「Call My Name!」の続きです。
過去話は保管庫にあります。
http://red.ribbon.to/~lyrical/nanoha/01_549/CallMyName.html 原稿用紙換算で300枚超ありますが、最初の数話みれば設定はつかめます。
簡単な粗筋。
名前を失い、大切な思い出を無くした少女が目覚めたのは、
少女が存在しない海鳴市だった。事情を話して家族や友人に
は受け入れてもらえるものの、残された記憶との微妙な差異
に少女は悩む。自分が何なのか判らない不安、一人になるこ
とへの恐れが、少女の心を曇らせて淫靡な誘惑に足を踏み外
させていった。
前回に引き続いて主人公と両親です。
現実にあったら普通に性的虐待になる内容なので、
苦手な人はスルーしてください。
全部で3話分、12スレ、約25KB。
Call my name!
(31)みてください
「・・・はいつもどうしてるの?」
「……いつも?」
母の胸の中で心地よい余韻に浸っていた少女は、母の質問
の意味が分からず首をかしげた。
「さっきも自分でしようとしてたでしょ、こんなふうに」
母は少女の手を取ると、ふさふさした下腹部の茂みの奥に
導く。そこはだいぶ時間が経っているのに、いまだ熱く潤ん
でいた。
「ぃ、いつもなんてしてないよ!」
その感触で何を聞かれたのか悟った少女は、母の誤解を解
こうと強く否定する。
「それじゃ、たまにしてるのね」
「たまにもしてないの」
「なら、いつ?」
「えと……」
簡単に追い詰められて返事に窮する少女。言わないで済む
ならそうしたいが、嬉しそうな母の様子からそれは無理そう
だった。ウソはつきたくないが、言えば必然的に両親の情事
を盗み見したことがばれてしまう。
「自分でするのは誰でもしていることで、悪いことじゃなの
よ。ただお母さんはお母さんだから、娘がどうしているのか
知っておきたいだけ」
臆する少女の心をほぐそうと、母は汗で額に張り付いた髪
を取り除いてキスをした。そこから少女の顔中にぽわぁっと
温もりがひろがる。
「……きのうの……夜」
「えっ……あら、もしかして?」
少女がうなずくと、母は困ったように苦笑いを浮かべる。
やはり少女が起きていたことは気が付いていなかったようだ。
「ごめんなさい……」
「いや、お父さんたちが悪い。それが寝坊の原因ならお父さ
んたちは失格だ」
ちょうどコーヒーを入れにいっていた父が戻ってきて、少
女の前に座って頭を下げる。
「すまなかった。疲れていたのに起こしてしまって」
「ごめんね、・・・」
自分の方が悪いと思っている少女には、かしこまって謝ら
れるのは居心地が悪かった。
「いいよ、あやまらなくても。そうじゃなくても、寝坊して
たかもしれないし」
「そりゃ・・・は悪い子だな」
父の大きな手にクシャクシャと頭を撫でられ、少女は顔を
崩す。父に悪い子と言われるのは悲しいが、決まり悪い今の
状況から話題を変えられるなら我慢しようと少女は思う。
「・・・は、お父さんとお母さんをみて、どう思った?」
「え、どうって……」
少女の考えとは裏腹に、母は先程の質問を続けるつもりら
しい。
「いやらしいって、嫌いになった?」
「そんなことないよ! わたし、大好きだよ!」
嫌いになるようなことなど、何もない。
「だって、お母さんはきれいで……」
綺麗で、嬉しそうで、幸せそうで、気持ち良さそうで、互
いに愛し合っているのがよく分かって。それを見ているだけ
で少女は熱くなって。
「…さみしくて……」
だから、同じようになりたくて、指で触って。
「そっか、ごめんね。お母さんたち、気が付かなくて」
知らずにこぼれ落ちた涙を、そっと母の舌がなめ取る。温
かい母の胸、温かい父の手のひら。あの時はさみしかったが、
今は違う。しがみついた少女の腕の中に、確かな温もりがあ
るから。
「だから今度はお母さん達がちゃんと見てあげるね」
「……み…て?」
母の言葉の意味が分からず、少女はふたたび首をかしげる。
「昨日が初めてなら、ちゃんとできているか分からないでしょ」
「女の子の体はデリケートだからな。間違っていると大変だ
ぞ?」
その行為にちゃんとした方法があるのか少女には分からな
い。しかし両親が怖がらせるために脅そうとしているのでは
なく、ちゃんと気を付けなければならないことなのだとは何
となく分かった。
「……うん」
たぶん、見られている分だけ昨日のようにさみしくはなら
ないだろう。欲を言えばさっきのように母の指でしてもらい
たかったが。
「よしよし、いい子ね」
「まず始める前に言葉からだな。・・・はなんて言うか知っ
ているかい?」
同年代の子供達と比較して大人びた少女であるが、その手
のことに関して少女はかなり疎い。少しだけ考え、考えても
答えは出ないと気づいて首を振った。
「漢字なら自分で慰めると書いて自慰、英語ならオナニーだ」
「可愛らしく一人エッチとも言うかな」
どれも初めて聞く言葉で、聞いているだけなのに恥ずかし
くて顔が赤くなってしまう。すでにそれ以上のことをしてし
まっていても、行為と言葉が結び付いて具体的なイメージが
頭の中に浮かんで少女の羞恥心をあおった。
「それじゃ、次は宣言だな。どれでも好きなのでいいから
『わたしはこれからXXします』」
「『お父さん、お母さん、ちゃんと見てください』って、ね」
両親のとんでもない言葉に少女は目を丸くする。冗談かと
思いたかったが、二人とも顔はにこやかでもふざけている様
子はなかった。
「言わなくちゃ、ダメ?」
聞くだけでも恥ずかしいことを両親の前でして見せるのに、
さらにそれを稽古事の発表会のように言うのは恥ずかしさの
度合いが違い過ぎる。
「言ってくれなきゃ、お母さん見られないわ」
「何事もちゃんとしないといけないぞ」
最初に見せろと言ったのは両親だが、少しその気になって
しまった少女としてはおあずけされてしまうのは辛い。恥ず
かしくても両親だから、両親だから恥ずかしくて、その加減
が難しくて。ただ、いくら悩んでも今の少女の答えは決まっ
ていた。
「……わ、わたしは…これから……ひ、一人、エッチ…しま…
す……」
初めて口にする恥ずかしい言葉。まともに両親を見られず
目をつぶって。顔が沸騰したように熱くなって。熱はあっと
言う間に全身を巡り、下腹の奥に集まっていく。
「ぉ、おとおさん、おかあ…さん……ちゃ、ちゃんと…みて…
く、くだ…さ…い……」
恥ずかしさで硬直した少女の身体を、そっと抱き締める柔
らかな胸と逞しい胸。
「大丈夫よ、しっかり見てあげるからね」
(32)おしえて
「さ、やってごらん」
少女のすぐ目の前にはバスローブ姿の両親が座っている。
少女はと言うと、バスローブを敷いたソファーの上に生まれ
た時の姿。髪もリボンでまとめず下ろしたまま、強いて言え
ば後ろのすぼまりから少しだけ頭をのぞかせている数珠だけ。
足を閉じて膝を抱き、片手だけ太ももの間に割り込ませる。
つい気恥ずかしさで足の間を踵で隠してしまうが、ちらっと
両親の様子をみた限りでは注意しようとする気配はなかった。
「………」
足で挟んでいる方の手をそっと伸ばす。目指す先は気持ち
いいところ。真っすぐにした中指をスリットにそってあてが
う。
「んっ」
しっとりと濡れた感触。母の指遣いの残滓と、少女の期待
が表われたもの。触れただけで小さく粘ついた音を立て、じ
んわりと心地よい波が表面を拡がっていく。
「…ん………っ」
そっと、つかずはなれずのタッチで、スリットをあふれさ
せないように、指を優しく前後させる。そのわずかな接触か
ら、ふつふつと心地よい波が湧き上がる。
「ぁ…んん……はぁ、ん」
くちゅ、くちゅ、くちゅ。少しずつ大きくなる水音。それ
にあわせて、小さな胸の鼓動も高まり、細い肩でする息も荒
らぐ。
「・・・、気持ちいい?」
「ん、うん……ゃぁっ」
少女のつま先を母がかるく咥える。ほんの一瞬ではあった
が、親指にまとわりつく舌の感触に背筋がゾクゾクし、少女
は甘い吐息を漏らした。
「足をひらいてみなさい。そうすればもっと気持ちよくなる
わ」
「も、もっと……?」
にっこりとうなずく少女の母。足をひらけば、少女の嫌ら
しくてはしたないところを両親に見られてしまう。だが「もっ
と」という魅惑的な言葉は、少女の羞恥心と欲望のバランス
を微妙に崩した。
(もっと、きもちよく……)
少女は指をスリットにあてがったまま、サナギから孵った
蝶が羽をひろげるように、最初はつま先から、次に膝、そし
て太ももと左右に開いた。
白くほっそりとした太もものあいだ、まだ幼くて肉付きの
薄い膨らみとそこに刻まれた一筋の切れ目は、指に隠れて全
容を見ることはできない。しかし、そこから滴って下にある
数珠やバスローブを濡らす快感の証拠は隠せず、それどころ
かさらに指の隙間から証拠をあふれさせた。
「・・・、とても可愛いよ」
「こんなに濡れちゃって、やっぱり見られると感じちゃうエッ
チな子なのね」
母の嬉しそうな言葉に少女の身体がビクッと震える。
「わ、わたっ…し……」
一瞬否定しようとするものの、口ごもってうつむく。母の
言ったことに間違いはないと、多少どころではない自覚があっ
たからだ。現に少女の指はたった今も快感を求めて動いてい
る。
「エッチなのは悪いことじゃないわ。お母さんだってそうだ
もの」
「そうそう、女の子は少しエッチなくらいが可愛いんだ」
優しい笑顔の母、おどけてウインクしてみせる父。
「……ぇ、エッチでも……いいの?」
消え入りそうな、かそぼい声。すがるような少女の顔。
「いいんだよ、・・・は俺達の娘なんだから」
「ぁ……ぅ…ん……っ」
少女の下腹部はさらなる熱を帯びる。
両親に肯定され、受け入れられること。それは不安にまみ
れた少女の心に光明をもたらし、快楽を求めることへの恐れ
も一緒に溶かしていく。
「・・・、気持ちいい?」
「うん…きもち、いい……」
あふれた滴を両手の指すべて使い、足の間の幼い膨らみ全
体にこすりつける。にぶくじんわりと、下半身に拡がる心地
よい痺れ。
「もっと、気持ちよくなりたい?」
「…もっと……ん、うん……なり、たい」
もう、求めることに抵抗はない。ただただ、気持ちよくな
りたい。その思いが少女の幼い胸を焦がす。
「なら、気持ちいいとこを指でひろげてみて」
「うん……んんっ」
母に言われるままスリットを指でひろげると、たまってい
た少女の分泌液がとろりとしたたり、下にひいたバスローブ
に新たな染みをつくった。
「そこがどうなっているか、父さんたちに教えてくれないか」
少し意地悪な父の指示。恥ずかしさで頬を染めるが、それ
さえも快楽に結び付いて少女を潤ませる。
「ぇ、と……ぐちょぐちょで…おもらし…したみたい……」
「さすが父さんたちの子だ。感じやすいのも可愛い女の子の
条件だからな」
幼い少女に対しては極端なほめ言葉。だが手放しでほめる
父の様子に、少女は嬉しさではにかんだ笑みを浮かべた。
「・・・がもっと気持ち良く、もっと可愛くなるには、ちゃ
んと自分の体のことを知らないとだめよ。・・・の気持ちい
いとこがどうなっているか、分かる?」
そこには排尿器があること。それ以外に赤ん坊が産まれる
ところがあり、そこは男性器を受け入れることもできること。
そして、そこがとても気持ちいいところであること。あとは
アリサとすずかのが似ていて少し異なっていたように、顔と
同様、人により違うであろうこと。少女が知るのはそれぐら
いであり、説明しろと言われてもすることはできないであろ
う。
少女は紅潮した顔を左右に振った。
「おしえて、おかあさん」
「毛が邪魔で見えづらいかもしれないけど、お母さんのはこ
うなっているの」
床に敷いたバスローブの上で、少女の母は大きく股を開く。
同じように少女も母のすぐ目の前で足を開いた。二人ともよ
く似ているだけに、未来か過去を写す鏡を挟んでいるように
見える。
「どれ、父さんが見えやすいようにしてやろう。・・・は母
さんに似ているから、大人になったら同じように魅惑的なヘ
アーになるぞ」
母を後ろから抱くようにして、父の無骨な指が生い茂った
母の陰毛をかき分ける。あらわれた母の性器はぱっくりと開
き、その中は白濁した液体でしとどに濡れていた。
「この陰毛がはえている膨らみ、・・・がずっとなでていた
ところは大陰唇というの。大きくなったらもう少しふっくら
としてくるわ。それで……」
父の指が母の大陰唇を左右に引っ張り、母の指が内側にあ
る複雑なひだをつまむ。
「これが小陰唇。ここも触ると気持ちいいところよ。・・・
も同じようにして、お母さんたちに説明してみて」
少女も母と同じように、まだ発毛の気配すらない幼い大陰
唇を指で開く。
「うん……これが、わたしの、だいいんしん、で……」
父の指がないので自分の小指で押さえ、内側に隠れていた
小さなひだをつまむ。
「ぁぁっ……こっちが、しょう、ぃ、いんしん……んんっ」
かるくつまんだだけでも、外側の丘よりも強いしびれるよ
うな刺激。母と同じように引っ張ろうとするが、幼い未発達
なひだはつかみづらく、濡れた指からスルリと逃げてしまう。
「はぁぁ…んん……ぁ…ぁ、ゃぁぁ」
つかもうとすればするほど、ひだと指は少女の愛液にまみ
れ、それが想像外に気持ちよい。次第につかむのではなく、
ひだをこねたり指を押し付けたり、どうしたら気持ちいいか
を模索する。
「そう、それでいいのよ。どこが気持ちいいのか探してみて」
「…ぅ…んっ…ぃぃ…」
快感を求めて、濡れた指先を狭いスリットの中にさまよわ
せる。潤んだ粘膜はどこも心地よかったが、身体に刻まれた
快楽の記憶は少女の指をある一点に導いた。
「はぁぁっ」
大陰唇の合わせ目、ひだが重なった部分。そこを上から押
しただけで、激しい快感が幼い身体を駆け上がる。
「そこが女の子の一番敏感なところ。ここを、こんなふうに、
んん、皮をむくと……」
母の指が折り重なった包皮を剥き、小まめほどの器官をあ
らわにする。それは少し赤みがかった白い色をして、少女に
は綺麗に輝く真珠のようにみえた。
「ん、あぁ、はぁぁっ」
さらに父の指が下の泉からすくった愛液を真珠にまぶすと、
母はうっとりと甘い吐息をはく。
「……ここを……いっ!」
母の気持ち良さそうな様子に、少女もまねをして包皮を剥
こうとする。しかし加減を考えず強く触ってしまい、激しい
刺激に痛みを感じて悲鳴をあげた。
「あらあら、だめよ。そこは、優しく触ってあげないと」
「これはクリトリスと言って男のペニス、オチンチンの名残
なんだ。この小さなとこに男と同じだけの神経が通っている。
密度が高い分それだけ敏感だからね、気を付けないと今みた
いに痛いだけだぞ」
だからこうするんだ、と父が少女に実演して見せた。父の
無骨な指が本物の真珠を磨くように、そっと母の真珠をなで
る。よく見ていないと分からないような微妙な指の動きに、
母は熱い艶声をあげて乱れた。
「な、・・・、最初は、むかないで、うえから、あぁ、あな
た、あんっ」
「うん……うえから、んんっ」
今度は包皮をむかず、上からかるく押すようになでる。そ
れだけで下半身を痺れさせる強い快感。さらに父をまねして
スリットから愛液をすくい、包皮に塗り付けた。
「ぁ…あぁ…っ、ん、ゃぁ…んんっ」
快感が痛みに変わる一歩手前で押さえ、ギリギリの快楽を
求めて半歩進める。少しずつ包皮がめくれ、ゴマ粒ほどの幼
いクリトリスを濡れた指がとらえた。
「やっ、あ、あぁ、ん、あんっ」
「はぁぁ、ぁっ、クリトリス、んん、きもち、いい?」
「ぉ、おかぁ、さっ、くり、と、りす、きもち、いぃよぉ」
激しい陰核の快感をむさぼる少女とその母。まだ大人の余
裕がある母に比べ、少女はもういつ達してもおかしくないほ
ど呂律が回っていない。
「・・・、まだ駄目」
「あっ……ふぇ?」
絶頂を駆け登ろうとした少女の腕を母が押さえる。突然止
められて戸惑う少女に、母はにっこり微笑んだ。
「最後は女の子の一番気持ちいいとこでね」
(33)いっぱい
「いちばん、きもちいい、とこ?」
少女はもじもじと太ももをこすり合わせ、ひざの上で濡れ
た指をからませる。
「そう、一番大事なところよ。わかるわね?」
そう聞いて指に昨夜の感触がよみがえる。熱く潤んだ母の
胎内は易々と少女の指を飲み込み、まとわりつくように締め
付けていた。
「うん……でも、はいらないよぉ」
手を離したのでスリットが閉じて見えないが、少女の膣口
は年相応の大きさしかなく、男性器は論外、小指さえきつそ
うで、頑張って綿棒ぐらいならとしか思えない。
「大丈夫よ。昨日も言ったけど、ここは赤ちゃんが産まれる
大事なところ。だから結構柔軟性があるの」
父の中指が母の膣口にもぐりこんで中をかき回す。とろり
と愛液があふれ、くちゅくちゅといやらしい音がした。
「や、んんっ、そして、大好きな人のものを、受け入れる、
とこ……。それは、ぉ、女の子にとって、一番、気持ち、よ
くて、一番、幸せな、こと」
母の言葉はすとんと少女の中に落ちる。父のものを受け入
れている母も、兄のものを受け入れている忍も、うらやまし
くなるほど幸せそうで、今は指であっても、母はうっとりと
していて。
「ここは膣と言うんだ。この奥には赤ちゃんが宿る子宮とい
う器官がある。この辺りかな」
父はもう片方の手で母の下腹をなで、その上に母の手も重
なる。そこは少女が宿り、産まれた場所。いつか、少女も宿
すかもしれないところ。
「で、母さんや・・・の膣からにじんでいる液体を愛液とい
うんだ」
「愛液は気持ち良くなった時に、好きな人のものをスムーズ
に受け入れるよう、膣を濡らすために出るの。二人で気持ち
良くなれるように」
「こんなふうに、ね」
母が少し腰を上げると、父は太ももの下に手を通して母を
持ち上げ、そのまま胡座を組んだ足の上に降ろす。そこには
熱り立つ太く大きな父のものが母を待ち受けていて。
「あぁぁ…ぁ…ぁ…ん……はぁぁ」
母の指が父のものを胎内に導く。スリットは足と同じよう
に左右に大きく開かれ、父のものを咥えて張り詰めた膣口を
少女に見せつけた。
「こうして、受け入れて、一つに、なるの。ぃ、いきなりは、
たいへ、ん、だけど、指なら、・・・でも、大丈夫、よ」
母の胸と腰を後ろから抱き、首筋に下をはわせる父。愛し
そうに下腹をなで、頭をのけぞらせる母。
あのようになれるのか。大丈夫と言う母の言葉は信じてい
るが、見るのとするのではだいぶ違う。
「でも、どうしたらいいか、わからないよぉ」
両親の元に擦り寄り、母の胸に顔をうずめる少女。それを
優しく受け止める、父と母の腕。
「なら、一緒にしましょう。お母さんがお手本を見せてあげ
るから、ね」
「なるべく同じにした方がいいでしょ。あなた、後ろに」
「あぁ、わかった」
ふたたび父が母を持ち上げと、母の愛液でてらてらと光る
父のものが糸を引いて現れる。父はそれをそのまま母の後ろ
にあてがった。
「ならしてないが大丈夫か?」
「えぇ、大丈夫よ。あなたのですもの」
母は指で拡げたすぼまりを何度か父のものになすり付け、
息を吐きながらゆっくりと腰を下ろしていく。大丈夫と言っ
ているが、眉間にしわを寄せて少し苦しそうに見え、少女は
心配しながら母を見守った。
「んっ、はぁぁ……」
先の部分が全部中に入ると、楽になったのか表情が柔らか
くなる母。うっとりと目を閉じた母はそのまま体重をかけ、
残りをすぼまりの中に少しずつ収めはじめる。
「ぁ…ん……ぁぁ」
父のものが母の中に消えるたび、目の前にいる少女に蕩け
た母の吐息が降り注ぐ。母の熱と匂いが心地よく、少女はうっ
とりとそれを吸い込んだ。
「ふぅ……。これで・・・と同じね」
すぼまりに数珠を飲み込んだ少女と、父のものを飲み込ん
だ母。
「おいおい、父さんのはオモチャに負けないぞ」
なぜか対抗心を燃やした父が、母の胸を抱いて腰を揺する。
しかし、母はぴしっとその手を叩いた。
「胸はだめよ。・・・と違っちゃうでしょ」
「そんな殺生な。このくらいいいだろ、・・・もいいよな、
な?」
情けなく少女にねだる父。甘やかさなくていいのと母。両
親を見て、父を見て、母を見て、また二人を見比べ。
「えと……いいよ、お父さん」
仲の良い両親が好きで、たまに恥ずかしく思う時はあって
も、それはとても自慢できることで。
「いいでしょ? お母さん」
目の前でつながる両親を見ると胸がドキドキして、それに
どんな意味があるのか理解しているとは言い難くても、少女
にとって両親は愛しく憧れであり。
「もう、しょうがないわね」
「・・・、ありがとう」
満更でもない母と喜びを隠さない父。それは少女にも嬉し
いことで、そんな二人を見ているだけで胸もあそこも熱くなっ
て。
「それじゃ始めましょう。初めてだから小指を……」
顔の前で立てた母の小指を、後ろから乗り出した父がぱくっ
と咥える。一瞬惚けた顔を見せた母は、少女へ得意げにウィ
ンクする父の脇腹を思いっきりつねった。
「……もぅ、ばか」
顔をしかめつつ、それでも指を放さない父に、母は呆れ顔
でため息をつく。だが、その口調に少女はどことなく甘い香
りを感じて頬をゆるめた。
「・・・、よくなめて濡らしてね」
「うん」
少女は左の小指を根元まで咥える。やはり指を入れるのは
怖いのだろう。母の言葉や数珠を入れた経験からそれが必要
なのだと、舌を指にからませて念入りに濡らした。
「ん、くちゅ……これで大丈夫?」
「・・・の中も十分濡れているし、うん、大丈夫よ」
母に見せた小指と、ほっとして緩んだ口の端から滴が流れ
落ちる。少女はそれを無造作になめとった。
「それじゃ入れてみましょう。爪のところまで、ゆっくりと
さわりながら、ね」
母の指は口で咥えるように簡単に中へ入ってしまう。母は
ちらっと舌を見せ、白濁した愛液を奥からかき出すように爪
の生え際まで指を抜いた。
「……うん」
入り口にあてがった指が震える。だが、それが幼い膣口を
刺激し、指を飲み込もうと粘膜がゆるやかに蠢いた。
(わたしの、ここ……ゆび、ほしがってるんだ……)
体の求めに応じて、ゆっくりと中に指をうずめる。狭い少
女の入り口は熱く潤み、指先の分だけ外にしたたった。
「は、はいった、はいったよ!」
「やったな、・・・。中はどうなってるかな?」
母とつながった腰をゆっくりと動かしつつ、父は手を伸ば
して少女の頭をなでる。
「えと……あつくて、せまくて、ぎゅってなって、すいこま
れそうなの」
入っているのは爪の部分までだが、そこだけでもきつく締
め付け、中へ中へと導いているように感じられる。
「そうか、すごいな。ならもう少し、関節のとこまで入れて
ごらん」
「引っ掛かるとこがあったら、無理せずゆっくりと入れるの
よ」
少し力を込めると、指は中へ飲み込まれようとする。だが、
やはり関節は指先よりも太く、中もその先はさらに狭くてぴっ
たり閉じているようだった。
「っ、んっ……っ」
ほんの、ほんの少しずつ、母の言う通りにゆっくりと指を
進めようとする。しかし体が押し広げられる感覚に、少女は
どうしても躊躇してしまう。それに中で指に絡み付くものは、
手荒に扱ったら唇の端のように切れそうで少女を恐れさせた。
「・・・、お母さんを見て」
少女の母は大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出してみ
せる。母が深呼吸するたび、豊かな乳房が迫り出してはたゆ
たゆと揺れ動き、たまった汗が谷間を流れ落ちる。
(あ、指が……)
呼吸に合わせて母の指が前後していた。息を吸う時に出し、
吐く際に入れる。少女が気が付いたのを見て、母はにっこり
とほほ笑んだ。
「すぅぅぅ、はぁぁぁ」
少女は何度か深呼吸して気分を落ち着け、呼吸に合わせて
指を動かす。一ミリにも満たないほど、ほんの少しずつ。吐
く息に合わせ、少しだけ緩んだ体の中へ。
「すぅぅぅ、ん、はぁぁぁ……んん」
数え切れないほど薄い胸が上下したあと、小指の第一関節
は少女の中に姿を消した。その長さは数センチかそこら、少
女のすぼまりを埋める一番大きな珠よりも小さい。それなの
に少女にはそれよりも大きく感じ、その圧迫感に恐れ戦慄く。
「お、おかあさん、おおきい、よぉ」
「大丈夫、大丈夫よ。ほら、大きく息を吸って、吐いて」
少女の母は胸の中に少女を抱き寄せて胸の音を聞かせた。
ゆったりと波のように隆起する乳房からは、とくっ、とくっ
と乱れのない心臓の音。母の静かな息継ぎの音にあわせて少
女も深呼吸をする。
「ここまでくれば後は同じ。そうね、もし心配ならクリトリ
スをいじれば少し気が紛れるわ」
「……うん」
母に抱かれて落ち着いた少女は、胸の谷間に顔をうずめた
まま右手を動かした。人差し指と薬指で大陰唇を押し開き、
中指を折り曲げて現れた陰核に触れる。
「ぁ……んんっ」
包皮の上から軽く触れただけでも、せまい少女の中は収縮
して小指をきつく締め付ける。自分の指とはいえ異物の感触
と、小さな器官で感じる鋭い快感。少女の中で恐怖と欲望が
せめぎ合い、好奇心と憧憬が後押しした。
「ん、ぁ、はぁぁぁ」
か細い少女の指が幼い柔肉の中に消えていく。じっと見て
いては分からないような速度で、だが確実に少女の中へと押
し進む指。
「はっ、はぁぁ、んん」
自分の指の太さなどたかが知れているというのに、爪の固
さや関節の段差さえ分かるのに、まるで腕がそのまま入って
くるように感じてしまう、それほどの圧迫感。
「やっ、あぁ、ふ、ふるぇ、んんっ」
後ろのすぼまりに埋める数珠の珠が、少女の指を歓迎して
蠢動する。幼い襞はぴったりと指を締め付け、後ろからの振
動と快楽を伝えた。
「はぁぁ、あぁっ、やぁぁん」
膣内で感じられるほどには育っていない幼い身体。しかし
前にある敏感な幼芽、幼いゆえに感じる後ろのすぼまり。こ
れらに挟まれて未熟な感覚が強引に引き出されていく。
「ぁぁ、ゃ、んっ、はっ、はぁぁ」
一番太い第二間接も少女の中に消え、張り裂けそうな圧迫
感は少女の奥底、とても気持ちよくなるときゅっとなるとこ
ろに迫る。
「ぉ、おかぁ、さっ、ぁ、ぁっ、ぁぁ」
「・・・、全部入ったのね」
母の言葉に少女は涙を流した。それは、嬉しくてか、辛く
てか、悲しくてか、何でなのかよく分からず、ただほっとし
ただけなのかもしれない。
(おなか…いっぱい…はいって…る……)
忘れようとしても忘れられない、少女を苦しめる心の穴。
それが埋まったと思うのは少女の錯覚だろうか。
「そのまま、抜かなくていいわ。お友達にもらった珠にあわ
せて震わせるの」
母の優しい吐息が少女の耳をくすぐる。
「そう、きっと、気持ちいいわ」
「ぁ、ぅっ、ん、ぁぁっ」
言われずとも、少女はそうしていた。いや、そうなってい
た。
幼い柔肉はがっちりと指を咥え込み、抜こうと思っても簡
単に抜けるものではない。無理に動かせば中を傷つけてしま
うだろう。それが怖くて、動かないよう小指以外の指をぎゅっ
と握り締めても、どうしてもこぶしごと震えてしまう。
「ゃっ、ぁぁ、こ、こわっ、あぁ」
もう何度も味わった少女を押し流す巨大な波が、指のすぐ
近くで渦巻いている。波は沸騰したように熱く、嵐となって
少女に雷を落とし、視界を真っ白に染める。
「だぁ、だめぇ、やぁ、あっ、こわ、あぁぁ」
崩れ落ちる身体を母の胸と父の腕が支えられ、下半身はぶ
ら下がったまま打ち震え続け。
「あぁぁぁっ!」
「はぁ、あ、あん、あぁっ」
幼くも艶やかな喘ぎ声。
「わかる? 指の先に感じるでしょ。ここが子宮口、この奥
に赤ちゃんが宿るのよ」
「んくっ、ん、ぁ、ぁぁ、はぁぁ」
熱く潤んだ蜜壷の奥で指先に感じるしこりのような感触。
母の中は少女と母自身の指を難無く一緒に呑み込み、それで
いて手で握るように強弱つけて締め付ける。
「・・・にもちゃんとあるでしょ?」
母の言うとおり、少女の中にうずめた中指の先にも同じ感
触。
「はっ、あんっ、や、んんっ」
少女は何とか答えようとするが、力無く開き切った口から
は喘ぎ声が漏れるだけだった。
少女は最初に自分の中へ小指を挿入してから二度、入れる
指をかえている。少しずつ太くなる指はきつく、かなりの負
担ではあったが、母の導きと父の支えでその度に絶頂すら迎
えていた。
(…おかあ…さん……おとう…さん……きもち…いい…の……)
元より体力のない子供がこのような荒淫に耐えられるはず
もない。だが少女は気持ち良すぎることへの恐れは訴えても、
決して自分から指を止めることはなかった。まるでそれだけ
が両親とのつながりであると信じているように。
「あぁ、ぁっ、んん、んぁっ」
母の柔らかい乳房と甘い匂いに包まれ、敏感な幼芽も母の
指でいじってもらい、すぼまりの数珠も父が優しく動かして
くれる。
「・・・、またいきそうなの?」
「好きなだけいってもいいぞ。大丈夫、父さんたちがついて
るからな」
か細い指も、濡れた唇も、未発達な胸も、潤んだ秘裂も、
父も、母も、何もかも、すべてが蕩けて、混ざり、一緒に、
一つなり。
「っ……!!!」
声なく達した少女を母は優しく抱きとめる。
「・・・もちゃんと中でいけるから、もうお父さんのも大丈
夫ね」
次回はとうとう行き着くとこまで行ってしまいます。
自分で言うのも何ですが、考えるだけで鬱になったり。
たぶん4月になると思いますが、逃げて短編を書くかも。
RHがなのはに魔力負荷をかけている漫画の話から妄想して、
擬人化したレイハがなのはに抱き着いているっていうネタで……
それよりも保管庫の更新……
日曜に頑張ります。。。
スレ立て乙&投下乙です
>>549氏。
これですよこれ、やはりこのスレにはこの作品がないと。
・・・そういえばここってpinkの板だったんだなぁ(待て
・・・・嘘です、忘れてませんって。しっかりエロの続き書いてました。
んで〜変わりゆく〜のほうの6話もほぼ同時に書きあがりそうなんですが、
どっちを先に投下しましょうか。スレの主旨から言えば前者なんだけど、
この間殺人予告w喰らったからなあ。空気悪くなってもあれですし。
バッドエンドにしちゃったし。
どうしましょ?
連載物の中では一番特殊なのは自覚してます。
スレの始めにこれはきつかったかも。
人物名でないから初めてみた人は何のSSか分からないだろうしwww
>640氏
書けた方からで良いのでは?
そんなに空気悪くなるとは思わないけど。
>>640氏
俺としては6話を見てみたいと言っておこう
だがエロを見てみたいという青少年の欲求がががががががが(ry
>>17 スレ立て乙です。
やっぱりエロがないとこの板らしくないと思うし、
なにより興奮するので続きがとても楽しみです。GJでした。
>>1もとい
>>549氏新スレ乙です。
>>640氏 エロの件。自分はハードなバッドエンドでも、おkです。
あらかじめ断りを入れて苦手な方にはスルーしてもらえば良いわけですし、
不穏な発言をする不逞の輩の言うことは気にする必要ないかと。
〜変わりゆく〜の方も楽しみにしてます。
投下順はどちらが先でもよろしいのでは?
22 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/23(木) 04:07:13 ID:o4kBJfeA
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「広域結界、発生」
──彼女達の紡いだ言葉が発動の鍵となり、その足元に広がる床を、壁を、そして遺跡全体を結界が包んでいく。
それは不埒なる侵入者達を逃さぬよう、確実に仕留められるよう広げられた一種の檻。
「侵入者達と、その仲間を排除せよ」
彼女達は二手に別れ、それぞれの獲物の元へと向かう。
目的はいずれも同一に。たったひとつの目標のために。
「夜天の、主がために───」
と。
魔法少女リリカルなのはA’s −変わりゆく絆−
第六話 過ぎ去りし記憶と共に・前編
鋼の色に光るハンマーヘッドを、その身全てを砕かんと狼型の使い魔の背へと振り下ろす。
紅の戦闘服に身を包んだ少女に気付き向き直る暇もなく蒼い毛並みの狼はボロ雑巾のように叩き落され、
魔力によって形成されたその身体を大気中へと霧散させていく。
「5つ!!次っ!!」
紅の鉄騎こと、鉄槌の騎士・ヴィータ。屠り去った敵を一々見ているヒマなどない。
次なる相手に向かうべく愛機・グラーフアイゼンを構えなおす彼女の周りには同型の個体がまだうようよといるのだ。
それこそ、手を伸ばせばすぐとどくと言わんばかりに。
「ザフィーラの格好なんかしやがって、てめーら一体何なんだよっ!!」
叫びとともにまた別の個体へと向かっていくヴィータ。
数が多い以上、カートリッジは使えない。すぐ息切れしてしまうのが目に見えているからだ。
そんな彼女からすこし離れた場所で、すぐ後ろに浮ぶ艦を守りながら武装局員達が狼の群れの相手をしている。
「武装隊の皆さんは三人ずつで一体を相手にして下さい!!撃ちもらしたんはうちとヴィータでなんとかしますから!!無理はせんといて!!」
『いきますっ!!』
彼らの指揮を執っているはやての動きに合わせ、肩上のリインフォースがいくつもの標的へと照準を合わせていく。
「ええ子や、リインフォース!!」
先端に剣十字を模した杖、シュベルトクロイツを大きく振る。彼女のその動作にあわせ無数の光弾がターゲットとなった使い魔へと放たれ、
あるものは狙い通りの獲物を撃墜し、あるものはかわされることで体勢の崩れた狼を武装隊が倒すための布石となり、戦果を挙げていく。
「・・・ザフィーラの相手しとるみたいで、いい気はせんな」
シグナム達が内部に突入した直後か、入るのと同時だったのか。現れた狼の大群は明確な敵意を以ってアースラへと攻撃を波状に繰り返してくる。
ブリッジからクロノ達が見守る中はやて達は武装隊を率い、彼らへの迎撃戦を繰り広げていた。
なのはの手によってかなりのレベルまで鍛え上げられた彼らであっても、やはり根本的に火力が足りない。戦術やフォーメーションで補うにしても、
はやてとヴィータに頼る部分は大きい。必然、二人は武装局員達のフォローと遊撃に飛び回ることになっていた。
「クロノくんの手も借りたいとこやけど・・・艦長やししゃあないか・・・!!」
『マイスター、あれを!!』
「!?」
自身のデバイスの声に振り向くと時を同じくして、眼前の遺跡の上空に円形の見慣れた魔法陣が展開される。
「結界まで・・・!?これじゃシグナム達が!!」
彼女と同じように異変に気付いたヴィータも、使い魔の相手をしつつそちらを見て驚愕している。
「そ、それだけやない・・・この魔法、この魔力て・・・まさか!?」
『間違いないです、あの結界の魔力、ユーノさんのです!!』
「どーゆーこったよ、そりゃあ!!はやて、なんであの眼鏡ヤローの魔法が・・・・」
幾度となく自分達をサポートしてくれていた結界が、仲間達を閉じ込める壁となっている。
遺跡内で助けを待っているはずの、心優しい少年の魔法が。何故。どうして。
その事実に彼女達は困惑し、戦線にわずかな綻びが生じる。
「彼女」・・・いや、「彼女達」はそれを見逃すほど、甘くはない。
はやてとヴィータの動きが鈍くなったために手薄になった空域。
使い魔たちに苦戦する数人の武装隊員達のいるそこを、一筋の光が狼ごと薙ぎ払う。
「っ!!」
「ああ!!」
気がついても、あとの祭りだった。一瞬にして戦闘不能に追い込まれた局員達が煙を突き破って大地へと落下していく。
『エイミィ、転送急げ!!』
『やってます!!』
耳の奥に聞こえてくる通信から、クロノが彼らを救助すべくエイミィに怒鳴っているのが聞こえる。
聞こえているが、それ以上動くことはできない。
なぜなら、彼女達の目は、友と同質の結界に受けた驚きに、更に驚愕を重ねるように現れたモノへと、ただ注がれているのだから。
「あれ・・・は・・・・?そんな・・・っ!!」
「嘘やろ・・・なんで・・・なんでっ!!?」
狼の群れの最深部に、遺跡の入り口を守るかのように出現する、二つの三角形の魔法陣。間違えるはずもない。
はやてもヴィータも、己が魔法の基本となるべく普段から使用しているその形を。
そして主がために空に消えていった、愛おしき者の名を、忘れるはずがない。
「なんでだよっ!!リインフォースが・・・!!二人もっ!!」
『ヴィータさん、危ないですっ!!マイスター、どうしちゃったんですか!?』
自分の名が立ち塞がる敵に向けて呼ばれたことに戸惑いながら、リインフォースはヴィータの周囲を気遣い、
完全に動きを止め震えるだけになってしまった主へ呼びかける。
「嘘や・・・・嘘や・・・・うち・・・この眼で・・・」
「はやて!!」
『マイスター!!』
『はやて!!気を確かに持て!!今は戦闘中だ!!』
通信越しにクロノまでが激を飛ばすが、効果はない。
はやての援護を失った武装隊が一人、また一人と攻撃を受け、落とされていく。
「く・・・まずい・・・!!エイミィ、指揮は君に任せる!!僕も出て迎撃を!!」
「はいっ!!ゲート開きます!!」
艦長だから艦を離れられないとか、そんなことを言っている場合ではない。
このままでは、武装局員達が壊滅する。見かねたクロノが席を立った。手には待機状態の愛機・デュランダルが既に握られている。
(だが一体でも六年前、あのなのはとフェイトのコンビが勝機を見出せなかった相手だ・・・・二体を同時に・・・やれるか!?)
当時と今とでは、状況が違う。よくも悪くも。
実質一人で戦わざるをえなかったなのはと違い、こちらには今多くの戦力がある。
だがかつてとは違い、彼女達を内から止めることのできる存在もまた、いない。
不安と共に走るクロノの背後でブリッジのドアが閉まる。
彼からはもう見えないモニターには、
漆黒の広域空間攻撃魔法───デアボリック・エミッションを構え、今にも放たんとする、二体の夜天の書の意志が捕捉されていた。
「何故だ・・・何故貴様が生きている!!リィンフォース!!」
「・・・・・」
「答えろ!!六年前空に還ったはずのお前が何故っ!!」
剣撃と、拳による打撃。
打ち合い、振り返りざまに大声で問う烈火の将は、自分が「彼女」と戦わねばならないのかという点において、
自分でもわかるほどに激していた。外のクロノ達の状況と同じく、自分達へと攻撃をしかけてくる、かつての戦友の出現に対して。
彼女と同様にフェイトもまた、もう一体の・・・・シグナムとしては認めたくはないがもう一体のリインフォースと斬り合い、
激しい接近戦を演じている。
「自らの守護騎士の顔を忘れたか、リインフォース!!」
「・・・守護、騎士・・・・?」
顔面へと迫っていた拳がぴたりと止まり、跳躍した彼女は後退する。
「私は・・・夜天の書・・・そのバックアップに過ぎん・・・そのような名ではない・・・」
無論、それはただシグナムの問いに答えるための休止ではない。
足元に展開されたベルカ式魔法陣こそがその本意。「呼び出す」ための召喚陣。
「・・・そして・・・我が守護騎士は、ここにいる・・・」
「な・・・!?」
「そんな、あれは・・!?」
夜天の書の元、ひざまずくように現れたその姿は、女性。
騎士甲冑こそ身に着けてはいなかったが、長い緋の髪を後ろで纏めた、鋭く切れ長の瞳の持ち主。
それは正に、シグナムと瓜二つ。まだ、はやてと出会う前、戦うためだけの駒に過ぎなかった頃の彼女がそこにいる。
「私が・・・・もう一人・・・・?」
「いや」
もう片方と戦っていたフェイトが、背中合わせにシグナムの背後に着地する。
「・・・もう、二人です」
見ると、フェイトの向こう側の夜天の書もまた、同様の騎士を呼び出し終えたところだった。
その腰に下げた剣まで、シグナムのレヴァンティンにそっくりだ。
「・・・・・注意しろ。技術的には奴らは今の私には及ばん。だが身体能力や魔力は全て私と同じだ・・・。なるべく連携をとらせるな」
「・・・?・・・・わかりました。あなたも気をつけて。まずは・・・ここを突破しないと」
「ああ・・・いくぞっ!!」
もう一度、二人は自分の相手たる魔導書、そして騎士へと向かっていく。
(実戦経験の差で・・・まだ習得していない動きも、多いはずっ・・・!?)
────待て。何かが。何かが、おかしい。
(?・・・なんだ、何か、違和感が・・・?)
───何故私は、こいつの戦闘能力を知っている・・・・?
(どうして、私は・・・?)
ザフィーラの姿に酷似した守護獣達。
ユーノを感知できなかったクラールヴィント。
己が姿を模した敵。
そして自分たちのことを知らないリィンフォース。
───・・・否。知っているのではない。「覚えている」。
(!!まさか、こいつらは・・・!?)
斬撃を落としながら、シグナムの中で何かが一本の線に繋がった気がした。
既にあった記憶と言う名のパズルのピースがきれいに合致した、そんな感覚が違和感を払拭していく。
だがその思考は一方で彼女の太刀から、本来の鋭さを奪っていて。
「・・・」
「!!」
鈍った刃は敵を捉えることなく地面を穿ち、致命的な隙を晒すことになる。
「シグナムッ!!」
「く・・・!!」
「・・・ブラッディ・ダガー・・・」
回避など、させてはもらえない。
血濡れの短剣が四方八方から無防備なシグナムの全身を囲み、雨あられと降り注ぐ。
彼女の姿は、着弾の爆音と煙の中に飲み込まれ、包まれて消えていった。
結局こっちを先に投下することになりました。
プロット段階でのタイトルが「忌まわしき記憶と共に」だったりするのはアレです、
書いてる人間がガノタだからですorz
次回は後編、微妙に影の薄い主人公が出てくる予定。
>>18氏、
>>20氏、
>>549氏
d。
>>640氏
「レイジングハートは伊達じゃない!」
ごめん、無しで
お疲れさまです。
続きとエロを期待しながら待ってます
全裸で
「私、リンディ・ハラオウンがエアコンの温度を下げるというのだ!」
「エコだよ、それは!」
こうですか?わかりま(ry
バイト直前に書きあがった……!!
多分間に合うと思うので、投下してから出勤してきます。
今書きあがったばっかりなので、いくつか問題あるかもしれませんが、平にご容赦ください。
何もない空間で、少女はユーノのひざの上で彼にもたれながら、猫のようにごろごろと甘えながら、ユーノの話を聴いていた。
それはもう日常と貸した非日常。ユーノもそれを当たり前のように受け入れて、少女の伸びるがままにされている髪をなでてやる。
生まれて間もない少女の髪はこまめに手入れがされているのか、同年代の子供に比べても美しい髪をしていた。親の愛情がうかがい知れる。
ちょうど話にひと段落が着き、お互いに黙り込む。二人のほかには何もない場所だから、お互いの呼吸や心臓の音以外には何も聞こえない。
そんな静寂を穏やかな心地で感じながら、ユーノはじっと少女の髪を見詰めた。
栗色の長い髪。
「やっぱり、よく似てる」
口の端をほんの僅か動かして、ユーノは呟いた。
言葉の意味が分からずに、 少女は顔を上げてユーノの見上げた。説明を求めてじっと見つめる。
ユーノは初め、何も答えなかった。ただ何度も何度も少女の髪をなでる。
それがしばらく続いて、ユーノはぽつりと、呼吸と一緒にもれ出るように、その言葉を呟いた。
「……なのは」
それは、少女の言葉に答えた言葉ではなかった。本当にぽつりと、ユーノの中に溢れる何かがもれ出た結果だった。
そのことを、理屈ではなく少女は察していた。
少女はユーノの顔をじっと見つめた。泣き顔とも微笑みともつかない、不思議な顔だった。
そして、近くにいて触れ合っているというのに、不思議と遠い顔だった。
急に胸が締め付けられるように痛みだして、少女は胸を押さえた。
生まれて間もない少女には始めての感情。当然、耐性も心構えもあるわけもなく、戸惑いと痛みにユーノの服のすそを強くつかむ。
その感触に、ユーノははっとなった。どこか遠いと感じた印象が消える。
少女は帰ってきてくれたと感じた。もう離れていかないように強く強く身体を抱きしめる。
その少女の挙動を、ユーノがどう捉えたのかは分からない。
「……ありがとう」
ただそう呟いて、抱きしめる彼女の背中に包み込むようにして腕を回す。
優しい抱擁。けれど、少女の胸の痛みは消えてくれなかった。
ユーノは近くにいる。触れ合っている。これ以上ないほどに、彼のぬくもりを感じる。なのに、心だけがどこまでも遠く感じる。
その感覚に、少女は泣きたくなった。
今までもこういうことはあった。自分の髪を見るとき、ユーノは決まって遠い目をして、こちらに意識を向けてはくれない。
それでもそれはすぐに収まったし、ユーノもそれに気づくと照れたように笑ってごめんと謝るのが慣例だった。
それが、だんだんと酷くなっている。ユーノがどこか遠くに想いをはせる時間も、その深さも。
すべては、この髪のせいだ。幼い少女でもそれくらいは分かる。
親が与えてくれたこの長い栗色の髪。これがユーノを自分から引き離していってしまう。
少女は自分を生んでくれた親二人のことをそれなりに好きだったが、それすらも超えて恨みたくなってくる。
いっそのこと、染め上げたり切ってしまうことが出来ればいいのに。無理だと分かっていながら、そう思ってしまう。
この髪がこの色でなければ、ユーノはずっと側にいてくれるのに。
ユーノの心をもっと深く、深く知ることが出来るなら、ユーノを遠くになんて行かせはしないのに。
――ユーノを奪っていくやつなんて、いなくなってしまえばいいのに。
強く強くすがりつきながら、そんなことを考えた。
5.ベル
フェイトとユーノの会話は弾んだ。
もともと二人の仲はいい。その上しばらく会っていなかったとなれば、話すことは山ほどあった。だから。
「そういえば、最近なのはとは会ってるの?」
その話題が出てくるのは、当然の話だった。
なのはは二人にとって種類は違えど大切な人であり、二人の関係をつなぐ存在である。彼女の話が出てこない方がおかしい話だった。
フェイトはユーノがなのはに好意を抱いていることは知っている。
というより、この二人を知っている人間なら誰もが気づいているのではないだろうか。
クロノやシグナム、ザフィーラ達など、そういうことには鈍そうな人は分からないが。
正直な話、フェイトは自分が話さなければクロノは彼の気持ちには気づかなかったのではないかと思っている。
なのはの話をするとき、いつもユーノはとても穏やかで優しい目をする。
宝石箱にしまった宝物を、壊さないように、汚さないように、じっと覗き込んでは微笑んでいる、そんな想いが伝わってくるような瞳だった。
フェイトはそんな目のユーノの顔を見るのが好きだった。
そうして想われているなのはのことが大好きだった。
単純に二人がもっと仲良くなってくれたらいいと、そう願っていた。
きっと二人はどんどん仲良くなっていくのだろうと、そう思っていた。
だから。
「……ううん。最近は、あんまり」
そう呟いたユーノの瞳が寂しさと疲れに彩られているなんて、予想だにしていなかった。
「……ユー、ノ?」
思わず漏れ出た声は、自分でも思っていた以上に呆然とした声色だった。
「あ、ごめん。ちょっとぼうっとしてたみたいだ」
その響きにユーノははっと我に返った。瞳に普段の輝きを戻して、笑顔を浮かべる。
けれど、それは強がっている瞳だ。
理由ははっきりしない。けれど、どこかで見たことのある瞳だから、すぐに分かった。
言葉には出さず、ユーノの顔を覗き込んでただじっと、まっすぐな瞳をユーノへと向けた。
「……ごめん、嘘をついた」
幾万の言葉よりも雄弁なその視線に、ユーノは虚勢を保てない。
作った笑顔が取り外されて浮かび上がるのは、届かない星に心焦がれて手を伸ばす、朴訥な少年の素顔。
「……どこが、嘘なの?」
「強がったところ、かな。
……本当のことを言うと、なのはと会うのが、ちょっと怖い」
「怖い……?」
「うん、そう。怖い」
やがて、ぽつりぽつりと、ユーノは自分の胸に沈む思いを語り始めた。
その瞳は、フェイトを通り越してどこか遠い、遠い何かを見つめている。
「最近、なのはと会ってなかったからかな。仕事が終わって夜、時間が余ると、色んなことを思い出しちゃって」
それは例えばなのはとの出会いであったり、笑顔だったり、交わした会話の断片だったり。
疲れた体を毛布でくるんで瞳を閉じても、思い出すのはなのはのことばかりで。
身体が疲れ果てて重くて、普段なら泥のように眠りにつくはずなのに、長くて眠れない夜は続いて。
会いたいと募る思いは、やがて微熱交じりのため息へと変わっていく。
「思い出すたびに会いたいなあ、って思うんだ。けど、それと同じくらいに、会うのが怖い。何を話していいか分からないんだ。
……ううん、違うな。本当に怖いのは、思い知ることなんだ」
何を、とはフェイトは尋ねなかった。それはフェイトも分かっていたことだったし、口に出したくない類のことだった。
なのはは、まだユーノの想いに気づいていない。
好きな人が、自分の事を見てくれない。その辛さは、フェイトはよく知っている。
そう考えて、フェイトは今のユーノと同じ瞳をどこで見たかを思い出した。
昔の自分だ。
母のことが大好きで、ずっと大切に想っていて、けれど母は自分の想うようには自分のことを想ってはくれなくて。
想いを支えにしても、強がっても、寂しさは自分の中でどんどん降り積もっていった自分。
どうしようもなく寂しくて、疲れ果てていたあの頃の自分と同じ瞳を、ユーノはしている。
「……あれ、何言ってるんだろう、僕。……ごめん、変なこといって」
ユーノは苦笑した。いつもと同じなようで、決定的に違う、寂しくて儚げな微笑みだった。
焦がれる想いに身を焼かれながら、どうすることも出来ずに笑っていた。
なのははユーノのことをただの友達としか思っていないことを知っているから。
もしかしたら、と、フェイトは思う。
今までフェイトは、ユーノはなのはのことを遠くから穏やかに見守っているのだと、ずっと思っていた。
けれど、もしかしたら。
ユーノはずっと、届かない場所にいるなのはに手を伸ばしていたのかもしれない。
今こうして素顔を除かせているのは、なんらかのきっかけによるものに過ぎなくて、ずっと前からそうした想いは募っていたのかもしれない。
フェイトがなのはと出会ったことで、少しずつ変わっていったように。
ずっとずっと、消えない想いに焦がれながら幾つもの夜を耐え忍んできたのかもしれない。
それは、あまりに寂しい情景だった。
視界が涙で滲む。
「……フェ、フェイト?」
困惑した声が耳に届いて、フェイトは嗚咽を漏らした。
胸がぐちゃぐちゃになって締め付けられて、とても痛い。
ユーノは優しくて、なのはも優しくて、フェイトはそんな二人が大好きで、だから二人には幸せになってほしいのに。
ユーノはなのはのことが好きで、なのはもきっとユーノのことが好きなのに、どうしてこんなにも切ないのだろう。
フェイトは新しい自分を始めることが出来たけれど、ユーノはどうなのだろう。
古い自分を終わらせて、新しい自分を始めること。それが本当に、ユーノにとっていいことなのだろうか。
分からない。
どうして。
どうして世界は、こんなにも「こんなはずじゃなかったこと」ばっかりなんだろう。
なのはを想って明けない夜をただじっと待つユーノが可哀想で、フェイトは嗚咽がとまらなかった。
そんなフェイトを前にして、ユーノはどうすればいいか分からずに弱りきっていた。
さんざん悩んで迷った末に、不器用に、おずおずと、フェイトの肩に手を置いた。
「泣かないで……」
出てきた言葉は、ひどく不器用で。
その暖かさに、フェイトはまた泣いた。
――そして時間は現在に戻る。
明かりもついていないくらい自室で、ユーノは毛布に包まって丸くなっていた。
激情の波はようやく過ぎて、心が落ち着きを取り戻していく。
後に残るのは、疲れ果てた身体と心。
真に残る敏津を吐き出すように、ため息を漏らした。
結局、フェイトは昼休みが終わるまでずっと泣き続けていた。
仕事を再開することと、傍らで泣き続ける友達に挟まれて、ユーノはどうしようもなく困惑していたが、フェイトは大丈夫だからと繰り返して、ユーノを仕事に戻していった。
それから、ユーノが気づかないうちにフェイトは帰ってしまった。
まだ、泣いているのかもしれない。
そう考えると、気分がいっそう憂鬱になった。
いつまで、こんな夜は続くのだろう。
半分沼に沈めたような意識で、そんなことを考える。
なのはを想って、届かないことに苦しんで、フェイトまで泣かせて眠れずにいる、そんな夜はいったいいつまで続くのだろう。
そんなのは決まっている。
この夜が明けるときは、この想いがなのはに届く時だ。
ユーノは苦笑した。そんな簡単にいくならそもそもこんな夜をすごしてなんていない。
それ以外の方法などあるわけもない。
――リィン、と、胸元がかすかに光る。ささやき声が聞こえた気がした。
……いや、もうひとつ方法があった。頭に浮かんだ一つの考え。それはまったくの突然に、当たり前のように胸の中に鎮座していた。
「僕がなのはのことを諦めるとき、か」
その言葉は砂漠に落ちた水のように、ユーノの中にしみこんでいった。
自分がなのはのことを諦める。いつかそんな日が来るのだろうか。
この思いも苦しさも、すべて過去のこととしてしまえる日が来るのだろうか。
そんな自分は想像することも出来ない。
けれど、人はいつまでも変わらずに入られないことを、ユーノは知っている。
時は流れる、世界は変わる。その中で生きる人たちの意思とは無関係に。
その流れの中で、この気持ちも風化して、単なる少年時代の思い出として処理してしまえる日が来るのかもしれない。
(……それも、いいかもしれない)
不思議と波風ひとつ立たない、静かな心でユーノはその考えを受け入れた。
それがどんな形であれ、この苦しみが終わるのなら、明けない夜が明けるのなら、それでいいじゃないか。
そこまで考えて、ユーノは我に返って苦笑した。
どうやら自分はだいぶ疲れているらしい。普段ならこんなこと思いつきもしなかっただろうに。
疲れているからこんなに弱気になってしまうのだ。
「……もう寝よう。明日も早いんだし」
つぶやいて、端末のスイッチを切ろうとした瞬間、場違いなまでの陽気なメロディーが流れ始めた。
伸ばした手が凍りつく。
そのメロディーの意味を、ユーノはよく知っていた。画面を見なくても誰からのもか分かる。
なのはからのメールだ。
ユーノは錆びついた人形のような動きでメールを開いた。情けないことに手が震えていた。
がたがたと揺れる指がそっとメールを開く。
ユーノの目は吸い込まれるように画面に引き付けられた。
なのはからのメールは、元気ですかという温かい問いかけから始まっていた。
そして、学校や放課後の楽しかったことなどの近況報告をはさんで、お仕事がんばってね、の一文で締めくくられている。
内容は違えど同じ構成の文面。
そこに、今までにはなかった追伸が書かれていた。
『P.S 今度の日曜日にレイジングハートの調整が終わるので、本局に行くことになりました。
よかったらお仕事の手伝いに行ってもいいですか?』
その最後は、こう結ばれていた。
――久しぶりに会いたいです。
魂が打ち砕かれたかと思った。
瞳孔が開く。心臓が痛いくらいに締め付けられて、とっさに手で押さえた。
呼吸が出来ない。苦しい。服を引きちぎりそうなほどに強く強く手を握る。
パクパクと金魚みたいに口が開く。空気も言葉も出てこない。そんなものよりもはるかに大きな感情がのどにつかえて、行く道をふさいでいた。
分かっている。この一言に深い意味がないってことくらい。
最近仕事で合えなかった友達に会いたい。ただそれだけのことだ。
ただ、それだけのことなのに。
「うっ……く、あぁ……あ……」
それでもココロは、こんなにも痛い。
誰もいないくらい部屋で、ユーノは声を押し殺して泣いた。
このことをきっといつまでもなのはは知らずにいる。
そう思うと、また涙が溢れてきた。
ここまでです。タイトルはBUMP OF CHICKENから拝借。
それにしても、心理描写って難しいです……orz
みんなすごいよくかけててうらやましいです、本当に。
四苦八苦しながらベル聞いたり1/3の純情な感情聞いたりわたしたちの田村くん読んだりと資料を読み漁ってましたw
次はまだ間接的しか出てこないキーパーソン出して、それとちょっとした場面入れて大体折り返しだと思います。
>>549氏
GJですw
レベル高い作品がおおくてすごく楽しんでいますが、こうしてエロがあるとよりいっそう楽しめますねw
保管庫の更新と平行して書いてらっしゃるなんて、すごいなあと思いつつ、続き楽しみにしております。
がんばってください。
>>640氏
「……すまんが、みんなの魔力をくれ。」
「蒐集」
○ー・カイラム、撃沈。
分かりづらいネタでごめんなさいorz
私もガノタなので思わず反応してしまいつつGJですw
緊迫する戦況、深まる謎、そしていまだこじれたままの二人の絆。
これからどうなるのかとても楽しみです。がんばってくださいw
ウハ、投下ラッシュでつか!
とにかく皆々様方テラGJとしか言いようがない!
続きはマタ〜リとして待ちますから、どうか無理しないようがんがってくだせぇ。
みなさんGJっす!
>>1 乙〜!
ドリルの続きって、もうないのかな
>>640氏
グレアム「年寄りに寄ってたかってええぇぇっ!!」
えぇ、その、なんだ、あれだ、……スイマセンデシタorz
闇の書の意思が、スターライトブレイカーを使ったように
バックアップさん達も蒐集した相手の力が使えるようで…。
敵に回すと厄介ですなぁ、ユーノくんの結界。
続き楽しみにしてます。
>>430氏
乙です。 メートちゃんがなにか起こしそうだったり、
なのはとの対面でなにか起きそうだったりで、先が気になります。
>それにしても、心理描写って難しいです……orz
いやもう、ユーノやフェイトの、たまらない感じが
生々しいくらいに伝わってきましたよ?
>>41 おそらく主人公側で最高の硬さを誇る防御能力ですからね。
破るのは一苦労だ。
けどはやてって蒐集行使能力があるから全員の魔法をコピーできるんですよね。
あっちもあっちで強力だ。なのはが将来目立たなくなるかも。
43 :
jewel:2006/02/24(金) 00:15:42 ID:PQGlpC1T
>>549氏
GJ&スレ立て乙です! 前スレでは調子乗って投下しすぎたかな…と
反省している次第でゴザイマス… 保管庫の管理も乙ですm(__)m
>>640氏
いきなりパーティー全滅の危機!? 明らかに喧嘩してる場合じゃないw
>>430氏
「心理描写の難しさ」は私も苦労しております… 永遠の課題(汗
>>549氏
スレ立て乙です。そしてGJです。
この板らしいエロで素晴らしかったです。
>>640氏
GJです。
緊迫した雰囲気になってきましたね。続きが楽しみです。
>>430氏
GJです。心理描写は難しいですよね…。
でも430氏のは比喩とかもうまくて、レベル高いと思いますよ。
前スレで感想下さった方々、どうもありがとうございました。励みになります。
私も長編にチャレンジしてみようと思うのですが、やっぱり難しいですね。
現在プロット段階なのですが、アイデアがなかなか出なくって。
ちょくちょく気分転換でもしながらゆっくり進めていこうと思ってたりします。
で、ちょっとした短編書けましたので投下してみます。
1時頃に眠れなかったので書き始めてみたらいつのまにかこんな時間にw
45 :
98:2006/02/24(金) 08:28:38 ID:e2zFDJdE
<アリサのティータイム>
「なんだかのど渇いたわね」
部屋で一人でくつろいでいると、アリサはふとそう感じた。時計を見ると3時過ぎ。
いつもなら鮫島が紅茶を持ってきてくれる頃なんだけど……。
「鮫島ー?」
呼んでも返事がない。聞こえなかったのかなと思い部屋から出て廊下を見渡しても、一向に姿は見えない。
まだ1階にいるのかもしれない。紅茶を入れてくれるよう頼みに行こう。
そう思ってトントンと階段を駆け降りて1階のリビングに行くと、鮫島はテーブルに座っていた。
「あ、鮫島ー……?」
呼びかける声が途中で止まる。なんだか鮫島がいつもと違う。なんというか、グッタリしている。
いつもはずっとシャキッとしてるのに。どうしたんだろうとちょっと心配になって側に寄ってみる。と、
――寝息が聞こえた。かなり気持ち良さそうにスースーと。
(寝ちゃってる……)
疲れてるのか、どうやら眠ってしまっているようだ。
そういえば今日は、お父さんが日帰り出張とかで、鮫島は遠くまで送りに行ってさっき帰って来たんだっけ。
車の運転はやったことないからよくわからないけど、やっぱり疲れるのかな。
紅茶を入れてもらおうと思ったけど、それだけのために起こしちゃうのも何だか悪いかも。
(そうだ!)
なら、たまには自分で入れてみよう。ちゃんとできるかどうかわからないけど、何事もチャレンジ。
まずはお湯を沸かそう。これくらいは簡単にできる。
というわけで、まずはやかんに水を入れて火にかける。しばらく待てば沸騰するはず。
(でも、けっこう暇ね)
数分もすれば沸騰するのだろうが、その数分が意外と長い。
特にやることは無いし、じーっとやかんを見つめても沸騰が早くなるわけでもなく。
かと言ってのんびり待つには短い時間で、結局ずっと立っててなかなかに疲れる。
それでもしばらく我慢すると、ようやくお湯が沸いた。次はお茶葉を用意する番。
戸棚からティーポットを出そうとする。……が、ちょっと高い所にあって届かない。
(どうしよう。ジャンプして――なんて無理よね。なにか台があればいいんだけど)
周りを探してみるが、それらしき物は見当たらない。アリサはうーんと悩む。
その時、「クゥーン」と犬の鳴き声がすぐ近くで聞こえた。飼い犬のジョンソンが側に寄ってきたようだ。
「ジョンソン、どうしたの?あっ、もしかして上に乗せてくれるの?」
「キャンキャンキャン!」
後ずさりしていく。台になってくれるのかと思ったがそういうわけではないらしい。
「そうよね、そんなことしたらジョンソンつぶれちゃうもんね」
「クゥーン」
再びジョンソンが擦り寄ってきた。足元をグルグル回る。これは、どこかについて来てほしい時のいつもの仕草だ。
何か見つけたのかな。ジョンソンが歩き出したのでついていってみる。やかんがピーと吹いているので少し急ぎ気味に。
「あ、これ!」
ジョンソンに連れられてキッチンから少し離れた部屋の前に行くと、そこには台が置いてあった。
ちょうど、あのティーポットまで手が届く高さの台だ。
「ジョンソン、見つけてきてくれたんだ!ありがとう」
あたしが困っているのを見て、探してくれたのかな。さすがジョンソン、ご褒美になでなで。
ジョンソンは嬉しそうに尻尾を振っている。しばらくしてジョンソンが満足した頃、アリサは思い出した。
「そういえば、お湯沸かしっぱなしなのよね。そろそろ戻らなきゃ」
というわけで、庭に放したジョンソンに手を振り、アリサは台を持ってキッチンに戻った。やかんがピーピー言っている。
台を使うと、ティーポットは簡単に取れた。さて、それじゃ肝心のお茶葉の用意……なんだけど、
量がよくわからない。入るだけ入れちゃっていいのかな。でも入れすぎると苦くなったりするのかな。
(――やっぱり、たくさん入れたほうがきっとおいしいわね)
しばらく迷った後、アリサはそんな結論に達した。
ティーポッドにお茶葉をどばどばと入れる。ちょっと溢れたけど気にしない。そしてお湯を注いで、
「できた!」
あとはしばらく蒸らせば完成。その間にティーカップを用意しよう。と、その時、
「アリサお嬢様?」
鮫島の声が聞こえた。キッチンにアリサがいることを不思議に思ったのか、心なしか驚いたような声だ。
キッチンに鮫島が顔を出す。アリサが何かを作っていることに気付き、
「申し訳ありませんアリサお嬢様、どうやら眠ってしまっていたようで」
「あ、鮫島おはよう。ねえ、鮫島も紅茶飲む?」
「紅茶――といいますと?」
46 :
98:2006/02/24(金) 08:29:28 ID:e2zFDJdE
「あたしが作った紅茶なんだけど、一緒に飲みましょ」
「ああ、紅茶をお作りになられてたのですか。はい、よろこんで」
「うん、じゃあ用意するからテーブルで待っててね」
そうして鮫島と一緒に紅茶を飲むことになり、アリサはご機嫌でティーカップを二つ用意した。
自分が入れた紅茶を飲んでもらえるのはなんだか嬉しい。もう紅茶は完成したかな。
蒸らしているティーポットを見る。……なんとなく色が濃いような気がする。
これ以上蒸らしておくと真っ黒になりそうなので、たぶんこれで完成なのかもしれない。
でき上がった紅茶をティーカップに注いで、鮫島が座っているテーブルに運んだ。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます、アリサお嬢様」
「それじゃ、いただきまーす」
二人はズズッと紅茶をすすった。
「……」
「……」
「えっと……」
「いえ、おいしいですよお嬢様。目が覚めました」
「目が覚めたの……?」
リラックス効果のあるこの紅茶では普通目は覚めない、はずである。
「いや、あの……」
「……」
「……」
「もう……にがーい!」
あまりの苦さにアリサが叫ぶ。
なんでだろう、鮫島がいつも持ってきてくれる紅茶とは全然違うじゃない。
「ねえ鮫島、鮫島はどうしていつも上手に紅茶を入れられるの?」
「そうですね、昔にずっと練習してましたから、そのおかげでしょうかね」
「練習?」
紅茶を入れるのは、練習しなきゃいけないほど大変なことなんだろうか。
「はい、紅茶を入れるにはいろいろなコツがあるんですよ」
「どんな?」
「例えば、カップとポットは事前に暖めておくことや、葉によって蒸らす時間を少しずつ変えることなど、細かく挙げればキリが無いほどあるんですよ」
「そっか、そんなに大変なんだ」
全然知らなかった。お茶葉とお湯があれば誰でも簡単に作れるのかと思ってた。
だからきっと、初めてだけどおいしくできたと思ったんだけどな。
「あたしの紅茶はまだまだってことなのね……」
「でもね、お嬢様」
少し落ち込んだアリサを見て、鮫島は言う。
「紅茶を入れる時に一番大切なのは、技術でも知識でもなくて、まごころなんです」
「まごころ?」
「アリサお嬢様は、この紅茶をおいしく入れたいと思いましたか?」
「うん、おいしくできたらいいなって」
「でしたらきっと、アリサお嬢様はすぐにお上手になりますよ」
「――そうなの?」
「ええ。人を味や香りで楽しませることは技術さえあればできますが、一番大切な心を楽しませることは、まごころにしかできないんです。それをお持ちのアリサお嬢様なら、きっとすぐにでも。今度練習しましょうか」
「うん、する!」
やっぱりおいしい紅茶を入れたい。誰もがおいしいと言ってくれるような紅茶を入れられるようになりたい。
そしたら、なのはやすずかやフェイトにも、あたしが入れた紅茶を飲んでもらえるかもしれない。きっと楽しいだろうな。
そのためにも――練習、がんばろう。
「でもまずは、」
この紅茶を飲もう。
「んーっ、やっぱりにがーいっ!」
「いやしかし、この苦さもなかなか悪くないですよお嬢様」
「大人の味?」
「ビターですね」
「あははっ、なにそれー」
ほろ苦い紅茶をちょびちょびと飲みながら笑い合う、そんなある日の平和なティータイムでした。
>>98氏乙かれ〜。
アリサと鮫島のショートストーリーGJ!なぜかジョンソンに萌えますた。
たまにはこういうほんわかしたのも良いですね。
48 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/24(金) 17:03:55 ID:W5OsvmqX
>>98氏
GJです。こういうほのぼのした話も中々いいですね。
えーと、あのですね。これからエロを書こうとしているのですが。
皆さん、陵辱ものって大丈夫でしょうか?
>>48 Romです。いいんじゃないでしょうか…。
>>48氏
事前に耐性のない人は注意してくださいといったことを書いておけば
よろしいかと。つか俺も陵辱書いてますしorz
というわけで、砕かれし〜の最終話です。
陵辱ものなので苦手な方や嫌悪を感じる方はご注意。スルーしてください。
51 :
陵辱モノ。:2006/02/24(金) 17:31:45 ID:zMM382iO
「────そう、じゃああなたは戻ってきて、シグナム」
『何?・・・いや、しかし』
「もうすぐ、はやてちゃんが帰ってくるのよ。さすがにあなたまでいないのはまずいわ」
「───っ、ん、ぅぅん、んんっ・・・」
リングの向こうで通信を受けているリーダーは、おそらく戸惑っているのだろう。
シャマルの促す声にも、どうするか決めかねているようだった。
「ぅん、ん、ん、んんん─・・・!!」
うめき声のような、すすり泣くような発声に彼女はちらと脇を一瞥すると、再びシグナムへと向けた言葉を続ける。
「・・・もう、相手の管理局魔導士は倒したのでしょう?なら、あとはヴィータとザフィーラに任せればいいじゃない」
『それは、そうなのだが・・・』
「しっかりしてよ、リーダー。あなたがしっかりしてくれないと・・・」
『・・・我々に向かってきた魔導士なのだが・・・どうやら、捕らえてある白服の魔導士の仲間らしい』
「なんですって!?」
シグナムの告げた意外な事実に、シャマルの声も自然と大きくなる。
『だから、だ。このままにしておいていいものかどうか・・・』
「シグナム、その魔導士のこと、詳しく聞かせてもらえるかしら?」
真面目すぎる将が思案に暮れる前に、狡猾なる参謀の思考は即座に行動を起こしていた。
訝しげなシグナムから打ち倒した相手の状態、その人間と捕獲魔導士との関連を思い当たった理由、そして外見の映像など。
得られる情報を全て把握すべく。事細かに烈火の将へと質問をぶつけていき、次なる行動の指示を出す。
『・・・では、本当にいいのだな?私はこれから帰投するぞ』
「ええ、慌てず気をつけて」
通信を切ると、彼女は腰掛けていたベッド上から立ち上がる。
───そう、帰ってきてくれてかまわない。あとはヴィータとザフィーラがうまくやってくれる。そうすれば。
「・・・あなたのリンカーコア、ようやく蒐集できるわ・・・・」
「───!!ッ!!ッ!!────!!!」
彼女の下で、何かが蠢いた。
「主のためよ・・・悪く思わないでちょうだい・・・」
暗い部屋の中、四肢をベッドの足に拘束され、口に穴の開いたボールを噛まされ声を出すことすら許されない「それ」は、
確かに少女の形をしていた。
「なかなかかわいい名前してるのねぇ・・・?「なのは」ちゃん・・・?」
「──────・・・・・!!!!????」
「さぁ・・・お出かけの時間よ・・・。お友達が、待っているわ・・・」
泣きはらした、焦点の合わない虚ろな目の少女は、相変わらず汚されきったままで。
二穴に突き込まれた極太の電動擬似男根の動きにあわせ、抗う術なく腰をくねらせている。
それが、際限なく果て続ける少女───高町なのはの置かれている状況の、全てだった。
52 :
陵辱モノ。:2006/02/24(金) 17:32:41 ID:zMM382iO
終、崩壊
口内へと、熱い迸りがぶちまけられる。
凶悪なまでに太く巨大な剛直でいっぱいになっている少女の口に、それを受け入れるだけの容量は既になく。
生臭い粘液を嚥下するのは、幼い少女にとって困難であることこの上ない拷問であった。
結果として下しきれなかった分の白濁は溢れ、滴り、少女の身へと降りかかり汚していく。
「!!!!!」
身を引いてその飛沫をかわすことも、許してはもらえない。
下の口も同様にまた、口内を埋め尽くしているそれ以上に大きな肉槍に攻め立てられていて、腰を引くより先に最奥まで貫かれていくのだ。
「おらっ、噛んで逃げよーったって、そうはいかねーかんなっ!!生憎コレには痛みは通ってないんでな!!」
「・・・・・」
無言で後ろから膣奥を擦っていくのは、褐色の獣人。
そして毒づきながら少女を蹂躙する剛直の持ち主は、犯され続ける少女以上に幼い赤毛の女の子だった。
「んんんんぅっ・・・!!!!」
もう、両腕には、揺さぶられ続ける身体を支えるだけの力も残ってはいない。彼女を前後から貫き、抉っている二本の
極太の杭に支えられ、無理矢理身を起こされているに過ぎないのだ。
フェイト・テスタロッサは涙で霞んだ視界で自分を犯す少女を見上げつつ、敗北の味を味あわされ続けていた。
(なの・・・は・・・・・なの・・・・・・・・は・・・)
助けられなかった友の名を、心の中でただただ、呼び続ける。戦いに敗れた彼女ができる、それは唯一のこと。
二人の優秀なベルカの騎士と、守護獣に対し、彼女は友のためとたった一人で戦いを挑んだ。
いくらフェイトが実力者であるとはいえ、その行動は無謀以外の何ものでもない。
なす術なく打ち倒され、デバイスを破壊された挙句、今こうして全身を蹂躙されている。
「ほんとだったらさっさとリンカーコア奪うとこだけどな!!もーしばらく楽しませてやるよ!!」
「んぶうううぅぅっ!?んんっ!!うぬぅっ!!!」
紅の少女の嘲りと共に、再度口の中が生臭い液体に満たされていく。
彼女──ヴィータの股間に変身魔法で生やされた醜悪な形の男根は何度その精力を放出しても、衰える気配というものがなかった。
あっけなく処女を奪われ、媚薬と催淫効果のある魔法に肉体を漬け込まれ。
褐色の肉槍が膣壁を抉り擦りあげていく感覚にフェイトは喘ぎ、悶える。
バリアジャケットが引き裂かれた胸元では、二つの頂が弄られ、つんと立っていた。
背後から貫くザフィーラが覆いかぶさってきて、平らな双丘を揉みしだく度に乳首が擦られ、つつかれ、
声なき声が口と男根との隙間から漏れ出していく。
「・・・・・!!・・・!?」
そんなどうすることもできない状況の下、涙にまみれぼやけた視界の片隅に、達すると同時に彼女はなにかを捉えた。
一つは、緑色の服を着た、冷たい目の女性。
そしてもう一つは────自分以外の誰かへと群がる、数人の裸の男達の姿であった。
53 :
陵辱モノ。:2006/02/24(金) 17:33:32 ID:zMM382iO
「・・・・・」
「んは・・・あ・・・あ!!あ!!あああああぁっ!!!」
シャマルは、バックアップと補助のエキスパートである。魔力を持たない一般人の意識を奪い、
操ることなど、造作もない。
現に今、こうやって。
「や・・・ぁ・・・もう・・・いや・・・ゆる・・・ふぁああぁ・・・」
彼女の手によって自我を失った男達が、なのはを犯し続けているのだから。
前後の穴は当然のこと。
左右の小さな両手に一物を握らされ。
全身に精液を浴びながら泣き喚く少女は、目と鼻の先で犯され続ける親友以上によがり、腰を振る。
絶頂に到達したのは、一度や二度ではない。
「ふぁああ・・だめ・・・え、いや、ふむぅ、ん!!んううぅ!!んんぅ・・・」
唯一開いていた口にも肉棒が押し入り、あぶれたモノ達は我先にと少女の身体へと先走りに濡れたその先端を押し付けてくる。
「んーっ!!んっんっ、ん!!ふぁむ!!むぐ、んんうぅぅぅ・・・!!」
おそらくまた達したのだろう。もう汚されていない部分など微塵もないお腹へと子種を浴びせられ、背中を反らせて
目を見開くなのはへとシャマルは近づき、耳元へと囁きかける。
「・・・あらまぁ、こんなにもよがっちゃって。変態さんなのねぇ、なのはちゃんは」
「────!!・・・・・!!・・・!!」
「一体、何回イッたのかしらねぇ、この淫乱さんは」
無駄な努力とわかっていながら、今度はきつく目を閉じまたイってしまわぬよう快楽に耐えるなのはにも、その声はしっかりと届いていて。
「見なさい・・・あなたを助けに来たお友達の姿を・・・・」
「!!・・・!!ん、ん!!・・・・!!!!!」
かろうじて目を開け、見やった先では金髪の少女が光のない目を虚空に泳がせ、前後から突き上げられている。
(あ・・・・あ・・・・フェイト・・・・ちゃ・・・)
「あなたのせいよ」
(そ・・・・んな、そん・・・・な・・・)
「あなたの心が、リンカーコアを渡さないから」
(ふぁ・・ここ、ろ・・・・?)
「だから、お仕置きなの。あなたと、そのお友達に」
「怨むなら自分の心を、魔力を怨みなさい・・・・雌豚なのはちゃん」
「そ、んな!!んは、あああああぁああぁっ!!!!!」
シャマルは口元を歪め嘲笑を浮べながら歩き去っていく。
少女が彼女の話を聞けるよう命じられていたのであろう、若干緩やかになっていた
男達の攻めが再び、激しさを増す。忘れかけていた快楽の波にまたも飲み込まれていくなのは。
途切れることのない絶頂が、全身を駆け抜けていく。
(た・・・しの・・・せ・・・わた・・・のせいで・・・ェイト、ちゃ・・・まで・・・)
54 :
陵辱モノ。:2006/02/24(金) 17:35:22 ID:zMM382iO
(た・・・しの・・・せ・・・わた・・・のせいで・・・ェイト、ちゃ・・・まで・・・)
自分の心が魔力を押さえ込み、素直に渡さなかったせいで。
そのせいで友までもを巻き込んでしまった。
(いや・・・もういや・・わたしの・・・わたしのぉお・・・・)
「んんんんんんんーーーーっ!!!!んっ!!んっ!!んっ!!」
視線の先の友はもう、ものも言わずただ快楽を享受するだけに成り下がっていた。
あれもみんな、自分のせい。
(わたし、がっ・・・・!!)
心が、ヒビワレテイクのがわかる。
自分を、友を。
こんな目に遭わせる心なんて、砕けてしまえばいい。魔力なんて、奪われてしまっていい。
なのははむせび泣きピストンに揺さぶられ続ける身体で、そう願った。
何度も、何度も。締めつけ、貫かれ。しゃぶり、ぶちまけられ。よがり、注ぎ込まれながら。
何度も、何度も、強く願った。
───そして。壊れゆく彼女の願いは、叶ってしまった。
・・・・・数週間後、海鳴という名の都市は地図上から消滅した。
死傷者は数え切れず、被害を被った地域は必要最低限の犠牲というには、あまりに広大だった。
ロストロギア「闇の書」、そしてその主を葬り去った代償として、魔導砲「アルカンシェル」の一撃を受けたためである。
その引き金を引いたのは本来使用を一任されているアルカンシェル搭載艦の艦長ではなく、
同艦所属の若手執務官と、珍しいことに同乗していた一人の民間協力者の手によるものであったという。
彼らの責任を追及する声が上がる中、許可を出した艦長も発射を行った彼ら二人も、正式なコメントを出すことはなかった。
甘んじて非難を受けているのか、そのようなことに興味がないのか。
程なくして局員たる二名は職を辞し、残る協力者も姿を消し表舞台から去ったため、彼らの真意はわからない。
本局内の医療施設で昏睡を続ける二人の少女がそのことを知る由もなかったのは、幸であったのか、不幸であったのか。
そして彼女達が目覚めるのはいつになるのか、目覚めた時果たしてどれほど彼女達の心に正気が残っているのか。
それは誰も、眠り続ける彼女達自身でさえも、窺い知ることはできない──────。
−end−
もうね、
>>549氏とかの書く濃厚で精密なエロ話に比べたらorzな出来で
ほんとorz
>>430氏
メーたん人間体となのはの対決マダー(AA略)?
GJです。
>>98氏
なんだかすごく久しぶりに鮫島さんがまともにしゃべっているのを見た気がします(待
いや、自分の書く話だと出番がほとんどないもんでorzごめんよ鮫島さん
>>549氏
訂正が一点あるのでお願いできますでしょうか?
−変わりゆく絆−の六話の
>>23にある
>鋼の色に光るハンマーヘッドを、その身全てを砕かんと狼型の使い魔の背へと振り下ろす。
を
>目の前には、一体の狼型使い魔。その身全てを砕かんと振り下ろすのは、鋼の色に光るハンマーヘッド。
の倒置した形に差し替えていただけますでしょうか。申し訳ありませんがお願いします。
・・・・ほんと迷惑だねorzすんません
あ〜あ、ニ人とも壊れちゃった
しかも鳴海市消滅w
>>640氏GJ!!
あー、その、やってしまった後になんですが、謝罪を、前スレ422です。
妙なのを半分ほど書き込んだ直後に身内が事故ったと電話が入りまして、
急遽 To Be Continue とだけ付け足して電源切ってしまった次第です。
やっと落ち着いたのですが、こういう場合続きだけ書き込むほうがいい
でしょうか?頭からもっかい上げたほうがいいのでしょうか?
タイトルすら書いてないのでどうしたらいいか(本来は文末にタイトル
が入っていました)。
あと保管庫だけで過去ログまともに見ずにもうしわけありません、ここは
「トリップ」というのは推奨だったんでしょうか?なんかやり方が今一
わからなかったもので。ご教授お願いします。
皆さん感想ありがとうございます。やっぱり感想があるとやる気に大きく差が出ますねw
>>98氏
GJですw
本編ではあまり出番がなかったけどこういう暖かい光景が普通に思い浮かんでくるのがすばらしいですw
>>640氏
完結おめでとうございます、こちらもGJです!
もう片方とはうって変わってダークな話、救われないなあw
>メーたん人間体となのはの対決マダー(AA略)?
ちなみに、二人の修羅場はもう少し引っ張ってからになります。
そちらもなのはの参戦楽しみにさせていただきますねw
>>422氏
多分かまわないと思いますよ。
どうしても気になるようでしたら断りを入れて最初から掲載しなおせばいいのではないでしょうか。
続きが気になっていたので、投下していただけるなら身悶えながら読ませていただくことになるでしょうw
ちなみに、ここでは別にトリップ推奨というわけではありません。
トリップをつけている方は(私も含めて)それぞれの都合によるものなので、つけなくても大丈夫です。
トリップをつけたいときは、名前の後ろに#をつけて適当な文字を入力すれば、別の文字列に変換されます。
元の言葉は書いた本人しか分からないので、本人だと証明する手段になります。
トリップに入力できるのは半角なら8文字、全角なら4文字までということです。
……ほとんど549氏の受け売りですが、こんなところです。
ではでは。
>>57 >>58のトリップの説明だけど、
偽者に話の続きを勝手に書かれなくて済むとかかな?
話壊されるとそれなりに凹むからorz
430さん、他の皆さん、ありがとうございますー。
変なとこで区切ってしまったんで、スレ消費になりますが、もっかい最初から
出すことにします、ご容赦を。
あとこのトリップっていうのを一度やってみたかったので、ついでにそっちもw
「バルディッシュ、アーク・セイバー!」
「yes sir」
闇の中に光の鎌が弧を描き、いままさに彼女 −フェイト・テスタロッサ− に飛び掛らんとしていた異形の者の上半身と下半身を分断する。
彼女の視界の中にもはや動く物体はない。用心深く辺りに視線を巡らせながら、愛杖 −バルディッシュ− をシーリングフォームに変形させる。
「バルディッシュ・広域サーチ」
「There is no enemy reaction in the outskirts」(周辺に敵反応なし)
ふぅ、と肩の力を抜いてフェイトは通信機を取り出し、我が家にも等しくなった次元空間航行艦船アースラに送信する。
「アースラ、こちらは掃討完了。なのはの方は?」
アースラ内でモニターを見張る彼女の兄、 −クロノ・ハラウオン− からすぐさま返信。
「本命はなのはの方だったらしい。でもあっちもあっさり片付いたよ。ご苦労様、戻ってきてくれ、フェイト」
「了か・・・兄さん?」
通信機から聞こえる音に急に喧騒が混じる。
「クロ・く・ん・・フェイ・ちゃ・の座・・に次元震・・反・!」
《兄さん!兄さん!何が?》
急にざりざりと耳障りな音を発するようになった通信機を投げ捨てクロノに直接念話を送るフェイト。
彼女の周辺が揺らした水槽の水のようにゆらゆらとゆらぎはじめる。
水中で動こうとしたときの目に見えぬ何かがまとわり付くような感覚を全身に感じ、顔をしかめるフェイト。
《フェイト!君の付近で次元震反応があった!規模は不明だ!巻き込まれると危ない、すぐにこっちへ!!》
ゆっくりと身構えるフェイト。バルディッシュは既にアサルトフォームに変形させてある。
《ごめん、兄さん、ちょっと遅かったかな。転移魔法間に合いそうにない・・・》
《フェイト!?》
既に彼女の周囲の空間は揺れどころかひび割れんかのように軋み始めていた。
「・・・バルディッシュ、全方位プロテクション・・・」
「I can go anytime」(いつでもいけます)
−− ミシッ!! −−
彼女のわずか十数メートル先でついに空間に裂け目が入った。
「展開!!!!」
「yes sir!」
眩いばかりの光の球が彼女を包み込む。直径をぎりぎりまで小さくし、極限の魔力で可能な限り防御力を高める。
− 直後 −
グゴァゥッッッ!!!!!!!
目に見えぬ何か、次元と次元を繋ぐ莫大な力が、それからみればあまりにも小さな小さなフェイトに容赦なく襲い掛かる。
「くぅあっ!!!」
ゆらぎに攻められるたび、プロテクションバリアが激しく明滅する。わずかでも力を抜けばそのまま次元の狭間に投げ込まれてしまうであろう。
「ぐぅっ!・・・バ・バル・ディッシュ・・・」
「・・yes・・・sir・・・」
「!!!カートリッジロード!!最大出力!!!」
「!!!yes sir!!!」
ハーケンフォームに変形したバルディッシュを真一文字に構えるフェイト。バルディッシュそのものが激しく強く光り輝き、光がフェイトを包み込んでいく。
が、
襲い掛かる猛威に対するにはその光はあまりにも小さく見えた。
アースラ内司令室。
「だめだ、念話も通じない」
「じゃ、じゃあどうするの!このままじゃフェイトちゃんが!!」
「そんなこと言われなくてもわかってる!!」
ひっ、と普段見せない形相でクロノに凄まれた −エイミィ・リミエッタ− が後ずさる。
「あ・・・す、すまない、悪かった、その・・つい・・すまない、エイミィ」
義妹を心配するがゆえの兄の想い、そして執務管としての責務、それらを決してわからないエイミィではない。
「い、いえ、こちらこそ、軽率な発言でした、申し訳ありません」
「いや、すまなかった。それで、次元震の規模は?」
クロノの言葉に補佐官としての表情を取り戻し、キーボードを操作するエイミィ。
「次元震レベルN−2、規模的にはごく小規模です。範囲はやや広いようですが、次元航行に影響のあるレベルではありません。でも・・・」
「どんな大きさであれ、次元震の発生現場で発生の瞬間に立ち会った者など・・・過去には居ない・・・」
「提督・・・」
クロノの、そしてフェイトの母親である −リンディ・ハラウオン− が悲痛な面持ちでいつの間にか二人の後ろに立っていた。
「フェイト・・・くそっ!」
「信じましょう、フェイトを。あの子なら・・・きっと」
息子の肩に手を置くリンディ。だがしかしその手にいつもよりの力が篭っていたことに気付いたのは当のクロノだけであった。
「・・・」
「フェイトちゃん・・・」
静まり返るアースラ司令室。他のオペレータ達もどう対応していいかわからず互いに顔を見合わせるばかりである。
永劫とも思えるしかし数分の後・・・
《・・だ・・・う・・・・ぶ・・・》
「フェイト?!」
あまりの事に念話にもかかわらず声を張り上げるクロノ。
「クロノくん?!」
「クロノ?!」
「あ、い、いや、す、すまない、フェイトからだ。じ、状況を確認する」
《フェイト。大丈夫か?無事なんだな!》
「フェイト・・・」
「よかったぁーーーーー」
手を組み涙交じりで天を見上げるリンディ。
コンソールに突っ伏すエイミィ。
皆も一様に安堵の表情を見せていた。
・・・ただ一人クロノ以外は・・・
− 静かだった −
自分が声さえ出していなければ自分の鼓動の音すらも聞こえて
しまいそうなくらいに。
しかし。
静かなだけであった。
フェイトは今、次元震の只中にバルディッシュと共に飲み込まれんと必死に耐えて抜いている。
静か過ぎる周囲に自分の息遣いだけが聞こえる。
必死に魔力をバルディッシュに注ぎ込み。ただただただただひたすらに耐えに耐えに耐えに耐える。
そんな中に新たな音源が生まれた。
ギリリッッ!
「!バルディッシュ!!!」
救済の音では・・・なかった。
彼女のための杖バルディッシュの中央部に走る亀裂。
絶望の音色だった。
「バルディッシュ!!!!」
「master・・・」
「バルディッシュ!!バルディッシューーー!!!」
もはやフェイトにはどうしたらいいかわからなかった。クロノは次元震だと言っていた。だとすれば耐えてさえいればいつかはそれは収まる。ただそれがいったい何時なのかはわからない。
この静寂の猛威にいつまで晒されなければならないのか、それまで持つのだろうか、プロテクションは、自分の魔力は・・・そしてなにより・・・バルディッシュが。
(兄さん、なのは・・・母さん・・・みんな・・・)
「・・・ごめん、もう・・・」
気丈な少女の口から絶望がこぼれかけた。
「master・・・It is a request」(お願いがあります)
「な、何?!」
「A double road」
「!な、何言ってるのバルディッシュ!!」
「A method is only it if possible」(もし可能性があるとしたら、方法はそれだけです)
バルディッシュは彼女にこう言っている。カートリッジをロードしてくれ、と。
今現在すでにカートリッジをロードしているこの状況で、
「2発目をロードしろ」、と
「おかしい」
クロノのその言葉に気づいたのは最も近くに居たエイミィであった。
「?どうしたのクロノくん」
「繋がらない」
「え?何が?」
「フェイトだ、さっき確かにフェイトからの念話が届いたのに・・・こっちからの呼び出しに答えない」
「ど、どういう・・?」
リンディを振り返るエイミィ
「・・・わからないわ・・・よほどそれに特化した呪文を構築しない限り念話を妨害することは基本的には不可能だし・・・」
「次元震中心部に居ることの影響でしょうか?」
「・・・それもわからない、試した人は・・・居ないのだから」
「・・・」
「もしくは・・・念話すらできない状況にいるか・・・」
その時司令室のドアが開き、人影が飛び込んでくる。
「フェイトちゃんと連絡が取れないってホントですか?!」
フェイトの無二の親友 −高町なのは− であった。傍らには彼女に魔法との出会いをくれた少年 −ユーノ・スクライア− の姿が。
「状況は、どんな?」
無限書庫から出てきたときに脱兎のごとく目の前を駆けていったなのはを追いかけてきたので、状況を把握していなかったユーノが聞いた。なにせなのはに状況を聞こうとしても「フェイトちゃんが!」しか言わないのである。
「ロストロギアの回収になのはちゃんとフェイトちゃんがそれぞれ向かったの。追跡を逃れるのにロストロギアは2手に別れて、本命のロストロギアはなのはちゃんが捕らえてくれて無事保護。おとり側だったフェイトちゃんの方も使い魔は簡単に片付けたんだけど・・・」
「けど?」
「ちょうどその時フェイトの居た場所で次元震が起きた・・・」
念話をあきらめたクロノも会話に加わる。わずかとはいえ念話も魔力を消費する。そうそう続けているわけにもいかない。
「じ、次元震?!次元震の発生現場に居合わせたっていうのか!!!」
「・・・ああ」
「で、でも、次元震なら前にリンディさんだって、あの、プ、プレシアさんの時の・・・」
嘘だと言わんばかりにリンディを見やるなのは。
「・・・なのは・・・たとえあのプレシアさんだったとしても、故意に起こしたものと自然発生したものじゃ・・・スケールが違いすぎるんだ・・・」
「・・・そうね・・・それだから私でも押さえ込むことができたのよ」
「そんな・・・フェイトちゃん・・・」
PiPiPi・・・
訪れかけた沈黙を破る電子音。はっと顔を上げたエイミィがものすごい速さでコンソールを操作する。
「映像は駄目ですが、モニタリング回復!フェイトちゃんの魔法波長を確認!無事です!!但し次元震も継続中」
コンソールに皆が詰め寄る。一番前のクロノが叫んだ。
「状況はわかるか?」
カカカカカ・・・・と衰えないスピードでコンソールを走るエイミィの指。
「プロテクション魔法にて次元震を防いでいるようです・・・でも・・・」
「でも?何だ??」
「バルディッシュの・・・反応にノイズを確認・・・破損・・・しかけているようです」
「!!」
フェイトとバルディッシュが力を合わせてやっと現状維持の状態・・・バルディッシュを失えばどうなるかは明白であった。
PiPi! PiPi!
「え!?そんな、これ・・・」
「何だ、今度は!!」
「フェ、フェイトちゃんの周囲に魔力反応発生、で、でもこの波長は・・・」
「誰だ、記録のある者なのか?」
エイミィがゆっくりと振り返る。「その2人」の方に。
「・・・クロノくんと・・・なのはちゃん・・・」
「「「 !!! 」」」
周囲の視線を一手に集める2人。
無論、その2人が最も状況を理解していなかった。
そのわずか数分前の、依然として次元震に耐えうるフェイト。
「master・・・please・・・double road」
「な、何言ってるの、ダメ、そんなことできない!第一そんなことしてもこの状況から逃げられない、ただ時間かせぎをするだけ」
「Yes」
「え?」
「I can make time to advocate magic」(魔法を唱える時間が作れます)
「っ!?」
フェイトは理解した。この状態で2発分のカートリッジによる魔力を得れば、わずかではあるが時間を作ることができる。
バルディッシュが「単独」でプロテクションバリアを維持できる時間が。
フェイトが「単独」で転移魔法を唱えることができる時間が。
バルディッシュを犠牲とすることでフェイトが助かる可能性があるであろう、希望とも絶望ともとれる方法を。
「Please hurry up! I cut a magical power of a cartridge」(急いで下さい。カートリッジの魔力が切れます)
「ダメ!できない!そんなのダメ!!!そんなことしたらバルディッシュが壊れちゃう!!!」
「My mission helps you, and it is to protect it」(私の使命は貴方を助け、護ることです)
「ダメえぇぇぇぇーーーーーーーーーーーー!!!!!」
静寂の中の絶叫。その声は驚くほど遠くにまで響き渡った。
そう、「この2人」に。
「どう?出来そう?」
「うん、大丈夫、まだ・・・レイジングハートは言ってる、まだがんばれる、って」
「よし、行こう、なのは!」
「うん!クロノくん!」
ビキッ!!!!!!!!
先ほどよりも大きい音が響いた。無論、バルディッシュの柄にである。
「いやああぁぁぁ!!!バルディッシューーーーーーーーー!!!」
涙交じりの絶叫。
「誰か・・・誰か・・・助けて!!!兄さーーーーん!!!」
「そこの君!聞こえるか!今助けに行く!!」
「っ!!!」
聞こえた!
届いた!!
兄が助けに来てくれた!!!!
振り返るフェイト。
涙でぼやける視界にクロノのみならず、なのはも写る。
「兄さん!!なのは!!!」
そう叫ぼうとしたフェイトであったが叫ばなかった、いや、「兄」くらいは口にはしたかもしれないが、「何か」が口を塞いだ、物理的な何かではなく、フェイトの勘とも言うべきものが。
ぐい、と涙をふき取ったフェイトの視界に写る2人。
ちらりと見ればまごうことなきクロノとなのはだが、少し見ればなるほど違いも多い。
まずクロノは若い。無論フェイトの知るクロノも十五歳の少年と言ってもいい年だが、今前にいるクロノはさらに若い。おそらくフェイトやなのはと同じくらいの年頃であろう。
そしてなのはは風貌こそまったく見分けはつかないものの、手にしているものがフェイトの知るものとは明らかに違う。
柔らかな曲線を描く赤い柄に2枚の羽のレリーフ。そして先端の輪の中に光るハート型の赤い大きな宝石。
ともすればそう呼んでも差し支えないが、フェイトの知るなのはの持つ杖 −レイジングハート− とは明らかに異なる物だった。
「誰!!兄さんやなのはの姿を真似てるようだけど、ずいぶんとお粗末な変身ね!」
フェイトは自分の最後を覚悟していた。
この2人は耐えるだけがやっとのフェイトとは違い。次元震の中をゆっくりとではあるがこちらに向かってきている。それもなのはらしき者の力のみによって。
つまりなのはもどきがクロノもどきと自らをガードしながら移動までこなし、もう1人クロノもどきは寄り添っているだけである。つまりその手にもつこちらは本物と見分けのつかないS2Uで攻撃することができるということである。身動きの取れないフェイトに向かって。
《誰だか知らないけど余裕ね、でも似せるなら武器も姿も統一しなさ・・くっ!!》
激しく明滅するフェイトのプロテクション。
念のため、とクロノもどきに念話を送ろうとしたが、念話程度の行為ですら今のフェイトには生死を分かつ行為だった。
しかし、
「いけない!なのは!!」
「お願い、レイジングハート、あの人を助けて!!!!」
途端。
なのはらしき者のバリアフィールドが大きさを広げ、フェイトの周囲をも包み込む。
フェイトの周囲に今まさにフェイトを押しつぶさんとしていた力が。嘘のように消えた。
直後、フェイトのプロテクションが消失する。カートリッジの魔力が切れたのだ。
眼前に迫る2人にそれでも油断なくバルディッシュを構えるフェイト。当然である。
「・・・そんな姿でそんなこと言っても説得力ないわよ」
2人は困ったように顔を見合わせる。
「ごめんなさい。あなたが誰だかわからないけど、でも、こんなところであんな危ない状況だったから・・・余計なことをしたんだったらごめんなさい」
「君が危なかったのは事実だ。だから助けた。それじゃいけないのか?僕たちは君の知り合いにそんなに似ているのか?」
「・・・」
嘘を言っているようには・・・見えなかった。てっきりその姿でスキを付くものだと思っていたが、どうもそうでもないらしい。
助けてもらったのは事実のようだ。そのことは素直に感謝すべきだろう、だが・・・
「敵では・・・ないのね?」
「そうだ」
「違うよ!」
「・・・じゃあなぜ、そんな姿をしているの。わざわざクロノ兄さんやなのはの姿をしているなんておかしいわ」
「それなら逆に聞くが、なぜ君は僕らの名前を知っているんだ?僕たちは君の事を知らないぞ。それに僕には妹はいない」
「・・・」
どうやら本当にこのクロノとなのははフェイトのことを知らないらしい。
名前まで同じの似ている別人・・・助けてもらった身としてはこれ以上の非礼を重ねたくなかったフェイトはとりあえずそう言い聞かせた。
すっ、とバルディッシュを下ろし、頭を垂れる。
「まだ・・・全部信じきれないけど、でも、ありがとう。助かりました。」
笑顔を見せる2人。
「ところで1つ質問があるんだけど、いいかな?」
と、クロノ(?)。
「この時空嵐は何なんだろうか?ヒドゥンと何か関係があるのかい?」
「ヒドゥン?」
フェイトの知らない単語だった。
「えっと、そのヒドゥンというのはちょっとわからないけど、これは次元震。次元干渉エネルギーの結晶体が暴走した時に発生したりするの。まれに自然に発生することもあるらしいけど・・・」
「次元震、か・・・なるほど・・・」
「えっと・・・おっきな地震・・・なの?」
言葉だけで大体を理解したクロノ(?)と違い、なのは(?)はやはり少しこういうことには疎いようだった。
残る二人はえっ、と顔を見合わせ、ぽん、となのはの肩に手を置き、
「「ごめん、なのは、後で説明するから」」
綺麗に2人の声がハモる。
クロノ(?)はともかく初対面(?)のフェイトがそんなことをしたものやはり見分けのつかのその風貌のせいだろう。
「・・・えーと、なんとなく、そこはかとなーく・・・バカにされてる気がするのは気のせい・・?」
「「気のせい」」
再び2人。
「うー。嘘だー、2人とも絶対バカにしてるーーー」
「そんなことないよ、なのは」
「そんなことないわ、なのは」
三度。
「うー!!2人ともひどーい、ていうか、息合いすぎ!」
和みかけた場、しかし突如、3人の周り、なのは(?)の展開するバリアが明滅を始める。
「っ!レイジングハート!!!」
「なのは!」
フェイト、ひいてはフェイトの知るなのはのものよりも強固であろうフィールドもやはりこの状況で長時間耐えることはできないようだった。
「兄さ・・あ、いえ、えと、わ、私が転移魔法を使います」
「ここから抜け出せる方法があるなら急いで頼む!もうあまり持たない」
頷くとフェイトはバルディッシュを構えなおす。
「バルディッシュ!アースラの座標確認を!転移魔法用意!」
「yes sir」
傷つきながらなお、心強いバルディッシュの声。
「きゃぁ!!杖が喋った!!!」
クロノ(?)にしがみつくなのは(?)。
「応答型・・・いや、自律型法術杖・・・か?」
「説明はあと!行きます!」
− キィンッ! −
甲高い音と共に3人の姿は掻き消えた。
魔法少女リリカルなのは 〜 もう一人の私へ・・・ 〜
〜〜 To Be continuance 〜〜
えー、とまぁ、こういう感じで上げたかったわけです。
オリキャラ・・・扱いになってしまうんでしょうかね、リリ箱版のなのはっていうのはー
あと私はレイジングハートよりバルディッシュが好きです。
アサルトでなく旧の方が。それもシーリングフォームが。
だから冒頭でバルディッシュが旧形態を取っているのは仕様ですw
(というか今のバルデやレイハって旧形態取れないんでしたっけ?)
なんかこう、文体が変なのは・・・その・・・
とりあえず許容範囲ということにしておいてくださいー
それではまた今度、もう少しだけお付き合いくださいませ。
>>422さんGJっすw
いやぁ、しゃべるバルディッシュに驚くなのはに
少し萌えてしまいましたよw
続き待ってます〜
72 :
396:2006/02/25(土) 00:30:21 ID:BEKd1DcJ
新スレになったことだし投下します。一つの話をだいたい5、6レスにおさめるというシバリを
自分で作っているので容量のことは一応考えているつもりです。本当はもっと書きたい
ことがあるんですが。実は自分がとても早筆であることに最近気がつきました。
魔法少女リリカルなのはA's+
第四話 「波乱のパーティーなの(前編)」
「それじゃあ、フェイトの合格を祝って」
「「「「「かんぱーーい!!!」」」」」
アリサ・バニングスの豪邸で盛大なパーティーが開かれた。
バニングス家専属のシェフが作ったさまざまな料理がバイキング形式に広いホールに並べられている。
出席しているメンバーは主席のフェイトはもちろん、なのは、アリサ、すずか、はやての4人。
それに加えてアルフ、ヴォルケンリッターも参加してかなりの人数となっていた。
「うぉーケーキでけー!!なぁなぁはやて、これ食っていい?」
「ええでええで。今日は無礼講や。好きなもの食べ?」
「よっしゃーー!!!食うぞー!」
ヴィータがフォークを天高くつきあげ、自分の目的の料理の場所へと駆け出した。
「まったくヴィータのやつ…。まだ騎士としての自覚が…」
「まぁまぁ、ってはやっ!もう!!シグナムだって十分はしゃいでるじゃない…」
愚痴を言いながらもシグナムの皿には山盛りの料理がのっかっていた。
対照的にシャマルはバランスよく皿に料理をのせていく。プログラムの存在とはいえ、体重やプロポーションは
食べた分だけ変化するのである。
「それにしてもよく受かったわね。合格率15%だっけ?」
一通り料理をのせ終えたシャマルがシグナムに話しかけた。
「ああ。もともとテスタロッサには才能があったからな。十分努力もしたようだし、当然の結果だろう」
大きな肉の塊を口に放り込みながらシグナムが答えた。
(まったく!なんでシグナムはあれだけ食べてるのにこんないいプロポーションしてるのかしら。
今さらながらプログラムを組んだ人を恨むわ…)
フォークをくわえながらシグナムの体をじろじろ見るシャマルだった。
「でも、これからもっと忙しくなるんでしょ?」
アリサがグラスに飲み物を注ぎながらフェイトに尋ねた。
「たぶん…。まだ研修みたいなのもあるけど」
フェイトがアルフの分の料理を皿にのせながら言った。ちなみに今のアルフは子犬フォームである。
なのはの世界にいるときはいつもこの形態になっていたのである種癖のようなものだった。
「でも学校もちゃんと通うなんてすごいよね」
すずかが感心しながらフェイトを見た。
「学校でしか学べないことってあるから。それに…」
周りの4人を見渡しながらフェイトが続けた。
「なのは達がいる学校にもっと通っていたいんだ」
「わたしもだよ、フェイトちゃん!」
なのはがとびきりの笑顔を見せながらフェイトに微笑んだ。
アリサ、すずか、はやてもお互いを見て微笑みあった。
「そう言えばユーノくんは?」
ふと思ったなのはがフェイトに尋ねた。フェイトから連絡を入れたと聞かされていたので自分からは敢えてしなかったが、
今パーティーに姿は見えない。
「あ、うん。つい最近までミッドチルダに帰ってて、今こっちに向かってるらしいからそろそろ着くと思うよ」
そう言いながらフェイトは合格発表当日のことを思い出した。
*
(やるべきことはやった。…大丈夫。きっと受かってる)
祈るような気持ちで発表を待った。他の受験者とは違い、クロノが直々に合否を伝えにくると聞かされていた。
(たとえ落ちてても、何度でも受ける。受けるごとにわたしは強くなってるんだから)
自分に言い聞かせるように心の中で呟いた。今この場にはいないユーノの分も強く…。
フェイトは静かに目を閉じた。
ユーノはというとフェイトより早くに司書長に就任し、一族の皆に報告するやら発見した古代魔法の論文を発表するやらで
遠くのミッドチルダに旅立っていた。
出発当日、フェイトは合格発表に付き添えないことで何度も何度も謝られた。
別に怒る気は毛頭なかったが、その必死に謝る姿にいたずら心が生まれ、もし合格したら祝賀会には必ず出席すること、
という条件をつけて許すという形になった。
(あの時のユーノの顔…面白かったな)
クスクスと思い出し笑いをしていると、なんとなく緊張が和らいだ。
目を開いて時計を見ると発表の時間となっていた。
(時間だ…)
バシュっと扉が開き、時間きっかりにクロノが部屋に入ってくる。
部屋の中央にたってフェイトと向き合った。
「それじゃあ、発表する。フェイト・T・ハラオウン」
胸から紙を取り出しフェイトに見えないように広げた。
「はい」
ドクンドクンと自分の心臓の音が聞こえてくる。この部屋だけ時間が止まったような、そんな気さえした。
ごくりと生唾を飲んだ瞬間、クロノが微笑みながら言った。
「合格だ。おめでとう」
合格の記載がされた紙をくるっとフェイトの方に向けた。
聞いた瞬間フェイトの目は見開いた。今度こそ自分の時間は完全に止まった。
「え…え?」
まだ理解できないフェイトにクロノが呆れ気味に言った。
「自信がありそうだったからすぐ受け入れると思ったんだがな。まあ僕も合格した時は今の君みたいに…」
「〜〜〜〜〜〜!!!」
喜びで声にならないフェイトは勢いよくクロノに抱きついた。
「お、おわぁ!!」
その衝撃で後ろに倒れこみそうになったがなんとかクロノは持ちこたえた。
「う、受かった!わたし、受かったよ!!!」
両肩に手をかけられてガクガクと揺さぶられるクロノ。
「わわわわわかったから、わかったからちょっとおち、落ひふいてふれ、フェイト!」
クロノは何度か舌を噛みながら必死に抗議した。
「あ!ご、ごめんなさい…」
グルグルと目を回すクロノを目の前にしてようやくフェイトの心は落ち着いてきた。
「ああ!!そうだ!れ、連絡しなきゃ!それじゃ!!!」
クロノそっちのけで部屋を飛び出すフェイト。もちろん合格を伝えたい人は大勢いるが、第一報を知らせたい人がいた。
そのため、遠くの次元へ連絡がとれる管制へと駆けていった。
「まったく、先が思いやられるな」
片手で頭をかきながら一人部屋に残されたクロノが呟いた。本当は執務官になるにあたっての心構えを語るつもりだったが、
当の相手はなにやらお急ぎのようだ。
「…でも本当に、よかった」
家族の一人として、大切な妹の成功を喜んだ。
*
「ま、別にいいんじゃない?来なくても」
アリサがあっさり言い放った。
「ア、アリサちゃん!?」
すずかが驚いたようにアリサを見た。
「来てもまたこき使ってやるから、覚悟しなさいよ〜」
不敵な笑みを浮かべるアリサをなだめるようにすずかが言った。
「ま、まあまあ、もう3年も前のことなんだからそろそろ許してあげないと…」
「そうやでアリサちゃん。ユーノくん、この世界にくるたびにアリサちゃんにパシられとるやないか」
「にゃはは…」
自分も隠していた一人としてなのははただ笑うことしか出来なかった。
一緒にお風呂に入ったり、動物のふりをして可愛がられたり、たしかに小学6年生になった今ではちょっとまずかったと
なのはも思うが、お互い幼かったわけだしここは一つ水に流してほしいと思うばかりである。
「だ、駄目だよ!!」
少し声を荒げて言うフェイトに4人が驚いたように振り向いた。
急に視線が集まったのでフェイトは恥ずかしそうに小さくなりながら話した。
「えっと、その、ね?ユーノには忙しい中勉強教えてもらってたし、わたしが合格できたのはユーノのおかげもあるっていうか…」
語尾に近づくにつれ声が小さくなっていくが、その意志は確固たるものであることはその場にいる4人にはすぐわかった。
「ま、まーそういうことならしょうがないわね!レディを待たせるのも問題だと思うけど!!」
フェイトの顔が紅いのが気になったがアリサは強引に話を続けた。
(ほんとはアリサちゃんも来てほしいんだよ)
(ほんまに素直やないな〜アリサちゃんは)
「そこ!!言いたいことがあるならはっきり言いなさい!!!」
ぼそぼそと話すすずかとはやてをびしっと指差しながらアリサは叫んだ。
その4人の様子を静かに見ていたなのはは少しおかしな気分になっていた。
(フェイトちゃんとユーノくんが二人でお勉強して、それでフェイトちゃんが合格したんだよね…。
ただそれだけなのに、なんか変な感じ…)
胸に広がる不思議な感覚に戸惑うなのはだった。
「よっしゃ!ユーノくんが到着するまで場つなぎや!!
シャマル、普段から家で練習しとった一発芸を披露するチャンスやで!!」
元気よく立ち上がったはやてがシャマルを名指しした。
「してないしてない!!わたし、そんなことしてません!!!」
シャマルがぶんぶんと両手をふり必死に否定した。
「んだよ、使えねーなシャマルは」
ごちそうに囲まれて十分料理を満喫したヴィータがつまらなそうに言った。
「(ピキッ)それじゃあ一番シャマル、いきまーす!!クラールヴィント、導いて!!!」
『Jawohl』
クラールヴィントが円状になり旅の扉を開ける。
「こんなんでましたけどー」
ヴィータの胸からずるっと手が出てリンカーコアが露出する。
「ぎゃああああああああああ!!わ、笑えねー!!笑えねーよ!!!」
じたばたともがいていると手が引っ込んでいく。
「ヴィータちゃんは前からちょーっとわたしを軽く見てるようだから身の程を教えてあげたまでよ」
「んだと!!やんのかよ!」
がるるるとヴィータとシャマルがいがみ合った。
「こらこら、そうすぐ喧嘩したらあかん。でないと次はシグナムに歌ってもらうで」
「「すいません」」
「な、納得いかん!!!」
ヴィータとシャマルが静かになり逆にシグナムが叫んだ。
「…天丼だな」
静かにザフィーラが呟いた。
「なんだい、まだ食べたりないのかい」
「む…忘れてくれ」
不思議そうに尋ねるアルフに恥ずかしそうにそっぽを向くザフィーラだった。
そんな楽しげな(?)時間を過ごしていると部屋の端に少し大きめの緑の魔法陣が現れた。長距離用の転移魔法だ。
「準主役の到着のようやね」
みなが期待してユーノを登場を待ったが、魔法陣に人影は現れなかった。
「あ、あれ…?」
フェイトが少し不安そうに嘆いた。
「ってフェレットやん!!!」
一番最初にその存在に気づいて激しいツッコミをいれたのははやてだった。
「あ、遅れてごめんね」
ユーノは料理がのっていたテーブルに乗りぽりぽりと頭をかいた。
「ちょ、ちょっと!!なにまたフェレットのふりしてんのよー!正体を現しなさい!!!」
アリサがぎゅ〜っとフェレット形態のユーノを締め上げる。
「ちょ!ぐるじっ!!死ぬ!!死ぬって!!!!」
じたばたともがくユーノの様子を見て、なのはとフェイトがあわててアリサからユーノを解放した。
きゅ〜っと目をグルグルと回しながらなのはに抱かれるユーノ。
「アリサちゃん、動物虐待はよくないよ」
たしなめるように言うすずかにアリサが反論した。
「動物って!人間じゃん!!あれ?人間も動物か。…と、とーにーかーくー!さっさと元に戻りなさいよ!!」
「これがりふじんってやつだな」
「そうやでヴィータ。しっかり覚えとき」
人のふりをみてヴィータを教育するはやてだった。
*
「ミッドチルダからここまではかなり遠いから、フェレットの方が移動が楽だったんだよ…」
いじいじと机にのの字を描くユーノ。長旅の疲れもあってかしばらくはフェレット形態だったが、
ようやくついさっき元の姿に戻ったのだった。
「ふ、ふん!情けないわね!!」
ちょっと申し訳ない気持ちのアリサだったが、口から出てくるのは全く逆の言葉だった。
その場にいる大半の人がそのことを理解していたのでだれもそのことについては触れなかった。
「ユーノ…」
一息ついた場の様子を見計らってフェイトが話しかけた。
「あ!フェイト。合格おめでとう!って一番最初に言うべきだったね」
「ううん。いいの。来てくれて嬉しいから…」
微笑みながら話すユーノに少し恥ずかしげにフェイトは俯いた。
周囲の人間には周りと少し違う空間が出来上がっているように見えた。
「お、おい、シグナム」
ヴィータが背伸びしながら小さい声でシグナムに話しかけた。
「何も言うな。野暮というものだぞ」
シグナムが静かに目を伏せて言った。
「ちょ、ちょっと、なんなのよもう」
アリサは不機嫌そうに呟いた。
「なんや、いい雰囲気やな〜」
「う、うん。そうだね…」
ニヤニヤしながら話すはやてと、アリサの様子が気が気でないすずか。
「…………」
なのはは黙ってその光景を見つめていた。なにやら胸がチクリと痛んだ気がした。
80 :
396:2006/02/25(土) 00:38:45 ID:BEKd1DcJ
次回へ続く
次回予告
第五話 「波乱のパーティーなの(後編)」
はい。いきなり7レス使いました。396はよく嘘をつくと記憶しておいてください。それでは。
81 :
396:2006/02/25(土) 01:01:35 ID:BEKd1DcJ
>>549氏へ
たいへん申し訳ないのですが保存の時は
>>77の下から5行目
>クラールヴィントが円状になり旅の扉を開ける。
を
>クラールヴィントが円状になり旅の鏡を作る。
に変更お願いします。最低10回は見直してるのに投下してから不安になって確認とるんだから
思い込みってほんと怖い…。
>>4の422
クロスオーバーですか、同一人物二人が出会った時の反応が面白そうだなあ
>>396 修羅場になりそうですね、そうらあもう、エクセリオンVsザンバーで海鳴市が壊滅しそうなぐらいw
ただ、いい加減トリップを付ける事を進めてみたり(強制じゃありませんが)
敬称を
忘れてしまいました。
すみません
396氏乙!
リンカーコア露出テクはシャマルさんの十八番ですねw
第五話待ち遠しいです。ドキドキ修羅場なの?
396氏乙&GJ!
笑いと構成センスに脱帽。
二話と繋げて天丼ですかw
見切った!このスレは今、三角関係と修羅場が熱い!!
>396氏
乙!このあとは
>「やきもちを妬いてるならやきもちを妬いてるって、はっきり言ったらいいじゃない!」
>「なのは!!」
>
>バシッ!!
>
>私はストーブの上の餅をひっくり返した。
みたいな展開になるんですね
>>4の422氏
おーリリちゃだーGJ。
ケンカ上等なアニメなのはを見た原作なのはとか五つも年下なのに既に恋人持ちの自分を見てしまったクロノ兄さんの反応とか気になります。
続き期待ー
>>396氏
何アリサフラグ立っとんじゃ淫獣ゴルァ
はともかく、修羅場のヨカーン……先が楽しみですな
【V】
「…短期間とはいえ、管理局の戦技教官を務めた人間が、今度はそれを標的にしてるって
いうのか。釈然としないな」
『多分、管理局にいたころの自分のデータなんかを全部消去してから離れたんだろうね。
だから、無限書庫にある教官名簿の片隅にしか記録が残っていなかった、と』
ユーノが、モニターに写真を示す。15年という歳月をぬけ、現れたその写真。
色褪せ具合は、その月日を「長い」とも、「短い」とも思わせる。
―この魔導師にとっては、どっちなんだろう…
そんな思いが、クロノの頭にふっとよぎった。
「一番単純に考えれば、管理局への復讐、か…? 確か、15年前だったな。
その時期にあった主な事件は?」
『とりあえず、大まかにリストアップしてみた。でも、どの事件に関わっていたのかは
わからない。単に短期訓練でよばれただけで、一切関わってないかも』
「どの事件も、僕らが生まれる前のものだからな… 記録として残っているのは、
たとえ事実ではあっても、真実とは呼べない」
『…ロストロギア関連に絞れば、二件あった。内一つは、何人かが犠牲になってる。
暴走事故だったみたい』
「暴走、か…」
複雑な表情のクロノ。嫌でも、自分の父親の「事故」とイメージが重なる。
12年前、闇の書の暴走を止めるため、艦船と共に光に消えた父親…
『クロノ、大丈夫?』
心情を察したユーノが、ゆっくりと尋ねる。大丈夫だよ、とクロノは応じた。
『…でも、少し変じゃないかな? 2週間だけとはいえ、誰もこの人のこと
覚えてないなんて。普通ありえると思う?』
「確かにな…外部協力者とはいえ、1人くらいは覚えている人間がいてもおかしくない。
或いは、名簿に登録していたのみで、実際には指導していないとか?」
『うーん…。一応こっちは正式な管理局の書類だから、ガセネタってことはないと思う。
最低でも、登録してた事だけは間違いないよ。ごめん、これ位のことしか分からなくて』
「いや、感謝するよ。何も分からなかったころよりは大分ましだ。
明日、チームで対策を話し合うことになってるんだが…君はどうする?
なのはも、こちらに来ることになってるんだが」
『それじゃ、僕もそっちに行くよ。正直、無限書庫での調査も頭打ちになってきてるし…
一度、みんなで動きを決めよう』
「分かった。ご苦労様だったな、ユーノ。繰り返しになるが、感謝するよ」
『うん。それじゃあ、また明日』
ああ、と軽く笑顔をかわすと、通信が途切れた。
【W】
静かになった通信室で、送られてきた過去の事件に関する書類に目を通していると。
「お待たせ〜クロノ君! さ、リフレッシュしたところで、始めますか♪」
ドアが開く音に続いて、エイミィの緊張感に欠けた声が聞こえてきた。
「…もう終わったよ。明日、ユーノもこっちに来るそうだ」
いささかトーンの低い声で応じるクロノ。
「あ、ホント? ゴメンね、ついいつもの癖でのんびり入っちゃって」
顔の前に手を置き、謝罪のポーズをとる。
…しかし、彼女のその明るい声は、クロノの神経を逆撫でした。
「のんびり、ね…非常時だってのに、随分と暢気なもんだな」
目を合わせぬまま、クロノは腕を組んで皮肉る。
「…うわ、なんか感じ悪っ」
流石のエイミィも、友人の予期せぬリアクションに態度を変えた。
「確かにあたしが悪いけど、ほかにもうちょっと言い方があるんじゃないの?
いきなりケンカ腰だなんて」
「…そういう問題じゃないだろう。僕は、君の執務官補佐としての自覚が足りないと
言ってるんだ、エイミィ」
「何それ!? 信っじらんない! 一回お風呂が長くなったくらいで、そういう言い方される
なんて、酷すぎると思うんですけど! クロノ執務官」
「君の方こそ、『一回くらい』って言葉が、十分それを表現してるだろ」
「そんなの、言葉のあやってやつじゃない! 男のクセに、細かいことねちねち言ってさ!
第一、普段から他の執務官よりもずっと多く仕事もってきてるのに、こんなときに
いきなり文句言ってくるなんてどーゆーつもりよ!?」
「それが僕の『仕事』だからさ! 文句があるなら、別の執務官についたらどうなんだ!」
「仕事仕事って…バッカみたい! 安っぽい正義感掲げちゃって、ヒーローにでもなった
つもりなわけ!?」
…最早、理論とも感情論ともつかないやりとり。
互いに売り言葉を買っては、次の言葉を売りつける。
不毛なオークションで高まっていくのは、二人の怒りのボルテージのみ。
終いには、引くに引けなくなった二人が、お互いを睨み合うだけの格好になった。
「…もういい。君に話してもムダみたいだ。休ませてもらうよ」
「あっそ! 勝手になさったらどーですか!? クロノ執務官殿!」
フン、と顔を背けるエイミィに、クロノは書類を手に立ち上がって近づく。
「…ユーノから送られてきた過去の事件資料だ。目を通すくらいは出来るだろ」
パン、とプリントの束をテーブルに置き、そのまま部屋を出て行く。
苛立ちを残したまま、廊下を歩くこと数秒。
『クロノ君の………ばかぁ!!!』
ドアの向こうから声が響き、同時に何かがぶつかる音。
恐らくは、渡したばかりのプリントを束ねたものだろう。
(…どっちがだよ!)
ちっ、と舌打ちをすると、クロノは足早に自分の部屋へと向かった。
【X】
―翌日、艦船アースラ―
「…」
「…」
ブリッジに沈黙が流れる中、各々が淡々と仕事をこなしている。
(…ね、ねぇ、フェイトちゃん…これって…)
(…わ、わたしにも、よくわからないんだけど、朝からずっと、こんな感じで…
ユーノ、何か知ってる?)
(原因はなんとなく察しがつくけど…現場を見ていない以上、なんとも…)
殺伐とした空気が漂う中で、いつものメンバーは念話でかろうじて意思疎通。
(よぉし、ここは一発アタシが解決したげるとするか!)
(だぁめだよアルフ! 今はそっとしておかないと!)
意気揚々と二人に近づこうとするアルフを、ご主人様が必死に制する。
当の本人達はといえば。
「エイミィ。報告書No.SSC992G0778についてなんだが。本局の情報部に資料閲覧の
申請をしてもらえるか」
背中を向けたまま、クロノがエイミィに声をかけるものの。
「…あいにくですけど、自分の仕事だけで手一杯でして。すいません」
…同じく背中を向けたまま、いつもと全く異なる口調で応じるエイミィ。
「…そうか。もっと優秀だと思っていたが、随分と腕が落ちたみたいだな」
「ええ、おかげさまで。クロノ執務官こそ、『その程度のお仕事』、たまには
ご自分でなさったらどーですか?」
(…こ、怖いよ〜、フェイトちゃ〜ん…)
(とてもじゃないけど、入り込める雰囲気じゃないよ…)
(二人共、僕たちより年上だからね…僕らが何か言ったら、余計こじれちゃうかも…)
(そ、そっか…リンディさ〜ん、どーしましょう?)
すがるような思いで、艦長席を見上げる魔導師達。
視線の先には、困った表情でコーヒーを口にするリンディの姿。
(う〜ん、この二人、時々こうやってケンカするのよねぇ。大抵はウチのクロノが
ふっかけちゃうのよ。困ったものだわ)
ふぅ…と溜め息をつくその表情は、母親としてのそれだった。
(しかも、今回は随分と深刻みたいだわね… 何もこんなときにやらなくても…)
(いいんですか? 放っておいて…)
苦笑いのリンディに、なのはが尋ねる。
(とりあえず、今日のところは様子をみましょう。夜までこのままだったら、
私の方から二人に話をしてみるわ。ゴメンナサイねみんな。気を使わせちゃって)
謝罪するリンディ。3人はいえ、と首を振った。
(でも、こんな時に限って、事件っておこるものなのよね…)
一人そんなことを思いつつ、今度は艦長としての表情で、リンディは溜め息をついた。
91 :
jewel:2006/02/25(土) 04:48:25 ID:laJVdw4g
どうやら修羅場がブームになりつつあるようなので、さりげなく便乗してみましたw
二人の性格が表現できれば…と思って書いてましたが、どーでしょうか?(微妙
>>jewel氏 便乗修羅場GJです。
それにしても念話って便利だな。
みなさん楽しんでくれているようでとても嬉しいです。
続きを勝手に書く偽者の文もある意味見てみたいですが、逆に自分よりも良い話を
書かれたら凹むのでトリップつけました。
修羅場があるか、と聞かれるとあると答えますが、みなさんが思っている修羅場と同じかはわかりません。
その辺も含めて楽しみにしていてください。続きは頃合を見計らって投下します。
他の職人さんへの感想を妨害しかねないので。
>>jewel氏
年上のクロノとエイミィが年下'sから心配される様子は見ていて泣けてきます。
GJでした。
94 :
176:2006/02/25(土) 15:56:28 ID:jxi6+vi6
9 でも、終わりよければすべてよし
pm 5:27 海鳴公園
労働は慣れている……つもりだったのだがこれはどういうことだろうか。
女性の気を使いながらの行動なんて慣れないものはするもんじゃないと心底に思う。
あの後行く先々でらしくもない不器用な失態を見せて、結局一日エイミィに振り回されていただけだった。
「ふぅ〜……」
手すりにもたれながら深い深いため息。背中に圧し掛かっているような疲労を逃がそうと体を思い切り反らしてみる。
オレンジ色に染まった空。振り返れば水平線に沈もうとしている太陽が見えた。
「まったく……これのどこが休日なんだろうな」
出てきた言葉は文句そのものだけど、クロノの口調はどこか楽しげだった。普段の眼差しとは割合かけ離れた穏やかさがクロノの瞳に映し出されている。
「クロノ君っ」
放られてきた缶ジュースは難なく右手に納まった。掲げてみたそれは夕日には負けるだろうけどオレンジ色の缶。
「よくもまぁ飽きないよね」
「なら、他のものを買ってくれば良かったんじゃないのか」
プルトップを引いて中身は喉を駆け下りていく。昼から何も飲んでいなかった身としては砂漠のオアシスに等しいほどに有りがたく思えた。
「そう言って買ってきたら買ってきたで文句言う」
やっぱり文句なのだろうか。それでもエイミィの口調も自分と同じく楽しげだった。
「今度は言わないさ」
「いつの今度かしらね」
「そう遠くない未来であることは確かなんじゃないか」
きっとその機会があっても今の言葉を覚えているかどうかは分からない。八割方忘れているだろう。それが自分なのだ。
「じゃあ私は覚えておかないとね」
「それでオペレーターの仕事は忘れないでくれよ、エイミィ・リミエッタ執務官補佐」
「わかってますよ、クロノ・ハラオウン執務官」
そうして先に吹き出したのはどちらだったか。多分同時だ。最初は堪えるように、すぐに声を上げて夕焼け空一杯に笑った。
なんでこんなに可笑しいのか。理由は分からないけどとにかく笑った。笑いに笑った。
「あははは、もう……クロノ君笑いすぎ」
「ふふ、君こそ少しみっともないぞ」
エイミィが腹を抱えていつのをみるとさらに可笑しさがこみ上げてくる。そんなクロノの姿がエイミィにとってはいいスパイスだったようでさらに笑う。
悪循環というわけではない。例えて言うなら笑いの良循環だ。
95 :
176:2006/02/25(土) 15:57:36 ID:jxi6+vi6
「まったく、何で僕たちは笑ってるんだ」
「わかんない。でもいいんじゃない、笑うときは笑わなきゃ。クロノ君がそんな風に笑う姿滅多に見られないもん」
「結局僕は見世物か」
不思議と嫌な感じはしなかった。それどころか目の前の彼女にもっと見せてやろうとすら思える。
「可愛いよ、クロノ君」
「あんまりいい気はしないけどな」
まだ相当の量があるオレンジジュースを一気に流し込む。
空き缶はゴミ箱へ。エイミィの後ろ目掛けて投げたそれは綺麗な放物線と共にくずかごに一直線。小気味よい音が場に響いた。
「おっ、ナイス!」
「できなきゃ執務官形無しだ」
「別に空き缶投げのテストとかはないけどね」
「気分の問題なんだ」
こういうものは一発で入るととにかく気分がいい。素直に認めよう、自己満足であると。
「私もやってみようかな」
「外れたら自分で拾うん――」
カンカラン、と響く音。クロノが言い終えるより空き缶がゴミ箱に到着する方が早かった。
意欲がすでに即決となっているあたり流石はなんともエイミィらしい。
「拾わなくていいみたいね」
「ああ、ナイス」
ガラにもなく親指を立てた。
「でも今日は楽しかった。映画見て、喫茶店行って、ゲームセンターで遊んで、服屋で試着して……」
思い返すたびに指を折っていくエイミィ。本当に楽しかったのだろう。顔に浮かぶ柔らかな笑みは心の底から喜んでいると証拠だ。
夕日に照らされてエイミィの笑顔は心なしかすごく可愛くて綺麗に見えた。決して錯覚、というわけではなさそうだ。
「なぁ……エイミィ」
「なに?」
その顔を見ているとやっぱりそんな気持ちが沸いてくる。あの時言ってしまった言葉の重みが改めて我が身を打ちのめしていた。
「その、今更な感が拭えないんだが……」
口ごもってしまう。あれから何時間、いやもう三日以上経っている。それなら掘り返してまで言うことはないだろう。
今日の任務でそれなりの報いはしたはずだ。彼女の機嫌もすこぶるいいようだしそっとしておいた方がこの場合妥当なのでは。
「もったいぶらないでよ。男に二言はないぞ」
いや、エイミィだから言いたい。フェイトに言われたからとか理由にして言うのではなく、本心から言っておきたい。
じゃないと胸のつかえは永久に取れない気がした。
96 :
176:2006/02/25(土) 15:58:16 ID:jxi6+vi6
「その、なんだ……」
治まれ胸の動悸。上がるな顔の温度。いいから喉から声を出せ。酸素はあるのに金魚のようにパクパクするな。
あとそれとちゃんと目を見て話せ。礼儀は重要だと母さんから教わっただろう。
「ふ、不注意とはいえ君の……き、着替えを見て申し訳なかった」
エイミィの顔から表情が消えていく。自責が後悔へとシフトした。
だからってもう言わなきゃ駄目だ。躊躇いは大きな隙。戦闘ならば死に直結するのだ。
ある意味やけくそ、どうにでもなれとクロノは引き金を目一杯引き絞った。
「君の気持ちも考えずあんなことも言った。あれじゃ謝罪どころか逆切れしてるもんだ……本当に僕は駄目だ。駄目人間過ぎる!」
荒げた声は全て自分の心は向けられている。まさしく穴があったら入りたい。
「君の気が済むならなんでもする。今日みたいにエスコートだってする。本当にすまない!」
最後に深々と頭を落とした。
それからは長い沈黙がしばし続いた。
果たしてクロノにとって長い沈黙だったのか時間として長い沈黙だったのかはエイミィだけが知っている。
「一つ質問……いい?」
「ああ」
開口は質問から始まった。
「フェイトちゃんに言われたから? それとも自分の気持ち?」
「そんなの……僕の気持ちに決まってるだろ」
言われてしまえばフェイトが噛んでいるのは間違いのない事実。
だけどそれのおかげでこうやって後悔して言うことができるのだ。これのどこかが人に矯正された気持ちであろう。
「そっか……はぁ」
クロノにとってそのため息は死刑宣告に等しかったかもしれない。
絶対に失望された。そうとしか考えられない。やっぱり僕は最低男だ、と。そんな含みのため息だと思えた。
「まったく……なんでかなぁ」
頭の上が暗くなった。エイミィが近づいてきたのだろう。
「頭上げて」
言われて頭を上げれば目を細めて睨むよう自分を見下ろすエイミィがいた。伸長差も相まってすごく威圧感をかもし出している。
「ほんっと、クロノ君はさ」
右手が動く。きっと殴られるのだろう。覚悟を決めてクロノは目をつぶった。
だけどクロノの予想とは違ってエイミィは――
97 :
176:2006/02/25(土) 15:58:57 ID:jxi6+vi6
「不器用なんだからっ!」
――ゴツ!
本日二度目のデコピンは、やっぱり場違いな音を弾けさせてクロノの頭を突き飛ばした。
「〜〜〜っ!」
「もっとさ素直になりなよ。執務官だからってカッコつける必要ないと思うけど」
「べ、別に僕は格好つけてるつもりは」
「だったらもっと謝るのにぴったりの言葉、言える?」
言葉の意味がわからなかった。今さっき言ったのが謝罪ではないのか。一体なにをエイミィは言わせたいのか。ただ単に有りもしない答えを言わせようとしてるのを楽しんでいるだけではないか。
あれやこれや考え閉口するクロノにエイミィはやれやれといった具合に両手を上げて見せた。
「私はさ、クロノ君にガス抜きしてもらいたいわけ。いつもいつも執務官ばかりでたまには十四歳のクロノ・ハラオウンとして一日ぐらい過ごしてもらいたいわけ」
「それじゃあ誰が僕の代わりをするんだよ」
「それがいけないの。そゆこと全部忘れるの」
「無理難題だな」
執務官は一人だけだ。そして代わりもいない。誰かが補おうとしても早々できるものじゃないのだ。子供の遊びとは違う。
「そう、無理難題。でも私だってクロノ君のことはわかってるつもりだし」
そっとエイミィはクロノの隣へ立つ。そうして吹いてくるオレンジ色の潮風を体に受けて背伸びをした。
仕事は上司、プライベートは弟分。クロノには不思議なほど二つの要素が混在している。
かっこよさと可愛さ。変な意味での箱入り息子の仕事バカ。
「だからせめて私だけには見せて欲しいかなって。一瞬でもいいの、クロノ君が落ち着ける場所作りたい」
振り向くエイミィ。しばしクロノの顔を見つめると思い切り口角を吊り上げた。悪戯っ子が企みを思いついた顔になったとクロノは思った。
今度は一体何を言うのか。なにを言われても動じない自信はある。ある意味腹は据えた。
「今日みたいなクロノ君にさ、なってみよ」
「あんな情けない僕にはなりたくない」
「でも私だけだし。艦長は母親だし見せられない。フェイトちゃんは大事な妹だからもっとしっかりしなきゃ駄目。ということは」
「君しかいないというわけか」
ご名答、とエイミィはクロノの頭をくしゃくしゃと撫でた。
明らかな子ども扱いにクロノは憤慨しながら腕でエイミィの手を払う。
「や、止めろよ、僕は子供じゃない!」
「でも子供の方が素直だよ。子供なら悪いことをした時の謝り方わかってると思うけどね」
98 :
176:2006/02/25(土) 15:59:47 ID:jxi6+vi6
そこまで言われてクロノもようやく悟った。エイミィが自分になにを言わせようとしているのかを。
堅苦しい言葉よりもずっと相手に謝罪の気持ちを伝えられる三文字の言葉だ。
何で思いつかなかったのか。それはきっと背伸びした時に子供心と一緒に置いてきたから。
まったく、なんでこうもエイミィの言うことは的を射ているのか。
「それで、私の着替え覗いてクロノ君は何か言いたいことはありますか」
わざとらしくアクセントをつけた声でエイミィはちゃかすように言った。
「あ、ああ……その、なんだ……えと……」
「ん? 聞こえな〜い」
「……ああもう……だから……ごめんエイミィ…………本当にごめん!!」
子供っぽい、と言うより子供だ。
端から見れば弟が姉に悪巧みがばれて必死に謝っているような微笑ましい光景。身長差が余計にそれを引き立てた。
「ん、そこまで言われたらしょうがないなぁ。じゃあ今度またクロノ君にエスコートとしてもらおうかな」
「それで許してくれるなら軽いものだよ」
「その時だけはさ、今日みたいなクロノ君でいて」
「それも約束か」
もちろん、と頷くエイミィにクロノは片手で頭を抱えた。何もかもエイミィに乗せられた。うまい具合に手綱を引かれてしまった。
ご機嫌な様子でエイミィは一歩前に出るとその場で体を一回転。顔には満面の笑顔が浮かんでいた。
「あはは、なんかますますクロノ君のこと放っておけないな。こんなに不器用だって知ったら私がずっとついていなきゃ駄目みたいだし」
「ど、どういうことだよ」
「ようするにプライベートでも私はクロノ君の補佐したい、そう言ってるの」
「ぷ、プライベートって……」
思わずたじろいだ。それでもエイミィは止まらない。
今度は駆け出す。みるみる小さくなるエイミィ。やがて二人の距離が二十メートルほどになったところでエイミィが叫んだ。
「だから! 弟みたいだけどやっぱりかっこいいクロノ君が私は誰よりも好きなの!!」
決して冗談でもからかっているわけでもないエイミィの気持ちだった。
「クロノ君はどうなの!!」
「僕は……」
彼女が常に隣にいてくれる。それはクロノにとっては何よりも代えがたいものだと思えた。
いつでも彼女は自分の側にいた。いてくれた。自分が今日までやってこれたのはやっぱり彼女の力があってこそ。
オペレーターとして補佐官としてもしかしたら母親以上に自分を理解してくれる彼女。それ以上にクロノ・ハラオウンを知っている彼女。手玉に取れるくらいに。
99 :
176:2006/02/25(土) 16:00:53 ID:jxi6+vi6
「聞こえないよ! もっと大きな声で言って!!」
気にはなっていた。あの一件から彼女をもっと異性として強く思った。でもそれだけ、彼女とは仕事のパートナーとしてこれからうまくやっていこうと思っていた。
それも背伸びだ。本当はいつも自分を気にかけてくれる彼女との関係を壊したくなかっただけ。結局それも自分のせいで壊れかけた。
――悪かったよ。でも着替えなんて見せたって減るもんじゃないだろ。僕と君の仲だしそこまで気にする必要ないじゃないか。
死にたくなる。我ながらなんという馬鹿だ。
でももう仲直りはできた。想いは言葉で伝えられる。多分いつだってそうだ。こんなはずじゃないなら変えてしまえばいい。チャンスなんていくらでもあったのだ。ただ踏み出す勇気がないだけで。
「僕は……君のことが……」
彼女だってきっと勇気を振り絞って気持ちを伝えたはず。こんなはずじゃない関係。それを変えるために。
「エイミィ……」
ずっと遠くで彼女は震えているように見えた。不安げな表情が見え隠れして、少しずつ不安が顔を覆い始めている。
アースラの切り札。いつだって最後は決めるのは自分自身。きっとこの行方も自分次第。
拳を痛いほどに握った。もう躊躇はしないし怖気づきもしない。
肺に酸素が目一杯装填されていく。腹筋にこれでもかと力を込めてクロノは腹の底から思いを叫んだ。
「なんだかんだで世話焼いて支えてくれるエイミィのことが好きだ!! 僕の側にいてくれ!!」
笑顔が生まれた。
ぎゅっと目を瞑って何かを堪えるようにエイミィは走り出す。行く先はもちろん
「クロノ君!!」
クロノの胸の中にエイミィは全体重を預けた。あんまり勢い良くぶつかってきたものだからクロノの半身は大きく後ろへよろめいた。それでもなんとか踏みとどまってエイミィを抱きしめる。
「へへ……やっぱり素直が一番だよね」
「馬鹿正直なのもどうかと思うけどな」
「いいの! こういう時だけは素直じゃないと嫌われる……ぞ」
ずずっ、と耳障りな雑音が聞こえたような気がした。
「エイミィ……?」
「嬉し、涙ってさ……信じてなかったんだ……けど……あるんだね、ほんとに」
途切れ途切れの照れ笑い。しゃくりあげてうまく声が出せない。それほど涙もろい性格とは思っていないけどとにかく涙が止まらない。
「うぐ……ふぇぇ……」
「君が泣いてどうするんだ。これじゃ君の方が子供だぞ」
背中を摩ってエイミィの涙が止まるのをクロノは黙って待った。胸の中で泣きじゃくる彼女を見ていると不思議と愛おしさが心の中にわいてくるのを感じる。
「だったらクロノ君……なんとかしてよぉ」
なんとかできてれば苦労はしない。そうも言いくもなったが彼女の手前、クロノはその言葉を飲み込んだ。
せいぜい出来ることはやっぱり背中や頭を撫で続けること。それに胸を貸してやること。
なんだか胸が冷たくなってきた。きっとエイミィの洪水で豪いことになっているのだろう。数少ない私服なのでいささかもったいない気もするが今は特別だ。ティッシュにでもタオルにでもなってやろう。
100 :
176:2006/02/25(土) 16:01:49 ID:jxi6+vi6
「ひっく……えっぐ……ぐじゅ!」
鼻を啜る――のにも目を瞑ろう。男は我慢だ。
「君が泣き止むまでこうしてるから、安心してくれエイミィ」
「うん! 優しいね……クロノ君」
「お、男として当然だろ」
頬をかきながら視線を逸らす。少しだけ今の言葉にはどきっとさせられた。
気持ちを誤魔化すようにクロノは空を仰ぐ。水平線に半身を埋める太陽に空は橙と藍の境界線を形作りふと見た先には夜の主役が顔を出していた。
「…………もういいかな」
「いいのか?」
「うん、もう十分」
胸から離れエイミィは笑顔を作って見せた。
夕日の残滓が彼女を染めて目尻の涙も夕日色に染まった。
「ありがとね……」
「いや、意外なエイミィが見れて面白かった」
「……クロノ君のいじわる」
拗ねて見せても夕焼け頬が赤みをさらに増せば説得力はない。それに拗ねて顔だって見ようによっては可愛いのだ。
「ほんと意地悪だよ」
「今日の君の方がよっぽど意地悪だ」
憎まれ口を叩いても心は温かな気持ちで満たされる。
「どっちもどっちだよ、エイミィ」
「うう、そう言われても納得行かないわよ……」
「いいだろ? はっきり白黒つけるよりは」
「つけたいの!」
またオペレーターの性だ。こういう時にぐらいいいのではないのかと思う節もあるが、エイミィはなんとしても決着をつけたいらしい。
妥協してくれとは言わないつもりだが、乙女心というものは難しいものだ。
「……ねぇ、クロノ君あそこのベンチに立って」
「ベンチ? 言っておくけどあれは上に立つものじゃない、座るものだ」
「いいから!」
エイミィの勢いに押されクロノは少々戸惑いながらベンチに行くと、本来腰掛ける所に足をかけた。
「これで……いいのか?」
「うん、上出来」
目線の主が逆転した。今日始めてクロノはエイミィよりも高い場所から彼女を見下ろしている。
101 :
176:2006/02/25(土) 16:02:31 ID:jxi6+vi6
彼女のいつも感じている世界がこんな感じだと思うと、少しだけ恨めしくなった。
「でも少し高いかな……少し屈んでクロノ君」
「えっ? あ、ああ」
上体を少しだけ傾けて彼女の注文通りにする。
「ところでなにをするんだ?」
「目を瞑ったら教えたげる」
「わけわかんないな」
訝しげに思いながらクロノは双眸を閉じる。
真っ暗な世界で何かが肩を掴んだ。
「これは今日のお礼。それとね」
エイミィが身を乗り出した。目一杯の爪先立ちで彼女は恋人になったばかりの少年へ初めてを捧げた。
「……ん!?」
そこに触れたものが何であるかなんてクロノには直ぐにわかった。熱湯でも浴びせかけられたみたいに全身が熱くなった。
全ての音が消えてしまったような夕凪の中で二つの影は日が沈むその瞬間まで重なり続けた。
「はぁ……クロノ君にあげちゃった」
はにかむエイミィの顔にはまだ日没は訪れない。赤熱したままでクロノを見つめている。
「ひ、卑怯じゃないか。これじゃ僕だって君に初めてを奪われたようなもんだろ」
「貰ってあげたんだから。それともなに? なのはちゃんかフェイトちゃんにでも上げたかったとか?」
「そ、そんなわけあるかっ! なのはにはユーノがいるしフェイトにいたっては妹だぞ!」
そんなのと言っては酷いが二人にやるくらいならエイミィのほうがいいに決まってる。
「意地が悪すぎるぞ、エイミィ」
「なら意地悪なら私の勝ちだね。これで白黒はっきりついた」
「そのためにこんなことしたのか」
102 :
176:2006/02/25(土) 16:03:06 ID:jxi6+vi6
「もう一つ、私とクロノ君が恋人同士だってことに決まってるでしょ」
「き、君って奴は……」
よくもそんな恥ずかしげもなく歯の浮くようなセリフを量産できるのか。驚愕と言うより呆然だ。
「はいはい、怒らない。もう日も沈んじゃったしアースラに帰ろ」
まくし立ててエイミィはクロノの手を握り締めた。クロノが意識する前に踵を返して歩き出す。
「艦長にはわかっちゃうかな、私たちの関係」
「いつもどおりなら大丈夫だろ。というか」
「繋いでいいでしょ」
「……うん」
無性に負けた気がしたのでクロノも手に力を込めてエイミィの手を握り返した。しっとりとした汗の感触と彼女の体温が伝わってくる。
「あっ、そうだ」
「まだなにかあるのか?」
「一応エスコートってことだけど今度からこう呼ぶこと」
人差し指をピンと立ててエイミィは片目を瞑った。
「デートだって!」
走り出す彼女。当然、手を繋いでるおかげで引きずられていくクロノ。
「ちょ、ちょと待てエイミィ!」
「待たないよー」
やっぱり最後の最後まで彼女には逆らえない。訴えようにも極上の笑顔が全部水に流してしまう。
――ほんとにエイミィには敵わないよ。
そっと呟く言葉は心地よい敗北感と共に。
なんだかんだあったものの雨降って地固まる。ついでに虹のおまけつき。
こうしてあの朝から始まったアースラの一騒動は幕を下ろしたのであった。
103 :
176:2006/02/25(土) 16:03:48 ID:jxi6+vi6
無論その舞台の裏で
「あかんわたしの出る幕なかったやないか」
「いいじゃないですか。ああ、私も恋したいなぁ」
「まずは相手やなぁ」
偶然にも出会えた主と騎士が恋愛談義に花を咲かせていたり。
「ねぇ恭也、今夜は帰りたくないなぁ」
「なんなら家に泊まっていくか。みんな歓迎するだろうし」
「絶対そういう意味で取ってないわよね」
一足先を歩く恋人達がいたり。
「ああ、もうほんと見ているこっちが恥ずかしくなるわ」
「でもハッピーエンドでよかったね」
「フェイトちゃんの作戦大成功だね」
「うんよかった、兄さんもエイミィも」
兄達の恋路に妹と親友達が祝福したり。
二人を導いた沢山の人たちがいたことは忘れてはならないだろう。
何はともあれ、新たな一歩を踏み出した二人に末永く幸あることを――。
「私も新しい旦那見つけようかしら」
いや、あんたはいいから艦長。
104 :
176:2006/02/25(土) 16:06:58 ID:jxi6+vi6
これにてひとまずクロノ完結です
あとは後日談をちょこちょこと書いて、な感じです
てか無駄に長っ!?
>>549氏
ついに御本尊が挿入ときますか
……やっぱり開通式はユーノ君がいいなぁ(ユーノファンの呟きです。気になさらずぶち込んでください
>>430氏
嫉妬の嵐、修羅場の予感!?
ユーノもっとしっかりせい! なんて続き楽しみです
>>98氏
アリサはいいなぁと思う今日この頃、アリサがよく出てていいですなぁ
早く自分もアリサを魔法少女になんて話し作らないと、前に上げたあれぐらいしかアリサ中心のないし
>>640氏
ああもうワクワク、そしてガクブル
やっぱりBADエンドは救いないなぁ
>>422氏
なのはさんになのちゃんですか、着眼点がいいですね
クロノとくっ付いているなのはをユーノが見たら発狂しそうですね
>>396氏
うぇぇユーノの取り合いですかぁ、どうなるんでしょう
なんていうか某スレでハーレムユーノを見てるせいかあの言葉が脳裏をよぎりそうです
>>jewel氏
こっちが仲直りを書けばこっちで喧嘩とな!?
ああ、こっちはどうやって解決するのか、話の結末も楽しみです
なにはともあれ皆さんうまくて私少々スランプ気味です
なんていうかほんとに書いている人たちを表現できているのか心配になる始末
自分のはやたら文章量多いだけでまとめきれてない感がするし
だがこの修羅場の嵐にはこのクロノ・ハラオウンが反逆する! 次はエイミィとラブラブえっちだぁ〜
大丈夫です、何とか元気です。では、また
いろいろな意味で半端無いスレですね・・・
もう満腹ですお
>>176 お疲れさんでした
年の差カップル…いいですなぁ
こんにちは。396です。投下のペースが早いと思われそうですが続きを投下します。
これには理由があるのですが、一番被害をこうむるのは549氏なので本当に
頭の下がります。
魔法少女リリカルなのはA's+
第五話 「波乱のパーティーなの(後編)」
パーティー開始から数時間がたったとき、はやてがふいに立ち上がった。
(そや!うちにはやらなあかんことがあったんや)
急いで部屋を出て十字架型のアクセサリーとなっているデバイスに向かってはやてが囁いた。
「リィンフォース!出番やで」
『マイスターはやて!あれですね』
半透明の小さな少女が浮かび上がる。
「そうや、あれや」
いたずらっぽい笑顔を浮かべて魔法陣とともにはやては姿を消した。
「あれ?はやてちゃんは?」
急に見当たらなくなった主の行方をシャマルが尋ねた。
「トイレに行くって言ってたぜー」
そろそろ飽き始めたヴィータが眠そうに答えた。
「そういやあんた昔トイレにもついてきたよーな…」
トイレの単語を耳に入れたアリサがジト目でユーノを睨みつけた。
「行ってない行ってない行ってない!!!ちょっとアリサ!過去を捏造するのはやめてよ!!」
明らかに冤罪だがユーノは慌てて弁解してしまう。
その様子がおかしくてついついいじめてしまうアリサだった。
「…どうしたのなのは?」
ちょっと元気のない友人を心配してフェイトが声をかけた。
「え!?う、うぅん!別にどうもしないよ?」
びくっと反応するなのはだったが、同時に、心配させるほど自分の様子がおかしいことに改めて気づいた。
(なんなんだろ…ほんと)
ふぅっとため息をつくなのはに、フェイトは少し思い当たる節があった。
そのことを口にしようとした瞬間、部屋に三角形の魔法陣が出現する。
「え?こ、これって…」
フェイトが驚きながら床を見下ろした。
「ん?この魔力は…」
「はやてじゃん。なにやってんだ?」
すぐに気づいたシグナムとヴィータ。シャマルとザフィーラも不思議そうに魔法陣の中央を見つめている。
「なになに?なにが起こるってのよ」
魔法にさっぱりなアリサがユーノに尋ねた。
「これはベルカ式の転移魔法だ…。誰か来るみたい」
みなと同じ方向を見つめながらユーノが答えた。
しばらくすると人影が現れた。
「やーやーお待たせいたしました。本日のシークレットゲストの登場や!!」
オーバーにはやてが片手を上げると、同じく魔法陣から二人の人影が現れる。
「フェイト、おめでとう」
「まったく、なんて強引な…」
姿を現したのはリンディとクロノだった。
「母さん!!お兄ちゃん!!」
手を口に当ててフェイトは驚きをあらわにした。今日は忙しくて来れないと聞いていたからだ。
「今までいられなくてごめんなさいね。私としても最後までに間に合えばとは思ってたんだけど…」
「強引に連れてこられたよ」
ジロリとクロノがはやてを見たが、はやては気づかないふりをした。
今頃会議中にクロノとリンディが姿を消したことで局員が大いに慌てていることだろう。
(はぁ、始末書書かないとな)
と思いつつもあまり妹に変な気を使わせたくはなかったので微笑みながら言った。
「あらためて、合格おめでとう」
「うん、ありがとう」
少し目に涙を浮かべてフェイトが答えた。
「うんうん、よかったよかった。ええ話やないかー」
フェイトの後ろで涙をぬぐうふりをしながらはやてが言い、クロノの笑顔に青筋がたった。
「主はやて、私は感動しました!」
「なんか拉致に近いっぽいけど、ほんとにいいのかしら…」
シグナムが本気で涙をみせ、シャマルがいぶかしげにその光景を見ていた。
「リィンフォースも内緒にしてたんだなー」
『主の命令はぜったいですから!』
手を頭の後ろに組んで言うヴィータに、半透明のリィンフォースが秘密を守ったことを自慢げに話した。
「そんじゃ、仕切りなおしといきましょうか!!」
アリサがパチンと指をならすとシェフやらボーイやらが次々と現れ、空いた皿を片付けて新たな料理を運んできた。
そして夜遅くまでパーティーは続き、バニングス家の豪邸から賑やかな声が響いた。
*
「ふぃ〜もう食べれないよ〜」
満腹のアルフはぐにゃ〜と床に這いつくばった。
「ほら、アルフ、もう帰るよ」
フェイトがアルフを抱き上げながら言った。今日は久しぶりに家族で過ごせる日だ。足取りも軽くなる。
「今日は本当にありがとうね。うちのフェイトのために」
リンディが深々とアリサに頭を下げた。
「い、いえ!いいんです。あたし達もみんな自分のことみたいで嬉しいですから」
急にあらたまって言われたのでアリサもこれまた深々と頭をさげた。
「………」
自分に対するものとはあからさまに違うその態度にユーノはジト目でアリサを見た。
「なによ!文句あんの!!」
「…すいません」
アリサに対して謝る癖が染み付いてしまったユーノだった。
「それじゃあ、またね」
すずかが車に乗り込みみんなと別れを告げた。
「また今度な〜」
騎士達を引きつれはやてもまた帰宅の途についた。
「それじゃあ私達も帰りましょうか」
リンディが肩に掛けたスカーフを直しながらフェイトに話しかけた。
「うん。…あ、ちょっと待って」
そう言ってフェイトはユーノの方に走った。
「ん?どうしたの?」
玄関でアリサに憎まれ口を叩かれ、ようやく解放されたユーノが走ってきたフェイトを見て尋ねた。
「えと、あのね、わたしが合格したのって、ユーノが勉強を教えてくれたおかげだからちゃんとお礼が言いたくて…」
しばらく一緒に勉強した仲だが、あらたまってこういうことをいうとさすがのフェイトも少し恥ずかしかった。
「ううん、僕は自分にできることをやっただけで最後はフェイト自身が頑張った結果だよ」
素直に自分の思ったことを口にした。
「うん。でも、本当にありがとう」
そう言って微笑むフェイトに、ユーノは鼓動が高鳴るのを感じた。
「あ、う…うん」
直視できなかったのですこし目線をはずしながらユーノが答えた。
「それじゃあまたね、なのは、ユーノ」
フェイトが元気に手を振りリンディ、クロノとともにマンションへと向かった。
例によってユーノがなのはを送ることとなったが、何故か沈黙が続いていた。
「…………」
「…………」
深夜の歩道、お互いの足音があたりに響いた。
(なんだろ、この空気…)
ユーノはよくわからない雰囲気に少々気まずさを感じていた。
黙々と歩くなのはに何か話さないととは思うが、話題が全く思い浮かばなかった。
とりあえず何か言おうと口を開いた瞬間、先に話しかけてきたのはなのはだった。
「あ、あのねユーノくん!」
「は、はい!」
出鼻をくじかれた上に逆に話しかけられたので、ユーノは変な返事をしてしまった。
しかし今のなのはにはそんな細かいことは気にならなかった。
「わたし達って、最近全然会えてないよね?」
こちらを見ずに歩きながら話すなのは。
「え…う、うん。そうだね。僕は司書長になったし、なのはも学校があって、最近じゃ厳しいって有名な教導隊研修を
受けてるから…。なかなか時間が合わないよね。今日みたいなことでもないと」
おかしな緊張感のせいもあってかユーノはベラベラと話した。
ただ、元々思ったことを素直に話すタイプだったので不思議と内容に違和感はなかった。
「…………」
「…………」
(あ、あれ?)
再び降りる沈黙にユーノはどうしていいかわからなくなった。
(あぅ…何をやってるんだ僕は…)
久しぶりに二人っきりだというのになに一つ気の聞いたことを言えなかった。
…もうすぐなのはの家に着いてしまう。
その時、意を決したようになのはがこちらを向いた。
「あ、あの、あのね…。司書長になったお祝いもかねて、これを受け取ってほしいの」
そう言って髪をとめているリボンの片方をはずしこちらに差し出した。
「え、いいの?」
驚いたようになのはの手にある緑色のリボンに目を落とした。
ユーノはリボンを渡すことの意味を知っていた。絆の証…ユーノはそう理解していた。
「ユーノくんじゃなきゃ、駄目なの」
真剣な表情で言うなのは。きっと、何かが絆を形に残さなければならないと思わせたんだろう。
その何かがなんなのかユーノにはわからなかったが、しっかりと受け取ることでその気持ちに答えた。
「ありがとう。大事にするよ」
そう言ってユーノは微笑み、なのはもようやく表情がやわらかくなり笑顔を見せた。
*
「それじゃあまたね!」
「うん、また」
家の中に入るなのはをユーノは最後まで見届けた。
そしてしばらく一人で夜道を歩いた。人がいないところで魔法を使うつもりだったし、ちょっと散歩もしたかったからだ。
(なのはもフェイトも、それにはやても。みんな将来に向けて歩き出したんだよね…)
闇の書事件以降少しずつ現実味を帯び始めていた将来の姿。今まさにみんながそのスタートラインに立ったといえる。
自分も司書長に就任して間もない。これから覚えることがたくさんある。
みんなに負けていられないな、とユーノは思った。
「さむ…」
急に吹いた北風に肌寒さを感じポケットに手を入れると、先ほどなのはからもらった緑のリボンが手に当たった。
「髪の毛、もっと伸ばさないとなぁ」
空を見上げると夜空には雲ひとつなく、たくさんの星がきらめいていた。
―――そして3年後
―――それぞれがそれぞれの道を順調に歩んでいく最中
―――事件は起こった。
次回へ続く
次回予告
第六話 「最強の結界魔導師」
実は1〜5話は6年間の空白と人間関係の説明のためだけに書いたもので、
本当に書きたかったのは6年後の話だったのです。ということでなるべく早く
理解していただくために早いペースで投下しました。
なにげない文にも伏線が多いです。ユーノの気持ちになって読み返すとこの先楽しめると思います。
それでは。
名前忘れてました。
ついでに言っておきますと全十四話です。すでに十三話までできています。
GJですわん!!
「最強の結界魔導師」となるともしやユーノメイン(若しくは勝利の鍵)の
バトル展開ですかぃ、旦那?
凄く楽しみであります。
それと微妙に阿呆な僕のヴィジョンだったのですが、「…すいません。」と
言っているユーノがどっかの某人類バカ代表の人と重なったのですけど、あは。
では、失礼します。
>>396氏
>すでに十三話までできています。
乙アンドGJ!
おそろしいまでに筆が早いですなw
続きも早くみたいです。
>>396氏乙〜!!
そうか、メインは6年後の話でしたか。
一体これからどんな事件が起こるのか…wktkして待ってます。
396氏おつおつ!
6年後どうなってるのかな〜楽しみです。
なのは・・消極的になってたら・・
>>396氏
乙です。 アリサとの関係が新鮮ですね。
漫才じみたやり取りが、なのはやフェイトとの絡みとはまた違って。
焦りからか形になるものを求めて、リボンを渡すなのはさんが
可愛かったですが…どうか悪いフラグになりませんように。
まぁ最後ハッピーエンドなら、中盤の障害はむしろ(ジュッ
>>117 名前が覚えられないあの人のことかー!!
>>115 なのはとラブラブになるのも良し、なのは達を裏切るのも良し、アリサの奴隷になるのも良し(マテ
楽しみにまってますよ。
>>117 オーハヨーゴザイマース!
私が(ry
396氏乙!
五話で終わると思ってただけに全十四話にwktkが止まらない
遅レスだけど
>422氏GJ!
リリ箱の設定を持ってくるSSは見たことあるけど、まさかそっちのクロノとなのはが出るとは以外でした。
ゲームをやってた頃はガチでクロノ×なのはだったのに、いつの間にクロノ×フェイトの自分が出来たんだろう
125 :
名無しさん@ピンキー:2006/02/27(月) 22:48:49 ID:FEiNHVev
396氏、ひきつけるやり方が巧いっす! 期待してますよ。
≫124氏
私もそうです。気付けばクロノ×フェイトに。何でだろう・・・
こんなに反響があるとは。できあがってるのに焦らすのもなんなんで投下します。
映画にしたらこんな感じ、というつもりで書きました。
最終話では必ず泣かせますので最後までお付き合いください。
魔法少女リリカルなのはA's+
第六話 「最強の結界魔導師」
空には透き通るような青が広がり、地面は岩と砂のみが肌を晒している。
三つの太陽のような光源がその世界を照らし、桜色、金色、深緑色の光が混ざり合うことなく複雑な
放物線を描いている。
「はぁ…はぁ…」
「まだ、まだいける…」
なのはとフェイトは疲労しきっていた。
アクセルシューター、ディバインバスター、プラズマランサーなど、数ある魔法を繰り出したが一つとして相手の魔導師には
届くことはなかった。
(なんで、あんなに転移が早いの…?)
なのはは疑問に思った。攻撃しても転移で回避され、しかも相手は自分達のすぐ近くに出現し打撃を加えてくる。
魔力攻撃でないだけまだましだが、その鍛え抜かれた肉体から放たれる攻撃はバリアジャケットと言えどかなりのダメージをくらう。
「不思議か。私の転移速度が」
まるで心を読んだかのように魔導師が言った。
「この次元…。お前達は私が追い込まれて来た、と思っているだろうが…それは違う。私が追い込んだのだ」
魔導師が静かに言うと魔法陣が瞬時に魔導師を包み込みまた姿を消した。
「ど、どこ!?」
なのはが周囲を見回しても姿は見当たらない。
「なのは!!」
フェイトの声の方を振り向くと魔導師がすぐ横、肩が触れ合いそうな距離にまで近づいていた。
ぐんっ手首を引っ張られ思い切りフェイトの方に投げ飛ばされる。
「あぅっ!!」
フェイトにぶつかるように受け止められた。肩が外れたかと思うくらいの痛みを感じた。
「攻撃魔法が戦いの全てではない」
鋭い目つきで魔導師はなのはとフェイトを睨んだ。
もともと転移速度が異常なのか、なにかトリックがあるのかはわからなかったが先ほどの口ぶりからして
後者の可能性は高い。しかし、今はその種を見つけている余裕はなかった。
『なのは、わたしが相手に隙を作るから!』
『うん!』
まだ諦めるわけにはいかない。相手はジュエルシードを攻撃に使う様子もないし、
二対一、魔力の差から言ってもまだこちらに分がある。
「レイジングハート!エクセリオンモード!!」
『Yes, my master.』
「バルディッシュ、ライトニングフォームパージ!!」
『Yes,sir.』
なのはのレイジングハートがその形を突撃槍のように変え、フェイトのバリアジャケットがパリンッと割れるように換装し
ソニックフォームとなる。こうなると相手の攻撃を受けるわけにはいかない。
「カートリッジロード!!」
バシュッ!
リボルバーが回転しバルディッシュが熱を帯び、光のデスサイズが形成される。
その様子を魔導師は静かに見ていた。相手は攻撃を待つタイプであることは先ほどからの戦いで明白だ。
「いきます」
静かにそう言うと相手に向かってバルディッシュを構えなおす。同時にフェイトが魔導師の視界から消えた。
(!?)
予想をはるかに上回る相手のスピードに魔導師は驚いた。
次の瞬間目を見開き真上を見上げた。
「はああぁぁぁ!!!!」
太陽のような恒星の光を背にフェイトが鎌を振り下ろす。
さすがに転移に集中してる暇がなかったが魔導師はなんなくシールドでそれを防ぐ。
「くぅっ!!」
渾身の一撃、しかもカートリッジで魔力が増えているはずだが、魔導師の張ったシールドはびくともしない。
「バリアバースト」
魔導師が小さく呟くとシールドに波紋が生じ中心に向かって集まり始める。
「なっ!?」
ズガンッ!!!!
気づいた瞬間には爆発に巻き込まれていた。
「フェイトちゃん!!!」
なのはが叫び、魔導師が次はお前だと言わんばかりになのはの方を向いた。
シュンシュンシュン
(むっ!?)
音に反応し即座に魔導師は体をくの字曲げ避ける。避けた瞬間三日月形の光が回転しているのが目に入った。
先ほどのバリアバーストで生じた煙の中からキラリとデバイスが光をはなち、晴れた煙の間から金髪の少女の不敵な笑みが見えた。
フェイトは直接攻撃の前にハーケンセイバーを放っており、それが遅れるように魔導師に到達したのだ。
『Saber Blast』
ボンッ!と任意の時点で爆発させられた三日月の光は、衝撃とともにあたりを煙で包んだ。
(まずいな…)
視界が遮られ相手の出方が読めない。すぐさま転移のため少し集中する。
『A. C. S., stand by.』
次の瞬間機械的な音声が聞こえ、煙が吸い込まれるように一箇所に集まる。
そこから光の槍と少女が飛び出してきた。
「エクセリオンバスター!!!!!!!」
ギィィィィンとシールドと競り合う音が響いた。どうやら魔導師は防御に間に合ったようだ。
「くっ!!まだまだー!!!」
『Open.』
A.C.S展開によりレイジングハートを中心に光の羽が広がる。
ドガーン!!!!!
魔力同士の衝突でもくもくと煙が立ち込める。
「なのは!!」
フェイトが安否を気遣うように叫んだ。あたりにひとときの静寂が舞い降り、徐々に煙が晴れていく。
煙の中で人影が重なっているのが見えた。
「なのは!?」
先ほどとは違い悲痛な叫びへと変わる。片手で軽々と持ち上げられたなのははギリギリと首を絞められていた。
「このぉ!放せーー!!!」
バルディッシュで切りかかると、魔導師はなのはを放り投げながら回避する。
「ごほっ!ごほっ!!」
「大丈夫、なのは…」
激しくむせるなのはを受け止め、いたわるようにフェイトが肩を抱いた。
「惜しかったな」
つまらなそうに一言そう言うと、魔導師はパンパンと肩の埃をはらった。
「くっ!!」
悔しさと、友人にひどい仕打ちをされたことへの憎悪からフェイトは魔導師を思い切り睨みつけた。
「そう、殺すつもりでこなければ私には勝てない」
魔導師のまるで諭すような言い方に無性に腹が立った。
「しかし、たとえ誰が来ても結果は同じだ。逃がしもしない」
少し長めの魔導師の黒い髪が風に吹かれてなびいた。
「管理局の人間は……必ず殺す」
冷徹な瞳と確かな殺気。
(この人、本当にわたし達を殺す気だ…)
ようやく苦しさから解放されたなのはがその瞳を見て確信した。
血筋もあってか、なのはには確かにそれがわかった。
そして自分達が今どれだけ危険な状況であるのかも。
『フェイトちゃん』
『うん、わかってる。この人にはたぶん勝てない。逃げる方法を考えよう』
弱気なのではなく戦略的撤退。力の差が歴然としている今、一旦離れて立て直す必要がある。
『それじゃあ、せーので別々の方向に飛んだ後、各自転移しよう』
なのはが念話と同時に目配せをし、フェイトが頷いた。
『『せーの!!』』
桜色と金色の光が魔導師を中心に正反対の方向に飛んでいった。
それを見た魔導師は右手を前に出し深く目を閉じた。魔導師の手のひらに球状の魔力光が現れ、複雑な術式が中で渦巻いている。
次の瞬間、二人の目の前に魔導師が現れる。否、なのはとフェイトが魔導師に向かって飛んでいたのだ。
「「え!?」」
驚きもつかの間、なのはの脇腹に蹴りが放たれる。
「きゃあああああああああ!!!!!」
「なのは!?…くぅっ!!!」
なのはへの攻撃に気をとられたフェイトが同様にまわし蹴りをくらい吹き飛ばされる。
あまりの速さにデバイスのオートガードがまったく追いついていない。
なのはは下の砂の地面に思い切り叩きつけられ、フェイトは岩壁に突っ込んだ。
パラパラと岩が削げ落ちる音が響き、辺りに砂が舞った。
(ト、トランスポーター・ハイ…?)
フェイトが揺れる意識の中おぼろげに理解した。
(でも、二人とも高速移動中だったのに…。どうして?)
トランスポーター・ハイとは移動魔法の中でも高位転送魔法。
他人の転送はおろか、別々の場所にいる複数の人間を一斉に同じ場所に転送可能な魔法だが、高速移動中の人間を転送するという
例など聞いたこともなかった。
(な…なのはは…?)
同じように砂煙を舞ったほう見ると、ぐったりとしたなのはが見えた。不意打ちで相当なダメージを負ったらしい。
魔導師の体勢が崩れた中での二撃目を受けた自分はソニックフォームとは言え、なんとか意識は保っていた。
(なのは!!!)
急いでなのはの元に飛んで行こうとすると何本ものチェーンが体に絡みつく。
「ぐっ!!ディレイドバインド!?」
設置型捕獲魔法がフェイトに反応して発動した。
「ここに誘い込んだと言った時点で警戒するべきだろう」
気づいたらすでに目の前に魔導師が浮かんでいた。
「あなたの狙いは何?ジュエルシードを…どうするつもりなの?」
キッ魔導師をにらめつけながらフェイトが言った。
「動機と目的をすぐ自分達の枠に当てはめようとする。管理局の人間はいつもそうだな。
…私がジュエルシードで何かすると言ったか?」
冷ややかな目で見下ろしながら魔導師が言い放った。
「ま…まさか……、狙いは…わたし達?」
目を見開いてフェイトが言った。管理局の人間を殺すためだけに、ロストロギアを強奪したのだろうか…。
でも、なんでそんな回りくどいことを。疑問は尽きない。
「二度、同じことは言わない。お前と向こうのやつは、今ここで死ぬ。それだけだ」
魔導師が片手を天に掲げると少しずつだが光の槍のようなものが形成されていく。
なのはの方を見ると、どうやら気がついたようだが同じようにバインドされていた。真上には同様に槍があった。
この魔導師のバトルスタイル。それは、転移と防御で少しずつ相手に魔力を消費させ、拘束したあとにゆっくり致命的な攻撃を
加える。まさに結界魔導師がとれる最高の戦術だった。
高度な転送技術と完璧な防御呪文があってなせる技だ。鼻からレベルが違いすぎた。
(だからアルフを警戒していたんだ…。主人を倒すことで手間を省くつもりかと思ってたんだけど)
今さらながらバリアブレイクを放った瞬間強制転送された自分の使い魔のことに思いをはせた。
念話も届かないところに飛ばされたようで、居場所はわからない。アースラとの通信も気づいたらジャミングされていた。
そんなことよりまず今の身動きが取れない状況だ。目の前に作り出されていく光の槍を見あげる。
相手が時間をかけて生成した殺傷能力のある魔法だ。おそらくシールドを突き破るだろう。
(これで…終わりなの…?……ごめんね、アルフ、母さん、兄さん、みんな。………ユーノ………)
ぎゅっと目を閉じると出会った人たちの顔が思い浮かんだ。
「…………」
無言のままかざしていた手を振り下ろし、魔導師の実行の合図とともに槍が高速で放たれた。
ガキンッ!!!
槍が刺さる音がした。恐る恐る目を開けると、槍が自分の脇に刺さっているのが見えた。痛みはない。
どうやら自分には刺さっていないようだ。目の前を見ると黒い人影が見え、光を遮っていた。
一瞬で分かった。それが誰であるのかが。
「兄さん!?」
「アリシアとプレシアに会うのはまだ早いぞ、フェイト」
逆光でよく見えなかったが、クロノがこちらを見て微笑んでいるのがわかった。
次回へ続く
現れる最強の魔導師。その頃少年は遠くの地にいた。
次回 第七話 「不倶戴天」
とまあ予告も内容と同じくシリアスにいくことにしました。
オリキャラ出さないって言ったくせにと憤慨の方、すいません。
ただ、オリジナルの固有名詞というのは一切出ません。
テーマは“恋愛”から“想い”に変わります。それでは。
>>396氏
続き乙
夜中に待ってたかいがあったというものです
というか強!
次回のタイトルはものものしい感じがして期待して待ってます
>>396氏
乙&GJ!
これはもう6年後の設定で書かれているんですか?
>>136 そうです。次回でもう少しはっきりした描写があるんですが、
フェイトのクロノの呼び方が変わっていることで3年の月日を感じ取ってください。
…かなりわかりにくいですね。
なんつーか、擬音をつかうのはやめといたほうがいいと思うのだが……。
396氏乙!
わけありの強さのようですね。
>>138 それは好みによるんじゃないか?
俺は気にならんが。
擬音を使うとディティールが落ちたりしないか?
書く場合はワンポイントで使うべきだと思うのだが
オイラはなのはの嫉妬に期待してるの。
魔法少女リリカルなのはA’s −変わりゆく絆−
第七話 過ぎ去りし記憶と共に・後編
「シグナムっ!!」
爆煙に消えた仲間の姿は、夜天の書の拳をバルディッシュで受け止め鍔迫り合いを演じるフェイトの目にも入っていて。
シグナムの窮地にフェイトは相手に隙を見せるということも忘れ、声をあげて彼女の名を呼ぶ。
しかし。
「う・・・おおおおおおっ!!」
彼女の心配、安否を気遣う一同の視線は、幸いにして杞憂に終わり。
烈火の将は土煙の中を突き破って無事な姿を再び彼女達の前へと現し、
バリアに守られた敵へと、その剣を叩きつけるように浴びせていく。
「まだ、まだぁっ!!」
「・・・・」
しかして、夜天の書は一向に動揺した様子すら見せず。横に身をずらしてそれをかわすと、自らの守護騎士と合流し一定の距離をとる。
「・・・・テスタロッサ!!一旦後退だ!!」
「!?っく・・・・!!」
ガギリ、と鈍い音がしてハーケンフォームのバルディッシュが夜天の書の蹴りを受ける。
重いその一撃は、直撃を受けていれば骨の2,3本は軽く折っていかれただろう。
「そんな、でも・・・!!」
「こいつらが私の考えている通りなら・・・このまま続けても削られて消耗するだけだ!!退け!!」
「けど・・・!!」
(フェイト、悪いけどあたしもここはシグナムに賛成だ)
(アルフっ!?)
「済まないけど・・・・ちっとばかし数が多い。ザフィーラと二人じゃ、シャマルを守りきれるかどうか・・・・!!」
見ると、フェイト達が2対4の不利な戦いをしている間に。
いつの間にかその数を増した使い魔達によって、アルフ達は周囲を囲まれてしまっていた。
最初は無事そうに見えたシグナムも、額に脂汗を滲ませ、手数こそ多いものの明らかに守勢に回っている。
よくよく観察すると右手だけで剣を保持し、左腕は力なくだらりと垂れ下がっていて、痛むのか時折苦痛に顔を歪ませる。
彼女が今、相手の攻撃を受け続けるのが不可能な状態だから積極的に前に出て誤魔化しているに過ぎないということを、嫌でも気付かされる。
シグナムの指摘通り、そこには一方的な消耗戦の図式が出来上がってしまっていた。
─────それは、情報確認と把握を怠ってしまった、本来のフェイトならばあり得ないほど初歩的な。指揮官として絶対やってはいけないミスだった。
「っ・・・・!!」
「一旦退いて立て直すんだ、テスタロッサ!!」
「フェイト!!」
「このままでは、スクライアを救助するどころではっ・・・!!」
(何をやってるんだ、私は・・・・)
何たる、失態。自分を罵り、歯噛みしながらもフェイトは自身のデバイスに、すべきことの指令を出す。
「バルディッシュ・・・・サンダーブレイド・ランダムショット、フルオートファイアッ・・・!!」
『yes,sir』
「着弾後、オートでブレイク設定・・・!!」
呪文の発動と共に、雷を纏ったいくつもの刃が広間とも言うべき空間の壁や床、いたるところに突き刺さり爆散していく。
元より老朽化し、風化しかけていた部分さえもある壁面はそれによって多くが崩壊し、土埃をあげ。
爆風や着弾、崩れ落ちてくる壁の構成材に轢されることによって消滅する使い魔たちも少なくはない。
瓦礫に埋もれた遺跡の一室に静寂が訪れ、舞っていた埃がおさまった頃には、
フェイト達の姿はそこから完全に消え去っていた。
戦略的撤退、とは言うけれど。
そういった聞こえのよい言葉に粉飾されてなお、敗退と言ったほうが「らしい」後退であった。
* * *
ミッドチルダ式魔法陣を模したシールドが、同様にベルカ式のものを模したそれが、クロノとヴィータ、それぞれの前に展開される。
ラウンドシールドと、パンツァーシルト。二つの防御魔法が広がり、敵からの攻撃を防ぐ盾として。
「あ・・・・あ・・・・」
「リインフォース!!お前もやんだよ!!」
『は、はい!!』
「武装局員達は後退!!僕とヴィータの後ろへ!!」
かつて失ったはずの自らのデバイスの出現に呆然自失状態のはやて。
彼女を守るべくヴィータはリインフォースへと指示を出し、クロノもまた局員達を自分達の後ろへ下がらせる。
二人とも各々、ありったけの魔力をシールドに込めながら。
「デアボリック・・・・エミッション・・・・」
そして、漆黒の一撃が放たれる。
「来るぞっ・・・!!アースラ、バリア展開しつつ後退!!」
「シールド、途切らすんじゃねーぞ!!リインフォース!!」
『はい!!』
球体であった暗黒は、ゆっくりと広がっていき、辺りを飲み込んでいく。
「ぐ・・・ううううううぅぅっ!!!何て重さだ、ちっくしょおっ!!」
「耐えろヴィータ、リインフォース!!く・・・・!!」
一発でも、なのはの強固なシールドからごっそりと魔力を削っていった空間攻撃魔法が二発同時に合わさった、一つの攻撃。
それは単純な威力の1+1の足し算ではなく、相互の威力が混ざり合うことで破壊力が三倍にも四倍にもなっている。
クロノ達三人のシールドを合わせても、三つの盾にダメージを分散させることでなんとか耐えるのがやっとだった。
「まだ・・・おわんねーのかよっ・・・!!」
少しでも、いい。なるべくはやく魔法の発動が終わることを祈りつつ、必死に彼らは耐え続ける。
『クロノ君!!聞こえる!?』
ずしりと重い衝撃、ごっそりと魔力の削られていく不快な感覚に、顔をしかめつつ堪える一同の下に届いたのは、
切迫した声のエイミィによる通信だった。
「どうした・・・・?こっちは・・・・手が離せない・・・・!!」
『大変なの!!クロノ君達の後ろ、アースラと待機中の局員達との間の空間に転送魔法陣、多数発生!!』
「なん、だと・・・!?」
『こっちでも確認しました!!さ、さっきの狼さん達です!!』
「挟み撃ちかっ!?どーすんだよっ!!」
悲鳴のようなリインフォースの声と、ヴィータの叫び。
少しでも気を抜けばシールドを破られてしまいかねないこの状況では、後ろを振り返って戦況を確認することすら許されない。
だが早急に手を打たねば隊列が乱れ戦力的に劣る武装局員達に多くの犠牲が出てしまう。
「いけ、はやて・・・・!!」
「え・・・・?」
「リインフォースなら君から離れてもシールドを張り続けることができる・・・・動けるのは君だけだ、行け・・・!!」
「せ、せやけど・・・」
突然のクロノの指名に、先ほどから呆然と状況を見ているだけだったはやては首を振り、うろたえる。
「行くんだ!!君しか・・・!!」
「せ、せやけど・・・・」
あれを操っているのは、リインフォースなのだ。はやてが愛し、はやてを愛してやまなかった、深き主従の絆を結んだ魔導の書なのだ。
そんな彼女と敵対し、戦うなんて考えられなかった。例えリインフォース本人でなかったにしても、同じ姿をした者を攻撃し、攻撃されるなんて。
とても耐えられない。シュベルトクロイツを握る右手は震え、せわしなく動き回る視線はおろおろと、クロノ達と後方の狼の群れをいったりきたりする。
『マイスター、行ってください!!』
「はやて!!」
「行け!!早く!!」
「でも・・・でも・・・」
はやてがこうして迷っている間にも局員達は傷つき、倒れていく。数が減っていく度に彼らの不利の度合いは増していく。
(く・・・まずい、一旦武装局員全員を下げるべきか・・・・?はやてがこんな状態では・・・・!!)
奇しくもクロノが遺跡内部の妹と同じく、一時後退の意を脳内に浮かべたその時。
『っ・・・!?遺跡に関する追加資料を受信!!発信源は・・・レイジングハート・エクセリオン!?』
「!!」
──────彼女が、間に合った。
突然送られてきた新たな情報に戸惑うエイミィの通信を聞き、一同が顔を見合わせる。
時を等しくして、彼女からの念話が入る。
(・・・・クロノ君、ヴィータちゃん、はやてちゃん、リインフォースちゃん。こっちは任せて)
「ああ・・・・っ!!頼む・・・!!」
(みんなは、シールドの維持に専念してっ・・・・!!)
念話が終わるか終わらないかのうちに、一番右の一団を攻めていた狼の一体が爆散した。
局員達を取り囲む狼達はその異変に、はじめて自分達がそれぞれ三つずつの光の玉によって包囲されていることに気付く。
『divine shooter』
野生の持つ敏捷性など、その桜色の光の前では無駄だった。8体ほどいた狼の殆どは初動の一撃すら避けることもできず、
避けた者達もその誘導弾の誇る性能の前に次々と撃墜されていく。
唯一残った最後の一体は、四方八方から逃げ場なく迫ってくる魔力弾の集中砲火によってその身を散らした。
「武装隊は残った者で4マンセル編成!!相互にフォローできる陣形をとりつつ警戒態勢を維持!!」
『divine baster extention』
声を張り上げながら彼女は二体の夜天の書の意思へと、己が主砲をぶっぱなす。
呆けたようだった武装隊員達は聞き覚えのある上官の声に慌てたように命令を実行し、
隊列を組みなおし──不思議なことに彼らの慌てぶりは明らかに怯えといった類のものを含んでいた──。
押し寄せる魔力とも言うべき砲撃を受けた銀髪の女性達は防御魔法による盾でこれを防ぐ。
入れ替わりに魔力供給の絶たれた漆黒の破壊空間は萎んでいき、
魔力による重い圧力から解放されたクロノ達は息をついて上空を見上げた。
「ったく・・・・来るのがおせーんだよ・・・」
「なの・・・は、ちゃん・・・・!!」
───時空管理局武装隊所属戦技教導官・高町なのは。
「レイジングハート、カートリッジロード」
(大丈夫だよ、リインフォースさん)
戦域全体を俯瞰し、見渡せるその上空から向けられる彼女の視線はただ一点。
「あの子達は、わたしが代わりに止めるから・・・・!!」
俳莢しエクセリオンモードへと変型を完了したレイジングハートを手に、
はやて達の見るそれとは違った眼差しで、その先の夜天の書「達」をじっと見据えていた。
>>138 的確な助言ありがとうございました。確かに読むと違和感が…。
ということでこの先、無意味な擬音は修正したのでご安心を。
初めて小説書いたので粗相は見逃してください。
修正版1〜7話+お詫びの短編を次回投下時にアップロードします。たぶん金曜。
549氏もそちらを保管してください。
640氏乙!
戦闘描写うまいです。さすがとしか言えません。
はいどうも、640です。
実は現在仕事やらなんやらの関係で実家から投下してます。
いつにも増してとっちらかった印象なのは環境の変化が原因だと言ってみるテスト
嘘。次回の分で書く予定の内容に合わせるとこうなりましたorz
・・・・・回収しきれるよう祈っておいてくださいorz←人に頼むチキン
なのフェス原稿と同時進行だけど週一前後のペースは守る所存ですので。
クオリティ?・・・・・うん、がんばるorz
>>442氏
>というか今のバルデやレイハって旧形態取れないんでしたっけ?
最大出力状態はそれぞれザンバーとエクセリオンがそれに該当するので、取れなくなってると思います。
形状的にはいけそうな気もするけど。
>>396氏
>最終話では必ず泣かせますので最後までお付き合いください
wktkして待っております。
・・・・今回の
>>396氏のを読むまで文と文の区切りに「*」使えばいいってことを忘れてた俺アホorz氏ね俺
>>jewel氏
修羅場祭りwwww
期待してます。クロノ堅いよクロノ
>>176氏
カップル成立来ましたね。個人的にはクロノは尻に敷かれると思われ。
>「私も新しい旦那見つけようかしら」
クライド・・・・・哀れな。
>>640 いつもながらGJです!
──不思議なことに彼らの慌てぶりは明らかに怯えといった類のものを含んでいた──。
鬼教官に怯える武装局員にワロタwww
保管庫の更新が追っ付きません。
言い訳すると、つい読み込んじゃうから……。
専ブラで読むのも含めて四回は読み直してるかも。
で、みなさん、メガミマガジンは買いましたか?
すく水とかありますが、やっぱ魔法設定がそそられます。
>>70 >>147 > >というか今のバルデやレイハって旧形態取れないんでしたっけ?
> 最大出力状態はそれぞれザンバーとエクセリオンがそれに該当するので、取れなくなってると思います。
> 形状的にはいけそうな気もするけど。
どうでしょう.できるという設定もないができないという設定もないように思います.
新形態だとカートリッジが切れた場合にやばい気がするので,
もしも僕が設計者なら(可能なら)旧形態も残したいとか思うだろうな.
でもその辺を本気で議論しだすと荒れそうな気も.
書き手の好みでいいんじゃないでしょうか.
>>150 カートリッジシステムは「いざというときに、カートリッジで魔力増幅できる」のであって
カートリッジが切れたからってこれまでの魔法が使えなくなるってもんでもないでしょう。
>>149 保管庫管理乙です。4回って読みすぎ…といいつつここの職人の話は
どれも面白いから自分もよく読み返してる。
メガマガ買ってないけどスク水の画像はどっかでみたな。
153 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 00:21:56 ID:3coFbHjr
>>50 640氏
コレは砕かれ〜の第5話にあたるんですか?
旧形態ってアクルとハーケン?
>>150 まぁ、確かにカートリッジが切れたら形態を戻すと言う方式を取ると言うのは理にかなったものですけど
今回のRHとバルディッシュはカートリッジシステムを無理やり組み込み、改造した代物ですから
形態を昔の状態にすることは不可能だと思いますよ。
ともかく強くなる、ただその一点のみに絞ってRHたちは強化案を作成したはずですから。
ただなのはたち魔術師は本来デバイスがなくても魔法を行使できるので
カートリッジが切れてもカートリッジシステムに頼らない魔法なら使えると思います。
魔法少女リリカルなのは 〜 もう一人の私へ・・・ 〜
「フェイトちゃんの転移魔法を確認!アースラに帰還しましたぁ!」
エイミィお得意の親指立てが炸裂する。
「やったぁ!さすがフェイトちゃん!!」
「むがぐっ!!」
ユーノに飛びついて喜ぶなのは。顔面のここらへんとそのへんに感じる他の部分より
はるかに柔らかな感触に慌てふためくユーノ。
一方クロノは、
「エイミィ、フェイト1人か?」
「・・・いえ、3人です、フェイトちゃん、クロノくん、なのはちゃん。よほど慌てた
ようです。待機室でなくブリーフィングルームに転移しています」
「確認するのが一番早いな」
通信機のスイッチに手を伸ばすクロノ。
「フェイト、聞こえるか?無事なんだな?」
『はい、フェイトです。無事です。えっと・・・私だけじゃなくて。なのはも、その
・・・兄さんも・・・』
含みのあるフェイトの返事。
「・・・わかった。今からそちらに行く。3人ともそこで待っててもらえるだろうか」
『わかりました』
「さて・・・、どうしますか、提督」
あまり見せない難しい顔のリンディに振り返るクロノ。
「・・・そうね、行ってみるしか・・・ないわね。エイミィとユーノ君も来てちょうだ
い、もちろんクロノもなのはちゃ・・・あら?」
リンディの視界から主要人物2名が既に欠けていた。
「あの・・・なのはちゃんならユーノくん引っつかんでもう出て行っちゃいましたけど」
唖然とドアを指差すエイミィ。
「・・・と、とりあえず行きましょう」
軽い目眩を押さえつリンディ以下2人は歩き出した。真相の「一部」を求めて。
〜 〜 〜 〜 〜
アースラ内ブリーフィングルーム。見慣れた部屋にようやく落ち着いたフェイトがバ
リアジャケットを解く。
「助かった・・・のかな?」
「そのようだね。ありがとう、君のおかげで助かったよ」
「いいえ、助けてもらったのはこちらです。本当にありがとう」
「いや僕は何もしてないよ。なのはが僕たちを守ってくれたんだ。なのはと、レイジング
ハートが」
「そう・・・でしたね」
改めてフェイトは2人に向き直り、
「フェイト・テスタロッサです。改めてありがとう。そしてようこそ、次元空間航行艦船
アースラへ。高町なのはさん、クロノ・ハラウオンさん」
真剣な表情こそするものの、クロノに驚きはない。
「・・・居るんだね、こちらの世界にも、僕となのはが」
「はい。おそらくここはあなた方の知る世界ではありません」
「・・・なのは、どうやら僕たちは・・・ん?なのは?」
「へっ!え、あ、ははは、はい、な、何?クロノ君」
どうやらなのはは別のことに気を取られていたらしい。
「ご、ごめんなさい。あ、あの、その杖さんのことが気になって・・・」
えっ、と、フェイトがバルディッシュを見やる。
「I surprise it some time ago, and I'm sorry it is a young lady」
(先ほどは驚かせて申し訳ありません、お嬢さん)
「!」
「Then I have you help a master, and thank you」
(それとマスターを助けていただきありがとうございます)
わずかばかり驚いたものの、やや抵抗もできたかなのははゆっくりとバルディッシュ
に近づく。
「え、えと、こ、こちらこそびっくりしてごめんなさい。えっと、バ、バルディッシュ
さん・・・でいいのかな?」
「え・・・さん?」
「なのは・・・さん、って」
杖相手に何を言っているのだろうかこの娘は状態の2人。しかし当のなのはは、
「え、だって、ちゃんとお話できるし、その、驚いちゃったのは私だし、やっぱり悪い
のは私・・・だよね?」
「い、いやまぁ、悪いわけじゃ・・・ないんだけど・・・」
「・・・バルディッシュをさん付けで呼んだ人は初めて・・・」
「それに、黒くてかっこよくて、すっごく優しい感じがするよ、バルディッシュさん」
「Is it ・・・me?」(私の・・・ことですか?)
「うんっ!」
満面の笑みで答えるなのは。
「The young lady that thank you. I am honored」
(ありがとうございます、お嬢さん。光栄です)
PiPitt!!
『フェイト、聞こえるか?無事なんだな?』
フェイトの顔がぱっと輝く。急いで壁際の通信パネルに走り寄る。
「はい、フェイトです。私は大丈夫です。えっと・・・」
そこでやや言葉に詰まる。
「私だけじゃなくて。なのはも、その・・・兄さんも・・・」
『・・・わかった。今からそちらに行く。3人ともそこで待っててもらえるだろうか』
「わかりました」
通信はそこで終わる。2人に向き直るフェイト。
「上司からの連絡です。すぐこちらに来ますので、もうしばらく待っていてください」
「あ、はいっ!」
「わかりました。あの、その上司というのはもしかして・・・」
「はい、こちらの世界の・・・」
と、突然、
「あーーーーー!!」
なのはが悲鳴のような声を上げた。
「うわっ!な、なに?なのは」
「大変!バルディッシュさん怪我してる!!」
バルディッシュのシャフトに走る亀裂を見つけ叫ぶなのは。
「It is all right. I have a self-repair」
(大丈夫です。私には自己修復機能があります)
「で、でも痛そうだよ。あ、あの、フェイトさん」
「え、は、はい」
急に話を振られ驚くフェイト。怪我だの痛いだのおよそバルディッシュと縁遠い単語
に対処に困り果てる。
「あ、あの、私、治してもいいですか?」
「直す?」
「バルディッシュさんの怪我です」
「え、えっと、その、自己修復機能が、その、魔力さえチャージすれば自然に・・・」
「な、なのは、あのね・・・」
まさに面食らっているフェイト。クロノも勢いに押されなのはを止めることができな
い。
「で、でも、早く治してあげたほうがいいですよね!私、治してもいいですよね!」
「え、ええ、な、直せるなら、お願い・・・します」
押し切られるフェイト。
「はいっ!えっと、それじゃバルディッシュさんをテーブルの上に置いてもらってもい
いですか?」
「えっと、これで?」
そっとテーブルにバルディッシュを横たえるフェイト。
「ありがとうございます。それじゃ」
なのははゆっくりとレイジングハートを掲げる。
「リリカル・マジカル・・・お願い、レイジングハート。バルディッシュさんの怪我を
治してあげて!!」
レイジングハートが光に包まれ、その光がバルディッシュに注がれる。
ゆっくりとバルディッシュのシャフトの傷が消えていく。
「直っていく・・・」
「祈願型の魔法は見たことがありませんでしたか?」
呪文でインテリジェントデバイスを直すなどということができるとはフェイトは思い
もしなかった。
「願いを・・・叶える魔法」
「そう、それがなのはの魔法。レイジングハートはその手助けをしているんです」
「すごい・・・そんな魔法があったなんて・・・」
加速度的に直っていくバルディッシュの傷。ほどなくしてバルディッシュは元の聡明
な姿を取り戻した。
「ふぅ」
レイジングハートの輝きが消え、人心地つくなのは。
「どうですか?まだ痛いところあります?」
「I am all right. I seem to be well-conditioned from usual times」
(もう大丈夫です。普段より調子がいいくらいです)
「よかったぁ」
少さな笑みを見せるフェイト。
「うふっ、こっちの世界と同じですね」
「えっ?」
「なのはが、すごく優しいっていうことが」
「そうですか、こちらのなのはも」
「ええ、とっても」
クロノに微笑むフェイト。輝くような笑顔に思わずクロノの顔が赤くなる。
「Thank you twice. Ms.Nanoha」(二度もありがとうございます。Ms.なのは)
「えへへ、どういたしましてー」
なのはもバルディッシュに敬称までつけられ、少し照れているように顔が赤い。
「なんだか今日のバルディッシュはよく喋るね」
「Sorry master」
「ううん、怒ってない、逆。嬉しいよ。いつもこうだともっと嬉しいけどね」
「・・・I make an effort」(努力します)
「あはは、バルディッシュさん照れてる。面白ーい」
「N・・・No. Please do not make fun. Nanoha」
(違います、からかわないで下さい、なのは)
早くもなのはに対し敬称すら消えているバルディッシュ。
「えと、す、すみません、なんだかなのはがその、ご迷惑を」
「あ、いえ、ちょ、ちょっと驚きましたけど、でも、バルディッシュも嬉しそうだし、
お礼言いたいくらいです」
「それならよかった」
なんだか暖かな気分になった2人は笑いあった。
「それで・・・少し質問してもいいですか」
と、クロノは表情を改める。
「そう・・・ですね、私も聞きたいことが沢山あります、でも・・・」
「でも?」
「お話はクロノ・・・こちらのクロノが来てからにしましょう。もう来るはずです」
「・・・そうですね」
「え?こちらの?」
バルディッシュにかまけて話を聞いていなかったなのはは不思議そうな顔をする。
ちょうどその時ドアが開いた。
「待たせたね、フェイト」
2人のクロノが顔を合わせた。
魔法少女リリカルなのは 〜 もう一人の私へ・・・ 〜
〜〜 To Be continue 〜〜
ちょっと短いかもしれませんがUPします。4の422です・・・
すいません、また謝罪を。私、4スレの422でなく「5スレ」の422なんですよね・・・
えらいことしてしまった・・・もうしょうがないんで4の422で行きます、すいません。
あと、なんだか荒れるようなこと言ってしまったようで申し訳ありません、なにぶん
小説も設定資料も手に入らない状態でして・・・その、加えて言いますと・・・実は
アニメ本編もA'sは歯抜けで見た状態で全話見てないんです、ごめんなさい。
(12話見てないのが実に痛い・・・)
旧形態につきましては>150さんの言っているように、できるできないの説明がなかっ
たので、もしかして私の知らない設定で結が出てるのかと思ったので聞いてみた次第で
す。でも荒れる要素みたいなので先の発言は取り消します。矛盾が生じますが、今後の
文中では旧形態を取れないものとして表現します。、不快に思われる方は「4の422」の
文章はすっ飛ばしてください。申し訳ありません。
UPも止めたほうがよかったのかもしれないのですが、こういう場でないと表現の手段も
ないものでして、申し訳ないですが続けさせてもらいます。
(これで大体全体の1/3〜1/4くらいだと思います。プロットのみなので全体容量は不確
定ですが・・・早筆の396さんがうらやましいです。少し才能を分けてください)
それでは今回はこれにて。
P・S
GJを文章で表現するには無理がありました・・・
文中に書かれてますけど本当にバルディッシュがよく喋りますね。
今回だけでアニメで喋った分を超えてそうな勢いだ。
あと原作のなのはってアニメ版に比べてお馬鹿……と言うかずれてます?
クロノ同士が顔を合わせたってことで次回がとても楽しみです。
GJ!
ですが先生、何だか混乱してしまいます。 ○| ̄|_
>>161 >あと原作のなのはってアニメ版に比べてお馬鹿……と言うかずれてます?
フェイト「なのはにあやまれ!!」
なのは「・・いいよ無理しなくても・・・ほんとのことだから」
フェイト「な、なのは・・私は、なのはがお馬鹿でもずっと守っていくから」
なのは「ありがとうフェイトちゃん」
こうして二人の絆はいっそう深まりました。
422氏乙!
バルディッシュ好きだけあって愛を感じます
レスTHX!&はやw
>>161 > あと原作のなのはってアニメ版に比べてお馬鹿……と言うかずれてます?
こう、うまく言えませんが、原作版のほうが私にとってはなのはに触れる時間
が長い、といいますか、キャラをつかみ易い分自分好みに仕上がりやすい、って
感じになっています。簡単に言えば原作版より少し正確が誇張してる感じです。
いい意味でも悪い意味でも。
>>162 > ですが先生、何だか混乱してしまいます。 ○| ̄|_
次あたりで2人の明文化、とまではいきませんが、部分的に呼称は区別される
・・・はずです。
あえて今までは時には分け、時にはごっちゃに書くようにもしてますし。
>>163 惜しい!正解は、
フェイト「なのはにあやまれ!!」
なのは 「・・いいよ夢璃しなくても・・・ほんとのことだから」
×無理
先生より:もう少しがんばりましょう。
です。
>>164 I am honored. A master(光栄です)
馬鹿というより、子供らしいんだと思いますね。
原作だと、士郎は事故の際に死んでしまい介護が必要なかったため、
家族がなのはの為に割ける時間がTV版よりも多くなっています。
それに、桃子、恭也、美由希の他に、城島晶、鳳蓮飛という人物が
「家族」として高町家の一員になっています。
そのために、「家族に甘える事が出来たなのは」つまり原作のなのはは
TV版に比べて子供らしい無邪気さが残っているんだと思います。
私見で長々とすみません。
RHもバルデッシュもあの後改造されているなら
問題ないのでは
旧形態への再変形
感想を書くのを忘れました。
>>4の422さん
面白かったです。続きが気になります。
バルディッシュの事であたふたするなのはを見てると、
「ああ、俺の知ってるなのはだ」って安心した気分になりますねw
ただ、一部というか、原作版のなのはとTV版のなのはの差別化が
出来ていない部分があるように見受けられます。
同一人物の環境による性格の変化を書ききるのは大変でしょうが、……まあ、その。
頑張ってください。心中お察しします。
原作からのファンとして応援してます。
修正版第一話〜第七話+短編「リィンフォースの憂鬱」
ttp://up1.skr.jp/src/up8783.zip.html 短編はスレに投下しないので読みたいのであれば落としてください。
強制的に一話から読み直させる作戦です(半分嘘
422氏乙!才能というか単に綺麗な文を書いてないから早いだけなんですが…。
逆に422氏の英語の才能がほしいです。それでは続きを投下します。
魔法少女リリカルなのはA's+
第七話 「不倶戴天」
男二人が黙々と繁華街を歩いていく。その殺伐とした雰囲気に周りの人々は次々と道をあけていった。
「まったく、久しぶりに会うのが君か」
クロノはつまらなそうに言った。
「それはこっちの台詞だよ。ほんと、わざわざ遠出してきてクロノと顔合わせなきゃならないんだから
たまったもんじゃないよ」
ムッとしたユーノが眼鏡をついっと上げながら嫌味たっぷりに言い返した。ミッドチルダの中心地は大いに賑わいを見せ、
超高層建築がそんな二人を覆い隠すようにそびえたっていた。
―――数日前
「出張ですか。でもどこに?」
クロノは少し驚いたように言った。現在アースラは整備中で動けないとはいえ、艦長である自分が行くほどの用事なのだろうか。
疑問に思っていると、提督であるリンディがその疑問に答えるように言った。
「ミッドチルダによ。ある書類を取ってきて欲しいの」
「ある書類…。余程重要なものなのですか」
真剣な表情でクロノが言った。自分にも聞かされていないこととは余程の大事である。
しかし、リンディはあっさりこう返した。
「ううん。全然」
「な!?じゃあなんでわざわざ…」
ズルっとこけそうになるのをなんとかこらえ顔をずいっと前に出すと、リンディがピッと人差し指を立てクロノを静止させた。
「うちに忘れちゃったの」
「うちに…?」
たしかにミッドチルダ出身なのでハラオウン家のうちがあり、たまに家族で過ごすこともある。
この前も休暇で家族で過ごしたばかりだ。
「自分で行ってくれよ!!」
怒るよりも呆れが先にたった。家に忘れものをしたからお使いに行ってくれ?まさにガキの使いである。
リンディは両手を合わせてクロノに頼み込んだ。
「お願い!今私もフェイトも手が離せなくって…。それに家族以外の人に行かせるわけにもいかないでしょう?」
潤んだ瞳でいわれるとなにも言い返せなくなる。確かに今の自分は暇であるし、理由としても十分のように感じるが…。
そう思っていると笑顔でリンディが付け加えた。
「それに、今ミッドチルダにあなたの仲の良いお友達もいるみたいよ?」
「仲の良い…お友達…?」
いぶかしげな表情で母の顔を見たが、一貫して笑顔を崩さなかった。もう引き受けるしかない。クロノは自分に言い聞かせた。
*
ミッドチルダの温暖な気候が無駄な出張による陰鬱とした気分を晴らし、クロノの足取りはいくらか軽くなった。
(前来たばかりだけど、やっぱり悪くないな)
とりあえず自分のうちにあった書類は持って帰るのもめんどうなので転送業者に頼んだし、一件落着である。
ただこれだけのために長距離を移動したかと思うと沸々と怒りがわいてきたがなるべく思考の隅へと追いやった。
「うわっ!!」
周りを懐かしむように歩いていると、ふいに誰かにぶつかった。前が見えないくらいの何冊もの本を持ち歩いていたようで、
辺りに本が散らばった。
「あ、すいません!前がよく見えなくて…」
女性らしい声と栗毛色で長髪の相手がすぐに地面に這いつくばり本を拾い始めた。
「いえ、こっちもよそ見していて…手伝います」
そう言って本を拾うのを手伝おうとした瞬間相手の手と触れ合った。
「「あ……」」
暖かい感触を手に感じ、少し恥らいながらクロノは顔をあげた。
「「あ…あ、あああああぁぁぁぁぁああぁぁあああ!!!!!!!!」」
クロノの小さなロマンスは地獄とかわり、男二人の叫び声があたりにこだました。
そして冒頭に戻る。
「それで、クロノは何しにきたの?」
いつまでも怒っていてもしょうがないと思ったのか、ふぅっとため息をはいてユーノが話題をふってきた。
「に…任務だ。詳しくは言えない」
あまりに致命的な話題にクロノは嫌がらせかと思ったが、よく考えたら普通の疑問であるし、唇を噛んでリンディへの怒りを露にした。
もちろん表情は崩さない。
「それで、君こそなんの用事でここにいるんだ?」
自分のことは極力語りたくなかったのでとりあえずなんでもいいからとオウム返しな質問をした。
「僕は一族のみんなに顔を合わせに行ったり、あと、学院に呼ばれてちょっと講義をしてきたんだ」
ユーノは魔法学院を出ている。時空管理局の司書長ともなるとなかなかの高官だ。名誉生徒に選ばれても不思議はなかった。
「クロノこそ、艦長なのにこんなとこで遊んでていいの?」
ジト目で見られ、とりあえずこれ以上の追求は避けるべきと思い適当に言い訳した。
「今は整備中だしもともと局員は常駐ではないからな。それぞれの任務をこなしているから問題はない。それより…」
少しふんぞりかえってちらりとユーノを横目で見た。
「き、君はなのはとうちの妹、どっちを選ぶつもりなんだ?」
「ぶっ!!!」
ユーノがあからさまに吹きだした。もちろん笑いではなく驚きから来るものだ。
クロノは少しドキドキした。気になることではあったが実はこういう話題を自分から振るのは初めてである。
「なななな何を急に…」
相手のあわてる様子を見てクロノは少し心が落ち着いた。なにか得意な気分になり、責めるようにさらに続けた。
「受験勉強から妹が世話になっているのは知っていたが、たまに遊んだりしているようじゃないか。しかも、君の髪留めは
なのはと同じもののように見えるが?」
笑いをこらえながらユーノに言うと、予想通りの反応が返ってきた。
「あああああ遊ぶって言ってもみんな一緒だし、たしかに二人で遊んだこともあるけど、あ、あれはデートじゃないし、うん」
なにか自分自身に言い訳しているようで見ていて可笑しかった。
(は!?これじゃあエイミィそのものじゃないか!!!)
自分が普段いじられていたが、いざ逆の立場になってみると反動からか異様に面白く感じている自分に気がついた。
(いかんいかん…)
気分を落ち着けるために深呼吸を吐いた。
「それになのははクロノとの方が…」
「ん?なんか言ったか?」
ユーノが何やら言った気がしたが感情の制御で精一杯だったクロノにはまったく届かなかった。
尋問という談笑をしていると、ふいにアースラから通信が入った。
端末を見ると緊急であることがわかり、一瞬にしてクロノは艦長としての顔になった。
「どうしたエイミィ」
なるべく冷静に対応する。ユーノがいぶかしげにこちらを見ているのが目に入った。
「クロノくん!今すぐ指定する座標に向かって!!ジュエルシードが強奪されたの!!!!」
「なに!?」
本当に驚いた。PT事件から数年、12個のジュエルシードは次元管理局で保管・封印されていたが、まさかそれが奪われるとは…。
「それで犯人は?」
被害状況、原因究明と色々聞きたいことはあったがとにかく犯人の足取りが知りたかった。
次元干渉型エネルギー結晶体であるジュエルシードが悪用されれば次元断層も起こすことが可能だ。
ただ、その機能は現在凍結され、たとえ封印が解除されてもしばらくは使えないだろう。
「今なのはちゃんとフェイトちゃん、アルフが向かっててもうすぐ接触する。相手の一度の転移距離が半端じゃなくて
武装局員じゃ追いつけなくて…」
「はやては?」
「はやてちゃんとヴォルケンリッターは別件で任務中で…。終わり次第向かわせる」
「わかった。今すぐ向かう。アースラは緊急発進、敵のいる次元に移動。転移中も戦闘状況を報告してくれ」
「了解!」
ピッと端末を切るとカードを一瞬にして杖にかえ、意識を集中する。
「待って!!」
途中でユーノが呼び止めた。
「なんだ。大体聞こえただろう。緊急事態なんだ」
いらついた表情でユーノの顔を見ると、こちらを力強く見つめていた。
「僕も行く」
ユーノはそう言いながら服を一瞬にしてバリアジャケットにかえた。昔のフォームとは異なり、若干大人っぽいものとなっている。
「…君では…」
言おうとした瞬間強い口調で遮られた。
「ジュエルシードを発掘したのは僕だ。責任は僕にもある」
少し間をおいて真っ直ぐとこちらを見据えて言った。
「足手まといにはならない。絶対に」
ユーノとの付き合いは結構長いが、その時の顔はクロノが見た中で初めてものだった。覚悟と信念を感じさせる、そんな顔だ。
たぶん駄目だといってもくるんだろう。少し自分を落ち着けるためにふぅっと息を吐いて言った。
「わかった。行くぞ」
「ああ!」
そう言うとユーノが手をかざすと地面に緑色の魔法陣が現れ、一瞬にして二人は姿を消した。
*
「スティンガーレイ!!」
高速の光の弾丸が光の槍に当たりその軌道を変えた。
「兄さん!?」
妹であるフェイトがこちらを驚きの表情で見ている。バリアジャケットもボロボロで重症に近いダメージを
受けているように見える。
「ようやく来たか…」
魔導師は口の端をあげて言った。
「なに?」
クロノが言った瞬間魔導師がなにやら呪文を唱え片手を天にかざした。
魔導師を中心に魔力が広がっていく。
通常の半球状の結界とは違い、なにやら空間自体に魔力を感じる。明るさも普段と変わりなく眩しい光が上空の三つの光源から
依然放たれている。強力な結界であることはすぐにわかった。
「…なんのつもりだ?」
その隙にクロノがフェイトのバインドを解きながら尋ねると、魔導師があげていた腕をゆっくりとおろしながら答えた。
「4人では逃げられる可能性があるからな。念のためだ」
「大した自信だな。まだ勝つ気でいるのか?」
相手の口ぶりに怒りがわいたが、そこは冷静に抑えた。怒りは思考を鈍らせる。
「お前、何者だ?」
「…………」
目の前の魔導師は無口にただこちらを見下ろしてくる。
エイミィからの報告どおり、少し長めの黒い髪と黒い瞳。自分と同様一見するとなのはの世界の日本人のようにも見える。
ただ、その鋭い瞳からは確かな殺気が感じられた。今までの任務でこれほど死を感じる現場があっただろうか。
デバイスは持っておらず、戦闘状況を聞く限り相手は結界魔導師だ。それも超一流の。
途中でアースラの監視モニターがジャミングされたが相手が強く時空管理局局員に私怨を抱いていることがわかった。
今まさに妹を殺そうとしていたのだから。
「増援を待っていたのか?」
先ほどの口ぶりと、さっさと他次元へ移動しない様子を見て聞いた。
「…………」
やはり何も言わない。どうやらかなり慎重なタイプのようだ。言葉を選び、状況を見ている。
「答えろ!!!」
少し強く問いただすと、魔導師はつまらなそうに違う方向を見ていった。
「いいのか。あっちは」
その視線の先を見ると、ユーノが手の平から血を流しているのが見えた。どうやら光の槍を正面からうけとめ
シールドを少し貫通したらしい。バインドを解かれたなのはがそばに寄り添っているのが見えた。
(足手まといにならないって言ったくせに…)
と思ったが、同時にしょうがないことだとも理解していた。あの高密度の魔力攻撃はこっちだって軌道を変えるのが
精一杯だったし、なによりユーノはこの4年間戦闘にほとんど参加していない。
「いくぞ、フェイト!」
「うん!」
魔導師を避けるように二人の元に飛んでいった。その様子を魔導師は無言で見つめていた。
*
「妙なる響き、光となれ、癒しの円のその内に、鋼の守りを与えたまえ」
ユーノが使える高位結界魔法、ラウンドガーダー・エクステンド。
防御と肉体・魔力の回復を同時に行う結界がなのはを包み込んだ。
「そんなことより、ユーノくん、手!!」
なのはが自分の肩を抑えながら叫んだ。
「あ、うん。適当に包帯まいとくから大丈夫。それよりなのはのほうが重症だよ」
相手との相性が悪すぎた。当たらない攻撃、超近接戦闘型、シールド展開より速い攻撃となのはの長所がことごとく
つぶされている。フェイトより攻撃が集中しているのは頷ける。
(あいつ…ほんとになのはのことを…)
怒りで歯をくいしばった。自然に手にも力が入り血が吹き出る。
(だけど…)
転移の途中でエイミィから聞いたが、相手の強さは圧倒的だ。なにやらこの次元に仕掛けをほどこしてるようだが、
管理局でもトップクラスの実力を持つなのはとフェイトが二人がかりでもまるで歯が立たない。
おそらくクロノと自分が加わっても同じだろう。
相手の鉄壁の防御と完璧な回避能力、そして奇襲。どれをとってもこっちが不利だ。
「ユーノくん…」
なのはが不安そうにこちらを見ている。遠くからフェイトとクロノが飛んでくるのが見えた。
どうやら魔導師はまだこちらに向かってきてはいないらしい。
(みんな殺されるか…………いや、方法はある。一つだけ)
いくつかの方法は考えたが、確実なのはどうやらもう一つしか残っていないようだ。
できれば使いたくないが、逃げられないならどうしようもない。ユーノは覚悟を決めたように血の吹き出る手を見つめた。
「いい方法がある。みんな聞いて」
4人が集まり、ユーノの作戦に耳を傾けた。最初で最後のその作戦に。
次回へ続く
魔導師の圧倒的な強さになすすべのない少年と少女達。
それを打破するユーノの作戦とは…。
次回 第八話 「最弱の結界魔導師」
次回が書きたいがために十四話も書いたと言っても過言ではありません。
魔導師の強さですが、瞬間移動しまくるゴクウみたいなやつと言えばわかると思います。
エネルギー弾は撃てませんが。ヨガテレポートをするザンギエフか?
ま、とにかく強いんです。それでは。
>4の422氏
気になる所で話が終わってますな…
続きが非常に気になる!
>>396氏
修正版+短編に第7話の投下、乙!
ところでこのスレには保管庫というものがある事をご存知か?
>>179 攻撃が当たらないってのは攻撃力が低いのを補って有り余る能力ですからね。
ある種最強ですね。
ヤバイ、続きが凄く気になる。
タイトル的にもユーノが主役っぽいし、どんな展開が待っているのか今から楽しみです。
まぁ、一定空間内の全てを殲滅するブラストカラミティを使うとか
歴戦の勇士であるヴァルケンリッターを率いる広域攻撃Sランク蒐集行使能力付きのはやてがいると
対処法は色々と出てくると思いますけど。
>>170 396氏の短編「リィンフォースの憂鬱」すごく読みたいです。
しかしエラーで落とせません。はあはあリインたん!!
>ヨガテレポートをするザンギエフか?
想像するだけで嫌になるキャラだな……('A`)
一応第6話完成。それにしても皆さん書くのはやいなあ……
正直このペースでも結構無理がある私って一体……orz
微妙に手直ししておきたい気もしますが、明日は私用で一日家を空けるので今のうちにあげておきます。ペース遅くてすみません。
西日が辺りを赤く染める世界と時間帯、なのはは自宅への道のりを足取りも軽く歩いていた。
久しぶりに全力で魔力を放出した脱力感が、心地よく身体を浸食していた。
今日はいい日だったと、弾む心で笑う。
休日を利用して八神家に遊びに行った際に、ザフィーラがいたのはなのはにとって幸運だった。
彼女に頼み込んだおかげで、久しぶりに全力全開で魔法の実射訓練を行うことが出来たのだから。
レイジングハートによるイメージファイトもやりがいがあるが、やはり魔法の実践使用とはまた違う。
なのはの全力全開を耐えうるだけの結界など張れる魔導師の数が少ないだけあって、久々の全力全開の実射は格別だった。
「そういえば、ユーノ君はどうしてるかなあ……?」
そこから連想して、闇の書事件が始まる前はいつも訓練のサポートにまわってくれたパートナーのことを思い出した。
ユーノも結界魔導師としての実力は誰に劣ることもないほどの優秀さを誇る。
彼がいてくれたなら周囲のことを考えずに全力砲撃することもできるのだが、そういうわけにもいかない。
ユーノは今無限図書の司書として忙しなく仕事に励んでいるのだ。ないものねだりして迷惑をかけるなんてもってのほかだ。
そういえば、フェイトは今日執務官試験の関係で本局に行っているはずだ。
時間があればユーノとも会ってくると昨日話をしていたけれど、ちゃんと会えただろうか。
そんなことを考えながら歩いていると、自宅の前に見慣れた人影があった。
小指の先ほどの大きさにしか見えない距離だが、それが誰だかはすぐに分かった。
背中にかかるほどの長い金の髪を二つに結い上げた小柄な少女。かけがえのない親友を、なのはが見間違えるはずがない。
本局からこの世界まではどんなに早くても1時間ほどはかかる。時間帯を考えれば、おそらく帰ってきた直後に寄ってくれたのだろう。
そうして近くにいてくれるフェイトの存在が、なのはにはとても嬉しい。
だから、その気持ちをそのまま声に出して、駆け寄っていった。
「フェイトちゃーーーん!!」
その時、なのはは本当に嬉しくて、幸せで。フェイトのことで頭がいっぱいだったから。
ユーノのことは、頭からきれいさっぱり消えていた。
◆
――いったい、どうすればいいんだろう。
フェイトはなのはの家の前で、何も出来ずにただじっと、なのはの部屋を見上げていた。
誰よりも大切な親友の部屋までは、10メートルもない。けれど、その10メートルが、今のフェイトにはあまりに遠かった。
ユーノと別れてからたまらない衝動に突き動かされてここまできてしまったけれど、そこから一歩も動けない自分がいた。
なのはに会ってどうしようというのだろう。
なのはにユーノの気持ちを伝えて、それに応えてあげるように言えばいいとでもいうのだろうか。
それで本当に、2人が幸せになれるとでも言うのだろうか。
二人が好きだという想いはある。幸せになってほしいという願いもある。
けれど、そのためにはどうすればいいのか、“正解”が分からない。
恐れがあるから前に進めない。願いがあるから背を向けられない。
自分に出来るのは、ただただ立ち尽くすことだけで。
ああそうか、とフェイトは理解した。
今自分の胸に宿るこの思いこそが、ユーノの抱える痛みのその根源なのだ。
たまらずに、両手で胸を押さえた。身体の中でどくどくと熱い何かが身体を傷つけていく。固く目を瞑ってそれに耐える。
そんな時だったから。
「フェイトちゃーーーん!!」
満面に喜色をうかべて駆け寄ってきてくれるなのはの声が、胸に痛かった。
6.やさしさのやいば
「はい、紅茶。熱いから気をつけてね」
「……ありがとう」
フェイトは言葉少なく例を述べると、なのはの部屋のベッドに腰掛けたまま、少しずつ紅茶に口をつけた。
二人でお茶。そんないつもの光景なのに、油の切れた人形のようなぎこちない空気が流れているのを、二人は嫌というほど感じていた。
特に、なのはの困惑は深い。
つい先ほどまでの高揚感もすっかり消えて、胸の中で渦巻くのはフェイトへの心配と不安。
つい昨日までは、ただ隣にお互いがいるだけで幸せだったのに。
その落差が、なのはの困惑を深めていた。
どうしようか。事情を聞くべきだろうか。
けれど、それが自分が触れていいことなのかどうかが分からない。大切な友人だからこそ、触れることに躊躇ってしまう。
それでも。
(……やっぱり、事情を聞こう)
それがどんなことであろうと、高町なのははフェイトの力になりたい。
なのはがかつて選んだその決意を、翻した覚えなどないのだから。
「……ねえ、なのは」
事情を聞こうとなのはが口を開こうとした瞬間、フェイトはポツリと呟いた。
機先を制されて、出そうとした言葉は喉で止まったまま消える。
「……なのはは最近、ユーノと会ってる?」
「え?」
――どうして、そんなことを聞くんだろう。
最初に思ったのはそんな疑問だった。
だけど、それが悲壮なくらいに真剣な声だったから、意図は分からなくても誠実に答えるべきだと理解していた。
少し首を傾げて記憶をたどる。考えてみれば、ユーノとはここしばらく会っていなかった。
その記憶を引き出すのには、若干の間が必要だった。
「……最近は会ってないかな。ユーノ君、無限書庫のお仕事忙しいみたいだから」
「寂しく、ない……?」
なのはは、その声に込められた祈りに気づくことは出来なかった。
それは悲壮で、真剣で。けれど何よりもまず、縋りつくような声音だったことに、なのはは気づけなかったのだ。
なのはははにかんだ。
「なのは……」
フェイトはそれを見てしまった。嘘偽りのない、彼女の本音を。
それは、穢れない親愛の証。無垢な心。純粋な友情。
ユーノのそれとはけして交わることのない想い。
たしかに、まったく寂しくないといえば嘘になる。
「けど、ユーノ君も今一生懸命頑張ってるんだから、私も頑張らなきゃって思うから」
だから、離れていてもしっかりしようと思うのだ。大切な友人と再会したときに、誇れる自分でありたいから。
「そっ、か……」
「今度は私から聞かせて。フェイトちゃん……何があったの?」
覗き込むようにして尋ねると、フェイトはその視線から逃れるように俯いた。
二人の視線の間には彼女の金の髪がカーテンとしてかかる。
それが二人の間に空けられた溝のようで、ひどく悲しかった。
「フェイトちゃんが悲しいのは、嫌だよ」
紛れもない本音を呟いて、なのはは顔を寄せる。きれいな髪を掻き分けて、二人の額が触れ合った。
ゆっくりと瞳を閉じる。触れ合った肌と肌を通して、お互いの熱を感じる。
その温かさを通じて、フェイトの悲しみを分かち合えたらいい。そう思った。
「だから、教えて。私はフェイトちゃんの力になりたいの。ひとりで悲しむのは、駄目だよ」
その言葉は温かかった。
本当に、温かかった。
温かかった、から。
「……ぅ」
こつりと、痛みを感じる。
こつり、こつりと、触れ合ってはまた離れる。
「……ぅ、ぅう……」
「フェイト、ちゃん……?」
フェイトは、震えていた。震えて、泣いていた。
のど元からわき上がってくる感情にこらえきれずにしゃくりあげる。
なのははそれを、黙って抱きしめた。かつて母がそうしてくれたように、包み込むように、優しく。
フェイトがますます泣き声を強くしても、何も言わずに、ただずっと。
ここにいるよと、伝えるように。
フェイトはしばらくの間、なのはの胸元で泣き続けた。
けれどけっして、フェイトがなのはにすがりつくことは、なかった。
それから、どれくらい経ったかは分からない。
フェイトはその間中ずっと泣いていた。身体中の水分すべてを、身体中の悲しみすべてを出し切るかのように、ただひたすらに泣いた。
泣いて、泣いて、泣き声をあげ続けて。
喉がからからになってしわがれた声しか出ないころになって、ようやく涙は出尽くした。
それでも悲しみは止まらなかった。
どうすればいいんだろう。その答えは、まだ出なかった。
それは、時間だけが解決できる問題なのかもしれない。考えたところで、答えなんて出ないのかもしれない。
「……あのね、なのは」
そうかもしれない。どうしようもないのかもしれない。
世界はいつだってこんなはずじゃなかったことばっかりで、いつもいつでも、うまくいかないことの方がたくさんあって。
「なのはに、伝えたいことがあるんだ」
でも、みんなその世界で生きてる。頑張ってる。
だから、まだ、諦めたくない。
何も出来ないかもしれないけど、そんな資格なんてないのかもしれないけど。
それでも、二人の幸せを願いたいんだ。二人に、幸せになってほしいんだ。
その想いだけは、諦められないんだ。
「これから言う事、忘れないで」
だから、頑張ろう。
今私に出来ること、今私に伝えられること。そのすべてを、なのはに伝えよう。
「どんなに近くても、どんなに想っても、届かない場所は、たしかにあるんだ。
そうなる前に呼ばないと、きっと届かなくなってしまうんだ」
いつかきっと、二人の関係が変わる時は訪れる。
その結末がどうであろうとも、なのはには決して後悔だけはしてほしくなかった。
なのはのユーノへの想いはまだ「特別」じゃないのかもしれないけど、その時になのは自身がその感情が「特別」なのだと気づいていなかったら、きっと後悔するはずだから。
あえて、なのはの想いが「特別」じゃないことは、考えなかった。
否。考えられなかった。
「なのはが決めたことなら、どんなことでも、どんな時でも私はなのはの力になるから。
だから、『その時』になったら、迷わないで。躊躇わないで」
「フェイト、ちゃん……」
なのはは目をぱちくりとさせた。
まだ分からないならそれでいい。この言葉が役に立たなかったとしても、構わない。
ただ、今言える言葉を言わないで、2人が悲しむことになるのだけは、絶対に嫌だから。
「それが、今私が言える、精一杯のこと」
泣きはらした赤い目に強い強い願いと意思をたたえて、フェイトはそう告げた。
その後、フェイトは洗面所を借りて泣き腫らした顔をよく洗うと、送っていくというなのはの言葉を丁重に断って家を後にした。
残されたなのははただ困惑するばかりだ。
「フェイトちゃん、どうしたんだろう……」
結局、泣いている理由は何も話してくれなかった。
自分ひとりで抱え込んでいるのだろうか、自分は話すに値しないと思われたのだろか。そんな訳はない。なのはとフェイトはかけがえのない親友で、お互いのことを誰よりも思い合っているのだから。
ならきっと、フェイトの抱えているものは、自分には言えないことなのだ。大切に思うから言えないことは、誰にだってある。多分、気づいていないだけでなのは自身にもフェイトに言えないことはきっとある。
それを無理に聞き出すことはできない。フェイトが隠し事をするなんて、それ相応の理由があるに違いないのだから。
フェイトが最後に残した言葉が頭に何度も反響する。
一体、フェイトは何が言いたかったのか。なのはにはまだ分からない。
彼女の胸元で、レイジングハートが小さく光る。
『I don't know,too. But, I think I can understand what she said.』
(私にも分かりません。ですが、彼女の言いたいことは、分かるような気がします)
「レイジングハート、どういうこと?」
一呼吸をおくようにして、胸元の赤い宝石は答えた。なのはにとって衝撃的な一言で。
『I deserted once master,Yuno.』
(私はかつての主、ユーノを見捨てました)
「レイジングハート、それは……!」
とっさに口を入り込ませる。
なのはもユーノも、レイジングハートをそういう風に見たことなど一度もない。
それに構わずに、なのはのパートナーは言葉を続けた。
『I elected not him but you my master. ....Do you blame me?』
(私はあなたをマスターとして選びました。彼ではなく、あなたを。……私を薄情だと責めますか?)
「そんな訳ない! 責めるわけないよ……!」
『Thank you, my master.』
合成音による人工言語。けれど、彼女が笑っているのだということを、なのはは理解していた。
それだけの絆を育む時間を、二人は過ごしているのだ。
穏やかな声で、レイジングハートは自らの思いを語る。同じ道をたどろうとしている人間に、先達から伝える言葉。
『At time,a choice hurt someone.nevertheless,the occation that ask everyone to select will call on.』
(何かを選ぶということは、時に何かを傷つけます。それでも、選択を求められる機会は誰の元にも訪れます)
「レイジングハート……?」
それをまだ、なのはは理解できない。
けれど、その時がきたならきっと、役に立つ。力になる。そんな言葉。
『One of these days, I think a occasion will come to you. It may be sudden and unfair,in addition to that you don't know yourselfs will and result the select bring about.
(いずれあなたにもその時は訪れるでしょう。それは唐突で、理不尽で、自分の意思もその結果も分からないこともあるかもしれません)
And yet, don't hesitate to dicide,please. I selected not him but you. and she started new herself.
(それでも、躊躇わないでください。私があなたを選んだように。彼女が最愛の母との関係を終わらせたように)
In the same way, you can decide yourselfs future no matter who say. Don't forget,please.』
(誰が何と言おうと、あなたの行く道はあなたが決めていいのです。その事を、どうか忘れないで)
それは神々しい託宣に似ていた。
レイジングハートの静かな語りは、なのはの記憶の中に不思議な響きを持って染み渡っていく。
やはりまだ、その意味は分からない。けれど、フェイトもレイジングハートも、大切なことを伝えようとしていることだけは分かる。
その真摯さに、なのはは自然とうなずいていた。
そうすることが一番なのだと、自然と理解していた。
そして二人のこの言葉は、後のなのはの選択の、大きな指針となる。
一応ここまででちょうど折り返しになります。
大体のネタ振りは終わったので、あとは多分皆さんの予想通りの展開になるかと。……伏線をうまく張れるだけの力があればなあorz
ただ、来週はサークルのレポートやらなぜかある春休みの課題やらで色々と忙しくなりそうなので、少々書くのが遅れるかもしれません。
拙作を楽しみにしてくださる方には非常に申し訳ありません。
あ、あと一応タイトル決めました。「カルマ」にしておきます。
それにしてもここは相変わらず職人さんたちがすごいなあ……みなさんGJです。
>>549氏
保管庫更新お疲れ様です。えと、見てから気づいたんですが、私のは2話目にタイトルがついてませんでしたね(汗
よろしければ、「2.つたえたいことば」でお願いしてもよろしいでしょうか。
というか、疲れた&眠い……明日は早いのでもう少ししたら寝ます……では。 ノシ
リアルで遭遇したー!!
>>430氏GJ−!!
>>153氏
そうですね。砕かれし〜の最終話になります。
サブタイの前にいれておいたほうがよかったですね。すいません。
>>4の422氏
地味にユーノがなのはに振り回されてますね。
フェイトは年上のクロノと同い年のクロノ、どっちになつくんでしょう。
>>396 あ な た の 執 筆 速 度 を 俺 に 下 さ い
・・・・いやほんと、うらやましすぎるその神速orz
第八話となのフェス用原稿がどちらもかなり行き詰ってる件について。
原稿のほうは1本書き終わったんだけど二本目が・・・・orz
第八話は遅くとも月曜には投下できるようには、なんとか。
・・・ってあんまり投下しまくっても
>>549氏の負担になるのかorz
毎度毎度ご苦労様です
>>549氏
……訂正させてください。
初めから数えて5行目、
×彼女に頼み込んだおかげで、久しぶりに全力全開で魔法の実射訓練を行うことが出来たのだから。
「彼女」ではなく「彼」です。ザフィーラが女な訳ないだろ……orz
凹みつつ640氏に感想の御礼申し上げます。
それでは。
>>430氏
乙&GJ!
なのはの鈍感さはもはや犯罪ですなw
最後らへんのレイハの台詞(特に英語版)書くの大変だったんじゃ…スゴス(゚д゚)
>>430氏GJ!
一瞬なのは→フェイトなのかと思って焦りました。
さらに「なんかこれホントのホントに"特別じゃない"って可能性もなくね?」
と今も焦っています。
これでメートちゃんや、レーゲン、フィーゲルの目的とかが絡んできたら
どうなってしまうんでしょう。
レーゲン&フィーゲル→メート→ユーノ→なのは→フェイト?(間違いだらけ)
ど う な っ て し ま う ん で し ょ う
>>182 まあいずれ保管庫にのるでしょうからしばし我慢を。
というか駄文ですから期待はしないほうが…。
>>191 乙!個人的にお気に入りのフェイトが可愛くてしょうがないです。
>>192 投下ペースは自分も悩みます。
近頃ハードディスクが変な音を発しているので早く投下してしまいたいのが本音です。
バックアップはとってますが。549氏は気にせずゆっくり保管の方よろしくお願いします。
198 :
167:2006/03/04(土) 03:10:47 ID:aSDlRh1T
>>184 確かに、言われてみればそうですね。目から鱗が落ちた気分です。
しかし、アニメ版で晶とレンがいれば、また違ったのかもしれないですね
これ以上はスレ違い気味なのでやめときます。
アリサ並に英語力ありますね。
200 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/04(土) 17:40:55 ID:y1D5IXC9
フェイトを鎖で吊るして細めのドリルで腕や足に穴を開けたい
ユーノがなのはやフェイトにもたれかかって安らかに眠るSSきぼんぬ
永眠?
>>200 俺は開けるのなら元から穴のある場所に
自分の肉のドリルで穴を開ける方がいいな
あのドリル画像って続きないかな
某所で言われて気付いたんだけど、今までの3枚の画像
あれってそれぞれ関連性がないように思えるけど
ひょっとしたら、ここにUPしてくれた人が気付かなかっただけで
本当は間々に入るページがあったのかもしれないね
間のページはないようです。
いろいろと試しながら書いているような趣旨の事を、書いた人が掲示板でコメントしていました。
ドリル画像てなに?
205 :
YUKI :2006/03/05(日) 21:09:09 ID:0Q5l+05O
皆様お疲れ様です。
たくさんの素晴らしい作品に感服いたしました。
帰国して最初の休日でしたが、皆様の素晴らしい作品のおかげで疲れもとれました。
私の方はまだ続きが書けてません。
御免なさい。
保管庫、前スレ分まで更新しました。
みんな、GJなお話ばかりだよ〜!
あと、修正とかは基本的に依頼があったレスまできたら処理してます。
なので422氏のも6スレを処理する時に入れ替えます。
>>549氏
いつもお疲れ様ですー。
修正依頼があったレスにきたら処理ってのは、
間違いにくくて良い手ですな。
209 :
176:2006/03/06(月) 15:51:12 ID:DZrE1S8T
遡ること二日前
――無限書庫司書長ユーノ・スクライア。
今や彼の肩書きは時空管理局内では知る人ぞ知る人物となっていた。
『知らんことはスクライアに』が合言葉となり誰もが未知の文献や埋もれた知識の探求を彼に依頼する。
尊敬される司書として、また最高の歩く辞書として彼の人気は高まる一方である。噂の程ではファンクラブさえ作られている話まである。
「たまには外に出たいなぁ」
上下左右、視界全てに本が敷き詰められた空間の只中でユーノは一人、かぼそいため息を吐いた。
宛がわれた寮には戻っていない。どうせここと行き来するだけなら初めからここで寝泊りした方がいいだろうという彼なりの結論だった。
そうしてもう一週間ここにいる。
「まず自分で調べてくれ、頼むからさ……」
あちこちに浮かんでいる依頼書や書類の山を斜に見つつ頭を抱えた。
便利なものができればそりゃ使いたくなるのが人の心理というものだろう。それは仕方がない。
只中にいる人間の苦労が分からないのも仕方がない。
だがせめて、できそうなことは自分で全部やれ。
「うぇ……」
もう言葉にすらならない悲鳴が虚しく書庫に響いていた。
「外に出たい……お日様見たい……おいしいものが食べたい……」
口からぼそり、ぼそりと出てくるものは真っ白な雪のようにどこまでも素直な言葉。
うっすらと熊の浮かんだ目元に櫛を忘れたボサボサの髪、そして据わった目。もう以前のユーノの面影を追い求めることはできなかった。
「ゆっくり寝たい……遺跡探したい……発掘したい……外に出たい……」
繰り返す呪詛は彼に仕事を進めたあのチビ執務官へ。
別に彼に責任はない。ただ手近な相手だったからだけである。理不尽ではあるがもう精神的に危険領域を跳び越しているユーノに善悪の判断をつけることは
「ふ、ふふぇ……はは」
――無理。
210 :
176:2006/03/06(月) 15:52:14 ID:DZrE1S8T
そもそも期限を延ばさせて余裕を作ればよかったのだろう。だがジュエルシードの時も責任を感じ独りで回収しようとした真面目一徹である。
そうでなければ今だってユーノはユーノであっただろう。
「ははははは…………仕事しなきゃ」
スイッチしたように顔つきが変った。遠くを見つめていた眼は手元の依頼書に、両手からは光鎖が該当した資料を書庫から引っ張り出していく。
「さてと……ふぅ、不明言語の解読なんてこりゃまた厄介なものを持ってきたな」
どうやら先ほどまで変貌は彼が編み出した一つのストレス解消法だったらしい。完全に彼が壊れていなかったことは何よりである。
「え〜と……この文字は――」
真剣な眼差しを送っても早々答えは出ては来ない。懐に漂うのはいつか見た闇の書と変わらない大きさの魔導書。
だが何があったのか魔導書の半分がごっそりなくなっていて裏からはページが丸見えになっている。本来はこの二倍は厚みがあったのだろうが今では見る影もない。
「……なんだミッドでも地球言語でもないし、ベルカにしては統一性がないし」
それもある意味書物の神秘性を増すだけの装飾でしかないのだろう。少なくともユーノにとっては。
そして面倒な解読作業をもくもくと、休憩も挟まず進められるのは遺跡発掘を生業にするスクライア一族の性がなせる業なのだろう。
「…………待てよこれなら……ああ違う……これで……うん」
「ゆ〜のくん!」
「っうわぁ!?」
肩に触れた感触に思わず体を跳ね飛ばすユーノ。少しだけびっくりさせようと思った彼女は思ったよりも酷い反応に逆に驚いた。
「ど、どどうしたのユーノくん!?」
「だだ、だって僕しかいないのに誰かが……ってなのはかぁ」
「そうだよ、なのはだよ」
思わぬ反撃に口をへの字にするな彼女にユーノは安堵の笑みを浮かべた。若干引きつりが残ってはいるが。
「わたしが入ってきたのに気づかないなんて仕事頑張ってるんだね」
「うん、引き受けた仕事だからね。ちゃんとやらないと」
言って手にしたのは不釣合いな厚みの本。彼の顔ほどもあるそれはミッドでもベルカでもない別世界の言語辞書。
「今は何やってるの?」
「ん? 未知の文献の解読」
解読途中の魔導書の一ページを彼女に見せる。基本言語が日本語のなのはにとってその珍妙な文字とも図形とも取れる羅列は顔をしかめさせるぐらいにしかならなかった。
「すごいね、これ。わたしにはなんのことやら」
「普通はみんなそうだよ」
211 :
176:2006/03/06(月) 15:52:54 ID:DZrE1S8T
苦笑するユーノには当然のことながらこれは興味をそそる宝。好奇心が何事にも勝ってしまっているのだ。
遺跡発掘が生業ならではの職業病である。
「でも珍しいねなのはが来るなんて」
「うん、管理局の研修がちょうど本局だったから。でもほんとすごいんだよ、管理局の人って――」
顔を輝かせながらなのははちょうど今やってきた研修の内容を話し始める。
デバイスもなしでディバインバスター級の砲撃をこなす教官のことや。
自分より歳下のはずなのに二桁の数の誘導弾をやすやすと制御する魔導師。
その他並み居る実力者達の悲喜こもごもなどなど。
「『井の中の蛙大海を知らず』って言葉が胸に沁みそうだね」
「すごく沁みるよ」
相当大変なものだったのだろう。そういえばなのはが研修に行ってるメビウス中隊は管理局でもトップクラスの実力者しか入隊を許されないスペシャリスト集団のはず。
そこに研修に行ってる時点でなのはも相当な実力者のはずだというのに。
「はぁ……管理局って疲れるね」
――苦労してるんだ。
自分もそうだが蓋を開けて理想とのギャップに悩むのはいわゆる大人の世界なのだろう。
「お互い辛いけど頑張ろう、なのは」
「うん、ユーノくんが言ってくれるとほんとに頑張れる気がするよ」
「光栄だよ」
自分もなのはの笑顔に元気が沸いてくる。
「そうだ! また明日も来ていいかな?」
「えっ? うん、管理局の方はいいの?」
「明日からしばらく本局だからね」
「そっか、ならいつでも歓迎だよ。どうせ僕しかいないんだし」
依頼もほとんどが電子端末ずてで人なんて一日に一人来ればいい方。部外者入れたところで司書長は自分なのだからお咎めもない。
それに想い人のお願いなら聞かないわけにはいかないだろう。毎日でも大歓迎だ。
212 :
176:2006/03/06(月) 15:53:56 ID:DZrE1S8T
「あはは、よかった。じゃあこれからしばらくお世話になろうかな」
「学校とか家はいいの?」
「今は夏休みだからね」
偶然の神様ありがとう。これでしばらくはストレス解消をしなくてすみそうだ。
「ねぇ、ユーノくん。解読作業って難しいの?」
「そうだね……慣れないうちは難しいと思う」
「そうなんだ。ちょっとやってみていい?」
「難しいよ」
「覚悟の上!」
退屈しのぎか手伝いたいのか、とにかくなのははユーノの作業に興味津々と言った様子。
別に取り返しのつかない作業でもないし、それに知識も思い込みもない素人がやった方が思わぬ結果を呼び寄せることもある。
「いいよ、じゃあ辞書とかここにある。僕は新しい資料取りに上いくから」
手元の辞書の限界もあって断る理由は皆無。最低限の指示をしてユーノは今までいた自分の特等席――と言っても書庫のど真ん中だけでイスも何もないが――になのはを招待した。
「それじゃあ高町なのは研修生張り切って頑張ります!」
「うん」
目指すは一番上の本棚。チェーンバインドすら届かない超遠方だ。しばらくはこのお手伝いさんに頑張ってもらえるだろう。
しかし数分後、ユーノは自分の軽率な行動に激しく後悔することになった。
同時にそれは彼が長らく忘れていた冒険家としての心を蘇らすきっかけであり。
彼と彼女とその他もろもろの愉快な仲間を引き連れた冒険の始まりの序章となった。
インジュー・ジョーンズ 最後の晴天
発掘初日 きっかけは高町なのは
213 :
176:2006/03/06(月) 15:54:47 ID:DZrE1S8T
タイトルは適当です
短めに終わらせられると思いますがどうなることやら
内容はギャグよりですね。後は書きながら考えます(オイ
>>640氏
泣く子も黙る鬼教官がついに降臨
次もワクテカでお待ちしております
>>422氏
バルディッシュがいつになく流暢におしゃべり
レイジングハート(アニメ)はどんな反応をするんでしょう
>>396氏
緊迫感迫る戦闘でユーノがどんな活躍をするのか
ヨガテレポートなザンギエフって……怖っ
>>430氏
お疲れ様です
何処まで鈍感なんですかこの人は
次が楽しみです
>>549氏
お疲れさんです
無理はなさらずこれからもよろしくお願いしますね
214 :
聖:2006/03/06(月) 20:48:47 ID:HiXta/BC
自慰
自分でも理解しているつもりだった。こんな事はいけないと、頭の隅に追いやられている理性が言っているのも分かる。
それでも、フェイトは我慢出来なかった。
自室に飛び込み、勢い良く鍵を閉める。軽い金属音が室内に響いた。
酷く後ろめたい気分になる。それはそうだ。彼の――一緒に住んでいるクロノ・ハラオウンのアンダーウェアとなっている
タンクトップを洗濯物の中から強奪して来たのだから。
荒い動悸。喉は乾き、水分を欲している。頭の中は真っ白になっていて、巧く思考が動かない。
そんな中で、フェイトは覚束ない脚でベッドに向かう。腰掛けて、胸に大切に抱えていた衣服に視線を移した。
汗と彼の匂いが染み込んだタンクトップ。洗濯物を入れておく籠の一番下で潰されていただけはあり、随分とくたびれた
様子だった。
そのせいなのか、匂いも一入だ。
「………」
フェイトは無言のまま、無意識にタンクトップに顔を近づ、匂いを嗅ぐ。
それなりにきつい汗と、持ち主であるクロノの匂いが鼻腔をくすぐった。普通の人間ならばすぐに洗濯しようとするだろう
が、フェイトは違う。彼女にとって、その匂いは激しい邪欲を駆り立てて余りある物であり、如何なる華よりも香しい匂いな
のだ。
頭の隅の小さな理性が、匂いを一回嗅ぐ度に緩慢な速度で解けて行く。濃霧の向こう側に飛んでしまっている思考が
完璧に停止した。
本能が少女の小さな身体を支配する。脚の小指の末端から、五感、思考、そして邪欲までもを。
タンクトップを顔に押し付けたまま、フェイトはベッドに寝転ぶ。スプリングが軋み、サイドボード上に置かれたいくつか
のぬいぐるみが軽く揺れた。
「くろの……」
甘い甘い言葉が漏れる。本能に従って、フェイトは想像する。
自分を優しく抱き締めてくれる彼を。
耳元で甘い言葉を囁いてくれる彼を。
髪を撫で、首筋に激しいキスを繰り返す彼を。
楽しむように服を一着ずつ脱がせてくれる彼を。
想像が過激になればなるほど、現実に彼にそうしてもらいたいと思えば思うほど、フェイトの身体は熱くなって行く。製
鉄所の溶鉱炉のように。
タンクトップを力いっぱい抱き締めて、顔を埋める。
籠もる熱。身体の内から溢れ出る熱は、徐々に少女の下半身に集中して行く。
指が動いた。片手でタンクトップを抱え、スカートの上から股の間を擦る。
ぬめりとした感覚。何も考えられない頭の中を、電気のようなものが走った。
「くろの……くろのぉ……」
切なげな呟きが小さな口からこぼれた。愛しくて愛しくて堪らない彼の名前を静かに連呼しながら、フェイトはベッドの
上で身を捩った。
スカートの上から股を擦っている指がその速度を増す。電気が何度も頭の中を駆け巡り、一度擦る度に快感が身体を
蝕んで行く。
動悸がさらに酷くなった。荒い呼吸を細い肩で繰り返して、指の動きを激しくして行く。スカートの生地がもどかしくなっ
て来た。こんな淫らで変態的な行為に耽っているので、羞恥心はすでに忘却の彼方である。フェイトは荒々しくスカート
をめくると、シンプルな白いショーツの上から秘部に指を這わせた。
スカートの上からでは分からなかったが、ショーツの秘所はすでに湿り気を帯びていた。そこを擦る度に、先程までとは
桁違いの甘く、淫らな快感が少女を蝕んで行く。
「あああ……」
215 :
聖:2006/03/06(月) 20:49:51 ID:HiXta/BC
想像の中で、フェイトは幾度と無くクロノに抱かれ、果てた。時には優しく、時には激しく、何度も何度も彼はフェイトを
犯す。蹂躙する。
室内に静で卑猥な水の音がするようになるまで、時間は必要無かった。
下着の上からでもすでにもどかしくなった。痒い所に手が届かない感覚。フェイトは何の躊躇もせず、ショーツの間か
ら指を中へ滑り込ませた。湿っていた指が潤滑油のように肌の上を滑り、秘裂に到達する。
くちゅ、という音がした。指先に堅い何かが当たる。小さな小さな感触。フェイトは本能的にそれを指で挟み、剥き、
挟む。
「はぁぁッ……」
嬌声。感じた事の無い快感が頭を貫き、身体を震わせる。
フェイトは酸素を求める金魚のように口を開け閉めして、彼のタンクトップに顔を押し付ける。今、想像の中のフェイト
は、クロノの下半身のそれを貪っていた。
鉄の棒でも入っているような堅い堅いそれを唾液で濡らし、キスをして、しゃぶり付く。唾を垂らして、だらしなく口に
咥える。そうする度に、彼は何かに耐えるように呻き声を漏らし、フェイトの髪を撫でる。そうされるのがたまらなく嬉しく
て、フェイトは行為に没頭した。自分の稚拙な行為が彼に快感を与えていると思うと、何もかもを忘れてずっとしゃぶっ
ていたいとすら思う。
だが、それも想像の中の事。フェイトは彼のそれの代わりに、タンクトップを噛んだ。枕に頭を突っ込むような姿勢にな
って、お尻を天井に突き出し、秘裂に指を少しずつ挿入して行く。
「んんんッ!」
言葉に出来ない異物感。だが、それも今のフェイトには一つの快感でしかない。沈めた指で中をゆっくりと掻き回し
ながら、親指で堅くなった豆を刺激する。
行為はすぐに激しさを増した。快感の果てにある絶頂を目指して、フェイトは一心不乱に指を動かす。視界と嗅覚と
覆っている彼のタンクトップが加速機の役割を果たしているのは言うまでもない。
想像もそろそろ最高潮を迎えている。彼に貫かれたフェイトは、嬌声を上げ、彼になされるがままになっていた。正面
から、後ろから、下から、あらゆる方向から腰を打ちつけられる。少女の身体のあちこちには、すでに白濁色の粘り気の
ある液体がついていた。未発達の胸、細い腰、引き締まった太もも、そして顔。全身が生暖かい彼のモノを浴びている。
彼と同様に、想像の中のフェイトは何度果てたか分からなかった。何度キスをしたのかも分からない。
「くろのッ! くろのッ! くろのぉッ!」
タンクトップを解放して、フェイトは身を強張らせる。始めた時とは非にならない速度で出し入れしていた指を、一際大
きく突っ込む。その瞬間、高められていた快感が爆発した。独特の匂いがして、秘所から大量の淫水が吐き出される。
想像も終焉を迎えた。限界まで沈められたクロノのそれが、内膣で激しく脈打った。容赦なく打ち込まれる熱い熱い
液体を、フェイトは恍惚とした気持ちで受け止める。これ以上無い快感だった。
「あ、ああああ……」
頂点を過ぎた快感が波のように引いて行く。眠気すら覚える虚脱感が身体を包んだ。
果てたフェイトは汚れたベッドに身を沈める。ほとんど裸同然の下半身が小刻みに痙攣をしていた。腹の底、想像の
中で彼の射精を受け止めた内膣が熱く火照っている。余韻は完璧に残っていた。
荒かった息が徐々に整って行く。同時に、忘却の彼方に追いやった理性も戻って来た。
重い身体を引き摺るように起こして、乱れた自分の身体とベッドを見る。枕にはタンクトップが押し付けられるように
あった。
216 :
聖:2006/03/06(月) 20:51:49 ID:HiXta/BC
「………」
彼の洗濯物を盗み、その匂いを嗅ぎながら、我も忘れて自慰行為に耽ってしまった。変態も良い所だ。どうしようもな
い。そもそも本能を止められなかったのが情けない事この上無い。
フェイトはまだ余韻が残っている腹を抑えながら、後始末をする為にベッドを降りた。が、すぐに視線はベッドに戻る。
いや、正確には枕の上にあるタンクトップに戻った。
「………」
早く戻さないと。アンダーウェア一つ無くなったくらいで困らないだろうが、几帳面な彼の事だ。きっと訝しがるに決ま
っている。
それでも、フェイトはこのタンクトップを戻したくはなかった。こんな最高のオカズ、そうは手に入れれないのだから。
ベッドに歩み寄り、タンクトップを取る。この部屋はフェイトの自室だが、アルフと兼用である。目立つ所に放置して
おくと絶対に気付かれる。
フェイトは少し迷った末、クローゼットの中にある下着等を収納しておくプラスチックケースに入れる事にした。いくら
アルフとは言え、無遠慮に下着の入ったケースを漁るような真似はしないだろう。
結局我慢をする事が出来なかった。フェイトは重たげに溜め息をつくと、そそくさとタンクトップをプラスチックケースの
中にしまった。
三十分くらいで書いたエロくないエロSSですorz エロなんてほとんど書いた事が無いので、かなり微妙ですが…。
>>176氏
GJ!です。
なのは×ユーノキター!! なんか事件が起きるようでワクワクしますよー
>インジュー・ジョーンズ 最後の晴天
ワクワクしま……
……なにが起きてしまうのでしょう ゴクリ…(゚Д゚;)
>>176氏
相変わらず面白いですね〜
>インジュー・ジョーンズ 最後の晴天
これはあの格好をしてチェーンバインドを自在に操るカッコイイユーノを期待していいんですか?w
>>176氏
まずは乙。そしてGJ!
結びの言葉。「きっかけは高町なのは 」ってwww CMですかwww
>>聖氏
乙。とりあえずsageてもらえると嬉しい。
次の話を投下します。物語もいよいよ後半戦、急展開ですがついてきてください。
魔法少女リリカルなのはA's+
第八話 「最弱の結界魔導師」
「できるのか…その作戦」
クロノがユーノを見て言った。
「…やるしかない。今はこの作戦にかけよう」
ユーノがその場にいるみんなを見渡しながら言った。
「あのー、でも、相手をバインドできるの?あの人、拘束解除得意そうだよ?」
なのはが学校のように挙手をして質問した。なんだか緊張感のない感じだが、少しみんなの心が和らいだ。
「うん。みんなに言ってなかったけど、とっておきのバインドがあるんだ」
そう言ってユーノがなのはに微笑んだ。魔法のように見るものの心を安心させる、そんな笑顔だ。
「なのは、残りのカートリッジは?」
フェイトが残りの戦力を把握するために聞いた。
「最初使いすぎちゃったけど、あと2本残ってる。これで一気にかたをつける」
強く、それでいて少し悲しげな顔で答えた。それを見てクロノがたしなめるように言った。
「向こうは本気で殺す気できている。生半可な気持ちじゃこっちがやられるぞ」
「う、うん…」
いちおう非殺傷設定ははずさないが、これから行う攻撃はおそらく最大規模。純粋な魔力攻撃とはいえ、相当な
衝撃が相手を襲うだろう。エネルギー量から言って何が起こるかわからない。
「なのは。あいつの防御を破るにはしかたがないんだ。やろう」
フェイトが静かに言った。みんなわかっている。できればこんな手荒で危険な方法をとりたくないことぐらい。
「うん!」
今度は力強く頷いた。相手を傷つけたくないけど、仲間や自分が殺されるのは一番あってはならない。
決意とともにカートリッジを強く握り締めた。
「そろそろ、死ぬ準備もできただろう」
魔導師が4人に向かって言い放った。5分というわずかな時間だが待ってくれたのは自信からくる余裕か、
はたまた他になにか意図するところがあるのか。誰にもわからなかった。
「誰も死なないさ」
クロノがS2Uを回転させ持ち替え、フェイトに目配せした。
「うん。行くよ!バルディッシュ、ザンバーフォーム!!」
『Yes, sir.Zamber form.』
バルディッシュが輝きを放ち大きな金色の刀のようにその形を変える。
そして戦いの火蓋がきって落とされた。
*
「スティンガースナイプ!!」
クロノが放った魔力光弾が魔導師を追いかける。魔導師はうまく体を移動しそれをかわしていく。
(体術も相当なものだな…)
クロノは攻撃しながら相手を分析した。
(これならどうだ!)
『スナイプショット』
光弾の速さがぐんぐんあがり魔導師のまわりを目にも止まらぬスピードで周回する。
高速の周回運動の後、突然軌道を変え魔導師の真後ろから光弾が襲い掛かる。
ドン!っと魔導師に当たり煙が立ち込める。
「よし!」
手ごたえを口にした瞬間、クロノの真後ろから魔法陣を伴い無音で魔導師が姿を現す。
「撃ち抜け、雷神!!!」
巨大な剣でフェイトが真上から斬りかかった。
魔導師はぐいっとクロノを引っ張り放り投げる。
「うわ!?」
急に引っ張られ目の前のフェイトに驚くクロノ…と見せかけ、すでにこの反撃は予期しており
申し合わせたようにフェイトの攻撃を回避、フェイトはそのまま斬りかかった。
魔導師が片手で張った強固なシールドがそれを防ぐが、結界・バリア破壊効果を持つその攻撃にシールドは
破壊された。割れたシールドのすき間からギラリとした魔導師の鋭い目がこちらを覗いている。
『やっぱり届かないか…兄さん!!』
魔導師が体勢を立て直す前にすでに空中には数百もの光の剣が浮かんでいる。
「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!!!」
クロノがS2Uを振り下ろすと一斉に光の剣が舞い降りる。
「くっ!!」
さすがの魔導師も転移の暇もなく、先ほどとは逆の手で形成していたシールドを振りかざした。
全ては盾の前にはじかれる。
(無駄なことを…)
そう思い周りを見渡した瞬間、先ほどと同等の数の光の剣がこちらにむいていた。
「まだまだーーーーーー!!!!!」
青き光の剣が雨の如く降り注ぐが、一本として魔導師には届かなかった。
シールドを貫けないとわかっていながらもまだ攻撃を繰り返す相手に魔導師は少し呆れた。
とにかく息つく暇もなく攻撃を続けるクロノ。
「とどめだ!!デュランダル!!!」
『OK, Boss』
すでに逆の手に持っていた白きデバイスを振りかざす。
「悠久なる凍土 凍てつく棺のうちにて 永遠の眠りを与えよ!!」
『Eternal Coffin.』
魔導師を中心に巨大な氷が包み込む。
「くっ、はぁ…はぁ…はぁ…!!」
自分の中の最大の攻撃を連続して使用してクロノの魔力は限りなく消費されていた。
(やっぱり…駄目か…)
クロノの詠唱中に防御呪文を唱えたのか、巨大な氷の中心に球状の空間があり、その中から魔導師がこちらを見ているのが見えた。
とにかく転移される前にかたをつけなければならない。一回限りの短期決戦がこの作戦の中身だ。
「フェイト!!!!!」
クロノが叫ぶと、すでにフェイトは氷の真上で巨大な魔法陣を作り詠唱に入っていた。
「アルカス・クルタス・エイギアス。煌めきたる天神よ、今導きのもと降り来たれ。バルエル・ザルエル・プラウゼル。
撃つは雷、響くは轟雷。アルカス・クルタス・エイギアス…」
目を見開き、バルディッシュを振り下ろす。
「フォトンランサー・ファランクスシフト、ファイヤー!!!!」
30発以上のフォトンスフィアよりフォトンランサーが繰り出され、魔導師ごと氷を破壊する勢いで飛んでいく。
直撃と同時に、巨大な氷が細かな欠片となって空中に散った。
当然のように威力の弱まったフォトンランサーは魔導師のシールドを貫けなかった。
(本当に無駄なことを…)
魔導師がそう思った刹那、辺りがまばゆい光に包まれた。
(ぐっ!?)
あまりの閃光に目を閉じたが、何が起こったのか魔導師には理解できなかった。
ゆっくりと目を開ける。今もなお光の中に自分がいて周りは何も見えないが、開けずとも感覚でわかっていた。
自分が今拘束されていることが。
「どうやった?」
一言魔導師は後ろにいるであろう少年に話しかけた。
「簡単ですよ。魔力で生成された氷の欠片はフェイトの電撃で電気的な性質を帯び均等に分散、今も僕らの周りに浮かばせてある。
さらにこの次元の特徴である三つの恒星による強い光が氷の粒子の中で乱反射して強い光をこの空間に閉じ込めている。
あまり目を開けていると目がいかれますよ」
「…そうか」
あの大技の連続は今この瞬間、バインドを掛けるためだけの囮だったとは。
その無謀さと派手さに全く魔導師は気づかなかった。
「しかし、もう大技は撃てないだろう。私のシールドはバインドされていても使えるぞ」
魔導師がそう言うとユーノは静かに言った。
「感じませんか?この魔力」
確かに感じる。自分の真下に莫大な魔力が収束していくのが。
「まさか!?」
「そうです。こちらには術者の魔力に加えて、周囲の魔力を集積することで得た魔力を一気に放出する収束攻撃魔法の
使い手がいます。まあ僕が教えたんですけど。先ほどの大技の数々、ただの目くらましだと思いましたか?」
「くっ!!」
さっきの自分の考えが読まれたように否定され、さすがに少し頭に血が昇った。
先ほどの強力な魔力攻撃はシールドで防いだことによりここら一帯の空気中に散っている。もちろん自分の魔力も含めて。
その魔力が十分なチャージ時間により一点に収束していくのがわかる。
(あの魔法をくらうのはまずい…)
転移をしようと集中する。…しかしギリギリとバインドに締め上げられ集中できない。
「無駄ですよ。転移は集中力を必要とする。僕だって結界魔導師の端くれだ。それくらい知っています」
「これならどうだ!」
いらだちからか声を荒げ、バインドを外そうと解析しながら魔力を込める。
しかし、あることに気づいた。まったく術式がわからないのだ。
(なんだ、この魔法は!)
長年の経験と研鑽(けんさん)を積んだ自分は現存するほとんどの魔法を知っているつもりだった。
しかしどうだろう。今自分が拘束されているバインドは自分の知るどの魔法とも類似しない、まったく未知のものだった。
(くっ!!解けん!!!)
うっすらと目を開け自分の体を見ると、見たこともない文字が自分にまとわりついているのが見えた。
その文字は血と同じ色だった。
「そう、このバインドは絶対に解けません。あなたはここで僕と…」
少年が耳元で囁くのが聞こえた。
*
クロノとフェイトは空中から光の空間を見つめていた。あまりに強い光のため長く直視することができないが。
フェイトもクロノもほとんど魔力を使い切り、飛んでいるのがやっとの状態だった。
(なのはのスターライトブレイカーのチャージももうすぐ終わるな…)
魔導師が姿を現さないところを見ると、どうやらユーノのバインドは成功したらしい。
「兄さん…」
フェイトが不安そうにこちらを見てきた。
「大丈夫。あいつならできるさ。絶対に」
そう言いながら細目で光の先を見つめた。作戦では、バインドしつつスターライトブレイカーの射程外に移動する手筈になっている。
もうすぐカウントダウンが始まる。ユーノの姿はまだ見えない。
ためしに念話で応答をとってみた。
『ユーノ!ユーノ!!』
しばらくすると返事が返ってきた。
『ああ、クロノ。作戦は成功したよ。今拘束してる』
言っている間にレイジングハートのカウントダウンが始まった。
『Count 9, 8,...』
『おい、早く離脱しろ!巻き込まれるぞ!!!』
クロノが叫びにも近い強さでユーノに呼びかけた。
『……このバインド、実は長く持たないんだ。有効距離も限りなく短い。僕の血液を媒介にしてるから…』
『な、何を言ってるんだ?』
ユーノの言っていることが理解できなかった。カウントダウンは止まらない。
『6, 5,...』
『なのはには一番嫌な役目をさせちゃって…。謝っておいてね。クロノなら、きっと支えになってあげられる…』
(!!!!!)
『フェイ……三年前……あり……う…』
発射直前の魔力攻撃の影響で念話がうまく繋がらない。
ようやくわかった。ユーノは最初から………
次の瞬間クロノは思い切り叫んでいた。
「なのはーーーー!!!!撃つなーーーーーーーーーーーーー!!!!」
「え!?」
声に反応するまもなくレイジングハートが合図を告げる。
『Count zero.Starlight Breaker.』
桜色の光の柱が輝く光の空間を貫くようにそびえ立った。
スターライトブレイカーは魔導師が作り出した強固な結界をもたやすく突き破る。
衝撃で散った氷が粉雪のように舞い降り、辺りは幻想的な景色となった。
―――――そしてその光の中、少年と魔導師、12個のジュエルシードはその姿を消した。
次回へ続く
消えた少年。残される傷跡。
少年の想いは深く、そして悲しかった。
次回 第九話 「4年間の想い」
ようやく次回から1〜5話の伏線回収ができます。
あと人間関係もこの時のためのものですからどんな反応をするかはこれからをお楽しみに。
それでは。
ちょ!?ユーノ!!!???
男前すぎる行動とるから(つД`)
続きがすげえ楽しみっす、wktkしながら待ってますぜ。
>聖さん
聖氏って書こうとしたけど読みかたに気付いてやめたww
おっきした。ひとりあそび系でこんなに興奮したのは久しぶりだ
某聖痕さんとこのお話が題材かな。文体も似てるけど本人じゃ……
…まあ、深く追求しないでおこう。GJでした!
396氏乙!
こういうユーノを見たかった!
でも主人公なのにまた出番減るんだろうなw
>>230 聖(ひじり)じゃないか?
396氏乙ー
そしてユーノがお亡くなりになりました
主人公なのに…また出番が…
>>396氏
GJ!
うわー、ついにSLBで死者が(笑)
なのは(|| ゚Д゚)トラウマだなー、こりゃ…
234 :
さつま:2006/03/07(火) 13:54:13 ID:hRYcMsH8
皆さんの文章とてもすごくてとても感動いたしました!ワタシも今考えている
ギャグ主体のSSをかんせいしたらかきこんでもよろしいでしょうか?
396氏GJです!
って、え?あれ?ユーノ君!?
ちくしょう誰がこんなことを・・・orz
>>234 いいんじゃないでしょうか。
しかしメール欄にsageと入れるのを忘れないようにしてください。
>しかしメール欄にsageと入れるのを忘れないようにしてください。
今見るとなんか偉そうに見えるぞこの文……ごめんなさい……。
237 :
さつま:2006/03/07(火) 16:17:59 ID:hRYcMsH8
>>235さんありがとうございます。こういうところに書き込みするの初めてなので、いたらないところがあればちゅういおねがいします。
>>396氏
なんか読んでて微妙……。文章がどうも不自然。
戦闘中に動き回ったりして忙しいのに、わざわざ説明的な台詞を喋りまくってるところとか。
侮辱するわけではないが、これ396氏に実力がないのではなく、396氏が手抜きしてるようにしかみえない。
>>396氏おつおつ!
ユーノに惚れた。なのはの絶叫がきこえそうです。
>>229 Vipとかでよくwktkって略語みるんだが、これの
意味おしえてくれフェイト…ワクワク??
>>239 ワクワクテカテカ、略してワクテカの更に略
W a K u T e K a
大文字の部分ね
>>238 説明的な台詞の時は、みんな動いてない気が……
まあ確かに、自分も敵に言う事じゃないなとは思ったけど
動き回りながら説明台詞ってどこ指してるの?
ユーノも魔導師も互いに自信があったから余裕見せたでいいんじゃね?>説明
SLBのチャージ時間もあるしそんな違和感ない気がする。
完璧な矛盾に突っ込むならまだしも
>>238はただ噛み付いてるようにしか見えん。
つか無償で書いてる職人に手抜きとか言うなよ…。
職人全員が投下しづらくなる閉鎖的なスレになりかねないから以後は何ごともなかったかのようにスルーで↓
武装隊は再編成終了後艦の直援に回って!!第一線には私が加わります!!」
到着した少女は、一騎当千にして、百戦錬磨。
己が戦闘技術を授けた部下達へと的確な指示を出し、自らもまた槍のような形状をとった愛機の切っ先を、
道を阻まんと立ち塞がる二体の女性へと向ける。自分の取るべき行動を、実行に移すため。
『starlight breaker』
「なのは!!あの結界はユーノのものだ!!十分にチャージしないと弾かれるぞ!!」
「わかってる!!これでっ・・・・!!」
「やりすぎんなよっ!!中にはシグナム達だっていんだからなっ!!」
収束されゆく魔力を察知しなのはを目指してくる狼達を撃ち落としながら、クロノが叫ぶ。
ヴィータもまたはやてを守りながら同じ作業を行い、なのはのチャージタイムを稼ぐのを助けてくれている。
「大丈夫!!ちゃんと調節する!!」
二人の言う一見矛盾した要求も、彼女の卓越した戦闘技術ならば、可能。それでも彼女は過信など、しない。
───待ってて、ユーノ君。今、行くから。
ちらりと、ヴィータに守られ続けるショートヘアの少女のほうを見る。
(・・・ごめん、はやてちゃん。もう少し待って)
きっと自分は、彼女の今の不安な精神状態を助けることができる。
それだけの情報を、自分は持っている。けれど、今はまだ。
(この状況を、なんとかしないと・・・)
なのはに「彼女達」のことを託したあの人のためにも。
そして、謝らねばならない親友、助けを待っているであろう、大切な「友達」のためにも。
(まずはこの結界を壊すのが、先決っ・・・!!)
カウントは完了、いつでも発射は可能。あとはただ、ありったけの魔力を解放するのみ。
「いくよっ!!レイジングハート!!みんな、射軸上から退避して!!」
スターライトブレイカー。
その結界破壊の追加効果を持つ魔力の噴流が、翡翠色のドームへと突き刺さる。否、撃ち貫き、粉砕する。
相互の魔法の干渉による閃光の中、二体の夜天の書は結界の崩壊を最後まで確認することなく。
ベルカ式の転移魔法陣を展開すると共に、遺跡内部へとその姿を消していった。
魔法少女リリカルなのはA’s −変わりゆく絆−
第八話 知識の渇望
癒しのリング──クラールヴィントを中心として、淡い光が薄暗がりを灯していく。
装甲を外し患部を晒した左腕にそれを押し当てると、不自然な形に腫れ上がっていたその箇所が、
次第に正常な、まっすぐに伸びた女性のきれいな腕に戻っていくのがわかる。
「・・・と、これでいいはずよ。どう?まだ痛む?」
「いや、問題ない。・・・世話をかける」
何度か掌を開閉し、感触を確かめてみる。さすが風の癒し手、湖の騎士と言うべきか。
痛みはもう全くない。彼女の魔法に助けられたのは一体、何度目になるだろう。
ここは、フェイト達がはじめに遺跡へと突入した箇所からほど近い、小さな石室の一つ。
シグナムの負傷、リインフォース達(少なくともフェイト達はそう思っている)の追撃を考え、
彼女達はほとんど振り出しと言っても変わらないこの位置まで、後退を余儀なくされていた。
「さ、次。フェイトちゃんも少し怪我してたでしょう?」
シグナムの治療を終えたシャマルは今度は、部屋の隅で無言に俯く少女へと声をかける。
彼女もまたシグナムほどではないが身体やバリアジャケットの各部に、小さな傷をいくつも負っていた。
「・・・・いりません」
「え?」
「この状況を招いたのは、私のミスです。こんな傷くらい・・・」
「自業自得・・・・とでもいう気か?」
装備を着けおわり、シグナムは立ち上がる。
つかつかと少女の前まで行くと、胸倉を突然掴んだ。
「ちょ、シグナム!?フェイトちゃんに・・・」
「あまったれるなっ!!状況を招いたと思っているのなら、黙って治療を受けろ!!打開するのが先決だ!!」
「ッ・・・・・!!」
目前で怒鳴られ、正論を言われ。
フェイトは彼女から視線を逸らす。言われなくとも、分かっている。分かっているけれど、反論が出来ない。
シグナムは肩を怒らせたまま手を離すとくるりと向きを変え、なおも続ける。
「・・・もう一度言う、お前は指揮官なんだ。しっかりしてくれないとこちらが困る・・・!!」
「・・・・・ごめん、なさい・・・・」
普段ならシグナムが彼女に怒鳴ることもない。フェイトがミスをし責任を感じることもない。
壁まで行くと、背中を預け目を閉じて腕を組む。さっさと治療を済ませろ、ということらしい。
フェイトも今度は、おとなしくシャマルの癒しを受けた。ただ相変わらず表情は暗く、空気は重いままだが。
雰囲気は最悪と言っていい───フェイトの回復をするシャマルがそう思っていると、
たまりかねたアルフが努めて明るい声で口を開く。
「い、一体あいつらなんだってのさ。リインフォースやシグナムの猿真似までしちゃって。大体・・・」
「ええ・・・・そうね。あの子達、何なのかしら・・・」
「あれは・・・・、夜天の書だ」
「・・・・・・え?」
「・・・そしてあの騎士は、私だ」
「シグナム、あなた何を言って・・・・」
「正確には実戦経験を積む前の段階・・・基礎データ段階の守護騎士プログラム・・・」
シグナムの言葉は、突然すぎて。
「どういう・・・・こと、ですか・・・・?」
壁に体重を預ける彼女の告白に、一同は──常に冷静なザフィーラのみが、普段と変わらぬ様子で──、
声を失い凍りついたように耳を傾ける。
「あの夜天の書も、正確に言えば夜天の書──リインフォースそのものではない」
おそらくは夜天の書、そのものに何かあったときのために作られた、バックアップデータを録る為の外部メモリー。
いわば、第二、第三の夜天の書としての、スペア。
「無論、スペアと言っても性能はほぼ夜天の書本体と変わらん。蒐集行使もできるし、かつて本体が蒐集したもののデータも入っている」
少なくとも、夜天の書が「夜天の書」であった頃のものは。
旅する機能───転生機能が、オミットされている点を除けば、それはほぼ夜天の書、そのもの。
「ちょ、ちょっと待って!!そんなの聞いたことないわよ!?」
「シャマル」
「それにおかしいじゃない、あれが夜天の書で、守護騎士システムが生きてるなら、なんで私とヴィータちゃんがいないのよ!?」
「・・・シグナムが言っただろう。あれは、基礎データ段階だ、と」
「ザフィーラ!?」
唯一冷静な鉄面皮を崩さず、黙って話に参加をしていなかったザフィーラが今度はメンバーの視線を奪った。
しかし彼は言うべきことは言ったと思ったのか、それ以上言葉は繰り返さない。
「・・・・お前も、気付いたか」
「いや・・・思い出したと言うほうが正しい。昔の記憶を・・・な」
「そうか・・・・。シャマル」
事情が解っている様子の二人に対し、騎士達の中で唯一飲み込めず外された格好のシャマルの表情には、
不満と苛立ち、不安が浮んでいて。それに対する解答を提示すべく、シグナムは言葉を続ける。
「無理もなかろう。お前とヴィータは、まだ誕生していなかったのだからな」
「え・・・・?」
夜天の書の守護騎士プログラムは、夜天の書とその主を守るために作られ付加された機能の一つだ。
前衛を務めるアタッカーに、後方支援を行う参謀格。指令を出すリーダー、そして全体を護る盾役に、
きれいに役割が分担されている。
「・・・・だが、そのように役割が明確に分かれるようになったのは、夜天の書の誕生から少し経ってからだ」
旅する魔導書───夜天の書が旅立ち、悠久の時を経ていく中で実戦を繰り返し、
その時代ごとの主によって守護騎士システムはより多様な局面に対応できるよう整備されていった。
シグナムは少しと表現したが、それは夜天の書の気の遠くなるような長い歴史から見た場合の相対的なものであり。
実際にはどれほどの年月がかかったのかさえ、計り知れない。
「基礎データ段階では単純に・・・・取り替えの利く盾と強靭な矛。前衛と後衛、二種類の戦闘プログラムしか存在しなかったのだ」
つまり、彼女達が戦った相手。それはシャマルも、ヴィータも生まれる前の。
「昔のザフィーラであり・・・・私だ」
たった二人でただひたすらに戦っていた頃の、盾の守護獣と、剣の騎士、そのもの。
「そんな!!それじゃあ!!」
彼女達は、過去の自分自身の分身達と戦い、屠り去ってきたことになる。
その手を、汚して。
「大丈夫だ」
「だけど!!」
穏やかなシャマルが、狼狽している。
きっと彼女も、辛いのだ。同じ守護騎士でありながら、自分がシグナム達の気付いたことに気付けなかったことが。
参謀格、ヴォルケンリッターの補助と支援を担当とし、細やかな点への気配りの人である彼女なら、なおさらであろう。
「彼女達は・・・我々の手で、止めてやりたいんだ」
「シグナム・・・・」
「夜天の主に仕える者として、リインフォースの最期を見届けた守護騎士として」
* * *
互いを労わり合う三人の守護騎士のやりとりを見ながら、フェイトは自分達三人のことを思っていた。
自分と、なのはと、ユーノ。
互いのことを思い合うはずの三人である点では同じはずなのに、どうしてこうも違ってしまったのだろう。
細かな点の違いは挙げればきりがないけれど。言い出したのは自分だから仕方ないのだけれど。
彼女達は3人で。
自分達は3人ばらばら。
ばらばらであっても、互いを気にかけているのはずっと、変わらないのに。
なぜ歪になってしまったのだろう。
あれほど憤り、拒絶したはずのなのはの顔が。
三人の絆を見る今は、ひどく懐かしく。ひどく恋しい。赦せないと思ったはずなのに。
それなのに、ユーノを二人で迎えに行きたい。
けれど、いくら思っても。
3人は、ばらばらだった。
おそくなりましたorz設定固めて自分の中で消化するのにえらい時間がかかったorz
今回ともう2〜3回が面倒な部分のヤマだからここさえ乗り越えれば・・・。
>>176氏
GJ!!特にタイトルがwwwただ一点気になる点が。
>知る人ぞ知る
これだと「本当に知っている人しか知らない」という意味になってしまうと思われ。
重箱の隅つつくようなマネでスマソ
>>聖氏
どこかでみたことあるなぁと思ったんですが、「聖痕の刻まれし蒼き鷹」さんの
ssが題材のようで。誤解されないようにあらかじめ書いておいたほうがいいかもしれませんね。
>>396氏
血が媒介とはまたユーノ自爆系の技を・・・・。
足りない魔力は身体張って補う感じがしていいですね。
んでまたご報告。
ttp://www.nanoha-fes.net/circle_list.htm 無事参加決まったみたいです。実家にいるから今日ようやく判明。
まんま640の名前で出してます。一応なのはかフェイトのコピー誌の予定。
というか参加リストがなのは関係の有名どころばっかで激しく場違い感が・・・orz
>>640氏、祝なのフェス参加ケテーイ! ヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノ
俺は行く予定ないんですがね…orz ちと遠いや…
そしてSS投下乙&GJ!乙女心は複雑ですねぇ〜
なのフェス640氏さんも参加されるんですね。いいな〜
参加リストみたら有名な人いっぱいじゃないですか。
当日楽しんでください。ああ・・
・・大阪は遠いのでいけんとですたい。
なのフェス参加します。
640氏楽しみにしてます。できればコピー誌両方出ませんか?
>>396氏GJ!!
なんらかの仕掛けで驚異的な力を得ていた魔導師に、
環境を活かした作戦で立ち向かう、管理局魔導師達。
血沸き肉踊る戦いに打たれた、決めの一手は血の拘束…燃えます!
なのはさんはこの道選んだ以上は、いずれ出くわすであろう壁に
最悪の形でぶつかってしまった感じですなぁ…。
…ところでまさか、このまま死亡ENDになったりは…ガクガクブルブル((((゚Д゚;)))
>>640氏GJ!!
シャマルとヴィータがいない理由に納得、シグさん達に
自分達を重ね見るフェイトが切なかったです。
>けれど、いくら思っても。 3人は、ばらばらだった。
ヤツハクル、ヤツハクル、ヤツハクル、ヤツハクル、ヤツハクル、ヤツハクル。
>>242 言いたいことは分かるけど、あなたの書き込みも噛み付いているように受け取れなくも無いよ
>>238の書き方が気になる人はいるだろうけど、作者本人ではないのだしそれこそスルーでいきましょうよ
>>640氏GJです!
>助けを待っているであろう、大切な「友達」のためにも。
まあこの認識が変わってないのは当たり前なんですが……
なんか「あー……」って気分になりますね。
>>640氏
言葉の使い方が綺麗ですね。
思わず引き込まれるような書き方で、とても読みやすいです。
次回を楽しみにしてます。
255 :
さつま:2006/03/08(水) 14:10:00 ID:/C+XIzHZ
投下します
<激闘!魔法使い界超人タッグトーナメントなの>
「第一話 楽しそうな青年と置き去りな人々」
ここは時空管理局の戦技指導室そこにはとても巨大なリングが作られ、そのリングの上で一人の青年がなんだか叫んでいる。
「レディースアーンドジェントルメン!本日集まっていただいたのは、ワタクシ、クロノ・ハラオウン執務官が皆さんに心温まる企画をプレゼンツしたく呼び出した所存にございます。」
リング上にいるクロノに違和感を感じ、なのははとなりにいるフェイトに問いかけた。
「ねぇフェイトちゃん今日のクロノ君なんかおかしくない?」
なのはの質問にフェイトは答える。
「そうなんだ、一昨日突然『なあフェイト、友情パワーって素晴らしいな』とか言い出したかと思ったら急に部屋にこもりだして
昨日の朝「よし!これならいける!」って言って飛び出していって、今日メールにこの場所の写真と、『なのはとはやてたちを連れてきてネ、お兄ちゃんより』っていうメッセージがあって」
フェイトが言葉を続けようとした瞬間リングの上にいるクロノが叫ぶ。
「そこの二人シャーラップ!!質問ならあとで受け付けます!え〜皆さんのなかには最近自分の本気が出せず、ストレスがたまっている
方、自分の実力のほどがわからない方、はたまた『自分はホントは強いのにみんなに弱いと思われているのでは!?』とお悩みの方など
数多くいらっしゃるのではないでしょうか。そんな皆様の不満を解消する、すんばらしいアイディアを思いつきましたので発表するために
皆様に集まっていただきました。その名も!『魔法使い界で1番強い2人組は誰?激闘!超人タッグトーナメント!!』です。」
クロノの発言にその場の空気が一瞬止まる。まさかクロノがこんなことを言い出すとは、そこにいた誰もが予想だにしていなかった。
その雰囲気を無視するかのようにクロノがまたしゃべりだす。
「え〜あのテンション保てそうに無いのでいつもの僕に戻ります、ルールはいたって単純。時間無制限のタッグトーナメント、
どちらかのチームの両選手が失神するかギブアップするかすれば片方のチームの勝利になる、
通常のタッグトーナメントと違うところは両チーム四人全員が開始直後にリングインしてもらうところだ、デバイスは各々の物を使ってもらい、カートリッジの使用も自由、
デバイス面で劣るものはほかの部分でカバーして欲しい、何か質問は?」
クロノが聞くと、一人の局員がおずおずと手を上げた。するとリング上のクロノが彼を指差した。
「ハイ、キミ。」
「ええ〜と、拒否権は?」
「無い、ハイ次」
彼の質問に間髪いれずに絶望的な答えを投げかけるクロノ、すると「ハイッ!」という元気な声とともに一人の少女の手が挙がった。
「ああ、はやてか、なんだ?」
「こんなアホなこと思いついた理由は何や?」
はやての至極当然な問いに、クロノはムッとした顔をした。
「アホとはなんだアホとは」
「答えられるような立派な理由があるならゆうてみぃ」
「言ってやろうじゃないか、三日前、日本の本屋をぶらぶらしていたら『キ○肉マン』という漫画をみつけてな、面白そうだったんでマンガ喫茶で読破したんだが、
タッグトーナメントのところで『いいな、友情パワーって』と思って企画書作って上に提出したら快くOKしてくれたよ。」
今まで見せたことの無いような晴れやかな笑顔で語るクロノにはやても突っ込むことを忘れ、それ以上誰も何も言うことはできなかった。
「誰も質問は無いみたいだな、ちなみにさっきの拒否権は無いというのはうそなので気にするな、
しかし優勝チームには『ペアでいくご当地グルメ満載三泊四日ミッドチルダの旅』の旅行券を上層部の金でプレゼントだ、参加するものは遺書等の準備を整えたあと
一週間以内に僕かエイミィのほうにメンバーの名前、チーム名、優勝への意気込み、などを記入した紙にパートナーと撮った写真を封筒に入れて渡してくれ、
ああ、いい忘れていたが各自好きなやつと組んでくれ、以上だ、解散。」
クロノの話が終わり、静かになった指導室で、残された局員たちはただ呆然と立ち尽くしていた。
次回「第二話 それぞれのパートナーと結果的に一人ぼっちのクロノ・・・」につづく。
ぶっ壊れすぎでしょ、クロノくん。
まぁ、何はともあれ続きを待ってます。
展開しだいでは面白くなるかも。
……いったい漫喫でドコをどう打ったんだクロノ。
なんだか、いろんな意味でポップだ。弾けてる。
とりあえず
>>255乙
258 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/08(水) 20:17:11 ID:IdbaTkNV
フェイト×クロノをキボン
クロノ×なのはをキボン
まぁ、無理だわな-。なのははユーノ。フェイトはアルフとか?
クロノ×なのは無理なら、クロノ×ザフィーラとかアツイね。
ここってリクエストしていいの?
クロノが一人ってことは仮面の男に扮した師匠猫がクロノ・グレートを名乗ってタッグを組みに来るんですね
タッグに関してあれこれ言うと
さつまさんがやりにくいのでは・・・
リクエストに答えてみたいと思いつつ、
今かかえている話だけで精一杯。
昔に比べて書き手さんが増えたから、
もしかしたら応えられる人がいるかも?
無茶なリクエストだけど、ザフィーラ×アルフ+猫姉妹が見てみたい。
>>260 いくらでもどうぞ
ただし
答えてくれるとは限らない
フェイト+シグナムvs変体仮面's
変体仮面's Vs猫姉妹
……あれ?
268 :
さつま:2006/03/09(木) 13:59:35 ID:/leDK20I
実は思いつきで一気に書きあげたもんなんで、続きが・・
皆さんのコメント見ながらチームとか決めようかなと思ってます。
なのはとユーノ
フェイトとシグナムは決定ですね。
チーム名は、ホントどうしよう。
アリアとシャマルで長距離バインド+旅の鏡でリンカーコアに直接攻撃!
ありえない対決
なのは&ヴィータVSフェイト&シグナム
シャマルとユーノ
……勝てる気がしない
じゃあ初心に帰ってなのは×フェイトきぼん
絵とかはよく見るけど、小説だと最近はあまりない気がする
なのフェは&で友情タッグバトルならともかく×で括られるとなんか読んでてキツイのは俺だけか
絵でネタとか取り合えず可愛いおにゃのこ二人って感じならで「まいっか」ってなるんだけど
>読んでてキツイのは俺だけか
読まなきゃえぇやん。
そんな1人1人の好き嫌い気にしてたら、なんにも書けないって。
またスルー厨か
何でもスルースルー言ってりゃいいと思うなよ
流れを読まずに続きを投下します。その前にちょっとご指摘に回答を。
手抜きであることはもはや再確認事項だと思います。
全十四話書くのに二週間かかってないので。
読みやすい・キャラを偏り無く登場・一話の分量を変えずそれでいて続きが気になる構成
をモットーにやっていたので、ここでこいつしゃべりすぎとか不自然極まりないとか色々あるかと思いますが
解釈の幅を広げればいくらでも納得のしようがあるとも思います。文才のない396の文章に合わせて
くださると嬉しいです。というかお願いします。小学生の作文を読む気分でどうか一つ。
修正できる範囲内では修正しますが文自体となると手に負えないので…。
長くなりましたが続きいきます。
魔法少女リリカルなのはA's+
第九話 「4年間の想い」
上を見上げると、目の前は太陽がすぐそばにあるかのようにまばゆい光を放っている。
見ていることが出来ずに目をぎゅっと閉じた。それでもなお、光は瞼を通り目に刺激を与え続ける。
位置はわからないけど不安はない。だって彼が教えてくれるから。
『なのは、真上だよ。全力全開、手加減なしで!!』
自分のよく知る少年の声が聞こえる。そういえば、6年前にも同じような助言されたっけ。
魔法の世界に足を踏み入れるきっかけとなった彼。わたしのことをよく理解してくれている彼。
彼のおかげでさまざまな人と出会い、多くの経験をすることができた。
危険な時も、悲しい時も、嬉しい時も。いつもそばにいて微笑んでくれた。守ってくれた。
「管理局の人間は……必ず殺す」
敵。魔導師。彼はわたし達を憎んでいる。その瞳は、獣のように鋭く、残酷だった。
殺す。殺される。初めて感じる恐怖と緊張。仲間が絶命する様子なんて想像したくもない。
だから撃つ。最大の魔法を。守るために。止めるために。
少女が真上に杖を構える。
しかしその心は正反対だった。
(駄目!撃っちゃだめ!!お願い、やめて!!!それを撃ったら…)
少女は叫んだ。だが、止まらない。止められない。
『Count zero.Starlight Breaker.』
そして音が消え、光が広がる。桜色と太陽のような暖かい光が。
(やめてえええええええええええええええ!!!!!!!!!!)
「はっ!?…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ………」
ガバッと起き上がる。体中に汗をかいている。とても気持ち悪い。
コチッコチッコチッ
時計の音が部屋に響く。部屋は薄暗く、時計を見ると夜中の3時だった。
机の上のバスケットに目を向けた。毛並みのようなものが見え、もぞもぞと動く影が見える。
『ああ、なのは、おはよう』
眠たげに目をこすりながら一匹のフェレットが身を起こした。
(ユーノくん!?)
驚いて目を見開いた。しかし、それはバスケットの中の毛布が毛並みのように見えただけだった。
「うっ…くぅ………!」
ポタッ…ポタッ…
枯れたと思っていた涙は、なおも頬を伝い手に落ちる。
悲しかった。悔しかった。気づかなかった自分が。何も出来なかった自分が。
彼はいない。どこにも。あの微笑みは、もう見ることはできない。
「あ、あ、あぁぁぁあああぁぁぁぁあああああああ!!!」
何度目だろうか。何度泣くのだろうか。
なのはの嗚咽は、今日もまた朝方まで続いた。
*
暗い部屋の中、円卓の中央にはホログラムが浮かび、魔導師とジュエルシードのデータが浮かんでいる。
その円卓の周りには光ととも数人の人間がそのデータを見つめていた。
バンッ!!!
クロノは思い切り机を叩いて怒りをあらわにして言った。
「解決済み……だと!?」
それを見て白衣姿の男が続けた。次元管理局の調査員である。
ちなみに、ジュエルシードを保管していた次元管理局と法を行使する時空管理局は別物であり、クロノはその男を見たことがなかった。
「ええ。アースラのレコードを見させてもらいました。…さすがあの高町教官ですね。信じられないほどの魔力量だ」
白衣の男は眼鏡を指先で持ち上げ、手元のホログラムに目を落とした。
「ジュエルシードと強奪した魔導師が消えた件ですが、我々はそれらが次元の狭間、虚数空間に落ちたと結論づけました。
理論上、あの魔力量で次元の穴は生じます」
「理論上はでしょ!!半径一メートルのね!」
重要参考人として呼ばれていたエイミィが唾するように発言した。
「だが事実、それらは姿を消しました。アースラでも残留魔力における転移の痕跡は見つけられない。
おっと、そういえば司書長もいたんでしたね?魔導師の転移を阻害するのはあの状況下では当然でしょう。
…それに、彼自身はバインド以外の魔法が使えない状態でしたしね」
白衣の男が“ある報告書”に目を落としながら言った。
「あれだけ捜索してまだ探すのか?我々も忙しいのだよ。終わった事件にいつまでも人手を割いている余裕はない」
別の艦隊の艦長が冷徹に言った。
すでに事件から二週間。時空管理局が総動員で探したがどこに行ったかまったく検討もつかなかった。
ジュエルシードの機能も回復しているはずであり、さすがにいつまでも変化がないのはおかしい。
そのことを加味した上での発言だとしても、嫌味にしか聞こえなかった。
「次元管理局の高官が辞任したんだ。責任問題も解決したしな」
さらに別の艦長が少し含み笑いで付け加えた。
「お前ら…!!!」
クロノは歯軋りをしてその二人をにらみつけた。自分よりも10歳以上も年上だが、この際関係ない。
「静粛に!!」
老齢の議長が場を鎮めた。
「フム……それで、リンディ提督。君の意見が聞きたい。この件、今後どう扱う?」
皺で重そうな瞼を持ち上げ議長がリンディに視線を送った。
「はい」
リンディは伏せていた目を開き、静かにその場に立ち上がった。
「司書長、魔導師、それとジュエルシード…。これらが消えたのは事実です。
方法・原因はまず置いておくとして、その行方が未だはっきりしないのは決して無視できない問題です。
12個のジュエルシードは悪用されれば次元断層を引き起こされる可能性がある以上、野放しにはできません。
よって再度、ジュエルシードを指定遺失物とし、件の魔導師とともに捜索は続行すべきです。
人手がないならアースラの局員が探します。それで満足でしょう?」
キッと上官に睨まれ、先ほどの二人の艦長は目をそらした。
「ウム。その通りだな」
「さすがにあれは危険な代物だしな」
「後々問題になられても困る」
ぼそぼそと賛同意見が聞こえてくる。だが、だれも捜査に協力しようとは言い出さなかった。
「静粛に!!」
再び議長がざわめきを鎮める。
「ではその捜索、アースラ艦長、クロノ・ハラオウンくんを中心にやってもらおう」
静かにクロノを見て言った。
「言われなくても、そのつもりです」
吐き捨てるように言ったが、議長は気にも止めなかった。
「これにて解散。各自任務に戻れ」
パッっと部屋が明るくなり、ぞろぞろと人が出口へと向かった。
静かになった部屋にはクロノ、リンディ、エイミィだけが残っていた。
「クソッ!!」
クロノが今まで座っていた椅子を蹴ると椅子は脚を曲げながら吹っ飛んでいった。
「あいつらといい次元管理局といい、なんであんなわからずやばかりなんだ!!」
普段は冷静なクロノだが、ここ最近はまったく抑制できていなかった。
「クロノくん、落ち着いて!どうせあいつらは出世したクロノくんを妬んでるだけなんだから…」
「次元管理局もいい厄介払いができたとしか考えてないのは驚きだわ。みんながみんな悪い人ではないのだけれど…」
エイミィがクロノをなだめ、リンディが悲しそうに嘆いた。
クロノはズンズンと大股で歩いていくと出口に向かった。
「ちょっと、クロノくん!どこ行くの?」
あまりの勢いにあわててエイミィが止めた。
「決まってる!探すんだよ!!魔導師とジュエルシード……それに、ユーノを」
そう言うと部屋を飛び出してしまった。
「困ったわね。あの子も」
ふぅっとため息を吐きながらリンディが言った。普段顔をつきあわせると憎まれ口ばかり叩きあっていたユーノとクロノ。
数少ない男友達であったユーノとの会話は、表面上はいがみ合っていたけど本当は楽しくてしょうがなかったのだ。
ただ、艦長であるクロノにはもう少し冷静さを取り戻して欲しかった。
(あと数日すれば少しは落ち着くのかしらね…)
たとえ何日すぎようと心の傷は決して癒えないだろうが。
迎えに来たレティとともにリンディもその後静かに部屋を出た。
一人残されたエイミィは机に置かれたままの報告書に目を通した。
『ユーノ・スクライア司書長と使用した魔法に関する報告書』
ユーノ司書長はジュエルシード強奪事件にて魔導師と戦闘。現在行方不明。
戦闘状況の報告より、ユーノ司書長(以下:甲)は魔導師(以下:乙)に対し拘束魔法を使用したとされている。
乙の能力を鑑(かんが)みれば解除は容易であったはずだが、甲のバインドは数分間乙を拘束。
その特殊な魔法に関する記述を司書長室および甲の自室にて発見したので以下に記す。
その研究は4年前より始まっている。当初の目標は絶対に破られない防御呪文の開発であったと判明。
3年前、ミッドチルダにて行われた学会で甲は無限書庫で発見した古代魔法に関する論文を発表。
その古代魔法とは、現段階でも未知とされるリンカーコアを制御するものであるとのちの研究で明らかになった。
あまりの複雑さゆえ全ての解読及び再現が不可能であったが、どうやら甲はその一部をミッドチルダ式の魔法に組み込んだものと思われる。
リンカーコアに内包する全魔力と器を反転させ、血液を媒介とし一つの魔法に込める、というものであった。
魔力の器であるリンカーコアの強度は計り知れなく、
防御・拘束魔法に転化できれば最高の硬度をほこることは間違いないが、同時に、非常に危険な魔法といえる。
リンカーコアの破壊が及ぼす影響は現時点では6年前の闇の書事件での防衛プログラム以外に例がなく、
防衛プログラムはリンカーコアの破壊により消滅している。
性質上、他の魔法は使えないこと(念話や飛行などの単純な魔法は例外)と使用中に多量の血液を失うという欠点があげられる。
以降、この魔法を禁魔法に指定し、生成方法及び術式を門外不出とし使用の一切を禁じることとする。
以上
エイミィは報告書から顔をあげた。
(ユーノくん、悔しかったんだね…。だから一人で頑張ってたんだ)
4年前のあの時から、ユーノが何を想いながら戦闘を見てきたかが痛いほどわかった。
(でも…こんな守りかたって……ないよ……)
震える報告書にいくつかのシミができた。
次回へ続く
フェイトから衝撃の事実を聞かされるアリサとすずか。
ユーノが最後に伝えたかったこととは…?
次回 第十話 「絆」
ついにオリジナル魔法を出してしまいました…。名前はもちろんありません。
1〜5話のユーノの台詞と行動でちょくちょく伏線っぽくしたつもりです。
自分の身を削るのはユーノっぽいかなと。もともと他の人とレベルの差がありすぎでしたし。
次回は個人的に中々の修羅場のような気がします。それでは。
>手抜きであることはもはや再確認事項だと思います。
>解釈の幅を広げればいくらでも納得のしようがあるとも思います。
>396の文章に合わせてくださると嬉しいです。
ごめん、さすがにこれは擁護できねえや。精神年齢21未満は(・∀・)カエレ!!
私が目を覚ましたのはベッドの上でした。覚えているのははやてのこと。
私の魔法が失敗して、なのはの視線がはやてから逸れた数瞬、魔力の塊がはやてを押し潰しました。
その後のことはよく覚えていません。
<substitute for... prologue>
フェイトの症状は軽かったが、他のスタッフの被害が甚大だったこともあり、大事を取って精密検査の対象となった。
被害状況は定かではなかったが、なのはが無事との知らせがフェイトを安心させた。
だが、はやての事については誰もが表情を硬くし口を閉ざし、深刻な状況であることはフェイトにもよく判った。
「おはようございます」
フェイトの病室をシャマルが訪ねたのは戦闘の翌日だった。
普段、これといった交流のない彼女の訪問は、フェイトにとって意外ではあったが、ようやく日常に戻れたようでもあり、いつもにも増して和やかな彼女のそぶりは、はやての病状が深刻でないことを連想させた。
「はやては元気ですか?」
フェイトが、そう訪ねたのは自然ななりゆきだった。きっとはやては大丈夫、ちょっと回復に時間がかかるだけで元気。そう思った。そうでなければシャマルがこんなに明るいわけがない。はやてちゃんの側を離れるわけがない。
持参した白菊を花瓶に挿していた彼女は振り返らずに答えた。
「はやてちゃん、私たちが話しかけても何も答えてくれないんですよ。」
「脳にダメージが及んで、目も耳も動かないんだそうです。」
「あんなにリハビリ頑張ってたのに、無駄になっちゃいましたね。」
彼女は振り返った。
虚ろな目に狂気を湛えて、ちょっと微笑んでいたように、フェイトには見えた。
「だから、フェイトちゃんには、早く元気になってもらって」
とても優しい、作り物の声で、彼女は囁く。
「元気になってもらって、私の玩具になってもらいますね」
聞き返そうとした瞬間、両腕をバインドされた。
逃げようとした瞬間、足首にまとわりついた何かに足を取られた。
声をあげようとした瞬間、後ろに立ったシャマルの左手の綺麗な指がフェイトの口に割って入った。
全て、フェイトにとって一瞬のことだった。
「フェイトちゃん、殺しちゃおうかなと思ったんですよ。」
そう言って、シャマルは、床に倒れたフェイトの首に優しく手をかけた。
「でも、はやてちゃんに怒られちゃいますものね」
首にかけた右手を肩口に移動させる。局に支給された無愛想なパジャマのボタンが外れていく。
「だから、フェイトちゃんをはやてちゃんの分も幸せにしてあげます。」
露わになった胸元に手を伸ばすと、シャマルの指輪が微かな光を放った。
「…!?!?!?!!!」
フェイトの身体が震えた。
幼い身体に走った未知の衝撃、胸から全身に走った得体の知れない感覚。それが何であるのか、フェイトには判らなかった。
「駄目ですよ、暴れたら。これからずっと気持ちよくしてあげますから。」
シャマルの指が這った。微かに膨らんだ胸元にささやかな刺激を加える。指先が先端に近づくにつれ、甘い刺激が広がる。
「あらあら、気持ちよくなっちゃいました?」
右胸を触られる。柔らかく優しく撫でるように。少しずつ胸の先の方へ先の方へ、先まで気持ちよさが届いたら、また最初から。繰り返し繰り返し。
「や…やぁ…やめ…」
フェイトが微かにそう呟いたのを確認して、シャマルは服の上からフェイトの左胸を撫でた。官製品の雑な布地が、フェイトの左胸を優しく擦る。
「…ふぁ、あぅ、や…」
右胸から沸いた感覚が、左からもやってくる。幾らなんでもおかしかった。触られただけでこんなになるわけがない、きっと何か魔法を使われた。これは魔法だ。
「あぅあ、な…、はぁ、しら…ない…」
心地良かった。今まで、痛いことも辛いことも我慢できた。でも、これは知らない。気持ちよさで考えがまとまらない…。
「ひあ…あ…や…あ、あ…あ…」
でも…駄目だ、これは……危険だ…。
「!?」
フェイトから魔力を感じた瞬間、シャマルは身を離した。
フェイトが途切れかけた正気を繋いで紡いだ魔術は、シャマルの左肩を貫き、壁に痕を刻む。
「シャマル…、駄目…」
フェイトは両手をバインドされたまま、乱れた息をおさえながら言葉を吐く。衣服は乱れ、顔は紅潮していたが、蒼い瞳は理性を繋ぎ止めていた。物理ダメージを伴う魔法を使った以上、誰か来てくれると思った。ここは管理局の病院だから、すぐに誰かが………
「え? …あぅえぁあああ!!!!!!!」」
フェイトの脳を快楽が貫いた。右胸・左胸の気持ちよさが止まらなかった。いや、先程のシャマルの指よりも激しい震動が彼女の胸先を襲った。
「やぅ、あぁぁあぅあぅあぁうぁうあああ」
足に力が入らない。中空に固定された手首に体重を預け両足から力が抜ける。
「フェイトちゃん、暴れちゃ駄目って言いましたよね、私。」
フェイトを抱きしめ、シャマルは下半身に手を伸ばす。
「もうフェイトちゃんは、私のお人形さんなんですから。世界のどこにいても気持ちよくなれるように、フェイトちゃんの可愛い胸に魔法をかけてあげたんですよ。」
「そ…ん…やぅ…もうやめ……は…」
喘ぐフェイトを優しく抱きしめると、フェイトのパジャマのズボンを降ろす。
露わになった腿を撫で上げ、ショーツの下に手を忍ばせる。
「フェイトちゃんの大事な所に指が届いちゃいました。ここも気持ちよくなれるようにしてあげますね」
シャマルの指輪が光ると、光はフェイトの秘所から吸収されたように見えた。吸収された魔力はフェイトの快楽の引き金を引く。
「!!ぁやめや、あぁぁぅぅあぇ」
胸の気持ちよさの比ではなかった、股間から甘い衝撃が脳にぶつけられる。正気を保つのが精一杯だった。
「触っただけで気持ちよくなっちゃいました? ちょっと火を入れただけなのに、もう我慢できないんですね。」
フェイトの股間を探り、クリトリスの場所を探り当てる。
「も…う…やめて、私を変にしないで…」
「変になんてしてないですよ。気持ちよくなれるように繋いであげただけです。」
「フェイトちゃんは、元々えっちなんです。こんなに濡れてるのは、身体がえっちな証拠なんですよ。」
シャマルの指が細かく震える。瞬間、意識が飛んだ。
「あぁぁぅぅあぇ、やめぇぇぇ」
気持ちよさが全身を包んで、頭が真っ白になった。身体に力が入らない。
我慢したおしっこをようやくできたような、そんな気持ちよさの何十倍も気持ち良かった。
微妙な組み合わせですが、続き物です。
小説描くのは5年ぶりなので、稚拙なのはご容赦下さい。
もっとエロくできるように頑張ります。
批評批判歓迎。
読み返してミスに気が付いた orz
>はやてちゃんの側を離れるわけがない。
はミスです。フェイトはちゃん付けしません。マジすまんです。
>>396氏
GJ!そいや防御呪文の研究をしている〜な事を前に言ってましたね
>>277 396氏、GJ!
楽しませてもらっています
>>396氏
乙&GJ!
次回修羅場大歓迎!
ちなみに稚拙どうこうは反応しない方がいいと思うよ
396氏乙&GJ!
はげしく次回が気になります。
この時のためのアリサフラグでしたか。
このスレは殺人予告まであったし律義にレス返さなくていいですよw
>>291乙!
他のSSと区別つけるためにタイトルかコテハンつけたほうがいいかもしれません。
GJっす。
ありえない企画
なのはVSフェイト 100番勝負
その一 バーコードバトラー対決
>>396氏GJ!
ユーノが、ユーノがいないのに、
なんでこんな奴らがここにいるよのよーっ!>次元管理局員's
なんかこのまま「虚数空間に埋もれさせておきたい臭」がプンプンですが、
これであの魔導師の恨み事の原因、こいつらだったりしたら
スターライトブレーカーものですな。
>ユーノの使用した魔法の資料
だめだよユーノくん、こういうのはちゃんと処分しておくなり
暗号にしておかないと…。 せっかく作ったのに、禁術にされちゃったよ。
……新魔法、完全版・ブラッドバインド製作希(ry
次回のアリサの反応が怖楽しみです。
>>396氏GJ〜
こういう主人公が一人だけ行方不明とか大好物なんで、シリアスシーンなのにニヤニヤしてしまうw
301 :
176:2006/03/10(金) 23:52:36 ID:To20fnJa
インジュー・ジョーンズ
発掘二日目 平行線な主役とヒロイン
「――で、この次元空間は現在ミッドを目指して進行中です」
「なってしまったものはしょうがないとして、これまた厄介なものね」
目まぐるしくスクリーンに映し出されていく情報を尻目にリンディは落胆一色のため息をついた。
「すいません、わたしが余計なことをしなければ」
「その言葉は隣に言ってあげた方がいいと思うわ」
「…………うん、僕が全部悪いんだよ。全部……全部……ふふ」
肩を落としどす黒いオーラを漂わせるユーノに思わずたじろぐなのは。
「僕のせいだ……僕がなのはにあんなこと言わなきゃ……」
「まぁ事態はそう急を要するものでもないし」
「そ、そうだよ。だって別に体はなんともないし人様に迷惑かけたわけでもないし」
「なのはに迷惑かけてる……」
手がつけられない。お手上げだった。
「あはは……やっぱり張本人だけあってロストロギアの危険性を一番わかってるわけか」
「張本人……」
リンディの咳払いにエイミィは愛想笑いを浮かべながらモニターに向き直った。
が、既に手遅れ。鋭く抉る一言でユーノの精神状態はどんどん危険な領域へ引きずり込まれていく。
後悔、自責、責任、賠償、損害、補償、懲罰、懲役、投獄――以下もろもろ。
頭の中をぐるぐる回る負の言葉。パンドラの箱とはよく言ったものだ。
「あの……それでわたしは一体何をされたのでしょうか」
実は事の重大さを一番理解してない少女が誰に言うわけでもなく疑問を投げかけた。
「それは私の方から……やっぱりユーノ君する?」
「……よろしければ」
302 :
176:2006/03/10(金) 23:53:47 ID:To20fnJa
流石に気を使って様子を窺うエイミィにおずおずと進言するユーノ。まるで上司に指示を請う平社員だった。
「じゃあ説明する……しますね」
――第三級捜索指定ロストロギア晴天の書。
かの有名な闇の書――夜天の書と同じ系統に属す魔導書。夜天の書が魔導知識を収集する一方、この晴天の書は世界の文化、自然などを記録する巨大ストレージデバイスである。
その特性のおかげで歴代のマスター誰からも破壊や改変が行われなかったという一種の天然記念物となっていたらしい。
ところが肝心の作りがあまりに粗野だったらしくいつの間にか破損し行方不明となってしまった。
「まさかそれが管理局にあったなんてね」
その片割れをなのはが偶然にも解読してしまい、あろうことか契約呪文まで唱えてしまった。
「縦読みしたら読めたというかなんというか……」
逆転の発想なのか国語の勝利なのか。
大体一小節読んだくらいで契約が執行される早漏デバイス聞いたことがない。仮に偶然が引き寄せた誤作動でも、こんな傍迷惑な話たまったもんじゃない。
「それで起動しちゃうあたりもうなんというか、艦長はどう思います?」
「そうねぇ……使ってくれる人が現れて喜んでいるんじゃないかしら」
どうやらここにある晴天の書の片割れは今までずっと次元の海を漂流していたらしい。それが起動されると同時に内部に収集していた世界の情報を展開。
それはあたかも一つの世界のように振舞いながら契約者のなのは目掛けてやってきてるというのがユーノとアースラクルーの結論だった。
「でもこれを機に回収できるんだしいいことじゃないの」
そうなればいいだろう。だが違う次元が接触するなんて聞いたことがない。もしかしたら接触したせいでなにかしら次元災害が起きたらそれこそ取り返しがつかないことになる。
「さて両次元が接触するまであと78時間ちょっとね。……無限書庫司書長、準備はいいかしら?」
「はい?」
「こういう未知との遭遇は遺跡発掘と同じでしょ」
いきなりの出動命令だった。
戸惑いを隠せないユーノにリンディはそっと耳打ちする。
(ずっと書庫に篭ってるなんて健康に悪いわよ。旅行だと思ってなのはさんと楽しんでいらっしゃい)
囁かれた言葉の意味を解する前に頭が熱を持った。そしてユーノは沸騰した。
「は、はいっ!?」
「たまには本業もしないと、あんまり仕事ばかりじゃ家の息子になっちゃうわよ」
茶目っ気たっぷりにウィンクしてリンディはエイミィの隣に行ってしまった。
「どうしたの? ユーノくん」
「あっ? え、いや……うん、頑張らなくちゃってね」
「発掘作業久しぶりだもんね」
何をどう受け取ったのかなのはは満面の笑みと共に頷いた。相変わらず天真爛漫で癒し効果抜群の笑顔だ。
303 :
176:2006/03/10(金) 23:55:51 ID:To20fnJa
「わたしも研修がなかったら行きたかったかな」
「その点ならご心配なく! なのはちゃんはあれの契約者なんだよ。こっちから出向けば相手の進行止められるかもしれないんだし」
腰掛けながら腕だけ上げてエイミィが自信たっぷりに答えた。
「研修ばっかりじゃうちの執務官になっちゃうよ。息抜きだと思ってユーノ君と二人で行っちゃいな!」
掲げた拳が親指を立てた。
てっきりユーノ一人で行くかと思っていたなのはにこの一言は思いもよらぬ不意打ちとなった。
二人きり。その事実を前になのはの頬は見る間に朱に染まっていく。
「あ、あははそんな二人っきりなんて」
「アースラクルー一同はちびっこカップルの味方よ!」
「え、えーと……」
どぎまぎしながらいきなりお泊り旅行はないだろうと内心この時のなのは思っていた。
恋のスタートラインを二人が切ったのはそれなりに前である。しかし進行速度は微速蛇行の超鈍足。
まだまだ恋愛初心者の高町なのはに二人っきりの旅は少々刺激が強すぎた。
「……でも僕たち二人でも危険すぎると思います。程度の低いロストロギアでも油断はできません。どの道もう少し人をつけたほうがいいと思いますけど」
なのはに代わってユーノが口を開いた。決してそれは照れ隠しの詭弁などではなく任務に対する要望である。
「まぁ確かに……それは私も賛成よ。レジャーにしゃれ込むには少し危険が大きすぎるわ」
「そういう危険性があるのも確かなんですが……」
「エイミィ、遊びじゃないの。それに初々しい二人にはスリルよりも情緒が必要よ」
「はぁい、じゃあアースラ職員二十名に応援追加ですね」
リンディにまで諌められればエイミィも反論の余地がなかった。残念そうにコンソールを操作し護衛につけそうな魔導師を検索し始める。
「危険が起きてからじゃ手遅れだからね。……なのは?」
「え? なに?」
「……そう、だよね。ごめん、僕が駄目なばっかりに変なことに巻き込んじゃって」
「ううん、元はといえばわたしが悪いんだし……それに全然気にしてないから」
304 :
176:2006/03/10(金) 23:56:54 ID:To20fnJa
実際なのはが気にしているのはもっと別のこと。前に向き直る横顔を見つめるなのはには悔やむよう戸惑うような複雑な表情が浮かんでいた。
ユーノの言うことは一理ある。確かに未開地域の探索に二人で行くなど無謀の極みだ。
それでもエイミィの言うとおり二人っきりで行きたい自分もいる。せっかく恋仲になったと言うのに会う機会が全然ないというのはあんまりすぎる。
だからユーノが何の躊躇もしない姿を見ると彼の心中には自分のようが考えがないように思えて少しだけ悲しくなった。
「なのははこういうの初めて?」
「う、うん」
「あんまり身構える必要ないよ。それほど危ない任務じゃないと思うし、なんだか冒険映画みたいで面白そうでしょ?」
ユーノには自分が緊張しているように見えたらしい。自分を案じてくれる言葉は聞くだけで胸が温かくなる。
「あ、でも流石に映画みたいなことはないと思うけど。いつもあんなんだったら身が持たないからね」
苦笑してユーノはおどけて見せた。そんな仕草の一つ一つが今の彼女にいとおしく映る。
なんだかそれが余計に悲しくなった。二人の関係が変わろうと二人は何も変わらない。今だってユーノはいつもと同じ態度だ。
自分が踏み出せばいい。だけどどうしてか勇気が出ない。隣にいられればそれでいいともなのはは思っている。
確かにもっと先へ進みたい。漫画のような恋愛をしたいと望むけど、それ以上にそれで関係が気まずくなって壊れてしまうことを彼女は恐れていた。
「準備はすぐに出来そう?」
「はい、最低限の装備はいつもしていますから」
「なら大丈夫そうね」
既に打ち合わせを始めているユーノとリンディを横目になのはの心中は決して穏やかではなかった。
だけどもしなのはの感じている思いがユーノと同じだと知った時に彼女はどんな顔をするだろうか。
もっとも今のユーノになのはのような恋にしり込みするような感情はすでにない。いわば恋をきっかけに二人の心が逆転してしまったようだ。
鈍感のユーノに臆病のなのは。
それ以上を望むなのはに今を満足するユーノ。
いやはや二人が先へ進むにはもしかしたら情緒よりもスリルの方がいい薬になるかもしれない。そう言った意味でエイミィの提案は非常に二人に適当だった。
もっとも彼女がそこまで深く考えているとは限らない。単に面白がっているだけかもしれないが。
「……ユーノくんのバカ」
自分でも聞こえないくらいの声でなのはは呟き頬を膨らした。
冒険は初っ端から嵐の予感だ。
305 :
176:2006/03/10(金) 23:58:21 ID:To20fnJa
インジュ・ジョーンズ略してインジョー
第二話です。
鈍感さんななのはは恋をしてからどうなるか?
そんな感じで出来たらいいなと思っていたり
次回から段々とドタバタを拡大させていこうかと思います
>>聖氏
某スレで上げられてたフェイト絵が思い出されました
使っていたのはユーノのですが。ともかくGJです
>>640氏
三人はばらばらですか……
最後はうまく纏まるといいんですけどね
「知る人ぞ知る」については水準以上の人ならみんな知っているはずと
その手の人しか知らないはずの二通りの意味があったと思ったのですが
間違っていたら修正します。
>>さつま氏
クロノが壊れた
まだまだなんとも言えませんが続き期待しています
>>396氏
えっ、ユーノくん消滅?
まだ一波乱ありそうですが謙遜なさらず頑張ってください
>>291 わ〜い、また腹黒いシャマルだ〜
エロイの歓迎どんどんどうぞ
>>549氏
多分近いうちに上記のことも含めて今まで書いてきた物の修正を
まとめて出そうと思うんですけど(量はそれなり)メモ帳なんかに書き起こして
アップローダーしたほうがよろしいですか? 迷惑かけてすいません
306 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 02:10:44 ID:B73W8Gil
GJ!両思いになったら2人の考えが逆転したというのはありえそう。
次回も待ってます。
ここって、ちっともエロいのこないね。
たまに「ディープすぎるぜ!」ってのは来る
ここのSSは別にエロ抜きでも面白いし、俺は微えちぃのも好きだよ
たまにくる「うわっ、なのはエロ!!」てのもイイ!
>>307 そんな貴方は素敵なドリルなのは画像でも見て
心を癒してくださいな
「あまりうちを怒らせんほうがええで・・」
「はやてちゃん?」
「はやて?」
インジュー・ジョーンズってタイトル見て
インディー・ジョーンズ→リンディー・ジョーンズ
なんてのが頭に浮かんだ
それだけ。
えーと、ハードな話を書くのに行き詰まって、
ちょっと気分転換でソフトな話を。
ちょっとと言いつつ続き物だったりしますが。
最初なので18禁にするほどの描写はでません。
全部で3スレ、約6KB。
魔法少女リリカルなのは Days
1.目覚めは王子様のキスなの?
AM5:00 高町家次女の部屋。
Pi,Pi,Pi,PiPiPiPiPiPiPi♪ Pi...
「……うぅぅん……」
わたしは高町なのは、市立聖祥大付属小学校の三年生、そ
して魔法少女なんてものもやっていたりして。
小学生が起きるには少々早い時間なのですが、人の少ない
早朝は魔法の訓練には最適な時間帯で、わたしはずっと早寝
早起きをしています。最初は結構つらかったけど、今ではすっ
かり早起きにもなれました。
とは言っても、たまには少々起きるのがつらい日もあった
りしまして、それは今日だったりするのですが。
きのうはお兄ちゃんと一緒にすずかちゃんちへディナーに
およばれされまして、ちょっと夜更かししてしまいました。
時間は気にしていたのですが、夜は一人じゃ帰れないし、お
兄ちゃんをおいてノエルさんに送ってもらうのも変だし、肝
心のお兄ちゃんは忍さんと部屋にこもりっきりで。お父さん
におもいっきり怒られたのは仕方がないと思います。
「It is a morning, Master.」
「なのは、起きないの?」
同じ年くらいの男の子の声と、かっこいい女性の声。
男の子はユーノ君、フェレットの姿をしてるわたしの魔法
の先生です。
女性はレイジングハート、わたしのパートナーでいわゆる
魔法の杖さんです。
「きょうはもうちょっと……」
ユーノ君も猫さんたちに追いまわされて疲れてるはずなの
に。
あー、まぶしいから毛布をひっぱらないでー。
「うぅぅ」
「しょうがないなぁ。レイジングハート、なのはを起こして」
あきれちゃったのか、強制手段にでるみたいです。
でも、レイジングハートに起こさせる? 何をさせるんだ
ろう?
レイジングハートは自分じゃ動けないし、自動で発動して
くれる魔法はあるけど、プロテクションとかの防御魔法だし。
ユーノくんも魔法にデバイスは使わないし、もしかしてま
だ教えてもらっていない魔法かな? でもお寝坊さんを起こ
す魔法って何だろう?
あ、そんなこと考えてないで、目だけでも手でかくして寝
なくちゃ。
「I wake up a master.」
張り切ったレイジングハートの声。きっと、くじけそうな
わたしを励ましてくれているんだよね。やっぱ起きなくちゃ、
でも、やっぱり眠かったり……。
「っ!」
えっ、な、なに?
なにか、口をふさいでるの?
手を押さえられて目が開けられない!
「んっ」
な、なめてる? でも、なんか、ちょっと違うような。熱
くて、やわらかくて、ぬれてて。
(えーと、その、これって、キス、なんでしょうか?)
やっぱりそうだよね。わたし、いまキスされてる。ファー
ストキスは大好きな人とって、みんな言っているけど、誰な
のかな。知らない人なんて……。
もしかして、ユーノくん? ユーノくんなの? でも、ユ
ーノ君がこんなことするとは思えないし。
体は押さえられてないから逃げられるはずだけど、すくん
じゃって動けない。あまり乱暴な感じはしないけど、よく誰
なのか分からないし。
でも知らない人ならユーノくんがとめるだろうから、お母
さんかお姉ちゃんのいたずらなの? でも、お母さんの匂い
も、お姉ちゃんの匂いもしないのはどうして? まさかユー
ノくんも?
「んんっ」
や、はいってくる!?
なにこれ、ぬめぬめして、やわらかくて、これって舌?
なめてる、わたし、口の中なめられてる。歯も、はぐきも、
みんな、れろれろなめられちゃってる。でも、なんか、これっ
て……。
(な、なんか、へん……)
熱いの。なめられたとこが、なんか、熱いの。
温かい飲み物を飲んだみたいに、ぽかぽかして。
もう目が覚めてるのに、頭の中がぽわぁってして。
体中の力がぬけて、わたし、口の中だけになったみたいで。
(きもち、いい……)
なんでだろう?
お母さんに抱きしめられた時みたいにふわふわして、とて
もきもちよくて。
「ぁ、ん、んちゅ、んん」
誰か分からないのに、なんでなの?
からんでくる舌が、甘くて、とろけそうで、きもちよくて。
わたし、きっと、この人を知っている。
わたしのこと、大事に思ってくれている。
ふれているのは唇と舌と口の中だけなのに。
そうなんだって、思ってしまうのはどうして?
あなたは、だれなの?
「ちゅ、んく、ん……ぁ」
とつぜん、その人がはなれて。
わたしの舌も唇もおきざりにして。
なにがどうなったのか、わからなくて。
「ん、はぁぁぁ……」
でも、それで息苦しいのにやっと気がついて。
わたし、ずっと息をとめていたみたい。
大きく息をすって、ちょっと落ちついて。
(わたし、キス、されちゃったんだ)
キスが、こんなきもちいいなんて、わたし知らなかった。
お父さんとお母さん、毎日こんなことしていたんだ。
きのう、おにいちゃんも忍さんとしていたのかな?
(わたしの、ファーストキス……)
唇がぬれてる。わたしにキスした人のかな。
気配がするから、まだ近くにいる。
たぶん横でベッドに座ってる。
わたしを、見守っている。
目をあけるのはこわいけど、でも……。
「…………ぇ?」
金色の髪、白い肌、赤い瞳。
最初、ちょっとだけフェイトちゃんかと思ったけど、そん
なことはなくて。フェイトちゃんはアースラにいるはずだし、
何よりその人は大人だったから。
背も高くて、スタイルも忍さんやノエルさんくらいよくて。
キラキラ光る金髪は金属の糸のように細くしなやかで。肌は
雪か牛乳のようににごりなく真っ白で。瞳は宝石のように真っ
赤に輝いていて。
「……えーと、ど、どちらさまでしょうか?」
その人の格好は学校の制服みたいな感じで。ううん、制服
よりもバリアジャケットの方が似ているかも。少し冷たい感
じなんだけど、胸元を飾るピンクのリボンがとてもかわいく
て。
「Good morning, master.」
口はまったく動いていないけど、わたしがよく知る声でそ
う言ったのは、目の前にいるその人で。
「…………へ?」
「なのは、まだ寝ぼけてるの?」
ベッドに飛び乗ったユーノ君が、わたしの手の上に赤い宝
石をおいて。
「どちらさまって、レイジングハートに決まっているじゃな
いか」
「Condition green.」
顔は人形のようにピクリとも動かないけれど、やさしく笑っ
ているように見えて。
「ふぇぇぇぇぇぇ!!!」
もしもレイジングハートが人型になったら?
コンセプトはマンガ第一話をどれだけエロパロ的解釈が
できるかチャレンジ! です。
しかし、SS03もVFBも色々と衝撃でした。
二次創作する人には必須ですね。
>176氏
新規じゃなくて修正版なら数日残って直リンできる
アップローダにおいてもらえれば。
あ、AM5:00は練習開始で、起床はAM4:30だった。。。orz
>>549氏
>「どちらさまって、レイジングハートに決まっているじゃな
>いか」
>「Condition green.」
( Д) ゚ ゚
( Д ) ゚ ゚
「ちょ、ちょお待って!!なのはちゃんそれ、どういうことや!?」
二体の「夜天の書」の撤退を確認し。
結界を抜かれたことでもう彼女達が積極的に打って出てこないであろうと判断したクロノに
内部へ増援に向かうよう指示を受けたなのはは、はやてにもついてくるよう告げ、
彼女達と合流するまでの間に自分の体験した「出来事」を彼女に打ち明けていた。
「・・・言ったとおりの意味だよ」
俄かには信じ難い、その体験を。
失われた、彼女とのあるはずのない再会を。
「わたし・・・会ったんだ。夜天の書・・・リインフォースさんに」
伝えながら、彼女は思い出す。
数年ぶりに会う銀髪の女性の見せた微笑と、願いの言葉を。
夢現になんら変わらぬ姿で現れた、夜天の書・リインフォースの託していった想いを、噛みしめて。
魔法少女リリカルなのはA’s −変わりゆく絆−
第九話 彼女の遺した言葉
───それは数時間前。はやてがアースラへと到着し、事件の詳細をエイミィ達から聞いていた頃と、丁度重なる。
『久しぶりだな・・・。あの時の小さな勇者が、大きくなった』
いつの間に自分は、そこに立っていたのだろう。
彼女はいつから、そこにいたのだろう。
気がつくと真っ暗な闇の中、二人は対峙していた。
『六年とは・・・長いものだな・・・』
そう、六年。
あれから六年、どうやって生きていたというのか。
何故今になって、自分の前に姿を現したのか。
主であるはやてはこのことを知っているのか。
今思えば不思議なほど、それらの浮んで当然の疑問は一切感じず、なのはの口から出ることはなく。
二人はただ、当たり前のように相対していて。
『不躾だが、許してくれ・・・私には、あまり時間がない・・・』
たった一言、その一言で、ごくごく自然に彼女は頷いていたのだった。
彼女の言ったその言葉が事実である、ということを奇妙な素直さで受け入れている自分が居た。
「・・・・多分あれは、今はリインフォースちゃんの入ってる剣十字に少しだけ残ってた、あの人そのものだったんだと思う」
無力なかけらとなった彼女に残されていたのは、ほんの少しだけの、文字通りの最後の力。
僅かに残った力でなのはの前に姿を現した、彼女の想いが形となった幻影だったのだろう。
彼女はそのように推測する
。
今にも消えていきそうなその存在が精一杯の力で白服の少女に託した言葉、それは。
『・・・どうか』
「・・・『どうか主達を頼む。私の妹達を、止めてくれ。目覚めた、私の分身を』・・・って」
「リイン・・・フォースが・・・?」
「そ、それで!?そっからどーしたんだよ、あいつは!!」
ふるふる。否定の頭を振り、今にも食いつきそうな勢いのヴィータへと静かに解答を返すなのは。
「・・・それっきり。暗闇が晴れたと思ったら、わたしは支局の教官室の机でうたた寝してて。それで・・・」
左手のレイジングハートを示す。
「レイジングハートにあの遺跡の細かいデータがいつの間にか、どこからか転送されてきてたの」
それが到着と同時にアースラに送ったあの資料だよ。なのはは一同に告げる。
「最初は夢かと思ってたけど・・・入ってたデータもなんだか変だし、とりあえずみんなに連絡をとろうと思ったの」
「なるほど・・・な」
「そうしたら、本局のリンディさんから支局に連絡があって。ユーノ君と遺跡のこと聞いて、代理の教官に引継ぎだけして、慌ててこっちに」
なのはの説明を聞いて、クロノ達はようやく納得していた。
道理で彼女が到着した際、夜天の書達を見てもさほど驚いていなかったわけだ。
言葉を聞くだけでは彼女の見た単なる夢ではないかとも思えるが、彼女の持参したデータという、それを裏付けるものがある。
「ここにくるまでの間に、レイジングハートに入ってたデータには目を通したんだけど・・・あの遺跡、データ上の通称『仮宿』──」
なのはが遺跡のほうを見下ろすのにつられ、他の面々も同様に岩塊でできた構造物に、目を向ける。
「───・・・止められるのは、夜天の主だけみたいなの」
「!!」
「わたしの解釈が間違ってなければ、なんだけど・・・」
「エイミィ、どうだ?」
若干自信なさげに苦笑するなのは。戦闘魔導師が本分の彼女としては自身の資料解読力が不安なようだ。
それを受けクロノは、先ほどから送られたデータを解析しているであろう部下へと結果のほどを尋ねる。
『はいはーい』
通信を受けた先の彼女は休まず高速でキーボードを叩き解析を進めつつ、上司の要求する情報を彼へと伝える。
『うん、なのはちゃんの言うとおりみたい。中心部のシステム中枢に、その当代の主の魔力パターンを認識させる必要があるって』
「そうか・・・」
『あと、もうひとつ。正直けっこうきつい情報』
「?なんだ」
『さっきまでみんなが戦ってたあの「夜天の書」・・・あれは本体破損時のための予備機らしいんだけど』
「ああ」
『全部で四機、あの中にあるって。つまりさっきの二機の他にまだ、二機遺跡内に存在してるってこと』
「・・・そう、か・・・」
考え込む顔のクロノ。
提督として艦長の立場になり、現場に直接赴く機会は減ったが、その現状把握と対応能力は些かも錆付いてはいない。
しばしの後、はやてのほうを向き声をかける。
「はやて」
「っ、は、はい」
心配げなリインフォースを肩に乗せ俯いていたはやてが、びくりと反応して答える。
彼女も、自分が呼ばれた理由はちゃんとわかっているはずだ。
「・・・聞いての通りだ。どうやら君がこの任務の肝らしい。ヴィータも突入にまわって、なのはと一緒にフェイト達に合流してくれ」
「大丈夫?」
「ああ、ここは武装隊と僕で抑える。遺跡にさえ手を出さなければ、艦までは攻撃してこないだろうしな」
「・・・・」
『マイスター・・・』
「はやて」
夜天の主の瞳に浮ぶのは、一瞬の迷い。聞いた事実と、待ち受ける者達の姿に対する。
だけど、それは本当に一瞬のことで。
「・・・はい、行きます。あの子の妹達を止めるのは、主である私の役目やから」
一時の思考、閉じられた双眸が再度開かれたそこには。
なのはの話を聞く前の困惑に揺れる不安定な光のかわりに、
死してなお己を想ってくれているかつての従者に対する、深い信頼と愛情に基づいた強い意志の輝きがあった。
「あの子の願いに、応えたらんと。・・・な、リインフォース」
『はい!!』
彼女の名を継ぐ、現在の自分に力を貸してくれるデバイスの少女へと微笑みかける。
沈んでいた主の顔に笑顔が戻り、それを向けられた彼女は、同じく満面の笑顔を返した。
「よし・・・頼む。高町なのは以下四名、フェイト執務官達の救援に向かってくれ。合流後は、彼女の指揮に従ってくれればいい」
『ああ、それから!夜天の書のスペア達は転生機能ないから、封印、可能だよ!!以降何かわかり次第デバイスに転送するから!!』
「『「「はい!!」」』」
* * *
(・・・本当は)
遺跡へ向かって飛び、はやて達の背を追いかけながら、なのはは思う。
幸いにして彼女達の進行を阻むものは現れず。
なのはの心にはやて達には告げなかった事実を思い起こすゆとりを与えていた。
(本当は、それだけじゃない・・・)
『憶えているか・・・?私が6年前、言ったことを・・・』
彼女の黙っていた、リインフォースの今際の際。
魔導の書の主たる少女にすら黙っていた最期は、他の誰でもない。
高町なのはという一人の少女に対し遺された言の葉であったから、言えなかった。
(リインフォース、さん・・・)
それは消えゆく彼女の遺した、二度目の遺言。
『もう・・・お前は出会っているはずだ・・・』
(・・・誰、なんだろう・・・?)
与えられたその託宣にも似た別れ際の言葉を思い浮かべるたび思い浮かぶのは、
なぜだろうか、二人の大切な友の顔だった。
『・・・海より深く愛し』
自分に背を向け走り去っていく、フェイトの見せた非難する視線と。
『その幸福を守りたいと思える者に・・・』
(私の、海より愛し、守りたい人は・・・・)
いつだって側にいて笑ってくれていた、栗毛の少年の笑顔の数々。
彼の笑顔と、フェイトの泣きそうな顔が、ひたすら交互に心を埋め尽くす。
笑顔のあとには、平手打ちの感触を思い出し。
『ユーノが可哀相』───、その声に重なるように少年の微笑みが胸を締め付けていく。
(リインフォースさん・・・あなたは・・・何が言いたかったんですか・・・?)
少女の無垢な心は、未だ気付いていない。
自身の内でその問いの答えが、既に出ているということに。
「気付かないこと」、それの孕む残酷さを、少女はまだ、知らない。
高町なのはにとって、海より深く愛す人がだれなのか。
守りたいと思える存在が一体、誰なのかという事を。
はい、今回はなのは側の種明かし回になりますー。
設定やらなんやら詰め込むと文章のクオリティが下がる辺りダメですねorz
>>さつま氏
もう勢いで突っ走っちゃってください、いけいけゴーゴー
>>396氏
なのはがテラ切ナス・・・。はよユーノ帰って来い
>>287氏
シャマルが黒いのは正しい解釈です(待て
あの子はCDでも漫画でもフェイトの呼び方が定まってくれない困った子orz
>>176氏
ぶんむくれなのはktkr
>二通りの意味があったと思ったのですが
言われてみればそうだった気も・・・。多分こちらの勘違いですね、スマソ
>>549氏
レイハ様ああぁ〜〜!!
人間体でも英語なレイハエロス
>>549氏
やりやがりましたね、擬人化RH。
と言うかいいのかユーノ。
好きな女の子のファーストキスを奪われて。
>>640氏
乙です!もうwktkしっぱなしですわ。
いつ鈍感娘が気づいてくれるのかと…
レイジングハートで型月吸血姫のひと連想した俺は17分割されてきます
Donna Burke女史を想像した俺は新幹線にぶっ飛ばされてきます
SS02聴いた後で読んだからレイハがリインに見えた。
なにはともあれ>
>>549氏>640氏おつ
こんにちは396です。176氏、640氏乙!
176氏と640氏の小説を読んで自分も書こうと思ったので
ほんとに尊敬してます。とても続きが楽しみです。
549氏GJ!今回は微エロのようでしたがこれからどこまでいくのか
怖いような楽しみなような…。バルディッシュが擬人化したらどうなるんでしょうか。
それでは続きを投下します。
魔法少女リリカルなのはA's+
第十話 「絆」
「もーー我慢できない!!!ねぇ!!フェイト、ちょっとこっち来なさいよ!!」
「ア、アリサちゃん!」
アリサの怒声に教室の喧騒は一気に静まりかえり、周りの視線が集まった。もうそろそろ次の授業が始まろうとしていた。
すずかはおろおろとしているだけで今のアリサを止めることはできなかった。気持ちは痛いほどわかるから…。
「立って!ほら、立ちなさい!!行くわよ!!」
「………」
アリサは強引に腕をひっぱりフェイトを引きずるようにして教室を出て行った。
すずかが謝るようにぺこりと頭をさげ、その後についていった。
もう授業は始まっており屋上にはだれもいなかった。風もなくおだやかな晴天である。
しかしそんな気分のよい天気であるにもかかわらず、屋上は暗雲のような雰囲気に包まれていた。
「なのははもう二週間以上も学校休んで!!フェイトも学校に来たかと思ったら死んだような目をして話もまったく聞かない!!
馬鹿でもわかるわ、なんかあったって!!!」
アリサがいままでの鬱憤を晴らすように怒鳴った。
「いいから話しなさいよ!!!」
「ア、アリサちゃん…言いにくいことかもしれないし…それにはやてちゃんは任務って言ってたよ?」
なのは同様、はやても学校にまったく来ていなかった。メールを送っても返ってこない。
今まで任務で学校を休んだりすることは何度かあったが、こんなに長期間休むことはなかった。
「…………」
それでもフェイトは黙って視線をそらしていた。そんなに自分達は信用がないんだろうか…。こんなにずっと一緒にいるのに。
アリサの怒りは頂点に達した。
「なんとか言ったらどうなのよーー!!!」
フェイトの胸倉を掴んで詰め寄る。
ガンッと屋上の金属製の扉にフェイトがぶつかった。
「ね、ねぇ、もういいじゃない…そのへんに……」
「ユーノが……」
すずかのなだめの言葉を遮るようにフェイトがアリサを見ずに言った。
「え……?」
ようやく返ってきた返事に意外な名前が出てきてアリサは驚いた。
その様子を横目で見ながらフェイトが続けた。
「ユーノが……………死んだ」
「「!?」」
あまりの衝撃に二人は息を呑んだ。
「う…嘘……でしょ……?」
掴んでいた胸倉を離し、アリサは2,3歩あとずさった。すずかは口に手をあてて固まっている。
フェイトは無言で首を振った。
頭のいいアリサでもその言葉は理解できなかった。いや、理解したくなかった。
(あいつが……死んだ?)
まさか、そんな……
だって…え?
思考がぐるぐると回る。絶対に到達したくない結論をいつまでも回避するかのように。
しかし、その思考の円運動は最後には中心に収束した。
「あ…あたしは……なのはとフェイトが好きだから……諦めたのに……それなのに!!なんで!!守ってあげなかったのよ!!!!」
アリサが目をぎゅっとつぶって叫んだ。長かった髪の毛は今は短く切りそろえられている。
もう何も見たくなかった。何も考えたくない。
「アリサちゃん…」
すずかがぽんっとアリサの肩に手をのせた。
アリサが涙でにじむ目を開けてフェイトを見た。
「あ……」
フェイトは泣いていた。声も出さずに。目には何も映っていなかった。……そう、何も。
(一番つらいのは…なのはとフェイトだもんね…)
アリサは力が抜けその場に座り込んでしまった。
真っ暗な思考の闇の中、フェイトは最後のあの時に聞こえたユーノの声を思い出していた。
『フェイ……3年前……あり……う…』
(フェイト、3年前、ありがとう?)
聞こえた文字を一番可能性が高い単語に置き換える。
(……3年前……)
フェイトは少しずつ昔のことを思い出していった。
*
「え、映画?ぼ…僕と一緒に?」
ユーノの目は完全に点になっていた。
「うん。だ、駄目?」
フェイトが上目遣いにユーノを見上げた。
「だだだだ駄目だなんてと、とんでもない!!!で、でも、いいの?試験勉強は?」
あまりに突然の申し出にユーノはつい否定的な意見を言ってしまった。
「あ…うんっと…息抜きも必要かなって」
机に広げてあったたくさんの本を積み上げながらフェイトが言った。
「ユーノだって最近働きづめでしょ?」
無限書庫の管理に加え、なにやら魔法の研究もしているようだ。そんな中勉強も一緒にやってるんだから
フェイトより疲れているはずである。
「あ…うん」
たしかに最近はあんまり休んでないとユーノも思っていた。それに、なのはの世界の映画とやらも一度は見てみたかった。
「わかった。楽しみにしてるよ」
「ほんと?よかった!」
さすがのユーノも可愛い女の子からのデートの誘いを断るほど鈍くはなかった。
(ん?デート…?いやいやいやいやいや!!!!い、息抜きだから、これは!)
やはり鈍かった。
映画の内容は離れ離れになった恋人が再び出会うというなんともありきたりなストーリーであったが、
演出はとても凝っていて終わる頃には館内ですすり泣きの声が聞こえてきた。
試験勉強を開始したあの日、なのはとクロノを見て飛び出してしまったユーノをなんとか慰めたくて今回勇気をふりしぼって
誘ったフェイトだったが、始終隣に座る少年が気になってしまってほとんど集中して映画を見れなかった。
少しでもなのはの代わりになれれば。当初はそう思っていたが、自分の中にまったく別の感情があることに気づいた。
自分を見て欲しい。誰かの代わりではなく。その笑顔を自分だけに向けて欲しい、と。
そのような複雑な想いを胸に、明るくなった館内で隣に座るユーノを見てフェイトはぎょっとした。
次々と流れ落ちる涙を必死に服の袖でぬぐい号泣していたのだ。
(か、可愛い……)
本人に言ったら怒りそうだがフェイトは素直にそう思った。
「うぅ…よかったなぁ……ってフェイト、もしかして面白くなかった?」
驚きの表情でこちらを見てくるフェイトにユーノは恥ずかしそうに言った。
「う、ううん!!ち、違うの!その…と、とっても感動したよね!!!」
全然見てなかった。そんなことは口が裂けても言えなかった。
「そうだよね…。やっぱり絆があれば、絶対また巡り合えるんだよね」
ユーノがごしごしと目に残る涙をぬぐいながら言った。
「うん…」
おぼろげながら映画の内容を思い出すフェイト。こんなことならちゃんと見ておけばよかった。
DVDが出たら絶対買おう、と思った。
「僕には本当の親って呼べる人がいなくて……。でも、いつの日か会えるんじゃないかとも思ってるんだ。
諦めたら、そこで絆は切れちゃうような気がして…。無限書庫で一族ともなのは達とも離れて暮らしてるけど、
みんなとの絆があるから寂しくない。だって、また会えるんだから」
映画に感化されたのか、普段は口にしないようなことをユーノは話した。
(ユーノ……)
その真っ直ぐな瞳を見ていると、フェイトは胸が高鳴り顔が熱くなるのを感じた。
「あ…あのね…」
フェイトが何か言おうとしたとき、急にアースラから通信が入った。
『テスタロッサさん!!休暇中申し訳ありませんが、至急こちらに来てください!!』
目の前の魔法陣に詳細と座標が示される。
「あ……」
あまりに突然のことでユーノを呆然と見つめる。
「僕が送るよ」
そう言いながらユーノが手のひらをかざすと緑色の魔法陣が足元に広がった。
「みんなの助けになってきてね」
「あ、ちょっと、ユーノ!?」
何も伝えることができずにフェイトはそのまま転送されてしまった。
周りを見渡すと館内はすでに人がいなくなっていた。魔法は見られなくてすんだようだ。
一人残されたユーノが帰ろうとすると、ふいにあることに気がついた。
「あ!!お礼、言い忘れちゃった!!!」
それからユーノはデートをしたという恥ずかしさからか、何度もお礼を言う機会を逸し続けたのはお約束である。
*
(そっか。あの時のお礼か…)
思い出から現実にもどるように目を開いた。
座り込んで泣きじゃくるアリサをすずかが必死に慰めているのが見えた。
(絆…か)
ユーノが言っていた言葉を思い出す。
『やっぱり絆があれば、絶対また巡り合えるんだよね』
『諦めたら、そこで絆は切れちゃうような気がして…』
少しずつ、フェイトの瞳が輝きを取り戻す。
(ユーノが死んだ?まだ…そう決まったわけじゃない)
もはや絶望的との次元管理局からの報告。そんなものを自分は信じていたのだろうか。
スッと立ち上がる。まだ自分のやれることを全部やっていない。
「フェイトちゃん?」
その様子を見てすずかが驚きの声を上げ、アリサが充血した赤い瞳でこちらを見上げた。
「ごめん!まだ死んでない!!うん、ユーノは絶対生きてる!!わたしが見つける、だからアリサとすずかは待ってて!」
そう言ってバルディッシュを取り出す。
そのデバイスはひたすら待っていた。今この瞬間を。そして信じていた。自分の主人は絶対に立ち直ると。
キラリと輝き、フェイトの意志に答えた。
『フェイト!緊急収集!!クロノが呼んでるよ!』
突然アルフから念話が入った。みんな動き出したらしい。自分もいつまでも悩んでいられない。
『うん!わかった。すぐ行く!!』
『う…うん。早く来とくれよ!』
この二週間死んだようだった自分の主人の変わりようにアルフは驚きながらも念話を切った。
フェイトは転移せず、空中に飛び出す。アースラに行く前に会わなければならない人がいた。
自分と同じく失意の底に沈み、彼に想いを寄せる自分の友人。
「それじゃあ、アリサ、すずか!!絶対見つけてくるから!!!」
そう言ってフェイトは高速で学校の屋上を飛び去った。
「フェイトちゃん……よかった」
なにがそうさせたのかわからなかったが、立ち直った様子のフェイトをすずかはフェンスごしに見送った。
「連れてこなかったら、ただじゃおかないんだから!」
涙をぬぐいながら言うアリサは、怒った顔をしながらも心は落ち着き穏やかになっていた。
(無事に……帰ってきなさいよね…)
友人達の安全を祈るようにアリサは青く澄み渡る空を見上げた。
次回へ続く
その頃少年は見知らぬ土地にいた。そして動き出す少女達。
事態は新たな進展を見せる。
次回 第十一話 「不屈の心」
アリサ泣き損ですね。でもかなり好きなキャラであるのは登場頻度で気づいてる人もいると思います。
第三話が浮いた感じだったのは今回で回想するためでした。
回想部分が3.5話という位置づけです。
ついさっき玉置成実のReasonを聞いていたのですが今回の話に合ってるような気がします。
とうとう残り4話、次回から謎が解明されていきます。それでは。
>>396氏、禿しく乙&GJ!
も〜〜〜w〜ktkが止まらないったらありゃ〜しませんよ旦那
>>396氏、乙かれであります、そしてGJ!
先が楽しみで楽しみでしょうがないぜ!
>>640氏、396氏
乙&GJ!!
なのはさんマジ朴念仁w 本当に残酷な人だゼ…
そしてアリサマジ不憫('A`)
中学生アリサの髪が短かったのは失恋のせいなんだよ!!
(; ・`д・´) ナ、ナンダッテー !! (`・д´・ (`・д´・ ;)
一応完成。とはいっても今回はインターミッション的な話なんですが。
相変わらず展開の進みが牛歩のごとく……orz
こちらの神様たちや小説サイトの神様たちの小説を読み込んでいたら、自分の下手さ加減を痛感しましたよ……
自分の力量のなさを再確認してかなりへこんだりしつつ、それをばねにしようと四苦八苦しながら投下させていただきます。
上の文、思いつくままに書いてたらなんだか意味不明な文章になっちゃった……orz
7.そのうらがわで
「調子はどうだ?」
カタカタと目まぐるしくコンソールを操作しているエイミィにコーヒーを差し入れながら、クロノは尋ねた。
次元航行艦船八番艦アースラ。その中のエイミィに割り振られた自室でのことである。
当然ながら、部屋には二人の姿しかない。ディスプレイが表示されたことを示す僅かな音と、エイミィの動かす指の音しか聞こえない静かな部屋。
うっすらとした青色に染め上げられたその部屋で、エイミィは差し入れのコーヒーに口をつけながら答えた。
「ん、ありがと。……今のところ、怪しいところは何もなし」
「そうか……」
マグカップを傍らに置くと、エイミィは手早くコンソールを操作した。
二人の写真とその経歴が浮かび上がる。
「フィーゲル・レセシアルとレーゲン・ヴァッファ。どちらもミッドチルダ出身のデバイス研究者。
民間の大学卒業後にアシッド社に入社して、インテリジェントデバイス、特にそのAIのプログラムを研究してるみたい。
一応、過去に実験中に事故が起きてるけど、それも大したことないし、被害もほとんどなし。
開発中の実験の失敗なんてよくあることだし、短期の謹慎処分だけで済んでるみたい」
「現在この二人が開発しているっていうデバイスについてのデータは?」
「さすがにその辺は部外秘だから細かいところまでは分からないけど、アウトラインくらいなら調べられたよ」
簡単に恐ろしいことを口走るエイミィ。
通常、まだ発売もされていない研究中の内容などが漏れることなど考えにくい。
当然の話だ。まだ開発中のデータが漏れてライバル企業に先に作られでもしたら、大きな損害をこうむるのは間違いないのだから。
それを概要だけでも捉えているエイミィの手腕はすさまじいものがあった。
「開発コードはM-9、より高度かつ複雑化したAIの作成によって、インテリジェントデバイスの汎用性を高めることっていうのがお題目。
要するにデバイスをあまり必要としない結界魔導師とか、戦闘に携わらない民間人をターゲットにしたAIって言うことだね。
特徴は補助魔道回路作成機能。リンカーコアに直接バイパスを繋ぐことで、擬似的に魔道回路を作成する機能なんだって。
これを利用すればデバイスを必要としない魔導師でも意識容量が増えてより複雑な魔法の起動が行えるってのがウリ。
おまけにインテリジェントデバイスの自発的な魔法の発動がより高速化・大出力化することができるの。
一応他のインテリジェントデバイスにも、術者が危険にさらされた時には自動で防御魔法を行う機能はついているけど、これはもっと複雑で能動的な機能みたい。
理論上ではこれを利用すれば、闇の書の防衛プログラムみたいな複層式バリアを個人で形成することも不可能じゃないって。
もちろん、それにあわせてAIの方もより高次の判断が行えるようになってるそうだよ。
……いやはや、まだ開発段階とはいえ変わったデバイスだよ。これは」
エイミィが説明を続けているうちに、クロノはあごに手を当ててなにやら思案しているようだった。
その考えは、クロノ自身にもまだ言語化できる段階にはなかったらしい。ゆっくりと言葉を選ぶようにクロノは口を開いた。
「いや、そのデバイスの説明を聞いていたらちょっと、ね。
たしかにその機能は便利だ。まだ開発段階とはいえ、実用化されれば確かにデバイスの購買層の開拓にもつながるだろう。
けど、どうもこの二人の顔がちらついてね」
クロノの言う二人、それがフィーゲルとレーゲンの二人であることはすぐに分かった。
このデバイスを利用して、なにかを画策してるのではないか。その疑惑にとらわれているのだ。
その疑心暗鬼に本人が一番辟易しているようで、クロノは大きく首を振った。
「まったく、どうかしてるな。何の根拠もない人間を疑ってかかるなんて。執務官として失格だ」
「……ねえ。どうも分からないんだけど、どうしてクロノ君はこの二人にここまでこだわるの?」
エイミィの知るクロノは執務官としては能動的に行動することは少ない。
それはやる気の問題などではなく、自分のもつ執務官としての力が人の人生を左右するに十分だということを知っているからこその自制だ。
ゆえに、クロノは法に基づいて行動する。今回のように何の事件も起こしていない人間を調査することなど、非常に稀な事態だった。
クロノのことをあるいはリンディよりもよく知るエイミィだからこそ、クロノの行動に疑問を持っていた。
「僕だってあまりこういうことはしたくないよ。ただ……あの二人の目が、どうしても気になってね」
「目?」
「そう、目だ。僕だって執務官としていろんな人間を見てきたけど、ああいう目をした人間が一番厄介なんだ。
自分のやっていることの重みを理解して、それでもそんなことを鼻にもかけていない。……そうだな、あれは道楽者の目だ。敵に回すと一番面倒なタイプだよ。」
苦々しげに顔をしかめるクロノを見て、エイミィは何かに納得した。要するにクロノがあの二人を疑ってかかる理由は、ごくごく単純なものなのだ。
「なるほど。そういう訳か」
「……エイミィ?」
「ああ、いやいや、なんでもないなんでもない」
「……?」
クロノはまだ納得のいっていない様子だったが、それ以上問い詰めてくることはなかった。
「……まあいい。それに、あくまでこれはあやふやな勘に過ぎない。ここまで調査して何も出てこないのなら、僕の勘違いだろう。
法に反しているという根拠もないのに疑うなんて、僕も」
「あー、うん、それなんだけどね……ちょっと見てほしいものがあるんだ」
「見てほしいもの?」
エイミィがコンソールを軽く操作すると、当時の資料がいくつも浮かんできた。
事故の経緯や背景、実験内容などが書き込まれているそれは、なるほどエイミィの言う通りよく出来ている。執務官という管理職についているクロノの目から見ても、過不足ない完璧な出来だった。
「これがどうかしたのか? 特におかしいところはないようだが……」
「やっぱり、そう思うよね……」
エイミィはそう呟くと机に両肘を突いてあごを乗せた。彼女自身うまく言葉に出来ないらしく、もごもごとしばらく口を動かしている。
その態度が気になって、クロノは続きをたずねた。
「悪いが、君の意図が分からない。この報告書がどうしたんだ?」
「うん、これは調べててずっと思ってたんだけど……あまりにもよく出来すぎてるの。時空管理局だって結局のところ運営してるのは人だから、どこかしら矛盾や無駄があるものでしょ?
特にこんな小さな事故ともなると、調査だってそこまで徹底的に行われていたとは思えないんだけど……。なんていうのかな、薄汚れた壁が続く中、一箇所だけ染みひとつない真っ白な壁がぽつん、と立ってるみたいな感じというか……」
そこまで言われれば、クロノにも彼女の言いたいことは分かる。要するに、この報告書は何らかの意図で改竄、あるいは偽造されたものである可能性があるということだ。
なんの論拠にもならなかった勘が、ぼんやりとしながらも少しずつ形を作っていく。
「そうか……すまないが、もう少し調べてもらえないか」
「了解。その代わり、今度驕りね」
「……まったく、ちゃっかりしてる。」
エイミィは椅子の背もたれにもたれて、にんまりと笑う。暗に報酬を要求しているのに、その表情には悪びれたところがない。クロノは呆れて肩をすくめて呟くが、その目は穏やかに笑っていた。
「いいじゃない。この前マリーから聞いたんだけど、本局の近くに美味しいお店ができたんだって」
「分かったよ。それくらいなら安いものだ」
「うん。じゃ、決まりだね」
それじゃ約束とばかりに、エイミィが拳をクロノへ向ける。それに応じて、クロノの拳がこつんとぶつかった。
「さて、そうと決まればもう少しがんばりますかあ!」
「頼む。僕もそろそろ仕事に取り掛からないといけない時間だ」
「ん。頑張ってねー」
ディスプレイに視線を向けたままひらひらと手を振るエイミィに背を向けて、クロノは部屋を出ていった。
ドアから出る直前に、クロノはちらりとエイミィのほうを伺う。
――約束、楽しみにしてるよ。
一心に調査を進めてくれている相棒に感謝の言葉を口の中だけでつぶやいて、クロノは仕事へと戻っていった。
ミッドチルダの研究室の一室、メートヒェンが生まれた白い部屋の一角で、フィーゲルがディスプレイに移る文字の群れを凝視していた。
常人なら目を回しそうになるほどの情報量。
それを追う彼の瞳は、まるで目の前で手品を見せられた子供のように輝いている。
彼の後方で、スライド音を立ててドアが開き、今時アナクロな書類を小脇に抱えたレーゲンが入ってくる。
「フィーゲル、本局の方に研究室を借りる許可が出たぞ」
「本当? 予想してたよりも随分と早いじゃないか!」
思いもよらない吉報に、フィーゲルは振り返って相棒の姿を見上げた。
レーゲンは書類を抱えたまま肩をすくめる。
「少し非合法な手を使わせてもらったからな。出来る限り急いだ方がいい案件だろう?」
「さすが。そういう腹黒いことにかけては天下一品だねえ」
フィーゲルは満面の笑みで、心の底から相棒に対する賛辞を述べた。
レーゲンは眉一つ動かさずに淡々と、返礼を返す。
「ちなみに、袖の下はお前の預金から引いておいた」
フィーゲルの満面の笑みが固まった。
そのまま動かないフィーゲルの横を抜けて、荷物を自分の机に置く。
「い、いくらなんでもそれは酷くないか?!」
「仕方ないだろう。まさか経費として計上するわけにはいかん」
「それとこれとは話は別だろ……!予算が使えないことと僕の預金を使うことの因果関係に関する説明をもっとしっかり……!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐフィーゲルを完全に黙殺して、レーゲンは彼が見ていたディスプレイを覗き込んだ。
画面上で乱舞する記号の群れを視線で追う。
いつの間にか、やかましいフィーゲルの文句もなくなっていた。
端末を操作するカタカタという音と、空冷ファンが奏でる風の音だけが静かな室内に響き渡る。
しばらくの後、データに目を通し終えたレーゲンはため息をついた。
「……驚いたな」
「だろ? 僕にとっても正直予想以上の成長ぶりだ。こうなるかもしれないとは思っていたけど、まさかここまでとは思ってなかったよ。
よっぽどユーノ君のことが気に入ったらしい。今までマスターを選ばなかった、その反動かな」
フィーゲルは笑みを浮かべて肩をすくめた。
豊かな知性と包容力にあふれた、静かな笑み。子供の成長を喜ぶ親の笑みだった。
「闇の書……いや、リィンフォースの資料の方はどうだ?」
「予想通り、無理だった。あれだけのプログラムは再現不可能だし、それを支える魔力も現在じゃ個人の資質に頼ることになる。
今の僕らじゃ再現しようと思っても歪なバッドコピーを生み出した末に魔力が枯渇して衰弱死、ってのがオチだね。多分、ユーノ君でも同じだ。
……まったく、あれだけの子を4人も作って平然としてられる子だなんて、ロストロギアってのは恐ろしいねえ」
「なら、そっちのプランは諦めるか?」
「そうだね。こっちはあくまで補助的なものだし、一応代替手段の方は出来てる。
時間をかければいつかは再現できるようになるかもしれないけど、そんな気長なお付き合いになるかどうかは怪しいしね」
「今まで散々失敗してきたことが、まさかこんな偶然で望みが叶うことになるとはな」
「レーゲン、そこは偶然じゃなくて奇跡とでも呼ぼうじゃないか」
「なぜ?」
「決まってるだろ? そのほうがロマンティックじゃないか」
レーゲンは思わず苦笑した。もうすぐ30にも届こうかという年齢の男が言うにはあまりに子供っぽすぎる言動だが、それが不思議と似合っている。
いや、そもそものところ、フィーゲルは――おそらくは自分も――わがままな子供に過ぎないのだ。似合っているのが当然ともいえた。
「さて、これからどうなるかな」
「まさしく神のみぞ知る、だね。変化が起きるのは明日かもしれないし、一週間後かもしれないし、案外変化がないまま終わるかもしれない。
その変化にしたってどうなるかは僕らにだって分からないよ。それはあの2人次第だ。
……けど、注意を払っておいた方が良い人はいるけどね」
そう言って、フィーゲルはコンソールを操作して別の画面を表示した。
いくつかの魔導師の名前と経歴、顔写真の表示に、レーゲンは目を走らせながら尋ねた。
「このリストは?」
「ユーノ君の交友関係を洗ってみたら、なんとまあAAAクラス以上の魔導師がゴロゴロ出てきてね。この前あったハラオウン執務官のこともあるし、リストアップしてみた」
「……過保護だな。おまけに個人情報もいいところだ。ゴシップ誌の記者にでもなったほうが良いんじゃないか?」
「そういう事言わないの。何か問題が起きたときに僕らがフォローできなかったらそれでおしまいなんだから、できる限りの手は打っておくべきだろう?」
「できる限りのこと、ね」
それがどれだけの効果があるのか、レーゲンは疑問視せざるを得ない。
そもそもこの事態が二人にとって想定外の出来事なのだ。今のところいい方向に流れているとはいえ、この先どうなるかは見当もつかない。
正直に言えば、不安だった。自分達のやっていることに対してではない。そんなことは今更だ。
彼が不安に思っているのは、二人の望みが二人の感知しないところで進んでいく。そのことに対する不安だった。
たしかに今はうまくいっている。これ異常ないほどの幸運に恵まれているのも認めよう。
だが、真に望みをかなえようと思うのなら、この機会は見送って、自分達の手で確実に事態を進めていけるときになるまで待ったほうが良いのではないか。
そんな思いがレーゲンにはあって、そしてその不安は今頂点を迎えようとしていた。
思わず言葉が漏れる。
「……今ならまだ引き返せるぞ?」
それは法に、あるいは人の道に外れるかもしれない決定的な一歩を踏み出すか否かの最終確認。
その重みのある問いに対して、フィーゲルはいつもレーゲンが見ているその顔で笑った。
「レーゲン、馬鹿言っちゃいけない。今の状況と君が言う終わり、その全てが僕らの望んだことだ。
メートヒェンがユーノ君に出会って、今があって、その結末がどこにあろうとそれを見届ける。それこそが僕らの望みだろう?」
この道を選んだ結果の末に、望んだ結果ではないにせよ、犠牲を払った。
まだ露見していないだけで、それが時空管理局に知られれば、その行く末は身の破滅だ。
それだけの危険な橋を渡ってでも貫きたい、どうしようもない思いが二人にはあった。
だから、道を外れてまで今を選んだことを、後悔などしていない。
「……破滅さえも望み、か。救えない話だ」
それが分かるからこそ、レーゲンは苦笑して肩をすくめた。
心の底からの自嘲。けれど、清々しい気分でもあった。
フィーゲルも笑う。
――まったくだ。まったくもって、僕達は救えない。
自分達の望みは、そんな大それたものじゃない。
こんなことの為に罪を犯しているだなんて、傍から見たらバカ以外の何者でもないだろう。
おまけにやり方だって下手糞だ。やろうと思えばもっと上手くやることだって出来ただろう。
罪も犯さず、犠牲も出さず。ついでに言うなら利用もせず。ひっそりと完成させることだって、きっとできたはずだ。
それに何より、そうして失敗したことを後悔すらしていない。
なるほど、と心の中でつぶやく。
――要するに、僕達は悪党なんだ。それも頭に小がつくような。
それは本当にしっくりと当てはまって、そのことがおかしくてたまらない。
ああ、本当に、僕達はまったくもって救えない。
それでもまあ、今が楽しいのだから、いいじゃないか。
「気持ちを殺して生きるよりかはよっぽどマシさ。そう思ったからこそ、僕らはこの子のを生んだんだろう?」
「……違いない」
一応ここまでです。
……本当に内容がないな、これ……orz
>>176氏
GJです!軽妙なテンポがイイ!!
意外とここはコメディが少ないので、とても楽しみにしておりますw
>>聖氏
フェイトが、フェイトが……w
最初読んだときすわ聖痕の刻まれし蒼き鷹の管理人さんが光臨したのかと思いましたよw
GJですw
>>396氏
相変わらずの執筆速度、恐れ入ります。
話の展開も早くて面白いし、すごいなあ、と思いつつ、自分のを見てへこむ毎日ですよw
ただ、手抜き云々は誤解を招きかねないので注意したほうがいいかもしれませんね。
ともあれGJですw
>>640氏
プロトタイプリィンホース……?!
明かされていく謎に、なのはの参戦によって3人の関係にも色々影響が出てきてるようですし、リィンフォースと決着をつけるはやてのこともあって、続きが楽しみでなりませんw
GJですw
>>さつま氏
ものすごい壊れっぷりだなあ、クロノ……
いったい何があったんだと心配しつつ、タッグバトルに注目が。
キン肉マン読んでいないのが悔やまれます。
GJです。
>>287氏
エロ&ダークな展開に引き込まれました。
やっぱりここはエロパロ板なんだよなあと再認識しつつ、GJですw
続きを楽しみにしております。
>>549氏
レイジングハートですか!w
デバイスの進化もここまできたんだなあ……(違
当たり前のように紹介してるユーノ君に思わず笑ってしまいましたw
非常にGJなお話でした、続きが楽しみですw
書くのが遅いせいでレスの数がすごいことに……これから精進しますorz
保管庫を更新しました。
2月分までです。
追いつくまでやるつもりでしたが、
通販で買った同人誌が届いてしまったのでwww
外部CGIを使った検索機能を入れてみました。
ちょっと重いけど、無いよりましかな?
通常のサーチエンジンは検索避けで引っ掛からないので。
ついさっき気が付いたけど、本スレのテンプレに保管庫がwww
>本スレのテンプレに保管庫
すいません、それ多分俺がやりました。質問コーナーの追加ついでに密かに…
後悔はしていない。
>>549氏、乙ですー。ゆっくり同人誌お読みくださいwww
昨日見落としてたとことかあったので改めてレス。
>>250氏
少しスケジュール的にきついです・・・すいませんorz
予定としてはフェイト話+八神家ギャグの短編二本の入った本が一応確定。
短編というか短いだけのような気もしますが。ショートショート?
もう1本いけるかなぁ・・・?一応スレ住人向けのおまけも執筆中だし。
期待せずに待ってorz
>>396氏
お疲れ様です。アリサ・・・・自分も好きなキャラなんですけどね。
何故かうちの話では微妙に出番が・・・orz
うん俺の力不足orzごめんアリサ
>>430氏
うん、二人とも黒いね。だ が そ こ が(ry
>>396氏
ラストでは三角関係が四角関係に!
だがそれがい(ry
>>396氏GJ!
>「あ…あたしは……なのはとフェイトが好きだから……諦めたのに……
アリサアアァァーッ!!!
ここでフェイトの名も出るってことは、アリサはわかっていたんですね。
でも諦めたりせずに、ドロンドロンのデロンデロンな愛憎劇を繰り広げて欲し(ry
フェイトとのデート、テラホホエマシス。 あの後、こんな事があったんですなあ。
……ユーノ、早く帰って来い。
>>430氏GJ!
なんか気がついたらフィーゲル・レーゲンに肩入れしてる俺がいました。
メートちゃんとなのはさんの接触に注意だよ、フィーゲルさん。
まだまだ凄い力がありそうなメートちゃんによる
ユーノのスペシャルパワーアップに期待(キラキラ
>>549氏乙!
いつもお疲れ様です、重宝しております。
353 :
176:2006/03/13(月) 10:37:53 ID:u7OT3zol
発掘三日目 いきなりそうなんです
未開の土地に地図はない。いつだって冒険者達は古来からの知恵と己の勘を頼りに古代の栄光をその手にしてきた。
だがそこに至る道は必ずしも到達点が設けられているとは限らない。果てには時に命を奪うような罠が仕掛けられていることだってあるのだから。
「なめやがってーーっ!」
鬱蒼と茂った密林の空に怒声が響き渡る。
次の瞬間には奇怪なオブジェが鉄球の直撃を受けて盛大に爆散した。
空に飾られる灰色の雲。ふわふわと漂うこともなく風に流される中を緋色の騎士が軽やかに降りてくる。
「歯ごたえないくせにちょろちょろ出てくるんじゃねぇよ」
物足りなさげに鉄槌を振り回してヴィータは千切れゆく雲に毒づいた。
「なぁユーノ〜、一体いつになったら大魔王に会えるんだよ」
「大魔王って……」
「だってドラポンクエストじゃ敵倒して洞窟もぐって山を越えると魔法の城なんだぜ」
誇らしげに胸を張るヴィータ。気分はまさにゲームそのまま、世界を救う勇者様だ。
「はやても来りゃよかっのにな。こんなに面白いのに」
「駄目よ、はやてちゃんだって勉強忙しいんだから」
ヴィータをたしなめながらシャマルは今日ここに来てしまった自分の不運を呪いに呪った。
これなら医務室でお茶を飲みながら日がな一日ワイドショーでも見ていたほうがずっとマシなはず。いくらそれに対する報酬を前払いで貰っていてもだ。
ちなみにクロノ執務官の口座よりこれらリベートは支払われている。
「通信が取れなくなってもう二時間か……」
職員達の安否を気遣いながら悪い予感が当たってしまったとユーノは手元の方位磁針を見た。
くるくる回るご機嫌な針にこめかみを押さえずにはいられなかった。
「クラールヴィントはどうですか?」
「ダメ、方位どころか通信からなにもかも全部」
デバイスでも結果が同じならもう諦めるのが得策と思うしかなかった。晴天の空は窓から見るには嬉しくなるほど澄み切っているというのに今はこの世界の主の嘲笑に見えて胸糞悪い。
「まんまと誘い込まれたわね。どうするのユーノ君」
「そうですね……僕たちに残されている選択肢は少ないと思います」
「だったら行くまでだ。とっとと魔王倒して帰ろうぜ」
口を挟む選択肢が現状で最善となり得るものか。危険は多いが本来の目的に沿うならこれほど単純明快なものはない。
354 :
176:2006/03/13(月) 10:38:56 ID:u7OT3zol
「ヴィータの言うとおりそうした方がいいかもね」
「じっとしててあの変なのと戦い続けるわけにいかないし」
二人の策士の意見はほどなくして噛み合った。選択肢はひたすらに前へ、ゴールへ進むこと。目指すべき場所は実際方位など分からなくても魔力反応であらかた検討はつく。
自分の居場所をご丁寧に教えてくれるのは明らかに罠なんて見解はこの際置いておく。行き先はわかっても相変わらず帰り道は分からないのだから。
「だろ!? じゃ早速出発しようぜ」
「そうだね、ぐずぐずしてられないし」
休憩がてらに腰掛けていた木陰を立つ。木々の隙間から差し込む容赦ない太陽に目を細めた。
既にヴィータが先陣を切り後にシャマルが追走している。ここではぐれたらそれこそ冒険はおしまい。遭難してサバイバルだけはご勘弁。
「それじゃ行こうか、なのは」
同じく休憩していた隣の彼女にユーノは出発の合図を送った。
青空を覆う枝、垂れ下がるつる、足元を隠すシダ、突き出た木の根……。
テレビで見るだけの世界の居心地は――最悪だった。
ジメジメと擬音が飛び出しそうな湿度に上がり続ける気温は既に40℃はあるやもしれない。耐熱耐寒耐電と三拍子揃ったバリアジャケットもあっさり敗北した。
熱けりゃ冷房、寒けりゃ暖房。スイッチ一つで自然を捻じ曲げ生きる都会っ子のなのはにこの気候は異常気候そのものだった。
ならば魔法で、と思いたいところだがこの森に入って進むごとにどんどん魔法が使えなくなりそれど頃ではない始末。
最初は自分が全ての魔法を使えなくなった。レイジングハートも今は喋る宝石だ。何かに襲われたらひとたまりもない。
二人だけならユーノが守ってくれたのだろうけど今は
「なめやがってーーっ!」
ご覧の通りハンマーを振り回した物騒極まりない少女が社会科で見たハニワのような物体と奮戦している。
まさか一緒に行く仲間がヴォルケンリッターの二人だなんて想像が出来なかった。いろいろと時空管理局と交流が深まってからは彼女達と顔を合わす機会も多く顔馴染みであることは確かなのだが。
以前のことは水に流しても手痛い敗北を喫した相手と体に手を突っ込まれた相手とならば身を固くするほかなかったりする。
「なぁユーノ〜、一体いつになったら大魔王に会えるんだよ」
馴れ馴れしくユーノに話しかけるゲートボール少女、もといヴィータ。何の因果か無限書庫にお使いに行ったのをきっかけにヴィータはユーノを酷くお気に入りだ。
年上に囲まれ子ども扱いされるヴィータには一人の人間として真摯に付き合ってくれるユーノは格好の相手だったらしい。我が強い彼女に大人しいユーノは話し相手としてはぴったりだろう。
「だってドラポンクエストじゃ敵倒して洞窟もぐって山を越えると魔法の城なんだぜ」
この場合ユーノは最高の子分なのだろうけど。
それなら自分はユーノの恋人、ヒロインだ。
なのにやっぱり
355 :
176:2006/03/13(月) 10:39:57 ID:u7OT3zol
「そうですね……僕たちに残されている選択肢は少ないと思います」
自分よりも周りなのは相変わらず。咎めているわけではないが少しぐらいは目を向けて欲しい。
ヴィータだって今にすぐ魔法が使えなくなるのだ。シャマルも魔法が使えなくなったみたいだしユーノにはチェーンバインド程度しか魔法が残されていない。時間の問題だ。
「それじゃ行こうか、なのは」
立ち上がるユーノに一拍子置いてなのははゆっくりと腰を上げた。表情は心なしか重い。
「あっ、ユーノくん」
「なに?」
せめて手を取るなりしてくれてもいいだろうに。
思ったけど口には出せない。
「……暑いね」
はぐらかしてなのはは笑った。
そんな愛想笑いで暑さが和らいだら少しは気分は晴れるだろうか。
「もうすぐ一番反応の大きい場所に着くと思う。そうすればきっとみんな解決するよ」
笑顔で彼は答えてくれた。額を流れる汗が陽光にきらりと光った。
もうこうなったら映画みたいに次々に困難が降りかかって欲しい。何もかも忘れて目の前のことだけに必死になりたい。
胸のもやもやを旅のお供になのはは一歩踏み出した。
356 :
176:2006/03/13(月) 10:40:55 ID:u7OT3zol
どもどもインジョー3話をサクッと投下
なんかパッとしないメンバー一同ですがそこはお許しを
>>549氏
エロイなぁレイジングハートは、ともあれGJ!
ハードな方も焦らずじっくりお願いします
無論保管庫も
ところで誰か条件に合うようなロダってどこかないですかねぇ。ロダは苺ぐらいしか使ってないんで
>>640氏
果たしてどうなることやら
いいからユーノの胸にダイブインだ
>>396氏
モテモテの罪作りユーノ……
さっさと帰って来い、それしか言えないや
>>430氏
これが今後どのようにユーノたちに関わってくるのか
ワクテカで待たせていただきます
>>357 それも保管庫にいれてくれ、アンマはあはあ。
>>358 あそこはあそこで保管庫があるようなのでどうなのかな?
そもそも、こっちが追いついていないのにってのもあるし。。。orz
>>359 549さん失礼しました。よくみたら保管庫あるようですね。
アンマ読んで興奮していたよ。お互いの職人さんにエールを、
頑張ってくらはい。
こんばんわ396です。二泊三日の旅行に行く前に続き投下しておきます。
>>359 いつもお疲れ様です。
なんか追いついていないのに引き離すようでほんとご迷惑かけます。
魔法少女リリカルなのはA's+
第十一話 「不屈の心」
金色の絨毯のような麦畑が広がり、風がその絨毯に波を起こす。
その一面の麦畑の真ん中にぽつんと小さな一軒家が立っていた。木造二階建て、外装は白いペンキで塗られていたようだが
ところどこと剥げていて、とても長い年月を感じさせた。
「……うっ……」
痛みで目が覚め、ユーノはベッドから身を起こした。胸の辺りがズキズキする。
手には包帯が巻かれていて、乾いた血が薄黒くにじんでいた。自分の愛用の眼鏡はどこにもなく、視界がぼやけて見える。
「こ…ここは…?」
辺りを見渡す。あるのはタンスや机、そしてたくさんの本が散らばっていた。ベッドのすぐ近くの窓からは心地よい風が入ってくる。
立ち上がってとりあえず部屋の中を歩き回った。ふいに机の上の写真立てに気がついた。
目を凝らしてみると、写真立てには黒髪の少年と可愛らしい少女が並んで座っている写真が入っていた。
埃が目立つ部屋の中、その写真立ての周りだけはとても綺麗だった。
写っている二人はともに笑顔で、まるで恋人のようだ。
(喉が…乾いた……)
とりあえず水を飲まなければ…。寝起きなので思考は鈍かったが、とにかく部屋を出て下に続く階段を降りていった。
「……ぷはぁ」
ごくごくと水を一気に飲み干し、一息ついた。ダイニングキッチンに小さなテーブル。
テレビはないが大きなソファーがあり、観葉植物が部屋の中で育てられている。いたって普通の民家だ。
(なんで、こんなとこに…?それに僕は…)
次第に思考がクリアになる。
(そうだ、あの魔導師と戦って、それから……)
思い出そうとしていると、すぐ下に大きな濃い緑色の魔法陣が現れた。
「うわっ!」
突然のことにユーノはその魔法陣から飛びのき身構える。
「ああ、ようやく起きたみたいだね」
どこに行っていたかはわからないが、魔法陣から出てきた魔導師はいたって普通の顔でそう言った。
緊張が走り、ユーノはすぐ防御のために印を組んで魔力を込めようとする。
瞬間、
「ぐっ!あああぁぁぁ!!!」
胸の辺りに激痛が走り、ユーノは胸を押さえてうずくまった。同時に、自分に魔力が感じないことに気がついた。
「ちょっと君!無理はしない方がいい。君のリンカーコアは今修復中なんだから」
そう言いながら、魔導師は開けた冷蔵庫に顔を突っ込みながら続けた。
「まったく、僕も驚いたよ。まさか機能停止中にもかかわらずジュエルシードが君のリンカーコアを修復し始めるなんてさ」
冷蔵庫から取り出したリンゴをこちらに投げてよこした。
「ま、わからないことだらけだろうから少し説明するよ。君の事、それに……僕のこともね」
窓際においてあったリクライニングチェアーにどっかりと腰をおろしながら魔導師が言った。
敵意はまるで感じられない。本当にあの時戦った魔導師と同一人物なのだろうか。
そう思いながらも、目の前のソファーに腰掛けた。どの道魔法が使えないんだから逃げられない。
「…それで、あなたは何者なんですか?」
いぶかしげに見つめるユーノに、魔導師はにっこりと微笑んだ。
*
三つの光源。岩と砂だらけの世界に、なのは、クロノ、フェイト、そしてはやてとヴォルケンリッターの騎士達が、
焼けつくような暑さに耐えながら空中に浮かんでいる。
「なにか変わった様子はない?」
フェイトがモニターで見ているエイミィに尋ねた。
『う〜ん、魔力反応もないし、いたって普通の次元に見えるけど……』
エイミィの芳(かんば)しくない返事が返ってくる。
「しかし、なにか仕掛けがあるのは確かだ」
「やっぱりクロノくんもそう思う?」
クロノの真剣なその顔の両方の頬には真っ赤なもみじの跡のような手形がついており、
尋ねたなのはの片方の頬にもくっきりと手形が残っていた。
――1時間前
「クロノ艦長……かなりきてるな」
局員が嘆いた。
「あんなことがあった後だ。…察してやろう」
他の局員がため息とともに答えた。
捜索続行が決まった会議から数日。まったく手がかりらしい手がかりが見つけられない上、
その捜査を邪魔するように多くの事件が舞い込んでいた。
いつしか怒りはどこかへ行ってしまい、悲しみにくれるようにデータをぼーっと見つめる日が続いた。
(ユーノ…きみは死んだのか?ほんとうに…)
その目にはもはや画面は映っていなかった。
バシュッと誰かが部屋に入ってくる音がした。
「クロノ艦長」
その声に顔を上げると、はやてがじっとこっちを見ていた。
「なんだ?用があるならさっさと…」
パンッ!!!!
言い終わらないうちにはやての平手打ちが思い切りクロノに当たっていた。
驚いてはやてを見ると、目に涙をためていた。
「自分だけ悲しい思うたら大間違いやで!!!!!他にもっとやれることあるんちゃうん!?」
はやてと騎士達はずっとユーノを探し続けていた。気力を失い人形のようになってしまった友人達を見ているのもつらかったし、
ユーノが消えた日、現場にいられなかった自分が悔しかった。そして、みなが頼るべき艦長のその姿についに業を煮やしたのだ。
その言葉を聞き、クロノはようやく自分を客観的に見始めた。
やれること…?……そうだ……まだ自分はなにもしていない。ただ、人の集めた資料に目を通しているだけにすぎない。
やれること。艦長としてではなく、ユーノの友人として。
ガタンッと椅子を倒しながら立ち上がり、はやての肩に手を乗せた。
「すまない。ようやく目が覚めたよ」
はやてが涙をぬぐいながら見上げたクロノの顔は、いつもの頼りがいのあるキリッとした表情だった。
「ほんと、世話のかかる子なんやから」
涙声で微笑みながらはやてが言った。
「エイミィ、今すぐみんなを集めてくれ。例の次元に調査に行く!」
いつもどおりの艦長の様子に局員はぎょっとしてざわめいたが、エイミィだけは微笑みながらそれを見ていた。
「ちょっとクロノくん、こっち」
手招きしてクロノを近くに呼ぶ。
「な、なんだ?」
クロノは不思議に思いながらも言われるままに近づいた。
パンッ!!!!
エイミィの平手打ちが先ほどとは逆の頬にクリーンヒットしクロノの脳を揺らした。
「えっ?」
あまりの衝撃に少し眩暈がした。クロノは叩かれた頬をさすりながらエイミィを見た。
「遅い!!!」
エイミィは怒りながら椅子に座った。
「ご……ごめん……」
エイミィも自分を心配していたんだ。クロノは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
その様子を見ていた局員達に笑いが起こり、アースラはいつもの活気を取り戻した。
ところかわって高町家。
クロノからの召集を受けたフェイトは直接なのはの家に来ていた。
案の定なのはは召集命令にもかかわらず部屋に引き篭もっていた。なのはの母である桃子はまるでこの時を待っていたかのように
フェイトを出迎えなのはの部屋に通した。高町家の人々は、今までなのはに何も口を出さなかったらしい。
なんとなくだが、フェイトにはその意図がわかるような気がした。
「なのは……行こう」
フェイトがベッドの上でうずくまっているなのはに少し強い口調で言った。
「わたしは…きっと何もできない…。行ったって、また傷つけるだけなんだ…」
自分を抱きしめるようにひざに顔をうずめるなのは。これ以上現実を突きつけられたくないという意志が感じられた。
フェイトはその様子を無言で見つめた。まるで、つい先ほどの自分の姿を見ているようだ。アリサが怒るのも無理はないと思った。
だって、自分にも怒りの感情が沸々とわきあがっているのだから…。
「なのは……」
フェイトがなのはの頬に手を差し伸べ顔を上げさせる。
パンッ!!!!
乾いた音が響き、なのははフェイトを見上げた。頬の痛みで自分がビンタされたことがわかった。
「わたし達が探さないで、だれがユーノを探すの!?」
叩いた手を押さえながらフェイトが叫んだ。なのはは目を見開いてフェイトを見た。
フェイトは怒っているようで、とても悲しい顔をしている。なのははまるで自分が叩いたような錯覚に陥った。
そしてあらためて理解した。
(そっか…。やっぱりフェイトちゃんも、ユーノくんのこと…)
そう思ったら、一人で悲しみを背負っていたような自分が馬鹿らしく見えた。みんなだって悲しいのに。
自分だけじゃない。それに、悲しむには早すぎるんじゃないか。
……こんなところで自分は何をしているんだろう。やれることをやらなくちゃ。気がついたら、とにかく行動に移りたくなった。
バッと起き上がりレイジングハートを手にした。
「ごめんね。心配かけて」
微笑みながら言うと、赤い宝玉がキラリと光った。
『No problem.I have trusted my master.(問題ありません。私はマスターを信じていました)』
ぎゅっと緑の髪留めで髪をしばり、服をバリアジャケットに変える。
「行こう!フェイトちゃん!!」
「うん!!」
手を繋いでなのはとフェイトは転移魔法陣の中に姿を消した。
――そして現在
「デバイスもなしにあの転移は理論上不可能だ。いや、あったところで普通はあそこまで早くはできないんだが…」
クロノが全員を見渡しながら言った。
「でも、あの魔導師はなにも持ってなかったし、使った様子もないよ?」
フェイトが思い出しながら言った。そもそも彼は結界魔導師。デバイスを必要としない。
「んじゃよー、シャマルのクラールヴィントみたいにすっげーちっちゃいんじゃねーの?」
ヴィータがグラーフアイゼンを肩に乗せながら思いついたことを発言した。
「いや、それはないだろう。一般的にデバイスの大きさと性能は比例関係にある。小型のデバイスにそれほどの
機能があるとは思えんな」
シグナムが静かに答えた。
黙って考えていたなのはがその言葉を聞いて思いついたように言った。
「じゃあ、逆は?」
「どういうことだ?」
クロノが驚き、みんながなのはに注目した。
「あの、えっと、だからね?持ってないんじゃなくて、持てなかったんじゃないかなって。とっても大きくて」
なのは自身、とんでもない考えを言ったようで少し恥ずかしくなった。
みなにしばしの沈黙が降りた。
「ばっかでー!!そんなんどこにあるんだ……よ…?」
ヴィータが馬鹿にするように下を見下ろす。あたり一面は砂だ。
「ま、まさか……」
みんなが気づき始めたとき、すでにシグナムはデバイスを構えていた。
「レヴァンティン!!!」
『Jawohl!!』
バシュッとカートリッジがロードされる。
「はぁぁぁぁ!!紫電一閃!!!!!!」
高速で地面に向かって突っ込み思い切り攻撃を加える。
衝撃が走り、大量の砂が一気に空中に舞い上がった。
「あ…あれは…」
はやてが砂のすき間から見える巨大な黒い物体に気づく。
その黒く巨大な四角い物体は、一見建物のようにもみえるが、回路のような光が全体に走っている。
複雑な魔法陣がその真下に描かれており、シグナムの攻撃に半球状の結界がその姿を現していた。
「遠隔操作型の…巨大デバイス…」
クロノが呟いた。
その圧倒的な、そして今までに見たこともないデバイスの大きさに、みなが黙ってそれを見下ろした。
次回へ続く
魔導師が語る過去とは?その因縁が今、明かされる。
次回 第十二話 「悲劇の輪廻」
十二話は最終話の次くらい気合入ってます。
物語の核心ですのでお楽しみに。それでは。
はい、皆様、640の駄文の時間でございますよ。
今回はちょっと10話に時間がかかっているので、なのフェス原稿執筆中に
副産物としてできた話を、ひとつ。
クロノ18歳のある日の出来事ということで。
「進路・・・良好。各部、問題ありません」
オペレーターの声に合わせるようにドッキング・ベイが開き、艦体へと擦れるような金属音を伴って接続される。
各部のランプが完了を示す緑色へと変わり本局ドックとのドッキングが無事に終了したことを告げ、ブリッジは安堵の空気に包まれた。
「みんな、ご苦労だった。一週間ゆっくり休んでくれ」
そう言ってクルー一同を送り出したアースラの若き艦長──クロノ・ハラオウンは管理局本局の床に降り立つと、
自身もまた18歳という若さに似合わぬ、ほっとしたようなため息をついたのだった。
魔法少女リリカルなのはA’s
‐局員勧誘計画‐
ドック入りの報告書にサインをし終え手荷物を抱えた彼は、ふとドリンクの自販の置いてある休憩所へと足を運んだ。
・・・まぁ、何故か、と聞かれても返答には困るのだが。
これといってすることは残っていないし、久しぶりの我が家にさっさと帰って母や妹の顔を見て団欒したほうが当然、心身共に休まる。
特に理由もなく、単に少し喉がかわいた「ような」気がしたから何か飲み物でも買うかと曖昧に進行方向をそちらへ向けたというのが正しいところである。
大した時間のロスになるわけでもまい。家には帰る前に予め連絡を入れるつもりだったから、それを一服してからにすればいいだけの話だ。
フェイトはもう家に帰っているだろうか、微妙な時間ではあった。
「・・・、売り切れか、怠慢だな、設備管理の担当は・・・・」
手元のコインを数枚投入しボタンに手を伸ばしたところで、彼は普段愛飲する品、
無糖のブラックコーヒーに品切れを示すランプが灯っていることに気付いた。
わずかに顔をしかめながらも隣の甘さひかえめと書かれた別のコーヒーのボタンを押し込むと、
ガコンと音を立てて缶に入ったホットのコーヒーが取り出し口へと落下してくる。
───ブラックばかり飲んでると、胃が悪くなるんだよー。てゆーかクロノくんブラックばっか、親父くさーい。
昇進と同時に最近髪を伸ばし始めた旧知の女性オペレーターの声が脳内で聞こえた気がするが、それは無視し。
腰を曲げて取り出し口へと手を伸ばし、細い缶を引っ張り出す。
「あれ?お兄ちゃん、戻ってきてたんだ」
と、中身を撹拌するよう軽く缶を振っていると、聞き慣れた少女の声が背中から聞こえた。
この声は───・・・・、振り返ると当然そこには、妹の見慣れた顔があって。
「ああ、フェイトか・・・なんだ、はやてとなのはも一緒か」
「うん、お疲れ様」
「なんや、うちらはおまけかいなー」
「あはは・・・お仕事大変?」
なのはにはやて。よく見知った顔の二人の少女もまた、彼女に伴う形で並んで微笑んでいた。
「いつ戻ったの?」
「ああ、さっきだよ。これを飲んだら家に連絡するつもりだった」
「そっか」
自販機の取り出し口から出したコーヒーの缶を目の前に出してみせる。
「そっちはまだ、仕事か?三人、揃って?」
「うん、そんなところ」
「そうか────・・・って、さっきから気になっていたんだが」
「?」
ぐるり、と目の前の少女達三人の服装を見回して、尋ねる。
「なんで三人共、戦闘服なんだ?局内で」
そう、彼女達三人が今身に着けているのは局員の着る管理局の制服ではなく。
それぞれに特徴のある、三人が自らの魔力で組み上げたバリアジャケットと呼ばれる戦闘用の防護服であった。
実戦で現場に出ている場合などならともかく、デスクワーク中心の本局局内で着ているのは珍しい。
「あ、これ?これなー、いちいち解除するの面倒やし」
白い帽子を脇に抱えた、黒ミニスカートの騎士甲冑のはやてが答えるが、いまいちその答えでは事情が飲み込めない。
「?・・・模擬戦でもやってたのか?」
それにしては彼らの防護服が汚れていない気もするが、クロノに思いつくのはそのくらいであった。
しかしどうやら三人の微妙な表情を見る限りでははずれらしい。
「んー、ちょっと違うかな。ってあれ?クロノくん、リンディさんから聞いてない?」
純白のロングスカートに紅い宝石を首にかけたなのはの言葉でクロノはますますわからなくなる。
はて、母であるあの提督は何か言っていただろうか。フェイトのほうを見てみても、首を傾げるだけで要領を得ない。
「?」
と、局内放送を告げるメロディが流れ、呼び出しをかける担当官の声が室内に響く。
『テスタロッサ執務官、八神捜査官、高町教官、8番訓練室にお越し下さい。繰り返します、テスタロッサ執務官・・・・』
「お?」
「あ、休憩終わっちゃった。もう行くね、私たち」
呼び出しの放送を受け、フェイトは小さく手を振りながらバリアジャケットの黒マントを翻らせて踵を返す。
なのはとはやても頷きあってそれに続いたので、クロノもそれに応じ空いた片方の手を振り返した。
「遅くなるのか?」
「わかんない、その時は連絡するから、先に帰ってて。母さんはもう戻ってるから」
「それじゃあねー」
「ああ」
それならまあ、一足先に帰宅することにしよう。
飲み終えた缶を握りつぶしてダストボックスに放り込むとひとつ、大きく伸びをして。
今度こそ久々の帰宅となる我が家に向かって鞄を持ち上げたのだった。
* * *
────さて。そういったことが一昨日あったわけだが。
(一体・・・・)
どうして今、こういう事態になっているのだろう。
口角から泡を飛ばしかねない勢いで身を乗り出して喚きたてる二人の人物に、クロノは状況が把握できなかった。
・・・ここは本局内にある、クロノの提督としての執務室。
基本的に彼はアースラ勤務であるから使うこと自体はそんなに多くないが、本局にいる間は自分に割り当てられたこの部屋で書類関係の仕事をしていることが多い。
艦長としての忙しさから幾分解放され、落ち着いて静かに仕事のできる数少ない場所であった。
────いや、ほんとに「であった」なのである。あくまで、過去形。
「一体、何考えてんだよこのバカ提督っ!!なのはになんであんなことを・・・」
「・・・・・」
無限書庫の司書という肩書きを持つ眼鏡の少年と。
「私はあなたを見損なったぞ、クロノ提督!!よりによって主はやてを・・・」
「・・・・・・」
烈火の将の異名をとる、緋色に光沢を放つ長髪の女性から攻め立てられている現状から言えば、まさしく過ぎ去った過去の静寂である。
「・・・・えーと」
何故に今、理不尽に自分はこの二人から散々非難されているのだろう。
クロノは全く以ってその原因と思われるべき事象に、心当たりがない。
「とりあえずユーノもシグナムも、落ち着いてくれないか・・・・?」
「「これが落ち着いてられるかっ!!」」
二人の声が見事にハモるが、気圧されようにも理由がわからない以上気圧されることができない。
二人の固めた拳に勢いよく机上がバンバン叩かれるがどうしたものか。
「・・・・すまない、全く事情が飲み込めないんだが・・・・」
「君が知らないわけないだろ!!あの三人に共通の一番近しい上司は君じゃないか!!」
「いや、だから・・・・ん?待て。・・・三人?」
三人ということは、つまり。はやてと、なのはと。
「・・・・フェイト?」
「他に誰がいる!?自分の妹まであんなものに駆り出すとは情けない・・・!!」
「????」
さっぱり、わけがわからない。三人に対して、ユーノやシグナムがこのように血相を変えて抗議に来るような命令、出した覚えがない。
大体フェイトはともかく、あとの二人には一昨日休憩所で会って以来、まだ一度も会っていないのだから。
───命令なんて、出しようがないではないか。
「まだ白を切るつもりか!?だったら放送を見てみろ、放送を!!」
シグナムが、部屋の壁に備え付けられたモニター画面を指差す。電源を入れて放送されている内容を見てみろということらしい。
「放送?・・・なんなんだ、一体」
頭から湯気を出す二人に促されるままリモコンを操作し、スイッチを入れる。
「8だ。ミッドチルダ公共放送」
わかったから、落ち着け。心中でそばのフェレットもどきにつっこみ、チャンネルを動かす。一体、何を自分に見せようというのやら。
「別にこれといってー・・・・・」
『『『私たちと一緒に、働きませんか?』』』
「・・・・・・・・・・・・・・は?」
* * *
「な・・・・」
スパーンと。
そりゃあもう全力全開、フルスイングでスパーンと。
頭をスリッパか何かでおもいっきり叩かれたかのような衝撃に全身を硬直させた彼の目は、点のようになりながらも。
その原因である映像に映る、画面上の三人の少女を捉えていた。
「な・・・・な・・・・な・・・」
『時空管理局では、将来有望な人材を随時、募集しています』
繰り返し流される映像によって、彼の目はモニターへ釘付けになっていた。
『経歴は問いません。やる気と能力次第で、あなたも十分エースになる機会があります』
放送されている公共の電波、それによって映し出されているのは。
『一緒に、次元世界の安全のためにがんばりましょう』
愛機レイジングハートを手に視聴者に向け天真爛漫な笑顔を見せる高町なのはであり。
肩に乗った掌サイズの小さな少女・リインフォースと共にウインクする八神はやてであり。
閃光の戦斧・バルディッシュを抱いて恥ずかしげに赤らめた顔で微笑む最愛の妹、フェイト・T・ハラオウンの姿だったからである。
彼女達は一様にバリアジャケットを身に纏い、その愛らしい声と姿で画面の前に座る者達を管理局へと勧誘している。
バックは現場で戦う彼女達の凛々しい表情。画面下方にはご丁寧に、テロップで本局の連絡先まで出ているほどだ。
「なんだ・・・これは・・・・・?」
「聞きたいのはこっちだよ!!クロノじゃないのかよ、これ指示したの!!」
「・・・・んなわけないだろう・・・・誰がするか・・・」
「なら一体誰が命令したというのだ、あなたは・・・!!主はやてに悪い虫がついたら・・」
「わかった、わかったから落ち着いてくれ、シグナム・・・」
今にもレヴァンティンで斬りかかってこようかと思える勢いのシグナムをなだめ、両手を挙げて制すると、彼は机に両肘をついて頭を抱えた。
なるほど、二人が血相変えて抗議にくるわけだ。大方局内のモニターか何かでこれを目撃して、慌ててクロノの元に駆け込んできたのだろう。
シャマルあたりはしっかり録画テープに保存したりもしていそうだが。
「・・・多分、いや。間違いなくあの人の仕業だ・・・・・」
そしてこういったことを考え、実行しそうな人間といえば、思いつく限り一人しかいない。それが余計にクロノの頭を痛くする。
一昨日のなのはのあの不思議そうな顔と言葉からすると、自分には内緒で行われたことらしい。
「心当たりがあるのか?」
「・・・・君達だってよく知っているだろうに・・・・」
────・・・・あの親バカ、上司バカ。
クロノの抱えた頭の中には、自身のDNAの半分を共有する、上司にして母親の。
見たくもない、煮ても焼いても食えないとびきりの笑顔がうかんでいた。
* * *
───同時刻、別の執務室において。
二人の女性提督がクロノたちと同じようにモニターをみながら、こちらはのんびりとお茶を飲んでいた。
「いやー、やっぱりうちの子もなのはさん達もかわいく映ってるわー」
翡翠にも似た色の独特の髪をひとつに纏めた親バカにして上司バカこと、リンディ・ハラオウン提督と。
「三人のおかげで昨日の初放送以来、入局志願者からの問い合わせが普段の3割り増しよ。人事部担当としては助かるわ」
それを利用した管理局人事担当の眼鏡の女性、レティ・ロウラン提督である。
「しかし考えたものね、局内の人気アンケートトップ3のあの子達をCMに使って男性局員の募集するなんて」
「3人のかわいさの成せる技よ。フェイトは恥ずかしがっていたけれど、やっぱり正解だったわぁー」
放送を繰り返す3人の少女のコマーシャルを前にレティは満足そうに。
一方のリンディは年甲斐もなくキャーキャー言って自分の娘や部下達の映像に黄色い歓声をあげている。
「でもよかったの?人手不足解消に協力してくれるのはありがたいけれど、こんなの出ちゃうとフェイトちゃんに変な男がついちゃうかもよ?」
「だぁーってぇー、うちのフェイトの可愛いさをもっとたくさんの人に知って欲しいじゃなあい?
それにあの子、クロノに似たのか仕事一筋で浮いた話も全然ないし。いい年頃なんだからそろそろ彼氏の一人でも親としては・・・・」
「あーはいはい、そうね」
放っておくと際限なく親バカっぷりをぶつけられそうだったので、適当に流すレティ。紅茶を一口飲んでから話を変える。
「・・・で、第二弾のアイディアがあるんですって?」
「そうそう、そうなのよ。今度はヴィータさん起用で更に特定の趣味の方々を・・・・」
────とてもとてもはた迷惑で、かつ重要な(?)、お仕事の話へと。
End・・・多分。
はい、どうも。切腹する覚悟はできておりますorz
ノリと勢いだけで書いた、今は反省(ry
いやほら、人材不足って言ってたじゃないですか?ね?(同意を求めるな
>>176氏
>せめて手を取るなりしてくれてもいいだろうに。
むすっとしてるなのはktkrそうかなのはは甘々か甘々キボンぬなんだな
激しくGJです
>>396氏
>シグナムの攻撃に半球状の結界がその姿を現していた
ごめん、ついマサルさん的な一同の崩し絵リアクションを期待してしまった俺ガイル
特にシグナムあたりの。スマソ
Daysの続きです。
いやー、軽目のお話はサクサクいきますね。
*今回は*そんなエッチなとこはありません。
全部で2スレ、約5KB。
魔法少女リリカルなのは Days
2.レイジングハートは元気なの
「デバイスのガイド用ユーザインタフェース?」
「普通は家庭用品とかに使われるもので、レイジングハート
のようなインテリジェントデバイスには組み込まないんだけ
どね。なのはは正規の教育は受けていないからちょうどいい
かなって。さいわいレイジングハートはそのくらいなら余裕
あるし、組み込んでみようって、この間話したよね?」
そういえばそんなこと話していたかも。
「えーと、ちょっと忘れていたり」
先週のことだったし、時間かかるようなこと言っていたし、
それにそれに、寝ぼけていたし……。
「でも、てっきりアースラでエイミィさんがみているような
のがパパッて出ると思っていたんだもの」
駅やデパートにあるような情報端末のすごいの。これとア
ースラをくらべたら怒られちゃうかもしれないけど。
わたしがこんなのって空中に四角や丸をえがいたら、ユー
ノ君には首をふって苦笑いされちゃいました。そんなに変な
か?
「そうゆうのはどんなに簡単でも、機械が苦手な人にはやっ
ぱり難しいんだよ。マニュアルを読んで理解するのも大事だ
けど、人に手取り足取り教えてもらう方が覚えやすいよね?」
わたしも運動は苦手で、ちょっと前までちゃんと泳げなかっ
たんだけど、すずかちゃんに教わってプールへ遊びに行ける
くらいにはなったし。
「うん、そうだね。でもでも、こんな大人の女の人が出てく
るなんて、わたし聞いてないよ」
「ごめんごめん。どうなるかは起動したあとの形やバリアジャ
ケットと同じでどうなるか分からないからね。そうか、なの
はにはレイジングハートがそう見えるんだ」
レイジングハートの方を見るユーノ君だけど、なんか少し
横を見ている感じがして。
「あれ、ユーノ君には見えないの?」
「魔力は感じられるけど、どんな姿かは分からないよ。なの
はが幻覚系の魔法を使いこなせるようになれば人にも見せら
れるようになるけど、いまは見られるのはなのはだけ。レイ
ジングハートがなのはの思いを感じて、なのはにあった、な
のはのために作った姿をね」
「そうなの、レイジングハート?」
わたしの横でチョコンと正座しているレイジングハート。
よく見れば透けているし、宙に浮いているし、足はあるけど
ユーレイさんに間違われちゃうよね。
「The figure which is only mastered.」
きれいで、かっこよくて、ちょっとドキドキしちゃって。
しゃべっても顔が動かないのが人じゃないんだなって、でも
赤い宝石のような瞳がやさしく輝いていて。
「うーん、呼び捨てじゃまずいよね。レイジングハート、さ
ん?」
「Call it only by the name.」
ピタッてわたしにくっついて、顔をすりすりするレイジン
グハート。頬も手も体も、とても温かくて。見た目はとても
大人なのに、わたしより小さな子供みたいで。
「もぅ、くすぐったいよぉ」
「きっとレイジングハートもうれしいんだよ。そのモードな
ら色々なことができるからね」
それは確かに、うれしそうなのは分かるですが。
「色々って、その、キスで起こすのはちょっと過激じゃない
かと」
「てっきり鼻でもつまんでいるのかと思ったけど、そんなこ
としてたんだ。でもレイジングハートとならいつもしてるじゃ
ない?」
「それはそうだけど……」
あれは小さいときにみたアニメのまねで、魔法少女っぽい
かなって。でも、レイジングハートをあめ玉みたいになめて
ないもん。
「ところで今日はどうするの?」
「あ、もう四十五分! はやく着替えなきゃ」
いつもなら着替えて顔洗って、お兄ちゃんたちにおはよう
して、そろそろ出かけるころ。
「It helps.」
そう言ってレイジングハートがパジャマの裾をつかんで。
本当に人の姿で何かできるのがうれしいみたい。わたしも魔
法がいろいろ使えるようになった時はうれしかっし、それは
今でもそうだから、その気持ちはよく分かると思う。
「それじゃお願いね、レイジングハート」
「Yes, my master.」
あいかわらず表情は変わらないんだけど、レイジングハー
トはとても楽しそうにわたしのパジャマを脱がして。すそを
めくって、腕を上げたら頭までまくりあげて。
うーん、人に着替えさせてもらうのはちょっとはずかしい
かも。メイドのファリンさんがいるすずかちゃんも、ちゃん
と自分で着替えているんだし。あ、忍さんはノエルさんに着
替えさせてもらってるって言っていたっけ。
「な、なのは!」
「え……?」
ユーノ君がバタバタしてて、なぜか足のあいだがスースー
してて、よくみたらレイジングハートが足元にうずくまって
いて。
「きゃっ、下着はかえなくていいの」
「It is sweating.」
思わず座り込んじゃったけど、レイジングハートはパンツ
を離してくれません。
「……そ、そんなにくさい?」
「As for the lady, cleanness is best.」
「うぅぅ」
結局ぜんぶ脱がされちゃいました。レイジングハートはま
るで着せ替え人形で遊ぶ小さな女の子みたいです。
「わっ、なにしてるの!?」
私のパンツを鼻にあててクンクンするレイジングハート……。
「A master is healthy.」
「そ、そう……って、ユーノ君!」
「えーと、そのうち落ち着くんじゃないかな?」
こんなレイジングハートは新鮮で楽しそうだけど、ちょっ
と苦労しそうです。
「All right. My master.」
なのはの一人称は難しい。。。
次は桜台でエッチな特訓です。
>>640氏
逃げろヴィータ。
おもちゃにされるぞ。もしくは将来的に貞操の危機が。
いやいや面白かったです。
>>549氏。
やっぱりなんでユーのはこうも冷静なのかと疑問が。
つかレイジングハートが、レイジングハートが……。
自分の中のイメージが崩れていってます。
あとなのはさんって機械関係にめちゃ強い気がしたけどこれって原作設定でしたっけ。
でもフェイトの携帯買うときやたらスペックにこだわってた気がするし。
383 :
名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 06:38:16 ID:3CjWW5sl
>>382 少なくともとらハ3の設定ではまさにその通り、曰く「3歳でテレビとビデオのタイマー操作を覚え、4歳でカメラの操作を理解し、5歳でビデオの撮影が出来るようになり、今や、いっぱしのAVマスター。」だそうな
>>383 AVマスターと聞いて、別の物を思い浮かべてしまった・・・・
>>381 目の前でパンツくんかくんかされてる割には、ユーノもなのはもちょっと平然としすぎてる気がする。
ユーノはどうリアクションしたらいいのかわからなくて固まる。なのはは照れるよりも慌てるよりも先に、不気味がって引きそうなイメージがある。
ご意見ありがとうございます。
一人称にしたのと一話分を短くしようとしたのが裏目に……。
慣れないことはするもんじゃないですね。
保管庫へ入れる時に書き直してみます。
3話はその時一緒に。
てか、3話がいきなりエロなしで終わりそうになって書き直し中。
魔法少女リリカルなのは 〜 もう一人の私へ・・・ 〜
「待たせたね、フェイト」
「兄さん」
フェイトの顔がぱっと輝き、クロノに走り寄る。
「・・・」
「・・・」
2人のクロノはじっとお互いを見合っている。
予想通りというかなのはは、え?え?と双方のクロノを見比べる。
「ふぇっ?あ。あれ??く、クロノくんが・・・え、あれ?ちょっと違くて・・え??」
なのはに寄り添うクロノがそっとなのはの肩に手を置く。
「・・・いいかい、なのは、よく聞いて」
「え・・・うん」
目を閉じ、言葉を選ぶクロノ。ややあって。
「なのは・・・ここは、僕たちが居た世界じゃないんだ」
「へっ?」
「はいぃい??」
「まぁ・・・そういうことだったの」
上からなのは、エイミィ、リンディの反応であるが、予想の付いていたフェイトとク
ロノに驚きはない。
「私たちの・・・世界?」
「そう、パラレルワールド、っていう言葉を知っているかい?」
「ぱられる・・・わーるど?・・・」
「・・・そう、平行世界とか、別の可能性の世界とも言うね。なのはが知る世界とは異
なる世界」
「え・・・よく・・・わからない・・・」
困惑の表情のなのは。
「・・・そうだね、簡単に言うと、なのはが朝起きたとしよう」
「・・・うん」
「たとえばそこでどういう風に目が覚めた?普通にぱっと目が覚めた?目覚ましの音で
起きた?それとも朝寝坊した?」
「えっと・・・今朝は目覚ましで・・・」
「つまり今ここに居るなのはは今朝目覚ましの音で起きた世界のなのは、ということに
なるんだ、わかる?」
「えっと・・・うん・・・なんとなく」
「うん。そうするとこれで今朝なのはは少なくとも朝寝坊をしなかった。でももしかし
て目覚ましが壊れてたりしたら、もしかしたら朝寝坊したかもしれないよね?」
「うん」
「今朝朝寝坊したなのはが居る世界、それが平行世界と言うんだ」
「え?!え、で、でも私今朝は・・・」
「そう、寝坊しなかった。つまり今ここにいるなのはは朝寝坊しなかった世界の存在だ。
でも朝寝坊したなのはもどこかに存在している可能性があるんだ。そういう可能性の世
界のことを平行世界というんだよ」
「平行・・・世界」
「そう、同じ世界でありながら違う可能性が生じている世界。違う世界でありながら同
じ可能性が生じている世界。決して交わることのない世界。あるはずがないけど、どこ
かに存在している世界・・・」
「・・・」
「ぼくらはそのとある1つの可能性の世界に紛れ込んでしまったんだ・・・」
「・・・クロノくんやリンディさんが私の世界に来たのとも・・・・違うの?」
「・・・別の次元の世界という話では・・・ないね、僕が2人いることで少しはわかる
だろうけど、次元間移動とかそういうレベルの話じゃない。本質的に『僕たち』が存在
していない世界だから・・・」
「・・・違う・・・世界・・・」
不安そうにうつむくなのはの手をクロノがそっと握る。
「大丈夫、なのは、必ず僕が元の世界に戻してあげるから。だから心配しないで」
「・・・一緒だよ」
「え?」
「クロノくんも一緒じゃないと私いやだよ、2人で一緒に戻れるよね?ね!」
潤んだ目でクロノを見つめるなのは。クロノはそっとなのはを抱き寄せる。
「うん・・・一緒だ、約束する」
「クロノ・・・くん・・・・」
「オッホン!」
と、咳払いするリンディ。なのはとクロノは弾かれたように離れる。
「そろそろよろしいかなー、お二人さん♪そういうのはもう少し人目のないところでや
りましょうねー」
「・・・」
「・・・」
真っ赤になってうつむく2人。
《ははぁ、これはあれかー、あっちの世界ではクロノくんとなのはちゃんがくっついて
るのかー》
《ど、どうやらそうみたいだな、い、いや、そんなことはどうでもいいんだ。エイミィ
つまらないことで念話を使うな》
《ほー、つまらないことなんだー、ふーん、へー、ほー、ほほぉー》
《なっ、なんだよ》
「クロノ執務官、あとでゆっっっくりお話がありますので!お覚悟を」
「ななな、何言ってるんだ、エイミィ!べっ、別に僕はなのはのことをどうこう言って
るんじゃないぞ!」
「「は?」」
全員の視線が一気にクロノに集まる。
「うわー!わー!なんでもない!なんでもない!!!」
「クロノ、エイミィ、なんだかあなたたち最近2人でひそひそ話しが多くないかしら?」
「ちっ、違います!何言ってるんですか艦長!!」
「すいませーん、クロノくんが職務中に話しかけてくるものでー」
しれっ、と言い放つエイミィ。
「エイミィ!!それは君だろう!昨日だって!!・・・はっ!!」
「・・・勤務中の念話の私的使用は禁止にしないといけないかしらね・・・」
「母さんっ!!」
こめかみを押さえるリンディにクロノが食ってかかる。家族モードになっていること
にも気づいていないようだ。
「あ、あの、すいません」
フェイトがおずおすと手を上げる。
「ん?何かしら。フェイト」
「あの、話がずれてる気がするんですけど、その、こちらのなのはたちの話は・・・」
キュッ、っとバルディッシュを握る手に力を込め、平静を装い話題を変えることしか
フェイトにはできなかった。2人のそんな話をこれ以上聞きたくなかったから。
「あ、あら、そうだったわね、ごめんなさい」
「(エイミィ、後で覚えてろ)」
「(あーら、なーんのことかしらー)」
視線を交わさず横にならぶエイミィに小声でささやくクロノ。そっぽを向いているエ
イミィは気にしたそぶりもない。
その間にリンディはなのはともう一人のクロノの方へ歩み寄る。
「話が遅くなって申し訳ありません。ようこそ、次元空間航行艦船アースラへ、私は艦
長のリンディ・ハラウオンです」
「あ、高町なのはです。た、助けていただいてありがとうございました!」
(・・・リンディさんと同じ名前・・・でも普通の大人の人だし、羽もないし・・・)
ぽーっとそんなことを考えていたなのはを緊張したのと勘違いしたリンディは笑みを
浮かべ、なのはの前でひざまずき、そっとその両肩に手を添える。
「そんなに緊張しないで、なのはさん。こちらこそ、うちのフェイトを助けていただい
てありがとうございます」
(声は・・・ちょっと違うけど、でもやっぱり同じ感じがする。やっぱりこの人がこっ
ちのリンディさんなんだ)
変わってクロノが答える。
「こちらこそ結局助けられることになってしまい申し訳ありませんでした。クロノ・・
ハーヴェイです」
「ハーヴェイ?ハラウオンじゃないんだ」
エイミィがもっともな疑問を投げかける。
「もしかしてそっちの世界ではクロノくんと艦長は親子じゃないの?」
「えっ?リンディさんとクロノくんが?!」
びっくりして自分の知るクロノを振り向くなのは。
「クロノくん、リンディさんのこと知ってたの?」
「え・・いや、そ、それは・・・」
口ごもるクロノ。と、もう一人のクロノが助け舟を出した。
「エイミィ、平行世界の話だ、自分の常識が向こうの正解とは限らないぞ、僕と艦長が
親子でない可能性だってあるんだ。名前が違う時点でそれくらいは察するべきだろう」
「んー、それもそうね、ごめんね、変なこと言っちゃって」
「あ、いえ、そんな・・・」
「と、それより自己紹介がまだだったね。クロノ・ハラウオン。時空管理局執務官を任
されています。よろしく」
「こちらこそ」
《あれでよかったかい?》
《ええ、助かりました。なのはには・・・まだそういう事情を話していなかったので》
《それはよかった。自分のことだからなんとなくわかったのかもしれないな》
《そうですね、ありがとうございます、後でちゃんとご説明しますので》
《了解した》
にっこり笑ってごく自然に2人は握手を交わす。
「うわ、クロノ君・・・っていうか2人とも度胸あるわね」
エイミィがぎょっとする。
「ん?何がだ?」
「何か、まずかったでしょうか?」
「い。いや、ほら、よく言うじゃない。もう一人の自分と接触したら死ぬとか存在が消
えるとか」
「ああ、なんだ、そんなことか、あんなものただの噂だよ」
「そういうことですか、あれは自分と同じ容姿をした相手に驚いて心肺機能に障害が発
生した、簡単に言うとショック状態になるだろう、ということの推測にすぎませんよ」
おっ、とお互いを見やるクロノ。
「さすがだね、付け加えるなら検証した、もしくは実際に消えた、亡くなった。という
人物の記録が一切ないことも噂の粋を出ないということだね」
「そうですね。流石です、クロノさん」
「いや、最初に具体的な説明を僕は出せなかったからね、流石だよ」
「いえ、そんな、実例が無いことのほうが証明としては有用ですよ」
なにやら緩やかな空気が漂う。お互いに通じ合うものがあったようだ。
ついでエイミィが前に出る。
「まぁまぁ、お二人さん、ナルシストの誉めあいはそれくらいにして」
「誰がだ!」
「ちっ、違います、そんなんじゃありません!」
ほっといてエイミィは続ける。
「私はエイミィ。エイミィ・リミエッタ。時空管理局執務官補佐・・んー、簡単に言う
とこっちのクロノくんのお守りかな」
スパーン!
「クロノくん痛ぁーい」
「うるさい、まったく君ってやつは」
「むぅー、重ねて覚えてろー。で、それはそうと、そうかー、違う世界のクロノくんと
なのはちゃんかー」
「リリーチャー、と言ったところかしらね」
リンディの呟きにこちらのクロノが答える。
「リリーチャー・・・異なる世界か・・・なるほど」
クロノもふむ、とうなづく。
「リリ・・・んー、なーんか小難しいなぁー、2人ともこっちの2人より若いんだし、
クロくんとなのちゃんでいいよね♪」
「こら、エイミィ、それは失礼だろ」
クロノがエイミィを小突く。
「え、あ、僕は全然かまいませんけど」
「あ、私もです、ていうかそう呼ばれてましたし」
「ほらー、私の勝ちー」
えへん、と胸を張るエイミィ。
「(・・・2人とも、あんまりこいつを調子付かせないように)」
小声でささやくクロノ。当の2人はどうしていいかわからず苦笑いするしかない。
ついでフェイトが、
「えっと、改めて、フェイト・テスタロッサです。時空管理局の嘱託魔道師です」
「Master. I ask for my thing」(マスター、私のこともお願いします)
後から到着組のぎょっとした視線がフェイト、ひいてはバルディッシュに集まる。
「うわ、私バルディッシュが普通に喋ってるの初めて聞いたかも」
「そ、そうだな、僕も呪文詠唱と応答以外の言葉を聞いた記憶が・・・」
「やっぱりバルディッシュ、もう少し喋ったほうがいいかもね」
にこやかにフェイトが言う。
「・・・I make an effort」(努力します)
おぉー、という感嘆の声が漏れる。照れるかのようにバルディッシュは沈黙・・・
「あははっ、高町なのはです。よろしくお願いします。バルディッシュさん」
「Thank you Ms.Nanoha」(こちらこそ、ミズ・なのは)
・・・していなかった。
「クロノ、面白い事例ね、デバイスが人間に興味を持つなんて、ちょっとした事件よ」
「んー、デバイスすら惑わすなんて、なのちゃんてば小悪魔予備軍♪」
(完全に楽しんでるな、この2人・・・杖相手にさん付けの方は無視か・・・)
半ば呆れるクロノ。
そのときふとエイミィが気付いた。
「あれ?そういえばなのはちゃんとユーノくんは?」
「えっ?」
目の前のなのはが不思議そうな顔をする。
「あ、ううん、なのちゃんじゃなくて、こっちの世界のなのはちゃん・・・」
言ってふと固まるエイミィ。
「むー、なんだかやっぱりややこしいぞー」
「んー、確かにそうね。私たちより先に出たはずよね。なのはさんとユーノくん」
「えっと、その・・・こっちの私?・・・」
「そうだよ、なのは、こっちにクロノさんが居るように、なのはも・・・居るんだ」
「私・・・もうひとりの私・・・」
場に慣れかけたなのはであったが、もう一人の自分という存在に不安を隠せなかった。
と、バルディッシュがすかさず、
「Don't worry Ms.Nanoha. Another you are a tenderly,fine girl.
Of course you are so, too」
(心配しなくても大丈夫です、ミズ・なのは。彼女は優しくて素敵な女性です。
もちろん、あなたも)
「・・・バルディッシュさん・・・うん、ありがとう」
「You're welcome Ms.Nanoha」(どういたしまして、ミズ・なのは)
「(ねぇ、あれって口説き文句に聞こえない?)」
「(聞こえなくは・・・ないな・・・)」
と、そのとき。
「居たぁぁぁ!!!」
「どわあぁぁ!!!」
という叫びと、
ごがらがっしゃぁぁん!!
という景気のいい音がドアの向こうから響いてきた。
何事かとドアを振り向くとそこには高速機動魔法アクセルフィンを展開しつつ浮遊中
のなのは。
そしてなぜか廊下の角に鎮座していた「整理整頓してね Byリンディ」と張り紙がさ
れた掃除用具入れのロッカーに頭から突っ込んで目を回しているユーノの姿。
(無論こちらは皆の視界には入っていない)
「フェイトちゃぁーーーーーん!!」
こちらの世界のなのはが全力全開全速前進で部屋の中に突入してきた。
〜〜 To Be Continue 〜〜
失礼いたします、4の422です。
一番物語的に盛り上がらない部分の投下です。
パラレルワールドの解釈は人それぞれなのでノーツッコミにて。あれはあくまで私、
4の422の私的見解です。
それよりもこのスレを見ている人が100%リリ箱をやったことがあるわけではない、と
いうことに気付くのが遅れて、そのへんの説明を入れようとしたら解りにくいわ長いは
へろへろだわで、まる3日悩んだあげくばっさりカットしました。GAME版なのはを知ら
ない人は・・・ごめんなさいっ!!(某ネトゲ風に)
次回でやっと全員が揃います。今しばらくお付き合い下さいっ!
追伸
リリーチャーは反省しています。
396さんへ
以前に英語どうのでレスを頂きましたが、私も英語力は皆無です。バルデの台詞は
7割がヤフーの翻訳ページ、残り3割が中房の頃の英和辞典ですw
ヤフーは日→英、英→日とか変換できるので便利ですよ。ただし変換が決まりきった
形式しかないようで、例えばレイハの起動呪文なんかだと・・・
「風は空に、星は天に、そして不屈の心はこの胸に」
これを翻訳させると、
「Wind is empty, a star in the sky and an unyielding heart on this chest」
となります。
注目すべきは「風は空に」の部分、「Wind is empty」と訳します。
それは「空中」ではなく「空っぽ」です!!
とまぁある程度の自変換力は必要になりますが・・・まぁ使えるのは使えると思うの
でお試し下さい。
そしてぜひフェイト×バルデのSSをっ!!!w
何の関係もない追伸、auのLISMO対応携帯お持ちの方へ(但し検証はneonのみ)
イノセントスターターとかエターナルブレイズをミュージックプレイヤーに取り
込んでサラウンド設定で「Chorus」を選んで再生してみましょう。先入観さえあ
ればまるでプレシアさんがハモってくれているかのように聞こえますw
めかりろとかは微妙に違う感じなのでやはり水樹ボイスのなせる技かなと。親子の
設定がこんなところにまで!w
>>4の422氏乙!
リリちゃコンビは原作クライマックス直前辺りからやってきたようで。かなり微笑ましい状態ですね。
こっちのなのはさんは暴走特急と化してたりフェイトはラヴっぽいフラグ立っちゃってたり続きが気になります。
それにしてもバルディッシュが妙に軟派だッ!?(いや、ここは紳士と呼ぶべきか……?
>>4の422氏GJ!です。
早く続きを、続きが読みたいです。
そう思うくらい面白かったです。
でもデバイスの台詞って大変ですよね。
更にベルガ式のデバイスとか加わったらどうなるんでしょう。
こういうのをしっかり書いてる作者さんって凄いなって思います。
英語とかできない俺は普通に日本語にしています。
いや、無理だって!ドイツ語追加されたらしぬるよ、うん。
旅行から帰って来た396です。帰って早々他の職人さんの作品がたくさん
読めて嬉しい限りです。
>>392 一応お気に入りにexcite翻訳が入ってますがほとんど使ってません。
なんか結局でたらめになってしまうので…。英字新聞を訳したときは
それはそれはひどいものでした。
まあ自分の小説はデバイスしゃべらないからいいんですけどね。
それでは続きいきます。
魔法少女リリカルなのはA's+
第十二話 「悲劇の輪廻」
アースラ内会議室。今、クロノを筆頭に全員が集合し部屋は少し手狭になっていた。
大きな画面には魔導師の顔とさまざまなデータが並んでいる。
「例のデバイスを解析した結果、ユーノと魔導師はこの座標に強制転送されていることがわかった。
どうやら緊急用の自動プログラムのようだ。しかし…」
クロノは少し厳しい表情で続けた。
「あの時の膨大な魔力の影響で発動が遅れたらしい。約3秒間、二人ともダメージはくらっているはずだ」
リンカーコアを直接利用する魔法を使っていたユーノが耐えれているかどうか。それが問題だった。
「大丈夫!ユーノは絶対生きてる。だから行こう!!」
「あたしも早く行きたくてしょうがないよ!あいつに迷子にされた礼をた〜っぷり返してやらないとね!!」
「わ、わたしだって!!!」
フェイトが力強く言い、アルフもそれに賛同した。なのはも負けじと意気込む。
「まあ落ち着け。こちらも万全の準備で行こう。また同じような仕掛けがあるかもしれないしな」
クロノが焦る少女達と使い魔を制止させた。
「決戦は三日後。それまでにみんなで準備を整えよう」
「「「「「おーーーー!!!!!」」」」
全員が一致団結した後、一時解散となった。
その部屋を出る途中、ふいにリィンフォースがはやてに話しかけてきた。
『あの…マイスターはやて。ちょっといいですか?』
言いづらそうに聞いてくるリィンフォース。
「なんや?どうしたん?」
不思議そうに尋ねるはやてにリィンフォースが恐る恐る言った。
『前から思っていたんですけど……あの魔導師、昔見たことあるような気がするんです……』
はやては少し考え込んだ。…見たことがある?今のリィンフォースは自分が生み出したのだから自分も知っているはずである。
もしかしたら前のリィンフォースの記憶かもしれない。
「前の主達と接点でもあったんやろか?」
はやてはシグナム達に聞こうかとも思ったが、今まで誰も言わなかったということはたぶん知らないのだろう。
(関係なければいいんやけど……)
はやては悲しみを背負い光の粒となった彼女を思い出しながら祈るように思った。
*
「僕は僕ではないといえるし、僕であるともいえる。哲学的な意味ではなくね」
魔導師は窓の外の麦畑を見ながらゆっくりと言った。
「二重人格…ということですか?」
ユーノが思いついたことを言った。
「そうであるとも言えるし、そうでないとも言える。定義は人によって違うだろうね」
「…………」
ユーノは理解できずに眉を八の字にした。
「でも、確かなこともある。それは、君が会った“彼”と今君の前にいる“僕”の人格は非なるもの。
そう思うだろう?君も。…いや、ユーノ・スクライア司書長」
魔導師は振り向きユーノを見つめて言った。
「!?な、なんで僕の名前を?」
驚いた。魔導師には名乗った覚えもないし、自分は名前が有名なほど偉くもない。
「君だけではないよ。高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、クロノ・ハラオウン、そして……八神はやて。みんな知ってる」
はやての名前をあげる時だけ間をおき、魔導師は悲しいような、寂しいような、複雑な表情をした。
「…闇の書がなにか関係してるんですか?」
はやてといえば6年前の闇の書事件の中心人物だ。
「そうだね。あまり時間もないし、話そうか。僕と夜天の魔導書との因縁を……」
そう言って魔導師は再び窓の外に目を向けた。おだやかな風が魔導師の黒い髪をやさしくなでた。
──────それは遠い過去の話
「つい先ほど夜天の魔導書の破壊が確認された。次の転生先は、十中八九彼女だ」
「そんな……」
事実を聞かされた黒髪の少年は声をなくし、隣にいる少女は俯いた。
「でも!彼女に転生されると決まったわけじゃ…」
少年はそれでもまだ食い下がった。
「いや、彼女ほどの魔力と才能はおそらくどの次元にも存在しないだろう。それに、しばらく監視するだけだ。
そう慌てる必要もない」
そう言って提督は部屋をあとにした。
(夜天の魔導書は完成させてもさせなくても選ばれた主は死ぬんだから、どうしようもないじゃないか!!!)
少年が悔しそうに歯軋りすると、少女が優しく手を包み込んで言った。
「わたしは、大丈夫だから…」
そう言って微笑む彼女に少年は強いまなざしとともに言った。
「君は僕が守る。今までだってそうだった。君は僕の大切なパートナーなんだから…」
少年はぐっと手を握り返した。
この時代は時空管理局も発足してまもなく十分な体勢が敷けなかったのもあり、夜天の魔道書はさまざまな次元で猛威を振るっていた。
それでも、魔導書が魔法の資質が高い者を主に選び、しかも歴代の主はみな死んでいるという情報までは掴んでいた。
破壊しようとすると持ち主を飲み込んで転生してしまうという情報もあった。とにかく情報が錯綜し、確証がとれない。
主に選ばれればプログラムを改変する手立てもなく、リンカーコアを蒐集するか死ぬかの二択であった。
選ばれた主のほとんどが野望のために蒐集を選び、完成・発動後に闇の書の意志に肉体を奪われ、暴走により死亡している。
ヴォルケンリッターの騎士達はとても凶暴で手に負えるものではないとも聞かされていた。
(守ってみせる。絶対に……)
しかしその数ヵ月後、無情にも彼女の前に夜天の魔導書は姿を現した。
多くの局員の監視の下、彼女が主に選ばれる儀式が始まった。
「夜天の魔導書、開きます!!!!リンカーコア、コンバート開始!!!」
彼女から出てきたリンカーコアを魔導書が吸収しようとする。しかし、あらかじめ局員達が用意していた別のリンカーコアと
入れ替えるために、僕を含めた数人の結界魔導師達が魔法を発動した。
(代わりのリンカーコアは低知能の魔獣のもの…。これを魔導書が主と認識すれば、彼女は助かるはず!)
作戦を考えたのは僕だった。死に物狂いで情報を集めた結果、今の技術でとれる最善の策だった。
彼女のリンカーコアは一時的に別のものへと入れ替えられた。そして魔導書に吸収されるように近づいていく。
作戦は成功するかに見えた。次の瞬間、
「魔導書にエネルギー反応!!!こ…これは……防衛プログラム!?エネルギー体、この空間に出ます!!!!」
魔導書から出てきた光が瞬時に巨大な魔物となり、多くの局員を踏み潰しながらその姿を現した。
一瞬のうちにあたりは阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
僕も必死に逃げ、空高く飛び遠くからその様子を見ていた。
(そ、そうだ!)
主に選ばれるはずだった彼女はどうなったんだろうか?急いでその姿を探した。
すると、同じ高さに浮かびながらこちらをみている少女に気がついた。
(よかった……)
そう思い微笑んだ瞬間、
光の槍が彼女の心臓を貫いた。
(え……!?)
光景がスローモーションになる。彼女は口から血を流し、まっさかさまに落ちていった。
急いで助けに向かい、地面ギリギリでなんとか受け止めた。
「な、なんで!?だれがこんなことを!!!!」
僕は必死に治癒魔法を彼女に施しながら叫んだ。でもわかっていた。これほどの致命傷はもはや手遅れであることが。
「……ご…めん…ね…」
そう言いながら彼女は僕の頬に手を伸ばした。僕の頬にべっとりと血がつく。
そうだ、あの魔法。あの光の槍は僕の恩師である提督がいざという時にと教えてくれた殺傷能力の高い魔法だ。
すると、提督がすぐそばに立っているのに気がついた。
「き…きさまあああああぁぁぁ!!!!」
彼女を抱いたまま僕は怒りで叫んだ。
「周りを見てみろ」
悲しく、とてもつらそうに言う提督の言うとおり周りに目を向ける。
先ほど現れた巨大な魔物は姿を消していた。動かなくなった局員や怪我をした局員が廃墟と化した施設とともにいるのがわかった。
「彼女はこうなることも見越して私に頼んでいたのだ。みんなを巻き込むようなら自分を殺してくれと…」
彼女を見ると、僕を見て微笑んでいた。
「だ…だからって……どうして!?」
僕には理解できない。どんな理由があったって、理解なんてできない。
「あのまま魔物を放っておいたらみんな死んでいたんだぞ!!!契約するはずの主を契約中に失ったんだ。
魔導書はしばらく次元を彷徨うだろう。あと数百年はその姿をみることもあるまい…」
今の状況と怒りで頭が混乱し、僕はなにも考えられなかった。ただ、目の前で死にゆく彼女を見ていることしか出来ない。
すると彼女が最後の力をふりしぼって僕に囁いた。
「……わたしね……あなたのこと…ずっと前から…………」
最後に聞こえた言葉を耳にし、僕は絶叫にも似た叫び声をあげた。
「それから僕は時空管理局を離れ、たった一人で夜天の魔導書を探し続けた。……復讐を果たすためだけにね」
魔導師がこちらを見ていった。ユーノはあまりに壮絶な過去に言葉を失った。
しかし、一つ気にかかることがあった。いつの話なんだろうか。時空管理局の発足した時といえばとんでもなく昔だ。
ほとんど原始的な魔法しかないくらい昔。この人が今まで生きているはずがない。
あらためて魔導師の外見を見る。少なくとも20代後半か30代くらいだ。
その視線を感じて魔導師がゆっくりと話した。
「僕はね…何百年と転生と転移を繰り返す魔導書を追うために、ある方法を取るしかなかったんだ」
そういって手元にあった機械のボタンを押すと、重低音とともに目の前の古い民家風の壁が下がった。機械的な部屋がその奥にあった。
(!!!!!)
その部屋の両側には円柱状のケースが何本も立ち並び、中には裸の魔導師が何体も浮かんでいた。
そう、あれと同じようなものを昔見たことがあった。PT事件。あの時のアリシアが入っていたものにとても似ていた。
一番奥には棺桶ぐらいの大きさの装置があった。
「クローニングとコールドスリープ。これで僕は数百年にも及ぶ時を生きてきた。
そして、クローンの個体には僕の元となる記憶を植えつけ続けたんだ。その人格が“僕”。
だけど、度重なるクローンの影響で新たに人格が生まれたんだ。それが“彼”。彼は僕の負の一面である管理局を恨む感情を色濃く
受け継いでいるようだね。……いや、世界そのものを恨んでいるのかもしれない…」
(クローンの怨念の集合…?)
よくわからないがなんとなくユーノはそう思った。クローンにだって一人一人異なる人格があって当たり前だ。
(アリシアのことはよくわからないけど、フェイトは……フェイトなんだ)
ユーノはその場にいない少女を想い強く心の中で呟いた。
「僕は起きるたびに次元管理局や時空管理局に変身魔法で忍び込み、魔導書の情報を集め続けてきた。
17年前クライド・ハラオウンが死んだとき、僕は運悪くコールドスリープに入っていた。
最近になって細胞の劣化のせいか、長く起きていられないんだ。クローンとはいえ、行動させるのは一人と決めているしね。
何度かあったんだ。僕が活動してないときに魔導書が現れるときが。ただ、最大の不幸が数年前に起こった」
「闇の書事件の解決…」
ユーノが呟いた。
「僕は生きる目的を失った。だって、防衛プログラムはもうアルカンシェルで消し飛び、魔導書はたんなるデバイスになり下がったんだ」
魔導師は怒りに手を震えさせながら言った。数百年の苦労と彼女への想いが、全て無駄になったのだ。
「すると、僕の意識はどんどん希薄になっていき、いつしか“彼”が僕を動かすようになったんだ。
彼が起きているときは僕には意識があった。だから見ていたんだ。全部」
魔導師が面白そうに言った。まるで自分には関係ないことのように。
「だったら!なんで止めないんですか!!そいつは次元を消滅させるかもしれないんですよ!?」
ユーノはその無責任さに腹が立った。しかし魔導師はそれを全く意に介せず答えた。
「もう僕には関係ない。どうでもいいんだよ。彼女のいない世界に興味はないんだ。ただ、体は共通だし、僕が起きているときは
ちょっと協力してあげたりはしたけどね。さっきも管理局の会議に参加してきたんだ。魔導師とジュエルシードは虚数空間に落ちたから
もう探さなくていいよって言っておいた」
クスクスと笑いながら話す魔導師を見てユーノは理解した。
(この人は……壊れている……いや、とっくに壊れてたんだ。彼女が死んだその時から)
写真立てにあった少年と少女の写真を思い出した。
ふぅっと笑うのをやめ、魔導師はまた窓の外に目をやった。麦畑にさらさらと波が起きている。
ユーノが最後に質問した。
「なんで僕にこんなに話してくれたんですか?」
どうしても聞きたかった。魔導師に不利になる情報もかなり含まれていたからだ。
魔導師はユーノを見ずに嘆くように言った。
「君は、僕にとてもよく似ているからね。……見ていて悲しくなるくらい」
そう言って魔導師は目を閉じた。ユーノは、もうなにも言うことはできなかった。
次回へ続く
明かされた真相。そして最後の戦いが始まる。
次回 第十三話 「決戦」
補足
・主人格はどちらとも言えません。
・第九話の次元管理局の白衣の男が魔導師でした。
・変身魔法で忍びこんだと言っていますが局員として一生を終えたりとスケールが大きいです。
・よく読めばわかりますがクロノ側とユーノ側では時間が違います。演出上の理由で同列っぽくしています。
ちなみにクロノ側→事件から二週間+数日、ユーノ側→事件から二週間後
ここまで駆け足できましたがみんなついてきているか心配です。
残り二話ですが最後までお付き合いください。それでは。
>4の422氏
面白い!この設定は良いなぁ
>>396氏
眠れない夜にひと時の楽しみを有難う!
あと2話ですか…速いな〜
>>4の422氏
GJです。読んでて思わずニヤニヤしてしまいました。
なのはとなのはの対面はどうなるのだろう?
>>396氏
乙です。毎回楽しく読ませてもらっています。
ただ今回は、過去の魔導師と、少女や師との触れ合いや日常の描写が少なく
いきなり悲劇の事件の話になって、感情移入しにくかった感があったように思います。
予備情報のないオリキャラですし、もう少し魔導師の過去に文量を裂いて掘り下げてもよかったのではないでしょうか?
もし次以降の話でそれを予定していたのであればすみません。
今後も楽しみにしてるので頑張ってください。
>>405-406 感想ありがとうございます!
お答えすると、深く掘り下げる予定はないです。
理由としては、アニメ同様全十三話におさめるつもりだったのもありますが、
一番は完全オリジナルキャラにしたくなかったからです。わざと限界まで個性を殺してます。
オリキャラは相当な文章力がないと受け入れられないですから。
魔導師と少女のモデルはわかりやすいですし、悲劇の内容はアニメで慣れ親しんだものばかりですので
そのことを踏まえた上見ると感情移入しやすいかもしれません。それでは。
>>396氏乙!
ユーノと魔導師は似たもの同士だったんですね〜。
残り二話でどんなラストを迎えるか楽しみにしてます。
>>396氏
魔導師の過去を描くことで話により入り込めるようになりました。
ただどうしてもそれは可哀想だったねで終わりそうで、魔導師側に感情移入しきれないです。
もうちょっとだけ幸せな時間があったという描写があると後の悲劇がより映えたかと。
あと魔導師の過去の話の中で夜天の魔導書と闇の書と言う単語が二つとも出てきたのは何故でしょうか。
何かしら意図があっての書き方なんですか?
そもそもプログラムが狂った時点で夜天の魔導書ではなく闇の書になっているはずですが。
>>409 まだ狂い始めたばかりで、闇の書という呼称が使われていなかった(もしくは、まだこの呼び方が広まってなかった)時代の話なら矛盾はないのでは?
それなら魔導師が夜天の魔導書と呼ぶのも自然なことですし。
もっとも、未放送地域のDVD組なんで
>プログラムが狂った時点で夜天の魔導書ではなく闇の書になっているはず
ということならこの意見はおかしいですけど。
公式やその他感想サイトをみた限りでは、いきなり夜天の魔導書→闇の書と呼ばれるようになったということじゃない・・・と思ってるんですが・・・
>>396氏GJ!
>魔導師の過去。
重っ…こういう事例があっても、おかしくなさそうなとこが、なんともかんともorz
クローニングを重ねる内に別人格は芽生えるわ、主人格は希薄になるわ、
なんか時間と共に、どんどん「魔導師」という存在が壊れていってるようですなぁ。
>「わ、わたしだって!!!」
魔導師が重いんで、ちょっとこのなのはさんに萌えてますね(ゴロゴロ
>>410 おかしくはないと思う。
守護騎士達があの本の名を「闇の書」と認識してました(本名の記憶は失くしてました)。
「闇の書」って名は、「夜天の魔導書」を改変した主が付けたものであり、
そこから管理局サイドなどに、広まっていったと思われます。
多分、戦闘中の会話やらなんやらで「主」か「守護騎士」がその名を口にしたんでしょう。
だから当然、2つの名前の認識が錯綜している時期もあったかと。
無限書庫には「夜天の魔導書が改変されて、闇の書になった」事を記した書物がありました。
魔導師の件は、この本が書かれるより以前の事件なんでしょうね。
412 :
jewel:2006/03/18(土) 18:08:09 ID:S4pY4gKL
お久しぶりでゴザイマスm(__)m
忘れ去られた頃に今更続きを投稿させていただきます。
…パソコンが壊れるなんて、超予想外だったんだ…
【Y】
―ミッドチルダ某所―
彼は、静かに目を閉じ、ゆっくりと右手を前に出した。
フィィイイ…
掌の前に、黄色の光球―大きさはソフトボール程だろうか―が現れた。
彼は意識を集中させ、更に魔力を注ぎ込んでいく。しかし、その小球の大きさは全く
変化することなく、形状を維持したまま魔力密度を急速に高めていった。
「…アクセル」
彼が静かに呟く。初めの数秒、光球や周囲には何の変化も見られなかった。
しかし、次第に光球を中心として小さな風が流れ始め…瞬く間に、強い渦となって
彼の束ねた長髪をなびかせた。
もし、この場になのはやクロノ達がいれば…一見何の変哲もないこの一連の動作に、
驚愕し…感嘆したであろう。
超高密度の魔力球を、高い真円度を保ったまま、全くブレることなく高速回転させる。
彼―ディノ・ストラインの実力は、紛れもなく本物だった。
ふと気配を感じ、彼は目を開いて右手を下ろした。
圧縮されていた魔力が霧散し、周囲には瞬間的な突風が吹きぬける。
「きゃっ!」
背後にいた女性が、驚きの声をあげた。
「…失礼、驚かせてしまいましたね」
穏やかな笑顔で、彼が振り返る。
「魔法のトレーニングって、もっと派手な感じだと思ってたんだけど。
意外と地味なのね」
僅かに乱れた髪を手櫛で整えながら、女性が言った。
その言葉に、魔導師は苦笑いをしながら答える。
「魔法っていうのは、極論すれば生成・圧縮・変換・制御の4つの組み合わせに
すぎないんですよ。だからこそ、こういう基本的訓練を突き詰めていけば、
自ずと高みへと近づく。何も、魔法に限った事じゃないと思うがね」
「ふ〜ん」
得心した、という表情で女性がうなづいた。
「…ところで、何かご用ですか? ランチのお誘いには、いささか早いと思うんですが」
「せっかく真面目な事言ったのに、自分で台無しにするなんてね」
今度は呆れ笑いで、女性は魔導師に言葉を続けた。
「…さっき、レーダーが捉えたわ。このままのコースなら、おそらく1時間後に
近くの次元航路を通過するハズよ。どうする?」
「そうですか。なら勿論、決行ですよ。ためらう理由はどこにもない…とまでは
言わないが、どれも取るに足らないものばかりなのでね」
「クライアントにこんな事聞くのはルール違反なんだけど、聞いてもいいかしら?
『これ』を手に入れて、貴方一体どうするつもり?」
「…気が向いたらお話しますよ。今はとりあえず、お互いやるべきことに集中しないと。
ま、自分で二番煎じを淹れる分には、誰に文句を言われる筋合いもないのでね」
そう言うと、魔導師は彼女の脇を通って部屋を後にする。
やれやれ、という表情で、彼女は彼の横に付き従った。
【Z】
―2時間後、艦船『アースラ』―
「みんな、ちょっと集まってもらえるかしら? …緊急事態よ」
ブリッジの扉が開き、リンディが神妙な面持ちで現れた。
「今、本局の方から各艦船の艦長に直接の命令が届いたわ。内容がこれよ」
ピ、とモニターに映された文字に、なのは達の表情が一変した。
「そんな…」
「あんにゃろ… また同じコトしてくるなんて、どーゆーつもりだ…!」
「くそ、信じられない… 管理局の艦船にクラッキングだなんて」
最も悔しそうな顔をしたのは、そう話したクロノだった。
「…1時間程前、ミッドチルダ近くの次元航路を航行中の5番艦に、DSがクラッキング
を仕掛けてきたらしいわ。オペレーター達が対応したんだけど、15分後には艦内シス
テムが完全にダウン。復旧前に、停止中の艦船に転位魔法で直接乗り込んできたそうよ。
乗り込んできたのはDSのほかにもう一人いて、クラッキングはおそらくその人間によ
るものだそうだけれど…正直、私も信じられないわ。闇の書のときのリーゼ達のように、
管理局内部の人間ならともかく、外部から個人でやってのけるなんて、正に特Aクラス
のハッカーだわ」
両腕を組み、リンディが視線を鋭くする。
「それで、本局の方に向かってるっていうのも、ホントなんですか…?」
「ええ、そうみたいよ。このままの速度なら、6時間後に到着するわ」
6時間―余りに短すぎるその時間に、魔導師達は表情を曇らせる。
「…艦長。この命令が実行可能なのは、僕たちアースラ以外に、他に何隻ですか」
静かな声で、クロノが口を開いた。
「…現在位置から考えて、相手の本局到達前に進路に割り込めるのはアースラだけよ。
他の艦は、間に合ってもギリギリ本部直上ってところかしら。本部で整備中の船も、
大至急作業しているようだけど…間に合いそうにないわ」
リンディが辛そうに答える。
「…やるしか、ないって事ですね…」
「クロノ!」「クロノ君!」
皆に名前を呼ばれた若き指揮官は…無機質な命令の最後の一文を、じっと見つめていた。
―尚、五番艦の奪還は困難を極めると予想される。因って艦長には、
各館搭載の『アルカンシェル』の発射を許可する―
【[】
―同時刻、5番艦『フェンリル』―
「いやはや、見事な腕ですねぇ。見たところ、相当な防壁が用意されていたみたいですが」
ブリッジに、魔導師の落ち着いた声が反響する。
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない」
彼の前、通信士の席に座る女性は、キーボードを叩きながら答えた。
「といいますと?」
「こういう仕事やってると、クライアントの殆どは仕事の『結果』だけで判断しちゃう
のよね。『過程』がどんなに大変だったかなんて関係ナシ。反対にコッチにしてみれば
楽勝な仕事だったのに、バカみたいに褒められたりとかもするのよ」
「成る程、そういうことですか」
彼はふふ、と小さく笑った。
「それにしても、管理局もマヌケね。奪われた艦船にまで、奪還命令送信するなんて」
「…私たちへの警告を兼ねてるつもりなのさ。『降伏しろ、さもなくば』ってね」
不意に、魔導師は声色を低くする。表情も、心なしか真剣味を増したようだった。
「だが、確かに思慮不足かな。『管理局の艦船をジャックする』なんて馬鹿げたことを、
二度も仕掛けてくるような奴が、自分の命を惜しいと考えるとでも思ったのかねえ?」
複雑な笑みを浮かべながら、彼は言葉を続ける。
「それで、対策の方は大丈夫なんですか? せっかく乗り込んだのに、『アルカンシェル』
でいきなり蒸発なんてのは、ちょっと勘弁してほしいんですが」
「問題ないわ。今、新しく防壁ユニットを組み上げるついでに、発射プログラムも把握
したつもり。相手の艦が追ってきても、発射シークエンスの間に割り込み可能よ」
得意げな表情で、女性が振り返った。
「頼りになりますね。お礼を言わせてもらいますよ」
「そんなのは要らないわ。これが私のビジネスだし、貴方のように命を賭けるつもりも
毛頭ないから」
「…失礼ですが、世の中にはお金で手に入らないものも、あると思いますよ」
「知ってるわ、そんな事。ただ、買えるものの方がちょっとだけ多いのよ」
「クス…これはまた、一本取られたかな」
相手の冷めたコメントに、彼は苦笑した。
―同じく、8番艦『アースラ』―
「そんな…だって、その船には、他の管理局の人たちが乗ってるんでしょ!?」
なのはが悲しげに叫ぶ。フェイトとアルフが、それに賛同した。
「クロノ…私も、反対だよ…合流までには、まだ3時間くらいあるんでしょ? それまで、
みんなで一緒に考えれば、きっといい案が…」
「そーだぞ! アタシらはいっつも、そーやって乗り切ってきたじゃんか!」
「…」
彼女達の言葉にも、クロノは俯いたまま答えない。
「いいの、クロノ…? 君が、その…」
ユーノが辛そうに話しかける。全てを話さずとも、その意図は容易に伝わった。
今の状況は…他ならぬ、『あの場面』に酷似したものだ。
12年の歳月を超え、今度は彼と彼の母親が、逆の立場に回る…
こんな皮肉なことが、あっていいのか? ブリッジにいた誰もが、その思いを抱いていた。
【\】
「…僕だって、分かってるさ。でも、今やらなきゃ…本局が『アルカンシェル』で沈む
かもしれない。そうなったら、世界は…!」
ミシ… 俯いたクロノが拳を握る音が、彼の本心を物語る。
「………で、でも、まだ何か、方法が…」
「…高速航行してる上に、転送ポートにもジャミングが掛けられてるだろう。転位して
乗り込むのは不可能だ。ましてや、今更、説得に応じるはずもない。こちらが躊躇えば、
逆に向こうの『アルカンシェル』の餌食になるんだぞっ…!」
なのはの細い声にも、クロノは頑として譲らなかった。
「…ほんとに、そうなの…? それしかないの、クロノ…?」
なのはの肩に手を添えながら、今度はフェイトが問いかける。
彼女の静かな声は、感情的になっている今のクロノには、逆に響いたようだった。
「………ああ、そうだ。それが考えうる限り、最も確実な」
「ちょっと待って」
クロノの声を遮ったのは… それまで沈黙を続けていた、エイミィだった。
「エイミィさん…」
「さっきから聞いてれば、何言ってるのよクロノ君。クロノ君程の状況判断力があれば、
もう一つの方法に、気付いてないワケないでしょ」
椅子に座ったまま、クロノの背中に向けて話すエイミィ。
「ホントですか、エイミィさん!」
なのは達の声が明るくなる。一方、クロノは表情を硬くしたままだ。
「もっちろん♪ ほらクロノ君、ちゃんと説明してあげなよ」
エイミィが笑顔で話を振ると、クロノはようやくそれを口にした。
「一言で言い切るなら…向こうと同じことをすればいい。そういうことだ」
「…あ、そっか!」
ユーノが納得した、とばかりに手を叩く。
「そーいうコト。相手の艦船にあたしがハッキング仕掛けて、システムを掌握できれば
こっちのもの。停止させれば、アルカンシェルも発射できなくなるし、逆に乗り込む
ことだってできる。その間に増援もくるだろうし、上手くいけば、これが最良の策でしょ?」
エイミィの笑顔と明るい声が、場の緊張感を解いた。
「さっすがエイミィ! もー、こんな簡単なことに気付かないなんて、クロノらしくないぞ」
アルフが、ぽんぽんとクロノの肩を叩く。
「それじゃあ、早速やりましょうよ」
「うーん、流石にそれはちょっと無理。次元航路内だから、もうちょっと近づいて
からじゃないと。私も、防壁破りのウイルスとか組み上げなきゃならないから、決行は
丁度合流する辺りかな。…だからさ、なのはちゃん達はここで降りてもらえるかな?」
え? と目を丸くする一同。
「今回は通信関連のあたしの専門。超優秀な魔導師たちをキケンに巻き込むってなると、
ちょっとプレッシャーになっちゃうからさ。だから、ゴメンね?」
謝罪のポーズをとり、いつもと同じ明るい声でエイミィが話す。
「…そういう、ことなら…」
互いに顔を見合わせながら、なのは達は頷いた。
「オッケー、あとはおねーさんに任せなさい! それじゃ、あたしは自分の部屋で
準備があるから、みんなは先に降りててね。明日、任務終了後に会いましょ♪」
やや早口でテンポよく言葉を並べると、エイミィはブリッジを後にした。
そして、後に残されたなのは達に向け、クロノがゆっくりと呟く。
「…少し、席を外す。みんなは、転送ポートで降りてくれ。僕は、少ししてから合流する。
艦長、すみませんが…彼女達の誘導をお願いします」
「…分かったわ。但し、艦長として当然、私も艦に残るわよ。いいわね、クロノ執務官?」
「…分かりました。それでは」
一人、最後まで表情を変えることのないまま…クロノも、ブリッジの外に消えた。
417 :
jewel:2006/03/18(土) 18:18:56 ID:S4pY4gKL
記憶を頼りにここまで書きました。「会話」を重視する余り、今回も長く
なってしまいそうです…うーん。
クライマックスの前に一本、エイミィを主役にしたストーリーを書きたかった
のでやってみたんですが。私、全然魔法少女してないじゃん…(苦笑)
>>417 やばい、やばいですよ。エイミィに死亡フラグが凄い勢いで立ってますよちょっとコレ('A`)
頼むからあまり痛い事せんといてや〜
それは命令無視に対するものか、はたまた余計なおせっかいに対する怒りか。
「・・・どういう、ことですか・・・・!!」
怒気を含んだ表情の少女は掴みかからんばかりの勢いで、緋色の髪の女性へと詰め寄り。
無言に佇む彼女を一方的に、問い詰めていた。
「・・・・」
「どうしてスターライトブレイカーが、なのはが・・・・!!」
「フェ、フェイトちゃん、あのね、それは」
「シャマルさんは黙ってて下さい!!私はシグナムに聞いているんです!!」
少女の激しい剣幕にも、壁際の剣士は無言で目をつぶったまま。
彼女の舐めきったようなその態度が一層、フェイトの心を苛立たせる。
「なんとか言ったらどうなんですか!!シグナム!!」
魔法少女リリカルなのはA’s −変わりゆく絆−
第十話 親友
「あなたが・・・呼んだんですか・・・!?」
夜天の書の予備デバイス、彼女達の結界を破壊したスターライトブレイカーの衝撃は、
フェイト達のいるこの石室にまでその術者の魔力波動を伴って届いていて。
轟音と地響きの中、来るはずのない増援────高町なのはの到着を彼女達に知らせ、
同時に側らで壁に身を預けていた女性の呟きと相まって、未だ整理のつかぬ綻びたフェイトの心を改めてかき乱していったのであった。
「・・・いや?『呼んだのは』、私ではないぞ」
「やっと、来たか」────、白服の砲撃魔導師の魔力を感じた彼女は、確かにそう言っていた。
ぼそりと、聞こえるか聞こえないかというくらいの、それでいて少女が聞き逃さない程度のはっきりとした大きさの声で。
聞いた少女が彼女を問い詰めるであろうことを、明らかに見越した上での、呟くような発言だった。
「ただ、お前の様子が変だったのでな。クロノ艦長に任務前の空いた時間にでも母君に相談してみるよう進言はしたが」
「な・・・・!!」
激昂しかかっている・・・いや、もうしているフェイトとは対照的に。
半ば挑発的ともとれるあくまで冷静な口調でシグナムは彼女の詰問に答えていく。
「まあ、その時にスクライア司書の話題でも出たのではないか?リンディ提督は世話焼きだからな。大方あの人が高町に気をまわして──・・・」
「ッ・・・あなたって人は・・・・!!」
いけしゃあしゃあと言ってのけるシグナム。
わざと怒りを煽っているのかとすら思える彼女の物言いに、フェイトはただ拳を握りしめることしかできない。
いつ爆発してもおかしくない彼女の様子に、見守るアルフもシャマルも、シグナムと交互に見比べておろおろするばかりだ。
「怒っているのか?」
「ッ・・・・当たり前です!!余計な・・・・!!」
「なぜだ?」
「それは・・・・ッ!!、その・・・だって・・・・」
しかしシグナムに逆に訊かれ、フェイトは口ごもってしまう。
先走った感情が手前勝手なものであることを彼女自身どこかで自覚しているからこそ、答えられようはずもない。
なのはに会いたくない、任務に参加させたくないという自分の我侭以上の説明を感情的になったフェイトがするのは、不可能であった。
ユーノのため、なのはのため。任務に必要のない余剰戦力。どんな言葉で取り繕おうと、結局その怒りの理由はフェイトの気持ちにあるのだから。
そんな自分のことをフェイトは、自己嫌悪していた。
「だって、なのはは!!」
───なのはは、ユーノの事を。
「・・・高町が、どうした?」
「・・・・なのは、は・・・」
想いだけが、先走って。
内にある感情が、言葉となって出て行かない。
───ユーノの想いを、何度も、何度も傷つけて。私の気持ちも知らないで。
誰より彼女のことを想う少年の心を察せず。
応援すると決めた、フェイトの心にも気付かずに。
いつまでも、いつまでも。
大好きな彼女の笑顔が、今このとき、浮んでくるに到っては腹立たしい。
「なのはは・・・・」
俯く彼女の目尻には、僅かに涙が溜まっていて。
先ほどからきつく握りっぱなしの拳を下ろし、肩を震わせる。
「・・・私も少しばかり姑息な手だとは、我ながら思ったよ。だがな」
「・・・」
さすがにやりすぎたと思ったのか壁から離れフェイトの肩に手を置き、シグナムは諭すように語り掛ける。
彼女だってフェイトを、傷つけるためにやっているわけではないのだ。
「頑ななままでは、いけないのではないか?彼女ともう一度話してからでも遅くはあるまい?」
「でもっ・・・・」
「フェイト・・・」
無論口下手を自覚する彼女だ、感情的になっている今のフェイトを自分一人で鎮めようとは思っていない。
シグナムもせいぜい、己を布石のひとつ程度にしか位置づけてはいなかった。すべては本人同士で解決すべき問題。
自分はその準備をして少しばかりの手助けをする、ただそれだけだと。
───そして。
「・・・まぁ、あとは本人の前で・・・」
「言うたらええんとちゃうか?」
「!!」
「主はやて」
意識してか足音を殺し、彼女達が到着する。
「・・・ごめんな、フェイトちゃん。みんなに話したんは、私や。けど、後悔はしてないから」
スターライトブレイカーの炸裂からそれほど時間が経っていないのは、守護騎士達と彼女が「繋がって」いて、
迷うことなくここまでこれたからであろう。自身の身体を抱くように腕を組み立つはやては、すまなそうな表情でフェイトへと謝罪し。
一転厳しい表情を向けてから、彼女の入ってきた石室の入り口のほうへと軽く頷いて合図を送る。
「・・・さっきから大体、聞いてたから。言いたいことがあるなら、きちっと本人に向かって言うたほうがええよ」
はやての合図を受けたその先は薄暗く、僅かに人影が二つあるのが見えるだけ。
シャマルのクラールヴィントが微かに照らすこの部屋からでは、その顔までは確認できなかった。
にもかかわらず、当然と言うべきなのだろうか、フェイトは見るまでもなくそこにいるのが誰か、理解していた。
この期に及んでシグナム達が彼女を欺いてまで呼び込む相手なんて、一人しかいないのだから。
「フェイト・・・ちゃん・・・」
紅の鉄騎を伴って光の下に歩み出たのは、フェイトがおそらく、今一番会いたいと思っている。
また一方で、今一番顔を合わせることを恐れ、会いたくないと思っている相手。
「・・・なのは」
二日ぶりの親友との顔合わせは、お互いひどい顔だった。笑顔で笑いあうなんて、できるはずがない。
彼女のことだからここには単純に自分やユーノ、仲間達のことを心配して駆けつけてくれたのだろう。
しかしなのははフェイトとシグナムのやりとりを聞いてしまっている。
未だフェイトの心に抜けない棘となって残り続けている憤りの感情を、知ってしまっているのだ。
そのことが如実に現れている顔でそれでも、おそるおそるこちらへと面を向けるなのはに対し。
フェイトは、顔を合わせることができなかった。そして、しなかった。
* * *
「フェ・・・フェイト、ちゃん、あの・・・」
気付かなかった。これほどに彼女が、怒っていただなんて。
「・・・・」
彼女が視線を逸らし、こちらの顔を見ようともしないのも、無理もないのかもしれない。
影から聞いていた彼女の声は、聞いていてこちらが辛かった。聞いていたから、フェイトの怒りを改めて実感した。
「えと・・・」
「・・・・」
まだ潤んでいる瞳が痛々しくて、なのはは親友をこんなに傷つけてしまった自分を、悔いた。
───謝らなければ。まず、そう思った。
「あの、ね・・・?ごめんなさ・・・」
「やめて・・・」
「・・・え?」
謝ってすぐ、赦してもらえるなんて思ってはいなかったけれど。
少女はなのはの、謝罪の言葉すら拒否していて。
「やめて、よ・・・。謝らないで・・・。私、なのはのこと、嫌いになりたくないよ・・・」
「フェイトちゃん・・・?」
「なのはの顔、見てればわかるよ・・・。なのははまだ、わかってない」
フェイトが悲しげに憤り、顔を背け涙するその理由。あの日、彼女の頬を張った意味を。
なのははまだ、そのことが何一つわかっていない。謝罪なんて、聞きたくない。
「そんな、ことは・・・・」
「そんなことないって、言うつもり?やめて」
図星を衝かれ、なのはは視線を空に泳がせた。
「今のままでごめんなんて言われたら、私、なのはのこと赦せない。私自身のことも赦せないよ」
「・・・どういう、ことなの・・・?」
彼女がなのはのことを赦せないというのはわかる。けれど、フェイトがフェイト自身のことを赦せない。
それは一体どういうことなのか、なのはには解せなかった。
「・・・なのはが本当に謝らなきゃいけないのは、私じゃないでしょ・・・?」
「・・・・」
わからない。
フェイトは一体、何が言いたいのだろう。
「お願い。もう、気付いてあげて・・・」
「え・・・」
彼のことを。どうか彼の想いを。
そして、あなた自身の想いを。きっともうとっくにあるはずのひとつの想いに、気付いてほしい。
「答えて、なのは」
───あなたに、とって。高町なのはという、少女にとって。
「なのはにとって・・・ユーノは、何なの?」
どろどろしてるの書いてると、自分もどろどろした気分になってくるから不思議。
多分今回か次がどろどろのヤマです。
>>549氏
>私のパンツを鼻にあててクンクンするレイジングハート
ちょwwwwwなにやってんだレイジングハートwwwww
これからどうなっていくのやらwwwwww
>>4の422氏
バルディッシュのなのは評本人の行動で台無しwwwww
なのはらしいと言えばなのはらしいwwww二人の対面、楽しみにしてます。
>>396氏
過去編(?)乙ですー。ラストスパートですな。
>>jewel氏
久々にktkr、待ってましたー。
死ぬなエイミィ
>>640氏
わ〜ドロドロしてますね〜特にフェイトが……
一途さや激情はプレシア譲りなのかもしれませんね。
本スレでもキレると一番やばそうなのはフェイトだとよく言われてましたし。
425 :
YUKI :2006/03/19(日) 01:05:37 ID:XWyDvwm+
コンバンワ&お久しぶりです&初めまして
YUKIです
作品を投下して、中途半端で切れてから1ヶ月経ってしまいました。
その間の皆様の作品に癒されつつ、己の仕事に没頭してました。
この季節になるとどうしても仕事量が増えるので、しょうがないんですが。
ほんとに皆様の作品に感謝してます。
ほんんとに皆様の作品に支えられたと実感しております。
さて、「二人の距離」の続きを投下します
仕事終わってから書いたので中身があやふやになってしましました。
反省。
あらすじ
夢の中でエイミィの自慰行為を妄想してしまったクロノ
それからというものクロノはエイミィのことが気になってしまい、とうとうエイミィを力ずくで襲ってしまう
途中でエイミィの平手打ちにより行為そのものは未遂で終わるが・・・・・・
って感じです
その一言が・・・・・A
「はぁ〜、、、、なんで僕はあんなことを、、、、、なんで、、、、」
昨夜からずっとクロノは後悔しながら同じ言葉を繰り返していた
時間がたつのも忘れ、ただ自責の念に刈られていた
目を閉じれば浮かび上がるエイミィの泣き顔
今までエイミィを泣き顔は見たこと無く、あの瞬間の顔がただ自分を責め立てた
謝らなくてはいけない
自分の犯した罪を償うには、まず誠心誠意を持ってエイミィに謝らなくてはいけない
その答えはとっくに出していた
母親のリンディに叱れる前から・・・・・
だが、どう謝っていいか解らない
自分の未熟さがエイミィを傷つけた
それも最低な形で
己の欲望を満たすことだけに駆られ、自分を見失った
会おうとしても会ってはくれないだろう
当然のことだ 突然あんなことをされれば誰だって会いたく無くなる
しかし、謝りたい
許してくれないだろう
だが、自分の心からの謝罪の気持ちを伝えたい
考えても考えても上手い謝り方が浮かばない
浮かぶのは単純な一言しかなかった
解ってる、自分でもこの単純な一言が一番大事だという事は
それでも、クロノは精一杯考え抜いた
エイミィを傷つけたことへの自分への怒りや戸惑いを含めて
エイミィの部屋の前
ドアを睨みながら立ち尽くすクロノの姿があった
大きく深呼吸をしてから震える手でドアをノックする
―――コンコン――――
一瞬の間のあと
「ど、どちら様ですか?」
中からエイミィの返事が聞こえた
「え・・・エイミィ・・・僕だけど・・・・・」
中から返事は無い
「僕の顔なんてもう見たくないだろうから、そのままで聞いてくれ」
「き、昨日のことなんだけど・・・・・・」
・・・・・・・・・・
「き、昨日は本当にごめん!・・・・・謝って許されることでは無いと解っている。
でも、エイミィを傷つけ、怖い思いをさせた・・・・・僕の自分勝手な欲望でキミを傷つけた・・・・上手い謝り方も出来ない。」
ドアに向かって頭を下げながらクロノは続けた
「でも謝りたかった!僕の気持ちをエイミィに伝えたかった!許して貰おうなんて思ってない!僕を恨むんならそれで良い!・・・・それでエイミィの気持ちが少しでも晴れるなら、僕はエイミィにどのような仕打ちを受けても良い・・・。」
そこまで言い終えて、クロノはドアの前で固まっていた
「それじゃぁ、僕はもう行くよ・・・・。エイミィ、ほんとにごめん・・・・」
「・・・・・・・・・クロノ君待って・・・・・部屋の中に入ってきていいよ・・・」
うつむきながら立ち去ろうとしたクロノは耳を疑った
入って良い・・・・?
あんなことをした僕を・・?
「ほ、ほんとに良いのかい?」
「うん・・・」
「解った・・・・」
伝えたいこころ
エイミィの確認を得てからクロノはエイミィの部屋に入った
きちんと片付けられた室内
所々にある可愛い小物が、年頃の女の子の部屋に華やかさをもたらしている
うつむいててもわかるくらい、エイミィの泣きはらした目にクロノは心が痛んだ
それと同時に昨夜の自分にまた腹が立った
「え、エイミィ・・・」
「クロノ君・・・・・私、怖かったんだよ?・・・・・・・・・昨日、なんであんなこと・・・」
ベッドに腰掛けうつむいたままのエイミィ
「あ、・・・・・・そ、それ・・・は・・・・・未熟な僕が自分の欲望に勝てなかった・・・・・」
「そうじゃない・・・・・」
「えっ・・・?」
「私が聞きたいのはそんなことじゃない」
「え、えと、・・・じゃぁ、な、なにを・・・・?」
「馬鹿・・・・」
「・・・・・えつ・・・・・・?」
ボソリとエイミィが呟く
「クロノ君の馬鹿・・・・・・馬鹿、馬鹿、馬鹿、馬鹿、・・・・・バカぁーーーーー!!」
「な、なんだ!突然!・・・・・・・た、確かに今回のことは僕が悪かったけど・・・・・・」
「そうじゃないの!」
「ぼ、僕は精一杯謝ったじゃないか!」
「だからそうじゃないの!もう!・・・・・クロノ君、全っ然私の気持ち解ってない!!」
「き、君の気持ち!?」
「そう!!」
「私がなんで怒ってるのか全く解ってないんだもん!!!!!」
エイミィが怒る理由?????
そんなもの、僕がエイミィを襲ったことじゃないか!?
クロノは必死に考えを巡らすが、答えはそれしか出てこない
「だ、だから・・・・僕がキミに・・・・・・・・あんなことしたから・・・・・」
「違う!!そうじゃない!!・・・・・・・私がクロノ君にそんなこと一言でも言った?」
「え・・・・?い、いや、言ってないが・・・で、でも!あれは僕が全て悪いんだから!」
「あ〜・・・もう!!だからそうじゃないの!」
エイミィが少しずつ苛立ちはじめた
「じゃぁ!!何だって言うんだ!!!」
クロノもたまらず大声をあげる
「クロノ君の気持ちを私はまだ聞いてない!!
クロノ君は誰でも良かったの!?・・・・私じゃなくて、力ずくで押さえ込める女の人だったら誰でも良かったの!?」
エイミィの怒ってる理由・・・・
つまり、エイミィは・・・・・
長い沈黙が数時間のように感じられた・・・・・・・実際には数十秒の沈黙だったが
「あ・・・・・・ぼ、僕は・・・・・・」
「いきなり押し倒されて、あんなことされて・・・・・私はクロノ君にとってなんなの?
ただの学生からの友人?・・・ただの仕事上の部下?」
「ねぇ、答えてよ!!」
「僕は、エイミィだから・・・・・自分を押さえきれなかった・・・・・」
「・・・・・・・私、だから・・・・?」
「あ、あぁ。他の女性じゃ、あんなことはしない・・・・・・。
エイミィだから・・・・・。その・・・・・」
上手く言葉に出来ないことが恨めしく思える
こういうときにどういう事を言えば良いのか全く解らない
ただ思いつく言葉をたどたどしく口にすることしか出来ない
「じゃぁ・・・・・なのはちゃんやフェイトちゃんだったら・・・・?」
「なっ!?なんで、なのはやフェイトが!?!」
「答えて」
凛としたエイミィの言葉にさえぎられる
「・・・・・・なのはや・・・・フェイトでもあんなことはしない・・・・・
いや、しようという気すら起きない・・・・・・エイミィだけだ・・・・」
「・・・・私、だけ・・・・なんだ」
「あぁ・・・。エイミィだけだ」
「じゃぁ、それを言葉にしてよ。」
「えっ!?言葉・・・・?」
「うん。・・クロノ君のその気持ちをキチンと言葉にして欲しいの」
言葉・・・・?自分の気持ち・・・?
「あ・・・・・・・」
エイミィの言う意味が解った
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え、エイミイが・・・・・・す・・・・・・・好き・・・・・・・だ・・・・・・・」
うつむきながら、搾り出すように出した声は微かに聞き取れるほどでしかなかった
「聞こえない・・・・・・・もう一回・・・・」
頬を薄い桜色に染めながらエイミィ呟く
「エイミィが・・・・好きだ・・・・」
「もっと大きな声で言って・・・・」
「エイミィが好きだ!」
「もっと大きな声で!!」
エイミィはまだ満足してくれない
「僕はエイミィが好きだ!!エイミィじゃなきゃ駄目なんだ!!」
なかばヤケクソ気味に、顔を真っ赤にしながらクロノが叫ぶ
その瞬間、はじき出されたようにエイミィがクロノに飛びついた
「!!????!!!???」
「私も好き!クロノ君が大好き!!!!」
「あぁ・・・・僕も大好きだ。エイミィ・・・・」
ふたり顔を見合わせると、どちらとも無く唇を重ねた
まだ14歳と16歳のキス
妖艶とはほど遠く、あどけなさが残るキスだった
「あぁ〜、二人キスまでしてもうたでぇ・・・艦長・・・」
ドアの隙間からはやてが覗いていた
「おぉ〜、あ、あれがキスかぁ・・・・・」
「あらあら、これはちょっと予想外だったわねぇ。」
「あっ!こら!はやてちゃんとヴィータにはまだ早いわよ!見ちゃだめ!」
「ええやん、けちけちしたらあかんよぉ、シャマル」
「ケチとかじゃなくて、まだ二人には早いと言ってるんです!」
「おいおいシャマル、そんな大きな声出したら二人に聞こえちゃうぜ」
「もうとっくに聞こえてる(怒)・・・・・」
「あっ・・・・・」
「こ・ん・な・と・こ・ろ・で何やってるんですか?艦長?(怒)」
両目を引きつらせながらクロノが覗き見メンバーの前に立っていた
「何って・・・・・。息子の成長の記録を・・・・・」
「ほぉ〜・・・わざわざ、はやてやヴォルケンリッターを引き連れて・・・・・」
「みんなが二人のことを色々聞きたがってたから。」
満面の笑みで答えるリンディの顔は、さも満足気であった
「はぁ〜・・・・・・もう、僕は任務に戻りますから、さぁ!早くみんな自分の持ち場に着いて!」
クロノの言葉に皆残念そうに解散していった
クイっとクロノの袖が何かに引っ張られる感覚に気付いた
「んっ?エイミィ・・・・どうした?」
「ねぇ、クロノ君。ずっと一緒に居てくれる?」
身長がクロノよりも高いため、クロノがエイミィを見上げる形で答える
「あぁ。ずっと側に居る。今までも・・・・これからも・・・」
「うん。」
エイミィの瞳を濡らすのは嬉涙
もう、この瞳を悲しい涙で濡らすことはしない
強く心に誓うクロノの瞳も、少し濡れていた
fin
すいません・・・・。
中身めちゃくちゃになってますね。
つながりが悪いし、展開急ぎすぎでした。
焦って作るとこうなるんだな・・・・・。
今後気をつけます。
433 :
176:2006/03/19(日) 01:32:18 ID:gM3OXMk3
発掘四日目 遺跡の名物、お約束
混沌を秘めた闇の中にぽつんと赤い光が生まれる。この果てもわからない闇の中で光はあまりに小さく儚い揺らめき。それでも冒険者にとってこれほど心強い従者も他にはいない事も事実。
掲げられた光に照らされたユーノの顔は陰影に塗れているけれど。
「手で火を起こす人っているのね……」
「遺跡発掘が生業ですからサバイバルは得意なんです」
年下の少年に感心しながらシャマルは今さっき彼が作り出した松明を見つめた。
照明だって魔法で賄えてしまう世界にこんな時代錯誤激しいものが現存しているのは酷くギャップを感じてしまう。タイムスリップをしたよう錯覚さえ覚える。
だけどその橙の輝きはどこか温かで柔らかかった。ふと随分前に主がしてくれた誕生日なるものを思い出した。
ベルカにも自分が歳を重ねることに対して祝う風習はあったのだがケーキに蝋燭を立てる慣わしまではなかった。
彼が持っている松明はまるでそのケーキの上の灯火のように見えてふとあの日の情景が思い起こされる。
「悪くはないわね」
心が温かくなった気がした。
照明魔法の淡々とした光よりもこの揺らめきの方が暗闇の恐怖に打ち勝つ魔力がある。きっとそうなのだ。
「何か言いました?」
「いいえ、独り言よ」
やんわりと受け流してシャマルは微笑んだ。
「それにしても……」
一番魔力反応の大きかった場所には巨大な遺跡。その中に入ってもう一時間は歩きっぱなし。この回廊――暗くてそれすら不確かなのだが――もどこまで続いているのか。
ただ少し傾斜になっているから下に行っていることだけはわかる。
「どっかに明かりのスイッチでもないのかよ……」
「あったら便利なんだけどね……」
それで本当にあったらどんなに助かるか。おそらく松明の油もそろそろ切れる頃合だろうし。
「……もしかしてヴィータ怖い?」
「!? そ、そんなわけねーよっ!! おばけでもゾンビでもミイラでもシグナムでもこのグラーフアイゼンで」
「今はただの金槌だけどね」
「う、撃てもしない鉄砲なんかに言われたくねー」
「あっ、ヴィータちゃんの後ろに」
「来るな〜〜〜っ!!」
背後で何かが猛烈な勢いで何かが空を切っている。悲鳴の主はヴィータで脅かしたのはなのはとシャマル。普段ならそうやっても構わないが今の状況ではあまり、というかものすごくよろしくない。
「ヴィータ、その落ち着いて。僕らも傍にいるしそれに今そうやってデバイス振り回すと」
言ってる最中に松明が消えた。
434 :
176:2006/03/19(日) 01:36:24 ID:gM3OXMk3
「ぎゃああああああああ!?!?!?!?」
まさに絶叫。とにかく絶叫。何度も言うが絶叫。
「ごめんなさいごめんなさい! はやてのおやつ食べたのあたしです! ザフィーラのせいにしてごめんさい!! いい子にしますから、いい子にしますから!!」
――ヴィータ陥落。
ひゅんひゅん風を切っていた鉄槌が今ではぶんぶんと鳴る豪速の凶器。槌は壁という壁にぶつかり際限なく回廊を破壊していく。
おまけに壁にぶつかる度にヴィータは驚き悲鳴を上げ拍車をかける有様。
「二人とも頭下げて」
「もう下げてるよ〜」
「私ももうとっくに」
「そ、それならいいけどこういうことはあまりしないで欲しい! というかするな! 何があるかわからないんだよっ!」
ユーノの悲鳴のような剣幕にちょっとした悪戯心でヴィータをからかったことを二人は激しく反省した。
頭上では涙声のヴィータが暴れている。意外な弱みを見れた代償はとても高くついてしまった。
「ゆ、ユーノくん。ヴィータちゃんなんとかできないの?」
「僕に言われてもどうにもできないよ」
「シャマルさん〜」
「無理」
なのはを一蹴。旅の鏡でならヴィータのリンカーコアを引きずり出して昏倒させられる。だがこの照明魔法すら使えない状況下でその注文は受け付けられない。
対してなのははレストリクトロックでヴィータをがんじがらめにしようなんて考えだ。しかしこれも魔法が使えないので意味がない。
「ね、ねぇユーノくん。映画とかじゃなんか変なスイッチ押しちゃって大変なことが起きちゃうとか」
「言わないでなのはっ! 僕の経験じゃ十中八九よくないことが起きるに決まってる!」
ここまで無傷で来れたのだ。そろそろ罠の一つや二つやってこないと逆に不安になってくる。発掘のプロから言わせて貰えば罠だらけのほうが逆に安心できるのだ。
「寝てるシグナムのおでこにおっぱい魔人見参って書いたのもシャマルのパンツをザフィーラにかぶせたのもみんなみんなあたしです!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
「……ヴィータちゃん」
おまえの仕業か。
あのザフィーラがパンツをかぶってはしゃげる様な性分ではないと分かってはいたが。
「こ、こうなったら……」
435 :
176:2006/03/19(日) 01:37:49 ID:gM3OXMk3
歩み寄ってくる危機にユーノも覚悟を決める。唯一自分に残された魔法。十八番の鎖でもってヴィータを鎮める他はない。余計なことをされる前に小さな暴れ馬には少しの間だけおとなしくしてもらおう。
即時即決即行動。掌から生まれる輝きをユーノは悲鳴轟く方向へ狙い定めた。
「ヴィータごめん!」
だが頭を下げユーノがバインドを放とうとした矢先――
ガン! ……ガコ、ココココ……ガチャ!
何か、とても、ものすごく、嫌な音が……した。
「あ、あははもしかしてユーノくん、わたしやっぱり余計なこと言っちゃったり」
「大丈夫、余計でも僕はなのはを責めないから」
場数を踏んできたものにこんな音くらいで心は揺るがない。達観しているような口ぶりのユーノの頭ではすでにどんな罠が襲い掛かっても大丈夫なよう肝を据わらせ身構えている最中。
「……何がくるんだろう」
なのはの頭の中では以前見た映画が思い起こされる。
襲いくる罠は一歩間違えば命にかかわるものばかり。いろいろ罠が浮かぶけどこの状況から彼女の頭で該当する罠はアレしかなかった。
(まさか……ね)
それはないだろう。それが現実になったらお約束過ぎる。
「うわぁぁぁ!? アイゼン抜けろーーっ! おまえまで悪い冗談止めろよですにょ!!」
どうやらスイッチのくぼみにデバイスが引っかかっているみたいだ。
語尾までおかしくなってパニックに揉まれる彼女は放っておけば勝手に気絶してくれるような気がする。
それなら早く気絶してくれ、となのは以下全員の考えは皮肉にもこの時一致していた。
「にょにょにょ〜〜〜〜!! ふひゃあ!?」
言語を超越した悲鳴の後にこれまた素っ頓狂なヴィータの声。突然頭上が明るくなった。
闇にぼんやりと浮かぶ鉄槌の騎士の変わり果てた姿。顔は見るに耐えないのは言うまでもなく騎士甲冑は辺りの壁を壊したせいで誇りまみれだった。
涙と鼻水でデコレーションされた顔できょろきょろとヴィータは辺りを見回す。どうやら今のスイッチは照明装置だったらしい。
「……は、はははこ、こんなのこのあたしにかかればちょろいもんだぜ!」
自分で勝手に驚き泣き喚き、そして完結。袖で顔にひっついた恐怖の証を拭い落としヴィータは声を上げて高らかに勝利宣言。
「見るにょ! ……じゃなかった見ろよ! これが実力の差ってやつだぜ」
確かに泣き喚きで彼女との差を埋めるには大変な修練が必要だろう。何の修練かは知らないが。
「そうだね、うんうん、えらいえらい」
「さっすがヴィータちゃんだね」
「はやてちゃんがいたら褒めてくれるわね」
当然、三人揃って棒読みの称賛だったのは言うまでもない。
436 :
176:2006/03/19(日) 01:39:55 ID:gM3OXMk3
「だろ! へへっーんだ」
腰に手を、胸は反り、誇らしげな表情でヴィータは上辺だけの褒め言葉を受け取っていた。
今更だがユーノは今日の人選をしたエイミィのことを恨めしく思ったのは言うまでもない。
「所でユーノ君、さっきからなにか変な音が聞こえない?」
「変な音ですか?」
シャマルの発言に耳を澄ましてみる。
――なるほど、確かにごごごごごご……、と地鳴りのような音が遠くに聞こえる。なにやら音は徐々に大きく、なにより足元が揺れ始めているような気もしてきた。
「あの、その……わたし的に一つ言っておきたいことがあるんですが……」
「どうしたのなのは?」
「こういうのってさ……映画とかでよくあるあれじゃないかなって思っ――」
それから先の言葉は何かが激突した轟音で誰の耳にも届かなかった。
思い返せば一度突き当たりを曲がった記憶がある。多分距離からして音源はその角に何かがぶつかったのだろう。
「そうだね……きっとそうだね。なのはの言う通りだと思う」
当然だろう。照明のスイッチが唐突にあるなんてないだろう。
「……そうだよね」
なのはと一緒に視線を落としてみる。僅かだけど傾いている床は坂と呼べるだろう。
このまま順当に行けばぶつかったソレは間違いなくここを通る。
「なに心配してんだよ。どんなもんでもあたしは止められねーぜ」
「ヴィータちゃん……世の中には井の中の蛙大海を知らずって言葉があってね」
「胃の中のカラス? おまえの家ってカラスも食うくらい貧乏なのかよ……」
「…………わたしだって食べたことないよ」
「その二人ともそろそろ走る準備した方がいいよ」
無駄な会話をしてる間に、ほら音が迫ってきた。
「走る? そんなもんアイゼンの頑固なヨゴレにしてやるから安心しろってユーノ」
「できれば……ね」
「じゃあシャマルさんも」
「あまり走るのは得意じゃないんですけど」
言いつつすでにスカートのすそを持ち上げている辺り彼女もこれが一刻を争うことを理解してくれてるらしい。
問題はやはり
「かけっこするのか……?」
これだ。
437 :
176:2006/03/19(日) 01:40:57 ID:gM3OXMk3
「ヴィータも走った方がいいよ。たぶんそうしないとこの遺跡の頑固なヨゴレになるから」
「上等だ! やれるもんならやってみろだ!」
気合は十分なのだが悲しいかなベクトルが明後日だ。
「じゃあ僕たちはこれで」
「ヴィータちゃん、先行ってるね」
「あんまりのんびりしない方がいいわよ」
口々にするのは送別の言葉。
それ以上は何も言わず踵を返す三人の足。対して一人は相変わらず棒立ちの足。
ヴィータが瞬き一つした頃には彼らはすでに彼方へ走り去っていた。その勢い風のごとく。
「なんだよ……わけわかんねぇ。まぁそれだけあたしが頼られてる証拠だよな」
この期に及んで彼女の頭の中はそれで一杯だった。
「よぉし! やってやるか!」
片手の鉄槌をしっかり握り構え直す。さっきから耳障りだった音も敵のものならやる気の素だ。準備は出来ている。宣言通りに頑固なヨゴレにしてやろう。
「一発で終わらせてやる!」
眼光と共に回廊の遥か先を見据える。音はどんどん大きくなり足元を揺るがす地響きも大きくなる。
敵はかなりでかい。だがそんな事実はヴィータを怖気させる材料にはならない。
喉が動く。ついに暗がりから悪魔が姿を現す――。
「…………へっ?」
悪魔はすごく丸くてゴツゴツしていた。
通路一杯に陣取りながらそいつは自分目掛けて転がってきている。
「あ、あ、あ……」
で、ヴィータは三十秒前の三人がなんで走り出したのかようやく理解した。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!」
回れ右。気分は自分にカートリッジロード!
少女の悲鳴とは思えない絶叫を残しながら彼女はその場を走り去った。
いつかはやてに聞いた言葉が頭を掠める。
ウサギはギガ可愛くて大好きだけどこの兎にだけは絶対なりたくないと思った。だってあまりに情けなさ過ぎるから。
「ちくしょ〜〜〜!! ユーノのバカヤローーっ!!」
最悪の兎。その名前を
「うわぁぁぁぁぁん!!」
脱兎――と言った。
438 :
176:2006/03/19(日) 01:42:08 ID:gM3OXMk3
今日も今日とてインジョー第4話
自分とギャグの相性はあまりない気がしてきたorz
>>549氏
親父かレイジングハートは!
なんていってることよりみんな妙に冷静というか……
この前の修正要項まとめたものはここに上げときます
まず消えはしないので
ttp://siokara.or.tp/siobin/ の1ml sa43580です
>>4の422氏
さていよいよですなぁ
なのちゃんVSなのはさんか……(違
>>396氏
作りこんでますね
最後はどうなることやら
>>jewel氏
電脳戦でもやらかしますかエイミィさんは
なにはともあれご武運を
>>640氏
これでなのはが友達なんていった日には……
遺跡が消えますね
>>YUKI氏
おおっと修羅場の中の一輪の花
ラブラブはいいなぁ
(・∀・)
レスよりサイズ上いくとは
各職人様方、GJ!
気付いたら470KBオーバーか。
早いなぁ。
インジョーのヴィータかわええ。
ユーノ 「ヴォルケンとはやての出会いを描いた6話のDVDが
待てず某動画庫に手を出してしまいました。
6話最高でした。DVD買うので許して下さい、はやて」
445 :
YUKI :2006/03/20(月) 07:34:09 ID:qgyrbnsQ
>>176氏
感想有難う御座います
インジョーのヴィータのいたずら告白シーンに萌えました・・・・
上手すぎです
さて、何か浮かんだので30分くらいで書いてみました
作風は今までに無い形で書いてみたので違和感あるかもしれません・・・
ではでは。
かっこいいと言うには少し幼くて
可愛いと言う年齢でもない
本当は心配性なのに、意地はって「信頼してるから」何て言って手伝いに行くのを躊躇って
無事にフェイトちゃんが帰ってくると、誰よりも最初にフェイトちゃんに駆け寄るくせに
いつも何でも1人で背負い込もうとしてる
仕事上管理職だからいつも難しい顔して・・・・・
「たまには笑ったら?」って言ったら、どこか寂しさを共存させた作り笑いをする
立場の重さは私も理解してる
でも、まだ14歳なんだからもっと自分の幼さを出しても良いのに・・・・・・
それでも周りの大人に負けないように強がって・・・・・・
学生の頃から一緒に居るからそういうところは充分解っているけど・・・・・
仕事の時は頭がすごい回るくせに
私が髪型を変えても気づきもしない
「気付かなかったの?」って聞くと
「あぁ。気付いていたよ。昨日から変わってたね。」だって・・・・
気付いてるなら一言なんか言ってよ!!
「似合ってるよ」、とか「可愛いね」、とか・・・・
そうしたら
「僕が言わなくても、みんながそう言ってくれるだろ。」って!!
違う!違う!ほんっとに女の子の心が解ってないんだから!
色んな人に言われるのは嬉しい
でも、いちばんその事を言って欲しい人に言ってもらわなきゃ意味が無いの!!
なんで解んないのかなぁ・・・・もう・・・・・
ぶっきらぼうで、乙女心が理解出来てなくて
1人無理して背負い込もうとして
でも・・・・・・・・・でも・・・・・・・・・
誰よりも仲間を思い、誰よりも強い
誰よりも、私の側に居て欲しい・・・・・・
今度はきちんと伝えたい
私は
あなたが好きです
fin
447 :
4949:2006/03/20(月) 22:25:02 ID:p0VW+/gd
どうもはじめまして。
このたび私の駄文を投稿しようと思います。
久し振りに書いたのでお見苦しいところもあると思いますが宜しくお願いします。
題名、あたしの絵本
第一話、副題、物語の始まり。
448 :
4949:2006/03/20(月) 22:31:12 ID:p0VW+/gd
スイマセン!書き込もうとしたらエラーが出るので書き直します!
無駄に書き込んでしまって申し訳ありません!!
449 :
4949:2006/03/20(月) 22:36:43 ID:p0VW+/gd
「お〜い、居るか〜?」
少女は何の迷いも無く扉を開ける。
そもそも彼女にとって聞く必要性など皆無だった。
そこに彼がいるのはいつものことであり、彼女、ヴィータにとって日常なのだ。
数ヶ月前。
最初ははやての付き合いで管理局に来ていた。
しかし、ついてきてもやる事など無い、はやてとクロノの会話など聞いていても面白くない。
そこでヴィータは管理局の中を毎回散歩するようになった。
最初は通路を回るだけだった、そのうち細かい施設も回るようになった。
そして、無限書庫にも行くようになった。
最初は暇つぶし程度に見ていたのだが………
「あ、これ、はやてが読んでくれた本だ」
本、と言っても絵本、無限書庫には色々な世界の絵本もそろっている。
ヴィータは絵本が好きだった。
はやてがはじめて読んでくれた本だからだ。
ヴィ−タはそのうちの一つを手にとって読み始める。
ヴィータは絵本の話を最後まで知らない。
いつもはやてが読んでくれても途中で寝てしまうからだ。
結局、中盤にはヴィータは眠りについていた。
450 :
4949:2006/03/20(月) 22:37:20 ID:p0VW+/gd
夢の中、誰かの腕に抱きかかえられている。
その腕はとても暖かく、心地よかった。
ヴィータは喉の渇きで起きた。
しかし起きると同時に違和感を感じる。
(…ベットの感触が違う?…)
正方形の部屋に自分がいることに気づく。
天井も、壁も、まったく、見覚えの無い部屋だ。
(ま…まさか………)
誘拐、その言葉が脳裏をよぎる。
「…ん………明日…送る……」
ヴィータが考えているとき不意に話声らしきものが聞こえてきた。
ベットから離れたところ、ベットから見て右に頑丈そうな扉が見える。
声はその扉の向こうから聞こえ来ていた。
ヴィータは足音を立てないようにゆっくりと扉に近づいていく。
ヴィータは扉の右側に息を潜めて立つ、誰かが入ってきたら直ぐにでも戦えるように。
幸いなことに、グラ−フアイゼンはとられていない。
グラ−フアイゼなら扉ごと誘拐犯(?)を倒せるだろう。
ヴィータはグラ−フアイゼを起動する。
その時、不意に扉が開けられ誰かが入ってくる。
とっさにヴィータはグラ−フアイゼでその『誰か』の頭を上から振り下ろすように殴る。
451 :
4949:2006/03/20(月) 22:39:09 ID:p0VW+/gd
ゴォォォォン…
「ぎゃぽっ!?」
ドサッ………
『誰か』は奇妙な声を上げて床に倒れた。
「どーだ!あたしを誘拐……?」
ヴィータは『誰か』を見る。
そこに倒れているのは金髪の少し女性のような感じのある男の子。
今は叩かれたゴキブリよろしく?のようにピクピク痙攣している。
無限書庫の司書、ユーノ・スクライアだった。
結局のところ、寝てしまったヴィータをはやてに頼まれ、ユーノの部屋に運んだ、それだけだった。
「まだ痛いよ…」
今はユーノの部屋にいる。
ユーのは頭に氷嚢を載せている。
「あやまったじゃんかよ………」
ユーノとヴィータはテーブルを挟んで互いに向かいあう形で座っている。
あの後、音を聞きつけ駆けつけた職員がユーノを医務室に運び、現場にいたヴィータに事情を聞いた。
その際ヴィータが「あいつはあたしを誘拐して陵辱しようとしたんだ!!」
と、いったことからユーノは拘束され知り合いのクロノにしつこく尋問(拷問?)されたのだ。
しかし、はやてから頼まれた、と言うことがはやてによって確認され冤罪だったことが判明した。
それでも気になるのが人の性、釈放された時に聞こえた職員の会話。
『ユーノくん、あの歳で女の子を部屋に連れ込んでるんだ…』
女性職員のささやき。
『なのはちゃんとあの子…ヴィータちゃんだっけ?どっちが本命だ?』
男性職員の疑問。
『やっぱし本当はヴィータちゃんに何かしたんじゃ………』
両者の疑惑。
などなどあまりよろしくない内容の憶測が早くも浸透しているようだった。
今も扉の向こうで聞き耳を立てているであろう職員のことを考えて憂鬱になるユーノ。
452 :
4949:2006/03/20(月) 22:40:34 ID:p0VW+/gd
((明日からの仕事が怖い………)
そんな思考とはおかまいなしに空腹は襲ってくる、現在の時刻は午後八時。
(とりあえず何か食べよう)
何か食べればふっきれるだろう、そう思ったとき。
グギュルルルルルルル………
猛烈な音がした、肉食獣が久々の獲物を見つけた時のような音。
音のしたほうにはヴィータが顔を赤くしてそっぽをむいている。
ユーノは苦笑い。
「何か食べる?」
ヴィータは赤い顔をさらに赤くする。
「お…お前がそこまで言うなら食ってやるよ!」
笑いながらユーノは食事の準備を始める。
十数分後
テーブルには豪華な食事が並んでいた。
「………お前、料理上手いんだな………」
「料理作る機会が多かったからね………」
遺跡の発掘に世界を渡り一人ですごす時間が長ければ上手くもなる。
遠い記憶にユーノが旅立っている間にヴィータは料理に手をつける。
一口目、ヴィータの目が驚きに見開かれる。
二口目、一回に食べる良が増える。
三口目、一心不乱に食べ始める。
(う、美味い!はやてとは違う味付けだけど美味い!)
結局、ユーノの意識が戻ってくるころには料理は残っていなかった。
453 :
4949:2006/03/20(月) 22:41:12 ID:p0VW+/gd
「………残しといてくれてもよかったのに………」
顔を赤くしてそっぽを向くヴィータ、口の横に食べかすがついている。
「う、美味かったからつい…」
悪いと思っているのか口調は控えめだ。
「まぁ気にしなくていいよ、それより…口の周りきれいにしたほうがいいよ?」
ユーノに言われて初めて気づいたのだろう、懸命に口の周りを拭う。
が、汚れは落ちるところか広がっていく。
「ちょっと動かないで」
見かねたユーノがティッシュで拭ってやる。
「あ、ありがとう…」
気恥ずかしさから顔を真っ赤にするヴィータ。
自分のやったことに恥ずかしくなるユーノ。
恥ずかしさからくる気まずさに二人とも沈黙する。
部屋には時計の音と廊下からの声だけしか音が無かった。
『初々しい…聞いてるこっちが恥ずかしいよ!』
『ユーノくんの手料理食べてるよ?』
『ユーノくん、なのはちゃんの事あきらめたのかな?』
「ちょっとまってぇっ!!」
ユーノは扉に向かって走る。
「やべ!ばれた!」
「逃げろ!!」
扉が開くころには遠くに逃げてている職員、逃げ足だけは速かった。
454 :
4949:2006/03/20(月) 22:41:53 ID:p0VW+/gd
「まったく!」
ユーノは部屋のソファーに座っている。
結局、聞き耳をたてていた職員を追いかけていったユーノだったが捕まえられず戻ってきたのだ。
ユーノが戻たころにはヴィータによって食器などは水につけてあり、テーブルもきれいに拭いてあった。
「…片付けてくれたんだ…」
「か、勘違いするなよ!ただ気になるから片付けただけだからな!」
「…ありがとう」
素直にお礼を言うユーノ。
「ふん………」
礼を言われるのは慣れていないのかそっぽをむくヴィータ。
その後風呂に入ろうとしたヴィータに睨まれたり、いろいろあった。
きがえ、パジャマは女性職員が用意したウサギの絵が書いてある子供服だった。
風呂から出た後の沈黙。
特に喋ることの無い二人、今まで顔見知り程度だったせいか共通の話題はない。
またしても気まずい雰囲気の二人。
(ど、どうしよう…気まずい)
今までなのは以外の女の子と二人きりになる機会が少なかったユーノにはたいした打開策など思いつかない。
(そ、そうだ!)
「絵本、好きなの?」
突然の質問。
ヴィータにとってそれは凄い効果を発揮した。
「なななななな、何のことだ?」
予想外の質問に挙動不審になるヴィータ。
「絵本片手に寝てたから好きなのかなって思って…」
(そ、そうか、見られてたのか…!)
恥ずかしそうな顔のヴィータ。
「そ、そんな子供っぽいものあたしが好きなわけ無いだろ!!」
照れ隠しか大きめの声。
結局、絵本が好きなことも、しかも日本語が読めないことも。
455 :
4949:2006/03/20(月) 22:44:18 ID:p0VW+/gd
「なら教えてあげようか?」
ヴィータにとってそれは考えてもみないことだった。
はやてに言えば教えてくれるだろう、しかし恥ずかしい。
シグナム達に教えて貰うのも恥ずかしい、と諦めていたのだ。
(こいつに教えて貰うのも恥ずかしいな…)
恥ずかしさで躊躇するのは誰にでもあることだ。
しかし、ヴィータは揺れていた、恥ずかしい、でも絵本が読みたい大きく揺れていた。
「絵本読みたくないの?」
ユーノの言葉が決定打だった。
結局絵本の誘惑に負け、ユーノに教えてもらうことにしたのだ。
現在の時刻は十一時、そろそろ寝よう、そうユーノは思っていた。
あの後二時間、日本語を教えているが、ヴィータはすでに五十音はすべて読めるようになっていた。
「今日はこのぐらいにておこうか?」
「………うん………」
ヴィータは眠いのか頭がふらふらしている、返事も生返事だ。
「それじゃあベットはさっきのベット使ってね」
そう言って寝ようとするユーノ。
「あ、ありがと…ユーノ…」
不意に声をかけられる。
そういうとヴィータは走っていった。
なんとなく心が温かくなった感じがした。
456 :
4949:2006/03/20(月) 22:44:49 ID:p0VW+/gd
「………ん〜?…」
なんとなくベットが狭く感じる。
ユーノは違和感で目が覚めた。
ベットが狭く妙に暖かいのだ。
そして心地良かった。
体にやわらかいものが当たっている感触さえある。
(何だろう?…まいいやぁ…)
今日は仕事休みだし、このまま二度寝しよう。そう思ったのだ。
あまりの心地よさにまどろみの中に落ちていくのは早かった。
このとき起きていれば、後に彼は後悔することになる。
はやてはユーノの部屋の前に来ていた。
昨日泊まっていったヴィータを引き取るためである。
プシュー…プシュー
部屋に入るはやて。
「ユーノくん?起きてるー?」
……………
返事が無い。
(まだ寝てるんかな?)
ユーノくんには悪いけ寝顔を見させてもらおう。
はやていたずら心がくすぶる。
(おじゃましまーす)
とりあえず一番近い部屋に入ってみる。
そこには………
気持ちよさそうに寝ているユーノと、ユーノに抱きついて眠るヴィータ。
悲鳴が管理局にこだました。
457 :
4949:2006/03/20(月) 22:47:08 ID:p0VW+/gd
第一話終了です。
初めての投稿のため至らないところもあると思います。
これから宜しくお願いします。
サブ補足
ちなみに世界観は闇の書の事件から数ヵ月後と言うことにしています。
>4949氏
GJだがまずsageるべ
459 :
YUKI :2006/03/20(月) 23:02:35 ID:qgyrbnsQ
>4949氏
お疲れ様です。
GJです!
ユーノとヴィータは予想外のカップリングでした。
期待してます。
>4949氏
GJ!おつかれさま!
ヴィータいいな〜読んでてほんわかしました。
第二話もまってますよ。
>4949氏
GJよ、ヴィータのデレがたまらないね。
が、とりあえず、sageなさい。
>>4949氏
よかったですが……ユーノが禿げそうですね、気苦労でw
うおー、見たいと思っていたユーノ×ヴィータが投稿されてルー。
464 :
4949:2006/03/21(火) 06:58:22 ID:oWbqhvPn
すいません!sageしてませんでした!
皆様に迷惑をかけてしまい申し訳ありません!
てか、次スレ必要なら、容量的に立てないとまずくね?
↑テンプレです。
自分はDays2話再作成版しかないので、
次に投稿する書き手さんはスレ立てもお願いします。
保管庫はCallMyNameの次話までお休みします。
次スレ立てておこうか?
おねがいします
投下ついでに立ててみます。
Days2話ですが、いただいた意見感想含めて自分の書きたいことを
整理したら、95%新規で書き直しになっちゃいました。
これ、こっちに上げ直しちゃっていいですか?
6KB程度なので埋め立てにちょうどいいかなと。
765 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2006/03/10(金) 17:44:46 ID:lghAcrY0
>>764の妄想脱線3期。
クロノ「スクライア族なんて所詮墓荒らしじゃないか。全員逮捕だ」
ユーノ「な…なんだって?クロノ、それじゃまさか…」
クロノ「ああ、君みたいな役立たずをこっちに引き入れたのも、しっぽを掴む手がかりのためだ」
ユーノ「ク…」
クロノ「おっと、まともにやって僕に勝てるとでも思ってるのかな?」
なんてことになったら嫌だなァ。
この場合、なのはやフェイトはどう動くんだろう…。
766 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2006/03/10(金) 18:38:21 ID:xxZ4hMvP
>>765 クロノvsユーノは一回見てみたいかも。
圧倒的な実力差の中、ユーノがとにかく小細工の限りを尽くして、みっともなく往生際の悪さを尽くして、泥にまみれて逃げ回りながら、
なんとか勝機の糸をたぐり寄せ、最後の最期で会心の『逃げ』の一手を打つ。
テメーなんかより墓荒らし事件の方が重大だバーヤ!!って言い捨てながらw
このシチュ誰か書いてー(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
なのははユーノ側。なのは好きのフェイトも必然的にユーノ側
そうなるとアルフも。2人の友達であるはやてもユーノ側。
クロノ1人でかわいそす。
逆ににフェイトを通してなのはさえ引き込んでおけばユーノ完全に孤立だ
で、終盤に「やっぱり私ユーノ君を信じる!」って感じで内部分裂が起こって勝利の鍵に…とか
ユーノ完全孤立の孤軍奮闘は燃えそう。
>とにかく小細工の限りを尽くして、みっともなく往生際の悪さを尽くして、泥にまみれて逃げ回りながら、なんとか勝機の糸をたぐり寄せ、
まさに王道ストーリーだ。
クロノ完全に悪役かよ
クロノ派はいないのか?
リーゼ姉妹とアースラスタッフ(リンディ含む)、家族つながりでフェイトを引き込む
ことも不可能ではないってところか。
ちなみにマジに考えると、はやてと守護騎士は心情はどうあれ立場は管理局に
協力しなければならない。まあそれ言ったらなのはもなんだが。
まぁ、あくまで「クロノがユーノの敵だったら」という妄想で、発案者もそんなことになったら嫌だと言ってるし。
実はスクライア一族の逮捕を決定した上層部から、何とかユーノだけでも逃がそうとした苦肉の策…とか。
ユーノ「何するんだクロノ!」
クロノ「さっき、スクライア一族全員に逮捕命令が下された」
ユーノ「え!」
クロノ「ここなら安心だ……ここなら」
"バン”
フェイト「クロノ……」
クロノ「やあフェイトどうしたんだい?」
フェイト「何であんな事を……」
クロノ「何が?」
フェイト「クロノの出した報告書全部嘘だったじゃない、スクライア一族は免罪で釈放されたわ」
ユーノ「!?」
クロノ「五月蝿い!!お前も奪うのか、お前の僕のユーノを」
フェイト「お兄……ちゃん?」
クロノ「ユーノは僕のものだ、ユーノは僕のものだ、スクライア一族なんか渡すものか……」
こんなの想像した
なに、そのどこぞのスレでガチホモ設定になってるクロノw
483 :
480:2006/03/25(土) 01:31:06 ID:QFn5WVaa
フェイト(独白)
クロノ……お兄ちゃんは、私達の知らない間に
少しずつ、少しずつ狂ってた
ユーノが好きで…好きでたまらなかったけど
男だから自制して、自分を抑える事に精一杯で……
冷たく当る事しかできなくて、それが自分も傷つけて……
そのうちそれしか考えられないようになって……
そして、あの凶行に及んだって……
私は何も気付け無かった…ただ、それだけが悔しかった。
あと、この事件で仕事をやめたのはユーノの方だった。
彼はクロノの全てを受け入れて……クロノの為に、
仕事を辞めた。今は辺境の次元世界でクロノの家を……
二人の居場所を守ってる。
私は……嬉しいのか悲しいのかよく分からない……
でも二人が幸せならそれでいいと思う……
でもって
>>480に間違い発見
>クロノ「五月蝿い!!お前も奪うのか、お前の僕のユーノを」
↓
クロノ「五月蝿い!!お前も奪うのか、お前も僕のユーノを」
何やってるんだ俺はorz
ずっと前に本スレにAAネタで投下したばあちゃんの話を
改良して文字だけ投下していい?
なぜここで聞く?
すでに次スレ立ってるのに、
あと本スレは見てる人多いから
余り歓迎されないかもしれんが、
まあ改良がAA抜くだけとかじゃ無ければ
いいでないか
486 :
480:2006/03/26(日) 00:02:07 ID:XE68DE72
ユーノ(独白)
クロノが職場に復帰して、もう1年が過ぎた。
僕が仕事をやめてからだと3年だ。
クロノは責任の有る地位を手放して、
代わりに出来るだけ早く僕の所に帰ってくる。
僕はそれがとても嬉しい、
クロノの壊れてしまった心を直す為に、
二人の蓄えは殆ど使ってしまったけど、
収入は余り無いけど、自給自足が出来る
この辺じゃあ生活に困る事はない、
今日は僕が捕まえた猪で鍋物だ。
まさかこう言う所で遺跡発掘の経験が
生かされるとは思わなかった。
実はクロノの心は完全には治っていない、
ついこの間も、帰ってきた時に僕が居る無くて
パニックになった。もっとも、その後、
僕が獲物を担いで帰ってきたら直に落ちつたけど、
最近クロノは自分の心についてよく謝る。
そのたびに僕は笑ってクロノを抱きしめる。
そして、その後は……まあ夜なら大抵寝室へ、かな
……あ、クロノが帰ってきたみたいだ
クロノ「ただいま、ユーノ」
ユーノ「お帰り」
という内容のボーイズラブ本が
アースラ女性スタッフの間で密かに出回ってたりして
作者はシャマル。
原作:エイミィ
画 :シャマル
編集:はやて
こうですk(ry
>>485 次スレ立ってたのね('A`:)
パロスレには滅多に来ないもんで
作品に自信がないので練りに練ったら投下しますw
ユーノ「終わったね、」
クロノ「終わったな」
クロノ、ユーノ「「はぁ……」」
クロノ(独白)
最近急増した周囲の怪しい視線、
その元を辿っていったら、あろう事か
身内の作った大量の、と言うか膨大な
量の同人誌(注:801)にたどり着いた。
ソレを全て大元の原稿から没収して
二度と書くなと釘を刺して、ようやく
一息ついたところだ。
と言うか何やってるんだエイミィ……
八神家やフェイトまで巻き込んで……
まあお陰でザフィーラの情報提供があったけど、
取りあえず、自分の部屋で一服、
ユーノにおty……オレンジジュ-スをだす。
が、ユーノが凍り付いている事に気が付く
まさか?そう思っていたら、ぎこちなく
ユーノが振り向いた。
ユーノ「クロノ?怒らないから正直に答えてね」
クロノ「な、なんだ?」
ユーノ「本棚の一角を同人誌が占領してるように見えるんだけど
それも僕達を扱ったやつ……」
クロノ「あ、あれは証拠品だ、あの、その、決して
夜のオカズとかじゃ……」
ユーノ「ふーん、ならいいや」
クロノ「え……」
ユーノ「どうしたの?」
クロノ「いやなんでもない」
ユーノ(独白)
僕は自分の部屋に帰ると明かりを点けた。
無限書庫の司書長ともなると、
それなりの部屋を与えられるけど、
それでも半ば強引に、クロノの部屋で
休息したのには理由があった。
僕は本棚の一角を見る。
そこには、決してクロノを呼べない理由、
調査の段階で、没収と称して集め切った、
僕とクロノを扱った大量の同人誌が、並べられていた。
僕は少しため息を付き、天井を見上げる。
あの時に言ってしまえば良かったとも思う、
でもまあ、別に急ぐ必要も無いかな?
脈は有るって事だしね、
493 :
480:2006/03/27(月) 03:15:56 ID:xdQ8BrMy
このままだとスレ最後が801になるので
強引に終了、
つうか今までブーイングも誘導も無く書かせてくれた事に感謝
ボスケテ
>480氏
自分は楽しんで読んでたよ
直接的表現があるシーンはこのスレでは書いてないし、エロOKのスレだし
百合は良くて野菜は書いちゃ駄目って意見には納得出来ないけど、その意見が多数を占めるのなら
やはり遠慮して別スレで書いてたほうがいいんでしょうね。
>>480氏
俺も楽しんで読んでたよ。
エロパロだし、基本的に何でもありじゃねえの?
>>495が言っているように直接的表現のシーンはなかったわけだし。
ま、はじめに注意書きとか入れておけばスルーもできるし、今のやりかたなら文句いうのは御門違いってやつだぜ。
⌒*(・∀・)*⌒まだまだ書けるの
ニア、spk死亡 月の勝利
月「これで終わった…」
その頃ワイミーズハウス
ロジャー「L、メロ…そしてニアまで…キラニは勝てないのか…」
プルル…(電話が鳴る)
ロジャー「ん?…ああ、君か久しぶりだね。君がLの前任者『K』を降りてもう何年になるかな…」
K「その話ですが、『K』に戻って僕もキラを捜査しようと思ってるんです。」
ロジャー「…キラを?言い難いがL、そしてメロとニアも…」
K「知っています。後輩が殺されて黙ってるわけには行きません」
ロジャー「そうか…死ぬなよ。」
K「キラ…お前が何物か知らないが、必ず仇をとって見せるぜ・・・バーロー」
次週「コナン」