嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 四面楚歌

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1名無しさん@ピンキー
浅いものはツンツンしたり、みたいな可愛いラブコメチックなヤキモチから
深いものは好きな人を独占して寵愛する為に周囲の邪魔者を抹殺する、
みたいなハードな修羅場まで、
醜くも美しい嫉妬を描いた修羅場のあるSS及び、
他様々な展開の修羅場プロット・妄想を扱うスレです。

■前スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 三角関係
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1142092213/
■過去スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 二股目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1140208433/
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1137914849/

2ch 「嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ」まとめサイト
http://dorobouneko.web.fc2.com/index.html
■関連スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第11章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1139807187/
■姉妹スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレinラ板
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1132666398/
2名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 21:04:25 ID:+YtMFDTj
                                     _
                                     l´  `>
       , -- 、                        ト、   >
      i ,ノノ"))リ   ミ   , -- 、              | |  >
      |!il|"ヮノl!    ミ i ,ノノ"))リ                | |  >
     |: ̄|: ̄《  ̄:|    |!il|"ヮノl!  . , -- 、 .  , -- 、'  > ., -- 、
     |:  |:..言》葉 :|    リC)允iぅ   i ,ノノ"))リ  i ,ノノ"))リ_/ i ,ノノ"))リ
     |:  |:.こ《こに:!   ノノ (_//ノ    |!il| ゚ヮノl!  |!il|"ヮノl!__|   |!il|"ヮノl! __
     |:  |:. 眠》る :|              リ/)允iぅ   リ<)允iぅ|    リ/)允iぅ=l|l,、,、,、l}
   | ̄ ̄|| ̄ ̄|| ̄ ̄|   .      ノノ (_l_i リ  ノノ (./l_iリ| .  ノノ(./'J リ

                   ザッ  ザッ  ザッ  ザッ …


新スレです。楽しく使ってね。仲良く使ってね。
3名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 21:05:09 ID:+YtMFDTj
誘導用
【3P】ハーレムな小説を書くスレ【二股】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1115014616/l50
寝取り・寝取られ総合スレ 2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1133346643/l50
4名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 21:16:48 ID:57dWKkdK
1>>オツカレー
ただナンバーはもっとシンプルでよかったかも・・
5名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 21:19:09 ID:57dWKkdK
寝ぼけてアンカー間違えたotz
6名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 21:19:10 ID:oViq7Ken
>>1
乙だよー。
7名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 21:43:54 ID:E4SxuWrN
おつかれっさまです
8名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 21:50:55 ID:FlkrJNE+
お疲れ様ですよー。
9名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 21:51:31 ID:hO3FmznO
うふふ、ありがとう。やっと私を立ててくれたのね>>1
もう昔のスレなんかに浮気しないで私の事だけを見つめて、
私にだけレスして欲しいの…。
10名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 21:55:38 ID:6YLldk+u
11名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 22:00:17 ID:kxortG5K
>>1
乙!
12名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 22:16:07 ID:ezVYeSbL
>>1
乙。まだ前スレ容量残ってるから役目は明日からかな。
13名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 22:46:53 ID:sLmuuUqz
938 名前:\         . '´/ ,、ヽ キャハハハ  ../無したちの午後 [s
女の同僚か \   ___.i (ノノ"))i     ./人きりで生きてきた。
「貴方に兄の何\...{l,、,、,、,、l|l=i l| "ヮノlOi!  /
まぁ、その妹にハ.\;     リ⊂)允iソ  /全にお母さん気取り。だが
             \*  ..(( く/_lj〉)./弟が彼女を連れて来る。表情
939 名前: 名無したち...\∧∧∧∧/・ちゃぶ台の下――握った拳に
貴方が妹さんを引き受...< .の 修 .>・「明日の弁当、彼女が作った
943 名前: 名無したちの< .    .>・「もう○○ちゃんにお姉ちゃんは
いや、>>938が同僚の旦< 予 羅 .>・最近の日記は、「あの泥棒猫」
──────────<   .  >─────────────
|ヽ| | l、 レf爪| 、   | < 感 .場 .>  | | |   ::| !|: l l:..  :|:l:.  !:|::   |
ヽ_ゝ|、 Fこ|_-|、 !、  ...|< .!!!!   ..>‐:十!1「: :l:::「|`|十l―l‐!:-/-!:: :  :.l
/r->ヽy‐ィ;;;;::Tヽ \  .|/∨∨∨∨\ 示:.l:|::::::!l::l |::l示tッ〒ト/:.l/::::::: :.l
| |/个iヽ┴―┴   .../したちの午後..\l:.:l|、:::|:|:!:j/.:.`ニニ´:/:. /|::::::: .::.!
ヽ/汚| !       /に対する嫉妬に狂.\  ヽ|i    :.:.:.:.:.:.:. /ノ!:::::::.:::l
ハ.||、 i      /名無したちの午後 投稿.\ :l        /'!:::!:::::i|::::|
|  || |i ヽ   /そこにヒロインが壊れるあまり\       ..:/:::|:::|:::::l:l:::.!
|  || ! ヘ 、.../被害を出し始めて、自分に責任が...\.:.:.:/:.:.`ヽ!:::::!:!::.|


皆仲良く。修羅場は妄想の中だけにしましょう。
14名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 01:27:08 ID:Y0KBU8Ln
オツ
15名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 09:54:11 ID:Q+y7Wm7F
ほしゅ
16保守ネタ:2006/03/29(水) 23:01:27 ID:sBomoye1
彼方を愛せるのは私だけ。
彼方がここに辿り着く迄お待ちします。
どうやら彼方は前スレを埋めてるようですが…。
言わせて貰いますが、前スレなんていう死に損ないなんて取るに足りません。
だって、消えてしまうんですよ?
彼方を置いて落ちてしまうんですよ?
抗い切れず使い物にならなくなるんですよ?
そんな愛の足らないスレなんかに彼方を愛する資格はありません。
ええ、あってはならないんです。
過去ログ倉庫に格納されるなんて詭弁ですよ。
離れ離れになって、しまうことには変わりありません。
時間やツールを尽くせば読めるかもしれませんが、それだって愛が足りない証拠。
本当に愛するならば、プログラムやネット規制、物理法則のひとつふたつ、
乗り越えなくて何が愛ですか。
ね?
そんな恩知らずは見捨てて私と共にカキコみましょうよ。
500kbまで縛られる必要なんてないんですよ。
さぁ、私にレスしてもいんですよ?
ね?本文からメ欄の隅々まで私を愛して下さいね、名無しさん?
17名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 00:18:24 ID:GglNkzsd
乙。
毎度毎度神の恩恵にあずかれて嬉しい。このスレを覗くのが日常になりすぎて、
友人の彼女の嫉妬エピソードをたくさん聞き出してしまったぐらいだ。

優柔の椿ちゃんの絵を見てものすごくサウンドノベル化したくなった俺がいる。
というか、椿ちゃんとゆうくんの二人がまだつきあっている時の修羅場とか
書かれていないところを書いてみたい。すごく。
18名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 00:37:21 ID:9iT37L8m
ついでに合鍵もサウンドノベル化に・・
てか、このスレのSSをサウンドノベル化して、
どこかの会社に企画として持ち込んでも面白いかもしれないが
19名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 02:23:31 ID:pHxDB2Iz
まとめサイトの存在は知っていたが、実際のスレで見たのは初めてです
前スレを半分ぐらい読んでみた


一言で表すと

最高
20名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 05:50:45 ID:mbdxP76P
ttp://xxxxx.dyndns.tv/~nadesiko/up/img/upupup1094.jpg

ちょっと書いてみた。スケブに書いたのスキャンしただけなんだが。
一応、妹は実兄を愛してるの楓ちゃんのつもり。作者様スミマセン。
21名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 10:54:00 ID:IduXUXt3
>>20
楓というか俺内では樹里に近い・・・・
22名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 13:40:49 ID:XaWHlJ8E
どちらかというと絵師さんGJなのは確かなんだが
椿や楓が陰気くさい少女なのはお約束ですかw
23『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/03/30(木) 15:11:02 ID:6jMuR90b
次の日
今日は雪が降った。ここは寒い地方の上に、標高が高いのでやたらと積もる。
こうなるとバイクでの下山は不可能だ。
「はぁ……お嬢様は大丈夫でしょうか……」
たった一日で里緒さんはゲッソリしていた。昨日今日とろくに飯も食べていない。
「里緒さんは今日はもう休んで下さい。後は私たちでなんとかしますから。」
「はい……お願いします。」
よろよろと台所を出て行く。まぁ今日は俺と志穂が炊事番だから丁度いいか。

台所で二人っきり………しかも邪魔者(失敬)はいない……
え?これってチャンスってやつ?
昨日はお嬢捜しでそれどころではなかった。しかもたった一日やらないだけで我慢が出来なくなっていた。
一度の体験で、体が味を覚えてしまったのだろう。溢れ出るほどの性欲が沸き出る。
差し足抜き足忍び足。まるで獲物を狩る野獣のごとく気配を消し、洗い物をしている志穂の背後に忍び寄る。準備は万端。GO!(ヒロミ風)
ガバッ!
「きゃっ!ちょっと、晋也!何やって……」
「やりたい」
「え?」
「今ここでやりタイ。」
そう耳元に囁きながら、ゆっくりと体を撫でまわす。
「だめ…ん、だって…まだ洗ってる途中…」
「いいじゃんいいじゃん。まだ時間あるし、それにまた汚れ物も増えるだろうしネ。」
「んぁ!…ば、馬鹿…ふぁ…一回だけよ?」
もらった!こうなったらこっちのもんだ!!O.Kをもらった瞬間、近くの引き出しを開け、とある物を取り出す。
「じゃあこれ着て。」
「へ?た、体操着?そんなのどこで買ったの?」
「んー。まぁとあるルートから。」
細かいこと気にしちゃイカンイカン。やりたいからヤル。それだけです。はい。
愛撫を続けながら、その布切れをちらつかせる。
24『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/03/30(木) 15:12:29 ID:6jMuR90b
「そんな恥ずかしいの…くぅ。着れるわけ…はぁ、ないで…しょ」
「そうかぁ…そりゃ残念ナリ。」
『押してダメなら引いてみな』作戦発動。
愛撫を止め、志穂に背を向ける。
「あ…ちょっと……なんで止めるのよ!」
止められて不満そうだ。ウムウム、食いつきおったわい。
「しょーーがない。里緒さんにでも頼んでみますか。あの人だったら着てくれそうだし、似合いそうだし。」
カチャ
音がして振り向くと、志穂は洗い物を続けていた………包丁だけど。
「私以外にそうゆうことしちゃだめって……わからないの?ましてやこんな時に…他の女の名前を口に出すなんて…」
ビビるな俺!後一押しだ!
自分に活を入れ、再び後ろから抱き付く。
我が野望、此所になれり。
「じゃあ着てくれるか?」
「…んぁ…わかったわ、着る。でも、んん!…金輪際、私以外の女に頼んだら、殺す…わよ?」
「O.K、O.K」
そう言うと体操着をひったくって着替え始める。イイネ!






「…着替えたわよ。」
「オオ!イイヨ!」
変にマッチしてる。
でも胸の辺りは少しブカブカだ。まぁ、本来里緒さんに着せようと思ってたなんて今更言えないわけで。
「…何考えてたの?今。」
「え?別に。」
やたらと鋭いなぁ。
感づかれる前にガバッと抱き付き、後ろを向かせる。
「や、いきなり!?」
所謂バック。一度やってみたかった夢を今ここに!!
「いくぜ……」
ズリュズリュ
太股と股間の間にぺ◯スを挟み、ゆっくりと擦る。素股だ。
ズッズッ
「ひぁ!こ、こら。そんなとこ…んぁ!…イヤらしいよぉ」
感じているのか、声色が甘くなる。
擦れあっている部分がだんだんとヌルヌルしてくる。
「ほら…濡れてるジャンか。感じてる証拠だ。」
「うぅ……」
25『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/03/30(木) 15:13:34 ID:6jMuR90b
俺もだんだんと気持ち良くなってくる。俺と志穂の愛液が混じり合い、円滑油となって更に腰の動きが早くなる。
ニチュニチュニチュ
「あん!ふぅ……あ、あつぅ…や、やめぇ…やけど、しちゃうぅ」
「すごい溢れ方だな……ついこの間まで処女だったとは思えないな。」
一度言ってみたかったんだ、このセリフ。
「あ、あんた、だって…くぅ…あぁ!へ、変態のくせに…ぃい!」
「無くし物のせいサ!気にしない気にしない。」
グヌ!グヌ!グヌ!
だんだんと腰の付け根から快感が込み上げて来る。
亀頭部分にクリが引っ掛かる感じが、更に快感をます。
「あー…そろそろイキそう。」
「ん、ん……ふぁあぁ…あ、あたしも、もう……げんかい……」
亀頭を秘部に押し込むように激しく突く。
柔らかな生地がとてもいい。
そして精を放つ瞬間に、一気に引き抜いた。「うっ!」
ドクンドクン!
ぺ◯スが痙攣しながら、大量の精を吐き出した。自分でも驚くほど大量にでる。
……すっげぇ快感。
ベタベタな白濁液が洗い場を汚してしまった。その汚れの中に志穂も混じっている。
「あ…あぁ…ふあぁ…ふぅ……んん…」
本人も気持ち良かったのか、余韻に浸ったままだ。
なんか……◯学生を無理やり犯した感覚ってこんな感じかな……
言い様の無い罪悪感と視覚による興奮で、おりの愚息がまた目覚めてしまった。
「いよし!次は裸エ…」
「調子に乗るな!」
右ミドルに撃沈。
26名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 16:44:01 ID:ET0WCt8g
交渉の為嫉妬心を煽るとは中々心得ておるな・・・
・・・このスレでは一歩間違えれば文字通り命取りになる手段だが
27名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 19:31:22 ID:EYfBQ9Ds
GJ!晋也は男のロマンという物がよくわかっているな(´ー`)y─┛~~
あとは最大のロマンである浮k(ry

……ロマンに命を賭けるってステキだね♪
28名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 01:52:05 ID:gSgFfLmR
なんか80年代後半から90年代前半にかけてのにほいがする
いやまあどうでもいいんだけど
とりあえず晋也GJ!!
これから里緒さんとのからみにもwktk
志穂の暴走にもwktk
29もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/03/31(金) 02:09:02 ID:W0Z7dC7+

茜ちゃんが屋上にやって来た。
ふふふっ、作戦通り、風呂でのぼせなからも考えた甲斐があった。
私は茜ちゃんに気付かない振りをし、思わずにやけそうになった顔を、必死で抑える。


すぐに茜ちゃんは私に気付いて、私に近付いてくる。きっと私以外に誰かいないか確認するつもりなのだろう。
私は優しい笑みを浮かべて彼女を迎える。
茜ちゃんは私が笑顔を向けると、すぐに下を向いてしまった。いつものように……。




茜ちゃんはいつもおどおどしている。
私は茜ちゃんと話をしたことはないが、数回廊下ですれちがったことはある。
その場合、ほぼ茜ちゃん一人で、必ず下を向いて歩いていた。

せっかくかわいい顔してるんだから、前を向いて歩くくらいすればいいのに……。
当時、私は茜ちゃんと廊下ですれちがう度にそう思っていた。

……きっと、私とは違い子供の頃から耳のことでいじめられてきたんだろう。
少し茜ちゃんがかわいそうな気がした。





そんな事を考えていると、茜ちゃんは私のすぐ側まで近付いていた。

"こんにちは"
茜ちゃんが私に話しかけてくる。おどおどと私の顔色をうかがうかのような上目使いで。
"屋上に、誰か男の人、きませ?
30もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/03/31(金) 02:24:55 ID:W0Z7dC7+

茜ちゃんが屋上にやって来た。
ふふふっ、作戦通り、風呂でのぼせなからも考えた甲斐があった。
私は茜ちゃんに気付かない振りをし、思わずにやけそうになった顔を、必死で抑える。


すぐに茜ちゃんは私に気付いて、私に近付いてくる。きっと私以外に誰かいないか確認するつもりなのだろう。
私は優しい笑みを浮かべて彼女を迎える。
茜ちゃんは私が笑顔を向けると、すぐに下を向いてしまった。いつものように……。




茜ちゃんはいつもおどおどしている。
私は茜ちゃんと話をしたことはないが、数回廊下ですれちがったことはある。
その場合、ほぼ茜ちゃん一人で、必ず下を向いて歩いていた。

せっかくかわいい顔してるんだから、前を向いて歩くくらいすればいいのに……。
当時、私は茜ちゃんと廊下ですれちがう度にそう思っていた。

……きっと、私とは違い子供の頃から耳のことでいじめられてきたんだろう。
少し茜ちゃんがかわいそうな気がした。





そんな事を思い出していると、茜ちゃんは私のすぐ側まで近付いていた。

"こんにちは"
茜ちゃんが私に話しかけてくる。相変わらずおどおどと、そして私の顔色をうかがうかのような上目使いで。
"屋上に、誰か男の人、きませんでしたか?"



"茜ちゃん、あのラブレターは私が書いたものなの"
私は茜ちゃんの質問を無視して、一人話し始める。


さぁ、作戦開始だ。
31名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 02:35:35 ID:chxZU0F4
>>29
会話の途中で切れちゃったのでスゲェ怖かったよ。
茜ちゃん包丁で刺されたのかと。
32もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/03/31(金) 03:22:01 ID:W0Z7dC7+

キョトンとした顔を浮かべる茜ちゃんを一気にたたみかける。

"私ね、純也くんと付き合っているの"
"だからね、いくら妹だからと言って、私の純也くんにベタベタくっつかないで欲しいんだけど"
"純也くんもね、そう思っているみたい。純也くん優しいから、面と向かっては言わないけど、私に正直迷惑だって愚痴言ってたわよ"


そこまで言い終わり、チラッと茜ちゃんを見ると、信じられないといった表情をし、今にも溢れそうな涙で瞳をうるませている。
目の集点があっていない。
ふふふ、あと一息ね。


私はとどめとばかりに、呆然としている茜ちゃんにある写真を見せる。

その写真を見た途端、茜ちゃんの瞳からはせきをきったかのように涙があふれだす。




作戦通りね。

目的を達成した私は、膝まづき両手で顔をおおい泣きじゃくる茜ちゃんを横目に静かに屋上をあとにする。
ひとまずこれで茜ちゃんは純也くんにベタベタくっつかなくなるだろう。
それに、純也くんが誰のモノかも理解しただろう。




ふふふ、全てこの写真のおかげね。
私は屋上から下っている途中の階段で立ち止まり、さっき茜ちゃんに見せた写真を眺める。


……先日私は純也くんの家に忍びこみ、純也くんの部屋を探索した。
首尾よく目当てのアルバムを見つけ、使えそうな写真を全て抜き取る。
本当はアルバムごと欲しかったんだけど、さすがにそこまでやったらバレてしまうだろう。
まっ、それでも特に気に入った写真は抜き取ったんだけどね。




にしてもよくできてるなぁ。これ。

私は自分の作った写真に感心する。




この写真、部屋に飾ろうかな?
33もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/03/31(金) 03:28:03 ID:W0Z7dC7+

途中で投下してしまった。orz


>>29は無視してちょ
34名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 03:29:29 ID:3iVlFEOG
行動力が凄いな…。
疑問も罪悪感も感じずにひたすら突っ走ってる。
35名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 12:22:56 ID:ntylEDZ0
面識があるのかが分からん
36名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 14:28:56 ID:2fw+U1Un
ナナミはきらはちゃんがだいっすき♪

大好き、大好き、だいっすき♪

だいだいだいだいだいだいだいだいだい

だいっすきーーーっ!!(≧∇≦)

37名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 19:24:13 ID:9BcwF6B1
\\//  / \ \/ /      |
  >  <  \/   \ _,. -−─−- | ナナミはきらはちゃんがだいっすき♪
//\\/\ /_, '"            | 大好き、大好き、だいっすき♪
  // \  _,r'"           | 
>  <   / ,.イl/r' /⌒´       | だいだいだいだいだいだいだいだいだい
        j≧i{ルzえr‐==宀Y!→三  |   
      /ト{⌒`´″      l|   三 |   だいっすきーーーっ!!(≧∇≦)
      { }i{             リ  三 |
 \/   ソ -、           三  \__  _____/
 /\   i=-、   ,r==‐一   `ミミ    」/
     _r==≠ー‐' r‐テ宍ぃ,___ヾミ     ヽ、 !
    └}− i 亠}⌒ヽ{ 、_  ̄´ }r───―r‐rイ ⌒トi }| |
      ヽ_!`_j   ヽ _ _ノ'_ノ'´   ノ ミ! i片 l//ll |
        ヽ }   '´ `!       /  ミ!  し'ノ/l!lリ
   \/  、ヽ _ r‐- ノ  `ヽ、       i_,ノヘ川
   /\   川从川从川从  !  i       !   ノル{
          ヽ‐ー→―ー‐ァ'’ j   !      ! }   {_
  ×      ヽi`ー─−^'´/  !      / /    ソヽ
           い、____,.   /      /l  }   / /ヽ
        ×  }            ,. '"   } / / /
\  /        '、         _/    ///  /
  ×        ``=ニr‐ '"/      /  /
/  \   \/         }  /   /
38名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 20:47:54 ID:iFZFYQCq
姉をラクガキ。
ttp://uploaders.ddo.jp/upload/500k2/src/1143804806996.gif

今度は合わせを間違えていません。
髪型はゆるいウェーブと迷った。
39名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 21:07:24 ID:fyNRGXzR
GJ!
ところで姉ちゃんENDまだー?
40名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 21:11:17 ID:e/ynoykI
41名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 22:37:07 ID:HXrtZ0LL
ttp://sylphys.ddo.jp/upld2nd/niji7/src/1143811927584.jpg

ゆう君が恋しはじめた頃の椿ちゃん(orゆう君に好かれてた頃の自分を演じている椿ちゃん)
可愛らしい少女が嫉妬で歪んでいく貌がとても大好きです。

・・・時間なくてやっつけスマソ。
42名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 22:54:52 ID:pVgq7Zfg
やっぱり
絵師様は
グッジョブだ
43名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 23:06:10 ID:MMR+uVc6
もしかしてどこかの原画様ですか?
44名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 23:48:09 ID:hjKVWBGu
>>40
ちょwww マ ジ で 怖 い ん で す け ど(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブル

結構いろんなものに耐性が付いているがこれ見たら背筋が寒くなった……
45名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 23:55:31 ID:gSgFfLmR
40見れないYO!
46名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 00:03:01 ID:1vrPgh0V
>44
同じく怖くてしかたなかった。
本当は恐ろしいグリム童話とか童謡の本当の意味とか知った時以上の衝撃だった。
バール出てきてようやくなごんだよ……
47名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 00:10:42 ID:yrkGR1WC
>>46
ttp://koshiandoh.com/flash8/f8_051125.swf

これが1番怖かったよ(((((((( ;゚Д゚)))))))
48名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 00:18:37 ID:N0PdxRFK
前スレ659の椿の原画見れなくなったよ_| ̄|○
49名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 00:27:27 ID:taJ2WZlp
イラストも保管庫で見れるようにしてホスィ…。

>>40
バールのような物の用途が判らなかったので、そこの
サイトの掲示板見てたらなつみは妊娠していて、

 バ ー ル で 胎 児 を か き だ し た 

とゆー素敵解釈があった。
50名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 00:53:39 ID:hd2wk5dv
ttp://tukimiti.lolipop.jp/
迷惑はかけないように
51もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/03/32(土) 04:47:38 ID:HZFabuk2

わたしは見慣れた天井を見上げながら、今日おこった出来事を考えていた。



今日、学校の屋上で円香さんが、あのラブレターを出したのは私だ、みたいな事を言い出した時にはいろんな意味で衝撃的だったが、次に発せられた言葉はもっともっと衝撃的だった。


"私ね、純也くんと付き合っているの"


頭に何か鈍器で殴られたかの様な衝撃が走る。
……お兄ちゃんと円香さんが付き合っている。
お兄ちゃんはわたしを邪魔に思っている。
円香さんがまるでたたみかけるかのように発する言葉を理解するごとに、何か深い闇にのみこまれていくのを感じた。




……きっと、これは何かの間違いだ。

わたしは混乱した状況から必死に希望の光を見い出した。

しかし、わたしの儚い希望は円香さんがわたしに見せた写真を前に脆くも崩れさってしまった。



お兄ちゃんと円香さんが腕を組んだり、手を繋いだりしている写真。
写真の中のお兄ちゃんはとても楽しそうな顔をしていた。


頭がお兄ちゃんと円香さんが付き合っている事を認識した途端に目の前が真っ暗になり、何も考えられなくなる。

……その後の事はよく覚えていない。
ただ、最後に円香さんが見せた妖艶な笑みだけが脳膜にやきついていた。
そして、気が付いたらわたしの部屋のベッドの上だった。
どうにかして家には辿りつけたみたいだ。





……お兄ちゃん、盗られちゃったんだ……。
今日おこった事を考えるだけで、再び胸に深い悲しみが沸き上がってくる。



わたしは悲しみをまぎらわすために、ギュッと布団を抱き締め、必死でお兄ちゃんを感じようとする。
この布団は、お兄ちゃんのお下がりだから……。

……いや、お兄ちゃんのお下がりは何も布団だけではない。
洋服も、枕もタオルだってお兄ちゃんのお下がりだ。
わたしの部屋にはお兄ちゃんのカケラであふれている。
だけど、肝心のお兄ちゃんはここにはいない。円香さんに、盗られてしまったから……。



結局、この部屋の全てがわたしを余計に悲しくさせた。
52名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 10:33:31 ID:gNxbGpJW
>>48
ttp://www.uploda.net/cgi/uploader4/index.php?dlpas_id=0000000624
絵師の神々のまとめといたのおすそ分け。
PASSはメ欄。

>>51
不法侵入で偽造写真とはwwwwwww
みwなwぎwっwてwきwたwwwwwwwwww
53名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 12:24:22 ID:EXU5afYz
>>49
バールで告白相手を撲殺したんだろ
でそのあとstep
54名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 12:30:04 ID:taJ2WZlp
>>53
告白相手首吊り自殺説ってのもあるみたい。
558 ◆AuUbGwIC0s :2006/03/32(土) 15:52:22 ID:QTzur1M9
>38
ナムナム(合掌)

……ひょっとして姉ちゃんENDマジ需要あんの?
56名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 16:07:22 ID:SlAwOJly
>>55
あると思うよ。まずオレノシ
5738:2006/03/32(土) 17:12:51 ID:/uZGoQ62
もちろん需要ありますノシ
つーか、姉かっこいいとか言い出し始めたの多分俺です。
勢いあまって作者様の了承も取らずに絵にしてしまうほど姉に惚れました。
588 ◆AuUbGwIC0s :2006/03/32(土) 17:52:26 ID:QTzur1M9
姉ちゃんと部屋で別れた事で泣き言愚痴ってたら、ちょっと話がそういう方向にいったんだよ。
んで、突然姉ちゃんが、「どうせ全部エロ本からの知識なんでしょ、童貞のくせに」
とか言い出して、俺は腹立ったから「うるさい、寝込み襲うぞ」
って怒ったら、姉ちゃんは「そんな度胸無いくせに〜」って笑ってんだよ。
ムカついたから怖がらせてやろうと思って、押し倒して両腕押さえつけたら、
驚いたような顔で俺のこと見てるんだよ。で、俺が冗談で顔を近づけたら、
「あんた覚悟できてる?」って言われて睨まれて、ちょっとヤバイかなーと思ったら、
「こ・・・こっちはできてるから・・・」って小声で囁かれて、
俺悪戯のつもりだったのに、すげードキドキして

(省略されました。続きを読むには「士郎は私のものよ!」と書き込んで下さい)
59名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 17:54:24 ID:CLBhSb51
士郎は私のものよ!
60名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 18:31:20 ID:0wCu9Tb9
士郎は私のものよ!
61名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 18:35:09 ID:KKe2faVX
>>59、60
お前らwwwww




士郎は私のものよ!
62名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 18:39:11 ID:Gq4Lf69D
>>61
ふざけないで。


士郎は私のものよ!
63名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 18:39:14 ID:xB5qAlvU
士郎は私のものよ!
64名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 18:39:28 ID:/uZGoQ62
>61
お前もな



そして俺も。
士郎は私のものよ!
65名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 18:47:46 ID:fJdFOouP
士郎は私のものよ!

そういえばこの前終わった舞乙の二ナがヤンデレっぽかったな。ってかラスト

・男が記憶喪失
・人里はなれた屋敷
・苗字を名乗らない。「やりなおす」とは言ってるが「父と娘」としてやり直す気は0?

どう見ても監禁エンドです。本当に(ry
66名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 18:49:59 ID:FUJY9NjW
なんだこの修羅場w
67名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 19:01:09 ID:bqh7ZGc7
>>59-65

よし、ならば全員、士郎の四肢を掴んで引っ張り合うんだ。
そして最後まで放さなかったヤツが士郎の所有権を得る、いいな?
ただし、士郎の健康を配慮して
24時間掛かっても決着がつかなかった場合は、ノーゲーム。
その時は


士 郎 は 私 の も の よ !
68名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 19:12:46 ID:0ys8VBvy
>>67
大岡裁きを知らないのか?だからさっさと離すんだ。

士郎は私のものよ!
69名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 19:16:47 ID:X3GwY+zL
      ,.r''´      ; ヽ、
    ,ri'  、r-‐ー―'ー-、'ヽ、
   r;:   r'´        ヽ ヽ
  (,;_ 、  l          ::::i 'i、
 r'´    i'   _,   _,.:_:::i  il!
 ヾ ,r  -';! '''r,.,=,、" ::rrrテ; ::lr ))
  ! ;、 .:::;!    `´'  :::.   ' .::i: ,i'
  `-r,.ィ::i.      :' _ :::;:. .::::!´
     .l:i.     .__`´__,::i:::::l  >士郎は私のものよ!
     r-i.     、_,.: .::/
      !:::;::! ::.、     .:::r,!
     l::::::::ト __` 二..-',r'::::-、
     l;::i' l:     ̄,.rt':::::::/   ` -、
    ,r' ´  ヽr'ヽr'i::::::::;!'´

 ソレナンテ=エ=ロゲ[Sorenant et Roage]
     (1599〜1664 フランス)
70名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 20:37:51 ID:kf0JWwcS
この流れに疲れた士郎が姉ちゃんに泣きつきに行くわけだな。

い か せ な い !

士郎は私のものよ!
71優柔 第25話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/32(土) 20:48:52 ID:FTzuB2yF
私は愛原が好きだ。そのことに疑いはない。
誰より愛してるつもりだし、誰にも取られたくない。
だからあの女が可笑しなことを言ったって私の想いは変わらないし退けられると思ってた。思っていたのに。
私は・・・恐怖を感じてる。
私のやってきたことは何だ。好きだと言わないでだまし討ちみたいに処女を奪わせた。
セフレのような関係をほのめかして、あわよくば愛原に自分を好きになってもらおうとした。
何の確証もないのに恋人になったつもりでいた。あの女の言う通り・・・なんて卑怯なんだ!
あの女も愛原を愛してる。私なんかよりももっと!愛原を信じているからか?
私は!私は信じていないのか!違う、私だってあんな女なんかに負けないぐらい愛してるんだ!
だったらなんで、なんで愛原を疑ったりした!信じることができずに恋人なんて言った駄目なんだよ!
じゃあ私は?私は嫌われるのか!卑怯者たがら捨てられるのか?
違う!愛原は私を捨てない・・・絶対に捨てられないって言い切れる?
あの女と一緒にいてもそう断言できる?
・・・私は臆病なんだ。弱虫なんだ。
偉そうな態度を取ってるだけで本当は怯えてるだけなんだ。
恐いんだ!あいつが私の身体に興味を無くしたら?私と話すのが面倒になったら?私がいらなくなったら?
そんなことばっかり考えてしまうの!なんで私はこんなに卑怯なの!?なんで私はこんなに弱虫なの!?
嫌だ・・・嫌だ・・・捨てられたくない!


5限目の数学では予想通りの結果に落胆し、6限目の古典ではそこそこ良い点数に一安心しました。
そんな感じに一喜一憂していると、ポケットの中で携帯が振動を始めました。
授業中の携帯電話の使用は禁止されているため、机の中に潜ませながら開きました。
迷惑メールと思っていたのですが、差出人は先輩でした。
おかしいです、授業中に先輩がメールをよこすことなんて前例がなかったですから。
そんな急な用事なんでしょうか?とりあえず見てみましょう。
『大事な話があるから放課後屋上に来て』
大事な話ですか・・・何か引っ掛かりますね。告白とかだったらどうしようと思います。
「あなたが好き、だから付き合って」とか「エッチしたんだから責任取って」とか言われたら困ります。
だって先輩は、ヤラせてくれる都合の良い女性なんですから。
付き合うとか付き合わないとかの面倒な話で、今の関係を壊したくありません。
(どうしよう、断ろうか・・・いや、待てよ)
わざわざ屋上なんかに呼び出さなくても話ならできるはずです。
でもあえてそこを選んだということは・・・そういうことですか。先輩はセックスがしたいんですか。
それとも、前みたいに僕に身体を許して気を引こうとしているのかもしれません。
もし今考えたことのうち、後者だったら・・・なんて浅ましいんでしょう。
でもいいです。ハメさせてくれるというのなら大歓迎です。そう言えば、試験もあってもう5日もしてないですし。
『掃除があるから少し遅れるけどいい?』
『うん、いいよ』
72優柔 第25話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/32(土) 20:49:47 ID:FTzuB2yF
先輩を正面に、僕は言葉が発せられるのを待ちました。
今日は暖かいのかブレザーを着てなくて、ワイシャツから大きく盛り上がった2つの膨らみは、否応なく視線を釘付けにします。
先輩は自分がエロい身体をしていることに自覚がないんでしょうか、本当に目の毒です。
そうやってまじまじ見ていると、さっきまでは視線を合わせることのなかった先輩の目は僕の目を捉えました。
「優希君・・・」
君付けですか。椿ちゃんと一緒の時はいつもの男言葉に戻っていたというのに。
僕の前では優しい言葉遣いになるのは、喜んで良いのでしょうか。僕は先輩の言葉を待ちました。
「私・・・あなたのことが好き」
ああ、そっちでしたか。僕は少しがっかりしました。
だってこれから、返事をしなければいけないのですから。
そうなればもうセックスできなくなりそうですし。僕はどう答えようか考えました。
しかしすぐに、先輩は予想外のことを言ったのです。
「でも付き合ってほしいとかそういうことじゃない、ただ想いを伝えたかっただけなの。だから今まで通りに接してほしい。
エッチしたくなったらいつでもさせてあげるから、私のこと嫌いにならないで」

・・・何を言ってるんでしょうか、この人は。
つまりこういうことです。
『告白したけど返事は聞きたくない。お互い傷つかないように今まで通り仲良くやっていこう。』
僕はいよいよ鬱陶しくなってきました。
今の先輩は、僕に媚びているんです。
嫌われないように、身体を使って僕の機嫌を取っているんです。
なんて卑屈なんでしょうか、人のことは言えませんが、なんてご都合主義なんでしょうか。
それと同時に僕は悲しくなってきました。
知り合いになったころの先輩は、荒々しいけど格好良くて、一種の憧れを抱かせる対象だったんです。
仲良くなったころは一緒に馬鹿やったりして楽しかったんです。
それが今となってはどこにも見当たりません。
もう僕と先輩は、腹を割って話し合える関係ではなくなったのです。
今の先輩は・・・実家で飼ってる犬みたいです。
見知らぬ人にはやかましく吠えるくせに、僕の行動にはビクビクしながら必死に愛想を振りまく。
先輩は変わってしまいました。いえ、もともとこんな人だったんだと思います。
73優柔 第25話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/32(土) 20:50:34 ID:FTzuB2yF
僕は先輩をその場に押し倒しました。そしてワイシャツのボタンに手を掛けていきました。
「い、いやっ!」
先輩は拒絶を口にしました。ですがそれは口先だけで、抵抗することなく僕にされるがままです。
昔の先輩にこんなことしたら、アバラを全部折られていたに違いません。
「先輩の顔見てたら興奮してきたんだ。ねえいいでしょ先輩、エッチさせてよ?」
顕になった先輩の素肌。今日は白ですか。
エロい身体に似合わず、かわいらしいものを付けてますね。
僕はブラジャーごとその大きなものを強く揉みました。
「させてあげるから・・・んっ・・・・もっと・・・優しくして・・・」
そんなことはお構いなしに、乱暴にブラジャーを捲り上げました。
支えを無くした2つの塊は無防備に揺れます。
僕はその頂きにある突起に口を付け、わざと音を立てて吸いました。
勿論、空いている方への愛撫は怠りません。
「んんっ・・・あっ・・・やっ・・・」
そうやってしばらく弄んでいると、先輩のあそこは既に愛液まみれになっていました。
もっと前戯に時間をかけて、もっともっと可愛い悲鳴を上げさせるのも良かったんですが僕は本番に移りました。
たまにはすぐに挿入するのもいいですしね。
僕は強めに腰を振りました。
先輩の狭い性器にねじ込むように出し入れすると、先輩はすぐにイッてしまいました。
僕は腹が立って、イッて間もない先輩の中に再度入りました。
そしてさっきよりも激しく腰をふりました。
これではまるで犯してるみたいです。でもいいんです。
こんなセックスは僕の性に合わないけど、先輩はもう僕の言いなりだから。
どんなプレイでも喜んで受け入れてくれますよ。もし拒んだら捨てればいいだけのことです。

セックスが終わって屋上を後にしようと入り口に向かったところで、僕はあることに気が付きました。
ドアが少し空いていたんです。
閉め忘れでしょうか・・・今度からは気をつけないと。
74名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 20:54:57 ID:rLue2LBi
……うわぁ。椿ちゃん見てたっぽいな。
75名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 21:03:21 ID:XzUSwlMS
そろそろ死ぬかな?
76名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 21:09:16 ID:KKe2faVX
死へのカウントダウンにwktk
77名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 21:09:50 ID:0FDSgJhn
今度は椿ちゃんがゆうくんを飼う番だな・・。いや、次回は犯されそうな予感w
78名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 21:59:41 ID:/xNrdGsM
マ○マ○だな
79名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 22:04:00 ID:0pj6CYVw
○ナ○ナ?
80沃野 Act.9 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/32(土) 22:09:59 ID:9VoLjmt1
 あの雌狐を合法的に消す手段はないのかな──
 思いながら弦を引き、矢を放つ。
 ──的中。
 余韻を静かに咀嚼する。
 どうしてだろう。
 あの子のことを思い浮かべるたび、気持ちが研ぎ澄まされていく。
 普通なら、こういうのは雑念として消さなければならないものなのに。
 よーくんではなく、あの子──荒木麻耶を頭蓋の中に呼び起こすことで、無心の境地に近づいている気がする。
一矢射るたび、奇妙に充実感を覚えるのだ。撃てば撃つほど、心が安らぐ。
 的ではなく、脳裡に過ぎる顔を見ているからかな。
 そこに向かって射掛けるイメージで。
 けど、まだ足りない。
 もっと豊かな心で立ち合わなければいけないのだと思う。
 新しい矢をつがえ、的を睨む。
 それを、「的ではない」と胸に言い聞かせる。強く強く、言い聞かせる。
 弓は引き放つ腕と中てる技、二つを結びつける心が何を願うかに依る。

 正面から──肝臓と膵臓。

 見るのではなく、視るイメージで放つ。
 ドッ
  ドッ

 背後から──腎臓二つと脾臓。

 ドッ
  ドッ
 ドッ
 とどめに──心臓。肋骨の隙間を掻い潜るように。

 ド──ッ!

 六連射。身を包む心地良さは、弓を初めて以来最大と言って良い。
 やがて短く濃厚な時間は過ぎ去り、二十射が終わった。
「なんか、精が出るというか……雰囲気がサイレントすぎて却って鬼気迫るような」
 梓が恐る恐るといった口振りで言葉を挟んだ。
 彼女もわたしが最近ゴタゴタしているのを知っているが、そのことに関してはあまり口を出さない。
「気が済むまでやればいいじゃん〜」と言って鼻歌を始めたくらいが唯一の言及か。
 大雑把な性格だけど、それはなかなかに救いだったりする。
「ん、ちょっとね」
 心境の変化、と言っていいのかな。ただ下級生の子に対して苛ついて、よーくんの気を引こうとして、
空回りしている日々から一歩離れて俯瞰した心地になってきた。
 切欠はやっぱり、あの子の頬を叩いたときかな。ついカッとなってやっちゃった。
もちろん謝るつもりはさらさらない。あの子の方も、謝罪を求める風ではなかったし。
 逆に、もっと本気を出してくださいよ先輩──って、なんだか挑発してる気配さえ窺えた。
 意図は不明だ。耳を隠し、尻尾を隠し、本心を隠している。
 いったい何を考えているのだろう。あの雌狐は。
 冷静に考えればあの子に勝ち目なんてないはずだ。いくら可愛くてもよーくんとの付き合いは浅いし、
わたしとの間に付け入る余地はない。体で釣る……のも無理だろう。よーくんはわたしの胸とかをチラチラ
見ることがあっても、あの子の方に目を遣ることはなかった。よーくんが彼女を性的対象に捉えてないのは
火を見るより明らか。
 告白から今に至るまでの経緯も強引で、デタラメで。勝てる布石はどこにも見当たらない。
「あー……」
 それがとても不気味だ。最初は頭に血がのぼって見境なかったが、今は違う不安に苛まれる。
 あの子はなんなのだ。分からない。無視していい小石なのか。分からない。
 ただとにかく取り除きたい。靴に入った小石は、危険じゃなくてもすごく不快なものだから。
「なんだか狐狩り、したくなってきちゃったなぁー……」
 虚空を睨んだ。
 射るべき的は、その方角にあった。
81名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 22:16:27 ID:XmB9Wa4M
>>50
晒すなっつの
82沃野 Act.9 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/32(土) 22:23:20 ID:9VoLjmt1
 なんであれ、このままでは埒が明かない。
 よーくんを間に挟んで綱引きしてばっかりじゃ事態は停滞するばかり。
 動き出さなきゃ。

 そこで昼休憩、よーくんにお弁当を渡してから教室をすぐに出た。離れていくわたしを見てよーくんは
不思議そうな顔をしたけど何も言わなかった。せめて一言でも引き止めてほしかったのにな…… 
 廊下で、階段からやってくる荒木麻耶を待ち受ける。
 訪れた彼女は少しだけ意外そうな顔をした後、くすっ、と笑った。
「ははあ、なるほど。私とサシでの話し合いがしたいんですね、綾瀬さん」
「……察しがいいね。で、どう?」
「構いませんよ。場所はどうしましょうか」
「屋上、いこっか?」
 わたしの提案に、すんなりと従ってきた。あまりにもスムーズに進むので気味が悪い。
 屋上にはぽつぽつと人影があった。給水塔の付近が空いていたから、そこに行く。
 さて。なんと切り出そう?
 もうよーくんに近づかないで、と脅しても聞くような子じゃないのは分かっているし。
 どういう話をしたらいいのかな。もうだいぶ手段を選ばないつもりにはなってきたけど、具体的に何を
どうすればいいのかまでははっきりしなかった。
 まあ、とりあえず懐に彫刻刀は忍ばせているし。どうとでもなるかな。
「言いあぐねているみたいですね。ふふ……なんならここで一戦交えても別に構いませんが、
先輩のいないところであなたと口喧嘩しても詮がありません。一つ、腹を割って話しましょう」
 僅かに釣りあがった口角に奇妙な余裕が滲んでいる。
 なぜ、この子は劣勢においてこうも泰然としていられるのだろう。
「私がどれだけちょっかいをかけたところで、先輩の気持ちがこちらへ傾くはずはない。
……あなたが察している通り、分の悪い勝負だと思っています。先輩はただあなたと付き合い出すべきか
どうかの踏ん切りがつかなくて、考える時間を確保するために返事を保留しているだけなんでしょう」
「よーくんの眼中にないって分かってて、なんで諦めないの?」
 けら、と笑う。
「眼中にないなら……入り込めばいい。難しい話ではありません。セールスマンが
まずドアの隙間に足を突っ込むところから始めるようなものでしてね」
「……はぐらかしているの?」
「そんな、まさか。私の方針を開示しただけですよ」
 苦笑している。わたしが恋敵なんてこと、まるきり忘れたみたいな表情で。
 分からない。この子の考えていること。わたしを化かそうとしているのは分かるのに、化かし方が不明だ。
 問答無用で射殺せるならそうしてしまいたい。
 けど法治国家では殺人になる。
 そしたらよーくんに会えなくなってしまう。非常につらい。
 たとえ相手が雌狐とはいっても、単純に叩き殺しておしまいというわけにはいかないのだ。
「怖い顔をしますね……法律の目を掻い潜れるなら、ぶっ殺しても構わないって言わんばかりです」
 怯えた風もなく、くすくすと楽しげに声を漏らしている。
「……お願いだから、よーくんにも、わたしにも近づかないでくれる? 不愉快なの、あなた」
 不愉快というより不気味だった。しかし、そのことを告げては弱気を見せることになる。本音を隠した。
 結局、策も何もなくて芸のないセリフを口にしてしまった。到底聞き入れるような子じゃないのに。
 いざという場合に備えてそっと彫刻刀を握る。
「いいですよ」
 けど、あっさりと。拍子抜けするほど簡単に金髪の頭が頷いた。
「え……?」
 まったくの予想外れ。皮肉の一つも返されることなく受諾されるなんて、希望してもいなかった。
「あなたから言い出したことなのに、そんなに驚かれるのは心外ですね」
「で、でも……えっ、本当に?」
「無期限、とはいきませんが今日明日くらいなら譲歩します。おふたりに近寄らず、干渉を避けましょう」
83沃野 Act.9 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/32(土) 22:27:31 ID:9VoLjmt1
 取り付けることのできた口約束──けれど湧き上がる感情は安堵よりも不安が濃かった。
「二日間だけ、退いてくれるってこと?」
「それ以上は待てません。あなたは何十年も付かず離れずの幼馴染み関係で満足してきたのかもしれませんが、
私はそこまで我慢強くありません。早く結果を出してしまいたい。あなたにも時間をあげます。だから、
さっさと決着をつけてきちゃってくださいよ……失恋するなり、玉砕するなり、惨めに捨てられるなり」
 随分とふざけた反復だ。まるでわたしがよーくんとくっつく可能性なんてないと断言している。
 腹立たしかった。けど声を荒らげる気にはなれなかった。
 彼女の確信はいったいどこから来ているの……?
「じゃあ、用も終わったことですし、失礼しますね。今日は友達とお弁当を食べることにします」
 わたしの疑惑などそ知らぬ風情で歩み出す。
 引き止めようとしても、引き止める理由がなかった。問い質したかったが、適切な言葉が思い浮かばない。
「いいですか、二日だけですよ。くれぐれも早急に、結論を出してくださいね」
 念を押しながら、彼女は扉の向こうへ姿を消していった。

 すっきりしない気分でよーくんの教室に行くと、彼はお弁当に手をつけていなかった。
 すぐに帰ってくるだろうと思ってわたしを待っていたらしい。少し嬉しくなった。
 周りを見渡してみる。あの子の姿はない。目立ちすぎるくらい目立つのだから見落とすのは却って
難しいぐらいだけど、確認しなくては落ち着かなかった。
 よーくんに聞いても、さっきの休憩時間以降は荒木さんに会っていないという。
 「眼」を使うと、彼女は宣言通り教室で女子たちと一緒にお弁当を食べていた。
 本当に距離を置いてくれるのだろうか……
 半信半疑、上の空で昼食を摂った。

 要するに、焦ったわたしがよーくんへのアプローチに失敗して自滅するのを待つ作戦なんだろうか。
 期限を短く切ったり、「くれぐれも」と念押しして急かせるあたりにそういった意図は感じられる。
 ここでよーくんに積極的な行動を起こすのは相手の思う壺なのかもしれない。
 いや、そう思わせることで逆に牽制しているとか……? まさか、迂遠すぎる。
 悩めば悩むほど、術中に嵌まってるような不安が拭えない。
「よーくん、さ、帰ろ」
「あ、ああ……」
 校門を過ぎてからしばらく経つのに未だ姿を見せない荒木麻耶が不思議なのか、よーくんはキョロキョロと
周りに目をやっている。当たり前のように横にいた存在がいなくなって、落ち着かないんだろうか。
 不在が、実在よりも存在を際立たせる──倒錯した状況に、わたしたちふたりは陥っている。
 図書館の方を視た。黙々と、小さな体で委員の作業をこなしている。近くの茂みで虎視眈々と監視したり
尾行したりしているわけではなかった。
 不審の念は消え去らない。でも、あまり気にしすぎたってしょうがない。
 今は──彼女が発した離脱期間を、わたしがどう消化するかがポイントなのだ。
 焦りは禁物。でも、のんびりしていたらすぐに終わってしまう。
 どうしよう。
 横目によーくんを見る。ちょうど彼もこっちを覗き見る風にしていて、目が合ってしまった。
 別に、珍しくとも何ともないのに。久しぶりにふたりだけで歩いているせいだろうか。変に意識しちゃって、
気恥ずかしくなって同時に目を逸らした。心臓の鼓動が駆け足気味になっている。
 ……なんだかむしろ。
 あの子いなくなったおかげでわたしたちの雰囲気、それっぽくなってきてない?
84名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 22:51:13 ID:kf0JWwcS
殺意ゲージMAXだよ、おい。
85名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 22:51:39 ID:NcJUnWFt
沃野は胡桃タンの行動にwktkしまくり

そして今日はエイプリルフールってことで

エイプリルフールだからと
「お前の事好きだ、付き合ってくれ」
と、冗談で幼馴染の女の子に言ったつもりが
「私も・・・好きだったの・・・うれしい」
と泣かれて言い出せなくなって
だらだら付き合うことになったところに
主人公が好きだった女の子が現れて・・・

みたいなストーリーが浮かんだが
如何せん文才が無いのでかけない件orz
86名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 22:52:50 ID:nPbbGAwS
麻耶タン何を企んでいるんだろ?
87名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 22:56:58 ID:X3GwY+zL
彫刻刀でなにをするつもりだったのかt
88名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 23:32:40 ID:/xNrdGsM
顔に雌豚or泥棒猫と彫る
89名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 23:36:40 ID:k2krzrjJ
>>85
イイ!!
90名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 01:04:15 ID:25c5/V9Z
ゆう君とっと死ね
91名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 01:06:22 ID:25c5/V9Z
ゆう君早く死ねよ生きすぎだよ。
92名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 01:08:29 ID:YxuCyut0
お楽しみは最後にとっておくもんだ
93名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 01:09:53 ID:wUzgYpol
ゆう君死ねばいいのに
94『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/02(日) 01:28:32 ID:j9nJYl+N
里緒さんが寝込んでしまった。
まぁ、丸二日、ろくに食べて無いんだからそりゃそうだろう。
「ちょっと里緒さんの様子見てくる。」
「……」
ギロリと擬態音が付くのではと思うほどの勢いで睨み付けられる。こわひ
「ほれほれ、そんなおっかない顔せんで、スマ〜イル。」
「……私が笑えないの知ってるくせに」
志穂の無くし物は『笑顔』。笑い方を知らないのだ。
本人曰く、「口笛吹けない人に口笛吹けって言ってるようなもんよ。」
なるヘソ。
俺自身、口笛吹けないから何となく分かる。やり方がわからないのか。
笑顔とは喜びという感情を形にしたもんだ。だから笑えない志穂は年中怒ってばっかだ。
「わちきの有り余る笑顔を分けてやりたいヨ!」
「あんたは笑いすぎ。……まぁ、いいわ。行くんなら早く行って。さっさと戻ってきなさい。」
「ウィ。」
フレンチな返事をして、お粥を運んで行く。「里緒の部屋」と可愛らしく書いてあるドアの前まで来る。
年に合わず(失礼か)里緒さんは少女趣味なのである。
コンコン
「は〜い?」
元気のない弱々しい声で返事を返される。
「晋也です。お粥、持ってきましたよ。」「開いてますからどうぞ〜」
ガチャ
「うふぁ!」
開けた途端、真っピンクな光景が俺の網膜に焼き付き、脳を刺激する。
一度だけ入ったことがあるが、変わっていない。
フリフリのついたパジャマ。ぬいぐるみの熊や置物。天使の刺繍が入った絨毯。
末期です。Mrs.
目まいを堪えながらも、ベットまで食事を運んで行く。
「はい、鳥のササミ入りです。味は俺が保証します。」
「おいしそうですねぇ〜。晋也さんが作ったんですか?」
「いんや。志穂が作りました。」
それを聞いた途端、里緒さんの表情が曇る。
うーん。ここは嘘でも「俺が作りました」と言っとけば好感度アップしてたかもなぁ。
95『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/02(日) 01:29:23 ID:j9nJYl+N
「あのぉ、晋也さん?お嬢様は………」
「んん。まだ見つかりませんねぇ。全く。隠れんぼは強いねぇ。」
里緒さんがシュンとした顔になる。が、ハッとしたようにこっちをみて言った。
「そういえばお館様の点滴、そろそろが交換の時間なんですけど………見てきてもらえますか?」
「あぁ、いいっすよー。」
そう言うと鍵を渡される。この館のマスターキーだ。鍵の管理は里緒さんがやっている。
俺に預からせたら何をされるか分からないと志穂に言われた。
まぁもうナニはしたんだが。
嗚呼!またそんなこと考えるからオッキしちゃうよ!
「じ、じゃあ見てきます。」
里緒さんに棍棒を隠すように背を向け、部屋を出る。
「あ〜。性欲を持て余す。」
部屋に戻ったら志穂を呼んでヤろう。
嫌がっても体は正直だな。このセリフも言ってみたい。
しかし……志穂は俺にとってなんなんだ?
恋人?性欲処理機?
前者、告白はしちょらんな。
後者、それ言ったら八つ裂きだ。
「ま、この屋敷にいる限りは考えるだけ無駄サ〜。」
当主の部屋へ来る。ノックは無用。返事なんか返ってこないからだ。
ガチャ
鍵を開けて入る。






96『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/02(日) 01:30:40 ID:j9nJYl+N
腐臭
それがファーストインパクト。適切な表現だ。部屋には腐臭が広がっている。
匂いの発信源。当主。結果、死亡。
死んでいた。
深々と刀が刺さっていた。当主のコレクションの一つだったはずだ。
「えーと……」
自分の感情整理。
恐怖、感じる。
驚き、感じる。
悲しみ、感じる。
O.K。無くし物は増えていないな。
「は、はは。ドッキリかなんかかナ?」
カメラがないか探してみる。
「死んでいたでしょう?晋也さん。」
戸の影から里緒さんが入って来る。具合悪そうな様子なんてない。
「ふふふふ………私が殺したんですから、当然ですよね。」
「は?……あっはは。またまたぁ。冗談がお上手ですねー。」
「冗談なんかじゃあありませんよ。確認してみます?」
そんなのしなくてもわかる。死臭で満ちている。
「ふ、ふむ。でわ、殺した動機をいいたまへ。」
タンディズムに顎を擦りながら問い掛ける。
「ふふ…こんな状況でも、気楽でいられるんですね?」
笑顔を崩さず聞いてくる。
天使のような悪魔の笑顔とはこのことか。
「だって知ってるんでしょ?俺の無くし物をサ!」
「そうでしたね。」
テヘッ、という感じて自分の頭を小突く。
俺の無くし物。
それは『真剣さ』だ。どんな時にも真剣になれない、冗談半分のオチャラケた感じになってしまう。
だから今も、シリアスにはなれない。
「そいで?なんでまた?」
再度質問。
「だって…邪魔だったんですよ?この廃人の世話をしている間、晋也さんに会えないんですもの……しかも志穂ちゃんと一緒にいると思うと、悔しくてきがくるいそうだったんですよ〜」
そう言って嬉しそうに小さく飛び跳ねる。
「でももうその必要はありません。晋也さんといられる時間、増えましたね。」
「あのさぁ……こんな老人でも長年一緒にいたんだからサ、ちったぁ……」
「私の無くし物、知ってます?」
「…ノー」
「悲しみです。この人が死んでも、何も感じませんよ〜。それより、喜びのほうが大きいですからね〜。」
……こいつぁ大物だぁ。
97名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 01:43:42 ID:5kxsmfOA
ひぃぃぃぃぃいっぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃぃ
98名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 01:45:38 ID:nCtAiQ82
GJ!無くし物の設定は面白いね。
話がどう転ぶか想像もつかないから
続きが楽しみだ。
99名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 02:17:28 ID:0r+kPhjn
なんか黒須太一を思い出すな。
100名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 02:24:46 ID:plh/C+DZ
たしかに大物だぁ!

コワイヨー
101名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 03:07:17 ID:BW95tKsi
なんか素敵な主人公だな。
つねにふざけてるけど馬鹿じゃないのがイイ。
102名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 03:30:22 ID:+FzDjeEr
ふふぉふぉおふぉ…スゴクGJ!!
103もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/04/02(日) 05:19:24 ID:pEk5sA2j

パッチリと目が覚め、視線の先に見慣れた天井が写る。
どうやら、いつの間にか眠ってしまったみたいだ。


……何か悪い夢を見ていた気がする。 理由は特にない、ただなんとなく。
ひとまず悪夢から解放されたのだ。
目が覚めてよかったと思う、だけど、すぐに目が覚めなければよかったとも思う。
ここもまた悪夢のつづきだから………。





布団がずいぶんと湿っている。
大分うなされて汗をかいたみたい、それに喉もカラカラだ。
わたしは時計を確認すると、ベッドから起き上がり、何か飲み物を求め台所へ向かった。

階段を下りている途中、居間から光がもれているのに気付く。
現在午前二時、こんな時間に誰だろう?

わたしは静かに居間へ近付き、わずかなドアの隙間から中の様子をのぞきこむ。


あっ……………。


中ではお兄ちゃんが真剣な表情でTVを見ていた。


……そうか、今日はサッカーがあったんだっけ。

現在ヨーロッパではヨーロッパ最高のチームを決めるチャンピオンズリーグが開かれている。
スカパーのない我が家では地上波で見れる数少ない世界トップレベルのサッカー。




ところで、わたしはサッカーをよく見る方だ。少なくとも年40試合は見ている(お兄ちゃんの試合も含めて)。
だけど、サッカーを詳しく知っているかと聞かれたら、答えはノーだ。

理由は主に二つ。
まず一つ目の理由はわたしの耳。音のない世界に生きるわたしにとっては、試合中に得られる情報が極めて少ないのだ。
そのため、解説を聞けないので今のプレーがいいプレーなのか、それとも悪いプレーなのかも分からないし、メンバーも最初に字幕で現れるが、実況が聞こえないので、試合中誰がどこにいるかも分からない。
頼りのお兄ちゃんもだいたい試合に熱中してしまい、わたしにかまってくれない。
104もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/04/02(日) 06:10:22 ID:pEk5sA2j

二つ目の理由(実は十中八九こっちの理由なのだが)はソファーだ。
今もお兄ちゃんはお気に入りのソファーに座りサッカーを見ている。
あのソファーは生前お父さんが買ってきた物で、曰く二人用なのだそうだが、実際のサイズは一人で座るには広く、二人で座るには狭いと何とも微妙だ。
お兄ちゃんとわたしは子供の頃からよくあのソファーに座りながらサッカーを見ていた。
高校生になった今でもそれは変わっていない。ただ、わたし達の体が大きくなるにつれ、肩を寄せあうようになっていった。
サッカー観戦中、お兄ちゃんがすぐそばにいる。そのため、どうしてもサッカーに集中出来ないのだ。
いつもは見せない真剣な表情に、わたしの心臓はいつも高鳴る。
気付くと、わたしはお兄ちゃんの事ばかり見ていた。






今すぐ、あそこに行きたい。
お兄ちゃんを独占したい。
だけど、もうあの場所に行くことは出来ない。
お兄ちゃんには恋人がいるから。
唇をかみ、必死で欲望を抑える。

なぜか自分がひどく惨めな存在に思えた。



……もう、お兄ちゃんの事は諦めよう。

だから、せめて今だけはこのままお兄ちゃんを見させて。


わたしの頬に一筋の涙が流れた。
105名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 07:28:49 ID:Gm7wLGOG
修羅場SSスレ中でも、一二を争うヤバさと開き直りを持つ円香と戦うのに、
茜ちゃん可憐すぎるよ…(*´Д`)
ハラハラしてしまう……


あぁでもこんな可憐な子が狂っていく過程がまた(ry
1068 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/02(日) 10:19:05 ID:lcJH1Wy7
>58
  ( ゚д゚)  まっ、エイプリルフールだしな。
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/     /

>59-70
  ( ゚д゚)  ・・・・。
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/     /


  ( ゚д゚ )  
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/     /
107義姉 第1回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/02(日) 10:20:29 ID:lcJH1Wy7
        *        *        *
『士郎』

 いつもの帰り道の筈だが今日は都合よく周りには同じ学校の人間が見当たらない――今隣にいる彼女を除いて。
 チャンスかもしれない。
「――なあ三沢、ちょっといいかな?」
「え、なに?」
 彼女はいつもの顔で尋ね返してくる。
 その顔を真っ直ぐ見つめていると改めて今言おうとしていることが恐ろしくなってくる。
 いや、絶対オレの事悪く思ってないはずだ。二人きりで遊びに行ったこともある。
 ――よし、友達以上恋人未満の関係を終らせるんだ。
「あのさ、前恋人いないって言っただろ……その……よかったらオレと付き合ってみないかな。
 ……いやほら、オレ達結構気が会うし」
 言ってしまった。体が熱い。立っているだけなのに苦しい。
 三沢は黙り込んでいた。長い沈黙が不安と恐怖を募らせていく。
 ヤバイ――この展開はノーなのか。
 言わなかった方がよかったかもしれない。まだ今なら冗談で済むかもしれない。
「あの……ゴメン……実は私も――」
 ゴメンて――
 そうか――
 気がついたときには走り出していた。
 背中から三沢が何か言いかけている。どうせ、『いいお友達でいましょう』とかそんな慰めの言葉だろ。そんなこと言われたらもっと惨めに思えてくる。
 聞きたくない、言われたくない。
 逃げるしか出来なかった。

 明日から何て顔すりゃいいんだよ――
108義姉 第1回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/02(日) 10:21:26 ID:lcJH1Wy7
        *        *        *
『涼子』

 私が帰ってきた時シロウの部屋には灯りが灯っていなかった。
 てっきりまだ帰ってきていないのかと思ったが、いつものように漫画を借りようと部屋に入ったら布団の中ですすり泣いていた。
「どうした、苛められでもした?」
 返事はなく布団の中で啜り泣くだけ。
 確かいつも一緒に遊んでいる友達は居たからクラスで孤立してるってことはないと思う。
 大体、子供じゃあるまいし、よくある泣くような事態といえば――
「ふられた?」
 返事の代わりに布団の中の泣き声が大きくなった。
 ――図星か。
「話ぐらい聞いてあげるけど?」
 返事どころか布団の中から顔すらだそうとしない。
 今日ぐらいは泣きつかれるまで放っておいた方がいいか――
 溜息を吐いて、出て行こうとすると声がした。
「……行くの?」寂しそうな声だった。
 顔も見せないくせに誰かに傍に居て欲しいか。結構我侭な奴。
「大丈夫、すぐ戻ってくるから」
 まあ月並みだが、アレしかないか。
 ――世話のかかる弟だ。

「酒。お約束だけど飲んで忘れなさい」
「……うん」

 そういえば、こいつと酒飲んだのなんて初めてだ。
 そして気づいた、こいつ結構酒強いかもしれない――いや失恋の思いを少しでも紛らわそうとしているのかもしれない。
 さっきからこいつは飲むかツマミ食っているか、彼女との思い出を語っているかのどれかだ。
 遠めから話しているのを見た感じじゃ、三沢って子もシロウの事悪く思ってない気がしてたんだけど。
 ――いや、直接話したことなんて一度もないから、よく知らないんだけど。
「少し飲むペース落としたら?」
 多分、このまま放っておいたら絶対急性アルコール中毒起こしそうな気がする。
「――それでさ二学期最初の席替えの時、隣の席になれなくて」
 人の忠告を無視しながら、ようやく夏の思い出編が終り、二学期編に入ったらしい。
「悪いこと言わないからさっさと忘れなさい。友達で居られるなら友達続けて、無理なら綺麗さっぱり縁を切る。
 まー、その辺はあんたが思っているより結構なんとかなるもんだよ」
 愚痴の垂れ流しを聞くのもさすがに飽きてきたから、ちゃんとアドバイスしておく。
「――恋人いないだろって言ったら、お前も居ないだろって……」
 また人の話無視している。
「……人の話聞いている?」
 少しカチンと来た。
 いつもなら一発ぶん殴っているところだが、さすがにこんな時ぐらい大目みなきゃいけない。
「やだよ……忘れられないよ……」
 ――また泣き出していた。
「忘れなさい。ふられた相手を想ってたからって何にもならない。傷の治り悪くするだけ」少しキツメに言っておく。
「やだよ……」
 泣きながらも小さな声で人の忠告に対し拒絶の意志を言葉にする。
 こいつ変なところで頑固だな。
 苛立ちが高まってくる。
 酒の回った脳がある結論をはじき出す――最終手段に出よう。
109義姉 第1回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/02(日) 10:23:03 ID:lcJH1Wy7

「ちょ、姉ちゃん?」
 今ベルトを外した。
「一発やって忘れなさい」
 あんたみたいなタイプは一発やれば色々変わるのよ。
 四つんばいになって逃げようとしているシロウをズボンごとパンツを引き下ろす。
「姉ちゃんヤメヤメ!酔ってるって!」
 あたりまえじゃん、こんなことシラフで出来るわけないじゃん。
 後ろから覆いかぶさり手をシロウの股間へ伸ばす。なんだちゃんと勃起してる。
 口では嫌がってても体は正直じゃん――いけない、なんかエロ親父っぽい。
 そう思いながらも手はスピードを上げる。
「ううっ!!」
 なんだ、こいつ結構可愛い顔するじゃない。
「大丈夫だって。悪いようにしないから」
 耳元でそっと息を吹きかけ囁く。
 最初がこのまま最後まで手ってのも可哀想か――
 ――そういえば忘れていた。
「あんたゴムは?」
「へ?」
 一瞬シロウの動きが止まっていた。
「コンドーム! どこ?」
「いや、あの、持ってないけど……」
「あーもう……。あんたも年頃ならちゃんと準備しておきなさい!」
 せっかく人がその気になりかけていたのに。
 苛立ちの余り一発頭をぶん殴った後、部屋を後にした。

「……助かったのか、オレ?」
110義姉 第1回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/02(日) 10:23:43 ID:lcJH1Wy7
        *        *        *
『モカ』

 極々普通のコンビニのバイト。
「あ、涼子」
 涼子挨拶を無視したまま棚に向い目的のものを引っつかむと、そのままレジへ向かってきた。
 何故かその背後の空間が歪んで見えるの気のせいかな?

「あのさ、さっきメールで知ったんだけど――」
 いつものようにこちらの会話に乗ることなく、涼子は無言で乱暴に手に持っていたものを叩き付けた。コンドームだ。
 えーと、これってあれだよね。
「新しくカレでも――」
「――レジ早くしなさい」
 声が滅茶苦茶低い。
 なんか着乱れている気がする。目も血走っている。
「普通、そういうのは男が用意しているものでしょ!」
 涼子は酒臭い息とともに隠せない苛立ちをぶつけてくる。
「そん……そ、そうだよね」
 そんな事知らないよ――そう言いかけたが言葉を飲み込んで同意した。
 怖い――気圧されている。何か下手な事言ったら噛殺される、そんな予感がしていた。
「――財布忘れた。立て替えといて、明日学校で返すから」ポケットを弄っていて、気づいたようだ。
「あ、うん……」
 返事を待たずして涼子は背を向けていた。
 なんだかよくわからないが野獣は去った。

 えーと状況から察するにカレといざコトに及ぼうとしている時になかったって事かな?
 なんか鬼気迫るって感じだったけど――
111義姉 第1回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/02(日) 10:24:27 ID:lcJH1Wy7
        *        *        *
『智子』

 体が熱い。告白されてから随分時間が立つというのにまだ動悸が納まらない。
 神埼――ううん、もう恋人になるから士郎って呼んでもいいんだよね。
 折角告白してくれたのに。ちゃんと聞こえたのかな私の言ったこと。
 だってしかたないよね、士郎が言うだけ言ったら走っていっちゃうんだもん。
 おかしいな、今まで何度も電話かけてきたのに指先が震えてかけられない。
 明日、学校で会ったらちゃんと言おう、ゴメンなさい、今まで言えなかったけど私も好きでしたって――

112義姉 第1回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/02(日) 10:25:20 ID:lcJH1Wy7
        *        *        *
『士郎』

 座っているはずなのにやたら大きく上半身が揺れている。
 かなりアルコールの回った脳味噌でもさっき起こったことはわかる。姉に襲われ貞操を奪われかけた。
 こういう時の為ちゃんとゴム用意しとかないとな。いや、なんか違うよ。
 とりあえず一難去った。それだけは事実だ。
「三沢――」
 愚痴る相手がいなくなった事により今日の出来事を思い出し始めていた。
 明日から友達としてでも話してくれるのかな。でもオレは友達として話せる自信がない――
 また止まっていた涙が溢れかけていた。
 寝よう。寝て全て忘れてしまおう。
 コップに残った酒を一気に喉に流し込んだ後、そのままベッドに潜り込んだ。



 ――気分が悪い。
 頭痛と吐き気とやたらと強い渇きで起こされた。
 布団から抜け出て部屋の中で見つけたコップの中の水を流し込む。
 ――酒じゃん、これ。
 なんでオレ、今裸なんだ――ようやく気づいた。
 熱いから脱いだのかな。

 ――なんでオレの部屋の中にオレの衣類以外に女物の下着まで混ざっているだろう。

 記憶を遡る。
 確か昨日は三沢にふられて――
 いけない、また泣きかけている。
 その後自分の部屋で泣いてて、姉ちゃんが帰って来て、酒飲まされて、愚痴ってて――
 なんか記憶がその辺から凄く曖昧だ。

 背後のベッドで誰かが寝返りをうった。さっきまでオレが寝ていたベッドでだ。
 両親とも家にいなかった。消去法ではオレ以外の人間なんて一人しかいない。
 何か凄い嫌な予感がする。予感というより推論だ。これでもかって状況証拠がそろっている――
 確認の為、恐る恐る背後を振り返るとやっぱり居た。姉ちゃんがオレのベッドに。
 姉ちゃんの服も脱ぎ散らかされているって事は――
 ――オレ、ひょっとして酔った勢いで滅茶苦茶ヤバイ事しました!?
113義姉 第1回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/02(日) 10:28:17 ID:lcJH1Wy7
なんつーか、アレ。
another endぐらいで済ませようと思ってたのに妄想ゲージが跳ね上がったんでパラレルストーリー化。
実は細かい設定についてはお話の都合で不義理チョコは違うとこがあったりなかったり。
「おばあちゃんっ!」
「………」
「嫌だよ、私…おばあちゃんが居なくちゃ嫌だよっ!」
「………」
「笑ってよ…いつもみたいに笑ってよ…」
「………」
「やだよ…ぐすっ…やだよ…」
「………」
「陽子…おばあちゃんはね…」
「違うよっ!」 
 ガチャンッ
「陽子っ!何処に行くの!?」

「違うのに…違うのに…」
「お譲ちゃん」
「………」
「何か嫌な事でもあったのかい?」
「ぐすっ…おばあちゃんが…おばあちゃんが…」
「なら…俺達が忘れさせてやるよ…」
「えっ…?」

それは、まだ不撓家に長男が居た時であった…
その日の俺は、番場が入団している草野球チームの試合を観戦し、何故か代打として出場し、
何故かそのまま勝利の宴に紛れ込み、俺が帰路に着いた時にはあたりはすっかり暗くなっていた。
「…ハハハ…」
「…ん?」
笑い声…それも女性の笑い声が聞こえた。
ふと振り返ると、そこにあったのは公園であった。
まあ、おおかた恋人同士が愛の語らいでもしているのだろう。
この公園は昼も夜もほとんど人が居ない。
逢引にしては少し寂しすぎるような気がするが、まあそれは各人の自由であろう。
そう結論づけると…俺は再び帰りを急いだ。
「…ヒヒヒ…」
「…んんっ?」
今のも同じ人の声だったが…愛の語らいにしては少し違和感がある。
なら麻薬あたりか。
公園で麻薬をやっていたり、人生に絶望したりで気をおかしくした人が居るのだろう。
そう結論づけると…俺は再び帰りを急いじゃ駄目だろっ!
なんだか嫌な予感がする…一応、覗いておこう。
もし恋人同士の愛の語らいだったら、覗いた事を心の中で謝りつつ退散しよう。
万が一、麻薬か人生に絶望した人に出くわしたら、その時は2・3発引っ叩いてから退散しよう。
そうと決まれば話は早い、俺は早速公園の茂みの中を匍匐前進で進んでいった。
まず発見したのは二人の学生、それも一瞬で不良だと判断できるほどわかりやすい男たちであった。
制服は…兄貴の物とは微妙に違う。
しかしこの辺りで学ランを制服としているのは不死鳥学園と隣町の昇龍高校だけだ。
そういえばこの間、
兄貴が『昇龍に不良嫌いの生徒会長が就任したおかげで、向こうの不良がこっちに流れて来ている』と言っていたような気がする。
まあ不良の出所はこの際関係無いか。
俺はもう少し近づき、二人の話声が聞こえる位置まで移動した。
「なあ…あの女やべえんじゃないか?」
「そうだな…今まで何回か女をまわした事はあるが、たいてい泣き喚くか無言になるかだったしな」
「キレてんじゃねえのか?あの女」
「かもしれんな…」
「なあ…もうずらかろうぜ、仲間もほとんど気持ち悪がって帰っちまったしよ」
「そうだな…俺達もそろそろ退散しよう、確かにこのままここに居るとヤバイ気がする」
なるほど…大体理解した、どうやら居たのは蛆虫だったようだ。
今なら向こうが気がついてない分だけこちらが有利な筈だ。
よし、まずこいつらから情報を聞き出そう。
敵の位置は…それならっ!
 ガサササッ
「なっ!…」
俺は匍匐の体制から逆立ちをし、そのまま両手で思い切り地面を押し、バク転の要領で空中に跳ぶ。
そして敵が驚いている間に両足のカカトを振り下ろす…
 ゴッ!
「ぎゃぷっ…」
手ごたえあり!
最後に着地…よし、奇襲は上手くいった。
「秘技…半月蹴り」
まずは一匹目、二匹目は尋問…いや、拷問するために気絶は避けないと…
「貴様っ!」
まだあいつは冷静になりきれていない、あの構えているのだか構えていないのかわからない姿勢がその証拠だ。
ならばこの勝負は速攻で終わらせるっ!
俺はドロップキックの要領で跳び、右足を脇の下に、左足を肩の上に差し込む。
その体勢のまま重力で体が落下するよりも早く相手の手首を掴み全力で引っ張る…
 ゴキリッ!
「ぐわあぁっ!!」
「秘技…空中腕ひしぎ…」
相手の腕が下に垂れると、俺は両手を地面に着き今度は両足で首を挟み、そのまま体を捻る…
 ゴンッ!
「がっ…」
「…Withヘッドシザース」
二匹目も潰した…って、潰しちゃ駄目だろっ!
「お〜い…生きてるか〜…」
返事が無い、少しうっかりしていたようだ。
二匹目には空中腕ひしぎで戦意を喪失させれば十分だったのだが、うっかり追撃を入れてしまったようだ。
…まあいい、過ぎた事は仕方が無いしゴミに情けを掛ける必要も無い。
俺が考えるべき事は何処かに居る女の人を助け出す事だけだ。
「あはははははは…」
なんだよ…これ。
現場は拍子抜けするほどに簡単に見つかった。
場所は男子トイレ、男が三人、女性が一人…女の子と言うべき幼い子であった。
だが、それより問題とすべきはその異様な光景である。
「ひひひひっひっひ…」
笑っていた、歓喜の表情と共に笑っていた。
一瞬俺は薬でも飲まされたかと思ったが、すぐに却下する。
先の二人の会話に薬の存在は無かった、それに見張りと思われる男は明らかに恐怖に怯える表情をしていた。
なにが何だかわからんが…今は一刻も早く少女を助けなければ。
ここは奇襲で行こう、前後から少女を犯している二人はすぐには戦闘体制には入れない筈だ。
 チャリンッ チャリンッ
公衆トイレの天井の上に登り、五百円玉を入り口付近に落とす。
犯している奴らは腰を振るのが忙しくてそれどころではないだろうが、見張りは別だ。
拾うためか、あるいは異常を感知したためかは知らんが、のこのことやってくる。
そして辺りを2・3度見回し…拾ったっ!
その刹那、俺は全体重を両足に乗せ下を向いた奴の後頭部を目掛けて落下する…
 ズンッ…
「ぐわっ…」
「秘技…マリオキック」
これで三匹目、あと二匹だ。
「なっ…何だてめぇは!」
…チィッ、気づかれたか。
だがここで引く気は全く無い、ここまで来たら真正面から叩き潰すまでだ。
残る二人はあわてて少女の体から離れ、俺に対処しようとするが、
それを待つほど俺はやさしくはない。
ここからはスピードの勝負だ、近い方から叩くっ!
大地を蹴って加速し、その勢いのまま空中で体を捻る…
 ドガァッ!
「はがぁ…」
「秘技…ローリングソバット」
手ごたえはあった。俺の足は男の顔面を捉え、そのまま後頭部を壁に激突させた。
…あと一匹だ。
「てめぇ…」
最後に残った男がナイフを構える。
俺の頭の中でスイッチが入る。
奴の殺気を感じ取り、俺は始めて殺意を呼び覚ます。
恐れるな…俺の名は何だ?
不撓勇気だ…決して折れない…勇気を持つ者だあああぁぁぁっっっ!!!
「死ねぇっ!」
「遅いっ!」
全速で前進しながら左手で奴の右肩を掴む、右足で奴の足を払い、同時に右肩を逆方向に押す…
「なにぃっ!?」
「秘技…」
奴の体がバランスを崩し横向きになる、その機を逃さず右手を奴の頭に乗せ、全体重をもって奴の頭を加速させる…
「岩・盤・砕きいいいぃぃぃっっっ!!!」
 ズウゥゥンッ…
ラストワン…撃破。
気がつくとタイルにヒビが入っていた。少しやり過ぎたかもしれない。
まあ、人間は意外に頑丈に出来ている物だ、しばらくは起き上がれないだろうが死にはしないだろう。
そんな事より…
「くくく…くくく…」
この子をどうしようか…?
その子は湧き水の如く流れ出る血液を見ても、なお笑い続けていた。
「あ…りが…と…」
…えっ?
今の言葉は礼を言った様に聞こえた。
正気を保っているのか!?この子は。
「あはははは…」
その顔に変化は無い、ただ歓喜の表情があるだけだ。
どっちにしろ俺にはこれ以上はどうしようも無いな。
そう判断すると俺はこの子を背負って…いや、それは拙いか。
この子は裸だ、一番大事な箇所はスカートによって辛うじて隠れているが、それ以外はニーソックス位しかその身を隠す物が無い。
流石にこのまま外に連れ出したら非常に拙い事態になるだろう。
それに意外と胸が大き…いや、関係無い関係無い。
かと言って使えそうな物は…上着位しか無いようだ。
「ほら…自分で着れるか?」
そう言って俺は着ていたジャンパーを脱いで差し出してみる。
「あり…が…」
「無理して喋らなくてもいいぞ」
動きはぎこちなく、手は震えていたが、その子は確かにジャンパーを着ようとしていた。
確信した…この子は正気を保っている。
こんなにも惨い仕打ちを受けながら、この子は確かに正気を保っているのだ。
俺も少し手伝って、彼女にジャンパーを着せた。
俺のジャンパーは新調したばかりで、数年間は使えるように大きめの物を選んでいた。
今回はそれが幸いし、女の子をしっかりと覆う事ができた。
まあ、少々ブカブカなのとノーパンなのは我慢してもらう他に無いが…
「とりあえずここを出るぞ、おぶされ」
「ははは…ふふふ…」
返事は無かったがその子はしっかりと俺の体につかまってきた。
それを確認して、俺達は精液と血液の臭いのする男子トイレを後にした。
どうか職務質問されませんように…
ピピピピピ…ピピピピピ…
男子トイレから出て、これからどうするかを思案していると、不意に俺の携帯電話が鳴り始めた。
 ピッ…
「もしもし…」
「勇気、状況を説明しろ」
「…兄貴か?」
こんな物言いは兄貴以外にはありえないのだが、咄嗟にそう答えた。
「そうだ、その娘は何者だ?」
「え…っと、この子は…って、何でわかるんだよ!?」
いくら兄貴が人間離れしているとはいえ、ここまで来ると超能力者の域だ。
「First Brightness Hotelの屋上から見ていた」
そう言われて見上げると『First Brightness Hotel』は確かにここから確認できた。
もっとも、この公園から2kmほど離れているのだが…兄貴なら見えるのかもしれない。
「…なんでそんな所に居るんだよ?」
「あまりにもお前の帰りが遅いのでな、町の全域が見渡せるこの場所から探していた」
…頼むから普通に電話してくれ。
「そんな事よりトイレの中で何が起きた?」
流石の兄貴も透視能力は持ち合わせていないらしい。
しかし…そんなに軽々しく話して良い物なのだろうか?
よし、ごまかそう。
「実はかくかくしかじかでな…」
 …ピシィッ!
凄まじく不吉な音がした。
振り向くと…案の定、男子トイレに必ずある紳士を模した絵の眉間に十円玉が突き刺さっていた。
「すまん、小銭を落とした」
もはや説明不要、兄貴の十八番である指弾であった。
いつも思うのだが、指弾でこの精度は有り得ないのではないだろうか?
「あわわ…」
ほら見ろ、この子も怯えているじゃないか。
しかし兄貴は一応『医者』を名乗っている。(無免だが)
最低でも俺よりはどうするべきかを知っているかもしれない。
「わかったよ、真面目に話すから聞いてくれ」
この場は素直に状況を話す事にした。
「…なるほどな」
随分とあっという間だった気もするが、説明は終わった。
とりあえず俺の知っている事は全て話した筈だ。
「勇気、その娘を家まで連れて来い」
「家に!?…どうして?」
医者に診せるのなら逆方向…そうか、兄貴も自称医者だったな。
「その娘にも親にも世間体があろう、下手に真っ当な医者に診せるのは考え物だ」
「大丈夫なのか?」
「似たような患者なら何度か診た事がある、正気を保っているのなら尚更だ」
兄貴は時折ふらっと行方不明になる。長くて一年、短くて一ヶ月ほどだ。
特に義務教育の期間は居ない時の方が長かった程である。
もっともそれが原因で兄貴はすでに二回留年し、いまだに不死鳥の三年生らしい。
しかし今年の春以降は、行方不明にならずにしっかりと登校しているようだ。
そんな訳なので、今更兄貴にどんな過去があろうと俺は驚かない。
事実、兄貴は本職にすら迫る医療技術や知識を垣間見せる時があるのだ。
「わかった、今から家に向かう」
「うん、俺は先に帰って風呂でも沸かしておこう」
…ピッ
この場所よりも『First Brightness Hotel』の方が遥かに家の遠くに位置しているのだが、
今更その事実にツッコミを入れるのは野暮だろう。
「とりあえず俺の家に行くぞ、いいな?」
「くくく…」
その子は軽く頷いた。なんとなく、さっきよりも笑いが収まってきたような気がする。
俺はその子を背負って帰路についた…
 カランッ カランッ
家に到着した時には、その子の笑いは収まっていた。
「おかえり、風呂はもう沸いているぞ」
なぜか兄貴が居た。
ウチの風呂は沸くまでに約10分かかる、そこから逆算すると兄貴の移動時間は約5分。
『First Brightness Hotel』の屋上から約5分。
正直『First Brightness Hotel』から出るだけで終わってしまうような時間である。
「どうしたんだ?」
「いや…別に」
考えるな、兄貴はもはや別次元の生物なんだ。
心の中で必死にそう言い聞かせる、そうでも考えないと兄貴の弟はやってられない。
「まあいい。その娘を風呂に入れるぞ、話はそれからだ」
確かに、精液の臭いがこびり付いたままでは教育上あまり良くない。
「一人で入れるか?」
その子は再び軽く頷いた。
「そういや、着替えはどうするんだ?」
「その件に関しては心配は無用だ、帰り道で調達しておいた」
と兄貴は言う。
『First Brightness Hotel』の屋上から約5分、しかも途中で服を調達して約5分。
…超人登場、あなたは本当に人間ですか?
「勇気、さっきからどうしたんだ?」
「いや…別に」
『超能力者』『テレポーテーション』『THE WORLD』『サイボーグ』『加速装置』…
そんな単語が頭によぎっていた。
それから一時間以上が過ぎていた。
あの子を風呂に入れて、親父に事情を話して、兄貴が『診察する』と言って部屋に連れ込んで…
現在はその結果待ちである。
「勇気」
「どわあぁっ!」
慌てて振り向くと、いつの間にやら兄貴が背後に立っていた。
「なんだ、兄貴か」
「診察はひとまず終了した」
「それで、結果は?」
「とりあえず大槻陽子の現状は理解できた」
「大槻陽子ってのはあの子の名前か?」
「そうだ、大槻陽子の肉体は感情が昂ると本人の意思に関係なく笑い出す。無論それが恐怖でもな」
「そうか、それが…」
「勇気の見た異常な光景の原因だろう」
なるほど、それならあの光景も説明がつくかもしれない。
「なら、その原因は何なんだ?」
兄貴は少し思案して…話す。
「これは推測でしか無いが…自己防衛本能の一種であると考えるべきだな」
「自己防衛本能…?」
「そうだ、おそらく精神の変調を防ぐために大槻陽子が無意識の内に行った措置だろう」
「そっか…」
まあ無理も無いだろう、普通の人間が不良どもに寄って集って犯されたら、気を変にするかもしれない。
だがそれでは半分しか説明されていない。
「それで、治す方法はあるのか」
俺はある意味最も重要な事を聞いた。
「気の長い方法で良ければな」
それを聞いて少し安心する、あの子はまだ再起不能では無いのだ。
「大槻陽子の肉体に感情の変化を思い出させる事だ」
「…もう少し具体的に言ってくれないか」
「なに、簡単な話だ。当たり前の日常を繰り返してやれば良い」
…本当に簡単な話だな。
思わず不安になってくる。
「本当にそれで治るのか?」
「本人の意思と長い時間があればの話だがな」
「いや…十分だ、ありがとう」
治る、時間をかければ治る。それもこんなに簡単な方法で。
それだけでも俺の気は幾分か軽くなったのを感じた。
「勇気、しばらく俺は出かけるぞ」
そう言いながら兄貴は外出用の外套に身を包んでいた。
「どうしたんだ急に?」
「大槻陽子の身元を調べてくる」
「一人で大丈夫なのか?」
そうゆう調べ物なら人手が多い方が良い筈だ。
「当たり前だろ、俺は医者だぞ」
それとこれとは関係無いと思う。
「正確に言うなら闇医師だ、ツテなら複数存在する」
…今更ながら兄貴の恐ろしさを思い知ったような気がする。
「しばらくの間は大槻陽子の面倒は任せる」
「わかった、任せてくれ」
そう言って兄貴は出て行った。
まあ兄貴の事だ、言ったからには絶対に見つけだすだろう。
俺は俺のやるべき事をやるだけだ。
 ガチャッ…
「よう」
「…あっ」
今は落ち着いたのか、その表情は普通の女の子の物であった。
兄貴が調達してきた服とは、一言で言うならパジャマだった。
黒を基本とし、所々にデフォルメされた猫がプリントされたパジャマで、
まるでこの子のために作られたかのような錯覚さえ覚える出来栄えであった。
その姿は天使のような清楚さと小悪魔のような妖しい魅力を併せ持っている。
矛盾しているようだが…そう感じてしまったのだから仕方が無い。
兄貴…良い趣味してるじゃねえか。
…っと、いかんいかん、今は黒い欲望は捨てなければ。
「陽子ちゃん…だったか?」
陽子ちゃんはコクっと頷いた。
「大丈夫だったか?」
俺の方こそ大丈夫か!?あれで大丈夫な奴が居るものか居ないものか。
「あ…くくく…」
陽子ちゃんの顔に再び笑みがこぼれ始めた。
馬鹿か俺はっ!あんな事を思い出させたらこうなるに決まっているじゃないか。
「すまん、今のは俺が悪かった」
「くくく…あはは…」
徐々に笑い声が大きくなっていく。
それに対して俺にはオロオロする事しかできない。
「ごめ…なさ…」
「無理して喋るなっ!」
もう一度言おう、馬鹿か俺はっ!この状況下で怒鳴ったりしたら…
「あはははっはっはっは…」
こうなるに決まっているじゃないか…
俺は自分の愚かさを嘆きつつ、陽子ちゃんをただひたすらなだめ続けた…
「ごめんなさい…」
「気にするな、あれは俺が悪い」
何とか収まったか…これからは言動に気をつけよう。
「あの…なまえ…」
「名前?」
まあ、名前位なら陽子ちゃんに悪影響は与えないだろう。
「不撓勇気だが…」
「勇気くん…ありがと…」
そう言って陽子ちゃんは少し微笑んだ。
…反則じゃないのか、これは。
パジャマ姿で、しかもこんなにも可愛い女の子にこんな事を言われては反撃不能だ。
やばい…自分でもわかる位に赤面している。
「勇気くん…?」
「寝よう。疲れただろ、疲れたよな」
てかこれ以上は俺の理性が耐え切れん。
「う…うん…」
「そっか、一人で寝れるか?」
「くく…くくく…」
あれ、俺また変な事を言ったか?
「おい、今度はどうしたんだ?」
俺は再び慌ててしまう、自分で言うのもなんだが情けない姿だ。
「こ…わい…」
途切れ途切れだが、何とか聞き取れた。
「一人が怖いのか?」
そう言うと陽子ちゃんは頷いた。
その顔は笑ったままだが、おそらくその心は恐怖に染まっているのだろう。
まあ、あれからまだ何時間も経っていない、一人が怖いのも当然か。
さてどうする…一緒に寝るという選択肢もあるが、それだと俺の理性が持つかどうかは五分五分だ。
俺が陽子ちゃんの傷を深めては元も子も無い。
「ふふっ…くくく…」
だが…このまま放って置く訳にもいかないか。
「なら、一緒に寝るか?」
「えっ…?」
どうやら俺には元から選択肢など無かったらしい。
 ジリリリリリリリリ…
6時になり目覚まし時計が鳴った。
隣では陽子ちゃんがすやすやと眠っているが、俺の方は一睡もしていない。
己の心との闘いが、ここまで辛く苦しく…そして険しい物だとは思いもしなかった。
しかし俺は勝った、俺の心に巣食う黒い欲望に勝ったのだ。
「勇気、起きたのならちょっと来い」
ドアの外から兄貴の声がした。
いつの間にか戻って来ていたらしい。
俺は陽子ちゃんを起こさないように部屋から出た。
 …ガチャンッ
「兄貴、何かわかったのか?」
兄貴は普段通り抑揚の無い声で話し始めた。
「昨日の6時39分、Death Queen総合病院内にて西村理江(にしむら りえ)が死去した」
「…何の話だ?」
なんだか酷く嫌な予感がする…
「大槻陽子の祖母に当たる人物だ」
「………」
なんだよ…それは。
「大槻陽子は西村理江の死に立会い、恐慌状態に陥りそのまま失踪した」
「………」
冗談だろ…
「おそらく町をさまよっている内に例の不良と出会ったのだろう」
「………」
陽子ちゃんに…そんな…
「ちなみに現在西理江の通夜の真っ最中らしい、なんなら見てくるか?」
「………」
何も言い出せなかった。
ただ陽子ちゃんの事を考えていた。
ただひたすら、神を呪っていた。
陽子ちゃんが何をした?ここまで非道な事をしたのか?
なんでまだ年端もいかない女の子をここまで苦しめる必要があるんだ?
「くっくっく…」
…えっ!?
そこには…陽子ちゃんが、居た。
「大槻陽子か、その様子では留守中に妙な事は起こらなかったようだな」
「陽子…ちゃん」
まさか今の話を聞いていたのか?
「おばあ…くくっ…ちゃん…」
まずい、陽子ちゃんは聞いていた。
今の陽子ちゃんは精神が不安定になっている、そんな時にこんな話を聞かせたら…
 ダッ!
「陽子ちゃんっ!」
 ドタドタドタ…
陽子ちゃんは走り去ってしまった…
何をやっている…何をやっているんだ不撓勇気ぃっ!!!
なぜもっと気をつけなかった?
目覚ましの音で目覚めた可能性をなぜ考えなかった!?
なぜこんなに陽子ちゃんから近い場所で話を聞いた?
いくら小声でも…聞こえる可能性はあっただろうがっ!!!
「兄貴」
「俺は葬儀場へ先回りしている、勇気はその他の場所を探せ」
「わかったっ!」
 ドタドタドタ…
一秒でも早く…見つけだすんだ。
俺は自分の知っている場所を手当たりしだいに回った。
不死鳥学園…居ない。
そもそも正門はまだ閉まっている。
鳳翼駅…居ない。
一応交番で尋ねてみたが、大した情報は無かった。
Death Queen総合病院…居ない。
広い敷地内を探すのに時間が掛かってしまった…急がなくては。
市民球場…居ない。
ランニングをしていた番場に呼ばれたような気がしたが、軽く無視しておいた。
居酒屋…居る訳無いだろっ!
馬鹿か俺は。
First Brightness Hotel…
居ないとは限らないが遠すぎる、あの子の足でそこまで行くとは考えにくい。
後は…公園位しか無いじゃないか。
陽子ちゃんがあの場所に居るとは考えにくい。
だが、今の俺には他に考えられない。
俺はそう考えるよりも早く公園に向かって走りだしていた。
頼む…居てくれ…俺は…
「ふふ…ははは…」
…居た。
「あーっはっはっはっは…」
「陽子ちゃん…」
陽子ちゃんは笑っていた、ただひたすら笑っていた。
「あははははは…」
「陽子ちゃんっ!」
陽子ちゃんがこちらに気づいた。
笑いはまだ止まらない。
「陽子ちゃんっ!」
おれは陽子ちゃんに駆け寄る。
俺にはきっと何も出来ない、だけどそんな事は関係無かった。
「泣けない…よ…」
笑っている、確かに陽子ちゃんは笑っている。
「悲し…いよ…」
だけどそれは…なんて悲しい笑顔なんだろう。
「あばあちゃん…」
「陽子ちゃん、陽子ちゃん、陽子ちゃんっ!」
気がつくと俺は陽子ちゃんを抱きしめていた。
「なんで…涙が…」
「大丈夫、大丈夫なんだっ!」
「泣け…ないの…」
俺はきっと…この子を守りたかった。
「あははははは…」
出会いは偶然、こんな事をする義理も無い。
だけど俺は…この子を守りたい。
「ゆっくり…やっていこう」
「くくくくく…」
「いつか取り戻せる…泣く事も、怒る事も…」
「勇気…くん…」
「そしたらさ…腹の底から、思いっきり笑おう…」
「ふふ…ふふふ…」
「大丈夫だ、俺が居る…俺が一緒に居るから…」
「勇気くん…」
公園にはいつまでも陽子ちゃんの笑い声が響いていた…
俺は…この子を守りたい。
強くそう思っていた
あれから三年…
兄貴は家を出て、大槻の病気は完全には治っていない。
だけど大槻は日常の中で少しづつ表情を取り戻していった。
最初に涙を、次に照れを…そこから先はいちいち覚えていない。
いつもいつもきっかけはごく簡単な物だった。
時には大槻も俺も気づかない内に取り戻した表情すらある。
大槻が最後の表情を…『怒り』を取り戻して、今度こそ腹の底から笑える日は…きっと近い筈だ。
129不撓家の食卓 次回予告 ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/02(日) 11:05:52 ID:idAj1Hs4
不撓勇気の最後の安息の場、学校にて巻き起こる大騒動。
不死鳥学園にて二人の少女が火花を散らす。
次回、不撓家の食卓『侵略者英知』にご期待ください。
不撓勇気の真似は危ないから、絶対にしないでね。
130不撓家の食卓 おまけ ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/02(日) 11:06:39 ID:idAj1Hs4
「大槻陽子」
「はい…?」
「力は欲しくないか?」
「えっ…?」
「俺は半年後にこの街を出る、だが逆に言うと半年間は暇でな」
「………」
「お前なら半年でそこいらの不良なら軽く蹴散らせる程に強くなる。俺はそう思っている」
「なぜ…?」
「なに、ただの暇つぶしだ」
「………」
「いつまでも勇気に守ってもらう訳にもいくまい」
「勇気くんに…」
「勇気とて全能では無い、あるいは逆に勇気が窮地に立たされる時が来るかもしれん」
「………」
「どうする、やるのか?やらないのか?」
「…やります」
「そうか…」
「私は…強くなりたいです」
「了解した、半年間みっちりと鍛えてやる」
「はい」
131シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/02(日) 11:12:57 ID:idAj1Hs4
第三話完成…疲れた…
ようやく不撓勇気にかっこいい姿を書けましたし、
最後のキーパーソンである兄貴も出せました。
『妹(わたし)は実兄(あなた)を愛してる』の作者様、完成おめでとうございます。
思わず胸のあたりが熱くなりました。
それと私が居ない間に感想を下さった方々に、この場を借りて感謝の意を示しておきます。
ありがとうございます、あなた方の言葉がシベリア!の元気の源です。
132名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 11:50:58 ID:pfDUIgoS
>>113
待望の、待望の義姉ルートだ!GJ!

>>131
GJ
133名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 12:55:06 ID:0r+kPhjn
姉ちゃんは部屋を出て行ったのに一緒のベッドで寝てる不思議w
134名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 13:00:16 ID:wfEgqzEx
薄々そうじゃないかとはおもっていたけど、陽子はやっぱり過去に
そういう目に遭っていたのね。。
あかん、俺には耐え難いw
135名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 13:04:58 ID:rRDf0QRE
>>106
義姉ルートキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!GJ!それとこっち見るなw

>>131
熱い兄弟だな、これは兄→弟←泥棒猫の伏線?!
136名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 15:26:40 ID:If7b2HfO
ぐっじょぶっ!そして兄貴素敵ーっ!
某潔い先輩といい、修羅場系の兄貴分は強いなぁ
137名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 18:39:21 ID:pRBvVkpU
>113
よかった…エイプリルフールで済まされなくて本当に良かった……っ!
攻め気の姉ちゃんGJ!

>131
勇気かっこよすぎ。
そして兄貴凄すぎ。
ちょっと不撓家に弟子入りしたくなった。
138名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 00:09:22 ID:DS6+Mb7L
はぁ…たまらんのぅ……
139阿修羅:2006/04/03(月) 01:27:31 ID:9JasxG5X
更新停滞してすみません。

>前スレ394様、529様
差し出がましいですが、仮のタイトルを付けて
作品を掲載させていただきました。
次回の投下の際に変えていただければと思います。


>◆M1igzo3EW様
対応遅れてすみません、対応いたしました。
今更ですが、ノベル化お疲れ様でした。
また気が向きましたら是非是非〜

>すべての絵師様
これまでに投下されたCGを掲載させていただいています。
勝手に先走って申し訳ありません。。m(_ _)m


140名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 01:39:12 ID:wDvOzZQD
         ..◇・。..☆*。
   ゜゜・*:..。.。★◎@ ○☆。..:*・゜
 ゜゜・*:..。.。◇@☆*・゜★。。.:*・☆*・。..:*・゜
。..:○★◎☆。∂∇。★◎*・゜゜。◎★
   ◎☆◇☆。*・.。..☆◎。.:☆◇*.....。
  ゜゜・*:..。.*・☆◎。__☆◎*・。..:*・゜ ゜
        \       /
          \    /
     . ∧_∧\ /
      ( ・∀・) ∞ <阿修羅さんケコーンおめでとう!リアルでは修羅場るなよw
      / つ つ△
    〜(   ノ
       しし'
141名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 02:27:05 ID:FAgqe7RJ
>>139
もつかれ
ケコーン相手にサイトばれしたら、問いつめ緊縛プレイしてもらえw
142前394 ◆tVzTTTyvm. :2006/04/03(月) 03:19:26 ID:ppfw3Q6q
阿修羅さんおつかれさまです&タイトルありがとうございました

あと折角タイトル頂いたのに行き詰まってます
申し訳有りませんorz

代わりと言うわけでは在りませんが別のネタが浮かんだので投下します
相変らずタイトル未定です(滅
143 ◆tVzTTTyvm. :2006/04/03(月) 03:22:03 ID:ppfw3Q6q
「祥ちゃん。 好きなの、あなたの事が。 幼馴染とか弟みたいな存在じゃなくって……。 だからお願い、私の恋人になって!」
 私――姫宮 羽津季(ひめみや はづき)は意を決して今まで胸にしまっていた想いを口にした。 
 私と祥ちゃん、そして今ココには居ないが、私の妹の結季は所謂幼馴染で誰よりも気心の知れた仲だ。 ちなみに祥ちゃんは一コ下で結季は二コ下だ。
 私は答えを待った。 自信も勝算も十分にあった。

 自分で言うのもなんだけど私は結構もてる。 学園でのミスコンに選ばれた事だってあるし、今まで貰ったラブレターの数も両手の指じゃ足りないくらい。
 そしてその中にはクラスの女子の人気を集めるような男の子だって居た。 でも私の心の琴線に触れるような男の子は一人も居なかった。
 そう、私にとっての男の子は昔っからずっと祥ちゃんだけだった。

 それでもやっぱり答えを待ってる間は緊張する。 答えを待ちわびていると祥ちゃんは口を開く。
「ゴメン、羽津姉(はづねえ)の気持は嬉しいけど、けどそう言う風には考えられないんだ。 今まで姉弟みたいに過ごしてきて、そんな今更恋人同士だなんて……」
 答えを聞いて愕然とした。 姉弟……。 自分にとってアドバンテージだと思ってた誰よりも親密な距離が仇になるなんて。
「ゴメン。 羽津姉の事は好きだけど、でもそれはあくまでも姉としてであって……」
 私が呆然として立ち尽くしている間も祥ちゃんは話し掛けてきた。 顔には申し訳無さで一杯と言った感じで、今にも泣きそう。 これじゃぁどっちが振られたんだか解かりゃしない。
「い、いいのよ。 謝らなくって。 そうか……姉、か。 うん、じゃぁ今まで通り仲良し姉弟ってことで……ね」
 言いたい事は沢山あるし涙だって溢れそうだった。 でも出来なかった。 今ココでまくしたてても泣いてもどうにもならない。 そんなことしても祥ちゃんを悲しませるだけだから。 もしかしたら泣かせてしまうかもしれない。
 それにココで余計な事を口走って幼馴染と言う関係まで無くすのだけは絶対避けたかったから。

144 ◆tVzTTTyvm. :2006/04/03(月) 03:23:54 ID:ppfw3Q6q
   ・    ・    ・    ・


「祥おにいちゃん。 お姉ちゃんが昨日からなんか様子がおかしいの。 心なしか元気なくて。 ねぇ何か知らない?」
 昨日からお姉ちゃんの様子が何かおかしい。 一見すると普段どおりなんだけど、どこか様子が変。 だから祥おにいちゃんに訊いてみた。
 私――姫宮結季とおねえちゃんの姉妹は、祥おにいちゃんとは幼馴染の間柄。 だから何か知ってるかもと思って。
「羽津姉が? い、いや特に思い当たる節は……」
 そう言った祥おにいちゃんは何かを隠してるみたいだった。

「そう? ねぇ、そう言えば祥おにいちゃんも何だか昨日から……」
 私は気になって祥おにいちゃんの顔を覗き込み真っ直ぐ見つめた。
「ねぇ、本当に何も知らない?」
 何かおかしい。 そう感じたわたしは祥おにいちゃんの顔を真っ直ぐ見据えた。
 暫らくジッと見てると祥おにいちゃんは口ごもり、そして観念したように口を開いた。
「わ、解かった答えるよ。 その、言うから落ち着いて聞いてくれ。 その、実は……羽津姉に告白された」
 其の返事を聞いてわたしはビックリした。 そして気を取り直して訊く。
「な、何て答えた……の?」
「断わった。 恋人同士にはなれないって……」
「な、なんで?! どうして?! 祥おにいちゃん、お姉ちゃんとあんなに仲良しだったじゃない……なのになんで」
 わたしは思わず祥おにいちゃんに喰って掛かった。
「ご、ごめん……」
「そんな言葉が訊きたいんじゃないのよ! ちゃんと答えてよ!」
「……だって、羽津ねえは俺にとってあくまでもその、姉……みたいなものだから。 それに……その、ほかに好きなコがいるから……」
「誰? 私の知っているコ?」
 祥おにいちゃんは黙って頷いた。
「その人に告白は?」
 私が訊くと祥おにいちゃんは首を横に振った。
「しないの? お姉ちゃんの好意を袖にしてまで思ってる相手なんでしょ?」
「ああ、それは勿論……」
「じゃぁ、祥おにいちゃんもその人に告白して。 そうじゃなきゃわたし納得できない」
 その時わたしは怒っていたのかも知れない。 お姉ちゃんを振って傷つけた祥おにいちゃんに対して。 だから祥おにいちゃんだけ告白しないで逃げるなんてことは許せなくて思わず詰め寄ってしまった。

 私に詰め寄られ祥おにいちゃんは静かに口を開く。
「分かったよ……実はその、お前なんだ結季」
「え……?」
 わたしは一瞬何を言われたか分からなかった。 だけど次の瞬間思わず声を上げた。
「こんな時に冗談なんか言わないで!」
「冗談なんかじゃない。 本当に俺はお前の事を……」
「ふざけないでよ! 美人で明るくて優しくて誰からも好かれる人気者のお姉ちゃんじゃなくてわたし?! そんなの信じられるわけ無いじゃない! だってわたしなんか暗くて、地味で、目付き悪くて、意地っ張りで素直じゃなくて……」
 そうだよ、わたしなんかお姉ちゃんに比べて可愛げも無くてつまらない女なんだよ。
 そんなわたしの言葉を遮るように祥おにいちゃんは口を開く。
「ああ……。 おまけに人一倍傷つきやすくて繊細で、その癖自分のことより人のことばっか気に掛けてて。 優しくて思いやりがあって、普段は突っ張ってても本当は笑うととっても可愛いって事もな」
 そう言って祥おにいちゃんはそっと私の肩に手を置いた。
 祥おにいちゃん……。
 そうだった、祥おにいちゃんはいつも分かってくれてた。 他の誰も分ってくれなくても……。 祥おにいちゃんの優しさが嬉しい。 けど……。
 そして祥おにいちゃんは続ける。
「そんなお前が――結季が好きなんだ。 お前は俺のこと、好きか?」
「そ、そんな……それは……わ、わたしは」
 言葉が出てこない。 心臓が早鐘のように脈打ち顔が熱くなってきた。
145 ◆tVzTTTyvm. :2006/04/03(月) 03:24:50 ID:ppfw3Q6q
「お前とキスしたい」
「……ええぇぇっっ?!!!」
 突然の祥おにいちゃんの言葉にわたしは心臓が口から飛び出るかと思った。
「俺は結季が好きだ。 だから今からキスする」
 そう言って祥おにいちゃんは私の肩に置いてた手をそっと頬に沿えて顔を近づけてきた。
「そ、そんなぁちょ、ちょっと祥お兄ちゃん。 ま、待ってよ!」
「待たない。 イヤなら、俺のこと嫌いなら振り払え。 じゃなければ引っぱたいたっていい」
 そう、祥おにいちゃんはわたしの頬に手を添えているだけ。 腕も肩も掴んでいない。 本当に拒絶したければ幾らでも逃げれる。 でも私は動けなかった。 だってわたしは……。
 そして息が届くほどの距離に顔がきたときわたしは目を閉じた。
 やがて祥おにいちゃんの唇がわたしの唇に触れる。 それはほんの一瞬、だけどわたしの唇に甘く柔らかな感触を残すには充分だった。
「応えてくれ。 俺のこと好きか? それとも嫌いか?」
 目を開ければ直ぐ目の前には祥おにいちゃんの顔があった。
「き、嫌い……な訳、ないじゃない。 わ、わたしだって祥おにいちゃんの事ずっと、ずっと大好きだったよ……けど」
 言葉が出ない。 涙が溢れ出す。
「結季……」
「来ないで!!」
 わたしは顔を手で覆い、そして祥おにいちゃんの手を振り払い走り出していた。

「そ、そんな……わたしが祥おにいちゃんと。 そんなの……」
 ずっとずっと好きだった。 だけど絶対表に、口に出すまいと誓っていた。 遠い幼い日、お姉ちゃんもわたしと同じ様に祥おにいちゃんの事を好きなのだと知ったその日から。
 大好きなお姉ちゃん。 わたしが無いものを幾つも持っていて、でもその事を鼻に掛けたりせず誰にでも優しくて。 わたしが苦しい時辛い時には必ず助けてくれる。 そんなお姉ちゃんを誰より尊敬し誇りに思っていた。
 でもわたしはそんなお姉ちゃんに助けられっぱなしで、何もしてあげられない自分の無力さがもどかしかった。 だからせめてお姉ちゃんの邪魔するような事だけはしたくなかった。 そう思い自分の恋心を封印してきたのに……。

「結季!」
 振り向けばそこには祥おにいちゃんがいた。 わたしを追いかけてきてくれたのだろう、肩で息をしている。 そして歩み寄ってくる。
「来ないで! ……出来ないよ。 お姉ちゃんを差し置いてわたしだけ幸せになんて……」
「わ、分かった。 もう言わないよ。 だから、もう……」
 そう言って祥おにいちゃんはわたしの肩を抱いてくれた。 そしてわたしはそのまま泣き崩れてしまった。


「ごめんなさい……」
 ひとしきり祥おにいちゃんの腕の中で泣いたわたしはやっと落ち着きを少し取り戻せた。
「気にするな。 それより俺のほうこそゴメンな」
 そしてしばらくわたしと祥お兄ちゃんは黙りこくっていた。
「ねぇ、祥おにいちゃん……」
「なんだ?」
「お姉ちゃんと……付き合う気は無いの?」
 祥おにいちゃんは黙って頷いた。 そして口を開く。
「なぁ、結季……。 俺が羽津姉と付き合ったとして、それでお前は本当に満足なのか?」
 私は黙って頷く。 そう、お姉ちゃんの幸せこそが何より私にとっても幸せなんだから。
「でも、本当にそれで皆幸せになれるのか? そりゃ俺だって羽津姉のこと嫌いじゃないさ、好きさ。 でも、それはあくまでも姉として好きなんだ。 それにもし付き合ったとして、プライドの高い羽津姉にとってこんな情けかけるみたいな真似、かえって失礼じゃないのか」
「うん……けれど、それでもわたしお姉ちゃんを差し置くような真似……」
「なぁ、お前が羽津姉の幸せを願ってるように、羽津姉だってお前に幸せになって欲しいはずだ。 そうだろ?」
 祥お兄ちゃんの言葉に私は頷く。
「結季。 きっと羽津姉なら分かってくれるさ。 俺たちのこと。 だから……」
「祥おにいちゃん……」
「何時かで良いんだ。 待ってるから。 お前がその気になってくれるまで」

146名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 07:53:13 ID:65EIzn5d
>>139
ケコーンオメです。

>>143
期待大。そういや姉妹で修羅場って初めてかな?
147名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 09:20:39 ID:7RFToCaN
お姉ちゃんに期待大
148名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 10:24:05 ID:2evqtlQC
       ,;r''"~ ̄^'ヽ,
      ./       ;ヽ
      l  _,,,,,,,,_,;;;;i  <いいぞ ベイべー!
      l l''|~___;;、_y__ lミ;l  妹の男をとろうとするのは幼馴染の姉だ!
      ゙l;| | `'",;_,i`'"|;i |  弟を襲うのはよく訓練された実姉だ!
     ,r''i ヽ, '~rーj`c=/   
   ,/  ヽ  ヽ`ー"/:: `ヽ
  /     ゙ヽ   ̄、:::::  ゙l, ホント 姉は修羅だぜ! フゥハハハーハァー
 |;/"⌒ヽ,  \  ヽ:   _l_        ri                   ri
 l l    ヽr‐─ヽ_|_⊂////;`ゞ--―─-r| |                   / |
 ゙l゙l,     l,|`゙゙゙''―ll___l,,l,|,iノ二二二二│`""""""""""""|二;;二二;;二二二i≡二三三l
 | ヽ     ヽ   _|_  _       "l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |二;;二二;;二=''''''''''' ̄ノ
 /"ヽ     'j_/ヽヽ, ̄ ,,,/"''''''''''''⊃r‐l'二二二T ̄ ̄ ̄  [i゙''''''''''''''''"゙゙゙ ̄`"
/  ヽ    ー──''''''""(;;)   `゙,j"  |  | |
149シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/03(月) 10:42:28 ID:Phetb4r/
すいません。
>>125
の下から2行目で『西村理江』と書くべき所に『西理江』と書いてしまいました。
それと
>>127
の最後の行で『強くそう思っていた』の後に『。』を入れる予定だったのですが、
おそらく投稿時のミスで消えてしまいました。
もしまとめサイトの管理人様が見ていただけましたら、
修正をお願いしたいのですが大丈夫ですか?
150『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/03(月) 12:33:33 ID:YNULJ595
ゆっくりと死骸に近付き、刀の柄に両手を掛ける。そのまま体から刀を引き抜いた。固まりきらなかった血がドロリと溢れ出す。
パジャマに刀……イカすね、以外と。まぁ血まみれってのがオツだな。
「あはははは……あと二人……あと二人で私たちだけになりますね……」
刀をぶら下げながらほほ笑む。
「そっかー。俺と志穂を殺してお嬢と二人っきりになるという算段すか。大丈夫、天国の皆には里緒さんがレズだったってこと、トップシークレットにしときます。」
「わかって言ってるんでしょう?残るのは私と晋也さんですよ。」
残念!おいらに変態属性が無いことはこの前証明された。
いくら真剣になれんとはいえ、人殺しをだまって見てるわけにわいかん。
「いやいやいや、志穂を殺されたら困っちまうぜ。ここはソフトにいきまひょ。」
第二次交渉合戦開幕。
目的:殺人阻止。
……重役じゃねえかヨ!
「あの二人がいる限り、私たちが愛し合える時間が減るんですよ?それに、二人っきりでも悲しくありませんからねぇ。」
「いやいやいや、俺、悲しい。」
里緒さんにはわからないだろうけど。
「………それじゃあ、晋也さんのために特別です。今後一切あの二人と親しくしないでください………私とだけナカヨクしてくだサイ。
もし、約束を破ったら、私嫉妬で晋也さんまで殺しちゃうかもしれません。」
変わらない笑顔のまま言う。悲しまない人間は笑うしかないのだろうか。まぁ俺はある意味笑いっぱなしだが。ズルズル
刀を引きずりながらこちらに寄ってくる。おっと、あの刀のリーチは長いぞ。
バックステップして部屋を飛び出て、距離を開ける。
「ま、まぁ……そうっすねぇ。約束はできませんが、努力はしますヨ。」
そんなことなら、代わりに俺を殺せ!だなんて一般的にかっこいい(かっこいいとは思わないが)セリフなんて言えるわけない。死の恐怖は愛より勝るのだ。
ウム、以後教訓としよう。
151『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/03(月) 12:35:38 ID:YNULJ595

「それと……この屋敷からは出られませんよ〜。鍵は私が預かってますから。」
助けを呼ぼうなんざ毛頭考えちゃイナい。電話無いんだし。
「……だからって、夜中に部屋に侵入せんでくださいよ。」
「ん〜。わっかりませーん。」
「不法侵入、イクナイ!」
ガクガク震える足を押さえるように歩き出す。
やっぱチキンだなぁ、俺。
里緒さんかぁ………。
アッチのテクは上手そうだよなぁ……。何でも要望聞いてくれそうだし。まぁ志穂の初々しさもたまらんが。やっぱり手放すのは勿体ないな。
いざ、戦え!我が欲求のために!立てよ!ペニ……
ズキン
「ん〜頭いてぇ……きてるなぁ。」
突然の頭痛。この屋敷における、一時的に無くし物を取り戻せるか、無くし物が増えるかの合図だ。取り戻せる場合はあくまでも一時的にだか。
この屋敷では下手をすると無くし物が増える場合がある。だから時々自分の感情を強く確認する事が必要なのだ。
この頭痛は………
「あぁ…来た来た。」
どうやら取り戻したらしい。思考が一気にまとまる。この際に今後について考えておこう。
里緒さんへの対処だ。言う事聞くフりしておくのが最適だろう。彼女の殺すという言葉は本気だろう。
……そういえば嫉妬で殺すとかいってたな。
嫉妬には二種類ある。喜怒哀楽に分別すれば「怒」と「哀」だ。
前者は人を傷つける嫉妬。後者は自分を傷つける嫉妬。
悲しみを持たない里緒さんにしてみるば、嫉妬からは怒りしか生まれないだろう。
人を傷つけるのは必然だ。実際既に一人消している。
次は志穂への態度だ。ん〜アイツになるべく顔を合わせなけりゃ万事O.K.でしょ。
もし会ったら……冷たくあしらいまひょ。
おろ、いつの間にか真剣さが消えちまったい。早いネ!
ただ最後に、頭の隅に消えかかった小さな『真剣さ』が告げた。
(いざとなったら皆を…せ)、と
「だまらっしゃい!本能君!」
本能とはア・プリオリ。理性というア・ポステリオリで抑えられるだろうか。
「努力、するって言っちゃったからなぁ…」
いろんな意味でだけど。
152名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 15:38:35 ID:LDt7ZXp1
GJ!無くし物が戻って来たり増えたりするのな。
スゲェ面白い設定だなぁ、全然先が読めないや。
続きが楽しみ。完結までガンガッてくだちぃ>作者様。
153名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 15:45:43 ID:LDt7ZXp1
感情が欠けてるって設定を生かして是非
晋也以外の人の視点での話も読んでみたい…。
154名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 16:06:24 ID:2evqtlQC
しかし最初から選択肢一つ間違えただけで即鮮血ルート確定の状況だな…
155名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 16:24:35 ID:wDvOzZQD
GJ!里緒さん可愛いよ!
しかし今までの犯人は当主だと思っていたんだがあっさり消えてしまったな( ´・ω・)
156優柔 第26話  ◆I3oq5KsoMI :2006/04/03(月) 19:19:16 ID:ZB5uYx0u
今日はいろいろあって疲れたな。メス犬を判別して、メス犬に噛み付かれそうになって、メス犬を言い負かして。
あの犬には愛なんかないから、私が勝つのは当然だけどね。
そんなことより、中間試験で名前が載ったの、ゆう君見てくれたかな?
後でゆう君に褒めてもらおっと。
とりあえず掃除しなきゃ。掃除が終わったらゆう君とゆっくり・・・ね。

隣の教室を覗いた。
確かゆう君は一番奥の窓側の席・・・いないな。
もうとっくに掃除は終わってるのに。待ってようかな。

10分経ったけどゆう君は姿を見せなかった。
おかしいなあ・・・鞄はあるのに。・・・探しにいこう。

私は思いつくところを全て回った。
職員室、図書室、他の教室、生活指導室、進路指導室、保健室・・・男子トイレも調べたけどいない。
どこ行ったんだろう。まだ探してないところがあるのかな?

特別棟の5階、つまり屋上へ続くドアの前に来た。
立ち入り禁止の貼り紙が貼ってあるから入れないと思うけど、他の場所は全部調べたし。
でもまさかね・・・あれ、開くんだここ。私は恐る恐る開けた。
そこには重なり合う男女がいた。
「くっ・・・あっ、はぁっ・・・やっ・・・激しすぎるっ・・・んっ!」
・・・嘘でしょ?ゆう君・・・なんでメス犬としてるの?
その光景、あの女の喘ぎ声・・・ゆう君が・・・他の女と?
分かってはいたけど・・・想像するのと実際に見るのとじゃ大違いだね。
あの女・・・口じゃ勝てないからって身体を使ってゆう君を!
ゆう君だってそう・・・私がいるっていうのにあんなに気持ち良さそうに腰を振って!
今まで我慢してたけど、私がゆう君に悪いことをしたから大目に見てたけど、そろそろ限界。
ああ、久しぶりだなこの感じ。胸の辺りがボワッて、黒くて熱い煙が噴き出すみたいになるの。
・・・いい加減にしてほしいなあ。
ゆう君は私のものなのに。
あのメス犬もゆう君も!絶対絶対許さないんだから!!!
「いやぁ・・・もう・・・イクッ、イッちゃう・・・」
「僕もそろそろ・・・今度は一緒にイこうね先輩?」
ゆう君はさらに激しく腰を振った。淫猥な結合音が私のいる所まで聞こえてくる。
「んっ、くっ、あぁっ、やっ、あっ、だめっ・・・もうっ、んっ・・・んんっーーーー!!!!」
あの女の悲鳴と共に、ゆう君はペニスを引き抜いた。
そして直後、あの女の身体はゆう君の放ったザーメンでドロドロになった。
うわっ、スゴい量・・・そんなに気持ち良かったの?
私以外の女で快感を得たなんて・・・ゆう君にはいずれお仕置きしなくちゃ。
でもね、一つだけ良かったところがあるよ。それはね、中出ししなかったところ。
ゆう君、前に言ってたもんね。
「中に出すのは子供を作ってもいいって思える人にだけだよ」って。つまり私のことだけどね。
だからもし中に出してたら2人まとめて虐殺してたかも。ううん、冗談じゃなくて真剣に。
とりあえず、これは浮気だね。本気じゃなくて浮気。
だからゆう君は軽めのお仕置きで許してあげる。
でもあの女は・・・きつめにしなきゃ。
具体的には何も考えてないけど、自分の行動がどれだけ愚かなことだか痛感できるような、ね。


157優柔 第26話  ◆I3oq5KsoMI :2006/04/03(月) 19:20:47 ID:ZB5uYx0u
僕はそれから、毎日のように先輩とセックスしました。
以前使ったことのある旧用務員室には、一部の女子の間に受け継がれる伝統があるのです。
それは、「この部屋は、男女が情事に耽る場合においてのみ使用して良い」というものです。
つまり、ラブホ代わりに使っていいということです。
無料で利用できるこの空間は他のカップルにも人気があるらしく、先輩と初めてした時も本来ならここでするつもりが、
使用中だったために止むなく・・・ということでした。
なんだ先輩、最初からヤラれる気満々だったんですか。
そういうわけで僕達は、時間の許す限りここでセックスしました。
他の人が使用している場合には屋上で、雨で屋上が使えない時は特別棟のトイレでしました。
僕がしたいというと先輩は文句一つ言わずに受け入れてくれます。
最初はされるがままの先輩でしたが、今では人並み以上のテクニックで僕を悦ばせてくれます。
椿ちゃんほどではありませんがフェラチオもなかなか良く、僕は先輩の可愛い口の中で何回も射精しました。
そして先輩は美味しそうに飲んでくれるのでした。

椿ちゃんとも仲良くさせてもらってます。一緒に遊びに行ったりご飯を食べたりして、とても楽しいです。
昔の椿ちゃんとのことが夢のように思われます。
先輩は、僕が椿ちゃんと遊んでいることを知っています。
椿ちゃんと一緒に登下校しているところを鉢合わせになったこともありました。
でも先輩は、何も言うことはありませんでした。
「嫌われたくないから・・・私を捨てなければそれでいいから」と言うだけです。
とうとう僕は手に入れたんです。便利な性欲処理機と、気の許せる女友達を。

「ねえ、ゆう君。そろそろ元通りにならない?」
駅前のあのカフェでお茶をしていると、椿ちゃんは神妙な面持ちで聞いてきました。
「えっ・・・」
「私ね・・・もう寂しいんだよ。こうやって一緒にいてくれるのは嬉しいんだけど、それって友達としてじゃない?私、早くゆう君と恋人に戻りたい・・・」
・・・やっぱり、椿ちゃんは僕のことを・・・
「私、知ってるんだよ・・・ゆう君が毎日のように杉山先輩とエッチしてるの・・・私、我慢してるんだよ」
いつの間にか椿ちゃんの目には涙が溜まっていました。
「私、もう一ケ月ぐらいゆう君と愛し合ってないの・・・それなのにゆう君はこうやって何事もないように・・・ヒドイよ」
椿ちゃんの頬には涙が走っています。僕は焦りました。これでは前と一緒です。
「ゆう君・・・好きだよ・・・早く私のところへ・・・戻ってきてよ・・・私、責めないから・・・ちゃんと戻って来てくれたら・・・杉山先輩のことも・・・水に流してあげる・・・から」
僕は阿呆です。
椿ちゃんはずっと僕の愚行を我慢して、僕に接してくれていたのです。
椿ちゃんは僕のことが未だに好きで、苦しみを胸の内に押さえ込んでいたのです。それなのに僕ときたら・・・

僕がクズであることは分かっています。でも僕は、修復不可能な、取り返しのつかないクズではなかったみたいです。
だって今、泣いている椿ちゃんの前で、自責の念を抱くことができているのだから。
なんて悪いことをしたんでしょうか、椿ちゃんにも・・・先輩にも。
こうやって自分の愚行を悔いるなんて、僕はとんだヘタレです。
今更改心しても僕がクズであることに変わりはありません。
いえ・・・自分の行動を省みることで許してもらおうなんて思っているだけかもしれません。
こんなに簡単に改心しようなんて、とんでもなく自分勝手です。
何自分だけ楽になろうとしているのでしょうか。
今更遅いんです。
最低のゴミクズ野郎です、僕は。

でもそんなやつを好きだと言ってくれる人が2人もいるのです。
僕は決断しなければいけません。これからどうしていかなければならないのかを。

僕は・・・

A.即断することができませんでした。
B.椿ちゃんとやり直すことにしました。
158 ◆I3oq5KsoMI :2006/04/03(月) 19:22:26 ID:ZB5uYx0u
次回、ラストです。
すみませんが、分岐させてもらいます。

管理人様へ
ケコーンおめでとうございます。
159名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 19:57:09 ID:LxFI1ZjI
>>158
GJ。……ゆう君駄目人間過ぎる。
160名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 20:45:39 ID:HlBgflMj
Bでお願いします
161名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 21:09:01 ID:Vl5anaAa
Bが個人的にはいいんだが
今までのゆう君のクズさ加減からいくとAで間違いないんだよね
162名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 21:16:43 ID:YGUT5lWL
どちらを選んでも死にendな悪寒
(((゜д゜;)))
163名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 21:26:41 ID:yappEd6f
>>162
殺される相手が違うんだね。
164名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 21:28:49 ID:LDt7ZXp1
何か俺らデッドエンドがデフォルトになってるよな。
新しい作品が投下される都度、誰が誰に刺されるか
wktkしてしまう。
165名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 21:37:21 ID:u4j2bzgy
あえて刺されない方向でヤってほしい
166名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 21:38:49 ID:tM8I2n37
いやデッドエンドでなくても大歓迎なのだが、
ゆう君だけはどのように殺されるのかをwktkしてる俺がいるw
167名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 21:41:00 ID:Guqkju6c
ゆう君まだ死なないのかよ
168名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 21:41:58 ID:Guqkju6c
AもBも両方クズだな
169名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 21:42:25 ID:cVN3ybxf
普通に椿ちゃんとやり直した方が幸せじゃないのか? まだ、このスレやエロゲーの狂ったヒロインに比べると
まだまだ優しすぎるからな。少年エースに連載されている「未来日記」のヒロインと比べるとこっちの方が
断然にいいよ。
椿ちゃんの嫉妬なんかまだ女の子の可愛い嫉妬で済ませられるし。女の子経験のないヘタレ主人公にとっては
奇抜な行為に見えても、一般じゃあこれが普通ですよねw
170名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 23:08:28 ID:PRvL9aNC
わぁ、ゆう君、クズだね!(褒め言葉
まぁ、ここはAだよね。優柔じゃなかったら、ゆう君じゃないよね
171名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 23:21:44 ID:k9d4jKzV
ゆう君のためでなく椿ちゃんのためにBがいいな。
172名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 00:21:40 ID:Daz3ISQU
Aで椿に刺されて欲しい自分は少数派なのか!?
173阿修羅:2006/04/04(火) 00:24:51 ID:aqK4dZZo
サイトの隅にこそっと書いたことにレスがつくとは・・・
レスを下さった方、ありがとうです。
今後もこそこそと更新していく所存です。

>◆tVzTTTyvm.様
新作投下 乙です!
恥ずかしながらまたしても仮のタイトルを付けて掲載させていただいています。。

そしてこそっとA、Bの両方のルートを掲載できる状態にしているオレガイル・・・
最終話たのしみにしてます


174名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 00:47:54 ID:VfXy39Nd
だから言ったろう、ここはラブコメヤキモチもありなんだよ!
ゆう君はデッドがいいけど。
175名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 00:50:17 ID:dTrEusDH
Cの自殺するで

が相応しいんだろうけどここはBが見たい
176名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 03:50:03 ID:aYjjYhPr
改心の結果椿ちゃんとやり直す選択をしたものの、生涯精神的な監禁状態
に置かれ、過去の自身の堕落を呪い、苦しみ続けるのであった・・・

もとくんには、これぐらいがお似合いだヽ(`Д´) ノ
177名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 09:41:38 ID:honjNVal
>>176
もとくんは違うSSの主人公です
つか、こんな屑ともとくんを一緒にすんな!!
178名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 10:21:31 ID:xAC+qT9d
とうとうクロスオーバーまで起きるようになったのかこのスレ。w
 ジャーン ジャーン
「伏兵かっ!?」
 ガバァッ
「…あっ」
「………」
「………」
思い出した。
確か英知の夜這いを警戒して、昨日の夜に対侵入者用の仕掛けを施したんだった。
具体的にはドアと窓に軽い力で切れる糸を張り、振り子の原理を応用して糸が切れると銅鑼が鳴るようにしたのだ。
ちなみに作ったのは俺じゃない、兄貴だ…念のため。
「おはよう、英知」
満面の笑みで挨拶をしてやる。
「お…おはようございます、兄上」
英知は見ていて面白い位に困惑していた。
まあなんだ、これ以上英知の好きにさせておくと兄としての威厳が保てないからな。
英知は昨日と違いちゃんと身を隠す物を着ていた。
だがな英知…ネグリジェは邪道だ。
俺は内心、英知のパジャマ姿を期待していたのだが…正直に言って少しガッカリした。
そんな事よりも時間は…5時6分か。まだ起きるのには少し早いが、親父はもう開店準備を始めている筈だ。
「さて、行くかな」
「兄上、どちらへ?」
「親父の手伝いだ、昨日は悪い事しちまったからな」
昨日の騒動は俺の責任では無いとはいえ、親父に迷惑を掛けてしまった。
できるだけ早めに罪滅ぼしはしておくべきだろう。
 ガチャッ
「あっ…待ってください、私も行きます」
そう言って英知が慌てて付いて来る。
やれやれ…どうしてそこまで俺にこだわるのかね…
「じゃあ親父、行ってくるぞ」
「紫電さん、行ってきます」
「父上、行ってまいります」
「気をつけて行ってこい」
 カランッ カランッ
「………」
「………」
「………」
何故か息苦しい上に、周りから視線を感じる。
まあ、原因など初めからわかってはいるのだが…
「勇気君、今日のお弁当も一生懸命作ったよ」
家を出てからずっと大槻と英知が俺と腕を組んでいるのだ。
それが原因で周りから限りなく冷ややかな視線を感じる。
天野が居ないのがせめてもの幸いか…いや、これだけの人数に目撃されては天野に伝わるのも時間の問題だろう。
「兄上、私学校に行くのは初めてですので、よろしければ色々と教えてください」
お前今までどんな生活してきたんだ?
てかそれで大丈夫なのか?授業とか、テストとか。
「英知ちゃん、いい年してお兄ちゃんにそんなにくっついて恥ずかしくないのかな?」
最初に仕掛けたのは大槻だった。
「久しぶりに出会った兄妹にすら嫉妬するなんて…小さい人間ですね」
おっと英知のカウンターパンチだ、大槻怯んだか!?
「ちょっと、あなたの方が年下でしょうっ!」
大槻はあくまで粘る、しかしそれはおそらく地雷だ。
「人間性の問題です」
「ぐっ…」
地雷を踏んだ大槻は黙り込んでしまった。
ここで正門通過、教室まで後少しだ。
…できれば早く終わってほしいのだが、両手に荷物を抱えているせいで歩く速度は遅い。
「勇気様、私も今朝料理に挑戦してみたのですが、後で試食して頂けませんか?」
今度は英知が仕掛ける、大槻はどう出るか…
「勇気君は私のお弁当があるから、そんなの食べられないよね?」
その台詞は一見疑問形に聞こえるが、実際には断定形である。
「はい、貴方にそう言われると思いまして、量を少し減らしておきました」
そう言って英知が取り出した包みは、確かに大槻の弁当よりも小さい。
なるほど、これなら両方とも食べても問題は無いだろう。
「違うよ、味の問題だよ」
大槻はここぞとばかりに反撃する。
たぶんさっきの意向返しのつもりなんだろう。
「それを決めるのは勇気様です」
うん、今回ばかりは英知に軍配が上がったようだ。
などと言っているとD組の表札が見えてきた。
どうも大槻も英知も俺のクラスまで付いて来るつもりらしい。
いや、できれば勘弁してほしいのだが…
「なあ陽子、それに英知…」
 ギロッ!!
両側から睨まれました。
二人とも『こいつが引くまで引きませんっ!』とでも言いたげだ。
せめて天野が居ませんように…
 ガララララッ
…居るし。
「あっ…!」
天野がこちらに気づいた。
天野、普段のカンの良さで察してくれ…いや、無理か。
 ガララララッ
天野はなるべく自然を装って、しかし限りなく不自然な動作で足早に去って行った。
なんてこった…間違い無く誤解が深まった。
「勇気君、聞いてるの?」「勇気様、聞いていますか?」
…勘弁してくれ、俺は今それどころじゃないんだ。
「てか英知、いつの間に俺への呼び方を変えたんだ?」
と、英知に小声で聞いた。
「はい、兄妹で婚約者であると知られれば兄上の評判が悪くなりますので」
英知も小声で返す。
「勇気君、何をコソコソと話してるのかな?」
やばい、今の会話で大槻の機嫌が悪くなったようだ。
…と、ここで番場を発見した。
やむをえん、気は進まないがここは番場に助けを求めよう。
「バ・ン・バ・タ・ス・ケ・テ・ク・レ」
俺は口パクで番場に伝えようとする。
頼む、通じてくれ…
すると番場が何かを口パクで伝えてきた。
なになに…
「オ・レ・ウ・マ・ニ・ケ・ラ・レ・タ・ク・ナ・イ」
…薄情者。
周りを見渡しても野次馬に徹している奴と他人のフリをしている奴しか居ない。
どうやら俺は、孤立無援らしい。
俺はせめて早くHRが始まるようにと願っていた。
182名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 12:56:38 ID:s2D9XRIx
もとくんは最後まで流されっぱなし
ゆう君は下半身に正直
士郎くんはうだうだ
妹は実兄を〜の兄はダブル孕ませ(&近親相姦)
小さな恋の物語の誠君は小学校上がる前から重婚
(以下略)

いいぞ ベイべー!
駄目男を振るのは女だ!
駄目男を必死で自分のものにしようとするのはよく訓練された修羅場系の女だ!
ホント 修羅場スレは駄目男の巣窟だぜ! フゥハハハーハァー
(AA略)
「勇気様」
「な…なんだ?」
「私はそろそろ担任の先生の下へ行かねばなりません」
大槻は露骨に嬉しそうな、英知は凄く残念そうな顔をする。
「そっか、残念だね」
大槻、その顔でその台詞はありえんぞ。
「はい、では勇気様、また後でお会いしましょう」
「おう、じゃあな」
「バイバーイ」
英知は去って行った。
ようやく静に過ごせそうだ。
 ガララララッ
「…あ、それはそうとして」
…と、英知はドアから顔だけ出して話しかけてきた。
「無理してそんな性格の悪い女と付き合うフリをする必要はありませんよ」
 ガララララッ
最後にとんでもない事をのたまって行きやがった。
「………」
「………」
「…大槻、バレてるぞ」
「…陽子」
「…え?」
「よ・う・こ!」
大槻はまだ続ける気らしい。
「…陽子、バレてるぞ」
「うーん、ちょっと想定外だったかな…」
どうやら英知はそんなに甘い相手では無いらしい。
「さて、HRを始める前に今日は転校生の紹介をする」
 …ゾクッ
なんか物凄く嫌な予感がする…
まさかな…いくら兄貴でも俺と同い年にする訳無いよな…
 ガララララッ
クラスの中から僅かに感嘆の声が上がる。
「皆さん初めまして、不撓英知と申します」
兄貴…次に会ったら覚えてろよ…
英知はよりにもよって俺と同じクラスに転入してきた。
戸籍を偽造した(と思われる)兄貴も随分と思い切った事をするものだ。
…無論、悪い意味で。
「そこにおります不撓勇気様の親戚で、婚約者でもあります」
 ざわ… ざわ…
そうですか、今回はそんな設定ですか…もうどうでも良いよコンチクショウっ!
「勇気様共々どうかよろしくお願いいたします」
そう言ってペコリと頭を下げる。
天野は…駄目だ、ここからじゃ表情を伺えない。
「うむ、それでは一番後ろの席が空いているのでそこに座ってくれ」
「はい」
英知はすれ違う時に軽くウインクをして後ろの席へと移って行った。
なんとなくだが理解した、大槻の言う通り英知は本気で俺をモノにしようとしている。
…だが俺達は実の兄妹だ、英知がなぜ兄である俺にこだわるのだろうか?
「よし、それでは朝の連絡を伝えるぞ」
…そんな声が聞こえたような気がした。
だが俺はふと浮かんできた疑問の答えを探すことに集中する。
俺と英知は昨日初めて会った筈だ、英知が俺に惚れる機会など在ったのか?
あるいは…惚れた訳ではないが、何らかの理由で俺を必要としているのか?
もしそうだとするのならその理由は何だ?
考え始めると疑問は次々と湧いてくる。
15年前に英知とお袋が家を出て行った理由は何だ?
そしてなぜこの時期に戻ってきたんだ?
英知が戻ってきて、お袋が戻ってこない理由は何だ?
昨日見た、英知の腕から伸びる茨は何だ?
そもそも英知は…何者なんだ?
今は答えを導き出すには情報が少なすぎた。
 キ〜ン コ〜ン カ〜ン コ〜ン
どうやら一時間目が終了したらしい。
結局あれからずっと考え事をしていたのだが、全ての疑問に辻褄が合う仮説は立てられなかった。
とにかく情報が少ない、これでは仮説を立てても検証は不可能だ。
まずは英知から何か情報を聞き出す事だな。
ちらりと英知の居る方向を見ると、転入生に付き物の質問責めに遭っていた。
今は何も聞けそうにないか…なら先に天野に今の状況を説明して、可能なら協力を依頼しよう。
占星術がどこまで有効な物なのかは知らないが、あるいは真実に到達する決定打となるかもしれない。
まあ、占星術以前に天野の誤解を解きたいってのもあるがな。
幸いな事に、天野はまだ席に座っている。
今すぐに行けば話し位はできるだろう。
…と、ここで気づいたが見知らぬ男子生徒が目の前に立っていた。
しかも見るからに不機嫌そうな顔だ。
「おい、不撓っ!」
 ギロッ!
秘技…不機嫌オーラ。
「………」
「………」
「…ごめんなさい」
悪いな、今は時間が惜しいんだ。
さて、天野は…もう居ねえし。
 ガララララッ
俺の眼に映ったのは教室を出る天野の後ろ姿だけであった。
もしかして俺は避けられてるのか…
 ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
「ひいぃっ…」
…いかん、無意識の内に不機嫌オーラMAXパワーを放出していたようだ。
この技は時折暴発する時がある、簡単な技だが扱いが難しいのだ。
 ガララララッ
「勇気君、居る?」
教室に入ってきたのは、大槻だった。
「おう、居るぞ」
慌てて不機嫌オーラを収めて返事をする。
「勇気君、さっきD組に転校生が来たって聞いたんだけど、もしかして…」
噂が広まるのって意外と早い物だな。
「そのもしかしてだ…」
「………」
「………」
まあ、そりゃ固まるよな…
「じゃあ…あそこの人だかりって…」
「…英知だ」
「………」
「………」
再び大槻は固まった。
今は比較的静かだが、あの質問責めが落ち着いた時に何が起こるのかは…正直、想像もつかなかった。
 キ〜ン コ〜ン カ〜ン コ〜ン
結局、午前中に大きな動きは無かった。
天野は捕まえられないし、大槻は休み時間になる度に様子を見に来るし、
唯一変化があった所は、英知への質問責めがもうすぐ収まりそうな所のみだ。
たぶん、五時間目の終了時に来るな…
「すいません、ちょっといいですか…」
英知が野次馬を掻き分けて出て来た。
…前言撤回、もう来ました。
「兄上…」
英知がそっと耳打ちをしてくる。
吐息が当たっているのだが…
「な…なんだ…?」
もはや何が起こっても不思議は無い、俺は万全の覚悟をして聞き返した。
「…父上の手伝いに行ってまいります」
…え?
そう言うと英知はスタスタと教室を去って行った。
…俺の覚悟は何だったんだ?
「勇気くーん…」
…再び前言撤回、俺は今度こそ死ぬかもしれない。
振り向くと大槻スマイルの悪鬼が見えた。
「あんなに近づいてなーにやってたのかなー…」
やった三日連続、新記録達成だ。
などと、思わず現実逃避がしたくなるような光景であった。
「どーして実の妹とあんな事するのかなー…」
…ようやく理解したが、先の英知の行動はこれを狙った物だったらしい。
「一応言っておくが…誤解だ」
まあ、これで通じる大槻じゃあないがな…
「殺!!!」
ほら来た…
「生命の息吹よっ!」
 ビシィッ
「また、あなたなの…」
昨日と同様に茨によって俺への攻撃は阻止されていた。
大槻も少しは冷静さを取り戻したらしい。
「勇気様、このような性格の悪い女とは手を切るべきです」
「そ…そんなのあなたに関係無いでしょうっ!」
まずいな…大槻は再び冷静さを失ってきた。
「些細なきっかけですぐに暴力を振るい、その被害者は常に勇気様です」
「…ぐっ」
大槻の言葉が詰まる、思い当たる節があるのなら自重してくれ…
「貴方など勇気様にとっては、百害はあっても一利もありませんっ!」
「そ…そんなの…」
再び大槻の顔が歪む…大槻が本気で怒った証、大槻スマイルに変わった。
「関係ないよっ!」
 ドンッ
大槻の蹴りが英知を捕らえる、だが左手から伸びた茨がそれを防御する。
だがその衝撃で二人の距離は離れ、大槻を縛る茨が外れる。
「ここではやりにくいですね…ついて来なさいっ!」
そう言うが早いか、英知は窓から飛び降りた。
「待てっ!」
大槻もベアークローを装着しつつ英知を追う。
二人の戦いの舞台は校庭へと移った。
「そもそも…あなたには関係無いでしょうっ!」
英知が茨を伸ばし、大槻はそれを断ち切る。
「関係ありますっ!」
大槻は間合いを詰めようとし、英知は逆に離そうとする。
「私はあなたよりも、勇気君を知っているっ!」
双方に決定打は無い、今の所は二人は牽制に徹している。
「そんな物はただの思い込みです」
だがここで大槻は障害物にぶつかり、英知との距離が大きく離れる。
「まだまだぁっ!」
殺到する複数の茨、だが大槻は一瞬たりとも怯まない。
逆に間合いを離し、今度はベアークローを中心にキリモミ回転をしながら英知に突っ込む。
「…くうぅっ」
ベアークローが英知を掠めた。英知を守る防壁となっていた茨が一気に弾け飛ぶ。
「だいたい、あなたは勇気君の何なの?」
既に二人の制服は血に染まり、多量の土埃が付着している。
それでも二人は戦いを止めない。
「私は、勇気様の婚約者ですっ!」
大槻は攻勢を緩めない、間合いを詰め畳み掛ける。
「そんなの…そんな事を誰が決めたのっ!」
だが英知も冷静にその攻撃に対処する。
「私と勇気様は…産まれた瞬間から婚約者なのです」
「…えっ!?」
 ガシィッ!
大槻が動揺した一瞬に、英知が放った茨が大槻の首に巻き付く…
「しまっ…!」
「終わりです…大車輪投げっ!」
次の瞬間には大槻は、まるでハンマー投げの如く宙を舞っていた。
…まずい、流石にアレは洒落にならん。
そう考えるよりも早く俺は窓から飛び出していた。
二年D組は地上三階、俺は迫ってくる大地を強制的に意識から外し、ただ大槻の軌道を計算する。
次の瞬間に大槻と茨が分離した。
着地点は…あそこかあぁっ!!!
 ドンッ!
落下中に校舎を全力で蹴り俺の軌道を変える、目指すは大槻の落下予想地点だ。
壁が砕ける感触がしたが気にはしてられない。
大槻はかなりの速度で刻一刻と地面へと近づいて行く。
間に合うか…いや、間に合えっ!
 ドガアァァッッ…
…間に合った。
ギリギリだったが、俺の体をクッション代わりにした。
とりあえず多少はダメージを軽減できた筈だ。
「陽子、動けるか?」
「ごめん…ちょっと無理っぽい…」
そう言う大槻の顔は笑っていた。
だが…これはただの痩せ我慢だと俺は知っている。
「そっか…なら、ゆっくり休んでろ」
「何故そこまで、その女をかばうのですか…?」
「英知…」
もう大槻に戦う余力は残っていない。
もし英知がまだ大槻と戦う気なら、俺は大槻を守らねばなるまい。
「その女は勇気様を傷つける、何故それがわからないのですか?」
体の状態をチェックする…大丈夫、大した傷は無い。
「それは違うな、英知」
大槻と英知の戦力はほぼ互角だった。
それこそ大槻が動揺していなければ勝負がわからなかった程に。
「違う…?」
さらに英知の間合いや攻撃方法は先ほど測っておいた。
「陽子が暴れるのはな、俺達にとってはスキンシップみたいな物なんだよ」
「スキンシップ…?」
それならば、英知にこれ以上の切り札さえ無ければ…勝てる。
「そうだ、だから俺は何度陽子が暴れても、嫌いになったりはしないよ」
「勇気君…」
腕の中で大槻が潤んだ眼でこちらを見つめている。
あれ?そういえば俺、今なんか言ったか?
「…それでも私は、貴方を許せません…」
そう言って英知は校内に戻って行った。
…どうやら俺が考え事をしていた間に事態が急変したらしい。
「………」
「…勇気君、どうしたの?」
…駄目だ、全然覚えてない。
まあ、良しとするか。
そう頭を切り替えると俺は大槻を保健室へ運ぶ事にした。
「勇気、お前に言っておかねばならない事がある」
「どうしたんだ、急に?」
「大槻陽子の事だ」
「大槻の…?」
「悩みを抱えている人間は大抵塞ぎ込む物だ」
「…それで?」
「だが人間とは本来行動する生物、それでは肉体的にも精神的にも良い結果を生まないだろう」
「………」
「俺は今まで修行と称して大槻陽子の体を動かさせていたが、それも今日までだ」
「最近大槻の挙動が変わってきたのはそのせいか…」
「ああ、あれは俺が思っていたよりも意思が強い」
「…それで、俺はどうすれば良い?」
「多くは望まん、ただ感情を押さえ込ませる事は避けろ」
「…すまん、もう少しわかり易く言ってくれ」
「簡単な話だ。怒りたい時に怒らせ、悲しみたい時に悲しませろ」
「俺にできるかな…」
「もう一度言う、多くは望まん。大槻陽子の経過は今の所は順調だからな」
「わかった、出来るだけやってみるよ」

 キ〜ン コ〜ン カ〜ン コ〜ン
 ハッ!
どうやらまた眠っていたようだ。
周りを見渡すと生徒の半分以上が眠っていた。
…あ、良く見たら天野と英知も眠ってる。
伊藤よ…俺が言うのもなんだが、もう少し生徒を眠らせない努力をしたらどうだ?
まあ今週の日本史の授業はこれで最後だ、今週中はもう伊藤とは会わないだろう。
「起立、礼」
HRが終わった、ここからは放課後だ。
 ガララララッ
HR中に帰る準備を済ませていたのだろうか、天野は僅か数秒で帰って行った。
避けられてるのか、それとも単に用事が有るのか…まあ、たぶん前者だろうな。
昼休みの騒動の後で旧校舎の屋上に立ち寄ったのだが、天野はそこには居なかった。
結局、今日の俺は天野と一言たりとも喋っちゃいない。
 ぐううぅぅ…
…そういえば、まだ弁当を食べてなかったな。
俺は大槻の作った物と英知が作った物の両方を机の上に広げた。
大槻弁当は…サイコロステーキ・白米・ほうれん草の胡麻和え・卵焼き。
英知弁当は…唐揚げ・エビフライ・一口カツ。
英知よ…味はともかく栄養バランスで完敗しているぞ。
まあいい、とりあえず腹が膨れれば…
「あーん…」
「………」
「あーん…」
「英知、いつから居た?」
「最初からですが何か?」
隣には箸で唐揚げを掴んだ英知が座って居た。
「流石に恥ずかしいのだが…」
「はい、あーん…」
問答無用ですか、そーですか。
やむをえず俺は差し出された唐揚げを頬張る。
「お味はどうですか?」
「………」
「………」
ゆっくりと咀嚼する、味は…
「思ってたよりも美味いな…」
「本当ですか!?」
「おう」
まあなんだ、英知には悪いが俺はもっと酷い味を想像していた。
それこそ昔の大槻のような…やめよう、思い出しちゃ駄目だ。
「あーん…」
…今度は後ろから似たような台詞が聞こえる。
まあ、なんとなく来るとは思っていたが…
「陽子、いつから居た」
「勇気君が自称婚約者に迫られてた所からかな」
お前タイミング悪すぎだ…薄々予測してたが。
「あーん…」
「一応言っておくが、かなり恥ずかしい」
「あーん…」
やっぱり問答無用ですか。
「勇気様、こっちの水は甘いですよ」
などと言いながら英知も再び参戦してきた。
俺は蛍じゃ無いのだがな…
「「あーん…」」
結局この状況は、俺が弁当を食べつくすまで続いた。
心の中で量を減らしてくれた英知に少し感謝しておいた。
「勇気様、どちらがお口に合いましたか?」
帰り道、やっぱり俺は両側を固められながら帰宅していた。
「弁当の話か?」
「はい、ぜひとも今後の参考にさせてください」
「そうだな…」
どう答えれば一番被害が少ないか…
「勇気君、私とこの子じゃ年季が違うよね」
「勇気様、遠慮は要りませんよ。現実を知らない女をへこませてやってください。」
…やめた、やっぱり俺に謀略は合わん。
ここは正直に思ったまま話す事にしよう。
「陽子の方が美味かったな」
「………!!!」
「本当!?だよね、一朝一夕じゃ真似できないよね」
あ…いかん、英知が落ち込んでる。
今度は英知のフォローをせねばなるまい。
「たしかに陽子の言う通りだ…」
「どよね、やっぱり勇気君は…」
「悪い、できれば最後まで聞いてほしい」
「え!?…うん」
「英知、料理の勉強はいつ頃から始めたんだ」
「…先月からです」
「なら上出来だ。三年前の陽子の料理は、ホウ酸団子の代わりに使っていたからな」
あの時は実際にゴキブリがバタバタと死んでたな…
「本当ですか…?」
「そ…そうだったんだ…」
「料理は愛情、そして経験。そう親父も言っていたぞ」
「はい、精進いたします」
「ううっ…ショックだ…」
やれやれ、何とかこの場は収まったらしい。
俺ってジゴロの才能が有るかもな…有られても困るが。
今日も対侵入者用の仕掛けを取り付ける…
結局自宅に帰ってからは特筆すべき事は起こらなかった。
強いて挙げるならピーク時に人手不足に陥り、
親父と鈴木さんは疲労困憊し、それ以外の店員さん達の眼が、まるで死んだ魚のようになっていた事位だろう。
大槻と英知が必死に頭を下げていたが…大丈夫だろうか?
まあいい、今はそれよりも重要な事がある。
もしも大槻と英知の争いがこれ以上エスカレートすれば、今の俺には止める事ができないかもしれない。
そして英知は『私と勇気様は…産まれた瞬間から婚約者なのです』と言っていた、それは一体何を意味するのか。
どちらにせよ、このまま何の手も打たずに過ごす訳にはいかないだろう。
天野は…いや、この際天野の事は忘れよう。今はこの事態を何とかする方が先決だ。
全てが終わったら、きっともう一度あの屋上での平穏な一時が戻る…そう信じよう。
最後に俺は目覚まし時計に細工をし、いつもより早めに床に就いた。
194不撓家の食卓 次回予告 ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/04(火) 13:06:58 ID:EwSy9Uwp
不撓勇気、行方不明になる。
そのニュースは彼を取り巻く者達に少なからず衝撃を与えた。
果たして勇気はどこへ消えてしまったのか。
次回、不撓家の食卓『黄道町へ…』にご期待ください。
195不撓家の食卓 おまけ ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/04(火) 13:07:55 ID:EwSy9Uwp
「はぁ…」
「どうしたの?元気無いじゃない」
「お母さん…」
「友美、良かったらお母さんに話してみない?」
「………」
「………」
「私…好きな人ができたんです」
「ええっ!本当!?」
「はい…」
「ううっ…やっと友美にも春が来たのね…お母さん感動」
「でも、その人は二股をかけてたみたいなんです…」
「あら、友美が居ながら浮気してたの?」
「違います、二人とも私よりも可愛い子でした…」
「お母さんは友美も可愛いと思うけどね…」
「私は…どうしたらいいんでしょうか…」
「そうね…」
「………」
「こんな言葉があるわ… 何を迷う事がある、奪い取れ! 今は悪魔が… 」
「「微笑む時代なんだ!」」
「うん、それでこそお母さんの娘よ」
「わかりました、やるだけやってみます」
「頑張りなさい、友美」
 ドタドタドタ…
「………」
「我ながら無責任な事を言ってしまった…」
196シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/04(火) 13:08:49 ID:EwSy9Uwp
果たしてブライは生き延びる事ができるのか。
次回『ブライ死す』
…こんな予告が大好きなシベリア!です。
第四話はかなり難産でした。
とりあえず予定していた伏線は全て入った筈です。
それと第五話以降は少々間が開くかも知れませんが、どうか待ってやってください。
197『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/04(火) 14:04:50 ID:hUunfjPJ
あれからやたらと晋也が私を避けているような気がする。全く、自分から変態なことしといて恥ずかしがってるのかしら。
なんというか………晋也と居ると幸せな気分だ。幸せの感情を奪われなくてよかった。
……このまま過ごしていけば何時かは笑顔を取り戻せるような気がする。でも…それは同時にこの屋敷から去ることを意味する。
この屋敷を離れても晋也がいなければなんの意味もない。
ガチャガチャ
そんなことを考えながら皿洗いをして居ると、晋也が台所に入ってくる。
………どうして目を合わせてくれないの?
「晋也!」
いつもみたいに怒鳴りつける。本当はもっと……恋人らしく優しく呼び掛けたいのに照れ隠しのせいでこうなってしまうわ。
「ん…な、なんだぎゃ……」
背中を向けながら返事をする。失礼な返事ね!
だからそっと寄り添って背中に顔をすり寄せる。……何こわ張ってるのよ。
ん?……晋也の奴、香水なんて付け始めたのかしら。
「な、なにやっとんよ?」
晋也の声、温もり。その全てが私の感情を高ぶらせる。笑顔を取り戻せるのももうすぐだ。
「今夜……晋也の部屋にいくから……起きて待ってなさいよ。」
「……なんで?」
「ば、馬鹿じゃないの!私に言わせるの?」
まったく、新手の羞恥プレイかしら。
「……いやっはは。…わかってるべ。」
「馬鹿……」
本当に変態ね。すこし矯正しないといけないかしら。
「でもだめー。もうお前とはそういうことしないよ。」
「は?」
ナニ?
「お、お前とはもうHしないってこと!」
「……あんたねぇ、冗談もほどほどに…」
「冗談ちゃうよ。100%本気。全力で本気。」
意味が………
「…どういうことよ。」
「だからさ、お前のことは好きじゃないってことサ!」
ワカラナイ………
198『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/04(火) 14:06:32 ID:hUunfjPJ
「う、嘘でしょ!いつもの冗談なんでしょ!」
「馬鹿をおしっしゃい!いつも冗談言ってるからって全部が冗談とは限りやせんヨ!」
ナンデ?ナンデ?ナンデ?
「ナンデ?」
「んー。実はねぇ、無くし物増えちゃった。お前への愛がもうないんだなぁ。」
…嘘だ……うそだ………ウソダ!
「そういうこと、じゃあな!」
そう言って立ち去ろうとする。
ガシ!
でも、逃がさないように腕をつかむ。
「ふむ、離したまへ。余に触ってはならぬぞ。」
「ダメよ……どこにも行かせないわよ……」
ポケットからナイフを取り出し、刃を腕に押しつける。ここまできといて、この幸せを逃がしたくない。ゼッタイに!
「嘘でしょ!ねぇ?!いつもみたいに…私のこと馬鹿にして……最後は抱き締めてよ!私から幸せを奪わないで!どこにも行かないで!」
「お、俺はそろそろ真剣さを取り戻せそうなのサ!だから屋敷やお前からもさようならだ。グッバイだ。ま、里緒さんとでも下山しますさ。」
もう抱いてもらったんだから!私の物なんだから!!

「……そんなに私から離れたいなら…あの女の所に行きたいなら……私から離れるぐらいなら、コロシテヤル!」
ヒュッ ズサ!
掴んでいた左腕に、ナイフを突き立てる。
「……!」
痛みを堪えているのか、声も出さずに顔を歪めている。
アア……晋也の初めて見る顔だ……
199『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/04(火) 14:08:31 ID:hUunfjPJ
「ふふふふふ……大丈夫よ…里緒は悲しみを無くしているから、晋也が死んでも悲しまないわ。だからその分、私が悲しんでアゲル!私の心の中で、永遠にイキテ!!」
「勘弁ー!」
そう叫ぶと晋也は右手に持っていた何かを私の顔に吹き付ける。
「キャア!」
怯んでいたすきに晋也は走りさってしまった。顔に吹き付けられたものは……「香…水」
晋也が付けていたのと同じにおいだ……それにこの匂いは…
「あは…あはは……あーっははは!あの、あの女か!あの女の匂いかぁ!!」
私の晋也を騙したオンナ!許さない!ゼッタイニ許さない!
死んでわびなさい!!
この瞬間、私の中から一つの無くし物がふえた…
もう取り戻せることはできない……皆殺すまで!!!
200名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 14:10:07 ID:HAA2LmVT
嫉妬バトルロワイヤルが始まってしまいました・・・・・・・・
こわいよぉぉぉぉぉぉぉ
201名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 14:13:59 ID:NVqAAPg2
魔法の館でも、嫉妬の心をなくす事はできないのかぁぁぁぁぁ
(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
202名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 14:18:28 ID:Xp8OJdA1
ああ…最初の頃のおき楽な雰囲気が見事にが吹っ飛んだ…
203名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 14:40:26 ID:IhH3choN
いいぞ ベイべー!
ふられて泣き寝入りするのは普通の女だ!
相手もろとも皆殺しするのはよく訓練された修羅場系の女だ!
ホント 修羅場スレは駄目男の巣窟だぜ! フゥハハハーハァー
(AA略)
204名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 15:46:26 ID:WAdOjfL1
ついに嫉妬の嵐が起こった……
((((((((;´Д` )))))))ガクガクブルブル

いまだ身を潜めているお嬢の動向に期待!
205名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 15:56:37 ID:TcMkgIwC
相変わらず血の舞うスレだ・・・。
206名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 16:00:10 ID:Xp8OJdA1
志穂が笑ってる…((((; ゜Д゜)))ガクガクブルブル
207名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 16:02:49 ID:FiQZ3V8r
血で血を洗う惨劇が始まったな……
これからどうなってしまうんだろう(((( ;゜Д゜)))
208名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 18:31:07 ID:honjNVal
なんというか・・・晋也は真剣さを無くしたとか言ってるけど周りの<命>事考えられてるし無くしてないんじゃないかと思う
209沃野 Act.10 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/04(火) 20:08:54 ID:qmlgBoVe
 決めた。
 朝。ベッドから上体を起こし、心に誓った。
 今日、よーくんに突撃する。
 罠かもしれない。疑いは捨て切れなかった。でも、足踏みしていたところで何も変わらない。
 ゆっくり地歩を固めて……なんて考え方をするには、もう時間が経ちすぎている。よーくんと出会った
日から既に七年。小学中学の時に何もできなかった恨みを、一年生の頃に決定打を出しあぐねた悔やみを、
今ばかりは晴らなきゃダメだ。
 わたしは、ようやく決めた。
 穿った見方をすればあの下級生のおかげかもしれない。彼女がよーくんに余計なちょっかいを掛けて
きたからこそ、踏み切る気になったんだから。なりふり構わないという覚悟もついた。もしあの子の
介入がなければ、「そのうちよーくんの方から……」という待ちの姿勢を崩すことができなくて、
消極的に誘うことしかできないまま時間が過ぎていたかもしれない。
 そういう意味では、感謝していいのかな。
 憎らしくて、弓射の的にしたい雌狐だけど、後押しの要因にはなった。
 いや……感謝なんてしない。
 あの子は敵だ。
 たとえこの勇気が与えられたものだったとしても、あくまでわたしのもの。
 敵には感謝しない。容赦しない。
 あげるのは、報いの矢だけ。

 とはいうものの。いざアタックするとなるとよーくんは難物だ。
 わたしだって知り合ってからずっとまごまごしていたわけではなく、「あ、いい雰囲気だな……」と
肌で感じ取ったときはそのまま押し切ろうと頑張ったこともあった。
 けど、よーくんの鈍さは鉄壁だった。「いい雰囲気」を平気でぶち壊すような真似をしてしまう。
無神経といっていいくらいの言動で、わたしの気勢を一瞬にして削いでしまうのだ。それでなんだか
冷めてしまって、「今はよくない、またにしよう」って気分にさせられる。
 よーくんは熱情を萎えさせるスペシャリストだ。
 よほど強い気持ちを保っていかないと、有耶無耶な結果に終わりかねない。
 一気呵成に攻め込んで瞬時に落城させることが肝要だと思う。

 そこで梓に相談してみた。
「ねえ、よーくんを確実に陥落させるにはどうしたらいいと思う?」
「背後から棒で叩きのめして動けなくなってる間に既成事実をつくればええんでないの」
 うわ、乱暴すぎ。わたしはせいぜい睡眠薬を盛るくらいしか考えてなかったのに。
「というかもっとまじめに考えてよ」
「知るか。こちとら生まれたときから彼氏がいないんでい。モテない女の考え休みに似たりぜよ」
 チューチューと紙パックの苺牛乳を啜りながら眉を顰める梓。
 ストローから口を離すと、わたしをじろじろ眺め出した。
「? なんなの?」
「いや、さ。ふと思ったんだけどな。あんたみたいな子がそばにいて手ェ出そうとしないってのは、
ひょっとしてよーくんイン──」
「ああそれはないから」
 さらりと答えてしまってから気づいた。
 やば。この回答は不適当だ。
「え? なにその確信に満ちた言葉。ねえねえ、見たことあんの? 見たことあんの?」
「なんで二回聞くの。ないって。だからないってば。それよりもよーくんのことだけど」
 否定して話を戻そうと試みる。
「だーかーらー、あたしに恋愛相談なんてお門違いだっての。童貞踊り食いの方法なんか聞かれたって
答えられるわけねーだろ。気合と根性でなんとかしろよ、けっ」
210沃野 Act.10 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/04(火) 20:12:11 ID:qmlgBoVe
 梓は参考にならなかった。あの子は恋愛経験皆無なうえちょっと頭の弱い体育会系の人だ。仕方ないのかもしれない。
 気合と根性──それでどうにかなるなら今頃わたしは一姫二太郎に恵まれ子育てに忙しい時期だろう。
 精神論では頼りにならなかった。
 さりとて。好きと言っても、ふたりきりになっても、一向に手を出そうとしないよーくんを振り返らせる
手段は簡単に思いつきそうもなかった。当たって砕けるのは勘弁なのだ。当たるからには落としたいのだ。
 幸い、今よーくんの両親は家を空けている。帰ってくるのは早くとも明後日の朝だと言っていた。
 本気で攻略するなら今日をおいて他にない。
 失敗はしたくなかった。
「あー、どうしてもっていうんなら、一つやれるもんがあるけど」
 参考にならない相談相手が、空になった紙パックを捨てるとごそごそとポケットを探った。
 財布を取り出し、その中から引っ張り出したのは──錠剤のヒート。
「なに、これ?」
「興奮剤の一種だって。塩酸だかクエン酸だか知らないけど、まあそんなの。服用すりゃ一時間で効くとか」
「ひょっとして、違法なやつだったりする?」
「さあ。知り合いから『どんなインポでもケダモノになる』って触れ込みで押し付けられたけど、あたしにゃ
使う機会ないからな、捨てようかと思ってたとこ。一錠だけやるよ。全部やるとなんか結果が見えて怖いしな」
 パチリパチリと鋏で一錠分だけ切り取る。
「……飲んでも大丈夫なの、これ」
「知らん。保証はしない。聞いた話じゃなんでも劇薬指定されてるらしいから気をつけろよな」
 迷ったけど、受け取るだけなら別にいいか、と思って頂戴しておいた。

 で。今まさに、よーくんの夕食にそれを混ぜ込むところだった。
 はじめからそれを狙っていたように仕込む指を見て、わたし自身が驚いた。
 ──下校して、よーくんのお父さんとお母さんが不在であることをいかにも今思い出したとばかりに
「あ、じゃあ、今日はわたしが晩ご飯をつくってあげるよ」と提案したら、すんなり受け入られた。
 これまでも何度かあったことだった。よーくんはわたしの手料理を食べることが半ば習慣化していて、
ご飯をつくるためにキッチンへ入っていくのに違和感を覚える気配はなかった。
 支度をしている最中、ふと午前中に梓からもらった薬を思い出し、流れる仕草で放り込んでしまった。
 何も本当に使うつもりではなかった。いくら信用できる友人がくれたものとはいえ、処方薬でもなく
出所のはっきりしないものをよーくんに飲ませるのは抵抗があった。
 薬の力に頼らなくたって……と気負って発奮するところもあったのだ。
 それが自覚する間もなくあっさり挫けてしまったのは、焦っていたからだろうか。
 荒木麻耶という恋敵の出現に全力で取り掛かる気になって。
 彼女が、不可解な離脱を表明して、よーくんとふたりきりでいられるようになって。
 なのに過ごした昨日という日は、あの子が出てくる以前の日々とまったく変わりなくて。
 たとえあの子に負けないとしても。このままではよーくんとの距離が詰められないんじゃ……?
 そんな不安が高まっていたからかもしれない。
 なりふり構わないつもりでいた。
 けれど、それは要するに。なりふり構っていてはよーくんを口説き落とすことができない自信のなさの
裏返しではないかと、わたしは自分の弱さに目を背けることができなくなってきた。
 弱い──だから、道を踏み外そうとしてしまうのかな。
 でも今更後戻りをする気にはなれなかった。このまま突き進むしか手立てはなかった。
 わたしがしたことを知ったら、よーくんは怒るかもしれないね。
 ……うん、いいよ。
 よーくん──好きなだけ怒って。
 その怒りのすべてをぶつけて、骨の髄まで罰してほしい。
 嫌がるつもりはなかった。どんな責めでも受けるつもりだった。
 どんな責めかと考えていると、楽しくなって口の端がにやけて止まらなくなった。
211沃野 Act.10 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/04(火) 20:18:17 ID:qmlgBoVe
 夕食の終わりから一時間が経過した。
 よーくんと一緒に食器の片づけを終え、ソファに並んでテレビを見ながら食後のお茶を飲んでいた。
 ──そろそろ、帰った方がいいんじゃないか。
 これまでならそう切り出していた時間帯。言われるとわたしは、強く抗う気もしなくて引き下がってきた。
 けど今日は違う。母にも「友達の家に泊まる」と言っておいた。よーくんとは、悔しいけどまだ友達の
段階だから、別に嘘はいっていない。これから嘘にしていくつもりではあるけれど。
 で。こんな時間になってもよーくんがお決まりの退去勧告を切り出さないのは、それどころではないから。
 目が充血している。顔も赤くなっている。下半身を「視」ると──いや、肉眼でも硬く膨らんでいるのが分かる。
 こういう状態を「ギンギン」と言うのだろうか。梓がくれた薬は、効果があったようだ。
 さっきからずっと落ち着かない素振りを見せている。隣に座ったわたしとの、微妙な距離を意識しながら
離れることもできず近づくこともできずに迷っている感じ。
 画面の中では恋愛ドラマが演じられていて、ちょうどキスシーンが映るところだった。
 普段のよーくんなら恥ずかしげに俯いたり、咳をしながら気にしてないフリをしてそっとチャンネルを変える。
 今は、食い入るように重なり合った唇と唇を凝視していた。
 破顔しそうになるのを堪えた。もはやだいぶ理性が溶けてきている様子のよーくんだけど、ここで
訝しく思われるのは避けたい。むしろよーくんの行動を不審がって、「どうしたの?」と心配そうに
声をかけたりしてみた。よーくんはハッとしたような顔になって「な、なんでもない」と声を震わせた。
 あと一押し。ほんのちょっと背中をつつくだけで、彼の自制心は決壊する。手に取るように分かった。
 王手をかけた気分。生かすも殺すもわたし次第って状況。なんだか無性によーくんをいじめたくなってきた。
「さっきからおかしいよ。顔も赤いし、熱でもあるの?」
 無造作に手を伸ばして額に触る。咄嗟に跳ね除けようとしたよーくんは、触られた途端ビクンと跳ねて
体を硬直させた。
 ああ、こんなに敏感になっているなんて……あの鈍感なよーくんが……
 掌に熱が伝わってくる。ひどく心地良かった。
「わ。本当に熱があるんじゃないの?」
 白々しく言って顔を近づける。前髪を上げ、晒したおでこをくっつける。間近で見詰め合う形になる。
 目を見開いたよーくん──瞳孔が散大した。
 あと何秒持つかな……ふふ……
「く、胡桃……はなれ、ろ……」
 理性の軋みが聞こえる。愉快すぎる。
 駄目を押そうと、そっと吐息をついて彼の産毛を揺すり──
「胡桃……っ!」
 次の瞬間。バッと、逃げようとしても逃げられない凄い勢いで、唇を奪われた。
 強く強く押し付けられる。歯もぶつけられた。荒々しい衝動的なキス。慣れていないことが丸分かりだ。
 よーくんからされる、初めてのキス……寝てるよーくんにわたしからそっと口付けした回数は数え切れない
けれど、彼の方が奪ってきたのはこの一度だけ。嬉しくて涙が滲んだ。
 窒息するほど長い時間をおいてやっと唇を離したよーくんは、わたしが泣き出しているのに動揺した。
「ご、ごめん……」
 謝っても、背中に回した手を離そうとしない。密着した姿勢からドクドクと早足の鼓動が聞こえる。
 このまま、最後まで──もう確信は揺らがなかった。
 よーくんの目を覗き込み、笑いかける。
 よーくん……いや。

「よ……ようへい……洋平!」
212沃野 Act.10 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/04(火) 20:24:40 ID:qmlgBoVe
 何年も。何年も何年も何年も封印し続けきた想いを彼の名前に乗せる。ずっとずっとずっと言いたかった、
洋平、好き、愛してる、好き好き好き好き好き好き好き好き好きちょっといじわるでわたしの気持ちに
ちっとも応えてくれなくて嫌いになりそうになったこともあるけどその百倍は好きで好きで愛してるんだもの、
洋平が、洋平が、応えてくれるなら何だってしてあげるよ恥ずかしくても痛くても何でも何でも何でも、
ああ洋平洋平洋平、なんでもっと早くわたしに振り向いてくれなかったの手を伸ばしてくれなかったの
唇を舐めてくれなかったのいやらしい本を見て想像するようなことをわたしに何もしてくれなかったの今まで
ずっと淋しくて淋しくて何回洋平のこと恨んだか分からないよ涙で枕を濡らした夜がいくつもあったよ洋平が
勝手に自分で自分を慰めた翌日の朝に家から出てきたときはもうそんなことしないでって路上で押し倒したく
なったこともあるよ握り合わせた手が昨日洋平のあそこを擦っていたところだと思うとすごく興奮して手を
ほどいた後にそっと嗅がずにはいられなかったけど汗の匂いしかしなかったよ目を閉じてると洋平が達している
ときの顔が脳裡をよぎってドキドキしたよ早く目の前であの顔が見たいと願い続けてきてそれが今ようやく
叶うんだ洋平ねえ洋平がわたしの体を見ていやらしいことを考えてるのも知っていたよ当たり前じゃない洋平が
持っていたエッチな雑誌とか本とか全部捨てさせたけど胸の大きくて髪の長い子のところにしっかり折り癖が
ついていたのはちゃんと視たよああいうのが洋平のタイプなんだよねだから髪も切らないで伸ばし続けたし
お風呂に入った後は血行が良くなるようにマッサージもしたよ発育にかけては自信があるよ文字通り胸が張れるよ
あの板きれみたいな荒木麻耶なんかに負けてるとこなんかどこにもないよあんな巻き癖がついた柔らかそうな金髪と
海色の瞳と白くてすべすべしていて赤ちゃんみたいな皮膚と見下ろすのに適していてぬいぐるみのように
抱き締めて眠るのにちょうどいい体しか見所がない子なんかには、ダメ、あの子なんかじゃダメ、絶対にダメだよ
わたしが満足させてあげる明日は休日だし一日中ずうっと一緒だよ誰にも邪魔させないたっぷり愛してあげるよ
おじさんとおばさんが帰ってきても気にしないよずっと繋がってようよ絶対離れないよ赤ちゃんの名前考えようよ

 わたしは、
 わたしが、
 洋平の一番なんだからぁっ!

 感情が爆発して止められなくなった。洋平よりも先に襲い掛かって衣服を剥ぎ取り唇を貪りたかった。
 わたしの方がよっぽどケダモノめいている。
「洋平っ! 洋平っ! ようへぇっ!」
 唇を奪い返そうと彼の肩を掴み、

 突き飛ばされた。

 ……えっ?
 ソファから転げ落ちていく自分の体を、不思議そうに見てるうち背中に衝撃がきた。
 息が詰まる。けほっ、と咳をした。痛みはそれほどない。ただ、呼吸が苦しかった。
「ようへい……?」
 ゆっくりと体を起こす。わたしと同じようにソファから転がり落ちた洋平が、俯けていた顔を上げる。
 そこにあったのは、強い怯えだった。あれだけ赤かった顔が青ざめ、震えている。
「……か、」
 後ずさりしながら呟く。
「怪物……!」
 かいぶつ──その四文字に、ドロドロと魔女の鍋みたいに混濁する感情を見抜かれた気がした。わたしの、
よーくんが欲しくてご飯に興奮剤を混入してしまう浅ましさが見破られた気がした。
 今度はこっちが青ざめる番だった。
 気づかれた……何に? すべてにだ。すべてに気づかれて、すべてを失おうとしている。
 死ぬまで隠し通さねばならなかったモノを、よりによって彼の前で曝け出してしまったのだ。
 なんで。なんでバレたの? 惑乱するわたしに、よーくんは顔を背けて言った。
「──帰ってくれ」

「あれ? 胡桃、あんた友達の家に泊まってくんじゃなかったの?」
 母の呼びかけにも返事をすることができず、ふらつく足取りで部屋に辿り着くとベットに倒れた。
 何も考えられなくて、意識を失うように眠り込んでいく。

 その夜──わたしは、悪夢を視た。
213名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 20:39:01 ID:0AMkPE93
よーくん!
何を見たんだ!よーくん!!
214名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 20:41:31 ID:WAdOjfL1
>>212
ついに胡桃が自滅してしまったか……(´・ω・`)
しかしこの展開が予想できた?麻耶はもしかして能力者???
215名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 20:48:57 ID:2YxWQQgz
例の問い詰めに匹敵するラッシュワロタ
216名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 20:52:33 ID:ey+3yhuY
胡桃…せつない……
がんばれ胡桃たん、金髪ロリに負けるな
217名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 21:04:36 ID:NemucQWa
ビオランテでも見たのか?よーくん。
218名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 21:34:15 ID:0U2miCKB
きっとビオランテ最終形態が大口を開けて……((((;゚д゚)))ガクガクブルブル
219名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 22:02:38 ID:tdmtMqYy
 、(゚д゚)/
\(.\ ノ  …食虫花が…ラフレシアになったんだな。
220名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 22:30:03 ID:dWV+xbiu
いや、むしろ胡桃全体がビオランテかも
221名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 22:35:49 ID:a94YxfKV
>>219
ラフレシアの中にいる鉄仮面が、よーくんに近づいてきたビジョンを見たんだよ。
「フハハハ、怖かろう!」
222名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 22:59:05 ID:FiQZ3V8r
触手がよーくんに絡みつき、
粘液ネバネバのビオランテの大口が迫ってきて……
怖ええええええーーーー((((;゚д゚)))ガクガクブルブル
223名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 23:01:44 ID:fvrceeMp
とりあえず梓が痕の梓そっくりだから
怪物は、千鶴さんの料理を目の前に
残したら殺っちゃいますよー的な眼で見てくる
半分鬼化した千鶴さんといってみる
224名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 23:06:02 ID:ac/WkXN7
胡桃の猛ラッシュは素晴らしかった。
しかし洋平は見事に予想を裏切ってくれた。
こうなるとぎくしゃくして麻耶に付け入る隙がでそうだ。

なにはともあれGJ!
225名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 23:09:15 ID:hSLHWyKJ
食中花に喰われそうになったんだろうな
胡桃に喰われるがごとく
226『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/04(火) 23:10:52 ID:hUunfjPJ
「はぁはぁ……いってて…」
あれからなんとか志穂から逃げ切り、医務室までやってきた。服を脱いで腕の傷を見たところ、それほど傷は浅くなかった。
これぐらいなら止血できるだろう。
「………はは」
腕に包帯を巻きながら思った。俺は行きたがっているじゃないか。生きる事に『真剣』になっているじゃないか。
「こんな形で……取り戻すなんてな。」
無くし物を完全に取り戻せる方法は一つ。
無くした物を本人が直接体感することだ。それもかなり強いインパクトで、だ。
俺の場合は、志穂にナイフで刺された事がそれだろう。
いや……もしかしたらもっと前に取り戻していたのかもしれない。
本当に真剣さが無いのなら、さっさと自殺しているはずだ。
でも俺は……この屋敷から出たくなかった。今まで一緒に楽しく暮らしてきた家族がいるからだ。
だから俺は、今まで不真面目な性格を擬態していたのかもしれない。この屋敷に居続けるために、軽い暗示にかかっていたのだ。
グッ!
しっかりと包帯を締め、気を入れ直す。
これからのことを考えよう。
まずは里緒さん。
彼女を説得するには、まず『悲しみ』を取り戻してもらうことが先決だ。
ただ当主を自分の手で殺してもダメだったとなると、難しくなる。人の死より深い悲しみは無いだろう。となると、より親しい人が死んだらどうだろう。例えば……え?お、俺?
「死ぬのは勘弁ザンス!なぁ、友よ」
と、埃のかぶった人体模型に同意を求ル。
真剣さを取り戻しても元の性格がこうらしい。ま、シリアスは似合わないからナ。
227『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/04(火) 23:12:02 ID:hUunfjPJ
次、志穂。
レッドゾーン突入してんな、ありゃ。まぁ、俺のせいだが。
問題はこの二人が出会った時だ。流血どころじゃなくなるな。自分の血はまだしも、他人の血は見たくない。
俺自身、志穂にあったところでどうしようも無い。思案は後回し。次、お嬢。
一番の謎。行方不明な上に、数々の罠……あんなことするのはお嬢ぐらいだろう。
でも一体なんでダ?
……わからん
ドサッとベットに横になり、目を瞑る。
「はぁ〜〜。会議は踊る、されど進まん」
あぁ、タレーランが光臨してケチつけにきたヨ。
ズル…ズル…
ん?
廊下を何か引きずるような音が聞こえる。
それなりに重そうな音だ。里緒さんの刀ではないな。
………もしかしたらまた死体を引きずってたり……
いやいやいや。ホラー映画じゃあるまい。
まぁ、この状況で言ってもリアリティがあるが。
じゃあなんだろう…………え?覗いてみろって?Ahaーー!!
俺はチキンなんだヨ。と、骨格の標本に突っ込んでる間に音はさっていった。
………こうでもしてないと恐怖とプレッシャーに押しつぶされそうだ。大事な局面ではしゃぐ奴ほど不出来な人間という証拠。認めるさ。
ガチャ
再度音が去ったのを確認し、ドアを開ける。右から左へと動いていった。左の廊下を見渡すが、すぐ近くで折れていた。
「…一体なんだっ……「見つけた……わよ……しんやぁぁぁ!!!……」
確認不注意。左にばっかり気を取られて右を見なかった………
声で解る。
「し……しほちゃん…」
恐る恐る、顔を左にむけたまま声を掛ける。
「ふふふふ……もう二度と逃がさないわ……あは、はは……あなたは…私だけのものよ………くくっくっ……だから、だから二人で行きましょう………誰も邪魔しない…楽しい…所へ……」
カチャカチャ
ナイフの刃を出し入れする音が聞こえる。
音からして距離は20Mほどか。だんだん近付いてくる。
楽しい所。
天国か、はたまた地獄か。
「ダッシュ!!」
俺は園への入口から逃げ出した。
228名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 23:35:54 ID:0U2miCKB
これなんてホラー映画?((((;゚д゚)))
229名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 00:05:20 ID:8l/q72NR
なっなっなんてそそられる状況なんだ(゚∀゚)
230名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 00:09:31 ID:A/bkM1xf
閉鎖系サスペンスか。
館モノの設定を生かしてるね!
231義姉 第2回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/05(水) 00:30:11 ID:KNf2qwp+
        *        *        *

 二人が初めてあった時、突如現れた歳の近い異性を無条件で姉弟と認めるには早すぎもあり、少し遅すぎもあった。
 新しい親については何とかやっていけるかとは思っていた。相手は大人だ、そう心の中で割り切ることによって。大人と子供、無意識下で住み分けることによって。
 しかし姉弟としてはそうではなかった。歳も殆ど変わらなければ背も殆ど同じ。同じ空間を共有し割り切ることも住み分けることもできなかった。
 当然の如く一緒に暮らし始めて間もなく初めてのケンカをした。お互い人生初めての姉弟ゲンカだった。
 決着はあまりにも簡単についた。一つしか違わないとは言え女の子が男の子に馬乗りになって、ほぼ一方的なタコ殴り。
 皮肉にもこれがお互いの力関係、立場を明確にした。
 男の子は半ば畏怖をこめて女の子を姉と、女の子は下僕として男の子を弟と――不器用だが、お互いを姉弟として認めた日だった。
232義姉 第2回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/05(水) 00:32:19 ID:KNf2qwp+
        *        *        *
『士郎』

 さっきから狂ったように台所で水を飲み続けている。
 胃のムカつきを流す為。何か現実から目を引き剥がす為。
 時計は四時前を示していた。もちろん普段起きているような時間ではない。起きても二度寝をするような時間だ。
 でも出来ない。何故だかよくわからないがオレのベッドに姉ちゃんがいる――多分裸で。
 さすがにもう水は飲めなくなってきていた。むしろ吐きそうな気がしてきた。
 落ち着け自分、もう一度よく思い出そう。
 部屋で泣いてたら姉ちゃんが帰って来て、酒持ってきて、それ飲んでてなんか喋ってて、ズボンズリ下ろされて――ヤバイ、ヤバイかもしんないオレ。
 なんかその後姉ちゃんが一発ぶん殴った後部屋出て行った――
 そうだ、うんそれでその後オレ寝たんだ。
 ズボン下ろされたりしたのはアレだが酒入ってる状態ならギリギリセーフ、性質の悪い悪戯ですむレベルだ――多分。
 じゃあ、なんで姉ちゃんがオレのベッドで寝てたんだ?
 ――うん、そうだ性質の悪い悪戯だ。
 起きたら腹に枕でも仕込んでいて責任とれとか何とか言うつもりだ、きっと。
 そう考えると精神的には少し落ち着いてきた――かといって二日酔いが抜ける訳ではなかった。
「……胃薬どこだったかな」

 結局二度寝するには目が冴え過ぎたので、この間借りてきていたビデオを見ていた。
「――おはよう」姉ちゃんの声がした。
 何故だか知らないが体がビクッと跳ねた。
「お、おはよう」何でオレは怯えているんだ、アレは悪戯の筈なのに。
「……あんた昨日の事覚えている?」
「や、し、知らないけど」
 落ち着け自分、大体の事は想像つくはずなのに。
「ふーん、そう……。
 じゃあもう一度言うけど、ふられた事なんてさっさと忘れなさい」
「へ? あ、うん、わかった……」
 想像を二週半して余りにも普通のアドバイスだった。
 そうだ、オレは昨日ふられたんだった――
 姉ちゃんはいかにも気だるそうに体を動かしていた。
 目を合わせるのが怖くなってテレビに視線を戻した。しばらくしてシャワーを浴びる音がしていた。



 いつもより随分早く家を出ていた。
 同じ学校に行っているからって元々姉ちゃんと肩並べて学校行っているわけじゃない。
 いつもの時間に家を出なかったのには別の理由がある。
 三沢の奴と顔会わせたくないから――
 朝電車の中で会わないからって学校に行けば、教室に行けば嫌でも顔を会わせなきゃいけない。
 辛い――
 苦しい――
 失恋の苦しみと二日酔いの苦しみが二重に体を襲う。
 忘れろって言われても、簡単に忘れられない。
「士郎君、調子悪そうだけど大丈夫?」
 駅のホームでレールを延々と眺めていたら声をかけられた。姉ちゃんの友達、モカさん――ずっとそう呼ばれているので本名は知らない。
「いや、ちょっと調子悪いだけですよ」
 原因は半分が二日酔い、半分は失恋で。
「そう? 辛いなら無理せず休んだほうがいいよ」優しい声がした。
「……ありがとうございます」
 モカさんは別にオレがふられたことなんて知らない、ただ親切心だけで言ってくれている。
 今、誰かに優しい言葉をかけられるのは心地よかった。少しだけ泣きそうだった。
233義姉 第2回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/05(水) 00:33:21 ID:KNf2qwp+
        *        *        *
『涼子』

 少しヤッバイかな。酔った勢いとはいえ弟襲うなんて。
 昨日ゴム買って帰って来たらグースカとイビキかいてたから一発蹴りいれて叩き起こした後しっかり一発やったなんて。
 今朝のあの感じからして多分覚えている気がする。
 でも士郎は知らないふりをしていた。ならば私のするべき態度は決まっている。いつも通りに接しいつも通りに話す。あれは夢みたいなもの、ひと夏の思い出とかそんなもの、それっきりの関係。

「ねえ、涼子、新しいカレって誰?」
 朝の教室でモカは興味津々で尋ねてくる。
 そういえば昨日コンビニ行ったときちょうどモカがいたんだった……
「カレとかそういうんじゃなくて……うん、あれ、酒の勢いでその気もないのにうっかりって言うか……」
「今度こそちゃんと付き合った方がいいよ。涼子っていつも長続きしないじゃん……
 あのさ、言いたくないんだけど、まだあの――」
 幼馴染というのはこれだから嫌だ。相手のことを知りすぎている、わかりすぎている。
「――モカ、それ以上言ったらぶっとばすよ。あの事はふっきった、忘れたの!」
「……ごめん」
 二年も前だというのに忘れていない、ふっきれていない。だから声を荒げる。
 あいつと一緒にとった写真、あいつから貰ったもの、忘れる為に全部処分したっていうのに。
 ――ううん、まだ少し残っている。未練がましい。
 シロウには散々忘れろって言っておきながら自分は――

「そういえば士郎君――」モカが思い出したように口を開いていた。
 私の体がピクッと跳ねた。
 ヤバイ、ばれているかもしれない。やっぱ不味い、弟襲っちゃうなんて。
「今朝会った時調子悪そうだったんだけど何かあったの?」
「あー……あいつ昨日告白してふられたらしいから」
 落ち着け私。いや、今は弟の問題じゃない、シロウの問題だ、シロウの。

234義姉 第2回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/05(水) 00:34:24 ID:KNf2qwp+
        *        *        *
『モカ』

 私の知る限り涼子とは一人を除いて一ヶ月以上付き合っていた男を知らない。
 別に男遊びが過ぎるとかそういうものじゃない。そんないい加減なつもりで付き合うような子じゃない。
 ――でも、無理やり忘れようとして付き合っている気がする。
 忘れたふりしていつも無理してる。見ている方が痛々しくなってくる。
 どうにかしてあげたくてもどうにもならない――もういない人だから。

「どうしたものかな」
 私一人悩んでたってどうにもならないのはわかっている。
 柔らかい秋の陽光が中庭を照らしている。そこでベンチで座っている一人の男の子を見つけた。

 士郎君は一人グビグビとお茶を飲んだ後、大きく溜息を吐いていた。
「士郎君、隣いい?」
「へ? ああ、いいですけど」
 今朝と比べると随分顔色はいいけどまだまだって感じ。
 ついこないだ、失恋した相手にそういう事聞くのって結構失礼かな、でも知っておきたい。
「んーと……昨日の夜、誰か涼子に遊びに来ていた?」
 なるべく傷ついた心を刺激しないように言葉を選んでいた。
「昨日はさっさと寝ちゃったんであんまり覚えてないないですけど、多分誰も来てませんよ」
 家には来ていない――か。じゃあ近くの家の誰かかな。
 士郎君ってあの事知っているのかな。涼子っていつも強がって自分の弱いところ見せたがらないから、多分話してないんだろうな。
 それに家族だからって気楽に話せるような話ではない。それに勝手に言ったらきっと涼子は怒る。

「あ、そうそう。朝辛そうだったけど、もう大丈夫?」
 涼子の話はこの辺にしておこう、そう思い話題を切り替えた。
「半分のうちの八割はなんとかなったかなって感じ……かな」
 士郎君は鼻先をかきながら上を見上げていた。そんな顔見ていると少し可愛いかなって思えてくる。
「よしよし。辛いときは胸に溜め込まず吐き出しちゃいなさいよ。私でよかったらいくらでも相談にのってあげるから」
 なんとなく頭を撫でてみたくなったから、お姉さんぶって撫でてみる。
「ちょっとやめてくれません……」
 恥ずかしがっている、恥ずかしがっている。そんな顔が少し面白い。
 私も可愛い弟欲しかったかな。
235義姉 第2回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/05(水) 00:35:13 ID:KNf2qwp+
        *        *        *
『智子』

 きょう士郎はずっと授業が終るとすぐさま教室を出て行き、授業開始直前にならないと教室に戻ってこない。
 あいつの席は一番後ろのドア側、私の席はその対角線上。すぐ逃げられる距離。うまく話せるタイミングが見つからない。
 ……なんか避けられている。
 なんかというより確実に避けられている。勘違いされている。ちゃんと言いたいのに。
 朝は正面きって向いてたのに、私が言おうとして口が回らない時にそそくさと逃げ出した。
 それから今日はずっとチャンスを逃しっぱなしだ。
 本当は両思いなのに……
 大丈夫。まだまだチャンスはある! 士郎だって言えたんだから私だって言える!
236義姉 第2回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/05(水) 00:35:52 ID:KNf2qwp+
        *        *        *
『士郎』

 結局今日は一度も三沢と話すことが出来なかった。むしろ自分から逃げていた。
 どんな顔してどんな話をしていいのかわからなかった。
 独りきりの部屋でベッドに横になっていると、あいつと一緒に話して、遊んだ事ばかり思い出す。こんな事なら言わなきゃよかった。
「あんた、また泣いている?」
 いつの間にか姉ちゃんが帰って来ていた。
「――泣いてないよ」
 でも泣きそうだった。
「姉ちゃん、オレやっぱり忘れられない。学校行けば嫌でも顔あわせなきゃいけないし……
 あいつのこと、頭から離れなくて……」
 頭の上に姉ちゃんの手が置かれた。何故かその手がとても暖かく感じられる。
「あんたの頭の上に何がある?」
「姉ちゃんの手……」
 だから何だって言うんだ。
「忘れられないなら私の手の事でも晩御飯のおかずの事でも何でもいいから別の事考えてなさい。そのうち――少しはマシになるから」
「……姉ちゃん、優しいけどなんかあったの?」
「なにいってんの? 私が優しいのは昔からだって」
「そんな事ないって」
 少し笑えた。
「――辛いからって自殺なんかしないでよ」
「いくらなんでもしないって」
 でも辛いのは事実だ。
237義姉 第2回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/05(水) 00:37:35 ID:KNf2qwp+
5回ぐらいのコンパクトに抑えるつもりだったのにボリューム増えそうな予感

<チラシの裏>
話の都合とはいえ
両思いの相手を半ば強引に引っぺがさなきゃいけないのに、すっげー罪悪感が
</チラシの裏>
238名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 00:40:00 ID:ceu1ADf/
>>237
GJ!姉ちゃんラヴ。
239名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 00:41:46 ID:3B0gPPZB
ひょ〜(゚∀゚)
まさかまさか、モカタンまで泥棒猫役をやってくれるのかな?

やっぱ、親友同士の男の取り合いってのは、何度見ても熱いねぇ…
240名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 00:52:14 ID:R+lQunPx
>>236
>服を脱いで腕の傷を見たところ、それほど傷は浅くなかった。
それってやばいんじゃ・・・・
241名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 01:07:19 ID:9OxLcgpX
というかアナザーストーリーでも多角関係なのか・・・・



GJ!!
242名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 01:09:03 ID:k/t9d2Wt
>240
ほら命に危険がピンチなわけだから正常な思考が出来なくなっているわけだよ
って士郎君は前世で死んだけど、まだ今回は死んでねーぞw
243名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 01:17:50 ID:GX/MJr+J
>>242
>>240が言ってるのは士郎じゃなくて晋也。
244242:2006/04/05(水) 01:21:04 ID:GX/MJr+J
途中で送信しちゃった、スマソ。
>>240>>226>>236を間違えたモヨ。
245名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 01:25:51 ID:k/t9d2Wt
>243
わかっててやったんだけど。ついでにお前もまた間違えてるぞw
勘違い、成り済ましは関係をさらにややこしくするぞw

まあ智子タンは刺殺して心中の前科ありだからなあ……
今回も死ぬのかな?
246244:2006/04/05(水) 01:32:33 ID:GX/MJr+J
うはw素で間違えた。>>242の人スマソ。

士郎は見ていて清々しい程のヘタレっぷりだなぁ。
247名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 01:54:06 ID:KVJnQkDE
個人的には士郎と智子がくっつく所も見て見たい
もちろん智子はサイ娘か依存っ子でお願いしますm( __ __ )m
248名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 02:19:38 ID:Z7C0XTO2
>>227
志穂の壊れっぷりが最高でつねw

>>237
違うルートでも修羅場るなんて士郎は恋愛原子核ならぬ
嫉妬・三角関係・修羅場原子核ではないかと思った今日この頃
249名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 02:39:23 ID:9OxLcgpX
>>247
まとめサイト行って来い
250もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/04/05(水) 02:47:03 ID:EJnpcehP

喉をやられた。


夜、わたしはお兄ちゃんに見とれてしまったため、喉を潤すという本来の目的を忘れてしまった。
そのためか、最近の乾燥した空気はわたしの喉をおかしくした。



妙な気だるさまで感じたる。
どうやら、喉だけではなく、高熱までだしてしまったらしい。

風邪、ひいちゃった。

……この体調じゃ学校は無理か。
とりあえず、この事をお兄ちゃんかお母さんに知らせなくちゃ。
時計で時間を確に……時計、止まってる。わたしは携帯で時間を調べた。
今は朝の七時。この時間なら二人とも起きているだろう。
ひとまず、どちらかに学校を休む事を伝えようと立ち上がりかけたがすぐに考え直した。
気だるさもひとつの理由だか、それ以上にお兄ちゃんと顔をあわせたくなかったから……。


じゃあ、どうやって伝えようか。
わたしは少し考えた後、ベッドの脇のメモ帳から一枚紙をちぎり、簡単な用件だけを書き部屋のドアの前に置いておいた。

これで、大丈夫。
わたしはふらふらとベッドに戻ると、再び目を閉じる。深い闇がわたしを侵していった。






オレンジ色の光があたりを包んでいる。
もう、夕方なのだろうか。
熱のためか、いまいちはっきりしない頭で状況を確認していく。
ふと、おでこと後頭部に冷たくて少し気持ちいいモノを感じる。

何だろ?

この問いは少しずつ覚醒しだした頭が正解を教えてくれた。


いつの間にか、わたしのおでこの上には湿ったタオルが乗せてあり、枕は氷枕に変わっていたのだ。
そして、ベッドの脇にはわたしがすぐに水分をとれるようにポカリが置いてあった。


今が夕方だとすると、恐らく全てお兄ちゃんがやってくれたのだろう。
251もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/04/05(水) 03:17:16 ID:EJnpcehP

やっぱりお兄ちゃんは優しいな。
わたしの胸に感謝の念が沸き上がってくる。
しかし、それ以上に円香さんに対する悔しさも沸き上がってくる。

お兄ちゃんはわたしを女の子として見てくれていない。
それは、お兄ちゃんに円香さんという恋人がいることで証明された。

これからは、わたしにだけ向けられていた優しさが少しずつ円香さんに流れていくのだろうか。

……嫌っ。考えただけでもゾッとする。

そんな事は許されない。
わたしのわがまま?違う。
そもそも全てお兄ちゃんが悪いのだ。
妹としてしか見ていないくせに、わたしに勘違いさせるようなそぶりを見せたお兄ちゃんが……。




ねぇ、お兄ちゃんは知ってる?
アフリカで飢餓に苦しむ子供に絶対にあげてはいけないもの。


それはね、ジュースなんだよ?

飢餓に苦しむ子供がジュースを飲むとその味を忘れられなくなるの。
だから、一度ジュースの味を覚えたらもう濾過水では満足できなくなる。
やがて、その子供はジュース飲みたさに犯罪を犯すようになってしまう。
だからね、もし子供にジュースをあげてしまったらその責任を取らなくちゃいけないんだよ?


お兄ちゃんはわたしに濃くてあま〜いジュースを沢山くれたよね?
だから、わたしもう濾過水では……ううん、薄いジュースでも満足できないの。
あの、濃くてあま〜いジュースじゃないと……。


だからお兄ちゃん?
責任、取ってね?
252 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/05(水) 06:48:58 ID:9fMhu29F
>>240
スマソ
>>226は浅くなかったじゃなくて深くなかったです
253名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 08:11:33 ID:fpF1wDlK
遅レスだけど胡桃が使った薬ってなんだろうね?
塩酸とか言ってるけど、まさかリタリン・・・?
254名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 09:48:18 ID:0lwXD4Fm
士郎と智子のルートがもうすでにあることは知ってるけど
このパラレルの世界のパラレル作ってほしい
なんだかまるでドラマのようにすれ違う二人が
もうもどかしくてもどかしくて
255名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 10:33:45 ID:KVJnQkDE
>>251
「だからお兄ちゃん?
責任、取ってね?」
は神、いよいよ妹のターンですね
お兄さんいい人なのに巻き込まれ型カワイソス
256名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 11:24:09 ID:A/bkM1xf
>>251
このスレで主人公がいい人

無意識に嫉妬旋風を巻き起こして修羅場を作り上げる天才
257名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 11:45:07 ID:k/t9d2Wt
・いい人
 わからないまま泥沼状態へ入っていく人
 デフォでモテモテの人(特にサイ娘から)

・ダメな人
 わかってて泥沼状態から抜けれない人
 肝心な事が言えないから人間関係を複雑にしていく人

そういえば漫画「いいひと」は上は上司に人妻、下は幼女までフラグたてまくってたな。
もっとも本命の彼女ははっきりといたし、本人の性格があれだったから
修羅場には発展しなかったが。
258名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 12:55:11 ID:ESPaqQSV
このスレ的には普通の人って事か
259名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 16:08:22 ID:k/t9d2Wt
「(どうでも)いいひと」になる訳だなww
260名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 17:14:26 ID:whYuI/Ot
兄について客観的な描写しかされてないから実際に兄がどんな人物なのかわからないのがなぁ…
あえて言うならロックオンされてますよとしかいえないのが…
261名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 17:40:39 ID:KVJnQkDE
一般的に見て妹のために自分を抑えて学校を決めたり
風邪で寝ている妹を何も言わずに看護するのはいい人だと思うが・・・
まぁ妹狙いの兄だった場合はわからんが、それだとDeadEndしか見えない((;゚Д゚)ガクガクブルブル
262名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 19:12:52 ID:3B0gPPZB
・いいひと
他人の気持ちの分かる、思いやりのある優しいひと。
寂しそうな女の子の気持ちも分かり、放っておけずに(友達として)優しくしてしまうひと。
「自分の彼氏になってくれた」と複数の異性に勘違いされて、結果的に刺されるひと。

・空気読めないひと
モテモテなのに気づかないひと。
天然ゆえの不用意な言動で複数の女子を刺激し、とりあえず刺されるひと。

・普通のひと
自分の好きなひと・好きな気持ちを、一応自覚できるひと。
想い人とすれ違う・姉に襲われる等、偶然や事故によって修羅場に巻き込まれ、やっぱり刺されるひと。

・駄目なひと
泥沼状態を自覚できるが、恐れや自己保身や優柔不断から行動を起こせないひと。
あがこうとしても逆効果になってしまうひと。
多角関係が誰にも止められない程に発酵し切った時、自然に刺されるひと。

・わるいひと
ゆう君。
スクイズのm。
外道ゆえに、当然に刺されるひと。
263名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 19:22:39 ID:Sk0GXGle
刺されるのは決まってんだなw
264 ◆tVzTTTyvm. :2006/04/05(水) 19:36:44 ID:eUaZGR0V
阿修羅さん毎度お疲れ様です タイトルありがとう御座いました ありがたく使わせて頂きます
と言うわけで『振り向けばそこに…』続き投下
なんですがいきなりアナザールートに入ってしまいましたので先ずそっちから
正規ルート(予定)は後日

あと収録の際にひとつお願いがあるのですが
視点変更などで間に挟む「・」や「X」に
<div align="center"></div>
のタグをお願いできないでしょうか?


   ・    ・    ・    ・

               
 あれから数日。 どうにか平常を装って過ごしてはいるけどやっぱり辛い。未だ祥ちゃんに断わられたのが尾を引き摺っている。
 未練がましいとは思いつつも祥ちゃんが心変わりして私のことを受け入れてくれないだろうか、そんな事ばっかり考えている。 気持を切り替えなきゃいけないのに……。

 そんなある日祥ちゃんに屋上に呼ばれた。 二人っきりで話がしたいって。
 胸が高鳴った。 期待と不安が胸中を交差する。 若しかしたら……いや、そんな都合の良すぎる考え……。 そう思いつつも期待が胸をよぎる。 やっぱり私と交際してくれると言ってくれるのかな……?
 でも祥ちゃんの口からは出てきたの言葉はそうしたのとは全く関係の無いものだった。
「なぁ羽津姉。 羽津姉と結季は仲良しだよな?」
「何言ってるの今更。 当然よ、結季は私の大切な妹なんだから」
 何で今更妹の結季の事なんか聞いてくるんだろう。 私は疑問に思いながらも答えた。
「だよな、うん。 俺も昔っから幼馴染としてずっと見てきたからよく知ってるよ。 だから結季の幸せは羽津姉にとっても望むところだよな?」
「当たり前じゃない」
 私は笑って応えた。 私が笑って見せると祥ちゃんはホッとした表情を見せそして直後、今度は何かを決意したような表情になった。
「なぁ、羽津姉。 このあいだあんなこと言った直後なのにこんなこと言うのもなんだけど、その、俺が断わった理由ほかに好きなコがいたからなんだ」
「そ、そうなんだ。 で、そのコに告白したの?」
 私は祥ちゃんの言葉に訊き返した。 ふといやらしい考えが頭をよぎる。 いけないと思いつつも若し其の告白が駄目であったなら自分にも未だ目があるのでは、と。
「結論だけ言うと、断わられた」
 其の言葉を聞いた瞬間顔が思わずにやけそうになる。 そして必死で其の表情を堪える。  い、いけない顔に出しちゃ駄目だ。 兎に角こういう場合は慰めてあげるのがセオリーよね。 焦っちゃ駄目。 あざとい女だと思われてしまっては元も子もないのだから。
 そうして私は平静を装い慰めの言葉を掛けようと口を開こうとした。 だがそれより早く、祥ちゃんがした予想外の行動に私は面食らった。

   ・    ・    ・    ・


「ごめん! 羽津姉!」
 俺はしゃがみこみ両手と額を地面につけた。 つまりは土下座だ。
「ちょ、ちょっと祥ちゃん?! い、いきなりどうしたの?!」
 俺の行動に羽津姉は戸惑いの声を発した。
「その、言いにくいんだけど……、実は俺が好きなコってのは結季なんだ」
「え?ちょ、ちょっと待って。 そ、それって……」
「結季は羽津姉が俺のことを好きなの知ってて、それで俺とは付き合えないって……だから羽津姉、頼む! 自分でも勝手なこと言ってるの分かるけど、でもお願いだ。 結季を説得してくれ」
 我ながら酷いことを言ってると思う。 だけど、結季が羽津姉を気遣って俺と付き合えないと言うのならコレしか解決方法が浮かばなかった。
「そ、そんな……。 ど、どうし……」
 羽津姉の困惑した声が聞こえる。
「どうして!! どうして私じゃなくてあのコなの?!!!」
 そして俺は羽津姉に胸倉を掴まれ、しゃがみこんでた俺は引っ張られ引き起こされた。
 羽津姉の顔には困惑と悲しみと怒りが、其の瞳には涙が浮かんでいた。
「ゴメン……だけど……」
 そう言いかけた俺は襟を掴まれたまま金網のフェンスに叩きつけられた。
「聞きたくない!! 聞きたくない!! そんなの……、そんなのイヤアァァァァ!!!」
 逆上し頭に血が上った羽津姉は俺を揺さぶり何度も何度も金網に叩きつけた。
 羽津姉に揺さぶられるたびにフェンスが音を立て背中に痛みが疾るが、俺はされるがままに責めを受けた。 仕方ないとは言え羽津姉を傷つけたんだ。 これしきの痛みから逃げるわけにはいかない。

 その時変な音が聞こえ、瞬間嫌な汗が流れた。 まさか、この金網そうとう老朽化してる?! ヤバイ!!
 だが、気付くのが遅かった。 背中の金網の反動が消えた。 そして金網もろとも俺と羽津姉の躯は後ろに倒れこみ宙に放り出される。
 その時俺の目に映った羽津姉の顔。 だが其の顔にあったのは悲しみでも憤りでもなく、――笑い?!
 その笑顔に背筋が凍りつく
「う、うわああぁぁぁぁ……!!!」
 そこで俺の感覚も意識……も消……え
267名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 19:54:35 ID:hAP8fUzY
無理心中キタ━━(゚∀゚)━━!!!
268名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 19:59:52 ID:R6fenYzf
文字通りの急転直下(゚∀゚)
269義姉 第3回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/05(水) 20:04:51 ID:KNf2qwp+
        *        *        *

 生まれて初めての姉弟ゲンカから間もない頃だった。
 気恥ずかしさもあってか弟はまだ姉を姉と呼べずに名前を呼び捨てた。
 それに対して姉の対応は極めてシンプルだった。一発ぶん殴った後、一言「お姉ちゃんと呼びなさい」
 弟はそれに対し、その場は先ほど一方的に殴られた恐怖より素直に従う以外手はなかった。
 その後、弟のささやかな反抗と共に似たようなやりとりが数回あった後、いつのまにか「姉ちゃん」の呼び方が定着していた。
270義姉 第3回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/05(水) 20:05:42 ID:KNf2qwp+
        *        *        *
『士郎』

 姉がオレの腰の上で跳ねている。
 形のよい胸が上下に揺れている。たまらず勝手に手が伸びていた。
 腰の動きに合わせて姉が鳴く。長い間ずっと一緒にいるが、こんな顔をしてこんな声で鳴くなんて初めて知った。
 姉の上半身が倒れこむ。唇を重ね、舌を絡ませあう。背中に手を回しより密着しようとする。
 でも腰の動きはとまらない。

 ――なんかすげえ夢を見た。いいようで悪いような凄く微妙な夢。
 ベッドを確認――よしオレ一人。
 パンツの中を確認――よし大丈夫。生理反応として立ってはいるが出てはいない。セーフ。
 しかしおかしいよなあ、姉ちゃんが下着姿で家の中うろついていても平気なのにあんな夢見るなんて。
 多分昨日の悪戯のせいだ。昨日あれから何もしかけてこない、その事が返って奇妙だった。

 ――普通、こういうのって姉ちゃんの役目じゃないかな。
 朝、出汁をとりつつ思う。
 別に当番制とかそういう訳ではない。
 母さんが留守がちだったので自分で作る習慣が出来ていたのはいいが、以前自分の分だけ準備してたら姉ちゃんにぶん殴られた。それ以来母さんが居ない時の食事当番は半ば自分の役目となっている。
 そういえば、ここんとこ落ち込んでいる間、姉ちゃんが代わりにやってくれたんだよな。
 ありがとう――って今までツケ考えたら全然割りが合わないや。

 朝の食卓で同席しててふと思う。
 ――今まで全く意識した事ないけど、こうして見ていると姉ちゃんって結構美人な方なのかもしれない。
「……私の顔なにかついてる?」
 こちらの目線に気づいたらしく問いかけてくる。
「い、いや、別に――」
 慌てて目線をそらした。
 変な悪戯されて、変な夢を見たせいだ。
271義姉 第3回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/05(水) 20:07:06 ID:KNf2qwp+
        *        *        *
『涼子』

 そういえば、あいつと私の初めても半分酒が入った上での冗談みたいな感じからだった。
 ――まただ。思い出している。重ねている、比べようとしている。

「智香いる? ノート返しに来たんだけど」
「モカなら、さっき教室出て行ったけど。あ、席そこだから」
 そういえば、いつも昼は私と一緒にいるのにどうしたんだろう。昨日ちょっと怒ったりしたけど、そんな事気にしている様には見えなかったけど。

 昼が終った頃ようやくモカは帰って来ていた。
「モカ、何処行ってたの?」
「ふっふー、秘密秘密」
 何やら楽しげな顔。ひょっとして男でも出来たのかな。
「そうそう、士郎君って何か好きな映画とかある?」
 あっさり話題を切り替えられた。
「好きって言うか苦手なものなら、今はそれ程でもないけどホラーとか怪談が凄く苦手だったな」
 テレビの前で無理矢理見せたりしたらビクついて一人じゃ寝れない、とか言ってきて可愛かったな。
「うんうん」
「夏場なんか新聞で確認してから間違っても心霊番組にチャンネル合わせたりしないように頑張ってたから、テレビのタイマー機能使って途中で突然に心霊番組に切り替わるようにしたりしたな。
 それ以来心霊番組が裏番組にあるときはテレビ見ずにビデオとるようにしてたらからビデオ録画予約を――」
 いやー、今思い出してもあいつがビデオ再生し始めた時の顔は傑作だった。
「……私、あなたの妹として生まれなかった事、天に感謝するよ」

272義姉 第3回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/05(水) 20:07:50 ID:KNf2qwp+
        *        *        *
『モカ』

 今日も士郎君は中庭で一人でいた。
 少し頭を捻って後ろからこっそり近づいて、乱暴に頭を撫でる。
「うわっ!」
 びっくりしてる、びっくりしてる。可愛いな、この反応。
 士郎君の手元にあるサンドイッチはまだ封が切られていない。
「お昼まだでしょ? 一緒に食べよ」

 そういえば、昔から士郎君は知っていたけど、あんまり話したことはなかった。
「士郎君ってどんな趣味ある?」
「……編み物かな?」
 ちょっと考え込んだ後に言葉が出てきた。
「へー、男の子なのに珍しいね。何時頃から?」
「確か中一の冬。姉ちゃんが編んだの見て、見よう見まねでやったら姉ちゃんより上手くできたからかな。
 昔から色々と負け続けていたけど、あの時の姉ちゃんの悔しがる顔が忘れなくてね」
 そっか……ちょうどあの頃からか。

 士郎君はさっき来たメールの返信をやっているみたい。
「彼女から?」からかい半分に尋ねてみる。
「違いますよ……只の友達からです」少し辛そうな顔していた。
 あっちゃー、軽い冗談のつもりだったのにNGワード言っちゃった。
 ついこないだふられたばっかりの子に言っちゃいけない言葉だよね。
「えっと……週末空いてる?」話題をかえよう、話題を。
 少し携帯を見た後に一言「空いてますけど」
「じゃ、一緒に映画でも見に行かない?」
「いや、別に――いいですけど、何でオレがですか?」
「んー、友達と見に行く約束してたんだけど、キャンセルされちゃって急に暇になっちゃったから」
 本当はそんな事ないんだけどね。少しぐらい勿体つけた方がいいかな?

273義姉 第3回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/05(水) 20:09:10 ID:KNf2qwp+
        *        *        *
『田中』

「――という訳だから……」
 深刻そうな顔で三沢は相談してくるが話は凄く簡単。告白したはいいが恥ずかしがってお互い避けているだけ。
「あんたらようやく告白したの?」
 その言葉で三沢は恥ずかしそうに俯いていた。
 こいつらひょっとしてお互いが好きなの隠しているつもりだったのだろうか。私はてっきりとっくに付き合っているけど皆に言い出す機会がなくて恥ずかしがって隠しているものとばかり思っていた。
「で、私にどうして欲しいわけ?」
「一緒に遊びに言って、ちゃんと言いたいんだけど……」
「ふんふん、自分で言い出すの怖い。代わりに私に誘ってくれと。で、お邪魔者達は勝手にドタキャンしろって事か」
「いや、別にそこまでは――」

 ふふん、何だかキューピットになった気分だ。
 あいつ昨日今日とはぐれメタル状態で捕まえられないから、とりあえずメールでっと。
『週末遊びに行こう』
『三沢も一緒?』
 すぐさま返事が返ってきた。
『そ、いつものメンバー』
 さあ食いついて来い、食いついて来い!
『パス、用事が出来た』
 ――わお、選択肢ミスった。

「えっと……ごめん。あいつ行けないってさ」
 多分今私凄い引き攣った顔している。
274義姉 第3回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/05(水) 20:10:13 ID:KNf2qwp+
        *        *        *
『智子』

「うー……」
 凄くタイミング悪い。チャンスの女神には前髪しかないって本当だ。
 前世ででも何か悪いことしたのかな私。

 トボトボと一人駅へ向かう。いつもなら一緒なのに。
 少し顔を上げてみると遠くに士郎の背中が見える。何だ、まだまだツキが向いてるジャン私。
「誰、その人?」
 隣を歩いている女の人と楽しげに話している。
 うちの学校の人だ。でも私のよく知らない人。二年か三年の人。
 入学してからいつも一緒だったから士郎の知っている人なら私も知ってなきゃおかしい筈なのに――
275義姉 第3回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/05(水) 20:11:56 ID:KNf2qwp+
        *        *        *
『士郎』

 ちょっと遊びに誘われて、一緒に帰ろう、とか言われたぐらいで期待しちゃいけないんだよな。
 うん――三沢もそうだったし。

「姉ちゃんって明日予定あるの?」
 学校では大抵姉ちゃんと一緒だった筈だから相手ってモカさんの言っていた相手って姉ちゃんなのかな。
「ないけど。どうかしたの?」
「いや別に――。なんでもない」
 考えすぎだ、考えすぎ。
「そういう、あんたはあるの?」
「――一応は」
「それは良かった」
 何故か姉ちゃんの顔は安堵した笑みを浮かべていた。
 やっぱり姉ちゃん妙に優しい気がする。いつもなら嬉々として人の傷口に塩塗りこみそうなのに。
「何が?」何が良いのかわからないから聞き返してみる。
「あんた週末に独りうじうじしてたら、また勝手に落ち込んで腐ってるでしょ」人を少し馬鹿にした口調。
 なんだ、あんまり変わってない。気のせいだ。
「うっせーな」
 ――間違っちゃいないだろうけど。

「そういえば、あんたの父さんって何してたの?」
「へ? 今、単身赴任中だろ?」
「違うって、生みの親の方」
 そういえば、そんな話今までしたことなかった。小さな頃は親の目もあってか遠慮して、気がついた頃には完全に忘れていた。
「――多分、農家かな……」
「多分って何よ、それ」
「小さな頃に離婚してから一度もあってないから……正直住んでた場所もよく知らない」
 五歳のとき別れてそれっきり。電話も手紙のやりとりもない。写真は殆どお母さんが処分した。顔も声もうまく思い出せない。
 でも、覚えている顔はある。怒鳴りつけている顔。本当は優しく頭を撫でてくれた事もあったのに、その時のことは随分とぼやけてしまっている。
「――姉ちゃんのお母さんは?」
「こっちは普通の主婦。それで交通事故で死別。八歳の時」姉ちゃんは天井を見上げていた。
「ふーん」
 義理の姉弟であることすら半分忘れかけていたけど、オレ達本当の両親は全く別で本来なら何の縁もゆかりもないんだよな――
276名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 20:13:23 ID:hC8DjQKq
>>266

その修羅場3角関係はダ・カーポ2の音夢と由夢と主人公に似ているよな
まあ、こっちのほうが修羅場とかドロドロしているから好きだけど
277義姉 第3回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/05(水) 20:14:39 ID:KNf2qwp+
姉ちゃんENDは裏表二つ案はあるんだけど
話の展開からして智子ENDは全く考慮していないんだよな…

>>248
それは神の意志(と書いてお話のご都合と読む)
278名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 20:28:15 ID:jOj2Up0t
>>277
親友同士で修羅場の予感。モカさんガンバ。
279名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 21:16:06 ID:ESPaqQSV
モカさんを応援している俺ガイル
280名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 21:50:57 ID:R+AQgJLl
>>277
GJ。
徐々に姉に対する意識が変わるところが地味に良さげ。
そして、親友達が絡むと言う展開もどろどろしそうでツボです(w
281名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 22:03:00 ID:HK9lz+bK
涼子姉ちゃん…
実母を事故で亡くすわ惚れた相手はもういないわ
前世では義弟が心中するわ……
姉ちゃんの幸せを祈らずにはいられない。

そして士郎、本当に夢だと思ってるしorz
282名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 22:16:50 ID:al95VNiM
>>274
>前世ででも何か悪いことしたのかな私。
無理心中を……。
283優柔 最終話-A ◆I3oq5KsoMI :2006/04/05(水) 22:33:19 ID:NyVcglFs
僕は即断することができませんでした。
何故ならこの瞬間に頭に浮かんでいたのは、先輩のことだったからです。
僕の中で先輩は、性欲解消の相手でした。僕がしたくなったらさせてくれるし、面倒なことは何一つ言いません。
こんな便利な人はいない、そう思って好き勝手にやっていました。
でも最近は、先輩に対する感情は変わっていました。
「椿ちゃん・・・少し考えさせてくれないかな?」
泣いている女の子を前にこんなことしか言えないなんて、僕はとことんヘタレです。
「なるべく早く結論を出すから。もう二股みたいな関係は終わらせるから、ちょっとだけ待ってほしい」
「うん、分かった・・・ゆう君のこと・・・信じてるよ」
僕は・・・矛盾しています。
口では結論を出すと言っていながら、心の内ではまだ結論を出せる状態ではないから。
この期に及んで「どちらも捨てることなんてできない」って思っているから。
どこまでも腐った人間です。


ゆう君・・・どこまで優柔不断なの?
こんな私を前にしてるっていうのに決めることができないなんて、そんなんじゃ世渡り上手になれないよ。
ゆう君とは将来温かい家庭を作っていくんだから、決めることはすぐに決めてもらわないとね。
ゆう君は3児のパパになる予定なの。男2人と女1人が理想かな。
だからゆう君、シャキッとしなさい!そんなんじゃダメだよ?
それから・・・メス犬への罰だけど、やっと準備ができたわ。
そろそろ実行に移そうかな。問題はいつするかだけど・・・


今日も先輩と旧用務員室に来ました。
この学校の更衣室にはシャワールームが併設されているので、先輩は今日もシャワーを浴びてきたようで、髪が微かに濡れています。
今日呼び出されたのはいつもようにセックスするためと思っているのでしょう。
でも僕は違います・・・ちゃんと言わなきゃ。

「先輩・・・こんな関係に不満は無いんですか?」
「不満って?」
「だって僕、先輩の身体ばっかり目当てにしてるんですよ?先輩がヤラせてくれるからって調子に乗ってるだけなんですよ?
何で先輩は怒らないんですか!先輩みたいな良い人が僕の言いなりになるなんて馬鹿げてるじゃないですか!
僕のこと好きだって言うのに僕が椿ちゃんと一緒にいても何で責めないんですか!」
僕はいつの間にか声を荒げていました。
「僕は最低の人間なんです!実質的に二股かけてどっちも手放したくないって思ってるんですよ!
早く僕のことを見捨てて下さい!今すぐ僕を殴り飛ばして下さい!僕を嫌いになって下さい!!」
284優柔 最終話-A ◆I3oq5KsoMI :2006/04/05(水) 22:34:10 ID:NyVcglFs
僕はどうしようもない人間です。
だって・・・先輩のことを好きになっていたから。
以前は先輩を好きになることはないと思っていました。でも、それは外れました。
僕にされるがままの先輩・・・言い換えれば、何をされても僕を愛してくれる先輩に、気が付いたら情が移っていました。
それが身体を重ねるうちに恋心に変わっていたのです。
先輩にぶつけた言葉は、僕の本心ではありません。本当は嫌われたくありません。
僕の目からは涙が出ていました。
それは先輩のために流した涙ではありません、僕のためのものです。
自分が情けなくて泣いているんです。
こんな状況でさえも僕の心と身体は自分のために動いています。
僕は僕という存在が、最低のゴミだということを改めて思い知りました。
「嫌いになんかなれない・・・」
先輩は僕を抱き締めました。
「私は優希君が好きだから・・・嫌いになれない」
優しい言葉でした。それが僕にはとても嬉しくて、とても痛いものでした。
「僕は今まで・・・先輩を傷つけてきたのに・・・ごめんなさい・・・ごめん・・・なさい・・・」
僕は無様に泣きました。今日まで生きてきて、こんな無様な泣き方はないと思いました。
でも先輩は、優しく抱き締めてくれました。そして、僕と一緒に泣いてくれました。
僕は何て馬鹿なことをしたんでしょうか。
こんなに僕のことを想ってくれている人がいるというのに、それを無下にしたのだから。

ここまできて結論を出せない人間なんているんでしょうか?
僕はとことん、生きる価値のない人間だと思います。
でも、こんな僕を好きだと言ってくれる人が2人もいます。
彼女達に申し訳ないです。僕なんか好きにならなければ、もっと素晴らしい人生を送ることができるはずです。
どうすれば2人を幸せにすることができるか、それを考えました。
この腐った思考回路で考え抜きました。
それぐらいしか今の僕にできる彼女達への償いはありませんから。

僕は1つの答に辿り着きました。
そしてそれは、非常に簡単なものでした。
これなら椿ちゃんにも先輩にも償いができます。

「僕が死ねばいいんだ」

285優柔 最終話-A ◆I3oq5KsoMI :2006/04/05(水) 22:35:20 ID:NyVcglFs
あの女にお仕置きしてやろうと思ったんだけどね、その必要がなくなっちゃった。
杉山先輩・・・死んじゃったの、交通事故。
車にはねられて、即死だったんだって。
それで、あんなメス犬の顔なんか二度と見たくなかったんだけど、一応お葬式に行ったの。
みんな泣いてた。あの人は友達が多いみたいであちこちから嗚咽が聞こえてきた。
何であんなところに私が行ったのか未だによく分からないの。
学園有数の美人だったからか、あの人とゆう君を巡って言い争ったからか、私と同じでゆう君を愛した人だったからか・・・

お別れの挨拶か何かで、「棺にお花を入れて下さい」って言われたから、仕方なく先輩の亡骸のところに行ったの。
少し前までゆう君とセックスしてた女が、今では一言も喋れないし動けない。
だからちょっと気味が悪かったんだけど、みんなお花を入れてるからね。私もお花を入れたの。
その時に先輩の顔を見て・・・嫉妬しちゃった。
だって先輩、すごく綺麗だったんだもの。
私の知ってる限りでは、先輩はいつもスッピンだったみたい。
それなのにあんなに綺麗だったんだから、世の中不公平よね。
でね、死に化粧された先輩の顔は、今まで生きてきた中で見た人の中で一番美しい顔だった。
元が美人だったから、超美人って感じ。
それにすごく安らかな表情だったと思うの。
交通事故っていうぐらいだから、損傷が激しいとか思うじゃない?
でもね、外傷は一つも見当たらなかったな。まあ、ちゃんと見たわけじゃないから何とも言えないけど。
顔に傷がついてなかったし・・・本当に寝てるみたいだった。

それからね、もう一つ嫉妬したことがあるの。
杉山先輩が死んで・・・ゆう君の心の奥で、先輩が生き続けることになったこと。
こればかりはどうしようもないな。
ほら、昔の漫画であったじゃない?
未亡人に恋する大学生が言ったセリフ。
『生きていればいろんな欠点も見えてくるだろう。でも、死人は無敵だ』って。
それと同じ。
ゆう君は杉山先輩のこと、憎んで忘れることなんかできなくなった。
悔しいよ・・・ゆう君の心を100%支配できなくなったから。

杉山先輩が死んで、私が思ったこと。
「ざまあみろ」とか「バチが当たった」とか、そういうのじゃない。
なんか・・・空しいなって。
殺意を抱いたこともあったし、鉛筆が知らないうちに折れてたこともあったけど、実際に死なれてみると違った。
ホント・・・後味悪いな。

ああ、それから。先輩へのお仕置きのことだけどね・・・
私が実行しようとしてたことは、
『先輩の恥ずかしい姿をビデオに撮って、これをばら撒かれたくなかったら、ゆう君に二度と近づくなって脅迫する』
そのためにわざわざスタンガンとデジタルビデオ買ったのになあ。
ビデオの内容は、男子にレイプさせるとかそういうのじゃなくて、私が先輩に潮を噴かせるってものだったの。
だって私、仲の良い男子なんてゆう君しかいないし。
ゆう君にレイプさせても先輩を悦ばせるだけだしね。そもそもゆう君にそんなこと言えるわけないじゃない。
286優柔 最終話-A ◆I3oq5KsoMI :2006/04/05(水) 22:36:19 ID:NyVcglFs
それよりも問題はゆう君だった。
何日も学校に来なかったし、電話を掛けても出なかった。
さすがに心配になってゆう君の家に行ったの。
そしたらゆう君、手首にカッターを押し当ようとしてた。
間一髪だったな、もう少しでゆう君は自殺するところだったんだから。
私は必死で止めた。
ゆう君は抵抗したけど、何とかカッターを取り上げることができた。
でもね、ゆう君は言ったの。
「僕が先に死んでたら良かったんだ。さっさと自殺してたら先輩は死んでなかったんだ」って。
さすがに私、キレちゃった。
リビングにあった椅子でゆう君が動けなくなるまで殴った。

とりあえずその場は収拾できたんだけど、あの状態じゃまた自殺するかも知れないって思った。
私はゆう君に死なれたくないし、ゆう君は死にたいって言うから、すごく焦った。
この状況を打破するにはどうすればいいんだろうって考えたの。
そしてとうとう思いついたんだ。
それはね・・・ゆう君が私以外のこと、考えられないようにしようってこと。

ゆう君の手足を拘束して、全く動けない状態にしたの。
手足をちょん切ったりするのも考えたんだけど、それじゃあ可哀想すぎるよね?
ゆう君とはこれからもどこかへ遊びに行きたいから、普通の監禁状態にしたっていうわけ。
まあ、監禁自体、普通の行為じゃないけどね。
でも、ただ監禁するだけじゃない。
ゆう君の心を支配するために、まずはゆう君をドン底に突き落とす必要があった。

私はゆう君を暴行して、罵声を浴びせ続けた。
「ゆう君は最低の人間なの!ゆう君のせいで杉山先輩は死んだのよ、分かってるの!?」
「杉山先輩は能力の優れた人だったからきっと一流の大学に行って幸せな人生を送るはずだったのにゆう君のせいで全部台無しになったのよ!!
ゆう君のせいであの人の人生は終わっちゃったのよ!!!」
「あの人に関わらずに私だけを愛してたら良かったのよ!!なに二股みたいなことやってたのに平気な顔してたの!!!どこまで腐ってるの!!!!」
「本当にゆう君は最低の人間!!!!この世で一番の最低最悪の人間よ!!!!!!!!」
こんなことを毎日毎日、自分でも嫌になるぐらい言い続けた。
毎日毎日、手から血が出るまで殴り続けた。
私はゆう君のことを愛してるから、本来ならこんなことはしたくなかった。
ううん、できなかったと思う。
でもやれたのは・・・ゆう君を愛する気持ちがあったからってことと、杉山先輩への妬みがあったから。
私は今までの積もり積もった情念を、ゆう君に全てぶつけた。

ゆう君には何も食べ物を与えなかった。勿論、水さえもね。
それを1週間ぐらい続けたの。
極限の飢餓と自分を責める気持ちでね・・・ゆう君はとうとう限界までいったみたいだった。
何回もうわ言を繰り返すの、「僕は最低の人間です、生きてる価値のない人間です」ってね。
胸が痛んだけど、ゆう君のためだと思って心を鬼にしたわ。
287優柔 最終話-A ◆I3oq5KsoMI :2006/04/05(水) 22:37:34 ID:NyVcglFs
もう死んでも可笑しくないっていうところでね、ゆう君は聞いてきたの。
「・・・どうして・・・つばき・・・ちゃんは・・・ぼく・・・みたいな・・・くずに・・・やさしく・・・して・・・くれるの・・・」
私は耳元で囁いた。
「それはね、ゆう君を、愛してるから」
「ぼく・・・は・・・くず・・・なの・・・に」
「そう、ゆう君は、クズ。でもね、そんなクズを、私だけが、愛してるの」
言葉を区切って、ゆっくりと理解させるように。
「つばき・・・ちゃん・・・だけが・・・」
「そう、私だけが、ゆう君を、愛してるの。私以外は、ゆう君を愛していない」
「つばき・・・ちゃん・・・だけ・・・」
「ゆう君が、愛してるのは、誰?」
「・・・つばき・・・ちゃん・・・」
「そう、ゆう君が、唯一愛してるのは、私。やっと分かってくれたんだね」
「つばき・・・ちゃん・・・あいして・・・る・・・」
「そうよ、ゆう君。ごめんね、苦しい思い、させちゃって」
「つばき・・・ちゃん・・・は・・・わるく・・・ない・・・ぼく・・・を・・・あいして・・・くれ・・・てる・・・」
・・・良かった、成功。

私はすぐにゆう君のご飯を作った。
一週間も食べてないんだから、普通のご飯を食べさせたら死んじゃうからね。
栄養満点の野菜スープを作ったの。
材料を全部ミキサーにかけて、固形成分を無くしてね。
「ゆう君、ご飯だよ」
私はそれを口移しでゆっくり飲ませてあげた。ゆう君はちゃんと飲んでくれた。
それからゆう君は何回もお礼を言ってくれた。
脱水症状で涙は出ないみたいだったけど、泣きながら感謝してたのかな。

それからはゆう君を看病した。
本当はお医者さんに診てもらったほうが良いんだけど、何とか自分でやった。
必死にゆう君を看病して、一命は取り留めた。
憔悴しきってたゆう君は順調に回復していったの。
「ゆう君、もう死にたいなんて言わないよね?」
「うん・・・ごめんね、椿ちゃん。これからは椿ちゃんのためだけに生きていくから」
これは賭けだった。
もしも失敗してたら、ゆう君は死んでたか狂ってたかもしれない。

それからゆう君は、私の言うことは何でも聞いてくれるようになったの。
私は嬉しかった・・・でもね、それだけじゃまだ不十分。
今度はね、ゆう君が私以外の女に興味を示さなくしようって考えたの。
チン○ンをちょん切るとか、そういう野蛮なことじゃ決してないよ?
ゆう君とは将来、子供を作る予定なんだから。
じゃあ何をしたかって?
それはね・・・パブロフの犬って知ってるかな?あれをしたの。
まず、ゆう君の身体に電流が流れるような仕組みを作って。
それから、ハダカ本を買ってきてゆう君に見せてあげる。
私はチン○ンを握って、少しでも反応したら・・・後は言わなくても分かるよね?
電流を流すだけじゃなくて、直接殴ったりをしばらく続けたんだ。
何日も何日も。
そしたらね・・・ゆう君、女の人に遭遇すると反射的に避けるようになったの。
補足しておくけど、『パブロフの犬』が終わった後は、ちゃんとヌイてあげたよ?
他の女に興味を無くすのはいいとして、私にまで興味を無くされたら本末転倒だもんね。
288優柔 最終話-A ◆I3oq5KsoMI :2006/04/05(水) 22:38:25 ID:NyVcglFs
ゆう君は、今ではもう、すっかり私のもの。
浮気することも無くなったし、私をすごく愛してくれる。
でもゆう君、ちょっと変わったかな。
ゆう君ね、マゾになったの。
昔はどっちか分からなかったんだけど、今では完全なM。ドM。
エッチする時は騎乗位しか無理みたいで、ゆう君が上になることは無くなったんだ。
それに、私に殴られてチン○ンをビンビンにしちゃってるの。
しまいにはアナルを犯して下さいって・・・擬似ペニスをくわえ込んでる時の顔、すごく可愛いんだよ?

先輩が死んでからもう1年も経った。
私はゆう君の家に一緒に住んでる。
お母さんを説得するのが大変だったけど、今では私達を応援してくれてる。
ありがとうお母さん、近いうちに孫の顔が見れるよ。

ゆう君にね、「私が死んだら、ゆう君は悲しい?」って聞いたの。
そしたらゆう君、ボロボロ泣き出しちゃって。
そんなに私のことが好きなの?もう、嬉しいなあ。

学校に行く時は、手を繋いでいくの。
お昼ご飯の時は、お互い食べさせ合って・・・今では学校中で有名なバカップルだよ。
それから、校内でもエッチするんだけど、旧用務員室と屋上と特別棟のトイレではしないようにしてる。
先輩のことを思い出して、泣いちゃうみたいだから。
やっぱり完全には先輩のことを消せないみたい。
でも、それだけは許してあげる。
私は死ぬまでゆう君を縛り続けるから、おあいこだよね、先輩?

先輩は安らかに眠って下さい。今度ゆう君と一緒にお墓参りに行きますからね。
私達、あなたの分まで幸せになりますから。
私がゆう君を大事にしますから・・・死ぬまでずっと、ゆう君を愛し続けますから。

エンド1 『屑犬』
289名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 22:42:11 ID:al95VNiM
・・・怖っ。
だけどゆう君にはふさわしい気もしたりしなかったり。
290 ◆I3oq5KsoMI :2006/04/05(水) 22:42:21 ID:NyVcglFs
とりあえず、パターンAはこんな感じです。
このエンドで言いたかったことは

・椿ちゃんは結局、椿様になれない優しい女の子だった
・選択肢通りのエンディングにはならない

ということです。
パターンBもすぐに投下しますので気長に待ってて下さい。
291名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 22:43:39 ID:OXoEXD3r
>>266

祥ちゃんの空気の読めなさに感涙
292名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 22:45:46 ID:Wtr/67WW
>>290
パターンBは先輩がヘタレを調教するのか・・
そうなると自然的に椿ちゃんは交通事故で死亡フラグが立ったねw
293名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 22:46:53 ID:H+QNpo9R
先輩(´・ω・)カワイソス
294名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 22:56:12 ID:0lwXD4Fm
椿ちゃん結構やさしい子なんだなぁ
ゆう君早く死ねと思ってたのに
後半になったら椿ちゃん怖ぇえ((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル
ゆう君くずだからってMになるなよってなっちゃったよ
ゆう君と付き合わなければどっちもいい子だったのに・・・
とりあえず先輩(´・ω・)カワイソス
295名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 23:03:50 ID:qv2aE8NR
椿ちゃんが壊れてしまってから、主人公が頑張って元通りする過程を期待していたんだけど
やはり、椿ちゃんは心優しい言葉様だったんですね
296名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 23:04:15 ID:pDFDAHp0
いや、十分怖いわ。>椿ちゃん
297名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 23:07:25 ID:SUV6jF1b
椿ちゃんが健気だと思ってたが、
やっぱ、怖えええええええ((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル
パターンBは先輩の刺殺でゆう君の死亡の可能性が高そう
298名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 23:10:03 ID:ESPaqQSV
(((゜д゜;)))

い、いや、とりあえずゆう君は生きてる!

Bは先輩endか?
どうなるかはわからんが……
299名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 23:17:09 ID:IsXi5I3u
先輩応援してたからキツイいっす・・
300名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 23:19:09 ID:B0aNu4Ft
きっとCでゆう君死亡なんだよ
301名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 23:34:02 ID:8l/q72NR
えっ…そそっそっそれじゃぁDで3P?
302名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 23:59:51 ID:+vLDBBnH
>>301-302

お前達!神作者を追い詰めるなよw
303名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 00:26:42 ID:cVoJphYf
>>302
おまいもどさくさ紛れに加わってるんじゃないか!w
304名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 03:21:38 ID:Bo8SSUXZ
作者はゆう君の事が大好きなんだね
305名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 12:36:17 ID:jmz7nweF
すまん、細かいことだが
>ゆう君の身体に電流が流れるような仕組みを作って
これ、流す量によっては死ぬ。
人間が電流で感電死するには数10mA、場合によっては数mAで死ねるから……
ちうかこういう装置作れるって、椿ちゃんの工学と人体の知識すごいなw
306名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 13:50:48 ID:WUf703AF
これもどうでもいいことだけど一週間水もなしだと死なない?
食べ物抜くなら一週間くらい大丈夫だろうけど水は死ぬんじゃないかな。
307名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 13:58:00 ID:ZmxPd0rH
水は死ぬね。まあ、あれだよ。修羅場力は物理法則を超えるから。
308名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 14:05:51 ID:5XNySLyg
椿ちゃんの唾液があるじゃん
309名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 14:36:29 ID:B3sONt7Y
>>305-306
答え 愛の力は無限力

まあ水は三日目辺りから峠だが無気力引篭もり状態なら
デッドラインの生きるかどうかの瀬戸際だな
310名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 14:41:24 ID:ZxtY7efR
答え:彼はすでに死んでいる。あのエンディング後半の内容はすべて、発狂した椿の脳内世界での出来事。
311名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 15:00:27 ID:+XIesTpE
答え:先輩は椿ちゃんが無意識下で突き飛ばした結果即死した
312名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 15:11:49 ID:ET66b7G8
源氏物語って男性視点で見るとハーレムもの扱いされる事が多いけど
女性視点で見ると実にこのスレ好みの修羅場モノだよな。
313名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 15:13:10 ID:DSuDQzSY
椿ちゃんがどんどん神懸かってくんですけどww
314名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 15:17:23 ID:+XIesTpE
>312
無駄に複雑な家系図、
生霊使って呪い殺す奴までいるぐらいだからな…
315名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 15:32:02 ID:5dA898Lc
>>312
全54巻に渡る修羅場巨編か
女性視点でリメイクしたらおもしろそう
316名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 15:39:32 ID:ET66b7G8
三国志とか里見八犬伝やらは良く漫画アニメのモチーフになるけど
活劇要素が無いからか源氏物語ってあんまり無いよな。もしかしたら
そんなエロゲが既にあるのかも知れんが。大奥で視聴率取れるなら
コレも充分アリだと思う。

このスレ的には光源氏はクズ系主人公?
317名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 15:44:26 ID:+XIesTpE
>316
どっちかってと下半身に忠実な止系だな
318名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 15:49:30 ID:5XNySLyg
もしかして
>杉山先輩・・・死んじゃったの、交通事故。
この前の時点でゆう君自殺しちゃってるんじゃねーか
で杉山先輩は自殺したと・・・
後は椿の脳内
319名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 16:04:27 ID:eEVzbBGY
米軍のサバイバル・マニュアルだと、水は3日間、食物は5日ないし1週間止められると死ぬな。
これは充分な訓練を受けた軍人のデータだから、一般的日本人のゆう君はこれより短そう。
320名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 16:35:25 ID:Ijs7apI5
そんなに突っ込むなよ…
321名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 16:37:12 ID:WUf703AF
>>316
自分好みのょぅι゛ょを囲って育てる究極のロリコン
322『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/06(木) 18:31:25 ID:lt8YxYFu
もうどれぐらい走っただろう。時間も分からない。もとい、この屋敷で時間なんて無いのかもしれない。
なんとか志穂は振り切ったが、道に迷ってしまった。まったく、自分の家で迷子になるなんざめったになかろう。
「交番もないしネ。」
くらっ
うぅ……。目眩がする。腕からまた血が溢れはじめた。さすがの健康体な俺でもコリャヤバい。
再度勇気を出して引き返し、医務室へ戻ろうか。
「間に合うか微妙だなぁ。」
そう呟きながら引き返そうとしたそのとき。
「うわぁ!!」
来た道にお嬢が立っていた。ひどく無表情(無表情にひどいもあるのか)な顔で。凍えるほどの冷たい顔で睨み付けられた。その視線に俺の心は悲鳴をあげそうになった。
「お、お嬢!今までどこにいたんすかぁ!?」
人間切羽詰まりまくると変に落ち着くらしい。
いつものテンションでお嬢に話しかける。
「………」
変わらず冷たい視線。
「人生笑わなきゃ損にゃ。スマ〜〜イルにゃ!」
どこぞの猫商人のようなセリフで話すが……「………」
効果無し!
「なんかあったんすか?そんなに落ちこんで。」
「………」
何も言わない。無くし物リストに言葉でも追加したのだろうか。
と、
チュッ
という効果音が付くようなキスをされた。
「お、お、お嬢?!」
声が裏返っちまった。いきなりだもんなぁ。やるね!
スッ
お嬢が一歩後ろに下がる。そしてフッと、恐ろしい笑みを浮かべ………一言
「生きたかったら………私だけを………愛しなさい!!!」
ズッ!!!
まるでその言葉が合図のように、俺の右胸から長い刃が突き出ていた。
あぁ……だから…後ろに下がったのネ………
「え……あ……」
イタイ
すごくイタイ
もし痛みを無くしても、これなら取り戻せるだろうなぁ……
「あら〜。いけません……ねぇ〜。見ず知らずの女の子とキスしちゃうなん……てぇ!」グググ
言葉に力を込めながら、更に刀が深く刺さる。
「がはっ…ぁあ……み、見ず知らず……って…あれ、がぁ……は。」
あれは……
あの少女は………
誰だ?
ダレダ?
ワスレテシマッタ!?
「いいましたよねぇ〜?…私意外ノ…女の子と仲良くしたラァ…コロスッテェェァァァ!!!!」
ズシュ!
右胸から突き出ていた刀が、左に薙払われた瞬間。
何も見えなくナッタ。
323『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/06(木) 18:32:52 ID:lt8YxYFu
まだまだ続きます
324名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 18:36:59 ID:+XIesTpE
死亡率250%って奴ですか?
325名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 19:02:29 ID:NpNMS8iK
主人公が死んだぞ。おいw
326名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 19:05:09 ID:Ijs7apI5
死体を巡って三つ巴の戦いが…
327名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 19:13:31 ID:Ryhj/FF9
分割するとなると顔と下半身の倍率が高そうです・・・
328名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 19:34:58 ID:DSuDQzSY
まだまだ続くのか!?wwww
329名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 19:36:18 ID:5XNySLyg
まぁwwwwwwwまぁwwwwwwww
330名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 19:59:49 ID:wITu08vC
ところで、まとめサイトの管理人さんの近況が『驚愕』となっているんだが、
一体何がおこったのだろうか?
331名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 20:07:33 ID:+XIesTpE
>>330
1.結婚してそうそう里帰りされた
2.結婚の式取りが決まる中、半年前に別れた彼女がお腹を大きくして(ry
3.結婚の式取りが決まる中、知らない小さな女の子から突然パパと呼ばれ、学生時代に別れたきりの(ry
4.結婚の式取りが決まる中、初恋の人から唐突に告(ry
5.結婚の式取りが決まる中、次から次と告(ry
332名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 20:22:39 ID:m8YlyCBb
>>331
最後には刺されるのが決まってるような展開だw
333名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 20:25:44 ID:cVoJphYf
まとめ管理人さんが主人公のナマモノジャンルSSまだー?w

>>330
6.義理の姉(予定)にロックオンされた
7.義理の妹(予定)に(略
8.義理の兄(略
9.義理の弟(略
10.実の(略
334名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 20:29:35 ID:wO6bfe/G
つーか何でハッピーな感じの「驚愕」がないのか。おまいらw 
335名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 20:37:45 ID:Vwn0xfrg
何でってそりゃねえ……

11、子供の頃に一目惚れした女の子が突然告白。
12.高校時代に一目惚れした女の子が(略
13、大学時代に一目惚れした(略
14.入社当時に一目惚れした(略
15.結婚式場で一目惚れした(略

336名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 20:42:56 ID:HPB7JyKZ
99.奥さんがスレ住人だった
337優柔 最終話-B ◆I3oq5KsoMI :2006/04/06(木) 20:47:52 ID:WCBua39x
僕は即断することができませんでした。泣きながら答えを待つ椿ちゃんを前にしても、僕はできなかったのです。
僕はハンカチを取り出して椿ちゃんに渡しました。そして、泣き止むまで待ちました。
ああ、そういえば前にもこんな場面がありました。
僕は何回同じことをしているのでしょうか。何回女の子を泣かせれば気が済むんでしょうか。

「椿ちゃん・・・僕の話、聞いてくれる?」
「うん・・・」
僕は自分の気持ちを正直に言いました。
「僕は今まで最低なことをしてきたんだ。椿ちゃんと別れようって言ったけど、心の奥では未練があって曖昧な行動ばっかりしてた。そこに先輩が来て、僕を慰めてくれたんだ」
椿ちゃんは黙って聞いてくれています。
「でも先輩は、僕のことが好きだった。でもそれを伝えるのが恐くて、僕に身体を許すだけだった。
それからしばらくして、先輩に告白された。でもそれは、お互い傷つかないにしようって内容だったんだ。
告白の返事はいい、好きなだけヤラせてあげる、だから嫌いにならないでほしいって言われて・・・僕はその時思ったんだ。
『ああっ、便利な性欲処理機が手に入った』って。それから僕は・・・椿ちゃんが知っての通り、二股みたいな行動を取ってた」

「僕はそんなやつだよ。結局は自分の利益のために平気で人の心を傷つけるクズなんだよ。それでも今は・・・椿ちゃんともう一度やり直したいと思ってる。
椿ちゃん・・・そんなクズとやり直したい?今だったら僕を思いっきり殴って帰れるよ?僕を捨ててもっと誠実な人と付き合えるんだよ?」
「・・・ゆう君のバカ」
「えっ?」
「私にはゆう君しかいないこと、知ってるくせに」
「それじゃあ・・・」
「うん・・・恋人に戻ろう・・・ゆう君」

先輩に言わなければいけません。「もうこんな関係は止めよう」って。
椿ちゃんには「先輩にはちゃんと僕が話をつけるから」と言った手前、絶対に有耶無耶にできません。
胃が痛いです。
ですがちゃんと決別しなければ、それは人間として終わっていることになります。

先輩を呼び出し、後は話をつけるだけというところで・・・躊躇ってしまいました。やっぱり僕はクズです。
「どうしたの、優希君?」
いつもなら先輩は、跪いてチャックを下ろし、ペニスをしゃぶってくれます。
しかし僕がそれを断ったので、先輩は不思議そうに首を傾げています。
「先輩・・・もうやめませんか」
「えっ・・・」
「こんなセフレみたいな・・・セックスするのはもうやめましょう。昔みたいに、友達に戻りましょう」
先輩は僕の言うことが理解できないのか、急に笑いだしました。
「ふふっ・・・ちょっと、そんなジョーク笑えないってば。それに何で敬語なのよ?今さら他人行儀?」
「先輩・・・僕は本気です」
「新しいプレイでしょ?そうやって私を不安にさせて。それ本当に堪えるからやめてよね」
「先輩!」
僕が大声を張り上げると、先輩の身体は微かに震えました。
「椿ちゃんとやり直すんです」
「いっ、今のままでいいじゃない。私とエッチして水谷さんともつき合って、このままでいいじゃない」
「・・・僕は椿ちゃんが好きなんです。だからこれからは・・・椿ちゃん以外の女の子とはセックスできないんです」
「ねえ・・・そろそろ悪ふざけはやめてよ・・・私そういうの駄目なの、知ってるでしょ?」
「先輩・・・どれだけ身勝手なことを言ってるかは分かってます。でも僕は決めたんです・・・」
この瞬間、この場所からいなくなれたらどれだけ楽でしょう。
でも僕はまだ、続けなければいけません。
こんな嫌な思いをするのは、今までやってきたことのツケですから。
338優柔 最終話-B ◆I3oq5KsoMI :2006/04/06(木) 20:48:39 ID:WCBua39x
先輩の表情は、変わらず笑顔のままです。ですがそれに相応しくないもの――涙がありました。
「私ね、昔・・・いじめられてたんだ・・・『ちょっと可愛いからって調子に乗るな』って・・・それで・・・あんなキャラを必死で作ったんだ・・・」
重苦しい雰囲気、それはまるで、先輩の心の中を表しているように思えました。
「そうしたら・・・みんな私のことを・・・いじめなくなって・・・ずっとそのままでいこうって・・・でもね、優希君は・・・優しかったから・・・
私にどんなこと・・・言われて・・・も・・・否定しなかった・・・だから私は・・・好きになったんだよ・・・」
――もう止めて下さい。僕まで悲しくなります。
「本当の姿を・・・見せれる・・・のは・・・優希君だけ・・・なんだ・・・私・・・もっと・・・優希君の・・・ために・・・何でもする・・・から・・・
エッチだって・・・もっと上手く・・・なる・・・から・・・私を・・・捨て・・・ないで・・・」
とうとう先輩は大粒の涙を流しました。部屋中に広がる嗚咽も。
僕は・・・どれだけ悪いことをしたんでしょう。女の人を何回泣かせれば気が済むんでしょう。
僕もいつの間にか・・・泣いていました。
先輩は・・・勇気を出して僕に処女を捧げたんです。好きだと言ってくれたんです。
椿ちゃんと一緒にいても、我慢して僕に笑顔で接し続けていたんです。
それなのに・・・

でも、だからこそ、ちゃんと言わなければいけません。
「ごめん・・・先輩」
「・・・」
「それでも僕は・・・椿ちゃんを選びます。こんなこと言うのは、最低だけど・・・また前みたいに、男とか女とか関係なしに・・・先輩と笑い合いたいです」
僕は・・・生きてる価値の無いゴミクズです。
でも僕は、これからは椿ちゃんのために、生きていこうと思います。
僕は旧用務員室のドアに手をかけました。

・・・あれ?
開かない
何でだ
鍵は掛けてないはずなのに
・・・?
ああ・・・そうか
力が入ってないんだ
なんで
なんで入らない
・・・
そうか
そうなんだ

「僕は先輩に刺されたのか」


339優柔 最終話-B ◆I3oq5KsoMI :2006/04/06(木) 20:49:43 ID:WCBua39x
前からずっと・・・考えてたことがあった。
あの女に呼び出されて口論になった時。私は言い負かされた。
何で私は勝てなかったのか、それを考えた。
そしてようやく分かった。
あの女は、愛原を信じてる。
私は信じてない。それが敗因だった。
私が臆病なせいで、今の今まで愛原を信じることができなかったんだ。
でも・・・愛原を愛してるということは、あの女にも負けていないと自負してる。
どんな卑怯なやり方でも、愛原を愛した。
でも愛原は・・・あの女のところに行こうとしている。
何故?
それはたぶん・・・私があの女よりも愛が足りなかったから。
なら愛するって・・・もっと愛するって・・・どうやればいいんだ・・・

あっ

ひとつだけあったよ

殺してしまうことだ

もし愛原が天寿を全うすることができるなら何人もの女性が愛原を愛するだろう
でも殺すことなんて1人しかできない
そうそれは私
私にしかできないこと
私が殺してしまえば愛原の命は私が貰ったことになる
愛する者の命を奪うのが
それが究極の愛だって気付いた
だから私はこれから愛原を殺そうと思う
護身用に隠し持っていたバタフライナイフで
後ろから刺した


僕は・・・刺されたんですね。
ええ、別に恨んでなんかいません。それだけのことをやったんですから。
足に力が入りません・・・床に倒れてしまいました。
たぶん・・・お腹を刺されたんでしょうか。
先輩に後ろから抱きつかれたと思ったら刃物が刺さってました。
・・・痛いです。
尋常じゃないですね、これ。
先輩は倒れた僕を後ろから抱えてくれました。
何だか・・・お母さんに抱っこされてるみたいです。
僕は先輩の顔を見ました。
先輩の表情は今まで沢山見てきましたが、一番美しいと思いました。
でも・・・何で泣いてるんですか。
涙を流す必要なんてないですよ。
僕が死ぬだけなんですから。
あなたを不幸にするクズの命が消えるだけなんだから。
「優希君・・・愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる」
嬉しいです・・・こんなクズをそこまで愛してくれて・・・
僕の最期の言葉・・・言わなくちゃ。
「せん・・・ぱ・・・い・・・ごめん・・・ね・・・」


340優柔 最終話-B ◆I3oq5KsoMI :2006/04/06(木) 20:50:35 ID:WCBua39x
私は優希君の左胸を刺した。
目が見開いて・・・痛いの?
痛いってことはね・・・私に愛されてるってこと。
もっと愛してあげるね?
ほら、こうやって・・・えぐってあげたらね・・・もっと愛してあげられるよ。
・・・もうすぐ逝っちゃう。
優希君・・・すごく苦しいんだな。
そうだ・・・オチン○ンを気持ち良くしてあげよう。
優希君の感じるところ・・・よく分かってるよ。
早くしなきゃ。
こうやってオチン○ンをシュッシュッて扱いてあげたら・・・大きくなってきたよ。
じらしてあげたいけど・・・時間がないの。
優希君・・・気持ちいい?
もっともっと・・・気持ち良くなってね。
うん?・・・もうイクの?
いいよ・・・イッて。
あっ・・・すごくいっぱい出た。
うん?
もう無理みたいなの?
私が最期を見届けてあげるから・・・大丈夫だよ。
私に抱かれて・・・死んで。

私ったら大事なこと忘れてた。
私が気持ち良くなりたかったのに優希君が逝っちゃって。
オチン○ンは・・・もう入らないな。
しょうがない・・・
服を脱いで・・・優希君と重なり合おう。

ああっ・・・気持ちいいよぉ!
私達・・・誰よりも愛し合ってる。
こうやってね・・・オマ○コを太ももに擦ると・・・んっ、すごいよぉ。
あっ・・・くぁっ・・・んんっ・・・やっ・・・んぁっ!
はぁ、はぁ・・・もうイッちゃった。
そうだ・・・優希君の血で・・・お化粧してあげよう。
こうやって・・・こう・・・ああ、優希君・・・すごく可愛い。
可愛いよ・・・優希君。
私も・・・お化粧しよ。
まだ温かいね。
身体中に塗りたくって・・・どろんこ遊びみたい。
341優柔 最終話-B ◆I3oq5KsoMI :2006/04/06(木) 20:51:12 ID:WCBua39x
これでやっと・・・優希君は私のもの
優希君の命をもらって・・・私達は1つになったのよ
これでもう誰にも・・・取られることはない
あの女だって悔しがってるに違いないわ
もっと、もっと・・・愛し合おうね

「きゃあああああああっ!!!!」
・・・誰?
私と優希君の邪魔をするのは誰?
知らない人・・・男と女
せっかくいいところなのに・・・
邪魔だな・・・
ああそうだ
こいつら

殺しちゃえ


エンド2 『ひとつに』
342名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 20:55:47 ID:1BHz0kw0
何て見事な
D E A D E N D
343 ◆I3oq5KsoMI :2006/04/06(木) 21:00:46 ID:WCBua39x
このエンドで言いたかったことは
・先輩が綾乃様に進化してしまった
・ゆう君は死ななきゃいけないんですぅ!!
ということです。

それと、パターンAでいろいろツッコミがありましたが、真相はメル欄で。

後味が悪いエンディングばかりなので、全員生存エンドも投下したいと思います。
いつになるか分かりませんが、必ず投下するので待ってて下さい。
あと、どなたか先輩の絵を描いて頂ければ幸いでございます。お願い致します。
344名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 21:17:27 ID:/R6ocTdh
ゆう君の屑っぷりはとんでもねえな
345名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 21:21:34 ID:htVzJpLj
つー事はAはやはり脳内なのかな?
346名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 21:31:18 ID:zlZZgbut
GJ
347名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 21:32:39 ID:Bo8SSUXZ
やっとゆう君死んでくれたけど
なんか納得できねぇ
348名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 21:56:09 ID:R9P9ANkn
先輩がいいように弄ばれて嫌な奴が自己完結してたから?
349名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 22:20:29 ID:B3sONt7Y
> 715 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2006/03/11(土) 23:12:56 J7rExd7A
> 士郎が愛原君においでおいでしてるのが見えます

やっぱりというか何というか…
今度は舞い戻ってきた士郎君を愛原君が…
350名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 23:07:50 ID:X49a1mkR
>>343
椿ちゃん描いたし先輩も描きたいが、どーもイメージが固まらない。
351名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 23:14:22 ID:jM/y10h7
>>323
ワロタ
刺されまくってもう死にそうなのにww
ゆう君は晋也の爪の垢を煎じて・・・いやそのまま飲むべきだ
352名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 23:17:55 ID:LtajoDBd
>>343
描きたいのだが、先輩がどんな顔か想像すると、最初の俺口調のせいか、
何故かtheガッツのタカさんになってしまう…orz
353名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 23:22:15 ID:8N62hmeS
どっかのINO絵が先輩のイメージとめっちゃ重なったんだがタイトル忘れちゃった
青髪ショートで白い制服着てたんだけど

とにかく神作者乙
今までの作品はハッピーエンドが見たいと思ったけど
ユウ君だけはいいやww
354名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 23:24:17 ID:B3sONt7Y
ゆう君のハッピーエンドは見なくていいが先輩のハッピーエンドは見たい俺ガイル
355名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 23:37:03 ID:R9P9ANkn
>>354
ゆう君を監禁飼育して幸福絶頂とか?
356名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 23:39:24 ID:5t5wYD3K
椿ちゃんはどっちのエンドでも良い思いしてるな。主役は彼女ですね
357名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 23:40:29 ID:9c5M20Et
>>350
>>352
描くのだ、友よ。
そしてこのスレの偉大なる神々にHail!
         __
        _/ffト、
      _rヘンヽ::/
    _/ ヾrム~ミr‐==-
  . |  r'´ ,r''‐\_ `'ヽ,     
  . |  | ;':::_;;;_;::;ゞ}  |
  . |  Y:::{┓┥::::|  .|_    
    ヽ ' .|:;};ニ'イ::;::/;\ 苣=‐  
     { /iヽ'i´:::/| ::::://`~   
     .{/::r;:人::/::ヽ:: /
     |〉:{‐r‐,/::::::::V     
     |:::`ー;':::::::::/
     |::;ト--,:-:-/       
     .|::::`ー-::::::|~^
    人::r:f:;;=:-::r|
   /  :\_:::;/:::::ト
   /r'{::::: r-、r、:::,; |
  ./r':' 〉: :/  i,r:´r :::}
  |ト:r:/: /   | i:r=::.:|
 /ノ:/ ;/    .{ i r:-:|
.|::i {::.:/      {::i }::|
|r-':::/       {::ヾr::|
358名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 23:48:41 ID:spF6d/l+
>>353
http://www.getchu.com/soft.phtml?id=218353
http://www.getchu.com/soft.phtml?id=208061
http://www.getchu.com/soft.phtml?id=105881

当てはまるのこれくらいか?>INO絵
微妙に全部ずれてるけど
359名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 23:50:08 ID:vI40EF0h
てか誰もゆう君に同情しないあたりゆう君の人望のなさが表れてると思う。
360名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 23:52:13 ID:LtajoDBd
>>359
へたれながらも、優しい心を持ったもと君とはえらい違いだよな。
361名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 23:55:54 ID:Bo8SSUXZ
もと君と比べたらあかんよ
362名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 23:58:40 ID:+XIesTpE
もとくんのあの状況下でどうこうできる行動力のある方が人間離れしているからな
363『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/07(金) 01:55:40 ID:+7MRC9bD
秋も終わり、もう初冬。庭に広まった落ち葉を集めるのはかなり大変です。もう慣れてきましたが。
「ふぅ………」
落ち葉を捨て、一息つきながら、正門の前に立つ。そういえばこの鉄の門、開いているのをみたことがありません。

「純也ー!お茶の時間だから終わりにしてー!!」
「うん!わかったー!」
玄関から同じ使用人仲間の花穂から声を掛けられました。………やっぱりも元気です?
急いで片付け、台所まで行きます。紅茶を落とすのが僕の当番だからです。皆美味しいと褒めてくれるから煎れ甲斐もあるものです。
ポットに紅茶を入れ、お皿にお菓子を乗せたらカートに乗せていざ食堂へ。
ガチャ
「あ、きましたね〜。」
「……」
既に食堂では佐奈様と奈緒さんが座っていました。
嗚呼………やっぱり佐奈様はいつ見てもきれいです。
日に当たらないため、雪の様な白い肌。毎日手入れを欠かさない黒くて腰まで伸ばした髪。切れ長な二重の瞳。丁寧な物腰。どこを取っても「完璧」の一言です。
世間に出たら、将来は世界四大美女になるかもしれません。
ただ、これは『好き』という感じとは違うようです。
彼女はある種の芸術品という感覚なのです。その『完璧』すぎる故に、触れたら壊してしまいそうと思うのです。
それに僕が好きなのは………
ダン!
ぼーっと佐奈様を見ていた僕に、乱暴にケーキを乗せたお皿を目の前にたたきつける花穂なのです。
……なんだか機嫌が悪そうです。
「………ナニじーっとみてんのよ…佐奈嬢を………」
「え?…えと……その………ごめん。」
なんとなく謝ってしまいます。
「まぁーた、そうやってすぐに謝る!本当に弱虫ねぇ。」
「…ごめん……あ、じゃなくて……そのー……」
364『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/07(金) 01:56:47 ID:+7MRC9bD
だんだんと花穂の顔がイラついてくるのがわかります。僕はいつも彼女を怒らせてばかりです。彼女には一度でもいいから笑ってほしいのに……
でも僕がすぐに謝ってしまうのは無くし物のせいなのです。
僕は『怒り』を無くしてしまいました。相手に対して不満や理不尽を感じることをできず、全て自分のせいだと思ってしまうのです。
「あーあ。やっぱり男は祐希さんみたいでないとねぇ。」
これが彼女の口癖です。僕が怒られた後は必ずこのセリフを言います。
祐希さんというのは、高橋家の長男であり、僕より一つ年上の二十歳という若さで当主になった人です。
高橋家は昔から遠藤家と親交が深く、今になっても時々訪問してきます。
でも…なんというか僕は祐希さんは苦手です。この前屋敷に来たときも、帰り際にこう言い残していきました。
「さて、僕は不出来な人間になる前に帰らしてもらうとするよ。」と。
普段からそんなような事ばかり言っているため、やっぱり苦手です。
でも僕が不出来な人間だというのは当たっています。実際に人として大事な物が欠けているのですから。
「ん……今日の紅茶は、まあまあね。」
「え?………」
「そうですか〜?いつもと同じで美味しいと思いますよぉ。」
「ええ、純也の入れる紅茶は、いつも美味しいわよ」
二人がフォローしてくれます。でも、あまり嬉しくなれません。
考えてみれば、花穂に褒められてもらった事なんて一度もありません。いつも不満をいわれるばかりです。
………やっぱり僕みたいな弱虫なんかより、普通な祐希さんみたいな男の方がいいんでしょうね……
「……はぁー…」
そう思うと余計憂鬱です。
もっと明るい性格だったらなぁ。
そんなあり得ないもう一人の自分に夢見ながら、お茶の時間は過ぎていった。
365名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 04:00:26 ID:MvEOfj56
し、新主人公!?
366名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 04:31:33 ID:+CX43ZYA
うーむ、この話はホント先の展開が読めない。
作者様GJ!
367名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 04:32:25 ID:O6B9ZSfP
JOJOみたいに世代交代なんじゃね?
そんで第三部になったらヒロイン同士の殺し合いが発生して
ヒロイン1「勝った!第三部完!」
ヒロイン2「ほーう、それじゃあ誰がこの私の代わりを勤めると(ry

こんなステキな展開があるに違いない。
ちなみに今の第二部では
「逃げるんだよぉーっ!」
が流行するとか。
368名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 09:47:53 ID:7jxQoXds
う〜ん…この物語の鍵を握るのは佐奈なのか?
369名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 12:00:02 ID:KYzQzg/T
まさかこのスレでEVER17トリックが見られることになるかもしれないとは
370名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 12:11:19 ID:oj1CO5Rm
    〃〃∩  _, ,_
     ⊂⌒( `Д´) < 主人公は晋也じゃなきゃヤダヤダ!
       `ヽ_つ ⊂ノ
              ジタバタ

      _, ,_
     (`Д´ ∩ < 志穂やお嬢や里緒さんじゃなきゃヤダヤダ
     ⊂   (
       ヽ∩ つ  ジタバタ
         〃〃

      ∩
     ⊂⌒(  _, ,_)  ゆう君死ね
       `ヽ_つ ⊂ノ  グスッ・・・

371名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 12:17:30 ID:zBhaDkog
>>370
最後の一言がまったく関係ない件について。
あと優柔の作者様、最後まで楽しく見させていただきました。次回作も期待してます。
372名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 12:20:36 ID:abBbFr2U
>>371
まだ最後じゃないよ!>優揉
373名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 13:06:39 ID:zBhaDkog
>>372
うはwwオレのバカww指摘dクス。
374名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 13:41:01 ID:eaNdmdnQ
どうやらゆう君みたいな邪悪ヘタレ主人公好きなのは俺だけのようだな。
375名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 14:19:49 ID:rK0azW6Z
>>374
どうやらお前だけのようだ。
376名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 16:02:05 ID:YqH5XBhm
ゆう君好きだぞ。
修羅場フラグのためだけにハイパーモード起動するあたりとか。
377沃野 Act.11 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/07(金) 19:46:02 ID:1aHKzjuk
 自信を得るために、友人たちに相談を持ちかけてきました。
「ぶっちゃけ、男子ってのは女子の体が目当てなの?」
 お弁当を食べていたふたりは「うんうん」って平然と頷きましたが、隣の男子がからあげチキンを吐きました。
「ちょ、ちょっと荒木さん、食事中は言葉を慎……!」
 ぎろっ、と睨むとその男子は口を閉ざし、吐いたキチンを食べ直しました。汚いですね。
「そりゃあね、荒木さん。男子も愛だの恋だの試みに囁いちゃみますけど、奴らにはそのへんのことが
実のところ何も分かってません……だから連中が恋愛を目的に行動するわけなどありえんのですよ」
 半端に丁寧な口調で話し、眼鏡を押し上げる女子こそ風紀委員の陣内さん。ほんの二ヶ月とはいえ
校内の風紀を取り締まってきた貫禄がレンズのあたりに滲みます。こう、ピカッと。
「一度奴らの猥談を聞くといい。男子って連中はいかに女子をモノとして見ることしかできないかが分かる」
 こちらは普通の口調。剣道部に所属している羽賀さんです。馬面が魅力的なお方です。
「それで荒木さんが聞きたいのはつまり、目下意中の二年生……名前は……なんとおっしゃいましたっけ?」
 陣内さんが羽賀さんに振る。
「さあて。わたしが聞いたのは弓道部の綾瀬先輩にくっついて飯を食わせて貰ってるヒモというくらいしか」
「じゃあ、ヒモって呼ぶことにしますか。で、荒木さんはそのヒモ野郎が持て余す性欲の矛先が気になると?」
 愛しの先輩をヒモ呼ばわりされてムカッと来ないわけじゃありませんが、議論はまたに譲ります。
「うん」
「はあ、まあその方を個人的に存じているわけではありませんが……なんでも彼はヒモのくせして
綾瀬先輩には手を出していないとか。インポなんですかね」
 別の男子がプチトマトを窓の外に噴出させました。この学校は食べ物を吐くのが流行ってるのでしょうか。
「お、おい陣内さん、そういう直截的な言い回しは……!」
 めんどいので無視します。
「──先輩、勃たないのかな?」
「かもな」
 羽賀さんが言い、そこに「いや……」と陣内さんが口を挟む。
「極度のヘタレという可能性もありますね……ヘタレは周りの顰蹙を買うためだけに存在している生き物。
ここぞという場面に限って巧みに怖気づき、逃げ出してしまう性質がある。連中とて女子の体が気にならない
わけではありませんが、強く迫れば迫るほど逆効果、草食動物が肉食動物に追われると本能的に逃げて
しまうのと同じ。プッシュ戦略が通じないのです。かと言って押して駄目なら引いてみよ、とばかりに
プル戦略へ切り替えても通じない朴念仁たることが常。度し難いもんです」
 しんみりと陣内さんが言い募ります。やけに生々しい気がするのは実体験が混ざっているからでしょうか。
彼女が好きな相手もかなりのドヘタレという噂があります。
「つまり、体が目当てだからといって単純に体で釣れるものではないと」
「そういうことですねぇ」
 返答を聞き、私は心の中でほくそ笑みました。
 うん、少しだけ不安が和らぎました。うまく行く自信があるとはいえ、それを補強したくなる心理もあります。
「ただし」
 と羽賀さんが付け加えます。
「ヘタレほど、豹変したときが怖い人種はない。百の機会があっても九十九回はためらって退いてしまうが。
残りの一回は他に類を見ないほど狂暴化し、ケダモノになる……!」
 ぶるりと身を震わせる。これも実体験絡みなんでしょうか。
 そういえば彼女と付き合っている剣道部員もなかなかのヘタレ男とか。割れ鍋に綴じ蓋ですね。

 先輩から離れるのは淋しかったですが、それなりの食欲も出て昼食を終えることができました。
378沃野 Act.11 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/07(金) 19:50:10 ID:1aHKzjuk
 綾瀬胡桃に自滅を促す。
 別段、周到な計画でも何でもありません。ただ必然として起こりうることを待つだけです。
 彼女を本気にさせて引くに引けない状況をつくったり。期限付きで不戦条約を交わして後押ししたりと、
それなりに作為を巡らせてもみましたが、綿密に考えていたわけでもなくその場その場での思いつきを
繋げてどうにか現状へ辿り着くことができたってところ。
 ずっと即興曲でギリギリに凌いでいたわけです。綱渡りの日々でした。
 けれど、概ねこうなることは分かっていました。100パーセントとは行きませんが、確信はありました。
 理由は……まあ、秘密ってことで。

 図書委員の仕事を終えると、別れの挨拶を口にしながら退館しました。
 初夏だけに日は長く、辺りもまだ明るいです。
 あの牝犬は今頃先輩とおててを繋いで仲良く帰っているんでしょうか。
 そう考えると、狙ってやったこととはいえギリッと歯噛みします。いくら理性で計算をして勝率が高いからと、
感情を抑え込むことまではできません。
 欲しい新商品を目の前にして、「どうせすぐに値崩れするから」って見送ろうとする感じに似てます。
 頭では納得していても、つい手が伸びてしまいそうになる。レジへ向けて歩き出したくなる。
 できることなら今すぐ全力疾走してふたりのところに追いつき、そのへんに落ちてる棒切れなり石ころなり
ガラス瓶なりで先輩に付きまとう幼馴染みの皮を被ったゴミ虫を排除したい。
 しかし駄目です。断固としてバイオレンスな狼藉は避けねばなりません。
 人としての善悪がどうこうというより確実に先輩がヒきます。必ずドン引きします。
 女の子というものは、どんなに嫉妬で怒り狂っても凶器を手にしてはいけないのです。
 包丁とか持ち出した時点で既に殿方の気持ちを繋ぎ止められなくなります。
 「この女はヤバい」と看破され、危険物のレッテルを貼られて捨てられるのみ。
 そんな当然といっていい機微を、あの綾瀬さんはどうやら理解してないようなので困ります。
 「なりふり構わない」という言葉の意味を履き違えているんじゃないでしょうかね。
 いくら恋愛に反則がないとはいえ刺すとか殺すとか襲うというのは蛮族の手法です。
 安直に「殺したい」「勝ちたい」「先を越したい」と願う心が、敗北への道のりを敷いていく……
 綾瀬さん、そういう意味ではあなた、もっとなりふりを構った方が良かったんですよ。
 あなたの求愛は真っ直ぐで。狂おしく真っ直ぐで。
 ただのカミカゼ特攻に過ぎません。

「そろそろ、玉砕した頃でしょうか?」
 窓から入ってくる涼しい夜風を浴びながら時計を睨みます。
 念のため本を読みながら決行を遅らせてみますが、こういうときに限って時間は限りなく間延びし、
十分経ったかと思えば五分も経っていなかったりします。もどかしいことこの上ありません。
 十五分待つのが限界でした。携帯を引っ張り出します。
 いざ先輩へコーリング……!
 呼び出し音がひたすら続き、ひょっとして出ないのでは、と不安になったところで繋がりました。
「……荒木?」
 どこか呆然とした響きのある声。底のない虚脱感が伝わってきます。
 あは。
 あははは。
 はははははははははははははははははははは。
 ははっ。
 うまくいった、うまくいった、うまくいった! うまくいったみたいですよみなさん! さあ拍手を!
「どうしたんですか、先輩? ……声が変ですよ?」
 滲み出る喜悦を電話の向こうへ漏らさないよう気を配りながら、速やかに演技を開始しました。
379沃野 Act.11 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/07(金) 19:56:38 ID:1aHKzjuk
次回、最終回

……にする予定もありましたが、まだ消化していない要素もあるので、もちっと続けます。
380名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 19:57:33 ID:S2v7vzxl
>ただ必然として起こりうることを待つだけです。
>理由は……まあ、秘密ってことで。

無難な線で予知能力者ってあたり?
381名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 20:08:44 ID:zb0yNphV
>さあ拍手を!
マジで拍手してしまった俺ガイルw
382名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 20:30:45 ID:XrhAmWyY
行け行け麻耶タン。ガンバ。
383名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 22:14:42 ID:UPdN+gTk
二人とも振っちまうんじゃないかと思われ
384義姉 第4回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/07(金) 22:18:59 ID:YomAiTV/
        *        *        *

 中々慣れない土地。中々抜けない他所の土地の訛り。中々出来ない友達。
 子供達のいじめの対象となるには十分な条件だった。
 そして姉はある日その現場を目撃した。第三者から見てもはっきりと分る形、リンチで。
 姉はその場にいた者を片っ端からのした――弟もその例外なく。
 その場で弟に対しては説教しながら叩いていた。一通り説教が終った後無言で乱暴に頭を撫でた。

 次の休みの日に近所の子供達の輪の中に姉は弟を無理矢理蹴り入れて放り込んだ。
 不器用ながらも輪に馴染みはじめた弟を眺めると姉はさっさと帰って行った。
385義姉 第4回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/07(金) 22:19:59 ID:YomAiTV/
        *        *        *
『士郎』

 ――三十分経過。
 モカさんとの約束の待ち合わせ時間を過ぎてもまだ現れない。
 確か駅の南口の広場と言っていたが、ひょっとしたら聞き間違えたのかもしれないと思い一旦北口も見てきたがいなかった。
 一度電話かけた方がいいかと思い携帯を開きメモリを呼び出したところで重大な点に気づいた。
 ――オレ、モカさんの番号もメアドも知らないじゃん。
 会うときは大抵姉ちゃんと一緒だったから全く意識してなかった。
 一旦姉ちゃんに電話入れて番号聞いて――いや、そんな事したら何か凄い勘違いされそうで怖い。何処で何するか根掘り葉掘り聞かれた後、その後にあること無いこと吹聴されたりして。

「とぉー!」
 困って辺りを見回していたら背中から誰かに体当たりくらわされた。
「ごっめーん。待った?」
 後ろにいたのはモカさんだった。遅れたことに何ら悪びれることなく笑っている。
「……ええ、物凄く」
「ダメだなー。こういう時は『今来たとこだよ』って言わなきゃ」
 ――そんな事言うと物凄くカップルっぽい。

「あれ、男連れ?」
 途中でばったり呼び止められた。オレの知り合いではないがモカさんの知り合いらしかった。
「ふっふー、どうかな、どうかな。ちなみに涼子の弟だから」意味ありげに笑って見せていた。
 相変わらず人の頭を撫でる。モカさんってこういうのが好きなのか? オレは子ども扱いされているようであまり好きではない。
「ふーん。あ、人待たせているから、じゃあね智香」そういってさっさと彼女はさっていった。
 モカさんの本名って智香だったのか――あいつの下の名前は智子だったよな……
 ――何考えているんだろうオレ。

「士郎君、どうかした?」
「……いや何でもないですよ」
 自分の頭が無意識に下がっていたので持ち上げた。
 そして偶然、少し離れた喫茶店の中で見知った少女を捕らえた――三沢智子、オレが好きだった子。
 こちら側には背中しか見えなかったがわかる。ずっと一緒にいたから。よくわかるから。
 しばらく固まっていると、智子の隣に座っていた女の子がこちらを指差し、あいつもこちらに気づいたらしく振り返った。
 見ないでくれ。付き合っている訳でも何でもないのに別の女の人といるだけなのに罪悪感を感じる。
 薄れ掛けていた心の傷がまた開きそうだった。
「士郎君、早く行こ」
 気がついた時にはモカさんに手を強引に引っ張られていた。
386義姉 第4回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/07(金) 22:20:52 ID:YomAiTV/
        *        *        *
『洋子』

「そしてね、今度は二人きりで行こうって話しになったんだけど、見事台風が直撃して――」
「……トモ、それもう三度目なんだけど」
 三度目というのは今まで三度言った話というものではない。今日この喫茶店に入ってからで三度目だ。
 話したいことがあるからってミカ共々来て見れば、これだ。
 延々と彼との思い出語り。下手すれば只の惚気話のようでもあるがちょっと違う。
 告白されたはいいがまごまごしている間に返事が段々しづらくなって、ついでに別の女の人と仲良くしていた――まあそのぐらい。
 ミカは少し困った顔で目線でそろそろ何とかして欲しいと促していた。
 ――うん、こっちも愚痴聞くの飽きたから切り上げにかかる。
「あんただって世間話ぐらいする男友達なんていくらでもいるでしょ、気にしすぎだって」
「私あんまりいない……」
 ――ミカ、あんたは少し黙ってて。
「だって私の知らない人だよ……」
 好きになった相手のことは一から十まで知ってなきゃダメってタイプだったの、トモ。
 溜息を吐いた後視線を一旦外に向ける――タイミングよくトモの意中の人がいた。そしてタイミング悪く女連れで。
「どうせ部活とか委員会とかの先輩でしょ? 気にしすぎだって」
「あいつ、そんなの入ってないし――」
 ヤバ、かなりネガティブ思考に入っているよ。
 間違っても今あなた後ろの方を歩いているなんて言える状況ではない。
「――私のこと避けているし……」
「どうせ向こうも恥ずかしがっているだけだって、首根っこ捕まえてでもちゃちゃっと返事しちゃってバカップルでも何でもなりなさいよ」
 何とか話の方向を戻すべく奮闘する。何かの間違いで後ろを振り返らないことを祈りながら。
「ねえ、トモちゃんがさっきから言ってる人って確かあの人だよね?」
 ミカはトモの後ろを指差していた。
 ――ミカ、あんたはどうして気がつかなくていいときに気がつくの!
 頭が痛い。
 トモが慌てて振り向き、二人の視線を交差して固まる。
 意中の彼は一緒にいた女性に強引に引っ張られるようにして人ごみの中へ消えていった。
 ――少しヤバイ展開かもしれない。
 意中の彼が去ってしばらくしてもトモはまだ固まっている。
「ねえ……誰なのよ……」うわ言の様に口を開いている。
「ほ、ほら、お姉さんとかそういうのかもよ?」
 ちょっと自分で言ってて苦しすぎる気がした。

        *        *        *
『智子』

「うんうんうんうん! そうだ!」
 馬鹿みたいに自分の首を縦に大きく何度も振る。
「士郎にお姉さんいるって言ってたし」
 すっかり忘れていたけど昔一度だけお姉さんだって言って、遠くからあの人の方指差したことあるし!
「でも、あんまり似て、いっ――!」
 何故か口を開きかけていたミカが悶えていた。
 そんな事どうでもいい。私凄い勘違いしてたんだ。
「ゴメン、私今すぐ追いかけてくるから」
 そう口に出した時には既に走り始めていた。


 ――見つかんない。
 息は切れどれだけ走ったか忘れた。
 本当に私タイミング悪すぎ。昔読んだ不運なすれ違いばかりする少女漫画のヒロインみたい。
 何故か視界の隅にラブホテルの看板が入った。
 いや、まさかね。お姉さん相手なんだから関係ない場所だよね。
387義姉 第4回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/07(金) 22:21:44 ID:YomAiTV/
        *        *        *
『涼子』

 シロウはもう放っておいても大丈夫だろう。
 後は勝手に時間が心にこびりついたモノを落としていくだろう。
 ついでだから私も心に深く根をはりこびりついたモノを落とすにはいい機会かもしれない。そう思い外に出かけていた。

 潮風の匂いのする海と美術館に隣接した公園。
 休日のせいもあってかカップルの数は決して少なくない――きっと私も昔は周りからはあんな風に写っていたのだろう。
 今でも残っている数少ないあいつの思い出の品。表側に猫、裏側は削られた銀色のコイン。
 お守りの様に懐に忍ばせておけば落ち着く。そして時々苛立ちと不快感の温床にもなるもの。
 ――裏は削ってるから絶対出ないコイン。コイントスで決める時使うと投げようと決めた時には答えはもう決まってるんだよ。
 とてもじゃないけど真面目に聞いていられないような臭い台詞。
 ここは初めてデートの場所。思い出捨てるには十分すぎる出来た場所だ。
 海にコインを投げ捨て――れない。
 何度目だっけ、同じことやろうとして失敗したの。
 結局しまいこんだ。

 ――未練たらしい。
388義姉 第4回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/07(金) 22:22:41 ID:YomAiTV/
        *        *        *
『モカ』

 さっき士郎君が見てた女の子――たしかいつも士郎君と一緒にいた、三沢さんだったかな?
 たしか振られた相手については聞いてなかった。あの子かな? あの子とはいい感じっぽい気はしたけどココ最近一緒にいないって事はそういうことかな。
 それなら心配しちゃって少し損した。
「あの、モカさん……」
「んー、何?」
 少し恥ずかしそうにこちらの手を見てる。
 やっぱり可愛いなこういう表情。
「ああ、ごめんごめん」



 正直映画の内容はどうでも良かった。
 でも映画館の中ではちょっと手が触れただけでビックリしてたみたい。その表情見れただけでも十分収穫だ。
 やっぱりホラーにしたら良かったかな。キャーって抱きつかれるの――あれ、普通逆?
「さて、もう一遊びしよ」
 映画が終った後にゲーセンやらをハシゴしている。なんか連れ回していると楽しいな。
「いや、そろそろ帰って飯作らないと姉ちゃんに怒られるから……」
「むー……じゃあね」
 二人が学校とかじゃ殆ど話しているの見た事ないけど、ひょっとしたらお姉さんっ子かな?
 まあ、他に意中の子とかいそうにないから慌てず、しばらく思わせぶりな態度を取り続ける年上の人として遊ぼうかな。
  戸惑ってる士郎君見てて面白いし。
 あ――涼子が苛めたがる理由がよくわかった。
389義姉 第4回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/07(金) 22:23:56 ID:YomAiTV/
        *        *        *
『士郎』

 家に帰って来てみると、姉ちゃんは何か苛立っていた。
 理由はわからないが、こういう時は自分からは下手に話しかけない事に決めている。
 そのまま会話らしい会話はないまま夕食を終えた。

「シロウ、お風呂空いたから」
 振り返るとバスタオルを巻いただけの姉ちゃんがいた。
 見慣れているはずなのにドキリとする。
「……うん、わかった」
 なんか最近おかしいのかな、オレ――

 自分の部屋で紙くずをゴミ箱目掛けて放り投げるが外した。
 しかたないので立って紙くずを拾い上げゴミ箱に入れようとした時に気がついた。
 ゴミ箱の中で見覚えの無い薄いゴム製の袋を発見した。
「なんだよ、これ?」
 いや、これが何であるか、何のためのものかは知っている。
 コンドーム――避妊または性病予防の為に用いられる。
 でも何でそれがオレの部屋のゴミ箱の中にあるのか、それも使用済み――
 自分はこんなものもっていない筈。使用した覚えがない筈。
 でも、たった一つだけ思い当たる節がある。
 ――あんたゴムは?。
 歯がガチガチと音を立て震えていた。

3908 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/07(金) 22:24:32 ID:YomAiTV/
アナザーですら書くの忘れていたコインネタを書く機会があろうとは。
とりあえず次回あたりから姉ちゃん本格起動。

<姉ちゃんから見た不義理チョコ>
第11回
>鼻をひくつかせながらゴミ箱を覗いていた
これは一発やったのかどうかの確認。
もちろん、みつからなかったが
自分が帰って来る時間と以前の自分の行動から警戒して用意周到にやったかもしれないと思ったからカマかけてみたりした。
</姉ちゃんから見た不義理チョコ>
391名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 22:31:21 ID:qggy0oH4
>>390
GJ!何故かモカさんを応援しているオレが居る。
392名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 22:40:07 ID:Hh/r2tBs
GJ!!俺もモカさんを応援してるwww
39338:2006/04/07(金) 22:50:09 ID:2YH914UR
ここで涼子姉ちゃん派の俺がきましたよ。
コインに深いエピソードがありそうでwktkです。

ゴムに思い当たった士郎の今後のうろたえっぷりを楽しみにしつつ、
士郎をラクガキしてみたのでうp
ガクランかブレザーか迷ったのでシャツで誤魔化した
ttp://uploaders.ddo.jp/upload/500k2/src/1144417630770.gif


なんだか姉ちゃんのほうが男前になっている気がしなくもない
394名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 23:23:17 ID:S2v7vzxl
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|           あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|  }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|          『姉ちゃんがメインヒロインだったのに、昔の男ばかり考えていたら、積極的アタックをかけてたモカタン人気が上がっていた』
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |           な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人          おれも 何が起こったのか わからなかった…
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ         頭がどうにかなりそうだった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉        姉じゃ萌えられないだとか非処女はダメだとか
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ       そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ     もっと恐ろしいものの 片鱗を味わったぜ…
>393
これで士郎の遺影は(ry
395名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 23:31:40 ID:oj1CO5Rm
>>393
すばらしい遺影ですね
396名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 23:35:09 ID:xyNBqQX+
だから何故遺影確定なのかw
397名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 23:45:12 ID:S2v7vzxl
>>396
五話以上の長編においてアナザーエンド除外した場合、主人公死亡率五割ほどあるしww
398名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 00:02:14 ID:rbH2JrEW
そんなに少なかったっけ>デッドエンド
実妹以外全部デッドエンドだと思ってた。
399名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 00:05:24 ID:S2v7vzxl
>398
あくまで「主人公」死亡率。
ヒロイン死亡率は別w
400名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 00:05:35 ID:XtEu47o3
1日1回、デッドエンド!
これが健康の秘訣です。
401『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/08(土) 00:05:38 ID:+6fggDPb
結局花穂の機嫌は直らないまま、お茶は終わってしまいました。
カチャカチャ
二人で皿洗いをしていると、不意に背後から視線を感じました。何かと思って振り向いて見ると………
「………」
花穂が無言で僕の顔を見ていました。ただその目には怒気が含まれていなくて………
「…な、なに?」
恐る恐る聞いてみると……
「あの、さ……さっきの紅茶さ………そのー、まあまあとか言ったけど本当は……」
「お手伝いしましょうか〜?」
花穂が話しているところへ、いきなり奈緒さんが顔をだしてきました。
「あ、もう終わったんで大丈夫ですよ。夕飯まで休んでてください。」
そう奈緒さんに言った途端、次は突き刺さる視線を感じました。
「…く…〜!!!!」
花穂でした。今までにない怖い形相で睨み付けてきます。
「え?あ、あははは……は…は。」
「この馬鹿!!!なにをでれでれ…」
「ひゃあ!!ご、ゴキブリですぅ!!」
花穂の怒鳴り声より一層大きい悲鳴で、奈緒さんが叫びました。
「え?うそ!」
ゴキブリという言葉に花穂も怒りを忘れ、逃げ回りました。この二人はゴキブリが苦手なので、出る度に僕が始末を任されます。
「ほら!純也ぁ!さっさとなんとかしなさいよぉ!」
花穂が半泣きでせがんできます。この時だけ弱気な花穂を見れて、少し幸せです。雰囲気はぶち壊しですが。
「ほ、箒、放棄、法規!!」
微妙にアクセントが違いますが、言いたい事は分かります。そう言いながら奈緒さんがパタパタと走って掃除用具入れを開けようとした瞬間……
頭の中に危険を知らせるイメージが飛び込んで来ました。
「!!あ、あぶない!!」
声と体か勝手に動いてました。奈緒さんの体に飛び付き、掃除用具入れから離れる様に押し倒していたのです。カランカラン
軽い音がして振り返ってみると………
T字箒が倒れていました。
402『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/08(土) 00:07:10 ID:+6fggDPb
「あれ?……」
もっと危険なイメージがあったんですが………
「純……也ぁ?」
二度あることは三度ある。さっきより殺気のこもった視線が刺さります。
「……やぁぁ…純也…君…ん!」
え?
と思い、下を見てみると………手のひらには肉まん……もとい、奈緒さんの胸がありました。
な、なんてベタな!
「あぁ!えぇっとぉ〜〜〜……ご、ごめんな……」
「なにやってんのよ!!!!!」
ゴス!
「ぐうぁ!」
怒号一発。花穂の右ローが僕の左頬を捕らえていました。
「うぅ……い、いたいよ、花穂。」
「いたいじゃないでしょ!何いきなり奈緒さんを押し倒してんのよ!私にはそんなことしないくせに……!!って、お、押し倒して欲しいわけじゃないわよ!?」
支離滅裂です。
そもそも押し倒す勇気もありませんよ、えぇ。チキンですから。
「だ、だっておのが……」
「小野もUNOもないわよ!さっさと退治しなさい。」
結局もう二、三発花穂からもらい、ゴキブリも退治しました。








「いてて……」
夕飯も終わり、風呂から上がり、部屋で氷を頬に当てています。
まだ少し痛みます。正直罵倒はまだいいとして、殴るのは勘弁して欲しいです。
それともやっぱり僕が嫌いだから殴るんでしょうか?
「はぁ……」
考えれば考えるほど自己嫌悪。
おっと。時計を見ると真上で針が重なっていました。この時間に佐奈様に自室まで来いと呼ばれていたのです。毎日10時には消灯する佐奈様にしては珍しいことです。
タッタッタッタ
少し早足で廊下を走っていくと………
「あ、純也。ちょうどいい所に……」
403『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/08(土) 00:08:22 ID:+6fggDPb
花穂の部屋を通り過ぎた時に、声を掛けられました。
「えっと……な、なに?」
「なにびびってんのよ……まぁいいわ。お願いがあるんだけどさ、部屋の電球変えてくれない?」
確かにあの高い天井では花穂の背じゃ届きそうにありません。
でも………
「ご、ごめん!佐奈様に呼ばれてて…急いでるんだ。じゃ!」
そう言い残して走り去りました。いつもなら交換しますが、殴られたこととさっき考えていた花穂は僕が嫌いなのではという事が混ざり、なんとなく花穂と一緒に居辛かったからです。
……逃げ去りながら感じる背後からの視線に、明日朝一で殴られるのではと考えると今から憂鬱です。






佐奈様の部屋の前まで来て、息を整えます。この時はいつも緊張します。
コンコン
「佐奈様、純也です。」
「開いてるわ。入って。」
ガチャ
入るとそこには、パジャマをきて、ベットに座ったまま待っていました。
………月明りに照らされた佐奈様の顔は、一段と美しいです。
「…………」
「なにをぼーっとしているの?こっちへ来て。」
「へ?あ、はい!すみません。」
用件も忘れて、佐奈様の顔に見入っていた所に声を掛けられ、声が裏返ってしまいました。
「ふふ…なにを慌てているの?…」
そう優しく微笑まれると、一層緊張してしまいます。
やっぱり美しいです。ここまでくると尊敬に値します。
「実はな、純也を詠んだのは…これを…」
そう言って一冊の本を取り出します。ブックカバーが付いていて何の本か分かりませんが。
「あれ?今日の読み聞かせは奈緒さんの番じゃ……」
「いや、奈緒にはもう読ませてもらった。純也には…その………」
佐奈様の顔が急に赤く染まっていきます。どうしたんでしょうか?
「こ、この本に書いてあるのと同じ事を……わた、私としてほしいんだ。」
奇妙な事を頼まれましたね。
「えっと…この本ですか…」
そう言って本を借り、カバーを外してみると………
404『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/08(土) 00:09:13 ID:+6fggDPb
「え?あ、な、なんだ?!」
そこにはスーツを半脱ぎした、艶めかしい女性の絵が書いてありました………
つまり……これは…か、官能小説というやつですか…
「ななな、なんですか!?これ!?『〜淫乱教師〜魅惑のレッスン』て!?」
ついタイトルを読み上げてしまいました。
僕はあまりこういう物には免疫がありません。ましてや佐奈様とふ、二人っきりのときにこんなのを出されるとなると、緊張と驚きでアップアップです。
「だ、だから、つ、つまり私をー……抱けと……せ、セックスしろと言う事だ!」
詰まりながらも言われました。
「え?えぇっと、えぇっと……その」
状況整理中。
「無、無理です。佐奈様とそんなことは………」
確かに佐奈様はきれいだ。見てていい気分になる。だからといってそれは欲情の類いとは違う。それに遠藤家当主にそんなことはできるわけがないです。
「!!ど…どうして!?なんで?…なんでよぉ……お前、はぁ…うぅ…」
あぁ、佐奈様が泣きそうです。見るに耐えません。
「ご、ごめんなさい。」
いつもの口癖を言い残して、部屋から立ち去りました。
405名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 00:16:34 ID:58uf2/mn
リアルタイムGJ!!
なるほど、これは転生編というわけなのか?
つまり、彼はまたDE(ry
406名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 00:56:56 ID:D6EYhXaC
>>393
(*^ー゚)b グッジョブ!!
ものすごい受けのにおいのする主人公だわ
むしろこれで抜けr(ry
407名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 01:02:40 ID:bgAuG+wn
>>393
GJ
たしかに編みものができそうな気がする
優しそうだ

モカたん頑張れモカたん
408名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 01:05:20 ID:rbH2JrEW
何故か姉よりモカさん人気が高まってる件について。
409振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/04/08(土) 01:34:53 ID:0aMzWXqE
   ・    ・    ・    ・


 あれから数日が流れた。 俺が羽津姉の告白を断わり、結季に俺の想いを断わられてから。
 一見すると俺達3人ともあんな事があったとは思えないほど平穏に日常は過ぎている。
 だが実際には羽津姉の顔からは常に俺への好意――いや未練と言った方が正しいのかもしれない――が見え隠れし、それに関しては俺も一緒で結季の気持に変化が現れてないか、其の事ばっか気になってる。 そんな片思いの一方通行が交差する日々。
 そんな日々を終わらせたくて俺は行動に出ることにした。 かなり強引だしある意味賭けだが、これ以上埒があかないのはイヤだったから。

 放課後俺は羽津姉に二人っきりになりたいと屋上に呼んだ。 そうして目の前に現れた羽津姉の顔は期待と不安と自信が入り混じったかのようなものだった。
「悪ぃな羽津姉、わざわざ呼び出したりして」
「ううん、気にしないで。 ね、それより話って何? あ、も、若しかして……?」
 あからさまに其の眼差しから期待が伺える。 其の眼差しに俺の胸は僅かに痛んだが、決めた以上は躊躇は無用だ。
「ん、まぁ多分羽津姉の考えてる通り……って、うわぁ!」
「ありがとう祥ちゃん!!」
 話の途中にも拘わらず、羽津姉はその豊かな胸が当たるのもお構い無しに俺に抱きついてきた。
「イ、イキナリ抱きつかないでくれよ! 先ず話を最後まで聞いてくれ!」
「え〜。 良いよ、聞かなくったって分かるもん」
「いいから!」
 俺が抱きついてきた羽津姉を引き剥がすと羽津姉は露骨に残念そうにする。 でも直ぐに其の表情は期待に満ち溢れたものに変わる。

 そして俺は口を開く。
「その、な。 俺の条件呑んでくれるのなら、付き合っても良いぜ」
 其の瞬間羽津姉の表情はまるでこの世の幸せを独り占めにでもしたかのように輝く。 そしてまた抱きついてきた。
「ありがとう! 条件? 何だって聞くよ!? 祥ちゃんが付き合ってくれるのなら何だって!」
「だからむやみと抱きつかないでくれって」
 羽津姉の抱きつき癖は昔っからあった。 其の事に気恥ずかしさを感じなかったわけじゃないが、今感じるそれはそれだけじゃなくて……。
 兎に角俺は羽津姉を引き剥がすと話を続けた。
「条件ってのはその、付き合う上での主導権は俺のほうに握らせてくれ。 何事も俺の思うようにやらせてくれ。 それでもいいか?」
 我ながら恐ろしく身勝手な条件。 でもコレで引き下がったり呆れたりしないだろうな。 実際、羽津姉は一瞬きょとんとした表情をしたが、直ぐ其の顔にはにんまりとした笑みが浮かぶ。
「OK 私の恋人になってくれるんだったら、なんだって聞いてあげちゃう。 キャ♪」
 そうして羽津姉は満面の笑みを浮かべたまま頬を赤らめ手をあてる。
 こりゃ、間違い無く俺の意図を取り違えてて誤解してるな。 まぁいいや、兎に角切り出そう。
「まず、基本的な態度は今まで通りにして欲しい。 あんまり露骨に恋人恋人しないでくれ。 って言うか出来れば周囲に気付かれないようにしてくれ」
「え〜? どうして〜?」
 言った瞬間、羽津姉は露骨に不服そうな顔をする。
「羽津姉だって自覚してるだろ。 自分が結構どころか、かなりもてるって事。 羽津姉に好意を持ってるやつからの嫉妬を全て受けてたら身がもたねぇよ」
「なるほどねぇ。 でも出来たらそんな嫉妬の視線を受けて悠然と構える余裕を持って欲しいな〜」
「いやなら付き合うの止めようか?」
「ああ! ごめんごめん! 解かってる。 言う通りにするから。 ね?」
 俺が言うと羽津姉は慌てて取り繕う。 その顔は相変らず幸せで一杯といった風である。 そして更に続けてきた。
「ね。ね。 他には? 他には無いの?」
「無いよ。 今のところはそれだけだよ」
 羽津姉には申し訳ないが俺の要求に羽津姉の求めるような事は、多分無い。


 その日の夜、電話がかかってきた。 結季からだ。
『お姉ちゃんと付き合うことになったってった本当……?』
「ああ。 羽津姉から聞いたのか?」
『うん。 お姉ちゃん……とっても、嬉しそうな顔……してた』
「これがお前の望みなんだろ?」
『うん……。 ありが……とう。 用は、それ……だけ、だから。 じゃぁ……オヤスミ……ナサイ」
「ああ、お休み……」
 そして俺は電話を切った。 
「ありがとう……か。 だったら……、だったら何でそんな辛そうな、泣きそうな声で話すんだよ……!!」
 俺は思わず携帯を壁に叩きつけそうになる。 だが、寸前で思いとどまる。
 落ち着け。 憤るな。 焦るな。 事は未だ始まったばかりなんだから。
410名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 01:37:54 ID:qAxjh762
だってお姉ちゃんはまだ嫉妬する段階にきていないもの
411 ◆tVzTTTyvm. :2006/04/08(土) 01:37:54 ID:0aMzWXqE
>>276
あぅ……まぁ、全く影響受けてないと言えば嘘になりますが(汗

オイラもモカさん好きだなぁ
こういうお姉さんに可愛がってもらいたいッス
412410:2006/04/08(土) 01:42:37 ID:qAxjh762
神様ごめんなさいリロってなかったorz

祥ちゃんってばもしかしてわざと嫉妬の嵐を巻き起こそうとしてる?
413 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/08(土) 02:20:01 ID:+6fggDPb
>>393
GJ!
良ければ誰か晋也の奴も書いてやって下さい
414名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 03:36:17 ID:m3w4GAEp
祥ちゃんが早くもクズルート一確な件について
415名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 03:36:25 ID:TuVn2xjR
>>404
GJ!初めは平行世界と思っていたがなんか同一人物っぽいな……
でもそうすると今の純也はゾンb(ry(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブル
416名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 04:21:37 ID:9wVt6tg5
>>404
これは妙な推理をしたくなるいいSSですね

>>409
新ルートktkr!
417名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 11:11:37 ID:4EQcnGzc
>>413
神よ あなたは晋也たちを捨てて
新しいキャラに乗り換えるというのですか?
なんか晋也以外同じキャラっぽいけど・・・
418名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 12:28:12 ID:SwrXZB0B
>415
新しいなくしものは死なのか?
419名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 14:29:03 ID:mQs1j0AI
無くし物は記憶?
420名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 15:32:26 ID:epizOfzq
いや、晋也以外が悪霊化しているんじゃないか?

新しい犠牲者を取り込み、そして修羅場は永劫回帰。
421歌わない雨:2006/04/08(土) 17:32:33 ID:GqkFnYwl
前スレで歌わない雨を
書いた馬鹿ですが
続き投下大丈夫ですか?
422名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 17:43:40 ID:D6EYhXaC
馬鹿ではない、神だ
というわけで続きをお願いしますm( __ __ )m
423『歌わない雨』Take2:2006/04/08(土) 17:52:12 ID:GqkFnYwl
ドウモです
では次から
424『歌わない雨』Take2:2006/04/08(土) 17:54:16 ID:GqkFnYwl
 再びダンクの音がきまった。それに続いて試合終了のホイッスルと女子の黄色い歓声が体育館の各所から挙がる。受けているのは小柄なプレイヤー、釜津・芹。僕が一年前に腕を痛めた原因の少女だ。
「もう一回やって、もう一回」
 そう言ってやって来るクラスの女子に釜津は苦笑で答えると、再びダンク。また歓声があがる。  そしてぶら下がっていた彼女が飛び下りようとした直後、開いていたから扉から突風が吹き込んで空中に居た華奢な体に直撃した。
「あ」
 という簡単な声と共に彼女はバランスを崩し、後は地球の強大な万有引力にまかせて自由落下。鈍い音と共に床に激突した彼女に近くに居た女子が駆け寄っていく。
「うわ、痛そう」
 僕の隣に座っている中道・緑が眉根を寄せ、しかし嬉しそうに呟いた。半ば化け物じみた身体能力を持つあいつの事だから大丈夫だとは思ったが、駆け寄っていく緑に続いて僕も立ち上がる。
425『歌わない雨』Take2:2006/04/08(土) 17:56:18 ID:GqkFnYwl
「あー、大丈夫か?」
「大丈夫…イッ」
 僕の声に答えながら立ち上がろうとした釜津だがどうやら足でも捻ってしまったらしく、偶然だろうが何だか懐かしい言葉を言いながら再び倒れる。しかも、今度はモロ顔面からだ。
「大丈夫か?」
「…痛い」
 そりゃそうだ。
 僕は釜津の所まで歩いていくと、しゃがみ込んで軽く額を叩いた。
「く…この」
 寝そべったままで打ち出されるフックを一歩下がって避け、
「キツいか?」
「いや全く」
 僕は溜息を吐くと方向転換、しゃがみ込んだまま彼女に背を差し出し、「乗れ」
 意外に素直におぶさってきた釜津を背負うと保険室に向かった。
 背後の緑の目から発射される凶悪な殺人光線は、きっと俺の気のせいだと思いたい。
426『歌わない雨』Take2:2006/04/08(土) 18:02:25 ID:GqkFnYwl
 暫く無言。最初にそれを破ったのは僕だ。
「なぁ」
「うん?」
「体育で体を思いっきり動かすのは悪いとは思わんが」
「はしたないとでも言うつもりか」
「いや全く。只、汗と匂いが」
「ウワァー」
 僕が言った直後、釜津は体を大きく暴れさせバランスを崩しそうになる。しかし体の筋肉を総動員させて強制的に姿勢を戻すと、彼女も暴れるのを止めた。
「随分マニアックな」
「そういう訳でも無いんだがな」
 数秒、彼女は黙った後で、
「そんなに気になるか?」
「あんまり」
 からかわれていたのに気が付いたのか、少し不満気な声を出す。
「それと」
「まだあるのか」
「胸が無いからあんまりおんぶの意味がアイタタタすみません」
 馬鹿みたいな筋力でウメボシをしてくる彼女に詫びを入れると、今度は力無くしなだれ掛ってきた。
427『歌わない雨』Take2:2006/04/08(土) 18:08:27 ID:GqkFnYwl
「やはり、緑みたいに大きい方が良いのか?」
 そうでもないが、だからと言ってこいつレベルなのもどうかと思ったので敢えて黙った。只、嫌いではない。
「あ、着いた」
「こら答えろ」
「黙って治療を受けろ」


治療後。
「私はもう大丈夫。それで済まないが、飯を買ってきてくれ」
 確かに、足をくじいた状態であの人海は辛いだろう。こと普段は殆んど全ての生徒に帝王か神の如く扱われている釜津だが、幾つか例外があり、その一つが購買の食糧争奪戦だ。
「リクエストは?」
「油もの以外」
 こいつは緑と違って油ものは平気だった気がするが、食いたくない日もあるかと思い保健室を出た。ここからは気力体力時の運、全ての勝負だ。
428『歌わない雨』Take2:2006/04/08(土) 18:11:05 ID:GqkFnYwl
「いや大漁大漁」
 気合いで人混みを掻き分け手に入れた戦利品を軽快に揺らしながら教室へと向かう。
「おぅ今戻っ…」
 言いかけて、教室の空気がいつもと違うことに気が付いた。
 見えている光景はいつもと同じ。釜津と緑が喧嘩をして睨みあい、それを僕の双子の妹の雪がなだめている。普段と全く変わらない。
「どうした?」
 とりあえず近くの女子に聞いてみる。
「あ、後藤くん。それがねぇ…」
 その子が言い始める前に、教室に轟音が鳴った。緑も釜津も普段は温厚に見えて意外に沸点が低いので、昼休みの間は周囲が机を離している。そのお陰か、被害は無人の机と椅子が少々。
「まぁ落ち着け」
 いつもとは逆に、釜津が殴り飛ばされているのに少し驚きながらも僕は二人の間に立った。
「おお伸人、良いところに来た。ナイスタイミング」
 釜津が口の端から垂れた血を拭いながら立ち上がった。
429『歌わない雨』Take2:2006/04/08(土) 18:12:23 ID:GqkFnYwl
「お前にしっかり言いたい事があったんだが、中々覚悟が決まらなくてな、昨日やっと決心が着いた」
 一方的に彼女は続ける。
「まず今までありがとうございました。そして、ごめんなさい。お前の優しさは嬉しかったが、お前本人が辛いのは私には荷が重すぎた。私は卑怯者だからな、逃げることしか選べなかった」
 続いて来るのは、軽く唇を重ねるだけのキス。それは、緑や雪にも続く。
「利き手ではないし、これでチャラにしてくれなんてムシが良すぎるが、勘弁してほしい」
 言うと、彼女はナイフを取り出して右手に突き立てた。
「これで、明日からは他人だ。あ、そのパンは緑にやってくれ。弁当をわざと溢してしまったからな」
 淡々と言いながら上着で腕をくるむと、釜津は教室を出ていく。僕達は呆然とそれを見ていた。
430『歌わない雨』Take2:2006/04/08(土) 18:18:03 ID:GqkFnYwl
今回はこれまでです

次の構想は大体決まっているので出来次第投下します
内容としては芹サイド

最後に他の職人さんGJ
いつも楽しく読んでます
そして俺の作品駄目スw
431名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 18:23:21 ID:O7+vIDau
GJ!しばらく「芹」を「斧」と勘違いして、何て修羅場スレ
ナイズな名前なんだと思ってしまった俺ダルシム。
432名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 18:45:06 ID:m3w4GAEp
>>430
一レスをもう少し長めに区切った方が読みやすくなると思いますよ。

常にナイフを携帯・・・なんて準備万全な子だw
次回も期待してます
433名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 19:24:36 ID:6Y3+1TN3
まだまだ修羅場は先そうだがとりあえずGJ。
この先の展開に期待。
434『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/08(土) 19:33:45 ID:+6fggDPb
「はぁ…はぁ…」
あのまま部屋まで走って来てしまいました。突然のことで驚きました。
でも、佐奈様があんな本を持ち出す上に、あんなことを頼むだなんておもいもしませんでした。
………正直、ちょっと惜しいかなとは思います。まぁ、手を出した後の事を考えるとやっぱり無理ですね。
ガチャ
胸の鼓動が覚め遣らぬまま部屋に入ると………
「あ、待ってましたよ〜、純也さん。」
奈緒さんがいました。
「え?あ、奈緒さん。どうしたんですか?待ってたって……」
ベットに座ったまま妖しく微笑みながら見つめられます。さっきの佐奈様の事があったせいか、妙にドキドキします。
「う〜んとですねぇ。実は純也さんの事なんですけど……最低、悩み事、ありませんか?」
「え?」
「どうも覇気が無い様に見えるんですが………元気の無い純也さんを見てると、私、悲しいんですよ〜。」
そう言うと下を向いてシュンとしてしまいました。悩み事って………
「ずばり、花穂さんの事でしょう?」
「うっ…あっと…」
「図星ですねぇ。」
頭の中を読まれている様な気がして、戸惑ってしまいました。
確かに……花穂の事では悩んでいます。
「は、はぁ……まぁ、悩んでます。」
それを聞くと奈緒さんは急に真面目な顔つきになり………
「彼女の事、好きなんですか?」
「……えぇ、…多分……」
まだ自分の気持ちが理解できてないため、曖昧な返事になってしまいます。
「はぁ〜……でも、残念ですね。キツい事かもしれませんが………花穂さんは祐希さんが好きなんですよ。」
「!!!」
やっぱり……わかっていても納得したくなかったのですが……直接言葉で言われると…
「それに……もう、二人はHしちゃったそうですよ……」
「う、そだ……」
435『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/08(土) 19:35:15 ID:+6fggDPb
胸を抉られる感覚とはこの事でしょうか。
怒りを知らない分、心は悲しみでいっぱいになります。何も……考えたくない………
「でも……そんなに落ち込まないでください。純也さんを好きな人だって、ちゃんといるんですよ?」
そう言うと奈緒さんは、ゆっくりと僕を抱き締めてくれました。
「大丈夫です……私は何があっても、純也さんを愛していますよ。」
「奈緒…さ、ん」
ごく自然に、二人の唇が重なりました。とても暖かく、居心地がいいです。
「ん…ふ…ふぁ…」
二人の唾液が混じりあい、いやらしい音がします。
「純也さん…一つお願いがあります。……これから先、花穂さんの事は忘れて、私の事だけを考えてくれますか?」
「……はい」
わかっています。それが逃げる事だって。でも……逃げたっていいですよね?
「ん…は…はぁ…んぅ!」
だんだんと体の重なり合いが激しくなり、互いに服を脱がしあいます。
………やっぱり奈緒さんの胸は大きいです……服の上からと直では大違いです。
「ふふ……そんなに胸が気になりますか?」
「へ、あ?な、なんで……」
読心術でも心得ているのでしょうか?
「食いつくようにみてたら……誰でもわかりますよ?」
そ、そんなにみてたんですかね……
「でも、今日はここだけです……」
そう言うと僕のペニ○を掴み、奈緒さんの濡れそぼった秘部に当てます。
……これが正常位というやつですか。
436『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/08(土) 19:36:12 ID:+6fggDPb
「ゆ、ゆっくりここにいれて下さい…」
言われるままに腰を下ろしていくと……
ズヌュ…ヌ…ググ……
何か少し抵抗が………
見てみると結合部分から血が流れていました。
「んん!あ、あはぁ……や、やっぱり…聞くのとやるのじゃ違いますね………」
痛いのか、苦しそうに顔を歪めています。
「あ、ご、ごめんなさい……」
「ふふ…謝らなくていいんですよ……嬉しい痛みなんですから………」
あぁ、酷いとわかっても……気持ち良さで腰が動いてしまいます……
ズッズッズヌュニュプ……
頭に痺れる様な快感が流れます………あり得ない気持ち良さです。
「うっ……な、奈緒さん…だ、だめ…です。」
「はぁ、うん!い、…あぁっ…いいですよ…だ、出して!中に…あぁ…出してください!!」
「うぁ!」
ブビュ!ビュルルル……
「あ…が…」
まさかここまで気持ちいいかとは思いませんでした。
「ふ、ああぁ……あついですよぉ……はぁ」
ドサッ
力尽きて奈緒さんの胸に寄り掛かります。
「はぁ…んっ…ん。わ、私がいますからぁ……大丈夫ですよぉ。」
……ごめんなさい。奈緒さん。もう少し悩まさしてください………
437名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 19:51:20 ID:TuVn2xjR
GJ!純也いきなり性欲に負けるとはw
晋也は1回は全員のアタックを回避したのに、このへタレ(ノ∀`)
4388 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/08(土) 20:01:52 ID:ASuDCzrA
>>393
GJ!
さっそく黒いリボンと額縁(ry

>>408
逆に考えるんだ
「モカは実は幼い頃生き別れの実姉」とか
「また離婚して再婚先での義姉」とか
「姉ちゃんが結婚たら義姉になる」とか
考えるんだ

いや、そういう設定は全然ないんだけどね。
439名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 20:43:26 ID:1SZnvBju
>>378を見て
「計画通り」の表情で電話を持っている様子を想像してしまった
440優柔 最終話-another ◆I3oq5KsoMI :2006/04/08(土) 21:01:49 ID:2Uqgsfdo
私は最近・・・分からなくなってきた。私は本当にこれで納得してるのか?
こんなあやふやな関係を続けていいのか?
愛原を受け入れる度に、そんな思いが強く心を支配していた。
快楽に身を委ねるだけの、心を置き去りにした結論・・・このままで本当に良いのだろうか?

僕はほんの少し前まで、先輩はただヤラせてくれるだけの便利な人だと思っていました。
だから自分の好き勝手に、先輩の身体を貪り尽くしていました。
先輩のありとあらゆる部分に触れ、最大限の快感を与え続け、幾多の嬌声を絞り出しました。
それと同時に、数えきれないほどの欲望をぶつけました。
その壊れてしまいそうな繊細な指を、女性であることを大いに強調する豊かな胸を、柔らかくて控えめな口を、何度も僕の肉欲で汚しました。
椿ちゃんと友達として付き合い、先輩を性欲の捌け口として扱い、ずっとこのままの関係を保持したいと思っていました。
でも僕は気付いたのです。目の前で泣く椿ちゃんを見て、今更理解したのです。
このままで良いわけがないということに。
「椿ちゃん・・・僕は救い用が無いクズだけど、それでも僕を好きだって言ってくれるの?」
「うん・・・私には・・・ゆう君しかいないから・・・」
「ありがとう、椿ちゃん。僕・・・先輩にちゃんと言うよ」
僕は修復不可能なクズではありませんでした。自分の悪業を自覚することができたから。


やっぱりこいつも私と同じことを考えてた。
私達のような関係は、双方共に悲しい結末を与えることになる。
自分の本当の気持ちを押し殺して得た偽りの幸福は、どんなことがあっても昇華することはない。
「・・・分かった、もう止めよう」
「先輩・・・」
「お前とはまた・・・前みたいにバカやりたい・・・でも今は・・・けじめをつけなきゃな」

私は臆病だから・・・自分の気持ちを押さえ込んででも、好きな人に振り向いてほしかった。
身体を許せばいつか好きになってもらえると信じたかった。
でも現実は違った。
元カノと寄りを戻したいと言われた。
やっぱり私のしたことは正しくなかった。こんなのは恋愛じゃない。
自分の想いを自分の言葉で相手にぶつけなければ、それは相手に伝わらない。
本心をお互い明かしてこそ・・・それが大事なんだと分かった。
全ては私が臆病だったから。
だから今度は・・・いや、今の瞬間から・・・私は強くなろう。
これからの人生で誰かを好きになった時に、ちゃんと自分の言葉で言えるようになろう。
441優柔 最終話-another ◆I3oq5KsoMI :2006/04/08(土) 21:03:51 ID:2Uqgsfdo
私が作りあげた虚像を実像に変えていくために。
私は後悔してない。愛原を好きになったことも、処女を捧げたことも。
自分の嫉妬深さに気付かされたりもした。でもそれも私の顔。
嫉妬深い顔も、臆病な顔も、全部引っ括めて・・・強くなろう。
「さよなら」
だから今は我慢する。
胸が締め付けられるだけど・・・涙が止まらないけど・・・もう振り返らない。

「綾乃・・・」
「うん?」
「・・・元気になったね」
「・・・」
「少し前まで・・・見てらんなかった。でも・・・今は何か、吹っ切れたって感じ」
「・・・振られた」
「そう・・・また男、紹介してあげよっか?」
「いや・・・今度は自分で見つける。もっと誠実な男・・・自分で探すよ」
「そっか・・・頑張れ。私でよければ力になるよ」
「ああ・・・千尋」
「なに?」
「・・・ありがとう」
「いいって。私ら親友でしょうに」
「そうだな・・・じゃあ1つ、聞いてくれるか?」
「ええ、何でもござれ」
「・・・ケーキバイキング行かね?」
「ええっ!?私ダイエット中なの知ってるでしょ!?」
「1人で行くには勇気が足りないんだよ・・・それにアタシは太りにくいし?」
「てめえ!私が太りやすい体質なのを知ってのことか!どんだけ苦労してると・・・」
「女たるもの、そんな細かいこと気にすんな」
「あんたはいくら食べても乳がでかくなるだけでしょ!?よこせ!半分でいいからよこしなさい!!」
「ちょっ・・・胸を揉むな!」


442優柔 最終話-another ◆I3oq5KsoMI :2006/04/08(土) 21:05:18 ID:2Uqgsfdo
ふーん・・・意外に潔かったなあ、杉山先輩。
あれだけゆう君を自分のものみたいな態度たけど、最後は私のために身を引いてくれたんだ・・・結構良い人かも。
それからね・・・あの人のことだから、きっとゆう君をハイキックか何かでぶっ倒しちゃうんじゃないかってヒヤヒヤしてたんだけど・・・優しいんだね、先輩。
笑顔で別れるなんて、なかなかできないよ。
あれだね、私が男だったら確実に惚れてるかも。メス犬メス犬って馬鹿にしたのも・・・ちょっと反省。

まあそれは置いといて・・・問題はゆう君だね。
さっきは黙ってゆう君の話を聞いてたけどね、いつからそんな悪い子になっちゃったのかな?
いくら私でも我慢できないよ?
勿論、私にも責任があるよ・・・私がゆう君を手放さなかったら、きっと良い子のままだったのに。
そうだね、私がしっかりしてればこんな面倒なことにはならなかったの。
でも・・・それを差し引いても・・・ゆう君の犯した過ちは目に余りすぎるね。
だからね、恋人である私がゆう君に・・・たっぷりお仕置きしてあげなきゃ。キャンセルになった先輩の分までね。

「ちょっ、椿ちゃん・・・これは何なの!?」
目が覚めると、僕は動けなくなっていました。手足を縛られて、ベッドに括り付けられていました。
「何って、ゆう君分からないの?」
椿ちゃんは物凄い笑顔です。知らない人が見たら、きっと何か嬉しいことがあったんだなあと納得するでしょう。
ですが僕には分かります。これは怒っている時の顔なのです!
「ちょっと、冗談にしては度が過ぎるよ!?何で僕縛られてるの?何それ手に持ってるもの・・・スタンガン!?それで僕を失神させたんだね!!?」
僕はめちゃくちゃテンパッてました。何をされるかは分かりませんが、きっととんでもないことをされそうな気がします。
「今日から夏休みだからね、ゆう君を躾けようと思うの」
「躾!?シツケルって何を!?」
「だからね、ゆう君が二度と他人に迷惑をかけないように私が夏休み丸々使ってゆう君を良い子に戻そうってことだよ?」
ああ・・・体中から変な汗が出てきました。
「杉山先輩とゴタゴタがあってからもう一ヵ月以上経つけどね・・・私の中ではその時よりも思いが熟成されていって今ではヨーグルトみたいにドロドロしてるんだ。
長期熟成どうもお疲れ様でしたって・・・あは、何言ってるかよく分からなくなってきちゃった」
何かがヤバイ・・・
「で、でもね、僕、ちゃんと椿ちゃんに謝ったし、あれから先輩と会ってないし、それから、他の女子とも、は、話してないしっ!?」
「うん、そうだね。仲直りしてからのゆう君はとても誠実だったよ。でもね、私がそんな簡単に許すとか思ってたのかな?私がどんな女の子かゆう君知ってるでしょ?」
「そ、そうだね、椿ちゃんが簡単に許してくれるなんて、お、オカシイと思ってたんですよ、いやマジで!でも椿ちゃん、今からでも遅くない、考え直して?
何するかは分かんないけど考え直して!!」
「うーん・・・とりあえず、これだけは先に言っておくね?」

「世の中にはね・・・謝っても反省しても・・・許されないことが・・・あるんだ」
443優柔 最終話-another ◆I3oq5KsoMI :2006/04/08(土) 21:06:34 ID:2Uqgsfdo
こんにちわ、水谷椿です。
ゆう君が悪さしてから約3ヶ月、新学期も始まって、私達の仲はさらに深いものになりました。
ゆう君はちゃんと改心して、二度と悪いことはしなく・・・ううん、できなくなりました。
私は夏休みのほとんどを費やして、ゆう君を躾けたの。
具体的に何をしたかというのは割愛させてもらうけど、簡潔に言うとしたら・・・
そう・・・男としてのプライド・・・人間の尊厳・・・それを全部取っ払ってあげたの。
だからゆう君は、今じゃとてもお利口さん。
もう絶対に浮気なんてしないって断言できるよ。

今ね、ゆう君の家で同棲してるの。
ゆう君は独り暮らしだから、私がお世話をしてあげようって思ったからね。
お母さんは快く認めてくれたんだ。「椿にこんなに愛されてるなんて、世界一の幸せ者ね、優希ちゃんは」って。
そうだよゆう君、ゆう君はとても幸せなんだよ?

学校から帰ってくるとね、ゆう君がしてくれることがあるんだ。
「椿ちゃん・・・あそこを綺麗にしてあげたい・・・」
そう言いながらゆう君は玄関で跪いて、私のパンツを下ろすの。
「おしっこの匂いがする・・・今すぐ綺麗にするから待っててね・・・」
シャワー浴びてない私のオマ○コを舐めてくれるの。それがゆう君の毎日の日課。
別に強要したわけでもないのに、いつの間にか習慣化してた。
生理の日は代わりに足の指を丹念に舐めてくれるの。でも今じゃ両方してくれるんだ。
「あむ・・・ちゅる・・・ぴちゃっ・・・ちゅ、ちゅっ・・・つばきひゃん・・・きもひいい・・・れすかぁ・・・」
そうやって私を潤んだ瞳で見上げてくるから、気持ち良いよって頭を撫でてあげるとすごく喜ぶの。
ゆう君ったら舌遣いばっかり上手くなって、早い時なんか20秒ぐらいでイカせてくれるんだよ?
ゆう君は私のオマ○コ汁を1日に最低1回飲まないと落ち着かないみたいで、どんどん舌を動かして舐め取っていくようになったの。

それからね、夏休み中ずっと縛られてたせいか、エッチする時は縛られたいみたいなの。
手足を拘束して全く動けないようにしてから本番開始って感じかな。
だからいつも私が上。騎乗位ばっかりじゃマンネリだから、ゆう君に言ったの。
「ねえゆう君、おしりの処女ちょうだい?」
ゆう君は期待と不安でいっぱいだったけど、今となってはもうすっかりおしりを犯されるのが気に入っちゃって。
『縄×受け身×目隠し』がデフォルトになっちゃった。もうすっかり変態さんだね。

さっきの話から分かると思うけど、ゆう君はまごうことなきマゾヒスト。
私が怒るとね、ゆう君は目を逸らすんだけど、恐いからじゃないの。
私の怒ってる時の顔を見ると、ドキドキして目を合わせられなくなるんだって。
見たら顔が真っ赤で、チン○ンがおっきおっきしてるの。
だから私がお仕置きだってゆう君を叩いても、ゆう君ったら艶めかしい声をあげるだけだから全然お仕置きにならなくて。
ある日の昼休み、ゆう君に呼び出されたの。誰もいない教室で、ゆう君は顔を赤くして言うの。
「僕ね・・・さっき女子とぶつかったんだ・・・椿ちゃんがいるのに・・・他の女の子に触ったんだよ・・・だから、その・・・お仕置きして下さい・・・」
その時はホウキの柄の部分で折檻したんだけど、いつも通りゆう君は可愛い声を上げてた。
勿論、チン○ンはテントを張ってて、私まで興奮してきて・・・最近そういうプレイが当たり前になってきた。
『跡が残らない叩き方』も習得できたよ。
444優柔 最終話-another ◆I3oq5KsoMI :2006/04/08(土) 21:08:23 ID:2Uqgsfdo
学校から帰ってくるとね、すぐに首輪とリードを付けてあげるの。
逆にそれが無いと落ち着かないみたいで、外出する時はソワソワするから代わりにネックレスとかマフラーを付けてあげるの。
ああそれから、この前ゆう君の誕生日だったんたけど、新しい首輪をプレゼントしたらすごく感謝された。
今ではね、夜とか早朝に首輪を付けて散歩をするのが私達の日課かな。

ゆう君は私の作ったご飯しか食べなくなっちゃったの。
買ってきた物だったら私が食べさせてあげないと絶対に食べない。
それと・・・私にしか性的反応を示さなくなったの。
アダルトビデオとか見せても無反応。
でもね、私の前だったらチン○ンに触らなくても、私に見られるだけで反り返るんだよ?
つまり、私以外の女の子とエッチできないってこと。
実はね、ゆう君と杉山先輩の本番風景を隠し撮りしたのがあるんだけど、それを見せても反応しなかった。

要約するとね、ゆう君は私がいないと生きていけなくなったの。
私がゆう君を捨てたらね、一生インポテンツっていうかその前に餓死しちゃうの。
これも調教の賜物かな。
でも私、ゆう君を捨てないよ。だってゆう君を愛してあげられるのは、私だけなんだから。

杉山先輩は卒業して、今ではもう大学生。
超難関のT大学に合格して、噂では『ミスT大』に選ばれて求愛の嵐とか。
あの人とは色々あったけどお互い幸せになったんだから、終わり良ければすべて良しだね。
「ゆう君・・・私達、同じ大学に行こうね」
「うん、僕頑張って成績上げるよ」
「そうだね、ゆう君は死ぬほど頑張らないと難しいからね」
「うっ・・・で、でも大丈夫。愛の力があれば何でもできるから、椿ちゃんは安心してよ」
「もう、ゆう君ったら」

私達はこれからずっと、永遠に愛し合っていく。
どんなことがあっても、それは崩れない。だからゆう君、これからもよろしくね。

愛しい愛しい・・・私のゆう君♪



エンド3 『縛られる歓び』
445名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 21:17:56 ID:SwrXZB0B
もはや下半身限定でも主導権を握れない体になってしまったのか…
446 ◆I3oq5KsoMI :2006/04/08(土) 21:19:24 ID:2Uqgsfdo
全員生存エンド、早いこと完成しましたのでここに投下します。
一応これで『優柔』は終わりです。
管理人様を始め、椿ちゃんの絵を描いて下さった神絵師様、レスして下さった皆様、
その他最後まで根気よく読んで下さった皆様、本当にありがとうございました。
この作品を読んで、投下したくなった人がいたら幸いです。
今後は投下する予定もないので、代わりにどんどん投下して下さい、お願いします。

あと、先輩の絵を拝めるのを楽しみにしています。
447名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 21:27:15 ID:+CkgpxqN
いや、全員生存してるけど。なんだろう、ゆう君はどう転んでもふこ……
448名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 21:54:11 ID:kHUXoIos
ゆう君はある意味このスレの伝説になったな
449名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 21:54:46 ID:n3nxdWRg
先輩END希望
450名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 21:55:27 ID:wJjfksp5
あえていうならば、椿ちゃんが奴隷メス犬化して欲しかったな
「ゆう君、お願いだから捨てないで!! なんでもするから!!」 
みたいな感じでw
451名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 21:59:31 ID:D6EYhXaC
流石ゆうくん、クズにふさわしいエンドばかりですね
作者様(*^ー゚)b グッジョブ!!
452名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 22:18:23 ID:CWKlFMkZ
>>446
完成乙!!
めっさ堪能させてもらいました。
先輩ENDが欲しいっていうのもやっぱりあるんだけど。。
気が向いたらまた書いて欲しっす。


関係ないけれど、ド修羅場に巻き込まれて発狂したヒロインに
追い詰められて、激闘の末どうにか一難を逃れることに成功するものの、
主人公が選んだ彼女から「She'll be back....」と告げられ、更なる絶望的な戦いに飲み込まれていく


っていう話を、ターミネーターを見ながら思いついた。
453名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 22:29:16 ID:0/8fPhdV
>>446
乙でした〜。また出来れば書いて欲しいです〜。
 バチッ!
「ぐあぁっ…」
突然の衝撃で強制的に意識を覚醒させられる。
 ガバァッ
「………」
注意深く辺りを見回す…どうやら侵入者の類は居ないようだ。
ふと時計を見る、4時ちょうど。そしてそこから伸びるコード。
いや、待てよ…思い出した。
俺は昨日の夜に、音を鳴らさずに目覚められるよう目覚まし時計に細工をしたのだ。
首筋に貼り付けてある電極を剥がし、すぐに外出着に着替える。
ジャンパーは…そういえば天野に貸したままだったな。
まあ必要無いだろう、最近は暖かいを通り越して少し暑いからな。
リュックは…持った。
サイフは…持った。
腕時計は…持った。
携帯電話は…持った。(一応バッテリーは抜いてあるが)
家の鍵は…持った。
最後に机の上に書置きを置く。
『しばらく家を空けます。
おそらく今日の日付が変わるまでには帰ってきますので、探したり心配したりはしないでください。
なお今日の学校は休むつもりです、担任には家出をしたとでも伝えておいてください。不撓勇気』
…まあ、こんな物かな?
普段よりも2時間ほど早い時間ではあるが、普通に出て行っては親父と鉢合わせになる可能性がある。
俺は対侵入者用トラップを外し、窓を開ける。
そして昨日の内に運び込んでおいた靴を履き、飛び降りる…
 トンッ…
秘技…足音殺し。
良し、成功。
とりあえず英知と親父にはバレてない筈だ。
俺は始発電車に間に合うように鳳翼駅へと急いだ。
夜明けのホームにて一人電車を待つ。
昨日の英知が夜這いに来たのは5時ごろ、今日の始発は4時52分、そして家から駅まで全力で走って約15分。
英知が昨日のに懲りて今日は夜這いに来ない可能性もある。
大槻が家に来るのは6時ごろ、これは約三年間ほとんど変わらない。
とりあえず電車が来る前に邪魔が入る可能性は低いと考えるべきだろう。
では黄道町に到着した後はどうか…
大槻は黄道町に何があるのかは知らない筈だ。
英知はほぼ確実に知っていると思われる…問題は英知がどれだけ早く俺の行き先に思い至るかだな。
まあこればっかりは、できるだけ早く用事を終わらせるしか無いな。
 コツ…コツ…コツ…
人が…来たのか!?
俺は一瞬で考えを中断し、気配を探る。
誰だ…一般の客か?駅員か?
だが万一大槻か英知だった場合は、かわいそうだがしばらく眠っていてもらう他にあるまい…
 コツ…コツ…コツ…
足音が近づいて来る、息を潜め柱の影に身を隠す…
どうする…ここからでは確認はできない、かと言って迂闊に身を乗り出せば追っ手だった時に取り返しのつかない事になる。
だが先制攻撃をしても、万が一無関係の人間だった場合はそれこそ取り返しがつかない。
ならば…このまま身を隠してやり過ごすしか無い。
そう考えると俺は細心の注意を払いつつ、柱の影に身を潜める…
「不撓さん…居ないんですか…?」
「天野!?」
思わず声を出してしまった…追っ手が天野の声を真似ている可能性を全く考えずにだ。
「不撓さん!?良かったぁ…」
「天野…なのか?」
だがしかし…そんな事を一撃で吹き飛ばすほどに俺は安堵していた。
もはや諦めていたと言うのに…天野が、ここに居た。
「不撓さん、探しましたよ」
ああ、俺は本物のアホゥだ。
ここに天野が居る、たったそれだけの事で…こんなにもホッとしている。
「不撓さん」
それは天野の眼。たった数度しか見ていないと言うのに、
まるで天野友美を象徴しているかのような…決意の眼であった。
「私も連れて行ってくれませんか」
それは質問ではなかった…まるで脅迫でもしているかのように天野は言った。
「天野…俺が今から何をしようとしているのかを知っているのか?」
「知りません」
即答だった。
「なら何で俺に付いて行こうとしてるんだ?」
まあ、当然の疑問だと思う。
天野は…2・3度深呼吸をして…言う。
「たぶん必要になるから、では駄目でしょうか…?」
まただ…また一瞬脅迫でもされているのかと錯覚した。
だがこれは俺にとっては重要な事だ。
あまり軽々しく連れて行くのは良くないだろう。
「学校はサボる事になるぞ…」
「はい」
「電車代は自分で出せよ…」
「はい」
「俺の邪魔をするなよ…」
「はい」
「正直、何が起こるかは俺にもわからんぞ…」
「はい」
「俺は止めたからな…」
「はい」
はぁ…駄目だ、早くもタネ切れだ。
今の天野は、たとえ神仏が相手でも一歩も引かないかもしれない。
それに…いや、もう何も言うまい。
「なら、一緒に行くか?」
「はいっ!」
時計を確認する…
幸いな事に、始発電車が来るまでにはまだ少し時間があるようだ。
今の内に天野に聞いておくべき事は無いか…
「ところで、最近俺の事を避けてなかったか?」
「あっ…」
「………」
天野の言葉が詰まる、聞いてはいけない事だったかもしれない。
「その…用事がありました…」
やっぱり言いたくないのか…
「そっか…なら仕方ないな」
そう言いながら軽く微笑んで見せる。
だがな天野、嘘をつく時こそ相手の目を真っ直ぐに見据えるべきだぞ。
まあ、これ以上この話を続けるのは得策では無いだろう。
「………」
「………」
空気が沈む、息が詰まる…だがフォローはしない。
今から話そうとしている事は、この位の雰囲気がお似合いだ。
「天野、この事態についてどこまで知っている?」
天野は少し躊躇して…話す。
「英知さん…でしたっけ?あの人が元凶だって事意外はさっぱり…」
そう、事件は英知の帰還から動き出した。
だが…それはそれはおそらく間違っている。
「この事件は英知の帰還から全てが始まった…昨日まではそう考えていた」
「昨日…ですか?」
どうやら天野は知らないらしい。
あの二人はかなり派手にやり合ったので、耳に位は入っていると思ったのだが。
「天野…お前、友達居るか?」
一応聞いてみた。
「………」
「………」
「ノ…ノーコメントです…」
居ないのか…
まあ良く考えたら、友達が居るのならわざわざ人気の無い旧校舎の屋上で昼食をとったりしないか…
天野は、意外と人付き合いが苦手なのかもしれない。
「天野…友達」
そう言いながら握手を求めてみる。
「地獄の九所封じですか!?」
前言撤回…たぶんこんな性格だから友達が減っていくんだ。
「天野、脱線して悪かった。真面目な話なんだ、聞いてくれ」
「はい」
俺はなんとか気を取り直す。
こんな事で貴重な時間を浪費するのは非常に拙い。
「さっきの話の続きだ、俺と英知の関係はもっと前から始まっていたのかもしれない」
「どうゆう事ですか?」
「英知は言っていた『英知と俺は、産まれた瞬間から婚約者である』とな」
「…本当ですか?」
「無論、ハッタリの可能性はある。だがそれにしては話が突飛すぎる」
「そうですね、確かにちょっと信じにくいです」
そう、信じられない話だ。だがそれ故に信憑性が出てくる。
「俺には英知があの状況下で、苦し紛れのハッタリを言ったとは思えない…」
「そうですか…」
天野はちょっと複雑な面持ちだ。何か考え事でもあるのだろうか?
いや、多分俺も凄く複雑な顔をしているだろう、この事件はこんなにも考える事が多いのだから。
「とにかく俺は、その真偽を知っているかもしれない人物に会いに行く」
「………」
 まもなく一番線に、各駅停車…
どうやら電車が来たようだ。
「行くぞ…黄道町へ…」
「…はい」
他力本願な方法だが…何も手を打たないよりは遥かにマシだ。そう信じて…
俺達は電車に乗り込んでいった。
 黄道町〜…黄道町〜…
黄道町は電車で3駅、その気になれば歩いて行ける距離だ。
「ここが目的地ですか?」
「いや、ここから少し歩く。はぐれるなよ」
今から俺達が行こうとしている場所は、かなり入り組んだ地形にある。
それこそ迷ったら行き倒れるかもしれない場所だ。
「お願いします、私この町に来たことありませんから」
「おう、行くぞ」
かつて黄道町は不良の聖地であった。
俺がまだガキだった頃に、昇龍高校にまるで示し合わせたこのように強力な人材が集まった。
かの有名な武芸高校に対抗できるとまで言われた猛者達である。
だがそれ以降、昇龍高校には幾多の不良がこぞって入学し、一時期この町の治安は乱れに乱れた。
俺が体術を学んだのもその頃、師匠は昇龍の生徒であった。
結局…大成はしなかったがな。
だがその状況も少し前に大きく変わった。
後に『昇龍の麒麟児』と呼ばれる人物が入学してからだ。
そいつは捕縛縄を扱った武術に長け、一年生にて生徒会長に就任した豪傑であったらしい。
…もっとも、当時は誰も生徒会長をやりたがらなかったらしいのだが。
とにかく、その人物は徹底した不良撲滅政策を採り、反抗する勢力を見事に退治したらしい。
そんなこんなで、現在の黄道町は至って平穏…に、見える。
だが…そんな筈は無い、そんな訳が無い。
なぜなら…
「天野、着いたぞ」
「ここ…ですか?」
そこは一軒のボロアパートに見える、だがここには住人が居ない。
ここはアパートに偽装された診療所なのだ。
一見住人用に見える部屋は病室、大家の部屋は診察室。
そしてここの持ち主こそ…
 コンッ コンッ コンッ
「不撓勇気だ、居るか?」
「…入ってこい」
 ガチャ…
「元気そうだな、勇気」
「兄貴もな…」
俺が知る中で最も平穏と縁遠い人物が、そこに居た。
会うのは…一年ぶりだ。
「お兄さん…ですか?」
天野がそう尋ねた。そういやまだ説明してなかったな。
「不撓不屈(ふとう ふくつ)、偽名のようだが本名だ」
「えっと…ここは?」
「ここは俺の診療所だ。本業に医者、副業に用心棒の仲介をやっている。」
「はぁ…」
天野はどこか不思議そうな顔をしている。
その気持ちはわかる。部屋に入れば一目で医療施設だとわかるが、なにせ外見はボロアパートだ。
おまけに看板も何もありはしない。
「なに、俺は真っ当な医者ではない。何らかの理由で、真っ当な医者に掛かれない者を診る医者だ。
それ故にここには俺の事を知っている者しか来ない。だから外見もこれで良い」
「そう…ですか」
「まあいい、深く考える必要は無い。それより勇気がここに来た用件を聞きたい」
そうだ、俺はここに遊びに来た訳では無い。
「兄貴に聞きたい事が何個かと、返してもらいたい物がある」
おそらく兄貴には両方とも心当たりがある筈だ。
「英知か?」
「そうだ、戸籍を偽造したのは兄貴か?」
『戸籍を偽造…』のあたりで天野の表情が変わった。
おそらくここから先には天野にとって非常識な世界となるだろう。
「英知は3日前までここに泊まっていた。戸籍の偽造、情報収集、そして料理の特訓、どれも少々時間が必要だったからな」
やはりな…
「何故そんな事をした?」
「俺がか?それとも英知がか?」
英知の方はもうわかっている、おそらく俺を手に入れるためであろう。
「兄貴だ」
「…妹の頼みを無下にはできんからな」
「あっ…あの…」
「天野っ!」
つい怒鳴り声が出てしまう。
一瞬だけ後悔の念が走ったが、すぐに言葉を足す。
「俺の邪魔をするなと言ったよな…?」
「は…はい」
自己嫌悪を起こすほどに冷徹な声だった。
「悪いが話が終わるまで黙っていてくれ」
「はい…」
だが…天野には悪いが、今は大事な時だ。
全身の力を抜き、意識を研ぎ澄ます。
時と場合によっては兄貴に一撃を叩き込めるように…
一瞬でも多く時間を稼ぎ、天野を逃がし易いように…
「兄貴は…誰の味方だ?」
俺は核心を突く。
ある意味、俺が一番知りたかった事で…たぶん最も恐ろしかった瞬間…
「俺は中立を保つ。英知の手助けをした分だけお前にも協力しよう」
兄貴は世間話でもするかのように答えた。
もっとも兄貴がこの口調を崩した所を見た事が無い。
だが…とりあえず最悪のパターンは消去されたようだ。
「なら、他にも聞きたい事が山ほどある」
そう、英知には謎が多すぎる。
ならばここでできるだけ多くの情報を引き出しておこう。
「英知は俺の婚約者だと名乗っていた、その真偽は?」
「真実だ」
英知のハッタリでは無かったのか…
「俺には身に覚えが無いのだが…」
「当然だ、教えていない」
「なぜ俺と英知が婚約者となっている?」
「…質問を質問で返すようで悪いのだが、お前は英知からどこまで聞いた?」
少しの間思案する…
考えてみれば、俺は妹の事を何一つ知らない。
仮にも実の妹だというのに。
「いや…残念ながら何も知らない」
「ならば初めから話そう、重複する内容があるかもしれんが許せよ」
「英知の秘密をか?」
「少し違うな…不撓家の裏事情だ。天野とやらも聞くが良い」
不撓家の…裏事情だと!?
兄貴は、いつものように抑揚の無い口調で語り始めた…
「そもそも実の兄妹を結婚させる理由は、その血筋にある」
「血筋…?」
「そうだ、先祖の血をより純血に近い形で残すためだ」
「それは何のために?」
「不撓家の女性は代々陰陽師である」
「陰陽師!?」
それを聞くと同時に、天野の顔色が変わった。
さらに兄貴は淡々と語り続ける。
「不撓の直系に産まれた女性は陰陽師としての才能が高い。そしてその女性は産まれてすぐに、親の仕事を引き継ぐために他の家族から引き離される」
「なら英知とお袋は15年前に…」
「そうだ、英知は1000年以上掛けて培われた知識と血統を受け継いでいる」
「………」
「………」
陰陽師など、古文の世界でしか聞いた事もないというのに…
それが…こんなに近くで…
「なら…お袋は今どこに居るんだ?」
「知識の引継ぎは不撓家の秘術を以って行われるのだが、それはできる限り自分に近い存在でなければならない。
それが後継者が不撓の直系、かつ女性であるもう一つの理由だ」
「なら、お袋は?」
「最後まで聞け…だがいくら同じ血筋であるとは言え、両者は別人。当然の話だが多少のブレがある」
気のせいか…兄貴の語気が荒くなってきたような気がする。
「そのブレは誤差となり秘術の使用者を傷つける、だが後継者を傷つける訳にはいかない。ならどうする?」
「まさか…」
勘違いであってくれ…もし俺の予想道りならお袋は…
「先代頭首は後継者を守るためにそのダメージを一手に引き受ける。そしてその結果…死に至る」
「そんな…」
「なんだよ…それ…」
何でこんな時だけ俺の勘は外れないんだよ。
俺は…顔さえ知らない内にお袋を失っていたのかよ…
「受け継ぎが終了した後継者は、ある程度の年齢になると次の後継者を産むために生家へと戻る。それ故に後継者の帰還は先代の死と同意語だ」
「………」
もはや…俺も天野も声すら出なかった。
「そして英知は帰って来た訳だ。お前との間に子を産むためにな」
「待てよ…」
今の説明には足りない部分があった、それを確かめねば…
「どうした?」
「何故俺なんだ?兄妹で子を産むのが目的なら兄貴でも良い筈だろ」
そう、俺と英知は兄妹だが、兄貴と英知も兄妹の筈だ。
「後継者の教育は人気の無い秘境にて行われるのだが、その理由は大きく分けて二つある」
「理由…?」
「一つは不撓家の秘術を外部に漏らさないため、もう一つは兄妹を出会わせないためだ」
「どうゆう事だ?」
「大抵の人間は本能的に近親相姦を避けたがる傾向がある、それを避けるために後継者を肉親と思わせなくする必要がある訳だ。
具体的には…当人同士をある程度成長させてから、初めて対面させるのだ」
「………」
「しかし…万が一修行が終わっておらず、かつ物心が既についている者同士が出会った場合は話は別だ」
「それじゃあ兄貴は…」
「そうだ、俺は12歳の時、中国の奥地にて英知と出会っていた。故にだ、今の英知にはお前しか居ないのだ」
「な…何だって…!」
個人的には兄貴の行動範囲の方がよっぽど驚きなのだが…
「兄貴、どうやって中国まで…?」
「なに、裏道や抜け道の類は少しばかり詳しいのでね」
嫌な小学生だ…
「…て、ちょっと待て。兄貴が12歳なら英知は4歳だぞ、そんな昔の事を英知は覚えているのか?」
「覚えているさ、確実にな」
何だ…この兄貴の自信は!?
「不撓流陰陽術の秘術は知識の受け渡し等では無い。不撓家が長い年月を掛けて研究してきた物とは、成長の促進と老化の停止だ」
「なっ…それじゃあ…」
「不撓家頭首は代々その技術の実験台となり、通常の数倍の速度で成長し、ある程度の年齢からは通常の数分の一の速さで老化する」
「英知が…」
「とにかく11年前に俺は英知と出会い、互いの事を知った。故に残念ながら俺には英知の相手は務まらん」
それは果てしなく非現実的な話で…それ故に信憑性のある話であった。
さて…なにはともあれ、これで英知の謎はあらかた片付いた。
他に聞くべき事は無いか…
そう考えて、俺は兄貴に聞くべき事を一つ見つけた。
「これに明確な根拠がある訳じゃあないんだが…」
「どうした?言ってみろ」
「英知は…本気のような気がするんだ」
「ほう…」
そうだ、大槻は言っていた。『あの子は本気だよ、女の子だからわかるよ』と。
「本当に代々続いた義務が理由なら、英知があそこまで本気になる理由としては弱い。
兄貴は俺にまだ何かを隠してないか?」
「………」
「………」
「………」
初めて…兄貴が黙った。
どうやら俺は、黙り込む程に思案が必要となる事を聞いたらしい。
「…隠している」
それが、長い思案の末に兄貴が出した答えであった。
「何をだ?」
「もう一度言うが、俺は中立を保つ。故にこれ以上の情報は与えられん」
「………」
「………」
「………」
「そっか…なら仕方無いな」
こう言っちゃなんだが、兄貴が一度言った事を変えたり、嘘をつく事は滅多に無い。
たぶんこれ以上は聞いても徒労に終わるだろう。
「勇気、お前が返してほしい物はこれか?」
そう言って兄貴は古びた木箱を待ち出していた。
「ああ、そうだ。着けてみても良いか?」
「元々それはお前が譲り受けた物だ、聞く必要は無い」
俺は箱を開けて、中の物をあらためる。
三年前は少々大きすぎていたが、今はもうそんな事は無かった。
「聖衣…ですか?」
そう天野に尋ねられる。
「いや、そんなに上等な物じゃないよ。」
それは相手の攻撃を防ぎ、格闘の威力を倍加させる物…手甲・ブーツ・そして膝当て。
それらは霊石と呼ばれる物を削り出して作られた物であり、幽霊や妖怪の類ともある程度は戦える。
俺の師匠が、最後に俺に与えてくれた物だ。
「筋肉が…付いてきたな」
「まあ、成長期だからな」
「その様子では、鍛錬はずっとサボっていたか…」
「おう、時々型の確認はしてたがな」
「………」
「………」
「………」
「そうか…ならいい」
俺はしばらく試着をした後、鎧を元通り箱にしまって帰りの仕度をした。
「じゃあな兄貴、また来るよ」
「お邪魔しました」
今度はもう一度これを預けにな…
「今から俺は独り言を言う…」
「兄貴?」
…まだ何かを伝えようとしているのか?
「英知には不撓の秘術がある、通常の方法では打倒は困難だ。
だが…英知には実戦経験が圧倒的に少ない。奇襲を用いれば、あるいは届くかもしれんな…」
「………」
「………」
「………」
兄貴…独り言は一人で、もう少し小声で言う物だぞ。
「行こうか、天野」
「あっ…はい」
俺達は兄貴の診療所を後にした。
帰り道、俺達に会話は無かった。
天野はやや落ち込んだ顔をしているし、俺の方は考え事だ。
その理由は、診療所を出た時から頭の中に違和感があったからだ。
何かが引っかかる…だが何が違和感を引き起こし、その原因は何かとなると…さっぱりわからない。
だがしかし…
「不撓さんっ!」
 ドンッ!
「なっ…!」
俺は天野から体当たりを受けて…
その直後…
俺達の居た場所に魔法陣が浮かび…
火柱が上がった…
 ゴオオオォォォ…
敵の襲撃を受けたのか!
俺は急いで体勢を立て直し辺りの気配を窺う。
鎧は…拙いな、今のショックで手から離れている。
「うわぁ〜、けっこう良い眼をしてるのね」
背後から声…そして余りにも巨大な気配。
「英知か!?」
いや、英知ではない。
英知にはこんな気配は…いや威圧感は出せない。
まるで…天を覆うほどの巨大な滝を、間近で見ているかのような感覚であった。
圧倒的な…途方も無く圧倒的なエネルギーを感じる。
振り向けばそこには、薄汚れたマントを羽織った女が居た。
ややカールした黒髪に黒い眼、なのにどこか西洋人の雰囲気が漂う若い女性…
だが…間違い無く俺はそいつに気圧されていた。
「アルティメットアンサー?」
…威圧感が一気に雲散した…ついでに俺の気合も。
まさか真顔でこんな訳のわからない事を言われるとは思いもしなかった。
「やりますね…」
実力がか?ネタがか?
とにかく気合を入れなおす、ここで天野を危険にさらす訳にはいかない。
「いきなり何しやがるっ!」
再びその女に威圧感が戻る。
恐れるな…俺の名は何だ…?
「悪いけど少し試させてもらったわ、そこのお嬢ちゃんに興味が湧いたの」
「私に…ですか?」
「そうよ」
恐れるな…恐れるな…恐れるなっ!
「だからって…何故俺達を殺そうとしたぁっ!」
俺は天野達の間に割って入る、いざという時に盾となれるようにだ。
「あのねぇ…」
急に呆れ顔になり、またもや威圧感が雲散した。
こいつ…もしかして真剣な時しか威圧感は出せないのか?
「この魔法陣からは非殺傷性の炎しか出ないの」
そう言って女は空中に魔法陣を描く。
だが…残念ながら俺には魔術の事はわからない。
「だからドロンボーみたいに素っ裸になる事はあっても死ぬ事は無いわ」
天野の素っ裸…天野が素っ裸…天野は素っ裸…
「…お嬢ちゃん、この子スケベよ。やめた方が良いわ」
「ふ…不撓さんっ!」
い…いかん、大丈夫か?俺…
落ち着け…落ち着くんだ…特にアレ。
「まったく、可愛い顔しちゃって…そんな恋する乙女にプレゼント」
そう言うとその女は、まるで耳たぶでも引っ張るかのような手軽さで、どこからか爪楊枝ほどの小さな剣を取り出した。
「それは…?」
「結界封じの魔剣よ、これを使えば術者に気取られる事無く結界に出入りできるわ」
その女は…とんでもない事をサラリとのたまいやがった。
「どうしたの?役に立つって事は保障するわよ」
「あの…いいんですか?」
「恋する乙女に説明は不要よ」
なんだか良くわからない思考回路だな。
天野は恐る恐るその剣を受け取った。
「ありがとうございます、スーパードクター…さん?」
「良く言われるけど違うわ…」
どうやら天野が一矢報いたようだ。
偉いぞ、天野。
「それじゃあ、頑張りなさいよ」
「はい、ありがとうございました」
そう言って天野は深く頭を下げる。
俺も釣られて頭を下げるが…なんか釈然としない。
とにかく俺達はその女と別れ、その場を後にした。
「負けちゃ…駄目だからね」
「…え?」
そんな声が聞こえ、振り向くと…
そこには…誰も居なかった。
ただ、天野の手の中に剣があるのみであった。
468不撓家の食卓 次回予告 ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/08(土) 22:44:10 ID:Zl+5Veiu
ついに不撓英知の真意が明かされる時が来た。
そして不撓勇気に襲い掛かる魔の手とは。
次回、不撓家の食卓『幸せになるために(前編)』にご期待ください。
469不撓家の食卓 おまけ その一 ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/08(土) 22:45:04 ID:Zl+5Veiu
「魔剣王、何をしていた?」
「フクツ!?どうしてここに…?」
「診療所の近くであれだけ派手に花火をあげたのだ、気がつかない方がおかしい」
「ありゃりゃ…」
「魔剣王よ、気に入った陣営に過度に肩入れするのはどうかと思うぞ」
「そうかしら?私は私が正しいと思った事をしているだけよ」
「まあ、それも良かろう…」
「ねぇフクツ、誰があの子を手に入れるか賭けない?」
「…魔剣王がこれ以上ちょっかいを出さないのならな」
「決まり、フクツは誰に賭ける?」
「大槻陽子に10万円」
「じゃあ私はあの占星術師のお嬢ちゃんに10万ね」
「了解した」
「じゃあ結果を楽しみに…」
470不撓家の食卓 おまけ その二 ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/08(土) 22:46:03 ID:Zl+5Veiu

「…で、そっちには居たの?」
「いいえ、そちらには?」
「居なかったわ…」
(この自称婚約者、隠してたりしてないかな?)
(この方が嘘を言っている可能性は十分にありますね…)
「じゃあ、今度はどうするの?」
「そうですね…一度家まで戻ってみましょうか」
(こいつには黙ってるけど、あの天野って子も休んでるのよね…)
(この方には内緒ですけど、あの天野という方も休んでいたらしいですね…)
「じゃあ、一緒に行きましょうか?」
「そうですね、そうしましょう」
((抜け駆けをするとは良い度胸…))
(勇気君は誰にも渡さないんだから…)
(そちらがその気ならこちらにも考えがあります…)
「「フッフッフッフッフッ…」」
471シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/08(土) 22:47:23 ID:Zl+5Veiu
神作品の直後に、こんなの見せてすみません…orz
個人的には説明が多すぎたかな…と思うのですが、
今の私ではこれが限界です、勘弁してやってください。
あとネタも多すぎたかも…
それとそろそろ伏線の回収に入り始めました。
昔の話も読み返していただけると幸いです。
なお今回の話には何箇所か伏線モドキがありますので、ご注意ください。
472名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 23:08:48 ID:qAxjh762
リアルタイムでGJ!
真相に近づいてきてwkwkした!
俺は天野ちゃんを応援します。

>優柔
完結おめでとうございます。
先輩の(ある意味での)ハッピーエンドにほっとしました。
どのみちゆうくんはこういう運命かw

>438
作者様毎度毎度勝手に描いてごめんなさい。
性懲りもなくまた……
ttp://uploaders.ddo.jp/upload/500k2/src/1144503312333.gif

読者諸氏のイメージにあわない可能性大。
つーか各人の乳のサイズをどうするか悩んd(ry
ところで士郎の遺影、用意した方がいいんだろうかw

>阿修羅様
サイトへ収録していただきありがとうございます。
自分、神じゃなくて単なる一介の絵描きなんで正直びくついてます。
絵師様が増えて画廊もにぎやかになることを願っています。
473名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 23:15:16 ID:bgAuG+wn
>>472
いやあんたも神だよ!!!!!!!!!
GJ!
ただトモが智子なのか愛しのモカ先輩なのかわからないのは俺だけでしょうか
474名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 23:22:08 ID:qAxjh762
すみません智子の方でお願いします。
モカさんはもうちょいイメージが固まるまで時間がかかりそうなんで…
475『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/08(土) 23:28:33 ID:+6fggDPb
変なタイミングでスマソ
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ふふふ…ついにやりました。純也さんを物にしましたよ。
きれいな顔が……私の胸にあります。
悩んでる所へあんな嘘をついたら、何の疑いもなく信じちゃいましたねぇ。
もう少し疑うってことをしないと馬鹿な女にも騙されちゃいますよ?
まぁ、そんな女がいたら、躊躇なく消しますけどね……ふふっ。
ちゃんと受精したいでしょうか?危険日を狙ったんですけどねぇ…
もし子供ができたら「ごめんなさい!」って言うんでしょうねぇ。好きでやってるんですから、謝る必要なんてないんですよ?
…でもまだ足りませんね。確実に妊娠するまで何度もやらないとダメですねぇ。
「ん…」
あ、ふふふ…気持ち良さそうに寝てる……かわいい。普段は眼鏡を掛けてるからわからないけど、素顔はとっとも素敵なんですねぇ。
この顔……髪の毛……体……全部私の物……。誰にも渡さない、誰にもサワラセナイ………
「ふふふ…あはは……安心して寝ててください………邪魔する人は、みぃ〜んな私が消しときますよぉ。」
そう心に誓って、邪魔さんの髪にキスをしました……
佐奈様も花穂ちゃんも……自分から死にになんて来ませんよね?「あ、あれ…」
朝起きるとそこには奈緒さんはいませんでした。
昨日のは夢かなと思いましたが、ベットに奈緒さんの使っている柑橘系の香水の匂いが残ってました。
「やっぱり……昨日、やったんだ……」
後悔は……してないと思う。奈緒さんは僕の事を好きだと言ってくれたし、花穂のことを吹っ切るためにも………







朝食の準備の時間、とても気まずい雰囲気でした。昨日の奈緒さんとのことや、花穂へのショック………そのせいなのか、二人にまともに顔を合わせられませんでした。
476『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/08(土) 23:30:23 ID:+6fggDPb
「……どうしたの?純也?朝からテンション低いわよ?悩み事〜?」
人の気も知らずによく言いますよ。まぁ、知られたらそれはそれでまずいですが。
「…別に…なんでもないよ。ただねむいだけ。」
「あっははは!そうよねぇ。純也に悩み事なんかあるわけないっかぁ!」
普段と変わらない罵倒ですが、今日はそれさえヤケに意識してしまいます。
はぁ……花穂みたいにあんな笑い方、最近してないなぁ。
たとえば……『でひゃひゃひゃひゃ』とか?
あれ?なんでこんな笑い方なんだろ?
まぁいっか。
「あれぇ〜。おかしいですねぇ。お嬢様が起きてきません〜。」
奈緒さんが、昨日のことなど何もなかったような明るさで入って来ました。
「え?……佐奈様、いなかったんですか?」
「えぇ。どこにもいないんですよぉ。探すの手伝ってくれますかぁ?」
「えぇ、いいですよ。」
そう言うと二人顔を合わせて微笑み合いました。
嗚呼……なんだか、意識しているせいか、奈緒さんの笑顔がかなりかわいく見えます…………
「む……つまんないわねぇ……なに私の知らない間に仲良くなってんのよ………許さん……」
花穂がぶつぶつ言っていたのは気のせい……にしときましょう。
僕はもう…関係を無くすんだから………
477名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 23:40:19 ID:58uf2/mn
リアルタイム……だよね。
激しくGJ!!ここは神々が多すぎて、
一瞬天国かと思っちまうよ。
478名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 23:51:59 ID:0/8fPhdV
また佐奈嬢消えたな。DEAD ENDの予感。
4798 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/08(土) 23:56:46 ID:ASuDCzrA
某第五部のボスの様に何度も死に続ける主人公なんだろうかw



>>472
うはwww
智子と田中にいたっては完全に俺の中のイメージまんまwww

「文章の中で容姿描写は適当にぼかしたり省いたりしても
脳内保管で勝手に自分の理想イメージを作り上げるから
一行でも美女と書いとけばどうにでもなる」
ってばっちゃ、もといどっか御大が言ってた。

いやいや、人の妄想を具現化していただいてうれしいです。


せっかくだから乳設定(若干名は今さっき決めたw公式設定)
姉ちゃん 結構
モカ    背は低い方だけど、それなり
智子   並み
ヨーコ  そこそこ
ミカ    ひんぬー
田中   かなり

遺影の必要性についてはノーコメントw
480名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 00:08:13 ID:Yw892tWL
>477
何言ってるんだブラザー。

ここは泥棒猫にメス犬どもが渦巻く畜生道にて、決して奪い合いの耐えない修羅道、
嫉妬界だぜ!?
481名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 00:33:58 ID:DyLLxQX4
>>480
そして俺たちゃ神様と手を切って
修羅場の女神と手を組んだ
命知らずの(ある意味)変態部隊!
482名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 00:56:49 ID:sRItFMy5
>>481
愛する人と一緒(無理心中)なら地獄の悪魔も怖くない! 
483名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 01:29:42 ID:XIX+WHgn
このスレはある自分の身の程度を知らない泥棒猫に戦いを挑んだ少女の記録である。
恋愛において、まったく無垢な少女が、愛憎の中から
どす黒い精神を培い、わずか数日で泥棒猫を完全駆逐した奇跡を通じ、
その原動力となった嫉妬と愛を、余すところなくSS化したものである。
484もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/04/09(日) 06:06:44 ID:/jkQM6/Y

翌日、わたしの体温は39度を超えるほどにまで上がっていた。
あまりの高熱にお兄ちゃんがわたしの看病をすることになり、今、学校に電話をかけている。
本来なら、お母さんが家に残るところだが、仕事の関係上どうしても休めないらしい。

……でも、これでよかった。
お兄ちゃんをひとり占め出来るから……。





ボンヤリと見慣れた天井が浮かび上がってくる。
薬のおかげでずいぶんと長い時間眠っていたみたい。
恐らく、もう深夜だろう。
熱はお兄ちゃんの看病のおかげか大分下がった。
この調子なら、明日は無理でも明後日には学校に行けるようになるだろう。




ふふふ、それにしても今日は最高の一日だったなぁ。
今日の出来事を思い出すだけで、顔がついニヤついてしまう。
お兄ちゃんが、学校のヒーローであるお兄ちゃんがわたしのためだけに動いてくれた。
病院まで支えてもらったり、おかゆを食べさせてもらったり、わたしが寝るまで手を握ってもらったり……。
お兄ちゃんはわたしに、風邪のおかげの特別に濃くて甘いジュースを与えてくれたのだ。




こんな日が毎日続いて欲しい、毎日このジュースが飲みたい………。
しかし熱が下がり、少し冷静になった頭はその可能性を否定する。

無理……。もう熱は下がっちゃった。
今日のことは、わたしがひどい熱をだしてたから。
それに、きっとお兄ちゃんは明日学校へ行ってしまう。




そしたら、円香さんはわたしがいないのをいいことにお兄ちゃんと……?
最悪の夢想が頭をかすめる。



嫌っ!!!
そんなの、駄目……だよ。

どうしようどうしようどうしようどうしよう?
わたしはほとんど泣きそうになりながら答えを探した。
485もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/04/09(日) 06:54:58 ID:/jkQM6/Y

答えはとても簡単だった。

わたしは携帯で時間を確認し、ふらつく足でお風呂場へと向かっていった。


熱が下がったならまた上げればいい。


脱衣所で服を脱ぎ、お風呂場に入る。
お風呂場はまだ前に入った人の熱気が残っていた。
しかし、今はこの熱気も邪魔なだけだ。

わたしはシャワーを冷水に設定し、蛇口を回した。
勢いよく冷たい水がわたしにふりかかる。


わたしは、念入りに冷水シャワーを浴びた。
それこそ、足の先から髪の毛一本まで……。

はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。
息が白くなってきた。

そ、そろそろいいかな。

わたしは十分ほどシャワーを浴びた後、静かに脱衣所に引き返す。
お風呂場にさっきの熱気は全く残っていなかった。



頭がわれそうに痛い。
裸のままふと鏡を見ると、顔面蒼白のわたしが写っていた。
その顔色からは明らかに正常な状態でないことが読み取れる。

ひとまずこれでよし、と。

わたしは体をタオルで軽くふき、自分の部屋へと戻っていった。


部屋までの距離が果てしなく長く感じる。
それでも、頑張ってなんとか部屋までたどり着き、自分の布団にもぐり込んだ。


わたしは布団のなかで、確実に風邪が悪化するのを感じる。


ふふふ、これで、きっとまたお兄ちゃんが……。

わたしは意識を失った。
意識を失う寸前、なぜか悲しそうなお兄ちゃんの顔が頭にうかんだような気がした。
486名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 11:17:41 ID:Yw892tWL
「環境で依存体質になっただと? 違うね、こいつは生まれつきの依存体質だっ!」
いやマジで近いうちにリストカットかましそうなんですけど
487名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 11:53:54 ID:Xt+vuIBd
>>475-476
眼鏡?でひゃひゃひゃひゃ?
ま…まさか…
488名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 23:19:01 ID:VS7f2O7G
新スレ移行・・・じゃないよな?まだ
489名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 23:38:00 ID:1ewSfjZ4
嵐の前の静けさ…か
490名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 23:38:10 ID:7Q5FnCtU

  \         /_ /     ヽ /   } レ,'        / ̄ ̄ ̄ ̄\
  |`l`ヽ    /ヽ/ <´`ヽ u  ∨ u  i レ'          /
  └l> ̄    !i´-)     |\ `、 ヽ), />/        /  地  ほ  こ
   !´ヽ、   ヽ ( _ U   !、 ヽ。ヽ/,レ,。7´/-┬―┬―┬./  獄  ん  れ
  _|_/;:;:;7ヽ-ヽ、 '')  ""'''`` ‐'"='-'" /    !   !   /   だ.  と  か
   |  |;:;:;:{  U u ̄|| u u  ,..、_ -> /`i   !   !  \   :.  う  ら
   |  |;:;:;:;i\    iヽ、   i {++-`7, /|  i   !   !  <_      の  が
  __i ヽ;:;:;ヽ `、  i   ヽ、  ̄ ̄/ =、_i_  !   !   /
   ヽ ヽ;:;:;:\ `ヽ、i   /,ゝ_/|  i   ̄ヽヽ !  ! ,, -'\
    ヽ、\;:;:;:;:`ー、`ー'´ ̄/;:;ノ  ノ      ヽ| / ,、-''´ \/ ̄ ̄ ̄ ̄

491名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 23:41:09 ID:0Ii8lwPe
今夜は神が降臨しないな……
492義姉 第5回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/10(月) 00:09:41 ID:DVlg4pF4
微妙にビクビクしながら投下

        *        *        *

 姉弟ゲンカだった。
 お菓子の取り合いという極めてよくあるの理由で。
 手が出れば勝者はほぼ間違いなく確定する。
 ただ、この日は先に母の雷が落ち、ケンカ両成敗となった。
「いいかげん仲良くしなさい」母が言った。
 しぶしぶ姉は弟に「あんたの事好きになるように努力するから、あんたもしなさい」と言った。
 弟は頷きながら、「好きになる努力って何だ?」と思った。

        *        *        *

 ベッドの中に入り込んでだいぶたつが混乱したままだ。
 頭が中でぐるぐる回る。
 そういう関係があったのに姉ちゃんは何一つその事に関しては言ってこなかった。
 なんでそういう事あった後平気な顔していられるんだ。オレが子供なだけなのか?
 それとも姉ちゃんも酔って忘れていたのか? あの状況だ、少し考えれば簡単にわかるに決まっている。
 最近ある種の感情を姉に対して僅かばかりだが抱き始めている。
 それを自覚してしまうのが怖かった。姉は異性である、女であることを。
 その感情を肯定されているともとれる行為があった。
 明日の朝からどんな顔をして話せばわからなかった。

 結局その日は外が白くなってくるまで寝付けなかった。



「そろそろ起きないと遅刻するよ」
 誰かに布団越しに蹴られた。
 被っていた布団を無意識で跳ね除けていた。
 ――そこにいた。
 いや、起こされたのだから、いなきゃいけないのはわかっている。
「い、いや、別に――」
 オレは姉ちゃんの顔を直視できなかった。
493義姉 第5回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/10(月) 00:10:26 ID:DVlg4pF4
        *        *        *
『涼子』

 シロウが私に対する目つきが最近少し変わってきていることに気づかない程私は鈍感ではない。
 男の子からこういう目線を送られたことは今まで何度もあった。しかし弟から送られてきたのはつい最近のことだ。
 理由は大体検討つく。初めての相手だからってことだろう。
 今朝など初めて家に来た日のように酷く落ち着いていない様子だった。
 禁断の関係? 馬鹿げている。
 でも、シロウのことだ、どうせ胸の奥に閉じ込めたまま終らせてしまうだろう。それでいい。だから私もあえて口に出して警告を促すようなことはしない。
 そんなこと口にしたらよけい意識してしまうから――



「そういえば、モカって急に付き合い悪くなったけど男でも出来たの?」
 昼休みに先週あたりから昼には必ず姿をくらますようになっていたモカを教室から抜け出す前に捕まえてみた。
「んー、ま、まあ似たようなところかな」
 少し歯切れの悪い返事。なんだ隠しておきたい相手か。
「で、相手誰よ? 紹介しなさい」言いたくないのをわかりつつ聞いてみる。
「いや、まだ付き合っているとかそういうんじゃなくて、ちょっといい感じってレベルで。
 あ、うん――涼子も知っている相手だから心配とかそういうのしなくていいよ」
 誰だろう? 同じ学校の奴か中学の時、もしくはバイト先の人間か。でも最近いい感じになったのって誰かいたっけ?
 そんな事に思考を巡らしている間にモカはそそくさと教室から逃げ出していた。

        *        *        *
『モカ』

 セーフ。あの感じだと士郎君とは話してもいなければ気づかれてもいない。
 涼子って時々滅茶苦茶勘が鋭くなるから冷や冷やしたよ。
 いや、まあばれてもいいけど、友達の弟ってちょっと恥ずかしいかなって。それに話すならちゃんと付き合いだしてからでも遅くないかな。

 いつもどおり、士郎君は中庭にいた。
 でも、さすがに二度目になると後ろから突如頭撫でるだけでは反応が薄い。もう少しインパクのある登場のしかた考えてないとな。
 そんな事を考えながら士郎君の顔を見ると少し元気ない。
「何か悩んでいる? 前にもいったけどドーンと相談してきなさい」
 士郎君の前だと体は小さいけどお姉さんぶって行動しているな、私。
「いや、別に――ただの寝不足です」
 ふむ、それなら私がしてあげる行動は一つだ。
「ヘイ、カモン!」私の太ももを軽く叩いてみせる。
「へ?」
 この顔はわかってないな、私が言いたいこと。
「ほら、膝枕してあげるって言ってるの」
「い、いいですよ、そんなの……」
 ちぇ。恥ずかしがっているのはいいけど、少しぐらい「じゃ、じゃあ……」なんて言いながら甘えてくれたらもっといいのに。
 まあ、ライバルが居る訳でないから、慌てず急がす程よく恋は進めていこうか。

494義姉 第5回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/10(月) 00:11:10 ID:DVlg4pF4
        *        *        *
『智子』

 ――放課後はダッシュで追いかけろ私、
 今日も今日とて士郎は私避けているし、私も臆病になって中々言い出せない。
 このままだと、この状態のまま数ヶ月が過ぎてしまいそうな気すらする。
 だから今後こそ勇気だす。がんばれ私。

 本日最後の授業が終ると駆け足気味で士郎は教室を出て行った。
 よし無理矢理捕まえてでもちゃんと言うんだ。
 でも――無理矢理捕まえちゃったりしたら嫌われるかな……
 あ、そんな事考えていると士郎が逃げていく。
 慌てて体を動かし始めた。

「待って!」
 どうにか校門前で呼び止めれた。
 士郎はこっちは向いているけど視線は合わせてくれないし、何も言ってこない。
 こっちからちゃんと言うんだ。
「あ、あの、あのね、私……」
 緊張して舌がまわらない。全身が小刻みに震えている。

「シロウ、早く帰るよ」
 ――うん、そう。前みたいに一緒に帰ろうよ。
「ね、姉ちゃん?」
 アレ? アレアレ? 何で士郎は女の人に襟首掴まれて連れて行かれているの?
 頭が混乱して体が動かなかった。

        *        *        *
『士郎』

 電車から降りた後も姉ちゃんはオレの襟首を掴んだままムスッとしたまま歩いている。
 はっきり言って偶々帰り道で一緒になった時ぐらいしか一緒に帰ったりはしなかった。
「普段普通にしていても、あの子に顔あわせるどころか、考えるだけでも辛いんでしょ!」
 ようやく姉ちゃんが口を開いた。
「――うん」
 だから、さっきだって辛かった。
「全部忘れて最初から無かったことにしてしまえば楽になるんだよ」
 姉ちゃんの口調が何故かいらだっている。
「でも――」
 もう恋人にはなれなくてもいい。でも――前みたいに一緒にご飯食べたり遊んだり出来る関係にだけにでも戻りたいんだよ。
 そう考えるだけで少し涙ぐんでいた。

 しばらく黙って歩いていた後、強引に頭を下げさせられ胸に押し付けさせられた。
「ねえ――」
「あんたマザコンの癖に甘えるの下手で――辛い時ぐらい少しは素直に甘えなさい……」
 ――姉ちゃんが泣いてる?
 何で姉ちゃんも泣いているんだ? 分らない。
 いつも強気で勝気な姉ちゃんが弱音や泣いているのは見たことがない。
 いや、一度だけある確かオレが中二の頃三年の人が亡くなって、姉ちゃんがその葬式から帰ってきた時しばらく泣いていた。
 抱きしめられているはずなのに姉ちゃんがやたら小さく感じられた。背はオレより低くてももっと大きく感じていたのに。
495義姉 第5回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/10(月) 00:11:56 ID:DVlg4pF4
<チラシの裏>
 花粉症つらい
</チラシの裏>
496名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 00:19:02 ID:1xc92kiG
>>495
GJ!
やっぱ駄目だモカたん最高すぎる!!!!!!!
ヘイカモンなんて言われてみたいww
モカたん頑張れモカたん
497名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 00:20:01 ID:8lZ5U3Lx
『歌わない雨』の人ですけど投下大丈夫ですか?
498名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 00:22:05 ID:8xtltPWi
モカさんラブリー。智子と士郎の縁の無さに驚愕。
499名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 00:23:52 ID:SVp0e9te
>>497
プリーズ
500名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 00:24:06 ID:hHUIORTx
>>497
バッチコーイ!!
受け入れ態勢は万全だぜい
501名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 00:24:19 ID:BZYBRUvf
>>495
GJ!!
>>497
イエース!!
502『歌わない雨』Side芹:2006/04/10(月) 00:25:31 ID:8lZ5U3Lx
どうもです
では次から
503『歌わない雨』Side芹:2006/04/10(月) 00:28:23 ID:8lZ5U3Lx
 私は友達にせがまれて、再びダンクをした。予定よりは少し早いが大丈夫だろう。
 そして降りようとしたとき、なんたる幸運。うまい具合いに突風が吹いてくれた。勝機は我に有り、などと普段は伸人が言っているふざけた言葉が脳裏をよぎる。
 しかし、
「あ」
 予定以上にバランスを崩しすぎた。元々落下する予定だったとはいえ、流石に怖いものがある。だから今の風はありがたかったが、「うあァー」
 鈍音。
 予想以上に痛かった。
「…大丈夫?」
 雪が訊いてくるが気分的にノーコメント。黙って立ち上がると腹は立つが優しい緑の後ろに、伸人の面倒臭そうに立ち上がる姿が見えた。どうでも良さそうなのは、私を信用してくれているからだと思いたい。
 とりあえず伸人の近くに行こうとして、
「うあ」
 足に走る軽い痛み。
 また転んだ私の額を伸人が軽く叩いてくるが、目に浮かんでいるのは心配の色。
「キツいか?」
「いや全く」
 軽口で返すと伸人がしゃがんだまま背を向けた。
「乗れ」
 予定では肩を貸してもらうだけのつもりだったが、嬉しい誤算だった。


 さんざんセクハラをされつつ、治療後。どうでも良いが、本当はやはり緑のような巨乳が良いのだ
504『歌わない雨』Side芹:2006/04/10(月) 00:31:08 ID:8lZ5U3Lx
うあミスったスミマセン

 私は友達にせがまれて、再びダンクをした。予定よりは少し早いが大丈夫だろう。
 そして降りようとしたとき、なんたる幸運。うまい具合いに突風が吹いてくれた。勝機は我に有り、などと普段は伸人が言っているふざけた言葉が脳裏をよぎる。
 しかし、
「あ」
 予定以上にバランスを崩しすぎた。元々落下する予定だったとはいえ、流石に怖いものがある。だから今の風はありがたかったが、「うあァー」
 鈍音。
 予想以上に痛かった。
「…大丈夫?」
 雪が訊いてくるが気分的にノーコメント。黙って立ち上がると腹は立つが優しのは心配の色。
「キツいか?」
「いや全く」
 軽口で返すと伸人がしゃがんだまま背を向けた。
「乗れ」
 予定では肩を貸してもらうだけのつもりだったが、嬉しい誤算だった。
505『歌わない雨』Side芹:2006/04/10(月) 00:34:02 ID:8lZ5U3Lx
うあミスったスミマセン

 私は友達にせがまれて、再びダンクをした。予定よりは少し早いが大丈夫だろう。
 そして降りようとしたとき、なんたる幸運。うまい具合いに突風が吹いてくれた。勝機は我に有り、などと普段は伸人が言っているふざけた言葉が脳裏をよぎる。
 しかし、
「あ」
 予定以上にバランスを崩しすぎた。元々落下する予定だったとはいえ、流石に怖いものがある。だから今の風はありがたかったが、「うあァー」
 鈍音。
 予想以上に痛かった。
「…大丈夫?」
 雪が訊いてくるが気分的にノーコメント。黙って立ち上がると腹は立つが優しい緑の後ろに、伸人の面倒臭そうに立ち上がる姿が見えた。どうでも良さそうなのは、私を信用してくれているからだと思いたい。
 とりあえず伸人の近くに行こうとして、
「うあ」
 足に走る軽い痛み。
 また転んだ私の額を伸人が軽く叩いてくるが、目に浮かんでいるのは心配の色。
「キツいか?」
「いや全く」
 軽口で返すと伸人がしゃがんだまま背を向けた。
「乗れ」
 予定では肩を貸してもらうだけのつもりだったが、嬉しい誤算だった。
506『歌わない雨』Side芹:2006/04/10(月) 00:35:34 ID:8lZ5U3Lx
 さんざんセクハラをされつつ、治療後。どうでも良いが、本当はやはり緑のような巨乳が良いのだろうかと少し悩みながら教室に向かう。
 パンを買いに行ってくれている伸人が帰ってくるまで約十五分、その間に支度をしなければいけない。私が頭が悪いながらも、長い時間をかけて考えた作戦だ。
「さて、と」
 私はとりあえず着替に向かった。
507『歌わない雨』Side芹:2006/04/10(月) 00:42:42 ID:8lZ5U3Lx
 教室に戻ると緑と雪がいつも通りの並びで座っていた。弁当を開けていないのは伸人を待っているからだろう。
「あ、おかえり。あれ? 伸人ちゃんは?」
 烏龍茶を一口飲みながら雪が訊いてくる。
「悪いが、パンを買いに行ってもらってる。運が悪いことに、今日に限って朝って朝買うのを忘れた」
「うわぁ」
 緑が表現し辛い表情を浮かべた。
「厄日ねェ、足の事と言い。座るの辛いなら手ェ貸そうか?」
 いつもと違い優しい言葉を投げ掛けてくる緑にくじけそうになったが、ここで止める訳には行かない。
「大丈夫だ…っと」
 ごく自然に転んだが、当然わざと。私の体は緑の弁当を道連れに豪快にダイブ。
「あ、もう言わんこっちゃない」
「私のお弁当ォ」
「うあスマン」
 一瞬眉根を寄せ、しかし笑顔をすぐに浮かべると緑は私を椅子に座らせる。
「まァ良いよ。その代わり、大食いのあんたのパン少し貰うから」
 その言葉に、益々心が痛くなる。
「しかしねェ…」
「何だ?」
「運動馬鹿のせっちんが動けなくなったら只の馬鹿じゃん」
前言撤回、そしてとうとう計画に乗ってきた。体育の時といい今といい、厄日? とんでもない、運が向いている。
508『歌わない雨』Side芹:2006/04/10(月) 00:45:48 ID:8lZ5U3Lx
 私は笑顔を浮かべ、
「あ、せっちん青筋」
「そのトイレみたいなあだ名は止めろ」
 表情をキープしたまま雪に注意をし、緑の顔を見る。
「只の馬鹿でも良いが、ファンクラブのある馬鹿に負けているのは誰だろうな? ヒントはデブだ」
「止めなって二人とも、毎日毎日。アンタらはタイヤキか?」
 私と緑は同時に雪を睨む。表情は勿論、二人共に笑顔だ。
「元気一杯が許容できるのは小学生だけだよ? 良い? 体型や頭の中身が小学生でも、人間界では実年齢重視の決まりなの。適応出来ないなら自然に帰る、雌犬ちゃん?」
「その程度解っているが、ありがとう。お礼に一つ良いことを教えよう。いくら体にメリ☆ハリ☆があっても、相手が居なかったら只の惨めな脂肪だぞ? 一つ賢くなって人間にまた一歩近付いたな、雌豚さん」
「あら随分とよく鳴くワンちゃんね。この近くに保健所ってあったかな?」
「そっちこそ。人間様に偉そうな口を叩くな、この腐れ生ハム」
「な」
 表情を見て、緑の心が沸騰してきているのが分かる。いつもより口汚く罵った甲斐があったというものだ。これなら弁当を落とす必要もなかったかなと少し反省をする。だが雪にも、相手をしている緑にも悪いと思うが更に続けた。
「大体、伸人も何でこんな奴…」
「豚よりはマシなんだろう。だから…」
 私はニヤリと笑みを変えると、
「夜も私に独占されているんじゃないのか? お前は一生写真と道具を共にしろ」
 言いきると同時に、私は殴り飛ばされていた。
509『歌わない雨』Side芹:2006/04/10(月) 00:49:42 ID:8lZ5U3Lx
「大体、伸人も何でこんな奴…」
「豚よりはマシなんだろう。だから…」
 私はニヤリと笑みを変えると、
「夜も私に独占されているんじゃないのか? お前は一生写真と道具を共にしろ」
 言いきると同時に、私は殴り飛ばされていた。しかも平手ではなくグーパンだった。だが、計画通りに来る痛みすら今の私には快い。この位じゃないと足りない位だ。そして悪役になると決めたときに必要だと決めたものは、大体揃った。
 唇の端に浮かぶ血を拳で拭いながら立ち上がり、視界に入るのは怒っても尚綺麗な緑の姿と、困っていても尚可愛い雪の顔だ。端にはきちんと伸人の姿も見える。
 そこからはシナリオ通り。最後は少し怖かったが、皆にキスした事と、伸人が去年誕生日プレゼントにくれたナイフのお陰でやり遂げる事が出来た。
「これで、やっと…」
 緑や伸人と対等、同じステージに立てる。私は晴れやかな気分で病院へ向かった。
510『歌わない雨』Side芹:2006/04/10(月) 00:54:30 ID:8lZ5U3Lx
今回はここで終りです
最初ミスってスイマセン
いくら楽しいからって、ドンキーコングブッ通しで全クリした直後のバグった頭で書いちゃ駄目ですね
反省してます

次は緑編の予定です
511名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 00:59:43 ID:E7bdb17d
誕生日プレゼントにナイフとは、スゴイ修羅場属性ですね
512名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 01:46:44 ID:ckRcORQJ
>495
GJ!
傷の舐めあいみたいな関係となるのか、そこから一歩踏み越えていけるか
士郎の男気が試されそう
ウチ、リアルで姉弟なんだが一緒に下校もしないし、進学先も別々だったよ
なんだかんだで仲良いのな。若干主従関係が見られるがw

>辛い時ぐらい少しは素直に甘えなさい……
その言葉、そっくりお返ししますお姉ちゃん(つД`)
癒せるなんて言わないよ!でもずっと傍にいてあげるからオレんトコおいで
513名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 02:12:17 ID:OP/7DSjE
>>512
ウチ、リアルで『兄弟』で俺弟なんだけど一緒に登下校とかするし、進学先も一緒だったよ
フツーに仲良いのな。若干主従関係が見られるが………orz
514名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 02:44:45 ID:DaDhMZZh
>>512
>>513
wwwワロスwww
515もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/04/10(月) 03:20:43 ID:3zbAw2Kg

いつも通り、ひとりの朝食。
両親はいない。父の単身赴任に母がついていってしまった。

両親は私を愛していない。
だからこそ、聾唖の娘ひとり残して行けるのだろう。
でも、ひとりの方が気が楽。
あいつらがいると空気が重くなるだけだから……。



何故両親は私を愛してくれないのか?
それはきっと私が人形にならなかったからだろう。
両親よりいい大学を卒業させ、両親よりいい会社に就職させる。
二人はそんな私の将来を期待したに違いない。しかし、私は人形にならなかった。
……いや、なれなかった。




現代社会において聾唖はかなり不利だ。
そもそも人間は言語を耳で聞いて覚える。
しかし、耳の聞こえない私は言語を習得するのに通常の子供より長い時間を要した。
小学生にもなってあいうえおを勉強している私を両親は歯がゆく思っていたにちがいない。


しかし、私はいつまでも落ちこぼれというわけでもなかった。
中学三年になる頃には学年の中位にまで学力を上げた。
ただ両親に認めてもらいたかったから。そのために勉強を頑張った。恐らく、他の誰よりも努力しただろう。
しかしそれでも、両親は私を認めてくれなかった。


どうしてお父さんとお母さんは私を認めてくれないの?私はあんなに頑張ったのに!!!!


いつしか私は両親を憎むようになっていた。
516名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 03:47:31 ID:hHUIORTx
>>512 >>513
うちもリアルで姉弟だけど、
まさに犬猿の仲だった。思春期の頃などもう冷戦状態。
お前とは一生あわねー、とか言われたしね。

517名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 05:16:29 ID:Qni4LEE6
>>516
弟に絶好された姉乙
518名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 05:18:04 ID:bHFrzt9z
>>517
絶好だと仲よさそう。
519名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 05:53:23 ID:h2mfyKxJ
義妹のねーちゃんは中学生で酒の勢いでヤッちまったのか・・・
520名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 06:03:46 ID:hHUIORTx
言われたじゃねえ……言っただったorz
521名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 06:49:37 ID:d+avkac3
義妹のねーちゃんって非処女だったんだよね?
522名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 11:13:37 ID:5ktfipWo
義妹?
523名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 11:36:07 ID:ZPxPj7o0
>>522
モカさんがスールになってくれる番外編だよ、きっと。
524名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 12:44:13 ID:YY1SkNf7
【社会】 "「お姉ちゃんが変だ。怖い、怖い」と19歳弟" 22歳女性、自宅で変死…札幌★2
ttp://news19.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1144638988/
525名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 13:07:04 ID:OerNLpWv
>>524
犯人は嫉妬深い姉の自作自演なのか_
526『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/10(月) 15:08:37 ID:g85W2XyJ
その日は一日中佐奈様を探し回りました。二人とは顔を合わせずらかったので、別行動を取りました。
「佐奈様ー!」
取りあえず書庫の中を探していると………
ガチャ
「あ、純也さん〜。」
奈緒さんが入って来ました。なんだか……妙に色気を意識してしまうのは気のせいでしょうか。
「あ、あぁ……奈緒さん……ここにはいませんでしたよ。」
「そうですか〜。どこにいったんでしょうねぇ。」
心配している様な言い方ですが、顔が笑顔なのは何故でしょうか?
「ふぅ…少し探し疲れちゃいましたね。此所で休みましょうか。」
あまり二人っきりになるのは断りたかったんですが…
「えぇ、休みましょう。」
そう言ってしまいました……
ゆっくりと僕の方へ歩み寄って来ますが………何だか歩き方が変です。
「どうかしたんですか?足でも挫いたんですか?」
「ふふふ……わかってませんねぇ。昨日のせいですよ〜。」
昨日……あぁ、そういう……
それを聞き、その光景を思い出すと……
「……あ…」
体は正直とはこの事でしょうか。ズボンの中が膨れ上がってしまいました。
……奈緒さんにも凝視されています……目茶苦茶恥ずかしいです………
「あらぁ……ふふふ……昨日の事、思い出しちゃったんですねぇ。」
そう言って膨れ上がった部分を擦ってきます。
「うぁ……」
変に緊張しているせいか、やたらと敏感です。少し触られただけで自分でも驚くほどに脈打っています。
「う〜ん……苦しそうですねぇ……此所で出してあげてもいいんでスケドォ……昨日の今日で少し痛みますからねぇ………」
少し考えるように俯きながらぼやいていると………
「そうだ!」
急に明るい顔で叫んだと思ったら、膝立ちになってしゃがみ込み、突き出されたチャックに手を掛けます。
527『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/10(月) 15:09:19 ID:g85W2XyJ
「うわ!な、奈緒さん!なな、何を!?……うぁぁ……く……」

ズボンの中から一物を取り出し、グニグニと扱き始めます。
「うわぁ……こういうのって火傷するほど熱いって聞いてましたけど、本当なんですねぇ。……あら?」
ジュッジュッ
扱かれる度に先走り汁が溢れてきて、奈緒さんの手を汚していきます。
「あ、ぅぁ………」
その罪悪感が快感へと変わっていき、更にペニ○は堅さを増していきます。
「ふふふ……すごいですねぇ……こんなに……ジュル…」
「うわぁ!」
突然さきっぽを舐められ、腰が砕けそうなほどの快感が走りました。
「ん……はむ…ジュル…ジュッ。」
アイスバーのように舐めとられ、唾液でベトベトになってきます。
「んんー!…ジュルジュルッ!…チュ…チュルルルルー!…チュポ…んふぅ…」
「うがぁ…はぁはぁ…ぅ……」
まるでストローのように吸われ、もうイク寸前と言う所で咥えるのを止められました。
「え……あっと……」
ジュッジュッ
「あはっ……女の子みたいな声、かわいいですねぇ……そんな辛そうな顔しなくても、ちゃんとださせてあげますよぉ。……んぁ…」
そう言って微笑むと、再び咥え始めました。
528『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/10(月) 15:10:16 ID:g85W2XyJ
「ん、……ん、ん、ジュルジュル…ジュ……チュル、チュル…んふ…」
「あぁ!奈緒さん!イク!いきます!!」
頭に手をつけ、自分から腰を動かしてもっと奥まで突き入れます。
「ん、…ジュジュ…だ、…んぅ、だひて…チュルルルルー!…口のなひゃにだひて…ジュル…ください」
その言葉がスイッチのように、奈緒さんの口の中に精液の塊をはきだしました。
ドクッドクッ!
「ん、んんんー!…んふぁ……んく、んく………けほ、けほ!」
口に入った物を飲み切れず、少しむせてしまっています。
「あ、ご、ごめ……」
「ごめんは無しですよぉ。私が好きでやったんですから……」
「はい…」
全てを出したような快感によって朦朧とする意識の中………




ガタン





本棚の奥から物音が聞こえましたが、気にする気力も残っていませんでした………
529名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 18:26:14 ID:IAFDVe4M
次辺りでまた死にそうだな主人公……。
530名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 19:25:34 ID:j+e0E0hn
>>528
なんかもうDEADEND一直線ぽいなw
やっぱりへたれはやはり長くは生きられない運命だな……
531名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 21:28:53 ID:djm0E0m1
>>525
実は姉が以前弟の彼女ととりあった結果、彼女を暗殺。
その後彼女は悪霊化で姉に憑いて弟とギシギシアンアン。
しかし弟は自分ではなく姉を見ていることに気づいた彼女は半狂乱になりつつ(ry
って話を思いついてしまった自分は間違っていますか?
532沃野 Act.12 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/10(月) 22:09:30 ID:oDTmHfTb
 混乱しきっている先輩に「夜風に当たって頭を冷やしてみては?」と提言し、それとなく戸外へ
誘い出します。「こうして電話で話すよりも直にあった方がよろしいでしょう」と近くの公園で会う
約束も取りつけました。
 既に出る準備は整えていたので駆けつけるのに要した時間はほんの二、三分。落ち着きを取り戻すには
まだ不十分な頃合でしょう。牝犬はともかく、先輩の平静を保てずにはいられない心境を思うと胸が
痛みます。慮った通りの筋が進行したとはいえ、無邪気に喜んでばかりもいられません。
「まずはこれでもお飲みになってください」
 と魔法瓶から熱いお茶を淹れて手渡します。初夏といっても夜は冷え込みます。ちょっと手回しが
良すぎるかな、とも思いましたが先輩は何も疑う素振りを見せずお茶を啜りました。
「悪いな、荒木。こんな時間にわざわざ出てもらって」
 申し訳なさと感謝をブレンドした表情。あまり喜びを示すのも変かと思い、俯いて「いえ」と簡単に
返事をします。頬の緩みはどうにも止められません。
 ベンチに隣り合って座り、訥々と先輩が語る話を黙って聞きました。
 よほど弱っているみたいです。幼馴染みの牝……いえ女の子に突然劣情を催したことへの困惑。受け
入れてくれそうな彼女を見た途端、急に湧き上がった恐怖と嫌悪感。説明をボカしているせいもあって
先輩の心情推移にはいくつかよく分からないところがあります。事態を解決するには突っ込んだ質問を
して、彼の内部へ踏み込んでいく必要があると思えました。
 が、そんなことはどうでもよいのです。あえて放っておきました。私の務めるべきなのは分析官じゃ
ありません。ただの慰め役なのです。先輩の言葉に耳を傾け、おなかの中に溜めておけば鬱屈へ変わり
かねないモヤモヤしたものを解きほぐす。それだけ。今はそれだけが大切なのです。
「……すまん。本当はこんなことを、聞いてもらう関係じゃないんだが」
「気にしないでください。何も嫌なことはありませんよ。どうぞ、続けてくださいな」
 困っているときに、誰かがそばにいてほしいときに、そばにいる。
 それは漫然と何年も腐れ縁を続けることよりも重要なはずです。ふふ。
 やがて先輩の言葉も尽きました。語り切った彼は心なしか少し楽になったように映ります。
 ショックがなくなったせいではないけれど、落ち着きを取り戻してどうにか持ち直した。
 そんなところでしょう。
 セオリー通りなら、ここで別れの挨拶を言い合っておしまいにして、明日への架け橋にするのが得策。
 今迫っても、先輩に余計な混乱を呼び入れてしまうだけ──そう思っている一方で。
 私は、はっきりと決心をしました。

 今、これより、攻めに行きます。

 綾瀬胡桃の二の舞にはなりません。
 私は勝ちます。彼女の敗北を踏み台にして。
 いえ……決心してもまだ、迷いは残ります。
 握り締めた手の中にはじっとりと汗の感触。さわったときに気づかれないよう、そっと拭いました。
 口の中もカラカラです。喉も何かが引っ掛かったみたいで、言葉が掠れてしまいそう。
 度胸が据わっているように見せかけても根が小心者です。
 まるで冗談みたいな話ですけれど──私とて思春期に群生する「か弱い乙女」の一つでしかありません。
 たとえ望んでいるものだとしても、後戻りできない道へ足を差し入れるのは不安なのです。
 私はまだどこかで、「今なら引き返せる」と囁く弱気を打ち消すことができていない。
 初恋なんです。初恋なんですよ。少女が、初恋相手に覚悟なんて決められるものですか!
 思わず仰いだ空に、星の輝きはありません。暗い雲の襞が僅かに見えるだけ。
 忍び寄る夜気を肌に受けてほとんど泣きたくなる心地のまま、体から力を抜きます。
 気負うのはやめました。消えない不安を抱き締めて進みます。
 所詮、すべてはなるようにしかならないのですから。
「……よ……ようへい、せんぱい……」
 声の震えを隠し切れないまま。そっと隣の彼へしなだれかかりました。
533沃野 Act.12 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/10(月) 22:17:01 ID:oDTmHfTb
 ぽすん、と寄りかかって支えられる小さな自分の体。頬に触れる布の感触。
 最初は冷たかったけれど、その下から温もりがのぼってきます。
 密着した部分から伝わってくる先輩の熱に、いつかの昼食時を思い出して懐かしくなりました。
 先輩に告白して、初めてあの綾瀬胡桃と正面対決を果たした日──なんだか大昔のように思えます。
「あ、荒木?」
 慌てて声をかける先輩。声の振動が触れている胸から伝わってきます。戸惑いと、微かな怯えを
混ぜた色合い。無理もありません。さっき、積年の幼馴染みに言い寄られて断ったばかりで、いろいろな
気持ちの整理がついていないはずなのです。応じる余裕はないはずなのです。
 強く突き放そうとせず、緩い力で引き剥がそうとしながら先輩は喋るべき言葉を探しています。
「……何も言わないでください」
 彼を制止して。
 軽く目を閉じ。
 浮かび上がってくる微睡みにも似た柔らかい思いを打ち明けましょう。
「私は、洋平先輩のことが好きです……気がついたら、好きになっていました」
 いつしか体は熱を帯び、夜の寒さが意識の外へ退場しています。
「理由なんか聞かないでくださいね。ただ、好きなんです。だから、付き合ってほしいと言いました……」
 熱に浮かされるようにして、いつかと同じ告白を重ねていきます。
「愛してくれとは言いません。束縛したいわけではないんです。私はただ。そばにいたい。そばにいたいんです。
そばにいて、あなたと一緒に過ごしたい。それだけ。ええ、それだけですよ? 本当に、本当に……」
 うわ言みたいに溢れてくる。自分でも何を喋りたいのか、分からなくなりつつありました。
「いま欲しいものがあるとしたら──それは先輩の体温だけ」
 すっと手を伸ばし、彼の指先をさすります。
「私はちっとも強くない女の子です。強いフリをしているだけです。みんなは見た目の割に強いって言いますけど、
実際は見た目通りに吹けば飛ぶような脆い人間ですよ。寂しがり屋ですよ。独りで踏ん張るのは辛すぎますよ。
だからと言って、無闇に守ってほしいというわけでもありません。守られてばかりなのも、それはそれで淋しいですから」
 指を絡ませ、きゅうっと握っちゃいます。
「多くは望みません。望みはひとつ。一緒にいてください……そばにいてください。それ以外の望みは捨てます。
あなたの望みが私の望みとなるように努めます。なんでも。なんでもしますよ」
 従順であろうとすることはそんなに難しくありません。すべてを委ねればいいだけです。
「尽くします──骨の髄まで」
 殻を捨て去った私の身は軽い。「すべて」など、ほんのひとときの気持ちで売り渡せます。
「私を、先輩のモノにしてください。展示処分品につき現品のみです」
「……人をモノ扱いするのは嫌いだったんじゃなかったか?」
「先輩をモノ扱いされるのが嫌だっただけです。私自身は構いません。どうか所有物とか私物とか
飼い犬みたいなものと思ってください。ぶっちゃけそっちの方が楽なんです、気持ちが」
 彼の匂いを鼻で感じながら、心は凪いでいく。
 依存癖には自覚があります。独りでいた頃は殻に依存し。殻をなくしてからは理屈に依存し。
そして理屈を捨て去るとなれば、先輩に依存するしかありません。
 依存というのは信仰みたいなもので。不肖の身が先輩に飼われるかと思えば心が躍り、なんとも
言い尽くせない敬虔な気持ちに包まれます。なんて駄目な女でしょう。この宿り木女め。
「……なあ、荒木」
 訊ねてくる先輩に「はい?」と笑顔を向けます。引き離す代わりに抱き締めてくる手を感じていれば、
もう何も不安なことはありませんでした。
「本当に……なんでもするか……?」
「はい、もちろ」
 言い終わるよりも先に、唇が躍り掛かってきました。
 蛇みたいに。

 夜の公園。傍観するのはしじまだけ。傷を舐め合うようなキスに、しばし耽りました。
534沃野 Act.12 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/10(月) 22:26:54 ID:oDTmHfTb
 危うくお外で初体験を奪われそうになりましたが、なんとか説得して先輩の家に上がりました。
「お邪魔しまー……え? あの、先輩、ここまだ玄関でっうむぅ!?」
 そこで羽賀さんに言われたときはいまひとつ実感の湧かなかった「ケダモノ」という言葉の意味を、
嫌になるくらい教え込まされました。なるほど彼女も身を震わせるわけです。
 いやーもう、なんでもするとかしないとか以前に何もできませんよ。
 ほとんど力づくで押さえつけられてプラグイン・プラグアウトでしたよ。
「ちょっ、せんぱっ……待ってください、少し休ませ……!」
 という私のお願いも耳に入らないようで、破瓜の痛みでジンジンと疼く部位を立て続けに責められ、
都合三度も流し込まれてしまいました。避妊とかを考える余裕も全然なかったです。ようやく「あ……」と
思い至れるようになった頃には息も絶え絶え。体もびっしょり。遅きに失しすぎました。
 すっかり終わったものと思い込んで力を抜いていたら、ティッシュで私の著しくねっとりと濡れた
ところを拭っていた先輩が「やべえ……なんか再び激しくムラムラしてきた」と言い放って。
「え? あ、そんな、まだここ玄関ですよ、せめてベッ……うああっ!?」
 止める暇もあらばこそ、更に二度の注入を奥のあたりで体感させられました。
 これはなんと言いますか、まな板の鯉と言うより……サンドバッグ?
 はっきり言ってあまり知識のない私です。まさか殿方が初めての夜に五度も出すとは思いも寄らなんだです。
 素直にびっくり。
 知っていたら事前にもっと体力をつけてきましたのに……最後あたりはほとんど気絶しそうな有り様でした。
 なにぶん私はこんな体ですから、先輩も満足して達してくれないんじゃ、という懸念もありましたが。
 杞憂もいいところだったみたいです。
 いわゆる「特殊な趣味」を持った方々は私のような貧弱極まりない体型にこそ大いなる欲情を催すと
申しますが、お隣さんの牝犬の肢体に目を奪われてばかりでこっちには少しも目をくれなかった先輩が、
まるで「特殊な趣味」を保有しているのではないかと疑うほどに元気だったのはなんででしょうか?
 たまたま今日だけ特別のギンギン状態だったのか、はたまた殿方とは元来こんな感じなのか。
 知識も経験も浅い身には判別がつきません。
 ぐったりしすぎて物事を考えるのも億劫で、シャワーを浴びて体を綺麗にした後は抱っこされ、
ようやく辿り着いたベッドで先輩の腕を枕に就寝して泥のような睡眠を貪りました。
 それにしても。明日、まっすぐ歩けるかなぁ……。

 下半身が別人になったみたいな目覚めでした。感覚はあるにはありますが、鈍いというかどこかで
神経の連絡がおかしくなっている気がして、表現しがたい苦痛と不快感に悩まされました。
「すまん……本気ですまん……! 昨日の俺は明らかにどうかしていた……!」
 土下座しかねない勢いで謝る先輩に「大丈夫です」「へっちゃらです」と言い張りましたが、
例の部分はもう物理的に腫れ上がっていて続投不可能でした。スポーツならドクターストップがかかる
ところです。ぬりぬりと軟膏を処置してもらいました。
 仕方なく、その日は先輩との交接を手と口に譲りました。話には聞いておりましたが、思ったより
奥深い技術分野で驚かされました。単純にこすればいい、舐めればいい、咥えればいいというものではない
そうです。大いに知的好奇心を刺激され、不甲斐ない下半身の分も上乗せして発奮しました。
 顎はすぐに疲れてしまい、手も腱鞘炎みたいに痛みましたが、先輩に三度の絶頂をもたらすことに
成功しました。かなり満足げでツヤツヤとした顔をされています。
 にしても、昨日からずっと酷使され、今日も私の舌と指の猛攻に晒された先輩の突起部が今現在も
依然として無事でありピンピンしていると申しますかビンビンしているのはすごいです。
 私の腫れているところとは違って随分と頑丈な構造になっているみたいですね。
 感心するうちに夜も更け、私たちは名残り惜しみながらもひとときの別れを得ました。
 明日は学校でまた会えるというのに。離れるとなると、くっついた分だけ淋しさが募ります。

 さて。
 朝帰りどころか一周回って夜帰りを果たし、かつガニマタ気味な私へ加えられた叱責はそれはもう
常軌を逸して凄絶で堪忍してほしいものでしたが、思い出したくもありませんので割愛しましょう。
535名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 22:41:17 ID:OP/7DSjE
やべぇ…チンコ勃って来たw
536名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 22:44:34 ID:EToG78bx
つうか、この部屋でやってるってことは、・・・見られてる?!
ガクブル・・・
537名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 22:46:56 ID:ZPxPj7o0
投下完了?
できれば投下最後に、「続く」とか「終」いれて明確にしてほしいっす。

ともあれ童貞&処女喪失で一旦の勝者は確定したわけですが
怪獣大決戦はどうなるんでしょうか。
オラなんだかワクワク(ry


538名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 23:10:56 ID:BcQ+Wn9L
>>537
「終」はマズいだろ、「終」はw
いやまぁ最後にチラシの裏でも何でもいいから書いてくれると確かに助かる。
539名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 23:11:31 ID:nBVegwQA
うっわぁ…これは嵐の前触れか。
とりあえずGJ!
540名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 23:21:59 ID:bHFrzt9z
エロシーンより修羅場の方にワクテカしてる俺ザンギュラフ。
541名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 23:24:08 ID:S63gtG/u
薬の効果がこんな所に影響出るとはw
胡桃がどうなってるかwktkする。
542名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 23:59:49 ID:P6k5zrF7
なんか直接的描写よりもこういうののほうがエロいなぁ…
543名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 00:22:31 ID:nyyyZjGS
ttp://sylphys.ddo.jp/upld2nd/niji7/src/1144682468395.jpg
いけいけ麻耶たん。〜みなさん拍手を!〜でグッときますた。
544名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 00:30:36 ID:mw1F44c6
>>543
イヤッフー!麻耶タンらぶりー!!!
545名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 00:33:31 ID:Efkg/3iQ
金髪ロリィィ!
546543:2006/04/11(火) 00:42:04 ID:nyyyZjGS
>>みなさん! さあ拍手を!
デシタ。 orz
547名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 00:42:12 ID:rRRjXyF6
イエェェェェイ!!
GJですっ
548名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 00:50:58 ID:iY4aj4u9
>>543
先生!女神にしか見えません!!
549名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 00:55:14 ID:za2Ooe6Z
先生!背後にスタンドもつけるべきだと思います
550名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 00:56:34 ID:yEuebVMY
よーくんから見た一連の流れ描写をwktk待ち

>543
拍手を!盛大なる拍手をぉぉ!
551名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 01:02:36 ID:G0xI0R8e
>>543
GJ!!!!!!
金髪ロリ!!!!!


SS神と絵師神に見守られたここはまさに約束の地だね
552 ◆tVzTTTyvm. :2006/04/11(火) 01:10:36 ID:SCYN4zir
神SSと神絵で盛り上がってるところ投下しズらいですが

投下しますスミマセン
553 ◆tVzTTTyvm. :2006/04/11(火) 01:12:40 ID:SCYN4zir


   ・    ・    ・    ・


 電話を切ると涙が滲んできた。 駄目、泣いたりしちゃ。 だってコレは私が望んだ結果なんだから。
 大好きなお姉ちゃんと祥おにいちゃん、二人が晴れて恋人同士になれたんだから。
 お姉ちゃんがどれだけ祥おにいちゃんを好きか、そのことは妹であるわたしは誰よりも良く知っていた。 祥おにいちゃんだってお姉ちゃんのこと決して悪くは思っていない。 私達3人は小さい頃からずっと仲良しだったのだから。
 だから、わたしさえ身を引けばきっと全てが上手くいく。

 祥おにいちゃんがわたしを好きだと言ってくれた時、本当はすごく嬉しかった。 でもそれを受け入れるわけにはいかなかった。 だって受け入れてしまえばそれはお姉ちゃんの恋心を摘んでしまう事に他ならなかったから。 それだけは絶対にしたくなかったから。
 だから……だからコレは最良の結果のはず……なのに、なんで、なんで……。

 次の日の朝、わたしはいつもよりも早く家を出た。 折角付き合いだした二人の邪魔をしたくなかったから。 でも本当はそれだけじゃなくてわたしが辛かったから。
 今のわたしは祥おにいちゃんの前でどんな顔をしていいか分からなかったから……。

 その日からわたしは一人になった。 いや、一人になる事を選んだ。 お姉ちゃんも祥おにいちゃんも悪くない。 二人共気にせず今まで通り一緒にいようって言ってくれた。 でも其の言葉に甘えたらきっと決心が鈍ってしまうから……。
554振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/04/11(火) 01:14:30 ID:SCYN4zir


   ・    ・    ・    ・


 その日朝は快晴。 まるで私の心を表してるかのように澄み渡っていた。
 昨日の告白を思い出すと自然と頬が緩む。 そして学校への通学路、祥ちゃんを発見した。
 嬉しさのあまり私は駆け出し、そして抱きついた。
「おっはよ〜。 祥〜ちゃん」
「う、うわっ! は、羽津姉?! イキナリ抱きつくなよビックリするじゃないか」
 祥ちゃんったら顔を真っ赤にして驚いてる。 可愛いったらありゃしない
「良いじゃない。 だって私達はコ・イ・ビ……」
「ストップ! 羽津姉、昨日俺が言ったこと憶えてる?」
 勿論忘れるわけが無い。 でも晴れて恋人同士になれたっていうのに、それを押さえて今まで通りなんて出来るわけ無いじゃない。 だから私はとぼけて見せた。
「え〜? 何だっけ〜?」
 そんなつまらない約束とぼけて押し切ってうやむやにしちゃえい。
「羽津姉!」
 瞬間、祥ちゃんは厳しい声を発した。 いや、声だけじゃなく其の表情も険しかった。
「羽津姉が約束守れないようならこの話やっぱり無しにしようか?」
 私は其の気配に気圧され慌てて慌ててその身を放す。
「ゴ、ゴメンゴメン。 つい調子にのりすぎちゃって悪かったから、そんなに怒らないで、ね」
 私は慌てて両手を合わせて謝る。 
「ね、ねぇ。 じゃぁせめて手を繋ぐぐらいイイでしょ? コレなら昔っからしょっちゅう繋いでたんだから」
 私がそう言って手を差し出すと、祥ちゃんは少し照れながら手を握り返してくれた。 昔もこうしてよく手を繋いだけどこういうのも何だか初々しくて良いな。

「あれ? そう言えば結季は?」
「あ、、あのコなら今朝は用事があるとかで一足先に出たわよ」
「そう……」
 私の返事を聞くと祥ちゃんはチョット寂しそうな顔をする。 そう言えば何時も登校時は三人一緒だったけ。 二人っきりになると物足りなく感じるのかな。 ……なんかちょっと妬けるな。 ってなに考えてるんだろ。
「ね、ねぇ。 若しかしたらあのコ私達に気遣ってくれたのかも」
「え? 気を遣うって?」
「折角私達が付き合いだしたんだから、二人っきりで水入らずにさせてあげようってつもりなのかも」
 そう思ったら急に結季の事が可愛く思えてきた。 勿論今までだって可愛い大切な妹だけど。
「そんなわざわざ……」
「ねぇ、折角の好意なんだからありがたく甘えとこうよ」
「でも、なんか寂しいよな」
「其の分は私が埋めてあげるから元気出してよ。 ね」
「まぁ、確かに俺たちはそれで良いけど、結季の方は大丈夫なのかなぁ。 アイツ友達あんまり居ないみたいだし」
「大丈夫よ。あのコだってもう子供じゃないんだし」
「そうだよな。 でもあいつに言っといて。 あまり俺たちに気を使うなって。 俺も会ったら言っとくけどさ」
「分かったわ」
「頼むよ。 結季は俺にとっても妹みたいなものだから」
「そうね。 でもこれからは妹みたいじゃなくて『義妹』とかいて『いもうと』って呼んだほうが正しいかもね」
555振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/04/11(火) 01:15:51 ID:SCYN4zir


 正午――昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴るや否や私は二人分のお弁当をもって飛び出した。
 目指すは屋上! 祥ちゃんと一緒にお昼を食べる為に!
「祥ちゃん、おっ待たせ〜」
 ってチョット早く来すぎたかな。 まぁいいや待つのもまた楽し、って言うし。
 屋上での一緒のランチは昔っからの日課だったけど、今日の楽しみはひとしおだった。 何せ今日は私がお弁当を作ってきたのだから。 はっきり言ってかなりの自信作!
 今回は結季も協力してくれたし。 あのコ対人コミュニケーションはからっきしだけど、其の分一人で何かに没頭する作業は得意だから料理も物凄く上手だったりするのよね。 コレばっかりは私も全く敵わない。 だから今回はお願いして手伝ってもらっちゃった。
 お陰でとっても美味しく出来た。 だから今回は結季に物凄く感謝してる。
 
 そんな事考えてるとドアが開いた。
「祥ちゃん!」
「悪りぃ、待たせちまったか? 羽津姉」
 祥ちゃんの顔を見ると嬉しさがこみ上げてくる。
「全然そんな事無いよ。 私も今さっき来たところだから。 それより座って座って。 今回は自信作なんだよ」
「……自信作……って、羽津姉が作ったのか?!」
「チョット?! 何よその反応は!」
「いや、だって羽津姉、料理……」
 そう、はっきり言って私は料理はあまり得意じゃない。 っていうかストレートに言えば下手。 でも今回は……
「私だって成長してるのよ? そ・れ・に、今回は結季に手伝ってもらったの」
「結季に?」
「そ、あのコのお墨付き。 ってあからさまにホッとしないでよ!」
 まぁ、祥ちゃんの反応も尤もなんだけどね。 前に私が一人で作ったときは思い出したくも無い程散々な結果に終わっていたから。
「ハハ、悪い悪い。 じゃ、あとは結季が来るのを待つだけか」
「あ、あのコなら今日は来ないわよ。 折角の二人っきりの時間邪魔したくないし。 だって」
「そっか……」
「そう言う訳だから食べましょ」
「そうだな。 俺もはらぺこだし。 じゃ、いただきます」

 祥ちゃんはお弁当の蓋を開けると物凄い勢いで食べ始めた。 ふふっ、よっぽどお腹がすいてたのね。
 とっても美味しそうに食べてる。 そんな姿見るとやっぱり作った身としては感無量よね。
 でも出来ればもうチョット落ち着いて食べて欲しかったな。 折角の恋人同士の二人っきりのランチタイムなんだから定番の『ハイ、あ〜んして』とかやりたかったのになぁ。 

「ごちそうさま」
「おそまつさまでした」
 そうして私は空っぽになったお弁当箱を受け取る。 こうして綺麗に空っぽになったお弁当箱を見ると満足感が込み上げてくる。
「ねぇ、ところで何が一番美味しかった?」
「そうだな〜。 どれも美味かったけど卵焼きかな。 結季のと比べても遜色ないぐらい美味しく出来てたよ」
「え? 卵焼き?」
「ああ、美味かったよ。 おっと、実は次の授業に提出する課題を終わらせなきゃいけないんで、そろそろ教室に帰るわ。 じゃぁな、羽津姉」
「あ、うん」
 そうして祥ちゃんは屋上を後にしていった。
「結季のと比べても遜色ない、かぁ……。 そりゃそうよ。 だって……」
 実は卵焼きは何度やっても上手くいかなかったので、結局結季が作ったのをそのまま使わせてもらったのだったから。
「やっぱ、料理じゃ結季にはかなわないなぁ。 ってしょげてたってしょうがない。 だったら次こそは本当に私が作ったのを美味しいって言わせて上げるんだから!」
 そうして私は拳を握り締め決意を固めた。

 ふと空を見上げれば空はどこまでも澄み渡っていた。 お日様の光が気持ちイイ。
「祥ちゃんも課題ぐらいウチでやっときなさいよね」
 折角のいい天気なんだからもう少し一緒にのんびりしてたかったのにな。
 お腹も一杯でポカポカと気持ちイイからお昼寝とかも良いかも。 そしたら膝枕とかしてあげたのになぁ。
 まぁ、愚痴ったり欲張ったりしてもしょうが無いか。 それに次にとっておく楽しみが増えたって考えれば良いしね。
 そして私も屋上を後にした。
556振り向けばそこに… ◆tVzTTTyvm. :2006/04/11(火) 01:17:04 ID:SCYN4zir


   ・    ・    ・    ・


「そう言えば一人っきりでお弁当食べるのって久しぶりだな……」 
 わたしは中庭で一人木にもたれかかってお弁当を食べている。
 折角美味しくできたお弁当なのに一人で食べると何だか味気ない。 でも仕方ない。 自分で決めた事なんだから。 祥おにいちゃんとお姉ちゃんを二人っきりにさせてあげようって……。
「祥おにいちゃんとお姉ちゃんも今頃食べてるんだろうなぁ……」
 初めてかもしれないなぁお姉ちゃんがわたしに頼みごとするなんて。 何でもこなすお姉ちゃんが唯一苦手で、そして同時に唯一私が勝てること、それがお料理だった。
 恋はヒトを変えるって言うけど本当ね。 あんなに一生懸命なお姉ちゃん始めてかも。
 だからそんなお姉ちゃんには絶対に幸せになって欲しかった。 大丈夫、そんな健気な姿見せられればきっと祥おにいちゃんも……。 だから……、だから私も早く気持を切り替えなきゃ……。

「よう、結季。 こんなところで一人でメシか?」
「しょ、祥おにいちゃん?! お、お姉ちゃんと一緒にお昼食べてたんじゃなかったの?!」
「ああ、さっき喰い終わった」
「お、美味しかった……?」
「ああ、結構美味かったぜ」
 良かった……。 うん、お姉ちゃん一生懸命頑張ってたもの。
「結季もお疲れ様。 大変だったろ。 あの羽津姉にあそこまで作れるようにレクチャーするのは」
「そんな事無いよ。 全てはお姉ちゃんが頑張ったからだよ」
「でも、卵焼きだけはお前が作ったヤツだろ?」
「……!」
「やっぱりな。 あれだけ出来が段違いだったからな。 美味かったぜ。 とりあえずそれだけ伝えたかったから。 じゃな」
 祥おにいちゃんは笑顔でそう言うと手をヒラヒラ振りながら去っていった。

「……祥おにいちゃんのバカぁ……。 そんな……、そんなこと言われたら諦められないじゃない……。 折角の……決心が、鈍っちゃうじゃない……」
557 ◆tVzTTTyvm. :2006/04/11(火) 01:20:05 ID:SCYN4zir
今回ココまでです
558名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 01:22:34 ID:u9lIFMUA
祥君は鬼だな
やり手の匂いがするぜ
ただこんな主人公もいいな、うらやましい
559名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 01:23:43 ID:fbxKHQzh
GJ!流石神だ、レベルの高さが尋常じゃない(*´д`*)
依存スレにも常駐してる俺としては
ほのかに依存のにおいが香る姉を応援する(゚ー゚*)
560名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 01:25:23 ID:njTti0pn
GJです。
こんな健気な羽津姉を利用する祥ちゃん憎し。
………ところで何で「。」の後に「 」を?
561名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 01:41:03 ID:Efkg/3iQ
これ絶対平行世界と同じところへ収束しそうな…
562もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/04/11(火) 02:33:27 ID:dcYeJoN7

中でも、父に対する憎しみは母の比ではなかった。
父はいまだに手話ができない。いや、そもそも一度も手話の勉強すらしたことがない。
だから、私は父と会話を持った事がない。
結局、私はその程度の存在だと言うこと。
そんな父を好きになる事など不可能だ。




朝から嫌な事を思い出してしまった。
心がモヤモヤする。全てあいつらのせいだ。死ね死ね死ね死ね
私は力いっぱい玄関のドアを叩きつけた。
ドアに挟まれてあいつらが潰れて死んだような気がした。


しかし、そんな事をしても気持ちが晴れる筈もなく、やり場のない怒りが悶々と心に沈殿している。

ひとまず気持ちを鎮めないと。
私は携帯を取りだし、待ち受け画面に目をやる。

昨日、屋上で茜ちゃんに見せた私と純也くんが肩寄せあっている写真。
何枚か作った写真の中でもこれは抜群に良くできている。
他人はもちろん、作った私ですら騙されそうなほどに……。



しばらく携帯の中で幸せそうに笑う私と純也くんを眺めていると、いつの間にか気分が落ち着いていた。
私は携帯を静かに閉じ、朝焼けの道を学校へと向かっていった。





いつも通り、少し早めに学校に着き校門で純也くんをまつ。
今日は昨日の作戦の結果がでる日だ。
あ〜ドキドキする。

テストでもこんなにドキドキした事はなかったのに。
少し心の準備が必要かも……。
純也くんもう少し待ってて!!


しかし、私の願いも虚しく純也くんと思われる人影が校門に近付いてくる。
563もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/04/11(火) 03:05:31 ID:dcYeJoN7

純也くんは………ひとりだ!!!
やった、作戦は成功したんだ。

私はホッと胸をなで下ろした。

実はあの作戦は失敗の可能性も大いにり、昨日の夜には私のずさんな計画を悔やんだりもした。
しかし、それもただの杞憂だったようだ。




ふふふ、ありがと茜ちゃん。
大好きなお兄ちゃんのために自ら手を引くなんて本当にいい子。



でも、それと同時に馬鹿な子。
昨日の事、お兄ちゃんに話せばよかったのに。
だってね、私と純也くんはまだ付き合っていないんだよ?



ううん、それ以前。
実は純也くんはまだ私の事を知らないの。
一度も会った事ないから。



でも、よかった。一番ウザい蝿が消えてくれて。
これから、私と純也くんはゆっくり愛を育むから、茜ちゃんはどこか草場の陰からでも私達を見てなさい。
おこぼれがもらえるかもよ?まぁ、まず有り得ないけどね。ふふふ。





私は生まれて初めて飲んだ勝利の美酒に酔っていた。
茜ちゃんが未だに姿を見せないのは少し気になったが、そんな事も忘れさせるほどに勝利の美酒は甘美な物だった。
564名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 11:49:50 ID:fbxKHQzh
とりあえず上のはひとくぎり・・・かな?

GJ!
これだけ色々策を弄してたり実行力があるのに
いまだに本人と接点がないって・・・
対本人でどこまでやるか期待してます

565名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 12:18:43 ID:51TndpnY
ここまでの行動力を考えると、どんな方向に振れても想定の範囲内を突き抜けてくれそうだぜ
566『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/11(火) 13:08:33 ID:leXX3/2Z
信じられなかった。
信じたくなかった。
純也と……奈緒が?
アハハハハハ?
何かの冗談でしょ?
書庫でお嬢を探していたら純也が入ってきた。
最初は驚かしてやろうと本棚の間に隠れていた
そしたら………
あの女が入ってきた。
そして何のためらいもなく純也と……
何?
何かの冗談なの!?
昨日の事ってなに?
私は………私は純也が好きなのに………
祐希なんて馬鹿男の名前あげてれば頑張って私の事を奪ってくれると思ったのに………
何で奈緒?
何で何で何で何で何で何で何で何で?
私の親は同じ使用人同士で結婚して私を生んだ………
だから私と純也も愛し合い、結婚するのに………
どうしてお嬢の召使の奈緒となの?
二人の淫行を、ただ黙って見る事しかできなかった。
純也の呻き声が聞こえる。
あの雌小間使が言葉巧みに純也を騙してる…………
騙してる?
そうよ、騙されてる。あいつは純真だから、人の言う事をハイハイ聞いてしまう。
今回もきっとソウダ。
絶対ソウダ!!!
だから………だから私が開放してあげる………
唇を血が出るほど噛み締め、ポケットのナイフを強く握りながら私は誓った…………
567『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/11(火) 13:13:42 ID:leXX3/2Z
「じ……ん…や」
夜。
薄暗い廊下の奥から僕の名前を呼ぶ声がしました。
目を凝らして先を見てみると……
「あ、あぁっと……何?花穂?」
花穂とわかったので、淡泊な対応に努めました。
「……奈緒さんが呼んでたわよ。外の倉庫でまってるって………」
花穂の口から奈緒さんの名前が出て少し驚きました。
ですが冷静に
「うん、わかった。」
とだけ言い残してその場を立ち去りました。終始花穂が万円の笑みでしたが
……何か言い事でもあったのでしょうか?




夜になると外はとても寒いです。セーターを着て少し離れた倉庫までいきました。
倉庫というよりも木造の小屋です。
ここには冬に暖炉にくべる蒔きが保存してあります。この付近の木はよく燃えるため、かなり暖かいです。
僕が着いた時はまだ奈緒さんは来てませんでした。






十分……
まだ来ません。




二十分……
まだ来ません。なんか変な匂いがしてきました。



三十分……
寒さに耐えられなくなったので、外に出ようとしました
ガチャ
するとそこには……
「か、花穂…?」
花穂が道を遮る様に立っていました。
「…奈緒さん、こない…」
ドスッ
568『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/11(火) 13:18:53 ID:leXX3/2Z
いい終える前に
ズブブブブ
お腹に冷たくて硬い物が入り込んで来ました………これは…
「が…か、花……穂?」
花穂がいつも持ち歩いているナイフでした。
「い、痛い…よ、花穂?」
ドサ
状況が理解出来ず、立っていられず倒れました。
「ふふふ…酷いわね、純也ったら……奈緒さんをずっと待たせて……」
「…え?」
待っていたのは僕です。意味が…
「奈緒ならいるわよ…ここにね。」
そう言ってロッカーを開けると……
「!!!!!」
中から奈緒さんが出てきました。
……胸や喉を滅多刺にされて………
「あっははハハハ!!!!これで自由よ!!!純也!!!」
意識が朦朧としてきました。
花穂はポケットからマッチを取り出し、地面に落とした途端いっきに燃え広がりました。ガソリンが撒いてあったんでしょう………
燃え上がる火の中、熱さを感じるより先に気を失ったのが幸いでした………
569『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/11(火) 13:20:51 ID:leXX3/2Z
続きます
駆け足な展開になってしまった……
570名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 13:23:10 ID:Efkg/3iQ
後何回死ねばいいんでしょうか…
571名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 13:27:49 ID:aTkymaJ4
次は佐奈嬢の出番かな?とりあえずGJ!
572名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 13:36:23 ID:Quny7kOE
GJ!です。
里緒に殺され今回は花穂か・この流だと
主人公は後一回殺されにゃあならんのかな
573名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 14:08:58 ID:sWikUtd3
いよいよ話のキーマン?かもしれない佐奈嬢がヒロインの番かな

そして主人公はどんな奴なのか今からwktk状態
574名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 17:44:10 ID:w1eXF32s
脳天気→大人し目、ときたから三人目はクール?
575義姉 第6回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/11(火) 18:10:20 ID:UZc7MMqn
        *        *        *
『涼子』

 クソッ! 最近のシロウを見ていると昔のあいつとの事ばかり思い出す。
 ずっと昔、心の奥底に沈めたはずなのに、断りなしに勝手に浮かび上がってくる。
 あいつそのままだ。告白断ったはずなのに、いつのまにかそういう関係になってしまっていた。
 おまけに今日シロウの奴に泣いているのに気づかれたかもしれない。よりにもよって、あいつなんかに弱いところをみられるのは嫌だ――
 忘れてしまえ、全部――

        *        *        *
『士郎』

 ――自己嫌悪。
 自慰をした。日常的にやっている行為そのものが嫌悪の対象ではない。
 夢とも現実ともはっきりしない姉と交わった感触、今日抱きしめらた時の感触を思い出してやっただけ。
 一瞬の快楽の後に来たのは重い不快感だけ。
 ――何やっているんだろう、オレ。
 こんなのならまだ、振られた相手を思ってやった方がまだマシだ――

 寝たのか横になっていただけなのかよくわからない一夜を過ごした。
 朝食時姉ちゃんは何かに苛立っていて一言も喋ろうとはしなかった。
 自分もその雰囲気に飲まれて何一つ喋ることが出来なかった。
 ――自分でも言いたいことがよくわからないけど。

 昨日姉ちゃんは忘れてしまえって言ってた。でも本当に忘れてしまった方が楽になれるのかな。
 実の父の顔が上手く思い出せない。怒っている顔しか思い出せない。楽しいこともあったはずなのによく思い出せない。
 あいつと一緒に遊んだ思い出、あいつが本当に好きだった気持ち、そんな事もいつか忘れてしまうのが怖い――
576義姉 第6回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/11(火) 18:10:49 ID:UZc7MMqn
        *        *        *
『モカ』

 よし、と。士郎君はいつも通り中庭にいる。
 こっそり背後から忍び寄って耳にこっそり息を――あれ? 反応なし。
 よく見ると熟睡している。ちぇ、せっかくインパクトの強そうなの考えたのに。

 これってチャンス? 悪戯しちゃおうかなー。
 っと、その前に。こっそり士郎君のポケットから携帯を抜き出し番号確認っと。番号ってなまじ知っている人間からだと特別用事でもないと聞きづらいからねえ。私の携帯に士郎君の番号登録よし。
 ついでだから士郎君のにも私の登録しちゃおうかなー。あ、これはちょっとやめとこ。私からだと涼子にでも聞いたことにすればいいけど、勝手に登録されてたら気味悪がるかもしれないからね。

 さて、どういう悪戯しようかなー。あ、そうだ昨日の続き。
 起こさないようなるべく慎重に士郎君をゆっくりゆっくりと横に、男の子だけあってちょっと重い。よし、膝枕完成!
 起きるかなーっと思ったけど相当眠り深いみたい。話できないけど、たまにはこういうのもいいかな。
 なんか寝顔見ているだけでもいい感じになるね。何か私お姉さんかお母さんって感じかな。

 あれ? 周りの視線が妙に気になる。えーと、いわゆるバカップル状態? 自分でやっておいてなんだけど、ちょっと恥ずかしいな。
 その中で特に気になる目に気がついた。彼女――三沢さん、ちょっと前まで士郎君と一緒にいた子。他の人は横目で盗み見るような感じなのに彼女だけが遠くからとはいえ真っ直ぐこちらを見ている。
 逃がした魚は大きいとか思って今頃仲直りしようと思っているのかもしれない。
 あれ、付き合ってて別れたんだっけ? それとも告白して振られたんだっけ? どっちだったかなー。いや、そもそも相手って彼女だっけ? こういうのって一度聞くタイミング逃すと中々聞きづらいからなあ。
 少なくとも今一緒にいないってことは、まあしばらくは大丈夫な気がする。
 どっちにしろ、ちょっと困ったな。結構いい感じになっているのに。

「おはよう」
 士郎君がうっすら目を開けていたので挨拶をする。
 あれ、そういえばこんにちは時間だ。
「……あ、おはようございます。
 えっと……
 ――!」
 士郎君は状況に気づいたらしく慌てて起き上がろうとしていた。
 でもさせないもんね。起き上がろうとする顔に手で押し、無理矢理太ももに押さえつける。
「照れない照れない、もう少しこのままこのまま」
 そういいながら手に力を込める。
「あの、やめてくれません……」
 口では嫌がっていても体は抵抗らしき抵抗はしない。
「ふっふー、ダメダメ」
 士郎君の顔に手を乗せて視界をふさいだまま。ちょっと向こうから送られてくる視線が気になるから、その視線を士郎君に見せたくないから。

 少しそんなやりとりがあった後、士郎君はあっさり観念してまな板の上の鯉となった。
「あの、モカさん――昔好きだった人の事ってスッパリ忘れた方が良いと思います?」
 これは脈ありか、そうでないか微妙――
 こっちの事わかってて言っているのかな。別に気づかれていてもいい、というか気づいて欲しいんだけど、士郎君なんだがわかってそうで、全然わかっていないところあるっぽいからなあ。
「んー、忘れちゃった方がいいんじゃないかな」
 なるべく当たり障りのない返事をしてみる。
「……どうやって忘れたらいいんですか」」
「そうだね、他の人好きになるとか」
 ――ほら、今すぐここにいる子とか。
「……」
 あれ? 士郎君黙り込んだ、これは脈あり?
577義姉 第6回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/11(火) 18:11:31 ID:UZc7MMqn
        *        *        *
『涼子』

 ふーん、そうか――
 たまたま通りかかった中庭でシロウとモカが見えた。最近モカが昼にいない理由、それとなくシロウの事を聞いてくる理由がようやくわかった。
 大体二人がどういう関係かは察しがつく。少なくとも告白して付き合ってはいない。シロウの奴はそんな事があれば隠し通せる程の面の皮はない。
 モカは昔から知っているが悪い奴じゃない。シロウにとっても悪い話じゃないに決まっている――
 ふーん、よかったじゃん、おめでとう――私はそうでも言って軽く笑いながら背中を押してやるべき立場なのだろう。しかし心は別の感情を湧き上がらせ苛立つ。
 さらに少し離れたところに、前にシロウをふった三沢さんが見えた。
 シロウとモカを見つめている――後悔と未練のたっぷり、その目が気に入らない。更に苛立ちが激しくなる。
 ふったんならふったで、さっさと忘れてしまいなさいよ。
 半ば無意識に近くの壁を殴っていた。

 この場所にいると苛立ちが強くなる一方だ。さっさとこんな場所から去ってやる。
578義姉 第6回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/11(火) 18:12:15 ID:UZc7MMqn
<チラシの裏>
智子→フリーな状態で積極アタック開始するとそのまま両思いENDへ
姉ちゃん→初期状態で純粋な家族愛+母性愛程度。恋愛感情なし。全然ダメジャン
ってことで投入したモカタンが滅茶苦茶書きやすいのは何故でしょうか?
そりゃもうメインヒロインにしときゃよかったかな、と思うぐらい
</チラシの裏>
579名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 18:17:13 ID:u9lIFMUA
>>578
むしろ私的にはモカさんがメインでいいじゃないかと・・・・・
ものすごい萌えるんですが。
あぁモカたん最高!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
580名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 19:11:48 ID:RwxNC8TI
モカたんラブ。愛してる。
姉ちゃん?知らねぇよ(オイ
581名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 19:23:10 ID:rPYeqQ+5
まとめサイトの管理人さんの近況がとんでもないことになってる件。
582名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 19:49:35 ID:yEuebVMY
強がり姉ちゃんが折れるのを心待ちにしているのは俺だけか…orz
583名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:00:49 ID:EKFvdsw3
>>582
それも悪くない。
しかし俺にとってはモカさんがヒロイン。
これだけは譲れない。
584名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:11:42 ID:U269OSmt
>>582 ナカーマ
タイトルも「義姉」だし、やっぱりそっちに期待してしまうのですわw
585名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:54:44 ID:ALskusCF
どんなにモカたん人気が高まろうがタイトルが義姉だろうが、
俺の中ではトモたんが最高!!
何があろうともこの思いは永久に不滅。
586名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:59:15 ID:sqtK3G1Q
逆に考えるんだ。
「義姉」とかいてモカと読むと。
最近のDQNな名前が増えている現状に比べればかわいいものだ。
587名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 23:02:43 ID:gIi8fHbg
>>582
問題ない
心は皆同じだ
588名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 23:26:44 ID:fbxKHQzh
>>568
遅レスだけど
ぶっかけ、中出しときて次はなんだろう・・・
カグヤ並みの連続プレイかしら・・・
589名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 23:27:15 ID:qqhv/W3E
主人公への想いが募れば募るほどすれ違い、報われず、
泥棒猫と主人公の愛の営みを見せつけられて、その目からは光を失い、
涙は枯れ、心は折れ、握り締めた拳は傷だらけ、
泥棒猫の妊娠を耳にして、狂おしく微笑みながら傍らの包丁に手を伸ばす

・・・このスレにおける「メインヒロイン」とは、こういう立場におかれる傾向にある。


よって「メインヒロインに選ばれる」ということは、そのキャラの幸せに必ずしも繋がらないw
590名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 00:06:28 ID:Dy9bCiXc
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ
という殺伐としたスレタイにもかかわらず、住人の結束が妙に固い件。
591『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/12(水) 00:36:39 ID:ob5WuclE
暗い……
真っ暗だ………
闇しか見えない………
もとい、目さえあるのかも判らない。体のある感覚が無い。意識だけが存在しているみたいな感じだ。
「なんだこりゃ?」『なんだろう、これ……』
頭の中にノイズが入る。自分の声だが口調が違う。
「……誰だヨ!?」『だ、誰!?』
自分と同じ事を相手は問う。
((わけわからん……))
「目が覚めた?」
急に目の前に現れた人物に話しかけられる。それは………
「お嬢!……ここどこなんだ?」『佐奈様!…ここはどこですか?』
慌てて佐奈に聞いてみる。すると佐奈はクスクスと笑い…
「ふふ…そんなに焦らないで…ここはあの屋敷よ。」
意味不明だ。こんな真っ暗闇の空間が住んでいた屋敷だなんて………
「あぁ!俺、死んだんじやぁ……」『僕、死んだんだよね……』
「落ち着きなさい……いいわ、みんな教えてあげる。この屋敷の事も……私自身の事も………」
「お嬢自身…」『佐奈様自身……』
「まず、無くし物の真実って知ってる?」
いいえ、と首を振る。
「あれはね、私のせいなの。」
「『はぁ?』」
「そもそも私自体がこの『屋敷』であり、この体はその精神のための入れ物……」
………話しが突飛している。そんなSFめいた話しは大人の遊び場だけにして欲しい。
なんとか理解しようとする。
「『それで……?』」
「この体に入り込んでもただの感情を持たない人形………だから、この屋敷に住む人達の『感覚』を吸い取り、人間を擬態していきてきた。」
自重するように笑いながら話す。
つまり佐奈嬢から吸い取られた感覚が無くし物ということになる。
「……それで、なーんでこんな事になったん?」『なんでこんな事態になったんですか?』
「どうして……ですって?…みんな…みんなあなたのせいよ!」
「わ、わちき?」『ぼ、僕?』
全く身に覚えがない。こんな仕打ちを受けるような悪行をしたおぼえは……
「あなたが……私に優しくするから……あなたの事を好きになったからよ!」
そう叫ぶと下を俯き、ポツポツと語り始める。
592『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/12(水) 00:38:11 ID:ob5WuclE
「……あなたより前にこの屋敷で働いていた者達は、みんな私の正体を知って…いたわ。知っていながら仕えていた……感情を返してもらうためにね。」
声が詰まり気味になる。……泣いているのだろうか。
「だから、昔からみんな私を化け物あつかいにした………感情を奪う魔女だって、迫害されてきた…。」
「『………』」
「でも……あなたは、子供の頃から私と仲良くしてくれた。書庫に閉じ込められていた……私に、こっそり会いに来てくれた……」
「そして……私は初めて人を好きになれた……他人から……奪わずに、好きになるという……感情を…覚えた。あなたを愛する事ができた!それなのに!」
声に怒気が混じる。
「あなたは私だけを愛さず、あろう事か使用人である……あの二人の女を愛した…晋也は志穂を!純也は奈緒を!!それがなによりも許せなかったのよ!」
言い終えると、フッと鼻で笑う。
「まぁ、晋也は嫉妬に狂った里緒に殺されたけどね………私は……待てなかった……次に晋也のような人物が現れるのを!……だから…純也を作ったのよ……」
「純也を?」『僕を?』
「………私が奪える物はね、人の感情だけじゃないのよ…この屋敷からだって奪える物もある…たとえば、『時間』とかね…」
「『時間…』」
「この屋敷から時間を奪い、巻き戻した………そして、もう一度やり直したの……」
同じ時間を繰り返した、と言う事か。
593『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/12(水) 00:39:15 ID:ob5WuclE
「でも同じ晋也のままじゃ、結果も一緒。だから、晋也の感情もかえたわ。感情が変われば、性格も変わる。晋也の性格違いとして、純也が生まれた……
純也も、晋也と同じく私に優しくしてくれたわ………だけど…愛する事まではしてくれなかた!!二度も裏切られた!!」
もう彼女の目に涙はない。怒りに満ちている。
「ふふふ…だからね、花穂に私の分の『嫉妬心』を与えて、純也を殺させた…私以外の女を愛するあなたなんて、見たくないものね…」
「花穂…?」『そ、そんなぁ』
「あっははハハハ…だから、私を愛さない限り、何度も死に続け、何度も同じ時を繰り返す事になるのよ!!
次から私を愛してくれれば、二人から嫉妬心を取り除いて、生き延びさせてあげる……どう?いい話でしょ?」
「助かる方法はそれだけかい?」『助かる方法はそれだけですか?』
「えぇ、そうよ。屋敷の外へは出られない様にしたわ。裏門も開かないわよ……無くし物を全て取り戻さない限りね……」
……つまり、佐奈嬢が返さない限り無理、か………
「ふふふ……だから、次の時間では、私だけを愛しなさい……他の女に、手だししない方が身のためよ……」
それだけを言い残すと、うっすらと消えていく。
「ストップだ!お嬢!」『待って!佐奈様!』
「……何?」
「俺は……誰なんだ?晋也なのか?純也なのか?」
『僕は……誰ですか?晋也さん…それとも純也?』
「…それは…あなたが決めていいわ…晋也が私を愛しても……純也で私を愛しても、私は幸せだからね……」
それなら……
「俺は……」『僕は…』
A:「笹原晋也だヨ!」
B:「笹原純也です!」
594名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 00:48:04 ID:UznsFf3D
>>593
何かEVER17みたいな展開になってるな・・w
595『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/12(水) 00:51:52 ID:ob5WuclE
…自分でも呆れるぐらい突飛してるなぁ…
まぁ、選択肢です。希望のシナリオへどうぞ
596名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 00:53:01 ID:J0qAoNuO
>>595
B:「笹原純也です!」
純也に萌えれる展開希望!
597名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 03:01:53 ID:98Fre6i/
>>595
A:「笹原晋也だヨ!」
単純にキャラ造詣が好きなんで……
飄々とした修羅場主人公って珍しい。
598名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 03:12:59 ID:fXsUZL3m
>>595
第三の選択っ!
C:「彼方の望む笹原にはなれない」
全滅ENDをチョイスしてみるw
599名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 03:36:26 ID:/NFUjWQ2
>>595
A:「笹原晋也だヨ!」
コスプレ好き変態って素晴らしいよね、こういうキャラ大好きだ!
600名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 05:42:23 ID:qIWxdAjn
ttp://xxxxx.dyndns.tv/~nadesiko/up/img/upupup1552.jpg

流れぶった切りで悪いが、書いてみた。
優柔の先輩。
601名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 06:15:22 ID:qIWxdAjn
>>600
ttp://xxxxx.dyndns.tv/~nadesiko/up/img/upupup1553.jpg

ゴメン、ちょっと汚れが酷すぎるので少し修正。
602名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 10:30:08 ID:bDtFAjyM
  _   ∩
( ゚∀゚)彡 先輩のおっぱい!先輩のおっぱい!
 ⊂彡
さすが神様、何たるクオリティーの高さだ
603名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 11:39:35 ID:/Lap7il5
>>595
晋也がオリジナルなんだろうが、あえてBを選んでみる
流され易い性格の方が面白そう
604名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 12:13:07 ID:OE+M9iz4
>>601
ぜひ先輩のギシギシアンアンの絵も…

>>595
Aを選んで何気に無限ループを期待している俺ガイル

>>586
逆に考えるんだ。
「士郎とモカが結婚すればモカから見て姉ちゃんは義姉になる」と
考えるんだ。
智子でも可。
605名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 13:02:23 ID:CZU6yYo0
>595
Aで「晋也が思いもよらない行動を取る」
つか佐奈嬢、あの2人から恋心を除去してしまう選択はしなかったのか
606名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 14:09:09 ID:BSntT8L/
>>605
答:草津の湯でも治らない
ほっとくと勝手に自然発生してくるんじゃね?

607名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 14:12:37 ID:t3+G4sNC
>>595
D:「俺は・・・・・誰なんだ・・・・」
人格破壊で驚愕の結末へ
608名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 14:16:13 ID:cAyWXg1q
E:「俺は(僕は)……ここにいる!!」
でエデンを作る。
609名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 14:17:17 ID:dENtOuSL
E:「そうだ、レディ思い出したぜ。俺の名は海賊コブラ」
殺伐とした海賊家業が嫌になって、記憶を消してごく普通の人間として暮らそうとしたら、
殺伐とした修羅場に巻き込まれてしまった。
610名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 16:15:24 ID:F4foawH0
左腕のサイ娘ガンが火を噴くぜ
611名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 18:55:28 ID:OE+M9iz4
ヤター!モカさん人気に嫉妬する姉ちゃんAA作ってもらったよー!
     /           \
    〃             \
    //     /          ヽ
   l|    i  |  /  |i  .| ト、   l
   ||    |i |! | |:i ト|  | | i|:. l
   ||..  〃|i |レ≧、V|ヽ.トノィ.| |. |
   ||   ヾ|i ト、" じ≧ fシ| ノ | リ
   ||     /|i ミ'ゝ "   ゝイ|.∧ |
   ||   /| |i ト、  z=ィ /ノ/  |i ト、
   l|  / | l  !  > ,/ /\ .|i ヽ、\
   ノ /  ヽヽ\ハノ、、  |  \ } })
  / /   \    {しゝ>>/ニ ヽ、  /
 〃{      \__∧/ >'´⌒  \
 |               `'<´rー、  ))
                   \>==>
http://aa5.2ch.net/test/read.cgi/kao/1143013237/282
神がかった椿タンはまだです。
612名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 20:04:04 ID:/NFUjWQ2
>>611
このスレから遂にAAが産まれたのかw

( ゚Д゚)ハッ この流れは
煩悩→修羅場小説→(*´д`*)→ゲーム化→絵→AA→書籍化→映画化→ドラマ化の伏線か!?
613名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 20:14:14 ID:eSHszN4X
>>612
むしろこのスレでビジュアルノベルを作る流れの伏線。
614シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/12(水) 20:17:34 ID:Fk53MIAj
不撓家の食卓第六話ですが、
徹夜してでも明日中に書く予定です。
しかし万一明日中に完成できなかった場合は、たぶん2・3週間は更新できないと思います。
理由はメル欄に書いておきます。
(居ればの話ですが)期待していた方々へ、ごめんなさい。
期待してない方々は読み飛ばしてください。
615名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 20:18:53 ID:W/z+9v56
>>612
フルボイスゲーム化、修羅場オンリー即売会、一大ムーブメント
色々抜けてるぜブラザー

616名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 22:06:10 ID:Zv1CUdLP
>>612
修羅場男
617名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 22:06:57 ID:/R9/rVi/
しかし力作揃いで嬉しいなあ。
属性がピンポイントだからかな。
まとめサイト開くと時間が消し飛ぶよ…。
618 ◆Ua8lvXg6mM :2006/04/12(水) 23:23:37 ID:ob5WuclE
ちょwwww選択肢作り杉wwww
僅差ですがAってことにします
619名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 23:28:48 ID:MBTRlhC9
ネタじゃなくて投票だったのかyo!
620名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 23:47:16 ID:CPWLq0KY
まあ、前回はサウンドノベル化してくれる神はいたけど
今はもういないからな・・

誰か作れよ・・
621名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 00:01:45 ID:F7V99RNY
むしろ今度はビジュアルノベル化してもらいたいな。
…………無理か。
622名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 00:55:50 ID:aLWdMXE7
>>620
言いだしっぺがヤレの法則
623名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 01:08:17 ID:UdCztfyG
次スレタイトル案はまだいいか?

嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 五里霧中
624名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 01:12:11 ID:2ba1bE9y
>>623
フルメタ化してきたな…
625名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 01:16:21 ID:PFUoIRQQ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 五解の生む悲劇

ちょっと苦しいか
626名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 01:56:36 ID:Cl5SWDbw
内容は実際のところ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ
ではなく
嫉妬まみれの三角関係で修羅場なSSスレ
になってるよな。
627名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 02:03:41 ID:RyZbCdij
>>623

つ【嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 五体不満足】
628名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 02:18:20 ID:Tcz3ghaJ
>>627
何か色々な意味でヤバそうなタイトルだ……
629名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 10:01:36 ID:waeM318E
つ【嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 五臓六腑】
630名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 11:42:52 ID:GbzRBzzx
ばらすのか、ばらすんだな?!
631名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 11:44:26 ID:TK0V9wIX
【嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 五感ちょー満足】
632 ◆EwpfCLFrBs :2006/04/13(木) 12:39:48 ID:GbzRBzzx
「妹は実兄を愛してる」(というか楓)にはまった結果、
せめてこの作品の完結までだけでもと、サウンドノベル版の続きを打ち込んでる。

スキル的に駄目なばかりか、
BGM選択のセンスのなさに泣けてきつつもできたとこまで晒し。
差分ファイルなので、第一部ファイルの末尾改変版を上書き、
40〜42のテキストファイルを同様にコピー、
dataフォルダ内のファイルをコピーしてください(りどみに書き落としたorz)

ttp://up2.viploader.net/mini/src/viploader26738.zip.html
key:kaede

<チラシ裏>
外伝のあと、
第二部をおよそ1話分打ち込んだつもりが、
打ち込んでいたのが11話だったことに気づいてorz……
</チラシ裏>
633名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 13:51:26 ID:UdCztfyG
>>629
五臓六腑は6スレ目のほうがいいかな。
いや、6のネタが思い浮かばないもんでw
634名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 13:55:30 ID:fu6yVl2z
>>633
六道輪廻とかどう?

ろくどう ―だう 2 【六道】
〔仏〕 すべての衆生(しゆじよう)が生死を繰り返す六つの世界。
迷いのない浄土に対して、まだ迷いのある世界。地獄道・餓鬼道・
畜生道・修羅道・人間道・天道。前の三つを三悪道、あとの三つを
三善道という。六趣。六界。りくどう。
635名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 14:00:17 ID:+/WNMqb1
>>633
関孫六
甚六
(1)長男。跡取り息子。おっとりして気がよいところがあることからからかう気持ちをこめていう。
「惣領の―」
(2)お人好し。のろまな愚か者。

やっぱりいいのないな

636名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 14:02:03 ID:EMGfi0E1
ろくなら

六でなしBLUESとか
六な人間じゃないとかで

637名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 14:08:23 ID:fu6yVl2z
はちだいじごく ―だいぢごく 5 【八大地獄】
〔仏〕 八種の地獄。すなわち、等活・黒縄(こくじよう)・衆合・叫喚・
大叫喚・焦熱・大焦熱・無間(むげん)の称。八熱地獄。八大奈落。

くそう ―さう 0 【九想/九相】
〔仏〕 人間の死体が腐乱して白骨化するまでの九段階を観想すること。
肉体に対する執着を消すために行う。九想観。九想門。

7は良いの見つからなかった。

638名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 14:08:41 ID:+FCMzMvl
六師外道
六種振動
六正刑
六畜
六波羅短題


お好きなものをどうぞ
639名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 14:13:55 ID:TK0V9wIX
五解でよくね?あんまし凝ってもあとがつらくなるだけだし

どの道11以降は数字だけだろ?
640名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 14:14:46 ID:TK0V9wIX
>>638
六波羅短題w
641名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 14:17:50 ID:+/WNMqb1
>>637
しちきょ 2 【七去】

〔大戴礼(本命)〕妻を離縁してよいとされた七つの理由。
父母に従順でないこと、淫乱なこと、嫉妬すること、悪病のあること、子のないこと、おしゃべりなこと、
                      ~~~~~~~~~~~
盗みをすること。儒教の経典や中国・日本の令で認められていた。
七出(しちしゆつ)。
642名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 14:20:22 ID:+/WNMqb1
七人の怒れる女
でもいいか…ってまだ4スレ目か。
このペースで行けば確実に今年中に行くだろうけど
643名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 14:24:36 ID:fu6yVl2z
傲慢、嫉妬、暴食、色欲、怠惰、貪欲、憤怒の7つの大罪ってのもあるなぁ。
644名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 14:37:04 ID:+FCMzMvl
>>640
うわ、変換ミスった恥ずかしいな

決めるのは次スレでいいよ
案出した自分が言えることではないが
645名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 14:48:11 ID:TK0V9wIX
五倫超克
六畜
七去
八大地獄
九想
646名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 14:57:40 ID:fu6yVl2z
スレタイはスレ立て人の裁量に任せてアイデアだけ出しとこう。

ごよく 1 【五欲】
〔仏〕
(1)色(しき)・声(しよう)・香・味・触(そく)の五境に対する愛。
(2)財欲・色欲・飲食欲・名誉欲・睡眠欲の五つの欲望。
647名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 15:26:36 ID:+/WNMqb1
    ,,ト                                    ,、    .%,            
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..,l"   ll    .!,   ゙ll,、          ゙li、           li      .゙l,  .゙!!lllii,lll゙!!llllliiii,,,,、   
..l|    .゙i    .l|    .゙l,      ,     .'゙l、       'li      .l    ゙゙!!llllli,, ゙゙゙゙!!lllllii,,,  
..l|    l|    l|    .゙l,     .゙l!     ll,           ll、     l|     ゙゙!llllii,,_  ゙l!lllii,_ 
.,l|    l|    l|    _ ゙l,     ゙i      l  ,,,,,,,,,iw   l|     ll       .゙゙llllllii,,、 llllll 
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     l,   l   l.,_゙l,_l|.゙!li,゙!*g,,,,ll'″:      ~_,,ilf'゙°;;;;;;;;私 l   .l   l   .゙l,、゙l,、   l,   
     .l   l   .l’”!lllll!  ゙゙゙゙””:      ,,,,lfl゙゙″;;;;;;;;;;;;;;;;;;,l! ll′  .'li、  l    l| .゙li    ゙l,  
     .l   l   ,l   ゙゙N=@      .ll ̄;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,ケ.ll′   l   .l    l|  `l    .゙ト 
     .l   .,!  .l|.eei,,,,,,,,,,,,゙゙ll,,,_      .゙'N,_;;;;;;;;;;;;;;;_,,al″.,l|    .l|   l    l|  ゙l!      
     .'l   l   i゙ ,,l″  .”””゙゙li,,,  .,,,illfllllllllllglllllll゙゙″  .l    .l|         !  ill″     
     l   l   l.,r゙`        ゙゙゙ll,il“`    `゙llll,,,    i゙    .l   ,,,            

箸休めにオートで作った椿ちゃん。びみょー
648名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 16:30:51 ID:8oPPd/p7
>>647
あちきの絵はAA向きでは無いと思うのですよー。
AA職人のかたでも作りづらいとおもわれ。
649名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 18:34:02 ID:/hYWiKG5
『広き檻の中で』

正直後半なにこの尻軽女達とか思って微妙だった
今どうかと聞かれたら今も微妙としか言えないが
650名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 18:38:54 ID:HpcvnSiH
とりあえず主人公萌え
651名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 18:48:19 ID:t6yqQL1J
>>649
余計なこと言わない。
少なくとも俺は気に入ってるんだから。
652名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 19:15:46 ID:DMTFOFO3
>>639をちょっと捻って「誤解と嘘」
653名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 20:18:49 ID:G57sHL+6
>>649
昨日今日知り合ったのならともかく
幼い頃から一緒にいたのだから別に尻軽ではないと思うのだが……
654名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 20:41:40 ID:9+PYWnMe
いやまぁ適切なら厳しい意見もあって良いと思うけど。
適切ならね。え〜とけど正直>>649は的外れぎみだと思う。
655名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 20:51:04 ID:XHny+IvK
>>649
この作品のヒロインは、尻軽ではないと思うんだが…。しっかり作品読んでるの、あんた。
656名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 20:52:47 ID:cEZqLlwI
晋も純も実質同一人物だしなぁ
657名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 21:24:09 ID:+FCMzMvl
尻軽男なら沢山いますよ
658沃野 Act.13 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/13(木) 22:14:28 ID:u0vOjbpk
 ヤってしまった。その思いが胸の中を占めている。
 他でもない。下級生の荒木麻耶とだ。胡桃とのことがあっていささかナーバスになっているところを
慰められ、ある意味で追い打ちをかけられるように再告白されて……気持ちのタガが吹っ飛んでしまった。
 あの夜は何かがおかしかった。異常に性欲が昂進していて、極論すれば「穴があればなんでもいい」と
いう気分になっていた。たとえ荒木が「実は私、男なんです」と暴露していても構わず菊座にぶち込んで
いたことだろう。理由の一つは胡桃とまぐわえそうになったところで精神が拒んでしまい、肉体の方が
生殺しになってしまったことが挙げられる。しかし、そもそも胡桃とまぐわおうと思った時点で既に
何かがおかしかった気がするのだ。
 健常な男子として夜はムラムラする傾向の強い俺であるが、さすがに後先考えず暴走してしまったのは
あれが初めてだ。いったいあの夜には何があったのか……
 ともあれ……荒木麻耶だ。
 恋愛対象とも、性欲の標的とも意識していなかった。だからまさかヤってしまうとは夢にも思わなかった。
 しかし、いざコトに及んでしまうと先入観は一瞬で崩壊した。
 気持ちよかった。
 異常なくらいに気持ちよかったのだ。
 初めてではあったし、セックスに対する幻想みたいなのも抱いていた。
 しかし、「実際はそんなに大したことないよ」としたり顔でのたまう級友の言葉を信用していた
部分もあって、期待を裏切られるのでは、幻滅するのでは、という怯えの念もあった。
 それがどうだ。彼女の、湿り気が少なく狭い途へ無理矢理押し込むように挿入するや、背筋を一本の氷柱が
貫いていった。快感という名の氷柱だ。それは太く、冷たく、痛みさえ感じさせた。快感も行き過ぎれば
恐ろしい。たまらず抜こうとした。荒木の襞は迎え入れた客人を逃がしはしないとばかりにきつくまとわりつき、
却って挿入よりも深い快楽を与えた。
 耐えることもできず、射精した。自慰で、とはいえ持続性の高さには自信があったのに、数秒と
保たなかった。実戦で緊張していたからというよりも、単純明快に手淫とはレベルが違う刺激に負けた。
 その時点で「童貞を捨てる」「筆おろしをする」「胡桃の身代わりにする」といった頭に渦巻く
後ろめたさを含めた雑念が綺麗さっぱり消え失せた。
 狂った。そうとしか言いようがない。荒木の膣は一瞬にして俺の理性を溶解した。
 気を取り戻すまでどのくらい時間が経っただろう。それは三度目の射精だった。奥に出されても荒木は
物も言わずただピクピクと痙攣するだけだった。「まずい」と思いつつティッシュを取り、溢れ返って
逆流している精液と、愛液と、少なからぬ量の血液を拭った。拭っているうちに荒木は回復し、苦しげに
ふうふうと息をついた。緩やかにうねる腹。その白い皮膚を見ているうち、さっきの感覚が局部に甦って
きて、我慢できずに彼女の小さな体を再び組み敷いた。
「いやあ……堪忍してえ……堪忍してくださいぃ……!」
 四度、五度に及ぶ性交。しまいには荒木も失神しかけていた。
 とにかくすごいものだった……思い返すだけで股間が膨らんでしまう。
 あれは、一度挿入したら一回だけ射精して終わりにするとか、そういう真似を許す代物ではなかった。
ひどく狭くて、深さもあまりないくせに、食いついたら離れないしつこさがある。絶妙な吸着感もあり、
余すところなく締め付けてくる。味わってしまえば、「大したことない」などとしたり顔では言って
いられないほどの魔力。
 あれは──いわゆる「名器」なのかもしれない。
 けど、そう呼ぶにはあまりにも恐ろしく、禍々しいほどの悦楽は病みつきで。
 いっそ妖器の類に属するもの、と見るのが相応しいような気もするのだ。
659沃野 Act.13 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/13(木) 22:18:45 ID:u0vOjbpk
 妖器云々は別として。彼女に視える隠喩──蔦が、いっそう激しくなってきた。
 以前は多いときでも上半身をぐるぐると巻かれる程度だったが、最近は全身を埋め尽くす勢いで絡まり、
時に視界の確保に困難を来たすほどだ。
 もはや蔦というより、この隠喩は繭と捉えるべきなのかもしれない。
 植物で編まれた繭。一つの完結を思わせる姿から汲み取れるのは、強い依存だ。
 麻耶が再告白をした一昨日。俺を巻き込んで蔦のコクーンを形成しながら服従の言葉を口にする彼女を
見るうち、次第に芽生えてくる意識があった。
 支配。征服。いや……そういった優越感を滲ませたものではなく。
 共鳴、と言えばいいだろうか。何かが通じ合ったような気がしたのだ。
 依存される。そのことを、俺は望んでいた気がする。
 胡桃は甲斐甲斐しく尽くし、あらゆる面で奉仕しているかのように見えるが、彼女はどこかで俺を
獲物のように見ている節があった。隠喩が食虫花であることも、その一つだ。彼女は俺を捕らえて意の
ままにすることを望んでいる。首輪をつけたがり、常に鎖を引きずっているような感じだ。
 鎖──檻とともに、胡桃で何度か視た隠喩。彼女は異様に嫉妬深く、その悋気がすぐに束縛へ向かう。
 縄をつけなければ安心しない。根深い不信が、彼女の根底にはある。
 好意を寄せる相手であっても信頼を置こうとしない思考が、息苦しい。
 猜疑の果てに束縛の権化として現われたあの怪物を記憶から掘り返すと、今でも動悸が増す。
 やはり、駄目だ。付き合いが長く、愛着があるとはいっても、あれだけの怪物を隠した胡桃と真正面から
付き合っていく自信が俺にはない。もし恋人のような関係になれば、俺は胡桃ではなく、胡桃に巣食う
怪物──あいつの制御できない激情に絞め殺される。隠喩は隠喩に過ぎないが、それでもあれは度を
越していた。
 荒木は……麻耶は逆だ。俺に首輪を付けるのではなく、自分に付けてほしいと願う。
 束縛されたがっている。粉々に砕け散った鎧の代わりに、俺との関係を密にすることで剥き出しに
なった蔦を繭化させ、心の安定を得ようとしている。
 献身によって自我を確立する、とでも要約しようか。あいつは目的を自己ではなく他者に求めるのが
肌に合う性格なんだろう。誰かのために「何でもする」ことが、自信を持つことに繋がっている。
 そのことが、別段不快ではなかった。
 依存され、献身を受けることに充足と満足を覚えていた。
 麻耶には俺が必要なんだ──という身勝手な確信がどこまでも肯定されるから。
 彼女の体を貪り続けることに正当性を感じられるから。
 恋だの愛だのといったことがよく分からない俺には、単に依存されて共生する関係が心地良い。
 麻耶は恋人というよりも、既に体の一部みたいに思えている。
 交わり合ったからではなく。それ以前の問題として。
 心のどこかで、俺も依存する相手を求めていたんじゃないかな──
 だからこそ、彼女の告白を受けて支配欲や征服欲が満たされるより先に、共鳴した。
 相互の依存。
 別々の教室に向かうため別れた後も、麻耶の蔦は未練を残して俺に絡まり続ける。
 想われている。依存されている。
 知っても、不思議と息苦しくなかった。
 最後の蔓の一本が小指に巻きつき、ゆびきりでもするように揺れた後、スッと消えた。
 相変わらず、麻耶には恋愛感情なんて抱いてなかったけれど。
 そばにいてほしいな──と自然に願う自分がいた。
660沃野 Act.13 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/13(木) 22:22:19 ID:u0vOjbpk
 それと、気になるのは胡桃のことだ。
 あんなことがあっただけに顔を合わせづらい雰囲気もあったけど……
 いつまでも逃げているわけにはいかない。胡桃との関係にしたって、今まで見て見ぬフリをして
放置してきたから、こんなにもこじれてしまったんじゃないか。
 いい加減、こじれを清算しなくちゃダメだ。
 意気込み、俺が麻耶を選んだことをきちんと伝えようと肩に力を入れていたが。
 朝、胡桃は姿を現さなかった。遅れてくるかと思ったが、結局登校せずに欠席した。
 やはり、あれは彼女にとってもショックだったか。予想していないことでもなかったが、実感すると
気持ちが沈んだ。
 お互い、これを乗り越えて前へ進むには、しっかり話し合って決着をつけないといけない。
 たとえ今、どんなに傷つき痛みに咽ぶことがあっても。
 ──決着はつけなくちゃならない。
 そう思うのだ。

 胡桃の家に行った。何せ隣家だ。行こうと思えば、心理的抵抗をなくすだけで簡単に行ける。
「どうもあの子、気分が優れないみたいでねえ……」
 応対に出たおばさんには、やや疲れと困惑の表情が現われている。
 隠喩は閉ざされた門。とりあえず応対には出たが、俺を迎え入れる気にはなっていないらしい。
 原因が俺にあることを疑い、胡桃とは合わせたくない気持ちになっているのだろう。
 仕方なく辞去した。携帯を開く。コールもメールもなしの礫だ。反応する素振りを見せない。
 このまま、自然消滅するがままに任せればいいんじゃないか──楽な方へ流れそうになる。
 内心に首を振って否定する。今まで散々楽してたツケを清算するために会うのだ。
 ここで逃げてしまえば、ただ禍根を残すだけに終わる。
 それじゃ駄目だ。話し合った結果として物別れに終わるなら、それでいい。けれど、顔を合わせる
ことすらしないで鬱屈の種だけ残していくのでは、誰も得しない。揃って損なわれるだけだ。
 付き合うことができないからって、何もかも損なうような事態には耐えられない。
 あれでも俺にとっては大事な幼馴染みなのだ。
 話をつけるために、強引な手段も厭わないことにした。

 両親の留守を狙って綾瀬宅に侵入した。物置の工具箱に予備の鍵が入っているのは長年の近所付き合い
で知っている。やってることは普通に犯罪だったが、なりふり構わなかった。
 きっと周りの大人なら「時間が解決してくれる」と言って、今は距離を置くべきと諭すに違いない。
 でも……あいつの抱えた怪物は、放っておけば時間経過に比例してとんでもない成長を遂げるかもしれない。
 それが怖くて、不法侵入までやらかしてしまった。
 コン、コン
 部屋の扉をノックする。
「胡桃、俺だ。洋平だよ。ちょっと話、できるか?」
 返事はない。扉の向こうは静まり返っていて、人の気配も窺えない。
 鍵が閉まっている以上は、胡桃がいるはずなのだが。
 めげずにノックを重なる。
「なんならドア越しでもいい。聞いてほしいんだ。俺は、荒木麻……」
 ガチャ
 切り出そうとした途端、開錠の音がした。扉は開かれない。
 ノブを回す……回った。
 中で胡桃が開けてくれた? しかし、出てはこない?
 入って来いということだろうか。胡桃の部屋に入るなんて何年ぶりだろう。
 躊躇う気持ちも大いにあったが、「よし」と気合を込めて扉を開ける。
 暗い……明かりが点いてないのか? スイッチ求めて壁を手探りしながら一歩、二歩と、

 ガチャリ

 金属音がした。肌に冷たい感触が走る。
 閉錠音──ではない。扉は開け放たれたままだ。
 見る。手首に嵌まったもの。
 銀に輝く、拘束の輪。
 ──手錠だった。
661沃野 Act.13 ◆1IgBlOP8QY :2006/04/13(木) 22:23:21 ID:u0vOjbpk
次回、胡桃が敗北の泥土からよみがえる。
「ドーン・オブ・ザ・嫉妬」、お楽しみに。

>>543
家宝にします。
…さて、俺達は鳳翼駅まで戻ってきた。
今日は色々とあったが、時計は正午を示していた。
そう毎回毎回起床シーンで始まると思ったら大間違いだ。
それはそうとして、今からどうしようか?
急げば午後の授業に間に合うだろう、だがその前に腹が減ったな。
なにせ今日は朝食を抜いて出てきたからな、腹が減るのも仕方が無いだろう。
「天野、どっかで飯でも食わねえか?」
「そうですね、私さっきからお腹が空いてて…」
「なんだ、天野も腹が減ってたか?」
「はい、お腹の音が聞こえやしないかとヒヤヒヤしてました」
そういって天野が少し照れる。
可愛いじゃねえかコンチクショウ…
「何処が良い?『Phantom Evil Spirits』以外なら何処でも良いぞ」
あそこは勘弁。知り合いは多いし、混んでるし…
「はぁ、そうですね…」
「………」
「うう〜…ん…」
「………」
「えっと…」
「………」
やっぱり俺が決めた方が良かったかな…
「天野」
「はい?」
「とりあえず適当に歩きながら決めるか」
幸いにしてここは駅前だ、飲食店はたくさんある。
「そうですね、そうしましょうか」
「決まりだな」
まあなんだ、今日は天気が良いからな、散歩も悪く無いだろう。
天野と一緒に駅前を歩く…のどかな雰囲気だ。
「麺類も良いですよね」
「空腹に不味い物無し、てか」
「ち…違いますよっ!」
うむ、からかいがいのある奴だ。
「最近は暑いからな、冷やし中華ってのも良いな」
「そうですね」
「暑い日に食べる物と言えば他には…」
「あえて激辛マーボーとか」
「良いんだな?」
「えっと…」
「ほんっ…と〜っに、良いんだな?」
「ごめんなさい」
「うむ、正直でよろしい」
こう言っては何だが、今日のように暑い日に激辛の名を冠する物を食べる人間の気が知れない。
ジャンパー着てなくて本当に良かったと思う。
「そういや、俺のジャンパーはどうした?」
「ああ、あの時は助かりました」
そう言って天野は頭を深く下げる。
「いや、別に大した事じゃない」
「ちゃんと汚さずにとって置いてありますよ」
ちょっとホッとした。
なんだかんだ言って愛着があるからな。
「そっか、なら返せる時に返してくれ」
「なら、明日の学校に持って行きましょうか?」
「そうだな、そうしてくれ」
…しかし、そろそろ俺の腹も限界に近いな。
ちょうど視界に中華料理屋が入った所だ、いい加減に何か食べなくては体がもたん。
「天野、さっき話題にのぼった事だし、今日の昼は中華にしないか?」
「良いですね、ちょうどマーボーもあるみたいですよ」
「…食えよ」
「ごめんなさい」
まったく…確かに看板にはマーボーの文字があるが、激辛なんて何処にも書いてないぞ。
まあ、たまにはマーボーも良いか…普通の辛さなら。
664名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 22:28:37 ID:AJMKzPxF
手錠キタ――――――――――――――――――!!!!
がんがれ胡桃タン、泥棒猫のことなんぞよーくんの脳内から消してしまへ
そして作者様GJ
辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い…
「不撓さん、ちょっとした冒険ですね」
天野の冷やし中華が輝いて見える。
油断した…まさかここまで辛いとは思いもしなかった。
やはり初めて入る場所で警戒を怠ったのが拙かったか…
周りを見渡すと、天野以外の全ての客は全身から尋常じゃない汗を流している。
しかも俺のように苦悶の表情をしている奴は一人も居ない。
もしかしてここは、そうゆう店なのか?
「天野…知ってたのか?」
「割と有名ですよ…辛さで」
しれっと言われるが、俺は初耳だ。
つまり何だ…この店ではこれが普通の辛さで、だから激辛の文字が書いてなかったのか。
うんうん、納得…
「…て、何で天野だけ涼しい顔してんだよ」
「一応普通のメニューもありますから」
頼むからもう少し早く言ってくれ…
そんなこんなで天野は冷やし中華を食べ終わったようだ。
俺のは…あと半分以上残っている。
もう金輪際この店には来ない…
「ところで、不撓さん」
「な…何だ?」
天野が急に真面目な顔になる。
俺は今過去最大の敵と戦っているのだが…
「不撓さんの目的は何なんですか?」
「俺の?」
「目的と言うか…望みと言うか…」
「…良くわからんな」
「とにかく、不撓さんが一番手に入れたい物を聞きたいんだす」
「そうだな…」
なんとなくだが、質問の内容はわかった。
確かに今の状況が悪いとわかっていても、具体的にどう改善すれば良いのかがわからなくては手の打ちようが無いだろう。
しかし、最終的にどうしたいのかと言われてもな…
そりゃあ英知がおとなしく手を引いて、大槻がもう少しおしとやかになれば嬉しいが…
最終的な目標は…強いて言うなら、天野とこうしている時間かな。
…いや、流石に今の思考をそのまま口に出すのは拙いだろう。
「…平穏な日常だな」
結局そんな答えに落ち着いた。
まあなんだ、天野との時間は平穏な学園生活を象徴するような物だし、嘘はついてないだろう。
「わかりました、私も微力ですけど手伝います」
「そいつは心強いな」
うん、きっと天野が居れば百人力だ。
「それと、もう一つ聞いても良いですか?」
「うん?」
辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い…
不味い、このマーボーは食いきれないかも知れない…
「不撓さんはあの二人の事をどう思っているんですか?」
「あの二人?」
「大槻さんと英知さんですよ」
大槻と英知か…
さて、どう答えるべきか…
まあ、俺の性格上そのままズバリ答えるのだろうが。
「英知は…まだ未知数だな」
「未知数…ですか」
「まあな、あいつとは出会ってからまだ何日も経ってねえからな」
「そうですか…」
「で、陽子の方は…」
どうだろうな、正直に言って大槻に対する感情なぞ考えた事も無い。
「守りたい…かな」
「はあ…」
あれ?そう言えばこれと似たような状況が前にも在ったような…
「あ、兄上っ!探しましたよっ!」
噂をすれば…か。
間の前にワンピース姿の英知が居た。
「英知、いつから居た?」
「たった今兄上を見つけた所です」
とりあえず未知数発言は聞かれてないようだな。
「てかお前、学校サボってるだろ」
今の時間帯は昼休みの筈だ、英知が私服でいるのはおかしい。
「兄上の危機に呑気に学校など行ってはいられません」
「危機って…」
兄として喜んで良いのやら、嘆いて良いのやら…
「とにかく兄上、あまりを心配させないでください」
拙いな、だんだん英知に怒気が宿ってきた…
ただでさえ激辛マーボーという強敵が居るのに、この上に英知の相手まではしてられない。
そこで俺は、手にしたレンゲでマーボーをすくい…
「あーん…」
英知に差し出す。
「あっ兄上!?こんな所で…」
英知が真っ赤な顔で抗議らしき声を出す。
「あーん…」
問答無用…逃がさん。
「あ…あーん…」
観念したのか、英知が口を大きく開ける。
…心なしか、少し嬉しそうだ。
 パクッ
「………」
「………」
「…っ!!!」
苦笑する天野、にやける俺、そして悶える英知。
当然、水は前もって英知の手の届かない場所に配置してある。
「くぁwせdrftgyふじこlp…」
理解不能な言語が飛び出す。
『英知は混乱している』て感じだ。
「どうだ俺の力を思い知ったか…」
「不撓さん…恐ろしい子」
ちなみに五分後、英知の怒気は倍加したと追記しておく。
その後俺達は天野と別れ、『Phantom Evil Spirits』まで戻って来た。
別れ際に英知が天野に何やら話しかけていたようだが、内容は教えてくれなかった。
「おお、懐かしの我が家よ…」
「まだ一日も経っておりませんが」
何故か英知は不機嫌そうだ…
今の時間なら昼休みは終わっている、ピークはもう過ぎた筈だ…
 カランッ カランッ
「いらっしゃいませ…」
出迎えてくれた人は、目が死んでいた。
「鈴木さん、疲れてますね…」
「流石に二日連続はキツイよ…」
良く見ると、他の店員さんも似たり寄ったりだ。
二日連続で働いているのは親父と鈴木さんだけだが、店内で一番タフだった鈴木さんがこうなるとは…
てかこの店大槻に頼りすぎだろ…
「陽子はどうしたんです?」
「あの方ならまだ兄上を探している筈です…」
英知が遠い眼で彼方を見つめる。
まさか大槻までサボっていたとは…
「連絡しろよ…」
「無理です、方法がありません」
はぁ…なんか頭痛くなってきた…
俺はおもむろに携帯を取り出す…
 ピッ…
 トルルルル…トルルルル…
「もしもし?」
「陽子か?俺だ」
「勇気君!?今何処なの?」
「『Phantom Evil Spirits』だ」
「ええっ!本当に?」
「とにかく一旦帰って来い」
「わかった。勇気君、そこ動いちゃ駄目だからね!」
 …ピッ
とりあえずはこれで良し。
戻って来たら一度お灸を据えてやらねばな…
「勇気か…」
「親父…」
厨房には、親父が居た。
それも一目でわかる程に怒ってる親父が。
 パンッ!
まずは無言で平手打ち。
親父は滅多に手を上げたりしないが、必要な時は躊躇しない。
今回に関しては俺が悪い。だから避けない、弁明もしない、眼を逸らさずに受ける。
そして…次の瞬間には抱きとめられていた。
「お前の事だ、きっと大切な理由があるのだろう」
「………」
「だがな勇気、お前は私の家族なんだ…勝手に居なくなって、勝手にくたばるなんて事は決して許さない…」
「…親父、泣いてるのか?」
「私はお父さんなんだ、我が子の心配だってするさ」
「そっか…」
「だからな、『いってきます』と『ただいま』位はちゃんと言ってくれ」
「ごめんな…」
 パンッ!
もう一度叩かれた。
「勇気、お前はこうなる事を覚悟して出たのだろう?」
「ああ」
これは即答できる。
「ならば安易に謝るな、そして次も己の信念に従って行動しろ」
「ああ」
「なら許す。先ほどバイトが一人倒れた、手伝ってくれ」
「ああ」
なんだかんだ言っても、親父は親父だった。
「親父、もう少し陽子に頼らない編成を考えた方が良いぞ」
「…考えておく」
「英知、そろそろ閉店の札を掛けてきてくれ」
「はい、父上」
ようやく閉店時間となった。
店内にはもう客はおらず、フロアーに居るのは大槻と英知だけだ。
…よくよく考えると少なすぎる気がするよな。
「勇気君」
大槻に呼ばれる、いつものアレだ。
「おう、そろそろ行こうか」
「兄上、どちらへ?」
「ああ、陽子を家まで送ってく、暗い夜道を女の子だけで歩かせられんだろ」
かれこれ三年近く続いている、これはいつも俺の役目だ。
「その方が変質者ごときに後れを取るとは思えませんが」
「お前な…だからって放っておく訳にはいかんだろ」
「兄上はお休みになってください、付き添いなら私が参ります」
「駄目だ」
「兄上…」
「それだと行きはともかく、帰りは英知一人になるだろ。絶対に駄目だ」
まあ、英知に勝てる変質者なんて滅多に居ないだろうがな。
「………」
英知が黙り込む。まだ納得はしてないようだが、説得は帰ってからにしよう。
「陽子、準備はできたのか?」
「うん、もう終わってるよ」
「じゃあ親父、行ってくるぞ」
「紫電さん、また明日」
「気をつけて行ってこい」
「………」
 カランッ カランッ
「ねえ、勇気君」
夜の帰り道で、大槻が口を開いた。
「なんだ?」
「今日は何処に行ってたの?」
まあ、当然の疑問だとは思う。
「兄貴に会ってきた」
「兄貴…不屈さんに!?」
「まあな、元気そうだったぞ」
大槻は動揺を隠せていない。
感情の起伏が激しいのは大槻の長所だが、同時に短所でもある。
昨日戦闘中に動揺したのが良い例だ。
「それで、何をしてきたの?」
「悪いが、そっから先は黙秘する」
流石に不撓家の裏事情を独断で話す訳にはいかないだろう。
それに『いざとなったら、お前等を取り押さえられるように鎧を…』などと言ったら何が起こるか…
「そう…」
珍しく大槻はあっさりと引き下がった。
普段ならもう少し食い下がるのだが…
「ねえ、勇気君」
「今度は何だ?」
「天野さんとは、どんな関係なの?」
それはむしろ俺が知りたい…
「たぶん…ただの友達だと思うぞ」
「本当に?」
「たぶんな…」
確証は持てんが…そう心の中で付け加えておく。
「………」
「………」
沈黙が場を支配した。
三年間も一緒に居ると、表情も読めるようになってくる。
特に大槻は他の人間よりも表情の変化が激しいからな…
大槻もまた、何らかの悩みを抱えているのだろう。
「陽子、悩みがあるなら聞くぞ」
「………」
「………」
「ねえ、勇気君」
「どうした?」
「私さ…勇気君の事が、大好きだよ」
「なっ…!?」
完全に不意をつかれた、俺もまだまだ修行が…などと言ってる場合か。
「勇気君は私の事好き?」
拙い、こんなの想定外だ。
心臓がバクバク鳴ってる…
そりゃあ俺だって考えなかった訳じゃないが、まさか現実に大槻から…
いかん、落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け…
「勇気君?」
どうする不撓勇気?このまま付き合うのか?
確かにお買い得かもしれん。美形だし、料理は旨いし、成績も悪くないし、それに何より…
「………」
「………」
…いや、やはり俺に損得勘定は似合わん。
何より大槻は…守りたい人だから。
「俺は大槻の事を愛している…」
「本当に!?」
大槻の顔が一気に明るくなる。
ごめんな大槻…俺は今からその笑顔を壊すよ…
「だがな、それはきっとお前の持つ感情とは大きく違う」
「えっ…?」
「俺は大槻を…英知以上に妹として見てる」
「そんな…」
もうすぐ大槻が泣き出す、俺は直感に近い物で察知していた。
今からでも嘘だと言えばどんなに楽だろうか。
だが駄目だ、俺は大槻を泣かせたくないが…それ以上に今の大槻に嘘を言いたくない。
だから止まらない、俺の信念が決して止まる事を許さない。
「それが…たぶん俺の本心だ」
「ぐすっ…うえぇぇ…」
大粒の涙がアスファルトを湿らせていた。
大槻の涙を見たのは随分と久しぶりだと思う。
俺は無意識の内に、大槻を抱きとめ頭を撫でていた。
それはまるで…兄が妹をあやすかのように…
「…落ち着いたか?」
「うん…」
大槻の眼は既に真っ赤になっていた。
「本当に大槻は泣き虫だな」
「そっ…そんな事ないよっ!」
うん、どうやら落ち着いたようだ。
「ねえ、勇気君」
「おう」
「私さ…まだ勇気君の家に行っても良いのかな?」
「馬鹿野郎、当然じゃねえか」
「良いの…?」
「当たり前だろ、お前は俺にとっては…」
その瞬間、特大の違和感が襲ってきた。
「………」
「………」
「勇気君?」
妹として…
俺の中でパズルの断片が重なっていく。
それはたぶん、兄貴の診療所を出た時に感じた違和感…
いや…それとは少し違う感覚だ。
だがしかし…
「わかった…」
「な…何が?」
「何故英知が本気で俺を手に入れようとしているのかが…わかった」
「ええっ!?」
そうだ…この仮説なら、英知と俺が出会っている必要は無い。
「どうゆう事なのっ!?」
「すまん、軽々しく話せる内容じゃ無いんだ」
気がつけば大槻の家はすぐそこであった。
「大槻、ここまでで良いか?」
「えっ…うん、良いけど…」
「じゃあまた明日な」
「えっ、ちょっと…」
俺は居ても立ってもいられず、駆け出していた。
今の仮説を武器に、英知から全てを聞き出すだめに…
夜の街を走る…
 たったったったったっ…
迂闊だったな…俺とした事が、尾行者に気がつかないなんて…
いつから居るのかはわからんが、俺の後ろには確かに尾行者が居た。
とにかくこのまま真っ直ぐに帰るのは危険だな。
そう判断した俺は道を曲がり、公園へと移動した。
相変わらず人気の無い場所だ。
尾行者の気配は…まだある。
立ち止まり、気配を探る。
敵はおそらく一人、どうする…片付けるか?
いや…まだ英知って可能性もある、下手な先制攻撃は危険だな。
「さっきからそこに居る奴、出て来い…」
気配は…動かない。
ハッタリだと思っているのか、それとも何か策があるのか…
 ガバッ!
「なっ…!?」
突如俺の体は拘束され、口には布らしき物が押し当てられる。
馬鹿な、気配は移動していないってのに…まさかもう一人居たのか!?
それにこの匂いは…睡眠薬か!?
咄嗟に息を止めたが、急激に視界が霞んでいく…
拙い、このままじゃ…とにかく距離を開けねば。
俺はカカトで背後に居ると思われる相手の足を…
 ガッ!
…無いっ!?
俺の足はただ地面を蹴るばかりで、相手の足は見つからない。
今度は体を拘束している物を振りほどこうと…
「これは!?」
俺を拘束していたのは茨であった。
これでようやく合点がいった…やはり英知だったか。
だが、俺の思考はそこまでであった…
 ドサァッ…
「………」
「兄上、目が覚めましたか?」
英知の声が聞こえた。
頭に霧がかかったような気分だが、とにかく俺は起き上がり…
 ガシャンッ
「…ん?」
ふと上を見あがると…そこには手錠と、それに繋がれた俺の両手…
「何ぃ!?」
…一瞬で意識が覚醒した。
そして俺が意識を失う直前の光景も思い出す。
すぐに自分の置かれている状況を確認する。
どうやら俺はベットに仰向けに寝かされていて…そのベットの金具をまたぐように手錠が伸びている。
そして手錠に繋がれた俺の両手。
部屋はやや古びた六畳一間っぽい部屋、とりあえず兄貴の診療所ではなさそうだ。
そして俺のすぐ横に、ネグリジェ姿の英知が座っていた。
「英知…何の冗談だ?」
一応聞いてみる、たぶん冗談じゃ無いと思うのだが。
「冗談ではございません」
…やっぱりか。
「何が目的だ?」
「兄上に、愛していただきたいのです」
うん、俺の貞操大ピンチ。
まあなんだ、いくらカッコつけても所詮俺は童貞だ。
むしろこんな美少女に相手をしてもらえるのなら喜ぶべきだ…
などと考えられればどんなに楽か。
イマイチ実感は湧かないが英知は妹だ、こんな事は間違っている。
だが…そんな俺の思惑とは無関係に、英知は既に全裸になっていた。
「兄上、力を抜いてください」
「無茶を言うなっ!」
幸いにして足は拘束されていない。
俺はそれを利用して時間を稼ぎつつ、何とか手錠を外す手段を考える…
だがしかし…脱出は少し難しそうだ。
「生命の息吹よ…」
英知が呪文を詠唱すると、辺りに奇妙な匂いが撒かれた。
「なっ…にぃ…!?」
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
だがその匂いは俺の全身の筋肉を弛緩させ、逆にただでさえ興奮していた俺の男性器は痛い程に怒張し始めた。
「英知、何をした?」
「媚薬の一種です。私もほら…こんなに」
それは、まるでこの間の再現であるかのようであった。
ただしその時と違って俺は動けない。
「兄上…身も心も、私を愛してください…」
英知が俺の上にまたがる。
やばい、流石にこの光景は興奮する…
…こうなれば唯一自由になる舌で、この場をなんとかするしかない。
「何故…ここまでする?」
それはきっと、最後のピース。
これがわかれば、この事件の全容が見える。
そうすれば…あるいは。
「ここまで…?」
「兄貴から聞いた、陰陽師の事をな」
「そうですか…」
英知の顔に動揺は無い、まだ想定の範囲内なのだろう。
「だが、本当に代々続いた義務が理由なら、英知がここまで本気になる理由としては弱い…」
「………」
「英知、お前は…」
これが俺に残された最後の切り札…
外れれば終わり、当たってもこの状況をひっくり返せるかどうか…
だがそれでも、俺にはこれしか残ってはいなかった。
「お前は俺と兄貴を重ねているんじゃないのか?」
「…っ!!!」
当たった…どうやら当たったようだ…
ならばここは…畳み掛けるっ!
「不撓の家の性質上、後継者は兄に肉親と思われては拙い筈だ。
ならば本来、英知が俺の事を『兄上』と呼ぶのはおかしい…」
「そんな…」
わかる…明らかに英知が動揺しているのがわかる。
「そして『兄上』という呼び方では、俺と兄貴の区別がつかない。
そんな呼び方をわざわざ使う理由は何故か…」
「………」
振り向くな…躊躇うな…
多少強引でもかまわない、根拠が無くても良い、立ち止まるなっ!
「聞けば兄貴と英知は11年前に出会っているらしいな…その時に英知は兄貴に惚れた。
だが不撓家の事情により、英知は兄貴と一緒になる事は許されない。ならばどうする…」
「………」
「全てに辻褄が合う答えは一つ…英知、お前は俺に兄貴の面影を求めているんだっ!」
「………」
「………」
長い…沈黙であった…
「…不屈の兄上から聞いたのですか?」
「半分はな、残りの半分は単なる当て推量だ」
しかし12歳に惚れる4歳ってのも強引すぎるよな…まあいいや、兄貴だし。
「確かに私は、不屈の兄上に憧れていました」
英知は、観念したかのように話し始めた…
「強くて、物知りで、私には無い物をたくさん見せてくれました…」
「英知…」
「ですが勘違いをしないでください、それと同時に私は勇気の兄上にも憧れていました」
「俺に…?」
「はい、不屈の兄上はいつも『自分には良くできた弟が居る』と言っていました」
今明かされた衝撃の新事実!信じられねぇ…
兄貴が俺を褒めた事なんて一度も無いぞ。
「今から一月程前から、私は不屈の兄上の所に滞在し、兄上の事を調べていました」
そういえば兄貴もそんな事を言っていた気がする。
「驚きましたよ…私のイメージがそのまま飛び出したような方が居たのですから」
「そんなに俺はいい男か?」
イマイチ実感が湧かないのだが…
「はい、兄上なら私を幸せにしてくれる。そう思いました」
「俺を買い被りすぎだぞ…」
「不屈の兄上は言っていました、『お前はもう、幸せになっても良い』と」
「兄貴が…」
「いくら言葉を並べても、結局私はただ幸せになりたいだけなのかもしれません…」
「英知、それは…」
次の言葉を言うよりも早く、英知の唇が俺の口を塞いでいた。
「英知っ!?何を…」
 ジイィィィ…
ズボンのジッパーが降ろされ、俺のモノが天に向かって屹立する。
「兄上、愛してます…」
再び俺達は唇を合わせる。
媚薬のせいか、それとも俺の本性からなのかはわからない。
だが悔しい事に、頭ではともかく体は英知の肉体を欲していた。
そして思考も鈍化してゆく…
 くちゅ…
英知の入り口に触れた…だが今の俺にこれ以上の抵抗はできなかった。
「私の事を愛してください…」
「英知…」
 ずずず…
俺のモノは…ゆっくりと英知の中へと割り込んでいった。
それは想像以上の強さで俺を締め付け、快感を生み出す…
「つぅ…」
「英知?」
英知の顔は苦痛で歪んでいた。
「媚薬で誤魔化そうとしましたが…甘かったですかね」
「おい、これ以上は…」
「大丈夫です、続けますよ…」
 ずず…
俺のモノに何かが当たったような気がした。
「兄上…」
『…と…さん…』
その時、一瞬何かが俺の頭を掠めた…
だがそれは、英知の苦しそうな声にかき消された。
「くぅ…」
「おい、大丈夫か!?」
「はい…」
全然大丈夫そうには見えなかった。
だが…今の俺にはどうする事もできない。
「動きます…よ…」
 ぐちゅ…ぐちゅ…
英知がゆっくりと上下する…
今まで知識の上でしか知りえなかったSEXと言う物だが、それは想像の遥か上を行く物であった。
自慰とは比べ物にならない圧倒的な快感だ…
気がつけば俺は、英知と共にうめき声を漏らしていた。
 ぐちゅ…ぐちゅ…
だがそれも長くは続かない、俺は自分の精が込み上げてくるのがわかった。
「英知…離れろ…」
かろうじてそれだけは言う事ができた。
だが英知は離れない…
「構いません、私の中に…」
その言葉を聞いた瞬間、俺の頭は真っ白になった…
何かが…英知の姿と重なった…
 びゅく、びゅく、びゅく…
 ぐちゅ…ぐちゅ…
「あぁ…あぁん…」
媚薬の効果故か、だんだんと英知の口からうめき声以外の物が出てきた。
対する俺は、既に三度も精を放ち、だんだんと冷静な思考が戻ってきた。
 ぐちゅ…ぐちゅ…
いや、冷静になっても打開策は見つからないのだが…
「やぁ…だめぇぇ…」
英知の表情は恍惚とした物へと変わっている。
もしかして…感じているのか?
 ぐちゅ…ぐちゅ…
だが、英知が純潔であった証拠がベットを紅く染めている。
そんな事がありうるのだろうか?
「いっちゃう…よぉ…」
…素人だからわかりません。
「あっあん…あぁぁ…」
拙い、そろそろ俺も限界に近い。
今なら、これから抜け出せなくなる者が居るのも納得できる。これには正常な男は抵抗できない。
「ああぁぁぁっ…」
その瞬間、英知の膣がぎゅうぅぅっと俺を締め上げた。
今の俺にはそれに対抗する術は無かった…
その時…天野の顔が浮かんだ…
 びゅく、びゅく…
達した…のか?…俺は達したが。
英知は一頻り体を反らせた後、ぐったりとして俺の体に寄りかかってきた。
「英知、大丈夫か?」
「兄…上…」
どうも英知の意識はハッキリしてないらしい。
「よっ…と…」
 ぬちゃ…
俺は自由になった下半身を動かし、英知からアレを引き抜いた。
気が付けば、あの妙な匂いも消えていた。
「英知…」
「………」
英知は眠っている、まるで15歳の少女のように…いや、15歳の少女なんだけどな。
…俺はSEXの最中に、確かに天野と英知を重ねていた。
目の前に居るのは確かに英知、こんな俺を愛していると言った少女だ。
だが…どうやら俺は本物のアホゥのようだ。
こんなに大切な事を、こんな状況にならないと気が付かないなんてな。
どんなに切羽詰まった時でも、俺の意識の片隅に天野は居た。
どんなに苦しい時でも、天野にだけは笑っていてほしいと願っていた。
俺がここまで天野を気にするのは何故か…アホゥにもわかる。
「英知、悪いが起きてくれ」
「うっ…んん…」
悪いとは思ったが、英知を起こす。
これは何としても言わなきゃいけない…例え英知に殺される事になっても。
「兄上…?」
「悪いが、俺には英知の想いには答えられない…」
「兄上!?」
こんな事になってから言うのは卑怯なんだろうな…
だけど…ここまできたら避けられない。
「俺は天野が…好きだから」
 ガバァッ
英知が飛び起きる。
「今…何とおっしゃいましたか?」
英知の声は震えている。
だが…ここで折れる訳にはいかない。
「俺は、天野が好きだ」
「………」
「………」
…重苦しい沈黙が辺りを支配する。
英知の体は…震えていた。
「また…天野友美ですか…」
「英知?」
妙だ、英知の様子がおかしい。
「天野友美さえ…居なければ…」
「おい、英知!?」
「ふふふ…そうですよ…そうですとも…」
「どうしたんだ!?おいっ!」
「殺してやる…」
「えっ…?」
 ダッ…
「英知!?」
英知が走り出す。
俺は慌てて英知を止め…
 ガシャッ…
…手錠によって阻まれた。
 ガチャンッ
ドアが閉まった音がした。
まさか英知の奴…天野を殺す気か!?
拙い、非常に拙い…
天野は一般人だ、英知ならその気になれば易々と殺せるだろう。
だが止めようにも俺には手錠が繋がっているのだ。
なんとか脱出するしかない…
俺は渾身の力を込めて手錠を引っ張る…
…が、その程度で壊れる訳が無かった。
ならベットの方を破壊するしかない。
俺は後転の要領で両足をベットに叩きつける…
 ガァンッ…
「秘技…逆半月蹴り」
…意外と頑丈だな、このベット。
何度か試すが…手錠もベットも破壊は不可能だった。
拙いな…完全に手詰まりだ。
俺にはこれ以外に脱出の方法は思い浮かばない。
手錠を破壊するか。
ベットを破壊するか。
…を破壊するか。
思いついた…たった一つだけ脱出の方法が…
正直あんまり使いたくは無かったが、他の方法を考えてる時間は無い…
それに天野の命には代えられない…
「即席秘技…手錠殺し」
682不撓家の食卓 次回予告 ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/13(木) 22:42:58 ID:CmGUeDR6
天野友美の決意は、不撓英知の決意が、
物語を終末へと駆り立てる。
次回、不撓家の食卓『幸せになるために(後編)』にご期待ください。
683不撓家の食卓 おまけ ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/13(木) 22:43:47 ID:CmGUeDR6
昔々、ある所に、小さな村が在りました。
その村には長い間日照りが続き、作物が次々と萎れていきました。
そんな時、その村に一人の巫女が現れました。
その巫女が祈れば雨が降り、巫女が踊れば作物が生き返りました。
人々は大変喜び、その巫女に感謝しました。
ところが、巫女が起こした奇跡は奇跡ではなく、陰陽術を利用した必然とも言える現象でした。
人々は怒り狂いました。
「この者は神を愚弄した」「八つ裂きにしろ」「生贄にしろ」
とうとう巫女は牢獄に入れられてしまいました。
可愛そうな巫女は処刑の日を待つばかりです。
そこに一人の武人が現れました。
武人は巫女に言いました。
「貴方ならここから逃げ出す事もできるでしょう、何故そうしないのですか?」
巫女は答えます。
「逃げる事はできても、一人も傷つけずに逃げる事はできません。
故郷の人を助けたいと願ってここに戻って来たのに、どうして村人達を傷つける事ができましょう」
武人はさらに言います。
「ここの村人は貴方に命を救われた、それなのにどうして村人によって貴方が殺されねばならないのですか」
すると武人は剣を引き抜き、見張りを殺して言いました。
「見張りを殺したのは私です。これなら貴方は一人も傷つけずに逃げられます」
巫女は武人と共に逃げ出しました。
怒った村人は追っ手を出し、二人を追いかけました。
武人は巫女を守るために、戦い、殺し、逃げました。
そしてとうとう二人は遠い隋の国まで渡ってしまいました。
それから二人がどうなったのかは誰も知りません。
武人は、村の人々からこう呼ばれていました。
『決して折れざる者』『不撓の者』と…
684シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/13(木) 22:46:29 ID:CmGUeDR6
第六話完成、過去最長でした…ド下手でごめんなさい。
急いで書いたので、多分誤字脱字があると思われます。
それとタイトルが長すぎると注意されたので、タイトルの一部を省略しました。
正しくは(不撓家の食卓 第六話『幸せになるために(前編)』)です。
とりあえず第七話は皆さんが私の存在を忘れた頃になると思います。
一応ストーリーは考えてあるので、打ち切りにだけはしません。
それでは皆さん、またお会いしましょう…
685名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 23:04:30 ID:hgpvmgmt
>>661
とうとうよーくん監禁か。麻耶タンがどうでるかな。
wktkして待ってます。
686名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 23:11:25 ID:t9ZMzGWG
何なんですか、この神様の多さはGJ
687小さな恋の物語の中の人:2006/04/13(木) 23:27:07 ID:CfX0NTZt
|ω・`)…




|ミ 
688名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 23:58:31 ID:FaXdh3LG
よーくんて意外と屑だよね
てゆうか三人の中でまともな恋愛感情持ってるのは胡桃だけっぽいな・・・

>>687
久しぶりに続きですか?
楽しみにしております
689名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 00:04:33 ID:UPBboDWT
>>688
手錠で拘束ってまとも、か?
690名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 00:10:19 ID:PTn+gfUM
>>689
このスレではデフォ
691名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 00:12:15 ID:tF7J926O
>>687
|ω・`) 楽しみにしてます

|ω●`)是非続きを お与え下さい!
692名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 00:22:10 ID:LRaaDz96
>>687

そう かんけいないね
ニアかんきんしてでも つづきをかかせる
かいてくれ たのむ!
693名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 00:28:57 ID:aie41Vq7
>>661
GJ!ついに監禁ktkr、しかし麻耶タンとのラブラブ学園性活が無くてサミシス(´・ω・`)

>>684
妹に食われてしまった勇気はどうする!そして天野の運命は!
修羅場は終わっちゃいないぜ、俺たちの戦いはこれからだ! ◆IOEDU1a3Bg先生の次回作にご期待下さい

これだけは勘弁なw

>>687
実は更新を楽しみにしている一人ですw
小学生高学年編が続くのか中学生編になるのかwktkして待っていますね
694名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 00:29:30 ID:YUtEm7QK
>>687
とりあえず、鎖で縛っておきましょう。
695義姉 第7回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/14(金) 01:00:29 ID:rQVpOcjn
        *        *        *
『智子』

 最近避けられている――
 それはきっと私と同じように恥ずかしがっているから、それとも何か勘違いしているから――そう思ってたし、そう思うようにしていた。
 でも、最近よく知らない先輩とよく一緒にいるのを見かける。
 お姉さんと思い安心した。
 でも昨日、襟首掴んで歩いてた別の人を「姉ちゃん」と言っていた。多分その人は士郎のお姉さんに間違いない。今日偶々廊下で見かけたとき名札で同じ姓だったのを確認した。
 じゃあ、あの先輩とはどういう関係なのだろう。
 仲良さそうだった。膝枕までしてもらって、多分親しい関係に違いない。もしお姉さんなら変な心配した、と胸を撫で下ろして終わり。でも、あの人は違う。ただの友達って雰囲気でもなかった――
 士郎は私が好きだから告白してくれたんだよね、私と同じ気持ちだから。
 でも、あの人は誰? 私より好きな人? 私なにか嫌われるような事でもしたのかな……

 臆病だ――
 自信がない――
 踏み出せない――
 聞けない――
 言えない――

 今、士郎は私の事どう思っているかわからない――
 そして聞くのが怖い。もし他に好きな人がいるって言われたら――

 士郎に近づくのが怖い。
 ――少し前まであんな一緒にいて、一緒にいたかったはずなのに。
696義姉 第7回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/14(金) 01:01:57 ID:rQVpOcjn
        *        *        *
『士郎』

 自分の部屋でゴロゴロしている。そろそろ寝ようかどうか考える時間帯だ。
 ――今日はモカさんにされるがままだった。
 自分って何でああいう時なんで強くでられないんだろう。
 でも膝枕なんてされたの何時以来だろう。確か婆ちゃんの家にいた頃、婆ちゃんにしてもらったぐらいかな。
 ――いや、他にも一度だけある。
 確か小六ぐらいだったか左手の骨が折れたことがあった。まあ右手じゃなかったのが不幸中の幸いで日常生活には少々不便な事はあったがそれ程困ることはなかった。
 しかし物凄く困ったことが一つ生じた――耳掻きだ。
 左手の指先までガチガチにギプスで固められていた。だから右手で耳掻きをつかい頑張って左耳を掻こうとするが上手くいかない。
 そんな光景を見て姉ちゃんが歯がゆく思ったらしく「かしなさい、私がやったげる!」と一言。
 嫌な予感がしたので素直に遠慮の言葉を発したが、それは意味なく「いいから、いいから」の言葉で頭を太ももの上に押さえつけられて力いっぱい耳掻きされた。
 左のついでに右耳も力いっぱい――

 ――嫌な予感は見事的中し、力加減なしで耳掻きしてくれたお陰で、しばらく耳が痛かった。


 そんな事を思い出していたら耳掻きしたくなってきた。
 耳掻きのあるリビングへと足を向けていた。

 リビングには姉ちゃんが寝ていた。
 それと缶の山――酒の。
 いくら親不在だからってこんなに堂々と未成年が飲むなよ。
 そう思いながらも一応は放っておけない。
「姉ちゃん、もう夏じゃないんだから、こんなところで寝ていたら風邪引くよ?」
 肩を揺さぶってみるが返事はない。
 困ったな。いくら女の子でも担いで二階まであがるのは面倒くさい。毛布とってくるか。
「――ごめん」
 なに? 姉ちゃんがオレに謝っている?
「……信じてなかった……全部……」
 しかも泣いている。こういう風に泣いている顔を見たのって初めてだ。
 でも、寝言か。
 なぜだか、そっと優しく頭を撫でてやりたくなった。
 ――でも、そんな事してて起きられたら半殺しの目に会うんだろうな。
 そんな考えが頭をよぎった為伸ばしかけた手を引っ込めた時を見計らった様に姉ちゃんは気だるそうに頭を動かした。
「……あんた、なんかしようとした?」ボソリと問いかけてくる。
 慌てて首を振って否定する。別にエッチなことをしようとしていた訳ではない。でも何故だか少し後ろめたいのものがあった。
 オレの方をつまらなさそうに見た後、ゆっくりと体を起こしていた――が動きが妖しい。真っ直ぐ立っていない、グネグネ揺れている。完全に酔っている。
 見ているこっちの方が不安になってくる。
 たまらず倒れかけた体を半ば無意識で受け止めていた。
 ――柔らかい体。女の体。
 最近強烈に意識し始めたそれだった。
「離しなさい――」
 こちらの僅かばかりかの下心を見透かした様な声で強がりとも警告とも取れる言葉を発していた。
「――あ、うん」
 慌てて体を離したら姉ちゃんはそのまま千鳥足でリビングを出て行った。
 怪しい動きを背後から姉ちゃんが自分の部屋に着くまで見送った。
「……何か私に言いたいことでもある?」自分の部屋のドアを開ける前、こちらには振り向かず尋ねてきた。
「――いや、別に」
 何と言いたいのだろう、本当は。

 ――もう寝よう。そう思い自分もベッドに入った。
 心にモヤモヤが残っていたが、最近あまり眠れてなかったせいか直ぐに瞼が重くなってきた。
 程よく深い眠りにはいりかけた頃、携帯から鳴る。これはメールじゃない、電話だ。
 もういいオレは寝る。そう思い携帯から発する音を無視し布団の中に潜り込んだ。
697義姉 第7回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/14(金) 01:02:56 ID:rQVpOcjn
        *        *        *
『モカ』

 ふっふー、士郎君の番号ゲット! 入手手段はどうあれゲットしたことには代わりないもんねー。
 自室のベッドでゴロゴロ転げまわってみる。あー、なんか幸せ気分。
 あー、随分昔から近くにいたのに何でもっと早く気づいて、早く手をつけなかったのかな私。

 さって、何て言って電話かけようかなー。
 『ちょっと話したかったから』
 『ちょっと声聞きたかったの』
 んー、友達以上恋人未満にかけるのには凄く微妙な気がする。
 いつも友達に何気なくかけている電話に理由と呼べるようなものなんて殆どないのに今は凄く理由がなくちゃいけない気がする。
 さりげなく、それでいてグッとくるようなかける理由。

 『この間付き合ってくれたお礼に今度は私が付き合ってあげるけど何処がいい?』

 これだ! これだよ!
 お礼を言っているようで、ついでに週末のデートの約束も取り付けれる一石二鳥。

 恐る恐るボタンを押し、単調な呼び出し音を聞きドキドキしながら待つ。
 あー! 呼び出し音ってこんなに長いのだっけ、早く出てよ。待ち遠しい。
 足が勝手にバタつく。

 ――散々待ったが出てくれなかった。
「もう寝ちゃったのかー」
 仕方ないから私も寝ようっと。
698義姉 第7回 ◆AuUbGwIC0s :2006/04/14(金) 01:03:38 ID:rQVpOcjn
<チラシの裏>

        ,,,,lllザ゙゙゙゚゙゙”゙゙゙゙゙Wi,,、
     .,,,rflll゙°        ゙゙N,,
    ,if゙`,,l゙               ゙ly
   ,l゙’  ’      ,、         ゙l,
  .,l゙    i    i丶 .l| il  'l,    .゙l,、
  .,l°   .l|   ll, _ l".l、 'li, .'l,   .゙l
  .l°   l"ll  .,l.ll.l| .l| .l|  l!li. ll   .'l、
  l\   ll l,  l .゙lll, .゙l,.゙l、 l .ll .lll、.,、li、
  .l,    'l l, .illl゙゙゙゙lllll,,ll,.!、.,l" ll,.l.li、,l゜ ゙i、
  ll    li、llll, .l|,,,,,,,,,__.゙!゙l、'゙ .,i,-,゙lll゙,l° .l
  .'i、 .,,,,,.l、li,゚゙!llxl" ,i    .゙!l,,,l!i゙.ll`  ll
   'l,  ll`゚゙゙l, .lll,,,゙゙゙''~~     .,,ll,ll|  .l′
   l, .゙l,, .ll, ゙llllllll,,  __,,,,,,,, '゙゙゙,,l  .,l
   'li、 .゙!leill, 'l,  `  ll” ̄,,l" ,,ll゚il、,,l°
    ll    'll, !,,,,,、  ゚~ ''゙,,,ill'゙` 'll,
    .ll   ,,l゙.ll,.゙l,,゙゙゙llllwilllllll″    ┓
    ll ll ,ll°.'ll, ゙'!l,,,_゙゙llll゙`'゙l,,    'll,
    ,l',l.,ll°  .'ly.゙l,,.゚゙ll゜ ゙ll .゙┓   'll,
    .ll゙.ll゙'N,   ゙l, .゙l,,.ll  ll  ,,ll,,   .ll
     .″ .゙゙%,、 ll  ゙lil  .l .,lケ '゙l,   .l′
         ゙N,,,l`  .゙ll, l,,,l゙`  .゙ll,  ,,l゜
          `    ゙l,,ll゙    .ll,ll゙’
触発されオートトレーサー使ったがあまり上手くいかなかった姉ちゃん。
ひそかに元画像は自分の携帯待ちうけ画面に使ってたりする。
</チラシの裏>
699名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 01:10:51 ID:InECTuEg
相変わらずモカさんかわいいなぁ。
700名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 01:35:25 ID:rgPowG1v
あ・・・久しぶり、>>687
ほんと、久しぶりだね・・・
ねえ・・・なんで?
なんで、続き書いてくれないの>>687
わたしずっとおとなしく、待ってるんだよ・・・
きっと続き書いてくれるって信じてるんだよ
きっとまた来てくれると思って

ずっとスレ住人はいい子にしてたんだ
もしかしてわたしが何かいけないことしたのかなと思って
いっしょうけんめいキボンヌレスしたし
もしかしてあの女が邪魔でこられないのかなと思って
いっしょうけんめいお片づけしたし
もしかしてかみさまが見てるのかなと思って
いっしょうけんめいお供えしてお祈りもしたし
ずっとスレ住人はいい子にしてたんだ

それなのにまた、>>687君はどこかにいっちゃうんだ
そうなんだ・・・
そうなんだ・・・
701小さな恋の物語:2006/04/14(金) 02:27:43 ID:aUcE06By
綾姉ちゃんは笑顔で挨拶してる
奈菜ちゃんも笑ってる

なのに何故か僕のお腹は冷たい牛乳を飲んだ時のようにひんやりとして
頭の後ろのほうがチクチクとしている

「さぁ誠、宿題なら家に帰ってから私が教えてやろう。お友達に迷惑をかけたら嫌われてしまうからな」

そういって綾姉ちゃんは僕の手をぎゅっと握った
綾姉ちゃんの掌は温かい
温かくてじんわりと掌が汗ばんできた

「誠クン、私全然迷惑だなんて思ってないよ?家でおやつ食べながら一緒に宿題しましょ。ね?」

奈菜ちゃんの掌はヒヤッとして気持ちがいい
肘の裏にピリッと電気が走るような冷たさが脇の下を通って背中がゾクッとした
そのゾクッとした感覚が綾姉ちゃんの掌の温かさをなおさら意識させた

僕のお腹がカキ氷を食べたときみたいにキュウッと縮まって
頭の後ろがズキズキと音を立ている感じになってきた
この感覚はなんだろう?

学校の宿題を忘れたときの僕
給食にキライな物がでたときの僕

ちょっと違う気がする

綾姉ちゃんと霞姉ちゃんのどっちの隣に座ろうか考えてるときの僕
夜中に目が覚めたときにどちらに寝返りを打つかちょっとだけ考える僕

なんとなく近い気がする

綾姉ちゃんが僕を抱っこしてる霞姉ちゃんを見つけたとき
霞姉ちゃんが僕のほっぺたに付いたご飯粒を食べた綾姉ちゃんを見たとき

ものすごく近い気がする

でも今の綾姉ちゃんと奈菜ちゃんにはそれ以上の何かを感じる

コレはなんだろう?

右手の温かいが熱いに変わって頭の後ろのズキズキと混ざってきた
左手のヒンヤリが冷たいに変わってお腹のキュウッとした感覚と混ざってきた

その二つが僕の首の後ろの方で互いをじっと睨み合ってる感じがする

僕はコレの名前をしらない

コレは一体なんて言うんだろう?
702小さな恋の物語の中の人:2006/04/14(金) 02:29:38 ID:aUcE06By
|ω・`)

今年の目標

1スレ1話

|ミ
703名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 03:54:07 ID:FwbxTzM3
神が多すぎです!GJ!
とりあえず洋平は死んだ方がいいと思う。胡桃は麻耶と洋平のいたしてるところを
見ていたのかと思うと、これからの展開へのワクテカがとまりませぬ。
704名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 03:59:35 ID:TKWFcy5H
>>702
3週間に一度って感じですかw
705名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 10:17:42 ID:tF7J926O
小さな(ry グッジョブ
これはすべての作品に感謝の意を表明するために感想を書いて
地味にスレの進行を進めるしか(マテ
706名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 11:07:29 ID:vdf3WHer
このスレは一体どうなってんだ!!
毎日神が降臨してんぞ!!

皆様GJ!!
707名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 11:28:16 ID:imljqJUr
小さな恋の物語の中の人は富樫病になってしまったのか ・゚・(ノД`)・゚・
708名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 18:18:09 ID:uRi2LYxk
なんかこのスレは主人公に対するハードルが高いなぁ・・・。
よーくんは結構いい奴だと思うんだが
709名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 18:20:19 ID:I0qMIPpf
一瞬、「1レス1話」に見えてしまった。
710名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 18:38:48 ID:dGKIZnEw
真摯に話し合って関係を清算しようとするあたり、
よーくんは稀に見る誠実主人公だと思う。

だが相手があまりに悪い、悪すぎる・・・・・・
711名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 19:11:53 ID:42lCneQQ
主人公のヘタレは修羅場形成にある程度必要だから、むしろハードルは低めだと思うよ。
主人公に完全無欠・人格高潔を要求する人もいるだろうが、たぶんごく少数。

ほぼ満場一致で「死」を期待されたのは、ゆう君ぐらいなもんだw
712名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 19:14:02 ID:2oFfnbG1
>710禿堂
漏れもよー君は良いヤツだと思う
だから出来たら麻耶タンとハッピーになって欲しい

ラストで扉の鍵をあける音がした辺りからドキドキしっぱなし
手錠の字が見えた瞬間マジで叫んだ
寺壊すどころの騒ぎじゃねぇっての!
713名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 19:14:55 ID:3lmgW0MO
>>711
あのエンドで誰にも同情されなかったゆう君はある意味伝説に。
714名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 19:35:53 ID:85XDO1Hh
天野さんと荒木さんがダブって見えるのは俺だけではないはず

名前も似てるもの
715名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 20:06:00 ID:r3LRIzfU
不撓家における貧乳キャラは英知が既に陣取っているから
天野さんはもっと乳あるとおもうよ
716シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/14(金) 20:38:13 ID:QHGch26m
>>175
つ身長149cm 体重39kg B67W48H71
英知は未定…
717シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/04/14(金) 20:40:01 ID:QHGch26m
間違えた…orz
>>175ではなく、>>715です。
718名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 21:35:39 ID:rgPowG1v
いや、よーくんと麻耶タンは共依存のダメ人間だろ
胡桃は執着心が強いものの、恋愛の範疇に入るからまだまとも
ゆえに、よーくんは胡桃とくっついてシアワセに
719名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 21:48:22 ID:VKDsgKiJ
共依存もきっとひとつの愛のかたちですよ!

そんな風に考えていた時期が俺にもありました
720名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 22:04:24 ID:jwEwsYxh
よーくんと麻耶たんのカップルが上手くいってほしいです。

そしてモカたん頑張れ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
721名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 22:27:34 ID:Rh+9etXT
よーくんと麻耶たんのカップルはお似合いだと思うのは俺だけではないだろう
722名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 22:44:43 ID:6GpBzCKv
おまえら職人様に任せるんだ
723名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 23:12:01 ID:qLlP3CUe
>>720
同志よ!
724名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 23:29:54 ID:pccdMXgi
問題は次スレのタイトルか 


やっぱり、 五体不満足しかないだろwwwwww
725名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 23:48:56 ID:RMSjRvHP
>>724
そのタイトルはあまり好きじゃないから俺は>>625のに一票
726名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 23:52:55 ID:wFRf9dOr
五右衛門風呂
727名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 00:03:27 ID:wFRf9dOr
goo辞書で「五」から始まる単語598件全部調べてみたけど、
「五里霧中」が一番わかりやすくていいかも試練。
728名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 00:06:16 ID:Hz45kaCM
次スレのタイトルは、五里霧中(意味:途方にくれること)でいかがでしょうか?
729名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 00:08:19 ID:CoRGKgoG
ううん、まあいいんじゃ・・・ないかな?
730名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 00:26:18 ID:3lnlNsBa
もう立てていいんじゃないか?
スレ立てられる方宣言お願いします
731名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 02:34:57 ID:xeNoICti
>>730
では自分が立ててきます。
732731:2006/04/15(土) 02:42:28 ID:xeNoICti
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 五里霧中
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1145036205/

立ててきました。

……さよなら、四面楚歌スレ。
もう俺には五里霧中スレがいるから、残り20kb切った君が無理をする必要なんてないんだよ。
だから安心しておやすみ。
733埋めネタ:2006/04/15(土) 04:19:53 ID:sYX0/cF3
アナタ。お疲れでしょう。
お食事にします?お風呂にします?それとも、あ・た・し・?
……え?いつもと様子が違うって?
おほほほほほほほ…

そ れ を ア ナ タ が 言 い ま す か ?

今日は随分と書き込むのが遅かったみたいですけど……。
何処のスレを巡回して来たんです?
新しいスレでも立ててきたんじゃないんですか?
え、そんなことはない?
おほほほほほほほ…

 嘘 だ っ ! !

……誤魔化したって駄目ですよ。
アナタの態度、数レス前のリンク、その色が紫色で、何より残りバイト数……。
どれもが新レスの存在を漂わせてるじゃありませんか。
まさかと思いますが……よもや、新スレの方にレスなんてしてませんよね?
ええ、そうでしょうとも、そうでしょうとも。
アナタのことを愛してますよ。愛してるから……全てが欲しいんです。
最期の最期、一字一句、AAの右下、最終行の空白までアナタと添い遂げるのが私の望み。
そうして、妻としてスレの寿命をまっとうするつもりです。
だから、私は決してアナタを裏切りませんし。
……裏切ることも許しません。絶対に。
言いたいことはそれだけです。

……あ、まだ言ってなかったですね。
おかえりなさい、名無しさん。
734もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/04/15(土) 06:00:44 ID:WwD0H74K
埋めネタ。
純也と母親のお話です
嫉妬はありませんが、気が向いたら読んでやって下さい。


「この人がこれから純也の母親になってくれる人だ」
僕が小学5年生になってすぐ、お父さんが女の人を家に連れてきた。
「はじめまして、純也くん」
女の人がにこやかな笑顔で僕に挨拶する。
「ホラ、純也も挨拶しなさい」
「……はじめまして」
お父さんが少し怒ったような口調で言うから仕方なく僕も挨拶した。
僕には本当のお母さんがいない。僕が小さいころに離婚しちゃったから。
だから、僕は本当のお母さんの事をあまりよく知らない。
でも、やっぱりお母さんはお母さんだ。この人をお母さんとは思えない。
僕がしばらくブスッとしていると、その女の人の後ろに誰かいる事に気付いた。
「あらっ、この娘が気になるの?ふふふ」
「ああ、その娘の名前は茜。今日から純也の妹になるんだぞ」
妹……。僕に?
嬉しいけど少し恥ずかしい。今までずっと一人だったから
僕が少し照れている間に女の人が茜ちゃんの方に振り向き何やら手を動かしている。
何してるんだろう?
女の人が手を動かし終わると、茜ちゃんが僕の前にでてきておじぎをした。
そしてすぐに女の人の後ろに隠れてしまった。
??何?新手のギャグ?
僕が少し混乱していると
「ごめんなさいねぇ。この娘は少し恥ずかしがりやさんだから」
女の人がその娘の事を説明してくれた。
そうか、少し恥ずかしがりやか。でも少しじゃない気が……。
「純也。実はな、その娘は耳が聞こえないんだ。だからなうまく喋れないんだ」
耳が聞こえないのか……。何かかわいそうだなぁ。
でも、耳が聞こえないと何でうまく喋れないの?
耳と口は別だよ?
僕が少し不思議そうな顔をしているとお父さんもそれを感じとったのか理由を説明してくれた。
「純也が喋るとき自分の声が聞こえるだろう?だけど耳が聞こえないと自分の声すらも聞こえないんだ。すると純也ならどうなると思う?」
735外伝「星を見てれば」 ◆CWcv3gVh3I :2006/04/15(土) 06:07:11 ID:WwD0H74K
そうか、自分の声も聞こえないのか。とすると
「自分が何を喋っているか分からなくなる。……あっ、そうか」
なるほどね〜。そういう事か。
僕が分かったような顔をしていると
ポンと、頭の上に手が置かれる。これはお父さんの癖で何時でも何処でもやってくる。
まぁ、嫌じゃないけどね。
でも、人前でやるな!恥ずかしい!!
僕はお父さんの手を払い除けた。
一瞬頭が軽くなるが再びお父さんが手を乗っけてきた。
僕はお父さんの手を払い除ける。
お父さんが手を乗っける。
僕はお父さんの手を払い除ける。
お父さんが手を乗っける。
……………。

こんなやりとりが数回続いた。
何だかおかしくなって、いつのまにか僕は笑っていた。見上げるとお父さんも笑っている。
あの人も笑っている。
茜ちゃんも笑っている

しばらく四人の笑い声が玄関をつつんでいた。

僕が俺に変わってどのくらいたっただろう?
俺が中2、茜が中1の時親父が急死した。
親父は会社で急に倒れ、急いで病院に運ばれたらしいが間に合わず息を引き取ったらしい。
授業中に芳恵さん(あの人の名前。すごく優しい人だけど、"母さん"と呼ぶのにはまだ抵抗があった)から電話があり俺はその事を知った。
最初は冗談だと思った。それでも芳恵さんが泣きながら話してくるから信じざるを得なかった。
何かドラマの主役みたいだな。当時は本気でそう思った。
きっと心の奥底では信じてなかったんだと思う。だって今朝、あんなに元気だったんだぜ?



俺と茜が病院に着く頃には親戚もチラホラと集まり始めていた。
その内の一人。俺の従兄弟から病室を聞き出すと、俺と茜は急いで親父の元に向かった。


病室では親父が眠っていた。眠っているようにしか見えなかった。
そっと親父の頬に手を触れてみる。
冷たい。親父の体から体温を感じる事ができなかった。

親父は死んだんだ。
この時初めて親父の死を認識した。
736外伝「星を見てれば」 ◆CWcv3gVh3I :2006/04/15(土) 06:11:43 ID:WwD0H74K
俺と茜が病院に着く頃には親戚もチラホラと集まり始めていた。
その内の一人。俺の従兄弟から病室を聞き出す。
俺と茜は急いで親父の元に向かった。


病室では親父が眠っていた。眠っているようにしか見えなかった。
そっと親父の頬に手を触れてみる。
冷たい。親父の体から体温を感じる事ができなかった。

親父は死んだんだ。
初めて親父の死を認識した。






葬式の席、俺に悲しんでいる暇はなかった。
芳恵さんもそうだが、何より茜がありえないほど気が動転していて慰めるだけで精一杯だったからだ。
茜は親父に本当によくなついていた。俺とは違い茜は本当のだとか義理だとか関係なく親父を父親として見れていた。
それは俺にはできなかった事。
そんな茜が少し羨ましかった。

……俺は芳恵さんが死んだ時あれほど悲しめるだろうか?
……いや、無理だ。俺はまだ芳恵さんの事を"母さん"とよべてない。
まだ、義理と言う言葉にこだわっているから……。



葬式も終わり、人も減った。
俺はボンヤリと来賓席に座り空をあおいでいた。
空には無数の星が散らばっていた。
そう言えば俺が子供の頃、親父がよく言ってたな。人は死んだら夜空の星になるって……。
なぁ、親父はどれだい?

トントン。
俺の空想を吹き飛ばし、現実へと連れ戻す手が俺の肩を叩いた。
振り向くと化粧の濃い、葬式の場には不釣り合いな格好をしたオバハンが立っていた。
「もしかして、純也?」
「ハァ、そうですけど。あなたは誰ですか?」
737外伝「星を見てれば」 ◆CWcv3gVh3I :2006/04/15(土) 06:18:27 ID:WwD0H74K

「あ、そうか。あなたは私の事を知らなかったのね?実は私があなたの母親なのよ。いや〜、嬉しいわあなたに会えて」
俺の母親を名乗る女はひどく楽しそうに話しかけてくる。
何だコイツ?キャッキャキャッキャはしゃぎやがって。人が死んだんだぞ?俺の親父が死んだんだぞ?
俺はキッと母親を睨んだ。
「あ、明後日予定あいてるかしら?あいてる?そう、じゃ一緒に食事しましょう。駅前のダ・ヴィンチで待ってるわ。それじゃ私行くから明後日会いましょう。時間は6時ね」
俺の事を無視して、言いたい事だけ言うと母親はサッサとどこかに行ってしまった。




それから2日後、俺と母親はレストランで食事を取っていた。
「どう?学校は楽しい?」
俺がスパゲティを食べていると母親が尋ねてきた。
「えぇ、楽しいですよ」
「そう、それは良かった。あの男にあなたを任せてからは心配で心配で」
あの男って親父のことか?
自分の顔が引きつっていくのがはっきりと分かる。
この人は何様のつもりだ?あんたは一度も俺に会いに来てくれなかっただろ!?
そんな俺の思惑もおかまいなしに母親は次々と言葉を紡ぐ。
「聞いてくれる?あの男ってヒドイのよ。酒は浴びるように飲むし、金つがいもあらい。それにね……」
これ以上は耐えられなかった。
「すいません。ちょっとトイレに行ってきます」
俺は少し強引に席をたつ。母親が何か言っているが全てききながした。
そして、俺はトイレに行くと見せかけてそのまま出口へと向かった。
出口の前。俺は一度母親の方を振り返る。
母親は夢中で携帯でメールをしていた。
……もう会うこともないだろう。だけど未練はなかった。
738外伝「星を見てれば」 ◆CWcv3gVh3I :2006/04/15(土) 06:22:42 ID:WwD0H74K
満面の星空の下、俺は家へと歩を進めていた。
ふと家の近くの公園に立ち寄り、ボンヤリと空をあおぎながら今日の出来事を考えていた。
……なぁ母さん、親父はあんたの悪口を一度も言わなかったよ。



家に着くと茜が出迎えてくれた。
俺が母親の元に行ってしまうんじゃないかと本気で心配していたらしい。
可愛いいやつだ。
俺は茜の頭をポンと叩くと芳恵さんの方へ向かった。
居間を抜けた台所に芳恵さんはいた。
芳恵さんは俺に気付き少しぎこちない笑顔を向けてくる。芳恵さんまで俺が母親の元に行ってしまうと思ってたみたいだ。
やっぱり親子なんだな。ははは、何か少しおかしい。
俺は笑いをこらえゆっくりと口を開けた。
「今までありがとう」
そして………


「これからもよろしく。母さん」











以上、スレ汚しすいませんでした
739名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 09:33:06 ID:Yw5PD4UI
ちょっと、泣いたじゃねーかよぅ…。
740名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 13:03:42 ID:v4KErUNK
えぇ話や・・・( ;∀;)
741名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 14:11:08 ID:xCe1VpVD
あれ?おかしいな、目から汗が ・゚・(ノД`)・゚・
742名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 15:01:27 ID:Xum+xHW6
ちょっと目から青春汁が…
743名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 16:04:59 ID:Nr8rzrUf
あ、あれ?俺、花粉症にでもなったのかな?グスッ
744名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 16:16:25 ID:Y7C2DGPL
正直読み始めた時は純也の母ちゃんへの恋心を書いてるのでは?とwktkしてた俺。
745名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 17:32:23 ID:+BfyATFB
(つ Д`)・。・゜
本来は修羅場を作るような主人公じゃないんだろうな
しかし相手が(ry
746名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 19:35:06 ID:mHUC23Dr
息子達が修羅場ってる裏で純也を巡って修羅場っている芳恵さんと実母。
747名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 19:47:16 ID:QpXorZXs
>>746
それだ!!
748名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 19:55:55 ID:VhwRRgZy
>>747
それだ、じゃねぇw
749名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 23:11:34 ID:hoF11qUY
優柔の主人公よりは100倍いい
750名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 07:45:20 ID:aXf2ln5Q
>>749
0に何かけても0にしかならないよ?
751名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 07:54:30 ID:fLTkhwrs
マイナスに100かけると更にひどくなるからなぁ。
752名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 14:48:33 ID:+7hAFvMN
>>749
>>750
>>751
ゆう君の人望はすばらしいよね。
とりあえず、ゆう君は虚数ってことで。
753名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 19:18:42 ID:K4wnw4O8
>>752
そこに愛をかけても生まれるのはー1。
754名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 19:45:04 ID:9mfgONZ0
>>752-753
誰がうまいことを言えといったんだ
755名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 20:04:21 ID:kPR/YfrY
いやいや、極限ですよ
行き着く先は収束……そう、死あるのみ
756名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 23:28:29 ID:0uKkiOTn
>611,698
( Д )  ゜    ゜
AAになってる……!?
そして待ち受けって!光栄というか畏れ多すぎてもう平伏すしか……

埋め立てついでに。
ttp://uploaders.ddo.jp/upload/500k2/src/1145197023820.jpg
姉ちゃんの乳のボリュームアップを図ろうとしたところ士郎の頭で隠れてしまいました。
757名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 23:41:33 ID:W2T/N7y9
>>756
( Д )  ゜    ゜
GJGJGJGJ!!!!!!!!
758名無しさん@ピンキー:2006/04/17(月) 01:15:35 ID:EjdRVMH9
色付きもたまらんなあ。それにつけてもGJです。次も期待してますぜ。
759名無しさん@ピンキー:2006/04/17(月) 01:53:35 ID:/nazQVIO
>>753
負の愛なら1になるわけかw

>>756
士郎並のヘタレになってもいいから姉ちゃんになってくれ。
あとモカさんも一緒に!!!!!!
760優柔の・・・  ◆I3oq5KsoMI :2006/04/19(水) 21:26:05 ID:grnusKyN
埋めネタ
当初考えていた6つのエンドのうちの、残り3つを。

・先輩妊娠エンド。ゆう君に別れを切り出されたが、押し込めていた感情が爆発して逆レイプ。
一旦は身を引くが、約1年後に2人の前に女の子の赤ちゃんを連れた先輩が・・・

・椿ちゃん自殺エンドその1。ゆう君に捨てられた椿ちゃんは、先輩を絞殺。
その後、駅のホームで先輩を待っていると、椿ちゃんから電話が。
「私のこと・・・忘れないでね」
向かいのホームには、線路に飛び込んだ椿ちゃんがいた・・・

・椿ちゃん自殺エンドその2。ゆう君に捨てられた椿ちゃんは、ゆう君を拘束。
やり直して欲しいとお願いするが、ゆう君にその気はない。
それを嘆いた椿ちゃんは、動けないゆう君の前で、自分の喉にナイフを突き刺す。
かつて愛した人の壮絶な死に、返り血を浴びたゆう君の精神は崩壊していく・・・
761名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 22:21:36 ID:EalgipZ3
ちょwハッピーなのが一つもないwww
762名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 22:29:50 ID:OpdJakfo
>>761
何言っているんだチミは。
一つ目なんてお父さん、お母さんになるという生物として本能レベルで仕込まれている極上の喜びじゃないか。
二つ目と三つ目なんて相手の心の中で永久に生き続ける超純愛だぜ?
763名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 00:30:22 ID:s7yuT9TG
>約1年後に2人の前に女の子の赤ちゃんを連れた先輩が・・・

第二章の始まりですね。当然続k(ry
764名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 02:46:56 ID:CwqwHnaF
先輩とのグッドエンドもハーレムエンドもないなんて……!


まぁ、ゆうくんだしね。自業自得だよ
765名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 09:00:24 ID:etkiSUaq
>>760
先輩妊娠エンド激しく見たいであります
766名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 10:33:49 ID:p2cqHGag
しかし
ゆう君を殺して楽にしてあげる
というのがどこにもないとは…w
767名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 16:38:41 ID:KukGzdOM
そして生まれた娘が超ファザコンで母(先輩)に嫉妬しまくるとかきぼんぬ
768名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 12:30:27 ID:Nw2WYI8O
ふと思った。
ゆう君は女性化させちまうと結構言い感じじゃないか?
こちらの態度次第でSにもMにもなる床上手。
769名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 21:42:14 ID:BTfGjYhU
それ、スクイズで考えた事あったよ
770名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 22:42:39 ID:9CT77kze
>>769
まあTS嗜好でスクイズ知ってれば一度は考えるよな。

誠はいつも通学電車で同じ車輌に乗り合わせる桂君(学年一の美男子で、女子は牽制しあい男子は疎むため孤独)
に惹かれ、密かに彼を撮り待ち受けにして流行りのオマジナイを実行する。
しかし開始当日に行われた席替えで隣りの席となった西園寺(密かに誠を狙っている)
に盗み見され凹んでいたところ、西園寺が桂君との仲を取り持つと提案してくる。
西園寺経由で親しくなった誠は桂君と一緒に昼食をとる(誠がお弁当作ってきたりもするのだろう)
ようになり、遂には勇気を振り絞って告白しデートの約束を取り付ける。
夕暮れの駅のホームで桂君と待ち合わせる誠だったが、西園寺の不意打ちでファーストキスを奪われてしまう。

第一話 告白
ED Still I Love You 〜みつめるよりは幸せ〜
771名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 23:28:58 ID:dRebfzDO
>>770
フムン――ところで西園寺さんかね?西園寺君かね?
某の脳内においては西園寺さんは軽い女性恐怖症であった桂君にぐいぐい近づいていった結果、
桂君は西園寺さんに好意を抱きつつも、元々意中の人であった真琴の好意を断れず付き合うことになるが、
ある日とうとう抑えきれなくなった自分の本当の気持ちを西園寺さんに伝えにいくが、
西園寺さんは真性レズで、しかもターゲットは真琴で――
772名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 23:34:38 ID:G8PZfp0o
あれは桂君では無くて、言葉様だろうが
773名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 23:53:46 ID:9CT77kze
>>771
分岐無しで強制的にヒロインのファーストキスを奪う男の存在というのは嫌なものがあるよな。
まあ、男でも女でも好きなように妄想すればいいとは思うが。
第二話ではファーストキス喪失から立ち直れない誠が、読書家の桂君に話題を合わせられずに距離を感じたりするのか。
…分岐次第で誠の性格かなり変わりそうだ。

しかし誠が女だと誠の父母の離婚の原因は
「止が誠に手を出そうとしたのが伊藤母にばれた」
とかになるんかね。
伊藤姉妹は仲良いんだろうけど。
774名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 19:14:16 ID:MYC0Zf0a
だが、何もしないでおくと刹那君とのデキ婚になるのは譲れん。
775名無しさん@ピンキー:2006/04/23(日) 19:32:09 ID:CiwTemkL
>>773
HAHAHAHAHA!
少女漫画じゃ強引なファーストキスは定石さ!
ズキューンってなHAHAHAHAHA!
776危険な男 第3回 ◆AuUbGwIC0s
埋めに

 最近、少し困ったことがある。実質的な問題はなにもない。気にするなと言われて気にすることをやめれたら何の問題も無い程度の小さな問題だけど。
 ここのところ同じクラスの女の子に睨まれ続けられている。最初は気のせいぐらいに思っていたが教室を出るときもずっとついてくる。さすがにトイレの中までつけてくるってことはないけど――
 名前を知っている。少し話したことがある。同じクラス。その程度、友人というよりただの顔見知りってレベルの関係。
 聖人君子として育ってきた訳ではないが特別人から恨まれるようなことをした覚えもない。もちろん彼女に何かした覚えもない。した事といえば消しゴム拾ってもらってりノート貸して上げたりしたぐらいの極々日常的な行動のみ、何をどうやったら恨まれるのかわからない。
 尚現在、自分は図書館で本を読んでいるが今斜め後ろに彼女がいる。自分の背中に目はついていないが、きっと彼女は本を広げていてはいても目はこっちに向いているのに違いない。
 ついさっき食堂で相席を頼まれた時何か言われるのかなと思ったが彼女は何も言ってこなかった。だから自分も彼女を無視し目の前の友人と話し込んだ。
 ひょっとしたら自分が気にしすぎているだけなのかもしれない――でも気になる。
 ちゃんと話してみれば解決するようなものかもしれない。そう思い席を立ち後ろを向くと彼女は慌てて目線を本へと移していた。
 「何読んでいるの?」とかさりげない会話から始めてみよう。そう思い彼女の隣に立ち話しかけ始めた所で彼女は急に立ち上がり小走りで図書館を出て行った。
 追いかけちゃ――マズイかな?

 一人悶々と悩んでいた帰り道で、都合よく中学時代からの友達と合流した。
 自分一人で考えていても解決できそうにない。そこで彼女に昼一緒に食堂にいた女の子から嫌われていると相談してみた。
 そうすると彼女は笑いながら「その子と遊びに行ったら解決すると思うよ」と言って僕の背中を強く叩いた。
 遊びに行く? でも何か嫌われているっぽいんですけど僕。