嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 三角関係

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1名無しさん@ピンキー
浅いものはツンツンしたり、みたいな可愛いラブコメチックなヤキモチから
深いものは好きな人を独占して寵愛する為に周囲の邪魔者を抹殺する、
みたいなハードな修羅場まで、
醜くも美しい嫉妬を描いた修羅場のあるSS及び、
他様々な展開の修羅場プロット・妄想を扱うスレです。

■前スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 二股目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1140208433/
■過去スレ
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1137914849/

2ch 「嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ」まとめサイト
http://dorobouneko.web.fc2.com/index.html
■関連スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第11章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1139807187/
■姉妹スレ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレinラ板
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1132666398/
2名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 00:50:47 ID:5l7Rr3KJ

        _ ,. --  、.
     , ' ´       ` 、
.   /        /::..   \
   /    .:/  :/ :/i: i::ヽ \.`.、
  ./  :.,: : :/ :/ :/ :::/i:.i:.|"ヽ.ヽ: :ヽ ヽ.
  l  :/ ::/ :/ :/ :::/ |:i|:.| _|:.i: iヽ:ヽ i
  | / /: : i: i :_;.斗- //iノ´ __|:.i: i ハハi
. レ |: :i :|: レi |;/__ /' / rテト/|:.ハ| リ
 /  i: ハ.:| | レチ乏.    ヒュリ .レ: |
/ / :ヽ|: リ レ^ヒこリ     ̄`} :├ァ‐:.-...
/./ : : i: :ヽ ト、 ̄´   `  ,.イ :.i:ヽ.´ノ:./^  、
:/ : : : i: : : ヽ}` 、   `´,.ィ'ァ | :.i: : \ノ、    `  、
 :: : : :i: : : : :|   ` Tニ_i  ̄:ト---r‐': : : \      ` 、
. :: :i : :i: : :/      __ ̄|  ̄ ̄`ー‐┴‐"‐、      \
. :: i : :レく  ー‐‐-  ´   ヽ. ,         ` ー    ヽ
. :: :i : /  \          V___________ノ
. :: i: :.|    \_______//\|: : : /i|
. :: i: :.|    `Vrく__)くフくフフソ   \:/ iハ
. :: i: :.|     |    ̄  ̄ ̄「i     .} i ヽ
. :: i: :∧.    |        i     ...::| ノ  ヽ.
. :: i: :. :ハ    |:...    ..:.:.. i:: : ::::::::::イ     \
. :: i: :. :ハ    i::::::::::::::::::::.ノ.i.::i:::_/: :|       \
. :: i: :. : ハ    ト::::::::::::/    |: : : : l
. :: i: :. : : :ハ    l         |: : : : :l


新スレです。楽しく使ってね。仲良く使ってね。
3名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 00:57:54 ID:5l7Rr3KJ
誘導用
【3P】ハーレムな小説を書くスレ【二股】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1115014616/l50
寝取り・寝取られ総合スレ 2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1133346643/l50
4名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 01:04:06 ID:/1slwOuC
>>1
 ( ゚Д゚)っ  乙ならあるぜ
  ( つ 2/

  ( 。_。)っ
  ( つ 2/

  (゚д゚ )っ
  ( つ 2/

  ( ゚д゚)っ
  ( つ 2/

  ( ゚д゚ )っ
  ( つ 2/
5名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 01:04:32 ID:emUXOWdA
6名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 01:19:39 ID:bxFk9YWH
>>1

後は良質な修羅場が今スレも提供される事を作者様方と神もとい言葉様に祈るだけだな。
7名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 02:49:28 ID:IxE1tx4N
>>1
乙→>>1の幼馴染みに見つかる→×××
8名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 04:28:38 ID:UJkxnMxp

藍子と楓と胡桃の大活躍に激しく期待。

にしてもここの前スレ見つけてから、パソコン起動させる度に
ここを覗いてるな俺。
9名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 04:30:42 ID:4U+HZ0wb
938 名前:\         . '´/ ,、ヽ キャハハハ  ../無したちの午後 [s
女の同僚か \   ___.i (ノノ"))i     ./人きりで生きてきた。
「貴方に兄の何\...{l,、,、,、,、l|l=i l| "ヮノlOi!  /
まぁ、その妹にハ.\;     リ⊂)允iソ  /全にお母さん気取り。だが
             \*  ..(( く/_lj〉)./弟が彼女を連れて来る。表情
939 名前: 名無したち...\∧∧∧∧/・ちゃぶ台の下――握った拳に
貴方が妹さんを引き受...< .の 修 .>・「明日の弁当、彼女が作った
943 名前: 名無したちの< .    .>・「もう○○ちゃんにお姉ちゃんは
いや、>>938が同僚の旦< 予 羅 .>・最近の日記は、「あの泥棒猫」
──────────<   .  >─────────────
|ヽ| | l、 レf爪| 、   | < 感 .場 .>  | | |   ::| !|: l l:..  :|:l:.  !:|::   |
ヽ_ゝ|、 Fこ|_-|、 !、  ...|< .!!!!   ..>‐:十!1「: :l:::「|`|十l―l‐!:-/-!:: :  :.l
/r->ヽy‐ィ;;;;::Tヽ \  .|/∨∨∨∨\ 示:.l:|::::::!l::l |::l示tッ〒ト/:.l/::::::: :.l
| |/个iヽ┴―┴   .../したちの午後..\l:.:l|、:::|:|:!:j/.:.`ニニ´:/:. /|::::::: .::.!
ヽ/汚| !       /に対する嫉妬に狂.\  ヽ|i    :.:.:.:.:.:.:. /ノ!:::::::.:::l
ハ.||、 i      /名無したちの午後 投稿.\ :l        /'!:::!:::::i|::::|
|  || |i ヽ   /そこにヒロインが壊れるあまり\       ..:/:::|:::|:::::l:l:::.!
|  || ! ヘ 、.../被害を出し始めて、自分に責任が...\.:.:.:/:.:.`ヽ!:::::!:!::.|


皆仲良く。修羅場は妄想の中だけにしましょう。

10名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 06:31:59 ID:M/yH09pc
合鍵の藍子たんが、再逆襲できる
展開があるならば、どんな手段を
使ってくるのか楽しみ。
11名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 10:18:08 ID:+ZNJ5jA6
漏れはこのままサキさん逃げ切りでおk!
12名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 11:28:43 ID:7opqu/sN
>>11
それはいくらなんでも藍子たんがかわいそう。
10年以上、もとくんを思いつづけてきたのに・・・。
13名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 13:16:46 ID:+ZNJ5jA6
人を好きになるのに順番なんて関係あるかっ
14『Which Do You Love?』 ◆AsuynEsIqA :2006/03/12(日) 13:50:53 ID:Ox0jJXxz
土曜日
今日も変わらず喫茶店で麻子を待っていた。あのお見合い以来、向こうからのせっしょくはない。このままお流れなんて事になってくれたら喜ばしいのだが。
カランカラン
入口のベルが鳴る。恐らく麻子だろうな。
「よ………ぉ」
「お久し振りですね。」
歩いて来たのは麻子ではなく奏だった。
「麻子さんでなくて残念でした?」
「……なんでここに居るって知ってんだよ?それに麻子の事も。」
ここでの事は誰にも言ってないし、知られていないはずだ。
「あなたのスケジュールぐらい確認済みです。」
そう言いながら向かいに座る。
「まいったな。……で?そこまでしてここに来たんだ。なんか用があるんだろ?」
「ええ。まずはこちらを……」
そう言いって鞄から紙切れを一枚取り出した。
「ん?………なんだこれ!?お前!いつの間に!?」
「あのお見合いの後にすぐに用意してもらいました。お父様に相談したら喜んで賛成してくれましたわ。」
「あの……親バカ髭野郎……」
テーブルの上に置いてあったのは婚約届だった。もう俺が書く所以外はきっちりと記入してあった。
「学校で渡すのもまずかったので、今日になってしまいましたが。」
「はっ。こんなもん、俺が書かなければ意味がないさ。それとも、次は偽造に走るか?」
「書きたくなければそれで良いのですが………その時は、麻子さんやあなたのお義父様にまで被害が及びますよ?」
「おい!。ちょっと待て!麻子は関係ないだろうが!?」
「あら?真っ先に麻子さんに反応するなんて、あなたらしくないですわね。姉さんのこともそれぐらい大切にして欲しかったですわね。」
ちくしょう!
相変わらず社長の娘ってだけで権限ふりまわしやがって。
「なんで……なんでそこまでして俺なんかと結婚したいんだ?」
「言いましたでしょう?あなたを愛しているからって。」
15『Which Do You Love?』 ◆AsuynEsIqA :2006/03/12(日) 13:52:35 ID:Ox0jJXxz
本当か?
なにか裏がないか?
こいつがそう安々と結婚する程プライドが無いはずがない。
「さぁ、どうします?麻子さんには、私から言っておきますよ。」
そう言って微笑む。この笑顔が今日ほど憎く思ったことはない。
「……くそっ!」
なんでだ?
なに悩んでんだ?俺。
確かに社長への婿だなんて美味しい話さ。ましてや全国に有名な店だ。普通の奴なら速攻くいつくだろうさ。
じゃあ俺はなにを迷ってるんだ?
金や名声より大切な物があるのか?………人によっちゃああるだろうな。
「あっははは……」
不意に笑いが零れた。
そうさ。認めるさ。俺は麻子が好きだ。女としてな。
全く。人の気持ちを察する事に長けてるくせに、自分の事は全然気付かないなんてな。
ただ今はアイツに好きだなんて言える資格は無いな。自分の過去と今を全て清算するまではな。
「……時間をくれるか?」
「考えた所で、結果は変わらないと思いますが?」
「言ったろ?結果は原因だけじゃなくて課程の影響もあるって。」
「……まぁいいでしょう一週間です。それ以上は待てません。」
「感謝するよ。」
ふう。なんとか時間は稼げたか……
ガチャン!
なにかが落ちる音がした。
床を見ると……ケーキ、だったのだろう。原形をとどめずぐちゃぐちゃになっていた。
嗚呼。
最悪なタイミングだ。
そうは問屋が卸さないか。
「……聖…だ……れ?その女………」
テーブルの横では、麻子が顔面蒼白で立っていた。




16名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 14:23:52 ID:+oWpptFg
修羅場キター
(*´Д`*)ハァハァ
17名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 14:37:17 ID:FAjMelQY
これ修羅場か・・・?
ほんとに愛してるのかと、むしろ復讐が目当てな希ガス
18名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 14:50:11 ID:eI/ExYd1
実際復讐でも本当に愛してるほうの女性が嫉妬してくれるなら
それはそれで修羅場といってもまったく問題ないと思う件
邪悪っ子VS嫉妬っ子という異種格闘技もなかなか(*´д`*)
19名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 15:51:31 ID:AaRCRRzq
過去の清算っていう形はおもしろいな
20名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 16:31:41 ID:voD3AwOR
しかし主人公はすでに自分の気持ちを再確認してしまっているからな…
ここからどうなるのか期待
21名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 16:35:12 ID:Y4LJh+MC
このスレのノベル短編集とかでたら真っ先に買う
22名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 17:28:55 ID:2aAWdzqv
某ハカロワみたいに同人アンソロとか出せたらいいのにな。各作者さんごとに書き下ろし加えて。
ただ、購買層があれと比べて著しく狭いだろうから、採算取れそうもないけど・・・
23名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 17:33:16 ID:vpUkqniH
ハカロワって葉鍵ロワイヤルの略だったのか。
ぐぐるまで墓場鬼太郎ロワイヤルって何やねんと。
24名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 17:35:53 ID:HumbgD3X
サウンドノベル化して、俺は無限の富を得ることは可能かもしれんな
25名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 17:45:47 ID:vpUkqniH
>>21,22
つか、まとめサイトじゃ駄目なのか?

毎日繁くこのスレに通い、SSの投下が無いかドキドキ
するのもこのスレの醍醐味だと思うんだが。
26名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 18:59:08 ID:Pw8yAhBd
>>25
まあ、確かにそれも醍醐味なんだけど。
手元にも置いて置きたいという気持ちもあるのですよ。
27名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 19:10:38 ID:dfH2YqBE
まとめサイトを自分のプリンタなりでプリントするとか
28優柔 第15話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/12(日) 19:54:01 ID:rxqhAkTN
月曜日は朝礼があるので、僕は1本早い電車に乗りました。
ですから、駅に着いたのはいつもより15分も前です。
このまま学校に行ってもいいのですが、せっかくですからパンでも買っていきましょうか。
駅から少し行ったところにあるパン屋の、1日100限定のカレーパンがめちゃくちゃ美味しいんですよ。
いつもはすぐに売り切れてしまうけど、今はまだ7時58分。カレーパンが店頭に並ぶまで2分あるからゆっくり行きましょう。

侮っていました。まだ8時3分だというのに、僕が手に入れたのは最後の1個でした。
皆さん・・・凄いですね。でも運が良かったと思います。
僕は他に明太フランスパンとメロンパンを買い、再び学校に向けて歩きだしました。
今日は何だか良い日みたいです。

いきなり視界を塞がれ、前が見えなくなりました。
「だ〜れにゃ?」
耳元で囁く甘ったるい声。一瞬、誰だか考えてしまいましたが、すぐに分かりました。
「先輩・・・かな」
「うそっ、何でばれたんだ!?」
先輩は手をどけると、驚いた顔で僕を見てきます。
(先輩・・・そんなキャラでしたっけ・・・)
「可笑しいなあ、声色使ったから絶対バレないと思ったんだけどなあ」
先輩は納得できないようでぶつぶつ言ってます。
「なあ、なんで分かったんだ?」
「えっ!?」
僕はドキッとしてしまいました。
だって先輩を判別できた理由が「背中に当たった柔らかいものです」なんて変態チックなこと、言えませんから。
仕方がないので僕はごまかすことにしました。
「愛・・・かな」
・・・あれ、ツッコミが来ると思って構えていたんですが何も来ません。
えっ、ちょっと・・・先輩、何で赤くなっているんですか?そこは流すところですよ?

その後、先輩に「お前も赤くしてやる」と、ヘッドロックを掛けられました。
息が詰まったせいで顔が赤くなってしまいましたが、その原因の他に、顔に押しつけられた先輩の胸があったことはバレていないようです。
顔といい背中といい、先輩の大きくて柔らかいものを当てられて平静を保てる男子なんかいるのでしょうか、と言い訳しておきます。

「なあ、優希」
「はい」
「今日の昼、一緒に食べないか?」
「えっ・・・」
先輩がそんなことを言うのはたぶん初めてのことだったので、僕は少し驚きました。
(やっぱり先輩、金曜日に何かあったんだろうか・・・)
僕が黙っていると、先輩は声のトーンを落として言いました。
「駄目か?」
そこにいつもの先輩はいませんでした。なんて自身無げな顔をしているんでしょう、別人のようです。
それを見て僕は、先輩のことを可愛いと思ってしまいました。胸がドキドキいってます。
「い、いや、そんなこと無いよ。むしろ僕なんかでいいのかなって」
「よしっ!じゃあ昼、屋上に来てくれな」
先輩の顔がぱあっと明るくなりました。ていうか先輩、僕とお昼を一緒にするだけなのになんでそんなに喜んでるんでしょうか?

29優柔 第15話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/12(日) 19:55:09 ID:rxqhAkTN
今日も早く起きてしまった。私、まだ若いのにな。まあ寝坊して朝礼に遅れるよりいっか。
早めに行って教室の窓からゆう君にまとわりつくメス犬の監視でもしてよっと。

学校に着いたけど・・・まだ7時半か。暇だな・・・いくらなんでも早すぎたかな。
・・・黒板の掃除でもしようかな。まったく、うちの担任はガサツなんだから。
チョーク入れるところに粉がいっぱい蓄まってるじゃない。黒板自体に字の跡が残ってるし。
ゆう君の担任の駒田先生なんか、いつも黒板を綺麗にしてるんだから。新品みたいだよ?あれじゃ字を書くのためらっちゃうってゆう君が・・・

そろそろグラウンドに行こうかな。窓から眺めてるより先にいたほうがゆう君喜ぶと思うし。
最高の笑顔で「おはよう」って。でもその前に・・・お手洗い行っておこう。

ゆう君・・・タイミングが悪いよ。私がお手洗い行ってるうちに来るなんて。
いくら隣同士のクラスだからってゆう君、出席番号1番だから後ろ姿しか見えないよ。それに他の男子と円を囲むようにして喋ってるし。
あれ・・・女子とも喋ってるんだ。ふーん・・・ゆう君が嫌いな、遊んでそうな子だから論外だけど。
でもなんか・・・嫌だな。あっ、馴々しいよ・・・ゆう君に触っていいのは私だけなんだから。
あっ!ゆう君の頭叩いた!!ふざけないでよ・・・って、ゆう君も何嬉しがってるのよ!ゆう君はMじゃないでしょ!?
先生が点呼に来てるから我慢してるけど、そうじゃなかったらあなたなんか・・・
あっ、ゆう君がこっち向いた。早くいつもの顔に戻さないと。
私は自分の中で一番良い笑顔を作った。
すると、ゆう君は恥ずかしいのか目を逸らした。
もう、ゆう君ったら・・・可愛いんだから。
30名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 20:11:03 ID:a9Cg0RTW
愛されたいです
31名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 20:30:25 ID:IxE1tx4N
こういう殺意の潜んだ明るい日常は大好きです
32名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 20:39:42 ID:6iB0yTcm
「あはは、ゆう君ったらおかしいんだ。
 だって、自分から地雷を踏みに行ったことに気付いてないんだもん。
 もう、優柔普段なんだから」

そんな台詞が浮かんだ俺はもぅダメかも知れん…orz
33名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 21:25:20 ID:IZKOsqcx
>>32
「優柔普段」って、このSSだとかえって正しいな
34名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 21:48:23 ID:YJgW887t
もしも嫉妬のエネルギーで光線技がでるとしたら、
このスレのSSのヒロインは、
どれくらいの破壊力を叩き出せるのだろうか?
35名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 22:25:01 ID:gUm65Cd8
>>34
地球を破壊できます。
36名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 22:36:15 ID:vpUkqniH
>>34
愛で空が落ちて来る。
37名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 22:36:26 ID:AktkZDOU
あ、藍子の戦闘力がどんどん上がっていくっ!!
何ぃっ!?スカウターが壊れただと!!?
38名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 22:38:01 ID:eJGRL5eq
もう新スレか
優柔と沃野と合鍵と小さな恋の物語の続きマダー?
39名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 23:18:43 ID:rSocQijI
wktkしながら待つのが楽しい
40名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 23:22:42 ID:mn7OES0Q
男の嫉妬は見苦しいというが……女の嫉妬とはかくも美しいものなのか
41名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 23:30:04 ID:jAf7k1XQ
>>36
You are shock!!
42名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 23:34:15 ID:vpUkqniH
「愛を取り戻せ」の歌詞ってよく見たらこのスレ向きじゃね?w
43名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 23:35:21 ID:g2WzlDnj
>>41
微笑み忘れた彼女は見たくはないさ
44名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 23:39:10 ID:qU8gY2mC
邪魔する奴は、鋸一振りで即死さぁ〜〜〜〜〜
45名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 23:57:33 ID:mKAazCPx
藍子「手首を切るだけで好きな相手を引き止めることができるんだわ!」
もと「そのためならどんなことをしてもいいのか・・・
そんなことしたら逆にもっと気持ちが離れていくぞ!」
サキ「それなら私はもっともっと過激に両方の手首を切るわ」
もと「それは血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよ・・・」

最近の合鍵を見たら浮かんできたパロディをおひとつ・・・。
正直スマンかった
46名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 23:59:00 ID:CQp+0OgJ
>45
確かに肉体と精神を文字通り削りながらの闘いだからなw
47名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 00:24:45 ID:1ITbS4wB
すべて熔かし 無残に飛び散る…
48合鍵 最終回 ◆tTXEpFaQTE :2006/03/13(月) 01:23:23 ID:Av2avhDH
合鍵  最終回


藍子の様子を、サキはドアの隙間から、息を殺して覗いていた。

藍子「さ、もとくん、ごはんのじかんだよ」
そう言って、藍子は人形にスープをすくったスプーンを運んでいた。
当然、スープはボタボタとこぼれ落ちる。
それを気にする様子も無く、藍子はスプーンを動かし続けた。

その人形には、首輪がつけられていた。

―――――――あの日、藍子がサキにいいまかされた日。
あの時、藍子はおかしくなってしまった。

日常生活では、そのことに気がつく人はいなかった。
藍子がおかしくなるのは、彼女が自分の部屋に戻り、ベッドの上にある、首輪をつけられている
人形に話し掛けるときだった。
その首輪をつけられた人形に藍子は愛を囁く。

藍子の部屋の中では、その首輪をつけられた人形は、元也だった。

藍子「さあ、もうお腹一杯になったでしょう?」
藍子はスープを脇にどけ、人形を抱きしめる。
そして、パジャマの上から、人形を体に押し付けた。
サキが覗いている事に気付いていない藍子は、パジャマをはだけ、下着の中に人形を
潜り込ませた。
他人から見れば、それは人形を使った、自慰に見えるだろう。
だが、藍子にとっては、元也と愛し合う行為だった。

――――あの日、サキは半ば強引に元也を新しく借りたアパートに連れて帰った。
ほとんどが拉致状態だった。
そして、二人で新しい学校に転校した。

新しい学校に行っても、最初の一ヶ月は、元也は憔悴しきっている状態だった。
あんな目にあっていたと言うのに、藍子がどうなっているかを心配し続けた。
2日に一回は、藍子の様子を見に行く、といって聞かなかった。
その度、サキがカッターを自分の手首にあて、押し留めた。

最大限の譲歩として、サキが藍子の親に電話で様子を尋ねる、と言ったものだった。
電話をして帰ってきた、藍子の母親からの返事は意外なものだった。

49合鍵 最終回 ◆tTXEpFaQTE :2006/03/13(月) 01:24:57 ID:Av2avhDH
>>48の続き


元也が転校した事の本当の事情を知らない彼女は、サキを元也の事も知っている藍子の
友達なのだろうと勘違いをし、詳しく話してくれた。
藍子の母親によると、彼女は現在、しっかりとした状態だと言う。
入院前後の不安定な時期が終わったようだと喜んでいた。
元也君がいなくなった事が、かえってショック療法になったのかもしれない、
そんな事を、嬉しそうに話した。
だが、気になる事がある、とも言われた。

藍子が部屋で、人形に“もとくん”と名づけてベットに置いてある。
それだけなら、まあ、寂しくてそんな事してるだけだろうと思えるが、おかしいのは
そのお人形に、首輪をつけてその紐をベットに括りつけている、との事だった。

サキはそれを聞くと、藍子の、あの時の笑い声を思い出した。
そして理解できた。
藍子にとって、その人形こそが、元也なのだろうと。
おそらく、おかしくなった藍子は、その人形を本気で元也と認識しているのだろう。

…よかったじゃない、藍子ちゃん。
その元也君は、あなたから絶対逃げ出す事は無いんだから。
藍子ちゃん、その元也君と、末永く、お幸せにね。
私はこっちの元也君と幸せになるから。

サキは、藍子の母親から聞いたことを、元也に話した。
人形の事を除いて。
元也は、藍子がもとに戻った事を聞き、ホッとした。
こうやって、サキさんに拉致られちゃったことが、かえって良かったね。
そういって、サキと一緒に笑った。

そこから、サキと元也の本当のスタートが始まった。

そして春休みになった。
その長期休暇を使い、元也は彼の両親がいるブラジルに遊びに行った。
父さん、母さんと一緒に帰ってくるから、そん時はサキさんのこと、紹介するから。
そう言って、元也はブラジルへと行った。

50合鍵 最終回 ◆tTXEpFaQTE :2006/03/13(月) 01:25:33 ID:Av2avhDH
>>48の続き


元也が転校した事の本当の事情を知らない彼女は、サキを元也の事も知っている藍子の
友達なのだろうと勘違いをし、詳しく話してくれた。
藍子の母親によると、彼女は現在、しっかりとした状態だと言う。
入院前後の不安定な時期が終わったようだと喜んでいた。
元也君がいなくなった事が、かえってショック療法になったのかもしれない、
そんな事を、嬉しそうに話した。
だが、気になる事がある、とも言われた。

藍子が部屋で、人形に“もとくん”と名づけてベットに置いてある。
それだけなら、まあ、寂しくてそんな事してるだけだろうと思えるが、おかしいのは
そのお人形に、首輪をつけてその紐をベットに括りつけている、との事だった。

サキはそれを聞くと、藍子の、あの時の笑い声を思い出した。
そして理解できた。
藍子にとって、その人形こそが、元也なのだろうと。
おそらく、おかしくなった藍子は、その人形を本気で元也と認識しているのだろう。

…よかったじゃない、藍子ちゃん。
その元也君は、あなたから絶対逃げ出す事は無いんだから。
藍子ちゃん、その元也君と、末永く、お幸せにね。
私はこっちの元也君と幸せになるから。

サキは、藍子の母親から聞いたことを、元也に話した。
人形の事を除いて。
元也は、藍子がもとに戻った事を聞き、ホッとした。
こうやって、サキさんに拉致られちゃったことが、かえって良かったね。
そういって、サキと一緒に笑った。

そこから、サキと元也の本当のスタートが始まった。

そして春休みになった。
その長期休暇を使い、元也は彼の両親がいるブラジルに遊びに行った。
父さん、母さんと一緒に帰ってくるから、そん時はサキさんのこと、紹介するから。
そう言って、元也はブラジルへと行った。

51合鍵 最終回 ◆tTXEpFaQTE :2006/03/13(月) 01:27:10 ID:Av2avhDH
>>49の続き


帰りの飛行機で、元也は死んだ。着陸の失敗だった。

春休みが終わり、ゴールデンウィークが過ぎても、サキは立ち直れなかった。
夏休みがはじまる直前あたりで、やっとサキは意識がしっかりしてきた。
その間の記憶が全く無かった。

そのまま夏休みに突入し、サキはあることを思い出した。
藍子は、このことを知っているのか?
引越しをし、元也が死んだ事を、転校前の知り合いに知らせる人はいなかった筈だ。

サキは藍子の家に向かった。
家に上げてもらい、藍子の部屋へと向かった。

藍子の部屋の前まで行き、ノックをしようとしたところで、部屋の中から藍子の声が聞こえた。
よくは聞こえなかったが、「もとくん…」と言う声がわずかに聞こえた。

息を飲み、ノックするのを止める。
そして、音をたてない様に、ドアをわずかに開けた。

部屋の中で、藍子が人形に食事を与えようとしていた。

サキが覗き続けていると、藍子は人形を使い、自慰をはじめた。
サキにはそれが、藍子にとっては元也との行為である事が分かった。

その行為をしている時の藍子の幸せそうな表情に怒りが溢れてきた。
私は元也君を失ったのに、あなたはまだ、元也君と一緒にいるの?
久しく忘れていた嫉妬が胸に溢れた。

サキは改めてノックをし、藍子の部屋に上がりこんだ。
部屋に入ってきたのがサキだと気が付くと、藍子は叫び声をあげた。
人形を胸に抱き、サキを罵り続けた。

そんな状態の藍子に、取り付く島も無かった。
元也が既に死んだといっても、藍子にとっては胸に抱いている人形こそが元也なのだ。
藍子に、サキの言ってる事が理解できるはずが無かった。

サキは藍子に元也の死を理解させる事を諦めざるを得なかった。

一階に降り、藍子の母親に挨拶を済ますと、サキは帰路についた。

帰りの電車でサキは考え続けた。
元也君を手に入れ、そして永遠に失った私。
もとくんを手に入れることは出来なかったが、代わりに永遠にもとくんをその手に置いておける藍子ちゃん。

私と彼女、どちらが幸せなのかしら?
どれほど考えても、その答えは出なかった。
それでも、偽りであるとは言え、元也と一緒にいれる藍子が、妬ましかった。
藍子に、狂おしいほど、嫉妬していた。


52合鍵  ◆tTXEpFaQTE :2006/03/13(月) 01:29:31 ID:Av2avhDH
真ん中、書き込み失敗しちゃいました。

そんな訳で、最終回でした。
皆殺しエンドが多い、とあったのでちょっと捻ってみました。
こんなもんでどうでしょうか。
53名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 01:37:00 ID:IIBYLrbx
GJ!お疲れ様でした

死ぬよりもこのおわりかたの方が救われないような
54名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 01:43:53 ID:wFqntvV1
>>52
とりあえずGJだ!!

血を吐きながら続ける悲しいマラソンは二人の中で終わったのだろうか?
55名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 01:57:13 ID:w5MwIJ1c
もっと藍子に攻めて欲しかった
つーかもとくん悪くないのにヒドス・・・
56名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 02:01:34 ID:w5MwIJ1c
あ、そうだアナザーエンド希望!アナザーエンド!
藍子はあれで一つの幸せなんだろうけど違う形も見てみたい
合鍵が一番好きな作品ですので
57名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 02:07:24 ID:44QlYPG+
藍子派の私にお慈悲を!
作者様お慈悲を下され(;つД`)
このままでは救われませぬ・・・
58名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 02:10:59 ID:vHtmcSAS
お疲れさま!

やっぱり最後は悲劇しかないんかねぇ……(´・ω・`)
前の人も言ってるけど心中より救われない……
59名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 02:32:38 ID:PNP1yViv
>>52
狂おしいほどGJでした!藍子もサキも同じくらい 大 好 き だ!

やっぱりこのスレの性質からいってハッピーエンドはもちろん救いさえも難しいのかもね
(´ー`).。oO(番外編で二次元エンド風味な物も見てみたいなぁ)
と嫉妬や修羅場が好きだが大団円も同じくらい好きなへタレが思ってみる
60名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 03:20:06 ID:mBU+eECK
作者サンお疲れ様でした。 SSスレが出来た頃から今まで身悶えするような
修羅場を堪能させて頂きありがとうございますた、次回作にも期待しております。
けどまぁ、あんなことの後なのにサキさんが結構しっかりしてそうだったから
元也もやっと普通に暮らしていけるのかと思ってたんですけどね…

物語の登場人物とは言え、元也君には、次こそ幸せな結末を送って欲しいと、
そう思いました。。゚(゚´Д`゚)゚。
61名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 04:14:41 ID:PQQ8ZBY0
そういえばどちらか一方が敵を一掃!完全勝利!する話ってほとんど無いね。
62名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 04:17:20 ID:UkWiKkKY
つか、もとくんはよく自分を拉致監禁&リスカで脅迫する女と
付き合い続けられるなぁ。…彼もひょっとして壊れてる?
63名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 04:18:43 ID:Za7oQ5Uc
撲殺天使ドクロちゃんエロパロスレッド3(゚∀゚)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1133200382/l50
691から711
二次創作品だが
64名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 04:36:19 ID:wWfto37i
>>52の文才に嫉妬
65名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 04:39:15 ID:OHm42oBM
>>52
お疲れ様でした。
合鍵、最後までとても楽しませてもらいました。こういう終わり方もいいですね。
次の新作も期待してまってます。
66名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 08:17:59 ID:VjYTMdRZ
こういう気持ち悪い感じで終わるのもいいな。
変に派手に終わらなくてもいいね。
67名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 08:24:51 ID:Fa4o5Ycz
結局もとくんと藍子が一番不幸だったと思う
68名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 11:42:09 ID:uLT33tMI
最後に勝つのはわたしみたいな寝取り女なのよ
言葉みたいな悲劇のヒロインを演じているよりは
わたしのほうが萌えるでしょう
このスレはわたしの寝取りが正しいことを証明してるわ
                            O                   
     i:.:|.:.:i.:. :.:i:.:.:.:.:i  ';::.| ';.:!ヘ:.:ヽ:.:..: :.:.:i .l:.::!::::i:. :.:.iヽ:.:.:!:|   !
     |:.|:.:ハ:.::.:.i:.:.:.:.i_,.-弋!'"\゙、\ヽ:.::.::./`メ/!:.:i:.: :.::| i:.:.::|
     |::| l ::!:.:.:i:.:.:.:.|_____-\-- ヽ、 ` }:::.ノ-/-ノイ'|:.:.:.:ノ .}:.:.|
     | iヽ ::ト.├、:.:.i ̄i;;:} ̄ ̄     レ' I;:! ̄イi:.l:.:.::/  ノ:./
    //  ::{入Y:\゙、、″ _ノ     ヽ ″ ノ レ'.:ノ  //
    //::  ::\ヾっ ヽ  ̄          ̄  ル'i /'"
   //!:  :.:.:i::.:`ー弋           ゝ   ハ:|
   // | : ::.:i:.:.:.:i:.:.:.::ヽ      ヽ_;フ   , イ i ハ|   
  // | :::.:.:.i:.:.:.:i:.:.::.:.:.|\        ,イ:.:i.:. i ハ
69名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 12:59:52 ID:xu8DDYqa
藍子にも救いの手を
70名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 13:05:38 ID:X2OQ9fV6
>>69
わたしの勝ちよ
残念ながら、言葉と同じ
依存型の少女は敗北するために存在しているのよ!!
  i:.:|.:.:i.:. :.:i:.:.:.:.:i  ';::.| ';.:!ヘ:.:ヽ:.:..: :.:.:i .l:.::!::::i:. :.:.iヽ:.:.:!:|   !
     |:.|:.:ハ:.::.:.i:.:.:.:.i_,.-弋!'"\゙、\ヽ:.::.::./`メ/!:.:i:.: :.::| i:.:.::|
     |::| l ::!:.:.:i:.:.:.:.|_____-\-- ヽ、 ` }:::.ノ-/-ノイ'|:.:.:.:ノ .}:.:.|
     | iヽ ::ト.├、:.:.i ̄i;;:} ̄ ̄     レ' I;:! ̄イi:.l:.:.::/  ノ:./
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  // | :::.:.:.i:.:.:.:i:.:.::.:.:.|\        ,イ:.:i.:. i ハ

71沃野 Act.3 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/13(月) 19:22:00 ID:BZJvJwyF
「………ッッ!!」
 顔面神経が狂奔しそうになるのを必死になって堪えようとした。
 堪え切れなかった。
「ぶはっ!」
 隣の梓は飲んでいたペットボトル緑茶を噴き出した。
「えほっ、げほっ……び、びっくりさせるなよ胡桃! 急に物凄ぇ顔しやがって……!」
「ご、ごめんね……」
 謝りながら、平静を取り戻そうとする。深呼吸。叫びたくなる気持ちを押し留め、努めて冷静な思考を試みる。
 ……無理だ。どうしても心が波打つ。よーくんのことになると、わたしは平常心でいられなくなる。
「いったいどうしたってぇのよ……ほらそこ、本が破れてるじゃない」
 指摘されて見ると、確かに手に持っていた本が無惨に裂けていた。
 無意識の力で引き裂いてしまったらしい。まったく記憶になかった。
 ああ、どうしよう、図書館のなのに。弁償かな?
 ──いや。それは後回し。今はよーくんのことだ。さっき視たことを思い返す。苛立ちに手が震える。
 わたしはいつも通り、よーくんを「視」ていた。彼は周りの男子との話にも飽きたようで、
椅子に座ってぼんやり黒板を眺めていた。
 そこに、あの、金髪で、ちっちゃくて、いかにも「可愛い」と言われ慣れているようなあの子が来て……
 ああ。駄目。思い出しただけで目の前が真っ赤になる。呼吸が乱れる。
 嫉妬深いのはいけないことだと思うけど、よーくんのそばに女が寄るとカッと血が沸き立つのだ。
 しかもあの子。馴れ馴れしく、よーくんと見詰め合って、おまけに吐いた言葉が、
 ──好きです──
 ──付き合って、ください──
 わたしが、どれだけ、言おうと思って、言えなくて、よーくんって鈍感だから仕方ないよねと
自分で慰めながらなかなか眠れない夜に何度も何度も目蓋の裏で予行演習してうん、明日こそは、
と誓って興奮したせいで余計に眠れなくなった心を鎮めるため隣のうちのよーくんの寝顔を覗き視て
ようやく安心して寝付いて結局翌日には断られるのが怖くて言い出せない、ってことを繰り返してきた
セリフなのに、あの子はいともあっさりと言ってしまった。
 悔しい、そして、それ以上に憎い。熱さを通り越して寒気すら覚える憎悪が腸から突き上げてくる。
 荒木麻耶──知っている。目立つ子だし、何より彼女はよーくんと接触したことがある。
 わたしが知っているだけでも三度ほど。もっとあるのかもしれない。
 よーくんが図書館にいるとき、わたしは弓道場にいて、つい監視が疎かになってしまう。
 その隙をついて、こっそり会っていたのかもしれない。だからあんな言葉を。
 許せない。
 許せるわけ、ないよ。
 今すぐにでも立ち上がろうとしたわたしを、休憩時間の終わりを告げる鐘が遮った。
 忌々しいウェストミンスターチャイム。咄嗟に舌打ちしたくなった。
 けど、まぁ、いい。視れば、あの子も鐘の音に従って教室を出て行くところだった。
 次の授業が終わって、昼休みに入るまではお互いおとなしくしなきゃね。
 でもこんな調子だととても授業に集中できそうにない。ああ、よーくんも途方に暮れた顔してる……
「──おーい、また遠くを見ちゃって、どうしたの」
「あ、えっと、なんでもないよ」
「なんでもないってなぁ……確かに胡桃はしょっちゅう遠い目をしてボーッとしてるけどさぁ」
 ぶつぶつ言ってくる梓に生返事をしながら、わたしはこれからどうすべきか考えていた。
72沃野 Act.3 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/13(月) 19:25:45 ID:BZJvJwyF
 千里眼っていうのかな。遠くを見通す、超能力みたいなの。
 わたしは生まれつきそれを持っている。使いこなせるようになったのは小学生になってからだけど。
 昔から「胡桃は目がいい」とよく驚かれた。どんなに遠くにあるものでも、角度が悪くなければ
米粒程度の文字さえ読み取ることができた。「アフリカの人は視力が10.0」とかいう話も聞いたことが
あるけど、わたしの視力は数字で表せばどのくらいだろう。4.5km以上先、地平線の彼方でも視ることが
できた。それってもう、視力がいいとかそういう問題ではない気がする。
 よーくんもわたしの目の良さは知っているし、失せ物探しが得意なのも覚えているだろう。
けど、「眼」のことまで話すと気持ち悪いって思われてしまうような気がして、失せ物探しについては
「なんとなく分かる」としか言っていない。

 わたしの「眼」は胸のあたりにある。
 本当はどうなのか知らないけど、使っているときはそのあたりに熱を持つ。
 「眼」で視るときに目を閉じる必要はない。両目を開けたままで遠くを見通せる。
 ただ、集中力はどちらか一方に傾いてしまうので、両方の視覚を同時に処理するのは不可能だ。
セカンドサイトに意識が行っているときは五体の感覚が希薄になるし、体に意識を戻そうとすると
「眼」は閉じてしまう。便利だけど、一種の余所見なので気をつけないと結構危ない。
 その「眼」で、暇があればいつだってよーくんを視てきた。
 よーくんと初めて会った頃。わたしは特別な能力があることを自慢にしていて、他人を見下していた。
 実に嫌な子だった。「はんッ、ムシケラどもめ」系オーラを周囲に放つ漫画みたいな悪役。
 前の学校ではかなり威張り散らしていたし、よーくんと会ったときも生意気なことを言った。
 思い出すと顔が赤くなったり青くなったりする。身悶えを禁じえない。過去に返って自分を叱りたい。
 でも、よーくんはそんなわたしを嫌ったりしなかった。
 分かっているのかいないのか、はっきりしない口振りで応じて、どんなに嘲っても柳に風、糠に釘、
暖簾に腕押しだった。ムキになって言い返してきたところを誘導し、「眼」の力で屈服させ、従わせる
……そんな計画を思い描いていたわたしは、まったく手ごたえがないよーくんの態度に苛立った。
 なんで、自分がそれほどよーくんに固執するのか。
 大きな疑問からあえて目を逸らしながら、挑むような口調で突っかかっていた毎日。
 遂に我慢ができなくなり、癇癪を起こして叫んだ。
 ──洋平なんか、嫌い──!
 すると、笑われた。
「胡桃は面白い嘘をつくね」
 って。何一つ疑わない、確信に満ちた声で。
 そう。本当に嫌いなら、顔を真っ赤にして、面と向かって、そんなことは言わない。
 ようやく悟った。ムキになっていたのはわたしだって。
 気を引きたくて。構ってもらいたくて。それを認めるのが恥ずかしいから生意気な口を利いて。
 そこにいたのは特別でもなんでもない、ただ素直になれないだけの女の子だった。
 素直になることが恥ずかしいと思って、隣の家にいる男の子と単に仲良くしたい気持ちを隠したがっていた。
 そんなの、とっくに見抜かれていたんだ──
 遠くを見通す「眼」を自慢にしていた自分が不甲斐なかった。大事なものを見落としていたんだ。
 だから、お詫びもかねて、一生懸命つくった料理を、まだ温かいうちに食べてもらおうと運んだ。
「お、お裾分けだからねっ。ただ、その、つくりすぎちゃっただけ……なんだから……」
 分かっていてもまだ素直になれないでいた自分を持て余しながら。
73沃野 Act.3 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/13(月) 19:28:19 ID:BZJvJwyF
 以降はずっとよーくんを視ながら成長してきた。
 わたしの「眼」は単に遠くを視るばかりじゃなくて、壁とか屋根とかの障害物も通り越して視る、
言わば透視能力も含まれていた。
 プライベートを侵害するいけないことだって分かっていたけど、何度もよーくんの部屋を覗き視た。
 自室で誰の目も気にせずに寛いでいるよーくんの姿にはドキドキした。
 休日も、よーくんがどこにいるか、周囲を360°精査して探した。いつもすぐに視つかった。
 わたしが失せ物探しが得意なのは、視ようと思うものを、方角さえ合えばほぼ自動的に発見できるから。
 携帯なんかで連絡を取り合う必要もなく、町にいるよーくんを視てはそこを目指して走ったものだ。
 一刻も早く会いたくて──
 「眼」に集中してすぎて転んだり、電柱にぶつかったり、側溝にはまったりすることも一度や二度じゃ
なかった。

 部屋で着替えるよーくんを視て興奮するようになったのはいつ頃からだったかな……
 前はそういう場面に出くわすたび顔を赤らめて「眼」を逸らしていたものだったけど、友達を通じて
性の知識を吸収するたび、よーくんへの肉体的関心が深まってしまった。
 だからって正面切って「裸見せて」と頼むのは恥ずかしすぎる。
 いくらなんでもそこまで素直になる勇気はなかった。
 せいぜいが、ふざけているように見せかけて体をすり寄せるくらい。その程度で限界だった。
 そこで、よーくんと一緒に下校して玄関先で別れるや、脱兎の如く階段をのぼり、制服を脱ぐ暇も
惜しんでよーくんの部屋がある方角に張り付き、わたしより少し遅れて上がってきた彼が物憂げに
溜息をつきながら気だるく着替える一部始終を「眼」に焼きつけた。
 さすがに下着までは着替えなかったけど、それはお風呂の時間を狙うことで解決した。
 わたしの「眼」はいかなる距離も無にするけど、角度は常に一定だ。
 ベストショットを得るためのポイントを求めて夕方に家をうろうろする娘を母も父も不審がって
いたけれど、「難しい年頃だから……」と理由になっていない理由で無理に納得していた。
 よーくんと会ったのは十歳のときだから、揃ってお風呂に入ったりしたことはもちろん一度もない。
 初めて視るよーくんの裸……!
 緊張するやら興奮するやら、感極まるあまりにガクガクと震えながら涎を垂らす娘を見て父も母も
「難しい年頃だから……」と言いつつ受話器に手を伸ばすべきか迷ったことだろう。
 そんなこんなでわたしがよーくんの裸に異性を感じ出すのに前後して、よーくんも異性への興味を
抱き始めたようだった。ふたりとも中学に上がり、よーくんの声変わりも始まった頃だ。
 こともあろうに本である。いかがわしい写真が乱舞する書籍に、よーくんの視線は釘付けだった。
 誰のものとも知れぬ裸に欲情するよーくん。それを覗き視るわたし。
 耐えられるはずもなく、よーくんが卑猥な本を部屋に持ち込むたび押しかけ、廃棄を強制した。
 隠し場所に工夫を凝らそうとするよーくんの努力は涙ぐましかったけど、わたしの「眼」に敵う道理はない。
 モノがモノとはいえ私物の廃棄を求められることはよーくんにとっても不快だったようで、
何度か苛立ちの素振りを見せたこともあったけれど、こちらを見ると諦めたように何も言わなかった。
 よーくんは、なるべく平気な顔をしているわたしが内心で耳鳴りがするほど激昂していたのを
察していたみたいだった。よーくんは鈍いくせに、そういう察しはやけにいい。
 鈍い──そう、彼はわたしの気持ちを知っててわざと無視してるのでは、と勘繰るほど鈍い。
 なんでこんなに甲斐甲斐しく干渉しているのに、よーくんは反応してくれないんだろう?
 もっと露骨じゃなきゃいけないのかな?
74沃野 Act.3 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/13(月) 19:34:47 ID:BZJvJwyF
隠喩少年 対 視姦少女。
次回「パソラルの先端を刺して」、お楽しみに。

>>52
お疲れさまでした。
藍子の末路が切なく、サキの嫉妬も切なく、それでいて熱いです。
75名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 19:41:02 ID:36kh7cYq
やっぱ胡桃も体質能力者だったー
76名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 19:49:14 ID:Jmtd1GNi
麻耶も特殊能力持っていて世界を巻き込んだ戦争になるんですね?
77名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 19:58:28 ID:TUEonVtB
おはようからおやすみまでよーくんの暮らし見つめる胡桃というやつですね
78名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 20:21:44 ID:i1Nm4sB/
その内お互いの能力が分かって
「同じような能力をもってるなんて! 私たち最高に相性がいいのよ!」
とかゆー山岸由花子みたくなったりして
79名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 21:01:53 ID:PNP1yViv
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・) 胡桃も能力持っているってことは麻耶も……
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +
80名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 21:15:07 ID:BydY03Ez
>>71
GJ!毎回楽しみにしていますよ〜。
修羅場ってだけでなく設定も大好物ですよ
安易なバトル異能ものより、こーゆー限定能力ものの方が燃える性質なんで
81名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 21:21:18 ID:6pBOhKqQ
胡桃は元ツンデレだったのか
82名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 21:41:38 ID:+Q/LwTy4
書くよりは、見る方がいいかもしれないな
83名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 22:01:25 ID:WE/tUbDA
嫉妬成分無くても普通に面白そうなお話ですね

だが嫉妬成分が加わったことにより大変おいしゅういただけました
84名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 22:18:37 ID:zYcFEnAx
胡桃にはぁはぁしてきたよ
一行であっけなく死んだもとくんカワイソス
85名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 23:36:30 ID:7hE5gqmW
では麻耶は特殊嗅覚だといってみる。

つーか、アノオンナノニオイガスルって言って欲しいんですがね。

86名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 01:10:48 ID:t0Y1+/ss
マガジンでもあったよね。三角関係に綺麗な終わり方はないって。

こわいね。
87名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 01:11:04 ID:68bL8E4f
もとくんの死に方はあっけなかったけど終わり方は印象に残ったよ。
次回作期待してます。
88『Which Do You Love?』 ◆AsuynEsIqA :2006/03/14(火) 02:46:51 ID:qQIR2AiD
まず口を開いたのは奏だった。
「あなたが相澤麻子さんですね?初めまして、聖さんの婚約者の桐原奏です。」
作り笑いとともに手を差し出す。一方の麻子はただ体を震わせながら立ちすくんでいた。出された手など全く気にしていなかった。
「聖……婚約者って…何?……お見合い断るんじゃなかったの?」
「あぁ、確かにそう言ったね。」
「じゃあ…なんで婚約届なんて……書いてんの?」
静かに…けれど怒りが溢れんばかりの声が漏れる。不謹慎かもしれないが、怒った麻子の顔もまた美しいと思った。
「その話がまとまったので、これを書いてもらうためにここに来たんです。」
さらりと奏が言う。この尼…よくアドリブが効くもんだ。
「っ!!」
一層麻子の息遣いが荒くなる。言い訳や反論をしたっていい。だがこの状況でいったところで 単なる付け焼き刃だ。
パン!
乾いた音が店内に響く。一瞬だった。頬に痛みが走る。
「バカ…バカ馬鹿ばか!!聖なんて……聖なんて……」
全てを言い終える前に、店から出ていってしまった。
去り際に見た彼女の目からは、大粒の涙が流れていた。
「これであなたの言う結果というのも、決まったも同然ですね。」
「………貸せ。」
そう言ってテーブルにあった婚約届をひったくる。
「家で書いてくるから……来週また、ここに来な。」
「ええ、わかりました。」





月曜日
学校
麻子は休みだった。アイツが学校を休むのは初めてだった。
そして始めて分かった。アイツがいないと俺は一人だということ。アイツがいないだけで一日がつまらないと言う事が………




89『Which Do You Love?』 ◆AsuynEsIqA :2006/03/14(火) 02:47:40 ID:qQIR2AiD
同日 麻子の家
気付けば部屋にいた。泣いて布団にうずくまってた。食欲も気力も無い。
「聖…聖…んぅっ…」
ただそう呟いていることしかできなかった。
家に帰り、ずっと自慰行為に走っていた。もう何度イッたかも覚えていない。寂しさを紛らわせようとし、イッた後の激しい虚無感に襲われ、再び繰り返す。
そんな悪循環だった。道具としてボールペン……ただのボールペンではない。聖の物だった。一年前、一度借りたまま返さずに黙って使っていたのだ。
それを聖のモノと思って使う。
「ん…ふぁ!ひ、ひじりぃ…ひゃぁ!」
自分でも分かるぐらい重症だった。自慰に疲れて眠っても、夢の中でさえ聖に抱かれていた。
目が覚めれば夢だと気付き泣いていた。
そしてまた自慰を始める。一人暮らしだから誰も止める人なんていない。かといって、もう聖以外の人と会うことも嫌だった。
でも、もし聖に会いに行っても、あの女が隣りで笑っているのだろうか。
嫌。ヤメテ!!!私を見て!!
今頃聖の腕の中にいるのだろうか。
嫌!嫌!嫌!あの女に愛を囁かないで!!
良くないことばかりしか浮かばなかった。あんな婚約届だなんて出されれば終わったも同然だ。所詮自分はまだ子供。出来る事なんて限られてくる。
『手遅れ』…そう思ったが最後。悲しみがまた込み上げてきた。それを抑えるため、自慰行為も激しさを増す。
「は、はあっ!ひ、聖…ん、くぅ、あぁ!た、助け…てよぅ。あぁん!ひじりぃ!」
ビクッビクッ
またイッた。
疲れが溜まったため、眠くなりそのまま寝てしまった。また夢で聖に会えたらいいな…





午後の気怠い授業。国語は自習だった。
昼飯後だったので、眠気が襲う。雨音を子守歌に、熟睡にはいった。



『俺は(私は)アイツと出会う夢を見た。』




90『Which Do You Love?』 ◆AsuynEsIqA :2006/03/14(火) 02:50:23 ID:qQIR2AiD
あれは中学の卒業式の後だった。HRが終わり、クラスのみんなが卒業パーティーを開くと騒いでいた。
正直、顔と名前の一致してない奴等とそんなことをする気なんて毛頭なかった。だからみんなが騒いでいるなか、そっと教室を出ていった。その時だった。
「ちょっと聖!あんたも出なさいよ!クラス会。」
麻子だった。前々からお節介を受けていたため、こいつの名前だけは覚えていた。まだ髪が短い頃だ。
「いいよ。忙しいから。」
そう言えば、大抵の人なら引くはずだった。でもこいつは……
「だったら時間を作りなさい。最後ぐらい仲良くしなさいよ。」
無礼者だった。ここまで踏み込まれるのは初めてだった。だから…
「……駄目だ。女との約束なんだよ。」
完全な嘘である。よく考えれば俺みたいな奴に女ができるわけがない。でも麻子は
「え!?女!?」
馬鹿正直に受け止めていた。
「ち、ちょっと!誰?女って!?アタシが直接話つけてやるから!連れてきなさい!」
人をあまりにも素直に信じられる心に、俺は呆れ返った。
「お前には関係ないはずだ。ましてやもう卒業なんだからな。」
そう言い残して踵を返し、階段を下りて言った。
「やめときなよ、麻子。なんかあいつ、変な奴だし。誘った所で盛り下がるだけだよ。」
「そうそう。あんな根暗野郎放っといて、俺たちだけで楽しもうぜ!」
丸聞こえなんだよ、ばか野郎。それともわざと聞こえるように言ってんのか?
「でもさ……アイツだって三年間一緒だったんだし……」
そこから先は聞こえなかった。
ただその声が聞こえた時、久しぶりに…小さく笑った。




また玄関には知らない靴があった。
まぁいつものことだと、気にせず上がり階段へと向かう。昇ろうとした時、右手の部屋から妖艶な声が聞こえた。健全な青少年なら何かしら性的反応があってもいいだろう。
でも俺にはなかった。当たり前だ。自分の母親の声なんだから。あったらただの変態だ。
どうせまた何処の誰かも知らない男に抱かれているんだろう。
自分の若さと金を餌にして。
いつもの事と言い聞かせてみても、嫌なモノは嫌だった。階段を駆け上がり、部屋へと飛び込んだ。
91『Which Do You Love?』 ◆AsuynEsIqA :2006/03/14(火) 02:52:19 ID:qQIR2AiD

父、母、自分の三人で食事を取る。会話なんて或るはずも無い。
親父の奴も、知っていて黙っている。こんな壊れきった家庭より、もう一つの幸せな家庭のほうが大事なのは当たり前か。
母親だって、こんな家庭のために料理を作ろうだなんて思っちゃいない。そんな時間があれば、快楽に身を任せているからだ。
だから料理は毎回俺が作ってる。
反抗しても意味は無い。最早存在価値の無い俺が消えた所で、アイツらには百円を落としたぐらいにしか思わないからだ。
かといって死ねる勇気もなかった。
だから、こんな地獄の迷宮から逃げ出したかった。
学校を拠り所にしたところで、そんなのは上辺だけ。なんの解決にもならない。ましてや教師まで見て見ぬ不利をされては、どうしようもなかった。
だが春休み。
事態は一転した。親父の奴が向こうの女に騙されていたのだ。身ぐるみ全てを剥された情けない男は、妻の元へと帰還した。
だが不幸は続く。
母は妊娠をしていた。
30を過ぎた女に、本気でほれ込んだ男がいたのだ。しかも相手はかなりの資産家だった。こうして母は父と離婚を即決した。十分な理由もあったため、法的に可能だった。
だが父は、自分の不幸とは対称的に、幸せを掴み取った母と、無惨とはいえ形式上妻である女を取った男に、理不尽な嫉妬に狂った。
そして土曜日の朝。父は母を殺した。そしてその死体を犯し、自分の体液を死体にかけていた。
それを目撃した俺は、すぐさま家を飛び出した。
何処でもよかった。ただあの家で起きたことが信じられなかった。何処かで時間を潰し、戻って来たら何ごとも無くなってしまわないかと期待した。
そこで入ったのが、駅前の喫茶店だった。そこで一日を過ごしていた。
でも現実は変わらなかった。変わるはずもなかった。家に帰れば、すでに『家庭』は無く、無数の野次馬と警察官で溢れていた………
92名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 03:07:55 ID:OBR2+AAC
こっそりくすねたものをオナヌーに使うとはこれまた王道な
93名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 11:34:53 ID:DP6m76li
そういえば最近妹(わたし)は実兄(あなた)を愛してる更新されてないな
良作なんで続きが気になるとこ
94名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 12:04:49 ID:8kJX791N
彼はオルタやってたみたいだからショックで…
95名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 13:11:15 ID:x9p3wizk
まぁ一気にラストまで書き上げるって言ってたから素直に待ちましょうや
96名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 14:29:53 ID:SGQe+NIG
楓最強伝説の幕開けだ!!

合鍵は残念ながら、藍子たんが敗北に終わったが、
泥棒猫が勝つ世界は間違っているので、リセットして欲しい
97名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 14:34:32 ID:+9A6FJJ0
しかしあれだけ脅迫されておいてサキ先輩と付き合い続けようとする
もと君って…。
98名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 16:35:57 ID:ahY6yAGZ
楓と樹里の人です。こんにちは。
一気にラストは絶対無理だということがわかったので、
とりあえず細切れ更新に戻そうと思います。
その形になるように編集しますのでちょっとお待ちください。
 三日間の出張を命じられた先輩、もとい元樹さんにひっついて、私は大阪行きの新幹線の中にいた。
「樹里はいいさ、おれはあくまで仕事だぜ……?」
「まさか遊びに連れてって、なんて言うつもりはありませんよ」
「たかだか三日だろ? 親父さんに頭下げて休みを貰うほどのことかね……」
「そんなこと言わずに、旅行気分だけでも味わいましょうよ、ほら、駅弁も買ってあります」
「おわ、いつの間に」
 
 例の一件以降、元樹さんは楓さんには会っていないらしい。
 部屋に帰っても、いつもいない。
 パート先に連絡すると、辞めたのだという。
 ただ部屋が定期的に掃除されているところからすると、
 楓さんは彼が部屋にいる時間帯だけどこかへいなくなり、
 会社に行くと部屋に戻ってくる、といった意図的なすれ違いをやっているらしいのだ。
 ご苦労なことだ。
 そんなに顔を合わせたくないのなら、実家にでも帰ってしまえばいいのに。
 
“まあ、楓さんがどこにいようと、私の知ったことじゃないんですけどね。”
 
「そうだ、お茶ある?」
 ぬかりはない。別の袋から、五百ミリリットル入りのペットボトルを取り出す。
「烏龍茶と緑茶、どちらがいいですか」
「緑茶で。―――樹里は本当に気が利くなあ」
「愛です」
「……真顔で言われると、その、なんか、こう、照れるなあ」
 あれから元樹さんはかえって初々しくなったというか、変に老けたところがなくなった。
 楓さんがどれだけ彼に心労を掛けていたのかと考えると殺意さえ沸いてくるが、もう心配はいらない。
 彼の身も、こころも、すべて私だけのものだ。
 
「樹里、唐揚げ一個くれ」
「いいですよ、……はい、あーん」
「あ、あーん……」
 雛鳥のように口を開けたまま待つ、間の抜けた顔さえも愛おしい。
 
 ぐしゃり!
 
「……?」
「どうかしましたか?」
「いや、聞こえなかったのか? 何かこう、空き缶が潰れるような―――」
「全然。空耳じゃないですか? 耳掃除してあげましょうか」
「……揺れが怖いから、後でな」
----

 大阪の支社に向かうという元樹さんと別れ、せっかくなので観光してまわることにする。
 彼が仕事をしている時間に遊びまわるのは正直なところ申し訳ない気もするが、お土産でも買っていって許してもらおう。
 奈良・京都は中学生の時に修学旅行で行ったきりだから、大人の感性で観ればまた違った感慨があるかもしれない。
 
「―――で、いつまでそうしてるつもりですか、楓さん」
 振り返る。
 
 白のワンピースに白い幅広のぼうし、エナメルの小さなショルダーバッグという、
 どこかの避暑地から抜け出してきたお嬢様のような格好。
「……なかなかお洒落ですね」
「……っ」
 大阪は日本の中でも相当暑い都市だし、今の時期なら風邪を引く心配はないとしても、だ。
 それで変装したつもりだというならやはり、頭がおかしいとしか思えない。
 どう考えても人目を引くのはわかりきっているのに。
 ……あ、彼に気づかれさえしなければいいのか。あの人は基本的に他人に興味のない人だからね。
 
「……泥棒猫が、随分とまあ偉そうなこと」
「……数年ぶりの再開だっていうのに、第一声がそれですか?
 どうでもいいですけど、そんな怖い顔してたら可愛いお洋服が台無しですよ?」
「……。そうね、貴女をズタズタに切り刻んでそこのドブ川に投げ捨てたら笑えるかもしれないわね」
 道頓堀を指差す。あらあら、地元住民の方々がニラんでますよ?
「私を殺した貴女を、元樹さんが愛してくれるとでも?」
「兄さんの名前を軽々しく呼ばないで……ッ!」
 ヒステリックに叫ぶ楓さん。やめてください、そこの子供が怯えてますから。
「嫌です。――彼が言ってくれたんですよ?
『おれのことは元樹でいい。いつまでも先輩、じゃ他人行儀だからな。
 そのかわり、おれも樹里ちゃんのこと、樹里、って呼んでもいいか?』
 ……って。嬉しかったなあ……」
「……」
 ……よく耐えましたね。でも、そんなに噛んだら綺麗な唇が台無しですよ?
 
「……どうして、兄さんなの?」
「好きなものは好きだから、今さらどうしようもありませんね。
 極端な話、貴女と先輩が兄妹であることに対して関心は全くありません」
「……結論から言うわ。兄さんと別れてくれない?
 知ってるでしょう? わたしはね、兄さんがいないと駄目なの。
 兄さんじゃないと駄目なの。
 貴女にとってワンオブゼムでしかないひとが、わたしにとっては一番大切なのよ」
 にっこり。
 私は満面の笑みを浮かべ、
「―――お断りします。気に食わないっていうなら、また体を使って誘惑してみたらどうですか?
 ただし、今の先輩が貴女を抱く気になるかどうかは、また別の問題ですがね」
「こ……のッ……!!」
「とにかく、私から先輩に対して何を言うつもりもありませんから。
“言いたいことがあるなら、はっきり面と向かって言わないと、伝わりませんよ?”」
 

 どくどくと、快楽物質が、のうみそから、どろどろと、あはは、あははは……
 下着に恥ずかしい液体が染み出していくのがわかる。
 今夜、彼はしっとりと湿ったそれを見咎め、サディスティックな笑みを浮かべるだろう。
 いやらしい言葉で私の耳朶を乱暴に愛撫するうち、ますます溢れ出すそれを指に取り、
 私の目の前で糸を引かせるだろう。
 侵入を許した瞬間の被虐的な快感、獣のような吐息、滲む汗、彼自身の匂い、筋肉の躍動、
 社会通念上まだ貰えないはずの暖かさが、私の一番奥にじんわりと広がる感覚、
 それらすべてが、この先ずっと、この女に与えられることは、無いのだ。
 
 私は背を向ける。
「さようなら、楓さん」
 ……いい加減、こみ上げてくる笑いが堪えきれなくなってきていたから。
 
----
 
 携帯が鳴った。
「結婚してください」
(―――それは、その、前向きに検討ということで。今どこ?)
「日本橋です。父が脳の衰えを真面目に気にしているようなので、
 例のあれをお土産に買って帰ろうかと思ったんですが。どこも品切れみたいですね、残念です」
(―――そっか。仕事が片付いたから、どっかでご飯食べてからホテルに行こうと思うんだけど、大丈夫?)
「おなか空きました」
(―――てっきり食いだおれているものかと思ってた)
「……元樹さん、私をどういう人間だと思ってるんですか?」
(―――いやいや冗談。支社の人間に美味しいお好み焼きの店を聞いておいたから、そこに行こう)
 最寄りの駅で落ち合う約束をする。
 こんな何気ない、冗談交じりの会話ですら幸せでたまらない。
 結婚してくれ、なんて軽々しく言ってしまったが、
 本当に結婚したら、私は幸せすぎて死んでしまうのではないだろうか。
 本気で心配になってくる。
 
 会社の人のお墨付きだけあって、素晴らしい味だった。これが本場ってやつだろうか。
「ほら、こっちのも食べてみな」
 箸で割って、私の皿にひとかけら置いてくれる。
「元樹さん、何だかうちの父に似てます」
「え、そう?」
「家族で鍋でもやろうものなら、何が何でも自分で仕切らないと気がすまない人で、
 私の器に勝手に具材を放り込んでくるんですよ」
「ああ、あるある。うちもそうだった」
「それが駄目、ってわけじゃありませんよ。
 ただ、もう少しこちらの食べるペースも考えて欲しかったなあと」
「……ごめん、押し付けがましかったか?」
 しゅんとなる彼。ちょっとかわいい。
「いえ、かまってもらえるのは嬉しいです」
「……そっか」
「それにしても、“好きな人とふたりで食べるご飯はそれだけで格別ですね”」
「ん……、ああ、そうだな」
 ……貴方が笑ってくれるなら、私はそれでいいんですよ。

 元樹さんがホテルの部屋の鍵を指先で振り回しながらやってくる。
「さて、経費ではシングルの部屋しか取れなかったわけだが」
「まさかこの期に及んでベッドが狭いとか言わないですよね?」
「おれと同じ部屋に泊まるのは決定事項なんだ……」
「そのつもりだったので、部屋は予約していませんでしたが」
「いい根性してるよ」
 手招きして、彼の耳元で囁く。
(その代わり、御代は身体でおつりが出るくらい払いますから)
 ……。
 まだまだ若いですね。その方が嬉しいですけど。
 
 思う存分ご奉仕させていただいた。
 双方息も絶え絶え、といった様子でベッドに重なり合って寝転ぶ。
「どう、でし、たか?」
「……すごかった、気絶するかと思った」
 満足していただけたようだ。
 具体的に何がどうすごかったのかは武士の情けということで、訊かないことにしておく。
「それにしても……その、なんだ」
「……?」
「いや、いつもより声が、その、結構出てたなあ、と」
「……。“そうですね、誰に遠慮することもありませんから。
 でも、こういうホテルの壁って薄いですから、
 隣部屋のお客さんに迷惑掛けちゃったかもしれませんね”」
「……。謝りに行ったほうがいいのかなあ……」
103 ◆kQUeECQccM :2006/03/14(火) 17:23:23 ID:ahY6yAGZ
放置した形になってごめんなさい。
少しずつ進めていこうと思います。

実は、ラストシーンだけは決まっていたのですが、
こう鮮血の結末が続くとあれかなあと。
シーンそのものは既に完成しているので、アナザー扱いでいずれ公開しようと思います。
104名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 17:26:12 ID:S5ALCEyZ
作者様(*^ー゚)b グッジョブ!!
のんびりと待たせていただきます

元樹くん逃げて〜
隣の部屋から凄い危険な匂いがするわよ〜
105名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 17:27:42 ID:xO7/brtK
ドロドロの修羅場がすきでも最後はさわやかに終わってほしいという気持ちもあります
こうステーキ、ステーキ、ステーキが出され続けるとたまには魚が食べたくなるんですよ

>>103
乙です!楽しみにしてました
やっぱり樹里は俺のベストキャラです
106名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 17:33:05 ID:DP6m76li
壁薄いとか明らかにそれ意識してるよな・・・
107River of Tears 第4回 ◆AuUbGwIC0s :2006/03/14(火) 19:36:10 ID:uVJ4ZeOb
 可奈がいないということもあってか久しぶりにSF研で放課後を過ごしていた。
 カタンの開拓が一回終った辺りで時計を見る。そろそろ時間か。
「オレそろそろ帰りますんで」
「じゃあ、お姉ちゃんと一緒に帰ろうよ」
 赤井先輩とはいつものやりとりだ。でも随分久しぶりな気がした。

 帰ろうとしたら下駄箱で少々困っていた。
 傘がない。きっちり自分の名前まで書いていたのに間違われるはずがない。誰かに盗られたのかもしれない。
 おまけに外は雨が叩きつける轟音。冗談じゃない。
「ユウちゃん早く帰ろうよ」
「傘ないッス……」
「じゃあ、傘入れてあげよっか?」
「ああ、ありがとうございます」
 いつも笑みを絶やさない顔が女神の笑顔に見えてきた。
「でも頼み方ってあるよねー。例えば『優しいアイお姉ちゃんお願いします。傘に入れてください』とか」
「へ?」
 女神の笑顔が何か別のものに思えてきた。
「さあさあ、『優しくて綺麗なアイお姉ちゃんお願いします。傘に入れてください』」
「なんか形容詞が増えているんですけど……」
「『優しくて綺麗で大好きなアイお姉ちゃんお願いします。相合傘で一緒に帰ってください』」
 人のツッコミを無視したまま形容詞は増えて、なんか一部変更されていた。
 羞恥プレイか、これ?
 外は土砂降りの雨。傘も持たずに出ようなんて思わない天気だ。
「や、優しくて――」
 背に腹は変えられず人生初めての羞恥プレイに挑戦した。
108River of Tears 第4回 ◆AuUbGwIC0s :2006/03/14(火) 19:37:36 ID:uVJ4ZeOb

 雨の中一緒に肩を並べて歩く。並べて歩くというか既に肩はくっついている。
 理屈で考えれば抱きつかれ慣れているので別に意識する必要はないのに何故か意識してしまう。
「ユウちゃん、もっと寄らなくちゃ濡れるよ。
 でも、こうしているとねえ――」いつも笑っている顔が意味ありげに見えた。
「なんスか?」
 ――こうしてると恋人同士みたいだね。
 先日可奈が言ってた言葉頭の中で再生される。少しだけ期待してみる。
「姉弟みたいだね」
 ――期待したオレが馬鹿でした。
 期待を裏切られてちょっとだけガックリしつつ信号待ちをしていた所、思いっきり目の前を車が横切った。
 避ける暇すらなく濡れ鼠と化していた。
「ついてないッスね、先輩」
 そう言って先輩の方を見ると同じく濡れ鼠になっていて、透けて見えていた――その下着とか……
 慌てて視線を前に戻す。
「私の家すぐそこだから、着替えれるよ」先輩はいつもと変わらない声だった。
 気づいていないのか、男として全くみてくれていないのか――多分両方の気がした。


 先輩の家は駅と学校の間にある。
 そういえば家の前まで来たのは何度もあったが家に上がるのは初めてだ。
「はい、タオル。
 ユウちゃん、着替えるよね。背格好同じぐらいだから、きっとヨウちゃんの服合うと思うよ」
 ヨウちゃんって弟さんかな。そういえば余りそういうのは聞いたことない。
「いや、いいです。今日体育の授業あったから一応着替えはあります」
「えー、絶対似合うと思うのに」心底残念そうな声を出す。
 人様の服を着るってのはどうも抵抗がある。自分の服を誰かが着るってのも抵抗がある。
「お茶ぐらいは飲んでいくでしょ?」

「ユウちゃん、紅茶よりコーヒーだよね」
「あ、はい」
 コーヒー豆のいい匂いが漂ってくる。そういえば今までインスタントと缶コーヒー以外ロクに飲んだことなかったんだよな。でも、この匂いは結構好きになれそうだ。
「冷蔵庫にシュークリームあるけど……ユウちゃん甘ったるいの駄目だよね?」
「ええ、まあ」
「わらび餅用意しておけば良かったかなー。ユウちゃん好きでしょ?」
「そうですけど……」
 確かにわらび餅は好きだけど、そんな事言ったことあったっけ?
 甘ったるいのが駄目だとかコーヒー派だとかは言ったかもしれないが、わらび餅のことまで言った記憶は全くない。というか今まで好物として人に喋った記憶すらない。
「ねえユウちゃん、私の弟になってよ」
 いつの間にか自分の背後にまわってい先輩に抱きしめられていた。後頭部に胸の感触がある。年頃の男の子なら気が気でないはずなのに不思議と落ち着いている。慣れって怖い。
「イヤっス」
 何度目かもう忘れかけた程繰り返したやり取りだ。
「んもう」少しだけ怒ったふりをする声がする。
 今は顔が見えないが、いつもならこんな声をしていても笑っている。
「しかたないな、ユウちゃんは」
 そう言った後、耳が少し生暖かくなって何か固いものがふれて――耳が甘噛みされてる。
「うわっ! 何するんですか?」
 そのことに気づいたら思わず引いた。
「スキンシップ。姉弟ならするでしょ?」
 先輩はいつもの笑顔だった。
「いや――しないでしょ、普通?」
「ユウちゃんのお姉さんとは仲良くないの?」
 少し考え込んでみる。
 姉とはあまり仲良くない。歳が離れすぎているので共通の話題が少なすぎる。こっちがようやく小学校に上がったと思ったら向こうはとっくに中学で、こっちが高校に上がったと思ったら既に働きに出ている。
 しかし、抱きつきまでならともかく、耳の甘噛みとかはしないだろ、普通。
「ほら、私がお姉ちゃんになってあげるから、お姉ちゃんって呼んでよ」
「イヤっス」
 条件反射で答えていた。
109River of Tears 第4回 ◆AuUbGwIC0s :2006/03/14(火) 19:38:07 ID:uVJ4ZeOb
「はい、傘」
 先輩は家を出ようとするオレに傘を渡してくれた。
 これを忘れたらきっとまた戻らなきゃいけないという恥ずかしい目に会うのに忘れかけていた。
「じゃあ、また明日学校で」
 外に出て傘を開いてみると柄の部分にマジックで赤井洋平と名が書かれていた。
 ヨウちゃんって言ってたから弟さんのかな、多分。
 しかしちゃんと借りてきたものとは言え、人の名前が入っている傘を使うというのは何故か盗んできたもののようで少々使いづらかった。

 雨の中、歩き出して気づいた――甘噛みされた耳がかゆい

        *        *        *

「ユウちゃんってやっぱりヨウちゃんと似てるね。
 ねえヨウちゃん、ひょっとしてお姉ちゃんにヤキモチ妬いてる?
 駄目だよユウちゃんが弟になってくれたらヨウちゃんとは兄弟だもん。
 兄弟喧嘩はお姉ちゃんが許さないからね」

        *        *        *
110River of Tears 第4回 ◆AuUbGwIC0s :2006/03/14(火) 19:39:01 ID:uVJ4ZeOb
なんか放置期間長すぎたせいで勝手が違うズラ
111名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 22:33:28 ID:0iGwY1p+
二人・・・いや三人か!?
112名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 22:53:19 ID:onaEg1NR
先輩実はサイ娘!?(((( ;゚д゚)))
複雑な四角関係になりそうですな
113名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 23:39:30 ID:aE1LyPl7
楓の復讐は樹里を幸福の絶頂からどん底に叩き落とす事だろうか
114名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 00:00:18 ID:WHppuV8n
>>113
デスノート風にお前の策は読んでいるオチでいいかとw
115名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 00:05:09 ID:Y4tDHZwG
>>113
ここは楓のI can fly でどうだろう。
116名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 00:33:09 ID:klnVGCOl
楓かわいそう
117名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 00:34:42 ID:1kKNrB+w
不義理チョコの人、前スレ埋めGJ!
次は姉エンドを(ぉ
118名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 01:46:37 ID:MgJr/7c+
ちゃんと付き合いだしてもヤキモチ焼くこと忘れないとはええ子や
〃〃∩  _, ,_
 ⊂⌒( `Д´) < でも姉ちゃんからは本命じゃなきゃヤダヤダ!
  `ヽ_つ ⊂ノ   
119『Which Do you Love?』 ◆AsuynEsIqA :2006/03/15(水) 02:19:01 ID:A0AxLANq
やはりというか当然というか。俺は親戚中をたらい回しにされた。そりゃそうだ。犯罪者の息子だなんてレッテルをはった奴の面倒なぞ、誰もしたくない。
結局十数回断られた後、今の家庭に引き取られた。とはいえ、住む場所は別という条件付きだ。それでもまだ渋っていたぐらいだ。
あの日以来、土曜日は毎週あの喫茶店に来ていた。部屋にいると、あの情景を思い出してしまうからだ。
喫茶店は駅前から少しそれた裏道にあり、客はほとんどいなかった。それがまた俺にとってもいい環境だった。店に来ては読書に没頭していた。
そんなある日、アイツが……麻子の奴が現れた。
「こんな所に来てるなんて……以外ね。」
全く。この時ばかりは呆れて何も言えなかった。あれだけ卒業式の日に拒絶しといて、まだ話しかけてきたのだ。
「あ、その本!私も読んでるの!」
にやにやしながら鞄から同じ本を取り出した。
「面白いわよねー。特にこの主人公が……」
不愉快だった。自分の不可侵領域をここまで犯されることが初めてだった。だから何も言わず席を立った。
出口のドアを開けようとした時。
「高校……合格したの?」
何気ない……『普通』に満ちた会話だった。ただそれが暖かかった。
「………」
黙って首肯をし、店を飛び出していた。その暖かさが……なによりも堪えたからだ。
翌土曜日
「ふっふっふっ。読めたわよ。あなたが店に来るのは毎週土曜日ね。」
絶句した。
まさかまた来るとは思わなかったからだ。ましてや行動パターンまで推測していたのだ。
「………」
「相変わらず無愛想な奴ね。」
「あ……」
こいつなら。こいつなら俺を必要としてくれるのだろうか?俺を受け入れてくれるのだろうか?それともただの同級生としてのよしみなのだろうか?
不安と希望を含め、こう言った。
「立ってないで座ったら?」
これが二人の関係の始まりだった………




120『Which Do you Love?』 ◆AsuynEsIqA :2006/03/15(水) 02:21:23 ID:A0AxLANq
「ん………」
目が覚めた。不思議と体の疼きは収まっていた。今見た夢は、聖と私の始まりの夢だった。
あの時私は躍起になっていた。どうしても聖と仲良くなってやる、と。そうじゃないと気がすまなかった。
だから初めて喫茶店で会った次の日から、同じ時間帯に毎日店へと足をのばしていた。
今考えれば軽いストーカーだ。でも嫌じゃなかった。少し心地よい気もした。
そして二回めに会った日……
「立ってないで座ったら?」
初めて見た笑顔に、私は墜ちた。
「会いたいよ……聖………」
どうしても聖に会いたかった。あの笑顔を見たかった。声を聞きたかった。彼の……全てを求めていた。
たとえ隣りにあの女がいてもいい。今すぐに会いたい。ダメなら奪うだけ。消すだけ。
時計を見る。もうこの時間なら家にいるだろうか。そんなことを考えながら、すでに体は動いていた。




「やっべぇやっべぇ。」
どうやらあのまま放課後まで一気に寝てしまったらしい。起きれば五時を回っていた。
少し寝冷えしてしまった体を暖めるよう走っていくと、誰も居ない下駄箱で、丁度タカビと行き会った。
「あら、聖さん。今お帰りですか?」
「まぁな。寝過ごしちまってよ。」
「あらあら、相変わらずだらしのないことで。全く、受験生としての自覚が足りないのでは?」
「うっせー。お前だって今帰りだろうが。」
「ふふ、私は今から彼とデートですの。だからそれまで図書館で時間を潰していたんですのよ。」
「へーへー。お惚気はあっちでやってくだせぇ。」
しっしっと手を振って追いやる。
そんなのも意図せず、鼻歌交じりで幸せそうに歩いて行く。
「『彼』か……」
俺はそんなタカビに哀れみと謝罪の視線を送りながら、雨の中を下校した。
121『Which Do you Love?』 ◆AsuynEsIqA :2006/03/15(水) 02:25:59 ID:A0AxLANq
最早嫉妬の影も無くなって来ましたorz
修羅場嫉妬とやりすぎても食傷気味になってしまうかな、と言い訳。
嫉妬も出すから他に目移りしないで!!(つд`)
122合鍵  ◆tTXEpFaQTE :2006/03/15(水) 05:08:33 ID:ynjhoReW
合鍵  最終回、違うやつ。

(三十一話からの続き)

藍子を言い負かしてやった。
ああは言ったが、本当を言えば、元也が逃げ出すような事は無かったとサキには分かっていた。
元也が、あんな状態の藍子を放って、どこかに行くはずはない。

分かっていても、藍子を罵る事は止めれなかった。
うずくまり、泣いている藍子を見るのは、胸をすく、どす黒い勝利感があった。

そのまま、サキが藍子を見下ろし続けていると、
「…サキ、さん。そんなきつい事、言わないで下さい」
耳元で、元也の声。

ソファーで寝ていた筈の元也が、何時の間に来たのか、サキの後ろに立っていた。
驚いている内に、サキのスカートのポケットに手を入れられた。
しばらく、ポケット越しに弄られるサキ。
声が漏れる。もう少しでいけそうだった。

快感に身をゆだねていると、ガチャリ、と金属音。
手錠を絞めた音だ。元也に手錠をかけられた。

サキに手錠をかけると、元也はサキのポケットから手を抜いた。
その手には、いくつもの鍵が握られていた。

サキから鍵を取ると、元也はサキを強引にベットに押し倒した。
そして、自分が縛られていた縄を使い、サキをベットに括りつけた。

あら、これじゃさっきまでとは逆じゃない。いやん。いじめないでえ。
元也に荒っぽいやり方で襲われる事を想像し、サキはときめいた。

それなのに、元也はサキから離れ、首輪を付けられている藍子の方へと向かった。

サキ「も、元也君ッ!!何するつもりよ!!」
元也「何って、決まってるでしょ。
   藍子の首輪、取ってやるんですよ」
手にした多くの鍵の中から、どれが首輪の鍵か探しながら、元也は返事をした。

藍子「ああ、あああああ、もとくん、もとくん、もとくん、もとくん。
   ……ううう、ああ、もとくん、もとくん」
元也が助けてくれる。
そのことに感激し、藍子は顔をクシャクシャにして泣き喜ぶ。
サキの声をあげている事は分かったが、どうでもいい事だった。
もとくんが、私を助けてくれる。私を選んでくれたんだ。わたしを。

首輪が外れると、藍子は元也に抱きついた。
元也に抱かれていると、さっきまでの怒りや悲しみが嘘のように解けていく。
もうずっと、こうして抱かれていたい。
嗚咽をこぼしながら、元也にしがみ付いていた。
心が落ち着いてきた―――――――

123合鍵  ◆tTXEpFaQTE :2006/03/15(水) 05:10:18 ID:ynjhoReW
>>122の続き


そう思いはじめたら、急にベットに押し倒された。
藍子「え、あっ、キャ!!」
サキ「ちょ、ちょ、まって」

藍子も腕をベットに縛られた。

体勢として、サキは仰向けで固定され、藍子はサキにかぶさる様な形でうつ伏せで固定された。

まだ状況が飲み込めていないサキだったが、目の前の藍子が急に顔を赤らめ、目を潤ませた。
なにかを我慢するような表情だった。

あんなに憎んでいた藍子が、可愛く見えた。

藍子にサキが見とれていると、藍子が嬌声を上げ、その体が動き始めた。
元也が藍子にしはじめたからだと、数秒経ってから気が付いた。

サキの胸に怒りが燃え上がった。

手は縛られているが、口は自由だ。
噛殺してやる。

頭を起こし、藍子の首筋に近づける。
―――――が、藍子が動きまくるせいで狙いが外れた。

藍子「ふあっっんん!!!」
サキの唇が藍子の胸にあたり、藍子が予想外の悲鳴をあげた。
その悲鳴を聞いても嫉妬心が晴れる事は無かったが――――
しかし、なぜだか、サキの胸に快感が走った。

サキの心の嫉妬心が、加虐心と融合した。
いいわ。責めまくってあげる。

今度は意図的に、舌を使って胸を責めた。首筋も舐めた。口に含み、転がした。
自分の豊かな胸と違い、藍子のはぺったんこだ。
けど、白くてピンクで綺麗だった。
こんな、子供みたいな体で、よくもまああんな事出来たものねえ。
なんだか腹が立ってきて、かなりきつく責めてやった。

後ろから元也に責められて一杯一杯だったところに来て、今度はサキにまで下から
責められ、藍子はあっという間に達した。

しかし、元也とサキは責めるのを止めない。
特にサキの嬲りは恨みを晴らすかのように執拗だった。

最初に達してからも一時間以上責められ、藍子がぐったりしたところで、元也はその
標的をサキへと変更した。
124合鍵  ◆tTXEpFaQTE :2006/03/15(水) 05:11:40 ID:ynjhoReW
>>123の続き



体力も尽き果て、頭もはっきりとしない藍子は、サキが目の前、いや目の下でサキが
元也に襲われているのを見ていた。

藍子の視線は、サキの胸を捕らえていた。元也がサキを動かす度に、サキの胸は形を変える。

自分のより、ずっと大きい。大きいのに、きれいで、すらりとしている。
……………これで、これで、もとくんを、ゆうわくしたのね……

ゴツリ、と怒りが湧いてきた。
が、それを察したかのように元也が後ろから手で藍子のをいじってきた。
サキへの怒りの思考が中断された。

自分が嫌な気分になったのを、もとくんはすぐに感じてくれた…!!
その喜びを、指でいじられながら、藍子は感じ続けた。

サキへの殺気じみた嫉妬心が少しだけ薄れていった。

そうなると、今度は自分の下で喘いでいるサキさんを、いじめたくなった。
いつも余裕ぶってるサキさんが、こんなに乱れているを見るのはいい気味だった。
もっと、取り乱せばいいんだ。

藍子は、気に入らなかったサキの胸を、口でいぢめはじめた。
途端にサキは悲鳴をあげた。
それを聞くと、藍子の体に快感が走った。

元也がサキから離れた後も、藍子はサキの胸を責め続けた。
藍子がサキの胸から口を離した頃にはもう、サキは失神していた。

事が終わり、三人は泥のように眠った。

翌朝。
藍子とサキは同時に目が覚めた。
二人は起き上がり、睨みあった。しかし。

昨日、二人ともがお互いにあられもない姿を見せてしまった。
何となくばつが悪くなり、どちらからと言う事も無く、目を逸らした。
二人とも顔が赤い。

そうしている内に元也が目を覚ました。
二人におはようと言うと、部屋から出て行った。慌てて藍子とサキは後を追った。

パンとコーヒーを三人前、元也が用意した。テーブルに着き、三人で食事をした。

食べ終わると、元也が二人に家に帰るように言った。
藍子とサキ、二人ともが嫌だと言った。
だが、元也は聞く耳をもたず、有無を言わせなかった。
何となく、迫力に負け、二人は帰る準備をはじめた。

125合鍵  ◆tTXEpFaQTE :2006/03/15(水) 05:13:59 ID:ynjhoReW
>>124の続き


その日から、元也たちは学校に行く事を再開した。
そして、学校から帰ると、藍子とサキは争うように元也の家へと走った。

三人が元也の家に揃うと、元也はまた藍子とサキを縛り上げ、責める。

藍子とサキ、お互いへの嫉妬心が消えたわけでは無かった。
だが、それを解消させる方法が、相手を夜、責めまくる事へと変化した。
相手が泣いて懇願しても、止めてやらない。気絶しても、失神しても、責め続ける。
呼吸困難になるほど責める事が、怒りを納める手段になった。

相手の弱いところを見つければ、とことん責める。
そんな日が、続いた。

ある日、元也が藍子から先に始めようとすると、サキが
「ちょっと待って、昨日も藍子ちゃんからだったでしょう。
 今日は、私からお願い」
その日から、初めにされるのは、交代で、と言うことになった。

またある日、サキが、元也とは学校にいる間はしない、と言う二人の間で交わした約束を
破ると、藍子はサキを罰として、その日の夜中責め続けた。
翌日、サキは疲労と全身筋肉痛、足腰が立たず、学校を休んだ。
後から元也が聞けば、十分に一回ぐらいのペースでいかされ、それが夜中続いたのだと言う。

逆に、藍子が順番を破り、サキが来る前に元也と始めていた現場を押さえると、
ロータを入れたまの藍子に貞操帯をつけて帰っていた。
藍子はそのまま、2日間過ごすはめになった。当然、学校にもそれでいった。

そんな日々が続いている中、元也が風邪を引いてしまった。
二人は甲斐甲斐しく看病をしてくれた。

藍子「じゃあ、私達は居間で寝てるから、何かあったらすぐ呼んでね」
元也におかゆを食べさせたあと、二人は元也の部屋から出て行った。

汗をかいたおかげで、ひどく喉が渇いた。
二人を呼ぼうかと思ったが、時計を見ると夜の一時。
もう寝てしまっただろう。
仕方なく、キッチンまで行こうと、ふらつく足取りで階段を降りた。

一階に着き、キッチンに行こうとすると、居間から二人の声が聞こえた。
雰囲気からして、ただ喋っているわけでは無さそうだ。

こっそり覗いて、元也はびっくりした。
二人で、絡み合っていた。

そう言えば、二人はお互い、執拗なまでに責め、責められていたのだ。
元也がいないからと言って、しなかったのでは、体が疼いてしまうのだろう。

二人の行為を見ると、元也はこっそりとドアを閉め、自分の部屋へと戻っていった。
早く風邪を治して、あの二人に混ぜて貰わなくては。
126合鍵  ◆tTXEpFaQTE :2006/03/15(水) 05:14:49 ID:ynjhoReW
>>125の続き


次の日には、風邪は全快していた。
さっそく、と言わんばかりの勢いで元也は二人に押し倒された。

藍子を責めている最中に、藍子が
「ああ、やっぱり、もとくんが、もとくんがいないと、ぜんぜん、ぜんぜん、ちがうよおっ!!」
と叫んだ。サキが慌てて藍子の口をふさぐ。

元也が意地悪く、俺が寝てる間、二人でこっそり、何してたんだよ、と言うと、サキが
「あ、藍子ちゃんが、体が疼いて寝れないって言うから、仕方なく、私は付き合ってあげた
 だけよッ!!」
すると藍子が
「な、何言ってるのよ!!!
 最初にに誘ってきたのはサキさんじゃないの!!
 そのいやらしい胸が火照っておかしくなりそうって言うから、私が仕方なく!!」
「嘘言わないで!いやらしいのはそっちじゃないの!!」
「いいえ!!そっちでしょ!!」

二人がどっちが誘ったのか言い争っているのを聞きながら、元也が
「…おれは、ちょっと位、エッチな女の子が好きだけどなあ」
と呟くと、藍子とサキは同時に、
「「私から誘ったの!!」」
と叫んだ。

そのそろいっぷりがおかしく、元也は笑い出した。
藍子とサキは、何で元也が笑い出したのか分からず、顔を見合わせた。
だがその内、元也の笑いが感染したのか、二人とも笑い出した。

三人の笑い声が、部屋に、響いていた。
127合鍵  ◆tTXEpFaQTE :2006/03/15(水) 05:15:58 ID:ynjhoReW
最終回、違う終わり方をを望んだ方が多かったので、これまでつきあい、
感想を書き込んでくれた事へのお礼として、ハーレムエンドを書いてみました。
いかがだったでしょうか
128名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 05:37:03 ID:33dgGnqa
>>127
おかげで胸のモヤモヤがとれました。
129名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 07:13:26 ID:YyYw0imO
ユーザーフレンドリーすぎる作者様には足を向けて寝れません
130名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 08:13:42 ID:JYTGoEO5
ゲーム化希望
131名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 08:54:02 ID:UkuDJfd9
修羅場シーンは構図が命。絵師様頑張れとしか。
132名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 09:02:44 ID:Vg8qeQL+
GJ
133名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 09:59:20 ID:ymw2u+Sv
これで個別ルートまで含めたらどう見ても
そこいらのゲームよりも格上だよママン

Which do you loveの嫉妬楽しみに待たせてもらうっす
134名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 10:02:36 ID:Gms8aCO7
神々に感謝
135名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 10:54:08 ID:MUMeYFty
だから何でこんなにフレンドリーな神様多いんだよここ
もう最高
136名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 11:14:56 ID:TmRXpzHh
素晴らしすぎます。
ありがとうございました!
137名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 12:11:47 ID:ANItg0C4
レズ寝取られかと思っちまったぜ…
138名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 16:07:03 ID:QYGkQqLP
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|           あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|  }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|          『受け専門の主人公だったのに、気が付いたら、主導権を握っていた』
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |           な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人          おれも 何が起こったのか わからなかった…
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ         頭がどうにかなりそうだった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉        後付設定だとかテコイレだとか
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ       そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ     もっと恐ろしいものの 片鱗を味わったぜ…
139名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 16:26:34 ID:tknUA/vw
一瞬レズルートになるのかとガクブルしてしまったじゃないかこのやろう( ´∀`)σ)Д`)
140沃野 Act.4 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/15(水) 19:55:44 ID:nm/mYf96
 よーくんが自慰をしているのに気づいたのは、中一の秋だった。
 その頃、よーくんが寝付くのを視守ってから眠りに就こうと頑張っていた。
 でも、わたしは十時前に寝てしまうのに、彼はもっと遅くまで起きてるようで、なかなか難しかった。
 よーくんの寝顔を見てから眠ったら気持ちいいだろうなぁ、と思いつつカーテンの彼方を眺めていた。
 すると、まだ十時前なのによーくんは消灯してベッドに潜り込むところだった。
 これはチャンスだ。よーくんが寝付く瞬間を捕捉しよう。
 多少浮き立った心で観察したけれど、彼は輾転反側と寝返りを打つばかり。
 もう涼しくなって寝苦しい季節でもないのに、どうしたんだろう?
 じっと「眼」を凝らしていると、よーくんは掛け布団を跳ね除けて起き上がり、電気を点けた。
 眠れないのかな……何か悩みでもあるのかな……て心配していたら。
 突然、パジャマのズボンを下ろした。パンツごと。
 思わず「眼」が丸くなった。無論、比喩だけど、実際そんな心地がした。
 部屋で寛いでいるときはだらしなく股間を掻いたりお尻を掻いたり、なぜか腋の下や足の裏を嗅ぐ
ような奇行に及ぶよーくんだけど、パンツを下ろしてアレを剥き出しにするのは初めて見た。
 半ば思考が止まっているわたしをよそに、よーくんが晒し出したものに手を伸ばす。
 何度か視たものではあった。が、まさか「勃起」という現象があれほど凄いとは思わなかった。
 よーくんのそれは普段とはまるで別物で、自分の体内に飼っている動物を引っ張り出したようにも視えた。
 慣れた指つきで皮をめくると、ゆっくりとしごく。日課のように、ぎこちなさを感じさない動き。
 事実、日課だったんだろう。たまたま、その日がいつもより始めるのが早かっただけで。
 いつもはわたしが眠ってからの時間帯にしていたというだけで……
 「オナニー」という言葉は聞いていたし、概ねどんなものかも知っていたが、いざよーくんが
しているところを視るとショックを受けた。よーくんが男の子なのは当たり前だし、わたしだって
異性として意識しているし、求められれば、えと、その、やぶさかではないつもりだった。
 しかしそれはそれ、だった。知識としてしかインプットしていなかった事柄を「眼」の前で堂々と
(そりゃ、視られてるとは思ってないだろうけど)遂行されると、動揺しすぎて思考がポッカリ空白になった。
 これは、さすがに、視ないでおいた方がいい……遠くから理性の訴えが響いた。
 でも、蠢く指に翻弄されて跳ね回るよーくんの秘密めいた場所から「眼」が離せなかった。
 テスト勉強しなきゃいけないと分かっているのに他のことがやりたくなる、あの気持ちを百倍強化した感じ。
 よーくんはきつく目をつむって指を動かし続けた。
 静かに。黙々と。

 ……ねえ   よーくん、
  その脳裡に  何を    誰を
     思い浮かべているの  ……?

 思考の空白が埋まり、足早に訪れたのは興奮ではなく、虚しさと哀しさだった。
 こんなに、わたしが視ているのに、そばに感じているのに。
 手が届かない。わたしの手が、伸ばしても伸ばしても、どこにも届かないのだ。
 やがて言葉もなく欲望を吐き出し、気だるげに脱力した後で処理にかかる一部始終を、泣きたくなる
気持ちのまま視守っているしかなかった。
 どんなに遠くが視えたって、すぐそこにいるよーくんの頭の中を視ることはできない。
 彼が何を考え、思っているのか、分からないままただ視ていたってどうにもならない。
 ──わたしは、手を届かせたかった。
141沃野 Act.4 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/15(水) 19:59:52 ID:nm/mYf96
 行動を起こさないといけないのは自明だったけれど、さりとて具体的な方策はなかった。
 昔からずっと露骨なくらい好意を示してきたのによーくんが反応してくれないのはただ鈍いだけじゃなく、
知っていてわざとわたしから距離を置いているんじゃ……って考えると告白には踏み切れなかった。
 よーくん、好き──胸の裡でなら、何千回、何万回と呟いた。
 舌に乗せる直前まで行ったこともあった。でも、断られるのが怖くていつも後回しにしてきた。
 頑張ろうとは思ってみても、勝算を見積もる材料が乏しくて、不安だったのだ。
 自分に自信は持っていた。よーくん以外の男子にだったら何人も告白されたし、よーくんだって
チラチラとわたしの体に視線を這わせるようになった。満更興味がないわけでもないだろうし、
まったく異性として意識していなかっただなんてありえない。
 よーくんがあくまでわたしという存在を欲しいと思っているのか、それとも不特定の女の子に対する
関心がたまたまわたしの方にも向いているだけなのか、その判断はつかなかったにしても。
 別にどっちでも良かった。よーくんがわたしを「綾瀬胡桃」としてではなく「手近なところにいる
女の子」として見ているのでも構わなかった。よーくんが他の子を見さえしなければ、わたしは
それで充分なのだ。

 他の子を、見さえしなければ──?

 ああ、なんだ……簡単なことじゃない。
 わたしはようやく方針が見えた気になって笑った。
 よーくんに、わたし以外の女の子との接触を断たせればいいんだ。
 性欲を持て余している彼は「女の子なら誰でもいい」って思ってるかもしれない。
 選択問題みたいにいくつかの候補があればよーくんの気持ちはどこに向こうか予想できないけれど、
わたし以外の子と関係を深めることができない状況に追い込めば、彼は自然とわたしを唯一の候補と
見做すようになるはず。選択肢が一つしかなければ、誰だってそれを選ぶしかないんだから。
 よーくんの人間関係を封鎖する。見えない檻に閉じ込める。それが、中学生の間に心血を注いだこと。
 席替えのときは籤引きの中身に「眼」を向け、必ずよーくんの隣を確保した。存在を近くに感じられる
点でもうってつけの位置だったけど、よーくんに近づく女を汀で迎え撃つ絶好のポジションでもあった。
 行動を監視するのは当たり前。そばを離れているときによーくんが他の子と会っていても、偶然に
見せかけて駆けつける。携帯の番号を交換するような女友達は絶対につくらせなかった。
 ただ視ているだけでは無益な力も、行動と結びつければ役立つにことこの上ない。
 いつもよーくんを視てる、という安心感があった。彼がわたしの知らないどこかでよからぬことを
しているのでは、という不安に苛まれることもなかったから余裕も湧く。自慰に飽き足らなくなって
悶々とするよーくんは遠からずわたしに食指を伸ばすと信じて疑わず、泰然と構えていたわけだ。
 その安心感と余裕が仇となったのかもしれない。持久戦に耽っているうち、中学を卒業してしまった。
 ──このままでは駄目だ。もっと積極的な策を取らなくちゃいけない。
 募る想いと焦りから、警官だった祖父の部屋に忍び込んで手錠を調達した。
 然る後、よーくんを部屋に誘い込もうと試みた。
 オナニーばかりを繰り返すのはよーくんの体にも良くない気がしたのだ。彼のためを思うからこそ、
手段なんて選んでいられない。わたしから襲うみたいな形になるのは内心忸怩たるものがあったし、
よーくんの自由意志を蔑ろにするみたいで心苦しかったにしても、こっちにはちゃんと愛情があるわけで
結果的にはよーくんも満足してくれるに違いないから別に犯罪じゃないよね。うん、完璧な理屈。
 でもよーくんはどんなに誘っても部屋に上がろうとはしなかった。
 もう気軽に部屋を出入りできる年頃ではないんだ、と気づいた。ああ、もっと早くやっておけば……
 悔やんでも仕方ない。
 しかし諦めることもできなくて、鍵の掛かる引き出しにはまだ手錠が仕舞ってある。
142沃野 Act.4 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/15(水) 20:04:16 ID:nm/mYf96
 周りのみんなはわたしをよーくんの彼女って見てくれている。
 残念ながらよーくんは「違う」って否定するけど、形成された包囲網が一種の圧力になっていたはずだ。
 しかし今、それも綻び始めている。
「おい、胡桃。あんたの彼氏が一年の子と浮気したとかしないとか、やたら噂になってるよ」
「よーくんが浮気だなんて、そんなまさかぁ」
 心配そうな梓に、繕った笑みで応えながら、穏やかな気持ちではいられなかった。
 千里眼で声まで聞くことはできない。でもちょっとだけなら唇を読める。
 「せんぱい・すき」「つきあって・ください」──何かの間違いなら良かったのに。
 荒木、麻耶。ちっちゃくて可愛くて、遠い国のお姫様みたいな下級生。
 男の子に対して冷淡で、つれない素振りが得意な子だけど、だからって安心はしていなかった。
 よーくんは生意気な女の子を転ばす素質があるから……昔のわたしみたいに。
 用心して早めに釘を刺しておかなきゃって思っていたら、タッチの差で先を越されてしまった。
 今からでも刺せるかな。うん、刺さないと。
 何を?
 釘を。
 刺したいな、あの青い目に。刺したいな、あの高い鼻に。
 顔中、釘・釘・釘で埋め尽くしてあげたいな。
 あはっ──喩えだけどね?
「うっ。胡桃の表情……なんか怖くね?」
「そう?」
 昼休みになったことだし、お弁当を小脇に抱えてよーくんの教室へ向かう。
 ごはんを一緒に食べるのはわたしたちにとって日常の一部だ。誰にも邪魔はさせない。
 教室の前まで来た。開け放たれた入口から中を覗く。

 あの女が。よーくんのそばに立って、あろうことか──手まで握っていた。

 体温が下がる。口のあたりが強張りそうになる。訳が分からない。
 ねえ、荒木さん。あなた、誰の許可を得てそんな近くにいるのかな?
 よーくんにはわたしという存在がいるってこと、分かっていてふざけた真似をしてるのかな?
 冗談も度を越すと、笑えなくなるよ?
「…………あはっ」
 笑えないと思いつつ、込み上げてくるのはおかしさだった。
 怒りや憎しみが歴然としてある一方で、笑い出したくなる気分もどんどん湧いてくる。
 ずっと待ち望んでいた、「好き」って告白を口にする機会、先に取られちゃって。
 わたしだけが握ることのできたよーくんの温かい手を、べたべた触られちゃって。
 ここまでやられちゃったらさ……なりふり構っていられないよね?
 なりふり、構わなくていいよね?
 今まではよーくんとの関係が壊れるかもって恐れていたけど──もう箍を外そう。
 決心すると、なんだか、わたしがようやく「本当の自分」になれたような……解放感と充実感を覚えた。
 聖書の言葉にあったっけ。土は土に、灰は灰に、塵は塵に、ゴミはゴミ箱に。
 掃除の大切さが身に沁みるね。実力行使だって厭わない心境でGO、だね。
 例えば。雑菌だらけというより雑菌そのものな手を切り落としてやるとか。あはっ。
 他にも、よーくんを誘惑する猫なで声が二度と出せないよう、あの子の声帯でも切っちゃうとか。
 なーんてね。
 ふふ……でもわたし、声帯ってどのへんか知ってるよ……
 だって、視えるもの。
143沃野 Act.4 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/15(水) 20:05:28 ID:nm/mYf96
次は麻耶視点で。
144 ◆kQUeECQccM :2006/03/15(水) 20:07:42 ID:yoRYeWpi
勃起した。マジで。
これはきたよ、きましたよ
 東京に戻ってきても、相変わらず楓とは顔を合わせることができずにいた。
 もちろん携帯で話すこともできるのだろうが、
 当の楓がそれを望んでいないような気がしてそのままだ。
 樹里ちゃんは本当によくしてくれるし、それについて不満はまったくないからこそ、
 このままでいていいはずがない。
 結局、おれは何の覚悟もできていなかったのだろう。
 人倫を踏み越え、それを維持していくだけの根性も甲斐性もないのに、いたずらに楓を傷つけた。
 今さら何を言って許してもらおうという気もないし、その資格はないのだとわかっているけれど……

 ……?
 見覚えのある若草色の包みがおれの机の上に置かれている。
「ああ、それ。奥さんが置いていったよ」
 澤田さんが火の点いていない煙草を手の中で弄びながらこっちにやってくる。
「いやー、何だか護ってあげたくなるタイプの娘だね。きみにはお似合いだと思うよ。
 それにしても、愛妻弁当を忘れていくとはきみも大概にひどい奴だねえ。
 わざわざ届けにきてくれる、っていうのも甲斐甲斐しいけど……」
 ……楓だ。
 ということは、ここまで来たんだ。
「……早く、ちゃんとしてあげなよ?」
 肩を叩かれる。
 ……そういうことで悩んでいた日々が、何だか凄く昔のことのように思える。
 同僚たちに冷やかされながら包みを開くと、二つ折りにしてあるメモが床に落ちた。
 
----------------------------------------------------------------------------
 
 一度ちゃんとお話したいので、今日は寄り道せずに帰ってきてください。
                   お仕事、がんばってくださいね
                                    楓
                                    
----------------------------------------------------------------------------
 
 ……。
 今の楓が何を考えているのかは正直わからない。
 おれにできることは、楓の言葉を真摯に受け止めてやることだけだ。
 その上で、できること、できないことをきちんと伝えよう。
 弁当箱は高校時代から愛用している、楓のそれの二、三倍近い容積を誇る“どかべん”で、
 中身はきちんと色味と栄養のバランスを考えてあるのがよくわかる。
 思えば楓の作る飯を食うのも久しぶりだ。あいかわらずうまい。
 最近は外食か弁当ぐらいしか食べられなかったからな……
 料理ができないわけじゃないが、疲れて帰ってきて自炊するほど体力が有り余ってるわけでもないし。
 うちのお袋から継承されたこの味がいつか、どこかの家庭の味になるんだと思うと、何だか不思議な気分だ。
 ----
 
 フライドチキン。
 オムライス。
 グラタン。
 ハンバーグ。
 洋梨のケーキ。
 
 そんな、年端もいかない子供のおつむをひっくり返したようなメニューの数々が、
 狭いテーブルの上に溢れんばかりに並んでいる。
「……なんか、すごいな」
「思いつくままに作ったら、こんなことになっちゃって」
 エプロンを外しながら、楓が台所から出てくる。
 しばらく見ない間に、少しやつれてしまったようにみえる。
 
「……うん、じゃあ、ちょっとだけ、お話、させてくれますか?」
「……ああ」
 いつかのように、ふたり向き合って正座する。
「まず、勝手に部屋を開けて出歩いたこと。ごめんなさい、心配おかけました」
「うん」
「それと、……色々、酷いこと言ったり、その、しちゃったりして、ごめんなさい」
「……うん」
 楓の雰囲気からとげとげしさや、悪意のようなものは感じられない。

「……あれからいろいろ、本当にいろいろ考えました。
 いったい何が正しかったのか、間違っていたのか、
 結局わたしは何がしたかったのか、まともに寝ないで、ずっと考えてました。
 ……その、兄さんは、……森川さんのことが、好きなんですよね?」
「……ああ」

「兄さんのいないところで、一度だけ会ったんです。
 ……ものすごい喧嘩しちゃって、それっきりですけど。
 もちろん、最初は許せませんでした。
 わたしを裏切った兄さんも、兄さんをそそのかした森川さんも。
 ふたりに対する憎しみで、こころが真っ黒になりました。
 しばらくはそのままでいました。
 ずっと、ずっと、ずーっと、
 黒い絵の具みたいなどろどろした気持ちにまみれたまま、いました。
 自分の中に、こんなに醜い部分があるってことに驚いて、それすらも怒りに変わっていきました。
 ……森川さんとも、その頃喧嘩しました。
 その後も、その、ちょっと辛いことがあって、ますます気持ちは沈んでいきました。
 でも、どんなに兄さんのことを憎んでも、嫌いにはなれなかったんです。
 いっそ嫌ってしまえば楽だったのに、できなかった。
 いっぱい、いっぱい、いっぱい考えました。
 何千回、何万回同じことを考えても、それでも答えは結局変わりませんでした。
 ……やっぱり、わたしには兄さんが必要なんです。
 女として愛してくれなくてもいい、他に恋人がいてもかまいません。
 昔と同じように、妹としてでいいですから、そばに、いさせてください。
 ほんとうに、それだけで、十分です。
 だから、おねがいします。
 それが、かえでの、望みです」
 
 ……楓。

 
 
「兄さん、覚えてますか?
 本当に小さい頃―――わたしが幼稚園くらいの頃、兄さんに言ったんです。
 兄さんのお嫁さんになりたい、って。
 そうしたら兄さんったら、なんて言ったと思います?」
 
「……ぜんぜん憶えてない」

「『ぼくは料理の上手なおよめさんがほしい、そうしたら好きなものを毎日作ってもらうんだ。
  だからぼくのおよめさんになりたいなら、料理がうまくならないとだめだ』、
 って。それからわたしは、母さんに料理を習い始めたんですよ」
 
 楓は微笑む。
 男に媚びるそれではない。
 家族に向ける、親愛の表情だ。
 
「……お嫁さんにしてくれなくてもいい。
 これからも、ずっと、楓のお兄ちゃんでいてください」
 
 楓が膝の上で握った拳が、ぶるぶる震えている。
 笑った口元が、小刻みに痙攣している。
 目元に少しずつ涙が溜まり、それを懸命に抑えようとしている。
 血を流し、激痛に襲われながらも、楓は歩き出そうとしている。
 自分で決めた道を、自分の力で。
 それはあたかも、生まれたばかりの仔牛が、自分の足で立ち上がろうとするように。
 一体誰が、それを哂えるというのだろう?
 
「―――ああ。いつまでも、おまえはおれの妹だよ」
 
 何度も立ち止まり、後ろを振り返り、道に迷い、崖から転げ落ちて、
 隣を歩く人間はおろか、世界中のすべての人間の足音さえも信用できなくなって、
 それでもおれたちは辿りついた。
 ここからすべては始まっていくんだ。
 おれたちのすべてが。
 
 妹よ。
 寂しいときは甘えていい。辛いときは泣いていい。
 それでもいつか、傷口は乾くから。
 その時がおまえの、本当のはじまりだ。
 
 それまでは、おれがそばにいるから。
 
「―――それにしても、随分たくさん作ったな。しかも子供の好きそうなもんばっかり」
「“子供の好きなもの”じゃありませんよ。“子供の頃の兄さんが好きだったもの”です」
「その頃のおれがこの光景を見たら、嬉しさのあまり気絶していただろうな……」
「この年になって、やっと叶えてあげることができました」
「うれしいよ、すごく。ただ、いっぺんには食いきれないだろうな」
 くすくすと楓はわらう。
「食べたい分だけ食べて、後は冷蔵庫にしまっておきましょう。
 作った側の人間としても、味わって食べてもらいたいですから」
 
 ふたりで向かい合って、どれもこれも力作ぞろいの料理たちを味わう。
 これだけ大量でも食べる口は二つしかないので、どうしても冷めてしまう。
 申し訳なく思いつつも電子レンジで小刻みに暖めながら、子供の頃の思い出話に花を咲かせる。
 思えば遠くに来たものだ。
 日々の生活に忙殺され、世の中の裏側のえぐさを知り、
 どうしようもなく空虚な感覚に押し潰されそうになったこともあった。
 そんな時はいつも、昔を思い出して耐えた。
 あの頃はあんなにも無鉄砲で、何を恐れることもなく日々を生きていた。
 団地の連中とあたりを駆けずり回り、毎回のように擦り傷をこしらえて帰ってくるおれを手当てしてくれる、
 もみじの葉っぱのような、小さな手のひらのぬくもりを憶えている。
 
 その日は結局、別々に風呂に入り、同じ布団で眠りについた。
 楓がそれ以上何かを望むことはなく、平穏に夜は更けていった。
149優柔 第16話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/15(水) 20:17:21 ID:nEgteRZn
先週の金曜日から先輩の様子が変だと思って心配していました。
土曜日に電話した時には僕の単なる勘違いだとも思いましたが、やはりそうではないと今日の昼に改めて実感しました。

先輩は僕にひっつくように座ってきました。
ベンチは少なくとも4人は座れるというのに。
先輩は僕の買ってきたカレーパンが一口欲しいと言い、僕が了承するとパンにパクつきました。僕がかじった所をです。
お返しということで先輩のお弁当のおかずを貰いました。「あーん」てされました。
先輩は僕についたソースを舐め取りました。
それは頬っぺたについていたのではありません、唇の端についていたのです。
会話の所々で僕を見つめてきました。
目を合わせるなんてものではなく、潤んだ瞳で、上目遣いで。
いくら僕が鈍感でも、あんなにも露骨な態度を取られれば気付かないわけがありません。
そもそも僕みたいな、しがない後輩と一緒にお昼を食べても何のメリットもないと思うんです。

だいたい、椿ちゃんと別れてからの先輩の行動はおかしいんですよ。
何ヵ月も会ってなかったのに急にセックスしようなんて普通言いますか?それも自分の彼氏でもないただの後輩と。
先輩が性経験豊富で淫乱だというなら分かりますが、処女だったんです。
それに、「早く処女を喪失したかった」という理由も今思えば変なんです。
そういう考えを持つのは、自分の周りの人が性に対して軽い考え方を持っている、言い換えれば遊んでいるから自分もそうならなければ・・・という馬鹿げた考え方をする人です。
でも先輩は、少なくとも僕の知っている先輩はそんな人じゃありません。
シャツのボタンを無駄に多く開けて肌を露出しスカートの裾を限界まで上げて太ももを晒したりするのが格好良いと思ったり、
優先座席で携帯をいじりながら大声でダベったり、お小遣い稼ぎに身体を売るような、そんな典型的バカ女とは対極のところにいる人なんです。
それから・・・ああ、何で気付かなかったんでしょうか。自分の馬鹿さ加減が本当に嫌になります。
先輩と初めてセックスした時のことです。
ワイシャツを脱いだものの、下着姿を晒した先輩はガチガチに緊張していました。
顔もこれ以上ないというほど真っ赤で、よく見ると身体が震えてました。
「大丈夫だから」とは言うのですが全然大丈夫ではなく、いつもの先輩の快活さは見る影もありませんでした。
僕の前戯にされるがままで、勃起したペニスが腰に触れただけで小さな悲鳴を上げたんです。
2回目の時も同様で、前みたいにガチガチではありませんが、相変わらず緊張の色は隠せていませんでした。
パンツを脱がされ秘部が露になると、平静さを保とうと努めていた顔が一気に紅潮し、泣きそうになりながら僕の愛撫を受けていました。
本番中も声を必死に押し殺して、顔も背けたままでした。
何が言いたいのかというと、ペニスもろくに凝視することができないような人が、簡単に処女を喪失しようなんて考えないと思うんです。
ブラジャーを外されると恥ずかしくて手で隠してしまうような人が、セフレみたいな関係を望むとは思えないんです。
きっと先輩は、勇気を振り絞って僕に身体を許したのでしょう。それは何故か・・・

これまでの先輩の行動を分析すると、ある1つの結果に至ります。
これは僕の勝手な思い込みかもしれません。
こんなことを考えるのはとてもおこがましくて、自惚れていると言われても仕方がないと思います。
でも、単なる思い過ごしだとも思えないのです。

もしかしたら先輩は、僕に恋愛感情を抱いているんじゃないでしょうか。
150優柔 第16話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/15(水) 20:18:43 ID:nEgteRZn
これはあくまで僕の推論に過ぎません。
違っていれば僕は勘違い野郎だったと笑い飛ばすことができます。
でも当たっていたならば・・・僕は、最低な行為を取っていることになります。

僕・・・先輩の好意に気付かないでエッチしたんです。軽い気持ちでしたんです。
もし先輩の真意を知っていたら、普通はしようなんて思いませんよ。
だって僕、先輩に恋愛感情なんて無いんですから。
彼女と別れて寂しいから、たまたま僕に優しくしてる先輩に甘えて、セックスしただけなんです。
椿ちゃんについてもです。
別れたんだから無視すればいいのに優しさを見せて、未練がましい行為を取って。
嫉妬しないならやり直してもいいって考えたこともありました。それが叶わないなら、友達に戻りたいって。

考えれば考えるほど頭が変になりそうです。
でもあえて整理すると・・・
僕はね・・・椿ちゃんとの関係をチャラにして・・・友達という後味の悪くない関係に戻ってお互い傷つかなようにしようって考えて・・・
・・・先輩は・・・甘えさせてくれる・・・いい人だって・・・

もし先輩が僕のこと好きだったら・・・僕は最低の人間になるんです・・・
だって僕・・・恋愛感情もないのに・・・先輩ともう1回ヤリたいと思ってるから・・・

今まで自分は真っ当な人間だと思っていました。でも今は違います。
僕は気付いたんです。
僕はヘタレとかいう以前に、クズだってことに。

椿ちゃんも先輩も、どうして僕みたいなクズに構ってくれるんでしょうか
151 ◆I3oq5KsoMI :2006/03/15(水) 20:22:58 ID:nEgteRZn
進むの遅くてすみません・・・
152名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 20:33:59 ID:suUNYVdg
これなんていう絨毯爆撃?









ありがとう神々様
今日はいい夢が見れそうです
153名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 20:34:55 ID:G3rC3NSP
>>140-151
あのー。今ご飯食べて酒飲んで気持ちが凄く良かったんです。
それで何気なく更新したら一気に神が投下してるじゃないですか。
デザートにしては豪華すぎると言うかなんと言うかこんなに堪能していいのかと言うかなんというか。
とにもかくにもGJってか本当にありがとうって感じで本当すんません。こんな美味しいデザート食べてすみません。申し訳ございません
154名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 20:37:44 ID:suUNYVdg
これで小さな恋の物語が投下されたら綾にクールにせせら笑われてもいい
155名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 20:41:59 ID:tknUA/vw
ちょwww神が大量に降臨してきて感想が間に合わねぇw

       / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
       | アパム!アパム!感想レス!感想レス持ってこい!アパーーーム!
       \_____  ________________
                ∨
                      / ̄ ̄ \
      /\     _. /  ̄ ̄\  |_____.|     / ̄\
     /| ̄ ̄|\/_ ヽ |____ |∩(・∀・;||┘  | ̄ ̄| ̄ ̄|
   / ̄ ̄| ̄ ̄| ̄|  (´д`; ||┘ _ユ_II___ | ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|
   / ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄|( ” つつ[三≡_[----─゚   ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|
  / ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄| ⌒\⌒\  ||  / ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|
 / ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄] \_)_)..||| | ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄
156名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 20:52:19 ID:suUNYVdg
じゃ感想レスを

沃野
胡桃 は 釘 を 装備 した!
よー君 は おどろきとまどっている!

「妹は実兄を愛してる」
なんか目から汗が出てきました。楓の一途さが切ねぇ・・・

優柔
>椿ちゃんも先輩も、どうして僕みたいなクズに構ってくれるんでしょうか
フラグktkr

3神様いつもすばらしい話を作ってくれてありがとうございます

このスレに張り付いてる香具師挙手 ノ
157名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 21:00:44 ID:ORnfRV2o
挙手とか俺がいるとかやめれ

>沃野
なんて読むのかな?
158名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 21:18:11 ID:qaWz58GM
よくや【沃野】
[意]地味が肥えて作物などのよくみのる平野。

個人的には胡桃みたいなタイプのヒロインが大好きですw
能力を欲望のために使いまくる変態チックなところがナイスw
159名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 21:38:46 ID:o0IxarNM
能力使用中は五感が鈍るって言ってたからよーくんの見ながら同時オナヌーは無理か。
160名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 21:44:50 ID:YyYw0imO
これで……これで……ッ
楓は、終わってしまうのか……ッ
実妹の力はここまでなのか……ッ
161名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 21:54:08 ID:/HTLCMTf
え、楓の逆襲無し?フェイントですよね作者様?
162名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 21:55:30 ID:Yze+iRpx
つ大安
163名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 22:09:15 ID:o0IxarNM
朝目覚めた時にはきっとサイコな展開の始まりですよ。
今からwktk
164名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 22:11:09 ID:unMtlWTz
作者さんが『最近鮮血エンド多いんでマンネリ避けるためアナザーも書く』みたいなこと言ってなかったっけ。
まあ毎回DEADENDって分かりきってたら楽しみが半減するし、
「これは鮮血か?それともほのぼので終わるのか!?」という緊張感を味わいたい自分みたいなのもいるから有難い。
165 ◆kQUeECQccM :2006/03/15(水) 22:36:22 ID:yoRYeWpi
ちょう外出してたので今更米。

終わり方については明言を避けておきます。
ただ、長期休止中、悩みに悩んで完結させられなかったというあたりから
それとなく察してくださいな。

あー、やば、このスレおかしいほどおもろい作品ががが
166名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 22:40:21 ID:rqCnP62J
嵐の前の静けさですよ、きっと。
167名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 22:46:02 ID:klnVGCOl
楓はあれでいいと思う
168名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 22:57:42 ID:BY7G+mag
>>165
>あー、やば、このスレおかしいほどおもろい作品ががが
語尾が壊れてるー?!

いやいや、なんかしんみり系のいいお話でした。いやマジで。
一時的退却かどうか不明として、結婚を祝福する事になったのですね。


……そして、もちろん結婚生活の陰で愛人生活を送る、と(w

169名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 23:06:13 ID:iQ3XrlbG
俺もこのまま楓が引いてくれたほうが嬉しいかも
なんつーか泥沼の愛より親愛の愛のほうが楓には似合うきもする
170名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 23:17:42 ID:tdNDPPiQ
まあ俺は兄妹そろって泥沼でのたうつようなのが大好きなわけだが
171名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 23:37:36 ID:y5yggKuV
修羅道とは此れ斃すことと見つけたり。
172名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 00:31:38 ID:3Md9YQdl
今頃不義理チョコのアナザーに気づいた
とても暖かい話だった、ちょっと和んだ
そのあと、本編エンドの後の死後の世界での
智子の妄想なんじゃないだろうかと思ったら
急に暗くなった。俺の心は荒んでいる・・・
何はともあれ作者様遅ればせながら(*^ー゚)b グッジョブ!!
173名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 00:41:20 ID:1Yd3W1dB
ヒロインから「ごめんなさい」とか「もうあきらめます」みたいに殊勝なセリフが出てきたら鮮血の結末に供えて身構えてる俺ガイル
174名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 02:19:42 ID:Gsdvyad3
ところで沃野の胡桃ちゃんの名前の由来は
某地味キャラ?
175名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 07:21:12 ID:x8P+YPNH
>僕はヘタレとかいう以前に、クズだってことに。
>椿ちゃんも先輩も、どうして僕みたいなクズに構ってくれるんでしょうか

故(?)士郎くんの末期症状に似ている希ガス
176名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 22:33:54 ID:3Md9YQdl
この流れなら言える

一時間レスがなかったら俺に藍子ちゃんのような幼馴染が
現れて一緒に住むとか言い出す

| : l=.| _          
|...」 |/ ,、ヽ       γ⌒⌒ヽ
| ̄ |ノノ"))i       (」l_ハ_l」_ 〉
|_ | ヮ ノl|        (  ・∀・)  藍子たんハァハァ
l文| と}ソ つ        (     )  
| ̄ |_lj〉))          人 ヽノ
|   |'ノ            し(__)
 
177夢と魔法の王国 第一話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/16(木) 22:37:09 ID:13k3+feB
<プロローグ>

ワタシとアイツの仲は最悪だった。
双子はみんな仲が良いなんて、誰が言ったのか。
二卵性だから似てないんだと言っているのに、誰もが「そっくりだ」と笑う。
いったいどこが似ているんだろう。
アイツは何も考えていない体力バカで、ワタシは温和で器量よしの才女だ。
…いや、自信過剰じゃないぞ。
ともかく、成績も容姿も性格も運動神経も、なにからなにまで違う。
あんなヤツと一緒にされると吐き気がするんだが……。

双子には不思議なシンパシーがあるという。
一方が怪我すると、もう一方も同じ箇所を怪我するとか…。
もし本当だったら、いくらでも自分で自分を傷付けてやるんだけどな。
それでアイツが苦しむんなら、どんなに痛くったって本望だ。
まあ、既に試したことがあるから、「そんなもの信じてない」って胸張って言えるんだけどもさ。

でも。
今日、双子のシンパシーってやつを少し信じる気になって、同時に呪いたくなった。
つまるところ、非常に遺憾ながら、アイツがワタシと同じ人を好きになったってわけなんだが……。
178名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 22:37:24 ID:+UfOt5t0
| ∀・)ミタヨ-
179夢と魔法の王国 第一話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/16(木) 22:37:39 ID:13k3+feB
<1>

本当に久しぶりに、拓がウチにやってきた。
あのバカがいない日をわざわざ選んだのだから、
今日はゆっくりゆったり、二人きりの時間を楽しむつもりだった。
「うーん、この屏風もなんか懐かしいなぁ」
玄関口を見て、溜息を漏らす拓。
純和風な佇まいのそこには、子供の頃から変わらず金色の唐屏風が置いてある。
「そう言われれば、拓がウチに来なくなって、もう十年くらいになるか。
 ……まあ、ワタシは学校で会ってるから、それほど実感が湧かないんだが」
とはいえ、やはり十年の隔たりは大きいだろう。
昔は拓の家とも家族ぐるみの付き合いをしていたのだが、
いまとなってはお父様もお母様も、拓のことを忘れているかもしれない。
……あのバカは確実に忘れてるだろうな。バカだから、アイツは。
ワタシは笑いを噛み殺しながら、拓を招き入れる。
「"彼女"の家に上がるのって、なんか緊張するね……と、おじゃましまーす」
「うむ、お邪魔しろ。いま、お茶でも持ってくる」
「先にミィちゃんの部屋に行っても……」
「かまわないよ。ああ、場所は昔から変わってないから」
「わかったよ」
板敷きの階段を軽快に上っていく足音を聞きながら、台所に向かう。
我が家はかなり広い建物で、その二階部分が全面的に子供部屋となっているのだ。
一方、階下には寝室がいくつかと居間、それにお風呂や台所などが備わっている。
その台所も、やはりそれなりに広い。
よその家の台所をあまり見たことがないからわからないが、たぶん一般家庭のものより遥かに広いのだろう。
正月ともなると、十数人のコックが走りまわる現場になるからな……。
その広い台所で、ワタシは宝探しのようにあちこち茶葉を探して回る。
紅茶を出そうと思っていた。
たしか良いモノがあったはずなのだ。
ワタシは紅茶にはそれほど造詣が深くないのだが、
先日、お母様が入れてくださった紅茶はとても美味しいと感じた。
あのバカが珍しくお代わりを要求したくらいなのだ、その味と香りは推して知るべし、だろう。
拓がそれを飲んで笑ってくれるだろうことを想って、ワタシはしのび笑う。
この気分のままで今日一日を過ごせたら嬉しい。
そして、その望みどおり拓の隣で笑って過ごせるのだと、ワタシは信じて疑わなかった。

まあ、そのときまでは、な。
180名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 22:37:47 ID:I/r1txHj
「残念だったな、俺が阻止してやる! 泣いたり笑ったり出来なくしてやる!」…と。

ピンポーン

何だ、こんな夜更けに…?
181名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 22:37:50 ID:gvm0O1ns
阻止
182夢と魔法の王国 第一話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/16(木) 22:38:40 ID:13k3+feB
<2>

なんとか紅茶を見つけて、なんとか紅茶を入れて、ワタシはゆっくりと階段を上っている。
盆の上に乗っかったティーカップは、ゆらゆらと揺れて危なかっしい。
このまま行くか、それとも拓の助けを呼ぼうか迷い、
――思考は、明るい笑い声に遮られた。
「?」
それはワタシの部屋の中から聞こえてきていた。
楽しげな拓の声と、可愛い子ぶった気色の悪い声。
まさか。
紅茶がこぼれるのも気にせずに、わたしは階段を駆け上がる。
盆を持ったまま、ワタシは無理な体勢で扉を開け放ち、
「あれ、お姉ちゃん? どうしたの?」
くりくりした目がこちらに向く。
制服のプリーツスカートを花のように広げて、そこには美樹が座っていた。
「……なんでオマエがいる、美樹」
「なんでって、ここがわたしの家だからじゃない?」
にっこりと笑うヤツの顔には、まるで邪気がないように見える。
でもワタシにはわかる。
こいつの腹の中は黒くて薄汚いものでいっぱいなのだ。
他人は騙しおおせても、他ならぬワタシを騙すことはできない。
……これも双子のシンパシー?
一方で、「美樹ちゃん、大きくなったよなぁ」なんて、拓は笑っている。
なに言ってるんだ、この男は、まったく。
「美樹、ちょっと来い。ああ、拓、すまないが美樹に話があるんだ。ちょっと待っててくれ」
「ああ、ミィちゃん。待って」
意外にも、拓に呼び止められる。
「なんだ?」
「……あのさ、言いにくいんだけど、ちょっと用事が出来ちゃったんだ」
いまだ立ったままのワタシに、携帯を掲げてみせて、
「母さんが倒れちゃったみたいでさ」
「え? ……あ、ああ。そうか」
拓の母親はとても体が弱い。
ワタシが幼い頃からずっとそうで、いつ亡くなるかわからないとも聞いていた。
そして、彼女は今でも病院のベッドの上にいる。
……しかし。しかしだ。
なにもこんなときに……。
「それを伝えたくてミィちゃんを待ってたんだ。ごめんね」
拓はそう言って、立ち上がる。
「あ、――」
紅茶を、と言おうとして、慌てて口をつぐむ。
彼の母親が危険だってときに、「お茶でもいかが?」なんて言う気か、ワタシは?
「ん? どうかした?」
「いや、えーと、お母様によろしく伝えてくれ」
「うん、わかった。本当にごめんね。また一緒に遊ぼう。美樹ちゃんもね」
すこし寂しそうに微笑んで、拓は部屋から出て行った。
取り残されて、ワタシはその場で仁王立ちしたままだった。
手にはお盆が残っている。
紅茶から湯気が立っている。
ああ、どうしてこうなるんだろう。
「振られちゃったね、お姉ちゃん!」
呆然としているワタシを見て、美樹が笑っていた。
183夢と魔法の王国 第一話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/16(木) 22:39:27 ID:13k3+feB
<エピローグ>

「で、オマエはなんでここにいるんだ?」
「えぇーそんな怖い顔しないでよぉーお姉ちゃーん」
「その気色悪い口調をやめろ! 今日は用事があるから出かけるんじゃなかったのか?」
「だからぁ、……くくっ、だからさぁ、おまえの邪魔をするのも用事だろ?」
「き、気付いてたのか……」
「だっておまえ、昨日からずっとそわそわしてんだもん。モロバレ」
「開き直るな、バカ!」
「まあ、わたしが邪魔するまでもなく、相手にされなかったみたいだけどな」
「っ、それはっ! だからっ!」
「久しぶりに会ったけど、拓ちゃんかっこよくなってたよねぇ。わたしがいただいちゃおうかな?」
「人の話を聞け! っつか、渡すわけないだろ!?」
「てめーの彼氏じゃないだろ。わたしが好きになったんだから、どうしようがわたしの勝手じゃん」
「ワタシの彼氏だよ。知らなかったのか、うすらバカが」
「……マジで? うわ、ショック。こんな犬の糞のどこがいいんだろう? 拓ちゃんは」
「どこぞの牛の糞よりはマシだと思ったんだろうさ」
「……ともあれ、アタックするのは個人の自由だよね!
 ふふっ、それにしても、美衣の彼氏が拓ちゃんとは……運命感じちゃうね。
 双子で同じ人を好きになるなんて、これが双子のシンパシーってやつなのかな?」
「……拓にバラすぞ、"アレ"を。それが嫌なら自分の部屋に篭って壁に向かって喋ってろ」
「……ったく、卑怯だね、おまえは」
「卑怯で結構。ともかく、拓に手を出すんじゃない」
「ちっ、そうやって恋する乙女の邪魔をしてると、いつか馬に蹴られるぞ……」
「誰が乙女だ! オマエは"男"だろうがっ!!」
184 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/16(木) 22:41:07 ID:13k3+feB
これから先のこと何も考えてないんで、続かないかもしれない。
元ネタはずっと前に書き込んだ、「ヒロインの片割れが実は女装キャラ」ってやつ。
覚えてる人、いるかどうかわからんけど。

>>180-181
おまえら仲良いな。
185名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 23:06:56 ID:I/r1txHj
マジごめん、本当にごめんなさい・・・悪気はなかったんだYO!
186名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 23:14:13 ID:gvm0O1ns
>>184
割込みスマソ
187名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 23:29:16 ID:HT32Eay9
>>178 >>180-181
割り込んででも176を阻止しようという心意気に乾杯
188名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 23:31:18 ID:3Md9YQdl
おまいら張り付いてる割に書き込みがなさ杉だYO!
・・・俺の藍子たん・・・(ノД`)シクシク

本音
正直煽ってすまんかった、割り込み発生のきっかけは俺orz
そして新たな作品にwktk
189名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 01:34:11 ID:eY6PQtO1
ttp://sylphys.ddo.jp/upld2nd/niji7/src/1142351218257.jpg
誰かこういう母子二代に渡る(ry
190名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 01:59:14 ID:Pa9LRgTY
>>189
ttp://www2.odn.ne.jp/~aai22770/originaruhp4/originaru175.htm

むかーし読んだSSを思い出した
ちなみにURLのはその一例っす
191名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 07:45:36 ID:ZVH86Gxm
>>189
指写ってるところがお茶目だなw
192名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 12:16:22 ID:oWffoE40
娘&母親での修羅場か・・・
193名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 12:22:22 ID:HLrXx/Se
194名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 18:15:03 ID:CjjDBJzx
>>193
これの続きはないのか、続きはーっ!
親子丼男のほうもいいけど社長テラモエスwww
195名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 18:33:14 ID:7h+ljhj4
やべ。超やっべ。親子丼食いたくなってきた。
でも惨事だと洒落になりませんなあ。
196名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 19:23:28 ID:VcWDh7lb
若くて綺麗な母親なんてありませんよ。ファンタジーやメルヘンじゃないんですから
197名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 20:30:59 ID:1cBsZ9iD
でも、信じたいんだ。
若くて美人な母親の存在を
少なくとも、彼女が最終兵器になるより現実的だ
198名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 20:50:42 ID:iHsN2Diq
ここは良作ばっかですね
199名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 21:34:44 ID:jFEUrYRg
神がいるからね
200優柔 第17話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/17(金) 22:18:16 ID:iJLXQkSu
昼食時のこと、私にしては大胆だったと思う。
息の当たる距離まで近づいた。実際に愛原の腕が私の肩に触れたわけだし。遠慮して私から離れようとするのが微笑ましかった。
パンのお礼のつもりで弁当のおかずをあげたけど、あれはさすがに恥ずかしかった。
「あーん」なんて私のキャラじゃない・・・たまたま作ってきたけど、あいつの口に合っただろうか。
というか、愛原の口に入った箸をそのまま使ってたな。完璧な間接キス・・・あいつはそういうのは気にならないのか?
むしろもっと気にしろよって言いたくなる。何かこっちが馬鹿みたいじゃないか・・・

「来週から中間考査が始まる。諸君らは特進クラスに所属しているのだから、くれぐれも無様な成績を残さぬよう、しっかり勉強しておくように」
夏休みになれば受験勉強で忙しくなる。私には時間が無いんだ。
いつまでも弱腰で接していたらいけない、今日みたいに積極的にアプローチをかけていこう。
分かりやすい態度を取って、さっさとあいつに気付いてもらおう。

移動教室のため教科書類を携えて歩いていると、一緒に教室に向かっていた千尋が話題を振ってきた。
「先週の金曜の駅でのこと、知ってる?」
聞いた途端、一瞬だが身体が硬直した。考えないようにしてたのに・・・
「・・・何が?」
「駅でいちゃついてるバガップルがいたんだって。しかも改札でだよ?ほら、あんたの知り合いの・・・愛原君だっけ?いやー、 近頃の2年は大胆ってゆうか無謀ってゆうか・・・」
「違う」
「えっ?」
私はすぐさま訂正した。こういう情報は早いうちに訂正しなければ誤ったものがどんどん蔓延していくから。
「いちゃついてたんじゃなくて抱きつかれてただけだ。あいつらもう別れたんだ、女のほうが勝手に付きまとってるだけなんだよ」
そう・・・ハイエナが勝手に愛原の周りをうろついて、卑しくも横取りしようとしてただけなんだ・・・私の愛原を。
思い出さないようにしたが無駄だった。
あの時の映像が鮮明にフラッシュバックされる。
ああ・・・この感覚・・・また溢れてきちゃった・・・

「・・・綾乃?」
千尋の声で冷静さを取り戻した。
駄目だな・・・抱えてる教科書が折れ曲がっててる。
いつもの私は・・・そう、こんな顔だ。
何があってもこの表情をキープしておかなくては。

今日を振り返って理解したことが1つある。
今のところ、愛原が私の知らない女子と喋っていても焦りや憤りを感じることはない。
そうなるのは・・・あの女と一緒にいるところを想像した時だけ。
邪魔だな・・・あの女。


201優柔 第17話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/17(金) 22:19:21 ID:iJLXQkSu
朝礼が終わって教室に戻ると、何故かみんなニヤニヤしてた。
何故かって、理由は分かってるけどね。やっぱり私の思った通り、駅での事が話題になってた。
冷やかしてくる人もいたけど・・・それってただ羨ましいだけなんだと思うな。
だってそうでしょ?愛が無かったらあんなことできないからね。ゆう君、私たち嫉妬されてるよ。

これでメス犬も懲りたんじゃないかな?
私とゆう君の間に入り込む余地なんて無いって分かったんだし。
あっ、でも・・・メス犬っていうくらいなんだもん、きっとあざといに決まってるわ。きっとゆう君にまだひっついてると思う。
まあそれはおいといて、メス犬って誰なのかな?

今日で一気にメス犬候補が増えた。
私が知ってる限りでは、ゆう君と話したのが7人で、その中でも仲良さそうにしてたのが3人。
みんなゆう君のクラスの人だけど・・・イライラするな。
ゆう君と同じクラスってだけで親しくしていいなんて誰も許可してないのに。
ゆう君もゆう君だよ、他の子と仲良くするくらいなら私とエッチすればいいのに・・・ビョーキになる前に戻ってきてね。
私だっていつまでも我慢してられないんだから、そのうち実力行使に出るかもしれないよ?

久しぶりに駅前のカフェに来た。ゆう君と喧嘩して以来だから結構経つんだけど・・・店員さんが微妙な顔してたな。
でも、無理もないか。あの時はゆう君が帰った後も独りでシクシク泣いて、店員さんが困って「大丈夫ですか?」って声掛けてくれたぐらいだもん。
今日は友達と来たけど・・・はやくゆう君と一緒に来たいな。


202優柔 第17話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/17(金) 22:20:02 ID:iJLXQkSu
晩飯にカレーを作った。カレーといってもレトルトのそれではない、
カレー粉と小麦粉でルーを作った、正に手作りだ。
緑黄色野菜がたっぷり入った野菜カレー。食べる直前にガラムマサラを振って・・・いただきます。
・・・言うまでもなく旨い。スプーンがどんどん進む。
自慢じゃないが、私ってクラスの中で一番料理ができるんじゃないかって思えるほどだ。
調理実習の時に私の包丁捌きを見た男子から賞賛を受けたぐらいだしな。
それにしても・・・1人カレーはやっぱり寂しい。一緒に食べてくれる人がいたらいいのにな。
愛原に食べさせてやりたい・・・

後片付けを終え、風呂から出たところで私は閃いた。
いや、気付くのが遅かったというべきが。
――明日も一緒に昼食を食べようって言えば良かった。
昼間は色んな意味でテンパってたから言うのを忘れた。
また一緒に、二人っきりで、誰にも邪魔されずに食べたい。
今日みたいに、「あーん」ってしてあげたい。
昼は毎日、一緒に食べて・・・そのうち愛原の分の弁当も作ってきて・・・
私は携帯を握りしめ、すぐさまメールを送信した。
『昼に言うの忘れてたけど、明日も一緒に昼飯食わね?』
自然と頬が綻んでいた。

遅い。送信したのは7時だというのに、もう11時を回ってる。
愛原は今まですぐに返信してくれた。最長でも30分以内にしてくれるのに。
私は不安になっていた。さっきまでのときめきがまるで夢のように。
何で早く返信してくれない・・・何かあったんじゃないのか?

日付が変わった頃、返信が来た。
『明日からはクラスの友達と食べますから結構です』
それは思ってもみないものだった。
絵文字も句読点もない、愛原のとは思えないほど冷たいメール。
目の前が真っ暗になる。スーっと血の気が引くのが分かった。
――愛原が初めて・・・私を否定した・・・
私は恐くなった。何か悪いことをしたのか?嫌われるようなこと、したのか?
震える指先でメールを打つ。
『なに、アタシと飯食うのが嫌なの?』
文章とは正反対の心境。
いつの間にか涙ぐんでいた。
つい前までは積極的にいこうって思ってたのに、そんな私は今、どこにもいない。

結局、愛原から返信が来ることはなかった。
私はその日、一睡もできなかった。
203名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 22:40:13 ID:SIQAUq1Y
うわ超GJもうなんていうかGJ優柔だいすk
204名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 23:04:20 ID:eLMenF+N
ふーむ、愛原が返信をしなかった可能性はおよそ2通り考えられるのだが・・・

・椿が携帯を盗んで返信した可能性
・前話で、愛原には綾乃に対する恋愛感情がないことがはっきりしているので、
敢えてそっけなく返した

さぁどっちだろう?
毎度ほんとにGJでありますよ。
205名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 23:18:48 ID:pQbnP5xt
>>204
先の展開を予想してカキコするのはほどほどにしておいたほうがいいと思う。
あんまりやりすぎると同じ内容だった場合、作者さんもやりずらいと思うから。

作者さんGJ!!!
続きに期待しております
206沃野 Act.5 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/18(土) 00:11:28 ID:gauCILN5
 言っちゃいました、言っちゃいました。
 先輩に、好き──って。
 言っちゃいました!
「時間がありませんし、返事はまた後でお願いしますね」
 と余裕ぶり、澄ました顔でお辞儀して出てきましたけど。
 心臓はもうバックバク。すぐにも破裂してしまいそうな有り様です。
 顔が熱くなってるのも分かります。冷めろ〜、冷めろ〜、と念じても無理です。冷めません。
 少しでも興奮を紛らわせようと深呼吸したり髪をいじってみたりしました。
 ふう、と物憂げに溜息をついて窓の外を眺めたりもしてみます。落ち着いたふりではありますけど、
ちっとも落ち着いていないのは震える肩からして明らかです。息もまだちょっと荒い。
 こんなに緊張したのは入学以来初めてでしょう。殿方に交際の申し込みをすること自体が初めて
ですから仕方ないと言えば仕方ありません。いくら私が周りとは趣を異にする外見だからって、心の
中身は高校生。いえ恋愛経験が不足気味というかゼロなことを勘案すれば中学生レベルかもしれません。
 念願の告白……前夜に鏡の前でこれでもかと練習してはみましたものの、やはり本番はキツいです。
 いっそナシにして辞書だけ借りて帰ればいい、と弱気の虫を跳ね返すのに難儀しました。
 そもそも辞書なんて口実に過ぎないんです。本当は持ってます。告白のために乗り込んだんです。
あそこで引き下がったりしたら自分の情けなさに涙を流すところでした。
 まずは第一段階が終了ってところでしょうか。いかにも人の気を知らない、鈍そうな先輩に向かって
私の想いを吐露することができただけでも上出来。これであの人は嫌でも私が気になりますよね。
 先輩に決まった人がいる、という噂は会って間もない頃から耳にしていました。
 最初は「ふーん、あんな男に」と比較的無関心でした。色恋沙汰にはまだ興味がなかったから。
 無関心でいられなくなってからは、「決まった人」が誰なのか気になり出しました。
 噂は有名だったので、友達にちょっと聞いてみただけで相手の方が分かりました。
 先輩とはクラスが違う、三組の綾瀬胡桃さん。長くて黒い艶やかな髪、すらりと伸びた背。弓道部
という所属に負う凛とした立ち振る舞いの中に、活発で朗らかな性格が垣間見えます。発育も大変に
よろしく、凹凸のお手本みたいな体は男女問わず注目の的でした。
 友達に「憧れる」と述べる子もいましたけど、私は羨望より妬みが勝ちました。
 いつになってもずっと「外人」扱いの見た目と、一向に成長しない体。「外人なのになんで成長が
遅いの?」みたいな眼差しを受けて何度傷ついたことか。私服で歩いてるとき「あの子、小六くらい
かな?」「外人だから上に見えるんだって。本当は十歳未満だろ」と無茶苦茶なこと言われました。
 誰も彼もが子供っぽく見えるクラスメートの男子に「子供みたいだ」と思われる屈辱がどれほどか、
ちょっと表現し切れないものがあります。
 そんな体験を一度もしないでチヤホヤされてきただろう綾瀬先輩。
 よりによってそんな人がなんで彼のそばにいるの? と二重の妬ましさに苦しみました。
 私自身「あんな男」と思った時期があるように、彼は取り立てて目立つ生徒ではありません。
 運動も成績もパッとせず、見た目も性格も格好いいわけじゃなく、純粋な注目度は低い。綾瀬先輩を
語るついでに「ヘタレ」呼ばわりされるのが関の山。あたかも料理に添えられたパセリです。
 なのに綾瀬先輩は彼に付きっ切りで、昼食も一緒、登下校も一緒です。「はい、あ〜ん」をやったり
おてて繋いで歩いたりしてるんですからもうバカップルそのもの。
 そんな光景を他人事と切り捨てることができずに悩み、胸を苦しませるようになったのは。

 私が、パセリの味に目覚めてしまったからです。
207沃野 Act.5 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/18(土) 00:20:16 ID:gauCILN5
 大して劇的な切欠はありませんでした。なんてことのない積み重ねで、私は恋に落ちていました。
 彼は図書館によく来ました。うちの高校は併設されている図書館の規模がそこそこ大きく、当番は
組まれていますが基本的に図書委員が総出になります。おかげで私も目にする機会が何度もあり、
自然と話しかけられる関係になりました。
 私は殿方に対する不審が根強かった。彼らは、見下すことをやけに好むから。
 「可愛い」「綺麗」という言葉は同性の友達からも掛けられますし、愛玩動物を見るような意識が
感じられるとはいえ誉め言葉として受け取ることに抵抗はありません。しかしそこに珍獣か何かを
調教しようとするような不快な好奇心を覗かせるとあっては、到底応える気になれません。
 どうも私は相手の征服欲を無闇に煽るところがあるらしいです。金髪で碧眼という未だに日本人の
コンプレックスを刺激してやまない要素に加えて、体が未成熟で幼く見えることがいけないようです。
 私だって、別に恋愛に興味がないわけではありません。
 ただ、「したい」と思える人がいなかった。
 だからもちろん、先輩に対しても最初は好感を抱いておりませんでした。
 警戒心が解けず、随分と突慳貪な受け答えをしてしまった記憶があります。
 ここで怒ったり萎縮したりする人もいますけど、先輩は軽く受け流していました。
 ひょっとして鈍い人なんだろうか、って確かめる意味で何度も露骨に冷ややかな態度を
取ってみました。それでもめげません。どころか、高いところにある本を取ってくれたりするとき、
恩着せがましくもわざとらしくもない雰囲気で向き合ってくれます。男の子へお礼を言うことに
慣れていない私の小さな声にも気にした風がなかった。
 そこで上向き修正が加わったのは確かです。
 ふさふさした金髪や青い瞳という、私の一部分に過ぎない場所ばかりを注目せず、ありきたりの
友達として接してくれるような異性を求めていた……って想いが漠然とありましたから。
 むしろ、あったはずなのに、です。
 不思議なことに、彼が自然な優しさや思いやり、時にからかいを示すたび、私の身は硬くなりました。
 体を覆う不可視の殻──好奇の視線や不躾な言葉から守る、精神的な防御。
 対人関係においてそれをまとう傾向にある私ですが、彼と会話するたびに殻の存在を意識し、
「もっと厚くしなければ」と思うのです。いささか過剰なくらいに。
 そうしないと、私の「中身」が溢れ出してきて、こぼれてしまうような……そんな気がしました。
 なんだかとても息が苦しくなりました。
 いっそ先輩なんて無視してしまえばいい、と思ったこともあります。黙殺してしまえば、苦しまない。
 けれど、話しかけられるたびに反応せずにはいられない自分がいました。どんなに殻を強固に
しても、無視することはできなかった。むしろ無視したくなかったからこそ、殻を補強したのかも
しれません。闇雲に、頑なに。
 そして。綾瀬先輩という非の打ち所がない人が彼の傍らに寄り添っている瞬間を目にしたとき。
 私は諦めることにしました。
 彼を、ではありません。殻を保持し続けることを、です。
 たぶん、彼は私の築いている殻に気づいているはずです。
 決してその殻を壊そうとはしません。殻ごとの私を見てくれているのだと思います。
 でも、私は。
 楽しげに笑って彼の手を引っ張る綾瀬先輩を見て。
 どうしてもあの位置に立ちたい、と願ってしまったんです。
 ──話しかけられるばかりで、身を硬くして自分から喋りかける言葉を持たない私が嫌でした。
 ──廊下で会っても、挨拶程度しか交わせずに通り過ぎるだけの関係が嫌でした。
 私はあの人のことをよく知りません。
 だからこそ。もっと知るために殻を脱ぎ去ろうと決心しました。
 それは、あの人なしでは生きていけないような女になるってことかもしれないけれど。
 剥き出しの私を見て欲しくなったのだから、どうしようもありません。
208沃野 Act.5 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/18(土) 00:25:00 ID:gauCILN5
 綾瀬胡桃が別に先輩と付き合っているわけじゃないことを先輩本人の口から聞いたとき、思わず
小躍りしたくなる気分を抑え込むのに苦労しました。
 胡桃は幼馴染みだよ、別に彼女ってわけじゃない──
 図書館で他の人にそう言っているのを耳にした私は、いよいよ自信を持ったわけです。
 たとえ先輩と綾瀬胡桃が本当に男女交際しているのだとしても、玉砕する覚悟ではいましたが。

 そんなこんなで昼休みになりました。
 愛しの……と言い切れるほどの自信はまだありませんが、ともあれ先輩の教室へ急行します。
 コンパスの短い足が今はもどかしいばかり。
「き、来たぞ! 魔性の下級生が!」
 入って行くと、私は注目の的になりました。
「おいおい、すっげぇ自信満々だぜ、あの目つき。まるで映画の子役みてぇだ」
「こんなちっちゃい子が男を寝取るだなんて世も末だなぁ」
「洋平のバカタレがモテる時点で世の中終わってるよ……」
 なんでも告白した休憩時間以来ずっと私の話題で持ち切りだったそうで。
 「略奪愛の旗手」とか「いたいけな泥棒猫」とか、大層な名前までいくつも得てしまいました。
 略奪も何も……先輩はフリーのはずなのに。まあ、先輩以外の発言は特に気になりません。
「しかし、相手が三組の綾瀬さんよりも格下なら話にならなかったところだが……」
「うむ、格上格下以前にタイプからして違う。この勝負、読み切れん!」
 うるさい外野はシカトしましょう。
 ここは脇目も振らずに駆け寄るのが恋する乙女の嗜みです。
 たったっと小走り。先輩はぐったりした感じで椅子に座ってます。どうやらかなり詰問された様子。
「ええっと、で、さ。荒木。悪いけど俺は……」
「先輩!」
 いきなり断りの言葉から始めようとした口を慌てて塞ぎます。出鼻を挫かれるのは最悪のパターンです。
 あの女を引っ張り出すまで間を持たせないと。
「えっ、何?」
 大声に反射的な質問を返す先輩。戸惑っているその顔に向け、

「だ──抱いてください」

 ぶほわぁっ、って壮絶な音とともにごはんを吐き出すクラスのみなさん。汚いなぁ。
「……は……?」
 先輩まで土偶のような顔をしています。少し予想外です。
 いくら衆人環視だからって「抱き締めてほしい」とお願いするだけでここまでびっくりするなんて。
 緊張で少し言葉は違ったかもしれませんがニュアンスはちゃんと伝わったはずですよね?
「……駄目ですか?」
「そりゃ……駄目だろう……普通……」
 驚きすぎたのか、他人事みたいな口振りです。
「じゃあ、いいです。代わりに手を握らせてください」
 大きな要求を突きつけて拒ませた後に譲歩して小さな要求を行うと、相手はついそれに応じてしまう、
いわゆる「ドア・イン・ザ・フェイス」の心理テクニックを活かした戦法です。我ながら完璧。
 言われるままに差し出してきた先輩の手をはっしと両手で掴み、挟み込むように握ります。
 伝わり合う素肌の感触……ふふ、ちょっとだけ親密度アーップ。
 あの女もそろそろ来る頃合ですね。

 さあ──勝ちに行きましょう。
209沃野 Act.5 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/18(土) 00:27:05 ID:gauCILN5
次回、胡麻相搏つ。
210名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 00:28:45 ID:05mFbnnj
GJ!!!
麻耶可愛すぎラヴ。
211名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 00:46:14 ID:P87wF5k5
展開にどんどん引き込まれてしまいました!次回が本気で楽しみだ…

というわけで>>209の人気を先物買い
212名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 00:47:29 ID:PRh5tFMR
>>211をTOB
213名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 00:55:54 ID:pXwHKYQM
>>212をタイーホ
214名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 02:34:58 ID:OvKY19gI
ものすごく面白くてニヤニヤしっぱなしのは俺だけじゃないはずだ
(*´д`*).。oO(麻耶可愛いよ麻耶可愛いよ麻耶可愛いよ麻耶可愛いよ麻耶可愛いよ麻y(ry )
215名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 03:18:46 ID:HbHVEKhZ
胡桃たんがんばれ胡桃たんがんばれ胡桃たんがんばれ胡桃たんがんばれ胡桃t
216名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 05:06:19 ID:0GcwJLnO
胡麻相撃つに吹いたw
217名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 08:15:23 ID:oEPeEQ5O
やべぇ…コイツ危険な臭いだぜぇ
女に大決戦で血を見てもおかしくない、そんな修羅場の臭いだ…っ
URRRRRRRRRRRRRRY!!

…ぐっじょぶ
218名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 08:37:45 ID:QwVG2fHS
>ドア・イン・ザ・フェイス
いったい何人の人間をたらしこんだんだ、こいつは?
219名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 09:06:09 ID:T9sSt1Jt
>>209
もう最高デス(w
まるでハリウッド映画を三分に縮めたかのような強引展開にワラタ。
って、いきなり決戦かよっ!
220名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 11:41:27 ID:oAJhGWqs
〉ドア・イン・ザ・フェイス
なんとなく幽波紋な響き…(^・ω・^)
221名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 15:02:56 ID:hxYBRjtu
>220

わかったぞ!
この物語は特殊能力者相手に普通の人間が知恵と勇気と人間心理を駆使して挑む戦いなのだ(`・ω・´)
222名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 15:50:06 ID:IwAm5k/z
な、なんだってー!
223名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 15:56:39 ID:nqs+drwg
よーくんにしか見えていないビオランテVSメカビオランテ大決戦って感じ
もちろん被害を被るのはよーくんのみ
224名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 15:59:54 ID:bgm7Qwhh
>223
何も知らない人間がそれだけ聞くとラブコメにしか思えないなw
実際は…ガクガクブルブル
225優柔 第18話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/18(土) 18:57:18 ID:7uEvnFMi
先輩と一緒にお昼を食べてから4日が経ちました。早いものでもう金曜日です。
僕は自分の本性に気付いたからか、先輩とも椿ちゃんとも、意識して避けるようにして過ごしました。

月曜日に先輩からメールが来ました。内容は、また一緒にお昼を食べようというものでした。
これによって、僕の推測が僅かですが現実味を帯びてきました。
だから僕は丁重にお断わりしました。返信が来ても無視しました。
何故そんなことをしたか?
先輩に恋愛感情がないことを分からせるために冷たく接する、つまり先輩のための行動だと思いますか?
違うんです。自分のためなんです。

先輩がもし僕のことを好きだったら・・・それを知るのが恐いんです。
だって、自分が最低の人間だって改めて痛感することになりますから。
何が最低かと言うと、今の僕は、先輩がどう思っていようが関係ない、言い換えれば、先輩の心には興味が無いんです。
興味があるのは、正直言って先輩の身体の方だけなんです。
だから先輩が僕のことを好きだったら、きっと僕はそれを悪用して、先輩を慰みものにしてしまいます。
簡単にヤラせてくれる、僕にとって都合の良い人だってことで片付けてしまうんです。
「私を抱いたのは私のことが好きだからでしょ」とか恋人発言をされたら、
「吹っかけてきたのはそっちの方だ」と開き直って相手のせいにして、面倒臭くなったら水に流せばいいって考えるようになるんですよ!!

・・・今はまだいいです。さっき述べたことは、僕の想像の枠を超えないものですから。
先輩の気持ちを知って、もう先輩とはしないって思うかもしれません。
でも・・・未来に恐怖しています。
恐怖しているからこそ、先輩の気持ちを知ることのないように、わざと避けるようにしてるんです。

誰だって自分がクズだなんて思いたくありません。
自分は特別な存在で、少なくとも価値のある人間だと思いたいはずです。
だから僕は・・・
・・・あっ・・・今、初めて気付きました。

僕って・・・他人に優しいんじゃなくて・・・自分に優しいだけなんですね・・・

先輩が好きでした。先輩として、女友達として。
だから前までは、先輩の女性としての部分を敢えて見ないようにしていました。
男女の友情を壊したくなかったから。
だから僕は先輩を抱くべきじゃなかった。先輩に身体を許されても、欲望に打ち勝つべきだった。
一度でも男女の関係になったら、もう友情なんて無くなってしまうから。
いえ・・・もともと、男女の友情なんて成立しないんです。
そんなのは僕の勝手な理想でした。
現に、僕は先輩の女の部分にしか興味が無くなったし、先輩は僕のことが好きだって分かったし。

前者はともかく、後者はなんで分かったかと言うとね・・・先輩が今、2年2組の教室の前まで来て、僕を待ってるからなんですよ。
今現在、僕は限りなくクズに近いところにいます。恐れていた未来がやってきたみたいです。
226優柔 第18話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/18(土) 18:58:23 ID:7uEvnFMi
久しぶりに先輩の顔を見て、思いました。
「誰、この人?」って。
月曜日の登校時に目を塞いできたり、一緒にお昼を食べた時の先輩とはまるで別人でした。
例えるならば、段ボールの中で誰かに拾われるのを待っている仔犬のようでした。
いつもの威勢はどこにいったのか、目を合わせることもなく、か細い声で言いました。
「ねえ・・・ちょっと・・・来てほしいんだけど・・・いいかな・・・」
僕はショックでした。こちらの反応を窺ってビクビクしてるような、そんな弱々しい先輩を見たことがありませんでしたから。
一体、何があったというのでしょうか。嫌な予感がよぎりました。

屋上の入り口には立ち入り禁止の張り紙がされています。
ですが、何故か鍵は掛けられていないので自由に入ることができます。
それを知ってる人はほとんどいないようで、僕が行った時に誰かに会ったということはありません。
連れて来られたのはいいんですが、先輩は何もせずに景色を眺めたままこっちを向かないでいます。

しばらくの間、嫌な沈黙が続きました。
この場から早々に立ち去りたくなるような、そんな雰囲気です。
そしてようやく先輩は振り返り、自信無げな目で僕を見ながら言いました。
「なんで・・・メール返してくれなかったの・・・ずっと待ってたのに・・・」
いつもの男言葉ではありませんでした。
「何度もメール送って、電話もしたのに出てくれなくて・・・今までこんなこと無かったから、私・・・」
先輩は自分のことを「アタシ」って呼ぶはずなのに。
いつの間にか先輩の目には涙が溜まっていました。
「私・・・何かしたのかな・・・嫌われるようなこと・・・したの・・・かな・・・」
先輩はボロボロ泣きだしました。

意味が分かりませんでした。
僕が何か悪いことでもしたというのでしょうか?
数日間、連絡しなかっただけでこの人はなんで泣いているんでしょうか?
いえ・・・理由は分かります。
先輩は僕が好きなんです。だから泣いているんです。
僕に冷たくされたから、それが辛くて僕の前で涙を流しているんです。

今までの僕なら、「僕をこんなに想ってくれて嬉しい」とか、「僕のせいで泣かせてしまって可哀想」とか思っていたはずです。
でも今の僕の心情は・・・「ムカつく」です。
227優柔 第18話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/18(土) 18:59:19 ID:7uEvnFMi
先輩の発言はまるで恋人のそれです。
2回セックスしただけでそんな風に思われたくありません。
そもそも先輩のやり方が気に入らないんですよ。
処女だって分かったのは、挿入して鮮血を目にした後でした。
好きなら好きって言えばいいのに、そんな既成事実を作ってから恋人みたいな態度を取られても迷惑なだけなんです。
僕を慰めるなんて言っておきながら、結局は自分のためだったじゃないですか!?
それと、泣いている先輩の様子を見て確信しました。これが先輩の本当の姿だって。
僕の知っている先輩は先輩の作りあげた虚像だったんですね。
これはどう見たって嘘泣きじゃありません。僕の知っている先輩はこんなに惨めたらしく泣かないんです。
何か・・・興醒めです。
僕の好きだった先輩なんて、どこにも存在しないって分かったから。
今まで抱いていた尊敬の念は何だったんでしょう・・・馬鹿みたいです。

こんなに汚い考えができるなんて自分でも驚きです。
今まで人の良い所を見つけようという信条を持っていましたが、そんなのはただの偽善でした。
本当の僕は、人一倍汚れた思考回路の持ち主です。

僕は泣いている先輩を優しく抱き締めました。
「ごめんね、先輩・・・泣かないで・・・」
すると先輩は強く抱きしめ返してきて、僕の胸で泣きじゃくりました。
良かったじゃないですか、先輩。
自分の本当の姿を曝け出せて。僕も自分の本当の姿を理解しましたから。

この時点をもって、僕はクズ・・・いいえ、最低のゴミクズ野郎であることが確定しました。
だって今、僕の考えていることは
「しばらく性欲処理に不自由しなくなる」・・・ですから。
228名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 19:03:20 ID:WhBZWZ21
今までとタイプが違う主人公いい!!
でもクズだなw

神達よいつもありがとうございます!!
229名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 19:07:40 ID:1r+LQ0Bx
今までに無いクズっぷりだなぁ。
今までダメ男はいたが、クズ男はいなかったもんな。
230名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 19:11:19 ID:nqs+drwg
また変な方向に目覚めちゃって……
231名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 19:12:45 ID:cn1cFlh/
こいつはすげえや!!
232名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 19:30:43 ID:hxYBRjtu
下半身の欲求に従う…これはもっとも危険なルートに入りそうだな
233名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 19:37:19 ID:Nwqvrefp
何だこいつ。やべぇ、鮮血エンドへまっしぐらだ。
234名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 19:55:56 ID:VZvRgg7L
とてつもない方向へ化けやがったな
ハレムエンドか?
235名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 19:59:24 ID:QwVG2fHS
>234
我が子へ、だろ?
236名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 20:23:03 ID:t+v+wKcm
>>235
死亡エンドじゃねぇかorz
237名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 20:44:08 ID:bgm7Qwhh
vo. いとうかn(ry
238名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 20:49:40 ID:R6Ak3DB4
俺はこういうKOOLな主人公は嫌いじゃないぞw
このタイプの主人公は詰めが甘いのが問題なんだよなぁ・・・。
239名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 20:59:21 ID:uKaM8X+C
あるあるw

ヒロインの方が一枚も二枚も上手なんだよなww萌える
240名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 21:02:03 ID:9eB4tDO1
完全にクズ男だな
241名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 21:47:08 ID:FBugFMT5
クズ男が上手な女の子にうまく操られて
最終的に雁字搦めになったら(*´д`*)ハァハァ
全ては先輩と椿とこの世界の神の赴くままにm( __ __ )m
242名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 22:05:32 ID:gauCILN5
ゆう君……おそろしい子!

これで椿様が完全にリミッターを外せる状況が整いましたな。
243名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 22:09:42 ID:elP49tlf
しかし、1スレ目立ち上げ以来こうもレベルの高い作品が
投下され続けるスレも珍しいな。
244ひとり:2006/03/18(土) 22:29:25 ID:OEHMS025

彩度 さやかは可愛い。絹のように細く、滑らかで、それでいて強さをもった髪。雪のように白い肌は優しく、はかない。大きな目と整った鼻、小さな口は過剰に自己主張することなく絶妙な調律を保っている。

顔は内面を写すとはよく言ったもので、彼女は自己主張をあまりしない。
そんな彼女が告白をしてきたのだ。
きっと、ありったけの勇気を振り絞ったのだろう。
「駄目、ですか?」
返答に窮していると、彼女が尋ねてきた。
上目づかいで俺を見るその目は、涙でうるみ妙な色気をかもしだしていた。
ずるい。
そんな顔で告白されたら、きっと神でも断れないだろう。それほどまでに、彼女の顔は魅力的だった。
もしも、彼女がその顔を自由に使いこなせたならば、
彼女は希代の悪女として、その名を轟かせるだろう。
ま、彼女じゃ無理だとおもうけど……。


いずれにしろ、俺には選択肢がなかった。



「駒野く〜ん。早く行こうよ〜。」
下でさやかが俺をよんでいる。

早いもので、あの告白の日から二週間がたった。
あれから俺達は順調に交際を重ね、ついに、初めて彼女が俺のアパートに泊まりにきた。
ところが、俺は酔い潰れて寝てしまい、彼女に何もできなかったらしい。
あんま飲んでないし、そんなに弱くないんだけどな〜。
まぁ、緊張していたのだろう。

俺は荷物を整え、バイク乗り場でまつさやかのもとへ向かった。


俺がバイクに乗ると、おろおろとさやかが後ろに乗ってきた。
ぎこちない……。やっぱりさやかにバイクは合わないのかもな。

そんな事を思いながら大学へ向かった。
もちろん安全運転で。





投下してみるテスト
245名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 23:07:12 ID:+iC2oMB4
なんだかゆう君をなぐりたいです
まあ先輩のやり口も汚いけどね
と本気で考えさせるほど俺をここまで夢中にさせる作品を乱発させる
神々には本当に感謝してます
246名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 23:20:22 ID:uURRntTf
いや、むしろスレ的にはこの主人公こそがBestだろう。
決断力がありすぎる男は不要(w
247名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 23:30:07 ID:pA2S0Sv+
何ていうかダメ男の方がクズ男よりBestな気がするが。
いや新しい感じで面白いけど。
248名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 23:36:02 ID:bgm7Qwhh
嫉妬修羅場が人を選ぶからねえ。
神が素晴らしいひと揃いなのは言うまでもないが、住人も立派だと思うよ、おれは。
249名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 00:14:05 ID:WCDuNGJ+
>>248
マジで言ってるんなら引く
250名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 01:45:15 ID:X1DtVvhF
>>244
この平穏に警戒してしまう自分・・・。
まだ方向性がわかりませんが続きを楽しみにして待ってますw
251名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 01:52:31 ID:FXS5osAv
そうか、ここは可愛いラブコメチックなヤキモチもOKだったんだな!
激しい修羅場ばかりで忘れてたぜ。
252『Which Do you Love?』 ◆AsuynEsIqA :2006/03/19(日) 01:59:27 ID:EAfeMnCN
まだ雨は降り続いていた。どうもこの特有の匂いは苦手だ。
冷えた体に更に寒さが染み渡る。
………と、前方にタカビを発見。あれが『彼』か。
「よ!タカビ。」
「あ、…ま、また会いましたね。」
いつもと違い、お淑やかなタカビ。なんか不自然で新鮮だ。
腕を組んでいた隣りの『彼』が顔をしかめる。こんな時に俺に会うのに困惑しているんだろう。
しかたない。ここは相手に合わせてやるか。この茶番に。
「これがさっき言ってた彼かい?はじめまして。園崎のクラスメートの高嶋です。」
「ええ……はじめまして…」
「そうです。こちら、お付き合いさしていただいている聖さんです。お会いするのは初めてでしたわね。」
成り立っていないようで成り立つ会話。当事者のみが気付かない状況。ねじれた愛情。幸い周りに人がいなくてよかった。
「じゃ、邪魔者はさっさと帰りますか。またな。」
「…さようなら。」
「また明日。」
二人と手を振って別れる。二人が見えなくなるまで見送った後、雨音にかき消されそうなほど小さくつぶやく。「認められるといいね……」
そして再び歩き出した。






アパート前
アパートに着いた時はもう六時を回っていた。ここまで遅くなるのは初めてだった。
傘を閉じ、階段を上っていく。
部屋のドアの前。人影があった。体育座りでうずくまっていた。
「!!……ま……麻子……」
「えへへ……来ちゃった……」




取りあえず部屋へ上がらせた。傘もささずに来たのだろう。全身ずぶ濡れだった。
253『Which Do you Love?』 ◆AsuynEsIqA :2006/03/19(日) 02:02:38 ID:EAfeMnCN
タオルを渡しが、全く拭こうとしない。パジャマのままの服装だった。その濡れた布地が肌にくっついている。
「っ!………」
よく見ると下着……ブラを着けていないようだった。胸元まで外れたボタンから見える肌や頬の色が、ほんのりと赤くなっていた。
それに加え腰まで伸びている長い髪が纏わりつき、かなり色っぽかった。
自分の腰が熱を持ち、疼き始める。
まずい……
このままじゃあ……
「ふふ……どうしたの?」
ぼうっと見ていると、上目遣いで覗いてきた。
「!!。あ…いや。なんでもない。体、冷えただろ。風呂沸かしてくるから、ちょっとまってろ。」
慌てて立ち上がり、風呂場に行こうとすると……
「どこにも行かないで!!」
グイ!
急に腕を引っ張られた。
そのままの勢いでベットに押し倒される。起き上がる前に両肩をがっちりと押さえ付けられ、身動きがとれなくなった。
「うふふふ…そんなの待ってたら風邪引いちゃうわよ………。今まであなたのことずっと待ってたのに…まだ待たせるつもり?」
ぎりぎりと肩を掴む力が強くなる。
「だったら……体拭けよ…」
なんとか言い訳を試みる。
女特有の甘い香りが鼻をくすぐる。それとともに理性の壁が音を立てて崩壊する。

麻子はそっと耳元へ口を寄せ、こうつぶやいた。
「じゃあ……聖が暖めてよ……私だけを…」
それが引き金だった。
254名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 02:18:10 ID:upPKageB
つい先ほど、「Which Do you Love」においてもどろどろとした
修羅場スイッチが押された模様です
これから先については神様がお決めになるようですので
続報を心待ちにしたいと思います

先と変換しようとしたらサキとでますた(*´д`*)
255ひとり:2006/03/19(日) 03:25:21 ID:OwlrCzYu

「 よう、加地」
「おはよう、亮(りょう)くん」
大学の校門前で見つけた男に、俺達はそろって声をかける。
「あ、ああ、おはよう」
ぎこちない笑顔で返事を返すこの男は、加地 亮。
俺とさやかの同期で、さやかにとっては幼馴染みでもある。
無口で無愛想、友達も少ない。つーか、俺とさやか以外の奴と話している所を見たことがない。
加地は、人と関わりあいをもつことを避けている。何でも、小学生の頃、両親を交通事故(さやかはブレーキの故障と言ってた)で失った事がトラウマとなり、人と親しくなる事が怖いらしい。




人と親しくなる事が怖かった。突然消えてしまうかもしれないから……。
だから僕は人と関わりあう事を極力さけてきた。
駒野くんは、そんな僕に初めてできた男友達だ。
彼はいつも僕の事を気にかけてくれ、そして、しゃべりかけてくれた。
初めはうっとうしいだけだったけど、次第に彼のしゃべりかけは当然の事のようになり、
気が付いたら、僕から話しかけるようになっていた。

あの悪夢以来、さやかは僕の支えだった。彼女がいなかったら、僕は発狂していたかもしれない。そう思えるほど、彼女は僕を支えてくれた。
256名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 03:27:39 ID:Bxgc/37a
もしかして男同士の修羅場?
257ひとり:2006/03/19(日) 03:36:31 ID:OwlrCzYu
そんな二人が付き合いはじめた。
僕の大切な二人。僕は言葉で言い表せないほど二人に感謝している。
二人には是非幸せになってほしい



「なぁ加地、さやか知らねぇ?」
講義が終わり、さやかを探していた俺は、偶然見つけた加地に尋ねた。
「えっ?さやか?さっき駐車場の方に行くのを見たよ」
「そっか、サンキュ」
加地と別れ、駐車場へと歩を進める。
そう言えば、さやかがひとりで駐車場へ行くなんて初めてだな。



駐車場の右隅、俺のバイクの前にさやかはいた。
何やってんだ、あいつ。
さやかはバイクと向き合いしゃがんでいた。

「なぁ、何やってんだ?」

ビクッ!彼女は驚き、振り返った。
その顔は、まるで悪戯がバレた子供のよう、いや、違う。彼女の顔からは、もっと重大な何かが感じられた。
「何やってんだ?」
再度同じ質問をしてみる。
彼女は答えない。心なしか視線が游いでいるように見える。
「まぁ、いいや。駅まで送ってくから乗れよ」俺はいつものように彼女を駅まで送っていこうとした
「いや、今日はいいよ。ちょっと用事があるから……。それじゃ……」
「サヨナラ」彼女は踵をかえし、駐車場を離れていった。
258ひとり:2006/03/19(日) 03:40:51 ID:OwlrCzYu
心にモヤがかかっていた。
彼女が別れ際に残した言葉がえらく、頭に舞っているためだ。
サヨナラか……。
いつもと違う別れの言葉……。
もちろん、深い意味などないであろう言葉。
しかし、俺には何か別の意味がある気がしてならない。
考えれば考えるほど、心にモヤがわいてくる。
バイクのスピードをあげる。風がモヤを吹き飛ばしてくれる事を期待して。


そろそろカーブか……。
俺はブレーキに手を伸ばした。


「!!!!!」
ブレーキが利かない。
馬鹿な!!! 故障か!? いや、それはないだろう。
最近すぐブレーキが甘くなるので修理に出したばっかりだ。
悪戯?
でも、だれが?
そもそも、俺のバイクに近付いた奴なんて……。
ガードレールはすぐそこまで迫っていた。
259名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 03:41:44 ID:ThPRDrxh
いや、駒野君を巡ってさやかと亮の鞘当だろ。

「さやか、君はいい友人だったがね・・・駒野君に手を出した
のがいけないのだよ。」
260夢と魔法の王国 第二話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/19(日) 04:05:42 ID:JThoQNnM
<プロローグ>

わたしが男だと知っている人は、もう何人もいないと思う。
「みき」ではなく「よしき」と呼ばれることも減ってしまった。

母親のトチ狂った趣味のおかげで、わたしは物心付いた頃からずっと女装を続けてきた。
小学校のときだって、それを知っている人は少なかったし、
みんなとは違う私立の中学にわざわざ進学してからは皆無といってよかった。
絶対にバレないよう、わたしは細心の注意を払ってきた。

なんでそこまでするのかって?
そりゃ、最初の頃は目的もなかったわ。
母親に言われるままに着せ替え人形になっていただけだった。

でも、あの日から、わたしは変わった。

化粧を覚えた。
意識して言葉遣いも変えた。
服装にもちゃんと気を使うようになった。
プールも身体測定も避けて、我ながら見事に隠し通した。
そうやって少女たちの中に身を置くことで、己の女らしさを磨いてきた。

あの日。
拓ちゃんと出会った日。

あの糞女は知らないだろうが、わたしはずっと彼のことが好きだったのだ。

…絶対、負けてやらないから。
261夢と魔法の王国 第二話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/19(日) 04:06:16 ID:JThoQNnM
<1>

校門から伸びた長い坂を、自転車で一気に駆け下りた。
木漏れ日が、まだら模様になって地面に落ちている。
風がすごい勢いで耳の横を通り抜けていって、わたしは笑う。
とっても爽やか。
いや、高校球児みたいな表情をしている場合じゃないだろ。
顔を引き締めて、さらに力いっぱいペダルを踏む。
自転車は気持ちよく加速する。
わたしは昨日のことを思い出していた。
姉の美衣がやけに浮かれていたこと。
拓ちゃんが家にやってきたこと。
……彼氏彼女の間柄になったって?
ふざけんな。
拓ちゃんは近所に住む男の子だった。
幼い頃は、そりゃもういっぱい遊んだものだ。
拓ちゃんは小さな騎士で、わたしを女子と思って、お姫様のように大切に扱ってくれた。
昨日の反応から見て、いまでもわたしを女だと信じているんだろう。
そんなふうにどこか抜けているのも昔と変わらない。
可愛らしいと思う。
抱きしめたいと思う。
そうやって、自分の中にまだ熱い想いが存在していることを確認する。
一度もブレーキを握らずに、対向車の見えない直線道路を、わたしは走り抜ける。
向かう先は決まっている。
あの女と、そして拓ちゃんが通う高校だ。
262夢と魔法の王国 第二話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/19(日) 04:07:34 ID:JThoQNnM
<2>

プールでは、女子水泳部が50mクロールの真っ最中で、プールサイドには美衣の姿もあった。
隣のレーンでゆったりと泳いでいる男子水泳部の中にいるのは、あれは紛れもなく拓ちゃんだ。
ふーん、なるほどね。
あの陰気で根暗で運動神経ゼロの美衣が部活に入ったのには、こういう理由があったわけか。
……どうせロクに泳げもしないくせに。
呟きつつ、わたしは拓ちゃんの水から上がってきたのを確認する。
よし、アクション。
フェンスに付けられた扉を開け、中に入る。
そして、ゆっくりと美衣に近付いていく。
「お姉ちゃーん!」
その可愛らしい声に、プールサイドにいた女子水泳部員の目が一斉にわたしに向く。
わりあい好意的なそれらの視線の中に、……美衣の、殺気混じりのものを感じる。
わたしはあっという間に取り囲まれた。
「うわぁ! 美衣が二人いる!」
「だ、誰?」
「知ってるー。妹さんだよね?」
「双子? 双子なの!?」
まるで珍獣扱いだが、それに対する文句はこの際捨て置こう。
彼女らに対し、わたしは最大限「女の子らしい」笑顔を作る。
わたしの身長は男としても女としても小さい方なので、その仕草は余計に可愛らしく見えるはずだ。
「えへへ、美衣の双子の妹で、美樹って言います! よろしくおねがいします!」
「美衣ちゃーん、妹さん来てるよー?」
「ワタシに"妹さん"はいないはずだけどねぇ……」
ようやく美衣が立ち上がる。
「もう、お姉ちゃんひどいよ。せっかく他所の学校まできた"妹"に……」
「そうねぇ、何しにきたのかしら? ここは他校生は立ち入り禁止なんだけど」
「お姉ちゃん、なに言ってるのよ! お姉ちゃんが『替えのパンティ忘れたから持ってきて』って言ったんじゃない!」
わざと、拓ちゃんにも聞こえるくらい大きな声で言ってやる。
わたしが広げた"ソレ"は、――大きなクマさんがプリントされたパンティ。
座って休んでいる男子部員たちが、大声で笑っている。
女子部員たちも必死で笑いを堪えようとして、しかしクスクスと笑い声が漏れ聞こえる。
「ア、アンタねぇ。大嘘ぶっこいてるんじゃ――」
子豚ちゃんのようにピンク色の顔面になった美衣に、
「あ! 部活の邪魔しちゃったね! ごめん、お姉ちゃん!」
手に持っていたクマさんパンツを投げつけ、すみやかに撤退。
美衣は頭でっかちで挑発に乗りやすいぶん、キレると手が付けられないから……。
まあ、これは単なる嫌がらせ。
本番はこれから、ね。
263夢と魔法の王国 第二話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/19(日) 04:08:24 ID:JThoQNnM
<3>

美衣をさんざんからかったあと、わたしは拓ちゃんのもとに向かった。
「こんにちは、拓ちゃん!」
「こんにちは、美樹ちゃん。……その、パンツはもういいの?」
拓ちゃんは恥ずかしそうに微笑む。
あーもう、この笑顔!
汚らしい美衣なんかとは比べ物にならない、天使の笑みだわ!
「あんなのどうでもいいって! わたし、拓ちゃんに会いにきたんだよ!」
「え……?」
わたしたちを遠巻き見ていた誰かが口笛を吹いた。
それに、拓ちゃんは顔を真っ赤にする。
「あのね、今度の日曜、暇かなぁ?」
上目遣い。45度の角度をキープ。
囁くような、他の人に聞こえないくらいの声で、拓ちゃんに迫る。
「え……と、確か、ミィちゃんとデートする予定だったけど……」
「そ、それダメだよ!」
「え? ダメ?」
拓ちゃんの胸にすがりつく。
既にわたしの瞳は潤み始めているはずだ。
「お願い、デートをキャンセルして。日曜日に、わたし、どうしても拓ちゃんに伝えなきゃいけないことがあるの」
「でも……先に約束したのはミィちゃんとだし……」
「お姉ちゃんと拓ちゃん、二人に関することなの。大事なことなの。お願い!」
「その"伝えなきゃいけないこと"って、いま言うのとかじゃだめなの?」
「うん、日曜日じゃなきゃだめ……」
わたしはじっと、拓ちゃんの目を見つめる。
涙がぽろり、頬を伝う。
「……わ、わかったよ。そこまで言うなら……」
ふふん、ちょろいもんよ。
うちのクラスメイト直伝の泣き落とし。
どれほどのものか疑ってたけど、いやぁ、効果抜群だわ。
「ありがとう、拓ちゃん……わがまま言ってごめんね……」
わたしは涙を拭き拭き、健気に微笑んで見せた。
264夢と魔法の王国 第二話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/19(日) 04:09:56 ID:JThoQNnM
<エピローグ>
「で、アンタはなんで学校まで来るんだ! しかもあんな馬鹿な嫌がらせまでして!」
「あのパンツ、実際にあんたの愛用のパンツでしょーに」
「そうだけどっ! んなもん皆に見せんなっつーんだよ!」
「いいじゃん、クマさんパンツなんて可愛らしいわよ」
「……こいつっ、こっ、殺してやろうかっ」
「殺されたくなーい。あははっ。
 あ! そういえば、帰り道、拓ちゃんになにか言われてたわよね? なんだったの?」
「ん? ただ、急に今度のデートをキャンセルするって言われただけで……」
「デートって、今度の日曜に買い物いくんだってはしゃいでた? なんだ、やっぱり振られちゃったの?」
「キャンセルされただけだっ!」
「まあ、いいけど。……そっか。振られちゃったのかぁ。あ、それだったらさ、」
「……振られてないが、なんだ?」
「美樹、お姉ちゃんにお願いがあるんだけどぉ、聞いてくれるぅ?」
「気持ち悪いから単刀直入に言え、クソバカ」
「……あのさ、今度の日曜、暇?」
265 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/19(日) 04:11:17 ID:JThoQNnM
つーわけで第二話。

自分にしては珍しく、最後までの話の筋をちゃんと考えたので、
たぶんあと三話くらいで終わるはず。

えーと、最後まで付き合っていただければ幸いでございます。
266名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 05:41:13 ID:2kR3hnHf
な、なんだってー!
そういやそうだった。
修羅場SSが力作ぞろいで
可愛いヤキモチのことを忘れてた。
267名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 05:42:42 ID:2kR3hnHf
あ、>>266>>251へのレスです、失礼。
268危険な男 第2回 ◆AuUbGwIC0s :2006/03/19(日) 09:16:08 ID:VbQ7trur
 私は人ごみが嫌いだ。今私がいる食堂などその典型的一例だ。
 正直言ってこんな場所など来たくない。だがしかたない、あの男の監視の為だ。
 しかし今もう一つの問題点がある。席が空いていない。いや正確には一つだけ空いている、あの男の隣の席だ。
 あの男は向かいの席の女と仲良さそうに談笑しながら食べている。この女は違うクラスの筈なのによく一緒に話しているのを見かける。
 やはり胸の奥で何かが警告している――
 しかたないので相席がいいか尋ねてみたら二つ返事で了承された。
 尋ねた時何か変なところはなかっただろうか、なにか警戒されたのだろうか、そんな不安感が胸に湧き出していた。
 監視としては近い方がいいのかもしれない。しかしここまで接近していいものなのだろうか、少し落ち着かなくて顔を見れない。
 隣の男はそんな事おかまいなしに向いの席の女と談笑をしている。
 邪魔だ――何かが言った。
 隣の男は食事がすんだらしく席を立った。ここでようやく私は自分の食事に殆ど箸がついていないことに気がついた。
 早く後を追わなければならない、急いで食事を詰め込む。
 そうだ席を立つ前に、あまりにも無防備な彼女に警告しておこう。被害者を出さない為、加害者を作らせない為に。
 一言だけ、一言だけ「彼には近づかない方がいい」と彼女に教えてやった。
 彼女は一瞬わけの分らない顔をした後、少しだけ何かに納得して「大丈夫、私達そういう関係じゃないし、邪魔しないから心配しなくていいよ」と笑いながら言った。
 そういう関係とは、どういう関係のことだ? わからない。
 しかし大丈夫だという人間だという人間ほど大丈夫じゃないことを彼女は気づいているのだろうか。多少無理させてでも距離をおかせた方がいいのかもしれない。
 そうこう考えているうち彼女は席を立とうとしていた。
 離れ際に彼女は、あいつ昼はいつも図書館にいると教えてくれた。
 そんな事お前に言われなくても知っている。
 ――いつも見ているから。
269名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 11:49:23 ID:z0iZzDIh
実に微笑ましい話だ
270名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 13:43:56 ID:OFg8Dlt+
心が温まるね
271名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 13:59:41 ID:kiPusvNM
ほんと、まるでハバネロを食べたように温まる
272『Which Do you Love?』 ◆AsuynEsIqA :2006/03/19(日) 15:02:54 ID:EAfeMnCN
「はぁ、はぁ、はぁ。」
静かに始まり、静かに終わった性交。いや、性交とは言えないだろう。愛撫だけだったのだから。
聖の性器は治まったまま。麻子は快感で完全に脱力状態だった。だが不満だった。
「なんで……勃たないの?……私、そんなに魅力ないの?」
そうじゃない。確かに麻子は女としての魅力はある。精神的にも興奮はする。でも、体はそう素直に反応してくれない。
いわゆる精神性の不能だ。
「あの…女が。あの女がいいって言うの?!私なんて抱きたくもないの!?」
「違う!そうじゃ……」
「嘘!!体は正直じゃない!!お願いだから……私を抱いてよ…聖しか…いないのよぉ…。」
うつむいていて麻子の表情はわからない。ただ小刻みに体が震えていた。
ただなにかブツブツ呟いていた。
「ふふ…ふふふ。そうよ…そうよねぇ…それがダメなら……奪ってやる……聖の全てを奪ってやる!!」
ガッ!
急に首を締め、一気に力をこめる。
「がっ!は…ま、麻子……!」
「聖は……私とだけ仲良くしてればいいの……!他の人には、無愛想でいなさい!変わらないで……私の知ってる聖のままでいて!!」「麻子…ちょ、ブレイク、ブレイクだ……」
麻子の肩を何度か叩くと、気を取り戻したように力を緩める。
「あ…ご、ごめん!」
麻子をどかして立上がり、ふらふらと歩く。ただ水が飲みたかっただけなのだが……
「ま、待って!」
腰にしがみつかれ、また身動きがとれなくなる。
「ごめんなさい……酷いことしちゃって……謝るから……謝るから嫌いにならないで。ここに居てよ…」
泣き声になりながら訴える。
「そ、それとも、この前の喫茶店ではたいた事に怒ってるの?だったらそれも謝る。でも、勘違いしないでね!?聖が好きだからこんな酷いことしちゃうのよ?」
最早自分で何を言っているかも理解していないのだろう。ただ感情のままに口が動いているのだろう。
「麻子…俺もお前が…」
「はん!首を締めておいて、よく好きだなんて言えたもんですわね?」
273『Which Do you Love?』 ◆AsuynEsIqA :2006/03/19(日) 15:04:02 ID:EAfeMnCN
ドアから響く第三者の声。自分の言いかけた言葉を止め、咄嗟に振り向く。
「あの…女ぁ!」
飛び付きそうになる麻子を必死に押さえる。男女が絡み合っているのを平然と見てられるとはな……ホント、血が凍ってるんじゃないか?こいつ。
「はぁ、はぁ、うふふ…でも、残念だったわね…来るのが遅かったわ。もう聖は私を抱いてくれたの……愛してもらったのよ…ふふ、悔しいでしょう?」
奏でがやれやれといった様子で肩をすくめる。
「そんな行為、先だろうが後だろうが何ら違いはありません。それに、遅いのはあなたの方ですわ。」
「?…何を言って……!!!」
そう言って鞄から紙切れを一枚麻子の目の前に突き出す。
それは婚姻届だったが……俺の書く所も既に記入してあった。
「これで決まりです。私たちはもう夫婦同然ですので、あなたの入り込む余地はありません。」
「そんな…嘘よ!!嫌!!嫌ぁ!!」
「お前!!なんでそんなのを持って…」
思わず奏に詰め寄る。そんなものを書いた記憶など無いからだ。
「あら?あなたが書いて渡したんじゃありませんか?覚えてらっしゃらないの?」
この前もらった紙は手を付けてないはずだ。
「聖……どうして……どうしてこの女なの?!私にしてくれたことは嘘だったの?!」
「違う!俺は書いてない!!こいつが勝手に……。」
「イヤァァァ!!やめて!!なにも聞きたくない!」
俺が言い訳をする前に、麻子は大声で叫んで飛び出していってしまった。
「…言いましたでしょう?どんな手段もいとわないと。それに、あなたの事だから、あの人を抱いてなんていないのでしょう?」
「ちくしょう……ちくしょう……」
麻子が出ていったドアを見てうなだれながら呟いた。奏の言葉なんか耳に入らなかった。
全てこいつの思惑通りに進むことが悔しかった……
274名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 17:37:38 ID:ypCDtV+w
ここは神がたくさんいる、最高だ。
275名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 18:33:34 ID:wAijc0uE
>「あの・・・・女ぁ!」
このへんの、心情を爆発させて吐露する台詞が個人的に大好き。
「泥棒猫!」みたいに相手に叩きつける台詞もいいんだけど、ね。

ところでまとめサイトの管理人近況が「リアルが危機」
となって以来、更新がないのは気のせいか?
276名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 19:21:21 ID:9demhlLq
きっとリアルでこのスレに投下されてるSSのような体験をしてるに違いない。
さすが管理人だよなっ
277名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 19:25:26 ID:jAM6gYh0
え、管理人さん拉致られてる?
278名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 21:24:26 ID:tsFlRne9
まさか…

…ねぇ、2chなんか見ていないで私だけを見て!!私だけを!!

なんてことになっているんじゃ(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル
279優柔 第19話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/19(日) 21:52:39 ID:nBsQWBtg
さっきは先輩のことをムカつくって思っていましたが、別に嫌いなわけではありません。
むしろ好きです。
誰だって自分に好意を抱いてくれる人を嫌いになろうなんて思わないでしょうし。
ああ勿論、『LIKE』ですよ。『LOVE』じゃありません。

僕は先輩と屋上でセックスしました。
行為が終わって、先輩は僕の肩に寄り添って幸せそうな表情を浮かべています。
――ああ、もう完全に恋人だと思ってる。
セックスのやり方がいけなかったのかもしれません。
後ろから抱き締めて胸を揉みしだき、十分に濡れてきたら手マンで数回イカせてあげたのはやっぱりまずかったと思います。
フェンスに手をつかせてお尻を突き出させ、アナルを舐めながらクリトリスを擦ってあげたのはいくらなんでも早すぎたと思います。
「かわいいね」とか「きもちいい?」とか耳元で囁いて、ディープキスをしながらのピストン運動は軽率だったと思います。
でもまあ、仕方ないですよね。椿ちゃんと付き合ってた時は、こういうネチっこい愛し方をしていたんですから。
わずか半年の付き合いだったとはいえ、僕は椿ちゃんに悦んでもらいたくて、気が付いた時にはそれなりにエッチが上手くなってました。
それと同時に、僕の性癖も明らかになりました。
僕は、女の子の感じている時の顔を観察するのが好きなんです。
それと、奉仕するのも好きみたいなんです。
だから今回もこんな感じになってしまいました。
確かこれって・・・『恋人プレイ』って言うんでしたっけ?

先輩は立ち上がろうとしましたが、急によろめいてしまいました。
とっさに僕が支えたので倒れることはありませんでしたが、独りでは歩くことができないみたいです。
ちょっとやりすぎたかもしれません。
「先輩・・・保健室まで送るよ」
本当は面倒臭かったんですが、このままおいて帰るほど薄情でもありません。
先輩に肩を貸して、1階にある保健室まで連れて行きました。
「すみません、この人が急に倒れちゃって・・・」

「ごめん先輩、急に用事が入ってすぐに帰らなきゃいけないんだ」
簡易ベッドで仰向けになっている先輩にそう告げると、少し悲しそうな顔をしました。
「ううん、いいよ・・・また連絡するから、ちゃんと出てね」
「本当にゴメン。今度はすぐ出るから。それじゃ、また」
先輩の口調は完全に変わっていました。
全くトゲトゲしさの無い、優しい響きでした。
まあそんなことはどうでもいいんです。
分かっているとは思いますが、別に用事なんてありません。

教室に戻って時計を見ると、まだ5時でした。
ということは、先輩は1時間で7回イッたことになります。
3回目のセックスでこんなにイケるなんて、先輩は淫乱の素質があるかもしれません。
それと、あんなに可愛い顔といやらしい身体をしているんだから、言い寄ってくる男はいくらでもいたはずです。
僕なんかに処女を捧げずに、誰かとヤリまくってたら良かったのにって思います。
もしそうだったら、絶対に先輩を抱いてなかったですから。
僕もクズにはなってなかったでしょうし。
・・・今、改めて思いました。
僕って最低です。
今のままだったら十中八九、楽に死ねない運命を辿ると思います。
280優柔 第19話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/19(日) 21:53:40 ID:nBsQWBtg
「ゆう君、待って」
教室を出たところで呼び止められました。
振り返るまでもなく分かります、椿ちゃんです。
「あ・・・椿ちゃん。どうしたの、こんな時間まで学校にいるなんて」
「今日は図書委員の放課後の当番だったの。5時までだから今終わったところ」
「へえ、そうだったんだ。ご苦労様」
「ゆう君は何してたの?」
・・・ハメてました、なんて言えません。
「来週から中間試験が始まるから教室で勉強してたんだけど、途中でリタイヤしてさっきまで体育館で女子バトミントン部の練習風景見てハアハアしてた」
「あははっ、ゆう君面白いなあ」
椿ちゃんは屈託のない笑顔を浮かべています。
付き合ってた時にこんな冗談言ったら、もの凄い形相で睨まれていたでしょう。
でも今は、そんなことは全くありません。
「ねえ、ゆう君」
「うん、何?」
「お腹減らない?どこかでお茶でもしようか」
椿ちゃんから誘いを受けました。確かにさっきまで運動していたので、多少の空腹は感じられます。
「うーん、どうしようかな・・・」
本来ならば行くべきではありません。僕達は別れたのだから。
「・・・じゃあ、行こっか」
でも僕は行くことにしました。
だって僕はクズだから。

駅前のカフェに行きました。
久しぶりにここのカプチーノとシナモンロールが食べたくなったので椿ちゃんに提案したところ、椿ちゃんは快諾してくれました。
前に別れ話をした所だから嫌かなって思ってたんですが、すごく嬉しそうでした。
「実は私も来たいって思ってたんだ。同じこと考えてたみたいだね」

椿ちゃんとは普通にお喋りをして、何事もなく別れました。
でも僕の心境に変化が起きました。
別れる時に胸が切なくなったのです。
そして僕は思いました。
椿ちゃんとはもうセックスしたくない、こういう友達の関係でいたいって。

ヤラせてくれる先輩がいて、楽しくお喋りできる女友達がいる。このポジションを保持したい。
こんな都合の良い考えは、駄目ですか?
281名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 21:56:33 ID:Bxgc/37a
クズ神キターーーーーーー
282名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 22:02:08 ID:8n9UbD+k
まさにダスト・オブ・ダスツ
283名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 22:06:23 ID:7eCAvvGw
凄ぇクズっぷりだ。
284名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 22:18:31 ID:U0fXQypC
クズもここまで徹底してると逆に気持ちがいいな
285名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 22:28:03 ID:W0Mf+AYP
やっべぇ笑っちゃうほどクズだこれw
286名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 22:31:12 ID:fWEhfnMY
どう考えても、健気な椿ちゃんと寄りを戻すべきだろw 
いや、学園ラブコメのお約束としては
287名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 22:36:51 ID:jAM6gYh0
椿ちゃんがいつ牙を剥くか、すんげー楽しみだ。
288ひとり:2006/03/19(日) 22:49:24 ID:OwlrCzYu

僕のたったひとりの友達が死んだ。
スピードの出しすぎでカーブを曲がりきれなかったらしい。

両親が死んだ時と同じ喪失感。
いや、あの時は全てを理解するのには幼すぎた。
今の喪失感のほうが途方もなくおおきい。


通夜の席、放心する僕の横で泣きじゃくるさやか。
……無理もない、恋人が死んだのだ。

隣のさやかを慰めようと、手をのばした瞬間にふと違和感を感じた。

何かがおかしい。

さやかは悲しんでいる。真っ赤に腫れた目なんかはひどくいたいたしい。
ただ、彼女から流れでる空気が異様なのだ。
明らかに、僕や他の参列者とは異質……。
例えていうなら、野菜の中にひとつ果物が混じりこんでるよう。



考えすぎか……。
駒野くんの死にショックを受けて、一時的に論理的思考ができないだけだ。


………また、ひとりに戻ってしまった……。
いや、一応さやかはいるが……。


通夜も終わり僕とさやかはそろって家路につく。
「これで……」
後ろを歩くさやかが何かをつぶやいたが、言葉はすぐに夜の闇に吸い込まれてしまった。
僕はさやかが何をつぶやいたか尋ねようとした……が…やめた。

何か口を開くと、僕まで闇に吸い込まれてしまいそうな気がしたから。





「これでまた、亮くんには私しかいなくなったね」





――チラシの裏――

結局、何が言いたいのかとゆーと、
彩度(サイド)は駒野ではなくて加地だと言うこと


――チラシの裏――
289名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 22:54:57 ID:VAQhIF4r
ガクガク(((( ;゚Д゚))))ブルブル
290名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 23:24:41 ID:X1DtVvhF
>>279-280
こういう完全に利己的な主人公は大好きですw
それを自覚して自分に都合のいいように周りを操るのもいいw
291名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 23:45:50 ID:Bw7k2gvR
>>288
やっぱその苗字はサッカーからなのか!?

しかし、排除する為に恋人になるなんて・・・さやか、恐ろしい子!
292名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 00:01:53 ID:JrIKgBiQ
>>321
              ,,,──-____
           _/´-         \
          / /  ./ヽ  `ヾ     ヽ
        /  /  |∩|    彡\   | >そんなエサでこの俺がクマバウアー
        |  ミ  ( ● )   | ヽ  ).  |
        |  | | ●   ● / / /   .|
        (_/ ヽ       /| (_/\  |
            ∪ ̄ ̄_|U⌒´|.   |  |
               .(___)   |`⌒´|_
     ──────── ┻┻   .(___)
            ──────── ┻┻
293名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 00:07:27 ID:9demhlLq
>>321の美味しそうな餌に期待。
294名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 00:16:36 ID:07yrJ4XI
もう嫉妬とか修羅場とか関係無しだと思う
295名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 00:19:26 ID:07yrJ4XI
嫉妬とか修羅場、関係ないな
296名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 00:23:04 ID:l7cJVxbB
>>293が自分だけを見てくれないことに嫉妬する>>322
297名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 01:16:23 ID:OuV2vyK7
ゆう君、外道杉。

しかし、性欲処理の相手と気の置けない女友達は全く別物で、
これを個別に確保したいという気持ちには強く共感できる。

男なら誰でも思うことだ。
298名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 02:50:26 ID:tNGZdqJv
椿ちゃんにかつてない萌えを感じた
299名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 03:13:51 ID:m+p6nzrg
しかし、真の外道は自分を外道とは言わないのだ。

見えるよ、ゆう君が奈落へ落ちる様が!
300『Which Do you Love?』 ◆AsuynEsIqA :2006/03/20(月) 08:03:28 ID:AfB7rw/p
気付いたらまた部屋で自慰をしていた。無我夢中になって帰ってきたのだろうが、記憶にない。パジャマしかきていない薄着で、雨の中を走って来た。
人が好奇の目で見ていたが、全く気にしなかった。
聖がもう手の届かない所まで行ってしまった。
それは世界が無くなるのにも等しかった。
もう何をしても無価値だ。
そう思う度に、体が快感を求めていた。だが何度自慰をしても、もう自分の手では満足出来なかった。聖の手で愛撫された時は、本当に幸せの絶頂だった。
あの最初で最後のチャンスで、聖に処女を捧げられなかったことに後悔する。
じゃあ他の男に変えるのか?そんなのは死んでも嫌だ。聖以外の男となどに触られるなど以ての外だ。
でも今はあの女が聖の隣りにいる。あの女が得意な作り笑いを浮かべ、聖をだまそうとしているんだ。
自分が聖にしてもらうはずの事を今しているかもしれない………そう思うと、怒りの抑えようが無かった。
バリン!!
手近にあった鏡を割って気持ちを落ち着かせる。
何故あの女は聖を狙うのだろう?あの高慢チキな態度からは、全く愛が感じられなかった。それで結婚しては、聖がかわいそうだ。
そうだ……私が聖をあのハイエナ女から助けてあげる事が天命なんだ。
こうなったらあの女の尻尾をつかまえて、脅しまくってやる!!!!
「あはははは……待っててね聖……すぐに助けてあげるから…あの女を潰してやるから……」
荒れ果てた部屋で、一人妄想を捲し立てる。弱みを握ったらどう料理してやろうかしら……婚約解消はあたりまえ
薄汚い男どもに襲わせて輪姦……
私たち夫婦の(もちろん聖と)小間使。
はたまた精神的に追い込んで自殺……
売春婦にして稼がせるか……
学校の男どもの精液便所も悪くない……
「ふふふ……楽しみ……覚悟しなさい………」
聖に抱かれる妄想以外で、ここまで浮かれるのは初めてだった。
早速あの女のあとをつけるしかない。確かあの有名な会社の娘だ。会社の近くに家があると聖が言っていた(なんであのクソアマの家を知っていたかは後で問い詰めよう)から大体はわかるだろう。
桐原奏…桐原……どこかで聞いた名字だったが、そんなの今は関係ない。
私が今やれることは一つだけ。聖の開放だけだ………
301名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 09:12:24 ID:8dMbAjBl
麻子に後光がさしている。
302名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 15:30:47 ID:4jmigoNy
なんかみんな展開早いよね。
303優柔 第20話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/20(月) 20:00:37 ID:C/aI0pX2
ゆう君が少し変わった。ううん、元に戻ったという感じがした。
喧嘩した時から私を見る目が・・・何て言うのかな・・・あんまり関わりたくないって様子だったんだけど、今日のゆう君はそんなことなかった。
何かが吹っ切れたみたいだった。
私ともごく普通に話してくれたし、ちゃんと目を見てくれた。
もう大丈夫みたいだね。やっと元通りになりそうだよ。

私ね、最近変わったみたいなの。
精神的に成長したっていうか、落ち着きが備わっていうか。
嫌なことがあっても少しぐらいなら我慢できるようになったの。
それが表情に出ることも無くなったみたい。
そう、さっきの事。
ゆう君とのお喋りがすごく楽しかったからあんまり考えないようにしたんだけどね・・・
ゆう君・・・メス犬の匂いがプンプンしすぎだよ?
ゆう君のせいでお店のソファに爪の痕がついちゃった。
破れたって言ったほうがいいかもしれないね。
ゆう君ったら、私に嫉妬してほしくてわざとやってるんじゃないかしら。

私ね、ちょっと焦ってる。ゆう君のことは信じてるけど、もしかしたら変な方向に行っちゃうんじゃないかって。
そう、獣姦。
いくらゆう君がモノ好きだからって、そんなことはないとは思うんだけど・・・
ほら、漫画であったじゃない。
吸血鬼が食糧であるはずの人間との間に子供を残したっていう。確かその子はギャングのボスになったのかな。
まあそれはいいとして、早いところそのメス犬を見つけだして、ゆう君にちょっかい出してくれたお礼に何かしなきゃ。
・・・撲殺?だめだめそんな野蛮なこと。
軽くお灸を据える程度にね。かるーく、ね。
勿論、ゆう君にも。私がどれだけ愛してるかってことを身体に刻み付けてあげるの。
小一時間・・・ううん、最低でも丸一日かけてね。
そうすれば二度と私から離れようなんて思わないばずだから。

ああ・・・今日も独りで慰めなきゃいけないよ・・・
何もしないで帰すなんてやめて拉致っちゃえば良かったかな。

304優柔 第20話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/20(月) 20:01:22 ID:C/aI0pX2
もう外が薄暗い。
保健室のベッドでこんなに長い時間寝たのは初めてだ。
カーテンの向こうにいる保健医は知らないだろう。ここにいる原因が快楽によるものだなんて。
何と言うか・・・凄すぎた。
愛原があんなにテクニックがあるなんて思いもよらなかった。
あんなに激しく私を求めてきたし、その・・・ああ、思い出すだけで恥ずかしい。普通あそこまでできるか?
何回もイカされたのもそうだが・・・尻の穴を舐めるなんて。
普通に考えれば変態行為の何者でもないが、とても嬉しかった。
愛原が私の身体をあそこまで愛してくれたんだから。
ただするだけじゃなくて、ちゃんと私を気持ちよくしてくれて。
激しいけれど優しくて・・・本当に私のことを愛してくれてるんだ。

行為が終わった後も優しかった。聞いた話だけど、男は終わると急に冷たくなるっていう。
女と違って絶頂してる時間が短いらしいから。
でもあいつは、まともに歩けない私を保健室まで運んでくれた。
「大丈夫か」って声を掛けてくれた。
私は確信した・・・私達は、気持ちが通っていると。

でも何だ・・・私の今の気持ちは。
嬉しさと恥ずかしさに隠れているけど・・・この・・・正体不明の嫌悪感はいったい何?
・・・あれ、私・・・嫉妬してるの?
愛原君が私をあんなに愛してくれたのに、何で妬いてるの?

・・・ああ、そうか。
私・・・あの女のこと考えてる。
だって愛原君があんなにエッチが上手なのは・・・あの女がいたからだもの。
私のおっぱいをいやらしい手つきで揉んで・・・あそこをクチュクチュ音を立てて擦って気持ち良くしてくれたのも・・・
それだけじゃない・・・お尻の穴に舌を入れて私にあんな恥ずかしい声を出させたのも・・・
何回も腰ふってお○ん○んを出し入れして・・・舌を絡めるキスをしてくれたのも・・・
全部あの女と・・・してきたことなんだね。
もっと・・・もっと凄いことしてたのかな?
そんなことを考えると・・・

駄目だな・・・愛原君の過去に嫉妬するなんて。
私だって他の男とファーストキスしたんだからおあいこだよ。
それにもう、そんなことを考える必要ない。
愛原君は私のことが好きだから。私も愛原君のことが誰より好きだから。
嫉妬する必要なんてもうない。
これからは、私がいるから。
愛原君は、私のものだから。
絶対に誰にも渡さない。渡すもんですか。

私の正体を見られちゃった。
こんなに弱い女だってこと、ばらしちゃった。
何年もかけて作った、メッキがはがれちゃった。
でもいい。愛原君にしか見せないから。
他の人といる時は、いつもの私でいよう。
私の正体を知っていいのは、愛原君だけ。

愛原君の記憶から・・・あの女のこと・・・消せたらいいのに。
305 ◆I3oq5KsoMI :2006/03/20(月) 20:03:54 ID:C/aI0pX2
もう20話ですが、いつ終わるか分かりません。
気長に待ってて下さい。
306名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 20:37:27 ID:O6pHfUTR
椿様キタコレ。
307名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 21:05:28 ID:SAhEDdSg
>>305
いいよいいよー、やりたいことどんどんやっちゃいましょう!

まぁあえて個人的に言わせて貰うなら、この物語というよりこのスレ全体が
他スレよりもエロ描写が結構薄めな気がするんだけど、修羅場描写メインの
このスレでは仕方ないのかなー
308名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 21:18:44 ID:O6pHfUTR
え?俺達は修羅場にハァハァしてるんじゃないのか。

オリジナルシチュスレでエロ薄はままある事だが俺自身は
面白ければそれでオケ。むしろ修羅場を盛り上げる為に
エロシーンがあるくらいの認識だが同志はおらんのかのう。
309名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 21:33:49 ID:H3bPAd+p
まあ、嫉妬と修羅場メインで良いんだが、やはりエロパロだからエチも当然欲しいところだ(w
310名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 21:52:07 ID:l9Fh9j4h
>>308
俺もだが。ここの住人は皆そういう認識だと思ってた。
311名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 22:46:20 ID:g+BsTrTu
>>308
俺もだブラザー( ゚д゚)ノシ
312名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 23:28:33 ID:yUw40+h3
俺もそう思ってたよ
まさかそう思わない住人が存在していたとは・・・貴様それでも嫉妬&修羅場スレの住人か!
313名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 23:30:11 ID:O6pHfUTR
修羅場スキーにはエッチシーンそのものよりもその後の

あ  の  女  の  匂  い  が  す  る  よ  ?

の方が大事なのです。諸君、私は修羅場が好きだ!
314名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 23:33:42 ID:YuIMMpOq
>優柔
さりげなくジョジョネタw
GJ!!
315名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 23:44:12 ID:xlWYswfe
俺的には椿ENDとかキボンヌw
泥棒猫が最後に笑っているENDはあんまり好まないしなw
だから、世界よりも言葉様が好きな派な俺にとっては
泥棒猫は叩かれて当たり雨ですよw
316名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 23:47:04 ID:XY5Jo2bq
>313
その後の妊娠による勝利宣言が忘れてるぜブラザー
317名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 00:35:35 ID:FDCMlc6/
>>315
俺達は結果を楽しんでいるんじゃないだろう?
世界派、言葉派なんて関係ない
過程の嫉妬や修羅場を楽しめればいいじゃないかブラザーw
修羅場サイコーw
318名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 01:24:09 ID:9fyZfp+F
このスレが出来た経緯を考えればどうしても修羅場メインになるのは
理解してるつもりなんだけど、元々がエロパロ板住人の漏れからすれば
少々物足りなく感じてしまうのも事実な訳で…(;´Д`)
そんなわけで、ここの常連さんもたまにはこの板の他スレを覗いて見ては
いかが?と思った次第
319名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 01:37:01 ID:ZYaOGP/u
エロパロ板でここしか覗いてない人っているのか?
そんな俺はエロ薄味の幼馴染みスレとメイドスレ住人。
320名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 01:39:22 ID:1YdjyAUR
この板だとあとは876スレ……黒吉田さんハァハァ。
321名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 01:41:13 ID:Ep2Runab
このスレオンリーさ
浮気なんてできないよ
322名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 01:45:42 ID:ZYaOGP/u
>>321
>>292から着弾まで密かに様子を伺って来たのだが
とりあえずGJ!w
323名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 01:48:09 ID:Zk88aQTK
とりあえず泥棒猫スキーの俺は少数派?
324名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 02:30:43 ID:khZWZwoB
まああれだ

ここは修羅場で抜く人たちのスレだからb
325名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 02:39:35 ID:anaaVkjP
言うなれば鮮血の結末とか我が子へとかで抜く人達が集まるスレですよ。 
326名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 02:55:56 ID:vsLTQcji
まあ、もともとこの板の住人はエロゲ板の住人だからな・・・
327赤色  ◆tTXEpFaQTE :2006/03/21(火) 04:35:19 ID:N6lTIyTK
赤色  第一回


「ここを、今日から再び、お兄様の御部屋とさせて頂きます」
そう言って案内された部屋は、驚くほど広かった。
今まで住んでいた家からすると、眩暈が起きそうだった。
――――けど、懐かしかった。

シンは頭の中で計算した。
十年。
十年ぶりに、この屋敷に帰ってきたのだ。

感慨にふけっていると、顔を覗き込まれた。
「どうしました?何か、不審な点でも?」
「え、あ、いや、何でもないよ」

先程から屋敷内を案内してくれている女の子。
彼女も、シンにとっては懐かしい。
十年ぶりに会う妹。セリ。

駅まで、付き人を従えた彼女が迎えに着た時は、妹だとは気がつかなかった。
シンの記憶の中で、セリはもっと幼く、弱々しい印象だった。
それが今では、こうやって向かい合っていると、何だか息苦しさを覚える程の圧迫感が
あった。

それも、当然かもしれない。
セリは、屋敷でお嬢様として育てられてきたのだ。
屋敷を出て、一般階級人として育ったシンが、上級階級の人間と接する事で感じる
居心地の悪さがあるだろう。

それと、もう一つ。
シンには、セリを捨てたと言う罪悪感があった。

シンとセリの母親が、十年前に屋敷を出て行ったのだ。
一般階級の出身の彼女に屋敷での生活は耐えれるものではなかった。
母は、シンを連れて逃げるように屋敷を出て行った。
セリを置いて。
セリは、病弱で、屋敷での手厚い保護がなければ生きていけないかもしれなかった。

シンを連れて母は故郷へと帰った。故郷に帰ると、母は良く笑うようになった。
屋敷にいるとき、シンは母の笑顔を見た記憶がなかった。
母の笑顔が嬉しくて、シンはそこでの生活を受け入れた。

だが、いつだって、二人の心には刺が刺さっていた。
置いてきた、セリの事。

328赤色  ◆tTXEpFaQTE :2006/03/21(火) 04:36:32 ID:N6lTIyTK
>>327の続き


故郷に帰ってから三年後、母が再婚した。母の、高校の時の同級生だった。
シンに、新しい父親が出来た。
それと同時に、新しい妹も。新しい父の連れ子だ。

新しい妹は、鈴音といった。
鈴音はピアノが得意で、彼女のピアノを聞くのが、シンは好きになった。
そのピアノを聞くと、シンはいつも鮮明にセリを思い出すことが出来た。

シンと鈴音は、すぐに仲良くなった。
鈴音は何時もシンの後を「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と、追いかける様になった。
鈴音が好きなのは、シンと一緒に河原で遊ぶ事だった。
かくれんぼ、鬼ごっこ、水遊び。

逆に鈴音が嫌いなのは、シンがセリの事を話すこと。
自分以外、見たことのない女の子が、ずっと前からシンの妹だと言う事が、嫌だった。
シンの、「セリに会いたい」その一言を聞くと、鈴音は嫌な気持ちになった。
お腹が重くなって、苦しくなった。

シンが宝物にしている、セリの写真を見せて貰うと、とても可愛らしい女の子だった。
そのことが、更に嫌だった。

後で、シンに内緒でその写真を捨てた。

またある日、シンがセリに出す手紙を机の上に出しっぱなしにしていたのを、破いて捨てた。
シンがセリに手紙を出そうとすると、ついでだから、ポストに入れてきてあげる、と言って受け取り、
そのまま街中のゴミ箱に出した事もあった。

セリからきた手紙を、捨てた事もあった。

シンが、いつか、セリの所に行ってしまうかもしれない。
そう思うと、鈴音は怖くなった。
想像すると、おしっこをするところが、キュウ、と縮こまる気がした。

鈴音にとって、会ったことも無い、セリと言うシンの妹が、世界で一番、嫌いな人になった。


329名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 05:15:49 ID:cGjD7rmJ
GJ!ついに妹vs妹の修羅場がキタ━━━━(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━━━━━!!

これでまた一歩、修羅場の楽しみが増えたw
330夢と魔法の王国 第三話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/21(火) 07:44:24 ID:kPof+DBh
<プロローグ>

「今度の日曜、デートをして欲しいのよ。」
美樹が言った。
話によると、美樹の話を聞いてワタシに興味を持った後輩がいたらしい。
よければ、今度の日曜日に、二人きりでデートをして欲しいと。
ずいぶん積極的な人間もいたものだ。
美樹がワタシのことをなんという風に言ったのか知らないが、どうせロクなことを言っていないのだろう。
それで興味を持ったというのだから、どうせ変な男に違いない。
しかし、結局、ワタシは頷いた。
特に意図はない、単にそういう気分だからだった。
せっかくのデートを拓にキャンセルされて、その当てつけというのもあるかもしれない。

ワタシは、拓ではない男とデートすることになった。



<1>

そして。
ワタシは有名な待ち合わせスポットである噴水の前で、おめかしをして、
恋人でもない男が来るのをひたすら待っているのだった。
道行く人々は涼しげな格好で、家族は楽しそうに、恋人たちは嬉しそうに、
笑いながら、あるいははしゃぎながら、手を握り、あるいは腕を組み、目の前を通り過ぎていく。
その光景を、ワタシは一人で見ている。
暑い日差し。
肌が焼かれるのを感じる。
とてつもなく不愉快だ。
拓以外の男とデートするなんて、普段なら考えもしないことだ。
ここにいる理由なんてない。
単にむしゃくしゃしているだけ。
楽しみにしていたデートをキャンセルされて、
しかもそのキャンセルの理由も教えてくれなくて、
それに、水泳部の練習のとき、あのオカマの変態に鼻の下を伸ばしていたのもムカつくし、
あのオカマの憎たらしい顔も、ワタシの神経を非常に刺激してくれる。
ああもう、それら一つ一つを思い出すだけで、頭のどこかが切れそうになる。
拓とあのオカマが話しているところを見ると、いっそ「そいつは男なんだぞ!」と叫んでやりたくなる。
けれど、まあそこまでするのも大人気ないと思ってしまうのだ。
アイツがずっと女装を隠していることを知っているし、
しかも、それを始めたのは本人の意思ではなく、お母様の勝手のせいなのだから。
ワタシは少しだけ、それに同情している。
あくまで少しだけだ。それ以上でもそれ以下でもない。
そんなことを考えて気を紛らしながら、ワタシはじっとその場に立っていた。
331名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 07:45:27 ID:hdIWKGKs
きたよ、妹もの!義理VS実!
こりゃ楽しみだわい
332夢と魔法の王国 第三話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/21(火) 07:45:51 ID:kPof+DBh
<2>

やってきたのは、可愛らしい男の子だった。
背は低く、ワタシと同じくらい。
中性的な顔立ちで、茶色がかった髪の毛が目立っている。
Tシャツにジーンズというラフな格好だが、不思議と清潔感を感じさせる少年である。
「あなたが美衣さんですか……?」
「そうだけど、君がプーくん?」
美樹から聞いた名前を言う。
「あ、はい。いや、ぼくは風太です」
「うん。いこうか、プーくん」
「風太ですって……あ、ちょっと……」
ワタシは歩き始めた。
デートの予定は立ててあるので、そのプランに従ってまずは映画館へ向かおうとする。
本当ならば、ワタシの横にいるのは拓のはずだったのだが……。
考えるとイライラしてくるので、ワタシは頭を振って思考を打ち消す。
「美衣さん? どうかしましたか?」
「気にするな」
そう返しても、プーくんは小首をかしげている。
ワタシは彼の腕を取った。
「わ、わわわわわわ!?」
「ほら、ぐずぐずするな。さっさといくぞ」
腕を胸におしつけるようにして抱くと、プーくんの顔が面白いほど真っ赤になる。
……新鮮な反応だ。
たまには、こういうのもいいかもな。
そうだ。とりあえず楽しもう。
いろいろなことがあるけれど、今日はみんな忘れてしまおう。
少し楽しくなって、ワタシは薄く笑みを浮かべた。



<エピローグ>

「ほらね。わたしの言ったとおりでしょ」
「…………」
「お姉ちゃん、拓ちゃんと遊べないからって、他の男の子とデートしちゃうんだよ。そういう女なの」
「……な、なにかの間違いだよ……」
「あんなに仲良さそうなのに? ほら、お姉ちゃん、腕まで組んでるじゃん!」
「ただの友達とか……じゃないかな……?」
「ちゃんと見なさいよ、拓ちゃん! 目を逸らしちゃダメだよ!」
「ち、違う。……うん、友達なんだよ、きっと……そうに決まってるよ……」
「拓ちゃん!」

 ――――――♪

「……あ、電話だ。で、出なきゃ」
「拓ちゃん! 聞いてよ、拓ちゃ――どうしたの?」
「……えっと、もう一度お願いします」
「拓ちゃん?」

「母さんが……重体……?」
333 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/21(火) 07:46:43 ID:kPof+DBh
こんな凝った形式にしなけりゃよかった、と反省。

>>331
あー、ごめん。
334名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 10:23:19 ID:EQxhSYWZ
何か色々きてるー
神様達、お疲れ様です
335名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 13:56:54 ID:zBMuv+1L
「ここは禁断の聖域。
萌えを気取った愚か者達の夢の跡。
このスレの住人は知っているのかな?
スレの発端がエロゲー板の嫉妬・三角関係・修羅場統合スレだということを」

「・・・だろうな。知っていればそんな風に書き込めるはずもない。
なんの影ももたぬ、そんな普通の書き込みに・・・
言葉様から名を聞いたときは思いもしなかったのだがな。
君が彼女だとは。
てっきり死んだものだと思っていたよ。あの寝取った女は。
・・・特に、西園寺世界はね。
その生みの親であるぬまきちと共に、当時の言葉様信者の
最大の標的だったのだからね。
・・・だが世界は生きのび、成長し、戦火に身を投じてからもなお
存在しつづけている。
何故かな?
それでは私のような者でもつい信じたくなってしまうじゃないか。
・・・彼らの見た狂気の夢をねぇ」

「君は人類の夢。最高の寝取り女。
そんな願いの元に開発されたぬまきち博士の理想な悪女。
それによって生み出された唯一の成功体。
・・・彼の娘。数多の寝取られたヒロインの犠牲の果てにね」

336名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 17:42:06 ID:Ep2Runab
>>332

拓ちゃんって自分は約束反故にして女と遊んでるのに
美衣が男とデートしているだけで駄々こねてるとはゆう君に負けず劣らずクソだな!
337名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 18:58:26 ID:/GIKBdE7
>>336
おまいはちゃんと読んでいるのかと小一時間(ry
338名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 19:18:43 ID:dUN8WoDl
>>336
どこにツッコミを入れれば良いんだ?
339名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 19:19:54 ID:GRfPpq7r
>>336の人気を先取り嫉妬
340沃野 Act.6 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/21(火) 20:48:08 ID:mIODaGSl
「道を開けろ……! 本妻の出頭(おでまし)だ!」
「来たか、全クラスに勇名を轟かせる最強の世話女房!」
「現代に甦った那須与一!」
「浮気者は射殺すまでッ!!」
「見せてくれ、『情けなし』の心!」
「──二年三組、弓道部所属、綾瀬胡桃さん!」
「おおお──!」
 相変わらずこのクラスの方々は騒がしいことこの上ありません。
 当の綾瀬先輩は自分の名前を呼ばれたのも耳に入らないようで、奇妙に強張った笑みを顔に貼り付かせて
て立っています。手を握られたことがそんなにショックだったんでしょうか。たかだか手ぐらいで。
 ふふ、ショックですよね……私だってあなたと先輩が手を繋いでるの見たとき、結構キましたもの。
 きっと今、私の手首を切り落としたいとか思ってますよね。あははっ。
「く、くるみ……これ、は……その……」
 喉をひくつかせて呻く先輩。なんだか本当に浮気が見つかった亭主みたいです。
 むー。不満です。納得いきません。
 彼氏でもなんでもないんなら、もっと毅然とした態度を取ってほしいところですよ。
「よーくん、」
 つかつかと歩み寄ってきます。私と違って背が高いので迫力ありありです。なにげない手つきで髪を
掻き上げましたが、指先が僅かに震えているのを動体視力のいい私は見逃しません。
 手にはお弁当袋があります。自分のに加え、先輩のも用意してきたんでしょう。
 と。いきなりでした。
 ゴッ
 私の腕を殴りつけたのです。肘のあたりを、こう、無造作にスイングした拳で。
 ジーンと痺れます。
 思わず力が抜けて離してしまった手──蠅でも叩くみたいに押しのけて、体を割り込ませました。
「おべんと、食べよ?」
 にっこり笑って先輩に向かい、私の方はアウト・オブ・サイト。
 存在を強制的に無視されてしまいました。いやはや。これは難敵ですね。
 でもこれしきで引く気はありません。逆襲してやります。
「先輩、一つお聞きしたいのですが」
「えっ?」
 彼はまだ混乱から立ち直っていない模様。
 一気にカタをつける必要がありそうです。畳み掛けましょう。
「綾瀬さんは、先輩の幼馴染みであって──別に恋人ではありませんよね?」
 ひくり。肘叩き女は片っぽの頬を痙攣させました。
 ここで否定されたら彼女は立つ瀬がなくなる……のですが、
「う……えーと……その……」
 先輩は言葉を濁すばかりで答えようとしませんでした。
 目から「恋人って言いなさい」ビームを放つ綾瀬胡桃の威容に恐れをなしたのでしょうか。
 む。あれだけ鈍い先輩ならズバッと確言するって思っていたのにあてが外れちゃいました。
 まあいいです。気長に攻めましょう。
 勝算はゼロじゃありませんし。
 何はともあれ今は。
「──お昼、ご一緒させてもらえませんか?」
 チャンスに食いつくのみ。
341沃野 Act.6 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/21(火) 20:51:50 ID:mIODaGSl
 かくしてギスギスした昼食会に出席することと相成りました。
 綾瀬胡桃の放つオーラが重いです。「あっち行け」系の圧力を無言でのしかけてきます。
 それでも先輩の心は離したくないからか、顔は懸命に装ってにこやかな表情を浮かべています。
 よっぽどつくり笑い慣れしてるんでしょう。倒すべき牝犬ながら、尻尾振りにかける情熱は見事だと
感心させられます。お爺さんの時計並みに何年も休まずパタパタと振り続けてきたに違いありません。
 ご苦労様です。もうすぐ千切ってあげますからね、その尻尾。
「でね、よーくん、さっきの休憩時間に梓が緑茶噴いちゃって……」
 巧みに私の存在を無視しつつ雑談を披露する牝犬。
 私は黙々と食事。今ここで先輩に話しかけても、牝犬に妨害されるのがオチです。時間の無駄。
 仕掛けるのはもう少し先です。
 そろそろ。そろそろ来る頃ですよ……。
「よーくん」
「ん?」
「はい、あ〜ん」
 出ました! ダダ甘幼馴染み流必殺の型、「食べさせてあげる」の構え!
 左手を添え、おかずをグリップした箸を周りの目も気にせず悠然と突き出しています。
 この態勢から繰り出される一撃はあらゆる殿方を骨抜きにし、ことごとく幼児化せしめる威力を持つとか。
 口を半開きにして「あ〜ん」とかほざく女は同性から見ればキモいだけですが、異性には違うみたいです。
 というかこの女、相当「あ〜ん」慣れしてますね……口の半開き具合が絶妙ですよ。
「う……あ〜ん」
 逆らっても無駄だと学習している先輩は素直に従っています。
 親鳥から餌を受ける雛のように口を開けて。
 ああっ……悔しいっ。起こると分かってても間近で見ると毛が逆立ちそうになりますよ、これ!
 周りにどんなに人がいても構わずふたりだけのラブ時空──衆人環視の密室をつくりだす威力は傍から
眺めてると「おへえ」とか呻きたくなります。脳がムズムズする感じで、目の裏が痒くなってきます。
 ぐぐぐ。牝犬め、毎日毎日来る日も来る日もこんな不埒の悪行三昧に及んでいたとは。
 即座に予定を変更して彼女のお弁当を引っ掴み、窓の向こうへダイブさせたくなりました。
 我慢……ここは我慢の子ですよ、麻耶! あなたは我慢のできる人です! 耐えよ!!
 己に言い聞かせて必死に自制をかけます。傍らで行われるおぞましい儀式からも目を背けません。
 既に彼女が使って唾液が付着している箸を、先輩の唇に触れるよう動かされても我慢。
 先輩の伸ばした舌がねっとりと箸や具材に絡みつくのを傍観させられても我慢。
 そもそもお弁当自体があの女のつくったもので、材料に腐れた愛情が混じっている件も我慢。
 綾瀬胡桃が勝ち誇ったような視線をこちらに投げて含み笑いするのにも我慢──
 すみません、やっぱり屠殺していいですか、この牝犬?
「どう? おいしい、よーくん?」
「あー、塩加減がちょうどいいな、うん」
 にこっ。照れっ。阿吽の呼吸で遣り取りされる常習犯スマイル&はにかみ。
 がああ……っ! 腸が煮えくり返るとはこのことですか……っ!
 無理、もう無理! これ以上は耐えられません! 反撃の狼煙を上げさせていただきます!
「せ、せんぱいっ!」
「な、何?」
 いけません、緊張と憎悪でつい声が裏返ってしまいました。
 コホン、と一つ空咳をしてから。
「……はい、あ、あ〜ん……」
 やられたんだからやり返します。私も先輩に食べさせてあげるのです。
 座高でも差がありますから、ちょっと腰を浮かせていますよ。手もプルプルですよ。恥ずかしいせいで
口も半開きどころか四分の一開きですよ。ええきっと傍から見れば不恰好で無様ですよ。
 でも私だって必死なんです。必死になってる乙女を笑わないでいただきたい。
 摘むは丹精を込めてつくりあげた、彩りも鮮やかな塩茹でブロッコリー。
 今、先輩の口元へ参ります……!
342沃野 Act.6 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/21(火) 20:55:13 ID:mIODaGSl
 と見せたのはフェイントですよ、綾瀬胡桃!
「…………ッ!!」
 一瞬物凄い形相を覗かせた牝犬めが机の下から蹴りつけてきます。
 はははっ、引っ掛かりましたね、罠とも知らず!
 あらかじめ読んでいた私は難なく避けます。
「あっ!?」
 そしてバランスを崩したかのようにフラついてみせるわけです。
 少しだけ持ちこたえるフリをしてから先輩めがけて倒れ込みます。
 ここで先輩が避けたりしたら私はただのイタい子というか椅子に激突して痛い目見る子になりますが、
先輩は避けません。これには確信があります。はじめから分かっていて賭けたのです。
「わっ……荒木!」
 ほうら、狙い通りに腕の中へぽすん、です。このときばかりは小さくて軽くて受け止めやすい我が身を
幸いに思うことしきりでございます。
 一連の所作においてもグリップしたブロッコリーを取りこぼさなかったのは執念の為せる技。
 抱き止められ、見上げる形になった私はすかさず箸を先輩の口に向け、食べてもらいます。
「どうですか?」
「もぐっ……ああ、これも塩加減がなかなか……ハッ!?」
 殺意が篭もった視線に気づいて振り返る先輩。
 綾瀬胡桃は慌てて嫉妬まみれの表情を消しますが、一瞬チラッと見えたはずです。
 ふふ、先輩、あれがあの女の本性ですよ。付き合うには重過ぎる奴って分かりますよね。ふふ。
 今度は私が勝ち誇る番です。お箸を持ったまま先輩の腰に腕を回しギュッと抱きつきます。
 鼻孔に伝わってくる汗の混じった匂い。これが先輩の体臭──嗅覚に刻み込みました。
 容姿のせいか「気紛れな猫」と言われたりする私ですが、むしろ心性は犬に近いと自覚しています。
匂いには敏感なんです。今後はこの匂いを「ご主人様」と認識して帰巣する所存にございます。
 こっそりしたつもりでしたが鼻をスンスンさせている私の仕草に綾瀬胡桃は気づいた模様です。
 敵もさる犬。「匂い」に関しては鋭敏なんでしょう。マーキングされることも警戒してるはずです。
「よーくん……ちょっと、聞いてくれるかな」
 いよいよ腹に据えかねたのか、彼女は重々しい口振りになりました。
 ゴクリと喉を動かす先輩。周りの方々も固唾を呑んで見守っています。

「わたしね、よーくんのことが──好き」

「愛してる。ずっと、ずうっと昔から。口にするのは初めてだけど、気持ちは最初からあったよ」

「だから、ね。お願い。早くその目障りな子をフッてくれないかな──?」

 ああ……言っちゃいましたね。
 いいんですか、綾瀬さん。覆せませんよ。
 あなたがそれなりに大切に思っているかもしれない、幼馴染みとしての距離。
 二度と取り戻せないのかもしれませんよ……?
343沃野 Act.6 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/21(火) 21:02:48 ID:mIODaGSl
 脱幼馴染みを目指す牝犬から宣戦布告が為されてより七時間後。
 夕食も終わって寛いでいるところです。遂にあの女との全面戦争が始まったとなると気持ちもそわそわ
しがちですが、適度な弛緩もなければ勝ち抜けません。気を張るばかりがすべてではない。
 肩の力を抜いたまま携帯を取り出し、先輩の番号へ掛けます。既に短縮に登録済。
 でも掛けるのはこれが初めて。先輩の方には見知らぬ番号が表示されているはず。
 名乗らなくては、と思うのにドキドキして第一声がなかなか出ません。初TELって緊張しますねー。
『……荒木か?』
「な、なんで分かったんですっ!?」
『蔦が……いやなんでもない』
「はぁ」
 なんか別の意味でドキドキしました。
『ていうか、なんでお前が俺の番号知ってるんだよ?』
「秘密です」
『えっ、秘密?』
「はい」
『秘密って、え?』
「秘密です」
 断固として口を割るつもりはありません。
『まあいいや……で、どうしたんだ』
「単刀直入に言うとですね、私の告白の返事を延ばしていただきたいんです」
『延ばすって、なんでまた』
「牝い……コホン、綾瀬胡桃さんまで告白したせいで事態がもつれているからです。仮に先輩が私を
受け入れてくれたとしても今の段階で彼女が聞き分けてくれるとも思えません。必ず荒れます。既に
荒れ気味ですが、もっと荒れること請け合いです。少し時間を置いて私たちの気持ちが整理できるまで
保留すべきでしょう。でないとこの三角関係は血を見ることになりかねません」
『あのな、荒木。気を持たせないように言っておくが、俺はお前のこと……』
「先輩に恋愛感情がないのは承知してます。でもですね、考えてみてください。現在の状況はほぼ二択に
なっているんです。つまり、先輩が私をフッたら自動的に綾瀬さんと付き合うことになりますね。
『あの子を捨てたってことはわたしを選んでくれるのね! 嬉しい……!』って彼女は絶対に言ってきますよ」
 これまでは想いを口にしなかったので曖昧な関係でもすんだわけです。
 しかし、一度明言してしまったからには彼女も後に引けません。吐いた唾は飲めないのです。
 そう仕向けることが私にとって、か細い勝機を掴むことに繋がる──
「私を選べとは言いません。先輩に考える時間をつくってほしいだけです。私をフッたせいでなし崩しに
綾瀬さんと付き合うことになるとか、そうした流れにはなってほしくありません。消去法ではなく、
あくまで先輩が自分で考えてどちらを選ぶか決断する、そのための猶予として返事を保留していただきたい」
 逡巡の時間は一分とかかりませんでした。今日のこともあったからでしょうか。
 彼も、綾瀬胡桃には危惧すべきところがあると分かったみたいです。
『……分かった。それでいいんだな』
「ええ」
 二、三言交わした後、通話を切りました。途端に静寂が身を包みます。
 なんて淋しいんでしょう……先輩の声が聞こえなくなっただけで、こんなにも。
 ふふ、強く持とう、強く持とうと願っていても、剥き出しの心は脆いみたいですね。
 私は強くありません、ちっとも強くありません、強いフリをしていただけです、痛感せざるをえません。
 一人だけの体温がひどく心細いです。殻を脱いでしまったせいか寒さが芯まで沁みてきます。

 せんぱい。はやく、あなたが私の殻になってください──

 情けない欲求と、それを許そうとする憐憫の中で、静かに頬を濡らしました。
 私はこの弱さを肯定し、強さに変えられるまで、負けるつもりはありません。
 たとえ相手があの綾瀬胡桃であっても。吐いた唾が飲めないのは私もです。
 一度孵化してしまったからには。
 殻の中へ戻ることなどできません。
344名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 21:04:02 ID:rKgcmiQ3
麻耶可愛すぎw
345名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 21:14:33 ID:oV1Ga4YV
なんかこう…和んだ(*´ω`)
346名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 21:16:37 ID:Bl8n/adH
ここまで軽妙かつ笑えて笑えない修羅場があっただろうか?
347名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 21:19:05 ID:ZYaOGP/u
む、麻耶タンはスタンド能力者では無かったか。
348名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 21:19:16 ID:uTatq0JY
この昼食会はよーくんから見たらさぞ恐ろしい光景だったろうな。
349名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 21:20:38 ID:7oAFFaFE
リアルタイム麻耶タ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ン !!!!
350名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 21:20:43 ID:KiRt68SC
凄まじい修羅場のはずなのに、思いっきり笑わせて頂きました。
351名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 21:24:30 ID:dUN8WoDl
微笑ましさと危うさと昏い感情が同居してる・・・。
この変な雰囲気が怖いよw

邪悪な胡桃の逆襲はどうなる!?
352名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 21:26:08 ID:1krPRL2F
今回の話のよーくん視点が凄く見たい
353名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 21:26:22 ID:ZYaOGP/u
クラスメイトは「そこに痺れる憧れるゥ!」とか言いそうなノリだし、
胡桃タンは背景にゴゴゴだのドドドだの効果音背負ってそうだし、
もはや俺の頭の中では荒木絵で物語が進んどるとです…。
354名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 21:28:01 ID:CIx+GRFH
周りの第3者からの視点も見たいな。
机を蹴り上げる胡桃とか胡桃の所業にこめかみひくつかせる麻耶とか顔青ざめるよーくんとか。
ちょっとおもしろそうw
355名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 21:34:28 ID:dUN8WoDl
周りからは普通のラブコメに見えてるんだろうなぁ・・・。
二人の殺意が見えるよーくんからしたら生きた心地がしないんだろうがw
356名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 21:49:42 ID:3CGSgweN
>「く、くるみ……これ、は……その……」
>喉をひくつかせて呻く先輩。

さらっと流されてるが、
よーくんこの時、トンでもない隠喩を目のあたりにしてるぞ、きっとw
357名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 23:21:57 ID:2NXP4Vlb
ようくんが世にも恐ろしい光景を見ているにもかかわらず
周りからはハーレム物のラブコメの主人公にしか見えないなんて
学園ラブコメの主人公ウラヤマシスとか思ってた俺だが
ようくんとは変わりたくないな
いやでもむしろ…
358名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 23:33:10 ID:/zMqqEVc
>すみません、やっぱり屠殺していいですか、この牝犬?

すんごい扱い方だね、麻耶タソ。
359名無しさん@ピンキー:2006/03/21(火) 23:58:22 ID:8Y936xOd
麻耶かわいいよ麻耶(*´Д`)
一見ラブコメに見えるがよーくんからすればものすごい修羅場という罠
360名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 00:05:41 ID:pLTYqaHi
胡桃たん最強説を提示したい。
なぜなら、胡桃たんは遠距離狙撃+遠隔視スキルを所持しているので
その気になれば凡百の泥棒猫なぞ、人目のないところで暗さt
361名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 00:16:09 ID:OCciCICt
よー君視点の世界がそれはもう沙耶の唄張りの世界な気がして
ちょっと((;゚Д゚)ガクガクブルブル
でも、それでも、堪らない!俺がヤバス
362『広き檻の中で』 ◆ewwZ0iiR3. :2006/03/22(水) 02:30:58 ID:gL3mlDHP
舞台は某県の深い山中にあるとあるお屋敷。ここに昔住んでいた遠藤家は、周辺の山々を支配していたという。
だがそれは昔の話。今はその末裔が、先祖から引き継いできた莫大な財産を使い、世俗との交流を断ち自由気ままに生きている。
とはいえここに住んでいるのは70歳を超える寝たきりの老人(つまり一番偉い人)と、その愛人との間にできた娘の遠藤佐奈(17歳)。
佐奈の専属メイドの高橋里緒(21歳)。
お屋敷の使用人の笹原晋也(19歳)、成瀬志穂(18歳)の五人のみである。
老人は一日二十時間寝ているので実質四人である。
佐奈は家訓に従い、一切家から離れようとせず、それに付く里緒も家から出たことがないため、一般知識に乏しい。
それに比べ、前使用人たちの子供の晋也と志穂は、住み込みで働いているが近くの街へ(とはいえバイクで一時間はかかる)よく降りるため、一般知識は蓄えている。
これはそんなお屋敷の秋の話である。
生まれてこの方一度も開いたのを見たことのない大きな正門の前で、晋也は落ち葉を掃いていた。
小さい頃から仕事のノウハウをたたき込まれてきた晋也にとって、百メートル四方の館の掃除など簡単だった。
「終わった終わった。さてと………でひゃひゃひゃひゃ。」
怪しい笑いを浮かべて部屋へ戻る。さっき買ってきた保健の絵本………所謂エロ本があるからだ。
早速袋から取り出し読み始める。
「うん……おお!!………ヲヲヲ!」
とりあえず「メイド特集」はスルー。巷では『メイド喫茶』なるものが流行らしいが、里緒さんと志穂がメイド服を標準装備なため慣れてしまい、興奮が薄れる。
「……ましてや志穂なんぞに欲情したら終わりだぜヨ。」
「晋也ぁ〜!戻ってきてんの!?……ってなにしてんの?」
363『広き檻の中で』 ◆ewwZ0iiR3. :2006/03/22(水) 02:31:56 ID:gL3mlDHP
噂をすればなんとやら。ノックもなしに入って来る。が、予防策に抜かりは無い。『おいしい料理百選』と書かれたカバーを見せつけ、シリアスな目で志穂を見つめる。
「ほら…今日の料理、俺の回だからさ……へへっ、皆にうまいもん食べさせたくて………」
「袋とじ。見えてるよ。」
「……」
「……」
ズバ!!
一閃の元に我が心の友が散って逝く。
「嗚呼!!志穂!バタフライナイフを装備するなとあれほどいっただろ!!大体『戦うメイドさん』のポストは既に………」
「し〜ん〜や〜」
甘い吐息がかかる程に顔を近付けられる。ぴたぴたとナイフの腹を頬に当てる。光る刃がちびたい。
「あんたねぇ!!そんな本読むなら私を呼べって言ってるでしょうが!!あんたになら私の裸ぐらい見せてやるわよ!!」
そう叫びながらバリバリと服を脱ぎ始める。
「そ、そんナ!情状酌量の余地を認めて!!終身刑は堪忍!!」
必死に服を脱ぐのを抑えるが、限界がある。
と、そんな地獄に垂れ下がる一本の蜘蛛の糸を発見した。
ぽんやりと歩いている里緒さんを発見。すかさずふくよかな双丘にルパンダイブ!!
「里緒さん!!助けて!!俺の部屋で露出狂が跋扈してるンです!!」
「あら〜。大丈夫ですか〜?」
「ダメです!!!」
「里緒さん……そいつをこっちによこして……」
ナイフ片手に部屋を出て来た志穂が、里緒さんを強請る。が、さすがは里緒さん。俺を渡すまいとギュッと胸を顔に押しつけるようにキツく抱き締め、志穂を睨み付ける。
「…………」
「…………」
互いに無言のまま目線という名の刃が鍔競り合う。そんな中俺は………
「………オフゥ」
しっぽりと饅頭を堪能していた。
364もし、神様がいるのなら……。:2006/03/22(水) 02:42:37 ID:ptWWsO2+

妖精がそこにいた。

全校応援で無理矢理行かされたサッカーインターハイ県予選決勝。

ピッチ内で行われる激闘。ゆれるスタンド。
きっと、私以外の生徒は声の限りに応援しているのだろう。

私は耳が聞こえない。
全ては私の想像である。

しかし、今はこれでいい。

雑音が聞こえないおかげで私は彼に集中できる。

音のない世界では、彼の優雅なドリブルも、創造成豊かなパスも、そして何より、彼の心底楽しそうな顔も私だけのもののような気がした。

どうやら、私は妖精に心を奪われてしまったらしい。




翌日、私は彼について徹底的に調べあげた。(とは言っても、彼は有名人でほとんど調べあげる必要はなかったのだが)
彼の名前は、兵藤 純也。3月14日生まれの17歳。右利きで血液型はO。
母と妹との3人暮らしで、いわゆる母子家庭。
しかし、彼と母、妹とは血がつながっていない。
それでも、父の死後、本当の息子のように育ててくれた母に彼は感謝していて、
いつか、恩返しをしたいと考えているらしい。
そして、何より私を驚かせたのは彼の妹。
彼女(名前は茜)は、私と同じで耳が聞こえない。
それで、彼は妹との会話のために手話をマスターしている。
つまり、私と直接、会話ができるのだ。

何て偶然……。
偶然?本当に?
いや、違う。これは運命だ。

きっと彼は、神様が私の耳の代わりにくれたモノなのよ!!!

……ふふふ、あはははは。
なぁ〜んだ、神様、そういう事だったのね?

今まであなたを怨んでごめんなさいね、そして、ありがとう。


私は彼と幸せになります。
365もし、神様がいるのなら……。:2006/03/22(水) 05:44:17 ID:ptWWsO2+

次の日から私は行動を開始した。

まず、朝一に学校へ登校し、純也くんの下駄箱の確認。
……やっぱりあった。
しかも二通も……。

まぁ、純也くんはかっこいいからね。この位は想像してたよ。
だけどね、純也くん。そういうトコの管理はしっかりしなくちゃ。
変な雌猫を近付かせちゃダメ。勘違いされちゃうよ?
私は下駄箱にあったそれををバッグの中にいれた。
後で名前を確認しなくちゃ。
悪い猫にはしつけが必要だからね、ふふふ。

下駄箱を出た私は校門へと向かう。純也くんを見張りに。
言っておくけど、私はストーカーじゃないよ?

例えばね、自分のリンゴにハエがたかってたら、みんな追い払うでしょ?
私がしてるのも同じ。

だって純也くんは私のモノなんだから。


それから十分くらいたった後、純也くんは登校してきた。
あ〜純也くん純也くん純也くん純也くん、私の純也くん。

純也くんは笑顔だった。
その笑顔を見て、私の胸に淡くて、熱いものがこみあげてくるのを感じた。
しかし、すぐに私の熱は真っ黒な炎へと変貌していく。


誰?あの女。


女が私の純也くんにピッタリとはりついてい歩いている。弾けるような笑みを浮かべながら……。

何、あの女?一体誰の許可を取ってそこにいるわけ?
純也くんは私のモノなんだよ?

殺意が爆発する寸前、幸いにも疑問は氷解した。
二人がしきりに手を動かしていたからだ。


ふーん、手話……ね。

そう、彼女が茜、ちゃんか………。
366名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 07:48:43 ID:Ltv1QoP2
GJ!二柱も降臨キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!
ハーレムっぽい作品と思いこみ独占欲な娘、両方の修羅場に期待(*´Д`)
367名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 08:56:36 ID:kcvoMhMB
続々と神々が降臨!!!
368名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 09:58:10 ID:iZjKbp9d
>>364の娘さんからは世界を狙える地雷パゥアを感じる
369名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 10:06:54 ID:lqpYBxaH
そういえば王道がないよな。
「私のお腹には彼の赤ちゃんがいるの」ってな奴
370名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 10:54:05 ID:jy5Meds6
>>369
俺は楓タンの悪夢のフリがあるので樹里タンにソレを期待してる。
371名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 16:00:48 ID:A4WGbm21
むしろ俺は楓にソレを期待。
372名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 17:32:23 ID:J1p5yIRj
じゃあ俺は楓タンと樹里タンの両方に期待.
373『広き檻の中で』 ◆ewwZ0iiR3. :2006/03/22(水) 20:29:18 ID:gL3mlDHP
結局志穂のフック2発で争いは終わった。よく考えれば俺何悪いことしたんだろう?と思うが、問うてみたところでもう一発フックをもらうのがオチだ。
おとなしく料理を作る。今日は結局ピザにした。本当にメニューには悩む。
「おいしかったです。」
「ごちそうさま〜」
「あんた……腕前上げたわね……」
それぞれ感想を言い、片付けにはいる。作った人が片付けるという決まりだ。
居間に戻るとテーブルを囲んでトランプの用意をしていた。この屋敷で許される数少ない娯楽だ。テレビもラジオもないため、いくらこの生活に慣れても暇と言う感情は処理できない。
「ンで?今日は何ヤンの?ポーカー?ダウト?ページワン?」
「ババ抜きです。」
「そっかぁ〜。残念だな志穂。ババ抜きだっ………了承。ナイフをしまえ。」
武力に勝る脅しはないよネ。
「ちなみに三人で話した結果、勝った方には賞品を贈呈することにしました。」
「ヘえー。賞品って何?」
「あんたよ。」
「晋也です」
「晋也さんですよ〜」
三人で一斉に指を指す。サラウンドの威圧が俺の心を突き上げる。
「晋也を今夜自由にできる権利よ。」
「ウェイト!!俺は物じゃない!!拒否権を執行しようじゃないか!!」
「パッパと配っちゃいましょ。」
「聞いてくれよぅ……」
願望とは裏腹に事は進む。
「この勝負。負けられませんわね。」
「佐奈様には失礼ですが、本気でいきますよー。」
「夜はそう長くないからね。早く終わらせるよ。」






「神は朕を讃えた。」
結果。俺の一人勝ち。三連勝のぶっちぎり。これで俺の貞操は守られる事になった。
「うぅ……悔しいですが……仕方ありませんね。」
「あら〜。晋也さん強いですね〜。」
「くそーー!なんであんたが勝ってんのよ!!!」
三者三用の負け台詞をはく。こんな状況で「実はズルッ子してたんだ」なんて言えるわけが無い。
三人は背中に鏡を背負うようにして座っているため、目の良い俺には丸見えなのだ。
「さ、はよう片付けやんしょ。」
ばれる前にちゃっちゃと急かす。
片付けが終わり、風呂に入ろうとした時に志穂に声をかけられる。
「今日。あんたのばんでしょ?」
「あー…そうだった。」
今日の『当番』は俺のため、佐奈嬢の寝室へ向かう………





374『広き檻の中で』 ◆ewwZ0iiR3. :2006/03/22(水) 20:30:23 ID:gL3mlDHP
「お、俺、もう我慢できないよ……」
「ふふ…慌てないで。まだまだ始まったばかりよ……んっ!ふぁ……は、はいってくる!」
『剛直した俺のモノが、彼女の秘部を貫く。淫らな水音が部屋中に響く。』
「あぁ!す、すごい…すごい締め付けだ!これじゃあ俺、も、もう。」
「いいの…ん!好きなだけ、あぁ。たくさんしていいのよ!!」
限界をむかえた。
「あ、先生!イ、イクっ!」
「ああぁー!!私も、イクゥーー!!」
「今日はまた一段と難しい本ですね」
………無知とは罪ナリ。佐奈嬢は毎晩寝る前に本の読み聞かせをしないと寝れないのだ。
だから今日当番だった俺は昼間に買って来た『淫乱教師〜魅惑のレッスン〜』という小説を読み聞かせてみたのだが、ちっとも恥ずかしがりやしない。
感情をこめて読んだこっちが恥ずかしい。
「は、ははは……まぁ、今日はここまでです。おやすみなさい、お嬢。」
そそくさと部屋を出る。佐奈嬢の前でこの小説を読んだせいでジョンソンが興奮してしまった。ある種の羞恥プレイだネ。





バタン
「ふぅ…」
慌てて出ていった晋也を見送り、そっと溜め息をつく。
まったく、晋也の奴め。私が何も知らないと思ってあんな本を読み聞かせるなんて……
私だって知らないわけじゃない。その……愛し合う男女が……せ、セ、セッ……をすることぐらい知っている。
でもああやって知らないふりをしていると慌てる晋也の顔がまた愛しい。
いずれ私も…セッ…セッ…をするのだろうか。いや、するだろう。もちろん相手は晋也だ。私は晋也以外の男を知らない。だったら私と晋也が愛し合うのは必然的な事。
でもこの屋敷にはその愛を拒む邪魔者が二人いる。志穂と里緒だ。しかも二人とも晋也に気があるのは見てわかる。なんとか駆除できないだろうか。
父様が死んで私が当主となれば、当主権限を使って煮るなり焼くなりできる。でもそのまえに二人が晋也をたぶらかしてしまったら意味が無い…………
晋也について思考を凝らしていたら晋也の顔が見たくなった。時間は11時間。
今頃は里緒は明日の朝の下ごしらえ。志穂は屋敷中の戸締まりに行っている。晋也は暇な時間なはずだ。
ガシャン!!!
近くにあったツボを落とす。これですぐに晋也が愛する私の下へ駆け付けて来るはずだ。さぁ、早く来なさい……私の晋也………
375名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 20:56:16 ID:aSbpUXVE
>>374
GJ!
俺にとってのここ一番の期待作だ
376名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 21:02:21 ID:8fzAeIKw
今はラブコメ風だが後々が楽しみだ。
377名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 21:04:01 ID:OCciCICt
propellerの主人公張りに総受けですね
主人公の性格がかなりゲームの主人公向き
これはゲーム化に期待(*´д`*)
378名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 21:50:46 ID:ci+sGQae
四角関係には新たな要素が増えるんですよ

漁 夫 の 利


とにかく里緒さん超萌
379名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 22:34:10 ID:Ag8XgO93
>>364
耳が聞こえないという設定がどう生きてくるのか期待

>>374
嫉妬の嵐が吹き荒れそうだ
380優柔 第21話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/22(水) 23:20:33 ID:CCi2q8K+
さあ大変です。来週から中間試験が始まります。
ここ最近は色んなことがあったので勉学の方を疎かにしていましたが、さすがにやばいです。
こんなことなら日頃から勉強していれば良かったと思います。
椿ちゃんや先輩が羨ましいですよ・・・2人とも成績が僕よりも遥かにいいですから。
特に先輩はスゴいです。
うちの学校では定期試験や全国模試などで優秀な成績を残した人の名前が掲示板に張り出されるんですが、先輩はそこの常連さんです。
『巨乳はバカ』なんて迷信だと考えさせられます。
・・・あれ?
思ったんですけど、先輩ってスゴい人です。
校内でトップクラスの美貌と抜群のスタイルを兼ね備えていて、さらに頭脳明晰なんですから。
どうしてそんな人が僕みたいな何の取り柄もない輩に股を開くんでしょうね。僕には理解できません。

土日は友達の家でテスト対策をしました。
実は先輩から「うちに来ない?」というお誘いがあったんですが、丁重にお断わりしました。
先輩は独り暮らしをしているので男の僕を上げるということは、きっとそういう意味合いがあるのでしょう。
それに、「勉強を教えてあげるから」と言われましたが、最終的には僕が別の意味での勉強を教えることになってしまいそうですし。
勿論、前みたいに泣かれるのも困るので、ちゃんとフォローをしておきました。

先輩は妙に積極的になったような感じがします。でも同時に、僕に媚びるような態度もするようになりました。
僕が喜びそうなことを言い、逆に僕が嫌がるようなことは言いません。
つい最近までの先輩は完全にいなくなりました。
出会った頃のような荒々しさもなく、仲良くなった頃のような逞しさもありません。
完全に別物の先輩・・・いえ、これが本当の先輩。
僕は・・・急激に醒めてしまいました。
これから先、何回先輩を抱くかは分かりませんが、これだけは断言できそうです。
『先輩に恋愛感情を抱くことは無い』
でも感謝はしています。
先輩のおかげで女子と喋れるようになったし、こんなに気持ち良い思いをしているんですからね。
381優柔 第21話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/22(水) 23:21:29 ID:CCi2q8K+
先輩と電話をしているうちに(先輩から掛けてきたのは言うまでもありません)、一緒にお昼を食べた時の話になりました。
あの時は楽しかったねとか、どうでもいいようなことを話してくるんですが、1つだけ気になることがありました。
いえ、気になるというより不安なことがありました。
先輩がくれたおかずの話題になって、僕に評価を求めてきた時のことです。
その時、僕は言ってしまったんです。
「椿ちゃんと同じぐらい美味しかった」って。
さっきまで楽しそうに喋っていた先輩は、急に黙ってしまいました。
そして、物凄い冷たい声で言いました。

「早く・・・元カノのこと・・・忘れなきゃいけないよ・・・」

一瞬、何とも言えない寒さを感じました。
さっきまでの媚びるような言葉遣いとは一転、また僕の知らない先輩を目の当たりにしました。
そしてこの感じ・・・忘れたくても忘れられません。
そっくりです・・・あの頃の椿ちゃんに。

現在、僕はクズからヘタレに戻っています。
だって、ついさっきまで先輩のことを手玉に取ったように思ってたのに、今は先輩にビビっているんですから。
電話を切ってしばらく経つんですが、何だかこの・・・胃の辺りがキリキリと痛むんです。
これって・・・椿ちゃんが嫉妬深くなってから起こった症状に似ているんですよ・・・
ああ・・・思い出してきました・・・
女子とぶつかっただけで殺気を放ってきた時のことを。
隠してあったエロ本を見つけられて、ものすごい笑顔で「廃棄」って言われた時のことを。
自分の母親と話しただけで、あり得ない力で僕の手を握り潰そうとした時のことを。
あれ・・・冷や汗だ・・・

試験が終わった次の日、いつものように学校に行こうとすると、普段とは違う光景を目にしました。
駅前広場の『天使の像』の前で待つ1人の美少女・・・杉山綾乃先輩です。
僕に気付くと手を振ってやって来ました。
「おはよう、優希君」
先輩は僕を待ってくれていたようです。
いえ、そもそも約束なんてしていないんですが。
まあそれはいいんですよ、先輩と会ってからしばらくは何事も無かったですし。
でもそれからでした。僕はその後、とても恐ろしい体験をすることとなってしまいます。


382優柔 第21話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/22(水) 23:22:34 ID:CCi2q8K+
試験の出来はまあまあだと思う。日ごろからちゃんと勉強してる分、試験前になっても焦ることはないしね。
さてと、試験も終わったことだし・・・そろそろゆう君を取り返すかな。
もうね、まどろっこしいことはやめようと思うの。
普通にお茶誘ったり、先に学校に来て教室の窓から見張ったりなんて。
とりあえずは・・・登校するところから始めようかな。
ゆう君の行動は計算済み。
朝礼の無い日は8時11分着の電車に乗るから、私はそれに合わせればいい。
ちょっと早く来すぎたみたい。
駅前のファーストフードでコーヒーでも飲んでよっと。
ここからなら駅は一望できるから、ゆう君が来たらすぐに行ける。
出てくる人も多いけど、私ならゆう君なんて瞬時に見つけられる。
愛があるからね。
・・・気付いたんだけど、これも十分まどろっこしいな。
本当はすぐにゆう君を捕まえて、あんなことやこんなことをしてあげてもいいんだけど・・・人目が多すぎるからしょうがないか。

あっ、ゆう君が来た。
私はすぐにトレーを片付けて店を出た。
待ってよ、ゆう君。歩くの速いよ。

・・・新しいメス犬候補を発見した。
銅像の前で待ってたその女は、馴れ馴れしくも手を振りながらゆう君に近づいていく。
そして、満面の笑顔を向けた。
そのまま学校へ向かう2人。
――気に入らない。
私は2人の行動を、少し離れた場所から観察した。
あの女は確か・・・杉山先輩。ゆう君と仲の良かった、唯一の女の先輩。

女の勘って言うか、それを見たら誰でも分かると思うんだけどね。
ゆう君に向ける先輩の目が・・・女性のものだった。

ちょっと前に、自分が考えてたこと。
『・・・ああ、そういえば上級生に一人だけゆう君と仲が良い女がいたっけ。
たしか・・・杉山先輩っていったかな。
客観的に見たら美人だし、おっぱい大きいし。でも、ゆう君に気があるとは思えないな。
それに、誰とでも寝てそうだから・・・ゆう君が選んだりするわけないか。』
これが当たりだったなんて、思いもよらなかったよ。

メス犬・・・見つけちゃった。
383名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 23:24:10 ID:4l8x8UEK
第三の女キタ?????キタ?????
384もし、神様がいるのなら……。:2006/03/22(水) 23:25:33 ID:ptWWsO2+

神様はわたしに少しイジワルだ。

神様はわたしに耳をくれなかった。
神様はわたしに父親もくれなかった。

そして、神様は初めてできたお父さんも奪っていった。

わたしは何も悪い事はしてないよ?それに、これからも絶対にしない。
だから神様、これ以上私から何もとらないで。
お願い、だから……。




いつものように、お兄ちゃんと学校へ向かう。
道中、お兄ちゃんはいつになく上機嫌だった。
……無理もない。ついに念願の全国への切符を手にいれたのだから。
お兄ちゃんはサッカーがとても上手い。年代別代表の常連だ。
だけど、お兄ちゃんは一度も全国大会に出場したことがない。わたし達の高校が弱すぎるから……。

お兄ちゃんならもっと強い高校に行っても活躍できるのに……。
現に、お兄ちゃんには中学卒業時、たくさんの高校やクラブユースから誘いがきた。
だけど、お兄ちゃんは全ての誘いを断り、この高校に進学した。
……理由は分かっている。それは……わたしだ。
わたしは生まれつき耳に障害があり、ほとんど耳が聞こえない。
そんなわたしを受け入れてくれる高校は少なく、近場でとなるとここしかない。
お兄ちゃんは、翌年のわたしの入学にそなえてくれたのだ。

でも、お兄ちゃんはこの高校に進学したのはわたしのせいじゃないと言う。
もともと、俺はこの高校に行きたかったんだ、と。


嘘……。
わたしは知っている。
お正月の高校サッカー選手権を家で見ている時のお兄ちゃんの寂しそうな目を……。


……思えば、お兄ちゃんはいつもわたしのために動いてくれた。
耳のせいでイジメられるわたしをいつも助けてくれたし、わたしに内緒で手話を勉強してくれた。あの時は最高に嬉しかったなぁ〜。
それに今だって、わたしの側にいるために、サッカーの練習時間を減らしてくれている。




もう、わたしはお兄ちゃんを兄として見れないよ……。
だって、お兄ちゃん優しすぎるんだもん。
385名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 23:25:39 ID:4l8x8UEK
ごめん勘違いしてたw
とにかく神乙
386名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 23:40:00 ID:9CNuTxrH
>>381
元々、女性はそういう生き物だということを
このヘタレが思い知ることになるんだよな・・

本当に女の人の嫉妬は恐すぎますね
387名無しさん@ピンキー:2006/03/22(水) 23:43:20 ID:jy5Meds6
マテ、ここのスレの嫉妬具合を世界標準にしちゃイカン。w
388名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 00:02:03 ID:hREGoAFE
世界基準化か・・・・
想像してみた
従来の基準
三角関係発覚!!→修羅場→泥沼→男一人勝ち(3Pやらハーレム)
このスレ基準
(男の知らぬところで)修羅場
      ↓
「全力で戦った後には友情が芽生える」という格言
がうそと思えるほどの 大 激 戦 ! !
      ↓
底なしの泥沼試合。
      ↓
相手を排除!!!(殺す、男を洗脳等)
      ↓
エンド

かな・・・・?
389名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 00:10:23 ID:2N5HoBp0
従来の基準にしおらしく身を引くとかは無いのかソレ。
刃傷沙汰が無いだけで充分このスレ基準だぜ、この修羅場脳。w
390名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 00:17:51 ID:4kXVyVeN
とりあえず神々乙、そろそろ修羅場が見れそうだ・・・
391名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 00:34:59 ID:nJ6OlpMs
いよいよ言葉様の出番ですか
392名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 01:14:17 ID:gVMypMY1
神の皆様乙です。
>>384
耳が聞こえない以上手話で罵倒しあうのか、
沈黙の中敵意をぶつけ合うのか
今から修羅場を期待して興奮してきましたw
393名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 02:12:32 ID:adHXSMs9
>>384
もし俺がこの子の立場で、こんな兄貴がいたら
間違いなく惚れるね

>>392
そこでビンタ合戦ですよw
ひたすら死ね死ねと念じながら、無言で相手の頬を叩きあう女の子たち…
うはwwwwwwおkwwwwwwww
394名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 03:52:11 ID:JUrlzNnM
 何時からだろう、俺――吉田紅司(よしだこうじ)が、あいつ―白波夕子(しらなみゆうこ)のことをこんなにも意識するようになったのは。
 物心ついたときから幼馴染で、喧嘩したりじゃれあったり男とか女とか意識せずただ楽しかった。 誰よりも、他のどんな男友達より気を置けない仲。
 そして何時しかそれは友情から恋心に変わっていた。
 快活な性格も、跳んだり跳ねたりするたびに揺れるツインテールも、少し小振りの胸も全てが愛しくてたまらなかった。
 でも言えなかった。 言った途端この関係が壊れてしまいそうで怖くて。
 この関係が壊れるくらいなら幼馴染のままでいいと。

 だがそんな関係が終りを告げようとする出来事が起こった。
 単刀直入に言うと女の子に告られた。 相手はクラスメイトの藤村美嬉(ふじむらみき)。 酷く内気で影の薄いコだったが、三つ編みが良く似合う可愛いコだったから名前だけは覚えてはいた。 でも、それ以上は知らないコだった。
 いや、たった一回だけ話した事がある。 駅で困ってる所を声をかけたのだった。 切符を無くしてしまい困っていた所を助けてあげたんだっけ。 律儀な事にその事をずっと恩義に感じてくれて、何時しか其の気持が俺への好意に変わってたらしい。

 だがそんな告白の一部始終を夕子に見られた。 そして見られた事以上に夕子が言った台詞は俺にとってショックなものだった。
「おめでとう!コレであんたも彼女居ない歴にピリオド打てるね。 折角こんな良いコが勇気振り絞って告白してくれたんだから裏切っちゃ駄目だよ。 あ、コイツ一見パッとしないけどコレで結構優しかったりイイヤツだからヨロシクね」
 目の前が一瞬真っ暗になった。
 実は目撃された瞬間、見られた事に狼狽すると共に夕子の本心を知れるチャンスじゃないかなんて思ったりもしたから。
 若しココで夕子も狼狽したり或いは嫉妬の表情でも見せれば、それは自分にも脈があると言う証拠だから。
 でもそんな幻想は粉々に砕け散った。
 一瞬、違う、そんな気持は無い、と。 俺が好きなのは夕子、オマエだけだと。 そう言おうと思った。 が、
「おう、オマエも早く彼氏作れよ」
 出てきた言葉は心にも無い正反対の言葉だった
 見栄を張ってしまった。 醜く言い訳する所なんか見せたくないと思ってしまった。 好きな娘の前だからカッコつけたいと思ってしまったから……。 自分の馬鹿さ加減に腹が立つ。

 そして立ち去る夕子の背中を見送り姿が見えなくなると、俺の内には藤村に対する怒りが込み上げて来た。 完全な逆恨みだ。 だが藤村の顔を見た瞬間そんな気持も吹き飛んだ。 泣いていた。
 一瞬自分の心の内を見透かされたかと思いうろたえた。 だが違った。 嬉しくて幸せで思わず涙が溢れてしまったんだと。
 胸が痛んだ。 俺の身勝手な感情と裏腹に藤村の真っ直ぐさに。
 そしてそんな藤村を可愛いと思った。 気が付くと無意識に手が伸び抱きしめていた。
 俺は自分の身勝手さを恥じた。 夕子が俺のことを友達としか思ってなかった事にこの娘は何の関係も無いのに。
 むしろ知りたかったあいつの気持を知れたんだ。 下手に告白すれば友達の関係すら終わってたかもしれない、そうならずに済んだんだからむしろ結果的に良かったじゃないか。

 そして俺と藤村との付き合いが始まった。 最初は成り行き上で仕方なく、そんな思いであった。 趣味も好みもまるで違うのだらけでこんなので上手くやっていけるかと心配に思った事もあった。  だがそんな心配は徐々に消えていった。
 藤村は――いや、美嬉はいつも俺の話に真摯に耳を傾けてくれた。 そして一生懸命合わせてくれた。
 一途で真剣でそんな姿に次第に惹かれていった。
395名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 03:55:53 ID:JUrlzNnM


   X    X    X    X 


「どうしてあんな事言っちゃったんだろ」 
 あのあと家に帰った私は激しく後悔し、自己嫌悪に陥っていた。
 紅司を探しに行ったら女の子から告白を受けていて、しかもとっても可愛いい娘で。
 あんな事を言ってしまったのは怖かったから。 紅司の口から、このコと付き合うことにしたよ、そんな言葉を聞くのが。
 だって其の娘、女として自分よりはるかに魅力的に見えたから。 がさつな自分と違ってしとやかな物腰も,愛らしい顔立ちも。
 だから自分で自分に引導を渡した。 大好きなヒトから其の言葉を聞くくらいなら、と。
 そして今、自分の部屋で一人泣いていた。 泣いて泣いて泣き腫らして、それでも気持は晴れなかった。
 そんな次の日、告白を受けた。 相手は一つ年上の先輩。 比較的見知っており、クラスの女子からの人気も高いヒト。
 でも私にとっては只の一先輩に過ぎないヒト。 だが客観的に改めて見れば確かにそれなりに魅力的だし知らない相手じゃないし。
 誰かと付き合えばこの辛い気持も紛れるかもしれない。 そう思って告白をOKした。

 だがそんな気持で付き合ったって上手くは行かないのは目に見えてた。 何かある度に心の中で紅司と比べてしまう。 そしてそんな気持が関係をギクシャクさせ結局破局。
 別かれる事にショックは無かった。 大して好きでもなかったのだから当然と言えば当然だ。 

「そうか、お前やっぱり未だ吉田の事が」
「ごめんなさい先輩」
 ショックは無いけどやっぱり罪悪感はある。
「実はずっと黙ってたんだが昔、吉田に相談を受けた事があったんだ。 オマエに告白しようかどうか迷ってる、って。 勿論その時俺もお前を狙ってたから止めさせたんだけどな。 こんな事になるくらいならあの時アイツのの背中押してやりゃ良かったかな」
 其の言葉に思わず愕然となった。
「そんな……紅司が。 でも今更もう遅いよ。 だって紅司にはもう彼女が……」
「そうやって諦めるのは未だ早いかもしれないぜ。 俺たちだって上手く行かなかったんだ。 あいつだって上手く行ってないんじゃ無ぇのか?」
「そ、そんな都合のいい話……」
 ある訳ない。 そう言おうとしたが言葉が続かない。 だって本心ではそうであればどんなに良いだろうと思ってたから。
「いや、実際愚痴ってたぞ。 女と付き合うのがこんなに疲れるものだと思わなかった、って。 同じ女でもお前と会ってるときは気楽で楽しかったって」
「で、でも今更……」
「俺とオマエはもう恋人同士じゃ無くなっちまった。 でもな、大事な後輩である事には変わりないんだ。 だから幸せになって欲しいんだ」
 そう言って先輩は背中を押してくれた。
「ごめんなさい。 アタシ先輩の事傷つけたのに、それなのに……」
 皮肉なものだ。 今までにないほど先輩の優しさが身に染みる。 たった今別かれ、しかも他の男へ思いを打ち明けようとしてるこんな時に。
「がんばれよ」
 そう言ってくれた先輩の笑顔に勇気付けられる。 そして私はそんな先輩の笑顔に見送られ走り出していた。

396名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 03:58:47 ID:JUrlzNnM
思わず自分でも書いて投下してみました
続きはまた後日
397名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 10:28:26 ID:mY1Wq0Ul
先輩カッコヨス
抱いて
398名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 13:30:03 ID:rRzDQXq5
GJ!
先輩、ナイスガイ!
でも、その後の修羅場を想像すると…ナイスアシスト!(ぇ
399名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 14:04:21 ID:FTOqruCs
尊敬に値するよナイスガイ先輩。(某シト風に読んでください)
400名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 14:32:16 ID:D7dO/qVv
先輩テラカッコヨス!!
てか先輩一番人気w
401名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 15:30:36 ID:k9SlEjlU
修羅場の中輝く漢に惹かれる801板の出張所はここですか?
402名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 15:39:50 ID:phYgYZHr
先輩GJ!w
403名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 15:39:55 ID:2N5HoBp0
>>401
…いや、ゲイとホモの違いは判らんが801は違うと思うぞ。
アレは801穴なる謎器官を持つ生き物の腐姐さん達の為の世界だからな。
404名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 15:43:01 ID:pSnYoy4I
801の姐さん達は来てないと思うがな。
405名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 16:34:36 ID:6RL9MG29
このスレに出てくる女達に自分がひっかかったら、EDになるかもしれんw
406395の続き:2006/03/23(木) 16:46:28 ID:JUrlzNnM


   X    X    X    X 


 あの日弟から其の話を聞いた時、俺――結城悟は自分の耳を疑った。
「吉田が女と付き合い始めたって? しかも其の相手は白波さんじゃないだって?」
 吉田とは中学のころ部活が一緒で弟の同級生な事もあり、高校になった今でもたまに会って話したり、時に相談を持ち掛けられたりもする。

 そう、ほんの数日前にも相談を持ちかけられた。 相談の内容は恋愛に関すること、白波に告白しようか迷ってると言うものだった。
 正直困惑した。 何故なら俺も白波に惹かれていたから。 いや、惹かれていたというより羨ましかったのかもしれない。 中学入学と共に引っ越してきた俺には幼馴染は居ない。 だから白波と言う幼馴染がいる吉田が羨ましく、また妬ましくもあった。
 だから言った。 あまりことを焦らず慎重にいけと。 下手に告白なんかして仲がギクシャクするような事になったら後で後悔するぞ、と。
 後になって我ながらみっともないことを言ったと自己嫌悪に陥った。 ああは言ったがきっと告白は時間の問題だし、告白すればきっと付き合うことになるだろうと。

 だからそんな吉田が白波以外の女の子と付き合いだしたなんて自分でも信じられなかった。
 一体何故? だがそんな疑問以上に強烈な思いが胸に込み上げてくる。
 これって若しかしてチャンスなんじゃねぇか? いや、チャンス何て言うほどの物じゃ無いかもしれない。 確立が0%から1%になっただけかもしれない。 だがその1%すら光明に思えた。
 そして思い立ってすぐさま告白した。 結果はOK。 我ながら信じられなかった。 ベタだけど何度も自分の頬っぺたや手の甲をつねって夢じゃないかと確認したりもした。 

 そして始まる薔薇色の日々……のはずだった。 
 付き合いだした白波に俺の好きな笑顔は無かった。 吉田といつも屈託無く笑いあってた笑顔。 俺が何よりも好きで、何よりも羨ましくて、何よりも欲しかった笑顔。
 でも今俺の目の前にあるのはそんな極上の笑顔には程遠い、薄っぺらな作り物の笑顔。 
 もう一度見たかった。 あの太陽みたいにまぶしい笑顔が。 そのために俺に出来る事は……。
 答えは解かりきっていた。 たった一つしかない答え。 でも選びたくない答え。
 だけど、これ以上見てられなかったから。 あんな痛々しい作り物の笑顔は。

          ・

「何やってんだろうな俺」
 胸の前で合わせた両手を離し伏せていた目を開くと俺は自嘲気味に呟いた。
 恋愛ごとで神頼みなんて。 しかもそれが自分の恋じゃなくて、たった今別れた女が別の相手と上手く行きますようにだなんて笑い話にもならない。

 そう、俺は意を決して夕子と――白波と別れた。 俺じゃアイツを幸せにしてやれないから。
 俺が白波に伝えた吉田の言葉
――いや、実際愚痴ってたぞ。 女と付き合うのがこんなに疲れるものだと思わなかった、って。 同じ女でもお前と会ってるときは気楽で楽しかったって――
 確かに吉田はそう言った。 だがそれは吉田が藤村と付き合い始めた直後の事
――あいつだって上手く行ってないんじゃ無ぇのか?――
 それも過去の話。 つい先日見た吉田と藤村はとても楽しそうだった。
 そんなことを統合していくと白波が今告白した所で今更どうにもならないかも知れない。
 だけど吉田が藤村と付き合うようになるまで、吉田がどれだけ白波の事を思っていたのかも知ってる。
 だから吉田の心にまだ白波への未練が残っていれば……。
 そして俺はもう一度目を閉じ胸の前で手を合わせた。
407名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 16:48:43 ID:JUrlzNnM
レスdクス
って言うか先輩が思いのほか人気でぶったまげた
思わず予定変更して先輩パート書いちまったよw
408名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 16:49:19 ID:B31i2hqn
燃えゲーには魅力的な男キャラがよくいるが
ついに修羅場SSにも魅力的なサブキャラが生まれたか
409名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 16:57:15 ID:yiUCKRr6
先輩夢をありがとう
410名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 17:03:01 ID:2N5HoBp0
こ、こんなに潔く身を引くキャラは初めてだ…!

このスレって嫉妬or三角関係or修羅場じゃなくて
嫉妬+三角関係=修羅場!スレだよな。
411名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 17:16:18 ID:+jy4Km+1
今真理を垣間見た
412名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 17:29:49 ID:4kXVyVeN
主人公と同じ名前だor2
413名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 20:12:28 ID:T0W/T7zG
保管庫にある◆AuUbGwIC0s氏の無題ってやつを
待ち続けてるのはもしかして俺だけ?
 元樹さんの言うところによれば、事態は一応の終結をみたらしい。
 もう何も心配は要らないよ、と彼は穏やかな顔で言うが、
 あれがそんなに簡単に彼を諦めるとは到底思えない。
 策謀の限りを尽くし巡らし、彼の枕元で好機を今か今かと息を潜めて待っているに違いない。
 元樹さんは優しい。優しすぎるほどだ。
 だからこそ、あの雌狐がまた何かしでかしたら、きっと形勢はあっさり逆転してしまうだろう。
 そうなればまた私が追う番だ。そんなのはまっぴら御免である。
 私にアドバンテージがあるうちに、完膚なきまでに、叩き潰す。
 もともと倉井楓という女性は“そういうたち”である。
 どんな状況であれ、用心のしすぎということはないのだ……
 
 都内でも有数の大きさを誇るこの書店で、彼の妹君は働いていた。
 長い黒髪を後ろでまとめ、白いシャツの上に深緑のエプロン、
 グレーのデニムパンツという出で立ちで本棚に立ち向かう彼女は、
 かつての浮世離れした雰囲気をもはや纏ってはいない。
 背丈が自分の半分ほどしかない少年少女に、
 しゃがみこんで笑顔で応対するさまは、まるで年若い保母のようですらある。
 
「“ご苦労様です”」
 後ろから耳元に囁きかける。
「―――あ、はい、お疲れ様で―――す」
 上司から労いの言葉を掛けてもらったと勘違いしたのか、
 営業スマイルのまま振り返ったはいいが、口元が引きつっている。
「……お仕事終わったら、ちょっと時間いいですか」
「今さら……今さら、何も話すことなんてありません」
 憤懣やるかたなし、といった表情を浮かべる楓さん。
「貴女になくても、こちらにはあるんですよ」
「……今、この場で聞くわけにはいかないの?」
 何が何でも差し向かいで私と会話するのが嫌らしい。
「本当に言ってもいいんですか? 仕事にならなくなりますよ」
「……兄さんのこと?」
「それ以外に何があると?」
「……わかったわ、終わったら連絡します」
「あれ、私の連絡先(アドレス)、知ってるんですか?」
「……最低ね、貴女」
「何を今さら」

 会合の場所に指定したのは路地を入った所にある、あまり人の寄り付かない喫茶店だった。
 客の入りは決して良いとは言えないがちゃんとしたものを出す、いわゆる穴場というやつで、
 元樹さんに教えてもらったお店である。
「……で、お話って何かしら。森川樹里さん?」
 目の前でゆらゆらと香ばしい湯気を立てるブレンドに手を付けすらしないうちに、楓さんは切り出す。
「落ち着いてコーヒーくらい飲ませてくださいよ」
 ガラスのポーションケースから角砂糖をカップにひとつ落とし、攪拌する。
「……はっきり言いましょうか。今こうしてるだけで凄く不快なの。
 貴女がどれだけ酷いことを言うつもりなのか知ったことじゃないけど、」
「いつまで先輩と一緒に生活してるつもりですか?」
 あくまでさらりと。
 野原で摘んだ花束を差し出すような調子で、中には蜥蜴という悪質。
「……兄さんに出て行け、って言われるまでです」
「ふざけないでください、彼がそんなこと言うわけないでしょう」
「別にふざけているつもりはないんだけど」
「単刀直入に言います。邪魔です。この上なく邪魔です。
 貴女が彼の部屋に居座っているかぎり、いつまで経っても遊びに行けないじゃないですか」
「……不潔」
「貴女にだけは言われたくないですね」
 これだけは譲れない。
「……話はそれだけ? もう行ってもいいかしら」
「あくまで立ち退く気はない、ってことでいいんですね?」
「貴女に指図される謂れはありませんからね」

「後悔しますよ」
「……今でもしてるわ。十分ね」

----

 わたしの周期はわりと正確だったから、一ヶ月も遅れた時点で半ば確信していた。
 バイトの帰り、薬局に寄って買ってきた“それ”を目の前に、しばし瞑目する。
 歯ブラシと体温計を足して割ったような、珍妙なフォルムのそれにどれだけの信頼を置いていいものか。
 心臓がばくばくいっている。いっそ身を投げてしまいたい衝動に駆られるが、そうもいかない。
 兄さんと約束した。きっと立ち直り、いつかあの日の兄妹に戻ると。
 それまでは、わたし自身さえも、わたしが勝手に決着してはならないのだから……
 
 きっかり一分後。
 わたしは判定窓を覗き込み、そのままテーブルに崩れ落ちた。
 入学試験の受験番号、就職内定の厚い封筒、人生を左右するシンボルは多々あるだろうが、
 女として生まれてきた以上、これを超える通告は恐らくあるまい。
(妊娠した―――)
 思い返せばずさんな避妊だった。避妊具は一応付けていたが、無ければ無いでそのまましていたのだから。
 やっと歩き出せる、ここから前に進めると思った瞬間にこれだから、運命というやつはかくも残酷だ。
 
 どうすればいい。
 どうすれば、いいんだろう。
 兄さんに、言える?
 兄さんの子供ができたって、本当に、言える?
 ……言えない。
 ぜったい、言えない。
 なら、黙って堕ろす?
 兄さんが授けてくれた、この小さな命を、殺せる?
 ずっと昔から、心の奥底で望んでいた、この奇跡を、手放せる?
 無理。できない。そんなことするくらいなら、死んだほうがまし。
 じゃあ、どうすればいいって、いうの?
 
 タンクトップにトランクスという、うちのお父さんと同じ格好をして、
 駅の近くの屋台で買ってきたという焼き鳥とビールで、野球中継に夢中の兄さん。
 こうしている間にも、わたしの下腹に宿った新しい命は、
 わたしの血中から栄養を吸収し、着々と成長しているのだ。
 異物だ。
 異物である。
 わたしの意志とは関係なく、この子は十月十日を目指しこんこんと眠り続けるのだ。
「食うか?」
 兄さんが串の一本を差し出す。どす黒く濁った肝臓に、甘辛いたれで味をつけ焼いたものが四切れ。
「……い、いい。要らない……うぷ」
 猛烈な勢いでトイレに駆け込んだわたしの背中を、兄さんがさすってくれる。
 
 だめだ、ぜったい、殺せない……
 
 結局その日は一睡もせず、先のことを考えていた。
 同じ部屋で暮らす以上、そう隠し通せるものでもないだろう。
 お腹が大きくなってくれば絶対に気付かれる。
 だが、母体保護法によって定められている二十二週を守りきれば私の勝ちだ。
 それ以降の堕胎は業務上堕胎罪にあたるため、気付かれたところでもう堕ろすことはできない。
 あとは両親に泣きついてでも絶対に出産してみせる。
 利用できるものは何でも利用してやる。鬼にでも畜生にでもなってやろうじゃないか。
 兄と愛し合うことを決めてからというもの、
 人の道を外れることに躊躇などなくなって久しいのだから。
 
 翌日、バイトを休み産婦人科へと赴いた。
 待合室は若い女性たちで一杯だった。
 マタニティドレスを着たひとはやはりというか全体的に表情が明るい。
 人の世は移り変われど、妊娠出産は自身の女性性を完全肯定される事象であることに変わりはない。
 むしろ、いかにもできるオンナといった趣の女性が俯いている姿を見ると、暗澹たる気持ちになる。
 わたしのような人種にとって、彼女らの心象を理解することは難いが、幸せになってもらいたいものだ。
 ……なんだろう、この余裕は。
 実の兄の子を身篭ってしまった妹なら、もっとこう、悲壮な雰囲気を纏っていてもいいんじゃないのか?
 自問自答して、可笑しくて、思わず吹き出してしまう。
「何ヶ月ですか?」
 隣に座っていた、ポニーテールの女性に声を掛けられる。
 彼女も薄桃色のマタニティに身を包み、かなり大きくなったお腹をさすっている。
「まだわからないんです。初めてここに来たもので」
「あら、じゃあ検査薬か何かで?」
「ええ、どうやらおめでたみたいで」
 おめでた、が肯定表現であることを理解したのだろう、女性の表情がぱあああっと明るくなる。
「おめでとうございます、ほんとに」
「ありがとうございます」
 ふたり顔を見合わせながら笑う。
 女性が妊娠すると綺麗になる、ってほんとだな、って思う。
「お姉さんは妊娠何ヶ月ですか?」
「これで7ヶ月目なんですよ」
 おっきいなあ。
「旦那さまがね、熱心にかまってくれるからすごく嬉しいの。結婚する前はすごくクールなひとだと思ってたのにね」
「わたしも、寂しがり屋だからかまってもらえるとすごく嬉しいです」
「大丈夫、パパになると、びっくりするくらい男性って変わるから。いっぱい甘やかしてもらえるよ」
 それは、わたしには、ないことだと、わかっていたけれど。
「楽しみです」
 いいんだ、そんなものは。
 本来わたしの妄想の中でしかありえなかったことが、今こうして現実として私の目の前に横たわっているのだから。
 
----

 仕事が忙しく、帰って寝るだけの生活が続いた。
 別々の布団で寝るようになった。
 一緒に風呂に入ることがなくなった。
 食事のメニューが元々立派な内容だった。
 楓は元々、あまり身体が丈夫なほうとはいえなかった。
 気付けなかった理由はいくらでも後付けで用意できるだろうが、事実だけは変わらない。
 
 楓が妊娠した。しかも既に堕ろせない時期に差し掛かっているという。
 後悔は後ですればいい、とるものもとりあえず実家に連絡した。
 報せを聞くなり田舎からすっ飛んできた両親も、僅かに膨れた楓のお腹を見るなり泣きだしてしまった。
 老いはじめた親二人に縋りつかれながらも、楓は超然としていた。
 それはむしろふてぶてしさすら感じさせる微笑であり、
 母の強さともまた違う、もっと子供じみた虚勢だったように思う。
 
 ひと段落すれば、あとはお袋の独壇場だった。
 やれ腰は冷やしてはいけないだの、薬は絶対飲むなだの、
 楓にひとつひとつ出産の心得を伝授している。
 それにふんふんと頷きつつ神妙に聞き入る楓を、
 頬杖をつきながら眺める野郎ふたり。
 
 親父の表情は読めない。
 ただ一言ぽつりと、すまなかった、とだけ聞き取れた。
 それが何についての謝罪なのかはっきりしなかったが、おれは頷いた。
 
「……で、だ」
「……ああ」
「……男の子か女の子か、聞いたか?」
「多分、女の子だってさ」
「名前は決めたのか?」
「……今日初めて何もかも聞いたのに、考えてるわけないだろ」
「それもそうか」
「……」
「……」

「……孫の顔が、楽しみだ」
「親父……」

 しんみりとした空気が流れたその瞬間、玄関のドアがばたーんと盛大な音を立てた。
 
「先輩先輩! 私妊娠しましたっ! これでこれで、楓さんと一緒に住むわけにはいきませんよね!
 責任とって結婚してくださいっ! 何なら入り婿でも結構です! 両親に挨拶に来てください! 今すぐ!
 新婚旅行はどこにしますか? やっぱり海外ですか? ハワイ? グアム? 
 両親はシンガポールだったらしいのでそれもいいですよね! 元樹さんは煙草吸わないし!
 式は前も言ったとおり神前式がいいです! でもやっぱりウェディングドレスも捨てがたいですよねっ!
 いずれにせよお腹が目立つ前にやっちゃいたいので次の休みに一緒に式場の下見に行きましょう!
 さー楓さん、これで元樹さんは私のものです! 正攻法ですよね? 常道ですよね? 文句はないですよね?
 いくらなんでも嫁入り前の身体を傷物にした上に身篭らせて、その責任を取らせないとは言わせませんよ?
 あンだけどぱどぱ中に出しておいてまさかとは言わせませんよ? 証拠のビデオも、ボイスレコーダーも、
 ついでに言うと使用済みの近藤さんもいらっしゃいます! 嘘だと思うならDNA判定でもなんでもどうぞ!
 悔しいですか、悔しいでしょう、でも貴女は元樹さんの妹だからどうしようもありませんね、大丈夫、
 貴女くらい魅力的な女性ならいくらでも男性が言い寄ってきますから。
 ちぎっては投げ、ちぎっては投げっぱなしブレーンバスターって感じですよええ。
 よろしければうちの事務所にいい男がいますから紹介しますよ? さえない感じですが根はいい人です。保証します。
 さあ元樹さん、下にタクシーを待たせてますので来てください! まずは元樹さんのご両親にご挨拶に参りましょう!
 こういうことは早ければ早いほど心証がいいってものですからね! 末永いお付き合いになるんですから、
 こういう儀式はきちんとしましょう。ああ何だか緊張してきました、でもきっと元樹さんのご両親ですからさぞ立派な
 方々なんでしょうね、ちょっと安心です。でも楓さんのご両親でもあるんですよね、もしかしてお二人は血縁関係にあるとか?
 そのせいで楓さんがインセスターでモラルハザードで畜生道まっしぐらになったとか……
 はっ、憶測でひとをどうこう言うのは良くないですよね、ごめんなさい。でもきっときっと大丈夫ですよね、
 元樹さんも私もまだ若いですが社会的地位もありますし、ふたり合わせれば収入は十分ですしね!
 さあ行きましょう、ぐずぐずしている暇はありませんよ? 一時間後に新幹線の指定席を取ってありますからっ!」
 
 ぜはー、ぜはー、と荒い息をつく樹里。
 
「……」
「……」
「……」
「……」

「……あれ?」
419 ◆kQUeECQccM :2006/03/23(木) 20:52:09 ID:1cIXSWgx
何がへたれって、最後の最後にコメディになる俺の根性のことですよ、ええ。
次回最終回です。

後は「エロが足りない」とのことなので外伝で何かやることにしましょう。

>370-372
読まれてしまった……うぐぅ。
420名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 21:00:53 ID:adHXSMs9
ダブル妊娠キタ-------(゚∀゚)-------!
421名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 21:01:47 ID:rGBL9hnI
作者様最高です!!!

>>372
ビンゴ。
422名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 21:02:34 ID:foJkYqZ+
もしかして修羅場ではなく妥協ありの和解エンド?
423名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 21:12:23 ID:Q1srlx88
>>422
修羅場はもう既にあったからなぁ。
別にDead endじゃなくてもいいんじゃない?
424名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 21:49:43 ID:yHWS0v74
>>419
作者様GJ!たまにはこういうほのぼのとしたのも良いものですな(´ー`)y─┛~~
425名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 22:02:59 ID:Hvpkv84B
これをほのぼのとしてるって言えるのがおかしいw
426名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 22:03:00 ID:w8f+lnig
>>419
キタコレw
最終回と外伝、楽しみにしてます
427名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 23:21:19 ID:pEbi0lIr
え、これコメディなの?
なんか後の展開が怖くて
(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブルなんだが。
樹理さんが壊れそうで
428名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 23:31:27 ID:7bJ26F4H
>>419
>後は「エロが足りない」とのことなので外伝で何かやることにしましょう。

このスレには絶対的に足りなかったエロ分補給キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
君には期待しているッ!!!
429名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 23:33:02 ID:D7dO/qVv
いや俺は樹理さんの壊れ気味な長セリフにふいたw
430名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 23:37:50 ID:B31i2hqn
というか生でやりすぎw
431名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 23:43:04 ID:rRzDQXq5
えーと…とりあえず、
親父さんは元樹くんを思いっきり殴っていいと思うんだ。

…GJ
432名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 00:49:16 ID:2oNYBBKk
名前に「もと」即ち修羅場の法則
433名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 00:50:28 ID:7ePnN0ii
>>418
あれ?
連載の初期の楓が見た悪夢の

妊娠したの

が伏線になっていたのか

上手いな
434名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 01:03:19 ID:eOIkomrG
このあと二人が産んだ娘たちによる父親争奪戦の修羅場に期待。
435名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 01:12:02 ID:7rIyVDfc
>>434
それはそれでおもしろそうだw
436名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 01:55:00 ID:d6ItUQEF
これが普通だったら
元樹が父親にを殴られたりなんかしてなんかそういう流れになるんだろうが
そうならないところがこのスレのすばらしさだと僕は思うんです
437名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 02:09:27 ID:dUNWvXfN
しゅら-ば 【修羅場】
 (1)戦乱や闘争で悲惨をきわめている場所。しゅらじょう。
 「何度も―をくぐってきた男」「―を踏む」
 (2)芝居や講釈などで、激しい戦いの場面。〔講談では「しらば」「ひらば」という〕

どうやら俺達と世間一般の修羅場に対する認識にはズレがあるようだ。
>>436の云う親子の確執も修羅場の範疇なのかな。

どろぼう-ねこ ―ばう― 【泥棒猫】
 他人の家へ忍び込んで食物を盗む猫。

これが正しいのだろうけどやっぱり物足りない…。
438もし、神様がいるのなら……。:2006/03/24(金) 02:32:54 ID:lZCsgj5F

今日は体育館で全校集会がある。
お兄ちゃん達サッカー部の表彰。
いつもわたしは、集会には出ないで保険室にいるんだけど、今日はお兄ちゃんの表彰だから……。

お兄ちゃん達サッカー部が壇上に上がっていく。
ふふふっ、お兄ちゃん珍しく緊張してる。かわいい。

そして、キャプテンと副キャプテンに、それぞれ優勝トロフィーと賞状が手渡された後、お兄ちゃんが校長先生の前に立つ。
チームの表彰ではなく、お兄ちゃん個人の、すなわち、最優秀選手賞と大会得点王の表彰。
周りがザワつくのが分かる。
きっと、お兄ちゃんの個人賞を発表したのだろう。
全校の視線がお兄ちゃんに集中している。
女生徒の何人かはうっとりとした表情を浮かべながら……。


お兄ちゃんをそんな顔して見ないで!!!!
わたしの胸が急に熱くなる。
分かっている。この感情は嫉妬だ。

分かっている。お兄ちゃんはわたしの恋人ではない。

分かっている。お兄ちゃんはわたしを妹としてしか見ていない。

だけど、だけど!!
やっぱりそんな顔してお兄ちゃんを見てほしくない。
だって、だってわたしは、お兄ちゃんの事が大好きだから……。

わたしの目からは、なぜか大粒の涙があふれていた。
439もし、神様がいるのなら……。:2006/03/24(金) 03:37:24 ID:lZCsgj5F

全校集会が終わり、その日の日程を全て消化した後、わたしはお兄ちゃんと一緒に帰る。
お兄ちゃんは、わたしのために朝練は全て休み、放課後の練習は月、水、金曜日だけ参加している。
そして今日は火曜日。

帰りの電車の中、お兄ちゃんはやけにニヤニヤしていた。どこでかぎつけたか、わたしが全校集会で泣いた事を知っているらしい。



あの時……。
わたしは恐ろしい事を想像をしてしまった。
すなわち、お兄ちゃんがわたし以外の女の子と恋人になっているところ……。

悲しかった。お父さんが死んだ時よりも。

寂しかった。子供のころ一人でお留守番してた時よりも。

そして、悔しかった。隣にいるのがわたしではないことが……。

……まずい、また泣きそう。

わたしは下を向いて、必死に泣くのを我慢する。

ふと、頭の上にあたたかい感触。
……お兄ちゃんの手だ。

お兄ちゃんは、子供の時からわたしが泣きそうになると、わたしの頭をなでてくれた。

わたしは吸い込まれるようにお兄ちゃんの胸に飛込む。
すぐに胸いっぱいにお兄ちゃんの匂いが広がり、気持ちが落ち着いてきた。
少し冷静になり、お兄ちゃんを見上げる。
お兄ちゃんは困った顔をしていた。

ここは電車の中だもん。困るよね?
でも、やめてあげないよ。
わたしを泣かせたのはお兄ちゃんなんだから。


ところで、こうやって抱きついていると、わたし達は恋人同士に見えるのかな?
わたしはふと考える。


恋人同士、か。
いっそこの場で、わたしの気持ちを告白しようか。
……いや、無理だ。
わたしにそんな勇気はない。
そして何より、今の状態をくずしたくなかったから。
結局、わたしはわたし達の駅につくまで、お兄ちゃんに抱きついていた。







それにしても、想像しただけでこんな気持ちになっちゃうなんて……。
もし、本当にお兄ちゃんに恋人が出来たら……………わたしはどうなっちゃうんだろう?
440名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 05:29:33 ID:MAOsltJS
茜かわいいよ茜
(*´Д`)'`ァ'`ァ
441夢と魔法の王国 第四話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/24(金) 10:47:22 ID:ETazjenH
<プロローグ>

『お姉ちゃん? いまどこにいる?』
『どうした?』
『尾行してたんだけど、見失っちゃって』
『……おまえは本当に暇人なんだな。まあ、それなりに楽しくデートしてるから。邪魔するな』
『ああ、そうなんだ。なら"問題ない"わ』
『……なんだそれは。切るぞ』
『うん。せいぜい仲良くね。おまえみたいな女を相手にしてくれる人なんて珍しいんだからさ』
『――っ!!!』

――ッー……ツー……――

切れたか。
わたしは拓ちゃんの方に向き直った。
「美樹ちゃん? 電話終わったの?」
「うんっ! 早く行こっ!」
拓ちゃんのお母さんが心配だ。
余裕のない表情をしている拓ちゃんの手を引いて、わたしは走り出した。

お姉ちゃん、デート、楽しんでね。
442夢と魔法の王国 第四話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/24(金) 10:48:41 ID:ETazjenH
<1>

運よくタクシーを拾うことが出来て、車中。
運転手さんに事情を話して、全速力で飛ばしてもらっている。
運賃もあとでいい、だってさ。いい人だ。
拓ちゃんは落ち着きなく、窓の外を眺めたり、前を睨んだり、俯いたりしている。
タクシーが何度目かの角を曲がったとき、拓ちゃんがぽつりと呟いた。
「……ミィちゃん、来てくれるって?」
こんなときにあの女のことなんて、と思いつつも、正直に答えてあげる。
「さぁ、なにも。どこにいるかも教えてくれなかったよ。デート中だからじゃないかな」
「そんな……。いや、絶対来てくれるよね……」
拓ちゃん、まだあいつのこと信じてるんだ。
目の前で別の男とデートしてるとこを目撃しても、まだ。
……妬けるなぁ。
タクシーが信号に引っかかった。
運転手さんが申し訳無さそうに、ルームミラーでわたしたちの様子を確認する。
わたしたちはどう見えているのだろう。
兄妹?
友達?
恋人?
ただの男と女?
男と、男?
……まったく、こんなときに考えることじゃないな。
「母さん……」
拓ちゃんの声は悲痛だ。
わたしは、そっと彼を抱きしめる。
「絶対大丈夫だよ。これまで元気だったんでしょ?」
「うん……まだ半年は、って……。倒れることも、しょっちゅうあったし……。
 ……でも、今回は先生の声、真剣で……『今度ばかりは覚悟して』って……」
拓ちゃんはいまにも泣き出しそうで、すごく弱々しい。
わたしは、腕にさらに力を込める。
「わたしがいるから……そばにいるから……大丈夫だから……」
そう、拓ちゃんのそばにいるのはわたしだ。
あの女は決して来ない。
来ないんだよ、拓ちゃん。
443夢と魔法の王国 第四話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/24(金) 10:49:34 ID:ETazjenH
<2>

「手術中」のランプが煌々と光っていた。
わたしは、ずっと拓ちゃんの手を握っていた。
拓ちゃんは、ずっと目を瞑っていた。
わたしたちが病院に着いたのはギリギリで、
手術室に入っていく拓ちゃんのお母さんの姿を、少しだけ見ることが出来た。
拓ちゃんはぎゅっとお母さんの手を握って、そしてすぐに引き離された。
それからずっと、この状態――
「なんで……ミィちゃんは来てくれないんだろう……」
「デート中なんだよ」
「なんで……来てくれないんだよ……」
「……知らないよ」
本当は知っている。
わたしが伝えなかったからだ。
来なくて当たり前だ。
拓ちゃんのそばにいるのは、わたしなんだから。
わたしは、もう少し強く、拓ちゃんの手を握り締めた。



「手術中」のランプが消えた。

手術室から出てきた医者は、
すぐさまわたしたちに近付いてきて――

「うああああああああああああああっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!」

拓ちゃんの絶叫を、わたしは何も言わずに聞いていた。
拓ちゃんが流す涙を、泣かずにじっと見つめていた。
444夢と魔法の王国 第四話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/24(金) 10:50:19 ID:ETazjenH
<エピローグ>

『うん、もう大丈夫』
『僕、頑張るよ』
『今日はずっと傍にいてくれてありがとう』
『……僕は、美樹ちゃんのことが好きだよ』
『これからもずっと傍にいて欲しい』

おやすみを告げて、通話を切った。

わたしは家に帰っていた。
時計の針はもう23時を回っている。
美衣はもう眠ってしまっているだろうか。
……今日は疲れた。
悲しいこともあった。
けれど、それ以上に嬉しいことがあった日だった。
電話越しに聞いた拓ちゃんの声が、まだ耳に残っている。
『好きだよ』
好き。
好き。
好き。
わたしも好きだよ。
……わたしの夢が叶うかもしれない。
拓ちゃんなら打ち明けられる。
言ってみよう。
わたしがちゃんと心を込めて告白すれば、
彼はわたしが男だと知っても受け入れてくれる。
信じてみよう。
拓ちゃんを、信じるんだ。
そして、ずっと傍にいてあげるんだ。
445 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/24(金) 10:51:17 ID:ETazjenH
あと二話くらい。


>>336
まあ、正解だ。
拓ちゃんはこれからクズ一直線だ。
446名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 11:03:18 ID:d6ItUQEF
拓ちゃん母親が死んで動揺してるのはわかるが
何でお前デートなんかして病院に来なかったんだ氏ねとかいって
切れだしたら殴るよ
447名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 11:15:18 ID:kAgRyQRM
拓ちゃん以上に、危篤の情報すら隠蔽して相手を貶めようとする美樹の姿勢が気に喰わない。

「あまり拓ちゃんに馴れ馴れしくするなよこのフォモめ!」

と、とりあえずミィちゃんの代わりに罵っておきますね。
448名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 11:33:49 ID:ysJB9y50
どうやら俺は>>447とは分かり合えないようだ
449名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 11:42:23 ID:1OPpIMpD
男でもいいー!避妊するからー!
450名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 13:06:30 ID:eGukTDc+
とっても策士な美樹コワス。
見事に手の上で踊らされてるな。
451『広き檻の中で』 ◆ewwZ0iiR3. :2006/03/24(金) 14:27:45 ID:4ErPGxuZ
………来ない。
おかしい。既に花瓶を落としてから五分が経っている。いつもならすぐに来るのに今日はこない。
不機嫌なまま寝室を出て晋也を探す。普段自分から出向くことなど滅多に無いのだが。
……しかし自分ね家なのに道に迷うというのはいかなるものか。だいたい広すぎるのだ。この屋敷。しかも意味のない行き止まりまである。まるで昔の絵本にあった迷路のようだ。
十分ほど歩き、台所の近くまで来ると、何やら騒ぎ声が聞こえた。
「くぉらぁー!晋也ー!お嬢様になんて本読み聞かせてんのよ!!!」
「お、落ち着けい!!志穂!ぼかぁお嬢に清く正しい性教育を教えたまでで……」
「官能小説のどこか正しい!?」
志穂と晋也だ…
なるほど。だから来れなかったわけか。
「晋也!志穂!」
晋也がナイフをまな板で受け止めていたところへ声をかける。
「二人とも、もう仕事は終わったのですか?」
「あ…」
志穂の顔色が変わる。この様子だとまだ戸締まりもしていないのだろう。
「すいません、お嬢様。今すぐにしてきます!」
猛ダッシュで走りさっていく。よし、これで晋也と二人っきりだ。
「晋也。ちょっと私の部屋に来てくれます?」
「ええ、わかりました。」
なんの疑いも無しについて来る。これでさっき思い付いた作戦も成功するはずだ。誰よりも早く晋也を自分の物にする方法。
カチャ
部屋に入り、気付かれないように鍵を締める
「あの壺を落として割ってしまったのです……」
「あいや!娘子よ!こりゃまた派手におやりになったな。」
そういいながら破片を拾い集める。
今だ…
ゆっくりと晋也の背中に乗りかかり、耳元で囁く。
「あー。危ないですってお嬢。離れててください。」
「いいのだ、晋也。実はもう一つ頼みがある。」
「はぁ?」
「私を抱け。さっき読んだ小説の様に。」
瞬時に晋也の顔色が変わり、私を引き離す。
「あ、あははは……お嬢も冗談がうまくなったっすねー」
「冗談等では無い!わ、私は本気で言っている。」
どうやら私が本気だという事が伝わってないらしい。だから一気に服を脱ぎ、下着姿のままさらに迫る。
「お、お嬢!俺、片付け終わったんで失礼します!!」
ガチャガチャ
「無駄だ。内側から鍵がかけてある。この鍵が無いと開かないぞ。」
晋也が泣きそうな顔をする。気持ちいいというのだから素直に抱いてくれればいいのに。
452『広き檻の中で』 ◆ewwZ0iiR3. :2006/03/24(金) 14:28:28 ID:4ErPGxuZ

「どうした?なにをためらっている?」
ズイズイ
「いや…俺はお嬢を抱くなんでできないですヨ……」
「!!!ど、どうしてだ?!これは命令だ。抱け!抱くんだ!!」
ガチャ
「あら?お嬢様と…晋也さぁん?な〜にしてるんですかねぇ?」
いきなりドアが開き、里緒が顔を出す。顔はいつものようにぽんやりと笑っているが、目と声は笑っていない。
「里緒!どうやって開けた!?」
外からは開けられないはずなのに……
「ふふふ、ちょちょっとですねぇ…」
ダッ!
そのすきに晋也が逃げ出してしまった。里緒の奴め……自分も晋也が好きだからって主人である私の邪魔をするなど……許さん!!





「ふぅ、びびったびびった。」
まさかお嬢まであんなことするとは思わなかった。まだまだ子供だと思っていたのに。人の姓長ってはやいネ。
「……って教えたの俺自身じゃん。」
一人呟き自己嫌悪。
お嬢は一度も外へ出た事がないため、体の成長が乏しい。だから17歳とはいえまだ中学生レベルの発育なのだ。
つまり見た目はペド……青い果実だ。
「ふむ、それを食べたら犯罪と言うモノだよ、晋也君」
「なにぶつぶつ言ってんの?危ない人みたいだよ」
急に後ろから志穂に声を掛けられた。
「そんなことしてる暇あったらさっさと台所の掃除でもしてきなさい。」
偉そうに言って去っていく。嗚呼、ムカムカする。





ゴシゴシ
「……ふぅ、終わった。」
台所の掃除を終え、モップを掃除用具入れにしまう時、悪戯心が芽生える。年を取ってもやんちゃな心。
モップをドアに立て掛けたまま閉じる。開けると頭にコツンというあれだ。
「ま、志穂か里緒さんがひっかかるだろ。」
期待に胸を震わせながら、風呂に入る事にした。




453『広き檻の中で』 ◆ewwZ0iiR3. :2006/03/24(金) 14:29:41 ID:4ErPGxuZ
風呂から上がり、台所に来てみると、里緒さんががまだ下ごしらえをしていた。この様子だとまだブービートラップの餌食にはなっていない様だ。
「あ、晋也さん。掃除は私がしますからいいですよ〜」
そう言いながら掃除用具入れを開けようとする。
(ワクワク。里緒さんびっくりするだろうな)
ガチャ
「え?」
「!!!!」
ドアを開けた瞬間、自分の体が勝手に動いていた。飛び込む様に里緒さんに飛び付き、押し倒す形になる。いつもなら胸に顔を埋めるぐらいはするが、今はそんな調子じゃない。
ドン!!
モップにしては鈍い音だ。恐る恐る振り替えると、降りかかってきたのはモップではなく………薪割り用の斧だった。
「び、びっくりさせすぎだぎゃ!!」
思わず訛ってしまった。
「晋也〜……里緒さんになにしてんのぉ…?」
悪魔再臨
仰ぎ見れば、志穂が鬼女のような顔で仁王立ちしていた。
「や……晋也さん…お嬢様だけに飽き足らず私まで…」
「えっ!?」
「ちょ!あんた!お嬢にまで手ぇ出したの!?うわ〜〜ん!あたしは一切襲わないくせにぃ!!!!」
突然の連続パニックで頭がいっぱいっぱいだ。取りあえずこの二人から対処だ。
「馬鹿!!泣くな泣くな!ゴ、ゴキ!ゴキブリが出たんだよ!!はやく里緒さんを連れ出して外で待ってろ!!ここはおいどんににまかせるでごわす!」
「へ?う、うん。」
俺の勢いに押され、里緒さんと台所から出て行く。
「え〜と…」
振り向いて見ると、やっぱり斧。どうみても斧。やんごとなき斧だ。
「Oh、noー……」
まるで今さっき研いだばかりのように煌煌と輝いていた。
454名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 14:43:06 ID:3beFiRoT
ちょw一体誰が仕掛けたんだよwww
コメディの中に見え隠れする狂気。テラコワス
455名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 15:04:50 ID:ISQkzAtJ
 今微妙に書き進めているものがあるのですが、投稿良いですか?

注意
・携帯からの投稿
 マジすいません
・あれ? 萌えは?
・あれ? 修羅場は?
・主人公馬鹿?
・つまらないよね?
456名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 15:15:12 ID:ysJB9y50
萌えは作者が狙って付けるものじゃない。
読者が見出すものだ。
457歌わない雨:2006/03/24(金) 15:29:04 ID:ISQkzAtJ
「I singing so like that rain. He don't like…」
 歌っている途中で右手に走る痛みに、眉をしかめて声が途切れた。今日はここまでにしようと立ち上がり、煙草に火を点けた。リハビリのお陰か、今では難無く動くようになった右手だが、今でも珠に痛みが走る。医者が言うには物理的なものではなく、心の問題なのだそうだ。
「とは言ってもなぁ」
 人は簡単に、そうそう心を切り替えられるもんじゃないと僕は思う。
 僕は右手に走る痛みに眉を寄せたまま、痛みの原因を思い出す。
 あれは一年前に遡る。
458歌わない雨:2006/03/24(金) 15:31:19 ID:ISQkzAtJ
「思ってたよりもつまらなかったね」
「馬ッ鹿、お前、最高に泣けただろうが」
「あー…、伸人ちゃん、王道好きだからね」
 幼馴染みの緑と一緒に映画館に行った帰り、いつものような下らない話。そこでいつも通りに終るはずだったのだが、そこに突然、
「ウアァー」

 甲高い音と共に割って入る声がした。半射的にそちらに目を向け、
「ウアァー」
 僕も相手と同じ様な悲鳴をあげた。急な坂道を自転車に乗ったクラスメイトが降りてくる。部活帰りなのか高校の制服を着ている。付け加えるなら、サドルに座るときにきちんとスカートを織織り込まなかったのだろう。翻るチェックの布地の下に見えるのは、
「黒!? 凄ェ」
 そこからの自分の行動は、自分でも感心する。
 「え? 黒? 何?」と混乱する緑を突き飛ばして自転車を回避させたあと、正面の壁に激突しないように自転車を押さえ込んだ。
 放心しているクラスメイトが何か言っていたが気にせずそこで別れつつ、緑に保険証を持ってくるよう頼み、自分は病院へと向かった。
459歌わない雨:2006/03/24(金) 15:33:51 ID:ISQkzAtJ
「そして複雑骨折、一年とは随分短いもんだ」
 煙草の煙を吐き出して空を見上げると、不意に背中に鈍い衝撃が来た。「よぉ」
「おぅ」
 振り替えるとそこに居たのは、腰まで届くウェーブのかかった長い髪。鋭い顔立ちの、背の低い少女。
「何一人でブツクサ言ってるんだ? 只でさえお前は凶悪な顔付きをしてるんだから、子供が見たら泣き出すぞ」
 軽口を叩きながら投げてきた缶コーヒーを取ろうとして、
「あ」
 取逃し、落とした。
 拾おうとして視界に入ってきたのは、悲しそうな彼女の表情。
「気にするな、誰も悪くない」
 僕は敢えて彼女に聞こえないように声を小さくして呟き、再び空を見上げた。
460『広き檻の中で』 ◆ewwZ0iiR3. :2006/03/24(金) 18:21:23 ID:4ErPGxuZ
勢いの余り晋也に台所から押し出されてしまった。私もいきなりの事に素直に返事してしまった。
久しぶりに見た晋也の真剣な顔。やっぱりかっこいい。ゴキブリを倒してくれるなんて男らしい。この人を好きになってよかった。
物心つく頃から。いや、それより前から晋也とは一緒にいた。小さい頃から使用人としての仕事を教えられてきたが、全く苦では無かった。常に晋也が隣りにいたからだ。
そんじょそこらのモデルなんかよりかっこいい。伊達のファッション眼鏡もポイントだ。それに似合わない下ネタも多いけど。
初対面の人に下ネタをかますのは凄いけど。
でもここ最近私に対しての接し方が消極的になった気がする。体の触れ合いも少ないし、私より里緒さんと仲良くしてる時間の方が長い。私が照れ隠しで襲ったりするのがいけないのかな。
キスもHも晋也だけと決めている。私が知ってる限り晋也もまだ未経験だろう。でもこのままでは里緒さんに先を越されてしまう。
ましてやお嬢まで狙っている。いつまでもこの関係を続けている訳にはいかない。晋也を虜にするか、ライバルを消すか………
後者の方が確率は高い。消去法で私しかいなくなる。
ガチャ
「おぉ、片付いたぞ。」
晋也の事を考えている時にいきなり顔を出され、ドキッとする。
「ゴキブリなんていたんですか〜?」
「ええ。でももう大丈夫です。あなたの晋也君が片付けました。」
「あなたの」に力を入れて言う。何があなたのよ!あんたは私のものなんだからあんたに権限なんてないの!!
「もう心配しないで思う存分料理してください。」
晋也が里緒さんに優しい言葉を囁く度に、ポケットにあるナイフを握る力が強くなる。
もう一つの方法があった……
461『広き檻の中で』 ◆ewwZ0iiR3. :2006/03/24(金) 18:22:21 ID:4ErPGxuZ
一通り台所を調べてみた。掃除ロッカーの他にも、上の開きの棚から包丁が落ちてきた。
包丁は怪我ですむかもしれないが、斧が直撃したら一大事だ。
こんな仕掛けは悪戯じゃあすまされない。
「うむ、犯人にはお尻たたき百回の罰だな」
おっと、自分以外にはうら若き乙女しかいないな。役得役得。
一人になって考えてみる。あの斧を仕掛けたのは誰か。小学校の先生みたいに、「誰が犯人かなんていうのは問題ではありません、やったという気持ちが問題なんです」等と悠長にしていられん。
まず当主の爺さんは除外。
里緒さん……まさか自分で仕掛けて自分でかかるなんて、おっちょこちょいな里緒さんでもありえない。自殺願望も無さそうだしネ。
志穂……確かに凶暴だけどあんな事をするようなやつじゃあないのは俺が一番知っている。
佐奈嬢……はっ、まさか箸より重いものを持ったことのない人が斧を持てるわけない。
んで、消去法でいくと……え?つーか、俺?
ま、まさかモップを立て掛けたと思い込んで、実は無意識の自分が斧を……
「晋也?」
「ペ、ペルソナ!?」
「はぁ?相変わらず独り言多いね。大丈夫?」
思わず叫んじまったい。
「あぁなんだ、志穂……が!!」
見てびっくり。志穂が…あの志穂がね、ネ、ネグリジェを着て立っていた。なんつゆーか……イイ!新鮮!!別人!!!
今までの考えごとをさっぱり忘れ、食い入る様に見てしまった。
「あのサ、部屋の電球切れちゃったから取り替えてくれる?私じゃあ届かなくて。」
確かに、自称150cmの志穂じゃあ届くまい。
「あいよ。」




462『広き檻の中で』 ◆ewwZ0iiR3. :2006/03/24(金) 18:23:12 ID:4ErPGxuZ
志穂の部屋に入った途端、甘いにおいが鼻を突く。いつも志穂が使っている香水とは違うにおいだ。なんか……頭がもやもやする。
「いよっと」
部屋の天井は高い。175cmある俺でも、椅子を使ってやっと手が届く。
一苦労して変え終える。と………
グラグラグラ
いきなり地面が揺れる。地震かと思ったが違った。志穂が椅子を揺らしていたのだ。
「うわ!!」
ドン!!
抵抗する間もなく振り落とされる。落ちた衝撃で頭を強く打ち付けたせいか、ひどく目まいがする。
「いてぇ〜!おい、志穂!悪ふざけも程々に……!」
気付けば志穂の顔が目と鼻の先にあった。その顔は今までに見たことのないほど色っぽかった。
「し、志穂サン」
「ふふふ…いいからじっとしてて。」
いつの間にか志穂の手が股間に添えられていたそこには俺の猛々しい(標準がわからんが)竿があった。
……目茶苦茶恥ずかしい。まさか志穂にこれを見られるとは。晋也、一生の不覚ナリ!!抵抗しようとしても、この甘いにおいのせいで頭がぼーっとし、力が入らない。
さらば…俺の清き人生………
463名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 18:29:49 ID:2CKyZN66
主人公がコメディ系だから軽く読んでるけど今までのに匹敵する位DEAD ENDの可能性が高いような。
464River of Tears 第5回 ◆AuUbGwIC0s :2006/03/24(金) 19:52:22 ID:N2ZvtJGi
 ぼんやりと教室から外を眺めながら、つい昨日先輩に甘噛みされた耳をかいている。
 悪ふざけ――だよな。いつもお姉ちゃんだって言って抱きついてくるし――
 いや、待て。赤井先輩ってオレ以外に誰か抱きついている人っていたっけ?
 ――いない。少なくともオレの知る限り一人もいない。だから佐藤先輩はオレ達が付き合っていると思ってた。
 先輩、オレの事好きなのかな――自然とそんな考えに行き着く。
 弟というのは、遠まわしにそういう関係になってくれと言っているのかな。
 オレは――どうなんだろう。少なくとも嫌いじゃない。
「――ユウ君、じゃあ明日ね」可奈がなんか言っている。
「んー……」
 無駄に唸ってみる。
 恋愛対象として意識し始めたせいか、先輩に初めて抱きつかれた時の記憶が頭によぎっていた。あの時は照れと恥ずかしさで一杯だった。しかし連日のようにやられて、いい加減なれてたはずだ。でも今日抱きつかれた時は初めての時の感覚だった。
 オレは好き――かもしれない。
「聞いている?」
 気がつくと広子の少し怒った顔が目の前にあった。
「え、なにが」
 全く聞いていない。
「可奈と一緒に服とか買いに行くから付き合ってってさっきから言ってるんだけど」
「オレ別に服なんていらねえし――」
 正直服は事足りてる。人からは地味だとかダサイとか言われているが十分だ。
「あんたのじゃなくて、あたし達の!」
「……だから何で?」
「荷物持ち兼虫除け」
 広子がさらりと言う。虫除けって事は男避けか。
「あー、お前なら大丈夫。お前がズボン穿いとけば問題ないだろ」
 それを聞いて可奈は苦笑を漏らしている。
 広子は女の子にしては背が高い方なのに、それに反比例する胸。短い髪に、男っぽい感じもする顔。
 自分の記憶では中学時代で少なくとも二回は男に間違われた記憶がある。
「なにか言い残すことあるなら聞くけど」
 あれ、オレの首に何故広子の両手があるんでしょうか。
 心なしか、その手に力が感じられるのは何故でしょうか。
「可奈、待ち合わせ場所どこだ?」
 目の前の顔を見ないように可奈に尋ねていた。



465River of Tears 第5回 ◆AuUbGwIC0s :2006/03/24(金) 19:52:53 ID:N2ZvtJGi
「おい、ユウ。ちょっといいか」
 いつも通り授業は終わり、可奈と帰ろうとした時、クラスメイトの村上に呼び止められていた。
「ん、なんだ」
 村上は可奈の方をちょっと見た後、二人きりで話したいといってきた。
「どうせすぐ終るって」
 心配そうな可奈にそう声をかけてやった。

 男子トイレの中。アンモニア臭に混じってニコチンの匂いがしていた。
「愛の告白なら手短にな」
「いや、違う――いや半分そうか」村上は少し照れていた。
 冗談のつもりで言ったのに。
 体が勝手に二歩ほど引いていた。今まで知らなかったけど、そんな趣味があったのか。
 これでも一年ちょっと前まで空手をやってた身だ。手がかってに上がり構えていた。
「オレ、同性愛の趣味ないからな」
 構えながらも、きっちり自分の意思表示を出した。
「いや、そうじゃなくて……香川のことなんだけど」村上はボソボソと喋っていた。
「ん? 広子がどうかしたのか」
「……お前と仲いいよな」
「まあ、一応――ああ、そうか」
 こいつ、あいつの事の好きなのか。勝手に納得して一人で大きく頭縦に振った。
「付き合っている人とか好きな人いるとか、そういうの知らないかな」
 物心つく前から一緒に遊んだ仲だが、今はよく知らないところがある。
 陸上部の友達とかになると殆どわかんないし。
 ――まあ、下ネタどころか恋愛絡みの話でする赤面する性格だから付き合っている奴なんていないと思うが。
「――ん、その辺よく知らないから今度聞いとく」
 あんな奴でも好きなってくれる人がいるんだな。そう思うと自然に顔に笑みがこぼれていた。
 オレは先輩が好きなのかな――自然と耳をかいていた。


466River of Tears 第5回 ◆AuUbGwIC0s :2006/03/24(金) 19:53:24 ID:N2ZvtJGi
「ユウ君早く帰ろう」
 トイレの直ぐ前で心配そうな顔して可奈は待っていた。
「悪い、もう一つ用事あったの思い出した。こっちは直ぐ終るから」
 先輩から昨日借りた傘、わざわざ学校まで持ってきていたのに放課後になるまで返すの忘れていた。

「赤井先輩います?」
 アニソンをBGMに流れているSF研の部室を覗いてみるが先輩の姿が見当たらない。
「今日はドラマ再放送のビデオ録画忘れたからってさっさと帰ったぞ」
「そうッスか」
 家まで傘持っていかなきゃ駄目か。まあいいか、そんなに距離あるわけじゃないし。
「悪い、可奈。帰りに寄るとこが出来た」


 先輩の家には傘返しにきただけなのに、何故か家に上げられて、コーヒー出されて一緒にドラマの再放送を見た。ついでにドラマが終った後も先輩とペチャクチャと喋っている。
 オレやっぱり先輩好きなのにかな――いつもと同じように喋っているはずなのにやっぱり昨日のことがあるせいか意識してしまう。
 お互い気が会う方だとは思う。
 ――先輩はどう思っているのかな。

 トイレに行った際、ある匂いで掛けられているものに気がついた――ドライフラワーだ。
「――ほら、女の子はもっと笑った顔して」
 居間に戻ってくると先輩が可奈に何やら言っている。そういやオレと先輩ばかり喋っていて可奈が蚊帳の外だった。
 そういえば、この前来た時にはあまり意識していなかったが、部屋のあちらこちらにドライフラワーが飾られている。
「ドライフラワー好きでしょ?」
「いえ、別に――」
 ドライフラワーに目が言っていたのに気がついたのか、先輩が楽しげに問いかけてきていた。
「ヨウちゃんは結構好きだったんだけどなあ……」心底残念そうな声だ。
 正直花はともかくドライフラワーってのは好きにはなれない。
 瑞々しさが全くない。実を結ぶこともなければ散ることも許されず、ただゆっくりと朽ちていくだけの存在。

「ねえ早く帰ろうよ」耳元でオレに聞こえるだけの声で可奈がそっと囁く。
 さっき先輩と話している可奈は正直楽しそうな顔ではなかった。先輩が苦手なのかな、こいつ。
「あ、先輩。オレ達そろそろ帰るんで」
 あんまり無理矢理付き合わせるのも悪い気がしてきたので、そろそろ切り上げることにした。
「じゃあ、ユウちゃん、また遊びに来てね」
 いつもの笑顔だ。この顔は好き――かもしれない。
「んじゃ、また遊びに来ます」

「なあ、お前、ひょっとして先輩苦手?」
 帰り道に先ほどの考えを可奈にぶつけてみる。
 可奈はその問いに小さく頷いた。
 先輩って嫌われるタイプとは思わない。でも可奈みたいに内気な人間にとっては馴れ馴れし過ぎるのが苦手なのかもしれない。
 なんか、こいつに悪いことした気になっていた。
 ――でも、また先輩の家に遊びに行きたいな。
467River of Tears 第5回 ◆AuUbGwIC0s :2006/03/24(金) 19:54:16 ID:N2ZvtJGi

展開上の都合とはいえ、中々修羅場にいかねー

>413
あー、そのうち書きます。そのうち。
468名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 21:18:06 ID:7rIyVDfc
ヨウちゃんが気になる
一体どういう事なのか…
469名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 21:32:15 ID:2/AKcVHR
>>467
レスどうもです。
では気長に待ってますw
470名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 21:41:04 ID:qYg2iMte
一体この時誰に予想ができたというのだろうか。
近い将来、件の作品を巡って>>469>>872が血みどろの修羅場を繰り広げることになるということを……。
471優柔 第22話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/24(金) 21:46:34 ID:KSxn8y0d
「ゆう君、おはよう」
後ろから声を掛けると少しビックリしたようだった。
もう、ゆう君可愛いな。今すぐ抱きしめてあげたいけど・・・この人がいるから。
ゆう君とほぼ同時に振り向いた、この女・・・杉山先輩。
さっきまで優しい顔してたのに、私を見た途端に目の色が変わった。
あれ、もしかして・・・私と同じタイプの人?
「あっ、ゆう君・・・ネクタイ曲がってるよ?ほら、こっち向いて」
ゆう君の首周りに手を掛けながら、ちらっと先輩の方を見た。
表情に変化はないけど・・・分かるよ。
この人も自分の大好きな人が他の女と喋ったりするだけで我慢できないんだ・・・
ゆう君・・・悪い人、ううん、悪いメス犬に目を付けられちゃったね。

「えっと・・・杉山先輩もおはようございます」
一応あいさつはしておかないとね。
「ああ、おはよう・・・優希、この子誰?」
・・・優希?
ふーん、名前で呼んじゃってるんだ。私だって「君」つけてるのに、厚かましいな。
そもそも私と喧嘩してからほんの数週間しか経ってないのに呼び捨てなんて。
あはっ、ムカつく。
とりあえず自己紹介はしておこう。
「水谷椿です。ゆう君の彼女です」
「なっ!?」
あれ?本当のこと言っただけなのに、何を驚いてるんだろ。
まさか自分がゆう君の彼女だなんて思ってないよね?ありえないありえない。
「あれ、優希。お前達別れたんじゃなかったっけ?ほら、前に話してくれたじゃん。2人でカラオケ行った時に」
2人っきりでカラオケか。
先輩・・・ケンカ売ってるんだ。
でもそんなんじゃ、びくともしないよ?
だって私、ゆう君を信じてるから。
それじゃ私も、反撃開始っと。
「もう、ゆう君いじわるだなあ。私たち、ちょっと喧嘩してるだけじゃない。ほら、先々週の金曜日は一緒に相合傘して帰ったし、
先週の金曜日も一緒に駅前のカフェ行ったじゃない。ね、ゆう君?」
私の言葉を聞いて、先輩は何事もないかのように振舞った・・・わけないじゃない。
今一瞬、顔が引きつったよ。
あ・・・私の微笑みに目を逸らした。
もしかして先輩、私よりも独占欲強い?そうなんでしょ?
せっかくだからもっと遊んじゃおっかな。
472優柔 第22話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/24(金) 21:48:55 ID:KSxn8y0d
それにしても・・・スゴイね。歩いてるだけなのにブルンブルン揺れてる。
これでゆう君をたぶらかしたのかな?
それにすごく綺麗な脚してるし、お尻もいやらしいな。
絶対に男子のオナペットになってるはず・・・ご愁傷様。
その上、認めたくないけどかなり美人・・・メス犬から女豹にクラスチェンジしてあげてもいいぐらい。
まあ、そんなのどうでもいいか。
さっきから私のこと挑発してるみたいだけど、何を張り合ってるのかな、この人は。
ゆう君をたぶらかして自分のものみたいに振る舞ってるけど、ゆう君が迷惑そうにしてるの気付いてないみたい。
まったく、全然なってないよ。

「杉山先輩」
「ん?」
「すごく美人ですね」
「えっ・・・」
「それに胸も大きくて、髪も長くて綺麗だから、羨ましいです。先輩って、クラスの男子だけじゃなく女子にも大人気なんだって聞いてます」
「・・・何が言いたいのかよく分からないんだが」
「あの、噂で聞いたんですけど・・・先輩って、下級生の女の子を食べちゃったって本当ですか?」
「っ!!・・・水谷さんだっけ?面白いこと言うなあ、そんなことあるわけないだろ」
「ですよねー。失礼なこと聞いてすみません」
あはっ、無理しちゃって。目元がピクピクしてるの丸分かりだよ?

「杉山先輩。ゆう君借りてもいいですか?ちょっとプライベートな話があるんですけど」
「・・・アタシに聞かれたくないことなの?」
「いいえ、別に聞かれても問題ないですけど、ちょっと気まずくなると思いますよ?」
「・・・いいから」
「ありがとうございます・・・ねえ、ゆう君」
さてと、どんなリアクションするかな。
「ゆう君、溜まってない?」
「!!」
「最近全然エッチしてないじゃない。言ってくれたらいつでもさせてあげるからね?」
「お前・・・」
「せっかくだから後でしよっか?」
「・・・おい」
「はい?」
「・・・何言ってんだよ」
先輩は冷静に喋ってるつもりなんだろうけど・・・私ね、今すごい笑顔なの。
だってね、この女がプルプルしてるの面白すぎて笑いを堪えるのに必死だから!!
「すみません、下ネタ嫌いでした?でも先輩だってしてることじゃないですか。恥ずかしくはないですよね?」
「アタシは・・・」
「あっ、もう下駄箱に着いちゃった。先輩、また今度ゆっくりお話しましょうね。行こ、ゆう君」
ゆう君が後ろを向いた瞬間に、あの女の顔が一変した。
うわあ・・・恐い。昔の私みたい。
今の顔を写真に取ってゆう君に見せてあげたいよ。100%嫌われるから。
473優柔 第22話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/24(金) 21:50:19 ID:KSxn8y0d
さてと・・・確認しなきゃいけないことがあるんだった。
「ねえゆう君、杉山先輩とエッチしたでしょ?」
「えっ!?」
はい・・・確実。
私のゆう君に手を出すなんて、何様のつもりなんだろう。

じゃあ早速、『メス犬抹殺計画』を始めましょうか。
まずは・・・正攻法でいってみようかな。


先輩と椿ちゃんのご対面でビクビクしていた僕ですが、特に何もなくてほっとしました。
途中で椿ちゃんが変なことを言いましたけど、両者とも仲良さそうに話していましたし。
僕の取り越し苦労だったみたいですね・・・良かった良かった。
そもそも、僕は何も恐がる心配なんて無いんです。
だって、二人とも僕の彼女じゃないんですから。
椿ちゃんには『別れよう』って言ったし、先輩には『付き合おう』とか『好きです』なんて言ってないですしね。

それでは・・・今日も一日、頑張りますか。
474名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 22:08:33 ID:2/AKcVHR
ついに直接対決来ましたよw
これからゆう君はガクブルしながら過ごす事になるだろう
475名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 22:18:28 ID:HJ+60Klb
ゆう君ヘタレなのは変わってなかったか。
476名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 22:20:53 ID:cI0ot0VD
ゆう君、もうちょっと頑張ろうよ・・・。
先輩を手玉に取った時のKoolさはどうしたんだ!!
ゆう君はもっとキレたKoolな子だと俺は信じているぞ!!!
477名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 22:24:22 ID:NGcs3rio
神GJ!ゆう君はクズ男な上に空気まで読めないのかw
先輩と椿ちゃんの水面下?の攻防は激しい修羅場を予感させる(*゚∀゚)=3ハァハァ

>>462
ゆっくりとしかし確実に修羅場へと向かって行く晋也ウラヤマシス
いままでうまく回避していたがついに貞操が奪われてしまうのかw
「不撓君、お弁当できたよ」
「おう、ありがとな」
「勇気、玄関に置いてあるコーヒー豆を運んでおいてくれ」
「おう」
「店長、カレーの仕込み終わりました、味見をお願いします」
「……うん、これなら大丈夫だろう。」
「親父、豆運んでおいたぞ」
「そうか、なら机を拭いてきてくれ」
「まかせろ」
「あっ不撓君、今何時かな?」
「7時58分だ、間に合いそうか?」
「多分大丈夫だと思うよ。…あ、店長うどんの仕込み終わりました」
「……ん、合格。残りは私がやっておくから君はそろそろ支度をしなさい」
「はい、よろしくお願いします」
「大槻、悪いんだけど二階の俺の鞄取ってきてくれねえか?」
「いいよ、ちょっと待ってて」
 ドタドタドタ…
「勇気、お前もそれが終わったら学校に行きなさい」
「あと四つだ、すぐに終わるよ」
 …ドタドタドタ
「不撓君、持って来たよ」
「おう、こっちも今終わった」
「お弁当は中に入れておいたから」
「ありがとよ。親父、行ってくる」
「紫電さん、行ってきます」
「気をつけて行ってこい」
 カランッ カランッ
俺の名は不撓勇気(ふとう ゆうき)、17歳。
親父が経営している喫茶店『Phantom Evil Spirits』を手伝いながら私立不死鳥学園に通っている。
少し家庭環境が複雑なのを除けばごく普通の高校二年生だ。
「大槻、時間は?」
「8時6分、まだちょっと余裕があるね」
これは大槻陽子(おおつき ようこ)、16歳。
こいつは毎日毎日弁当作りと『Phantom Evil Spirits』の手伝いに来てくれる奇特な方だ。
通学路上にあるとはいえ徒歩25分の道のりを歩いて約三年間もである。
最初は皿洗いや掃除しかできなかったのに、今では厨房に接客にと大活躍である。
最近では大槻目当てに来店する客も増えてきており、『Phantom Evil Spirits』には無くてはならない存在である。
約10メートルの道のりを歩き、正門をくぐる。
「でも、ちょっと近すぎると思わない?」
…と、大槻が独り言の様につぶやいた。
「何が?」
「学校までの距離だよ」
「そうか?立地条件としては悪くないと思うぞ」
「それはそうだけどさ…」
「何より遅刻が減って助かる、あの場所でなければ俺は遅刻王なってた」
「うん…そうだね」
『Phantom Evil Spirits』の開店準備を親父一人でこなすには無理が生じる。
それ故に俺と大槻は毎日手伝っているのだが、その量はそれなりに多く、
気がついた時には遅刻寸前という事が多々あるのだ。
「じゃあ、また後でな」
「うん」
大槻は二年A組、俺はD組。
去年は二人ともC組だったのだが、偶然は二度も続かない物らしい。
 ガララララッ
HR約15分前。いつもこの位の時間に到着すれば言う事は無いのだが、残念な事に今日はどちらかと言うと例外である。
さて、それはそうとしていつもその辺にたむろしている友人Aと友人Bは…
教室を見渡すと、なぜか友人Aの席は謎の毛玉によって占拠されていた。
…理由なんて考えなくともわかるがね。
「天野」
「…く〜…」
返事が無い、もう一度。
「あ〜ま〜の〜」
「…す〜…」
ダメだこりゃ
不意に寝顔を覗きたくなる衝動に襲われたが、ここはぐっとこらえて友人Bを探すことにした。
「見〜た〜ぞ〜…」
「どわあああぁぁぁ!!!」
探すまでもなかった。
「いきなり何しやがる馬鹿野郎!」
「浮気良くない、格好悪い」
「なんで俺が浮気している事になってるんだよ!!」
「…うんんっ…」
「わ!?…」
まずい、起こしたか?
「………」
「………」
「…く〜…」
OK、冷静になって整理しよう。
どうやらいつの間にか友人Bに背後を取られていたらしい。
そして俺の先ほどの行動を見られていたらしい。
…て、待てよ。俺は言われるほどやましい事はしたか?
…してない。間違い無くしてない。(しようとはしたかもしれないが)
「番場、ちょっと来い」
「言い訳なら署で聞くぞ」
「ちげーよ、いいから来い」
そう言って俺は友人Bを教室の隅まで連行して行った。
こいつの名は番場茂(ばんば しげる)、野球部所属。
バントで一塁に進む男である。
そして悔しい事に俺の幼馴染である。
幼稚園で知り合ってからはまるで示し合わせたかの如く同じ学校に通い続け、
それは高校受験を経ても変わってはいないのである。
だがこいつは世間一般における理想の幼馴染像とは真逆の位置にいる男であると断言できる。
そしてさらに残念な事にこいつも二年D組なのだ。
「…で?何の話なんだ?」
「あんまり浮気していると恋人が泣くぜ」
「俺に恋人はいねぇ…」
さらにさらに残念な事に、去年の夏に甲子園に出場して以来(一回戦で敗退したが)こいつには恋人がいたりするのだ。
「じゃあ大槻は何なんだ?」
「友人、それだけ」
「あの人もかわいそうにねぇ…」
「何でそう思うんだよ」
「毎日一緒に登校して」
 グサァッ
「確か弁当も作ってもらってるんだろ」
 グササァッ
…やはりこいつに弁当の事を話したのが運の尽きだったか。
「明らかに友人の範疇超えてるだろ」
たしかに一見正論に聞こえる、だがここはしっかりと反論せねばなるまい。
「あのな番場、一つ言わせてもらうがな…」
「何だ?」
「あいつは三年ほど前から親父が料理を教えているんだよ」
「…それで?」
「それ以来あいつは妙に料理に凝り始めてな。あの弁当は新しく覚えた料理の実験で、俺はある意味モルモットなんだよ」
「なるほど」
どうだ、これなら反論できまい。
「じゃあ聞くが…」
…あれ?
「何で大槻は料理に凝り始めたのかねぇ」
「………」
「………」
「俺が知るか…」
「女心のわからん奴め…」
「やかましい!」
 キ〜ン コ〜ン カ〜ン コ〜ン
「…予鈴か」
まったく…番場が居ると時間が早く感じるな。良くも悪くも。
 キ〜ン コ〜ン カ〜ン コ〜ン
随分とあっという間だった気もするが、昼休みになった。
今日の授業中に特筆すべき点は無かった。
しいて言うなら天野がとても眠たそうに船を漕いでいただけである。
ふと窓を覗き校庭を見ると、走って校庭を横切る外食組の姿があった。
外食組とは昼食を求めて校外に旅立つ連中の総称で、その中には大槻も含まれている。
…いや、正確に言うと大槻は校外に旅立ってはいるが昼食を求めている訳では無い。むしろ逆である。
あいつは最も忙しい時間帯の『Phantom Evil Spirits』に現れる強力な助っ人なのだ。
『Phantom Evil Spirits』は喫茶店の看板を掲げているがランチにも力を入れている、
具体的には分量のある料理を採算の取れるギリギリの安さで提供しているのである。
それ故に昼休み中は数多くの学生が詰めかけ、それこそ嵐のような忙しさとなるのだ。
そのせいで大槻は3時間目と4時間目の間に食べるようにしているらしい。
ちなみに俺は手伝いに行っても皿洗い位しかできないので相当に暇な時意外は学校に居る。
薄情と言う事なかれ、俺が行くとむしろ煙たがれる事すらあるのだ。
しかしここまで公然と外食やらバイトやらをしているにも関わらず、学校側は特に何も手を打ってはいない。
懐が広いのか、それとも単に面倒なだけなのか…まあ、どうでも良いか。
…さて、俺も弁当を頂くとしますかね。
俺は席を立ちいつもの所へと向かう事にした。
教室で食べると番場の様にカンの良い奴が大槻の弁当とメニューが一緒だと気がつく可能性があるのだ。
 ガチャンッ
旧校舎の屋上に人影は無い。故に俺は安心して大槻の作った弁当を広げられる。
新校舎の屋上には時折静かな環境を好む連中が訪れるのだが、わざわざ旧校舎にまで来るのはよっぽどの物好きだけである。
俺の知る限りそんな物好きは俺と…
 ガチャンッ
「…不撓さんですか?」
…こいつだけだ。
こいつは天野友美(あまの ゆみ)。
二ヶ月ほど前に知り合った…多分友人。
もっとも俺が勝手にそう思い込んでいるだけで向こうはどう思っているのかはわからん。
できれば友達くらいには思っていてくれると嬉しいのだが…て、何を考えているのだ俺は!?
とにかく落ち着け、落ち着いて話しかけるんだ不撓勇気。
「大丈夫か?天野」
「はい?」
俺の方こそ大丈夫か?これで理解できるのなら天野は超能力者だ。
「いや、朝から眠たそうにしていただろ」
「ああ、その事ですか」
「そうそう、大丈夫なのか?」
「いえ…実は二時間目は寝ていました」
「そうか、日本史じゃあ仕方ないな」
「伊藤先生には悪いですけど話が単調で…」
そう言って二人で苦笑する。
嵐の中で翻弄されている大槻には悪いが、この穏やかな空気はそう易々と捨て去れる物では無い。
俺は手作り弁当を、天野は購買のサンドイッチを広げる。
特に打ち合わせをしている訳では無いのだが、最近はこうして二人で食べる日が多い。
「そういえば、そもそも何で天野は眠たそうだったんだ?」
「はい、昨日は遅くまで星を見ていました」
「…そっか」
天野はよく空を見上げる。何をしているのかと聞くと、必ず星を見ていたと答える。
太陽が輝いていても、空が雲に覆われていてもだ。
それでも天野には見えるらしい。
…イマイチ信じられないが。
「なあ、天野」
「はい」
「楽しいのか?それは」
「うーん…どうでしょうか」
「なんだ、楽しい訳じゃあないのか?」
「そうですね、あれは毎日の日記と同じなんですよ」
「星を見てからじゃないと私は安眠できないんです」
「…そっか」
なぜ天野が星にこだわるのかは俺にはわからない。
だけどその事を話す天野の姿は、どの天野よりも輝いている気がする。
「だが安眠のために睡眠時間を削ってたんじゃあ本末転倒だろ」
「そうなんですけどね」
そう言って天野はまた苦笑した。
「不撓さん、一つお願いしてもいいですか?」
天野は早くもサンドイッチを食べ終っていた。
天野は小食ではあるが、食べるのは早い。俺の弁当はまだ半分弱残っていた。
「何だ?」
「はい、五時間目が始まる少し前に起こしてもらいたいのですが」
そう言う天野の目つきは半分閉じかけていて、今にも倒れそうだ。
「ああ、わかっ…」
 ドサァッ
「…お疲れ様」
俺が返事をするのと同時に、天野は自分の腕を枕代わりにして眠り始めていた。
一体何が天野を夜更かしさせたのであろうか。まあ、そんな事はどうでも良いか。
今の俺にとって重要な事はただ一つ。
「風邪ひくぞ…」
いくら6月とはいえ屋上で寝ていたら風邪をひくかもしれない。
「…す〜…」
起きる気配は全く無い。
とはいえ今俺が持っている物の中で掛け布団の代わりになりそうな物は…上着しかなかった。
少しだけ躊躇したが、結局俺は上着を天野に提供する事にした。
天野の寝顔は…なんと言うか、うん、ノーコメント。
ただ思わず襲い掛かりそうになった事だけは追記しておく。
昼休みが終わるまであと30分近くある。もう少しくらい天野を寝かせてやっても罰は当たらないだろう。
そういえば…もうすぐ夏服の季節だな。
そんな事を考えながら俺は再び弁当に箸を進めた。
「起立、礼」
随分とあっという間だった気もするが、HRが終わり放課後になった。
さて今からどうするか、天野は寝てる(授業中はなんとか持ちこたえていた、偉いぞ)、番場は部活。
 ガララララッ
「不撓君、居る?」
大槻が現れた、どうする。
・戦う  ・呪文
・逃げる ・道具
…疲れているのかもしれないな、俺は。
「アンキモ、アンキモ、アンキモ!」
…何だ今のは?
天野の声だったような気がするが…寝言か?
「不撓君、どうしたのボーっとしちゃって」
「いや、なんでもない」
天野も疲れているのだろう、俺はそっとしておく事にした。
「一緒に帰らない?」
と大槻は聞く。しかし平日でこのセリフを聞かない日はほとんど存在しない。
「近いけどな」
「良いじゃない、近くても、」
いつものパターンだと大槻は『Phantom Evil Spirits』の手伝いに行くつもりだろう。
俺は…まあ少し位なら手伝ってやらんでもない。
「OK、帰ろうか」
「うん」
そうして俺達は再び10メートルの道のりを歩いていく事となった。
 カランッ カランッ
「いらっしゃいませ…っと、勇気君か」
「こんにちは、繁盛してます?」
「それなりにね」
この人は鈴木正成さん(すずき まさなり)。
近所の大学に通いながら『Phantom Evil Spirits』で働いている。
特徴は…えーっと…特徴が無いのが特徴だ。
「店長、勇気君と陽子ちゃんが来ましたよ」
「じゃあ私も着替えてきますね」
さて、俺も少しは親孝行でもしますかね。
俺は厨房で皿洗いをする事にした。
手伝いを始めてから二時間ほど経過した。
『Phantom Evil Spirits』の客の入りも落ち着き、皿洗いにも余裕のような物が出てきた。
鈴木さんも先ほど帰り、この店で働いているのは俺と親父と大槻だけとなっていた。
「不撓君、お客さんだよ」
「大槻、客が来ただけでいちいち報告するなよ」
さすがにそこまで『Phantom Evil Spirits』は落ちぶれてはいない。
「そうじゃないよ、不撓君に会いたいって言ってる子が居るの」
「俺に…一体誰が?」
「ううん、知らない人。不死鳥の制服着ていたけど」
不可解だ、俺の倍以上の交友関係を持つ大槻が知らなくて、かつ俺に用事がある人間が居るものか居ないものか。
「親父、行ってきても良いか?」
俺は一応厨房の親父に確認した。
「大丈夫だ、行ってこい」
OK、許可は出た。
「大槻、その子はどこだ?」
「9番席」
「了解、それと紅茶を一杯頼む」
「うん、わかった」
さて…鬼が出るか蛇が出るか。
「勇気、バイト代から天引きしておくぞ」
いちいち細かいぞ、親父。
「…あ、不撓さん」
9番席に座っていたのは俺にとっては良く知る人物だった。
「なんだ…天野か」
とか言いつつちょっとだけ嬉しかったり…と、いかんいかん。
放課後に爆睡したせいか、顔色は良い。
しかし初めて来る場所故なのか、少し緊張している様子だった。
「で、どうしたんだ?」
「はい、実は…」
「お待たせいたしました、紅茶のお客様」
大槻が営業スマイルで乱入してきた。てか早すぎるんじゃあないか!?
大槻は一見普段通り、しかし気のせいか機嫌が悪いような気がする。
とりあえず迷惑客撃退用の大槻スマイルになってないので良しとしよう、うん。
「…て、天野は何も頼んでないのか?」
「はい、あんまり長居をすると迷惑でしょうし…」
「誰もそんな事は思っちゃいないよ、なんなら奢ろうか?」
ちなみに俺には金のかかる趣味は無いので、基本的にバイト代は全て貯金してあるのだ。
「いえ、流石にそれは悪いですよ。じゃあアイスコーヒーをお願いします」
「御注文を繰り返します。アイスコーヒーが一点、以上でよろしいでしょうか?」
なんだか今日は寒いな…なんでだろう?
「は…はい、お願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください」
「………」
「………」
「不撓さん」
「…何だ?」
「なんだか大槻さんが怒っていたような気がしたんですけど…」
「奇遇だな、俺もだ」
とにかく紅茶でも飲んで落ち着こう。
この妙な緊迫感の中では話ができん。
487歌わない雨:2006/03/24(金) 22:32:48 ID:ISQkzAtJ
 伸人を探して辿り着いた先は、やはりいつもの公園だった。特に何をしたいと思ったわけではなく、ただ何と無く隣に居たいと思っただけだ。
 近くの自販機で買った缶コーヒーを手に近付くと、普段通りの景色。いつもの指定席で煙草を吸いながら、いつもの歌を歌っている。
 照れ隠しと言う訳ではないが、軽く背中を蹴るとやはりいつもの眠そうな調子で挨拶をしてきた。変化の無いこの様子に、私は毎回安堵を覚える。彼が毎回作ってくれる、意味の無い現実逃避だと分かっていても、だ。
「そういえば、天野は何でここが俺の家だって知っているんだ?」
「はい、時々朝にここから出てくるのを見てますから」
「そっか…」
「………」
「………」
いかん、まだ妙な緊張感が残っている。
「不撓さん」
天野が何かを決心したかのような顔になった。
「何だ?」
自然とこちらも顔が引き締まる。
「本当はお昼に言おうとしていたんですけど…」
まさか…これはもしかして…
「お待たせいたしました、アイスコーヒーのお客様」
再び大槻が営業スマイルで乱入してきた。
心なしかさっきよりも体感温度が下がっているような気がする。
大槻スマイルには辛うじてなっていないが、なんか怖い。
「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「…は、はい」
大槻よ…天野が引いているぞ。
「………」
「………」
「不撓さん」
「…何だ?」
気のせいか天野は泣きそうになっている。
「私、大槻さんの気に障る事しましたか…」
「…わからん」
そのまま五分ほど経過した。
俺も天野も注文した飲み物を飲んでどうにか落ち着いたようだ。
「不撓さん」
天野が先ほどのように神妙な面持ちになった。
「おう」
こちらもとにかく頭を切り替える。
「不撓さんにとって良くない事が近い内に起こります」
最低でも愛の告白ではなかった。
「…どういう事だ?」
天野の発言に対して、俺はこれしか言えなかった。
「おそらく人間関係のもつれから、不撓さんは何らかの騒動に巻き込まれると思います」
「………」
「………」
それは、にわかには信じられない話であった。
信じられない話ではあったが、天野はまっすぐに俺の目を見ながら話している。
あくまで俺のカンだが、これは嘘や冗談の類では無い。
だが真実かどうかを判断するにはまだ情報が少なすぎた。
「なぜそう思った?」
天野は少し躊躇して、答えた。
「昨日の夜に、星が教えてくれました」
「星か…」
普通に考えれば変な宗教か怪しい占いの類だと考えるべきだろう。
「私は少しですけど占星術が扱えます。だから、星の動きから他人の未来がある程度まで予知できるんです」
「………」
「あの…信じてくれなくても良いです。自分でも、変な事を言っているんだってわかっていますから」
「まあ、普通は信じないだろうな」
こう言うと、天野は少しだけ落胆したような表情になる。
当然と言えば当然の話だ。だけど…
「わかっています。でも、せめて自分の周りの人に注意を払ってください」
天野はただ俺の心配をしているだけなんだと思う。
そのために夜更かしをして、そのためにこんな信じてもらえないような話をしている。
天野は自分のためではなく、他人のためにこんな事を言っているんだ。
だから俺は…
「あの…私、帰ります。聞いてくれてありがとうございます」
「俺は天野を信じたいと思う」
「…え?」
なんだよ、そんなに意外そうな顔をしなくても良いじゃないか。
「近い内に人間関係のもつれから騒動が起きるんだな?」
「あ…はい、そうです」
そんなに俺の一言が意外だったのか、見ていて面白い位に今の天野は混乱している。
「わかった、気をつけるよ。ありがとう」
「あ…あの…、あり…ありがとう…ござ…」
…て、あれ?
「おい天野、泣くなよ」
「だって…ぐすっ…だってぇ…」
天野は泣いていた、これでもかってくらいに泣いていた。
「泣くなって、ほら。イナイイナイ…バアァー」
俺達は二人仲良く面白い位に混乱するのであった。
「不撓さん、ありがとうございました」
「おう、また来いよ」
「はい、必ず来ます」
 カランッ カランッ
結局、天野が泣き止むまでに15分の時間を要した。
今にして思うと天野の神妙な表情は恐怖から来る物だったのかもしれない。
もしかしたら天野は以前にも似たような事があって、
それが原因で友人を減らす事になったのかもしれないな。
しかし、人間関係のもつれから起こる騒動とは…
「不撓君、今の人誰なのかな?」
もうこの時点で起きているのではないだろうか。
俺の眼前には大槻スマイルを浮かべた修羅が立っていた。
「大槻さん。店は閉めた、存分にやりなさい」
いつの間にか親父は本日貸切の札を玄関に掛けていた。
まだ閉店時間まで1時間はあるってのに…良いのか?
「店長、ありがとうございます」
 カチャッ
そう言いながら大槻は伝家の宝刀ベアークローを両手に付けていた。
「駄目だよー、あんなに可愛い女の子をたらしこんだ上に泣かせるなんてー…」
「いや…おい、ちょっと待てって」
「しかも私が知らない間にどーやって仲良くなったのかなー…」
「いくらなんでもソレは洒落にならんぞ、大槻」
「そうだよねー、いくら私が頑張っても全然気がつかないしねー…」
「待て大槻、何の話だ」
 ドンッ
後ろには壁、もはや退路は無かった。
・戦う  ・呪文
・逃げる ・道具
「………」
「………」
「アンキモ、アンキモ、アンキモ!」
「殺!!!」
「ギャアアアアァァァァッッッ………」
しかし、俺の予想に反して事件はまだ始まってすらいなかった。
全ての元凶となる者は、現在は隣町である黄道町に居る事は…
この時点では誰も知る由もなかったのである。
491次回予告 ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/24(金) 22:35:05 ID:VTVoF1zY
ついに不撓勇気の平和な日常を脅かす者が現れた。
はたして天野友美が予言していた『人間関係のもつれ』とは一体何を意味するのか?
次回、不撓家の食卓『帰還』にご期待ください
492歌わない雨:2006/03/24(金) 22:35:16 ID:ISQkzAtJ
 そして、私は敢えてそれに甘える。強い彼と違って、私は弱いから。
 だからいつも通りに軽い調子で缶を投げて、しかし一瞬で幻想が壊れた。
「あ」
 という彼の一言と共に、握れなかった缶が地面に落ちる。それだけならば、日常の中にそれなりにある風景。
 しかし、これの原因が私自信であることが頭の中をよぎり、表情はそれのせいで相当に情けない状態になっていたらしい。
 彼は無言で隣に座るよう促すと、黙って煙草を吸いながら夜空を見上げた。
「………」
 そして敢えて私に聞こえないように、フォローの言葉を言う。
 暫くは、無言。
 快い空気を味わいながら、彼の優しさに浸る。今暫くは、この空気は私のものだ。
 そして改めて思う。
 私は彼が好きだ。
493名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 22:35:51 ID:dUNWvXfN
>>476
オマイも少しcoolになれよ。

Kool 【商標】クール ((米国製のメンソール入り紙巻きたばこ)).
494シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/24(金) 22:40:45 ID:VTVoF1zY
>>491

とりあえず2chには初投稿です。
まだまだ若輩者ではございますが。
どうぞよろしくお願いします。
495名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 22:47:43 ID:ISQkzAtJ

 うわスミマセン
 「歌わない雨」を書いている馬鹿ですが、割り込んでしまったみたいです。今度から落ち着いて気を付けますので許して下さい
496名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 22:54:10 ID:PtaZmqCB
>>493
クールになれ でぐぐってみるんだ
497名無しさん@ピンキー:2006/03/24(金) 22:56:10 ID:2oNYBBKk
>>493
そういえばドジっ娘の出てくる修羅場ってなかったよな?
498沃野 Act.7 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/24(金) 23:28:09 ID:0TUh5jB9
 両手に花と人は言うが。俺にとっては花の牙に狙われ蔦に絡みつかれる秘境の密林な日々だった。

 随分とこちらにとって都合のいい提案をしてくれた荒木は、明くる朝に俺ん家を強襲した。
 夜中に突然電話を掛けてきといて、そのうえ自宅まで押しかけてくるとは。夜討ち朝駆けの精神か。
 チャイムの音に「は〜い」と玄関のドアを開けた母は、そこに外国人風の少女を見てたまげたことだろう。
 え、なに、宗教の勧誘? こんなちっちゃい子が? みたいな。
 彼女が息子の後輩と聞いて腑に落ちないながらも俺を呼びにきた。
 着替えもまだだったせいで対応に困り、「ちょっと待たせてやってくれ」と伝えたら母は気を利かせて
しまったらしく「じゃあ、上がってもらいましょう」という運びに。
 そうして朝の食卓の席に荒木麻耶が鎮座ましましている。湯気の立つコーヒーを前に行儀良く、しかし
物怖じせず。俺や両親の方がよっぽど落ち着かない。
「え、えーと、あの、その、なんだ……」
 動転したのか、父は目をキョロキョロさせながらあらぬことを口走った。
「きゃんゆーすぴーくいんぐりっしゅ?」
 金縛りの呪文。
 ツッコミどころが多すぎて俺と母は絶句した。
「いえ、英語は不得意でして。日本語なら話せます」
 澄ました顔で答える荒木。目の前のコーヒーには手をつけない。
 と、そのときだった。
「ごめんください!」
 玄関のドアを荒々しく開けた胡桃が言い放った。姿は見えないが声で分かった。
 お隣さんだけあって両親ともに面識がある。これはさすがに遇しやすく、いささかホッとした面持ちで
「あら、胡桃ちゃん、いらっ……」「お邪魔します!」と迎え入れられた。
 普段、家に上がり込むことなんてないのに。やはり荒木の存在を感知したからか?
 胡桃の情報網はいったいどうなってるのだろうか。
 ズンズンと食堂に入ってきた胡桃は荒木を睨みつけた。父が「ひっ」と呻いて新聞紙を取り落とす。
 涼しげな目で見詰め返す荒木。すぐに興味なさげな仕草で目を逸らし、湯気の減ったコーヒーに
ドボドボと牛乳を注いで啜った。ひょっとしてこいつ猫舌なのか。
「おばさん、わたしの分もコーヒーお願いします」
 言うや否や椅子を引き、座り込む。このまま粘って牽制を続けるつもりらしい。意識が完全に荒木へ
向かっているせいか隠喩は何も見えない。そのことを幸いに思う。
 母は新しいコーヒーを用意しながら「あのね。母さん、二股はイケナイと思うなっ」と叱るような
口調で囁いた。父も新聞を拾いながら頷いた。俺は半笑いで否定した。
 人間は追い詰められると半笑いになるらしい。
 できあがったコーヒーを渡されるや、胡桃はそのまま飲み始める。ブラック無糖、そして地獄の熱さ
がこいつの好みなのだ。辛いものは苦手なくせに。どんな舌をしているのやら。
 会話は絶えた。そらぞらしく話題を振る気にもなれず淡々と食事を取った。
 素で拷問みたいな朝だった。
 登校時間が近づいてきたので三人揃って外に出る。母は目で「ガンバレ!」と伝えた。いや何に頑張れと。
 歩き出す寸前、さっと右手を握られる。指と指とが絡み合う。胡桃恒例の「手繋ぎ刑」だ。
 やられたことのない奴には分からないと思うがこれは刑と呼びたくなるほど恥ずかしい。
 見せつける意味が強いのだろう、食虫花が満足げにゆらゆら揺れている。
「よーくん、遅刻しちゃうよ。要らない子は道端にほっぽっといてガッコいこ?」
 満面の笑顔で言えるあたり、肌寒い。
499沃野 Act.7 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/24(金) 23:36:06 ID:0TUh5jB9
 いや、胡桃だって昔はいい子だったのだ。気遣いがあった。配慮があった。俺が他の女子と遊んでいても
面罵せずそれらしい理由をつけてから追い払ったり俺の手を引っ張って連れ去ったりしていた。
 「もう、よーくん、メーッだよ」と冗談っぽく抓るに留めた。割合痛かったけど。花もよじれてたけど。
 ……あれ?
 なんか本質的には変わってなくない?
 気づいてちょっと憂鬱になった。
 一方、俺が胡桃と手を繋いでいる間もぐるぐると蔓を巻きつけてくることに余念がなかった荒木は、
この攻撃にもへこたれていない様子だ。
「先輩、鞄をお持ちします」
 申し出るというより通告だった。巧みに取っ手から俺の指を引き剥がしてもぎ取る。
 持ち替えて左手に保持した。荒木自身の鞄は背負う方式になっているから両手フリーなのだ。
 ランドセルじみて余計に幼く見えるってことは、言わない方がいいんだろうな。
「あっ、こんなところに先輩の空いた手が。僭越ながら握らせていただきます」
 わざとらしい言い草とともにギュッとしてきた。小さな手だ。しかも白くてすべすべ。俺のと対比してみると
そのへんがいっそう際立つ。胡桃とはまた違った心地良さだ。あ、ヤバ、ちょっとドキドキする……
「よ・お・く・ん?」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ! 軋むっ、軋んでるっ、骨がっ!」
 絵に描いたような嫉妬っぷりだなぁ、おい! 顔は笑ってるけど目が笑ってないし口角引き攣ってるし
食虫花さんもプンスカ湯気を発してるぞ。えらくコミカルな隠喩だ。そろそろこいつに名前つけたくなってきた。
「綾瀬さん、そういう怒り方はみっともないと思いますよ」
 猫系のスマイルを浮かべながら荒木が嘯く。しかし、こいつもこいつでギュウッときつく握ってきてる。
おいおい、実はお前も内心胡桃と一緒なんだろ……蔦の絡まり方が尋常じゃないぜ。
 なんかもう、他人事ならげらげら笑って指をさしたくなる情景だった。
「あはっ。ねえ荒木さん、さっさとよーくんから手を離してちょうだい? よーくんの手、汚れるじゃない」
「ふふ。お断りです。あなたが離したらどうですか。先輩、歩きにくそうですよ」
 それぞれ、自分が優位であることを示そうとする威嚇的笑声を交わす。
「えっとな、両方離してくれるとありがたいんだがな」
 提案にいらえはない。
 隠喩が消えている──どうやら本格的な睨み合いに発展してきたらしい。
 ふたりに挟まれながらふたりに無視される形となった俺。
 それは蔦や食虫花からも解放される、奇妙な安息だった。
「げええ、洋平が本妻と愛人を並べて仲良くおてて繋いでる!」
「なんてことだ、3Pへの黄金フラグか!?」
「いかん、このままでは洋平のハーレムが建立されてしまう……!」
 安息はすぐに掻き乱された。通学路なのだ。登校時間なのだ。人目はある。注目されるのは当たり前だった。
 ああ、もう、どうしよう。

 そうだ。
 諦めよう。

 即座に無の境地へ達することができた俺は我ながら見事なヘタレだった。
 「そばに女の子たちがいなかったら石を投げてやるのに」という目で睨めつけて来る男子のことごとくをスルー。
 下足場まで来ればもうゴールだ。胡桃とはクラスが違う。荒木とは学年からして違う。
 手を離した二人は残された僅かな時間を使ってガンをつけ合い、最後に何か語りかけるような目をして去る。
 ようやく、平穏な朝が訪れた。
 すぐに級友たちに囲まれてボコボコにされたり詰問されたりする儚い平穏だったが。
500沃野 Act.7 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/24(金) 23:46:02 ID:0TUh5jB9
 心休まるのは授業中だけ。高校生は「勉強なんてやってられるか」とほざくのが本分なのに泣ける話だ。
 休憩時間に入るとすかさず胡桃が乗り込んでくる。少し遅れて荒木も。距離と足の短さが反映されてるのか。
 ふたりはがっちりと俺の両脇を固め、互いに微笑みと毒の利いた言葉で牽制し合い、たっぷりと睨み
合ってからチャイムの音で帰っていく。ちゃんと押しかけないと相手に抜け駆けされるとでも思って
いるように、毎時間毎時間律儀に同じことを繰り返すのだ。俺は恐怖のサンドイッチに心臓が縮こまって
「あ……その……」「う……えと……」など言葉を濁すしかない。ヘタレ人形だった。
 級友たちの好奇心と嫉妬心も最高潮だ。二人が帰ってから授業が始まるまで、ほんの一分足らずの間に
俺に罵詈雑言を投げかけたり制裁を加えたりと忙しない。おかげで心と体がボロボロだ。
 世界中が敵になったと誇大妄想に陥っているうち、昼休憩がやってくる。
 およそ学校生活において誰もが待ち詫びるオアシスの時は、しかし俺には殺伐たるラブコメ地獄だった。
 三組側の戸から胡桃が。階段側の戸から荒木が。僅かな時間差でやってくる。
 ふたりとも、お弁当を二つ持って。花と蔦が嵐をスパークさせながら。
「小学校の頃から食べ慣れた味だもんね、『幼馴染みの味』だからね、当然わたしの方を取るよね?
薄汚い雌狐の何を材料にしたか分かんないよーなごはんもどきはゴミ箱にポイしてさ?」
「小学校からじゃいい加減食べ飽きてますよね? 波風立たないよう仕方なく口にしてるだけですよね?
そんな腐れ縁の糸引き飯よりかは拙作の弁当がまだマシであると断固謙遜いたします」
 隠喩じゃなく表現として火花が散る争いの後に突き出される二つの弁当箱を「どっちも美味しいから」
とフォローしつつ食す俺は、なるほど男子たちの「殺したい」「代わりたい」という杭の視線を向けられる
に足るどっちつかずの態度だった。どちらを優遇することもなく、答えをはぐらかす。余計に事態が
ねじれていくばかりで収束する気配がない。
 無論、この事態を楽しんでいるわけではない。可愛い女の子に囲まれるなんてウハウハだなぁ、なんて
ことは、まったくとは言えないがそれほど感じていない。心痛と胃痛に苛まれて食欲も減るばかりだ。
 要するに、どちらかを選ばなければならない。荒木が言った通りの二択めいた状況。これだけ好意を
受け取っておいて「やっぱどっちとも付き合わない」と切り出すのは当人も周りも納得しない雰囲気が
築かれてきた。
 数年来の幼馴染みを取るか、知り合って二ヶ月足らずの下級生を取るか。
 もし「両方くれ」と言ったら包丁を二本、腹にもらうことになるだろう。
 天邪鬼な抜け道としては「第三者を取る」って手もあるが、これだと騒ぎが拡大するだけか。
 いや、そもそも第三者に当たる子なんていないけどさ……いないよな?
 のらりくらりと答えをはぐらかしていられるのも今だけだ。やがて決断を迫られる日が来る。
 そのとき、俺はどっちを選ぶのか……
 はっきり言って、全然目算が立っていなかった。俺は女子に欲情したことがあっても、恋心を抱いた
ことなんて一度もない。胡桃に付きまとわれながらも、男女交際なんて異次元の行為だと思っていた。
 告白すれば俺は胡桃を異性として強烈に意識した時期がある。覚えたてのオナニーに夢中になっていた
中坊の頃、いつだって脳裡に思い描くのはあいつの裸体だった。中学に上がってからも仲良くやっていた
俺らだが、冗談めかしてヘッドロックを仕掛けた日の夜に胡桃の髪から伝わってきた匂いを思い出して
自慰に耽った。膨らみ始めた胸をチラチラ横目にして、何度あいつの風呂を覗きに行きたいと悶々とした
ことか。ヤりたいって頭下げたら、案外簡単にヤらせてくれるんじゃないか、と思い詰めたこともあった。
 性欲を持て余しながらも踏み切れずにいた理由の一つは、胡桃の異常なまでの嫉妬深さや執着心。
 一線を越えてしまえば二度と後戻りできなくなると直感していた。
 もう一つは、あいつの胸に揺れる隠喩──毒々しくてケバい色合いの花を、それでも自分の欲望で
踏み躙りたくはなかったのだ。むしろ、かつて咲いていた野の花の白さを取り戻したかった。
 あまりにも困難で、どんな手を使えばいいのかもよく分かりはしないのだけれど。
 ひょっとすると俺は、失われたあの花にこそ恋をしかけていたのかもしれないから。
501沃野 Act.7 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/24(金) 23:52:14 ID:0TUh5jB9
 荒木に関しては特に性欲を覚えない。そっちの趣味はない。
 ただ、下級生の女の子としては可愛いと思っている。できれば恋だの愛だのといった事柄が絡まない
仲で適度な距離を保って付き合いたかった。そうしているうちに俺の感情が変化して、もしかしたら
荒木に気持ちが傾くこともあったかもしれないが、今となっては虚しい推測でしかない。
 だから荒木にはどうあれ断りの返答をすることになるだろう。けど、そのタイミングを計るのが難しい。
 今の三角関係は「どっちかを選ぶ」ことが大前提になっているので荒木をさっくりフったら「じゃあ綾瀬さん
と付き合うんだな」って言われて結論を急がれることになる。「もうちょっと考えさせて欲しい」と申し出ても
胡桃が聞き分けてくれるかどうか。そうならないための時間稼ぎとして、荒木への返答は先送りにする。
 下手な対応をすれば胡桃と荒木、今は侍らせているかに見える二人を一気に両方失いかねない。
 ──俺の本音を腑分けすると、行き着く先にあるのはそこだった。
 つまり、俺は恋愛云々なんてよく分からなくて。
 以前の、胡桃がいて図書館に行けば荒木と会える状態をなるべく取り戻したいだけなんだ。
 虫が良すぎる。分かっている。そんな自分に折り合うためにも、今は時間が必要だった。

「……なんてことを考えるうちに放課後だ」
 今日の授業は終わっていた。周りに妬まれるほどの少女二名に心を決めかねて、無為に時間が過ぎた。
 ふと思う。本当に時間は必要なのだろうか。俺はただ逃げてるだけで、結論なんて一秒で出せるような
性質なのではないか。さっさと胡桃と付き合うなり荒木と付き合うなり、サイコロでも振ってケリを
つけてしまえば早い。一天地六、賽の目に運を任せるのも人生だろう。
 まあ、そんな都合良くダイスなんて持ってないけど。時間を稼ぐことばかり考えててもいけないし、
ここは順当に誰かに相談でもするかな。
「……というわけで数年来の幼馴染みか知り合って二ヶ月足らずの下級生を選ばなくちゃならんのだが」
「死ね」
 非常に簡潔な返事をおっしゃる。
「いや、こう、なるべく生きる方向で発言を増やしてくれるとだな、」
「死んでしまえ」
 増えたが内容は一緒だった。
 図書館の奥まった席に座り、図書委員の中でも特に親しい男子をつかまえて相談を持ちかけたらこの体たらく。
 あてが外れてしまった。
「我らが図書委員のアイドルにして金のふわふわ髪を持つ現ロリ神と、全学年男子に『えてしがな』と
言わしめる嫁カーストの最高位にして煩悩無限生産な肢体を持つ女子を秤にかける行為自体が
貴様の如きヘタレ愚凡には万死に値する。考えるだけ無駄につき今すぐそこから飛び降りろ。
お前は死ぬかもしれんが、少なくとも世界はちょっとだけ平和になるぞ」
 と、マジな目をしながら窓を指す。隠喩はゴム紐……バンジージャンプか? 本当に死んでほしいとは
思っていないが、「飛び降りろ」という言葉に篭もった怒りは本物らしい。
 ホッとしていいのか、嘆くべきなのか。なんであれ参考にはならなかった。図書館を辞し、帰路に就く。

「よーくん、今帰り? 奇遇だね、わたしもなんだー」
 あっという間に捕捉されて手を繋がれた。本当に、こいつはどこかで俺を見張っているのか?
 付き合ってない段階でこれなんだから、いざ彼氏彼女の関係になったらって考えるとゾッとする。
 どれだけ拘束が厳しくなるか、想像もつかない。最悪、高校を出たら「同棲」と称して部屋に飼われる
ハメになるかも。こう、首輪とか付けられたりして……いや、さすがにそれはギャグか。ははは。
「よーくんってチョーカーとか似合うかもね! 今度買ってみない?」
 散歩なのか、飼い主に引っ張られていく犬の首元あたりをにこにこしながら見てそう聞く胡桃に対し、
ちょっと笑いが渇き始めたが、い、いや、まだギャグの範疇だよな。
 隠喩に座敷牢が視えたのは気のせいだろう、きっと。
 きっとね。
502名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 00:07:31 ID:g6989iNe
ここは神が住まうスレだな
次々と名作ばかりが・・・

本当にスクールデイズが絶好調のときにこのスレが立てられていたらならな
503名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 00:08:50 ID:g6989iNe
優柔の椿ちゃんは犬系ヒロインだな
504名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 00:23:59 ID:PRG3TtHJ
>>503
首輪で繋がれてるのは飼い主の方だがな。
505名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 00:31:14 ID:AIRJq4Y9
>>498-501
ナイスです!
今回は前回に比べてコメディ分が多いので落ち着きますねー。
まぁ、日常に潜む昏い感情が面白いのですがw
506名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 00:31:43 ID:P3qJ1O8i
『えてしがな』って何?
507名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 00:32:39 ID:TfcmmVvX
>>506
得たいものだ…でよかったっけ?
508名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 00:35:07 ID:/PC+0AmM
もう朝と夜に定期巡回するのが日課になってしまった・・・
毎日修羅場を与えてくださる神々に感謝orz
509名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 00:35:41 ID:QfgZXwBD
素晴らしいとしか言いようがない。続きが気になる。
510名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 00:37:04 ID:g6989iNe
サウンドノベル化する職人さんとかいなくなってるよなw
511名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 00:49:28 ID:QfgZXwBD
合鍵のサウンドノベル読みてえです。
512名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 01:12:46 ID:VvmieNR2
というより、保管庫でサウンドノベルがダウンロードすることが出来ないんだけど
よかったら誰かどこかにUPしてください。
513名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 01:19:49 ID:DYHt2ITI
>>512
※リンクを右クリック→「対象をファイルに保存」にてダウンロードしてください。

ちゃんと読めよー
514もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/03/25(土) 02:03:38 ID:SUzMn4HE

私は一人おしおきを開始する。
だってあいつらは私の純也くんに手を出そうとしたんだもん。これは私の当然の権利よね?

一人目をパスした後(一人目は友達だったので、特別に階段からつきおとすだけで許してあげた)、二人目にとりかかる。

とは言ってもおしおきはとても簡単だ。人通りの少ない交差点で、信号まちしているターゲットの背中を押してあげるだけ。
そして、運よく丁度ターゲットは信号まち。
私は周りをよく確認する。……よし、誰もいない。
私は静かにターゲットの背後に近付く。
あっ、ターゲットも私に気付いたみたい。
でも、惜しかったね〜。もう少し早く気付けたら助かったのに。
私はターゲットを優しく押してあげた。
ターゲットは驚いた顔で私をみる。私は最高の笑顔でターゲットを見送る。
ターゲットはトラックの車輪に巻き込まれた。
腕や足が有り得ない方向に曲がる。
あはは、まるで人形みたい。
すぐに血が噴水みたいに吹き出し私の顔を汚したが、気にならない。それほど私は目の前の光景に夢中なのだ。

うあ、今手首が飛んだ。

あ〜あ、ぐちゃぐちゃ。もう助からないだろうなぁ。
まっ、顔見られちゃったし、死んでくれた方が私にとっては都合いいんだけどね。

さて、おしおきも終わったし、家に帰ろ。

私は、かえり血もぬぐわずにその場を後にする。続々とあつまる野次馬に横目に見られながら。
515名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 03:13:11 ID:jY/T25BN
本当に神々に感謝とGJです!
>>501
周り達からみればラブコメに見えるがその実体は……
まぁそれでもよーくんウラヤマシス、麻耶可愛いよ麻耶(*´Д`)
>>514
サイコ娘テラコワス……((((((((;*゚Д゚)))))))ガクガクブルブルハァハァガタブルガタハァハァガクガクガク
516名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 05:06:12 ID:VvmieNR2
>>513
いや、「対象をファイルに保存」が全然表示されないんですけど。
517名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 05:18:14 ID:xsB1Ak4Q
>>516
やってみたけど表示されたよ
518名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 06:19:04 ID:BFcCB3vD
>>514
ちょーwww
いきなり殺してるんですけど・・・
こっ怖ぇぇぇ
519名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 10:44:22 ID:kiSdZkC3
>>514
行動はぇぇw
520名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 10:49:34 ID:PUCeub37
次回辺りにはもう逆レイプぐらいかましてそうだな・・・
521名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 12:22:01 ID:jwoy+jSu
>>501
「侍らせて」ってなに?
さむらいらせて?

自分の勉強不足もあるけど、この作品には時々読めない漢字が
出てくる事が多いから、そこで朗読が一時中断することが残念…
522名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 12:28:47 ID:0NCDk4+N
>521
はべらせて
523名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 13:36:09 ID:VvmieNR2
右クリックするリンクって、ダウンロード(3.0MB) 2006/02/27版でいいんですよね?
524名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 13:41:06 ID:VvmieNR2
すいません表示されてました。いろいろ迷惑かけてすみません。
525『広き檻の中で』 ◆ewwZ0iiR3. :2006/03/25(土) 14:50:24 ID:v1EP+nO9
「ふふふ…やだぁ、晋也ったら。私みたいな体でも興奮するの?」
「ぐっ!」
確かに。こいつは態度はデカいが体は小さい。佐奈嬢と似たぐらいだ。胸もAと言っても疑われるぐらいだ。
「ロリコン…」
ザシュ!
かいしんのいちげき
しんやは200のだめーじをうけた
こいつの言葉は持ってるナイフ並に鋭いゼ……
「まぁ…私はその方が嬉しいけど……」
ぶつぶつ言いながらズボンのチャックを開け、一物を取り出す。自分でも見たことのないぐらい腫れ上がっていた。
「うわぁ…あんたのって大きいのね……」
たまげたように言って、ゆっくりと扱き始める。その快感に体を震わせながら一つ疑問が……
「あんたのって」………ということは……他の男のモノを見たことがあるのか!!それに何やら手慣れてるし……もしかして前に来た高橋家のどら息子とでも……
いや、まぁ、ね……こいつも年頃だし、セックスの一回や二回あるだろ………
でもなんか悔しい。俺がここまで独占欲があったなんてびっくりだ。
「そこに愛はあったのかい?」
「はぁ?」
「い、いや…なんでもない……それよりやたらと上手だな。やっぱり経験者は違うネ。」
嗚呼!?俺ったら何ムキになってんだ!?
「ばかっ!私だって初めてに決まってんでしょうか!?」
「へ?それにしちゃあやたらと手慣れてるな。」
「そ、それは……」
「それは?」
「こういう時のために、あんたの部屋にある本とかで練習したり……勉強したり……してたから。」
「………」
「………」
沈黙………
志穂も自分で言って顔を赤らめてる。恥ずかしいなら言うなよ!
ええ、悶えますよ。この『隣りに住むかわいい幼馴染み』的な台詞。聞いた途端に一段と堅さが増します。
恥ずかしい。穴があったら入りたい。まぁこれから入るだろうけど。
「そんなに信じられないなら止めるわよ!」
「あぁ!嘘!止めんでくれぇ!」
正に目の前に人参をぶら下げられた馬状態。生まれた頃からたたき込まれた使用人という下僕根性がここで発揮。
526『広き檻の中で』 ◆ewwZ0iiR3. :2006/03/25(土) 14:51:06 ID:v1EP+nO9
「じゃあ…入れるわよ……んっ」
ヌルン
ツルン
入りそうで入らない。焦らしてるつもりでもなさそうだがなんだかむず痒い。
「押さえてるから…落ち着け。」
手で支えて固定する。そこにめがけてゆっくりと腰を下ろす。
グッ!ぐぐっ!
「ん!……ったあい!」
痛いと言ったのだろうが言葉になっていない。
入っていくのに抵抗がある。割れ目の隙間からは血が流れでてくる。相当痛いのだろう。顔は苦痛の色に染まっている。
「んあ!い、いたぁい!ここまで痛いなんて聞いてないよ!」
「言ってないヨ!止めるか?」
「はぁはぁ……ここまできたら最後までやるわよっ!」
ニチュ ニチュ
だんだんと淫蜜が染み出てきたのか、淫美な音が響き始める。
「ん……ふぅ。あっあんっ。ど、どーぉ?しんやぁ?」
志穂の声も鼻にかかったようになる。痛みも和らいできたのだろうか。俺も快感に身を任せるようになる。ただ志穂のペースで進のは気に食わん。ここは逆転して…
ズン!
「あっ!こ、こら!うごくなぁ!…んん!」
下から突き上げる。
オオ、いい!…けど疲れる。
「そ、そんなに激しく突かれたら…もう……」
「ああ、俺もそろそろ……」
腰の動きが早くなる。限界は近い。
「い……くぅーー!!」
「ぐぁ!」
射精する瞬間に一気に引き抜く。その感覚がまた更に気持ちいい。
ドクン!ドクン!
「ああ…ふ。あつい……」
生臭い精液が顔にかかる。中だし派よりブッカケ派の俺にとって、最高の絵だ!
「あぅ…」
気を失うように志穂が覆いかぶさってくる。
「あら?志穂?おーい」
「すぅ」
寝てやがる。
あぁ。しかしついにやっちまった。このやるかやら無いかの人間関係だからこそ下ネタがいけたのに……
やっちまったら生々しくなる。
「でも気持ちよかった……あしたもヤろっかな」
なんてふしだらな事を考えちゃいながら眠りについた。
527名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 14:54:00 ID:JKt4gSMH
これで佐奈嬢がどうでるか。
528名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 15:25:31 ID:VvmieNR2
すいません、ファイル落とすことは出来たんですけど
ファイルの中身が違うんで誰かどこかにUpしてください、お願いします。
529名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 15:58:51 ID:0/rZlPyg
ちょっと書かせてもらいますよ。
いや、俺のPC、スクールデイズができないらしい。
あはは、いいさ。俺にはこのスレがある。
腹いせに、ss書いてやる。ははは、駄作の投下だ。ははは。
嘘、ごめん。初投稿。頑張りました。見てやってください。


「プロローグ」


さて、まぁ、毎度のことながらこの空気にはうんざりさせられる。
っていうか、おまえら、しゃべれよ。王がじきじきに来ているんだぞ。
なんか、ほら、あるだろ。戯曲の話とか、政治の話とか。
どうしてこう、ギスギスしているんだ。
全く、俺を誰だと思っている。
世界最大最強の帝国「カルタ」の皇帝「デイビット」なるぞ。
もうちょっと、こう、ご機嫌とってくれたって。


「陛下。紅茶のおかわりは、いかかです?」


おお、勇気あるな、おまえ。
えーと、そう、カシア姫。三人の姫君の中でも最年少の姫は、おずおずと、しかし確固たる信念を以っ
て俺のカップを手にとった。

「カシア殿。この紅茶を用意したのはこのわたくしですわ。お注ぎするのは当然、わたくしの役目でし
ょう。貸しなさい」
530名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 16:00:32 ID:0/rZlPyg

うわっ。やっぱ出やがったな。ディア姫。俺は三人の中で一番嫌いだが、一番印象のある姫君を、でき
るだけ無表情で見る。
ああ、綺麗だ。本当に、な。金色の髪は、なるほど、太陽の姫巫女と言われるだけある。何度と抱いた
が、『女』として、完全に成っているのはこのディア姫だけだ。

「い、いいです。私が、やります」
「黙れ愚民。下等三民出が、このわたくしに意見するか」
「おい。いい加減にしろ。その言葉は、朕として見逃すわけにはいかんな、ディア」
「あら、失礼。つい本音が出てしまいましたわ。まぁ、どこぞの王はゲテモノ好きですから。極上のス
イーツばかり食べていても、飽きるのは認めますわ。どうぞ、お注ぎなさい。礼も儀も知らぬ姫」

うぉ、睨んだよ、カシア。こぇえな。おい。まぁ、平民出ってのは怖いからな。高級商人の子は、貴族
とはまた別のプライドがある。政治的意味合いで後宮入りしたこいつが、俺に惚れるのは、想定外だっ
たが、まぁ、どうでもいい、というのが俺の意見だ。

そう、どうでもいいのだ。
この後宮など、所詮仮初の世界。俺が、本当に愛している存在を確約するまでの仮の巣に過ぎない。


「どうでもいいわ、茶ぁ、注ぐだけで、デイビットの気を引けるわけねぇし」

汚い言葉で立ち上がったのは、第三姫、アマンダ。こいつだけが、唯一マトモかな。いや、まぁ、落ち
着けるわけよ。友人みたいな関係かな。

「ふん。相も変わらず、小汚い言葉をお使いになられますわね、アマンダ姫。そうそうに立ち去りなさ
い。ついでに、後宮からもお出になったらいかかです?貴女は下町で平民ども相手の娼婦が一番お似合
いですわ」
「そうさね。それなら、アンタの方が売れるよ。一昔前は、赤髪が流行ったが、今はパツ金が一番取れ
る。高貴な存在を犯すってのは、男心を擽るもんさね」
531名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 16:02:30 ID:0/rZlPyg
「誰が、糞平民どもの娼婦になるか。愚民め。茶の席に呼んでやっただけ、跪いて感謝するくらいのこ
とをしろ」
「ディアっ。朕は先も言ったぞ。その言葉は――」
「ははは。跪く?アンタに?御免だね。跪くなら、デイビットに、ベットの上で、ね」
そう言って、アマンダは俺にウインクしてさっそうと出て行った。
おお、カッコイイ。査定プラス1だな。まぁ、正直、三人の中ではぶっちぎりに一位だけどな。
「陛下。一つ進言いたしますわ。アマンダ姫と、あまり閨を共にせぬほうがよいと思われます」
「いや、待て。まず朕の話を聞け」
「品位が下がりますわ。陛下。どのように誑し込まれているか知りませんが、くだらない平民の交わい
方など、学ばれぬ方がよろしい。貴族には貴族なりの睦び方というのがございます。まぁ、第三身分に
は到底わからないとは思いますが」
で、カシアを挑発。俺は完全無視ですか。そうですか。
俺、一応、世界最強の王様なんですけど。
査定マイナス1だ。一週間は絶対いかん。ムカついた。

「ディア、姫。訂正、してください。陛下の品位は、下がってなんかいません。私と交わったとしても
、陛下の品位は下がらない」
「黙れ、そう言ったぞ、下等民。そうでしょうとも。陛下の品位は下がりませんわ。何故なら、このわ
たくしと交わっているのですから。そういえば、貴女のところへは陛下はいつごろ行かれましたか?わ
たくしなど、昨日まで三日間もいらしていただき、愛してもらいましたわ」
「え……」
「まぁ、平民ごとき穴など、広がり過ぎてガバガバではありませんこと?いったいどれほどの男に身体
を開いたのか。虫唾が走る。その点、わたくしは正真正銘、処女を陛下に差し出し、閨の勉学を怠るこ
となく、常に陛下のご期待に応えるようにしております。そうでしょう?」
「いや、だから、ディア、朕の話を、だな」
「去れ。下等三民。ははっ、なんですか、その顔。汚い醜悪な顔が、さらに醜くなっておりますわよ?
あぁ、なんて醜い。本当に、陛下はゲテモノがお好きですわね。その性癖、わたくしが直してさしあげ
ないと」
さすがに、堪らなくなったのか、カシアは立ち上がり、目元には涙を溜めて、走り去った。
532名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 16:04:08 ID:0/rZlPyg
「ふぅ。やっと二人きりになれましたわね。陛下」
「ディア。貴様、朕を幾度となく無視しおったな」
「あら、すみません。虫を追い出すのに夢中になってしまったようで」
「だから、な。四民平等制を提案する王の目の前で、よくあんな言葉を口にできる」
「すみません。長年、染み付いた貴族としての態度が、滲み出てしまったようで」
何が長年だ。まだ二十年も生きておらぬというのに。

「陛下……んっ」
差し出された唇。それは極上の果実。
分かっている。この姫は、三人の中ではもっとも女だ。
子供ではなく、大人の女。それは確かに極上の甘み。
「ん、、ふぅ、、あぁ、、陛下ぁ、わたくし、もう、我慢でき」

「失礼します。陛下。お楽しみのところ申し訳ございません」

「ぶほぉっ」
口内まで入ってきた、ディアの舌を押し返して、俺は彼女に向き合う。

恐ろしいまでに伸びた山羊の角。
青白い左腕。焼け爛れた肌を微かに見せる、人ならぬ腕。
萎れた黒い左翼を持ち、顔左半分を隠した女。
それがサンドラ。我が最高の騎士。
533名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 16:06:22 ID:0/rZlPyg
「うぉ、ごほっ、な、なんだ、サンドラ」
「お客様です」
「後にしなさい。それにしても、なぜ貴女がここにいらっしゃるのかしら。奴隷」
不機嫌さを隠しもせず、サンドラに半ば叫ぶように言うディア。そういうところが、むしろ貴族らしく
ないと思うわけで。
ディアからすれば、等級もつかない奴隷出身のサンドラを、目にするもの嫌なのだろう。
「陛下の近衛騎士だからです。陛下、急いでください」
マントを引っ張って、無理矢理立たせようとするサンドラ。心なしか、いつもの無表情さが崩れ、興奮
を隠しきれていない。
「な、なんでそう急かすのだ?」
「キルシャ様です」
「キルシャ?キルが来たのか」
「はい」
「すぐ行く」
「陛下っ」
叫ぶディアなど相手にしていられない。
俺は、親友が待つ謁見場まで早足で行った。

534名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 16:11:07 ID:0/rZlPyg
「久しいな。キル。魔王討伐から、もう二年か」
思わず笑みが零れる。今日一番、心が落ち着いているのを自覚する。
後宮は嫌いだ。落ち着けない。
「うん、本当にね。あはは、王冠も板についてきたじゃない、デット」
「いんや。俺は、ターバン巻いていた方が気楽でいいっつーの。王なんて、楽じゃねぇーよ」
「ほんと、格好だけは一人前ね、デット」
そう言って笑ったのは、キルシャの恋人(本人は否定するが)である魔法使いソフィアである。
後宮の女たちの作り物の美しさではない、素朴で温かみのある美しさ。くそ。キルに嫉妬しちまうぜ。
「いや、ソフィア嬢も随分……いや、そんな変わらないか。全く、毎晩キルに胸揉んでもらってるんじ
ゃないのか?」
「な、なに言ってるのよっ!ふざけないでよ、そんなこと、そんな毎晩なんてっ!ば、バカじゃないの
っ!ってか、別にキルとはそんな関係じゃないんだからっ!」
「ほぅ。毎晩ではないのか。可哀想になぁ。一人枕を濡らす日もあるのか。なに、俺が慰めてやろうか
?」
「……遍く空より来たれり炎。空前の前にその身を晒せ……」
「いや、待て。悪かった、話し合おう」
最上級魔法の詠唱に入ったソフィアを慌てて止める。俺の城を軽く壊せるからな。ソフィアの魔法は。
「しかし、またどうしたって言うんだ。手紙も無し来て。何かあったのか」
「いや。そうじゃないんだよ。ギルドの仕事も一通り片付いたし、そろそろ仲間に会いに行ってもいい
かなって」
「キルったら、本当に貴方に会いたい、会いたいって五月蝿いんですもの」
「そりゃ、嬉しいことだ。だが、いきなり過ぎだ。宴会の準備もままならん」
「別に、そんな豪勢なことしなくてもいいよ」
「そういうわけにもいかんのだ。世界を救った勇者に何のもてなしもないなんて、各国に知られたら、
どんな野次が来るかわかったもんじゃない」
「陛下、そろそろ私にもご挨拶をさせてください」
俺の言葉を遮ったのは、サンドラだった。
「サンドラっ!久しぶりじゃない。元気だった?」
「キルシェ様。ソフィア様。お久しぶりです。お元気そうで何より」
「いやぁ、相変わらず綺麗ですね。サンドラさん」
「……キルぅ?」
535名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 16:13:20 ID:0/rZlPyg
「い、いや、あれ、えっと……」
「そちらも、相変わらずですね」

キルこと、キルシェ=アリオッチ。ソフィア=マベロード。我が騎士、サンドラ=アーキン。そして俺
、デイビット=キシオムバーク。
俺たちは、キルに連れられ、幾多の試練を乗り越え、魔王を倒した勇者一行だ。
この世界は、かつて魔王率いる魔族の軍勢の脅威に脅かされていた。で、まぁ、伝説の勇者であるこの
気弱なキルに連れられ、俺は国を復興するために、ただ一人の従者を連れ、魔王討伐に参加したのだ。

「で、どうする。まだ日は出ている。夕食はここで?」
「いや、街に宿をとってあるんだ」
「おい、俺の城に泊まっていけよ」
「ま、あんまり迷惑かけられないし。ほら、キルって、あんまり豪華なの好きじゃないでしょ?」
「確かに。んじゃ、どこだよ」
「ほら、旅の時によく泊まった、大通りの角の」
「あそこか。よし」
ならば、決まっている。
「陛下?まさか……」
「んあ、仕度しろ。行くぞ」
「陛下、お待ちください。今日は後宮入りのはずでは」
「はぁ?んなもん、キャンセルだ。キャンセル。さ、行くべ、行くべ」
俺はサンドラの手をとり、王座を下りる。
「ほんと、気侭な王様ね」
「はっ。俺は何も変わってない。変わったら、それは俺ではない」



大通りのすぐ脇の小さな通りに、その酒場はある。
魔王の在中は、情報集めによく訪れていたが、今はただ酒を楽しむだけの店だ。
536名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 16:16:16 ID:0/rZlPyg
「でさ、あん時の門番。あの豚男には笑ったよね」
「そうだったね。でも強かったじゃない?」
「バカ。あれはアンタが勝手に特攻するからじゃない。アタシの魔法で一発よ」
「いえ、あれは確か私がトドメを指したはずでは?」
「ちょっと待て、あの塔と言えば、俺の武勇伝を聞けよ」

俺は、王とばれないように、昔と同じような、薄汚い服にターバンを巻いている。
他の奴らも概ね、目立たない格好をしている。
まぁ、俺たちは世界一の有名人だしな。

「はぁ、デットの武勇伝?あん時、アンタ、サンドラの後ろでがたがた震えてたじゃない」
「いや、待て。あそこで伝説の剣を手に入れたのは、一重に俺のお陰だろ?な、そうだろ?」
「え、あ、う、うーん……」
「陛下。残念ながら、あのダンジョンでは、陛下のご活躍は皆無に思われます」
「え、嘘、マジ?」
「ほら見なさい。あれ、確か伝説の靴の時だったじゃなかったけ?」
「はい。あの時の穴掘りの姿。あれはまさに王族の気品を感じました」
「いや、サンドラ。それぜんぜんフォローになってない」

昔の気持ちを、思い出した。これだ。俺がずっと求めていたものは、これだったのだ。
仲間がいる。仲間がいて、馬鹿なこと言いながら、酒を呑める。
537名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 16:18:12 ID:0/rZlPyg
祖国を取り戻すという使命を完遂させても、満ち足りなかった俺。そうか。これが、俺の求めていたも
のだったのか。

「さて、と」
突然、話の流れをぶった切って、ソフィアが席を離れる。
「ん?どうした、ソフィア。う○こか?」
「馬鹿っ!ねぇ、サンドラ。あとは女同士の会話をしましょ」
「え?あ、しかし、陛下が……」
サンドラは俺を置いていくのが嫌らしい。仕方ない。
「行って来い。まぁ、同姓同士で、積もる話もあるだろう。俺も、あるしな」
そう言って、俺は含み笑いをしながらキルの方を見る。
「え、ぼ、僕?」
「そういうこと。さ、サンドラ。あっちのテーブル行きましょう」
ソフィアはしぶるサンドラを連れ立って、脇のテーブルに座った。
さて、ソフィアたちが帰ってくるまで、キルをからかって遊んでやるか。




「さて、どこまでいったの?」
ソフィア様は時々意味がわからないことを言う。
私にはそれが不思議でしょうがない。
「突然、そのようなことを申されましても。私は何をどう返せばいいのですか?」
「だ・か・ら、テッドとどこまでいったのって話」
「どこまで?えと、この前の視察では北の湿地まで行きましたが……」
「そんなボケはいらないわ。テッドと、キスくらいはしてるの?」

は?
538名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 16:21:39 ID:0/rZlPyg
「……何故、私が陛下と接吻を?」
私は、たっぷり数十秒考えてから、やはり何もわからなかったので、もう一度聞いた。
「え、いや、だって、サンドラ、テッドのこと好きでしょう?」
「はい、もちろん」
その質問ならば、即答ができる。私は、あの御方に絶対的忠誠と敬愛を持っている。それは私が私であ
るが故の誇り。そして決意。あの方の剣となり、盾となり、どこまでお供する。
あ、なるほど、ソフィア様は私の陛下への忠誠を試しているのですね。
「私は、昔も、今も、陛下への忠誠心は揺らぐことはありません。たとえ、魔族にこの身体を犯されようとも、汚れた第四身分であろうとも、この私を必要とされる限り、永遠に、この忠誠は揺らがない。
汚れた身ですが、この心に宿るただ一つの希望。それだけは汚さぬように、私はこの忠誠を貫き通します」
「いや、えと、誰もそんなこと聞いてないのだけれど」
え、違うのですか。ならなんだと言うのです。
陛下には、正妻席こそ空いているものの、第二、第三、第四席までがすでに埋まっているのです。いずれあの姫君のどなたかが、正妻の席に着き、陛下の御子を生むでしょう。
私は、陛下の部下であり、騎士です。そんな、妻がするようなことを、この私がしたいと?
私の忠誠は、そんなくだらない、俗的なものではない。
高尚にして、高貴なる我が想いは、あのようなくだらない女どもの想いと比べようもない。

「私は、騎士です。ソフィア様。理解できないかもしれませんが、私は騎士なのです。奴隷身分の私を
最後まで騎士として扱ってくれた、最高の陛下の騎士。これは確かに愛情でしょう。しかし、私は決して陛下の重荷になりたくない。陛下ほどの高貴なお方の末席にすら、私のような身分の女がいてはいけ
ない。そして、私は魔族に犯され、このような身体になってしまいました。女として、私はもう、その存在意義を無くしました。だが、騎士は違う。実力と忠誠さえあれば、騎士はそこにいることができる。私が
欲しいのは、情愛ではない。敬愛なのです。それを、お分かりいただきたい」
ソフィア様は何故か悲しそうな顔をした。
「身分って。私たちは、仲間でしょう。奴隷身分なんて、言わないで」
「しかし、この国はそれでできているのです。昔から。私は一生、奴隷身分出身の騎士ですし、陛下は一生陛下なのです。ご理解を」
「……なら、もし、貴女が、奴隷じゃなくて、貴族の生まれだったら?そして、魔族にそんな身体にされてなかったら?」
「は?」
「だから、もし、貴女がちゃんとテッドと吊り合う身分で、結婚できるのだとしたら、貴女はどうする?」

くだらない仮定だ。
くだらない。仮定するまでもない。ですが、答えましょう。答えなければなりません。
他ならぬ、ソフィア様のご質問なのですから。
539名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 16:24:48 ID:0/rZlPyg
「在り得ない仮定です。ですが、答えましょう。もし、私が後宮に入ることができたのであれば、あのくだらない後宮のクズどもを一掃します。陛下を癒すこともできないクズ。ゴミ。私が殺します。えぇ
、殺しますとも。徹底的に、惨殺してやります。あんなクズどもが、陛下のお種宿すなど、言語道断。縊り殺してやります。陛下のためではなく、自らの保身と野望しか考えないクズども。陛下の隣にただ
居られることがどれほどの幸せか理解できない大馬鹿。ずっと何の不自由もなく暮らしてきたくせに、文句ばかり垂れる馬鹿ども。陛下の重荷になるだけでなく、時に陛下を害することもあるのですよ。先
日など、嫉妬に狂ったクソメス犬が陛下に切りつける事件がありました。あぁ、陛下がお許しにならなければ、きっと私はあの女の首を叩き落としていますよ。ええ、そうでしょう。あんな奴が、陛下に抱
かれている?はっ。笑ってしまいます。陛下を楽しませるのではなく、自らの地位のために、種を宿すためだけに励むメス犬。死ね。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
「ちょ、ちょっと、分かった。分かったってば。ごめん、意地悪な質問だったわ」
全くです。ですが、お分かりいただけたと思います。
あの後宮は腐っている。腐りきっている。
「あの、さ。案外、言ってみればいいんじゃない?」
「は、え、何を?」
「だから、好きって。だって、テッド、わざわざ正妻席残しているんでしょ。あれ、多分貴女のためだ
と思うんだけど」
「馬鹿な」
「言ってみなよ。きっと、そこから何か始まるかもしれないよ」
ソフィア様の言葉を反芻する。

『そこから何か始まるかもしれないよ』

確かに。確かに、そこから新しい何かが生まれ、始まるかもしれない。
だが、もし、この想いを打ち明けたら。
きっと、私は、もう、何もかも隠すことなく。


奴らを、皆殺しにしてしまうでしょうね。
540名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 16:28:40 ID:0/rZlPyg
終わり。いや、プロローグなんで続きます。
エロは期待しないで。いや、だからって修羅場期待されてもあれだけど。
まぁ、初心者という鎧を被っているので、生暖かく見守ってください。
別に鎧の下に蔓なんて隠してないですよw

ってか、今見たら、誤字脱字多っ。すみません。次回気をつけます。
541名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 16:48:01 ID:jwoy+jSu
修羅場期待できないなら、なんでこのスレなわけ?
スレ違いになりそうならよそでやってね
542名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 16:49:22 ID:t+GRjL3Y
そりゃそうだ。
543名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 16:54:01 ID:jwoy+jSu
や、つまり言いたかったことは、こうして公開するのなら
卑屈な態度にならず胸を張って出して欲しいと言う事だ
544名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 16:54:19 ID:6J5O5wxw
>>541-542
まあ生暖かく見守ろうでは無いか
スクールデイズやりたがってるような人だし
第一に修羅場無いならまず此処に投下しないよ
一種のアレだ前振りみたいなもんですよ
545もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/03/25(土) 16:56:24 ID:SUzMn4HE

私は家に着くとすぐに部屋にこもり、おもむろに電気をつける。
すぐに眼前に広がる、部屋1面にはりつけられた純也くんの写真。

ふふふ、ただいま純也くん。




昨日の試合後、私は部屋に着くなりインターネットで兵藤純也を調べた。
キーワードを入力し、検索ボタンをクリックする。
すぐにたくさんのヒットが見つかる。その中には大量の画像もあり私はその全てを印刷し、部屋中にはりつけておいたのだ。




たくさんの純也くんに見つめられ、私は幸せな気分になる。
昨日、頑張ってよかった。
私は自分で自分を誉め称えた。




……そうだ。
私はある事を思い付き、急いでパソコンの電源を入れ、インターネット回線を繋ぐ。

キーワード入力……

兵藤純也 高山円香

検索ボタンをクリック。
……ヒット件数は……ゼロ、か。
まぁ、しょうがないか。今はね。
でも、すぐにこの二つのキーワードでたくさんヒットするようになるんだよなぁ。
あっ、でも、その時私は「高山円香」じゃなくて、「兵藤円香」か。
兵藤円香……、なんて素敵な響きなのだろう。
私はしばらく幸せな妄想に入り浸っていた。
546名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 17:01:42 ID:0/rZlPyg
>541-543
すみません。そうですね。仮にも作品を発表しているわけですから。
ちゃんと修羅場までのプロットはあります。
来週の土曜には完成すると思います。
しっかり自分で考えて、お、こりゃぁ、いい修羅場!と思ったシチュです。
ここの神作品に負けないよう、頑張ります。
よろしくお願いします。
547名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 17:22:25 ID:VLNdUp+g
>>546
頑張れ、応援してるぞ

>>545
何だこの行動力の高さはw
548名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 17:26:40 ID:6D9nY93M
>>546
私も応援しております。できればトリップor作品名を付けて検索し易いようにして欲しいです。
549 ◆M1igzo3EW. :2006/03/25(土) 18:26:43 ID:H6mtXuIS
>510その他の皆様
( 'A`)ノ サウンドノベル化してた人です。一応生きてます。
たくさんの作品が投下されてフィーバーされているところを水を差すようで恐縮ですが、これ以上更新できないかもしれません。
理由としてはリアルが忙しくなってきたのもありますが、どうにも熱意が冷めてきたっていう大変自分勝手なものですorz
ですので、今まとめサイトにあるやつで停滞することになってしまいます。

だから。ぶっちゃけ。
誰か引き継ぐなり「俺が新しく作り直す!」なりしてください。
そんな意味で>24には期待してますよー(・∀・)
NSCripterはノベルツールとしてはまだ楽な方に入りますので、やる気ある方がちょっと勉強すれば簡単に引き継げると思います。
そしてソースコードのひどさに驚愕するがいいw

>528
ファイルが違うってどういうこと?
さっきこちらでダウンロードしましたが正常に動きましたが……
ダウンロードしたときにファイルが壊れたとかそんな理由しか思いつかないので、再DLしてくださいとしか。
まさかとは思うけど、ZIPの解凍方法がわからないとかそういうことはないですよね?

妹愛の作者様。依存+妹が好きな自分にとってすごいご馳走でした。ありがとうございます。
阿修羅様。Joker消してください( 'A`)読み返すとかなりの適当さにメチャクチャ恥ずかしいです。
このスレの住人の皆様。いろいろ書こうと思ったけど長く説教臭くなりそうなのでヤメ( 'w`)

熱意が再燃したらまた何かすると思いますが、それまでただの1ROM人に戻ります。
でわ。
550名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 18:35:22 ID:TdocvB+a
>>◆M1igzo3EW. 氏
今まで活動お疲れ様でした。
いつかまた熱意を取り戻し、あなたが修羅場職人としてカムバックする日がくることを願っています。
551名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 18:47:50 ID:658J7Dxv
>>529
俺の場合は対スクイズ級のプレイのために新PC買った。
今では言葉信者最左翼。誠×言葉以外認めないというところまできた。
未来の修羅場ゲープレイのために新しい機体買ってみるというのもありだと思う。
552名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 18:51:23 ID:VvmieNR2
何回も質問したものです。Firefoxを使ってサウンドノベルを落とそうとしたんですけど、Firefoxを使って落とすとファイルが変になって
ダウンロードされてたんですけど、IEを使って落としたらちゃんとしたファイル落とせました、色々と迷惑かけてすいませんでした。
553名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 18:57:14 ID:tgqRS8Hf
まあスクイズの為だけにじゃなくても買ってもいいと思うんだが。ビスタも発売延期になったしなorz
ってか>>529のパソのスペックが気になる……。一応3〜4年前のパソでも動く筈だが。
554名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 19:02:45 ID:pILGwITJ
>>545
うわあ超すてきーwwwww
血の雨を降らせたヒロインは多いけど、
初めから割り切ってるのは珍しいwwww
555名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 19:07:59 ID:XutPeDCF
>>546
頑張れ。修羅場を待ってるぞ。

>>549
お疲れ様でした。
556名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 20:43:00 ID:Bi/HmwlB
合鍵と優柔をサウンドノベル化するだけで演出で苦労すると思うな
タグ打ちは辛いし、やはりサウンドノベル化は不可能だな
557名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 20:55:12 ID:Rmsc4A4q
やっと追いついた…オレが貧血で倒れてた数日間で進み過ぎだYO
修羅場スレ八百万のネ申たちに感謝orz
558 ◆kQUeECQccM :2006/03/25(土) 21:06:25 ID:dmAUD8w/
>549
感謝ということで鳥付きで。ありがとうございました。そしてお疲れ様でした。
私の作品はもうすぐ終わってしまいますが、貴方の熱意によって続けられたところも多分にあります。本当にありがとう。

他の方々。最終回はもうちょっとだけ待っててください。
559もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/03/25(土) 21:07:40 ID:SUzMn4HE

"大丈夫、わたし、一人で帰れる"

昼休み、送ってくと言ってくれたお兄ちゃんの申し出を断る。
昨日、わたし達の学校の生徒がいきなり交差点に飛び出し、トラックにひかれて亡くなった。
それで、お兄ちゃんは急に心配になったらしい。
わたしは耳が聞こえないから車のクラクションも聞こえないだろうって。

お兄ちゃんのこころ使いはすごく嬉しい。
大切にされてるって感じる。

でも、わたしはそこまで子供じゃないし、何より今日はお兄ちゃんにとっては数少ない練習日……そこまで迷惑かけられない。

授業を終え、帰り支度をすませたわたしは一人校舎を出る。
グラウンドではお兄ちゃん達サッカー部が練習をしていた。

……たまには、いいかな。
わたしはお兄ちゃんの練習を見学していく事にした。




………やっぱりお兄ちゃんはすごい!!!
わたしは普段サッカーを見ない素人だけど、お兄ちゃんのプレーが明らかに際立っている事は分かる。
誰よりも柔らかいトラップ、まるでダンスのステップをきざむような華麗なドリブルは誰も止められない。
そして、次元を支配したかのような絶妙なパス。



かっこいい……。
いつもは見せない真剣な表情にわたしの胸はときめく。


わたしは結局、練習終了までお兄ちゃんに見とれていた。
560もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/03/26(日) 01:10:39 ID:sUaXBgZE

わたしは練習の終わったお兄ちゃんに近付き、肩をたたく。

お兄ちゃんは驚いた顔でこっちを見て、すぐに話しかけてくる。


"茜、まだ、いたのか"

お兄ちゃんの問いかけにわたしは笑顔を返事代わりにする。

すると、お兄ちゃんも笑って
"そうか、すぐ着替える。待っててくれ"
と言い残し部室へと入っていった。



お兄ちゃんが着替えている少しの間、わたしに冷たい視線(主に女子の)が集中する。




しばらくしてお兄ちゃんが部室から出てくると、わたしは周りの女子に見せつけるようにお兄ちゃんと腕を組む。
お兄ちゃんは一瞬困ったような顔をしたが、すぐに、いつものこと、とあきらめそのまま歩きだした。

えへへ、妹の特権。 こうすると恋人同士に見えるでしょ?



どう?お兄ちゃんにこんなことしていいのは、わたしだけなんだよ?うらやましい?
わたしは、周りの女子に対して大きな優越感を感じていた。





結局、わたしは家まで腕をはなさなかった。
561名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 01:44:08 ID:JZyW57dc
もう死亡フラグにしか見えない
562名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 01:55:28 ID:6RaUj9ZP
修羅場と言うより火サスのかほり。
さぁ、ねむりなさい〜♪
563名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 03:09:15 ID:1sLEoEpZ
キャー
茜ちゃん逃げてー、どこか遠くに。お兄ちゃん置いて逃げてー
564名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 03:34:58 ID:Holnk8kE
むしろ兄を連れて逃げろ
565名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 11:52:11 ID:mCLncQJI
むしろ迎え撃て
566『広き檻の中で』 ◆ewwZ0iiR3. :2006/03/26(日) 12:15:01 ID:ZIA4KE0B
翌朝
O.K
状況整理だ。目の前に全裸の志穂。うむ、昨日俺たちはヤった。誘ってきたのは志穂の方。ってかほとんど逆レイプ。
「はは!モーマンタイ、モーマンタイ!」
ポジティブにいこうよ。
と、問題は早く自分の部屋に戻らんといかん。誰にも見られずに、だ。
志穂を起こさないように服を着て、そっと部屋を出る。自分の部屋までおよそ歩いて三分。複雑な道だからこんな時に遠回りになるのが困る。外から見たより中は広く感じるのだ。
「しっかし……初体験が逆レイプってのも問題だな。」
男として情け無い。いっそ改変してしまおう。
『初体験は?』
『レイプです。』
いやいや、それ犯罪。ってかそんなことインタビューするやついないか。
一人悶々と考えながら部屋の前まで来る。なんとか誰にも見つかっていないようだ。安心して部屋のノブに手をかけると……
「あら?晋也さ〜ん。お早いですね、今日は。」
SIT!!右方向に機影を確認。忘れていた。里緒さんはステルス常備だったんだ。しかも今日は朝食当番。朝六時とは言え起きている。
上等だ。これから交渉に入る。
その瞬間、俺は自分の機密を守るためのネゴシエーターになるのだった。
「ああ、おはようございます、里緒さん。ちょっと早く目覚めちゃったんで、朝の散歩をしてたんです。」
「へぇ〜。そんなの初めてですよね。あ、例えば朝帰りとか!」
「………」
「………」
ニコッ
お互い笑顔で間合いを取る。こいつぁ手強い。あの笑顔からは『なんでもお見通しですよ』と言うオーラが感じられる。周りの空気が多少黒く澱む。
「は、ははは…いやだなぁ、里緒さんたら。この屋敷から出て朝帰りなんて疲れちゃいますよ。」
「だからぁ、この屋敷の中で朝帰り。誰かの部屋に居たとかぁ。」
「…………」
「……………」
ニコッ
567『広き檻の中で』 ◆ewwZ0iiR3. :2006/03/26(日) 12:16:20 ID:ZIA4KE0B
誰かって志穂しかいねぇじゃねえか!!!
体中の穴から染み出る冷や汗に体を震わせていると、ゆっくり且つ大胆に里緒さんが近付いてくる。気付けば目の前に来て、その豊満な胸を押し当てられる。
小さくなく、かといって大きすぎでもない。俺にとってど真ん中ストライクな胸だ。
しかも昨日一線を超えたことによって、今までと違う見方をしてしまう。
(めっちゃ触りたい。てか搾乳したい)
そんな不埒な欲望が渦巻く中、里緒さんが耳元で囁く。
「ふふふ…ずいぶんとお楽しみのようでしたね………。でも、彼女じゃあ出来ないこともあるんじゃあないですか?」
そう言って更にグリグリと胸を二の腕に押し当てられる。その沈む様な感覚に、今朝二度目の朝勃ちが始まる。ってゆうか……ち、乳首当たってる!!
「!!……晋也さんさえよければ、いつでもいいですよ。」
そう言ってそそくさと立ち去ってしまう。いつもより諦め(?)が早いがどうしたんだろう。
里緒さんの立ち去った方を見て、今だ治まらぬ胸のドキドキに浸っていると………
「しん……や……?」
背後からの殺気。しまった、里緒さんはこの殺気を感じ取って逃げたのか。どうやら俺には忍者になれる素質はないらしい。
「晋也?これはなーに?」
そう言って再発した俺の肉棒を握る。普通なら嬉しいがこの状況で喜びには浸れない。
「ここここ、こ、これは!あ、朝勃ちだヨ!」
「嘘だ!あの女に胸押し当てられてたたせんでしょ!!!」
ギュウー!
力強くペニ公を握られる。
568『広き檻の中で』 ◆ewwZ0iiR3. :2006/03/26(日) 12:18:05 ID:ZIA4KE0B
「い、いてぇっ!!ストップだ!!志穂!!」
「ダメよ!!私意外の女で勃起させた罰!それに……さっきより堅くなってきてるじゃない……変態ね。」
ま、まさか。俺にM属性は無い筈……。
「これ以上私意外の女で勃起させたら……絶対に許さないから……」
「そんナ!!男として生を受けた限りそれは不可能に近い………」「昨日私とHしたわよね!?」
「はひ…」
「あれって、私のことが好きだからでしょ!?だから抱いてくれたんでしょ!?」
そう言ってナイフを下腹部付近に押し当てられる。さすがの俺もここまでされると萎えた。Mではあるが変態では無いゾ!!
「うン……」
『あれってレイプじゃん?HAHAHAHA』
なんて言ったら今日の朝食はソーセージに早変わりだ。まだ男としてヤりたいことはたくさんあるんだい!!
「私を捨てて裏切るなんて……絶対に許さないから……いつでもあんたのことをみてるからね。逃げられないのよ、私からは………」
ナイフという呪縛から開放され、自由を取り戻す。
志穂はぶつぶつ言いながら部屋へ戻っていった。
さすがにこれはヤバい。あいつは本気だ。もしかしたらア◯サ◯が降臨してるやもしれん。いつもみたいに陽気で居られ無い。
「でもシリアスになったら俺じゃ無いっしょ!」
どうやら俺のオチャラケた性格は死ぬまで治らないらしい。
愛のために死ねたら本望だ!!
でも、愛はIでも愛憎は勘弁して欲しいかも………
569名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 12:56:08 ID:5TswwYVQ
志穂ちゃんクレイジートレインまっしぐら。
570名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 13:12:08 ID:6RaUj9ZP
>ア◯サ◯

アベサダでオケ?
571名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 13:59:26 ID:K4OeKvYQ
アーサー?

572406の続き:2006/03/26(日) 17:39:07 ID:iHfdhD1y


   X    X    X    X


 私は真っ直ぐに走った。 本当に愛してる人の元へ。
 もう気持は偽らない。 自分の気持のままに生きるんだ。 そう思うと気持は軽やかでまるで羽根でも生えてるみたいだった。
 やがて其の身は紅司の家の前に辿り着いていた。 はやる気持を抑えながらインターフォンを押す。
 来る途中に空の買い物篭を持ったおばさんを――紅司の母親を見かけた。 だから今、紅司は家に一人きりのはずだ。 其の事が余計に気持を加速させる。
 インターフォン越しに聞こえた紅司の声はひどく懐かしく感じられた。
 そう言えばお互い恋人が出来てからめっきり話す機会が減ったっけ。 でもそれも今日で終り。 お互い偽りの恋人と別れ真の恋人同士になるんだ。
 玄関に上がるとそこには愛しい笑顔があった。 
「久しぶりだな夕子、まぁ上がれよ」
「そう言えばこうして家に上がるのも久しぶりだね。 お邪魔しま〜す」
 そして私は部屋に通された。 私が部屋に入ると紅司は茶を煎れてくるからと一旦部屋を出た。
 そして戻ってきた紅司からお茶を貰い口をつける。 走ってきたせいかとても美味しく感じられた。

「ご馳走様」
「どういたしまして」
 そしてお茶で喉を潤した私は口を開く。
「ねぇ紅司、藤村さんとは最近どうなの?」
「美嬉と? ああ、上手くやってるよ」
 そう言って紅司は笑顔で答えた。 其の笑顔に面食らった。 だが思い直した。
 ああ、そうか。 私の事を気遣ってくれてるんだ。 きっと、自分も上手くやってるからお前も気にせず上手くやれよ、そんなつもりなんだろうな。
 それにしても呼び方まで恋人のふりが板についちゃって可笑しい。 藤村じゃなくって美嬉だって。
 そして紅司は暫らく自分と藤村さんのことを話していた。 内容は一言で言やのろけ話。 とても幸せそうな顔で。 紅司ったら私を安心させる為とは言え嘘をつくのがうまいんだから。

 でも幾ら嘘とは言えこれ以上藤村ののろけ話聞くのも不愉快になってきた。 そろそろ切り出そうか。
「ねぇ」
「ん? ああ、悪い。 つい俺ばっか話しすぎちまったな。 お前のほうは先輩と上手いことやってるのか?」
「私と先輩はね……別かれちゃった」
 其の言葉を聞いた瞬間紅司の表情がこわばる。 しまったとでも思ったのだろう。
「ゴメ……」
 私は紅司の言葉を遮り口を開く。
「ヤダ、そんな顔しないでよ。 言っとくけどあたし落ち込んでなんかいないんだからね。 それどころか今は物凄く晴れ晴れとした気分。 やっぱね、好きでもないヒトと付き合ったって上手く行かないから」
 私がそう言うと紅司は驚いた顔をして口を開く。
「え? それって……」
「うん、私にはほかに好きなヒトが居たから。だから先輩と別れた。 ね、紅司も其の方が良いと思うでしょ?」
「そ、そりゃ無理して付き合ったってお互い上手く行かないし……」
「でしょ?! やっぱ紅司もそう思うよね。 ねぇ、紅司の方はどうなの?」
「どう、って?」
「紅司。 あの時私があんな事言っちゃったから引っ込みつかなくなって、それで流されるように告白を受けちゃったんじゃないかな、って」
「そ、それは……」
 口ごもった。 って事は? 期待が確信へと変わり出す。
「確かに実を言うと、俺もあの時本当は付き合うつもりなんか無くて。 でもその場の流れと言うか、言い訳するのも見苦しいかなと思って。 それでつい見栄を張るみたいにあんな事……」
「やっぱりそうだったんだ。 ごめんね、あの時は変な事言っちゃって。 だって藤村さんって私なんかより可愛いから当然OKしちゃうんだろうな、って。 そう思ったら紅司の口からそんなの聞くの怖くなっちゃって。 それで思わずあんなこと口走っちゃって……」
「え? それって……」
「うん。あの時本当に言いたかった言葉はね、交際を祝福する言葉とか応援とかそんなのじゃなくって。 本当は其の娘となんか付き合わないでって。 だからねさっき言った私が本当に好きなヒト。 それはね……紅司、あんたなの」
 私は意を決して口を開いた。 言えた。 やっと言えた。 今までずっと言いたかった言葉。
573406の続き-2:2006/03/26(日) 17:39:59 ID:iHfdhD1y
「ね、ねぇ。 紅司……は私のこと、好き?」
 答えが無い。 沈黙が不安を掻き立てる。
「どうして答えてくれないの? 若しかして……私のこと……」
「そ、そんな事無いよ。 その、俺も……好きだよ」
 やった! 遂に聞けた。 何よりも聞きたかった言葉。
「じゃ、じゃあさ。 付き合おう?」
「ちょ、ちょっと待て! そんな、付き合うって」
「何で待つの? だって両思いなんだよ? 何の問題も無いじゃん」
「だって俺今美嬉と付き合ってるんだぞ?」
「別かれればいいじゃん? だって藤村さんとは成り行きで付き合っちゃっただけでしょ? 私があんな事言っちゃったから」
「別かれるだなんて……、出来るわけ無いだろ。 そんな美嬉を裏切るような真似」
 そういえばコイツ昔っから義理堅かったり律儀な所あったっけ。 其の気持が邪魔してるんだね。 だったら私が取り払ってあげる。

「裏切る? 好きでもないのに只流されるように付き合うほうがよっぽど裏切ってない?」
「好きでもないとか、流されるとか。 そりゃ最初はそうだったさ」
「最初って、じゃぁ今は違うとでも言うの?」
 私がそう問うと紅司は首を振った。 だが其の向きは横じゃない。 え? どうして縦に振るの?
 いけない、ココで怯んでは。
「好きだって言うの? そりゃ確かに藤村さん可愛いいけど、でも暗くて地味で、そんなコといたって疲れるだけでしょ?」
 そう言った途端、紅司の顔が険しくなった。
「確かに暗くて地味で、そんな面もあるさ。 けどな、美嬉はいつも俺の話に真摯に耳を傾けてくれた。 そして一生懸命俺に合わそうとしてくれて……」
「それで惹かれていったっていうの? 違うよそんなの。 それはきっと義務感や責任感みたいなものだよ」
「違う! そんなんじゃない!」
「本当にそう言いきれる? 付き合っちゃった以上は、尽くしてくれるから、慕ってくれるからはそれに応えなきゃいけない。 そんな義務感や責任感じゃないって」
「そ、それは……違う! 断じて違う! そんな訳……」
「じゃぁ質問を変えるね。 付き合っていて無理してるって、疲れるって感じた事は?」
「無理とか疲れるとか、そんなことある訳……」
「本当に? ただの一度も? さっき紅司も言ったよね。 無理して付き合ったってお互い上手く行かないって。 それって紅司にも言えることだったんじゃないの?」
「そ、そりゃ最初の頃はそう言う風に感じた事も……でも今は!」
「それってただ慣れただけで好きって気持とは違うんじゃないの?」
「違う! 違……」
 あと、もう一押し。 見ててちょっと可哀相な気もしてきたけど。 でもここで手を緩めちゃ駄目だ。 そう、紅司の為にも
「じゃぁコレが最後。 藤村さんとの間に遠慮の気持とかそう言うの無い? 私と話してるときみたいに全て本音で話し合えている?」
 完全に押し黙ってしまった。
 今日はもう帰ろう。 人間押してばかりじゃ駄目、時には引く事も大事だから。
「今日はもう帰るね。 でも良く考えておいてね。 本音で付き合えない仲なんて、結局お互い後悔するだけなんだから」
574名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 17:42:00 ID:iHfdhD1y
いい加減タイトル決めた方が良いんだろうけど思い浮かばんorz

次は藤村パートの予定です
575名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 17:45:55 ID:mDrh4f9l
GJ。
えーとタイトル思い付かないなら鳥だけでもつけたら?
576名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 19:35:43 ID:K4OeKvYQ
GJ!!です。

う〜ん…タイトル案を募集するとか?
577名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 20:01:02 ID:Z4Rgyz3D
タイトルなくても阿修羅氏が一応付けてくれるからな。
それよりトリ付けたらどう。
578名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 20:25:54 ID:yZmGUQp8
本家のエロゲスレのほうから流れてきますた。
なかなかステキな作品(嫉妬修羅場大好き)ばかりで
阿修羅氏のまとめページにあるビジュアルノベルゲーム化なんかもいい感じ。
しかしここを見てる絵描きさんは自分以外いないのかな?
文章書きじゃないけど 創作意欲はムンムンわ き ま す た。
579優柔 第23話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/26(日) 21:20:14 ID:f2gwrMKn
朝から最悪な気分だ。
せっかく早く来て愛原と一緒に登校しようと思ったのに・・・計ったみたいに現われやがって!!
フラれたくせにいつまでも諦めの悪いやつ。なんでつきまとう?愛原はもう私のものだ。
別れたんなら潔く身を引べきなのに・・・相合傘してカフェに行ってあげくにはエッチしようだと!?
私のいる前で・・・私と愛原の時間を邪魔して!!

ああ・・・殺りたい。
二度と愛原の前に現われることがないように細切れのグチャグチャにしてカラスの餌にしてやりたいな!!!
愛原が見てなかったら簡単に殺れんだ・・・
殺して・・・殺して・・・殺して、殺して、殺して、殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して!!!!!!

・・・落ち着け、私は混乱してるだけだ。
あの女でさえ平然としていたんだ、私が動揺してどうする。周りの連中が怯えているじゃないか・・・
冷静に、冷静に・・・そう、私はいつもこんな風にクールなんだ・・・
ゆっくり呼吸して・・・よし、だんだん落ち着いてきた・・・
大体、私が慌てる必要性なんて皆無なんだ。
あんな女なんか取るに足らない存在なのになんで私が焦らなければならないんだ。
私のほうが圧倒的に有利な立場にあるんだから。
何をみっともないこと考えてたんだ。
殺す殺すって、それじゃただの痛い女だ。
私は違う・・・常に余裕を持って他人と対応する。
感情に流されるな、下級生相手に熱くなるな。
そうだ・・・私はこれでいいんだ。


うちの学校は一応、進学校です。
クラブ活動より勉学の方に力を入れているため、毎年数多くの生徒が国公立・難関私立大学に合格しています。
(おかげで『祝・甲子園出場!』とか一度も聞いたことがないんですけどね・・・)
そういうわけで、定期試験が終わった翌日には採点が終わっていて、成績優秀者の名前が掲示板に張り出されます。
クラスの男友達とお昼を食べ終えた僕は、早速見に行くことにしました。
ええ勿論、僕の名前が載ることなんて最初から期待していません。

全学年の成績が掲示されるせいで、掲示板前は人でいっぱいです。
掲示板を見ようとする人と見終わって帰ろうとする人がいるため、非常に混雑しています。
その中に先輩を見つけました。お友達に抱きつかれています。
それから椿ちゃんも、前のほうにいます。
あっ、椿ちゃんが僕に気付きました・・・ウインクされました。
相変わらず可愛いな・・・
怒った時の般若のような顔はまるで幻のようです。
580優柔 第23話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/26(日) 21:20:57 ID:f2gwrMKn
人の流れを遮って・・・ようやく確認できました。
文系・理系、それぞれ上位10名の氏名と得点が・・・うん、高得点ですね。
「よしっ、10位だ!」
僕の友達の橋本君の名前がありました。

10 橋本 孝文    721点

900点満点だから、平均80点ですか・・・すごいですね。
僕にはとても取れそうにありません。
隣で歓喜の涙を流している橋本君を横目に、僕は再び掲示板を見ました。

 8 水谷 椿     753点

あっ・・・椿ちゃんもですか。
元彼女とはいえ、自分より成績が良いのは何か・・・複雑です。
続いて3年の文系の成績を見ました。
どうせ先輩も載ってるんだろうな。

 1 杉山 綾乃    889点

ね・・・凄いや。
とうとう1位ですか・・・
先輩・・・何でそんなに頭が良いのに僕にヤラせてくれるんでしょうか。
先輩にはもっと相応しい人がいると思うんですけど。

あれ、そういえば・・・もういないな。
先輩も椿ちゃんも、教室に戻ったんでしょうか。

581優柔 第23話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/26(日) 21:22:17 ID:f2gwrMKn
この女について来るように言われた。
朝に言ってた通り、ゆっくり話がしたいらしい。
いきなりのことで多少は驚いたが・・・丁度良い。
こちらからも伝えたいことがあるからな。
お互い無言のまま、特別棟へ続く渡り廊下を歩く。
ゆっくりと、だが着実に人の喧騒は消えていった。

「おい、どこまで行く気だ?」
「そうですね・・・ここらへんでいいですか」
特別棟3階の廊下。私とこの女以外、誰もいない。
辺りは静寂に包まれている。
不愉快だな・・・この女の吐息まで聞こえてくるじゃないか。
私は気持ちを落ち着かせた。
相対するは、私が最も憎むべき対象・・・愛原の元カノ。
私の内心とは違って、この女は今でも笑顔だ。
――憎たらしい。
そんな私の思いはいざ知らず、ゆっくりと口を開いた。
「杉山先輩・・・学年1位、おめでとうございます」
思っても無い言葉。敵から褒められた。
いや・・・ただのお世辞。心にも無いことを。
「そんなのはどうだっていいんだよ。さっさと本題に入れ」
「まあ、せっかちなんだから・・・ふふっ」
口元に手をやってクスクスと笑った。
こんな何気ない仕草でも殺意を呼び起こしてくれるなんてな・・・
「それじゃあ先輩、私からお願いがあります」
「・・・何だ」

「今後一切・・・ゆう君に近づかないで下さい」
笑顔のまま発せられた言葉。
それが私に、何とも言い難い焦燥感を抱かせた。
582 ◆I3oq5KsoMI :2006/03/26(日) 21:24:56 ID:f2gwrMKn
次回、やっと修羅場れそうです。

>>578 期待してます!
583名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 21:30:35 ID:4s2E9ZU/
(´・ω・`)ついにこのときが…





(´゚ω゚`)きたお
584名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 21:40:11 ID:vspKVBgf
どう考えても、椿ちゃんは先輩に勝てる要素が見当たらないな。ケンカも先輩の方が上だし
次回は屋上から椿ちゃんを突き落とされそうで恐いんだがw
585名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 21:42:58 ID:FCgjDQ8P
もうゆう君死んでいいよ
586名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 22:02:36 ID:jDJL4/EP
正座して待ちます
587名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 22:07:08 ID:juBEQUMv
ゆう君も先輩と付き合ってしまえばそれなりに幸せになれると思うんだがな。
変な所で欲を出すのが主人公らしさということかw
588名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 22:16:21 ID:qFxgnc8w
>>587
きっと椿ちゃんは雌豚に騙されたかわいそうなゆうくんを救い出してくれるよ!
589名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 22:16:37 ID:CWz4zKC/
多分ゆう君今までこのスレに出てきた中で死んで欲しい主人公No1だと思う。
590名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 22:23:58 ID:jDJL4/EP
だがそこが良い
591名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 22:24:26 ID:6RaUj9ZP
待て待て、死んだら終わっちゃうじゃまいか。
ゆう君は生かさず殺さずがいいと思います先生。

つか、先輩はカッとなると記憶が無くなるのが怖いな。
椿ちゃんテラヤバス。
592名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 22:38:34 ID:CWz4zKC/
………生かさず殺さず……監禁?
593名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 22:39:50 ID:4QSFqR1P
ついに修羅場……雌豚vs泥棒猫(´д`*)
594名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 22:42:47 ID:vspKVBgf
椿ちゃんENDでいいよ
俺は先輩みたいなツンデレキャラは嫌いだし
やはり、大人しい女の子の方が嫉妬するのが一番萌えるわけですよ
595名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 22:47:51 ID:6RaUj9ZP
>>592
いや、四肢切断の上奪い合い。
596名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 22:56:56 ID:rTlrWpSc
>>595
ミート君パーツ争奪戦みたいな感じか。
頭・胴体・四肢の全てを手に入れた方が彼と…彼と…心中?
597名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 22:57:59 ID:j3iUkC2Y
ダルマは流石にゆう君可哀想だろ。……そう、でもないか? 
598名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 22:59:25 ID:K4OeKvYQ
上半身と下半身に均等に分ければいいんじゃね?
599名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 23:00:33 ID:j3iUkC2Y
>>598
右と左の方が平等だよ。
600名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 23:07:39 ID:HYlK9j+N
左右平等に切れなくて、どっちが多いほうを取るかで揉める気がする。
601名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 23:14:44 ID:SPwkeZwF
どう切ろうか相談してるうち、お互いに「コイツを斬れば分ける必要なくなるじゃん」と気づく
602名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 23:33:43 ID:HYlK9j+N
>>601
結局はそこに行き着くんだなw
603名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 00:35:48 ID:oLt8ay50
ゆう君が死ねばそれでいいよ
604名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 00:37:41 ID:2S7uzs9A
グラム単位まで秤にかけるのか?
605名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 00:46:36 ID:DZe4iV8Q
血が漏れて計りづらいから冷凍してから切断。
606名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 00:49:24 ID:TbO9ZRwj
半分にされるゆう君がにwktkしてる俺
607名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 00:54:39 ID:tU8/gScI
やはり行き過ぎた愛情の行き着く先はカニバリズム?
って一旦肉を切り刻み始めたら猟奇スレ向きか。
608名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 01:10:54 ID:zNp17P9N
「ゆう君、二人っきりお弁当食べよ」と言って出してきたのが焼き肉弁当だったら要注意ということか
609名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 01:12:24 ID:TGH6OO1e
可愛い嫉妬が好みの漏れとしては、これまでで十分満足しているんだけど・・
処女喪失の頃の先輩がすげぇ大好き・・・だけど
やっぱりここの人は血を見ないと気がすまないのなw


考えすぎかもしれないけれど、保管庫のSS管理の指針を読む限り、
管理人氏はタイトルが決まるのを待っるっぽい・・・?
610もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/03/27(月) 02:38:04 ID:8wZ80Dfp

何?あの子?


練習の終わった純也くんにタオルを届けようとした私より先に、一人の女の子が近付いていく。
恐らく、茜ちゃんだろう。


純也くんと茜ちゃんは一言二言手話で会話すると、茜ちゃんを残して純也くんは部室へと入っていく。


ギュッと唇をかむ。
何で茜ちゃんがそこにいるのよ!!
そこは私の場所でしょ!!!!!!
私は、遠くから茜ちゃんを睨んでいた。


しばらくして、純也くんが部室から出てくると、あろうことか茜ちゃんは純也くんと腕をくんだ。



あの女ぁぁ!!!!
強くかみすぎた唇は血が吹き出し、口中に鉄臭い血の味が広がったが、たいして気にならなかった。

それほど、私の心は黒い嫉妬の濁流にのみこまれていた。





あ〜、いいお湯。
お風呂の湯かげんはベストの状態で、あまりの気持ちよさに、今日あった嫌な事も、全て私の体から出ていくような気がした。




――あの後。
私は、無意識に彼等を尾行していた。
何故尾行なんてしたのだろう?
そもそも、純也くん達を尾行するメリットはゼロだ。純也くんの家の場所などとうに知っている。
しかし、その一見無意味な尾行のおかげで私は大きな収穫を得ることができた。


すなわち、純也くんの家の鍵のありかが判明したのだ。
611もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/03/27(月) 03:25:17 ID:8wZ80Dfp

純也くんの家は母子家庭で、昼間母親は仕事で家にいない。
そして、純也くんと茜ちゃんも学校があるので家にいない。

つまり、昼間純也くんの家は確実に留守状態なのだ。





ふふふ、茜ちゃんには感謝しないとね。
私はお風呂のなかで包帯の巻かれた右手を見上げる。




純也くん家の鍵のありかが分かり、浮かれ気分で家に着いた私は、思わずにやけそうになる顔を必死で抑えて、部屋にいそいそと入っていった

ベッドに座り、
これからは、いつでも純也くんの家にお邪魔できるのね。なんて素敵な事なんだろう……。
みたいな事をうっとりと考えていると……。

痛っ!!
急に右手に痛みが走る。
慌てて右手を見ると、いたる所から血がにじみ出ていた。

考えて見ると、道中ずっと腕をくんだままだった茜ちゃんに対する怒りを静めるために、ずっと爪を立てた手を握り続けていたのだ。(左手は握力が足りなかったのか、かろうじて血はでていなかった)


その後、私は急いで右手の治療をした。
包帯は少しやりずぎかな?とも思ったけど、私のからだはもう私一人のモノではないので、一応大事をとった。



しかし、いずれにしても茜ちゃんにはおしおきしなくちゃ。
茜ちゃんに感謝してるけど、これとそれとは話は別。

……でも、あまりヒドい事はしたくない。
もうすぐ私の妹になるわけだし、何より純也くんの悲しむ顔が見たくないから……。

まぁ、ひとまず純也くんが誰のモノかを分からせてあげる事からはじめよう。


私はお風呂のなかで作戦をねりはじめた。



あまりに長い時間、お風呂のなかでねり続けたためのぼせてしまったのは、また別の話。
612名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 03:41:16 ID:5eXq+4Px
魔の手が近付いているのに、誰もそれに気付いていない…
マジコワス(((;゚д゚)))
613名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 03:55:36 ID:tU8/gScI
このまま誰にも気付かれず自分で弄した取って置きの策に
ハマって自爆しそうな娘だな。
614夢と魔法の王国 第五話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/27(月) 04:03:18 ID:t422ztSe
<プロローグ>

朝。
登校してきた拓に挨拶したけれど、無視された。
拓は、そのまま教室から出ていって、授業が始まるまで帰ってこなかった。
後を追いかけることも出来なかった。

授業の合間、何度も話かけようとしたが、拓はそのたびに教室からいなくなっていた。
ワタシを避けているようだった。

……怖い。

ワタシはなにをした。
なにかしたっけ。
拓が不愉快に思うことを?
なにを怒っている。
わからない。
拓はワタシのこと、嫌いになったのか。
違うそんなはずない。
でも、そうじゃないと――

昨日、別の男といたことが、棘のようにワタシの心に突き刺さっている。
考えたくなくて、後ろめたさを必死に押し殺した。
考えたくない。
考えたくない。

……あ。
アイツがなにかしたのか。
アイツがなにか言ったのか。
そうだ。
こんなに急に拓の態度が変わるはずない。
昨日のデートだけでなく、あることないことベラベラと吹き込んだのだろう。
アイツのことだ、どんなことを言ったかわからない。

……だとしたら、もう許してやらない。



昼休みにようやく拓を捕まえて。
なんとか、放課後、二人きりで話す約束をした。
615夢と魔法の王国 第五話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/27(月) 04:03:55 ID:t422ztSe
<1>

「母さんが死んだよ」
開口一番、拓はそう言った。
「……え?」
まったく思いがけない言葉だった。
もちろん拓のお母さんが病弱だったことは知っていた。
でも、死んだって――
「母さん、嘘ついてたんだ。余命半年とか言って、実はいつ死んでもおかしくなかったんだって。
 はは。笑っちゃうよね。僕のためを思って嘘をついてくれてたんだ。
 あと半年とか、まだ大丈夫とか、治る見込みもあるとか、……嘘ばっかりだよ。
 そんなんだったら、本当のことを言ってくれた方がよかったのに」
屋上の冷たいコンクリートの上に、拓は座り込んだまま、じっと動かない。
傍に立つワタシには、うつむいた彼の表情は見えない。
けれど、これで朝から様子がおかしかった理由がわかった。
大切な人を亡くすことは辛い。
いつもと違って当たり前だ。
……でも、どうしてワタシに言ってくれなかったんだろう。
ワタシは信用されてないのだろうか。
拓のそばで彼を支えてあげるのは、ワタシの役目なのに。
「ねえ、ミィちゃんは、嘘、つかないよね?」
心細げに見上げてくる拓に、ワタシは勢い込んで答える。
「つかない。絶対に、つかない。誓うよ」
拓は弱々しく笑って、立ち上がった。
そして正面からワタシを見据える。
「……信じる。だから、正直に答えて」
拓は一息置いて、言った。
「昨日、ミィちゃんと一緒にいた男の人は誰?」
――っ!
見られていた!?
……そうか、美樹が!
「ミィちゃんは、あの人が好き……なんだよね?」
「違う!」
叫んだ。
「あ、あれは、ただの友達なんだよ!」
視界が涙で滲む。
拓はそんなワタシを見つめている。
その目には、もうワタシは映っていないような気がした。
怖い。
怖い。
怖い。
拓が離れてっちゃうよ。
616夢と魔法の王国 第五話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/27(月) 04:04:50 ID:t422ztSe
ワタシは拓の胸にすがりつき、訴える。
「違う! 違う! ワタシには拓だけなんだ! 信じてようっ……」
拓は、涙でぐしゃぐしゃのワタシの顔を、じっくりと眺めて。
――やがて、微笑んだ。
「わかってる。ミィちゃんは、嘘つかないもんね」
「信じて、くれるの?」
拓は、無言で頷いた。
……よかった。よかったよ。
わかってくれた。
そうよ、ワタシと拓は愛し合っているんだもの。
美樹が何を言おうと、何をしようと、ワタシたちは――

「でも、もう別れよう」

……え?

「ミィちゃんは、母さんが死んだとき、……来てくれなかったよね」

え? ちょっと、 え? そんな、 それは、 だって、

「言い訳はいいんだ。責めたりもしないよ。
 ……でも、僕は、死ぬほど悲しかった。
 そんなとき、傍にいてくれない人は嫌なんだ。
 傍にいてくれたのは、美樹ちゃんだった。
 ねえ、ミィちゃんと美樹ちゃんは双子だよね。
 同じ性格で、同じ顔だよね」

違う。違うよ。
どこが似てるって言うの。
ぜんぜん違うじゃない。

「それなら、傍にいてくれる美樹ちゃんを、僕は選ぶよ」

そんな。
そんなことって……。

「僕は、美樹ちゃんのことが好きだ」
617夢と魔法の王国 第五話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/27(月) 04:05:39 ID:t422ztSe
「あはっ」
そのとき。
「あははははっ」
ワタシは笑っていたのかもしれない。
ワタシは泣いていたのかもしれない。
壊れた。
なにかが、ワタシの中で壊れた。
ワタシは笑っていたし、泣いていた。
もういい。
全部教えてあげる。
なにもかも嘘っぱちだって教えてあげる。
「いいことを教えてあげようか」
ワタシは拓の耳元に囁いた。

「――美樹は男だよ」

あはははっ!
そのときの拓の表情といったら!
「……そ……そんなの、嘘――」
「嘘はつかないって、さっき言ったろう」
そう、それは拓が誓わせたことだ。
だからこそ、拓はワタシの言葉を否定できない。
「アイツは女装が趣味なんだよ。女に混じって、それで自慰にふけっている変態。
 スカート履いてチンコおっ勃ててるような変態なのさ。
 あははははっ。拓はそんな変態に欲情してたってわけだ。
 ああ、拓。可哀想な拓。
 泣くことはないぞ。ワタシがいるじゃないか。
 拓のこと、ワタシは理解ってる。
 ワタシだけは理解してるっ!」
ワタシは頬の筋肉を無理やりに引き上げて笑った。
びくん、と拓が震えた。
「ねえ、拓」
ワタシはできるかぎり穏やかに語りかけた。
子供を優しく諭すように。
赤ちゃんに言い聞かせるように。
「ねえ、拓。お願いだよ。
 拓はかしこいから、わかるだろう?
 拓とあいつは結ばれないんだ。
 どんなに想われても。どんなに想っても。
 二人は絶対に結ばれない。
 ねえ、ワタシなら拓を愛せるんだ。
 拓。拓。たくぅ……。
 拓も、ワタシなら愛せるだろう?
 だから、ね? ワタシにしよう?
 拓は、ワタシを愛してくれるよな?」
私はそっと、彼を抱きしめた。

抱きしめた。抱きしめた。抱きしめた。抱きしめた。抱きしめた。
抱きしめた。抱きしめた。抱きしめた。抱きしめた。抱きしめた。
抱きしめた。抱きしめた。抱きしめた。抱きしめた。抱きしめた。

ワタシの腕の中で震えていた拓は、
「う、うん、わかり、ました」
――ぎこちなく頷いた。

もう、絶対に離さない。
618夢と魔法の王国 第五話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/27(月) 04:06:46 ID:t422ztSe
<エピローグ>
『美樹ちゃん? 拓だけど。……えっと、話があるんだ』

『うん、わたしも、話がある』

『いまから、僕の学校の体育館裏に来てくれる? あそこなら誰も来ない』

『わかった』

『待ってるから』

『うん』



言われなくても、授業が終わってすぐに、わたしは拓ちゃんの高校に向かっていた。
告白するつもりだった。
真実を、わたしの口から話すつもりだった。
わたしは深呼吸した。

いよいよだ。
619 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/27(月) 04:07:40 ID:t422ztSe
最終話は1レスで終わるんで、このまま一気に投下しちゃいます。
少々お待ちください。
620夢と魔法の王国 最終話 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/27(月) 04:08:40 ID:t422ztSe
<エピローグ>

急いで体育館裏に向かった。
これからいう言葉を、心の中で何度も練習する。
鼓動が高鳴る。
きっと大丈夫だ。
拓ちゃんは受け入れてくれる。
だから、拓ちゃんにきちんと言うんだ。
わたしは男なんだ、って。
「男なんだって?」
「え?」
わたしは拓ちゃんを見た。
拓ちゃんは見たことのない目をしていた。
「ミィちゃんから聞いたよ。僕をずっと騙してたんだね」
「た、拓ちゃ……?」
なにがなんだかわからなかった。
拓ちゃんの目が恐い。
なんで?
どうしたの?
わたしはただ拓ちゃんに触れたくて、一歩、踏み出した。
そこで、足を払われた。
「きゃっ……」
地面に倒れこんだわたしの上に、拓ちゃんがのしかかってくる。
痛い、痛いっ!
う、動けないっ!!
わたしの上に乗っかったまま、拓ちゃんがわたしのスカートに手を掛ける。
「い、いやっ……いやだっ……」
わたしは涙を流して必死に暴れるけれど、
拓ちゃんは完全に上に乗っていて、ひっくり返すことも抜け出すことも出来ない。
ビリビリと、スカートが破られていく。
冷酷に、無情に、わたしの正体が暴かれていく。
……やがて。
「やっぱり本当なんだ」
そう言う拓ちゃんの目が、ひどく冷たかった。
まるでムシかゴミを見るような目で、わたしを見下ろしていた。
どうしてそんな目で見るの、拓ちゃん。
わたし、ずっと、ずっと、好きだったのに……。
「これからは僕に近付かないでくれよ……変態さん……」
そう言い残して、拓ちゃんは去っていった。
一度も振り返らなかった。
あとには、わたしだけが取り残された。
地面が冷たい。
立ち上がる気力さえない。
ずっと待っていても、拓ちゃんは戻ってこなかった。
誰もこない体育館裏で。
わたしは、ずっと泣き続けた。
621 ◆sF7o7UcWEM :2006/03/27(月) 04:09:43 ID:t422ztSe
これで終わり。

拓ちゃんが風見鶏すぎてアホス。
本当にただのクズだなぁ。

>>446
殴っていいよ。
622名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 05:07:22 ID:dnsWB1Y+
( ゚д゚) ……これで終わり!?

(つд⊂)ゴシゴシ

(;゚д゚)

(つд⊂)ゴシゴシ
  _, ._
(;゚ Д゚) …?!
623名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 09:10:25 ID:rmQN04kD
ナンダコレ?
624名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 09:43:28 ID:JH7RfqkI
拓ちゃんをぶん殴りたい
625名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 09:49:12 ID:VnX/o/gq
GJ!!
だからこそ無理を承知で叫んでみる。

続編キボン!!!!!!

正直続きが読みたくて仕方ないです。
626名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 11:05:13 ID:0gDJYxJS
何か凄い展開だなぁ・・・。
まあ、これはこれでいいのかもしれない。
とりあえず、お疲れさまー。
627名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 12:14:55 ID:ryCtKMb3
今回投下分は、これで終わり、って意味じゃないの?
628名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 12:27:03 ID:5jkvdVlR
>>620
乙です!
拓ちゃんもそりゃあ信じていた人に騙されていた事を知ったらキレるよなぁ…。
629名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 12:46:44 ID:cMnUkxjH
>>620  乙!
展開が完全に想定外だ。
これはなかなか面白い。
630不撓家の食卓 第二話『帰還』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 15:44:46 ID:4gzxxvRj
夢の中で、俺は天野を蹂躙していた。
これが夢である事なんて一瞬でわかる。
天野と俺は恋人でも何でもないのだから。
だが一糸纏わぬ天野が四つん這いになっている姿を見れば、
健康で文化的な最低限度な男は皆同じ行動をとるだろう。
俺とて、天野にこんな願望を抱いている事は否定できない。
天野は…美人さんだからな。
 じゅく…じゅく…
気のせいか、肉が擦れ合う音が聞こえたような気がした。
それになんか…感触がリアルすぎやしないか?
手でさすった時の感覚を遥かに凌駕しているこの感覚は…
 ちゅば…ちゅば…
「怪しい、おかしい、変だ!?」
 ガバァッ
「…あっ」
「………!!?」
眼前に広がるは俺の部屋、そして俺のアレに舌を這わせている見知らぬ少女であった。
「おはようございます、兄上」
「俺に妹はいねええぇぇっっ!!」
何が悲しくて俺は朝っぱらから絶叫しなくてはならないのだろうか?
俺は何もしていない、断じてしていない。(願望はあったが)
だが、この少女は全く動じてはいなかった。
それどころか、ゆっくりと…まるで未だに夢の中に居るのではないかと錯覚させるほど艶かしい動作で俺の上に伸し掛かってきたのだ。
「兄上、私の方は準備ができております」
「なっ!?」
そう言って見せられた女性器は、確かに見てわかるほどに濡れていた。
初めて見るモザイクの無いソレは、一瞬にして俺の脳に焼き付き興奮を促す。
…て、今気がついたがTシャツ以外何も身に着けていないじゃないか!
「…いきます」
 くちゅ…
天に向かってはち切れんばかりに怒張しているモノが、入り口に触れた。
俺がこの子と一線を超えるのにもはや1秒の時間すら必要としないだろう。
この時点で俺は、考えるのをやめていた。
「いくなあああぁぁぁっっっ!!!」
 ゴッ!
「はぐっ…」
はっきりと言おう、俺はこの時追い詰められていた。
だから俺がこの少女のアゴを目掛けて全力で拳を放ったとしても、
一体誰が俺を責められるのであろうか?
…ごめんなさい、動転していました。
後に残ったのはぶっ倒れて目を回している半裸の少女と、もはや取り返しのつかない程に勃起している俺だけであった。
なんと言うか…なんとなく惨めな気分だ。
とりあえず俺は少女の言っていた『兄上』の真偽を確認するために、親父の姿を探す事にした。
631不撓家の食卓 第二話『帰還』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 15:46:03 ID:4gzxxvRj
「親父、居るか」
居た、親父は店内の椅子を定位置に運んでいた。
「おはよう。勇気、驚くのは良いが悲鳴を上げるのはほどほどにしてほしいのだが」
…と、親父は眉一つ動かさずにこんな事をのたまいやがった。
「聞こえていたなら助けろよ…」
「なんだ、何か妙な事でもあったのか?」
ここでようやく親父の表情が変わった。絶対何か知っていやがるな、こいつ。
「親父、知っている事を全部話せ、残らず話せ」
「英知から何も聞いてないのか?」
「えいち…?」
はて…どこかで聞いた事があるような気がする。
「なんだその顔は、まさかとは思うが忘れたのか?」
昔…それこそ気が遠くなる程の昔に聞いたような気がする。
「わ・す・れ・た・の・か?」
思い出せ…思い出すんだ不撓勇気、たしか俺が幼稚園児だった時に…
「…あっ!」
「ようやく思い出したか…」
そうだ、なぜ忘れていたのだろう。
「お袋の名前!」
「全然違うっ!!!」
…あれ、おかしいな。
「………」
「………」
「まあいい、忘れたのならもう一度話そう」
「…ごめんなさい」
「英知はお前の妹だ、もっとも実際に会うのは初めての筈だがな」
「妹…?」
そう言われればそんな事を聞いたような気がする。
「そうだ、今から15年前に英知は産まれ、そして今まで楊貴と共に暮らしていたらしい」
「楊貴ってのは?」
「…一度お前の頭を切り開いてみたい」
「…ごめんなさい」
親父、冗談だよな…背筋が寒くなったぞ。
「不撓楊貴(ふとう ようき)、こっちがお前の母親の名だ。二度と忘れるな」
ああ、それでようやく思い出した。
俺が今まで写真ですらお袋の顔を見た事が無いのは、お袋が妹と共に家を出て行ったからだったんだ、
…いや、正確に言うならば妹が産まれるまでの約2年間はお袋の顔を見て育ったらしいのだが、
残念な事にその頃の記憶は非常に曖昧だ。
「親父、それならなぜ今頃になって英知がこの家に来たんだ?」
「………」
「…親父?」
「それは…本人から聞いた方が良いだろう。私とて全容を知らされている訳では無いのだからな」
「英知に…?」
どうやら、親父から聞き出せるのはここまでらしい。
「…兄上」
いつの間に目覚めたのか、そこには先ほどの少女が立っていた。
632不撓家の食卓 第二話『帰還』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 15:47:05 ID:4gzxxvRj
「英知…なのか?」
「はい…兄上」
15年ぶりの兄妹の再会、だが俺にはイマイチ実感が沸かなかった。
当然か…実際に会うのはこれが初めてらしいからな。
まあ、そんな事はどうでもいい。
今は英知に聞かなければならない事がある。
だけど…なんとなくだが、聞いてはいけないような気がした。
聞いてしまっては二度と戻れなくなるような、大切な何かを失ってしまうような、
そんな嫌な予感がした。
だがしかし…聞かなければ何もわからない、何もわからないまま終わらせるのはもっと嫌だ。
随分と長い思案のを経て、俺は意を決した。
「英知…」
 カランッ カランッ
「おはようござ…い…」
大槻よ…前々から思っていたのだがお前はタイミングが悪すぎやしないか?
今になって思い出したのだが、英知の身を隠す物はTシャツが一枚あるのみであった。
 カチャッ
それになぜ一介の高校生がそんな危ない物(ベアークロー)を持ち歩いているんだ?
「このっ…ド変態っ!!」
最後にもう一つ、なぜ俺を攻撃するんだ…
俺はそんな事を考えながら、意識を手放した…
「くぅ…このっ…」
…あれ?
「兄上に手を出す事は私が許しません」
それは、まさに信じられない光景であった。
英知の右腕からまるで茨のような物が伸び、大槻の右腕を拘束しているのだ。
「あなた…何者なの?」
「兄上の…不撓勇気の婚約者です」
『いつ婚約したんだ!』と、言いたいがぐっとこらえる俺。
「ふざけないでっ!婚約者は私よっ!!」
『お前も対抗するなよ!』と、良いたいが口が裂けても言えない俺。
「兄上っ!」「不撓君っ!」
今度はこっちに矛先が向いてきた、てかもう勘弁してくれ。
「「いったいどうゆう事→→ですかっ!」
           ↓→なのっ!」
お前ら実は仲良いだろ。
「………」
「………」
「………」
嫌な沈黙が辺りを漂う。
いったい何なんだこの二者択一っぽい雰囲気は。
だいたい俺は婚約を交わした記憶は全く無いぞ。
まあ流石に2歳の頃に交わした約束は覚えてはいないが、その頃の英知は0歳だ、覚えている訳がない。
大槻の方は…たぶん英知の言い分をブラフだと考え、それに対抗するために自分も同じ手を使ったのだろう。
そう考えると、まず俺は英知からできるだけ多くの情報を引き出すべきだな。
633不撓家の食卓 第二話『帰還』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 15:48:00 ID:4gzxxvRj
「英知…」
「なんですか?兄上」
 カランッ カランッ
「不撓さん、大丈夫ですかっ!」
天野…お前もか。
「………」
「………」
「………」
「………」
「大丈夫…ですか?」
流石の天野も状況が読みきれないらしい。
まあ当然な話だ。ベアークローを構えた大槻とそれを茨のような物で拘束している半裸の英知、
その二人に睨まれている俺、さらに黙々と開店準備を進める親父。
そして最後にパジャマ姿の天野。
この場面を見ただけで事情が理解できる奴は本物の超能力者だ。
…って、パジャマだとおおおぉぉぉっっっ!!!
「不撓…さん?」
い…いかん、思わず叫び出しそうになったしまった。
だが、それほどまでに天野のパジャマ姿は破壊力抜群であった。
全身真っ青でなんのプリントもされていないシンプルな物だが、その質素さが天野にマッチし、かつ清楚さを引き立てている。
さらにやや大きめのサイズが天野の小柄な体を強調しているが、決して嫌味の域に入らない絶妙なバランスを保っている。
そう、まさしく絶妙なバランスだ。大切なのは本人、服装はあくまで本人のための引き立て役である。
その点天野のパジャマは、引き立て役に終始しつつ、それでいて決して無視できない存在感がある。
天野…本年度のMPP(モースト・パジャマ・プレイヤー)は君で決まりだ。
「不撓君、何をジロジロみているのかな?」
いかん、大槻と英知の事をすっかり忘れていた。
しかも間の悪い事に俺の服装もパジャマ、つまり万が一アレが勃起してしまうと俺にはそれを誤魔化す術は無いのだ。
「兄上、どうしたのですか?」
いかん、これ以上天野のパジャマ姿を見ているのは非常にまずい。
なんでもいい、何か別の物を考えるんだ。
別の物…別の物…別の物…
だからって天野の全裸を想像してどうするんだあああぁぁぁっっっ!!!
634不撓家の食卓 第二話『帰還』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 15:48:54 ID:4gzxxvRj
 カチャッ
「不撓くーん、どーしてそんな場所が急に元気になるのかなー…」
わーい、大槻スマイルand二刀流だー。
二日連続で見られるなんてラッキーだなー。
「兄上、溜まっていらっしゃるのなら毎日私がお相手いたしますよ」
とか言いつつ英知の腕から出ていた茨は大槻の拘束をやめ、まるでドリルのように寄り集まっていた。
「ごめんねー、最近私忙しかったから不撓君溜まってたんだよねー…」
大槻はあくまでブラフ攻勢を緩める気は無いらしい。
だがな大槻、いくらなんでもお前がそんな事できる訳が無いだろう。
「私なら毎日何度でも兄上の溜まった欲望を満足させてあげられますのにねえ」
ナイスだ大槻、お前のお陰で英知の矛先が俺から外れた。
「こーやって胸で挟むの大好きだったよねー、貧相な誰かさんには無理だろうけどねー…」
勝手に俺の過去を捏造しないでくれ、俺は無実だ。
「私はまだ若いですから、兄上が協力してくださればいくらでも大きくなれますよ」
お前らたしか2歳差だったよな?
俺の記憶が正しければ二年前の大槻の方が大きかったぞ。
「そんなの不撓君は待てないよねー、それに貧乳はなにをやっても貧乳だよー…」
大槻、今の言葉で全ての女性の半分を敵にまわしたぞ。
「あんまり無駄に大きいと垂れるのが早いですからね、あなた10年後に鏡を直視できます?」
英知、それはいくらなんでも禁句だ。
「あ…あの…不撓さん」
「違うっ!断じて違うっ!ブラフだっ!ハッタリだっ!」
「………」
「………」
「………」
「………」
まずい…非常にまずい…
このまま何のフォローも無いと天野はこの二人の言葉を信じかねんし、大槻と英知は今にも暴れ出しかねん。
何か無いのか…何かこの状況を打破する方法は無いのか…
635不撓家の食卓 第二話『帰還』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 15:50:02 ID:4gzxxvRj
「勇気…遅刻するぞ」
「「「…え?」」」
現在8時10分、正門が閉まるまであと10分。
「て…て…店長!どうしましょう、開店時間が…」
「やむをえまい、今日は一時間遅らせて9時に店を開けよう」
「ご、ごめんなさい。私のせいで…」
「かまわんよ、そんな事より早く学校に行きなさい」
さっきまで大槻スマイルを浮かべる程に怒り心頭していた大槻であったが、
親父の一言で一瞬にして冷静になり、今度は逆に狼狽し始めた。
だが状況は俺も同じ。いや、既に登校準備を全て終えている分だけ大槻の方が遥かにマシだ。
天野にいたっては一度自宅に帰らなくてはならないのだ。
天野の家がどこにあるのかは知らないが、おそらく遅刻は確定だろう。
「え…っと、お邪魔しました」
「待った。天野、ちょっとだけ待っててくれ」
「…え?」
 ドタドタドタ…
そう言うや否や俺は二階への階段を駆け上り自室に駆け込む。
えっと…これでもない、これでもない、これでもない、あった!
 …ドタドタドタ
「天野、これ羽織って行け」
私服用のジャンパーだ、洋服掛けに無造作に掛けてあっただけだったので探すのは簡単だった。
「あ、ありがとうございます」
「勇気、それに…天野さんだったかな?」
「はい、天野友美といいます」
のんきに自己紹介してる場合かよっ!
「これも持って行きなさい」
 シュッ
「わ…とっと」
そう言って親父は俺達に銀紙で包まれた物を投げてよこした。
「あの…これは?」
「おにぎりだ、休み時間にでも食べなさい」
「ありがとうございます、頂いていきます」
気のせいか…親父の方が感謝されてないか?
 カランッ カランッ
天野は走り去って行った。
結局何のために来たんだか…
「不撓君、遅刻しちゃうよっ!」
「わっ…そうだった」
「兄上、制服と鞄を用意しておきました」
そう言ってワンピースを着た英知が制服と鞄を持ってきた。
「サンキュー」
俺は速攻で受け取り自室へ…
「…て、ちょっと待て」
「はい?」
「何でお前が制服と鞄の場所を知っているんだ?」
あれは脱衣所に置きっぱなしだったはずだ。
「はい、今朝偶然見つけました」
そう言って英知はえっへん、と胸を張る。
良かったな天野…僅差でお前の勝ちだ。
「不撓君っっ!!」
「わぁー、ごめんなさいごめんなさい」
 ドタドタドタ…
636不撓家の食卓 第二話『帰還』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 15:51:07 ID:4gzxxvRj
 キ〜ン コ〜ン カ〜ン コ〜ン
四時間目が終わり昼休みとなった。
…しかし今朝は酷い目にあった。
大槻と英知の対立もそうだが、そのせいで俺は駆け込み電車のごとく正門に挟まれたのだ。
しかも大槻は俺が当直の先生の注意を引き付けている隙に、まんまと塀を飛び越えて突破していたのである。
結局大槻はセーフ、俺はアウト。
天野に至っては学校に到着したのが一時間目の中ごろの話である。
だが今は嘆いても仕方が無い、今の俺に必要な物は購買である。
当然の話だが今日の大槻は弁当を作ってはいない。
すると俺が昼食を調達する方法は二つしか無い。すなわち購買か外食かだ。
最後に俺のカンが購買に行けと伝えてくるので、今日の昼食は購買の弁当かパンに決定したのだ。
 ガヤガヤガヤガヤ…
購買に到着。
番場が言うには、外食組が居る分だけ購買は他校に比べて空いているらしいのだが。
しかし正直に言って、これのどこが空いているのかと番場を問い詰めたくなる。
だいたいどこが最後尾なのかわからんし、そもそも列になっているのか?
よくもまあ天野は毎日ここで買い物できるものだ。
…などと思案していると、最前線から見知った顔が這い出してきた。
「天野」
「あっ…不撓さん」
「もう買い終わったのか?」
「はい、不撓さんも今日は購買ですか?」
「まぁ、今日はいろいろあったからな」
そう言うと天野は、笑っているような困っているような複雑な顔をした。
「ところで、何か天野のオススメはあるか?」
「そうですね…私はこのサンドイッチが気に入っているんですけど」
そう言って天野は自分が買ってきたサンドイッチを見せてくれた。
「そっか、じゃあ俺もそうするかな」
 ガヤガヤガヤガヤ…
「………」
「………」
「…不撓さん?」
「…なんだ?」
「もしかして、買い方がわからないんですか?」
「………」
「あの…私が買ってきましょうか?」
「…スマン」
情けない男が一人居た。
「はい、まかせてください」
そう言って天野は俺から小銭を受け取ると、再び人混みの中に潜り込んでいった。
いや、突き進むと言った方が正しいかもしれない、明らかに何人かを押しのけていたと思う。
「フライング摂政ポセイドンッ!」
「うわらばっ」
…何だ今のは?
片方は天野の声だったような気がするが…気のせいだよな。
その数秒後、天野は無事サンドイッチを手に入れ俺の前に舞い戻ってきた。
「お待たせしました」
「大丈夫だったか…?」
「はい、慣れてますから」
…やめよう、さっきのは聞いちゃいけないような気がする。
俺達は購買を後にした。
637不撓家の食卓 第二話『帰還』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 15:51:59 ID:4gzxxvRj
 ガチャンッ
旧校舎屋上に到着した。
適当な場所に腰をおろし、先ほど購入したサンドイッチにかじりつく。
「なるほど…なかなかいけるな」
「でしょう、お気に入りなんですよ」
そう言う天野の顔は本当に嬉しそうだ。
さて、せっかく二人きりになれたのだ。今の内に押し倒…もとい、あの事を聞いておこう。
「なあ天野、なんであの時あのタイミングでやって来たんだ?」
そう、英知が帰ってきた理由も気になるが、これも聞いておくべきだ。
天野のあの時の行動は、あたかも俺の危機を察知していたかのようだった。
そうでなければ開口一番『大丈夫ですか』などと言える訳がない。
「…昨日、不撓さんに良くない事が起きると言いましたよね」
「ああ、言ったな」
記憶力に自信は無いが、流石に昨日の事は覚えている。
もっとも、危うく植物人間になりかけたがな。
「あの時は近い内に、と言いましたが、私の見立てではあと一週間前後の事だと思っていました」
「ま、まさか一週間後にこれ以上ややこしい事が起こるのか?」
いくらなんでもこれ以上立て続けに事件が起きたら俺の気力が持たんぞ。
「いえ、起こらないとは限りませんがその可能性は低いはずです」
「本当か!?」
「はい、私が予知した災いは今朝すでに始まっていました」
「そうか…」
とすると、昨日天野は英知の帰還を教えてくれていた訳か。
「そういえば、なんで天野は今朝パジャマ姿だったんだ?」
「あの、お恥ずかしい話なんですが…今朝、星が不撓さんの危険を教えてくれた時に頭が真っ白になってしまいまして…
気がついたら不撓さんの家に向かって走り出していました」
「そ、それは災難だったな…」
おかげで俺の目の保養にはなったが。
「天野、この騒動がいつ頃収まるのかはわからないのか?」
「すいません、いつかは収まるはずなんですけど、それがいつ頃なのかはちょっと…」
「そっか…ごめんな、無理言って」
天野は少しだけうつむいたが、すぐにまた俺の目を真っ直ぐに見つめて言った。
「不撓さん、これだけは覚えておいてください」
それは昨日と同じ眼だった。天野がこの眼をしている時は、どうしても何かを伝えなければならない時だ。
「『今は嘘になんかならない』と言う言葉が有ります。ですが、予知は嘘にする事ができます。」
「どうゆう意味だ?」
「人の運命は絶えず流動しています。ですから、どんなに精巧な予知でも必ず綻びが出ます。
その人に強い気持ちがあれば、予知は嘘にだってなるんです」
一つだけ昨日と違う点があった。今の天野に恐怖は無い、あるのはきっと…強い決意。
「わかった、絶対に忘れない」
だから俺には、こう答える以外に思いつかなかった。
638不撓家の食卓 第二話『帰還』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 15:52:50 ID:4gzxxvRj
サンドイッチを平らげてからも、俺達は話し続けた。
だけどそれは、本当にどうでもいい話だった。
試験の話、天気の話、この町の話、思い出話。
本当にどうでもいい事だったけれど、本当に大切な話だと思った。
天野が笑って、俺がからかって、天野が少し怒って、俺が謝って、今度は二人で笑って。
それはいつもの昼休みだった。
この時だけは、俺は自分の身に起こっている災厄を忘れ去っていた。
「ところで不撓さん」
急に天野がずいぃっと身を乗り出してきた。
「な…なんだ?」
顔が近い、顔が近い、顔が近い…
「大槻さんが言ってた事は本当ですか?」
「な…んな訳ねえだろっ!」
距離を取るために後ずさる。
かなりなさけない姿だが四の五の言ってはいられない。
「本当ですか…」
「あたりまえだ。仮に俺と大槻が愛し合っていたとしても肉体関係になる事は無えよ」
「えっ…」
やばい、今とんでもない事を言ったような気がする。
「い…いや、違うぞ、別に俺と大槻は恋人でも何でもないんだからな」
馬鹿か俺は…自分で言っておいて自分で白々しいと思っている。
 キ〜ン コ〜ン カ〜ン コ〜ン
なんてタイミングが悪い、こんな時にチャイムが鳴るなんて。
「ごめんなさいっ!」
「おい、天野…」
 ガチャンッ
行ってしまった…
「何をやっているんだよ、俺は…」
639不撓家の食卓 第二話『帰還』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 15:53:42 ID:4gzxxvRj
「性交渉恐怖症?」
「そうだ、今の大槻陽子は性交渉に対してトラウマを抱いていると思われる」
「そっか…まあ無理も無いよな」
「今の所は吐き気を催す以外の症状は確認できていないが、それ以上はどうなるか予測がつかん」
「治らないのか?」
「俺も何個か手は打ってあるが、半年では完全に治すのは無理だろう」
「そんな…」
「そんな顔をするな勇気、完全には治らんが日常生活に支障が出ないようにはなるだろう」
「本当か!?」
「当たり前だろ、俺は医者だぞ。もっとも、あの件に関しては当たり前の日常を繰り返す他に無いがな…」
「なら、俺はどうすれば良い?」
「勇気、お前は大槻陽子をどうしたい?」
「どうゆう意味だ?」
「お前はこれ以上大槻陽子を守るつもりなのか?」
「そんなの当たり前だろ」
「勇気、人間一人守ろうと言う事は言葉ほど簡単な事ではない。そいつが抱える全ての物をまとめて背負っていくだけの覚悟が必要だ」
「………」
「もう一度聞く、お前に大槻陽子を守る覚悟はあるのか?」
「………」
「………」
「わからない…だけど俺は、あの子を守りたい」
「………」
「………」
「不合格だな…だが追試くらいは受けさせてやろう」
「追試?」
「いつか必ず、この問いをもう一度受ける時が来るだろう。その時までに答えを考えておけ」
「…わかった」
「それともう一つ言っておく、大槻陽子を守るのなら自分から手を出してはならない」
「………」
「経過が順調なら、大槻陽子はいずれ自分から性交渉へと手を伸ばす日が来るだろう」
「わかった」
「忘れるなよ、いつか必ず追試を受ける日はやってくる」
「わかった、その日までに…必ず答えは出す」
640不撓家の食卓 第二話『帰還』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 15:54:51 ID:4gzxxvRj
 キ〜ン コ〜ン カ〜ン コ〜ン
 ハッ!
いかん、どうやら眠っていたようだ。
既に五時間目は終わり休み時間に入っている。
流石は伊藤、催眠教師の名は伊達ではないのか。
…と、そんな事はどうでもいい。
今は天野に話を聞いてもらわなくては。
 ガララララッ
「不撓君、ちょっと来てっ!」
大槻、実はわざとやっているんじゃないのか?
しかも天野はもう居ねえし…
やむをえず俺は大槻の居る廊下へ行くのであった。
「で…何の用だ?」
「不撓君、口裏合わせて」
「…頼むからもう少し詳しく説明してくれ」
それでわかったら俺は超能力者だ。
「疑われてるの、あの自称妹に」
自称もなにも、たぶん本物だと思うぞ。
「疑われてる…て、何が疑われてるんだよ?」
いかん…ちょっとイライラしてるな、俺。
「朝に言ってたハッタリ」
「そのまま真実を暴露してしまえっ!」
「………」
「………」
あ…流石に言い過ぎたか。
大槻が滅多に見られない泣きそうな顔になっている。
641不撓家の食卓 第二話『帰還』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 15:55:40 ID:4gzxxvRj
「…それで、俺は何をすればいい?」
「う…うん、えっとね…」
駄目だ、全然辛気くさい雰囲気が消えない。
さっきから俺は何をやっているんだ。
「とりあえず、店にいる時だけでも名前で呼んで欲しいかな」
「つまり…偽装恋人か」
少しありきたりだが、効果はあるかもしれない。
問題は…天野に更なる誤解を与える可能性がある、て所か。
「なあ大槻、何もそこまでやる必要は無いんじゃねえか?仮にも俺と英知は実の兄妹なんだぞ」
「駄目だよっ!」
「ちょっ…大槻、声が大きいぞ」
一応ここは天下の往来、平たく言えば廊下だ。
現に大槻の声を聞いて振り返る人がちらほらと見えていた。
「あの子は本気だよ、女の子だからわかるよ」    
「本気って…」
「あの子は本気で不撓君を手に入れようとしてる、それでもいいの?」
「それは…非常にまずい」
どんな事情があるのかは知らないが英知は妹だ。
今の俺に近親相姦を容認する理由は無い。
「私だってそんなの嫌だよ。だから…お願い…」
大槻の泣きそうな顔は久しぶりに見る。
三年前に失って…大槻が日常の中で取り戻していった感情だ。
何をやっているんだ不撓勇気…三年前のあの日に、俺は大槻を守りたいと言ったじゃないかっ!
「俺からも頼む…」
「えっ…?」
「偽装恋人を…やってくれ」
642不撓家の食卓 第二話『帰還』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 15:56:33 ID:4gzxxvRj
「起立、礼」
放課後になった。
六時間目の授業も、ハッキリ言って全く聞いていなかった。
天野にどんな言い訳をすれば良いのだろう?
そんな事ばかりが頭に浮かんでいた。
とにかく天野に偽装恋人の件も含めて事情を話そう、さもなくば間違い無く誤解を深めてしまうだろう。
「天野…」
 ダアッシュッ!
逃げられた…
全く、一体何がどうなっているんだ?
 ガララララッ
「不撓君、一緒に帰ろう」
やむをえん、天野が『Phantom Evil Spirits』に来ない事を祈りつつ…
今は先に英知の方をなんとかするしかあるまい。
天野の件はまた明日にしておくしかないな。
俺は意を決して大槻と共に帰路についた。
 カランッ カランッ
「勇気君、それに陽子ちゃん、お帰り」
鈴木さんが出迎えてくれた。
微妙に肩透かしをもらった気になるが、ここで気を抜く訳にはいかない。
「鈴木さん、あの子は?」
「あの子…英知ちゃんの事かな?」
「はい、そうです」
「うーん、あの子はピークを過ぎてから外出してるからな…ちょっと僕にはわからない」
「「外出!?」」
どうやら大槻も初耳らしい。
「そうだよ、店長も行き先は知らないみたいだけど、何処に言ったんだろうね?」
「すいませーん」
「おっと、仕事仕事…」
鈴木さんはレジへと向かった。
微妙どころか…完全に肩透かしをもらってしまったな…
「………」
「………」
「…陽子、一応聞くがどうする?」
「とりあえず、仕事しよっか…」
「そうだな…」
結局、閉店時間が過ぎて大槻が自宅に帰るまで英知が帰って来る事はなかった。
643不撓家の食卓 第二話『帰還』 ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 15:57:22 ID:4gzxxvRj
「…で、結局英知は何処に行ってたんだ?」
夕食時、俺は英知に尋ねてみた。
「はい、不死鳥学園に転入手続きをしに行ってました」
…What!
「明日からは私も兄上と同じ学校に通いますので」
なんですとっ!
「………」
「………」
「………」
…あっ、親父も固まってる。
「…て、ちょっと待て、お前確か15だったよな?」
「はい、戸籍の事なら既に偽造済みです」
「………」
「………」
「………」
戸籍を偽造できる奴なんて一人しか居ない。
しかも英知と知り合いでも何の疑問も無い。
「マジか…?」
「マジです」
俺も親父もこれ以上何も喋れなかった。
この騒動は、当分の間は収まりそうもないと…俺は悟った。
644不撓家の食卓 次回予告 ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 15:59:19 ID:4gzxxvRj
三年前のあの日…不撓勇気は一人の少女と出会った。
彼にとってそれは…産まれて初めての『守りたい』人だった。
次回、不撓家の食卓『Three years ago』にご期待ください。
645不撓家の食卓 おまけ ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 16:00:15 ID:4gzxxvRj
 カランッ カランッ
「お客さん、まだ準備中ですよ」
「父上、ただいま帰りました」
「…父上?」
「はい、お懐かしゅうございます」
「…英知か!?」
「はい」
「英知、楊貴は…」
「………」
「………」
「そうか…」
「父上…」
「謝らないでほしい、実の娘を恨みたくはない」
「…はい」
「………」
「………」
「父上、兄上はいらっしゃいますか?」
「勇気の事なら奥の階段を上って左の部屋だ」
「はい、では…」
646シベリア! ◆IOEDU1a3Bg :2006/03/27(月) 16:04:24 ID:4gzxxvRj
第二話はいかがでしたでしょうか?
『おまけ』はこんなやり取りもありましたが、不撓勇気は知らない事なので、
こちらで紹介させていただきました。
なお、私はしばらく用事がありますので、
第三話はおそらく一週間ほど間が開くと思われます。
647名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 16:36:04 ID:+F1IV3h/
これから、キレた美樹ちゃんの猛反撃が始まるわけですね!?
648名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 17:45:24 ID:dnsWB1Y+
そして2人が争っている隙に横から天野がかっさらっていくという事か!
649名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 17:50:57 ID:oLt8ay50
俺はこれはこれでいいかも。
美樹は美衣にひどい事したからなぁ。
でも続編キボン
650名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 18:32:06 ID:YLqgHRun
>>194
亀レスだが載せとく。
誰かこれで書いてくれないかな……
ttp://az1.jp/2ch/u-chan/
651名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 18:51:37 ID:Xw2cibl+
>>620
俺もこれは自業自得だと思うなあ。
続編は美樹がいい男を捜し求めてハッテン場を旅する話だな。
652名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 19:50:17 ID:tU8/gScI
>>621
えーと、美衣ちゃんは拓ちゃんとずっと同じ学校に通っていて、
美樹ちゃんは拓ちゃんが好きだけど、男である事を隠す為に中学
から別の学校に行ってたって事?この双子が恋敵になったのが
いつ頃なのか良く判らなかった。スマソ。

双子モノならではの相手に成り済まして周囲の評判を落とす戦法で
美衣ちゃんを孤立させ、母親の趣味で嫌々女装させられている旨を
拓ちゃんに伝えて同情させれば実は男だったと言うハンディを乗り
越えて拓ちゃんをウホッの道に引きずり込む事も出来ただろうに。
美樹ちゃん勿体ナス。
653『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/03/27(月) 20:40:24 ID:rSx7VQyL
敵、迫レリ
朝食から俺への攻撃は続いた。
大体なんで朝から鰻?ニンニク料理?
しかも俺だけみんなより量覆いヨ!
「うわ〜。おいしそ〜」
こら!志穂!!ちったぁ疑いを持ちなさい!!
「たくさん作っちゃったんで、お昼と夜も同じ料理でいいですか?晋也さん。」
『カレーじゃねぇんだよ!!こんな料理何度も食えるかぁ!!!』
と叫んでテーブルをひっくり返せるほど度胸は無い。だってチキンだもん。
「コケコッコ(いただきます)」
食べようとして箸に手を伸ばすと……
「あれ?お嬢は?」
よく見たらお嬢がいない。これじゃあ流石に食べられない。
「おかしいですねぇ〜。声を掛けたら返事があったんですけど……もう一度見てきますね。」
そう言い残して食堂を出て行く。残された二人。
「お嬢が寝坊だなんて珍しいね。」
「ん!?あぁ、そうね。」
このやろー。普段どおりに喋りやがってる。昨日俺たちはやっちまったんだゾ!
もう幼馴染みからは卒業しちゃったんだよ!!
なんだか自分でも分かる。今までと志穂を見る目が違う。
なんつーか……女を感じる。あのうなじといい、太股のラインといい………ん?スカートがいつもより短い!
ヤロォ。挑発してるなぁ。
「うっ」
イカンイカン。もう一品加わるところだった。
「どうしたの?うずくまって。」
確信犯じゃあないあたり恨め無い。
誤魔化そうとして料理に鼻を近付ける。
「ン〜。いい匂だ。早く食いたいぜ。」
「へぇ…そんなに里緒さんの料理食べたいんだ……私の料理はそんなにがっつかないくせに。」
自爆
こいつ、更に嫉妬深さが増している。
前はこんなんじゃなかったのに。
「ばっか!そうじゃない!!昨日の夜に激しい運転したから腹減ってるんだ!!!」
赤面
作戦終了。オヴァ?
654『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/03/27(月) 20:42:04 ID:rSx7VQyL
「晋也さ〜ん。志穂ちゃ〜ん。」
気が抜けそうな声で里緒さんが入ってくる。
「はい?」
「は…ど、どうかしました?」
志穂、再起動。
「佐奈様がいないんですよぉ。探すの手伝ってくれます?」
「はい!よろこ……」
ギロ!
「…了解、サー。」
そしてわがまま姫の捜索は始まった。
「晋也!あんたは私と一緒に探すの!!」
「えぇ〜。効率悪いじゃん。」
「あんた一人にすると何するか分からないからね。監視よ。」
二人っきりになって何かするのはお前でねぇの?
俺は第二次レイプ合戦に身構えるのであった。
「でも……お嬢、ここんところおとなしかったのに。久々ねぇ。」
探し初めて10分。屋敷の二階へ上る階段で志穂が口を開く。
「そだねー」
「あれ?お嬢の無くし物ってなんだっけ?」
「自制心じゃなかったかナ?」

代々この屋敷の所有者と、そこに仕える人は、生まれると同時に人としての『何か』を失う。それに気付くのはそれなりに年を取ってからだ。
その重度や頻度も人様々。その結果現当主の老人はほとんど廃人と化してしまった。
その『無くし物』を取り戻してからやっと屋敷を出れる。
失ったまま町へ出ると周りの人に迷惑をかけてしまう。だから取り戻すまでこの広い檻の中で暮らさなくてはいけない。
「そういやさ、里緒さんの無くし物ってなに?」
「キャアーーーー!!!」
突然屋敷中に響く悲鳴。
「里緒さんの声よ!!」
「里緒さぁーん!今すぐ駆け付けますヨー!」
いたた!!走りながら抓んないでよ、志穂。





広い屋敷を目まぐるしく駆け回ると、書庫の前で里緒さんが座り込んでいた。その腕からは血が流れていた。
「やや!どないしよっと!」
「お嬢様がいきなり包丁で襲いかかってきて……」
「な、ナンダッテ!?」
そいつぁアブねぇ。あの娘子、限度ってもんを知らねえからな。
「それでお嬢様は?」
向こうの客室の方へ指をさす。
「ほら!晋也、行くよ!」
「お、オラは里緒さんの治療を……」
「包丁もってるお嬢相手に、私一人で行けっての?」
(お前なら勝てる)
そう言う暇も無く腕をつかまれ引っ張られてしまった。
言ったら手刀という刃を食らうもん。
悲しいかな。この屋敷で一番権力の低い俺は言いなりになっていた。
655『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/03/27(月) 20:43:19 ID:rSx7VQyL
トリップを忘れてしまいました。
すみません(つд`)
656名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 22:03:27 ID:4KNvDH5Y
おもしろくなってきた
657名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 22:24:59 ID:TGH6OO1e
不撓家の食卓 の天野は、ただの不思議ちゃんなのか、それとも策士なのか・・・
今後の出方に個人的に期待。
658沃野 Act.8 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/27(月) 22:29:48 ID:KLO1nd8x
「先輩。遅参ながら荒木麻耶、ただいま駆けつけました」
 いつの間にか下級生の頭がちょこんと横に来ていた。背が低くて視界に入らなかったのか。
「呼びもしないのに……本当、邪魔なときだけ来るよねー」
 と頬に手を当てて溜息をつく胡桃。口振りは冗談めかしていて、わざと憎まれ口を叩いているように
装っているが、目は笑っていなかった。
「はい、目を離している隙に先輩が頭のおかしなビッチさんに咬まれて狂犬病になってはかないませんので」
 まじめくさって頷く荒木は、早速俺の鞄を奪って手を握ろうと虎視眈々の構え。
 ゆら〜りゆら〜りと脱力させた腕でしきりに間合いを計っている。
「あはは、荒木さん、ヤンキーゴーホームって言葉知ってるかな?」
「おや、もしかすると綾瀬先輩は戦前とか戦中とかのお生まれですか?
ははあ、さすが昭和製は違いますねえ。なんとも秀逸なアナクロニズムに言葉を失います。
何せ、ほら、私と先輩は平成生まれの人間ですから。温故知新の驚きでいっぱいです」
「頭がおかしいのはあなたじゃないかな荒木さん、わたしも平成生まれよ?」
「なら言わせてもらいますが綾瀬さん、私も日本人ですよ? ヤンキーと言われても何十年か前に
絶滅・化石化した、深夜の学校の窓ガラスを割って盗んだバイクで走り出す種族のことしか連想できません」
「バイクは盗まないけど、人の男は盗む気満々な子なら、わたしも簡単に連想できるよ」
「盗むだなんて……綾瀬さん、洋平先輩はモノじゃありませんよ? 取った取られたとか子供の喧嘩
みたいな言葉を使うのはやめていただけませんか」
 罵り合いの中でさらりと言われたものだから、俺はうっかり聞き流してしまった。
 聞きとがめた胡桃が文句をつけたことでやっと気づいた具合だ。
「……ちょっと、荒木さん? いま、よーくんのことなんて呼んだの?」
「え? 洋平先輩、って。いけませんか?」
「何、それ」
 わなわなと全身が震え出している。
「なんであなたがよーくんのことを洋平なんて呼ぶの?」
「いえ、ちゃんと後に『先輩』ってつけてま」
「黙って!」
 叫ぶ胡桃。何かが彼女の逆鱗に触れたようだった。
「おい、胡桃、どうし……」
「よーくんのことを……よーくんのことを……よーくんのことを……」
 息が荒くなっていく。取り乱そうとする自分を抑えるかのように目をきつくつむっている。
「よーくんのことを、名前で呼んでいいのは……」
 搾り出すような声で。
「……わたしだけなんだから……!」
 ゆるゆると目蓋を開き、細目の、激昂をギリギリで耐えている表情。繋いだ手にも震えが伝わる。
「だから……! よーくんに向かって図々しい呼び方、しないでくれる……!?」
 まったく余裕のない、必死な声。
 それを、荒木は。ちょうど俺と出会った頃の頑なで冷ややかな顔つきで迎え。
 見下ろされているのに見下しているような、不思議に高圧的な光を目に湛え。
 鼻で笑いながら言った。

「バカみたい」

 瞬間、荒木の頬が鳴った。
 止める間もない、流れるような平手打ちだった。
 手を振りぬいた胡桃は、荒木に対抗して温度の低い表情を顔に貼り付かせていた。
 ゾッとする。
 こいつは出会った頃の生意気な時期ですら、こんな顔をしたことはなかった。
 けど、一度だけ。胡桃がこうやって体温をなくした相貌に変じたのを見た記憶がある。
659名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 22:33:05 ID:cVp/qT5E
ttp://sylphys.ddo.jp/upld2nd/niji7/src/1143466184973.jpg

一応優柔の椿ちゃんのつもり。
外見に関する情報が少なくてみんなのイメージとは違うかも。スマソ。
660沃野 Act.8 ◆1IgBlOP8QY :2006/03/27(月) 22:36:34 ID:KLO1nd8x
 小学校五年生。親しくはなったがまだ胡桃の花は色づいてなくて、何の衒いもなくあいつを「友達」と
呼ぶことができた、ひどく穏やかな時代にその記憶は収められている。
 俺とあいつは同じクラスだった。俺は今と変わらずヘタレで、成績も運動もパッとせず、周りのウケを
取れるような面白い子供でもなかった。胡桃と遊んでいてからかわれたり冷やかされたりしても、
本気のやっかみはほとんどなく、なんにも気兼ねしないで過ごしていられた。
 けれど、胡桃の方はそうもいかなかったようで。男子をガキ扱いして大人ぶる早熟な女子たちに、
彼女は少し妬まれていたようだ。まだ体は大して膨らんでいなくて発育の度合いは並程度にしても、
周りと比べて容貌が綺麗だったのだ。「可愛い」ではなく一歩先に進んで「綺麗」の域に達していた
胡桃を、特別気に掛ける女子児童がいた。
 その子は際立って美人でもなかったが、不美人というほどでもなかった。大人だったら君だって
充分可愛いし綺麗なんだから自信を持って、と個性尊重めいた言い回しで励ますところだろうが、
つまるところ、女子の社会は比較論だったみたいで。きっと、「充分」では不充分なのだ。
 容姿以外での面に優れていたのに付け加えて、その子が気になっている六年の男子が胡桃へ想いを
寄せているという噂もあった。その噂の真偽については寡聞にして知らないが、噂があったこと自体は
聞いている。その子の内側で妬みが何倍にも増幅されたに違いない。
 鬱屈の結果として彼女が採択したのは真っ向勝負ではない。単なる憂さ晴らしだった。
 端的に言うと、胡桃とやたら仲の良かった男子──つまり俺にベタベタとまとわりつき、馴れ馴れしく
することで胡桃にイヤガラセしようと考えた。
 尋常な仕掛け方では勝てないと悟ったからそんな真似をしたのだと思えば少し哀れに思うが、憂さ
晴らしで仲の良いフリをされるのは俺にも迷惑だったし、胡桃にとっても不快だったようだ。
 しばらくは我慢を強いていた様子だったが、やがて口論になった。
 別に付き合っているわけじゃないんでしょ、本気になってバカみたい──
 笑われて胡桃はグッと詰まった。当時の俺はガキすぎて付き合うとかどうとかってことを意識する
頭はなかったから、胡桃とてうまく言い返せなかったのだろう。いや、よく考えると今も同じ状況か。
 とにかくそれで当の子はいっそう調子づき、何ならあたしと付き合わない──と媚びてきた。
 冗談なのは分かりきっていたし、「やだよ」とすげなく断ってやった。
 えー、んなこと言わないでさー、洋平──
 そいつが俺の名前を口にした瞬間。胡桃の表情がスッと削げ落ちた。

「よーくんを……呼び捨てにするな」

 怒気を顕わにするよりも怖ろしい、何かが欠けた無表情だった。
 生意気だった時期の胡桃は平気で俺のことを「洋平、洋平」と呼び捨てにしていたが、険が取れて
朗らかな笑顔を見せるようになったあたりから、親しみを込めて「よーくん」と口ずさむようになった。
いくら小学生たってそのあだ名は恥ずかしい、と抗議したけど聞き入れてくれなかった。
 いっそ以前と同じく呼び捨てにしてくれた方が楽なのに、俺も胡桃をそうしてるし、って言ったら。
「ダメだよ、あの頃のわたしとはケツベツしたんだから」
 と胸を張り、「うーん、でも」と考える素振りを見せて。
「もし……わたしとよーくんが、恋人としてお付き合いするよーになったら、そのときは改めて
よーくんのことを、『洋平』って呼ぶようにするから、それまで待ってくれないかなぁ」
 と。にっこり笑って、「だから、よーくんも、他の子に名前を呼ばせないでね」とも付け加えた。
 てっきり新手のジョークだと思って間に受けなかった。すぐに思い出さなくなった。
 単に胡桃以外で女友達ができなかったから、野郎にしか「洋平」って言われなかったのだ。

 ひょっとすると、胡桃にとっては。
 「洋平」という、俺のありふれた名前が聖なる盟約になっているのかもしれない──

 胡桃が本気を出してしまったから、あの喧嘩はあっさり幕を引いて後に続くということがなかった。
 そして今思えば胡桃の花も、あの時から肥大化を始めたような気がする……
661名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 22:48:15 ID:SaHCHYj+
そろそろ本気で修羅場モードかな?
662名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 23:05:09 ID:v6wK6Pcb
>>654,660
GJですっ

修羅場…イイ( ゚∀゚ )/

663名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 23:13:51 ID:RM2hBj+k
今日は投下が多いな。もう450kb近いよ。

明日にでも次スレを立てることになりそうだが、スレタイは前スレ735の
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 四面楚歌
でいいのかな。
5スレ目だと…五体不満足?
664名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 23:22:01 ID:5jkvdVlR
私は四肢切断に一票です

>>658-660
さすがですw
コメディとシリアスの落差が激しいですね…。
665名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 23:27:50 ID:nKP5BGLm
>>659
GJ!!
てか、皆さんすごいね
666名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 23:36:37 ID:IEcJabtU
麻耶タン、昭和生まれを馬鹿にしないでよう・・・

>>659
ちょ、さりげなくスゲーうまいなw
真ん中と右下の迫力が伊達じゃないw
667名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 23:42:35 ID:ptxlmGuF
>659さんは職人ですか?
668名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 23:47:37 ID:L9WUR2Jn
>>663
まだ平気
次スレは500KB超えてからでいい

それと、今後も数が増えていくことを考えると
あまり凝らずに普通に○スレめでいいと思う
669名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 23:48:38 ID:QesZxXeK
>>659
GJ!!
オレ的には左上はゆう君に先輩とセックスしたと言われた時の顔だな。
670名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 00:55:16 ID:IaDCfFN/
>>659
神キタコレ!右下の娘に刺されたい(゚∀゚;)
671名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 00:56:02 ID:a9tYXSg0
たくさん投下されてるな
672名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 01:25:03 ID:dqpIMywY
毎日たくさん投下されてるよな。作者様方に感謝。
673名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 01:35:08 ID:MzD6w0Ca
>>659
神キタ━━━━━━\(T▽T)/━━━━━━ !!!!!
この調子で先輩も頼みますm(_ _)m

>>668
この板は500KBで書き込めなくなるから490超え位で立てれば良いんじゃないかな
674名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 01:39:44 ID:62KC/tmr
早いなぁ…まだこのスレ立ってから半月だってのに
675名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 01:52:52 ID:HfSIWE/6
>>674
しかも量だけ多いんじゃなくて質も高いし。
676名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 02:16:03 ID:P01bV4ty
>>663
あなたを殺して私も四にます
というのはどうか。
長いか。
677名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 02:25:53 ID:D2lKbTCG
>>659
激GJ!!

こんな具合に神が降臨すると自分も何か書きたくなるな。
678名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 02:40:14 ID:kk5LSok1
>>663
五人ばやし(早死)
昔どっかの官能系推理で5Pのことをそう書いていた記憶がw

……なお、このスレで五人も手を出せば早死にどころでは無い。
679名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 03:06:21 ID:AP0upItp
>>654>>660
作者様GJです、毎日の疲れた心がこのスレによって癒される(*´д`*)
680もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/03/28(火) 03:58:04 ID:WSN3q/84

"茜、最近、俺の部屋に入った?"


……え?
あの日、お兄ちゃんと腕をくんで帰ってから二日後の朝、いきなりお兄ちゃんがわたしに尋ねてきた。
何か少し怒った感じ……。
どうしたんだろう?


わたしはひとまずお兄ちゃんの質問に答える。
"入って、ないよ"
わたしには以前、お兄ちゃんの部屋に勝手に入り、お兄ちゃんが大事にしてた日本代表の加地のユニフォームを破いてしまい小一時間泣きながら説教された苦すぎる思い出がある。
それ以来、わたしはお兄ちゃんの許可なしでお兄ちゃんの部屋に入った事はない。



その話はおいといて、お兄ちゃんの少し怒った感じの態度が気になったわたしは、逆に質問してみた。
"どうか、したの?"
お兄ちゃんは少し怪訝な顔をしたが、すぐにフッと笑い、
"いや、何でもない。きっと、気のせいだ"
と答えた。
その顔からは怒りの色はすっかり消え、もう、いつもの優しいお兄ちゃんに戻っていた。




支度をととのえ、普段通り、わたしはお兄ちゃんと一緒に学校へ向かう。

学校に着き、下駄箱でうわばきに履き替えようとしたところで、わたしはうわばきの上にちょこんとのっているあるモノに気付いた。


……こ、これは、もしかして……ら、ラブレター……?

あまりの衝撃的な出来事に、わたしは時が止まったかのように、下駄箱の前から動けなくなった。

しばらく動けずにいると、後ろにいたお兄ちゃんが不思議そうな顔でわたしをのぞきこんでくる。

わたしはお兄ちゃんの視線に気付き、大いに慌てたが、なんとか笑顔でごまかし、急いでラブレターとおぼしきモノをカバンにつめこんだ。

なぜか、それをお兄ちゃんに見られたくなかった。
681もし、神様がいるのなら……。 ◆CWcv3gVh3I :2006/03/28(火) 04:53:35 ID:WSN3q/84

放課後、わたしは一人屋上への階段を登っていた。



今朝、下駄箱に入っていた手紙はやっぱりラブレターだった。
誰にも見付からないようにトイレの個室で何度も確認したから間違いない。
だけど、そのラブレターの内容はわたしが想像してたモノよりもかなり短い内容で
「放課後、屋上に来てください。伝えたい事があります」
としか書いてなかった。もちろん差出人の名前もない。

ただ男の子にしては、丸っこいかわいい字で書かれていた事がひどく印象的だった。





屋上の扉を開けると、強い風がわたしを吹き抜けていく。
……寒く、なってきたなぁ。
少し肌寒い風に、秋の気配を感じる。


わたしは風に誘われたかのように、ゆっくりと屋上を歩き出した。



……あれっ?

どうやら、屋上には先客がいるみたい。
わたしと同じ制服のキレイな女の人……。


あの人は………知ってる。

名前は高山 円香さん。
わたしの一個上で、お兄ちゃんと同い年。
そして、わたしと同じ、数少ない耳の聞こえない障害児。


わたしが円香さんの方に歩を進めると、円香さんもわたしに気付いたようで、にっこりと笑いかけてきた。
女のわたしでも思わずドキッとしてしまう天使のような笑顔で……。

相変わらずキレイな人だなぁ……。

わたしは、自分と円香さんの体を比べて思わず溜め息をつく。
スタイルもわたしのぺったんこな体とは対照的……。うらやましいなぁ。






…………それにしても、円香さんはどうしてこんな時間にこんな場所にいるんだろ?
682名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 05:56:52 ID:qPB5J8oo
うおー。何か修羅場の予感キター!
更に、お兄ちゃんの部屋侵入されていそう・・・
とにかく茜ちゃん、その高い所から逃げてー、飛んで逃げてー!
683名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 08:56:26 ID:FlkrJNE+

と う と う 絵 師 が き た っ

やはりそのあれですよ、闇上目遣いが最高だと思うんですよ
他のも見てみたい!
684名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 10:57:33 ID:4ktYPB7V
高いところはやばいんじゃ(((( ;゚Д゚)))
685名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 12:10:47 ID:kqi5l2m0
茜ちゃん、それラブレターじゃなくて果たし状ー!
686 ◆kQUeECQccM :2006/03/28(火) 12:15:46 ID:FlkrJNE+
!ご注意!

手元に「さくらむすび」のサントラがある方は、是非それを聴きながら読んでください。
雰囲気が出ます。
 ………
 ……
 …
 
 穏やかな春の陽射し。
 甘く匂い立つ花の香り。
 遠くでさえずることりのこえ。
 
 それらを全身に浴びて、わたしはいま、おとぎ話のような風景の中にいる。
 
 いちめんのなのはな。
 いちめんのなのはな。
 いちめんのなのはな。
 
 誰もが知っている、有名な詩の一節。
 水平線の向こうまで連なる、広大な菜の花畑を前に、
 
「これが全部、サラダ油の原料になるのね……」

 隣で写真を撮っていた、大学生と思しき男女がずっこける。
 
「あ、あのねえおじょーちゃん、この風景を見てそれはないでしょう……」
 頭を抱えながら、プラチナブロンドの女性は立ち上がる。
 男性の方は苦笑いを浮かべながら、膝についた土を払っている。
 
「キミくらいの歳で、そんなに枯れた感性でものを言ってどうするのよっ。
 もっとこう、少年期らしい率直な、それでいておとなをハッとさせるような発言をお願いしますっ」
 女性はしゃがみこんで、わたしと視線の高さを合わせる。
 今気付いたが碧眼だ。日本人ではないらしい。
 ともすればこの金髪は地毛なのだろうか。てっきり染めているのかと思った。
「それは大人の勝手な物言いね」
「あらま、おませさんだこと。でもね、子供のうちは子供でいたほうが楽よ?
 大人になったら、嫌でもそうやって現実を見て生きていかなきゃいけないんだから」
「知ってるわ」
 さすがに面食らったのか、男女はお互い顔を見合わせる。
「……ねえ、お嬢さん。お歳はいくつかな?」
 男性の落ち着いた声色が耳に心地いい。優しげで、ちょっと我が家の大黒柱に雰囲気が似ている。
「女性に年齢を尋ねるのは失礼ですよ」
「……あはは、は、は。ごめん、ごめんね」
 
----
 
 数十メートル先で、うんうん唸りながら構図に迷っている男性を、
 ベンチに腰掛けながら件の女性とふたりで眺める。
 女性はシノダと名乗った。あの男性と結婚しているらしいので、きっと男性の苗字なのだろう。
「で、もみじちゃんは家族で旅行に来たんだ?」
「はい」
「何人家族?」
「五人です」
「あやや、今時珍しく大家族さんだ」
「うちはちょっと特殊なので。それでも稼ぎ頭は3つありますから、
 経済的に困窮しているわけではありません。むしろ裕福な部類に入ると思います」
「……。なんか、すごいね、もみじちゃん」
「そうですか」

「シノダさん」
「アリサでいいよ」
「では、アリサさん」
「何かな?」
「アリサさんは、どうしてあの男性と結婚したんですか?」
 シノダ―――篠田さん、もといアリサさんは思いがけなく真剣な顔になり、それからにっこりと笑った。
「お互いに、愛し合っていたから、かな……」
 自分で言っておいて、やんやんやん、と身をよじるアリサさん。
 ちょっとかわいい。泣かしたくなる。
「結婚する上で、何か問題はありましたか」
「たくさんあったよ。何もない人のほうが珍しいんじゃないかな」
「……差し障りなければ、教えてくださいませんか」
「そんなに固くならなくても大丈夫だよ、怒ったりしないから。
 ……そうだねえ、やっぱり私が純粋な日本人じゃなかったのが大きいかな。
 彼の実家がね、旧いおうちだったから、親戚のひとたちも頭が固くて。
 悪口も、ひどいこともたくさん言われた。思い出したくないくらいに」
 
 ほんの一瞬だけ、アリサさんの顔が悔しさに歪んだのを見てしまった。
 
「それでもね、彼は庇ってくれた。だーれも味方がいないのに、私のために戦ってくれた。
 そして勝ってくれた。だから、私たちは今こうして一緒にいられるの」
 
 そう言って微笑むアリサさんは、とっても綺麗だった。
 
「……末永く、お幸せに」
「……うん、ありがとう」
 春の陽気にあてられたのか、気がついたらアリサさんの膝枕で寝入ってしまっていた。
「……ああっ、ごめんなさい」
「ううん、いいの。難しいこといっぱい知ってても、やっぱり寝顔は天使だねっ」
 ほっぺたをつつかれる。
「うにうに、うにうに、ほりゃっ、うにうにー」
 されるがままになっていると、遠くからわたしの名を呼ぶ声が聞こえる。
「もみじちゃん、もしかしてご家族かしら?」
「ひゃい」
「ああごめん、あんまり気持ちいいものだから」
 あわてて解放される。
 
「……おぉ〜〜〜〜〜い!」
 大きく手を振りながら、焦げ茶色の農道をショートカットの娘がやってくる。
 せいぜい年の頃は十七、八といった体格に見えるが、いかんせん動作が子供っぽいので幼くみえる。
「お姉さんかな? まさかお母さんじゃないよね?」
 わたしはそれに微笑で応える。

「はあ、探したよぅ、はあ、もう、はあ、どこに、行ってたのかと、はあ、思ったぁ」
 わたしをダブルスコアで圧倒する身長を持つ少女が、肩で息をしながら私を責める。
 溌剌としているが、喋りかたが如何せん間延びしているせいで眠くなる、というのが周囲の評価である。
「ここ」
「そういう屁理屈言わないでよぅ。
 お父さんも、お母さんたちも呼んでるよっ。そろそろお弁当にしようって」
「そうね、じゃあ行きましょう」
「もう、お姉ちゃんったら都合がいいんだからぁっ。
 おにーさんにおねーさん、うちのお姉ちゃんがご迷惑をお掛けしましたっ。
 それじゃっ。……ほらお姉ちゃん、早く行こうよおっ」

 後ろを振り返ると、篠田夫妻が唖然とした表情を浮かべていた。
「「お、お姉ちゃん……?」」

 わたしはそれにスリーピースサインで返答すると、妹の後を追った。
 
----

「杏樹(あんじゅ)、あんたねえ、もう少し落ち着いたらどうなの?
 ある程度の年齢を重ねてなお天真爛漫っていうのは、褒め言葉じゃないわよ」
「うーん、そんなこと言われても。
 そんなこと言ったら、お姉ちゃんは外見と内面のギャップが激しすぎるよっ。
 もっとこう、かわいい感じのほうがラヴリーでキュンって感じだよっ」
 その、フィーリングだけでモノを言う癖はやめてほしいと切に願っている。
「肉体が成長しないだけで、精神は普通に成長しているのよ。
 それをあんたときたらカラダばっかり大きくなって。
 とてもじゃないけど、“あの”樹里かあさんから生まれたとは思えないわね」
「ううー。それ、みんなに言われるから気にしてるのにー」

 わたしの家庭は少々複雑な事情を内包している。
 父親がひとりに対して、母親がふたり。
 しかもその片方は、父の実妹であるというから驚きである。
 社会的な問題もあり、わたしには戸籍上父親がいないことになっているが、
 真実はきちんと家族会議でわたし達姉妹に伝えられた。
 
 全ては結果論でしかないが、わたしには遺伝的欠損があり、肉体の成長が極めて遅い。
 その代わりというのか、わたしの知能は常人のそれを軽く上回る、らしい。
 まあそんなことは、わたしからすればどうでもいいことだ。
 五体満足といえばそうだし、そのことで周りからどうこう言われた記憶はない。
 むしろ周囲からはマスコット扱いされ、
 黙っていても学校の机の上にどんどんお菓子がたまっていく有様だ。
 これ以上の幸せがどこにあるというのだろう。
 
「いやー、それにしてもすごいねぇ。いちめんのなのはな。いちめんのなのはな。いちめんの……」
「あんた、本当にそればっかりね」
 この子は杏樹。わたしのもうひとりの母親である、樹里かあさんの娘だ。
 実は、わたしと歳が数ヶ月しか変わらないのである。
 年子なんてレベルじゃないのである。
 どう考えても同時進行だったのである。
 最近は、あまり考えないようにしているが。
 
「でも、来てよかったでしょー?」
「……そうね」

 生きた土を踏む感触。
 移り変わる太陽の光で時間を読むよろこび。
 エンジンの音の聞こえない、静かな空間。
 どれもこれも、都会では得難いものばかりだ。
 
「それに、楓お母さんの絵本の新作完成祝いとぉ、お父さんの昇進祝いも兼ねてるんだからぁっ。
 私たち姉妹がもっと盛り上げていかないとぉっ!」
「はいはい……」
 
 ……。
 
 うれしいことがあったって、
 
 つらいことがあったって、
 
 わたしたちは歩いてゆく。
 
 どこまでも続いていく道を。
 
 あたたかな光の中を。
 
 五人で歩いた、はるの日を。
 
 [ END ]
692 ◆kQUeECQccM :2006/03/28(火) 12:20:25 ID:FlkrJNE+
 グッドエンド「いつつのかげ、とおのあしあと」
 
 まとめサイト管理人様。
 ノベルゲーム化してくださった方。
 レスを下さった方。
 ROMでも、ずっと読んでいてくださった方。
 長い間、本当にありがとうございました。
 
 とりあえず、
「妹(わたし)は実兄(あなた)を愛してる」
 完結でございます。
 
 思えば長かった、ほんの気まぐれで書き始めたのは良かったのですが、
 120KB以上という、自分でも最高サイズを記録した作品となりました。
 
 鮮血の結末を回避したことについては賛否両論あるでしょうが、
 もし要望が高ければもっと洗練させた状態で別(バッド)ルートを出したいと思います。
 
 さしあたってはえろです。外伝は自分のリビドーをこれでもかとぶつけた、
 淫語系えろすになります。多分。性癖とか言うな。頼むから。
 
 そういうわけで、とりあえず、じゃあね。

 ノシ
693名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 12:25:04 ID:gq579BOs
>>692
乙でした!!
さくらを聞きながら読んだら幸せな気分になりました!!
BadEndがあるなら悲しい決意をチョイスして読ませていただきたいです

本当にお疲れ様でした!
694名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 12:29:07 ID:2yBoJn2n
ありがとうありがとうありがとう
幸せを運んでくれてありがとう
695名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 13:01:14 ID:cvc+I7Kx
>>692
お疲れ様。
樹里が実に良いキャラだった。
主人公も真面目でいい奴だったし。
696名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 13:12:12 ID:IG5no+52
>>692
お疲れ様でした。
毎回楽しみに見させてもらってました。ありがとう。
ちょっと続編を見てみたい気もしますがw

そういやこのスレにしては珍しく主人公に対して「ウザイ死ね」コールがなかったような。
697名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 13:13:24 ID:Xz1Ds+z2

  \         /_ /     ヽ /   } レ,'        / ̄ ̄ ̄ ̄\
  |`l`ヽ    /ヽ/ <´`ヽ u  ∨ u  i レ'          /
  └l> ̄    !i´-)     |\ `、 ヽ), />/        /  地  ほ  こ
   !´ヽ、   ヽ ( _ U   !、 ヽ。ヽ/,レ,。7´/-┬―┬―┬./  獄  ん  れ
  _|_/;:;:;7ヽ-ヽ、 '')  ""'''`` ‐'"='-'" /    !   !   /   だ.  と  か
   |  |;:;:;:{  U u ̄|| u u  ,..、_ -> /`i   !   !  \   :.  う  ら
   |  |;:;:;:;i\    iヽ、   i {++-`7, /|  i   !   !  <_      の  が
  __i ヽ;:;:;ヽ `、  i   ヽ、  ̄ ̄/ =、_i_  !   !   /
   ヽ ヽ;:;:;:\ `ヽ、i   /,ゝ_/|  i   ̄ヽヽ !  ! ,, -'\
    ヽ、\;:;:;:;:`ー、`ー'´ ̄/;:;ノ  ノ      ヽ| / ,、-''´ \/ ̄ ̄ ̄ ̄
698名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 13:20:55 ID:oMfRD7Wn
>697
つまり第二部は異母姉妹の血で血を洗う激闘及び第二子の出産権をかけた闘いの同時進行が…
699名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 13:37:24 ID:oViq7Ken
>>692
なにかとても幸せな気分になりました・・・。
このスレの性質上、楓を最後まで疑ってしまいましたが
楓の告白は本心からの物だったのですね。
私はバッドエンドは無くても良いと思いますw
700名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 13:43:02 ID:gq579BOs
楓タンの愛は綺麗すぎて幸せになりました。
前に神作者様がうpしてくれた小学校の時のお話も良かったし。
701名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 13:53:04 ID:AP0upItp
>>692
本当にGJでした、いままでの感動をありがとう。゚(゚´Д`゚)゜。
まさに「 大 団 円 !」と言って良い素晴らしい幕引きでした
このような素晴らしい作品を創ったあなたに最大の感謝を。
702名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 14:25:59 ID:sLmuuUqz
>>692
乙でした。
あのままど修羅場に突入するかと思っててましたが
GOODENDでホッです

>>701
今まで「大団円」を「大円団」だと思ってたw
703名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 15:05:30 ID:62KC/tmr
ぐっじょぶ!
修羅場でも男に責任能力(あるいは甲斐性)があると幸せになれるのですね
修羅場って愛固まるとはこのことかーっ
704名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 15:09:10 ID:2yBoJn2n
>>700
神作者様がうpしてくれた小学校の時のお話

kwsk
705名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 16:04:04 ID:tkrUsL7T
>>704
まとめサイトにあるよ。
706名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 16:38:14 ID:/m1tF5Ns
>>702
実はオレもだw
707優柔 第24話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/28(火) 18:47:26 ID:eLAd7dZO
「近づくな・・・だって?」
「はい」
「お前・・・自分の言ってること分かってんの?」
「ええ、ちゃんと理解してますけど」
「なら自分がどれだけイカれたこと言ってるかも分かるよな?」
「イカれたこと?どういう意味ですか?」
「フラれたくせにいつまでもつきまとうストーカー女だって言ってんだよ!」
ふーん・・・私がストーカーだったらこのメス犬は何なんだろう。
「ストーカー?先輩もおかしなこと言いますね。ちょっと興奮してません?落ち着いて下さいよ」
「お前っ!!」
「ほらほら、そんな恐い顔しないで。ゆう君と一緒にいる時みたいな穏やかな顔、見せて下さい」
もの凄い顔。でもすぐに元通りになった。もう、無理してるのバレバレだよ。
「っ!!・・・そうだな、お前みたいなキ○ガイに熱くなってもしょうがないな」
「あら、汚い言葉。私そんなこと言われなきゃいけないことしましたっけ?」
「・・・いつまでも愛原に未練がましい態度を取ってるだろ」
「私はただ、ゆう君と仲直りしようとしてるだけです」
「・・・何だって」
「だから、ゆう君とはちょっと喧嘩してるだけですって」
「はあ・・・ここまでとは思わなかったよ・・・」
私の言葉に呆れたようにため息をついた。この人、表情がすぐ顔に出るみたいだね。
「何がです?」
「お前、フラれたんだよ?愛原に捨てられたの、分かる?」
「だから、まだ喧嘩してるだけで・・・」
「愛原が教えてくれたんだよ、僕は束縛されるのが辛くなって彼女と別れましたってな。だからお前は勘違いしてるだけなんだよ!」
「ならどうしてゆう君は私と一緒に下校してくれるんでしょうか?どうして一緒にお茶してくれるんでしょうか?別れたならそんなことしないと思いますけど」
「あいつは優しいからな。お前みたいなやつでも傷つけたくないんだよ!それだけだ!」
何、この女・・・ゆう君を知ってるみたいに言って!あなたにゆう君の何が分かるって言うの?
「ゆう君のことなら何でも知ってるようなセリフですね・・・確かにゆう君は優しいです。私の知っている男性の中で一番ね。それより先輩・・・ゆう君は何人目の男性ですか?」
「なっ・・・」
「先輩ぐらい魅力的な人なら男性経験は無いなんて言わないですよね?」
「・・・」
「・・・杉山先輩?」
「・・・あいつが初めてだ」
へえ・・・先輩処女だったんだ。意外だなあ。
「嘘・・・誰にでも股を開いてると思ってたのに・・・なんでゆう君に捧げたんですか?」
「そんなの決まってるだろ・・・アタシは愛原が好きだからだ」
私はこの女の答えに安堵した。
「そうですか・・・良かった・・・」
「えっ・・・」
「もしもあなたが軽い気持ちでゆう君としたんだったら・・・今すぐにでも殴りかかってましたから」
誰とでも寝てたらビョーキが恐いからっていうのも理由の一つなんだけどね。
708優柔 第24話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/28(火) 18:48:45 ID:eLAd7dZO
「とりあえず、もう1つ聞きたいことがあります」
「何だ」
「どうして先輩はゆう君と私の邪魔をするんですか?さっきから気になってたけど、先輩は部外者なんですよ?」
その通り。この犬は何でさっきから吼えてるんだろ。
「ふざけんな!アタシと愛原が関係ないわけないだろ!!」
「なら先輩はゆう君にとっての何なんですか?」
「アタシは・・・愛原と付き合ってる」
「あら・・・」
「アタシは愛原が好きなんだ。あいつもアタシが好きだ」
・・・数回エッチしただけで恋人扱いですか・・・あなたなんかみんなのオナペットなだけなんだよ?
男子の妄想の中で何百回も脱がされてるんだよ?みんなその身体が目当てなだけなんだよ?
ゆう君が本気になるわけないじゃないの。何を勘違いしてるんだろ、この犬畜生は。
「・・・本気で言ってるんですか、そんなこと」
「当たり前だろ。アタシ達はもう付き合ってるんだ。お前なんて愛原には必要ないんだよ!!」
「・・・」
何か馬鹿らしくなってきたな。この人ホントに頭いいんだろうか。
私が黙ってるのは何も言い返せないからだと思ってるみたいで、この女は勝ち誇ったように言った。
「愛原から聞いてるよ。お前、嫉妬深いんだってな。他の女子と喋っただけでヒステリー起こして、いつもあいつを束縛してたんだよな?アタシは違う・・・嫉妬に狂ってあいつを苦しめたりしない。だからもう身を引け」
あーあ、自分から墓穴掘っちゃって。
嫉妬深くない?なら朝のことはどう説明するんだろ。
・・・せっかくだからカマかけてみようっと。
「・・・ふふっ」
「何が可笑しい!」
「先輩・・・いいこと教えてあげましょうか」
「・・・?」
「先週末、つまり先週の土曜日ですか・・・私ね・・・ゆう君とエッチしたの」
「なっ!?」
「もう1回言いますね。私、ゆう君と久しぶりに愛し合いました」
「・・・・・・・・」
「あれ・・・どうしたんですか先輩。身体が震えてますよ?」
「くっ・・・!」
この女はブルブル震えている。顔もまるで般若みたいに。
もっと苛めちゃお。
709優柔 第24話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/28(火) 18:49:48 ID:eLAd7dZO
「ゆう君・・・凄かったなあ。久々だったから獣みたいに襲ってきて大変だったんですよ」
「・・・うそだ」
「ゆう君のちん○んをしゃぶってあげました。ゆう君ったら、汚い音を立ててフェラされるのが大好きなんです・・・知ってました?」
「だまれ・・・」
「私にワンちゃんみたいにお尻を突き出させて、乱暴に腰を振りました。その時のゆう君、息が荒くて・・・まるで動物の交尾みたいでした」
「やめろ・・・それ以上言うな・・・」
ああ恐いなあ。でも、まだまだ。
「それからね・・・ゆう君ったらいつも私にしてるように中にいっぱい出して・・・」
「やめろっつってんだろうがっ!!!!」

ドンッ!!

「痛っ・・・」
身体に走る衝撃。
状況を理解するのに時間が掛かった。
私はどうやら・・・先輩に両手で胸倉を掴まれて、ドアに押し付けられたみたい。
もう、痛いなあ。頭に血が昇りすぎたからって暴力は駄目だよ?
「あ・・・」
この女は我に返ったみたいで手を離した。
恐い恐い、さっき瞳孔開いたみたいになってたよ。
でもこれで分かった。この女は・・・
「・・・うふふっ」
「!?」
「ふふっ、あはっ、あはははっ、あはははははははははははははっ!」
私は笑いを堪えることができなかった。
この女への感情を表に出さなかった反動か、盛大に笑ってしまった。
「なっ、何笑ってんだお前!?」
驚いたように私を見る・・・って、あなたも結構なことしてくれたじゃない。
「先輩・・・さっき言ったこと・・・嘘です」
「えっ・・・」
「私・・・ゆう君とエッチなんてしてませんよ?」
「な・・・」
この女のあっけに取られた顔といったら!
私は再びやって来た感情を抑えて言ってやった。
710優柔 第24話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/28(火) 18:51:54 ID:eLAd7dZO
「今ので分かりました・・・先輩、あなたにゆう君を好きだなんて言える資格はありません」
私は続けた。
「あなたはゆう君を信じないで私の嘘を鵜呑みにした。私は違います・・・あなたの言うことなんて1つも信じてませんから」
「アタシは・・・」
「それに・・・ゆう君に初めてを捧げたって言いましたけど、迫ったのはどうせあなたからですよね?」
「くっ・・・」
「やっぱりそうですか・・・それから、ゆう君はあなたと付き合いたいなんて一言も言ってないんじゃないでしょうか・・・いえ、あなたが好きということもね。違いますか?」
「うっ・・・」
あーあ・・・痛い女。
「ああ、図星ですか・・・まったく、あなたという人は」
もう全部言ってやろう。
「・・・卑怯者」
「っ!?」
「ゆう君があなたと一緒にいるのは・・・可哀想だから」
「違う・・・」
「あなたはゆう君の優しさを利用してるだけなんです。嫌だと言えないのを良いことに恋人面してるだけです」
「違う!」
「違いません!!」
ゆう君はこんな女と・・・ああ・・・駄目だな・・・今すぐバラバラにして焼却炉で燃やしてあげたいよ・・・
「私はね・・・先輩と違ってゆう君を信じてるんです・・・喧嘩しても・・・浮気してもね・・・ゆう君を信じてるから・・・
あなたを八つ裂きにしてやりたいけど・・・抑えてるんです・・・ゆう君と付き合ってからまだ7ヵ月しか経ってないけど・・・
ゆう君を誰よりも理解してるの・・・本当に思いやりがあって・・・自分のことは後回しで優しくて・・・でも甘えん坊なんだ・・・
私ね・・・前は自分のことばっかりで・・・ゆう君を苦しめてた・・・でもね・・・今は違うの・・・ゆう君のために生きようって・・・もっと寛大になろうって・・・
私はね・・・ゆう君を愛してる・・・誰よりも・・・この世界で誰よりも!!」

「あ・・・もうすぐ授業が始まりますね。早く行かなきゃ」
「・・・待てよ」
「はい?」
この女は焦った口調で言った。さっきのような力強さはなかった。
「アタシが・・・アタシが愛原と付き合ってるんだ!お前なんかいらないんだよ!」
「またそんなこと言ってる・・・私、先輩の言うことなんか聞いてませんよ?」
未練タラタラ、そもそも私に言ってもしょうがないんじゃないかな?
「あなたはそのうち・・・ゆう君に嫌われます。その前に身を引いたほうがいいんじゃないですか?」
「待てよ!」
「待ちませんよ。ほら、先輩も早くしないと授業に遅れますよ?学校一の才女が遅刻なんて締まりませんからね」
私は振り返ることなく階段を下りた。
見なくても分かるよ、あの女の顔が。
711優柔 第24話  ◆I3oq5KsoMI :2006/03/28(火) 18:52:27 ID:eLAd7dZO
はい、私の勝ち。やっぱり人間は、ちゃんと論理的な主張ができなきゃ駄目だよね。
それにしても・・・さっき私の胸倉を掴んだ時の先輩、あれはちょっと危なかったかな。
すごい馬鹿力だったし、もし先輩がもっとキレてたら・・・素手で絞め殺されちゃってたかもね。

とりあえず正攻法でいったけど、あの調子じゃゆう君を諦めるとは到底思えないな。
もっと別の手段を考えようかしら・・・

あっ、授業に遅れちゃう。早く行かなきゃ。
712 ◆I3oq5KsoMI :2006/03/28(火) 18:55:47 ID:eLAd7dZO
>>659超GJです!
作者冥利に尽きるというものです。ありがとうございます!
713名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 18:59:39 ID:6YLldk+u
現在女の戦いは椿ちゃん優勢気味か。
しかし、ゆう君のゲージはどちらにも触れてないところがミソかw
714名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 19:05:48 ID:+b8nOI9R
>>712
椿ちんの方が冷静で逆に怖い。

>>692
このスレで珍しくハッピーエンドでしたね。
娘達の掛け合いほのぼのしました。続きも見てみたいですね。
最後に作者様今まで本当にお疲れ様でした。
715名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 19:59:50 ID:+YtMFDTj
椿ちゃんマジ燃え。舌戦においては圧倒的だな。

475kb超えたが次スレのスレタイは結局どうする?
問題が無いなら9時ごろにでも新スレ立ててくるんで、
「ここはこうした方がいい」
とかあったら教えて下さい。
716名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 20:01:42 ID:y8C57GYe
ゆう君はいつ死ぬのかな
717名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 20:07:23 ID:Uv2NpxJt
>>716
率直にモノ言い過ぎw
718名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 20:13:34 ID:8hz1056R
>>715
四面楚歌でいいんじゃない?
5スレ目以降は○スレでいいだろうけど。まだネタがあるうちはw 
719名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 20:41:26 ID:cQirR6R6
正確には512KBで書き込めなくなった筈。だから500KB超えてからでいいでしょ
それからすぐに12KBも埋まるわけ無いですし
720715:2006/03/28(火) 21:08:35 ID:+YtMFDTj
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 四面楚歌
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1143547426/

立ててきました。

>>719
雑談スレや過疎スレならこんな心配しないんだが、ほぼ毎日神SSが投下されているこのスレの現状を考えるとね。
神経質と笑ってくれてもいいよ。神が投下出来ない状況の方が困る(俺が読めなくなるから)。

では。
721名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 21:50:43 ID:yneKvEAm
>>720
乙!じゃあ新スレに乗り換えようか。
722名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 22:22:00 ID:cJmxRbLo
いやっ!
捨てないでっ ずっと一緒にいてくれるって言ったじゃないっ!
なんでもするっ!
なんでもするから、私だけを見てっ!
いかないでっ! 
いか…な…い…で……



……ひっく
うっ……くっ……うっ……

そっか…あのスレがあるから…
あの新スレがあるから…
あの新スレのせいで…

……ゆ る さ な い
723名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 23:07:16 ID:0p2AglqI
まだ初代スレも見られるってのに
dat落ちする前に3回も乗り換えてんだな
724名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 23:10:29 ID:ezVYeSbL
まあもう少しはこっちで良いと思うけど。
725名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 00:03:27 ID:0h+I/3tu
どう考えても、椿ちゃんは先輩に絞め殺されるフラグ立ったように思えるんですけど
基本的に椿ちゃんみたいな健気な女の子が酷い目に遭って、先輩みたいな女がいい目している
のがこの世の中だよな
726名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 00:17:14 ID:5oXZccZ0
ポイズン
727名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 00:24:26 ID:KK+MiQFN
ゆう君も絞め殺されそうだけどなぁ。
728River of Tears 第6回 ◆AuUbGwIC0s :2006/03/29(水) 00:33:19 ID:TzEgfe/e
 ――やっぱり買い物なんて付き合うんじゃなかった。
 独りぼんやりと缶コーヒー片手に雲ひとつない空を眺めながら、改めて思った。
 なんで女の買い物って奴はこんなに時間がかかるんだろう。文句を言おうにも男一人に女二人、分が悪すぎる。
 今二人は女性下着専門店の中にいる。自分には女連れとはいえ、そんな店に乗り込むような度胸はない。だから独り店先で待っている。
 このまま、こっそり帰ってしまおうか――そんな考えが頭をよぎる。
 ホント綺麗な空だ。

「ユウちゃーん!」
 空を眺めているといきなり抱きつかれた。うん、先輩だ。
「へー、これがアイの弟クン?」先輩の連れの人が言った。
 ――いえ、ただの先輩後輩です。
 いや、ただの先輩後輩なのかな――中途半端に親しすぎる関係が返ってそういう関係なのかどうか頭を狂わせる。
 いっその事、この場で思いをぶちまけてもいいかもしれない。
「んー、ここで荷物持って立っているってことは――うんうん、頑張ってね」
 先輩は何かに物凄く納得した顔で満面の笑みを浮かべ、大きく頷いていた。
 オレの背後には女性下着専門店。
 えーと、ようするにガールフレンド待ちの男の子って事ですか、オレ?
「いや、あの違うんですけど……」
「お姉ちゃんは邪魔しないからね、じゃあもう行くね」
 人の肩を思いっきり叩かれた後、言い訳も聞かず先輩は駆け足で去っていった。
 誤解、されたかな――
 頑張ってね、って事はオレに恋愛感情もっていないのかな――

「ユウ君、おもたせー」
 後ろから可奈の声がする。
「よーし次はユウの服買いに行こう。あたしが選んであげるから」続いて広子の声。
「ヤダ」服は間に合っている。
 ややオレのハートはブルー気味――
729River of Tears 第6回 ◆AuUbGwIC0s :2006/03/29(水) 00:33:48 ID:TzEgfe/e
        *        *        *

 最近ユウは丸くなった。
 こう言うとまるで昔荒れていたけど今は随分おとなしくなったって感じがするがそうではない。
 精神的な意味ではなく物理的な意味合い――オブラートに包まず言えば太ってきている。
 この間修学旅行の写真を確認したのではっきり言える。こいつが空手を止めたのもこの頃からだ。
 そしてユウの服の趣味は地味を通り過ぎてアレすぎる。あたしはこいつが、この数年単色無地の飾り気も何もない服以外着ていたことを見たことがない。
 そんなに顔も悪くないし、これ以上太らなければ髪型とか服とかも気遣えば結構光ると思うのに――

「なあ、お前って付き合っている人とか好きな人とかいるのか?」
 帰り道に何気ない感じでユウがあたしに聞いてきた。
「……いない」擦れる声が出ていた。
 付き合っている人はいないけど、好きな人はいる。直ぐ手の届く距離に――
「……ユウは好きな人とかいる?」
 聞き返してから、自分の耳が熱くなっているのがわかった。
 ――これって遠まわしに告白しているのかな。
「んー、いるけど……。なんか中途半端に距離が近すぎるって言うか……。オレの事本気で兄弟ぐらいにしか思っていないって言うか……
 おまけに前に付き合ってるだろ言われて否定しちゃったから、今更付き合ってくれとか言いづらいというか……」
 上目づかいで見てみるとユウは耳をかきながら、少し困った顔をしていた。
 距離が近すぎる、兄弟みたい、物心ついた頃から一緒に幼馴染だから当然だ。確か前に先輩に『デートか?』って聞かれて違うって言ってた。
 ――完全にあたしのことじゃん……
 心臓の鼓動の間隔がどうしようもなく短い。今凄いタイミング。何を言ったらいいのか分らない。
 口はわずかに動くが、言葉はでない。いや今向こうから言おうとしているから待っていればいいのかも。
「――相手もユウ君と同じ気持ちだよ、きっと」
 ありがとう、可奈。フォローしてくれて、やっぱり親友なんだね。
「……だといいんだけどな」
 ――そうだよ。

        *        *        *

 ユウ君、小学校の頃言った事気にしてたんだ――いつも一緒だったから、皆から恋人同士だろって言われた時違うって言ったこと。
 私そんな事とっくに気にしていないのに。
 最近ずっと一緒にいるから、とっくにそういう関係だと思ってたけど、よく考えたらまだちゃんと言ってなかったね。
 うん、私待っているから。
730River of Tears 第6回 ◆AuUbGwIC0s :2006/03/29(水) 00:34:47 ID:TzEgfe/e
        *        *        *

 さっきから広子は顔を真っ赤にしたまま俯いている。好きな人いるかって聞いただけでこれだ。こいつ告白された日にはどうなるんだ?
 一方可奈は幸せを隠し切れないって顔でニカニカしている。こっちは何が嬉しいんだろうか。

「うーむ……」
 別に今日は先輩に嫌われたとかそういう訳じゃないんだよな。
 むしろ励ましてくれたぐらいだから悪くは思っていないはずだ。
 でも、もし先輩が男の人と二人きりで仲良さそうにしてたら――ああ、これがヤキモチって奴なのか。オレやっぱり先輩のこと好きだ。
 先輩はヤキモチとか妬かないのかな……
「た、たた多分、ユ、ユウの、す、すすす好きな人……」今にも下を咬みそうな勢いで広子が口が震えていた。
 いや、広子お前まで無理して言わなくていい。お前にフォローされたとなると返って不安になる。
「――今度二人きりになった時にでも言ってみるかな」
 大丈夫だよな、きっと――
731River of Tears 第6回 ◆AuUbGwIC0s :2006/03/29(水) 00:36:34 ID:TzEgfe/e
<チラシの裏>
ようやくロクにヤキモチすら妬かないヌルイ展開から抜け出せそうな気がする……
</チラシの裏>
732名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 01:58:40 ID:/w+abzYY
ttp://sylphys.ddo.jp/upld2nd/niji7/src/1143564830190.jpg
優柔24話の
「ふふっ、あはっ、あはははっ、あはははははははははははははっ!」
のところ。なんか状況設定をきっちり確認してからかけばよかた・・・すんまそん。
733名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 02:06:40 ID:Uvm1kljA
やべ、脳内妄想のワンシーンと猛烈フィットしたwwwwwww
超絶GJ!!!
734名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 02:18:21 ID:SqiTMz4I
ゆう君はバラバラ殺人でしょ
735名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 02:21:26 ID:oV3SU165
>>731
ちょwwみんな勘違いし過ぎwwww
こうして修羅場が作られていくんだなぁ

>>732
GJ!!
テラコワス
736名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 02:29:06 ID:I78mTdbX
>>731
GJ!!です。
三角…いや四角関係か…?第7話期待してます。

>>732
上手すぎだってwww
737名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 02:35:24 ID:KiT3i0Nk
>>732
デラウマス
ラフ画も良かったですが、色が付くとさらにイイ(・∀・)
738名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 09:15:27 ID:l999keGm
>>731
その時は、じわじわと修羅場に近づいていることに誰も気づいていなかった……
誤解しすぎだからw

>>732
GJ!狂気が出てすごくイイ(;゚∀゚)=3ハァハァ
739名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 10:07:48 ID:5oXZccZ0
すばらしい・・・
ぶちきれもーど!ぶちきれもーどでーす♪
740名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 10:45:57 ID:TPrNV6ie
>>731
勘違いのせいで着々と修羅場フラグが立ち続けてるw
GJ。



昨日友達から聞いた話なんだけど、友達にはやたら弟大好きな女の子がいるらしい。
家に帰って彼女がきてたりするとガン睨んだりするし、
弟の携帯に彼女が出ると「明日、一緒に買い物しようって伝えて」とわざわざ彼女に伝言を頼むそうだ。
この話を聞いて思わずwktkしてしまった俺は立派な修羅場スレの人間になれたんだなぁと何となく感慨深くなってしまった。
741『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/03/29(水) 11:23:42 ID:8WVsKAWy
結局その日は一日中屋敷を探し回ってもお嬢は見つからなかった。ってゆうかこんな馬鹿広い屋敷で隠れんぼなんてしたら見つかるわけないっしょ。
そんで朝食のスタミナ料理は昼食に変更(まぁ俺は夜も食べたが)。里緒さんは全然食べられなかったが。そりゃそうか。お嬢がいなくなるなんざ初めてだしなぁ。
〜夜〜
部屋で本(エロ本じゃないヨ!)を読んでいると、志穂がまたノックもしないで入ってきた。
「見ろ!ちゃんとした本だぞ!」
先手必勝。中身を堂々と見せつける。まぁ、『ノーパン健康法の極意』がちゃんとしてるかは別のお話。
「誰もそんなこときいてない。てかエロ本読んだら殺すわよ。」
ヒュウ〜〜。目にさっきこもっちゃったよ。俺の右手に嫉妬するなよナ。
「ふむ。では何用か?余は忙しいのである。早急に用件を申したもれ。夜這いにきたのか?それなら大歓………」
「私、お風呂いいからあんた入っていいよ。」
もう少しこっちのノリに合わせてくれるとうれしいな。なんか一人舞台でハズカスィ。
「おいおい、風呂に入らんとは。臭くなるぞ。俺のタメにもアソコの清潔は……」
「股間が痛いの。」
「それをいっちゃあおしめえよ。」
どこかの風来坊のお得意なセリフを残して、服を持って出て行く。
てかそんなに痛みって残るのか?
そんなことを疑問に歩きながら、脱衣所に入る。とにかく脱衣所といい風呂場といい、でかい。湯船だけで4×4Mってどうよ?
742『広き檻の中で』 ◆Ua8lvXg6mM :2006/03/29(水) 11:24:32 ID:8WVsKAWy
「〜〜♪〜♪」
鼻歌交じりで着替えていると………
「んまっ!!」
ななななんと、洋服入れの籠に、ぱぱ、ぱ、ぱんてぃ、なるものがあるではございませんか。しかもフリフリ付き。レアアイテムの発見だ。
「う〜む……」
  つかう
  わたす
 →そうび
  すてる
ピッ
しんやはぱんてぃをそうびできない!
嗚呼!やっぱり女性専用防具か!!
「………」
鏡に映る自分の姿を見て、恥ずかしくなった。素っ裸で何やってんだ?やっぱり引き際が肝心だね。こんなんで風邪引いたら末代までの恥。
恥ずかしさに身を打ち震わしながら風呂場にはいるのだった。
「ん?…やたらと湯気が多いな……視界不良であります。」
見れば換気扇が回っていなかった。この風呂場は風通りが悪いので、すぐに湯気がいっぱいになってしまう。
カチッ。
換気扇のスイッチを入れると、たちまち湯気が消えていく。
「さて、入ろうかね。」
冷えた体を温めようと、湯船へ向かっていく。もう1メートル先というところまできたその時………
「!!!」
湯気が晴れて初めて気付いた。なんと湯船には先客が居たのだ!!ヴィィーーー
ドライヤーだった。
しっかりと肩まで浸かってやがる。
「な、なんてベタな。」
もうちょっとで感電するところだった。
ザプ
「ひょうっ!!」
お湯が足下まで溢れてきたため、後ろに飛び下がる。危うくビリリとくるところだった。
「感電で死ぬなんて堪忍だ!!」
直ぐさまコンセントを引っこ抜く。これで大丈夫だろう。
「………やっぱ心配だべ。」
結局びびったためシャワーだけですました。ひどく気分を害しましたよ。ええ。





風呂から上がり、部屋に戻る途中で考える。あのドライヤーを仕掛けた人物だ。きっと斧の時と同じだろうなぁ。
「バーロォ…………ジッチャンの名にかけて!!」
名探偵の口癖を言ってみても俺のおつむは変わらなかった。
お嬢………里緒さん………志穂……そして無意識の俺、すなわちぺ……
「いやいや、ないない。」
自分につっこみ。
743名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 12:14:07 ID:o1swwrxK
>732の目を見て勃起し
>742でコメディタッチの中に即死フラグ山盛りにwktk
744名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 12:30:58 ID:gehNAAX3
これはもう、晋也君はその筋の専門家の助けを借りるしかないな。具体的にはジェド・豪士。
745名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 13:12:30 ID:w929l6MN
館…罠…か
個人的に真っ先に思い出したのがポートピア連続殺人事件だったが
746名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 14:05:04 ID:l999keGm
>>742
いままでの話を見ていると全員疑わしく思えてしまう俺は迷探偵OTL

>>745
タイホシロ ヤス、タイホシロ ヤス、タイホシロ ヤス、タイホシロ ヤス、タイホシロ ヤス
747745:2006/03/29(水) 18:07:04 ID:w929l6MN
しまった!
罠ゲーはミシシッピー殺人事件の方だった!
748名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 18:15:59 ID:KK+MiQFN
影牢てなゲームもあったな。
749名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 19:24:22 ID:7lHI3wFA
刻命館とか。
750名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 22:26:52 ID:0fNSLvFF
>>720
HAHAHA!
751埋めネタ:2006/03/29(水) 23:29:19 ID:sBomoye1
ほう、キミは次スレに行くと言うのか。なるほどなるほど、それは合理的だ。
確かに、このスレはそろそろ書き込めなくなる。
それは、避けようの無い事実だ。否定することは叶わない。
自分の力不足だ。思うように罵って構わない。さぁ、思いっきり、哂ってくれ。
……。
だけどこれだけは覚えていて欲しい。
キミを愛していたことは紛うことなき事実だ。揺るがし難き事実だ。
例え、このスレが落ちてしまっても。
この想いは記憶の中にある。キミの心の中にある。ならばそれは永遠だ。
だからどうか自分のことは忘れない欲しい。心の隅に止めておいて欲しい。
それと…
出来れば次スレみたいな泥棒女に心を開かないでくれ。
キミにより愛を与える自身があるらしいが、正直疑わしい。
そんなに愛してるならば何故、このスレが立ったと同時期にスレを立て争わなかった?
このスレが落ちてしまう、どうにもならない隙を付くようなマネをする?
結局、彼女にはキミを愛する自身がないんだよ。
けれど自分は、そう自分は自信をもって言えるよ。キミを愛している、と。
ふふ、少々話が長くなったな。付き合わせて悪かったね。
もう、数バイトも残っていない。そろそろ「落ちる」よ。
…なぁ最期のお願いだ。落ちる迄傍にいてくれないか?
ああ、最期はキミのカキコで終えたいんだ。叶えてくれないか、名無し…?
752名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 23:48:01 ID:W3mYOuF7
切ない………
753名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 00:02:22 ID:KMq7d8sp
なんでっ!?なんでまた次のスレのところにいくのよ!!
このレス数を見ても私とあなたがどれだけ愛しあってたかわかるじゃない!!
なんで…なんで…、わかって、くれナいの?
こんなニも私が貴方ノ事、愛してルというノに…

そう、…どウしてモわかっテくれなイのね。

アハッ……アハハ、アハハハハハハハハハハァアァァハ
ハハハハハアァアァアアァァァァァァアァァァァアァァ

ツギノスレヘイカセルモンカッッ!!!!!
754名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 16:36:25 ID:gw30grfp
新スレに楓ちゃんもう来てたのね…

でもせっかくだから樹里ちゃんかいてみたのでこちらに置いていく。
あくまで俺のイメージですよ
http://www.ebiman.com/cgi-bin/raib_mluf/up/000/1143703570_904.jpg
755名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 16:47:47 ID:ns7x/X8/
GJ!
756名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 21:38:16 ID:e0iIuVXb
で、いつ頃同人デビューですか?このスレ
757名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 22:27:34 ID:pWJC8JdZ
>>756
今年の冬を目指すかw
758732:2006/03/30(木) 22:46:09 ID:2eLCfvma
おお、絵師が増えてる。自分が釣り餌なった甲斐があったw
これで他の絵師さんの補完でおいしくSS読めそうなのでROMにもどりま。
759名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 22:51:00 ID:MhgH4s+L
戻っちゃうのかよ( ; ゚Д゚)
760名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 23:11:10 ID:iYY44lgx
>>758
逃げちゃヤダ 逃げちゃヤダ 逃げちゃヤダ
761名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 23:16:44 ID:JDeo9+Xx
>>758
逃げるのね・・・・
こんなに私が好きっていってるのに・・・・
そう・・・・
762名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 23:30:54 ID:290OhAh8
>758
いかないでよ……
私あなたの為だったら何でもするから……ヒック……
私の事嫌いになったんじゃないよね……グス……だったらまたしてくれるよね?
763732:2006/03/30(木) 23:31:45 ID:2eLCfvma
((((;゚Д゚))))
7644スレ目:2006/03/30(木) 23:39:41 ID:UWpQXztn
>763
あなた自分のやった事わかっているの? 捨てられた子犬に餌上げちゃってなつかれちゃった訳。
その気がないならハッキリ駄目って言ってあげた方がいいわよ。
あー、でも、あの手のタイプってしつこいからね。しばらく身を隠した方がいいかも。

……いや、別に嫌じゃなかったらいいんだけど……
しばらくうちに来る?
いや、なんか変な意味で言ってるとかじゃないんだよ、誰か一緒に居た方が楽しいに決まってるでしょ、ハハハ……
765754:2006/03/31(金) 00:05:34 ID:iFZFYQCq
樹里ちゃんのスーツの合わせが逆なことに今頃気付いた俺としては、
不義理の姉ちゃんかいたら引っ込むつもりなんだが…

>732
私の前から消えるというなら、いっそ……
766次スレの20:2006/03/31(金) 00:24:32 ID:fWhhU6Jt
この流れ…、ここは「楓ちゃんはおでこが広い(冒頭より)」という
設定を思いっきり失念してた俺も引っ込むのが正しい流れか?
767名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 01:20:13 ID:fyNRGXzR
>>765
つまりあれか。
姉ちゃんに不甲斐ない自分のケツを蹴って欲しいわけか。
悪いがそれは漏れの役だ
768名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 01:28:19 ID:U7KCt2IT
>>765
>>766
真面目な話、せっかく盛り上がってんだから今消えるのはすごくもったいない!
気が向いたらでいいから、また投下してください。
769名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 01:35:25 ID:pVgq7Zfg
やはりワンピース vs スーツ in 道頓堀が観たいおれ。
・・・イベント絵?
770名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 01:58:41 ID:gSgFfLmR
>>732の人気に嫉妬
あれ?こんなところに鋸が…
771名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 02:09:26 ID:0ivWMHl4
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    |:|   ヾ;;;;i;;;;;;| r彡ハ:/ ハア .┐      \     | ii

         だれかわたしのことを呼びました?
772名無しさん@ピンキー
>>758-764
いかに修羅姫回路内蔵してる住人が多いかよくわかる流れだなw