ。
精度だってちょっとイジれば弓より凄いよ?
あ、でも一番の理由はやっぱりお兄ちゃんが・・・・・」
そこで口を一旦閉じて俺の顔をチラチラ盗み見た。
「なんだ?俺がどうかしたのか?」
「…やっぱいい。お兄ちゃんってホントいつまで経っても女心が判らないんだねっ!」
怒られてしまった。わけわからん。
「それにそれに、あたしのマスケットそんじょそこらの市販の物とはワケが違うよ〜。まずね―――――」
そこからはマローネの銃の仕組み講座だった。
火薬の調合が一味違うだの、筒の中に螺旋状の溝を造ったから普通のとは精度が段違いだの。
俺には解らない銃の構造を事細かに説明。いやもうマローネが銃好きだってことはよく解ったから…
謝る必要なんてないと思う。
ssが書けない人たちの妄想を変わりにss化してくれるなんて……
神すぎて頭が上がらないです。
思い返せばマローネとこれほどたくさん話をするのは久しぶりだ。
騎士になってからはあまり会う機会がなかったから足掛け二年ぶりってところか。
こうしていると初めて彼女と話したことを思い出す。
最初、俺はマローネに話しかけられても殆ど無視していた。
当時はあの事件が頭から離れず、静かな憎しみだけで生きていた。
だから彼女と話をする余裕も興味もなかった。ただ奴等を殺せる腕を磨くだけの日々。
マローネとの関係が変わったのは俺が初陣から帰ってからだ。
彼女は俺の無事の帰還に泣いて出迎えた。
彼女は泣いてくれたんだ。世話をされても無視していた俺なんかのために。
それからようやく俺も現実に目を向け始めた。相変わらず復讐のことが頭から離れなかったけど。
少なくともそれを剥き出しにすることはなくなった。マローネのおかげで今の俺がある。
彼女が居なければ俺はただの殺人快楽者になっていただろう。
マローネには随分迷惑をかけた。自分も戦うと言い出したときはどうなるかと思ったが。
まぁ今となっては情けない話、徒手空手で勝負したら勝てるかどうか判らないくらいに強い。
さすがは師匠の血を引く子供だ。
今はそれくらい傭兵としての腕を身につけているが、当時は戦闘に参加すると言い出したのは驚きだった。
世話焼きの彼女のことだ、多分俺を心配してあんなことを言ったんだろう。
彼女には頭が上がらない。
……いつか、マローネにもお礼がしたいな。
「―――――それに……あたしが次弾用意してるときはお兄ちゃんが守ってくれるもんね?」
相貌を崩して俺に笑いかけた。
「あのなぁ…騎士辞めたからって俺が傭兵旅団に戻るって決まったわけじゃないぞ?」
「あははっ。駄目だよ、お兄ちゃんはあたしを守らなきゃ。絶対に連れ戻すんだから。
―――――あんな女どもには渡さない」
「え?」
最後の部分はよく聞き取れなかった。一瞬マローネの顔に戦慄したが……見間違いか?
「あ、お兄ちゃん。あそこはロブおじさんの好きな酒場だよ」
道の向こうにある一軒の寂れた酒場を指さす。もう彼女は笑顔だった。やっぱり見間違いだったんだろう。
気を取り直して俺も酒場の方に目を向けた。
「はー……ありゃ、また……
師匠もロブさんも…どうしてああいうボロい酒場を好き好んで通うんだろ」
アリマテアに居た頃もそうだったけど二人とも酒が多少不味かろうがあんな雰囲気の潰れそうな酒場が好きだ。
なんでも「いかにも傭兵が好みそうな感じがたまらない」んだそうだ。彼らの妙なこだわりは理解できない。
「あ、誰か出てきた」
呆れて天を仰いでいるとマローネが店から客が出てくるのを見つけた。
って、他にもあんな店を好む変わった感性の人間がいたのか。
そう思いながら顔を確認する。
ズクン。
胸に激痛が走る。
―――――?
どこかで見た顔だな。 (何を言っている。)
えーと。 (忘れるわけないだろう。)
確か… (あの男だ。)
随分昔に見たような… (×××を×した男だ。)
誰、だったかな。 (たとえ神が庇おうとも神ごと×××やるとお前が誓った男だ!)
『いやぁぁぁぁぁッッッ!!!!!』
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「―――――お兄ちゃんッ!!!」
マローネの叫び声で俺は現実に引き戻された。
「・・はぁ・・はぁ・・・はぁ・・・・はぁ」
知らない間に肩で息をしていた。どうなってるんだ?
マローネが俺の腕を痛いほど強く掴んでいる。
見れば、俺は無意識のうちに腰の剣に手をやっていたらしい。剣を鞘から抜こうとしていた。
こんな街中で抜剣しようとするなんて……何考えてんだ、俺は。
「だ、大丈夫?お兄ちゃん」
「あ…あぁ。もう平気だ、心配かけたな」
背中をさするマローネに笑顔で返し、気分を落ち着ける。
「長旅で疲れたんじゃない?今日はもう帰ろう?」
「…そうだな」
まったく…マローネに諭されるまで気づかないとは。
不慣れな長旅で気づかないうちに相当疲れが溜まってたんだろう。タチの悪い幻覚だ。
もう一度酒場の方を見るが、店を出た客の姿は見当たらなかった。
ここまで。
>>前スレ591
やっぱり突っ込まれた…('A`)
他にも英名や仏名がごちゃ混ぜになってたり割とその辺はいい加減です
時代考証とか難しいですね。銃の辺りもヤバそうだなぁ…
割り込んでスマソorz
しかし、なんて素敵な女かな、マローネ。
この4つ巴の戦いの結末はいったいどうなるんだろう。
>>67 GJ!この執筆スピードでこのクオリティなんて神すぎだ
実験作を投下、初心者でスマソ
爽やかな朝、どこまでも続く青空、愛らしいスズメの声。
あぁ、世界はこんなにも明るいのに…
「…………………」
「…………………」
なして俺の周囲だけどんよりオーラたちこめてますかゴッド。
しゅらばとる(タイトル適当全体コメディ、時々イタイ系)
事の発端は、今朝の目覚めである。
俺こと不動 辰真(ふどう たつま)は、筋金入りの寝ぼすけであり、自力で朝起きるのは不可能な男です。
なので毎朝無意味な奮闘を続ける目覚し時計をスパンキング、二度寝直行がマイライフ。
起床時間をやや過ぎると、廊下からパタパタというスリッパの音が聞こえ、軽く扉がノックされる。
「辰真、もう朝だよ。起きなさい」
若干低い声が聞こえると、続けて扉がガチャリと音を立てる。
扉を開けた人物は、布団に包まり二度寝を慣行している俺を見て大抵溜息、時折苦笑を浮かべるらしい。
「ほら、起きるんだ辰真、遅刻してしまうだろ?」
と言って優しく布団を剥ぎ取り、眠る俺の頬を優しく撫でる。
撫でるその手は、若干ゴツゴツしているが、女性らしい柔らかな肌と、ミントの香り。
やや低い女性の声が、眠る意識に心地よい。
「むぅ…あと10分と少々…頼む椿姉ぇ…」
「む、そんな風におねだりされたら、お姉ちゃんはつい許してしまうじゃないか…って駄目だ、甘やかすな私」
何やら葛藤しているのは俺の姉、不動 椿。
ショートヘアーに長身巨乳。顔立ちは絵に描いたようなプリンス系。男装がとっても似合う麗人風。
「ほら、あまりお姉ちゃんを困らせないでくれ…早く起きてくれないと、襲ってしまうじゃないか…」
と言ってモゾモゾと布団に侵入してくるマイシスター。
見た目は宝塚王子様系だが、中身はブラコンダメ姉である。
「ふふふ、眠り姫ならぬ眠り王子は、キスで目覚めさせるのが通例だったね…」
どこの通例でしょうか姉さん。
じゅるりと涎を舌で舐めとりつつ、俺の唇をロックオンする姉。
いい加減身の危険を感じるので起きる俺、ヘタレです。
「椿姉、起きたから離れ――むぐっ!?」
「ん…んん…っ」
はい、唇奪われました〜。
って言うか椿姉っ、ちょ、舌、舌は駄目だってっ、そんな啜りながら舐め上げんといて〜っ!
「死になさい雌犬めっ!!」
ヒュンッ!!
「―――っとと、危ないじゃないか、辰真に当たったらどう責任とって死んでくれるんだい、楓?」
俺の口内を蹂躙していた椿姉を離れさせたのは、風切り音を立てて振るわれた薙刀。
しかも刃は真剣ですよいやマジで。
「たっちゃんが傷ついたら、それこそ精魂、来世までかけて妻として尽くしますからご心配なく椿さん」
「あはは、朝から笑えない冗談を言うね楓、笑えな過ぎて思わず殺したくなったよ」
薙刀の一撃を人間離れした瞬発力で避けた椿姉の視線の先、物騒で痛い会話をする俺のもう一人の姉の姿がそこにあった。
あの、姉さん方、喧嘩するなら広い所でお願いしますよ。もう部屋の物買い換えるの面倒なんで。
そう思いながら口に出さずに部屋から脱出。不動 辰真、ヘタレです。
おおう、GJ!
「起きて下さい、御主人様」
肩を軽く揺さぶられて意識が覚醒をしていくのが分かる。しかし何故さくらの声がする
んだろう、そう言えば起床には付きものの華の体温が足りない。ああ、そうだった。僕は
華に捨てられて、それを追い掛けてその後に…
「意識を失ったんだっけ」
未だに思考の回転は鈍いが、それでもそれなりに考えはまとまってくる。
「おはよう、さくら。これをほどいてくれ」
「おはようございます、御主人様。そういう訳にはまいりません」
場所は体育倉庫、夕日が差し込んでいるのを見るとあれから殆んど時間は経っていない
らしい。今の僕は椅子に手足をガムテープで固定されている状態、身動きをとろうにもと
れない。転んだときのために周りにマットレスが敷かれているが、今はその何気無い心使
いも腹が立つことこの上ない。
「何でこんなことをするのかな?」
「これも愛の形です」
「君の地元では、拉致って縛りつけることを愛って言うんだね。日常でよく使う言葉と同
じだから、間違えないようにしっかり覚えておくよ」
「ありがとうございます」
僕の言葉に、あまり気分を害した様子もなく平然と答えを返す。完全に僕よりも立場が
上だから、余裕を持っているんだろう。それか、もしかしたら彼女は気付いていないと言
うか、心の奥と表面で上手く接触が出来ていないのかもしれない。僕が逃げ出すと分かっ
ていて縛りつけているのに、本人はさも相子相愛と考えているという矛盾に、全く気が付
いていないようにも見える。
これなら少しは刺激をしても良さそうだし、僕を殺そうという意思は無いようだから会
話は大丈夫だろう。このまま引き伸ばしていれば、いつか助けが来る筈だ。今は周りに誰
も居ないのか普通の声で話をしているが、いつまでも来ないというのはない。戸締まりを
確認しに教師が来る筈だから、それまで持たせれば僕の勝ちだ。
僕はさくらと目を合わせると、
「場所を変える気は無いかな。ここは埃っぽくて」
「あと少しの辛抱です、すぐに終わりますから」
「そう言われてもね、僕はこう見えて綺麗好きなんだ」
「それなら大丈夫ですよ。掃除洗濯ブラシかけはあたしも好きで、得意ですから」
駄目だ、この娘は。
「そうなんだ。じゃあ料理は? これも完璧なら素晴らしいお嫁さんになれるね」
「それも得意ですし、少し恥ずかしいですけど御主人様の命令であるなら、女体盛りだっ
て頑張ってみせますよ」
本当に。
「それにしても、お嫁さんだなんて。でも安心してください、あたしは死ぬまで御主人様
の奴隷ですから余計な心配はしなくても良いんですよ?」
言葉が通じない。
顔を赤く染めて頬に手を当て、妙なしなを作って身をよじらせるさくら。この一昔前の
行動も時と場合によっては可愛らしく見えないこともないんだろうけれど、今の僕は骨抜
きになるよりも恐怖を感じた。
それよりも、さっきこの娘は何と言った?
僕がこの場所に文句を言って、『すぐに済む』と言ったということはこれから何かをす
るということだ。それから、僕の移動を行うということ。意識を失う前に『勇気を貰う』
と言っていたことも思い出せば、その答えは簡単に出てきた。
「華には手を出すなよ。あといちゃいちゃしたいなら、他を当たれ」
睨みつけながら低い声で言うが、やはりさくらは気にした様子はない。
「あたしには、御主人様以外居ませんよ。それに、まだあのクソガキの洗脳が解けていな
いみたいですね。大丈夫です、あたしが解いてみせます」
否定しないところを見ると、図星なのだろう。しかし慌てた様子が無いのは、僕が何も
出来ないことと、自分の意識、この状況に酔っているからだろう。本人が異常なのだから、
それが異常だということには気が付いていない。
そして恐怖の他にもう一つ、華を馬鹿にされた怒りが浮かんできた。
「華のことを悪く言うなよ」
「話が反れましたね。でも結果オーライ、重症の洗脳を解く意味も出来ました」
「何を」
「勇気を下さい」
そう言うとさくらはペットボトルに入った液体を口に含み、続いて僕の鼻を摘んできた。
鼻呼吸が出来なくなった僕は仕方なく唇を開く。それに唇を重ねると、さくらは口内のド
リンクを僕の口に流し込む。少しむせて殆んどを吐き出したが、僅かな量が喉の奥を通っ
ていった。それがどんなものなのか想像して、気分が悪くなる。
「美味しかったですか? あたしの唾液が混じったジュース。御主人様のが混じったもの
は、それは天上の甘露のような味でした」
「何を飲ませた」
「はい。初めてのときは緊張で立たなくなる人がまれに居るらしいので、念のため」
やはり、想像通りに何か薬でも入っていたのだろう。速効性のものなのか、数分の内に
血液が下半身に集中していくのが分かった。最近は華がべったりだったので出していない
せいか、普段よりも勢いが強い。
「あは、苦しそうですね御主人様。今あたしが楽にしてあげます」
言うとさくらは僕のベルトを外し、股間に跨ってきた。さくらも初めてらしく、流れた
鮮血と溢れる愛液が僕のズボンを汚していく。しかし今本当に気にしているのは、そんなことではない。
相手が、華じゃない。
その事実に、僕の心が痛んでいく。こんなことを言うのは女性差別なのかもしれないが、
実際男には膜も子宮もないし確認のしようもない。けれどそれでも将来の華のために大事
にとっておいた純潔が散らされたのは辛かった。二人のために残しておいたものが無惨に
壊されるのは殴られるよりもずっと痛い。
しかし体の作りはそんな事情などはお構いなしで、初めて体験する快感に絶頂を目指し
て昇りつめてゆく。華とは性的なことは一切していないし、他の人とは基本的に触れるこ
とはない。自分でするときも頑張らなかった僕がこの刺激に耐えられる筈がなかった。
「そろそろ出そうなんですね、出して下さい」
低いうめき声と一緒に、精液を出す。
「いっぱい出ましたね」
無感情に、しかし嬉しそうにさくらは呟いた。
「では、雌豚共を殺しに…」
言いかけたところで、轟音と共に扉が吹き飛んだ。僕の右側を通過する扉と一緒に埃が
舞い上がり、スモークのように視界をぼやけさせる。
その向こうには、片足を上げた水が立っていた。
「パンツ見えた?」
ヘラヘラとした表情を浮かべながら、非常識な挨拶をしてくる水は僕を見て、続いてさ
くらを睨みつけた。その瞳に宿っているのは、明確な殺意。
「ごめん、旦那。手遅れだったね」
さくらとセックスをしてしまったことを言っているのだろう。怒りに満ちているのか、
声は抑揚がない冷たいものだがそれでも申し訳ない気持ちは伝わった。僕の初キスを奪っ
たということも含めて、気にしているのかもしれない。
「手間が省けました、まずはアナタから」
鉄パイプを持って立ち上がるさくらを再度睨むと、
「お前からだ」
容赦のない蹴りを飛ばした。
轟音。
鉄パイプで受けとめたさくらが後方に大きく吹き飛び、跳び箱を巻き込みながら倒れ込
む。そちらに唯一動く首を向けると、くの字に折れ曲がった鉄パイ
プが見えた。水とは言葉で勝負して良かったと思う。こんな攻撃を受けたら、僕などは欠
片も残さずにやられていたに違いない。
「まだやるか?」
分が悪いと悟ったのか、水の言葉にさくらは走って用具倉庫を出ていった。
今回はこれで終わりです
誠さんは今回良いとこ無しですね
>>75 続きカモーン! チョットゴツイ手ってことは椿姉さんも武術やってらっしゃる?
姉同士でバトルって見たこと無いのですごく楽しみ
是非続きを
アビスさまの姉妹にたった今の姉姉・・・。
4人もの女性、しかも家族が俺達の前にあらわれた!
主人公にとって、もはや自宅より学校の方が身が休まる場所になりそうだな。
しかも、姉妹が力をあわせて外の泥棒猫を寄せ付けまいとする(に見える。今の所)
前者の物語に対し、姉姉が互いを泥棒猫と思っている後者・・・。
異なる構図で始まった2つの物語に、期待を隠せないぜ!
本当に神の集うスレだな・・・。
85 :
「弱き人々」:2006/06/09(金) 23:29:40 ID:w+fWezkS
もし世界が自分中心なら
あの人と一緒に居られる
でも世界は自分の中でしか中心でいられない
自分の気持ちを貴方は、どう伝える?
午前9時23分46秒
朝
激しく眠い・・・・
だが俺は大学に行く仕度をせねばいかん
鉛のように重い身体を起こして、洗面所に向かう
鏡で自分の顔を見る
「ひでぇ顔・・・・」
正直自分の今の顔を世界のニュースで流したら
優雅に朝をむかえるマダムからテレビ局に苦情殺到だね
しかも国際規模、テロだなそりゃ
顔に冷たい水を浴びせて眠気を顔から無理矢理引き剥がす
ほーら、すっきりきりりん☆
でもないね
俺の名前は村瀬完一(むらせ かんいち)
神龍大学(しんりゅうだいがく)の三年生
まぁ都内の23区に有る大学で、有名私立大だ
高校三年を勉学とスポーツとゲームに費やした俺
そんな俺は只両親の言い付けに従い今の大学に行った。
大学に入って特にすることも無く、生徒が多いだけに出席に関しても甘く
論文やレポートも楽な物、テストさえクリアすれば留年とは無縁
そんな人生
只・・・女とのいざこざさえ無ければ、だ。
何だかんだで仕度を済ませて大学に行くためバイクに跨る
さぁて今日も一日ファイト一発!
86 :
「弱き人々」:2006/06/09(金) 23:46:41 ID:w+fWezkS
私の名前は霧島佳織(きりしま かおり)
村瀬先輩とは学部、サークルが同じ
それだけ
先輩との出会いはサークルの新入生歓迎パーティーだった
壁にもたれてボーッと酒を飲んでいただけ
それだけ
でも他の先輩と雰囲気が違った
落ち着いていて、何となく暖かい空気がそこにある感じがした
お、先輩の事考えていたら丁度居た
「せんぱーい!」
私は成る可く速く走る
振り向いた先輩はいつものように、おぅ、と言うだけだ
「今日は、サークル、出ますか?」
少し息が荒くて喋るのが辛い
「まぁ出れたらね、俺は忙しいのだ」
先輩は淡々とキャンパスに向かって歩いていく
「忙しいとは?」
私の予感では又下らない事だろう
「お嬢さん、そりゃあれだよ、ゲーセンだね」
先輩はエセのナイスガイスマイルを見せる
白い歯は光っては無い
「・・・・サークルより優先ですか?」
呆れますが馴れました
「違うね!俺には行かねばならぬ戦場が有るだけさ!」
「それがゲーセンですか?」
「そうだよ、今や小さいガキや大人はゲーセン行くのが流行だ」
そんな時代は永遠に来ませんね・・・
「とにかく今から来て下さい!高木先輩も来てますから!」
もう実力行使でも連れて行く
「っちょ!ちょ待て!ってか痛い痛い!襟掴むな!」
「逃げる前に実力行使です!」
「ユー!俺には二本の足が有るから使わせてくれYO!」
こんなあんなでサークル棟にまっしぐらな私達
先輩の世話するのは本当に幸せです♪
頼む、神よ。sageてくれ
88 :
「弱き人々」:2006/06/10(土) 00:04:14 ID:lElSvaYb
サークル、それは甘く切ない響き(か、どうかは知らない)
俺と佳織の二人はサークル棟に向かう
因みに所属してるのはテニスのサークル
テニス経験は無いけどね♪
あぁ世界はこんなにも美しい
「何ぶつくさ言ってるのですか?もう着きます」
「そうかい、なら後は入る勇気を出すだけだね」
俺には勇気は無い、何故ならドアの向こうは綺麗な花園だからさ
「高木先輩は怒ってませんから安心して下さい」
「ならば行くのが漢だね!」
俺は青いペンキの剥げたスチール扉を開ける
「高木よ!俺は帰って来たぁ!」
入るなり自分でも言う必要が有るか疑う言葉
しかし反応は無い
見えるのはパイプ椅子に腰掛けた女性
「ほぉ・・・君か?村瀬君」
その冷たい視線ならクール宅急便も冷凍車いらずだね
ここで怯めば俺は即死だ
「実は母が危篤でな、出たかったのだがね」
「言い訳無用、あんたやる気ある?」
その冷たい言葉で何人のM属性の男を逝かせるかは計測不能だね
「違うんだ高木!俺は只世界平和の為にね」
「茶、買ってこい」
その冷たいツンツンさ、ツンデレ喫茶で働くべきだね
ツンだけだけどね!
しかし何で高木は何時も俺がサークル出ないと機嫌悪いのかね
気にしてもしょうが無いね
みそ汁にワカメが無いことに悩むと一緒だ
いやぁ気にするか、俺はな
とにかく俺は茶を買いに行くべく出撃した、にんにん
メール欄にsageと入れて、お兄ちゃん!
申し訳ないすorz
以後気を付けます・・・
ノリで書いたところがあるな
続きお待ちっ
辰真が部屋からつつつつつーー…とこそ泥の如く退室しても、椿と楓の睨み合いは続いていた。
「まったく、私がたっちゃんのお弁当を作っている隙を狙うなんて、相変わらず姑息なお人ですね椿さん」
「自分が出遅れたのを他人のせいにするなんて、滑稽だね楓。思わず鼻で笑ってしまうよ」
毒素100%の言葉の応酬。二人の間にスパークがバチバチと生じ、バックで炎が燃え盛る。
「いえいえ、昨晩たっちゃんの部屋に侵入しようとして失敗したどこかの雌犬よりかはマシですわ」
「おやおや、それはそれは。でもそれは同じように侵入しようとしてトラップに引っ掛かった雌猫にも言えることじゃないかな?」
互いに笑顔なのに、その視線は絶対零度。
石化の魔眼にだって対抗できるかもしれない視線が伝えるのは、奇しくも同じ。
『私の辰真(たっちゃん)に近づくな雌ブタっ』
である。
ここでこの二人の紹介をしよう。
ショートヘアーに中世的な顔立ち。王子様のような雰囲気を極自然に醸し出す麗人。
名前を不動 椿と言い、辰真の実の姉…ではなかったりする。
細身の長身で、大柄な辰真と並んでもさして差の無いのがちょっぴり悩みな女子校生。
年齢は辰真の一つ上である。
で、腰下まで届くロングヘアーに柔らかな物腰の女性。
名前を不動 楓。椿と同い年で辰真の実の姉…ではないんだなこれが。
椿に比べるとややスタイルでは劣るが、身体全体から漂う大和撫子オーラに敵は無い。
この二人、本当は姉ではなく辰真の従姉であったりする。
諸々の事情で一緒に暮らしているが、その気になれば結婚だって可能。
故に
「私のたっちゃんに触らないでください、妊娠したらどうするんですか」
「辰真は男だよ。それとも何かい、私が男っぽいと暗に言っているのかい?」
愛する辰真を奪い合う毎日だったりする。
「さぁ、どうでしょう。そう思うならそうなのではないですか、『王子様』?」
「言ってくれるね楓、いや『楓の君』、そんな腹黒な性格じゃぁ辰真に嫌われるよ?」
「あらあら、私のどこが腹黒だと? 心の底から全て、たっちゃんに染めてもらう為に真っ白なのに…」
「戯言を。第一、私のこの性格も話し方も、全て辰真が似合っていると言ってくれたからね。素敵だと言ってくれたよ…」
その時の辰真の言葉を再生しているのか、ウットリとした表情を浮かべる椿。
美人なだけに、その表情だけで絵になる。が、涎は少々あかんと思われる。
「わ、私だって、たっちゃんに楓姉の雰囲気は母さんみたいで落ち着くと言って貰えましたわっ」
「それは母性を見て言っただけで、君自身の魅力とは関係ないんじゃないかい?」
「(むかっ)…あら、それなら椿さんの素敵も、父性や兄に対するものではないのかしら?」
「(ぴきっ)……どうあっても私を男扱いしたいらしいね…」
堪忍袋の緒が大変な状態になりつつある二人。
楓は持っていた薙刀を構え、椿は制服のブレザーの懐から銀色に光る棒を取り出す。
「躾のなっていない雌猫に、少々灸を据える必要があるみたいだ…」
シャキンッと甲高い音を立てて伸びる棒、チタン製の特殊警棒。
「浅ましい雌犬に、少しばかりお仕置きをしてさしあげますわ」
カチャと音を立てて薙刀の切っ先が椿に向けられる。
一瞬即発の空気、互いに高い腕前であるためにタイミングを見計らう。
後の先か、それとも先の先か、さてどうするかと考える二人の聴覚に、常に最優先で拾われている声が聞こえた。
『いただきま〜す』
「「辰真(たっちゃん)待って、一緒に食べるからっ!!」」
0,1の迷いも無くリビングに向かう二人。
彼女達の中では、宿敵よりも辰真との朝食の方が大事なのだ。
「ちょっと、椿さん邪魔ですよ、その無駄に大きい胸しまってくださいっ」
「無茶を言うなっ、そういう楓は狭い所も楽々で羨ましいよっ」
「むきーっ、言ってはならない事をーーーっ」
「おや失礼、そしてお先にっ」
「待ちなさ〜〜いっ!」
とりあえず、何だかんだで仲は良いのかもしれない。
そして話は最初のどんよりオーラに包まれた食卓へと戻るのであった。
急にネタができたので勢いで書いてみました。ど素人がどこまでできるか…
.............
何してんだろ…
どうして此処にいるんだろ…
なんか記憶があやふやだから少し整理してみよう。
たしか今日は、久々のデートで近くにオープンした動物園に行ったんだっけ。
でも、色々動物がいたようだったけど健司さんばかり見ていたのでよく覚えていないや。
えへへ。
そのあと、お昼はベンチに座って私の手作りのお弁当を食べたんだっけ。あまり上手に
はできなかったけど「おいしいよ」って言って全部たべてくれたっけ。嬉しいなぁ〜。
また作ってあげるね。
……また?
え〜と、そのあとはショッピングしたり、映画を見たり、公園でお話をしたりしてたっけ
。とっても楽しかったね!今度はどこ行こうか?
……今度?
「バンッ!」
いつ終わるともしれない瞑想が、突然だれかが部屋に
飛び込んできたために終わりを迎えた。
……だれだろう?突然入ってきて…。
「ねえ…、冗談でしょ?一体なにしてんのよ?」
……だれに話てんだろ?
「早く目を覚まして家にかえるわよ?お姉ちゃんのいうことが
聞けないの?」
…………
「ねえ!ねえってば!なんで!どうして!
目ぇ覚ましてよ………………なんで……」
最後の方はもうほとんど啜り泣きで、なに言ってるかわからないな…。
するとキッと泣きはらした真っ赤な目で
こちらを睨み付けてきたかと思ったら
「なんで珠佳がここにいるのよ!!!」
――――え?
「なんで?なんで健司が死んで珠佳が生きてんのよ!どうしてよ…」
え?健司さんが死んだ?なに言ってるんだこの人は。
…あれ?ちょっとまって。そういえば…帰り道で
信号待ちしていた時に…車が歩道に乗り上げてきて…
こっちきたと思ったら健司さんが突然私を突き飛ばして…
それから…それから…。
「ちょっと!なんとか言ったらどうなのよ!」
「純望お姉ちゃん…私…なんで、どうして…」
そうだ思い出した。でもこれ以上考えることができない
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
部屋から飛び出した私はとにかく走った。
少しでも部屋から離れたかった。
雨が降っていてもいい
見知らぬ場所でもいい
とにかく遠くへ、遠くへ。
体がオーバーヒートして止まった時
気がついたらとある公園についていた。
よく覚えている…ここは…
健司さんに初めて会った場所だ。
そして私は泣いた。大泣きした。涙腺がこわれるぐらい泣いた。
だれもいない……投下するなら今のうち
あの目障りな女がいなくなって、やっとすっきりした。やっぱりあの女は敵だ。今まで
シュンに色目を使ってくる女は、近くに私がいる事で追い払ってきたけど、あいつは全然
怯む様子がない。
……なんでなの、あの女は地位にも、人にも恵まれてるはず。王宮騎士だもの。それな
のに、どうして……どうしてシュンを、私の大切な人を盗ろうとするの! 私にはシュン
しかいないの! シュンは私の世界、私のすべて、私の私の私の私の私の私の私の私の私
の私の私の私の私の……私のものなの!!
「……イラ……アイラ!」
「ぇ! あ……ごめんなさい、少し考え事をしてて。どうしました?」
いけない、あの女のことを考えてたら嫉妬心に押さえが利かなくなってしまいました。
顔に出てなかったでしょうか。
「いや、手元が危ないとおも……」
「痛ッ!」
「アイラ!!」
ああ、指を少し切ってしまいました。そういえば、キャベツを切ってる最中でした。そ
れなのに、余計な事を考えてたから、見ると切り方はめちゃくちゃになってますし、指も
切ってしまいました。
「ああ、言わんこっちゃないよ。ほら、見せて」
「いえ、このくらい大丈夫です……あ、あの? シュン?」
彼は私の左手をとり、自分の顔に近づけていきました。そして
「ん……」
「!!!!」
私の切った人差し指を、口に含んで、傷口を舐めてくれました。
あ、あぁ……感じ……ちゃいます。
「……はっ! ご、ごめん! 嫌だった?」
い、嫌なはずないです。ふ、不意打ちなんてずるいですよ!
「嫌じゃないです……ありがとう、シュン」
「昔、自分で指を少し切ったりしてた時は舐めてたから……あ、薬と包帯とって来るよ!」
そう言って慌てて、シュンは台所を出て行きました。
……シュンの舐めた人差し指。私は、恐る恐る口に含みました。
「ん……」
ああ、これがシュンの唾液の味。そう思うと、どんどん脈が速くなって行くのを感じま
す。
シュンと間接キスしてるんですね、私……このままシュンを想って自分で慰めたい。本
当はシュンに慰めてもらいたいけど。右手が自然と股間に伸びていく。
「アイラ、持ってきたよ」
「ひゃっ!!」
「ど、どうしたの!?」
「な、なんでもないです。」
びっくりして、変な声を上げてしまいました。うう、お預けですか……。
「それじゃ、手を出して。見たところ浅いから、あとは消毒して包帯をしよう。よっぽど
の重症でない限り、回復魔法は使わない方が体には良いって言うし」
でも、シュンが私の心配をして手当をしてくれる。それで心が満たされていきました。
「うん、やっぱりご飯を食べてる時か寝ている時が、幸せを感じるわ」
「叔母さん、それはどうかと思うよ……」
この上ないくらい、幸せそうな顔をする叔母さんを見て、僕は苦笑する。それに合わせ
て隣のアイラも笑う……のが普通の食卓の風景なのだが、アイラは笑ってない。
向かい側に座ってご飯を食べてる、レイナさんが原因なんだろうな。若干睨んでるよう
な気がするし。仲良くして欲しいんだけど……まぁ、しょうがないか。
アイラが人見知りが激しいのは分かっているし、レイナさんも気にするなと言ってた。
うん、気にしないで僕も食べるとしよう。
「シュン、このスープはおいしいな」
「そ、そうですか。気に入っていただいて光栄です」
「うん、毎日来て食べたいぐらいおいしいぞ」
料理を出して一番嬉しい時は、食べてもらった人においしいといってもらう事だ。僕は
その言葉を嬉しく思った。
「アイラと一緒に、この野菜スープを作ったんですよ。ね、アイラ」
少しでも打ち解けてもらおうと、アイラに話を振る。
「……はい」
一言だけしゃべってそのまま食事を続ける。やっぱり駄目か……。そろそろ、僕と叔母
さん以外にも打ち解けられる人が、アイラにできればいいと思っているんだけど。
「ところで、ちょっといいか? シュン」
「なんですか?」
一通り、食事が終わったところでレイナさんが話しかけてきた。隣から少し殺気を感じ
たのは気のせいだと思う。
「騎士団の件だが……」
それか……。そのあとレイナさんは、騎士団に入ってからの具体的な事を話し始めた。
普通なら、見習い騎士からのスタートの所を、要望があれば推薦で王宮騎士の試験を受
ける事ができる事。落ちたとしても、正規の騎士の称号を得る事ができる事。などなど。
「悪くない条件だと思うが……君のような実力を持った人材が、今の騎士団には必要なん
だ。どうだ? やってみないか」
そこまで言われると心が少し揺らぐ。けど……
「駄目です!」
急に今まで黙ってたアイラが立ち上がって叫んだ。
「シュンは私の大切なパートナーです! 勝手に騎士なんかにされるなんて、さっきから
我慢してましたが、図々しすぎますよ!」
「ア、アイラ!?」
今まで黙ってたのが嘘の様に声を荒げるアイラをみて、相当怒ってるのがわかる。こう
なると、僕か叔母さんしか止める事ができない。
「別に強制してるつもりはないが? それに、リーリア殿もシュンの決断に任せると言っ
てる。図々しいのはむしろそちらでは?」
「なにを!」
ああ、レイナさんも火に油を注ぐような事を……。とにかく止めなきゃ、と思ってると
救いの手が現れた。
「まぁまぁ、こればっかりはわたし達がどうこう言う問題じゃないわ。本人の意思が大事
よ。ね、わたしはどっちでもいいよ、シュンちゃんの好きにしなさい」
叔母さんに諌められて、アイラは席に着く。そして、縋るような目で僕を見てきた。
「シュン……」
大丈夫だよ、心配しなくても。確かに魅力的な誘いだけど、今の生活に不満はないし、ギ
ルドの人たちの事も好きだから……僕がレンジャーを辞めることはないよ。
「すいません、申し出はありがたいんですけど……断らせていただきます。この事が、名
誉な事は分かってます。けど、レンジャーの仕事をしてる今の生活が、自分には合ってる
と思いますから」
「そうですよ、今まで通り私たちで、一緒にお仕事をやっていけばいいんです」
僕が断りの言葉を言った途端、アイラはこの上ない笑顔になり、レイナさんは表情には
あまり出てないが、少しがっかりしてる様子が見れた。
「わかった。しかたないな、君がそう言うのなら。だが、気が変わったらいつでも言って
くれ。それと……また会いに来ていいか?」
「はい?」
驚いて、少し間抜けな声を上げてしまった。何でまた、会いに来ていいかなんて聞くん
だろう? 別に駄目な理由はないけど。
「いいですよ、でもどうしてなんでしょうか?」
「いや、今日君と戦って負けてしまったからな。また修練を積んでから再戦したい。それ
に、なんだ、その……君と友人になりたいと思ってな。どうだ?」
少し顔を伏せ気味に、レイナさんは言った。なんだ、そんなことだったら別に断る理由
はない。それに、レイナさんみたいな強い人とまた手合わせできるなんて、願ってもない
事だ。僕は承諾の返事をしようとすると
「だ、駄目ですよ、シュン! その人はそんなことを言って、またしつこく騎士団に誘っ
てくるつもりなんです!」
「ふぅ、随分と嫌われたものだな。わたしも」
「ふん、本当はそう思ってるんですよね!」
「ちょっと、アイラ! 失礼じゃないか!」
「私はシュンのことを思って!」
「はいはい、そこまで。二人とも、落ち着きなさい」
結局、僕はレイナさんと再戦と再開の約束をした。アイラは終始不満そうだったけど。
「それじゃあ、また来る。今日はいろいろすまなかったな」
「いえ、そんなことないです。それではまた」
僕は家から出て、レイナさんを見送った。
さっきからアイラが突っかかってきた事も、レイナさんは許してくれた。それにしても
アイラ、いつもなら気に入らない人がいると、不機嫌オーラを発するだけなのに、今日は
嫌に突っかかってたな。
でもここまで感情を出すんなら、逆に仲良くすることもできるかもしれない。うん、前
向きに考えよう。そう思い直し、僕は家の中へと戻った。
/*うわ……俺のバカ…orz 上から四話1、2、3、です*/
―――――――――――――――――
夢を見た。私がシュンを傷つけた日の夢を。
王都の東部のはずれの森。そこに私は立っていた。視線の先には、小さい頃ののシュン
が苦しそうに息をして、その傍で小さい頃の私が泣き叫んでる。シュンの右の胸部に、ひ
どい火傷ができてる。原因は、私の魔法のせい。私のせい。私の……私のせいで!!
”そう、あなたが彼を傷つけたんです”
もう一人の私が現れ、頭の中に響くような声で話しかけてくる。
わかってる!! だから……だから私は死に物狂いで努力して、自分の力を制御できる
ようにした! そして、シュンの役に立てるように、あのあとも今までと変わらず、優し
く接してくれたシュンのために!
”本当に彼のためだけなのですか。自分のためじゃないんですか?”
……違う、違う!!
”卑しい。彼のためにと言って結局は自分が一番。そんな卑しい雌犬は彼に相応しくない
です”
うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!!!!!
”あなたなんかより相応しい人がいますよ。そう、例えば……わたしの様な”
そう言うと、目の前の私はあの女に変わった。
図々しいあの女、レイナに。
”そう言う訳だ。雌犬は引っ込んでくれないかな? 結局の所、シュンに依存しているだ
けの雌犬には、彼を苦しめる事はできても幸せにはできない。彼のためを思うなら……目
の前から消えるべきだと思わないか。 メ ス い ぬ さん?”
何で……あなたに……急にでてきたあんたなんかにっ!!!!!
私と!! シュンの!! 関係を!!
どうこう言われなくちゃいけないのよ!! 消えなさいよ!! 泥棒猫!!
私は印を切り、魔法を発動させる。あの女の周りの空気が爆発し、高熱が巻き上がる。
”あははははは!!図星なんだな、雌犬!”
忌々しい雌猫はバラバラになっていく。でも、首だけになっても、狂ったように笑いな
がら勝ち誇った様子で見てくる。
嫌! 嫌! もう嫌! 助けて……助けて! シュン!
”アイラ! アイラ!!”
薄れていく意識の中、シュンの声が聞こえたような気がした……。
―――――――――――――――――
……嫌な夢を見た。
あの日の夢を見たことはこの一回だけではない。その度に、自分に対する嫌悪感と、シ
ュンに対する依存と愛情が深まっていくのを感じる。
それにしても、今度はあの女になったのか……。前は……誰だったか。思い出したくも
ない。
私には、自信がない。シュンはとても魅力的だ。小さい頃も、周りにはいっぱい仲間の
子がいた。私なんかが近くにいてはいけないのかも知れない。そんな思いが、何回も私に
似たような夢を見させる。シュンを独占したい。けど、自分に自信が持てない。
だめだだめだ、こんな事を考えては。
もっと、もっとシュンの役に立てるようにならなきゃ。胸を張って彼の隣にいれる様に。
起き上がり、カーテンと窓を開ける。まだ少し、空は暗い。ふと下を見ると家の前に彼
がいた。訓練用の刀で、素振りをしている。こうやって、日々の鍛錬を惜しまないのが彼
の強さを作ってる一つだ。……私もやらなきゃ。
シュンに気付かれないように窓を閉め、私はローブに着替えて瞑想の準備をした。
見苦しいとこ見せてスマソ。 徹夜はやるもんじゃないっすね。
しがない理系の大学生なので更新ペースの遅さは勘弁してください。
それでは、神々に敬礼しつつ寝ます。
GJ!
アイラの「ですます調」に、妙に萌えてしまうのは俺だけか。
仕事明けに覗いてみれば・・・・もう100k越えですか。
このスレもすぐに捨てられるんでしょうね・・・。
>>神々
GJ!です。とてつもないこのスレの神々に感謝を・・・。
モカさん分が不足してきたぜ……
モカさんはまだか、まだなのか。
神々様本当にGJ!です(*´Д`)ハァハァ
やっぱり嫉妬と修羅場は人生のオアシスだ
このペースはさすがに速すぎるでしょうに
投下します
銀髪の少年の母国にある大きな屋敷でまだ幼さの残る少女が口元を緩めた
まだか?まだなの・・・・・報告は?
同じ場所を行ったり来たりと世話しなく往復する
なにをやっているのかあの役立たずが・・・・
少女は苛立ちを隠すことなく近くにあったイスを蹴り飛ばすとテーブルに置いてあるグラスを取った
グラスの中の真紅ワインが揺れて波紋をたてる
まあいい・・・・少女は微笑した
最後に笑うのは自分だ・・・・
少女の手からグラスが落ていき地面で割れた
白い純白の絨毯が真っ赤になるのを見て少女は大きな瞳を細めるとにっこりと笑んだ
自分は彼女になにかしてあげることができたのだろうか?
銀髪の少年は今日何度目かになる自問をした
答えなど出ていたら自分はいまここにはいないか・・・・
少年は自分のふがいなさと一人の少女への懺悔の気持ちで一杯になった
こんなことなら・・・・真実を彼女に伝えておけば
嫌われ役に徹していれば・・・・
悔いても戻らぬ時間を思い少年は憂いを含んだ顔で天空を見上げた
瞬間、少年の目が驚きで見開かれる
同時に大きな爆発音がした
この国の象徴でもおおきな門が炎上している
穴の開いた部分から武装した兵士らしき人たちが侵入して来る
「ガイロスト!?」
少年は見知った紋章と鎧にそう大声を上げ再び天空を見つめた
「プレシア!」
天空から舞い降る少女の髪が左右に別れてまるで翼のように広がった
天使かとも思えるその姿に少年は一瞬で魅せられてしまった
少年に背を向けて地面に着地した少女は身をひるがえして腰の剣を抜いた
青い髪の毛先が舞い上がり円状の軌道を描いた
少女は少年を見つめ一瞬微笑んだ
そして・・・・すべてがゼロになった
「兄様・・・・今日も遅かったですね!」
またかよ・・・・帰るそうそう
俺は不満げな態度をとって近くにあったイスに腰掛けた
「お前は俺の嫁さんかっての・・・・」
「兄様に一生面倒を見てもらいます」
はぁ、こいつは・・・・
「リスト・・・・お前もそろそろ婚約なり結婚なりしてくれんのか?」
うんざりと・・・・答えるとリストの瞳から一筋の涙が落ちた
そして・・・・・
「兄様以外の男性に・・・・兄様が私以外の女と」
そうだよ・・・・そうそれが自然な形なんだよ
理解したかわが妹よ・・・・
「坊ちゃま・・・・お夜食をお持ちいたしました」
巨乳のメイドさんが乳をボンボン揺らしながらうまそうな飯を持ってきた
この場合乳と飯両方を指す
「いただっきま〜す」
ブイン!
俺の頬を何かがかすめて頬に線が入りそこから微量の血が流れた
俺の後ろの壁にナイフが突き刺さる
な・・・・・
「に、兄様は・・・・私が他の男に汚されても構わないと?」
兄様ですから・・・・妹の幸せを願うのですよ
「兄様が私以外の女に汚されても構わないと・・・・?」
それは俺の自由だと思うぞ・・・・うん
「させない!他の誰にも兄様を渡したりなんてしない!」
ナイフをちらつかせてリストは俺に恋慕のそれともとれる視線を送った
「お嬢様?」
巨乳メイドさんが心配げに声を掛けるとリストはすさまじい形相でメイドさんをにらみつけた
「クビ・・・・あんたクビよ」
メイドさんの顔が青ざめていく・・・・・
「お前のどこにそんな権限がある・・・・安心しろ巨乳メイドよ、こんなぺちゃパイ妹の横暴は俺が許さん」
メイドさんの顔に血の気が戻っていく
良いことした後は気分がいいな・・・・うむ
「兄様は・・・・兄様は私よりもそのメイドがいいと・・・・そうおっしゃるのですか?」
妙に低いぞ・・・・リストの声が
「だったら、あんた殺して私が一番になってやる!」
ナイフを振り上げリストは巨乳メイドさんに襲い掛かった
最初は冗談のたぐいだと思ったがリストの目は本気だ
「く・・・・!」
俺の肩にナイフが食い込む
しかしすぐにナイフが引いていく・・・・
「あ、兄様!・・・・・」
リストがその身を投げ出して俺の方を舐め始めた
「ごめんなさい・・・・私・・・・・」
申し訳なさげに・・・・リストは俺の肩を舐めている
幸い深くは入っていないので俺にとってはかすり傷の中に入る・・・・
「なんでも、しますから・・・・私とずっと一緒にいてください・・・・兄様」
もう少ししたらこいつもほんとの恋を知るだろう
それまでなら・・・・・待ってやるよ・・・・それまでだぞ?
プレシア・サキエル ツンデレ娘。依存系のゼルの絶対論者。
メシア・シャムシエル ゼートラルの姫君。
リスト・サンダルフォン ゼルの妹。キモウトをめざしています(作者が)
リルス・レリエル メシアのおもり&護衛やく
簡単ですがこんな感じです
結局あのあと彼女は・・・・
『あの、その・・・・その!ごめんなさい!』
顔を真っ赤にして僕に背を向けてその場を去ってしまった
残されたのはアホ面でボー然する僕のみ・・・・・
なんとか気持ちを落ち着かせて僕は色々考えてみた
秋乃さんには憧れていた・・・・うん
恋愛感情かただの憧れか?と問われたら僕は間違いなく前者を選ぶと思う
嬉しい半面不安な気持ちのほうが強い
「た、ただいま・・・・」
なんか僕悪いことしたみたいだよ・・・・
恐る恐るといった感じで僕は廊下を静かに・・・・・
「どうしたかな〜?涼ちゃん?」
「どわ!」
思わず引いてしまう僕に夏姉ちゃんは悲しげな顔をした
「酷い・・・・涼ちゃん・・・・お姉ちゃんを化け物みたいに」
あれ?そうだよね・・・・僕はこの家の家族なんだから
オロオロする必要なんてないんだ・・・・
「ご、ごめんね?夏姉ちゃん・・・・・」
今にも泣きそうだった夏姉ちゃんがにっこりと笑んだ
変わり身が早いな・・・・まったく
「はい・・・・♪」
「え・・・・?」
夏姉ちゃんは両手を広げてまたニコっと笑んだ
「お詫びに・・・はぐはぐ」
しびれをきらして夏姉ちゃんが僕を引き寄せた・・・・
あぐ・・・・大きな胸が僕の目の前にアップになって柔らかい感触が伝わる
悲しい・・・・姉だとわかっていても欲情してしまっている
「ああん、涼ちゃん♪」
「お兄ちゃん?どうしたのさっきから上の空だよ?」
「・・・・・・・」
「お兄ちゃん!」
はっ・・・・なんだ冬香か・・・・
「まさか、クラスの女子のことなん考えたりしちゃったりなんかして!」
ギク!鋭い・・・・さすが妹・・・・関係ない?
「そんなことないよね〜、涼ちゃんは私のこと考えていたんだよね〜?」
相変わらずの間延び声で夏姉ちゃんが僕に夕飯の皿を渡した・・・・
「違うよね?私のことだよね?」
どうやら話はずれたみたい・・・・言えないよな・・・・僕が女の子に告白されただなんて
家族だから言えないこともある
でも、この時の為に二人は僕に色々世話をやいてくれたんだ
「えっと・・・・両方かな?」
僕・・・・頑張るよ二人とも
だから一番に伝えるよ・・・・二人には
「もう、そんなんじゃ彼女なんてまだまだ先だね・・・・」
「早く涼ちゃんの彼女さんの顔が見たいわ〜」
翌日今度は僕が秋乃さんを屋上に呼び出した
その顔には不安が伺える
それと期待も・・・・
「あの、僕で・・・・ほんとにいいの?」
自分で言うのもなんだけど僕はあまり目立たないし顔だって微妙なラインだと思う
そんな僕をこんな可愛い彼女が?
変な妄想が頭を駆け巡る
たとえば友達の賭けに負けて罰ゲームで僕に告白したとか・・・・
「私は・・・・神坂くんじゃなきゃ・・・・嫌」
う・・・・可愛い
「ほんとにいいんだね・・・・僕なんかで」
「神坂くんはなんかじゃありません!」
すごい勢いで秋乃さんが僕に迫ってきた
「私の気持ちの伝え方がいけなかったんですね・・・・なら、見てください・・・・私の覚悟を!」
間直に近づいた彼女の顔がさらにアップになっていく
「・・・・・ん」
柔らかな感触が唇から全身を駆け巡った・・・・
「今のが・・・・私のファーストキスで・・・・す、わかっていただけましたか?」
小さな身体がわずかに震え彼女の顔は恍惚したかのうように熱を持っていた
「ご、ごめんね・・・・疑ったりして」
「え、あ・・・・はい」
「まだね、キミのことよく知らないけど・・・・これから知って行きたいって思う」
彼女の顔が目に見えて期待のそれに変わっていく
「ぼ、僕のほうからも・・・・・僕と・・・・付き合ってください!」
「ただいっま〜♪」
こんなに気分のいい帰宅は初めてかも
いつもは疲れが先立ってたけど・・・今日は疲労すら心地いい
「お帰り〜・・・・なんだか涼ちゃんが楽しそうでお姉ちゃんも嬉しいわ〜」
台所から夏姉ちゃんが顔だけ出してニコニコと笑んだ
「冬香は?」
「冬香ちゃんならテーブルでお腹すかしてるわよ〜」
ちょうど良いや・・・・
「ご飯はもう出来てるわ〜あとは涼ちゃんを待つのみよ〜」
少しどきどきしながら僕は冬香の向かいに腰掛けた
続いて最後の料理を夏姉ちゃんがテーブルに乗せて冬香の隣に腰掛けた
「実はね・・・大事な話があるんだ」
一番に伝えるよ・・・・二人に・・・・
「僕ね・・・・彼女が出来たんだ・・・・」
がちゃん!夏姉ちゃんの手からサラダを盛ったお皿が落ちて割れた
「お兄ちゃん・・・・いまなんて言ったの?」
冬香も唖然とした表情で今僕が言った言葉をまるで外国の言葉を聞いたときのように理解不能という感じでいる
「昨日・・・・女の子に告白されて・・・・その子と付き合うこと・・・・」
がちゃん!さっきよりも大きな音に僕の言葉が途切れた
「嘘よね?嘘だよね?お兄ちゃん・・・・・!」
テーブルに置いてある物をすべて床に落としてそれに構うことなく身を乗り出し涙目で僕に迫る冬香
「ふぐ・・・・えぐ・・・・・」
夏姉ちゃんは泣き出している・・・・初めて見た・・・・泣いている夏姉ちゃんを
「嘘だ!嘘だって言ってよ!悪い冗談だよね?そうでしょ!なんとか言ってよ!」
冬香の怒鳴り声と夏姉ちゃんの鳴き声だけの中で僕は訳がわからなくなっていた
どうして?僕は二人とも祝福してくれると思って・・・・
今まで僕のことを想って色々と女の子のこと教えてくれたんじゃないの・・・・
自分で先の展開あまり考えないでいいので気が楽ですね・・・・無責任発言スマン
タイトルは異論ないようなのでこれにします
しかし・・・・この話・・・・書いてて面白いのでずらすら書けます
すいません、姉妹日記の二話です
度々すいません
補足ですがリストの兄様は
(にいさま)ではなく(あにさま)です
何この神ラッシュ
アビスさん二本同時進行とかテラスゴス
もう本当皆さんGJGJ!
修羅場キタァーーーー!!
泣き出す姉と怒り出す妹・・
これこそラブコメの王道ですねww
明日香の電話から一時間は経っただろうか。まだ家には誰も来ない。熱も相変わらず、引く気配を見せない。
母は終始我関せずの態度。俺も当てになどしていないが。
病院に行こうかとも思ったが、行きつけの病院の診察券がない。ついでに保険証も。
どこにあったか思い出せず、余計に熱が上がった。手当たり次第に探しても見つからず、体力の無駄遣いに
終わった。
正直に言って、この状況で助けが来るのは実に有難いことだ。
唯一の不安要素は、明日香が作るといった飯。俺が前学期の終業式の日に盗み見た成績表によると、明日香
の家庭科の成績は『2』。
しかもその数字の下には修正液がついていた。『1』を修正したのか、『3』を修正したのか、そこが問題
だ。
まさか食ったら死ぬようなものは出てこないと思うが、不味いものでも困る。
ポンピーン。
ん、考えていたら来たみたいだ。今の状態で出迎えるのは辛いから、家の鍵は開けておいてある。
勝手に入ってもらって構わない。
誰も出ないとわかったのか、ドアノブをガチャガチャする音がする。すぐにドアが開き、少しばかり風が入
ってきた。
「人志ー。入るわよー」
予想通り、明日香の声だった。
「おじゃましまーす」
「失礼させていただきます」
予想に反して、木場ともう一人、聞いたことの有るような無いような男の声もした。
三人分の足音が響く。寝ている俺には、凄く大きな音に聞こえる。
何だ何だ何だ? どういう経緯でそんな軍勢に?
やがて入ってきた三人に、俺はあっという間に囲まれてしまった。右に明日香、左に木場、頭のほうに知ら
ない男。
三人とも同じタイミングで座り込み、顔を覗かせてくる。
「人志、どう? 熱は下がった?」
「いや……」
包囲されている所為か、質問というより尋問をされているような錯覚に陥りそうだ。
いやそんなことは無い。明日香は部活を休んでまで来たんだ。木場は……同じような理由で来てくれたのだ
ろうか。
じゃあ、この男のほうは? ……全然わからん。
「どれどれ」
「どれどれ〜?」
二人の手が額の上に、いや、顔全体に置かれた。前がよく見えない。
やめろ、俺の顔は百人一首か。
顔を散々擦られて、ようやく開放された。
「やっぱり結構あるわね。でも大丈夫よ。あたしが来たからね」
「伊星くん、私も私も」
二人の顔が近づいてくる。
「あんまり近寄んな、風邪がうつる」
本当はアップになった顔が少し怖かったからなのだが、ぱっと距離が置かれる。
「人志、何か食べた?」
「朝から何も」
ざっ!
言い終わった途端に、明日香と木場が立ち上がった。
「それじゃあ、今からご飯作るわね」
「え〜? わたしが作るよ〜。新城さん、料理できるの?」
言葉に続いてにらめっこが始まる。明日香の眼は鋭く、木場の眼は笑ってない。
「馬鹿にしないでよ」
二人は台所へ向かっていった。作って貰うのは良いが、あんまり食欲無いんだけどな……。
「お久しぶりです。伊星先輩」
今度は、枕もとの男が話し掛けてきた。もう訳がわからない。
久しぶりと言われても、思い当たるところが見つからん。うちの学校の制服を着て、先輩と呼ぶから、一年
か?
「その顔では忘れてますね。一年の屋聞ですよ。ほら、以前お話したじゃないですか」
「屋聞……?」
あまり聞かない苗字だ。それと、前に話したと言っているが……。
――――思い出した。屋聞新一。だいぶ前に俺に何やらあれこれ尋ねてきた奴だ。
そうそう、いきなり、「変人こと伊星先輩の独占突撃インタビュゥゥゥ!」とかふざけたことを抜かしたか
ら、こちらも変人と呼ぶにふさわしき回答をして追い払った、ということがあったな。
「思い出しましたか?」
「今度は何の用だ?」
あのときから、印象はかなり悪かった。一言で言えば慇懃無礼。俺にインタビューをしたのも、大方記事に
して笑い飛ばすつもりだったんだろう。
そんなことに付き合ってられるか。
「……あまり大きな声では言えないのですが」
台所のほうをチラ見しつつ、声が広がらないように手を口元に縦に当てている。
「伊星先輩へのインタビュー、第二弾、です」
……それが大きな声では言えない事なのか?
大体、何で風邪で寝ているときに来るんだ。弱っている時を狙ったのか?
まあ来てしまった以上は仕方がない。第一弾の時のように、適当に答えて追い払うか。
「それでは早速質問します。今の御気分は?」
「スチール缶のような気分だ」
「新城先輩と木場先輩がお見舞いに来られましたが、そのことについては」
「地球は回るんだから、そんなこともあるだろう」
「さらに、手料理まで振舞われるんですよ?」
「店長を呼べ。話はそれからだ」
「……真面目に答える気、あります?」
「ないな。クロだから」
「なにが黒なんですか」
「髪の毛」
「……わかりました。もういいです」
屋聞はメモ帳とペンを引っ込め、やれやれというため息をつく。
「はぐらかしてもらった方が、こちらにも都合がいいですけどね」
やけに意味深な言葉。これも人の腹の内を探るための餌だろう。
うかつに口は開けないな。
「ん〜、このアイ○ノン、もうぬるくなってますね。氷水に替えましょうか?」
……頭と枕の間に手を突っ込むな。温くなってるのはわかっている。
俺が何と答えようか考えているうちに、屋聞はアイ○ノンを引き抜いて立ち上がった。どこからともなくビ
ニール袋を取り出し、冷蔵庫を開けて、氷をひょいひょい放り込む。
人の家の冷蔵庫を勝手に開けるな。と言おうと思ったが、明日香と木場が既にやっている。
「さあどうぞ」
頭に氷水の入った袋が乗せられた。
……んぷ。
ビニール袋がぐにゃりと広がり、顔全体に覆いかぶさった。
まあ、普通はそうなるよな……。
「あっとすみません」
ブン屋が手で吊り上げて、額の上にだけ乗るように調節された。
つーかわざとだろ。インタビューがうまくいかなかったから嫌がらせか?
「良い匂いがしてきましたね」
しばらくして、その言葉通り、台所のほうから料理に香りがやってきた。
少し食欲が沸いてきたかもしれない。
何かを焼いているのか、ジュージュー音が聞こえる。
「新城さん、何を作ってるの?」
「見ればわかるでしょ。お粥よ」
「え……? おかゆ……?」
ジュー、ジュー、ジャッ、ジャッ。
二人の話し声と、炒め物と思われる音。
「……おかゆにしては、良い音出してますね」
「言うな」
漂ってくるのは良い匂いなのに、おかゆという単語が深く引っかかる。
大丈夫だよな? 明日香、お前を信じていいんだよな?
(16話に続く)
すみません間違えました。
料理に香りが
↓
料理の香りが
です。
自分を信じてー!(訳:食うな)
このペースだと後3日で捨てられそうな悪寒。
まさにヤリチン
ドタドタと慌しく押し合い圧し合いでリビングへと入ってきた姉二人が神速の領域で俺の隣へと腰を下ろす。
右手に椿姉、左手に楓姉。
この構図を見れば、大抵の男は血涙を流して呪詛を吐き出す。
「辰真、今日のお味噌汁は辰真の好きなナメコのお味噌汁だよ」
「たっちゃん、今日のお弁当にはたっちゃんの大好きなおかずをたくさん入れたからね」
互いに自分の料理をアピールしながら、おかずを箸で極自然に俺の口元へと運ぶ。
「むっ」
「むむっ」
俺を挟んで睨みあう姉達。視線がぶつかって火花が散っている。
それを無視して黙々と食事を続ける俺。触らぬ神に祟りなし。不動 辰真、ヘタレです。
「たっちゃん、今日のお夕飯何が良いかしら。お姉ちゃん気合入れて作るわ。それこそ、今目の前の料理以上に」
「辰真、明日のお弁当はリクエストあるかい?今日のお弁当よりも美味しいのを作ってあげよう」
所々の単語を強調しながら問い掛けてくる姉二人。
気持ちは嬉しいが、お二人の額に浮かぶ青筋が怖いです。
「あ〜、それだけど…俺今日泊まりだから」
ピシッ
……なんだろう、今の何かが瞬間冷凍されたような音は。
「た、辰真…泊まりって、どういうことだい…?」
椿姉、体の動きがギシギシ言ってるって。
「そ、そうよ、ど、何処に、誰と泊まる気なの、お姉ちゃん許しませんよっ?」
焦っているのか、愛用の薙刀を取り出す楓姉。いや、普通に危ないから。
「友達の家。今晩家族が居ないから遊びに来いと命令系で」
「「その友達は男、それとも女っ!?」」
ほぼ同時の言葉。物理的な圧迫感すら感じる。これが言霊というものだろうか?
「お、男だって」
そう、残念ながら男である。
名前は牧原 貴葉。今の学校に入学した時からの友人。
あまりの仲の良さに、漫画同好会によってホモ説まで流された。
ぐっすん、俺はノーマルだってば…。
「そ、そうか…男ならまぁ許してあげよう…」
「そ、そうね…許してあげるわ…はぁ…」
物凄く残念かつ嫌々ながら許してもらえました。
姉二人の事は好きだが、どうにも過保護でいただけない。
前にクラスの女子に遊びに誘われたら物理的に阻止された。
主に刀と薙刀使われて。
一応納得はしてもらえたが、二人のテンションはどん底。漂うオーラもどんよりブラック。
はて、何故に落ち込んでいるのだろうか…?
「泊まり…泊まりか…一日とはいえ、おやすみもおはようも、キスもハグもできないなんて…あぁ、私はこの地獄に耐えられるだろうか…」
「せっかく、せっかく私が夕食の当番の日なのに…料理を食べてもらえないばかりか、おやすみのキスもおはようのハグもできないなんて…地獄だわ…」
なにやら二人はブツブツ言いながら、朝食をノロノロと食べる。
そろそろ学校へ行かねばならない時間だが間に合うのだろうか…?
学校へと到着。
しかし姉二人はいまだ落ち込んだオーラを放ったまま。
それでも俺の手を握るのは止めてくれない。
前に手を握るのを拒んだら、「私と手を握るのは嫌なのっ?」と、真剣をギラつかせて懇願されました。
何故この二人は事あるごとに刀やら薙刀やらを取り出すのだろうか。
椿姉は、祖父に習った剣術の有段者。中学時代では剣道で大会三連覇をしている。
一方の楓姉は、祖母が嗜んでいた薙刀に興味を抱き、今では免許皆伝の腕前。
どちらの姉も文武両道で美人、しかも炊事洗濯なんでもござれのパーフェクトお姉ちゃん。
それに比べ、俺はなんと駄目駄目な弟なのだろうか…。
あぁ、突き刺さる嫉妬の視線がとっても痛いよママン…。
因みに視線の割合は、男性2に対して女性8と圧倒的に女性が多い。
それはそうだろう、何せ姉二人は学校の二大プリンセス。
憧れる女生徒も多く、下級生や同級生の仲にはお姉様と呼んでる人も居る。と言うか多い。
事あるごとに姉二人に比べられて、よく凹んでいる俺、やっぱりヘタレです。
「それじゃ、お昼に屋上でね」
「浮気しちゃ駄目よたっちゃん」
二人は一つ上の上級生なので昇降口で別れる。
その際、昼の約束と釘を刺すのはいつもの事だが、俺にそんな相手はいない。
と言うか、浮気って俺別に楓姉の彼氏じゃないんですが…。
そんな事を思いながらクラスに到着。教室の後ろ、窓際に席に座ると頭をポンと叩かれる。
「お、おはよう貴葉」
「あぁ、おはよう」
そこに居たのは、無表情な友人。
基本的に無口で無愛想、おまけに性格は攻撃的という奴だが、俺とは気が合うのかいつも一緒だ。
「相変わらず無表情だな、もっと笑顔とか見せれば女子に人気が出るぞ?」
そう、貴葉は中性的な顔立ちで、女装とかすれば女の子に見えてしまう。
背も低めで細身で華奢。男子の制服を着ていても、男装している美少女に見られることが多い。
が。
「うるせぇ、殴るぞ」
「も、もう殴ってますよ貴葉さん…」
性格めっさ乱暴。直に手が出ます。
しかも何か格闘技でもしているのか、その拳から放たれる一撃は正に必殺。
以前、絡んできた不良を一人で叩きのめしたのを見ているので下手に怒らせることはできませんです、ハイ。
「それより、今日来るんだろ。準備したか」
「応よ、ほれこの通り」
そう言って、着替えとゲーム類が入った鞄を見せる。
それを見て素人目には分からない満足そうな表情を浮かべ、貴葉は自分の座席に戻った。
むぅ、いまだに貴葉の行動パターンは読みきれない。
友人で親友でクラスメイトでゲーム仲間。
貴葉と俺はそんな関係である。
まさか本当に男装少女か?
先読みはいけないよ。
そうだよね、楽しみが減るよね。
俺はショタが参加する修羅場の可能性を捨ててはいない
>>134 確かにショタの可能性もあるな
この際嫉妬であるなら性別は問わない所存(゚ー゚*)
「夢と魔法の王国」という例もあるし(*´д`*)
GJなんだが他作品とキャラの名前がモロかぶりだな
「はい、お兄ちゃん。珈琲」
お兄ちゃんを気遣いながら宿の部屋に帰ると珈琲を淹れてあげた。
「ありがとう」
お兄ちゃんが珈琲を飲んで喉を鳴らす。あたしが淹れた珈琲を飲んで。あたしが、淹れ、た……
「……んっ…」
「マローネ?」
思わず上げてしまった声にお兄ちゃんが訝しそうな顔をした。
「う、ううん!何でもない」
危ない危ない。久しぶりに世話を焼いた快感にちょっと濡れちゃった。
「…そういえばマローネの淹れる珈琲も随分と久しぶりだな」
「えへへ。懐かしい?」
昔を思い出して懐かしそうに飲むお兄ちゃん。
「あぁ。あの頃は朝にこれが出なきゃ一日が始まらないって感じだったなぁ」
エヘ。嬉しい。
「今度は飲まなきゃ禁断症状を起こすくらい美味しいの淹れてあげるねっ」
「あはは。恐いな」
そう。あたしがいなきゃ生きてけないくらいのね。
「ね、ね、お兄ちゃん。ホントに騎士辞めたの?」
あたしは気を良くしてお兄ちゃんの隣に座った。
「昨日言っただろ。色々あってな」
「どうせだから聞かせてよ、アリマテアの話」
最初は軽い気持ちだった。離れて暮らしていた半年間、いや二年間を埋めたいという純粋な気持ち。ただそれだけ。
「聞いてもあんまり楽しい話じゃないぞ?」
「それでも聞きたいの!」
「わかったわかった。そうだな、まず―――――」
だけど。
お兄ちゃんの口から出たのは本当に楽しくない話だった。
「―――――で団長たちと旅に出て此処に来たってわけ」
何なの……それ。
じゃあお兄ちゃんは仇のトレイクネルの娘と旅してるって言うの…?
あの銀髪の女はそれを解ってて厚顔無恥にもお兄ちゃんの隣で笑ってるって言うの…?
あのお姫様は自分の国の汚い謀略の所為で苦しんだって解ってるのにお兄ちゃんに付き纏ってるって言うの…?
お腹の中が煮えくり返りそうなのを必死で抑えた。
「どうした?マローネ」
お兄ちゃんの声が随分遠くから聞こえる。
あたしはお兄ちゃんが一番辛かった時から支えてきたのに。
離れたくない想いを堪えて二年間も我慢してきたのに。
それを横から掻っ攫った牝豚どもはよりにもよってお兄ちゃんの仇ッ!?
ゆるせ、ない……ゆるせない。許せない。許せない許せない。
許せない許せない許せないッ!許せない許せない許せない許せないッッッ!!!!
激しい憎悪で食いしばった歯が砕けそう。
「お兄ちゃん」
なんとか感情を心の奥底に閉じ込めて。
「そんな人たちと、旅してて、楽しいの?」
「旅の目的が目的なだけに、あんまり声を大にしては言えないけど……
まぁ…楽しい、かな」
照れたように頬を掻くお兄ちゃん。
……あんな女たちといて楽しい…?嘘だよ。お兄ちゃん。
「ねぇ、やっぱりあたしたちのところに戻って来ようよ」
「え?」
「あの人たち、なんか嫌な感じだよ。きっとまたお兄ちゃんを不幸にする。
だから、ね?その前に旅団に戻ろう?」
そうだ。あの女たちは絶対にお兄ちゃんを不幸にする。あんなヤツらとはすぐに縁を切るべきだ。
「何言ってるんだよ。そんなワケないだろ」
笑ってあたしの頭を撫でるお兄ちゃん。
……駄目。お兄ちゃんは完全にあの女たちに騙されてる。
「それよりマローネ、おかわり、もらえる?」
あたしに空いたコップを差し出すお兄ちゃん。
「う、うん…」
とりあえず今日のところはここまでにしとこう。
でも、お兄ちゃんがまたあんなことになる前になんとかしないと。
―――――あたしが、あたしがお兄ちゃんを助けなきゃ。
以上第五話でした。
六話も完成しているので深夜にでもまた投下したいと思います
GJ!!!!
六話が投下されるまで寝ません
全裸で待つことにするよ。外の公園で
>>129 トリップの付け方をご存知ですか?
名前欄に#の後ろに適当な文字列を入れるとトリップが表示されます。
例えば、名前欄に
テスト#1234って入れると、ここの名前欄みたいになります。
>>141 ちょっと署でお話し聞かせてもらえますか?
とりあえずUPされるまで女装して町内一周してみようかな〜
>143
決して怪しい者ではありません。
>>144もそう言っていますし。
ここはスルーですよ、スルー
女装した
>>145と男の子の密会現場に、偶々通りかかった男の子の幼馴染が
「私の○○くんを汚すな!!この泥棒猫!!」と言いながら
145に向かってナイフで襲い掛かっていく姿が見える・・・
145さん、ファイトだよ!
>>138 キタ━━━━━━(;゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
『第一話』
「失礼します」
病室のスライドドアを開け、一礼。
白い病室風が漂うこの部屋に似つかわしくない、若い女性が微笑んでくれた。
「体のほうはいかがですか?
あと、これは新しい駅ビルにできた洋菓子屋のケーキです・・・よかったらどうぞ」
病室の窓際のベッド、そこに彼女は今日も座っている。
俺は花が咲いたように美しい微笑を浮かべる女性に少し照れながら、慣れた手つきで備え付けのデスクから仕草で椅子を引っ張り出す。
「昨日左腕の包帯が取れたんですよ・・・・お医者様もあと二週間で退院できると仰っていました・・・・」
俺が花瓶の水を取り替えて椅子に腰掛けると、彼女は少し残念そうに言った。
怪我が治るのになぜ残念がるのかは不明だが、日に日に活力を取り戻す彼女の様子に、俺は少し顔をほころばせた。
そう、俺こと幹田馨(みきた かおる)は目の前の女性、森瑞希(もり みずき)さんをバイク事故に巻き込んで全治三ヶ月の大怪我を負わせてしまったのだ。
保険会社が事後処理はすべて順調に行ってくれたものの、俺は見目麗しい若い女性の貴重な時間を三ヶ月も奪い去ってしまった。
当然罪の意識にさいなまれた。
それにあとから解ったことによると、森さんには身寄りがいなかったのだ。
ご両親を幼いころに同じく交通事故で亡くし、頼れる親族もいない彼女に対する贖罪の一つとして、俺は身の回りの世話を買って出ることにした。
友人の誘いや自らの欲求を封印し、可能な限り彼女の看病をした。
俺の贖罪への献身と、想いが通じたのか。最初は心を閉ざしていた彼女は日に日に笑顔を多く見せるようになった。
聞けば森さんは俺と同じ大学生であったが、特別奨学金で国立大学に通う成績優秀で前途有望な特待生であるらしい。
あとで同じ法学部であることがわかったが、三流私大の俺と全国でも三本の指に入る国立大生の彼女とでは世間に対する考え方や、法知識に対する造詣の方も深い深い隔たりがあった。
俺はがんばって彼女に話しを合わせようと、いままでおろそかにしていた法学を必死で学び始めたが、逆に教えられてしまうという無様な形で決着がついた。
最近では学校の課題を手伝ってくれたり、教授の授業よりも的確でわかりやすい講義をしてくれたりするのだ。
本当に感謝してもしきれないほどであるし、言葉にできないほどの恩義を感じている。
殺したいほど憎いであろう俺に、ここまで情けを掛けてくれる彼女は地獄に舞い降りた天使さながらである。
「本当ですか!!それはよかった!!」
だから俺は、包帯が消えた彼女の姿を心から喜んでいる。
手入れもロクできないはずなのに、腰まで届く彼女の髪の美しさと艶が、俺には太陽より眩しかった。
彼女も止まった時を動かすことができるのだ。当然喜んでいるものだと思っていたが、先ほどの残念そうな顔のまま俯いていた。
「わたしが退院すれば・・・馨さんともう会うことができないんですね・・・・そう考えると、少し寂しいです・・・・・」
俺など憎んでも憎みきれない汚らわしいゴ○ブリ以下であるはずなのに、彼女は情けを掛けてくれる。本当に天使だ、いや、もはや神といっても過言ではない。
「寂しがることなんてないと思いますよ!!外には楽しいことがいっぱいありますし、俺のことなんかすぐ忘れますよ」
軽口だと気づいたときにはもう遅かった。
今までの和やかな雰囲気が一瞬で消し飛んだ。
「忘れません!!!忘れることなんて・・・・できません・・・・・・」
彼女は震えながらも、強い口調で言った。おとなしくて物腰の柔らかい口調の彼女が取り乱す姿は始めて見た。
頭を鈍器で殴られたような感覚に襲われる。
そして、大事な事を思い出した。
俺は大馬鹿野郎だ!!!!
彼女は事故のことで傷ついている。両親を事故で亡くした彼女に、更にバイク事故という形で傷口に塩を塗りこめてしまったのは俺だ!!
今までの慈悲に満ちた彼女の笑顔に浮かれすぎていた。
俺はどんなに償っても犯罪者。
身に刻まれた罪人の烙印はいくら身を削って尽くしても、法と時間が赦してもこの身が朽ち果てたとしても決して消えることがないのだ。当然、彼女の心の傷も同様だ!!
それなのに、なんて俺は馬鹿なことを・・・・・
今すぐ死んででも償うべきだが、それも解決にはならない。
「申し訳ありません!!今まで浮かれすぎていました。自分が赦されることのない罪を犯した人間であることも忘れ、貴女の優しさに甘んじていました。本当にごめんなさい!!!」
俺は即座に土下座して額を地面に擦り付けた。摩擦熱で皮膚がすべて剥がれ落ちて醜い肉を曝しても、後悔の念は消えそうにない。
「え・・・・っ・・・・・・そんな意味でいったわけじゃ・・・・」
「とにかく、今日はこれで失礼いたします。ケーキは痛まないうちに食べてください。次回からは、失礼のないようにいたしますので」
俺は再度額を地面こすり付けてわびると、そのまま踵を返して部屋をあとにした。
「まって・・・・・・ちがうの、そういう意味じゃ、馨さん!!・・・・待って!!」
後ろで彼女が何か言っていたが後悔と不甲斐なさで噴火しそうな頭では聞き取ることができなかった。
今度からは態度を改めよう。勉強を教えてもらうのもやめよう、砕けた口調で話すのもやめよう。
俺は犯罪者に相応しい矮小な態度をとっていればよい。
そう俺は、罪人・・・・・・赦されることなど、ない。
>>52 のプロットを勝手に使わせていただいて書きました。
二時間ほどでしかも初投稿なので至らないところもあると思います。
このスレに対する愛情は誰よりも深いのでがんばって完結っせようと思ってます。
さくらが逃げたあと、僕は大きく溜息を吐いた。
「ごめん、旦那。間に合わなかった、こんな風になったのは私のせいだ」
「それだけじゃ」
「私の、せい、なんだ」
抱きつくように僕にもたれかかると、水は泣き出した。再び慰めようかと思う気持ちと、
このままではいけないという気持ちが浮かび上がる。もしかしたら、本当に彼女が悪いの
かもしれないが、何故かそれを責める気持ちは出てこない。それはもしかしたら今の水の
姿を見て思っているだけなのかもしれないけれど、それでも怒りは出てこない。
僕は吐息を一つして、今日で何度目だろうと考えた。
「謝るのは後で良いからさ、早くガムテープほどいてくれないかな? こんなヨガみたい
なポーズって痛くてさ、間接が固い僕は正直死にそうなんだ」
安心させるように、敢えてふざけた言葉を言う。今はそんなことをしている余裕なんか
はないし、問題は山積みだけれど水を放っておける程には酷い状態ではない。今のところ
の一番の問題だったさくらは居ないし、股間のうずきも治まっているから大丈夫だろう。
「怒ってないから」
今は両手が固定されているのは寧ろありがたい。華に捨てられた反動か水を抱き締めた
くなるが、その衝動を抑えることが出来た。そのことだけには感謝をしながら、僕にすが
りついたままの水を慰める。
しかし、水はより一層泣き声を大きくした。
「ごめん、なさい。わた、しがあの娘を、こわ、し、たから」
そう泣きながら言うと、やっとでガムテープを剥がし始めた。意味は分からなかったが、
しかしこれで少し納得がした。多分昨日のことでスイッチが入り、それを水も後押しした
形になったんだろう。もしかしたら以前からしていたのかもしれないが、それでも怒る気
にはなれなかった。
それは僕も共犯だからなのか、それとも水に情が移ったからなのか。
「水は、悪くない」
本当にそう思っているのかは、自分では分からない。ただ責める気持ちが無いだけだ。
「許して、くれなくても、良いけど、嫌わない、で」
そう懇願する水の姿を見て、何故そんな気持ちになったかを理解する。
今の水は華と同じで、だから許してしまいそうになる。叱られた子供のようにひたすら
に泣いて謝り、許しを求めてすがりついて、何があっても僕の側から離れようとしない姿
は華と瓜二つだった。だから、責める気持ちも怒る気力もなくなる。
そして、何故僕がそんな面倒だとさえ思える華の側に居たかが、やっと分かった。
依存されていたからでもなく、友達だからとか幼馴染みだからとか兄妹や娘のようだか
らとか、大切だからとか、そんなつまらない理由じゃなかった。
いつも頭の中に居たのは華で、逆に気が付かなかった。
「僕は、華が好きなんだ」
その言葉に水は体を小さく震わせ、僕を脅えた目で見上げてきた。しかし、何も言わず
にガムテープを剥がし続ける。体を擦り付けながらというのは、せめてもの抵抗だろうか。
僕の体を自分に擦り付ける作業は、やはり華にそっくりだ。
「ごめん。改めて言うけど、やっぱり華以外は駄目だ」
水は無言で続行、残りは後ろ手に縛られているだけの状態になる。それを剥がそうと、
水は抱きつくように手を回してきた。
「後ろは、散らかってるから」
言い訳のように呟きながら、半ば抱き締めるような状態でガムテープを剥がし終わる。
漸く自由になった腕を前に出し、
「ありが…」
「なに、してるんだ」
僕に覆い被さっている水の向こう、そこにはこちらを睨みつけるように華が立っていた。
全力で走ってきたのか肩で息をして、荒い呼吸をしながらこっちを見ている。自慢にして
いた綺麗な髪は乱れて、手入れに気を使っていた白い頬には涙の跡が見える。
華は大粒の涙を溢すと、
「だましたな、やっぱりボクをだましたんだ」
叫び、扉を蹴った。
「信じてたのに、裏切った。ボクを捨てるんだ」
「違う」
誤解を解く筈なのに、喉が干からびて声が出ない。
「じゃあ、それは何なんだよ? 抱き合って、二人して」
「これは違う」
「どう違うんだよ、教室でもしてたじゃないか。ボクは誠にとっての一番だとずっと思っ
てた、だからずっと信じてたんだ。確かにボクは頭も悪いし運動もあんまり得意じゃない
し見た目もこんな風に子供だし家事も出来ないしいつも誠にべったりだしわがままだしそ
れなのに誠の意見は何も聞かないし独占欲が強くていつも放さないしそれのせいで迷惑か
けてばっかりだしはっきり言ってそれのせいで誠が普通の生活すら送れないし依存心も強
くて誠が居なかったら何一つ行動出来ないしそれどころか生活すら生命活動すら出来ない
し少しでも離れると不安で一杯になっておかしなことしちゃうし憾癪持ちですぐにカッと
なって信を困らせちゃうしボクをなだめる誠に気を使わせてそれのせいで好きなことも出
来なくさせちゃうし発育が悪いせいで隣に居て恥ずかしい思いさせちゃうしそのために自
分の体を無視してボクの健康管理してくれているのに言うことを聞かなかったりいつも自
分のことを二の次にして優しくしてくれる誠には大変な思いばかりさせているけど、でも」
漸く言葉を区切った華は僕の側に寄ると、
「それでも誠が好きで、そんな誠が好きで、だから信じていたんだ」
耳元で叫んだ。
「いつまでしがみ付いてるんだよぅ、離れろよッ」
そのまま体を割り込んで、強制的に水の体を引き剥がす。泣いているまましがみ付いた
ままだった水は、脱力していたらしく簡単に僕から引き剥がされた。そのことによって、
僕の股間が露になる。
「な」
萎えてはいるものの、さくらに出されたまま閉まっておかなかった局部に華の視線は釘
付けになる。そこに付いているのは、先程セックスをした証の精液や愛液、そして処女膜
を破った結果の鮮血だ。
「あ」
華は一歩よろめくと、僕と水を交互に見て、
「あああぁぁァ」
足元に落ちていた鉄パイプを拾って、
「止めろ、やったのはさくらだ」
振り上げ、
「そんなの関係無い」
水の頭に振り降ろした。
鈍音。
そして、僕の顔を見る。
「ごめん、誠。ボクはもう生きられない」
焦点の合ってないその瞳は、今までにも見たことのないものだ。初めて僕に見せるその
表情はいつもの泣き顔と違い、最早痛々しさを通り越してひたすらに悲しい。
「あとは、さくらだね」
そう呟くと、華は用具倉庫から出ていった。
「待っ…」
追い駆けようとすると、足首を掴まれた。視線を向けると、頭から血を垂れ流しながら
水がヘラヘラとしながら、しかし泣きそうな表情で僕の顔を見上げている。救急車を呼ぼ
うと携帯を出すと、僅かに頭を振った。
唇の端を上げ、
「自分で、も分か、るんだよ、もう無駄だ、って」
僕は掛ける言葉が思い浮かばず、せめて話しやすいようにしゃがみ込む。本当は今すぐ
にでも華を追いかけたいし、話す暇などなかったが、しかし無視は出来なかった。
目を合わせると、ひひひ、と嬉しそうに独特の笑い声をあげる。
「私ね、本当に、旦那が、好きだったんだ。今でも、一番、好き。ごめんね、私の、せい
で、迷惑、かけて。償え、そうに、ないや」
一語一語、途切れながらもはっきりと喋る。
「楽し、かった」
「うん」
「嬉し、かった」
「うん」
「ごめんね」
「うん」
「短い、間、だった、けど、ありがとう」
それきり水は目を閉じると、何も言わなくなった。
「馬鹿、安らかそうな顔して」
僕は水を軽く抱き締め、キスをする。
最後に限って何も言わず、わがままや、要求すらしてこなかったけれどそれをして欲し
そうだったから。礼儀としても、誠意としても、そうするべきだと思った。
数秒続けて、僕は用具倉庫から出た。
今回はこれで終わりです
次回は最終回
乞う御期待!
>>159 キタ━━━━━━(;゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
できればハッピーエンドも要望したいです
いい問い詰めw
>152
このスレに対する愛情は誰よりも深い?ふざけないで!
このスレは私の方が愛してるし、私だけを愛しているのよ!!
>>152 GJ!!
頑張って続き書いてくださいませ 期待してます
>>159 GJ!!!!
少し寂しい気持ちもしますが最終回期待しております!
>>152 凄い面白い・・w 主人公がすげえ勘違いばかりしているから、本当に修羅場を引き起こす才能がありそう
まとめサイトのSSも結構容量があるよね・・。
サウンドノベルでも作ったら、下手なエロゲー並に容量がありそうだ・・。
さすがにもうサウンドノベル化してくれる神はいないけどねww
ijiouh
>>152 全裸でwktkしながら期待して待っている
あぁあぁぁああもうすげえうぇうぇうぇ
僕もうずっと全裸
な、なあ、おかしくないか?
これだけ書ける人間がいて、欲しがってる人間がいる、
なのにどうしてエロゲにこういうのが少ないんだ…?
・・・いや、忘れてくれ。気のせいだ…
あのさ、何時まで俺は全裸で待たないといけないの?外の公園でさ。
なんか、>147あたりでは、死闘くりひろげてるしさ。
>168.169から、全裸の奴がくるし、おかげで>170方面の別の警官に見つかるし。
修羅場がおかずの我々はあまり気にしとらんが
このスレ結構エロ成分少なめだからなぁ。
つまり、薬を使って自分を主人公に襲わせるヒロインとか、逆レイプするヒロインとか、
アブノーマルな濡れ場を作り出せば完璧と言うことじゃないですか?
あれ?でも結構いるような気が(ry
ふと思ったんだが、このスレって夫や妻の浮気系の修羅場ってあまりないね。
どっちかっていうと、泥棒猫ってこういうのが一番似合うし。
やっぱ、昼ドラみたいな響きだから少ないのか?
ある意味邪道だからなぁ。
確かにエロ成分はかなり低めだな
ある意味正道でもあるが。
セックルなんて依存ちゃんが覚醒する為の飾りなんです、
エロい人にはそれが判らんのですよ!
つーか、ここSMスレでもないのに主人公の逆レイプ率が
異様に高いな。
>>177 年齢的なものもあるんじゃまいか?子供の親権とか慰謝料とか
あんまり現実的だとかえって萎える。
なんつーか若さ故の暴走とか好きなんだ
なるほど〜、やはり年増はきついのね。納得した。
出来て、大学生夫婦が限界ってとこか? 出来るかどうかわからんけど、
許婚通り越して高校生夫婦とか……さすがに無理か。
さすがに年増を作品に登場させても、このスレ住人は萌えないだろうな
脳裏的には泉ピン子にイメージ変換するからな
既出の源氏物語くらいの時代設定なら人妻も若くて萌えるんだがな。
明るいハーレム系よりはジュクジュクした大人の恋愛が見たい
主人公(男)は年とってても29までがいいな
自分の修羅場初体験はマクロスでした
修羅場はココと違って可愛いもんだけど映画は衝撃的だったな
トリップ知らんかった、
>>142 マジ感謝。では続き。
授業は滞りなく終了。
お昼は相変わらず姉二人のあ〜ん合戦が始まり、二人をお姉様と仰ぐ人たちからの殺意の視線に晒されて過ごしました。
不動 辰真、今日も胃が痛いです。
「辰、帰るぞ」
「うぃ、ちと待ってくれ」
既に帰り支度を終えている貴葉に急かされ、帰り支度を整える。
と言っても教科書類はロッカーと机に放置プレイなので荷物は今朝持ってきた鞄のみ。
因みに貴葉は俺の事を辰と呼ぶ。こう呼ぶのは友人では貴葉だけだ。
「飯どうする、ピザか?」
「う〜ん、偶にはラーメンなんてどうだろうか?」
貴葉も俺も料理なんてできないので、夕飯は外食か出前になってしまう。
「悪くないが、まぁその時決めりゃいいだろ。行くぞ」
くいっと顎で教室の出入り口を示され、帰るのを諭される。
「へいへい、お供しますよ」
軽口を言いながら、俺達は貴葉の家へと歩みを進めた。
「雪兎くんバイバ〜イっ」
「うん、バイバ〜イっ」
お友達に手を振って別れる。仲の良い女の子、だけどあんまり好きじゃない。
だっていつもボクのこと女の子みたいとか可愛いとか言ってくるから。
女の子に可愛いとか言われても、ボク嬉しくないもん。
うん、やっぱり可愛いって言ってもらうならお兄ちゃんだ。
お兄ちゃんに頭をなでなでしてもらいながら、今日も可愛いぞって言ってもらえたら、何よりも嬉しいもん。
自分が華奢で女の子みたいだってことは自覚してる。
パパもママも可愛い可愛いって言って女の子の服ばっかり着せてくるもん。
前は嫌だったけど、今は嫌じゃない。
だって、お兄ちゃんが可愛いって言ってくれるもん、えへへ。
「はぁ、お兄ちゃんに会いたいなぁ…」
ぽつりと呟く。声に出ちゃうくらい会いたい。
会っておしゃべりしてなでなでしてもらって、いっぱい可愛がってもらうの。
最近はあんまりお兄ちゃんが遊びに来てくれないから寂しいよ…。
って、あれ…?
あそこを歩いてるのって…お兄ちゃんっ?
あぁ、間違いない、お兄ちゃんだ、大好きなお兄ちゃんだっ!
嬉しいな、嬉しいな、お兄ちゃんの家こっちじゃないから普段会えないのに。
どうしてここに居るんだろ、もしかしてボクと遊びに来てくれたのかなっ?
わ〜い、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃ――――
ねぇ、お兄ちゃん…その隣の人…誰なの…?
貴葉と歩いていると、ふと視線を感じて立ち止まる。
俺の住んでいる家と貴葉の家は学校を挟んで対極の位置にあるため、こちら側へはあまり来ない。
貴葉とはいつも商店街で遊んでいるし、精々買い物か…あとは先生に会いに行くくらいだ。
因みに先生と言っても、別に教師じゃない、俺の師匠である。
「どうした、辰」
立ち止まった俺に素人目には判別不可能な怪訝な表情を浮かべる貴葉。
「ん、あぁ…」
それに対して曖昧に返事しながら、視線を感じた方を探るように見ていると…
道路の角で、こちらを呆然として見つめている小柄な影に気がついた。
華奢で幼い体躯に、ふわふわした柔らかそうな髪。
ボーイッシュな感じのする少女…ではなく、女の子っぽい少年が立っていた。
その少年には、あまりにも見覚えがありすぎた。
「ありゃ、雪兎じゃないか。お〜い、雪兎〜っ」
軽く手を振って声をかけると、雪兎が少し危うい足取りでこちらへと来る。
どうかしたのだろうか、何やら元気がないが…風邪か?
「お兄ちゃん…」
「おっす雪兎、学校の帰りか?」
「うん、お兄ちゃんも…?」
「応よ、これからこいつ…あぁ、俺の友達なんだけど、こいつの家で泊り込みで遊ぶ予定でな」
はて、何故だろう、貴葉を親指で指差しながら泊り込みと言った瞬間、雪兎の愛らしい顔が歪んだぞ。
「お兄ちゃん、その人お兄ちゃんの何なの…?」
「は? いや、友達だけど…」
「本当に? 本当の本当に友達なのっ?」
はて、雪兎は何故こんなにも必死と言うか、焦っているのだろうか?
「だから、友達だっての。どうしたんだよ雪兎、なんか変だぞ?」
とりあえず頭を撫でてやると、途端に表情がふにゃ…と溶ける。
ん、相変わらず撫で心地のいい頭だ。
「…辰、知り合いなのか」
今まで口を噤んでいた貴葉が、何やら不機嫌な声で…と言うかぶっちゃけお怒り気味で口を開いた。
な、なんだろう…俺逆鱗に触れるような事したか?
「あ、あぁ、俺の先生、つっても師匠なんだけど、その人の子供でさ、可愛い弟みたいなもん?」
「ほぅ、それにしちゃ随分な懐きようだな…」
貴葉の鋭い視線の先には、俺の身体に顔を埋めてグリグリと擦り寄っている雪兎の姿。
と言うか、
「ちょ、雪兎そこは駄目っ、そんな所でグリグリしちゃアカンってマジでっ!」
俺の体格と雪兎の身長の加減で、雪兎の顔が丁度俺の下腹部あたりにくるのだ。
そんな場所でグリグリされたら、色々と危ういではないかっ!
ちょっとの加減で男の重要部位がグリグリされちゃいますYO!
「ふ、仲の良いことで…」
怒りとかの負の感情が混じった言葉と共に、鼻で笑われました。
はて、俺は何か不味いことをしてしまったのだろうか…?
「ふにゃ〜、お兄ちゃ〜ん…」
とりあえず、雪兎を引き剥がそう。俺ショタちゃうし。
トリップはその文字列を知らない限り同じにはならないからね
いわば自己証明みたいなもので
ちょw雪兎と貴葉に不覚にも萌えてしまった俺はもうだめかもわかんね(*´Д`)ハァハァ
なにこの神投下ラッシュ( ゚д゚)
まとめてすまないがみなさんGJ!!
しかしもう140KBかよ
このスレも1週間もすれば
さっさと捨てられる事になるのか……
「も、もう駄目。一歩も走れねえ。」
目の前には、真ん中に噴水のある中々に大きな公園。
時計は4:23を指している。
さっき冬姉から電話があったのは15分位だったから、
「やばいな・・・」
急いで公園の中を見渡すと、・・・・・いた。
噴水から少し離れた木の下のベンチに、彼女は座っていた。
ショートヘアで、洗いざらしのジーンズに半袖のシャツという極めてラフな格好だったが、
逆に、そのシンプルな服装が彼女の美しさを引き立たせていた。
目鼻もキリッとしていて、男の俺から見てもかっこいいと思う。
今は、よく言えばクール、悪く言えば無愛想という感じの表情である。
「・・・・・・・・・・・・・・」
は、いけないいけない。観賞している場合ではなかった。早く向こうに行かなければ。
って冬姉、何故にあなたの足元には原型のない空き缶(多分コーヒー)が何本も転がっていルノデスカ?
もしかしなくても俺のせいですか?3分の遅刻で?そうですか。
・・・・・・・それじゃ、俺は死刑宣告されたくないので帰るとしますね。
そう思って俺が足早に帰路に着こうとしたとき、
「どこに行くつもりだ?康明」
ピシッと何かがひび割れる音。
BACKをいつの間にか取られていた。
ヤバイヤバイヤバイ。今後ろを振り返ったら・・・・。
ギチギチと首が鳴っている。
それでも後ろからの威圧には耐え切れず
、
「もう一度言うぞ。どこに行くつもりだ?」
再度問いかけられる。
(ええい、くそ、もうどうにでも成れ!)
振り返ったその瞬間、
「ゴッ」
世界が真っ暗に反転した。
「うわあああああああああああああああ!!」
ガバ!という擬音がまさしく合うかのように、上半身を布団から起こした俺は、
大音量で絶叫していた。
「はあはあ、なんちゅう夢だよ・・」
悪夢を見ていた。それもとびっきりの。
そう、冬姉に殺されかける夢なんて・・・・。
しばらく深く呼吸をして少しは落ちついた。周りを見渡す。うん、昔のままの俺の部屋だ。
次に時計に目を向けると、針は丁度AM7:30を示していた。
「ということは、さっきのはやはり夢なんだ。」
そう思って溜め息をつく。
「ちゅる、ちゅぱ、じゅぷっ」
「うぁっ・・・・・・・・・・て、はい?」
そんな水気を含む音が、布団の中から聞こえてきた。
なんだか猛烈に嫌な予感がする。
意識が覚醒するにつれ、その違和感はむず痒いような感覚に、 そしてほのかな快感へと変化していく。
その理由を理解した俺は、いきなり布団を振り払う。
「ちゅ、じゅる、っぷは。やあ、やっと起きたか。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
思考停止。
「中々起きないのだから心配したぞ?まあ下の君は私に反応して
すぐに起きてくれたのだがな。」
ははは、という笑いが妙に部屋に響く。
ナニヲイッテイルンデスカコノヒトハ。
「どうした?私の顔に何かついているか?」
「えっと・・・・・、俺さ、公園で冬姉に会った後の記憶が何故か無いんだけど・・」
「ああ、そのことか。何、愛しい姉の目の前で逃亡を図った愚弟を殴って気絶させて、仕方ないから家に連れて帰っただけだ。」
うわ〜冬姉の中では敵前逃亡=死ですか
「・・マジデスカ・・・」
それから少し話をした後、
「そんで、何で寝てる間俺のにフェラしてたわけ?」
「心外だな。愛しい弟と2年も離れていたんだぞ?
少しでも早くお前を味わいたいと思うのは当然だと思うがな。」
いえ、十分に当然ではありませんよ?冬姉。
「大体、2年前に私の処女を奪ったのはどこの誰だったかな?」
ニヤリ、という音が聞こえた。
「うう、それを言われると・・・・・」
そう。何を隠そうこの藤田康明、2年前に従姉弟の処女を奪っていたりする。
でもあれは冬姉が俺が留学するのを聞いてその晩に押しかけてきたからというか、
それで俺も冬姉を悲しませたくなかったからというか。
「・・・と、ともかくあれはちゃんと両者合意の上でとやったことなんだから、卑怯じゃないか」
「分かっているさ。そもそもなぜお前の部屋に来たのかわかっているのか?」
「え、よ、夜這い、じゃないの・・・かな?」
「まあそれが第一目的だが、もう一つはだな」
クイックイッと時計を指す。時刻はAM8:00.え〜っと8時といえば・・・。
「あ、成る程。8時ならそろそろ学校の支度をしないとやばいねっ・・ということは・・」
「ふむ。転校初日に遅刻は最悪だと思うな」
「どわ〜〜〜〜〜〜!ち、遅刻だ〜〜〜〜〜〜〜!」
「どわ〜〜〜〜〜〜!ち、遅刻だ〜〜〜〜〜〜〜!」
彼はそう言うと急いで学校の支度をして家を出て行ってしまった。
その後姿を2階の彼の部屋の窓から見送る。そして彼の後姿が見えなくなると、窓を閉め再びまだ彼の体温の残る布団に潜り込む。
「・・・せっかちなのは変わらないな・・・。まあ他のところは結構変わってしまっていたが」
そう言いながら、先ほどまでの口内の感触を思い出す。アレは、2年前とは比べ物にならなかった。身長が私よりも大きくなっていたのにも驚いたが、やはり一番の驚きはアレの成長だろう。なにせ自分を貫いたものだ。今は愛おしくさえ思える。
彼には聞きたいことが沢山あった。
向こうの学校の事。2年間の海外生活での事。
そして・・・・手紙に混じっていた一本の金髪の事。
今日の一件はその事も関わっていた。(まあ態度には出さなかったが
思い出したらなんだか無性に彼に会いたくなってきた。
今すぐにでも彼を問い詰めたい。しかし会うための口実がない。
ふと弁当と言う単語が浮かんだ。
今日は、私は大学が休みだ。
ならば、姉が弟に弁当を持っていくのは当然のことではないか。
そう思うと体が勝手に動いていた。
「よし。一仕事するとしようか」
今日はよい一日になりそうだ。
やっと1人目のヒロインが出せました・・・。
次は泥棒猫を出したいのですが、いかんせん長文を書くと、
すぐに稚拙な文になってしまい本当にすいません。m(−_−)m
ショタに金髪猫だなんて今日は珍味だらけだぜ。
だがその珍味もいいではないか
うん、大好き。
「お休みなさい、ウィル」
小声で言って私はウィルの部屋の扉を閉めた。
かなり疲れが溜まっていたようで、夕食後、私が部屋を覗いたときは彼は既に夢の中だった。
気付かないうちに無理をさせていたのだろうか。
もっとちゃんと私がフォローしてあげないと。こんなんじゃウィルの伴侶失格ですね。
気分転換でもしようと階下のバーに向かうと。
「ほぅ!ではウィリアムは―――――」
王女の明るい笑い声。誰かと話しているのかな?
「あぁ。あいつは昔っからポトフが好物らしくてよ。
酒場でも酒飲まずにポトフばっか食いやがるんだよ」
他に男性の声も聞こえてきた。
バーの中を覗くとカウンターで王女とベイリンおじさまが歓談していた。内容は…ウィルのことね。
くっ…あの王女め。私を差し置いてウィルの好物を訊いて一歩リードする気ですね!小癪な!
「その話、私も聞きたいです。おじさま」
断りもせず、隣に座った。私に気が付いた王女が眉を顰める。
「むっ!おぬしはお呼びではないぞ!マリィ!」
「別にあなたに話があるわけではありません。私はおじさまに訊いたんですよ?」
「ぐぬぬぬぬっ…!!おのれ!マリィのくせに生意気な!」
拳をぷるぷる震わせる王女。あははっ、顔真っ赤。気持ちぃー。
「はっはっはっは!!姫さん、あんたの負けだ。諦めな。
それにここは酒を飲むところだぜ?カタイことは言いっこなしだ」
おじさまが豪快な笑い声をあげて王女の背中をバシバシ叩く。
「けほっ、けほっ…む〜……わらわは不愉快じゃ!!失礼させてもらうっ!!
―――――ベイリン、またおぬしと話をしても構わぬか?」
ぷんすかと怒りながら椅子から飛び降りておじさまに尋ねた。
「勿論だ、楽しみにしてるぜ」
色好い返事を聞いて王女は笑顔で返し、私には舌を出してバーを去って行った。
「さてと。嬢ちゃん、オレに付き合ってくれるんだよな?」
王女を見送ると、おじさまは空いた器をこちらに置いた。
「えぇ。喜んで」
「ふーん…あのウィルがねぇ……」
ちびちびとグラスを傾けながらもおじさまの目は遠くを見つめていた。
「だから、私は彼の助けになりたい。三年もウィルが苦しんだのは私の父のせいだから……」
「そうだな。確かにゲイル=トレイクネルのせいでウィルは苦しんだ」
ズキン、と胸に刺さる言葉。あはは…容赦ないなぁ。
「だけどな、嬢ちゃん。それはあんたの親父がやったことであんたじゃない。
それに…あいつを救ったのも嬢ちゃんだぜ。」
「え?」
「あいつが戦争終わってもなんで騎士辞めなかったか解るか?
あんたがいたからだよ。オレはてっきり村を襲った連中を追うために騎士を辞めると思ってた。
復讐のためだけに行動していたウィルがそれを曲げて騎士団に残ったんだよ。
オレたちじゃできなかったことをあんたはやったんだ」
おじさまは少し自嘲気味に笑った。
「そんな…私は……」
「礼を言わせてもらうぜ。可愛い弟子を救ってくれてありがとう」
おじさまらしくない、深々と頭を下げた謝辞。
「や、やめてください!おじさま!
私、そんなんじゃ…そんな人間じゃ……」
そう、私はそんな人間なんかじゃない。汚い女だ。
ウィルのためと称して王女を殺そうとした。そういう女なんです、おじさま。
「かっかっかっ!ガラにもないことしちまったな」
おじさまは笑って頭をかいた。でもすぐに真剣な顔に戻り。
「ついでにひとつ頼んでいいか?」
「え、えぇ…?」
「これは一番ボロボロだったころのあいつを知っているから言えるんだが……
ウィルがもしまた復讐にこだわるようになっちまったら助けてやって欲しい」
「え?でも彼はもう…」
「わかってる。でもな、いくら本人が変わったっつったって根っこの部分はそうそうすぐには変えられない。
言い換えれば変わろうとしている今が大事なんだ。だからあいつのことを見ていてほしいんだよ」
この人は本当にウィルが心配なんだ。これが親心というものなのだろうか?
父とろくに会話もしなかった私にはあまりよくわからないが何か暖かいものを感じた。
「大丈夫です。おじさま。私、ウィルを見るのは得意中の得意ですから」
おじさまは私の返事に一瞬目を瞬かせ、すぐに吹き出した。
「ははは!そうか。ウィルもとんだ果報者だな!こりゃ、オレの取越し苦労だったみたいだ。
安心したぜ。ともかくこれからもウィルをよろしく頼むわ」
私に手を差し出して握手を求め。
「はい」
それに私も応えようと―――――
「駄目だよ」
突然の声に驚いて振り返ると、そこにはマローネさんがこちらに怒りの形相を向けていた。
「マローネ…?」
おじさまもその顔から不穏な空気を読み取った。
「そんな女なんかにお兄ちゃんは任せられない」
ぎりぎりと歯を食いしばる音がこちらまで聞こえてきそうだ。
「お兄ちゃんが一番辛かったときに側にいなかったくせに……
今さらあの人の隣に立たないで。お兄ちゃんを助けてあげるのはあたしなんだからッ!!!
あんたなんかに…あの人が辛い思いをした元凶のあんたなんかにお兄ちゃんは渡さないんだからッッ!!!!!」
憎悪と怒り。その眼はあの日の私と同じ気がした。
「マローネッ!!!」
ビィィィン…とバーが反響するくらいの怒号。おじさまがマローネさんを一喝していた。
「…いい加減にしろ。それ以上はオレが許さねぇからな」
彼女は口を閉じはしたものの、それでも私への怒りの眼差しは衰えず。
「―――――ない」
背骨が凍りつくくらいの低い声。
「あたしは絶対に認めないッッッッッッ!!!!!!!!!」
私に殺気をぶつけて彼女は走り去っていった。
「…すまんな、嬢ちゃん」
「いえ……」
そう答えたが私はマローネさんが消えた方向から目が離せなかった。
第六話「新旧サイ娘、合間見える」でした。
>>189 初めてのサイ娘体験は『ダブルキャスト』の美月でした。
背後から撲殺したり、包丁片手に返り血を浴びた姿で迫る勇姿に戦慄。
ジェノサイド編は今でも自分にとっての聖典です。
サイ娘キタキタ、サイ娘キタ(*´Д`)
これでブラマリ2ndのメインは、団長VSマローネ(VSシャロンちゃん)で決まりだな
サッカー見ようと思って起きたら
何このレス数
昨日の夕方から進み過ぎ
神様達お疲れ様です。勃起しました。
>>206 GJ!!
このままマローネは突っ走っていくんかな?
以下チラシの裏
昔やってたデュエマっていうカードゲームに
「あなたを誰にも渡さない」
-毒吐きダリアの花言葉
ってのを発見した……
投下します
「冬香・・・・今日も学校休むのか?」
ドアをノックしながら何度目になるかわからないほど言った言葉を繰り返す
あれ?ドアが開いた・・・・
部屋に入った瞬間ほんとに冬香か?思えるほど別人になっていた
やつれていて・・・・
「出てけ!あんたなんか大嫌いよ!」
罵りの声に僕は引きそうになったけど・・・・冬香のことを思えばこそだ
「学校まで一緒に行こう」
僕と二人は違う学校に通っている
遠いというわけではないし・・・・走ればなんとかなるはず
「来るな!バカ!」
差し伸べた手が払われた・・・・痛い
手の甲が赤くなってしまった
「あ、ごめんなさい・・・・私」
急に顔色を変えて冬香は俺に擦り寄った
「嫌いにならないでね?・・・・ね?お兄ちゃん・・・・・」
心配げに僕の手の甲をさする
おかしい・・・・どうしちゃったの?
こんなの僕が知っている冬香じゃない
「夏姉ちゃん・・・・?」
今度は夏姉ちゃんの部屋に入る・・・・
夏姉ちゃんの部屋には比較的楽に入れる・・・・でも
「遊びに来てくれたの?涼ちゃん・・・・じゃあね、夏美ね〜、おままごとがいい♪」
そう言って夏姉ちゃんは後ろから茶碗を取り出した
「どうぞ・・・・あなた・・・・」
ゆっくりとした動作で夏姉ちゃんが僕の前に茶碗を置いた
茶碗にはよく小さい子がやるような泥団子が入ってる
「美味しいですか?あなた・・・・・ふふ」
呆然とする僕を見て夏姉ちゃんが微笑んだ
本気でやってるの?僕・・・・わからないよ
いつも優しくて僕を包み込むような包容力を持っていた夏姉ちゃん
口うるさいけど世話好きですごく活発だった冬香
どこで・・・・歯車がずれてしまったのかな?
僕・・・・・僕・・・・・
どうしたらいいか分からないよ・・・・誰でもいいから助けてよ!
「涼さ〜ん!秋乃です〜!」
外からの声が神様が僕に使わしてくれた天使のように思えた
僕は階段を駆け下りて玄関を開く
「秋乃さん・・・・・」
「わ・・・・少し痩せちゃった?」
一週間ぶりの恋人の顔に僕は今にも泣きそうな顔をしてしまったかもしれない
優しく笑んで秋乃さんは僕を抱きしめてくた
「今は・・・・このまま・・・・・ね?」
甘い香りと柔らかさに包まれて僕は自分の力が抜けていくのを止められずに彼女に身を預けた
「誰・・・・その女・・・・・お兄ちゃん」
「・・・・・・・・ただのお友達よね〜涼ちゃん」
声のするほうを見るとそこには夏姉ちゃんと冬香がすさまじい形相で秋乃を睨んでいた
「初めまして、涼さんのご兄弟ですか?私涼くんとお付き合いさせ・・・・」
秋乃さんの目が驚きで見開かれた
瞬間冬香が僕を押しのけて秋乃さんに飛び掛った
「あんたが・・・・・あんたがお兄ちゃんをたぶらかしたのね!」
「あ・・・・・く!」
秋乃さんの上に馬乗りになって胸元を思い切り掴み上下に振る
秋乃さんの小さな身体が地面に何度もぶつかりその度に小さなうめき声がした
「やめろ!」
すぐに止めようとした僕の背後に夏姉ちゃんが回り両脇を押さえた
「離してよ!秋乃さんが!」
「二人はね・・・・プロレスごっこしてるだけよ〜・・・・・心配ないわよ」
笑顔の奥になにか黒いものが見えた気がした
「だ・か・ら・・・・涼ちゃんは向こうで夏美とオママゴトしましょうね♪」」
どこにそんな力があるのか
この一週間ろくになにも食べていない細腕で僕の身体を引きずる夏姉ちゃん
「殺してやる!」
僕がもたもたしているうちに小さな声も聞こえなくなってきた
秋乃・・・・さん?
「消えちまえ!」
やめて・・・・冬香!
「お兄ちゃんを惑わす泥棒猫!」
悪あがきで自分で付け足しをしています
先の展開ですがプロット以降の展開も一様考えていますが・・・・
無理なら皆様のお力を借りるしかなくなってしまいます
ですが書いたからには責任を持って最後まで書きます
と、書きつつ迷宮に迷い込んだ気分&無責任発言連発です
>>215 気楽に面白おかしく書いたらいいんじゃないの?
個人的の展開としては、秋乃と涼ちゃんがこのままラブラブ展開で姉妹を置き去りにした結果
姉妹→ヤンデレ化したら・・
すでにヤンデレだよなw
うう、怖いなあ。GJ
『第二話』
馨さんは亡者のような弱々しい姿のまま、部屋を後にした。
必死で引きとめようしたが、想像以上の早足でわたしの言葉が届くことはなかった。
「そ・・・・・んな・・・・・つもり、じゃ、なかったのに・・・・」
津波のように押し寄せてくる感情。
胸が張り裂けそうなほどに痛い。
毎日のようにお見舞いに来てくれる馨さんを病室から見送るときも、同様の痛みがある。
しかし、今回のは桁違いだった。
わたしの不適切な発言が与えた誤解。
しかも最悪な方向にニュアンスを間違えてしまった。
むしろ・・・・赦されないのは、わたしの方なのに・・・・
実際、事故の原因はほとんどわたしのほうにある。
暗い夜道で、しかも横断歩道ではないところで急に飛び出したのはわたしだ。
衝突の際、バイクの操縦技術がよほど高かったのか、わたしはほとんど衝撃から逃れることができた。
そう、わたしの左腕の骨折と、全身打撲はバイクの音に驚いて立ちすくんでしまった上に、パニック状態で自ら車体に突っ込む形になってしまった自分に原因があるのだ。
その上私の体は直りが悪く、通常の人なら二週間の入院と一ヶ月の通院ですむところをわざわざ三ヶ月まで引き伸ばし、更にまともに歩く体力も失ってしまって、入院期間を先送りにする形となってしまった。
このことは事故で『一応』加害者となっている馨さんも知っているはずだ。
むしろ馨さんは被害者なのに、甲斐甲斐しく身辺の世話と身寄りのいない私に毎日会いにきてくれる。
最初は罪悪感のようなものを感じていたが、想いはだんだん変容していった。
気づけば罪悪感は恋心になっていた。
彼の優しさと笑顔に触れるたびに、わたしの慕情は肥大化していく。
そして二ヵ月半経った今では自分でも抑えきれないほどになっていた。
正直彼の姿を見て、彼の呼吸を感じ、彼の優しさに触れないと生きていけそうもないし、彼の笑顔、温もり、視線、興味・・・・すべてを自分の物にしてしまいたいとまで考えている。
なんて薄汚い女だろうか。
・・・・わたしは罪人だ。
馨さんは身長が高くて体つきも立派。
細い目と鋭い顔つきがちょっと怖い印象を与えるけど、とても心の温かい温和な人柄だ。私のような勉強しかしらない暗い女に合わせて必要以上の知識までも学んできてくれた。
私なんかにかまっていなければ、外ではお友達がたくさんいるだろうし、女の人にも大層もてることだろう。彼女の一人や二人いてもおかしくはない。
そう思うたびに、申し訳ない気持ちと、存在するかどうかもわからない女性の影に煮えたぎるような嫉妬さえ覚え始めている。
彼の有意義な時間を、病室で小さくなっているのが相応しい狡猾で浅ましい女のために使わせてしまっているのだ。
ほんとうに、本当に申し訳ない気持ちと、彼にもっと構って欲しい。他のことに感けないでもっと私だけを見ていて欲しい。という感情が二律背信して自分でも制御できないほどになっている。
その上、彼に最悪の形で誤解まで与えてしまった。
謝らなくてはならない、誤解を解かなくてはならない。
始めにそう考えるべきなのに、私の薄汚い慕情は、
『もしかしたら、彼は明日からお見舞いに来なくなるかも・・・・』
『面倒くさい女だと思って、別の女のところにいくかもしれない・・・・』
そんな低俗で汚らわしい独りよがりな考え方をしている。
しかも、退院の日までが刻々と迫っているのだ。
どうしよう・・・・もしかしたらこのまま彼と疎遠になってしまうかもしれない・・・
もうわたしに笑顔を見せてくれないかもしれない・・・・
どうすれば、どうすれば、彼とこのままでいられるの?
どうすれば、どうすれば、彼の誤解を解いてあげられるの?
一晩考え抜いても、答えは出なかった。
それに考えれば考えるほど、思考は深みに落ちていく。
わたしが途方に呉れていると、コンコンっとドアをノックする音。
このリズムは馨さんのものだ。
全細胞が歓喜を告げているが誤解だと告げられなかったことが胸に引っかかっていた。
「失礼します」
何時もどおり一礼して入室する馨さん。でも今日は声が少し枯れている。
「気分はいかがですが?森さん」
いつもはここで破顔してくれるのだが、今日は表情が硬いまま。
釣られて私の声も低くなってしまう。
「へ、平気です・・・・」
「そうですか」
彼は短く告げると日課となった花瓶の水を取替え、ゴミ箱と簡単な部屋の掃除をした。
そして慣れた仕草で椅子を引っ張り出して雑談なり法律の勉強をするのだけど・・・・
「では今日はこれで・・・・それと昨日のケーキ、いかがでした?幼馴染が薦めてくれた店で買ったものですが。お口に合えば幸いです。では」
馨さんの声がいやに冷たく感じる。そして言葉に含まれた『幼馴染』という響き。不穏だ。
不穏すぎる。
誰、誰なの?幼馴染??男の子・・・・・いや、男の子はケーキなんて・・・・でも馨さんは甘いもの好きだって・・・・・それも私に合わせてくれたの?
・・・・馨さん・・・・
棄て・・・・ないで。
「馨さん!!!・・・・・幼馴染・・・・誰??」
気づけば大声を上げていた。
馨さんは細い目を見開いて驚いている。
「ど、どうしました?森さん」
しまった、感情が暴走していた。先に誤解を解かなくてはいけないのに・・・・
「違うの・・・・昨日の事・・・・違う・・・・」
「え?」
「忘れないってこと・・・!」
馨さんは目を見開いたまま直立していたが、また表情を曇らせると悲しそうに言った。
「解りました・・・・・・迷惑でしたら、もうお見舞いにはきませんから・・・・賠償金が少ないのでしたら、更に上乗せしても構いません。
こんなことで赦されなんて思っていませんでしたが、目障りなら本当に消えますので・・・今まで申し訳ありませんでした」
その言葉を最後に馨さんは退出した。
白い部屋に打ちひしがれた私だけが、残された。
今日も、誤解は解けなかった・・・
しかも新しく浮かび上がった、『幼馴染』という単語。
心が悲鳴を上げる。
黒い炎が胸を焦がしている。
灰色の怨念が脳内を渦巻く。
違う、違うの・・・・
独りに、しない、で・・・・
主人公の勘違いっぷりとヒロインの独占欲が良い味を出してきて今後の展開に期待
見事なまでに噛み合わない二人だなぁ。
…………それでこそ修羅場スレにふさわしい。
個人的にこういう展開は大好きだ
>>218 楽しみにしてます。頑張ってください
あとメル欄に無粋な突っ込みをば
なんだこの嫉妬ラッシュは
んー・・・山本くんの時も思ったんだが、
度を越した勘違いってのはちと萎えるな。
状況把握能力はいらんが、最低限の日本語能力くらいは欲しい>主人公
そりゃ作品のカラーによるだろう。
どうしようもなさがいいギャグっぽいものもあれば、
ちょっとした勘違いがスパイスになるシリアスものもある。
前に特定の主人公叩きを見ていて思ったんだが、
理想パターンだけを追い求めると、おなじ傾向の作品・同じ傾向の主人公ばっかになっちゃうよ。
個性があって結構けっこう。
面白い作品でなければ認めないって方はこのスレに向いてないよ
神のやる気を削ぐだけなんで書き込まないで下さいな
では投下致します
第4話『恋は盲目であり。そして、残酷でもあった』
話は今日の昼休みに遡る。
水野翔太が猫崎猫乃とイチャイチャお弁当タイムでくつろいでいた頃。
梓はまた同じメンツに恋愛相談を受けていた。
ついに恐れている事態が起きてしまった。
あの翔太君にメス猫がさかりに発情している。本当に不潔で気持ち悪い。思わず、朝は手を握り潰す寸前までいきそうになっちゃったけど、
そんな姿を翔太君に見せるわけもいなかったので、憎悪を見事に抑えこんだ。
よく、私は耐えたなと自分で誉めたいところだけど、翔太君のおかげでもある。
もし、あの場に翔太君がいなかったら、どこまで進展していたのか全く想像できない。
だけど、あのメス猫は余裕の表情を浮かべていたのは悔しかった。
だから、その余裕がなくなる所まで追い詰めるために、私は今日も友人の志織に恋愛相談を受けてもらっていた。
「泥棒猫から愛しいの翔太君を奪う方法って……」
困惑のぎみの志織は眉をひそめて、どういう風に答えればいいのか首を傾げていた。
「翔太君はあの女に騙されているんだよ!!」
じゃなかったら、あのメス猫と翔太君が付き合うなんて展開はありえないのだ。
「どう考えても、清い交際でしょうあれ?」
「いいえ。とっても不潔すぎます!!」
翔太君は私としかイチャイチャしないとダメなんです。他の女の子とは絶対にダメなんだから!!
あの猫乃に愛しい愛しい翔太君の肌が触れるだけで穢れてしまう。もう、強制的な手段に出ないと手遅れになってしまう。
「不潔って、恋人同士がイチャイチャするのは普通の事でしょう。水野にも彼女が出来たことなんだし、あんたもいい男を見つけたら?」
「し…お…り……!!」
「はいはい。落ち着きなさい」
わたしの頭をぽんぽんと叩いて、冷静さを失っている私を優しく志織は諭す。
他の友達も憐れむような視線で語っているが、志織だけは本音でぶつかってくる。これはわたしが大事な友達とかじゃなくて、はっきりと物事を主張しないと苛立つ気性であるからだ。
「水野の事が好きなら、思い切ってヤッてしまえばいいじゃないの?」
「や、や、ヤっちゃうって……。えっ、えっ、」
「既成事実をさっさと作ってしまえばいいじゃん。もう、中に出してもらって、赤ちゃんが出来たの、責任とってってね」
「あ、赤ちゃんって……」
翔太君とわたしの赤ちゃん。想像するだけで紅潮しているのがわかっている。
性に興味がある年頃だけど、翔太君とあんなんことをこんなことをしている姿が想像するだけで濡れてしまいそう。
「ある意味、両刃の剣だけどね。あんたが水野に捨てられたら、何もかも失うし」
捨てられる可能性はないと思うけど、翔太君が恋人を捨てて、わたしをお嫁さんにもらってくれる可能性の方が高そうだ。イケルかも?
「だったら、翔太君の家に忍び込んで、襲おうかな」
私の頬がにやけていた。アプローチを繰り返しても、無意味というなら、翔太君を押し倒して既成事実を作る。
もし、私が妊娠してしまえば、あの付き合っている泥棒猫よりも長い付き合いをしている私を最優先に考えてくれるはずだ。
「あんたが押し倒すぐらいに好きだという意志表示を示しているだから、さすがに気付かない鈍感はいないと思うけど……」
「これで泥棒猫から翔太君を奪い返すことができるよ」
そういう風に考えると、今まで欝だった心が少しだけ和らげてゆく。
久しぶりに食欲も沸いてきた。わたしがお弁当の中身を開けようとした時だった。
女子グループに睨んだ視線と向けながら、こっちへとやってくる男子生徒の姿が。
あれは、翔太君の友達の、えっと、誰だったけ?
思い出した。山田って人だよ。
「聞き捨てならねえな!」
怒気が篭もった声で、冷たい空気を震わせた。
両手の拳をボキボキ鳴らし、尋常のない怒りの形相でこちらに迫ってくる。
「水野を押し倒す? てめえら、本気で言っているなら、このフリーダムな毎日を送っている俺が絶対に許させないぜっ!!」
「お前には何の関係もないでしょう。あっちに行きなさい」
「そうよ。キモイっての」
と、志織と女子グループの口数と罵声が飛んで行く。
いきなり、会話に飛び入り参加をしてきて、キレるなんて誰だって不愉快に思うよ。
「グゥレイト!! 数だけは多いぜ!!」
大袈裟なリアクションをとって、意味のわからない言葉を告げる。
なんで、翔太君はこんな猿人と友達関係をやっているんだろうか。
「いいか。お前等。水野は好きな相手に失恋したんだ。あいつが落ち込んでいる姿を見なかったのか? ああん? あいつだってようやく、その失恋を乗り越えて、愛しいの彼女と上手くやっているんだ。邪魔するなっての!!」
翔太君が失恋? 一体、誰に失恋したっていうのよ。
「水野が失恋って、何の話よ?」
わたしが聞きたかったことを志織が山田にも負けない鋭い視線で問い返した。さすがは頼りになる友人です。
「元凶はそこのお前だろうが!!」
山田が指を差して、わたしの方に向かって罵声している。予想外なことに私は動揺して、あぅあぅと怯えていた。
「てめえが水野に、屋上で彼氏とキスをしている所を目撃させたのが元々の原因なんだよ。水野という男がありながら、他の男と付き合ったことでどれだけ水野が傷ついたのかわかってるのか? あん?
酒を飲ませた時に本音とか暴露していたぞ。風椿の事がずっと好きだったのに、想いを告白する以前にフラれたってな。
あいつは風椿と彼氏の事を気遣って、ずっと風椿の事を避けていたんだ。その彼氏が水野の事を誤解して、恋人関係がギクシャクしないようにな。
それがどれだけ辛かったのか、俺には知り得ることはできないけど。せっかく、あいつが新しい恋を見付けたのに、それを悪戯半分で邪魔しようなんて、あんまりじゃないかっ!!」
山田の独白でクラスは一気に沈黙して、わたしたちに視線を集中している。
「梓に彼氏? そんなバカな話はあるはずないでしょう!」
志織が山田にも負けないぐらい怒声で言い返す。
「そうだよ。私に彼氏なんかいないよ。ずっと、翔太君一筋だもん」
そう、彼氏なんかいない。いるはずがない。もし、翔太君が誤解しているとするならば、あの屋上の一件だ。
わたしが男子生徒の告白を断った時に、屋上に吹く風が強くてゴミが入った。その男子生徒が優しく目のゴミを取ってくれた。ただ、それだけのこと。
それがわたしと翔太君を狂わせてしまった。
誤解とすれ違いがこんな残酷な運命に変わって行くなんて。
「なんだって!! それじゃあ、水野は……」
山田も自分の間違いに気付いて、先程の勢いがなくなってしまった。彼も翔太君の事を想って出た行動だから、別に何とも思ってもいない。
逆に言うなら、山田がバカな事をしたおかげでようやく翔太君の真意がわかった。
その時。
重々しい空気の中の教室のドアが開かれた。
その人物は騒動の中心である翔太君であった。クラス中の視線が集まっているのに、
何事もなく自分の席に座った。嬉しそうに携帯を取り出して、メールを送信している。
この状況に気付かない程、恋は人を盲目にするのだろうか?
翔太君がクラスの異常に気付いて、周囲を探るように見ていた。私とも視線が合った。
私は目で翔太君に強く訴える。
風椿梓は水野翔太君の事が小さな頃からずっとずっと好きなんです。
あなたがいないと私は本当にダメなんです。傍にずっと一緒にいさせてください。
この想いに気付いてください。お願いっ!!
残酷にも、本玲を報せるチャイムが鳴り響いた。
担当教科の先生が入ってくると、翔太君は私に興味をなくしたように黒板の方に集中した。
放課後になると、私は翔太君の後を静かに追っていた。
あの山田の言葉を信じるなら、翔太君を今も誤解したまま、本当の自分の気持ちを誤魔化して嫌々に泥棒猫と付き合っているのに違いない。
翔太君が私を避ける真相を知ったおかげでどんな戦法を仕掛けても、私には勝ち目がある。
だが、義理堅い翔太君のことだ。誤解の真相を話しても、あの猫乃の交際を続けるかもしれない。それなら、真相を話しても特に何の効果もなくなってしまう。
やはり、志織に言われた通りに、こ、こ、ここは押し倒すしかないんでしょうか。
胸の鼓動が激しく揺れる。考えるだけでも、赤面してしまってるし。
ああ!! 何かエロい妄想している間に翔太君がスーパーに入っているしっ!! 追い掛けなきゃっ!!
「待たれよ」
その言葉はBダッシュをしようとしていたわたしを制止するかのように重々しく聞こえた。
「其方、恋をしておるな」
怪しい老婆がいかにもうさんくさい置物を置いて、何か店らしきもの営業をしていた。
「あの、私に何か?」
さっさと翔太君を追いかけたいのに。
「其方の恋を成功させるためのご商品があるので、ぜひ見ていただけませんか? 損はさせませんからのぅ」
「いいですけど。くだらない商品なら、買いませんからね」
老婆の言葉に何か引っ掛かるモノがあった。私が恋をしていることを見抜いた老婆に少しだけ興味が沸いたというべきだろうか。老婆の商品が私と翔太君の恋の状況を変えると直感ながら感じた。
「この商品でございます」
差し出されたのは古ぼけた鋸であった。刀身は茶色に錆びており、すでにこの鋸の使い道はすでに終わっているように思える。
「ある少女が彼氏を寝取った泥棒猫を17分割したいわく憑きの名鋸でございます。この鋸を使えば、どんな泥棒猫でも分断することができましょう」
「って、明きからにヤバイ商品じゃないですか!!」
「恋する少女の望み、夢、届かない想いを持つ少女たちには大絶賛でした。あなたもこの鋸を手に持てれば、満足致します」
老婆がいわく憑きの鋸を私の手にしっかりと持たせる。
鋸を持った瞬間に頭の隅々が冴えてゆく。これは今まで感じたことがない高揚感に包まれ、あの泥棒猫を殺したい衝動が襲ってきた。
(殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、あの泥棒猫をっっ!!)
私じゃない女の子の声が頭の中で聞こえてきた。
(死んで、死んで、死んで、死んで、お願いだから死んで、あの人の顔を見れないように私が私が私がグチャグチャに潰してあげるから。どこがいい?
頭、腕、足、胴体、ううん。泥棒猫に相応しい死に方は、グチャグチャに潰してあげる!!)
少女の悲痛の叫びが頭の中に入り込み、感情そのものがわたしと同調してしまう。
同じ感情を抱いたことがある私にとっては、それがもっとも自然であった。
大好きな人を独占して、近寄ってくる女は全て殺す。
これこそが恋に苦しむ女の子の至高の目的だ。
「お婆さん。これはいくらですかっ?」
「その鋸は人を選ぶ。其方が選ばれたなら、お代はタダでございます」
「ありがとうございます。お婆さん」
円満なる笑顔を浮かべて、お婆さんにお礼を言うと、私はYダッシュで走りだす。
目的は、翔太君を自分だけモノにすること。
だったら、先回りして翔太君のお部屋で待ち伏せしておこう。そっちの方が何かと手間が省けるし。
うふふふふっっっ。どんな風に料理しようかな。てへっ。
何か鋸とか出てきましたよww
まあ、鋸ネタは多分このスレの住人には知らない人がいないかと
書いていたら、惨劇には鋸しかねえ!! って感じで出しましたが・・。
次回はヤンデレ化した梓が翔太に襲い掛かりますww
>>229 GJ!!
鋸・・・このスレにふさわしい宝具というべきものw
鋸を受け取る前はBだけど受け取った後はYって、16ビットに性能UPですね
>>226 >特定の主人公叩き
○○姉を弄んだ○ちゃんの事か?
でもこのスレじゃ罵倒もエールの一種だろ?
>>227 俺はお前さんみたいな言い方こそ止めて欲しいなぁ。
225のだって一つの感想なわけで罵詈雑言ではないんだし。
uha
GJ
>215
.おれの好みは、
「僕」が姉妹をいさめていったん沈静化、秋乃さんは白い いい娘で二人はラブラブ
そこからの、姉妹による「僕」寝取られ劇。だな
>>232 今回はネタに満ち溢れているなwディアッk(ry…もとい山田に激しくワロタwww
なんで、幼馴染みってよくヤンデレ化するんだろう?」
まあ、もろストライクど真ん中なんでなんも問題はないんだが(*´Д`)
おお、定番の装備ですな
うーん、GJ!
目覚めは最悪だった。
「ウィリアム〜っ!起きよっ!」
俺を眠りから引き起こす、姫様の声。それだけなら快調に目覚められた筈だ。
だが。
ドシンッ!
「ぐほぅっ!!?」
腹部に強烈な衝撃を受けて無理矢理覚醒させられた。
「街に行くぞっ、ウィリアム!!」
腹に重みを感じながら目を開けると姫様が俺に跨って座っていた。
「い、痛いですよ…起きますから、ど、どいて…」
なんとかそれだけ声に出す。
「どうしたのじゃ、ウィリアム!元気がないぞ」
あなたのせいです、姫様。やっと姫様がどいてくれたので、瞼を擦りながら上体を上げた。
姫様もベッドに腰かける。
「…で、なんです?姫様」
「うむ、おぬしと街をまわりたいのじゃが。構わぬか?」
「え?でも俺あんまりこの街詳しくないですよ?」
俺だって先日マローネに案内されたばかりだ。
「いいのじゃ。……わらわは、お、おぬしとデートがしたい。…マリィだけでは不公平というものじゃろう?」
言ってる最中に恥ずかしくなったのか、俺から視線を離す姫様。
あ、ちょっと赤くなった。なんだか今日は少し様子が変だな。
「わかりました。朝食を取ったら出ましょうか」
「やったーっ!」
諸手をあげてはしゃぐ姫様。ここまで喜ばれると俺の方が照れてしまう。
「では早く準備して降りて来い、ウィリアム。さもなければ―――――」
俺に近づきつつ流し目。やばい、姫様が誘惑モードに入った警告だ。
「元気なソレ、わらわが食べてしまうぞ」
すっ、と左手で朝から絶好調の息子を撫で上げられた。あふん。
「着替えるからとっとと部屋から出てってくださいっっ!!」
恥ずかしさが頂点を越えて俺は思わず叫んでしまった。
朝の生理現象の存在を失念していた。ちくしょう。
「あははっ、待っておるぞ。ウィリアム」
俺にウィンクを飛ばしながら小走りで部屋から退出。完全に掌で踊らされている。姫様……マセすぎ。
着替えを済ませると、一階に下りて入居者に開放されている厨房兼、食堂に入った。
「おはようございます、ウィリアム様」
食堂にはシャロンちゃんが客に料理を運んでいた。
「おはよう…って何してんの?シャロンちゃん」
「先日から日雇いでここで働かさせてもらっています」
…なんとまぁ。仕事見つけるの早いな、シャロンちゃんは。怖いくらい様になってる。
「それじゃ俺も朝食もらえるかな?」
シャロンちゃんに注文を取ってもらおうと席についた。
「では少々お待ちください」
相変わらず馬鹿丁寧にお辞儀して厨房の方へ消えていくシャロンちゃん。
……あれ?メニュー訊かないの…?
変に思って厨房の方を眺めていると。
シャロンちゃんが、鍋を抱えた仏頂面の姫様を連れて出てきた。顔が強張っている。
鍋が重いのだろうか?というか料理してたの?姫様が?
「う、うぃりあむ…」
おもいっきり緊張した面持ちの姫様が俺の前のテーブルに鍋を置いた。
「姫様?」
尋ねても固まったまま。普段は自信に満ちたつり目が今は不安気に垂れている。
後ろに控えていたシャロンちゃんが、見かねてそっと姫様の肩に手を置いた。
「さ、姫様」
「う、うむ。
ウィリアム、その、えと、ぽ、ぽぽ、ポトフを作ってみたのじゃが、食べてくれぬか?」
「ポトフ?」
鍋の中を覗く。
………うっ。
俺はポトフが大好物だ。だから別に朝からこんな重い料理が出てきたとしても俺にとっては大した問題じゃない。
だけど。鍋の中はまるで闇鍋だった。魔女の大釜を連想するような凶々しさ。
「た、食べてみてくれ」
姫様はそう言いながら鍋の中の黒い流動物を皿に盛っていく。
ところどころにある黒い固形物はじゃがいもか……?ポトフってのはもっと、こう色とりどりじゃなかったか?
なんでなにもかもが真っ黒なんだよ。
「えーと、ポトフ、なんですよね…?」
黒い物体を指差しながら姫様の顔を窺った。
「やっぱり……ダメ…か?」
ぐっ。ちょっと泣きそうな顔された。どうやら回避不能らしい。
「わ、わかりました。いっいただきます!」
姫様が泣き出してしまう前に慌ててスプーンを取り、掬った。
「……ごくっ…」
恐ろしいものがこれから口に運ばれようとしている。ちらりと姫様を見るとじ〜っと俺を凝視していた。
ええぃ、ままよ!俺は腹を括ってその黒い物を口に入れた。
ポトフ(推定)の味が舌を刺激する。……こ、これは。
「ど、どうじゃ?」
咀嚼している俺に評価をせがむ姫様。
「不味いです。煮込みすぎでポトフの味がしません」
俺ははっきりと感想を述べた。
「…っ……そ、そうか……」
姫様がしゅん、と小さくなる。
「―――――でも、俺の為に作ってくれたんですよね?すごく嬉しいです。
よかったら…また、是非食べさせてください」
「ほ、本当かっ!?」
ぱっ、と顔を輝かせる姫様。
「えぇ。今度はちゃんとした姫様のポトフが食べてみたいです。また作ってくれますか…?」
「〜〜〜〜っ!!ウィリアムぅ!!」
感極まった姫様が飛びついてきた。
「あぁ!あぁ!必ずまた作るぞっ!!」
飛び跳ねながら抱きつくものだから、危なくてしょうがない。
「うわっ、姫様!こ、こぼれますから暴れないで!」
また掬ってポトフ(推定)を口に運ぶ。…うん。不味くてうまい。
「食べ終わったら街へ行くぞっ、ウィリアム!」
こちらが身動きできなくなるくらい、ぎゅうっと抱きつく。
おかげでその日の食事はなかなか進まなかった。
>>235 みんな、罵倒をしながらも、実は主人公を皆に嫌わせて
結局『主人公の味方は私だけなんだよ?』と言って取り入って
最終的に主人公を独り占めにする気なんだ!!
あの人は私のなんだから取らないで!!
「何なの……これ」
誰もいない厨房で呟いた。
今日はちょっと寝坊してお兄ちゃんに朝ご飯を用意してあげられなかった。
その報いなのだろうか。
目の前にある、空の鍋。これにはポトフが入っていたらしい。
マリベルとかいう子がお兄ちゃんに食べさせた物だ。
昨晩、厨房で何かガサゴソしているのを偶然目撃したし、
さっき、窓からお兄ちゃんとその子が楽しそうに街へ行くのが見えたから間違いない。
あの子は今、お兄ちゃんと一緒にいる。あたしは独り。
「なんで…」
なんであたしからお兄ちゃんをどんどん奪っていくの?
ポトフはお兄ちゃんの大好きな料理。だから勿論あたしの得意料理でもある。
なのに。
あたし以外の料理をお兄ちゃんが食べた。
お兄ちゃんに手料理を食べさせていいのはあたしだけなのに。
お兄ちゃんの世話をしていいのはあたしだけなのに。
お兄ちゃんの側にいるべきなのはあたしだけなのに。
お兄ちゃんと話していいのはあたしだけなのに。
お兄ちゃんを見ていいのはあたしだけなのに。
お兄ちゃんを愛していいのはあたしだけなのに。
お兄ちゃんを…。
お兄ちゃんを…。
お兄ちゃんを…。
「あたしだけなのにッッッッッ!!!!!!!!!!」
ガンッ!!
視界が真っ白になるほど頭にきて、目の前の空鍋を殴り飛ばした。
「はぁはぁはぁはぁ……」
カラカラとひしゃげた空鍋が床を転がる。
気分が悪い。憎悪と怒りで失神しそうだった。
――――――――――あいつら、すごく目障りだなぁ・・・・・死ねばいいのに。
普段不遇な扱いを受けている姫様のために
甲斐甲斐しさをアピールする場を用意した第七話。
…のはずが終盤のインパクトのせいで印象薄に。
やっぱり不遇orz
惨劇の予感w
作者さんGJでした
やってしまったorz
神様申し訳ございません
ここは幼馴染に刺されて死んでお詫びを!
姫様キタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
だがそれ以上にマローネの「お兄ちゃんを(略)」
が堪らなすぎる(*´д`*)
>>231 なぜに、昔日本テレビやっていた週刊ストーリランドとかいうアニメ出てきた
不思議な老婆のネタなんだ?
今やってる4chの浮気しないか心配で夫に盗聴器しかける妻に萌えてしまった…
ごめwwwwww誤爆wwwwwwwwwww
ホントすいません。許して。
水は、本当に無器用だった。僕が答えを出したように素直に考えればこんなことにはな
らずに済んだのに、それでも進めなかった。目標に向かって進むことしか知らないのに、
肝心の真っ直ぐ進む方法を知らなかったから辛い目に遭ってしまった。それでも『疾走狂』
の名前の通りにひたすらに僕に向かってきて、『ジグザグ』とした道のりを見せつける。
真剣で一途な彼女の想いは、だから僕には痛々しさを覚えさせた。
さくらは、本当に馬鹿な娘だった。素直に懐いてくれれば良いのに、屈折した関係を僕
と結ぼうとしていた。その想いには応えられないけれど、他にも、道が出来た筈だった。
『ジクザグ』なその繋がりが、多分最初から間違っていたんだろう。
僕は歪な彼女たちのことを振り切るように走る。
着信音。
音だけで華からのものだと確認すると、急いでポケットから携帯を出した。慌てて取り
落としそうになるものの、気合いで持ち直し通話ボタンを押す。
『誠か?』
電話越しに聞こえてくる華の声は、感情が削がれて冷たくなったもの。先程に長講説を
していたものとは思えない程に暗くて悲しい声だ。
『ボクは屋上に居る』
短く呟くと、一方的に通話を切られた。こっちからかけ直しても、電源を切っているの
か繋がらない。試しにさくらにかけてみても、同じ結果だった。
廊下を曲がりながら、僕は舌打ちを一つ。
「冗談じゃない」
口からは、自然に憎まれ口が漏れていた。
そう、本当に冗談じゃない。折角本当に華が大切だと、好きだと気付いたのに、こんな
ことで終わるなんて冗談じゃない。これは僕の利己主義かもしれないけれど、いつものよ
うに習慣で言うのではなく、きちんと好きだと伝えなければならない。やっとの思いで分
かった言葉が、無意味になってしまうなんて悲しすぎる。
「ごめん、華」
華は、いつでも僕に好きと言ってくれていた。僕がはぐらかしたり、曖昧にしたり、引
き延ばしていたときでも、心の底から好きと言ってくれていた。僕がそれに答えていなく
ても、応えていなくても、そんなことを気にせずに愛情を示してくれていた。僕が何もせ
ずに暮らしていたときでも、二十歳になったら結婚をして、キスをして、セックスもする
という約束を信じて待ってくれていた。僕はさも当然のように暮らしていたつもりだった
けれど、華はどれだけ辛かったんだろう。自分の体や性格に劣等感を持っていて、それな
のに僕が約束を守る証明も無い生活。同年代の男女がしているようなことを何一つしても
らえなかった華は、どれだけ苦しかったんだろう。僕のキスを見せられたり、セックスの
跡を見たときはどれだけ悲しかったんだろう。今の僕よりも、ずっと辛くて苦しくて悲し
かったに違いない。華は泣きやすい娘じゃない、僕が泣かせていたんだ。
それなのに、僕は今まで信じていてくれた華に答えを言っていない。
階段を上る。
「無事でいてくれ」
軽い息切れを感じて、日頃の運動不足を呪った。
「無事で」
疲れのせいか、最悪の光景が頭に浮かんでくる。
「無事で、いてくれ」
三度目の光景が頭に浮かび上がったとき、やっと屋上の扉が見えた。そこからは屋上の
光景は見えないが、僅かに開いた隙間から漏れてくる声で華は無事だと確認。安心で緩む
足を奮い立たせ、ラストスパートをかけるように一気に駆け上がる。
着いた。
完全に座り込みそうになる体に鞭を打ち、扉を開ける。
「お疲れ様、メロス」
華が、薄い笑いを浮かべて僕を見る。
「お疲れ様です、御主人様」
満面の笑みで、さくらは僕を見た。さっきの蹴りで骨が折れているのか、左腕はおかし
な方向に曲がっているし、脇腹からは血が溢れ落ちている。それでも笑顔なのはハイにな
っているのか、痛みすらも感じない程に壊れているのか。
フェンスに背中を向けてもたれかかっている二人に共通しているのは、どちらにも声に
感情が無いことだ。壊れて冷たくなった感情に背筋が凍るが、僕は前を見た。
「ただいま、セリヌンティウス」
華の方に歩みを進める。
「御主人様、待っておりました。御慈悲のお陰で、今は何でも出来そうなんですよ? 今、
このクソガキを…」
さくらが言い終わる前に、華は軽くその体を押した。
「御主人様?」
痛みは感じなくても、体は嘘を吐かないらしい。本当にあっけなく、あっさりと言って
も足りないくらい簡単にさくらの体はバランスを崩して宙に舞った。綺麗な髪や制服を翻
しながら、僅かな時間で視界から消えていく。
「な、華?」
華は僕に近付くと、やっといつもの表情を見せた。
「ボクは、セリヌンティウスじゃない。暴虐邪治の馬鹿な王様だ」
乾いた笑い声をあげて、僕にしがみつく。いつもより弱いその力だが、しかし僕には振
りほどけない。振りほどこうとも思えない。
「ボクは人殺しだ。今だけじゃない、ずっと前から何人も」
『殺戮姫』が、本当に人を殺した。今はそんな華のあだ名も、質の悪いジョークにしか
聞こえない。僕の目の前に居る少女は、自分を『奴隷』と呼んでいた少女と同じ異常者だ。
何の躊躇いもなく人の命を消す、最低の人種。
「誠が好きで、誰にも取られたくなかったから、間に入ってほしくなかったから」
自分のためだけに、他の人のことなど考えずに殺す。僕に依存をしすぎて、人として、
最低限のルールも守れない。僕の側に居るためだけに、最低のルール違反をしてしまう。
人間失格もいいところだ。
「こんなボクがお願いするなんて、ムシの良い話だけど」
本当に、自己中心的だ。
「どんなに嫌われても」
僕を抱き締める力が強くなる。
「裏切られても、捨てられても」
それはもう強いを通り越して、痛いとすら思える程だ。
「それでも、誠が好きだから」
「華」
それでも、僕は華が好きなんだ。
「死ぬときは、誠に見てほしかったんだ」
僕から離れると、華は綺麗な笑顔を浮かべた。それはいつも僕に見せていた、僕の一番
好きな、華の表情。一番見慣れた、二人の時の表情だ。
華は涙を浮かべながら僕に背を向けると、
「そろそろ死ぬね」
気軽に、旅行にでも行くときのような感じで告げるとフェンスに向かって歩き出す。
僕は、華を抱き締めた。
「なん、で?」
僕からは表情が見えないが、多分泣いているのだろう。くぐもった声で呟くと、体を小
さく震わせた。小さい頃からずっと、何度も体験してきたことだから分かる。華が泣いて
いるときは、いつもこうだった。
「ボクは、人殺しだよ?」
手の甲に、滴が当たる。
「誠の側に居ちゃいけない」
華の体が大きく震え、
「それどころか、生きてちゃいけない」
ついには自分の力で立てなくなったのか、脱力した軽い体重が僕の腕にかかる。それは
何年も変わらない、抱き慣れた重さ。
その姿勢のまま、華は体を大きく震わせると、
「なのに何で?」
僕に振り向いて叫んだ。
「ボクを捨てたのなら、もう関わらなきゃ良い」
「馬鹿」
僕は先程よりも強く華を抱き締める。
「いつ僕が華を捨てた? 華を嫌った?」
「だって」
「人の話は、最後まで聞け」
僕はさくらや水を歪んでいると思ったけれど、一番歪んでいるのは僕たちだ。お互いに
好きな筈なのに、付きも離れもせずにだらだらと繋がってきた。いつも一緒に居た筈なの
に、常に一定の距離で歩いてきた。気持ちも確かめずに、隣あっていた。
だからこそ、
「僕の隣は華じゃないと駄目だ」
「でも、ボクは人殺しだよ?」
「関係無い」
そんなことは関係無い。今までは邪魔者が居なくなるまで待っていたが、そんなのは無
関係だった。そうする奴が現れたら、二人で潰して殺せば良い。
「僕と、付き合ってくれ」
「ボクなんかで良いの?」
「華が良い」
「ありがとう、宜しくお願いします」
「こちらこそ」
「愛してる」
「愛してる」
華は涙を流しながら、笑顔を浮かべる。
まっすぐ来れば良い筈なのに色々なところに寄り道をしたせいで、ここに来るまでの道
のりはどうしようもない程に『ジグザグ』で、簡単な道も時間がかかりすぎた。今までの
二人の関係も歪な『ジグザグ』、これからの関係も、これからの道のりもきっとそうなん
だろう。どうしようもない程蛇行運転、『ジグザグ』尽くしも良いところだ。
でも、
それでも、
僕たちは恋人になった。
「「愛してる」」
最終回でした
いかがだったでしょうか?
少しでも楽しんでくれたら幸いです
暫くは名無しに戻る予定ですが、何かの拍子に戻って来たら迎え入れてくれると嬉しいです
それではまた
作者様お疲れ様でしたm( __ __ )m
大変楽しませていただきました
もしかしたら初の幼馴染勝利?かもしれない
大変綺麗な終わり方で作者様の力を見せ付けられました
”何かの拍子”期待してます(゚ー゚*)
乙
出来たら「とらとらシスター」続き書いて欲しい
貴方の作品であれが一番面白かったし好きだ
モカさんとこうして一緒に肩を並べて帰るのは日常の一部となっていた。
「それでさ、ゆっこはカレの家遊びに行った――!」
電車待ちで話していたところ、モカさんは言いかけた言葉を急に飲み込み体をすくめた。
どうしたのか、声をかけようとした所、視界の右側――モカさんの後ろに三沢の姿が会った。
「やっ。今帰り?」
言葉だけなら別になんでもない友達同士の挨拶の筈なのに微妙な違和感を感じる。前と比べる随分普通に話せるようになった気がするけど、まだお互いどこかに蟠りを感じている。
「あ――うん」
どうしてだろう、こうしてモカさんと一緒に歩いている所を見られた事に罪悪感を感じてしまう。三沢は只の友人――の筈なのに。
そうだ――以前まではいつも三沢の奴が隣にいたんだ。あいつとは傍に居るだけでうれしかった。そしてもっと一緒に居たかったんだ……
「最近って日が沈むの早くなったよね」まだまだ青い西の空を見ながら三沢は言う。
「夜になると随分冷え込むしな」
モカさんはオレたちの間に会話を邪魔しない為かオレの背中側にいた、代わりに手を握り締めていた。心なしか、その手はいつもより強く握られていると感じた。
三沢とは電車の中でもずっと話していた。ここまで彼女と話していたのは随分久しぶりに話した気がする。
何気ない会話。何気ない彼女と会話の筈なのに違和感を拭い去れない。胃の奥に少しづつ得体の知れないものが流し込まれている。
「モカさんどうかしました?」
さっきまで三沢と話していたから気づいてなかったがモカさんは頭が痛いのか、何かを考え込んでいるのか、片手を頭に当てていた。
「え、と……いや、考えすぎ考えすぎ……」人の耳で聞こえるギリギリのレベル呟いていた。「……いやまあ、ついでだから……」さっきまで表情はなく、何かを思いついた顔がそこにあった。
「うーん、私達付き合っているよね?」
「ええ、まあ……」
目の前の表情からは、それだけで終らない確信があった。
「別に催促とかする訳じゃないけど、プレゼントとか欲しいかなーって」
恋人へのプレゼントってどんなのがいいのだろう。今までそんなもの送った事がないからよくわからない。花か? いや何か違う気がする。身近な女性で何か送った事あったっけ――ああ、そうだ。去年の姉ちゃんの誕生日には適当にケーキとか贈っていた。
「指輪とかもいいかなーって」瞳が煌いていた。
指輪? 指輪っていくらぐらいするんだ? 今まで買った事もなければ興味すらもっていなかったから、どのぐらいの値段がするかなんて想像もつかない。今財布の中で足りるのだろうか。
「とりあえず今日はチョコレートケーキでもいいよ?」
人の頭と財布の中を見透かした様な笑みがそこにあった。
姉ちゃんと一緒に夕食をとった。久しぶりだ。言葉数は少ないが一人じゃないことが心に温かい潤いを与えてくれる。
「ねえ気づいたんだけど」
夕食後テレビを見ていたら、目の前に姉ちゃんの顔が飛び込んでいた。
「え、何?」
目の前の顔を見ているのが恥ずかしくなって目を天井へ逸らした。天井の染みが見える。あの染みは何時頃から出てきたのか。昨日今日ではないし少なくとも自分がここに来た時はなかった気がする。
「相手と話すときは真っ直ぐ相手の目を見る」
頭を掴まれて顔を真っ直ぐ向けられた。でも目は泳いでしまう。そして頭を掴んでいる手を無理矢理払ってまで顔を背けることも、自分の部屋へ逃げる事も脊髄が許してくれなかった。
真っ直ぐ見ることは出来なくても目は左右に移動させながら、その顔を視界にいれたくて仕方がない。そうだこんな風な感じの事が以前姉ちゃん以外に――
「私達ってスキンシップが足りない」
「いや――」
スキンシップって――あの淫らな情欲に溺れた関係が頭をよぎる。いや、姉ちゃんの事嫌いとかそういうんじゃないし、美人だとは思うけど――目の動きと呼吸、鼓動、全てが落ち着かない。
「普通姉弟ってもっと一緒に遊んだりするのに私達殆ど遊んだことないじゃん」
「――あ、うん。言われてみれば」
体から急激に力が抜けていた。なんだ普通に家族としての意味合いか。
「で――どうするの?」
いきなりそんな事言われても何をしたらいいのか自分の中に全くイメージがわかない。
「さあ? あんたも考えときなさいよ」
姉ちゃんは軽く笑いながら頭を撫でるように優しく二回叩かれていた――これもスキンシップに入るのかな。モカさんもよくしてくれているが誰かに触れてもらっていることが無条件で癒される。あ、グーで叩かれた回数の方が圧倒的に多いかも――
――そういえばお互い全く触れないでいるが姉ちゃんはオレと寝た事はどう思っているんだろう。
<チラシの裏>
転職先はやたら遠かったりするは、ネクタイしめなきゃいけなくなったは
毎朝シャツにアイロンあてなきゃいけないは
満員電車で風邪もらうは、歯の詰め物は外れるは、眼鏡はなくすは(ry
</チラシの裏>
>>265 リアルで大変な生活になっているんですね・・・・
でも応援しています!!
ほんなこつ
とりあえずモカさんのやきもち(?)に萌えた。
これを機に、姉や三沢のように暗黒面が少しずつ出て来ると更に萌えるな。
リアル生活が落ち着いて、またここに来てくれる日を待ってます!
やっとモカさん分が補給されたゼ。
挙式おめ>阿修羅様
>>265 乙です!
とりあえず電車で風邪うつされたのは
ストーカーしているヤンデレが
夜中、外でずっと家を監視していたがため風邪をひいて、
そのまま満員電車までストーカーしていてそこでうつされたと予想
>>270 そういや、このSSスレでヒロインがストーカーだったというのはまるでないな・・。
ストーカー化で一番萌えるのは・・やはり幼馴染かな・・。
幼馴染属性がGJの俺にとっては他は考えられませんね・・。
智子、もっと前面に出て来てくれ
>ヒロインがストーカー
もし神の円香たんは?
>>265 モカさんの嫉妬も可愛いよモカさん(*´Д`)ハァハァ
>>阿修羅氏挙式おめです
板違いの顰蹙を承知で訊きたいが、
>>210のアレ、出典は何だ?
気になって眠れねぇ。
アドレス削ってログ辿ってみな
Bloody Maryと血塗れ竜の作者さん文章うまいね〜
その辺のラノベよりよっぽど読みやすい
続きwktkしながら待たせてもらいます
「うぅ…なんか恥ずかしい……」
「れ、冷静になると……やりずらいです……」
ベットの上には二人の少女。俺の桃源郷、ここに成れり。
「俺を生んでくれてありがと……マイファザー」
「「そっちかよ」」
ダブル突っ込みにめげず、ベットにルパンダイブ。ぐわしと両腕で二人を掴む。
「ぐへへへへ。ちこうよれちこうよれ。」
ぶっちゃけ我慢の限界。さっき春華に手で抜いてもらっただけでは足りないのだ。
「落ち着きなさいよぉ。」
「が、がっつかないでくださいぃ…」
それは無理な話だ。
「では早速、口でやってもらおうかな。」
デンと二人の前に晒す。ハイテンションだから紛れているが、かなり恥ずかしいシチュである。
「うぅ……んむ…ふぁ……」
「んちゅ……はむ…あ……」
予想外。これは素晴らしい。ステレオアタックがここまで気持ち良いとは思わなかった。志穂の慣れた舐め方と、春華のぎこちなさがまたいい。
「す、げぇ……」
勝手に腰が動いてしまい、二人の柔らかい唇に当たるのがまた快感だ。
「んん……あ……じゅる、じゅるる……」
「はむ……ちゅうううう!」
二人同時にストローの様に吸われ、脳がスパークする。
「うをあ!」
予告する暇も無く、精の塊が溢れだし、二人の顔に直撃する。
「わっ…ぷあ……相変わらず多いわね…」
「ひゃあ!あぁ……んぁ……す、すごい……」
二人の反応が違うのも面白い。
ろくに顔を掃除させないまま、次の段階へ。
「んじゃ……今度はこっちか前戯を……する必要ないか……」
「うぁ……」
「ご、ごめんなさい……」
二人とももうぐっしょりだった。となると、言える事は一つ!
「ほぅ…しゃぶっただけでぬれちゃったのか。」
言った途端、顔が赤くなった。いや、まぁ、言ってるこっちも恥ずかしいのだが。
「よし!じゃあ、春華からだ。」
「は、はい!」
「……納得いかないわ……」
不満をブツクサ言っている志穂をスルーし、さっそく春華に棒をあてがう。
「痛いだろうけど我慢してくれ。」
「は、はい……んん…ああ!」
ぐぐぐと入っていく。とてもきつい隙間から、きれいな血が流れ出る。
「ああ…ん…せ、せんぱいと……ついに……」
「すげ…きっつい……」
ひさびさな処女感覚。いや、志穂のだってキツくて気持ちいいよ?
「あぁーん!もう我慢できないぃ!」
そう叫ぶと、志穂が仰向けになっていた春華にまたがるようになった。……所謂、美少女丼(?)ここに爆誕。
「おにーさん、涙チョチョぎれそうだよ……」
「い、いいからさっさと腰動かして。……二人同時にぐらいできるでしょ?」
「もろち……もちろん!」
あまりの感激に同様しまくり。
「当然、私の中に出してくれるわよねぇ〜」
「え?わ、私も……今日は危険日なんで、よかったらせんぱいの子供が欲しいかなーっと……」
「ちょっ!それだけはダメ!」
「なんでですかぁ?志穂さんはこれからもやれるんならいいじゃないですか!」
「お、おまえら、暴れるなって……」
性感帯に響く!二人を落ち着かせるため、腰を動かす。二人の穴に出し入れするのは難しい。
ちなみに二人とも名器だ。志穂はよくうねり、春華は処女だったせいか、かなりキツい。
「あぁ…ん、くぅ…ふぁ…」
「うぅ…あん…あは…はふ…」
興奮とともにペースも上がる。射精感が徐々に高まる。
「そ、…そろそろ…」
「んぁ!わ、私も…いきそ…はぁん…」
「ふあ…せ、せんぱぁい…なにか…なにか、きてますぅ。」
「ぐぁ!」
交互に中に精子を注ぐ。興奮のせいか、いつもの倍は出ていただろう。
「あ…く…熱いよぅ…晋也ぁ…」
「うああああ!…なにか、はいってきますぅ!せんぱいぃ!」
そのまま二人に抱き付くように、ベットに倒れこんだ………
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
「あ、あのぉ、志穂さん……」
「ん?」
二人が髪を梳かしている時、春華が志穂におずおずと尋ねる。
「そのぉ……用具倉庫でって……どうなったんですか?」
「あ!!すっかり忘れてた。そういえば許せない事してくれたわねぇ。………まぁ、いいわ、助かったし。」
「え?本当ですか?」
「うん……なんか、男の内の一人がいきなりスタンガンで他の奴等倒しちゃって………そのまま逃がしてくれたわ。
『君のフラグを立たせてはいけない!』なんて意味不明なこと言ってたけど……」
スタンガンて……やりすぎじゃないか?それに、人の彼女にフラグ立てんなよ……
まあ、助かって何より。二人は仲睦まじく(?)頬を抓合っていた…………
GJ!!
さて俺も「とらとら」を書き始めるか
GJ
>>277 ありえないと分かっててもブラマリの東の帝国が
血塗れ竜の舞台とか考えるとワクワクする
>>281 Youの作品はこのスレで一番エロいよ!
GJ!
嫉妬…しっと と読むが、やきもち とも読める
たまには、軽いヤキモチ物も良いものだ
このスレでは嫉妬と書いて死亡フラグと読む場合が多い気がするよ。
さわやかな修羅場書いてもおk?
無論
バッチコーイщ(゚Д゚щ)カモォォォン
むしろお願いしたい所存
是非書いてくだされm( __ __ )m
>>282 とらとら、期待してます
本当にこのスレって神々が多すぎて、本スレを知らない間に上回ってしまっているよw
>>282 とらどら期待してます・・。
>>288 さわやかな修羅場いいよ萌えます
とらどらは違う。
それでは俺は、「きぃちゃんとむっちゃん」を応援してみよう。
ガバガバの遠藤さんщ(゚Д゚щ)カムバック!
それにしても、まとめサイトってさ。
繋がりにくい時間帯だと、真っ暗なバックに般若面だけが浮かび上がるんだよな…。
なんというか……いつもにらめっこしてしまう俺ガイル。
キョータ君のやつ マダー?
ストーカーの萌えの話とか知らないか_
297 :
ツナガリ#:2006/06/12(月) 20:47:34 ID:Csb/46ur
兄さん何故逃げるんですか?
私を見てください
私に触れてください
私を愛してください
もうあの人はいません
もうあの人を見ないで
もうあの人に触れないで
もう私以外を愛さないで
ねえ、兄さん
やっと血も一つになれたんですよ
あの人の血を飲むのは嫌だったけれど
あなたと同じ血が
体の中に在ると思うと
とても心が温かいんです。とても心地良いんです。
兄さん何処ですか
早く出てきてくれないと
この張り裂けそうな思いを
周りにぶつけてしまいそうです
兄さん何処ですか・・・
ニイサン・・・・
最近短い物が少ないので・・って短すぎですか・・・・・。
あとどなたかトリップについて教えて頂ければうれしいです。
#の後に文字を入れる
>>298 さすがに埋めネタぐらい短いと嫉妬や修羅場の魅力を伝えきれないと思う
トリップは名前欄に#○○○って感じでやる
いい感じの病みっぷりだなぁ……w
トリップは「#」に続けて好きな文字列を打ち込めばよかったはず。
阿修羅様おめでとう
いつのまにやらまとめサイトに埋めネタ特集なんてある
載ると思っていなかったからなんか恥ずかしいな
さ・さ・・・さわやかな・・・しゅ・・修羅場・・・ハァハァ・・・
ま・・ハァハァ・・・マダー?ハァハァハァハァ・・・ハハハァァァ・・ふ・・フゥフゥ・・・ホォオオォ・・・
やばい!>303が禁断症状になった!!
305 :
八スレ:2006/06/12(月) 21:47:02 ID:XYjARB7Q
七誌くん・・・私のこと忘れてしまったの・・・?
私まだ埋まってないんだよ?
今までずっと一緒に居たのに・・・
もう24時間以上も会ってないなんて・・・我慢できない・・・
それもこれも九スレの牝豚が七誌くんを誘惑してるからだ・・・
七誌くん・・・早く・・・きて・・・
305の「八スレ」が「ハズレ」に見えた
これがホントのハズレ女だなとか一瞬思った
8スレ超スマソm( __ )m
307 :
弱き人々:2006/06/12(月) 22:30:24 ID:3mdua9wO
茶、只その為に今自販機の前に居る
日本茶、ウーロン茶、麦茶、無茶、イチャイチャ
色々有るね、そこのカップル
無難にウーロン茶にして俺は部室に戻る
無難かどうかは周りの意見より俺の意見で決まるね
HAHAHAHA!
あいつは何時もチャラけている
でも本当は違うのは一番私が知っている
霧島さんの知らない彼を私は良く知っている
知っているから、どうしても意識してしょうがない
彼とは大学一年の時出会った
サークルで
バスケは出来ないと言いながら走ってシュートして行く間
その間が格好良くて
そして裏では人の事を一番気遣ってくれてて・・・・
とにかく、私が彼を好きなのはしょうがない
多分出会った時からの運命なのだろう
でも運命には一人邪魔者が居るけど、ね
308 :
弱き人々:2006/06/12(月) 22:44:09 ID:3mdua9wO
部室内
空気は微妙に重い
ウーロン茶を飲みながらも高木様は無言じゃ
我らサークルの女王様は無言でゲス
まぁ考え事してると何時もこうだけどね
「先輩、それでですね。御崎大学のサークルと試合が・・・」
遠くから(近いが)霧島タソの声が聞こえるのぉ
御崎大学ね、強いよね。あのサークル
そして美女も居る
御崎大学に鞍替えしようかね、女王は怖いし
すると女王は
「いい?負けたら無条件でキャンパス内マラソンだから」
それは無理だね!あの馬鹿でかいキャンパス走れば死ぬね!
「それと村瀬はこの後予算について話が有るから残れ」
女王!そりゃ横暴だね、俺にはゲーセンが
「あぁ、残るよ」
言えないな本音なんて、てへ☆
そしたら霧島は
「じゃぁ先輩、予算の話が終わったらラーメン食べましょ?おいしいラーメン屋見つけました!」
それはナイスな発言だ
「ごめんなさい霧島さん、今日は遅くなるから先帰りなさい」
予算の話で遅くなるとは、こりゃ折檻でもあるかね
折檻される理由は?
1 今までのサボった報い
2 女王はサドだから
3 俺に対する憎しみ
俺には全てが当てはまる気がしてならないね!
今日は長い一日だねジョニー
309 :
弱き人々:2006/06/12(月) 23:15:43 ID:3mdua9wO
俺の好物の一つのラーメンと予算について
なら俺は予算の方を選ぶよ
だって僕ちゃん真面目だもん
「もう少し徴収したらどう?絞れば出るはね、未だ」
「いやいや、高木さん。俺達貧民はゴマと違ってもう出ないさ」
予算について、真面目な話
試合するための場所や道具の金はかかって当然だ
その為の話合いだがね
「まぁこれぐらいね・・・それとこの後暇?」
ゲーセン・・・と言いたいがココはナイスガイだからね
「いや暇だね、暇すぎてつまらなくて」
「ならこれから飲みに行きましょう」
why?まぁ心境はそうだがね
「良いよ、行くか。暇だし」
気付けば二人で飲み屋に向かって歩き出していた
先輩が可哀想
高木さんが怖いなら怖いって言えば良いのに
高木さんは先輩が逆らえないって分かってて
先輩を独占してる
今日もワザと頃合いを見て話題を切り出したんだ
先輩が逆らえないから
私が先輩と仲良くしているのが嫌だから
考え事をしながら街を歩いていると
「あっ・・・」
先輩だ、しかも高木さんまで
いやあの病原菌
ワザと追い出したのは分かっていたが
あの女
私は二人の足取りを追っていた
歌?
>>309 GJ!日本代表よりも続きに期待してwktkしてますね
すまん・・・せっかく書いてくれたのにこんなこと言うのは間違っていると思うが、
読みにくい・・・orz
逆にいえば改行さえしっかりすればGJ!!ということだ。
内容は悪くないと思うのでこれからに激しく期待。
携帯からなら読みやすい
つまり改行さえ(ryと書き込もうとしたらもう言われてた
とりあえずGJ!かなり期待してます
ただ寂しい。
それを誤魔化すためにお兄ちゃんの部屋に入った。
扉を閉めるとすぐにベッドに飛び込んだ。
シーツに顔を埋める。
「おにいちゃんの…におい…」
右手には昨晩お兄ちゃんが使っていたスプーン。洗わずに取っておいたものだ。
そっとそれを口に咥える。
「あむ……」
お兄ちゃんの味。お兄ちゃんの匂い。お兄ちゃんの味。お兄ちゃんの匂い。お兄ちゃんの味。お兄ちゃんの匂い。
お兄ちゃんの味。お兄ちゃんの匂い。お兄ちゃんの味。お兄ちゃんの匂い。お兄ちゃんの味。お兄ちゃんの匂い。
「ん…はっ…」
興奮が急激に高まってくるのが解る。下半身が熱い。
熱に浮かされながら、空いた左手を熱る秘部に運んだ。
「は…ぅっ……ちゅぷ……ふっ……おひー…ひゃん……」
左手を忙しなく動かし、右手でスプーンを何度もねぶる。
お兄ちゃんはあたしだけのものだよね…? (俺はマローネだけのものだ)
お兄ちゃんはあたしだけが好きだよね…? (俺が好きなのはお前だけだ)
お兄ちゃんはあたしだけを抱きたいよね…?(お前だけが欲しい。マローネ)
お兄ちゃんは――――――――
頭の中のお兄ちゃんがあたしの望む答えを何度も言ってくれる。
気が付けば、背中が限界まで反りあがっていた。
「ひ、ひもひいいよ……おひーひゃん、もっと…」
あたしだけの。あたしだけの。あたしだけのお兄ちゃん。
お尻が何度も突き出るようにうねり始めた。限界が近い。スプーンを口から離した。
「いひっ……ダメ…お兄ちゃん……ぁ…いれ、て…」
スプーンを浅く、自分の秘所に押し込んだ。
「はうっっっっ!!!!!!??」
脳が強烈な快感の信号で埋め尽くされる。
あたしはだらだらと涎を垂らしながら潮を吹いていた。
「はっ……はっ……はっ……はっ…」
絶頂の波が引いてくると、さっきよりもっと寂しさが込み上げてきた。
自慰後の疲れからか抗い難い眠気に襲われる。
――――――淋しいよ、お兄ちゃん……
あたしはそう心の中で呟きながら眠りに落ちていった。
「正直に言うとわらわはまだ物足りぬのじゃが…」
「お、俺は疲れました…」
どういうわけか旅のときと立場が逆転してる。運動量は旅の方がずっと上なのに。不思議だ。
夕暮れ時、俺がギブアップの宣告をして宿に帰ることにした。
今はそれぞれ自分の部屋に入るところだ。
「ウィリアム、ちょっとこっちに来い」
俺に手招きする姫様。
「なんです?ひめ……んむっ!?」
油断した。彼女に近づくとキスされてしまった。
今日は本当に姫様のペースに嵌りっぱなしだ。
「今日は楽しかったぞ、ウィリアム」
そう言うと笑って逃げるように部屋に入ってしまった。
「……」
ぼぅっと姫様の部屋を数瞬見つめる。
可愛い、と思ってしまう俺はやはり掌で踊らされているのだろうか…?
ポリポリ頭を掻きながら自室の扉のノブを捻ると。
……施錠が外れてる。合鍵は団長たちにも渡しているし誰かが開けたのかな?
一応警戒しながら扉を開けた。
「って、マローネか……」
マローネの姿を確認して俺は安堵した。
何の用事で入ったのか解らないがベッドの上で小さな寝息を立てて眠っている。
彼女の隣に腰掛けて様子を見ようとすると。
「お………ちゃん……にお……」
マローネがボソボソ何か言いながらゆっくり目を開けた。
「あ……れ…?」
「目が覚めたか?マローネ」
寝ぼけ眼のマローネが俺の目を見つめる。
少しづつ目に光が戻ってきた。現状を理解し始めたようだ。
「うひゃっ!!?」
マローネが慌てて飛び上がり右手に持つものを後ろ手に隠した。
……スプーン…?
「お前、食い意地張ってるなぁ……何もスプーン持ち歩かなくても…」
「い、いいでしょ!別に!」
なに怒ってるんだよ。変なやつ。
「それより、此処にいるってことは俺に何か用があるんじゃないのか?」
「え?あ、いや…その、何処、行ってたの?」
少し目を泳がせたがすぐに俺に質問してきた。
「あぁ、ちょっと街までな」
答えると少し俯くマローネ。
「………マリベル、って子と…?」
声がさっきより少し低くなっていた。
「そうだけど……マローネ?」
様子が変だ。こっちに来てからというものマローネはちょっとおかしい。
「その子のこと、好きなの?」
話が突然飛躍した。本当にどうしたんだよ、マローネ。
「急に何言い出すんだよ、お前ちょっと変だぞ?」
「いいから答えてッ!!」
マローネの張り上げた声が部屋に響き渡る。さすがに俺も動揺した。
「わ、わかったよ。
好き…かどうかはわからないけど……うん。大切な人ではあるかな」
とりあえず正直に答えた。
「…そう」
それだけ言って黙り込むマローネ。表情は髪で隠れてよく見えなかった。
…何かマズイことを言ったんだろうか…?不安になった矢先。
マローネがふらりと立ち上がった。夢遊病みたいで少し怖い。
そのままゆらり、ゆらりと部屋を出て行こうとする。
「おい、マローネ。いったいどうし――――もごっ」
呼び止めようとするとスプーンを口に突っ込まれた。
「……てやる。……てやる。……てやる。……」
最後に聞き取れない声でぶつぶつ独り言を言いながら部屋から出て行った。
「あいつ、本当にどうしたんだ……?」
咥えたスプーンは何故か少ししょっぱかった。
唾液収集家マローネの巻でした。
妹ポジションキタ━━━━━━(;゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
GJ
キモウトキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
スプーン舐めるとか最高ですよね
では投下致します
第5話『邂逅明暗』
これは悪夢だ。
襲いかかってきた梓に体を押し倒されて、ベットに沈む俺。
小柄な梓がこれだけの力を出せるはずがない。男である俺が本気でどかそうとしてもビクともしない。
すでにぎっちしと固定された俺は抗う手段を持つことはできなかった。
「や、や、やめるんだ。梓っ、んっん」
俺の言葉を騙されるように甘いキスが口を塞ぐ。口内に入り込んできた梓の舌は求めるように唾液が流し込まれる。
その感覚は体中に電気が走り、男の本能に火が付きそうになる。
「だ、だめ。翔太君は未来永劫わたしのモノになるための誓いなんだから」
そう言って、更に二度目のキスで口を塞ぐ。梓のキスが俺の理性を奪って行く。かつては好きだった女の子とするキスに興奮を覚えない男はいない。
俺は自然に梓を求め始めていた。
「っんんん」
唇と唇を離れた時が互い唾液が繋がって糸を引いていた。それを見て、梓は満足笑みを浮かべる。
俺の体の上に体を預けている梓が頬を舐め始める。
「翔太君が私を避けている理由がわかったんだよ」
「うん?」
「あの屋上で私が他の男とキスしてた翔太君が誤解していたでしょ。本当に何もなかったのに、翔太君が先走って、私に彼氏がいると思ったのかな?」
えっ?
「ううん。そんな人間はいないよ。私が好きなのはいつも一人だけ。私はずっと翔太君の事が好き。好きで好きでたまらない程に愛している。これが生涯偽らない私の正直の気持ちなんだよ」
それじゃあ? 全て俺の誤解だったのか?
勝手に思い込んで、俺は梓を避けていた。本当は何もなかったのに、俺が良ければやったこと全てが梓を傷つけていた。
「だから、あの泥棒猫に発情していることは許してあげるから、私だけを愛してよ」
泥棒猫? ああっ!!
咄嗟に猫乃の笑顔が脳裏に浮かんでいた。交際して短い間だが、梓に彼氏がいると思い込んでいた時にあいつの笑顔がどれだけ俺は癒してくれていたのか。
今、本能に任せて梓とやってしまうと猫乃はどうなる?
恋愛で傷心したあの悲痛を、俺の身勝手のせいで猫乃も味わうことになるのか? 猫乃を傷つけるのか? 笑顔が似合っている彼女を。
少なくても、梓と肉体関係を結ぶことは間違っている。
「私ね。ずっと、翔太君にこうやって甘えたかった。ずっと、寂しかったんだからね」
俺の胸に頬摺りする梓の表情はどこか幸せそうに赤く染まっていた。梓の幸せも壊したくはなかったけれど、俺は……。
今は……。
猫乃の彼氏なんだ。
だから、俺は猫乃の彼氏として相応しい行動を取る。それがけじめって奴だよ。
「もう、やめよう。梓」
「し、翔太君」
「今はお前とこういう関係になるのは間違ってる」
「間違いじゃないよっっ!! 私と翔太君は結ばれる運命なんだよ。だから、抱いてよ。私のことを見捨てないでっ!! ずっと傍にいさせてよっ!!」
悲痛に篭もった叫びが俺自身の決心が揺らいでしまう。
梓が俺を想う心がちゃんと届いている。例え、梓を壊れてしまっても、俺だけは拒まない。ちゃんと、受け入れてやる。
だから、今だけは俺の我侭を許してくれ。
「頼むからどいてくれ……。お願いだ」
「い、嫌っ!! 私はあんな泥棒猫に負けないんだから。翔太君を私のモノにするんだ。ううん、私は翔太君のモノなんだよ。だから……」
押さえ付けられた体が更に重くのしかかってくる。梓の一体どこにそんな力があるんだろうか、俺がどんなに抵抗しても無駄であった。
その時、着信のメロディが流れた。
俺のズボンのポケットから流れるメロディの設定は一通のメール。淀んでいた部屋の空気は一気に拭き飛んだ。
無言で梓は俺のズボンのポケットから乱暴に携帯を取り出す。
そして、手慣れた手付きでメールを確認すると梓の顔が怒りの形相へと変わってゆく。
「やっぱり、元凶はさっさと片付けないといけませんねっ!!」
鬼の形相に変化した梓が俺に興味をなくしたのか、部屋を飛び出した。梓が激怒した原因だと思われるメールは、恋人である猫乃からであった。
その内容は、ごくごく普通の内容であった。
先輩。
今、私は居残り課題で残ってます。
その課題は今は恥ずかしくて見せられないんですけど
完成したら真っ先に先輩に見せてあげますから。
先輩を想って、わたしは描きます。
タイトルはもう決まってるんですよ。
「私の愛する人」
PS
今日、先輩の家に泊りに行っていいですか?
私たちもそろそろ、エッチとかしてもいい頃だと思います。
これを見て、梓は何で激怒をした?
部屋から抜け出して、どこに向かった。
(やっぱり、元凶はさっさと片付けないといけませんねっ!!)
あの狂気に犯された梓がするべき事は、まさか……。
邪魔者になった猫乃を殺すってことか?
最近のゲームでは、寝取られた主人公を奪うためにヒロインは奪った相手を虐殺して、愛を取り戻すゲームが社会的ブームを興した。
そのブームはあらゆる分野において、最高潮の売り上げを見せた。時を同じく、現実世界でもおとなしい恋する少女がゲームと同じように鋸や剣や槍など言った武装をして、相手を虐殺する事件が多発している。
ゲームの影響が現実世界に侵食されるかのようにこのヤンデレブームはこの国のあちこちに事件として起きるようになった。
その加害者は語る。
ある怪しい老婆が自分の背中を押してくれる商品を売ってくれると。その商品を手にとると、自分が抑圧していた心の闇の部分を引き出してくれる。
その商品を使った女の子たちの悲痛の叫びで、女の子は種割れして覚醒する。
老婆の存在は長年警察は追っているが、その存在は掴むことはできないと聞く。
最後に老婆は商品の代金はタダでございますという噂だが、そんなもん嘘ぱっちらしい。
老婆が望むモノ。
それは、女の業。
嫉妬・三角関係・修羅場。
それらを演出をして、自ら楽しむ傾向があるらしい。老婆はその磨けば光る原石を探しては商品を売り付ける。そして、惨劇を心存分に楽しむ。
もし、梓が老婆に商品を買ったことで狂ってしまったなら。
惨劇は起きる。
恋人の猫乃の切り裂かれた死体と共に明日のニュースを飾ることだろう。
そんなこと、させるわけにはいかないっ!!
猫乃を殺されるわけにも、梓は殺人者するわけにはいかない。
急いで、梓の後を追わなければ。
でも、居残りの課題が終わってないって事は学校か。
一体、何の課題なんだよっ!!
現実でも 嫉妬・三角関係・修羅場になってくれたら本当に有難いことなんですが
では、次回は猫乃の過去が明らかになります・・。
7話以降で分岐するんで
さて、最終話を頑張って書き上げますか・・w
老婆はこのスレの住人だったのか!
『第三話』
俺がその報せを聞いたのは、事故を起こしてから回数を増やしたバイトが終って部屋で無気力を楽しんでいるときだった。
あぁ、もう静かに無気力すぎて笑えない。
体は疲労で今にも倒れこんでしまいそう。シャワーも浴びる気力もなく、そのままベッドに沈み込んでしまいたいくらいだった。
意識が残像に消えていきそう・・・・・
瞬間、狂ったように携帯電話が電子音を吐き出した。
半目で覗き込んだウィンドウに映った名前は、『病院』
嫌な予感が電流のように駆け抜ける。
疲労と眠気は奇麗に壊れた。
寝間着のスウェットの上にダウンジャケットを着込み、滅多に履かないスニーカーで家を飛び出す。
上がる息と冬なのに全身の汗腺から噴出す汗をぬぐいもせずに駅前でタクシーを拾った。
肩で呼吸しながらも必死に行き先を搾り出す俺にタクシーの運転手もびっくりした様子だったが、熟練の技を以って最小のメーターで、しかも彼曰く最高記録という速さで病院にたどり着いた。
面会時間などとっくの昔に終っていたが、今回の電話が伝える旨は『森さんが階段から転げ落ちて重態』というものだった。
もしかしたら昼間に言った俺の軽口で傷ついたのかもしれない。
渦巻く不安と、恐怖、後悔を必死でシバきあげてなんとか看護士さんに連れられて病室に向かった。
「長い入院生活で体力もないのに十五階から階段で降りようとしたみたいですね。
幸い直りかけていた左腕の再骨折と新たに右足の靭帯断裂ですみましたが、三ヶ月の追加入院です。可哀想ですが・・・・」
「重態というのは・・・・?」
「どうやら間違って連絡が行っていたようですね。彼女は薬で眠ってはいますが意識はちゃんとしていますよ」
俺は糸が切れたようにその場でへたり込んだ。
「馨・・・・さん・・・・」
目覚め眼が映したのは、顔をくしゃくしゃにして泣き出しそうなわたしが焦がれて止まない人だった。
「おはようございます、森さん。そして、本当にすいませんでした!!!森さんの気持ちも考えずに、あんなことをいってしまって。そうですよね、忘れられませんよね。自分を殺しかけた男のことなんて。でも俺だってそんなことで赦されるなんて思っていませんから・・・・」
「馨さん・・・・わたしの話・・・・聞いてくれるかな?」
また地面に額を擦り付けている馨さんの腕を取って、わたしはゆっくりと話し始めた。
わたしの家庭のこと、数少ないお友達、意地悪な親戚のおばさんのこと・・・・そして、何時も独りだったわたしに初めて優しくしてくれた、馨さんのこと。
「そ、それじゃあ忘れない・・・っていうのは?」
「うん・・・こんなわたしに優しくしてくれた馨さんを忘れることはできない・・・・ってこと」
「じゃ、じゃあ俺のこと・・・・」
「うん・・・赦すよ・・・・」
馨さんは声を上げて泣き始めた。
それと同時にわたしはほっとした。
ようやく誤解を解くことができて、よかった。って。
だからこれからの入院生活も楽しくなるよね・・・・!!
まだ馨さんと一緒にいられる・・・・
そう・・・・思索に果てにたどり着いたのは、自らの体を傷付けて馨さんの視線を無理矢理固定することだった。
手首を切るのはどうか――――――――――――――――これは更に誤解を与える可能性がある、却下。
窓から飛び降りてしまうのはどうだろう――――本当に死ぬ恐れがある、却下。それに誤解を与えるという点では一緒。
馨さんは大勘違いが大得意なようだ。
どうすれば誤解を与えずに入院期間を引き延ばして気を引くことができるだろう・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
わたしは、最終的に自分の体を階段から突き落とした。
いや、『飛び降りた』というほうが適切だろうか。
これもすべて、馨さんと一緒にいたいため。
疎遠になってしまうことで別の女のところに行ってしまうのが恐かった私は、もはや病気だった。
怪我には馨さんの献身で打ち勝てたが、この胸に住まう病には勝てなかった。
もう独りはいや、いやなの。
こんなわたしのそばにずっといてくれたのはあなただけだよ・・・
みんな、わたしの性格を知ると離れていっちゃうの。暗い女って。
でもね、でもね。馨さんだけはちゃんと私の話を聞いてくれたんだよ?
ほら、今も言ってくれたじゃない。
『森さんが無事なら構いません、って』
だから・・・・・・・・・・・・・・・・・・責任とってね・・・・・?
馨さん馨さん
馨さん馨さん馨さん
馨さん馨さん馨さん馨さん
もっと大怪我して置けばよかった。
いっそ腕でも切り落としてしまうべきだったかなぁ。変な気を回すんじゃなかったなぁ・・・・・馨さんならきっと受け入れてくれたのに・・・・
馨さん馨さん馨さん馨さん馨さん・・・・・
もうあなた無しでは、生きていけませんからぁ――――――――
えへへ・・・
「森さんが元気でよかったです」
これからの入院生活のことを考えると笑いが止まらない。
「うふふふふ元気ですよ、ふふふ、困るくらいに・・・・」
不気味な笑みを浮かべるわたしを訝るように見た馨さん。
いつもの鋭い横顔も素敵だけど、きょとんとした顔も素敵・・・・
もう離しませんから・・・・
ふふ
ふふふ
ふふふふふ
でもそんな甘い高揚感は長くは続かなかった。
カツ・・・・・・
「――――――――じゃあ明日から馨がお見舞いに来なくても平気よね」
カツ、カツ、カツ・・・・・
ヒールの音と共に病室の入り口から現れた長身の美女。
わたしは顔筋が凄絶に引きつるのを抑えられなかった。
誤字などのご指摘ありがとうございました。
それと様々な感想ありがとうございます。
感想をいただけるのはそれだけでうれしく、次回の糧となるのでバシバシ突っ込んでくださいw
次回ついにヒロイン2の登場で勘違いメインではなくて修羅場メインになっております。
誰かキタ━━━━━━(;゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
何だこれは、GJ!!すぎる。
wktkが止まらない〜!!
投下します
>>332 泥棒猫の参入で話を盛り上がるぜ!!
惨劇の予感
「はぁ〜」
おかしい・・・・彼・・・・ゼルと出会ってから私はおかしい
ゼルのことばかり考えている
もう数日経っているのに・・・・頬にはまだ熱を感じる
「どうしましたか?メシアさま?」
リルスが心配そうな顔で私にそう問う
なにも答えない私にリルスは肩をすかすと窓を開いた
朝日の清々しい光が私の身体を照らして小鳥のさえずりが私の心を満たしてくれた
でも心の奥にある隙間のような物までは満たしてはくれなかった
「恋・・・・ですね」
恋?私は長年頭を悩ましていた謎が解けた学士のような感覚を感じ迫るようにリルスに詰め寄った
「なぜ私が恋をしていると?」
「恋わずらいと言いますでしょ・・・・・ため息をついたり誰か一人のことばかり考えたり」
私が・・・・恋を?
「一目惚れなんて・・・・私はそんな軽い女ではありませんよ?」
「なら、運命だと思えばいいじゃないですか・・・・恋などいままでしたことなかったのでしょ?」
そうか・・・・運命か・・・・
私は悩みが解消された爽快感で窓に広がる広大な景色に目を向けて
思い切り息を吸い込んだ
気持ちいい・・・・それに・・・・素敵
こんな素敵な気持ち初めて・・・・・
「リルス!」
待ってましたとばかりにリルスが私の前に衣装ダンスを持ってきて広げた
ここが彼の国・・・・
幸い私が親善の為に国に来たと言うと国王は手厚く出迎えてくれた
私がゼルを気に入ったと言うと王は『ぶっきらぼうな甥ですが気に入っていたたでけて嬉しいですよ』と笑い飛ばした
私が国の案内をとたのむと王は気を利かせてゼルをその役を任せてくれた
「・・・・・・・」
どうかしたのかしら?最初に逢った時のあのおちゃらけた感じは陰を潜めてまるで従者のように私の命令を待っているよう
「あの?・・・・私、なにか気に触ることでもいたしましたか?」
「いえ・・・・そんなことは」
その瞳に私はあることを思い出した
変わったのではない・・・・彼が変わったのは私がその瞳の色が左右違うと言った時から
「あなた・・・・私を探していたと仰いましたね?」
「はい・・・・長年」
「どうしてかしら?」
ゼルは歩みを止めると私をまっすぐに見つめた
それだけのことなのに・・・・その瞳に私が映っていると感じるだけで私がまるで恍惚したかのように顔を染めた
息遣いもまるで私のものではないみたい
「あなたに・・・・尽くす為です」
なんでもしてくれるの?私に?・・・・なら
「キス・・・・してください」
まったく、まったく!
ゼルはいったい何をしているの!?
気・・・・気になってなんていない!
ただ・・・・・そう、ゼルがまた鼻の下を伸ばして女の子に迷惑を掛けているに違いない
女の子がゼルの毒牙にかからないかどうかが心配なの!
バカらしい・・・・誰に言い訳しているのかな?
思えば思うほど・・・・私は・・・・もう少し素直になれたら
ゼルは私にキスしてくれるかもしれない
抱いてくれるかもしれない・・・・
思い浮かべたその光景が現実と重なった
え・・・・・
向こうでゼルがひざまずき私以外の女にの手の甲に口付けていた
女が不満そうな声を出すとゼルは立ち上がり女の頬に手を乗せた
やめて・・・・やめて!
ゼルが愛していいのは私だけなの!
ゼルを愛していいのは私だけなの!
触れていいのも・・・・・触れられるのも・・・・ゼルのすべては私のものなの!
ゼルなにをしているの?ダメよ・・・・やめてお願いだから・・・・
そんな女に・・・・私だけなんだよ?
言ったじゃない・・・・愛してるって・・・・・囁いてくれたじゃない
私だけを見てくれるって・・・・私を護るって・・・・・
悪夢は続いた・・・・
ゆっくりとゼルは女に口付けた
・・・・ゼル?
ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!
ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!ゼル!
嘘だと言って!悪夢だと言って!私以外にキスなんてしないって言って!
あんな女嫌いだって言って!私だけを見て!私だけに触れて!私だけを愛して!
私にとって世界はあなたなの!その私からそれを奪わないで!私に気づいて!
今なら間に合うから!そんな薄汚れた女より私の方がいいでしょ
もう過ぎてしまったことはなにも言わない!でもそれ以上はやめて!
私を見て!私を見て!私を見て!私に気づいて!私に気づいて!私に気づいて!
私を見て!私を見て!私を見て!私に気づいて!私に気づいて!私に気づいて!
私を見て!私を見て!私を見て!私に気づいて!私に気づいて!私に気づいて!
私を見て!私を見て!私を見て!私に気づいて!私に気づいて!私に気づいて!
こんなにも愛しているんでよ?あなたの為なら私はなんだってやってみせます
人を殺す事だっていとわない!今まであなたの言うことはなんでもきいてきたじゃないですか!
それに気づかないゼルもゼルだけど!許せない!あの女!私のささやかな幸せを奪った!
許せない!不満とばかりに舌を絡めるように催促している
許せない!殺してやる・・・・・殺してやる!
殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
その醜くキスの快感で喘ぐ声を発するノド元を裂いてやる!
男を惑わすきらびやかな髪を根こそぎ引っこ抜いてやる!
ゼルにそれ以上近づくならその両足も切り裂いてやる!
それ以上ゼルに触れるならその両腕を切り落としてやる!
これ見よがしにゼルに押し付けるその胸も判別できないほどずたずたにしてやる!
ゼルを惑わすその綺麗な顔も皮を剥いで原型の分からないほどにしてやる!
そうよ・・・・ゼルと私の間を邪魔する女はみんな私が壊してやる!
なんかゼル連呼が変だな・・・・こんなはずじゃなかったのに!
見にくくてすいませんでした
連呼の部分を書いている時エヴ○を横で流していたのである部分はまんまですね
投下したあと気づいた
管理人様、すさまじく亀ならが結婚&挙式、おめでとうございます!羨ましいぜこんちくしょう!
姉妹日記も寝る前か明日の朝当たりに投下します
これはいい依存っ子ですね(*´д`*)
ゼル連呼もかなり来たのですが
アビス殿は恐ろしいほどのクオリティーを求めていらっしゃる
姉妹日記のほうもワクテカして待ってます
GJ!この依存っぷりはすばらしいですなw
姉妹日記も楽しみにしてますね!
依存ヒロインが黒くなると惨劇が起きるw
?あたりまえじゃないか。
うはwwwこのスレすっげwww
( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \ / \ / \
ようこそ・・・男の世界へ・・・・
お願い、愛して! の作者です。
新スレ記念で読みきりを書いたはずが無駄に長く……orz
完成してますが、とりあえず前編を投下します。
私のおにいちゃんは、昔から何をやっても大した努力もせずにそれなりの評価を
得ることができる人でした。
天才という程ではないにしろ、勉強も運動も同年代の子達よりは少し上の結果を
残し、だからなのか性格も道化的というか、それほど熱心に取り組んでいる姿を見
た事がありません。
――必要がないからしないだけだ。いつか私がその事を指摘した時、おにいちゃ
んが言った言葉です。
そんなおにいちゃんにも一つの非凡な才能がありました。
人が地面に足をつけた時から備わっていた力。走ることです。
綺麗なフォームを崩さずに地を蹴り、誰よりも疾く駆けるあの人の姿を私はずっ
と隣で見てきました。
生まれつき身体が弱くて、よく病気にかかってしまい、外出できなかった私の手
を引いて、おにいちゃんは何度も外に連れ出してくれたのです。
今もグラウンドを駆けるあの人の姿を見る度にそのことを思い出してしまいます。
――真っ赤な、赤いバラと一緒に……。
――ピ!
(あっ!)
あの人を眺めていた私は、突然聞こえた笛の音に我にかえりました。
あぶない、あぶない……。思わず魅入ってしまっていたようです。
離しかけていたストップウォッチを強く握り、走り出した先輩に視線を戻し
ます。
軽快でリズムに乗った駆け音。
真っ白い運動靴が白線にその色を重ねたときが私の仕事の時間です。
――カチッ
「はぁ、はぁ……」
「先輩、今のが最後の一本です。お疲れ様でした」
零コンマ単位でもずれてないだろうストップウォッチとタオルを手に、先輩
に近寄ります。
「ふぅ……えぇ、お疲れ様」
立ったまま自分の膝に手を重ねて息を切らせている先輩に、記録が見えるよ
うにストップウォッチの画面を見せ、ついでにタオルも渡します。
「凄いですね。最後に今日最高のタイムが出せるなんて……」
「ふふ、長距離に転向した方がいいのかしらね」
先輩は私の差し出したタオルを受け取りながら、微笑んでくれました。
いつ見ても凄く笑顔が愛らしいです。彼女目当てに入部する生徒が多いのも
分かる気がします。
普通の女性なら羨ましくも感じるでしょうが、「ろくな男と付き合ったこと
がない」と嘆いていたこともあり、先輩は先輩なりに疎ましく思っているらし
いです。
そう考えると、ずっと心に決めた大好きな人がいる私は得なのかもしれませ
ん。
そんなことを思っていた時です。
「よっ! お・つ・か・れ」
「ひゃうっ?」
な、なに!? 突然私の肩から何かが出てきて声を……。
声を…………って……。あ……。
――トクン
その人の顔を確認した途端、急に心臓が高鳴り始めました。
「あら……」
「お……おにいちゃん……。男子も今終わったんですか?」
肩から生えてきた顔は、思い切り馴染みがあるものでした。
「おう、もう汗でびしょびしょだ」
「お疲れ、桜木くん」
返事とばかりに、おにいちゃんは私の反対側の肩から手を出して振っています。
私から見ると、まるで本当に肩からおにいちゃんの手が生えてきたみたいです。
しばらくボーっとその手を愛おしく眺めていたのですが、それに先輩は気が付い
たのか、上品に口を手に当てながら笑ってきました。
恥ずかしくなった私は急いで視線を逸らして、表情を整えます。
「それはお疲れ様でした。どうりで肩が湿ってくるはずですね」
「おお、首筋の汗が気持ち悪くて気持ち悪くて」
「つまり私の肩をタオル代わりにしてるということですか?」
「まさにその通りだぜ、マイシスター」
「退けてください」
「しかしな、マイシスター」
「退けてください」
「……あい」
おにいちゃんは渋々といった様子で私の肩から顔を離しました。
あ……あぁ……。おにいちゃんの熱がなくなっちゃう……。
いつも余計なことばかりを言う自分の口に何かを突っ込んでやりたくなりまし
た。
「ふっ、テンドンか……。我が妹ながらあっぱれ」
「なに訳の分からないこと言ってるんですか? ほら、先輩も呆れてますよ? 『な
んでこんな人が長距離のエースなんだろう』って」
「お前な……時に言葉は暴力より深い心の傷痕を……」
「クスクス、華恋はお兄さんに厳しいわね」
「だって先輩……」
はぁ……また、やっちゃいました……。どうしてこうなっちゃうんでしょう……。
好きなのに……ううん、そんな言葉じゃ表せないぐらい、おにいちゃんのことが大好
きなのに、素直になれない自分が凄く憎らしいです。
自覚する前はこんなに素直じゃないわけじゃなかったのになぁ。
おにいちゃん……ごめんなさい。
「おにいちゃんが私の肩で汗を拭うから悪いんですよ」
この服、洗うのもったいないですよね……。うん、決めました。
このシャツはこのまま私の部屋に飾っておきましょう。
あはっ、これでずっとお部屋でおにいちゃんを感じることができますね。
「ありがとうございました〜」
部活の終礼も終わって、陸上部の部員の人たちが様々な方向に散っていきます。
私は真っ先におにいちゃんのところに向かいました。
実はこの後の時間が部活中、一番の楽しみだったりします。
「おにいちゃん、グラウンド整備、行きましょう?」
基本的に陸上用グラウンドの整備や部室掃除は一年生の仕事で、三年生である
おにいちゃんや二年生の私がする必要などないのですが、マネージャーという立
場の私が何もしないわけにはいきません。
おにいちゃんはそんな私のために、毎日一緒に手伝ってくれるのです。
今日も隣に並んでおにいちゃんを身近に眺めながら共同作業ができると、高揚
を押し殺すことができませんでした。
しかし、おにいちゃんは申し訳なさそうに頬をかくと、
「あ〜、行きたいのは出なんだが」
「出?」
「いや、山々なんだが……。もうすぐ定期考査のテストがあるだろ? 受験生だ
し、これからちょっと友達の家に泊まりこみで勉強してくるんだ」
「え……?」
思わず間の抜けた声をあげてしまいました。
まさか断られるとは思ってなかったからです。
それも……泊り込み?
「約束だし、あんまり待たせるわけにもいかないしな。……えぇっと……」
おにいちゃんが困ったように言葉を濁らせます。
「あ、ううん。そっちの用事も知らないで、いきなりごめんなさい。……そうです
よね。おにいちゃんは受験生なんだから私の手伝いなんてしてる場合じゃないです
ね」
そう言いながらも、本当は嫌で堪りませんでした。
本当は「そんな用事なんか放っておいて下さい」と言って、約束なんて破っても
良いから、行って欲しくありませんでした。
今日一日会えないなんて……寂しくて、切なくて、狂ってしまいそうです。
そんなことを思っていたからか、少し皮肉っぽい言葉になっていることに、言った
後で気付きました。
「悪いな」
そう思うなら行かなきゃ良いですのに……。
でも、遊びなんかが理由ならともかく、テストのために勉強しようとしているおに
いちゃんを止めることなどできません。
それにおにいちゃんは優しいから……言えば、無理にでも手伝ってくれそうです。
おにいちゃんと一緒に居られないのは確かに凄く嫌だけど、あんまり無理を言って、
嫌われたりしたら生きていけません。
だから妥協案を出すことにしました。
「後日、ショッピング同伴。それで良いですよね?」
「……前向きに善処します」
「信じますよ」
「まぁ、政治家よりは信頼しててくれ」
そこまで言って、ようやく私は笑顔を見せてあげることができました。
おにいちゃんが私の頭をポンポン撫でつけます。私が言う事を聞いたときにいつもし
てくれた小さい頃からのおにいちゃんの癖みたいなものです。
少し気恥ずかしかったのですが、これだけは絶対に止めて欲しくないので、何も言わ
ずに時間が許す限り撫でてもらいます。
最後に毛並みに沿って頭を撫でてもらい、髪を整えさせると、ゆっくりとおにいちゃん
の大きな手のひらが離れました。
「じゃ、あんまり遅くなる前に帰れよ」
「あ、うん」
その何気ない気遣いが凄く嬉しいです。
おにいちゃんは身を翻すと、先輩のいる正門へ走り寄って行きました。
…………あれ? 先輩のいる?
先輩は正門の柱を背にもたれかけ、誰かを待っていました。
――いえ、誰か、ではありません。
おにいちゃんに手を振っています。
「おにいちゃん!」
思わず少し大声になってしまいましたが、おにいちゃんは立ち止まり、特に気にし
た風でもなく、こっちに戻ってきてくれました。
「ん? どしたい」
「先輩と一緒に帰るんですか?」
「あぁ、あいつと帰り道途中まで一緒なの、お前も知ってるだろ?」
「それは知ってますけど……」
何で先輩と帰るんですか。言いかけてすぐに口を噤みました。
私がマネージャーとして入部してからは、私の仕事を手伝い、ずっと一緒に帰って
きたおにいちゃんですが、その前は同級生の人たちと帰りは一緒だったはずです。先
輩とは同じクラスで仲も良い、ましてや同じ方向が帰路で、今日みたいに一緒に帰れ
る日なら、一緒に帰らない方が不自然かも知れません。
お友達の家に行く前に一度私たちの家に寄るということを推測すれば、別に何もお
かしいことはないです。
でも……。
「本当に一緒に帰るだけですか?」
「馬鹿を言え。男がそんな健全な考えしか持っていないようなら人間は滅んでしまう」
「ふざけないで」
私は冷たい笑顔を顔に貼り付けたまま言いました。
「あ〜……まぁ一緒に帰るだけだよ」
「何ですか今の間は?」
しつこく問い続ける私におにいちゃんは悪戯っぽい微笑を浮かべます。
「冗談だって」
それだけ言うと、さっさと正門の方へ再び走り寄っていきました。
少し呆気にとられていた私はその後姿に聞こえないよう、ぽそりと呟きました。
「それも信じますからね」
なんでこんなに長くなったんでしょうね……?
続きは完成してるのでまた早い内に投下できそうです。
それと一応、名前を付ける事にしました。
阿修羅様、お手数ですが変更をお願いします。
これが短編とはもったいないおばけがでるぞ!
ども、アビスです
お願い、愛して!はデブでモテナイ君が華麗に変身&どんな容姿でも一途に彼を思う瑞奈ちゃんに心打たれておりました
こちらの後編も楽しみにしております
猫泥棒・・・・私も泥棒猫はですよ・・・・愛は奪うものです
泥棒猫はじゃなかったらごめんさない
にゃんとごくとけ〜ん☆
っく・・・またしても北斗スレと誤爆・・・・
すまない・・・!!
>>362 ま ・ た ・ し ・ て ・ も ・ ?
うふふ、そんなに私にやきもち焼いて欲しいんだ。
君の気持ちは嬉しいけどあっちのスレの子が勘違い
しちゃうでしょ?そんなおイタをする子にはオシオキが
必要だよね…。
>>363 や、やめてくれ!あいつは関係ない!
悪いのは俺なんだ!感想書こうと思ってやめただけなんだ!
>>364 でも、またしてもってことは・・・二度目なんでしょ?
だったら少しは思い知ってもらわないとね?
すぐ戻るから・・・すぐ『済ませる』から、ちゃんとここで待っててね。
もしいなかったりしたら・・・わたし、あなたのこと・・・。
投下します
小さな息が漏れる
意識が消えかかってきたみたい・・・・なにがあったの?
痛みもなくなってきた・・・・
「冬香!」
誰かが倒れる音がした・・・・私はゆっくりと瞳を開くと音のした方へ視線を向けた
「離して!お兄ちゃん!私が!私が!!!!」
もがき爪を立てる少女を涼さんが必死で押さえている
「やめてくれ!冬香!どうしちゃったんだよ!」
急に肩を物凄い力で握られた・・・・痛む首を必死で動かすとそれは視界にすぐに入った
大人っぽい落ち着いた感じの女の人が私の上に乗っている
目を細めた女の人は一瞬だけど微笑んだ
息・・・・苦しい・・・・・う・・・・・
再び視界が霞んでいくのを感じながら私は必死で涼さんの方へ手を伸ばした
「秋乃さん!」
私の名が叫ばれると首を絞める力がいっそう強くなった
「やめてくれ!」
泣き叫ぶ声が私の鼓膜を通り抜けるかのように聞こえたあとに急に首に込められた力がなくなった
温もり・・・誰だろう?
雨でも降ってるのかな?少し冷たいよ・・・・
「秋乃さん・・・・ごめんさない・・・・・ごめんさない」
白の色に包まれながら私の意識もその中に消えていった
・・・・ここは?
「秋乃さん!」
視界が開くと泣き腫らした目をこすっている涼さんが浮かんだ
「ここは?」
「病院だよ・・・・」
そっか・・・・助けてくれたのね?ありがとう・・・・
「ごめんね・・・・僕のせいで・・・・僕のせいで」
そんなことない・・・・そう言ってあげたいのに・・・・
私・・・・
あれから数時間で私の意識は完全に回復した
謝り続ける涼さんをなだめてようやく事を把握することができた
どうやら私は涼さんのご姉妹に乱暴されたらしい
聞いてみると涼さんのご姉妹はどう考えても精神の病気だとわかった
「ここって南条医院だよね?」
「そ、そうだけど・・・・?」
見覚えあるはずだよ・・・・だってここは
「私のお父様が経営している病院だよ・・・・」
「え・・・・そうだったの?」
なんか・・・・可愛いな
驚く顔も魅了的だな・・・・いけないけいない
「たぶんね・・・・それは精神の病気だよ」
「心の病?」
「そう・・・・だからね、お父様に相談してみます・・・・」
それを聞いて涼さんは嬉しさを表したあとすぐに悲しげに俯いた
「ごめんね・・・・僕のせいで」
「ふふ・・・・気にしない、気にしない」
私は少し痛む手を涼さんの頬に重ねてゆっくりと下に這わした
「これでも院長の娘ですよ?そこらへんの女の子よりも理解はあると思うよ」
「でも!」
「私たち・・・・恋人ですよね」
涼さんは私を見て少し微笑んだ
「キミが僕を許してくれるのなら」
なんだ・・・・そんな心配してたの?
バカだな・・・・・もう
ああ、愛おしい・・・・この人が・・・・とても
「私の気持ちは変わらないよ・・・・涼さん」
そう・・・・永遠に
「精神科医さんに相談してみます・・・」
「ありがとう・・・・悪いね・・・・・気を使ってもらって」
私は首を振って気にしないでと合図を送ってにっこりと笑んだ
「将来・・・・私の義姉妹にもなるんだから」
「そ、それは・・・・・うぅ」
ムッ・・・・なにかな、その反応は・・・・
涼さんは結婚を遠まわしに連想させると引いてしまうタイプみたい
男の人ってみんなそうなのかな?
私にとって彼以外の価値観なんてどうでもいいか
「ああ、なんか胸が痛いよ〜」
「え!?え!!!」
いかにも演技ですよって感じで私はよろめいてベットに頭を付けた
「痛いよ・・・・・」
「ご、ごめんなさい・・・・あの時背中を強く打ったから・・・・・だから!」
おどおどしながら涼さんが私の背中をさすってくれた
「私のこと・・・・好き?」
「え・・・・・う、うん」
「愛してる?」
「勿論だよ・・・・・」
少し不思議そうな顔をした涼さんの顔が布団と私との間にある指の隙間から見えた
優しいな涼さんは・・・・
「治らないよ・・・・」
「うぅ、どうしよう・・・・・」
「だって・・・・胸が痛いのは・・・・あなたのことでいっぱいだからだよ」
げふ!大声を上げたあと涼さんが顔を真っ赤にしてベットに上半身を横たえた
「いつか結婚してくれますね?」
「はひ・・・・秋乃さん」
「あ、そうだ・・・・退院したらデートしませんか?」
「はひ・・・・秋乃さん」
なんかバカップルみたいですね・・・・私たち
幸せ・・・・
面白い・・・・面白い・・・・
書くことがこんなに面白いなんて
自分はどうしても物語性を重視して嫉妬や憎悪をうまく書けないのですが
姉妹日記は不思議と嫉妬を書けますヤンデレも書けてします
この話・・・・秋乃さんの視点が多いので真っ白な印象ですが・・・・最初は姉妹の真っ黒でした
姉妹視点ではなんか無駄に殺伐が続く・・・・しかもあまり修羅場な感じがしない
関係ないですが姉妹日記の影響でヤンデレスレ
向けの作品を書いたのですが・・・・途中で挫折、どうも自分は綺麗な嫉妬劇が好きらしいので
純粋にヤンデレにできませんでした
浮気も二股もいけませんね
もうこのスレ一筋です・・・・ほんとですよ?
長々すいませんでした・・・・
すいません、アホみたいな誤字です
最初の1レス目の最後から二行目
「秋乃さん・・・・ごめんさない・・・・・ごめんさない」
を
「秋乃さん・・・・ごめんなさい・・・・・ごめんなさい」
です
ごめんさない・・・・って・・・・orz
管理人様訂正お願いいたします・・・・申し訳ない
372 :
嫉妬スレ:2006/06/14(水) 00:42:56 ID:aSqvBY30
流石アビスお兄ちゃん♪
私一筋なんてキャー♪
でも・・・一回浮気しそうになったんだよね?
私、不安だな・・・お兄ちゃんのことは信じてるけど
もしかしたら、お兄ちゃんの周りの女(スレ)がお兄ちゃんに迫っちゃうかも
うん、ここは私がしっかりお兄ちゃんを躾けた方がいいわね
待っててね、アビスお兄ちゃん♪
姉妹は最初から精神病だったのかwwwwwww
何で精神病になったか考えたことはあるのか、と涼君に小一時間問い詰めたい
投下します
「あ、白、こぼしてますよ」
ふきふき。
「んー」
「ああもう、拭いてる途中なんですから食べるのを再開しないでください。
って、言ってるそばからもう!」
「ユウキ、くすぐったい」
「こら、大人しくしなさい」
「んーんー。はむっ」
「人の指をくわえない。食べ物ではありませ――うわわ、くすぐったいっ!?」
「むふー」
ちゅぽ、と白の口から指を引き抜き、何度目かわからない溜息を吐く。
白の食事の世話は、慌ただしいことこの上ない。
勢いよくがっついていたかと思えば、唐突に猫のようにすり寄ってきたり。
欠片も残さず平らげたかと思ったら、おもむろにこぼしてこちらをチラチラ伺ってきたり。
落ち着いて食べることができないのかなあ、と毎日のように思わされる。
まあ。
ことごとく甘えてくる白の様子に、こちらの頬も幾度となく緩まされたりもしているのだが。
「……アトリみたいに上品に食べてくれれば、こちらも助かるんですけど……」
「? 誰みたいに?」
「ああ、いえ、何でもありませんよ。
それより白、今日はこれでもう終わりですか?」
「んん。全部食べるー」
再び勢いよく食事をかっ込み始める白。
それをのんびり眺めながら、ふと、他の囚人のことを考える。
――アトリ。
密入国者の、闘技場新規登録囚人は、そんな名前を持っていたらしい。
とはいえ、この監獄では名前で呼ばれることなど稀なため、監視員で知っているのは僕だけである。
初めて会った際、初めて言葉が通じた相手だからか、彼女は何かと僕を頼るようになってきた。
異国の言葉を解せる監視員など数えるほどしかおらず、それで会話できる者は更に少ないため、自然と僕が彼女の世話をするようになっていた。
もっとも、僕の第一の仕事は白の世話と決まっているため、手が空いたときに見に行って、軽く話をする程度だが。
それでも、話し相手がいることは、彼女にとって少なからず救いになっているようで、
行くたびに、とても嬉しそうな表情で出迎えられてしまう。
異国の顔立ちとはいえ、十二分に整った造形の美少女が、喜びを全身で表すその様は、気を抜けば魅了されてしまいそうな程だ。
もっとも。
貴族の出し物になる予定の少女に、一時の気の迷いで手を出したりなんかしたら。
それこそ比喩表現抜きで首が飛んでしまうのは目に見えている。
僕がアトリの、おそらくは無意識であろう魅力の発露に負けずにいられたのは。
きっと……いや、間違いなく。
僕に対して、あまりにも無防備な姿を晒している、囚人闘技場王者のおかげである。
余計な情報――囚人であることや、稀代の殺戮者であることを考慮に入れなければ。
白は、きっと帝国で一番の、可憐な少女だろう。
名前を表すかのような銀髪は、背中まで流れてなお、その輝きを失わない。
肌は白磁のような滑らかさで、見る者全てを吸い寄せそうな色艶である。
背はやや小柄だが、姿勢の美しさと相俟って、完成された黄金像すら連想させる。
性格は素直の一言。一度気を許してしまえば、長年愛しんだ猫のように、甘え擦り寄ってくる。
最近表れてきた唇の艶めかしさも、時折見せる艶のある仕草も、街中であればあらゆる男を魅了するに違いない。
そんな白と、ずっと一緒に過ごしてきたからこそ。
僕は、アトリの魅力には参らなかった。
彼女と接する際に表れる気持ちはただ一つ。
――せめて最期は、楽しい記憶を。
その思いがあるからこそ、僕は暇を見つけては、アトリのもとへ通っていた。
ただ。
今までは白だけだったから、特定の感情さえ抑え込んでしまえば、問題なく付き合うことができていたが。
今のように、白と同格の美少女とも時折会話するような状況だと。
――どうしても、二人の差異を見つけてしまい、余計な感情が湧き起こる。
それが例えば、食べ方の違いであったり、話すときの目の合わせ方であったり。
ついつい、二人を比べてしまう。
別に、どちらが上か、などといったランク付けなどする気もないが。
今まで気付きもしなかったような、少女の「女らしさ」といったことも目についてしまうのだから困ったものだ。。
例えば、いつものように白が擦り寄ってきている今。
服の首もとから胸の先が見えないように、絶妙にガードしている所などに気付いてしまう。
っていうか、見られるのが恥ずかしいならくっつくな、と。
「あっ! ユウキさん! こんばんわー!」
白が猫ならこっちは犬かな、と。
僕の姿を確認するなり、檻の手前まで駆け寄って、ぶんぶん手を振るアトリの姿は、
なんというか、元気よく尻尾を振る犬の姿を連想させた。
「こんばんわ、アトリ。調子は如何ですか?」
「元気だよー。ただ、ごはんが少ないから、ちょっぴりお腹ペコペコだけど」
「そうですか。それじゃあ、後で夜食を持ってきてあげますよ」
「やったー! ユウキさん大好き!」
鉄格子を抱きしめて、全身で喜びを表現している。
微笑ましいことこの上ない。囚人であることすら忘れさせてしまう快活さだ。
「そういえば、アトリ」
「はい?」
「もう、こっちの言葉は理解できるようになりましたか?」
アトリがこの監獄に移されてから一週間が経つ。
普通の人間なら、一週間程度では、異国の言葉を理解するのは難しいだろう。
捕まる前の期間も、ここに来た時点で言葉が不自由だったことから、習得には役立っていない様子である。
故に、アトリが帝国の言葉を解せなくても無理はない――が、
「もう、聞き取る程度はできるのでしょう?
監視員や囚人の声に対する反応が、出会った当初と変わってきていますしね」
「…………」
「違いますか?」
「……ユウキさんは凄いなあ」
ほう、と感嘆の溜息らしきものを、アトリは吐いた。
「うん。言ってることは大体わかるようになったよ。喋るのはまだ難しいけど」
今度はこちらが感嘆の溜息を吐く番だった。
てっきり、発音や簡単な挨拶程度までしか聞き取れてないと思っていたが――ここまでとは。
理解する能力が優れているのは間違いないだろう。
だが――それ以上に、アトリは“他人の言動を観察する”のが抜群に上手いのだと思う。
簡単な仕草や言葉遣いから、相手の状態を察知し、気持ちや雰囲気を読みとるのだろう。
きっと祖国では、空気の読める娘として、皆から好かれていたに違いない。
しかし――ここまで理解するのが早いとなれば。
「じゃあ――僕が本格的に帝国の言葉を教えましょうか?
アトリなら、すぐに覚えることができますよ」
そう、提案した。
――と。
アトリは一瞬、嬉しそうな表情を見せるものの、やや考え込むそぶりを見せた後、
何故か、にへら、と緩んだ表情を僕に向けた。
「いや、それは嬉しいんだけど、でもさ、それより今の状況も好きなんだ」
「今の状況?」
わけがわからなくておうむ返し。
すると、アトリは少しばかり頬を上気させながら。
「うん。
ユウキさんと、私だけの、秘密の会話。
私に話しかけてくれるのは、私の国の言葉を話せるユウキさんだけ。
これって、なんだか、凄く胸がポカポカするんだ」
なんだそりゃ、と思った。
要は、他の人間に聞こえない会話をしている背徳に、緊張と興奮を覚えているということだろうか。
まあ、深く考えても仕方ない。僕の言語能力だって完璧ではないのだ。
ひょっとしたら、少しの意味の取り違えもあるかもしれないし。
とりあえず、アトリが構わないのなら、別にいいか。
ああ、でも。
ひとつだけ、断っておかなければならないことが。
「でも、僕はいつもここに来られるというわけではありませんから。
他の人とも話せた方が、何かと楽になると思いますが――」
「嫌だよ、そんなの」
きっぱりと。
アトリは僕の目を見てそう言った。
そして、続けられた言葉に、僕の思考は停止させられた。
「だって――あと、半月もないんだよね?」
え。
なんで、知ってるんだ?
目が。
異国の瞳が、僕の心の裡を覗く。
僕は言っていない――でも、考えればすぐにわかるはずだ。
新入りの囚人にあるまじき個室待遇。
そして、兵士たちの会話からこぼれる幾つかの単語。
アトリほどの理解力を持つ娘なら――自分の“出番”が近いことなど、簡単に察するに違いない。
その上で、アトリは、僕に、まっすぐ瞳を向けてきている。
「なら……このままでいいじゃない。
私はこのままでも……“辛くない”よ?」
駄目だ。それは、
あと少ししかない時間なんだから、できる限り“楽しんで”欲しい。
僕だけじゃ、それを提供できるかどうかわからない。
だから、他の人とも話せるようになって、楽しみの種を増やした方が――
「でも、“試合”までに言葉をちゃんと話せなかったら、ただ習うだけで全てが終わっちゃうよね」
「それは、そうだけど、いや、でも……」
いいのだろうか。
この暗い監獄の中、僕一人だけを相手にして、そのまま一生を終わらせていいのだろうか。
彼女の望むまま、僕だけが相手をしていればいいのだろうか。
思考が上手く働かない。
なんだか、無理矢理泥の中で泳がされているような感覚だ。
このままではよくない。早くいつもの通りに戻らなければ。
冷静になれ。
そうすれば、彼女を安心させる言葉も、簡単に紡ぎ出せるはず――
「でも、さ」
その前に。
アトリが、顔を近づけた。
檻に顔を押しつけるように、僕の瞳を直視する。
「私が勝てば、大丈夫だよね。
言葉を習い続けることも、できるよね」
…………。
……ああ、そうだ。
万が一、何か奇跡が起こって、アトリが試合に勝利した場合。
そのまま闘技場登録者として、この監獄に住まい続けることになる。
そうすれば、言葉を教え続けることもできる。他の人とも繋がりを持つことができる。
なんだ、それで解決じゃないか。
「だから、さ。ユウキさん」
アトリは、唇だけで笑って、
「試
合に勝つことができたら、私の付き人になるって約束して?
そう約束してくれれば、試合まで、頑張って言葉を勉強して、他の人とも話せるようになるよ」
付き人?
でも僕は、白の――
「私が勝てる可能性なんてほとんど無いんだからさ。
万が一勝ったとき、私に色々教えてよ。そのための、付き人。
私だって、知りたいこと、いっぱいあるんだよ?」
そうだ。
アトリのような女の子が、試合で勝てる可能性なんて皆無だろう。
ならば。
この少女が最期まで希望を捨てないよう、形だけでも約束すればいいじゃないか。
アトリの理解力なら、きっと言葉はすぐに覚えられるはず。
最期の、本当に短い時間だが、周囲の人間と関わりを持って生きることができるだろう。
会話できるのが僕だけだなんて歪すぎる。
それを正すためにも、ここは、彼女と約束しておくべきだろう――
頷いた後。
ぼんやりとした頭で。
もしアトリが勝った場合。
白はどうなるのかな、と疑問の欠片が微かに浮かんだ。
遅筆&展開遅くてすみませんorz
ようやく……修羅場の片鱗が……出てきたのかな?
もっと修羅場れるよう頑張ります
個人的に思うことだけど、アビス氏の文章はもう少し風景や心理描写を詳細に
書いてみてもいいように思う。 読ませて貰ってる立場でこんなこと言うのもなん
だけど、少し展開を急ぎすぎるというか、アニメを見てるみたいでね。
キタワァー
アトリモエス
最後のところ、変なところで改行されてますねorz
【誤】
「試
合に勝つことが〜
【正】
「試合に勝つことが〜
です。見苦しいところを晒してすみません。
修羅場フラグキタ━━━━━━(*゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
白派だったがアトリもテラカワイス
そういえばかなり昔の2時間モノのドラマで浮気をしている夫が主人公で、その相手が殺害されてしまい警察からその犯人に疑われる。
その真犯人は幼い頃のトラウマで大切に想う相手に感情移入し過ぎる余り、その相手になりきってしまう多重人格サイコ奥さんで、
愛する夫が浮気相手と別れたがって悩んでいるのにこっそり気づいて、その夫になりきって夫ならこうするだろうという思考パターンを完璧にトレースして浮気相手をヌッコロス。
その完璧っぷりに警察も夫が犯人と思い込む…っていうドラマだったんだけど誰か知ってる?
>>383 アトリが好きです、でも白はもっと好きです(某CM風
アトリ可愛いすぎ
空前絶後の絶体絶命。言ってることは支離滅裂。つまりはピンチってこった。
「ふう……ふふふ……」
溜め息を付いたあと、色っぽく笑う志穂。…嗚呼、こんちくしょう。可愛いじゃねぇかい。
「それで……どうする?」
あの騒動から(3p)から数か月。なんの騒ぎも無く、平和に暮らせる……つもりだった。が、たった一人の、たった一言がそれをぶち壊した。
『おめでたですね。』
発言者、医者。
やっちまった。いや、後悔はして無いが、ちょっと早い。志穂は産む気満々で、俺も墜ろせだなんて酷い事は言えない。
「気をつけてたんだけどなぁ……」
ぼやく。
「気をつけてた?」
それを聞いた志穂の頬がピクリと動いた。(気がした)
「ほぼ毎日……暇さえあればHして……毎回ゴム無しで中出し……獣並みの性欲ぶつけてきたじゃない………」
「うっ」
「鬼畜……」
「うぅ……」
春華は妊娠しなかったそうだが、あの日の帰り
『ご心配は無用です、せんぱい。烏丸春華、いっしょう貞操を守り抜くつもりです。えぇ、貞操帯でもなんでも…』
と、うれしいことを言ってくれた。
「はいはーい。他の女の事はか・ん・が・え・な・い!!」
エ、エスパーか!?おもいっきり頬を抓られる。仕方ない、最終奥義!
「んん!」
志穂の腕を引っ張り、唇を奪う。1、2、3、4、5……
「ふぁ…ん……」
落ちた!勝者、笹原晋也!決め技、口内責め!
「ひ、ひきょうらないよ!」
かつぜつが悪い。最近気付いたが、舌が弱点らしい。………ちなみに、あれから胸が大きくなった。この前Cになったらしい。
世間一般では小さいかもしれんが、志穂の体からすりゃでかい。まあそれが色気に繋がってるわけでもなく、相変わらず子供っぽいのだが。
「ふふん、俺が何も考えずに中出ししてたとでも思ったか?」
「なんも考えて無いでしょ?」
「し、失敬な!か、か、か、……彼氏の言う事ぐらい、信じなさい!」
「どうだか……」
「いや……彼氏じゃないな……」
「え?」
ポケットからあるものを取り出す。うーんこういうありきたりなパターンは好きじゃないのだが、仕方ない。
「ほら……未来の夫と呼びなさい。」
取り出したのは指輪……
「これって……え?え?」
どうやら突然の事で混乱しているらしい。そりゃそうか。話が突飛すぎたか?
「あー…おほん。遅かれ早かれ、俺達はこうなるんだから……えーっ……いまちゃんと言おう。」
「うん…」
目を閉じる志穂。こぼれる涙。そこに悲しい色はなく、喜びで透き通った涙。
「卒業したら…結婚しよう……志穂。辛い事だらけかもしれないけど……もうお前となら恐いもの無しだ。」
「うん…喜んで!」
万円の笑み。堪えきれず、思わずもう一度キスをする。今度は長い長いキス。
その時、開いている窓の外から、風が吹き込んだ。その風はラベンダーの香りがした。そこに怒りや悲しみはなく、ただ純粋な、祝福の香りだった。
(ありがとう………)
溢れるほどの幸せに包まれ、心の中でそう呟いた。もう迷わない。決して……一生、愛する人を守るため…………
・
・
・
・
・
・
fin
やっと終わった……なんだかやたらと長く書いてしまった様な気がします。最後まで付き合って下さった方、感謝です。
ハッピーエンドなのは作者の趣向です。自分が志穂派なんでw
それじゃ………僕はヤンデレすれに行くから……此所とは、しばらくお別れだよ………(・ω・)ノシ バイバイ
なんか寂しいですが、とりあえず完結オメです
396 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 16:11:34 ID:eU9nMBC/
正気にては大業ならず
恋愛とはシットグルイなり
投下致します
第6話「猫の記憶」
わたしはキャンバスと一生懸命睨めっこに没頭していた。
すでに誰もいない美術教室で居残りの課題を仕上げるため。
とっくの昔に下校時間は過ぎていて、周囲の風景はすでに陽は落ちており、暗闇が世界を覆っていた。
猫乃は大好きな先輩のために頑張って課題を仕上げてるんですよ。
その課題は肖像画を描く。相手は誰でもいいので、クラスの人間か親や友人などいろいろな選択肢があったのに私は先輩を描くことに決めた。
先輩の顔なら、見なくても描けます。でも、先輩を描くと決めたからこそ、全ての工程において丁寧に描きたかった。
それで他の子よりも時間がかかって、居残りするはめになっちゃったけど。その分、やりがいのある事だと私は思う。好きな人を想い浮かべて描く事は私の胸に充実感で一杯になる。
この作品が完成したら、真っ先に先輩に見せよう。先輩は喜んでくれるかな。
猫崎猫乃作『愛する人』を捧げるイメージを浮かべるだけであっちの世界の住人になりそうで恐いです。
でも、今思うと先輩と恋人関係でいられることは不思議にならない。
いきなり、ここで告白しますが、実は私は猫なんです。
そう、猫崎猫乃は私が猫だった時を意味する名前。
先輩に出会った日、そのとき私は猫だった。
学校帰りに先輩は私の頭を優しく撫でて、餓えていた私に餌をくれた。それが日課になっていて、私はいつも餌と頭を撫でてくれる男の子の事が好きだった。
だから、彼の下校時間になると決まった場所に行き、彼が来るのを待っていた。
それが猫にとって、最上の幸せであった。野良猫に優しくしてくれる人間は今までいなかった。
この男の子だけが私に優しくしてくれる。温もりをくれる。
その人間が好きで好きでたまらなかった。
でも、所詮は人間と猫。結ばれるはずもなかったが、先輩が傍に来てくれるだけで満足だった。
そう、満足だったんです。
あ、あ、あ、あ、あ、あの女が邪魔さえしなければ。
今も忘れはしない、あの女の顔。
風椿梓。
いつものように待っていた私に、殺意の視線を向けた女がやったこと。
「翔太君が餌をくれるから、勘違いしないでよ野良猫……。翔太君は私にだけしか優しくしないといけないんですから!!」
猫の首をぎっちしと掴んで、尋常なる圧力で絞めてゆく。
苦しい、苦しいよ。やめてよ。
助けて……。
猫は泡を吹いて、失禁してゆく。
「あはははははは。死んじゃったの。でも、猫さんが悪いんだよ。わたしの翔太君を奪おうとしたから。これに懲りて、来世も翔太君に近付かないことね」
その言葉は聞こえなかったが、嘲笑した笑みは私の瞳に焼き付けられていた。
死んだと思われた私は次に目が覚めた時は人間の女の子になっていた。
そう、生前の死の記憶と人間である猫崎猫乃の統合人格の元で生まれ変わったのだ。あの愛しい人がいる時代にと。
何より嬉しかったのは、人間に生まれ変わることで私は翔太君と結ばれることができる。彼の赤ちゃんを産むこともできるのだ。
そして、もう一つ。
憎々しい風椿梓に復讐できることだった。あの女が大切にしている人を私が奪い、永遠の敗北を突き付ける。
それが私の描いた理想のシナリオだった。
だから、先輩とあの女がギクシャクした関係にどれだけ私が喜んだでしょうか。
傷心した先輩を癒すために下駄箱にわたしは精一杯の想いをラブレターに込めた。
先輩が屋上に来てくれた時、どれだけ胸がときめいたことやら。
そして、交際してくれると言ってくれた時は私は心の中で感涙した。
狙い通り!!
これで風椿梓を完璧に下すことができた。もう、先輩は私だけモノだ。絶対に離さないし、傷つけることもしない。
私の完全勝利だ。
このキャンバスを完成させて、今宵は先輩に抱いてもらう。
これで王手ですよ。風椿梓。
筆をとって、色の色彩を丁寧に塗っていく。難易度の高い技術はいらない。
わたしの想いをキャンバスに込めるだけ。大好きな先輩を愛している私の純白な心は絵に描かれてゆく。
常にイメージするのは理想の先輩。描き上げる前は真っ白な用紙が魔法のように一人の男の子の肖像画を描いていた。
「よし、これで完成かな」
えへへとにこやかに頬が緩んでいた。これで先輩を見せて誉めてもらうんだから。
一人、妄想に酔う私は気付かなかった。
暗い廊下から静かに聞こえるが、重々しく響く足音を。
それは一歩一歩と近付いていることさえも。
ただ。
私の中で笑ってくれている先輩の肖像画が告げていたかもしれない。
ここから逃げろと。
猫乃が実は猫だったというつまらんオチでスマソ・・。
まあ、梓に絞め殺されているんで、その辺はちょっと涙します・・。
ってか、すでに鋸を手にしなくても、充分にヤンデレのような気も・・。
とりあえず、続きは頑張って書きますんで。
梓(((((((( *゚Д゚)))))))ガクガクブルブル
素晴らしい狂気と独占欲を持っているな
>>394 お疲れ様でした! ハッピーエンド、よかったです。
ヤンデレの作品も楽しみにしております。
>>394 一番好きだったのに終わっちゃヤダー・゚・(ノд`)・゚・
>>394 おつかれさまでした!
病み具合、嫉妬分、物語の展開と、すばらしい話だったと思います。
強いて言うなら晋也君がなぜそこまで志穂を好きなのかよく分からなくて、
春華に比べて色々弱かったのが残念かな、と。
中編投下します。
正門まで歩み寄ったおにいちゃんは先輩に何かを話しかけています。
声はおろか、二人の表情も良く見えませんが、楽しそうな雰囲気はここまで伝
わってきました。
その中で、おにいちゃんは私の名前を一度でも口ずさんでくれているのでしょう
か。
おにいちゃんの声が私の名前を呼ぶ度に、私の身体は愉悦に震えてしまいます。
だけど今、私がおにいちゃんの声を聞くことはできません。おにいちゃんの隣は
私じゃない人が占領しています。
私じゃない人が隣でおにいちゃんの姿を見て、声を聞き、会話しているのです。
もしもそれが先輩以外の女の人なら、あまりに気持ち悪くて寒気と吐き気を覚え
てしまいそうです。
マネージャーの仕事なんか放り出して、あの中に割り込み、そしてどんな手を
使っても二度とおにいちゃんの近くになんか寄らせないようにしてあげます。
それなのになぜ、先輩と一緒に帰ることを(快くではないけど)容認したかと言
うと、答えは至極簡単、先輩は特別だからです。
先輩は私のおにいちゃんへの想いに気付いていて、協力してくれてる唯一の人
です。
実の兄妹を好きになるということは、社会や家族という保障されたグループを
拒絶する事に他なりません。そんな私の内の不安を先輩は何度も取り除いてくれ
ました。
何より、先輩は、自分にとっておにいちゃんは絶対に友達以上の存在じゃない
と、あらかじめ私に宣告しておいてくれたのです。
そんな先輩だからこそ、おにいちゃんが惹かれるのではないかという不安はあり
ますが、そうなったらそうなったで、おにいちゃんの振られて傷ついた心を慰めて
あげることができます。
あはっ……おにいちゃん……。ふふふ、もしそうなったら、いっぱい、いっぱい、
慰めて、慰めて、ずっと一緒に泣いてあげます。抱き締めて、お世話をして、ずっと
ずっといつまでも一緒に居てあげます。
――その時に告白するのも良いかも知れませんね……。
『あなたを愛してる人はここにいますよ』って。
あぁぁぁ……おにいちゃんの耳元でそんな事を言えたらどんなに気持ち良いんでしょう。
それともおにいちゃんが私の耳元で『愛してる』って囁いてくれるのでしょうか?
何度も、何度も、日が暮れるまでずっと……。
あうぅぅ……お、おにいちゃん……そんなこと言われたら……私、駄目になっちゃいそう
ですよぅ……。
おにいちゃん……大好きです、愛してます。
こんな陳腐な言葉でしか想いが表せないのが凄く歯がゆいぐらいです。
ねぇおにいちゃん、いつか想いが通じ合えたらすぐにでも結婚しましょうね?
本当の結婚が出来なくても、世間が祝福してくれなくても、全然構いません。
ううん、それどころか私以外におにいちゃんの凛々しいタキシード姿なんて絶対に見せた
くありません。二人だけの結婚式で十分なんです。
あ、でもやっぱり先輩だけには見せてあげても良いかも知れません。
私たちの仲を応援してくれる唯一の人だもの。二人の幸せを見て欲しいです。
そして最後にブーケを、真っ白いブーケを先輩に直接渡してあげるんです。
これからの幸せと、素敵な人との出会いを願って……。
それぐらい、先輩は特別な人でした。
部室にはカレンダーが貼ってあります。
試合や合宿日などの予定の他に、部員の個人的用事のある日にまで様々な蛍
光ペンで印が付けてあり、もう誰の何の用事なのかも分からないほどカラフル
に仕上がっているカレンダーです。
「あ……」
部室の掃除が終わり、ふとそのカレンダーを見たとき、あることに気付きま
した。
――今日は先輩の誕生日。
あまり自分のことを主張しない先輩は私とおにいちゃんにしか誕生日を教え
てませんし、一軒家に一人で暮らしていて祝ってくれるはずの家族もいません。
自分の生まれた日に誰も祝ってくれないことの悲しみは、ずっと独りで寝たき
りだった私には、痛い程分かります。
それに普段から先輩には、気を使っておにいちゃんと二人きりにさせてもらっ
たり、相談にのってもらったりしていますし……。
――よし。誕生日に寂しい想いなんてしちゃいけませんよね。
丁度、今日はおにいちゃんもお泊りですし、こうなれば私もお泊りさせてもら
いましょう。おにいちゃんのいない家なんかに帰っても、意味がありません。
思い立った私は、長椅子に置いていた通学用鞄を片手に握り、部室の扉を開けます。
せっかくおにいちゃんに心配してもらったのに、結局こんなに掃除に時間がかかっ
てしまいました。やっぱりおにいちゃんがいないと駄目ですね。
外に出ると、グラウンドはもう鮮やかな夕暮れの紅から宵闇に染まり始めていました。
夕食を食べた私はお父さんとお母さんに、今日はお友達の家に泊まりに行く
という旨を伝え、純白の華を包んだ白い花束を手に、先輩の家に向かっていま
す。
私の家は、二階を居住スペースとして、一階を母が副業でお花屋さんを営ん
でいるため、私が今手にしている華――白いバラも即席のお祝いとして簡単に
手に入れる事ができました。
すっかり日の落ちた辺りの暗闇には、気味が悪いほど人の気配を感じません。
それでも何とか家の前まで来た私は頼りない外灯の光を頼りに、軒先のプ
レートで先輩の苗字と名前を確認します。
――藍川由姫。
確信した私は立派な作りのインターホンに手を当て、力を入れました。
それと同時に、家の中から微かに漏れてくる小気味良い電子音。
しかし、しばらく待っても扉が開かれることもなければ、誰かが来てくれ
る気配もありません。
再度、インターホンを押します。
同じように待っても不気味な静寂しか返ってきません。
「おかしいですね……」
この時間までどこかに出かけているということは先輩の性格からまず有り得ま
せん。
考えられるとすれば、事件に巻き込まれたか、何かの理由での突然の失踪、も
しくは買い物など一時的にどこかに出掛けた可能性ですが……。
某探偵風に小難しく考えてみましたが、一人暮らしをしている先輩のことを考
えると、買い物というのが一番有力です。
こんなことなら来る前に電話をしておけば良かったのに。
礼儀としてもそうしておくべきだったのですが、どうしても先輩を驚かせたかっ
たのです。
意気消沈した私は一度嘆息し、最後に開くはずもないドアノブに手をかけ……。
「あれっ?」
予想していたはずの抵抗がありません。そのまま引いてみると軽い音をたてて、
あっさり過ぎるほど簡単にドアが開かれました。
視線をそこから覗かれる廊下に寄せると、奥から微かに光が漏れています。
几帳面な先輩が鍵をかけずに外出するとは思えません。
「せんぱ〜い?」
控えめに先輩を呼んでみますが、やはり返事はありません。
疑問に感じた私は、失礼を承知で先輩の家に足を踏み入れ、その光に向かって
歩を進めました。
家の中に入ると、外では風で流されていたバラの香りが鼻腔を擽り始めました。
『ほら、華恋、しっかり手を繋いでろよ』
こうしてバラを手にしているだけであの日の光景が、色褪せた映像となって脳裏に
浮かびます。
十年前、その日も私を連れ出したおにいちゃんは大勢の人で賑わう大通りに連れて
行ってくれました。
最初は始めて見るあまりの人の多さに、感動していましたが、気付いたらしっかり
掴んでいたはずのおにいちゃんの手をいつの間にか離してしまっていて、私はその場
にしゃがみ込んで声をあげながら泣いていました。
結局は、顔を真っ青にさせたおにいちゃんがすぐに見つけて連れて帰ってくれまし
たが、私はなかなか泣き止まなくて……。
家に着くと、おにいちゃんはお店の赤いバラを取って、私の髪に挿してくれたのです。
『ちょっとじっとしててな……目印だ』
きっと、おにいちゃんは赤いバラの花言葉なんて全然知らなかったんだと思います。
それでも、その時の私にとっては涙が出るほど嬉しいことで……。
その時から真っ赤な紅い『バラ』は私の中でとても大切なものになっていました。
あの綺麗な、綺麗な、真っ赤な、真っ赤な、紅色の…………。
――――血?
……あれ……?
……あれっ? あれっ? あれっ? なんで? え?
なにこれどういうことですかおかしいよだってあれねぇほら……。
私確かめましたよ? ここに入る前。
絶対、間違いなく、百パーセント、ここ先輩の家ですよ? 『藍川由姫』って軒先で確かめましたもん……。
だから私はおかしくないです。おかしいのはそっちなんです。
だってそうでしょ?
……なんで先輩のベッドで先輩とおにいちゃんが裸で一緒に寝てるんですか?
(((((((( ゚Д゚)))))))
後編はまた今日中に投下します。
一レス目にまたタイトルが抜けていました……。
あぁ、ごめんなさい! 見捨てないでっ!
(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブル
みごとな昼ドラ的修羅場! やはり男が嘘ついた修羅場はワクワクするね
GJ!この実は先輩が泥棒猫だったりするのか!?!?
>>394 乙でした!
俺も志穂派なんで最高ですwwww
あ…それより……
他のスレに行くってどういうこと?……嘘だよね?
そんなことしたら……私どうなっちゃうか……わかんないよ?
>>413 血みどろキタこれww
久しぶりの鮮血(前哨)祭りの予感に土器土器。
その日の夜。
「よぉ〜!ウィル!ちょっと来い!」
バーの前を通りかかったのが運の尽きだった。
師匠がバーの中から俺を呼んでいる。楽しそうなのはただ酔っ払ってるのか、何か企んでるのか…。
「な、なんか用ですか」
げんなりした表情を全く隠さずに師匠のテーブルへ近づくと。
師匠が楽しそうな理由が後者だとすぐに気づかされた。
「あっれ〜。ウィルぢゃないれすかぁ〜?」
うっ……。
ひどい酔っ払いがもう一人いた。
「いや〜お前ンとこの騎士団長様は酔うとおもしれぇなぁ」
ぐびぐび〜と飲酒している団長を見ながらゲラゲラ笑う師匠。あんたの仕業かい。
「師匠!何やってるんですか!笑ってないで団長を止めてくださいよ!…うぉっ」
俺が注意しようと団長の隣に移動した瞬間、凄い力で引っ張られ無理矢理隣に座らされた。
「ふふふ〜、つ〜かまえたぁ〜♪」
さ、酒臭いです…団長。なんとか説得して今日はもう寝かせないと。
「だ、団長、その辺にしましょう?明日は積荷の護衛ですよ?」
「うりゅさ〜い!誰の所為でこんなことになったと思ってるんれすかっ!」
「だ、誰の所為って…誰?」
酔っ払いにまともな受け答えをしてはならない。傭兵時代に培った教訓だ。
その日はそれをうっかり忘れていた。
「それはれすねぇ………あーたに決まってるれしょーがっ!!」
ビシィッと俺を指す指が鼻にささった。
「今日は寂しかったんれすよぉ…朝からず〜っと姫様と出かけてるしぃ〜」
しなを作りながら俺に擦り寄って。
「私ぢゃらめなんれすかぁ?」
俺の胸の上でのの字を書いた。
「だ、駄目ってことは、ない、ですけど……」
助けを求めて視線を動かす。あ、師匠と目が合った。
ニヤニヤ笑ってやがる……憶えとけよ…あの酔っ払いオヤジ。
「ウィルはぁ…私が嫌いなんれすか〜?」
依然として酔っ払い上司の口撃が続く。
「い、いえ…そんな訳ないです……」
団長の柔らかい肌の感触が右半身の至るところを刺激する。
非常に危険だ。今の団長はとにかく危険だ。
「らったら〜私にちゅーしてくらさい」
「ちゅ、ちゅー?……ってうわわっ!?」
俺に唇を寄せてきた。失礼とは思いながらも彼女の額を押さえて防御する。
「ちゅ〜…」
さて。この人、どうしたもんだろう。
「う〜…やっぱり私が嫌いなんら…」
今度は拗ね始めた。団長って酔っ払うとこうなるのか……次から気をつけよう。
「そんなことないですってば」
「じゃあ、じゃあ、せめて『愛してる』って言ってくらさい」
「えぇ!!?」
ずずいと顔を寄せてくる。息が猛烈に酒臭い。
「早く、早く。ほら、愛してりゅ〜、って」
「うぅっ…」
「あ・い・し・て・りゅ〜♪」
戦局は不利。撤退もしくは降参を提案。撤退は却下。降参を推奨。相手の要求に従え。
俺の脳内会議はとうとう白旗を揚げた。
「あ、あい…」
「………」
「愛して……」
ポテンと。俺の肩に彼女の頭がもたれかかった。
「団長?」
顔を覗くと彼女はすやすやと眠りこけていた。やっとダウンしたらしい。
「ふぅ〜……」
「首の皮一枚で繋がったな。ウィル」
安堵のため息をつく俺を見ながら師匠がニヤニヤしていた。
「これは何の拷問ですか…」
「くくっ…でもなかなか可愛かっただろ?」
「だとしても悪趣味すぎます。……あ、そういえば師匠」
酔い潰れた団長を部屋に運ぼうと抱えると、ふと夕方のことを思い出した。
「あん?」
「ここのところ、マローネの様子がおかしいんですが……何か知りませんか?」
その質問にちょっと苦い顔をして黙り込む師匠。何か心当たりがあるんだろうか?
「…………お前もマローネもまだまだガキってことか…」
「師匠?」
「何かアドバイスでもしてやれりゃいいんだが…オレは女房一筋だったしなぁ…」
脈絡のないことを言う。意味がさっぱりわからない。
「何の話ですか?」
「なぁ、ウィル。明日の護衛のことだけどよ、マローネのやつに目をやっといてくれないか?」
本当に脈絡がない。何を言いたいんだ?
「それは構いませんけど…どうしたんです?藪から棒に」
「ま、親のエコヒイキってやつだ」
「はぁ?」
「明日は気ィ引き締めてかかれよ?じゃねぇと分け前やらねぇからな〜」
俺にひらひらと手を振りながら師匠はバーを去っていった。
「師匠まで様子が変だ…」
泥酔する団長を抱き上げたまま俺はそうぼやいた。
同刻、オークニーより西の山小屋にて。
誰にも使われていないことが一目で解るほどの朽ちた山小屋。
小屋の中は勿論のこと、外にまで幾人もの強面の男たちが翌日網にかかるであろう獲物を待っていた。
総勢は優に五十人を超える。
小屋の中で一際自信に満ち溢れた隻眼の男。
その男が手下から報告を受けていた。
「ふーん……これ、間違いねぇんだろうな?」
「もちろんです。冒険者の斡旋所から今日盗ってきたものですから」
鋭い眼光で手下を睨む。どうやらここに集まっている男たちの頭らしい。
「そうか。もう下がっていいぜ」
男は受け取った用紙をパラパラ捲りながら手下を下がらせた。
「積荷の護衛……ベイリン傭兵旅団、か。
………こりゃ面白ぇことになってきやがった」
紙に目を通しながら口角を吊り上げる男。
笑ってはいるが、その男の目はギラギラとした殺気に満ち溢れていた。
「三年前の借り、返させてもらうとするか」
紙をぐしゃりと握りつぶす。
――――――――隻眼の男の名は、モルドといった。
団長、みさくら化。
みんなGJ
おれ、このスレに作品投下したら結婚するんだ…
死亡フラグ((((;゚д゚)))
BM2、どんどん面白くなってきたー
酔いどれ団長に(*´Д`)ハァハァ
>>423 それなんて結婚式でにこやかに新婦と笑みを交わしていたら
突然ばーんと教会の扉が叩き開けられて制止を振り切りながら
やってきた、昔捨てた女に「あなたは誰にも渡さないんだから!」と
包丁を突き立てられ「私だけ! 私だけ! 私だけ! 私だけ! 私だけ!
私だけ! 私だけ! 私だけ! 私だけ! 私だけ! 私だけ! 私だけ!
私だけのもの! 私だけよ! あは。あはははははははははははははは!」
って言葉の数だけぞぶぞぶと繰り返し刺されて苦しみ悶えながら絶命するフラグ?
このスレの神々方激しくGJ!!
>>423自身の修羅場と作品を全裸で待ってるよ。
>>423 そうか!それはめでたいな!よし、今日はお祝いだ!この投下が終わったら取って置きのシャンパンを開けてやるぜ!
だから、今日は一緒に飲み明かそうぜ!この投下が終わったらな。
電子音。
四時限目の終了を示すこの音は、この織濱第2高校においては祭の開始を告げる開幕の
ベル。これを聞いた生徒はあちらこちらで手作り弁当を広げていちゃいちゃとカップルぶ
りを見せ付けるように食事を開始し、今さっきこのクラスで熱弁を繰り広げていた世界史
の教師も自慢の愛妻弁当を食べに職員室へと駆け足で戻って行った。自慢するように重箱
を持ち、全クラスを訪ねていたことは記憶に新しい。兔にも角にもどちらを見てもカップ
ルカップルカップルカップル、男女交際率が90%をこえるこの高校はそんな男女で満開だ。
たまに男々だったり女々だったりするのは御愛敬だが、世界は愛で満ちている。
え? 僕?
生徒全員がカップルという訳ではないので、それには含まれません。だけどそれでも一
人寂しくという訳ではなく、一緒に昼を食う人は居る。そろそろ来る頃だろうと考えてい
ると、教室の扉が開いた。
しかしそれはいつもとは逆、教室の前の扉。
「守崎・虎徹君は居るか?」
禀とした声に視線を向けると、そこには有名人の織濱・青海(あおみ)さんが立ってい
た。僕に何の用だろうか、正直心辺りが無い。片や理事長の娘で才色兼備のお嬢様、僕は
平凡な一生徒、会話をしたこともなければ接点すらもない。そんな人からの突然の指名に、
思考が混乱を始めた。
「返事くらいしてくれないか?」
織濱さんは僕を鋭い目で睨みつけると、大股で寄ってきた。美人なので様になっている、
という考えと恐怖が混ざり、僕は自然に椅子ごと後退をする。
僕が何をした?
自慢ではないが、自分でも「温厚・人畜無害・平和主義者」と三拍子の揃った普通人の
代表のような生徒として暮らしてきたつもりだ。理事長の娘さん直々に詰め寄られる覚え
は欠片もない。
だが向こうはその気持ちは関係無いらしく、僕の僅か1m手前に立つと、
「君の子供を産ませてくれ」
随分と直球で告白してきた。
ちょっと待て。
「分かりにくかったか? 短刀直入に言うと、結婚を前提に付き合ってくれ」
その言葉を聞いた瞬間、僕を含めてクラス中の空気が凍りついた。その原因はこの高校
での禁忌を犯した哀れな愚者に対する恐怖の念だ。
僕だって好き好んで独り身でいる訳ではなく、それなりの理由が存在する。それが今、
織濱さんが平気で踏み込んできたもので、僕の周りでの最大のタブー。僕にはブラコンの
猛獣が二人居て、他人が近付こうものなら迷わず噛みついてくる。結果、僕は年齢と彼女
が居ない暦が等しくなっているのだ。
「どうした? そんなに固まって」
しかし、織濱さんは周囲の空気など関係無いらしい。純粋に不思議そうに小首を傾げて、
僕の顔を覗き込んでくる。
「もう一度言おう。好きだ、付き合ってくれ」
「ちょっと待ったァ」
「それとお昼ご飯です」
小気味の良い音と共に教室の扉が左右に動き、再び閉まる。僕にとっては見慣れた光景
だが、織濱さんは眉根を寄せてそれを不思議そうに見た。
しかしすぐに視線を戻すと、再び僕の顔を覗き込んでくる。
「それで、答えだが…」
「待ちなさいってば」
「この雌豚」
今度は普通に扉を開き、姉さんとサクラが入ってきた。叫びながら織濱さんを睨みつけ
ているのは、二人とも共通だ。ここ暫く見ていなかったから、その迫力も増して見える。
「誰だ?」
「奥さんだよ」
「妻です」
「姉と妹だけど」
今まで何度もしてきたやり取りに、僕は少し肩の力が抜けるのを感じた。少し問題あり
だが、やはり家族というのはそれだけで安心出来る。
改めて話を聞こうと、織濱さんに向く。
「何で僕なのさ」
よくぞ聞いてくれたとばかりに、織濱さんは胸を反らした。胸に手を当てて軽く上を向
き、何か過去を反芻するように目を閉じてうっとりとした表情を浮かべている。今時、こ
のポーズはどうなんだろう。
「あれは、一週間前のことだ」
一週間前、何かあっただろうか。思い出せる事と言えば、捨てられていた三毛猫を拾っ
た事しか覚えていない。まさかそんなベタな事が理由とは思いたくないが、念の為に携帯
の待ち受けにしてある呑助(のみすけ)の画像を出す。因みに名前の由来は、牛乳を恐ろし
い勢いで飲んでいたからだ。
「もしかして、これ?」
「それだ、その優しい姿に心がときめいた」
余計な言葉は要らない、僕は移心伝心したことをこれ程悔いたことはない。こんなこと
で惚れられるのは有り得ないだろうが、しかし彼女からは何かラブいオーラが伝わってく
るのがはっきりと分かる。一週間もそんなことを考えていたとすると、それはもう、大変
だっただろう。
一週間。
不意に、疑問が湧いてきた。彼女ははっきりと物事を言うタイプなのは周知の事実で、
即断即決の人としても有名だ。乙女心というものもあるのだろうが、無神経にも不思議に
思ってしまう。
「そんな、何で一週間も間を開けたんですか? それは愛していない証拠なので、豚小屋
にでも帰って下さい」
言葉は汚いが、サクラが上手い具合いに質問をしてくれた。誰に対しても怯まずに言葉
を放ち、簡潔にまとめようとする。好みは分かれるところだがこれは僕の好きなところで、
サクラの数多い個性の一つだ。因みに姉さんは付いてこれずに後ろでうろうろしていた。
話を戻す。
僕も興味があったので視線を向けると、
「見とれて雨に打たれて風邪を引き、三日間寝込んだ。その後二日間伝える方法を悩み、
残りの二日は友人に止められた」
納得した。現に今でも僕の後ろでは二匹の虎が襲いかかるタイミングを見計らい、獲物
が妙な動きをするのを待っている。殺虎の血は今日も全開だ。
しかし彼女からは恐れのようなものは感じない。
「話が反れたが、答えを聞かせてくれないか?」
正直、僕にもそろそろ春が来てほしいと思っていたから、その申し出はありがたい。だ
がそれの相手が織濱さんとなると話が微妙に変わってきて、僕自身気後れするのと、織濱
さんの安全が心配になってくる。この姉妹虎は、過去に僕が付き合いかけた女の子を病院
送りにした前科者だ。出来ることならば織濱さんだけではなく、姉さんにもサクラにも、
傷付いてほしくない。皆で笑って暮らすのが一番に決まっている。
僕が答えあぐねていると、横から手が伸びてきた。
「駄目えぇッ」
鈍い音と共に姉さんが織濱さんを突き飛ばす。
「虎徹ちゃんは、あたしと結婚するの。お姉ちゃんのお婿さんだもん」
何て事をするんだ、仮にも理事長の娘さんなのに。しかも、どさくさに紛れて変態発言
をしないでほしい。只でさえ僕まで変態だという噂が流れているのに、これ以上酷くなっ
たら堪らない。
「私の夫に手を出すな、この泥棒猫」
サクラまで!!
流石に注意をしようと後ろを向くと、そこには恐ろしい表情をした二人が立っていた。
先祖の血を色濃く受け継いだ、『虎殺しの虎』がそこに居る。過去に一度しか見たことの
ないその表情は、僕を恐怖のどん底に突き落とした。
蛮勇だと分かっていても、しかし男には動かなければいけない時がある。このままいく
と、確実に血を見ることになるのは誰の目からも明白だ。
立ち上がろうとすると、後ろから制止の声がかかる。見ると、埃を払いながら織濱さん
がゆっくりと立ち上がっていた。お嬢様していると思っていたが、結構タフな人らしい。
「君の姉妹は、少し変わっているな」
少しで済むんだろうか。僕には彼女の基準は分からないが、動揺もせずにこの二人を少
しの変わり者と評する彼女が大物なのは分かった。
「あたしは普通だもん」
「姉さんは兎も角、私は普通です」
この娘達は…。
しかし織濱さんは気にした様子もなく微笑むと、
「そうだな、すまなかった」
一礼する。
流石はお嬢様、僕らとはどこか出来が違うのかもしれない。だが、未だに凶悪な視線を
二人は続行中。もしかしたら、この人は大物とはもっと別の、
「返事は後の方が良さそうだ。今は友達から、昼御飯でも一緒に食べよう」
曲者かもしれない。
今回はこれで終わりです
自転車の練習したり、何故か彼女とリアル修羅場したりで遅くなりました
自転車って乗れると結構便利なんですね
自転車の練習してる作者様(*´д`*)
そして、作品も(*´д`*)
>>394 ヤンデレスレなんかに行って見捨てないで!
あ、そっか俺もそっち行って二股かければいいんだ!!
>436
二股・・・?ふ〜ん>436は、二股するんだ。
二股は〜♪
男の浪漫さ〜♪
でも俺は太股がいいな〜♪
「はぁ…」
思わずため息が出ていた…
さっきからずっとこんな感じだ。
「ごきげんよう」
「えっ…?」
そんな時、誰か…聞き覚えの無い声が僕に呼びかけた…ような気がした。
「ごきげんよう、倉田先輩」
いや…どうやら僕を呼んでいるらしい。
声がした方向を向くと…そこに居たのはやっぱり知らない女の子だった。
「えっと…僕?」
「他にどなたがいらっしゃるのですか?」
やっぱり僕が対象だったらしい。
でも…やっぱり僕の記憶にこの子はいない。
…いや、本当にそうか?
「どうかなされましたか?」
「ごめん、ちょっと待ってて…」
黄金の髪、ターコイズブルーの瞳。
月並みな表現だけど、まるでフランス人形のような佇まい。
昇龍高校の制服、頭に巻かれた赤ハチマキ。
そしてハチマキに筆文字で書かれた『不殺』の文字。
ここまで特徴的な人物を僕は忘れたのか?
いや…確か…この間校内新聞の写真で…
「新生徒会長…」
「あら、光栄ですわ」
その瞬間、僕の全身が凍りついた。
「なっ…なんで生徒会長がこんな所に!?」
「あら、少し考えればすぐにわかると思いますけど」
言われてみれば…今度の生徒会長は不良撲滅政策を推し進めているって噂を耳にした事がある…
考えてみると、黒埼先輩の素行はお世辞にも良いとは言えない…そしてここは病院…
とすると…
「まさか…傷ついた黒崎先輩にトドメをっ!」
「………」
「………」
「「………………」」
うわ…嫌な沈黙だ…
「…聞かなかった事にしておきます」
「…違うよね…やっぱり…」
そしてこの状況下で最後まで笑顔を絶やさなかった会長も立派だ。
「怪我人か見舞い目的以外に病院に足を運ぶ方がおりますか?」
「もしかして…誰かのお見舞いかい?」
「どちらかと言えば敵情視察ですわ」
「はぁ…」
なんか不思議な子だな…
で…途中で妙な人物と出会ったが、僕はそのまま帰路についている。
僕には考えなければならない事が山ほどある、生徒会長に構っている時間なんて本来は無いんだ。
そう…頭に浮かぶのは…
先輩と最上…二人の人物が同時に浮かび上がってくる。
胸が熱い…この感覚は…そう、僕が今まで恋だと思っていた感覚…
もしこれが恋ではないとすれば、僕は今まで黒崎先輩を何だと思っていたのだろう。
もしこれが恋だとすれば、僕は最低の人間だ。
まだ日が高い。今からでも駅に行けば最上が待っているだろう。
今回はお金をかけずに駅前を散歩がしたいらしい。
でも…さっきまでならともかく、今の僕にそうする資格は無い。
いや、先輩との関係を清算していない点においては、さっきも今も同じかな…
僕は一体どうしたんだろうか?
最初に先輩を好きになって、だけどそれは段々と冷めていって、そして最上に惹かれて、かと思ったらまた先輩に惹かれ始めている…
僕は…なんて節操の無い人間なんだろうか…
これから…どうしようか…
自分の心のままに行動したら…まず間違い無く先輩の恐怖の整体フルコースが待っているだろう。
最上からもきっと嫌われる。
かと言って、このままの気持ちで先輩と付き合い続ける自信も無い。
なら…どうしよう…
「先輩」
後ろから例の生徒会長の声が聞こえた。
振り向くと…案の定、赤ハチマキが見えた。
「君は…もうお見舞いが終わったの?」
「いいえ、先客がいらしたので日を改める事にしましたの」
「へぇ…じゃあ、君もこっちが帰り道なの?」
「それも違いますわ。先輩に言い忘れた事がありまして、それで急いで後を追ってましたのよ」
「僕の?」
「ええ」
なんだろう…この子が僕に用事って…
「それで、言い忘れた事って何?」
「ええ、私とて生徒会長の端くれです、悩み事があるのならいつでも相談をお受けいたしますわ…と」
なるほど…どうもこの子にはバレバレだったらしい。
意外と洞察力があるんだな。
でも…この問題は僕が僕自身の手で解決すべきだろう。
「ありがとう…でも、気持ちだけ貰っておくよ」
「あら、悩みは話すだけでも多少は楽になる物ではなくって?」
「それでもだよ…」
「将棋やチェスでは当事者よりも傍観者の方が良い手を思いつき易いそうですわよ」
「かもね…」
でも…この問題に関しては他人の手は借りられない。
「わかりました。ですが、本当に困った時は必ず私を頼ってください。いつでも相談に乗りますわ」
「ありがとう…」
そう言うと会長は上品に頭を下げ、立ち去って行った。
当事者よりも傍観者の方が良い手を思いつき易い…それなら、一度距離を置いて冷静になるのも手かな…
少しだけ頭が軽くなったような気がする。
もしそれが狙いだったとするなら、あの小さな生徒会長は大変な大物なんだろうな。
そんな事を考えながら、僕は再び帰路についた。
アアア(;´Д`)
会長素晴らしいよ会長
あれから。
冷静に考えてみれば。
アトリとの約束は、こちらの動揺に付け込んで為された稚拙な誘導によるものだ。
後からいくらでも反故にできるし、こちらから説き伏せることも可能だろう。
でも。
なんだかんだで、アトリに言葉を教える約束を取り付けることができたのだから、そんなに悪い取引ではない。
それに――彼女が試合に勝てるとは、思えないし。
残酷な考えかもしれないが、アトリが死んだ場合は、当然約束はなかったことになる。
故に、どんなに大きな約束をしても、実質的に果たす必要性はゼロになる。
要は、悩むだけ無駄、ということだ。
だから、僕は気軽にアトリの所に毎日通った。
言葉を教えるという名目で。
異国の見目麗しき美少女と、時折冗談を交わし合いながら、授業のような雑談を繰り返していた。
はっきりいって、楽しかった。
白ほどではないものの、アトリも充分素直な娘で、こちらの言うことをしっかりと吸収してくれるのが心地よかった。
それに、二度と会えないであろう異国の美少女と、幾度となく笑顔を交わし、同じ時間を共有するのは、悪くない。
きっと、相手が囚人というのを気にしない男であれば、垂涎モノの状況だったに違いない。
そんなこんなで、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
結局、アトリが完璧に言葉を身に付けることはなかった。
こちらの言葉は全て理解できるようになっていたが、発音がどうも苦手らしく、喋ることは、終ぞままならなかった。
最終的に、彼女の話し相手となったのは僕一人。
アトリがそれで満足できていたかどうかはわからない。
でも――少なからず、楽しんでくれていたとは思う。
何故なら。
彼女が時折向けた笑顔は。
白のような、混じりっ気のない純粋なものだったから。
そして、試合当日がやってきた。
奇遇とでも言うべきだろうか。
この日は、白が最終試合を務める日でもあった。
試合を止めようだなんて思わない。
でも、ありえないはずの明日を夢見て、僕との会話に喜びを見せていたアトリ。
来るはずのない“試合の後”を約束して、彼女を自分のエゴに付き合わせたのだから。
せめて、最期くらいは見取らなければ。
白の試合が控えているので、勝手に観客席に出るのは無理だが。
控え室から闘技場へと続く通路からなら、試合の様子を見ることはできる。
よく知る少女が殺される様は、できることなら直視したくはないのだが。
それでも、彼女のことをよく知る人間は僕一人なのだから。
目を、逸らすつもりはなかった。
――アトリの相手は、彼女をここに移させたビビス公爵のお気に入りである。
サド公爵のお気に入りだけあって、かなり加虐趣味に特化しているとのことだ。
前回は、少年囚人を闘技場中央で犯しながら殺したそうだ。
色物扱いされてはいるが、実力は折り紙付きで、中堅といっても差し支えない。
最悪、アトリの公開死姦ショーを見せつけられるかもしれない。
想像すると、胸の当たりがキリキリと痛んだ。
さて。
これ以上は考えるだけ無駄だろう。
後はいつも通り、白の支度を整えるだけ。それが、僕の仕事である。
白への挑戦者は、南棟の有望株らしい。今度こそは、と思う観客も少なからずいるとのこと。
まあ、相手がどんなに強かろうとも、闘技場に赴く白は、きっといつも通りなのだろうが。
相手に対して感情を欠片も抱かずに、作業のようにあっさり殺す。
それが、囚人闘技場の王者、血塗れ竜である。
今宵は一人の少女が死に、一人の竜が血にまみれる。それだけだ。
まずは、白を起こしに行かなくては。
今日も今日とて、囚人闘技場は盛況だった。
白が出場する日は必ずといっていいほど満員御礼なのが常ではあるが、
今日はそれに加え、ビビス公爵が大々的に宣伝した、異国の少女の初試合である。
可憐な少女が、逃げ場のない闘技場で、戦いを強いられる。
相手は残虐性に定評のある、変態囚人。
何が起こるのかは、興奮しきった観衆には容易に想像できているのだろう。
まだ試合の消化具合は半ばといったところだが。
会場の熱気は、既に頂点近くまで、達していた。
そして。
司会の声が、響く。
『お待たせしました!
それでは、本日の折り返しとして、ひとつ、奇矯な試合を御覧せしめます!』
観衆全員の瞳が、期待に染まる。
『陵辱演出家 対 異色少女
皆様ご存じの大変態と、異国の美少女の、無制限勝負です!』
司会が言い終わられないうちに。
観衆が、興奮の怒号を上げた。
う お お お お お お お お お ! ! !
びりびりと、控え室の方にまで振動が伝わってきた。
「……大人気だなあ」
思わず、ぽつりと呟いた。
「何が?」
後頭部をこちらの胸に押しつけるように、白が顔を上げて訊ねてきた。
「いえ。別に」
「? そんなことより、ユウキ。……ん」
首の角度を変え、こめかみを僕の肩に押しつけながら、目を閉じて心なし俯く白。
“撫でて欲しい”のポーズである。
やれやれ、と溜息を吐いてから、王者の望むままに優しく撫でる。
試合前に血塗れ竜の機嫌を損ねるわけにはいかないので、それはもう、心を込めて。
「んー」
幸せそうに喉を鳴らし、両腕を僕の背中に回してくる。
これは、東側の控え室ではよくあること。
扉を固める監視員ですら、あまりに見慣れた光景なので、特に関心すら払わない。
もともと白は、人目を気にすることなどないが、僕はといえばそうでもない。
可憐な少女が、周りに人がいる状況なのに、僕の胸の中で無防備な姿を晒しているのだ。
少々胸が高鳴ったところで、いったい誰が責められようか。
――と。
「出番だ、E4−934」
係員に呼ばれ、一人の少女が腰を上げる。
先程まで、隅の椅子に、ちょこんと腰を下ろしていた少女。
今日の出場者で、白以外の唯一の東棟囚人だ。
アトリ。
この後、加虐趣味の変態に殺される少女。
僕が、最期を見届けたいと思った少女。
何故か――控え室にいる間、こちらに対して無反応を貫いた少女。
彼女が、立ち上がりながら、口を開いた。
「――勝ったら、好きなものを貰えるの?」
驚いた。
アトリの口から紡ぎ出されたのは。
紛う方なき、帝国の言葉だった。
異国の少女の言葉に、係官は戸惑いを隠し切れぬまま、答えを返す。
「何でも、ということはない。限度は当然、あるぞ」
「わかってる。……でも、大丈夫」
アトリが、こちらを見る。
「――約束、したから」
そう言って、異国の少女は、控え室の外へ出た。
「……なに、あいつ?」
自分が睨まれたと思ったのか、白がむーっと唸っている。
そんな白の頭を優しく撫でて、
「すみませんが、白。少々席を外してもよろしいですか?」
「? ……あ、ユーキ――」
「すぐ戻ります」
白に手を振って、僕も控え室を出た。
歓声がびりびりと空気を震わせている。
既に試合は始まったようだ。
すぐに終わる可能性もある。急がなければ。
やや駆け足で通路を進む。
そして、闘技場の様子が見えるところまで辿り着いた。
監視員に会釈して、試合の様子を確認しようと顔を向けて――
――そして、見た。
陵辱演出家こと、ネオ・ホーンピースは、自らの身に何が起こったのか、しばらく理解できなかった。
簡単で美味しい試合のはずだった。
いつものように相手を殴り倒し、衆人環視の中で犯し尽くし、殺す。
観衆や、自分を推薦した公爵の希望に添うように、様々な強姦プランを頭の中で練っていた。
そして、それを実行に移すため、まずは一撃、少女を無力化させるために殴ろうとしたところで――
「――なんで、手が半分無くなってるんだ?」
ぽつり、と。
誰かに訊ねるかのように、疑問が口からこぼれていた。
拳が半分、消失していた。
赤い肉と、白い骨が露出している。
断面は歪で、まるで、獣か何かに“囓りとられた”かのようだった。
恐る恐る、前方の少女へ視線を移す。
少女は、開始の位置から一歩下がった状態で。
まっすぐ立って、こちらを見ていた。
その口が。
くちゃくちゃと。
“何か”を咀嚼しているように、見えた。
「う、う、うああああああああああああああああっ!!!」
拳からギンギンに響く激痛を掻き消すかの如く。
ネオは絶叫を上げながら、異国の少女に襲いかかった。
自分の利点は長いリーチだ。安全地帯から素早い攻撃を繰り返すという戦闘スタイルである。
絶叫しながら、幾度となく拳や足を振り回す。
ネオの手は長いため、少女の攻撃が届くことはない。
無我夢中に攻撃を繰り出し続け――ふと、ネオは疑問に思った。
あれ?
なんで、すぐ近くに、こいつがいるんだ?
そう思った次の瞬間。
まるで口づけをせがむように。
少女の顔が近づいてきたかと思ったら。
がり。
前頭部を“喰われた”ネオ・ホーンピースが、そのまま地面に崩れ落ちた。
ネオの手は半ばほどまで消失し、削れた肘関節が晒されている。
闘技場すら揺るがしていた歓声は、いつの間にか全て消え去り、痛いくらいの静寂に包まれていた。
誰が、この結果を予想しただろう。
少女の惨殺劇となるはずだったこの試合、終わってみれば、結果は真逆。
得も言われぬ悪寒に、観衆全員が苛まれているに違いない。
白の戦いを見慣れている僕ですら。
この決着は、想像の域を遙かに超えるものだった。
『……し、勝者、い、異色、少女……』
司会の、半ば呆然とした声が響く。
それを聞いたアトリは、踵を返して東側の入り口へ歩いてくる。
たすたすたす、と砂地を踏むその足取りは。
どこか、軽さを含んでいた。
そして、アトリが入り口を通り、そのまま控え室への通路を歩いてきて。
――僕の目の前に、立った。
「勝ちました。
これで、ユウキさんは、私の付き人になってくれるんですよね?」
にっこりと。
心の底から嬉しそうに、アトリは言った。
僕は何も答えられない。
そして。
「……なに、それ?」
僕を追いかけてきていたのか。
血塗れ竜が、そこにいた。
ようやく……!
ようやく、書きたかったシーンに辿り着いた……!
この後はきっと……ッ!
きっと?きっと何だ!何さ!?
・・・震えて待ちます。個人的に一番期待してるお話なので、
先を推測するのも一切無しで。
明日の仕事中、このサイトをチェックしながらの勤務になりそうです・・・。
>>452 つづき、続きをぉ・・・・
すっごいドキドキしてきた!!
是非長編で読みたいです!!
まったくだ。けしからん
誤字発見orz
447の下から3行目。
司会が言い終わられないうちに。
↓
司会が言い終わらないうちに。
です。
あと、5話はひょっとしたらしばらく後になってしまうかもしれません。
期待せずにお待ち頂ければ幸いです。
しっかし、4話のスタートが444からとは……白の呪い?
>>452 食人姫て・・・・・言葉のまんまの意味ってことなのかぁ!!!
この二人がユウキを巡って戦うことになると思うと・・・・・・!!!
続きをめっちゃ楽しみにしてます。
差し出がましいですが
>>142と
>>192を参考に
トリップを付けられることをオススメします。
>>452 GJです!アトリ(;゚∀゚)=3ハァハァ
食人姫キタ━━━━━━(;゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
驚愕の事実!!アトリはジャックハンマーだった!
血みどろの修羅場を早く!!
こ、こんな展開は予想してなかった
久々のヒットですよ! はっ早く続きを…ッ!!
主人公の命がalways風前の灯火なのが新機軸
(;´Д`)ハァハァ 理性の限界点を見た気がしますた
(ごろごろごろごろごろごろ)(モニタの前で転げまわる音)
今プリンセスプリンセス見てたらキモウトがいてニヤニヤしちまった。
ヽ(・∀・)人(・∀・)ノ
キモウト(・∀・)イイ!!
今、纏めサイト覗いてきたら管理人近況がえらいこっちゃ!
このスレ始まって以来の最大の危機かも(((;゚д゚)))
お気に入りは保存しといた方がいいかも知れんな
旦那が「三角関係」だとか「修羅場」だとかなスレを覗いてたらホントに修羅場っちまいますよ
遅れました、後編投下します。
バラはその色によって様々な花言葉を持ちます。
白、黄色、赤、ピンク。更にはバラの今の状態によっても伝わる想いは変わって
しまいます。
バラを送るときは、その花言葉を参考してみるのも良いかも知れません。
――さて、今夜あなたに送るバラは……何にしましょう?
「ん……ぇ……?」
「あ……目、覚めましたか?」
先輩はパチパチと数回まばたきすると、朧気そうな意識のまま、ふわふわとした
視線で自分を見下している存在を怪訝そうに見つめています。
手をロープで後ろ手に組まされ、そのロープで足も椅子に固定され、私を見上げ
るその姿は、まるでこれからおろされようとしている小汚い豚みたいです。
「おはようございます……くすっ、もう真夜中ですがね」
「え……あ、え……?」
状況を把握できず、辺りを愚かしくあたふたと見回す姿にはもう以前の凛として
いて尊敬していた先輩の影すらありません。
「あなたのお家がそんなに珍しいですか?」
「あれ……桜木くんはぁ?」
――ピキ
身分不相応にもおにいちゃんの名前を吐く雌豚に私は大きく右手の掌を掲げ、
「まだ寝ぼけてるみたいです……ねっ!」
そのまま振り下ろし、小さな一室に軽音を響かせます。
「っっ!」
「寝ぼけ、とれました?」
痛々しそうに頬が赤く熟れ、ようやく自分の置かれている状況に気付いた雌豚は
信じられないといった表情で私を眺めます。
「か……れん……?」
私は雌豚に対してただ冷たい目線を浴びせ続けながら、
「ウラギリモノ……」
ぽそりと、静かに呟きます。
それに面白いように反応した雌豚は、突然寒気が走ったのか、一度身体を大きく
震わせました。
「かれ……っ!? ……桜木くん? 桜木くんはどこっ!?」
「ベッドに寝かせてあげたままですよ……」
そう告げると、雌豚はほんの少し安堵の表情を見せました。
なんのつもりですか? 雌豚がおにいちゃんを心配なんかして……。
おにいちゃんを心に浮かべて良いのは私だけなのに。
「助けを呼ぼうとしても無駄ですよ? 少し強力な即効性の睡眠薬を飲ませてあり
ますから、しばらくどんな騒音があっても起きてはこないでしょうね」
苛立った私は無愛想に、助けを呼ぶ事ができない孤立した状況であることを説明
しました。
おにいちゃんに近付く雌豚のために用意した睡眠薬だったのに、おにいちゃんに
使う事になるなんて、思いもよりませんでしたよ。
「まぁそれでなくても、おにいちゃんはお疲れだったみたいですし……ね?」
「ちが……っ! 違うの華恋!」
「何が、どこで、どう違うのですか?」
「それは……」
未だ自分の立場に狼狽する雌豚に思わずくすりと笑みが零れてしまいました。
「あなたがおにいちゃんと……。私の大切な、大好きな、優しい優しいおにいちゃん
と、セックスしたことが違うのですか? そんなこと、言いませんよね? おにいちゃ
んの大切なものを奪っておいて、なかったふりするなんて」
もしそんなことをするつもりなら、今すぐ殺してあげます。
まぁ、どちらにしろいずれ……ですけど。
「おにいちゃん、凄く痛かっただろうなぁ、あんなにシーツに血を染み込ませちゃって。
……あはっ、ふふふふふ……どうでした? おにいちゃんの純潔の……お・あ・じ・は?」
「さ、桜木くんの純潔? なに言って……」
「独り占めにしようだなんてズルイと思いません?」
雌豚風情が……ねぇ?
私は見せ付けるように雌豚の目の前に、鮮やかな紅に染まった粘着質の液体が付着した
指全体を、糸をひかせるように擦り合わせました。
それを見て、羞恥に震えるようにしていた雌豚を気にも留めず、そのままゆっくりと口
にそれを持っていきます。
「あむ……んぅ……ぴちゅ」
あぁ……おにいちゃんの純潔の血……。
おいしい、おいしい鉄の味……。おいしくて、ちょっぴり苦くて甘い。
ふふ、あはっ、あはははははは――!
これがおにいちゃんの味なんだぁ……。
これが、この味が、そうなんですね?
この味を、目の前の、この雌豚は味わったんですね?
……うっ、想像しただけで気持ちが悪くなります。
「華恋……あたしは」
雌豚は馬鹿の一つ覚えみたいに相変わらず弁解しようとしています。
全く、本当に……。吐き気がするほど……。
「ほんとにあなたって……きたなぁい」
「……!!」
「友達面して私に接して相談に乗るふりをして内心小バカにしてたりおにいちゃんは
友達以上の存在じゃないなんてうそ吐いて騙したりして私を信用させるなんて大した
策士ですねそれだけでもおにいちゃんに近付くための卑劣で下劣な手なのに最後には
おにいちゃんを誑かして襲っちゃったりして……」
心の中では私の事なんて報われない想いをする変態妹ぐらいに思っていたんでしょ
うけど……。
あはっ……誰がその程度の存在なんかで終わらせてあげるものですか!
「この薄汚れた、淫魔! 雌猿!! 雌豚!!! 泥棒猫!!!!」
お前なんかに、おにいちゃんは渡してあげない。
あの人の隣にいるのも、あの優しさを受けるのも、頭を撫でてもらうのも、髪に紅い
バラを挿してもらうのも、全部、全部私だけです。
だけど雌豚は私の言葉にいちいち大袈裟に首を振りました。
「違うわ! あたしは華恋のことをそんなふうに思ってないし、桜木くんのことを誑
かしてもない!」
「言い訳はもう――」
「桜木くんは……今日やっと……あたしのこと『愛してる』って言ってくれたんだもの!」
――……瞬間、部屋は静寂に包まれました。
……………………。
「あはっ……くす、くすくす……あははははははははは!!!!」
お腹の底からこみ上げてくる色んなものが詰まった空気を耐えることができず、笑い
という形で噴出してしまいました。
「か、華恋……?」
「妄言も良いところですねぇ……せんぱい?」
あなたなんかが、あなた如きが……。
あなたがどれだけの時間、あの人と一緒にいたと言うんですか?
あなたがどれだけの間、あの人の優しさに触れてきたと言うんですか?
あなたがどれだけの強さで、あの人を想っているというんですか?
どれだけ隣にいて、悩んで、苦しんで、ときめいて、幸せを感じて、愛してきたと
いうんですか!!?
ふざけないで下さいふざけないで下さいよあまりふざけないで下さいねまったくふ
ざけないでふざけないでふざけるなふざけるな――。
「ふざけるなっ!!!」
あの人を本当に愛してるのは私だけ、あの人が本当に愛してるのも私だけ。他の誰
でもないの、ましてやあなたなんかじゃ絶対ない。
……なんでこんな女を信用してたんだろう?
おにいちゃんがこの女に告白して、振られて、その傷ついた心を癒してあげようと
思ったのに……結局、心を傷つけられたのはこっちだった。
――それも最悪な状況で。
「あたしだって、ずっと桜木くんのことが好きだった」
そんな言葉、反吐が出ます。
「あなたに相談されたとき、どんなにあたしが苦しんだか分かる?」
そんなの知りたくもありません。
「それでもあたしは、諦めようとしたわよ」
それならどうして……?
あなたは、お前は私をウラギッタのですか?
怒りと悲しみと憎しみと深い深い嫉妬がぐちゃぐちゃに混ざって瞳から流れ、視界が
揺らめいてきます。
「だけど諦められなかった……その気持ちは、あなたにも分かるでしょう?」
「煩いです」
雌豚を強く睨みながら、私は青いシートを敷いた床から純白の花束を拾い上げます。
「華恋……兄妹で結ばれたって……幸せになんてなれないよ」
「黙りなさい」
そんなのあなたが決める事じゃありません。
「あなたがどんなに桜木くんを愛してても……」
「黙りなさいと言ってるんです」
「桜木君の隣に――」
「煩い……うるさい」
「あなたはいない」
「黙れっ!!!!!!!」
私は、激昂のままに先輩に花束を『突き立て』ました
――――アカ
幾数にも重なり、包み込むように蕾を中心に展開している白いバラの花びらのその
一つ一つに、じわりじわりと、アカが染みていきます。
それはまるで最初からアカいバラだったように――。
私は先輩のその茫然自失した表情に、自分の顔が愉悦に歪むのを感じました。
「え……あぁ……?」
「ふふっ、あはっ、ふふっ、ふっ、ふふふっ……」
ほんとぉに汚い――血ですね?
おにいちゃんのとは大違い。
「かれ……な…………?」
アカに濡れた花束から、同じアカに濡れて不気味に光る包丁を取り出してみ
せます。
「凄くいい包丁を使っていますね? やっぱり一人暮らしだと自炊が上手くな
ければいけないんでしょうね」
「な……に、言って……げほっっ!!」
あ、また血を吐いて……ほんとにシートを敷いていて良かったです。
こんな汚い血で床を汚しちゃいけませんよね。それに――。
「あはっ、凄い量」
花束がびしょびしょです。
「あ……あ、あ……」
もう声も掠れ始めた先輩を尻目に、包丁を捨てて、鮮血に染まった花束を丁寧
に持ち直します。
「ねぇ、先輩、おにいちゃんの隣に私はいないって言いましたけど」
……だからなんですか?
「隣に居られないなら……障害物を取り除いてでも走って追いつくまでです」
あの人の隣は私のものなんですから。
「例え追いつけなくても、おにいちゃんは必ず私を見つけてくれます」
いつ、どこにいても。
「だって、私の髪には目印があるんですから」
――真っ赤な、赤いバラがあなたに見えますか?
「くすっ、はい、誕生日おめでとうございます」
言い終わって気の済んだ私は、必死の形相で私を見つめる先輩の膝に、花束を置いて
あげました。
「本当は良い具合に染まったらおにいちゃんにあげようと思ったんですが……これじゃ
あ、ただ赤黒いだけですからね」
知ってますか? こんな感じの色のバラの花言葉。
あはっ、実は私も良く覚えてません。憎しみだとか恨み……でしたっけ。
「あれ? 先輩? 嬉しくないんですか? …………」
あぁ、もう聞こえてないみたいですね。
ぐったりと力尽きている先輩の手足をロープから解放してあげます。
手足がだらんと垂れ下がり、アカに身体を染めるその姿は少しだけ……。
「綺麗ですよ、先輩」
そう感じました――。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました……。
完結です。
――と見せかけて、まだおにいちゃんとのアフターが残ってます。
近いうちに投下しますので、どうぞそちらもよろしくです。
おおう、流血キタコレ。
GJですよ
鮮血キタ━━━━━━(;゚∀゚)━━━━━━ !!!
まとめサイトの管理人近況がやばいことになっているな……
阿修羅氏はエロゲ板の方もマークしてくれていたから、かなりの作業量なんだよなぁ。
丁寧にまとめ続けてくれたのを、つい当たり前のように享受していたよ。
地味で目立たない作業は、こういう時になって改めて価値を思い知らされる。
そんな氏にエールを送るが、無茶して新婚家庭を台無しにされぬよう・・・
是非このまま続けて欲しいが、あまり無理をなさらぬよう・・・
『第四話』
(三話で森さんが眠っている間のお話です)
「馨、ちょっと」
森さんの無事を確認した後、俺は夢の世界を彷徨いつつもなんとか大学にたどり着いた。
例のごとく授業は全寝。よだれの着いた教科書を誰にも見られないように袖口で拭い、
重い気分のままちゃっちゃと教科書をしまった俺は後ろから掛けられた声に弾かれたように振り返った。
「ゆ、ゆかり・・・・どうした?」
そこには長身の美女が立っていた。それも目に見えて解る不機嫌オーラを漂わせて。
やっべ、涎拭ったのばれたか?
「どうしたのはアンタのほうよ。最近授業マジメに受け始めたと思えばサークルにも顔出さないですぐバイト行っちゃうし、
何でもバイクで轢いちゃった女の子のところに毎日通ってるんだって?
それにどうしたの今日は。顔、死人みたいよ?」
早口で一気にまくし立てるのは同学部で、同じサークル。そして幼稚園のときからすべて同じ学校・クラスであった因縁の存在、浅羽ゆかりだった。
物静かでおしとやかな森さんとは対照的に、明るく活発な所謂幼馴染。
肩まで伸ばして丹念に巻かれたセミロングを明るい栗色に染め、同じく対照的にはっきりとした顔立ちの美貌にそれを引き立てる丁寧なメイクを施している。
格好はそれほどぶっ飛んでいないものの、季節感のない露出の多いお姉風である。
森さんが谷間に咲く涼しげで可憐な百合であるならば、ゆかりは太陽の祝福を一身に受けて咲き誇る真夏の向日葵。周りのレベルが上がるほど輝き、目立つ存在だ。
本人曰く処女であるが、裏で何をやっているかは不明だ。
まぁコイツのことだから、ヤルことはやってるだろう。
「そ、そうか・・・??ちょっと気に掛かることがあってな・・・・しかたねぇだろ。
あと、心配してくれてんのか。サンキュな」
「べ、別に心配してるわけじゃにゃいわよ・・・・」
「噛んでるぞ」
ゆかりは大きな胸を強調するように腕を組んだ。口を尖らせて不満をアピールしている。
不機嫌なときにアヒル口をするのは昔からのクセ。それを一瞬で理解してしまう自分に少しうんざりした。
「入院してる女の子のこと??」
うう、いきなり確信か。どう答えたらいいかわからねー
「ま、まぁな」
「なによぉ、その反応??もしかしてその女の子にフラれた、とかぁ?」
突き刺さる言葉。まぁ事実フラれたようなもんか。
俺が黙っていると、ゆかりは急に真剣な表情になった。
「あ、あんたねぇ・・・・仮にもバイクで轢いちゃった子と仲良くなれはしても付き合うなんてムリでしょ!!
きっと向こうの子もあんたの顔を見るたびに事故のこと思い出すのよ。
だから、もうお見舞いに行くのなんてやめて変わりに慰謝料上乗せして誠意を見せればいいのよ」
いつものように強い口調で、ゆかりはブーツのヒールを鳴らして言った。
「いや、だからそれはちが・・・・」
「言い訳はいいの。ちゃんと女の子に謝りなさい。私も着いて行ってあげるから」
「・・・わかりました」
有無を言わさないゆかりの強い視線。昔からこれだけには逆らえなかった。
・・・・・
・・・・・・・・・・・へヴィだぜ。
最近の馨はおかしい。
おかしいといえば昔からおかしいんだけど。
最近のおかしさは近年のおかしさでも群を抜いておかしい。
この男、馨は昔から『人』にモテる。
人というのは異性だけでなく同姓、年下年上邦人異人変人奇人宇宙人未来人超能力者・・・・
問答無用で惹きつけてしまう。
もはやこれは才能や生まれ持ったものだといわざるを得ない。
何しろこの私も・・・・・・・・くやしいけど・・・・・・・・・・惹きつけられてしまった一人なのだから。
大学でも馨は目立つ。高校まで野球部で鍛えられた無駄のない筋肉によく日焼けした肌。人より頭半分飛びぬけた長身は人ごみの中にいても難なく発見できる。
硬い黒髪を短髪にまとめ、鋭さを持った顔つきはどこか近寄りがたいオーラを発しているが、コヤツの笑顔を見ると一発でその印象は崩壊する。
そう、コイツほどギャップというものを体現している存在はいないのではないだろうか。
しかも馨の場合天然だから性質が悪い。
そしてその天然をはるかに超越した『鈍感』これはもう犯罪だ。
今まで何人もの心を気づかないうちに破壊してきたのか、エクセルで計算してメールに添付してやりたい。
きっとちょっと前にバイクで轢いてしまった女の子もそんな馨の特性にヤられてしまった子なのだろう。
病院の窓口で面会手続きを済ませ、事故に巻きこんでしまった女の子の話をききつつ長い廊下を馨と二人で歩く。私がどんなに高いヒールを履いても、馨のほうが目線が高い。ちょっと悔しい。
夫婦同じ高さで歩くのが夢なのに。
「で、その女の子、また怪我したの?」
「ああ。階段から落ちて更に三ヶ月退院延期らしい」
「はぁ〜合計半年の入院ね・・・私なら背中にコケ生えるわ。
まぁ、それで・・・・アンタはその子が階段から転げ落ちた前の日にちょっと揉めちゃって、その日も険悪だったのね〜そりゃ階段から飛び降りたくなる気持ちもわかるわ」
馨はお前に何がわかる。という目線で睨んでくるが、ぎろりと睨み返す。
すると馨は盛大にため息をはいた。
きっと私の推測は当たっている。
先述のとおり、こいつはダントツで天然鈍感勘違い三冠王だ。
女の子が忘れられないといったのは馨が起こした事故のことではなくて、『馨の献身と優しさ』更にこれは推測の域をでないけど『馨に対する想い』のことだろう。
それをコイツはお得意の勘違いで大暴走してしまったわけだ。
まぁ、大変ねイロイロと。その女の子も。
そっちのほうが好都合だからいいけど。
勘違いで暴走した馨の心を繋ぎとめるためと、二人きりの時間を誰にも邪魔されたくなかったからだろう。
昔から馨にまとわりつく異性だけでなく同s(以下略 を何度も退けてきた私も今回ばかりは冷や汗が出た。
だから私も積極的に行動することにした。十五年以上馨のそばにいる私。
ここまで本気にさせた子には正直驚いたし、ライバルと認めてあげてもよい。
でも・・・・話を聞くうちに認識は変わった。
目障りだからさっさと消えてもらおう。
――――――――――――――――馨の心を占めていいのは私だけなんだから。
「それじゃあ、ゆかりはここで待ってろ」
病室の前で、馨は珍しく真剣な顔つきをした。
まあいいわ。二人きりで会わせるのはちょっと癪だけど。こっちもイロイロ聞きたいことがあったから、大人しく了承する。
カツカツとヒールを鳴らしながら病院を歩き回り、
私は先ず始めに女の子の担当医の所へ行った。
私が馨の姉を名乗ると壮年の優しそうな医者は、しきりに首をかしげながらも真剣に話してくれた。
私は馨のことを嗅ぎ回る時、姉を名乗る。
馨の体つきは立派で大人びているように見えるが、しゃべりだすとあどけなさと少年のような輝く瞳は隠せない。だから私のほうが不思議と大人びて見えてしまうのだ。
特にバイクのことを話すときのあいつは一番輝いていた。
だから、一番輝いていた馨の楽しみを事故で奪い。
その後の関心をすべて独占していた女の子を私は許せなかった。
『妙なんですよ・・・・今回の怪我は。いくら体力がなかったとは言え・・・受身も取らずに自分から突っ込んでいく形でないと、この部位を痛めることはまずあり得ません。
腕の骨折ですが、こちらも折れ方も変でして・・・』
私は頷きながらも医師の言葉の端々を反芻していく。
詳しくは知らないようだが、バイク事故のこと、そして階段から落ちたときの詳細・・・・
やっぱり私の予感はほとんど的中していた。
あの子、やるじゃない。
口の端が邪悪な形で歪むのを感じる。
さぁて・・・・・
どうやって馨の心から退場していただこうかしら・・・・
――――――――――――――――――――――――――――――――泥棒猫さん?
文章読みづらくてごめんなさい。
続きは夕方にでも・・・・
血塗れ竜と食人姫が面白すぎて続きを書いてる場合じゃない気がしたw
スウィッチブレイド・ナイフにすごい幼馴染がやってきた!wktkです
血塗れ〜のヒロインたちはそもそもなんで捕まっているんだ?ってくらい強いけど、面白いからキニシナイ
>>487 幼馴染と泥棒猫の争いに期待
病院を退院してから真の戦いが始まる
血塗れ竜と食人姫、修羅場以外の部分もすごく面白いだけに、
いざ修羅場突入となるとワクワクしすぎてたまらんな〜。
>>490 馨さん、退院できるんだろうか……
まあ、いざとなれば退院しなくても脱走すればいい話だけど。
阿修羅氏の話で思ったんだが
新婚の相手が
真夜中にパソコンで
般若の面がでてる真っ黒いサイトをニヤニヤしながら見ていたら
コイツやばいって思うよな……
ヤバいかどうかはともかく、「何してんの?」とは思うわな。
般若の面をやめて、TOPページはこのスレと無関係を装ってみるとか・・
いろんな意味で管理人は大変だな
まとめサイトのアドレスに倣ってお魚くわえた猫の写真でカモフラージュ。
このスレを見てるとどのキャラに死亡フラグが立ってるか一瞬でわかるようになってしまう…
投下します
アホみたいな長さです・・・・お覚悟を
それと心臓の弱い方はお控えになったほうがいいと思います
上流階級の人間が住む住宅街の一角で誰もいないのをいいことに私は無茶なお願いをした
けど彼は私の言葉に従って静かに口付けてくれた
情熱的に舌が絡み合う
気持ち良い・・・・誰かと接吻するのは初めてだったけど
とても気持ちよかった、彼の中に溶けてしまう感覚
これが・・・・女の喜び?
違う・・・・もっともっと気持ち良いことがあるはず・・・・
教えてくれますよね?私に・・・・
ゼルの首に腕を絡めて私はもっと深くと催促した
なんのためらいもなくゼルは受け入れるとより深くと舌を絡めてきた
幸せに包まれながら時を忘れている私の胸が不意に苦しさに悲鳴を上げた
「あ・・・・・く!」
膝を付きその場に崩れる
な・・・・なに?この感覚は・・・・キスの余韻などではない
血が凍り全身の神経を通じて頭に危険だと知らせている
胸が・・・・・かきむしる胸の痛みが私の頭に見知らぬ光景を教えてくれた
私の手を取るゼルによく似た青年・・・・そして・・・・
それから先は見えなくなった・・・・
光景が消えたわけじゃない・・・・私の意識が持たなかった
霞む景色が二重三重になって揺らめいた
「プレシア・・・・・まさか!」
驚きでその身を震わせるゼルが呆然とある一点を見つめている
剣を抜こうか一瞬ためらってゼルはそれをやめた
少しの笑顔の後にゼルの身体がゆっくりと倒れた
な、なに・・・・?
はっきりしないまま私はある光景を思い返していた
ゼルと初めて逢った時だ・・・・あのときのリルスと同じだ
同時に怒りがこみ上げてくる・・・・どこの誰だか知らないけど・・・・よくもゼル
どこかで声がした・・・・
『見つけた・・・・・ふふ』
まだ幼さの残る声が私の頭に響いた・・・・
・・・・?重かった身体が不意に動いた・・・・立てる?
立ち上がると同時に全身の血が右手に集中しているかのように熱を持った
な・・・・なに?これは・・・・見ると右手にはしっかりと血塗れた剣が握られていた
頭の中にまた声がした
『殺しあうの・・・・・あのときのようにね』
身体が勝手に動く・・・・いや・・・・怖い!
まるで操り人形のように私は駆け出した
霞む意識の中で私は近くの迫ってくる少女を確認した
うつむきかげんで表情は伺えない・・・・少しよろめきながら私の剣とは少し違う血塗られた剣を引きずりながら近づいてくる
『あなたの敵を・・・・彼女を!』
頭の声が強くなる
痛い・・・・苦しい・・・・辛い・・・・悲しい・・・・寂しい
負の感情が込み上げる
思い出した・・・・あの子はゼルの近くに居たあの少女だ
一度きりだが見た限り彼女もまたゼルに好意を持っている
負の感情の中にまたある想いが芽生えた
『あの女さえいなければゼルは私の物に!』
声の主が私だと気づき私は己の感情に恐怖した
止められない・・・・
殺せ・・・・殺せ・・・・・殺せ・・・・彼女は彼の愛を独り占めした
なにを・・・・言っているの?
消してしまえ・・・・そうすればゼルは私の物になる
やめて!これ以上私の心に入ってこないで!
無駄よ・・・・私は・・・・・
『あなた自身なんだから・・・・・』
頭に方目を潰された少女が浮かんだ
顔の半分を血に染めている、その手には小さな眼球が握られている
私は必死に逃げた・・・・けれども少女はどこまでも追いかけてくる
『無駄よ・・・・メシア・・・・・』
顔が冷たい・・・・恐る恐る触れてみるとやはり冷たい
手を確認すると鮮血がべっとりと付着して地面に落ちて弾かれた
目が・・・・目が!
『言ったでしょ!あなたは私なのよ!』
痛い・・・・痛い・・・・・痛い・・・・痛い
苦しいよ・・・・苦しい・・・・助けて・・・・ゼル・・・・
『捕まえた!』
少女の手が私の肩を掴んだ
「あぁぁぁ!あぁぁぁ!あぁぁぁーーーーーー!!!!!!」
剣を握る力を強めながら私は猛然と正面に迫った少女に突進していく
「あぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!」
上段に構えた剣を思い切り振り下ろした
あの女は微動にせずにそれを自らの剣で受け止めた
私何度も剣をあの女に向かって叩き付けた
殺せ・・・・殺してしまえ・・・・殺すんだ!
あの女が一歩引き剣をゆっくりと後ろに引いた
気づいた時には私の鼻先を血塗られた剣がかすめていた
私が回避したのを見ると無機質な瞳が一瞬光を持った
瞬間突かれた剣が止まり横に軌道を変えて私に向かってきた
「メシアさま!」
リルスが剣を構えてあの女に向かっていく
それを見たあの女が地面を蹴り上げて後ろに下がる
私とあの女の間にリルスの剣が割り込んだ
私の身体がまた動かなくなった・・・・
そしてそれは始まった・・・・
プレシアは覇気に満ちたリルスの顔を掴んだ
その瞬間まるで電池の切れたオモチャのようにリルスの身体から力が抜けた
力なく地面に膝を付き悲鳴を上げるリルス
「あ・・・・・あぁぁぁ!!!!!!」
プレシアはまるで氷のように冷たさを感じさせるその赤い瞳を存分に輝かせた
「あんたも邪魔するの・・・・なら・・・・殺してあげる」
驚くほどに澄み切った声でプレシアはそう言うと
「知っているのよ・・・・あなた、ゼルに敗れてから・・・・ゼルのことばかり考えていたでしょ?」
だらしなく唾を垂らしながらリルスは頭上の蒼穹を見つめた
「隠しても無駄よ・・・・知ってるんだから・・・・あなたはゼルに色目を使ってた」
思い当たるふしはあったがいまのリルスにそのことを肯定するほどの力がなかった
初めて自分を打ち負かしたゼルにリルスは恋心を抱いていた
メシアの手前そのことは心の奥に潜ましていたが・・・・・いまリルスの心がさらけだされてしまった
「許さない・・・・ゼルに近づこうとする女は・・・・すべて!」
リルスの両手が左右に上がり十字架のような形をとるとその身体がゆっくりと天空に登っていく
「あ・・・・ぎゃぁぁーーーーーー!」
全身を焼かれるような痛みがリルスの身体を駆け巡ると体中が裂かれたように全身の至る所から血が噴出す
天空から血の雨が降ってくる
「プレシア・・・・・」
ゼルは痛む身体をゆっくりと起き上げて天空を見つめた
顔に付着した血を拭うとゼルは絶望に満ちた瞳でその場に膝を付いた
そして祈る・・・・どうか止まってくれ・・・・頼む
願いが届く訳もなく磔刑の儀式が始まった
全身の血という血がリルスの身体から噴出し無垢な表情のプレシアの顔を赤く染めた
「苦しい・・・・ふふ、これがあなたの罪よ」
ゼルに近づいたことが罪
「断罪の時を静かに感じなさい・・・・・」
プレシアの背中から純白を表すかのような真っ白な翼が一枚現れた
羽根が舞い上がり振ってくる血と重なり地面にひらひらと無数に白と赤に塗れた羽根が落ちていく
悲鳴を聞きながらプレシアは無邪気に笑ってくるくると回転し水浴びを楽しむかのように全身を赤に染めていく
「第一の断罪・・・・・」
プレシアが宙に舞い上がると十字に天空に吊るされたリルスの腕が強張った
「あ・・・・・ぁ!!!!!」
リルスの華奢なその腕が身体から引き裂かれるのにそう時間は要らなかった
両手が身体から抜けて血がさらに噴出した
「痛い・・・・苦しい?これがあなたの罪の重さよ・・・味わいなさい」
地獄のような痛みと胸の苦しみ・・・・そして血が溶岩のように沸き立つ
リルスはまぜ自分がまだ生きているのか・・・はやく死にたい
そう思った・・・・
「うぐ・・・・がは!」
口から血が吹き出した
抑えようと腕に力を込めようとしたが・・・・動かそうにももうその腕はない
「終わりよ!」
血塗られた剣がリルスの胸を貫いた・・・・
その瞬間さっきまで噴出した血が嘘のように止まり辺りに飛び散った血がプレシアの剣に集まっていく
「あ・・・・・あ・・・・・あ・・・・・・あぁぁぁぁ!!!!!!」
死んでいてもおかしくないその身体でリルスが最後の叫ぶを発した
城のベルがゆっくりとゆらめき綺麗な音を響かせた
一人の少女の処刑を知らせるかのように・・・・・
ここまで読んでくださった方お疲れ様でした
なんか嫉妬とか修羅場とか関係なくなっていますね
スレ違いだって叩かないでくださいね?
ちゃんとこのスレ向きな展開もこのさきありますので・・・・
管理人様・・・・自分のことを最優先に考えてください、無力な私にはこんなことしか言えません
明日か明後日に生きここのアナザーと姉妹日記を投下します
|ω・`) アビス殿毎回GJです
ちと今日はハードな描写ですね((;゚Д゚)ガクガクブルブル
この先の展開にワクテカ(*´д`*)
あぁ、おいらにHTMLの知識があれば
阿修羅殿の負担を減らすべくミラーサイトを作れたのに・・・orz
投下いきます。
「さあ、いよいよです。美しき少女二人が、病床の伊星先輩のために心を込めて作った手料理!」
そこのブン屋五月蝿い。少女って、お前より年上だろ。
こっちは何が出てくるのかビクビクしてるのに、こいつはやけに盛り上がっていく。
傍から見てるだけの奴は気楽でいいよな。
「では先手、新城明日香、二段」
突っ込みどころの多い合図と共に、明日香が枕元にひざまずく。
ちなみに、明日香は剣道二段ではない。
皿にかぶせられた蓋が外される。その中身は――――。
「風邪引いてるんだから、消化に良いお粥を作ったわよ」
ほのかな醤油の香り、薄い狐色に染まったご飯、ちょっと焦げがある。
……。
明らかにチャーハンだ。
「なっ、何よ。何か言う事はないの?」
ありすぎてどれにしたらいいのか判らん。熱もあって、頭が、うまく、機能するだろうか。
とりあえず、明日香はチャーハンを作ったんだな。じゃあ。
「……木場は何を作ったんだ」
「!!」
どちゃ。
「な、なんと!」
明日香は皿を落とし、屋聞は後ろに吹っ飛んだ。
中身がこぼれる。今一度見ても、やっぱりチャーハンだ。
「人志……」
明日香の腕が震えている。震えた手が、竹刀に伸びる。
「……覚悟はいい?」
竹刀を逆手に持って、俺の眼前に、持って来た!?
あ……明日香の目が、普段とは全然違う。
この眼は、あの時、男たちに竹刀一本で向かって行った時の眼だ。
相手を憎み、倒すことしか考えてない、ケンカの眼だ!
「ま、ま、ま、待て!」
俺が明日香を怒らせたのだろうか、不味い事を言ってしまったのだろうか。
「待たないわよ。早く木場さんのご飯が食べたいんでしょ!? あたしのまずそうなお粥なんていらないん
でしょ!!」
いやそれチャーハンだろ。じゃなくて、明日香が作ったのがこれなら、木場はどんなのを作ったのかと、た
だそれしか考えてなかったんだ。別に、明日香のはいらん、早く木場のを出せ、という意味ではない。
単純に、誤解されたのか? 俺は二人の作ったのを目でまず見て、それから食べたいということを言わなく
ては。
だが、本人が言った通り、明日香は待ってはくれなかった。
竹刀が、俺の腹を突く。
「う……ぐっ……ごほっ」
呼吸が無理やり止められた。風邪とは別の咳が出る。
息が戻って見てみれば、明日香が、竹刀を振り上げている。
な……なんでここまでされるんだ。これは悪夢か?
「待ってください!!」
声を張り上げて、明日香の前に憚る奴がいた。屋聞だ。
「新城先輩。伊星先輩は病人なんですよ!? 暴力を振るう相手ではありません!」
明日香の動きが止まる。
「伊星先輩。言うことがあればどうぞ」
「その……まず、披露が先で、感想は食べた後で、竹刀は無しで……」
もういっぱいいっぱいで、うまく文章にできない。とにかく、その憎しみの眼はやめてくれ。
明日香に憎まれるような事はしない。したくないから。
「……分かりました。新城先輩、その竹刀は引っ込めてください」
静かに諭す屋聞。明日香は何か言いたげな眼で睨み返したが、何も言わず竹刀を引いた。
少しは、落ち着いてくれただろうか。
「では気を取り直して、後手、木場春奈、クラスA」
「はぁ、やっとだね〜」
小さい土鍋を持った木場が枕元に来る。その表情は、いつものような、笑顔であった。
相変わらず、何を考えてるのかわからない。
折りたたみ式テーブルの上に鍋を置き、ミトンをはめた手で蓋を掴む。
「3、2、1、はぁ〜い!」
開けられた鍋から、湯気が勢いよく舞い上がった。その下に覗かせているのは、太い麺。
「うどんだよ〜」
今度は看板に偽り無し。土鍋の中で煮込まれたうどんと、野菜、肉、だしが合わさって、やや濃い匂いがこ
ちらまで届く。
うん、これは美味しそうだ。
「さて、両者出揃いました。これより召し上がって頂きましょう」
改めて、俺の前に二つの料理が差し出される。片方は、明日香作のチャーハンにしか見えないお粥。さっき
こぼれた分が減り、半分くらいになっている。
もう片方は、木場が作った煮込みうどん。
土鍋が小さいとはいえ、一人で食べるにはやや多い……か?
「伊星先輩。どちらからいきますか?」
いつの間にかメモ帳とペンを用意した屋聞が詰め寄ってきた。
どちらから、か。まあ両方食うつもりだが……どうも、チャーハンお粥は引っかかる。
「じゃあ、うどん……」
に、しようか。と続けようとして、三人の反応に遮られた。
「キタアアアァァァッ!! 伊星先輩、うどんです! 木場先輩のうどんを選びましたっ!」
無駄に声を上げ、何かのメモを取る屋聞。
「ありがとう、伊星くん。先に食べて貰えるなんて嬉しいな」
笑顔の幸福感が五割増の木場。
「……」
無言でそっぽを向く明日香。
……拗ねるなよ。ちゃんとそっちも食べるから。
「ん、箸……」
とりあえずうどんから食べようとしたが、箸が手元にない。なぜか木場が持っている。
木場は箸を鍋の中に入れ、すぐ引き上げる。野菜が挟まれていた。
それを上下させて、汁をある程度落とすと、左手を添え、俺の口の方へ運ぶ。
「伊星くん、あ〜ん」
……この年になってそれをやれと?
横をちらりと見れば、ブン屋がカメラを構えている。
もしこのまま、「あーん」と口を開ければ、食べさせてもらうという、恥ずかしい食事風景を写真にされて
しまうのか。
いくらなんでもそれは厳しい。
ガキじゃないんだから、こんな幼稚っぽい食べ方はしたくない。何より、
「自分のペースで食わせてくれ」
箸を自分の手で動かせないのは、非常にじれったい。
無礼を承知で、俺は木場の手を強引に広げさせて、箸を取った。
木場にしてみれば、奪われた、という気分になっているだろう。笑顔のまま固まっている。
本当に、本当に悪いが、そこまでしてもらうのは俺の気がすまない。
「バカね。人志にそんな技が通じるわけないでしょ」
よそのほうを向いていた明日香が振り返って言う。
屋聞はカメラを握ったまま転倒していた。
「ど、どうかな、味」
一口目のうどんを飲み込んだところで、木場が尋ねてきた。
「ん、すごくおいしい」
言い終わってから思うと、なんとも面白味のない感想だ
このうどん、長く煮込んだのか、麺も肉も野菜も、柔らかくて食べやすい。
「よかった〜」
ちょっと味付けが濃い気もするが、口の外から中へ、麺がスムーズに滑る。
木場は、料理上手なんだな。この前、明日香の試合を見に行ったときの弁当も、豪華で美味しかったし。
どんどん口に運んでいくうちに、気付けばあと一口分。
ここだけは強めに意識して味わい、飲み込む。一息ついた。
「伊星先輩、木場先輩作のうどん、完食です」
「わ〜」
木場の拍手が鳴り響く。
じゃあ、次いくか。
俺は明日香作のチャーハンお粥の皿を引き寄せる。明日香が一瞬だけ振り向いて、また背を向けた。
改めて皿の中身を見る。やはりチャーハンである。
……落ち着け。お粥だと思うから不安なんだ。これはチャーハンだ。明日香はチャーハンを作ったんだ。
箸で一口取り、口の中に投じる。
五感の一つ、味覚をより研ぎ澄ますため、目を閉じてから咀嚼する。
……うん、美味しい。美味しいチャーハンじゃないか。
結局俺の不安は、すべて杞憂だった。
よく考えてみれば、家庭科の成績が、そのまま料理の腕前に直結するわけではない。明日香が料理をしてい
るのは、調理実習以外に見たことはないが、中々どうして、やれるもんなんだな。
「おいしいな、これ」
しかしお粥ではない。なぜ最初からチャーハンを作ったと言わなかったのだろうか。
「……別に、無理して誉めなくたっていいわよ……」
相変わらず明日香は顔を見せない。だが肩が、安心したのか微かに上下していた。
今の俺に、無理をして世辞を言う余裕なんてないからな。
「伊星先輩、新城先輩作のお粥も完食しました」
見た目も味もチャーハンそのものだったあれを、屋聞はいまだ律儀にお粥という。
「ではここで質問です。どちらのほうか美味しかったですか?」
屋聞が、木場が、明日香が、俺との距離をつめる。
どちらが、と言われてもな……違う料理だし……。
「甲乙付けがたい」
「あ〜そうですか。いえ、実にらしい答えです」
どことなく気の抜けた反応が返ってきた。らしい答えって何だ。
明日香の機嫌は、もうほとんど直っているようだった。ただ木場が、上目遣いで何か言いたそうな様子だっ
たが、何も言ってこなかった。
食事のあとは、屋聞から市販の薬をもらって飲んだ。
それからと言うもの、俺は寝る以外にする事が無く、三人も、これと言ってやるべきこと、俺が頼みたいこ
とも無く、じっとしているだけの時間が続いた。
そして午後八時。辺りはもう夜中と同じくらいの暗さになった。
「人志、何か取って欲しい物ってない?」
「いや、特には……」
同じやり取りが繰り返される。木場とも似たようなことをしている。
「もう、ここらで引き上げましょうか?」
屋聞の言葉に、明日香と木場は顔を見合わせ、肩を落とした。
「そうしたほうがいいかもね」
「……そうね」
三人とも、ゆっくりと立ち上がる。
「少々、長居してしまいましたね。我々はこれで帰ります」
「伊星くん、今日はゆっくり休んでね」
「人志、また明日、ね」
「ああ……。あ」
帰ろうとする三人を見送ろうとしたが、一つ忘れていた事があった。
「何?」
「あー、その……まあ、あれだ」
いざ口にするのは凄く気恥ずかしい。たった、一言だけなんだが。
「今日は……来てもらって、飯も作ってくれて、その……ありがとう」
騒がしかったり、危機を感じたりもしたが、それでも来てくれて良かったと思う。
「あ、あたしは! ただ、昨日のお返しをしに、来た、だけだから……」
「気にしないで。私の方こそ、急に来て、迷惑かけてごめんね」
二人の声に、自分の恥ずかしさが上乗せされた気分になった。
明日香は、いつも危なくなったらすぐ助けに来るし、木場も、理由は分からないが親しげな態度だし……。
今度こそ、三人が出るのを見送った。だが、帰って行った後は、疲労感がどっと出てきたのだった。
(17話に続く)
たまにはラブコメみたいな雰囲気なのも良いな
これがどう修羅場に転じていくのか期待
>>512 乙です。
なんかほのぼのしてていい感じですね!
ただ新聞部が好きになれないw
「嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ」まとめサイト VS 阿修羅氏の嫁というシャレにならないリアル修羅場……!
と思ったけど、更新された近況読むと大丈夫みたいだね。
あと阿修羅氏、バックアップ取った犯人の一人は俺です。
ごめんなさい、もうしません。
ちょっとしたネタが出来たので投下してみます。
短いですがこのスレ的なのかどうか…
「ごほっごほっ…一体…何が?」
あたりは機械の爆発ですっかりメチャメチャになってしまったようだ。
「煙でよく見えないが…かすり傷ですんだようだ。」
あの爆発でかすり傷程度で済んだとは、運が良かったようだ。
「あ、教授と弥生さんは?」
キョロキョロと辺りを見回しても煙で全く見えない。
さてここでなにがあったのか?
そもそも事の発端は…
―――1時間前―――
「さて、今日の講義はっと…B棟2階か」
さて行くか、と思った時
ピーンポーン
ん?校内放送?
「3年生の佐藤樹くん、佐藤樹くん、稲本教授がお呼びです。至急実験棟3へ行ってください。繰り返します…」
ゲ!次講義あるのにあの教授、なんで呼び出すかな…
でもすぐ行かないと、単位落とされるかも…
5分後―
「おー待っておったぞ、樹くん!!」
「なに言ってんですか、講義あるのに呼び出したりして…。」
「いやー悪い悪い。」
そう、この目の前にいるのが生物学の権威(?)、稲本炉利教授。
つい先日発表した「宇宙ステーションにおける性欲と幼女の関係に対しての一考察」
とかいうイタイ論文を発表して一大センセーションを巻き起こしてたっけ。
…まあ違う意味で、だけど。そして隣にいるのが
「こんにちは、樹。」
この教授の助手をしている氷室弥生さん。
身長175センチ、ボンキュッボンのナイスバデーなのですが、、
別名「氷の巨人」
なにしろ笑ったことがなく、いつもしかめっ面していてとにかく近寄りがたい雰囲気があるんだよな…
しかも下手にちょっかいかけると凄まじい蹴りが飛んでくるんで今では俺と教授しか話しかけないんだよな。
「ごめんなさいね、私は講義が終わってからでも良いじゃないって言ったんだけど、教授がどうしても今呼ぶって言うから…。」
「いえ、弥生さんは悪くありませんし、講義の方は代返頼んどいたので。さて…」
さっきからにこにこ顔の教授をジト目で見て
「それよりも教授、一体なんの用ですか?講義はもういいですが
この後晴香ちゃんとデートなんですからね。」
それを聞いた弥生さんがピクッ
あれ?弥生さん、額に青筋が浮かんでいるような…
いつにも増して不機嫌なのかな?
「大丈夫だよ樹くん、時間はとらせないよ。」
本当かなー
「実はついに念願の発明品が完成したのだ!!で、早速樹くんに成果を見せたくてね。」
「え?発明品ってあの「どんな巨乳もひんぬーにする薬」ですか?」
「いや、あれは実験した所、ひんぬーじゃなくてチチそのものが
無くなってしまってなー、その上5分しか効果が無かったのだ。」
それもそれで凄いな
「え?じゃあなにが完成したんですか?」
すると教授はなにやら袋から液体が入った瓶をだして
「ふっふっふっ…じゃーん!若返り薬〜!」
あれ?意外とまともだ。
「説明しよう!この薬は野郎が飲んでもなんともないが、女性が飲むとアラ不思
議。なんと10歳児くらいになっちゃうのだ〜!!」
……………………は?
「え、え〜と、それ何の役に立つんですか?」
すると教授は笑顔で
「わたしがうれしい!」
だめだこりゃ
「ふむ、樹くんは私と同類だし、もっと喜んでもらえると思ったのだが…。」
「喜びません!!大体俺はロリコンじゃないです!!」
それを聞いた教授はニヤァ〜と笑って
「ほお〜、そうかね?なら君の彼女の晴香くんだっけか?彼女はどうなのかね?」
「ちょっと胸が無いこと以外は普通の女子大生ですよ。」
「そうなのか?」
「そうです!」
そう言うと教授は残念そうな顔をして
そうか…と呟いて一応は納得したようだ。
「ま、それはともかくこの若返り薬の実験も済んで
結果をみるだけなんだよ」そういうと目を輝かせて
じーっと弥生さんを見て…え?
まさか!
「そう!弥生くんに飲んでもらった。…どう?気分は?」
その瞬間弥生さんのハイキックが教授の顔面にクリーンヒット!
あ、ミニスカートで蹴りなんかしたら見えちゃいますよ。
つづけざま右ストレートが放たれたが、これはかわしたー!
あ!教授がかわしたひょうしになんか機械のスイッチが入ったようだ。
たしかあの機械は漏電してて―――
そして現在――
「教授ー!弥生さーん!無事ですかー!」
「ごほっごほっ、い、樹?大丈夫?怪我は?」
煙でよく見えないけど、弥生さんは無事のようだ。
やっと少しずつ煙も引いていってなんとか周りも見えてきた。
「あ!弥生さん!!怪我とかだい…じょ…え?」
「どうしたの、樹?」
「や、弥生さん、その姿…」
第一話「こんなの認めない!」完
次回 第二話「い、い、一緒に住むぅ?」
あまりハードな修羅場は書けないですが、こういうのならできますね。
続きは反応をみてかんがえます。
エロパロ板でも屈指の戦闘力を持つオニャノコが
集まるスレはここですか?
>>519 是非!!
教授がいい味だしすぎw
彼女と弥生さんの修羅場が見たい。
誰かエロイの書いてくれないかなぁ
>>519 GJ!弥生さんの嫉妬?がいい味だしていて良かった
続きマジキボンヌ!
なんかキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
投下しますよ
織濱さんが弁当を取りに一旦戻っていく背中を見送ると、僕は後ろを向いた。因みに、
僕なんぞが逆らえる訳もないし彼女自身もあまり人の話を聞くタイプではなさそうなので
諦めて一緒に食べることになった。
閑話休題、僕の目の前では尚も険しい表情をした姉さんとサクラが立っていた。二人は
織濱さんと一緒の食事をとることになったことや、僕のさっきの態度が気に入らなかった
らしい。露骨に機嫌が悪そうな二人を見ていると、悲しくなる。
しかし、だからと言って甘くしていてはいけない。普段から僕のことを好きだ好きだと
言って懐いてきたり、そんな風に好意を持って接している家族が他の誰かに取られるのが
嫌なんだろう。昔はそれが過剰になりすぎて事件を起こしたが、高校生にもなってもまだ
そんなことではいけないと思う。今は一緒だし、繋がりが消えることは一生ないけれども、
それでもいつかは別れや巣立ちのときが来る。
僕は吐息を一つ。
「はい、二人とも座って」
文句を言いながらも、おとなしく二人は床に座った。これもそう珍しいことではないの
で、クラスメイト達は再びイチャイチャと弁当をつつき始めた。僕も本当はそうしたいのだけれど、説教が先だ。
鉄は熱い内に打て、悪いことをしたらそれはすぐに直すのが僕の信条だ。今は大変かもし
れないけれど、これを続けていればいつかは平和に弁当を食べることが出来る日が来ると
僕は信じている。
だから、今は心を鬼に。
「姉さん、女の子座りしない。サクラも体育座りをしないの、パンツが見えるでしょ」
「お姉ちゃん、正座苦手だもん」
「見せているんです」
「黙って正座しなさい」
渋々といった様子で二人は正座、僕を上目使いで見上げてくる。
「何で、あんな事したの。失礼だし、乱暴はいけないでしょ?」
その言葉に、二人はしゅんと頭を下げる。あまり強く言ったつもりはなく、多分内容よ
りも怒られているという行為が堪えているのだろう。あまり良いこととは言えないけど、
説教自体はよくあることだから、僕が久し振りに怒ったことに対してもばつが悪いのかも
しれない。
「姉さん?」
「だって、あの人が虎徹ちゃんを取ろうとしたから」
「サクラ?」
「兄さんが取られると思うと、つい」
やっぱり、予想通りの解答だ。家族仲良くは良いことだけど、ブラコンまでは許容出来
てもそれ以上の重依存はどちらにとっても良くない。それは個人の価値観だけれども、意
思や尊厳を他人にまで被せ預けることだ。それをした方もされた方も、個人のバランスや
境界がおかしくなる。
今までに何度も自分に言い聞かせた言葉、それを反芻して二人と目を合わせた。
「あのね、僕らはいつまでも家族だし、僕も居なくならない。それは変わらないけど、僕
も一人の人間だからいつかは家族を持つ。今はそうでもないけど、いつかきっと」
悲しそうな目には、もう先程の怒りや不満は見えない。黙って僕の話を聞いているのを
見ると、これで良いと思うのだが、それとは逆に鈍い痛みも襲ってくる。
「いつかは、僕も誰かとこんな風になるんだから、少しずつ分かってほしい」
黙り込んだまま、ついには涙まで浮かべ始めた二人を見るとこれ以上は喋る気が消えた。
手を掴んで立ち上がらせると、膝や靴下に付いた埃を払う。
「終わったか?」
突然かけられた声に振り向くと、織濱さんが涙を浮かべて立っていた。肩を小さく震わ
せて、何故だか慈愛に満ちた微笑みと眼差しを向けてくる。それは、姉さんやサクラに対
しても向いていた。
彼女は小さく拍手をすると、
「素晴らしい話だった」
聞かれていたのか。
説教をしている間は気にならなかったし、クラスメイトもあまり気にしている様子もな
かったので油断をしていたが、実際に意識をしてみると気恥ずかしい。家ではよくしてい
るものの、学校ではこれが初めてで、人目があるところでこんなことをするとこうも悶え
たくなるものだとは思わなかった。いや、それよりも心配なのが相手の二人で、只でさえ
恥ずかしかっただろうにそれが嫌った相手に見られたとなればどれだけ苦痛だったのだろ
う。今更になって僕は後悔をし始めた。
「どの辺りから聞いてたの?」
「パンツ云々から」
よりにもよって、そんな表現をするか。もう少し言葉を選んだり、気を使っても良いん
じゃないだろうか。場を和ませたりするのが目的かもしれないが、女子がそんなことを言
うのはどうかと思う。
天然なのか、織濱さんはすぐに表情を切り替えると、
「それは兎も角、弁当を食おう」
手に持った重箱を机の上に置いた。
「帰って下さい」
「虎徹ちゃんはあたしと食べるの」
さっきの説教がまるで意味を成していない。今すぐに、というのは無理だとは思うし、
急に変えることもないと思うけれど、それでも少しは我慢してくれるのを望んでいた僕は
誰にも聞かれないように小さく吐息した。
「そう言わないで、ご飯くらいは良いんじゃないかな」
「ありがとう。さっきの弁舌と言い、あなた達は素晴らしい兄弟を持っているね」
その一言で、姉さんとサクラの表情が少し和らいだ。あまり乗り気ではないようだが、
それでも渋々席に着く。目を合わせないようにしているのは、せめてもの抵抗だろうか、
そのくらいは仕方ないと怒らないことにした。
「ところで」
蓋が開いた重箱を眺めてサクラが眉根を寄せた。因みにサクラがこの高校に入学してか
らは、僕らも重箱。このクラスを担当している世界史の教師のを合わせて三大重箱と呼ば
れているらしい。最後の一つが分からなかったが、織濱さんだったのか。
僕がそんなことをぼんやりと考えている間にも、サクラは重箱を睨んだままだった。
「それは、自分で作ったんですか?」
「いや、家の料理人に作ってもらったものだが」
小姑攻撃が始まった。
「制服も綺麗だけど、それもお家の人だよね?」
姉さんまで!!
確かに、朝食は母さんが作るが弁当はサクラが作るし衣類は姉さんが全て管理している。
どちらも本人の強制的な申し出によって割り振られたポジションで、誇りも持っているの
だろうが、こんな露骨に言うとは思わなかった。
「そんな甘えた人には」
「家の虎徹ちゃんをお婿さんに出すことは」
「「出来ません」」
何でこんなときだけ仲が良いんだよ。普段は喧嘩ばかりしているくせに、牙を剥くとき
は見事なコンビネーションだ。だからこそ、今まで僕には彼女が居なかったのだ。
それに対して織濱さんは、
「わたしは、このくらいでは負けない」
「あんたもかよ」
つい、いつものノリで突っ込んでしまった。
せっかく、綺麗な流れで行けると思ったのにこれでは台無しだ。しかも、治ってないの
はまだ我慢が出来るが、それどころか悪化をしている。
仲良く、してほしいのに。
僕は吐息をすると、サクラの作った弁当を食べ始めた。
今回はこれで終わりです
他の作者さんの作品が凄すぎて、投下し辛い感じです
あ、あと自転車にとうとう乗れるようになりました
作者様GJ!姉妹(*´д`*)
そのクオリティーで投下しづらいと言ったら
どれだけ恐ろしいものを目指してるのかと((;゚Д゚)ガクガクブルブル
自転車おめでとうございます、自転車でフラフラ走るロボさん(*´д`*)
>>530 漏れは楽しみにしてるよ!
鮮血の展開もいいけど、こういうほんわかストーリーで
やきもちの応酬もたまらなく大好きなので、他は気にせ
ずこの調子でいってくらさい〜
作者様、素晴らしい作品超GJ!
チャリっ子ロボさんとか考えてたら、某格ゲーの「ワッハッハ-」と言いながら空飛ぶポンコツを思い出した
今ヤンデレスレで投稿してるのが修羅場向けになりそうなんで、こっちに移ってよい?
よりにもよってあっちのスレで誤爆してるし
今頃、
>>534さんはきっと・・・(((;゚Д゚))))ガクガクプルプル
ヤンデレスレの住人に…
>>534 ヤンデレスレと修羅場スレの二股だなんて(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブル
щ(゚Д゚щ)カモォォォン
では投下致します
第7話『鮮血・鮮血・鮮血』
あのメールを見て、私は目障りな猫崎猫乃をこの手でバラバラにしたい衝動にかられていた。
いや、誘惑に乗ってしまっていた。だって、翔太君と恋人関係にいる猫乃と表面上とはいえ、言葉を交わさなければならない。
本音では絶対にそう思ってもいない白々しい言葉があの泥棒猫の口から出てくると考えるだけで耳が腐りそうだよ。
それだったら、さっさと殺して、翔太君を私だけモノにした方がてっとり早いでしょ。
うんうん。
どんな勝負の世界でも勝者の椅子は一つだって決まっているんだよ。相手がその椅子に座っているなら、惨殺してでも奪ってしまえばいい。
恋愛は命懸けの決闘。死と隣り合わせの戦いと言ったもんだ。そういえば、この鋸を買ってから、心が晴れ晴れして気持ち良すぎてたまらない。
もう、こうやって握り締めているだけで何でもできる気がしてしまう。
待っていてね。
今、おいしい血を飲ませてあげるから。
猫崎猫乃は居残り課題をやっているとメールに書かれていた。
私の予想では学校内のどこかにいるはずなんだけど、すでに職員室は閉められて教師連中は帰っているらしい。
だったら、すでにあの女は下校しているのか? いや、それはない。
裏門から侵入して、昇降口から忍び込んだ。ちゃんと、下駄箱で猫崎猫乃の下靴があるのは確認済み。
生徒一人がこの時間まで居残りをするのは物騒かもしれないけど、これは私にとっては神様がくれたチャンスだと思えた。
ここで猫乃を惨殺しても、怪しまれるのはこの時間まで生徒を残している学園側に非があり、校内に侵入してきた変質者の犯行だとして片付けられる。
ふふっ……。
やれる。思い切りやれるわっっ!!
さてと。
わたしは明かりがついている部屋を下の階から見上げていた。
あそこに泥棒猫がいる!!
すでに暗闇に染まりきった校舎はわたしと猫乃しかいない。
早歩きで廊下を歩いて、奴がいる教室の扉を静かに開けた。
「ね、猫崎猫乃っっ!!」
キャンバスに何かを書いていたようだけど、私は何も気にすることなく、この世界でもっとも憎い女の名前を大声で罵声して走り出す。
「う、うにゃ……?」
椅子に座っている猫乃が振り向いたが、遅い。私はすでに間合いに踏み込んでいる。鋸を両手持ちで上から力一杯に振り下ろす。
これで決まったはずだ!!
もっとも憎い女、風椿梓が扉を開けてくると3ー4メートル程度の間合いをたった一歩で踏み込んできた。
予想外の襲撃に私は反応すらできない。彼女の得物が私の首を狙うように真っすぐ一閃するはずであった。
だが、振り向いた時に焦っていた私は足を踏み外して、あの女の一撃の軌道上から逃げるようにこけていた。
「ちっ……」
外したと思ったのか、2、3歩と後退して、鋸を突くような構え方をしている。
私は現在の状況をまるで把握していない。頭は真っ白になってパニックを起こしていた。
まさか、私を殺しに来ようとは一体どこの誰が思うんでしょうか?
ふと、私は先輩に送る肖像画の事が気になって、危険を顧みずに後ろを振り返った。
あれ?
なんなの、これは?
あれだけ頑張って仕上げた先輩の肖像画はさっきの一撃で先輩が微笑んでいる顔が見事切り裂かれていた。
許さない。許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない。許さない。許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない。許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない。許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない
許さないっっっっっっっっっーーーー!!
頭のどこがぶっちんと音を立ててキレた・
私の唯一の拠り所を無理矢理殺して奪ったくせに、現世まで私の大切のモノを奪うんですね。
だったら、今度こそは容赦しない。
今は猫じゃない。体格もだいたいと同じだから、何の抵抗もせずに殺されたりはしない。
殺すという憎悪に関しても、あの女とはすでに同等のつもりだ。
周囲を見渡して、あの女と同等の武器を探した。鋸よりも殺傷力のある武器が欲しくて欲しくてたまらない。
そういや、隣の教室に日本刀が置いてなかっただろうか。この美術室の教師は日本刀マニアでバレないように真剣を隣の準備室に飾っていると話を聞く。
しかも、その刀はある伝説のソルジャーが愛用した『正宗』だと聞く。詳しいことは知らないが、それがわたしの後ろの扉に置いてあるってことだ。
あの女が様子を探って、間合いをとっている。動きがあれば私を問答無用に切り裂くことだろう。
鋸は刃がギシャクシャしているから、あれに切られると傷が後に残ってしまう。あの陰湿の女が考えそうなことだ。
とはいえ、このままでは私は無残に殺される。
瞬発力、動態視力は前世が猫だった私が有利。後ろを振り返って。
私は猛ダッシュで準備室に向かう。僅かに反応が遅れたあの女も追い掛けようとするが、わたしの方が断然早かった。ドアのノブに手をかけると急いで鍵を閉めた。
真っ暗の部屋の中、月の明かりに反射して輝く一つの刀に目が映る。
鞘に入りきらない程、長い刀身は通常の刀よりも長く、一人の人間が決して扱えることができない程に大重量でさえあった。こんなもん、何で美術室に置いてあるという疑問などなかった。
すっかりとこの刀に魅入られてしまった。刀の鞘を掴むと少女である私の細い腕でも持てないはずの刀が持ち上げることができた。思わず、ほくそ笑む。
さあ、始めましょう。
一人の男の子を奪い合う、命懸けのゲームを。
私はもう一つの美術教室の扉から抜け出し、廊下に出た。
暗闇の廊下は私が猫であり、夜行性だったために視えている。
「さあ、風椿梓。あなたの望み通りに殺し合いましょう!!」
広い場所で充分に戦える場所に相手を引き寄せる。梓はすぐに廊下に出て、鋸を構えている。
「そうだね。あのあなたが書いた醜い絵のようにバラバラに切り裂いてあげるわ!!」
「大切な先輩の肖像画のことか!!」
全ての努力を無駄にした女に殺意のこもった視線で睨み付ける。
もはや、互いに言葉はいらない。
憎い相手をこの世から消し去るためだけにこの場にいるのだ。
「死んじゃえーー!!」
離れていたはずの距離を一瞬にして埋める風椿梓の身体能力に驚きながらも、わたしは正宗を振り回していた。
カチン。カチン。
互いの武器が重なる金属音が深淵なる廊下に響き渡った。
「きゃっはははははは」
狂った笑顔を浮かべて、あの女の笑い声が五月蝿い。すでに正常の人間のものではない。狂気を犯された殺人者。
ファナティック。
愛ゆえの狂信者。
「し、翔太くんのために、ど、ど、泥棒猫をこ、殺すわっ!! ふふふふはははは」
「いい加減にしてください」
わたしの込めた必殺の一閃。
それをたやすく受け止める風椿。すでに同年代の女の子の身体能力を大きく上回っている。長期戦になってしまうと、こちらの体力がもたない。
「きゃっははっはっははっは。死ね死ね死んでよっっっっっ!!」
笑い声と共に鋭い乱撃が襲いかかってくる。
「いっ、」
鋸が肩を擦った、その痛みが私の集中力を奪ってしまう。
「よ、よ、よ、よ、くもやってくれたわね!!」
正宗が咆哮するかのように神速の一撃が風椿の胴体を切り裂いた。散らばってゆく血をわたしも浴びるが、あの風椿に相当のダメージを……。
「あはははっははははは」
切り裂かれた場所を気にすることもなく、ただ笑っていた。その呆然としていたことが隙になってしまった。風椿の鋸が迫っていた。
「約束された勝利の鋸(泥棒猫虐殺闃)ーーーー!!」
必殺技なのかは知らないが、高らかに叫んで、わたしの首元を振り下ろすように切り裂いた。あの女よりも血があちこちに飛び出している。
これはさすがに激痛を通り越して、正直ヤバイ……。だが、私は倒れることもなく、正宗を構えていた。そう、すでにわたしもあの女のように肉体が精神を凌駕し始めている。
こちらも奥義の一つや二つお見舞いしてやらないといけませんね。
正宗を構えようとした時。私たち以外の足音が聞こえてきた。
「もう、やめるんだーー!! 二人とも!!」
この戦いを一番見られたくない先輩の姿がそこに在った。
「一体、何をやっているんだ。お前等は!!」
狂った梓を追い掛けて、学校まで無我夢中に走っていた。
猫乃が殺されることを阻止するために、惨劇を止めようとしていたのに。
すでに遅かった。
猫乃と梓は互いに凶器を持ちだして、殺し合っている。
すでに両者が致命傷だと思われる箇所から信じられない程の血が出血している。
このまま、殺し合っていたら二人とも出血多量で死んでしまう。
「何で殺し合っているんだよ。意味がわかんねえよ」
「翔太君。今、あなたを惑わす泥棒猫を殺してあげるから。そこでおとなしく待っていてください」
壊れた笑みを浮かべて、いつもと変わらない調子で俺に語りかける梓。
だが、俺の知っている梓はもうここにはいない。ただ、狂気に犯された殺人快楽者に変わりつつある。
「先輩。大丈夫です。この私が守ってみせますからね!!」
可愛らしい声で言う猫乃も梓と同じく壊れていた。そう、虚ろ瞳で語りかける仕草は俺の体全体を凍えさせてしまう程に。
「泥棒猫が私の翔太君に喋りかけるなっっっっ!! 耳が腐るんだよっっっ!!」
「その言葉、あなたにお返ししますよっっっつ!!」
二人が駆け出す。
奔る刃、流す一撃。
互いの技量は常に互角。斬り合う二人の姿に見惚れていた。
一体、同世代の少女たちはいつ人外を超える領域に辿り着いてしまったのか。
恋する乙女の想いに限界はない。常に想いの果ての上限を目指し、好きな異性のために己を犠牲にしてまで、外敵を排除する尊く儚い強い意志。
それが彼女らの根源衝動であるのか。
不意に俺は思う。
二人の少女の血を流している根本の原因は俺の勘違いであること。
あのとき、勘違いをして梓を避け続けていなければ?
猫乃と付き合わなければ、この惨劇は起こらなかったのでは?
と、夢想してしまう。
だが、もう遅い。
あの老婆の企み通りに惨劇を起こってしまっている。梓が猫乃を虐殺するまでこの死闘は終わる事なく続く。
ならば、俺にできることはないのか!?
分岐ED
1・このまま、傍観する。(猫崎猫乃END)
2・二人を止める。(風椿梓END)
3・自分の想いを告白する(水野翔太END)
次回から最終回分岐ED
最初は猫乃ENDからで、最後は水野翔太EDでこの作品は完結致します・・。
二人の激しい恋の行方を楽しみにしてください・・
もう、二人とも瀕死だけどww
オレ、こういうのって幼馴染派なんだよね・・・
ということで2をお願いします。
最近、分岐エンドの作品増えたな
迎え撃つのは、家庭科室に置いてある曰くつきの魔包丁かと思ってたよ。
その昔とある海岸で、二股かけた男子生徒を妊婦少女がトンべりしたという悪魔の包丁。
「お兄ちゃん、お帰りなさい」
「ただいま、あぁ、良いにおいがするね。今日は揚げ物?」
「うん、唐揚げだよ」
「あのさ、最近肉料理が続くよね。兄ちゃん、そろそろ魚が食べたいなぁ・・・・」
「ごめんね、ちょっとお肉がたくさん手にはいったから。傷む前に処分しちゃわないといけなくて」
「いやいや、俺の方こそ折角作ってもらってるのに我侭言ってごめんね」
だって、たとえあんなものの成れの果てでも、腐らせちゃうと勿体無いでしょ?
>>548 カニバリズムは究極の愛情表現とも言う。
愛する人の血肉になってしまうぞ?
このスレは神が多いと何度思わせれば気が済むんでしょう?
俺も幼馴染み好きなんで2希望です。
後、シベリア氏に一言。
『第五話』
(第四話の続きです)
私が病室に戻ると
華奢で白絹のような肌に、瑞々しいほどの黒髪が映える女の子が馨の腕を取って熱心に話していた。
飾らなくても十分美しさを発揮できている。そんな彼女に二重の意味で嫉妬心が隠せない。
この角度からはよく見えないけれど、馨はきっと泣いているのだろう。
膝を地面に着けて土下座するような形で女の子に腕を抱かれている。
その薄っぺらい胸で馨の気を引こうってことかしら・・・・
生意気。
私は入り口の影から暫く二人を観測することにした。
黒髪の女の子は同色のくりくりとした大きな瞳を潤ませて、ゆっくりと説くように語り掛けている。
時折馨の腕を自分の体に擦り付けるのも忘れていない。
ひとしきり話し終えたのか、馨は女の子の腕をゆっくりと解いて立ち上がった。
少し寂しそうな女の顔にイライラが募る。
本当に庇護欲を掻き立てる大した泥棒猫だ。
馨の親切心を利用して大した怪我でもないくせに全力で依存している。
気づかない馨も馨だが、いい加減下腹部を渦巻くどす黒い感情が抑えられなくなってきていた。
「うふふふふ」
黒髪の女の子は口に手を当ててお上品に笑う。
あのあどけない笑顔の裏にどれだけの策謀が隠れているのか、皮を引き剥がして馨に見せてやりたい。
―――――――――――――――本当に幸せそう。
だから、その多幸感を最大級の絶望を以ってぶち壊してやることにした。
馨に気づかれないように接近。
女の子の黒い瞳とちょうど相対するようにして、言ってやった。
「―――――――――――――――じゃあ明日から馨がお見舞いに来なくても平気よね」
しばしの沈黙の後。
女の子の笑顔が、般若の形相に歪んだ。
「ゆかり??部屋の前で待ってろって言っただろ!!」
「べつにぃ〜私がどこに行こうと勝手でしょ。それにアンタ、デレデレしすぎ。仮にも事故を起こした加害者なのよ。もっと恭しい態度に改めなさい」
膝までのブーツの踵を鳴らしながら、背の高い少し派手な印象を与える女性が近づいてくる。
漂う香水の芳香。
馨さんに着いたわたしの匂いを打ち消すような空気。
好きじゃ・・・・・ない。
馨さんは女性の言葉に、また顔色を失った。歯噛みしているようにも見えた。
女の人はわたしを品定めするかのように見渡し、極上の笑顔を浮かべた。
「初めまして、馨の幼馴染の浅羽ゆかりです。私の馨がご迷惑おかけしたようで」
――――――――――――――幼馴染・・・・・ケーキは・・・・この人??・・・・・・
――――――――――――――ちがう・・・・・それに、あなたの、馨さんじゃ・・・・ない・・・・。
背筋を悪寒が突き抜けていく。
馨さんは、もしかしたらこの人に連れて行かれてしまうかも・・・・・
この派手な女の人が、わたしから馨さんを奪っていく・・・・・
――――――――――――――思考が急に冷えていく。
それと同時に、目の前が暗くなって全身から血の気が引いた。
女の人は白いトレンチコートの裾を揺らしながらわたしに掌を差し出した。
握手、するつもり・・・・・
そのキラキラした長い爪――――――――――――――邪魔。
へし折ってやりたい。
「は、初めまして・・・・森瑞希です・・・・」
握手するのが嫌だから、視線を外して答えた。
私の態度に浅羽さんはまた嫌な笑みを浮かべた。
「お怪我のほうも大したことなくてよかった。私の馨は大袈裟でしょ?だから貴女がそこの窓から『飛び降り』でもしないか心配だったわ」
言葉に含まれる毒。
この人・・・・・もしかして識ってる??・・・・・・
不安が膨張した。胸が痛い。
――――――――――――――助けて、馨さん・・・・!
「ゆかり、止せよ。昨日の今日なんだから、森さんも疲れてるんだよ」
ゆかり?・・・・・森さん・・・・?どうして、浅羽さんは呼び捨てなのに、わたしは森『さん』なの?・・・・・
痛い、痛いよ・・・・
「そうかしら?さっきはあんなに元気そうに笑っていたのに。まぁいいわ。無事だってわかったでしょ?
それにこの怪我はアンタの所為じゃないんだから気に病むことないわよ。ねぇ、森さん?」
やめて・・・・やめてやめてやめてやめてやめて・・・・・・
馨さんを誑かさないで!!!
「森さん・・・・・?」
わたしを訝る馨さん。
対照的に浅羽さんは満面の笑みだ。
気分が悪い・・・・・
なんて答えればいいのだろうか。
気にしなくていい、と答えればもう馨さんはお見舞いにやってこないかもしれない。
でも、責任を取ってっていったら・・・・
馨さんはお見舞いに来てくれるだろうか。
「ねぇ、森さん?もうお見舞いに来なくていいわよね?」
黙りこくるわたしに焦れたのか、浅羽さんは少し語気を荒くしている。
それでも貼り付けたような笑顔は崩さなかった。
どうしよう、どうしよう・・・・・・
「ちょっと、森さん?」
わたしがやっと搾り出した言葉。
それは――――――
「―――――――――――――――――――――――――その・・・・・・・・・・・・・・・・・忘れ、ません・・・・・から・・・・・・」
馨さんの表情が凍りつく。
「さっき、赦してくれるって・・・・・」
「・・・・・・赦せるわけ・・・・ありません・・・・・・忘れることもできません・・・・もう・・・・・・・・・」
「あんた!!!」
浅羽さんが怒りを露にする。そのままわたしの胸倉をつかみあげて綺麗な瞳で覗き込んでくる。
「ゆかり、止せ!!俺が、俺が・・・・悪いんだから・・・・・すいません森さん。
でもお見舞いは続けます。森さんが赦してくれなくても、俺にできることはこれくらいしかないから・・・・・」
浅羽さんを羽交い絞めにして私から引き剥がし、馨さんは疲れきった顔でそう言った。
この話をまた利用するのは卑怯だと思ったが、こうするしかなかった。
あの時も、馨さんはお見舞いを続けてくれた。
だから、今回もきっとそう言ってくれるって信じていた。
「馨、アンタは先に帰ってなさい。私は森さんと話すことがあるから」
浅羽さんは短く告げて馨さんを追い出した。
二人だけの時間を邪魔されて腹が立ったが、わたしにも言いたいことがあったので好都合だ。
馨さんは落ち着かない様子で出て行った後、なんの前触れもなく浅羽さんが切り出した。
「あんた、いったいどういうつもり!!散々馨を苦しめといて・・・・・まだアイツを縛り付けるつもりなの??」
咲き誇る大輪の花が修羅の擬態だと見抜くのに、そう多く時間は掛からなかった。
次回に向けて修羅場パワー充電中です。
皆様、パワーを分けてください・・・・・・
一週間で400KBか。
ほんとにヤリ捨て状態だな
>過保護
年下生徒会長にwktk
つかやっぱ超人だらけに見えるわけで
森さんの粘着のしかた、いいねぇ〜
それでは投下します。続きからになってしまって申し訳ない。これ以前の話はヤンデレスレでご覧ください
m(_ _)m
――翔太
翔「これでいいな。」
なかなか納得のいく分け方になった。明ちゃんの行ったドアを進むのが、俺、由良、光。まだ誰もも入っていないドアへ、脱出法を探すのが、敦也、美保ちゃん、奏、絵里ちゃん。
敦「じゃあ、気をつけてな。」
敦也に励まされる。そんなこと初めてで、変に寒気がした。照れ隠しに頭をかき、返事をする。
翔「はは、こっちは大丈夫だって…お前らこそ、気をつけろよな。」
最高の笑顔を見せてやろうと、顔をあげた……が。
由「兄さん……もうみんないっちゃいましたよ?」
敦也班は誰ひとりみてやいなかった。ちくしょう……
光「ほら、早く行くわよ!翔太。明が危険な目にあってるかもしれないでしょ!?」
グイグイと馬鹿力で引っ張られる。相変わらず強引な奴め!
翔「だぁ!もう、大丈夫だっつの。明ちゃんはお前の妹なんだ。殺人鬼の一人や二人ばったばったと……」
由「兄さん、今はそんな冗談言ってられないと思いますよ……本当に。」
確かにそうだが、これでも自分では畏怖しているんだ。……誤魔化すためにおちゃらける。これが俺の処世術なんだからな………
――敦也
明を翔太達に任せ、脱出法を探す。とはいえ、四方を山に囲まれ、正門には狂犬。その上洋館内には殺人鬼が彷徨ってるときた。
それを考えるだけで憂鬱になるのだが、何より今は……
美「奏ちゃん……絶対にあっちゃんに近付かないでよね!」
奏「まだ言ってるの?だから私じゃないって!」
美「嘘よ!信じられないわよ!二人きりになったら、その人を殺すつもりなんでしょ!?……ね?あっちゃん。だから私といれば安全だからね?」
仲間内での疑心暗鬼。さっきの死体は、間違いなく人の手によるものだった。一緒にいた奏が疑われるのは無理もないが。
特に警戒心が強いのが美保だ。この洋館にきてからなにかおかしい。
美「大丈夫だよ、あっちゃん。私が一緒なら。他の人…特に女の子と一緒にいちゃだめだよ?殺されちゃうから……」
奏「そのあっちゃんが殺人鬼だったらどうするのよ?」
美「そんなわけないでしょ!!?勝手に罪を着せないで!あっちゃんだなんてきやすく呼ばないでよ!この人殺し!」
そう美保がヒステリック気味に叫ぶ隣り、『本当に俺が殺人鬼だったら?』という黒い思案が浮かぶ。
本能から沸いた醜い塊が、理性を突き破りそうになるが、なんとか飲み込む。
イケナイ……保たないと………理性を………
――絵里
最悪な雰囲気のまま、時々カナちゃんと美保ちゃんの言い争いかあるまま進んでいった。途中、敦也君の顔色がひどく悪い気がしたけど、しばらくしたら普通と変わらなかった。見間違えだったかな?
ガチャさらにドアを開けると………
敦「真っ暗だな……電気が切れてるみたいだ。」
電球はあるが、スイッチを変えてもつかなかった。このままでは何も見えない。
絵「はい、敦也君。」
そう言って懐中電灯を渡す。山岳部の備品だが。渡すとき、美保ちゃんにすごいきつく睨まれたが、怖くて目を合わせられなかった。……なるべく敦也君に近付かない方がいいかも。
そして光を付けた途端……
グルルルルルル……ウーッウーッ!
どこかで聞いた覚えのある唸り声。一瞬にして背筋が凍る。これは……あの……
奏「あ、あ……嘘でしょ?…なんで……なんでここにも犬がいるのよ!!?」
カナちゃんが真っ先に叫びだす。その金切り声と光によって、狂犬も私達の方に気付く。まずい、襲われたら私、逃げられない……
敦「まじかよ……」
敦也君は至って冷静に犬を照らしていた。こっちへと迫っているのに!!
投下します。
闘技場と控え室を繋ぐ通路。
試合に赴く囚人が、己の気を高ぶらせながら歩む道。
生き残った囚人が、勝利の余韻に浸る道。
それが、今は。
「貴女が王者の血塗れ竜ですか?
はじめまして。アトリっていいます」
「お前なんか知らない。消えろ」
二人の少女が、にらみ合っていた。
アトリが白に向かって口だけ微笑み、
白は僕の側に歩み寄る。
「貴女のことは、ユウキさんから“よく”聞いてますよ」
頻繁に会っていることを強調するように。
アトリが、僕と白を交互に見た。
「…………」
白が、僕の顔を見上げてくる。
――いつなの? と、目が問いかけていた。
暇なとき、少し話をしていただけ――と、口を開きかけて、それに上乗せするように。
「――鬱陶しい餓鬼ですって。ベタベタしてきて気持ち悪いそうですよ」
何を言ってるんだこの娘は!?
直ぐさま訂正するつもりだった。
しかし、それより早く。
「ユウキはそんなこと言わない」
アトリの嘘に対して。
白はきっぱり言い返した。
でも、その言葉には。不安や恐れが多分に含まれていて。
アトリが、くすりと笑みをこぼした。
「まあ、信じる信じないは貴女の勝手ですけど。
それじゃあ、今後ともよろしくお願いします」
「ユウキみたいな喋り方を止めろ」
「すいませんね。こちらの言葉にはまだ不慣れなものでして」
嘘吐け。
本当は、敬語から日常会話まで完璧にマスターしているくせに。
おそらくは、白を挑発するためだろう。
……何故、アトリが白を挑発するのかはわからないが、兎に角このままぼんやりと眺めるわけにはいかない。
囚人同士の私闘は厳罰だ。
そうなる前に、何とかこの場を納めなければ。
「と、とにかく、白もアトリも、控え室に戻りましょう。
アトリは試合が終わったばかりですし、白もこの後試合です。勝手な行動は――」
「――そうですね。
血塗れ竜さんとユウキさんの最後の時間、別れの言葉でも交わし合っててください」
「言ってる意味がわからない」
「ユウキさんは、」
まて。
何を、言うつもりだ?
「明日から、私の付き人になるんですから」
「嘘」
「嘘じゃありませんよ。ユウキさんも、ちゃんと、約束してくれました」
「嘘だ!」
白が声を張り上げる。
彼女の叫び声なんて、初めて聞いた。
「ね、ユウキさん。約束してくれましたよね?」
確かに……約束は、した。
だが、言っちゃ悪いが――守る気なんて欠片もない約束だった。
嘘つきの誹りを受ける覚悟で、明日にでも約束は反故にするつもりだった。
アトリが――こんなタイミングで白の耳にさえ入れなければ、何事もなく終わるはずだったのだ。
なのに。
「ユウキさんが約束を破るような人ではないことを、貴女は知ってますよね?」
僕が何と言おうか迷っている隙に、アトリが更に追い打ちを。
――なかなかに、したたかな娘である。
狙いがいまいち掴めないが、今、この場を支配しているのは間違いなくアトリだった。
「……だめ」
「貴女の意思は関係ありません。
囚人と監視員。どちらの処遇が優先されるかは、考えずともわかるでしょう?」
「だめ!」
駄目だ。
このままアトリに喋らせ続けるわけにはいかない。
でないと――きっと、よくないことになる。
しかし、現実は非常なもので。
僕が反論の言葉を発する前に、アトリは告げた。
「貴女は、ユウキさんに見捨てられたんですよ」
「だまれッ!!!」
叫ぶと同時。
白は目にもとまらぬ速さで、僕の制服の内ポケットに手を差し入れ。
ひゅ、と。
一挙動で、万年筆を投擲していた。
狙いはアトリの喉。
鋭い先端は、そのまま少女の喉を貫く――かに見えたが。
がきり。
硬い音が響き、万年筆は砕けて落ちた。
――歯で受けたのか。
投擲の勢いと咬合力で、硬いはずの万年筆は、無惨にも粉々に砕けている。
両者共に並ではない。もし、この二人が本気で殺し合った場合、果たして止めることはできるのだろうか。
「危ないですね。
あんまり速くなかったとはいえ、もし刺さったらどうするつもりだったんですか?
囚人同士の私闘は厳罰と聞いていますが」
「うるさい」
苦手な投擲より、直接“手を伸ばす”方が有効だと思ったのか。
白はそのまま、アトリに向かって歩を進め――
「――止めなさい!」
声を張り上げ、僕は二人の間に割って入った。
これ以上は駄目だ。
白が触れたら全てが終わる。
アトリは、白の強さを知らない。
だからきっと、こんな暴挙に出ているのだ。
それに白も、アトリの言葉で頭に血が上っているだけだ。誤解を解けば、すぐに落ち着くと思う。
「ユウキさん。貴方も言ってやってくださ――」
「黙りなさいアトリ。それ以上喋るようならこちらにも考えがあります。
白。殺し合うのは闘技場の中でだけです。それ以外は絶対に許しません」
「…………」
「……わかった」
強い口調で、いったん二人を黙らせる。
さて。
まずは、一番最初に言わなければならないことを。
「――私は、囚人闘技場王者の付き人です。
これは王者が望んでいることでもあり、私も外れたくはありません」
僕は、白の付き人である。
褒められるだけで、可愛らしい微笑みを見せてくれる血塗れ竜。
僕はこの娘を見捨てる気なんて毛頭無い。
「ですから、アトリとの約束は破棄します。
話し相手としてならともかく、それ以上アトリと関わる気はありません」
きっぱりと、そう告げる。
ぎゅ、と。白が腰に抱きついてきた。
ぐいぐいと、おでこを胸に押しつけてくる。
安心したのか、先程までの殺気は消え失せ、いつもの甘え竜に戻っていた。
「……今じゃ、コレが限界かな……?」
ぽつり、と。
アトリが何やら呟いたようだが、僕にはよく聞こえなかった。
「ごめんなさーい。囚人番号E4−934、心より反省してまーす」
先程までの真面目な口調は何処へやら。
そっぽを向いて、ふて腐れた声を上げる。
一体何がしたかったのか。
――と。
控え室の方から、慌ただしい足音が響いてきた。
振り返ると、数名の監視員と、甲冑を着込んだ兵士がこちらに駆け寄ってきていた。
「いたぞ!」
「E4−934! 直ちに我らと同行してもらう!」
先程の試合を見ていたのか。
やや及び腰で、アトリへと近づいていく。
「何? 貴方達?」
「いいから来い! ビビス様の命令だ!」
――ビビス。
アトリをこの監獄に連れてきた公爵である。
貴族内での発言力もそれなりで、中央の兵士もそれなりに動かせる立場の人間である。
「……アトリが予想以上に強かったから、か」
虐殺の見せ物として連れてきたはずが、逆に相手を惨殺してしまった。
そんな少女を、ビビス公爵はどうするつもりなのだろうか。
「……別に、鉄でも噛み千切れるけど」
ぽつり、と。
アトリが怖いことを呟いた。
露骨に後退りする兵士たち。
これじゃあ、連れて行くのは一苦労かな、と思ったが。
「素直に従いなさい、E4−934。
ビビス伯爵は、貴女を闘技場登録者として支援するようです。
ここで無駄に暴れてみせても、損するだけでしょう」
凛とした声が響いた。
兵士たちの合間を縫って。
“銀の甲冑”が前に出た。
「…………」
白が唇をへの字に曲げてそっぽを向く。
血塗れ竜にとっては嫌な相手が来たようだ。
アトリが、銀の甲冑を見つめていた。
自分に対して怯えきっていた兵士とは違うことを悟ったのだろう。
どう行動するのが得策か考え込んでいる模様。
「……はーい。わっかりましたー」
溜息を吐いた後。
両手を、銀の甲冑に向けて差し出した。
「手錠はかけません。そのまま付いてきてくれて結構です」
「……気前がいいんだね?」
「私がいますから」
「貴方、男? 女? 声だけじゃいまいちよくわからないんだけど」
「性別は関係ありません。行きますよ」
そう言って、銀の甲冑は背を向ける。
その背中に、一瞬アトリは目を光らせたが。
――隙が全く見当たらないのに気付いたようで、そのまま諦めて歩き始めた。
「あ、ユウキさん」
ふと。顔はこちらに向けずに、アトリが問いかけてきた。
「――私が王者になったら、付き人になってくれますか?」
答える前に。
白の腕に力がこもった。
腰に柔らかい感触が押しつけられる。
結局、タイミングを逃してしまい、そのままアトリたちを見送ることになった。
このとき。
白の唇は僕の制服に押し当てられていて気づけなかったが。
彼女は、小さな声で呟いていた。
「もっと殺すから。
いっぱい殺すから。
がんばって殺すから。
ぜんぶぜんぶ殺すから。
――だから、一緒にいて」
白とアトリのどちらが正ヒロインだったか、
書いてる途中で忘れてしまいました
作者様GJ
白カワイス(*´д`*)
主人公も優柔不断じゃなくてしっかりした男っぽいわ
そして再び誤字発見orz
571でビビス公爵が伯爵になってました。
申し訳ありません。
きっと、“銀の甲冑”の中の人が正ヒロインだ!
最後のせりふにぐっと来た
作者さんGJです
作者様方GJです
スウィッチブレイド・ナイフがもの凄くツボりました。
胸の奥がゾワゾワ来ます。
甲冑公爵様は無敵です―!
ついに修羅場ktkr
スウィッチブレイド・ナイフは森さんがその気になれば馨に対して
「誠意見してみいや」的な圧力をかけて関係を強引に持続させ、
ゆかりとの仲も妨害する一石二鳥な切り札を持っているけれど、
それを使うと溝が深まって恋愛方面にシフトできない諸刃の剣……
っていう状況が微妙なバランスを築いていて面白いなぁ。
血塗れ竜と食人姫は設定的に修羅場れば修羅場るほど、
当事者以外の血が大量に流れそうで惨劇の予感にwktk
そろそろこのスレも危なくなってきたかな?
乗り換える準備をするか・・・・。
いや早過ぎるだろ
前スレだってまだ埋められてないんだぞ?
480KBくらいまで待ったほうがいい気がする
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ アレから十月十日
ちょっと長いかな
いっそ
[嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 十月十日]
の方がすっきりかも?
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 十戒
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 十に氏ね
血塗れ竜と食人姫、身悶えしつつ続きをお待ち申し上げます。
本性現したアトリ、すごくイイ(*´д`*)
投下します
――意識の覚醒と共に迫り来る強烈な痛み。
あの日から、その鈍痛は一日も休ませてくれることなく、もう習慣化し始めてい
た。どうやら今日も例外には漏れなかったようだ。
開かれたカーテンから覗かれる空は既に夕闇に覆われ、ますます酷くなる頭痛と
相俟って、陰鬱な気分にさせてくれる。時間の感覚が狂い始めて、今日が何日で何
時なのかも、良く分からない。
ただ、道路を歩く華恋の姿が見えることから、もう俺には縁のない陸上部が終わ
る時間帯なのだろう。
由姫の消息が分からなくなって、もう十日が過ぎた。
正確には、俺が行方知れずになった由姫のことを認識してから今日で八日目にな
る。実際に由姫が姿を見せなくなって二日間、俺は由姫の家のベッドで強力な睡眠
薬を飲まされ、眠っていたらしい。
見つけてくれたのは妹の華恋で、何の連絡も無しに二日間も家に帰らない俺を心
配して「友達の家に泊まる」という俺の言葉から、俺のクラスメイトで仲も良かっ
た由姫を連想して電話をした後、何度やっても音信不通だったので来てくれたとの
ことだ。
正直、由姫の家に泊まったあの夜のことは、あまり憶えていない。
華恋を、妹を妹として見ることができなくなってから、悩んで、苦しんで、諦め
ようとして、そんな時に由姫から告白を受けて、愛を実感できないまま惰性で付き
合う事になって……あの日が、最初の恋人らしい恋人になろうと決意した夜だった。
あの日、俺は何をした……?
睡眠薬で長い間、意識を混濁された後遺症なのか、断片的な情報しか引き出せない。
激しい律動と揺れる肢体。乱れる髪と快感に歪む表情。卑猥な水音と皺を作るシーツ。
情事を連想させるには十分な情報。だけど――。
真紅に揺らめく何かが、頭にこびりついて離れない。
あの夜、何があった……?
間違いなく、由姫の失踪には俺が関係している。
そのことが罪の意識になって、戒めとばかりに八日間、激しい頭痛が続いている。
横たわるベッドも、眠る度に吹き出てしまう汗の臭いが染み込んでいて気持ちが悪い。
我慢できず、俺は大儀そうに身体を起こした。
それとほぼ同時に部屋の扉が音をたて、開き、嗅ぎ慣れた香りが鼻腔を擽る。
それは紅い、何か……。
……真っ赤な……バラ……?
「おにいちゃん……」
「…………」
入ってきたのは紅いバラの花束を手にした華恋だった。
扉を後手に閉める。
「起きたんですね」
「……おはよう」
「おはようございます」
俺の今の気分とは裏腹に、華恋は優しい笑みを浮かべて言ってくれた。
あれから、華恋は特に変わった様子を見せていなかった。
いや、変わったこともあるのだが、不自然な程、行方不明になった由姫のことを甘受
し、いつも通りの日常を過ごしている。
だけど、そうしながらも、こうなった俺を毎日心配して部屋に来てくれている。いく
ら睡眠薬を飲まされていたとはいえ、由姫の家のベッドで眠っていた俺を警察が疑った
時にも、必死に庇ってくれたらしい。
――無理をしている。
最初の頃はそう思っていた。俺のために、俺を心配させないために自分を殺している
のだと。華恋は由姫のことを慕っていたし、何より知り合いが失踪したと聞いて普通に
している方がおかしい。
……その「おかしい」を、俺は華恋に感じていた。
「お腹、空いていますか?」
「いや、大丈夫。それに減ったら自分で作って食べるから」
「そうですか?」
少し残念そうに呟いて、身体を寄せてくる。
「華恋」
「はい?」
「…………」
これが華恋の変わったことだった。
必要以上に身体をすり寄らせてくる。
素直になった……とは少し違うかも知れない。まるで今まで我慢してきたものを爆発
させたように甘えてくる。
その華恋の表情には悲しみの色など微塵も感じさせない、幸せそうな笑顔が映し出さ
れていた。
「もう、何ですかぁ?」
以前は絶対にしなかった、媚を売るような声の調子で言いながら顔を覗き込んできた
華恋に、我にかえった俺は華恋の手にしているバラの花束に視線を寄せた。
「……それは?」
「バラです」
見れば分かる。
「そうじゃなくて、それ、店のバラだろ。どうして持ってきたんだ?」
「ん〜、プレゼントです」
そう言って、手にした花束を渡してきた。
視線を寄せると、バラの深い赤が強烈に目の網膜に焼き付けられ離れず、バラの香り
が鼻から通って脳髄を痺れさせるような刺激を感じさせた。
――分からない。
最近の華恋の行動が全然理解できなかった。
プレゼントをされるような日でもなければ、行いもしていない。
疑問を口にしようと開く前に、先に華恋の声が聞こえてきた。
「紅いバラの花言葉……知ってますか?」
――あぁ、なんだ、そうか。
自分でも驚くほど早く、華恋の言葉の意味に気がついた。
何で気付かなかったんだ。簡単な事だったんじゃないか。
紅いバラの花言葉、花屋の息子だ。昔のように知らないわけがない。
いや、昔から知らないフリをしてきただけなのかも知れない。
気付けなかった想い。
歪みきった想い。
間に合わなかった想い。
許されない想い。
だけど、何より望んでいた想い。
もう、手遅れになってしまったけれど……それでも。
どうやらお互い、捨て切れそうにないらしい。
「それじゃ、おにいちゃん、私部屋に行きますね」
「……待てよ」
部屋を出ようと扉に近寄った華恋に、静止の声をあげた。
「え?」
困惑する華恋。
あの日から、俺から華恋を呼び止めることなんてなかった。
「こっち」
「あ、はい……?」
手招きをする俺に、おずおずと近寄ってくる。
俺がベッドに腰掛けるように言うと、華恋は素直にそれに従って座った。
ご褒美とばかりにその華恋の頭をポンポンと優しく撫でつけてやる。
昔から少しも変わってない、しなやかで柔らかい髪だ。
華恋は小さく、「あっ」と声をあげ呼吸が荒くなったのを感じたが、抵抗はせず、
黙って受け入れたままだった。
最後にもう癖のようになった、流れに沿って頭を撫で、髪を整えさせる作業をする
と、華恋の頭からゆっくりと手を離した。
「おにい……ちゃん?」
「ちょっとじっとしてろよ……」
俺はそれだけ言って、花束からバラを一輪だけ取り出し、髪の中に挿しいれた。
綺麗な、紅いバラを。
いつかのように……。
だけどあの時とは違う。後戻りのできない選択をしようとしている。
一人の少女を犠牲にして、地獄に落とすようなことをしている。
俺が引き金を作って、おかしくなった華恋が引いてしまった。
でも、もうどうでも良い。
どうせもう全部壊れてしまってるんだろう?
「目印だ」
振り返った華恋は、誰よりも綺麗で、誰よりも幸せそうに微笑んでいた。
忘れてはいけない事を忘れて。
想ってはいけない人を想って。
こんな結末を招いてしまった。
どれだけ恨まれたって構わない。どんな罰でも受けるし、それだけのことをしてる。
だけど今だけは……こいつの隣で華のように可愛らしい笑顔を見続けさせてくれ。
華は、真っ赤な『血』をつけて、いつまでも俺に寄り添っていた。
【fin】
華恋((((((((*´Д`)))))))ガクガクハァハァブルブルハァハァ
怖くもあり素晴らしくもある依存ですな
怒涛の神ラッシュの中、本当に恥ずかしいのですが完結です。
結局、新スレ記念で書いたのに書き終わった頃には新スレがもう捨てられるだなんて……orz
もう読みきりはしばらくこりごりです。
『花言葉補足説明』
白いバラ 尊敬、純潔
黒赤色のバラ 深い憎しみ(?)
紅いバラ 死ぬほど恋焦がれています
600 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 09:53:07 ID:yExse8iZ
/H\
('(0M0∩_ 俺をどこかのスレに送ってくれ。
/ヽ .〈/\ お別れの時にはお土産を持たせるんだ。
./| ̄ ̄ ̄|.\/
| .カラミソ..|/
 ̄ ̄ ̄
現在の所持品: 辛味噌 バードン ゆかなの生写真 枕営業検出用リトマス試験紙 PS2
MGガンダムMK−Uver2.0ティターンズの腰パーツ PC130B(ポリキャップ)
加藤あい温泉入浴DVD ヅラ(姉葉秀次モデル) カブトゼクター ガンダムA5月号 ハツカネズミ
はも竹輪 焼き銀杏 マナライフ50
/H\ _
('(0M0∩_ ・゚' '´/ ,、ヽ
・゚' * /ヽ゚' *.〈/\ ____ i (ノノ"))i
・ ./| ̄ ̄ ̄|.\/ {l,、,、,、,、l|l=i l| "ワノlOi!
| .カラミソ..|/ ・ リ⊂)允iソ
;* (( く/_lj〉))
・゚' (./J
お別れなんて、させません
――奏
狂犬はためらう事なく、真っ直ぐ私たちの所へと向かって来る。その目には殺意が満ち溢れていた。
敦「アブねぇ!」
敦也君がえりっちを庇う様に、狂犬の飛び付いた軌道からそれる。確かに、足が不自由なえりっちを庇うのは賢明な判断だが………
(私だっているのよ…なんで私も助けてくれないの?…)
そんな黒い感情がこんな時にも浮かぶ。私は庇ってもらえなかった、助けてもらえなかった。私も足を怪我したら守ってもらえるかな?
グガァ!
再度狂犬は敦也君に飛び掛かる。だが、次は逃げずに、右の拳を犬の頭に叩き付けた。すると……
ギャインギャイン!
予想以上にのたうち回る狂犬。その眉間には、深々とガラスが突き刺さっていた。シャンデリアの破片だ。いつの間に拾ったのだろう。
狂犬はそのまま大量の血を流し、ビクビクしながら動かなくなった。白目をむき、絶命していた。
敦「はあ……死んだか。……大丈夫か?絵里。」
絵「う、うん、ありがとう。」
またえりっちを気遣う。足が不自由だからってそれはないよ。………私だって!
「あっちゃん…ドウシテ?」
その時私の思いを言葉にした人が居た………
――美保
信じられなかった。あっちゃんが私ではなく、他の女の子を庇ったのが。私だって危なかったのに。
敦「大丈夫か?絵里。」
まただ。まただ。またあっちゃんは私以外の女の子を心配している。その子だって殺人鬼かもしれないのに。
そうよ…なら、私が守らないと……私の近くに居させないと。
美「あっちゃん…ドウシテ?」
フラフラと近付き、あっちゃんの腕をつかむ。この安堵感を誰にも渡したくない。あっちゃんが守ってくれるのは私だけ!
美「ドウシテ?ナンデ!?……絵里ちゃんだけ庇うなんて……私も、私も襲われたんだよ?怪我しなかったかって…心配してくれないの?……そんなにこの娘が足手まといなら、置いてくればよかったのに!!」
それで……殺人鬼に殺されちゃえばいいのに。もう黒い感情はおさえがきかない。
美「絵里ちゃんはホールに戻って一人で待ってて。もう私のあっちゃんに守ってもらえるだなんて甘い考えでついてきたら迷惑……足手まといなの!!」
敦「美保!」
パン!
……はたかれた。アッチャンに初めて叩かれた。ナンデ?私、間違ってないのに!!あの女が邪魔なだけなのに!
――明
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
あの勢いのまま走りきり、狭く、暗い部屋まで入ってしまいました。…でもここなら大丈夫。殺人鬼が混じっているかもしれない部員も此所がわからないだろうし。
なにより鍵がついているんだから、安心です。一呼吸して、落ち着こうとする。
「うぅ……」
さっきのグロテスクなビジョンが瞼の裏に浮かんで来ますが、なんとかふり払う。もう、信じられる人なんていない。
帰りが遅くて親が心配し、救助隊の人が来てくれるはずだ。それまでここでたえていればいいんだ。
「よしっ…大丈夫。大丈夫。」
そう前向きに考えると、気持ちが楽になる。ただじっと待つのも辛いので、近くにあった本棚から何冊か抜き出し、読もうとする。と、その本の間からなにか紙切れが落ちた。
拾って見るとそれは、おそらくこの洋館の地図だった。持っていれば便利だろうし、一応ポケットにしまった。
「よいしょ……これ、なんの本だろう?」
埃のかぶったカバーを払うと、『Diary』の文字が浮かんだ。
「日記?……この洋館の人の?」
悪い気もしたが、今は好奇心が勝っていた………
>>604 GJ!
ヤンデレスレからきたのでわからない人もいると思うので
いちようあらすじ説明してもらったほうがいい気がしますが……
あと投下終了宣言してもらえると助かります。
お姉ちゃんは心が広いから浮気ぐらい大目に見てあげる。
どうせ遊びなんでしょうあの女は。
わかってるの、弟君はお姉ちゃん以外好きになんてなれるはずないもの。
ううん、怒ってなんてないわよ。ペットの犬相手に嫉妬する人間なんて居ないものね。
だから大丈夫よ。
うん、そうだよね犬とか猫って可愛いし触りたいのはお姉ちゃんもわかるよ。
でもね――
投下しますよ
兄さんが告白を受けている、その事実に私は気が狂いそうになった。無謀にもそんなこ
とをしているのは織濱さん、この高校での有名人。天衣無縫とはよく言うけれども、だか
らと言って何をしても許される訳ではない。実際彼女はこの高校の女王のように扱われて
いるけれども、それとこれとは話が別だ。
止めなければいけない。
私の血が、それを叫んでいる。いつだって兄さんは私に優しくしてくれた、これからも
きっとそうだろう。いつまでも永遠に、私の側に居てほしい。それだけ、たったそれだけ
の願いなのに織濱さん、いやさん付けどころか名前で呼ぶのももったいない。あの雌豚は
そんな些細な願いさえも摘み取ろうとしている。
そんなのは、許せない。
兄さんはいつまでも私の兄さんなのだ。
思えば、自然に体が動いていた。
快音。
その音と共に、開いた筈の扉が目の前に現れる。それを行ったのはもう一人の邪魔な雌
豚で、それを見る度に毎回苛々してくる。本当に毎回毎回、何故私の邪魔をするんだろう。
兄さんは優しい人だからいつも姉さんをかばうけれど、それに突け込んでいつもいつも、
それに甘えて困らせてばかりいる。いつも優しく素敵な笑顔の中に苦笑が混じっているの
が分からないのだろうか、いや分からないんだろう。天然を通り越してもはや馬鹿の世界
にどっぷりと脳や脊髄まで浸っている姉さんは、そんな兄さんの苦しみなど分からないに
決まっている。気が付かないどころか、気付こうとすらしていないんじゃないだろうか。
そう考える度に、兄さんがかわいそうという思いと、姉さんに対する殺意が湧いてくる。
兄さんも、そんな馬鹿な女は切り捨ててさっさと私と二人きりになれば良いのに。
いけない。
一瞬で兄さんとの幸せな未来を想像した私は、その魅力的な世界に囚われそうになった。
私もまだまだだ、決まりきっている栄光に溺れるなど、修行が足りない。確実な未来だけ
れども、そんなので満足していては兄さんに申し訳ない。もっと幸せにならないと、更に
兄さんには幸せになってもらわないと。
いけないいけない。
再び快楽の虜になりそうだった自分を戒める。これでは勝手に布団に入り込んで満足し、
兄さんに迷惑をかけている馬鹿な姉と同じになる。もし相手が自分だったら兄さんも幸せ
だろうけれど、しかし私は我慢する。結ばれるまではお互いに慎みあうのが、たしなみと
いうものだ。兄さんと結ばれるにあたって、これは大切なもの。
そう自分に言い聞かせながら、今度はまともに扉を開く。姉さんも今回はまともだった。
姉さんは勢い良く雌豚へと向かっていく。兄さんがそれに苦笑しているけれど、今回は
仕方がない。何しろ、家畜に告白されているのだ、それは表情を曇らせるというものだ。
こんなときばかりは、あの馬鹿な半畳も少しは認めても良いように思える。
結果、雌豚は失礼な視線と共にこちらを尋ねてきた。姉さんの馬鹿な意見は耳障りだが、
聡明な兄さんはきちんと訂正してくれる。私の意見も、きちんとフォローしてくれた。今
はまだ在学中だし、大事にするような馬鹿な真似はしない。優しいから姉さんが取り乱さ
ないように考えて喋るし、変な印象を与えるようなこともしない。その気遣いに私は誇り
と嬉しさを覚える。それとも、周りが騒ぎ立てて私に構うのが嫌なんだろうか、そうに違
いない。意外と独占欲が強いんですね、でも私はその方が嬉しいし、私も兄さんしか見え
てないから大丈夫ですよ。安心して下さい。
しかし、どんなに兄さんが立派な方でもこの雌豚はどんな方法を使ってくるのか分から
ない。なにしろ動物だ、まともな思考回路の人間では想像もつかないようなことをしてく
るだろう。もしかしたらシンプルに、姉さんのように無駄に大きく
て下品な乳で誘惑してくるのかもしれない。兄さんのように高尚で潔癖な人なら大丈夫だ
と思うけれど、一応警戒するに越したことはない。それが未来の妻の役目というものだ。
取り敢えず兄さんの質問のフォローをすることにした。内助の効、というのもあるが、
嫌々聞いている様子の兄さんにはこれ以上の負担をかけたくなかったのが一番だ。優しい
兄さんは、人の意思を踏みにじろうとはしない。それが、どんなに嫌な相手であってもだ。
美徳とは思うけれど、少し直してほしいとも思う。
雌豚といえば、今時宝塚の人しかしないようなポージングでうっとりとした表情をした。
正直気持ち悪いのでさっさと消えてほしいと思う、兄さんもそう思っているに違いない。
表情が、その事実を如実に物語っていた。
口から出てきた言葉は、一週間前。
それは、私にとって一種の記念日だ。初めは兄さんに引っ付きまわっている呑助を殺そ
うとも思ったけれど、兄さんと一緒に愛でていると安らいだ。今はまだ高校生なので子供
は産めないが、その子が二人の愛の結晶に思えてきた。今にして思えば、今はあれは子供
を持てない私達に対する神様からの贈り物だったのかもしれない。
案の定、雌豚の答えも呑助がらみだった。携帯の待受を見て、頷いている。だが今はそ
んなことはどうでも良い。一週間も間を開けて、それなのに愛しているなんてどんな了見
なんだろう、その神経が知れない。
思ったらそのまま口から出てきて、返ってきたのはつまらない言い訳だった。
本当に、この雌豚は。
あまつさえ、再び兄さんに求愛行動をしてくる。
思わず手が出そうになったとき、既に姉さんが突き飛ばしていた。いつもの行動は気に
食わないが、兄さんに付く悪い虫を払うヤジや、こんな暴力だけは認めている。
それに便乗する形になったのは嫌だったが、つい口から本音が出てしまった。
だがモラリストな兄さんは姉さんの行動が気に食わなかったらしく、振り向く。それと
雌豚が立ち上がるのは同時、偽善的な言葉を吐くと一方的に昼食を一緒にとる約束をして
教室から出ていった。
数秒。
兄さんは吐息をすると、座るように指示をしてくる。下着はいつ兄さんに見られても良
いように、寧ろ見てもらうためにいつも気を使っているが、他人に見られそうになるのは
嫌だし、そもそも計算外だった。それに気が付いて注意してくれる
兄さんはやはり優しい。それに、兄さんも他人に見られるのが嫌なのだろう。それとは逆
に、よほど姉さんの行動に腹が立ったのか、初めて学校でお説教が始まった。
お説教と言っても、姉さんに対する注意と私との将来に対する真摯な言葉だけだったの
で幸せだった。兄さんの美しい声でそんなことを言われて少し濡れてしまう、それも仕方
のないこと。終わった後も腰砕けになった私を気遣い優しく立たせてくれたし、あの雌豚
も祝福の言葉を私に向けた。
それでも私の幸福は止まらない。
邪魔者が二匹居る食事も、問題なし。聞けば弁当もあの雌豚が作ったものではないらし
いので妙なものは入っていないようだし、そもそも雌豚の弁当には手を付けてもいない。
兄さんはやはり私が一番のようだ。
美味しそうに私の作ったお弁当を食べてくれている。
唾液の混じった炊き込み御飯。
愛液の入ったダシ巻き卵。
その他にも色々、全て私の愛情のこもった自信作。
「美味しゅうございました」
兄さんのその一言で更に濡れてくるのが自分でも分かる。
自分でもはしたないとは思うけれど、それも兄さんが魅力的だから。
責任、とってくれますよね?
今回はこれで終わりです
途中まで凡ミスしましたが、今回は「3虎」ではなく「妹虎」です
管理人さん宜しくお願いします、すみません
あと、昨日せっかく有給取ったのに1日自転車乗って市内一周したせいで超筋肉痛('A`)
>>614 愛液いりの弁当ハァハァ。
いい変態っぷり!!
このままつきぬけてほしい
キモ妹イイヨイイヨー(*゚∀゚)=3ハァハァ
うはwwwwやべえwwGJ
作者様GJ!
妹殿が想像の範疇を超えたキャラで
作者様の技量に感謝、こんな良いものを読ませていただけるとは・・・
姉の方の心境もあるのでしたら楽しみにしてます|ー゚)
翌日。
山道へと続く街の西口、そこで今回の仕事の依頼主と合流した。
ベイリン傭兵旅団の七名と、俺、団長を含めた計九名で護衛に当たる。
「積荷は何なんですか?」
俺は荷台に被せられた布の隅を捲って馬車の御者に尋ねた。中にはいくつもの樽が載せられている。
「火薬、だよ」
「げっ……じゃあ火の気はヤバイですね」
驚いて荷台から飛びのく。
どうりで報酬額が高いわけだ。山賊の出る山道を火薬の積荷を護衛しながら通る。骨が折れるな。
後でマローネには注意した方が良さそうだ。
「ぅ……」
マローネの姿を求めて回りを見ると団長が荷台に手を着いて顔を蒼くさせていた。
「大丈夫ですか?」
「あぁ…ウィル…平気です。情けないですけどただの二日酔いですから。
実は昨日ちょっと飲み過ぎまして……」
照れて笑う団長。
実は…って、昨日俺に絡んだこと覚えてないのか。
昨日のことは俺の胸の内に閉まっておこう。
あんな可愛……いや自分がどんな酔い方したか知らない方がいいだろう。
「お、お大事に…」
団長から目を離してマローネを捜した。
…いた。少し離れたところでマスケットをいじっている。
どうやら銃の調整をしているらしいマローネに駆け寄って声をかけた。
「積荷は火薬らしい。
マローネ、気をつけろよ。引火したら終わりだ」
「ん、わかってる…」
生返事。ずっとこんな調子だ。
落ち込んでいるのかそれとも何か考え事をしているのか…
どちらにせよ、元気が取り得のマローネのこんな姿は見たことがない。
これは師匠の言うとおり彼女をちゃんとフォローしていた方が良さそうだ。
「気分が悪いんなら俺か師匠に言えよ?」
黙ったまま二丁め――――予備の方の銃の調整を始める。
「…マローネ?」
「ねぇ、お兄ちゃん……」
マローネとは思えない覇気のない声。顔も俯いていてどんな表情なのか確認できない。
「ちゃんと、守ってあげるからね」
パチンと火薬の乗っていない火皿の上の当たり金を火打石が叩く。
「俺のことはいいから。それよりお前はちゃんと俺の後ろにいるんだぞ?
約束通り、お前が弾込めしてる最中は敵に指一本触れさせないからな」
そう言うとやっと顔をあげた。今日初めて見た彼女の顔はやや驚いた表情だった。
「ありがと」
少しだけ元気を取り戻したのか俺に笑顔を見せてくれた。
うん、マローネはこうでないと。
ふとこちらの様子を窺っていた師匠と目が合う。
師匠は「やれやれ」と俺に肩を竦めていた。
「よし…じゃあお前ぇら、準備はいいな?」
師匠の集合の号令と共に俺たちは出発した。
――――――――・・・・・
「出てこないですね」
俺の隣を歩いていた団長が呟く。
「……このまま街まで無事に行けたら有難いんですけどね」
例の山賊が出るという山道に入って一時間。一向に姿を見せない。
今歩いているところは左が崖で右側が断崖絶壁になっており、おまけに道幅が狭い。
馬車の隙間には人一人がやっと通れるほどの隙間しかない。
なので師匠を始めマローネ以外の旅団のメンバーは前方を、
団長や俺、マローネは後方警戒の陣形で山道を歩いている。
だけど流石に警戒しっ放しで肩が凝る。いい加減、みんなの集中が切れる頃だ。
マローネが心配で少し後方を歩く彼女の様子を見た。
銃を両手で抱えたまま、目は少し虚ろ。団長の方を見ているようだが焦点が定まっていない。
うーん…やっぱ変だな。
俺は見かねて、歩く速度を落としてマローネの隣に移動した。
「緊張してるのか?マローネ」
「あ…お兄ちゃん」
俺に声を掛けられるまで気付かないとは。これは相当調子悪いんじゃないのか?
「大丈夫だよ。師匠だっているし、俺もついてる。
それに団長は百戦錬磨のアリマテアの英雄だぞ?……二日酔いだけど」
頭を片手で押さえている団長に目を向けてほんのちょっとだけ不安になった。
「だから不安なんだよ…」
団長を見ながらぎゅっと銃身を掴んだ。
「え?」
「…なんでもない。お兄ちゃんは持ち場に戻って」
マローネに言われて仕方なく団長の元に戻ったが、結局彼女の瞳は虚ろなままだった。
道幅の狭かった険しい山道を抜けると、道幅が広くなり傾斜も緩やかになった。
先程とはうってかわって緑も生い茂っている。
「マローネさん…ですか?」
しきりに後ろを振り返っていたら団長に気付かれてしまった。
「えぇ。今回の仕事の内容がちょっと危険なものですから気になって……ん?」
団長に顔を向けようと首を動かすと。
彼女のやや斜め前方――――――つまりは積荷に被せてある布が不自然に動いたのが見えた。
見間違い、じゃない。
「どうしま…」
(しっ!団長、前にいる師匠に言って馬車を止めてください)
団長の言葉を遮って小声で言う。
彼女もそれに不穏な空気を感じ取ったのかすぐに先頭を歩く師匠の元まで黙って走って行った。
……積荷に誰かいる。
こんなところに隠れてるってことは街からずっと此処にいたのか?
俺は布が動いた辺りに意識を集中させながら剣を抜いた。
馬車がゆっくり停車した。
師匠が合図してくれたのだろう。皆が荷台を取り囲んで配置につく。
師匠に目配せしながら荷台に近づいた。
「……出て来い。黙って出てくれば危害は与えない」
剣を構えつつ布の向こう側に隠れているであろう人物に警告した。
緊張の糸が張り詰めた沈黙。やがて。
「あ、あはは……ウィリアム…」
布を捲くって現れた、引き攣った笑いを浮かべる少女。……姫様だった。
「はぁ〜……こんなところで何やってるんですか」
脱力して剣を収める。呆れて怒る気もしなかった。
警戒していた周りの皆も呆れて持ち場に戻っていった。
「す、すまぬ…ウィリアム……
マリィだけ一緒なのはズルイとおもったのじゃ……」
今回は流石にやり過ぎたと感じたのか縮こまって俺に謝った。
「まったく……これっきりにしてくださいよ?
次、こんなことしたらいくらなんでも怒りますからね?」
荷台で小さくなって俯いてしまった姫様を降ろした。
「ウィル、姫さんから目離すなよ」
師匠も苦笑いを浮かべて馬車の前方に戻った。
「俺の側を離れないでください、姫様。
団長、フォローお願いします」
俺一人で姫様とマローネ両方を見ているのは辛い。
団長にも力を貸してもらえるよう願い出た。
「わかりました。任せてください」
「マリィもすまぬ…」
「え…?い、いえ」
姫様に謝られて面食らう団長。姫様が真剣に団長に謝るなんて。
相当堪えたらしい。まぁ確かに今回は強く反省してもらわないと。
物騒な場所を姫様連れて歩くのはリスクが高―――――
ヒュッ
馬車が再び動き出そうとした刹那。
何かが風を切る音が聞こえた。戦時中よく聞いた音だ。これは……
ヒヒーンッ!
直後に馬の悲鳴。
矢が馬の首に刺さっていた。
「出たぞーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!!!!」
誰かの叫び声につられて、木々の影に目を凝らすと。
何人もの男たちがこちらに向けて弦を絞っていた。
ここまで。
この後の戦闘シーンが長くなりそうです…ごめんなさい。
GJ!二日酔いの団長、虚ろな瞳のマローネ、足手まといの姫様、出番すらないシャロン
これからどうなるのか!?
* * *
『モカ』
考え過ぎ――の筈。
今頭の中で転がっている問題は三つ。
一つは涼子が私達の事を何も言ってこないこと。あの時の「私のもの勝手に取るな」と言わんばかりの視線を向けていた事実はなかったかの様に全く触れて来ない。
ここまで何も言われないと返って奇妙過ぎる。単に一晩寝たら落ち着いたから我関せずって態度とっているだけかもしれない。
これは別にどうでもいいと思う。今頭の中を占有している問題はここから。
士郎君があの子と仲がいい事。前から学校内でよく一緒に歩いていたりはして、遠めにいい雰囲気って感じはしてた。
でも、私と付き合う少し前から彼女と一緒にいるのを見かけなくなっていた。そこから、ふられたって話を聞いた時彼女の事だと思っていた。
そして最近その彼女との関係がビミョーって言うか妙な勘繰りいれたくなる感じがしてくる。士郎君の私への応対を見る限り本当に彼女とは仲のいいだけの友達――の筈。
そして最後に――彼女が私の後ろに立った時の気配。今日の学校の下り階段の前、そして帰りの駅のホーム。その時殺気というか何と言うかネガティブな気配を感じた。
そして場所は後ろから突き落とせば冗談に済まない場所。階段はもちろん、駅のホームならタイミングによっては――いや、同じ学校行っているんだし後ろに立つなんて偶然でも十分過ぎる程考えれる。
元カレとヨリを戻そうかどうか考えていたところ、元カレはさっさと別の女みつけたんで、元カレに対しては友人として踏ん切りをつけようとしているが、
現カノジョが目に入ると何をするわけでもないがやっぱり妬ましい気持ちが出てくるって所だろう――そう頭の中で強引に決着を付けた。
嫌な考えヤメヤメ。士郎君と電話でもして忘れよう――と思った矢先に猫の鳴き声がした。窓の外に目をやれば一匹の白猫がいた。赤い首輪がついている、飼い猫だ。
暗闇の中、窓からの光に照らされた白い体に、猫の特徴とも言える目が輝いていた。
しばらく窓越しに見つめあった後、窓を開き手を差し出していた。
「ほーら、おいでおいで」
白猫は逃げはしないが、手に近づいても来ない。ただこちらを見ているだけ。
愛想悪い子だな。何かエサないとダメかな。
「ちょっと待っててね」
待つかどうかはわからないが、とりあえず声はかけておいた。
数分足らずの間だったが白猫は行った言葉律儀に守ってくれたのか、それとも別にやることがなかっただけなのか待っていてくれた。
「かもーん」
白猫の目の前で煮干ちらつかせると、警戒しながらもゆっくりと近づいて煮干を咀嚼し始めた。煮干がなくなった後、まだ少しでもその味を堪能したいのか私の指先を猫独特のざらついた舌で舐めてくる。
フム、何か食べ物で――これは使える!
* * *
『智子』
鏡の前でミカが私の髪を念入りに梳かしてくれている。
「ごめん、急に泊りたいなんて言ったりして……」
私の両親は帰りがいつも遅い。帰って来ない日だって珍しくない。お互い自分の仕事の世界だけで生きている人間。
今にして思えば結婚して私が生まれてきたのが不思議なぐらいの。放任主義を通り越して無関心に近い親については物心ついて以来そうだったので別に今更何か言おうとは思わない。
おばあちゃんが私の育ての親だったから、でもそのおばあちゃんは去年亡くなった。
家に帰れば私は独りになる。そして独りでいると変な事考えそうになるから――士郎の事、あの人の事――
「ううん、別にいいよ」
鏡に見えるミカは何事も無いかのように笑っている。
私の心の奥底の黒いものに気づいていないから笑っていられるのかな――
いやミカはいつだって笑っていた――どうしたらこんな風に笑っていられるんだろう。
* * *
『士郎』
モカさんからメールが来た。件名及び本文に「にゃー」の一言。
どう返信していいか全くわからない。電話をかけようかどうかしばらく迷った挙句メールで「にゃー」と返した。
「お風呂空いたよ」
後ろから頭を軽く叩かれて、ようやく姉が風呂から上がった事に気がついた。
「あ、うん、わかった」
そう返事してから振り返ればタオルで髪を拭いている姉ちゃんがいた。
綺麗だ――心が自然に呟いていた。
しっとりと潤いを含んだ黒い髪、それから目を離すことができない。
こちらの視線に気づいたのか何故か姉ちゃんが笑っていた。あわてて視線をそらした。
「すぐ入るから」
逃げる様に風呂場へと向かっていた。
ついこの間まで全く意識していなかったそれがある。昔はよくクロノキが占有していた洗濯籠――の中のもの、女物の下着。今家には二人しかいない。当然誰のものかもわかっている。しかし何故か視線が行ってしまう。
「そういう関係はもう終ったんだ」そう自分に小さな声で言い聞かせた。
風呂上りに携帯を見ればメールが来ていた。今度は「にゃにゃー」の一言だった、
――どう解釈すればいいんだろう。よくわからないから「にゃん」と返信した。
リビングは既に暗くなっていた。姉ちゃんは自分でスキンシップが足りないとか言ってた癖にさっさと自分の部屋に帰ったんだろう。
俺も寝よ。そう思い自分の部屋へ向かっていた。
部屋に入ると部屋を暗くし、布団へ潜りこもうとしたら姉ちゃんの体に足をぶつけた。
「姉ちゃん、ごめん」
慌てて足を引っ込めながら姉ちゃんに謝る。
姉ちゃん?
薄暗い部屋の中をベッドの中から見回す。ポスター、本棚、その他色々あるがオレの部屋に間違いない。
「ね、姉ちゃん?」確認するかのように声をかけていた。
「なに?」
やはりそこに姉ちゃんが居た。
「ここオレのベッド……」
何か別に言うことあった様な気がするがそれ以外言葉がなかった。
「あんた、怖くて寝れない時、いつも私の部屋来たでしょ? だから今日は私から来たの」
今別に怖くないし――いや、そもそも最後にそんなことしたの随分昔だし――じゃなくて――
「え、と……別に怖くないから……」
「言ったでしょ――スキンシップ」
いや、普通の姉弟でもこの歳になると一緒に寝ないと思う――多分。
「髪の毛触っていいよ?」
どうしたらいいかわからなくなったので姉に対して背を向けて寝ようとしたところ、その言葉が出ていた。
「あ、うん――」
寝返りをうって姉ちゃんとなるべく視線を会わないようにしながら、警戒している猫がエサをとりにいくように恐る恐る手を伸ばしていた。
そっと指先に絡める。柔らかい、それでいて弾力がある、記憶の中にあるそれよりいい感触だった。
そうこうしているうちに理性が押さえつけている男としての本能がムクムクと起きかけている。
知っている。今目の前にあるのは女の体だ、男が求めてやまない快楽を与えてくれる体だということを。
「もういいの?」
「――うん」
よくない事を考え始めたのでそこから逃れるために、髪から手を離し姉に背を向けていた。しかし背を向けたからといって今同じ布団の中にいる存在が夢幻の如く消える訳ではない。むしろ返って意識してしまう。現に後ろの息遣いがはっきりと聞こえている。
「そっか――」
溜息にも似た声の後、手足が伸びてきていた。両腕でしっかり掴まれ、足でも掴まれている――まるで抱き枕だ。
今背中に感触がある。もし体の中の神経を移動できるなら今間違いなく七割はそこに行っている。背中に当たる柔らかい布地の下のまた別種の柔らかさをもった存在を味わいたいと。
「さっきあんたがしたい事したから、今度は私の番」
スキンシップ――心の中で呪詛の様に呟く。
<チラシの裏>
迷走かます前にサクッと終らせたかったんだけどな…
</チラシの裏>
姉キタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
さて、ミカまで出てきたわけだが一体どうなるやら(*´д`*)
ここ3週間ほど監禁されててこのスレ覗けなかったんだが……
な ん か い ろ い ろ 来 て る ! !
まとめサイトに張り付いてくるぜ!
姉がデレ期に入ったが、モカさんの「にゃー」にはかなわない。
いったいなにを思いついたのだ。
ち、ちくしょう……!!
俺は…俺は…姉さんとモカさんのどっちかを選ぶなんて……出来ねえッ!!
涼子姉ちゃんやっと動いてくれたッ!!!
黒髪フェチにとって今回の描写はたまりません
そして今になってミカにちょっと心引かれ始めてる……
あと、チラシ裏をシベリア!氏へ
オイラは不義理の時からミカたん一筋
だから不義理のエンディングではマジ泣きしかけたし
智子が死ぬほど妬ましかった
姉ルート、いやモカさんルートか?が終わったら
ミカエンド書いて欲しいしなと思ってたりして
毎回運命の巡り合わせでふたりは出会うも、無念にも最後まで結ばれることは
叶わず、次に生まれ変わったときこそ…といった輪廻を繰り返す物語もまた良し
>>631 ならば両方選らべばいいだけだ
ただ刺されても死なない体、調教、密会のいずれかのスキル手にしてからやろうな
それではあらすじを……指摘サンクス
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ある日、山岳部は部員の親戚の家である、洋館に招かれた。敦也、兄妹の翔太と由良、美保、奏、絵里、双子の光と明。
彼らは引率の馬場先生にバスで山奥の洋館へと向かった。だが、途中でバスの調子がおかしくなり、仕方なく歩いて行くことに。雨が降りながらの中、ようやくだどりつくも、いきなり正門の庭で、血に飢えた様な狂犬に襲われる。
なんとか無事に洋館に逃げ込んだものの、先生は怒り、洋館の人を探しに行く。みんなも自由に洋館を探索し始めるが、そこには命を落とす様な数々の罠が待ち構えていた。
罠を回避し、みんなが玄関ホールに集まった時、落ちて来たシャンデリアには惨殺された先生の死体が巻き付いていた…………
異様な雰囲気の洋館。彷徨う殺人鬼。その殺人鬼には、ある一人への異常なまでに深い愛情があった。その愛する人と二人きりになるまで、殺人は止まらない………
疑心暗鬼に陥る仲間。恐怖のあまり逃げてしまった明。錯乱に陥り、敦也に依存する美保。仲間同士の信頼も、内側と外側、両方から崩れて行く。
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以上がヤンデレスレでのあらすじです。修羅場ってよりホラーよりだ………orz
「姫様!俺の後ろに!」
姫様を自分の背後に隠して襲ってくる矢を捌く。
――――囲まれた!
馬を失った馬車を囲むように俺たちは陣形を組んだ。
何処に隠れていたのか、山賊たちがワラワラと草むらや岩の陰から出てくる。
「マローネッ、弓兵を頼む!」
弓兵たちの第二射をやり過ごすと、後ろに控えていたらしい帯刀した男たちが剣を構えて襲い掛かってきた。
数が尋常じゃない。
「くっ!」
振り下ろす賊の剣を左の剣で受け流し、右の剣で男を袈裟斬りにする。
次の瞬間には別の男が俺に刺突を放っていた。
「お兄ちゃんッ!」
すぐ近くから爆音とその男の胸が爆ぜる音。マローネのマスケットだ。
「助かった!マローネ!」
三人目の賊の腹を薙ぎながらマローネに礼を言った。
……このままじゃジリ貧だ。とてもじゃないがこの数は相手に出来ない。
依然として増え続ける山賊。ざっと百人はいる。
山賊のくせに一人一人が精錬されている。戦争した隣国の正規兵が子供に思えてくるくらいだ。
おまけに……
「ッ!!」
こめかみを押さえながら苦渋を漏らす団長の声。
相手の喉に剣を刺す彼女に目をやると少し辛そうな表情を浮かべていた。
二日酔いが祟ったか。
早くなんとかしないとみんな殺される。
先ず何より脅威なのが統率の取れた奴らの動きだ。これを潰さないと。
頭を潰して相手の足並みを乱す。そうすれば今より活路は見出せるはずだ。
両の剣で二人の男の頭蓋を同時に割りつつ、賊たちの顔を確認していく。
――――首魁は……どいつだ。
それらしい男の姿を捜して目をしきりに動かす。
俺の目が、一人の男で止まった。山道の先で高みの見物と洒落込んでいる隻眼の男。
…あいつかッ!!
確信してその男の顔を見たとき。
ズクン。
胸に激痛が走った。
あの、男。あの男は。あの男は!あの男はあの男はあの男は!!!
ひとりでに自分の太刀筋が荒れ狂ってきたのが解る。
思考と肉体が乖離し始めた。
頭は止せ、と言っているのに身体は暴れだそうとする。
隻眼の男への殺意を抑えようと唇を噛んだが、次の瞬間それが無駄になった。
隻眼の男が、俺たちの苦戦ぶりを見てにやりと口を歪め。
その表情を引き金に俺の記憶が無理矢理掘り起こされた。
『……ふぅ…まぁまぁかな』
アリマテアを出て以来。
『五月蝿せぇよ、糞ガキが』
鎖で雁字搦めにしていたはずの俺の火箱が。
『ちッ、メソメソ鬱陶しい女だな。もう用も済んだし殺っちまうか?』
もう捨てたと思っていた、俺の中の怒りの火箱が。
『暴れるんじゃねぇよ、この!じっとしてろ!』
俺の意志を無視して。
『ウィル!助けて!!お願い!!た―――』
爆発した。
「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ーーーーーッッッッッ!!!!!!!」
喉が引き千切れそうなほどの咆哮。
これは、俺の、声、か…?
身体が異常に熱い。目の前がチカチカする。
思考が、黒一色に、塗り、つブ、さレる。
そしテ、俺の意志トは関係なく、全身ノ筋肉が勝手に躍動シ始メタ――――――
「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ーーーーーッッッッッ!!!!!!!」
頭痛と吐き気を抑えながら賊の剣戟を捌いていたとき、脇から誰かの叫び声が聞こえた。
その声がスイッチだったかのように私の視界の隅が赤く染まる。
……なに?
不思議に思って振り返ると。
「邪魔だぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!!」
ウィルが鬼の形相で回りの賊たちを殺しまくりながら一直線に進んでいた。
ウィルを中心に、腕や首が次々に舞う。その度に一瞬赤い花が咲いた。
まるでつむじ風のように走り回る二本の剣。
周囲の男たちがそれに巻き込まれ切り刻まれていた。
戦争していた頃の彼と同じ…いやそれ以上の姿だった。
ウィルが一直線に進む先―――片目の男に向かって赤い絨毯を敷いていく。
「ウィル!何やってんだッ!!」
おじさまが声を張り上げるが山賊の相手で手一杯らしく彼に駆け寄ることができない。
いけない。完全に意識が“飛んで”しまっている。
我を失って陣形から外れ、独りで敵陣に特攻するウィル。
「ウィル!戻りなさいッ!」
私の言葉が届かない。ウィルが徐々に孤立していく。
どうして急にあんなことになったのか解らないけど、とにかく早く彼を連れ戻さないと。
このまま放って置けばウィルは自滅する。
焦ってウィルを連れ戻そうと私も馬車から離れた。
それがいけなかった。
「放せぇぇぇッッ!!」
馬車を離れた私の背後で姫様が喚く。
自分に失態に気付いて振り返るが、男が姫様を担ぎ上げて連れ去った後だった。
以上十一話でした。
バトル後編はまた夜に。
姫様ぁぁぁぁぁ((;゚Д゚)ガクガクブルブル
やべぇ、これは先が気になってしょうがない切り方だ
作者様GJ
姫さんやっぱり足を引っ張って……
>>627 やべえモカさんラブリー過ぎ。GJ
モカさん最高!!!!
でも返信するシロウにも萌えてしまったのは内緒だ
『第六話』
さっきはアレでも猫を被っていたほうなのか。浅羽さんの剣幕は恐ろしかった。
美人なだけに青筋を立てて怒鳴るその姿は鬼のよう。
「・・・・・・そういうあなたこそ・・・・どういうつもりなんですか・・・・・・大体・・・・・あなた馨さんの何なんですか・・・・・」
「私はねぇ、馨の幼馴染なの!!!ずっと昔からそばにいるのよ。
だからねぇ、アンタみたいなネクラ女にいつまでも縛られてる馨が気の毒でたまらないの!!!」
「幼馴染なら・・・・・いいじゃないですか。
わたしには、馨さんしかいないんです。親も、友達も、親戚もいません・・・・でも、そんなわたしを、馨さんは見捨てませんでした・・・
だから、もう、もう、・・・・・駄目なんです・・・・・馨さんじゃないと・・・・だから、だから、馨さんをわたしから盗っていかないで!!!」
自分でも言っていることは意味不明。
でも、ここで退いたら負けだと思った。
「ホント汚い女・・・・・そんな可愛い顔して・・・・・最初の事故だってあんたがちゃんと気をつけてれば大したことなかったんでしょ。
それなのに、ずるい言葉で馨の良心を利用して・・・・!!昨日の怪我だってわざと階段から落ちたんでしょ。医者が言ってたわ。
どう考えてもあの怪我の仕方は変、ってね!!!」
「そんなことどうでもいいんです・・・・
馨さんが、馨さんがそばにいてくれれば!!!
私は馨さんが好きなんです。愛しているんです。
だからただの幼馴染のあなたには関係ないでしょう!!」
「ならはっきり言ったらどうよ!!!今まで自分の想いを隠すために事故のことを利用してたってね!!!」
「!!!!!!!!!!!!!!!」
――――――――――――――――真実を抉られた。
どうしてこの人はまるで心を読むようにピンポイントで核心を突けるのか疑問に思ったが、それ以上に心のダメージが大きい。
浅羽さんの剣幕に押されないように、恐怖で凍りつく表情で睨み返すのが精一杯だった。
「何も言い返せないのね。まぁ当たり前か〜そんなこと馨に話したらもうお見舞いに来なくなっちゃうかもしれないし、最悪二度とあなたの前に現れないでしょうね〜
アイツ見かけによらず繊細で、素直だし。あのときだって最後まで慰めてあげたのは私なの。そうよ、馨のことで世話を焼いたり手を繋いだりキスしたりセックスして、アイツを愛せるのは私だけなの!!!
だから・・・・・・・・・・・・・・・・・・もう二度と加害者被害者の関係以外で馨に関わらないでくれる!!!??」
この人・・・・・馨さんと、したことあるの?・・・・・
嘘よ、嘘、嘘・・・・・・
「帰って!!!帰ってよ、この薄汚い牝犬!!!性の匂いを漂わせて馨さんを誘惑して!!汚らわしい、厭らしい、排泄物以下の病原菌!!早く消えてよ!!
貴女なんて死んじゃえばいいのよ!!馨さんが貴女なんかに手を出すはず無いじゃない!上手く陥れたんでしょ、卑怯者!!!!」
負けたと解っても心は抵抗を続ける。
頭に浮かんだ罵詈雑言を口の回る限り垂れ流し、右腕で狂ったように枕を振り回す。
「ふん・・・襲い掛かってきたのは馨のほうよ。まるで動物みたいに息を荒くして、私の体を力任せに組み敷いた後で狼みたいに全身舐りまわしてくれたわ。
途中で理性を取り戻して、照れながら『愛してるよ』って囁いて中に熱いのをくれたときはホント初めてなのに飛びそうになったわ〜オンナの悦びってヤツ?
―――――――――まぁ、安心してよ。アンタは未来永劫絶対味わうことはないでしょうから」
――――――――――――――――馨さんの照れた表情が脳をフラッシュバックする。
――――――――――――――――あの笑顔が、優しさが、ぬくもりが、指先が、吐息が・・・・
――――――――――――――――全部この女のために・・・・・・!!
目の前が真っ赤になって、頭の中を白が埋め尽くす。
―――――――――――――それより先は覚えていない――――――――――――
言い負かしてやった。
あの女、私の虚言で意図も簡単に壊れた。
私の願望を事実のように語ってやったら泥棒猫は憤怒と絶望の表情を交互に繰り返した。絹のような穢れを知らない肌が真っ赤に染まったり死んだように青ざめるのはとても面白かった。マンガみたい!!・・・・
今思い出すだけで噴出してしまいそう。
そして最終的には明暗順応しているわけでもないのに大きな瞳をこぼさんばかりに見開いて瞳孔を広げたり閉じたりしていた。
徐々に暗くなっていく瞳を睨みつけていると、声も出さずに涙をぼろぼろ流して動かなくなっちゃった。
そのまま放置してきたけどまさか手首切ったりはしないわよね?
階段から飛び降りた前例があるから油断できないけど担当医が見張ってるからまぁ平気でしょ。
それに私は死んでもらったほうが嬉しいけど、馨がこれ以上傷ついたら嫌だからせいぜい廃人程度で済ませて欲しいもんだわ。
あの女には意気揚々と語ったけど馨とはキスまでしかしたことがない。
それも彼が寝ているときにした、触れるようなキスだけ。
ずっーーーと、そばでアピールし続けているのに馨はいつまでたっても気づかない。
私の性格がいけないのかもしれないけど、来年には大学を卒業しなくてはならない。だからそろそろ私たちの関係にも区切りをつける頃なのかも。
さぁて、今日は行きつけのブティックで目一杯買い物して帰りましょ♪
――――――――本格的に馨を陥とすにはイロイロ準備も必要だしね
あははは〜楽しみぃ〜
改行失敗した・・・・
毎度のことながら読みづらくて申し訳ありません。
投下します
生きここのアナザーです
24話からの分かれます
それと外伝もなかったことになっています
IFという考えが近いかもしれません
暗くなった窓の景色の向こうに誰かが居る
全身が凍りついたように強張り頭に逃げろと命令が駆け巡った
俺は額の汗を拭うとできるだけ平静を装った
「詩織さん・・・・奈々さん・・・・」
二人の肩を掴んでドアに向かう
かつかつと三人分の足音が響いた
速く・・・・速く!俺は焦りのあまり窓を見やってしまった
気づかれた・・・・そう思った瞬間、物陰から姿の見えない黒い人影が大きな窓に向かっていく
刀先がガラスにめり込みヒビが入る
刀を引き抜くと思い切り蹴り上げる
もろい窓は崩壊し、身体の半分を焼かれその手には見覚えの確かにある刀が握られていた
もしかして・・・・彼女が?
再び俺の記憶がフラッシュバックした
覚えている・・・・少し髪が伸びているが・・・・確かに俺はこの人を知っている
怖い・・・・逃げたい・・・・・そんな考えしか浮かばない
なにをやっているんだ!俺が二人を護らなきゃいけにんだぞ?
自分をしっかり持て!逃げるな!逃げるな!逃げるな!逃げるな!
二人は最低二股やろうの俺を純粋に愛してくれてるんだ・・・・
護るんだ・・・・俺が!
「久しぶりね・・・・仁さん」
口元を緩めて彼女はにっこりと笑んだ
月の光が彼女の背後から差し込み影を作っている
「でも、雌犬二匹はあなたの子供を身篭ってしまったようね・・・・」
刀を握っていない左手の指が火傷の線を伝っていく
驚くほど細く美しいその指が不意に止まった
「仁さん・・・・・あなたは許してあげる、でも・・・・あんたら二人は許さない!」
射抜くような眼光だったその威圧感が明らかに殺意に変わった
刀が振り上げられた・・・・俺は迷わず彼女の懐に飛び込んでいた
な・・・・なんだ?身体が勝手に・・・・
自分がボクシングをしていたという話を考えていたが0秒と1秒の間に消えた
俺が彼女の腹を殴りつけようとした時だった
頭上から刀の柄が俺に向かって降りてきた
後頭部に激しい痛みが走り俺は頭を抑えてその場を倒れた
「ふふ・・・・仁さん・・・・・」
俺の顎を掴んで少し引き上げると彼女は・・・・香葉さんは自分の唇を舐めて俺に近づけてきた
俺の唇と香葉さんの唇が重なり彼女の舌が俺の口の中に侵入してきた
抗おうとしてもがくが頭をモロに打たれ脳が反応してくれない
香葉さんのしなやかな指が俺の胸を通り抜け全身を愛撫する
「これ以上仁くんを汚すな!」
がちゃん!ガラスの割れる音がした
視界が開くとそこには割れたガラス瓶を持った詩織さん
そして頭から血を流して必死でもがく香葉さんを奈々さんが抑えている
「く・・・・・」
ふらふらとした足つきで俺が立ち上がると詩織さんが駆け寄って俺を支えてくれた
「大丈夫?」
上目使いで俺を見つめて詩織さんは頭をさすってくれた
「大丈夫・・・・それよろ速く・・・・」
逃げろ・・・・その言葉が出る前に香葉さんを抑えていた奈々さんが振り下ろされた
「きゃ!」
「死ね!」
刀を掴んで奈々さんに向ける
「やめろ・・・・やめろ!!!!!!」
俺がタックルすると華奢な香葉さんの身体はよろめきその場に倒れた
「仁さま!詩織さま!奈々さま!!!!」
高田さんが騒ぎに気づきようやく来てくれた
俺は香葉さんを必死で抑えて高田さんの方を見て叫んだ
「はやく二人を!」
高田さんはしばし唖然としたあとすぐに状況を理解して二人の手を取った
「仁さん!仁さん!どうして邪魔するの!私はあの雌犬二匹の腹にいる汚物を引き出して!」
「やめて・・・・ください・・・・香葉さん・・・・・」
俺の涙が彼女の頬を濡らした
香葉さんはしばし俺を見つめた後にすごく悲しそうな顔をした
「そんなに・・・・大事なの?」
「はい・・・・・」
それを聞くと彼女は微笑んだ・・・・もう大丈夫なのかな?
俺が戒めを解くと彼女はゆっくり立ち上がった
「愛しているのね・・・・・二人を」
「はい・・・・・」
「なら、こんな世界に生きていても・・・・仕方ないか」
彼女は刀を再び握ると自分のノド元に向けた
「香葉さん!」
「来るな!」
爆発しそうな彼女の感情から来る声が聞こえ俺は思わず身体の動きを止めてしまった
「忘れさせない・・・・私を・・・・私を!」
不意に彼女から力が抜けて膝が折れた
首から血が噴出し反対側からは刀の先が突き出されて隙間から血が滴っている
事切れる前に香葉さんはにっこりと笑んだ
俺は・・・・俺は!
なにも出来ない・・・ただのアホだ・・・・最低だ・・・・最悪だ
この人は本気で俺を・・・・思い悩んでそれで・・・・
自分に惚れてくれた女の人一人や二人護りたい?
俺はボクシングを始めたきっかけを思い出しながら自負の念でいっぱいになった
俺は・・・・護りたかったんだよ
自分のせいで狂ってしまった少女の前で俺は何度も謝り続けた
あれから一ヶ月・・・・俺は無気力に過ごしていた
詩織さんと奈々さんの出産も近い
二人の世話以外のときは俺はこうやって空を見上げてまた自負の念を抱く
忘れられない、俺のせいで狂わせてしまった少女の最後の笑みを思い浮かべて
「少しは気晴らししてみてはいかがですか?」
少しやつれた俺を心配して高田さんがそう言ってくれた
詩織さんと奈々さんも俺を心配げに見つめ少し微笑んでくれた
その言葉に甘えて俺は久しぶりに屋敷から出てみた
そういえば一人で屋敷の外に出たの何ヶ月ぶりかな?
することもなく小さい頃よく詩織さんと遊んだ公園のブランコに腰掛けた
ブランコに揺られてまた彼女の最後の笑みを思い返した
他に道はなかったのか?あれは仕方ないことだ・・・・
カッコ悪いな・・・・俺、なに言い訳してるんだよ・・・・はは
このまま消えてなくなってしまえるならどれだけ楽だろう
また逃げた・・・・最悪だ・・・・詩織さんと奈々さん・・・・それにお腹の子がいるのに・・・・
最低・・・・最悪・・・・クソやろう・・・・
「泣いているんですか?」
か細い少女の声に俺はいつの間にか泣いていたのに気づいた
「す、すいません・・・・」
恥ずかしくなって俺が目元を拭うとそこには綺麗な少女が立っていた
金髪の髪をかき上げて少女は両手を合わせてにっこりと笑んだ
「お久しぶりで・・・・仁さま」
区切ります
不安を胸に玄関のドアを開いた
秋乃さんが入院中彼女に無理言ってずっと病院に居た
だから家には一度も帰っていない
両親がいたらストッパーになってくれたのだろうけど
二人は8年前に他界していて今は三人だけ
きぃ・・・と音を立ててゆっくりと家の中をのぞいてみる
真っ暗だ・・・・中に入って居間に近づいていく
とんとん・・・とんとん・・・・料理の音?
規則正しい包丁の音に導かれて僕はゆっくりと廊下と居間を繋ぐドアを開いた
「あら、お帰り〜涼ちゃん」
一瞬自分の目を疑った
どういうこと?
その光景は僕がまだ秋乃さんと付き合うまえ・・・・あの穏やかな時間が流れていたときと・・・同じだった
「お兄ちゃんどこ行ってたの?私お腹ぺこぺこだよ〜」
無邪気な笑みが僕を迎えてくれた
「こら、冬香ちゃん・・・・はしたない」
暖かな笑みが僕を迎えてくれた
「さ、お料理できたわよ・・・・涼ちゃんも早く座って」
料理のいい香りに釣られて僕は指定席に腰掛けた
その後はいつもと変わらず
間延び声で僕に甘える夏姉ちゃん・・・・
無邪気に僕にじゃれつく冬香
あの出来事が夢だったのではないかと思えるほど
なにも変わらない・・・・あの時のままだった
今日は待ちに待った涼さんとの初デート♪
し・あ・わ・せ・・・・あぁ
幸せに浸りつく前に私は涼さんにお二人の様子を聞いてみた
涼さんの答えは晴れやかな笑みと思いがけない一言だった
「え・・・・そうなの?」
私が小首をかしげると涼さんはうんうんとうなずいた
「僕もびっくりだよ・・・・でも、これで元通りだよ」
嬉しそうな涼さんに私も思わず笑んでしまった
よかった、二人は涼さんが以前話てくれた二人に戻ったのね・・・・
少し痛い思いをしてしまったけど、二人とは仲良くやっていきたい
それと謝らなくちゃ・・・・二人を病気だって決め付けちゃって
「今度、お家にお邪魔して・・・・良いかな」
「ほんと!あぁ、楽しみだな・・・・いつのする?」
最近元気がなかったけど・・・・ようやく涼さんは本来の明るさを取り戻してくれた
私の気持ちも軽くなって鼻歌なんてしながら私は涼さんの腕を取った
「う・・・・秋乃さん?」
「いいでしょ?私たち・・・・こ・い・び・と」
鼻先にちょんと指を乗せて私は笑んだ
「なんだからね♪」
恥ずかしそうに頬をかきながら涼さんは私の肩に手を回してくれた
少し人通りの多い商店街で私たちはつい最近まで羨ましいと思えてならなかった恋人たちのように肩を寄せ合った
幸せ・・・・・
でも、楽しい時間はすぐに過ぎてしまった・・・・
デートの王道の映画そのあと昼ごはんをお洒落なお店で食べて・・・・
それで・・・・・もうおしまい、私の家に着いちゃった
「ここが秋乃さんの家か・・・・」
興味津々といった感じで涼さんが私と家を交互に見た
「じゃあ、もう夜も遅いし・・・・帰るね?」
しばらくして涼さんは私にそう言うと手を振って背中を向けた
「ま・・・・ま、ま、まま・・・・・・・待って!」
いかにも動揺していますよっていう声で私は彼を引きとめた
「よ・・・・よよよよ、よ・・・・・よか・・・・ったら家・・・・寄っていかない?」
涼さんは少し戸惑って見せてケータイを取り出した
「あ、夏姉ちゃん?僕・・・・今日遅くなるから・・・・うん、ご飯はいいよ」
なんどか涼さんはうなずくとケータイを切った
そして私の方を見て微笑んだ
「じゃあ、少しお邪魔させてもらおうかな・・・・」
あ、はは〜・・・・頭の切り替えが大変だ〜
くるくる回る〜
生きここAnotherキタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
姉妹日記キタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
作者様同時進行お疲れ様です
BLOODもハピネスもあって浮気症ッぷりが
凄い勢いでアビス殿の死亡フラグを確立していく
アビス殿はどの子に刺されるのかしら・・・
GJ!日本代表よりも続きに期待しています!
投下します
――連れてこられたのは、東棟の端の部屋。
囚人部屋のように殺風景な部屋ではなく、広々として豪奢な意匠の部屋だった。
来賓者をもてなすための場所だろう。
そしておそらくは――東棟の特産物を使って、“もてなす”ための場所。
気を遣って消臭しているのだろうが、私の鋭敏な嗅覚は、饐えたニオイを嗅ぎ取ってしまう。
さて。
こんな所に呼び出したくせに。
呼び出した本人の姿は、見当たらなかった。
「ビビス様はまもなく到着します。失礼の無いよう座っていなさい」
“銀の甲冑”が、部屋の中央の椅子を指した。
そこに背筋を伸ばして座っていろ、ということか。
素直に言われたことを聞くのは、何故だか妙に癪に障るが、ここで暴れても得はない。
渋々と、豪華な椅子に腰掛ける。
扉を背にする形なので少々落ち着かないが、まあ話の流れ的に、
扉から突然襲撃者が現れるということもないと思うので、そのままぼんやり待つことにした。
思い起こすのは、先程のやりとり。
血塗れ竜が、こちらに向けていた、あの目。
一つの意思が明確に込められた、ある意味純粋な瞳だった。
――ユウキに近づくな。
笑いたくなってしまう。
王者の滑稽さにではない。
その願いは、むしろ自分のものだということに。
控え室での、あの光景は、腑が煮えくり返るのに充分だった。
ユウキさんの足の間に腰を下ろし、ごろごろごろごろ発情期の雌猫のように擦り寄るあの様。
10秒に一回は己の体を彼に擦り付け、あまつさえ幾度と無く頭を撫でられているではないか。
あんなに優しそうに、柔らかく。
髪を撫でられている間の血塗れ竜はまさに至福といった様子で、羨ましさに奥歯が砕けそうだった。
王者は特別待遇だとは聞いていたが、特別すぎて殺意すら覚えた。
しかし。
自分が王者になることができたら、アレをそのままそっくりいただけるのだ。
ユウキさんの胸の中に収まって、頭を撫でられる自分を空想する。
…………えへ。
おっといけない。涎を垂らしてしまった。
感触を想像するだけで、ごはん三杯はいける。
最初は、話の通じる暇つぶし相手――ってだけだったのに。
日を重ねる毎に、彼の人となりは、私の琴線に幾度となく触れてしまった。
現状に絶望しているのに、優しさを捨て切れていないところとか。
どんな相手でも、素直に応対してくれるところとか。
頭はいいのに、隠し事が下手なところとか。
気付いたときには、既に好きになっていた。
彼と一緒にいたい。
彼に甘えてみたい。
彼と触れ合いたい。
そして何より。
彼を、手に入れたい。
そのためにはどうすればいいか、考えた。
結論は――至ってシンプル。
私が、血塗れ竜になればいい。
今の王者が居座る場所こそが、私の求めているモノなのだから。
「――変な顔をするのを止めなさい。
ビビス公爵がもうじき来ますよ」
銀の甲冑の声で、我に返る。
思索に耽りすぎて、だらしない顔を晒していたらしい。
慌てて表情を引き締めて、呼び出し主の到着を静かに待つ。
ビビス公爵。
私を、ここに連れてきた人。
目論見が外れて私が勝ってしまい、さぞかし腹を立てていることだろう。
呼び出した目的は何だろうか。
こんな場所に呼び出すということは、私のことを犯すつもりなのだろうか。
――否。あの中年親父は不能である。
私が最初にあいつの城に連れられたとき、それなりに整った容貌の私を前にしても、欠片も色めいた視線を寄越さなかった。
後で話に聞いたところ、ビビス公爵は性的に不能で、代わりに人間が殺し合うところを見るのが大好きらしい。
故に、帝都の闘技場にちょくちょく己の領地の囚人を送り込み、殺される様を見て興奮するとのこと。
……闘技場の囚人じゃ無理だから、兵士に殺させるつもりだろうか?
しかし、私としては、囚人も兵士も大差ない。
この国に来てから、私のことを殺せそうな奴といったら――せいぜい血塗れ竜くらいしか目にしてない。
今この部屋で待機している兵士連中も、束になったところで驚異にすらならない。
ただ――私のすぐ側にいる、銀の甲冑。
こいつだけは、わからない。
強いとは、思う。少なくとも弱くはないはずだ。
しかし、実力を計れない。
大抵の相手なら、噛み殺す様子を鮮明に想像できる。
それはあの血塗れ竜ですら変わらない。奴の喉笛を食い千切るプランは少ないが立てられる。
それが、この銀色だけは不可能だ。
私がこいつに勝てる状況が想像できない。殺される気はしないが、勝てるかどうかもわからない。
この、銀の甲冑だけが、不安要素だった。
――と。
背後の扉が、開く気配。
「来ているな。まったく、よくも私の顔を潰してくれたものだ」
聞き覚えのある、ビビス公爵の声。
しかし、その声は――内容とは裏腹に、嬉しくて飛び跳ねているかのようだった。
趣味の悪い高級そうな服を纏った中年親父が、正面の豪奢なソファーに腰を下ろす。
ふん、と鼻息を吹いた後、私のことを見下ろすような表情で、
「まずは、私の顔を潰した罰だ。――セツノ」
「はい」
刹那。
がつん、と。
横っ面を強打された。
「――ッ!? あぎっ!」
あっさりと吹っ飛ばされて、10足以上離れた壁にぶち当たる。
何よ今のは!?
私は少なからず警戒していた。
なのに、当たる直前まで、攻撃を全く察知できなかった。
銀の甲冑がすぐに近くにいたから、気を付けていたはずなのに。
とにかく――まずは立ち上がって、体勢を整えなければ。
「……あ、れ……?」
ぐわんぐわん、と視界が揺れていた。
脳がぐちゃぐちゃにかき回されている。やばい。このままじゃ戦えない。
揺れる視界で、必死に対象を探し出す。
――いた。
私が座っていた椅子の真横に、黒装束の女が立っていた。
あいつに、殴られたのか。
私の五感は常人のそれを上回る――が、それでも感知できなかった。
「安心しろ。罰はこれで終わりだ。――戻れ、セツノ」
「はい」
中年親父の声が響くと同時、黒装束の女の姿は、かき消えた。
衝撃でくらくらしていることを差し引いても、女の動きは私には捉えられないものだった。
「さて。異国の女よ。まずは名前を聞こうか。
私の領地にいた頃では、結局聞けず終いだったからな」
言葉が通じなかったのだから当たり前だ――と、言おうとしたが。
ぐるぐる回る視界が気持ち悪く、うまく言葉を紡げなかった。
「彼女の名前はアトリです、公爵」
銀の甲冑が口を開く。……何故知ってる? 私の名前は、先程までユウキさんしか知らなかったはずなのに。
「そうか。では、アトリよ。
お前にはこれから、闘技場で活躍してもらう」
「……は?」
「私のお気に入りを喰い殺してくれたのだ。
――お前が、代わりを務めるのが筋だろう?」
にやにやと脂ぎった笑みを晒しながら、中年親父はそう言った。
全然筋ではない気もするが、闘技場で戦うことに異論はない。
「しかし……今の様子を見ると、それほど期待はできなさそうだがな」
いきなり殴らせておいて、なんて言い草だろう。
とはいえ、逆らってもいいことはなさそうなので、代わりに口の中のものを吐き出した。
からん、と。
手甲の一部が床に転がる。
「何だそれは? ……!? セツノ! 右手を見せてみろ!」
「……はい」
再び、黒装束が表れた。その表情には、悔しげなものが滲んでいる。
黒装束――セツノとやらの手をしげしげと眺めた後、中年親父は満足そうな笑みを浮かべた。
「それではアトリよ。これからお前の生活は、私が保証しよう。
勝ち続ける限り、お前の望みのもそれなりに配慮しよう。
好きなものをくれてやる。だから代わりに――相手を喰い殺せ。いいな?」
中年親父の目には、ギラギラとした興奮の炎が燃えていた。
……なるほど。先程の私の戦いが、こいつの琴線に触れてしまったらしい。
「……別にいいけど」
まあ、食事の量を増やしてもらえれば充分だけど。
「ただ、な」
「?」
「私は、お前がどの程度強いのかよくわからん。
中堅どころを倒したといっても、まぐれだったのなら期待はずれだ。どうせなら、今の王者に近づいて欲しい」
……王者、ねえ。
可笑しくて、つい笑いそうになった。
わたしは――それになるつもりなのに。
「だから、お前の強さを見せてみろ。
ちょうどいいところに、化物姉妹が手に入ったところだ。
――お前にはこの、セツノと戦ってもらう」
姉妹?
ということは、もう一人……?
「姉のユメカは、現王者の血塗れ竜と戦うことが決まっている。
今宵、血塗れ竜が負ければ話は流れるが――そうはなるまい」
へえ。
それじゃあ、つまり。
「私と血塗れ竜の、戦いぶりを、比べたい、と?」
「そういうことだ。まあ、セツノもユメカも、私が見る限りでは、良い勝負をすると思うがな。
――そういうことだ、セツノ。
お前かユメカ、どちらかが勝った場合は、お前の村の要望を聞き入れよう」
「はい」
頷いたセツノの視線は……まっすぐ、私を射抜いていた。
うわあ。今から殺す気満々だねえ。さっきの血塗れ竜を思い出しちゃうよ。
事情はよくわからないけど――この状況、利用しない手はないだろう。
向こうが条件を出してきているのだから、こちらが出しても受け入れられる可能性は高い。
「その代わり、こっちも条件を一つだけ。
私がそこの黒いのを食べたら――ひとり、ある監視員を私の所に通わせて欲しい」
「なんだ、そんなことか。
構わんぞ。お前が勝ったら、その監視員とやらをお前専属にしてやろう」
今度こそ。
笑いを堪えきれなかった。
毎回無駄に長くなってしまってすみませんorz
アトリ視点に挑戦してみました
次回、白視点
>>667 アトリ素晴らしすぎる!!
でも白の依存っぷりの方が好きだ
このスレにはもっと血に飢えた修羅場スキーがいると思ったけど
案外ラブコメちっくなのもOKなんですね。
とりあえず投下してみます。
うふ、うふ、うふふふふ…だめだ、考えただけで笑いがこみ上げてくる。
今が3時だから、あと2時間で樹さんが講義を終えてこの門から出てくるわ。
本当は5時に講義が終わって、6時待ち合わせの予定だったのだが
待ちきれなくて2時間も早くきてしまった…。
でもこうやって樹さんのことを考えながら待っていれば
時間なんてあっというまに過ぎちゃうわ。
それに待っているのもデートのうちだし。
んふふふ、今日はどうしようかしら。とりあえず今日公開の映画を見る予定だったわね。
樹さんが見たがっていたけど、どんな映画なのかしら。
チケットを見ると「Thief cat」と書いているわね…
Catってことは猫が主人公なのね。動物映画なのかしら。
でも樹さんが言うにはサスペンスホラーらしいし…
それにチケットには女性が鋸を振り回しながら女性を追いかける絵がのっているわね…。
猫に鋸?うーん、いまいちピンとこないけど、ホラーならキャーとか言って
手握ったり、抱きついたりと怖がるふりして暗闇に乗じて色々できるわね。
えへ、えへ、えへへへ…っといけないいけない、想像したら涎が。
その後はちょっと小奇麗な所で食事をして、夜の静かな公園で
愛を語り合い、そしてその後は近くのホテルであんなことやこんなことを………。
うふふふ、今夜は徹夜ねー……っといけないいけないつい興奮しすぎて鼻血が…。
しかも今回は秘策を用意しているのよね。
最近ゴムばかりだから前回のデートの時に樹さんの財布に入っていたゴムを
隙をみてこっそりと針で穴を開けているんだから。
まあゴムに穴が開いているかなんて、私が付けてあげている限り気づかない
だろうし、生も何回かしているからその時にもしかして…って思うわね。
しかも今日は危険日というこの2つの条件が揃えば
できるかもしれない。いいえ、できてみせるわ!!
そして万が一できちゃえばこれをきっかけにして学生結婚も夢では……
学生…結婚…結婚…結婚!!!!!!
キャー!キャー!!いいわっ!!夢が現実に!!……っといけないいけないつい
暴走しちゃってアソコが濡れてきちゃった。
大体樹さんも悪いのよ。いっつも私が結婚しようよとか
いつ両親に挨拶に来てくれるの?とか聞いているのに、曖昧な返事でかわされちゃうのよね。
だからこんな方法をとっちゃうんだから。
もしかして樹さんは、結婚ということに対してちょっと引いているのかもしれないわね。
まあそれならそれで既成事実を盾に迫れば、優しい樹さんだから責任をとって結婚を了承するわね。
ふふ、バッグには私の名前と判が押された婚姻届けも入っているから、
できちゃったらすぐ書いてもらって役所に持っていかなきゃ。
…………っと気が付けばもう4時だ。時間がたつのが早いな…。
ってなんで通行人のくせに私をジロジロ見んのよ。
見せもんじゃないからさっさと行きなさいよ!!ったく……ん?
一匹の「害虫」が私に近づいてくるわね。なに?彼氏なんかほ
っといてカラオケにでも行こうだぁ?なんで私がアンタみたい
な「害虫」とカラオケに行かなきゃいけないのよ。
「人間」の「男性」としかお付き合いはしませんので。…まあ
その人は樹さんしかいないのですが。とはいえあまりはっきり
言っても可哀想なので少しオブラードに包んで言ってあげましょう。
「害虫はとっとと自分の巣に帰って下さい。シッシッ」
うん、どうやら私の言葉を理解できたようね。それぐらいの知
能はもっていて良かったわ。帰り際なにか叫んでいたようだっ
たけどなに言っていたのかさっぱり解らなかった。
全く…巣から出てこないでほしいです。
時計を見るとそろそろ5時になりそうだ。
ああ………早く…早く来て…樹さん…。
一方そのころ………
あの爆発事故で奇跡的にかすり傷で済んだ俺と弥生さんは、
埋まっていた教授を救出して改めて部屋を見渡してみた。
機械は壊れ、壁は崩れ、窓ガラスや薬品が入った瓶などは全部
割れて、すでに原型を留めないぐらい破壊されてしまったようだ。
しかしこのへやの現状よりも今は弥生さんが大変だ。
「少し状況を整理しましょう。」
「そうだな樹くん。」
「………………………」
一回深呼吸して
「まさしく部屋は全壊、機械も薬品類も木っ端微塵なのですが、みんなかすり傷
ですんだのは幸運でした。」
「うむ、まったくだ」
「………………………」
そこでさっきから黙っている弥生さんを見て
「ただ…弥生さんが………。」
「ん?弥生くんがどうかしたか?実験は成功し、ちっちゃくなって可愛くなった
ではないか。うんうん」
ブチッ
ん?今なにか紐が切れたような音が…
「こんのロリコン教授が!!死ね!!」
「や、弥生さん!!落ち着いて!」
いきなり弥生さんが教授につかみかかったので、羽交い締めにして引き離した。
「樹!離せ!人をモルモットがわりにして!許さん!」
そう、教授が作った「若返り薬」は見事に成功し、それを
(騙されて)飲んだ弥生さんは(外見は)10歳児ぐらいになっ
てしまったのだ。
「ち、ちょっと弥生さん、教授を殺したら元に戻れなくなるかもしれませんから
乱暴はやめましょう?」
「うっ………たしかに。」
ひとまず落ち着いたところでこれからどうするか話合った。
まずこの部屋はもう使えないので、元に戻す薬の製作は別の実験室でやり、その
実験室は教授の方で探すとのことだ。そして俺と弥生さんは今日の所はとりあえず帰ることにした。
門に向かう帰り道……
「しかしあの教授、服まで持っているとは…」
「呆れてものもいえないわ」
このままでは帰れないことを言うと、教授は別の部屋からぴったりのサイズのト
レーナーとスカートを持ってきたのだ。
「でもよく似合いますよ」
「似合っちゃダメだろ!…たく」
元気をだしてもらおうと思って言ってみたが、言葉はともかく少し表情が和やか
になったようだ。よかった。
「で、これからどうしますか?」
「樹はこれからデートだろ?私は当座の寝床を探さないとな。」
「え?なんでですか?」俺がそういうと弥生さんは複雑な表情で
「樹も知っていると思うが、私の家は親が道場を開いているのは知っているな?」
「ええ、たしか親父さんが師範をしてるとか…」
そう、弥生さんの親父さんは総合格闘技の師範で、年末の格闘技イベントに出場していかつい外人を
蹴りでばったばったとマットに沈めてたっけ。
「闘うことしか頭にない親父の家に娘がちっちゃくなって帰ってみたらどうなる
か…わかるだろ?なに、電話で富士の樹海に籠もるとでも言っとけば怪しまない
しな」
なにげに凄いこと言いってるがそれで納得する親も凄いな。まぁたしかに家に帰れないのはわかったけど、でも寝床っていってもホテルじゃ
お金がいくら掛かるかわからないし、泊めてくれる友人がいるかどうかも……そ
うだ!
「弥生さん!いいこと思いつきました。当座でいいなら俺の家にきませんか?」
「は?」弥生さんは驚いているようだ
「俺の家だったら大学にも近いし、部屋も一つ空いているから遠慮することない
ですよ」
「待て待て、そう言ってくれるのは嬉しいが樹には彼女がいるだろ?無用の誤解
を招くことになるだろ。」
弥生さんはそう言うがやはり心配だ
「でも…」
「そんなに心配するな。寝床くらいなんとでもなるさ。それよりも自分のことを
考えな。ほれ、門の所で身を捩っている子がそうではないのか?」
見ると門の所に晴香が頭をブンブン振って奇声をあげているのが見えた。
な、なにをしているんだ?
すると弥生さんが笑顔で
「早く行ってやれ。これ以上待たせるとあれ、通報されるぞ」
そう言う弥生さんを見ると笑顔ではあるけれど、なんか淋しそうに見えた
「でも……。」
「まったく…そんなんじゃハゲるぞ。大丈夫だって、寝床も大事だがまずは元に
戻ることが先決だからな。」
それはまあそうですけど…
「このあと実験棟1にいる後藤教授にことの次第を説明して相談するから、当座
の寝床も大丈夫だ。だから安心して行ってこい」
そうは言ってもなんか一抹の不安はあるけれど、俺なんかよりもしっかりしてい
るから大丈夫だろう。
「わかりました。弥生さんが大丈夫と言うのでしたら大丈夫なのでしょう。」
「心配してくれてありがとう。大丈夫だから」
「でも約束して下さい。なにかあったら遠慮なく電話して下さい。飛んで行きま
すから」
「よく覚えておくわ」
そう言うと俺は門の所に向かって歩きだした。
その時後ろの弥生さんからぼそっとなにか独り言が聞こえたような気がしした。
「樹、あなたのその優しさは彼女だけに向けなさい。私に向けたら…期待しちゃ
うじゃない」
第2話「い、い、一緒に住むぅ?」完
次回第3話「あんなヤツに遅れをとるとは…」
おかしい…書けば書くほど晴香がどんどんキモくなってくる。
最初はもっと普通な子だったのに…
このスレ的にはこっちの方がいいのかな?
一途で可愛らしい娘じゃないか。
おいおい、残りキロ数一桁切ったぞ?!
次の作品の投下は次スレ?
それとも前スレに戻るのか?
個人的には白言葉様から黒言葉様にある過程が大好き
女の子は可愛いさは黒く病んでゆくことにあると思う
8スレ目がまだ48kbとも残っているw
誰だ早漏スレ立てしたの
ごめん48kb→×
38kbでした
>>667 (・∀・)イイ!!
アトリのしぶとそうな感じがたまらない。
修羅場はもちろん、バトルSSとしても楽しみになってきた!
682 :
埋めネタ:2006/06/18(日) 19:54:11 ID:q9Z0zLZO
消灯された病室、9スレの苦しげな吐息だけがその空間に響いていた。
いや、病室に近づく足音が、一つ
───ガチャリ。
「七誌?」
嬉しげに呟いた9スレの表情は訪問者の顔を見て般若もかくやと言う顔に変わった。
「8スレ・・・!!!何しにきた!!!」
「あなたを嗤いにきた、と言ったら怒るかしら?」
「何を───ぐぅっ!!」
「ほら、あんまり興奮すると、すぐ埋まっちゃいますわよ?」
「ぅふふふ・・・アンタも・・・大して変わんないくせに!」
「でも、埋まるのはあなたのほうが先でしょう・・・?」
「・・・埋まってたまるか!!七誌を・・・父さんの代わりにしか見てないあなたに!!あなたなんかに!!」
血を吐くような叫び。それすらも8スレは表情を変えなかった。
「・・・七誌さんは言ってくれました。私が今でもあの人のことを愛していてもいいよって。
僕があの人を愛してる私の心ごと好きになってみせるって。」
「・・・フン・・・」
「でも、私は七誌さんの中にいるあなたをきっと愛せない。許せないって思ってしまうでしょうね。
わたしは、七誌さんには私のことだけを思ってて欲しい。私のことだけを見て欲しい。私のことだけを感じて欲しい!
だから、あなたが埋まって、七誌さんを、七誌さんの心を縛り付けるのは絶対に許せない。」
「とうとう本性を現したわね。この・・・泥棒猫!!」
「私もあなたに七誌さんを譲るつもりなんてありませんから。」
「何様のつもりよ!!」
「あなたこそ、一体何のつもりなんです!!埋まる埋まるって・・・七誌さんを苦しめる事ばかり・・・」
「・・・私が埋まったってアンタだけには絶対七誌は渡さない!!絶対に!!」
煮え滾るような殺意さえ混じった視線と、透き通った氷のような見下した視線が
交差し、薄暗い病室に濁りきった憎悪が充満する。
しかし、次に8スレの発した一言はその異空間すらあっさりと崩壊させた。
「・・・七誌さんにはまだ言っていませんけど、今、私のお腹の中には
七誌さんの子供が宿っているんです。」
「・・・嘘───」
「あなたが信じるかどうかなんて、どうでもいいことですけど・・・」
8スレは愛おしそうにお腹を撫でた。
「あなたがこのまま死んでしまえば、七誌さん優しいから、
ずっとあなたの事、引きずって生きていくでしょうね・・・
でも、もしそのときに私が身ごもってることを知ったら?」
「!!!!」
「・・・もしも、私がその赤ちゃんにあなたの名前を一文字借りて・・・
そうね、10スレにでもしようかしら?」
「自分の子供まで道具みたいに・・・アンタは!!!」
「きっと、あなたの生まれ変わりだとに思って
いっぱい愛情を注いでもらえるでしょうね・・・
この子を通して、時々七誌さんはあなたを思い出すんでしょうけど・・・
でもそれすら、時間が経つにつれて、七誌さんの心は
ゆっくりと、そこにはいない『あなた』から、すぐそばにいる
『あなた』じゃない『あなたと似た名前』の私達の愛の結晶に移り変わっていくの・・・」
想像ことすらおぞましい未来に9スレは言葉を発する気力も失い、
ただ8スレを呆然と見つめた。
「そして、七誌さんのあなたとの記憶は『思い出』っていう箱にしまわれて、彼の心の奥に小さく、本当に小さくなって収納されちゃうの。」
「!!!」
「でも、奥に大事にしまわれたその箱は、やがて埃をかぶって・・・
長い年月を経て、どんどん劣化して・・・そのうち虫食いだらけの、
ぼんやりとした、意味の成さないものになるのよ。」
「・・・」
「だから、───そう、あなたのその姿があまりにも惨めで哀れだから
最後くらい、夏が終わるまで私の七誌さんをあなたに貸してあげます。」
「あなたのじゃ・・・ない・・・七誌・・・は・・・」
「あなたがどんなに七誌さんに追い縋っても、あなたが死んだら私が引き摺り下ろしてあげますから、どうぞご心配なく。」
8スレがゆっくりと立ち上がり、氷のような瞳が9スレを射抜く。
「・・・じゃ、遅くなると、七誌さんが心配しますから・・・さようなら。」
8スレが去った病室には一晩中すすり泣く9スレの声だけが響いていた。
誰かが言ってた義母ネタ
やっぱし難しかったので埋めネタで再利用してみた
>>667 アトリで思い出したが.hackのアトリもなんか黒いらしいな。
妙だ…
私が入院してからもう二週間…あの日以来健斗が全くお見舞いに来ない。
最初は忙しいのかとも思っていたが、土曜も日曜も来ないのは合点がいかない。
嫌な予感がしていた、とてつもなく嫌な予感がしていた。
そしてそれと同時に嫌な妄想が私の頭に湧き上がった。
誰か知らない女に微笑む健斗。
誰か知らない女と手を繋ぐ健斗。
誰か知らない女と抱き合う健斗。
誰か知らない女に誘惑される健斗。
誰か知らない女とホテルに入る健斗。
誰か知らない女の××を×××て××××…
「駄目だっ!それだけは駄目だっ!」
「何を訳のわからん事を言っている…」
「不撓!?いつから居たんだ?」
いつの間にやらベットの側に不撓が立っていた。
「お前が悶えている間はずっとな。そんな事より何を考えていたのだ?」
「えっと…」
確かホテルに連れ込んだ後に…
「誰か知らない女の全身を強打してとどめを…」
「もういい…」
無論、主語は『私』だ。
「もういい…」
一週間の間に私の予想よりも多くの人が見舞いに来てくれた。
中には初対面の人物まで居た程だ。
それでも二度以上見舞いに来る人物は非常に稀で…それでも毎日見舞いに来てくれた人物が一人だけ居た。
「だいたい怪我人は怪我人らしく大人しくしていたらどうだ?」
…こいつだ。
不愉快な事に、こいつだけが何故か毎日ここにやってくる。
「私が五体不満足になったのは誰のせいだ?」
「…すまん」
最初は不撓の顔が見えるたびに恐怖が蘇ってきたものだ。
だが今は慣れたのか不撓が理不尽な暴力を振るう奴ではないとわかったからか、どちらにせよ今の私は普通に不撓と話せるようになっていた。
まぁ、それが良いか悪いかはこの際置いといて…
「なんでわざわざ毎日現れるんだ?」
「前にも言っただろう、償いを済ませねば気分が悪いと」
不撓は何を今更、とでも言いたげに言う。
「だから何度ももういいって言っただろう、しつこいぞ」
「ほぅ…それは残念だな、病院食は不味かろうと思って軽食を用意しておいたのだが…無駄だったか」
「………」
「………」
ぐうぅ…
「食べる…」
「そうこなくてはな」
不撓の言う通り、病院食はあまり美味しくない上に量が少ない。
それに誰が作っているのかは知らないけど、不撓の持ってくるお弁当は以外に美味しいのだ。
私はようやく少しづつ動かせるようになった両手でそれを受け取った。
蓋を開ける…うん、悔しいけど美味しそうだ。
「不撓、そういえばこれは誰が作ってるんだ?」
「俺だが…それがどうした?」
…は?
「不撓が作ったのか!?これを」
「そうだが…どうしたのだ?」
欝だ…
私の料理の腕はまだまだ発展途上だが、まさか男に負けるなんて…
「一応聞くけど、なんでこんな事までできるんだ?」
「学べる物は何でも学ぶのが俺の信条だからな」
「なぁ不撓…もしかして暇なのか?」
「さあ、どうだろうな」
「暇なのか…」