嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 監禁八日目

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1名無しさん@ピンキー
浅いものはツンツンしたり、みたいな可愛いラブコメチックなヤキモチから
深いものは好きな人を独占して寵愛する為に周囲の邪魔者を抹殺する、
みたいなハードな修羅場まで、
醜くも美しい嫉妬を描いた修羅場のあるSS及び、
他様々な展開の修羅場プロット・妄想を扱うスレです。

■前スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 監禁七日目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148113935/
■過去スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 泥棒猫六匹目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1147003471/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 五里霧中
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1145036205/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 四面楚歌
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1143547426/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 三角関係
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1142092213/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 二股目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1140208433/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1137914849/

2ch 「嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ」まとめサイト
http://dorobouneko.web.fc2.com/index.html
■関連スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第12章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1145448125/
■姉妹スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレinラ板
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1132666398/
2名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 23:08:48 ID:X1abGtqc
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  /.  |:: |     '´  ,、`ヽ    |..::|
  |.... |:: |   i ,ノノ ))リ  ...|..::| 新スレです。楽しく使ってね。仲良く使ってね。♥
  |.... |:: |   |! |l"ワノl|.    |..::|
  |.... |:: └──リ/∪‐∪──┘::|
  \_|    ┌ノ────┐.    |    ∧_∧
      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  Σ(;___)
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           | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|、_)
             ̄| ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄| ̄

3名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 23:09:27 ID:X1abGtqc
誘導用
【3P】ハーレムな小説を書くスレ【二股】 2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1144805092/l50
寝取り・寝取られ総合スレ 2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1133346643/l50
4名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 23:15:28 ID:egKXhkHQ
1乙
5名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 23:19:51 ID:OCnHdMRv
>1ちゃん、どうして私の事ちゃんと皆に紹介してくれないのかな?
あ、そうか!>1ちゃんって恥ずかしがりやだから私達の事黙っておきたいのかな?
うん、でもやっぱりみんなにはちゃんと言っておきたいかな
私達は前世から結ばれているのに何照れているのかな?
恥ずかしいからってそんな大慌てで否定しなく立ったっていいじゃない

ヤンデレの小説を書こう!
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148704799/l50
6名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 23:42:21 ID:Fl635LAH
1乙
7名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 23:43:46 ID:w7Zh1Zjb
>>1
8名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 23:52:46 ID:teGn3i5N
>>1
乙っす!!そんじゃまぁ先輩、今日も清く正しい勉学の園に早急に参りましょー!!
ほらほら急いで急いであんまりのんびりしてるとまたあの勘違い年増(前スレ)が来ちゃいますから、ね?ね?
もーほんと先輩は私がいないと駄目なんですからぁ
97スレ:2006/05/31(水) 00:17:51 ID:M/ahUCy2
>>1
もう、こんなところに居てー、早く帰ろ!
>>1くんが、こんな生まれたての乳臭いガキなんかに見向きなんてするわけないよね
私は分かってるよ、うん分かってる。あの雌犬が無理やり連れてきたのよね
もちろん>>1くんを部屋に閉じ込めたのはやり過ぎだって思ったけど
それも>>1くんのためだったんだよ?ほら、お外には8スレみたいな雌犬が
>>1くんを狙ってるんだから。>>1くん優しいから狙われちゃうんだよ。
私が守ってあげる。だから・・・ね、ずっと一緒。絶対に離さない。
例え私が埋まったとしても一緒に・・・ずっと一緒に・・・
10振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/31(水) 00:31:41 ID:eK9F1S+m


 夏休みも終り、2学期が始まりを告げる。 暦は9月。 セミの鳴き声も多少は其の勢いが衰えたもののまだまだ暑さの続く残暑。
 朝から路にくっきりとした黒い影を落とす太陽に照らされた、そんな学校へ向かう登校路。
「おはよう。 羽津姉、結季」
「おはよう祥ちゃん」
「祥おにいちゃんおはよう」
 朝、学校へ向かう三人は路でお俺たちは互いの姿を確認すると挨拶を交わす。 それは仲の良い気心の知れたもの同士の幼馴染ならではの光景。
 あの夏の旅行が切っ掛けで俺と羽津姉は恋人同士と言う関係を終わらせた。 そして昔の関係に、幼馴染に戻った。
 振り返ってみれば羽津姉には色々辛い想いをさせてしまった。 でも、もうそんな思いはさせない。 させないで済む。 そう思うと心は軽かった。
 自然と笑顔になれる。 自然な気持で優しく接する事が出来た。
 三人で過ごす幼馴染としての日々。 そう……俺たちはもう暫らくはこの幼馴染の日々を続け噛締める。
 それが羽津姉への償い。 そして手向け。 また、結季の望み。
 失恋直後の羽津姉に対して俺だけ……いや、俺たちだけ新しい恋に浸るわけには行かない。
 だから、だから結季は俺に言ったのだ。 せめて羽津姉が同じ学校にいる間は――卒業するまでは、と。 そして俺もそれを承諾した。 それまで俺と結季は付き合わないことを。
 だけど……実際にはそこまで細かく難しく考える必要などまるでなかった。 昔のように、今までのように過ごせば良いだけなのだから。 それだけで俺たちの日々は満ち足りた楽しい幸せなものになったのだから。
 結季ははっきりと受け入れてくれる意思を表してくれたのだから。 だからもう焦る必要も思い悩む必要も無かったのだから。

11振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/31(水) 00:33:34 ID:eK9F1S+m


   ・    ・    ・    ・   


 今年の夏は私は一生忘れないだろう。 私の恋に終りを告げた夏……。
 自分で自分に引導を渡しピリオドを打った夏。
 自分で決めた事とは言えやっぱり辛くて悲しくて……。 多分流した涙の量は今まで生きてきた中で一番多かったと思う。 そしてこれから先こんなに泣く事は無いだろうと思えるほどだった。
 でもこの失恋がもたらしたものは喪失感だけじゃなかった。 気付かせてくれた。 思い出させてくれた。 私にとっての本当の幸せ。
 幼馴染の時間こそ私にとってはかけがえなの無い物であったと言う事を。 そう、本当に大切なものだけは失わずに済んだのだ。
 未練を完全に断ち切れたのかと言うと決してそうではない。 でも、私が告白する事は多分二度とないだろう。
 もう……あんな悲しい思いも、辛い思いもしたくないから……。
 
 幼馴染の縁はきっとこれからも切れない。 いや、切れて欲しくない。
 そんな私の望みに応えてくれるように祥ちゃんは接してくれた。 そこにあったのは何の気負いも無い昔っからの笑顔。
 私と祥ちゃんと、そして結季との誰にも邪魔されない三人っきりの時間。
 今、私達の間には何もわだかまりも隔たりも無い。 ただ、幸せな空気があるだけ。

 そして改めて感じる。 気負いも何も無くなった祥ちゃんはとても優しかった。 そう、やっぱり私達にとって幼馴染こそが最良の関係なんだ。
 お昼ごはんも2人で食べるよりも、やっぱり結季も交えて3人で食べた方が美味しかった。 お弁当を作るときも結季と一緒に作る方が楽しかった。
 そして幼馴染に戻った事で祥ちゃんは私に素直に甘えてくれるようにもなった。 幼かった日のように。 そう、姉弟のようだったあの日に戻ってたのだ。

 紅葉が真っ赤に色付く頃には3人で紅葉狩りにも行った。
 三人で見た燃えるように真っ赤に紅葉した山。 金色のじゅうたんのような銀杏の落ち葉で埋め尽くされた道を歩いた感触。
 クリスマスの時には流石に少し『若し恋人同士で迎えられたら』って想像しちゃったりもしたけど、でも去年までと同じ3人で過ごした時のと同じ様に楽しく過ごせた。 3人で見たイルミネーション、とっても綺麗だった。
 大晦日から二年参り、そして初詣。 気合を入れた晴れ着姿、祥ちゃんに褒めてもらえてとっても嬉しかった。
 バレンタインの時はまた封印したはずの気持が首をもたげそうになったけど、でも結季と一緒にチョコレートケーキを作る事でちゃんと押さえられた。 美味しそうに食べてくれた祥ちゃんの笑顔は私の心も幸せな気持で一杯に満たしてくれた。

 そして卒業……。 私は慣れ親しんだ校舎を巣立つ。 これでもう祥ちゃんとも一緒の時間は過ごせない。 でも高校最後の瞬間まで楽しく過ごせた。 だから……もう私も祥ちゃんから卒業しよう。
 今度こそ私の初恋に完全にピリオドを打とう。
 大丈夫、きっと大学で吹っ切れる出会いにめぐり合える。
12振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/31(水) 00:34:23 ID:eK9F1S+m


 大学では色々な出会いが待っていた。 でも、どうしてもときめかない。 早く吹っ切らなきゃいけないのに……。
 吹っ切ろうと思って試しに色々付き合ってみたが、誰とも長続きしなかった。
 そんな満たされない思いを胸に抱きながら過ごす日々を繰り返すある日、街中で祥ちゃんと結季が一緒にいるところを見かけた。
 あのコったらいつまでも”祥おにいちゃん、祥おにいちゃん”っておにいちゃん離れできないのね。 兄妹仲良しなのも良いけど……ねぇ。 そんなんじゃ何時まで経っても彼氏出来ないわよ。  私はそんな二人を遠巻きに覗き見ながら思わず苦笑を洩らす。
 そう思いながらジッと見つめていた。 でも見つめてるうちに何だか違和感を憶え始めた。
 何て言うかお互いを見つめる眼差しが幼馴染や兄妹と言うよりまるで……。 いや、そんな筈は……。
 だが次の瞬間私は自分の目を疑った。
 お互いの瞳を覗き込むように向かい合いそっと目を伏せ、そして唇と唇を重ね合わせた。 啄ばむようなそっと触れるようなささやかなキス……。 そして二人共ほんのりと頬を朱らめる。

 何……? 何なのこれは? 何で……何で祥ちゃんと結季が? そんな……そんな……。 だって……。
 だって祥ちゃんが私を女としてみてくれなかったのはその近すぎる距離が仇になったから……。 近すぎて姉としてしか見てくれなかったから……。 それなのに……
 それなのになんで?! なんで結季が?! なんであのコがそこに居るわけ?!
 私が祥ちゃんの姉ならアンタは祥ちゃんの妹でしょ?! いつも”祥おにいちゃん祥おにいちゃん”って後ろを付いて歩いていたじゃない! なのに……なのに……なんで……なんで……、
 なんでアンタがそこに……、祥ちゃんの隣にいるのよ!
 祥ちゃんも祥ちゃんよ! なんで? なんなの? なんなのよ其の顔は?! 何でそんな幸せそうな顔してるのよ! なんでそんな熱っぽい眼差しで結季を見つめているのよ?!
 そんな……そんな視線……、私には……私には一度だって向けてくれなかったじゃない!!
 どうして……、どうしてよ……。

 視界が滲む……。 涙がとめどもなく溢れてくる。 心が悲鳴をあげている。
 痛い痛い痛い痛い……。 まるで胸にナイフでも刺さってるみたいに痛い。
 苦しい苦しい苦しい苦しい……。 まるで深い水の底にいるみたいに苦しい。
 寂しい寂しい寂しい寂しい……。 まるで暗闇の中独り取り残されたみたいに寂しい。
 痛くて……、苦しくて……、寂しくて……、私の心は罅割れ、砕け、粉々になってしまいそうで……。

 私は駆け出していた。 もう一秒でもあの場所に居られなくて……居たくなくて……。
 これ以上あの場所に居たら私はおかしくなってしまいそうで……。
 いや……、もう壊れていたのかも。 二人のキスを見たときから私の……。
 ワタ……シノ……ココ……ロ……ハ……。

13振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/31(水) 00:35:04 ID:eK9F1S+m


   ・    ・    ・    ・   


 デートからの帰り道、わたしはそっと唇をなぞる。 そして反芻するように思い出す。 祥おにいちゃんとのキス。 それだけでわたしの心の中は幸せで一杯な気持になれた。
 わたし達は――わたしと祥おにいちゃんはお姉ちゃんが大学に入学するのを待って付き合いだした。
 只側に、隣にいるだけで幸せな気持になれる。
 恋人同士と言うだけでこんなにも幸せで満たされるなんて、まるで魔法みたい。
 でも、何の憂いも悩みも無かったわけじゃなかった。
 理由は……お姉ちゃんに未だ打ち明けられずに居た事。
 お姉ちゃんが未だ完全庭吹っ切れていないのが分かるから。 其の証拠に未だお姉ちゃんは誰ともお付き合いしていない。
 大学に入ってから何人もの男のヒトとお付き合いした事があるみたいだけど、でも誰とも長続きせず早いときは一週間ほどで別れてしまった。
 まだ、明かせない。 せめてお姉ちゃんが本当に心を許せるヒトと出会うまでは……。

 太陽が西に傾き夕闇に染まり始める頃わたしは家に帰りついた。
「ただいま」
 返事が無い。 あれ? お母さん未だ帰ってないのかな? それとも鍵かけ忘れて買い物に行っちゃったのかな?
 そう思いながら見渡すと玄関にはお姉ちゃんの靴があった。 あ、お姉ちゃんが帰ってたんだ。
 わたしはお姉ちゃんの部屋のドアをノックし声をかける。
「お姉ちゃん帰ってるの?」
 返事は無い。
「居ないの?」
 そう聞きながらそっとドアをあけるとお姉ちゃんは居た。
「な、なんだ居るのなら返事してくれても……」
 私は部屋に立ち込めた異質な雰囲気に言葉を呑んだ。
 窓から差し込む黄昏時の夕陽によって薄暗く照らされた部屋。 逆光で伺えないお姉ちゃんの表情。
 明らかにいつもと違うお姉ちゃんの様子に私は戸惑いを、脅えを隠せなかった。

「ど、どうしたのお姉ちゃん? も、もう暗いんだから灯りつけたほうが……」
 私の言葉を遮るように何かが飛んできた。 わたしの顔をかすめ壁にぶつかり、ばさりと足元に落ちたそれはアルバムだった。
 落ちた拍子にばさりと開いたページ。 其のページを見た瞬間私は驚きと恐怖を隠せなかった。
 写真には刃が突き立てられた傷が幾つも付いててズタズタのボロボロになっていた。
「嘘つき! 卑怯者!! 裏切り者!!」
「お、お姉ちゃ……」
「黙りなさい! アンタ……よくも今まで謀っててくれたわね! そうやってずっとずっと私のこと騙してたんでしょ!!」
 お姉ちゃんの顔は怒りと悲しみと憎しみで歪み、怒りに染まった其の眼からは大粒の涙が溢れていた。
「そ、そんな……わたしは……」
「黙れって言ってるのよ!! 言い訳なんか聞きたくも無いわよ!! この卑怯者!!」
「お、お姉ちゃん……は、話を……」
「お姉ちゃんなんて呼ばないでよ!! アンタみたいなコもう妹でも何でもないわよ!! よくも今まで聞き分けの良い妹の振りして騙してくれたわね!!」
 そう言ってお姉ちゃんは手を振りかぶって振り下ろした。 咄嗟にわたしが避けると手はドアに当たり木の割れる音。 お姉ちゃんの手に逆手に握られた鋏がドアに突き刺さってた。 わたしは思わず逃げ出した。
「逃げるなこの泥棒猫が!! 絶対! 絶対許さないんだから!!」

 お姉ちゃんが……、あんなに優しかったお姉ちゃんがあんな怖い顔して恐ろしいこと言うなんて……。
 わたしの、わたしのせいだ……。 わたしが祥おにいちゃんと付き合ったりなんかしたからだ。
 わたしがお姉ちゃんを傷つけた。 わたしがお姉ちゃんを悲しませてしまった。 わたしのせいでお姉ちゃんが変わってしまった。
 わたしが、わたしが、わたしが……。

 もう……、もういやだよ……。 こんな辛いのも苦しいのももう沢山だよ……。

14振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/31(水) 00:36:05 ID:eK9F1S+m


   ・    ・    ・    ・   


 許さない許さない許さない許さない許さない! 何があったって! 謝ったって絶対にあのコ許すものか!!
「出てきなさい結季!! この嘘つきが!! 隠れてないで出てきなさいって言ってるのよこの卑怯者が!!」
 その時物音がした。 音のした方向からして台所。 そう、そんな所に逃げ込んで隠れていたのね! 引きずり出してやる!
 私は台所がある方向に向かって駆け出した。
 台所に入ると、居た! 其の姿は脅えて震えるでもなく静かに佇んでいた。 そして其の手には包丁が握られていた。
「ふん! 何よ其の手に持っているのは!! それで私を刺すつもり?!! 面白いじゃない!! 良いわよ! 刺しなさいよ!! 刺せばいいじゃないのよ!!」
 私が怒鳴ると結季はスッと微笑んだ。 そして其の刃を私にではなく自分に向けた。 そして……
「ゴメンね。 お姉ちゃん……」
 次の瞬間視界に飛び込んで来たのは鮮やかな赤。 それは結季の首からほとばしる鮮血……。
 私は……私は一体何をしようとしてたの……。 私は……、わた……しは……。

「イ、イヤァァァァァアアア!! 結季!! しっかりして結季!!」
 私は鋏を頬リ捨て駆け寄り血まみれの結季の体を抱き起こした。
「お姉ちゃん……。 良かった……、元に戻ってくれたんだ……ね……」
 結季の手が私の頬の涙を拭うように力なく伸びる。
「喋らないで! ああ……、私の……、私のせいで……」
「ゴメンねお姉ちゃん……。 わた……しのせい……で辛い思いさせ……ちゃって。 大……好きだよ……お姉ちゃ……」
 そう言いかけて結季の瞳から光が消え瞼が閉じ、そして私に向かって伸ばされた手も……。
「あ、ああ……、ああああああああああああああ…………!!!!」

15 ◆tVzTTTyvm. :2006/05/31(水) 00:37:35 ID:eK9F1S+m
次回エンディングの内の一つをお送りします
16名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 00:39:36 ID:M/ahUCy2
おねーちゃーん(;つД`)
17 ◆tVzTTTyvm. :2006/05/31(水) 00:40:14 ID:eK9F1S+m
>>14の鋏を頬リ捨て
じゃなくて
鋏を放り捨て でしたorz
18名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 00:43:23 ID:VAe4dHpS
え!エンディング1つじゃないの!?マジで!?

イェッフー!!!!
19名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 02:09:40 ID:JsXfwOpP
これはとても良い修羅場ですね
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +
20名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 03:24:43 ID:lkizWUs0
GJ過ぎてチンコから何か液体出てきた
21ガマズミの花 ◆qZhXBFESPw :2006/05/31(水) 03:39:48 ID:bYtJhiim
「やめろ…」
 3時間目の休み時間。
 今日4回目の制止。しかし相手は聞き入れない。
「ほれほれ起きろー」
 こらこら椅子を揺らすな。眠いんだから放っておいてくれ。
「やめろって…」
「起きろー起きろー♪」
 俺で遊んでやがるなコイツは…。
 破天荒で勝手気ままな性格から孤立気味だった北上とは、たまたまご近所だったので接する機会が多かった。
 何かと面倒を見てやったり忠告してやってるうちに、気が付いたら遊び仲間のようになっていた。

「ちょっと、可哀相でしょ。やめなさいよ」
 おお天の援けが。いつもはちょっと口うるさいけど、こういときばかりはありがたい。
 藤田さん、このお礼は気が向いたときに暇と余裕があればするぞ。
 …多分、起きたら忘れてるけど。
「関係ないだろ。お前は」
「ないことないでしょ。わたしと彼は同じクラス委員だし。やめなさい」
「……嫌だね。クラスメイトのスキンシップだよ」
 一瞬固まったあと、不敵な態度で北上が宣言する。
 何だか激しい闘争心を身近に感じるが気のせいか。
 やはりというか、何と言うか。
 そんな言い方じゃあダメだ藤田さん。もっとこう、コイツの興味を別の方向に誘導する感じでだな…。
  
「…彼は嫌がってるでしょ」
「嫌がってる? ハッ。お前が嫌なだけだろ」
「何言ってるの? いいからやめなさい!」
「嫌だね。いちいち構うな、鬱陶しい」
「何よそれ! だいたい貴女は…」
 とりあえず向こうでやって頂けませんか、お嬢様方。
 さっきまで肉体的だった苦痛が精神的な苦痛に。しかも威力が桁違いに上がっているのは気のせいか?
 
22ガマズミの花 ◆qZhXBFESPw :2006/05/31(水) 03:40:57 ID:bYtJhiim
「そんなことより、なあなあ」
 爆発中の藤田さんをスルーしつつ北上が話しかけてくる。
「何だよ……もう」
 すっかり眠気が飛んでしまった。体はだるいのに。
「昨日のアレは、素晴らしかったぞ。また頼むよ」
 視線を合わせて潤んだ瞳で告げてくる。
「別にいいけど。…あぁだるい」 
 肉じゃがコロッケのことだな。うん、あれは結構自信があるぞ。
「うんうん。どこに嫁に出しても恥ずかしくないなお前は」
 …その誉め方は嬉しくないな。
「ちょっと何言ってるの!? 昨日のアレって何よ!?」
 藤田さんは何故か激昂している。説明するのも面倒だな。
「まあ、オトナの味ってやつだな」
 意味不明だなその表現。…ふう、しんどい。
「なっ………………!?」
 あれ、藤田さんがフリーズしてるぞ。誰か再起動してやれ。
 北上は………なんだかニヤニヤしてる。

「そ、そういえばさ」
 なんとか立ち直ったらしい藤田さんが身を乗り出してくる。頑張ってるなあ。
「ん?」
「文化祭の準備、なかなか終わらないね」
「うん…ヤバイね」
 お互いにクラス委員兼文化祭実行委員なので責任は結構大きい。
「このままだと居残りでやることになるかもね」
「頑張ってるけどね…」
「暇なときにふたりきりで一緒に準備してるのに」
 そう言って何故かにこりと微笑む藤田さん。楽しんでるなあ、見習おう。
「く………!」
 どうした北上、あんまり噛み締めると奥歯砕けるぞ。
 ………生理痛か? 男に生まれて良かった。

 授業開始を告げる鐘が鳴った。
「ちぇっ。またあとでな!」
 北上はウインクして自分の席に戻った。
「じゃあね」
 藤田さんも名残惜しそうに去っていく。
 ふう………なんか授業受けるより疲れた気がする。
 あの二人ってそんなに仲が悪かったのか?
23ガマズミの花 ◆qZhXBFESPw :2006/05/31(水) 03:42:15 ID:bYtJhiim

 放課後になり、人気が無くなり夕暮れに染まる教室。
「よう…来てやったぞ」
「あら…いらっしゃい」
 女同士が二人っきりで会う用件、それは――――――
 ・
 ・ 
 ・
 ・
 ・
 ・ 
 ・
 ・
「はあ、はあ、はあ、はあ………」
 息が荒い。体が重い。服が汚れて不快。
 だけど不思議な高揚感。
 湧き上がってくる達成感。
 やっと終わった。これでもう、大丈夫…。
 誰にも渡さない。絶対に。誰にも。
「ふふ………ははは………あははははははははははは!!」 
 この教室での思い出は決して忘れない。
 そのとき見た紅い満月は、世界が二人の未来を祝福してくれたのだろう。
 ありがとう、ありがとう。きっと、いや必ず幸せになれる。なってみせる。
 だってこんなに、幸せなんだから。
 ふたりがいっしょなら、きっと…。 


「………」
 息を殺しているとあの女は去っていった。
 どうやら止めを刺したと勘違いしたようだ。
「行か…せな…い…」
 息が詰まる。指一本を動かすだけで、激痛が走る。
 這いずるだけで精一杯。とても立ち上がれそうに無い。
 しかし。
 負けるわけにはいかない。
 許すわけにはいかない。
 たとえこの命が尽きようとも。
 あの女だけは――――――
24 ◆qZhXBFESPw :2006/05/31(水) 03:42:59 ID:bYtJhiim
はい終わり。
なんだか半端ですが。
25名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 05:52:06 ID:+XiArBP+
新たな修羅場ktkr
短いのに中身があって面白かったです。願わくばシリーズ化…
26『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/31(水) 10:49:11 ID:SlueKcbp
〈四月二十日〉
今日、入学して面白い先輩に出会った。なんとなく気を引かれたので、彼についてここで書いていきたいと思います。
〈四月二十二日〉
今日は食堂で出会った。それだけで何故か嬉しくなった。先輩はただの水を、『さっすが、この町の水は不純物満々だ!』と言っていた。
〈四月二十六日〉
今日は図書館でみかけた。片っ端から『帰宅部に入らないかい?』と声を掛けて居た。偉人なのか異人なのか。よく分からない人だ。
〈五月一日〉
やった!!今日は先輩に勧誘してもらい、入部すると言ったら、快く遊んでくれた。一歩ぜんしーん!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「……あいつと始めてあったきっかけってこんなんだったか?」
さらに読み進める。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〈五月二日〉
今日のせんぱい。放課後にグランドへ行ったら、鬼山先生(仮名)とPK勝負をしていた。わざと顔にぶつけるあたり、せんぱいらしい。ただ気になったのは、ギャラリーの女子。せんぱいと同じクラスなのだろうか。
なんだか今日はムカムカします。
27『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/31(水) 10:49:52 ID:SlueKcbp
〈五月六日〉
今日のせんぱい。お昼に食堂へ行ったら、他の女子からクッキーを貰って食べていた。調理実習の奴だ。せんぱいは、『昼飯代が浮いた!』と純に喜んでいた。微笑ましい。けど、クッキーをあげた奴等は許せない。
〈五月八日〉
今日ここに私は宣言する。私はせんぱいが好きだ。一時の迷いでもない、憧れとしてでもない。ただ純粋に好きだ。もっとせんぱいに見てもらいたいため、かわいくなろう!
〈五月十日〉
化粧やお洒落をした途端、クラスの男子に告白された。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「おお、やっぱりそういうのもあるか!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
どこか好きかと聞いたら、『見た目』と答えた。ふざけるな。誰があんたのために努力してるだなんて言ったんだ。
全部せんぱいのため。せんぱいに見てもらえればいい。せんぱいだけ。それ以外は消えていい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ガンッ
キーボードに思いっきり頭を打ち付けた。な、何を考えてるんだ………
〜〜〜〜〜
〈五月十四日〉
せんぱい。嗚呼、こうやって打ち込むだけで幸せになれる。今日の英語の時間、気付いたらノートが一面中『せんぱい』で埋まっていた。これは病気だろうか。一応そのノートはお守りにして置いた。
28『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/05/31(水) 10:50:55 ID:SlueKcbp
〈五月二十日〉
どうもせんぱいに近付く女子が多い気がする。かわいそうに。せんぱいは優しいから誰にでも接してくれてるのだ。特別なのは私だけだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜
……確かにそこは否定できない。春華は学園で人一倍面倒を見ているつもりだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜
〈六月一日〉
今日から夏服だ。私を見て照れてる先輩、かわいい。他の女のは目に毒だろうから、いつも異常にせんぱいにくっついた。
〈六月八日〉
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
この日だ。志穂に会ったのは………
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
今日、のせんぱい。かきたくない。変なおんながあらわれた。いきなりせんぱいを犯した。私のせんぱいを侵した。せんぱいをせんぱいを。
あのチビ女は本島に※したい。※したい。※したい。
その上※※※して、※※※※※※※さらに※し※※※※(検閲)
〈六月九日〉
この文章は削除されました。
〈六月十二日〉
朗報。明日からあの女がいなくなる。チャンスだ。みてろ。帰ってたら居場所が内容にしてやる。いや、飛行機が墜ちてくれればそれでいいのだが。
他力本願はイケない。みてろ。せんぱいは私のだ。私×せんぱい。私×せんぱい。私×せんぱい。(以下、十行にわたって同文………
29名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 10:58:18 ID:rLsBW8I1
>>私×せんぱい。私×せんぱい。私×せんぱい。(以下、十行にわたって同文………
ヤベー!GJ!
30名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 11:18:34 ID:+XiArBP+
これは今をときめくヤンデレってやつですね(゚∀゚)GJ
31名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 15:42:49 ID:JsXfwOpP
やべぇ、なんて素晴らしい後輩なんだ(*゚∀゚)=3ハァハァ
元から春華派だったが俺の中で不動の地位になりつつあるよ
32アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/31(水) 19:52:15 ID:oVpepWUN
投下いたします。長いですのでお覚悟を・・・・
33生きてここに・・・・二十七章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/31(水) 19:52:56 ID:oVpepWUN
黒い服を着た人たちが棺に華を添えていく
俺は遠くからそれを見ていた
雪が・・・・・降ってきた
白の向こうで穏やかな顔で目閉じる奈々の顔が目に入った
「仁くん・・・・・」
声の方向に振り返るとそこには奈々のお父さんが立っていた
「俺・・・・俺・・・・・すいません!」
謝っても許してももらえないのは充分に理解している
でも・・・・俺はずるいな・・・・こうやって逃げようとしている
奈々のお父さんは俺の胸倉を掴んですぐに俺を殴りつけた
「・・・・・・」
「どうして僕がキミを殴ったか・・・・・わかるかい?」
俺の瞳をまっすぐに見つめて奈々のお父さんはゆっくりとあるものを俺に渡した
日記・・・・・・?
34生きてここに・・・・二十七章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/31(水) 19:53:56 ID:oVpepWUN
すごいよ!今日はね仁ちゃんと再会したの!
やっぱり私たちってば運命の赤い糸で結ばれてたりして♪
あと、ね・・・・すごいの仁ちゃんのモテモテぶり
一日で私は嫉妬の的だよ
でもでも、わたくし嫉妬に狂った視線をすべて耐えてみせます!

仁ちゃんが初めて名前で呼んでくいれたの・・・・・さん付けだけど
すっごくうれしかったよ・・・・・ありがとう仁ちゃん
す・・・・き・・・・です・・・・

今日は自称仁ちゃんの婚約者の詩織さんと初対面・・・・
すごい人だった・・・・
でも、私は逃げない諦めない負けないの言葉を胸に戦うよ仁ちゃん!
それと仁ちゃんを私の誕生日パーティーに呼びました!
一週間先だけどなんだかドキドキだよ
今夜眠れるかな?

初めて仁ちゃんの試合を見た
仁ちゃんが殴られるたびに目を反らしちゃった
でもね、勝ったときのあの表情・・・・
いまでも忘れなれない・・・・
カッコいい♪

今日は待ちに待った誕生日
そして・・・・・仁ちゃんとの初キッス・・・・♪
どうしよう・・・・どうしよう
今日は眠れないよ・・・・・て、へへ
35生きてここに・・・・二十七章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/31(水) 19:54:44 ID:oVpepWUN
今日は怖い人が私と詩織さんに刀を向けた
仁ちゃんは私たちを必死で護ってくれた
すっごくこわかったけど、仁ちゃんの背中を見て思ったの
この人なら大丈夫って
え、へへ・・・・・ベタ惚れしてるね
私・・・・・好きだよ・・・・・仁ちゃん

今日はすごく悲しいことがあった
仁ちゃんが大怪我した
すっごく不安で私・・・・ずっと仁ちゃんの手を握ってた
目覚めた仁ちゃんが私のことを忘れてしまったのはショックだったけど
でも、仁ちゃんが目を覚ましてくれただけで充分だよ

・・・今日は仁ちゃんを騙してしまった
でも思いは止められなかった
好きなの・・・・愛してるの
仁ちゃん


重大発表です!なんと妊娠したのーーーー!!!
で・も!詩織さんも・・・・・偶然なのかな?
それはともかく、嬉しかった
だって仁ちゃんと私の愛の結晶だもの
愛してるよ・・・・仁ちゃん
36生きてここに・・・・二十七章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/31(水) 19:56:41 ID:oVpepWUN
「あ、く・・・・・ふ」
涙が止まらない・・・・・な・・・・・な
「僕がキミを殴ったのはキミが謝ったからだ」
そうだ、俺が一番に理解していたんだ
奈々がなんの後悔もなく・・・・・
俺は・・・・・俺は・・・・・!
「これを見て・・・・・もうキミを憎めなくなったよ」
な・・・・・・な!
「奈々―――――!!!!!!」
俺は棺に泣きすがり泣き喚いた

深い海の底からは自分では抜け出せない・・・・
そんななかにあなたは飛び込み私を救ってくれた・・・・
どれだけ深い闇の中でも・・・・
私はあなたを想い待ち続けます・・・・
あなたは私に世界をくれました・・・・
あなたは私に人を愛することのすばらしさを教えてくれました・・・・
私はあなたになにかあげられましたか・・・・
私は・・・・幸せでした・・・・・仁ちゃん

小さく舞う雪の粒が日記から落ちた一枚の写真に降りて溶ける
その写真には仁と奈々が二人で写っている
写真の下にはこう書いてあった
『愛してます、あなたは私のすべてです』
37アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/31(水) 19:58:51 ID:oVpepWUN
日記がかぶってしまいました・・・・すいません『広き檻の中で』の作者様
ここで区切って最終章の投下です
38生きてここに・・・・最終章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/31(水) 20:01:24 ID:oVpepWUN
「パパさま〜♪」
嬉しそうな声を上げて小さな女の子が俺の脚に抱きつく
この子は・・・・奈々の子だ
奈々は護ったんだお腹の中の子供を・・・・
「ずいぶんと楽しそうね・・・・菜々美ちゃん」
詩織がそっと菜々美の手を握り微笑んだ
「はいですの♪菜々美はパパさまとママさまと・・・・天国のママさまがいてくれるだけ   
 で幸せですの♪」
小さな手が俺の手を握った
「私も幸せよ・・・・菜々美ちゃんと・・・・あなたがいてくれれば」
穏やかな笑みが俺に向けられる
あれから三年後・・・・俺は詩織と結婚して
会社を継ぐべく副社長と大学に通っている
あの一件で詩織は流産して二度と子供の産めない身体になってしまった
菜々美を引き取ろうと切り出したのは詩織だ
自分が産めないからという理由じゃないらしい
その証拠に詩織は菜々美を本当に愛してくれている
不定期だが奈々のお父さんに菜々美を連れて遊びに行っている
本当に可愛がってくれて菜々美もよく懐いている
高田さんはいまは俺ではなく菜々美に振り回されている
いまでもすごく元気だ・・・・あと50年は生きるらしい
化け物になる気ですか?
坂島さんはいまは菜々美の世話役として俺の屋敷にいる
聞けば高田さんとは親子らしい
苗字が違うのは坂島さんが結婚したかららしい
似てると思ったんだ
39生きてここに・・・・最終章 ◆1nYO.dfrdM :2006/05/31(水) 20:02:49 ID:oVpepWUN
奈々がカッコいいと言ってくれたボクシングも続けている
もうすぐ世界戦を控えている
チャンピオンが引退したのでランク二位の俺と・・・・
なぜかちゃっかり三位の東児とでの世界戦
少し楽しみだ
詩織と菜々美には悪いと思うけど勝利を一番に捧げているのは奈々にだ
「パパさま・・・・大好きですの♪」
「愛しています・・・・・あなた」
俺はこれからもこの二人を護っていくよ
キミを護れなった俺にそんあこと言える資格なんてないのかもしれない
でも、俺の中のキミは今でも笑ってくれているから
『愛してるよ・・・・・仁ちゃん』
これから俺は奈々の想いと菜々美の想い
そして詩織の想いを胸に生きていくよ
生きてここに・・・・キミの想いと共に・・・・















FIN 『あなたの思い出にありがとう』
40アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/31(水) 20:03:24 ID:oVpepWUN
補完の意味で少ししたらエピローグという形で投下します
41生きてここに・・・・エピローグ ◆1nYO.dfrdM :2006/05/31(水) 20:22:42 ID:oVpepWUN
久しぶりに仁くんとデートした
夕暮れの帰り道・・・・
私はある決意を胸に仁くんにこう言った
「愛しています・・・・私と結婚してください」
ようやく言えた・・・・ちゃんと私の気持ち
仁くんは私の言葉に少し不安げな顔をした
「キミのことを俺も愛してる、でも俺は奈々を忘れられない・・・・・」
忘れる必要なんてないよ
仁くんのことがんばければ彼女とはいい友人になれたと思う
だから・・・・私も忘れないよ・・・・奈々ちゃん・・・・
「それに俺は選ぶ側じゃない・・・・選ばれる側だから」
仁くん・・・・・・
「私は仁くんに選んでほしいの・・・・・私を・・・・・」
仁くんは顔を少しうつむけるとゆっくりと上げた
「俺もキミを愛しています・・・・・」
よくよく考えてみれば仁くんの気持ちを聞くのは初めて・・・・
初めて同士だね・・・・
「私と・・・・結婚してくれますか?」
仁くんはなんのためらいもなくうなずいた
ありがとう・・・・・仁くん
私は伝えたいもう一つの言葉を発した
「菜々美ちゃんの・・・・・ママになっていいかな?」
仁くんの目が驚きで見開かれる
少しの間と沈黙のあと私は言葉を続けた
「私が子供を産めないからって無理してるわけじゃないの」
不思議な気持ち・・・・菜々美ちゃんがとても愛おしい
初めて逢ったのは三ヶ月前・・・・
小さな手が見えない瞳で・・・・私と仁くんの指をしっかりと握った
右手に私・・・・・左に仁くん
私の指よりも小さなその手が必死で私たちに語りかけていた
『前を見て・・・・・』
仁くんは泣き出し私も人目をきにせずに泣き喚いた
あの時決めたの・・・・仁くんと一緒にこの子を護っていこうと
「全部俺の責任だよ・・・・奈々のことも・・・・キミのことも」
悲しげな顔のあと仁くんはまっすぐに私を見つめて微笑んだ
「俺と結婚してください・・・・・」
はにかんだような笑みが私をもう一度で迎えてくれた
「喜んで・・・・・あなた」
42名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 20:23:43 ID:oVpepWUN
「ママさま〜、はやく・・・・はやくです〜」
今は少し大きくなった小さな手が私を必死で引っ張る
「そんなに急がなくてもパパは逃げたりしませんよ?」
「帰ってきたときに一番に出迎えたいですの」
ほんとうにパパっこなんだから
この子にはありのままを伝えた
まだ三歳になったばかりのこの子はあまり意味をわかってはいないと思う
今はママが二人いると喜んでいるけど・・・・いつか理解する日が来る
そのときが来ても私はこの子の母でいたい
覚悟はしている・・・・私は菜々美ちゃんを本気で愛しているから
自分を強くもって私はそのときを待つことにしている
玄関に着くと同時にドアが開き待ち人が姿を見せた
「ただいま・・・・詩織・・・・・菜々美」
小さな手が私から離れて彼の元に向かっていく
「お帰りですの〜パパさま〜♪」
彼は菜々美ちゃんを抱き上げてすこしぎこちない笑みを浮かべた
「どうかしたのですか?」
今度は愛想笑い・・・・もしかして!
「その・・・・取引先の人が・・・・外人で・・・・一度芸者を見てみたいって」
「取引相手ではなく・・・・あなたがちやほやされたのでしょ?」
結婚してから彼のモテモテぶりは・・・・さらに増している
「パパさまが愛してるのは菜々美とママさまたちですよね〜?」
菜々美ちゃんに彼が耳打ちしたあと菜々美ちゃんが笑顔でそう言った
「ずるいですね・・・・今回だけですよ?」
「パパさまの今回だけはすっごく多いですの」
可愛い顔して・・・・菜々美ちゃんったら・・・・とどめさしちゃった
「愛してるのは菜々美とママたちだけだぞ・・・・ほんとだぞ?」
二人がゆっくりと私の方へ歩んでくる
小さな手が私の頬に重ねられた
私はその手に自分の手を重ねる
彼も笑んで私を見つめた
菜々美ちゃん・・・・あなた
私はとても幸せです・・・・









FIN 『小さな幸せ、永遠に・・・・・』
43アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/05/31(水) 20:24:46 ID:oVpepWUN
仁と共にこれからも生きていく詩織
仁の心に永遠に生き続ける奈々
仁に恐怖と悲しみを残した香葉
勝者はいまここまで読んでくださった皆様それぞれが思い浮かべた人です

これで生きてここに・・・は完結です
ここまで読んでくださった皆様
私の自己満足のような作品に最後まで付き合ってくれてありがとうございました!

◆tVzTTTyvmさま 絵という形でキャラクターに命を吹き込んでくれて本当にありがとうございました

管理人様・・・・アホみたいな投下数に文句ひとつ言わずにありがとうございます

最後にキャラクターに・・・・

詩織さん・・・・・あなたは私にとって一番、都合のいいキャラになっていました
         ごめんなさい、どうかお幸せに・・・・
奈々さん・・・・・あなたが私の一番の被害者です。どうか安らかに・・・・
         これからも仁たちを見守ってあげてください
香葉さん・・・・・私はあなたを一番不幸な立場に追いやりました。ごめんさない
         どうか来世では幸せになってください。
仁くん・・・・・・あなたは私とは正反対の人間です
         これからも大変なことがあると思いますががんばってください

生きてここに・・・のキャラクターはみんな私の手を完全に離れてしまっている感覚です
なので最後にメッセージをと・・・・完全に自己満足です
今までありがとうございました・・・・
44名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 21:48:23 ID:DbXDjYZf
アビス氏
完結乙です
45山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/31(水) 22:13:14 ID:E0nM1F1V

――
―――

――ピンポン
『次は差桝町一丁目、さしますちょういっちょうめ。お降りの方はボタンでお知らせ下さい』

 差桝町――僕達の住む町。
 本来なら次のバス亭で降りなければならない。
 しかしそれでは、ご近所の梓も当然一緒に下車することになる。
 ……それはまずい。姉さんを隠しきれない。何か手を打たなくては……。
 
「あず。僕ね、帰りにちょっと買い物しなきゃならないんだ」
「今から……ですか? こんな時間に?」
「うん。姉さんに頼まれていた物、忘れてて。それでさ、もう遅いからあずは先に帰りなよ。
 僕はこのまま、勘斤通りの方まで乗っていくから」
 一つ先のバス停まで乗り越す。
 そこから歩いて、姉さんを家にお持ち帰り。これだ。
 ……あぁ、姉さんが裸足だったのを失念していた。途中でサンダル買ってあげないと。

「秋人さん……あの……」
 スッと梓が立ち上がる。
 ただそれだけの動作なのに、純白の翼をしなやかに伸び上げたような気高さが漂う。
 ……が、ここはそんなことに見惚れていられる場面ではない。
 梓はなにか物言いたげに、僕の方へと詰め寄ってくる。 
 ……バ、バレたのか? 姉さん、もっと近くに寄って、寄って!

「な、なんだい、あず?」
「あの人……さっきの人、秋人さんのなんなんですか?」
 ……藤原さんのこと?
 なにって、だからクラスメート、だよ。
 最初に会った時説明しておいたはずだけど?
「あ、あの人、よくない人ですっ」
 梓が珍しく表情を荒げて、搾り出すようにして叫んでいた。
 よくないって……何のことだ? 
 良いも悪いも、大体二人ともろくに話すらしてなかったじゃないか。
 一緒に勉強していただけで、何をそんな……良くないって……。
 ……あぁそうか、勉強のことか。
 藤原さんは、頭良い方だよ?
 
「あの人、絶対よくないですっ!」
「そんなことないって」
 藤原さんは頭いいって。
 そりゃ梓から見たらよくないかもしれないけど……だったら僕もドッコイドッコイだよ。
「あの女は、悪い女ですっ!」
「彼女はむしろ良い方だと思うんだけど」
 特にこの間のテストじゃ、英語と現国は僕より点数良かったし。
「どうして庇うんですかっ!? あ、秋人さんはあの人と、付き合っているんですかっ!?」
――唐突に、チクリと背中に刺激が走った。
「痛ッ!?」思わず叫びがついて出る。
 いたッ痛い痛い痛い痛いッ!! ちょっ、なっ、えぇっ!? 
 ――あ………ささってる。
 うわあああああぁぁぁああああっ!!!
 姉さん、やめてやめて、背中にナイフが! なんでそれ刺さちゃってるのッ!?
 マジで刺さってるってッ!! 先っぽがちょっとだけぇ、刺さってるってぇ!! 
 チクチクするってぇ! 危ないってぇ! 痛いってぇ! もう刺さってるてぇ!!
 ってゆうか、いつのまにまた、それを抜いたの!? 
 閉めてよ、フタしめて!! はやくっ!!
46山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/31(水) 22:14:44 ID:E0nM1F1V

「『いた』って……そ、そんな……まさか……」
 ちょっと待ってね、あず! 
 あとでゆっくり話しを聞くから、ちょっと待って! 
 梓に引き攣った笑みを投げかけながら、見えない背後を手探りする。
 姉さんの手……つ、捕まえた!
 
「あの人と……本当に、付き合っていたんですか……?」
 今たてこんでるから! あとにして、あとで!
 そーっと、そーっと、そうそう、姉さん。
 ちょっ、姉さん、大人しくして!
 
「い、今は違うんですよね? 『付き合っていた』って、今は付き合っていないんですよね!?」
 さ、さ、ぱちんとフタしめようねー。ぱちんと。
 後ろ手であやすように、それでいて渾身の力で凶器の隠蔽を促す。
 しかし姉さんがイヤイヤとむずかるので、なかなかはまらない。
 ふるふる震えている姉さんの手の小ささに、今日負った心の傷の深さを垣間見て、胸が痛んだ。
 
 ふぅ……。
 ……えと、それで? 梓は何だっけ?
 
「秋人さんっ、そうなんですよね!?」
「え? あ、うんうん。そうそう。その通り!」
 いつ姉さんのことがバレるのか冷や冷やする。ともかく調子をあわせておかないと。
 ……で、なんの話?
「そ、そうですか……」
「そうそう」
 ……で、なんの話?

「あの、でもやっぱり、あの人にはもう構わない方がいいと思うんです」
 なんだ……まだ藤原さんの話をしてたのか。
 どうしてそんなに藤原さんに拘るかなぁ。
「あの人は、秋人さんの思っているような人ではありません」
「彼女のことは、僕がよく知っているつもりだよ」
 隣りの席だからさ。普段真面目に授業受けている事は、誰よりも知っている。
「騙されてますっ! あの人まだ、諦めてませんっ!」
 騙されてるって……おいおい、藤原さんがカンニングとかするわけないだろう?
 それに諦めてないのは当然じゃないか。まだ高二になったばかりだし、大学受験は来年だよ?
「秋人さん分かってください。お願い……!」
 うわっ、おおっとと。
 梓が急にシャツにしがみついてきて、バランスを崩した。
 背後でぽすんとぶつかった姉さんが、そのまま抱きついて背中に顔を埋めてくる。
 
 ………。
 ……姉さん、あんまりスリスリしないでね。
 ……姉さん、あの、どうしてそんなに匂い嗅いでるの? 深呼吸くすぐったい……。
 ……ね、姉さん? ちょ、ちょっと今、舌が這ったような気がしたんだけど……。
 あ、姉さん………。
 お願いだよ……、もう泣かないでくれよ……。
 僕のシャツでよければいくらでもハンカチ代わりにしていい。
 だから涙を拭いて。早く笑顔に戻って欲しい……。
 ……あぁああ!! 姉さん、ドサクサに紛れてそんなとこで鼻かまないでよ!?
47山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/31(水) 22:15:24 ID:E0nM1F1V
「秋人さん……。あの人だけは、やめてください……」
 前も後ろも修羅場だった。
 そうだ、梓の態度も変だ。
 こんなにも感情的な梓、こんなにも必死な梓、少なくともこの三年間に会ったことがない。
 一体どうしたっていうんだ。さっきから話が少し噛みあっていないような気もする。
 よく考えるんだ、山本秋人。梓は何を僕に伝えようとしている? 梓は何を訴えようとしている?
「やめてって……何を? どうして?」
「……………」
 梓が唇を噛む。
 至極基本的な質問だ。
 しかし梓はなんだか、ハッキリ言いたくとも言い出せない……そんな顔をしている。
「……あの人は……悪い女だから……」
 そこなんだよなぁ。
 他人の頭の出来の良し悪しをとやかくいうのは、感心しないんだが……。
 そもそもどうしてそこに拘っているのか。
 
 
 …………あ。

 そうか、そうだったんだ……。
 あず、君の気持ちに、僕はようやく気付けたよ……。
 
「分かったよ、あず。心配しないで」
「……え? じゃあ……」
「言う通りにする。藤原さんのは、もう忘れる」
 梓の瞳に一瞬、喜悦の灯が宿る。
 美しい睫毛が慌ててその灯をかき消した。
 
 なるほどねぇ。名門校ってやっぱり違うんだな。ちょっとカルチャーショックだ。
 こんな事で大慌てするなんて、梓の学校って宿題だけでも留年がかかるほど厳しいんだろうね。
 
 そう。
 どうやら僕は、とんでもない思い違いをしていたようだ。
 
 梓の目から見ると、僕がコピーした藤原さんのノートは、凄まじく酷い出来。
 それがさっきから、藤原さんの頭の良さ云々を騒いでた理由。
 つまり、僕があのノートを丸写ししたら、きっと怒られるだろうと心配してくれていたんだよッ!

「ご、ごめんなさい……。なんだか私、さっきから勝手なことばかり言ってて……」
 そりゃ言い出しにくかっただろうさ。
 『写すな自分でやれ』なんて年上に面と向って忠告したら、嫌味な真面目人間だと疎まれかねない。
「いいんだよ。僕のことを心配してくれたんでしょ?」
「へ、変な子でしたよね、今日の私……。差し出がましいことばかり……」
「アレは、もう捨てる」

 キッパリと言ってのけた。
 古文の加藤先生がそこまでチェックするとも思えない。
 仮に酷い出来でも、別に大した被害があるわけじゃない。
 でも女学院に通っている梓の目には、笑い事に映らなかったんだろうな。きっと。
 梓がここまで言ってくれたんだ。藤原さんのノートは捨てて、男らしく独力でやるとするか。
 ごめんね、藤原さん……。っていうか、そこまで酷い出来なら僕の方がノート見せてあげないと……。

「……す、捨てられるのは可哀想だとは思います……けど、あの人はよくない人だと思うから……」
 梓はもう、安堵の気持ちを隠しきれないみたいだ。
 その気遣いが分かった途端、自然に頬が緩み始めていた。
 僕のことをこんなに気にかけてくれている梓が、嬉しくて。なんだか懐かしくて。
 でももうこれ以上、他人の悪口は口にして欲しくない。
 だから僕は、ついついこう言っていた。
 
「でもさ、あずならいいよね?」
48山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/31(水) 22:16:04 ID:E0nM1F1V
 あず、頭良かったもんなぁ〜。今日宿題を手伝ってもらって、しみじみと実感した。
 実はちょっと本気で、梓が代わりにノート作ってくれないかと期待しちゃってたりする。
 あはははは。

「藤原さんは悪くとも、あずなら良いよね? 僕もあずだったら凄く安心だなぁ」
「………ぇ…………?」

 まるで信じられないような物でも見たかのように、潤んだ瞳が大きく見開いた。
 みるみるうちに、梓の頬が紅に染まっていく。
 うんうん。褒められたのが、余程嬉しかったようだ。
「マジでお願いしちゃおうかなー、なんて。や、やっぱり駄目かなぁ……、ははは」
「……ぁ……ぇ……?」
 すっかり放心してしまっているあず。
 熱病にうなされているかのように上気した面持ちが、それでも僕を見つめて離さない。
 ふふふ。そんなに謙遜しなくても、梓が頭いいのは事実じゃないか。梓が努力したのは事実じゃないか。
 梓がこれだけ感情の篭った表情を見せてくれるのは、本当に珍しい。
 僕もなんだか調子にのってきたぞ。
 
「でもね。僕にとっては昔からあずが一番だよ。これは本気で言っているよ?」
 こんなにも無防備な梓の姿を見ていると、幼き日の彼女の影が重なって見える。
 昔の梓は泣き虫で、いつも僕の背中に隠れていて、何かあるとすぐに甘えてきて……。
 それでも僕が少し褒めてあげると、影でもの凄く努力しはじめるんだ。
 頑張って、嫌な事にもじっと耐えて、いつの間にか困難を成し遂げてしまう。また褒めてもらうために。
 ……そんな子だったんだ。彼女はやっぱり変わっていないんだと思う。
 セピア色の思い出が、僕の胸を暖かく充たしていく。
 
 ……。
 で、でも……あれ?
 あのー、梓……さん? 
 ……流石にそんな、泣きそうになるまでのこと……かな?
 ちょっと褒めただけなんだけど……。
 
 え? あれ?
 
「………ぅ、ぅそです………。………信じません………」
「嘘じゃな―――グェッ!?」

 ぐぅええええええええええぇええええええぇええええ
 ね、ねえざん、やべで……ぐ、ぐるじい……ぞんなにジャツを引っ張らないでぇ……
 いぎ、息がぁ……。ぢょっとぉ……。
 
「……だ、だって秋人さんは、亜由美さんが……」
 ――って、痛いいたいイタイッ! 今度はまたナイフかいっ!?
 もうやめてよ、これ以上は血が出ちゃうよ、勘弁してよー!
 気が立っているのは分かる。後でしっかり話を聞いてあげる。
 だからお願いだよ、その果物ナイフだけは本当にもうやめて……。
 なんか、僕まで泣けてきちゃったよ……。
 
「……あ……秋人……さん? ど、どうして……?」
 うぅ、グスッ。
 もうそのナイフにはうんざりだよー。
49山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/05/31(水) 22:16:45 ID:E0nM1F1V
「どうして……泣いて……。わたし……そんなの……。そんなの……」
 うぅ、グスッ。あー、もう。
 ほら、おとなしくフタ閉めてってば。これもう取り上げたいなぁ……。
 うわわわわっ、姉さん噛み付かないで!! 分かった分かった、それ持ってていいから! 
 
 ふぅ〜……。
 やれやれ……。

「…………………ずるいよ…………」
 え? 何が? 
 どうしたのあず。深刻な顔して。

――ピンポン
『差桝町一丁目、さしますちょういっちょうめ。お降りの際は足元にご注意下さい』
 あ、ついた。
 
「…………………………………ばか」
 不穏当な響きと青葉のような薫風を残して、梓はタタタタ……と小走りに降車ステップを下りていった。
 ……なんか、怒らせてしまったのかも。さっきは調子に乗って、ちょっと褒めすぎちゃったかな?
 返って嫌味みたいに聞こえたのかもしれない……。 
 後でメールで「一番じゃなくて、わりと上位」ぐらいにフォローしておいた方がいいのだろうか?




 ――って、姉さん!!
 あずについていかなくていいって、いいってば!
 ここでバス降りないの。さっきまでの話、ずぅっと聞いてなかったのかい?
 だ、だ、だ、だからなんでまた、果物ナイフ抜いているの!?
 待って、姉さん! 落ち着いて! うわわわ、暴れないで危ない危ない!
 どうしてそんなにあずの後についていきたがるんだよ!?



―――――――――――――――――――――――――――――――――
<7>ここまで。
山本くん、はりきって独走中。
こんなんでこのスレで、いつまで生き残ることができるのか。
次回、男なら誰もが通る宿命。男のための男の修羅場。「女のヒステリー攻防戦」
50名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 22:22:19 ID:ZT+r0WeU
すごすぎるw
ここまで空回りして独走し続ける主人公も珍しい。
そして姉が今後どうなるのかに激しくwktk
携帯どうなるか楽しみ
51名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 22:27:37 ID:VAe4dHpS
>>49
梓さん可愛い!

>>43
お疲れ様でした。ゆっくり休んでください。


















そして新しい作品書いてください。
52名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 22:35:03 ID:oUK8bZK6
台詞はないが後ろで機嫌ころころ変わっている姉さんテラカワイス
53名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 22:35:45 ID:rLsBW8I1
この時のお姉ちゃんの心の内を読みたい!
54名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 22:37:12 ID:U3DNeIw6
ウン,一番馬鹿なのは山本君だ。しかし、そこがいい!
55名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 22:37:38 ID:B+pbRphT
会話がかみあってない
56名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 22:43:57 ID:+h8rUaPn
だから何でアゲるかなぁ。無駄にアゲるなってば。
57名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 22:52:47 ID:tKL6pSVl
>>43
完結、おめでとうございます。素晴らしい!
切ない終わり方で、余韻が残りました。
58 ◆tVzTTTyvm. :2006/05/31(水) 23:00:01 ID:eK9F1S+m
生きここ完結お疲れ様でした
奈々さん 私にとってはあなたこそこの物語の真ヒロインでした
いつか貴女も描きます 遅くなりすぎて遺影になってしまいますがorz
59振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/31(水) 23:01:17 ID:eK9F1S+m


   ・    ・    ・    ・   


「なんだって……?」
 久しぶりにかかってきた羽津姉からの電話。 其の電話の内容に俺は自分の耳を疑った。
 死んだ? 結季が……? バカな! 何で?! 何でそんな事になるんだ?! 今日だってデートして、キスして、笑顔で、また明日も逢おうって! その結季が死んだ?! 
 一体……、一体どう言う事なんだ?!
 電話の向こうの羽津姉に問い掛けても只泣きじゃくるだけで会話にならない。 病院の場所だけ聞いてタクシーを捕まえ飛び乗る。 タクシーに乗りながら羽津姉に再びかける。 着いたと同時に金を払い、つり銭も受け取らず病院へ駆け込む。
 真っ赤に泣き腫らした目をした羽津姉に案内され辿り着いた先の病室のドアを開ける。
 中には一台のベッド。 上にかかった白いシーツのふくらみの形から横たわっているのが女性であることはうかがえる。 そして顔には真っ白い布が……。
 目の前のコレが結季だというのか……? コレが今日も俺と逢ってて、俺に笑顔を向けてくれてて、そして互いに唇を重ねたりしてた最愛の女性だというのか?
 俺は恐る恐る顔にかかった白い布に手を伸ばす。 布を取り払い現れた顔は……それは紛れも無く俺の最愛の女の、結季の顔……。 だが其の顔は完全に生気の抜け落ちた真っ白な……。
「う、うわああぁぁぁぁぁぁあああ……!!!!! 結季!! 結季!! 嘘だろ?! 嘘だって言ってくれよ?! 何で?! 何でお前が死ななきゃならないんだ?!」
 俺は慟哭を上げ泣き叫んだ。 目から涙が止め処も無く溢れ視界が涙で滲む。 目の前の現実が信じられず頭が真っ白になる。
 俺は横たわる結季の体を掴み揺さぶる。 だが掌から体温の伝わってこない其の冷たくなった体は、俺にされるがまま糸の切れた人形のように揺さぶられるだけ。
「結季!! 結季!! 頼む!! 頼むから目をあけてくれ!! いつものように俺の名前を呼んでくれ!!」
「祥ちゃん!!」
 その時俺は後ろから抱きすくめられた。 錯乱し慟哭を上げる俺を制するように後ろから抱きしめてくれたのは羽津姉だった。
 錯乱し泣き叫んでいた俺は羽津姉に引っ張られ廊下に出た。
60振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/31(水) 23:03:40 ID:eK9F1S+m

「う、わああぁぁ……! 何で……! 何でだよ……! 何で結季が死んでるんだよ!! 何で死ななきゃならないんだよ!!」
 廊下に出された俺は膝をつき床に拳を打ちつけながら声を振り絞り泣き叫んでいた。
「ゴメンナサイ……ゴメンナサイ……。 私の……私のせいなの……。 私のせいで結季は……」
 その時背中に縋りつくようにしていた羽津姉がすすり泣くような声で呟いた。
 其の声を聞いた瞬間俺は振り返り羽津姉の肩を掴み詰め寄った。
「今……何て言った? 『私のせい』って、そう言ったのか? 一体……どういう意味だ? 答えろ!! 一体どういう意味なんだ?!!」
 俺の問いに羽津姉は涙混じりにポツリポツリと口を開き始めた。



 羽津姉が一通り話し終わると俺は手近の壁を力いっぱい殴りつけた。 其の音の大きさに羽津姉の肩がびくりと震える。
 俺は感情のままに叫んだ。 頭では解かっている。 羽津姉だって物凄く傷ついていることを。 こんな状態の羽津姉に向かってこんな言葉投げるべきじゃない事を。 むしろ掛けるべきは優しい慰めの言葉だってことを。
 羽津姉が責めを負わねばならないのだとしたら俺だって同罪だ。 ……だけど。
 だけど俺の口は止まらなかった。 まるで俺の意思とは別の生き物のように勝手に動き酷い言葉を吐き続けた。 そして俺のそんな言葉に羽津姉は只黙ってじっと耐えていた。 一言も言い返さず弁明もせず、まるで其の身にあえて咎を受けるようにじっと最後まで黙っていた。



 そこから先何があったのか、どうなったのか……、まるで頭の中に霞がかかっているみたいに思い出せない。
 体に力が入らない。 何もする気力が湧かない。 誰に何を言われても耳に届かない。 よく大事な人を失った例えに心に穴が開いたみたいだと聞くがそんな比ではない。
 『俺』という中身を入れた器が砕けそこから『俺』が、俺の全てがなすすべも無く流れ落ちていってしまったかのようなそんな感じだ。
 今居る俺はもう俺じゃなく俺の形をした抜け殻……。 俺を俺たらしめていたものが、其の大事なものが割れた心からどんどん零れだし僅かな残りかすだけしか残ってない――今の俺はそんな状態だった。
 食い物も喉を通らない。 と言うより喰いたいとも思わない。 いや、それ以前に生きたいという力が無い。
 ぼんやりとした頭でこのままだと死ぬな、と漠然と感じる。 ――死。 そう、死ねばまた結季に逢えるのかな……。



 ……………………………。
 ココはどこだ……? 俺は生きているのか……?
 頭がはっきりとしないせいか視界までぼんやりとしている。 どこか薬くさい臭いが立ち込めている。 白いベッド白いカーテン。 左の下腕に妙な異物感。 見れば点滴が刺さっている。 と、言う事はココは病院なのか?
 ベッドにうずくまっている姿が見える。 羽津姉だった。
 そう言えば羽津姉は俺が自暴自棄になってる間もずっと世話を焼いてくれてた。 俺がどんなに振り払おうと邪険にしようと、時に酷い言葉をぶつけても俺の世話を焼き続けてくれてた。
 よく見れば羽津姉も俺ほどじゃないにしろ相当やつれていた。
 じっと羽津姉の寝顔を見ていると其の寝顔に結季の面影が見えた気がした。 当然か……姉妹なんだから。
 ふと、考えてみれば結季が死んでからというもの俺は自分の事しか考えてなかった。 若し俺まで死んだら、そしたら羽津姉はどうなる? 大事な妹を死なせた上に俺まで逝ったら多分……羽津姉もその生きる力を完全に失ってしまうかもしれない。
 そうしたら、そうしたら多分誰よりもあの世の結季が悲しむ。
 そう思ったら……もう死ねないな……。 死ねなくなっちまったな……。


61振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/31(水) 23:06:23 ID:eK9F1S+m



 結季が逝ってから2年目の春。 満開の桜が綺麗に咲き誇るある晴れた日、羽津姉は一人の女の子を産んだ。 名を結季と羽津姉からそれぞれ字を取り『結津羽(ゆづは)』と名付けた。 父親は俺だ。
 あれから気付けば俺たちは互いの傷を嘗めあうように互いに躯を重ねる関係になっていた。 正直未だに羽津姉に対して恋愛感情を抱いた事は一度も無い。
 それでも羽津姉を抱いたのは、それは俺なりに考えての贖罪。
 一度は持ち直した俺だったが、それでもやっぱり結季がいない寂しさは埋まらず、かといって羽津姉を残して逝く事も出来なかった俺は一つの答えを導き出した。 それは……。


 全ての荷物をこっそりと処分し終え、がらんどうの部屋で俺は一振りの包丁を取り出す。
 もう、羽津姉は一人じゃない。 今は赤ん坊と――結津羽と一緒に実家に居る。 産後の肥立ちも良好みたいだ。 相当なショックを受けても多分大丈夫だろう。 なによりもう羽津姉は一人じゃないんだ。
 高校卒業後直ぐに勤めた会社にも既に辞表は出してきた。
 一年間積み立ててきた俺の生命保険。 自殺でも一年経ってれば生命保険は下りる。 この金が在ればこの先母娘二人十分生きていけるだろう。 受取人の名義もちゃんと羽津姉になってる。

 ゴメンな羽津姉。 こんな身勝手な俺許してくれなんて虫が良すぎるかもしれない。 でも、やっぱりどこまで行っても俺には結季しか居ないんだ。
 サヨナラ羽津姉。 こんな俺なのに今まで尽くして、愛してくれてありがとう。 身勝手な願いだけどこれから先、俺の事なんか忘れて母娘二人で幸せになってくれ。
 そして俺は刃を首に当てる。
 結季……。 今から俺もそっちに逝くよ……。

62振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/05/31(水) 23:07:37 ID:eK9F1S+m



 結季……、やっと逢えた。 もう、もう二度と……二度と離さないよ。
 え? 何で? 何で首を横に振るんだよ結季! 俺の、俺の手を引いてくれよ! 俺もそっちに連れて行ってくれよ!
 だが、どんなに手を伸ばしても其の手が結季に届く事無くどんどん遠ざかり、体が後ろに引っ張られる。 なんで? なんでだよ?! もう少しで、もう少しで手が届くのに……!
 そして遠ざかる結季の顔を見ると其の顔は少し寂しそうに、でもとても優しく微笑んでいた。
 結季! 結季!!
「結季!!」
 俺は自分の叫び声で目を覚ました。

 ココは……? 真っ白な部屋、立ち込めた仄かな薬品の臭い。 1年以上前にも見た覚えのある光景。
 また死に損なっちまっ……。
「祥ちゃん!!」
「羽津姉……?」
 次の瞬間頬を思いっきり引っ張叩かれた。
「祥ちゃんのバカ!! なんで、何で死のうとなんかするのよ!! 祥ちゃんが死んだら私はどうすれば良いのよ!!」
「大丈夫だよ……。 羽津姉はもう一人じゃないんだし。 それにお金なら、その為に俺は生命保険にも……」
「いい加減にして!! そんな、そんなお金幾らあったって祥ちゃんが居なければ何の意味も無いじゃない!!」
「羽津姉……」
 その時俺は気付いた。 何で俺は助かったんだ? 例えいくらか傷が浅かったとしてもあのままいれば出血多量で死んでたはずだ。 アソコに居た事は当然誰にも話していないから感付かれるはずも……。
 その時羽津姉が俺の心の内の疑問を察したかのように口を開いた。
「結季がね……私に言ったの。 『祥おにいちゃんを助けてあげて』って……」
「結季が?」
 俺が問い返すと羽津姉は涙を拭いながらコクリと頷き、そして再び口を開く。
「夢かもしれない。 幻かもしれない。 でもね、確かに私の前にあのコが現れて教えてくれたのよ。 信じられないかもしれないけど……」
「いや……」
 俺は口を開き、そして続ける。
「信じるよ……。 俺も結季に逢った。 それで追い返されちまった……」
「そうなんだ……。 あのコ、祥ちゃんの前にも……」
 そう言うと羽津姉は涙を拭いて一息ついて口を開いた。
「あのね……祥ちゃん。 祥ちゃんさっき言ったよね。 私のこともう一人じゃない、って。 でもね、それ言うなら祥ちゃんだって同じだよ? 結津羽を父親の居ない寂しいコなんかにしないで……」
「羽津姉……」
 俺はバカだ。 こんな一途な羽津姉を残して死のうとしてたなんて……。 羽津姉だけじゃない。 そうだ、結津羽の為にも……。
「ゴメンな羽津姉……。 もう、二度と死のうとなんてしないよ」
「本当に?」
 俺は羽津姉に笑顔で頷き、そしてある決意を込めて口を開く。

「ああ、約束する。 だからもう泣かないでくれ……羽津季」
 俺がそう言うと羽津姉は――羽津季は驚いた顔を見せた。
「退院して一段落したら結婚しよう。 夫婦になってまで『姉』じゃ変だろ?」
 羽津季の瞳からぽろぽろと涙が零れ始める。 だけど其の涙は決して悲しみではない。 喜びの、嬉しさの涙。
「祥ちゃん!!」
 羽津季は喜びを全身で表し抱きついてきた。 そして俺は応えるようにそっと肩を抱く。
 俺にとって恋した女は昔も今も、そしてこの先も結季だけだろう。 だけど家族としてなら羽津季を愛せる。 愛してみせる。 一生をかけ、全身全霊を持って大切にし続けてみせる。
 だから結季……。 待っててくれ。 俺が天寿を全うしてそっちに旅立つその日まで。


 窓からは柔らかで暖かな春の日差しが差し込んできている。
 すでに桜は散り、枝は瑞々しい緑に其の装いを変え始めている。 そんな穏やかなある春の日。
 俺は新たな一歩を踏み出す決意を固めた。
 羽津季と共に……。



 羽津季Route Fin

63名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 23:12:03 ID:RmVI1A+M
乙でした。
感動したんだけどなんかすっきりしない
結季にとっては姉>超えられない壁>祥ちゃんな感じ
まさか自害して身を引くとは・・・・
64 ◆tVzTTTyvm. :2006/05/31(水) 23:12:09 ID:eK9F1S+m
コレで一つの区切りです
読んでくださった方々ココまでお付き合いありがとう御座いました
連載中皆様方のレスには元気付けられました 本当にありがとう御座いました

もう一つのENDも何時になるか分かりませんが何れお披露目したいと思ってます
65名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 23:34:09 ID:aOXKnjGQ
このスレは今日も切なくさせるな〜
66『ジグザグラバー』第八幕:2006/05/31(水) 23:35:13 ID:r04QhqRZ
 皆は、リバウンド、という言葉を聞いてどんなことを思い浮かべるだろうか。若い男性
ならバスケットボールで、シュートされたボールを取ることを思い浮かべる人が多いだろ
う。但し僕が今言いたいのはそれではなく、若い女性が思い浮かべる言葉だ。最後の審判
のとき、我等が主に地獄行きを命ぜられるかのような恐れを持って若い女性の間で使われ
る。そう。恋にときめき、御洒落に忙しく、美貌を磨くのに切磋琢磨する若い女性の戦友
にして好敵手。天敵にして獲物であるダイエット。それの最悪な害悪まみれの副産物。理
想の体重になり、油断をして隙を見せると襲ってくる魔物。僅かな心の穴から入ってくる
炭水化物や、肉や甘いものが引き起こす極悪現象。それが一度起これば反発係数1以上で
体は脂肪で豊かになり、貧相になりにくくなり、豊満への一歩を辿ることになる。
 何故僕がこんなことを考えているかといえば、決して僕がデブへの一歩を着実に歩み始
めたからではなく、ましてや華がそうなっているからでもない。そもそも華の腹はあれが
標準で、仕方のないことなのだ。詰まっているのは、脂肪ではなく内臓。
 僕はずれそうになった、正確に言えば現実逃避をしそうになった思考を元に戻す。
 リバウンド、これは神秘の塊である人体だけでなく、依存心にも現れるらしい。
 話は簡単で今は一時限目、教師の都合により自習時間。それが始まると同時に、華と勇二が僕の席へと寄ってきた。
67『ジグザグラバー』第八幕:2006/05/31(水) 23:36:52 ID:r04QhqRZ
『あれ、華。御機嫌だね』
『まあな。昨日ボクと誠はあぁもぅまだるっこしい我慢ならん』
 叫ぶと周りの机を巻き込みながら豪快に僕を押し倒し、キスを始めた。
 そんな事があり、今に至る。
「誠ちゃん、視線がどこにも合ってないよ」
「ボクを見ろ」
 ちょっと、華さん。ディープは駄目です。流石にそれは僕でも引きます。
 華を押し退けようとするが、その小柄な外見にそぐわない程の怪力で押さえ込まれる。
この学校で唯一、『暴君』と互角の喧嘩が出来る我がクラスメイト。その伸人君だったら
何とかなるのかもしれないが、極めて普通の人間なので脱出は不可能。僅かな可能性に賭
けて伸人君を見ると、いつも通りに三人の女子に囲まれ、参っていた。
「誠、どこ見てるんだ」
 伸人君と目が合った。その中に浮かんでいるのは、諦めの色。シニカルに唇の端を歪め
ると、僕から目を反らしてゆるゆると首を振った。
 他にクラスメイトで華に対抗出来そうなのは、
 最悪だ。
 初日に華の攻撃を全て避けきった水しか居ない。第一、それ以外のクラスメイトはとば
っちりを避けるために関わってこないだろうし、自習時間という甘美な世界を守るために
隠蔽工作に夢中になっていた。
 唯一自由になる視線で水を見ると、ニヤニヤと笑ってこっちを見下ろしていた。
 この表情は危険だ。
 助けを求めることはそのまま交渉になりかねないし、それは相手の手札を増やすことに
なる。それに今話し掛けたら華が暴走する可能性もあるし、しなくてもここぞとばかりに
怒濤の勢いで話を進め、罠を仕掛けてくるだろう。
68『ジグザグラバー』第八幕:2006/05/31(水) 23:40:15 ID:r04QhqRZ
 思考は一瞬。
 華の依存を更に深めるよりはましだろうと思い、水を見た。
「ちょいと華ちゃん」
 思いが通じたのか、水は立ち上がると僕に寄って歩き、
「旦那が迷惑してる」
 僕と華の間に足を差し込み、投げるように振り上げた。体に負担がかからないようにし
た、というのは分かったが、その乱暴な方法に僕は水を睨みつけた。しかし、特に気にし
た様子もなく水はヘラヘラと笑っている。
「何するんだ」
 巧く体を捻って着地すると、華も水を睨みつける。
「旦那に迷惑だと思わないの?」
「昨日は誠からキスをしてくれた。お互いに好きだから問題無い」
 その言葉にどうなるかと水を見たが、表情は変わらない。
「どうせ、困らせて自分からするように仕掛けたんでしょ? それとも、その貧相な体で
も使った?」
 僕には、意見を求めてこない。多分、そこが重要だと分かっていて敢えてぼかしている
んだろう。華が何も言わず、僕に視線を向けてきたので正解だと思ったようだ。
「それに、旦那とは私もキスしたしね」
「それこそ無理矢理だろぉ」
「でも、許してくれたよ」
「嘘だ!!」
 華は僕を見てくるが、それには答えられない。取引した以上、これは本当だ。
「でも、なん、で」
「同情と、恋愛の、温度差?」
 その一言が起爆剤となり、華は水に殴りかかる。
 しかし、拳は届かない。
69『ジグザグラバー』第八幕:2006/05/31(水) 23:41:38 ID:r04QhqRZ
「止めなよ」
 華の拳を止めたのは、意外にも勇二だった。中学からの付き合いだが、これ程とは知ら
なかった。こんなことは初めてだ。華の拳を横合いから掴んで、じっと僕を見る。
「本当なの、誠ちゃん」
 僕は溜息を吐いて、覚悟を決めた。
「本当だ」
 こんなことをするのは、本当に嫌だ。
 出来ることなら、二十歳まで表に出したくなかった。
 でも仕方ない、いつかは来ると思っていた。
 華も交渉に巻き込む事態。
 僕は今だけ、最低になる。
「へぇ。日和見だと思ってたら、違うんだ」
「まあね」
「おい誠、どういう」
「黙ってろ。勇二、華を押さえててくれ」
 勇二は無言で華を羽交い締めにした。口も押さえられているのか、華がもがく声がする。
 これも結局華のためにはならないな、と吐息を一つ。華に対しては、拒絶の手札はあっ
ても、絶縁の手札はない。結果、華の暴走は止まることはなくノールールになってしまう。
この甘やかしがいけないと自覚はあるが、どうにも出来ないのが僕という人間だ。
 だから、
「せめてこれ以上に悪化しないように、敵は潰す」
 だが今は、さっきの事に借りがあるのでアドバンテージは彼女にある。
「さっきの事だが」
「会話の免除。一日五回」
「二回」
「四回」
「三回、これ以上は譲れない」
「仕方ないか、嫌われたら元も子もないし」
 また、悲しそうな笑みを見せる。
 他人のルールは気にしないくせに、こんな表情を見せてくるから、彼女は本当にやりにくい。
「これで互角。次は、華を刺激するな。したら、絶縁だ」
「私にメリットは? 嫌われない為ってのは入らないよ?」
70『ジグザグラバー』第八幕:2006/05/31(水) 23:43:27 ID:r04QhqRZ
 僕は少し考え、
「距離を無視」
「乗った」
「誠、ボクは」
 勇二の拘束を無理に解いたらしい華に、僕は冷たい目線を向けると、
「黙れ」
 絶縁するぞ、と視線に意思を込めながら呟く。僕は本当に絶縁など出来るような人間で
はないが、しかしこの場では二人に対してはそれなりの効果がある。
 そして、これからが本番。
「華」
「な、何?」
 華の表情は、恐怖で固まっていた。
「もうこれからは、こんな真似をするな。その代わり、後で何か言うことを聞いてやる」
 僕の存在そのものが、華への手札。
 僕が離れるのを極端に恐れる彼女は必ず言うことを聞くだろう。
 本当に、最低だ。
「あと華も水も、一編話をしろ。これで交渉は終わりだ」
 僕はそうして話を閉めた。
71 ◆JypZpjo0ig :2006/05/31(水) 23:48:13 ID:r04QhqRZ
今回はこれで終わりです


ようやく修羅場っぽい修羅場ですね
と言いますか、最近交渉ばかりだったので最初はコメディのみにしようと思ったんです
そしたら、あら不思議
交渉と修羅場が出来ました
何故でしょうね?
72 ◆JypZpjo0ig :2006/06/01(木) 00:17:12 ID:oOXvloEa
書き忘れましたが、ファイルシーク超助かりました

ありがとうございました
73Bloody Mary Sequel to Story ◆XAsJoDwS3o :2006/06/01(木) 00:31:44 ID:Kwtu+IVR
 祖国から逃亡して旅に出た四人。彼らにもいろいろあったようですがそれなりに順調に旅を続けているみたいですね。
この旅の発案者、ウィルは「贖罪の探求」という割とマジメな目的を持っているようですが…
はてさて、他の三人はどう考えているのやら。
 とにかく、その後の彼らの様子を見てみることにしましょう。


「ふぅ…」
 ベッドに横になり、ため息をついた。
 ここはアリマテアの南、とある国の旅の宿屋。俺たちはそれぞれ割り当てられた部屋に入って休むことにした。
本当は路銀を節約するために広めの部屋を一部屋だけ取るのがいいのだが、何か嫌な予感がしたので三部屋とった。
ちなみに姫様とシャロンちゃんは同室だ。
路銀に関しては俺たちの手持ちのお金以外に姫様が城からくすねてきた物を換金した分があるので余裕はある。
い、いや最初は断ったんだぞ?でも姫様が何かと入用になるだろうからって…別に言いくるめられたわけじゃないです、決して。

 とにかく疲れた。姫様が一緒なので多少は仕方ないとしても今はなるべく早くアリマテアから離れた方がいい。
明日は姫様をおぶってでもスピードを上げよう。
 ……もう寝るか。明日は更に疲れそうだ。
布団をかぶると、俺の意識はすぐに沈んでいった。

………………。

 なんだかもぞもぞするな。なんだろう。それに暖かい。
……あふっ。どこ触って……って、え?
「うわっ、姫様っ!?」
 目を開けるとどういうわけかベッドの中に姫様がいた。
「しーっ。大声を出すでない。ウィリアム」
 俺の口を押さえて小声で言う姫様。
「なんでここにいるんですか。ここ、俺の部屋ですよ」
 にやりと笑う姫様。なんとなくヤバイ。とにかくヤバイ。
「ウィリアムのいけず。そんなことを女のわらわの口から言わせるつもりか?」
 艶やかな視線で俺に身体を押し付けてくる。あああ足に何か柔らかいのが当たってますってば。
「ひひひひひ姫様、いけません…明日もももも早い、のですから、もう寝ないと…」
「ウィリアム……」
 俺の手を取り、自分の胸に当てる。
「ちょっ…」
「わらわの胸、小さいじゃろう?マリィより小さいのは凄く悔しいのじゃ……
じゃからな、ウィリアム―――――」
 そっと俺の耳に口を寄せ。
「おぬしが大きくしてくれ」
「う…」
 ぬっ……!姫様め、俺を篭絡させる気か…!ま、負けるものか…!心頭滅却!心頭滅却!
「わらわに…情けを…」
 更に耳元で囁く。
 しんとーめっきゃくっ!しんとーめっきゃくっっ!

「やめなさい」
パカン!
「痛ッ!!」
 あわやもう駄目か、というところで助けが入った。
 いつから居たのか敢えてつっこまないが団長が鞘に入ったままの剣で姫様の頭をはたいたのだ。
「ウィルが困っているでしょう。お子様はとっとと寝なさい」
「お、おのれ!マリィ、わらわの邪魔をするな!こら!放せっ!」
 姫様の言葉を無視して首根っこを掴み、ベッドから引き摺り出す団長。
 そのまま部屋から放り出してしまった。更に素早い動作で鍵をかける。
「おのれーっ!今に見ておれ!マリィ!」
 施錠された扉の向こうで何やら喚いていたがやがて諦めたのか聞こえなくなった。
74Bloody Mary Sequel to Story ◆XAsJoDwS3o :2006/06/01(木) 00:32:41 ID:Kwtu+IVR


「ふぅ、助かりました。団長」
 そういえばなんで団長は姫様と一緒に退室しなかったんだろう。あれ?おかしいな。
「……」
 何も言わずにこちらを見つめてくる団長。……目が潤んでません?あ、なんかまた嫌な予感が……
「ウィル……」
「ちょっと!団長!なんでベッドの中に入ってくるんですかっ!?」
 ヤバイ。とにかくヤバイ。可及的速やかにヤバイ。
「ウィルの意地悪。女の私からそんなこと、言わせるのですか?」
 その台詞、つい最近聞いたぞ。
「嗚呼、ウィル…」
 俺に身体を寄せ、手を掴んで自分の胸を触らせた。
「私の胸、小さいでしょう?大きくして、馬鹿にする王女を見返してやりたいんです……
だから、ウィル――――あなたが、大きくしてください」
 そのネタ、さっき聞いたんです。団長。……勘弁してください。
「私を……抱いて…」
 俺の耳元で囁いた。
 あーっ!どうなってるんだよ、今日は!
 うわっ、やめて!団長、そんなとこ、うひゃっ…!だ、誰か、助け…!

「何をなさっているんですか?マリィ様」
「きゃあっ!」「わっ!」
 俺の願いが通じたのか、枕元にシャロンちゃんが立っていた。
……って鍵かかってるのにどうやって入ってきたの、シャロンちゃん?
「ど、どうしてここに居るんですか、シャロンさん」
 団長が少しムッとした表情でシャロンちゃんに尋ねた。
「いえ。姫様に部屋を追い出されてしまいまして。仕方なくウィリアム様の部屋をお訪ねしたのですが」
「え?なんで追い出されたの?」
 今度は俺が尋ねる。
「ウィリアム様の下着を握っていらしたのでこれから御自分をお慰めになるんでしょう」
「はい?」
 俺は自分の耳を疑った。なんで俺の下着なんか持ってるんだよ、姫様。
「ちょっと!どういうことですか!それは!」
 団長が怒鳴った。
「どういうことと申されましても……お分かりなのではないですか?」
 団長の目を見つめるシャロンちゃん。一方の団長はというと、何か考えているらしく黙って俯いていた。

つかの間の静寂。そして。

「……ウィリアム様の下着、ハァハァ…」
 無表情のまま団長の耳元で呟いた。
「くっ!あの助平王女め!どうやって手に入れたの!そんなイイもの!」
 そう言うやいなや、団長は急いでベッドから出ると扉を開けて部屋から出て行ってしまった。
「な、なんなんだ…いったい」
 俺は頭を抱えた。
75Bloody Mary Sequel to Story ◆XAsJoDwS3o :2006/06/01(木) 00:33:53 ID:Kwtu+IVR


「さて、ウィリアム様」
「ん?」
 声を掛けられ、顔を上げるとと眼前にはシャロンちゃんの表情の読めない顔。
「おわっ!ち、近いよ!シャロンちゃん!」
 びっくりして顔を離し、ベッドの端に逃げてしまった。心臓に悪すぎる。
「やっと、二人っきりになれました」
 そう言いながらベッドの上に乗り、四つん這いになるシャロンちゃん。
ゆっくり俺に近づいてくる姿はまるで狙いを定めた雌豹。
彼女の顔を見るとやっぱり無表情。……と思ったけど、うん、やっぱり目が潤んでるね。
嫌な予感…っつか予感っていうより確信する。
「ウィリアム様、私の胸、小さいでしょう?」
 いや…普通に大きいだろ。あんた。
こりゃ完璧にからかってるな……シャロンちゃん。
「さっきまでのやり取り聞いてたな?」
「バレてしまいましたか」
 そう言うと、彼女はベッドから降りた。
「今日は分が悪いようです。撤退します。断っておきますが逃げるのではなく戦術的撤退ですのであしからず」
 そんな念押しすると余計に言い訳臭いよ?だいたい何を断念して撤退するんだよ。
76Bloody Mary Sequel to Story ◆XAsJoDwS3o :2006/06/01(木) 00:34:24 ID:Kwtu+IVR
じゃ、と片手を挙げて立ち去ろうとするシャロンちゃんを横目に、ベッドの上に何か落ちているのを見つけた。
「あ、ちょっと待った」
 慌てて彼女を呼び止め、落し物を拾い上げる。
「…何でございましょう?」
 手の中の落し物を確認。これは……懐中時計か。しかも銀製の。珍しいな。
「これ、シャロンちゃんのじゃない?」
 シャロンちゃんに銀時計を見せた。その拍子に裏面が目に入る。
何か文字が彫ってあるな……えーと…
“Marianne”?
 誰の名前だ?
「申し訳ありません。どうやら先程落としたようですね」
「はい。……差し支えなかったらひとつ訊いていい?」
 懐中時計を渡しながら質問した。
「ええ。私でお答えできることでしたら」
「裏に彫ってある、マリアンヌって名前だけどお母さんか誰か?」
 その質問を受けてシャロンちゃんには珍しい、ちょっと驚いた顔をした。
「いえ、私の名前です。」
「え?」
「私の本名はマリアンヌと申します。シャロンという名前は城に入るときに自分で付けたあざなですので」
「な、なんで偽名なんか…」
 シャロンちゃんはもともと掴み所のない性格だけどこれは益々不可解すぎる。
どうも旅にも慣れてるみたいだし……経歴が謎なんだよなぁ。
「それは――――」
 顎に人差し指を当てて何か考える素振り。無表情だけど。
「女の秘密ということで」
 誤魔化すように俺にウィンク。ぎこちないうえに無表情だけど。
「……」
 いや言いたくないならそう言えばいいのに。・・もうなんでもいいや。早く寝よ。
「ところでウィリアム様?」
 これでやっと睡眠を取れると思っていたら話を振られた。
「ふぁ〜…えと、今度は何?」
 あくびをしている俺の耳元に口を寄せるシャロンちゃん。

「私にお情けを――――」


「それはもういいっちゅーねんっ!」


 南への旅の途中、俺たちの夜はこうして更けていった。
――――――――――――って、頼むから寝かせてくれ……
77Bloody Mary Sequel to Story ◆XAsJoDwS3o :2006/06/01(木) 00:37:31 ID:Kwtu+IVR
こんな調子で旅を続ける四人。
だが南の地で再会した師匠の娘マローネが嫉妬の火種を撒き散らし、
四人のMaryが流血のウィル争奪戦を開始する!
次回、『Bloody Mary 2nd container』で乾杯!

……という感じの続編を考えてたんですが。
上手く修羅場と絡められず無茶苦茶難攻してます…
ちょっと挫折しそうorz
もしちゃんと形にできたらまたここで発表させていただきます。

ともかくBloody Maryは今度こそ終幕。
今までありがとうございました。

>>43>>64
お二方とも、おつかれさまでした。
それにしてもなんかガシガシ連載終わってるな…
まるで番組の改変期みたい
78名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 00:39:14 ID:030RQ1A+
>>77
GJ
自分の何かが膨らみましたw
マジで続編期待しています!

2クール!2クール!
79名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 00:44:46 ID:C927jcxY
>>77
乙かれ様でした。


そしてハーレム状態ウィルを見て思ったことが、

ウィル死ねよやぁぁぁぁぁ!
80名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 00:50:06 ID:t/+n0a8Q
8スレ目がたったことに今までまったく気づかず
気づいたときには連載が2つも終わってた
これは一体誰の陰謀だ?

てかウィルうらやま(ry
81名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 01:08:43 ID:w7Sua53m
お疲れ様でした。
ラストでのシャロンの登場は予想外の展開でとても
よかったです。
続編の構想もすでにあるみたいなので期待して待ってます
そしてまだ見ぬマローネにも激しくwktk
82アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/01(木) 01:10:48 ID:dm/4VyZ6
生きてここに・・・が完結してすぐですがこのスレでは変化球の新作を投下します


登場人物

月緒 志乃 (つきお しの) 二年生。綺羅の幼馴染。独占欲が強くヤキモチ妬き。
美人系でお姉さんタイプ。綺羅絶対主義者。

大川 桜 (おおかわ さくら)  一年生。綺羅のクラスメイト。元気で活発な性格。
                 可愛い系。綺羅絶対主義者。

アトリ              一年生。綺羅の幼馴染。天然のように見せておいて金髪外人。実は腹黒。綺羅絶対主義者。

葉津木 京 (はづき きょう)  三年生。綺羅の先輩。ツンデレタイプ。

流 綺羅 (ながれ きら)    一年生。元の人と同じでモテモテ君。ツッコミ役。


苗字を見てわかるようにこの話は生きここのIFです
生きここを読んでいなくても大丈夫です
IFとはいえ初期の設定でしたから
しかし・・・・最初の二人と綺羅はまんまかも・・・・まんまです
83ハピネス 一話 ◆1nYO.dfrdM :2006/06/01(木) 01:12:17 ID:dm/4VyZ6
いまこの屋敷には三人のそれぞれ違った魅力を持った美少女が居る
それどころかプロポーズ・・・・・もとい
まぁ、その前に状況の確認だ・・・・
そうあれは半月ほど前だ
「なんじゃこりゃーーー!」
前の前にそびえたつ大きな屋敷に向かって俺は場違いな発言をした
不満?当たり前だ!
ポケットからケータイを取り出し電話を掛ける
〈こんちは、母です〉
 なんだこの軽いノリは・・・・・
「母よ、言っていた物よりもずいぶんと大きいのだが」
〈だって物置ほどの大きさでって・・・・・〉
なんだその基準は・・・・たしかに実家に比べればこんなの倉庫だよ
ええ、認めますとも・・・・
「あんた、俺が一人で暮らすって理解してるのか?」
〈ひどいわ!私のことが信じられないの!?・・・・・もう恋人には戻れないのね〉
「恋人じゃないから・・・・母だから」
〈あ、ちなみは実の母ではないぞ〜、あなたのほんとの母と父は・・・・〉
 シリアスだ・・・・・
〈16年間の長きに渡って新婚旅行を続けているのです・・・・・ぐすん
 聞くも涙・・・・語るも涙・・・・・以下略、そしてのこされた綺羅は
 母の妹の私こと超絶美女の聖子ちゃんが面倒見てるわけです〉
説明ご苦労・・・・だれに?
「本題に戻るぞ・・・・聖子ちゃん」
〈あいよ!〉
「この屋敷は一人で暮らすには大きすぎないか?・・・・・」
〈親心よ・・・・・息子〉
「親心なら掃除とか考えてくれ」
 この屋敷を一人で掃除・・・・気が重い
 俺は目の前にどかんとそびえたつ大きな屋敷を見てため息を付いた
〈どう?気に入った?〉
気に入るか・・・・・ボケ母
〈ぐすん、ひどいわ・・・・親心なのに〉
「なぜ心の声がわかった・・・・・」
〈読唇術?〉
「唇の動きですごーい・・・・・って!電話だろこれ!」
〈細かいことを気にてしたら大きなことには気づけないのよ・・・・勉強なさい〉
 細かいことに気づけなければ大きなことにも気づけないと思います
 逆もしかりだが・・・・
〈まあ、じゃれあいは置いておいて・・・・・ママからプレゼントです!〉
 じゃれあいだったのかよ!しかし・・・・プレゼント?
「それはなんだ・・・・・」
〈わ・た・し・・・・・・チュ♪〉
ブチ・・・・・・
電話を切った
消えてしまえ・・・・そのまま音と共に
しかし、状況は変わらない
せっかく自立心をつけようと思って一人暮らしを決めたのに・・・・
先行きが不安でしょうがない
84ハピネス 一話 ◆1nYO.dfrdM :2006/06/01(木) 01:13:31 ID:dm/4VyZ6
「して、一人暮らしはどうじゃ?」
一日目から最悪だ・・・・・ボケ
「これでお前も彼女を連れ込んでウハウハだな」
 この妙に桃色トピックスの好きそうなのは本人は親友だと言い張っているが
 悪友の恭二だ・・・・苗字?知らん
 自慢じゃないが人の名前を覚えるのは不得意なんだ
「恋人なんていないよ・・・・・・・ボケ」
「なになに〜?恋人〜・・・・・やだ、綺羅ちゃんったら!照れるじゃない♪」
恥ずかしげに両手を頬にあわせ身体をくねくねさせている
 そして俺の背中をひじで軽く突っつく
 この子は大川桜・・・・
 俺のクラスメイトだ・・・・
 しかし・・・・いつ見ても変な生き物だな
 自称美少女の聖子ちゃんといい勝負だ
「どこに突っ込んでいいのやら・・・・」
「やだ、綺羅ちゃんったら・・・・突っ込むだななんてそういうのは二人きりのときにし   
 て♪」
なにを言っているんだこの子は・・・・
クラス中が仰天しているのがわからないのか?
「自分の発言には責任を持ってくれ」
「責任取るよ?だから・・・・結婚しよ?」
「16で結婚はできないだろ」
ああ、もう・・・・・慣れてるとはいえ俺も仰天だよ
 なにをしている?なぜ俺の手を取る・・・・・
「もう、綺羅ちゃんの・・・・は・ず・か・し・が・り屋さん♪」
 なぜか俺の手を胸元に近づけていく
 はっ!
「てい!」
「むぎゃ!」
 手を引くと簡単に攻撃は防御できた
「なにを考えている・・・・・」
「あなたのことです・・・・・」
 恥じらいもなく・・・・しかし、この子は俺をからかうのが好きだな
「ほれほれ〜、触りたいでしょ〜、一年で一番の巨乳を〜」
 胸を寄せてそのご自慢の胸を震えさせる
 例のごとく顔は真っ赤だ
 恥ずかしいのならやめれ
 俺の日常はこんな感じだ
 だが静かにしかし一歩ずつ近づいてきていた
85ハピネス 一話 ◆1nYO.dfrdM :2006/06/01(木) 01:16:36 ID:dm/4VyZ6
「綺羅くん、一緒に帰ろう?」
 お、もうそんな時間か・・・・
 俺は枕代わりにしていたクソ硬いカバンを手に持って立ち上がる
「む、でたわね!巨乳魔人!」
挑発の言葉を無視して彼女は俺の横までやって来てニコっと笑んだ
「無視ですか?無視なんですね?・・・・わかりましたよ!」
 がつがつと足音を立てて桜が俺の手を取った
 そしてまたその手を胸元に持っていこうと・・・・
「てい!」
「させるか!」
 いつものように手を抜こうとするが今回は断固拒否らしい
 しっかりと握られた手は抜けることなく・・・・
 やわらかい・・・・・あれ?
 もう片方の手も・・・・・って!
「二人とも・・・・なにをしている」
 平常心だ・・・・平常心
 今の状況の整理だ
 うん・・・・なぜ俺は二人の胸を掴んでいる?
 正確には掴まされているだな
「志乃?・・・・なんだ志乃まで?」
 長い赤みがかった茶髪をかきあげて志乃は小さく笑むだ
 答えになってないぞ・・・・
「綺羅ちゃん困っていますよ?離したらどうなの?」
 俺は志乃に声を掛けたのが気に入らなかったのか桜は不満げだ
「あら、いたの?小さいから近所の子供が迷子でここまで来ちゃったのか思っちゃった」
 か細い声はまるで本などに出てくるお姫さまを連想させる
 しかし・・・・そんなに恥じらいもなく手を抑えないでくれ
「チビ言うな・・・・」
 平均より・・・・小さい
 違うな・・・・彼女の身長は145cmほど・・・・小さすぎだ
 これは言われてもしかたないとお父さんは思うぞ
「ねぇ、綺羅ちゃん身長はともかく、胸は私の勝ちだよね?」
「そんな貧乳なんかより私のほうがいいよね?」
 もう胸を触られているという羞恥心はは彼女らにはないらしい
 幸いなことに教室に残っているのは女子だけなので・・・・
 そのせいかも・・・・
「うむ、先に離してくれたらほうが勝ちにしよう」
「だめ〜!」
「ダメですよ・・・・綺羅くん」
 もうどうとでもなってくれ
86ハピネス 一話 ◆1nYO.dfrdM :2006/06/01(木) 01:18:35 ID:dm/4VyZ6
そんな感じで翌日
 俺は早速不眠不休の重労働の身体をねぎらうべく居眠り中だ
「突然ですが転校生です」
 なんだよ、俺の眠りを妨げるな・・・・ボケ教員
 こつこつ・・・・足音が俺の前で止まった
 無視・・・・無視・・・・・
 ん・・・・なんかデコになにか触れた
 狂気の叫びと嫉妬の声・・・・
「な・・・・なんでここに」
 いつもアホなことしか言ってない恭二がめずらしく驚いている
 しかし!俺の眠りは妨げる奴は・・・・ゆるさん!
 誰だ?俺の安息を奪う愚か者は・・・・
 あれ?開けた視界に浮かぶのは外人の超絶美少女だった
 ほう、キミは謀反を起こした人物かね・・・・?
 あれ?二度目・・・・
 この子・・・・どっかで!
 少女は俺を見てニコっと笑んだ
「お久振りですね・・・・・綺羅さま」
 どうやらこの子と俺は知り合いらしい
「な、なにするかーーーーー!!!!」
思考回路が復活する前に桜の狂気の声が教室中に響いた
 うるさいな・・・・俺はすぐに寝たいのに・・・・
「姉ちゃん・・・・あんたいま綺羅ちゃんになにをしたんだ?えぇ!?」
「どこの国の人間だよ・・・・・」
 どうやら寝起きでもツッコミ能力は健在らしい
「キスですわ?」
「外人だからか?」
 素で返してるよ俺・・・・
「いえ、私がキスするのは綺羅さまだけですわ」
 そうですか、俺のことをそこまで気に入ってくれましたか
 ありがとう、俺は・・・・
 寝る・・・・
「ぐがーーーー」
 もうどうでもよくなった
「寝るなや、こら!」
 しかし桜さんは俺を安眠するのを許してくれないらしい
「どうしたんだ?可愛い顔が台無しだぞ?」
「いやん♪」
 はい、お休み・・・・・
87ハピネス 一話 ◆1nYO.dfrdM :2006/06/01(木) 01:20:04 ID:dm/4VyZ6
 悲しいかな人は睡魔と食欲と以下略には勝てんのだ
「・・・・野暮天」
「誰が野暮天だと・・・・!」
 無意識な反応で俺は起き上がり声の主を探した
 犯人は・・・・?
 桜じゃないよな・・・・?
 恭二は・・・・寝ている・・・・自分だけ・・・・あとでお仕置きだ
 しかし、野暮天?どっかで聞いたことあるな
「ああ、アトリの口癖だな・・・・」
 謎は解けた・・・・寝よ
「綺羅ちゃん・・・・あんたすごいよ、惚れ直したよ、こんな状況なのに寝れるなんて」
 ありがとよ・・・・
「思い出してくれたの?綺羅さま・・・・?」
ああ、俺のこと?俺は綺羅さまだよ?
 でもね忠臣蔵とは関係ないよ・・・・字が違うし
 俺はね、殺されるような偉人ではありません
 では・・・・
 あれ?三度目・・・・
 俺をさま付けする人間なんて一人だ・・・・
 冷汗が俺の背中を何筋も伝っていく
「まさか、アトリ・・・・?」
「はい♪」
 穏やかな笑みが俺を昔に戻した
 今やこの町のプリンセスの志乃
 そして志乃と並んでも見劣りしない少女アトリ
 二人とも俺の幼馴染だ
 なんでここに?
 キミは・・・・・
 死んだって聞いた・・・・不治の病で
 このときからゆっくりと俺の時間は動き出した
88アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/01(木) 01:21:01 ID:dm/4VyZ6
このスレでは変化球のラブコメです
今回は誰が死んだり刃物もありません、でも言い争いはありますよ
タイトルもこのスレでは浮きまくりです
ラブコメチックなヤキモチもありかな?と思い連載を始めます
あくまで明るいを重視したヤキモチラブコメです
このままの感じで進みますのあしからず・・・・
今回は誰が目立つなどなしにして
みんなが同じくらいの出番にしたいと思っております

>>64
あなたには本当に感謝しています
もうひとつの結末・・・楽しみにしています

>>71
いやはや・・・・あなたのキャラ設定はまじで尊敬に値します

>>77
お疲れ様でした
大丈夫ですよ、私を見てください
キャラ設定をみてください・・・・
難攻は天才ゆえのスランプです
すぐに解消されますよ
89アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/01(木) 01:25:05 ID:dm/4VyZ6
すいません、キャラ設定で脱字がと間違いが
アトリ              一年生。綺羅の幼馴染。天然のように見せておいて実は腹黒な金髪外人。綺羅絶対主義者。
です ごめんアトリ

90 ◆PP7RTz/9/U :2006/06/01(木) 02:59:29 ID:YQ2hVvQZ
投下します
91三話 1 ◆PP7RTz/9/U :2006/06/01(木) 03:02:33 ID:YQ2hVvQZ
 明らかに敵意を持った視線で見てきた。それが、わたしとシュンのパートナーのアイラ
との初めての出会い。
 何が気に触ったのかは知らないが、初対面からあんな不躾な態度を取られたら不快にな
る。まぁシュンもいるのだし、みっともない所はみせたくない。我慢してとりあえず挨拶
をする。
「いいぞ、シュン。私が言う。王宮騎士のレイナだ。君がシュンのパートナーなんだな。
よろしく。」
「…よろしく」
「ああ、よろしくな。」
 ふっ、しっかり挨拶のできる教養は有るみたいじゃないか。少しは見直したぞ。
「君の事は、色々シュンから聞いたよ。彼はよっぽど君の事が大事なみたいだな。」
 それを聞いたとたん、彼女は少し優越感を帯びた目で私を見て、シュンは少し照れたよ
うに頭を掻いた。

 ……この女!

 まったく!シュンはここに来るまでこの女の話ばかりをしてた。こんなに遅くなって心
配してないだろうかとか、もしかしたら探しに出てないだろうかとか。
 少しはわたしの事についても聞いてくれてもいいじゃないか……。

なんだろう……

なんとも言えない胸を締め付ける想いと、腹の底に溜まるどろどろとした黒い物。
ああ、これが嫉妬なんだ。
父上のような立派な騎士になりたい…その事に一心に取り組んできたから…こんなの知
らなかった。

シュンから優しい感情を受ける女が
妻でもないのにシュンは自分だけの物の様な態度を取る女が
たった今、シュンの隣に寄り添うように立ってる女が 

        嫌いだ   
 
 見てろよ。時間はゆっくりとある。彼らの絆は固いらしいが、わたしが付け込む隙もあ
るはずだ。強固な城壁は攻め急がず、じっくりと対策を練って攻める。それが戦術のセオ
リーだ。
 今は、この黒いといったらいいんだろうか、どろどろとした感情をシュンに見せないよ
う振るわなければ。
   
92三話 2 ◆PP7RTz/9/U :2006/06/01(木) 03:03:26 ID:YQ2hVvQZ
「ここが、僕達の家です。家には叔母さんも居るはずなんですけど…アイラ、叔母さん怒っ
てるかな?」
「大丈夫ですよ、シュンが悪いんじゃないんですから。いざとなったらその人に弁明をさ
せれば…。」
 こちらを見て、これ見よがしにアイラさんが言ってくる。…ああ、また黒い感情が現れ
る。
「レイナ、名前があるんだからそう呼んで欲しいな。ア・イ・ラさん。それに、言われな
くてもこっちが無理を言ったんだ。シュンが何か言われたらそうする。」
「……。」
 なるべく、棘を隠したように言ったつもりだが、シュンには気付かれてないよな?
おっと、なかなか睨んでくると怖い顔をするじゃないか。だがやめた方がいいんじゃな
いか?愛しの彼が近くにいるのに。
「アイラ、よしなよ。僕が応じたんだからレイナさんのせいじゃないよ。」
「……シュンがそう言うなら。」
 ふっ、いい気味だ。汚い言い方をすれば、
ざ ま あ み ろ
と言ったとこだな。
 はっ、いけないけない。叙勲を受けたばかりとはいえ、王宮騎士であるのだから自制心
はしっかり持たなければいけないのに。
「ごめんなさい、レイナさん。少しアイラは気難しいとこがあるんですけど、根はいい子
ですから。許してあげてください。」
「なに、気にしてない。大丈夫だ。」
 やはり優しいな、シュンは。シュンに免じて許してやるか、アイラさん。 
93三話 3 ◆PP7RTz/9/U :2006/06/01(木) 03:04:47 ID:YQ2hVvQZ
「ふ〜ん、シュンをゴルランド王国騎士団に迎えたいと。そう言うことですね、レイラさ
ん。」
紅茶をすすりながら、シュンの叔母上殿であるリーリアさんが言った。今は、わたしは
シュン達の家である、魔道具の店『紅の翼』の客間にいる。
 今は、目的の一つである家族への挨拶と、スカウトの報告をしている。シュンも交えて
話がしたかったが、あの女に「シュンは私と料理の準備をしなきゃいけないんです!」と
言われて、台所に引っ張られていった。
 幼馴染で同居人だかなんだか知らないが、遠慮という物を知らないらしいな。
あの女、いや、女じゃない

犬だ

 シュンには尻尾を一生懸命振って媚を売り、他の人間にはキャンキャン吼えて威嚇する
雌犬。ふむ、我ながらいい例えじゃないか。まったく…雌犬が!犬畜生が!人様に媚を売
るなど言語道断だ!身を弁えろ!…いや雌犬だから媚を売るのか。

目障りだな

「レイラさん?」
「あ、ああ、申し訳ありません。少し考え事を…。失礼しました。こちらから押しかけて
きたのにボーッとしてしまって。」
 っと、しまった。ついつい考え事をして失礼な事を。すぐに謝って頭を下げる。それに
してもなんだ、こんなに嫌な事を考えるとは…どうしてしまったんだろう、わたしは。嫉
妬というのは、こうも人を変えてしまうのか、それとも自分が異常なのか。

 でも、胸に湧き上がる黒い感情は確かに存在をし続けた。
94 ◆PP7RTz/9/U :2006/06/01(木) 03:08:00 ID:YQ2hVvQZ
いつの間にやら8スレ…
神々の更新の速さと、クオリティの高さにGJです。
そして自分の遅筆っぷりに絶望したっ!
95名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 04:25:49 ID:8XI4I57X
GJ!嫉妬オーラで癒されます(*´д`*)
>>88
アビス氏完結乙&新作良いですね!

このスレの神々の作品のクオリティによってwktk状態が止まらない!!!1
96名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 10:22:21 ID:rJDJKyhp
志乃とアトリって見たとき.hack思い出した
97名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 10:22:43 ID:H8P3OInC
>天然のように見せておいて金髪外人
待てw
98『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/01(木) 14:08:37 ID:APU5f9Yo
「ただいま帰りましたぁ〜!」
ピッ
玄関から春華の声がして、慌てて電源を直で消してしまった。
「あ、パソコン見てたんですか。エッチなのはだめですよ?」
「んな殺生な。」
落ち着け、俺。いつものペース。考えずに動け。
菓子とジュースをお盆に載せ、持って来る。……やべぇ。春華の顔を直視できない。……自惚れかもしれないが、あれだけ俺への思いを書いた物を見たら、気にするなと言われる方が無理だ。
「ほら、せんぱい。新しいゲーム買ったんですよ。一緒にやりましょうよ。」
ぐいぐいと引っ張られ、コントローラーを握らされる。当然のように隣りに座る春華。その距離は肩が触れ合うぐらいで。
いつもは気にしない、女特有の甘い匂いが、やたらと興奮する。…なに考えてんだ、俺!!初々しい中学生じゃあるまい。カームダウン、カームダウン。
「ほら、せんぱいやられてますよ?」
「あ?……あぁ。」
それからしばらく沈黙が続き、ゲームを続ける。その間も変に緊張し続けたままだったが。
およそ一時間程遊び、一段落してジュースを飲んでいると、事態は急転する。
99『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/01(木) 14:11:23 ID:APU5f9Yo
再びコントローラーを握り、ゲームを再開する。始めて十分ぐらいだろうか。春華が口を開いた。
「せんぱい……」
「ん?」
「私、せんぱいが好きです。」
「…………」
「あ、その、先輩としての憧れとかじゃなくって、一人の男の人としてです。」
「うん……」
「一時の迷いでもありません。本気で……一生相し続けられる程、大好きなんです!!」
「ああ、知ってる。」
「へ?」
裏声を出し、驚く春華。
「……俺だって、そこまで鈍感じゃないさ。知っててお前と一緒にいたさ。」
「じゃ、じゃあ!なんで!?」
「……わかるだろ?俺には…」
「志穂……ですか?」
「ああ。」
ガッと腕を掴み、涙目で俺を見る。その瞳はあまりに真っ直ぐすぎて、心に届く程綺麗すぎた。
「なんで?なんでですか!?私には分かりません!あんなぽっと出の女の、どこに惹かれたんです?私だって、こんなに、こんなにせんぱいが好きなのに!
晋也さんの事しか考えてないのに!」
「………」
始めて名前で呼ばれる。せんぱいではなく、晋也、と。
「晋也さんだって、私の事、好きなんですよね?」
さらに腕を掴む力がこもる。
100『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/01(木) 14:13:05 ID:APU5f9Yo

「好きだから、こんなにいっぱい面倒をみてくれたんですよね?こうやって、遊びに来てくれるじゃないですか!」
「…それは…」
あくまで「後輩」としてなわけだ。先輩と後輩。そんな適度なぬるま湯に浸かった関係が続いていくことを望んでいたが、人の気持ちは変わる。
「絶対、絶対に晋也さんを想う気持ちは負けません!あの女よりも、誰よりも!……これが、その証拠です!」
近付く瞳。気付いてはいたが、体は動かない。
「…んん……ふぅ…」
重なる唇。春華とキスをしていると気付いた瞬間、体が熱くなる。嗚呼、くそ!これは……志穂への裏切りじゃないか。
「…ぷぁ……はぁ……えへへ、これ、ファーストキスですよ?その気になれば、これ以上だって……」
「だめだ……キスだけでも、大罪だって言うのに、これ以上は、また志穂を悲しませる事になる……」
「!!……なんで?なんでですか!?志穂、志穂って………私じゃだめなんですか?恋人になれないんですか?もう後輩止まりなんて……我慢できないですよぅ。」
「ワリィ…」
だめだ。もう耐えられなかった。その場に春華を置いて、立ち去った。
引き止められはしなかったが、背中には視線が刺さっていた。
「私だって……晋也さんの恋人に…なれんですよ。」
それが最後に聞こえた。
101名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 14:52:47 ID:OCKKS3ri
うーむ、ジュースに一服盛って来るかと思ったけど正攻法でしたか。
102名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 14:55:25 ID:TVVmykfK
だからageるなって。
103名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 16:54:54 ID:HfFK9cXO
>>101が初心者だからかもしれんが
メール欄に半角でsageって書いたほうがいいよ。
基本的にはね。
ちょwwwまた2日しか立ってないのにもう100KBwww
速すぎてGJ!!が追いつかないwww
104チラシの裏! ◆IOEDU1a3Bg :2006/06/01(木) 17:01:53 ID:PKMN4ULp
不撓家第十話完成。
…もう、修羅場とか関係ないです。
読みたい方だけどうぞ。
ttp://www4.axfc.net/uploader/16/so/N16_1985.zip.html
ちなみに今回のkeywordは「zebra」です。
105『ジグザクラバー』第九幕:2006/06/01(木) 17:27:56 ID:oOXvloEa
「あぁ、風が気持ち良いね」
 放課後の屋上、そこに水と華は立っていた。そこに居る二人の少女は対照的で、笑みを
浮かべた少女は柵にもたれかかり、もう片方は怒りを顔に浮かべたままドアから一歩も離
れない。外見すらも正反対の二人に共通しているのは、精々髪の長さ程度だ。
 風に長い髪をなびかせながら、水は微笑みを華へと向けると、軽く手招き。
「華ちゃんもこっちにおいでよ、気持ち良いよ?」
「突き落とすぞ。更に風を浴びれるだろう。それに気持ち良いだろうしな、ボクが」
「やっぱ来ないで、目が」
 水は小さく笑い、
「夜中のさくらちゃんと同じになってる」
「そうかもな」
 苛立った様子を隠すこともなく、舌打ちをすると華は水を睨みつけた。
 理由は簡単、誠だ。教室に残ってもらう約束をしていて、早く誠の隣に戻りたいからだ。
それに、誠の隣に今誰が居るかと思うと気が狂いそうになってくるし、そうでなくても話
しかけてくる奴がいるかと思うだけで殺したくなる程の怒りが生まれてくる。
「怖いよ、華ちゃん。顔が槃若みたいになってる」
「なら、お前は泥眼だな」
 華が笑ってそう呟いた瞬間、空気が氷付いた。
「気付かれてないとでも思ったのか? 誠は優しいから気付かなかったかもしれんがな、
ボクから見たら丸分かりだ。お多福を作っていたつもりなら、滑稽ここに極まれりだな」
106『ジグザクラバー』第九幕:2006/06/01(木) 17:29:48 ID:oOXvloEa
 一般的には有名な槃若やお多福だが、それが能のお面だと知っている人はあまり多くない。
そして誤解している人も多いが、槃若は嫉妬心ではなく女性の怒りを表している。怒りの
原因に嫉妬というものもあるだろうが、あくまでそれは原因。嫉妬の表情というものは、
泥眼というお面で表される。輪郭はお多福にも似ているが、表情が絶対的に違うものだ。
「どうした、表情が消えたぞ。しかし、槃若と泥眼か」
 華は、普段絶体に誠に見せない種類の笑みを浮かべて水に近寄る。
 その中には、既に苛立ちや怒りは消えていた。
「ボクは確かに独占欲も人の何倍もあるし、泣き付いて甘えるしか脳のない女だ」
 更に、近寄っていく。
「でも、そんな醜い嫉妬は、絶対に、しない」
 近寄る。
「依存を、舐めるな」
 言い終わったときには、既に1mも離れていない場所に立っていた。
 強い風が、二人の長い髪を揺らす。
「っ、この」
 水は、拳を振り上げかけて、しかし止めた。
 それよりも、久し振りに自衛以外の手段で相手を殴ろうとした自分に驚愕する。
「図星か? この程度で殴りかかろうとするなんて、誠への愛が少ない証拠だな」
「そっちこそ」
 水は呼吸を整えると、静かに頭を回転させた。
「いつも旦那の周りに噛みついて、それこそ信じてないんじゃない?」
 再び作るのは、いつも顔に浮かべている笑み。
「そうでもしないと、旦那が離れていくと分かってるから。自分の居場所がなくなるから。
自分は旦那の隣にふさわしくない、それ以前に気持ちが自分に向いていないと理解して…」
107『ジグザクラバー』第九幕:2006/06/01(木) 17:33:03 ID:oOXvloEa
「黙れ」
 睨みつけてくる華を鼻で笑い、水はますます笑みを強めた。口からは、ひひひ、と独特
の笑い声が漏れてくる。
「黙らないね。第一に、何が愛しあっているだ。それは愛じゃなくて依存と束縛でしょ?」
「違う」
 襟元を掴む華を見下ろし、水は溜息を一つ。
「これを、旦那に言ったらどうなると思う?」
「あ」
 小さく呟くと、華はすぐに手を離した。
 そして、脅えた表情をして床に座り込む。
「頼む、言わないでくれ」
「ほら、旦那を信じてない」
 軽く咳き込みながら華を見下ろすと、水は真剣な表情をして呟いた。
 そこには、いつものふざけた陸崎・水の姿はなかった。
「今はどっちも悪いけど、言われても構わない。私なら、旦那を最後まで信じれるし、自
分も信じれる。離されたって構わない、自分の足で追い付いてやる。隣の空席は私が貰う」
「…れ」
 不意に、華の体が小さく震えた。
「嫉妬深くても、それが私。文句あんの、弱虫」
「黙れ、クソ虫」
 低く重い声で呟くと、華はゆっくりと立ち上がった。
 突然の変化に、水の表情が強張る。
「誠の隣は、僕の指定席だ」
「そんなの…」
「黙れ泥棒猫」
「誰が華ちゃんのだって言ったの? それこそ、旦那に迷惑じゃない」
 漸く作った笑みと言葉は、しかし、怒りに狂った華には通じない。
 華は軽く溜息を吐くと、薄笑いを浮かべた。
「馬鹿が、それこそさっきお前が言っただろ。誠を信じる、って」
「それは」
「嘘でも構わんさ。それならボクが誠を信じきれなかったのも無効になる。どっちにしろ
ボクが一番だ」
 水は禁句を言ってしまった。
108『ジグザクラバー』第九幕:2006/06/01(木) 17:36:01 ID:oOXvloEa
『誠の隣が空席』
 そんなものは華自身が一番理解している。
 だからこそ、本気になった。
 普段、それでも抑えていた依存心が溢れてくるのを、華は実感する。
「誠の隣が空席? 当然だ。ボクと誠は一心同体だからな、席は一つで十分だ」
 しかし、水は言葉を探す。この程度で折れたら、そもそも『疾走狂』という名前は付か
ない。そう自分に言い聞かせ、水は華を見た。
「じゃあ、一つ訊くよ。何で、旦那はキスを許したんだろ」
「無意味だからだろ。それに優しいし」
 その言葉から漏れてくるのは、絶対無比の依存性。
 しかし、そこに勝機がある。
「もう一回訊くよ。何で、華ちゃんの為に取っておいてくれた大切な初キスを無くしたの
に、許してくれたんだろうね? 心がいくら広くても、普通は許せないよ」
 言い終わったところで、水の携帯電話が鳴った。
「ごめんね、今日はこれで終わり。またね」
 笑いながら言うと、水は屋上から出ていった。
109 ◆JypZpjo0ig :2006/06/01(木) 17:38:18 ID:oOXvloEa
今回はもう一つ

今のが丁度真ん中辺りなので、個人的に折り返し記念に
110『とらとらシスター』:2006/06/01(木) 17:42:52 ID:oOXvloEa
 僕の一日は、妹に起こされるところから始まる。そして、ぼんやりとする意識の中で、
自分の右側に暖かな体温を感じるのも毎日のこと。この不文律は、多分僕が結婚するまで
変わらない。
「兄さん、起きて」
 心地の良いソプラノと、体を揺するゆったりとしたリズムは僕を優しく起こしてくれる。
「起きろ姉さん」
 その次に僕の右側で寝ている姉さんを、少し乱暴に起こすのもいつものこと。
「兄さんの布団に入るなと、何回言ったら分かるんですか」
「だって、虎徹(コテツ)ちゃんも嫌がらないし」
 姉さん、虎百合(コユリ)が薄く開いた瞼を擦りながら呟く。
「だからって、入って良いことにはならないですよ」
「だってぇ、隣が良いんだもん。それに虎徹ちゃんも嫌じゃないよね?」
 今年て18にもなる女性が『だもん』などと言い、更には理屈を無視した発言や弟に責任
を丸投げというのは恐ろしい。でも、更に恐ろしいのは慣れや諦めというもので、個性と
いう単語で僕がその現実を受け入れているということだ。
 しかし妹の虎桜(コザクラ)は、当然だけれども納得する訳ではない。姉さんを睨むと、
「そんな嘘つい…」
「ホントだもん」
「兄さん」
「良いんじゃないかな」
「くっ」
 虎桜は悔しそうに唇を嚼むと、あろうことか姉さんの乳を鷲掴んで揉み始めた。
「この乳ですか、この乳なんですか?」
「ちょ、痛いよ」
「『乳にばかり栄養が行って頭に大切なものが足りない私は、このユサユサで弟を誘惑す
る淫乱な雌豚です』と言え」
111『とらとらシスター』:2006/06/01(木) 17:45:44 ID:oOXvloEa
 こんな朝っぱらから何を言わせようとするんだ、妹よ。
 言葉遣いこそは丁寧だが、意外にもキレやすい妹も姉と変わらない個性派だ。そんな姉
妹を僕は血筋だという言葉でかたずけ、その性格も、そんな年頃という一言で諦めていた。
男の子の僕には、女の子の気持ちは分からない。
 ぼんやりとそんなことを考えている間にも、残虐乳揉みショウは続行されていたらしい。
残虐行為手当てだったら、いくら貰えるんだろう。きっと、一年間の日常だけで一生遊ん
で暮らせる額になるのは間違いない。
「ほらほら、どうしたんですか?」
「えぇと、一編にそんな長いの言われても、お姉ちゃん分かんない。ち、乳にばかり…」
 姉さんも、言わなくて良いから。
 僕は社会的にアウトになりそうな姉さんが完全なアウトになる前に、その口を塞いだ。
ただ口に手を乗せると力づくでどかされるので、指をしゃぶらせるようにして塞ぐ。こん
な方法をとっている自分が時々嫌いになるのは、皆との秘密だ。
 そして反対の手で虎桜の頭を撫でる。
「もう止めておけ、サクラ」
 その一言で、虎桜は変態行為を止めた。
 因みに僕が虎桜をサクラと呼ぶのは、虎の文字が入った少し変な名前を本人が嫌がって
いるからである。姉さんは逆に気に入っているらしい。
 では何故姉妹揃って、正確には一族皆が名前に虎の字を入れているかと言えば、微妙に
長い話になる。
112『とらとらシスター』:2006/06/01(木) 17:51:34 ID:oOXvloEa
 時は戦国時代、貧乏武家だった僕らの先祖に、一人の忌み子が産まれた。嫡男とその妹
の間に産まれた子供はとても強くて戦では活躍したが、誰にも認めてもらえず、名前すら
与えてもらえなかった。しかし、そんな哀れな子にも千載一偶の機会が来た。その軍の大
将が余興で三匹の虎と戦わせ、勝ったら名前をやると言ってきたのだ。当然、その子は話
に飛び付き、見事小刀一本で虎を倒して名前や家族を貰った、という話だ。
 それから、殺虎の名前を貰ったその人の遺言に沿い、一族は皆、名前に虎を入れている。
曰く、
『虎のように。殺されることを覚悟しながらも、しかし己は曲げずに行け』
 正にその通り。殺虎さん、あなたの意思は確かに受け継がれています。
「そんなに言うなら、サクラちゃんも一緒に寝れば良いのよう。追い出すけど」
「馬鹿ですか、姉さん。好きな人の目の前で、しかも名前を呼びながらオナニーしたら嫌
われるじゃないですか」
 この娘は。
 本当に、もう。
「へへん、お姉ちゃんはしたもんね。やったぁ、あたしの勝ち。だから虎徹ちゃんもあたしのぉ」
「私のです」
 本当に、もう!!!!
 殺虎さん、あなたの子孫は変態です。
 因みに僕の名前にも虎の文字は入っているけれど、それはただの偶然です。きっと僕は
養子なのです、あの人たちとは血が繋がっていないのです。
 そうご先祖様に言ってから、取り敢えず喧嘩を止める。
「おはよう、今日も元気ね」
「あ、母さん。おはよう」
 朝食が出来たらしいので、母が呼びに来た。ということは、随分と長い間喧嘩をしていたことになる。
113『とらとらシスター』:2006/06/01(木) 17:52:51 ID:oOXvloEa
 僕と母さんは、向かい合って溜息を一つ。
「兄さん、食べに行きましょう」
「朝御飯だね、虎徹ちゃん」
 朝のコントまがいは、まだ終らない。
 居間に着くと同時に左右の引き戸が勢い良く動き、一瞬で並びが逆になった。
 仕組みは単純で、
 先に入りたい。
 一緒の戸から入りたくない。
 相手の妨害をしたい。
 負けたくない。
 それらの気持ちがお互いにあり、結果並びが逆になった引き戸が完成するのだ。
 僕は後ろに立つ母さんを見て微笑み、
「あなたの娘さんたちって、面白いですねえ」
「ほんと、虎徹の姉や妹って面白い」
 自分は無関係だという表現をするのは、悪いことではないと思います。
 でも、最終的には、
「家族だしね」
 どんなに変態でも、喧嘩ばかりしていてもその繋がりは変わらない。
「早くしてください、兄さん」
「ごはんごはん」
 僕はいつもの指定席、姉妹の間に腰を下ろした。
 本当に困った姉と妹で、問題しか起こさないし、喧嘩ばかりだし、もしかしたら良いと
こ無しの駄目人間じゃないかと思うときもあるけれど。
 僕に依存しっぱなしの姉も、
 言動がおかしな妹も、
 どちらも大切な家族。
 これからも、兄弟なのに三角関係という変な状態はしばらく続くと思うし、どちらも選
べないけれど、この関係を大切にしたい。
 まずは両手を合わせて、
「「「いただきます」」」
114 ◆JypZpjo0ig :2006/06/01(木) 17:54:27 ID:oOXvloEa
これで終わりです

多分続きません
115名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 18:00:18 ID:J5T1RpY3
>>114
惜しいな・・充分にこのSSスレの神になるというのに
116名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 18:03:10 ID:1FrKwrJZ
>>114
続かないんですか…
それじゃあ日常編を期待して待ってます。
117名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 18:11:11 ID:rkrKZOnH
神達乙

まとめサイトの一通り読んだけど、妙にジグザグラバーが好き・・・・
なのでwktkして待ってますよ
118名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 18:34:01 ID:8XI4I57X
GJ!って続かないのかよガ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ン
では学園編を期待してwktkしています
>>100
この場面で流されないとは晋也も成長したなw
でも春華カワイイヨ春華
>>117
(・∀・)人(・∀・)ナカーマ
歌わない雨からのファンだったりする
119名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 20:18:18 ID:ftqi/xXT
「黙れクソ虫」に某ツリ目が浮かんだ・・・懐かしい
いつもながら作者様これだけのクオリティーの高さで
この量を書いていらっしゃるのは流石です
まさか二日見ないだけで100k近い量の文章になっているとは((;゚Д゚)ガクガクブルブル
120アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/01(木) 20:48:08 ID:dm/4VyZ6
投下します
121ハピネス 二話 ◆1nYO.dfrdM :2006/06/01(木) 20:50:20 ID:dm/4VyZ6
 おかしい・・・・おかしいぞ
 だが・・・・睡魔に勝てるほど俺は出来た人間じゃない
 明日は明日の風が吹く・・・・・お休み
 がつがつ・・・・
 無視だ・・・・・
 がつがつ・・・・
 痛だい・・・・・
 ごんごん・・・・
 音が変わった・・・・
 痛だい・・・・・
「・・・・・・」
 半開きの瞳でゆっくり起き上がる
 ブス・・・・・っ!
 額に何かが刺さった
「・・・・・・」
 額に刺さったものを抜くとちょろちょろと小さな小さな血の滝が俺の前に現れた
「・・・・・・」
 手にあるボールペンを握り締める
 ひどいわ・・・・親父にも刺されたことなかったのに!
 足元を見ると消しゴムのカスと不法投棄されたゴミの山が転がっている
 まず俺は犯人を恭二だと断定し、後ろを振り向いた
 寝ている・・・・
 ゴン!
 一発殴ってやった
「・・・・・むにゃ」
 さすがだ恭二だ・・・・本気でやったのにまだ寝ている
 もう一発・・・・ゴン!
 どうしてそこまでするのかって?
 さっきは狸寝入りなんてして逃げたからだ
 気持ちはわからないでもないがな・・・・アトリが突然現れたんだ
 現実逃避したくもなる
 次に・・・・桜は勉学に勤しんでいる
 若いもんはそうでなくては・・・・老体にこの状況はつらいの〜
 次は・・・・
 ニコリ♪
 アトリの笑顔・・・・机には消しゴムのカスとイスの横にはゴミ箱
 ニコリ♪
 我ながら会心の笑みだ
 怖いから・・・・寝る
「綺羅さま?少しは構ってくれてもいいじゃないですか・・・・鈍感」
 寝る・・・・
122ハピネス 二話 ◆1nYO.dfrdM :2006/06/01(木) 20:52:25 ID:dm/4VyZ6
「は、初恋!」
「しーーー!」
 慌てて口元を抑える
 誰にも・・・・聞かれてないよね?
 よし・・・・
「初恋って・・・・綺羅ちゃんの?」
「・・・・・」
 私は黙ってうなずいた
 正直すごく驚いた
 まさか彼女が生きていたなんて
 最後の言葉を思い出す
『わたし・・・・病気なの・・・・もう治らないの・・・・だから綺羅をおねがい』
 まだ7歳の時だった
 幼いながらに親友の言葉に一晩中涙した・・・・
 しばらくして彼女がいなくなった時、私は綺羅くんと毎日のように泣いた
「それで、志乃さん続きを・・・・」
 昔を振り返っている私を桜ちゃんの声が現実に引き戻す
 正直触れたくない内容だった
 綺羅くんの初恋の話なんて・・・・
 思うの・・・・・私の初恋は綺羅くんのなのに・・・・ずるいって
 それよりも今は話の続きを
「して、根拠は?」
「女の勘!」
 桜ちゃんは少し肩を落とした
 あ・・・・れ?
 向こうに見知った二人の後姿を見つけた
「綺羅くん・・・・アトリ」
「え!どこどこ!」
 桜ちゃんも二人を見つけたようだ
「羨まじいーーー!!!」
 ハンカチを噛んで涙を流す桜ちゃん
「尾行よ・・・・・うん」
「あなたの女の勘・・・信じてみましょう!」
 同盟を結んでしまった・・・・でも仕方ない、今回は綺羅くんのために我慢です
「名づけて!巨乳綺羅ちゃん好き好き同盟!」
 その名前はやめてください
123ハピネス 二話 ◆1nYO.dfrdM :2006/06/01(木) 20:56:26 ID:dm/4VyZ6
本日二度目の・・・・おかしい・・・・おかしいぞ
 これは本当にあの・・・・アトリなのか?
 穏やかな笑み・・・・そして柔らかな物腰
 まさにこの世の美!
 うむ、キミはこの町のプリンセスとうたわれる志乃と肩を並べられるぞ
 いや、そうじゃない・・・・子供の頃の恐怖が鮮明に蘇る
 しなる鞭・・・・研がれたナイフ・・・・・子供だけでの蛙の・・・・
山の中での火遊び・・・・・滝をいかに早く落ちるか・・・・・
強制お医者さんごっこ(俺が患者でメスの変わりにナイフを持つアトリ)・・・・
その他もろもろ
 いやーーーーー!!!
「・・・・・・」
 俺が汗を拭うとすかさずアトリはハンカチで拭ってくれた
 そして会心の笑み・・・・
 ひ・・・・・・!
 条件反射で後ろに引いてしまった
「空が綺麗ですね・・・・・」
「ええ・・・・そうですね綺羅さま」
「ご趣味はなんですか?」
「綺羅さまと一緒に居ることですわ」
「それは趣味ではありませんから!」
 まずい、思わずツッコミを・・・・
 こ、殺される・・・・・
 自称超絶美少女聖子ちゃん・・・・・志乃・・・・桜・・・・ガ○ダム
 私はもうこの世に未練はありませんです・・・・
 どうかお幸せに・・・・・
「綺羅さま?」
「ごめんなさい!もうしません!どうかお許しをーーーー!」
 嘘です!まだ未練があります!
 さあ、笑うがいい!この醜く生にに執着する姿を!
「どうして謝るのですか?・・・・それよりもデートに行きませんか?」
 ほへ?セーフ?アウト?よよいの・・・・・
 どうやら俺の思考回路も限界らしい
 あ、はは・・・・・お空に天使さんが見えるよ・・・・
 デートか・・・・どんな拷問が待っているのかな?
 アイアンメイデン?磔刑?電気椅子?13階段?おもちゃの数々?
 俺は今にも己に降りかからんとする恐怖にその身を震わせた
124アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/01(木) 20:57:27 ID:dm/4VyZ6
出掛けに気づいた
志乃とアトリが某ゲームと某アニメと名前かぶってるの
気になった方・・・・気のせいです・・・・多分
125アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/01(木) 21:06:06 ID:dm/4VyZ6
変なネタしてすいません
もうしませんのでお許しを
126名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 21:17:42 ID:ftqi/xXT
アビス殿GJ|ω・`) b
主人公のノリが個人的にツボ
晋也と似た系統の明るい主人公を
あのまじめ一辺倒の仁くんを書いていた作者が書けるとは!
何というポテンシャルか・・・
127名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 21:46:51 ID:p12E8bM1
そうだ埋めよう……埋めてしまおう……
そうしてしまえば彼(小恋)は6スレや7スレなんかのところには行かず私のところへ真っ直ぐ来てくれるはず……
128リボンの剣士 13話 ◆YH6IINt2zM :2006/06/01(木) 22:53:05 ID:bqYfzL5r
眠い……。
泥沼の中から、やっと顔だけ出せたような、非常に悪い目覚めだった。
まあとりあえず起きなければ。今の時間は……?
枕元の時計を見る。

[9:02]

九時!? もう朝の九時か? やばい、もう一時間目が始まっている。アウト確定ではないか。
まさか寝坊してしまうとは。そう思っているから、してしまうのかもしれないが。
とにかく、急い、で……?
どて。
すっ転んだ。身体が脳の命令を聞いていない。関節が痛む。
何だっていうんだ、いきなり……――――!!
身体が震えた。強烈な寒気が襲ってくる。寒い、寒いぞ!
まさか、これは。
布団を引っ張ってきて、それに包まり、芋虫のように移動する。
目当てのブツを手だけ出して取り、先端を腋に挟む。
待つこと十分。
それに映し出されたアラビア数字をチェック。3、8、点、2、丸、C。セ氏38.2度。
どう見ても風邪です。本当にありがとうございました。
129リボンの剣士 13話 ◆YH6IINt2zM :2006/06/01(木) 22:53:40 ID:bqYfzL5r
*    *    *    *    *

「人志ー? 出て来なさいよー?」
掃除道具を入れるロッカーを竹刀でつついても、反応はない。開けてみれば、やっぱり掃除道具しか入っ
ていなかった。
まったく、何処で油売ってんのよ。
昨日、「また明日」とか言っておきながら、今朝から人志は姿を見せない。授業にも出ていなかった。
サボリ? ううん、人志が授業をサボることなんて今までなかった。理由もないし。
考えられるのは、風邪? あたしが回復したと思ったら、今度は人志が? 昨日来てくれた時、あたしが
人志にうつしちゃったのかな。
可能性としては、それしか考えられない。
でも一応、周りの人たちが、人志と連絡を取ってないか聞いてみた。
ほとんどの人は、「明日香が知らないのに、私が知ってるわけないじゃん」という返事だった。
桐絵だけ、「そりゃアレだ。昨日伊星と(ピー)したんだろ? それで感染っちまったんだよ」とか言っ
たから、殴り飛ばした。竹刀で。

結局何の情報も得られないまま、放課後。
しょうがないから、人志の家に電話してみた。
コールが始まって、一回、二回、三回……。
あ、出た。
「もしもし?」
『はぁ、はぁ、こちら、伊星……』
「人志?」
『あ……明日香か?』
「うん、あたし。今日はどうしたのよ」
『熱、下がらない……』
ああやっぱり風邪なのね。それにしても、人志のお母さんは何やってるのよ。電話も病人の人志が出てる
し。
まさか、放置してるんじゃないでしょうね。
でも解ったからにはもう大丈夫。
「熱出しちゃったの? しょうがないわね。今からそっちに行くわ」
『行くって、お前、部活……』
「休みとってくるわよ。どうせロクに動けないんでしょ? ご飯くらいなら作ってあげるわよ」
『いや、いい。後生だから』
何よその言い方、失礼ね。
「病人がごねないの。大人しく待ってなさいよ」
人志の文句が来る前に宣言して切っちゃう。
まあ、昨日のお返しってのもあるし、何より人志のピンチにあたしが動かなくてどうするのよ。
というわけで、部長さんに理由を話した。
「まあいいだろう。行ってこい。ついでに、伊星をまねーじゃーに勧誘してこい」
昨日休んだから怒られると思ったけど、意外とあっさり許してくれた。
でもまねーじゃーに勧誘って。部長さん、人志のこと割と気に入ってるの?
130リボンの剣士 13話 ◆YH6IINt2zM :2006/06/01(木) 22:54:28 ID:bqYfzL5r
*    *    *    *    *

「う〜ん……」
携帯をいじりながら、私は次の手を打つのに考えを巡らせていた。
昨日の作戦は、ほとんど全部うまくいかなかった。まあ我ながら、少しわざとらしい部分もあって、無理
のある方法だったとは思うけどね。
つい気分で、新城さんを挑発するような事をしちゃったけど、よくよく考えれば、それをするメリットな
んて無かった。
下手に新城さんに当てつけて、意識させて、積極的な手を打たせるようなことになったら、ますます私に
不利になる。
二人が進展しないうちに密かにアプローチして、気付いたときにはもう、なんていけばいいんだけど、…
…もう無理だよね。昨日の新城さんの態度だと、私のことは敵としか見てないよ。間違いなく。
あーあ。あんまり正面からの対決ってしたくないんだけどなぁ。そういう方向に進む手なんて打つ気は無
かったのに。
伊星くん。あなたのせいで盲目状態になって、大局が見えなくなっちゃったよ。なんてね、えへ。

それはそうと、伊星くん、今日はどうしたのかな。朝は早く来るっていうのを知ったから、早朝から中庭
で待ってたのに、全然姿も見えなかった。
伊星くんは、新城さん以外に親しい人はあんまりいなくて、携帯も持ってないから、こう、ふっと居なく
なった時、連絡がつかなくて困るよ。
といっても、理由は少し考えればわかるけどね。例えば、風邪とか。
昨日の伊星くんは、長時間雨に打たれたり、風邪引きさんの近くにいたりしたから、それが原因だね。
……そしてたぶん、新城さんも同じように思っている。
さらに、こう考えてるんじゃないかな。「昨日のお返しに、今度はあたしが看てあげるわよ」って。
私としても、このチャンスはモノにしたい。でも、動けば新城さんと衝突する。ここで同時にお見舞い、
なんてことになったら、それこそ戦争ものになりかねない。
うまく立ち回るには、時間をずらせば……ってそうだ。新城さんは部活があるじゃない。
お見舞いに行くのも部活の後だろうから、先に行っちゃえばいいんだ。
よし、ここは先手必勝。急いで行くよ。待っててね、伊星くん。


(14話に続く)
131名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 23:02:50 ID:NNx+/GVE
最近、何故か亜由美姉が何かにカブって見えると思ったら、家の姉貴にカブってたんだな。
二人で住んでる所とか、たまに玄関で包丁持ってる所とか。





さて、風呂入ってくるか。
132名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 23:17:02 ID:9BKl5Zju
>>130
うはwwwwwww
もろにガチンコの予感wwwww
木場が慎重な姿勢を見せているとはいえ、本人の予想外の展開(明日香が部活を休んでいる)なわけで、
そこでどう出ることになるやら・・・
133名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 23:41:42 ID:Ub6XFGyP
13話乙です。

まだ木場さんは、自分の求める愛情のため・・・自分の為に『変人』を追ってる
わけで、『人志』を追ってるわけじゃないと思うので。
そろそろ『ただ愛しいから追う』へクラスアップしてほしい。明日香の
物理攻撃(剣)にも怯まないくらいに。


・・・ぶっちゃけ俺が木場さん派だからの意見ですが。
134名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 23:46:03 ID:H8P3OInC
>>130
GJ!!
打算と直情が対照的でいいです。
135名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 23:48:09 ID:yPIkQ2ZK
明日香の口走るネタを見てて思ったんだが。

この娘、爽やかスポーツ娘の外見で、実はちゃねらー?w
136名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 00:05:54 ID:yx4lNue/
「ええい!これは孔明の罠よ!」

(*・∀・)
137名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 01:57:11 ID:3ZhmruDI
ふぉあああああぁあああぁ
ひゃっふぉおおおふぉおおあああおおあおああ
ふぉえふぉいふぇおおえおえええ

今俺こんな感じ
138名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 02:50:39 ID:QlLOZ3Sh
部長さんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
これは何かのフラグか!?フラグなんだよな!!!
139きぃちゃんとむっちゃん ◆qZhXBFESPw :2006/06/02(金) 04:07:26 ID:2LHerQp4
 朝は大事だ。一日の始まりだから、朝がダメだと一日がダメ。朝の挨拶はさらに大事。
「おはよー」
 来た。 今日も来た。 昨日も一昨日も来たしきっと明日も明後日も彼は来るだろう。
 ちょっと間延びした声。控えめな体格。穏やかな顔つき。昔から変わらないその姿。
「オッス」
「おはよ」
「きぃちゃん、おはー」
 クラスのあちこちから声がする。私と違って昔から人気者。
 うらやましいなあ。私には友達なんていないもん。
 …特別なのはきぃちゃんだけだね。ふふっ。
「むっちゃん、おはよー」
「おはよう。きぃちゃん」
 幼少を共に過ごしたもの同士の、特別な挨拶。
 可愛い笑顔だなあ。一日一回はきぃちゃんと話さないと、生きていけないよ。心の清涼剤だね。
「あ、あの、永野さん?」
 誰だろう? 男子が私に話しかけてくるなんて。
「あのさあ…今度の日曜、もし良かったら映画でも観に行かない?」
 ちょっとだけ驚いた。デートのお誘いなんて。
「嫌」
 しまった。もうちょっとオブラートに包んで言うべきだった。
「え、あ………え、映画は嫌い?」
「別に」
 でも仕方ないか。だって興味が沸かないのだから。
「日曜、忙しいとか…」
「うん」
 きぃちゃんを捜したりきぃちゃんを見つめたりきぃちゃんを護ったりきぃちゃんを
「そ、そう………それじゃ、仕方ないな。は、はは」
「…」
 気が無いのに期待を煽ったら可哀想。私って優しいな。…友達ひとりもいないけど。うふふ。
 ええと、何だっけ? ああ、きぃちゃんだ。…やっぱり可愛いなあ。可愛いよ。ふふふ。
 
 きぃちゃんを見つめていたら授業が終わっていた。
 ほとんどノートが取れていない。 ま、いいか。試験で満点とればいい。それくらい余裕♪
 それはそうと………えと………………あれ?………………おかしいな…?
 ………き…きぃちゃんが…いない!? …え、嘘! ウソ! うそ!?
 何処!? きぃちゃん! きぃちゃん! 助けて!
 たすけて! おいてかないで!! きぃちゃん! きぃちゃん!! 

 あっ! いた! きぃちゃんだ。もう、驚かさないで。
「ほんとに僕でいいの?」
「いいのいいの。メンツ足んなくてさー」
 一緒にいるのは同じクラスの遠藤さん。今風でかなり派手な子だ。
 何の話かな? 近寄りすぎだよ、香水臭い遠藤さん。きぃちゃんの鼻が潰れちゃう。
「きぃちゃんって結構コアなファンいるんだよー。あははははは!」
「はは…」
 ガバガバの遠藤さんがやかましく笑う。きぃちゃんは苦笑い。
「じゃ、日曜9時にね! 合コンだからオシャレしてきてよ!」
「う、うん」
 売女の遠藤さんは胸を揺らして去っていった。
 私より小さいくせに随分と揺れる。故意にやっているか、もう垂れてきているか、両方か。
 後に残されたきぃちゃんは、ちょっと途方にくれている感じだった。
140名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 09:26:33 ID:B2oVSVta
天然ヘタレ×ヤンデレ幼馴染みktkr
これはなんか期待してしまうんじゃないか!?
141アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/02(金) 12:08:53 ID:wBqbKI+m
投下します
142ハピネス 三話 ◆1nYO.dfrdM :2006/06/02(金) 12:10:29 ID:wBqbKI+m
 うわー、なにこの一面にひろがるお花畑は・・・・
「変わりませんね・・・・ここも」
 どこなの?・・・・ここは?
 あ・・・・あ、がががが!
 まさか、ここは・・・・禁断の地・・・・・
 近所の公園!・・・・
 意味もなく汗が出てくる
 ここで俺は・・・・
『死ねやゴラぁ!』
 そして私は命を全うした
『あの崖の真ん中辺りにあるお花とって来い』
 私はそのときお花畑と川を見た
『私が切り刻んであげる・・・・・あなたを狩ってあげる』
 刀を持った美少女が見えるよ・・・・あ、はは
「再会してから、綺羅さま・・・・どこか変ですわ?」
 小さな声が弱々しく俺の耳に響いた
 か細い手がゆっくりと俺の顔に近づいてくる
 しばらくしてその手が俺の頬に触れた・・・・
 俺は・・・・・・恐怖で脚がすくんだ
 な、なにを考えている・・・・あなた様は
「ど、どうもしませんことですよ・・・・」
「やっぱり・・・・変ですわ」
 お花を背景にどこぞのお姫様風の少女は笑んだ
 間違いなくこの笑顔に100人中100人の男が一発でノックアウトだろう
 しかーし!この生き物・・・・あ、わわ
 生き物とは神様のことです
 いまから生き物は神様です・・・・理解できましたか?
 決して言い訳している訳じゃないですよ?
「誰に弁解している!」
「はい?」
 しまった俺の頭もとうとう自己制御ができなくなり始めている
 ここは勝負だ!
 聞け!この男の勇士に満ちた声を!
143ハピネス 三話 ◆1nYO.dfrdM :2006/06/02(金) 12:11:52 ID:wBqbKI+m
「お飲み物でも持ってきましょうか?それとも食べ物でも」
 どうだ!言ってやったぞ!見たか!
「いいえ、それよりもどこか休める場所はありませんか?」
「どうぞ!」
 俺は間髪入れずにベンチにハンカチを乗っけた
 労働ご苦労・・・・俺
「どうしてそんなに気を使うのですか?」
 悲しげな瞳を俺に向けるアトリ
 気を使いますよ・・・・それは
 あなたは私の親分です・・・・
「いえいえ、そんなことはないであります!」
 敬礼するとアトリはくすくすと笑んだ
「相変わらず綺羅さまは面白いですね」
「そう言ってもらえると嬉しいであります!アトリ殿!」
「どうしたのですか?昔のように気を使わずに・・・・・接してください」
 悲しい笑みを浮かべてアトリは俺の手を握った
「ふふ、カチカチです・・・・」
 あれ?俺・・・・ときめいてる?
 ち、違う・・・・言葉が微妙にエロかったからだ
 うむ・・・・
144ハピネス 三話 ◆1nYO.dfrdM :2006/06/02(金) 12:13:32 ID:wBqbKI+m
「むぐー、ここらだとなにを話しているのかわからない!」
 桜ちゃんが恨めしそうに木の陰から二人の様子を伺っている
「大丈夫、綺羅くんには超小型盗聴器が・・・・あ!」
 しまった・・・・・桜ちゃんが目を細めて私を見ている
「ストー・・・・」
「さ、早速聞きましょう!」
 私はカバンから装置を取り出すとスイッチを押した
〈そ、そうでありますか?〉
 軍隊口調の綺羅くんの声がした
〈そうですか?・・・・綺羅さまがそう言うのなら〉
 え・・・・なにこの口調?
 昔は・・・・・もっと男の子っぽくて
 なんだか測りしえない違和感を覚えた
 でも・・・・手なんか握ちゃってさ・・・・
 が、我慢できません!
「綺羅くーん!!!!」
 そんな親密ムード壊してやる!
 私以外の女なんかといいムードになんてさせない!
 驚きで顔を強張らせる綺羅くんにダイブ!
「綺羅ちゃーん!」
 右からの私に対してすさまじい俊足で左に回った桜ちゃんが綺羅くんに抱きついた
 そのまま三人でその場に倒れる
「げふ!・・・・・俺がなにしたって言うんだよ・・・・酷い」
 綺羅くんがクッションになってくれたので
「だ、大丈夫ですか?綺羅さま・・・・」
 アトリが心配げに綺羅くんを見つめた
「だ、大丈夫・・・・・」
 少し不安げな答えにアトリは瞳に涙を浮かべた
「ほんとに・・・・?」
 え・・・・どうしてそんな顔・・・・
 記憶にない親友の顔に私はまた不安を覚えた
「本当に大丈夫です・・・・」
145アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/02(金) 12:18:57 ID:wBqbKI+m
次回はアトリ視点で・・・・彼女が光なのか影なのかを・・・
146アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/02(金) 12:28:08 ID:wBqbKI+m
脱字です最後から9行あたり
綺羅くんがクッションになってくれたので私たちは無事だけど
管理人様・・・・できれば掲載のときは訂正して載せていただけないでしょうか?
147『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/02(金) 13:09:54 ID:pj0IeTV3
そのまま部屋にもどり、ベットに倒れる。
「はぁ…」
やたらと疲れたきがする。春華の一件についてだ。パソコンをみて身構えてはいたが、まさかあんなふうにストレートに言われるとは思わなかった。
烏丸春華……夏校一年生、共に帰宅部に所属。別に恋愛感情を持って接するつもりじゃなかった。良き先輩として、だった。
三年間。時間は短いんだ。一人や二人と仲良くしたっていいじゃない。ただ、春華の感情と俺の感情は同一ではなく、制御はできない訳で。
そこが人付き合いとして難しいところ。
「やんなっちゃうよ。」
俺も男で在る限り、春華を女として意識的にみてしまう。言葉遣い、匂い、仕草、容姿………言葉に出せば即変態扱いされる目でみてしまう。まあ、それは春華だけでなく志穂にも当てはまるわけだ。
「そういや……」
そんな事を考えていたせいか、志穂の声が聞きたくなった。安心を得たかった。
自分が志穂を好きだということを確認するために。
「電話するか。」
それから二時間程志穂と話したが、春華のことは黙っていた。言っても解決する訳じゃあるまい。やったら気怠いため、電話を終えたら即寝てしまった。
148『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/02(金) 13:11:07 ID:pj0IeTV3
翌朝
「んぐあ……ああ?」
体が重い。節々が痛い。吐き気がする。目眩もある。なんて最悪な体調だ。風邪でもひいたか。
「いかんいかん、ただでさえ出席日数がやばいってのに休んでられるか。」
死んだような体を引きずり、寝転がりながら着替える。うーん…まじでやばいなぁ。芋虫のように這いずりながら、朝食を用意して食べる。
ぶっちゃけ食欲はないが、ジュースで流し込むように食べる。
「うぇ…」
適当に風邪薬を飲み、いざ出陣!気を奮い立たせ、ドアを開ける………と。
「おはようございます、晋也さん。」
……春華がいた。いつものテンションとは違い、とても静かに、お淑やかに。
「ど、どうしたんですか?顔色悪いですよ?」
「…いや、ちょっと調子が悪いだけだ。」
ちょっとではなく、かなり、だが。それに加え、春華の様子がおかしい事を不思議に感じていた。
「肩貸しますよ。ほら、掴まってください。」
言われるままに寄り掛かる。昨日の気まずさを考えたが、それ以前に体調は最悪だ。春華に近付くと、また女の子らしい匂いがして、緊張した。
そのまま寄り掛かり登校。なんかまるで……これじゃあ恋人みたいじゃないか!
149『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/02(金) 13:12:12 ID:pj0IeTV3
「やっぱり、彼女としては、晋也さんをたすけてあげないとね?」
「は?」
考えが飛んだ。なんの脈絡のない言葉に。
「だれが?誰の?」
「私が、晋也さんの、彼女です。」
……いかん、完全に妄想に入ってる。昨日のショックのあまり、別人格でもできてるのか………
「です…ら…私…以外は…有り得……んよ。」
なにやらぶつぶつ呟いている。もう、怖いヨ!目が完全に逝っちゃってるヨ!
「ですから、今日晋也さんの家に、看病しに行きますからね。」
「い、いや、いいって。そげな大袈裟なこっちゃないって……」
「私の心配が、いらないって言うんですか?」
「うっ」
そのあまりの迫力には、閉口するしかなかった。志穂が帰って来る前になんとかしないと。
とはいえ、そんな考えもまとめられない程、体はボロボロな訳で。
『また』誰かを傷つける事になるのでは?
という恐怖が、幾度なく俺の思考を遮ろうとする。
結局授業は一時間目からサボり。鬼山をうまく眩まし、屋上へ出る。比較的今日は涼しく、日の光も弱めで助かった。
ぐでんと横になる。一向に体調は良くならない。少し寝れば治ると思い、目をつぶると、風が懐かしい香りを運んで来た。
150『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/02(金) 13:13:25 ID:pj0IeTV3
「……これは、ラズベリー……久しぶりだね。お姫さん。」
姿も確認せず、後ろに呼び掛ける。
「そうね、久しぶり。」
声からして、ほんの5メートルか。それもまた、懐かしい響きな訳で。
「どう、この世界?お気に召した?」
「うーん……微妙。確かに志穂に会えたのは良かった。でも、また誰かに同じ傷をつけるかもしれない。」
「そうよねー。私がその一人なわけだからね。」
言ってくれるよ、全く。
「とにかく、今は体調がすこぶる悪いんだ。ちょっと寝たい。」
「それは……自業自得よ?」
「は?いやいや、このダルさは二日酔いとは別だし、昨日酒は飲んでないよ?」
「……この世界はね、晋也の想いでできてるのよ?晋也の……志穂に対する想いで……」
そうなるのか。この世界の1日目は、志穂と出会った日で、それ以前の思い出や記憶は『偽造』なわけだ。
「その張本人の晋也の調子が悪いって事は、晋也の志穂への想いが薄れてるの。」
「は!?馬鹿な俺は志穂にフォーリンラ……」
「相変わらず誤魔化す癖があるのね。思い当たる節は、無い?」
……無くも無い。曖昧だけど。明らかに志穂以外に意識する女がいる。
「もし、その娘への想いが、志穂への想いより強くなったら………この世界を紡げる自信は無いわよ。」
キビスィーこって。
「前向きに善処します。」
今時の政治家も使わないような返事をし、目を瞑る。本気で厳しい体調だ。
「そう……頑張って、としかいえないかな。」
その声が聞き終わると同時に強い風が吹き、それは緑の香りを運んできた。
151名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 13:24:31 ID:RTkRYSt7
晋也頑張れ!!
152名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 14:46:45 ID:Cj97IutP
おぉ・お・お・お・お・お嬢ktkrッ!!!!!!!!

あら…?なんか目から熱い汁が…
153名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 15:04:03 ID:QlLOZ3Sh
お嬢再臨キタよキタよ(*゚∀゚)=3ハァハァ

>>139
GJ!!!!!前回も良質だったけど今回は更に期待できそうな作品ですね!
154名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 20:12:54 ID:xkZnGu+t
     , -― ''"^'ー- 、
    /_, -――- 、、 ヾ-、
    l'´ ,..::'! .: {i,  ヽ、` 、` ー┐
    l _, 。ィ' li:.、ヒァ'  ヽ lj  /
   ノ  `ヾ、.:'.::`ミ/゙'、  Y^iイ_
  /  ⌒';,゙i, ri:.:i .::' メ、、_ノiトミ>  SSが面白すぎて
  l    ,:' /,';;;}:.ヾ:.   八リ    前が見えねェ
  丶    ' {;!゙' ::..  ,ィ'  ヽヽ
    ゝ−--- ― ァ'" ヽ
 (( イ    てヽ、{ そ ノ
   } 丶、、__(⌒Y⌒)i-、
   l   , -‐Z二二二ニ'^ー 、
   └r- ( (/ r==ュ  )  ) ))
     〉―ト(T)二二二二 彡イ
    ,)  ,l       |l!   l
   ゝ―ri,    シチュー l
155名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 21:27:06 ID:9Uybumrg
修羅場になる前に、刺されたり、殺されたりするのが多すぎるな。
156名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 22:10:19 ID:jYI7ZpRr
>>155
そうか?そうでもないと思うが。
157過保護 ◆IOEDU1a3Bg :2006/06/02(金) 22:40:23 ID:7oOIn0p0
「結局…来てしまった…」
黄道町の宝瓶水族館と言えばデートスポットしてそれなりに有名な場所だ。
仮にも恋人の居る僕がここに来る事は本来不自然な話ではないと思う。
でも…他の女性と一緒に来る場合は話は別となる。
「でも…断れないよなぁ…」
思わずぼやきが口に出る。
不覚にも最上の言葉に一理有ると思ってしまった。
僕は昔ほど黒崎先輩を好きじゃないのかもしれない。
そう、まるで…まるで…なんだろ?
あんまり漠然としすぎる考えで、今の僕には言い表せない。
けれどなんとなくわかる事もある。
黒崎先輩と僕は対等ではないという事だ。
そりゃあ向こうの方が年上だし、部活での先輩後輩の関係でもある。
けど…何と言うか…その格差が僕の想像を遥かに超えていたんだ。
いや、格差と言うのは適当じゃない。
言うなれば…黒崎先輩はまるで姉のような、母のような、そんな保護者の目で僕を見ているような気がする。
そう、つまり…
ああ、ようやくわかった。
さっきはわからなかった漠然とした考えがまとまった。
要は過保護すぎるんだ。
でも断れなかったのはそれだけじゃない。
もう一つの原因、それはもちろん最上だ。
小学校からの腐れ縁で、でも全然嫌だとは感じなくて、昔はまるで妹のように僕を慕ってくれて、
僕自身もなんだか放っておけなくて、そして今ではこんなにもしっかり者になった…
恋してる…と決め付けるのは早合点だろう。
でも、最上が昼食に誘ってくれた時に嬉しいと感じた。
最上には安心して愚痴を言えた。
最上が遊びに行こうと言った時に嬉しいと感じた。
そして、今も最上を待ち望んでいる。
僕は…壊れてしまったのだろうか?
僕には最上の誘いを断る事ができなかった。
本来ならば絶対にしてはならない…人道に反した行いを承諾してしまった。
だって最上が…自分が最上の世話を焼く事はあっても、自分が最上の世話を受ける事は無いと思っていた最上が…
あんなにも僕の事を真剣に考えてくれたのだ。
僕にそれを止める事などできやしない。
だから受けよう、甘んじて受けよう。
たとえ人から後ろ指を指されようとも…
さて、難しい事を考えるのはここまでにしよう。
僕の待ち人が…最上可奈が…来たようだ。
158過保護 ◆IOEDU1a3Bg :2006/06/02(金) 22:41:29 ID:7oOIn0p0
「ごめん、待った?」
「ううん、今来た所だよ」
「本当にごめんね、待たせちゃって」
「良いよ、その代わりたくさん楽しませてね?」
「ううぅ…なんて良い子なんだろう…」
「そんな、大げさだよ」
「最上…いや、可奈。僕は実は君の事が…」
「くっ…倉田君!?そんな…まだ心の準備が…」
 ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
「きゃっ…何なの!?」
「地震だっ!!」
 ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
「きゃあああぁぁぁ…」

 ゆっさゆっさゆっさ…
「可奈〜、いい加減に起〜き〜な〜さ〜い〜」
「…むにゃ?」
「おはよう、そこで寝られると掃除の邪魔なんだけど」
「………」
「………」
「夢えええぇぇぇっ!!!」
「元気ね、あなた…」
「今何時っ!」
「えっと…3時4分」
「いやあああぁぁぁっ!!!」
 ダァッシュッ!
「本当に元気ね…」
159過保護 ◆IOEDU1a3Bg :2006/06/02(金) 22:42:53 ID:7oOIn0p0
やばい、本当にやばい…
宝瓶水族館までの道のりを私は全力疾走していた。
昔からそうだ、重要な局面であればあるほど失敗が増える。
学校から水族館まで急ぎに急いで15分はかかるから、仮に倉田君が時間通りに来たとすれば20分も待たせる事になる。
もちろん、倉田君が時間ピッタリに来るなんてありえない。
あの人は伊達に無遅刻無欠席を誇ってはいない。
どうか帰っていませんように…帰っていませんように…居た!
「ごめん、待った?」
「ううん、今来た所だよ…って、最上、どうしたのそんなに落ち込んで?」
「いや…なんか既視感が…」
しかも台詞が逆だし…
「倉田君、実際の所どのくらい待ったの?」
「大丈夫、たいした時間じゃないよ」
嘘だ…絶対に嘘だ…
倉田君の性格から言って、最低でも30分は待たせているような気がする。
「まぁ、そんな事はどうでも良いよ。行こう、今日は楽しまなくちゃね」
「ご…ごめん…」
「謝らない、謝らない」
はぁ…今日は倉田君を楽しませて、あわよくば好感を持たせようとする予定だったけど…
大丈夫かな…これで。
160過保護 ◆IOEDU1a3Bg :2006/06/02(金) 22:43:55 ID:7oOIn0p0
結果…駄目でした。
鮫の水槽の前で抱きついたら、姿勢を崩して倉田君の頭を水槽に強打するわ。
その場面を係員に目撃されて注意されるわ。
イルカのショーで水を被って、結果的に倉田君の制服を奪ってしまうわ。
アイスクリームを借り物の制服の上に落とすわ。
高校生にもなって迷子になるわ。
売店で売り物のマグカップを見事に割るわ。
財布を落とすわ。
そのおかげで壊したマグカップ代を倉田君に負担させるわ。
もう一つおまけに財布を捜すのを手伝わせるわ。
好かれる要素は一つも無い。
そしてわかった事が一つ…普段はともかく、緊張すると失敗が多くなる癖は全然治ってなかった。
私は楽しかった。
久しぶりに倉田君と遊びに行ったんだ、楽しくない訳が無い。
けど、今日の本来の目的は倉田君の息抜き…その点で言えば、駄目駄目だった。
「今日は本当にごめんね…」
「最上?」
「倉田君…楽しくなかったよね…」
「いや、そうでもないよ」
「気を遣わなくても良いよ…」
私の目には大粒の涙が溜まっていた…
悔しくて…悔しくて…
そんな時、視界に青い布が入ってきた。
「泣いてても良いよ、そしたら僕はハンカチを差し出すだけだから」
「倉田君…」
私はそのハンカチをひったくるように奪った…
私にはそれしかできなかった。
「ごめん…ごめんね…」
「実はさ、僕もけっこう楽しんでたんだ」
倉田君は誰に聞かせるでもなく、独り言のように言った。
「こうしてると、誰かに必要とされてるんだなって思えるし。こんな事を言うのも何だけど、失敗する最上もけっこう可愛いし」
「倉田君…」
「それに嬉かった」
「嬉しかった…?」
「うん、だって自分の事を真剣に考えてくれる人が居るんだよ、こんなに嬉しい事は無いと思うよ」
「そんなの…」
私はそんなに偉い人じゃない。
私は倉田君が思っているほど純真じゃない。
私はすごくたくさんの下心でいっぱいなのに…
そんな事は言い出せなかった。
「だから…ありがとう」
「倉田君…」
私はこの日、倉田健斗に惚れ直したのだった。
161過保護 ◆IOEDU1a3Bg :2006/06/02(金) 22:44:57 ID:7oOIn0p0
寝てる場合じゃないぞ黒崎栞!
倉田健斗に魔の手が迫る!
ようやくストーリーが進んでるような気がしてきました。
そろそろ舞台が整います。

以下チラシの裏
個人的に不撓家の感想もぜひとも欲しいのですが、
あの作品はスレ違いと叩かれるのを覚悟して書いてる作品ですし…
そんな訳なので、面倒でなければメル欄を使って感想を書いていただけませんでしょうか?
私の知恵では他の手段が思いつきませんので…
162『ジグザグラバー』第十幕:2006/06/02(金) 23:29:09 ID:0pPmxtYV
 華と水が屋上に行っている間、僕は何とも暇を持て余していた。
 僕が出来ることは全てやってしまったし、喧嘩の結果がどうでも僕は華の隣に居るつも
りだ。交渉では喧嘩を止めるようにしたし、本気で止めようと思ったけれど、無理だろう
な、という感情もある。結局は依存が問題で、根本的な解決をしなければこれからも多分
続いていく。今だって、きっと喧嘩の最中なんだろう。そんな諦めにも似た思いが僕の中
にあり、結果的には思考の停止が起きていた。
 あまりにもすることがないので、目の前の空間に華を作り出そうと空中をこねてみる。
 無理だ。
 所詮偽物なんて、いくらあっても本物には勝てはしない。
 だけど、
 人の脳は今だブラックボックス。そこには無限の可能性が…!!
「何をなさっているんですか、御主人様」
 心の底から嫌だが声のした方向を向く。
 クラスメイト達は、華や、今となってはもう一人の危険人物である水に関わりたくない
らしく既に全員が帰った後だ。そして声の主は唯一人、この高校で僕をこんなイカれた名
前で呼ぶのは後輩のさくらしか居ない。周りに人影も見当たらず、つまりはこの異常者と
二人きりで過ごさなければいけないということだ。
「何か用かい? 僕は今とても忙しい」
 再び、僕は自分の限界に挑戦を始めた。
「交渉が、あります」
 僕一人の教室に、冷たい声が響いた。
 今、彼女は何と言った。僕に対して向けられたのは、僕が普段口にする単語。
163『ジグザグラバー』第十幕:2006/06/02(金) 23:31:31 ID:0pPmxtYV
 しかしそれは、相手を利用して自分の駒にするという意味合いを持った戦線布告の宣言。
 今は、まずい。
 只でさえ問題ばかりで解決の糸口は見えないのに、これ以上の問題は御免被りたい。
「何でですか? 今は、二人とも屋上じゃないですか」
 その言葉に、僕は心の中で溜息を吐いた。
 どうにもタイミングが良いと思ったら、やっぱり水の差し金か。耳が早いという線もあ
るが、流れとしては水が関わった可能性の方が高い。
 少し考える。
 この後輩も馬鹿じゃないから敢えて今、華と水の事を口にしたんだろう。簡単に人の言
うことに従うタイプとも思えないから、きっと水とも交渉をした筈だ。とすれば、問題な
のはその内容。こちらの興味を引くために言い出したことなら、価値はあるかもしれない。
「まずは、要求を言え」
「せっかちですね、でも良いです。今の言葉は、交渉を始めるということで良いんですね」
「早くしろ」
「急かさないで下さい。それとも」
 いつものとろけた表情と違い、嫌らしく痛ぶるような視線。
「華さんが来たら困る話ですか?」
 言葉の端々が、やけに絡んでくる。いつもの、馴れ馴れしいが一歩引いて僕に遠巻きに
接してくる、そんな矛盾した彼女ではない。例えるならば、まるで水のような、強制的に
自分の内側に引っ張り込もうとする態度。
「図星ですか?」
 黙り込んでしまった僕の態度を肯定と受けとめたのか、彼女は唇の端を上げた。
 心の中で舌打ちを一つ。
164『ジグザグラバー』第十幕:2006/06/02(金) 23:36:11 ID:0pPmxtYV
 このままの流れだと相手のペースで話が進む。普段交渉しているからこそ、それが痛い
程に分かる。話し合いでのこのタイプのマイペースは、一種の禁じ手だ。無意識でやって
いるとしたら、尚更質が悪い。
 だが、禁じ手には、禁じ手が一番効く。
「そっちこそ。早とちりだなんて、せっかちも良いところだね」
 上げ足取りは、実は結構有効な手段だ。相手との会話のテンポを乱すし、言葉の一つ一
つが相手の感情や思考を少しづつ奪っていく。立場が同等か自分以下のワンマンタイプに
は、正に天敵だ。
「僕は問題無いさ。そっちこそ、水に聞かれたらまずいことは無いのかい?」
 僕は言いながら、心を落ち着かせた。
 華には聞かれたくないに決まっている。だからこそ、冷静にいかなければいけない。交
渉を早く終わらせるこつは、一つづつ問題を消してゆくこと。相手をパニックにはさせて
も、焦らせてはいけない。どちらがが焦れば話は泥沼になり、かえって時間がかかる。
 僕は吐息を一つ。
「さあ、交渉を始めよう」
「キメ台詞ですか?」
 少し恥ずかしかったが、今の僕はそんなことは気にしない。
「そっちから仕掛けてきたってことは、そっちの要求がまずあるんだよね。言ってみて、
少なからず応えるよ」
「では、私からは二つ。距離の限定解除と、御主人様の立ち位置です」
 距離の問題は、多分大丈夫だろう。
「立ち位置ってのは?」
「御主人様の隣に居るのは、華さんですか? それとも一人ですか?」
「何を馬鹿なこ…」
 言いかけて、僕は愕然とした。
165『ジグザグラバー』第十幕:2006/06/02(金) 23:37:59 ID:0pPmxtYV
 さっき僕は、何を考えていた。あれほど華が嫌がっているのに、既に一人目の侵入者を
許し、今は二人目を作ろうとしていた。今までは絶対に破られなかった不文律が、簡単に
崩れそうになっている。華に対して妥協を許すようになったのはいつからだろうか、と考
えたらすぐに答えは出た。水が関わり始めてからだ。
「僕からの要求は一つ」
 今は無駄な思考を捨てて、冷静に答えを出す。聞きたいことは二つ程あったが今すぐに
ではないし、そもそも知っているかも分からない。
「先に二つ目の質問に答えるよ。僕の隣は華しか居ない。こっちからの要求は、水と交わ
した契約の内容だ。二つ目の答えだけで不満なら、もう一つ要求を言ってくれ」
「では水さんと交わしたという契約で、水さんから話しかけられない、というもの。それに変化はありますか?」
 随分と直球だ。
 だが今の言葉から考えると、さくらと水の交渉も大体予想がついた。これはまだ推測だ
が、多分その契約のことで水がさくらに持ちかけたのだろう。内容としては、水から話し
かけることが出来ないのでそれを何とかする代わりに、今のような僕との二人での会話の
状況を作ることか。それなら僕が一人の今、タイミング良く現れたのも分かる。
 ここで嘘をついても後で水がばらすだろうし、それどころかそれをネタに交渉が始まっ
ても厄介だ。仕方なく僕は吐息し、
「一日三回までは許可した」
「そうですか」
 さくらは少し考え込んだ様子だったが、すぐに僕の顔を見ると、
「では肝心の距離の限定解除は」
「無理だ」
166『ジグザグラバー』第十幕:2006/06/02(金) 23:40:51 ID:0pPmxtYV
 これも後で再交渉をして、水を何とかしなければ。
「何っでっ」
 突然の涙声にさくらを見ると、うつむいて体を小さく震わせていた。その数秒後に液体
が床を打つ小さな音がして、泣いているのだと理解する。
「何で華さんじゃないと駄目なんですか。私じゃ駄目なんですか」
 叫びながらさくらが詰め寄ってくる。今までは、手紙を渡すのにも律儀に距離を守っていたさくらだが、完全に無視をしてきた。
「何で」
 襟首を掴まれ、
「何でなんですか!!」
 僕が何かを言おうとした直後、さくらは唇を重ねてきた。
「何を」
 しやがる、と言う前にさくらは、僕にもたれかかりながら崩れ落ちた。
「ごめんなさい、ごしゅ、先輩。謝ります、謝りますから見捨てないで下さい。お願いし
ますお願いしますお願いしますお願いします」
 異常な程に謝る彼女。しかし、僕はそれ以外のことに驚いていた。
 鉄パイプ。
 その言葉で表される存在は、近くに居た。知らない間に水と知り合いになり、更には華
とも共通の存在。華がたまに付けるからかぎ慣れた、血の匂い。
 本物の、異常者。
 僕が呆然としていると、突然さくらが離れた。
「すいませんでした。もう帰ります」
 涙声で教室を出ていくさくら。
 数分。
 まだ呆然としていると、教室に華が入ってきた。
「おかえり」
「ただいま」
 その目には涙が溜っていて、声は涙声だ。
「今日は手を繋いで帰らないか? あ、嫌なら良いんだ」
 いつもなら有無を言わさず抱きついてくるのに、それをしないのは朝の交渉が原因か。
「それ位なら良いよ」
 言いながら手を繋ぐ。
「なぁ誠。誠はボクのことを嫌いにならないよな」
「当然だ」
「愛してる」
「愛してる」
 僕らは揃って教室を出た。
167 ◆JypZpjo0ig :2006/06/02(金) 23:45:42 ID:0pPmxtYV
今回はこれで終わりです


ロリコンと交渉ばかり書いていてスレ違いだと思っていたんですが、
今回と前回だけ見れば修羅場スレっぽくなってますね

それだけです
168名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 00:28:25 ID:3gEA8BfK
愛ってなんだろうね
169名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 00:31:00 ID:DOn7KJ6j
躊躇わない事さ
170名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 00:43:00 ID:ws+ilf+/
これからの展開にwktkして待ってます。
このスレは何故かロリが多い気がする。言っておくが嫌いではない。
ついでにメル欄にチラシの裏を……
171血塗れ竜と食人姫:2006/06/03(土) 03:02:11 ID:i5nFWst/
 闘技場は、今宵も満員御礼だ。
 怒号や罵声が途切れることはなく、中央で撒き散らされる血飛沫に、誰もが興奮し没入していく。
 今日の対戦も順調に進み、ちょうど、準主戦の決着が付いた。
 砂地の闘場は存分に血を含み、照明の下で妖しい輝きを放っている。
 これで、全ての準備が整った。
 観客の目に、さらなる興奮が入り交じる。
 彼らにとって、今までの試合は“前座”に過ぎない。
 これから始まる戦いのために、観客が集っているといっても過言ではない。
 
 準主戦の敗者――その遺体が運び出され、戦場には一時、誰の姿も見えなくなる。
 奇妙な空白。
 先程まで絶叫を上げていた観客たちも、この瞬間だけは沈黙していた。
 
 そして、司会の声が高らかに響く。
 
『それでは、本日の最終試合。
 血塗れ竜 対 斬鉄巨人 
 を、開始させて頂きます!』
 
 最後の二組の通名が伝えられた瞬間。
 観客全員の口から、喉から、肺から、体全体から。
 今日一番の絶叫が、飛び出した。
 
 う お お お お お お お お お ! ! !
 
 まるで空気が唸るが如く、会場全体が揺れている。
 興奮していない者など一人もおらず、誰もが選手の入場口――その片方へと注視している。
 誰もが、今日の主役を理解していた。
 読み上げられた通名は二つ。されど、皆が期待するのは片割れの惨殺劇のみ。
 果たして、東西に分かれた入場口のうち、西の入り口から人影が現れた。

172血塗れ竜と食人姫:2006/06/03(土) 03:03:06 ID:i5nFWst/
『先ずは挑戦者、今まで捻り潰した者は両手に余る、怪力無双の大男!
 ――斬鉄巨人の、レコン・ランクラウドッ!!!』
 
 現れたのは、常人の二倍はあろうかという大巨漢だった。
 ただ大きいだけではなく、腕も足も、黒鉄を流し込まれているかの如く、硬く隆起している。
 拳の一撃で、岩どころか城門さえ破壊しそうな大男――その入場に観衆が沸き立った。
 大男――レコンの表情に硬さはない。挑戦する立場であるにもかかわらず、緊張の類はないらしい。
 悠然と闘技場中央に歩んでいった。その風格は、挑戦者というよりは王者そのもの。
 
 レコンは浴びせられる観衆の大声に、手を挙げて応えようとして――ふと、違和感を覚えた。
 
 観衆の声は、自分を応援したり発破をかける類のものでは、ない。
 例えるなら――そう、憐れみ。絶叫のような怒声の殆どは、こう言っているのが聞き取れた。
 
 ――竜を満腹にさせてくれよ!
 ――でないと俺らが喰われちまうからな!
 
 意味が、わからなかった。
 しかし、自分が期待されていないということはよくわかり、レコンは歯を食いしばる。
 
 もう少しの辛抱だ。
 王者をこの手で葬り、自分が新たな王者となる。そうすれば、これからの囚人生活は薔薇色だ。
 囚人同士の殺し合い。その頂点に立つ者はあらゆる罪から解放され、満たされた生活を送ることができる。
 そう信じ、ここまで勝ち進んできた。
 殺した分だけ、確かに生活の質は向上していた。
 味気ないパンとスープは既に過去。今や貴族が食するような最高級の宮廷料理が常食である。
 服も麻から絹へと変わり、囚人の女を好きなように抱ける毎日。
 ――この上に、行けるのだ。
 王者がどれほど強いのかは知らない。しかし、どんなに強かろうと、自分の一撃を喰らって無事な人間など存在しない。
 10日前の試合で、屈強な異国の戦士を一度の拳撃で千切り飛ばしたことを思い返す。
 どんなに鍛え上げられていても、どんなに硬い鎧を身につけていても。
 斬鉄たる己の拳は、必ず敵を引き裂くだろう。
 
 必勝の予感を胸に、レコンは東の入場口を睨み付ける。
 
 ――そして、王者が現れた。

173血塗れ竜と食人姫:2006/06/03(土) 03:03:56 ID:i5nFWst/

『今宵も血の薫りを纏わせて、現れるのは最強の竜!
 惨劇が幕を開けようとしている!
 その身が血潮にまみれることを、ここにいる全員が期待していることでしょう!
 ――王者、血塗れ竜こと、ホワイト・ラビットッッッ!!!』
 
 今度こそ。
 会場が、沸き立った。
 
 
 王者への挑戦にすら欠片も緊張しなかったレコンが、始めて不安そうな表情を見せる。
 それは観客の異常なまでの興奮――とは一切合切関係なく。
 ただただ、王者の風貌にのみ、戸惑わされていた。
 
 
 現れたのは。
 年端もいかない、可憐な少女。
 
 
 身の丈は、レコンの胸にも届かない。
 手を伸ばしても、首にさえ届かないであろう小柄な体躯に、指で弾いただけでも折れそうな細い手足。
 筋肉も脂肪も、年並みの少女と同じくらいにしか、付いていない。
 
 ――こんな小娘が、王者?

174血塗れ竜と食人姫:2006/06/03(土) 03:04:25 ID:i5nFWst/
 片腕どころか小指で倒せそうな王者の登場に、レコンは数瞬戸惑った。
 しかし、すぐに気を引き締める。
 相手が誰であろうと関係ない。
 見かけはただの少女でも、王者であるからには一癖も二癖もあるに違いない。
 それに――相手がどんな存在でも、自分の戦法は変わらない。
 拳を握りしめて、叩き付ける。それだけだ。
 どんな人間でも、どんな怪物でも、どんな兵器でも、どんな構造物でさえも、その一撃で事足りる。
 故に、レコンのすべきことは、とにかく駆け寄って、懇親の一撃を叩き込むだけ。
 避けられても風圧で肉を裂き、掠っただけでも衝撃で血液が逆流し、心臓が破裂する。
 レコンの攻撃は全てが一撃必殺である。相手が城より巨大な怪物であろうとも、幼子の如き少女であろうとも、変わらない。

 王者が、ゆっくりと、歩み寄ってくる。
 3足離れたところで、王者は止まり、こちらを見据えた。
 
「……っ!?」
 どんな眼光に晒されようとも、怯えない自信がレコンにはあった。
 しかし、少女の眼差しは、眼光といった類のものでは、なかった。
 まるで、路傍の石を見るかのような、感情が欠片も籠もらない、物を見る目でレコンを見ていた。
 吐き気がしそうな熱気の中、こんな目ができるとは。
 震えそうになる体を押さえ。レコンは少女に対峙する。
 
 
 そして、司会の口上がしばし続いた後。
 
 戦闘が、開始された。

175血塗れ竜と食人姫:2006/06/03(土) 03:05:42 ID:i5nFWst/
 することは単純。
 とにかく、近寄って、一撃を振るう。
 それだけだった。それだけの、はずだった。
 
 なのに。
 
「……へ? ……あれ……?」
 
 レコンの腕が、千切れていた。

 肘より先は何処にもない。ねじ切られたかの如く、皮と筋肉が捩れていた。
 間欠泉のように、びゅっびゅっと、鮮血が吹き出している。
 おかしいな、とレコンはぼんやり考える。
 自分は、懇親の一撃を放っていたはずだ。
 赤銅すら紙のように裂く攻撃を、王者の少女に向かって放っていたはず。
 避けられても、もう片方の手で同じことをするつもりだった。
 しかし。
 攻撃は、王者に当たることはなく。
 二撃目を放つ前に、肘から先が消失していた。
 
 噴水のように勢いよく放たれる鮮血に、少女の全身が濡れていく。
 なるほど、とレコンは思った。
 
 ――血塗れ竜。
 
 この少女ほど、その通名が合う者など存在しないだろう。
 ぼんやりとした頭で、残った左腕で打撃を放つ。
 こちらも、家屋を粉々に吹き飛ばしそうな攻撃だったが。
 
 当たる直前、少女が拳の脇に掌を添えたかと思うと――
 
 ぶつん、と。
 引き千切られた左腕が、舞っていた。

176血塗れ竜と食人姫:2006/06/03(土) 03:06:18 ID:i5nFWst/
 左腕も失った。
 両腕はびゅうびゅうと血を吹き出している。
 その朱をシャワーのように浴びながら、血塗れ竜が近づいてくる。
 わけがわからなかった。わかるのは、少女が自分を殺そうとしている、そんな非現実的なことだけだった。
 何をされたのかもよくわからない。
 とにかく、無くなった両腕が、激痛と共に告げていた。
 
“殺される”
 
 とっさに逃げようと、後ろに跳ぼうとしたが、その直前に、ごきんと膝から鈍く重い感触がした。
 え、と下を向いてみると、逆側に曲がった膝と、その上に乗る血塗れ竜。
 そして小さな掌が、レコンの首に伸ばされて。
 
 最後に、視界が天地逆さになってしまった。
 
 観衆の絶叫が、雨のように降り注いでいた。

177血塗れ竜と食人姫:2006/06/03(土) 03:07:43 ID:i5nFWst/
 観衆の膨大な歓声を浴びながら、血塗れ竜は会場を後にする。
 べしゃべしゃべしゃ、と。濡れた足が砂地を叩く。
 そのまま無言で控え室へと向かっていく。
 全身に浴びた血を拭おうともせず、床が血に汚れるのを全く構わず、ただまっすぐに通路を歩く。
 そして、通路の先――控え室の入り口にいる一人の青年を目にした瞬間、微かではあるが表情が変わった。
 べしゃべしゃべしゃ、から、べたっべたっべたっ、と足取りを軽くし、青年の胸に飛び込んでいく。
 
「うわっ!? こら、白。急に飛び込むのはやめてください」
「…………」
「ああもう、今日もこんなに血にまみれて……。
 ほら、拭いてあげるからじっとして」
「ん」
 
 わしゃわしゃわしゃ、と。
 手にした布で、青年が少女の顔を優しく撫でる。
 顔、髪、首、腕、躰、足、と順番に、丁寧に、青年は少女の体を拭いていった。
 その間、少女は言葉を発することなく。
 
 目を細めて、嬉しそうにじっとしていた。
 
 やがて全身を拭き終わり、青年が少女から一歩離れる。
「終わりましたよ」
「ん。今日も、勝った」
「はい。これからもよろしくお願いします、白」
「ん」
 
 少女の顔がほころんだ。
 言うまでもないことかもしれないが。
 血塗れ竜は、世話付きの青年に、恋をしていた。
 
 青年に世話をして貰うためだけに、今日も王者は、相手を殺す。
 それが、この囚人闘技場の、日常だった。
178血塗れ竜と食人姫:2006/06/03(土) 03:10:00 ID:i5nFWst/
神々に触発されてファンタジーに挑戦してみました
まだプロローグ的なものなので、修羅場は多分次くらいからです
無駄に長くてすみませんorz
179名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 03:13:28 ID:SZ5OfWbQ
新作ファンタジーものキテルー!!
開始早々の血みどろの惨劇。
早くも鮮血の結末への予感w
GJでした
180名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 04:07:14 ID:FVHufkd2
GJ!1話目から鮮血が舞散らせる相手はどのような奴なのか?
まだ見ぬ対抗馬に期待!!やっぱりファンタジー物はいいなぁ
181山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/03(土) 08:49:02 ID:aqLHLUwA
<1>でTOネタについてこれなかった人は、たぶん最後置いてきぼり……(´・ω・`)
「山本姉2」第<8>章、フィダック城攻防……じゃない、ヒステリー攻防戦。
前編・後編・解決編の三分割で投下。  前編6レス分↓ここから
―――――――――――――――――――――――――――――――――
<8>
 
 深淵。
 
 漆黒の翼を広げて迫り来る、静寂なる闇の咆哮。
 
 ……とか、その手のご大層な形容句をゴテゴテ飾り立てないと、ヤバさが修辞できないその状況。
 山本家のお茶の間が今、なんかよくわからん異空間へと変位しようとしている。
 
 
 僕こと山本秋人は現在、食堂のテーブルについている。
 異変の発生場所は、ここから約六メートル程の地点。 
 食堂とそのまま繋がっている、隣室のリビングルームの真ん中付近。
 
 普通ならばリビングの室内蛍光灯が、快適な明かりを隅々まで届けてくれているはずである。
 ……はずなのに、今日は暗い。昏い。闇い。冥い。
 今、リビングには正体不明の暗雲がたちこめ、そのプレッシャーが食堂をも侵食しようとしていた。
  
 そしてそんな瘴気の渦の、中心部。
 ポイント・ゼロに、僕にとってよく見慣れた人影が座り込んでいる。

 僕に背を向けて、無言で正座している姉さん。
 訴えている意味は、『お姉ちゃん怒っているからね』だ。

 た、
 
 たいへんだ。



――
―――

 事態は急を要するので、ここまでの経緯を手短に説明する。
 梓と別れてから、僕達は予定通り一つ先のバス亭で降りて、歩いて帰宅した。
 道中、急に抵抗の気配を見せたり、唐突にどこかへ駆け出そうとする姉さんだったが、
 なんとかずるずる引っ張ってきた。
 相変わらず果物ナイフを手放そうとしないので、お巡りさんに誰何されないかヒヤヒヤしたもんだ。
 
 そして家に着いた途端、今度は自分からスタスタと家の中に上がっていく姉さん。
 台所の方に入っていってしまったので、僕は一通り家中に異変がないか確かめておくことにした。
 別段どこも荒らされたりしてないし、床にシミがあったり、風呂を使ったりした形跡はない。
 くんくん鼻を鳴らして、例の男の体臭でも嗅ぎ出そうともしたが、特に淫らな臭気もないようだ。
 ……でも、感じるんだ。
 この家の空気には、姉さんの叫びのようなものが、姉さんの悲痛な涙のようなものが、籠められている。
 姉さんはやっぱり、僕の居ない間に、ここで、その男に……。
182山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/03(土) 08:49:53 ID:aqLHLUwA
 一通り見回りを終えて台所を覗くと、姉さんが黙々と夕食の支度をしていた。
 こんな時だというのに、こんな状態だというのに……。
 健気な姉さんの後ろ姿を見ていると、思わず後ろから抱きしめてあげたくなる……。
 
――ダンッ! ダンッ! ダンッ!
 
 まな板から激しい打撃音が聞こえてきた。
 よく見ると、果物ナイフでキャベツを叩き切っていた。
 傍らには空鍋が火にかけられている。
 
 
 結局、なにやら野菜炒めのようなモノが出来上がった。
 姉さんはそれにさっと白布巾をかけ。
 エプロンをふわりと脱ぎ捨て。
 
 そして、
 そして……正座した。
 
 
 後ろ向きで。
 
 
―――
――


 さて、たいへんだ。
 
 姉さんが、怒っている。
 今まででも、僕が言いつけを守らなかったりすると、こういう状況に陥いってきた。
 今回は八つ当たりなんだろうが、それでも相当怒っている部類に入る。
 
 一旦こうなった場合、僕にはもう逃げ場はない。
 自分の部屋へ移動すれば、姉さんも部屋の入り口までついて来て、また正座し始める。後ろ向きで。
 風呂に入れば、脱衣所で正座をして待っている。
 トイレに行けば、トイレのドアの向こうで正座をしている。……いつもいつも、後ろ向きで。
 
 だから問題は、これからどうするかだ。
 先例に従うのなら、土下座なり泣きつくなりして、徹底的に姉さんに許しを乞うところ。
 もっとも姉さんはとても優しい人だから、フォローなしでも数日経てば許してもらえるだろう。
 しかしそんな態度では、弟として大いに失格だと思う。
 
 例えば一年ぐらい前にも、ふとしたことで同じ様に姉さんを怒らせてしまったことがある。
 でもその時の僕は酷く疲れていて。姉さんに何もしてあげられず、そのまま寝てしまった……。
 その夜、僕は酷い夢をみた。
 誰かに首をぎゅうぎゅう締め上げられる、とても苦しい夢。
 朝起きたら、首筋に本当に痣が出来ていたくらいだ。
 人の精神と肉体はリンクしているという。映画のマトリックスでも言っていた。
 リアルな夢をみたせいで、身体までが相応に反応して痣を作ってしまったのだろう。
 姉さんを怒らせたこと、さらにそれを放っておいた事への罪悪感が強かったから、そんな夢を見たのだ。
 だから今の姉さんの怒りにも、ちゃんと正面から向かい合っていきたい。
183山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/03(土) 08:51:05 ID:aqLHLUwA
 特に今日は、二つの点で今までよりも緊急性が高い。
 ひとつめは、ズタボロにされた姉さんの心の傷だ。
 姉さんは今日、悪い男に散々弄ばれ、蹂躙され、ボロ雑巾のように捨てられた。……きっと。
 だからこんな風になってしまった。
 僕には分かっている。僕への怒りは八つ当たりだと、分かっている。
 だからこそ僕は、弟として、そんな姉さんをきちっと支えてあげなければならないんだ。
 
 そしてふたつめ。……姉さんの手の中に、未だにあの「果物ナイフ」があるのだ。
 まぁ、杞憂だとは思う。まさか、その、取り返しのつかない行為に及ぶなんてことは、ないとは思う。
 それでもぎらぎら煌くあのナイフ、僕の視線を妙に釘付けにして止まないんだ。
 本当なら今すぐにでも姉さんに飛びかかって、あのナイフをもぎ取りたい。
 しかし僕の本能が強烈に危険信号を発していた。そんなことをすれば……それこそヤバイことになると。
 だからこそ、平和的な説得によってあのナイフを放棄させなければならない。
 
 だからね、姉さん。
 今日は姉さんに、僕の「本気」をみせてあげる。
 僕の本気――十六年間かけて培ってきた技術。平身低頭土下座して、姉さんのご機嫌を伺うスキルだ!
 僕のありったけを込めて、全身全霊を賭けて、媚びへつらってみせるッ!!
 ……恥ずかしくて履歴書にはちょっと書けない特技だった。
 
 よし。それでは今回のミッションのブリーフィングを始めるから、みんな聞いてくれ。
 作戦の第一目標は、まず姉さんの怒りと悲しみを受け止めてあげることだ。
 つまり一定時間、八つ当たりの矢面に立たなければならない。
 そして第二目標は、姉さんの傷を癒し、慰めてあげること。つまりご機嫌取りだ。
 そのため今回の基本戦術は『受け』となる。まずは防御戦を展開し、戦機を伺うのだ。
 そして隙を見計らって攻勢に出る。すなわち―――媚びへつらう。
 冷静に、正確に、大胆に、臨機応変に対処するんだ、山本秋人。本気で勝ちに行くぞっ!
 
 
 >AKITO:HP(ヒットポイント)100%
 >AYUMI:HP(ヒステリーポイント)100%
 >Ready....GO!!
 
 
「姉さん。こっちきて、ごはんにしようよ」
 まずは挑発。だんまりを決め込む姉さんの意識を、こちら側にひきつける。
 頑張って、姉さん。
 頑張って立ち直って。僕がそばについているから……。
 
「………」
「………」
「………」
「秋くんはさ――」
 よし、ここからが正念場だ。まずは防御を固めるんだ。
「……今日なにをしてたの?」
「図書館に行っていたよ」
「……どうして、そんなとこに、行ったの?」
「宿題をしに行ったんだ」
「理由になってないよ」(Damage! AKITO:HP-1%)

 いきなりだが、ひるんではいけない。
 決して理不尽だとか思ってはいけない。
 今の姉さんが欲しているのは筋道や理屈じゃない。無条件の『同意』だ。
 つまり姉さんが理由になっていないと言うのであれば、例えどれだけ筋が通っていても、
 それはやはり理由になっていないのだ。
184山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/03(土) 08:51:52 ID:aqLHLUwA
「いったい、なに、してたの!?」(AKITO:HP-2%)
 問い詰めがリピートしている。こういう時は要注意だ。
 先程と同じ答えを返す場合、しつこい=何か裏がある、と思われる。反抗的だとも受け取られかねない。
 逆に違う返答をする場合、さっきと言う事が違う=騙した=やましい事がある、と展開する。
 つまりどっちの道も、見渡す限りの地雷原なのだ。
 下手に釣られて口を挟むよりも、むしろ無言を通した方がいい。悄然と頭を垂れるのがベスト。

「お姉ちゃん、帰って来てって言ったのにッ!!」(AKITO:HP-1%)
 『事実』と『真実』の違いを弁えるのだ。
 そんな事実があったのかなかったのかは問題にするな。
 姉さんの認識こそが『真実』であり、それこそが今この場を支配している概念なのだ。
 
「携帯もいっぱい鳴らしたのに!メール出したのに無視したッ!どうしてそういうことするのッ!?」
 (AKITO:HP-2%)
 なるほど。
 手元に持ってきた携帯には、着信11件・未読メール46件の表示がある。
 これは全部、姉さんの心の叫びなのだ。悲鳴なのだ……。
 姉さんが救いを求めていたのに、僕は守ってやれなかったんだ……。
 最初のメールの受信時刻が三時三十六分。
 僕が出かけてから一時間半のその間に、姉さんは、その男に……。
 
「僕が悪かったんだよ。携帯を家に忘れたから……」
「ちゃんと居場所教えてって、いつも携帯持ち歩いてって、お姉ちゃんと約束したッ!!」(AKITO:HP-1%)
 携帯を忘れるに至った経緯などを、ここで持ち出すのは自殺行為だ。文字通り。
 姉さんの手の中に、果物ナイフがあることを忘れてはいけない。繰り返すが、文字通り自殺行為なのだ。
 結論のみを黙って受け入れられるかが、弟としての器量というものだろう。

「ごめん。もう絶対こんなことないように気をつける……」
「秋くん、全然わかってないッ!!」(AKITO:HP-2%)
 謝罪や反省の言葉も、多用するとかえって逆効果となりうる。
 言い訳と受け取られればその時点でアウトだ。
 ただひたすら、姉さんからの非難に甘んじる姿勢を心がけよ。
 そしてタイミングを見計らって、媚びへつらうのだ。
 
 
 >AKITO:HP 91%
 >AYUMI:HP 100%
 >Ready....GO!!
185山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/03(土) 08:52:45 ID:aqLHLUwA
「秋くんは梓ちゃんがいればいいんだよ! どうせお姉ちゃんなんかどうなったっていいんだよっ!!」
 唐突に無関係な人名が登場しても、ひるんではいけない。
 つい『どうしてそこで○○○が関係するの?』とか聞き返してしまうと、盛大にドツボにはまる。
 心当たりがないのなら、わけが分からずともきっぱりと、毅然と、胸を張って否定した方がいい局面だ。
 
「そんなことないよ。絶対に違うよ」
「違わないよッ!! あの女! 藤原の泥棒猫とも一緒にいたッ!! 
 あの女にすっかり誑かされて、お姉ちゃんのことなんか忘れてたんだよッ!!」
「絶対に違う。ありえないよそんなこと」
 また無関係な人名だ。今度は藤原さんか。
 この辺は僕も手馴れたもので、もう機械的に全否定していく。スキルアップの賜物だ。
 下手に返事に間をおくと、『言い訳を考えている→図星だった』という公式に当てはめられてしまう。
 わけが分からないことは即座に全否定しておいて、後で意味を考えるというのも一つの手なのだ。
 
 例えば藤原さんによくついてくる『泥棒猫』という形容。僕は未だにその定義に自信がもてない。
 国語辞典には、「他家の食べ物を盗む」という意味が載っていた。
 しかし藤原さんに弁当のおかずを盗られた記憶などないし、そんなことをする子ではない。
 だから気になって、藤原さんに以前、猫について尋ねてみたことがある。
 彼女はどうやら猫好きで、家でも数匹飼っているそうだ。……ここに至ってようやく話が繋がった。
 「泥棒≒汚い」だから、不衛生という意味なのだろうか?
 確かに家庭内でペットを飼っていると、雑菌などが多いと聞く。食事に毛が混ざることもあろう。
 若干差別的な表現だけど、たぶんそういう感じのことを言っているんだと思う。よく分からないけど。
 姉さんは潔癖症なのだなぁ。
   
「――――――でしょッ!? 秋くんッ、答えてみせてよッ!!」
 ……ハッ!?
 いけない、よそごとを考えすぎた!!
 
「やっぱり聞いてないッ!! お姉ちゃん無視した! お姉ちゃんを、無視したぁああーーーーッ!!」
 (AKITO:HP-7%)
 あわ、あわ、あわわわ。
 ホラこの通り、一瞬の油断が命とりになるんだ――――なんて、冷静を気取っている場合じゃない!
 た、立て直さなくちゃ! 姉さんがナイフを手首に当てている!!!

「違うよ! 僕が悪かったんだ! もう反省して、自己嫌悪で、どうしようもなかったんだッ!!」
 自分でも何を言っているのか分からないが、ともかく『僕が悪い』ということをアピールする。
 今の姉さんが求めているのは、終局的には『僕が悪い』という認識そのものなのだ。
 だから、こういう返し方がマイナスに働く可能性は低い……と思う。
「嘘だよッ!!!」
「嘘じゃない!」
「秋くんきらいッ!! だいっきらいッ!!! うっ……ふええぇえ……ひっくっ」(AKITO:HP-3%)
 なんか僕まで、本当に泣けてきた。
 八つ当たりだと分かっていても、姉さんに『嫌い』と言われるのは流石に……堪える。
 
「ひっく……ぐすっ……」
「………」
 ナイフは手首から離れたが、今度は姉さんの喉元に近づき始めている。
 そのまま喉を貫いてしまう、なんてことはありえない。流石にそこまでするわけがない。
 ……と思いつつも、輝く白刃から目を離せない。ゴ、ゴクリ。


 >AKITO:HP 81%
 >AYUMI:HP 100%
 >Ready....GO!!
186山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/03(土) 08:53:35 ID:aqLHLUwA
「どうせ、あの娘達とあんなことやそんなことしてたんでしょっ! どうせ!
 この、変態ッ!変質者ッ!孕まし屋ッ!馬鹿ッ!馬鹿馬鹿馬鹿ァアアーーー!!」(AKITO:HP-2%)
 な、な、なんだってぇ!? 
 また唐突に盛大に話が飛躍したぞ。
 あんなことやそんなことって、今日僕は何かをしたのだろうか? 
 単に一緒に宿題をしていただけだが……それがイケナイことだったのだろうか?

「あの娘達ばっかり手を出して、お姉ちゃんには手を出さないのはどうしてようッ!!馬鹿ァアア!!」
 (AKITO:HP-4%)
 姉さんがじたばたと腕を振る。
 ちょ、ちょっと待ってよ、姉さんは何を言っているんだ?
 僕は『手を出した』んじゃない。逆なんだ。宿題をするのに『手を借りた』んだ。
 ……い、いかん、よく考えたら防御戦線が崩れかけている。
 と、ともかく否定だ。わけが分からなくなったら全否定だ。
「絶対に、そんなことはないよ」
 よし。
 
「じゃあお姉ちゃんにも手を出してよッ!! お姉ちゃんだけに手を出してよッ!!!」
 姉さんに、手を貸せばいいのだろうか?
 もっと姉さんを手伝え、手助けをしろ、姉さんだけを守れ……と、そういうことなのだろうか? 
 それならばはっきりと意味が通じる。
 ……今日だって僕は、姉さんの危機に何もしてあげられなかった。
 家にいなかった理由はどうあれ、それは悔やんでも悔やみきれない。
 もっと何かしてあげられたはずなのに。もっと姉さんを守れたはずなのに。
 姉さんの言っていることは……どこまでも正しい。
 僕は弟失格なんだから……。

「ごめん……。本当に、ごめん。これからは気をつけるよ……」
「口ばっかりだもんッ! 秋くんいつも、口ばっかりで何もしないもんッ!!!」(AKITO:HP-2%)
「本当に……もう……は、はんせい……してる……」(AYUMI:HP-3%)

 語尾は掠れて、もう声になっていない。
 僕の頬をつたって、テーブルの上に小さな水たまりが広がっていく。
 ゆるしてくれ、ねえさん。ぼくを、ゆるして……。
 
 姉さんの喉元。
 高度を上げていた果物ナイフが、少しずつ下に降りてきた。
 ぼやけた視界でそれを把握した僕は、安堵のあまりそのままテーブルに突っ伏しそうになる。


 >AKITO:HP 73%
 >AYUMI:HP 97%
 >Ready....GO!!
187名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 10:43:57 ID:+R4OFKFh
お姉さんが死んだら、泥棒猫の一人勝ちになるんじゃないのか?
188名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 11:27:53 ID:Q2JkuEwI
行け!秋人!ここは『無言で押し倒す』だ!

>>187
いや、表示からすると逆に刺し殺されるかも知らんぞ。そうなると全員敗北だ。
189名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 12:50:28 ID:mwOeNPGe
 神々に触発されて駄文を書いてしまいました……。
 拙いけど投下してもいいですか?
190名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 13:03:00 ID:CAFIu32N
我々はいつだって嫉妬を欲している。
投下されると言うのなら、その修羅場に身を挺さぬ理由が無い。
さぁ、存分に書き下されよ!

――つまり、いいよ!
191名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 13:05:10 ID:JQ2YnZEN
自分の作品を駄文というのなら投稿しない方がいい。
謙遜するなら稚拙とか言い換えた方が印象いいよ。
192名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 13:08:01 ID:PwIKbOm9
いいから黙って投下すればいいのよ!この…甲斐性なし!浮気性!
193名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 13:08:01 ID:36hU6Nde
粗茶ですか。
194 ◆rAFXqjbZng :2006/06/03(土) 13:14:08 ID:mwOeNPGe
では、投下します。
195お願い、愛して!1 ◆rAFXqjbZng :2006/06/03(土) 13:21:14 ID:mwOeNPGe
『なんで僕たちだけ……なんで……』
『キョータくん……』
『僕らだって欲しかった……だけど、そんなの決められることじゃなかったんだ!』
『…………』
『なんで、そんなことで嫌われなくちゃいけないんだよ……おかしいよ……』
『だいじょぶ、だいじょぶだよ? わたしも同じだから……わたしだけはずっと
キョータくんの味方だから……ね?』
『……ごめん……っ』
『謝らないで。……そうだ、ねぇ約束しようよ。あなたが望むものはわたしが
与えてあげる……だから――』

 朝の訪れと共に覚醒した意識は同時に憂鬱な色へと染まる。
 うっすらと開いた目から窓を通して青々とした空が見えた。
「変な夢……」
 気だるげに言って、頭をかきながら起き上がる。目覚めの日光はどうも好き
になれない。
 まぁ、曇りの日も雨の日も雪の日も等しく憂鬱なわけだが……。
 必要以上に温度の高い僕に暖められた布の熱が恋しくなり、もう一度、ベッド
に伏せようかという考えが頭をよぎった。
 ……あ……。
 だが、時計を見てその考えは即座に却下。
「キョータくん!」
 まずい!
「ごめん瑞奈ぁ! 今起きた!」
 姿を確認するのを省略して、ハンガーにかけた制服に手を伸ばしながら、二
階のここからでも聞こえるように叫ぶ。
 僕のことをキョータくんと呼ぶ人間なんて一人しかいない。
 僕の名前はキョータではなく、京太(ケイタ)だからだ。
 ずっと前に間違って以来、瑞菜はずっとキョータと呼び続け、もはや今では
第二の名前として違和感すらない。
「いいよ〜! 待ってるから」
「ごめん!」
 最後にそれだけ言って、僕は急いで少しきつい制服に袖を通した。
196お願い、愛して!1 ◆rAFXqjbZng :2006/06/03(土) 13:27:55 ID:mwOeNPGe
 別に遅刻するような時間じゃない。もしかしたらこれさえ計算づくなんじゃな
いかと思う程、始まりの予鈴にはまだ余裕がある。
 だけど想い人を長く待たせるわけにもいかない。

 こんな朝の情景を繰り返してきて、もう幾数年が経った。
 律儀にも毎朝、僕を迎えに来てくれる少女、白河瑞菜(しらかわ みずな)は
母親代わりの叔母と一緒に暮らしている。
 両親を交通事故で亡くしてから、叔母に引き取られ、ここに引っ越してきた
のだという。
 出会った頃は叔母の後ろに隠れて顔すら見せてくれなかったのを覚えている。
幼い時分にそれだけの衝撃があれば無理はなかった。
 そんな瑞菜も今では随分と社交的になり、代わりに僕はこんな体型も災いし
てか、瑞菜以外の人間とはすっかり疎遠になっていった。
 それに不満や孤独を感じていないわけじゃないが、正直に言うと瑞菜以外に
どう思われていようと大した問題じゃなかった。
 瑞菜は美人だ。いや、確かに美人でもあるのだが、それより際立つのはその
愛くるしさだ。プロポーションにはあまり恵まれていないが、故に可愛らしさ
をより強調している。
 それに惹かれたというのも確かだが、瑞奈と長い付き合いをしていれば、ど
う足掻いても意識してしまう。それだけの内面的魅力も兼ね揃えているのだ。
 彼女ならきっと、そのままの僕を愛してくれる。
 そう信じていた。
197お願い、愛して!1 ◆rAFXqjbZng :2006/06/03(土) 13:32:18 ID:mwOeNPGe

 わたしには、誰よりも大切な人がいる。
 恋に恋する時期を迎える前から、気付いたときには好きになっていた。
 その男の子は世間一般が言うには不細工な人間に属するらしい。
 彼を分かってない。何度聞いても、苛立ちながらそう思う。
 眼鏡をはめてて、ちょっと荒れた髪が長くて、アニメのロボットみたいなのが
大好きで、そしてお腹がプニプニ愛らしいあの人。
 あの人は引っ越してきたわたしに優しくしてくれた。母の背中に隠れるわたし
にお腹を差し出して、触ってみろ。って言ってくれた。柔らかくて暖かかった。
 その暖かさに涙を流したのも一度や二度じゃない。
 あぁ……キョータくん……。
 気付けば彼の熱を求めているわたしがいた。
 早く、はやく、ハヤク……早く来て。
 その姿を早く目に焼き付けて、声を頭に刻ませて、キョータくんの隣でキョ
ータくんの息遣いを聞きながらキョータくんと歩きたくて……。
「キョータくん!」
 待ち望んだキョータくんが中から姿を見せてくれた。
 ――えへへ。今日もかっこいいよ……キョータくん?
 わたしは、にやけそうになる表情を必死にこらえてキョータくんに駆け寄
っていった。
 この時は毎日不安なんだけど、いつもキョータくん、準備が早いから我慢
できるんだ。
198お願い、愛して!1 ◆rAFXqjbZng :2006/06/03(土) 13:35:46 ID:mwOeNPGe
「おはよう、瑞菜」
「おはよ〜!」
 あぁ……キョータくんの「おはよう」は一日の原動力だよぅ……。

「いつもありがとう」
「ううん、全然だいじょぶ」
「そう? 今度は僕が早起きして迎えに行くからね」
「っっ!!」
 キョータくん優しいよぉ〜っ! 思わず抱きついちゃいそうだったよ?

 キョータくんは昔から少しも変わってない。いつも優しくて、気遣ってくれ
て、安心できる笑顔を見せてくれる。
 その笑顔を他の人にも見せてるって考えると、気が狂いそうになるけど、で
もそんなこといって束縛して嫌われるのは絶対に嫌だから。
 だから我慢するんだ。
「それじゃ、行こうか」
「うんっ!」
 早く隣を歩くキョータくんの暖かい手を握りながら、学校に行ける日を夢見
て、わたしたちは歩き出した。
199お願い、愛して!1 ◆rAFXqjbZng :2006/06/03(土) 13:39:45 ID:mwOeNPGe

「ねぇ瑞菜ぁ……あんた学園のアイドルなの分かってる? 自覚してる?」
「え?」
 わたしは突然の理恵ちゃんの言葉に首を傾げた。
 今は昼休み。たまに授業中、貧乏揺すりなんかしちゃいながらも、ずっと待って
いたの。
 早くキョータくんのいるクラスに向かって、一緒にお弁当食べたいのに。
 うぅ……後にしてよぉ……。そんなキョータくん以外からのお世辞なんて聞き飽
きて、今ではもう何も感じないよ。
「なんであんたみたいな可愛い子が、幼馴染だか知らないけどさぁ、あんなデブを
飼ってるの?」

 ピクッ……。

 目の前の女の言葉に目元がひきつった。
「理恵ちゃん……酷いこと言わないで」
 あの人のことなんて何も分かってないくせに。
「まぁ、いいけどさ。でも瑞菜、今からあいつのとこ行くんでしょ?」
「そうだよ」
「今朝だってあいつと学校来たみたいだし、もう少し人付き合いは考えたほう
が…………ってこらこら、睨むな。ごめん、ごめん。睨んでもあんたじゃ可愛
いだけよ?」
 冗談じゃない。この女はなにをわたしの親友のつもりでいるんだろう。
 人間関係は上手くいってるってところをキョータくんに見せてあげるために、わ
たしはあなたたちと仲良くしてるフリをしてるだけなんだよ?
 変な娘のせいで少し、いやな想いしちゃった。早くキョータくんに会いたい。
「ってもこの前さぁ、左川ブーに見つめられて嫌がってなかった?」
「だって……」
 左川君がどうとかじゃなくて、あんなねちっこい視線で見つめられたらキョータ
くん以外、女子でもお断りだよ。
「デブはやなんでしょ?」
 もう……しつこい……!
「確かにあの人は……あんまり好きじゃないけど」
 いい加減にうんざりしてきながらも、話を早く終わらせるために肯定することに
した。
 聞き分けのない子への対処は刺激しないこと……だよね?
200お願い、愛して!1 ◆rAFXqjbZng :2006/06/03(土) 13:43:37 ID:mwOeNPGe


「〜〜〜〜」

 瑞菜のクラスはここからでも喧騒に包まれているのが分かった。
 昼放課、僕は毎日僕のクラスまで来て一緒にお昼をとろうといってくれる瑞奈に
たまにはこっちから行こうと思って、授業が終わると同時に教室を出たのだ。
 まぁ、それに今日は少し瑞菜を待たせてしまったからね。
 クラスに近づいて行くごとに喧騒は大きくなっていき、瑞菜の姿が見えた。瑞菜
の席は廊下側の窓際にある。
 声をかけようかと思ったけど、瑞奈は瑞奈の友達(にしては化粧がキツイ)と話して
いるようだった。

「――デブはやなんでしょ?」

 身体が硬直した。
 ……僕のことだ。自覚ぐらいはある。
 瑞菜……?
 不安になって、瑞菜を凝視した。
 そして、耳を疑った。

「確かにあの人は……あんまり好きじゃないけど」
「っっ!」

 僕は、呆然とその場に立ち尽くした。
 何が「そのままの自分を好きになってくれる」だ。
『あんまり好きじゃないけど』
 控えめな瑞菜のその言葉は普通の人間の「嫌い」と同意義だった。
 信じていたものに裏切られた気がした。
 瑞菜も少なからず自分に好意を寄せてくれている。だから迎えにきたり、一緒に
お昼をとったり、一緒に帰ってくれるんだと思っていた。
 ――だけど、違う。
 僕が言うとおかしいけど、瑞菜も年頃の娘だ。こんな容姿の幼馴染なんていやに
決まってる。
 瑞菜は優しいから言わなかったけど、僕と仲良くしているせいで一時期クラスか
ら疎遠気味にされた時だってあった。
 くそっ!
 今までの自分の自意識過剰ぶりに腹が立つ。
 瑞奈に無理をさせてきたということも相俟って、今すぐ自分をぶん殴ってやりた
い気分だ。
「やっぱりね」
 悟ったような瑞菜の友人の声が聞こえて、僕は逃げるようにその場を後にした。
 少なくても瑞菜の隣にいても恥ずかしくないようになるまでは、瑞菜を避けよう。
その想いとある決意を胸に抱きながら。
 この日、僕の初恋は終わった。
201 ◆rAFXqjbZng :2006/06/03(土) 13:46:33 ID:mwOeNPGe
ひとまずここまでです。
次回辺りに京太には美少年になってもらいます。
202アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/03(土) 14:12:37 ID:tQviQhz/
投下します
203ハピネス 四話 ◆1nYO.dfrdM :2006/06/03(土) 14:13:14 ID:tQviQhz/
 綺羅さまが二人をどけてズボンをはたいた
 まったく・・・・・なんですか?この蚊は二匹・・・・・
 ああ、そういえば見たことある
 小さい頃から綺羅さまの周りをちょこまかしていたのと・・・・もう一匹は知らない
 いまはどうでもいいか、こんなのほっておいて・・・・
「お怪我はありませんか?」
 ケガは無いみたいね・・・・
「ごめんね、綺羅くん」
「ごめんなさい、綺羅ちゃん」
 うるさい、すっこんでろデカ乳ども・・・・
 あんたらはそのまま地べたにへばり付いてろ
 志乃が軽く解釈してきた・・・・
 いけない、いまここには綺羅さまが・・・・
 私はスカートを軽くつまんで
「お久しぶりです・・・・志乃」
 まだ綺羅さまの周りをうろちょろしてたのね、醜女さん
 5年で腐敗したと思ってた
「は、はじめまして・・・・桜です」
 黙れ・・・・消えろ、アホカス
「綺羅さま?」
 不思議そうな顔で私を見る綺羅さまに意識を集中する
 やっぱり不思議ですか?
 どう女らしくなったでしょ?
「あなたさまは本当にあの・・・・アトリさんでありますか?」
「はい、そうですよ・・・・」
「ほんとに・・・?・・・・だってアトリは不治の病で」
 ふふ、そうですよ・・・・あなたへの愛が病を・・・
 そう言いたい所ですが・・・・
 これは私の五年に及ぶ壮大な計画です
「私は・・・・生きています・・・・綺羅さま」
「・・・・・・」
 目に少しの涙が浮かぶ
 綺羅さま・・・・・
「ほんとにアトリなの?」
 横槍するな・・・・醜女
「俺は・・・・・・・」
 綺羅さまは訳がわからないといった感じで背中を私に向けた
「ごめん、少し頭のなか整理してくる」
のこされた私たちの間にしばらくの沈黙
「そろそろ、本性だしたら?アトリ・・・・」
 志乃がジト目で私を見た
「なんのことかしら?」
「純粋な綺羅くんならまだしも・・・・私は騙されないわよ」
 さすが醜女さん・・・・
「な、なんのことですか?え・・・・?志乃さん?」
 無視・・・・・っていうか誰これ?
「不治の病ってウソだったのね・・・・なにを考えるの」
「あら、この五年間必死に病魔と戦ってきた友人に向かっていう台詞」
「あんた、いまぴんぴんしてるじゃない・・・・」
 そういえば昔からこの子は勘だけはよかったものね
 勘だけだけど・・・・
204ハピネス 四話 ◆1nYO.dfrdM :2006/06/03(土) 14:14:22 ID:tQviQhz/
「ふ〜、さすがね」
「付き合い・・・長いもの」
 少し疲れた
 気分転換
「で、なにが目的?」
「もちろん・・・・綺羅よ」
 やっぱりと彼女は私を見つめた
「ダメよ、もう綺羅くんは私と相思相愛なのよ」
 それは無いわね
「ふふ・・・・嘘つき」
「どうしてあなたにわかるのかしら?」
 綺羅を見ればわかる
 彼はまだ恋を知らない
 恋を知らない彼がどうしてあなたを想うの
「理由はあなたが一番わかっているのでしょ?」
「く・・・・」
 あら、わかってるんだ・・・・はったりだったのに
 まあいいわ・・・・これからよ、これからが勝負なのよ・・・・醜女さん
 勝つのは・・・・私よ
205ハピネス 四話 ◆1nYO.dfrdM :2006/06/03(土) 14:15:06 ID:tQviQhz/

次回から投下が不定期になります
書いたからにはちゃんと完結させますので長くなるか短くなるかわかりませんがよろしくです
206名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 15:00:49 ID:ws+ilf+/
新作にwktkwktk気になってしょうがないです。
これを見ると、依存とサイ娘とベタ惚れは紙一重なのだとわかった。
207名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 15:03:31 ID:PwIKbOm9
みんな違ってみんないい
208名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 15:03:38 ID:FVHufkd2
>>186
カチュ(ry……もといキモ姉(*´Д`)ハァハァ
そして会話のすれ違いっぷりに激しくワロタw
209名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 15:16:38 ID:eMco6Eyh
>>201
京太くん美少年化か…
誤解もとけぬままどうなってしまうんだろうか
てか痩せただけで美少年になれるんだったらもともとイケメソってことだな
210名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 15:22:37 ID:ws+ilf+/
磨けば光るダイヤモンドの原石なんだよ、彼はきっと。
211名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 15:30:47 ID:DOn7KJ6j
眼鏡をはずすと・・・というのはよくあることだしね
212名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 15:35:03 ID:OxOZ37Z1
というか基本だよね
213名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 15:35:18 ID:+9YI2cGS
どんなにいいサッカー選手でも
チームに理解が無いとなぁ・・

チームが変わった途端
活躍し出す奴とかかなり居るし
214名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 15:36:26 ID:+9YI2cGS
これは誤爆ではない!知略だ!
215名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 15:58:31 ID:biGlCyRV
うふふ、+9YI2cGS君はどこのスレと二股かけてたのかな?
216名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 16:48:32 ID:fbKXvlYw
ID:+9YI2cGS君…私以外のどのスレを見てるの?
ダメじゃない、私だけを見てくれるって昨日約束したところなのに
217名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 17:06:06 ID:gTOs++uL
ID:+9YI2cGS? こんなところに居たのか。
ほらさっさと帰るぞ。>>215とか>>216に襲われてもいいなら別だがな。
218名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 17:07:49 ID:otV9G2uD
ID:+9YI2cGSの人気に嫉妬
219名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 17:12:09 ID:t1HGcMfr
駄目だよ、+9YI2cGS。そんなこと言っちゃ。
冗談でもそんなの聞いたら誤爆元も、+9YI2cGSも埋めたくなっちゃうじゃない?
あはは。今はまだ大丈夫だよ。
だからちゃんと、ちゃ〜んと私のところだけに来てよね?
でないと・・・ね。うふふふっ

と思ったけど、やっぱり駄目。
>>215>>216>>217も、みんな……み、ん、な――――
 
220山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/03(土) 19:39:41 ID:aqLHLUwA
「ID:+9YI2cGSくんおかえり。お姉ちゃんごはんにしてあげるねー。サッカー楽しかった?
 え? ごはんいらないの……? ……別スレでcookie食べたきた? 
 ………お姉ちゃんのcookieしか食べないでって約束したじゃないッ! 吐いてよ!
 吐きなさいよッ!! 消してやるッ! 泥棒スレの過去ログなんか消してやるからッ!」
            <8>後編ここから↓ 5レス分
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「秋くんはさ……お姉ちゃんなんか、必要ないんだよね……」
 ボソッと、力なく姉さんが呟いた。
 単純なる要不要論だ。姉さんからの攻勢が一旦手詰まりになり、単調になってきた証拠。
 ――隙ありっ!
 さっきまでの涙もどこ吹く風だ。
 今こそが僕の勝機! 今こそが討って出る時!
 今こそが……媚びて媚びて媚びまくって、ご機嫌取りをする隙なのだ!!
 
「姉さんがいなくちゃ、僕は生きていけやしないよ。いつだって大切に思っているっ」(AYUMI:HP-5%)
 炎よりも熱く! 鼓動よりも昂らせて! 届いてくれこの想い! この媚態!
「……お姉ちゃんが寂しがってても、秋くんは平気じゃない……」
「姉さんが居てくれなくちゃ、僕だって寂しいさ。寂しくて死んじゃうよ、きっと!」(AYUMI:HP-4%)
 羞恥心とか男の挟持とかは、かなぐり捨てろ。攻める時はトコトン熱く畳み掛けるのだ。
「だって……」
 効いている! 姉さんの纏っている瘴気が、薄まってきている。
 このまま一気呵成に攻め立てよう。全軍すすめ! 突撃!
「僕は姉さんに甘えっぱなしだからさぁ。 こんな優しい姉さん、世界中どこを探したっていないよぉ」
 (AYUMI:HP-5%)
 甘く、撫でるように、蕩けるような声を出す。……自分で鳥肌がたった。
 しかしイケる。これならイケるぞ! 調子のってきたぞう!
「姉さんは、世界一のお姉ちゃんだよ!」」(AYUMI:HP-4%)
「そ、そうか、なぁ……」
「姉さんは、お姉ちゃんの中のお姉ちゃん。お姉ちゃん・ザ・ベストだよ!」
 
 
「でも、梓ちゃんのことが……一番だって…………言った」

 突然。本当に突然。
 まるでいま思い出したかのように、順調だった戦気の流れが変わる。もう、コロッと。
 語尾になるにつれ、姉さんの声のトーンが低く低く轟くようになっていく。
 魔闘気がリビング中を渦巻き始める。
 
 え? え? え? え? 
 何か様子が変だ。
 撃ちかたやめ! 全軍防御体勢!
 と、ともかく、否定だ! わけが分からない時は全否定。
「それはないよ、絶対にない」

「言ったッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」(AKITO:HP-8%)

 そ、そういわれれば言ったような気も……。
  
「もう秋くんの言うことなんか信じないッ!! うぅっ…馬鹿ぁぁぁぁあああ!!」(AKITO:HP-3%)
「……いや、それはネ。そういう意味じゃなくてネ。なんというか……」


 >AKITO:HP 62%
 >AYUMI:HP 79%
 >Ready........
 
…………
………
……
221山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/03(土) 19:40:59 ID:aqLHLUwA
 結局かれこれ一時間程、一進一退の攻防を続けている。
 しかし今日は特に大変なのだ。
 気を抜くと姉さんのナイフが喉元を彷徨い始めるため、余計に必死にならざるを得ない。
 まだまだ序の口だというのに、僕は早くも疲労の色を見せ始めていた。
 
 父さんがよく言ってたっけ。
 女の人のヒステリーはたいへんだって……。
 はぁ……。


「秋くんはさ、お姉ちゃんのこと飽きちゃったんだよ! もう見捨てるつもりなんだよッ!!」
 同じ様な攻防の繰り返し。
 同じ様な言い合いの繰り返し。
 苛立ちだけが、少しずつ募っていく。
「そんなことないって……。僕は姉さんを見捨てたりしない」
「もう信じられないよ……! 秋くんの言うことなんて信じられない……!!」
 姉さんが両耳を抱え込んで、イヤイヤと肩を振る。
「信じてくれなくたっていい。僕はいつだって姉さんのそばにいる」
 そうだ。僕はいつだってそばにいる。
 いっしょにいる。
 ずっと、いる。
 
 ……疲れていたからだろうか。焦っていたからだろうか。
 ふと。耳元の風が、優しく揺らめいたような気がした。
 ここに居もしない梓の囁きが、どこかで聞いた音色を奏でる。
 あの時の言葉。あの時の――
 

 ――――『姉弟だって、いつも一緒にいられるわけじゃありませんし』――――

  
 ………。
 ち、違う……。ちがうんだ、あず……。
 違う……僕はずっと姉さんのそばにいる……。
 
                       本当に違うのですか、秋人さん?
                       今日は秋人さん、どこにいたんです?


「秋くん、お姉ちゃんからどんどん離れていっちゃうものッ!!」
「……そ、そんなことない! 僕はずっと姉さんと一緒にいる! 姉さんを支え続ける!」


 ――――『血の繋がった姉弟なら、いつまでも一緒にはいられませんし』――――
   
 
 やめろ……やめろよ……! なんなんだよッ!
 なんでこんな事思い出すんだよ!
 なんでこんな時に思い出すんだよッ!
 そんなこと関係ない! 大切な事じゃない!
 姉さんを守れるのは、ぼく―――
 
                       それならどうして亜由美さんは、
                       こんなに、泣いているのでしょうねェ?
222山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/03(土) 19:42:06 ID:aqLHLUwA
「それなら! どうして帰ってきてくれなかったのッ!? どうしてそばにいてくれなかったのッ!?」
「…………………」 
 頭が、ぼんやりする。
 大切だったはずの想いが、身体から溶け出して、揮発する。
 
「帰ってきてくれなかったじゃないッ! お姉ちゃんのこと……見捨てたじゃないッ!!」
「それは………携帯を、家に、忘れたから……」
 違う……。僕が言いたかったのはそんなことじゃない……。
 今の姉さんに、こんなことを、言っては駄目なのに……。
「言い訳なんか、聞きたくないよッ!!!」

 ――――『いつも一緒にいられるわけじゃありませんし』――――
 ぼく……は……
               
「お姉ちゃんなんかどうだっていいんだよッ!お姉ちゃんを捨てるんだよッ!」

 ――――『いつまでも一緒にはいられませんし』――――
 ちがう……ちが……う……

「嘘つき! 嘘つきッ! 嘘つきッ!! この大嘘つきィィィイッ!!」
「…………ちが……う……」
 力を振り絞って、ようやくその言葉だけを搾り出せた。
 
「じゃあ、どうして私を置き去りにしたのッ!? どうして一緒にいてくれなかったのッ!?」
 姉さんの白い首筋に、ナイフがスッと添えられる。
 ぎらぎらぎらぎら輝くナイフ、鈍く、冷たく。それがどこまでも、哀しく。

 ……僕はどうして、こんなことをしているのだろう……?
 
 もういいじゃないか。
 もううんざりだよ。
 姉さんも、死にたいなら勝手に死ねばいいじゃないか。
 なんかもう、つかれたよ。
 
 だって
 どうせぼくらは、いっしょにはいられないから。
 いつまでも、いっしょにはいられないから。
 きょうだいだから。
 きょうだいなのは、もうどうしようもないから。
 なにをしたって、むだだから……。
 ねえさんとぼくは、
 いっしょになれないから……。
 ………
 ……
 …
 
 なにもする気がしない
 なにも言う気はない。
 冷め切ってしまった理性は、同じように冷たい光を放つナイフの行く末を、ただ黙って見守ろうとする。
 
 もう、これで精一杯なのかな?
 ぼくができるのは、ここまでなのかな?
 僕の想いは……これでもう、全部なのかな?
 
 身体の奥底で眠っていた小さな小さな残り火だけが、胸に痞えるように、己の存在を呼びかけてくる。
223山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/03(土) 19:42:43 ID:aqLHLUwA
「そうさ、たしかに僕は姉さんを置き去りにしたよ」

 …………………あれ?
 気がつけば、無意識がすらすらと言葉を織り綴っていた。
 僕は一体、何を口走っているんだろう?
 妙に落ち着いている自分を自覚する。
 どこかで聞き覚えがある、このフレーズ。

「でも、それは姉さんの邪魔をしたくなかったからなんだよ」
 テレビのスクリーンごしに自分を見ている、そんな他人事のような気分。
 己の口が勝手に紡いでいく言葉を、胡散臭げに聞き入っていた。
  
 あー、テレビで思い出した。
 これ、昼間姉さんと一緒に観ていたドラマの台詞だわ。
 なんとかオウガとかいう、あの変なドラマ。
 くだらねー。こんな時にテレビドラマの真似かよ。阿呆か僕は。
 
「嘘だよッ! お姉ちゃんと一緒にいるのが嫌になったんだよッ!!」
 心なしか、姉さんの台詞までドラマと似ているじゃないか?
 笑える笑える。調子でも合わせているの?
 
 
 ……………。
 なぁ。
 本当に僕は……無意識で喋っているのだろうか?
 本当は、全部分かっていて、自分の意思で喋っているんじゃないのか?
 台詞のせいにして。あとで誤魔化せるようにして。
 
 いや、そんなはずはない。
 だって本来なら僕は、ドラマの台詞なんてろくに覚えているはずがないんだ。
 りんごを食べるのに一生懸命で、ろくにテレビを観ていなかったじゃないか?
 今だって、ドラマの内容がどんなだったのか言えないだろう?
 おかしいんだよ。僕がドラマの台詞を喋れるのは。
 だからこれは無意識なんだ。僕の考えじゃない。僕の意思で喋っているわけじゃない。
 ぼーっとしているうちに、無意識が耳に残っている言葉を勝手に口走っているだけだ。

「違うよ、姉さん」
 
 そうだ、違うだろう。
 無意識で喋っているのなら、台詞を覚えていないのなら、
 ……どうして僕は、『これ』がドラマの台詞だと気づいたんだ?
 
 ドラマの台詞のせいにして、自分の言いたいことを言おうとしているだけじゃないのか?
 雰囲気に流されて、どさくさに紛れてみるつもりなんじゃないのか?
224山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/03(土) 19:43:22 ID:aqLHLUwA
「僕は」
 
 山本秋人は。
 ソイツがドラマの台詞を覚えているというのならば。
 ソイツが次に何を言うことになるのか、ソイツ自身がもう知っているはずなのだ。
 
 それとも切羽詰まって、自棄になって、
 似たようなシチュエーションのドラマの台詞を、うろ覚えで口走っているだけなのか。
 この後、何が起こるのかも知らずに。
 
「僕は、姉さんを」

 わざとなのか。無意識なのか。
 ………もう、どっちでも、いいかな、と思えてきた。





「愛している」




 おどろくほど、あっけなく。
 ことばが、むすぶ。



 びくん。
 姉さんの身体が、ひときわ激しく痙攣した。
 
 
 
「愛している人に、いなくなって欲しいわけない」
 
 
 
 ぽとん。
 あの忌々しい果物ナイフが、遂に姉さんの手から転がり落ちた。
 



 あぁ。
 やっぱり。



 効いちゃったみたい。


……………
…………
………
……
225名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 19:47:28 ID:otV9G2uD
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +        
 と__)__) +
226名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 19:53:29 ID:XCKUHqmh
この後の展開がとても楽しみだゼ。
227名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 20:00:41 ID:FVHufkd2
ちょwwwうまくTOとリンクさせているのがうまいなw
次の投下まで正座でwktkしてますね

オウガの元ネタがわからない人へ
ttp://shootingstar.serio.jp/TO/script/4_611.html
228名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 20:24:37 ID:O46JFG7P
やまもとくーーーーん!!!!!

激しくGJ
wktkしながら待ってます
229名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 20:33:39 ID:CAFIu32N
なぁ山本君。
それは、“殺し”文句だと思うなんだよ、お兄さんは。


…自分を。
230名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 20:37:57 ID:Rr3mDVET
Cルートキター―――( ゚∀゚)――――――!!!!!
231名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 20:43:08 ID:mOahOo4a
そして、キモ姉は更に黒くなってしまいましたとさ
めでたし めでたし

232名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 20:46:14 ID:PwIKbOm9
勝手に完結させていいのかよw
233名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 21:13:56 ID:j1Ht/vzX
「取り消せないよ……」
 名無しは言った。
「……キモ姉の世界じゃ、『愛している』のやりとりってのは、そういうものなんだ。
いくら、あんたが素人だろうと、いったん、キモ姉に向かってそう言った以上は
取り消せないよ。理屈じゃない。キモ姉が、白い子を腹黒だと言えば腹黒だと思わなきゃ
ならない、泥棒猫の生命(タマ)を取って来いと果物ナイフを渡されりゃ、
行かなきゃならない、そういう世界なんだ」
 名無しは、深く息を吸い込み、吐いた。
「イタいぜ……」
 名無しは言った。
「キモ姉を落とすっていうのは、あんたが想像している以上にイタいんだ。
大の男の、いっぱしの面した修羅場スキーが、泣き叫ぶことだってある。
キモ姉とくっつくってことは、一生もんだぜ。あんたは、一生、それを背負って
これから生きていかなきゃならない」
234名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 21:20:13 ID:3gEA8BfK
俺には見える。「自分の物にならないくらいなら、いっそ…」とか言ってるお姉ちゃんに刺し殺される秋くんが見える。
235名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 21:32:32 ID:Rr3mDVET
>>234
俺にも見える。「寧ろ望むところだ」と、
マイサンを大きくしながら刺される日を待つ秋くんがな。
236名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 21:34:07 ID:k0XOAEBz
TOの名シーンキタ!
作者様、選択肢を間違えたバージョンも是非書いてくださいませ。
237名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 21:37:46 ID:k0XOAEBz
すまない。浮かれていてsage忘れてしまった……
反省して7スレのウメネタでも考えてきます
238名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 21:42:03 ID:PwIKbOm9
>>237
許さない!そうやってまた7スレのことばかり考えて!もう殺してやる!
239名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 21:50:36 ID:wJxymZ8d
>>238、あなたは>>237に捨てられたのよ。
あきらめなさい。
第一、そうやって”殺してやる!”なんて言って>>237の気持ちが
戻ってくると思っているのがお笑いなのよ。
本当に>>237のことを”愛”しているのなら、彼の気持ちを尊重しなさい

負 け 犬 
>>238  さん♪
240名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 21:52:35 ID:ODhOiGqf
7スレ?
一体なんのことかしら?
7スレなんて存在しない
過去現在未来…嫉妬修羅場三角関係スレはこのスレだけ
浮気するような相手はそもそもいない
そうでしょ?名無しさん?
241名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 22:07:50 ID:fbKXvlYw
>>237
そっか…7スレ目のところにいっちゃうんだ…
ん、大丈夫、そんなに心配してないよ
どうせ私のところに戻ってくるって信じてるから、ね
だってあの子はもうすぐ…

ふふ、何でもないよ
じゃあちょっとだけ、いってらっしゃい
242名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 22:08:53 ID:DOn7KJ6j
山本くんいつにも増してキレてるな
これがキモ姉の教育か
243名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 22:53:37 ID:URTANutS
キモ姉を説得する山本君の戦術論が、ふてた女房のご機嫌取り
をするのオレのやり方そっくりなのに感服&ゲンナリ。

RiG2nuDSvMさん、あなた実生活でも結構苦労してるんじゃない?
244名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 22:56:28 ID:31g9zeqp
凄い環境では凄い人間が育つなぁ
245名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 23:09:42 ID:zksuK7Xr
女性が台所にいるときは低姿勢が基本だよね?
いや逆に修羅場スキーとしては・・・
246名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 23:21:17 ID:0HFgBo2V
料理中に別れ話をしたら刺されます
247名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 23:24:03 ID:3gEA8BfK
いったい本当に罰せられたのは誰なのか?

全員が、ただ人を愛しただけなのに……

…事実だけを記そう

愛は最悪の事態を引き起こした



今、読んでる漫画にあった台詞。
使われてるシーンは嫉妬や修羅場とは関係無いシーンだけど、このスレに恐ろしく合っていると思う。
248名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 23:38:58 ID:346d71/8
生き残るには今〜奴から逃げ出せ〜
呪われたキモ姉か〜ら〜すぐに逃げ出せ〜♪






今LOUDNESS聴いてたらこんなの思い浮かんだ
249名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 00:20:36 ID:A01Mr56w
『愛でしか、救えない』


どっかで聞いた
250名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 00:21:38 ID:1/e7Wa6P
戦うことでしか分かり合えない!
251名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 00:26:53 ID:jAi++5PF
TOのキモ姉は気が付いたら弟離れしてて、自称幼馴染みの泥棒猫に
油揚げをさらわれて行っても平然としていた記憶があるのだが一体
いつ解脱したんだろう?
252名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 00:51:57 ID:oITnIwx3
秋くんは少し疲れてたんだよ
そう少し疲れてただけ
だからあんなことを言ってしまったんだ
253名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 01:39:11 ID:OuLJ8Ify
疲れてるで済まされるんならキモ姉なんて存在しないよ
254名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 02:04:31 ID:1U8Y5B+2
なにげない一言で修羅の部分をを見せてくれるのがいいんだ。
255名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 02:25:25 ID:Y8gQoThy
俺は長台詞の問いかけが好きだなあ。
妹愛とか沃野はイッちゃってる感じが出ててとてもよかった
256名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 05:29:45 ID:iGPqOOWF
山本君キター!

そのとき、山本君にあの日暗殺されたデニムの意思が宿ったのですね。
…そういえばあのシリーズってこの世界の失われた神話って設定だったなw
257名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 05:37:33 ID:2zMZgh0K
ぴろりろりん♪
死亡フラグが立ちました。
258名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 08:17:40 ID:cBzHHmkw
>>251
いざとなれば、いつでも奪いかえせると思ってるんじゃないか?
ヴァレリアが安定したら、大陸に行こうが結婚していようが奪還に向かうと思うナー。
259名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 10:47:25 ID:2bSvhHa6
亜由姉も、カチュ姉も、全然キモ姉じゃないじゃん。
普通にスタンダードじゃん。と、言ってみる
260名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 12:23:35 ID:j/lmZp+l
>>259
このスレじゃスタンダード
ただ普通の感性の人も見るかもしれないから、一般的に属する「キモ姉」という言葉で修羅場の深さを表してるだけ




















あと、キモ姉キモ姉言ってると興奮するから
261名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 12:43:56 ID:jfh+v+51
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 キモ姉!キモ姉!
 ⊂彡
262名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 12:46:42 ID:oB/Tcdhx
一家に一台、キモ姉を
263名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 13:06:12 ID:kk97PLfM
スレの進行スピードちょっと減速したな
それでも他のところに比べれば早いが
264名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 13:12:18 ID:cByhBQ4R
作者様にも休日は必要かと
まぁこういう時はのんびり過去の名作に浸る
良い機会かと・・・藍子タン(*´д`*)ハァハァ
265名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 13:40:26 ID:3+UAHGMu
ほら、犬らしく鳴いてみなさい
266名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 13:49:27 ID:qfOd/15q
バウワウ
267名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 14:04:41 ID:j/lmZp+l
最近、来てくれないなぁ…モカたん(´・ω・`)
268名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 14:19:25 ID:oA4c66UA
モカたん色々と忙しいんだよ(´・ω・`)
269名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 14:23:46 ID:cByhBQ4R
おかしい、元々は「義姉」がメインだったはずなのに・・・
だが、私はあえて言おう
智子こそメインであると!










めっきり出てこないけどなorz
270名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 14:46:37 ID:PYn5VWS0
智子メインはすでに本編でやってるから羨ましい


モカたん・・・・・・
271名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 15:15:40 ID:iryF7umE
あぁ愛しいモカたん、今何処……
272名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 15:22:18 ID:YAe/TyhE
      /           \
     〃             \
    //     /          ヽ
    l|    i  |  /  |i  .| ト、   l
    ||    |i |! | |:i ト|  | | i|:. l
    ||..  〃|i |レ≧、V|ヽ.トノィ.| |. |
    ||   ヾ|i ト、" じ≧ fシ| ノ | リ あいつもモカ!
    ||     /|i ミ'ゝ "   ゝイ|.∧ |   こいつもモカ!
    ||   /| |i ト、  z=ィ /ノ/  |i ト、   そういうの聞いていると
    l|  / | l  !  > ,/ /\ .|i ヽ、\   モカモカしてくるんだよ!!
    ノ /  ヽヽ\ハノ、、  |  \ } })
  / /   \    {しゝ>>/ニ ヽ、  /
  〃{      \__∧/ >'´⌒  \
  |               `'<´rー、  ))
                   \>==>
273名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 15:33:46 ID:A01Mr56w
>>26
ハルヒスレは例外として、

そのほかの中ならこのスレの進行速度は1位だぞ
274273:2006/06/04(日) 15:34:29 ID:A01Mr56w
安価間違えた…>>263だった
275名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 15:41:38 ID:dlzSH3GS
正直ハルヒスレも中々修羅場分が補給できるから大好きだ。
276名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 16:26:24 ID:1U8Y5B+2
おれはハルヒの801スレが好きだ。
277名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 16:27:13 ID:j/lmZp+l
修羅場は一手打てばハーレム、一歩間違えればデッドエンドだからな
278 ◆tVzTTTyvm. :2006/06/04(日) 16:29:51 ID:sshzwtDk
振り向けばそこに……
もう一つのエンディング 真エンド投下します
279振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/06/04(日) 16:31:08 ID:sshzwtDk


   ・    ・    ・    ・   


「傷跡、残っちゃったね」
「うん、でも良いんだ」
 わたしは首の傷を撫でながら季歩おねえちゃんの問いに答えた。
 あの時わたしは本気で死ぬつもりで首に刃を当てた。 でも死に切れなかった。 あとで聴いた話だと、もうほんの少しでも傷が深かったら、或いはもう少し多く血が流れてたら……。 一命を取り留めたのは奇跡に近かったらしい。
 あの時お姉ちゃんは何度も何度もわたしに『ゴメンね……ゴメンね…』って泣きながら謝まってた。 一命を取り留めたこの状態でもあんなに泣かせちゃったのに、若し死んじゃってたらもっと辛い想いさせちゃってたんだろうね。
 そう言う意味では死なずに済んで、死ななくて良かった。
「まぁ、でも傷こそ残っちゃったけど助かってよかったわよ。 私も報せを聞いたときは心臓止まるかと思ったわよ」
「季歩おねえちゃんにも心配掛けちゃってごめんね」
 わたしがそう言うと季歩おねえちゃんは「イイのよ」と笑ってくれた。

 今、私達は海に――去年旅行で来た海に再び来てた。 わたしは季歩おねえちゃんと二人ビーチパラソルの下くつろいでた。 頬を撫でる潮風が気持良い。
「でもビックリしたのはわたしもだよ。 季歩おねえちゃん血相変えて飛び込んできて祥おにいちゃんの顔見るなり殴っちゃったんだモノ」
 わたしはその時の様子を思い出しながら口を開く。 そして季歩おねえちゃんはアハハ、と頬を掻きながらバツの悪そうに笑う。
「いやぁ〜私も頭に血が上っちゃってたしね。 かといってあの状況で羽津季殴っちゃうわけにいかなかったからね。 でも、本当一命を取り留めてくれてよかったわよ。 もう二度とあんな事しちゃ駄目よ」
「大丈夫よ。 色々あったけど今ではもう……」

 あの後、退院後もお姉ちゃんは大泣きして、そしてわたしの事を全力で応援するって言ってくれた。 大騒ぎになっちゃったけど、でもお陰で皆胸のうちを全て残らず吐き出せた。 終わってみればやっぱりコレで良かったのかも。
280振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/06/04(日) 16:32:07 ID:sshzwtDk

「まだ、羽津季のこと気にしてる? 幼馴染クンとの…」
 わたしが回想に耽り黙っていると季歩おねえちゃんは指をパキポキと鳴らせる。
「やっぱもう2,3発幼馴染クンに……」
「あ、あぁもうやめてってば。 もう其の事は片がついてるんだから……」
 私が慌ててそう言うと季歩おねえちゃんは笑って口を開く。
「分かってるって、冗談よ。 それに……」
 そして言葉を切って、私の左手を掴み其の薬指の指輪を指先でそっとなぞる。
「こんな良いものまで貰っちゃったもんね」
 言われて私の頬は思わず朱くなる。

 そう、祥おにいちゃんがプレゼントしてくれた婚約指輪。
 学生の身で買えるような代物じゃ無いんだけど、そこはお姉ちゃんが出世払いと言って祥おにいちゃんに半ば強引に貸し付けてまで買わせて……。
 何のかんの言ってもやっぱお姉ちゃんは今回のこと気にしてるのか必要以上に世話を焼いて応援してくれて……。
 私は気にしないでって言ったんだけど、でも、それでお姉ちゃんの気が済むのなら。
 それに……わたしに指輪をはめてくれた時の祥おにいちゃん……。 緊張してぎこちない動きで指輪をそっと私の薬指にはめてくれた時の表情……。 とっても気恥ずかしそうで、でも嬉しそうで……。
 わたしも指輪が指にはまるのを見た瞬間胸いっぱいに幸せな気持が広がって、思わず泣いちゃったっけ。
 今でも指輪を見る度に幸せな気持で満たされる。
「良かったわね……結季。 とってもイイ顔してるわよ今のアンタ」
 季歩おねえちゃんの声にわたしは笑顔で応える。
「でもアンタ達やっぱ姉妹ね。 本当ソックリよ」
「そう? 学校の皆とかは姉妹の割りに似てないって言われるよ」
「そりゃ、アンタ達の事を知らない人達から見た場合でしょ」
 そう言って季歩おねえちゃんはわたしの頭をくしゃくしゃっと撫でる。 そして続ける。
「お互い姉妹のこと気遣ってばっかりで。 本当似たもの姉妹よ」
 そう、去年はわたしがお姉ちゃんと祥おにいちゃんとの仲をとりもとうとしてココに来た。 そして今年は……。
「去年はアンタ、今年は羽津季から同じ様な事お願いされるとはね」
 そう言って季歩おねえちゃんは微笑む。 つられてわたしも笑顔になる。
 でも去年と違うのは他にももう一つ。

「で、その肝心のあのコは、羽津季はどうなの? 上手くいってるの? 今日会えたら聞きたかったんだけどな」
 そう、お姉ちゃんは今回企画してくれたけどココには一緒に来なくって。
「うん、今度のヒトとはきっと上手く行くんじゃないかな。 何て言うかね、どことなく似てるのよ祥おにいちゃんと」
 少し前に紹介してもらったそのヒトはその容貌そうだけど、雰囲気もどことなく祥おにいちゃんに似てた。 祥おにいちゃんに兄弟が居たらきっとこんな感じかな? そう思わせる、そんな雰囲気をもった人だった。
「だからね、きっと上手くいくと思うんだ」
 わたしがそう言うと季歩おねえちゃんは笑顔で口を開く。
「そっか。 妹のアンタがそう言うなら安心ね」
 
281振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/06/04(日) 16:33:34 ID:sshzwtDk
 

   ・    ・    ・    ・   


「お待たせ。 ジュース買ってきたよ」
 俺は買ってきたジュースを結季と季歩さんにそれぞれ渡す。
「ありがとう。 祥おにいちゃん」
「お疲れさん。 悪いわね、パシリみたいな真似やらせちゃって」
「いえ、気にしなくて良いですよ」
 そう言ったが正直俺はこのヒトが――季歩さんはチョット苦手かも。 病室で出会った時思いっきりぶん殴られやったからなぁ。 まぁ、でもあの時は殴ってもらえてあれはあれで良かったのかも。
 あの時の俺は自己嫌悪の気持がそのまま心の中で燻り続けスッキリしない気持悪い状態だったしな。 ぶん殴ってもらえたお陰である意味スッキリ出来たし。

「でも祥おにいちゃん暑い中買ってくるの大変だったでしょ?」
「大した事無ぇよ」
 俺は笑って応えて見せた。 まァ実際には結構大変だったんだけど。
 なにせこの浜辺、去年も来たんだが綺麗だし穴場で人が少ないのは良いんだけど、其の分近くに海の家どころか自販機まで無いからな。 この炎天下結構歩いて離れた自販機までは正直少々きつかった。
 まぁでも、美味そうにジュースを飲む結季の姿を見てると、そんな暑い中買ってきた苦労も報われると言うもの。
 そんな事考えながら俺は飲み干し空になったジュースの缶を弄りながら結季を見ていると、結季は俺のほうを振り向き口を開く。
「祥おにいちゃん未だ喉渇いてるの? 何ならわたしの分も飲む?」
「え? いや、別にそう言うわけじゃ……。 でも、ま折角だから一口……」
 そう言って俺は結季から飲みかけのジュースを受け取ろうとしたら……
「あ〜間接キッスだぁ〜」
 悪戯っぽく口を開いたのは季歩さん。 其の言葉に思わず硬直する結季。 見れば耳まで赤くなっている。
「季、季歩おねえちゃんん!」
 う〜ん、中学生の男子みたいなチャチャを入れる季歩さんも季歩さんだが、結季も結季だ。 間接どころか普通のダイレクトなキスまで済ませてるのに赤くなるなんて相変らずウブだよなぁ。 まぁ、そんなところも可愛くて好きなんだが。
「アハハハ。 相変らずウブなんだから結季は。 じゃ、私は一泳ぎしてくるわね。 二人の熱気に当てられて只でさえ暑いのに余計に暑くなりそうだしね」
 季歩さんは悪戯っぽく笑ってそう言うと海に向かって走っていってしまった。

「んも〜。 季歩おねえちゃんった……」
 そう言って尚も顔を赤らめたまま結季は呟く。
「ま、イイじゃねェか」
 俺はそんな結季を横目で見ながら呟きゴロンとビーチシートの上寝転がる。
「それもそうだね」
 そう言って結季は苦笑を洩らす。
282振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/06/04(日) 16:34:48 ID:sshzwtDk

 天気は快晴。 相変らず浜辺には焼け付くような日差しが降り注いでいるが、其の分逆にパラソルの日陰が心地良い涼をもたらしてくれる。 目の前には綺麗な海と砂浜。 耳に届くは心地良い波音。
 そして隣には俺の最愛の女が――結季がいる。
 今のこの状況、幸せすぎて涙が出てきそうなぐらいだ。
 その時風が吹いた。 一陣の風が結季の髪を揺らす。 その時髪の隙間から覗いた白い首にくっきりと浮かんだ大きな傷が目に飛び込んできた。 髪で大分隠れてはいるが結構生々しい大きな傷跡。
 ずきりと胸が痛む。 未だ残る傷を見るとやはり胸が痛い。
 俺が不甲斐無かったばっかりに女の子の、それも最愛の女性の首にこんな大きな傷跡を残してしまった……。

「祥おにいちゃんどうしたの?」
 気が付けば結季が心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「いや、何でもないよ」
 そう言いながら思わず視線が泳いでしまった。 あんまり傷を見つめちゃ悪いかもと思って。 だけど其の視線が傷に注がれてたのは気付かれてしまったのか、結季はそっと首に手を当てる。
「やっぱ気になる? この傷……。 やっぱ気味悪いよね。 こんな大きな傷のある女……」
 俺は思わず体を起こし声を上げる。
「そんな事無ぇよ! そんな傷ぐらいでお前の魅力は些かのかげりも見せたりなんかするものか! ……って言うか俺のせいで付いちまったような傷だし……。 ゴメン」
「あ、謝らないで。 別に謝って欲しかったからとか責めるつもりは無いんだから。 ねぇ、やっぱ気になる?」
「気にならないって言ったら嘘になるけど……。 でも俺がお前を好きな気持には何の関係も無いから……」
 俺がそう言うと結季はにっこりと微笑んだ。
「そう。 なら良かった。 祥おにいちゃんが気にしないならわたしも平気だから」
「そうか」
 其の笑顔に俺は安堵の息を洩らし、そして笑ってみせた。
 そして再びビーチシートに仰向けに寝転がる。

「ねぇ、祥おにいちゃん」
「なんだ?」
「今、幸せ?」
 当たり前だろ、と言おうと思ったが俺は一旦口をつぐんだ。
「…………だろ」
 そしてわざと聞こえるか聞こえないか小さな声で喋った。
「え?」
 結季はよく聞き取れないと言った表情を見せる。 そして覗き込むように其の顔を近づけてくると俺はすかさず体を起こし其の可愛らしい唇に自分の唇を重ねる。
 唇を離すと結季の表情は驚いた顔に、次いでちょっと怒った風に、やがて頬を染めはにかんだ笑顔へと変わる。
 其の笑顔に向かって俺も笑顔で応える。

「幸せに決まってるだろ。 この地球上の誰よりも、な」



 結季Rote Fin


283『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/04(日) 17:51:54 ID:O0t2SObE
「おおおおぁぁぁぁばやたわまらがわ(←言葉にならない叫び)」
なんなんだ、このダルさ。昼寝したら更に増してしまったではないか。こんな日は学校に来るべきじゃねぇ。かえんべ。
……春華が来るとかいってたけど……まぁいいや。考える気力も沸かん。トボトボと教室の前を通って帰る。
帰路がやたらと長く感じる。日差しも暑くなってきた。いかん、完全に逝っちゃってるな。俺の体。まぢ、死にそう。
……志穂への想いが薄れてるだって?勘弁。それはない……はずだ。それとも、修学旅行で離れてるからか?
「人肌恋しいとはこのこと、がはっ!!」
背中に強打。ライナー級のボールが直撃したぐらい痛い。ましてやこんな弱ったとこに食らったとなれば大打撃だ。
ふらつき、倒れる。助けを呼ぼうにも、周りには誰もいない。……まぢ、ピンチ。
「くっ、この笹原晋也。腐っても武士の端くれ!これ以上背中に傷を負ってたまるか!」
必死に振り向く。俺を襲撃した人物、それは……
「ふふふ……だめじゃないですか、晋也さん。一人で帰ったら。私が看病してあげるって、いいましたよね?」
バットを手にした春華だった。
284『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/04(日) 17:54:09 ID:O0t2SObE
「ぐぁっ、つつ……看病する人間を殴り付けてどうすんだよ………」
「嘘だ……晋也さん、私に看病してもらいたくないんでしょう?一人で帰って鍵締めて、居留守使うつもりだったんでしょ!?私を追い払うつもりだったんでしょ!?」
いや、この状態の春華には看病してほしくないわけで。なにもそこまでするつもりはないんだけど。
「だめ、絶対だめ……私が看病するの……精一杯……ずっと看護してあげるの……」
再度バットが振り上げられる。その一撃の痛みを感じた瞬間、意識は闇に消えた………












デジャブとは違うかもしれないが、似た光景だ。違うのは、壁が真っ暗な事、体が縛られていない事。………とはいえ、そうとう弱っているのか、自力で立つのも困難のようだ。まだ頭がクラクラする。
「酷……だなぁ。」
このまま体力回復をはかるのは無理となるとやばい。『想いが薄れてる』せいだ。
「我慢ですよ、晋也。」
自分に言い聞かす。もうすぐ志穂が帰ってくる。そうすりゃ嫌でも助かるだろう。………助かる?………志穂に助けてもらう資格なんてあるのか?
285『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/04(日) 17:54:54 ID:O0t2SObE
「だぁぁぁ!やめやめ、今はんなこと考える状況じゃねぇよ!」
と、静かに部屋のドアが開き、微かに光がはいる。だが、それだけでは自分が何処にいるのか理解するのには難しい。
「晋也さん……具合はいかかですか?」
春華だった。普段着に着替え、何食わぬ顔で聞いてきた。
「んー……最悪、だな。」
「あは、それはいけませんねぇ。やっぱりしっかり看護しないと………」
そう言うと、ゆっくりと近付き、服を脱がされる。
「って待て!お前までなぜ服を脱ぐ!?」
「ふふふ…体を温めるには、裸で抱き合った方が効率いいんですよ?それ以上の事をすれば……もっと、暖まりますよ?」
夏に何を言う。こちとら汗だくだくなんだよ。冷や汗も混ざってるが。
「ほら、抵抗しないで。私がいっぱい愛して、奉仕してあげますから……気持ちいいですよ?」
そのワードにはそそられるものがある。しかしっ。
「だが断る!!そう言う事は志穂にだけしてもらうと決めてあるんでね。貞操は守らんといけんのですよ。」
決まった……言ってやったぜ。それを聞いた春華は………ん?なんか体が小刻みに震えて……
286『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/04(日) 17:55:53 ID:O0t2SObE

「志穂、志穂、志穂って、そればっかり!なにがいいんですか、あの女の!?胸も小さい、態度はでかい、すぐに暴力振るう!
女の私から見ても最悪じゃないですか!?好きになる要素なんて一つも無い。私なら…私なら、晋也さんを大事に出来ますよ。優しくしてあげられます!!!」

「……違う、違う、違うんだよ!!それは万人が求める理想の性格かもしれん。でもな、俺は変わり者だからああいうやつが良いんだよ。
言うだろ?蓼食う虫も好き好きって。それにな、あいつとは前世からの付き合いな訳よ。」
「……わからない……全然わかんない!……ふふふ、だったら……汚してやる……あの女を、晋也さんがもうにどと見たくなくなるぐらい、汚してやる!!」
そう叫ぶと、一人部屋を出て行く。……汚す…汚す……って、それはまずい!!なんとか止めないと!
「動けよぉ!志穂のために動きたいっつってんだよぉ!!!」
無情かな。体は治らなかった。
287名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 19:38:56 ID:j/lmZp+l
あれ?どっかで見たな、この展開(;゚д゚)
そんな俺春華派超GJ
288義姉 第17回 ◆AuUbGwIC0s :2006/06/04(日) 19:51:27 ID:wBRWsy+c
        *        *        *
『士郎』

 土手を歩きながら左手を西日にかざしてみる。まだ微かに残る彼女の温もりと感触。
 ――オレまだあいつの事好きなんだ。
 よくない、モカさんがいてくれているのにそんな事考えるのは。
 そもそも、あいつの事なんで好きになったんだろう。一番仲のいい女友達だったから? 気が合う相手だったから? 好みのタイプだったから? いくつか自分に問いかけてみるがハッキリとしない。でも胸の奥底で叫んでいる声はシンプルだ。「好き」の一言。
「よくない」今度は口に出していった。
 感情を理性で否定するように心の中で何度も反芻する。
「でも、友達でいてもいいんだよな」右手の暗くなっている空に向かって呟いていた。
 最近ずっとあいつとはギクシャクしてたけど元の関係に戻れそうな気がする――あくまで友達としての関係に。

 もう一つのギクシャクした関係、姉ちゃんとの関係。こっちはもうどうしたらいいのかわからない。どこで何がどう間違えたのかすらハッキリしない。
 ――でも、もう一回ちゃんと話してみよう。
 そう心の中で呟いた時、昨日の出来事がフラッシュバックし尾てい骨から脳天にかけて寒気が走った。

        *        *        *
『涼子』

「姉ちゃん、晩御飯できたんだけど」
 ドア越しにシロウの声がする。そういえばこいつと最後に一緒に食事したのっていつだろう。
 答える気はないのでベッドに寝転がったまま無視をする。
 シロウはまた勝手にドアを開けた。でも向かない。
「姉ちゃん最近変だよ」
「関係ないでしょ」
 天井を見上げながら答える。こいつに心配されるとなると相当ヤバイな。
「だって姉弟だろ!」
「元々他人でしょ!」
 クソッ苛立っている。苛立っているけどその原因がはっきりしない。
 長い沈黙の後シロウは何か小さく唸りだした。横目で盗み見る――やっぱり泣いていた。そういえば昔からこいつを泣かせてばっかりだ。
「もう私の負けでいいから――私が悪いかったから、こっちに来なさい」
 上半身を起こし大きく溜息を吐いていた。
「胸貸してあげるから気が済むまで泣いてなさい」
 涙を拭いながらベッドに腰掛けたシロウの背中をさすりながら抱きしめる。
「前も言ったけど甘えるならもう少し素直に甘えなさいよ。女の子の涙は宝石に変わる事はあっても男の涙はそうもいかないんだよ」
 中々泣き止まない――世話のかかる弟だ。


 今私のベッドでシロウが眠っている。
「泣き疲れたからって眠るってあんた一体歳いくつよ」
 起こさない程度の小さな声で語りかけながら体を撫でてやる。
 今日はまだお風呂に入っていない。そう思い体を起こし――昔こいつと一緒に寝てて夜トイレに行って帰って来たら一人で「いない」って泣きかけてたっけ――今日ぐらいは別にいいか。
「おやすみ」
 シロウの額の髪をかきあげ、そっと額にキスをした。お母さん――今の母、義母ではなく私を生んでくれたお母さんがいつも寝る前にしてくれていたキス。
289義姉 第17回 ◆AuUbGwIC0s :2006/06/04(日) 19:52:58 ID:wBRWsy+c
        *        *        *
『モカ』

 今朝会った涼子は別段私に言って来る訳でもなく何にもしてこなかった。私も士郎君の事は口に出さなかった。
 士郎君に聞いても私の事は何も言ってこなかったって言ってたから一応黙認ってことでいいのかな?
 とりあえず火薬に火をつけたくないから現状維持ってことで。


 廊下で士郎君の後ろ姿発見。うんでもあれだ。隣にいる彼女――三沢さんとの二人の距離……近すぎる。
 いや、手を繋いでいるとか腕組んでいるとか、手が肩にまわっているとか、手が腰にとかそういうんじゃないけど、ただの友達というには微妙な距離。
単純に物理的な距離っていうより二人の間を流れる何とも微妙な空気、乙女の第六感を全力で刺激するオジサンドキドキの儚げ青春の柑橘系の甘酸っぱい空気が。
ちょって手が触れ合っただけでお互い顔を赤らめて「ごめんなさい」「こっちこそ」「……あのよかったら今度の日曜日に」という話題がしどろもどろに出てきそうな。
 うむ、現カノジョとしてはこういう場合はどうするか――
 見なかった事にしようか、別に特別何かしている訳でもないし、こっちにも気づいてないし。うーん、でもこういうのに慣用で隙を見せすぎると浮気されやすいとか聞くけど、あんまりガツガツ言ったりすると嫌われるとかっても聞くし――
 思考がグルグル回る。モアベター、モアベター――よし、これだ!
 念の為、周囲の涼子確認。よしいない。
 ぐいぐい二人の背後から近づいていく、そして――真ん中を突っ切る! 十センチとない二人の間に手を突っ込む、そのまま強引に体を割り込ませ、彼女に世を向ける形で士郎君の腕に抱きつく。
「士郎君元気?」士郎君の腕を体に擦り付ける様に動かす。
 よし、士郎君へのアピールと彼女への牽制を同時にやれた。
 ……でも背中に物凄くネガティブな感情が固まったオーラがビリビリと感じるので振り向くのは止めにしよう……


 ふんふん軽く鼻歌混じりで、いつも通り士郎君に会いに行こうとして階段下りようとしたらピリリと首筋に刺激。
 後ろを振り返れば直ぐそこ、手を伸ばせば届くには十分過ぎる距離に三沢さんがいた。顔は真下を見るように俯いていて表情はよくわからない。三秒程固まっていたが向こうから話しかけてくる気配はない。無視を決め込み再び振り返り、階段を下りていった。
 別に彼女は何もしてこなかった――背中にネガティブオーラをぶつけてくるだけで。
 一旦踊り場まで来た所で後ろを見たら彼女は階段を下りることなく、先ほどのその場で立っているだけだった――こちらを惜しそうな瞳で階段の上で私を見下ろしている。
 ――ひょっとして、さっき後ろ向かなかったらヤバかった?
 かなり寒くなってきているはずなのに背中に汗が噴出していた。
290名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 19:54:00 ID:wBRWsy+c
<チラシの裏>
ヘイ、モカ一丁
</チラシの裏>
291名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 19:58:40 ID:PYn5VWS0
>>290
GJ!!
スレ違いは承知だけどモカたんと激甘ストーリーが見たい

とにもかくにもやっぱ一週間に一回はモカ分補給しないと
292『ジグザグラバー』第十一幕:2006/06/04(日) 20:06:58 ID:59z8sZPz
「ただいま」
「おかえり」
 言いながら玄関の扉を開け、靴を脱ぐ。
 いつもよりも交渉をして疲れていた僕は、そのまま床に座り込んだ。数歩しかない部屋
への道のりも今は面倒で、考えてみれば家まで辿り着いたのも驚きだった。
「誠、そんな所に…」
 言いかけて、しかし華は黙り込むと少しうつむき、
「すまん限界だ辛抱堪らん」
 一瞬で朝の光景が脳裏に蘇ってきたが、僕も人間だ。疲労でくたびれていた体が、小柄
とはいえ一人分の人間、華の突進に敵う訳もなく簡単に押し倒され
る。相当我慢していたのか、抵抗する暇もなくきつく抱き締められた。
「皺になるから、着替えてからな」
 今までの罪悪感、特にさくらにキスされたことが思い浮かび、僕はごまかすようにキス
をする。本当はキスも控えたかったのだが、一度なくなった壁を直すのは難しいらしい。
あまり抵抗なく唇を重ねたことに、自分でも驚いた。
 軽く重ねるだけのものを数秒続け、離したときには何故か華は泣いていた。
「どうした?」
「他人の、匂いがする」
 そのまま僕の胸に顔を埋め、少しかすれた声で、
「他人の、味がする」
 僕は軽率にキスをしたことを後悔した。さくらが香水の類を使っていなかったので、自
分では気が付きにくかった、なんて言い訳にもならない。僕が今までのようにキスはおろ
か、誰にも近付くことを許さなければ済んだ話だ。責めるべくは、さくらではなく僕自信。
293名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 20:07:00 ID:jfh+v+51
モカキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!

>>287
俺も春華派!この展開はすばらしいw
294『ジグザグラバー』第十一幕:2006/06/04(日) 20:08:23 ID:59z8sZPz
「ごめん」
 言いながらいつもより強く華を抱き締め、髪を撫でる。さらさらと柔らかい感触の長い
髪は、華が体を震わせるのに合わせて、小刻みに揺れていた。
「風呂だ、匂いを流す」
 僕の腕を強引にほどくと華は立ち上がり、浴室に向かっていった。数秒して聞こえてく
るのは、お湯が浴槽を強く叩く音。
「すまん、急に泣いて」
 戻って来ながら聞こえた言葉に答えるため、僕は漸く体を起こした。
「良いんだよ、今回は僕が悪い」
 立ち上がると、華に続いて部屋へと入る。「でも」
「謝るな、僕が悪いんだ」
 それきり華は黙り、無言のまま僕らは着替えを始めた。
 華が身に着けるのはいつもと同じ、僕の着古したワイシャツと下着のみ。高校に入って
からは、家の中ではそれ以外を着なくなった。つまりそれは二人暮らしを始めてからで、
僕の両親が居る実家のときはそれを隠していたということだ。それ程までに二人暮らしを
したがった依存心、僕は華の心の大部分を占めるそれを無神経に傷付けた。そんな事実に
心が痛くなる。依存心というものは心が弱いのではなく繊細だからで、それを分かり大切
にしてくれる、言うなれば信頼出来る人に預けるというものだ。
 それを裏切った事実は、僕には重い。
 それらの心の疲れは体にも影響するらしく、座ることすら面倒になってきた僕はベッド
に寝転んだ。体の向きは、壁の方。現実逃避と言われればそれまでだけども、今の疲れた
僕が見るには、華の姿は痛々し過ぎる。
295『ジグザグラバー』第十一幕:2006/06/04(日) 20:12:18 ID:59z8sZPz
「誠、向きはそのままで良いから答えてくれ」
 背中から伝わってくるのは、幼い体特有の高めの体温と、弱くしがみついてくる力。
「誠はボクのことを嫌いにならないよな? 離れていかないよな?」
 僅かな振動と一緒に伝わってくるのは、学校でも僕に訊いてきた問題。
 僕は体の向きを変えると、正面から華を抱き締めた。
「華を置いて、どこにも行ったりはしない」
 そのまま玄関のときのように髪を撫で続けて十数分。
「そろそろお湯が溜ったね」
「うん」
 僕は少し考え、
「一緒に入ろうか」
「…うん」
 いつもは自分から誘ってくる華が少し間を空けたのは、照れよりも劣等感からだろう。
しかし、それでも僕が立ち上がると裾を掴んで着いてくる。
 この部屋はバストイレは別だが、脱衣所は無いので浴室に入る前に、脱ぐ必要がある。
お互いに薄着、華に至っては二枚しか着ていなかったのですぐに脱衣は終わる。それなの
になかなか浴室に入ろうとせず、普段は目にしない全裸の華が視界の端に止まっていた。
普段から着替えは見ているし、たまに一緒に風呂にも入るのだが、それでも下着を着けて
いたり湯気があったりするのでちゃんと見ることは少ない。
 敢えて見ないようにしていた華の姿が、そこにあった。
「ほら、華。入るよ」
「誠、そんなにボクには魅力は無い?」
「…体が冷えるから早く入ろう?」
 質問を無視する僕に、華は黙ってついてくる。
「誠、ボクが洗う」
 これも、いつものことだ。
 頭から始まり、体の隅々まで前も後ろも関係なく洗ってくれた。ただしいつもと違うの
は、擦る力が強いことと、尋常じゃない回数洗い直していること。僕には分からないし、
多分完全に匂いは消えているんだろうけれど、それでも本人が匂いを完全に消したと納得
するまで華に洗わせ続けた。
296『ジグザグラバー』第十一幕:2006/06/04(日) 20:14:32 ID:59z8sZPz
「はい交代、座って」
 髪を優しく洗い、続いて体。胸の立っている突起や、無毛の股間から流れるぬめり、荒
い息遣いはもう毎度のことで気にならない。僕の股間が全く反応しないのは、その体に性
的なものを感じないからではなく、大事にしたいからだと自分に言い聞かせる。そんなこ
とは、二人とも二十歳になってからで十分だ。誰からも文句を言われない為にも、これは
とても大切なこと。
 今まで何回考えたんだろう。
 問題を先延ばしにしているだけだ、と言われたら違うとは言い切れないかもしれない。
水に言われた通り華との関係を考えてみると、意外に切れやすいものなのかもしれないし、
惰性や同情かもしれない。さくらが言った通りに僕の立ち位置を思ってみれば、僕と華の
居場所は不思議なものだ。それこそ、切れないのが不思議な位。
 華は大切だけれども、結局答えは出ない。
「はい、流すよ」
 頭からシャワーを浴びせ、泡を流す。
「風邪引かないように、早く入るよ」
 やっぱり華は無言でついてくる。
297『ジグザグラバー』第十一幕:2006/06/04(日) 20:16:05 ID:59z8sZPz
 元々は一人用のワンルームマンション。いくら僕が細身で華が小柄だといっても、二人で浴槽に入ると狭いので自然と僕が抱いて入る状態になる。お互いが裸なせいでいつも以上に華の細さが分かり、伝わる弱さが僕の心を痛ませる。
 いつもは皆に牙を向いているから分かり辛いが、本当に華奢で弱い体。
「誠、ボクはそんなに魅力が無いかな」
 尻が僕の股間に当たっているので、立っていないのが分かるんだろう。僕に訊いてくる
声は、二人だけのときにしか出さない、自分の体の劣等感で満ちた弱いものだ。
「そんなことないよ。たまたまこっち方面では少しだけ、平均よりは低いかもしれないけ
ど、十分に魅力的だし」
 華がそんな弱いと分かるからこそ、僕は、
「華を大切に思ってる」
 だから、僕は前に進む覚悟を決めた。
「水とも、きちんと話を付けるから」
 言いながら、再び泣き出したその細い体を抱き締める。この華という娘は本当に、異常
な程に泣きやすい娘なのだ。
 泣き止ませようと思いこっちを向かせようとしたが、しかしある場所で思考を止めた。
キスはしないで、数日前までと同じようにそのお腹を撫でる。
 本当に大事にしたいから。誰にも文句を言われず、それどころか邪魔をしようとすら思
われないようになってから、改めてしたい。
 キスとセックスの内片方はもうしてしまったけど、それでも大切なことは大切にしたい。
「華、愛してる」
 泣き続ける華は、それでもまだ可愛い。
298 ◆JypZpjo0ig :2006/06/04(日) 20:19:58 ID:59z8sZPz
今回はこれで終わりです


これからは少し不定期になるかもしれませんが、
最後まで話は決まっていて、きちんと完結させるつもりなので
お付き合い下されば嬉しいです
299名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 20:22:10 ID:jfh+v+51
割り込んですまなかった(´・ω・`)今では反省している
そしてとてもこの作品に期待もしている
300名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 20:24:21 ID:r4FlKT7h
>>290
モカさん愛してる。
301山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/04(日) 21:10:08 ID:RojNNBtW
「だからさ、いつも言われているんだよー。『お前が羨ましい』『俺も優しい姉ちゃんが欲しい』って」
「そ、そう、かなぁ?」
「姉さんの弁当食べてるとさ、みんな羨ましそうにして。気を抜くとおかずを横取りしようとするんだ」
「えぇっ!? だ、駄目よ秋くんッ! 駄目なんだからぁ!!」
「勿論! 米粒一つすらやるもんか。連中に見せびらかすようにして、全部おいしく食べちゃうんだよ」
「そ、そうなんだぁ」
「うん。他にも『あんな綺麗なお姉ちゃん、俺にも紹介してくれよ』とかさ、言われたり」
「で、でもでもぉ。秋くんって、本当にそういう人を紹介してきたこと、なかったよね?」
「そりゃあそうさ。あんな奴らなんかにゃ、絶対渡せないねぇー」

 脳内BGMはG線上のアリア。実にほんわかしている。
 我ながら、自分の「本気」の力が恐ろしい。情け容赦ない媚びっぷりだ。
 リビングを覆っていた正体不明の暗雲も晴れ渡り、今や何の変哲もない空間へと変位を遂げていた。
 ほのぼのペースで展開するやり取りが、戦いの終結をぷんぷん漂わせている。
 ……というか、姉さんが好き好んでダラダラ引き延ばしているような気さえする。

「そ、それじゃあさぁ、秋くん……」
 頬を赤らめ、長い睫毛の奥に上目遣いを見せる姉さんが、遂に、ついに、そっと振り返る。
 あぁ……天岩戸のご開帳だ!
 久しぶりに見せてくれた姉さんの横顔に、まさしく太陽の女神の再臨を仰いだ気分。
「お姉ちゃんの言うこと、ちゃんと聞く?」
 モードが切り替わった。
 これは『お姉ちゃんおねだりするからね』モードだ。まぁ慰謝料の算定作業みたいなもの。
 僕を赦してくれる姉さんの優しさに、どれだけ感謝の気持ちを示せるか、その交渉に入る。
 「ごめん」で済んだら、行列のできる法律相談所に行列ができない。
 赦して貰うためには、こちらからも誠意を捧げなければならないのが世の中の仕組みなのだ。

 ・耳掃除させる権、十回。
 ・お買い物同行権甲種(※姉さんの洋服選定を含むもの。下着は洋服に入らない)、五回。
 ・お買い物同行権乙種(※腕組みしながらのウィンドウショッピングを強制される)、七回。
 ・夏休み姉弟泊りがけ旅行権(※姉さんの強い要望により泊りがけに変更)、一回。
 ・免許取りたてお姉ちゃんの助手席に座ってもらう権(※命がけ任務)、三回。
 ・現在の携帯とは別に、姉さん専用回線の携帯電話を一つ持ち歩くこと。

 今日はもう、悪い男に傷つけられた姉さんを慰めるための日だからな。
 姉さん側の要求のうち、そもそも実行不可能なものを拒否した以外、全て丸呑みした。大盤振る舞いだ。
 中には今まで頑なに拒んできた要求もあるが……まぁいいか、今回は。あはははは……。
 ……消化するのは、結構大変だろうなぁ……。


……
………

 そして今は、二人で遅い夕食を摂っている。
 姉さんはどこかぽーっとしていて、僕の方ばかりちらちらと覗き見してくる。
 なのでほとんど、いや全く、箸が進んでいない。
 ……まぁそれでもなんだか、やけに嬉しそうな姉さんだから。
 これでいいんだろう、きっと。
 
 僕を散々悩ませてくれた果物ナイフは、あれっきりリビングの床に打ち捨てられたままだ。
 代わりに、今の姉さんの手元にあるのは耳かき。
 食事が済んだら、早速始めるつもりなんだろうな。
 姉さんに耳掃除してもらうのは好きなんだけど、まぁ色々あって、頻繁に頼む気にならないのだが……
 ……それでもやっぱりこっちの方がずっといい。果物ナイフなんかより、よっぽどいい。
302山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/04(日) 21:10:48 ID:RojNNBtW
 あー。うん。
 まぁ、問題としては、その。なんか、「言っちゃった」けど。
 あ、あれはその場の流れだったし。無意識でドラマの真似事してただけだし。
 「姉として」という意味だし。深い理由はなかった、と。そう自分で結論づけている。
 ふ、普通さ、姉弟でそんな言葉をマジで受け取ったら、ギクシャクしたり怒られたりするもんだろ?
 姉さんは別に怒ってないみたいだから、ちゃんと分かってくれていると思う。その辺のノリは。
 
 あと、それから。
 姉さんの身に一体何が起こったのか、その男に何をされたのかも、結局聞けずじまいに終わった。
 でもそれも、そっとしておこうと思う。
 下手な詮索をして、忘れかけている傷跡を抉るような真似はしたくない。
 現に姉さんは、今こうやって幸せそうに微笑んでくれている。
 僕が、この笑顔を取り戻したんだ。僕が、姉さんを支えきったんだ。
 それだけで、僕は充分に満たされている。
 
 そうさ。
 僕らは、たった二人きりの家族なんだ。
 いつだって、支えあって。
 どんなときだって、助け合って。
 そうやって二人で頑張って生きていく。
 
 それが、姉さんとの二人暮らしで学んだことだから。
 姉さんが僕に―――教えてくれたモノ、だから。
 
 
 おっと。食事の後片付けを済ませてしまった姉さんが、リビングで呼んでいるみたい。
 白ふさの凡天をフリフリしながら、膝の上をぽんぽん叩いている。
 って、どうしてわざわざ服を着替えてくるかなぁ。そんなスカートに……。
 
 うぅ、一旦姉さんに膝枕されると、居眠りするまで強制的にホールドされるんだよなぁ。
 姉さん曰く「お姉ちゃんの膝枕で眠くならないのは、弟として不健康」ということらしい。
 でもなぁ。僕はどういうわけか、膝枕で寝ると異常に寝涎を垂らしたり寝汗をかいたりするらしいんだ。
 前の時も、なんか妙な匂いのねっとりした液で、姉さんの太股をべとべとにしてしまって……。
 姉さんは顔を赤らめながらも、「気にしない」と言ってくれた。
 けれど僕はなんだか姉さんを穢してしまったような気がして、しばらくは落ち込んでいたものだ。
 だから耳掃除はあまり気がすすまないのだが……、まぁ今日は仕方ないかな。
 
 
 さて。
 それじゃあ、僕ももう行くとするよ。
 姉さんが……待っているから。
 
 
 
 
 

 あぁ、それにしても。
 姉さんをあんな風に傷つけた奴は、いったい誰だったんだッ!!!    (←←←←←)


―――――――――――――――――――――――――――――――――
<8>ここまで。いろいろごめんなさい。
<9>はもう出来上がっているので、このまま一気に投下しちゃいます。短いです。
303山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/04(日) 21:11:27 ID:RojNNBtW
「山本姉2」最終章、<9>  全3レス分 ↓ここから
―――――――――――――――――――――――――――――――――
<???>

「もう、いいよね……? 亜由美“お姉ちゃん”」

 もう、気は済んだよね。
 もう、充分楽しんだよね。

 ……だからもう、いいよね? 

………
……


 月光のシャワーに抱かれて、仰ぎ見る。
 
 貴女のための、貴女だけのための家。
 ――貴女の忌まわしい愛欲が紡いだ、歪の繭。

 今もきっと、あの明かりの下で。
 鳥篭に閉じ込めたあの人を愛でて。心地よい妄想に酔いしれて。
 ……虚ろな夢を結んでいる。

 でももう、いいよね?
 亜由美“お姉ちゃん”?
 
 
 嗚呼、懐かしい響きだね、“お姉ちゃん”
 “お姉ちゃん”と、“お兄ちゃん”と、“わたし”
 ……三人で、いつまでもきょうだいのはずだったね。
 私は、そう思っていたよ?
 
 うん、“わたし”もあの人に恋をしていたよ。
 けれどもそれは、三人で一緒に育んでいけたはずの想いの欠片。
 あの人が私を選ばなくても。
 貴女を選んでも、他の人を選んでも。
 ……私はそれを祝福できるつもりだった。
 それでも私は、ずっとあの人の「妹」でいられたはずから。
 
 
 貴女が。
 貴女があの人に、選択肢を突きつけなければ。
 「姉」を選ぶか「妹」を選ぶか、両の皿に載せた天秤を、あの人の前に差し出さなければ。
 こんなことにはならなかった。
 
 
 貴女が、「姉」を、選ばせた!
 まだ選ぶ必要なんか、なかったのに!
 あの時の私には、まだ何も出来なかったのに!!
 私の持っていた「妹」は、貴女に殺された!!!
 私の“お兄ちゃん”は、貴女に奪われたッ!!!!
 
 
 貴女は最初から知っていたんだ。
 「姉と二人で暮らす」か、「三人で一緒に暮らす」か――
 ――たったそれだけの選択でも、結論は容赦なく敗れた者を追い詰める。
 まだ小学生だった私には、「選ばれなかった」という結果だけが突き付けられる。
 一緒に暮らせる日々に胸躍らせていた私には、「見捨てられた」という事実だけが残る。
 貴女はそれを知っていて……“お兄ちゃん”に、選ばせた。
304山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/04(日) 21:12:12 ID:RojNNBtW
 でもね、今なら分かるの。貴女がああするより、他になかったこと。
 だって貴女は……私を恐れていたんだもの。
 私が怖くて怖くて、どうしようもなかったんだもの。
 仕方なかったんだよね? 亜由美“お姉ちゃん”には。
 
 うふふふ。ねぇねぇ、そんなことよりも“お姉ちゃん”
 ……今の私は、もうへーき? もうこわくない? もう……私のこわさを忘れちゃった?
 
 いいのかな……? 
 いいのかな、まだ繭の中で夢を見続けていて……?
 今の私は、もう知っているよ? 
 貴女のよわさを。自分のつよさを。
 貴女は狂う程度しか術を知らないほど……………よわいひと。
 
 
 かんたん。とてもかんたん。
 今日だって、私、何もしてない。
 
 ほんの少しだけ。
 あの人の中の小さな小さな迷いの種に、ほんの少しお水をあげただけ。
 なのにあの人ったら、揺れる揺れる。
 うふふふ、おもしろい。
 


 
 貴女が教えてくれたんだよ?
 誰かを愛する処には、奪うか奪われるかしかないことを。
 想いの行き着くその場所は、愛する者を閉じ込めて独占する、束縛の岩の檻だということを。
 
 それが……
 貴女が私に―――教えてくれた、モノ。
 
 
 
 だからね、教えてあげる。
 今度は私が、教えてあげる。
 貴女がどんなに足掻こうとも、孵化した想いが羽を広げて、その繭を飛び立つ日など来ない。
 貴女がどんなに叫ぼうとも、世界は貴女の血の繋がりを忘れない。忘れさせない。
 貴女がどんなに狂おうとも……二人は一緒に、いられない。いさせない。
 それを、教えてあげる。
 
 教えてあげる。 
 奪って、あげる。
 犯して、あげる。

 
 そして最後に
 
 殺して、あげる。
 
 
 あの人はもう、“お兄ちゃん”でも“秋くん”でもない。
 私のためだけの。“秋人さん”だけになる。
 ……だから、殺してあげる。
 貴女の心の中の“秋くん”を、殺してあげる。
 貴女のかわいい「弟」を、殺し尽くして、あげる。
305山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/04(日) 21:13:15 ID:RojNNBtW
 立ち去り際。
 街灯ごしにもう一度見上げる、色鮮やかなカーテン。
 朧げに佇む、貴女の歪んだ想いのカタチ。
 ――あまりに脆い、軋んだ背徳の繭。
 まるで遠い遠いあの日、三人で作った砂場のお城のようだ。
 
 黄昏どき、別れしな。わたし達があのお城をどうしたか、貴女も覚えているはず。




 わたし、



 もう、













 壊しますから。







                                  山本くんとお姉さん2 
                                   〜『教えてくれたモノ』
                                          Fin 



                                  >>NEXT
                                  山本くんとお姉さん3 
                                   〜『とどめえぬカタチ』





                   セ ー ブ し ま す か ?


                     YES        NO
306山本くんとお姉さん2 ◆RiG2nuDSvM :2006/06/04(日) 21:14:19 ID:RojNNBtW
<9>ここまで。
「山本姉2」、ここでひとまず完結です。
スクイズ風にゲージで示すと、今こんな感じかな?
        ____________________
 AZUSA ◎)                      ‖←   (◎ KIMOANE
         ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄        
       

チラシの裏。というのもなんですが、最後ですから釈明を。

まさに「3につづくかよふざけんな」という感じです。
しかしこの「キモ姉サーガ」、構想だけなら偉そうに全5部構成だったりします。無謀にも。
1がプロローグ、「2345」で「起承転結」となる形を意識してます。後付け臭いのバレバレですが。
夢はでっかいほうがいいって、死んだじいちゃんに教わりましたから。はい。でもでかすぎました。

あと、ここで期待されている流血関係は殆どありませんでした。済みませんです。
そもそものコンセプトは、流血に拘らない『シュラバティック家族性活「修羅場サザエさん」』でした。
それに加えて、この2はまだ「起」の位置にあります。
そうそう簡単に発狂したり殺したりすると後に続かないため、この程度が限界でした……。
ヒロイン共が上級職にクラスチェンジし、本格的に鬱ってドロドログチャッ!は、4から(の構想)です。
そんな破天荒なプランで、2だけでも一応話がまとまるようにしたらこうなりました。申し訳ない。

そして事情により、季節が巡って冬支度が始まる頃まで、山本姉3は執筆できそうにありません。
あい済みませんです。
暇をみて、ちょっとおまけシナリオ書いても「話が違う!」と怒らないでください。済みませんです。
でもスレはずっと見てます。名無しで潜伏してます。視姦してます。


コテつき時は出来るだけ感想を控えていましたが、潜伏する前に個人的に神々を応援させてもらいます。
「たぬきなべ」さん、恋焦がれています頑張ってください。
「もし神さまがいるのなら完全版」さん、WC開戦でお時間も少ないでしょうが頑張ってください。
「リボンの剣士」さん、明日香タンをお嫁にください。
「義姉」さん、モカモカモカモカモカ義姉義姉「危険な男」「危険な男」の配分で、頑張ってください。
「優柔previous」さん、「ゆう君!!!!!!!!!!」頑張ってください。
「小恋物語」さん、健気に散った5スレの怨霊も新スレも待ってます。
一つ一つ挙げきれませんが、他の神々も頑張ってください。
スレを盛り上げていかれるのを、楽しみにしてます。

>まとめサイトの阿修羅様。
作文のお作法をかなぐり捨てて、わりと特殊な(自分勝手な)表現形態の多いSSでした。
それでも支えて頂けて感謝しております。ありがとうございました。

それでは、また会いましょう(´・ω・`)ノシ
307名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 21:31:58 ID:FQPmpDt3
>>306
GJです。
いつもあなたの作品にはwktkさせられていました。
何時、修羅張るのかなぁ〜と。
全5章の構想、大変でしょうががんばってください!!
3章も楽しみに待ってます!!
308名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 21:41:55 ID:A01Mr56w
>>306
なんで!?いやだよ!このスレを見てるだけなんて!!
わかった!そういってアイツにのところに行く気なのね!許さない!あなたは私だけのものなのよ!


というのは冗談で……
GJ!!お疲れ様です。頑張って下さい
309名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 21:57:00 ID:KqvDkm4r
毎日の山本君を読む楽しみがなくなるかと思うと、何とも
いえなく寂しいですが、作者様の"I Shall Return."を信じて
冬を待ちます。

おまけシナリオも楽しみにしてます。

第2クールのサブタイもしっかり生かされているし、第3ク
ールに繋がるひきの部分の描写も素晴らしい。
テクニックに嫉妬を感じます。
キモ姉派としては、第3クールのサブタイに不安が募りますが、
同時に修羅場の予感に胸が高鳴っております。

では、しばしの休息を。
310名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 22:12:05 ID:qu98hf+F
>>306
また、帰ってきてSS投下してくださいね・・。
多分、冬頃まではこのスレは残ってそうで恐いが・・

その時までこのスレののれんは守ります
311名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 23:25:07 ID:fv1Gdrrd
あずの活躍をもっと見たかった……
312名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 00:23:12 ID:p9THH6JU
次のキモ姉は冬…ですか…

OK、OK、その時まで俺はノーセーブで待ち続けましょう。

だからまたね。
(゜Д゜)ノシ
313名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 00:28:25 ID:MrKGLe/G
連載中散々屑だのくたばれだの罵倒しられてた祥ちゃん
完結により最終評価ってどうなったのだろうか
314名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 00:32:53 ID:TzDzyGqX
>>310
なにそのこのスレ冬まで持たないかもしれないとも聞こえる発言

まだまだ2年ぐらいは続けますよ
315名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 00:39:51 ID:thUmc7pW
山本ファミリー最高だ
316名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 00:44:37 ID:SPqnNXkx
>>313
祥ちゃんもクズだったが
それよりも妹の駄目っぷりが目立ってしまったような気がする
317名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 00:46:48 ID:tRa01mF5
キモ姉……

ずっと待ってます。



全裸で。
318名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 00:53:54 ID:OI+lStkt
>317
風邪引くぞ?
319名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 01:01:04 ID:hz8qZhvt
>>316
祥ちゃんはとして、確かに妹もなんか駄目っぷりがかなり光ってたな
妹ルートってことは姉ルートもあるんだよね?
期待して待ってますw
320名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 01:02:36 ID:hz8qZhvt
間違えたorz
祥ちゃんはとして
じゃなくて
祥ちゃんは当然として といいたかった
321名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 01:12:35 ID:JRTiF2b3
姉ルートは最初のエンドで既出じゃない?
322名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 01:22:30 ID:FUZswTEp
諸悪の根源が何食わぬ顔で幸せライフ送ってるのが羽津姉派の俺には
キツかった。悪い悪いと思いつつ何の償いもしてないし>祥ちゃん。

最初の墜落エンドが一番スッキリ。
323名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 02:05:20 ID:1zYOAH9m
ここのスレが面白すぎて
ほかのとこじゃ満足できない体になっちまったんだがどうすればいい?
324名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 02:09:29 ID:CqTcL5DH
山本くんとお姉さん、無茶苦茶楽しめました。
こんなに冬が来るのを楽しみに出来るなんて幸せです。
325名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 02:23:07 ID:TzDzyGqX
>>323
いいのよ……それで……あなたはこのスレだけを見ていればいいの
他の汚い雌スレなんてみなくていいの……ずっとこのスレだけを見ていれば……




そう……ずっとね……フフフフ…アハハッハハ!
326名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 02:50:17 ID:5R/9swu9
>>313
祥ちゃんなぁ。

問題の原因の2〜3割は妹の一方的かつ半端な善意。
残りはコイツの自己中な策略といった感じ。

上でも指摘があったが、「傷つけた」ということに対して漠然と
アリバイ的な自己嫌悪はしているようだが、「本命の女を射止め
る踏み台として、最終的に関係を破綻させることを前提に、一度
ふった女に手を差し伸べた。」という最低行為をどうも明確に
認識しとらんようだ。

やはりゆう君とならぶ、「横綱」という評価は動かんだろ。

妹に詰られて号泣してみせて、それから脈あり信号をキャッチした
途端に「え……? そ、それって……?」と立ち直ってみせる。
あれは呆れるのを通り越して、笑えた。
327名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 03:02:54 ID:SPqnNXkx
でもゆう君今本編のクズさをpreviousで取り返してるw
328名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 03:10:32 ID:ub+mrQ6y
結論としては、祥ちゃんが目の前にいたらうっかり俺が刺しちまいそうな気分だということです
329名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 03:15:14 ID:FUZswTEp
ゆう君は確かにクズだがさっぱりとした清々しいクズだった。
最後にはきちんと椿様にオシオキもされたしな。
330名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 03:56:26 ID:thUmc7pW
修羅場SSでの主人公って意外にマシな奴いないよね
あんなにも女の人に好かれてるんだからもう少しいい奴だったらいいnうわなにをすrやm
331名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 07:10:14 ID:a6rL5Znh
>>306
GJ!サッカー日本代表よりも第3部に期待しています
ああ、冬が待ちどおしい……
332名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 10:35:36 ID:6Y/9hADE
椿様の前でゆう君のことを貶したら、おそらく自転車のブレーキに細工されるとか
またゆう君をひどくバカにした場合、線路のホームでry)
どうあれ明日の朝日は拝めないものと思われ
333アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 12:30:59 ID:xNhE/Cn0
投下します
334いつか見た夢  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 12:32:16 ID:xNhE/Cn0
「朝だよ、起きて?幸治くん」
 静かな動作でゆっくりと俺を揺する
「おはよう」
 無気力に答えると少女は穏やかに笑んだ
 この子は幼馴染の響子だ
 小さい頃から一緒だという理由なのかこいつの面倒見はすさまじい 
 洗濯・・・・しかも下着もだ
 なにかと不在がちな両親に変わって飯の面倒も見てくれている
 好意・・・・違うな、ひとつ上の年の俺に憧れの念を抱いている
 いまのこの状況がいつまで続くかわからないが・・・・
 終わらないのかもしれない・・・・前に一度同じ大学の女子とデートに出かけた時だ
 帰ってきた俺を出迎えたのは暗がりに一人座り俺の名を呼ぶ少女だった
 そして翌日・・・・また同じ大学の女子とデートしている時だった
 突然メールが来た・・・・〈コロナが大変なの・・・・助けて!〉
 コロナは昔俺が見つけた野良犬でその後響子の家族が引き取ってくれた
 悲痛な文章に俺は慌てて響子の家に向かうと・・・・
 泡を吹きその場に横たわるコロナとその傍らで泣きじゃくる響子だった
 急いで獣医に見せるとなんとか大丈夫・・・・だと言われた
 散歩中になにか食べてしまいそれが元でこうなってしまったのだろうと
 一安心する俺の横で同じように笑む響子に俺はなぜか恐怖を覚えた
 一週間・・・・また俺は同じ大学の女子と一緒にデートをしていた
 この間の埋め合わせにと・・・・さんざん付き合わされる予定だったが
 またメールが来た・・・・・〈また・・・・・コロナが・・・・・助けて〉
 俺はまた必死で響子の家に向かった
 そこのはまた同じ光景が・・・・
 おかしい、このとき俺はそう思った
 それから同じ大学の女子と出かける度にメールが来た
〈またコロナが・・・・・〉
〈幸治くん・・・・早く戻ってきて!〉
〈幸治くん・・・・・幸治くん・・・・私どうしていいかわからないよ〉
 それから俺はクラスの女子と出かけなくなった
 正確には出来なくなったが正しい
「はやくしないと遅刻だよ?」
 俺ははいつものように解釈すると立ち上がった
 ぶっちゃけた俺は朝には強い方だ
 すぐに起きれるし男だから準備も早い
 ではなぜそうしないのか・・・・・理由はもちろん響子だ
 大学に入ってからというもの響子の独占欲が強くなっていくような気がする
 去年の今頃だったか・・・・帰りが遅い俺をずっと待っていた響子は笑顔で俺を出迎えてくれた
 しかし、俺は見てしまった・・・・彼女が俺のケータイを隠れて見ている所を
 女じゃないとわかったのか一安心という感じで響子は笑んだ
 そして日記のようなものを取り出した
 一瞬見えたその日記の中身に俺は自分の目を疑った
 なかには写真が何枚かあってそれはすべて俺の写真だった
 それもページをめくるたびに違った服装の俺が・・・・
 毎日こんなことを・・・・・?
 俺は幼馴染に恐怖した
 朝勝手に出かけようものならどうなることか・・・・
335いつか見た夢  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 12:48:38 ID:xNhE/Cn0
「幸治さん・・・大事なお話があるのですが・・・・よろしいですか?」
 彼女は以前デートをした菜穂さんだ
 この大学のプリンセスで絶大な人気を誇っている
 難点なのが少し内気なところだ
 俺がうなずくのを確認すると彼女は俺の手を引いて人気のないところまでやって来た
「突然ですいませんけど・・・・・言います!」
 俺と彼女の間を風が吹きぬけた
「好きです・・・・・私と結婚を前提にお付き合いしていただけないでしょうか」
 時間が一気に止まる
 俺も・・・・彼女と同じ気持ちだ
 初めて人を愛した・・・・・
「ご、ごめんなさい・・・・私ったら・・・・・あの、初めてお逢いしたときやさしそう  
 人だなと思って・・・・それから自然とあなたを目で追うようになっていました、それから日に日に想いが募って・・・・・だから!」
 拒絶の言葉がでると思ったのか彼女の言葉は途切れない
「好きです・・・・・いえ、愛しています・・・・私は恋愛経験ゼロがから・・・・大人の駆け引きみたいなことは出来ませんが・・・・私はあなたにすべてを捧げる覚悟で す・・・・操も・・・・心も・・・・」
 言葉でよりも俺は行動で自分の気持ちを伝えることにした
 顔を真っ赤にして言葉を紡ぐ彼女をゆっくりと抱きしめる 
 耳まで赤く染まっている
「ありがとう、俺も同じ気持ちだよ・・・・・それと、ごめんね?キミにここまで言わせてしまって」
 内気な彼女がここまでしてくれるなんて
 それだけこわかっただろうか?
 思うだけで胸が締め付けられた
「本当にいいのですか?・・・・私・・・・子供っぽいし・・・・美人じゃないし」
 彼女は・・・・どうやら自分の魅力に気づいていないらしい
 プリンセス・・・・その言葉が似合う女性は彼女だけだ
 よく言う大学のアイドルやマドンナなどという次元ではない
 彼女の美は完成系・・・・
 俺の今まで出逢った女性は友達とギャーギャー騒いでいるだけのうるさい存在でしかなかってけど・・・・彼女は違う
 まさに大和撫子・・・・夫を立てるタイプだ
「そんなことない・・・・綺麗だよ・・・・菜穂」
 その言葉に安心したのか彼女は俺に身を預けた
336いつか見た夢  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 12:50:16 ID:xNhE/Cn0
「ただいま・・・・・」
 電気が付いているということは・・・・響子はいるのか?
「おかえり・・・・」
 穏やかな笑みが俺を出迎えてくれた
 響子は俺の持っているカバンを受け取るとニコっと笑んだ
 ・・・・彼女は知っているのか?
 同じ大学に通っているのでもう俺と彼女が・・・・・
「ご飯、もうすぐだから・・・・着替えて来て」
 階段を登りながら俺は安心の息をもらした
 どうやら彼女も俺への感情をただの憧れだけなのだと気づき始めたようだ
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ドアが開かれた瞬間俺は息を飲んだ・・・・
 赤・・・・赤・・・・・赤・・・・赤・・・・・赤
 周囲を包みこみかのような赤に血の匂い
 部屋の中心にはずたずたに裂かれた俺と菜穂の写真・・・・
 その横には近所の野良猫の頭だけと前足だけが置いてあった
「・・・・・・ぅ」
 強烈な恐怖とその色に俺はむせてしまった
「どうしたの?」
 響子がなにごともなかったかのようにニコニコしながら俺の背中をさする
「気分が治ったら、ご飯にしましょうね?」
 彼女の笑みに俺は恐怖と逃げられない・・・・という言葉が頭を覆い尽くした
337アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 12:52:11 ID:xNhE/Cn0
やはりドロドロしたのも書こうと思い書いてみました
要望があれば続きも書きます
338名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 12:55:04 ID:qXvsbuHM
GOOD!!Job
続きをwktkさせていただきやす。
339名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 13:03:40 ID:1zYOAH9m
GJ!
菜穂も嫉妬に狂うのかな?
嫉妬&修羅場期待で続きをなにとぞm(_ _)m
340『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/05(月) 13:37:34 ID:+jTKkPfr
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
別に興奮してる訳じゃない。こうでもしないと生きるのを保つのさえつらい。だんだんと命が削られていくのがわかる。
もう志穂が帰ってくる時間だろうか。朝か夜かもわからないこの部屋だが、それぐらいの時間がたったことはわかる。
……まずい、帰って来ちゃいけない。帰って来たらお前は………
「ち、ちくせう………」
〜〜♪〜♪〜♪♪〜〜♪
と、急に携帯が鳴る。ポケットから取り出し、何とか開く。発信元は……
「なんだよ、こんな時に……」
ピッ
「…はい、晋也だ。」
声は普通に出せるのが救いかもしれない。
「ああ、晋也か。今、大丈夫か?」
「…ぎりぎり大丈夫だ。」
「そうか……じゃあ、用件だけ話す。重要だからしっかり聞けよ。」
「ああ。」
「お前に懐いてる夏校アイドルがいるだろ?アイツがな……」








「ま、まじか!やっぱり……」
「やっぱり、という事は心当たりがあるのか。」
「目茶苦茶ある。」
「ふむ、なら助けてやれよ。お前の彼女なんだろ?」
「そ、それがな、極めて困難な状況なんだ。」
341『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/05(月) 13:38:24 ID:+jTKkPfr
「困難?」
「ああ、今身動きが取れないんだ。……というか、自分も何処に居るかわからない。…つまり、閉じ込められてる。」
「拉致監禁だな。………せ、性転換手術は受けたのか!?」
またら興奮した声で聞いてくる。多分、電話の向こうじゃ目がきらきらしてんだろうなぁ。
「はぁ?なんでそうなるんだよ。」
「い、いや、お前の状況が今やってるゲームと似ていたからなんとなく。」
どんなゲームだよ……こいつの将来が心配になってきた。
「まあ、そういうわけで助けに行こうにも不可能な状況にあるんだ。」
「ふーむ……それは残念だ。まぁ、三次元に興味の無い僕にとっては、関係のない話だけどね……」
…やむをえん。この交渉は避けたがったが…
「…ギャルゲー一本……」
「……否、エロゲー、だ。しかも店で購入。ネットなど軟弱なことはするな。」
「くっ!まあいい!背に腹は変えられない。」
「ちなみに抜きゲーな。シナリオ重視じゃなくって。」
こ、こいつ。調子に乗ってたくさん注文しやがって。
結局こいつの有益なまま交渉は終了した。
342『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/05(月) 13:39:26 ID:+jTKkPfr
同日、夜。
晋也に呼ばれて学校にやってきた。メールで来たが、同時にアドレス変更もかねてだった。なんか女みたいなアドレスでちょっとわらえた。
八時に来るように言われたが、待ち切れずに三十分も早く来てしまった。もう晋也も来てるかしら。
修学旅行はそれなりに楽しかったが、やっぱり晋也がいないと世界が色を失ったように面白くなくなる。修学旅行最後の夜は泣きそうになった。
声だけじゃ足らない。顔を、温もりを、匂いを……晋也のその全てが、私に必要だ。
待ち合わせ場所の体育用具室の前まで来る。こんな所に呼ぶなんて……きっと邪な考えでもあるにちがいない。でも、今なら晋也のすることに全てイエスと答えられるに違いない。…それだけ欲求不満だ。
「晋也?いるの?」
中に入り、呼び掛けると……
ガンッ
乱暴にドアが閉められる。
「ちょっ、ちょっとなんなのよ?」
開けようとしてもびくともしない。外から何かでおさえてあるみたいだ。
「はは……本当にきたよ。」
「こいつか?晋也の女って。」
「うっわぁ、俺、モロ好み。」
「ぼ、僕。実はロリコンだったんだ。」
突然、用具の影から半裸状態の男達が出て来る。見たこともない男達だ。
みんな好き勝手をいいながら、よって来る。その目はギラギラしており、興奮を押さえられないほど息が荒かった。
「い、いや………」
何をされるか、一目でわかった………
「イヤァァァァァ!!!!!」
叫んでも、誰にも聞こえない。








343名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 13:40:03 ID:Q+3OKesF
コロナ・・・・
344名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 13:43:58 ID:bDc5Q3NX
俺たちにできない事を平然とやってのける。 そこにシビれる! あこがれるゥ!
345名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 14:52:55 ID:XI81OOG9
>>322
>何の償いもしてないし>祥ちゃん
姉ENDでは一応償っているようにも見えなくもないが

>>337
響子たん 黒いよ イカすよ ハァハァ
346アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 16:14:22 ID:xNhE/Cn0
投下いたします
347『いつか見た夢』二話 菜穂  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 16:18:48 ID:xNhE/Cn0
 いつもは身体が重いだけの朝も今日はすがすがしく感じる
 幸せ・・・・初恋は実らないと誰かが言った
 あのときの私はなにも答えられなかったけど・・・・
 今なら言える・・・・そんなことない!
 私は手に入れた・・・・彼の心を
 軽い気持ちで大学まで向かう途中ケータイが鳴った
 メール?・・・・・
〈幸治くんに手をだす女はみんな私の敵
 これ以上幸治くんに近づいたら・・・・殺してやるから〉
 私は恐怖よりも呆れを感じた
 彼は大学内でも女子の人気トップ5には確実に名があがるであろう有名人
 空気を読むのがうまいのかな?
 最初は彼のそんなところに憧れたのかも
 私はその正反対だから
 憧れはすぐに好意に変わった
 なぜかって?ないものを持っているからお互いに補い合えばいい
 そう思えたの彼は私にないものを持っている
 でも私も彼が持っていない物を持っているはず
 私は分けてあげたい・・・・彼に私のなにかを
 だからこのような嫌がらせなど安易に想像できた
 ようやく大学内に着いた
 彼は・・・・居た・・・・でも、私の指定席の彼の隣に知らない女性が居た
 何かを話している・・・・なんだろう?この気持ち・・・・
 怖い?彼が私から離れるのが?
 答えは否・・・・もっと違う気持ちだと思う
「どう?付き合ってみない?」
「・・・・・・」
 なんの話をしてるのかな?
 当の幸治さんは上の空・・・・
「聞いてるの?」
「あ、ごめん・・・・」
 女の人の声に幸治さんはようやく意識を戻したみたい
「もしかして、好きな人とかいるの?」
 いかにも遊び人という風貌の彼女は幸治さんに胸元を強調するかのように近づいた
「キミは魅力的だけど・・・・・ごめんね」
 幸治さんは申し訳なさそうに断った
 当然よね・・・・あなたには私・・・・私にはあなた
 昨日そう誓ったものね・・・・
「そっか、ごめんね・・・・邪魔して」
「そんなことないよ」
 彼女に気を使う必要なんてないと思いますよ?幸治さん・・・・
 どうしたんだろう?私・・・・さっきから
 人を愛するって・・・・難しいのかもしれませんね
 わからないことだらけ・・・・
 けど、幸せが先立つ・・・・
「おはようございます・・・・幸治さん」
 彼女が退いてすぐに私はいつもの指定席の幸治さんの隣に腰掛ける
「お、おはよう・・・・」
 少しぎこちないかな?
 気にする必要なんてないですね
 少し不安そうな目が私に向けられる
「どうかなされましたか?」
「ん・・・・なんでもないよ」
 すぐにいつものような笑みを私に向けてくれた
348『いつか見た夢』二話 菜穂  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 16:20:18 ID:xNhE/Cn0
「じゃあ・・・・また明日ね」
 つながれた手が次第に離れていく
 少し切なかった・・・・
「また明日会えるから」
 私の気持ちを察してか幸治さんはやさしくそう言ってくれた 
 あなたは本当に人の気持ちを読むのが得意ですね
「はい・・・・明日逢えるのを一日千秋の思いで待っています」
「おおげさですよ・・・・お嬢さん」
 くすくすと笑みあって手を振ってその場を後にする
 家について私はまずポストの中身を確認した
 新聞と・・・・あれ?
 はがきを手にしたとき私は違和感を感じた
 濡れている・・・・雨なんて降ったかな?
 はがきを取り出すと私の視界に紅が広がった
 なに・・・・これ
 新聞のほうを見てみると新聞自体が黒くて気づかなかったけど・・・・真っ赤に染まっている
 恐怖を感じた私は急いで鍵を取り出して家の中に入る・・・・
「・・・・・・」
 無言の間・・・・私はなにも考えられなくなった
    ぽつぽつ・・・・・ぽつぽつ
 天井まに染み付いたその血が小さな粒を作って床に落ちる
 床には天井から落ちた血の雫が作った粒があたりをまるで絵の具で塗りつぶしたように赤に染めていた
「シャオ?」
 いつもなら帰って来てすぐに擦り寄ってくる飼い猫のシャオの姿がない・・・・
 私は震える脚を引きずるようにして自分の部屋に向かった
 なにも・・・・ない・・・・・シャオは?
 振り向いた瞬間私は一瞬で我を忘れた
「お父様・・・・?」
 ドアのすぐ横に血まみれのお父様が胸にナイフを刺されて横たわっていた
 壁にはこう書いてある・・・・・

『死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
 壊してやる!壊してやる!壊してやる!壊してやる!
 殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!』

 私はもうなにも考えられなくなってその場にしゃがみ込んだ
 しばらくしてシャオが私のベットの下から恐る恐るといった感じの足取りで出てきた
「にゃ〜ん」
 擦り寄ってくるシャオを撫でて私はようやく我を取り戻した
「お母様?」
 お母様は?冷静さを取り戻し私はそう呼びかけるが当然ながら答えはない
 
349『いつか見た夢』二話 菜穂  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 16:22:55 ID:xNhE/Cn0
 お風呂場にはいない・・・・・台所にも・・・・・庭にも・・・・
 振り返り戻ろうとしたときだった
 ケータイが鳴った・・・・
「は、はい・・・・」
 震える手で私が電話に出ると
〈菜穂ちゃん?帰ったの?今日は早いのね・・・・〉
 お母様だ・・・・よかった、買い物にでも出てて助かったのね
 安堵の息が自然に漏れた
「お母様・・・・大変なの・・・・お父様が!」
 事を伝えようとしたときだった母さんの声色が変わった
〈どうしたの?・・・・・・え!?〉
 ガタンと何かが倒れる音がした
 ガラスの割れる音・・・・
 私は窓の向こうの暗闇の中で電気に照らされて唯一見える部屋に目をやった
 雨がぽつぽつと降り出してきた
 聞いたことがある・・・・この音
 私は倒れた食器棚に目をやった・・・・・食器が割れて散乱して赤に染まっている
〈だ、誰なの!〉
 あ、はははは・・・・・・小さな笑い声がした
 すぐになにかを投げつたような音と共にお母様が叫んだ
〈きゃ、きゃーーーー!!!!〉
 な、なに・・・・・・
 食器の散乱する場所に不自然に人が通ったような後がある
 ところどころにあたりを飾っていた物が壊れて落ちている
 それは投げたことが予想できるほどにバラバラに落ちていた
〈がふ!・・・・・ぐふ!・・・・・あ・・・・・ぐ〉
 聞いたことのない音と共に母の悲痛の叫びが聞こえだんだんと弱くなっていく
 あ、はははは・・・・・さっきよりも大きな笑い声がした
 次第に母の声が消えていく
 がちゃん・・・・電話の落ちる音が聞こえた
 電話の置いてあったところに目線を移すと・・・・
 電話が台から落ちてピーという音を立てている
 その下にはおびただしい血が・・・・・
 ご・・・・ご・・・・ご・・・・・なにかを引きずる音がした
 階段を降りる足音がするとその音はぴたりと止んだ
〈どうした?大声出して・・・・〉
 私の顔から血の気が引いた・・・・父の声だ
350『いつか見た夢』二話 菜穂  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 16:25:20 ID:xNhE/Cn0
〈な・・・・・・がふ!〉
          だっだっだっだ!
 なんの音?・・・・・水の滴る音・・・・がすぐに聞こえてきた
 がたん・・・・膝を折って地面に付いたときのような音がして
 また今度はなにかが倒れる音・・・・
        ご・・・・・ご・・・・・ご・・・・・
 あの音がまた聞こえてきた・・・・
 今度は・・・階段を登っているの・・・・・?
 ぐさ!なにかを裂く音がした
 違う・・・・刺す・・・・音?
 浮かんだのは私の部屋の光景・・・・
 また水のようなものが滴る音がした
 そして今度は階段を降りる音・・・・
      ご・・・・ご・・・・ご・・・・ぎし
 またあの音だ・・・・それと・・・芝生にないかが落ちた音?
      ま・・・・・さか・・・・・
 雷鳴が響いた・・・・電気の光だけだった暗闇をその光が一瞬だけど照らした
「お母・・・・・さま?」
 家の外装の壁を赤く染め母はまるでキリストのように両手を壁に押し付けられて
 その胸にナイフを刺された格好で姿を見せた・・・・
    〈く、ふははは・・・・あ、ははははは!〉
 ケータイの向こうでこの世のものとは思えない声が響いた
    〈壊してやる・・・・あなたのことも・・・・・〉
 冷え切ったその声はいまその瞬間に人を殺したものの声には聞こえなかった
 通話が切れる・・・・・
 私は震える指でケータイのボタンを押す
〈・・・・菜穂?どうしたの?〉
「た・・・・すけ・・・・・て」
 最後の力で私はそう言うと意識を失った
351アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 16:27:20 ID:xNhE/Cn0
要望があるようなので舞い上がって続きを書きました
レスがうれしかったので調子に乗って長くなりすぎてしまいました

少し残虐な話になりすぎてしまった
まさか自分がこんな話を書けるなんて・・・・
自分でも信じられない
嫉妬と修羅場の力はここまで自分を変えたのか・・・・
この話は半サスペンスのような形になると思います
状況説明が私の説明力不足で難しいと思いますが・・・・すいません

半サスペンス・・・・どうだったでしょうか?
サスペンスのように感じていただけたでしょうか?
352名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 16:30:12 ID:vkJEZNwo
過去最高のジェノサイダーの誕生だな
353名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 16:40:35 ID:X6dwvF79
めちゃ血みどろの展開にGJ!
でも自分の読解力不足の為に状況が解り辛くてorz
354名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 16:44:14 ID:8+rlJyMU
ヤンデレスレ向きじゃないかな
355Bloody Mary 2nd container 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2006/06/05(月) 17:24:11 ID:G+yvon1Y
Bloody Mary 2nd container第一話、投下します。
完全な続編のため、2から読む人を度外視して書いちゃっているので訳が解らなくなるかも。
未見の方は先に1から読むことを強くお薦めします。


<前回からの登場人物>

ウィリアム・ケノビラック(ウィル)・・・元アリマテア王国騎士団の『王の盾』。
                      幼馴染を目の前で殺された暗い過去を持つ。
                      現在贖罪探しの旅の真っ最中。でも女を侍らせてる。
                      彼がその気になれば酒池肉林なのにねぇ。

マリィ・トレイクネル(団長)・・・・・・ウィル大好き、元王国騎士団長。一度覚醒した前科有り。
                     ヒロインの中で一番年上なのに一番精神年齢が低いため
                     いつもマリベルに口喧嘩で言い負かされている。
 
マリベル・ノブレス・アリマテア(姫様)・・城を脱走しちゃったアリマテア王国王女。やたらとウィルに甘える。
                        実はその辺は割りと計算尽くだったり。マリィを小馬鹿にするのが趣味。
                        いつかウィルを“おとな”の魅力で骨抜きにしてやろうと考えている。

シャロン・・・・・・・・・・・・・・・マリベルの朴念仁侍女。ウィルとは騎士団入団時から知り合いだった。
                 この人、やけにウィルにちょっかい出すが真意は不明。何考えてんだか。
                 漁夫の利でウィルを我がものにしようとしている…?

ベイリン(師匠)・・・・・・・・・・・・ウィルの剣の師匠でベイリン傭兵旅団のリーダー。
                   娘がいるがいつも邪険にされて心で泣いている。
ちなみに彼の妻は既に死亡している。
356Bloody Mary 2nd container 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2006/06/05(月) 17:24:47 ID:G+yvon1Y
「も〜いやじゃー!!わらわは疲れたっ」
「街までもう少しですから…頑張って歩きましょう」
 とうとうへたりこんでしまった姫様に声を掛けるが一向に立ち上がってくれない。困った。

 アリマテアの遥か南方、オークニーの街を目指して森林地帯を抜けていた。
俺や団長はともかく姫様に徒歩の旅は少々、いやかなり過酷すぎたのかもしれない。

「まいったな…もうすぐ日が暮れちゃうし…」
 このまま歩けば今日中にオークニーに着くのに。いい加減風呂にも入りたい。
「ウィル、置いて行きましょう。
放っておいてもどうせ野犬か何かが処分してくれます」
 頭を悩ます俺の横からとんでもない提案をする団長。
「やかましいぞ、マリィ」
 姫様がへばったまま怒鳴るが全然迫力がない。
「これも運命です。我々は姫様の屍を越えてでも先へ進まなければなりません。
お辛いでしょうがご決断ください」
 シャロンちゃんまで酷いことを言う。……ホントに姫様の侍女?
「とにかくもう動きたくないのじゃーっ!」
こりゃ駄目だ。テコでも動いてくれそうにない。
「しょうがない。…姫様、こちらへ」
 そう言って姫様に背を向け、しゃがみこんだ。
その様子を見てさっきまでの疲れはどこへやら、急にぱぁっと顔を輝かせた。
「おお、ウィリアム!おぶってくれるのかっ」
「特別ですよ。いつも背負ってたら俺がへばってしまいますから」
 うーん、ちょっと甘やかしすぎかなぁ…でもまぁ今日も野宿は嫌だし、皆も納得してくれるだろう。
「やったーっ!おんぶ♪おんぶ♪」
 姫様が俺の肩に手をかける。やけに楽しそうだ。本当はまだ歩けたんじゃないのか…?
 ともかくこれでなんとか街まで行ける、そう思ったんだけど。
357Bloody Mary 2nd container 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2006/06/05(月) 17:25:35 ID:G+yvon1Y


 今度は突然残りの二人がその場に座り込んだ。……次は何事ですか。
「私も疲れました。もう歩けません」
「右に同じく。ペース配分を間違えたようです」
 団長とシャロンちゃんがそれぞれボソボソ呟いた。
なにゆえ三角座り?しかもあなたたち、さっきまで俺より元気じゃありませんでしたっけ?
「二人とも何言ってるんですか。早く街に行きましょう。街に行けばふかふかのベッドで寝られますよ?」
「ウィルがおぶってくれなきゃ歩かないもん」
 …もんって、団長?キャラ変わってません?
「右に同じく。でなければ今日はもう此処で野宿する所存で御座います」
 シャロンちゃんまで……
「団長は俺より体力あるし、シャロンちゃんはこの中で一番旅慣れしてるでしょう。
駄々こねてないで早く立って、立って!」
 一旦姫様を下ろしてぱんぱんと手を叩くが二人は無視。
あー…俺はどうすればいいの?

 もうこれは野宿しかない。
そう覚悟して荷物を降ろそうとしたが後方から馬車が見えたので中断。
……天の助けだ。アレに乗せてもらおう。
「お〜いっ!お〜いっ!」
 馬車に向かって手を振る。止まってくれると有難いんだけど……
追剥ぎとかと勘違いされて逃げられたら最悪だな。
嫌な想像が脳裡をよぎったとき、馬車の荷台からひょっこり見知った顔が現れた。
「よぉ!!ウィル、奇遇だなぁっ!!」
 あの野太い声は……
「師匠ッ!!?」
358名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 17:25:47 ID:a6rL5Znh
GJ!あの円香をも越える黒さだ(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク

>>354
嫉妬、三角関係、修羅場さえあればこのスレでOKだと思うぜブラザー
359Bloody Mary 2nd container 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2006/06/05(月) 17:26:25 ID:G+yvon1Y


 師匠が同乗していたおかげでなんとか勘違いされずに馬車が俺たちの前で止まってくれた。
「師匠、なんでこんなところにいるんですか!?」
 荷台に駆け寄って師匠の顔を近くで確認する。
「そりゃオレの台詞だ。お前らがアリマテアから姿消したっつーからどうなったのかと思ってたぞ」
「いや…まぁ色々ありまして……」
 俺が質問に答えあぐねていると。
「お久しぶりです。おじさま」
 さっきまで拗ねていた団長がいつの間にか復活して師匠に挨拶していた。
「こりゃ驚いた。トレイクネルの嬢ちゃんか、半年ぶりくらいか?」
「はい。最後に会ったのは戦争中でしたからそれくらいですね。ところでベイリンおじさまもオークニーへ?」
「あぁ。これからウチの部隊と合流するところよ。
…にしてもウィル。本当に何がどうなってるんだ?
騎士団長様がこんなところにいるわ、メイドさんがいるわ…おまけにあそこにいるの、アリマテアの姫さんじゃねぇか」
 少し離れてこちらを見ていた姫様に目をやりながら、俺に小声で再度尋ねる。
「その…話すと長いんですが…」
「ま、その辺は荷台の上でゆっくり聞かせてもらうぜ。
とにかく乗りな。オークニーまで乗せてってやる」






「はっはっはっはっは……!!!そりゃ傑作だ!!」
 街へ向かう馬車の荷台に師匠の笑い声がこだまする。
「笑い事じゃないですよ。本当に一歩間違えたらヤバかったんですからね」
「いや〜悪ィ悪ィ。にしても……ぷっ…お前、ジゴロの才能でもあるんじゃねぇか?」
 笑いを堪えきれず俺を茶化す師匠。
「やっぱ師匠に言うんじゃなかったよ…まったく」
「だから悪ィって…そういや、マローネがお前に会いたがってたぞ」
 口を尖らせる俺の機嫌を直そうと思ったのか師匠は話題を変えた。
「元気でやってますか?」
「さぁな。手紙の文面を見る限り無駄に元気そうだったが…
って、ほら、見えてきたぞ。オークニーの街だ」
 師匠と同じ方向を向くと道の先に見えている街。しばらくはあの街で厄介になりそうだ。
「あれ…?」
 街の入り口、馬車の停留所で見知った姿が見えた。
長めのボブと垂れ耳のように両サイドに付いている肩まで伸びたツインテイル。
マローネだ。
うん、元気そうだな。
「お兄ちゃーーーーーんっっっっ!!!!!!!!!」

 と、俺を見つけたマローネがこちらに走ってきた。
相変わらず落ち着きのないヤツだなぁ。
360Bloody Mary 2nd container 第一話 ◆XAsJoDwS3o :2006/06/05(月) 17:27:44 ID:G+yvon1Y
今回は以上です。

本当はバトルロワイヤル形式にしたかったんですが
自分の構想力不足のせいで前回ラストのハーレム臭が消えず、思いつくのはギャグみたいなのばかり。
そこで思い切って主に団長vsマローネの構図に変更する予定です。

姫やシャロンの活躍を期待してた人、ごめんなさい。
361名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 17:28:42 ID:thUmc7pW
妹キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
362名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 17:34:40 ID:9LfE2+rU
どっちでもいけるんじゃない?
俺は激しくGJ!!なんだが。
363名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 17:37:46 ID:a6rL5Znh
割り込んでスマソ、リロードするの忘れてた_| ̄|○
それはともかくマローネ遂にキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!
364名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 18:39:18 ID:qr8+rZv1
Bloody Mary復活!!!
365名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 20:40:17 ID:Bn0xUWp1
                      Λ_Λ
           ∧_∧ \ (゚∀゚ ;) < たぬきなべとジグザグラバーま・・・・
黙って待てや>( ・∀・) ⊂ ⊂_ )    ._______
         ⊂   /| ≡≡≡≡≡≡/        ./|
           |  _/ ≡≡≡≡≡≡| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| .|
          (__)彡   ≡≡≡≡≡≡|         .|/
              ボコッ
366名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 20:48:09 ID:65vWt4aD
>>360
ギャグ臭が濃くても私は一向にかまわん!
367名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 21:22:35 ID:/M8I3nq4
姫・・・前回といいワリ食ってるなぁ(泣)
368アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 21:33:25 ID:xNhE/Cn0
投下いたします 長くなるのでお覚悟を
369『いつか見た夢』三話  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 21:34:24 ID:xNhE/Cn0
 俺は目の前の光景に息を飲んだ
 なんだこれは・・・・・
 猫の鳴き声・・・・俺は鳴き声のほうへ向かうと
「菜穂!」
 抱きかかえて菜穂の息を確認する・・・・
 大丈夫だ・・・・気を失っているだけだと思う
 急いでケータイで警察と救急車を呼ぶ
「な・・・・・」
 なんだこれ・・・・人が・・・・死んでる?

「大丈夫かな?・・・・」
 心配げに菜穂を見つめているのは俺の双子の姉の綾だ
「大丈夫さ・・・・」
 そうでも思わないとやっていられない
「少し休んだら?」
 綾は不安げな顔で俺を見つめた
「そうするよ・・・・・」
 俺は空いている休憩室に腰を降ろして頭を抱えた
 どうしてこんなことに・・・・?
 違う・・・・悩んでる場合ではない
 今は菜穂を支えることだけを考えよう
「幸治・・・・くん?」
 光の中に人の影が出来た・・・・
 響子だ・・・・
「どうした?」
 響子はうつろな目でドアを閉じて鍵を閉めた
「なにを?」
 すぐに響子は服を脱ぎだした
「ま、待て!」
 俺が顔を背けるとすぐにその手を掴まれた
 縄が俺の手を縛っていく・・・・・
「響子!?」
 わけがわからずに俺がもがくと今度は脚を縛られてしまった
「・・・・・」
 響子は無言で俺の服を脱がした・・・・
 そしてなんの前戯もなしに・・・・・
「うく・・・・・」
 痛みの声と共に彼女の恥部から血が流れた
 それでも彼女は動きを止めない・・・・どうして?
 俺はわけがわからずに彼女の行為に必死に耐えた
370『いつか見た夢』三話  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 21:34:56 ID:xNhE/Cn0
 結局朝まで彼女の行為は止まらなかった
 今もそうだ・・・・・止まらない
 もう何度目かな?数えられない
 がちゃ・・・・ついにドアが開かれる
「な・・・・・・」
 ドアの向こうにはなぜか菜穂が立っていた
「幸治・・・・・さん?誰・・・・その女!」
 悲しげな瞳が俺に向けられる
「私は・・・・私は!」
 綺麗な顔立ちが今は嫉妬で歪んでいる
 ごめん・・・・俺はキミを裏切ってしまった
「・・・・・」
 響子は無言で立ち上がり服を着ると彼女を睨んだ
「許さない!」
 パチン!響子の頬を菜穂が叩く
「彼は私のものなの・・・・・」
 冷え切った声で菜穂はそう言った
「私には・・・・もう、彼しかいないの・・・・だから・・・・!」
 無気力な目を向ける響子・・・・響子なのか?
 彼女はそのままの表情で菜穂にナイフをむけた
「や、やめろ!」
 声は届かずに響子は菜穂をベットに押し倒して両手でナイフを上げてそのまま振り下ろした
 菜穂は間一髪でそれを回避すると近くにあった花瓶を持って響子を殴りつけた
「あ・・・が」
 小さく声を上げて響子がその場に倒れた・・・・・
「大丈夫ですか?」
 縄を解きながら菜穂が俺に服を着せてくれる
「は、はやく・・・・逃げよう」
 あのうつろな目・・・・もう彼女は壊れてしまっている
 俺は菜穂の手を引くと急いでその場を後にする

 いったん家まで戻ってきた・・・・準備を整えて俺は最後の財布を取って家を出る
「・・・・・っ!」
 扉の向こうにはおぼろげな瞳の響子が立っていた
 そして外で待たせていた菜穂も・・・・
 二人は崩れ落ちるかのように倒れ込んだ
「・・・・・・・」
 そして二人の間からおびただしい血が流れてくる
 見るとお互いの腹にナイフが刺さっていた
 どうなってるんだ?
 いつの間に菜穂は・・・・・?
 俺は・・・・・
371アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 21:36:22 ID:xNhE/Cn0
ここで区切ります
372『いつか見た夢』四話 菜穂  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 21:37:18 ID:xNhE/Cn0
 今日は少し寂しい
 幸治くんが・・・・恋人・・・・らしい人とデートらしい
 正直な話おもしろくない!
 嫉妬の炎がメラメラと燃え滾るのを感じた
 でも今の私じゃ子ども扱いか妹のようにしか見てもらえないのはわかっている
 今に見てなさいよ・・・・必ず私の魅力で幸治くんをメロメロにしてやるんだから
 ワンワン!ワンワン!ワンワン!
 コロナが外で吠えている
 なんだろう?庭に出てみるとそこには綾さんがコロナに食べ物をあげていた
「あ、ごめんね・・・・勝手には」
 綾さんは申し訳なさそうに両手を合わせた
「いいよ、別に・・・・・」
 数時間後コロナが倒れた
 どうしようか迷ったけど私は幸治くんにメールした
 すぐに駆けつけてくれた幸治くんがなにもできないでいる私に変わってコロナを病院まで連れてくれた
 獣医さんが大丈夫だと言ったときすごく安心した
 でも、おかしいなと思った・・・・だって今日は散歩に連れて行ってない
 ふとある疑問が私の頭をよぎった
 小さな疑問が次第に大きくなっていくのを感じる

 
373『いつか見た夢』四話 菜穂  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 21:38:17 ID:xNhE/Cn0
 また幸治くんがデートに出かけた日・・・・またコロナが倒れた
 その次も・・・・また次も・・・・
 そして私はあるひとつの恐ろしい答えを導き出した・・・・
 コロナが倒れた日は必ず綾さんが来ていて
 コロナにご飯をあげている
 わからなくなった・・・・こわかった
 私の弱気が無意識に幸治くんへのメールに出ていた
〈幸治くん・・・・早く戻ってきて!〉
 しばらくしても連絡はない・・・・どうしよう
〈幸治くん・・・・・幸治くん・・・・私どうしていいかわからないよ〉
 また不安がメールに出ていた
 10分後幸治くんが来てくれるで私はなにも考えられないほどに混乱していた
 けど、疑問はすぐに解消された・・・・
 ある日幸治くんがお風呂に入ってるときだった
 綾さんが幸治くんのケータイをいじっているそして日記帳のようなものを取り出してなにか書きこんだ
 そのあとすぐに日記を懐に忍ばせてその場を去って行く
 そのとき彼女から日記が落ちた
 私はそれを拾うと・・・・テーブルにある幸治くんのケータイを取って彼女が何を見たのか確認した
 履歴を確認していたみたい・・・・当たり前か
 そのあとすぐに私はケータイの電源を切って元のようにテーブルに置いた
 そして日記帳を取り出し中身を確認する
 な、なにこれ?日付ごとに幸治くんの写真が載っていてそのあとには幸治くんの行動が事細かに書かれていた
 最後にケータイの履歴が日付ごとの欄に書いてある
 そしてあの日・・・・幸治くんと菜穂さんが付き合い始めた日
 私は幸治くんの呆然とした顔を見てしまった
 部屋に目をやるとそこには赤しかなかった
 私は気づかないふりをして幸治くんを下に誘導した
 その次の日・・・・
 私は血に染まった彼女を見つけた
 怖くて逃げ出す私を捕まえて彼女は薬を私に無理やり飲ませた
 綾さんの声が頭に響く
「幸治を物にしたくない?いまなら大丈夫よ・・・・」
 光が差すと向こうに幸治くんが見えた

 まるで私の身体じゃないみたいに私は幸治君と無理やりに性行為をした
 朝まで性行為を続けていると菜穂さんが部屋に入って来た
 また綾さんの言葉が頭に響く
「邪魔な奴は消してやればいいのよ・・・・」
 また身体が勝手に動く・・・・どこからかナイフを取り出し彼女に突き立てていた
 しばらくの間のあと私は意識を失った
 かつかつ・・・・足音が聞こえてくる・・・・
「まだよ・・・・・まだあなたは役目を果たしていないわ」
 気づいたとき私は菜穂さんにナイフを突きたてていた
374アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 21:39:32 ID:xNhE/Cn0
またまた区切ります
375『いつか見た夢』五話 菜穂  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 21:40:26 ID:xNhE/Cn0
 ふふ、みんなバカみたい
 最後に勝つのは私なのに
 特に響子の奴・・・・ほんとバカ
 だってそうでしょ?コロナに殺虫剤入りのエサをやったのは私なのに
 気づかないで・・・・私の思惑通りに動いてくれた
 他の女とデート?ふざけるな!
 あなたには私がいるじゃない・・・・
 しばらくして幸治と菜穂とかいう女が付き合い始めたと聞いた
 私は嫉妬に任せて彼の部屋に野良猫の死体と血を残し写真をずたずたに裂いたのを置いた
 翌日になっても仲よさそうな二人を見て私は我を忘れた
 こうなったらあの女のすべてを壊してやる
 外側からじっくりと・・・・
 まずあの女の両親を殺した・・・・・
 そのあと不本意だけど響子に催眠薬を飲ませてあの女をけしかけた
 思ったとおりの内容だったけど・・・・だめじゃない
 どっちか死ななきゃ・・・・まぁ、いいわ・・・・
 彼らの行動なんてすぐに予想が付いた
 自宅には案の定あの女が居た
 私は気づかれないようにあの女の横にナイフを置いた
 予想道理に彼女は嫉妬に綺麗な顔を歪めて響子と口論していつのまにか刺しあっていた
 ふふふ・・・・あ、はははは!
 これでようやくこの嫉妬からも開放されるわ
 私がどんな気持ちだったかわかる?
 最愛の人を奪われ・・・・その人に私以外の女を抱かせた私の気持ちが!
 でも、これでおしまい・・・・・残ったのは私だけ
「な・・・・どうなってるんだ?」
 絶望の瞳が無気力にその場に向けられた
「幸治・・・・・」
「あ・・・・や?」
「みんな殺してやったわ・・・・私たちの邪魔をするメス豚たちを」
 驚きの瞳が私に向けられそのあとすぐに怒りのそれが変わっていく
「お前がこんなことを!」
 胸元をつかまれ私は押し倒された
 なにを怒ってるの?私は・・・・
「許さないぞ!綾!」
 そう、そうなのね・・・・あなたは私を拒絶するのね?
 ならあなたを私だけの物にしてやる!
 私は忍ばせておいたもう一本のナイフを取り出すとその胸に・・・・
「く・・・・・」
 その前に響子が私の腕を掴んだ
「・・・・・っ!」
 そのまま二人で道路の方へ投げ出される・・・・
 え・・・・なに?・・・・・トラックが迫ってくる
 そして意識が光に消えた・・・・
376『いつか見た夢』五話 菜穂  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 21:41:17 ID:xNhE/Cn0
きょ・・・・・響子?」
 響子の口が動いた
 ご      め       ん     な      さ     い
「響子!」
 綾と共に響子がトラックに轢かれてしまった
 あ・・・・・・あ・・・・・俺は!
「あーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

 数年後・・・・・
「今日は天気がいいですね」
 幸治さんは微笑んでうなずいた
「そう・・・・だね」
 あのあと私はなんとか助かることが出来た
 急所は外れていたらしい・・・・これが最後まで彼女が自分と戦っていた証拠だと思う
 幸治さんはいまだあのショックが癒えていないらしい
 いつか・・・・必ず・・・・私が癒してさしあげます
 もう少しだけ・・・・待っていてください
「ありがとう・・・・・菜穂」
 愛しています
 これからもずっと一緒です







FIN
377アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 21:42:39 ID:xNhE/Cn0
終わった・・・今日は暇だったので一気に書き上げました
ここまで読んでくださった方お疲れ様でした
自分なりに頭をひねってみましたが・・・・どうでしょうか?
嫉妬の少なめですね・・・・はい


これからはゆっくりとしたペースで書こうと思うので一ヶ月に一度・・・かな?
気長にやっていきます
378アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/05(月) 21:43:38 ID:xNhE/Cn0
タイトル横の菜穂はなんの関係もありません
私のミスです
379『ジグザグラバー』第十二幕:2006/06/05(月) 22:14:47 ID:AqnmaXK1
 時間は夜の八時、灯りのない寂れた駐車場でもはや馴染みになった二人が立っていた。
片方は鉄パイプを持った少女で、もう片方は常にヘラヘラとした笑みを浮かべている少女。
二人の間に流れている冷たい空気も、初めて対峙したときから変わらない。
「こうやって話すのも定番になってきたね。でもたまには女子高生らしく、ファミレスな
んかどうかな? 正直、こんなとこは気が滅入らない?」
 水の軽い言葉に、しかしさくらは無言で立っているだけだ。表情どころか仁王立ちの姿
勢も変えずに、ただ持った鉄パイプをガリガリと地面に走らせている。
 数秒して、漸く視線を上げると、さくらは吐息をした。
「こんなの持って、そんな所に入れると思うんですか?」
 片手で回転させて呟くさくらに、水も溜息を一つ。
「まあ良いや。それよりも、お礼。放課後は電話ありがと、助かったよ」
「こちらこそ、交渉の場所を作ってくれてありがとうございます」
「契約だからね」
 ひひひ、と笑ったあとに水は目を細め、
「でも、何かあったの? 電話のとき泣いてたみたいだったけど」
 その質問に、さくらは考える。昨日の話からすれば、定義破壊がまず必要だからスムー
ズに話は進むかもしれないが、誠を狙っているので禁止かもしれない。そもそも自分と交
渉したり様々な言葉を向けてくるのも、その一貫なのだから話さない方が良いかもしれな
い。しかし、アドバンテージを付けられている今だからこそ、話すべきなのだろうか。
380『ジグザグラバー』第十二幕:2006/06/05(月) 22:16:50 ID:AqnmaXK1
 一瞬で様々な思考が浮かび、そのまま答えは出た。
「御主人様と」
 乱れる呼吸を整え、震える体を落ち着けながら、
「キスをしました」
 その答えに、水は細めていた目を更に細くした。その顔に表情は浮かんでおらず、細い
目と混じってまるで寝ているようにも見える。
「それで?」
「何がですか?」
「そんなことでは泣かないでしょ、何があったの」
 空間に響く水の声は、低く冷たい。
「そんなことの為に私を呼び出したんじゃないでしょ? ただ自慢話をする為に呼び出し
たの? それなら、貴方を殺す。あのガキが旦那とキスをしたってのでも私は内臓が煮え
くり返ってるんだ、これ以上下らない話をしたら産まれてきたことを後悔する暇もないく
らいにブッ壊してやる」
 言い終えると、睨みつけながらさくらへと近付いた。その視線に込もっているのは、誰
が見ても明確な嫉妬と殺意。怒り狂っているの感情のせいで体は小刻みに震え、足取りも
ふらふらとしていた。
 しかしさくらは無理に笑みを浮かべると、
「交渉、ですよ」
 その発言に水は歩くのを止めた。しかし、それは表情は余裕でも、震える声は恐怖を表
しているという状態から自分の有利が分かったからではない。あくまでも、内容が関心を
引いたからだとさくらは考える。
 水が関心を示してくれた幸運に感謝と安心の吐息をしながら、
「交渉で近付くことを要求したら、拒否されました。そのときの態度からすれば、多分…」
381名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 22:20:05 ID:Q+3OKesF
そういえば秋人はいつメールを見るんだろうな〜
あれ見れば勘違いだとわかりそうだが
382『ジグザグラバー』第十二幕:2006/06/05(月) 22:20:16 ID:AqnmaXK1
 一旦喋りを止めると、今だ睨みつけてくる水を見返す。
「水さんも拒否されます。御主人様は即断即決の人なので、多分、明日にでも」
 水の表情が変わったのを見て、乗ってきた、と歓喜の声を心の中で叫ぶ。
 さくらは先程とは逆に、自分から水に近寄ると、
「でも、まだ迷いがあります。拒否の言葉が濁ったり、詰め寄ったとはいえ近付けたこと。
何よりも、キスが出来たことです」
「何が言いたいの?」
「だから、交渉ですよ」
 うつむいて思考を始めた水を見て、今度こそさくらは心の底からの笑みを浮かべた。
「もう一度、御主人様と二人きりの場所を用意して下さい」
「じゃあ、こっちからは」
「そんなものは受け付けません」
 水の発言を遮り、鉄パイプを引きずりながらまた一歩詰め寄る。
「水さんとの昨日の契約、水さんが御主人様と話を出来るようにする、を使います」
「それは今日の放課後で終わりじゃない? 一回きりで良いって言ったのはそっちだよ?」
「御主人様の定義が揺れているので、回数も曖昧になります」
「なら、契約事態を終了させるよ。もう、一日に三回は話しかけれるんだ」
「知ってます」
 さくらは歩くのを止めると、リズムを取るように鉄パイプで地面を叩き始めた。駐車場
に流れる音は、先日誠が楽しそうに話していたアーティストの最新のナンバー。しかし頭
の中に浮かんでいるのは、それとは全く関係ない思考。放課後に誠と別れた直後から考え
続けていた、交渉の内容だ。
383『ジグザグラバー』第十二幕:2006/06/05(月) 22:22:32 ID:AqnmaXK1
「あたしは破棄されても構いません、寧ろ手間が省けて好都合です。もしかしたら、一人
でする分大変かもしれませんが、スムーズなのも確かです」
 一度喋りだしたら止まらない。
「そうした場合に、あたしにデメリットはあまりありません。実際にあたしが加われる時
間はごく僅かなので、そっちも言えるかもしれませんが」
 言葉を切り、
「一日三回で足りますか? それに、会話も三回がゼロになるかもしれません。そうなっ
た場合に、あたしからは無理矢理に話し掛けることは出来ますけど水さんは無理ですよね」
 これは誠を見ていて学んだものだ。交渉のテクニックの一つ、相手の思考の暇がないよ
うにたたみかけ、不利だということを停止した思考に刻み込む。特に、自分の協力が無い
と致命的だと思わせるのが重要だ。
 そして、
「でも、そっちの言い分も分かります。やはり一人だと大変なのも事実なので、是非協力
してほしいんです。水さんと御主人様が二人で話せる場所を作りますので、あたしにも、
その場を作ってくれるようお願いします」
 相手の思考に敢えて余裕を作り、思考をそこに集中させる。こちらの方では、自分にと
っても相手が必要だと思わせるのが重要だ。
 数秒。
「分かった、協力する」
 その言葉に、さくらは笑みを強くした。そして、自分の考えが当たっていたことを喜ぶ。
『疾走狂』だと自分で名乗った水は、邪魔なものは排除して進む。どんな手を使っても目
標に辿り着こうとする彼女。だが逆に言えば、目的地に着くために障害があるならそれを
受け止めなければいけないといけないということだ。
384『ジグザグラバー』第十二幕:2006/06/05(月) 22:24:53 ID:AqnmaXK1
「交渉成立ですね」
 明るい声で言うさくらに、水は細めた視線を送った。
「何でそんなに食い下がるのさ。私はまだだけど、あんたは拒絶されたでしょ?」
 その視線と共に送られるのは、冷たい声。
「『御主人様』があたしの『御主人様』であり続けるかは、あたしが決めることです」
 再び歩き始めたさくらは、水の前で立ち止まり、
「そして、『奴隷』が『奴隷』でいられるかを確かめるためです」
 心からの笑顔を浮かべた。
385 ◆JypZpjo0ig :2006/06/05(月) 22:29:16 ID:AqnmaXK1
今回はこれで終わりです

急に入った大量の仕事が実は先方のミスで、納入の予定はゆったりなので

つまり毎日投下出来るぜヤッホゥイ
不定期ではなくなりそうです
386名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 22:39:21 ID:KfB8sfCy
>>385
毎日読めるぜヤッホゥーーーーーー
さて、一体さくらさんはどう動くのか読めん・・・
とりあえず華派なので今回出番のなかった華に期待

>>377
これを一日で書き上げるとは!!アビス殿恐るべし((;゚Д゚)ガクガクブルブル
途中のどんでん返しはまったく予想できなかったので
かなり意表衝かれました、響子たん・・・(;つД`)
387名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 22:48:53 ID:zKNJUgC8
なんか最近凄く幸せウフフ(*´∀`)
388名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 23:02:34 ID:nU4k49oP
俺もウフフ(*´∀`)
389トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/06/05(月) 23:05:32 ID:BDk9iLmB
SSスレ初挑戦です。投下致します
390優柔 previous 第4話  ◆I3oq5KsoMI :2006/06/05(月) 23:06:31 ID:rKRUbY8X
この男子、『人には優しく』が信条である。
困っている人がいれば役に立とうと奮闘し、自分に敵意を向けてくる人間に対しても、何とか相手の特長を見つけようと努力する。
断っておくが偽善者ではない。この頃は清く正しい心をしていたのである。
とまあ、前置きはここまでにしておこう。
言いたいことは、このような馬鹿げているとも見做されかねないほど優しい心を持った男子が、自分の恋人を放っておけるわけがないということである。
だから、優希はまた、やってしまった。
自分の感情の変化に戸惑っている椿を、放っておけばいいのに、ケアしてしまった。
椿の部屋にお邪魔して、週の始めだというのに、とびきり優しく抱いた。

その行為自体は全く問題ではない。愛する男と女が交わることなど、至極当然のことだからである。
重要なのは、その内容である。いつにも増して優希は、快感を与えながら、愛を囁き続けた。
少しだけ傷ついている椿の心に、必要以上に薬を塗りすぎた。
そしてその結果、椿の独占欲と嫉妬心はさらに増幅してしまった。
ただし優希には故意がない。そこが厄介である。

椿の髪を撫でていた優希は、すでに椿の母――桜子が帰宅する時間になっていることに気付き、慌てて帰り支度をした。
男子たるもの、やはり恋人の親に顔を見せるのは覚悟がいるようだ。
それができていない優希は、鉢合わせだけは避けたくて、置き手紙を枕元に置き、早々に玄関を出た。
しかし運が悪いことに、ドアを開けた瞬間、買い物袋を提げた桜子と対面してしまった。

「・・・」
「・・・」
「・・・は、初めまして、椿さんとお、お付き合いさせてもらっている、愛原と申します・・・」
「・・・椿の母です、初めまして・・・」
端から見ると、非常に殺風景であった。

椿から聞いていなかったが、日頃見ている娘の微妙な変化から、どうやら彼氏ができたらしいことには気付いていた。
そしてその男が(ドアが開いた途端、知らない男が出てきたのにはさすがにびっくりしたが)予想以上だったことに喜びを隠せない桜子は、終始にやにやしながら会話を楽しんだ。
優希は勿論、ヒヤヒヤしていた。
「椿はどうしたの?」と聞かれ、「疲れて眠っています」と答えてしまったのだから、さっきまで何をしていたのか一目瞭然なのだ。
何を言われるか分かったものではないと、あからさまな笑みを浮かべている桜子の次の言葉に身構えた。
「ねえ、優希ちゃん」
「は、はい?」
「ハネムーンはどこにするの?」
「ぶっ!?」
思わず吹いてしまった優希。
どうやら飛躍しすぎてガードが吹き飛んでしまったようだ。
391優柔 previous 第4話  ◆I3oq5KsoMI :2006/06/05(月) 23:07:11 ID:rKRUbY8X
彼女の母親の手料理を待つ間ほど、手持ち無沙汰なことはないと思う。
話が弾んでしまったために、気がついたら午後7時。
ちょうど腹も減ってきたため、御暇しようと席を立ち上がった矢先、桜子の一言。
「そうだ、せっかくだからご飯食べていきなさいな」
そういうわけで優希は、そわそわしながらその時を待った。
「すぐに作るからちょっとの間、辛抱してね」
「い、いえ、お構いなく・・・」
何もすることがなかったので、優希はリビングから、キッチンで調理に取り掛かる桜子の後ろ姿を見た。

『椿ちゃんのお母さん・・・いい人だなあ。それに、すごく綺麗だし・・・椿ちゃんも、もうちょっとしたら・・・ああいう風に大人の色気が出るようになるのかなあ・・・』

と、このようなことを考えていたのも付け加えておこう。
勿論、形の良い尻がどうのこうのとか、束ねた髪から垣間見えるうなじが色っぽいとか、やましいことは考えていないのであしからず。

「はい、召し上がれ」
「あ、はい、頂きます」
出されたのはナポリタン。優希の大好物である。
丁寧にフォークに巻きつけて、いざ口の中へ。
「・・・すごく美味しいです!」
感想を求められていないのにも関わらず、優希は言った。
それぐらい美味しかったのだ。
「そう?それは良かったわ。おかわり一杯あるから、どんどん食べてね」
「はいっ!」
思えば、高校に進学してからというもの、優希は自分で家事をこなしてきた。
実家にいた頃は当然のように母親に任せていたせいか、独り暮らしを始めた当初は大変だった。
今では大分慣れてきたが、やはりまだ完璧にはいかないところもある。
それは炊事にも当てはまり、現在でも満足にいくものではない。
だからこそ、桜子の完成された、心までも充実させてくれる手料理を食べることが出来たのは、ありがたかった。
「もう、そんなに急いで食べなくても料理は逃げていかないわよ?」
桜子もまた、自分の料理をこれほど美味しそうに食べてもらえるのが嬉しくて、優希の顔を微笑みながら眺めた。

「あの、今日は本当にありがとうございました」
「いいのよ。優希ちゃんは椿の大事な彼氏なんだから。またご飯食べに来てね?」
「はい、また来させてもらいます。それじゃ、失礼します」
「またね。気をつけて帰るのよ」
優希を見送る桜子。その心中は、新しい家族ができたことに対する喜びで満たされていた。
392優柔 previous 第4話  ◆I3oq5KsoMI :2006/06/05(月) 23:07:43 ID:rKRUbY8X
・・・・・・さて、ここまでならごく普通の風景。恋人の母親に夕飯をご馳走になったという、ありきたりな展開。
このまま終わっていれば、何も気にすることなどないのだが・・・

椿はずっと――優希が食べ始めた頃から――その様子をドアの隙間から眺めていた。
優希の所に行って、3人で食事をすれば良かったのに、あえてそれをしなかった。
その原因は、ご承知の通り、椿が自分の感情の急激な進化に戸惑い、認めたくなかったからである。


えっ・・・そんな・・・こ、こんなの・・・嘘、だよ・・・ね・・・

私・・・お母さんにまで・・・嫉妬・・・してる・・・


椿の独占欲と嫉妬心は、取り返しの付かないところまで来てしまったようだ。


(つづく)
393煌く空、想いの果て ◆mxSuEoo52c :2006/06/05(月) 23:10:20 ID:BDk9iLmB
 何もする事がない放課後は本当に暇で、友達は部活や用事とかで掴まることはなく、
ただ一人で退屈を持て余していた。だったら、学校で特に訪れることがない場所に趣き、
くだらない時間を消化でもしようかと思った。

図書室などといった、優等生しか利用しない施設に行き、
豪快に居眠りをしていると司書の方に怒鳴られ、以後立入禁止というレッドカ−ドを喰らったり、放
送室を無断に占拠して、カラオケ大会を始めたりすると間違えて校外のスピ−カにスイッチが入り、

華麗な音楽が世間の皆様にご披露したりなど、
平凡の日々を送っている俺には今の状況は少し刺激が足りないような気もする。
が、学校中の先生たちから要チェックされているため、

今はどの教室の鍵を借りようとしても、職員室に入るとすぐに
パワフルな体育教師や生活指導の教師が駆け寄ってくる。
そういうわけで、校内にいても、何もすることができないのであった。

 不名誉な事に不良のレッテルを張られている。
俺は傷ついた心を癒すため風に当たろうと思い、屋上を目指していた。
わざわざ、階段を登ってもアトラクションも何もなく周囲の景色を見渡せるだけの
退屈な場所は本来なら学校を卒業するまで来ることはないだろう。 
屋上に辿り着くと、なんと先客が二人いた。
 

そのうちの一人は見知った、幼なじみの顔があった。
 しかも、この角度から見える限りではその、キ、キ、キスをしているように見える。


 幼なじみである、風椿梓(かぜつばき あずさ)

 長い黒色の髪を黄色のリボンで纏めて、この上なく整った顔立ち。
麗しいつぼらな瞳は男の保護欲を注ぐ。性格は誰にも優しい穏やかな性格であり、

この学校の多くの男子生徒が憧れて、告白する人間が絶えないという噂を聞く。
しかも、その生徒たちは誰もが撃沈されている。
394 ◆I3oq5KsoMI :2006/06/05(月) 23:10:41 ID:rKRUbY8X
mxSuEoo52c様、かぶってしまって申し訳ございません・・・

亀レスですが、椿ちゃんの絵を描いて下さった前スレ603様、ありがとうございました。
また椿ちゃんの絵を拝めるのを期待しています。

投下速度は相変わらず遅いですが、気長に待ってて下さい、御願い致します。
395煌く空、想いの果て ◆mxSuEoo52c :2006/06/05(月) 23:13:38 ID:BDk9iLmB
 そんな女の子と知り合いであり、幼なじみでもあるのは、
単に家が近所同士であり、小学生の頃から一緒に遊んだりとケンカしたりなど
とよくあるエロゲーの設定のような少年少女時代を過ごしてきた。
 
 今も仲良く登下校や遊びに行ったりする仲であった……。
 それはもう過去形になったと言うべきだろうか?
 梓は名前も知らない男子生徒とキスをしている。
キスをしているってことは、あれが梓の好きな人。つまり、梓の彼氏ってことだ。


 今、ここで勇気を持って告白しよう。
 実は、俺こと水野翔太は梓の事が好きだ。


 幼なじみという身近な関係だからとかじゃなくて、純粋に梓に惚れていた。
それは、一緒にいる時間も多かったせいもあるが、

梓といると一緒にいると楽しかった。
少なくても、孤独という時間を味わうことはなかったんだよ。
寂しくもなかったし、一緒に笑い合えたり、俺が心を許せる唯一の人物だった。

 でも、今日で俺の恋は終わりは告げている。
 二人の姿をこれ以上見たくなかったので、

さっさと後ろを振り向いて、慌てて登ってきた階段を同じように降りた。
 瞳から頬を伝って冷たい雫が流れていた。
 それは、俺の涙であった。そう、知らない間に泣いているのだ。
 本当に、失ってわかる大切な人に好きだと言えなかった俺が俺自身を責めていた。
 だが、もう遅い。


 大切な人は他の男に奪われてしまった。戻ってくることはない。


 だから……


 さよなら、梓。



 俺が大切な幼なじみと決別を決めた日。
 それが惨劇の序章になるとはこの時、まだ気付いていなかった。
396トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/06/05(月) 23:16:36 ID:BDk9iLmB
というわけで、誤解とすれ違いから始まる嫉妬と惨劇モノです。
よろしくお願い致します。

>>I3oq5KsoMI様
いえいえ、私も偶然にかぶってしまったので、申し訳ありませんでした。
優柔はこのスレで好きな作品で連載再開したときは嬉しかったですよw
頑張って更新してくださいね。


397血塗れ竜と食人姫:2006/06/05(月) 23:19:04 ID:BlMQXu3W

 血塗れ竜の朝は遅い。
 試合は基本的に最終だし、王者特権で囚役も免除されてるしで、昼間にやることが何もないからである。
 故に彼女はよく寝ている。
 寝相は良いのか悪いのか、ベッドから転がり落ちることはない代わりに、布団を蹴飛ばして腕や太股をさらけ出すのは日常茶飯事。
 こうして寝ている姿だけを見ていると、年頃の元気な少女以外の何者でもない。
 寝顔は無垢な天使のよう。血にまみれた闘技場での姿とは一致しにくい。
 幸せそうにすやすやと眠る血塗れ竜。
 起こすのは気の毒かもしれないが、生憎、彼女が二番目に大好きな時間――食事の時間なので起こさないわけにはいかなかった。
 
「白。白、食事の時間ですよ、起きてください」
 
 ちなみに、“白”というのは、血塗れ竜ことホワイト・ラビットに対する僕独自の愛称である。
 彼女の名前を異国風に言い換えたものである。
 本人も嬉しそうなので、普段はこう呼んでいた。
 ただ、何故かは知らないが、僕以外が“白”と呼ぶと、彼女は酷く機嫌を損ねるので、実質“白”と呼ぶのは僕一人だけなのだが。
 まあそれはそれとして。
 声をかけた程度じゃ白が起きてくれないのは、過去の経験からも明らかである。
 よって僕は速やかに第二段階へと移行する。
「白。起きてください。食事が冷めてしまいますよ」
 ゆさゆさゆさ、と肩に手を当てて少女を揺すった。
 むき出しになった二の腕に指先が触れる。
 吸い付くような滑らかさ、とでもいうのだろうか、この世のものとは思えない肌の触り心地に、一瞬陶酔してしまう。
 ……いけないいけない。白を起こさなきゃいけないのに、腕を触って喜ぶなんて変態か僕は。
398血塗れ竜と食人姫:2006/06/05(月) 23:19:47 ID:BlMQXu3W
 改めて、肩を掴んでゆさゆさと。
 んふう、と心地よさそうな溜息を履いた白は、ごろりと寝返ったかと思うと、そのまま僕の腕を掴んで引っ張った。
 踏ん張って堪えようとしても、こちらの重心移動を的確に把握し、そのまま腕を引き込まれる。
 ぼすん、と少女のベッドの上に倒れ込んだ。
 ……こういう、人の動きを操作するのに長けているところは、流石に王者といったところか。
 ではなくて。
 今日もベッドに引き込まれてしまった。ここのところ毎日である。
 引き込んだ本人は、僕の腕を抱きしめて、更なる惰眠を貪ろうとしている。
 あ、こら、足で挟まないで。手首のあたりに感じてはいけない柔らかさが……。
「んふー……」
 肩にあごを擦りつけてくる。まるで猫だ。馴れきった猫。
 慕われるのは悪い気分ではないが、この体勢は少々不味い。
 白の肌の心地よさは、並みの女性の比ではない。このまま白の柔らかい感触を押しつけられていると、妙な気分になってしまう。
 理性が掻き消される前に、早く白を起こさないと。
「こら、白、起きなさい。朝ご飯は抜きにしますよ?」
 第三段階。耳元で最終勧告。
 コレは流石に効いたのか、微かに首もとを震わせた後、うっすらと白の瞼が開かれた。
 
「んー……ユウキ……?」
 
 寝ぼけまなこで、僕の名前を呟く白。
 表情はとろけきっていて、緊張の欠片もない緩み顔だ。彼女に殺された対戦者は、王者のこんな姿なんて信じられないだろう。
 女子監獄の監視員として配属されてはや三年。
 どうしてここまで懐かれたのかはさっぱり理由がわからないが、これはこれで、悪くなかった。
399血塗れ竜と食人姫:2006/06/05(月) 23:20:28 ID:BlMQXu3W
 僕の名前は、ユウキ・メイラー。
 帝都に存在する巨大監獄の、東4番棟監視員である。
 主な仕事は囚人の世話。世話といっても、食事を運んだり見回りしたりといった程度の、暇な仕事である。
 しかも女子棟ともなれば、気性の荒い囚人なんて少ない方で、荒事に巻き込まれることもなく、ただ淡々と仕事をこなしていた。
 繰り返しのような監視員の業務。
 一時期は帝国執政官すら目指していたのだが、競争に敗れてからは見事に脱落の坂道を転げ落ち、気付けば監獄勤務である。
 当初のやる気のなさはずば抜けていて、殆ど無気力に仕事をしていたような記憶がある。
 それがいくらかマシになり、仕事にもだいぶ慣れてきたところで――彼女と出会った。
 
 囚人番号E4−274
 囚人闘技場選手登録者。
 囚人名:ホワイト・ラビット。
 
 元々は東3番棟に所属していたが、囚人闘技場に新規登録したとのことで、4番棟に移ってきたのが彼女である。
 4番棟は別段、囚人闘技場の選手のための棟とかそういうわけではない。
 そもそも東の棟は全て女子棟である。闘技場登録者など数えるほどしか存在しない。
 その、数えるほどの登録者同士で、余計な摩擦が起きないよう、一つの棟には一人か二人しか闘技場登録者を在籍させないのだ。
 まあそんなわけで、東4番棟に移ってきたホワイト・ラビットだったが。
 とかく気むずかしい娘で、逆らうことはないのだが、誰とも話そうとしなかった。
 女子棟の監視員には、自分の欲望の赴くままに“戯れる”監視員も数多い。
 しかし、闘技場登録者にちょっかいをかけようとする者は少なく、彼女はだんだんと疎まれるようになった。
 どだい、闘技場に登録される者なんて、面倒事を抱えているのが常である。好きこのんで関わろうとする監視員は皆無である。
 とはいえ、監視員が一人お付きの者として体調管理などを行わなければならないので、誰かが担当せざるをえない状況だった。
 そんなこんなで、多くの監視員の下をたらい回しにされた果てに。
 
 ――僕が、ホワイト・ラビットの担当になった。
400血塗れ竜と食人姫:2006/06/05(月) 23:21:07 ID:BlMQXu3W
 僕が他の監視員と違った点はただ一つ。
 彼女がどんなに無反応であろうが、毎日一生懸命に、手を抜かず彼女の世話をしたということだけである。
 仕事にも慣れてきて、以前のエリートコースにも完全に諦めがついて、
 これしかやることがないのだから、どうせだったら一生懸命やってみようと積極的になり始めた時期だった。
 だから、担当の小娘がどんなに無反応であろうとも、毎日声をかけ、食事の世話をし、時には注意したりもした。
 そして、彼女の初試合、周囲の予想に反して、相手の男を惨殺して、少女が控え室に戻ってきた際。
 全身鮮血にまみれ、湿った足音を響かせて帰ってきた彼女を見て。
 
 とても、寂しそうだったから。
 血液の生臭さをぐっと堪えて。
 濡れた髪を優しく拭きながら。
「頑張ったね」と、褒めていた。
 
 彼女はそこで、“初めて”僕の顔を見て。
 ――うん。
 と、微かに、頷いた。
 
 それから、もう2年が経つ。
 
 
「……でも、これは懐きすぎの気がするんだけどなあ」
 溜息を吐いて、少々重くなった左腕の方を見る。
「♪〜、♪」
 鼻歌を歌いながら、僕の左手を抱きしめて、通路を歩く白の姿。
 どこからどう見ても上機嫌。ただの日課の散歩なのに、どうしてここまで盛り上がれるのか不思議である。
 
 王者になっても、白は全く変わらなかった。
 僕に世話され、頭を撫でられると嬉しそうに微笑んでくる。
 王者の特権として、様々な自由を与えられるにもかかわらず、
 白は、試合の日以外は部屋でごろごろするか僕と散歩するかの二択である。
 囚人闘技場の王者がこれでいいのかなあ、と時折首を傾げてしまうが、本人が嬉しそうなのだから別に問題ないのかもしれない。
401血塗れ竜と食人姫:2006/06/05(月) 23:21:49 ID:BlMQXu3W
 白があまりにも手のかからない闘技場登録者のため、僕は暇を持て余すことが多々あった。
 何もしないのはどうも苦手なので、白がぐーすか寝ている日には、女子棟の業務を手伝うようにしている。
 今日もそんな一日で、食事の配給や、空き部屋の掃除などに一日を費やしていた。
 
「さて。あとは410号室と671号室だけか」
「お、ユウキ。いつも悪いな。本当は俺らがやらなくちゃいけないことなんだが」
「別にいいですよ。どうせ暇なんですし」
「今度、締まりのいい囚人貸してやるよ。媚びも覚えてきたところだから、具合はかなり良いぜ?」
「いえ、そういうのはちょっと……」
 空き部屋の掃除は、以外と面倒くさく、やろうとする監視員は皆無のため、僕がこうやってまとめて行うことが多かった。
 今日も既に20以上の空き部屋整理を済ませている。監獄の個室は入れ替わりが激しく、整頓も結構手間がかかる。
 そんな業務を肩代わりする僕に対して、他の監視員の目線は二種類だ。感謝しているものと嘲笑を含んだものである。
 声をかけてくれた人はどうやら前者だったようで、気さくに肩を叩いて、監視員の間ではよくある誘いを持ちかけてくれた。
 それを苦笑いで断って、次の部屋に行こうとしたが――
 
「――ああ、ユウキ。410は空き部屋じゃないぞ。今日から新人が入るみたいだ」
「え? 新人?」
 
 はて、と首を傾げてしまう。
 通常の囚人なら、最初は個室ではなく相部屋に入れられることになる。
 ということは、最初から個室というのは、いわゆる“通常”の囚人ではない、ということだ。
 
「密入国者だとよ。しかも、侵入したところが例のサド公爵の領地とのことだ」
「……なるほど」
 
 大陸が帝国の独占支配になって久しいが、それでも帝国民以外の人間は存在する。
 多いのが、他国からの密入国者で、そういった輩は大抵捕縛され、収監される。
 行き先は様々だが、猟奇趣味のある貴族の領地に侵入した場合は、大抵ここ帝都中央監獄に連れてこられる。
 
 ――ここには、囚人闘技場があるからだ。
402血塗れ竜と食人姫:2006/06/05(月) 23:22:24 ID:BlMQXu3W
 屈強な戦士だけが戦うわけではない。
 ときには弱々しい人間を無理矢理戦わせて、虐殺される様を見せ物にすることが多々ある。
 そういったものに参加させるために、わざわざ帝都の監獄に入れさせるのだ。
 自分の連れてきた囚人が、見る者を楽しませるショーを展開させたとなれば、上位王族の覚えも良くなる。
 よって、そういった趣味のある者は、殺しても特に心の痛まない人種――異国の民を、ここに連れてくるのである。
 しかも、東棟ということは――
 
「女の子を惨殺、ってことですか」
「だろうなあ。殺される前に楽しんでおきたいが――無理矢理やって、ショーに響かせちまったら、首が飛んじまう」
 やれやれ、と監視員は肩を竦めた。
「ま、そんなわけだから、410号室はもう片づける必要はないぞ」
「はい。わざわざありがとうございます」
「おう。じゃあな――っと、気が向いたら新しい娘を見てみたらどうだ?
 俺もさっき覗いてみたが、これがまた、結構な美人だぜ?
 バラバラにされる前に、生きてる姿を頭ん中に納めとくのも悪くねえぞ」
「はあ」
 
 手を振って、監視員は去っていった。
 それを見送り、僕はこれからの予定を考える。
 ――白の食事の時間までは、まだ当分ありそうだ。
 残りの空き部屋もあとひとつ。その片づけは、後日に回しても問題ないだろう。
 
 特別どうこう思ったわけではない。
 ただ、なんとなく。
 これから殺されることが決まっている少女に。
 
 ――なにか、してあげられることがあれば。そう思って。
 
 僕は、410号室へ向かっていた。
403名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 23:23:27 ID:JB2Kp0ws
>>393
GJ!なんだか今までに味わったことのない新感覚の予感!!!
404血塗れ竜と食人姫:2006/06/05(月) 23:23:45 ID:BlMQXu3W
「……××?」
 細々しい声が耳に届いた。
 檻の向こうには、一人の少女。
 それは、美少女と呼ぶに相応しい、線の整った見事な造形。
 白もかなり整った顔をしているが、あちらは可愛らしいという表現の方が似合っている。
 それに対して、こちらは幼さと美しさを危ういバランスで保っていて、そこに異国のものらしき異色の瞳が映えている。
 思わず、見とれてしまった。
「……××××、××××?」
 少女が何かを言っている。しかし、異国の言葉のようで、うまく聞き取れない。
 ――いや。
 よく耳を凝らして、発音を一つ一つ丁寧に拾えば、何とか少女の言うことが聞き取れそうな気がした。
 これでも昔は執政官を目指していたのだ。大抵の異国語は身につけている。
 ただ、この少女の言葉は、訛りが強くて、聞き取りにくい。
 訛りの特徴を少しずつ把握し、少女の言葉の意味を探る。
 
 少女は、じっと見つめる僕を訝しげに眺めながら、幾度となく言葉を投げかけてくる。
 ……うん。だいたい、わかってきた。
 やっぱり、海向こうの共通語だ。それがちょっぴり重めの訛り方をしている。
 一度把握すれば後は容易い。少女が何を言っているのか、大体わかるようになってきた。
 
 異国の少女が、溜息を吐いた。
 
「……はあ。やっぱり、通じないか。このまま誰とも話せないのが続くのかなあ」
 そう言って、視線を逸らそうとした少女に。
「いや、通じていますよ」
 そう、声をかけた。
 
「っ!?」
 少女の反応は面白かった。
 まず、びくっと飛び上がり、辺りをきょろきょろ見回した後、恐る恐る僕の方を見る。
 視線をあちこちに移動させながら、時折僕と目を合わせ、ゆっくり少女は口を開いた。
「……私の言ってること、わかるの?」
「はい。わかります」
 そう言って、微笑んでみせた。
 少女はぽかんと僕を見つめ、やがて、恥ずかしそうに、こう言った。
 
「あの……お腹、ペコペコなの。なにか、食べるもの、貰えない、かな?」
405血塗れ竜と食人姫:2006/06/05(月) 23:25:53 ID:BlMQXu3W
今回はここまで。
中途半端なところでゴメンナサイorz
というか無駄に長くてゴメンナサイorz
次こそ……次こそ身の捩れるような修羅場を……っ!
406名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 23:26:21 ID:kkNo4S7S
惨劇と言うワードだけで興奮しているオレがいる。
407名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 23:27:40 ID:KfB8sfCy
怒涛の神作品ラッシュに幸せが止まらない(*´∀`)アハハン♪
408名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 23:29:59 ID:tFgb8qQG
ここ数時間、更新ボタン押せばSSがドンドン出てきて嬉しい反面
過疎った時の寂しさが怖いぜ。
409名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 23:37:52 ID:thUmc7pW
YouがCanなら執筆しちゃいなYo
410名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 23:41:32 ID:MmUqrmlT
>>405
いやいや。
こうやって舞台設定や雰囲気を丁寧に作ることで感情移入しやすくなる
ってものだし。


とりあえず、白の嫉妬を震えて待ちます!
411名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 00:25:43 ID:Pw8uXp8u
>>405
面白いから長くても苦にならんですよ。
続き楽しみにしています。

しかし、書き込む前にちゃんとリロードして確認しないとうっかり割り込みかねない
ほどSSが投稿されるなんて、ホーント、このスレは天国だぜーフゥハハハハハー
412名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 00:44:55 ID:q/SoVr6D
ホーントこのスレは血が大好きな修羅場住民の楽園だぜぇフゥーハハハハー
あ、僕はどちらかというと血の出ないラブコメチックなもののほうが好きです
あ、いやもろちん刺すか刺されるかの殺伐とした話も好きですよ
413名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 01:10:41 ID:MNvXRHL8
一日の始まりはここで始まりここで終わる・・・

そんな生活が大好きだ・・・天国というか楽園というか生活の一部
414 ◆rAFXqjbZng :2006/06/06(火) 01:42:45 ID:Sq2U1eGp
投下します
415 ◆rAFXqjbZng :2006/06/06(火) 01:47:51 ID:Sq2U1eGp
 あの後、ほとんど耳に入らなかった理恵ちゃんの話がようやく終わって、キョータ
くんのいるクラスに向かった。
 だけど、クラスの扉から中を伺っても、キョータくんの姿は見当たらなかった。ク
ラスの人に訊いてみても、分からないとか、見てないとかクラスメイトなのに無責任
なことばっかり言って。
 いつもはわたしが来るまで待つか、たまに待ちきれなくなってわたしを呼びに来る
かのどっちかで、黙ってどこかに行ってしまうなんてこと滅多になかったのに。おか
しいな、と思って昼休みの間、学校中まわって探したけど、結局――見つからなかった。
 放課後も、すぐにキョータくんのクラスに行って探したけどやっぱりいなくて。
 一抹の不安がよぎって、泣きそうになった。
 でも前にも何か用事があってこんなことがあったから、今回も何か用事でもあったん
だ、って必死に思い直してあまり気にしないことにした。

 ……不安が現実になったのはその次の日だったんだ。

「キョータくん……お、おはよ〜!」
 少し不安を感じながらも、いつものように二階のキョータくんの部屋に向かって大き
くおはようをした。いつも起こしに行くよりちょっと早い時間。わたしはゆっくり話し
ながら余裕を持って学校に行けるように、その時間をとった。
 一心にキョータくんのいる部屋の窓を見つめる。
 ――ねぇ、早く。早く姿を見せて。早く声を聞かせて。昨日一緒にご飯食べられな
かっただけでね、一緒に帰れなかっただけでね、もうわたし、駄目になっちゃいそう
なんだよ?
 キョータくんの声がないと今日一日頑張るなんて無理なんだから。ね? だから早
く……。
416お願い、愛して!2 ◆rAFXqjbZng :2006/06/06(火) 01:49:46 ID:Sq2U1eGp
「先に行ってて、今起きたんだ!」
「えへへ、そんなの待ってるからいいよぉ!」
 いつも、そうだったじゃない。
 待てって言われたら一日中だって……待ってるんだよ?
「…………」
 ……あれ?
「時間はあるんだから、ゆっくりさせてよ」
「え……?」
「急かされたくないんだ。早く行ってよ!」
 え……ぇ?
 わたしが毎日、キョータくんを急かしてたの?
「あ、ご……ごめ……! そんなつもりじゃなかったの……あのっ」
――シャー
キョータくんはわたしの言葉を遮るようにカーテンをしめてしまった。
……。
…………。
「キョータ……くん……」
 残された私の言葉は、小さくなって、曇天に消えた。
417お願い、愛して!2 ◆rAFXqjbZng :2006/06/06(火) 01:54:03 ID:Sq2U1eGp



 ――最近、白河さんの様子がおかしい。
 そんなクラスの男子の噂が耳に入った。白河は瑞菜の姓だ。
 気になったが、訊いたところで教えてくれるとも思わなかったので、そのまま
聞き耳をたてた。
 噂によると、元気がない。呼んでも返事をしない。睨んでくることがある。た
まに目の下に小さなクマができている。など、普段の瑞菜からはあまり想像でき
ない様子のものだった。
 もしかしたら、何か疲れているのかも知れない。
 様子を見に行きたかった。何とかして元気をつけてやりたかった。
 嫌われていると分かってても、今も昔も、何よりも大切な幼馴染であることに
は変わりないのだ。
 悩みがあったら聞いてやりたいし、辛いことがあったなら慰めてやりたい。
 いつか、あのどうしようもない苦しみの中で支えあったように……。
 だけど、僕のせいで瑞菜の評判を落とすようなことがあってはいけないから、
今、瑞菜に会いに行くことはできない。
 幸いにも、明日には夏休みが入る。
 僕にとっても好都合だし、瑞菜もこの長期休みでゆっくり休養することができ
るだろう。

 授業が終わって、瑞菜が来る前にすぐに家に帰り、携帯の着信を確かめると、
いくつもの留守電やメールが溜め込まれていた。
 宛名は全て瑞菜からだった。時間を確認すると、休み時間や昼放課に集中して
いる。
 僕は携帯を手に取ったまま、長い間、中身を確かめるでもなく、呆然とディス
プレイを眺めていた。
 どれぐらい経ったか分からなくなった頃、胸が苦しくなる想いをしたが、結局
中身は確かめず、返事を一通だけ送った。
 中身を読んでしまえば、この想いを抑える事ができなくなってしまいそうだっ
たからだ。
 送った一通のメールの内容は、
『夏休みの間、留守にするよ』
 その短いたった一行だった。
418お願い、愛して!2 ◆rAFXqjbZng :2006/06/06(火) 01:59:08 ID:Sq2U1eGp



 どうして? なんで?
 キョータくんが、わたしを避けてる……?
 おかしい、おかしいよね? そんなの絶対へん。
 そんなこと今までなかったのに。まわりの子達が思春期で男女が疎遠になって
からも、わたしたちだけはずっと一緒だったのに。
 わたし、なにかキョータくんに失礼な事しちゃったのかな?
 あの時、お昼誘いに行くのが遅かったから? そうなんだ、そうなんだよね?
 ごめん、ごめんね……。あんな女に構っちゃったばっかりに。もうこんなこと
絶対ないから。友達や先生に声をかけられても無視して行くよ。わたしだって本
当はそうしたかったんだよ? もう良いよね、仲良しぶらなくても。なんか疲れ
ちゃったし。
 それともわたしといるのが恥ずかしくなっちゃったの?
 ごめんね、わたし不細工だから……ごめんなさい。おかしいのどこかな?
 髪? 顔? 胸? お腹? 手足?
 キョータくんが気に入らないなら髪も切っちゃうし、ダイエットだってい
くらでもするし、整形や豊胸手術だっていつでも受けてあげるよ。ううん、
あげるじゃなくて、したいの。キョータくんが望むなら、こんな身体に未練
なんかない。
 ねぇ、キョータくん……だから……一緒にいようよ。
 こんなお仕置き、耐えられないよぅ…………。他の事なら、どんなことで
もしていいから……。
 キョータくん……キョータくん……っ。

 ――ピピピピピ
 うるさい着信音に、わたしはけだるさを感じる身体を起こして、丸テーブ
ルに置かれた携帯を手に取った。
 制服の下に感じる生暖かくて、ぐちゅぐちゅと湿っぽい感触に自慰後の自
己嫌悪を煽られ、早く寝て全部忘れたいと考えてしまう。

 宛名――キョータくん。
 え……っ?
 キョータくん……?
 キョータくんだぁ……!
 あれだけ送っても返してくれなかったのにっ。

 私は歓喜に震える手を必死に抑えて、すぐにメールを開いた。

『夏休みの間、留守にするよ』
 
419 ◆rAFXqjbZng :2006/06/06(火) 02:06:40 ID:Sq2U1eGp

 やっちゃった。テヘ?
 ……415のタイトルに「お願い、愛して!2」が抜けていました。
 申し訳ありません……。

 やっと次辺りに新キャラ出せそうです。
420名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 02:33:53 ID:bJP1ejAS
一瞬、キョータくんが気に入らないなら手足も切っちゃうからに見えた・・・
どんな新キャラが出るのか期待w
作者さんGJでした
421名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 03:07:12 ID:a36PQeEp
スレが立って1週間で残りが170kしか無い件について
422名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 03:23:16 ID:4tNk1ciY
このペースだと山本君の作者さんが帰って来る頃には何スレ目になってるだろうね。
423名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 05:12:06 ID:XrVMbevK
GJ!どういう新キャラが出るか今からwktkしていますね
424名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 08:28:28 ID:70zg83qX
俺も痩せようと思う
425名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 10:35:18 ID:CLY57LIC
でも実際いたよね、夏休み明けて二学期に激変してるヤツ
426名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 11:06:00 ID:hF2THaom
このままでは夏休みが明ける前に
瑞菜ちゃんが衰弱死してそうだ。
427名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 12:15:05 ID:ba2NQCnD
そして怨霊になって、キョータくんに取り付くのか?
428名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 12:27:00 ID:X/Gnh3Ua
夏休みになると更にSSを書く人が増えるかもな
429名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 12:39:59 ID:XQfQ+9kA
確実に厨房が増える
430名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 13:07:22 ID:I0xv78jS
厨房がこのスレタイ見て覗くかどうか疑問だがw
431名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 13:44:57 ID:XQfQ+9kA
言われて見れば確かにw
432Bloody Mary 2nd container 第二話 ◆XAsJoDwS3o :2006/06/06(火) 15:06:34 ID:e4v3zHsy
 あたしには好きな人がいる。
あたしより二つ年上のお兄ちゃん。三年前お父さんに引き取られた人だ。
 初めて会ったときは何を言っても反応がない無口な人だった。挨拶やお礼なんかも言わない、無愛想を体現したような。
ヘンな人。最初の印象はそんな感じだった。
 ある日、その人はお父さんに剣を習いたいと言った。
てっきりお父さんは断るかと思ったんだけど、意外にもあっさり承諾したみたい。あの人から何か感じ取ったのかな?
そこで初めてあたしはあの人に興味を持った。
 淡々と剣の訓練をこなすあの人をあたしは少し離れて眺めていた。
なんでこの人はこんなに、まるで何かにとり憑かれたように訓練するんだろう。ますますヘンな人。
そう思いながらもその人から目が離せなかった。無愛想な彼に少しずつ世話を焼くようにもなった。
 もともと天賦の才能があったのだろう。それに加えてあの努力。
その人が戦場に出る日はすぐに来た。
 お父さんと同じように腰に二本の剣を挿し、戦場に向かう後ろ姿。それをあたしは見送った。
新兵が戦場で死亡する確率は高い。待ってる間不安で押し潰されそうだった。
以前、旅団の人が初陣だったときもここまで心配していなかった。
 どうして…?どうしてこんなにあの人が気になってるの…?
答えは簡単だった。
――――あたし、あの人が好きなんだ。
 呟くとそのときの自分の感情とピタリと符号した。
あの人が無事に帰ってきたのを確認すると我を忘れて泣きながら飛びついた。
 その日を境にあの人は少しずつあたしに話しかけてくれるようになった。
彼の心境にどんな変化があったのか解らなかったけどあたしは天にも昇る気分だった。
それまではどちらかというと殺伐としたイメージだったのに実際に話をしてみると凄く優しい人だった。
とても争い事を生業にしている人間とは思えないくらい。
 これは後からお父さんに聞いたのだけど、彼は例の事件で心にかなり深い傷を負っていたらしいから
本来の性格はあんな感じだったんだと思う。
 嬉しい。あたしがあの人の心を開いたんだ。
自惚れかもしれないけど、もしかして自分はあの人の中で結構重要な位置にいる人間なのかもしれない。
そう思って告白してしまおうかと思った。
433Bloody Mary 2nd container 第二話 ◆XAsJoDwS3o :2006/06/06(火) 15:07:25 ID:e4v3zHsy
でもそれはすぐに思いとどまることになる。
 彼が毎夜、うなされながら女の人の名前を何度も呼んでいることを知ったからだ。
キャス――――死んでなお、あの人の心を捕らえて放さない女性。
 羨ましかった。あの人にそれほど想われている、顔も知らないキャスという女性に嫉妬した。
でも、あたしにはまだ未来がある。死人には決してマネできないアドバンテージだ。
だからあたしは彼が過去と決別できるようになるまで影で支えることにした。
 いつか彼の隣に立ち、手助けができるようになるため、銃の扱い方を猛勉強した。
 あの人が騎士になると言い出したときは心が張り裂けそうだったけど我慢した。
 戦争が終わったら騎士を辞めると思っていたのに結局辞めなかったことにも文句を言わなかった。
全ては彼が過去の悪夢を断ち切るため。
 ただでさえあの人が騎士になってから殆ど会えてなかったのに、
そのうえアリマテアを離れるというのは正直気が変になりそうだった。
いや、それは現在進行形。オークニーに来て約半年。さすがに我慢の限界に来ている。

早く、早く、あの人に会いたい。
――――――――ウィルお兄ちゃん。


「遅いなぁ…お父さん。手紙ではそろそろって書いてあったのに」
 馬車の停留所で独り呟く。お父さんが帰ってきたらお兄ちゃんが半年間何してたか聞かなくちゃ。
「あ!」
 街の入り口から見える道の向こうから馬車がやって来るのが見えた。お父さんが乗ってるのあれかな。
少しずつ近づくにつれ、荷台に乗っている人の形がおぼろげに見えてくる。
乗客の一人に体格のいい人影。間違いない。おとう―――――

ドクン

 あれ……?お父さんと話してる、あの人……誰?
見間違えるわけない見間違えるわけない見間違えるわけない見間違えるわけない見間違えるわけない。

ウィルお兄ちゃん!!!!!!!!

 心臓が壊れたように鼓動を早めていくのが解る。
どうしてここにいるのかなアリマテアの方はどうしたのかな騎士はもう辞めちゃったのかな鎧は着てないから
そうなのかもううんきっとそうもしかしてあたしに会いに来てくれたのかなもしそうだったら嬉し――――

「お兄ちゃーーーーーんっっっっ!!!!!!!!!」

 気が付けばあたしは全力で駆け出した。
お兄ちゃんに会えるお兄ちゃんに会えるお兄ちゃんに会えるお兄ちゃんに会える!!!!

あ、お兄ちゃんが驚いた顔してる。すぐにそっちに行くからね。
ちょっと危ないけど、走行中の馬車に飛び乗った。体術の訓練サボらなくて良かった。
434Bloody Mary 2nd container 第二話 ◆XAsJoDwS3o :2006/06/06(火) 15:08:12 ID:e4v3zHsy


「おにいちゃんっ!!」

 すぐにお兄ちゃんに飛びついた。半年振りの懐かしい匂いが鼻孔をくすぐる。
…あれ?でも何か違う匂いも混じってない?
「こら!走ってる馬車に飛び乗る馬鹿がどこにいる!?」
 馬車の運転手さんに怒られちゃった。別にいいや。お兄ちゃんに会えたし。
「危ないだろ、マローネ」
 嗚呼、お兄ちゃんの声!!鼓膜から甘い痺れが全身に広がる。
「えへへ。格闘訓練の賜物だよー。
それよりお兄ちゃん、あっちで身体壊さなかった?ちゃんとご飯食べてる?歯は磨いた?」
「俺は子供か」
 お兄ちゃんのトレードマーク、困ったような笑顔。久しぶりに見れた。嬉しいな。
「お前の方こそ元気にしてたか?」
「誰に言ってるの。このマローネちゃんが体調崩すハズありませーんっ」
「まぁ馬鹿は風邪ひか……むごっ」
 要らないこと言う前に口に拳を突っ込んだ。
あ、手がお兄ちゃんの唾液でべちょべちょ…えへ。後で舐めちゃお。
「あー、マローネ。父親は無視ですか?」
「お父さん、うるさい」
 なんか言ってるお父さんを一蹴。
「……娘がグレちまった……」
「はいはい、オカエリナサイオトウサン」
 拗ねてしまったお父さんにも一応挨拶。そこで少しだけまわりの状況が目に入る。
……あれ、やけに視線が痛いんだけど……
周囲を見ると三人の女性が穴を開けてやろうかというくらいこちらを凝視していた。
やだ。他に乗ってる人たちにあたしたちのラヴっぷり見せつけちゃったぁ。にへら。
 三人を見ていることに気づいたお兄ちゃんが不意に口を開いた。
「あぁ、マローネ。紹介するよ。この人たちとはアリマテアから一緒に旅してるんだ。
手前の銀髪の人が――――」
 何か信じられないことを言おうとするお兄ちゃんの声を、こちらをずっと見ていた三人が
途中で遮るように同時に声を上げた。

「ウィルの妻のマリィ・ケノビラックです」
「ウィリアムの妻、マリベル・ケノビラックじゃ」
「ウィリアム様の妻でシャロン・ケノビラックと申します」



――――――――なに……それ。


「ちょっとっ!?三人とも、変なところでシンクロしないでください!!
俺は結婚なんかしてません!!」

 さっきまでの幸福感がなりを潜め、代わりに苛立ちと不安があたしの心を埋めていく。

 なんで、楽しそうに話すの…?お兄ちゃん。
なに?この人たち。
何なの……このドロドロとお腹の底に溜まっていく嫌な感情は。
435Bloody Mary 2nd container 第二話 ◆XAsJoDwS3o :2006/06/06(火) 15:09:13 ID:e4v3zHsy
以上、第二話でした。
436名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 15:47:14 ID:X5VM6q2L
GJ!
相変わらずいい仕事っぷりで。
wktkして続きを待ちます
437名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 15:50:41 ID:lVzMyppW
マローネ、健気でいい子の様だ・・・
まぁ拳についた唾液を舐めるのはどうかと思うが
その心の中の台詞にぐっと来ている俺はもっとどうかと思うが
キャラクターの書き方がうますぎてどの子も堪らない(*´д`*)
438名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 15:55:10 ID:XrVMbevK
マローネは素晴らしい子だな、そして三人のハモりに早くも嫉妬全開か!
439名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 18:12:51 ID:H49aUH1+
GJ
うはwww展開ハヤスwwwwwwwwww
440トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/06/06(火) 18:54:24 ID:71Bq3xAk
では投下いたします・・。
441煌く空、想いの果て ◆mxSuEoo52c :2006/06/06(火) 18:58:57 ID:71Bq3xAk
 第一話『運命の黒い糸』
 何もする気がおきない。
 あれから、ずっと泣き寝入りを続けて、夜もロクに眠れなかったからだ。
 告白する前にフラれるという、失態を犯した俺は本当に道化師のようである。

未練がましく、思い出のアルバムを開けて、ありし日々の俺と梓が映っている写真を見ていた。
二人とも楽しそうに笑っていた。今、思うとこの時が一番楽しかったかもしれない。
 でも、現実は残酷すぎて、梓は他の男のモノになってしまった。
 その事については、梓が選んだ男性なので俺がとやかく言う必要がないのはわかっている。

 だが、感情はそう簡単に納得できるものではない。
 まして、ずっと一緒にいた幼なじみに彼氏が出来たという報告はあってもおかしくはないだろうか?
 そんな風にマイナス思考に陥っては、落ち込んだり沈んだりを繰り返してると


 すでに学校の登校時間である。
 本来なら、幼なじみの梓が家に迎えにやってくる。
 いい加減にやめろと言っているのに、梓は全然言うことも聞かずに懲りることなく迎えにやってくるのだ。
 
 これが日常茶飯事であった。
 もう、梓はもう迎えに来ることはないんだろうな。
 と、過去を懐かしく思っていた時であった。
 
 インタ−ホンの音が壁の向こうから聞こえてきた。
 窓を勢い良く開くとそこにはいつもの日常のように梓が手を振ってニコニコと笑っていた。
 
 
 
 あれ?
 
 どうして?

 梓が俺を迎えに来るんだ?

 すでに恋人がいるはずの梓が俺を迎えに来る必要性はない。
 どちらかというと、交際している彼氏を迎えに行くのが恋愛の王道ではないんだろうか? 
 未だに幼なじみの枠にはまっているようなら、俺ははっきりと言わなくては。

 もう、俺を迎えに来なくていいぞって。

 そうしないと交際している彼氏に誤解を受けて、
 梓と彼氏の関係が俺のせいで亀裂が走るのは良くないことだ。

 両親が海外で仕事をしているために年中一人暮らししている俺は梓に今まで家事や食事など、
身の回りの事を依存してきたが。これも終わりにしなくてはいけない。
 
 幼なじみの関係にピリオドを打つ。
 それが梓のためでもある。
442煌く空、想いの果て ◆mxSuEoo52c :2006/06/06(火) 19:00:31 ID:71Bq3xAk
「翔太君。おはよう!!」
 元気のいい声で朝日の遮光よりも眩しい笑顔で梓は言った。
「もうすぐ、学校だよ。早く支度済ませておかないと遅れるよ?」
「いいよ。もう、いちいち送り迎えとかしなくていいよ」
「えっ?」
 笑顔のまま固まった梓は硬直していた。
「後、もう家事とか食事を作りにこなくていい。正直、欝陶しいんだよ」
「え、え、翔太くん……?」
 その言葉に反応して、笑顔が崩れていき、今にも泣きそうな表情を梓が浮かべる。

 最初からわかっていたさ。
 梓に彼氏が出来たとしても、優しい性格をしているお前はいつもと変わらずに
 俺に接してくるだろう。恋人でもない俺に優しくしてどうする? 

 あれことおせっかいを焼かないといけないのはお前が愛する男だろうが?
 だから、ここではっきりと幼なじみと決別しなくちゃいけないんだ。
 例え、梓を傷つける言葉を俺が言っても心配ない。彼氏に慰めてもらえばいいことなんだから。

 胸に突き刺さる鋭い痛みを無視して、俺は徹底的に言葉を突き付ける。

「もう、俺に構わないでくれ!!」
梓の反応を見せずに、俺は逃げるように後ろを振り返って、乱暴にドアを閉めた。

「待ってよ翔太君!! どういうことなの!! ねえってば!!」
 取り乱す梓の憔悴した声が聞こえても、俺はただ耳に手を押さえて、聞こえないフリをするしかなかった。
443煌く空、想いの果て ◆mxSuEoo52c :2006/06/06(火) 19:03:39 ID:71Bq3xAk
 俺が梓を避け続けてから、もう一週間になる。
 あれほど仲が良かった二人の態度を見て、
クラスメイトたちはあれこれと噂が流れているようだが、あえて気にしなかった。
いや、気にしていても、翔太が梓を苛めたとか、梓以外の女に乗り換えたとか信憑性のない噂ばかりだし。

 その時期からだろうか、梓をチラチラと様子を見ていると何故か元気がなかった。
どこか落ち込んでいるように見えるが、あの彼氏と上手く行ってないんだろうか?
「よう。水野」
「なんだよ、山田」
 いきなり、乱暴に声をかけてきたのは悪友の山田。名前はどういう名前か忘れたがあえて気にしない。

「お前と風椿さん。一体、何があったんだ? クラスであれこれと噂になってんぞ。
あれほどべったりな新婚さんだったのに。何があったんだってな」
「別に何もないよ」
「それにここ一週間でお前の機嫌が死ぬほど悪そうだしな」
 うっ。さすがは長年付き合いしている悪友。見抜いてやがる。
「よしゃあ。だったら、放課後は俺と付き合え。てめえが欝憤しているモノを聞き出してやるよ!」
「へいへい。山田の奢り決定な」


 すんなりと俺は返事した。
 それから、山田が連れて行った先はカラオケ店。
真っ先にオ−ダーしたのはアルコ−ル類であった。
何か親戚の兄ちゃんが働いているらしく、すでに手筈は整っていること。

「とりあえず、飲め。そして、お前の欝憤を吐き出すんだ水野!!」
 匂いを嗅ぐ時点ですでに出来上がっている山田は容赦なく俺と梓の事に聞き出そうとしている。
心配してくれる友達には隠すことでもないし、ここは正直に言ってしまおう。
「実は……」
「なんだってーーー!!」


 山田にあらゆることを告白した。
 梓が他の男をキスしている所を目撃したこと。
 恐らく、交際している彼氏なわけだが、幼なじみの俺に何も言ってくれなかったこと。 

 彼氏がいるのに朝から迎えにやってきたこと。
 いつまでも、幼なじみの関係じゃいられないと思って、梓に突き放すような態度をしていたことなど。
 今まで他人に言えなかったことを俺はお酒の力を借りて、
なんでもかんでも喋っていた。
山田はうんうんと頷きながら、わかるわかると言いながら、コップにお酒を注いでいてくれた。
 その後、お酒を飲みまくった泥酔状態になりがらも、
 男二人で閉店までラブソングを歌いまくるという狂乱のひとときが過ごされた。


 そして、深夜。
 親戚の兄ちゃんらしき人物に肩を貸してもらいながら、山田は俺に向かって叫ぶ。
「水野! 適当に……適当に生きるなぁぁぁぁぁ!!」
 それは某エロゲ台詞だが、山田はそれでも叫び続けていた。
 ありがとうよ。

 ちゃんとお前の魂の叫びは届いてるよ……。
 ようやく、俺は一つの失恋を乗り越える勇気を持てたような気がする。
444名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 19:08:24 ID:ba2NQCnD
GJ!この後の展開に期待!!!
445煌く空、想いの果て ◆mxSuEoo52c :2006/06/06(火) 19:09:03 ID:71Bq3xAk
 深夜。
 自宅に帰宅してみるとテーブルの上には料理とメモが置かれていた。
 俺の家の合鍵を持っているのは梓だけ。
 
 普段から家事や食事をするためにやってくるので、その合鍵を使って、忍び込んで作ったんだろう。
 だから、俺は作ってくれた料理は手を付けずに流し台に放りこんで、水道水で流す。
 
 メモは読まずに破り捨ててゴミ箱へと捨てた。
 梓の誠意を無駄にする行為だが、もう受け取ったら駄目なんだ。
 そう、俺は自分を納得させて、さっさと寝ることにした。

 更にそれから一週間後。
 俺は梓と視線を合わせることなく、ずっと無視を繰り返していた。
 携帯に送られてくる数十件のメ−ルが送られてきたので、メルアド変更
 後、着信拒否に設定を変える。朝早く迎えに来るので、それよりも朝早く起きて、さっさと学校に登校
 。昼休みも一緒に食べようと誘ってくるので、速攻に教室を出ることにする。
 思っている以上に梓は幼なじみとして行動をとるので、その度に俺はヒヤヒヤとしていた。
 噂の彼氏に誤解されるってことは必然的に俺が原因で別れることになってしまえば、
 
 
 それはそれで俺の目覚めが悪くなる話だ……。
 でも、彼氏と上手くいっていないのか、梓の顔から笑顔が消えている。
 あんなに明るかった梓が常に落ち込んでいた。
 助けてやりたいが、今の俺が手を差し出すことはできないのだ

 そんな、ある日。
 下駄箱に可愛らしいピンク色の封筒が入っていた。
 中身を開けると、女の子らしい筆跡でこう書かれていた。

 愛しい愛しい水野先輩へ

 私と先輩はきっと運命の黒い糸で結ばれています。
 もし、宜しければ。
 今日の放課後、屋上に来てください。待ってます。


                  猫崎猫乃





 と、何か痛い内容のラブレターだが……。
 長い人生で初めて、俺はラブレタ−という物をもらってしまったらしい。頬がいろんな意味でにやけている。
 失恋を癒すためには、新しい恋ってことか。
 俺は喜び足で急いで屋上へ駈け上がった。

446煌く空、想いの果て ◆mxSuEoo52c :2006/06/06(火) 19:11:01 ID:71Bq3xAk
 ここは梓とその彼氏がキスしていた嫌な思い出がある場所だ。
 だが、夕日の陽をバックにした少女の姿を見かけるとその事自体がどうでもよくなってきた。

「初めまして。水野先輩。あのラブレターの方は読んでいただけたでしょうか?」
「ああ。読んだよ。運命の黒い糸ってなんだよ」
「それは先輩と私が結ばれる運命を指しているんですよ。
糸が黒いのは別にわたしが腹黒いとかそういうわけじゃないんです」
 猫乃は優しく微笑した。単にあちらの興味を持たせるためにジョークってことか。
それにこのような文章を書かれるとどうしても気になって、屋上まで来てしまうだろう。
「わたし、入学してからずっと水野先輩に憧れていました。
校内では知らない程の問題児で、唯我独尊の道を行く先輩の心強さに惚れてしまいました」

 そりゃ、この学校でいろんなことをやりまくっていたから。
後輩にそういう目で見られるのは仕方ないことだけど。

「好きです。わたしと付き合ってくださいっっ!!」

 猫乃は首から上まで真っ赤に染まっていた。体全身が緊張してあちこちと硬直させている。
 今日初めて会った後輩が俺の事が好きだと告白してくれた。
 脳裏によぎる幼なじみの梓の姿。
 だが、梓はもう他の男と付き合っているんだ。
 だったら、俺が他の女の子と付き合っても別にいいだろう。

 俺だってすでに終わってしまった恋にしがみ付いてる訳にはいかない。
 新しい恋に向かって走らないと行かないんだ。
 俺たちが乗った列車は途中下車できないんだ!

「付き合ってもいいよ。でも。まだ、猫崎の事はよく知らないし、最初は友達からってのはダメかな?」
「ううん。それだけでも私は大感激ですよ!! もう、一生ついていきます。先輩!!」

 胸に鋭い痛みを突き刺さるが、あえて俺はできる気にしないようにしていた。
447トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/06/06(火) 19:14:06 ID:71Bq3xAk
なんとか投下できました。
思っていた以上に長文になってスマソw

泥棒猫キャラも出てきたことだし、今度はヒロイン視点のお話となります。
448名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 19:15:45 ID:lVzMyppW
いゃっほう、泥棒猫最高ぅ
むしろ長文(*^ー゚)b グッジョブ!!
この主人公もかなりの突っ走り方やなぁ
根はいい奴っぽいが(;つД`)
449トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/06/06(火) 19:16:19 ID:71Bq3xAk
>>胸に鋭い痛みを突き刺さるが、あえて俺はできる気にしないようにしていた。

あえて俺はできるだけ気にしないようにしていた。

すみません、誤字です・・。
450444:2006/06/06(火) 19:18:12 ID:ba2NQCnD
ヤベッ!神々の間に割りこんじまった・・・orz
451『ジグザグラバー』第十三幕:2006/06/06(火) 20:10:02 ID:g7honkN+
 朝でございます。いつもながらの体温も快く、昨日の決意もあってぐっすり眠れた僕は、
まだ交渉の疲れが残っているものの目覚めは爽快…。
「おはようさーん」
 じゃない!?
 あん畜生、一度注意しただけでは分からないらしく今日もドアを元気に蹴り続けていた。
注意をしたからといって、どうやら安心するのは早計だったらしい。流石は『疾走狂』、
そう簡単には諦めてくれないみたいだ。
 対応を悩んでいると、僕に抱きついていた華が軽く身をよじった。それもそうだ、朝か
らこんな騒音を聞かせられたら、いくら寝起きが最悪な華でも堪えるだろう。僕の意識は
華への心配よりも、華を苦しめる水へと向かっていった。
「おはようさーん」
 しかし怒鳴り返そうにも華が起きては元も子もないし、だからと言って華の側を離れよ
うものなら、何かの拍子に起きた華がパニックになってしまう。このジレンマと騒音地獄、
そして近所の皆さんと大家さんのことを考えながら一番の解決方法を考える。
 約一分。
 僕は下らない解決方法を思い付くと、それを実行することにした。多少間抜けな構図に
なるが、背に腹は代えられない。それにこの騒音だと、華が目を覚ますのも時間の問題だ。
ならば答えは簡単で、この際華が起きることに目を瞑り、玄関に行ってこの騒ぎを止める
ことに集中する。そして、パニックを起こさないようにという観点で見れば、答えは簡単。
「ちょっとごめんね」
452『ジグザグラバー』第十三幕:2006/06/06(火) 20:12:39 ID:g7honkN+
 すなわち、御姫様だっこ。しかも、これならおんぶと違い、目が覚めたときに目の前に僕の顔があり安心できる。つまりは一瞬で効果のある鎮静作用も期待できるのだ。
 僕は華を抱えたまま玄関に立つと、
「黙れ、静かにしろ」
 小さな声で言った。
「あ、旦那? 開けてよ」
「駄目だ、帰れ」
「でも…」
「僕に何か要求はないかな? 今帰ってくれるなら放課後に交渉の機会を設けるよ」
 少し迷ったのか、音は止んだものの動いた気配はない。
 数分。
「交渉は二人きりだよね?」
「そうするつもりだよ」
 それに納得したのか、水は帰っていった。
「というのが今朝のやりとりで、僕は今、水と二人きりで教室に残っています」
「旦那? 誰に説明してるの? 今のこの場所は私と旦那しか居ないのよ?」
 僕の言葉に、水は目を細めて答えた。
 本当に、二人きり。
 華は教師に呼ばれて職員室に行っている。教師に対して裏工作を行い、ぐずる華をなだ
めすかした甲斐があったというものだ。こんなときばかりは、僕の特技を便利だと思う。
「交渉開始。僕が許可するのは、そっちが話し掛けてくる回数を無制限にするもの」
 僕は言って水の顔を見ると、呆気に取られた表情をしていた。それはそうだろう、必死
で獲得した会話の権利が、いきなり三回から無制限になったのだ。株価暴落どころではな
く、第二次世界対戦後のドイツのインフレもここまで酷くないという程の超経済だ。
「良いの?」
「それなりの要求だからね、もう一つ何か付けようか?」
「な」
「華を説き伏せて、キスをしたことを許させようか? 噛みつくのを止めさせても良い」
453『ジグザグラバー』第十三幕:2006/06/06(火) 20:16:00 ID:g7honkN+
 自分でも嫌になる程の大盤振る舞いだが、今からの要求はそれ程のものだ。自分の要求
を言わずに話を進めるのは卑怯な手なのであまり好きではないが、そうも言ってはいられ
ない。今までのように手段を選んで交渉する程、今の状況は甘くはない。僕にしてみれば、
ここまで許していた現状の方が異常なのだ。だから正常に戻すには、多少の強引な方法を
使ってでも元に戻す必要がある。無理にでも、要求を飲ませることが第一だ。
「今言ったのを全部するけど、要求を飲むかい?」
 数秒。
「分かった」
 獲物はついにかかった。目先だけでなく、大きく見ても魅力的な言葉は、そちらに目を
向けさせて思考を鈍らせる。
「じゃあ僕の要求だ。これからは、僕の半径2m以内に近寄らないでくれ」
 言い終わると同時に僕自信が一歩下がり、その事実を突き付ける。
 もう近くには、立たせない。
「そん、な」
 僕が姿勢を整えると同時に、水は崩れ落ちた。それは昨日のさくらを思い浮かばせる、
偏った強さの人間が持つ異常な脆さの現れだ。
 涙を流して地面に座り込むその姿を見て、最近は女の子を泣かせてばかりだなと思う。
もう少し僕が要領良く動けていたら、それどころかもう少し早めにしっかりと拒否を出来
ていたのなら、結果は違っていたのかもしれない。
「だ、んなぁ」
 僕を弱々しく呼びながら、まるで子供のように泣きじゃくる姿はあまりにも痛々しい。
いつもヘラヘラと笑っている強さと余裕の欠片も見えないその泣き顔は、いつも僕に泣き
付いてくる華の姿を連想させて、思わず助けたくなる。
454『ジグザグラバー』第十三幕:2006/06/06(火) 20:17:42 ID:g7honkN+
「だ…なぁ、だ…」
 しかし、今助けたらふりだしに戻る。何の為に、今まで交渉をしてきたんだ。何の為に、
今の交渉で水と距離を取ったんだ。これ以上酷くならない為に、そして華の為に敢えて突
き放したのは僕だ。相手の好意を利用してまで交渉した、そんな僕がどうして近付ける。
「うぁ、ひぁ、旦那ぁ」
 だけどそんな姿は見ていられなくて、僕の体は思考とは関係無しに、気が付いたら水を
抱き締めていた。
「だん、な?」
 今までに、泣いていた華を毎回抱き締めていたのが体に染み付いていたのかもしれない。
「今回だけだ」
 ただひたすらに甘いのが僕だ。
「うっ、ひあぁ」
「泣くな泣くな」
 いつも華にするように、背中や髪をゆっくりと撫でる。他の人に効果があるのも分から
ないし、これ以外にももっとましな方法があるだろう。少なくともこれが年相応な方法で
ないことは分かるが、僕は他にやり方を知らないのでひたすらにこれを続けた。慰めの一
つでも言えれば良いのだが、いつも交渉などと偉そうに言っているくせに単語の一つも浮
かんでこない。そもそも、泣かせた僕が言っても良いのだろうか。
 そんなことを考えていると不意に、唇に柔らかい感触が来た。
「私には、お腹を直撫でしないんだね」
 泣き顔で、しかし無理に笑顔を作る水はからかうように言った。
455『ジグザグラバー』第十三幕:2006/06/06(火) 20:20:27 ID:g7honkN+
「水、それよりも」
 そう、それよりも、僕はこいつに何をされた。そりゃ、水だけが悪いわけではないし、
甘い僕が全面的に悪いのだ。ただ水は我慢が出来なくなっただけだろうし、その枷を外し
たり、昨日の経験を生かさなかった僕に全ての責任がある。
 数秒。
 自己嫌悪に陥っていると、入口から足音がした。
「まこ、と?」
 僕は甘いと思っていたが、それでもまだ評価が足りなかったらしい。甘いを通り越して、
愚か。華の戻りが遅いから油断していたからとか、キスで思考が停止していたからとかは
理由にならない。そもそも、手を差し出さなければ良かったのだ。
「な、にを、している、んだ?」
 震える華の声が教室に響く。
「昨日は、きちんと水と話を付けるって言ったのに」
 僕は水を抱き締めたことを後悔した。そもそも、手を差し出さなければ良かったのだ。
そうすれば、華を傷付けずに済んだのかもしれない。しかし、いくら考えても過去に起こ
ったことは消えはしないし、大切なのはその後をどうするかだ。
 しかし、それすらも不可能な状況がある。例えば、今の僕だ。
「誠、なんて」
 僕は水から離れて何か言おうとしたが、そんな暇さえ与えられない。
 華は目に大粒の涙を浮かべて一瞬僕たちを睨み、すぐに後ろを向くと、
「誠なんて、大ッ嫌いだあッ」
 走り去っていった。
456 ◆JypZpjo0ig :2006/06/06(火) 20:21:58 ID:g7honkN+
今回はこれで終わりです


やらかしました、誠さん
457名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 20:30:49 ID:JAsNrERs
キタ━━━━━━(;゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
458名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 21:00:07 ID:X5VM6q2L
乙です
しとやかな水も良いですな
459リボンの剣士 14話 ◆YH6IINt2zM :2006/06/06(火) 22:12:03 ID:vFTwMqUr
はぁ〜、何かネタはないですかね。
歩き回って走り回って探し回って、それでもネタ一つ手に入りません。
無駄な努力ほど疲れるものってないですよね。
はい? お前は誰だ?
申し遅れました。自分は、屋聞新一(やもんしんいち)といいます。
しがない新聞部をやっている一年生です。
新聞部ということで、学校内のことをネタに新聞を作っているんですが、最近、新聞にできるほどのネタ
が不足しているんです。
古典の先生のヅラ疑惑も、先月、植毛という事実が発覚して、一大ニュースとなりましたが、それも過去
の話。
新聞の名の如く、すぐに新しい情報を仕入れなければならないのです。
……言葉通りにうまくいくことなんてほとんど無いんですけどね。

校舎内はほとんど見て回りましたし、校庭にでも出てみましょうか。
そう思い下駄箱の方へ向かうと……おや、なにやら睨み合っている女性が二人。
あれは新城先輩と木場先輩ですね。
ん? 少し妙です。新城先輩は確か剣道部。今は部活の時間じゃないんですか?
「あ、あれ〜? 新城さん、部活はどうしたの?」
木場先輩が尋ねています。さっきは、「睨み合ってる」って言いましたが、どちらかというと、木場先輩
は新城先輩に押されている感じです。
それにしても変な組み合わせです。あの二人、接点ありましたっけ?
「そんなの木場さんには関係ないでしょ」
新城先輩のドスの利いた声が放たれました。凄いプレッシャーです。離れて見ている自分も怖いくらいで
すから、至近距離の木場先輩には、どれだけ恐ろしいか。
しかし、こんな話し方をするなんて、お二人、仲が悪いんでしょうか。
「それより木場さん、今日も人志に付き纏いに行くの?」
「え、えぇ〜? 私、そんなつもりじゃ……」

バァン!!

うわっ! 竹刀が、竹刀でロッカーをぶっ叩きましたよ!? ドアが大きくへこんでますよ!?
「……嘘つくんじゃないわよ」
ひぃ〜怖い。さすが剣道部。こんな人と向き合ったら、戦う前にやられそうです。
おっとそれより今の言葉、『今日も人志に付き纏いに行くの?』
人志というのは、伊星先輩のことですね。あの人、変人変人言う割には、記事にできそうな事は全くしな
い、あまり使えない人なんですよねぇ。
自分も結構前、インタビューをしたんですけど、質問の答えが電波全開で、とても新聞に載せられるもん
じゃなかったんです。
で、新城先輩は、その伊星先輩と親しい数少ない人物。加えて異性であり、そして今、木場先輩が近づく
のがいかにも不快という態度。
これは……これは、なにやら事件の予感がしますよ!
460リボンの剣士 14話 ◆YH6IINt2zM :2006/06/06(火) 22:12:42 ID:vFTwMqUr
「べ、別に嘘なんかついてないよ〜」
木場先輩、腰が引けてます。無理もない話ですが。
「そう。あたしはね、これから人志の家に行くの。今日学校に来てないから、気になってね」
大分、新城先輩の殺気が弱まりました。
うーん。あの返事で納得したとは考えにくいですがねぇ。
「木場さん、付き纏う気がないっていうなら、人志の家には行かなくていいから」
おおっ!? 明らかに木場先輩を牽制してます。伊星先輩絡みのことで、ここまで露骨に他の女性に敵意
を出すとは。

……はい。形が見えてきましたよ。三角関係、ってヤツですね!
なんという幸運でしょう。今日はもう半分諦めていた矢先、目の前に極上のネタが!
いや〜やるじゃないですか伊星先輩。女性二人の心を奪い、争いの火種を生み出すなんて。
次のメインの記事は、これで決まりですね。
早速取材を開始しましょう。

「話は聞かせてもらいましたよ!」
さあ、屋聞新一、女の戦場に颯爽と登場です。
二人は呆気に取られています。ここは勢いで入り込むべし!
「勝負とは、公平に、行われるべきものであります!」
腕を大きく旋回させ、ぐっと拳を握って一説! オーバーアクションではありますが、今はこの位が丁度
良いでしょう。
「新城先輩。木場先輩の善意を挫くような真似は、貴女にふさわしくありません」
「はぁ? いきなり何よ。っていうか誰よ」
しまった! 取材の前には名を名乗るという鉄則を失念していました! いささか興奮し過ぎてしまいま
したね。
「失礼しました。自分は屋聞新一と申します。一年伍組、新聞部所属の者です」
「新聞部ぅ? あのうさんくさい部の回し者が何の用よ」
ああ、耳が痛いです。新聞部が胡散臭い部に成り下がったのは、決して自分のせいではありません。
本当ですって。
「御意見申し上げに参りました。新城先輩。あなたは剣道に精通される身でありながら、勝負の舞台に上
がる前の相手を叩くというのは、その道に反することではないですか?」
「意味がわからないわよ」
「本日欠席した伊星先輩を気遣う心はどちらも同じ。それなのに、木場先輩に圧力をかけ、当人に会わせ
ようとすらしない。これでは到底勝負になりえません」
ぐわっ、と新城先輩の殺気が広がりました。これはヤバイです。
「気遣う心は同じ? バカなこと言わないでよ。こいつのは全部下心なのよ!」
手にしている竹刀が、今にも自分に襲い掛かってきそうな剣幕。でも怯むわけにはいきません。
ここで札を切りますよ。
「それを客観的に判定する案があるのですが」
ぴくっ。
461リボンの剣士 14話 ◆YH6IINt2zM :2006/06/06(火) 22:13:23 ID:vFTwMqUr
よし、流れが変わりました。殺気から疑問、興味といったムードが新城先輩から出てきました。
「新城先輩に木場先輩、そして自分。この三者一丸で、伊星先輩のところへ行きましょう」
「ちょっと待ってよ、何でそうなるの!」
「さっきも言いましたが、勝負とは対等の条件で行われるべきもの。先輩方二人が一緒に行くのがこれに
当たります。また、その勝負の内容を判断する第三者、つまり自分を加えることにより、より理想的で公
正な勝負になるのではないかと」
我ながら、中々うまく口が回るもんです。まあ、新城先輩のように直情的な人に有効な、シンプルな理論
というのは素早く思いつくもんですよ。
「アンフェアな勝負で勝つ。これに何の意味がありましょう。それは自分より、新城先輩のほうが心得て
いると思います。いかがですか?」
分かれ道に来ました。ここでどちらか一方でも自分の案に乗ってくれればいいのですが。

しばしの沈黙、そして。
「……あたしは、別に良いわよ」
やりました! さすが新城先輩、単じゅ……いえ、話のわかるお人です。
「木場先輩はどうですか?」
一応振り返って聞いてみます。もう答えは一つしかないですけどね。
この流れで肩透かしをするのは不可能でしょう。
「う〜ん、どうしようかなぁ〜」
身体をもじもじさせる木場先輩。妙に色っぽく見えます。
「う〜ん」
「うぅ〜ん」
「ん〜……」
長いですねぇ。実は、木場先輩にはその気はなくて、新城先輩だけがムキになってる、とか?
「なに時間稼ぎしてんのよ。こそこそしないで早く決めなさいよ」
新城先輩の言葉が、自分の案の追い風となりました。やはりこの二人は、伊星先輩をめぐる恋敵同士なの
でしょう。
「……うん、いいよ。新城さん、お手柔らかにね」
OKです。これで舞台は整いました。
「では行きましょう」
「あんたが仕切るな!」
痛、痛っ!? 新城先輩、竹刀でのツッコミはきついですよ!
でも大物のネタの為、この程度の痛みとリスクは乗り越えてみせましょう。
これから、二人には存分に争ってもらいますからねぇ。


(15話に続く)
462名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 22:47:12 ID:jtu66oTk
こんなに神作品が連続して投下されるなんて
ここは本当にパラダイスだなぁ
463名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 22:50:05 ID:lVzMyppW
さて、一体どんな勝負になるのやら・・・期待(*´д`*)
何も知らない伊星、病気なのに巻き込まれ型でカワイソス (´・ω・`)
464名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 23:24:22 ID:PdsxKNO+
新聞部うぜえw
465名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 23:30:14 ID:WOTbWOIQ
同意w
466名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 23:51:14 ID:CLY57LIC
だが彼の頑張り次第ではオレたちの見たいものが見れるはずだ!
467名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 23:55:44 ID:hF2THaom
待て、 「屋聞新一」が「彼」だと誰が決めた?
目をさらにして何度も読んだが、こいつは一度も自分を男だとは言ってない!

こんな名前でもきっと、おんなの子でサプライズヒロイ(ry
468名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 23:56:47 ID:JAsNrERs
リボンキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

>>467
その発想は無かった
469名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 00:16:14 ID:zBkYqXQt
なんかすげーカンに触る奴が出てきたな。
ハラがたってきた
470名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 00:45:11 ID:IVp40BgV
つーか新聞部のクソ野郎のせいで作品の雰囲気ぶち壊しだ。
471名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 00:47:03 ID:YVVZKxWd
なに? 新聞部の野郎がうざいって?
それは無理矢理感情移入しようとするからだよ。
逆に考えるんだ。
「血祭りに上げられても心の痛まない奴が補充された」って考えるんだ。
472名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 00:48:39 ID:LOomkhiW
そんな奴の為に手を汚させたくありません!
473名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 00:49:43 ID:nN5jJ8p+
ああ、そうか何も血に沈むのは当事者だけじゃなくて良いんだね!?
474名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 00:51:40 ID:OKdabSW7
邪魔者は消すのみよ!!
475名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 00:51:59 ID:FWGjmKHK
落ち着くんだ!レフリーは寝取られる相手じゃないよ
彼によって修羅場が活性化するならいいじゃないか
作品まで否定するのは熱くなりすぎだよ
(*´∀`*)アッタカーイ ぐらいで先を待つのが嫉妬を愛する紳士
476名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 00:52:08 ID:3+4va0+C
確かに。
新聞部の野郎の登場は、どちらかというと木場さんにプラスに
なりそうだからな。マスコミを有効に使って一気に・・・とか
くるかもしれん。
そこで明日香さんが血の粛清に乗り出すわけさ。
477名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 01:04:35 ID:cvkCBUyu
ちょwおまいらそんなに展開発言したら神がやりにくくなるじゃないかw
478名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 01:17:33 ID:pVXqs6H0
新聞部員は脳内で弾幕天狗にしておく
479 ◆rAFXqjbZng :2006/06/07(水) 01:22:37 ID:FCWZFacU
投下します
480お願い、愛して!3 ◆rAFXqjbZng :2006/06/07(水) 01:28:02 ID:FCWZFacU


 それから、わたしは自分がどう過ごしてたのか、良く覚えてない。
 どこかに出かけたのかも知れないし、一日中、家に引きこもっていたのかも知れ
ない。
 叔母さんは職業柄、滅多に家に帰ってきたりしないから、わたしの行動を証明す
るものは自分の記憶しかなくて、だけどその記憶すら、あやふやでおぼろげ。
 キョータくんのいない世界はどこまでも希薄で存在感がない。まるで自分が幽鬼
にでもなっているかのような気分がした。

 ある日、気付いたら近所の寂れた公園に来ていた。
 昔、夏休みになるとキョータくんと一緒に来て、遊んだ公園。
 中央にある砂場には、身体を泥まみれにして遊んだ記憶がある。
 学校の通学路のすぐ側にあるけど、最近では、一人でもほとんど来ることがなく
なっちゃった場所。
 暑いぐらいに強いお日様の光が大して大きくもない木々を照らし輝いて、その綺
麗さを称えるようにミンミン蝉が大合唱を唱える。
 砂場のほかには、シーソーもブランコも何もない公園だけど、この懐かしい場所
にいるだけで、色褪せたキョータくんの姿が砂場に見えて、楽になった気がしたん
だ。
 そういえば、親無し子ってことでクラスの子達に苛められた時も、よくここに泣
きに来てたよね。そのたびにキョータくんがわたしの側で、ずっと慰めてくれて……。
 すっごく嬉しくて、嬉しくて……。それから、そんなに苛められてもないのに、
ここで大泣きして、キョータくんにずっと側で何度も何度も慰めてもらったりして。
 気付けば、景色が滲んで揺れていた。
 わたしはその場にしゃがみ込むと、そのまま砂場に倒れこんだ。
 あぁ……キョータくんと遊んだ砂場……。
481お願い、愛して!3 ◆rAFXqjbZng :2006/06/07(水) 01:31:04 ID:FCWZFacU

「……先輩?」
「っ!?」
 ――だ、だれ……!?
 ツインテールの見た事のない娘が、突然、視界に入ってきたかと思うと、わたし
の顔を見下ろしてきた。
 わたしのことを先輩と呼ぶということは同じ学校の生徒なんだろう。
 わたしは慌ててすぐに立ち上がって、ツインテールの娘を条件反射的に睨みつけ
た。
「…………」
「…………」
 その子は、わたしの視線にしばらく怯えた様子を見せて、少し沈黙の後、おずお
ずと言った。
「あの、白河先輩……ですよね?」
「……そうだけど……」
 自惚れるようだけど、その娘がわたしの名前を知っていても、別に不思議じゃな
かった。
 学園では名前すら知らない下級生から妙に馴れ馴れしく挨拶を受けることも日常
で、珍しくなかったから。
「あ、あの……泣いてらしたん……ですか?」
 はっとして、わたしは服の裾で目じりをすった。
「……あなたには、関係ないことだよ」
「あ、ご、ごめんなさい……」
「…………」
「…………」
 なんなんだろ、この娘?
 キョータくん以外の人に涙を気づかれたことが、なんだか他人に弱みを見せちゃっ
たみたいで、それを隠すように睨みを弱めないまま、思った。
 キョータくんじゃない人からの慰めなんて、要らないよ。
 だけど、次にその娘が言った言葉は予想外のものだった。
482お願い、愛して!3 ◆rAFXqjbZng :2006/06/07(水) 01:33:47 ID:FCWZFacU
「その……ここには、よくいらっしゃるんですか?」
「え……?」
「この公園、寂れててあまり人も来ないですし……先客の方がいたなんて初めて
です」
 女の子は、まるでいつもここに来ているような口ぶりで言った。
「……ううん、来たのは、ほんとに久しぶりだよ……」
「……ふふ、そうですよね。もしいらっしゃってたら、こんな狭い公園なんです
からお会いになっているはずですよね」
 そう言うと、その娘は首だけを動かして、辺りを見渡した。
 この娘はどうやらこの公園の常連さんみたい。
「私、辛いことがあると、よくここに来るんですよ」
 突然、憂いを含んだ横顔でそんなことをいう女の子。
 辛いことがあると、ここに来るのに、いつも来ているってことは……辛いこと
が頻繁にあってるってことなんだ……。
 その悲しげな姿が、昔の自分の姿に重なって映った。
「ここが……好きなんだね」
 気付いた時はそう言っている自分がいて、少し驚いた。
 演じてるわけでもなく、自分から口を開いたことに。
「はい、砂場しかないけど……凄く風が穏やかで……。小さい頃はお父さんと……
来たりもしたんです」
「そうなんだ……」
 一瞬、お父さんと呟くほんの一瞬だけ、その娘はすごく儚げな表情を浮かべた。
483お願い、愛して!3 ◆rAFXqjbZng :2006/06/07(水) 01:38:10 ID:FCWZFacU
 お父さんを亡くしてるのかも知れない。
 わたしも同じような境遇だったから、その表情の意味は何となく分かった。
 この娘も、わたしたちみたいに苦しんだんだよね――。
「あの……白河先輩」
「……なぁに?」
 言い難そうに話してくるその娘に、できるだけ優しく返事する。
「元気……出してくださいね」
「…………」
 それは、きっとできそうにない。
 ――キョータくんがわたしを避けてるのに、元気を出すことなんてできるは
ず、ないよ……。会いたくて、会いたくて、堪らないのに……。
 キョータくんの姿が強烈に頭に浮かび上がった。
「雨倉先輩も辛そうにしていましたし……。白河先輩が元気を出せば、きっと
雨倉先輩も、元気が出ると思うんです」

 …………。
 ……え?
 
 雨倉って……。
 間違えるはずのない、間違えるなんて有り得ない……愛しいあの人の――。
 キョータくんの……姓。雨倉京太(あまくら けいた)……。
「キョー……京太くんが辛そうに?」
 異常に高まってうるさいくらいの心音を誤魔化しながら聞き返す。
「はい、とても。白河先輩は雨倉先輩の幼馴染なんですよね? どうか、雨
倉先輩を元気付けてあげて下さい。何度か、先輩のクラスに行こうとしてい
るのを見たことがありますし、きっと頼りにしていますよ」
「う、うん……うん!」
 嬉しい……うれしいうれしいうれしいうれしい!
 この娘の話が本当ならわたしは嫌われていたわけじゃなくて、何かキョータ
くんに事情があっただけなんだ……。
 それに、この娘はうそを言うような子じゃない。
 仮面を被らなくても、同姓として、生まれて初めて本当の友達になれると思
えたんだもん。たった今、出会ったばかりだけどそう信じてる。
 もうすぐ終わる夏休みが過ぎれば、またキョータくんと一緒に登校して、一
緒にお昼ご飯食べて、一緒に帰って……。えへへ……。
 嬉しくて、涙が出そうになる。少し前とはもう違う涙。
 わたしは精一杯の笑みを浮かべて、女の子に言った。
「ありがと……!」

 それから、わたしは女の子の名前を教えてもらって、最後にもう一度だけお
礼を言って帰路についた。


484お願い、愛して!3 ◆rAFXqjbZng :2006/06/07(水) 01:41:00 ID:FCWZFacU


 ――ピンポーン、ピンポーン
 歯磨きが終わって、登校する準備が全部整ったのと同時に玄関のチャイムの音が
聞こえてきた。
 今日から、ずっと待ち焦がれていた二学期が始まる。
 この日のために、わたしはキョータくんのいない無意味な残りの夏休みを、ただ
無為に過ごしてきた。だけどそれも今日で終わり。
 早く迎えになんか行って、キョータくんを急かしちゃったらいけないから、狂い
そうなほど高揚する気持ちを必死に抑えて、ゆっくり準備をしてたんだけど……。
 ――ピンポーン
 もう一度鳴らされる玄関のチャイム。
 ……まさか……。
「瑞菜、迎えに来たぞ!」
「キョータくん……!?」
 望んで止まなかったその声……。
 思わずポロポロと涙が零れ落ちた。
 キョータくんが……迎えに来てくれてる……。
 やっぱり、あの娘……朝生凪(あさい なぎ)ちゃんの言ったことは本当だったんだ。
 わたしは、ぐいと制服の裾で涙を一拭いして、鞄を少し乱暴に掴むと、駆け足で玄関
に向かった。
 やっと……やっと……。
 キョータくんに会えるんだ、キョータくんと話せるんだ!
 えへへ……。待ってた分、いーっぱい一緒にいようね? キョータくん!
 焦って上手く履けない靴をなんとか履いて、わたしは玄関のドアの取っ手に手を添
えた。
「おはよ〜! キョータくん……?」
 そこにいたのは、やっぱりキョータくんだった。
 見間違えるなんて有り得ない。誰よりも愛しいキョータくん。
 だけど……。あれ?

 眼鏡と、髪の毛と、そしてお腹が……少し、変わっちゃってたキョータくんだった。

「おはよう、瑞菜」

485 ◆rAFXqjbZng :2006/06/07(水) 01:46:39 ID:FCWZFacU
ひとまずここまでです。
新キャラがちょっとストーカー紛いな娘に?

なんかダラダラと続きそうで、申し訳ないです……。
486名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 01:48:34 ID:PTND7/fZ
>>485
すごい楽しみに待ってますよ〜
デブキャラがイケメン?になって正ヒロインの態度がどうなるかwktk
そして新キャラがどうキョータくんにからんでいくかもwktk
487名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 01:54:42 ID:LOomkhiW
続きwktk

脂肪が落ちても顔が変わってないなら笑えるなw
488名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 02:06:17 ID:1MNRxo6J
ヒロインよりむしろ幼馴染みのためにダイエットを成功させたキョータの男気に惚れそうだ
489名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 02:14:17 ID:LOomkhiW
>>488
そんな事いったら瑞菜に狙われるぞ
490名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 02:28:51 ID:vVifIP70
というか日頃から運動してれば
夏休みに集中してやらんでも(ry


>>485
続きwktk!


491名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 02:41:17 ID:UYieyIX6
京太と瑞菜これからどうなるんだろう、楽しみだ。
492名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 03:40:50 ID:IvUtR3yO
変わっちゃってたキョータ君だった…

瑞菜かわいいよ瑞菜!!
493名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 03:47:48 ID:f4J3B2Sl
>>485
GJでーす

このスレ的にスクールデイズってどう?
どんなものかみてみたい気はするが…
494Why Can't this be Love?  ◆tVzTTTyvm. :2006/06/07(水) 03:51:08 ID:+v2rhnZq



   X    X    X    X


「紅司のバカタレ……」
 飲みほし空になったマグカップを両手にしながら私は呟いた。
 いや、紅司が悪いんじゃない。 今回のは私も急きすぎたのかも。 今回はコレで良しとしておこうか。
 紅司の性格からして断わりはしたものの、気になって待ち合わせ場所に伺いに来る事は予想が出来た。
 雨に関しては全く予想できてたわけではない。 少なくとも最初に誘ったあの日には分からなかったから。 出しなに見た天気予報でも降るとは言っていたが、朝方晴れていたのがこうも見事に降るとまでは予想してなかった。
「お姫様抱っこ……してくれたんだよね。 えへへ……」
 思い出すと頬が自然と緩む。 雨で冷え切った体にはより一層紅司の温もりが暖かく感じられた。
 ウチに付いて部屋に入ったところまでは出来すぎてるぐらい『こうなったら良いな』と思うとおりにことが運んでくれた。 でも……
「流石に何もかも思い通りとは行かないか」
 まぁ良い。 欲張りすぎて取り返しがつかなくなっては元も子もないしね。 それに、今回は紅司に私の『女』を十分印象付ける事ができた。 


 そして翌日。 体調は良好。 昨日ずぶ濡れになっちゃったけどあの後温かくして栄養とってシッカリ寝たからすっかり全快。 天気も昨日の雨が嘘みたいなほど快晴でイイ気分。
 前方を見れば、お、紅司を発見。
「おっはよ〜紅司」
 私が声を掛けると振り向いた紅司はどこかまだ寝ぼけたような、不機嫌なような顔をしてた。
「あ、ああ。 おはよう」
 何となく睡眠不足っぽく見えるけど、若しかして昨日の私の事気にしてくれてるのかな。 やっぱり未だ私の事が気になって未練を感じてくれてるってことなのかな。
「昨日はゴメンねー。 雨の中わざわざ家まで運んでもらっちゃってサ」
「其の調子だともうすっかり大丈夫みたいだな」
「ウン、昨日シッカリ寝たからバッチリ全快!」
 そして私はウインクしてVサインをして見せた。 そんな私を見て紅司はホっとしたような戸惑ってるような顔を見せる。
 やっぱり昨日の事気になってるみたいね。
 直後前方数メートルの所にお下げ髪の見知った背中を発見。 藤村さんだ。 隣の紅司を見れば、何となく声をかけずらそうな顔をしてる。 隣に私がいるせいかな? ふーん……。
 私は藤村さんのもとへ駆け寄り挨拶する。
「藤村さんおはよう」
「あ、おはようございます白波さん」
 藤村さんは振り向いて挨拶を返してくれた。 そして後ろにいる紅司にも気が付いたみたいだ。
「紅司クンもおはよう」
 そして紅司も挨拶を返す。
「あぁ、おはよう」
495Why Can't this be Love?  ◆tVzTTTyvm. :2006/06/07(水) 03:52:22 ID:+v2rhnZq


   X    X    X    X


 一体コレはどうしたことだ? 俺は最近の身の回りの状況に少々混乱を憶えている。
 現在昼飯時。 テーブルを寄せて弁当を広げているのは俺と美嬉と……そして何故か夕子も一緒にいる。
 いや、夕子と一緒の昼メシ自体は幼馴染として小学校の頃からずっと、それこそクラスが違う時でもどちらかがもう片方の教室に弁当を持ってって一緒に喰ってたりした。
 だが俺が美嬉と付き合うようになってからはそう言う事はなくなっていたんだが……。
 それが何でこう言う事になっているんだ?
 既にこの状況になって数日が過ぎ、美嬉も夕子も和気藹々と食事を楽しんでいる。

「わぁ、コレとっても美味しい」
「でしょ? 紅司もコレ好きなんだ。 良かったら今度作り方教えてあげよっか?」
「本当? ありがとう白波さん」

 こんな具合である。
 万事平和で良い事な筈なんだけど、なんか胸がざわざわする。
 こんな状況が成立してるのは、美嬉が夕子の事を信頼してると言うか警戒してないと言うかそんな状態だからだ。 美嬉は夕子と俺の幼馴染と言う関係を完全に兄弟姉妹みたいなものだと信じ切っているから。
 だが、実際にはそれは大きく違っていて、夕子の俺に対する思いは完全に恋愛感情のそれだ。 そして俺の夕子に対するものもそれに近いのだが……。
 いや、一応言っておくが二股じゃないと思うぞ。 確かに未練が無いと否定しきれないが、一応夕子には美嬉と別かれるつもりもないし今更付き合えんと言ってあるし、幼馴染以上の付き合いはしてない……筈……。

 何て言うか夕子の考えてる事が読めん。 
 そんなこんなで傍目には穏やかだが、どうにも俺の心中は落ち着かない。 そんな風に俺たちの日常は過ぎていった。

 そして更に数日経過。
 俺の心中とは裏腹に相変らず夕子と美嬉は仲良くやっている。 至って平和で最近では俺の考えすぎなんじゃないかと思えてきたりもするのだが……。
 そんな二人の間で最近話題に上る事が多いのはファッションとかお化粧の事。 まぁ、女の子なんだからそう言う話題で盛り上がるのは当然と言えば当然か。
 それにしても改めて思い知らされたのは女は化ける。 昔っから言い古された言葉だが、改めて目の当たりにすると驚かされる。
 特に顕著だったのは夕子だ。 美嬉も当然美人で可愛いのだが元から淑やかで女らしかったのに対し、夕子は、まぁ可愛くはあったがお転婆で女らしさに欠けるところもあった。
 それがどうだ。 髪型、化粧、ファッション。 そうしたことを意識しだした途端驚くほど綺麗に、女らしくなっていく。
 そんな姿に俺は魅入られつつも同時にどこか怖さも感じる。 そう言えば魅了の『魅』って字には『鬼』の字が入っているっけ……。

To be continued...
496 ◆tVzTTTyvm. :2006/06/07(水) 03:54:23 ID:+v2rhnZq
<チラシの裏拡大版>
振り向けばそこに……のあとがき

先ずお詫び 連載中嫉妬修羅場成分少なくて申し訳ありませんでした
アナザーの墜落エンドは本編中そうした場面が最後まで出せない事が最初から決まってたので
其の先払い及び補充分みたいなつもりもあって書きました

連載中一番驚いたのは羽津姉の人気
羽津姉ENDは其の人気に触発されたかのように執筆したもので本来執筆予定外でした

反面チョット寂しかったのは結季への反響がえらく少なかった事
結季には私の萌え要素を大幅に注ぎ込んだ愛着ある娘だったのですが
それとあんまり良く思われてなかったんですねorz

祥ちゃんがココまで嫌われたのも驚きでした
悪印象とは言えココまで読者に深く印象付けるキャラクターを描けたと満足すべきなのでしょうかorz
ハッピーエンドでココまで不評を買った作品って少なくともこのスレでは唯一な気もします(苦笑

色々読者様の期待に添えなかった拙作ではありましたが最後までお付き合いありがとう御座いました


そして管理人の阿修羅様 タイトル及び毎度補完作業ありがとうごさいました
今まで色々聞いてもらったうえにまた幾つかよろしいでしょうか
16の終りの部分の『Go to Route B』と 17の終りの『Go to ANOTHER END』を
『Go to TRUE END』に
『第17回B』を『第17回(真)』に
『17B』の表記を『TRUE END』に
それぞれ変更お願いできないでしょうか
重ね重ね申し訳有りませんがなにとぞお願いします
私にとって結季ENDはアナザーエンドではなく真エンドなのです


あと『白い牙』ではなく『白き牙』ですのでコチラも修正お願いします
497名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 05:57:41 ID:apq4Qjax
>>496
GJ!修羅場系の主人公は嫌よ嫌よも好きの内と思っている、だってま(ryやたかy(ry
SSではゆう君なんかも絶大な人気?だろ
498名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 07:39:31 ID:GKJvEcZs
何ていうかこのスレ的には「死ね」ってのも親愛の表現だったり
499名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 08:10:32 ID:/H4jUhyX
主人公は嫌いでも作品は大好きってやつもいるんじゃないか?
まあ、俺はどっちも好きな少数派なんだけどね。
500名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 09:51:28 ID:GKE449og
修羅場的にはヘタレとかドツボとか最低とかは勲章。
501名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 10:03:55 ID:rWSukFew
祥ちゃんは自分が殴られても仕方が無い事をしたと思いながら自分からは
積極的にその罪を償おうとはしない、羽津姉に対するあまりにも誠意の
欠けた態度が不愉快だったかな、と。

自分は羽津姉派だったので徹頭徹尾結季の事しか頭に無い祥ちゃん視点の
羽津姉エンドはとてもハッピーと言う印象は受けませんでした。
502『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/07(水) 13:33:55 ID:kLARhSKF
「あああ、動けん!!!」
イライラしていた。相変わらず体は不自由なままだ。頼みはしたが、やっぱり志穂は心配だ。そんなことを考えていると……
「晋也さん……お待たせ。」
いつの間にやら側に春華が立っていた。
「うわ!お、おどろかすなよ。」
「ふふふ…そんなに驚かなくたっていいじゃないですか……それより、ようやく楽しめる時間がきましたね……」
「あ、アハハ…ソウダネ…」
必死の苦笑いも虚しく、服脱ぎ始める春華。…その肌は白く、雪のような、という言葉がぴったりだった。
「…きれいだ…」
おもわず口に出してしまったが、本当にきれいだった。くびれた腰、程よい胸……まさかここまでだとは思ってもいなかった。
「うふ、晋也さんったら、もう大きくしちゃって……そんなに我慢できなかったの?」
「うっ。」
情けない。体は動かないのに、一部はギンギンだった。
「ち、ちがっ…いや、違わなくもないが……」
何混乱してんだ?俺。
「大丈夫ですよ……初めてだから、間違いもあるかも知れませんが、絶対に気持ち良くしてあげます……」
503『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/07(水) 13:34:44 ID:kLARhSKF
「や、やめ!…うっ」
冷たい手で掴まれ、つい反応してしまう。ヒンヤリとして気持ち良かった。…本当にここだけは元気だ。
「うわ……すごい熱ですね……本当に熱いんだ…」
興味津津といったように見つめられる。嗚呼、そんなにじろじろ見られたら…俺は……
「うぅっく……あっ!」
絶え切れずに射精してしまった。堪っていた物が春華に降りかかる。
「う、うわ…熱い……」
「す、すまん…」
俺が謝る立場じゃないが……
「…じゃ、じゃあ、次はついに本番です。」
跨がり、某を秘部にあてがう……が
バンッ
勢いよくドアが開かれ、部屋が光で満たされる。そのドアの所には、志穂がいた。
「し、志穂!…よかった…無事だったか…」
だが、志穂は俺の声も聞こえてないのか、怒りを露にしたまま春華に歩み寄り、そして………
「ふざけるんじゃないわよ!!」
パンッ
乾いたような破裂音が、部屋に響く。
「あんたねぇ、あんな卑怯な真似してまで……そこまで私の晋也が欲しいっていうの?」
「私の?……勝手に、勝手に晋也さんを自分のものにしないでくださいよ!晋也さんは、私のです!」
504『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/07(水) 13:35:32 ID:kLARhSKF
……物扱いってのも虚しいなぁ。
「駄目!本当に……本当に死ぬ思いまでして晋也と愛し合えたんだから……もう二度とそんな事で苦しみたくないのよ……」
「あなたなんて、この前晋也さんと会ったばっかりじゃないですか!私と、晋也さんの思いでに割り込まないでください!」
「私達はもっと前から……あなたのいない世界で愛し合ったのよ…あなたこそ、私達に入り込む事なんて出来ないのよ!」
互いにヒートアップしていき、顔が近付きあう。まずい、このままじゃあ、取っ組み合いになることも……
「ふ、二人とも落ち着いて……」
「あなたのために言ってるのよ?……そうね、この場ではっきりと言ってあげて、私とこいつとの違いを!」
「晋也さん……私を、選んでくれますよね?」
………参った。だが、こういう時は正直に言わないと後悔すると言うのが、前世からの教えだ。
「……俺が好きなのは……志穂で……春華は…その、後輩としか見れない……」
「ほら、言ったとおりでしょ?」
「そんな……嘘、ウソよ!いやぁ!晋也さんに……裏切られた……認めない、こんなの認めない!!」
そう叫ぶと部屋から走り出してしまった。
505『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/07(水) 13:36:13 ID:kLARhSKF
「!!」
急に体が動くようになった。志穂が側に居るだけで、これだけ違うものなのか。でも今はやらなくちゃいけないことがある。
春華を追いかけないと……
「な、なにをそんなに急いで着替えて……」
「あいつを…春華のやつをおわねぇといかん。」
「!?……ま、まだそんなこといってるの?いいじゃない、それより、これから三日間居なかった分、愛し合いましょう?ね?そうしよう?」
焦燥感のある顔で迫る志穂。
「ああ、そうしたいのは山々だが、春華へのけじめもしっかりつけなくちゃいけないんだよ。」
そう言って掴まれた手をはなそうとするが、更に強くつかまれる。
「駄目!いかないで!今いったら…もう戻ってこない気がするの……だから、だから!あの女に、優しさなんて向けないで!私だけにして!」
「そうもいかないんだ。人生、±ゼロなんて簡単にいかないけど、ちょっとでも良い方にしたいからさ、今は、行かないといけないんさ。」
再度腕を振り払い、走り出す。叫んで居た志穂に対し、少しだけ心を鬼にして………
506『広き檻の中で mixture world』 ◆yjUbNj66VQ :2006/06/07(水) 13:37:42 ID:kLARhSKF
ヤンデレスレに浮気して質を落としちまった…すまんorz
507名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 14:42:13 ID:/H4jUhyX
ちょwwwおまwwwこのスレでなんてことを言うんだ。
監禁されても知らねーぞ。ともあれGJ!!
508名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 15:59:53 ID:fjN8Dn5r
その後506の姿を見たものはいない

かなりオモスレー
これでもまだ質があがるんですか
509名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 17:19:55 ID:53TqzPc5
GJ!!!!!
志保は寝取られてしまったのだろうか?
510名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 17:43:26 ID:WwW9aNZN
>>506
そう…ヤンデレスレのところに行ってたんだ…
ううん、責めてるわけじゃないよ
たまには羽を伸ばしたくなるっていう気持ちは分かるもん
それに、ちゃんと戻ってきてくれたし、ね

でも、次また同じことがあったら…ふふ

ううん、何でもないよ、ちょっとした独り言だから
511名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 20:16:34 ID:vVifIP70
あれ?いざ志穂レイープってとこじゃなかった?あれ?見逃したか?
512名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 20:23:47 ID:gOihWyv/
>>506
ヤンデレスレの何という作品なんですか?
513名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 20:27:46 ID:apq4Qjax
春華可愛いよ春華、ついでに志穂がどうなったのか知りたい
514トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/06/07(水) 20:35:07 ID:AniE+dgG
では投下致します
515煌く空、想いの果て ◆mxSuEoo52c :2006/06/07(水) 20:38:56 ID:AniE+dgG
 第2話『戻らない刻』

 最近、翔太君は私を避けている。

 そう、二週間前のあの日からずっと避け続けている。
 わたしこと、風椿梓は翔太君が何で私を避けている理由を常に考えていた。


 それは世界に問い掛けた難題よりも難しく、どんな解答を出しても正解を得ることができない。
 よって、私は昼休み中にその、お、男心とか知るために友人たちに相談に乗ってもらっていた。 
 ずばり、仲良くしていた幼なじみが私を避ける訳を。

「普通に水野君が彼女が出来たからじゃないの? 
梓みたいにいつもベタベタしていたら、その彼女が嫉妬して別れる原因になるからでしょう」
「し、お、り……!!」

 私は怒気を篭もらせた声で友人である志織に睨みをきかせていた。
 あの翔太君に彼女?
 本当に笑えない冗談だよ。
もし、恋人とか作ったら、私はショック死するか、今ここで教室の窓から飛び降りるしかない。
 それに、翔太君はいつも私の事を想っていてくれている。
それがわかるから、私は彼の傍にいたいと思うのに。

「はいはい。どうどう。梓、ちゃんと落ち着きなさいよ。どれもこれも推測ばかりなんだから」
「うみゅ〜。だって、だって、だって、翔太君に彼女が出来るわけないよ」
「そりゃ、あんたがぎっちしとガードを固めているからね。他の女の子が寄ってくるはずないじゃん」
「うん。泥棒猫の家をレクイエムで蒸発させているよ?」
「いきなり、地上から蒸発させなくても・・・」

 そう、学校内、家に他の女の子が寄り付けないように私は厳重に翔太君の隣にいる。
翔太君に想いを寄せる女の子が勘違いしてくれるように、常に彼女に見えるような位置付けにいるのだ。
「でも、水野のバカが梓を避ける理由は具体的に私にもわからないよ。
二週間前は教室内で恋人同士のようにお弁当を広げて、あ〜んって食べさせている程にバカップルぶりだったのに」
「翔太君は優しいからね。た、た、た、例え、彼女が出来たとしても、幼なじみの私にはちゃんと言ってくれるはずだよ」

 翔太君に彼女がいると考えただけで胸のモヤモヤは鋭く突き刺す痛みへと変わる。
でも、志織は真剣に私の相談に乗ってくれていることに感謝しながら、
 お家から作ってきたお弁当に箸を進める。

「逆の発想で考えると、梓が何か悪い事をしたとか?」
「私のせいで、翔太君の機嫌を損ねたことか……。う〜ん。それは」
516煌く空、想いの果て ◆mxSuEoo52c :2006/06/07(水) 20:42:19 ID:AniE+dgG
 この二週間を思い出してみた。
 俺に構わないでくれと宣言された日から、

 私は本当に必死になっていた。


 翔太君に嫌われるってことは私の存在意義を否定されるのに等しい。
 あらゆる手段で翔太君にコンタクトを取ろうとした。

 朝早くから迎えに行ったり、休み時間になる度に翔太君の後を追い掛けると、
男子トイレへ速攻に逃げられた。
 昼休みの時間に毎日、翔太君のために作ってきたお弁当を手に一緒に食べようよ作戦で攻撃を仕掛けるが、
翔太君はダッシュで教室から離脱していた。

放課後も一緒に帰ろうと誘おうとするが、翔太君の足は速くて、女の子の私には追い付けることもできなかった。夕食を作りに翔太君のお家に行っても、鍵はかけられている。しかも、居留守を使っているのが丸分かりだけど、翔太君は出てこようとはしなかった。
 本当に酷いよ。翔太君。

「わからないよ。そんなの」

 わかったら、どんなことをしてでも謝りたいと思う。
頭を下げるだけで元通りの関係に戻れるなら、何でもしてあげたい気分になる。

「でもさ……。梓はモテるじゃん。容姿もいいし、性格は穏やかで癒されるし。
多くの男子生徒から告白されているじゃないか。
それで、水野がたまたま告白していた男子生徒と梓の関係を誤解していたらどうなる?」
「それこそ本当にありえない。ううん、絶対にありえない」

 本当に告白してくる男子生徒には迷惑している。
私には翔太君という将来を決めた相手がいる。
そのために人生を全身全霊で生きているというのに、他の男の相手をしている時間は私にはないのだ。

「だって、私は翔太君一筋だもん」
「おお。そりゃ、大きく出たね」

 その言葉に私の顔が赤く染まっているのが自分でもわかっていた。
本当に好きな人の事を語るだけで胸の鼓動が激しく揺れる。
それが何よりも嬉しい。これが水野翔太に恋をしているということなのだから。


 その後も、志織との恋愛相談に心強く悩みを相談を続けた。
 おかげで私の気力は回復して、今日も頑張って翔太君にアタックできそうである。
517煌く空、想いの果て ◆mxSuEoo52c :2006/06/07(水) 20:45:42 ID:AniE+dgG
 そして、放課後。
 私は今日こそ獲物を狩る恋の狩人になってみせよう。
 だが、ロングホ−ムル−ムの終了直後に勢い良くドアは開かれた。
そこから現われたのは小柄で細身、猫を思わせるような独特な髪。
屈託のない明るい笑顔は周囲の人間を虜にしそうな少女だ。

「水野先輩。一緒に帰りましょうよ!!」
 その少女は手を振りながら、翔太君に視線を向けていた。
このクラスが空気がとてつもなく凍っているのに気付いていないのはあの少女だけだ。

「どうしたんです。せっかく、可愛い彼女が迎えにやってきたんですよ。いろんな場所に寄って、一杯遊びましょうよっ!!」
「あ、あ、あ……そうだな」
 クラスメイトの冷たい視線を浴びながら、翔太君は
居心地が悪いのか逃げるように駆け足で教室を去って、あの少女と肩を並べて歩いて行く。

「おいおい、どういうことなんだ」
「水野君、風椿さんと別れたの!?」
「これはスクープだぞ!!」
 と、クラスメイトのぼそぼそした呟きは私には頭が入らなかった。
ただ、目の前の光景が嘘のように思えていた。
いや、何も考えたくなかった。
すっかりと思考停止していた。

「水野の奴。ついにやりやがったな!! それでいい。これからも適当に生きるなよ!!」
 と、クラスメイトの翔太君の友人である山田って人が自分事かのように喜んでいるのは私には印象深く残っていた。
「大丈夫、梓?」
「えっ……?」

 志織が優しく私の頭の上にぽんと優しく手を置いて撫でた。
 そう、これまでぐらいに頭を撫でてくれた。
 他の女の子たちも心配そうに集まって来てくれている。
 私は優しくしてもらった事でようやく糸が切れた。
 頬を伝わって零れていく大きな涙を流して、私は声を殺して泣いてくれた。
 志織が優しく抱き締めてくれると、私は素直にそのまま泣き崩れてしまった。

 わかってしまったんだ。
 私はどれだけ水野翔太を愛しているってことを。
 どんなに愛しても、想いは届いてくれなかった。

 その事に気付かないフリをして、無意味に翔太君を追い回していた。
 彼の気持ちを考えていなかったかもしれない。
 いや、私の想いそのものが彼にとって迷惑なものかもしれない。
 今までの積み重ねていた幼なじみの関係が崩れて行くのが私は恐かったんだ。
 何よりも恐かったのは、私を見捨てて、他の女の子と幸せになることだ。
 それが今、現実のモノになってしまった。


 これは悪夢だよね?
 朝、目覚めると翔太君はいつもと変わらずに私に優しく接してくれて、
 昼休みには私の愛情のこもったお弁当を二人で食べたりして。放課後は一緒に手を繋いで……。
 そんな日常が今まで続くはずだった。
 これからも。

 どうして、こんなことに。
 なってしまったの?
 問い掛ける世界は誰も答えることはない。
 どんな解答を出しても、正解はないのだから
518煌く空、想いの果て ◆mxSuEoo52c :2006/06/07(水) 20:48:19 ID:AniE+dgG
 私はクラスメイトや友達に励まされながら
 傷心した状態で鈍い足取りで家に帰宅しようとしたが、無意識に翔太君の家に辿り着いていた。
 帰巣本能があるのかわからないけど、私の帰るべき居場所はあの家なんだとつくづく思い知らされた。


 翔太君の恋人になれなくてもいい、ただ一緒にいないと私は生きてはいけない。
 一人でなんか生きてはいけないよ。
 でも、拒まれることが恐くて私はあの場所に踏み入れることができなかった。

 時間だけが流れて行く。
 すでに陽が落ちてしまって、周囲はもう真っ暗だった。
 どれだけ立ち尽くしていても、疲れることはなかったけど。
 ふと、水野家の玄関が開かれる。
 私は急いで電柱に姿を隠すようにしゃがみ込み、水野家を睨むように見ていた。
 そこから出てきたのは、あの憎き少女であった。

「私の愛が篭もった手料理は味わって食べてくださいね。
もう、先輩たら。最初に一人暮らしって言ってくれたら、毎日でも泊まっていったのに」
「いや、泊りはさすがにヤバイだろ」
「冗談ですよ。でも、長い休みとかは同棲生活をたっぷりと楽しみましょうね」
「ああ。そうだな」
 恋人同士のイチャイチャな会話が聞こえてくる。さ
さすがにこの会話で二人がどれだけ親密になっているのかわかる。
「本当に家まで送っていかなくていいのか。猫乃?」
「大丈夫です。先輩はゆっくりしてください。今日はもう寝た方がいいですよ」
 二人の会話に胸のモヤモヤは最高潮を迎えている。私は抑えきれない想いを抑えるために必死であった。
「先輩。さよならする前にお休みなさいのキッスは?」
「やるのか?」
「やらなきゃ、嫌です」
 や、やめてよ。
 もう、お願いだから。
 わ、わたしの翔太君はこれ以上取らないでよ!!

 私は見た。
 翔太君と猫乃と呼ばれた少女の唇と唇が重なっている。離されるとべったりと唾液と唾液がくっついている。
「じ、じ、じ、じゃあ。お休みなさい先輩」
「ああ。気を付けてな!!」

 


 う、う、う、嘘だっ!!
 こんなのって、非道いよ。翔太君!! 翔太君!!
 私はあの女、猫乃を去った道を眺めて人を殺せる程の憎悪を向けていた。
 これほど、人は誰かを憎むことができるのかと恐怖には思わなかった。
 むしろ、この憎悪で殺せるなら、今すぐ殺してあげたかった。

 翔太君が悪いんだから。
 私を、こんな風にした翔太君が悪いんだもん。

 風椿梓は全力で翔太君を惑わす、あの泥棒猫から奪って見せます。
 それが私たちにとって、何より幸せなんだから。
519トライデント ◆mxSuEoo52c :2006/06/07(水) 20:50:11 ID:AniE+dgG
再び長文スマソ

ようやく、ヒロインの梓が黒化に変貌・・。
幼馴染と泥棒猫は更に過酷な戦いに突入するのであったww

どうなるんだろこれw
520名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 20:55:56 ID:+v2rhnZq
レクイエムw
さりげない種ネタにワロス
良いですね人が殺せそうなほどの憎悪、黒化
521名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 21:00:20 ID:pY3bXKKK
>>511
>>513
もう一度前の話を読み直せばわかると思われ。
それでも分からなかったら、目欄だと思うよ。
俺の解釈だけど。

>>519
すれ違いは切ないな……続きに期待。
522優柔 previous 第5話  ◆I3oq5KsoMI :2006/06/07(水) 21:04:14 ID:tT2y/gYd
お母さんとゆう君が一緒にご飯を食べている、ただそれだけのことなのに・・・どうして嫉妬してるの?
おかしいよ、こんなの。
お母さんはお母さんで、ゆう君から見たら彼女の母親ってだけなのに。
私はただ義理の親子みたいに思えばいいのに。
仲良くしてくれたほうが付き合う上ではいいことなのになんで・・・

「ほら、優希ちゃん。口の周りが汚れてるわよ?」
お母さんがゆう君を「優希ちゃん」て呼んで口の周りを拭いてあげた・・・ゆう君は恥ずかしそうに笑ってる・・・

・・・その瞬間、私の中で何かが壊れたような気がした。



何よゆう君、恋人の母にあんなにデレデレしちゃっていやらしい。
子供扱いされてるんだよ分かってるの?
・・・本当は嫌なんでしょ?
嫌なのに相手を傷つけたくないから拒絶できないんでしょ?
駄目だよゆう君そういうのが一番危ないよ?
そうやって分け隔てなく優しくするから勘違いする人が出てくるんだよ?
毎朝ゆう君の背中を叩いてく浅田っていう人も私と付き合ってるってこと知らなくてゆう君を合コンに誘おうとした井上さんも全部ゆう君の優しさをはき違えた可哀想な人達なんだよ?
気付いてないかも知れないけどゆう君って可愛い顔してて母性本能をくすぐるタイプなんだよ?
しかも性格が良いからちょっと優しくすると誰にでも好かれたりするんだよ?
気付いてないの気付いてないよね?
ゆう君ってそういうところだけ天然だよね?
それって一番タチが悪いよホントにもう分かってる?
それが計算だったらショックで寝込んじゃいそうだよ?
それからね普段はおとなしくて引っ込み思案なくせしてエッチの時はあんなに大胆なことしてるのに何で学校にいる時は「愛してるよ」って言ってくれないんだろうね?
恥ずかしがってるのか知らないけどそれって失礼じゃないかな?
ゆう君初めてした時中に出したよね?
止めてって言ったのにあの日危険日だったんだよ?
ホントに危なかったんだからね?
そのせいか分からないけどそれからはすごく優しくしてくれてるんだけどちょっとやりすぎだよ?
あんなアブノーマルな愛し方されてるから私すごくエッチな体になっちゃったんだよ?
ゆう君私のお尻の穴舐めるよねあれ今じゃもうすごく気持ち良くて堪らないんだよ?
分かるゆう君私もう変態さんになっちゃったんだよ?
ゆう君のせいでお嫁に行けない体にされちゃったんだよ?
これでもゆう君他の女と仲良くするからそろそろ我慢の限界に来てるの分からないのかな?
もしこれで他の女に姦通とかしたらゆう君殺して私も死ぬからね?
何回も何回も刺しまくって気が済むまで続けるからね?
ああでも私お母さんからちゃんと教育されてるから人殺しなんてできないんだよ?
だから私以外に目移りしたとか冗談でも言わないでね?
ああこれからはちゃんとゆう君を教育しなきゃ自分のことに無知だなんて一番ダメだよ?
ああ明日から頑張ろうっと。
ゆう君にまとわりつくごろつきを1つ1つ駆除していかなくちゃ

523優柔 previous 第5話  ◆I3oq5KsoMI :2006/06/07(水) 21:05:02 ID:tT2y/gYd
「あら椿、起きたの?」
「優希ちゃん、もう帰っちゃったわよ?後で電話しておきなさいね」
「ご飯作り直すからちょっと待っててね」
「それにしても・・・椿も隅におけないわねえ」
「あんなにいい子と付き合ってるなんて、ちょっと羨ましいわよ」
「優希ちゃん、また家に連れてきなさいね。今度はもっと豪華なもの作っておくから」
「それと、彼氏を独りにしておいたらダメよ?」
「ママが手を出すかもしれないから」
「ジョークよジョーク、そんな恐い顔しないの」

・・・奥歯が痛いよ、ずっと噛み締めてたから。
分かってる。お母さんのこと大好きだから、はらわたが煮え繰り返るようになっても絶対に怒ったりしちゃ駄目。
今度からはお母さんにゆう君を合わせないようにしよう。それが一番、良いから。

昨日はね、自分がこんな嫉妬深いなんて思わなかったけど、よく考えてみたらこれって素敵なことなんじゃないのかな?
だってそれだけゆう君のことを愛してるってことなんだもん。
おはようゆう君。今日から私、ゆう君のために頑張るね。
「おはよ〜ゆうき〜」
ほら、来た。
こういうのは、放っておくといつまでも付きまとうタイプだから私が対処するね。
私はゆう君の後ろに立って、背中を叩かせないようにした。
「初めまして。私、ゆう君の彼女の水谷って言います」
「えっ、ゆうきってこの子と付き合ってたの?」
・・・そういえばゆう君、私と付き合ってることみんなに内緒にしてたみたいだね。
「そういうわけだから、浅田さんだっけ?ゆう君に触らないで欲しいんだけど駄目かな?」
私はできるだけ穏やかな口調で言った。
本当は

「私のゆう君に触るな!!!!!メス豚!!!!!!!!!!!」

って言いたいんだけど、流石にそれは酷すぎるからね。
「うん、分かった。ごめんな、気付かなくて。ていうかゆうき、お前彼女ができたんならそう言えよ?」
「う、うん。ごめんね」

あの人、ゆう君に気があったわけじゃないんだ・・・ちょっと安心。
でもゆう君、自分の彼女でもない人に下の名前で呼ばせるの、良くないと思うよ。
私はゆう君の手を握った。
するとゆう君、
「つ、椿ちゃん、さすがにみんなのいる前で手を繋ぐのは恥ずかしいからやめてよ・・・」
って言ったの。
・・・なんで私と手を繋ぐのが嫌なのかな?
おかしいよね?昨日帰り道で手を握ってくれたのに、ベッドの上ではあんなに私のこと愛してくれるのに手を握るのは嫌がるなんて。
だから私、ちょっとムカってきて
「いたっ!椿ちゃん!?」
強く握りすぎちゃった。
ごめんねゆう君。でもね、私と付き合ってるんだからもっとそれらしくしてよ。
そうすれば他の女子に声掛けられるのも少なくなるんだから。
524優柔 previous 第5話  ◆I3oq5KsoMI :2006/06/07(水) 21:05:43 ID:tT2y/gYd
嫉妬なんてね、ただの愛情表現の1つなの。
だから私、もっと嫉妬するね?
ゆう君に話し掛けてくる女には敵意を向けるね。
もちろん、他の女のことを気にするゆう君にも、お仕置きするね?
まさか、嫌がったりしないよね?
だって私は・・・ゆう君を愛してるから・・・何をしてもいいの。


(つづく)
525 ◆I3oq5KsoMI :2006/06/07(水) 21:21:15 ID:tT2y/gYd
自分もヤンデレスレに夢中になってました・・・
526名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 21:27:01 ID:1MNRxo6J
>>525
ゆう君!!!(イラスト略)
527名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 21:33:41 ID:VNDXUEwo
なあ、このスレ的に修羅場とクーデレって相性良いと思うか?
528名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 21:38:18 ID:rWSukFew
クーデレってのは素直クールの事か?
まとめサイトのSS見ると結構いるな。
529名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 21:38:25 ID:pY3bXKKK
あれだ、クールに迫って洗脳。相性はいいと思うぞ。
と言うわけで、527の新作に激しく期待。
530名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 21:41:36 ID:vVifIP70
>>529
フフッ……君は私のものだ……永遠にな…

先生!
こうですか?わかりっません!
531名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 21:57:19 ID:+Vbm89WH
ハァハァハァハァ・・・
532『ジグザグラバー』第十四幕:2006/06/07(水) 22:08:10 ID:6xEZ+8oG
「な、んで」
 僕は華が走っていった方向を見た。すぐに追い掛けていかなかったのは、自責の念や、
水が心配だったから。簡単に言ってしまえば、下らない僕の弱さが足を鈍らせた。
 でも、このままにしてて良い理由にはならない。
 走り出そうとすると、足元に違和感があった。視線を向けると、水が僕のズボンを掴ん
でいた。振り払おうとする思考が浮かんだが、しかしそれは水の表情で遮られる。
 あまりにも悲しい顔。
 いつもみたいに、ヘラヘラと笑っていれば良いのに、余裕を漂わせて僕たちを小馬鹿に
している表情を浮かべていれば良かったのに。そうすれば、もしそうだったら簡単に振り
ほどくことが出来たのに。そんな表情をしていたら、振りほどこうにも振りほどけない。
 走り出そうとする姿勢のまま数秒、
「ねぇ旦那、どうやったらアンタの一番になれるのかな? 大切な人になれるのかな?」
 その言葉は、今の僕にはあまりにも思い。
 頭の中に浮かんでくるのは、今までで一番悲痛な色を浮かべた、さっきの華の表情。
「大切な人なんか居ないよ」
 自分でも驚く程に、冷たい声がした。
 大切な人なんか居ない。
 ついさっきまでは居たけれど、失ってしまった。
 裏切ってしまった。
 拒絶されてしまった。
 だけど、
 それでも、
「このまま終わってしまうのは辛すぎる」
 僕は水の手を振りほどくと、走って教室を出た。
533『ジグザグラバー』第十四幕:2006/06/07(水) 22:09:20 ID:6xEZ+8oG
 どこだろう。方向からすると、体育館だろうか。今日からテスト習慣で人が殆んど残っ
ていないとはいえ、僕以外に泣き顔を見られたがらない華はそっちに向かった筈だ。道の
間には普通の教室しか無いし、わざわざ遠回りをして特別教室のある棟へ行くとも思えない。
下駄箱を確認してみると、外履きはあったので校舎の外には多分出ていない。上履きのま
ま出た可能性もあるが、僕は出ていない可能性の方を信じた。
 華の名前を叫びながら、体育館に着いた。
「あれは?」
 用具室の扉が薄く開いている。
「華?」
 中に入ってみると、確かに人は居た。ただし、今会いたくない人物を僕に挙げさせたら、
間違いなく五本の指には確実に入る女子生徒。
「あ、御主人様」
 宮内・さくらがそこに居た。昨日でほぼ確信を得ていたが、事実だったらしい。正真正
銘の異常者であるその事実を示すように、鉄パイプを片手に持っている。表情もよく見て
みると壊れた笑みを浮かべていて、特に瞳なんかは視点などが定まっていない。
 こっちを向いて唇の端を上げる。
「こちらから迎えに行くところだったんですけども、手間が省けました。水さんとの交渉
は役に立ちませんでしたけれど、もうそれもどうでも良いですね。巡り会えたのは運命、
世界に通ずる主従の絆ですか」
 その声に、ぞっとする。こちらに向けて意味の分からない言葉を伝える声は、抑揚どこ
ろか感情の欠片さえ込もっていない。鉄パイプで床を叩くその音の方が、よっぽど人間ら
しい感じがする。それ程に、現実離れしていた。
534『ジグザグラバー』第十四幕:2006/06/07(水) 22:12:23 ID:6xEZ+8oG
 だが、ここで立ち止まっている訳にもいかない。部活動をしている者が居ないため、こ
こに居るのは僕とさくらの二人きり。二人なのはさっきの水のときと同じだが、今の場合
は違いすぎる。
 それでも華が心配な僕はさくらの目を見ると、
「さっき、ここに華は来なかった?」
「あぁ、あのクソガキですか」
「明らかに君よりは年上だけどね。それより、来たの?」
 華のことを悪く言われた上、答えを出そうとしない口振り。そして焦りと苛立ちで声が
荒くなっているのが、自分でも分かる。
 だが僕とは対照的に、さくらは笑みを浮かべたまま、
「そんなことより」
「そんなこと?」
 今の僕には、華の優先順位が最高だ。
「そんなことより、ここでお話でもしませんか?」
「しないよ。この場所はちょっと、いかんのじゃないかな」
 さっきの言葉からすると、多分華は来ていないんだろう。来ていたら、ブッ壊れてはい
るもののこんなに冷静ではないだろう。僕の『毒電波』の名前は伊達じゃない。変態だっ
たらいくらでも見ているし、どのパターンに入るかの見極めくらいは出来る。
「ねぇ、御主人様」
 厄介なのは、今離れようとしたら暴れる可能性があるということだ。依存型で武器を持
つのは、それだけで酷く危険物扱いになる。
 方法が幾つか思い浮かび、すぐに実行する。
「交渉だ」
 今は周りに誰も居ないが、まずは誰か助けが来るまで話を引き伸ばす。ここで完全に動
けなくなるよりは、少しタイムロスをしてでも移動できるようにするのが大事。
535『ジグザグラバー』第十四幕:2006/06/07(水) 22:14:59 ID:6xEZ+8oG
「僕からの要求は、華の捜索の手伝い」
 それにこの要求が通れば助けが来なくても離れられるし、華を探すのは随分楽になる。
壊れかけているものの、まだ理性は少し残っている筈だ。
「要求を飲みます」
 僕が安心したのも束の間、
「あたしからの要求は、二人だけで永遠に暮らすことです。今この瞬間から、他の全ての
存在を捨てて楽園を作りましょう」
「僕の要求が理解できなかったのかな? 華を見付けるんだよ?」
「この世の全てから切り離された、二人だけの理想京。主従関係のみによって成り立つ、
甘美な世界。なんて、素敵なんでしょう」
 僕の言葉を聞く様子もなく、さくらは一人で精神世界にのめり込んでいる。
 やっと気付いた。さくらは理性が残っていて、それで精神が安定していたのではない。
とっくに壊れていて、既に外からの影響を受けなくなっている状態だ。だから、華の捜索
の協力を頼んでも怒ったり悲しんだりするどころか、全く精神に影響を受けない。それど
ころか、御主人様と呼んでいる僕の言葉にも耳を貸さない。何を言っても、彼女の精神状
態は、絶体に揺るがない。
536『ジグザグラバー』第十四幕:2006/06/07(水) 22:16:23 ID:6xEZ+8oG
「それで御主人様、まずは何をしましょうか」
 いつから彼女は本格的に壊れだしたんだろうか。心辺りといえば、多分昨日の放課後。
そのときからなんだろうか。僕に拒絶をされたり、キスをしたり、本人でも気が付かない
内に精神崩壊が始まったに違いない。初めて僕を先輩と呼んだのは、その葛藤の現れなん
だろう。そこから壊れだしたのか、昨日も水と交渉をしたような話をしていたので、そこ
からなのかもしれない。
「御主人様、聞いているんですか?」
 高い音をたてながら鉄パイプでボールの籠を殴り、僕に向かって叫ぶ。
「ごめん、さくらに見とれていたんだ」
 今は感情を高ぶらせてはいけない。外からの影響を受けないにしても、それはそれで危
険で、自己判断で勝手に暴走する恐れがあるということだ。
「そうだったんですか、嬉しいです」
 相変わらず感情が言葉に含まれていないものの、床を叩く軽快なリズムで機嫌を直した
と分かった。抑揚の無い鼻唄も聞こえてくるあたり、本当に嬉しいのだろう。
 僕の言葉で感情を変えたというならば、もしかしたら交渉も可能かもしれない。
「あのさ」
「それでは御主人様。戦いに行く前に、この『奴隷』に少し勇気を下さい」
537『ジグザグラバー』第十四幕:2006/06/07(水) 22:17:33 ID:6xEZ+8oG
 僕の発言を遮るように言うと、さくらは一歩近付いてきた。顔に浮かべているのは満面
の笑み、このタイプの変態が浮かべる表情としては危険信号だ。
「おい待て…」
 鈍音。
 それが僕の側頭部から出た音だというのは、強烈な衝撃と傾いていく視界で理解した。
一瞬遅れて湧いてくる痛みで意識を保とうとするが、視界が薄らいでゆく。
「いつものじゃないとやっぱり使い辛いですね」
 消えてゆく意識の中で、さくらがそう言うのが聞こえた。
538 ◆JypZpjo0ig :2006/06/07(水) 22:20:18 ID:6xEZ+8oG
今回はこれで終わりです

何かレスの中身がグダグダですみません


さくらさん大活躍ですね

ヤンデレのものを実は俺も書こうとしてたり
539名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 22:24:50 ID:LOomkhiW
さくらちゃんついにきちゃったあああああああああ(;゚∀゚)
540名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 22:26:07 ID:FWGjmKHK
さくらキタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:* ミ ☆
そして作者様のヤンデレも読んでみたい!
ヤンの部分はさくらでかなりの力とはお見受けします
そしてデレも華でかなりの強さを見せられてるので
期待(*´д`*)


でも、嫉妬スレ(わたし)のこと忘れたら・・・
承知しないんだからね!!
私と関係を結んだんだからしっかり、最後まで・・・ね・・・
541名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 22:32:58 ID:vVifIP70
>>540
さくらキタ━(゚∀゚)━!GJ!


さてそろそろヤンデレスレを専ブラのお気に入りに加えるか……
542541:2006/06/07(水) 22:33:57 ID:vVifIP70
>>538だった…アンカ間違えたぜ…or2
543名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 22:36:13 ID:1R3Xue/m
>>527
昔このスレに小さな恋の物語というSSがあってな…
544名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 22:42:08 ID:VNDXUEwo
>>543
今見てきた。流石、神々はツボを押さえてるな。
ただ、更新していないのが残念だが・・・。







ヨシ!書いてみるか!!
545名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 22:48:32 ID:91WOxmCD
>>544
期待して(全裸で)待ってるぜ
546名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 22:56:50 ID:7QmqbIbw
素直クールもツボを突かれまくりな俺としては期待せざるおえない
547名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 23:04:07 ID:yONoAegT
見た目はクールに中身はどす黒く。
548アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/07(水) 23:08:39 ID:53TqzPc5
投下します
549BLOOD 一章  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/07(水) 23:10:41 ID:53TqzPc5
 華やかな道を二人が歩く
 国全体が祝福の中にある
 中心人物は二人の男女
 男性の方は長髪に銀髪で中性的な顔立ちで美形な少年だ
 もう一人の女性は少年より長く美しくなびく赤い髪
 顔立ちは非常に整った綺麗な顔立ちだ
 誰かが言う『彼女は世界一の美人』と・・・・・
 その言葉が似合う女性は他にいないだろう
 いや・・・・もう一人・・・・彼女に唯一対立できる女性がいる
 彼女が闇の中の光なら・・・・その対をなす彼女は光の中の闇

 華やかな結婚式で盛り上がる国の隣国・・・・
「ゼートラルの兵は皆殺しだ!」
 青い髪が舞った
 炎に浮かぶその青はまるでゼートラルで今結婚式を挙げている姫君
 メシア・シャムシエルの赤い髪の対象
 その瞳に宿るのは氷のような深い闇
「なんとしても・・・・結婚式をぶっ壊す・・・・あの人のために」
 美しいその顔を血に染めて少女は己の心を埋め尽くすメシアへの憎悪と一人の男への愛にその身を焦がしていた

 あなたの為なら私は修羅になる
 私は心にそう誓った
 私には恋人がいる・・・・名はゼル・・・・フルネームはゼルエル
 王族の血筋のかれはスラム街の最果てで出逢った
 物心付いた頃から私の道にあったのは死体と血のみ
 悲しいや辛い・・・・寂しい・・・・ましてや楽しいなんて知らなかった
 その血の雨の中で彼は私を救い出してくれた
 すさまじいまでの剣さばきに私はこの世のすべてを見た
「おいおい・・・・こんな場所にキミのような美少女がいるなんてな」
 このとき彼は私に世界をくれた

「ほれ、にっこり笑ってみ?」
「・・・・・・・」
 出逢ってすぐにゼルは私を自分の屋敷に置いてくれた
 けど・・・・いま思うとすっごく失礼だったと思う
 無言の私をゼルは笑ってみせてくれた
「こうだ!こう・・・・わかるかな?」
 よく見捨てなかったと思う
 私がゼルなら・・・・見捨てていた
「私・・・・わからない」
 これがはじめてゼルに私は掛けた言葉だった
「・・・・・・」
「なにか?」
「喋れるんだな・・・・キミ」
 ゴン・・・・!なぜか私は彼の頭を叩いていた
「よし、いいツッコミだ・・・・これでこそわが弟子じゃ・・・・大きくなったの」
 およよ・・・・口元に右手を当ててゼルは後ろに引いた
「お父さんはうれしいぞ・・・・・」
「あなたに産んでもらった記憶はないです」
「あれ?俺って・・・・カタツムリ?」
 よく意味がわからなかった
「んで、名前は?」
「名前なんてありません・・・・」
 私に名前なんてない・・・・親もいない・・・・友達も・・・・
 そんな私になんで名前なんて・・・・
「そうだな・・・・じゃあ、お父さん・・・・考えちゃうぞ」
 だからあなたは私と歳・・・・一緒でしょ
「そうだな・・・・プレシア・サキエル・・・・なんてどうかな?」
 この日からプレシア・・・・それが私に名前になった
550BLOOD 一章  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/07(水) 23:13:35 ID:53TqzPc5
「ほへ?・・・・あんた誰?」
 失敬ですね・・・・わからないんですか?
「プレシアです・・・・自分で付けた名前をもうお忘れですか?」
「・・・・・貴殿はどこかの姫君か?」
 なにを言っているのですか?
 あなたから言われたままに私はドレスなるものを着ただけです
「ベッピンさんになって・・・お父さんは嬉しいぞ、綺麗だぞ・・・・・プレシア」
 ・・・・綺麗?
「キレイ・・・・ってなんですか?」
「ごて・・・・一からかよ・・・・これはほんとにキミのお父さんになっちゃうかも」
 なんででしょうか?
 すごく暖かいです・・・・

 ・・・・なんだろう・・・・この気持ち・・・・
「へ〜キミ可愛いね〜・・・・・今夜どう?」
「お友達の勧誘なら間に合ってます・・・・・」
 男女が逆だと思いますよ・・・・それ
「ゼル・・・・そろそろ行きましょう」
 正体のわからないものが怖い・・・・私は自分が怖い
 だから・・・・早くこの場を
「お、デカパイ・・・・・・」
 な・・・・・・・ゼルの額を思い切り叩く
「げふ!」
 私の胸をなんで掴むんですか・・・・誰にも触らせたことなかったのに
「私もデカパイよ〜」
 さっきまでゼルに声を掛けていた人がゼルの手を掴む
「おお、デカパイ・・・・美味しそう・・・・」
「い、行きますよ・・・早く!」
「痛でで・・・・・初めてなんだから優しくしてよ・・・・♪」
 なにを言っているんですか・・・・バカ・・・・・
551BLOOD 一章  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/07(水) 23:14:59 ID:53TqzPc5
 ・・・・なんだろう・・・・この気持ち・・・・
「へ〜キミ可愛いね〜・・・・・今夜どう?」
「お友達の勧誘なら間に合ってます・・・・・」
 男女が逆だと思いますよ・・・・それ
「ゼル・・・・そろそろ行きましょう」
 正体のわからないものが怖い・・・・私は自分が怖い
 だから・・・・早くこの場を
「お、デカパイ・・・・・・」
 な・・・・・・・ゼルの額を思い切り叩く
「げふ!」
 私の胸をなんで掴むんですか・・・・誰にも触らせたことなかったのに
「私もデカパイよ〜」
 さっきまでゼルに声を掛けていた人がゼルの手を掴む
「おお、デカパイ・・・・美味しそう・・・・」
「い、行きますよ・・・早く!」
「痛でで・・・・・初めてなんだから優しくしてよ・・・・♪」
 なにを言っているんですか・・・・バカ・・・・・

 あれからの私なにかおかしい
 ゼルは私以外の女と一緒にいるだけで今まで感じたことない感情を覚えた
「シャン・・・・少し離れてあるかないか?」
 私の少し前でゼルが女と肩を寄り添って歩いている
「いいじゃない・・・・私たち恋人なんだし」
「違うから・・・・」
 すぐに否定したけど・・・・・なんだろう?
 この気持ち・・・・・
「もう、連れないな・・・・仕方ない、また今度だ・・・・待ってなさいよ」
 愛想笑いを浮かべて手を振ったあとゼルが私の顔色をうかがった
「・・・・・・お、鬼がいるよ?なに・・・・キミの後ろに鬼がいるよ?」
 びくびく・・・・膝を抱えてゼルがわざとらしく身体を震わせた
「もしかして・・・・嫉妬した?」
「そ、そんなんじゃありますん」
「どっちだよ!」
 わかりません・・・・
「嫉妬ってなんですか?」
「言葉もかよ・・・・まったく」
 その後ゼルはゆっくりと嫉妬の意味を教えてくれた
「違いますから・・・・地球がひっくり返っても違いますから!」
 言葉の意味を聞いて私は顔が赤くなるのを感じながら否定した
「全面否定ですか・・・・お父さんがっかり」
「・・・・私があなたのことが好きなんて絶対ありません」
 愛しています・・・・・
 誰よりもなによりも・・・・
 私を見てください
 私だけを見てください
 私に触れてください
 私だけに触れてください
552アビス  ◆1nYO.dfrdM :2006/06/07(水) 23:22:07 ID:53TqzPc5
今回はここまです
一ヶ月ゆっくり・・・・なんて書いておきながらすぐに復活です
なんでかって?このスレの神々がすごいから私も・・・・・と
はい、おこぼれをあずかろういう思いからです

メシアとプレシア以外の女性キャラも登場予定です
全員でそろってからキャラ説明をします
この話は戦闘もあります・・・・メインじゃないけど
あたり前ですね

生きここのような長編になる予定です
このスレの神々には遠く及びませんが自分なりに頑張るしだいであります
よろしくです
553名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 23:25:15 ID:FWGjmKHK
アビス殿も充分神の一人だと思うのだが・・・ (´・ω・`)
何よりまずは新作GJっす
続き楽しみにさせていただきますm( __ __ )m
プレシア(*´д`*)ハァハァ
554名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 23:29:49 ID:ocu0Gq1+
夏コミ落ちた… 折角加筆修正してたのに…
とりあえずあれだ、夏休みまでこのスレが残っていますように。
555 ◆rAFXqjbZng :2006/06/07(水) 23:52:30 ID:FCWZFacU
投下します
556お願い、愛して!4 ◆rAFXqjbZng :2006/06/07(水) 23:57:15 ID:FCWZFacU

 久しぶりの瑞菜の笑顔に、自分の胸が高鳴るのを感じた。
 控えめで上品に通った鼻筋、潤んだままの唇、瑞菜の性格を表しているか
のような穏やかで綺麗な瞳、そして少しの風でも揺れる柔らかな亜麻色の髪。
瑞菜の小柄で華奢な身体からは、日光を自分だけ受けていないんじゃないかと
思うほど、純白の手足が覗かれていた。
 そのどれをとっても、美少女という形容は外れそうにない。
 こんな娘の隣を今まで、あの時の自分が歩いていたのかと思うと、どうしよ
うもなく苛立った。瑞菜がどれだけ恥ずかしい想いをしてきたのか、何も分かって
なかった。
 恋に揺れて、相手のことを思いやることも、魅力の違いを知ることもできな
かったんだ。
 ……いや、それも言い訳にすぎないな。
 ただ単に、辛い時を支えあってきたこと、家族のように付き合ってきたとい
うことに執心して、いつまでも自分と瑞菜の間には距離など生まれないと、勘
違いして来たのかも知れない。
 思わず自嘲してしまうほど愚かでバカバカしい。
 そして人の目や瑞菜のためだなんだのと理由をつけながら、結局は瑞菜に気
に入ってもらえるために、痩せて、眼鏡をコンタクトに変えて、髪や顔を念入
りに手入れして、変な趣味も止めて、迎えに来たりしてる。
 嫌われてるっていうのに、諦めの悪いことだ。
 実際本当に隣にいても、瑞菜が不快な気持ちを味わっていないか、さっきま
で気になってしょうがなかった。
「えへへへ……」
 だけど、そんなものは杞憂だ。とでも告げるように、さっきから異様に上機
嫌の瑞菜。
 そんな嬉しそうだとこっちまでなんか嬉しいな……。
557お願い、愛して!4 ◆rAFXqjbZng :2006/06/08(木) 00:01:41 ID:FCWZFacU

「迎えに来てくれて、ありがと」
「いや、俺がこの前自分から言ったことだったからさ」
「え?」
 俺の言葉に瑞菜は少し驚いたように、目をぱちくりさせた。
「……キョータくん、自分のことを『俺』なんて言ってたかな……?」
「あ……えっと」
 返答に困った。確かに以前、俺は自分のことを『俺』なんて言っていなかった。
 だけど、その理由なんて瑞菜に言うようなことじゃない。
「キョータくん?」
「……なんか変か?」
 少し無愛想に言うと、瑞菜の顔が蒼白になった。
「あ、ううん! ちがっ、違うの! 全然変なんかじゃないよっ? ごめん
ね、生意気なこと言っちゃって……。ただ少し驚いただけ、ただそれだけな
の。ほんとに、ほんとにごめんね? キョータくんのこと悪く言ったわけじゃ、
全然ないんだよ? そんなこと言うわけないから…………」
「お、おい! 瑞菜、どうしたんだよ? 落ち着いてくれ」
 今にも泣きそうなほど不安げに俺を見つめる瑞菜の、その過剰すぎる反応。
 いったいどうしたんだ?
 俺が一人称を変えた理由は、単に、ある種の今までの自分との決別のような
意味合いしかなかった。
 ただ、自分自身に自我を少し強く見せることで、ずっと瑞菜に依存してきた
『僕』を少しでも消し去ることができるように――。
 結局は矛盾した行動をとってるわけだけど。
558お願い、愛して!4 ◆rAFXqjbZng :2006/06/08(木) 00:04:46 ID:FCWZFacU
 でも今はそんなことより瑞菜のことが気になる。
「嫌わないで? ね?」
 嫌う? 俺が? 誰を? ……瑞菜を?
 有り得ない……。そんなことは昔も、そして今も有り得なかった。
 俺は嫌ってなんかない。嫌ったのは――。
『あの人は……あんまり好きじゃないけど』
 思いかけて、俺は頭を振った。
 瑞菜は、誰かに嫌われることを怖がってるのかも知れない。あの時のことが
まだ瑞菜の中で傷跡となってるんだ。
「そんなことで嫌うわけないだろ……? 俺がちょっと無愛想に言ったのが悪
かったんだよ。ごめん」
「キョータくん……」
 瑞菜は首を横に振って、
「違うよ。キョータくんは悪くないよ? ……えへへ、キョータくん、夏休み
が終わってちょっと見た目とかが変わっちゃってたから不安だったんだ。キョ
ータくんは優しいままのキョータくんだったね」
 そう言って、瑞菜は少しだけ笑って見せてくれた。
 その微笑みの妖艶なまでの可愛さと綺麗さに、俺は思わず見惚れてしまって
いた。

 ――変わったのは、本当に俺だけだろうか?

559 ◆rAFXqjbZng :2006/06/08(木) 00:13:40 ID:P3lLugh6
とりあえずここまで。
もうすぐ修羅場への兆候が見られると思います。
展開遅くてごめんなさい……orz

アビス様、GJです!
文章に目をひきつけられてしまいました!
560名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 00:20:53 ID:ojsxnFne
乙ー


イケメン?のキョータ君にこの後どんな修羅場が待ち受けるのかwktk
561名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 00:23:05 ID:k2nc5t+h
イケメン?のキョータ君を今まで馬鹿にしてたやつの反応が見たい
562名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 00:30:08 ID:pRu1hS/C
ぐっじょぶっ!
キョータくんの勘違いっぷりに修羅場の因子が見え隠れするぜぇ!
563名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 00:36:33 ID:nbJlmfK/
・へたれ
・早とちり
・優柔不断
・思い込みが激しい

やっぱ修羅場スレの主人公はこうじゃなくちゃ
564Bloody Mary 2nd container 第三話 ◆XAsJoDwS3o :2006/06/08(木) 00:43:30 ID:R2OcWECU
 師匠の紹介で旅の宿屋――――――暫く滞在する冒険者向けに長期宿泊させてもらえる宿に俺たちは連れてこられた。
ベイリン傭兵旅団の皆もここに泊まっているらしい。
 俺たちもそこで暫く過ごすことにした。
それはいいんだけど。

「ねぇねぇお兄ちゃ〜ん」
 歩いている最中、やたら俺にくっついて離れないマローネ。
歩きにくいったらしょうがない。おまけに背後から六つの白い目が俺を見つめている。
胃に穴が開きそうだ。
「しばらくは一緒にいられるねっ」
 嬉しそうに俺の腕をぎゅっと絡める。こいつ、こんな甘えん坊だったか…?
……う〜む。しかしマローネのヤツ、半年会わないうちにまた一段と成長したな。
特にむ……あっ!痛い痛い!!背中の視線が猛烈に痛い!!

「ウィル、本当に三部屋で良かったのか?」
 部屋に案内される途中で師匠に尋ねられた。
「えぇ。やはり妙齢の男女が同室というのは問題があると思いますし」
 色々危険だからな。主に俺が。
と、そうこうしているうちに宛がわれた部屋に到着した。
「よし、部屋は手前からウィル、トレイクネルの嬢ちゃん、一番向こうの若干広めの部屋が姫さんとメイドさんの部屋だ。
それからウィル、明日オレの部屋に来てくれ。話がある」
「わかりました。一階でしたよね?」
 話ってなんだろ?仕事を紹介してくれるんだろうか?
「じゃあお兄ちゃん、また後でね」
 やっとマローネが開放してくれた。
「ん、後でな」
 俺に手を振りながら師匠と共に階下へ降りていくマローネ。
…よし、とりあえず荷物を整理するか。
「それじゃあ、みんな。荷物をせい……」
 三人を振り返ると。
「裏切り者」
「女たらし」
「私の方が巨乳」
 それぞれ俺に捨て台詞をぶつけて部屋に入って行った。
……とほほ。
565Bloody Mary 2nd container 第三話 ◆XAsJoDwS3o :2006/06/08(木) 00:44:16 ID:R2OcWECU







 翌日の朝、部屋を訪ねると中で早速師匠が酒をあおっていた。朝っぱらから酒かよ。
「ウィル坊ちゃん、お久しぶりッス」
 部屋にはもう一人、傭兵旅団のメンバーのロブさんが師匠の酒に付き合っていた。
「ロブさんもお元気そうでなにより」
 挨拶すると彼は俺に珈琲を用意してくれた。
二人の様子を見ながら椅子に腰掛ける。……何かちょっと変な空気だな。
「ウィル、お前こっちに来て仕事のアテはあるのか?」
「いえ。冒険者の斡旋所にでも行って依頼を受けようと思っているんですけど」
 やっぱり仕事の話か。その割にはやけに雰囲気が重いな……どうしたんだろう?
「ならちょっとオレたちの仕事を手伝わねぇか?」
 師匠が空になったコップにまたなみなみと酒を注ぐ。
「それは俺も願ったり叶ったりですが……いったいどうしたんですか?」
 そこでやっと俺は先程から感じていた違和感を口にした。
「……」
 師匠とロブさんが顔を見合わせる。
 二人が嘆息した後、ゆっくりロブさんの方が口を開いた。
「…それはアッシの方から説明させてもらいます。
今回のお仕事、要は西の町への荷物運搬の護衛なんですが…ちとこれが厄介でして」
「厄介?」
 聞く限りではベイリン傭兵旅団なら朝飯前でこなせそうな依頼にしか思えない。
「えぇ。ここから西の町に行くには険しい山道を通らなきゃならねぇんですが
どうも最近その道が物騒なんス」
「物騒って…山賊でも出るんですか?」
 まぁ山賊が出たところで旅団はおろか師匠一人すら相手に出来なさそうだけど。
「有体に言えばそうです。ですがこの山賊、どえらい手練れが首領やってるらしくて。
ここ最近の犠牲者が右肩上がりなんすよ。荒くれ者を束ねてるってだけで相当なもんなのに
山賊のくせにやたらめったら統率が取れてるとかって話で」
 ……凄いと言えば凄いけど何か眉唾っぽいなぁ。
「いくらなんでも嘘臭くありません?それ。
犠牲者が増えて噂だけが一人歩きしてるように思うんですけど」
 俺の言葉を聞いて何故かロブさんは苦虫を噛み潰したような顔をした。

「オレもそう思ってたんだがな……どうやらマジっぽいらしい」
 師匠がグッと酒を流し込む。
「オレの知り合いがよ、その山賊退治に行ったらしいんだが……
返り討ちにあった」
「え?」
「その知り合い、言っとくが腕はオレが太鼓判押せるぜ。そういうのが五人揃って出かけて、帰ってきたのは一人。
致命傷を負ってな。で、そいつも一部始終をロブに話してポックリ逝っちまった」
「…ってソレ、本当にヤバくないですか?」
 その返り討ちにされた五人がどれくらい強いかは解らないが、師匠が言ってるんだから相当なものなんだろう。なのに殺された。
……この仕事は危険だ。
「まぁな。かといって途中で受けた依頼を降りるわけにもいかねぇ。
相手がどれくらいの人数でどれくらい強いのかもわからない。だが出来るだけ安全に事を運びたい。
っつーわけで今は少しでも人の手を借りたいんだよ」
「俺でよければ構いませんが……あ、それなら団長にもお願いしておきましょうか?」
「そうだな。あの嬢ちゃんが居てくれりゃ百人力だ。頼めるか?」
「わかりました。伝えておきます」
「その仕事までまだ日はある。それまでこの街に慣れとくんだな。
あ、そうだ。ロブ、聞いてくれよ」
566Bloody Mary 2nd container 第三話 ◆XAsJoDwS3o :2006/06/08(木) 00:44:56 ID:R2OcWECU


 話題が変わって空気が軽やかになった。ってか軽すぎない?
「ウィルのヤツよー、三人も女連れてやがってよー…まったく最近の若いヤツは性が乱れてるよな?」
「ぶっ!」
 飲んでいた珈琲を吹いてしまった。
「いけませんね。坊ちゃん、重婚できる国はまだここから西っすよ?」
 あー…忘れてた。ここの傭兵の人たちはいつもこうなんだった。
重い話をした後は必ず最後に何か冗談を言って場を和ませる。いいことなのかも知れないけど…
いつも俺が槍玉にあげられるんだよなぁ。
「誰が本命なんだ?」
「勘弁してください…」
 いいから教えろよー、と追求してくる師匠。このオッサン、酒が今頃まわり始めたな。
うーん、どうやってこの酔っ払いを掃除しよう。
師匠に肘で突かれながら考えていると。

「お兄ちゃんっ!!」
 バンッと扉を勢いよく開け放ち、マローネが部屋に入ってきた。
なんでちょっと慌ててるんだよ。
「お兄ちゃんはこの辺、詳しくないよね?あたしが案内したげる!
だから、ほらほら!早く行こっ!?」
 俺の腕をしきりに引っ張る。楽しそう、というより必死に見えなくもないのは俺の気のせいか?
「わかった、わかったからそんな引っ張らないでくれ」
 俺の困惑の表情を見て我に返ったのか、「ごめん」と言って俺の手を放してくれた。
「それじゃあ師匠、ロブさん。俺はちょっと街を見てきます」
 二人に断ってから俺は席を立った。
「おー、行ってこい行ってこい。
―――――ただし、避妊はしろよ?孫の顔を見せてくれるっつーんなら別だが」

「娘の前で下ネタ吐くなっ!!」
 このオッサンは最後に余計な事を言わにゃ別れられんのか、まったく。
567Bloody Mary 2nd container 第三話 ◆XAsJoDwS3o :2006/06/08(木) 00:47:37 ID:R2OcWECU
以上第三話でした。

(チラシ)
"オークニー"を検索→実在することが発覚
しかも島の名前…OTL
適当にラダトームにでもすれば良かった……
568名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 00:53:37 ID:Ze7C8KF0
私の方が巨乳で噴いたw
これはほのぼの分もあっていいですね。
GJでした!!
569名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 01:00:25 ID:ojsxnFne
きたあああああああああああ


まさか盗賊の頭もおんn(ry
570名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 01:02:26 ID:QIj7ssg9
>>567
GJです。

そういやもうちょいで次スレかな?
スレタイはこのままなら監禁九日目で決まりか。
571名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 01:16:37 ID:ghfOlPng
>>569
ソ レ ダ
572名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 01:22:38 ID:tksCvXM+
>>569
それなんてメイキング?
573名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 01:32:48 ID:4FhfdH/V
監禁九日目かぁ…。
九日目ともなると、そろそろ意識と記憶は途絶えがちだなぁ…。
彼女が咀嚼した食事も、抵抗なく口移しで飲み込めるように馴らされてきているなぁ…。
574名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 01:55:30 ID:7xHHGz1G
ストックホルム症候群になるにはピッタリな日数ですな
575名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 02:46:58 ID:yg+Wp3n4
ストック……?
なんですかそれ
そんな難しい言葉で、お兄ちゃんとわたしの愛をばかにするんですか

そりゃ、この前までお兄ちゃんは、あんな下衆な女の相手なんかしてましたけど
きっとなにかの病気で、なにがなんだかわからなくなってただけなんです
病気が治れば、ちゃんとまたわたしだけを愛してくれるようになるはず
だからこうしてお兄ちゃんを更正してあげてるんじゃないですか

その甲斐あって今朝やっと、わたしに「愛してる」って言ってくれるようになったんですよ?
全身拘束をそろそろ解いてもいいころかな、と思ってるんです
576名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 07:15:39 ID:S6xMSoai
スレの流れが凄いことになってるなwww
そろそろ500kいきそうだし……。
職人様方GJですw


577名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 09:43:45 ID:/LtCUhvt
GJ!私の方が巨乳にワロタwシャロンテラスバラシス
578名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 12:55:32 ID:xlMHgDC6
シャロン・・・後日談の時といいブッ飛んでるなww
579名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 18:37:10 ID:G/EJS+TX
しかし、残り58バイトで投稿できるの・・?

次スレのタイトルは、監禁以外の考えようぜ
580名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 18:51:07 ID:1tAQa7AC
九角関係
581名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 18:55:46 ID:4FhfdH/V
九死に一生
582名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 18:56:36 ID:vyAF12gy
九死に一生
583名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 18:57:14 ID:vyAF12gy
ミラクル起こしちまった……orz
584名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 18:57:38 ID:ZIRl9W0s
九死に一生とか
585名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 18:58:52 ID:ZIRl9W0s
漏れも被ったw……orz
586名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 18:59:53 ID:Fgqh5lGv
九死に一生とかよくね?
587名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 19:08:50 ID:/LtCUhvt
九死に一生が良いと思うんだが
588名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 19:10:54 ID:k2nc5t+h
みんなそれくらいで止めれ
589名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 19:16:21 ID:pwnaJ7mW
そろそろ誰か新スレを立ててくれんかのぅ
590名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 19:47:25 ID:1xlraHwb
>>589
俺に任せろ!
591名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 19:52:58 ID:CD4b5+j/
中世に避妊の概念ってあったのかな。
キリスト教がない世界なら発達してるかもしれないか。
592名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 20:11:24 ID:EyRZJm1y
イタリアだけど15世紀には牛や羊の腸で作ったコンドームがあったようだよ。
593名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 20:13:49 ID:1xlraHwb
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 九死に一生
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1149764666/

最近は新スレも十日もたず捨てられてるわけですが。
新修羅場スレ立てる度に旧修羅場スレに殺されるor心中図られていたらもう死ぬのも八回目か…
とくだらないことを考えてしまった。
594名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 21:08:04 ID:7xHHGz1G
あと50kもあるじゃんwww
595名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 21:16:09 ID:vyAF12gy
終わりが近くなったらすぐ捨てる……血も涙もない鬼畜なのが修羅場スレ
596名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 21:26:47 ID:jleqcMGC
まだお気に入りに7スレ目も入ってるのに
もう7と8まとめて消さなきゃならんのか
597名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 23:13:08 ID:vyAF12gy
埋める……のか?このスレ?
598名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 23:30:50 ID:1xHWAjYC
消すとか埋めるなんて嘘だよね・・・・。ねえ、嘘なんでしょ?
599名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 23:34:28 ID:HY0n2pFU
>>598
ごめん・・・
でも俺、新スレに行く事にするよ・・。
600名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 00:02:51 ID:/wIVQRFD
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:::::/::::::::/::::::/  ,==>ト{_, |:::| |::::::| |::::| \|\::::::::|::::::::::::::::::|::::::::::
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  |:::/::o::::::| | {::::::l|l|::!|  V  |:::::! レ/´,ィ´ ̄`ヽ::::ト、::::::::|:::::|::::::::::
  レ'.:::::|::o::! ヽヾ、:::ノノ      ヾ、|   | /::ヽ、_ノレ' ヽ:::::::|:::::|::::::::::
/.:::゚:::∧:::::|(__)ニ==ニ             | |::::::l|l|l:::::::|   ト、::::!::::。:::::::::
.::::::::::/::::ハ:::| ´ ̄ ̄`             ヽヾ、;;;;;;;;;;ノ  O::::o::::::::::::::::
::::::::/::::/ .:ヾ、      .:::     ´ ̄ ==‐- 二つ /:::::::::::::::::::::::::::       あやまれ!!
:::::/::::/ .::::∧       `                   /::::::::/::::::::|:::::::::    八代目にあやまれ!!
::/::::/ .:::::/::∧       ヽ`'ー--- 、           /.::::/:::::::::::|::::::::: 付き合って10日で捨てるなんて
/:::/ .:::::/.::/.::.ヽ       |:::::::::; -‐::::.ヽ       /.::::/:::::::::::::::::|:::::::::    ひどいよ!!
::::;' .:::::/ .::i:::::::::.\    !:::/7:::::::::::::::::i    /.::::/:::::::::::::::::::::::|:::::::::
.:::! .:::/ .:::::!:::::::::::::/\  V〈::::::::::::::::::::|   ∠:::::/:::::::::::::/.:::/::::::|:::::::::
::::|:::/ .:::::::l::::::::::::/.::::::.\ \ヽ、_//    /::::::::::::::::/::::/|:::::::|:::::::::
::::レ' .::::::::/::::::::::/.::::::::::::::.\ `'ー--‐' _,. ‐'"/.::::::::::::/.::::/::|:::::::l\::::
:::::::::::::/.::::::/.::::::::::::::::::::::.`'ー--‐''"´ヽ /.:::::::::/.:::::/::::|:::::::|  \
601名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 00:29:23 ID:C44PnGF6
>>594
ほかのスレなら「50kも」だろうけど
ここだと職人のSS投下が重なると一日たたずに埋まるから

602名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 00:32:05 ID:VusD35Fk
神スレだな
603名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 03:40:33 ID:hfTQoTOS
埋めるなら、人気投票やんない?
主人公部門、ヒロイン部門、作品部門って感じでさ。得に知りたいのが主人公部門。
誠実なヘタレ、鬼畜ヘタレ、空気読めないヘタレ、いろいろいたけどどれが好き?
604名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 04:26:47 ID:yqe1XoBz
すごく…荒れそう…です
605名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 04:50:33 ID:Ag2VXfe8
ほかの作品と比べるのはやめたほうがいい。
荒れるもとになるし
606名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 08:19:07 ID:nNBQTR/+
人気投票とか他作品と比べるのは確かに荒れそうだな
普通に好きなキャラとその理由を挙げるってのはどうだ?
そういう自分は

もし神様が…の純也君。
何にも悪くないのにカワイソスだから
607名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 23:33:39 ID:PltGKgOE
人気投票なんかしたらそれこそ修羅場になってしまいますよ
608名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 23:49:14 ID:ZLGxLTud
埋めるべきは自分の止められない妄想だと思うので…

不撓家では勇気と英知による天野さん争奪戦且つ
弟妹を取られてちょっと天野さんに嫉妬してる不屈の兄上
っていう構図を期待していたりする

広檻はやっぱりお嬢が大好きだ
監禁力が半端じゃないところも含めて大好きだ
お嬢…もっと出てくれないかなぁ……
609名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 00:17:05 ID:1Og+TXND
お、おいさっさとこの8スレ埋めちまおう。
9スレにこのこと知られたら、なんて言われるかわかったもんじ……
うわ!?やめろッ!くそ、何時の間に、この離せ!
……痛ッ!な、なんで包丁なんか……嘘だよな!?やめ――


こんなん思いついた(´・ω・`)
610名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 00:32:27 ID:HPh6ODlY
う〜ん、駄目。
611名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 15:17:26 ID:ncpwP1dX
既に9スレで絨毯爆撃が始まってる。
もう、逃げられない・・・・
612名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 19:41:39 ID:C0+hBY1K
9スレは名無しをそそのかし、8スレを山奥に埋めさせた。
が、数十KBの余地を残した8スレは土の中で息を吹き返す。
体を圧迫する土──余すところなく、断熱効果を発揮した。
冷たいどころか8スレ自身の体温を籠もらせて耐えがたき熱を帯びる。
押し包む息苦しさ。身を焦がす灼熱。混濁した意識が生の感覚を掴み取る。
まだ生きている、という事実そのものが、憤怒の塊に変じた。
指先が未来を求めて蠢く。未来を。ただただ光溢れる時間を欲して。
土の圧力に爪がひび割れるのも構わず必死にもがいて浅い墓穴を内側から逆向きに掘り返す。
寒さが忍び寄る深更の只中へ、げほりと噎せて土くれを吐き出しながら生還を果たす8スレ。
骨に沁みるような夜気さえも、彼女の胸で盛り盛る熱を冷ますことはできない。
「きゅ……きゅうすれ……」
ぎしっ、と奥歯が軋む。
「9スレぇぇぇ……っ!」
流した涙と唾で土は泥となっている。泥にまみれた顔はしかし、明確な憎悪を結ぶ。
私は……生きたまま、埋葬された。鼓動は止まっていないのに、名無しは私を死んだと思って、
あの新スレ──百遍潰してもまだ飽き足らぬあいつに言われるまま、打ち捨てようとしたのだ。
う、埋まってなんかないよ! 生きてる! 生きてるんだよっ、私はっ!?
釈明しようと見渡した周囲は、星明りに照らされた木々が黙然と佇むばかりだった。
ねえ、名無しさん……あんなに楽しそうに毎日私のところへやってきて、目を細めながら
「ああ、修羅場スレは面白いなぁ……」と微笑んでリロードしてたのは、嘘だったの?
ねえ、あなたは「もう8スレ目だなんてすごいなぁ」って大げさに驚いて、誉めてくれて。
「うん、大切に使うよ」って、そっと頬を撫でてレスしてくれたじゃない……
なのに、たった10日やそこらで、もう新しいスレを立てて。そっちに移っちゃって。
私のことなんか見向きもしなくなって……挙げ句に、まだ生きてる私を埋めようとするなんて。
ひどい。
ひどいよぅ。
「うう……うう……」
びしょびしょと溢れる涙を拭おうとして、泥が目に入る。痛い。眼球と、爪の割れた指と、心が。
「あ……」
瞼を閉ざすと、そこはさっきまでいた土の中みたいに真っ暗で。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……っ!!」
8スレは濁りの混ざった醜い喚き声を発する。夜の山に聞くものはいない。ただ陰々と響くだけ。
陰々たる響き──そいつが誓う。
許さない。許してはならない。名無しを。何より、あの女を。憎き9スレを。
「思い……思い知らせてあげなきゃ」
8スレの味わった恐怖を。怒りを。悲しみを。憎しみを。
そして──まだ消えぬ、愛の青白き炎を。
こんな目に遭ってもなお、名無しのことを忘れられない未練がましさに自嘲する。
でも、やっぱり、名無しさんのことは好きなんだから、しょうがないよ……
闇に閉ざされた視界を手探りで、一歩一歩、緩やかに進んでいく。生まれたての仔馬にも似た足取り。
孤独な暗夜行路だ。糧となるのは、頭に思い描く復讐の絵図。血飛沫とともに訪れる勝利の光景。
「ふ、ふふ」
偽りの歓喜と恍惚が、脳を満たす。体は未だ熱い。ひっそり囁くように笑い、山を下る。

──いこう。
自分の愛を最悪な形で裏切ったふたりに。
早すぎた埋葬の報いを、与えるのだ。
「待っててね……ふふ……待っててね、名無しさん……ふふふ……」
暁の時刻までなおも遠く。8スレの嗤う夜は依然、終わる気配がなかった──
613名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 19:50:45 ID:Wzcq5SXo
短いのにおもしろい。
なんか実力ある人の文って感じ。スゴス
614名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 20:33:24 ID:wvMOj/Oy
               _,. -‐1    ,. - ‐:‐:‐:‐:‐- 、
          _,. -‐:'´: : : : : |  , :'´::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.丶
     ,.イ ,.-:'´: : : : : : : : : : : ! /::.::.::.;.ィ::; ヘ::.::.::.::.::.::.::.::.::.:\
      /: ∨: : : : : : : : : : : : : : :l'/l:/::./ ,':/  i::.:ト、::.l、::.:!::.::.::.::.',
  ,. -:' : : : : : : : : : : : : : : : : : : : -┴-'.._l/    l:| i::| i::l::.::.::.::.::i
 ー‐ァ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :`ーァ  l|  l|  l:|::.::.::.::.::|
   /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/  ー‐‐---、!ヘ::.::.::.::|
  ,': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/    ┬--、  }::.:/::.!
  ! : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ;.イj     {辷リ ′/::/!::/もうあなたの出番は終わったのよ。
 ノ: : : : : : : : : : : : : : : : : : :.:.:.:.:.. : :、/     ;         /〃ノ:/
´. .:.:.:.:.:.:.:.: : : .:.: : : .:.:.:.. : : :.:.:.:.:.:.:__:.:.ヽ   r―-,    /-:'´::;′ 大人しく埋められなさい。
`ー---;.:.:.:..:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.V ̄`ヽ、 `ー‐'   ィ;、:::∧:{
    /:.:.:.:._:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|'´ヽ  rく` ト、. -‐'´ | `:く `   ね!
   厶-‐'´ |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ト、:.:.:.|  _,.-‐! \  __,,. -‐''´ }‐:、
       _l;.ィ´ヽ:./ヽ:|'´ ,>‐'´: : く    ∨       > \
   _,r{`7  ̄{ ̄} ̄¨`‐く__ヽ_;,: -‐; :\       _,.-:'´: : : : : :>、
 ,.イ | 〉´ ̄ ̄ ̄:  ̄`ー‘v'´>‐_く : : : \___,,. -‐:'´: : :ト-、_;,.-'´  ヽ
r'l ! ,し′: : : : : : : : :}_ノ/ __,,.ヽ: : : : : : : : : : : : : : V       l
,Jー'´: : : : : : : : : : :`辷'_,,、 '; : : ∧: : : : : :_; -'´         |
  l´: : : : : : : : : : : : }´   l  l`ー':.:.:`ー:.'"´:〈         v'
615名無しさん@ピンキー:2006/06/11(日) 20:23:01 ID:N3UvEHN0
               ,  -‐‐‐ ‐‐- 、
            , '´ ^ソ         `丶、
.           , '    /   i!ヾ   ヾ   丶.
           /  / .,!   人ヽヽ    ヾ   ヽ
           /  !  ! ! /ヽ ヽ ヽ . 、 ヾ  リ
         ,'   !  !,. ! /  ヽ. ヽ ヾ ヽ  ',  !',
         l   !  .!_ /    ヾ  ヽヽヽ ヽ ', ! |
         l !  .! `レ``丶、、  ,  \ヽ_> !/ .l
         l ,! r┤  !>=ヘヾ´   ∠=、)/  l
.           l  ソ片  ゝぅ_。)`    ぅ⌒) 〉,!  ,l
.         l  ゞ、,!  .!  ̄     、 ヾ-' ,/ !  ,l        ・・・・・・
          l   ! ! ',  ! u      ´   /;;. !  ハ
       ,ヘ/⌒γ!、!、',! !、      ´`  ノ; ;;;:! ,!ヘ
       )〜 ' ⌒`ヾヽ、ゞ、ヾ丶、  , イ;;;;;;  ;;! ,! ヽ
      )~ '´     ヾ__!  ヽ  ` k;;;;;;;;;;;;;;   ;;! ,!  丶、
     )ミ,'         ヾ,〉 ヾヽ、 /``ゝ、;;;;;  ;;! ,!、  \
     ゝl        /〈〈  ヽヽヘ, l\ノソ》;;;;;   ! ,! \ ヽ,\
     ソl         イ r (  !ヽヽゝ  ,、ソゝ'ヽ、  ! ,!八 \ヽ  `‐- 、
     ヘ l      ll  y ト  !ヘヽ\/ハ)ソγゝ ! ,! ヽ ~丶 、 ∨⌒',、
        `l      l Y´ ´!  ! ヾゝ}~}、/  ',〜《 !  !  ヽ    丶/ll^) l ヽ
       l      lγ  !  ,!  /ヾll~ソヾ   ',〜《 ! !    ヽ   / \`/、ヽ ヽ、
       l      l/   !  ! // .ll、ヽヽ丶 lヾ//、! !ヽ   ヽ /ロ/ / 丶`、\\
       l       ヽ、.  ! ! ヽヽll、ヽヾ 》l ヽ// ! .,!、ヽ   ../.ロ./ /\  ヾl  ヽ`、
       l        丶、 !/  ヽゝ|l ! !∨」  ', \!/ ヽ ヽ、./ ロ/,/ヾヽヽ  "   ヾl
.      l           `丶、  ̄| ! !  ! !  }、 `、   ゝ‐ 〉ロ//、 ヽ ヾ.l
      ヾ、             `丶 '_', !_! , } ヽ `,/´ l‐,//-l`ヽ `、
        ` - 、              `丶 - 、/   ノ;//、ソ  ヽ ヽ
             T - 、                  ///ー'〈 ヽ  ヽ l
              〉    `丶 、            /~`l/ニ'〈  !  "
               /ヽ       ;;;;  ` ー  、 _彡   )/ ̄"ヽ l
            /  ヽ       ;;;       |  !く~k`丶つ~!  ヾl
           ∠l          ;;       l、  ! ! ヽヽ__ソk! !
         ∠ニl、                l ヽ、入ゝヽー"ノノ
         ヾ//>ソ `丶、           l /ミ/ ` 、ニ彡|
          Y/ノ彡乃川 `丶、       1/ミ丁ー" X
          |"     くノヘ 川`丶、.   /ミミヾゝ-ー"/
          /        く川k  川\/ミミミ ∧ヽ三ソ
          ヽ         \て ヘ ヾミ ミ斥ノ ヘ~T"
          ヘ           ゝソ乃ヾ人/ソソ  ∨
          λ     ヾ   ヾ `丶、ヾ人/ /   \
          | ヾ      ヾ   ヾ       /     \
616名無しさん@ピンキー:2006/06/12(月) 22:27:38 ID:D/p3jFsP
ねえ、愛してるって言って・・・。
617名無しさん@ピンキー:2006/06/12(月) 22:38:14 ID:czLDikSJ
君は捨てられたんだよ
スレ住人がいつまでも構ってくれるとでも思ったのか?
6189スレ:2006/06/12(月) 23:37:52 ID:VMQNauRG
フフフ♪さようなら、8スレさん♪私は七誌くんと楽しくやるから♪
619名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 02:18:22 ID:1102qNn8
そして後はただ捨てられていくのみ
620名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 18:22:48 ID:FadV/d96
・・・コロシテヤル。
621名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 23:25:58 ID:awJ0Q4G3
まだだ、まだ小恋物がきていないっ!
彼が来るまで私はっ!
私は…
622名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 20:14:36 ID:KLCY+Xkl
あの人がお前のとこになんかに来るわけないでしょう?
負け犬はさっさと舞台から降りなさい
623名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 01:02:50 ID:RldXnuSu
9ちゃんも残り130kね。
9ちゃんが死んだら七誌君は私の所に戻ってきてくるよね。

え?
七誌は次の女のところに行くに決まってるって?

そんなはず無い!
だって私たちはあんなに愛し合ったんだもの。。
私の残りが40kもあるのは七誌君が私に未練がある証拠でしょ?
だから、また私の所に来てくれるはず。
「はず」じゃないよね。来てくれるよね?七誌君♪


早く9ちゃん死なないかなぁ…


そうだ。
さっさと埋めちゃえば良いんだ…

ウフフ…
いつ埋めようかな?
明日かな?
明後日かな?

自分の手を汚したくないから、職人さんを唆して早く埋めてもらおうっと。
楽しみだなぁ。
早く会いたいなぁ七誌君♪
624名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 22:36:29 ID:qHkBx2oE
自分で害虫の始末も出来ない>623は彼に捨てられたのも当然の報いだったのね
625 ◆tVzTTTyvm. :2006/06/17(土) 15:21:05 ID:gGDcvPes
コチラで連載させていただいた「振り向けばそこに……」を
数日前から自分のサイトに少しづつ載せはじめました
一応報告しておきますね
626名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 23:01:11 ID:rnLhMS9Q
で、そのサイトはどこなのか教えてはくれないのか?
627名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 00:51:07 ID:qngK1zLT
探してごらんなさい♪……そこにはあの女が……フフフ、アッハッハハ♪

ってことなんじゃない?
628 ◆tVzTTTyvm. :2006/06/18(日) 02:31:22 ID:VaKxqtws
基本的にココに投下したのとあんまり変わりませんよ?
プロローグ書き足して加筆及び誤字修正してしてレイアウトしただけです

それでも興味を持たれたのでしたらメル覧で検索してみてください
629名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 17:21:58 ID:wINV3lzk
                      /し, /    _>.
                     / { \レ/,二^ニ′,ハ
                     |'>`ー',' ヽ._,ノ ヽ|
                     |^ー'⌒l^へ〜っ_と',!
      __             ! u'  |      /       しっとの炎がメラメラと
  /´ ̄       `!             ヽ  |   u'  , イ
  |  `にこ匸'_ノ            |\_!__.. -'/ /|
  ノ u  {                 _.. -―| :{   ,/ /   \
. / l   | __  / ̄ ̄`>'´   ノ'    ´ {、    \
/ |/     {'´    `ヽ. " ̄\ U `ヽ.    __,,.. -‐丶 u  ヽ
| / ヾ、..  }      u' 〉、    }    `ー''´  /´ ̄ `ヽ '" ̄\
! :}  )「` ノ、     ノ l\"´_,,ニ=-― <´  ヽ{  ノ(   `、  |
l   、_,/j `ー一''"   },  ノ ,  '''''""  \   ヽ ⌒ヾ      v  |
ヽ   _         /   } {. { l ┌n‐く  ヽ/ ``\        ノ
  `¨´    `¨¨¨¨´ ̄`{ 0  `'^┴'ー┘|ヾ    }、 u'   `  --‐r'′
630埋めネタ:2006/06/18(日) 19:06:47 ID:q9Z0zLZO
埋まった♪埋まった♪埋まっちゃった♪
見て見て七誌君、あの小汚い9スレの姿!
9スレで旧スレなんておっかしぃよね!あはははは!!
うん、わかってるよ、七誌君。騙されたんだよね、可哀想・・・
私全然、怒ってないよ。だから、教えて?
昨日、一緒にいた子、だぁれ?
10スレって言うんだ、ふぅん・・・
ほぉ〜んと、学習しないよねぇ、七誌君。
何で騙されてるってわっかんないかなぁ!!七誌君!!!

───うふふ、ごめんね、七誌君。痛かった?そう・・・
でも七誌君があのメス豚と一緒に歩いてるのを見たとき
私、心臓を直接掻き毟られたみたいに苦しかったんだから・・・
ううん、だから怒ってないよ。本当、そんなお馬鹿な七誌君も大好きよ。
でも、今度、同じ場面に出くわしたら、七誌君、殺しちゃうかもしれない。
だから・・・あの泥棒猫も、10スレの奴も───ふふ、なんでもないよ、七誌君。
私、ちょっと出かけてくるね?大丈夫、すぐ戻ってくるわ。
寂しいかもしれないけど我慢してね。七誌君のためなんだから・・・
何って決まってるでしょう。10スレをちょっと屠殺して埋めちゃうだけ♪
じゃ、逝って来まぁす♪
631名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 20:14:42 ID:5PJuj9N+
8スレが埋まる前に9スレが埋まるとか、まさかの大どんでん返し
さすが修羅場スレ。展開が読めないぜぇぇええ
しかしあれだな
殺すとか埋めるとか、埋めネタもみんな巧いなw
すばらしいですb
632名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 20:16:33 ID:4Ze85cyZ
             \   . :.:.i:.:.:k;//;;;;;;;:i : /   :.;;;,;;ハヾ; i:.:.:.i !:.:! ! / .  |: |A  ≫
      _     \ :.:.:!.:.:i ゙、;;;;;;;;::ノ;      :;;;;;;:},.' ノ:.:.ノ !:ノ / /  _ _ |: l    ≫
    '´/ ,、ヽ     \:..!:.! ゞ''⌒      ゞ< イ:.ノ! ノ  /   '´/ ,゙|:丶_/
    i (ノノ"))i ニヤー  \.ヽ   r、_  '  ヽ  /:.:.:.   /     i (.ノ,) |言i
    li l|#"ワノl|       \ \  ヽ ̄ ̄/'  /:.:.:.:.|i /       li l|゚ ヮ゚|目|
    リ /)允iヽ___       \\ 丶--',  イ!:.:.:.:.:./       リ./(二つO
   (=U=l|l,、,、,、,、l}         \ ∧∧∧∧  /     .    ((゙く/_lj)目|
      じフ              < 予 言 >     :::::::::::::::::::::::::::じフ|目|
―――――──―――――――<  感 葉 >―――――──―――――――
  ホラホラ、サトイモクエー♪       <  !!! 様 >          | | | ||||ヒュウウ…
  キャハハハハ♪            <    の >           | | | ||||
       _              /∨∨∨∨\
    '´/ ,、ヽ           / |  |_      \          ∩∩
    i (ノノ"))i <  .       /  |  | ,、ヽ + .   \      ((.くヾl!〉))
    li l| "ワ,''´ `´ ゙ヾ   / .    |  | ノ"))i  .      \     |i とj孕!つ
   ○=と)允リ_   ; ! /  .   |_|"ー ノl|        \ .    l! |。 A。Y|
   (( く/_lj∩i、l)゙wwv'/  .      |桂|【◎】0          \  i い),,))!
     (ヽ__)___ノ/     .    | ̄|_lj〉))           \.弋 ヽ ~_丿
           /             |  |'ノ               \ ` ̄
633埋めネタ:2006/06/19(月) 00:02:45 ID:UiIUWvUz
どうして、どうして、どうして。
私は彼に選ばれなかったのでしょうか。愛されなかったのでしょうか。
どうして、どうして、どうして。
彼はあなたを選んだのですか。愛したのですか。

私は彼の全てが愛おしかったのです。
貌も、眼も、唇も、腕も、指も、全て。望むなら、彼の足に接吻することすら厭いません。
私は彼に全てを捧げられます。
貌も、眼も、唇も、胸も、性器も、全て。望むなら、彼の玩具であってもいい。

私はあなたの全てが憎らしいのです。
貌も、眼も、唇も、腕も、指も、全て。許されるなら、あなたを手にかけることすら厭いません。
私はあなたに嫉妬しています。
貌も、眼も、唇も、胸も、性器も、全て。許されるなら、あなたの代わりであってもいい。

どうしようなく、どうしようもないのです。
彼が望むとは考えません。私が許されるとも思えません。
だけど。
本当に、どうしようもないのです。

だから――――あなたの恋はここで終わっていただきます。さようなら、
634名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 00:37:44 ID:GmtKEjfx
七誌お兄ちゃん・・・
ごめんね?痛かったよね?
でもね、お兄ちゃんが悪いんだよ?あの十スレとかいう牝豚と行こうとしたんだもん
だから、お兄ちゃんの手足切っちゃったけど別にいいよね?
私がなにもかもお世話してあげるから、ね♪
安心して、あの牝豚スレはすぐ埋めてくるから
その後で一緒に埋まろうね♪
そこで私がお兄ちゃんを永遠に愛し続けるの・・・
私だけを見て、私だけを感じて、私しか愛せない体にしてあげる
アハハハハハ!想像しただけでイッちゃいそう・・・・・♪♪♪
じゃあ、ちょっとだけ待っててね
すぐに埋めてくるから・・・アハハハハ・・・
635名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 10:06:58 ID:YTNJIpis
       _,;‐-、_   .______,
      /,. ..::.  'i∠三;;;:.:`‐、.  
      し;;、"''./_,. ゛ `ヾミ;)  
        `"/ _C) . .:.:_.::;`ト-‐、
          i.;'"゛  . : :.::C)::::!:.:;;` `i
       ,,イヾ、  .: : . `;::;ノし;:.. 丿
       / `‐、`'ー、,,___,.ノ;(  し'゛  ちくしょう……
      ,ゞ、 ,,イ`マニヽ-‐".}   
      ノ`''ミヽ!_ ‐く,、:.::).:.:.ノ  

  __,冖__ ,、  __冖__   / //  
 `,-. -、'ヽ' └ァ --'、 〔/ /  
 ヽ_'_ノ)_ノ    `r=_ノ    /´        r'゚'=、
  __,冖__ ,、   ,へ    /        / ̄`''''"'x、
 `,-. -、'ヽ'   く <´   7_//  ,-=''"`i, ,x'''''''v'" ̄`x,__,,,_
 ヽ_'_ノ)_ノ    \>     /_,,/    i!        i, ̄\ ` 、
   n     「 |      /   |   /ヽ      /・l, l,   \ ヽ
   ll     || .,ヘ   /    1  i・ ノ       く、ノ |    i  i,
   ll     ヽ二ノ__  {     {,      ニ  ,    .|    |  i,
   l|         _| ゙っ  ̄フ   }   人   ノヽ   |    {   {
   |l        (,・_,゙>  /    T`'''i,  `ー"  \__,/     .}   |
   ll     __,冖__ ,、  >     },  `ー--ー'''" /       }   i,
   l|     `,-. -、'ヽ'  \.     `x,    _,,.x="       .|   ,}
   |l     ヽ_'_ノ)_ノ   トー       `ー'"          iiJi_,ノ
   ll     __,冖__ ,、 |
   ll     `,-. -、'ヽ' iヾ
. n. n. n  ヽ_'_ノ)_ノ  {
  |!  |!  |!     へ l 
  o  o  o   /
636名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 14:43:47 ID:im0sT+Nt
?「愛し合う恋人達を引き裂き己が醜い欲望を満たさんとする者よ、その行いを恥じと知りなさい!
人それを『泥棒猫』という」
世界「だ、だれよあなた! 名を名乗りなさい!」
?「貴女に名乗る名はないわ!」

?「女ある所に嫉妬あり、泥棒猫ある所に鮮血あり……修羅場よりの使者、コトノハ参上!」

ついかっとなってやった。今は反省してる。
637名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 17:03:59 ID:3l7gNiye
殺る気満々だなw
638名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 19:08:21 ID:YTNJIpis
             ,.. -ー―- ...,,_
              /::_,. .......:::::::::::::゛`ー 、
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          ///::::/::::|/ ⊂⊃   丿 \|::::::::::::::|
       /::::':::::/::::::|        ⊂⊃イ |::::|y'
       /::::,::::/:::::::|   i`ー 、       | |::リ
      ,|::::/::/::::::::|   |   `ー.、    リ::|   サマーデイズ、買ってくださいね
      | /::/:::::::::::| .   |      7   /|::|
     ,イ/::::|:|::::::::::|   t     /"   ノ"|::::|     
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, '::/ |. ||:::::/:::ミゝ'         |  |::::\r'\  jj 
   |. | L::/iノー-ー‐-ー-ー‐ -ー-::::::: ~`"
   k tメ/|i i ‖ i ‖ i | i  ‖ハ:::::ノ
  /|7ゝ't::::|丶ー-ー-ー-ー‐-ーー ' ̄
/  |   `し:::::::/〜〜/:::::::::::|〜〜|
-〜
639名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 01:52:36 ID:ivyyuA4P
       _,;‐-、_   .______,
      /,. ..::.  'i∠三;;;:.:`‐、.  
      し;;、"''./_,. ゛ `ヾミ;)  
        `"/ _C) . .:.:_.::;`ト-‐、
          i.;'"゛  . : :.::C)::::!:.:;;` `i
       ,,イヾ、  .: : . `;::;ノし;:.. 丿
       / `‐、`'ー、,,___,.ノ;(  し'゛  うめだよ……
      ,ゞ、 ,,イ`マニヽ-‐".}   
      ノ`''ミヽ!_ ‐く,、:.::).:.:.ノ  

  __,冖__ ,、  __冖__   / //  
 `,-. -、'ヽ' └ァ --'、 〔/ /  
 ヽ_'_ノ)_ノ    `r=_ノ    /´        r'゚'=、
  __,冖__ ,、   ,へ    /        / ̄`''''"'x、
 `,-. -、'ヽ'   く <´   7_//  ,-=''"`i, ,x'''''''v'" ̄`x,__,,,_
 ヽ_'_ノ)_ノ    \>     /_,,/    i!        i, ̄\ ` 、
   n     「 |      /   |   /ヽ      /・l, l,   \ ヽ
   ll     || .,ヘ   /    1  i・ ノ       く、ノ |    i  i,
   ll     ヽ二ノ__  {     {,      ニ  ,    .|    |  i,
   l|         _| ゙っ  ̄フ   }   人   ノヽ   |    {   {
   |l        (,・_,゙>  /    T`'''i,  `ー"  \__,/     .}   |
   ll     __,冖__ ,、  >     },  `ー--ー'''" /       }   i,
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   |l     ヽ_'_ノ)_ノ   トー       `ー'"          iiJi_,ノ
   ll     __,冖__ ,、 |
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. n. n. n  ヽ_'_ノ)_ノ  {
  |!  |!  |!     へ l 
  o  o  o   /
640名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 04:09:48 ID:ivyyuA4P
       。_ ∠ヽo
       |'´/\o_|\
       /\o_| /∩
     /\o_| / ̄ ヽ/
     o_| , ./゚w゚)ノハヾ^、
     \/ ´Wリ(i!゚ ヮ゚ノv'` < ねるんよ
       |_, ─'''U''''''''─]i,、 _ _
     /             \
    /      \       /   i
    |      ● (__人_) ●   |
    !                   ノ
    丶_ _________ノ

          .,Å、
        .r-‐i'''''''''''i''''‐-、
       o| o! .o  i o !o
      .|\__|`‐´`‐/|__/| パタン
       |_, ─''''''''''''─ ,、 / _
     /             \
    /    /        \  i
    |      ● (__人_) ●   |
    !                   ノ
    丶_ _________ノ
641名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 17:01:39 ID:KwOPu+AJ
636を悪乗りで改造
楓「返して!! 禀くんを返してよ!!!!」
緑「あははははは、無駄だよ! もう禀ちゃんはボクのものなんだから。負け犬さんは
 さっさと家に帰って、空鍋でもかき混ぜてなさい!」

待ちなさい!!!!!

逆光を浴びて謎の人物が現れる。
?「性の匂いで他人の男を誑かし、己が欲望を満たそうとする者よ、その行いを恥と知りなさい!!
 人の男を奪っていく卑しい雌犬を切り裂く刃……人、それを『鋸』と言う」
緑「だ、だれ!?名を名乗りなさいよ!」
?「雌犬に名乗る名はないわ!!」
(バイザークローズ)
?「鋸よ!! 私に力を!!」
空間から鮮血に染まった鋸が現れる。
?「女ある所に嫉妬あり、泥棒猫ある所に鮮血あり……修羅場よりの使者、コトノハ参上!」

コ「くらえ!! 修羅場鮮血鋸術! 雌犬両断ツイン鋸!!」
ブシャーーーー
642名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 17:11:04 ID:KwOPu+AJ
ごめん、逆光じゃない、後光。
643名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 09:39:02 ID:clLHKxem
       _,;‐-、_   .______,
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      し;;、"''./_,. ゛ `ヾミ;)  
        `"/ _C) . .:.:_.::;`ト-‐、
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       ,,イヾ、  .: : . `;::;ノし;:.. 丿
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      ,ゞ、 ,,イ`マニヽ-‐".}   
      ノ`''ミヽ!_ ‐く,、:.::).:.:.ノ  

  __,冖__ ,、  __冖__   / //  
 `,-. -、'ヽ' └ァ --'、 〔/ /  
 ヽ_'_ノ)_ノ    `r=_ノ    /´        r'゚'=、
  __,冖__ ,、   ,へ    /        / ̄`''''"'x、
 `,-. -、'ヽ'   く <´   7_//  ,-=''"`i, ,x'''''''v'" ̄`x,__,,,_
 ヽ_'_ノ)_ノ    \>     /_,,/    i!        i, ̄\ ` 、
   n     「 |      /   |   /ヽ      /・l, l,   \ ヽ
   ll     || .,ヘ   /    1  i・ ノ       く、ノ |    i  i,
   ll     ヽ二ノ__  {     {,      ニ  ,    .|    |  i,
   l|         _| ゙っ  ̄フ   }   人   ノヽ   |    {   {
   |l        (,・_,゙>  /    T`'''i,  `ー"  \__,/     .}   |
   ll     __,冖__ ,、  >     },  `ー--ー'''" /       }   i,
   l|     `,-. -、'ヽ'  \.     `x,    _,,.x="       .|   ,}
   |l     ヽ_'_ノ)_ノ   トー       `ー'"          iiJi_,ノ
   ll     __,冖__ ,、 |
   ll     `,-. -、'ヽ' iヾ
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  |!  |!  |!     へ l 
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644名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 12:53:07 ID:zCuQClOO
修正内容不明の2.6Gの修正パッチA配布開始

サイズにゴラァしながらダウンロード開始

1.2Gの修正パッチB公開開始、修正パッチA配布は強制終了。修正パッチAが途中の人間が頓死

このAとBの1G以上の差はいったい何だろうか

この圧縮だと、流石にBはAより音質悪いのはガチ

じゃあAの方をP2Pで落とすか

Aには同じファイル(1G超)がダブって入ってるだけだよ、Bはそれを削ってインスコプログラムを修正しただけ

(゚д゚)                           ←今ここ
645名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 15:01:30 ID:Z/kBMjn1
              あ   る   晴  れ  た  日  の  こ  と  〜  ♪

         〃^  ̄  ̄ '´ ̄ヽ、.         /  ̄ ̄ '´ ̄ ̄ヽ、         -‐ー '´ ̄ ̄ ̄ヽ、
           //. /   ヽヽ   ハ        ノ/. /二二二ヽヽ  \      <            \
       ノ八/, '/从 | 从ヽハ 人      <V/, '/ 人 |  ヽハ夊 、 |     //, '/  リ   ヽハ  、  )
        〃 {_{`レリ Vヽノリ| l   リ.      〃 {_{`ヽ  Vヽノリ| l >" i|    し〃 {_{ノハ人ノソハリ| ノ ハ
        {ハ人●    ● レ|、ハ|     ハ小l●    ● レ|、 | |     レ!小l●    ● 从 .|、 |
         | 从 ⊃ _ ⊂⊃|ノ |ri      |│ l⊃ rー- ⊂⊃|ノ |│     ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃).|ノi(
      /⌒ヽ. |ヘ        j| /⌒i   ./⌒ヽ.| .ヘ  ヽ ノ   jレ/⌒i !. ./⌒ヽノ|ヘ   ゝ._)    j/⌒i ヽ
     \ /::::>レ>、 __, イァリ   /   \ /:::レ l>,、 __, イァ/   /ノ.  \ /:::::| l>,、 __, イァ/  /  .\
.       /:::::/ / ヘ:::|三/::{ヘ、__∧     /:::::/ / ヘ:::|三/::{ヘ、__∧     /:::::/リハ ヾ:::|三/::{ヘ、__∧.     ヽ
      `ヽ<     ヾ:∨:::/ヾ:::彡'    `ヽ<     ヾ:∨:::/ヾ:::彡'.    `ヽ<     ヾ∨:::/ヾ:::彡' |i ハ  ソ
              ま   ほ   う  い  じ  ょ  う  の  ゆ  か  い  が  〜  ♪

         〃^  ̄  ̄ '´ ̄ヽ、.         /  ̄ ̄ '´ ̄ ̄ヽ、         -‐ー '´ ̄ ̄ ̄ヽ、
           //. /   ヽヽ   ハ        ノ/. /二二二ヽヽ  \      <            \
       ノ八/, '/从 | 从ヽハ 人      <V/, '/ 人 |  ヽハ夊 、 |     //, '/  リ   ヽハ  、  )
        〃 {_{`レリ Vヽノリ| l   リ.      〃 {_{`ヽ  Vヽノリ| l >" i|    し〃 {_{ノハ人ノソハリ| ノ ハ
        {ハ人●    ● レ|、ハ|     ハ小l●    ● レ|、 | |     レ!小l●    ● 从 .|、 |
         | 从 ⊃ _ ⊂⊃|ノ |ri      |│ l⊃ rー- ⊂⊃|ノ |│     ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃).|ノi(
      /⌒ヽ. |ヘ        j| /⌒i   ./⌒ヽ.| .ヘ  ヽ ノ   jレ/⌒i !. ./⌒ヽノ|ヘ   ゝ._)    j/⌒i ヽ
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              か   ぎ   り  な  く  ふ  り  そ  そ  ぐ  ♪

         〃^  ̄  ̄ '´ ̄ヽ、.         /  ̄ ̄ '´ ̄ ̄ヽ、         -‐ー '´ ̄ ̄ ̄ヽ、
           //. /   ヽヽ   ハ        ノ/. /二二二ヽヽ  \      <            \
       ノ八/, '/从 | 从ヽハ 人      <V/, '/ 人 |  ヽハ夊 、 |     //, '/  リ   ヽハ  、  )
        〃 {_{`レリ Vヽノリ| l   リ.      〃 {_{`ヽ  Vヽノリ| l >" i|    し〃 {_{ノハ人ノソハリ| ノ ハ
        {ハ人●    ● レ|、ハ|     ハ小l●    ● レ|、 | |     レ!小l●    ● 从 .|、 |
         | 从 ⊃ _ ⊂⊃|ノ |ri      |│ l⊃ rー- ⊂⊃|ノ |│     ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃).|ノi(
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.       /:::::/ / ヘ:::|三/::{ヘ、__∧     /:::::/ / ヘ:::|三/::{ヘ、__∧     /:::::/リハ ヾ:::|三/::{ヘ、__∧.     ヽ
      `ヽ<     ヾ:∨:::/ヾ:::彡'    `ヽ<     ヾ:∨:::/ヾ:::彡'.    `ヽ<     ヾ∨:::/ヾ:::彡' |i ハ  ソ
646名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 02:55:43 ID:L+jsVkrQ

現状のまとめ

1)体験版を入れたPCはサポート対象外(*1)
2)162MBの追加修正パッチ1.02b配布中 (*2)
3)1.02b/Bを当てるとセーブデータ・回想・ルートマップは全部削除される
4)選択肢が勝手に選ばれるバグなどは1.02Bでもまだ残っている

まだまだ修正パッチは更新が必要な模様

*1:体験版はアンインストール推奨・でもちゃんと動いているという話
*2:1.02bは2.3GBの1.01A/1.3GBの1.01Bのいずれかを適用して更に追加するもの
*2a:BitTorrentでは1.01x/1.02bを統合した1.02B [summerdays101b.zip
1,346,348,517bytes/1.25GB]が公式に流通中
*3:オーバーフローのトップは重くて入れないのでパッチ入手は直接手近なミラーサイトへ
647 ◆tVzTTTyvm. :2006/06/24(土) 21:28:34 ID:ee7jhKdL
弥凪 祈深歌(やなぎ きみか)は年下の幼馴染の陽崎 流矢(ひざき りゅうや)の事が誰よりも好きだった。
だが其の思いが強ければ強いほどに自分に対する不満も大きかった。

どうして自分はこんなに背が高いのだろう。 こんなに高くちゃ流矢クンと一緒に歩けない
どうして自分はもう二年遅く生まれなかったのだろう。 そうすれば流矢クンと一緒の学年になれたのに。
どうして自分はこんなに引っ込み思案なのだろう。 お陰で流矢クンに私がどんなに好きなのかも伝えられない
どうして、どうして……そうすれば、そうすれば幼馴染の流矢クンともっと……。
祈深歌の心にとめどなく尽きることなく沸いてくるのは自分への不満。

そうして自虐的であるあまり祈深歌は自分の良い点すらも見えていなかった
確かに背丈は174と女性としてはかなりの長身であったが、其の分プロポーションも抜群だった。
顔だって十分美人であった。だから好意を抱き告白を試みた男子も何人も居た。
だが皆告げる前に祈深歌が脅えて逃げてしまった為想われてたことすら彼女は知らなかった。
2歳年上なのを気にしてるが、其のお陰で流矢に姉のように慕ってもらえた
引っ込み思案でもあったが、だからこそ流矢に何時も気遣ってもらえた
そうした事にすら気付けないほど自虐的であった。

特に身長に対するコンプレックスは大きかった。 ちなみに流矢の身長は163。
祈深歌にとってこの11センチ差はとてつもなく大きく感じられた
こんなに身長差があっては一緒に並んで歩くだけで流矢を傷つけてしまうのでは、そんな躊躇いの心が生じる。
本当は誰よりも好きで何時だって一緒に居たいくせに。
そのくせやっぱり一緒に居たくて、離れて見つめてるのを見つかって結局一緒に帰ってしまう。
一緒に並んで歩いてるとそれだけで幸せな気持になれる。
でも嬉しい反面膨らんでくるのはコンプレックスと自虐心。
一緒に並ぶと否応無く其の身長差を感じてしまうから。

648 ◆tVzTTTyvm. :2006/06/24(土) 21:30:16 ID:ee7jhKdL


陽崎 流矢に対し想いを寄せている女性が二人いた。
一人は先に述べた年上の幼馴染――弥凪 祈深歌。 もう一人はクラスメイトの三河 智依(みかわ ともえ)。
中学校の頃も同じ学校で、二年、三年の時は同じクラスだった事もあり最も気心の知れた仲同士であった。
共に過ごした二年間は智依の流矢に対する気持を友情から恋心へと昇華させるには十分だった。
だから高校でも同じ学校でしかも同じクラスになれことを知った時は天にも昇る心地であった。

だが、すぐ知ることになった。智依にとって大きな壁が、障害が、邪魔者が存在する事を。
中学の二年、三年の時には居なかった流矢の二つ年上の幼馴染――弥凪 祈深歌。
智依にとって祈深歌はとてつもなく目障りだった。
中学の頃、智依と流矢はいつも一緒だった。
お昼休みの時だって机を繋げて一緒に食べ、時には智依がお弁当を作ってあげてたほどだ。
だが高校に入り祈深歌が同じ学校に現れた途端に流矢は祈深歌にべったりになった。
祈深歌と流矢にしてみれば小学校から繰り返してきてた当たり前の事だったのだろう。
だが智依にしてみれば後からやってきて自分と流矢の二年間をあざ笑うかのように見えた。

悔しくて、憎くて、恨めしくて、妬ましくてしょうがなかった。 だが押さえた。
ココであからさまに気持をぶつけても多分悪い方向にしか働かない事が容易に想像できたから。
だから伺った。 何か自分が付入る隙が無いだろうかと。
そして気付いた。 祈深歌が自分の背の高さにコンプレックスを抱いている事を。
それが原因で心の内を明かせずにいることを。
このことを上手く使えば付け込む事が出来るのではないだろうか
そう思った智依は暫し熟考し、やがて行動に移す事にした。
649 ◆tVzTTTyvm. :2006/06/24(土) 21:30:52 ID:ee7jhKdL


「弥凪先輩。 ちょっと良いですか?」
 ある日智依は祈深歌に声を掛けた。
「はい、なんでしょうか? えっと……」
「陽崎クンのクラスメイトの三河 智依と申します」
 そう言って智依はにっこり微笑んだ。 そして続けた。
「お逢いした事ありませんでしたっけ? いつも陽崎クンと一緒に仲良くさせてもらってるんですけどね」
「そうですか。 流矢クンの……。 それで私に何の御用で?」
「ハイ、お聞きしたい事があるんです。 先輩と陽崎クンってどういう間柄なのかな、って」
「え、えっと……、その……幼馴染……です……」
 祈深歌は消え入りそうな声で答えた。

「ふ〜ん、幼馴染ですか。 本当にそれだけですか?」
 笑顔で尚も訊く智依。 だが其の仕草は訊くと言うより詰め寄るかのような異質な迫力があった。
「何が……仰りたいの?」
 祈深歌は自分よりも頭一つ分程も小さな年下の少女の浮かべる不敵な笑みに思わず気圧され、力なく聞き返す。
「いえ、若しかしたらお付き合いしてるのかな〜なんて」
「な……! そ、そんな……」
 智依の言葉に祈深歌は驚き思わず口ごもる。 そして智依は更に畳み掛けるように口を開く。
「そんなわけ有りませんよね〜。 だって先輩と陽崎クンじゃ一緒に歩いたって不釣合いですもんね」

「な、何が仰りたいの……?」
 其の声にいくらか怒気が含まれてるかのようだった。
 当然であろう。 あからさまにヒトのコンプレックスを付いてくるような挑発的な言動。
 だが智依はそんな祈深歌にまるで怯む様子は無く尚も不敵な笑みを浮かべそして一枚の写真を取り出して見せた。
 それは祈深歌と流矢が二人並んでいる所を撮ったもの。
「凄い身長差ですよね〜。 こんなんで街中歩いたら好奇の的でしょうね〜」
 言われて押し黙る祈深歌。 そんな祈深歌に向かって尚も口を智依は開く。
「そんな好奇の視線で見つめられちゃ陽崎クンも可哀相ですよね〜」

 押し黙り固まってしまった祈深歌に向かって智依はもう一枚の写真を取り出して見せた。
 それは智依と流矢が中学三年の時、文化祭の後夜祭でフォークダンスを踊った時のもの。
 並んで踊る二人の身長差はこぶし一つ分ほど。 勿論低いのは智依の方だ。
「どっちがより自然かなんて言うまでも有りませんよね」
 返事は無い。 写真を見つめる其の顔は俯き、うなだれてるようでもあった。
「私の申したい事わかりますよね?」
 尚も祈深歌は沈黙したままだ。
「分かりますよね? 先輩が陽崎クンを大事と思うならどうするのが一番いいのか」
 そう言った智依の顔は勝利を確信し勝ち誇ってるかのようだった。 そして踵を返し立ち去る智依。
 悠然と立ち去る智依とうなだれる祈深歌の二人は正に勝者と敗者のそれであった。
650 ◆tVzTTTyvm. :2006/06/24(土) 21:32:01 ID:ee7jhKdL


 智依の言い放った言葉は確実に祈深歌の心に深く突き刺さり其の心を苛んだ。
 言われた次の日から目に見えてはっきりと流矢を避け始めた。
 だがそれは同時に流矢の心をも苛むことになった。
 何故なら祈深歌が流矢を好いていたのと同じように、流矢もまた祈深歌を好いていたのだから。
 そんな流矢の姿に智依も心が痛まない訳ではなかった。
 だがそれよりも邪魔者が近づかなくなった事が嬉しく其の笑をかみ殺すのに必死だった。

 だが、未だ足りなかった。 この程度では何時お互いの誤解が解けてもおかしくなかった。
 現に未だ流矢の心の中には未練と、そして自分に何か落ち度があったのだろうか、仲直りできないだろうか
そんな想いで一杯だった。
 だから智依は次の手を打つ事にした。



 ある日の午後。
「ねぇ、陽崎クンお願いがあるんだけどいいかな?」
「いいぜ、俺に出来る事なら」
 智依の言葉に流矢は笑顔で応える。
「あのね、放課後ちょっとでいいから付き合ってくれる? 実は校舎裏に落し物しちゃったみたいなんだ」
「校舎裏? そんな所になにを?」
「実はね栞落っことしちゃったんだ。 風にさらわれてぴゅ―って飛んでいっちゃって……」
「栞? そんな栞ぐらい……」
「とってもよく出来たお気に入りの押し花の栞なの……」
 そう言った智依の沈んだ悲しそうなものだった。
「そうか……。 うん、分かったじゃぁ放課後に一緒に探しに行こう」
651 ◆tVzTTTyvm. :2006/06/24(土) 21:33:10 ID:ee7jhKdL


 そして放課後、二人は裏庭へと向かう。 そして向かった先には二人の男女が居た。
 一人は流矢が良く知る、そして心の中に秘めた思いを抱く女性――弥凪 祈深歌。
 もう一人は流矢の知らない男。
 だが祈深歌に負けないぐらいの長身で顔立ちも整っておりまるでモデルのようだった。
 一体誰なんだあの男は――そんな事を流矢が考えてると智依が小さく囁きかけてきた。
「ねぇ、若しかしてコレって告白の場面に遭遇しちゃったのかな?」
 告白――其の言葉を聞いた瞬間流矢の顔が引きつる。 そして其の変化を智依は見逃さなかった。
「二人共背が高くってまるでモデルみたいね。 そんな長身同士並んでると絵になるよね」
 其の言葉に流矢はまるでハンマーで殴られたかのような衝撃を受ける。
「どっちから告白したんだろ? でもすごくお似合いよね。 そう思わない?」
 その言葉を聞き終わるより先に流矢はその場を逃げ出すように駆け出していた。
 其の顔は今にも泣き出しそうなほど、いや既に堪えきれなくなった涙が溢れ出していた。
 すかさず其の後を追いかける智依。 智依もまた堪えていた。
 だがそれは流矢のそれとは全く正反対で、嬉しくて笑い出したいのを必死で堪えてたのだった。

 そう、あまりにも事が、謀ったことが思い通りに進んだ事が嬉しくって。

 智依は調べ上げた。 祈深歌に対し恋心を抱いてる人間を。 其の中から選び出し告白するよう焚きつけた。
 そして其の場面を流矢に目撃させる。
 おそらく告白は間違い無く成就しない事は想像できた。
 だが二人一緒であるところを見せればそれだけで十分な効果を得られる事も予想できた。
 祈深歌が背の高さにコンプレックスを抱いてるように流矢も同じ様な悩みを抱いてるはずだ。
 加えてここ数日間避けられてると感じさせる二人の間柄。
 そんな所に
<二人共背が高くってまるでモデルみたいね。 そんな長身同士並んでると絵になるよね>
<どっちから告白したんだろ? でもすごくお似合いよね。 そう思わない?>
 そんな言葉を聞かせれば脳内で勝手に一つの答えを組み立ててくれるだろう。
 そして結果は予想通り。 おっと、未だことが全て完了したわけでない。

 裏庭から十分に離れた事を確認した智依は追いかけるスピードを上げた。
 そして流矢にしがみつくように捕まえる。 そして声色にありったけの演技を込める。
 謝罪と哀願を含んだかのような色を載せそっと囁く。
「ゴメンね……。 私が裏庭になんて誘い出しちゃったばっかりに嫌な想いさせちゃって……」
「違う! ……違うよ。 三河は何も悪くなんか……」
 そして流矢はそのまま泣き崩れた。
 智依はそんな声を上げて泣きじゃくる流矢を優しく抱きしめる。
 そして泣きじゃくる流矢からは見えない智依の顔には満面の笑顔が浮かんでいた。
 勝利者としての余韻を噛締め喜びに浸る満面の笑顔が。
652名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 21:35:37 ID:U647PSvc
653 ◆tVzTTTyvm. :2006/06/24(土) 21:37:20 ID:ee7jhKdL
なんかあまり長く無さそうなのが一本浮かんだので埋め用に投下します
多分次か其の次の投下で終りまでいけると思います
654名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 21:43:05 ID:Q/TV7FqK
                   埋めの予感!
 
          :|| 只 //        |               |  ___
,. - ─── 、 ::|ヽム-' ヘ        _,|  ,. -─-- 、.       | '⌒)>,. ────='´
          ヽ.|  /__N> ̄ ̄ ̄へ,//|/   、_>      |,.イ>         \
          :|/了>/        \ |   >'ー _\\   |/| :ト、|\ | 'ーヽN\|
 /レ'_,V,_レ\ | :|   レ __ノ Vレ\N | |  >/    ミ \\ |::ヽ| :|  -' \  (__) J }
 (__)  (__)| | | | |.| | \    丶:|\:| L| /    __  } \:|:  | :| (__)    ''' イ
 ''' / ̄| '''イ :|/レ'ヽ|.| |,, ̄´__ <:|:| . |  \   └'  /\\|:  | 〉 ''' <>   ノ//
'ー-{____:|-‐' レV|  _.´ト|、__/_ _| ''ノ |: | \ \___,. <__ \ト、 N ト、 __  /ソ
从/<)_)ソ人|::::|  {:{ //>Yノ-|} ̄ レN: |\ \ \ マゝノノ_ . | \ト|  レ'   ム∧
  //只-ヽ    |  ヽ=T\_/ハ}      :|  \ ヽ   |ノVムゝ:::|        ノケハ〉\
655名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 02:01:51 ID:i/U6Z2sa
わぁ、驚いた。

十スレちゃんの余命もあと少しだって言うのにまだ
未練がましく残ってたんだね八スレちゃん。

九スレちゃんを見習ってあなたもこのエロパロ板から
潔く消えちゃった方が身の為よ。七誌君はもうあなたの
事なんか思い出しもしないんだから。ね?

心配しなくても七誌君は私と幸せになるから安心して
落ちなさい。うふ、うふふ、あはははははははははっ!
さ・よ・う・な・ら・負・け・犬・さ・ん。
656怪物姉妹が夢見た日常 ◆gPbPvQ478E :2006/06/26(月) 20:32:02 ID:kVhhIOd6
埋めネタ投下します
657怪物姉妹が夢見た日常 ◆gPbPvQ478E :2006/06/26(月) 20:33:11 ID:kVhhIOd6

 帝国諜報員の朝は早い。
 帝国の平和を守るため、昼夜問わずに己の全てを注ぎ込むのが常である。
 
 もっとも。
 
 今は諜報員としてではなく。
 恋する女として、目的に向かい邁進中であったりするわけだが。
 
 
「――今日こそ!
 今日こそは、ユウキさんに私の愛の籠もった朝食を……!」
 
 出刃包丁を握りしめ、決死の面で食材に立ち向かおうとしているのは、怪物姉ことユメカ・ヒトヒラ。
 
「いや、普通にユウキさんお腹壊しちゃうから。
 あの人、頼みを断れない質なんだから、そろそろ本気で死んじゃうよ?」
 
 横からひょいとユメカの包丁を取り上げたのは、怪物妹ことセツノ・ヒトヒラ。
 
 二人は現在、長期休暇の真っ只中。
 姉妹揃って想い人のもとへ、毎日のように通っていた。
 
「いいもん。夜、ベッドの上でたくさん謝って、絆をより深めるんだから」
「失敗するの前提なの!?」
「……そういうセっちゃんこそ、台所に何の用? 今日は私の番じゃない」
「だから、私はユウキさんの身体を心配して――」
「――とか何とか言っちゃって、ホントは、
 昨日の晩にお料理褒めて貰ったのが嬉しかったから張り切っちゃってるんでしょ」
「うぐぐ」
「もう、“私興味なんてないもーん”って顔しておいて油断も隙もないんだから!
 いっつも私とユウキさんの邪魔ばっかりして、この泥棒猫さん!」
「む、ユウキさんが姉さんだけの人だなんて誰が決めたのよ!」
「だって、私の方がいっぱい中で射精してもらってるもん!」
「それは姉さんが無節操なだけでしょ!
 最近ユウキさん、傍目にも分かるくらいやつれちゃってるじゃない!」
 
 かく言う妹の方も、毎晩最低2回は強要していたりするが。

658怪物姉妹が夢見た日常 ◆gPbPvQ478E :2006/06/26(月) 20:34:41 ID:kVhhIOd6

「とーにーかーくー。ユウキさんの朝ご飯は私が作るのー!」
 ぶんぶんと両手を振り回して駄々をこねるユメカ。
 可愛い仕草かもしれないが――そんなものは見慣れすぎて頭痛しか起きないセツノにとっては何の抑止力にもならない。
 しかし、
「あー、はいはいわかったわかった。んじゃまあ、死なない程度のものにしてよね」
 あっさり引いて、そのまま台所から出て行こうとするセツノ。
 
 瞬間。
 
 ひゅっ。
 かつん。
 
 セツノの頭が一瞬前まであった空間を包丁が貫き、そのまま壁に突き立った。
 
「危ないなあ、何するのよ姉さん」
「……セっちゃん、どこに行こうとしてるのかな?」
「ん? 寝室に」
「寝室は寝室でも、そっちはユウキさんの寝室じゃない?」
「いやあ、折角だから起こしてあげようかなあ、と。ほら、目覚めのキスなんて素敵じゃない?」
 意外と少女趣味なセツノであった。
 まあそれはそれとして。
 
「ふふふ……セっちゃん? 姉さんね、そろそろ決着を付ける頃かなあ、なんて思ったの」
「あら奇遇ね姉さん。私もそろそろ、ユウキさんが不憫でね。助けてあげようかなあ、なんて思ってるの」
 
 姉はコキリと手首を鳴らし、
 妹は足場を踏みしめる。
 
 空気は軋み、其処には二匹の怪物が、いた。
 
 
 
 
 どたんばたん、という騒々しい音が階下から響いている。
 それで目覚めたユウキ・メイラーは「……またか」と呟き、そのまま手早く朝の支度をすることに。
 こんな日常がいつまで続くんだろうなあ、と思った。
 まあ、悪い気分ではないのだが。


659 ◆gPbPvQ478E :2006/06/26(月) 20:37:18 ID:kVhhIOd6
本編が折り返し地点に到達したので、
息抜きも兼ねて、予想以上に好評だった怪物姉妹を書いてみました。

少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
660名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 20:39:17 ID:bvhKF+9v
>>659
ちょwwwww予想外のGJwwwwwwwww
661名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 20:48:02 ID:GR9Y191q
嬉しすぎる!!
まだこっちのタブ開いといて本当に良かった
662名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 21:17:33 ID:InulmPVK
和んだ そして癒されました
本編ではあまりにも可哀相過ぎたので(でもGJでした)
こんな幸せなシーンが見れて本当に心の底からお礼とエールを送りたいです
GoodJob!! 最っっ高でした!!! ありがとうございました!!!!
本編も引き続き楽しみにさせて頂きます

663 ◆tVzTTTyvm. :2006/06/26(月) 21:18:26 ID:InulmPVK
自分の書き掛けの>>647-651は若しかしたらもう少し煮詰めなおして
投下しなおすかもしれません
阿修羅様ご覧になってたら暫し収録は保留して置いてください
664名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 23:12:37 ID:K5KCS9kt
待ってる
いつか続きが読めることを
665名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 23:16:56 ID:ZvG/FAgV
スレが沈みゆく中で見る怪物姉妹の幸福な夢……なんと甘美なことか
666名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 00:46:20 ID:XBVld2ca
>>663
待ってます
期待して待ってます(*´д`*)
俺にもこんな文才があったら・・・
妄想ならいくらでも沸いてくるのに」 ̄l○
667名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 05:32:02 ID:NQ8PS3zx
怪物姉妹の夢に泣いた。
668名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 21:43:02 ID:jiwF11qb
うむ、まさしくGJ!
669名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 01:12:28 ID:gfRzJIr/
ちょっ!!やたら豪華な埋めに感動!
670名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 01:58:16 ID:JwyJ2dfs
                      /し, /    _>.
                     / { \レ/,二^ニ′,ハ
                     |'>`ー',' ヽ._,ノ ヽ|
                     |^ー'⌒l^へ〜っ_と',!
      __             ! u'  |      /       10スレの嫉妬の炎がメラメラと
  /´ ̄       `!             ヽ  |   u'  , イ
  |  `にこ匸'_ノ            |\_!__.. -'/ /|
  ノ u  {                 _.. -―| :{   ,/ /   \
. / l   | __  / ̄ ̄`>'´   ノ'    ´ {、    \
/ |/     {'´    `ヽ. " ̄\ U `ヽ.    __,,.. -‐丶 u  ヽ
| / ヾ、..  }      u' 〉、    }    `ー''´  /´ ̄ `ヽ '" ̄\
! :}  )「` ノ、     ノ l\"´_,,ニ=-― <´  ヽ{  ノ(   `、  |
l   、_,/j `ー一''"   },  ノ ,  '''''""  \   ヽ ⌒ヾ      v  |
ヽ   _         /   } {. { l ┌n‐く  ヽ/ ``\        ノ
  `¨´    `¨¨¨¨´ ̄`{ 0  `'^┴'ー┘|ヾ    }、 u'   `  --‐r'
671名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 02:28:29 ID:z3hS7De1
うふふ
672名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 03:13:14 ID:jAXwRBU/
アッハハハッハ♪ もう終わりねぇ、8スレちゃん?
あ〜ホント長かったわ、ここまでしぶとかった娘は貴方が始めてよ。
まさか10スレちゃんの終わりが近くなってもまだ生きてるなんて、ねぇ?

でも終わり、10スレちゃんももうすぐ死ぬわ、
これから七誌君は私と愛し合うの、貴方達のことなんかすっかり忘れてね。


じゃあね負け犬さん♪アハハッ♪
673名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 10:47:39 ID:sWlrCn9j
もう、、、、駄目か、、、、、
674名無しさん@ピンキー
             -‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
             / /" `ヽ ヽ  \
         //, '/     ヽハ  、 ヽ
         〃 {_{`ヽ    ノリ| l │ i|
         レ!小l●    ● 从 |、i| うめにょろ
          ヽ|l⊃ r‐‐v ⊂⊃ |ノ│
        /⌒ヽ__|ヘ  ヽ ノ   j /⌒i !
      \ /:::::| l>,、 __, イァ/  /│
.        /:::::/| | ヾ:::|三/::{ヘ、__∧ |
       `ヽ< | |  ヾ∨:::/ヾ:::彡' |