1 :
強化(ry:
>>1 乙。テンプレは多分これで合ってる。
ここは即死ってあるんだっけ
2ch本体は即死トマトルが、ここはpink鯖だしなぁ、わからん
>1乙。とらに卸すそうだが、そこでネット通販出来たら買うー
4 :
いつふた:2006/04/14(金) 22:22:57 ID:Vpa/mIxo
ゲーム:アルシャード(アルシャード5本目)
形式:小説形式(三人称)。
エロ度:和姦。指入れまで。
レス数:9+1
備考:4本目(『リコの森』)パラレル。
終幕:収拾がついていない。
注意:本日作成。つい今し方書き上げたとこ。校正はほとんどしていない。
◇リコの息子
事の起こりは『あの』グラーフ・シュペーだった。
3レベルにして17レベルの攻撃を素手で受け止めたことから始まり、事あ
るごとに自らの飛空艇“虚無の翼”号を撃沈されながらも、未だかつて敗北を
喫したことがない、……もとい。
『敗北を認めない』、生きた伝説。
かの男・グラーフが、事もあろうに『4レベルに上がった』という情報は、
ミッドガルド全体を震撼させた。
あまりの衝撃に、真帝国皇帝グスタフ・ヨーゼフ二世が腰を抜かして失禁し
たという噂さえまことしやかに囁かれているほどである。
――このまま奴が順調にレベルアップを重ねれば。
銀十字軍隊長ヴィルヘルム・グーデリアン大佐は戦慄した。
――帝国の威信が失墜する。否。帝国そのものが崩壊しかねない。
そうしてここに、帝国の存亡を賭けての一大作戦が展開される。
グラーフのレベルを下げよ! 元の3レベルに! 叶うことなら2レベル以
下に!
てゆーかンな暇あるならグラーフを抹殺しろよとかいうツッコミは無しだ!
奴のレベルを下げるには、この世のありとあらゆる存在、そして非存在をも
『下げる』といわれる神秘の力が必要だ。
その名は“柊力”!
“柊力”を入手せよ!
“柊力”をその身に有する異界の勇者・柊蓮司を確保せよ!
そのために、柊蓮司を異界より召喚する唯一の召喚士を捕らえよ!
こうしてエクスカリバー所属の召喚士・キサラ・ノースライトは帝国全軍に
追いまわされることになった。
「たぁ〜すけてぇ〜ぃ」
「やれやれ、困ったものだ」
本気で困っているのかどうか、むしろ面白がってんじゃないかと疑わしい口
調でグラーフ・シュペーは呟いた。
だが、彼は本気で困っていた。
仮に、彼自身が帝国全軍に追いまわされる立場とあらば、困るどころか望む
ところの大喜びなのだが、彼ではなく、彼とは縁も所縁もない見知らぬ小娘が
帝国全軍に追いまわされているというのが気にくわなかった。どうすれば自分
の方に帝国の目が向くか、上手い案が浮かばなくて、彼は非常に困っていた。
……あー。もとい。
彼の責任ではないにせよ、彼が原因で、罪もない少女が帝国全軍に追いまわ
されているという悲惨な事実を、世直し義賊、“虚無の翼”号船長グラーフ・
シュペーともあろう者がみすみす看過するわけにはいかなかった。
だが、彼は今、“約束の地”の一件に忙殺されて、とてもじゃないが彼女を
救出に向かうだけの余裕はなかった。それゆえ、彼は困っていたのである。
「さて、どうしたものかな」
彼は広大な青空を飛空艇から眺めつつ、やがて、ニヤリと笑った。
「そうか。あの男がいたな」
そうしてエクスカリバー所属の召喚士・キサラ・ノースライトはヘルムート
・ゾンバルト将軍に捕らえられた。
「なんて卑怯な!」
彼女の非難を、ゾンバルトは嫌らしいニヤニヤ笑いで平然と受け流した。
帝国の根幹すら揺るがすグラーフ船長のレベルアップに、帝国将軍であるか
らこそ今日まで甘い汁を吸いつづけてきたゾンバルトが恐怖しないわけがない。
必死の彼は、実力以上の能力を発揮する。
追跡者の影に怯え、疲れきって道を歩くキサラの前に、見るからに美味そう
な饅頭を一つ、落としておいたのである。
少し先に、もう一つ。
更に少し先に、もう一つ。
疲れていると、甘い物が欲しくなる。肉体の渇望に、キサラは逆らえなかっ
た。
がしゃーん!
鋼鉄製の檻が彼女の上に降ってきたのは、彼女が36個目の饅頭を拾った直
後であった。
「出しなさい! こんなことをしたって無駄です、わたしは絶対に柊さんを召
喚したりはしません!」
毅然として言い放つ態度は、饅頭を食いながらでさえなければ実に凛々しい
ものであったことだろう。あと、口の周りのアンコも拭っておくべきだ。
「気の強い女だ。だがその威勢がいつまで保つかな?」
パチン、ゾンバルトが指を鳴らすと、ジェイソン・マスクを被った背の低い
拷問吏が、威圧感を込めてのっそりと現れた。
「やれ」
将軍の命を受け、拷問吏は黒い打鞭を振り上げた。
「きゃっ!」
キサラは身を竦めて息を呑む。
ピシィッ!
大きく撓った打鞭が、少女の柔らかな身体を捉えた。
はずだった、が。
拷問吏は檻の外。拷問対象は檻の中。
鉄格子が邪魔をして、鞭が当たらない。アホでもわかる理屈だ。
ぴしぴし。ぴしぴし。
何度か繰り返したけど、当たらなかった。
誰か注意してやれよ。と、キサラが内心ツッコミを入れたほどである。
ゾンバルトは舌打ちをして、部下どもに命じた。
「引きずり出せ!」
檻の扉があけられて、拷問吏は中に手を突っ込み、キサラの細い腕を鷲掴み
にした。その力強さは並大抵ではない。
「嫌っ! 離して!」
離した。
「ズラかるぞ、キサラ!」
ジェイソン・マスクの下から、くぐもってはいるが、彼女の聞き覚えのある
声がした。
どかどかどかどかどかーん! ほぼ同時、彼らの周辺へと凄まじい砲撃が上
空から加えられた。うわーっ、ダメだーっ、とばかりにゾンバルト配下の者ど
もが次々吹っ飛ばされていく。
風が吹き荒れ、視界が奪われる。朦々たる砂塵と土煙。
その合間、僅かの切れ目に空を見上げれば、陽光をはじき威風堂々、それは
空賊御用達の飛空艇。
「今だ、走れ!」
拷問吏に先導されて、召喚士は咄嗟に駆け出した。
「な、何者だ、貴様!?」
いや先に『追え』とか『捕まえろ』とか部下に言うべきではないのかとキサ
ラが内心ツッコミを入れたほどの、それはゾンバルトの詰問。
拷問吏自らの手によって、ジェイソン・マスクが脱ぎ剥がされた。その下か
ら現れる、不敵な面構え。
ゾンバルトは真っ青になって叫んだ。
「げげーい、貴様は賞金300万Gの大空賊シドーッ!」
「また賞金が上がったんですか」
「フッ、グラーフの奴に頼まれたのさ。空に生きる者同士の、まあ、横のつな
がりってやつだな」
「いえまだそのこと訊いてませんから、わたし」
「気にすんなぁ、賞金の高さはお尋ね者のステイタスだぜぇ」
「いえもう終わってますから、その話題」
キサラと、そして船長たるシドを収容し、飛空艇は大空高くに舞い上がった。
この船はクリスタルを積んでいない。その代わり、シドが持つシャードから
動力を得ている。
――クエスターのシドが船外に出ていたのに、何故この飛空艇は空を飛んで
いたのでしょう。
キサラは、しかし湧き上がる疑問を胸の内にしまっておいた。
もしも指摘してしまったら。
シャード持ちがいなければカバラ製のエンジンは動かず飛空艇は飛べない、
ということに気づかせてしまったら。
多分、今からでもこの飛空艇は墜落する。
絶対に墜落する。
足が痛いので歩いて病院に行った者が、アキレス腱が切れていますねと医者
に診断された途端、歩けなくなるようなものである。
「あんたぁ、お帰りぃ〜」
二人がブリッジに上がった、途端に飛びかかってくる人影。
「無事に戻ってきてくれて嬉しいよぉ〜」
シドの首っ玉にかじりつき、すりすり、ネコみたいに頬擦りしている、それ
はキサラの目には、リンクスの少女に見えた。
「おうおう、リコ。寂しかったかぁ?」
「寂しかったよぉ〜」
ぶっちゅうううううう。
ここはブリッジ。繰り返すがここは空賊の飛空艇のブリッジである。
周りにはシドの部下達がいる。
キサラという客人だっている。
ついでに言うなら、
「おかしらぁ! 帝国船団多数! 高速で追跡してきやす!」
ピンチは思い切り続いている。
なのに。
――君ら何やってんねん。
眼前で熱い熱いディープ・キスを交わすドヴェルグの男とリンクスの少女に、
どうツッコミを入れれば効果的であろうかと頭痛がするほど悩む召喚士キサラ
であった。
シドは、リコと呼んだ少女を片手で抱いたまま、キャプテン・シートにどっ
かりと座った。リコも、そのためキャプテン・シートに同席するかたちとなる。
キサラは、きょろきょろ周りを見回して、自分の席を探した。
こう見えてシドには部下が多い。どこにも空席らしき場所はない。
空賊の一人・ペイジが、気を利かせて彼女を手招きし、副通信士席を空けて
くれた。そして自分はブリッジを出て砲台に向かった。
「全速前進!」
シドの号令一下、彼らの飛空艇は背後の空中戦艦どもを振り切るべく逃走を
始めた。
「このまま約束の場所まで一直線だ」
「約束の場所?」
キサラの質問に、シドが答えた。
「エクスカリバーとのランデブー・ポイントさ。シェルリィとかいうアルフが、
お前さんを保護すると言ってきた」
なら、もう大丈夫。“青の”導師の名を聞いて、キサラの表情にホッと安堵
の色が浮かぶ。はずだった。んだけど。
なでなでなで。さすさすさす。
シドの右手はリコの尻をなでていた。
シドの左手はリコの股間をさすっていた。
「あっ…………あっ……あっ……」
半ば崩れた横抱き加減で男に抱きかかえられ、頬を赤らめて喘ぐ少女の姿に、
キサラの方こそ、頬を赤らめた。
ドッ、と衝撃。船体が大きく揺れる。
「ああんっ!」
リコが総身をよじって切ない声を上げた。今の揺れで左手が彼女の過敏な部
分を強く押してしまったのだ。衣服の上からとはいえ、しつこいぐらいに愛撫
をされて既に火のついた身体にとって、それは甘く激しい刺激だった。
「左舷直撃、なれど損傷軽微!」
部下の報告がきびきび上がる。
「面舵いっぱーい!」
朗々と響く声で命じるシド。なんと頼もしい態度か。
かくいう彼は少女を抱え直して、彼女の右乳を背後から揉んでいる。
船体が進路を急速に右へと逸らしていく。この方向ならば、今みたいな直撃
を喰らうことはあるまい。
「嫌っ、そ、そんなとこ……ばっかりぃ」
少女がふるふると首を横に振った。
「左っ……左もぉっ……!」
「取舵いっぱーい!」
右から手を離して彼女の左乳を揉み始めたシドの命令により、船体は大きく
左へ進路を変えた。
キサラは船外モニターに映る光景を凝視した。今まさに紙一重で、何発もの
砲弾が飛空艇の脇を擦過したのだ。あと一瞬、舵を切るのが遅かったら。考え
ただけでもゾッとする。
「シ……シドぉ……」
少女が、何かピンク色の卵みたいな物を取り出した。小型のカバラ機器であ
ろう、とはキサラにも予想がついた。シャードのゾーンの中で、それはブーン
と唸りを上げて、どうやら小刻みに震動しているようだった。
「して……ねぇ、してぇ……っ」
「反撃しろっ!」
シドの号令が飛空艇の砲塔を旋回させた。たちまち火を吹く対空砲。
ああ、ダメだ。キサラは唇を噛んだ。帝国艦隊にも優秀な軍人がいるらしく、
こちらの攻撃は悠々とかわされている。
キサラは神に祈った。先ほど自分に席を譲ってくれた、気のいい空賊の戦果
を祈った。
祈りがスノトラに通じたか。
「やるな、ペイジの奴」
シドの満足げな呟きが聞こえた。彼の座っている砲台から撃ち出された一発
が、母艦に比肩する巨大戦艦に吸い込まれたのだ。上手く急所に当たったらし
く、墜落めいて高度を下げていく。
だが、それだけだった。あんなにたくさん敵がいるのに、こちらの砲弾は、
まるで無視されているかのように当たらない。
あちらの砲弾が当たらないのは、標的たるこちらの飛空艇が小さいことと、
何より召喚士を生け捕りにする要があるからだ。しかし確率的に、そのうち手
酷い一発を喰らうだろう。そして彼我の戦力差からして、その一発が命取りに
なる。飛空艇が失速し、大船団に囲まれてしまえば、もう逃げ場はなくなるの
だ。
その間にも、シドは卵の先端で、なぞるようにくすぐるように、少女の内股
を攻撃していた。足の付け根のあたりをしつこくしつこく往復する。肝心の部
分には、しかし、近づこうともしない。
「いやぁん、もぉっ。ちゃぁんと当ててよぉっ!」
じれったそうな少女の嘆きに奮起したか。
「オラァ、てめぇら男を勃てろぉ!」
船長の激励に奮起したか。
アイアイ・サー、と威勢のいい返答が伝声管から聞こえ、それからはまるで
嘘のように、こちらの攻撃があちらに当たり始めた。
「ああっ、あああん、当たって、当たってるぅぅぅ……!」
シドは彼女の望みのままに卵を動かした。衣服の上から、強めて、緩めて、
感じる部分に、加える震動。
「あふ、は、はふ、はふん、ふああふ、あふぅっ、はふぅぅぅんっ」
全身を上気させた彼女は、空気を求めて喘ぐ金魚。
それを横目に眺めるキサラも息苦しさを覚えて、自らの身体を抱きしめた。
邪魔だわ肩は凝るわ痴漢には遭うわでちっともいいことがないキサラの巨乳
が、彼女自身の腕に押さえられて、ぽよん、柔らかく弾んだ。
きゅ。
胸の先端、ゾクリと感触。布地にこすれて、刺激を受けた。
「……あ」
戦闘の興奮。肉体の昂奮。
自分の身体を抱く腕を、強めたり、緩めたり。
そのたび乳房が、撓んだり弾んだり。
胸の蕾に加わる刺激。こんなときなのに、それともこんなときだから?
――気持ちいい…………。
キサラの視線の先。シドの愛撫に鳴かされている、従順な仔ネコが一匹。
淫らで。可愛くて。
羨ましい。
――わたしも、誰かに、あんなふうに。
――ああ…………柊……さん……。
少女の痴態に浮かされて、乳首の快感に誘われて、キサラの呼吸も、
「ふぅ……はふぅ……」
と、愛らしいものに変わっていく。
「おかしらぁっ!」
切羽詰った悲鳴が上がった。
「新手でやす! 前方、帝国艦隊、展開っ!」
ハッと我に返ってキサラは正面スクリーンを見遣った。
銀と黒とがキラキラと、小脇の拡大表示を確認するまでもなく、それは新た
なる敵影。
完全に、挟まれてしまった!
「ど、どうするんですか!?」
キサラがシドを振り返った。が、彼は片手でリコの胸を揉み、片手の卵で彼
女の股間を責めている。
「ひ、や、あっ、もう、もう、入れ……入れ、てぇっ……」
「んん〜? 聞こえんなぁ〜?」
「お願いぃ、イジワル、しないでぇ、中に、入れ……シドの、シドの、」
もはや焦点を無くした少女の瞳。たらりと唾液を垂らした口で、感極まって
叫ぶ。
「突っ込んでぇぇぇっ!」
「よぉし、突っ込めぇぇぇっ!」
船長の号令に、逆らう者など一人とて無し。飛空艇は限界を超えた出力で、
想像を絶する勇躍、真正面の帝国艦隊に向けて突進した。
「ひー!?」
あからさまな自殺行為にキサラは頭が真っ白になったが、驚いたのは帝国軍
側もご同様らしく、戦列に乱れが生じ、まるで飛空艇を通すための道を空けて
いるかのようにもなる。
やった、このまま行けば!
キサラの喜色が、即座に絶望に。
船外拡大モニター。
まっすぐこちらに向けられる、砲塔。
ブリッジに……直撃が、来るっ!
「イッちゃうぅぅぅっ!」
さんざん焦らされて完全に出来上がっていたリコは、濡れた狭間にシドの指
を突っ込まれ、軽く掻き回されただけで、あっさりと昇天した。そして。
きら。
細い細い光条が走った、だけ。
どばばばばばばばばっ!
飛空艇正面に展開していた帝国艦隊が、一瞬で爆発し、全滅したのだ。
「な、何? 何ですっ!?」
慌てふためくキサラ。
一方、悠然と構えるシド。
ほかほか湯気を立てて、ぐったりと満足げに彼にもたれかかるリコを優しく
力強く抱きかかえたままで。
「ヘ、やっぱし来やがったか」
天空を、宇宙を、見上げていた。
天と宙との境にひらいた時空の裂け目を見上げていた。
「ha――――hahahahaha――――――――! グッジョーク!
イッツァナイッジョー! hahahahaha――――――――!」
このキチガイじみた馬鹿笑いは。
「てめぇっ、ヴィオ! 何がグッドジョークだ、どこがナイスジョークだ!?
てゆーかさっさとこの縄を解きやがれぇっ!」
この怒鳴りツッコミは!
静かな静かな駆動音を立てて、大空を覆うその威容。
対奈落艦――二番艦“レーヴァテイン”。
ぱ、と通信モニターに、爆乳をたゆんと揺らす白銀の乙女が映った。
「ハーイ、皆サン! ゴ主人様ヲ、オ連レシマシタヨー!」
続いて不良じみた、……不幸じみた少年が映った。
どのぐらい不幸じみているかというと、風呂に入っていたところを拉致られ
たらしく、髪にはシャンプーの泡がモコモコ。濡れた全裸は荒縄で椅子に縛ら
れ、大事な部分は、ケロリンの黄色い洗面器が隠している。
それはもう、涙がちょちょぎれるほど不幸じみていた。
「柊さん!」
キサラは目を瞠った。
リコはモニター向こうの彼を見詰めて、静かに呼びかけた。
「…………息子よ――――」
「誰がお前の息子だっ!?」
柊蓮司のツッコミに、リコがきっぱりと返した。
「夫婦は一心同体! シドの息子はわたしの息子!」
「応とも!」
シドが大きく頷いた。
だからその『シドの息子』っつー前提はどこから、と必死にツッコミ続ける
柊蓮司に、青い顔をしてキサラが叫んだ。
「だ、ダメです柊さん、自分の世界に戻って! あなたは今、」
「事情は、ヴィオレットから聞いた」
そう言って彼は、
「俺がこっちに来ちまえば、もうお前が狙われることはねぇ。そうだろ?」
気楽に、片目を瞑ってみせた。
全裸は、まあ、仕方ないとして、せめてアソコにあるのがケロリンの黄色い
洗面器でなければ、もうちょっとキマっていたかも知れない。
「……柊さん……」
キサラは胸が熱くなった。望まぬ再会。彼を危険に遭わせるだけの。
なのに、何故こんなにも嬉しいのだろう。
何故こんなにも幸せなのだろう。
別に彼の素っ裸を見れたから嬉しいというわけではない。断じて。
「さあ、とっとと連中をブッちめるぜ! やれ、ヴィオ!」
「イエス、マスター! ト、ソノ前ニ、」
「あ?」
「“エスプリ”ノ効イタJOKEヲ一発」
「あとにしろ、あとにっ!」
通信が切れた。
そして船外モニターの中、神々の戦舟レーヴァテインが帝国船団を赤子扱い、
端から順に駆逐して行くのが見えた。
異界の魔剣使い。古代の戦乙女。
かつて奈落の魔王からこの世界を救った英雄達。
彼らの帰還が、それだけで、グラーフ船長のレベルを下げようとする帝国の
大いなる野望を打ち砕けるはずもない。
けれどそれは希望だった。
キサラの希望、世界の希望、そして恐らくは。
シャードがもたらす、神々の加護。奇跡という名の希望なのだった。
「ところで、よぉ、キサラ」
コホン、と咳払いなどして、シドが彼女に話し掛けてきた。
「こんなこたぁ言いたかないんだが、」
「何です?」
彼は眉をひそめて苦言を呈した。
「ブリッジで乳ィいじくってオナニーすんなよ」
「あなたに言われたくありません! てかそんなことしてませんーっ!」
・・・・・おしまい。
以上、前スレ>869に言われてカッとなってやった。今は反省しているわけが
ない。というお話でした。
最近NWご無沙汰なんで、柊力が何なのかとか実はよく知らないままに書き
ました。
さ、最高すぎるwwwwwwwwwwww
シドの采配がイカしすぎwwwwwwwwwwwwwww
アホだ……なんてアホなんだ……(※褒め言葉)
>>14 GJ。キサラ可愛いよキサラ。
きくたけリプレイのヒロインではキサラが最萌な身としては、とても嬉しいですよ。
……そ云えば、去年書き掛けた「柊×キサラ」SSのプロットはどうしたんだろう、俺。
そしてヴィオレットは相変わらずエロ馬鹿ガイジンだなぁ。【誉め言葉】
シドwwwwwwさいこーwwwwwwwwwww
強人劇(略しすぎ)の中の人。スレ立てお疲れ様です。そしてありがとう。近場で手に入りそうなところがあるといいが。
リコの息子。きっと我等が蓮司なら、タイトルからまずツッコんでくれると信じてる。というか騙されたさ! まさに愛すべ
きアホどもよ(含乗組員)。俺はコメディテイストが書けなかったりするので、このテンションは速度共々羨ましいっす。
しかし速いよ! 速過ぎるよ!? 前スレ868は正しかった。何この大海嘯。ルアダンを萌え変換してルアたんとか、そんな小
ネタを捻ってる場合じゃねぇ。投下直後なのでちょっと間を空けようかとも思ったけれど、失礼ながらこのまま書き込ませてい
ただくぜ。
「どうして、そんな取り引きなんか――」
状況がまずい事は判っていた。じわじわと力を回復しつつある侵魔に、身動きのならないウィザードふたり。このままではふた
りとも餌食にされるだろうと知れていた。でも打開策に頭を巡らせるより、あたしは問わずにいられなかった。
「そんな事しなくても、キミだけなら逃げれたでしょ?」
「それならセンセだって同じだよ」
呟くようなあたしの声に、ぐったりと俯いていた彼女が顔を上げた。両頬に二筋、涙の痕。
「ワタシの事なんて放っておけば、あんな怪我しなくてすんだのに」
「それは……」
あたしには思うところがある。けれどそれは一口に語れるものじゃない。言いよどんだ隙に――、
「それにね、心配してくれたから」
彼女が笑った。
「『キミを心配してる』って。先生はそう言ってくれたんだもん」
ひどく無防備に。心底から嬉しそうに。こんな状況でも一瞬見惚れてしまうくらいに。自分だけの宝物を見つけた幼子の笑顔で。
「それだけで…?」
命の代価には、随分と不足な理由だと思った。特にまだ充分なくらいの未来を持ってるこのコにとっては。だから思わず漏らし
た言葉に、彼女はううんと首を振った。
「ワタシにはそれだけじゃなかったから。だって……あっ!?」
ぐい、と彼女の顎が掴まれた。無理矢理に蜘蛛を振り向かされる。
「何を休んでいるんだい? まだ終わりじゃあないよ」
艶やかな笑い。彼女がびくりと身を竦ませる。その眼前には蜘蛛の指。どこから滲み出しているのか、それは緑色透明の粘液に
塗れていた。
「お前は私に、精気を捧げる約束をしたんだからねぇ」
「あ……や、やだ…んぅ…っ」
強引に開かせた口に、蜘蛛の指が突きこまれた。抗いも束の間、諦めたように彼女の細い喉が動く。何ともしれないものを嚥下
させられているのだ。
「やめろ! そのコから手を離せッ!」
けれどいくら身もがいても、足をばたつかせても、糸の拘束はびくと緩まなかった。悔しい。生徒ひとりも守れないのか。どう
しようもない無力感と焦燥とがあたしを焼く。
「これはねぇ、毒だよ」
その様を横目に見つつ、蜘蛛が嫣然とまた笑った。
「ひとを狂わせる毒さ。体中が鋭敏に、淫らになって肉欲の虜に堕ちる。ウィザードだろうがなんだろうが、そうなってしまう毒
なのだよ。さっきのこの娘の乱れっぷりをお前も見たろう? 効果が出るまで、少しばかり時間が入り用だけれどね」
ようやく指が引き抜かれた。唾液と粘液が糸を引く。けほけほと咳き込んで、彼女は荒い息をつく。すいと蜘蛛はその傍らを離
れた。勝ち誇った様子であたしの顔から覗き込む。
「そういえば、お前もさっき私に傷を負わされたのだっけねぇ?」
「…だから?」
「判らないのかい? 治癒魔術で若干散ったにしろ、そろそろ効いてくる頃合だと言っているのだよ」
瞬間、ピースが稲妻のように符合した。指先から滲む毒液。あたしの体を貫いた手刀。意味するところはひとつだ。
「そんな! 先生には何にもしないって!」
同じ答えに辿り着いたのだろう。叫ぶ彼女に、
「あれはまだ、約束をする前だろう?」
「で、でも…っ」
その頃にはあたしは、問答どころじゃなくなっていた。意識させられた所為か、それともエミュレイターはそこまで正確に自身
の能力の効能を把握できるのか。
いつの間にか呼吸が早くなっていた。肌が熱ぼったく汗ばんで、視界が狭まる。体の芯からじんじんと痺れるような感覚。なん
とか堪えようと、先までの怒りの残滓をかき集めて蜘蛛を睨むが、無駄だった。そんなか弱い残り火では到底足りない。
「っ……、は……っ…」
意図せず艶めいた吐息が漏れる。身動きのたびに肌を擦る衣擦れすらもたまらなかった。情欲の炎に飲み込まれる。
「センセ!?」
悲鳴のような彼女の声。教室で。教え子の前で。このコの前なのに。そんな背徳の感情が、一層に淫蕩な火勢を強くする。あた
しは知らず内腿を擦り合わせていた。何一つされていないというのに、じんわりと腰の奥からあふれ出してくる感覚がある。もし
も両の手が自由だったら、とっくに自らを慰めていただろう。
「ああ、いけない」
嬲るような声。蜘蛛は、明らかに反応を楽しんでいた。羞恥と屈辱。なのに腰のうねりをどうにも止めようがなかった。あたし
の様子に満足したように、今度は彼女へと歩み寄る。
「ほらご覧。私の毒、お前も身をもって体験したろう? あのままだとお前の大事な先生、このまま気が触れてしまうかもねぇ」
「やだ、そんなの駄目だよ! センセを助けて!」
「おやおや、困ったねぇ」
予想通りの反応を引き出したとばかりに、間髪入れずに蜘蛛は応える。
「なんとかしてやりたいのは山々だけれど。私は『手を出さない』って約束してしまったものねぇ?」
ぐっと言葉に詰まった彼女に、蜘蛛は舌なめずりをする。ひらりと手を閃かせた。
「あっ!?」
唐突に吊り下げられていた糸から解き放たれて、彼女は床にへたり込む。
「お前が、なんとかしておやり」
「……え?」
「私にされたようにしてやればいいのさ。お前の先生を、気持ちよくしておやり」
座り込んだまま、彼女はおどおどとあたしと蜘蛛とを見比べる。そんな言葉を容れるなと告げたいのに、声は出なかった。それ
は蜘蛛の言葉に、期待してしまったからだった。誰でもいいからこの疼きを治めて欲しいと、そう思ってしまったからだった。
「で、でも…」
「助けたいんだろう?」
逡巡の末、彼女はやがてこくんと頷いた。ふらふらと立って、あたしのところへやって来る。
「だ、駄目。来ちゃ駄目!」
必死で欲望と熱とを抑えてあたしは叫ぶ。指一本でも触られたら、もうそれだけでどうにかなってしまいそうだった。
けれど腰を落として糸の柱にもたれるような中途半端な体勢で、足だけばたつかせたところで、何ほどの効果も得られれはしない。
「暴れちゃダメだよ」
簡単に制されて、お腹の上に跨られた。
「…っ」
これからこのコに犯されるのだ。
息を詰めて、自分が生娘のように竦んでいるのが判った。同時に期待してしまっているのも。
「――センセ、ごめんなさい」
あたしの肩を抑えるように手を突いて、彼女が目を閉じた。ゆっくりと顔が近付いて、唇が触れ合う。
「ん…んぅ……んん……は…ぁ……」
もどかしいくらいに優しい感触。あたしは自分から舌を求める。紅も塗っていない唇を割って、中に入り込んで。お互いの唾液に
濡れそぼった器官を絡めて堪能する。それだけなのに、背筋が震えるくらいに気持ちよかった。
永遠のような時間の後、息継ぎめいた呼吸で終わるくちづけ。あたしに馬乗りになった素裸の生徒は、うっとりと瞳を潤ませる。
すっかり上気したあどけない顔立ち。けれどそこには紛れもない情欲が灯っている。
白い肌がまた上気している。ん、と小さく漏らして、彼女は華奢な身体を震わせた。
「…センセ…」
彼女の方も、さっき飲まされたあれが効いてきたのに違いなかった。
細くて白い指が、あたしのシャツのボタンをたどたどしくひとつずつ外していく。ふたりの早い呼吸が混じる。わざと焦らしてい
るのじゃないかと思いたくなるくらいの主観的時間を経て、前がはだけられる。やはりゆっくりと下着が外されて、あたしの双丘が
まろび出た。
「ん、あっ、駄目っ……うぁっ……く、ん……だ、めぇ…」
彼女の手がおずおずとそれを捏ね始める。電流が走り抜けるような快感。どうしたって拒絶には聞こえない声で、あたしは制止を
求める。
「…センセ、可愛い…」
また唇が重なった。てのひらの動きがだんだんと大胆になる。いいように形を変えられ、硬く尖った先端を音を立てて吸われる。
どうしようもなく嬌声を上げさせられながら、でも。
――足りない。
貪欲にあたしは思う。こんなんじゃ足りない。
ぞくぞくと背筋を這う、今まで覚えがないほどの快感。でも、それですら不足だった。一番いやらしいところに刺激が欲しかっ
た。ひとりでは決して埋まらない部分を、深くまで満たして欲しかった。
「不満足そうだねぇ、先生は」
心を見透かしたように言われた。かっと頬が熱くなる。けれど屈辱よりも身を犯す熱の方が強い。抑えきれずにもどかしく身悶
えしてしまう身体が、いくら黙してたところでこの上ない雄弁な返答になる。
え、と行為を止めた彼女に、謎かけめいてエミュレイターは口の端を吊り上げた。
「そんなんじゃ駄目だ、って言ってるんだよ」
そうして彼女に、ぼそぼそと耳打ちをする。
「そ…そんな事……」
「お前達夢使いは現実を書き換えるウィザードだろう? やってごらん。大好きな先生もお待ちかねだよ。それに」
つう、と蜘蛛が彼女の花弁をなぞった。たったひとすくいなのに、指にはべっとりと蜜がまとわりついていた。それはさっきか
らあたしの素肌を濡らし続けていた、彼女自身の官能の証明。
「お前だって、もっとよくなりたんだろう?」
目の前に突きつけられ、彼女は恥じらうように俯いた。そのまま、長い逡巡。
「そいつの、言う事、なんて…聞いちゃ、駄目だよ」
弄る手が止まっても、一度火のついた体はまるで治まらない。喘ぎ喘ぎながらも、あたしはそう声を振り絞る。
何を吹き込まれたのかは知らないけれど、エミュレイターの提案が良い事だとは到底思えない。
「――センセ」
そっと、小さな囁き。指が、ほつれたあたしの前髪をかき上げる。それだけで、ぞくりと震えが走った。汗ばんだ額に、彼女は軽
くくちづける。
「…ごめんなさい」
聞こえないくらいにもう一度告げて。あたしの上から退くや、ベルトに手をかけた。パンツが膝まで引き降ろされる。ぐっしょり
と濡れそぼったショーツが露になる。
「だ、駄目!」
今まで手付かずだったそこへの愛撫を、一瞬期待してしまう。そんな自分を叱咤して、言葉で制止を試みる。
けれど、手足にまるで力が入らなかった。
物足りないとすら感じていたのに、さっきからの行為で、すっかり体はできあがってしまっていた。加えて、続きへの甘い期待。
抗い難い肉の疼き。
それらがない交ぜになって、結果、あたしは彼女のか弱い力にすら逆らえない。
超中途っぽいですが、とりあえず今回はここまで。
土蜘蛛さんの特殊能力は毒の八手。ここは地下。ならばそういう毒以外にはあり得ぬかと。累積するペナルティは、つまりそ
ういう事でござんすよ。きっとね。
甘味風味にゃなる予定なので、苦手な方はもうちょっとだけお待ちくだされ。
んじゃまた、そのうちに。
>>25 新スレ早々土蜘蛛さんGJ。もとい心待ちにしておりましたー。
ここ最近割とハイペースで読めて嬉しい限りですよ。
……しかし、起きて最初の巡回で真っ先に読んでしまうと、その、この持て余した昂ぶりはどうすればー(--;;
27 :
いつふた:2006/04/15(土) 10:40:21 ID:6ttRlf/3
>1
言ったつもりで忘れてた。
スレ立て乙です。
>>25 なるほど、このあと例のアレか。ふんふん。
……うぉ!? 寸止めかよ!?
などと考えながら読んでいたわたしは陵辱物が苦手なんだそのはずなんだ。
>>26 もっぺん蒲団に戻ればいいじゃなーい。
果てしなくGJ
>>1&職人諸氏乙
最近魔人竜(ゲームブックね)やったのだが、孕ませネタ多くてワロス
30 :
いつふた:2006/04/15(土) 21:21:40 ID:qlqoIFAX
ゲーム:番長学園!!(番長学園!!3本目)
形式:小説(三人称)
エロ度:和姦? 女の子同士。口でする程度。
レス数:5+1
終幕:ハッピーエンド
◇酔っぱらいブギ
「レイちゃんひどいやぁぁぁぁぁ…………!」
今日もごんちゃんの悲鳴が、ドップラー効果を伴って駆け去っていった。
―〜―〜―
原因は、雪姫が面白がってレイ番長に飲ませたラ・九州特産の芋焼酎。豪巌
との戦いでラ・九州に出かけた折、震王が手に入れてきた物だ。
「ラ・九州ならバラのワインぐらいお土産に持って帰って来なさいっていうの
よ、ねぇ?」
訳のわからないことをケラケラ笑いながら言って、完璧に出来上がっている
雪姫が、逆さに持った芋焼酎のビンをレイ番長の口に突っ込んだのである。
震王の工房で唐突に始まった酒宴は、もはや泥沼のアルコール地獄と化して
いた。氷刃は疾うの昔に酔い潰されており、一升瓶を抱きかかえて幸せそうに
眠っている。彼の隣には、真っ青な顔をして苦しげに喘ぎながらも未だ飲むの
をやめようとしない震王。更にその隣には、涙をだぁだぁ流しながら胃の中の
物をげぇげぇ吐いている恋。
番長学園最強の門番衆も、酒に関しては所詮未成年ということであった。
「みんなお酒に弱いんだねぇ」
目尻がほんのり赤く染まっただけで、唯一平然としているごんちゃんも、こ
の惨状に遭って止めようとも介抱してやろうともしない辺り、酔っ払っている
のには違いなかった。
「…………っく」
小さなしゃっくりの音。
「……んぞ……」
「んぞ?」
ごんちゃんが振り向くと、
「ごんぞぉぉぉぉぉぉ」
すっかり目の据わったレイ番長が、物凄い形相でごんちゃんの鼻先にいた。
「ひ、ひいっ、レイちゃんっ!?」
かつてないほどの恐怖を覚えてごんちゃんは悲鳴を上げ、逃げ出そうと身を
引いたところをレイ番長に両肩を掴まれた。
こここ殺さないで殺さないでお願いぃ! あまりのことに声も出せず、ただ
ただ震えるばかりのごんちゃん。
レイ番長の両腕が、ごんちゃんの首に回った。
……嗚呼、今日を限りにボクもお父さんお母さんのところへ逝くことになる
のか……。覚悟を決めたごんちゃんの、瞼の裏に懐かしい父母の姿が浮かんで
は消えた。
「好き」
唇に、柔らかな感触。
ファーストキッスは、酒の味だった。
―〜―〜―
「ダメ、だよレイちゃん……」
雪姫がケラケラ笑い、氷刃がすうすう眠り、震王がぐいぐい飲みつづけ、恋
がゲロゲロ吐いている工房。
誰もこちらを気にしていない、だからといって人前で、それも気心の知れた
仲間の前で1枚1枚脱がされていくのは、ごんちゃんにとって、とても恥ずか
しいことだった。
白いTシャツ。エドウィンのブラックジーンズ。スポーツブラ。白パンツ。
はちまきをして靴下を穿いただけの格好で、ごんちゃんは工房の床に横たえ
られた。
優しく、だけど有無を言わせずごんちゃんを裸にしたレイ番長は、とろとろ
に蕩けた表情で、馬乗りになってごんちゃんを見下ろしていた。
「綺麗よ、権三。とっても綺麗」
「……レイ、ちゃん……」
可愛いのに、何故か面と向かって可愛いと褒められたことのないごんちゃん
は、一足飛びに『綺麗』と褒められて、頬を真っ赤に染めた。照れ臭い。なの
になんて嬉しい言葉だろう。
「んっ」
からかうように、レイ番長はごんちゃんにキスを落としていく。おでこ、鼻
の頭、唇、顎、喉元、胸、乳房の間、上腹、おへそ、下腹、
「あっ、あっ、あっ、あっ」
そのたびごんちゃんは軽い声を上げてしまう。くすぐったくて、でもとても
気持ちがいい。
やがてレイ番長の唇は、下肢の茂みに到達した。両足を割り、レイ番長の舌
が狙いを定めて伸びる。
「レ、レイちゃん、そこはっ!」
思わず身体を起こし、両手でレイ番長の頭を遠ざけようとするごんちゃん。
だが、ごんちゃんの太ももの間にあるレイ番長の頭は、びくともしなかった。
「そこは、何? 権三」
「そこは、汚い、……から」
「汚いから、何?」
全く意に介さず、レイ番長はごんちゃんの狭間に頭を沈めた。
「ひあっ!?」
びくん、全身が跳ね上がる。レイ番長に触れられた部分から、背筋を通って
脳髄まで、とてつもない電流が走った。番長能力、蓄電体質。雷電を操り攻撃
する彼女が、しかし、未だかつて体験したことのない、それは甘く切ない電流
だった。
「ああっ、いやっ、レ、レイちゃん、あ、あはっ、ああん、あああんっ!」
その激しさに、ごんちゃんはただただ翻弄されるばかり。
1級番長であるごんちゃんは、本来、2級番長であるレイ番長から通常攻撃
でダメージを受けることはない。それなのにこの一方的な展開は、多分に酒の
力と、レイ番長が消費した番長フレームの力に違いなかった。あるいはこの舌
技もまた、レイ番長の必殺技の一つであるのかも知れない。
「レイちゃん、ああ、レイちゃん、レイちゃん、あああっ!」
「そうよ、権三」
レイ番長が、満足げに舌なめずりをする。
「もっとあたしを呼んで」
「はあっ、はぁっ、レイちゃん、レイちゃんっっ!」
きゅ、軽く歯を立てられて、ひとたまりもなくごんちゃんは達した。
「きゃああああっ!」
悲鳴。だけどそれは幸せの悲鳴。
「ひ……ひどい、や、レイちゃん…………」
ぼろぼろと目尻からこぼれた涙も、悲しみのためではない。興奮して、興奮
しすぎて、抑えきれない感情を抑制するため、意思とは無関係に泣き出したの
だ。
「ふふ……じゃあね、今度は」
セーラー服のレイ番長は、着衣のまま、下着だけを脱ぎ去った。ごんちゃん
を床に座らせ、彼女の頭を、自分のプリーツスカートの中に隠してしまう。
「あたしにも、して?」
レイ番長のおねだりは、命令に等しかった。
スカートに視界を奪われたごんちゃんは、思考力も奪われてしまったかのよ
うだった。あふれる涙も止まらないまま、無我夢中でレイ番長自身に舌を這わ
せた。
「あ……ん」
ぴくん、レイ番長が反応する。
ごんちゃんの、ただただそこを舐めしゃぶるだけの拙い動き。だがとても一
生懸命な動きに、物理的な刺激以上の精神的な快楽を覚える。
「そこ、そこよ、権三。そう……そうよ、だんだん、上手になって…………」
更なる快楽を求めて、レイ番長が腰を振る。彼女は両腕を上着の裾から突っ
込み、ブラに包まれた双丘を縦横無尽に揉みしだいた。
きゅう、と自分の乳首を抓る。ちょうど彼女の雛尖が、ごんちゃんの舌先に
触れたタイミングで。
「はぁ……っ!」
快楽の波がレイ番長に打ち寄せた。
「……よかったわよ、権三」
そう褒められて、するりとスカートの中から出て来た顔は、酔夢にやられた
か性夢に呑まれたか、ぼんやりと、でも物欲しげにレイ番長を見上げる顔だっ
た。その口元は涎と愛液でべたべた。それを拭き取りもしないでごんちゃんは、
「レイ、ちゃん」
「なぁに?」
「…………さっきの、もう一回……して…………」
レイ番長は底なしに淫猥な笑みを浮かべて、再びごんちゃんに挑みかかって
いった。
―〜―〜―
目を開けたのは、レイ番長が先だった。
「……何? あたし、夕べ震王の工房で……?」
あやふやな記憶を辿りつつ、ふと、手に当たる温かな感触に目をやると。
赤い痣とか。歯形とか。縄で縛ったような跡とか。
イヤらしい印が身体中に付いている素っ裸のごんちゃんが、小さく眉を寄せ
たやたらと色っぽい寝顔で眠っているではないか!
何? 何が起きたの一体!? 慌てて辺りを見回せば、頬を擦り合わせた格
好で眠っている氷刃、雪姫ご両人。酒浸しの床の上で溺れている震王。ゲロの
海に沈んでいる恋。
やがてごんちゃんが目を開けた。
「…………ん、レイちゃん……」
寝惚けた声で、言う。
「もっと、ボクを愛して……」
ぞわぞわぞわぞわぞわっ! 完膚なきまでの鳥肌を立てて、レイ番長は光の
速さでヒきまくった。
「ごんぞぉぉっ! 起きろぉぉっ!」
ぱんぱんぱんぱんぱぁん! 往復びんたを複数回かまされて、さしものごん
ちゃんもきっぱり目を覚ました。
「え!? ええっ!? なんでボクこんな格好っ!?」
焦りまくりのごんちゃん、大慌てで服を着る。
「何? 何があったのっ?」
半泣きでレイ番長に尋ねる。どうやら二人とも、夕べの記憶がさっぱりない
ようだ。
さっぱり、ないのだが。
「権三」
「何、レイちゃん?」
きゅいいいいっ。高まる番長力の気配を、ごんちゃんは敏感に察した。
「なんかよくわかんないけど、全部あんたが悪ぅいっ!」
「ええええっ!?」
「死ねぇ、ごんぞぉぉぉぉ!!!」
レーザー一斉掃射。震王の工房を瓦礫の山と変えて、なおかつごんちゃんへ
と殺到する。
「やめて、やめてよレイちゃぁあん!」
ごんちゃんは外へ飛び出した。
「逃げるか、待てぇ!」
追うレイ番長。
そして雪姫が目を覚まし、酔いの残った眼差しで彼女らを見送った。
ふふ、と微笑を浮かべて。
「本当に仲がいいわね、あの二人」
「このエドウィン娘! 大人しくあの世へお行きっ!」
「レイちゃんひどいやぁぁぁぁぁ…………!」
今日もごんちゃんの悲鳴が、ドップラー効果を伴って駆け去っていった。
・・・・・おしまい。
以上、レイちゃん×ごんちゃんって公式カップル、だよねぇ? というお話
でした。
ふたりの仲の良さにちんちんおっきした。
38 :
いつふた:2006/04/17(月) 23:13:07 ID:sefPTE0f
ゲーム:扶桑武侠傳(標準的(?)武侠作成方式)
形式:会話形式。
エロ度:ほのめかし程度。
終幕:誰も不幸にはならない。
レス数:12+1
◇配役武侠でGO!
「中途半端に時間が余りましたね。次回分のキャラメイクだけでも済ましてお
く、ってことはできませんか?」
「できるよー。キャラシはもうコピってあるもん。
でもってこっちが配役武侠、サンプルキャラクターのコピー。
適当に好きなの選択してー」
「どれでもいいの……?」
「どれでもいいよー」
「てゆーかGM、一通りちゃんと説明せぇや」
「『扶桑武侠傳』についてはメールでザッと説明したよね。読んでくれた?」
「とりあえず和風中華風チャンポンのチャンバラ物ファンタジーだということ
は理解した」
「……合っとんのか偏っとんのか微妙やな」
「でね、正当派の剣士がやりたいなら剣聖派でー、怪力の戦士がやりたいなら
白虎派ー。この2つは初心者向けってことになってるからルルブ不所持の人に
お勧めー。
魔法戦士がやりたいなら天文会。これは初心者から中級者向け。
僧侶、つーか補助系がやりたいなら天蒼派。これは中級者から上級者向け。
プレイヤー4人だから、この4つン中から選ぶことになるかなー」
「では飛雲会にします」
「をい。」
「6つしかパターンがないのに、上級者向けと銘打って初心者を排除したサン
プルキャラクターが2つもあるのは何なんでしょうかね」
「そんなこと言われたって」
「あたし、これがいいな……」
「凶門派? これも上級者向けってことになってるけど、いい?」
「他のキャラクター、イラストが好みじゃないから……」
「そ、そう」
「飛雲会とか凶門派というのは、どういうキャラクターなんだ?」
「イメージ的には盗賊と暗殺者だよ」
「だいぶキャラ被りしていないか?」
「データ的には、百発百中だけど殺せない奴と、一撃必殺だけど当たらない奴」
「かなり両極端だな」
「なあ、『カンフー・ハッスル』でやっとった、琴をバァッとひいたら敵がズ
タズタになるやつ、あれが再現できるのんはあるか?」
「天文会だね。門派功夫……えと、特殊技能の入れ替えするなら最初から使え
るよ」
「ただし、敵が耳を塞いでたら効きませんけどね」
「えー? そら間抜けやなぁ、真空刃で切り裂くとか脳に直接響くとかやない
んか……うーん…………」
「俺はルールブックを持ってないし、映画も観ていないから、初心者向けのや
つがやりたい。剣聖派と白虎派、どちらがいい?」
「どっちでもー」
「他のキャラクターとの兼ね合いがあるかと思うんだが」
「イメージでパッと決めていいですよ。『扶桑武侠傳』は、あんまりパーティ
全体の戦略を考える必要がないですからね。ぶっちゃけ、たとえば全員剣聖派
でもどーにかなるゲームです」
「いやあの、GMの負担とかも考えてね?」
「なに、『天羅』で全員金剛機とか言われるよりずっとマシですよ」
「全員陰陽師の方が地獄かも……」
「やーめーてー。サバききる自信な〜い」
「武侠というのは、要するに冒険者なんだろう?」
「そうらしいな。英雄候補っつーか」
「『ロードス』のパーンみたいに、田舎者で戦士で、というキャラ立てなら、
世界観を知らなくても何とかなるのではないかと思ったんだが」
「パーンがいいんなら剣聖派じゃないかな。イメージ的に騎士だし」
「それはそうなんだが、《礼儀作法》に《説教》というのが今一つだ」
「それは一般功夫……一般技能だし、入れ替えてもいいよ?」
「何に入れ替えたらいいのかがわからん」
「ああ、そうか」
「『騎士』にこだわらないのなら、白虎派の方が『田舎者』に合ってるんじゃ
ないかと思いますよ。《野宿の知識》があって、都市の定住民よりは山野を漂
泊する民といった感じで」
「そうだな。それにしよう」
「決めた! 天蒼派に決定! 旅の医家ってイメージ立てでいこ!」
「旅のイカ? 名前はテンタクルスか?」
「ああ、だったらプリンスとサウザンダラーが必要ですね」
「違ぁう、医家や医家、医者の方!」
「テンタクルスの元ネタはタコだと思う……」
「やからイカやないっちゅーねん」
「えーと、飛雲会で凶門派で白虎派で天蒼派ね。これで決まり? んじゃパー
ソナルシートを埋めていきましょー。キャラシの右側ー」
「てゆーか本来、先にパーソナルシートの方を埋めるんじゃないですか? 配
役武侠を選ぶ前に」
「イラストとか技能とか見てもらった方がイメージ湧くかなーと思って」
「でも、これってルール通りにやると外見がイメージ通りにいきませんよ?
イラストが気にいってサンプルキャラクター選んだ人がいるぐらいなのに」
「そこはそれ、ROC許可ってことで」
「ロール・オア・チョイスは不可能です」
「え?」
「カードを引いて決めますから」
「あ゛。」
「言うなればランダム・オア・チョイス……」
「え〜ん、皆がイジメる〜」
「なあ、この世界の平均身長ってどのくらい?」
「ちょっと待って…………あったあった、男性が五尺九寸、179cm。女性
が五尺二寸、157cm」
「随分男女差が大きい……」
「男の身長だけ奏の兵馬俑の身長に合わせたからですね、きっと」
「なら俺のPCはぴったり平均身長やな」
「女性の平均身長?」
「男の平均身長」
「女性キャラなのに男性の平均身長?」
「何でやねん! 男や男!」
「天蒼派だっけ。女医さんじゃないんだね、残念」
「現代物ちゃうねんから、医者はフツー男やろ」
「『スペヒ』も現代物ではないが、女性ドクターをやっていたのは誰だ」
「あれは萌えキャラでしたねー」
「今度も萌えキャラをするのかと思った……」
「せんわいっ。そういつもかつも女キャラやっててたまるかっ。
あー、年は数えの二十歳。見た目の印象は年齢不詳。歳に関係なく、大人っ
ぽく見える。老け顔。
身長は五尺九寸。体つきは痩せた身体。飢えた狼のようでもある。
肌は象牙色。手や肩など目立たない場所に言葉の刺青。
目の色は灰色。瞳の印象は哀しげな瞳。
髪の色は黒に銀の混じり毛。髪型は、昔の医者っぽく総髪で」
「老け顔で、痩せてて、白髪混じり……?」
「苦労したんだねー」
「旅の医家やしな。若干二十歳にして、あまりにも多くの生と死を見詰めてき
てん」
「わー、なんか雰囲気出る〜」
「そういう奴に限って、あとでイジられキャラになるんだ」
「なってたまるか!」
「では次、飛雲会〜」
「僕は女性キャラにしてみました」
「げ」
「え、ダメですか」
「い、いえ、どうぞ、続けて」
「年齢は数えの十七歳。見た目の印象は、年齢より多少若く見られる。身長は
五尺四寸。体つきは華奢。妖艶でさえある。
その上《変装》持ちなので、美少年に変装しています」
「うわー、やっぱ狙ってきたー」
「男装の麗人は武侠物のデフォルトですよ」
「てゆーか美少年なんや?」
「魅力の【沢】が最高値の14。つまり、データ的にも裏づけはあります」
「なるほど」
「『華奢な身体』……。『妖艶でさえある』……。キャッチコピーは、『わた
し、脱いだら凄いんです』……」
「それから、肌の色は桜色。刺青は美しい花の刺青。
瞳の印象は優しげな瞳。色は黒色。ただし、片目が虎のような琥珀色」
「ん? 俺の目と同じだ」
「あ、カブりましたか。じゃあ……墨色に変更」
「いいのか?」
「虎のような、ってぐらいですから白虎派の方が似合うでしょ。
でもって髪は美しく結われた髷。色は濡烏色。以上です」
「次は俺か?
俺のキャラは数え二十三歳。老け顔、と出たんだが、年相応に変更していい
か?」
「おっけ〜」
「身長は六尺五寸」
「六尺五寸。197cmっ!? でかっ!」
「流石は白虎派、ってとこですね。男性ですか?」
「男だ。
どうせなら七尺一寸と言いたかったんだが」
「ははあ、身長七尺二寸の弟がいて、二人でタッグを組むんですね?」
「けど白虎派は鍼治療できんのとちゃうか。天蒼派に変えるか?」
「いやしかし、今更なぁ」
「あー。こーゆーことがあるから、先にパーソナルシートを埋めてからサンプ
ルキャラを選択するよう推奨されているのかー」
「違うと思う、多分……」
「よし、ではこうしましょう。『白虎羅漢功奥義、天雷功!』とか叫びつつ、
自分に針をざくざく。命力回復」
「それいいなぁ。今度NPCで使お〜」
「とりあえずカードの思し召しのまま、身長六尺五寸で。鋼のような身体で。
肌の色は赤銅色。刺青は無し。
瞳は、さっきも言った片方だけ琥珀色。鋭い眼光であるらしい。
髪は鳶色。髪型は簡単に束ねた程度の髷。
……こんなもんだ」
「最後は、あたし……?」
「うん」
「あたしのキャラクターは、凶門派で女性。
年齢は数え二十五歳だけど、見た目は童顔だから年齢不詳。
身長は五尺六寸で、魅惑的な身体。でも、平均身長より10cmも大きいか
ら、ちょっとコンプレックスがあるかも知れない……」
「でも、魅惑的な身体なんだよね? きっとモデル体型なんだよ。すらっと背
が高くて、ぼん、きゅっ、ぼーんって感じの」
「ほほう、では僕のキャラクターは貧乳ということにします。ただし、男装に
は便利だからコンプレックスは別にないという方向で」
「そこ、今は自分の話をしないっ」
「済みません」
「肌の色は小麦色。勇壮な鳥獣、竜虎の刺青……具体的には獅子と鳳凰……」
「か、カッコえ〜っ」
「瞳は寂しげな碧色。
髪は漆黒で、腰の下に至るまでの長い髪。
以上です……」
「んーっと、一番年上と一番年下が両方女性のサンドイッチなのか。……まあ
いいや、それでいこう」
「あー、GMGM。苗字に『貴族(文官)の家柄』って設定が付いてんけど、
何か役得ある?」
「設定に深みが出るよー」
「……わかった」
「で、【消せない記憶】は?」
「三年前の冬、雪がすべてを覆い尽くした故郷で、自分が、怒りで我を失って、
親友を自殺に追い込んだ」
「何があったんだろう」
「考えてんけど、小さい頃から天才ゆーてちやほやされてきたんが、自分より
先に親友の方が医師免許を取得したんで、プライドがずたずたになって、嫉妬
で怒り狂って親友にやつあたりしたんちゃうかなと。
ナイーブな親友は自分自身を裏切り者のように感じて、それを苦に自殺して
しもた」
「医師免許は変だなぁ。科挙にしようよ」
「んー、せやな。文官の家柄やしな」
「三年前っていうと、数えの十七歳……? 親友も同い年なら、それで科挙に
合格、って……」
「めちゃめちゃ優秀だな、親友。てゆーかまだ十七歳なんだから、受からなく
て当然だろうに」
「そういうふうに達観でけへんほど子供やってんよ。
【生き様】は、医家やから『仁愛』にしようかと思てんけど……【消せない
記憶】に合わせるんやったら『懺悔』なんかでもええかな、と」
「二度と同じ過ちを繰り返すまい。『友情』」
「それもらいっ! 【生き様】は『友情』にする」
「次、あたし、いい……?」
「ど〜ぞ〜」
「七歳の頃、夏、風鈴が囁くように鳴っていた出産祝いで、天蒼派武侠が地位
を奪うため父を串刺しにした」
「天蒼派武侠が父を串刺し!?」
「鉄笛でですか? 判官筆でですか?」
「玉簾だったらイヤすぎ。算盤だったらもっとイヤすぎ」
「串刺しといえば、普通は槍か何かだろう?」
「いや、天蒼派っちゅうのは普通の武器が使えん掟なんや」
「あ、でも、それいい……。天蒼派なのに槍で父を殺すほど、その武侠は父の
地位に執着していた……」
「それでは地位がもらえなくなると思うんだが」
「そこまで考えが及ばないほど野心に錯乱してたんだよー」
「風鈴を鳴らす涼風に血臭が立ち昇り……生まれたばかりの赤ちゃんの真っ白
な産着に、父親の血が点々と……」
「うあー、凄惨だー」
「凶門派は元から天蒼派と仲が悪いんちゃうかったっけ? しかも天蒼派武侠
が親の仇ゆうことになると、パーティが内部分裂せんか?」
「それはプレイヤー同士の擦り合わせでどうにでもなると思いますよ」
「えっと……あたしの家は元々天蒼派で……だから天蒼派そのものに偏見はな
いんだけど、復讐のためには力がいるから……天蒼派は人を殺すのを否定する
から、それじゃ救えないものもあると思って、凶門派に……」
「なんで剣聖派とかやのうて、わざわざ凶門派やってん」
「ん……きっと、法秩序を重んじる正派の限界に絶望して、敢えて天蒼派が否
定する凶門派を選んだんだと思う……」
「天蒼派で地位のある父親を、天蒼派の武侠が殺して、娘は凶門派に、ですか。
なかなか美しい悲劇ですね」
「すると【生き様】は『復讐』だな?」
「『家族』……天蒼派を捨てて凶門派に弟子入りしたから、もう実家には戻れ
なくて……それでも一番大切に想っているのは、残された母親や、兄弟達のこ
と……」
「天蒼派でもある旅の医家に父親の面影を見て、家族を案じるような懐かしむ
ような、ほのかな思慕を……とかゆーのは無しか?」
「あはは、そーゆーこと自分で提案するし」
「あ? 今回のセッションはラブコメ路線にするて言うたんはお前やろ?」
「そうでした、てへ」
「何ィ!? 俺は聞いてないぞ!?」
「あー、最近のメール読んでないな? ほら、武侠物なんて、GMも含めて皆
わかってないんだから、どうせセオリーを知らないんだもん、もうとことんま
で崩そうかと思って。
だからシナリオは、冒険者の最初の冒険ってことで死ぬほど簡単なやつにし
てさ。その分、【花鳥風月】駆使して人間関係をロールしてもらおうかと」
「冒険者の最初の冒険。ダンジョンもぐってゴブリン退治か?」
「正直それも考えたんだけど」
「考えたんかい!」
「でもね、幾らなんでもふざけすぎだから、もうちょっとマトモなのにするよ。
ただし、基本はラブコメってことで、皆さんよろしくお願いします」
「あたしは構わない……。『仲間にほのかな思慕』でOK……」
「俺の方は、せっかく【生き様】が『友情』やからなぁ。憎からず想いつつも、
友情ゆえに言い出せない、みたいな」
「友情ゆえに言い出せない、ってよくわかんない」
「やからぁ、ずっと『友達』やったもんで、上手く『恋人』ってふうに気持ち
が切り替えられへんねん」
「なるほど、定番だね。
相手が五歳も年上だから、それで萎縮してるのかと思った」
「ああ、その手もあるか」
「でも童顔の年上と老け顔の年下だから……」
「まあ、見た目だけなら気にはならへんか」
「……あたしの設定はこんな感じ……」
「では次の人〜。まずは【消せない記憶】を教えてくださーい」
「三年前の秋、祭囃子が聞こえていた芝居小屋で、師兄が拳で、師弟を武芸の
使えない身体にした」
「また三年前か」
「去年に変更する」
「提案なんですが、師弟よりは師妹の方が悲劇的でよくないですか?」
「師妹に変更する」
「ちっとは自分で考えんかいや」
「仕方ないだろう、よくわからんのだから」
「けどさ、何で師弟よりは師妹の方が悲劇的なの?」
「たとえばですね、師妹は女であることを捨てて、白虎派の武侠として修行に
励んでいたんですよ。ところが師兄は師妹のことが好きで、彼女には普通の女
性としての幸せを掴んで欲しい。できたら自分と、という考えなんです。
だから師兄は折りに触れて師妹を説得していたんですが、師妹は全く聞く耳
を持たなかった。
そして運命の日、楽しいはずの祭りの最中、芝居小屋の裏手で、いつもの説
得が口論に発展して、ついに殴り合いの喧嘩となり、その結果、師妹は重傷を
負い、武道家としての道を断たれて廃人同然に。師兄は後悔のあまりに出奔し
たという次第です」
「よぉそんな設定が即興で出てくるなぁ。感心するわ」
「兄弟子が弟弟子の才能に嫉妬して、っていうのは無し?」
「他の人のキャラ設定とカブるでしょう、それ。
第一、兄弟子が嫉妬する相手が、PCを通り越してもうひとつ下の弟弟子、
というのもPC設定的に面白くありません」
「んー、そっかぁ」
「しかし、この【記憶】が俺のキャラクターとどう関係するんだ?」
「それは、あ〜……。
可愛い妹弟子の仇討ちのため、逃げた兄弟子を追って旅に出たとか。
実は兄弟子を尊敬しており、だからこそ妹弟子に対する罪をきちんと償って
欲しいと願い、彼を探しに出たとか。
男女の擦れ違いに嫌気が差して、どうしても恋愛関連のことに抵抗感を覚え
るとか」
「恋愛関係に抵抗されたらラブコメになんないよぅ。ピンとこないんだったら
もっかいカード引いてみてもいいよ?」
「そこまでする気にはなれんが……保留、ということにしたい」
「ちなみに【生き様】は?」
「『愚直』。田舎者だからな」
「なるほどなるほど。
つまりこのPCは、師兄が師弟又は師妹を再起不能にしたという事件がどう
しても忘れられない。しかし生来の愚直さゆえに、それが何故なのか自分でも
よくわかっていない。
モヤモヤした気持ちを抱えつつ、旅を続けているんですよ」
「ああ、そのぐらいがいい。そういうことにしといてくれ」
「そういうことにしときたまえ〜。
で、ラブコメ要素は?」
「愚直やねんから、とにかく誰かに一目惚れっちゅうのはどないや?」
「通し」
「通しかい」
「田舎者ぽくていいと思った」
「じゃあ、凶門派の彼女なんか、ミステリアスでいいんじゃないかな? 凶門
派はどうしても自分の門派を隠す必要があるから、謎めいていて気になるって
感じで」
「せやったら俺のキャラクターは、友情ゆえに白虎派のPCに遠慮して、凶門
派のPCの想いに素直に応えることができない、って方向性にしよう」
「綺麗な三角関係ができあがりましたね。僕のキャラ要らないんじゃないです
か?」
「とりあえず【消せない記憶】をどうぞ」
「幼い頃、春、桜吹雪が舞っていた林のなかで、謎の大猿が風に吹かれて泣き
虫な幼い自分に生きる強さを教えた」
「謎の大猿キター!」
「猿かい! 猿に生きる強さを教わったんかい!」
「ちなみに【生き様】は『喜楽』です」
「猿やもんなぁ。猿に教わる生き様やもんなぁ」
「幼いながらに世を悲観して泣いていた少女は、でっかいお猿の大らかな姿に、
笑顔で生きる素晴らしさを教わったんですよ」
「よっぽど愉快な芸をしていたんだな、その猿回し」
「猿回し違います。猿そのものです」
「猿回しの猿だったのかもよ?」
「……うう、イメージがっ」
「享楽的な男装美少女……。物語を引っ掻き回す役どころになりそう……」
「トリックスターの位置付けやな」
「ところでGM」
「はいはい」
「セッション中は十八禁描写アリですか?」
「……朝チュンまでなら」
「チッ」
「チッゆーな。ラブコメなんだから十八禁まで行かなくてもいいでしょ」
「リプレイに起こしたときに……小説パートを挟めば……」
「ふふ、それでこそ暴れ甲斐があるというものです」
「な、何をする気なんだよぅ〜」
「ところで……他のメンバーは飛雲会の彼女の男装に気づいているの……?」
「《変装》は何で対抗判定やっけ?」
「特定の誰かに変装した場合は知力の【火】で見破るけど」
「なら俺のキャラクターは気づいとる、か?
でも、別に知覚の【水】で見破ってもおかしないよなぁ」
「《虎嗅功》で、月に一度の血の臭いを嗅ぎつける、なんてありそうですね」
「《虎嗅功》ってセクハラ……」
「臭いには気づくけど、理由はわからない、とか。古傷が開いたのかも、って
適当に解釈するとか」
「それはいい。ならば俺のキャラクターは気づいていないことにする」
「だったら俺のキャラは、気づいとるけど敢えて気づかんフリで。それが友達
いうもんやと思てんねん。でも、それとなく気遣いはする」
「あたしのキャラは……」
「女同士、知ってて黙ってくれている方が何かと都合がいいと思います」
「ん、ならそんな感じで……」
「気づいていないのは白虎派のPCだけですね? では僕のキャラは、白虎派
のPCが気づいてないことに気づいていない。他の二人と同様、知らないフリ
をしてくれているものだと信じ込んでいる。
その上で、白虎派のPCにモーション掛けまくりということにしましょう」
「わあ、引っ掻き回しにきたー」
「他のキャラのことは、えーと、そちらの苗字は何です? ……蒼先輩、紅先
輩と呼びますが、白虎派のPCだけ、……ちょっと苗字を見せてください……
朱哥々と呼びます」
「哥々とは何だ?」
「訳すと『お兄ちゃん』ですかね。まあ、親しみを込めて年上の男性を呼ぶと
きの敬称と考えてください」
「白虎派のPC的には、男に惚れられたっつー認識なわけやな? 男同士で、
気持ち悪いて思うんやないか?」
「その辺はどうですか? 嫌がってぎゃーぎゃー叫んで逃げ回るのもラブコメ
的だと思いますが」
「俺のキャラは愚直だから……相手が男であっても、好かれて悪い気はしない
と思う」
「女の子みたいに綺麗な男の子だし……ちょっと心が揺れる、みたいな……」
「美少年にベタベタされて、思わずドギマギしては『あれは男だ、男なんだ』
と自分に言い聞かせる。それですっかり自己暗示にかかってしまって、正体を
見てなお、『ああ、俺の功夫が足りないばかりに、男が美少女に見える』など
と悩む、なんてね」
「面白そう……あたしがそのキャラやりたいぐらい……」
「しかもこちらは享楽的だから、夜這いも逆強姦も辞さない勢いで。具体的に
は魅力の【沢】に自我の【山】で対抗してもらいましょうか。こちらが勝った
ら夜這い成功。あちらが勝ったら夜這い失敗」
「こらこら、GMに無断で対抗活劇するなっ。てゆーかそれって飛雲会側有利
なんだけど、夜這いが成功したら、」
「朝チュンやな」
「うわ〜っ」
「あ、でも、白虎派PCは凶門派PCに一目惚れしとるわけやから、全力で抵
抗するんやないか?」
「そこで【生き様】を貫く……。一人の女を想って、他からの誘惑は『愚直』
に跳ね除ける……」
「でしたらこちらは『一緒に楽しもうよ〜』と『喜楽』の【生き様】を貫きま
しょう」
「ベッドインするか否かで【生き様】対決かい。凄まじいな『扶桑武侠傳』」
「それは『扶桑武侠傳』のせいではないと思うー」
「せやけどホンマにベッドインしてもーたら面白ないやんな?」
「どうしてです?」
「流石にその時点で、実は女やったと気づくやんか。男や思て逃げ回りよるか
ら、ハタで見てて楽しいんちゃうかと思うねんけどな」
「いえいえ、思い込みの力を甘くみてはいけませんよ。
白虎派のPCは、相手の素肌に直に触れても、まだ男だと思い込み続けるん
です」
「そら幾ら何でも無理があるやろ。胸もあるやろし、前も付いてへんねんし、
男よりほら、入れる場所が1つ多いんやし」
「ヤオイの穴だと誤解する……」
「通し」
「通すな!」
「大丈夫ですよ。『扶桑武侠傳』には、内功の鍛錬が髪や瞳の色を普通の色と
は違う色に変化させることがある、という世界設定がありますから」
「ああ」
「これを拡大解釈して、身体にも変異が生じると考えるんです」
「うへえっ!?」
「勿論、それは知られざる事実でもいいしです、白虎派のPCの勝手な解釈で
もいいですし。
つまり、白虎派のPCは僕のキャラクターを見て『内功の鍛錬で女性的な身
体に変異した男性の武侠』と理解するわけです」
「そこまでくると、もはや『妄想:飛雲会のPCは絶対に男(−5CP)』の
世界やな」
「んむ、愚直だ」
「え、ええんか!? ……ええんやったら、まあ、ええけど」
「なんかもうホントにドタバタのラブコメだね。凶門派の彼女に一目惚れって
設定の方が要らないんじゃないかな」
「むしろ飛雲会の彼女に一目惚れ……」
「いいね、それ。実は女の子であるとも知らずに、男に惚れたと思い込んで無
意味に苦悩するんだ」
「通し」
「また通しかいっ! 何でも通すなお前は」
「ただ、それだとパーティ内の人間関係が2−2で閉じることになる……」
「でしたら、なかなか自分になびかない白虎派PCに痺れを切らして、天蒼派
PCに僕のキャラが一夜のアバンチュールなどを仕掛けてみましょう」
「事態が一気に修羅場になった……」
「パーティが崩壊しかねんな」
「『ひばりくん』程度の四角関係は欲しいかと思ったんですが」
「あんまりギチギチに人間関係固めてもしゃーないやろ。一応、恋愛関係は天
蒼派と凶門派、飛雲会と白虎派の間に限っといて、天蒼派と白虎派の間、飛雲
会と凶門派の間に、それぞれ友人関係を結ぶって方向でどないや」
「妥当なところだと思う……」
「なかなか面白い設定になったよね。イベントチャートの作り込み甲斐があり
そ〜」
「好きやなお前、イベントチャートの自作」
「てゆーか予め発生しそうなシチュを洗い出しとかないと不安で仕方ないんだ
よね。今回は易占判定表にラブコメイベント追加したの。半分ぐらいできたよ、
見る?」
「今見てもーたらオモロないわい」
「それもそーか。
んじゃ、次回はこのキャラクターを使って『扶桑武侠傳』のセッションって
ことで。今日はみなさん、お疲れさまでしたー」
・・・・・おしまい。
以上、卓上ゲームのエロパロならではのお話でした。
52 :
いつふた:2006/04/18(火) 21:47:39 ID:1zlr+k7Z
ゲーム:扶桑武侠傳(扶桑エロ武侠傳)
形式:いつものふたり。
エロ度:エロネタギャグ。
レス数:4+1
「ねぇねぇ」
「あ〜?」
「『扶桑武侠傳』のルールブックを読んでみたんだけどさ」
「ああ」
「知り合いに『Gガンダムの登場人物ができるよ』と聞かされてわくわくして
いたのに、実際のところPCの立場は要するに三級番長で、でも世界観的には
三級番長の方がよっぽど扱いが良くて、がっかりしたけど諦めずにルールブッ
クを読み込んでみれば、噛めば噛むほど味が出てきて、ぶっちゃけ味が出るま
で噛まないとさっぱりチンプンカンプンなんだけど、なんて面白いルールなん
だろうと思ったのは『しんもく』の判定方法以来で、しかも『しんもく』より
わかりやすくて、でも武侠物に慣れていないせいか『しんもく』ほど背景世界
がイメージできなくて、せめてもうちょっとPCの目線の高さのNPCを用意
してくれないと困るよ、当面のライバルとか一般市民とかさぁ!」
「興奮しているのはわかったが、とりあえず褒めるか貶すかどっちかにしろ」
「褒めてるんだよぉ〜。これホントに楽しいねぇ〜」
「大喜びだな」
「大喜びだよ!
特に消せない記憶決定表なんかもうサイコーに笑える!」
「しかし扶桑武侠傳のPCは、アルシャードのクエスターやN◎VAのキャス
トのような、世界屈指の存在ではないぞ?」
「うん、そこはちょっと寂しかったけど、ほら、特級番長には絶対に勝てなく
たって、三級番長には三級番長なりの活躍の場ってもんがあるし」
「しかも扶桑武侠傳には、ダブルクロスのエフェクトやナイトウィザードのイ
ラストのような、わかりやすいエロ要素はないぞ?」
「いや別にエロを求めているわけでは」
「尤も、扶桑武侠傳には火のないところに煙を立てるが如きエロさがあるな。
流石は噛めば噛むほど味の出るゲーム」
「ちょっとちょっと、噛めば噛むほどってのはルールの話であってっ」
「よく見れば、サンプルキャラクターには完全無欠のエロキャラがいる」
「エロいサンプルキャラクター? ああ、《誘惑》持ちの天文会だね」
「そんなあからさまな話ではない。
確かに天文会は、《誘惑》に加えて《天文鉄布術》による拘束プレイが可能
という素敵なエロキャラだが」
「あ、あの、《天文鉄布術》については言及してないんだけどっ?」
「いいから天文会の能力値をよく見ろ」
「そうそう、この能力値の配分も面白いよね。対応する2つの能力の和が15
になるよう割り振っていくの。たとえば体力の《天》と心魂の《地》が対応し
ているから、《天》を上げれば命力が高くなるけど、その分だけ《地》が低く
なって内力が下がる、みたいな」
「どうでもいいが、『命力』を『ミンリー』と読んでしまうのは俺だけか?」
「すると敵武侠の命力は『壊力』と書いて『カイリー』?」
「話を逸らすな」
「お互い様でしょっ」
「とまれ天文会の能力値の件だが、体力の《天》が“1”と、非常に低いだろ
うが。そのくせ武力の《雷》と感覚の《水》が“5”で、これまた決して高い
とは言えない」
「そうだね、それで?」
「機敏の《風》と知力の《火》が“10”だから、テクも性知識もあるのだろ
うが、なにぶんにも体力がないから長時間のプレイができない。それでは短期
決戦が得意かというと、《雷》と《水》の低さから、一撃必殺の威力に欠け、
そのうえ不感症気味なので、即イキも即イカセも困難だ。
エロという観点からは、今一つ中途半端なのだよ」
「そーゆー観点でPCデータが組まれててたまるかっ。
てゆーか、たかが能力値の組み合わせを、よくもそこまでエロ方面に変換で
きるものだね?」
「想像力に限界は無い」
「妄想力に限界は無い」
「でもって、一番エロに向かないのが剣聖会」
「……参考までに、何で? 《雷》が“14”で高いんだから、ええと、武力
による即イカセ? が得意ってことになるんじゃないの?」
「その分《風》が“1”と、致命的にテクがない。魅力の《沢》が“3”で、
自我の《山》が“12”だから、モテない上に、他人に興味も持っていない。
かてて加えて《説教》持ちの《礼儀作法》持ち。
これがどういう女かと考えるに、ひたすら騎乗位で自己中心的に腰を振って
自分勝手にイくわけだが、相手の男も半ば無理矢理イくことになる。そして行
為のあと、後味の悪い思いをしている男に向かって、『貴方は女性に対する礼
儀がなっていない』と説教するような、底意地の悪いお局タイプ。
男であれば、金で買った女を散々に嬲ったあとで、『もっと自分を大切にし
たまえ』などと小言を垂れる脂ぎったオヤジ、というのが相場か」
「うわー、剣聖会のイメージ台無し〜」
「ひるがえって天蒼派は、なるほど知力の《火》が“14”、魅力の《沢》が
“11”、人体のツボを知り尽くした《天蒼医術》に機敏の《風》の“12”
を合わせて、目くるめく性戯を披露しそうなものだが」
「何か問題でも?」
「感覚の《水》が致命的に“1”。相手がどう感じているか《推理》できても、
実体験を伴わなければ、マニュアル通りの手順をしか踏襲できまい。職業的な
女王様や性奴の調教師には好適な逸材だろうが、一方的に抱くの抱かれるのい
う関係ではなく、互いに心を通わせ『抱き合う』パートナーとしては、これも
また片手落ちと言わざるを得ないのだ」
「なんか色々難しいね。じゃあさ、白虎派は?」
「知力の《火》と機敏の《風》がそれぞれ“1”だが、性知識やテクニックの
なさは感覚の《水》が“14”という敏感さでカバーできる。体力の《天》と
武力の《雷》が共に“14”で、魅力の《沢》も“8”とそこそこあるから、
相手の男にしてみれば、純真無垢なおぼこ娘をこれから仕込むが如き楽しみが
あるな。それでいて《野宿の知識》でアオカンにも対応できるという嬉しいオ
マケつき」
「おー、完璧だね」
「だがしかし、自分が女を駅弁するならいいが、《白虎羅漢功》で逆に自分が
持ち上げられては、相手の男にしちゃあ面白くないだろう」
「そうだね。白虎派の体力武力に、相手の男がついていけるかっていう問題も
あるね」
「更に惜しむらくは《虎嗅功》持ちなのだ」
「それって鼻がいいんだよね。くさいにおいを憶えちゃうんだよね。
……なんか嫌……」
「同様に、《闇の眼》持ちの凶門会も遠慮したいところだ。『恥ずかしいから
灯りを消して……』という定番台詞が意味をなさなくなり、互いによく見えな
いところでまさぐりあう愉悦が味わえない。
しかも凶門会は、《天》、《水》、《風》が“14”。《沢》が“3”、
《山》が“12”と、剣聖派同様、他人より自分に目が向いている。
《孤独》の能力で一人きりになっては、体力が尽きるまで敏感な部分を巧み
に自慰している女が目に浮かばんか?」
「うーん、エロいっちゃあエロいんだけどねぇ」
「そしてお待たせ、飛雲会。これが超一流のエロキャラだ」
「え、どうして?」
「魅力の《沢》が“14”、自我の《山》が“1”、機敏の《風》が“14”」
「というと、めちゃくちゃ魅力的な女の子で、しかも……自我が最低値って、
自制心がないってこと?」
「これはこのように読むのだ。『フェロモン出しまくりで、口説き文句に流さ
れ易く、最高級のテクニシャン』」
「うわっ、エロマンガの主人公みたい!」
「知力の《火》が“9”、感覚の《水》が“6”と、性知識も性感もバランス
よくある。武力の《雷》が“1”で一撃必殺の威力こそないが、体力の《天》
が“6”だから、まずまずの持続力でカバー可能」
「わあお、ますますエロマンガの主人公だね」
「かといって体力バカでもなく、このため、行為のあと、体力に余裕を残して
いるのは相手の男の方が余程ということになる」
「なるほど、女の子がクタクタになるまで可愛がってあげたってことで、男の
面目が立つわけだ」
「そしてここが最大のチャームポイント。
《変装》によるコスプレサービスや《飛雲軽功》によるアクロバティックな
体位で、日毎夜毎のセックスを飽きさせない!」
「うおー、確かに言われてみれば完全無欠のエロキャラだね!」
「得心が行ったか」
「得心しまくりだよ。
……なんか根本的なところでメチャメチャ騙されてるような気がするけど、
納得はしたよ」
「うむ。
ところで飛雲会掌門の趙飛雲は、たった一人で天下第一武侠たる瑞覇に挑み、
引き分けに持ち込んで、当座とはいえ彼の野望を阻止したと言われている。
ただし、それは『様々な卑怯な行為』の結果だ、とも」
「それって天文会の負け惜しみかと思ったんだけど、違うの?」
「飛雲会の武巧の弱さは特筆すべきほどであり、また、強大な敵の隙を突くの
は戦術の基本。しかも隙ができるまで待つのではなく、こちらから能動的に隙
を作らせるのが得策だ。相手が強ければ強いほど、な」
「そりゃそうだろうけどさ」
「掌門というぐらいだから、サンプル飛雲会武侠とは比べ物にならないくらい、
趙飛雲は扶桑屈指のエロキャラに違いない」
「…………まさか!?」
「対瑞覇戦で彼がどのような策を弄したか、想像にかたくないな」
「対瑞覇戦で彼がどのような策を弄したか、想像をしたくないな」
57 :
扶桑エロ武侠傳:2006/04/18(火) 21:51:36 ID:1zlr+k7Z
・・・・・おしまい。
以上、飛雲会のサンプルキャラクターが一番エロいという結論ありきのお話
でした。
なにこのありそうな作り話
作り話だよね?
59 :
いつふた:2006/04/19(水) 23:05:51 ID:0rxc+7iu
ゲーム:ギガントマキア(ギガま!)
形式:いつものふたり。
エロ度:エロネタギャグ。
レス数:4+1
注意:本日作成。つい今し方書き上げたとこ。校正はほとんどしていない。
◇貴様の血は何色だ
「ねぇねぇ」
「あ〜?」
「何だかんだ言いもって『ギガントマキア』のルールブックも買ってきたわけ
だけどさ」
「ああ」
「……それも生活費をつぎ込んでまで」
「社会人として、我ながらどーかと思う」
「卓ゲ板の『ギガま!』本スレ読んで、これは買うまいと心に誓ったのにね」
「そうだな」
「ガオガイガーしか出てこない『ガガガ』は面白くないのにね」
「せめてプライヤーズは欲しいところだよなぁ」
「待てぃ。
そこはまず氷竜炎竜と言うべきところではないのか」
「何を言うか。氷竜炎竜単体なら簡単に再現可能だ。『ギガま!』にはマシン
ネイチャーがいるだろうが」
「え? マシンネイチャーは巨大な人型ロボットなの?」
「まあそうだ」
「そんなことしたら情報収集できないじゃない。デカすぎて民家に入れないし、
そもそもパンピーに見えないよ」
「ゆえに、通常は電霊をインストールした人間大のアンドロイドであり、戦闘
中だけ巨大ロボットに電霊をダウンロードすると考えればよい」
「あ、なるほど」
「そしてまた、どうせそこまで拡大解釈をするのなら、メイガス、レンジャー
等もロボットに乗るなりパワードスーツを着るなりの演出をすればよいのだ」
「そっかぁ。それならだいぶロボ軍団に近くなるね」
「ミンストレルは命ねーちゃん兼マイク・サウンダーズになるわけだな」
「13人もいるのっ!?」
「だが本物はただ一人」
「影分身かいな。
でもそうするとさ、いきなりフュージョナーの希少価値が薄れるよね」
「世迷言を。『ガガガ』を観るがいい、どれほど勇者ロボ軍団が活躍しようと、
敵にとどめをさすのはガイ兄ちゃんのガオガイガー。浄解するのはマモル少年。
それらの役目を兼ね備えるフュージョナーの存在なしに、『ギガま!』は全く
成り立つまいが」
「言われてみればその通りか。じゃあフュージョナーの地位は安泰だね。
で、何でプライヤーズが欲しいの? NPCかアイテム扱いのお助けツール
なら、たとえば、ロードの《プロテクト・ブレイク》で武器を換装するときに
その手の演出をすればいいってことにならない?」
「俺がプライヤーズを欲する理由は、」
「ふんふん、理由は?」
「すっげぇかわいいから」
「さ、話を変えようか」
「特にあの3番目が」
「話を変えよう!」
「しかもカーペンターズは早期復旧作業に至便」
「復旧作業? ならラースフェリア人でも連れておいでよ」
「その手があったか」
「わあ、納得しやがった」
「で? 何の話に変えるって?」
「もう言い尽くされた感はあるけどさ、やっぱ『ギガま!』の最大の欠点は、
『普通の人間の血は白い』って設定だよね」
「全く、嫌すぎる設定だ」
「て〜のひらを〜太陽に〜、透かして見〜れ〜ば〜♪
ぼくの血潮は何色に流れるんだろう」
「カラーイラストの顔色を見る限り、血が体内に収容されている分には現実世
界の人間と似たようなものと考えて差し支えなかろう。どういう原理かは知ら
んが、な。
それ以前の問題として、てのひらを太陽に透かして見たときの赤は光の赤で
あって血の赤ではない」
「あんまり細かいこと言わないの。
とまれ、『ギガま!』の世界でも、照れたときや熱が上がったときには顔が
赤くなるわけだ」
「でないと初夜の晩に困るからな。
『初めてなの……優しくしてね』と恥じらいつつ新妻が頬を赤く染めるから
嬉しいのであって、白く染めたのでは何が何やら」
「いやまあそれはそうかも知れないけどさ。
とすると、対処に困るのは出血したときだね」
「その通り。
年頃の少女が、体調不良を覚えつつトイレで下着をおろしたときに、パンツ
の白い汚れを目にして『まあ、わたし、大人になったのね』と」
「…………おひ。」
「やはりパンツの汚れは赤くないといかんな」
「いや問題はそこではなくて」
「白いパンツに赤色の印。これこそが大人の証。
なんとも美しい光景ではないか」
「あのさ、あれってけっこー黒っぽかったり茶色っぽかったりして、別に綺麗
でも何でもないよ?」
「イメージの問題だイメージの。
白いパンツに白色の印では、男の夢精と何ら変わらん」
「うわっ、ミもフタもねぇっ」
「後ろ漏れを起こしてスカートが『赤く』汚れて心無い男子にからかわれる、
その恥ずかしさ、情けなさ。
衣服にこびりついた『赤い』汚れを水でゴシゴシ洗いながら、自分がもう子
供ではないことに、何故か涙してしまう複雑微妙な乙女心。
これを『白』に入れ替えてみろ。
夢も希望もありゃしねぇ」
「血の色に夢も希望もあるかーっ! てゆーかさっきから何をアホなこと力説
してるんだーっ!」
「重大なことだ。地下スレ的に」
「そ、そうか、TPOを考えればそれで正しい……のか?」
「他にも、たとえば処女喪失をした場合、破瓜の証の血が白かったら、中出し
された精液と見分けがつかない。
恋しい男に、『お前、ホントに初めてなわけ?』なんて言われてみろ。
ショックで女が自殺しかねんぞ」
「いや別に、処女喪失しても血が出ない人だっているしっ。
そもそも『血は白い』というのが常識なら、赤いのが出てこないからって非
処女の証拠にはなんないしっ。
だからきっと、何か他の手段で処女の証を立てるんだよ。それとも処女と非
処女との間に肉体的な差異がないか」
「……そうか。
精液の方が赤ければ、この問題は解決されるわけだな」
「済みません許してくださいマジそれ許してください考えただけでも不気味で
すから赤玉みたいで恐いですからっ」
「真面目な話、実際のセッションでだ、たとえば『S=F』のサシャみたいな
病弱儚げな妹キャラが、咳き込んで吐くのが真っ白な血。
勘弁してくれって感じだろう?」
「確かに、それって絵的にどーよ、ってツッコミたくなるね」
「吐き出した赤い血の跡が家中にこびりついてドス黒く変色している、という
ホラーまがいのギャグですら、血が白くては使えないだろうが」
「そうだね。黒っぽいからこそ、笑えるなりに怖いんだもんね」
「新撰組の沖田総司みたいなお耽美系のにーちゃんが、胸を患い床に伏せって、
真っ白な血を喀血する。
そこへ仲間が様子を見にきて、彼は仲間を心配させまいと、蒲団に散った血
の白いシミを隠そうとする」
「そーゆーときって、絶対仲間に見つかっちゃう運命なんだよね」
「そして仲間はバツが悪そうに、そのシミから目を逸らしながら言うのだ。
『御免……オナニー中だったなんて気づかなかったんだ。……てゆーかティッ
シュに出しなよ、それ……』」
「うあー、シリアスシーンが一気に台無しー」
「むう。ここはやはり精液を赤くして区別を」
「せんでいいっ!」
「というわけで、『普通の人間の血は白い』という設定は見なかったことにす
るのが吉だ」
「じゃあさ、じゃあさ、PLがライフパスの覚醒表で、66番を振っちゃった
ら?」
「はっはっは、決まっているだろう。
……殺すのだよ」
「誰をっ!?」
「ん? PLを殺すとでも思ったか?
正確には、覚醒表66番のPCを抹殺して、別のライフパスを取得したPC
を作成してもらう。
要するに、覚醒表66番は永久欠番なのだ。
一般人の血も、西暦時代の人間の血も、どちらも赤い。これで無問題」
「よしよし、今回は綺麗に話がまとまったね」
「ま、あれだな。どうせ変な色の血にするのなら、青色の血にすればよかった
のだ」
「わかった! PCはみんなガミラス星人、とか言い出す気なんだろ〜?」
「そういうわけではない。
人魔に覚醒した人間が、他人の血を飲むという設定があるだろうが」
「ああ、はいはい。
魂の痛みに耐えきれず、その痛みを緩和するための吸血行為。なんか色々と
使えそうな設定だよね」
「愛する者を護るための力を欲してパシオンコードを受け入れ、人魔と化した
がゆえに、血の渇望に逆らえず、愛する者の青い血を貪る」
「うんうん、悲劇的だねぇ」
「護るべき者の命の灯火が消えるまで、容赦なく青い血を啜り上げて、人魔は
呟くのだ。
『……あー、おいち』」
「そーゆーオチかーいっ!」
64 :
ギガま!:2006/04/19(水) 23:15:13 ID:0rxc+7iu
・・・・・おしまい。
以上、某サイトのリプレイを読んで『ギガま!』を衝動買いしたというお話
でした。
でも別にイラストはエロいと思わんかったなぁ。あのメイガスのエルフねー
ちゃんも含めて。
むしろ『ギガま!』のエロ分は【以下SS2本分ぐらいの解説】
流れとはまったく関係ないが、QBの今度出る武者巫女の乳がエロい件について
流れを戻していつふたの人GJ
うむ、ギガま!の問題点を見事に代弁した上に解決策まで提示してくれたいつふたの人GJ。
……システムは良いと思うんだ。それを打ち消して余りある世界観周りの設定のアレっぷりがなぁ……。
あと、イラストに関しては絵師のファンとしても同意。
間垣センセが本気出したらこんじゃもんで済まないと思うだけに。乳とか。ああ乳とか。
68 :
ギガま!:2006/04/20(木) 06:18:39 ID:ymm7gXQG
>>67 >ギガま!の問題点
普通の人間の血は白い
>解決策
精液を赤くして区別
こうですか? わかりません!
血尿?乙。
番長学園。今更のように気付いた。そうか、あのふたりは公式カップルだったのか。レイ番長は時代を先取ったツンデレと
いう事か。見事な解釈に番長力10点。
そして知らないゲームに対する知識が深まりました。扶桑とギガントマキアってそういうゲームだったのか。致命的な誤解
を抱きつつ、七尺兄弟かよ! とツッコまずにはいられない。で、作成された武侠でのリプレイはまだですか?
陵辱が苦手とかそんな話。大人になると趣向が変わるらしい。わさびとか平気になったりする。それと同じさ。多分ね。
んで血尿の流れを断ち切って、っつーかやっぱりそんなもの断ち切るのはごめんなので回避して、続きをおいていきますぜ。
足首まで脱がせて、彼女はそこで手を止めた。少し考えてから、靴の方に取りかかる。脱衣に邪魔な物を先に処理して、そう
して仕事を易くして、あたしの踵を宙に浮かせて。
一息に剥ぎ取られた。
下半身を覆うのは、濡れて透けて隠すという意図においてはすっかり役立たずになってしまった下着一枚。まるで流れ作業の
ように自然な動きで、彼女はそれへも手をかける。内腿をぎゅっと閉じ合わせたけれど、そんなものは少しの抵抗にすらならな
かった。
濃密な女の匂い。布と花弁とを繋いで細く糸が伸び、途切れた。
「み、見ないで……っ」
さっき哀訴された時、自分は目を逸らせなかったのに。あたしは馬鹿みたいに、彼女と同じ台詞を口走る。
無駄なのは判ってるのに。頭の隅、どこか冷静な部分でそんなふうに考える。同時に靄のかかったようにぼうとした感情で思
う。見られたい。隅から隅まで。このコに。全部。
その欲望を意識して、かっと頭が熱くなった。顔を背けて目を瞑る。
足が割り開かれた。体を固くして抗いかけるが、すぐに諦念と渇望とが満ちていく。
あたしの入り口に、ひたりと熱いものが押し当てられた。思わぬ感触に、あたしは閉じたばかりの目を見開いて――、
「…えっ!?」
絶句した。
触れていたのは猛々しく膨張した男性の象徴。今しがたまで存在しなかった肉の塔が、彼女の股間から傲然と姿を現していた。
夢使い。現実を書き換える。蜘蛛が口にしたそれらの単語の意味が、あたしの頭にようやく染みていく。
華奢な体躯には不似合いな、グロテスクなくらいのサイズ。多分本物を見た事がないのだろう。その幹は随分と大きいし、細
部も若干異なっている。
でも。
あんなのに入ってこられたら。あんなのが入ってきたら。
刹那浅ましい期待に身を浸しかけた、その思考の空白の間に。花蜜を先端にたっぷりとまぶしたそれが、じりじりとあたしの
中に押し入ろうとしていた。
「あっ、ちょ…っと、待ちなさ……ダ、メ…だって……んあっ!」
一番太い部分が門を潜る。それだけであたしは軽く達してしまう。
「く、あ、ああっ…だめ、おっき……!」
ず、ず、ず、ず、ず。
あたしの内側をゆっくりと確かめるように、おおきなものは進軍を続ける。一寸刻みにあたしを犯していく。彼女の息も荒い。
それはきちんとした肉体の一部としての感覚があって、自身へも快感が伝達されるようだった。
襞が肉棒を擦っていくそのたびに、声にならないふたり分の媚声が漏れる。
「ん、んうっ、あっ、あっ、あぁっ、は…っ」
規格外のサイズのそれがあたしを拡張しながら、奥の奥、一番深いところまで到達する。子宮の入り口をノックする。それで
も、到底全部が収まりきるものではなかった。
「くっ…あ、はぁっ」
あまりの存在感に、胸の中の息を全部吐き出させられる。快楽のあまりに涙が滲む。それをそっと、舌で舐め取られた。
「センセの中、あったかくて、きつくて、すごく気持ちいい」
とろんとした半眼で、愛おしげに囁かれた。
腰が引かれる。おなかを満たしていたそれが後退して、肉の返しがごりごりと内側を抉っていく。
「だめ、うご……動いちゃ…は、あ…っ」
頭が真っ白になる。ただの一往復で、あたしは二度も高みに押し上げられていた。駄目、なんて繰り返すけれど、それはどうし
たって、もっと、としか聞こえないだろう。
ずず、ずず、ずずず。
筒先だけを収めていた剛直が、また侵入を開始する。あたしの腰を抱え込んで体を折り曲げるようにして、さっきよりも断然速
いペースで彼女が抽送を開始する。技巧も何もない動き。けれど太くて大きい熱を持つ凶器が、満遍なく感じる部分を擦り上げて
いく。どこもかしこも、襞の隅々まで。
「は、あっ……もう、ダメ……いき、そ……あ……ッ」
目の裏で火花が散る。身動きならない体が、大波にさらわれて狂奔する。
だというのに、彼女は少しも許してくれなかった。もう自分でも止められないかのように、激しく腰を使い続ける。
もうどちらのものとも知れない、切迫した息遣い。下になっているあたしに汗の玉が降りかかる。
男女両方を備えた格好になっている彼女のふとももは、女性の部分から滴る白濁した蜜にべっとりと汚れて、てらてらと光沢を
濡れ放っている。紛い物の男性器官に精を放つ機能はないらしい。だが、彼女の方も幾度となく達しているのは確かなようだった。
「ウィザードふたり分のプラーナともなると、流石だねぇ…」
感極まったような、蜘蛛の声。
どちらかが恍惚を迎えるそのたびに、プラーナが奪われて蜘蛛へと流れ込んでいくのは判っていた。でも、どうしようもなかっ
た。ちらりと見れば、潰れていた目の全てが輝きを取り戻そうとしていた。
「くく、ふたりで貪りあうがいいよ。果てのない快楽に溺れるがいい。存分に味わったら――」
あたしたちの痴態を眺めながら、侵魔はゆったりとほくそ笑む。
――その頂で、殺してあげる。
そして囁く。認識してはいても、けれどもう止められるものじゃなかった。
理性など手放して、獣のように溺れてしまえば。そうすればきっと楽になる。もっと、気持ちよくなれる。それしか考えられな
かった。
「ん、ふぁっ……ぁ…は…っ、センセの、中……あつくてぇ…っ」
触覚だけでなく、聴覚からも蕩かすように。彼女の囀りが耳に滑り込んでくる。あのか細い印象のソプラノが、こんな淫らに変
わるなんて、想像だにしなかった。
彼女のような美少女が、眉を寄せてどうしようもなく官能に翻弄される様は、ひとの興奮を掻き立てずにはおかない。多分に漏
れず、あたしも桃色に上気したその肢体に魅せられていた。動きが自由だったなら、立場が逆だったなら。あたしは思う様彼女を
犯していただろう。
「あんっ、すご……んあっ、ああっ、あ、あ、もっと…ぉ……ッ」
「センセ……ん、ああッ……セン、せ…っ!」
彼女が甘い声でよがり泣く。いつしかあたしも、自らから腰を打ち振って更なる快感を得ようとしていた。あられもない嬌声。
そのひと突き、一往復ごとに意識が天に投げ出されるみたいだった。身体が意志によらず痙攣する。今まで一度も経験した事のな
い、信じがたいほどに深く狂おしい愉悦。
「あ、ふ、ああっ、ん、うぁ、あああッ」
互いの腰のぶつかりあう音。淫猥な水音。そして忙しない呼吸音。神経が焼き切れてしまいそうだった。目の前が真っ白に漂白
されて、突かれて、擦られて、抉られて。
「おやおや。教師が淫らだと、教え子もそうなるみたいだよ。これだけ交われば普通少しは治まるものだけれど……」
届くのはもう言葉じゃなかった。ただの音。鳴っているだけで意味を持たない。意味を理解できない。蜘蛛はくつくつと喉の奥
で笑う。
「余程この娘に好かれているんだねぇ、先生は」
「はぁ、ああ、うぁっ、あ、あ、くぅん……んぅ…」
酔わされて翻弄されて、突き出していた舌が吸われた。口が塞がれる。ねっとりと舌が絡まって、いいようにあたしの口中を犯
していく。ぼうとしたまま応じかけて、気付いた。
違う。
それは交歓ではなく、唱呪の動きだ。
そうあたしが認識できたのも、唱えられた彼女の魔術が効果を発揮したから。どうしようもなかった火照りが、波が引くように
その熱を減じていく。意識と思考がクリアになる。
ウィザードが生来備える属性は二つ。若干の例外はあるが。修得できる魔術はその属性に縛られる。あたしと彼女の属性は異な
るようで、どんな魔法を行使したのかまでは知れなかった。ただ身体、精神の異常を消去するものだったのだろうとだけ類推する。
彼女が先の戦闘で行使していたのは虚魔法。確かその属には、対象の事象情報を操作する治癒魔術が存在していたはずだった。
「ん……んっ…ぅん……っ」
鼻声を上げ続ける。心身が常態に復したのを悟られぬように。ちらりと蜘蛛を盗み見れば、あたしたちから奪取したプラーナに酔
うにように目を細めていた。
大丈夫、気付かれてはいない。
薄く開けた目で見交わす視線。
行為と恍惚の余韻で裸身を桜色に染めてはいるけれど。彼女の瞳は冷静だった。彼女もまた、毒の影響下にはない。おそらくは
自力で、あたしより早く、あの淫毒から回復したのだろう。
「ん……は…っ」
唇は重ねたまま。傍目にはキスに浸っているようにしか見えないに違いない。でもあたしの口の中で紡がれ練り上げられている
のは、別の術式の為の言霊。
正直に言えば、上げる声は半ば演技ではなかったりする。毒自体が消えたとはいえ、それまで身体に刻み込まれてきた快楽は本
物。唱呪に気付かれない為とはいえ、やわらかな唇がしっかりと触れ合って舌と舌とが時折でなく擦れあって。加えて彼女の仮初
めの男性は未だあたしの中に納まったままなわけで。
もぞもぞと彼女が腰を揺するたびに、あたしの火種はまた燃え上がりそうになってしまう。彼女の息にこらえきれない切なげな
ものが混じるような気がするのも、あながちあたしの勘違いではないだろう。
「悪いけれど、そろそろお別れをしようか」
爛と輝く緑光。八つの瞳を邪悪に彩って蜘蛛は呟く。
勝ち誇った笑みを浮かべて。精気を充足させた蜘蛛はにじり寄ってくる。あたしたちがまだ快楽の只中で溺れているものと信じ
込んで、止めを刺そうとやって来る。
四つ指を揃えた貫手が、蜘蛛の顔の横に矢でも番えるように構えられた。
彼女はきっと。それを、待っていた。
「――!」
タイミングを図っていた最後の言霊は、大気を震わせて織り込まれた。術式が完成する。上体を捻る格好で、指先に生んだ歪み
の弾丸を彼女は解き放つ。
だが。
「…危ない危ない」
蜘蛛はぺろりと唇を舐める。転瞬、思いもよらない身ごなしの速度で、この侵魔は魔術を回避していた。
呪弾は標的を外して射線上、檻のように積み重ねられた椅子と机とを飲み干し、打ち砕く。
「正気に返っていたのだね。でも、残念」
あたしの身動きは封じられている。彼女は術を発動させたばかり。どちらも行動を起こせる常態にはない。
その認識からだろう。依然勝者の体で蜘蛛はほくそ笑んだ。
「もう一度唱えるよりも、私の方が早いねぇ?」
再び手刀が振り上げられる。たっぷりの毒を塗して。
振り下ろされる。無防備に身を晒すだけの彼女へ向けて。
嫌な音がした。いや、音というのは正確じゃない。震動。衝撃。そんなふうに表現すべき、音に満たない音。刀剣のような鋭さ
を持たない鈍い凶器が、肉を貫く濡れた音だ。
そして、焦臭。
「言ったよ。あたしの生徒に触るな、って」
彼女へと一撃を加えかけた途上の格好で、蜘蛛は動きを止めていた。びくりと体を痙攣させて、口から緑血を吐く。
蜘蛛の腹から、鈍く光沢を持つふたつの突起が生じていた。背後からエミュレイターを貫いたそれは、握りこぶしふたつ分ほど
の長さで突き出している。目を見開く蜘蛛。信じられないとでもいうふうに、その手がおずおずと突起を握る。
「あ……が…ッ」
緑色の体液を更に噴出させつつ、首を捻って背後を睨む。
そこにあるのはあたしの相棒の姿。
彼女の狙いは最初から蜘蛛にない。一撃で絶命させる事のできる相手ではないと認識している。そう。虚無の弾丸は、相棒を封
じていた糸の檻こそを狙ったものだった。
蜘蛛を貫いたのは相棒の顎。本来は捉える為に用いられるそれを、貫く為に使ったのだ。加えてその先端へは、残されたありっ
たけのあたしのプラーナを注ぎ込んである。
螺旋状に回転する光を帯びたそれは、いわば2本の槍。如何なる防ぎをも貫かずにおかない穿孔機。鼻先に香る焦げた匂いは、
侵魔の身体がその纏わせた光に灼かれたがゆえのものだった。
「おのれ…おのれぇッ!」
エミュレイターが吠えた。それまでの白皙の美女の面影はどこへやら。口からは牙、全身に剛毛を生じさせてその本性をかなぐ
り出そうとしている。下半身は再び蜘蛛のそれへと戻り、相棒の拘束を抜け出そうとする。
「させないって」
それを悠長に眺めているほど、あたしは親切じゃない。そうは問屋が卸さない。
自分自身は身動きが取れないにしても。あたしの思考は相棒の思考。あたしの意図を瞬時に汲んで、相棒はそれを水鏡のように
行動に移すのだ。
ぐい、と相棒が頭をもたげた。自然、連れて侵魔の体は持ち上げられる。宙吊りにされる。自重で傷が広がった。
「ぎゃ、がァぁぁッ!」
締め上げる。腹から突き出た突起の間隔がみしみしと縮む。骨をへし折られ内臓をかき回され、土蜘蛛は苦痛に絶叫する。
まだ生きている。でも、そこまでだ。
既にあたしから離れて、立ち上がっていた彼女を見上げる。ふたつ目の魔術が完成していた。
その掌上で、ぐう、と空間が歪められる。
大きい。直径は、ざっとで20cmくらい。さっき彼女が放った歪みを弾丸と表するならば、今度のそれは砲弾と呼称するのが
相応しかった。
吊り上げられ、逃げ場のない蜘蛛の顔が絶望を刻む。
「ま、待てッ。待って…!」
「――さよなら」
小さな呟き。砲弾は解き放たれる。
虚無は蜘蛛の胸部に着弾。金属音めいた音を発しつつその直径を一息に広げると、非存在の貪欲さで存在の侵蝕を開始。
今度は、食べ残しが撒き散らしされはしなかった。充分すぎるほどのサイズの虚無の顎が、侵魔の肉体を一辺の痕跡も残さずに
呑み干してしまっていたから。
魔術結界が消失する感触。今まであった、のしかかるような圧迫感が霧消する。
それは月匣のルーラーの、完全なる死を意味していた。
あたしと彼女は視線を交差させ、同時に笑みを浮かべて交わす。それからふたりともとんでもない格好をしているのを思い出し
て、やはり同時に赤面した。
夢使いは現の夢で魔導力を上昇させたんですよ。両性具有はなんか魔術的才能がどうこうととか聞いた事がありますから。
詳しい事なんてよく知りません。
あとデモンホールドからヴォーティカルカノンな感じで。サンプルの持ってない魔法とか特殊能力とか、がんがん使ってま
すが気にするな。俺もしない。きっとレベルアップしたのさ。
んじゃまた、そのうちに。
77 :
いつふた:2006/04/20(木) 22:25:08 ID:kdepujyk
ゲーム:ギガントマキア(ギガま! その2)
形式:いつものふたり。
エロ度:エロネタギャグ。
レス数:5+1
注意:本日作成。つい今し方書き上げたとこ。校正はほとんどしていない。
◇愛はギガまを救う
「ねぇねぇ」
「あ〜?」
「『ギガま!』ってさぁ、公式的にヒーロー=フュージョナー、ヒロイン=ミ
ンストレル推奨なんだねぇ」
「ああ」
「元ネタが『ガガガ』だから仕方ないんだろうけど、フュージョナー×ミンス
トレル固定っつーのも何か味気ないなぁ」
「別にミンストレル×フュージョナーでも構わんと思うが」
「ヒロイン攻めヒーロー受け?」
「イケイケの攻めヒロイン、だけど支援系能力者と、受け受けしい気弱なヒー
ロー、だけど直接戦闘系能力者との組み合わせ。昨今では珍しくもなかろうが。
『とっても少年探検隊』の、ほむらと武道みたいな」
「それは『昨今』の例示としてどうなんだ」
「ともあれ、サンプルキャラクターで言うなら、素直に“巨神操者”ד安ら
ぎの歌姫”がデフォってことでいいのではないか?」
「だからそれがつまんないんだってば。
それに、その伝で行けば“操鋼の戦巫女”ד幻想の詩人”の組み合わせに
なるでしょう? 仮に受け攻めを逆にして“詩人”ד巫女”にしたとしても
さ。性格設定的に、今一つピンと来ないとゆーか」
「そうだな。
まだしも“詩人”ד操者”の方がマシだな」
「待て待て待て待てこらこらこらこらっ」
「永き時を生き、達観した大人のミンストレルと、若さゆえに未熟な熱血直情
フュージョナー。
いかにもBL的でよろしい」
「いかにもBL的だからよろしくないのっ」
「ふむ。
ではヘタレ攻め“操者”×誘い受け“詩人”なら」
「おんなじことだよっ!」
「とはいえ“巫女”ד歌姫”というわけにもいくまいが」
「へ? どうして?
儚げなお姉様系フュージョナー×元気っ娘な妹系ミンストレル。
勿論受け攻めが逆でもいいけどさ。美味しい組み合わせじゃない?」
「お前さん、イラストの雰囲気に騙されているのではないか? 頭にウサギ耳
なんぞが付いていて可憐にも見えるが、所詮“巫女”はライカンスロープだ。
能力値的に“操者”よりも怪力で、サンプルキャラ一のアホだぞ」
「うわぁん、夢が壊されたぁっ!」
「どうせなら怪力でアホなりの性格設定をしておけばいいのにな。それこそ熱
血直情フュージョナーでよいではないか。
下手に萌えを狙って『神秘的な舞姫』めいたテクスチャを張るから、能力値
との乖離がお寒い笑いを呼ぶのだ」
「しくしくしくしく……」
「ところで、他のサンプルキャラクターでカップルを作るとするなら、やはり
“森界の魔女”と“獣を狩る獣”は外せまい」
「ほう、“獣”ד魔女”?」
「いやいや。
こいつらは一方的な攻めキャラだから、カップルにはなりえない」
「い、一方的な攻めキャラ? “獣”はともかく、“魔女”も?」
「“魔女”ד英知の継承者”。
仔犬のように元気で可愛い“継承者”を、《テレポート=コード》で手元に
引き寄せて、あれやこれやの逆強姦。巨大な乳房をたっぷんたっぷん揺らしな
がら、『おねーさんが教えてあ・げ・る』と優しくもヤラしい筆下ろし」
「うあー。“継承者”トラウマになるよー。そういう性的なイタズラをされた
人ってさー。大人になってから不能になったりとかさぁ。逆にレイプ魔になっ
たりとかさぁ。
ってちょっと待った。
マシンネイチャーは大人にならねぇっ!」
「自分ツッコミか。多芸だな。
別に、子供であることが問題ならば、ボディだけ大人型のそれに換装すれば
よかろうが」
「中身は子供のままだけどなっ。
と、その前に、マシンネイチャーにエロエロなことができるのかっ!?」
「できないわけがあるまい。鋼の身体とは言うが、もしも『アルシャード』の
ヴァルキリーみたいに『触れればガチガチに硬くて冷たい』という設定なら、
一般人と接触したときに不審がられるだろう。そもそも『普通じゃない』と気
づかれた時点で、マシンネイチャーは一般人に認識されなくなってしまう。
また、各国への潜入任務を負う場合、潜入先で普通の人間と肉体関係を結ぶ
こともありうるだろう。
しかもマシンネイチャーの中身である電霊は、元々西暦時代の人間だ。人間
としてのアイデンティティを有している以上、食う寝る出すヤるの快感も憶え
ているはず。
更に、精神の安定のために肉体の安定を図ることは基本中の基本。
ならばあのアンドロイド・ボディは限りなく生身の人体に近い代物と考えて
しかるべきだ。西暦技術の高さを考え併せれば、それは充分に可能である」
「…………あのさぁ」
「何だ?」
「アンドロイドにエロが可能って設定を起ち上げるためだけに、どーしてそー
ゆー理屈をさくさくさくさく思いつくかなぁ」
「使えば使うほど脳は活性化するものさ」
「どっち方向に使ってやがるかっ」
「でもって“獣”は、相手が“氷の微笑”と“赤眼の狩人”」
「うえっ、フタマタ!?」
「うむ。“獣”の相手は、どちらが良いとも決めかねたので両方だ」
「ど、どーゆーこと?」
「鉄火肌の“狩人”は、優秀だが怠け者な“獣”の尻を叩く姉さん女房のよう
な存在」
「ああ、なんつーか、二人の間で交わされる痴話ゲンカ風の会話がすっごく想
像できるよ。
『ほらぁ、何ぐずぐずしてんだぃ、行くよっ!』
『へいへい、行きゃあいいんだろ?』
『あたいが突っ込むからね、ちゃんと援護しな! 間違っても後ろっから撃つ
んじゃないよっ!』
『お前こそ下がってな。そのデカいケツが邪魔で、敵が見えねぇよ』
『な、何だってぇ!?』
……みたいな」
「公式的に、同じクラスのPCが2人以上いるパーティは推奨されていないが
な。そもそも特務隊のクルースニクは平均人数が4名。仮にレンジャ―が2人
いたとしても、戦闘時はどちらか一方が出て、他方は待機ってことになるはず
だ。理屈をつけるなら、ローテーション上の都合。さもなくば、戦闘時に使用
される西暦技術を制限することで、“神の血壁”に与える悪影響を低減するた
め」
「や、野暮なこと言うもんじゃないよっ」
「ちょいと台詞を変えてみようか。
『ほらぁ……、何ぐずぐずしてんだぃっ、あたい、もう、イくよぉっ!』
『へいへい、一緒にイきゃぁいいんだろ?』」
「どぉゆぅシチュに変えてるんだよぅ〜」
「『あたいが突っ込むからね』というのは攻守交替ということだな。ペニバン
着けて、“狩人”が“獣”の後門にストライク」
「せんでいいっ!」
「とまあ、この二人、受け攻めリバーシブルで絶好のカップルだろうが」
「リバーシブルはやめようよ、リバーシブルは」
「何にせよ、精神的にも頼り頼られ、バランスよく付き合っていける二人では
ないか?」
「でもさ、そーゆーことなら、常に冷静沈着の“微笑”が、優秀だが怠け者な
“獣”の尻を叩く姉さん女房のような存在、ってのでもOKなんじゃないの?」
「それでは萌えが足りん」
「え、足りないの?」
「足りないの」
「はあ」
「“微笑”は、皆の前ではクールでドライな女艦長。アークの方針を重視し、
例えば神樹を守るべく、街一つ、国一つを、そこに住む罪も無い人々ごと灰塵
に帰する作戦も厭わない」
「ほほう、フュージョナーあたりが猛反発して、命令違反をしまくるパターン
だね?」
「しかし“微笑”の本心は、繊細なガラス細工のように傷つき易い。結果的に
多くの命を救える可能性が高い作戦とはいえ、他人に犠牲を強いねばならない
矛盾に、誰よりも悲しみ、苦しんでいるのは彼女自身なのだ」
「うはっ、萌えを捻じ込んで来たぁっ」
「しかも彼女は半ば二重人格。丁寧語でキツい毒舌を吐く表の顔と、幼い少女
のように頼りない裏の顔とを有する。
誰かの支えがなくては生きていけない、壊れてしまう。そういうナイーブな
一面を、彼女がさらけ出せるのは、唯一。
恋人である“獣”としとねを共にするときだけ」
「ひあ〜。そこまでされると、もう文句のつけようがないよ〜っ」
「“獣”が戦う理由は、“微笑”を護る、それ以外にない。
彼女のためなら命を捨てる、いや、地獄の底からだって何度でも甦ってみせ
る。そんな覚悟」
「いいねぇいいねぇ、カッコいいねぇ」
「さて、“獣”の相手は、対等のパートナーである“狩人”と、保護被保護の
関係である“微笑”、どちらがいい?」
「どっちもいい〜。これマジ決めかねる〜ぅ」
「以上、“魔女”ד継承者”、“獣”ד狩人”、“獣”ד微笑”、“詩
人”ד操者”のカップルが成立したわけだが」
「おい。
今さりげに要らんモン混ぜなかったか」
「“歴戦の勇士”は“歌姫”の実の祖父というあたりでどうだ」
「あ、いいねぇ。ヒロインは博士の娘、っていう古きよき巨大ロボット物のパ
ターンに近いね」
「例えば、こんな感じ。
『あ……おじいちゃん…………そんなトコ、ダ、メ、ェ……っ!』
『ふぅむ。そういう顔も、お前の母さんにそっくりだよ』」
「うぎゃっ、祖父×孫娘!? それに“勇士”のその台詞、まさか“勇士”×
“歌姫”の母親……父娘相姦が前提っ!?」
「これがホントの母娘丼。案外、“歌姫”の実の父親は」
「や〜め〜てぇ〜。ヨゴレ過ぎぃ〜っ」
「ともあれ、これでサンプルキャラクターは全部ハケたな」
「へ? “巫女”があぶれてるよ?」
「だから儚げ風味の体力バカには萌えないと言っているだろうが」
「そんな酷いことばっかり言わないで。何とかこう、お願い」
「巫女なのだから、神に身を捧げているわけで、その意味じゃあ他のサンプル
キャラクターとのカップリングは不可能だ」
「だったら、誰かNPCとか」
「彼女は神に身を捧げていると言ったはずだ」
「仲間外れは可哀相だよぅ」
「誰が仲間外れにしたか。
彼女は神格機兵に身を捧げているのだ。
ソードライフルの銃身に舌を這わせつつパイずり。
自分の唾液にまみれたソードライフルを雌穴に突っ込んでディルドー・プレ
イ。
充分にエロいカップリングではないか」
「ううっ、最後の最後まで酷い扱いのままかよ……。
てゆーか入んねーよっ!」
・・・・・おしまい。
以上、『ギガま!』のルールブックを斜め読みして二番目に思いついたのが
“獣を狩る獣”ד氷の微笑”だったというお話でした。
真っ先に思いついたのは【以下SS1本分の解説】
>>58 エエ、モチロン作リ話デスヨ?
>>76 うにゃ。投下お疲れさまで。
一読しました。なるほど、そーやって相棒を助けましたか。ふんふん。
細部は再読時に堪能します。GJです。
>いつふたのひと
「ギガま」やりたくなってしまったじゃないか!!
GJ!!
つーか“獣”ד微笑”でSS書きたくなったじゃないか!!
責任を取ってください
【馬鹿はさりげなく無茶を言った】
>>76 GJです。
できれば2人だけのエロもお願いします。
虚の呪文では毒は1R無効しかないですし、
淫毒&ラブでお願いします。
なんだこの怒濤の勢いは。GJが追いつかん。
できれば夢使いのモノから射精もお願いします。
突然ですが。
今更ながら昨日遠方の本屋で見つけパワーオブラブ購入。
…これGETしてから、レンの言ってた全く別人な女版メガネ神父の
妄想が止まらん。レンさん容姿とか性格とかそこんとこ詳しく…
と思っても一切出てこないので、妄想の侵食ばかりがざくざく進行。
今や黒ミコの「俺に世界を救わせろ!?」
って甲高野太い声だろう台詞も、
「私に、世界を救わせて?」と小首を傾けて
ねだる長袖美少女眼鏡っ子に変換され…。
やばいよ。神さまヘルプ。○| ̄|_
これでおっさん自体にも萌え始めたらもう
ダメだとおもう。
それとも行くとこまで行くべきか…。
吐き出しスマソ
89 :
いつふた:2006/04/21(金) 23:22:18 ID:mvoUsNt8
ゲーム:ギガントマキア(ギガま! GM専用!)
形式:いつものふたり。
エロ度:エロネタギャグ。
レス数:7+1
注意:本日作成。つい今し方書き上げたとこ。校正はほとんどしていない。
付属シナリオ、GM専用情報等のネタバレを含む。
PL専の人は読まないようにしてください。
◇クルースニクはガオガイガーの夢を見るか
「ねぇねぇ」
「あ〜?」
「『ギガま!』のルールブック、世界観を中心にぽそぽそ拾い読みしてるんだ
けどさ」
「ああ」
「……何かこう……何かこう、心の中にたまってくるモヤモヤしたものは何だ
ろう?」
「性的欲求不満だ」
「はい!?」
「エロ絵エロ絵と散々前評判を聞かされて、いざ目にしたのがどーってことな
い普通のイラスト。
そりゃあ『たまる』だろう」
「ちーがーぁう! 絶対に違ぁう!
そりゃイラストは、別に好きじゃないけど、ルール解説部分のSDキャラ絵
なんて可愛いと思うしっ」
「ほう、あれにエロを感じるとは、お前さん、なかなかの通だな」
「エロから離れろエロからっ」
「冗談はさておき、モヤモヤの原因を究明していこうか。
『ギガま!』とは何をするゲームだ?」
「『ガガガ』」
「端的にも程があるな。では『ガガガ』と『ギガま!』に共通するキーワード
を挙げてみろ」
「えっと、すんげぇロボット、敵は元・人間、地球とか列島とか、とにかく世
界を守って戦う組織、……。
そうそう、『ガガガ』は熱い。『ギガま!』も熱いプレイが推奨されてる」
「そんなとこだな。
このうち、『すんげぇロボット』に関しては文句が無いだろう。神格機兵は
世界に三体のみ。選ばれた者だけが操縦できる逸品。その能力を一部封印しな
ければならないほど強力な兵器。
『敵は元・人間』。これも御同様だ。人魔化した人間の救済手段もちゃんと
用意した上で、『助けてあげられてよかったね』エンドか『助けてあげられな
かったよぅ』エンドかは、主に戦闘の結果次第であるから、ゲームとしては上
出来だろう。
『熱いプレイ推奨』。エモーションカードは勇気、愛、友情など、一般的に
ポジティブとされている感情がほとんどで、ネガティブな絶望のカードはGM
からしかPLに与えられない。全体として、善悪二元論のシンプル・イズ・ベ
ストな姿勢で挑んで間違いは無い、というシステムに『なっている』」
「……今ちょっとビミョーな言い方をしたね?」
「簡単に言おう。
『ギガま!』とは、ガイ兄ちゃん兼マモル少年と、命ねーちゃんと、長官と、
参謀とで、ガオガイガーを運用して『ガガガ』をやれというゲームだ」
「わあ、すっごくわかりやすい」
「が、『ギガま!』で『ガガガ』はできない」
「へ?」
「正確には、『ガガガ』のノリではできない」
「何のこっちゃ」
「『ギガま!』にGGGのような、『世界を守って戦う組織』はあるか?」
「アークでしょ? ひいてはアーカイブ。アークがGGGで、アーカイブは国
会とか国連とかかな?」
「現状、マザーの独裁状態だがな」
「独裁、っていうのは聞こえが悪いなぁ。マザーの指揮下、全員一丸となって
パシオンに対抗してるんだよ」
「列島を囲む“神の血壁”。鋼魔は“神の血壁”の“外側”から来る。西暦技
術や神格機兵と鋼魔との戦いは一般人の目から隠され、その存在すら知らされ
ることはない。
さて、何を思い出す?」
「…………『ナイトウィザード』だ!」
「世界を囲む“世界結界”。侵魔は“世界結界”の“外側”たる裏界から来る。
魔法やウィザードと侵魔との戦いは一般人の目から隠され、その存在すら知ら
されることはない。
まんまだな」
「まんまだね」
「では訊くが、『ナイトウィザード』のルールブック、世界観を中心にぽそぽ
そ拾い読みして、心の中にモヤモヤしたものがたまってくるか?」
「全然」
「そうだろうそうだろう。
あれだけエロ絵とエロネタが満載では、性的欲求不満のたまる余地なぞあり
はしない」
「エロから離れろエロからぁっ!」
「敵の魔王は種々のタイプが勢ぞろいの美少女ばかり。倒して捕らえて、コレ
クションに最適。口説いて恋愛するもよし、調教して隷属させるもよし」
「エロから離れろっちゅーに!」
「ウィザードの目的は何だ? 微視的には大切な人々を侵魔の魔手から護るこ
とだ。巨視的には“世界結界”を維持することだ。
大切な人々を侵魔の魔手から護らなければ、彼らはどうなるか。
“世界結界”を維持しなければ、世界はどうなるか。
その情報は、PCであるウィザードは勿論、PLにもはっきりと明示されて
いる。
そしてまた、各種のウィザード組織は、様々な思惑が交錯するとはいえ、最
終的に“世界結界”の維持という点で協力し合える、いわば味方だ。
こうなると、魔法を許容しない世界で、魔法を許容しない世界を、魔法使い
が魔法を使って守る、という矛盾が、むしろ活きてきて実に面白い」
「ふんふん、その通りだね」
「さて、クルースニクの目的は何だ? 微視的には大切な人々を人魔や鋼魔の
魔手から護ることだ。巨視的には“神の血壁”を維持することだ。
大切な人々を人魔や鋼魔の魔手から護らなければ、彼らはどうなるか。
その情報は、PCであるクルースニクは勿論、PLにもはっきりと明示され
ている」
「あれっ?
ね、『“神の血壁”を維持しなければ、列島はどうなるか』の情報は?」
「どこかに書いてあったか?」
「……読み落としたかな? あ、そうそう、もしも“神の血壁”がなくなった
ら、なんか列島が滅びて大変なことになるんだよね。異法に侵略されて大変な
ことになるんだよね。
って……あれ? あれあれ?」
「そう。“神の血壁”を維持しなければどうなるか。その情報は、PCである
クルースニクは勿論、PLにすらほとんど開示されていない。
“神の血壁”がなくなったら列島に何が起こるのか。そもそも異法とは何な
のか。異法の侵略とはどういうことなのか。
アークの目的は列島の現状維持だ。そのために西暦技術を独占し、鋼魔の存
在を隠蔽し、クルースニク達を集めて戦わせる。
では何故、アークは列島の現状維持に力を注ぐのか。
GM情報としてすら、全くルールブックに書かれていない」
「え〜? それじゃあクルースニク達は何のために戦ってるんだよぅ。
GGGが地球を守るのも、『ナイトウィザード』のウィザード組織が世界を
守るのも、ちゃんと納得できるのに、アークは全然納得できないよぅ」
「一方、敵の目的は何か。最終的に、何を求めているのか。
これも判然としないのだが、少なくともカフカとレオンの目的は単純明快だ。
アークに囚われている大切な女性――たった一人の魂を救うため。
こちらの方が、よっぽどヒーローっぽいな」
「アークは、マザーは何で彼女を返してあげないんだろう?」
「理由は不明だ」
「ええ〜っ? 全然ダメじゃん〜」
「PCが悩む分にはいい。誰かの魂を犠牲にしてまで、この戦いに意味がある
のか。大いに悩み、苦しむべきだ。それもまた熱血のかたち。
だがPLを悩ませてどうする。その手の悩みはPLのモチベーションを下げ
る一方だ。
「でもほら、世の中には『天羅』みたいに悲劇を楽しむゲームもあるんだし」
「『天羅』を遊ぶときは、最初から『楽しく嫌な気分になる』ために遊ぶんだ。
けど、『ギガま!』に求められていることは違うだろう?
ガイ兄ちゃんができるぞ! とほくほくして『ギガま!』を手に取ったPL
が、『何だこれ。俺は女の子を生贄にして戦うのか? 女の子を助ける方じゃ
ないのか?』と疑問をいだき、やる気をなくしても仕方がないだろう」
「そっかぁ。だからこの情報はGM専用で、PLに教えちゃダメなんだ」
「つまりGM持ち回りができないってことだな」
「……プレイ環境を狭めるね」
「また、GGGができるぞ! とほくほくして『ギガま!』を手に取ったGM
が、『何だこれ。アークって、腹にイチモツ、どころか陰謀を抱えているよう
にしか見えないぞ? まさかマザーが諸悪の根源じゃないだろうな?』と疑問
をいだき、やる気をなくしても仕方がないだろう」
「なるほど。
『ギガま!』で『ガガガ』はできる。
でも『ガガガ』のノリではできない。
そういうことなんだね」
「そして致命傷。
さっき言ったように、『ギガま!』は善悪二元論のシンプル・イズ・ベスト
な姿勢で挑んで間違いは無い、というシステムに『なっている』」
「うわっ、世界観とシステムとがマッチしてねぇっ!」
「最悪だな」
「い、いや、こーゆー考え方もできる。
『ナイトウィザード』って超☆素晴らしいゲームだなぁ!
『ギガま!』のレベルは普通普通!」
「……楽しいか?」
「……楽しくない」
「さてと、更なるモヤモヤネタを提供しようか。
フュージョナーには、少年少女だけがなれる。
換言すれば、大人になったら神格機兵に乗れなくなる。
これな〜んだ?」
「…………『天羅』のヨロイ乗りだ」
「ま、フュージョナーの場合、ヨロイ乗りとは異なる最期があるがな」
「何?」
「神格機兵に取り込まれる」
「それってさ、ヨロイ乗りの魂が明鏡空間に取り残されるようなものじゃない
の?」
「その場合、ヨロイ乗りの魂を含んだ明鏡は、ヨロイを操縦できる。逆に、そ
の明鏡に他のヨロイ乗りが《接合》してヨロイを操縦することはできない。
一方、神格機兵に取り込まれたフュージョナーは、神格機兵の部品の一部と
化するわけだから、神格機兵を操縦するには新たなフュージョナーが必要とな
る」
「なるほど、そう言われれば全く違うね」
「神格機兵の中には、これまでに神格機兵に取り込まれた何人ものフュージョ
ナー達の魂が宿っているに違いない」
「ああ、神格機兵と一体化したフュージョナーは、かつてのフュージョナー達
と、新たなフュージョナーを守って、共に戦うんだね」
「神格機兵の中では、これまでに神格機兵に取り込まれたした何人ものフュー
ジョナー達が、新たに取り込まれたフュージョナーを、暇にあかせて輪姦プレ
イ」
「いきなりだな、おい!?」
「逃げるに逃げ出せず、夜となく昼となく淫らな遊戯を仕掛けられ、最初は抵
抗していた新入りも、やがてはすっかりエロエロに」
「うわー」
「そして歴史は繰り返す」
「繰り返すなよ。どっかで断ち切れ」
「その他、段々神格機兵との融合ができなくなってフュージョナーではなくな
るケース。
これはヨロイ乗りの業がたまって明鏡に接合できなくなるケースに似ている
が、ヨロイ乗りは、プライドはともかく能力的には容易に機面ヨロイ乗りに転
職できるし、領主の子としての立場で、別な側面から戦に臨むこともあるだろ
う。
それに対して、フュージョナーはツブシが利かない。神格機兵のないフュー
ジョナーなぞ、一般人に毛の生えた程度の戦闘力しかないのだから、鋼魔は勿
論、人魔との戦いにおいてすら、足手まといにしかなりえない。アークの他部
署に配属される可能性もあるが、そこが何をしているところなのか、イマイチ
よくわからない上に、そこに配属されたフュージョナーは、PCとしてはもう
使いものにならないだろう」
「働いて、働いて、あとはポイ捨てされるのみ?」
「まあ、大半はその前に戦死するらしいがな。
フュージョナーは『貴重な消耗品』ってトコだ」
「せ、せつねぇ〜っ。全然ロボット物の主人公っぽくないよぅ。『ガガガ』な
ら、ガイ兄ちゃんやマモル少年は唯一無二で替えが利かない、って熱い設定な
のにぃ」
「しかもフュージョナーが何人いたところで、神格機兵は何故か常に一体のみ
で運用される。どうせ、二体以上が稼動したら“神の血壁”に対する悪影響が
大きいとか何とか理由があるのだろうが」
「仲間同士で手を取り合って、とか、敵に操られた神格機兵と同士討ち、とか、
そーゆー熱い展開がありえないんだね」
「では複数のフュージョナーで上手くローテーションを組んでいるのかと思い
きや、付属シナリオではアーク所属のフュージョナーが少なくとも2名いるに
も関わらず、一方が戦闘で再起不能に陥ったとき、他方を戦場に投入するまで
に1週間はかかる状態だった」
「だからフュージョナーを現地調達することになるんだね? それがPC1。
熱い展開じゃない」
「ならば何故アークは予備のフュージョナーを方舟に乗せて常時交代可能にし
ておかなかった?」
「え、ええと?」
「パシオンとの戦いは永きにわたっている。昨日今日始まった戦いではない。
フュージョナーの戦死や大怪我、なんて非常事態は何度だってあったはずだ。
そのたび数少ないクルースニクの、それもフュージョナーを狙い撃ちで、現地
調達してきたのか?」
「お、おかしい、ねぇ?」
「交代要員のフュージョナーも全治一週間の大怪我だったのだろうか」
「そ、そうだよ、うん、きっとそうだ」
「単にシナリオの都合だろう」
「ミもフタもない言い方をするなよぅ」
「ロボットアニメは通常一年間で放映が終わるから、その一年の間にさえ、設
定が矛盾を起こさなければそれでいい。
だが、アークは百年以上も戦い続け、これからも何年、何十年と戦い続ける
であろう組織だ。そこを考えずに設定を組んでいるからおかしなことになる」
「何だかなぁ」
「で、フュージョナー連中は、先の見えない戦いの中で、『俺の屍を越えてい
け』的に次々と交替するわけだが」
「交代じゃなくて交替なのね」
「そんな悲壮な覚悟をせにゃならんほど事態は切迫しているのかといえば、前
述した通り、敵味方の対立構造そのものに全然透明感がない。しかも最終的な
勝利条件は不詳。まさに使い捨て主人公。マンガや小説ならともかく、TRP
Gには全くの不向きだ」
「……嫌過ぎる……あまりにも嫌過ぎる……」
「ま、何だかんだと言ってはきたが、『大事な人が人魔にされました、身近な
人々が鋼魔に襲われています、さあ大変だ、頑張って鋼魔をやっつけろ! 人
魔を救って人々を守れ!』的な遊び方をする分には、『ギガま!』に過不足は
ないからな」
「世界の命運とか大きな事件を扱わずに、身の丈に合ったエピソードで遊べっ
てことだね」
「めでたしめでたし」
「よかったよかった」
「…………つまらんな」
「…………つまらんね」
「何のためのスーパー巨大ロボットなんだろう」
「『ギガま!』ならでは! って気がしないね」
「世界設定が変だ、とは聞いていたが、まだ言及していないことも含めて、こ
こまで壊れているとしみじみ哀しいものがあるなぁ」
「『面白そう』なゲームじゃなくて、『面白そうな気がするだけ』のゲームで
終わってるねぇ」
「カジュアル・セッションなら、世界設定如き、ナンボでもいじりようがある
んだが……」
「コンベで困る?」
「SSが書けねぇ」
「そっちが切実か」
「おお、そうだ。話は変わるが、フュージョナーには更に別の最期もあるな」
「はい?」
「戦いに敗れ、神格機兵から引き摺り下ろされて、人魔か鋼魔に強姦される」
「いやヨロイ乗りじゃないんだから、あんた」
「心に深い傷を負ったフュージョナーは、『自分を守ってくれなかった』神格
機兵に憎悪を燃やし、自らを鍛えてフュージョナーからギガースハンターに転
職」
「いやヨロイ狩りじゃないんだから、あんたっ」
「そんなフュージョナーがパシオンコードを刻まれて、人魔に変貌するのだ。
『貴様も私と同じ目に遭うがいい!』
次から次へと神格機兵を破り、後輩フュージョナーを引き摺り下ろしては、
見るも無惨な強姦の嵐。
やがて新たな後輩フュージョナーに敗れたとき、人魔化している先輩フュー
ジョナーは、《アブソルート・ソウル》による救済を拒絶し、
『貴様も、いずれ私の二の舞だ』
そう捨て台詞を残して自ら死を選ぶ。
その後、フュージョナーの心を癒してやれなかった後悔で、パートナーだっ
たミンストレルが連鎖反応的にパシオンコードを刻まれて、人魔に変われば完
璧」
「うわぁん、『ギガま!』が『天羅』ばりの悲劇にぃ!」
「更にその上、部下が二人も人魔に誘惑された自責の念から、ロードがパシオ
ンコードを刻まれて」
「あのな。
様式美もそこまで続くとただのギャグだよっ!」
・・・・・おしまい。
以上、
>>67の言い分は全くその通り。というお話でした。
PLすらやる気ないから読んだけど・・・・・・
ダメだな、ギガま!
なんつーか・・・
キリタケの世界観にツッコミを入れる存在は居なかったのかと小一時間(ry
【スレ違いです】
まあ、いいじゃん俺なんて「使えないこと」で有名なエクステンドまでそろえちゃったんだぜ!!
その上コンベンションでGMまでしちゃったんだぜ orz
その時のミントレルが
「見えない物を見えるという私は、幼い頃『悪魔憑き』と言われ村人達に襲われ(ry)そしてアークに拾われたのです」
なんてエロなキャラも居たが、良いのか悪いのかよくわからない思い出です
このスレ的言えることは
「性交できるだけルリルラよりもエロイ」でいいじゃないか!!
【馬鹿は現実を見るのを辞めた】
>>98 いや、ここまで救いのないヌロヌログチャグチャのエロシナリオならやりたいぞ
ギャグでだがな!!w
102 :
67:2006/04/22(土) 03:44:13 ID:EDuvbyZl
>>97 おぉ、前回に引き続いて見事にギガま!の設定面における問題点を……(T^T) GJっす。
誰かこのテキスト、添付ファイルでキリタケ先生に叩き付けてやってくれんかのぉ。
ついでに間垣センセをエンギアに下さいと(えー
以前にも書いたように、自分は基本ルルブを購入してエンギアのそれと並べて、
「(田中天ばりの渋い声で)息子よ……」とスターウォーズ風味に遊んだきりなので。
エクステンドまで購入した
>>99氏含めて、頭上がらないって事ですよ。
システムだけ残して世界観をラー○フォンとか鉄の○インバレル辺りから持ってくれば、とかも考えたけど。
ソレだと鳥取内でのコンセンサス構築から始めないとアレだしなぁと断念したっきりで。
基本ルールでユーザーを掴むの世界観構築って大事ですよ。
103 :
いつふた:2006/04/22(土) 16:02:51 ID:p/Pbjw6d
ゲーム:モンスターメーカー・ホリィアックス(MM聖斧3本目)
形式:小説(男一人称)
エロ度:キスもペッティングも本番も無し。
レス数:5+1
終幕:ハッピーエンドではない。
◇アフレコード
朝食には遅く、昼食には早すぎる時頃。
森の中に、僕は彼女を連れて入った。
「話って、何?」
「ちょっと、他人には聞かれたくないことだから……もう少し、奥で」
「そう?」
いつだって、彼女は僕の前を歩く。魔術師の僕を、まるでひ弱な弟か何かの
ように扱うのだ。僕を護ってくれているつもりなのだろう。
僕と、彼女と、あいつの三人で。故郷を離れ、この一年間、ずっと冒険の旅
を続けて来た。戦士二人と魔術士一人のパーティ。色々と大変な目にも遭った
けれど、楽しいことだってたくさんあった。
あいつは剣を鍛え直すために、今日一日、鍛冶屋のところにいるはずだ。本
職にさえ任せず、熱した剣を自分で打つ実直さが、あいつの長所であり、短所
でもある。
「ここまで来ればいいんじゃない?」
「そうだね。でも……少しだけ待ってて」
こんなところに、きっと誰もこないだろうけど、万一ということもある。僕
はグラスチャイムの呪文を唱えた。
「ディアルン」
それから森の衣の呪文を。僕達の姿が、誰にも見られないように。
「ディアリス」
これで僕達の姿は小一時間、植物に隠され、更に、半日の間、ここから半径
10ヤーム以内に近づくものがあれば、草花が僕に教えてくれる。〈木〉の呪
文は僕の得意分野。派手なものはないけれど、要は使いようだ。
グラスチャイムと森の衣、この二つの呪文は彼女も知っている。よほど誰に
も聞かれたくない話なのだろうと彼女は察したに違いない。表情が真剣になっ
た。
そして僕は、ありったけの集中力で次なる呪文を唱えた。
「ディアワード」
「きゃ!」
当たり前だが僕を信用して全く警戒していなかった彼女は、面白いように魔
法に掛かった。悲鳴を上げて、じたばたしたってもう遅い。蔦がらみの魔法、
トゥワインの呪文。木々に巻きつく丈夫な蔓が、僕の思惑通り、触手のように
伸びて彼女の四肢を捕えた。
「何をするの!? 放して!」
「嫌だね。ああ、暴れたって無駄だよ。戦士の君が、力尽くでどうにかできる
代物じゃない」
僕は自信たっぷりにニヤリと唇を歪めてみせる。
勿論、逃れるすべはあるけれど、これは彼女の心を縛る暗示だ。できない、
という先入観が植え付けられれば、どうしたって抵抗力が殺がれるのだから。
トゥワインの呪文の持続時間は数分から十数分。とてもじゃないが短すぎる。
だから僕は予め、彼女のマントの隠しに護符を忍ばせておいた。魔法の持続時
間を10倍にする護符を。護符……今の彼女にしてみれば、呪いのアイテムだ
ろうけど。大丈夫だよ、それは使い捨てだから。効き目があるのは、今回だけ。
そして僕は、唯一使える〈心〉の呪文、アブソーブの呪文を唱えた。
「アフレコード」
相手の記憶を1分毎に1日分、自分の頭にコピーする読心の魔法。夕べの記
憶を読み取るだけなら30秒でも充分だ。
僕は彼女の瞳を真っ直ぐに見詰めて、低く囁きかけた。
「酷いな。昨日の夜も、僕をオカズに、一人でオナニーしていたなんて」
彼女の顔がカッと赤くなった。恥じらいなのか、怒りなのか、僕には判別で
きなかった。けれど、ここまで来て、こんなことまでしてしまって、今更もう、
どっちだって同じだ。
「なっ……何を!」
「お風呂から上がったあと、ベッドに潜り込んで、頭から布団をかぶって」
「馬鹿、変なこと言わないで!」
「パジャマの裾から両手を突っ込んで、自分のおっぱいをぎゅうぎゅうに揉み
搾って」
「そんなこと、してないわよ!」
「嘘つき。揉んで揉んで、乳首をパジャマの裏地になすりつけながら揉んで、
それから乳首を摘まんで、勃てて、指先でクリクリ転がして」
「やめて! もう、やめてよ!」
夕べの自分がしでかしたことを、僕に逐一『報告』されて、気の強い彼女が
涙目になっている。故郷を出て以来、彼女が泣いたのを見るのはこれが初めて
のことだった。
……僕はあのまま故郷に残って、ただの幼馴染でいればよかったのだろうか。
旅の間に少しは彼女も僕のことを見直してくれるかと、変な欲をかいたのが悪
かったのだろうか。
わからない。だけれど、とにかく。
もう、引き返せない。
「どういうつもりなの……こんなことして…………っ」
「罰だよ、これは、君に対する。恋人がいるくせに……あいつと付き合ってる
くせに、浮気なんかした君に対する罰さ。あいつが悩んでいたよ、最近、君が
ちっとも誘いに応じてくれないって。だから僕も気にはしていたんだ、けど、
君に限ってと信じていたのに」
「違う……違うの、あたしは……」
「何が違うの? 僕が知らないとでも思った? 野宿の合間に君の頭の中身は
全部読ませてもらったんだよ。そう、ぜーんぶ、ね」
僕は笑う。にっこりと笑う。泣いてしまいそうになったから、笑う。
君を疑った僕の性根を笑う。
君の記憶を盗み見た僕の卑劣さを笑う。
杞憂であれと願い、そして叶わなかった僕の思いを笑う。
……嘲笑う。
「いつ、どこで、誰を想って、何を何回ヤったのか。僕はみーんな知っている
んだ」
あいつと彼女と、二人は想い想われる恋人同士。だけど恋の初めのときめき
が色褪せ、愛情が情愛に醸成される狭間の、それは幸せに慣れた者の倦怠期。
刺激を求めて頭をもたげる、ちょっとした浮気心。
「今までずっとお姉さんぶって、僕のことを弟扱いしていたくせに。『弟』を
ズリネタにするなんて、この変態」
彼女は、だけど愛してもいない相手に身を投げ出すような女じゃない。だか
らたまたま近くにいた男、つまり僕、に空想の中で抱かれることで、浮気心を
満たしていた。……それだけの話だ。本来なら責められる謂れはないに違いな
い。
でも許さない。絶対に許さない。
だって許せないんだ、たとえ空想であれ、あいつ以外の男に抱かれることを
望んだ。あいつを裏切った君が、どうしても許せないんだ。
…………いや。違うな。
諦めたのに……あいつだから、君の好きな人があいつだったから、僕は君を
諦めたのに。ただの旅仲間、冒険仲間でいようと誓ったのに。
「そのうちズボンに手を突っ込んで、パンツの上からクリトリスを圧迫刺激し
始めたね。でも、すぐにパンツをずらして、直にクリトリスを弄り始めたね。
アソコの入口に指を浸して、少し濡らしてからクリトリスをクチュクチュ……。
すごく気持ちよかったんだね。イヤらしい喘ぎ声を立てていたの、憶えている
かい?」
僕は彼女を糾弾する。
「そんなときに、僕の名前を呼んだ。あいつの名前じゃなくて。どういうこと
なんだい? あいつに愛されて、それでもまだ足りない? あいつだけじゃな
く、他の男にも犯されたい? なんて淫乱な女なんだ、君は」
僕は……僕こそ糾弾されるべきなのに。
僕を想ってオナニーしていた君に、僕は今、気が狂いそうに欲情している。
身体の底から抑えきれない喜びが込み上げてくる。この場で君を抱きしめて、
そのまま命果ててしまいたいほどに。
空想とはいえ、僕に抱かれることを選んでくれた。それがあまりに嬉しくて、
こんなことで嬉しいと感じる自分が情けなくて。
許せないのは、だから僕自身。立てた誓いを自ら破って、君を求めてしまう
僕自身の気持ちだ。
「僕の裸を妄想して。僕に組み敷かれることを妄想して。僕に貫かれることを
妄想して。……あいつの顔を僕の顔に置き換えたような、奇妙な妄想だったけ
どさ」
彼女はギュッと目を閉じた。耳を塞げないから、心を閉ざそうとしているの
だろう。
「クリトリスでイッたあと、ゆっくりと人差指を中に突っ込んだね。すっかり
ジュクジュクになっていた入口を何度も何度も掻き回して、やがて中指も突っ
込んだね。お尻の方までグチョグチョに濡らしながら、ネトネトの愛液を掻き
出すように指を出し入れして」
辱めの言葉を、こんなにもスラスラと口にする僕。そんな人だったの、と彼
女は驚き嘆いているに違いないけれど、意外さを感じているのは、多分彼女よ
りも僕の方がよほど。
「でも残念だったね、君は中ではイけない人なんだ? 中途半端で終わってし
まって、欲求不満が残っただろう? ひょっとして、今も身体が疼いていると
か?」
屈辱に、ギリ、と唇を噛んで、彼女の口の端に血がにじむのが見えた。
「アソコがヨダレを垂らしてるんじゃないかい? 奥の方からグチュグチュに
濡れてきてるんじゃないかい?」
必死で頭を横に振る彼女。
「僕に言葉で責められて、それだけで感じてるんだろう? 本当に、君はとん
でもない変態なんだね」
「……違う……違う……」
彼女の呟きは、まるでうわ言だった。
絶望。彼女の心を占めるのはきっと絶望の感情。
隠し通していたはずの秘密を、他ならぬ僕に暴かれて。
「なんなら今ここで、僕に頼んでみるかい? どうか私を抱いてくださいって。
夕べ私が妄想していた通りのことをしてくださいって」
止め処なく涙があふれて、彼女の頬を濡らしている。
「どうして泣いているの? そんなに悔しい? それとも悲しい? こんな目
に遭わされて、『なんて私は可哀相なの』、そう思っているんだろう?」
無意識に、僕は彼女の頬に手を伸ばしていた。
「触らないでっ!」
彼女の必殺の斬撃にも似た、それは鋭い拒絶の言葉だった。
僕は動きを止めた。いや、動けなくなった。
キッと僕を睨みつける瞳は、とても美しかった。
「へえ、僕に触れてもらえるとでも思ったのかい? そんなに期待していた?」
いつしか彼女の両眼には、僕に対する嫌悪と憎悪が燃えていた。
それでいい。それでいいんだよ。
「馬鹿だな。君に、僕が触れるほどの価値なんてありはしない」
僕は彼女に背を向けた。
「暫くすれば、魔法は解ける。そうしたら街に戻って、野良犬相手に股ぐらを
ひらくがいいさ」
痛いほど彼女の視線を感じながら、だけど僕は振り返らなかった。
倦怠期に芽生えた僕への浮気心など、これですっかり消え失せるはず。僕さ
えいなくなれば、きっと二人は縒りを戻す。元の鞘に収まるのが一番いいんだ。
それが、一番いいんだ。
森を出て、その足で僕は、街を突っ切り港へ向かい、今朝早く予約しておい
たブルグナ行きの船に乗った。最近、ブルグナではまたぞろ戦乱の兆しがある
との噂だ。忙しければ忙しいほど、危険であれば危険であるほど、……忘れる
ことができるだろう、僕も。
出航。
波立つ僕の心とは裏腹に入り江は静かなもので、船は追い風に乗って順調に
滑り出した。
明るい日差しは小春日和の温かさ。雲一つなく、航路の好天は約束されたも
同然だった。
他の乗客達が見送りの人々と甲板で別れを惜しんでいる間に、僕は一人で、
船室に入った。
薄暗い部屋の奥。耳の底に響く船体の軋み。
あてがわれた寝台に横たわり、何故だろう、僕は一筋の涙をこぼした。
・・・・・おしまい。
以上、トゥワインで四肢拘束、アブソーブで非接触陵辱、というネタありき
のお話でした。おかしいなぁ、当初の予定ではラブラブカップルのSMごっこ
なお話だったのに。
110 :
いつふた:2006/04/23(日) 08:24:11 ID:5FaU8IEL
ゲーム:扶桑武侠傳(天文会と飛雲会)
形式:いつものふたり。
エロ度:エロネタギャグ。
レス数:4+1
「ねぇねぇ」
「あ〜?」
「天文会は30年ほど前、飛雲会は20年ほど前に設立された、まだ新しい門
派なんだよね?」
「ああ」
「そのどちらもが、創立者にして掌門である瑞覇や趙飛雲に対する尊敬とか憧
憬とか感謝とか信服とかで門弟達が寄り集まってるんだよね?」
「まあそうだな」
「ところが、天文会は掌門の居場所がわかっているのに、なんか色々内紛とか
があって結構グダグダで、飛雲会は掌門が行方不明なのに、安定していて結束
が固い。
面白いぐらい対照的だね」
「その理由はわかるか?」
「え? ええと……瑞覇は武力で弟子を統率する覇者型のリーダーで、趙飛雲
は人徳で弟子を統率する王者型のリーダーだから、前者はリーダーが直接出て
来ないと弟子達が勝手気ままを始めて、後者はリーダーが直接出て来なくても
弟子達が勝手に自律する、みたいな?」
「おいおい、天文会の門弟のほとんどは、瑞覇に拾われ育てられた孤児である
という事実を忘れてはいないか? 反面、趙飛雲は弟子を育成するということ
を滅多にしていない」
「う? じゃあ……瑞覇はお父さん的存在、趙飛雲はお兄さん的存在。子供は
父親には反抗するけれど、兄弟仲は良い、みたいな?」
「瑞覇と趙飛雲とは師父を同じくする兄弟弟子だが、仲は良いか?」
「ああああっ、わかんなくなったぁ!」
「まず組織としての規模と年代とがその理由に挙げられような。
人員最少の飛雲会に比べて、天文会はメンバーが多い。母集団の人数が多け
りゃ、必然的に、バカやる人数も多くなる。
また、同門が互いに顔を合わせる確率も高くなるな。つまり、単に同門であ
るというだけで、性格や主義主張としては反りの合わない奴ら同士が出会い、
ツノ突き合わせてのケンカになる可能性も高いということだ。
そして天文会の方が飛雲会よりも10年ばかり長く存在する。そりゃあ内部
分裂の火種も、10年分余計に抱えていようさ」
「な、なるほど」
「しかも天文会は、組織的に打倒朝廷のスローガンを掲げ、しかも行動に移し
ている。
そもそも朝廷を打倒する、その方策だけでも複数あるだろう。例えば実質的
な権力者である成望寧を排除することで東朝の機能を麻痺させるという手順。
逆に、成望寧を擁護することで東朝の腐敗を促進するという手順。あるいは、
とにかく武力で丸ごと叩き潰してやるという手順。
仮に、武力で丸ごと叩き潰すとして、朝廷のどこからどう攻めるか。手向か
いしない官吏は殺すのか見逃すのか。
最終目標は同じでも、途中経過が異なる以上、どれをどう実行すべきか意見
の対立を生むに違いない。
更に、天文会の目的は朝廷の打倒そのものにあらず、瑞覇、ひいては天文会
を機軸とする新たな世を創り上げることだ。少々先読みが利き、幾分なりと私
利私欲を有する者であれば、朝廷という支配体系の代わりに現れる天文会とい
う支配体系にあって、自らの立場を可能な限り最高支配者たる瑞覇の傍に置く
ことを考えるであろうな。捕らぬ狸の皮算用、今からその座を巡って水面下で
熾烈な権力争いが巻き起こっていても不思議はない。
そしてまた、天文会の掟は最強であること。敗北は、即ち破門だ。武林にお
いて勝つことは、勿論大切なことであろうが、それに固執する武侠がある種の
歪みを内包することは想像に難くない」
「うーん、天文会ってかなりドロドロしてるんだねぇ。それに比べて飛雲会の
爽やかなこと爽やかなこと」
「いやぁ、あれは安定していて結束が固いとか爽やかとかいうより、『中身が
ない。ゆえに風通しがいい』と評するべきだ」
「おいおい、酷い言い草だな」
「だってそうだろう。飛雲会は組織立っては何もしないことを旨としている。
てゆーかぶっちゃけ飛雲会ってやつは『趙飛雲ファンクラブ』であって、それ
以上でもそれ以下でもなく、その他の何物であることも望まず、求められても
いない。
掟という名の束縛どころか、他の門派には必ずある師父−弟子の厳格な擬似
家族的枠組みすらない。人間、ルールがあるからルールを破ることができるの
であって、ルールがなければルール破りは存在し得ないのだ。
同門の誰かが困っていたら助けに入るし、情報は融通し合うし、という傾向
にはあるが、それすらも連中にとっては、『趙飛雲がそんな感じの人だから、
自分も真似しよーっと』ぐらいの認識だろう。だから別に助けなくても、情報
を独占していても、誰からも文句は言われない。
このように各メンバーが、てんでばらばら趙飛雲に萌えているだけのユルい
組織にあって、どう内部対立を起こせというのだ?」
「むー、そっかぁ。飛雲会って、仲良しこよしの心あたたまる組織かと思って
いたけど、そういうふうに考えたら随分と人間関係の希薄な組織なんだね。
その伝でいけば、天文会は『仲良くケンカしな』って感じの熱く活発な人間
関係があるわけだ」
「天文会と飛雲会。設立から間もないこともあって両者ともに掌門の求心力が
非常に大きい。
天文会は、門弟同士が身近で、お互いの競争心も高いがゆえに、瑞覇が直接
統率しないと内ゲバで自滅しかねない。ただし、競争心の高さは各門弟の研鑚
度の高さでもあり、門弟同士が身近であればこそ、瑞覇さえ健在ならば天文会
は一丸となり、その結束力の強さと安定性は、飛雲会は勿論、他の門派の比で
はなくなるわけだ。
そして飛雲会は、趙飛雲の生死に関わらず、このまま組織として長続きしよ
うが、今この時をもって自然消滅しようが、何らの不思議はない存在だ。なに
しろ門弟達の目が、お互いではなく趙飛雲その人にしか向けられていないのだ
からな」
「そっかぁ。組織の中がゴタゴタしている天文会も、傍目には落ち着いて見え
る飛雲会も、常に瓦解の危機をはらんでいることには違いないんだね」
「さて、性的に抑圧されている人間は、ストレスがたまって異常行動に出やす
いものだが」
「はい? 何、いきなり?」
「飛雲会は掌門に対するエロOKだからストレスがたまりにくい」
「ちょっと待て。今までの話の流れで、飛雲会の武侠にストレスがたまりにく
いのは推察できるけど、性的なストレスとか掌門に対するエロOKとかって、
どういうこと?」
「言うまでもなく、天文会のメンバーは瑞覇に対する、飛雲会のメンバーは趙
飛雲に対する、それぞれ好意的な感情を持っている」
「うん」
「好意が愛情に変わったとき、天文会はそれを否定するが、飛雲会は否定しな
い」
「な、何で?」
「師父と弟子との恋愛は外道の行ないとして固く禁じられているためだ。その
理由は多分、師弟の関係に父子、母子のイメージが強く重ねられており、師弟
相姦が近親相姦であるかのように受け取られるためだろう。
よって、天文会の連中は、『直系尊属』である瑞覇に対する熱い想いを抑圧
し、又は秘匿しなければならない。その苦しみは、現実の行動をも容易く狂わ
せるに違いない」
「うわー」
「一方、飛雲会に師弟の関係は全くない。直接の師弟はもとより、掌門と門弟
の関係ですら、単なる先輩−後輩の間柄だ。『家族』じゃない、『赤の他人』
であれば、互いの好意が性的な行為に直結したっておかしくはないし、許され
もしようさ」
「そ、そうか!」
「要するに、天文会で『瑞覇様好きじゃぁぁぁ!』と叫んだ者は一門総出の袋
叩きに遭う。それゆえ実際に瑞覇を押し倒すこともなければ押し倒されること
もあるまいよ。
飛雲会の者は現在進行形で『L・O・V・E・らぶりー趙飛雲!』と叫んで
いるようなもの。趙飛雲を押し倒すもよし、押し倒されるもよし。
どちらがストレスをためこむか、一目瞭然だろう。
飛雲会の武侠の中に人助けを志すほど心の余裕のある者が目立ち、天文会の
武侠の中で悪行三昧に堕する奴が続出しても、まあ無理はないな」
「と、とりあえず掌門をめぐっての恋の鞘当てという内紛が飛雲会で起こらな
いといいねっ」
「心配無用」
「……そうか、人数が少なすぎるから。一人が趙飛雲とイチャイチャしている
間、他の人達はずっと遠くにいるんで、趙飛雲の取り合いにならないんだ」
「いいや。人数が少なすぎて、趙飛雲を取り合う必要がないんだ。
なにしろ全員で趙飛雲を輪姦しても、逆に全員が趙飛雲のハーレムに入って
も、恐らく誰しもが寂しい思いをすることなく、平等にいい目にあうことがで
きようからな」
「ちょっと待てちょっと待て、全員って、おい!?」
「しかも女侠に関しては、百発必中の腕前で確実に妊娠させることができるか
ら、彼女が腹ぼての間は滅多に相手をしなくていいだろうし、子供を産んでし
まえば、彼女の興味が趙飛雲よりも趙飛雲の子供に移ることも大いにありうる
わけで」
「うひゃあ、趙姓の子供がざっくざく!?」
「瑞覇は養子が一門を固め、趙飛雲は実子が一族を担う。さて創設者の死没後、
天文会と飛雲会とがそれぞれどのような道を辿るか、見ものであるとは思わん
か?」
「……できればどっちも雲散霧消してほしいと思う……」
・・・・・おしまい。
以上、瑞覇と趙飛雲って兄弟弟子やんか、なにケンカしてんねんと驚いたこ
とから端を発したお話でした。
―――業務連絡
諸般の事情で一旦投下休止。そらこんなけ毎日ぼんぼん落としてたら落とす
モンなくなるわい。
それでは皆様、またの会う日を楽しみに。ごきげんよう。
とか言いつつ明日ぐらい突発的に新作を書き上げて、いきなり落としに来る
可能性が否定できないよ我ながら。
おつ〜。
でも、ブレカナ3rd買ってまた突発的に書いてくれると俺は信じる。
あれだ。突発的にエロリプレイが読みたくなった俺は何処に行けば良い?
自分でエロセッションやって、自分で書いて、此処に晒せば良いじゃない。
……秘密指令1919?
そういえば、ネットにあるエロリプレイって、
ほとんどが「女性PCがヤられる」話な気がする。
…………なんで?きのせい?
エロ部分はPLに委託してるから
あ、ショタが読みたいって意味なら……うーん、自分でプレイするのが一番早いかな
エロセッションというものをやってみたいのだが、さすがにオフでやるわけにも行かず。
>>122 だったら、オンセでやればいいじゃない?
つーかヤレ!!
TRPGである以上「女性NPCがNPCに襲われるシーン」に余り時間をかける訳には行かない
そして、「男PCが女NPCとしっぽり」はそこそこ見かけるが――読みたいか?
>>124 女PCが男NPCに襲われるシーンをやればいいじゃない(マリー)
カオスフレアスレ参照
>インペリアルジェイド追加アイテム パットフットチーズ
パットフットの少年から取れる食料品。皮を剥いて食べる。
独特の匂いがあるが、そこがたまらないのだそうだ。
富嶽への輸入が盛んであり、生パットフットは高い値で取引されている。
ここまでは把握した。明日買いに行く。
mjk
カオスフレアスレ行ったら、普通に新サプリが面白そうで読み込んでしまったじゃないか。どうしてくれる。
取り敢えず女性化した滝川一益にハァハァしときまつ
武侠皇帝と信長の逢瀬をキボン
>>127 パットフット特有の耳をそなえたその11、2才ほどの少年は、目隠しと猿轡を噛まされ全裸で椅子に座らされていた。
腕を後ろ手に縛られ、両足首は椅子の脚に結び付けられている。
吐く息が荒いのは、この殺風景な部屋の寒さのだけではない。
やがて、するりと女が一人その牢獄のような部屋に入ってきた。
豊満かつ妖艶な体を真っ赤な薄絹で包んだその女は少年を見てにやりとほくそえんだ。
どうやら高い金を支払った甲斐はあったようだ。
女は少年の足元に音がしないように静かにしゃがみこみ、ふっと少年の未成熟なペニスに息を吹きかけた。
ぴくりと、少年の体に震えが走る。その反応を楽しみながら、今度はさらりと黒いシルクの手袋を嵌めた手で、撫でてやる。
触れた瞬間、少しだけ腰が引かれた。しかし女の華奢な黒い手はそのわずかな間合いすら許さずにゆるゆるとペニスを扱き上げる。
女は、じわじわと来る緩やかな快感と明確な羞恥で震える少年の体、そして皮被りながらしっかりと天を向くペニスをじっくりと視姦すると、
メインディッシュとばかりに少年のペニスをぱくりと口に含んだ。
こうですか、わかりません!
是非完全版を!
>>129 インペリアルジェイドはエロいよな。
土方さんのエロを待つ。
・・・・・・九天弦女といるるんの絡みが読みたいです。
>>129 >「あ・・・・・・ふぅ。ご無体です、姫様」
>「ふん?その割りには声が濡れているぞ」
>自分より年下の少女に後ろから胸をまさぐられ、拗ねたように滝川一益は抗議した。
>信長に一族を救われ、忠を捧げてから幾度も情けを賜ったが未だに一方的に喜ばされてしまう。
>くのいちとして当然の如く閨の技も身につけており素人などは一晩中よがり狂わせる手練手管を
>身につけていたはずなのに、だ。
>ニューマンハッタンの安モーテル(治安の良い、そして守りやすいホテルのスィートを主張したが
>「お忍びで来ているのに目立ってどうする」と押し切られてしまった。)のベッドに引き倒され、
>後ろから着物の合わせ目の中に手を這わされる。
>熱い。結い上げ髪のうなじに触れる唇と、背中で押しつぶされている信長の豊かな乳房と、
>そして布地越しに尻に当たる信長様の陽根が、一益には酷く熱く感じられる。
>「は、あぁ・・・・・・ん」
>「お前のモノも見事にそそり立っているな」
>そう言って乳房の頂点にある鳶色の芽をつままれると、軽く気をやってしまい長い息が漏れた。
>「の、信長様ぁ・・・・・・」
>あっさりと快楽に屈する我が身を情けなく思いつつも、一益はベッドに四つんばいになる。
>そして自ら着物の裾を大きくまくり上げ、濡れていた其処をベッドライトの薄明かりに晒した。
>「いいぞ・・・・・・」
>信長もベッドの上に膝立ちになり、半陰陽の印をまろびだす。
>
>夜はまだ始まったばかりだ。
まで読んで続きがないことに憤慨した。
137 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 02:01:37 ID:z9/PFJ9R
>>136 続きをッ! 続きをーッ!(フレアを投げつけながら)
デフォルトで生えてるのか信長w
まあ富嶽は基本が女性化だからなー、男役いないw
となると秘剣・流星の創案者も女性化か。
濃尾一の美少女だろう(byだったらイケるぜ!)
>>140 中身が曖昧なままで美少女。魚とかバリバリ食べる。
「た・・・種」
うむ。問題なし。
弟子のちゅぱちゅぱの方をどう女性化するかが問題だな。
富嶽に三十以下の若年の男性が一切存在しないことに驚愕した。
汚れたカラスだけが知っている古ぼけてペンキもはげた非常階段を上ると、ビルが作られたときから一度も掃除されたことが無いのではなかろうかと思うほど荒れ果てたコンクリートの屋上があった。
足元にはネオンの光、まるで地面が光っているよう。
なのにこの屋上は都会の煙っぽい不明瞭な夜に包まれている。
巨大な円柱状のタンクと、その脇にとってつけられたような管理用のコンクリート小屋。山手線の中ではマイナーな名前の駅前の薄汚れた雑居ビル。
キャバクラとかカラオケボックスとかが入ったいかがわしいこのビルの管理小屋を、『部長』達がどうやって手に入れたかはわからないが、マルク達はそのスペースを『部室』と呼んでいた。
電気も水道も回線も来ているし、メンバーが持ち込んだちぐはぐな家具も増えてきたために、まずまず居心地はよいのだが、見掛けだけは決定的に殺風景な部屋が『部室』だった。
ポケットから取り出した鍵で、頑丈だけがとりえのスチールドアを開ける。
部室の中は冷え切っていて、冷蔵庫のかすかな音がやけに大きく聞こえる。マルクはコートも脱がずにサドルバックを所々に破れ目のある合皮ソファーに放り出した。
マフラーに口元を埋めたまま、三台あるPCのひとつに電源を入れる。全部共用だし、スペックはお世辞にも高いとはいえない。とはいえ、アレの中の人が廃品回収同然のパーツを拾って作ってくれたのだ。
無料なのだから、文句を言う筋合いでもないだろう。
照明もつけていない『部室』に薄い緑の光がディスプレイから投げられかける。USBメモリを突き刺してメールチェック。個人の情報はこういった形で管理している。アレが言出したことだが、いまではマルクもダガーもそういった手順に慣れきっていた。
家に自分の部屋やパソコンが無いわけじゃない。ここに来るメンバーそれぞれだって、もちろんネット環境はあるだろう。
だいたいこの部屋だってわざわざ電車に乗ってくるような場所ではないはずだ。
確かにボードゲームやちょっとした集まりの時には便利だ。人の眼も時間も気に欠けることは無い。貸切ではある。ほぼ永遠に。
どういう経緯で『部長』達がこの部屋を手に入れたか知らないけれど、その彼らからの連絡が途絶えてもう一年。この部屋は放置されっぱなしで、そのくせ、水道もガスも電機も請求が来ない。いったいどうなっているのやら。
「居心地が悪いわけじゃないんだよな」
マルクはコンビニの袋からホットコーヒーを出して啜った。五月なのに、妙に肌寒い夜だ。どうやらマルクは自分が一番ノリで、今日は一人なのかな、と思い当たる。
GWなのだ。そりゃぁ、みんなセッションで忙しかろう。そういえば、こんな場所があるのに『部員』同士が一緒にセッションすることは稀だな。とマルクは思った。
『部員』というのも隠語だ。別に誰がリーダーとか、入会条件がどうとかは無い。この場所を知ってる人間、ここに来る人間は全員『部員』と呼んでるだけだ。
入り浸っているのは5人くらいだろうが、場所を知っているのはその三倍くらいか。いや、年末のOFFで三次会に使ったから、もうちょっと多いかもしれない。
ごぅん。重い音を立ててスチールのドアが閉まる。
「あ。来たんだ」
マルクは入ってきた女の人に声をかける。彼女はちらりとマルクを一瞥すると、ふいと視線をそらして荷物を降ろす。トートバッグにはマルクには理解できないものがいろいろ覗いているようだ。女の荷物はいつでも訳がわからんな。そう思う。
彼女はすっきりした横顔を持っていた。細身の身体を包む黒っぽい色彩の服はいつでも地味だったが、彼女のたれ目気味の瞳のせいで柔らかな印象を持っていた。とはいえ、マルクは彼女を『知って』いたから、それに騙されるようなことは無かったけれど。
「飲むよねー? 煎れるよ」
マルクはPCの前を離れるとコンロの前に移動する。返事は期待しない。
小さな気配がする。
彼女はやはり後ろで別のPCの電源を入れているようだ。薄暗い部屋に投げかけられるディスプレイの光が二倍になる。小さな背丈はマルクの胸元にもならないだろう。体型だけでいえば、中学生とさほど変わらない。少女ともいえる。
ただ、それを云ってしまったヤツはその日のうちに『部員』を辞めてしまった。というか、卓上を辞めてしまったとか。
――彼女のお仕置きはそれは苛烈なものだったのだ。だからマルクはそういうことは云わない。
「はい」
煎れ立てのお茶を渡す。澪はソファーでそれを受け取ったまま、じっとマルクを見上げた。大きな瞳がマルクを見上げている。
いつもは自分から視線をそらすくせに、たまにこんな風にじっと見つめてくる。こいつは自分がいわゆる世間常識で言えば標準より綺麗な容貌な自覚があるんだろうか。とマルクは思う。
ちょっぴりだぞ。CHAでいえば19くらい。馬鹿。それじゃちょっぴりじゃねぇじゃねぇか。すかさず自己突っ込み。
それがじっと見つめられた気詰まりさからの照れなのは自分でも判っている。でも視線をはずすなんて、別に悪いことをした訳でもないのにしたくないから口をへの字にしたままマルクは問いかける。
「どうしたの?」
澪はスケッチブックを取り出すと、すばやくメッセージを書く。
『今日は、みんなはいないの?』
女の子らしい丸い文字。指先もほっそりしていて綺麗だ。性格が良ければもてるだろうに。マルクは内心でこっそりため息をつく。いや、もててるか。だろうな。この人、被る猫の偽装効果が高そうだし。
澪は問いたげにマルクのコートをつん、とひっぱる。
「あ。うん。そうみたい。GWだしね。みんなコンベンションとかじゃない? 暗牙とかからは携帯はいってたよ」
これが視線をそらさないもうひとつの理由。声を持たない彼女への、せめてもの気遣い。
「いやそれがさー」
振り向いてPCデスクに自分の分のマグカップを置く。コンビニで買ったホットコーヒーよりは美味しい。一人なら入れることは無かっただろうな、と思いながら話を続ける。
「スんごいの見つけたんだって。コンベで。困ったちゃんスレ行きだってさ。炎上Blogで殿堂入り狙うって」
マルクは笑いながら他の『部員』の話をしつつ、手早く専用ブラウザをスクロールさせる。それは本当になんでもなく。
いままでこの『部室』で無数に行われた、本当に取り留めの泣いただの世間話。いや、世間話にもなっていない、仲間内の軽口だった。
ただの毎日続けてきた、
普通の会話。
だから見過ごしてしまった。
『そっか。……いただきます』
『なの』
逃亡のラストチャンスを。
よし、まずはここまで投下完了だ。
すげえ、ホントにやった。
続き超期待。
152 :
聖マルク:2006/05/05(金) 04:41:31 ID:o47Y59eW
超期待。
っつうか俺かよ。
これから澪総攻めが始まるのか…ワクドキガクブル。
ありがトン。井上トン。
ごめん。マルク。澪には許可取ったけれど、マルクにはとってなかった。
ごめんなさいごめんなさい。でも、総攻めなんだ。
だからマルクじゃなくて、マルクは手始め。
だから許して。うそ、ごめん。そこまで書けるかどうか判りません。
わーい、喜んでくれた、うれしいなりー。
だから、またかくー。だいにだんー。
――つんつん。
マルクのダッフルコートの襟がひっぱられたのはそのしばらく後だった。
「なに?」
PCに向かっていたマルクは振り返る。澪はいつものあのつっけんどんな無表情で、ちらり、とソファーの隣においてあるライティングテーブルのマグカップを見る。
「もう一杯?」
こくり。
肯く澪には感謝とかすまなさそうな気配は無い。それが澪の当たり前。マルクは別に気を悪くもせずに腰を浮かせる。
「暖かいほうがいいよね。今日はなんか寒いもん――」
言葉に詰まる。振り返ってシンクに向かおうと思ったが、普段だったら気配を察してすっと下がってくれる澪が下がってくれない。澪は、振り向いたマルクのコートの中にすっぽりと包まれるほど近くに立っていた。
澪はかしげた首のまま、振り向いた直後の不安定なバランスのマルクを見上げる。背丈のせいで、マルクからはほとんど真下を見下ろすように澪の整った表情がある。
垂れぎみの大きな瞳、やわらかい描線をつくる眉、卵みたいに滑らかな頬のライン、肩に付かないほどに切りそろえられた甘い香りの髪。
「えっと。……キッチンいけないんだけど」
澪は答えもせずに無心にじっと見上げる。腕の中にすっぽりと抱え込めるほどの距離なのに、触れもしないで、大きな黒い瞳で見上げている。
「うー」
マルクは机と澪にはさまれて、困惑したような声を上げる。『部室』に通うようになってもう数年。澪とは長い付き合いだ。良いところも悪いところも判っているつもりだった。
これもきっと悪ふざけ。そう思おうとした。いや、思ってる。むしろ確信がある。
こいつはこんな澄ました表情をしているが、内心では舌を出しているに違いない。
(だけど、うぅ……)
そうなのだ。
だけど――、なのだ。
こんな近距離で触れ合いそうになることなんて無かった。
大体この毒舌家の華奢な娘は身体の周りにいつでも空気のヴェールをまとっているように他人を寄せ付けない雰囲気を放っていたのだ。
こんな距離にいるどころか、誰かとふざけあって肩をたたきあってるところさえ見たことが無い。
悪ふざけは判っているのに、マルクは身動きが取れなくなる。
性格の悪いこいつはきっと心の中では大笑い。そんなの決まっている。
決まっているけれど、やけに細い首筋と、華奢で折れそうな鎖骨がやけに視界に飛び込んでくる。
「澪、ほら、マグカップ。取れないから……」
困りきったマルクの声に、澪は黒いニットの袖から覗かせた細い指先で、マルクの背後のディスプレイを指差す。身体をねじったマルクはその指先を視線で追ってしまう。
――澪総受けと澪総攻め、どっちがいい?
そう、そのスレッドには書き込みがあった。
マルクはさっと青ざめる。しまった、そうその表情には書いてあった。いつもの調子で軽いレスを返してしまっていた。脳裏に人間不信の鬱状態でとぼとぼと去っていったコテハンが思い浮かぶ。
「それは、あの。えーっと、受動防御。いや、機会攻撃に関する話でっ」
動揺が声に出ないように気をつけようとするのだが、不安定な視線で身体をねじっているせいで、思うに任せない。
こんこん。爪先が軽い音を立てて、ディスプレイに触れる。
嘘をつかないようにと警告するように。
その僅かな音がマルクの心に染み込む。
「いや、そうじゃなく。なんて云うのかな。フレンチジョーク? マーガリンよりライトな軽口で」
澪はじっと見上げている。
暗い部屋の中で、ディスプレイの光を映す黒い瞳が、水に熔かした月影のように揺れている。
(うぅ……)
見上げる澪にはなんとも言いようの無い迫力があった。自分は勝手に慌てているだけだと自分に言い聞かせるマルク。だけど、後ろに下がろうとして机につっかえてしまう。
まずタイミングが悪い。笑ってごまかせる状況ではない。
いや無理やりすれば出来るのかもしれないが、薄暗い部屋とディスプレイの光が呪縛しているかのようで、マルクにそれをさせてくれない。
その上、体勢もわるい。完全にバランスが崩れていて、机に片手を突いてしまっていた。抜け出そうとすれば、澪を押し倒して――マルクはその考えをミリ秒で頭から追放する。
「うー、判りました。降参、ごめんなさいっ。謝るってばっ」
心臓にかかる負担が限界に達する前にマルクは逃げを打った。三十六計。多少馬鹿にされたって、このままの体勢よりはずっとましだった。
何がきついかって、こんな状態が――。さほど悪いことに思えなくなりそうで怖い。
ちゅ。
その衝撃はまさにその心臓に止めを刺すに十分だった。いつの間にか視線を伏せた澪は、両手でマルクの手をつかむと、ささげ持つように人差し指の先に口付けをしていた。
(ええぇええええ!!??)
ちゅ。ちゅく……ん……ちゅ。
澪は艶めかしい吐息をもらして指先に口付けをする。
小さくついばむ柔らかいその感触が暴力的な衝撃でマルクの意識を疑問符と感嘆符で埋め尽くしていく。まるでメモリが物理的に占領されていく様に似て、高性能なウィルスに蹂躙されるような熱暴走をマルクの心に引き起こす。
(あ、あ。ああっ。な、ナニガオキテルデスカっ!!??)
ちゅ。……ん……。はぁ。……く……ふぅ。
「澪ってばっ。何をしてるのっ」
落ち着いた声を出したつもりなのに、ボリュームが調整できなくて震えてしまう声。その自分の声が恥ずかしくて、マルクの体温がまた上がる。
かりっ
澪はその声にこたえるように、指先に軽く歯を立てる。
優しい甘噛みは膝の力が抜けるほどで。
(やばいっ、これってば、やばいかも)
マルクは必死に『ソレ』から意識をそらそうとする。『ソレ』を言葉にしたら、なんだかちょっと、いやかなり、凄まじくまずい事になるような気がする。
「な、ナニをしてるのかな。お嬢さんっ、ばっ、ばかなことを」
空いてる手を肩にあてる。乱暴にならないように、それでも力を込めて、澪を止めようとする。
澪はそれに気がついたのか、軽い口付けを繰り返していた指先から唇をはずすと、宝石みたいに綺麗で表情の読めない瞳をマルクを向ける。
(ううう、ほんとナニ考えてるんだよぅ)
マルクの逡巡を見逃さないように、澪は肩に添えられていたほうの逆の手をそっと取る。
冷たい部屋の中、うるさい心臓、火照った体のマルクには、澪の指先のひんやりした感触がやけにはっきりと感じられる。
――澪には、マルクが何で止めたのかまるで判っていなかったのか。いや、判っていたのだろうが。
マルクに見つめられながら、ゼリーのように光る唇をやけにゆっくりと開くと、残ったほうの手の指先を吐息を漏らしながら咥える。
ちゅ……。んぅ……。
軽いキスではなくて。それは始めから柔らかく濡れた感触。
とろとろの暖かい生クリームに指先を入れてかき混ぜているような背徳的な感触。
澪の唇は経験が無いわけでもない筈のマルクを硬直させるに十分な破壊力を持っていた。
今回はここまでっ。
でっ。
とんでもねぇ、ワタシャ神様ダヨ。
めっさクオリティタカス
しかしやはりドキュソが鳥坂先輩ポジションなんだな。
マルクは童貞だよ!
くそうぅ、みんなで読みやがって。
有難うございます。まじで。
この野郎、ダガー。
コテハンなんだからいつまでも安全圏にいられると思わないでくださいよ?
えーっと、当物語におけるキャラクターは現実の板の設定と類似しているところもありますが
澪以外はただの類似ですので華麗にヌルーキボンヌ。
ダガーだと姪っ子ネタしか思いつかん。
それはそれとして
>>164、アンタホントにアマチュアか?
いなくなった部長ってハッタリの中の人?
それはそれとしてJANUタンを!JANUタンを!
なんと言えばいいのか。情景がすーっと思い浮かんでくる。
コテハンネタとか無視しても、すごく澄んだ感じのナイスSSだぬ。超GJ。
はむ……、ちゅ、くちゅ……。
薄暗い部屋の中で微かな濡れたような音と、跳ね回るような動悸の音だけが響いている。
(ちがうって、この動悸の音は俺のっ! 聞こえてるの俺だけだってっ)
自分に突っ込みを入れるマルク。だけど耳元で鳴るような心臓の鼓動は止まらない。もうそれは音というよりは何かの物理的な圧力。ひとつ跳ねる度に、顔が熱くなるのがわかる。
澪は静かにマルク指先をなめている。
それは圧倒的な柔らかさ。無理に引き抜こうとしたら傷つけてしまいそうで、身体が固められたように動かせない。
ちゅ、んぅ……。
澪は上目遣いにマルクを見上げる。
伺うようなその視線のまま、少しだけ覗かせた舌先でマルクの手首を、ちゅるんと舐めあげる。
(〜〜っ!)
マルクのびくんとする動きに澪の瞳が僅かに細まる。まるで確認するように、まったく同じところを唇の柔らかさが追いかけてゆく。
「だめだってば、そんなとこっ」
マルクの静止も聞かずに、手首に透けて見える血管の流れを辿るように何度も舌先と唇が這い回る。その感触は指先の時よりもダイレクトで、膝の力が抜けそうなほどだった。
澪の白い前歯が手首の静脈にそえられて甘く噛むたびに、まるでそこを食い破られそうな恐怖感がわく。しかしそんな恐怖感も、唾液を乗せた舌が慰めるようにゆっくりと這うだけで、とろけ出して、混じり合い、背筋を駆け上る何かに変化してしまう。
マルクは必死に『ソレ』から意識をそらそうとする。
(違う違う違うってば、そんなことないってばっ)
身体の中で育ち始めている『ソレ』は、まるで出口を探そうとするようにゾクゾクと尾骨を辿っている。きっと意識してしまったら我慢しきれない。
マルクはぎゅっと眼をつぶって振り払う。
(うぅーっ。ちがうー。澪はそんなやつじゃねぇてばー!?)
でも眼をつぶったのは間違いだった。マルクが隙を見せた次の瞬間、いつの間にか澪のひんやりした指先はマルクの首筋に触れている。
つつぅ……。
なでる指先の温度は室温よりも低く感じて、真夏のアスファルト並みにほてったマルクはその感触に小さく呻いてしまう。
びっくりして見開いたマルクの視線には澪が。
大写しの澪がいた。
シャボンを流したようにとろりと潤んだ瞳。
至近距離でわずかに開いた澪の唇は、まるでフルーツゼリーのように艶やかで、それだけで意識が占領されてしまう。
(やばっ。ソレはまずいっ)
視線をそらして『部室』を見回そうとしたマルク。だけど澪はそんなマルクの首筋に回した指先で、そのままマルクの耳たぶに触れ、優しくその後ろをくすぐる。
――まるで犬にするみたい。とマルクは思う。
嘘だ。すぐさまに否定の声が脳裏に沸く。
だって犬にはこんなに丁寧に触らない。
くすぐったくなる寸前のむずがゆい様なもどかしい感触で、澪は何回も何回も丁寧にマルクの首筋と耳の後ろをなで上げる。
丁寧に、優しく、しつこいくらいに。
そうされる度に頭の中をゆっくりかき混ぜられているみたいにふわふわした気分がマルクに押し寄せる。
まずいと思ったのに。
『部室』でも見回して気をそらそうと思ったのに。気がつけば、僅かに開いた澪の唇に視線が釘付けになっている。
くちゅり。澪がゆっくりと身体を揺らす。
唾液を乗せた艶光る舌先が緩慢な動きで唇を湿らせる。
何かを待ち望むように甘く動く唇。
(ダメ。禁止っ。そんなん無しっ)
耳の後ろを探るひんやりした指先。後ろ髪の間に探りいれて、かき回すように弱く動かす動き。
小さい吐息。喉を鳴らす子猫のような響き。
澪の瞳がマルクを絡めとる。
その瞳はとろんと溶け出していて。
(流されないって、そんなわけナイナイっ。ここは『部室』で俺はウォリアーだって)
そう思っていたのに、いつの間にか抱きかかえるように広げた腕の中に澪がいた。
細い腰は抱き寄せてしまえばきっと腕が余ってしまうほど。
澪の肉付きの良くない細い足がマルクをけしかけるように半歩だけ前に出て、何の前振りもなしに柔らかく押し付けられた瞬間、マルクは澪にキスをしていた。
ちゅ……んっ。ぅ……ぁ……ん……。
んぅ……。あ……はぁ……。
あまりにも柔らかい感触。軽く唇を合わせるなんて出来なかった。
ダムが一瞬で決壊するように、最初からとろけた口内で舌先を絡ませあう。
腕の中には澪の身体がある。
外見から想像していた通りの細い身体。肉付きの薄い肩のライン、伸びやかですっきりした腹部から柳のような腰。マルクが抱きしめれば、抱きしめるままに簡単にそれは腕の中に堕ちてくる。
澪の身体は引き寄せれば簡単に抱きしめられ、そのくせ腕の中で籠の中の魚のようにくねって動く。
その軽い身体を押さえ込むのなんてあまりにも簡単で、腰を抱き寄せれば腰が、背中を抱きしめれば胸が、おびえるように動きながらも、マルクの腕の中に体重を預けてくる。
腕の中に女の子という動物がいるのは言いようがないほどのスリルがあった。かよわい動物を独り占めしている愉悦と背徳感。
動悸が気にならないほど夢中になる感覚。
手首を握り締めてきつく抱きしめるだけで、圧倒的な酩酊感が押し寄せてくる。
(あれ……)
腕の中でよわよわしくもがく澪。
でも考えてみれば、さっきまで絶対に流されないとか、ダメとか、禁止とか、そんなことを……。
「澪、あの……」
くちゅ。
言いかけたマルクに視界に、自分の唇と唾液の銀の糸をひく澪の唇がある。
「あの……」
その唇がどちらからともなく重なる。
(じゃなくって、そうじゃなくて、こういう流れはまずいだろぅ俺ってばっ)
意思を離れたマルクの舌先を、澪は濡れた唇で歓迎する。
柔らかく唇ではさんで、誘うように舌先を触れ合わせる。マルクの舌先が暴れるように口内を探るときはひくんひくんと身体を震わせて応える。ちょっとでも動きを緩めれば、鍵をかけるように舌先を絡めて丁寧に甘いむずがゆさを教え込む。
マルクが我慢できなくなるように。
マルクが抵抗できなくなるように。
(ううー。ダメだってば……。それは流されて……)
何回か抵抗をした。静止の言葉もかけようとした。
その度に澪の濡れた唇とか、首筋をなでる指先とか、腕の中でくねる身体がマルクと澪の唇を重ね合わせた。
(不可抗力とはいえ、本当にそろそろ、マズい……)
身体の火照りと、澪の身体から立ち上る暖められたような甘いシャンプーの香りの中で、ぼぅっとなりながらマルクは考える。
腰は引いてるけれど、このままじゃあっさり澪にばれるような気もする。
トリカエシガツカナイ。
あれ、おかしいな。ぼぅっとした思考のままマルクは考える。
トリカエシガツカナイってなんだっけ? 何で漢字変換されないのかな。ネットのやりすぎかな。
それとも。
――それとも、澪の唇があまりにも。
あまりにも?
意識の表面に『ソレ』が上って来そうになる。背筋を駆け抜ける圧倒的な危機感。まずい、意識しちゃったらまずい。絶対まずい。
ことここに及んでだけれどそれだけはまずいっ。その感覚がマルクのぼやけた思考を一気に引き戻そうとする。
「澪っ!」
思いがけず大きな声が出る。もうまずい。家に帰ろう! 今日の澪はおかしい! 『部室』に二人きりというのもまずい。飲み込まれちゃまずい。
「えっと、なんだ。その、いきなりキスなんかしちゃってゴメン! このお詫びは後日絶対しますっ、今日は急用があるから帰るねっ、ゴメンねっ!」
意識して澪の唇を見ないようにマルクは一息に言い切る。息継ぎなんかしてる暇はない。身体の芯が甘くしびれたように脈打っているのがわかる。
下手に隙を見せたらまた雰囲気に持っていかれない。それは澪にだって申し訳ない。本当は自分のほうが制御しなきゃいけなかったって云うのに。
でもマルクの思考はスレッジハンマーで殴打されたように四散する。
澪はとろんとした表情で、細い指先をマルクの腰の中心に絡めていた。
指先で、まるでいいこいいこをするように、小さく撫で上げる。
甘く疼いていただけのものが一気に耐え難いほどのじれったさに育つ。
(〜〜っ!!!)
マルクの声にならない表情の変化に、澪はとろけるように甘く微笑んだ。
今回はここまでっ。うひひ。そろそろ攻めっぽくなってきたかも。かもっ!
>>167 恐悦至極(ずびしっ
>166
JANUたんは可愛いけど、許可もらえないと怖いので腰が引ける。
マルクちょー可愛い。超ちゅーしたい。
やべえ。
仕事が。
でも漫画は書き上げるデス。
ベル×柊SS(絵付き)の続き? はははははははははは
超GJ!
2ちゃんで自分がコテハンでないことを後悔する日がこようとは……
>>174 がんがれ! 来月のサンクリでエンカウントできるのを楽しみにしているぞ。
うひひ、やるのうパンツマン先生。
凄いインパクトのある大作が来てるなぁ。
直前に投下されていたSSとこれから自分が投下しようとしていたSSとを
読み比べて、自分の分のパンチの弱さが気になって投下を控えるなんて初めて
のことです。
てゆーかぶっちゃけめっちゃ悔しい。
この分だと近々続きを読ませていただけるのでしょうか。楽しみにしていま
す。
>この部屋は放置されっぱなしで、そのくせ、水道もガスも電機も請求が来ない。
とある映画を思い出したけど、それがオチだったらヤなので言わない。
澪がマルクを小さくなでなでする。
それは先ほどとまったく一緒。優しく、丁寧に、でも、丁寧すぎるほど。
忠実に同じ動きを繰り返す。
甘痒いじれったさがマルクの腰の奥をずくん、ずくんと攻め立てる。それは決して激しい感覚ではないけれど、非力なボディーブローのようにじわじわと蓄積されていく種類のものだった。
「あ、あ……。あ、みお?」
言葉もうまく出てこないマルクの真っ赤になってうつむく表情を、澪は覗き込むように見上げて、あの天使のような微笑を見せる。
その微笑だけでマルクの脳は沸騰してしまう。微笑みながら、澪の指先はズボンの上からマルクをくるり、くるりと撫で回しているのだ。
ほとんどはじめてみる微笑と、下半身からの感覚に翻弄されて、マルクの処理能力はパンク寸前。いや、パンク寸前にさせられていた。
きゅっ。
指先で軽くつままれる。鋭い感覚にマルクの思考は途切れてしまう。その感覚を追いかけようとすると、澪はまたあの丁寧なもどかしさで、マルクを執拗になでなでするのだ。
「そんなことしちゃ、だめだってばっ……澪」
自分の声がかすれていくのがマルクには判る。それが余計に情けなくて、さっきからまともに顔も上げられない。
でも、それなのに澪は、顔を背けても、下を向いても、覗き込むように微笑むのだ。とろんとしたまなざしで、甘く緩んだ唇を見せ付けるように。
(なんで。――こんな。澪って、こういう娘だ……っけ……)
何かおかしい、違和感がある。この毒舌家の娘は人をからかって遊ぶ性質の悪いところがあって。からかって……。遊ぶ……。
もしかして。
もしかして澪は。
それが違和感で。
きゅっ。
一瞬で脳がリセットされる。それは強制的な割り込み処理。逆らいようがないような感覚の本流。痛みにも似た、でもいつまでも抱えていたくなるような甘さが下半身の力をごっそりと奪い取っていく。
澪の指先がマルクの先端を握りこんだのだ。
小さな指先の感触がきつく絡みつくように染み込む。
一瞬の空白の後に、澪はマルクをあやすように優しい愛撫を再開する。逃げるように腰を引いたマルクでも隠せないほどに猛ったものを、なだめるように、やわらかく撫で上げる。
形を確かめるように指先がたどり、くすぐったくなる様なじれったさで可愛らしく動く。優しく諭すように、何回も、何回も。
何回も繰り返すその丁寧な動きは、マルクの空白になった思考をふわふわしたもので満たしていく。シュークリームのようにとろりとした甘さで脳内が一杯になってしまう。
膝の力も抜けてぼんやりしていく。身体が熱くて、ふわふわした酩酊感。
それはマルクに既視感をもたらした。さっきからこの繰り返しのような気がする。ループしているような。それが違和感なのか。
そう思ううちにも、優しい撫でなでの感覚が蓄積されていく。
澪の指先があまりにも優しいから。その感覚が欲しくなってしまう。
どんどん考えるのが億劫になるような。
見えているゴールにたどり着けない。マルクはもがくように違和感にしがみつく。
「みお、みおっってば」
無理やりに違和感を形にする。
澪はその声に問いかけるように、恥ずかしくてうつむいているマルクの顔を覗き込む。
ふわりと咲いた笑顔にマルクの心臓はレッドゾーンの回転数になる。こんな状況で見せるなんてあまりにも卑怯な笑顔だった。
GM権限並みに強力な却下だ。かく乱される思考に、すりすりと撫で上げる指先の動きが拍車をかける。
「うう、澪っ。わざとでしょっ、意地悪してるでしょっ。いじめてるでしょっ!?」
でも、その笑顔がとうとうマルクを違和感に辿り着かせた。さっきまでどうしても捕まえられなかったものが、言葉にしたとたんに明確になる。
雰囲気に流されていたことは本当だけど、澪が意地悪なのはもっと本当だ。
『やっとわかった?』
その言葉にも、澪は微笑む。心臓をつかまれてしまうほどの極上の笑みで。
『いただきます』
『なの』
マルクは気がつくとスチール机に寄りかかる様にへたり込んでいた。
楽しそうな澪が力の抜けたマルクの腰の上に器用に座り込む。スカートから伸びたほっそりした太ももが自分の腰を挟むようにしているのは、ぞくぞくするほど扇情的な眺めだった。
澪は小さく鼻歌でも歌いそうな微笑で、マルクのダッフルコートのボタンをはずす。コートを開けばそこにはネルのシャツ。一瞬のためらいもなく、ボタンをまばらにはずしてしまう澪。
澪の小さな手のひらが薄暗い部屋でひらひらと動くその光景は、まるで花びらが舞っているみたいだな。マルクはぼんやりと思う。
(花びらみたい……。じゃないっ!)
「澪っ、なにしてひゃぅんっ!?」
脱がしきっていないシャツの裾野から潜り込むように、冷たい指先がわき腹に触れる。あまりの温度差に身体のほうが勝手に跳ねるように反応してしまう。
澪はその動きが楽しかったのか、持ち前の丁寧さで何度もそこに触れる。
初めはただの冷気に感じられた指先だったのに、だんだんと温度に慣れてきたのかくねる魚のような動きを実感させられてしまう。
堪らないほどのくすぐったさ。
その間も澪はマルクに認識させるように、ゆっくりとボタンを一つづつはずしていく。
乱れた衣装のマルクを見下ろす表情は楽しそうで、その大きな瞳が細められ、にこりと笑う表情は天使そのものだった。
『いいかげん悪あがき』
『なの』
息を切らすマルクに、手早く書いたスケッチブックを見せる。
その表情は楽しそうで、余裕たっぷりという感じだった。
(え、えぅ? 悪あがき? 流されちゃえってこと?? 言いふらされそうでそれだけはイヤだぁ!!)
心のそこにゾクリとした感覚が芽生える。自分は何を考えてるんだろう。そうじゃない気がする。いや、それも間違えてはいない。この毒舌娘に弱みを握られるのは避けたい。絶対に避けたい。
でも、そんな弱みを握られるとかではなく、もっと……。
意識の奥にある『アレ』というような。
えっと、それって……。
マルクは考える。考えないようにしてきたことを。
してはいけない事なのに。
『そうなの』
『認めちゃったほうがいいの』
見透かすように微笑う澪。そして優しく慈しむように指先でマルクの頬をなでる。うっとりするような指先の冷たさ。
澪は、そのまま体重をかけた腰をわずかに揺らめかせる。
(〜〜っ!!)
マルクの身体が一気に硬直する。ズボンの中にある今まで極力意識しないようにしていた甘い疼きの中心が、澪の小さなお尻を突き上げている。
澪のスカートの中は、引き締まったような肉感なのに、どこまでも受けれて行きそうな柔らかい部分がその中心にある。その部分がマルクの猛ったものに触れて、言葉に出来ないような感覚を引き起こす。
(ううっ、うぅっ)
今までの事が子供だましだったような直接的な感覚。いや、ズボン越しに軽く体重をかけられているだけで、直接的でもなんでもないのだが、その感覚はマルクに激しい羞恥心を巻き起こさせる。
『認めちゃったほうがいいの』
スケッチブックを抱えたまま、澪は微笑んでみせる。
それが直視できないほど顔が火照ったマルクは、顔をそらす。しかし、澪は容赦なくその頬に指先を添えて、自分の方を向かせようとする。
意地になったマルクがぎゅっと目をつぶって耐えると、澪はほんの軽く腰の中心をゆらめかせる。
――くにゅり。
マルクは身体の芯を扱きたてられるような甘さで無理やり意識を澪に吸いつけられる。逆らえないほどの甘さ。身体の抵抗する筋肉が全て千切られてしまうほどの優しさ。
『認めちゃったほうがいいの』
マルクはぶるぶると顔を振る。
それは。それはまずい。どうしようもなくまずい。
徹底的にまずい。まずい上に危険。危険というよりは死地。14番よりもデッドエンド。
しょにょ4投下ー。
>>173 マルクはかわいいよねー。可愛いだけじゃないんだけどねー。
>>174 わーい、がんばってなのだ。またSS投下なのだ。
>>175 ありがとー。コテハン大戦書いてやろうかと思ったけど、
筆が遅くて(というか、だらだら長くしか物が書けなくて)orzだー
>>176 うひひ。それもやるぜー。
>>177 そんなこと気にしないで投下しようよー。
投下した後に誤字に気がついたりしようよー。
おいらもだらりと書いてるので、だらりだよぉ。
追記
澪が返事くれない。嫌われたらしい。ぐすん。
気にするな、全てが終わった時に澪の反応が分かるっ!
それまでは突き進めっっ!!ひたすらマルクを喰らえっっっ!!!
【素直にGJと言え】
>>183 判ったYO! なのだー。
恥知らずにも連続でイっちゃってもいいかなー。
どんどんぱふぱふ。
ふうん。
澪がそう言いたげに小首をかしげる。
『じゃぁね』
『澪が教えてあげる』
『なの』
上半身をゆっくり倒していく澪。
マルクだってそれが何をする動きなのかは薄々判った。でも、マルクが判ったからこそ、澪は寸前で動きを止める。
マルクの視界に大写しになる、澪の小さな唇。
ディスプレイのわずかな光を反射して滑光ピンク色の可憐なつぼみ。
その唇がゆっくりと開いて、白い歯の間に桜色の舌がちらりとのぞく。
我知らずこくりと唾液を飲み込んでしまうマルクに、澪はにこりと笑うと、その唇を近づける。
軽いキス。子供のように唇を触れ合わせるだけの清純なそれ。
マルクの胸の鼓動がまた早くなる。
小鳥がついばむ様なキス。唇の表面に蓄積される甘いさざなみ。
それがマルクに否応なく散々教えこまれた口内の感触を思い出させる。我慢できないほど甘くて、いつまでもいつまでも味わっていたくなるような澪の唇の感触。
脳がしびれるほど教え込まれた感覚が勝手にリフレインをはじめる。
それでもマルクは必死になって唇を閉じる。
もう、いい。弱みを握られても、意地悪されても、笑われても。
それくらいだったら、どうにかなる。最悪逃げられる。
でも、そうじゃなくて。
――認めちゃったほうがいいの。
絶対にダメだ。マルクは必死になって遮断しようとする。
でも、そんな抵抗も手遅れだった。状況はすでに詰んでいたのだ。
この体勢自体がすでに袋小路だった。澪の太ももに挟まれたマルクの腰を、澪の柔らかすぎる柔らかさがこすり上げると限界はあっさりと来てしまう。
開いた唇、誘い出されたマルクの舌を澪は甘い唾液で出迎える。
はむはむと唇の挟むような動き、くねるように絡ませあう滑らかな舌。
教え込むように小さく立てられる歯の硬さ。
澪の唇の動きが、何度も何度も、マルクに教え込む。
キスをねだるよう可愛らしくすぼめる動きも。
とろりと唾液を流し込む舌の動きも。
柔らかくマルクの唇を噛む動きも。
(ああ。これって……コトバ。……なん、だ……)
マルクの朦朧とした脳裏にも、それが次第に、飲み込まれてくる。
声を持たない澪の、もうひとつの意思疎通。唇越しに伝わる、唇の動きだけで伝わる、短いメッセージ。
澪はゆっくりと、でも執拗にマルクに教え込む。
唇からあふれた二人の唾液がとろりとマルクの首筋にこぼれる。
澪はそれさえも愛おしそうについばんで、にこりと微笑むと、マルクの瞳を覗き込む
。小さな舌先で唇を湿らせると、力が抜けているマルクの手を持ち上げて、自分の唇に触れさせる。
(このカタチって、『キ』。つぎは『モ』……わかんないけど、ヒ、かな……。その後は……『イ』だと思うけれど……)
澪はその動きを繰り返し、マルクを微笑みながら見下ろす。
(キ……モ…ち……イ……)
まずい。それはまずい。それは辿り着いてはいけない正解。
危機感が切迫してマルクの心をがんじがらめにする。それに気がつくのは弱みを握られるのよりも数十倍まずい。もうそれは絶体絶命で。
――くにゅり。
逃げ出すマルクの心を澪のとろけるような腰が引き戻す。それは熟練の狩人の動き。押し付けた中心をゆっくりとすり潰すように動かして、マルクの瞳が潤むまで丁寧に教え込む。
(キ…モチ……)
唇の間に銀の糸橋がかかるほどの至近距離で、澪がマルクの瞳を見つめる。探るような強い視線が、マルクの心の奥を覗き込んでくる。
マルクがどんなに逃げようとしても、澪の柔らかい太ももが挟み込んで、『その感覚』を刻み込む。マルクの追い詰められた頭はもうパニック寸前で、澪が教え込んだそのコトバを何回も脳内で再生してしまう。
(キ…モチ…い……)
――認めちゃったほうがいいの。
認めたら。
それは認めてしまったら。
オシマイになってしまう。絶対に、絶対に。
くにゅり。
(〜〜っ!!)
繰り返させられる。唇の動きが染み込んでくる。
溶岩みたいに火照った身体。澪が冷ますようにあちこち触れてくるたびに、『ソレ』が染み込んでくる。
――認めちゃったほうがいいの。
ぶるぶると顔を振るマルク。でも澪はまるで容赦なく、腰を軽くゆする。
腰の中心で何回も優しく撫で上げ育て上げられた感覚が、マルクの身体も心も制御不能にしてしまう。
決して強くはならない、丹念で丁寧ななぞる動き。
一回一回は歯を食いしばって耐えられる甘さは蓄積されて、マルクの身体をすっかり浸してしまっている。
ちゅ。
とどめになったのは何気ないキスだった。
面白がるような、意地悪をするような、澪の微笑む表情と、子供みたいに浅いキスでマルクはとうとう陥落した。
「気持ち……いい……」
悔しい気持ち、恥ずかしさ、強制されて辿り着かされた怒り、屈辱、そういった負の感情なのに、澪に教え込まれたむずがゆいような甘さでデコレートされたそれはどうしようもなく蟲惑的で、マルクを飽和させてしまう。
言葉に出すと、まるでその言葉で全身の神経がつながれたように今までの感覚がプレイバックされる。
指先をしゃぶられる自分。
首筋をなでられる自分。
何回も唇をなぞられる自分。
舌を絡めている自分。
ボタンを外されている自分。
身動きできないように腰の中心に座られている自分。
マルクは思い出すたびに、体温がどんどん上がっていくような気がした。
「……かも」
それが悔しくなって、無理やり疑問系に変える。
その途端に動きを止めていた澪の腰が、思い出させるように柔らかく絡むように動く。その動きは澪の丁寧なキスを連想させて、マルクは一瞬で降参する羽目になる。
「ぅぅ、わかったよ。キモチイイ…です…」
情けない表情でマルクは澪に告げる。
それはどうしようもなくデッドエンドで。
手遅れ感たっぷりの行き止まり表示。
絶対的に破滅的で。壊滅的で。終末的。
澪に弱みを握られるよりも、数十倍、数百倍始末に終えないこと。
それは、澪に弱みを握られるわけではなく、澪自身がマルクの弱みになったということ。
絶対に取り消せない弱み、しかも雪達磨式に膨れ上がる弱みを澪に握られたのに等しいこと。
しかも、おぞましいことに……。
ちゅ、くちゅ……。
問題が解けた子供にご褒美を上げるように、澪はゆらゆらと腰を揺らしながら、何度もキスをする。
気がついてしまったマルクはその快感を快感としてダイレクトに受け取ってしまう。無意識には気がついていた。今まで感じてきた甘さやむずがゆさは全て気持ちよさだって言うことを。
気がついてしまえばそれは無制限に膨れ上がる。
抵抗できないほど甘美な期待感だった。
なにより始末に終えなくおぞましいのは、最悪の状況なのにそれが堪らないほど気持ちいいということ。
唇を離した澪は上気した微笑みで、もう一度、と促す。
「キモチイイ…です…」
くにゅり。
よく出来ました、のなでなで。マルクは悔しいのに、疼く腰の感覚にうめき声を上げてしまう。そんなマルクの様子に微笑んで、澪はじっとしている。
(……?)
澪は小さく微笑んだまま、期待に満ちた目で腰を浮かせている。マルクには触れないように、浮かせた腰がゆらり、ゆらりと揺れる。その動きだけでマルクの背筋にはしびれに似た快感が再生される。
(うう。なんだかすごく悔しい……)
「キモチイイ…」
くにゅり。マルクの瞳を覗き込んでいた澪が腰を接触させてくれる。
「すごく、キモチイイです……」
くちゅぅり。
「とろけそう……です……」
澪に誘導されるままに繰り返すマルクに、何度も何度も澪の柔らかすぎるあそこがこすり付けられる。脳が沸きかえって思考がまとまらないままに、何度も何度も恥ずかしい告白をさせられている。
三回云えば三回、十回云えば十回繰り返される、澪のご褒美。
息も絶え絶えになって身体中を甘く疼かせたマルクから澪は身体を起こしてスケッチブックを取り出した。
『では本題』
『なの』
マルクは少しだけ桜色に上気した澪の表情をぼんやりと見上げているしか出来ない。
『ミルクちゃんとはイイコトいっぱいいっぱいいっぱい』
『なの?』
びきり。
マルクの時間が凍結させられた。
しょんなわけで、しょにょ5投下ー。
やっと黒くなってきた澪。やっぱり澪は黒くないとね。
黒澪らぶ。いぇー。
>>172 あるJANUSと名乗る人はこう言った。
『私はやぬたんじゃありませんし、たくし上げもしません!』
つまり、やぬたんとは関係ないやぬたんに、
たくし上げをさせたとして、何の咎めを受けようか? いや、受けまい。
>>189 「お・ち・た!堕・ち・た!」と椅子をぐるぐる回した俺が来ましたよ。
じわじわとキタ後にすとーん、と。澪の底の知れなさ加減とマルクの可愛さに脱帽。
なんかまだ二、三回転しそうなのでwktkして待ってます。
>>190 つまりコレか!
っ【尚、この作品はフィクションであり実際の人物、団体とは一切関係がありません】
なんかむずかしー。ここに来て詰まったー。
つか書いたのに破棄ー。マルクはむずかしいなぁ。
ショタにはしたくないよな。(その位置には別のキャラがいるし)
がるるるる。とうなって、みんなのことかじる。がるるる。
やぬたんは、可愛いのだけど、可愛いの中心、みたいなのが
うまくいえんけど。それが自分の中に生まれないと書けない。
やぬたん、書いていいですか?>本人様
がうがう。
がじがじ。
193 :
聖マルク:2006/05/07(日) 22:30:51 ID:JZqURgr5
俺は難しいのか。やっぱりアレか。個性が足りない?
ウォッチスレの214が、澪の返事なんじゃないかな。
>192
ちょっとわかる。エキセントリックさが足りないよな。
いいこと思い付いた脱がしたら女物の下着着てるとかどうだろう。
可愛すぎるとやや違うな、ってのは解らないでもない。
カンタンにゆうとね、マルクは極論マジレスでかつボケなんすよ。
「なぁ、コネというものは普通、ダイヤのスートからじゃないか?」
『わたしを常備化できる経験点もってきやがれ』
『なの』
うーん、エロくはないか。
ダガーさんは鋭いなー。こわいのだ。
うんとうんと、なんか、そんなに大げさなことじゃないんだよ。
ある台詞を言うときに、マルクさんなら
(本物のマルクさんじゃなくて、今問題にしてる作中のマルクさんは)
ひらがななのかな、漢字なのかな、それともカタカナで言うのかなーとか
些細なとこが難しいというか。
マジレスというか、真面目。で、可愛げがある。ような。
こういうこと書くと怒られそう。
あんまり悩むとエロくなくなるし。
いや、エロを書くつもりはないんだけど、まったく。
手品をするときに、メインの右手の動きはテクニカルだけど、
左手の動きがそれを支えているというか。ヒロインの魅力は、相方によって左右されるというか。
くそ、マルクー。大好きだぜ。らびゅん。
澪はいうまでもなく。
「なっ!?」
今までとは別種の熱さが頬に上る。
「なーっ!」
言葉にならない声を、澪はたおやかに上げた指先をマルクに唇に進入させて止める。度重なるキスで、自分でもわかるほどにとろけきったマルクの口腔に、澪は指先をぬるんと入れて、ゆるゆるとかき回す。
マルクを見つめる視線は楽しそうで。
スケッチブックを軽く振る。
『ミルクちゃんとは』、『イイコト』、『いっぱい』、『なの?』
単語が、マルクの脳内にばらばらに入ってくる。それぞれの言葉はわかるのに、文章としては意味を成さない。意味を成さないにもかかわらず、ただ恥ずかしかった。
本当は怒ってもいいような内容のはずなのに、澪が蜂蜜みたいに微笑むから、身体の中の疼きだけが大きくなって、それが甘痒くて怒ることも出来ない。
「んっ、んぅー。んぅ」
舌先を絡め取るような澪の指先。何度も自分の身体を撫で上げた白い指先が、今度はマルクの咥内をかき回している。自分のそれに比べて華奢で繊細に感じるそれを傷付けたくなくて、マルクは口を閉じることが出来ない。
ちゅるん。
指が引き抜かれる。
唇から離れていく唾液を絡めた指を見つめて、マルクはどこかで寂しさを感じる。その寂しさがどこから来ているのか良く判らない。けれど、考えるよりも澪の追求のほうが早かった。
『なの?』
「そんなこと、あるわけないでしょっ!?」
やっとの思いでマルクは反論した。あんなのはスレで云われているだけなのだ。大体妹ブームだなんて、妹がいないやつだけの戯言だ。
確かに可愛いところはあるかもしれない。自分を慕ってくれると悪い気はしない。血縁だからだめだという一方的なタブー視を持ち出してうやむやにするつもりもない。
しかし、血縁以前に一緒に暮らしてきた家族だ。一緒に暮らせばダメなところもイヤなところもむかつく所も沢山見る。それはそれで悪いことだとは思わない。
自分だって妹から見たらダメ人間なところがあると思う。家って言うのはつまり舞台裏で、油断してしまうところなのだ。外では見せられないようなところを見せてしまうのが家で、それは自分も妹も一緒。
(でも、舞台裏だけを見てて、つまり、その……『イイコト』ってなんだぁ!? うわ、澪ひどいやつーっ!!??)
でもそんなマルクの混乱した思考の隙を突いて、澪は着実に歩を進めていた。
かちゃかちゃと冷たい金属音が鳴る。
「……澪?」
澪はマルクの途切れた言葉に顔を上げる。安心させるような微笑。
マルクはまた言葉に詰まる。その一瞬の隙を突くように、すっかり緩めたベルトを抜き取り、澪はマルクのズボンを下着ごとずりおろす。
「うゃぅっ!?」
ひんやりした外気にさらされたそれは、マルクにはどうしようもないくらいに硬くなっていて、取り返しのつかない状況を示している。
外気とは別の、柔らかい冷ややかさがマルクの茎にからみつく。
それは澪の花びらの様な小さな手。
好奇心に満ちた動きで熱化して限界まで張り詰めたマルクの勃起をそっと握る。
「んっ、ぅう。澪、ダメ。ダメ、タンマ。タイムっ! ロープ、レフリーっ」
マルクの混乱した声を無視して、視線を落とした澪はやわやわと力の入れ具合を変えてくる。それだけの刺激なのに頭の中が沸騰して、身体が勝手に硬直する。
入れるつもりなんてないのに、足の指先にまで力が入って靴の中でつま先がぎゅっと丸くなってしまう。マルクだって別に未経験なわけでもない。
だから、これがどういうことなのかは判るし、この先、辿り着く先だってわかる。
でも、いま澪に受けている『コレ』とマルクの知っている『ソレ』はなんだかまったく別のもののような気がした。
柔らかい指先の動き、恥ずかしさで動けないマルクの先端を、優しくなでる指先。それは丁寧で、マルクの快楽を余さず掘り起こすための動き。重くて抵抗できないような愉悦が下半身から湧き上がって、マルクは嗚咽をもらしてしまう。
マルクの中心からわずかに腰をずらして太ももになった澪は、自身の短い黒のスカートの裾を突き上げるようにたっているマルクを、優しく優しく何度もにぎりこむ。
その動きは緩慢でマルクには物足りない。稚拙にも思える。
でも、だからこそ、時たまやって来る探るような強い刺激に抵抗できずに身もだえしてしまう。
ちゅく。
美緒はその動きを満足そうに見下ろすと、マルクの唾液でとろとろになった右手の指先でマルクの先端に触れる。
(〜〜っ!!)
滴るほどの湿った粘液がマルクの先端に触れて包み込む。張り詰めて刺激に飢えていたマルクは新しいご褒美にあっさりと降伏してしまう。張り詰めた先端や、縫い目や裏側の筋を、澪のぬるぬるした指先が這い回るのは歯が浮くような快楽だった。
(これ、やばっ。もってかれ…そぅ…っ! 〜っ!!)
鋭いくせにもどかしい快感にマルクの太腿が張り詰め、びくんびくんと痙攣する。
澪は喉を鳴らすように愉しげな吐息を漏らすと、はじめて手のひらをゆるゆると上下させる。それはとろけそうに優しい動き。
這い回る濡れた右手の指先が先端を鋭い刺激で追い詰めるのに、左手はマルクを愛おしげに慰める。二種類の気持ちよさに引き裂かれそうになるマルク。
(んっ、うぅっ!! まずい、まずいぃっ)
瞳をぎゅっと閉じて我慢するマルク。でもそれは無駄な抵抗で、時間の問題に過ぎないと自分だって判っていた。
これで澪にまた弱みを……。そう観念しかけたマルクの勃起から澪の指先がすっと離れる。荒い呼吸で酸素を求めるマルクの脳にはまだ思考が戻ってこない。
だけど、なんだかすごく物足りなく寂しくなってしまった事だけは判る。その寂しさを埋めるように、マルクの腰は澪を乗せたまま揺すられる。
その拙い動きに澪は微笑んで、後ろ手にスケッチブックを取り出す。
『ね』
『きもちよかった』
『なの?』
マルクはまだぼんやりとしたまま、こくりと頷く。
きもちいい。そう、気持ちよかった。
澪に教えられた気持ちの良さを何十倍も濃くしたような我慢の出来なさが、腰を中心に膨れ上がって疼きあがったのだ。思い出しただけで、ずくりと感触が蘇る。
澪はとろりと微笑うと、指先でマルクの勃起の根元を握る。
それだけで、マルクの身体はまた勝手に準備を始めてしまう。
『なの?』
繰り返される問いかけに素直に頷くマルク。
期待感だけで腰がせりあがりそうになる。恥ずかしいが、澪に触られたままの勃起の先端が刺激を欲しがって、ひくひくと蠢いてしまっているのだ。
でも、澪は澄ました表情で、マルクの頷きの続きを待つようにじっと見つめている。
「ぅ……ん。キモチ、よかった……です」
荒い呼吸を繰り返したせいだろうか、少しかれた声でマルクは答える。
(〜〜っ!!)
きゅっと絞ったままの澪の指先がゆるゆると動く。それだけでマルクの勃起は悲鳴を上げる。甘い疼きがじれったい様に身体に広がって、身もだえをとめることも出来ない。
必死に手のひらを握り締めて、耐えることしか出来なくなる。
『なの?』
「キモチ、いい……。もぅ……」
かすれる声。澪のこれは卑怯だと思う。誘導尋問だ。絶対抗議してやる。
その決意も、先端の切れ込みを執拗にくすぐる指先の前に脆くとろけてしまう。
ふと刺激が途絶える。うっすらと目を開けたマルクに澪はたずねるように視線を絡ませる。
『もう』
『でちゃう?』
頷くマルク。じれったい。腰の奥がむずむずする。
行き場を失った熱いどろどろがうねくって、もどかしくて気がおかしくなりそうだった。
床に広がったダッフルコートが熱くて、半分はだけられた胸がせわしなく上下する。もう弱みを握られてもどうなってもいいから、澪を抱きたかった。澪の中に突き立てて、気持ちよくなりたかった。
「気持ち、いい……。澪、もうダメ。……降参。澪の事欲しい」
音を上げる。マルクの腕が持ち上がって、澪の細くて軽い腰をたどる。その指先に澪の身体が大げさにびくんと震える。
――ああ、澪も興奮してるんだ。
そう思うとマルクは少しだけ安心する。
「ね、澪。おねがい」
だから、お願いの言葉も素直に云える。
澪はそのお願いに答えるように指の動きを再開させる。ゆるゆると優しく愛撫を再開する左手、限界まで張り詰めた先端を先走りの粘液でくるくると弄ぶ右の指先。
マルクが感じる場所を全て覚えこんでしまったように、先端の穴を執拗に指先でほじる。丁寧なやわらかい動きなのに、何回も何回も繰り返すしつこいくらいの淫らさがマルクを追い詰める。
「ちょっ、澪、もう、だめっ」
マルクが切迫した声を上げる。
このままでは実際の年齢は知らないけれど、少女みたいな外見の澪に指で無理やり絶頂かされてしまいかねない。というか、その危機は気がつくと目の前に迫っている。
『でちゃう?』
「出ちゃうってば、そんなにさえたらっ。ん、ひゃぅっ!」
澪の指先がゆるゆると太腿や下腹部を這うのさえ、今では全てが快感に直結している。澪の指先が小さな蛇のように何度も何度も勃起に絡みつく。
そのたびに鋭い喜悦が背筋を駆け上り、マルクの脳裏にはじける。
キモチイイ。その言葉が脳裏をぐるぐる回って、視界がすっと狭くなる。澪の指先と、覗き込むようなきれいな表情しか見えなくなる。
『いいよ』
「えぇっ!? ……あ、あぅっ!?」
以上、しょにょ6だったのだー。
つぎでひとくぎり、つくといいなー。
くちゅくちゅといやらしい音を立てる指先が、滑らかにマルクに絡みつく。もうマルクには澪がどういう触りかたをしてるのかもはっきりとは判らなくなっている。
「やだ、出ちゃうってば、澪、ダメっ」
マルクはもがいて、澪の指先を止めようと手を伸ばす。しかし、澪が勃起の先端を甘くしごきたてるだけで、全身の力を吸い取られたように脱力して抵抗もままならない。
『いいよ』
『みせて』
『なの』
澪がとろりとぬれた舌先で唇を舐める。それを見るだけでぞくっとした感触が背筋を駆け抜け、丸くはどんどんと追い込まれていく。
「やだやだっ、澪っ。そうじゃなくて、澪が欲しいのっ」
もう恥も外聞もなかった。マルクの頭の中にあるのはそれだけ。
「――澪の中に入れたいのっ。澪と一緒がいいっ」
一人では寂しい。気持ちよくなるなら一緒がいい。いや、一緒がいいというより、一緒でなければいやだった。
澪の触り方は丁寧で優しい。柔らかくて、じれったくて、身もだえするほど気持ち良いのにどこか物足りない。でも、だから貰えば貰うほど寂しくなる。
澪を抱きしめて、澪の中に突き立てて、澪の中に全部注ぎ込まなければ気が済まなくなる。それはいっそ麻薬的な誘惑で、マルクはそれだけで、自分が絶頂っているのかどうかわからないほどのくらくらする快楽を受け取ってしまう。
『――なんで?』
澪は不思議そうな顔で言葉を差し出す。それは、疑問。
「なんで、って……」
(そんなの……)
そんなのは当たり前すぎる問い。問う方がおかしい。じれったさに沸騰しそうな頭で思う。だって澪が欲しい。薄い身体を抱きしめたい、繋がりたい。 こんな風に一方的に快楽を注ぎ込まれているのに寂しさと物足りなさと悔しさだけが募っていく。
「だって澪が欲しいのっ。気持ちよくなりたい…っ……」
絶え間なく絡みつく澪の優しい指使いに必死に耐える。気を緩めるとあっという間に意識どころか魂まで持っていかれそうな悦楽の本流の中で、マルクは自分の言葉にしがみつく。
『いいよ』
『ほら』
澪は髪をかき上げるように首を傾けると、小さくて朱い唇から、とろとろと唾液をこぼす。その透明な粘液は、ひんやりとマルクの勃起に絡みつき、染み込んでいく。
(〜〜っ!!)
鳥肌が立つような淫らな光景に、全身が硬直する。
澪は微笑むと、くちゅりくちゅりとマルクの快楽の中心をかき回す。
指の腹が何度も何度も先端をつまんで、軽く爪先を立てる。ぬるぬるとしたもどかしい淫らな感触と、ぴりっと混じる爪先。追い詰めるように癒すように優しく勃起を扱く左手。
『もっと』
『なの?』
澪は自分の指先をしゃぶるようにたっぷりと唾液を絡ませると、マルクの先端にそれを塗りこむ。それは致命的な麻薬のようにマルクの神経を侵す。マルクはその指先のつむぎだす甘い旋律に酔いしれ、我を失っていく。
『わたしの手で』
『とろけて』
「ダメっ……、ううっ!!」
もう限界だった。それでもマルクは必死に耐える。もう自分でも何のために我慢しているのか判らなかった。
澪と一緒じゃないとイヤなのか、それとも今感じている快楽をちょっとでも多く享受するために、はしたなく長引かせているのか判らなくなってくる。
(だめ、それでも、こんなのっ!!)
最後の抵抗を、最後の拒絶を告げようと、霞む瞳で澪を睨み付ける。
澪はそのマルクの視線に気がついて。
上気した頬のまま、咲いたような笑顔を見せる。
とろんとした瞳で、天使のように微笑む。
その笑顔がマルクの中の引き金を引く。
もうダメだった。狂ったように腰を動かす。どろどろにぬめった澪の指が締め付けるようにマルクの勃起を責め立てて、とっくに超えていた限界の、さらに果てへとマルクを飛翔させる。
(〜〜っ!! ぅ〜〜っ!!)
限界まで我慢していたマルクの勃起は、その蟲惑的な蠢きに耐え切れなかった。たちまちのうちに麻痺して、おびただしい量のミルクを噴出させる。
何回も何回も脈打ちながら、澪の白い指先を汚していく。
澪はそれを興味深げに見つめながらも、そそのかすように何度も何度もしごきたてる。この期に及んでも強くならない優しい動きがもどかしくて、必死になって腰を突き上げるマルクを狂わせるように甘い感覚を刻み付けていく。
澪との間にあるのはまだ愛情と呼ぶには脆すぎて、友情というには身体の感覚が突出していて、それでいてでは何に当てはめればいいかというのは皆目検討不能で、まったく理解不能だった。
無闇に恥ずかしくて、混乱していて、不条理で、理不尽で、腹立たしくて……。
そのくせ甘やかで気持ちよかった。
繰り返し繰り返し指先から注ぎ込まれる快楽は、あまりにも甘美で逆らいようがないほどで、そのくせ頼りなくて。……もっともっと欲しくなるほどじれったいのに、与えられないもどかしさの塊で。
だいたい、澪のことなんか好きになった覚えはない。
どちらかといえば苦手だった。無口で、暗くて、人を見透かしたように見て。
意固地で。鋭いを超えて惨いことを平気で言い放つ娘だった。
――ホント早く死ねばいいのに。
そんな風に他人に言える娘だ。今では慣れたし、それが澪というヤツの芸風なんだとはわかっている。でも、最初は引いたし、それで凹んでいるやつも見てきた。
しかし、慣れたっていうのはどうなのだろう。
いま、その言葉が澪の口から漏れるのを想像しただけで、マルクはずきんと不愉快な痛みが沸くのを自覚する。
はっきり云って澪はいやなヤツだ。人間として無慈悲なヤツだ。自治のことを正論で言うけれど、嫌いな人間は虫けら以下の扱いをするやつだ。
そんなの判っている。
こいつは冷酷でたぶん邪悪な娘なのだ。
そんなの判っている。
差別主義者で教条主義者で人間嫌いだ。
そんなの判っている。
こんなものは、ただ気持ち良いだけ。快楽に流されてるだけなんだ。
そんなの判っている。
のに。
柔らかい頬のライン、大き目のたれた瞳、さらさらの黒髪が、薄暗い室内にディスプレイの光で揺れている。
潤んだ瞳で、とろりとマルクに微笑む。
紅くて小さな唇から、唾液の筋が漏れているのが誘惑的で。
きっと後でひどい目にあわせるための嘘満載の微笑みなのに。
こくりと、安心させるように頷く澪の、
水溶性の宝石みたいな瞳に吸い込まれるように。
――だから。
(〜〜っ!!〜〜っ!!!!)
止まらなかった。自分でも驚くほどのミルクがびゅるびゅると澪の手でしごきだされる。首筋が反り返って無意識に耐えようとするが、今までに経験したのに何倍もするような快楽が思考をショートさせる。
澪が微笑んでいるから。
頭の中身がどろどろになって、全て吸い出されるような気持ちよさ。
あんな顔、考えてみれば始めて見たから。
こんな快楽を味わってしまったら二度と元に戻れないような、一回で中毒になってしまうような、圧倒的な愉悦だった。
「あああん……っ!」
そんなことは澪本人には絶対に云えないから。
全身の筋肉が千切れてしまったようにぐったりと弛緩するマルク。
まるで頭の中を全て漂白されてしまったように荒い呼吸を繰り返す事しか出来なくなる
暗い部屋に、かすかなPCファンの音とマルクの荒い息遣いだけが響く。
真っ白になってしまった思考、身体の力は抜け落ちて、ふわふわと力が入らない。
どれだけの時間が過ぎたのだろうか。
ひどく長く放心していたような気もするが、実際にはそうでもないのかもしれない。
太腿に乗っかっていた澪の体重がふとなくなる。
ぼんやりした視界でマルクは澪を見上げる。
彼女はマルクの白濁の飛び散ったスカートを仔細に眺めていた。思案するように小首を傾げると、トートバッグから取り出したウェットティッシュで丁寧に拾うように摘みとって行く。
モニターの光に照らされて自分の出したものを拭き取ってゆく澪の姿はやけに綺麗だった。それはスリルや焦燥感に似ていて、抗いようがない感情を呼び起こす。マルクは澪の何気ない仕草だけで、鼓動を圧迫されているような思いをする。
「みお……」
なにか言うべき言葉があったわけじゃない。
マルクの中には恥ずかしさとか、苛立たしさとか、割り切れない感じとか、澪への怒りみたいなものがまだ渦巻いている。
でも、何か言葉をかけたくて、ただ澪の名前を呼んでみる。
澪はすっと立ち上がる。言葉は聞こえているはずなのに。バッグからポシェットを出して、そのままトイレへと向かう。
(うう。……恥ずかしいな)
澪が立ち去ったのを確かめて、マルクはティッシュでぬぐって、ズボンを履きなおす。事実その通りなのだが、軽く犯されたような気さえする。
消え入りたいほど恥ずかしいし居心地が悪い。こうやって思考が戻ってきてみれば、澪がかなり早い時期から企んでいた感じがするし、腹立たしい気持ちもある。
ただし、気持ちがよかった、それも底抜けに気持ちがよかったのは本当だし、射精の瞬間に感じたあの感情、名前がつけられない気持ちもあって、今のマルクは割り切れないもので飽和状態だった。
なんともいえない感情がもやもやたまる。胸の奥が固くなったような焦燥感があって、早くどうにかしなくてはと思うのに、どうしていいかは皆目わからない。なんだか澪に八つ当たりしそうだった。
カチャリ。
やはりスチールのドアを開けて澪が戻ってくる。
「澪? あの、おかえり」
マルクは声をかける。澪は、いつもの冷静できれいな表情でちらりとマルクを見る。
マルクはその表情にひるむ。
ずくん。
焦慮が胸をつく。得体の知れない切迫感があふれる。
「えっと」
澪はソファに据わると、トートバッグをひきよせて、その内部の整理を始める。トイレに持っていったミニバックをしまい、ウェットティッシュを交換してるようだ。
澪はマルクにはまったく興味を持っていないようだった。
「ぅ……」
言葉を失うマルク。澪はそのまま作業を続ける。
気詰まりな数分の後、澪は探すように『部室』を見回す。マルクはスケッチブックを拾って、その澪に手渡した。
いぶかしむ様な澪の視線がスケッチブックを手渡した形のまま、困ったようなマルクの視線と交差する。
「あの、ね……」
マルクは無理やり言葉を搾り出した。
――腹が立った。なのか
――ずるいぞ。なのか
――ありがとう。なのか
――気持ちよかった。なのか
自分でも何を言っていいのか、何を云いたいのか、マルクには判らなかった。ただ、何か云わなくては、何かを変えなくてはという気持ちだけが溢れて、それが焦慮感になって喉を塞ぐ。
「あのね。さっきの、あれ……」
思いつかないままにマルクは話し出す。その言葉を無視するように澪は視線をそらす。それだけで、マルクの胸はつぶれそうになる。
「……」
数瞬。澪は手渡されたスケッチブックを開く。
『馬鹿?』
うっ」
言葉に詰まる。当たり前だ。当たり前の澪だ。普段通りの澪だ。
むしろ誤作動を起こしているのは自分で、その緊急性は6。直ちにアップデートを必要とするレベルなのだ。マルクはそう思う。
判っているのに胸が痛む。
何でこんな気持ちになるのだろう。
もどかしいほど優しい指先の動き。首筋を、髪の間をくすぐる様に通り抜ける感触。抱きしめた腰の細さ、シャンプーの甘やかな香り。
「だって、澪がやったんだろ。さっきだっ――」
『知らない』
断ち切るような澪のメッセージと表情。
訳が判らなくなる。ほんのついさっきのことなのに、澪のあの優しい指先や微笑みは本当のことだったのかどうかも判らなくなる。あやふやで、あいまいで。
ただの自分の願望だったのかも知れないとまで思う。
(それはいくらなんでもありえないだろう)
だいたい、澪のことなんか苦手だったのだ。刺々しくて、無関心で、冷笑的で。
意固地で。鋭いを超えて惨いことを平気で言い放つ娘だ。
そう思うとマルクの胸は石のように硬くなって、息を引き絞られるような切迫感を感じる。
こんな苦手でつっけんどんなやつに、あんな願望を抱くなんてないだろう。
願望の見せた幻なんて、さすがにそれは……。
大体こいつが最悪のやつだってことはわかってたはずだ。ずっと判っていた。
最中だってずっと判っていたくらいだ。
――ふわり。
脳裏に「あの時」の笑顔はフラッシュバックする。
とろんとした瞳。天使のように微笑み。
甘く開いた唇、小さく漏れる吐息。
頭を振って強引に振り払うマルク。
「澪っ!」
『ふーん』
『なの』
「ふーん、って何だよ」
奇妙な焦慮にかられて詰め寄るマルク。澪は普段どおり、自分には実際には関係ないというような、距離のある冷静さを崩さずに答える。
『マルクは』
『優しくして欲しい』
『なの?』
澪は見透かすような、嘲笑うような冷たい笑みをマルクに向ける。それは無表情よりも毒舌よりも冷たい、恐ろしい感覚をマルクにもたらす。
言葉は一見譲歩のように思える。そういう風に問われれば、そうして欲しいのかもしれない。正直に言えば、誘惑を感じる。それもかなり強く。
でも、澪はマルクを嘲笑うように見ている。馬鹿にするように、くだらないものでも見るように。それはほとんど恐慌状態に近いほどの忌避感をマルクにもたらす。優しくされたい。そうかもしれない。
でも、それはこんな微笑ではなくて、では自分が何を望んでいるのかといわれれば判らないけれど、これだけは絶対に承服できないことで。
「〜っ! 違う。自惚れすぎだ。澪のボケっ」
マルクはそのまま自分のバッグをつかむと、PCの電源も落とさずに大またに部屋を出た。腹が立ってたまらない。苛立ってたまらない。あんなムカつく娘を一瞬でも抱きたいと思ったなんて。抱きたいと思わされたなんて。
悔しくて恥ずかしくて涙がこぼれそうになる。
マルクは、マフラーの中で真っ赤になった鼻をすすり上げると、まるで徒競走でもするかのようにスチールの階段を下りていった。
――カン! カン! カン! カン!
蹴飛ばすような響きを聞きながら、二人の匂いの篭った部屋の中で澪は小さく笑う。
『マルクの、なの』
『なの』
以上、しょにょ7終了! さらに以上をもって当SS終了!
どんぱふー。一人で盛り上がるの禁止!
あさっぱらからばかいっぱいだぞ>おれ。
長々遠めよごししちゃってすんませんしたー!
(平身低頭)
これで澪にこぞーじゃないっていってもらえるかな。かな!
澪、可愛くかけてるかな。かな。
(いや、それはどうかと思う)
ギガGJ!!
ああ、澪にぐるぐる翻弄されるマルクの可愛さがなんというかスペシャル。
これって絶対ヒロインはマルクだよね?超お疲れ&GJでした。また読んでみたいっス。
212 :
聖騎士:2006/05/08(月) 11:49:02 ID:x6FNaoNr
すごい才能だ。感動した。
これから澪を見る目が変わりそうだわw
超GJでし。
なにかコテハンをミンナでつけて、今後もがんばってほしいと脅迫したくなる。
かもしれない。(すんません、ウソです...oTZ)
でもこれ卓ゲ関係なくね?
うむ、コテハンネタはうっかりするとそうなる。
いわゆる出落ちの類にあたるものであるから、使用の際はゆめゆめ注意されたし。
まとめサイトでは「その他」に分類するしかないしな。
正直なところFEARゲーのSSとかが恋しくなってきた。
>>209 本気でアンタ何もんだ。とても素人にゃ見えないぞ?
218 :
いつふた:2006/05/08(月) 21:25:59 ID:w83Y1ofW
>209
GJでした! 参考になる表現がいっぱいあります(「腕の中に女の子とい
う動物がいるのは〜」のくだりとか)。じっくり勉強させていただきますね。
>214>215
問題があるのなら、適切なスレに誘導してあげてください。もしくは問題の
解消方法を提案するか。
でなければ二度とこの手のSSが読めなくなるか、問題があるまままたここ
に投下されるかの二択でしょう。
>216
まとめサイトの管理人さん次第でしょうが、コテハンネタのSSが複数にな
れば「その他」から独立して「コテハンネタ」って感じの分類が増設されるの
ではないでしょうか。
ていいますか、この流れで「FEARゲーのSSとか」を投下した日には、
まるで>209へのあてつけのようにもみえるので、落としようがありません。そ
りゃまあ持ってきたSSは「FEARゲーの」ではありませんでしたけど。
明日以降、良い流れに変わっていることを願って。
おやすみなさい。
かつてこの板にあったミーニャースレは落ちて久しいしナァ。
そういやオレも昔ミーニャースレで☆hitomi♪たんネタ書いたコトがあったような。
まァ何はともあれ>209GJ。
アイテムから見るカオスフレア
佩玉――
暁帝国で最も一般的な属性の一つ。
ふたなりさんからぶら下がる玉である。
ほとんどの成人男性が身に付けているのはともかく、
女性でもぶら下げている者は少なくない。
出る分量に応じて大きさが違うので、力を見分ける際の目安とされている。
なお、玉付き派の暁帝国と多国間では宗教対立があり、
特に「爆根玉付きなんて認められない!!」とするアムルタートとは相性が悪い。
(冥龍皇イルルヤンカシュが九天玄女の馬鹿でかいミルクタンクにより、
手酷くボゴォッ!! ひぎぃ!! とばかりに犯されたため、嫌っているという諸説もある)
シーメールOKと発表したファイフ王国との間では貿易が盛んであり、
また、衆道を容認する富嶽とも共感するところがあるという。
…うん、ふと思いついたことを適当に書き連ねるのは良くないよな。
>>210,211,213,220
楽しんでくれてありがとうなのだー。終わってみれば、あらばかりが目立ち
妹ネタもパンツネタも十分に盛り込めなく、つまりは多分それは冗長ということ
なのだとおもうのだー。もっともっとエロくも出来たように思うのだけど
澪の黒優先で。くろぐろ。
「すごいいやなやつなのにさからえない」感じが出てたらうれしいのだけど。
>>217 ただのしろーとですー。
>>218いつふた
ありがとうございます。参考だなんてとんでもないです。
おいらもたのしみにしておりますです。
>>219短剣
これもひとつのセッションなれば。
>>214,215,216
うぃ。スレ違いだったかもです。ごめんなさい。
引き上げます。どっか別の場所があればいいんだけどー。
個人的には強化人間といつふたの人が入っていれば卓ゲ地下関係に……って、アレはコテハンとは少し違うか。
駄コテ板だとログが残せないからこっちのほうが嬉しいが、
神についていくだけか。
209が何十k書いたかは良く判らんが放逐する側は
「関係ない」、「出落ち」の14バイトですむからな。
書いたり作ったりプレイしたりするやつらは消えて
一行で石を投げるやつらが残るのが2chの運命とはいえ
後味の悪い結末だ。
後者は兎角前者は重要な事じゃないか
保管庫のヒト乙。
卓上ゲーム「板」エロパロにすれば無問題という電波を受信した。
【馬鹿はうまいこと言ったつもりらしい】
卓毛その物とは全く関係ないが卓毛板関連ではあるし、
投下物の純粋な出来はいいからなあ、追い出すのもモッタイナス
コテネタウザいって人が多数派なのは確かだが、少し寂しいぜ
まず何のネタか注意書きして、嫌な人はNG指定するとかしてスルーするようにすれば委員ジャマイカ
他のスレじゃあよくあることだし。
俺は好きだぞコテハンネタ。GJー
ネタはともかく、出来は紛れもなく神だった。ていうか、ネタに目を瞑ってもいい出来だった。
どんなネタであれ、神の新たな作品を望む。
234 :
215:2006/05/10(水) 05:23:17 ID:MD2HFbjN
なんか余計な事言った。その上言うべき事を言い忘れた。
>146-
凄い面白かった。思わず引き込まれて最後まで読んでしまった。
あとそれから、ごめん。あんまりな物言いだったし、
あとからこういうのもあつかましい限りだけど、どうか気を悪くしないで欲しい。ごめんね。
ふぃあ通聞いたら・・・
ステビア×エルト
というネタが突如湧いた
纏まったら投下するね
捧げよ男根!肉欲の宴の始まりだ!
(訳:期待してるぜべいべー)
激しく期待
238 :
いつふた:2006/05/12(金) 21:43:50 ID:mktJA9Jb
ゲーム:真・女神転生200X(メガテンX 4本目)
形式:小説形式(原則三人称)。
レス数:6+1
分割:なし。
エロ度:和姦。挿入あり。
連続性:単発。
時節:主に三月。
終幕:別に今にして始まった不幸じゃない。
◇探す探す探す
「ようこそ、回復の泉へ」
甘い水色を連想させる優しげな声。青みを帯びた長い髪。清しいブルーの綾
衣。
泉の聖女と呼ばれる女性に、少年は無言で歩み寄った。
期待に満ちた微笑みを浮かべる彼女に、ちゃり、と手渡す魔っ貨。少年の顔
はあくまで無表情。聖女の顔に浮かぶ失望の陰り。
少年――年若い外見に大人びた雰囲気の、彼はまるで自動販売機に相対する
かの如く、無機質に一言、全回復、と告げた。
傷跡。血糊。疲労。
彼を蝕むダメージの深さは一目瞭然。泉の聖女は改めて穏やかな微笑を浮か
べ、
「どうぞこちらへ」
少年の先に立ち、部屋の奥へと案内した。
床は固いのか柔らかいのか、素材は不明で、まるで光を放つよう。
その中心にこんこんと湧き出る、目を奪われるほど澄みきった水。
少年は泉のほとりに片膝をつき、片手で泉の水をすくって飲んだ。
一口。また一口。
泉の聖女の見守る中、彼の心身が活性化され、傷も疲れも、たちまちに癒え
て失せた。
立ち上がり、彼は彼女に背を向けた。何らの興味も――好意も、脅威も――
いだいていないかのように。
邪魔をした。淡々とそう告げ、躊躇いのない足取りで真っ直ぐに出口へ向か
う。
……ふわり。
いつの間に移動したのか。少年の胸に寄り添うように、白く細い身体が涼風
の如くしなだれかかった。
「まさか、もう帰るなんて言わないでしょう?」
そっと囁き、強く抱く。
「なかなか来てくれないのだもの。寂しかったわ」
少年の唇を盗む。泉の聖女は欲情に濡れた妖しの瞳。火照った肉体に、蠱惑
の匂いが立ち昇る。
少年は、パーカー1枚を羽織った無難なシャツとスラックス姿。開襟の胸元
に、唯一アクセサリーめいて勾玉のペンダント。それは慎ましい色合いの磨き
込まれた玉石飾り。
泉の聖女がペンダントに触れそうになって、途端に少年の腕が動いた。彼女
の指先から勾玉を守りながら、綾衣の薄物を脱がせていく。さっさと済ませて
終わらせようというのか、素早いが、機械的な所作。
瞬く間、顕わになる裸身。艶かしくも豊満な、そこにいるのは泉の聖女では
なく、性の快楽を待ちわびる、ただの一人の女だ。
「大丈夫。疲れたらまた回復させてあげるから。いつものように」
爛れた誘惑に乗って、少年が女の肌へと指を這わせる。
――もうっ。きみなんか、だいっきらい。
少年の心の中、遠い記憶の中だけにある声が、真情とは正反対の拗ねた言葉
を投げかけてくる。
「……また、誰か他の人のことを考えているの?」
女の繊手が少年の両頬を捉えた。深い口づけを強請って……叶えられず、単
に触れるだけのキスで済まされる。お座なりな。すんでのところで身をかわす
かのような。
「相変わらずね」
女はくすくすと笑った。
「気にしちゃダメよ。今は私と、この私と楽しんでちょうだい」
二つの身体が床へと倒れ込んだ。女の汗に男の汗が混じり合って、清らかな
室内に淫猥な匂いが満ちた。
回復の泉。いつ、誰が、何のために創設したのか、詳細不明の回復施設。そ
れはたとえば神社の裏手、鯉が泳ぐ池の小脇に出入口がある。又はたとえば下
水道、埋設されなかったはずの土管を出入口とする。いずれも水に関わる場所
だ。
ここは港湾、潮が満ちれば海に没する階段を降りたその先に、泉への扉があ
る。
微かに漂う潮の香り。
遠くに聞こえる波の音。
母なる海に回帰するヒトという種の原点ゆえか、ここに辿り着いた人間は、
真っ先に心が癒され、安堵の気持ちを覚える。
だが少年は、ヒトではなかった。ヒトの形をしてはいるが、見る者が見れば
即座にわかる。彼は人間ではない。悪魔でもない。人間と悪魔が合体してなる
存在――人から化した悪魔――悪魔人ですらない。
彼は異形の魔人。
それは人修羅と呼ばれる。
浅く日に焼けた肌にくまなく、タトゥーめいて描かれた暗色に輝くライン。
奇怪なその紋様は、見る者に不安と畏怖とを与える。
人間に生まれ、人間を捨てて、人間を超えた者。謎の力――マガタマと共に
あるモノだ。
「人修羅も、子供を作ることができるのかしら?」
指で、掌で、唇で、舌で。隅々まで確かめるように少年の全身を愛撫する女。
執拗なほどの攻めように息を荒げながらも、少年は素っ気なく答える。
「知らん」
年上の女は余裕たっぷりに笑った。
「あらあら、無責任だこと」
幾らか不機嫌の混じる声音で、少年が返す。
「できると言えば、やめるのか?」
「ふふ、まさか」
獣のような眼光で、女が挑みかかっていく。
「訊いてみた、だ、け」
手足の牽制、主導権の奪い合い。体位を入れ替え、首尾良く女が馬乗りにな
る。
成熟した女の肉体が、濡れそぼつ口を赤くひらいて、屹立する少年自身を生
身のまま呑み込んでいく。仰臥する少年の中心に硬くそびえる塔は、柔らかく
彼を出迎える襞に、上から下まで全て包み込まれた。
「……っはぁ…………いいっ……!」
振り絞るような感嘆の女声。
「最高よ、貴方の」
泉を訪ねる何人の男に同じ台詞を囁きかけたのか。
だが、真相を知る必要はない。大人の嘘は蜜の味。今一瞬の交わりに、馬鹿
正直な誠実さなど、単に無粋なだけだ。
女にのしかかられたまま、少年が腰を動かす。
「あんっ! もう、おイタはダ……メぇっ!」
たちまちのうちにビクンと反応、泣き声めいて、女が鳴く。
「あっ、ああっ、あっ、……あっ……!」
強く突き上げ、弱く掻き回し、微妙にして絶妙な突き込み。度重なる痴態に
興奮しきった身体が、本人の自覚、少年の思惑をも越えて、最高潮への階梯を
凄まじい勢いで駆け昇っていく。
「いい……いいわっ、いい、いい…………っ!」
問わず語りに繰り返す声。少年の視界でぶるぶる揺れる乳房を、女は片方、
これ見よがしに持ち上げた。
「吸ってっ」
白く盛り上がる丘の色づいた尖端に少年がむしゃぶりつく。キツく歯を立て
てやると、激しい嬌声を上げて女はよがった。
淫らなリズムで打ち付け合う結合部分から、熱の塊が全身に広がっていく。
急激に高まる内圧。何もかもを押し流していく強烈な快感。
それでも。
少年はずっと冷めていた。
身体が熱くなればなるほど、心は冷たいまま、意識と肉体との乖離を皮肉げ
に眺めている。
「ああああーっ!」
悲鳴に近い絶叫を上げて仰け反る女。その体奥に男の迸りを放って、少年の
内を占める束の間の絶頂。
生々しい営みを終えて、彼の中には肉の満足感と心の虚無感とが残る。
気だるい。後戯を求めて擦り寄る女が疎ましい。
「……少し仮眠を取らせろ」
「ヤればヤりっぱなしってわけね。ふふ、可愛い」
嫣然と、大人の女の含み笑い。適当に服を着た少年を更に奥の小部屋に案内
し、そこにある大きめの寝椅子を指さす。
身体を投げ出すように寝椅子へと倒れ込んだ少年に、女は囁きかけた。
「恋人にはちゃんと優しくしてあげているの? それとも彼女にもそういう態
度?」
その質問には答えぬまま、少年の魂は眠りの底へと流れ、漂った。
夢の中。知らない記憶が再現される。時代はわからない。場所もわからない。
多分、そこは“この世界”ですらない。
暗い。赤い。熱い。息苦しい。……戦場。
囲まれる。異形のモノどもに。だが、彼ら二人もまた、他に受け入れる者の
ない“異形”であった。
だけど充分だった。彼らには充分だった。そこに自分がいて、隣に愛する者
がいて、共に生きていた。それだけで、充分だった。
――……ないで。一人にしないで……!
泣き顔。ああ、おれは何度きみを泣かせれば気が済むのだろう。涙など見た
くないのに。いつだって、笑っていて欲しいのに。
横たわるおれ。おれを見下ろすきみ。離れまいと縋るかのように、おれの手
を両手でしっかり握って。
おれの喉から、かすれた声が漏れ出る。
「御免。おれ一人、先に……」
死ぬことになりそうだ。台詞の最後を言わせずに、きみが激しく首を振る。
「嘘だよ。そんなの嘘に決まってる。本当にきみは嘘つきなんだから。きらい
だよ。だいっきらいだよ」
そう、おれは嘘をついた。きみを護ると誓ったのに。きみの最期を見届ける
まで、きみを護り続けると、きみを護り抜くと、そう誓ったのに。
「次の……生まれ変わった、その先で…………」
五感の全てが薄れていく。戦わなければいけないのに。護らなければいけな
いのに。このままおれが死んでしまえば、残されたきみが、どれほど惨い目に
遭わされるか知れないのに。
「きっと、きみを護る、から」
きみを残しておれは死ぬ。甘えん坊で寂しがり屋のきみを、このおれが天涯
孤独にしてしまう。ましてやこんな敵陣の真っ只中に、おれはきみを置き去り
にして。
悲しむのはおれでいい。苦しむのはおれでいい。それなのに、おれはきみを
ばかり悲しませ、苦しませてしまう。
「だから、そのときは……おれのこと、大好きって…………言って…………」
馬鹿なおれ。こんなときまで、口に上す言葉は自分の欲望ばかりだ。
それともいっそ、おれがきみを殺せばよかったのか。一緒に逝こうと言えば
よかったのか。一思いに楽にしてあげればよかったのか。
わからない。もう、何もわからない。
わかっているのは唯一つ。次に生まれ変わっても、世界が生まれ変わっても、
おれはきみを探し出し、再びきみに恋をする。必ず。
「ま……待って、待って、嫌だ、死なないで、お願い!」
きみの姿が消えていく。きみの声が消えていく。匂いも、手触りも、口の中
いっぱいの血の味さえ、遠くかすんで、消えていく。
少年が回復の泉を出ると、すっかり真夜中だった。
波止場に、小学生ぐらいの女の子がぼんやりと立っていた。こんな遅い時間
に、と、良識的な大人であれば眉をひそめるに違いない。
だが、その正体を知ったあとでもその子に関わろうとする者は少ないことだ
ろう。
悪魔――神話伝承、虚構の存在であったはずの、者であり、物である、モノ。
今は人間の姿を借りている、悪魔は少年を見つけて、大喜びで飛び上がり、
「ア〜ニキ〜ィ!」
親しげに声を掛けながら駆け寄ってきた。
「やぁッと出て来た。遅いッスよ、ッたくぅ」
訳知り顔。色男はつらいッスねぇと下品なキヒヒ笑い。
「で? 次はどこ行くンスか?」
問われて、さて、どうするか。少年は無意識に、胸の勾玉を撫でていた。
これは彼女の勾玉。彼女が宿すべきマガタマ。禍玉。
黙示録の日本。魔都・東京で、彼が覚醒したように、彼女もまた、異形の力
に目覚めるはずなのだ。
彼女を探しに行く。答えはそれしかない。彼女を探す。探す探す探す。
「やぁッぱそれッスかぁ」
ま、しょうがないッスよねぇと、呆れたような、諦めたような、それでいて
納得した同意。
「ンじゃ、テキトーに行きましょッか」
あてはない。あてはないから、足の向くまま、歩いていく。
右手に海。左手に倉庫街。遥か向こうに街灯り。天高く、晧々と満月。
「でもさぁアニキィ。覚悟はしといた方がいいッスよぉ?」
てくてく足を進めながら、童女の姿の悪魔が言う。
「折角探し当てたアネさんの生まれ変わりが、実はゴッツいおッさんだった、
なんてことも、ないッちゃあ言えないわけだし」
その軽口に、脳天への拳骨で応える。命中寸前、小さい悪魔はゲラゲラ笑い
ながら逃げた。
「冗談ッスよ冗談。今度もアネさん、アニキ好みのいい女に生まれてますッて」
だといいけどな、と少年は苦笑した。
いつ逢える? どこへ行けば逢える? どうすれば、逢える?
疑問符ばかりが浮かぶ中、多分、今は戦うことだけが、彼女を護る唯一のす
べ。
都市にわだかまる影。人心に忍び寄る闇。悪意に満ちて、大きく口を開ける
奈落の陥穽から彼女を護るために。
戦おう。戦い続けよう。
強くなろう。強くあり続けよう。
今度こそ、誓いを果たすために。
ちゃぷん、ちゃぽん、海が波止場を叩く音。
ごぼっ、どぷんと波が跳ねる。
「行くな」
少年が足を止め、先を歩く悪魔を制した。
「……来る」
ッちゃー、と額を押さえて、女の子はうめいた。愉しげに。
「そのようッスね」
……重たげに海水を纏わりつかせ、ぬめった深緑の腕が何本も、何本も這い
上がってくる…………。
・・・・・おしまい。
以上、リプレイで魔人が追加されていたから、ノクターン知らないけど書い
てみたお話でした。
―――マルチレス
>116
済みません、ブレカナ3どころか先祖返り起こして最近はBBOTをちょこ
ちょこと書いています。
そういえば去年の今頃はBBNTを書いていたような。
時節柄なのでしょうか【何が】
>222
>「すごいいやなやつなのにさからえない」
つまりシステムはBBOT。
マルクは澪に「嫌悪」の絆を10レベルで持っていて、絆判定に成功しまく
り、稼ぎに稼いだ「愛」を惜しみなく使って澪の行為判定を高達成値で成功さ
せている、と。
……なんて容赦のない負けプレイなんだ。
>>245 わーお、乙〜。
>BBOT
わーい、本物のBBだー!(超失礼)
>>245 GJ〜。エロしてても雰囲気が保たれているスタイリッシュな感じが実にメガテン!
句点のおき方が上手で、するりと読めてしまうのが実力の証にみえるのですー。
248 :
いつふた:2006/05/13(土) 19:59:23 ID:Z5RCNCwr
ゲーム:真・女神転生200X(メガテンX 5本目)
形式:小説形式(原則三人称)。
レス数:8+1
分割:なし。
エロ度:和姦はキス止まり。強姦は挿入あり。
連続性:4本目(『探す探す探す』)の続編。
時節:主に三月。
終幕:知らぬが仏。
◇大好き、って
二人きり。初めての夜。
耳の中、自分の鼓動が聞こえる。
身体が熱い。息苦しい。
「こわい? どきどきする?」
問われて頷く。小さく。
「おれもこわいよ。どきどきする」
驚き。少しだけ安心。彼も同じなのだ。
おずおずと彼に身を寄せれば、力強く抱きしめられる。彼の両腕が自分の背
中に回って、包み込まれるようなそのぬくもりに、身も心も彼にゆだねる幸福
感でいっぱいになる。
口づけが欲しくて、そっと瞼を閉じた。
「いつまで寝てるホ? 遊びに行くホ!」
陽気で呑気な仲魔の声に、ギョッとする。目が覚める。
「……あれ?」
日曜日の朝。見慣れた自室。敷き蒲団の上で、背中からぎゅうっと掛け蒲団
にくるまって。……そりゃあ包み込まれるような感じがするはずだ。
少女は、がっかりしながら身を起こした。
寝乱れたパジャマを掻き合わせ、
「お着替えするから出て行って」
しっしと追い出すように手を振ったが、蒲団の傍らに膝をついた悪魔は畳を
ばんばん叩いてうきうきわくわく訊いてくる。
「今日はどこ遊びに行くホ?」
「あとで考えるー。お着替えするから出て行ってってば」
「ダイジョーブ、オイラここで待っててあげるホ」
ドタドタ、蒲団の周りで踊りまわる妖精ジャックフロスト。
「だーかーらー出て行ってってばぁ」
嗚呼、なんてラブロマンスのない現実。少女は、は〜ぁと溜息をついた。
「どうしたホ〜? 元気ないホ〜?」
「んーん、別にぃ。何でもなーいー」
ふと振り返る。あちらの壁の姿見に映るのは、寝惚けた顔でぼんやりとこち
らを見ている女の子。まだまだ子供っぽい体型で嫌になるけれど、ちょっぴり
は可愛いんじゃないかな、と頑張って自惚れてみる。自分で自分を嫌いでいた
ら、好きな人が自分を好きになってくれることなんてないと思うから。
だからそのうち、そのうちきっと、夢で見たように、素敵な恋人が。
「さあさあ、は〜やく遊びに行くホ!」
……できたらいいんだけどなぁ、と少女は再び溜息をついた。
―〜―〜―
この世界。いつとも知れず戦いは始まり、いつ果てるともなく続いている。
強い者。弱い者。年若くあろうが年老いていようが、大地に蔓延する死の恐
怖から逃れられる者は皆無だ。
けれども止められない。愛する気持ちは止められない。二人で与え合う生の
実感。それも束の間のことと、本当は知っていても。
「ね、おれのこと、好き?」
「きらい」
ぷん、と頬を膨らませる、まだ少女にも見える娘。
「だって浮気ばっかりするんだもん。だいきらい」
「そ、それは悪いと思ってるよ、けどほら、男として、何というか、さ」
おろおろと、言い訳にもならない言い訳を口に上す、少年めいた青年。
彼の胸にそっと寄り添い、潤んだ上目遣いで少女は拗ねた。
「夕べは寂しかったんだから。ずっと会いたかったんだから」
「御免」
謝ることしかできなくて、少年は少女を抱き寄せる。
「今日はちゃんと一緒にいるから。それで許して欲しいな」
幼い子供をあやすように、少女の身体をゆったりと揺らして。
少女はきっぱりと言った。
「でも、今夜はさせてあげない」
「ええっ!?」
「そんな気分じゃないんだもん」
「そ、それはちょっと……勘弁して欲しいような……」
「夕べはすっごく、そんな気分だったのに」
「どうして先にそれを言っておいてくれないんだよ!?」
少年は焦るが、少女は知らん顔である。
「言っておいたら、何?」
「そしたら昨日はきみと仲良くできたし、今日は他の……」
大いなる墓穴。むーっと睨みつけられて、少年は黙る。
「昨日どこかでしてきたんでしょ? だったら、我慢しなさい」
「……我慢します」
情けない苦笑で、少年は言った。
わざとか天然か、少女は無防備に、彼に寄り添ったまま。今すぐにでも手を
出したくて、ジリジリ、イライラしている少年。まるでおあずけを喰った犬、
口の中を唾液でいっぱいにして、皿のように丸く見開かれた目で、美味そうな
山盛りのエサをじっと見詰めている。
少年のぬくもりの中で、まどろむようにしていた少女が、不意に問うた。
「そんなに、好きって言って欲しい?」
「勿論、言って欲しいよ。だって、おれが好きなのは、きみだけだから」
ここぞとばかり、少年は少女に口づけの雨を降らせた。
ついばむような軽いキスを、少女は大人しく受け止める。
調子に乗った少年は、柔らかな少女の唇を割り入り、彼女の中を舌先でくす
ぐり始めた。
「んっ……んんっ、ん!」
少女が拒み、身をよじる。それを無視して、少し強引な愛撫。
彼女の動きが弱まった頃、少年がそっと顔を離すと、
「……っは」
嬉しくなるほど甘い吐息がこぼれた。
少女はすっかり上気した頬。とろけた瞳が、二人をつなぐ銀糸の橋を眺めて
いる。
「……だいっきらい……」
僅かに眉を顰めて、口に出す言葉だけが精一杯の抵抗。
「可愛い」
いとおしさに全身を支配されて、少年はもう一度、口づけを求めた。
今度は少女の方からも、積極的に絡め合った。恋情の高まりに比して、キス
も熱意を深めていく。
……このぐらいにしておくか。少年は打算し、口づけを終えた。
小刻みに震える小鳥のような彼女。夢見る瞳で彼を見上げて、自分の方から
欲しがりだすまで時間の問題。
「……あの、ね……」
そらきた、と少年は、勇んで少女の声に耳を傾けた。
「何だい?」
「今際の際に、言ってあげる」
「え?」
全く別種の台詞を期待していた少年は、意味を掴み損ねて、少し惚けた。
「何だって?」
「今際の際に言ってあげる。……だから、一人で先に死なないで」
「え、ええと?」
更に困惑する。先程の会話――そんなに、好きって言って欲しい?――あの
続きだということは思い当たったけれど、あまりに不吉なその言葉が、彼の不
安を掻き立てた。
「そういうのは……」
少女はぷいっとそっぽを向いた。
「でないと好きって言ってあげない。どうせまた浮気するんでしょ? なら、
死ぬときぐらいは傍にいて。死ぬときだけは、一人にしないで」
彼女の声音には、どこか切迫した悲しい感情が込められていた。まるで、そ
の未来が決して訪れないことを知っているかのように。
そんな馬鹿なことはない。少年は笑う。若者らしい、希望に満ちあふれた心
で。幸せになるために、おれたちはいる。幸せな未来のために、おれは、おれ
たちは戦っているんだ。
だから、少年は少女に囁いた。
「わかったよ。きみが死ぬときには、おれが傍にいる。寂しくないように、最
期まで傍にいてあげる」
「約束してくれる?」
「ああ、約束する」
少年が力強く頷きかけると、ふわりと淡く、少女は笑顔を浮かべた。
優しい色の彼女の瞳を真っ直ぐに見つめて、誠実に彼は誓いを立てる。
「おれはきみを護る。きみの最期を看取るまで、おれはきみを護り続ける」
自分に、世界に、刻みつける誓い。きみを護る。そのためにおれは生きてい
る。幸せだったと微笑んで、きみが永久なる眠りに就くまで。
「必ず、きみを護り抜く」
「うん。信じてる」
「だからそのときには、おれのこと、大好きって、言って」
そうして触れ合う唇は、心の奥まで、あたたかかった。
幸せだった。つい昨日まで。
今はただ一人。ただ独り、取り残されて。
“異形”とされてきた。迫害されてきた。
それでも二人なら、二人でなら、幸せだったのに。
幸せでいられたのに。
「嫌! 嫌、やめて、嫌ぁっ!」
冷たい地面に四つん這い。丸裸に剥かれて、両手両足を楔で打ち留められて。
刃物で切られる。鞭で打たれる。焼きごてを当てられる。悲鳴。絶叫。その
たびにドッと湧き上がる嘲笑。
全身に生傷。蚯蚓腫れ。火脹れ。それでも責め苦は終わらなかった。
「っく……ああっ、は、嫌…………ぁっ!」
そしてまた、激しい陵辱。背後から突き込まれ、情け容赦なく揺すり上げら
れ、遠慮も会釈もなく中へと出され、休む暇さえ与えられず。
次々と犯される。
穢される。
「ふ、……ぅっ、……助け、て…………ん、あっ!」
周りには数多くの男がいるというのに、救いを請う彼女の声を聞き届ける者
はいない。
「……お願い……もう、や、め……て…………!」
願えば願うほど。涙を流せばその分だけ。罵声と怒声が間断なく浴びせられ
る。
彼女を責め苛み、地獄の苦痛を味わわせているのは“悪魔”ではない。
彼らは“人間”。
かつては彼女もそうであった、『普通の“人間”』。
だのに言葉が通じない。だのに気持ちは伝わらない。
これならば。こんなことならば。
“悪魔”の方が、まだマシだ……!
少女の脚の間。どちらの穴からも白濁の粘液が溢れ出す。どろりと。
汚臭が漂う男の塊を口に含まされ、何度も飲まされて、何度も吐く。
「つらいか? つらいだろう、なあ?」
親切めかした男の指が、少女の顎をくいと持ち上げた。
「死んで楽になりたいだろう?」
少女は答えない。
「殺して欲しいだろうっ!?」
激昂して髪をひっつかむ。痛苦に顔を歪めながら、少女は一つの台詞を無理
強いされた。
「ころして……ください」
終わりなき輪姦。辱めを受ける合間に、繰り返しその哀願を強いられた。
「……殺してください……」
「殺して欲しければ!」
殴られて男を舐めしゃぶる。
「死なせて欲しければ!」
蹴られて尻を振りたてる。
「楽にして欲しければ、俺達の言う通りにするがいい! この、化物が!」
化物よりも醜い顔で、男が少女に唾を吐く。
「どうか、どうか、殺してください。お願いします、殺してください」
うなされるように、呪文のように、呟きながら、彼女は思う。
死ねないよ。
まだ死ぬわけにはいかないよ。
彼が護ってくれたいのちを。彼が残してくれたいのちを。
どうしてここで、こんなところで、使い果たすことができるというの?
愛する少年の面影を、恋しい少年の思い出を、少女は生きる支えにして。
何をされても、させられても。死ぬまい、生き続けよう、生きて必ず幸せに
なろう。それがきっと、唯一つ、彼の想いに報いることだ。
……けれどもその努力は、滑稽なほどに、哀しく無意味な足掻きであった。
殺してと自ら口に出す言葉は、意志に反して彼女を侵食していく。生きよう
とする心を水泡に帰していく。
希望の欠片もない状況。
与えられるのはただ絶望。
抵抗する気力を殺がれ、助けを求める相手もなくて。
何もかもがどうでもよくなるほど、彼女の身体は打ちのめされ、疲れきり、
意識はどんどん混濁していく。
死ぬのかな。もう、死ぬのかな。
死んだら、また……逢えるかな?
生まれ変わって、逢えるのかな?
――次の……生まれ変わった、その先で…………。
――きっと、きみを護る、から。
――そのときは……おれのこと、大好きって…………言って…………。
あれはいつのことだっただろう。
あれはどこでのことだっただろう。
わからない。だけど信じていよう。
信じて待っていよう。きっときみを護る、その誓いが果たされる日を。
そうしたら、あの日、約束した通りに。
好き……大好き……何度でも言うよ、大好き、って。大好き、って……。
「……お願いします……殺してください……殺してください……殺してくださ
い……殺して………………」
―〜―〜―
「ようこそ、回復の泉へ」
楚々たる美女の出迎えに、少女と妖精が挨拶をした。
「こんにちは」
「こんにちはホ〜」
ここは港湾、潮が満ちれば海に没する階段を降りたその先。泉の聖女が守る
回復施設。完全な中立地帯だ。
にこやかに用件を尋ねる泉の聖女に、少女が両掌を差し出した。
「このひとを回復させてあげて欲しいの」
そこに、深く傷つき、ぐったりと倒れ伏した小さな妖魔がいた。レプラコー
ンかその類い、小人の靴屋の御伽話に出てくるような、いわゆる妖精や精霊に
近い悪魔だ。
「では、こちらへ」
端麗なブルーの綾衣がよく似合う、泉の聖女は見る者の心が安らぐような微
笑みで彼らを部屋の奥へと案内した。
目を奪われるほど澄みきった泉。そのほとりに両膝をついて、少女は妖魔を、
誤まって溺れないように気をつけながら、そっと水につけた。
たちまち傷が塞がる。みなぎる魔力、生命力。
ぱちぱち、と瞬きした妖魔は、ピン、と飛び跳ねて少女の傍へと降り、暫く
その周りをネズミのようにクルクル回っていたが、そのうち、どこへともなく
走り去ってしまった。
「元気になってよかったホ!」
妖精も嬉しげに踊っている。
少女は泉の聖女に頭を下げた。
「どうもありがとう」
「いいえ」
彼女から規定の魔っ貨を受け取って、泉の聖女は尋ねた。
「あれは、あなたの仲魔ではないのですか?」
少女はあっさり、違うよ、と言った。
「港に遊びにきたら、そこで怪我をしてたんで、連れてきてあげたの」
黙示録の時代、悪魔どもの蠢く魔都にあって、仲魔でもない悪魔を見返りも
なく自腹で回復してやるなぞと、『殊勝』や『お人好し』の域を通り越して、
奇人変人以外の何者でもない。それが常識というものだ。なのに。
――優しい子。
その優しさが裏目に出ませんように、と泉の聖女は祈る。優しさこそが、血
と死に彩られた変革の時代を駆け抜ける力であればいい。生ぬるい考えだとは
わかっていても、そうであれと願わずにはいられなかった。
用の済んだ少女は、出口に向かいながら泉の聖女に対して親しげに手を振っ
た。
「それじゃ、またね」
「ごきげんよう。お気をつけて」
泉の聖女も小さく手を振り返して、少女と妖精とを送り出す。
「後ろを振り向いてはなりませんよ」
波止場。
どたどた走る妖精。ばたばた追いかける少女。
「こーら。人間変身しなさーい」
「ヘーキだホ、ちょっとぐらいならバレないホ〜」
右手は海。左手は倉庫街。遥か向こうに住み慣れた街。大空にはさんさんと
お日様。
ふ、と少女は足を止める。何かの痕跡、気配のようなものを感じた気がして。
夕べは満月。丁度その場で激しい戦いがあったことを、だけれど少女は知る
由もない。
「ホ? どうしたホ?」
「んー、何でもないよ」
少女は首を横に振り、そして大きく伸びをした。
「あーあ! 何かいいことないかなー!」
「いいことって何だホ?」
「そーだなー」
少女は暫し熟考し、元気いっぱいに答えた。
「すっごく素敵な恋人に出逢うの!」
「ホ! そりゃいいことだホ!」
「一緒に学校に行ったりね、あっちこっちにデートに行ったりね、うーんと仲
良くして、ずーっと傍にいて、それでね、それでね、」
勢い込んで話を続けた少女は、ふと、はにかんで、言葉を続ける。
「……そのひとに、大好き、って言うの……」
「んじゃ、オイラに大好きって言うホ!」
「ヤーだホ〜」
妖精と楽しそうにはしゃぎ回りながら、少女は街の方へと駆けていった。
・・・・・おしまい。
以上、先に死んで楽だったなぁ男の方、残されて大変だったなぁ女の方、と
いうお話でした。
…………GJ。
なんと色々グッと来た。陵辱もの嫌いなんだけどなあ。
相も変わらずのビターテイスト、GJ。
260 :
いつふた:2006/05/14(日) 21:13:46 ID:P0QtPnWp
ゲーム:真・女神転生200X(メガテンX 6本目前編)
形式:小説形式(原則三人称)。
レス数:6+1
分割:前後編の前編。
エロ度:和姦。挿入なし。
連続性:5本目(『大好き、って』)の続編。
2本目と3本目(『ペッパー警部』『頭痛薬』)に関連。
時節:三月末。
終幕:更にドツボにはまった。
◇アンク
旧校舎。
3階。
元・教室。
机も椅子も、教卓も運び出され、板の間にゴミや紙くず、土埃だけが散乱し
ている。
使い込まれた黒板には幾筋ものチョーク跡。日直、と書かれた白ペンキの下
に、消し残りの苗字が2つ並んでいる。
電気は未だ通っているらしく、室内には蛍光灯が光っているが、アルミサッ
シの窓の外、蔦の絡んだ壁が工事用のブルーシートに覆われて、真昼の陽光が
青に透過し、この中は鎮んだように蒼い。
傍らに日本刀を転がして教壇に腰掛け、足を投げ出す少年。一見して高校生
ぐらいの年齢。
パーカーは脱ぎ捨てられ、開襟シャツは下までボタンが外されて、大きく胸
元がはだけられていた。彼の呼吸に合わせて、丁寧に磨き込まれた勾玉のペン
ダントが光を反射する。浅く日に焼けた地肌には、魔術紋めいて線引きされた
不気味なタトゥー状の深い色合い。
人修羅。それはヒトに生まれてヒトを捨て、ヒトを超えた“異形”の生物。
世界に最大25人しか存在しえず、現存する人修羅の数は、確率的に、十指に
も満たぬと言われる。それゆえ、悪魔と関わる人間、悪魔人、そして悪魔です
ら、その存在を知らない者がいるほどだ。
誰より彼自身、噂には聞いたことがあっても、自分以外の人修羅に遭遇した
ことは一度もなかった。敵であれ、味方であれ。
人修羅の少年は、下半身のスラックスが半脱ぎの状態。ハの字に広がる彼の
脚に挟まれる格好で、まだ小学生としか見えない女の子が、明るい茶髪の頭を
彼の股間に突っ込んでいる。
「ン……ッ」
くちゅ。くちゅ。くちゅ。ぐちゅ。
少年のものを美味しそうに含んで、口いっぱいの唾液が淫らな水音を立てる。
とろりと糸を引く銀水が床に垂れ落ちて、白い砂埃を黒く濡らしていく。
ねろ〜っと、付け根から先端までを舌でなぞりながら女の子は、その愛くる
しい唇から少年の剛直を吐き出した。
「ッは……アニキの、こんなに大きく…………ッ」
姿かたちこそ子供だが、その表情は、まるで陽気な淫魔。自らの唾液にぬら
ぬらと濡れ光る一本を喜悦の面持ちで両掌に包み、下から上へと愛しげに撫で
続ける。
「アニキのこれ、大好きッスよ」
童女は熱っぽく潤んだ瞳で少年を見上げた。
童女――否。童女の姿を借りている悪魔の愛撫を受けた少年は、多少呼気を
乱し、だが、その眼差しは観察眼にも似た冷静さ。
彼女はちょっとばかりムッとした。
「何とかならないンスか、その態度」
「……何がだ」
「気持ちいいッしょ? 感じてくれてるンしょ? だッたら」
「ああ、気持ちいい。続けてくれ」
義務感で台詞を吐いた。そんな口調だった。
「ホント、素直じゃないッスね、アニキ」
そりゃあね。アニキがアネさんのことにしか興味ないのは知ってるッスよ。
と、小柄な悪魔は内心で呟く。けどでも、今はわたいしかいないンスから。も
うちょっと、わたいのこと気に掛けてくれてもいいと思うンスよ。
女の子に擬態した悪魔は、ふふん、と鼻で笑った。
「そーやって、いつまでクールぶッていられるッスかね? アニキの弱点なら、
わたい、ぜぇんぶ知ってるンスよ?」
女の子は片手で肉茎を上下に擦りつつ、もう片手で袋の中の玉をコロコロと
転がし始めた。
「すぐにバーッとイかせてあげちゃうッス」
異界化。
黙示録の時代に、魔都・東京における人界と魔界との境界線は薄くなる一方
で、短時間ならば、街の一隅が自然発生的に魔界の一部と化することも珍しく
なくなってきた。
運悪く異界化に巻き込まれても、今はまだ、何も知らぬまま無事に通り抜け
る者の方が多い。が、悪魔に襲われ儚く命を落とす者、悪魔の精神汚染を受け
て惑乱する者、異界から戻ったはいいが、保護の名目で対悪魔組織に“処理”
される者、そんな不幸な者達の数が、徐々に増えているのも事実である。
数分で立ち消えるほどの異界化ならば、放っておいてもほぼ害はない。が、
数時間以上も保つ異界化ならば、放っておくわけにはいかないだろう。そこに
異界化の“核”となる悪魔がいるなら、倒して魔界へ還すか、説得して退去さ
せる。“核”となる悪魔がいないのなら、異界化の消滅までその内部を監視す
る。
それが彼――人修羅アンクの、まあ、小遣い稼ぎとコネへの義理立てを兼ね
た実戦訓練のようなものだった。
コネへの義理立て。異界化の対処は、成城の老翁からの依頼でもあった。翁
は、必要ではあるが飼いにくい人材を、物資や情報などのエサを与えて半野良
の状態で泳がせ、それでいてその行動を自らの目的に合致させることが得意な
フィクサーである。少年の兄がまだ生きていた頃からの付き合いで、その狸親
父っぷりには何度も舌を巻かされているが、老獪にしてしたたかな手腕には、
半ば尊敬の念をいだくことも確かだ。
人修羅の少年は、春休みの高校、異界化した旧校舎の一郭で、今は休息して
いた。この教室――元・教室――は“静寂の間”。どれほど危険度の高い異界
の中にも必ず一箇所は存在するという、中立地帯、安全地帯である。人間であ
れ悪魔であれ、ここは傷を癒し疲れを取るべき場所であり、決して戦闘は行な
われない。それは暗黙の了解。それとも契約と表するべきか。
今回の異界化は、“核”のない突発的なもの。校内に、もともと生徒や教師
の数は少なく、そもそも旧校舎は解体寸前で、立ち入り可能な場所が限られて
いた。内部をうろつく悪魔どもも、悪戯者だが基本的に無害な連中がほとんど
で、放置しても大して問題はなかろうとも思われた。が、特に急ぎの用もなし。
少年・アンクは異界に進入し、悪魔どもを追い散らしながら、迷い込んできた
何人かの生徒達を、出口であるワープゾーンへと放り込んで助けた。
ブルーシートの向こうから、カキィンと高く、野球部だかソフトボール部だ
かが練習する音。ザッザと足音は、陸上部の走り込みだろうか。ブオー、ダカ
ダカ、管楽器を吹き鳴らし打楽器を打ち鳴らすブラスバンド部。ギュンギュン
うるさいのは軽音部に違いない。
マガタマを受け入れ、人間であることを捨てる選択したその日に、少年は家
を出、高校も辞めた。後悔はしていない、だが、こうして学校の中にあって、
一抹の寂しさを覚える気持ちを抑えることはできなかった。
足を投げ出して教壇に座り、アンクは胸の勾玉――マガタマを握り締めた。
彼は、人修羅となった時点から、本名、即ち人間としての名ではなく、合体
したマガタマの名を名乗っている。つまり、彼はマガタマ“アンク”の宿主で
ある。宿主の生命力を高め、また、癒しの魔法を主とするマガタマの。
未だ巡り逢えぬ彼女に、生きていなくては巡り逢うこともできないから。
今度こそ護り抜くべき彼女を、生きていなくては護り抜くこともできないか
ら。
転生し、現世にて“アンク”を得たのは、彼の宿命であり、必然であるとも
言えた。
彼女に手渡すべきマガタマを胸の下げ飾りにして、彼は彼女を探している。
悪魔と戦いながら。時には人間と戦いながら。
――きみはどこにいるんだい?
――今は何をしているんだい?
――逢いたいと、おれに逢いたいと、想ってくれているかい……?
「ア〜ニキ〜ィ」
ガラッ、教室の扉が横に引き開けられた。
「だいじょーぶッした、もうこの校舎にはどこにも誰もいないッス」
建て付けの悪いドアをガタガタと閉め、白いブラウス、赤いスカートの女の
子が入ってきた。
彼女は、かつてアンクの兄――亡き兄が召喚し使役していた妖精ピクシーの
変わり身である。
車椅子のハッカーから贈られたアームターミナルを手に、彼の兄は“運命の
少年”と呼ばれ――少年? もういい年のオッサンが? と、当時の彼は冗談
混じりの憎まれ口を叩いたものだ――、転生した女神の探索を始めた。
青年は普通の人間だった。ただ、恋人が“幻視者”だった。人の目に見えな
いものを視、人の耳に聞こえないものを聴く彼女は、この世の行く末に不安を
覚え、不吉な啓示を受けるたびに悲しみに暮れていた。彼女を支え、護るため
に力を欲した彼は、サマナーとして生きる道を選び、剣の道を歩む弟や、探偵
業者の親友を恃んで、魔都・東京を縦横無尽に駆けた。
前世の悔恨。今度こそ大切な誰かを護り抜く、その決意は幼い頃からずっと
少年の心にあったから、彼は兄の選択を全力で応援した。
だが、兄は死んだ。
悪魔に殺されて死んだ。
恋人と共に死ねたことだけは、兄の救いであったろうと少年は思う。
探偵と二人、かろうじて生き残ったものの、少年は、兄の葬儀に立ち会うと
きにも気の抜けたようになっていた。仲のいい兄弟だったから、と周りの者は
悲しみを更に深めた。
兄の死。それは確かに少年にとって大きな衝撃だったけれど。
兄が死んで、では黙示録の戦いは。救世主はもう、現れないのか。未だ巡り
逢えぬ彼女の身の上を案じる者として、そのことは、少年を打ちのめすに充分
な衝撃だった。
……やがて、無力感に苛まれて脱力しきっていた彼を、愕然とさせ、却って
正気に戻す噂が流れてきた。
退魔師集団・クズノハ系のサマナーである一人の少女が、新たな“運命の少
年”として、アームターミナルを手にし、女神探索行に乗り出した、と。
だったら兄は?
死んだ兄は何だったのだ?
宿命。兄は予言の成就としての存在ではなかったのか? それとも。
黙示録の予言を、人間達や悪魔どもが、よってたかって是が非にも成就させ
ようとしている。そういうことなのか?
だとすれば兄は、予言の成就を暗中模索する連中が選んだ実験体の一つ。
だとすれば兄の死は、捨て駒の犬死にに過ぎない。
彼と同じように考えた“私立探偵”――兄の親友は言った。悲劇は繰り返さ
せない。俺は次の“少年”と共に戦う。“運命の少年”だなどとそそのかされ
て、敢えなく命を散らす犠牲者を、二度と出さないために。
――それが、死んだあいつへの手向けだと思う。
そうですか、と頷いた少年は、お前も来るか? と誘われたとき、首を縦に
は振らなかった。
違うと思ったからだ。
それは違うと思ったからだ。
兄への手向けは、本当の手向けは、きっと…………!
彼のもとに、2つのマガタマを持ち、失われた兄のアームターミナルに格納
されていたはずのピクシーを連れて“金髪の男”が現れたのは、四十九日の法
要が滞りなく行われたあとのことだった。
おれは運命に逆らう。
おれは宿命に立ち向かう。
黙示録の予言、誰もがその成就を目指すとしても、おれだけは、絶対に成就
させまいと抗う。
世界が救世主を望むなら。
おれが、救世主の要らない世界を創る。
救世主が必要とされるほどの不幸、悲劇、終末。そんなものなどない平和な
世界を創る。
それこそが兄への、本当の手向けだと思うから。
戦いがなければ、諍いがなければ、その世界できっときみも幸せに暮らして
いけるはずだから。
……たとえ、おれがきみに逢えなくても……。
「なーにヘニョッてるッスかアニキィ。元気出してくださいよぉ」
ぱんぱん、と軽く、ピクシーに、いや、元・ピクシーに肩を叩かれた。悪魔
合体を重ねて、同じ妖精の系列でも、今の彼女はルサールカだ。
「アネさんのことばッか考えてたッてダメッスよ。見つかんないモンはしょう
がないンスから」
「そうだな」
言って、マガタマから手を離す。彼の胸元で大きく揺れるマガタマは、まる
で真のあるじ恋しさに身をよじっているかのようだった。
スラブの魔女は、ぽん、と明るく手を打った。
「そだ! 今日はわたいがアニキをお慰めしてあげるッスよ」
「……要らん」
「いーからいーから、わたいとアニキの仲で、遠慮しッこなしッス」
細っこい手が、たちまちのうちに不穏な動き。パーカーを脱がせ、シャツの
ボタンを外して、衣服の上から予想されるより逞しい胸板に、甘く唇を寄せた。
「おまえ、もしかして兄さんともこういうことをしていたのか?」
「え〜?」
ちろり、鳩尾を舐め上げて、
「女の子に、男性経験なんか訊くもんじゃないッス」
かりり、男の乳首に歯を立てた。
「っ!」
「あ、キツかッたッスか?」
愛咬の跡を舌先で優しく癒す。
「心配しなくたッて大丈夫ッスよ、アニキ。わたいはアニキ一筋ッス」
魔女が浮かべる妖艶な微笑み。ベルトのバックルをカチャカチャ外し、衣服
を下へとずらしていく。
柔らかく垂れ下がった男のそれを、水の精霊のヒンヤリした両掌が捧げ持っ
た。
「やわらかチ・ン・チン♪」
歌うように言って、何らの躊躇いもなく、パクンと口にする。
幼い口腔内に、温かく柔軟な感触。
「ん……ッ」
くちゅ。くちゅ。くちゅ。ぐちゅ。
それがたちまち熱く硬くたぎる。
「ッは……アニキの、こんなに大きく…………ッ」
一旦口技を終えた妖精は、自らの唾液にぬらぬらと濡れ光る一本を、喜悦の
面持ちで両掌に包み、下から上へと愛しげに撫で続ける。
「アニキのこれ、大好きッスよ」
「すぐにバーッとイかせてあげちゃうッス」
宣言。口の中に片方の玉を含んで、唇と顎を使いコロコロと転がす。その上
で舌は、付け根の部分をレロレロと愛撫していく。
指先は唾液に濡れた会陰をなぞりあげて、もう片方の玉を淫らにくすぐる。
掌は肉胴を握り締めて扱き立て、たまに雁首を強めに刺激する。
熱心な奉仕。高度な技巧。
「く……ぁ、は…………ぁうっ」
瞬く間に高められる。あっという間に昂ぶる。
相手になされるがまま、というのは彼の趣味ではない。少年は、仲魔は勿論
のこと、人間の女や女性格の悪魔どもと性戯で付き合う経験が少なくないのだ。
どういう行動が快楽を導き、どういう反応が快楽を高めるか、年若さに見合わ
ず一通りは熟知している。
享楽。戦いに生きる者の知恵。暗き死の影に磨耗した心は、性の迸りで癒す
に限る。
童女の姿の悪魔、その肩を少年は突き飛ばした。
「きゃン!」
可愛らしい悲鳴を上げて仰向けに転がった彼女。倒れる勢いで自ら脱ぎ捨て
る下着。赤いスカートを捲り上げて足を広げ、挑発する。
無毛の狭間は既に濡れ、期待に満ちて、少年を迎え入れる。
未成熟な肉体が、爛熟した果実のように、有り得ないほど淫猥な動きで彼の
剛直を余すことなく受け容れた。
「ああんッ、アニキィ、抱ッこぉ、抱ッこがいいぃ」
望みは叶えられ、ぐいと持ち上げられた。しっかりと抱きかかえられて、彼
女は両手で彼の肩を掴み、両足で彼の腰にしがみつく。
「ああっ、ああっ、ああン、ああはぁン!」
激しく揺すり上げられるリズムに乗って、童女も自ら尻を踊らせる。
「いいっ、いいよぉ、アニキィ、もっとぉ!」
強請る。求める。舌を伸ばして少年の唇を舐め、奥へと挿し入れる。
体奥深くに少年が当たる。痛いほど押し込まれて、熱い塊が盛り上がる感覚。
「イ、イく、イくッ、わたい、イッちゃ……!」
絶頂。光にはじける刹那、
「えッ!?」
するりと抜かれた。地に落とされた。
「や、やだ、嫌、アニキ、抜かないで、アニキ、イかせて、いやぁッ!」
泣き叫び縋り付く彼女に、少年は冷たく言い捨てた。
「勝手な真似をした罰だ」
「そんな……ッ!」
腰の悶えに耐えかねて全身をくねらせる、彼女の口を大きく開けさせ、無言
の命令。そこへ突っ込み、容赦なく吐き掛ける白い濁汁。
口の中いっぱいに、植物めいた臭いの粘液。断続的に噴き出すそれを、童女
は涙を流しながら喉を鳴らして嚥下した。
ガラッ。
「やぁっと安全地帯に着いたホ〜」
「よかったぁ、これで一息つけるね」
元・教室の入口。
二足歩行の雪だるまと、その後ろ、プレート・バンダナにサバイバルベスト
という出で立ちの男の子、もとい少女。
元・教室の床。
小学生と思しき女の子の口に、未だ大きく勃起させた一物をねじ込んでいる
少年。
硬直。
沈黙。
天使が通ったか、幽霊が横切ったか、頭の中が空っぽになったかのような空
白の時間を経て。
「キャーッ!?」
頭のてっぺんから振り絞るような甲高い悲鳴が上がった。
本日はここまで。
次回投下は、早ければ明日。遅くとも、まあ1週間以内には。
そんなアナタにグッドジョブ。
……コンスタントに書けていーなあ。漏れも頑張らねば。目標・明日の夜。
うん、なんか、すごく良かったのだー。
エロとしては濃さ蒲生ひとこえ、というのもあるけれど、
そっちに進むよりこちらで正解だと思うのだ。
原作のギミックを丹念に拾い、少年の心を拾い、
惹かれあう二人の関係を丁寧に拾って、それってかなり大変だったと思う。
気持ちが溢れたナイスSSだったのだー。
いいな、あこがれるのだー。わかぞうもがんばるー。
>>261 ああ・・・悪魔ロリは良いなぁ
グッジョブでございます
ところで秋葉の東京レジャーランド5階のイラストノートでベル様発見
なんかどえらい見覚えのある絵柄だが・・・まさかね?
272 :
いつふた:2006/05/15(月) 21:45:58 ID:H/Nhv2Fd
ゲーム:真・女神転生200X(メガテンX 6本目後編)
レス数:9+1
分割:前後編の後編。
エロ度:狙って書いたエロ描写はない。
「キャー! キャー! キャー! キャー!」
悲鳴の主は、何かに追い立てられているかのように教室内を走り回った。
「変態だホ変態だホ変態だホ変態だホ〜!」
「落ち着いて! 落ち着いて、J!」
青い頭巾の雪だるま――どう見ても、それは妖精ジャックフロスト――をJ
と呼んで、少女は、彼女も実はあんまり落ち着いていないらしく、
「落ち着いてったら!」
ちょいと足を出した。
狙いはドンピシャ、雪だるまの短足が引っ掛かり、ボテンと転倒する。
倒れてなおジャックフロストのJは、真っ黒い目玉をくるくるさせて、ジタ
バタと暴れた。完全にPANIC状態である。
「へへへ変態がいるホ変態がいるホ、早く逃げないと襲われるホ!」
「大丈夫だよ、ここ中立地帯だから!」
少女の説得も、どこか的を外している。
慌てず騒がず衣服を着直し、身なりを整えたアンクは、Jに掌を突き出し、
一言。
「《パトラ》」
「ホ!?」
ジタバタしていた手足が、ぴたりと止まった。
むくり、身体を起こして、
「イヨちゃん、オイラ落ち着いたホ」
「よかったね」
互いに手を取り、上下に振って喜び合う。
そして少女は悪魔に言った。
「あのね、J。あのひとたちは悪魔さんだから。悪魔さんの価値観を人間の倫
理や道徳で判断しちゃいけないの。人間の常識では変態行為でも、悪魔さんの
ひとたちには至極日常のことなのかも知れないんだから」
「そうだったホ。オイラ間違ってたホ」
「……『悪魔さんのひとたち』ッて何なんッしょーねアニキ」
ボソリと呟く赤いスカートのルサールカ。あまりの馬鹿馬鹿しい大騒ぎに、
熱く火照っていた肉体は、もうすっかりと冷め切っている。
「つーか説得する側が逆じゃないかと思うッス」
悪魔の価値観を人間の倫理や道徳で判断してはならない。そういう忠告は、
普通は人間である少女に、悪魔であるJが行なうべきであろう。
ところで、校舎中をチェックして無人であることを確認したのに、こいつら
どこからやってきたのか。それともマンガみたいな偶然で、完璧に擦れ違って
いたのか。あとでアニキが怒んなきゃいいッスけど、と人修羅の仲魔は気が気
でない。ましてやあんな赤裸々な場面をバッチリ見られてしまったのは、どう
考えても「もうこの校舎にはどこにも誰もいない」と報告した彼女の責任なの
だから。
童女姿の魔女は、あとで受けるであろう“お仕置き”の内容を身震いしなが
ら予想し、……明後日の方向に妄想してヨダレが垂れそうになった。
そんなこととは無関係に、少女はアンクの方を向いて、ぺこりと頭を下げた。
「助けてくれてありがとう」
確かにアンクはJに魔法を使ってやったが、それを助けたと称してよいもの
かどうかは微妙である。愉快なジャックフロストくんが恐慌を来たしたのは、
そもそもアンクとルサールカの淫行が原因なのだから。
その点を踏まえて、アンクはこう返した。
「いや。こちらこそ、悪かった」
少年の声の温かみ、柔らかさ。
妖精はハッとなって顔を上げた。
なんと優しい眼差しで、彼はこの小娘を見るのか。
まさか、こいつがアネさん!?
女悪魔は嫉妬半分、ギリリと少女を眺めやる。
顔立ちは全然美人じゃない。男の子みたいに短く切った黒髪は、下手をする
と男のアンクよりも短い。サバイバルベストやズボンのポケットは、どれもこ
れもパンパンに膨らんでいて、入口から傷薬やマハラギストーン、ペンライト
といった実用品から、どう見てもおやつなペロペロキャンディまでもが覗いて
いた。イタズラな悪魔どもにさんざっぱらからかわれたのだろう、身体のあち
こちに、生卵をぶつけられた跡や、絵の具をかぶせられた跡が残っている。
ちなみにジャックフロストの方は、そのでっかい頭や丸っこい胴体に、赤や
黄色で『へのへのもへじ』や『肉』、卑猥な記号などが描かれていた。
レベルの低い悪魔と、覚醒段階の低い人間――十中八九、“異能者”――の
コンビが勇んで異界に乗り込んで、大変な目に遭った、といった風情だ。
「ダメッスよアニキィ!」
ルサールカは慌てた。
「人違いッス、これ絶対に別人ッスよ! こんなのと間違えられたら、アネさ
ん悲しむッス! だってほら、服を着ててもわかるじゃないッスか! この小
娘、胸も腰も尻も全然ないッス! 嘘みたいな幼児体型ッス! こんな子供に
手ぇ出したら、ロリコンの謗りは免れえないッス!」
ロリコン。それが該当するなら、少年はとっくにロリコンである。外見だけ
とはいえ、小学生女児を相手に性戯を繰り広げていたのだから。
そんなことなど委細気にせず、女悪魔は両手で向かい合わせのS字を描いて
みせた。
「アネさんはもっと、バストがこう、ウエストがこう、ヒップがこう!」
ガツガツガツン!
自分の脳天に膨らんだ幾つものたんこぶを、涙をこらえてさする妖精娘の耳
に、二人の会話が聞こえてきた。
「なんか今、そっちのひとに随分セクハラな悪口を言われてたような気がする
んだけどな?」
にこにこ笑いながらも、ひくひく引きつっているような口調だった。
仲魔の頭をしこたま殴ったアンクは、少女を宥めるように言った。
「気にしないでくれ。きみのことではないから」
『きみ』。その二人称をアンクは、今まで他人に対して使ったことがない。
やっぱりアネさんなんスかアニキ!? 『もう』見つかっちゃったンスか!?
複雑な想いを抱くルサールカの視線は、少年少女の間を忙しく往復した。
だけど、あれ? と思う。
――本当にアネさんなら、どうしてアニキはマガタマを渡さないンス?
少年少女の会話は、穏やかに続いた。
「ここには何か用があって来たのかい?」
「てゆーかフツーに、自分の学校が異界化してたから、気になって見に来たん
だけど」
一般的にはあまり『フツー』ではないが、悪魔と一緒に行動する非一般的な
少女にとっては、確かに『フツー』のことであろう。
「でも本当は、来月から自分の学校」
と、別段言わなくてもいいことまで付け加えて。
「大したことなくてよかったよ、うん」
尤も、そう言う御当人達には、かなり『大したこと』が起こったようである。
「ひょっとして、きみたちが何とかしてくれたの?」
「異界化したからといって、必ずしもそこが危険とは限らないさ。勿論、危険
極まりないことの方が多いけどね。だから、この場所でそんなにも梃子摺って
いるようなら、」
少女とジャックフロストとの様子を等分に眺めて、アンクは楽しそうにクス
クスと笑った。
「中の様子がわからない異界に、きみたち二人だけで乗り込むのは得策じゃな
いと思うよ」
ルサールカは半ば呆然として、ああ、アニキが笑ッてるッス、と独りごちた。
あの無愛想の塊みたいなアニキが、こんなにも笑ッてるッスよ。
少年の台詞に少女は何も言い返せなくて、むーっと黙り込んだ。が、不快や
嫌悪を覚えているわけではなく、むしろ好感触、親しみを持ったようだった。
「だったら悪魔さん、」
トランプのブランク・カードめいた物を手品みたいにすちゃっと取り出し、
「仲魔になってくれる?」
わくわく尋ねる少女。いわゆるカードハントの能力があるようだ。
「無礼な小娘ッスね!」
Dが激昂した。
「わたいのアニキを、あろーことかカードなンかにっ!」
人修羅は、妖精娘の片頬を捻りあげながら言った。
「残念だけど、おれは悪魔じゃないんだ」
「え? じゃあ、悪魔人さん?」
「人修羅、……と言ったら、わかるかい?」
少女は懸命に頭を捻っていたが、やがて首を横に振った。
「御免なさい、わからないよ。不勉強で申し訳ない」
「滅多にいない存在だからね。知らなくたって無理はない」
アンクの胸で、もう一人の人修羅を生み出すはずのマガタマが揺れている。
ところで、それ痛そうだからやめてあげて、と少女が取りなしたので、悪魔
は人修羅のおしおきから解放された。礼は言わないッスよ、とは言わなかった。
ただ黙ってそっぽを向いた。
「おれはアンク。こいつは妖精ルサールカ。通称はディ」
「アンクに、ディ? どんなかんじか訊いていい?」
「どんな感じ、って訊かれても。別に、普通としか」
少年の答えに、少女は小さく溜息をついて、黒板、白墨の跡に、指で書いて
みせた。
『漢字』。
汚れた指をズボンの腰で拭き取る少女に、少年は微苦笑を返した。
「アンクというのはマガタマ……というモノの名前で、日本では片仮名で書く。
ディはデビルの頭文字、アルファベットのD」
少女も自己紹介をする。
「玉造伊予だよ。玉造は勾玉を製造するって書いて、伊予は伊予柑の伊予。で
もってこの子は妖精ジャックフロストのJ。いつかフロストエースになりたい
J」
フロストエースといえば、キングフロスト、フロストクイーンに次ぐフロス
ト族の文字通りエースだ。かの邪悪帝国においては帝国鎮護の要。王、女王を
守護する騎士の地位にあるといわれており、一介のジャックフロストが目指す
には、あまりにも遥かな高みと言えたが、
「ヒーホー!」
片腕を天に突き出し、Jは気炎万丈である。
「フロストエースになったらAって改名するホ!」
「するとフロストクイーンになったらQ、フロストキングならK?」
「どうしてわかったホ!?」
アンクの言葉に、ジャックフロストは目を白黒させた。
「イヨちゃんにもバレたんだホ〜! むむー、トランプのマークに引っかけた
高度なネーミングであるのに、オマエ、なかなかやるホ!」
それはどうも、と人修羅は軽く肩をすくめた。
ううう、アニキがあンなに楽しげに会話してるッス。妖精娘は驚きの連続で
もうヘトヘトだった。なんだかそこらの普通の人間みたいッス。いつものキレ
がないッス。こんなアニキ、こんなアニキ、
――可愛いッスぅ〜。
一人で萌え萌えになる女悪魔であった。
そこらの普通の人間は悪魔と親しげに会話をしないものだが、ともあれ彼を
こんなにも柔和にしてしまったのは、ジャックフロストでもなければ、悔しい
けれど自分でもない。
ルサールカの視線の先にいる、この貧相な腰つきとしょぼい乳をした不格好
な小娘だ。
「アンクさんは、どうしてこの学校にいるのか訊いていい?」
「さんは要らない。アンクでいいよ」
「ん、わかった」
「おれもきみのこと、イヨって呼んでもいいかな?」
「いーよ。あ、洒落じゃなくてね」
「面白くないッス」
思わずルサールカがツッコミを入れると、少女には見えない位置で、少年の
指先が女悪魔をギュイッと抓りあげた。
苦痛を声にもできずに顔を歪める妖精娘にきょとんとして、それから少女は
話を続けた。
「アンクもやっぱりここの生徒? それとも“運命の少年”さん絡みで集まっ
てきたひとの一人?」
“運命の少年”。
あまりにもあっさりその名が出てきて、アンクは慎重に探りを入れる。
「いいや、ただの通りすがりさ。それに、“運命の少年”って?」
「知らないの? “運命の少年”さんっていうのはね、黙示録の預言で、」
「そうじゃないよ、“運命の少年”が何者かは知ってる。ただ、何故この場で
その名前が出てくるのかがわからないんだ」
「あのね、この学校には“運命の少年”さんがいるんだよ。新三年生。だから
イヨ、ここを受験したんだもん」
一人称が自分の名前という子供っぽい喋り方で、だがそれは“運命の少年”
を知る者にとって聞き捨てならない台詞だった。
「きみは“運命の少年”に興味があるんだ?」
「あるよー。なんかね、今の“運命の少年”さんはね、普通の“運命の少年”
さんじゃないんだって。でね、面白いから見に行っておいでって言われたの」
「誰に?」
「それは、秘密」
秘密、と言うところで、伊予は自分の唇に人差し指を当ててみせた。
両端がキュッと深まって、小さい笑みを浮かべる唇。朱くて、柔らかそうで、
ついつい邪念を込めて眺めてしまい、アンクは自分自身を恥じながら少し目線
を逸らした。
「そもそも“運命の少年”に『普通の“運命の少年”』と『特殊な“運命の少
年”』とがあるのかい?」
問われて伊予は、暫く小首を傾げていた。説明の仕方に戸惑っているのか、
それともどう誤魔化そうかと迷っているのか。
ややあって、彼女はとっておきの内緒話を打ち明けるように言った。
「じゃあ、ヒントだけ。もともと黙示録の預言は唯一神のプログラムだよね。
“運命の少年”さんはそこから派生した救世主候補なんだから、男の子のはず
だよね。女の子の救世主なんてありえないのに、今の“運命の少年”さんは間
違いなく女の子だよね。……どうして?」
アンクは目から鱗が落ちた気分だった。
現代的な感覚でいるから、別に疑問にも思わなかったのだ。が、神学的に考
察するなら、確かに妙な話である。
「正直、ラグナロクの戦いなんて、どっか余所でやって欲しいんだけどさー」
「世界の行く末決めるのに、どこの余所でやれッていうッス」
「そんなに面白いんだったら、見に行くぐらいはいいかなーって」
「ひとのツッコミ無視すんじゃないッス!」
どこか遠くで少女と悪魔のすれ違いまくりな会話が聞こえる。
黙示録の時代。ラグナロクの戦い。
神は、悪魔は、世界に何を求めているのか。
何を定めているのか。
アンクは思う。何が求められていようと。何が定められていようと。
関係ない。おれはただ、彼女を護るだけだ。
現世の彼女を護るだけだ。
置いてあった日本刀を肩に担いで、アンクは提案した。
「イヨ、特にこの場に居残る用がないなら、おれたちが出口まで送ろう」
たち? おれたち? わたいもッスか!? ルサールカの抗議は、しかし口
には出なかった。また殴られたり抓られたりするのが嫌だったからだ。
「おれたちと一緒なら、あの連中も悪さをしてこないだろうから」
あの連中、に何をされたか思い出したのか、伊予は鼻の頭にしわを寄せた。
が、アンクに対しては嬉しそうに微笑んで、小さく頭を下げた。
「それは頼もしいな。有り難う、是非お願いするよ」
「ヒーホー、仲魔が増えたホ〜」
喜ぶJに、勝手に仲魔扱いするな、とは言えないDであった。その理由は以
下同文である。
アンクは伊予に尋ねた。
「こんな冒険はいつもやっているのかい?」
「いつもじゃないよ。時々」
「危ないから止めておけ、とは言わないけれど、もう少し装備も調えて、仲魔
も数を募った方がいい」
「うん、そうする」
素直に頷いてから伊予は、
「ね、アンク」
値切りに値切った交渉の果てに、もうちょっとオマケしてくれない? と店
員に頼み込む買い物客みたいな、妙な期待感を含めて尋ねた。
「召喚悪魔の仲魔じゃなくて、Jみたいな、いつも一緒の仲魔になるのも、ダ
メ?」
アンクの肩がギクリと震えるのを、Dが気づいた。
彼は世間話の口調で答えた。
「生憎、きみの『仲魔』にはなってあげられないけれど、きみに何かあったと
きには、必ず助けてあげるよ」
「本当?」
「約束する」
その言葉はルサールカの耳に、まるで誓約のように、そして聖約のようにも
聞こえた。
そんな会話を交わしながら、1階、男子トイレのワープゾーンまで、ほんの
数分、移動は平和そのもの。一番奥の個室、ドアを開けると、向こうの景色は
学校の裏門だった。
伊予はびっくり、目をぱちくりさせた。
「こんなところに出口があったのかー」
「入口は隣の女便所だったホ。出口は男便所で、ちゃんと合ってるホ」
「う、うるさいなっ」
どうやら男子専用トイレに遠慮して、ちゃんと調べなかったらしい。
「ね、アンクとDさんは外に出ないの?」
「もう小一時間ほど、この異界化が続くだろうから。それが終わるまではね」
「ふうん、大変なんだ」
伊予は名残惜しそうであったが、ただ、こうとだけ別れを告げた。
「気をつけてね、アンク、それからDさん」
和してJも言う。
「バイバイだホ、アンちゃんにDちゃん」
「アンちゃん!? アンタ、アニキに向かッて……」
思わず叫んだDの頭をガッと押さえつけ、アンクは返した。
「きみたちこそ、気をつけて」
人修羅と悪魔に見送られ、またね、と手を振って、一人と一体はワープゾー
ンをくぐっていった。
「いいひとたちだったね」
「いいひとたちだったホ」
「また会えるといいね」
「ん……でもオイラ、ホントはちょびっと恐かったホ。おしっこチビりそうに
なったホ」
「アンクでしょう? うん、すっごく恐かったね。もしもアンクと戦うことに
なったら、伊予たち、一撃で殺されるかも知れないね」
「恐ろしいホ〜」
「すっごく恐くて……でも、とっても綺麗だった」
「綺麗だホ? アンちゃんがホ? あの不気味たっぷりの模様がホ? オイラ
難しい言葉知ってるホ、ああいうの、禍々しいっていうんだホ」
「そうかも知れない。そうなんだけど…………なんか、このへんがね、とって
もポカポカするの。なんだかとっても、あったかい気持ちがするの…………」
旧校舎の廊下。ぎしぎしと床を鳴らして、一人と一体、否、二体。
「ちょっとちょっと、ねぇぇ、アニキィィ。あの小娘、まさか本気でアネさん
だ、なんてンじゃないでしょうねぇ?」
「ああ」
重く、頷く。
「彼女だよ」
胸に、手を当てる。
「彼女だ」
熱い。熱い熱い熱い。愛しくて愛しくて熱い。
痛い。痛い痛い痛い。恋しくて恋しくて痛い。
焼け付きそうな、灼き切れそうな、熱さ、そして、痛み。
「おれにはわかる。ここが、そう言っている」
心が、そう叫んでいる。
逢いたかった。逢いたかった。逢いたかった。逢いたかった。
やっと逢えた。やっと逢えた。やっと逢えた。やっと逢えた……!
女悪魔は、更に不満げになった。
「けどさぁ、あの小娘は、アニキのことに気づいてなかったみたいッスよ?」
「多分、前世の記憶がないんだろう。……その方が、いい」
「はァ?」
妖精は頭上に大量の疑問符を浮かべた。
「アネさんに前世の記憶がなきゃ、アニキが困るでしょーに。そのマガタマを
渡しゃ、覚醒して思い出すんじゃないンスか?」
アンクはマガタマを握った。
「渡さない。これは渡さない。これは誰にも渡さない。彼女にも」
それは静かな、本当に静かな口調。
「もう、彼女を巻き込みたくない」
まるで自分に言い聞かせる口調。
「あんな幸せそうな彼女を、“こちらの側”に引き込みたくないんだ」
ルサールカは肩を竦めて小さく息を吐いた。
「別に、アニキがそれでいいならわたいはそれでいいッスけど、最近は黙示録
の何のッて物騒ッスから、護身のためにも渡しとけッて、わたい、アニキなら
そーゆーふーに考えるかと思ッてたッス」
確かに、ついさっきまでの彼はそう考えていた。
けれど出逢ったから。出逢ってしまったから。気が付いた。実感した。
マガタマを手渡せば、やがて何かのキッカケで、彼女は自分と同じ人修羅に
覚醒するだろう。それは即ち、彼女に、人間である自分を捨てさせることだ。
彼女を、異形の魔人となさしむることだ。
強大な魔力と引き換えに、人修羅に――元の人間そっくりの姿と元の人間の
記憶を有するだけの、全く別の“何か”に――自分が変容する恐怖、変容した
自分に対する恐怖、そして底無しの喪失感と失ったことへの絶望感。それを彼
女に味わわせることだ。
仮にマガタマを手放したとしても、人修羅はもう人間ではない。死んで再び
人間に転生するか、自分が人間として生きる世界を新たに創り出すしか、人修
羅が人間に戻る方法はないのだ。
「彼女は人間だ。普通の、当たり前の人間だ。たとえ、彼女が黙示録の戦いに
駆り出されるとしても、それは覚醒者、超人、……『人間として』だろう。人
修羅としてではないんだ。こんな……『化物として』では、ないんだ」
――召喚悪魔の仲魔じゃなくて、Jみたいな、いつも一緒の仲魔になるのも、
ダメ?
ああ、それは何と魅力的な誘いか。彼女の傍にいれば、彼女を見詰め、声を
聴き、触れることさえできるだろう。だけど。
――彼女は人間。おれは人修羅。
その壁は絶対的で、その隔絶は絶望的で、逢えないよりも、傍にいられない
ことよりも、逢える方が、傍にいられることの方が、きっと一層つらく、よほ
ど苦しいに違いないのだ。
寂しくて。淋しくて。
自ら為した選択の結果、とはいえ一人では、一人で背負うこの運命は、あま
りに重く、痛みに満ちている。だからこそ、彼女を“こちら側”へ引き込むま
い、その決意も無駄にして、無理矢理彼女を人修羅に、異形の魔人にしてしま
う。
ガッ!
手にした刀が鞘ごと、色褪せた壁に、やつあたりめいて叩きつけられた。
愛しているから。大切だから。恋しいから。欲しいから。
抱きしめたいから。どこへも行かせたくないから。今度こそ、最後まで護り
抜きたいから。
――悲しむのはおれだけでいい。苦しむのはおれだけでいい。
――どこか遠くからでも、きみを護ることさえできればいい。
そう思うのに。そう思う心は真実なのに。
――悲しいのは嫌だ。苦しいのは嫌だ。
――きみの傍にいたい。きみに傍にいてほしい。
そう願う気持ちもまた、真実なのだ。
「………………っ!」
涙は、なかった。
けれども、それは慟哭であった。
張り裂けそうな。
引き裂かれるような。
廊下の真ん中、何もないところで人修羅達の歩みが止まる。不審に思ってか、
ざわざわと、何体もの悪魔どもが恐る恐る様子を見に来る気配。だが、アンク
の強さを身に染みて知っている以上、近づいてはこない。
とはいえ連中は腐っても悪魔だ、舐めてかかるわけにはいかない。彼らにも
気を配りながら水の妖精は、
「アニキィ、しっかりしてくださいよぉ」
人修羅の背中を懸命にさすった。
「アニキがそんな顔したら、わたいも、わたいも悲しいッスぅ」
慰めようとして、しかし果たせず、ルサールカは我が身の情けなさにボロボ
ロ泣いた。
「アニキィ、アニキィ」
人修羅に呼びかけながら、悪魔は心の中で、必死に彼女に呼びかけていた。
――アネさん、アネさん、どこにいるンスか。アニキが悲しんでるンス。ア
ニキが苦しんでるンス。アニキを助けてあげてくださいッ。わたいじゃダメな
ンス、お願いします、助けて、アネさんッ!
その祈りに応える者は、しかし、ついに現れなかった。
・・・・・おしまい。
以上、ばたばたばたばたばたっ! と足音がして、「ごめ〜ん、この辺にヒ
ランヤ落ちてなかったー?」とか言ってイヨちゃんが戻ってくるラストとどっ
ちにしようか迷って、結局こっちにしたというお話でした。
つーか執筆早ッ! そしてGJ。
GJ。とにかくGJ。
……えー、異能の指先〜書いてた奴ッス。
どうにか書き上がりそうなんで、今夜にでも完結をば。
つーか半年も放置で、読んでてくれたヒト、ゴメン。
今更どーでもいいってヒト、生暖かくスルーヨロ。
いつも書いてる職人さんは凄いと思った。
名無しだけどいつも応援しとりやす。
287 :
異能の指先:2006/05/16(火) 20:16:04 ID:nXXsg6PD
そんじゃあ、ちょいと通りやす、ト。
今回で完結。ダークでバッドエンド。
288 :
異能の指先:2006/05/16(火) 20:16:55 ID:nXXsg6PD
性感と羞恥で少女の意識が圧殺寸前に追い込まれるや、息を潜めていた女の指先が動きを再開した。
ぐりり、ぐりりと押し込まれるのを、少女は感じた。得体の知れない感覚がうなじから脳髄へ走る。差し込まれたものが、
女の指が、脊髄で蠢いている。脊髄を貫通して脳髄を掻いている。神経が締め付けられる激感は今まで体験したどんな
感覚にも当てはまらない。この世の何より強烈な異物感。少女の口から、「あ、あ、あ、あ、」という機械的な声が漏れる。
死体に電気を流して筋肉を踊らせるのに似た動き。正常な状態でこれをやられていたら、確かに狂っていただろう。“白き
閃光”のホンの僅か生き残った冷静な部分がそう分析する。そう、今は正常ではなかった。薬物で無理矢理発情させられ、
丁寧に官能で炙られた神経系は、その異物感さえ快楽として許容し始めていた。
こね上げられる乳房と、頸椎を焼く疼き。
脳裏が白く、白く白く染まっていく。高みから高みへ。渇いていく。疼きが灼熱感に変じ、これまで以上に全身を焼く。
同時、異変が起きた。
弾けない。熱が熱のまま、血管を暴走し、神経を短絡させて、それでも頂きに達しない。
昇っても昇っても頂が遠のいていく。
(熱い、……ああ、あぁぁぁぁッ!! 熱い……っ、や、あ、あ、あっ!! 何、これぇぇぇっ!!)
最早苦鳴さえままならない体で、少女は悶え狂った。「あーっ、あーっ、」と切れ切れに泣きながら、綺麗だった細面を真
っ赤に染めて、顔をぐしゃぐしゃにして。
「何、って? 脳神経に私の指を入れてるって、言ったでしょう?」
高ぶりを帯びて艶めいた女の声が、耳朶をくすぐる。
それだけで目がちかちかとするほど、皮膚感覚は貪欲に官能を求め。
「脳内分泌物を、ちょっといじって、ね? ねぇ、私の指が貴方の頭の中をくちゅくちゅってしてるのが分かる?
凄くイイでしょう。でも、足りないでしょう?」
「あーっ! あーーっ、ああぁぁーーーーっ!」
「ねぇ、脚の間が疼くでしょう? さっきからずっと腿を擦り合わせてる」
(そんな、こと……っ!)
「本当よ、自分で見てごらんなさい」
女の言葉とともに、神経を直に犯す愛撫が緩やかになる。
少女は言われるがままに、涙で霞む目を自分の下半身に向けた。
(あ……)
愕然とする。腰が、脚部が。汗を纏い、上気し、まるで自分の体でなくなったように、蠢いていた。パイプ椅子に臀部を擦
りつけて、腿の肉を寄り合わせて。自分の体がこんな動きをするなんて、知らなかった。
ぞくり、とした。
(こんな、こんな恥ずかしい動き方……)
ぐちゅり。頭の裏を舐められた。一際大きな「あ」の音を上げながら、胎内の熱がまた一段階上がったのを感じる。それ
から、脚の間の疼きも。一度意識させられてしまうと、もう堪らなかった。
「指でシテごらんなさい。脚を開いて……知ってるでしょう?」
(や、や……)
マスターベーション。“ホーム”の性教育でその意味は習ったし、訓練や戦闘の後で体が高ぶった夜、ソレの快感を求め
てしまうこともある。けれど酷く恥ずかしくて、自分のそこに指を伸ばすのはごくたまにだ。大抵は枕を強く抱いて、そのま
ま眠ってしまう。
ましてや、ここで。心神喪失状態にあるとはいえ、大勢の人間がいる場所で。
289 :
異能の指先:2006/05/16(火) 20:17:41 ID:nXXsg6PD
渇望と拒絶に震える意識が、脳髄をいらう指に攪拌される。ぐちゅり、ぐちゅり、ぐちゅり――っ!
(やぁぁあああっ! もう無理、やめてっ! もうやめてぇぇぇっ!!)
「狂う? 狂っちゃいそう? スレば楽になるのよ」
(やだあっ、みんながっ、みんながぁぁっ!)
「だから言ったでしょう。みんなは見ていないわ、気にすることなんてない」
(うあ、ああ、あぁぁ……)
女の囁きのままに、少女は堅く目を瞑って、震えながら股を開いた。蓄積していく熱を弾けさせたかった。オルガスムス
の震えが欲しくてたまらなかった。もう何回か脳を掻き回すあの愛撫をされたら、比喩でなしに神経系がショートし、脳髄
を焼いてしまうだろう。自我は完全に破壊され、自分の電流で灼けた脳は自分の見知らぬ誰かとして復元されるだろう。
ジャーム化――今まで手に掛けてきた“ホーム”の仲間達が刹那フラッシュバックする。
「そう、ヒトでいたいのなら……受け入れなさい」
(あ、あ……)
狂うことへの恐怖、それから屈することへの言い訳。
そんな自身の心の動きを、自覚する余裕などなく――
(ここ、さわ……れば……)
あられもなくめくれたスカートの下、とうに濡れそぼって秘所に張り付いた下着へ、少女は右の手指を這わせた。
くちゅっ
薄布越しに粘膜を圧す、粘性の音。
くちゅくちゅくちゅ……っ!
(は……ぁぁあああぁぁぁっ! こ、れぇぇぇっ!!)
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、ッ!」
「そう、もっと激しく、ね」
いつからか女の囁きが自身の思考へ応えていることに、少女は最早気付かない。
溺れていく。果てへ、果てへ、果てへ。
少女の瞳が完全に焦点を失った瞬間、女は掛け金を外した。
同時、乳房を揉み潰し、脳髄をぞろりと舐め上げる。
耐えられない、耐えられるわけがない、人外の刺激。
(あ、は…ふぁ――)
少女の貌は波が引くように脱力し、呆け、
甘美な絶望の予感に、瞳を濡らす。
瞬間、
「あああああああああああああああああああああああっっっ!!!」
喉を絞り上げて、細い肢体を軋ませて、“白き閃光”は絶叫を上げた。
叫びながら、真っ白く染まった頭の中から、何か致命的なものが引きずり出されていく。
その何かと脳細胞がズルズルと摩擦して、それが更に快楽に変わって、この世のものではない悦楽へ変じていく。
白く、白く、白く――――
290 :
異能の指先:2006/05/16(火) 20:18:35 ID:nXXsg6PD
◆
女は崩れ落ちる肢体を抱き留めた。
白かった肌は全身真っ赤に染まり、ありとあらゆる体液でべとべとに汚れたUGNの子。
片腕を半ばから失った、壊れた人形。
「少し調子に乗りすぎたかしら……掃除が大変だわ」
空虚な苦笑を浮かべながら、女は汚れた服を脱がせ、“白き閃光”の裸体を床に横たえる。
「登録ナンバーJ−56471、コードネーム“白き閃光”、今月の非常連絡コードは“シンギング・イン・ザ・レイン”――
どう、合ってる? 合ってるわよね、貴方の頭の中から抜き出したんですもの」
少女は応えない。虚ろな視線を虚空に投げたまま。胸郭が呼吸で上下している以外、生命の気配を失っている。
自我崩壊――脳に保存されていた全記憶を吸い出される衝撃は、精神機能を破壊するのに十分過ぎる。“紫紺の華”
もそうなったように。今までの女の犠牲者がそうなったように。
女はエージェントだ。FHエージェント。作戦目的はこの区域のUGN支部長の確保、ないし暗殺。
そのために、支部内部の人間に成り代わる必要があった。まず不意打ちで“紫紺の華”を仕留め、記憶を奪い、姿を奪
った。そうして後方の安全の確保と共に支部の情報を手に入れ、それから改めて手近な内部職員――“白き閃光”を襲った。
成果は……この通りだ。
「さて、それじゃあ仕上げ、と」
女は白衣を脱ぐと、ハイネックとタイトスカートを放り、ストッキングから下着までも無造作に脱ぎ捨てた。
成熟した女の裸体が――“紫紺の華”の体が――露わになる。妖しく綻び、粘液を湛えた雌芯さえも。
そうして白蛇のようにうねる肢体を、少女に絡みつかせていく。
唇を奪い、舌を絡める。濡れた肌に全身をなする。細い脚を抱くようにして、開いた股の間で少女の秘所を嬲る。
喉がこくりと唾液を嚥下し、汗腺が汗を舐め取っていく。女の陰唇がちゅぱちゅぱと収縮して、愛液を啜る。
変質した女の各器官が、少女の体液を採取し、分析しているのだ。
「んっ、う……ふぅ……っ」
女は小さく鳴いた。くぐもった、艶めかしい吐息。“紫紺の華”を犯した時の彼女の声だと、女は思い出した。小動物が啜
り泣くように体を丸めて、とめどなく涙を流しながら、彼女の魂は静かに悦楽へ沈んでいった。静かに壊れていった。
耳鳴りがして、鼻の奥がツンと痛んだ。無性に哀しかった。
“白き閃光”の記憶が疼いた。あの少女が泣いている。
“紫紺の華”の記憶が疼いた。少女の抜け殻を見つめる、透明な貌の幻視。
人形は弄ばれるまま、声も上げず、ただただ揺れる。
のし掛かり犯す女の痴態は、屍姦の様相。
「ふぅ……はぁ……あッ」
女は少女の脚を掻き抱いた。紅潮した顔を歪め、秘所同士をぐちゃぐちゃに揉み合わせた。
無垢な信頼があった。まだ本当の意味でヒトを疑うことを知らなかった少女は、当人も気付きはしなかったけれど、とて
も無邪気に彼女を慕っていた。先生と呼ぶ声にはなんの翳りもなかった。
無垢への憧憬があった。ヒトを好くことができず、ヒトから目を背け、遠ざけてきた女は、どこまでも無警戒に自分の傍に
立つ少女が羨ましかった。淡く、それでいて素直に隣人を愛せる少女を可愛らしいと思った。
錯綜する想いが、絆(ロイス)が女の中で堅く堅く抱擁を交わした。
抜け殻とまぐわうだけの肉悦より遥かに激しい官能が、女の最奥を焼いた。
「あふうぅぅぅぅっ!!」
甲高い嬌声を上げて仰け反った女の肢体は、華奢な少女のそれに変じていた。
291 :
異能の指先:2006/05/16(火) 20:19:28 ID:nXXsg6PD
2時限目の終了を告げるチャイムが鳴り、生物室からは退屈な授業から束の間解放された生徒達がぞろぞろと姿を見
せた。何一つ不自然な点などなく、当然のように、その少女の姿もそこにある。
体を拭い清め、予め用意していた制服を着込んでいる。姿形はおろか、体臭に至るまでの複製。立ち居振る舞いも当人
の記憶から再現してあった。
壊れた人形は、生物準備室のロッカーで膝を抱えて眠っている。ほどなく後援班が適当に回収するだろう。その後どうな
るかは、少女の知ったことではない。適当に実験体になるか、治療後に洗脳されるか、ダッチワイフにでもなるのか。
少女は
話しかけてきた女生徒
に“白き閃光”の顔と声で応じた。勿論女生徒の顔も名前も知っている。転校初日に話し
かけてきてくれた、最初の友人だということも、“白き閃光”が女生徒と過ごした日々も知っている。女生徒への汚れない
友情と、ちくりと胸を刺す隔意も。
心地良い“白き閃光”の思考回路に身を委ねながら、少女はふと、忘れてしまった自身の記憶に思いを馳せた。
FHエージェント。名うての潜入工作員。それは最早向性に近く、人格とは呼べない。幾度も記憶の吸収と他者擬態を繰
り返すうちに、少しずつ混じり合った記憶は過去を曖昧にしていた。
失われた思い出が恋しくないと言えば嘘になる。
けれど彼女にはいつだって、他者の暖かな記憶がある。なら、どうでもいい。無理に思い出す必要もない――
刹那、脳裏に閃く思考があった。
――私という現象は一つの混沌。
定められた形はなく、
従うべき法則もない。
私は、もはやどこにもいない――
フラッシュバック。唇をニィと歪めた女の顔。長い、しなやかにうねる髪。冷たい瞳。
その瞳は確かに、少女を見ていた。
「どうしたの? 具合、悪いの?」
「……いいえ、大丈夫……」
気遣わしげに声を掛けてくる女生徒を振り切り、少女はわけもなく足を早めた。
どうしてだろうか、一瞬の幻影だった筈の女の瞳が、ずっと自分の背中を追っているように思えた。
292 :
異能の指先:2006/05/16(火) 20:21:16 ID:nXXsg6PD
……以上、お粗末。
>>292 異能の指先
半年待ってた甲斐がありますた。
個人的には超GJです。エグザイル万歳。
GJ!エロエフェクト万歳!
やっぱエロ向き、特にこういう陵辱系の特殊プレイ向きなのはエグザイルなのか
295 :
いつふた:2006/05/16(火) 22:08:24 ID:V1goCetZ
ゲーム:真・女神転生200X(メガテンX 7本目前編)
形式:小説形式(原則三人称)。
レス数:9+1
分割:前後編の前編。
エロ度:和姦。挿入あり。近親相姦注意。
連続性:6本目(『アンク』)の続編。
時節:主に四月頭。
終幕:先が思いやられる。
◇カムド
春。四月の宵。
すっかり暖かさを増した夜。
駅前のショッピングセンターは、既に異界化していた。
ずらりと軒を並べる店舗は、どこも完全にシャッターが閉まっている。たま
に開いている店からは、何の光も漏れてこない。
間接照明。薄明るい通路。
通い慣れた道を通り抜ける足取りですたすたと歩く少年は、一見して高校生
ぐらいの年齢。
徒手空拳。武器の類いは特に何も持っていなさそうだ。
服装は、この季節の装いというにはやや薄着。半袖のTシャツにジーパンを
穿いて、トレーナーの袖を首に巻いて背中に羽織っている。
それはつまり、防具らしい防具を身に着けてはいないということでもある。
与し易し。
舌なめずりをした影が、真上から少年へと飛び掛った。
少年を襲った影は――悪魔と呼ばれるモノは、その一瞬の変化を、最期に目
にしたかどうか。
一撃のもとに悪魔を引き裂いた、今や少年の姿は悪魔よりも悪魔じみたもの
と化していた。
闇色に輝く奇怪なラインが全身に浮かび上がり、右の腕に猛禽の鈎爪めいた
魔晶剣が生えている。
彼は人体そのものに武器を融合するインプラント技術の賜物、“デビルアー
ムズ”。
彼は人間でも悪魔でもない異形の魔人、“人修羅”。
妖鳥コカクチョウとの合体。マガタマ“カムド”との合体。本性を現した彼
を人間と見間違えることは、既に困難を通り越して不可能である。
少年は右手を人間のそれに転じた。更に、自身を覆う輝線を意識的に消失さ
せる。
魔都と変じた東京に進出してきた悪魔達は、往々にして人間の姿を取る。人
修羅にもまた、人間社会に溶け込むために、あるいは敵を油断させるために、
人間に“化ける”能力があった。
「やれやれ、あと何体の悪魔を倒せばここから出られるんでしょうね」
溜息一つで少年は、先ほどまでと全く変わらぬ歩調で再び歩き始めた。
―〜―〜―
雨が降っている。
曇天。鉛めいた黒雲は重く湿って地に垂れ込める。
光。赤い光。地面の方から、遠方の空から、集まってくる。次々と。
遠く、雷光に浮かび上がる高い高い塔の上へ、まるで急き立てられるように
集まってくる。
赤い光。赤い光。苦しみ悶えて死に逝く者が流す、血の涙のように。
その光景を眺めながら、身じろぎもせずに座っている少年。
彼の腕の中に、あたたかないのちがある。安らいで、眠っているかのような
少女。柔らかなぬくもり。悪夢のようなこの世界で、それだけは確かな現実。
けれどその現実は、何と悲しい現実だろう。
彼女の身体は徐々に衰弱していく。今ここにあるいのちは、ただ消えゆくの
を待つだけのいのち。このあたたかさも、ぬくもりも、間もなく冷たいものと
なる。
「見えるかい? もうすぐ世界が終わるよ」
少年は少女に話しかけた。
轟音。全身を打ちのめす。
空が裂ける。大地が砕ける。
突風。業火。大量の水。
それでも塔は揺るぎなく立っている。
赤い光が集まっていく。
赤く、一つに集まっていく。
「きみをこんな目に遭わせた、この世界が死のうとしているよ」
少女はゆっくりと瞼を開けて、同じようにゆっくりと言葉を紡いだ。
「うん。見えるよ」
少女の声に、恐怖はなかった。
自分の終焉が早いか。世界の終末が早いか。
覚悟というより、それは諦念。
諦念というより、それは受容。
絶望を認めて、最期を待つだけ。
死の恐怖など。もう、磨滅してしまったのだ。
「とどめが欲しいかい?」
少年の哀しい問いかけに、少女は首を横に振った。
「お兄ちゃんさえ、よければ。このままこうして……抱いていて」
弱々しく差し伸べられた手を取り、少年は彼女の背中を支えて横抱きにする。
彼の胸に頭を預けてくる、大切な少女。
大事な妹。
小さくて泣き虫で可愛くて、好きで好きで大好きで、素直に優しくしてやれ
ず、しょっちゅういじめた幼い日。
何度も何度も泣かせたのに、お兄ちゃんお兄ちゃんと呼び慕って、泣きなが
らでも追い掛けてきてくれた。精一杯、彼の方に手を伸ばして。
その手を、もしもあのときしっかりと握っていれば。
こんなことには、きっとならなかったのに。
長じて兄は“異形”となり果て、それゆえ、妹の前から姿を消した。
再会――彼が彼女を一方的に『見つけた』とき、彼女も彼と同じ“異形”と
化しており、……恐らくはその“異形”のせいで、迫害されて……何人もの男
達から、思い出すのも憚られるほどおぞましい仕打ちを一身に受けていた。
激昂。彼は怒りに我を忘れて、そいつらを皆殺しにして。
血溜まりの中、助け起こされた妹は、繰り返し繰り返し、兄にこう囁いた。
――殺してください……殺してください……殺してください……。
彼の懸命な、必死の看護のお陰か、やがて彼女は正気を取り戻した。けれど
もそれは、彼の独り善がりな自己満足だったのかも知れない。
あのまま彼女を狂気の中にとどめておいてやっていれば。そうして、そこで
死なせてやっていれば。
今日まで彼女は、苦しみながら生き続けることはなかったのだ。
少年は少女の髪を撫でた。
「壊れた世界は、新しく生まれ変わるというね」
「うん」
「次の世界は、きみに優しくしてくれるだろうか」
「世界は優しいよ。こうしてお兄ちゃんに会わせてくれたもの」
少女の喜色に、思わず知らず流れて落ちた、少年の一粒の涙。
「こんな世界が……優しいものか…………っ!」
それは悔し涙。
無力な自分を憤る涙だ。
「ぼくはずっと、生まれてきたことを後悔していたよ」
死にゆく最愛の少女を抱えて。
「自ら命を絶つ勇気もない自分が、ずっと嫌いだった。情けなかった」
壊れゆく世界を目の当たりにして。
「だけどもし、生まれ変わった世界に、このぼくも生まれ変わることができた
なら。今度は世界を変えられるぐらいに、強い力を手に入れてみせる。必ず」
ああ、誰が正気でいられるだろう。
「ぼくは強くなる。今度こそきみを護ってみせる」
そしてぼくは、自分の狂気を言い訳にして。
「きみを不幸にする全てのものから、きみを守ってみせるよ」
きみを抱いて、きみに抱かれて。
「だからきみも生まれ変わって、今度こそ……今度こそ、幸せに」
壊れて、死にたい。
「お兄ちゃん」
ふと、きみの掌がぼくの頬に添えられた。
「大切なひとと、大切な時間を、大切に過ごすことができるなら」
子守唄のような穏やかさで紡がれる言葉。
「これ以上の幸せなんて、どこにもないよ」
きみが身体を起こして、そっとぼくに口づける。
「抱いてくれてもいいよ。お兄ちゃん」
それはきみが先程望んだ『抱く』とは明らかに違う意味。
きみにその言葉を言わせてしまうほど、なんて小心者のぼく。そんなにも、
きみが望んだという免罪符が欲しいのか。
「お兄ちゃん。……抱いて」
卑怯者! ぼくは自分を罵りながらも、きみの唇を貪った。
止まらない。止められない。
着衣を剥ぎ取り、互いの裸身。
きみの素肌に、ぼくは所有の印を刻んでいく。
愛して。ぼくを愛して。その想いを塗り込めていく。
兄としてではなく。一人の男として、このぼくを愛して。
弱り果てたきみの身体が、ぼくに触れられて震える。
残りのいのちを燃やしきり、薄桃色に上気する。
しっとりと汗。二人の肌が馴染む感触。知らず知らずこみ上げてくる嬉しさ。
――大切なひとと、大切な時間を、大切に過ごすことができるなら。
――これ以上の幸せなんて、どこにもないよ。
「っあ……!」
仰け反るきみの首筋に愛咬。
指先で辿るきみの狭間。そこは懸命にぼくを受け入れる準備をしていた。
気持ちばかりが急いて、半ば無理矢理、ぼくはきみに侵入する。
痛苦の歪みは、一瞬で。
きみは笑顔を浮かべてくれた。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「ありがとう」
ぼくの方こそ、きみに感謝を。
世界は、多分、本当は優しい。
「もっと早くこうしたかったよ」
世界が壊れる音を聞きながら、ぼくはきみに打ちつける。
「もっと早く、きみとこうしたかったよ」
世界が砕ける音を聞きながら、ぼくの全てを打ちつける。
「愛してる……愛してる……愛してる……愛してる……」
ぼくはこの指できみを確かめる。
ぼくはこの舌できみを確かめる。
きみが生きていた証を、ぼくが最期に確かめる。
ぼくが生きていた証を、きみの中に放つために。
「ぁ……はぁ……はぁ……っ」
ぼくに組み敷かれ、ぼくに貫かれている、きみの身体。小さな身体。
傷つき、疲れて、やつれ果て。打ちのめされて、死に瀕し。
だのに何故、これほどまでに美しいのか。
吐息。喘ぎ。数知れず繰り返される呼気の合間に、何度も繰り返す口づけ。
「生まれてきて、よかった」
世界が死に逝く断末魔の絶叫が響き。
ぼくの耳にはきみの声だけが届く。
「……生まれてきて、本当に、よかった……」
その微笑みと共に、きみは永遠の眠りに就く。
きみのいのちが、ぼくの腕から滑り落ちていく。
泥の波にでも呑まれたのか、不意に辺りが重く真っ暗になって。
ぼくの意識も、一瞬で途切れた。
世界は壊れ、また生まれ変わる。
生まれ変わったその先で、もう一度、いや、今度こそ。
―〜―〜―
『あの子を護る』。物心ついた頃から、それがぼくの生きる目的。
あの子の生まれ変わりがどこにいるのかわからない分、なお一層その思いが
ぼくを駆り立てていた。
生来不随の右腕。武道を修めるに、それはあまりに大きなハンデ。かといっ
て、ぼくに魔術の才はなく、神々や悪魔と交信する能力もなかった。
邪教の館の内部に“魔匠”正宗の鍛冶場を見たその日、ぼくは何の躊躇いも
なく、この動かない右腕に魔晶剣を埋め込いたいと願い出た。そこに悪魔を合
体させれば、仮初めの右腕は真贋見紛うほどの精巧な義手となるから。
そうまでして得た力を元手に、あの子を探して、戦って。
やがて、時の翁の眷属を名乗る男からマガタマ“カムド”を受け取ったとき、
瀕死だったぼくは迷うことなくそれを自分に宿した。人間として死ぬより、異
形の魔人として生きることを選んだ。
前世のぼくは、自らの意志に反して“人間”である自分を失った。
現世のぼくは、自らの意志に従って人間であることをやめた。
あの子のためなら、ぼくは何だって手に入れる。何だって捨ててみせる。
世界があの子に優しくないなら、あの子に優しい世界を、このぼくが創る。
あの子を愛したい。あの子に愛されたい。
いつか想いは届くだろうか。
いつか願いは叶うだろうか。
逢いたい。逢いたい。
今はただ、あの子に、逢いたい。
――次の一撃。受けきれなければ、ぼくは死ぬ。
少年はギリッと唇を噛んだ。
精霊アーシーズ。一対一、しかも本来格下の相手であるが、こうも連戦し疲
労が蓄積した今となっては、とてつもない強敵だった。
閉店間際のショッピングセンター。ビル丸ごとの異界化に巻き込まれて以来、
一体どれだけの時間が経過したのか。
何人かの死体を見た。
何体かの残骸も見た。
やがて自分も悪魔と遭遇、戦闘になって……これで何度目の戦いだろう。
ゴォッと吼え猛る悪魔。のしかかるような突進。回避できるか、それとも。
「ホー!?」
「きゃー!?」
どさどさっ!
落下物が天井からアーシーズへ。
互いに激突、驚き怯んだ精霊は攻撃を中止して一旦距離を空ける。
ころころん、と床に転げ落ちたのは、一方は悪魔。一方は人間と思しき少女。
「あたたたた……。も〜ぉ、何回落とし穴に落っこちたら気が済むのぉ」
「ゴメンだホ〜ぉ」
情けな〜い、声。
でっかい頭にまあるい身体。気弱な表情、愚鈍な喋り口。青い頭巾の、それ
は言わずと知れた妖精ジャックフロストであった。
少女はちょっぴり涙を浮かべた瞳で、ぶつけた腰を撫でさすっている。男の
子みたいな短髪の頭にプレート・バンダナ、ポケットの中にごちゃごちゃとア
イテムの詰め込まれたサバイバルベストを着ている。
「……あれ?」
ぱちくり、両目を瞬かせ、少女はまず、少年を見た。
全身の輝線。それは人修羅の証。右手の鈎爪。知識さえあれば、それがイン
プラントされた魔晶剣であると推察することは容易だ。
「……おや?」
そしてまた、少年に相対する悪魔を見た。
岩石めいた殻にくるまる泥人形のような姿。地水火水の下位精霊のうち、大
地の力がこごってなるモノ。
「えっと……お邪魔、かな?」
反応に困って、ぽりぽり、頭を掻く仕草。
ゴワアアア! 突然アーシーズが絶叫。もはや問答無用の呈。
「わあ、怒った!」
少女は慌てふためいて立ち上がった。
「お願い、お手伝いするからあの悪魔さんやっつけて!」
そう少年に頼みながら、少女はポケットの中から白色と黄緑色のクレヨンを
取り出した。その手際は手品のよう。壁に素早く何かを描きつける。
それは刻印。悪魔に固有の紋章。
「出てきて、ヘケとん!」
ばん! と拳で叩きつけた途端、壁の一部が崩落した。
否、壁の一部が崩落めいて、一体の悪魔と化したのだ。
顕現したのは蛙頭の女神。そはラー神族の聖獣ヘケト。
両生類質の肌と瞳とを有する、麗しい女神官姿。
「何ノ、用デス?」
「あのひとの怪我を治してあげて欲しいの」
「イイ、デショウ」
生命と再生を司るモノが、その両腕を少年へと伸ばした。
「《ディア》」
賦活。少年の傷が癒され、痛みが失せた。それも予想より大幅に。
驚きを含めて少年が見返すと、少女はにへへと得意げに笑った。悪魔召喚、
“式神使い”の能力。恐らく召喚悪魔に悪魔合体を繰り返し、《ディア》を複
数回継承させて、その威力を強化してあるのだ。
――お願い、お手伝いするからあの悪魔さんやっつけて!
契約の前段は執行された。ならば後段を実行するまで。
激しくその身を震わせて突進してくる精霊をいなし、《気合》を込めた人修
羅カムドの鉤爪が、大地の固まりめいた悪魔を易々と引き裂いた。
ありがとーヘケとん、とヘケトの両手を握って上下にぶんぶん振る少女。ヘ
ケとん、というのは女神の呼び名らしい。妙な仇名で礼を言われた女性格の聖
獣は、グッグッと上機嫌に喉を鳴らして魔界へと還っていった。
次いで少女は少年に向き直り、ペコリと頭を下げた。
「助けてくれてありがとう」
「こちらこそ、助けてくれてありがとう」
少年も少女に頭を下げた。
妖精ジャックフロストは、少女の背中にしがみつき、ビクビク人修羅の様子
を窺っている。
「ん? どしたのJ?」
その妖精をJと呼んで、少女はJに尋ねた。
Jは答えた。
「こ、こ、怖いホ〜ぉ」
「怖いったって、普通の人修羅さんだよ? 前にも会ったことあるでしょ?」
『普通の人修羅』って何なんだ。と少年は内心でツッコミ。
ともあれ、少年は少女と初対面だ。悪魔の個体識別は難しいが、こうも気弱
なジャックフロストにも面識はない。
恐らく、少女は少年以外の人修羅に、どこかで会っているのだ。噂だけでも
数人しか確認されていない、稀有の存在たる人修羅に。
だが、そうおかしな話でもない。黙示録の東京。この魔都に、各地の人修羅
達もまた、次々集っているはずだから。
「だってお手々が怖いホぉ。前のは普通の手だったホぉ」
「そのかわり、変態行為はしてないよ?」
「そ、それもそうだホ」
ジャックフロストは気を取り直したらしかった。
どーでもいいけど、と少年は呆れた。前に少女が出会った人修羅。
――この子が見たとき、変態行為をしてたのか。
どんな奴だかちょっと会ってみたいかな、と思った。
少し考えて、やっぱり会いたくないや、と思い直した。
「きみはぼくが怖くないんですか?」
右手を人間形態に変化させながら、少年は少女に訊いた。
「怖いよ、すっごく」
平然と少女は答えた。
「でもね、とっても綺麗だから」
「綺麗?」
「うん、綺麗だよ」
恐ろしい、気味が悪い、禍々しい。彼に与えられる形容詞は精々そのような
もの。お調子者の悪魔がカッコいいと表現したことはあったが、綺麗と褒めら
れたのは流石に初めてだった。
「そうですか?」
微妙な照れ臭さが先に立ち、少年ははにかむ。
「それにね、」
大切な物がそこに入っているかのように、少女は両手を胸に当てて。
「なんか、こうして傍にいるだけで、この辺があったかくなる感じがするの」
「イヨちゃん、アンクのときもおんなじこと言ってたホ〜」
「だっておんなじなんだもん」
ジャックフロストのツッコミを受けて、少女はぷんとむくれた。
それから少年に尋ねる。
「人修羅さんって、みんなそうなのかな? 会うとあったかい感じがするもの
なのかな?」
「さあ、それはぼくにはわかりませんけど」
少年は、つっと少女に歩み寄った。
「もしもぼくが、前世ではきみと兄妹だった、……と言ったら。きみは信じま
すか?」
少女は茶目っ気たっぷりに返す。
「信じない、と言ったら、その言葉を撤回するの?」
否とも応とも取れるその言い回しに微苦笑して、少年は更に問いを重ねた。
「きみはぼくを見て、何も思い出しませんか?」
「それは思い出した方が楽しいこと?」
わくわく尋ねる少女に、少年は少し悲しい顔をした。
「いいえ。多分、思い出さない方がいいことです」
「そっか。じゃあ詳しくは訊かないでおくね」
そのとき、我知らず少年の指が少女の髪に触れた。繊細なガラス細工を扱う
かのように、そっと。
なぁに? と少女は目顔で少年に問う。
少年の瞳に揺れる、切羽詰った感情。何度か口ごもって、……意を決したよ
うに、こう切り出した。
「済みません。きみのこと、今すぐ抱きしめたいんです。構いませんか」
唐突な申し出。しかし少女は特に驚きもせず、暫くのあいだ思案し、……や
がて、微笑んだ。
「鯖折りとかしないんなら、いいよ」
冗談混じりの許可を口にした直後、彼女は彼の腕の中にいた。
それは優しく、狂おしい抱擁。
ぬくもりは、どこか懐かしい匂いがした。
「逢いたかった……逢いたかった……やっと、やっと、やっときみに、きみに
逢えた…………!」
震える声は、まるで涙のようだった。
少年に抱き寄せられたまま、少女は僅かに身じろぎをした。痛いのか、苦し
いのかと少年が力を緩めると、ふわり、彼の後頭部を撫でる掌の感触。
「逢えてよかったね」
嬉しいような、くすぐったいような。少年はクスリと笑った。
「っ!?」
瞬時知覚する気配。敵かと我に返った少年。少女を庇い、一閃したその白刃
を、即刻現出した鉤爪で受け止めた。
そこには彼に向けて太刀を振り下ろした一人の少年。怒りのこもる低い声で
告げる。
「イヨから離れろ」
彼の面貌には暗色の輝線。
二人の、否、二体の人修羅の、それが出会いであった。
本日はここまで。
次回投下は今週末の予定。遅くとも来週末までには何とか。
>保管庫の中の人
言ったつもりで言いそびれていました。更新お疲れ様です。
>292
あの伏線が、この展開につながりますか。驚きました。
敵である先生の中に、味方である先生の記憶が甦って、白き閃光を助けてく
れるのかと期待していたのですが。
うーん、こういう展開はやっぱり苦手だなぁ。
306 :
名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 09:50:37 ID:VKpyN2kt
>292
長い期間をかけての完成、ありがとう(あれ、なんかちがう?)
GJです。
忙しいとは思いますが、新作が読める日を期待しております。
やっぱ、DXいいなぁ(遠い目をしつつ)
>いつふた様
怒濤のGJデス!!すごいペースで、仕事中に読まないと追いつけません。
どうしてくれるんだ!(うれしさ爆発の笑顔で)
メガテンXは、わからないのですが、こぉいうのを期待して買ってもいいんかな?
おしえて、エロい人!
夢見る人形
(ブレイド・オブ・アルカナ リプレイ「ディングレイの魔核」より)
あの事件から数日、僕ことエルトリウムは今日も今日とて、日銭を稼ぐことで毎日が過ぎてゆく。
世界を救った英雄だって腹が減っては、本当にどうしようもない。
街角で笛を吹いて、酒場で笛を吹いて・・・とりあえずの日銭を稼ぐ。
いつか覇王と成る日迄!! ・・・本当にいつになるかは解らないけど。
そして、寝倉にしている下町の崩れかけというのがふさわしい、我が家に帰ってくる
「ただいま・・・つっても返事が返ってくることはないけどさ」
と、ドアを開ける。独り言をつぶやきながら
「おかえりなさい」
・・・
・・・・・・
「何で返事が帰ってくるんだ!! てゆうか誰!?」
僕は驚き、仕込み笛を鞘走らせようとした。
「・・・私だけど」
そこには数日前に大冒険を一緒にやった仲間である、一体のクレアータの少女が立っていた。
「ステビア!? 何でここにいるのさ」
「……他に行くところ無かったから」
308 :
夢見る人形:2006/05/17(水) 20:50:14 ID:h9GkaoZX
彼女とは冒険の後、分かれたはずだ。もう二度と会わないと思っていたけど。
「で、何しに僕の所へ?」
「……あの事件の黒幕、トレハロースを追っている。手がかりを探す」
トレハロース、それは僕の父親である、エクセリオの仲間にして親友。そして闇の鎖に捕らわれ今は行方しれずだ。
「僕は知らないぞ、彼の行方は」
とりあえず、厄介ごとに巻き込まれない為、そう言ってみる。なんにしろ、彼女は苦手だ。
「……だから、一緒に手伝って。情報を調べるのはあなたの役目」
「ごめんこうむ……」
ステビアは悲しそうな顔をして僕をにらみ
ドスン
金貨の詰まった袋を目の前のテーブルに置く
「やらせていただきます」
ちなみに、断ろうとしてから0.2秒の早業である。さすが僕。
「で、今日の所は遅いから、調べるのは明日って事で」
僕は袋に手を伸ばそうとすると、すっと引き上げられ
「……成功報酬」
「さいですか」
さすがに期待を裏切らない。お約束だ。
まあいい、僕は英雄の息子だ心は広い!!
309 :
夢見る人形:2006/05/17(水) 20:50:46 ID:h9GkaoZX
「で、今夜は宿は決めているのか? なんなら案内するけど?」
「いい、ここに泊まる」
をい!!
「悪いけど、ここにはベットは一つしかないんだ」
「……見れば解る」
相変わらずマイペースで強引で容赦のないステビアの台詞
「じゃあ、僕は何処に寝るんだ?」
「……ベット」
へ?予想外の答えだ、てっきり僕に床に寝ろと言うと思っていた
「じゃあ君は?」
「……一緒に寝る?」
まて!!
「まて、ちょっとまて、結婚前の男女が床を一緒にするのはどうかと思うよ、おにーさんは!!」「じゃあ、床に寝る」
「女性を床に寝かすなんて出来るわけ無いだろ」
「……見た目だけ、私は人形だから」
「見た目だけでもそうでなくても、女性を床に寝かすなんて出来るわけ無いだろ!!」
「じゃあ、一緒に寝る」
こ、こいつ僕が床で寝ると言うのを見計らって居るんじゃないだろうな?
「じゃあ、一緒に寝てやろうじゃないか!!」
310 :
夢見る人形:2006/05/17(水) 20:53:24 ID:h9GkaoZX
あ、売り言葉に買い言葉? つーか何を言っている僕!!
「……最初からそう言えばいいのに」
……何か、とんでもなく取り返しの付かないこと言ってませんか?僕
「……でも、その前に」
「は?」
「おなかすいた」
……さいですか。
続く
ちなみに、リプレイしか読んでなくてルルブ持ってないので世界観とかかなりテキトーです
続きはたぶんエロイ展開になると思う
どんなベットシーンするか悩み中
311 :
異能の指先:2006/05/17(水) 23:17:16 ID:geaGoI0f
最後なのでマルチレス失礼。
>>293 待っててくれてありがとうでス
>>294 力のキュマイラ・技のエグザイル・力と技のソラリスということで
>>305 迷ったんですがバッド路線でまとめました。今度はラブいのを書こうと思います。
それはそうとそんな貴方にグッドジョブ。執筆速度と質・ネタの両立、あやかりたいくらいで。
>>306 新作……が、頑張ります。
>>310 乙&GJ。続きワクテカしてやすよ。
ところでブレカナ3rd好評発売中。楽しいよー?
312 :
異能の指先:2006/05/17(水) 23:21:48 ID:geaGoI0f
……途中で送信してしまった。連投失敬。
その他、GJとか乙とかくれた方々、ホントにありがとさん。
そんじゃあ名無しに還る。何かまた投稿することあったらお付き合い願えると。
くそう、みんなGJすぎる。
このスレってこんなに神祭りな場所だったっけ?
読むのが追いつきませんがーっ!?
今週末にシナリオ上げて会報印刷しなきゃ行けないのにーっ!?
印刷が終わったときのご褒美にすればいいじゃない(マリー
316 :
夢見る人形:2006/05/19(金) 21:03:24 ID:oTDDKunl
夢見る人形 続き
で、あれから2時間経った。食事を作って、振る舞って・・・
てぇ!!僕しか働いて無いじゃないか!!
「じゃあ。寝るけど。本当に一緒で良いんだな?」
「……うん」
無表情に応える彼女、恥じらいも何も無しですか?
「まあ、僕にはその気はないから、間違いなんて起こらないとは思うが」
「……襲われたら……斬る」
断言ですか、断罪ですか。ステビアさんの攻撃では僕はひとたまりもありません。
勘弁してください
「じゃあ、僕は壁側に先に入っておくから」
「……(こくん)」
無言で頷いた、彼女。まあいい、壁側ならベットから墜とされる危険性もない!!
有る意味逃げ場もないけどな!! ってぇ、それはそれで危険じゃないか?
まあ、いろんな事を考えながら先に毛布に入り壁側に移動壁に向き、ステビア側を背に!!
パサ・・・
ん? 衣擦れの音? っていうか、まだ彼女の気配はベットの外なんですが?
何となく気になって彼女の方を向いてみる
317 :
夢見る人形:2006/05/19(金) 21:04:00 ID:oTDDKunl
「……」
彼女は一糸まとわぬ姿で、服をたたんでいた……
「何してんの!?」
「……服着て寝ると、皺になる」
まあ、そうでしょうけどね、つーか裸で寝るんですか?
それはそれで萌なので許す!!
…
……
いやちがう!!
「そ、そうは言ってもね、その格好はどうかと」
「……風邪はひかないから」
まあ、クレアータだしね、ってそうじゃなくて!!
ヤバイ、非常にヤバイ、つーか自分の視点が制御できません。今日は眠れないかもしれません。
自制心を性欲が越えた瞬間、僕の命が終わるのですね。
「……となり入るよ」
「あ?…はい、どうぞ」
そのまま僕の隣に入ってくる、柑橘系の甘酸っぱい香りがする。
僕はとりあえず壁側に向き直り、
「平常心、自制心。父さん見ていてください。僕はこの試練を乗り越えて見せます」
「……うるさい」
裏拳炸裂、あんた良いパンチ持ってるね?
318 :
夢見る人形:2006/05/19(金) 21:05:15 ID:oTDDKunl
そして長い夜が始まった。
意識しない自信は、ちょっと前までは備わっていた。
なんて言うか、苦手意識とか恐怖感とか天国から手招きしている幻影の父さんとか。
まあ、なんだ。そう言った物が有ったから欲望っていうか性欲も湧かなかったわけだ。
だけど、彼女の全身を見てしまい、それが隣にいるという状況は、意識するなと言う方が難しい。
ぶっちゃけ、心臓から送られる血が海綿体に一気に流れ込んでいるような気がします。
時々寝息も聞こえます。しかも妙に艶めかしく感じてしまいます。
一緒に旅をしているときは、こんな意識は全然無かったのに。不思議不思議。
「……エルト……起きてる?」
ステビアさんのつぶやきが聞こえます。ええ、いろんな意味で起きてますとも。
「ん?、ええ、どうしました」
「……手つないでも良い?」
なんでですか!?
「どうして?て、手を?」
「……なんとなく……誰かが一緒にいてくれると……安心するから」
その声に孤独感を感じた。
そうか、彼女にはもう誰も居ないのだ。親であるマルボーロ、姉、兄。すべてこの世の人ではない。
そしてその孤独感は、僕にも覚えがあった。
英雄エクセリオ、僕の父は偉大だった。そしてその活躍故に家に帰ってくることは少なく、僕と母はいつも孤独感を味わった。
そして、既に僕もその両方、父と母を失っている。
何となく、彼女に共感してしまった。
「わかったよ」
彼女の手を握る
柔らかい。暖かい手。恐ろしいほどの剣戟を繰り出す手には思えないほどの柔らかさ。
「……ありがとう」
319 :
夢見る人形:2006/05/19(金) 21:08:57 ID:oTDDKunl
ちょっと、普通の、彼女を知らない人間なら気づかないほどの照れが、そこにはあった。
僕もちょっと照れくさくなった。
「……エルトの手、大きくて暖かい」
ぐはぁ。そんな台詞、ステビアさんから聞けるとは思っても見ませんでしたよ?
僕の心にクリーンヒットですよ?
ヤバイですよ? さっきの共感で、散っていた血が、また局所に集まってしまうじゃないですか?
「ステビアさんの手だって柔らかいし、暖かいよ」
雰囲気を出してどうするよ僕?
「……どうしたの? ドキドキしてる」
そりゃあ、ドキドキもしますよ?
「ね、寝ましょうよ、明日から色々あるんですし」
駄目です、何かもう一つリアクション有ったら、心の安全弁は吹っ飛びます。
「……そうだね、おやすみ」
ステビアさんの手が”ぎゅ”って僕の手を握りました。
それがとても心地好かった。
続く
寸止めしてみた。悪気はない、許してくれ
その、何というか書いていて自分で照れた。あまりの初々しさに
というか、初々しいエロ書くの初めてなのでより悩みは深い
続きは週明けか明日の夜かです
GJ!!
ステビアで萌える日が来ようとはおもわなんだ。GJ。
あら、とっても良いお仕事ですわね。
>319
エルトがとてもエルトらしくて良いと思いました。特に、
>まあいい、壁側ならベットから墜とされる危険性もない!!
この次の行に、
>有る意味逃げ場もないけどな!!
この文が来るあたり。
全身くまなく、ヒトならぬ者達の似て非なる紋様。
危険を察して仲魔のところまで退がった少女は、途方に暮れて二人の少年を
見遣った。
片や重厚な戦国刀を手にした人修羅。容貌は冷たく整っているが、彼の両眼
には炎熱の意志が込められている。
片やその腕に鉤爪を有する人修羅。温かみのある柔和な面立ちだが、その瞳
には氷雪の思惟が宿っている。
殺気は顕わ。殺意は如実。急激に高まる緊張感。
限界。刹那。鋭光、過たず相手の肉体を捉える。
「ダメーっ!」
身を挺し、少女が間に割って入った。
激痛、いやさ死をも覚悟の、右手と左手、真っ直ぐに二人を止める。
ぎゅう、と瞑っていた目を恐る恐るあけてみれば、気勢を殺がれた少年二人
が、憮然として矛を、正確には太刀と鉤爪とを収めているところだった。
「よ……よかったホ〜」
腰を抜かした妖精が、ヘナヘナその場にしゃがみ込む。
「イヨちゃん、殺されちゃうかと思ったホ」
「ん、イヨも、ちみっとだけそう思った」
ほ、と息を吐いて、少女は、幼い子供を叱るように、人修羅達に言った。
「同じ仲魔なのに、ケンカしちゃダメだよ」
ここで彼女が言う『仲魔』とは、彼女と妖精ジャックフロスト、又は聖獣ヘ
ケトとの関係のような間柄を意味しない。同種同族という意味だ。悪魔は一般
に同種同族を仲魔と見なして、原則、戦闘は回避しようとする。勿論この原則
は、全く別個の人間がマガタマと合体することでそれぞれ変じた人修羅達には
これっぽっちも通用しないが、少女は委細構っていないようだった。
無言で睨み合いを続ける少年達の雰囲気を和ませようと、少女は賑やかさを
演出した。
「ではここで改めて自己しょうか〜い。イヨの名前は玉造伊予。玉造は勾玉を
製造するって書いて、伊予は伊予柑の伊予。まだ“異能者”だけど、悪魔召喚
なら、ちょびっとできま〜す」
目顔で促されて、子供めいた悪魔がぴょいと飛び上がる。
「オイラ妖精ジャックフロストだホ。名前はJだホ。いつかフロストエースに
なるのが夢だホ」
少女のお願い目線に耐えられず、少年の一方がぶっきらぼうに口を開いた。
「おれはアンク。マガタマ“アンク”の宿主だ。少しばかり剣を使う」
他方の少年も、固い声で告げる。
「その伝でいけば、ぼくはカムドと名乗るべきですね。マガタマ“カムド”の
宿主で、見ての通り、魔晶剣をインプラントしています」
「アンク、カムドさんはさっきイヨのこと助けてくれたんだよ。カムドさん、
アンクはこの前イヨのこと助けてくれたんだよ」
だから仲良くしてね仲良くしてね仲良くしてねっ、という無言の懇願。
伊予に向け、カムドは穏やかに告げた。
「カムドでいいですよ。さん付けは要りません」
「そう? じゃあイヨのことも普通に呼び捨てしてね」
伊予に向け、アンクは優しく叱った。
「異界に入るときは、もう少し装備も調えて、仲魔も数を募った方がいい、と
言っておいたはずだけど?」
「てへへ、表層だけ覗いて帰るつもりでいたら、落とし穴にはまって下の階層
に落っこっちゃったの」
「ならおれが出口まで送るよ」
「ならぼくが出口まで送りますよ」
期せずして、人修羅達の台詞が揃った。
再び睨み合う二人。火花を散らす視線の牽制。
「ええと……それがね」
伊予は困ったような顔。
「さっき悪魔さんに聞いたんだけど、ここ、出口が一つしかないんだって」
出口が一つしかない場合、往々にしてそれは異界化の“核”であるこの世界
の主、いわゆるBOSSが守っているものだ。
「先へ進むしかない、ということですか」
カムドが嘆息した。
「でしたら、きみは“静寂の間”で待っていてください」
「“静寂の間”なら、あちらに一つあった」
アンクの先導で、3人と1体、もとい3体と1人は、通路の奥へと歩き始め
た。“静寂の間”は、異界の迷宮に時たま存在する完全中立地帯。悪魔であれ
人間であれ人修羅であれ、そこにいれば他者から攻撃を受けることはない。
「……あのさ」
おずおずと伊予が提案した。
「イヨも一緒に行くって、ダメかな?」
「ダメです」
「危ないだろう?」
人修羅たちは挙って反対。伊予は負けじと反論する。
「でもほら、BOSS戦は人数がいた方がいいし、イヨだって何にもできない
わけじゃないし、ただ待ってるだけなんてつまんないし、……って、そうだ、
アンク、今日はDさんは?」
「ここに来てすぐはぐれたんだ。無事なら、どうせ目指す場所は同じだよ」
「だけどさ、丁度いいタイミングで合流できるかどうかわからないでしょ?」
「それは確かにそうだけど」
その間に、Jがカムドに、Dとはアンクの仲魔の妖精ルサールカのことであ
ると教えた。
「あのさぁ……二人とも、自分一人でBOSS倒そーとか考えてない?」
考えていた。口には出さなかったけれど。
「二人で協力した方がいいよ。絶対にいいよ」
伊予の言葉は尤もだったが、信用なるかどうか今一つわからない者と組むぐ
らいなら、単身で挑んだ方がマシ。それも戦場の常識だ。
「アンクとカムドは、出会ったばっかで何だか仲が悪そうだけど、アンクはイ
ヨに親切にしてくれたし、カムドだってイヨに親切にしてくれたし、だったら
イヨがいれば仲良く協力できるんじゃないかなぁ」
アンクはカムドを見た。
カムドはアンクを見た。
そして意見の一致を見た。
「わかった。おれたち二人で協力してBOSSを倒すよ。だからきみは、Jと
“静寂の間”で待っていてくれないかい?」
「本当に? 本当に仲良くしてくれる?」
「勿論。だからそんなに心配しないでください」
伊予は納得し難い様子で何かを訴えるように二人を見上げていたが、そのう
ち、うん、と頷いた。
“静寂の間”。そこは異界化する前は喫茶店だったようだ。壁際のソファに
伊予を座らせる。彼女と入口との間にJを座らせる。
「これ。持ってって」
伊予は二人に、ありったけの魔石とチャクラドロップとを差し出した。
「必ず無事に戻ってきてね。二人揃って帰ってきてね」
「ああ。約束するよ」
「いい子で待っていてください」
少年達は少女に手を振り、“静寂の間”の扉を閉めた。
キィ、パタン。
そうして、ふう、と大きく息を吐き。
「……ちゃっかり追いかけてきそうな気がします」
「奇遇だな、同感だ」
何となく顔を見合わせて、どちらからともなく、再び大きな溜息。
二人は周囲を警戒しながら、最下層へと、油断なく階段を降りていった。
ややあって、口火を切ったのはアンクの方だった。
「おまえも彼女の前世の関係者か」
それは質問ではなく確認。お互い、一目でそのことは感じ取っていた。
カムドは答えた。
「ぼくは、あの子の兄でした」
「ああ、彼女を置いて行方不明になったっていう?」
苦笑、というには苦すぎる笑いがカムドの頬に浮かんだ。
「仕方がなかったんです、ぼくは“異形”化してしまいましたから。あの子を
巻き込まないためには、そうするしかなかったんですよ。……きみは?」
アンクは答えた。
「おれは彼女を“異形”にした張本人だ」
怒るだろうと予想していた。むしろ怒らせるつもりだった。
が、彼は意外と冷静な反応を見せた。
「そうですか、きみがあの子を庇って死んだというあの子の恋人だったんです
か」
前世、彼女はアンクと出逢う前に兄と生き別れ、アンクと死に別れる前は、
兄と再会していない。それは即ち。
「じゃあ、おれが死んだあとにも、彼女は無事だったんだな?」
希望のこもった台詞は、絶望的な沈黙の前に、やがて霧散した。
呟くように、少年は尋ねた。
「……何があったか、訊いても構わないか?」
「知らない方がいいですよ。あの子だって、知られたくはないでしょうし」
言葉を濁したことが、却って彼女の身に起きた悲劇の陰惨さを物語っていた。
「そうか……」
「言っておきますけど、きみを恨むつもりはありませんよ、ぼくにはね」
意外の上にも意外な言葉に、アンクは驚きに打たれてカムドを見遣った。
彼女の兄は、真摯な瞳をしていた。
「死に際にあの子は、『生まれてきてよかった』と微笑いました。多分、それ
はきみと出逢ったからでもあるんでしょう。……だから」
誰も彼もが、大切な人の幸せを願っているのに。
誰も彼もが、祈りを込めて努力しているのに。
願いは邪欲に。祈りは野望に。努力は無駄な足掻きとなって、そこに不幸が
生じる。
選んだ道を歩いているのか。流れに押し流されているだけなのか。
それすらも判然としないまま、運命の歯車だけが回りつづけるのだ。
無慈悲に。機械的に。
「でもま、それはそれとして」
カムドはしれっと言い切った。
「前世の恋人の目の前で変態行為をするよーな奴に、今のあの子を渡すつもり
はありませんから」
アンクはつらっと言い返した。
「おれは“静寂の間”で仲魔と遊んでいただけだ。状況も場所柄も弁えずに前
世の妹に抱きついていた、シスコン兄貴に文句を言われる筋合いはないな」
「あはは、言うじゃないですか」
人修羅カムドが鉤爪を現出させる。
「フッ、おまえこそ」
人修羅アンクが太刀の鯉口を切る。
「ほーら、やっぱりケンカしてる」
ぷん、とお怒りの言葉が聞こえた。
ぎょっとなって振り返ると、後ろの正面、拳を両腰に当てて仁王立ち。“式
神使い”玉造伊予と、人修羅達に叱られるのを怖れてか、彼女の背中にしがみ
ついて隠れている妖精ジャックフロストのJ。
「仲良くするって言ったくせに」
アンクとカムドが口々に述べる、
「待っていろって言っただろう!?」
「ダメですよ、危ないから戻って!」
伊予は平気のへいざ。ふい、と通路の斜め前を指した。
「あそこじゃないかな? “BOSSの間”」
そこは異界化する前、ラーメン屋だったようだ。はためくのぼりや窓ガラス
に貼られたポスター、そして看板に、『魂のラーメン屋』と書いてある。如何
にも味自慢、実力勝負、ラーメン職人の店! といった風情の店構えだった。
「……ニキ〜……」
どこか遠くから、情けな〜い声がかすかに聞こえてくる。
「ア〜ニキ〜ィ、たぁすけて〜ぇ」
「Dっ!?」
仲魔の声を聞き分けて、入口、暖簾を跳ね除けて、アンクが店内ならぬ“B
OSSの間”へと飛び込んだ。一歩遅れてカムド。済し崩しに伊予、それから
J。
「た〜すけて〜ぃ」
太いロープでグルグル巻きにされ、ぶーらぶーらと天井から逆さ吊り。水妖
ルサールカが人修羅アンクを認めて涙ながらに訴えた。
「アニキ〜ィ! 助けてくださいよぅぉぅ〜!」
「間抜け」
冷たく一言切り捨てて、ガーンとショックの妖精を、しかし見捨てるわけも
なし。すらりと刀を抜き払う。
店内中央、でかい釜。もうもう上がる濃厚な湯気。魔界の炎がガンガン燃え
て、グツグツ煮える音がする。
ヒァァァ、ギァァァ、魂消る悲鳴。見れば釜の中、茹でられているのは中華
麺ではない。
死んで早々、活きのいい亡霊。
「魂のラーメン屋、ね」
伊予が嫌そげにボソッと呟いた。
長い棒切れで釜の中身を混ぜているラーメン職人が、にたりと笑ってお客に
謝った。
「お客さぁん、申し訳ありやせん、本日はもう看板でして」
「この人達は、食い倒れた人達ですか?」
辺り一面、ごろごろ転がる死体を視界の隅に収めつつ、カムドが鉤爪を眼前
に構えた。
「そんなに美味しいのなら、是非ぼくたちにも振舞ってもらいたいものですね。
閉店だなんてケチくさいこと言わないで」
「生憎、こいつぁワシの賄いでしてね」
釜を背に、それを守るようにして近づいてくるラーメン職人。ゆるり、表す
悪魔の本性。
「それでも奪うと仰るのなら、戦うまででさぁ。食い物の恨みほど怖いものは
この世にありやせんぜ?」
禿頭、全裸、細身の男型。アラビア神族、幽鬼グールだ。
食屍鬼の台詞に伴って、釜の中から3体の新手がバッと飛び出し、ビチャ、
ビチャとスープの飛沫を振りまいて降り立った。ガリガリに痩せ細り、腹だけ
が膨れ上がって、飢えた獣のような目をしている。餓鬼道に堕ちた亡者の成れ
の果て。それらは幽鬼ガキであった。
「ねぇねぇ」
ガキどもを指しながら問いかける伊予に、カムドが応じた。
「何です?」
「あれって、トリガラとかトンコツとかみたいな物?」
「ああ、なるほど。ガキでダシを取った『魂』のラーメンというわけですか。
上手いことできていますね」
「アンタら余裕カマしすぎッス」
天井でDが呆れながら揺れている。
「二人とも、お喋りはそこまでにしておけ。遊び相手が」
アンクが切っ先を敵陣に向ける。
「来るぞ!」
人修羅2体と異能者、悪魔のパーティは、グール率いるガキの群に挑んだ。
街灯の時計は25時を大きく回っていた。
異界化が解けたショッピングセンターは、何の変哲もなく、閉店したビルに
よくある沈黙の佇まい。
伊予がJとじゃれている間に、アンク、カムドの両人は、どことも知れず、
電話連絡を取っていた。誰かコネに後始末を依頼しているようだ。
カムドが伊予に尋ねた。
「もう終電もありませんしね。ここから家まで遠いなら、タクシーでも拾って
帰った方がいいですよ」
「拾った車がクリス・ザ・カーだッたりして」
「ヒホー!?」
妖精ルサールカのDがボソリと呟き、怯えた妖精ジャックフロストのJが伊
予にしがみついて、Jは伊予ともどもすっ転び、Dはアンクに耳を引っ張られ
た。
伊予が答えた。
「ここからなら歩いて20分ぐらいだし、散歩がてら歩いて帰るよ」
言いながらもうてくてく歩き始める少女を、カムドとアンクが追う。
「それではおうちの人が心配するでしょう?」
「大丈夫、おうちの人はいないから」
あっけらかん。
「おうちの悪魔はいるけど」
「はあ?」
「うちには悪魔しかいないんだよ。だから夜遊び夜更かし上等なの」
Jが同意してヒーホーと叫ぶ。
「ちょっと待ってくれ、きみは人間だろう? 親や家族は?」
「いるよ。みんながお父さんお母さんで、みんなが家族だよ」
「だけどそいつらは悪魔じゃないのか?」
「仲魔だよ」
少女は当たり前のことのように微笑んだ。
「アンクとカムドこそ、おうちに帰らなくていいの?」
カムドはたははと情けない笑いを漏らした。
「ここまで遅くなったんですから、今更ですよ。きみを家まで送って、それか
らのんびり帰ります」
「送ってくれるの? 嬉しいな。でも、遠回りにならない?」
「方角的には、同じなので」
おれには帰る家などないから心配無用、とは言わずに、アンクは黙ってカム
ドより更に後ろ側を歩いた。
当り障りのない雑談に費やす、約20分の道のり。
伊予は、ただこうしてみんなといるだけで楽しいと言いたげに鼻歌でも歌い
そうな風情であったが、やがて、住宅地に建つ古びたマンションの前で、踊る
ようにクルリと振り向き、二人の少年に礼を言った。
「ありがとう、ここまででいいよ」
「ちゃんとドアの前まで送りますよ」
「平気平気」
人修羅達を順に見渡して。
「それじゃ、アンクもカムドも、気をつけて帰ってね。おやすみなさい」
「アンちゃん、カムちゃん、Dちゃんも、お休みホ」
ばいばい、と手を振り、建物の中へと小走りに駆け去る。Jも同様、ぽてぽ
て走っていく。
「仲魔は連れ歩くわ、悪魔に育てられているわ。現世のあの子は、色々と特殊
な環境にあるようですね」
独り言の口調であったが、それは明らかにアンクに聞かせるためのものだっ
た。
「ぼくに予備のマガタマがあれば、あの子に持たせておくんですが」
「何だって?」
瞳の色は押し殺した憤怒。アンクがカムドを睨み据えた。
「おまえは彼女を人修羅にする気か」
「それも選択肢の一つですよ。ラグナロクの戦いでは、ただ生き延びるだけの
ことにも大いなる力が必要なんですから。あの子は未だに“異能者”。それで
いて、もう悪魔と共に戦っている。危なっかしいにも程があります」
「わかっているのか、それは力を与える代わりに、彼女を……!」
「人修羅と化すことの弊害は、ぼくとて実感済みです。そんなことは百も承知
の上で言ってるんですよ。そもそも、前世であの子を“異形”化したひとに、
よもや反対されるとは思いもよりませんでした」
責めるというより、それは事実の指摘だった。
「その様子だと、きみは複数のマガタマを持っているんですね? さもなくば、
他のマガタマの在り処に思い当たる節があるか」
「だとしたらどうなんだ」
「力尽くでも、と言いたいところですが、流石に今日は戦いすぎました」
アンクもカムドも、疲労の色が濃い。
「それに、今ここできみに死なれては困ります」
「アンタがアニキを殺すこと前提ッスか、生意気な奴ッスね!」
憤然としてルサールカが喚いたが、無視された。
「どこか安全な場所に四六時中あの子を閉じ込めておく、なんてわけにはいか
ない以上、あの子を護るためにはきみと手を組む必要があるでしょうから。戦
闘力にせよ、あの子に対する思い入れにせよ、きみ以上の適任者をぼくは知り
ません」
「おれが彼女を独占したがる、とか、おれこそ彼女の身に危険を及ぼす、とか、
そうは考えないのか?」
「ああ、そういうことでしたら、誠心誠意、きみを『説得』させていただきま
すよ」
とてつもなく人の好さそうな笑顔で、
「こう見えてもぼく、目的のためなら手段は選ばないタチなんです」
ギッ、と右腕の鉤爪。悪魔たるDが総毛立つほど、その意思は苛烈。
「ぼくの望みはあの子の幸せ。あの子が不幸ならばあの子に幸福を。あの子が
幸福ならばその幸福に永遠を」
「それで彼女を俺たちと同じ化物にするのか」
「そうですね。ひょっとしたらあの子は、たとえ死に瀕しても、化物として命
存えるよりは、人間として死ぬ方がマシだと考えるかも知れません」
カムドの言葉に、同意してアンクが頷く。
「けれど、ぼくのためにもあの子には生きていてもらわなければならないんで
すよ。ぼくがこうして生きているのはあの子が生きているからこそ。あの子が
死んでしまえば、ぼくに生きている意味などない」
「それはおまえの勝手な思い込みだろう。そんなことのために、彼女に自分が
人間でなくなる苦しみや悲しみを背負わせるわけにはいかない」
「あの子が苦しみ、悲しむのなら、その苦しみや悲しみからさえ、ぼくはあの
子を護ってみせます」
それは狂気にも似た、静かなる激情だった。
「神も悪魔も等しく悪魔。祈りを聞き届けるものなどない。……ならばぼくが
願いを叶える。それだけのことです」
アンクはゾッとした。カムドの決意に鳥肌が立った。
「改めてお願いします、アンク。ぼくと共に、あの子を護っていただけません
か?」
気おされ、我知らず一歩を後ずさったアンクに、カムドは続けた。
「きみも人修羅たるを選んだ者ならば、創世のビジョンがあるのでしょう?
ぼくはあの子に優しい世界を望んでいます」
「おれは……救世主を必要としない世界を創る。黙示録の予言も、ラグナロク
の戦いもない平和な世界を」
「ふうん、理性的なビジョンですね」
「綺麗事だと思うか。不可能だと?」
「いいえ。その世界があの子に優しいのなら、ぼくは他に何を望むものでもあ
りませんよ。だからぼくたちは協力できる。そうは思いませんか」
感情的なビジョンを持つ人修羅は、
「返事は急ぎません。ゆっくり考えてください」
結論は一つでしょうけどね、と付け加えて、もう一人の人修羅に背を向け、
夜の闇へと消えていった。
一人残された少年は、電信柱に身体を預けて大きく息を吐いた。
不満げな妖精が彼を突付く。
「ダメッスよアニキィ、あんな奴に好き放題言わせてちゃあ。もッとビシーッ
と言ッてやらないと、ビシーッと」
何を言えというのだ。
あれほどの想いに、あれほどの誓いに、何を言えというのだ。
前世の兄にああまで決意をさせるほど、彼の亡き後、彼女の余生は不幸だっ
たのだろうか。悲惨だったのだろうか。
アンクの指が、服の上から胸のペンダントに触れる。
彼女に渡すべきマガタマに触れる。
――おれは……どうすればいいんだ?
どうすれば、彼女を護ることができるんだ?
その答えを知る者は、恐らく誰もいない。
・・・・・おしまい。
以上、『魂のラーメン屋』は実際のセッションで体験済み。出現悪魔が違う
上に中ボス戦だったけど。中ボスが回復魔法の使い手だったんで、気分的には
毎ターン大ダメージを繰り出してくるラスボス戦よりつらかった。というお話
でした。
―――チラ裏
どこ行った。最初に書いていたはずのアンク×イヨらぶらぶ展開。カムドは
性格捻じ曲がりまくるし。お前は素直で大人しい好青年(好少年)で、アンク
のキャラ立ての比較対象ってだけの役回りだったのに、お前の方がアンクを圧
倒してどうするんだ。
GJ!
グッジョブ!
こう、連日のように神作品が続くと、何か幸せな気分になれるなぁ。
うん、すばらしい。
パロという以上に、メガテンオリジナルSSの趣と実力がある感じっす。
先が気になるよー。でも、思うに、イヨもどっかで覚醒しちゃうよな。
こんだけどんぱちやってりゃさ。覚醒したら、少しづつ思い出しちゃうよな。
それっていてぇと思うんだが。いいこなので、幸せを祈る。
「とりあえず、服、着ないとね?」
裸身から狼狽気味に目を逸らすと、その隅で彼女がわたわたと向こうを向いた。
床に散らばったままの衣服を拾い集める。あちことべとべとなままなのはどうにも気持ちが悪いけれど、素裸のままじゃいられな
い。背に腹はかえられない。ここはぐっと我慢だ。
上掛けは出血で黒ずんで染みになってしまっている。気に入りだったのに、ちょっと落ちないかもしれない。嘆息気味に思って、
それからふと思い至った。彼女の夢使いの装束、ひょっとしてあの蜘蛛に駄目にされてしまっているのじゃないだろうか。
「キミのは大丈夫?」
「え?」
「服、無事だった?」
「えと、制服は月衣の中だったから」
尋ねてみるとそういう返答。あの手合いが丁寧に脱がすとは思えないし、やっぱりびりびりにされてしまったんだろう。想像しか
けて、そして思い出しかけて、あたしは慌てて頭を振る。
「…」
「…」
ふたりもそもそと身支度をしつつ、流石に会話はない。ぎこちないというか、気まずいというか、なんとも困った空気。その静寂
の中に、時折漏れ聞こえる衣擦れ。背中同士だから目には入らないけれど、その分音が、またしても変な妄想を掻き立てたり。…っ
て、ちょっと待ちなさいよあたし。そういう趣味はないでしょうに。
「着替え、終わった?」
「はい」
「じゃ、そっち向くよ?」
振り返った先にはいつもの通り、制服姿の彼女。ただあたしを直視できないらしくて、視線はきょときょととあっちこっちを彷徨
っている。いつものクールで動揺しない風情からはかけ離れた挙措。
そりゃそうだよねぇ。あんなコトしちゃった後だし。あたしも正直困惑気味だけど、うん、ここは大人の側が糸口を作らないと。
「手」
「?」
「手、上げて」
彼女はきょとん不思議そうな顔で、でも言われるままに挨拶の格好で片手を持ち上げる。そのてのひらへ勢いよく、あたしは自分
のてのひらを打ち合わせた。ぱんっ、といい音がする。
「わぁ!?」
驚いた声を上げたところへ、
「いいコンビネーションだったと思わない?」
にっと笑って見せると、ぱっと彼女も笑顔になった。
「うんっ」
初めて見た、屈託のない満面の笑み。あたしはそれだけで結構幸せな感じになってしまって。
「やっぱ、笑ってた方が可愛いよ」
ナンパの手管めいた文句が思わず口をついた。発言直後に慌てたところで、一度出た言葉は戻らない。
「――」
って、なんだってこのコも頬染めたり胸元に手を重ねたり、効果覿面な感じになっちゃってますか。そういう趣味はないんだって
ば。そのはずなんだけど。
「あ、や、その、だからさ。キミってクラスだと、いつも冷静で無関心な顔をしてるじゃない? でもそうしてた方がいいよって話。
きっとその方が友達も増えるよ?」
誤魔化しめいて重ねた途端、彼女の表情が暗くなった。お説教臭かっただろうか。折角の笑顔を台無しにしてしまった事を、あた
しはかなり後悔する。
「……あの、あのね。センセにだから、言うけどね」
数秒の沈黙の後。彼女の方から切り出した。フォローしようと開きかけた口を噤んで、ここは聞き役に回る事にする。
「ワタシ、夢使いだから。だからトモダチとかそういうの、無理だって思うんだ」
「――なんで?」
「あのね、夢使いは他のひとの心を好きなふうにできるから。ワタシがもし誰かとトモダチになりたいって思ったら、その子も同じ
ふうに思うように、心をいじっちゃうかもしれないから」
ああ、判った。そう思った。
「好きなひとの気持ちを、ワタシのなって欲しい通りに書き換えちゃってるかもしれないから。そんなふうに出来た友達は、ホント
ウの友達っていうんじゃないと思うから……」
潔癖症なのだ、このコは。自分の力を強く意識してしまっていて、無意識下でそれが働く事を恐れている
例えるなら。お金持ちが「好きなのは自分じゃなくて、自分の持ってる金の方なんだろう」と、そういう猜疑で他人を見る。そん
な観点が一番近いだろうか。周りから見れば意識し過ぎなだけな場合が大抵だけれど、本人にしてみれば切実極まりない思考の迷路
だ。
もっと大人になれば、腹の底が見えなくてもなあなあと上辺の付き合いもできる。でも彼女は友愛や恋愛というものへ、透明で美
しい宝石のような幻想を抱くような年齢で。そこにわずかなりとも不純物が混ざるのが許容できないのに違いなかった。
ましてや彼女の懊悩の根幹は魔術にある。世界結界を揺るがしうる要素であるその事について、おいそれと他人に相談できる代物
ではなかった。
だから彼女は悲哀を閉じ込めて、心細さに封をして、寒くなんてないと装って。無関心で興味などないように振舞っていたのだ。
そうして他人を遠ざけて。でも、「心配してる」なんてたった一言で命をかけてしまうくらい、寂しくてたまらないのだ。
彼女が作る壁の素材が、ふと知れたような気がした。
もう少し思慮が浅ければ、そんな不純に思い至りはしなかったろう。もう少し図太ければ、生きるのが上手ければ、自分の能力も
利点のうちと割り切ってしまったろう。
その聡明さと、そこから生じて彼女を支配してきた孤独とを、あたしは思う。
「だから、センセもワタシの事は放っておいて」
伏せた瞳は微かに潤むようだった。か細い体が震えていた。おそらくは、不安に。あたしはそっと微笑む。拒絶を明言される事を
恐れるくらいなら、遠ざけようとしなければいいのに。
「思うんだけど」
軽く頭に手を乗せると、びくんと彼女は身を竦ませた。
「最初が嘘だったら、その後の事も全部嘘になっちゃうのかな?」
撫でながら、ゆっくりと言葉を紡ぐ。意味だけじゃなくて、温度も伝わるように。染み込む様に。
「あたしは、違うと思うんだ」
見上げる瞳に微笑みかけて。
「第一印象だけが全部じゃないでしょ? 最初に相手をどう思うかじゃなくて、その後積み上げてく思い出ってヤツこそが、友達っ
てのの条件じゃないかな、ってね」
「……」
「例え最初にどう取り繕ったって、キミっていう人間の本質は変わらないよ。だから誰かと色々積み重ねていけたんなら、積み上げ
てったその時間こそが本物なんだってあたしは思う。嘘なら、いつか必ずほころびが出る。だからキミの力っていうのは、ちょっと
だけ他人と仲良くできる可能性が高くなるって、それだけの事じゃないのかな」
彼女の顔に、期待と不安と、何か色々がない交ぜになった自分でも解らないような感情が揺れる。きっと拾われる直前の、ダンボ
ール箱の猫がこんな目をするに違いない。
「でも……だってセンセがそう言ってくれる気持ちになるように、ワタシが仕向けてるかもしれないんだよ?」
ぼそぼそと呟く彼女の額を、あたしは指でばちんと弾いた。
「逆にね。そこまで人間を侮るもんじゃないよ」
放っておいて、と彼女は言った。それはつまり逆説的に、あたしと友達になりたいと彼女が思ってるって事で。
言外に好意を告げられときながら、それを無視するほどあたしは厚顔じゃない。
「キミは頭のいいコじゃない」
あたしがそう言うと、彼女はどうにも答えられない、困ったような顔をする。褒められて嬉しいのと、謙遜しなきゃ考えたのと、
多分半々くらいだろう。
彼女の、年齢に不相応なくらいに澄んだ知性。でもそれは予断になりがちな、実体験を経ない判断を齎したりするものでもある。
頭が良すぎて不器用なそういうところ、あたしの親友にこのコはちょっと似ている。
「だから周りが見えちゃって、周りを見ちゃって、大変だと思う。――ところで芥川龍之介って知ってる?」
あたしの唐突な話のつなぎに、若干困惑気味ながらも首肯を返す。
「頭のいいひとだったみたいだよ。キミみたいにね。その芥川の友達がさ、『彼は死ぬ少し前、カンシャクを起して花瓶を壊したと
いう。それはウソかほんとうか知らないが、もっと平生花瓶を壊していたらあんなことにはならなかったと思う』、なんてふうに書
いてるんだよ。『あまりに、都会人らしい品のよい辛抱をつづけすぎたと思う』ってね」
「……」
「『平生から花瓶を壊していたら』って言い回しがいいよね。我慢しないでもっと我がままに自分を出してたらって、自殺しちゃっ
た友人への悔いがすごくある気がする。それにあたしはね、花瓶を壊してみないと解らない事だってあると思うんだ。頭のいいひと
は、かっとなって花瓶を割る前に、壊した後の片付けの事まで考えちゃうのかもしれないけど。やっぱり割ってみて初めて解る事っ
て、あると思うんだよ」
「…センセ、なんだか先生みたい」
やっぱりお説教ぽかったか。くすりと笑った彼女に頭をかいて、「一応国語教師だからね」と反論しておく。
「ま、だからさ」
言葉を切って、繰り返し二度三度、あたしは彼女の頭を撫でた。やわらかな髪の感触が心地いい。手をやった当初はまた逃げられ
るかと危惧したけれど、うっとりと目を細めてされるがままになっている。
「あたしが言ってるのが嘘かホントか、とりあえずでまずはあたしと、友達してみない? 振り出しはこんな魔術事件だけど。それ
だって悪くないって、その証明にさ」
「――うんっ!」
こっちが驚くくらいに勢い込んで頷いて、また花が咲くように笑った。うん、やっぱりその方がいい。
そう思った瞬間だった。そこでくるりと視界が回った。世界が揺れた。まるで酔った時のように。
「センセ!?」
目眩がふっと治まると、心配げな顔が間近にあった。倒れかけたあたしを支えてくれたのだ。
「…ごめん」
息が切なくなるのが誤魔化せない。ついさっき体験したばかりの感覚だから、何が原因かはすぐに判った。判ったからといって、
どうなるものでもないけれど。
「……あの毒、まだ抜けてないみたい。悪いけど、もっかいお願いできる?」
なんとか自分だけで立ちはしたけれど、症状は更に性質が悪化させていた。
微熱が深いところから際限なく湧き上がってくる。呼吸が整わない。肌はもう軽く汗ばんでいる。蜘蛛の毒が生む、淫蕩な疼き。
ふたりの距離が近すぎて、自制が効かなくなりそうだった。目の前のやわらかい身体を抱き寄せて抱き締めて押し倒してしまいたい。
また、あの甘い声を聞きたい。気持ちよくなりたい。
「あの…センセ、あの魔法ね、一時的な効果しかないから……それで、その、してればそのうちに消えるみたいで。だから…あのね」
治癒魔法の施術を乞うたあたしから視線を逸らして、真っ赤な顔で消え入りそうに彼女は言う。
「ワタシも、センセとの最中にあの毒が消えたから、えと…センセさえよかったら……」
俯いて指を色々な形に組みなおして、はにかむように。
毒で再び蕩けてしまったあたしに、それ以上のお預けは無理だった。
「ん…っ」
肩を抱き寄せて、口を塞ぐ。たっぷりと時間をかけてやわらかい唇を、次いで口腔に侵入して小さな舌を堪能する。熱い息と唾液
が交換されてお互いを循環する。ぎゅっと強張っていた彼女の体から、力が徐々に抜けていくのが判った。
「ん…は……ぁ」
キスを終えるとため息のような喘ぎ。上目遣いの瞳は、もうとろんと潤んでいた。意図しないだろうに、ひどく蠱惑的な表情。
えっと、だからこれは医療行為。ただの毒抜き。緊急避難で応急処置で、つまり人工呼吸がキスとしてノーカウントなのと同じ事。
のめり込みそうになって、あたしは自分に言い聞かせる。
それを打ち砕くように。彼女の方から、腕を回してぎゅっと抱きついてきた。どきんと強く心臓がはねる。
「センセ、あのね」
あたしの胸に顔を埋めるようにして、耳まで赤く染めながら。彼女はぽつりとあたしに告げる。
「センセとさっきしたのが、ファーストキスだよ」
「そう?」
なんだか気恥ずかしくなって、照れ隠しで短く返すと、
「ホントだよ?」
心配そうに、不安そうに見上げる瞳。その髪をすくって、指先で耳の後ろをそっとくすぐる。んっ、と小さく可愛い反応。
「大丈夫、信じてるよ」
今度は額にくちづける。律儀に目を瞑って、彼女は愛撫を受け入れる。
「それじゃ――お願い」
ふんわりと温かい体を抱き締めて。耳元へ熱い呼気と一緒に囁くと、彼女はこくんと頷いた。
今回はここまで。
GWの超絶穴埋めシフトを経て、その後風邪で引き込んでぶっ倒れてたりしました。若干回復したので神作連打の流れを断ち切って、またぞろ湧いてきやがりました。度々間が空いちまってすまんっす。
これからみっしり投下されてる作品群を堪能してくる。ああ、なんかこの大量の分量が幸せだ。ふふ。
>>337 なんですかこれは、月曜の朝から皆を幸せでいっぱい殺すつもりですか!?
……殺されてたまるか……続きを読むまでは……!
そんな決意をするくらいGJ!
うおおおっ、センセ×夢使いがまた来たァーーッ
GJ。
……ところで以前来てた人造人間×吸血鬼の続編が来ないもんかといまだに待っている俺。
345 :
いつふた:2006/05/22(月) 18:27:11 ID:5KhoLQ9b
>340
>悪いけど、もっかいお願いできる?
先生アンタ、この状況下で自分の生徒にまたアレ作って挿れろと!?
なんてけしからん教師なんだ!
>341
>治癒魔法の施術を乞うたあたし
……けしからんのは自分の解釈の方だと知った、気だるい月曜日の夕べ。
>342
GJ&お疲れ様です。以前も仕事疲れで倒れていらっしゃいませんでしたか。
ご無理をなさらず、お大事になさってくださいませ。
それはそれとして、早いトコ続きを投下してね。
【鬼】
>336
詳細な感想ありがとうございます。
嬉しいから調子に乗って投下。
346 :
いつふた:2006/05/22(月) 18:28:18 ID:5KhoLQ9b
ゲーム:真・女神転生200X(メガテンX 8本目起の章)
形式:小説形式(原則三人称)。
レス数:14+1
分割:起承転結の起の章。
エロ度:和姦。キス程度。
連続性:7本目(『カムド』)の続編。
時節:主に四月。
終幕:よかったのやら悪かったのやら。
◇運命の少女
幾たびとも知れず重ね合わせた素肌はしっとりと汗ばみ、荒く乱れた吐息が
ようやく穏やかに落ち着いてくる。
雨音が全てを呑み込む、夜明け前のひととき。
裸形の男と女――少年と少女が、ひとつの寝床を分け合っている。
抱きしめた腕の中、少年の胸に頬を寄せる少女の耳元に、彼はそっと囁いた。
「ね、おれのこと、好きって……言って」
少女は身動ぎをした。首を横に振ったのだ。
「きらい」
全く逆の言葉をつんと言い放つ、彼女の身体を彼は大きく突き放した。驚い
て目を丸くする彼女に、意地悪く告げる。
「おれのこと嫌いなんだろう? 嫌いな奴になんか抱かれたくないだろう?」
少女はぷうっと膨れっ面。少年の胸に自ら飛び込んで、離されまいと抱きつ
き、宣言めいて、更なる言葉を口にした。
「だいっきらい」
少年はくくっと喉で笑いながら、再び少女を優しく抱きしめる。
互いの腕に包まれた、あたたかな生命の息吹。
この幸せが永劫ならば、何を捨てても惜しくはなかった。
この幸せが、永劫ならば。
世界を捨てても惜しくはなかった。
―〜―〜―
春雨。
薄桃色にほころぶ桜花を散らし、黄緑色に萌え出ずる若芽を濡らして、絹糸
よりも細く、音のない雨が降りしきっている。
厚い雲に覆われて日差しはないが、辺りは薄明るく、そして暖かい。
新設の墓地。几帳面な区画の真ん中あたりに、桃谷、と苗字の刻まれた墓が
あった。
墓石の前。傘も差さずにじっと佇む人影。目深にフードを被ったパーカー。
両手をポケットに突っ込んで。
一見して、彼は高校に通うような年代の、至極普通の少年。だが、彼に相対
した者はきっと、神話伝承に語られる人外に遭遇したかのような、一種の隔絶
感を覚えることだろう。……その理由は、わからないとしても。
「……剣也、か?」
背後から声をかけられてゆっくりと振り向いた眼差しは、まるで他人の存在
自体をきっぱり拒絶しているかの如き硬さだった。
それなのに、その男はどこか安心したように言った。
「やっぱりお前か。元気そうでよかった」
黒の傘と赤の傘。それらの下に、一組の男女。男は水桶を手にし、女は花束
を抱いていた。墓参り。日曜とはいえ夕方近く、誰にも会わないだろうと高を
くくっていた少年は、自分の読みの浅さ、あるいは間の悪さに小さく舌打ちし
た。
男は“私立探偵”。彼の真実を知る者は、その二つ名をも知る。怪奇事件の
謎を解く探偵。悪魔を撃ち抜くガンスリンガー。
彼の隣で女が一人、少年に目礼した。
彼女は“ウィザード”。表向きは高校の保険医。その実、医術と魔術を身に
つけた生と死の贈り手。
二人は、黙示録の時代を“運命の少年”と共に直走る者達だ。
“私立探偵”は、かつて先代の“運命の少年”と――今はこの墓の下で眠る
青年と共闘していた者でもある。
「その姿……人間に、戻れたのか?」
問われて、少年は片手をポケットから抜き出し、手の甲を男に向けて掲げた。
浅く日に焼けた肌色。そこに一瞬、不可解な輝線が浮かんで、消える。
それは証。人を捨てた者の証。悪魔ですらない、“異形”の証。
人修羅の、証。
「……そうか」
男は納得して頷いた。そこには僅かながら、絶望も混じっていた。
一旦人修羅と化した者は、二度と人間には戻れないという。人を捨てること
を選択したのは少年の自由意志。だが、だからこそその事実は、弟を頼むと親
友に遺言された“私立探偵”を今もなお責め苛む。心の痛みは、多分、少年が
人間に戻り、平凡な幸せを掴むときまで、決して癒えることはない。
少年の開襟シャツ。胸元に、不思議な色合いの勾玉。これこそがマガタマ、
人をして人修羅となさしむるモノ。逆に言えば、これを宿す新たな人修羅は、
まだ生まれていないということだ。“私立探偵”は、そのことに幾許かの安堵
を覚えた。
用は済んだ、さもなくば最初からここに用などなかったかのように、少年は
“私立探偵”と“ウィザード”に背を向けて歩き始めた。そこへ再び男の声が
掛かる。
「待て。探す手間が省けた、ひとつ、仕事を依頼したい」
「仕事?」
少年は振り向き、一応は聞く耳がある風情。男は言葉を継いだ。
「大城戸翁からも連絡が行くと思うが、“運命の少年”の身辺警護だ」
「その件は以前にも断ったはずだ」
「事情が変わった。いや、本来の流れに戻ったというべきかもな」
現在の“運命の少年”が覚醒したのは、彼女が高校一年の秋。
その年、成城の老翁や明治神宮の姫巫女の支援を受けた白刃神社の剣士が、
魔都・東京における当時の急進勢力を排除し、その一件を機に国内の悪魔達が
結束して日本の防備を固めた。このため、本来ますます激化するはずだった魔
的な抗争は、ここ一年と半年の間、束の間の平和とも言える小康状態にあった
のだ。
「だからあの子は、今のところは普通の高校生としての生活も続けている。せ
めて卒業するまでは……いや、繰り言だ。ともあれ、今も水面下ではロウとカ
オスの激しい衝突が続き、ブラック・ハンドや五島師団の動きも表面化してき
た。もう、あの子にさしたる猶予はないと考えた方がいい」
「それで?」
「仲間になれ、共に戦えとは言わん。ただ、あの子の目の届かない場所、手の
届かない範囲に何かあるなら、それに対処してもらいたい。依頼を引き受けて
くれるとなれば、お前もあの子と同じ高校に通う手筈だ。……それは、桃谷の
親父さんの心遣いでもある」
「父さんの……」
少年はポツリと呟いた。
長男が死に、最後の子供となった家出息子に、せめて学校には通って欲しい
という有り難い親心なのだろう。
放っておいてくれればいいのに、と、彼は心中、複雑な思いだった。おれは
もう、人間ではないのだから、人間のあんたたちとは関係ないはずだ。
「一つ、情報だ」
“私立探偵”は言った。
「姫宮菊枝の命を受けて、“運命の少年”の身辺警護に、お前と同じ人修羅が
派遣されてくる」
「ほう」
「……興味はないのか?」
「別に」
世界に25種25個しか存在しないといわれるマガタマをその身に宿すモノ。
人修羅は複数のマガタマを切り替えて使うことができるため、マガタマの所有
数は多ければ多いに越したことはない。しかし、その人修羅が、たとえばマガ
タマ“アンク”を欲すれば、ここにいる少年から奪う以外に入手方法は存在し
ないのだ。
故に“私立探偵”は、他の人修羅の情報を出せば少年が釣れると思ったのだ
が、全くあてが外れてしまった。
彼が説得の言葉を考えていると、
「そう、だ。先輩」
兄が生きていた頃のように少年が“私立探偵”を呼んだ。懐かしそうに目を
細める男に、少年は尋ねた。
「“運命の少年”と同じ高校に、悪魔に育てられた人間が新一年生として入学
するらしいんだが、知っているか?」
「さあ、俺は聞いたことがないな。だが、そういうこともあるだろう。様々な
組織、様々な者達が、“運命の少年”を狙っているんだ」
彼女は単なる野次馬だがな、とまでは少年は言わない。
「俺の情報収集能力にも限界はある。だが、一人では不可能なことも、何人か
で協力すれば可能になるんだ。どうか手を貸して欲しい」
これは依頼だ。これは誘いだ。
――あの子を護るためにはきみと手を組む必要があるでしょうから。
――ぼくと共に、あの子を護っていただけませんか?
あれは依頼のようでいて。あれは誘いのようでいて。
明らかな脅迫だった。
……彼女は人間。自分は人修羅。
何度も自らに言い聞かせた言葉。
逢えば悲しい。傍にいれば苦しい。
いつかその悲しみに、苦しみに負ける日が来る。
その悲しみを、苦しみを、彼女にぶつけてしまう時が来る。
――こう見えてもぼく、目的のためなら手段は選ばないタチなんです。
――あの子が苦しみ、悲しむのなら、その苦しみや悲しみからさえ、ぼくは
あの子を守ってみせます。
悩んで、悩んで、悩んで、悩んで。
ああ。ダメだ。自分の気持ちは誤魔化せない。
それでも、どうしても、逢いたいのだ。
何をしてでも傍にいたいのだ。
「おれには、なすべきことがある」
少年は胸のマガタマを握り締めた。
「それを優先させてもいい、というのなら……」
「そうか」
男は、やおらニヤリと笑った。
「ただし、お前が編入するのは二年生だ」
「え?」
「無論、通常ならお前はあの子と同じ三年生だが、一年の終わりに中退した奴
が、三年生から始めて勉強についていけるわけがあるまい?」
少年は憮然として口をつぐんだ。
「ちなみに神宮の森の人修羅も今年二年生になるらしい。同学年として、いい
友達になれるんじゃないか?」
一年ダブって二年生。その事実を、からかう気持ちで男は告げたのだろう。
だが少年は、ちょっとした打算で心がいっぱいだった。
――二年生。だったら2年はイヨと同じ学校に通えるわけだ。
そして少年は、我ながら苦笑する。
学校なんて制度。あと何年、いや何ヶ月、この魔都に存在し得るのか知れた
ものではないのに、と。
少年が立ち去ったあと、男は水桶を地に置き、女は花束を墓前に供えた。
「どうして嘘をついたの?」
「嘘、だと?」
「“運命の少年”を、転生した女神の探索に専念させるために、その露払いは
必要でしょうよ」
冷酷なまでの女の言葉。だが、それは事実の指摘だった。
「けれど、彼の――彼ら人修羅の実体には謎が多すぎる。“運命の少年”を、
護るどころか何に利用しようとするかも知れたものではないわ。だのに何故、
彼らがあの子の身辺警護に選ばれたの? 成城の御老体や明治神宮のお姫様が、
そこまでのハイリスクを冒すかしら? クズノハやスティーブンは異議を唱え
たのではないの? 違って?」
「謎が多いからこそ、監視の効く場所に置いておきたいのさ。どうせ“運命の
少年”も監視するのなら、ひとところにまとめておけば楽だろう?」
「それは建前ね。本音は?」
女の追及に容赦はなかった。
「『貴方の』本音は?」
男は黙った。
彼の瞳に映っているのは墓石という物体であったが、彼の脳裏に映っている
のは、二度とは戻らない日々の幻だった。
人であることを捨ててまで、少年が、何を求めて力を得ようとしたのか。
何のために、何と戦っているのか。
男は知らない。知る由もない。
だが、一人の少女を護ることで、それが人としてのよすがになるなら。彼の
魂を、人の領域に留めておくことができるなら。
――弟を、頼む。
それが親友の遺言に応える唯一のすべではないかと思うのだ。
「その選択の結末に、責任は取れるの?」
女は手厳しかった。
男は返答しなかった。
噛み締められる唇。
その唇に、紅いルージュの唇が重なった。
傘に隠れて、そっと交わされる口づけ。
「……何の真似だ?」
低い声の問い。
「《パトラ》の代わりよ」
囁き声の答え。
「そんな精神状態で、今、悪魔にでも襲われたらひとたまりもないでしょう?」
眼鏡越し。見下すような眼差し。
「貴方が死ぬのは勝手だけど、私まで巻き添えにしないでちょうだい」
本心は、その身を案じている。
「ああ。気をつける」
雨は降り止まない。
雨はまだまだ、降り止まない。
春は恋の季節である。
尤も、彼の恋は一昨年の秋に始まった。そうして去年の秋、身も心も結ばれ
……るはず、だったのだが。
好事魔多し。文字通りの邪魔が入って、結局はお流れになった。
あれ以来、キスの頻度は増えた。一月に一度から、一週間に一度くらいに。
けれど、二人の仲がそれ以上に進展する気配はなかった。
――もーちょっとなー。強引に押してみっかなー。
少年は苦悩する。
――でもなー。あんまりせっついて、嫌われても困るしなー。
少年は嘆息する。
――けどさー。付き合いだして一年以上も何にも無しなんて、流石に俺達、
禁欲的過ぎだよなー。
少年の名は今宮拳司。知る人ぞ知る“運命の少年”信太和泉のパートナーで
ある。
右手に装着された魔晶手甲には、今や地霊ブッカブーが取り込まれており、
火炎掌ならぬ氷結掌の使い手となった彼は、何故か未だに“妖獣拳士”、“炎
の拳”と通称されている。
まあ、魔晶手甲の封印悪魔や攻撃属性が変わるたびに通り名が変わっていた
ら、ややこしくて仕方ないが。
地下鉄。駅構内の階段を上がると、外はしとしと雨模様。とはいえ雨量自体
は大したことがない。
通学路。学校までは徒歩10分。傘を持って来なかった生徒や、鞄の中から
折り畳み傘を出すのが面倒な生徒が、春雨じゃ、濡れて行こうと平気ですたす
た歩いていく。
少年もまた、霧雨の中へと足早に突っ込んで行った。
緩やかな坂の上の学び舎を目指して、ぞろぞろ連なる制服の一群。無意識の
うちに少年は、人混みの中に恋人の姿を探していた。
――あいつのこと大事にしてるつもりで、意気地なしとか思われてたらヤだ
よなー。
前方に相合傘、男子生徒と女子生徒。楽しげな談笑が聞こえてきて、ムカつ
くような、羨ましいような。そちらを見ないようにして、さっさと追い抜いて
いく。
「あ、今宮くん。おはようございます」
女子生徒の方から声を掛けられた。
驚いて振り向くと、そこに彼女が立っていた。
知らない男と二人で並んで。
「雨、大丈夫ですか?」
大丈夫も何も、現に雨には濡れている。
拳司は恋人の隣を見遣った。
名札の色からして、その男子生徒は彼らより一学年下。即ち二年生だ。苗字
は阿倍野と書いてある。
背丈は高からず低からず。体格はごつすぎず痩せてもおらず。中背中肉、至
極特徴のない体つきである。
顔立ちは、昨今流行の美形ではないが、人好きのする優しげな造作。眼つき
が悪いの汗くさいのと評される自分に比べれば、格段に女ウケすると思われた。
「信太、そいつは?」
自分でも嫌になるほど不機嫌な声音で、拳司は自分の彼女に尋ねた。
和泉は明るく答えた。
「従弟の晶くん。この春からうちに下宿することになったんです」
下宿。同居。一つ屋根の下!
「よろしく、今宮先輩」
名乗った憶えはねぇ、と拳司は腹が立ったが、考えてみれば、自分も名札に
名前が書いてある。
拳司に目礼してから、晶くんやらいう男子生徒はにっこりと言った。
「和泉ちゃんとは小さい頃から仲がよくて、今も先輩のノロケ話を伺っていた
ところなんですよ」
「の、ノロケてなんていませんよぅっ!」
和泉が真っ赤になって手足をバタバタさせる。
従弟。幼馴染。仲がいい。
俺だって、まだ『信太』って苗字を呼び捨てるのが精一杯なのに、『今宮く
ん』って苗字にくん付けで呼ばれるのが精一杯なのに、和泉ちゃん、などと、
晶くん、などと、嗚呼、親しげに、嗚呼、親しげに。
拳司の頭の中で、煮え繰り返るような感情がグルグル渦を巻いていた。
嫉妬。
恐らくその一言に尽きる感情。
考えてみりゃ、と拳司は内心でほぞをかむ。こんなに可愛くて、よく気がつ
いて、大人しいのに芯が強くて(以下キリがないので省略)な女子がヤローど
もにモテないわけがねぇ。
とりあえず学校では、拳司が鬼のように周囲を威嚇して彼女を死守してきた。
が。
――身内は盲点だった、身内は!
ちなみに法律上、従姉弟同士は問題なく結婚できる。
――どうしてくれよう。
晶を睨みつける拳司の眼光は、高出力のレーザー光線のようだった。
ふ、と晶は視線を泳がせて、
「和泉ちゃん、ぼく、先に行きますよ」
「え? いいの?」
「でないとぼく、先輩に恨まれちゃいます」
手にしていた傘の柄を和泉に手渡し、たっ、と小走りに駆け出した晶は、拳
司と擦れ違いさま、ボソリ、
「今日から3日間、家にはぼくと和泉ちゃんの二人きりです」
「何ィ!?」
噛み付くように聞き返すが、晶はアハハと軽く笑って、ついさっき自分達と
擦れ違ったばかりの真っ白い傘――油性ペンで自筆したと思しきジャックフロ
ストやピクシーのイラストが描かれた傘――に、その下の女子生徒に抱きつく
勢いで飛び込んだ。
そして一言二言交わすと、その子の傘を持ち、相合傘で歩いていく。
――ンの野郎、人畜無害そーな顔しやがって、けっこーなタラシじゃねぇの
かっ!?
「……くん? 今宮くん?」
「へ?」
我に返ると、彼に傘を差しかけて、和泉がきょとんと覗き込んでいた。
「どうかしたんですか? 遅刻しますよ?」
「あ、ああ……」
この警戒心の欠片もない恋人に、さて、何と言って注意を喚起したらよいも
のやら。
その日、拳司は一日中、早弁するのも忘れるぐらい、気も漫ろだった。
信太家と阿倍野家とは、クズノハの本流である葛葉家の遠縁に当たる。
信太の家は、もう随分と昔から、家全体としては悪魔との関わりを断ってい
た。ただし、時折サマナーや巫女となりうる能力者が生まれ、彼らがクズノハ
のメンバーとなることは当然視されていた。だから現在、信太夫妻は一般人と
して生活しており、一人娘の和泉だけが、サマナーとして、“運命の少年”と
して、クズノハのバックアップの下に活動している。
代々神社の家系であり、今も数多くの神道系退魔巫女を排出している阿倍野
家は、さかのぼること大正時代にクズノハを離れ、神宮の森に所属した。が、
未だクズノハとの縁は切れておらず、両者の仲介的な役割を果たしている。
「本来、阿倍野の男児は退魔巫女の補佐たる禰宜役を務めるんですが、ぼくは
ほら、色々と事情がありまして、禰宜のお役目を下ろされたんです」
「ふうん、可哀相だね」
「そうでもありませんよ。代わりに今回、“運命の少年”の身辺警護に回され
て、久しぶりに従姉とも会えたし、何よりきみに巡り逢えたわけですから」
ピクシーやジャックフロストの描かれた白い傘は、玉造伊予の物だった。一
年生の教室がある校舎と二年生の教室がある校舎とは別個であるが、晶はわざ
わざ伊予を一年の教室の前まで送っていった上、教室の前で暫く雑談をする。
「晶おにいちゃんが“運命の少年”さんの従弟だなんて、予想もしなかったな」
「世間なんて、思ってる以上に狭いものですよ」
カムドではなく晶おにいちゃん、と伊予が彼を呼んだのは、今の人修羅カム
ドが完全に人間に擬態しているためだ。学校に着くまでに、二人はこういう会
話を交わした。
「今は阿倍野先輩って呼べばいいの?」
「そうですね、コレを消してある間は、……」
コレ、と言いながら、自分の頬に線を1本、引いてみせる。意味するところ
は異形の魔人の証たる輝線。
「……ぼくのこと、晶と呼んでくれませんか?」
「晶先輩?」
「うーん、響きが今一つですね。晶と呼び捨てでいいですよ」
「だってイヨ、一年生だもん。学校で二年生の先輩を呼び捨てにしてたら、変
な顔されるよ」
「んー、じゃあー、……晶おにいちゃん、とか?」
自分で言ってて照れるほど、それは軽い冗談だった。
「ん、わかった。晶おにいちゃん」
実際に呼ばれてみると、何だかこそばゆくも嬉しかったので、晶はその案を
通すことにしたのである。
「イヨは元気に登校してきていますよ。昼休みにでも一緒に会いに行きません
か?」
遅れてきた転入生、ということで朝のホームルームの時間に紹介された桃谷
剣也は、『知り合い』であると主張した阿倍野晶の隣の席に座らされた。
「別に。元気でいるなら、それでいい」
1冊の教科書を間に挟んで、数学教師が板書した内容をノートに取っている
フリ。
「だったらぼく一人で行きますけどね。きみに会えれば、あの子も喜ぶと思う
んですが」
「彼女にだってクラスの付き合いってものがあるだろう。下手に二年生が首を
突っ込んで、クラスメイトとの雰囲気が悪くなったらどうするつもりだ」
「おやおや、繊細な心配りじゃありませんか。なるほど、きみの言うことにも
一理あります。放課後まで待つとしましょう」
「同じことだ。何も傍まで行かなくたって、遠くから見守っていれば充分だろ
うに」
「遠くから見守っているだけで、きみは満足できるんですか?」
しんとした教室に、カッ、カッ、黒板に白墨がぶつかる音。
「……さてな」
その返しは、剣也――人修羅アンクの本音でもあった。
そういえば、と晶――人修羅カムドが独りごちる。
「きみもあの子に『剣也おにいちゃん』とか呼ばれるんですかねぇ」
「はあ? 何のことだ?」
「そこ! 阿倍野と転校生か!? ごちゃごちゃ喋っている暇があったら、前
に出てきて例題を解け!」
教師の怒鳴り声が降って来たので、肩をすくめて二人は教壇に向かった。
放課後、家路を辿るのは、制服姿の男女高校生4人。
三年生。“運命の少年”と。
二年生。人間に完全擬態した人修羅二体と。
一年生。悪魔に育てられている“異能者”と。
授業が終わると、晶は不承不承の剣也を連れて伊予を迎えに行き、その足で
和泉を掴まえて、互いを紹介した。
“運命の少年”信太和泉は、ちんまりした男の子みたいな玉造伊予を一目で
気に入ったらしい。イヨちゃんイヨちゃんと呼んで、小さい妹にそうするみた
いに、彼女のふくふくしたほっぺをえいえいと突っついている。
落ち着いた雰囲気のお姉さん風な上級生に可愛がられて、伊予も満更ではな
いらしく、和泉先輩、と甘えた声で彼女を慕っている。
「……まさか和泉ちゃんに盗られるとは」
しくじった、と言いたげに舌を打つ阿倍野晶、こと人修羅カムド。
「イヨちゃんも、わたしの身辺警護に来てくれた人?」
「んーん、全然。面白いから見に行っておいでって言われただけ」
「誰に?」
「あのね、…………」
こしょこしょこしょ、と和泉の耳に伊予が耳打ち。
和泉は目をまあるくした。
「い、いいの? そんなこと、わたしに教えてくれて」
「いいの。イヨ、和泉先輩大好きだから」
「そう? ありがと」
「……おれには教えてくれなかったくせに」
ぼそ、と不満を漏らす桃谷剣也、こと人修羅アンク。
「実は今日、うち、お父さんもお母さんもいなくて、だからお夕飯はピザでも
取ろうかって思ってるんです。よかったら、一緒にどうですか?」
どうせ友達を呼んで騒ぐだろうから、と余分にお金ももらってあると和泉は
言った。
「本当はさくっと自分で作るべきなんでしょうけど、わたし、お料理って苦手
で……」
「イヨが作ってあげようか?」
「イヨちゃん、お料理得意なんだ?」
「うん。ピザだって作れるよ。和泉先輩にも教えてあげる」
「ん、んー、それはまた、いつかの機会に」
よっぽど苦手なのか、慌てて言葉を濁す。
「とりあえず今日は出前ということで、桃谷くんも如何?」
「いや、おれは……」
断ろうとした剣也を、晶が制した。
「折角友達になったんですから、是非、来てくださいよ」
大きめの声でそう言ってから、小さな声で囁く。
「まあ、そう身構えないで。敵対勢力じゃないってことを確認する、儀式みた
いなものじゃないですか」
和泉がにこにこと、色よい返事を待っている。伊予は、「何で行くって言わ
ないのかなぁ?」風に不思議そうな顔をしている。
そうして剣也は折れた。
「……ああ。邪魔させてもらう」
「そりゃあよかった」
晶は一つ頷いて、
「ところで、和泉ちゃん。今宮先輩にも来てもらったら?」
「今宮くん? 確か今日は、気功拳法の道場に行く日だったと思うんですけど」
「誘うだけ誘ってあげてくださいよ。でないとぼく、先輩に妙な誤解を受けか
ねませんから。ヤキモチ妬かれて、きっと殺されます」
仮に殺されたら、それは拳司をからかった晶の自己責任でもある。
「そんな大袈裟な」
くすくす笑いながら、和泉は晶の提案通り、ケータイで拳司を呼び出した。
が、何度掛け直してもつながらない。電波の届かない場所にあるか、電源が
入っていないとアナウンスが流れるのみである。仕方がないから、メールで一
報を入れておく。
「それにしても、料理が得意、ですか」
ぐ、と拳を握って晶は喜んだ。
「ポイント高いですね」
「何のだ」
剣也がツッコミを入れる。
「そもそも料理が得意というのは自己申告だろうが。本人は上手に作っている
つもりでも、実は死ぬほど味音痴だったらどうする」
晶は拳を握り締めたまま沈思黙考していたが。
やおら親指をビシッと立てて、
「それはそれで!」
この男なら、と剣也は頭を抱えた。伊予の手料理とあらば、たとえ真緑色の
毒煙を噴き上げていても、皿まで食らうことだろう。あまつさえ、死んでも地
獄の底から這い上がってきて、お替わりを要求するに違いない。
嫌ほどリアルな想像に、剣也の気分はずーんと暗くなった。
「ね、和泉先輩」
「なぁに、イヨちゃん」
呑気な声で、伊予がそちらを指差し、言った。
「あそこで異界化してるの、ひょっとして、先輩のおうち?」
おばさん達が立ち話をしている。
子供達が縦笛を吹きながら下校している。
乗用車が徐行運転で気遣わしげに角を曲がっていく。
そんな光景の向こう側。彼ら未覚醒の人間、“愚者”には毛ほども気づかれ
ることなく。
不気味な紫の霧に包まれて、陽炎みたいにゆらゆらと、信太和泉の家は、異
界そのものと化していた。
『今日、うちに誰もいないんです。今宮くん、遊びにきてくれませんか?』
ケータイで呼び出されて、今宮拳司は信太和泉の家の前にいた。
やっぱあの従弟と二人きりじゃ不安なんだろ、と、彼は道場に練習を休む旨
を伝え、いそいそここまで来たのである。
インターホンを鳴らせば、スピーカーから聞こえる電気的な音質の対応。
『はぁい、どちらさまですか?』
「今宮です」
と丁寧語で言ったのは、以前、和泉の母親を和泉と間違えて、俺だよ、なん
て言ってしまったためだ。恋人の母親に、オレオレ詐欺なら間に合っています
よ、と冗談で返されて、たいそう赤っ恥をかいた。
『ちょっと待ってください、今、あけますから』
よく考えたら、両親は留守のはずなのだから、返事をしたのは間違いなく和
泉である。案の定、ドアがひらいて、制服姿のままの和泉が出て来た。
縁の茶色い眼鏡は相変わらずだが、短めだった髪は肩まで伸びている。拳司
が何の気なしに、長い髪の女の子が好みだと漏らし、そのことでケンカになっ
たことがあり、それ以来、さりげなく彼女は髪を伸ばし始めたのだ。
俺のためだよ、これ。ンとに可愛いよなぁ、と拳司の鼻の下も伸びる。
「上がってください」
家の中へと招かれて、上がり口で靴を脱いだ拳司のうしろ、ドアがバタンと
閉まって、カチリ、鍵の掛かる音。
「ふふ、嬉しいな。今宮くんが来てくれて」
うきうきした声が、頭上から聞こえた。
――え?
拳司は、ようやく異様な気配に気がついた。
振り向く暇もあらばこそ。少女の顔が、すうっと降りてきた。逆さに。
その面立ちは、和泉のものだった。息を呑むほど美しく、妖艶で、魔的な。
寒気がするほど紅い唇。回避できずに、強奪されるキス。
視界の隅、ぱたり、ぱたりと、はためく蝙蝠めいた羽根が見え。
全身の麻痺感に、拳司は気が遠くなった。
「まぁたイヨだけ仲間外れぇ?」
ぶーぶー不平を鳴らす伊予を家の外に残し、
「ごめんねイヨちゃん、明日またうちに遊びに来てね」
申し訳なさそうな和泉。
「今回は、絶対についてきちゃダメですからね」
メッ、と念を押す晶。
そして無言で伊予の頭を撫でた剣也が、揃って信太宅に入っていった。ドア
が閉まり、内側から鍵の掛かる音がする。
むーむー唸りながら伊予はガチャガチャやったが、ドアは当然、あかなかっ
た。
そのガチャガチャ音を背後に聞きつつ、和泉はアームターミナルを装着し、
手には備前の短刀を握った。
晶は人修羅の本性を現す。全身に奇怪なる輝線。瞳の色は凍える青。ただし
右手は人のそれのまま。どうせ瞬時に換装できるのだから、通常はこの形態の
方が便利だ。
剣也も人修羅の本性を現した。闇色に光る全身の紋様。両眼の色は燃え盛る
赤。竹刀袋の口紐を解き、菊一文字を取り出す。
異形の魔人。初めてその姿を目の当たりにした和泉は、動揺を隠し切れない。
姿かたちは人間そっくりなのに、一人は彼女の従弟でもあるのに、何故にこう
まで“異質”なのか。何種類もの悪魔を見知った彼女でさえ、人修羅は本能的
根本的に、“違う”のだと強く強く意識させられた。
これは人間でも、悪魔でもないのだ、と。
晶――カムドは、剣也――アンクに訊いた。
「例の仲魔は喚び出さないんですか?」
「喚んでもいいが、奴は常に顕現している分、移動に時間がかかる。待ってい
られるのか?」
玄関先。ドタ靴、と表現したいような、使い込まれたスニーカー。少し泥の
着いたそれが“妖獣拳士”今宮拳司の物であると、和泉は知っていた。
「行きましょう」
キリリと表情を引き締め、“運命の少年”は二体の人修羅と共に、見慣れな
い我が家へと乗り込んだ。
ドアの外では、ダイバーに突付かれたハリセンボンみたいにぷーっと膨れて、
伊予がその場に座り込んでいた。ポケットから出したクレヨン。赤色と桃色と
で、石畳に描く悪魔の紋章。
パキンと指を鳴らすと、紋章が輝きを放って消失し、その跡に、妖精郷の密
偵がシュワッと姿を現した。
「ハァイ、どぉしたのイヨちゃん、ゴキゲンななめね?」
「あのね、この異界、イヨが入れるような入口って、他にある?」
「ちょっと待ってて」
羽虫のような翼翅を震わせて家屋の周囲を飛び回った妖精ピクシーは、やや
あって、
「イヨちゃん、こっちこっち」
“式神使い”の少女を手招きした。
本日はここまで。
次回投下は今週末か来週末の予定。
>いつふたの人
取り敢えず345のレスに萌えてみた。けしからんひとめー!
そしてGJ。各クラス各人の濃厚な背景描写と執筆速度に毎度圧倒されとります。
神投下連続の流れに乗って、今夜にでも投下を試みやす。
枯れ木も山の賑わいってことで一つ。
>いつふたの人
おつかれさまー。
…いつもスゴイなぁ、と思いつつ読ませていただいてますー。
なんていうか、晶が最初のイメージから次第に離れてきて(in日常)、どこまで行くのかが非常に楽しみですネェ。
続きも楽しみにさせていただきますー。
364 :
強化(ry:2006/05/22(月) 20:31:16 ID:nHw5SAjK
>いつふたの人
スゲェなぁ。俺もここまでの続き物が書ければねぇ……
ストーリーの組み立て方なんかも隙がないというか。
久しぶりにエロマンガ描いたらレイアウトの切り方は忘れてるわ
ペン入れの線はショボくなってるわでギャヒーって感じですよ。へう。
365 :
渇きの主妄想:2006/05/22(月) 22:58:45 ID:hCiHuxlI
では、ちょっと投下しまス。
ジャンル:ダブルクロス
登場人物:サンプルキャラクターズ他
傾向:ラブいのを目指す予定。エロは次回から。
366 :
渇きの主妄想:2006/05/22(月) 22:59:31 ID:hCiHuxlI
二年G組は校舎北棟の二階にあって、窓の外、ちょうど最後列の辺りに大きなシダレ桜が面している。春が遅
い北国なので桜が咲けば卒業入学とは行かず、始業式の日に窓から見た桜は丸裸。蕾が膨らんだのは四月の半ば
頃で、花が開く頃には嗚呼もうすぐゴールデンウィークかという、そんな具合である。
綾瀬桐佳の季節は、授業中の退屈しのぎにフッと目をやるこの木と共にあった――とは言い過ぎだろうか。
桐佳の席は最後列から一つ前、窓際から一つ右にあり、首を横向ければ件の桜がまぁまぁ良く見える。桜の花
はとうに散って、夏に青々と繁っていた葉も色褪せ、今は秋。そう遠からず、シダレ桜は丸裸になった枝を北風
に揺らすことだろう。
部活の朝練を終えた後、一校時目までの十分そこらを、友人らとのお喋りに参加するでもなくぼけっと季節感
に浸って過ごすのが、桐佳の日課だ。
何分、眺めがいい。というのも、桜と桐佳の間にある最後列窓際の席が授業開始ギリギリまで――往々にして
開始直後まで――空席であるせいだ。その席の主はただでさえ悪目立ちする相貌と無駄に高い背丈の持ち主であ
るから、彼が時間に余裕を持って登校してくるようになれば桐佳のガラでもないセンチメンタルな時間は失われ
ることになる。まァ有り得ないことだが。
少し風が強いようで、ビュゥビュゥと空気のうねる音がした。
そのうち、件の彼はいつもの彼女に引きずられるようにしてやってきた。
「オッス、おはよう、お二人さん」
桐佳はいつものようにニマッと笑って、その二人に声を掛けた。
始業一分前のことだった。
桐佳の後ろの席には一風変わった女生徒が座っている。今年五月にこの高校へやってきた転入生で、人形めい
て整った顔立ちと、光の加減で金髪に見える長いブラウンの髪をしている。ハーフか何かなのだろうが、初見で
は些か面食らった。性格は至って大人しく生真面目。その反面で一般常識に疎いところがあり、どこか浮世離れ
している。容姿のこともあってクラス内では近寄りがたく思われているフシもあったが、最近は“定位置”を獲
得したせいか、割合級友達にも親しまれているようだった。
定位置というのは、いわゆる一つのお目付役。
とかくサボりたがる某問題児を無理矢理学校に引っ張ってきたり、机に突っ伏して寝息を立てていれば無造作
にぐいぐいゆすって起こしたり、そういうポジションである。
「……ンぁ」
一校時目の古典で早々に眠りに入ったところを起こされたらしく、当の問題児が間の抜けた声を上げた。窓際
最後列の特等席、体も大きいがそれ以上に真っ白けの髪と病的に白い肌が目に付く。先天性代謝異常――いわゆ
るアルビノ。桐佳の聞きかじりの知識では、確かアルビノに日光は大敵の筈なのだが、彼がそういうことを気に
している様子は全くない。当人曰く、普通のアルビノとは違うので大丈夫。色素欠乏に普通も普通じゃないもあ
るのだろうか。桐佳は医者ではないのでよく分からないが。
三白眼の赤い瞳がジロッと彼女を睨む。彼女がキッと睨み返す。
……ややあって、彼がすごすごと目を逸らし、彼女が「よし」とばかりに小さく微笑。
見計らったように、古典教師が朗読に彼の名前を指名した。
不平の呻きを上げつつ隣から注がれる鋭い視線に負け、アタフタと教科書をめくる。
「83ページ、三行目」
と、彼女が囁く。
367 :
渇きの主妄想:2006/05/22(月) 23:00:02 ID:hCiHuxlI
桐佳の後ろは、いつも大体こんな調子だ。
不良生徒を地で行く彼が何かと口五月蠅い彼女に対して強く出られないのは、彼女にまるっきり邪気がないせ
いだろう。点数稼ぎだとか格好つけとかではなく、単に真面目なのとも少し違う。ごく自然に屈託なく、彼女は
ルールを尊重する。要するに、小さな子供にゴミのポイ捨てや列の割り込みを注意されていたたまれなくなる心
理である。
お陰で野獣よろしく生徒・教師から遠巻きにされていた彼もすっかり株を下げてしまい、以前はとてもなかっ
たことだが、こんな風に授業中当てられることもしばしばになった。
最早、クラス内では二人で1セットと見なされてきている感がある。
凸凹コンビ――と言ってしまうとアレだが。
席が近いせいもあるだろうが、とにかくよく一緒にいる。わざわざ家に迎えに行ってるらしいし、聞いた話、
並んで帰っていることもしばしばであるらしいし。しかし、じゃあ付き合っているのか、と言われると、意見の
別れるところである。不思議なことに。
虎と兎が並んで座っているようなファンシーさ、とでも言おうか。
なんとなく、甘ったるいものを想像しにくい雰囲気。
主に彼女の方だ。
何というか、言動や立ち居振る舞いに生々しさが乏しいというか、感情表現が穏やかで、大きな声を上げたと
ころも思い切り笑ったところも誰も見たことがない。純粋というか無垢というか、綺麗過ぎて生活感が掴めない。
純粋培養のお嬢様――少し違うが、そんな感じ。
或いは、空から落っこちてきた天使が人間の真似をすればこうなるだろうか。
――フッと浮かんだ思考の恥ずかしさに内心で悶絶していると、不意に名前を呼ばれた。
どうやら朗読の続きを指名されたようである。
「えと、ど、どこだって?」
「84ページ、一行目」
彼女への礼もそこそこに、桐佳はアタフタと立ち上がった。
彼女は成績は良いが、運動の方はあまり得意でない。
とにかく、よく転ぶ。桐佳の見たところ運動神経は悪くないし動きも機敏なのだが、見るからに細っこい脚が
それについて行けていない。なまじセンスばかりあるだけに、無理な動きを強いてスッ転んでしまうわけである。
(――何か部活に入ってちょっと筋肉つければ、活躍できると思うんだけどな)
四校時の体育、ソフトボールの最中に大転倒して膝と肘を擦りむいた彼女を保健室へ連れて行きながら、桐佳
はそんなことを思った。そう言えば、転校して間もない頃に女子バスケ部に誘ってみたっけ。塾通いで放課後の
予定が取れないからと断られたが。
隣を歩く彼女が時折蹌踉けるので、大丈夫かと尋ねると、
「ううん、平気」
と、本当に全く平気そうな顔で言った。
Tシャツとハーフパンツだったのが災いし、かなり派手に皮膚が剥けて出血しているのだが、顔色一つ変えて
いない。我慢強いのか、表情に出にくいたちなのか。
保健室に着いてみると、どうしてかいつもの養護教諭ではなく、生物担当の女教師がいた。ハイネックにタイ
トスカート、黒いタイツと、体にフィットした服を着て、白衣を羽織っている。長い髪は鴉の濡れ羽色。艶めい
ていて美しいが、どこか妖しいぬめりがある。
368 :
渇きの主妄想:2006/05/22(月) 23:00:42 ID:hCiHuxlI
常備したスマイルと遠くを見る感じの目つきがなんとなく怖い、桐佳の苦手な教師だ。
「……あのぅ、大熊先生は」
「風邪で欠勤ですって。今日は私ヒマだったから、留守番をね……あら、貴方また転んだの」
生物教師が苦笑いすると、彼女が「すいません」と心なしか恥ずかしそうに応えた。
「いいのよ。さあ、座って。怪我は膝と肘だけ?」
「ハイ」
気後れしている桐佳を余所に生物教師が椅子を勧め、彼女は大人しく腰を下ろす。
この二人、妙に仲が良いのだった。
「傷はちゃんと洗ったみたいね」
「ハイ」
生物教師はテキパキと膝の消毒を済ませ、ガーゼをあてがう。
ヒマだからと養護教諭の代役を買って出るだけあって慣れた手つきだ。
「はい、次、肘出して」
言われて彼女が左肘を上げた拍子、桐佳はふと、Tシャツから覗いた彼女の首元が目に留まった。左のうなじ
に近い辺り。ぽつんと穿たれた傷が並んで二つ――
「あれ?」
「どうしたの?」
なんだろうと桐佳が声を上げると、彼女が振り向き、生物教諭も手を止めた。
桐佳はごく何気なく、尋ねた。
「ここに傷跡みたいなのがあるよ。けっこう大きい。刺し傷――違うか、噛まれたみたいな。どしたの、これ?」
――まさか、耳まで真っ赤に染めて硬直してしまうとは思わなかった。
いつも穏やかで、激しい感情表現を絶対に見せないあの彼女が。
「……な、なんでもないの。なんでも」
目元を潤ませて、バッと首元を手で押さえて、裏返り気味の声でそう言った。
「えーっと……」
どう返したものかと苦悩しながら、桐佳は目を逸らした。
生物教諭が訳知り顔で、クスクスと笑っていた。
369 :
渇きの主妄想:2006/05/22(月) 23:01:41 ID:hCiHuxlI
……以上。お粗末。続きはできるだけ近いうちに。
>364
通販流通の予定がありやしたら是非ご一報を。
地方民にも入手の機会を!
>369
GJだが、いつふた様のまねはどうかと?
>>370 ……あ、ゴメ、直前に読んでたもんでつい素で書いてた。
気を付けル。
ぐっじょぶっ!
ワクテカして続きを期待!
>>344 久しぶりに着てみたら……覚えられてるって嬉しいな。
続き、気が向いたらやってみますわ。
その前に他の方の作品を読んでからですが。
流れを無視して、ふと思いついた妄想を書いてみる。
NW2異界大戦〜ディングレイルート〜
「ねえ、見て…柊」
そう言って、その巫女服の女性は袴をそっと脱ぎ始める。
魔王ディングレイ。柊の幼馴染である赤羽くれはの肉体を乗っ取った魔王は、柊に言い寄った。
「良いッ、見せんで良いっ!見たら『責任とってね』っていうんだろ!」
「見てくれないと、困るのよ」
そう言ってディングレイが袴を脱いで秘所を柊に見せる。
「見て、もう濡れてるでしょ?星の巫女っていつも寝る前に貴方の顔を思い浮かべながらここでオナニーするのよ。
変態でしょ?そんな彼女より私と一緒に楽しい世界を作った方が良いんじゃない?」
「!!」
「動揺……したね」
そう言って、ディングレイが絡み合うように柊の唇を奪う。
「あなた、このままアンゼロットについていたら破滅するわよ……私には運命が見えるんだから」
そう言って両手を柊の肩につけて、ディングレイは甘くささやく。
「ねえ柊、胸の小さい子は嫌い?」
そう言って、くすりと笑うとディングレイは巫女服をはばたけさせる。
「嫌いじゃねえけどよ……」
そう言って拒絶するかのように、柊はディングレイを突き放す。
「てめえが、くれはの顔使ってくれはの声で喋るなっ!」
…エロくないです。ごめんなさい。
>374
ワラテカ!
GJ。こんなノリだぁい好きだぁ!
柊が魔王に好かれるのはデフォだね (l_<)⌒☆b
どうしても
柊=受け
に感じてしまう
>>377 『超巨大武器』を取ったパワー・オブ・ラブの柊はまごうことなき「受けキャラ」だった。
英魔さまによると、矢薙さんも受k
379 :
344:2006/05/24(水) 20:46:54 ID:flv7+atF
>>373 おおうッ!? よもや届くとは。
楽しみに待ってまス。
異界大戦って何スレ目でのネタだったっけ?
あれ、エロじゃないから保管庫にはいってないよねぇ
強化人間劇場の何本目かだったハズ。
保管庫探したらあったwww
・強化人間劇場外伝・悪魔の蠅編(5-638) ※〜ラジオCM〜 から
・NW2 〜異界大戦〜 体験版(6-112)
――ただの少年。【魔剣使い】柊・蓮司。は今見てもいいなあ
383 :
いつふた:2006/05/26(金) 21:30:48 ID:af3K/SD4
ゲーム:真・女神転生200X(メガテンX 8本目承の章)
レス数:14+1
分割:起承転結の承の章。
エロ度:強姦。挿入あり。
今宮拳司は椅子に座っていた。
正確には、座らされていた。
何かで縛り付けられているわけでもないのに、両腕を背もたれの後ろに垂れ
下げ、少し足を広げた状態で、椅子に固定されていた。
動けない。
精々、首から上が動かせるのみだ。
彼は目隠しをされて、その上、素っ裸だった。魔晶手甲は当然のように取り
上げられており、靴下一つ履いていない。寒くはなかったが、とにかく自分が
情けなかった。
頭を振ってみる。目隠しがズレるくらいは期待したが、無駄だった。
何故、こんな目に遭わされているのか。
これから、どんな目に遭わされるのか。
不安感。恐怖感。緊張感。
目が見えないせいで、周囲の気配には敏感になっていた。第六感が告げる、
ここは異界だ、と。もしもここが異界化した信太和泉の家なら、いずれ彼女が
帰ってくるはずだ。
何とか危険を報せないと、という焦り。
こんな間抜けな格好を見られるのか、というみじめさ。
どのくらい時間が経ったのか。
やがて、部屋の空気が動く感触。誰か近づいてくる。
無論、『何か』、かも知れないが。
「ああ、気がついたんだ、今宮くん」
それは和泉の声――和泉そっくりの声だった。
拳司は唸った。
「誰だ、てめぇ」
「わたし? わたしは和泉」
「違う! てめぇは信太じゃねぇっ!」
「そんなことないわ。わたしは和泉。『あなたのための』和泉」
「何を言ってやがんだ、てめぇっ」
「だって今宮くん、“わたし”が欲しくて仕方ないんでしょう? “わたし”
のことを考えながら、毎晩自分で慰めてるんでしょう?」
誰とも知らぬ娘に、最愛の少女への欲望を暴かれて、少年はカッと頭に血が
昇った。
「うるせぇ、さっさと放しやがれ畜生!」
「“彼女”はあなたに相応しくないわ。あなたの想いに応えるには、“彼女”
はオクテ過ぎるもの。だから」
ふうわり、軽い口づけ。甘ったるい香りが鼻孔を満たす。するりと舌が滑り
込んできて、ゾクゾクするほど快楽の口づけ。クラクラと目眩が、しかし拳司
は頭を振ってそれから逃れようと頑張った。
「今日はたっぷりと、わたしが慰めてあげる」
ひんやり、乾いた掌が少年の胸を愛撫する。
温かな唇が。
柔らかな舌が。
瞬く間、少年の身体に性のわななきを塗りつけていく。
「や、やめろっ!」
首筋を這う指先。
鎖骨に立てられる歯先。
ただそれだけのことなのに、激しい電流が背筋を駆け昇っていく。
「っ、く……!」
「我慢をしないで。わたしを、感じて」
半ば勃ち上がった少年自身を、悩ましい口腔粘膜がねっとりと包み込んだ。
突き上げられるような快感。なんて刺激的な衝撃。
たちまち剛直するそれ。先走りの汁がチュッと吸い上げられ、その音にすら
手酷く興奮する。
舐め上げられて煽られる。
擦り上げられて煽られる。
射精感、たちまちのうちに限界突破。
「うわああっ!」
絶叫と共に彼が吐き出したそれを、娘は嚥下したようだった。
その様子は少年の脳裏で、愛する少女が自分に奉仕する光景にすり替えられ
ていた。
こんな想像、いや妄想。消えてしまえと彼は頭を振り続ける。しかし、何を
してもその妄想は鮮明になるばかりで、少年は泣きたいほど自分自身に怒りを
覚えた。
「今度はこっちに……頂戴?」
和泉の声が拳司に強請る。
肉感的な太股が、椅子に座った状態の拳司の太股に馬乗りになった感触。だ
が体重は感じない。なんて軽い。羽毛のようだ。
太股の感触が一旦消えた。そして。
「っあ!?」
イッたばかりのデリケートなそれが、握られ、無理矢理に勃てられる。一瞬
の痛感、直後、少年の肉棒は熱く濡れた坩堝に深く深く呑み込まれた。
「……はぁっ…………!」
思わず吐息。感嘆の吐息。なんて、なんてキモチいい。この世にこれほどの
快楽があったとは!
反射的に少年は腰を蠢かせていた。否、腰を使おうとして、微動だにできな
い自分に今更ながら仰天した。苛立ち。何故、何故。くっ、と喉から漏れた声
は悔しさを意味していた。
ふと、少年は。今、自分が何に対して悔しさを感じたのか、自覚して。
凄まじい自己嫌悪に陥った。
違うだろう。こんな理不尽な状況に置かれていることを悔しがるべきだろう。
この女を自らの意志で犯すことができない、そんなことを悔しがってどうす
る!?
「うふふっ、動きたいんでしょう? 動けないんでしょう?」
ゆらゆら、女の腰が揺れる。下肢の淫らな抱擁が、少年自身を責め立てて、
じゅっ、ぐちゅっ、と濡れた音。
「ね、どう? 気持ちいい? わたしのカラダ、気持ちいい?」
少年は首を振る。
必死で否定する。
自分の五感を否定する。
キモチいい、と叫び出したい衝動を否定する!
「ケッコー強情なんだ。ス・テ・キ」
口づけ。拳司は振り払う。
くくっ、と喉の奥で笑う声。
「そーゆーオトコを屈服させるのって、大好きなの」
死刑宣告にも似た絶対的な断言。少年が感じたのは戦慄か、……期待か。
女の動きが変わった。先端ギリギリまでじんわりと引き抜かれて、基端ギリ
ギリまで一気に『貫かれる』。物理的には少年の方が女の身体を貫いているの
に、彼は自分が悦楽の鋭槍に下半身から脳天まで貫かれる感触を味わっていた。
それが繰り返される、何度も、何度も、何度も、何度も。
「う、ぁ、ああっ、ぁあっ、あああぅっ」
堪えきれずに少年は激しく喘ぎつづける。
これは地獄だ。さもなくば天国だ。
堕落しきった天上界の法悦だ。
「意外と保つなぁ。さっき1回出したからって、わたしにここまでされてまだ
イかないなんて」
ぺろり、頬が舐められる。はむん、耳たぶを甘噛みされる。
「あなたホントに童貞? それともオナりすぎで遅漏気味? ……ねぇ、返事
をしてよ」
拳司はぜえはあ息を荒げるのみ。飲み込むことも忘れた唾液が唇の端から胸
板へと滴り落ちる。
「うーん、流石に返事できるほどじゃないか。じゃ、そろそろ2回目、いただ
くね」
宣言通り。入り口付近、最もキツく締まる部分が少年の根元を絞り上げ、奥
の方が、吸い込むみたいに雁首付近を締め付けた。
「――――――っ!」
頭が大きく仰け反って、全身の痙攣。
有り得ないほど大量の精が女の胎に放たれた。
「あ……あはっ、美味し……っ!」
和泉の声が感極まってとろける。
「これが、“妖獣拳士”の……ああん、たまんない、たまんないよぉ……っ」
気持ちよく、なってくれている……。混乱した意識の中で、今、少年と性の
交歓を繰り広げているのは、彼の愛しい恋人だ。
あいつが、俺と……気持ちよくなってくれている。嬉しい、俺も、気持ちい
い、気持ちいい!
「ホント……お仕事抜きでわたし、あなたが欲しいわ」
かり。小さな痛みが少年の首筋に走った。
むしり取るように目隠しが外された。
眩しさ。光に慣れたとき、少年の視界には、大切な彼女の笑顔があった。
上気して、ちょっぴりエッチな表情で。
彼女の背中、蝙蝠状の翼がはためいているが、そんなこと気にならない。
普段の彼女なら着るはずもない、黒く、肌身にぴったりした不思議な衣装を
身に着けているが、そんなこと気にならない。
その衣装、胸元と股間だけが部分的に露出しているが、そんなこと気になら
ない。むしろその方がエロい。
少女が朱唇をひらいた。
「ねえ、わたしのものになってくれる?」
「……何……?」
「あなたがわたしのものになってくれるのなら、今度はあなたが、わたしのこ
と、好きにしてくれてもいいんだよ?」
少女から少年へ、口づけ。少年は、少女の唇を飢えた獣のように貪る。
混じり合った二人の唾液が甘い。痺れるように甘い。
「……し、の、だ……」
できそこないのロボットみたいに、少年の口が開閉する。
「好きだ……信太……」
「和泉よ」
「和泉……和泉、好きだ、和泉……!」
少年が椅子から解放された。少女の身体を押し倒す、床に。
「和泉、和泉、和泉、和泉、和泉、和泉、……」
むしゃぶりつく。彼女の豊かなバストに。
ねぶりあげる。彼女のしこった乳首を。
――信太の……和泉のおっぱいって、こんなにでっかかったっけ?
理性がいだいた疑問は、しかし、劣情の波に即刻押し流されていった。
そこは信太家勝手口。
案内してくれたピクシーに別れを告げて、ドアを開けると台所。
「お邪魔しまーす」
伊予は文字通り勝手に上がり込んだ。
台所は、ハミングの渦。食器、調味料、戸棚など、ありとあらゆるものが不
気味な唸りを上げての大合唱である。実害はないが、あまり気分のよいもので
もない。早くここから出ていきたいという気持ちにさせる、嫌がらせの仕掛け。
伊予は独りごちた。
「へー、なんか賑やかでいいなぁ」
目を輝かせさえして、彼女は全然平気であった。
伊予は、ふと部屋の隅の駆動音に耳を傾けた。冷蔵庫だ。
すたすた、その前まで行って。
「勇者は宝箱をあけた! パコッ!」
擬音まで口で作りながら、えいやと取っ手を引っ張る。
冷蔵庫の中身も、肉であろうが玉子であろうが、やはり鼻歌を歌っていた。
氷温室では、小さな妖魔がFREEZEしていた。レプラコーンかその類い、
小人の靴屋の御伽話に出てくるような、いわゆる妖精や精霊に近い悪魔。
「可哀相に」
伊予は囚われびとを救出し、凍えた身体を掌で撫でさすって温め、はあっと
息を吹きかけてやった。なかなか解凍しないので、電子レンジと、ガスオーブ
ンとを見比べて、流石にそれはマズかろう、とコンロをトロ火にして炙る。
ときおりコロナのように噴き上がる炎を避けて、火傷に注意しながら数分。
やがて妖魔は伊予の手の中で立ち上がった。
「ああっ、2回も助けていただいて! なんとお礼を言ったらいいか!」
「2回?」
伊予は小首を捻った。この手の弱っちい悪魔を助けることなんて日常茶飯事
だから、いちいち詳しいことまで憶えていないのである。
「まあいいや、元気になったんだったらよかったね」
「生憎、何にもお礼の品を持っていないのですが……」
「いいよ、そんなの。さ、おうちにお帰り」
伊予が床に下ろしてやると、妖魔は立ち去り難そうに、暫く彼女の周りをク
ルクル走り回っていたが、
「そうだ! もう一度、その大きな冷たい箱をあけてみてください」
「これ?」
伊予は言われた通りに冷蔵庫をあけた。
「そっちの棚に、マッスルドリンコがあったはずです」
「あ、ホントだ」
自宅の冷蔵庫にマッスルドリンコ。
……嫌すぎるご家庭だ。
尤も、元々冷蔵庫に入っていた物か、異界化した影響で自然発生的に現れた
物かはわからない。とりあえず持っていって、使っちゃったらあとで弁償すれ
ばいいや、と伊予はマッスルドリンコをポケットにしまった。
「いいこと教えてくれてありがとう」
「お役に立つとよろしいのですが」
妖魔は照れながら、いずこかへと走り去っていった。
台所には、洗面所に続くらしい扉と、廊下に続くらしい扉と、ダイニングに
続くらしい扉と、外へ出る扉とがある。
「ど、れ、に、し、よ、う、か、な、う、ら、の、ちょん、べえ、さん、に、
訊、い、た、ら、よ、く、わ、か、る。こっち!」
洗面所に続くらしい扉をあけると、エーテル状のドワーフが、鏡の前で豊か
なヒゲを三つ編みに結っていた。
「こんにちは」
伊予が挨拶をすると、地霊はギロリと睨み返した。ワシに関わるな、と言い
たそうだった。なので、関わらないことに決めた。
洗面所には、風呂に続くらしいドアがあった。
「てや!」
あけると、妖鬼アズミが水浴びをしていた。
「閉めてくれんかね」
不機嫌に言われて、伊予は御免なさいと丁寧に謝り、静かにドアを閉めた。
「次は何が出てくるんだろう?」
水を得た魚のようにうきうきと、今度はダイニングに続くらしいドアをあけ
る。
そこでは、禿頭マッチョな黒パンツ一丁のおっさんが派手なポージングをし
ていた。
「ようこそ! こちらは回復道場出張サービスであります!」
アブラギッシュな小麦色の肌に、真っ白な歯がキラーンと光った。
「何をお望みでありますかな?」
回復、復活、解毒、解呪などの料金表を指し示す。
最後の一行に、『筋肉 0魔っ貨』とあった。
「この『筋肉』ってなぁに?」
「期間限定の新サービスであります。お試しになられますかな?」
「うん」
「ではどうぞ」
ふん! とおっさんが力んだ。
大胸筋がピクピク動いた。
続いて三角筋がピクピク動いた。
後ろを向いて、大臀筋がピクピク動いた。
最後に、耳がピクピク動いた。
「以上です」
「あははははっ、面白い面白い!」
伊予は手を叩いて大喜びした。
「心が和みましたかな?」
「うんうん、和んだ和んだ」
「ちなみに動かす筋肉は、注文のたびに異なります」
「へーえ、リピーター獲得のため?」
「そのようなわけです。他には何をお望みですかな?」
「このサービスはいつまでやってるの?」
「ゴールデンウィークまでを予定しております」
「そっかぁ。じゃあそれまでに、みんなを連れて、もっかい見に来るね」
「またのご来場をお待ちしております」
きぃ、ぱたん。
「忘れないようにしとかなきゃ」
伊予はいそいそ生徒手帳を取り出して、何やらメモを書き付けた。
「おーい、そこの人間」
そのとき、風呂場の方から、先程のアズミに呼ばれた。
「なーに、そこの悪魔さん」
「これから半身浴をするんだが、飲み物を持ち込み忘れた。何か適当に取って
はくれんかね」
「飲み物?」
周りを見回したが、台所用品は、ポットから急須まで、みな鼻歌を歌ってい
る。冷蔵庫をあけたが、ジュースとビールはド演歌をデュエットをしていた。
歌っていないやつで、しかも飲み物といえば、一つしかなかった。
「こんなんでいい?」
伊予は、手に入れたばかりのマッスルドリンコを差し出した。
「おお、上等上等」
「喜んでもらえて嬉しいよ」
「代わりと言っちゃあ何だが、この火除神符をやろう」
「わあ、ありがとう」
悪魔は風呂へと戻っていった。
「楽しいなぁ、今度は何があるのかなぁ?」
伊予は廊下に続くらしい扉をあけた。
そこはいきなり壁だった。
押しても叩いても、どうにもならない壁だった。
行き止まりかぁ、と伊予は腕をこまねいて考えて。
「ここらへんかな?」
シンク下の扉をあけると、案の定そこが廊下。伊予は這って歩かないと通れ
ない道へとゴソゴソ潜り込んでいった。
このあとも彼女は、色んな悪魔に出逢って、持っているアイテムを代わりの
アイテムと順番に取り替えていくことになる。
そこは何もない、がらんとした大きな部屋だった。
異界の迷宮と化した信太家を探索し、幾たびかの戦闘を経て、和泉、カムド、
アンクがその部屋――異界化の中心たる“BOSSの間”――に乗り込んだと
き、その中央には一人の青年と、彼の従者らしき娘が立っていた。
床も天井も左右の壁も、たった今の今までドアが存在した背後の壁も、ペン
キ塗りたてのように真っ白。
彼らの正面の壁、即ち青年と娘の背後の壁だけが、闇のように黒かった。
アナライズの結果、従者めいた娘の方は、幽鬼グーラーに相当する存在であ
ると判明した。グーラーは幽鬼グールの上位種。彼女は、死者の怨念が昏い力
を得て生まれた悪魔なのだった。
一方、青年は奇怪な血色の輝線を肌身に有する、一見して異形の魔人だった。
「名前を訊いても構いませんか?」
強気の笑みで和泉が尋ねると、青年は無機的に答えた。
「マロガレ」
「へえ、根の国のマガタマも人界に出てきたんだ」
ヒュウと口笛でも吹きそうな感じでカムドが独りごちる。
だが、アンクは青年を呼んだ。呆然とその人修羅を呼んだ。
「……兄さん……」
驚いて和泉とカムドが彼を振り返る。
「兄さん、まさか生きて……」
敵であることは明白なのに、少年の手にした刃の切っ先は、完全に下を向い
てしまっていた。まだしも武器を取り落とさないだけマシ、といえる状況。そ
れほどまでに、アンクの受けたショックは傍目にも痛々しかった。
“運命の少年”として戦い、悪魔に殺されて死に、遺体は荼毘に伏されて、
遺骨が墓の中で眠っているはずの兄。
彼の隣の幽鬼グーラーは、兄の恋人だった“幻視者”。あんなに仲がよかっ
たのに、あれほど愛し合っていたのに、今の二人の間柄は乾いたビジネス関係。
ただの主従のようにしか見えなかった。
人修羅マロガレは淡々と述べた。
「悪魔に殺され、黄泉に堕ちた俺の魂は、マガタマを得ることで再びこの世に
舞い戻った」
そうだったのか、と僅かな希望をいだきかけて、少年は敢えて首を横に振る。
その仕草で、自分自身の愚かな期待を払拭したいがために。
そして、強いて感情を抑えた口調で問い質した。
「ならばアームターミナルはどうした」
マロガレと名乗る青年の手には、鞘に入っていてすら禍々しい“気”を放つ
大振りの太刀が握り締められている。和泉の持つ備前の短刀、アンクの菊一文
字など、一触の下に折り斬られてしまいそうな。
だが、DDSの起動に必要なCOMPの類は持ち合わせていないようだった。
「今の俺は“運命の少年”ではない」
青年は無感情に答えた。
「“運命の少年”のパートナーだ」
「パートナー?」
「“運命の少年”を救世主となすべく、俺は使命を帯びている」
「勝手なことを言わないでくださいっ」
凛として、和泉がマロガレに抗議した。
「生憎、パートナーは間に合っていますっ。わたしの家を元に戻して、さっさ
と帰ってください!」
「パートナーとは、この男のことか」
マロガレが片手を翻すと、闇色をしていた壁が、一気に無色透明化した。
「えっ?」
最初、その光景が何を意味しているのか、和泉は勿論、アンクやカムドにも
わからなかった。
ようやく理解したとき、和泉はなりふり構わずそちらへ駆け寄っていた。
「今宮くん!」
世界で一番大切な少年の名を呼ぶ。伸ばした腕が届くと思った、その矢先、
ガン! と行く手を阻まれた。
そこには見えない強固な障壁があった。ガラスでもプラスチックでもない材
質。視線は通るが、向こうからの音ばかりでなく、こちらからの音も通さない
ようだった。
「今宮くん! 今宮くん!」
必死で壁を叩き、呼びかけるが、少年はこちらに気づきもしない。
「……未熟な」
初めて青年が感情を表した。それは少女の行動に対する失望だった。
「今宮くん……どうして……」
ずるずると、腰を抜かしたかのように和泉はその場にへたり込んだ。視線は
一点に凝固したまま。信じられない、という表情。ぽろぽろこぼれる涙。
「和泉ちゃんっ」
カムドが気を利かせて、彼女の視界を遮った。肩を強く揺さぶり、何とか正
気を取り戻させようとする。
「しっかり、和泉ちゃん。あんなもの、どうせ幻覚ですよ」
気休めと知りつつ、そう口にする。
青年は、ただ、事実をのみ告げた。
「幻覚ではない。それは現実。今、そこで起こっている現実だ」
“運命の少年”信太和泉のパートナー、“妖獣拳士”今宮拳司は、悪魔の娘
を四つん這いに這わせて、その尻に自分自身を突き込んでいた。とろけきった
だらしない顔で、積極的に腰を使っている。彼の突き込みを貪欲に受け止め、
悪魔の娘は狂喜して総身をくねらせる。
音声はない。まるで無声映画のよう。
各自の想像力が脊髄反射的に音声を補って、悪夢のような淫猥さを醸し出す。
戦いに慣れた和泉の知性が自動的にアナライズ。悪魔の娘を夜魔リリムと分
析した。が、それだけだ。それ以上のことも、それ以外のことも、彼女は全く
思い浮かばなかった。
そして、冷酷な台詞が彼女に降り注いだ。
「これでわかっただろう。悪魔如きに誘惑されるような者は、“運命の少年”
のパートナーに相応しくない」
和泉の恋人と、人外の娘との淫行。
それが幻覚ではないということは、マロガレに保証されるまでもなく“覚醒
者”の直感が察知していた。
「恐らく、マリンカリン系の能力でCHARMされているんです。アンク!」
唯一冷静なカムドがアンクを促した。アンクはぎこちなく頷いて、カムドの
意図通りに手持ちのディスチャームを投げた。
だが、魔力のこもった回復アイテムは、何の力も発揮せぬまま、壁に当たっ
て落下した。勢い虚しく、アンクの足元まで転がり戻ってくる。
「無駄だ。こちら側からあちら側にアプローチすることはできない」
不通の結界か、とカムドが唇を噛む。人間もダメ、アイテムもダメ、だった
ら人修羅は?
試してみたが、和泉同様、カムドも無色透明な硬い壁に阻まれた。殴ろうが
蹴ろうが傷一つ付かない。それとも、これは物理的な壁ではないのか。
「だったら、ぼくたちにできることは一つですよ。BOSSを倒してこの部屋
を出る。あちら側へ行って、直接今宮先輩を正気に戻す」
「う、うん」
和泉が何とか自分を鼓舞して立ち上がる。今宮くんを助けなきゃ、その想い
が今は彼女を支えている。膝から全身の力が抜けるような喪失感、失うことへ
の恐怖感に苛まれながらも、それでも懸命に、自分にできることをしようとし
ている。為すべきことを果たそうとしている。
――ったく、和泉ちゃんにばっか苦労させてんじゃないっ、この色ボケパー
トナーが!
カムドは拳司の不甲斐なさを内心で罵るが、間違ってもこの場で口に出さな
いだけの気遣いがあった。
代わりに、もっと実戦的な知識を口にする。
「マガタマ“マロガレ”には長所も短所もありません。相性変更のアイテムか
武器を装備していない限り、どんな属性の攻撃でも通用するはずです」
何故そんなことを知っているのか。それは彼が人修羅だからだ。彼の宿すマ
ガタマには、他のマガタマの能力が幾らか記憶されている。根の国の“マロガ
レ”、海洋の“ワダツミ”、聖域の“アンク”、夢世界の“イヨマンテ”、火
炎地獄の“シラヌイ”、惑わしの里の“ヒフミ”、龍王洞の“ナルカミ”、古
戦場の“カムド”。
逆に言えば、アンク、カムドの長所、そして短所も、マロガレには十中八九
知られているということでもある。呪殺やバッドステータス攻撃に出てこられ
たら、非常に苦戦することになるだろう。
和泉は従弟の忠告を受け、震える指先に過剰なほど力を込めて、悪魔を召喚
した。
「コール!」
彼女が傍らに喚び出したのは、精霊アクアンズだった。水の力がこごってな
るモノ。上半身は半透明な少女、下半身は波という全身青色の姿。祈るような
ポーズで召喚主を見上げて、命令が下されるのを待っている。
マロガレは言った。
「いい選択だ。俺の攻撃は剣、そして火炎魔法。剣攻撃はカムドの前に半減さ
れ、火炎魔法はアクアンズの《水の壁》で無力化される」
自らの手の内を明かす。それほどまでに自信があるのだろう、己の強さに、
実力に。
「手持ちで最強の悪魔がたまたま水系であったという偶然なのだろうが、全力
を尽くして運に見放されないことが勝利への鍵だ」
まるで教導者のような口振りに、和泉の疑問が噴出した。
「あなたは一体、何のためにこんなことをするの!? “運命の少年”が、わ
たしが邪魔だというのなら、」
「言っただろう。俺は“運命の少年”を真なる救世主となすべく新たな生命を
与えられた者だ」
「誰にっ」
「……そうだな、“運命の少年”を支持する勢力、とでも言っておこうか」
「ちょっと待ってください」
マロガレの説明に、カムドが割って入った。
「きみの目的が和泉ちゃん……“運命の少年”を救世主にする、ということな
んだったら、単に“運命の少年”のパーティに、きみも加わればいいだけの話
じゃありませんか。何故パートナー役まできみが“妖獣拳士”から横取りする
必要があるんです?」
こんなくだらない真似をしてまで、と目線で拳司の惨状を差す。
マロガレは答えた。
「理由は簡単だ。“運命の少年”は、“運命の少女”と結ばれねばならない。
“運命の少年”が女なら、“運命の少女”は男のはず。即ち」
「まさかきみが“運命の少女”とでも?」
「その通りだ」
あまりのアホらしさに、カムドは脳裏でハァヨイヨイと踊った。
「元・“運命の少年”が“運命の少女”? 何がどう間違えばそんなメチャク
チャな話になるのやら」
「運命の渦中にあったがために、俺が“運命の少年”であるとの誤解が生じた
のだ。救世主は男であるという先入観が、まだ“異能者”だった俺を含めて、
多くの者達の目をくらませた。無論、“運命の少女”が“運命の少年”として
生きようとしても、上手くいくはずがない。ゆえに俺は敢え無く悪魔に殺され
た。だが“運命の少女”は“運命の少年”の“運命”。二人は巡り逢い、共に
生きる宿命がある。俺はマガタマを与えられ、人修羅として生まれ変わった。
そうして、“運命の少女”として覚醒したのだ」
「長広舌お疲れ様です」
カムドが爽やかな声で皮肉を飛ばす。
「きみの話は大筋わかりました。きみが“運命の少女”であるという言い分に
説得力がない、ということもね。“運命の少女”は人間のはずであって、人修
羅なんかであるわけがない」
「それこそが先入観の産物なのだよ」
「だったらお訊きしますが、きみが“運命の少女”であり、今宮先輩が“運命
の少女”ではない、というのも『先入観の産物』なんじゃありませんか?」
売り言葉に買い言葉でその台詞を口にしながらカムドは、ありえない話では
ないな、と考え始めた。
「“運命の少年”である和泉ちゃんが自分の意思でパートナーに選んだ今宮先
輩の方が、よっぽど“運命の少女”である可能性が高いでしょうに」
「この男が“運命の少女”だとすれば、何故こうも易々と悪魔の手に堕ちた?」
青年が顎で指し示す、人間と悪魔の淫らな情交。
「“運命の少年”はその未熟のゆえに、思春期特有の幻想で恋情を“運命”と
錯覚し、誤まってこの男をパートナーに選んだのだ」
和泉に向けてゆっくりと手を差し伸べ、噛んで含めるようにマロガレが言い
聞かせる。
「今ならまだ、誤まりを正すことができる。躊躇をしてはならない。“運命の
少年”と“運命の少女”は一対の男神と女神。お前は、信太和泉という女は、
“運命の少年”となることを選んだ日から、“運命の少女”という男、即ち俺
に身も心も捧げることが義務づけられている。それ以上でも、それ以下でもな
い」
カムドが鋭く横槍を入れた。
「言っていることが自家撞着を起こしていますよ。未覚醒の“運命の少女”が、
『その未熟のゆえに』悪魔に魅了されたとも考えられるじゃないですか。今宮
先輩が“運命の少女”ではないという論拠にはなりませんね。きみの言葉は、
むしろ今宮先輩が“運命の少女”であるという事実を必死に押し隠そうとして
いるようにも聞こえますよ」
マロガレに言を継がせず、嵩に掛かってカムドが言い募る。
「悪魔に今宮先輩を誘惑させて、その光景を和泉ちゃんに見せ付けることで、
動揺を誘い、理性的な判断ができないようにしたつもりでしょうが、このぼく
が傍にいる限り、そうはいきませんから」
「随分とひねくれた考え方をする奴だ。何故、“運命”を真摯に受け止めよう
としない?」
「ばっかじゃないの」
腹の底から呆れたような一言が、人修羅二人の険悪な会話に終止符を打った。
カムドは急いで従姉を振り返った。両腰に手を当て、大きく溜息をつく従姉を。
「あのね、言っておきますけど、わたしの“運命”は今宮くんなんです」
和泉は完全に立ち直った、わけではない。自らの信念を口にすることで、マ
ロガレの仕掛けた罠に立ち向かっているのだ。
戸惑う自分自身に、立ち向かっているのだ。
「でなきゃわたし、“運命の少年”になろうなんて思うはずありませんもの。
アームターミナルを受け取って悪魔を喚び出して、刀を振り回して悪魔を斬り
伏せて、そんなことしようなんて絶対に思いませんもの」
少女はマロガレに断言する。彼女は世界に断言する。
「巡り逢い、共に生きる宿命があるというのなら、今宮くんとこそです」
「……愚かな」
マロガレが憐れむように首を振る。
「それが幻想だと言うのだ」
「幻想だから何なんです? 黙示録の預言だって、救世主の神話だって、そん
なのみーんな幻想でしょう?」
腹が立つのも通り越して、もう無視してやりたい。そこをぐっと我慢して、
最低限言うべきことだけは言っておく。そんな口調。
「“運命の少年”には“妖獣拳士”が必要なんです。いえ、わたしには今宮く
んが必要なんです。“運命の少女”が誰であろうと関係ありません。もしも、
そのことで“運命の少女”さんとやらがゴネるようなら、」
和泉は片手で肩口の髪をハサリと払った。
「その人に平手打ちの一つもお見舞いしますよ、勘違いしないで、ってね」
怒りを押し殺したような声音でマロガレが問う。
「男神の転生体よ。その選択が、世界を滅ぼす引き金だということを理解して
いるのだろうな?」
「勿論」
自称“運命の少女”の詰問に、にっこり、大きな笑顔で“運命の少年”は宣
言した。
「ご心配には及びません。もしもそうなったら、わたしは女神なしでも世界を
救ってみせますから」
人修羅マロガレは絶句し、そして、今の今まで事の成り行きにただ流されて
いた、少年アンクが力なく笑った。
「兄さん。あんたの負けだよ」
そして兄に問う。
「あんたの本当の目的は何だ? 新たなる創世を望む者の前にこそ、マガタマ
は姿を現し、その者を人修羅と化する。“運命の少年”を『利用』して、“運
命の少女”という立場を利用して、あんたはどんな世界を創ろうというんだ?」
兄は答える。
「俺は“運命”に殉じるだけだ。この悪意と欺瞞に満ちた世界を救い、正しき
道へと導くために」
「それは『自分が“運命”の表舞台に立ちたい』という意味か? “運命の少
年”では失敗したから、“運命の少女”として主役になろうということか?」
「…………変わったな。剣也」
フッ、と切なげに兄は笑った。
「昔は、俺の言うことなら何でもよく聞く素直な奴だったのに」
「変わったのは兄さん。あんただよ」
刃を一閃、弟は振り払った。過去の懐かしい思い出を。
兄を信じたいという心を。
「おれがあんたの言うことを鵜呑みにしがちだったからこそ、あんたはおれに
対して、いや、誰に対しても、言葉に気を遣っていた。周囲の意見を尊重して
いた。その上で、自分の意志を通すときでも、そんな押しつけがましい言い草
は決して口にしなかった。だから」
青年はピクリと唇の端を歪めた。だが、それだけだった。
「だからあんたには、あんたのために命を懸けてくれる親友も、恋人もいたん
だ。おれだって、あんたを尊敬していたんだ」
アンクは更に何かを言いかけて口をつぐみ、……その代わり、こう付け加え
た。
「こんなとき、悪魔ならこう言うんだろうな。『踊らされてはいまいか?』。
あんたには、心当たりがあるんじゃないか? 自分が誰かの笛の音に踊らされ
ている、ただの道化だ、と」
マロガレが鼻白み、そのとき、和泉がハッと息を呑む。そして悲鳴。
「いけない、イヨちゃんっ!」
瞬時に全員が和泉の視線を辿った。
結界障壁の向こう側。
一体の女悪魔が氷結魔法をリリムに当てて。
一人の少女が回復アイテムを拳司に投げつけた。
本日はここまで。
次回投下は来週末の予定。遅くとも半月以内には。
明日は半年ぶりのセッション! 嬉しいな! 楽しんでくるぞ!
けうまがやっぱり神だった件
>>384 乙&GJ。
そして楽しいセッションを過ごせますよーに。
「十三ちゃーん!」
「うわっ?」
その日速水十三が調査を終えて事務所に帰ると人間化したタッシェがいきなり飛び付いてきた。
そればかりかやたらと匂いを嗅いだり体を擦り付けてくる。
「おまえ、なんで・・・あっ!」
不審に思った十三が事務所の仲をみると、そこには食い散らかされたキウイの残骸があった。
キウイ。
マタタビ科の植物である。
「おまえ、どこからっ?」
「宅配便で来たんですー」
そういうなりタッシェがいきなりディープキスをしてくる。
獣の香りとほのかなキウイの味。そして少女のやわらかさが十三の理性を剥いでいく。
十秒ほどしたのちに十三から離れたタッシェはワンピースの裾をつまんでたくし上げた。
つるんとした丘は切れ込みが入っている程度の幼いものだったが
そこからあふれたものはすでに内太ももで糸を引いていた。
「十三ちゃんがたべたいですぅ」
熱い吐息を吐く少女に、青年はなすすべなく押し倒された。
普通にキウイを最初に思い浮かべて、血と肉が飛び散る凄惨な光景を想像してしまった>食い散らかされたキウイの残骸があった。
一先ずは感想とか。全部じゃないけど。
>卓ゲ板コテエロパロ
コテという題材の着目点もさる事ながら、なんかいいな。淡々とした感じなのに、妙に真に迫ったというか、押してくる
というか。こういうのを筆力があるというのか。
他のも色々拝読したいと思います。続き、別物を問わず、次以降を期待して待ってます。
>異能の指先
うっわー。なんつーか滅法エロいな。流石DXだな。評価ポイントが間違ってる気がしなくもないがな。
というか続きはもう来ないのかと思って諦めかけてた。まあ遅筆に関しては俺も人後には落ちない。
文章の切り方というか音のつながりというかがすごく好みなので、また書いていただきたいと思いました。できれば今度
はハッピーエンドで!
>いつふたのひと
そのクオリティとクオンティティを見習いたい。いやマジで。週一ペースがやっとですよ。きっと俺は努力が足りない。
アンク。死んでも浮気性は治りませんか。だからあんな再会をするのだ。様を見ろ。
伊予。天然というかなんというか、その性格が和みます。でもきっとこの子、ナチュラルに悪女だ。(←超主観)
カムド。頑張れ兄。いやさ元兄。今回は血縁じゃないから君にだってチャンスはある。
拳司。彼女にあそこまで言われておきながらそのヘタレっぷりは何かと。頑張れ拳士。ゲージ使え。男を見せろ。
あとお気遣いありがとうございます。実は季節の変わり目に弱いんです。というかその時期が新人指導やら何やらで鬼の
ようなんです。むしろ俺は蒲柳の質なんです。体めっちゃ弱いんです。とか言うと、周りのひとびとは必ずなんとも言えな
い眼差しで俺を見るんです。なんだってんだ。
>渇きの主妄想
この凸凹コンビは妙に好きなので。っつーかこのスレのお陰で好きになったので。
ありがちな言いだが、続きを楽しみにしておりますよ。視点の彼女がどう絡んでくのかも期待。
>>374 俺も覚えてる。という訳で気が向け。あ、いや、向けてください。
とは言ったものの。ぎゅう、と抱きついてくる体を同じ強さで抱擁しながらあたしは考える。
直接横になるには、床はちょっとばかり冷た過ぎる。かといってベッドのあるところまで移動っていうのも却下。あたしの我
慢がもう利かない。
数瞬だけ思案して、腕を解くとあたしは手近の机に腰掛けた。
「おいで」
深く座り直して、彼女を誘う。言われて戸惑う手を引いて、くるりと半回転。広げたの脚の間にエスコート。あたしに背中を
預ける格好で座らせて、そうして再度後ろから密着。
「セ、センセ…」
すっぽりあたしに捕まったふうになって、彼女は小動物のように身を震わせる。緊張と、それからきっと、期待とで。
自分の唇を舐めてから、あたしはゆっくり彼女の頬に舌を這わせる。ぺろりと、舐め上げて。口を寄せた肌は、どこか甘くミ
ルクの香りがした。
「それじゃ。イイコト、しよっか」
怯えたようにぎゅっと拳を握り締める細い身体に、そう囁く。うっわー。なんかあたし、ノリノリだ。
まずは軽くみみたぶを口に含んで。それから耳の裏。息を吹き込みながら耳の中。じっくりじっくり、飴玉を蕩かすように愛
撫していく。
「……ん……ふ……っ…」
口を噤んで、必死に噛み殺す甘い声。ふふー、まだまだ全然序の口だけど、どこまで頑張れるのかな?
当然仕事をしてるのは舌だけじゃない。両手だっても活躍中。
そっと、触れたか触れないかなくらいで胸を。それから少しずつ下ってわき腹、おへその辺りを撫で上げる。少し触れる力を
強くして、内腿。膝の辺りまで旅をして、今度は外側をくすぐりながらおしりの方へ。そうして同じ行程を辿って胸まで帰って
くる。
服の上からの仕業だから直接的な快感には繋がらないだろうけれど。これからの行為と、これから可愛がられる部分と。その
両方を意識させられて、か細い吐息はますます妖しい熱を帯びる。
「…ぁ……や…っ」
耳を開放して、今度は白い首筋を唇が嬲る。上々の、敏感な反応。興奮してきているのだ。
生徒を。しかも女の子をこんなふうにしちゃうなんて。すっごいイケナイ事をしてる気分。でもその罪悪感、背徳の感覚が、
更にあたしの欲望の火を掻きたてる。
制服の脇のファスナーを上げて、指をその下に潜り込ませる。下着をずらして、と思ったら。
「…つけてないんだ?」
あたしの両手は、やすやすと彼女の素裸の胸に辿り着いて触れていた。
「……だって、ダメにされちゃったから…」
なるほど、あのエミュレイターが、ご丁寧に一枚ずつ脱がしていくなんて事はなかっただろう。
「じゃあ、下も?」
問われて彼女は俯いた。既に欲情で桃色に染まっていなかったなら、羞恥に真っ赤になっていた事だろう。まあちゃんとした
お返事がないわけだし、その辺りの具体的な事は後々確かめさせてもらいましょう。
やわやわとふくらみ始めたばかりの胸を揉みしだきながら、あたしはそんな事を考える。その間にも地ならしを終えた手は、
ゆったりとした速度で丘の麓から頂上へと這い登っていく。辿り着いたその先、焦らされて痛いくらいにつんとなった先端を指
先で転がすそのたびに、腕の中で白い肢体が小さく跳ねた。
「気持ち、いい?」
くたりと全身から力が抜けて、あたしにすっかり身体を預けて。半ば目を閉じて刺激に酔い痴れる彼女に訊いてみる。
「ん…わかん、ない……。でも、なんか……なんか、ふわふわして……センセ……」
彼女はもじもじと切なげに内腿を擦り合わせた。上体を捻って、潤んだ瞳があたしを見つめる。…うわ、可愛い。もうどうに
でもしてって感じで。なんか今、すっごい男の気持ちが解った気がした。クセになりそう。
「いいコね。じゃあ――」
頬に。それからゆっくりたっぷりと時間をかけたディープキス。
「もっとよくしてあげる」
ぼおっとした顔で、何を言われたのかもきっと理解できていないだろう。密着したあたしに伝わる体温が高い。
胸から手を片方だけ逃がして、スカートのその下に。辿り着いた花弁はやはりむき出しで熱ととろみを帯びている。
「あっ!? …や、そんなトコ……んぅっ!」
まだ強すぎる刺激に、未成熟な身体が敏感に反応する。でも、逃がしてあげない。
「っ……ぁ…ァ…っ……!」
秘裂をなぞり、一番敏感な芽をいじる。声を必死に押し殺すけれど、もう隠せないくらい彼女の息づかいは荒い。ぎゅっと体
に力が入って、熱にうかされるみたいな浅くて早い呼吸。
不意に嫉妬が頭をもたげた。この華奢で綺麗でやわらかな身体を。あの蜘蛛は思う様――。
「い、た……っ…ん、…センセ…そんな強くしちゃ……やぁっ」
きゅっと乳首を擦り上げる。足の付け根で、指が淫らな蠕動を開始する。
――キスマーク、つけちゃえ。
のけぞる首筋を強く吸った。白い肌に残る、あたしのだっていう印。
「ふぁ、あ、あァ…っ」
弓なりに反って、くぅっと動きを止める。爪先までがぴんと伸びて、乱れた長い髪があたしの身体をくすぐっていく。やがて
ため息のような呼気を漏らして、全身の力が抜け落ちた。
「服を着た意味、なかったね。むしろ汚れちゃうだけだったかな」
囁きながら、あたしにもたれた彼女のスカートを脱がしていく。腰を浮かさせて、引き抜いて、すとんと床へ。
「はい、腕上げて」
彼女はもうあたしにされるがまま、言われるがままで。制服は綺麗さっぱり剥き取られて、生まれたままの格好になる。
んー、そうだ。
ちょっと悪戯心が湧いて、髪の束ねに手を伸ばす。
「あ…」
留めを解くと、浅黄の髪がふわりと広がって、軽く汗ばんだ肌に零れる。きっと誰も見た事のないこのコを、今あたしは独り
占めしてるんだ。机から滑り降りてしげしげと眺めていると、
「そんなに見たら、恥ずかしいよぅ」
足を閉じて薄い胸を両手で覆う。けれどどこか甘えた調子。
ちょっと待っててね、とひとつ頭を撫でて、あたしも手早く、けれどそれでももどかしく服を脱ぎ捨てた。
もう一度、今度は正面からぎゅっと抱き締めて。
「センセの体、あったかい…」
甘えるように彼女は頬擦りしてくる。素肌と素肌が触れ合って、ひと肌の心地良いぬくもりが伝わってくる。なんだか安心す
る温度。
「それに、なんだかいい匂い」
陶酔したような唇に軽く唇を重ねる。
「キミも。すっごく、かわいいよ」
うーっ、となんともつかなく恥ずかしげに呻いて、彼女はあたしの胸に顔を埋めた。でも残念ながらあたしは、こんな行為だ
けじゃ全然物足りないわけで。
「あ…っ!?」
つう、と潤んだ部分に指を這わせる。愛撫を再開する。擦られて、たちまち切なげな吐息に変わる。
「センセ…駄目…」
「何が駄目?」
少し深くに指を潜らせる。びくん、と仰け反る彼女の肢体。
「ダメなのはキミでしょ? お願いしたのはあたしなのに、自分だけキモチよくなっちゃって」
「あ、んっ…ご、ごめんなさ…ふぁ…っ」
ふたり抱き合ったまま、体を少しずらして、あたしのところに彼女の手を導いて。
「ね、同じようにして?」
「う、うん……こう?」
既に濡れそぼった花弁で、彼女の指がたどたどしく動く。きっと毒の所為だろう。的確な指戯とはとても言い難いのに、くす
ぐられるだけで電流のような感覚が、足の先から頭の天辺までを貫いていく。
「ん…そう、上手。んっは、あ…っ」
お互いを愛する淫らな蜜音だけが、他に誰も居ない教室に響く。少し背伸びをするようにして、向こうからキスをせがんでく
る。水音がふたつになる。さっきのこのコじゃないけれど、ふわふわといつまでもこうしていたいような浮遊感。女の子の体っ
てどこもかしこもやわらかいんだなんて、そんな事を思う。
すごく、気持ちいい。でも。
でも、これじゃ足りない。あたしの身体は驚くくらい貪欲だった。
「ね…」
舌を抜くと、惜しそうにそれを追う動き。もう一度味わいたくなるのをこらえて、
「やっぱりアレ、もっかいお願い」
「…? あ!」
意味を取り損ねたのか、不思議そうに小首を傾げた彼女の頬が、ぽっと染まった。
今回はここまで。だらだらと次回へ続く。
先生はちょっと調子に乗り過ぎじゃないかと思います。一応あと4、5回で終わりの予定っす。
んじゃまた、続きが出来たらば。
GJ!GJ!
いいぞもっと調子に乗っちゃえ
でもほら、生徒なんだからもっと思いやって女の子としてめろめろn(ry
えろい。実にえろくてよろしい先生だ。
石田ネコミミ絵で脳内再生されてやがるンですが、どうしてくれるんですかっ!!
GJ!!
GJ。
つか更新早いから、目が離せないな。
412 :
いつふた:2006/06/02(金) 21:21:37 ID:b2YT6PI6
ゲーム:真・女神転生200X(メガテンX 8本目転の章)
レス数:14+1
分割:起承転結の転の章。
エロ度:強姦シーンの続きが少し。
部屋の中には少年と悪魔。
騎乗位、少年の腹の上で女悪魔の乳房が激しくはずんでいる。
「ああっ、いいっ、クる、クる、クるぅっ!」
恍惚、全身を揺さぶって、蝙蝠状の翼を持つ夜魔は汗を光の玉と散らせる。
「い、イく、ぜ、イくぜ、和泉っ!」
人間・今宮拳司が吼え、
「いいわぁっ、キてぇっ!」
夜魔リリムが喚く。
二人きりの世界に閉じこもって、ただ相手だけしか見えていない。
それでも伊予は気を付けた。気づかれないよう、音を立てぬよう、抜き足、
差し足、忍び足。
青と紫のクレヨン。生徒手帳の1ページに描く悪魔の紋章。破り取り、こう
囁きながら投げる。
「静かに出ておいで、エンプーさん」
シュオッと顕現、一体の召喚悪魔。其は夜魔エンプーサ、地獄の牝犬。スレ
ンダーな少女の身体に犬の耳、犬の尾、犬の毛皮。部屋を満たす淫臭に反応し、
好き者めいた舌なめずり。獣欲の光景を目の当たりにして、その仲間に自分も
加われないことが、ちょっぴり残念そうであった。
「せーので行くからね?」
「ええ、いいわよ」
部屋の片隅、少女と女悪魔とがこそこそ内緒話。そして。
「せーのっ!」
「《ブフ》!」
エンプーサが氷結魔法を夜魔リリムに当てる。
「ギャンッ!」
石をぶつけられた犬のような悲鳴。油断しきっていたリリムはブフの一撃を
まともに喰らった。弾き飛ばされてFREEZE、一気に氷漬け。
「ていっ!」
その隙に、玉造伊予がディスチャームを拳司に投げつけた。
ぱん! とはじける魔的物質。少年の頭に浮かぶテンプテーションハートが
虚空に吸い込まれて、ようやく拳司は我に返った。
「お、おれは……!?」
「いいから早く、服を着て着て」
そこらに落ちていたズボンだのパンツだの魔晶手甲だのを、伊予は拳司の手
に押しつけた。
「え? 何? 何だ? てか、誰だお前?」
「そんなことはどーでもいいでしょ、早く和泉先輩たちと合流してよぅ」
「和泉!?」
その名が彼に理性を取り戻させる。そう、今は思考の時ではない。行動の時
だ。
氷漬けのリリムに、嵩に掛かってエンプーサがブフを唱える。その光景を尻
目に拳司は最低限の衣服を身に着け、何より魔晶手甲を装着し。
「彼女はどこだ?」
「多分ね、この部屋を出た正面の扉の中。イヨ、そこだけはまだ確認してない
から」
「っしゃ!」
「なんかね、すっごくヤバい敵が来てるらしいの。アンクとカムドも一緒だけ
ど、悪魔さんたちの噂によれば、戦力的にはかなり負けてそうなの。お願い、
みんなを、和泉先輩たちを助けて。先輩、和泉先輩の恋人なんでしょう?」
「ああ、そうだ」
少年は大きく頷く。
「俺が、あいつを護るんだ」
「邪魔よっ!」
FREEZEから自力で回復したリリムは、エンプーサを薙ぎ払い、大きく
翼を広げて立った。激怒。憎悪。醜くも美しい、苛立ちに歪んだ顔。
「おどきっ、エンプーサ!」
「ゴメンなさい、リリムおねーさま。あたし、イヨちゃんの味方なの」
ぺろ、と小生意気に舌を出す犬娘。蝙蝠娘がますます柳眉を逆立てる。
「ここはイヨたちに任せて。先輩は、早く」
少女が少年の背中を押す。
彼の使命へと急き立てる。
彼は“妖獣拳士”。“運命の少年”のパートナー。
「わかった。お前も気ィ付けろよ!」
「うんっ」
互いに手を振り、駆け去る者、残る者。
女悪魔が冷笑する。
「お嬢ちゃん。あなた一人でわたしに勝てるつもり?」
「んー、ちょびっと無理かな」
“式神使い”には見鬼の能力がある。だからこそ伊予はリリムの弱点に応じ
て氷結のエンプーサを召喚した。
そしてまた、彼我のレベル差も承知している。仲魔がいてさえ、“異能者”
である自分一人で、リリムは決して倒せまい。仮に“妖獣拳士”と二人がかり
で戦っても、自分が足かせとなってしまう。
だから行かせた。彼を生かした。彼の力を、正しく活かした。
「でもね、時間稼ぎにはなるよ。先輩が和泉先輩に会うまで。アンクやカムド
のとこに行くまで」
抜き払う、アセイミィナイフ。敵する夜魔の目にも明白、少女には剣の心得
などない。月光に祝福された魔法の短剣は、ゆえに気休め、お守り程度の代物。
それでも本物だった。心意気は本物だった。
「ここは通さない」
笑顔で告げる決死の覚悟を前にして、リリムは傲然と嘲笑う。
「いい子ね。おねーさん、ちょっとだけあなたに興味持っちゃった」
ちろり、鋭く伸びた爪先を舐める。
「遊んであげるわ。……おいで」
「和泉!」
“妖獣拳士”が部屋の中へ飛び込んだ、と同時に開け放たれたドアから二人
の人修羅が部屋の外へと飛び出た。
ところが、彼らの足が着地したのは部屋の中。そして再びドアは消える。
「空間がループしてるのかっ」
出られない。伊予を助けにいけない。アンクが悔しげに舌打ち。カムドが無
念の歯軋りをする。
「今宮くんのバカーッ!」
半泣きの表情で和泉が拳司を責めた。
「どうしてイヨちゃんをあっちに置いてきちゃったんですか!」
透明な壁の向こう側、リリムがエンプーサを片足の下に踏みつけ、雷撃、ジ
オンガが伊予を襲う。だが、決して致命傷は与えない。狩り手のネコが、獲物
のネズミをいたぶるかの如く。
「それがあの子の意思だからだ」
歯を喰いしばり、“妖獣拳士”が拳を掲げる。キン、と凍り付く氷結掌。空
気中の水分が結晶化して舞うダイヤモンドダスト。
「そしてこれが俺の意思だからだ、お前を護って奴を倒して、」
ビシリ、壁の向こうの少女を指さす。
「あの子を助けに行くッ!」
彼らの正面で、マロガレの殺気が膨れ上がる。
「説得が通じないなら、痛い目をみせることも必要か」
大振りの太刀が軽快に鞘走り、空間、裂くかのように真紅の刃が光を放つ。
「実戦こそが最大の訓練だ。今後の戦いのために、少しばかり鍛えてやろう。
死ぬ気で掛かってくるがいい、“運命の少年”」
「死ぬのはてめぇだっ!」
拳司が地を蹴り、アンクとカムドが左右に散った。
「アクアンズ、《水の壁》!」
和泉が悪魔を指揮し、血戦の戦端がひらかれる。
マロガレが太刀を上段に構えた。と同時に、透明だった壁が闇色に戻る。彼
がこの仕掛けを制御しているのだろう、ならば彼を倒せば伊予のところへ直通
で行ける可能性もある。
だが今はもう、伊予の様子を伺い知ることすらできない。
――お願い、イヨちゃん……無事でいて!
和泉は祈った。願いを聞き届ける“神”などいないと知っていても、無事を
祈らずにはいられなかった。
四対二。幽鬼グーラーは魔晶手甲と魔晶剣との連携の前に散り、真紅の太刀
と菊一文字とが斬り結ぶたびに火花を散らす。
回復手段を持たないマロガレは徐々に体力を削られて、鳩尾に“妖獣拳士”
の拳を受け、暗黒の壁に叩きつけられた。
「っしゃ、いい手応え!」
拳司は自分の拳で自分の掌を叩く。
「おそらくあと一撃か二撃で倒せるはず! みんな、頑張ってください!」
和泉の声援が少年達を鼓舞する。あと少し、あと少し!
「……思った以上に、やる」
むしろ嬉しそうに青年は笑った。その笑顔が記憶のそれと重なって、少年の
胸を痛めつける。
――兄さん。
訣別の剣をアンクは振り上げた。
「はぁい、マロガレ〜」
天井から降ってくる、甘ったるい女の声。
「わたしからのプ・レ・ゼ・ン・ト」
ドサリ、マロガレの足下に、一人の少女が落とされた。
「あの子は……!」
拳司が息を呑む。
「「イヨ!」」
アンクとカムドがその名を呼ぶ。
「イヨちゃん!」
和泉が自分の口元を押さえる。悲鳴を押さえるかのように。
伊予は、一体どれだけの電撃を受けたのだろう。短い髪も真新しい制服も、
焼け焦げ千切れて白煙を上げ、あんなにも滑らかだった肌は火傷を負ってボロ
ボロ。ぐったりと倒れ伏してぴくりとも動かないさまは、まるで、壊れてゴミ
捨て場に捨てられた人形のよう。
反射的に駆け寄ろうとしたアンクとカムドは、マロガレの太刀が伊予の首筋
にヒタリと当てられるのを見て、思わず足を止めた。
「人質のつもりか」
拳司が憎々しげに眉根を寄せる。
カムドはちらりと和泉を見た。彼女は頷く。その目は瀕死の少女を救うすべ
があると語っている。たとえばそれは、道返玉。
だが、だからといって、愛らしい少女が眼前で斬り刻まれるさまを見たくは
なかった。
これ以上、あの子が傷つくのを見たくはなかった。
彼女を連れてきた蝙蝠娘が、和泉の顔と声でマロガレに強請る。
「ね、わたしもちょ〜っと怪我しちゃった。ついでに治してくれない?」
「去れ。お前にはもう、用はない」
無感動な命令に、夜魔リリムは両手を広げて肩をすくめた。
「はいはい、召喚主様の仰せのままに」
女悪魔は魔界に還り、人修羅マロガレは少女の首に当てた刃を、ほんのわず
か、引いた。
それは薄皮一枚を切る程度の切り傷だ。だが、そこから流れ出たのは、否、
搾り取られたのは、ねっとりと赤い、赤い赤い光。
マガツヒ。半物質化した生命エネルギーそのもの。
「イヨ!」
アンクが跳んだ。カムドが駆けた。兄の剣から少女を救う少年。敵に向かっ
て鈎爪を振り下ろす少年。人修羅マロガレは魔晶剣の斬撃を回避、大きく跳躍
して自分の太刀を天へとかざした。
「千を殺して千五百を生ましめん」
和泉も拳司も、アンクもカムドも驚愕した。マロガレの体力魔力が完全回復
し、倒したはずの幽鬼グーラーが甦り、そればかりか、同時に“運命の少年”
側も全員、戦いで失った力を完全に取り戻したのだ。
「イザナミの呪い、イザナギの言祝ぎ。これがこの太刀、黄泉路剣の能力だ。
瀕死の者を生贄に捧げることで、敵も味方も区別なく癒す」
「何なんだそれ、何の意味があるんだ!?」
拳司が混乱する。マロガレは言を継ぐ。
「救世主となり、世界を救うためには、“運命の少年”に敗北は許されない。
例えば全滅寸前の起死回生、敵をも甦らせたとて、“運命の少年”は再び戦い
を挑み、そして勝利する。なにしろ生贄のマガツヒを吸って暫くは、黄泉路剣
の威力が大幅に増大するのだ。その性質は大いに利用できる」
軽く振られた刃。
あんなにも強固だった闇色の壁を易々と粉砕する。
「イ、イヨちゃん、イヨちゃんに、これを!」
床の上、アンクに抱き起こされたイヨに和泉が道返玉を差し出した。
「お願い、助かって、イヨちゃん!」
少女の手足は乾いた泥が崩れるようにポロポロと砂になっていく。ポトリ、
手首が落ちて、床の上で砂の山になった。その隣に、コトリ、単なるビー玉み
たいに道返玉が転がる。
「な……何で!? 何で効かないんです!?」
「当然だろう。その少女は黄泉路剣の生贄となった。身体は土に還り、魂魄は
黄泉へと落ちる。こうして瀕死の敵に黄泉路剣でとどめをさしていけば、味方
の犠牲は最小限に、敵を完膚なきまでに叩きのめすことができる」
冷淡にマロガレが説明する。
「魔法だろうがアイテムだろうが、その娘を甦らせるすべはない。勇気と蛮勇
とをはき違えた、愚かな子供には相応しい死に様だろう」
「あなたって……あなたってひとはっ!」
眦を決し、怒りと憎しみを込めて和泉がマロガレを見据える。
「ああ、いい眼だ」
青年は満足げだった。
「常にそのぐらい真剣であれば、遠からず世界は救われるだろう。さあ、特訓
の続きだ、“運命の少年”。次の戦いでは最後に“妖獣拳士”を贄としよう。
それからそこの人修羅どもを。それであと、都合三度は死力を尽くして戦える。
その上、人修羅は黄泉路剣の生贄に捧げてもマガタマがあとに残るからな。俺
がそれを使うことによって、お前はより早く、より確実に、救世主候補から真
なる救世主へと近づくのだ」
「ふざけないで!」
「誰もふざけてなどいない。世界がそれを望んでいるのだ」
「そんな世界……わたしは認めません!」
「イヨ! イヨ!」
最期だと、もう救えないと、わかっているのにアンクは少女を呼び、その身
体を揺さぶった。
たまらなかった。最期であることが。もう救えないと、わかっていることが。
ふ、と少女の瞼がひらく。
急速に生命力を失っていく瞳が、ゆっくりとアンクを見上げた。
唇が、震える。
「……ぅ」
「何? 今、何て?」
「ありがとう……約束を、守ってくれて」
「約束?」
オウム返しに問い返す少年。少女は花がほころぶように微笑む。
「さみしくないよ。しあわせだよ」
――きみが死ぬときには、おれが傍にいる。寂しくないように、最期まで傍
にいてあげる。
――だからそのときには、おれのこと、大好きって、言って。
「好きだよ。大好きだよ。きみのこと、大好き、だ、よ…………」
ザァァァァ。
アンクの手から、指から、今の今まで少女の身体であったものが零れて落ち
た。
残った物は、破れた衣服。人の形すらとどめていない、ただの砂山。
「……また……同じことの繰り返しなのか……?」
呆然と、カムドが呟いた。もはや立ってもいられなくて、ガクリと膝をつく。
「どうしてぼくは、ぼくはまた、」
ガッ、床に叩きつける鈎爪、傷つき流れる自らの血。
「あの子を護ってやれなかった!?」
意味不明の絶叫が少年の喉から迸った。
これで終わった。
全て終わった。
彼女は死んだ。人の身のまま死んだ。
幸せだよと言って死んだ。笑顔で死んだ。満足して死んだ。
おれは彼女の最期を看取った。果たせなかった前世の約束は、ここに果たさ
れたのだ。
もう、思い残すことはない。
もう、思い残すことなんか。
思い残す、ことなんか……。
「これは彼女のためじゃない」
アンクは呟いた。
「これはおれのためだ。おれのエゴだ。おれ一人の我侭だ」
胸のペンダントを、勾玉を、マガタマを引きちぎる。
「おれはおれのために、彼女を……彼女を」
彼女を苦しめても。
彼女を悲しませても。
彼女を不幸に貶めてでも、おれは彼女を、彼女をこの手に!
「カムド、『こいつ』を使うぞ!」
その一言で、少年達には充分だった。
目と目で頷き合う。アンクの差し出した手に、カムドの手が重なる。人修羅
達の意思の力が、二つの手の中、一つのマガタマに集中する。
――多分、ぼくたちは別々の身体に一つの魂を宿して生まれてきたんだ。
――彼女を護るために、いや、彼女を独占するために、おれたちはこの世に
生まれてきたんだ。
「「マガタマ合体! “イヨマンテ”!」」
人修羅二体の魔力を受けて活性化したマガタマが生物的にビュルリと伸び、
少女の残骸に突っ込んだ。
15歳の少女は、5歳の幼女と話していた。
「死んじゃったね」
「死んじゃったね」
「残念?」
「残念じゃないことはないけど、10年も余分に長生きできて、とってもラッ
キーだったんじゃないかな」
「好きなこと、やりたいと思ったこと、何でもぜぇんぶやったよね」
「楽しかったね」
「面白かったね」
「じゃあ、もう、逝こうか」
「そうだね」
少女達は手をつなぎ、生と死の分水嶺をゆっくりと越えていく。
「でも、欲を言えば、素敵な恋人が欲しかったなーって」
「誰か素敵なひとと、恋人同士になりたかったなーって」
「夢だったもんね」
「ずーっと夢だった」
そのとき、何かの気配を感じて少女達は後ろを振り返った。
そこにいたのは二人の少年。優しくこちらに差し出す手。戻っておいで、と
招くように。
15歳の少女と5歳の幼女が顔を見合わせた。
「どうする?」
「どうしようか?」
「……生き返ったら、素敵な恋人ができるかな?」
「……生き返っても、今までみたいに幸せでいられるかな?」
「わからないね」
「わからないよね」
少女達の躊躇いは、しかし、短かった。
「「なら、試してみようよ」」
そして少女は一人となって、少年達に駆け寄った。
顔はよく見えないのに、彼らの表情ははじけるような笑顔だとわかる。
少年達の胸に飛び込みながら、ああ、今、自分は一番いい選択をしたんだ、
と彼女は心から嬉しくなった。
「魔法だろうがアイテムだろうが、彼女を甦らせるすべはない。……なら、」
アンクは立ち上がった。構える鋭刃、赤き瞳に宿る意思。
「マガタマの力で、彼女を覚醒させればいい」
「人であることを捨てても。人であることを捨てさせても」
カムドは立ち上がった。手には魔晶剣、青き瞳に篭る力。
「世界を変えても、ぼくたちは共に生きる」
「馬鹿な!?」
マロガレは驚愕した。
砂と化したはずの少女が、少年の制服の上着を借りた格好で、軽く目を閉じ、
すっくとそこに立っていた。
全身を覆う奇怪な輝線。刺青めいた、それは人修羅の証。少年二人の色合い
よりも薄く、量も少なく、優しく淡い光を、ほんわりとはなっていた。
ようやくマロガレは納得して頷く、
「そうか、お前達、予備のマガタマを隠し持っていたのか」
「予備のじゃないよ」
少女が瞼をひらく。神秘的な紫の瞳。胸元、大事そうに手を当てて。
「これは元々、イヨのだもん。アンクがずぅっと大切に持っててくれた、イヨ
のマガタマだもん」
「お前のような子供が創世を望むとは。一体……」
「話は殴ってから聞く」
少女の姿の人修羅は、青色と緑色のクレヨンを手にした。壁でも床でも手帳
でもなく、空中そのものに描き付ける、悪魔固有の紋章。
「出ておいで、アズみん!」
「応よ!」
雄々しい返答、妖鬼アズミがバシャッと水しぶきを上げて顕現した。
「葬らん!」
ホームランと引っかけた命令で、妖鬼の釘バット、もといスパイクロッドが
一本足打法。マロガレの腹を真芯で強打。思わずマロガレが怯み、一歩を下が
る。
「よし。さあ、言いたいことがあるなら言ってみろっ」
一つ頷いてから居丈高に命じる高飛車な態度は、だが、彼女に全然似合って
いなくて、そのギャップがひどく可愛らしい。おかしみを刺激された和泉が、
堪えきれずにくすくす笑い始めた。
「……なんか一気にギャグ化しましたね」
上げた手の振り下ろし場所に困ったような顔をして、カムド。
殴られた腹が痛むのか、人修羅の青年は低く押し殺した声で応じた。
「話すことなど何もない。一人増えたところで、なすべきことは同じだ」
「なーにをえらっそーに。悪魔さんの使いっ走りの分際で」
人修羅の少女は挑戦的、いや、挑発的だった。
「さっきリリムさんから、冥土の土産に色々教わってきたもんね。生前のきみ
は“悪魔使い”だったのに、今は悪魔さんに利用されてることに気づきもしな
い、“悪魔使われ”だ、ってこととかさ」
「何をバカな」
「ホントだ、リリムさんの言ってた通り、本気で自覚がないんだ、きみ」
ちょっぴり生意気に、小馬鹿にした風情で。
「そんなんでよく“運命の少年”さんの、それも女の子の方の“運命の少年”
さんのパートナーになるなんて大見得切れたね。和泉先輩は普通の“運命の少
年”さんじゃないんだから、和泉先輩のパートナーは、普通の“運命の少年”
さんのパートナーよりも、うんとしっかりしなくちゃいけない、って聞いてた
んだけどな」
ここで密かに今宮拳司が致命的な心理ダメージを受けたが、それはさておき。
「きみみたいなひとが和泉先輩のパートナーになったら、間違いなくもう一人
の方が先に世界を救っちゃうね」
「“運命の少年”は一人ではないとでも言いたいのか?」
青年の言葉に少女は、処置なし、と言いたげに頭を振った。
「今んとこ、“運命の少年”は女の子と男の子が一人ずつ。女の子の方はなる
べく目立つように、男の子の方はなるべく目立たないように、別々に活動する
よう誘導されてるんだよ。なんだ、そんな情報も入っていないの?」
拳司は驚いて和泉を見返った。彼女は、そうでしょうね、と肩をすくめた。
「たった一人に世界の全てを背負わせるなんて、そんなのリスクが高すぎます
もの。何人かいる“運命の少年”達のうち、救世に成功した一人だけが本物で、
それ以外はリスク回避のためのスペア、という扱いないんでしょう」
カムドが訳知り顔で付け加えて、
「“運命の少年”、即ち男神の分霊である転生体は複数存在し得る、とはいえ
今までに何人もの“運命の少年”が殺されて、もう人員に余裕がない。女性で
あるがゆえにそもそも目立つ和泉ちゃんを囮に、男の“運命の少年”を敵対勢
力の目から庇護する。要はそういう手筈ですよ。ぼくやアンクが和泉ちゃんの
身辺警護にまわされたのも、囮の寿命を延ばす意味と、世にも珍しい人修羅を
配することで和泉ちゃんを更に目立たせる意味とがあるわけです」
「やることがえげつないな!」
拳司が憤慨して、誰にともなく怒鳴る。
反論できないマロガレに、少女はにこにこと言った。
「ねぇ、きみはリリムさんの“お母さま”に唆されてきたんでしょう? あの
ひとにしてみれば、救世主は女の子よりも男の子の方が嬉しいに決まってるよ
ね。要するにきみは、女の子の“運命の少年”を救世主に『しない』ために、
夜魔の女王様から遣わされた『逆“運命の少女”』なんだ。そうでしょ、“悪
魔使われ”さん?」
「貴様、黙って聞いていれば勝手なことばかり!」
「兄さん。いや、マロガレ。もう一度、さっきの質問だ」
アンクは兄に、かつては敬愛していた兄に、穏やかなまでの口調で尋ねた。
「『踊らされてはいまいか?』」
屈辱、憤怒に顔を歪ませ人修羅マロガレが長大な太刀を振りかぶる。
和泉が全員に通達した。
「マロガレには黄泉路剣の特殊能力以外に回復手段がないようです。その上、
その特殊能力は瀕死の相手にとどめをさすことで発動します。つまり、わたし
たちにさえDEAD状態の者がいなければ怖いものではありません。しっかり
と守りを固めつつ、確実に削っていきましょう」
前衛に“妖獣拳士”、人修羅アンク、人修羅カムド、妖鬼アズミ。
後衛に“運命の少年”、人修羅イヨマンテ、精霊アクアンズ。
新たな仲間を――仲魔を加えて、“運命の少年”たる少女は、“運命の少女”
を名乗る青年と対峙する。
「さあ、決着をつけましょうか」
引き際を弁えている、という点で、マロガレは馬鹿ではなかった。
「……ここまで、だな」
氷結の拳、衝撃の爪、鋭い刀が彼にダメージを蓄積し、回復魔法が彼の与え
たダメージを打ち消す。低下系魔法が彼の戦闘力を殺ぎ、加えて三体の魔人の
タフネスや、運命に愛された少女の《幸運》、彼女を《カバー》する少年の意
志が、彼からありとあらゆる勝ち目を奪った。
「また会おう」
黄泉路剣を一閃、空間に裂け目を作り、青年の姿の人修羅がその中へと身を
躍らせた。
「待ちやがれ!」
「はいはい、深追いは禁物ですよ」
同様に飛び込もうとした拳司、その肩をカムドが『右手で』掴んで、
「痛ぇっ!」
「おや失礼、和泉ちゃんの心の痛みとどちらが痛いですかね?」
慇懃無礼に嫌味を言いつつ、彼は鉤爪型の魔晶剣を人型の右腕に収めた。
「はふぅぅ〜。イヨ、もぉダメぇ〜」
糊付けし忘れた綿シャツみたいにへたへたと座り込むイヨマンテ。
「こんなに疲れる戦闘、初めてだよぅ〜」
人修羅と化して即座の、しかも激戦。彼女が心身に強いられた負担は、余人
には計り知れないものだろう。
マロガレの元・恋人の姿をした幽鬼グーラーは、床に倒れ伏したまま放置さ
れていた。アンクに頼まれて、和泉がグーラーをカード化する。
生前の兄の恋人。もしかしたらアンクの、剣也の義姉になっていたかも知れ
ない女性。彼女が変じた、闇の側の悪魔。
懐かしい思い出は哀しい形となって、少年のポケットの中に仕舞われた。
マロガレが退去した跡が消え、やがて異界化も解除された。5人の少年少女
は、元の姿に戻った信太家の応接間に出現し、全て終わったのだと安堵の吐息
をついた。窓の外はすっかり暗く、フェイクの暖炉上にある置時計は夜の7時
を指している。
「さてと、イヨ」
アンクがイヨマンテを睨みつけた。
「おれたちは、危ないから帰れときみに言ったはずだな?」
イヨマンテはへろへろと応じた。
「うん、イヨ、言われたはずだな〜」
「言いつけを聞かなかったばっかりに、こんなことになって。反省しているの
か?」
「イヨ悪くないよー」
「悪くないわけあるか!」
怒鳴りつけるアンク、耳がキーンとなるイヨマンテ。拳司がアンクを抑えに
回る。
「まあまあ、この子が来てくれたお蔭で、俺も助かったんだしさぁ」
「おまえの相手は、あっちだ」
アンクは拳司を突き飛ばした。
硬い表情で彼を見詰める和泉の真ん前に。
強大な悪魔を何体も相手取って怯むことのない“妖獣拳士”が、だーっと冷
汗脂汗を垂らして、STONEのように硬直する。
カムドが廊下に置いてある固定電話で、どこかに何かを伝えている間、アン
クから頭ごなしにガミガミと叱りつけられ、イヨマンテはふるふるとその身を
よじった。
「でもでも、イヨ頑張ったもん。マッスルドリンコをもらってさ、火除神符と
交換してさ、アメジストと交換してさ、」中略「最後にディスチャームと交換
してさ、それで先輩を助けたんだもん」
「で? 無理して一人でリリムに立ち向かって、挙句、マロガレに殺されたわ
けか」
「でもでも、イヨ頑張ったもん〜」
「そうやって『頑張った』せいで大変なことになったんだろう!? わかって
いるのか、今回はたまたまきみのマガタマがおれの手元にあって、覚醒という
手段で死ぬことを免れ得たけど、次からはそうはいかないんだぞ!?」
イヨマンテは目にいっぱいの涙を浮かべて、ぷーっとほっぺたを膨らませた。
「……イヨ、頑張ったんだもん……」
意固地になって、ただそれだけを繰り返す。
アンクは声のトーンを落として続けた。
「まだ自覚はしていないのかも知れないけれど、きみはもう人間じゃない。お
いそれと人間に戻れもしない。異形の魔人。化物だ。きみを人修羅となしたの
はおれの、おれとカムドの選択であって、きみに恨まれても、憎まれても仕方
のないことだろう。けれど、おれたちにそういう選択をさせたのは、きみの無
謀な行動の結果だということも、頭の片隅に入れておいて欲しいんだ」
「…………うん」
初めて、イヨマンテが素直に頷いた。ぽろり、涙の雫が落ちる。
「これから先、きみに何かあったら、たとえきみが嫌がっても、おれたちはき
みを助ける。それがきみにとってはどんなに酷な結果になろうと、おれたちは
何でもするよ。きみが大切だから。きみを失いたくないから」
どこか恐る恐るという感じで、アンクの腕がイヨマンテに伸びる。そっと、
優しく、抱きしめる。抵抗はなかった。
「きみさえよければ、おれたちと共に生きて欲しい。おれが言いたいのは、そ
れだけだ」
少年の胸の中で、少女は小さく震えている。
ややあって、彼女は遠慮がちに彼を見上げた。
「ね、アンク」
「ん?」
「それって、プロポーズ?」
問われて少年は僅かに戸惑い、すぐに納得した。『共に生きて欲しい』。彼
が今しがた口にした台詞は、確かに求婚の言葉にも聞こえる。
「そう受け取ってくれても構わないよ」
少女の耳に囁きかけると、彼女は困惑げに首を横に振った。
「こ、困るの、それはちょっと困るの」
「どうして」
まさか誰か好きな人でもいるのか? 少年の心が不安感に握り潰されそうに
なる。
「だってだって、それって婚約者になるってことでしょう?」
「そうだね」
「あの……あのね、あのね、イヨね、小さい頃から夢があってね、」
少女は頬を赤く染め、暫くもじもじしていたが。
「だから、だから、だからその……」
本当に大切な物をおねだりするみたいに、上目遣いに、そのお願いを口にし
た。
「……恋人に……なりたいな……」
少女が『恋人』なるものに執着する意味はわからないまでも、少年の心は安
堵感で解放され、と同時に胸が大きく膨らむような驚喜の衝動。このまま彼女
の唇を奪い、深く口づけを交わしたい、恋情の欲心。
「ああ。おれの方こそ、是非お願いするよ。……おれの恋人に、なって」
少女は喜びを込めて、自分の方からぎゅうっと彼に抱きついた。そして小さ
く問う。
「カムドは?」
ぷしゅうううって感じで、膨らんだ胸が一気にしぼむアンク。
――きみさえよければ、おれたちと共に生きて欲しい。
どう考えても、あれはアンクだけではない、カムドも込みの台詞である。イ
ヨの疑問は、だから当然のことだ。
おれ『だけ』の恋人になって欲しい。おれの恋人に『だけ』なって欲しい。
改めて、アンクが彼女にそう頼もうとしたとき。
「勿論、イヨはぼくの恋人でもありますよ」
いつまでイヨに抱きついてるんです? とカムドは目顔でアンクを制して、
ひょい、と彼からイヨマンテを取り上げた。
「ぼくたちは共に生きるんです、ねえアンク? ま・さ・か、抜け駆けしたり
独り占めしたり、なんてこと、きみは考えていないでしょう?」
人の好い笑顔で脅迫するのは、カムドのお得意らしい。アンクは渋々、そう
だな、と頷いた。
「ま、斯く言うぼくは抜け駆け独り占めを思いっきり考えてますが」
「考えるなよっ!」
「冗談ですよ」
カムドはアンクのツッコミを華麗に流し、少女に向かって尋ねた。
「イヨ。ぼくたち二人の恋人になってくれますか?」
「うんっ!」
元気いっぱい、少女は大きく頷いた。
「いっぺんに二人も恋人ができるなんて、イヨ、すっごく幸せ!」
素朴なのか欲張りなのか、相好を崩して大喜びするイヨマンテを、カムドは
抱きしめ、頬ずりまでした。アンクの心は理不尽な悔しさでドロドロになる。
「ちなみに、先ほど出前のピザを注文しましたから、もうすぐ届くはずですよ。
食べてってくださいね」
どこへ電話をしていたのかと思えば、宅配ピザ屋に電話していたらしい。
イヨマンテはわーいとはしゃいでから、
「ね、カムド」
「何です?」
「イヨ、やっぱり悪くないよね?」
甘えるように問いかけると、重々しい肯定が返った。
「勿論です。イヨは全力を尽くして自分にできることをやってのけただけなん
ですから」
思わずアンクはまた怒鳴る。
「話を振り出しに戻すな、イヨ! てか反省の色が無いぞ反省の色が!」
「反省の色ってどんな色?」
わくわくしながらイヨがクレヨンを取り出し、真面目くさった顔でカムドが
答えた。
「実はね、反省の色は無色透明でね、誰にも見えないんですよ」
「なーんだ、じゃあ反省の色が無くって当然なんだー」
あははははー、と呑気な笑い声が二人分。
アンクの拳がカムドの脳天とイヨマンテの脳天にブチ落ちたのはその直後で
あった。
ただし、カムドに与えられた拳骨とイヨマンテに与えられた拳骨との間には、
天と地ほどの威力差があった。
本日はここまで。
次回投下は来週末の予定。遅くとも半月以内には。
>369
>綾瀬桐佳の季節は(中略)この木と共にあった
北国の四季をさらっとなぞる描写と、この表現が特に綺麗だと思います。
少し目まぐるしい印象もありましたが、そのぐらい春から冬への移り変わり
が早いのだ、という感じがしました。
ところで、何がいつふたの真似だったのでしょうか。当人にわからないぐら
いのことなら、別に気になさるほどのことでもないのではないかと。
>407
>「やっぱりアレ、もっかいお願い」
ほーらやっぱり、けしからんのはいつふたじゃなくて先生の方じゃないか。
で、次回、これまた『治癒魔法の施術』のことでしたーってオチだったら部
屋の隅に行って20秒ほどさめざめと泣こう。
>半年振りのセッションのこと
お陰様で大いに楽しめました。
ただ、遊んだ翌日に丸一日寝込む癖だけは何とかしたいものです。
428 :
強化(ry:2006/06/03(土) 01:50:45 ID:k/1dWm+d
どうも。
くそう、皆さんGJな作品ばかり連発しおってからに。
その溢れるアイデアとやる気を分けてくださいお願いします。
私も原稿が明けたらラジオ……はもうやったか、テレビ番組だな。うん。
個別レスは長くなりそうなので控えますが。
人修羅ステキ人修羅ー。
ちなみに例のブツは今こんな感じ。一応間に合いそう。
ttp://kasamatusan.sakura.ne.jp/cgi-bin2/src/ichi38155.jpg.html 5年のブランクは大きすぎです。リハビリが必要、なんてモンじゃありません。
しかも時間がかかりすぎです。仕事は言い訳にならねえぞ俺。半年ですか。そうですか。
どう見ても最初と後半の絵が全然違います本当にありがとうございました。
いつふたの人、毎度GJ。……ギャバッ。
【強化ry氏のベルたんに萌え死んだ馬鹿一匹】
>>428 D&Dコアルール一式を質に入れてでも買う
どうやったら見られますか?
>>427 伊予ちゃんはかーいーなー。
かーいーなー伊予ちゃんは。
>>428 なぜサンクリがGM予約したイベントとかぶるのかっ!?(血涙)
すげーすげー、超期待。
ダメだ、俺も見れない……見れないというかDLできないのか?
ああ、気になるなぁ…………
>>431,434
どこでもいいので『ダウンロード』って書いてるところをクリックしてみるといい。
それでも駄目だったらちょっとワカラン。
>427
いーよいーよ!
>>435 見れた、超感謝。全然気付かなかったよ・・・。
わかりづらっ
俺も見れた!
グッジョブ!
440 :
強化(ry:2006/06/05(月) 00:51:56 ID:SBaDpWHw
いや、その、なんだ。
うpしてる画像は作画がマシなところだけうpしてるんであって、
最初のほうとかもう悲惨なので、あまり期待されても困る。
常にオチがつく、それが強化人間劇場クォリティ。
サンクリのカタログにカットがちゃんと載ってて一安心ではあるが。
慈善事業でうpろだやってるわけじゃないらしいしなぁ>かさまつさん
>>強化(ry 氏
それでも鎌腕ので、いつか書店委託or通販キボリ。・゚・(ノД`)・゚・。
サンクリいけないよぅorz
さて。
ここであたしはちょっとばかり硬直。というか困惑。
リクエストに応えてもらいはしたものの、しかし出来上がったのは、あの規格外のサイズのヤツだったりするわけで。
この非常識なものを押し込まれたら、正直どうにかなってしまいそう。さっきはあたしもわけわかんないくらいの状態だっ
たから、全然受け入れてしまっていたけれど。幾分毒の効能が薄れている今となっては、流石にこれは遠慮したい。きっと痛
いばかりのように思う。
「あ…っとね、もうちょっと、現実に即した感じでお願い」
「え? えと…?」
そこで半ば慌ててつけた物言いに、返ってきたのはなんだか戸惑った感じの、歯切れの悪い返答。
あ、そうか。このコ、実物見た事ないんだ。
「だからさっきの、なんていうか、ちょっと形とか、ね?」
「う、うん」
手で中空に描いて見せて。
物の形を説明するというのは、簡単なようでいて実は難しい。「何々のような」と例えたところで、それは説明した物その
ものと同一ではないし、大小濃淡の観念だってひとによってそれぞれだ。
「えっと、だから…こう、こんな感じで、もうふた回りくらい小さくしてみて」
「こう、かな?」
「うーん、もうちょっと、そう、うん、もうちょい、かな?」
「こう?」
「あ、それくらい」
そんなこんなで、おおまかなサイズを示つつもふたりで試行錯誤。ちょっと間抜けな光景かもね、と思っていたら、
「…センセは、経験豊富なんだね」
急に機嫌を損ねたふうに彼女は口を尖らした。…一体何、その唐突な発言は?
「豊富ってほどでもないよ?」
意図を測りかねて探るように返す。
「嘘。だってなんだか詳しいし、それにセンセ、美人だもん」
すると妙に過敏な反応。ぷいとそっぽを向く仕草。
あれ? これってひょっとして。
「やきもち?」
「…っ」
ふいっと問うでもなく口をついた言葉。それが正鵠だったらしい。
自分でもきちんと意識してなかった感情を指摘されて、彼女は息を詰めて一瞬泣き出しそうな顔をする。
「ち、違うよ。だって、センセもワタシも女の子だし、そんなのへ……んっ!?」
それから思わぬ発見。このコに嫉妬されるのって、実は結構嬉しいかも。
だから。慌てて言い募るのを遮って、あたしは屹立したモノへきゅっと指を絡めた。「あ、やん…っ」
指で輪を作って。それで締め付けてこすりあげて。彼女の反応を試しながら、一番気持ちいい刺激になるように。
ふふ、感じちゃってるんだ。あたしは淫らにほくそ笑む。
「セン、セ…ダメ、だってば……ん…ぁっ」
「これからね。誰にもした事ないコト、してあげる。キミが妬かなくていいように、ね」
熱くて、びくびくと脈打つそれを指遊びする。押し潰すように捏ねて、擦って、あたしの事しか考えられなくなるように。
「ふぁ…や、だめ…っ、ん、んんっ……ダメ、ダメだ…よ……ぅ…っ」
「だから、何がダメなの?」
「だって…」
もう息をすっかり荒くした彼女の視線が、気恥ずかしげにあたしの背後を示す。
「その子が、見てるから…」
ああ。すっかり忘れてたけど、相棒があたしたちを鑑賞するみたいにそこに鎮座ましましている。別にあたしたちが動物見て
興奮しないのと同じで、このコもあたしたちの行為を窃視して発情したりはしないと思うけど。
「気になる?」
こくり。
「でもキミ、見られるの好きでしょ?」
不意にあたしは意地悪な気分になった。わざと不思議そうな笑顔を作って彼女に尋ねる。
「さっきだって、あたしに見られてあんなに…」
「ち、違うの。あれはセンセだから…っ!」
「ふぅん、あたしは特別なんだ?」
なんかもう、これ以上ないくらい真っ赤になっちゃって。普段のクールめいた印象とギャップが可愛らしくて、ついついいじ
めてしまいたくなる。
「あたしの事、キライ?」
大慌ての勢いで首を振った。彼女の思考を追い詰めるように、やりとりの間もあたしの指はやわやわと敏感なところを責め続
けている。
「じゃあ……好き?」
耳に熱い息と一緒に吹き込む。しばらく戸惑うように逡巡したあと、
「――大好き」
答えと一緒に、首に腕が回された。抱きつく勢いのままに唇を奪われる。それは官能を求めてのものではなく。お互いのやわら
かい部分を重ねあって愛情を確かめる、恋人同士みたいな甘いくちづけ。
「あたしも。キミの事、好きだよ」
囁く。囁きながら思う。あ、今なんかあたし、自分からドツボにはまらなかった?
とまれ相棒には、ちょっと別行動をしていてもらおう。軽く合図するだけで、相棒は体をひと揺すりして廊下へと出て行った。
校内にはもうひとはいないはずだし、賢いコだから万一があってもうまくやり過ごすだろう。
「これで安心した?」
彼女へ目を戻すと、両手の指先で自分の唇を覆ってぽおっとしている。
今のキス、そんなに嬉しかったのかな?
とまれ隙あり、とばかりにあたしは身をかがめた。目の前には、とろりと透明な液を滲ませた男の子の部分の先端。
「きゃぅ!?」
ちゅ、とくちづけると、彼女は飛び上がらんばかりに反応する。彼女の愛液とあたしの唾液とを混ぜ合わせて、まぶして。デコ
レートしたそこに、根元から舌を這わせる。ゆっくりと幹にも絡めて、また先端へ。
「あん……や…ぅ、だめ、センセ、そんなの……ダメ…い、いけないよぅ」
相棒を離席させたというのに、まだ言葉で抵抗を試みる。むー、往生際が悪いなぁ。オシオキしちゃうぞ。
更に数度、舌先で屹立するそれをくすぐって。
「言ったでしょ。キミにだけする事、してあげるって」
観念しなさい、とばかりに言い置いてから、あたしはぱくりと口に含んだ。
おっきい。それに熱い。やり方はそれとなく知っていたけど、なにせ初体験だから具合が判らない。それでも聞きかじりの限り
で、あたしは一生懸命の奉仕を繰り返す。
頬をすぼめて擦り上げて。ざらざらと舌を絡めながら、彼女の顔を見上げる。目があった。うん、見ててあげる。キミが気持ち
よくなるところ、ずっと見ててあげる。だから。
「んっ…ああっ、あ、あんっ…は…っ」
鈴口を舌でつつくように。裏側から先端までをぞろりと舐め上げ。
「はっ、あ、ぁん、ふぁ…っ」
細い体を震わせうねらせ、彼女が過敏な反応をするから。あたしの行為はより一層に濃密になる。もっと可愛がってあげたい。
そんなふうに思う。
「セ、センセ、そんなのダメっ、ダメだよぅ」
髪をくすぐるように両手が添えられ。でもそれがあたしを押し戻す動きをしたのはちょっとの間だけ。
ちゅ、ちゅぱ。
咥え込んで、頭を上下させる。出入りするたびに唾液が奏でるいやらしい音。添えられるだけになっていた手が、今度は逆に腰
に押し付けるような微妙な動きをし始める。
顔を見つめたままの口淫。見つめ返す彼女の顔は、与えられる感覚にとろんと酔い痴れている。男の子の方だけでこんなになっ
ちゃってるけど。でもこのコには女の子の部分もあるわけで。
―― 一緒にしたら、どうなっちゃうのかな?
悪戯心で、あたしは怒張の下、彼女自身の花びらも手を伸ばす。そこは先から延々と続いた行為の所為で、すっかりと潤ってい
て。
忍び込んだ指が、甘い声を漏らし続ける彼女の花芯をくぅっと刺激した。
「んんっ、あああぁっ!」
背中が大きく仰け反った。さらけ出される白い喉。そこに残るあたしのキスマーク。そこまでを見たと思った時。
「!?」
喉の奥に、勢いよく熱いものが吐き出された。咳き込んで思わず口を離すと、彼女の屹立から噴き出す生暖かいものが、顔とい
わず胸といわず、あたしの体中を汚していく。
「や、センセ、これ、どうなって……ん、はっ…とまらない…よ…」
「う…わ、これ…って」
浴びせかけられたべとべとに触れる。白濁した粘性のあるそれは、多分精液か、精液のつもりの何かなんだろう。でも、さっき
は射精なんてしなかったのに。
そこで思い至る。もしかしてあたしが「現実に即してお願い」って言ったから?
「…」
呼吸が、荒い。あたし、なんかヘンだ。まだ熱いくらいに感じる欲望の果てが、とろとろと肌を滑って落ちる。普通なら気持ち
悪いとか思うんだろうけど。なんでだろう、どうしようもなく興奮してる。
「ご、ごめんなさいっ」
そこで彼女が我に返った。あたしの沈黙を怒りとでも勘違いしたのか、その手で白濁を拭い取ろうとする。
その手を押し止めて。あたしは胸の間に溜まった白い粘液を、指先ですくってくちゅりと含んだ。
「ん、おいしい…」
「あ…。センセ、そんなの、汚いよ」
そう言いながらも、彼女は魅入られたように視線を外せない。その顎先を、そっと人さし指ですくった。
「じゃあ、キミが責任取って」
「え…?」
「キミがあたしの事汚したんだから。全部、綺麗にして」
言いながら、あたしは体をよせて。汚濁を彼女の肢体にも塗りつけるように、お互いの胸をこねあわせる。
「……はい」
「ダメ」
差し伸べられた手首を、再度あたしは捕獲する。
「舌で。舐めて」
「――はい」
困惑と、抗議と、羞恥と、それから期待と。様々な感情が織り交ぜられた表情で、こくんと彼女は頷く。少しだけ身を離したあ
たしを追いかけるように顔を突き出し、目を伏せつつ舌を伸ばす。
「ん…っ」
やわらかな舌先が肌に触れる。ぞくっ、ぞくっと電流が走る。繰り返される熱っぽい彼女の呼吸。肌をくすぐるそれは、くすぐ
ったさよりも劣情を掻きたてる。
「そう、そこも。ほら、こっちもだよ」
頬を真っ赤に染めながら、それでもあたしに言われる通り、一生懸命情欲の具象を舐め取っていく。あたしの身体を。閉じたま
ぶたの上を。頬を。鼻筋を。唇を。鎖骨のラインや胸なんかを。たどたどしく、教え子の舌が旅をしていく。
微弱ながらも心地良いその刺激を堪能していると、
「センセ…!」
「わっ!?」
飛びつくように抱きつかれて、あたしはいきなり押し倒された。背中には冷たい床の感触。
「え、ちょっと…?」
覆いかぶさるような格好の彼女に目をやると、切なげに潤んだ瞳が見返した。股間のそれは、さっきあれだけ放ったというのに、
もう隆々と天を突いている。
「センセ、センセ…ワタシ、なんかもう…っ」
両手をさしのべて、そっとてのひらで包んであげて。それから優しいキス。
「あ…」
「あたしと、したい?」
泣き出しそうな顔が俯いて、それから察して欲しいとあたしの目を見返す。わざと判らない様子を装って首を傾げてやると、恥
ずかしくてたまらないけれど、言わざるをえないととうとう観念したみたいで。蚊が鳴くように、
「センセと……えっちな事、したいです」
よくできました。
「いいよ。おいで」
あたしは自分の指で門を広げる。焦らされていたのは彼女だけじゃない。実を言えば、あたしだって待ちきれないくらいだった
のだ。
「ん…は…っ」
もうすっかり準備万端になっていたそこへ、肉の凶器の先端が押し当てられた。なぞるように、馴染ませるように入り口を幾度
か往復して、
「あ…ああ、ああっ」
挿れられただけで、軽くイってしまった。信じられないくらいの快感。あっという間に高みに押し上げられて、真っ白になって
しまう。
けれど、浸っている猶予はなかった。
「センセ、気持ちいい? ね、気持ちいい?」
それだけを繰り返し問いながら、彼女の剛直が激しく出入りを反復する。滴る水音。絡まる蜜の音。ふたりの、いやらしい音。
ただ性急で忙しないだけで、技巧も何もない動きなのに。なのにあたしは、また更に高くに攫われてしまう。
「んっ、いいよ…もっと、あっ、あんっ……もっと、きて……くっ…ふぅ…っ」
睦言に、細い腰がピストンのペースを増した。あたしのおしりをしっかり抱え込んで、がむしゃらにうちつけてくる。膝をすり
むいちゃうのじゃないかと、ふとそんな埒もない心配が頭を過るのも一瞬。
「あ、そこ、そこ…っ、すご……んっ、ね、奥……もと深くまで突いて…」
幾度果てを迎えても更に先を見せる官能が、あたしの頭を真っ白に焼き付けてしまう。
あたし、自分の生徒と。このコと、こんな淫らなコトしてる。
肌には玉の汗。ふたりの身体が貪欲にお互いを貪ってうねる。。高められて。昂ぶって。そして弾ける。
もう何度達したのかもわからなくなる。欲望に呑み込まれて、快楽に狂いそうで。
「あ、あんっ、ちょ、ちょっと待って…は…あッ…少し、休ませ……ん…ッ!」
押し離そうと伸ばした手はかわされ、哀訴の言葉を紡ぐ口は彼女の舌に侵攻されて封じられる。たっぷりと口の中を嬲られて、
離れた唇とつうと唾液が繋ぐ。
「やん、だめ、また…は、んっ、また、イっちゃ……!」
押し上げられる。攫われてしまう。また、高いところに。
「ごめんなさい、センセ」
床の冷たさも、もう気にならなかった。ただ熱くて。体中熱くて、火照って、キモチよくて。
「でも、とまらないの」
「いいよ」
詫びるように呟く彼女も、この淫らな磁場に囚われてしまったようだった。その髪を撫でる。腕を伸ばして、今度こそ抱き締め
る。
「びくびくってしてる。気持ち、いいんでしょ?」
「ん、だってセンセの中、すごく……あ、ん…っ」
意図して締め付けると、犯される感覚も強くなる。あたしの奥の奥までを抉って、襞の一枚一枚までを擦り上げて。
「来て。あたしの中、キミの気持ちいい証拠で一杯にして」
赦しを与えられたかのように。ゆるやかになっていた腰の動きが再開される。
肉のぶつかりあう音。ふたりの身体が、快感が、熾火のように燃え上がっていく。貫かれているという感覚。繋がっているとい
う充足感。
やがて。
あたしの奥に、どくどくと熱いものが注ぎ込まれた。ありえないくらいの量。あたしの意識をも彼方の空白に追いやった。
くたりと力を失って倒れてくる彼女を、殆ど無意識でぎゅっと抱きとめる。
腕の中の温度。重なる人肌のぬくもり。そんな幸福感を味わいながら、ふたりの呼吸はやがて正常に戻っていく。
それきり音を失くした教室に、かすかに響くあめのおと。いつの間にか、降り始めていたようだった。
今回はここまで。週一ペースにちょっと遅れました。キリのいいとこまで書き終わらなかったので、まあちょこちょこと付け足し
たり調整したり。
やっぱ小さく細かくブツ切りで出るよりは、ある程度ながらでもまとまってた方がいいっすよね?
あといつもながら、レスサンクスです。励みになります。とまれエロはここで終了。以前「夢使いに頑張らせろ」と言った名無し
さんと
>>87がこれで満足してくれたら俺も満足。
その他感想は、今夜にでも読んでから。
んじゃまた。
今北水産
いけない教師と生徒キター!!GJ!!
>女神転生X
イヨは可愛いな。だが思った。やっぱりこの子は悪女だと。いきなり男ふたりも侍らすなんて! いや可愛いんだけどな!(←惑わされてる)
学校でアンク、カムドの両名と談笑してて、その後級友に「そういえば恋人がいるんだよね? さっきのふたりのどっちがカレシ?」「どっちって、えと、両方だよ?」とか素で答える未来が見えた! ような気がする。
そして救世主にこってり絞られるパートナーの図も見たかった気がする。
続きは明日くらいかしらん。楽しみに待っています。
>>428 もう外道ベイビーなんじゃないかとはらはらしたけれど、ちゃんと見れました。
ベル様うっとりモードだな。どんなストーリー展開になるのかも期待してるぜ。
・「『今日は気分がいいから。少しだけ、楽に殺してあげる』」
・通称ルアたん
・戦闘時はよく見なくても腰が引けている
・口上は部下が一生懸命書いた「威厳のある台詞集」の棒読み
・時々カンペを落として呆然とする
・流行のツンデレ
・配下曰く「ルアたんの為なら死ねる」
・他者を跪かせるのが趣味
・「ちょっと! 屈んでくれないと目線が合わないでしょ! 話す時はひとの目を見てってお母さんに言われなかったっ!?」
・反逆するものには容赦の無い制裁を加える
・(おどおどと)「もう逆らったり事しない?」「しません!」「嘘だ! やっぱり信じられない! あんたなんかもう信用し
てあげないんだからっ」(半泣き)
・気ままな山賊生活を楽しんでいる
・「今日はエル十三世のおやつを略奪してきたわ!」「さすがですね!」
・お酒は大好きだがもの凄く弱い
・酔い潰れた時の世話係は当番制。任命はくじ引きによる抽選だが裏で大金が動く
・「『今日のところはこのくらいで勘弁してあげるわ』。『ここまでできる人間を、あっさり殺すのは惜しいもの』」(退却時)
・実はこの負け台詞を一番よく言ってる
・かなりの頻度で再戦に現れる
・勝負に執着しているのではなく単にペットを取り返したいだけ
・もう売り払われてしまったと知って愕然。そしてしょんぼり
・ルア派とエフネ派の間には、深くて広い河がある
…などと過日戯言ってた。「これでSSを書け」とも言われたが俺には無理だった。
詳しくはアリアンロッド上級ルールP.162か、トラベルガイドP.275参照の事。
>>453 神、ktkr
とりあえず、暇な俺がトライしてみる
元はフィルボルな種族の王様だからな。ロリっぽさは充分だ。
ペットはイラストのクマたん?
昨日入稿しました。久々に仕事以外で徹夜。
では次から中断シリーズの再開しますかね。
でも俺自身が忘れてますね。保管庫行って読み直しせにゃならん。
>>452 ごめんストーリーはない。
6ページ以上描いたのも個人誌出したのも初めてだし
紙に描くの5年ぶりだし、もうね。
毎回エロでイベント参加してる人たちは凄いわ。尊敬する。
マンガ書くにはまとめる能力が必要だわ……。
458 :
453:2006/06/11(日) 05:35:19 ID:ekxvn3FS
>>454 OK、任せた。楽しみにしてる。
>>455 そう、イラストのやつ。ドロップ品に書いてあるから、負けた時にきっと奪われてる。
ル「べ、別にその子を取り戻したい訳じゃないんだけど! そこまで言うなら再戦を受け付けてあげるわっ」
冒「いや何も言ってないんだけど」
皆は強化(ry氏の本は買えたのかな?スレ違いだったらごめん。
俺?ああ、所詮地方ですとも...orz
あれ?そうだっけ?
俺も勘違いしてたな。
いよいよ明日か……
いつふたは「サンクリ」を知らなかった。
一連のレスの流れから、同人誌即売会であろうとはわかった。
日曜日に開催されるのだから、「サンデー何とか」の略だろうと予想しつつ
検索エンジンで調べた。
――サンシャインクリエイション
その後、旦那に「サンクリって何の略?」と訊いたら、一言、
「サンデークリエイト」
考えることは皆一緒。
>463
萌えた。
なかなか埋まらないなあ。
ところで通販ルートに乗ってくれるかしら。地方民は辛いぜ。
強化(ry関連のレスはこっちに落さない?そーすればかなり埋まると思うのさ。
今Dホール一般参加列に到着
緊張してきた……
468 :
いつふた:2006/06/18(日) 10:25:59 ID:HjQm5ouv
>467
リアルタイム報告ご苦労様です。どうぞお気をつけて。
てゆーかみんなサンクリ? それともWC……W杯に釘付け? どっちにも
無関係な身としては、新スレの方、誰もいなくて寂しいなぁ。
……今日は大人しく家事でもしてよう……。
俺は今日動けないので知人に全てを託した。
だが、奴はNWは愚かTRPGのことを全く知らないので素晴らしく不安でもある。
接触に成功しました。
471 :
強化(ry:2006/06/18(日) 15:51:52 ID:Y5yBN3rR
なんかとらに卸すことになりそうです
差し入れ等、有難うございました。
でも出来がかなりアレだったので10月にリベンジ。
乙かれ。
卸したら教えてクレー。
楽しみにしてるぜ!
>>471 そうか、10月になるとぐりぐり動くベルたんのアニメーションが
【無理です】
>>471 今日は無いと思いつつもとらでサンクリ新刊のあたりを探し回ってしまったw
どんな表紙なんじゃろ?
緑一色
477 :
いつふた:2006/06/19(月) 23:10:03 ID:dggwgMzq
保管庫更新お疲れ様です>中の人
ところで以前いつふたの書きましたBBNT外伝1本目が保管されていない
ようなのですが、アレはおっさん×男な描写があるからダメなのでしょうか。
>477
すみません、ただのミスです orz
今は対応する時間がとれないので、後日保管しておきます。
なお、当方は全作品の保管を行っているつもりなので、他にも抜けがあったらご連絡ください。
乙カレー。
おつー。
でもんぱ読了。
タッシェは萌え担当、あとの二人はエロ担当。
そして宏文総受けと理解した。
新規読者を釣るにはまずエロから。
ってママが言ってた。
北沢の基本概念だな。
かなでは百合ぽいとオモタ。
顔の白濁すくいとる絵は反則打と思います、
アキラの貧乳具合はすばらしいが、口絵のカラー変身シーンでは豊満だな。
>>485 お前は上手いこと言ったつもりだろうがそれ100万回言われてるんだぞ
もっとエロくパロれ。
488 :
にせ:2006/06/22(木) 22:05:28 ID:rrhXkpW6
つまり100万人が言えば奏嬢はふたなりになるんでござるな?
さっそく工作にはげむでござる。
じゃあまずはフォーリナー/装着者に《脱衣》あたりを追加か。
や、それは紫竜が生まれるだけな気がするから却下だ。
前、<<瞬間装着>>を全裸になる演出でやってた奴が居た。(無敵装甲プレートメイル相当の全裸)
警死庁?
大和田?
全裸パンチ?
495 :
強化(ry:2006/06/25(日) 18:28:48 ID:WIh4e5/t
とらから納品受領の通知が来ました。
web通販に乗るかどうかは知らない。
いや、部数少ないんで微妙なんですその辺。
乙。良ければサークル名かタイトルを教えて頂けると検索がラクなのだが。
……Web通販に乗らなかったらどーしよッかなあー。地元の友人に代理で買って貰おうかなァ。
乙&GJ。そして偉いぞ、虎の穴。
でも部数少ないんですよね?JGCで東京に行くけど
それまで残ってないだろうな。
とらの通販システムはよく知らないんだが、
とらのサイトでは秋葉店の出庫情報にはあった(24日)けど、通販のほうには無かったから、
WEB通販はやってないんジャマイカ?>ベル本
>>498 ヒントありがとう。そして通販発見
検索するのにIDで
040010103231
これで見つかる
おっしゃ、サンクス。
サンクス。そして、さっそく注文。
板全体の圧縮が近い今、同じスレでふたつも保持するのは
あんましよろしく無いでしょ。そろそろ11に完全移行する
べきじゃないかな。
放置しておいても残ってアレじゃないかネ?
埋め終わるまであとどれくらい容量あるだろ。ほっといた方がいい?
ところで、保管庫で管理人殿が書いてた駄コテ板やばいものスレって、どこダロウ。
仁王像ワラタ。埋めついでに。
とら通販売り切れ…orz
札幌店行ってきたが、置いてなかった…
このスレの容量は、496.2ってなってるな。もうすぐ終了?
残念・・・夏コミは駄目だったのかな?
,vvv、,,
.!ミiノ''ノ酒ハヽミi. / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
.;!ミ,,゜▲゜彡i. < 駄コテ板のはまとめサイトに入れていいよ。
⊂§~水~§つ \__________________
</」 :」ゝ
..</」_| : |_|ゝ
`´ `´
510 :
名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 21:53:04 ID:j6z4bUCi
下がり過ぎてるのでたまにはage
ぼちぼち埋め切ってしまおうぜ。
……ベル本、明日到着かー。
512 :
強化人間劇場:2006/06/29(木) 00:04:44 ID:7S1S7809
キター!!
機会と気合いがあったら再販キボンヌ
うむ、「しゅるっ」がエロイ。GJ。
さてあとちょっとだろうが、何か埋め話題でも。えーっと……
NWでエロい活用法ができそうな特技、何がある?
手前味噌だが、
ブラッドバレット=銃身状(要は筒状)に手が変形=サイバーオナホ
触手=そのまま
頼む!再販してください!お願いします!
<チラシの裏>
既にさんざん既出っぽいが、
デモパラ、食欲とか睡眠欲が満たされると衝動が減少するなら、
性欲満たしても衝動減っていいよな。
衝動の減少ではお金をリソースにするみたいだから、食事のルールの相当品で。
お金使うなら基本風俗で、夫婦や恋人やPC間でそういう行為をやって
衝動減らすときはグッズ代とかホテル代とかってことで。
つまり衝動を減らすためにローション買ってホテルに行き、
バスルームでぬるぬる絡みあう全裸のアキラ&かなでという光景を幻視した。
タッシェが乱入しても可。《触手》使って女子高生を責める仔猫エロス。
</チラシの裏>
>>515 レゾナンスフィストで高速振動
アームドシェルで服が破ける
本当にホムンクルスはエロいなあ
虎からの発送通知に、ベル本入ってた。
エロいねぇー(G=ヒコロウッ面で)
埋まったか
500KB
埋め
梅
宇目
右馬
宇女