【異形化】人外への変身スレ【蟲化】

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1名無しさん@ピンキー
獣・蟲・妖怪など主に女性がに人外へと変貌していくスレです。
しだいに頭の中身までもその生物になって、本能にしたがって交尾や産卵してしまうシチュ萌え。

↓その道の大御所
風祭文庫
ttp://www2u.biglobe.ne.jp/~bell-m/bunko/

関連スレ

【亜人】人外の者達の絡み【異形】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1098260654/

【獣人】亜人の少年少女の絡み3【獣化】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1118598070/

おにゃのこ改造BY アダルト
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1126763863/
2名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 09:00:19 ID:tLZjTTaI
おらおら、WWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金)の
愛くるしいパンダ様が>>2ゲットだぜ! 頭が高いんだよ、ボケ!

.         ,:::-、       __     >1 クソスレ建ててんじゃねーよ。ビンスみてーに裁判で潰しちまうぞ。
    ,,r   〈:::::::::)    ィ::::::ヽ    >3 >>2ゲットも満足にできねーお前は、俺の着ぐるみ着てプラカード持ってろ(プ
  〃   ,::::;r‐'´       ヽ::ノ     >4 お前はカキフライのAAでも貼ってりゃいいんだよ、リア厨ヒッキー(プ
  ,'::;'   /::/  __            >5 汗臭いキモヲタデブは2ちゃんと一緒に人生終了させろ、バーカ。
.  l:::l   l::::l /:::::)   ,:::::、  ji     >6 いまさら>>2ゲット狙ってんじゃねーよ、タコ。すっトロいんだよ。
  |::::ヽ j::::l、ゝ‐′  ゙:;;:ノ ,j:l     >7 ラッキーセブンついでに教えてやるが、俺はストーンコールドが好きだぜ。
  }:::::::ヽ!::::::::ゝ、 <:::.ァ __ノ::;!     >8 知性のねーカキコだが、お前の人生の中で精一杯の自己表現かもな(プ
.  {::::::::::::::::::::::::::::`='=‐'´:::::::::/      >9 つーか、自作自演でこのスレ盛り上げて何が楽しいんだ?
  ';::::::::::::ト、::::::::::::::i^i::::::::::::/      >10-999 WWEなんか見てるヒマがあったら、俺に募金しろカスども。
.   `ー--' ヽ:::::::::::l l;;;;::::ノ       >1000 1000ゲットしたって、WWF時代の映像物に販売許可は出さねーよ。
        `ー-"
3名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 10:30:20 ID:wk21BLaa
WWFってプロレス団体みたいだな
4名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 12:49:31 ID:Qhp/ZH6E
お立てたんだ>>1
5名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 13:17:30 ID:craf+KEe
>>1
実際にアメリカにWWFっていうプロレス団体あったんだよな
まぁ、裁判で負けてWWEになったけど
61:2006/01/08(日) 21:50:34 ID:9FNJKfem
あと獣化はここも。
冬風書館
ttp://kemono.cc/fuyukaze/index.html

18禁含みでこういったサイト他にありませんかね・・・
7名無しさん@ピンキー:2006/01/09(月) 01:07:47 ID:/8gE+++j
こんなスレが立つのを待っていた!
次は職人を待つか
8名無しさん@ピンキー:2006/01/11(水) 16:53:18 ID:wd1swfFw
角煮に同じようなスレ立てたいなあ。
立てたら絵師さん来てくれるかなあ。
9名無しさん@ピンキー:2006/01/11(水) 17:34:31 ID:ruywi6nn
このスレ、即死は大丈夫なの?
10名無しさん@ピンキー:2006/01/12(木) 00:36:25 ID:h6rO6sDI
そういやハカイダー03氏ってHPもってるの?
11名無しさん@ピンキー:2006/01/12(木) 16:02:22 ID:Bw4Zlzuy
「君の仲間は逃げてしまったようだね」
地面に転がるわたしを見下ろしながら、男は言った。
城の舞踏会にでも出るのがふさわしそうな上品な服装に身を包んだその男。しかしこんな
地下迷宮の最奥部に居を構えているのだから、ただの人間のわけはない。何よりそれは、
わたしの両脚を食いちぎったケルベロスが従順な子犬のように男にすり寄っていること
からも明らかだ。
悪魔。それもかなり位の高い奴。
「早く……殺しなさいよ」
仲間たちが逃げたことを恨みたくはない。正直、わたしたちの力ではケルベロスに勝てる
わけがなかったのだから。まして頼みの綱の回復呪文を唱えられるわたしが、こうして
戦闘不能に追い込まれてしまっては。
それに、逃げるのがあれ以上遅れていたら彼らはこの男を相手にする羽目になっていた。
そうなったら全員が無駄死にしていたことだろう。
だが、男はわたしの言葉に不思議そうな顔をしてみせた。
「殺すとは穏やかではないね。私はそういう荒事には飽きてきたのだよ」
情けないことに、その言葉に一瞬何がしかの希望を抱いてしまった。
死にたくない。
12名無しさん@ピンキー:2006/01/12(木) 16:03:16 ID:Bw4Zlzuy
僧侶は冒険者の中でもとりわけ死に近い職業だ。他の戦士や魔術師は、戦闘の際に殺すか
殺されるかという形でしか関わらないけれど、教会に勤めていれば必然的に死人と数多く
出会うことになる。
治癒呪文が追いつかず、わたしを恨めしそうに見上げて死んでいった人。防腐処置がすぐ
施されなかったせいで蘇生呪文も意味がないほど腐敗しきった子供の死体。それをさも
愛おしそうに抱きかかえてやって来た、まだ若い母親。蘇生呪文を使える首都の司教への
口利きを、涙ながらに頼みに来た老人。
そんな身近に溢れる死を、わたしは昔からただただ恐れていた。
回復呪文を唱えるのが上手だった。ただそれだけの理由で、周囲もわたし自身もわたしが
僧侶になると信じて疑わなかった。
天才少女なんて呼ばれていい気になっていたのは最初の一ヶ月程度。それからはずっと
死の影に怯えつつ死の近くに暮らしながら、十七歳の今日まで過ごしてきた。
冒険の誘いがあるたびにすぐ引き受けていたのは、死をもたらす存在であるモンスターが
怖かったから。自分の手で滅ぼせるものは全部滅ぼしてやりたかった。
だけど今日、こうして返り討ちにあっている。
腿の途中から先が失われ、だらだらと血が流れている。回復呪文を唱える精神力もすでに
尽きている。もう助からない。
悪魔は思わせぶりなことを言ったけれど、人間の感情の揺らぎを捕食するというあいつら
のことだ。わたしの期待や再度の絶望を味わいたいだけだろう。
わたしは舌を出し、それを噛み切ろうとした。
13名無しさん@ピンキー:2006/01/12(木) 16:04:35 ID:Bw4Zlzuy
「命を粗末にしてはいけないよ」
不意に、悪魔がわたしの胸元に手を置いた。
「?!」
するとそれだけで、わたしは身体の自由を奪われた。顎を動かすわずかな力も入らない。
そしてわたしは、異常な感覚に捉われた。
悪魔が手をついている胸元。そこから、わたしの身体の内側に何かが入り込んでいる。
その異物には五本の指があり、わたしの身体の中で自在に動き回りながら、何かを
しようとしている。
……わたしの中身を捏ねて、別のものを作り出そうとしているかのように。
「君たち人間は悪魔をこう呼んだりするね。『死と破壊の権化』と」
悪魔は、ひどく楽しそうな顔でわたしを見下ろしながら言った。
「だが今では、少なくとも『死』は正しくない。人間が死の間際に見せる心の動きは、
確かに美味ではあるけれど、所詮一度しか得られないものだからね」
いつしか、わたしの脚からの出血は止まっていた。実際に見られるわけではないが、
痛みは止まり、不思議なことに身体全体から力が湧いてくるようだった。
「君たちが牛や羊を養うように、我々も最近は君たちを養うようになりつつあるんだよ。
まあ、今回のこれは特別だがね。庭先に迷い込んできた可愛い子だ。特別に手をかけて
大事に大事に育ててあげたいと思っている」
そんな悪魔の猫なで声を聞きながら、わたしは眠気に包まれていった。身体はますます
活力を取り戻していくのに、手や脚を動かそうにも動かせないことを不思議に感じつつ。
「そうそう、自己紹介がまだだったね。私の名はベルゼ……」
最後まで聞く前に、わたしは眠りに落ちていった。
14名無しさん@ピンキー:2006/01/12(木) 21:33:07 ID:f24+EZ59
激しく期待
15名無しさん@ピンキー:2006/01/13(金) 03:25:04 ID:sdB8h1Ot
ワクワクテカテカ
16名無しさん@ピンキー:2006/01/13(金) 08:08:00 ID:OcBdZL5y
甘美な匂いが鼻を衝いた。
目を覚ますと、わたしは真っ暗な場所に横たわっていた。
「生きてる……」
思わず呟いた。
傷の痛みは完全に引いている。どこかが欠損しているという感覚もなく、あの時の悪魔の
行為によって、わたしの傷は完治したようだった。
だが身を起こそうとすると、手足は拘束されているのか少しも動かすことができない。
つまり、今のわたしは捕虜の扱いを受けているということだろうか。ただし壁や床に
固定されたり繋がれたりしているわけではなく、不恰好ながら身をよじらせて這うように
動き回ることはできそうだ。
「ここは、どこ……?」
再び呟いても、返事は返ってこない。暗闇の中、ただ嗅覚を刺激する匂いだけが辺りに
立ち込めている。わたしの周囲一帯、身を横たえる床からも、身をもたせかけようとした
壁からも。
いや、その柔らかい何かが部屋全体を埋め尽くさんばかりに充満していて、わたしはその
真っ只中に放り込まれているのだ。
それが何かは、見ることができないのでわからないけれど。
17名無しさん@ピンキー:2006/01/13(金) 08:09:16 ID:OcBdZL5y
それにしても、不思議な気持ちだった。
悪魔に囚われているというのに、この暗闇の中でわたしはなぜか心安らぐ気がしていた。
もともとわたしは闇が嫌いで、寝る時もランプの明かりがないと落ち着かないくらい
なのに。
それにこの、奇妙な充填物。おいしそうな、いい匂い。
身をよじらせた際に少し口についた『それ』を舐めてしまったが、今までに食べたことが
ないほどおいしかった。
眠っている間にどれほど時間が経ったかはわからないけれど、お腹はとても空いている。
はしたないとは思ったが、手が使えないのだからしかたない。わたしは『それ』に顔を
突っ込んで、夢中になって食べ出した。
食べながら、どういうわけか心が満たされていくような感じがする。
この暗闇の中で、『これ』を貪り食う。それが、今のわたしにとっては最も自然な
あるべき姿であるような気分になっていた。
「おや、もう食事を始めていたのかい」
不意に悪魔の声がして、わたしは身を強張らせた。心に緊張が甦った。
「ふむ、ショックに対する精神の防衛機構と言ったところかな。まずは反応を楽しんで、
そこから記憶を消すなり何なりのケアをするつもりだったが、その必要はなさそうだね」
わたしには意味のわからないことをいいながら、わたしの周りを歩き回っている。
「まあ、このまま適応されてしまうのは面白くない。一旦は元に戻すとしよう」
そう言うとわたしの身体に手を当てる。再びわたしは眠りに落ちていった。
18名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 09:06:58 ID:jMGgZ0np
イイヨイイヨー
19名無しさん@ピンキー:2006/01/15(日) 13:36:17 ID:i5CN3/ib
hosyu
20名無しさん@ピンキー:2006/01/16(月) 02:05:22 ID:tVp1bFtM
再び目を覚ますと、今度は燭台で照らされた明るい部屋の中にいた。
今のわたしは上等なベッドに横たわっている。手足を自由に動かすこともできる。
身を起こして立ち上がり、部屋の隅にある大きな鏡に向き合ってみる。
肩まで伸ばした金色の髪。青い瞳。白い肌。冒険者仲間や教会の同胞、教会を訪れる人々
などに美しいとよく言われる顔立ち。「清楚で知的」とか「温かく清らかな笑顔」なんて
言葉で持ち上げられたことも一度や二度ではない、わたしがひそかに、しかしそれなりに
自慢に思っている顔。
そしてネグリジェに包まれた、女性らしい適度な丸みを帯びた身体。
そこにいるのはいつも通りのわたしだった。顔も身体も汚れてはいない。
「あれは……夢?」
手も足も動かせない状態で床を這い、そこに転がっている何かを一心不乱に食べ漁った、
浅ましい自分の姿。あんなものは夢として片づけたい。
いや、だとしたら、その前も夢だったのではないだろうか?
悪魔に捕らえられたことも、仲間に置き去りにされたことも、突然遭遇したケルベロスに
足を噛み千切られたことも。
「気分はどうかね?」
わたしのそんな都合の良い空想は、不意にすぐ傍に現れた悪魔によってかき消された。
暗闇の部屋は夢かもしれないが、自分が虜囚の立場にあることは紛れもない現実だった。
21名無しさん@ピンキー:2006/01/16(月) 22:35:16 ID:uYlCCbqr
作者氏GJ
グール?
22名無しさん@ピンキー:2006/01/17(火) 02:11:45 ID:7PWz264q
GJ!
これから何に変わっていくんだらう。楽しみ。
23名無しさん@ピンキー:2006/01/17(火) 21:59:03 ID:zaeuC8kn
悪魔の名前はベルゼ……















ベルゼバブで、蠅の王様なので
ウジ虫に変えられたと見た
24名無しさん@ピンキー:2006/01/18(水) 23:38:46 ID:POer9KQm
保守
25名無しさん@ピンキー:2006/01/19(木) 17:24:32 ID:Oj6/c0hl
「まずは私の居城の案内をしよう。ついてお出で」
悪魔の言葉に唖然としていると、相手はわたしを見つめて微笑んだ。
「帰りたいなら止めはしないが、その際は私の援助など期待しないでもらいたいね。
私の配下や番犬には手を出させないけれど、この屋敷を一歩出れば野生の魔物がうようよ
している地下迷宮だ。君一人では地上に帰還するのも、そこから山と森を踏破して
街まで帰り着くのも、かなり困難ではないのかな?」
悔しいが、それは否定しようのない事実だった。わたしは想定しうる無数の危険という
見えない鎖でこの悪魔に拘束されていることを自覚した。
一人ではどうしようもない。誰か腕の立つ冒険者が救いに来てくれる、そんなわずかな
可能性に備えておくしかないと覚悟を決め、わたしは静々と悪魔の後に続いた。
「まずは生活の基本だね。君の部屋の隣にあるから不便はしないことと思う」
言いながら、悪魔がわたしたちの出た部屋の隣のドアを開ける。
とたんに、鋭い臭気が鼻を刺した。思わず咳き込み、涙まで出そうになる。
「ふむ、人間の身にはやはり刺激が強いかな。何せ地下深くなのでね、流し去るわけには
いかないんだよ」
照明も壁紙も上品な装いの小部屋。その中央には便器が置かれていた。臭気はその便器の
中央に穿たれている深く暗い闇から立ち昇っていた。
「防臭の魔法を壁と扉に施すだけでは足りないか。よし、便器も後で処理しておこう」
悪魔は気軽に言って、案内を再開する。魔法薬が収められた部屋や図書室など、わたしに
教えてどうするつもりなのかわからない施設を巡るうちに、不意に明るい広間に出た。
「鏡をいくつも使って、太陽と月の光が差し込むようになっている。廊下や君の部屋にも
光の通路はつながっているから、気が向いたら光を採り入れてみるといい」
26名無しさん@ピンキー:2006/01/19(木) 17:25:04 ID:Oj6/c0hl
「夕暮れ時にディナーにしたい。入浴などはそれまでに済ませた方がいいだろうね」
悪魔は元の部屋に戻るとそう言った。
「……あなたは、何がしたいの? わたしを優しく世話してどうするつもり?」
「初めて会った時に言った通り、我々は……少なくとも私は、殺すことに飽いている。
それよりは生きて様々なことを思う君の心の動きを、時間をかけて味わいたい」
そこで悪魔は言葉を切ると、わたしに笑いかけた。
「ちなみにね、私は優しくなどないよ。それは君の勘違いだ」
その笑みは、わたしが初めて見る、「悪魔」にふさわしい不気味なものだった。

部屋に入って一人きりになると、わたしは教わった通りにスイッチを入れた。
すると部屋の奥、普通なら窓に当たる部分が、空と眩しい太陽を映し出す。
鏡だけでなく魔法も使っているのだろうか、自分が地下の奥深くにいるとは思えないほど
その風景は自然で、窓さえ開ければすぐ外に出られそうな錯覚さえ覚えるくらいだった。
これはきっと、悪魔の策略なんだろう。
地上へ、わたしが本来いるべき場所へ、戻りたい。そんな願いとそれが叶わない苦しみと
それによる葛藤。この景色を眺めているだけで、わたしにはそれらの感情が芽生える。
悪魔はそれを楽しもうとしているのだろう。
ならばそれに乗るのはしゃくだ。わたしはスイッチを戻そうとした。
しかし装置が壊れたのか、スイッチを弄っても、もう風景は消え去ろうとしなかった。
「……別にいいか」
わたしが自分の心を平らかにすれば済む話だ。そう考えることにした。
しばらくぼんやりしていると、中天にあった太陽は次第に傾き赤みを増していく。
わたしは巨大な浴場へ入って身体をきれいに洗い流し、食堂へ向かった。
27名無しさん@ピンキー:2006/01/19(木) 17:25:40 ID:Oj6/c0hl
食堂の天井には贅を凝らしたシャンデリアがかかり、床には丁寧に織り上げられた絨毯が
敷かれている。テーブルや椅子も、たぶん一流の職人の手になるものだろう。
そこに置かれているすべての調度品は、以前訪れたとある小さな王国の宮廷のそれを
明らかに上回る品質のものばかりだった。
その部屋にも「窓」はかかっていた。赤い夕陽が山の端に沈みかかっているところ。
「ああ、ちょうどいいタイミングだね。これ以上遅くなったら迎えに行こうと考えていた
ところだよ」
悪魔がさも気遣っていたかのように声をかけてくる。
まるで新妻に話しかける夫みたい、などと連想し、そんな連想をした自分に嫌悪を抱く。
悪魔が人間に優しい言葉をかけるのは、相手を篭絡するために決まっているのに。
「さあ、とりあえずは椅子に座ったらどうかな?」

紅く染まっていた空が次第に夕闇に侵食されていく。
その光景を地下迷宮の奥深くで眺めながら、悪魔と向かい合って食前酒を口にする。
事態があまりに異常すぎて、まともな感覚は麻痺しそうになっていた。
そのせいか、つまらない些事を頭の中で考え込んでしまう。
それは、目の前の悪魔の態度。
さっきは新婚の夫婦になぞらえるなんて莫迦なことをしたが、何くれとなくわたしの
世話を焼くその姿は、もっと違う何かをわたしに思い起こさせた。
子を溺愛する母親? いや、わたしの仏頂面に頓着せず、わたしの受け答えなんて
期待せずに一方的にしゃべり続けるその姿は、別のどこかで見たように思う。
その時、巨大なトロールが、蓋をかぶせられた大きな銀の皿を持って現れた。
「おお、メインディッシュの到着だ」
28名無しさん@ピンキー:2006/01/19(木) 17:26:23 ID:Oj6/c0hl
それは本当に大きな皿だった。背丈も横幅もわたしの倍はあるトロールが、両手を一杯に
伸ばして運んでいるくらいなのだから。
蓋のせいで料理の量はわからないが、もし山盛りになっていたらわたしが丸ごと埋まって
しまいそうな分量になるはずだ。
悪魔とはそれほど大喰らいなのだろうか? わたしはそんな疑問を覚えた。
トロールはなぜかその皿を部屋の隅、それも床の上に置いた。
「さあ、こちらへおいで」
悪魔は立ち上がって皿に近寄ると、わたしを手招いた。
その仕草に、思い当たる。
あの態度は、人がペットに対する時のそれだ。親愛の情を示し、優しく扱い、しかし、
自分より程度の低い動物に対する優越感を隠そうともしていない、あの振る舞い。
羞恥と怒りに顔が赤くなった。唇を噛んで、椅子から立ち上がることを全身で拒んだ。
しかし悪魔は、出来の悪い飼い犬を見るように、穏やかな態度を崩さなかった。
「君の推測はたぶん正しいし、自尊心の高い人間がそんな時に怒るのも無理はない。だが
今は、少なくとも椅子からは立った方がいいと思うよ」
そう言うと、悪魔は「窓」から空を眺めて続けた。
「私は君にある魔法をかけている。月の光が関係する魔法でね。そうなると、君はたぶん
椅子から転げ落ちてしまうんだよ」
空からわたしに視線を転じ、気味の悪い笑顔を向けた。
「姿が変わってしまうからね」
29名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 01:25:51 ID:yqhbqWsO
なんかこうジワジワと進んでく
うまいなー
30名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 04:05:09 ID:8Nqi1mVT
ほうほう
31名無しさん@ピンキー:2006/01/22(日) 23:30:36 ID:R/UvPX64
保守

早く続きを!
32名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 22:30:02 ID:1/O0rvv9
保守
33名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 23:53:48 ID:cyoug0ag
「姿が……変わる?」
その言葉に、わたしは不吉な響きを感じ取った。
例えば、髪や肌の色が変わるとか、角や尻尾が生えるとか、その程度の生易しいものでは
ない気がした。
だいたい、椅子から転げ落ちるというのは何を言いたいのだ。
その部屋から逃げ出そうと立ち上がったわたしに、悪魔が言った。
「どこへ逃げても無駄だね。廊下にも君の部屋にも他の部屋にも、月と太陽の光は隈なく
射し入るようになっている」
そうだ。悪魔に言われ、わたしはあの部屋の「窓」も開いていた。
「おとなしくここへ来るのが賢明だと思うよ。ここには君の新たな身体に相応しい食事が
準備されているのだから」
悪魔は立ち尽くすわたしを手招きしながら床に片膝をついて皿の蓋を取る。
その途端、わたしの鼻を不快な臭気が襲った。
皿には、先ほどトイレの奥から漂ってきた、あの臭いの元が山盛りになっていた。
「じょ、冗談じゃないわ!! そ、そんなもの、わたしが食べられるわけ……」
恐ろしい想像に捉えられ、必死になって悪魔に反駁しようとしたわたしは、その時視野の
片隅にあるものを認めた。
「窓」の端から姿を覗かせ始める、青白く輝く満月。
変化はたちまちわたしの全身に及んだ。
34名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 23:54:23 ID:cyoug0ag
浴場から出た際に準備されていた、純白のドレス。
とっさにその中に身を埋めても、まるで意味はなかった。
薄紙に点じた火のように、布地の隙間から差し込む月の光がわたしの身体を蹂躙する。
腕と足が、恐ろしい勢いで縮んでいった。しゃがむ姿勢も取れなくなって床に転がる。
倒れた時に顔にかかった長い髪が、幻のように消え去っていく。
すでに手足が完全にめり込んだ胴体。その中から骨が失われ、内臓が作り変えられる。
悲鳴を上げようにも普通に声が出せない。それどころか口の形が変わっていく。
自分の肉体の変容を信じたくなくて、わたしは何かから逃げようともがいた。手も足も
ない状態で、胴体を必死にくねらせた。
「気分はどうだい?」
しかし悪魔はものの数歩でわたしに追いつくと、ドレスにくるまれたわたしを拾う。
布をめくり上げてわたしを見下ろした悪魔は、気持ち悪いほど優しい笑みを浮かべた。
それはさっきまでよりも親しみを込めた、人間に例えるなら、親戚の赤ちゃんをあやす
時のような笑顔だった。
一方のわたしは、部屋のあちこちから放たれる光がなぜかとても不快で、それらから
逃れようと懸命になっていた。
「やはり光は苦手なのだね。まあ、しばらくの辛抱だよ」
話しかけながら、悪魔はわたしを床に下ろす。あの皿の前に。
「さあ、さっきはともかく、今はおいしそうに感じるんじゃないかな?」
悪魔の言う通りだった。
変化の終わった今、その皿に乗っている穢れた物体は、やけに甘美な匂いを発していた。
35名無しさん@ピンキー:2006/01/25(水) 00:24:23 ID:fSsm0e11
すらいむか?
36名無しさん@ピンキー:2006/01/25(水) 01:14:55 ID:wmn1pFJi
いい感じ!
37名無しさん@ピンキー:2006/01/25(水) 01:25:50 ID:Kq/ZDJlq
ヘビ?
38名無しさん@ピンキー:2006/01/28(土) 00:33:59 ID:jLfmabPM
保守
39名無しさん@ピンキー:2006/01/30(月) 02:25:06 ID:BBXeWQsY
保守
40名無しさん@ピンキー:2006/02/03(金) 11:49:10 ID:kDvBqhAP
hosyu


41名無しさん@ピンキー:2006/02/03(金) 19:03:29 ID:vVqu9P3R
風祭のノリでいくとミミズだな・・
ミミズなら肥溜めとかも好きだろうし
42名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 01:31:02 ID:mxRBhBtR
うおおお、つづきー
43名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 07:26:52 ID:jY6gKMN6
目の前に今やうずたかく積み上がっている、銀の皿に盛られた魔物の糞尿。
姿が変わったためか、今その形はぼんやりとしか見えない。だが人間だったついさっきに
見たばかりの光景は、はっきりと脳裏に焼きついている。
「召し上がれ」
床に横たわるわたしを高みから見下ろして、悪魔が言う。
でも、こんなものを食べられるわけがない。
何に姿を変えられていても、わたしは人間だ。人間がこんなものを食べてはいけない。
それなのに、わたしの中で狂おしいほどに高まる感覚があった。
食欲。
自分の姿を変えられたおぞましさ。悪魔に対する恐れや怒り。今後に対する激しい不安。
そんな諸々の想念を掻き消すように、ただこのおいしそうな匂いを発する物を食べたいと
いう気持ちばかりが高まっていく。
人間としての理性がどれほど押さえ込もうとしても、全身が激しく訴えている。これを
食べたい、このおいしそうな糞尿の山に頭から突っ込んでひたすら貪り食らいたい、と。
「君が人間の身体のままなら、そのためらいは真っ当なものだろうね。けれどその身体は
そういうものを食べるようにできている」
わたしを誘うように、悪魔が言う。
「月の光が射し込まなくなるのは、夜が明ける頃。人間の姿に戻れるその時まで、君は
我慢できるかな?」
わたしには、できなかった。
数分間身をよじって悶えた末に、わたしは魔物の糞をがつがつと食べ出した。
44名無しさん@ピンキー:2006/02/06(月) 20:31:26 ID:+INyoz1A
ちょ!!ここなんてGJなスレですか?

>8
俺も立てたかったけどぶっちゃけ需要ないだろと思って躊躇してた
ネタがないけどスレ立てできるならしてみようかな・・・?
4544:2006/02/06(月) 20:39:03 ID:+INyoz1A
2chビューアー持ってないから立てられなかったorz
46名無しさん@ピンキー:2006/02/06(月) 22:33:23 ID:bqMj0DAn
関連スレ?
おにゃのこが改造されるシーン 5スレ目

http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1139205739/l50
47名無しさん@ピンキー:2006/02/11(土) 11:21:52 ID:1hg6M2Ct
hosyu
488:2006/02/12(日) 07:50:19 ID:rUWze+Lr BE:189682728-
結局立てちまった、今度遊びに来てくれ

[獣化]女の子が人外に変身しちゃうスレ[異形]
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/ascii2d/1139696918/
49名無しさん@ピンキー:2006/02/16(木) 08:42:08 ID:ndddDFmq
保守
50名無しさん@ピンキー:2006/02/16(木) 10:03:45 ID:eFz2z/Wl
食べて、食べて、食べて、いつしかそのまま眠っていた。

鼻に突き刺さる悪臭に、わたしは目を覚ます。
吐き気を伴うその臭いから床を転がって逃げ惑い、混乱しながら周囲を見渡した。
豪奢な造りの部屋を眺めるうちに、自分が悪魔に囚われていることを改めて思い出す。
そして昨夜、姿をおぞましい何かに変えられて、悪魔が差し出した魔物の排泄物を……。
記憶が甦った瞬間、わたしは吐いた。
吐いたと言っても胃液だけ。床に手をつき、どれほどえずいても、口の中に入ったものは
完全に消化されていて、身体の外に吐き出すことはできなかった。
涙に滲んだ目をしばたたかせつつ、遅ればせながらわたしは自分が人間の姿に戻っている
ことに気づく。
「窓」から射し込むのは朝の陽光。あの忌まわしい月は消え去っていた。
あれは悪い夢だったと思い込めれば幸せなのだが、全裸で糞尿塗れの浅ましい状態が
そんな逃避を許さない。
それでも、その時のわたしは、自分が人間に戻れたことについてはただただ喜ばずには
いられなかった。
太陽が沈めばまた月が昇ることすら忘れて。
51名無しさん@ピンキー:2006/02/16(木) 13:03:17 ID:H/grA5gM
>>50
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +
52名無しさん@ピンキー:2006/02/17(金) 07:11:14 ID:GG1EgDdg
次の日の朝、わたしはまた糞便の中で目を覚ました。

昨日は現れた悪魔に促されて入浴した後、一日中与えられた自室に篭もっていた。
無駄とは思いながらも、悪魔に部屋へ立ち入らないように頼んだりもした。
あの悪魔は、そんな頼みだけは律儀に聞き届けてくれた。
月の光を浴びたわたしはまた手足のない存在に変化し、それと同時にたまらないほどの
飢餓感に襲われた。
入浴後、悪魔に朝食へと誘われた時は断ったし、それ以降は部屋から出ていない。当然と
言えば当然の成り行きだ。
空腹は生き物から理性を奪う。
食べたい。食べたい。食べたい。その感覚だけが全身を衝き動かす。
ベッドから転げ落ち、床を這いずってドアまで辿り着く。しかし手足のない今のこの身体
では、ドアを開けることはおろかドアノブまで身体を伸ばすこともできない。
食欲はもはやわたしの全てとなっていた。お腹が空いた。何でもいいから食べたい。声の
失われた身体で、わたしは心の底からただそれだけを願った。
「ドアを開けてもいいかい?」
ドアの向こうからの悪魔の言葉は、その時のわたしには天使の歌声のように響いた。
開くと同時に廊下へもぞもぞと這い出す。そんなわたしを悪魔は優しく抱え上げ、食堂へ
連れて行った。
前日と同じ皿に盛られた糞尿を、ためらいもせずに一心不乱に食べ始めた。
53名無しさん@ピンキー:2006/02/17(金) 07:11:44 ID:GG1EgDdg
朝の光に照らされた自分の惨めな姿を見下ろして、わたしは泣いた。
昨日は混乱と虚脱で呆然とするばかりだったが、今朝は自分の姿を客観的に眺める妙な
余裕が生じていた。だから泣いた。
一日の半分を人間でない姿で過ごす、しかも魔物の糞尿を貪り食う、それが今のわたし。
つい数日前までのわたしは、魔物に立ち向かう僧侶として人々に憧れの目で見られていた
のに。美しい十七歳の女として冒険者仲間から色目を使われ、表向きは澄ましていながら
内心では満更でもないと得意になっていたのに。
溢れる涙を拭おうとしたが、両手は臭く汚れていてできなかった。
人間の嗅覚では糞を悪臭と感じることに変わらない。だから皿から距離は置いた。でも
昨日の朝のように吐こうとまでは感じなかった。
一昨日の晩、そして昨日の晩。二日続いてたっぷり食べたそれは、わたしにとってすでに
食べ物の一種になっているのかもしれない……。
そこまで考えて愕然とし、慌てて打ち消す。それは姿の変わった時の話。本当のわたしは
人間なんだ。だからこんなものは単なる忌避すべき汚物に過ぎないんだ。
そう言い聞かせるが、すでに目に馴染み始めたその存在に、以前のような激しい嫌悪感は
感じなくなりつつある。
わたしは裸身を両腕で抱いて大きく震えた。
心の有り様が変わってしまうことを恐れ、この境遇から何としても抜け出さねばならない
と固く誓った。
54名無しさん@ピンキー:2006/02/18(土) 01:47:32 ID:K/9/MtOr
連夜でktkr
55名無しさん@ピンキー:2006/02/20(月) 21:12:51 ID:SlL5Ye73
hosyu
56名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 04:44:19 ID:fSstmHEM
入浴を済ませた後、しっかり朝食を取った。まともな食べ物を多く食べておけば、少しは
晩に襲われる飢餓感を減らし、ひいては口にする糞の量を減らせるかもと考えたからだ。
そしてわたしは一昨日悪魔に案内された図書室へ足を運んだ。
月の光を浴びることで発動する魔法。それを打ち消すことさえできればわたしは普通の
人間に戻れる。
もちろんそれだけではすぐ悪魔に魔法をかけ直される。魔法の解除は悪魔の手を逃れると
同時に行わなければ意味がない。その手段はどうにかして考えておかなければならない。
だが、とにもかくにも魔法を何とかしなければ。
悪魔がどんなつもりでわたしをここに案内したのかは知らない。あるいはわたしを悪魔の
側につけようと企んでいるのかもしれない。けどあちらの思惑などどうでもいい。
自分の浅慮を後悔させてあげる。
悪魔の魔法が人間向けの言葉で書かれているわけもないだろう。だがわたしは教会勤めの
頃、死人や怪我人となるべく関わらずに済むように、古文書の解読や外国語の教典翻訳に
積極的に取り組んでいた経験がある。その甲斐あって、わたしは語学に関してそれなりに
勘が働くのだ。
今はまだ字形を読み取るのも困難な異界の言語に、わたしは突き進み始めた。
時間だけは山ほどあるのだから。
57名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 04:44:50 ID:fSstmHEM
「おお。ようやくだね」
四ヶ月ほど過ぎた後のとある晩。いつものように飢えを満たそうと糞を食べ漁りながら
(人間として普通の食べ物をどれほど腹に収めても、変化後の食欲は衰えなかった)、
わたしは変化した身体が妙に強張っていることに気づいた。皮膚が突っ張るような感覚が
全身を覆っている。
「本当なら遅くとも九週間ほどでそうなるはずなんだが、君は一日の半分しかその姿に
なれないからね。倍の時間がかかるのも無理はない」
何を言っているのかよくわからないが、聞き逃すには重大な何かを語っているようにも
思える。おいしそうな匂いを振り切って、わたしは悪魔に頭を向けた。
「ああ、気にせず食べ続けながら話を聞いておくれ。何、大したことじゃない」
悪魔は改めて糞を食べ出したわたしが聞き取りやすいよう、膝をついて言った。
「君はもうじき蛹になるんだよ」
58名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 08:30:31 ID:8sxVcWlB
投下乙です。芋虫でしたか・・・蛹と羽化が楽しみです。
59名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 08:36:36 ID:72Fcuz12
蝿かフンコロガシっぽいな・・・
60名無しさん@ピンキー:2006/02/27(月) 00:00:20 ID:F4YCwOX4
あげ
61名無しさん@ピンキー:2006/02/27(月) 00:46:57 ID:aSXlKYzp

ツ 、
田十
一┃
口人

無理
62名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 21:37:28 ID:4srPNsva
保守
63名無しさん@ピンキー:2006/03/04(土) 16:21:44 ID:S35hQEDe
良スレハケーン(・∀・)

ベルゼブル=蠅の悪魔=蠅では???
64名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 22:16:56 ID:ISCuNSCB
いやもう早く蠅娘の完成型がみたいですな。
65名無しさん@ピンキー:2006/03/07(火) 01:04:39 ID:U62RxoV9
(´・ω・`)<ここんとこ投下ないね
66名無しさん@ピンキー:2006/03/07(火) 23:45:46 ID:eXZ7E8+d
朝焼けの光に目を覚ましながら、わたしは昨夜悪魔が告げた言葉を思い出していた。
わたしはもうすぐ蛹になる……。
単に目先のことだけで考えればありがたい話だ。そうなれば月の光を浴びてもわたしは
魔物の糞をがつがつ食べないで済む。しばらくは、一日の半分をただ眠って過ごすことに
なるだろう。
だが、蛹はいずれ成虫になる。
その時わたしは、幼虫である今以上に浅ましいおぞましい存在に成り果てそうな気が
してならなかった。
逃げる算段は整いつつある。後はじっと機を待つばかりだった。

「明日は一日、外に出る用があってね。晩には帰って来るが、気楽に過ごしておくれ」
数日後、悪魔が待ちに待った台詞を言ってくれた。
悪魔は一週間に一度ほど外へ出る。何の用かは知らないし知りたくもないが、とにかく
外出して居城を空ける習慣がある。そして明日、待望のその日が訪れた。
最近の、「幼虫としてのわたし」は、すでに全身の皮が硬くなっている。きっと、もう
一日か二日で蛹になってしまうのだ
だがそんなことになる前に、わたしは人間に戻ってみせる。
わたしは今夜でこれも最後と思いながら、糞を食べていった。
67名無しさん@ピンキー:2006/03/07(火) 23:46:23 ID:eXZ7E8+d
いつものように糞の中で目を覚まし、浴室で汚れを洗い落とす。悪魔の気配はない。
わたしは動きやすい服装に身なりを整えると、図書室へ向かった。
この四ヶ月である程度は読めるようになった魔道書を開き、最後の確認をしながら
紙に二つの綴りを書き写す。混同しないように注釈も忘れない。
そして魔法薬が収蔵された部屋へ足を踏み入れた。
掌にすっぽり収まる小さな小さな壜。そのラベルに書かれた綴りとメモした綴りが
完全に同じであることを確認し、ポケットにしまう。
魔道書で取り上げられていた、『月の光』が関係する『変化の魔法』は一つだけ。この
薬はそれを打ち消す効果を持っていると紹介されていた。
今すぐ飲んでもいいのだが、まずはこの悪魔の棲家を脱出しなければ話にならない。
わたしは部屋を捜索し、別の綴りが記された大瓶を見つけ出した。
大瓶に満たされている紫色の毒々しい液体を指先に取る。ためらう気持ちはあったが、
戦闘力に乏しいわたしには、他に脱出の方策もない。
わたしは濡れた指先を額につけて、液体で紋章を描く。
この居城の扉や壁や、いたるところで目にする紋章。あの悪魔固有の紋章。
この液体で身体のどこかに特定の悪魔の紋章を描くと、その者はその悪魔のしもべに
なったことになる。簡便な契約であり、一種の呪い。
こうすれば、地上までの道中、迷宮に巣食う野良の魔物が襲ってこないはずだ。
もちろん地上に出たらすぐに教会へ駆け込み呪いを解いてもらう。これくらいの呪いは
容易に解けるはずである。
わたしは行き交う魔物の間を通り過ぎ、ケルベロスの前を抜け、迷宮へ足を踏み入れた。
68名無しさん@ピンキー:2006/03/08(水) 01:09:37 ID:mQWXL4i9
kita----!!!! 乙です。
変化と変心の様、楽しみにしてます。
69変身マニア:2006/03/09(木) 22:39:26 ID:JQ5nZsCJ
変身...それは私にとってとても楽しいこと。世間の人達は変身を
特別のもののように扱ったり奇異に感じたりするかもしれない。ある
いはマニアの中には変身というものを他者への蹂躙の道具として取り
上げたりするかもしれない。でも私にとっての変身はそんなものでは
なく、体の芯からの喜びの唄声を楽しむ特別なひととき。それはいろ
いろな動物や獣人に自分の意思で自由に変身出来る、他の人には真似
出来ない能力を楽しむことだった。

学校が終われば普通に友人達とお店に寄ったりして雑談した後、私は
帰宅の途に着く。自室に到着して宿題とか一通り済ませると、そこか
らは夜の散歩のお時間となる。私はゆるめの普段着を脱ぎ捨てて下着
の上下も脱ぎ捨ててしまうと姿見の目の前で自分の姿を映して生まれ
たままの体を堪能する。


「やっぱり定番から始めますか...。」


思いを込めて体に力を加えると私の体は小刻みにけいれんを始める。
じわっとした快感が体を包み始め、次第に皮膚の表面に明るい茶色の
毛が生じ始める。耳が次第に頭の上に移動し始め、口元は少しずつ前
にせり出し始め、お尻からは滑らかな肌から突き出してくるように尻
尾が生えてきて際限なく伸び始める。


「あ、あ、あ....ん......」


体の変化を鏡で追いながら調整する。変身にも美的センスが必要だと
私は思う。可愛らしく、エッチに、魅力的な姿になるように心掛けな
がら体の変身を促し、そして第一段階の変身を終えた。


「猫ちゃんに変身完了〜。」


それは人間の女の子の魅力と猫の獣としての魅力を兼ね備えた、可愛
らしい姿(自分ではそう思っている)の猫少女だった。全身を毛で覆
われているが人間の女の子としてのプロポーションを保ち、お腹は白
い毛で覆われ、背中は明るい茶色の毛で覆われ、手足も肉球を形成し
ながら普通に物が持てるように調整してある。髪の毛も変わらずに肩
の所まで伸びていてその頭から可愛い猫耳がちょこんと生えている。
私は鏡の前でごろにゃんと横たわってみたり、猫のように背面背伸び
をしてみたり、グラビア紙にあるような乳寄せをしてみたりして楽し
んだ。

もちろん変身はこれだけではない。完全獣化もお手の物である。私は
すかさず思いを込めて体に力を加えるとすぐに体は反応を始める。ぴ
くぴくけいれんを始め、じわっとした快感を伴いながら次第に体が小
さくなっていく。手が猫の前足へと変わっていき、口元も猫のサイズ
くらいに突き出していく。髪の毛が体の中に取り込まれていき、脚が
反転してバネのような脚力を持った脚へと変わっていく。すっかり本
物の猫になってしまった私の体。でも多少髪の毛らしい前髪を残して
みたり元の私の表情を残した猫顔になるようにしている。私は颯爽と
茶色の尻尾を立てて、あらかじめ作っておいた猫の出入り口から月夜
の夜へと散歩に出かけ始めた。


(続く)
70名無しさん@ピンキー:2006/03/09(木) 23:31:51 ID:rG8WxPTd
>69

GJ!
星新一みたいだね。
71『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/03/11(土) 01:08:09 ID:RPc2GqiF
額の紋章は鮮やかに効果を発揮して、魔物たちはわたしに近寄っても襲いかかったりは
しなかった。
仲間たちとともに一度通過しただけの迷宮は道筋が入り組んでいて、一人では何度も
道に迷ってしまったけれど、忌まわしい境遇から抜け出せる希望に胸膨らませて
わたしは歩を進めていった。
延々と歩き続け、何度となく階段を上り下りし、ようやくわたしの目に明るい外の光が
飛び込んで来た。
萎えそうになる足を奮い立たせて最後の階段を上る。すると野外の開放的な空気が
わたしの全身を包み込んだ。空は次第に西に傾き出してはいるが、日没まではまだ
しばしの猶予がある。
四ヶ月前、仲間とともに迷宮に挑んだ高揚感。一人取り残されて死に直面した恐怖。
悪魔に囚われて、人ならぬ醜い姿に変えられて、汚らしいものを食べさせられた屈辱。
色々な感情が胸にこみ上げてきて、わたしは思わずその場にへたり込むと顔を覆って
泣き出した。

どれほど泣いていただろう。
顔を上げれば太陽はすでに茜に染まり西の山の端に没しようとしている。
もうじき月が出てしまう。
わたしは慌ててポケットから小壜を取り出すと、蓋を開けて薬を一息に飲んだ。
72『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/03/11(土) 01:08:46 ID:RPc2GqiF
その途端、わたしの全身に変化が生じた。
四肢が力を失って、棒のように地面に倒れ込む。頬にかかった長い髪の毛が、幻のように
消え失せてしまう。
「そんな……嘘……」
それは、すでにわたしにとって馴染み深い感覚。
手足が粘土細工のように不気味に蠢きながら体内へ縮んでいく。身体の内部の構造が
作り変えられる。視覚が弱まり、光に対する嫌悪感が生まれ、高まる。声を上げるのも
叶わない。口蓋の形が変わっていく。逃げ出そうにも逃げ出せず、無様に横たわる胴体を
くねらせるだけ。それすらも、蛹に変わりつつある今となっては難しい。
この四ヶ月、新月の晩以外は夜毎必ずわたしを襲った変化。わたしが人でないものに
変わっていく……あの、醜い蛆虫に変わっていく、その時の感覚。

全身を襲う変化にもはや成す術もなく、わたしはただ自分がなぜこんな状況に陥っている
のかをぼんやり考える以外することがなかった。
薬が間違っていたのだろうか? でもラベルの文字は何度も確かめた。仮に別の薬だった
としても、あの魔法には月の光の存在が欠かせないはず。けれど今、月はまだ地平線の
奥にその身を潜めているはずなのに……。
「四ヶ月の独学では無理もない話だがね、君はあの魔道書を少し読み違えていたんだよ」
いつの間にか。
わたしを見下ろすように、悪魔が立っていた。
73『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/03/11(土) 01:09:52 ID:RPc2GqiF
その柔らかで落ち着いた声を聞きながら、わたしは自分が単に泳がされていただけだった
ことを知った。相手を出し抜くどころか、すべては向こうの掌の上の出来事だったのだ。
「あの変化の魔法における月の光の役割は、魔法が効果を発揮するキーではない。むしろ
逆なんだ」
……え?
「あの魔法は月の光によって効果を阻害され、姿を変えられていたものを本来の姿に
戻すんだよ」
悪魔の言葉は聞こえている。けれどその意味を思考が組み立てられない。
「だから魔法を打ち消す薬を飲んだ今、君は本来の姿を取り戻したというわけさ」
そんなはずない。そんなはずない。
だって、今のわたしは……
「ケルベロスに致命傷を負わされた君は一度命を落とし、私の手によって甦った。魂を
新たな肉体に宿らせてね」
手もなく足もなく声も出せず暗がりを好み糞尿を貪り食う……
「蠅の王たる私、ベルゼブブの子。それが今の君の正体だよ」
わたしは、声にならない悲鳴を上げた。
74名無しさん@ピンキー:2006/03/11(土) 09:07:47 ID:/3EI2m/r
きましたねGJ!!
75変身マニア:2006/03/13(月) 03:36:50 ID:hhayiiBY
月夜の夜道を歩く。人間としてではなく、猫として。尻尾を右へと左へと
振りながら。横を通る人間達は、まさか私が猫に変身した人間の女の子と
は思わないだろう。でもここは町中なので思いっきり変身して楽しむこと
が出来ない。私の足は自然と人のいない海辺へと向かっていく。

人家が途絶え、田畑が続き、草むらが両側に生い茂る海へと続く道に差し
掛かると、私は体を猫の姿から猫少女の姿へと次第に変身させ、二本足で
坂道を下っていく。月夜のほのかな明かりの中を普通の人間のように歩い
ていく。そして潮が静かに打ち寄せる砂浜へと到着した。


「やっほー。元気だった?」

「うん....。」


目の前にいるのは、名前も知らない幼い男の子。私がネズミに変身してい
て畑に仕掛けられていたネズミ取りに捕まってしまったところを助けてく
れた、命の恩人。お礼を言うために人間の姿に戻っても逃げ出さずにいて
くれた、気が弱そうに見えて意外と肝っ玉がすわった男の子。満月の月夜
の晩にここで会う約束をしていたのだった。


「今日は何に変身して欲しい?」

「そうだね...狐さんに変身して欲しい。」

「いいわよ。きつねうどん一丁ね。その代わり...私の胸で甘えて欲し
い....。お願い出来るかしら?」

「うん....。」


私はすかさず猫少女から狐少女へと変身したいと思いを込める。すると体
は小刻みに喜びの歌声を上げながら毛並みが猫から狐の金色の毛並みへと
変わっていき、耳はより一層とがって大きくなり、手足は黒色の手袋をし
たように色が変わり、猫の尻尾もふさふさした狐の尻尾へと変わっていく。
そして私の形良く張り出した胸の乳首からは雫がにじみ始め、与える相手
を求めているかのように抑えられなくなってきてしまった。


「お願い....早く吸って...。」

「うん....。」


変身体質の体のために、何かを好きになるという気持ちだけで母乳が出て
きてしまう体になってしまった。うっかりしているとベッドを汚してしま
うし、思いっきり出してしまわないと気が狂ってしまいそうで仕方がない。
この少年が、そんな私をまたもや助けてくれる。この子ならいくらでも出
してしまいたい。私は彼を抱き寄せると私の胸の先へと誘った。
76変身マニア:2006/03/13(月) 03:38:49 ID:hhayiiBY
月夜の浜辺で狐少女が少年におっぱいを吸われている。少しも嫌ではなく
て、こうして吸われていることがとても楽しくて仕方がなかった。少年の
目を盗んで、犬少女になってみたりウサギ少女になってみたりした。狐少
女に戻ると、少年は乳首から口を離して私を見上げている。


「もうお腹いっぱいだよ。」

「そう...ごめん。ありがとね。それじゃ、海辺のドライブに出掛けま
しょうか?」

「うん...。」


狐毛が母乳で濡れていてまだ体は物足りなそうだったけれど、私は彼を体
から下ろすと月の光に向かってすくっと立ち上がり、お尻を突き出してま
た変身したいと思いを込める。

馬に変身するにはセンスがいる。大きい上に体のバランスを取るのが難し
いからだ。私はぴくぴく歌声を上げ始めた体を抑えながらまずお尻と脚が
大きくなるように促し、ぎりぎりまで二本足だけで立つようにする。足先
に蹄が生じ、脚が馬のような筋肉質に変わり、尻尾も狐毛から馬のしなや
かな長い馬毛に変わると、胴体がだんだん太くなって体が支えきれなくな
る頃を見計らって手を地面に伸ばす。手もすでに指がくっついて蹄に変わ
り始め、体全体も馬毛に変わり、首も太く長く変化し始め、顔も馬のよう
に長くなり、首の後ろにたてがみを生じさせる...。馬への変身はダイ
ナミックで素敵だと思う。快感に浸りながら馬への変身はすっかり終わっ
てしまった。乳房だけは人間の時のような位置にわざと変身させずに残し
てある。


「さあ乗って、王子様。お待たせしました。」


馬だけど人間の声帯も残してある。私は腰を下ろして少年を背中に乗せる
と月夜の砂浜を楽しそうに駆け出し始めた。


(続く)
77変身マニア:2006/03/13(月) 03:46:48 ID:hhayiiBY
78名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 16:53:15 ID:0WHxuCHI
>>77
 中々刺激的な展開で・・・GJです。狐もですが様々な動物に変身出来る所がなんとも魅力的です。
 母乳とは意外な盲点でした、新たな萌えに目覚めそうです・・・。
79変身マニア:2006/03/13(月) 21:09:54 ID:hhayiiBY
>>78
感想を下さいまして誠にありがとうございます。誰もこのネタで
書いてくれないので、いつもイメージだけが毎日巡っていました。

ところで、私が誰なのか余興にお考え頂ければと思っております。
風祭玲さんのリンク関係者で、プログラムが少し得意な人です。
2ちゃんねるでも度々キモオタと名指しされたことがありますが。
(^^;;
80名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 23:31:27 ID:RcqiQRZX
>>79
最近サイトを閉鎖した、中京のニートの引篭もりDQNか?
81名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 00:24:40 ID:JznIXOTT
>>79
なに自分をアピールしてんの?
キモイよ
82変身マニア:2006/03/14(火) 04:12:14 ID:9cv1CMML
何だか叩かれてるなあ。今後ともよろしく。
83名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 05:28:06 ID:0TDQ6lRt
まあな。うん。sageないか。
84名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 22:56:10 ID:XmbWiskX
>82
叩かれる理由がわからない内は書き込まないほうが良い

85変身マニア キモオタ:2006/03/15(水) 09:24:47 ID:y0gbUQ7W
月夜の海の浜辺を、少年を乗せた馬が小気味良く駆けていく。見た目には
普通の茶色のサラブレットが鞍を付けずに走っているように見えるが、馬
の胸元には馬毛に包まれた二つの乳房が揺れている。こんな芸当が出来る
のは私の体だから出来ること...。背中に少年を乗せて馬の振りをして
駆けているのが楽しかった。そこに運悪く前方に散歩している老人の男性
がいて声を掛けられてしまった。


「こんな夜中に何やっているんだ? その馬はどこの馬なんだ?」


私は胸をすぐに奥に引っ込めた。そして私の大好きな少年が代わりに答え
てくれる。


「えっと...僕が家で飼っている馬なんです。今日は散歩で...。」

「こんな夜中に出歩いちゃいかんだろう? それに落馬したらどうするん
だ? 早く家に帰りなさい。」

「はい...。」


私は馬らしく体を揺らしながら方向を変え、去り際ボソッと老人に話しか
けた。


「ご心配お掛けしてすいません。」

「....?」


聞き慣れない女性の声を聞いてびっくりした顔を確かめると一目散に駆け
出し始めた。


「ダメだよ、驚かしたりしちゃ...。」

「何だかいたずらしたくなっちゃって。夜中に散歩したい時だってあるも
の。まあ、君くらいの年頃じゃそう言われるかもしれないけれど〜。」

「本当に馬らしくないね、お姉ちゃん。」

「えへ。」


(続く)
86変身マニア キモオタ:2006/03/15(水) 13:47:56 ID:y0gbUQ7W
私達は老人の男性に出会った場所からUターンして元の場所に戻ってきた。
そして砂浜から海に突き出したコンクリートの船着場みたいなところの先
端にたどり着くと、私は腰を下ろして少年を地面に下ろしてあげた。

すくっと立ち上がって私は人間に戻りたいと思いを込める。ぴくぴくけい
れんし始めた体をコントロールして上半身から軽くしていく。馬の顔は次
第に元の顔の大きさに戻っていき、馬の首も短くなっていってたてがみも
体の中に取り込まれていく。胴体も徐々に細くなっていき前足も蹄がなく
なって指が分かれていってタイミングよく下半身だけで立ってみせる。乳
房も胸の方に移動し豊かに膨らんでいき、馬の尻尾の毛も体の中に取り込
まれていって、頭に髪の毛が生じていくのと同時に全身の馬毛も消えて肌
色の素肌に戻っていく。大きかったお尻も徐々に小さくなっていき、足の
蹄も消えていって筋肉質だった脚が元の女の子の綺麗な脚に戻っていく。
すっかり一人の女の子が一糸まとわぬ姿で月光浴しようとポーズを取って
いる姿に戻った。


「ああ...気持ち良かった。馬はやめられないわ〜。」


私はすっと少年の側に寄り添うと、コンクリートの地面に腰を下ろした。
素肌に石の表面が食い込むけれど、それすらも気持ち良いように感じられ
た。


「よく逃げなかったわよね。私に出会って...。どうして?」

「最初は逃げたいと思ったけれど、ちょっと我慢して見ていたら変身する
姿が不思議で...綺麗で....。どうしてお姉ちゃんはそんなに変身
することが出来るようになったの?」

「う〜ん、中学の時に女子生徒の間でいじめられて、その時期に何か他の
動物に変身してしまいたいってすごく願ったの。そしたらある日猫に変身
してしまった自分を発見してあわてて人間に戻りたいと思って変身したの
が最初かな? それ以来いろいろな動物に変身しようと願えば変身出来る
ようになったわ。...それからは変身することはもう普通って感じ?
ただ...理解してくれる人がいなくて....君のような子がいてくれ
てすごく嬉しいの。」

「僕も...いじめられっ子だったから....。お姉ちゃんの変身姿を
見ていると生きている素晴らしさを感じるよ。すごく素敵....。」

「そう...? 嬉しいな〜。じゃあ、また空にも連れていってあげるわ。
巨大な鳥に変身して連れていってあげる。」

「本当?」

「本当よ!」
87変身マニア キモオタ:2006/03/15(水) 13:52:17 ID:y0gbUQ7W
そんなこんなで会話しているうちに夜も遅くなってきてしまった。


「それじゃ、今日の最後にいいものを見せてあげる。私の両脚を抱いてい
てくれる?」

「何が始まるの?」

「いいから私の両脚を抱いていてね。」


私はコンクリートに座ったまま変身したいと思いを込める。体は小刻みに
けいれんして喜びの歌声を上げながら、両脚が徐々にくっついていって隙
間が消えていってしまう。下半身は丸みを帯びて少し大きくなり、足先は
平たく魚のひれの形に広がっていって形を整えていく。そして表面から紅
くて細かい鱗が生えてきて下半身を紅く染め上げていく。私はわざと快感
の吐息を漏らす。少し髪の毛を長く伸ばし、胸も少し大きくした頃、私の
大好きな変身は終わった。


「何か分かるでしょ? 何かしら?」

「人魚...さん?」

「その通り! よく出来ました!」
88変身マニア キモオタ:2006/03/15(水) 13:53:36 ID:y0gbUQ7W
私は長くなった髪の毛をたくし上げ、その隙間からこぼれ落ちるように乳
房を誇示してみせる。腰から徐々に紅い鱗が生えていて下半身は紅い魚そ
のものだった。それ以上に人間の体のラインの美しさを兼ね備えた、美し
い人魚姿を少年に見せてあげていた。


「お願い、また吸って欲しいの。変身すると胸が張って仕方がないの。」

「僕もうお腹がいっぱいだよ。」

「お願い...今夜はこれで最後だから。」


髪の毛の隙間からにじみ始めた母乳を私の大好きな少年は吸い始めてくれ
る。少年にお乳を与える人魚。そう思うだけで私の精神はイってしまいそ
うな気持ちだった。


「もうお腹いっぱい。」

「ありがとう。ごめんね。それじゃ、また満月の夜にここで会ってくれる?」

「うん。お姉ちゃんといるとすごく楽しいもん。」

「嬉しい...。それじゃ、ひと泳ぎしてから帰るわね。またね〜。」

「またね!」


私はコンクリートの座っている場所からそのまま海へ飛び込む。水しぶ
きを上げ、海の比較的浅いところを泳いでいく。月夜の光を楽しむため
に、目を少し変身させて、わずかな光でも明るく映るようにして海の中
を楽しむ。

時々海から飛び上がっては岸にいるはずの大好きな少年のために私をア
ピールする。変身....それは私にとって楽しいこと、素敵なこと。
私だけが独占してしまっているけれど、本当はみんなと自由に変身して
楽しみたい。あなたは変身...したくありませんか?


(終わり)
89名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 23:55:04 ID:tX7EbHkR
>>88
GJ!!!
変身させられるネタをよむコトが多いですが、自分の意思による変身も面白いですね。
90変身マニア:2006/03/16(木) 00:15:40 ID:bQYH4bje
>>89
変身したいです。着ぐるみ以外の方法で何かないですか?

結局寝てる夢の中でしか無理なのかな?(;v;)
91名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 01:47:11 ID:k7RYJ9gD
脳をハックか脳を動物に移植
92名無しさん@ピンキー:2006/03/17(金) 04:32:25 ID:Gvc6vKl6
>>91
後者の場合万能文化猫娘のヌクヌクの事か?
93名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 01:36:23 ID:sh39s2bY
ところでベルゼブブの話ってあれで完結?
94 ◆eJPIfaQmes :2006/03/18(土) 11:14:03 ID:WCqIAX22
>93
成虫になってませんし、もう少し続けるつもりです。しばしお待ちを。
95名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 12:23:16 ID:ki29qS1G
お待ちしてます。
すごく楽しみなので頑張ってくださいねー。
96名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 14:40:15 ID:Fk74OHX2
ベルゼブブのお話、べつにセックスしてるとかじゃないのに
すごい興奮してしまうんです。私へんなのかしら。
楽しみにしてまーす。
97名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 02:29:29 ID:HmToerF9
>>94
ヽ(・∀・)ノ ウワーイ
98名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 03:30:14 ID:WgGTzO4j
wktk ×1000
99変身マニア:2006/03/19(日) 23:11:34 ID:hkY3bYFK
私はパンを扱う中堅の会社に勤めている。食品製造業というのは
一見緊張感のない会社のように思う人もいるかもしれないが、そ
れは大きな誤解である。工場は毎日稼動しており休みがないため
不定休でしかも連休が取りづらい。私も製造部門から総務部門へ
の配置転換で少しは勤務が楽になったが、最近になって少し困っ
たことが起こるようになってしまった。私の妻のことである。妻
は3人も子供をもうけて日々幸せそうに一緒に暮らしているが、
あまり私が構ってあげられないものだから欲求不満を起こしてい
るようなのである。

その日も昼休み近くになって書類を整理しながら机の上を見渡し
てみると、見慣れたちっちゃいものがちょこんと座って私を見上
げていた。ハムスターである。柄も某アニメのハムスターらしい
白地に橙色の混じった可愛らしい姿であるが、それが恨めしそう
に私を見上げているのである。私はそれを鷲づかみにしてスーツ
のポケットにしまうと仕事も中断してある場所へと向かった。

それは小麦粉倉庫の一番奥、パンに配合するもので時々しか使わ
ない特殊な小麦粉や薬品袋が積み上げてあって人がめったに来な
い場所である。私はそこにたどり着くと、さっき鷲づかみにした
ハムスターを今度はうやうやしく小麦粉袋の上に乗せて頼み込む
ように話しかけた。


「なあ、頼むから会社には来ないでくれよ〜。」
100変身マニア:2006/03/19(日) 23:12:28 ID:hkY3bYFK
そう言うと可愛らしいハムスターはぴくぴく体をけいれんさせな
がらむくむく膨らんでいき、ハムスターの柄の毛を身にまとった
一人の女性へとたちまち変身してしまった。私の妻である。彼女
は自分の思った動物や獣人に自由に変身することの出来る、不思
議な能力を持った女性だった。たまたま地方に旅行に行った時一
目惚れで結婚してしまったのであるが、まさか彼女にそんな能力
が備わっているとは思わなかった。今の彼女の姿は肩まで伸びる
髪の毛を生やしながらもハムスターらしいくりっとした可愛らし
い目をして胸も乳輪を残してハムスターの毛で覆われ、お尻から
は短い尻尾がくりっと飛び出している、可愛らしい女の子の姿だ
った。


「もぉっ、結婚してからずいぶん経つのにずっと忙しいまんまじ
ゃない? もう少し相手にしてよ。」

「分かったよ、分かっているけれど...なかなか時間が取れな
いんだ。今度連休作ったら必ず遊びに連れていってあげるから。」


私がそう言うと彼女はまたもや気持ち良さそうに体をけいれんさ
せながら今度は豹柄へと体の毛を変えていき、尻尾もぐんぐん伸
びて体全体がバネのように身軽になると、顔もなまめかしく恐ろ
しい豹顔に変身させて私を押し倒してきた。耳は可愛らしくぴく
ぴくさせているが口に生えた牙が私を怖がらせようとしているか
のように尖っていて手に負えない。


「私は今すぐ相手にして欲しいの! 何よ、人が大人しく子育て
や家事やっていれば調子に乗って...。夜だって帰ったらすぐ
ご飯食べて勝手に先に寝てしまうし。今相手にして欲しいのよ!」

「...しょうがない。ここでしか時間も場所も取れないけれど、
それでいいのか?」

「いいわ。私も半分は承知して嫁入りしたんだし。お願い..。」


いつの間にか豹から可愛らしい猫の獣人に変身した彼女は小麦粉
袋の上にちょこんと座って私が服を脱ぎ去るのを待っていた。服
を脱ぎ去るのと同時に彼女は私を押し倒し、深い茶色の猫毛に覆
われた乳房で私の顔を埋めるのだった。


「早く....しよ?」


(続く)
101変身マニア:2006/03/22(水) 13:35:01 ID:Ha1ps9NX
「ところで、お前妊娠する危険日じゃないのか?」

「え? ..それは大丈夫。私だって子供が好きとは言ってもこれ以上は
...」

「本当か?」

「本当よ。信じて〜。」


甘ったるい声で可愛い猫妻は私に抱きついてくる。妻が馬乗りになる形で
私と妻はつながる。猫毛に包まれた形の良い乳房を揺らし、次第に気持ち
良さそうな恍惚な表情で私を見つめる。


「私は下僕よ、あなたの...。好きで好きでたまらないもの。それに変
身に理解のある人もあなただけ...。あなただけが私の変身に驚かなか
ったもの。猫になったって犬になったって変わらず私を愛してくれる。ね
え、今度は私を押し倒して。私を調教して....。」


そう言うと妻は自ら小麦粉袋に横たわり、体を気持ち良さそうにけいれん
させながら可愛い犬の女の子に変身していく。茶色の猫毛が純白の犬毛に
変わっていき、耳は猫耳から垂れ下がった犬耳へと変わっていき、口周り
も犬らしい形に変わって尻尾も白い犬毛をパタパタとさせて可愛らしい目
で私を見上げる。私は妻とつながってさらに私のペースで揺らしながら念
入りに妻が気持ち良くなるように突き上げる。

ひとしきりエッチを楽しむと妻は犬への変身を解き、一糸まとわぬ女の子
の姿に戻った。


「ねえ、今日はどうして出してくれないの?」

「それは...。」

「お願い、出してよ。あなたの好きなアレに変身してあげるから。」

「....。」

「今日はね、試しに変身しながらエッチして欲しいの。お願い。」

「分かったよ...。」
102変身マニア:2006/03/22(水) 13:39:01 ID:Ha1ps9NX
私達は再び互いにつながる。私が上で、妻が下。最初は普通の男女のエ
ッチ風景と変わらない。しかし彼女の体が気持ち良さそうにけいれんし
始めると、彼女の股の間に私の脚が入らなくなり、彼女の両脚が次第に
くっついていって隙間がなくなっていく。両脚の太さ分の下半身を私の
2本の脚でサンドイッチしている間にも妻の下半身は少し膨張して形を
整え、足先が平たくなり魚のひれの形へと変わっていく。私の脚に伝わ
る感覚から細かい鱗が生え始めたようだ。紅くて細かい綺麗な鱗。それ
が妻の下半身を紅く染め上げていく。髪の毛も前より少し伸び、まさに
私のたった一人の人魚として一心不乱にエッチを楽しんでいる。そして
妻が変身している間つながっている先がどんどんきつくなり、今日は出
すまいと心に決めていたのに限界ぎりぎりに到達してきてしまった。


「油断したわね、あなた...。」

「え...?」

「人魚になるとあそこがきつくなるのよ。それに変身しながらだとすご
く気持ちいい...。お願い、出して。私の中に出して....。」

「〜〜〜〜〜〜!!」


急いでつながっているのを抜いて外出ししようとしても魚体の下半身か
ら抜けない。私は頭の中が白くなり、思わず白い液体を妻の体の中には
じけさせてしまった。


「あ.....。」


止めどもなくあふれ出す白い液体。ようやく妻の体から抜いてもそこか
らは未だに漏れ出している。彼女の魚の下半身を白い液体ですっかり汚
してしまって、彼女自身も気を失ったかのように親指を口に当てて満足
そうに眠ってしまっている。


(続く)
103変身マニア:2006/03/22(水) 15:42:05 ID:Ha1ps9NX
「誰、そこにいるのは!」


聞き覚えのある声だった。それは間違いなく、私の上司の女性の課長さん
だった。倉庫奥で妻とエッチしていたので気付くのが遅れた。倉庫は広い
ので課長が奥にたどり着くには時間がある。私は服を着ると側にあった小
麦粉袋の一つを破り、人魚になってしまった妻の体の上にぶちまけた。そ
して少し慌てている妻にそっと声を掛けた。


「静かに、小麦粉袋を顔に乗せてじっとしていて。」


女性の課長さんが私の側までたどり着いた。


「何やっているのよ、遊んでいる暇はないでしょ? ここで一体何をして
いたの?」

「いやあ実は、発注しておいた膨張剤が足りないんじゃないかと思って倉
庫に慌てて調べに来ていたんですが、それがうっかり小麦粉袋を引っ掛け
て落としてしまって。」

「そんな発注くらい他の人に任せておけばいいのよ。今のあなたの仕事は
総務の仕事で、製造の仕事じゃないのよ。総務に引き上げてあげたのに何
やっているのよ?」

「はい、すいません....。」

「それから、こんなところにいること自体が怪しいわ。私の勘だけど..
何かやましいことしていない? 女を作ったとか...ってあなたは妻持
ちでしたわね。」

「はあ....。」

「あ〜あ、残念だわ。ともかく、この小麦粉の始末しといてね。これも会
社の持ち物なんだからもったいないことしないでよ。」

「はい。」


女性の課長さんはそう言うと残念そうな笑みを残して倉庫を後にした。

魚のから揚げみたいに小麦粉まみれになったうちの妻は袋を持ち上げてち
ょっと恨めしそうに眺めていた。
104変身マニア:2006/03/22(水) 15:43:19 ID:Ha1ps9NX
「けほ。何、今の話....。」

「何って、今のが現在の私の上司。」

「へえ〜、美人じゃない。変身するような私より魅力的?」

「そんなことないよ。私なんか妻に取り込まれて一心同体じゃない? 隠
し事だって出来ないし。」

「そうよね。ねずみに変身してあなたの部屋もくまなく調べてるし、隠し
事なんて出来ないわよね〜。」


魚のフライのようになった妻は小麦粉だらけで袋に乗っかって笑っていた。


「それじゃ、私は帰るから。この小麦粉シャワーで洗い落とさなきゃ。」


体をけいれんさせながら人魚から再び人間に戻っていく彼女。そして、今
度は小麦粉だらけのまま腕や体に羽毛を生じさせながら言った。


「そうそう、私今日妊娠の危険日なの。」

「ええ〜〜〜!!」

「だって、もう一人子供が欲しくて欲しくて....。」

「どうするんだよ〜。」

「大丈夫よ、その時はその時。私が変身してお金儲けしたっていいんだか
ら、ものは考えようよ。でもぎりぎりまで働いてね、お父様。それじゃ、
鳥さんになって帰るから。」

「ちょっと待ってよ!」


彼女は私の言うことを無視して体をけいれんさせながら小さくなっていき
腕が鳥の羽の形に反転して羽毛が生え揃い、口にはくちばしが生じてすっ
かりインコに変身してしまった。そして壁にある隙間を見つけて私にウイ
ンクをすると綺麗な一声を残して外へと飛び去ってしまった。後に残った
のはぶちまけられた小麦粉袋と小麦粉まみれの私一人だった。

そう、私の妻は今さらながらであるが動物に自由に変身することが出来る
女性だったのである。そしてまた新たに子供が生まれて、ボーナスの夜に
は玄関に一人の女性の人魚と四人の子供の人魚が待ちわびたように待って
いるようになってしまった。


(終わり)
105変身マニア:2006/03/23(木) 12:46:04 ID:32TU+Nls
私のことはどうでもいいから、何か書いてよ。
106変身マニア:2006/03/24(金) 23:17:21 ID:GD8mmMoc
hosyu
107名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 02:59:10 ID:1CWUI7xF
.
108名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 02:15:57 ID:jKf4VqPF
(´・ω・`)
109名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 16:35:05 ID:usy9cpKC
(´・ω・`)
110名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 17:38:25 ID:qxrtenLj
(´・ω・`)
111名無しさん@ピンキー:2006/03/27(月) 21:33:30 ID:HO0bwbGU
(´・ω・`) 我々はスタンド攻撃を受けている
112名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 18:21:30 ID:koNKdlEZ
(´・ω・`)   
113名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 19:10:13 ID:afdk78aE
(´・ω・`)
114名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 21:23:32 ID:9QxQ4dqw
>>96
オレもすごく興奮する
成虫になってどうなるかすごくwktkしてる
115名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 23:50:31 ID:QbVHT1pn
ある朝私はチーター人間になっていた。
胸から腹にかけて
白い毛に包まれた四対の乳房が揺れ、
背中にはおそらく
黒い点の打たれた黄色い毛が生えていた。
尾がうごめき耳がゆれ
筋肉の強ばりが(特に太ももから尻にかけて)
体の新鮮さを語っていた。
116いにしえの・・・:2006/03/30(木) 00:58:34 ID:57d4llOK
雅やかな貴族文化が花開く裏で、
夜の闇の中、物の怪が跋扈していたそんな時代のお話です。

===========================================================
都の町外れ、あばら家の崩れかけた壁から差し込む月明かりの下
じっと自分の手を見つめる1人の男がいた。
その男が立つ、床も腐りかけたような部屋とは対照的に
男は綺麗な身なりをしていた。
身につけている直衣は身分の高い貴族の平服であり、
およそこのような場所にはそぐわない。
足元を見ると何やら怪しい呪具やらおどろおどろしい札やらが散らばっている。

そんな中、男はじっと立ち自分の手を見つめたいた。
「くだらぬ野心を抱かなければ長生き出来たものを。」
そう一言つぶやくと男はあばら家を後にした。

後には夜の闇が残るだけ・・・・
117いにしえの・・・:2006/03/30(木) 01:16:29 ID:57d4llOK
男の名は源雅成。
先代天皇の皇子であったが、母の後ろ盾が弱く源氏の姓を賜り
臣下となっている。
容姿に優れ、また詩歌、雅楽ことに琵琶の演奏の名手であり
貴族の姫君からは某小説の主人公、光源氏のごとく憧れのまなざしで見られていた。
いわゆるモテモテ君である。
そんな男が品行方正な性格に育つはずもなく、
光の君に負けないほど恋多き男であった。
118いにしえの・・・:2006/03/30(木) 01:37:47 ID:57d4llOK
それも今となっては昔の話。
詳しい成り行きは割愛するが、ある呪詛の失敗により
彼の魂は物の怪により喰われてしまったのである。
「人を呪わば穴二つ。まぁ、折角の身体だ。
しばらくの間はこちらの世界を楽しませてもらうとするか。」
御簾の間から自分に注がれる女たちの視線を感じながら
元雅成だったものはそう小さく呟いたのだった。
119変身マニア:2006/03/30(木) 18:05:13 ID:/trC0tkL
私達のような、動物に自由に変身出来る人間はこの世の中ではあまり
自己主張することが出来ません。それはそうでしょう、気持ち悪がら
れたり珍しがられたり、あるいは羨望や憎しみを感じる人もいるでし
ょう。でも、私達だってこっそり自己主張はしているのです。こっそ
り、でも時には大胆に、人々の前で変身して自己主張しているのです。


私の一日は、変身した状態から始まっています。まず朝の寝起きから
人魚に変身した状態で目覚めます。寝ている時は一切動けないから人
魚になった状態でいるのです。海の中を泳ぐ夢を見たいと思っている
んだけど、逆に学校の廊下で這いずって追いかけられている夢を見て
しまうこともあります。でも朝起きた時に下半身の紅い鱗に日の光が
散乱してとっても綺麗なんですよ。

そうしてそのままでは動けないから気持ちよく体をけいれんさせなが
ら人間に戻ります。鱗が消えていってひれが小さくなって足になり、
下半身の真ん中に切れ込みが入って人間の脚に変わっていくんです。
朝食を済ませると出掛けるほんの少しの間は猫少女に変身して尻尾を
揺らしながら仕度をしています。全身をうっすら猫毛で包み、お尻か
ら尻尾が生えるイメージをするとむくむく気持ち良く尻尾が生えてき
て、耳は頭の上に少し大きく可愛らしく生えるようにして姿見を見な
がら仕度をします。出掛ける直前には残念だけど猫毛も尻尾も体に仕
舞い込んで、耳も元通りの形と位置に戻して学校に出掛けます。


(続く)
120名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 21:32:21 ID:Uzw+/6Pu
変態マニアうざい、さっさと仕事探せ!引篭もりニート中年
121名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 23:53:33 ID:iZYwksJ7
ところで幼虫の人マダァー?
122名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 03:13:22 ID:uzdLp1Zw
>>119
ワンパターンの連発にしか見えず正直しつこい。
123変身マニア:2006/03/32(土) 04:27:42 ID:hAPIeliH
>>120
>>122

まあ何か書けや。ネタもない古事記。
124名無しさん@ピンキー:2006/03/32(土) 06:15:51 ID:dWgHcyb3
>>123
このソフト使って反論してるの ボクぅ?
ttp://www.vector.co.jp/soft/win95/personal/se235637.html

糞ネタばかりの引篭りパラサイトニートの変態マニア君
今日は職安休みかな?

125変身マニア:2006/03/32(土) 19:51:39 ID:hAPIeliH
このスレ糞まみれにするつもり?w

私の今までの態度見れば分かるでしょ? 雑魚はお静かに。w
126変身マニア:2006/03/32(土) 20:40:18 ID:hAPIeliH
      , イ)ィ -─ ──- 、ミヽ
      ノ /,.-‐'"´ `ヾj ii /  Λ
    ,イ// ^ヽj(二フ'"´ ̄`ヾ、ノイ{
   ノ/,/ミ三ニヲ´        ゙、ノi!
  {V /ミ三二,イ ,  /,   ,\  Yソ
  レ'/三二彡イ  .:ィこラ   ;:こラ  j{
  V;;;::. ;ヲヾ!V    ー '′ i ー ' ソ
   Vニミ( 入 、      r  j  ,′
   ヾミ、`ゝ  ` ー--‐'ゞニ<‐-イ
     ヽ ヽ     -''ニニ‐  /
        |  `、     ⌒  ,/
       |    >┻━┻'r‐'´
      ヽ_         |
         ヽ _ _ 」

  アプレカス [ Apurecus ]
  ( 2006 ? 没年不明 )
127名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 00:14:19 ID:yfegFRkO
お前はコテ外してsage徹底して、潜伏すべき。
このままだと荒れは必至だからな。
128名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 16:39:03 ID:9YLhCHGe
(´・ω・`)もう荒れてるがな。
129変身マニア:2006/04/02(日) 18:06:03 ID:fEkl5uMn
>>127
あなたに指示されるたくありません
私に構わなければ荒れないでしょう?
文句を言う前になにかネタ無いの?

これだから無能の一般人は。
130変身マニア:2006/04/02(日) 18:10:40 ID:fEkl5uMn
                _, --、
             /'´
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.〃---- , -‐  ̄  ̄:ニ - 、
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| |  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.!::.::.:::.:::|::|::::::!:/ニ/'ニ ' |/ ,ィ_l|/l'l'  =======
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|-‐,=ー-、_, -/ ::.::.:: / ::.::.:: / >ー' ´⌒ヽ::::::: !ヾ!. |! |:|
// ` > '´::.:::.:::.::: /::.::.::/           ヽ:ノ|:::::! |!!.l:!
ヽ:| /::: :::.:::.:::.::::/::::::/              V.|:::::|/:| |!
 / ::.::.::.::.::::;::/ :::, .'/  l:          V:::〃/ !
.':::.:::.:::.:::, /::/ :::/:::::|  |:    \      V:/ /
::.::.::, '/:::::/ :::/::.:::.::: }   ヽ     ヽ    ヽヾこ_,.-_─_ァ、
, '::/::://:::::/::.::.::/::|   `      ヽ    ヽ、`ヽニニく/ノ〉
::/::/::::/:::::/::.::/:/::: ! |        ヽ     ヽヽ-'/イ/レ′
'::/: , .':::l:::::::!/:::〃::::::| l            入     :|/  〉
/::: / ::.::: !::::::|::::://::::::::/ ,            ∧、丶、 .:::〃 /
::: /!::.::.:::/ヽ::.!:::: ' :::/ :/         /  ヽヽミ>'´  /|
::::{ |::.::.:::!  >` ' ´              /    `ー┬' /j |
::::| ヽ ::::l_∠ ._/            :  /       |「 ノノ
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  /    l           ヽ/、:ヾ`、 、
  |\   l::     , -‐'  ̄ ‐iく:ヽ、 、:\`ヾ、、        ___
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131名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 18:56:00 ID:fkPZXoIg
どうせ騙りだろ。
本物は以後トリップ付けるように。
132名無しさん@ピンキー:2006/04/02(日) 22:38:54 ID:WOfq+b61
成虫読みたい。(´・ω・`)
133名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 01:12:43 ID:UBNyeTR0
>>132
同じく(´・ω・`)
134名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 02:56:07 ID:x65+rcJv
>>130
これがクリーチャー量産母体になるべくクリーチャー化するんですね。
135変身マニア:2006/04/03(月) 04:23:24 ID:ROAyPzaj
学校では、あまり変身した状態ではいられません。授業中机に向かっている
制服の中で肌の見えない部分だけを狐毛を生やしたり猫毛を生やしたり、お
尻から尻尾を目立たない程度に生やしたりする時はあるんだけれど、それで
も体を動かして見えそうだな〜と思う時は思わず体の中にしまってしまいま
す。唯一手軽に変身出来る場所といえばトイレの個室の中。友達とペチャペ
チャ喋りながらトイレに入るんだけど、個室に入りながら私一人だけ猫少女
や狐少女に変身しています。壁をよじ登って覗かれる心配はあるんですが、
体が動物に変身したがる欲求不満を解消するにはここしかないんです。

お昼休みは...本当は一人で勝手にクラスを抜け出して変身して出歩きた
い気持ちだけど、友達と昼食を共にするのが女子同士で仲良くしていくため
の秘訣で...。あ、でも時々いろいろ理由作って抜け出すことはありまし
たね。その時は学校の校舎の裏側、普段使われていない物置の中で動物に変
身することがありますね。服を着たまま体をけいれんさせて、とろけるよう
に小さくなって猫や犬やねずみや小鳥に変身しましたね。変身した後自分の
服がくしゃっと脱ぎ捨てられているのを見て背徳感に萌えますもん。物置を
抜け出して植え込みの茂みから友達を盗み見たり独り言を聞いたりして、意
外な情報を聞き出したりすることが出来るんです。それらの遊びが終わると
また物置に戻って一旦獣のまま人間大の姿に戻り、下着とか制服とか着て人
間の姿に戻ります。ぴくぴく体をけいれんさせながら猫少女や犬少女の姿に
半分戻り、服を着てようやく人間に戻る...たまにしか出来ないけれど、
スリルがあって面白いですね。


(続く)
136名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 08:19:06 ID:LuMX68fl
あぼーんて便利ですね
137名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 10:20:56 ID:g5K3/u/E
信じ込んでいる奴は周りが見えないんだね。

可哀想だね。

アーッア、アーイ、エブリバディ パッション!
138変身マニア:2006/04/04(火) 04:31:58 ID:0OtnusE0
私にとって一番変身を楽しむ時間...それはやっぱり放課後です。どこか
のクラブに属したいと思ったことはあったけれど、まさか変身クラブなんて
ある訳がないし...。という訳で、帰宅部なんだけど部員一人の変身クラ
ブは一日の終了チャイムから始まるのです。たまに友達との付き合いでお店
に寄ったり相談に乗ったりする時以外は、一人で近くの公園の茂みに入って
いきます。

市の公共施設が並んでいる大きな公園の一角、建物の間と間が森の茂みに隠
れているお気に入りの場所に到着すると私は制服から下着から脱ぎ捨て、鞄
や靴と共にきちんと整理して植え込みの下に隠します。基本は全裸でしょ。
私は一糸まとわぬ姿で両手を横に上げたポーズを取って変身したいと願いま
す。ぴくぴく快感と共に変化を始め全身に鳥の羽毛が生じ始め、足は鱗が生
えてきて爪が長くなり、鳥のようにぎゅっと引き締まった形に変化していき
ます。腕も羽毛が翼の形に変化し、私の口の歯がくちばしに変化し始めて鳥
らしい姿に変化していきます。まだ人間の大きさです。というか、一旦人間
の大きさで動物に変身した喜びを楽しみ、それから完全に動物に変身して行
動を起こすというパターンが多いですね。森の建物の隅で、人間大の可愛ら
しい(?)インコ少女が翼を広げたり身づくろいのまねごとをして楽しんで
いるのです。もちろん飛べますけれど、このままだともっと翼を大きく変身
させないとダメだし返って目立つので、私は仕方なく普通のインコサイズへ
と小さくなっていきます。

地面を飛び立つと見ていたものがぐんぐん小さくなり、建物も全体が見渡せ
るようになります。ひとしきり公園や市の施設の上空をぐるぐる飛び回ると
駅の方面へ飛んでいき、電線に止まって乗降客や買い物客の様子をゆっくり
眺めます。それが終わるとまた公園の方に戻ってきて文化センターの屋上に
降り立つと、ぴくぴく体をけいれんさせながら元の女の子の姿に戻っていき
ます。当然、最近の建物は屋上には誰も立ち入らせてくれません。裸の少女
が歩いたり寝そべったりするなんて普通はありえないでしょう。私は自分の
裸を空に誇示するかのように仰向けに寝そべり、空の雲をゆっくり眺めます。
普通の人がたどり着けないところで一人の少女が裸でいる...。変身の楽
しみ方にはこういう方法もあるんです。裸だからちょっと寒いので狐毛を生
やし、狐少女に変身して尻尾のふさふさ感を味わいながらその日の夕方まで
過ごしたのでした。


(続く)
139変身マニア:2006/04/04(火) 04:53:31 ID:0OtnusE0
影武者がいるらしい。私はまったり変身を楽しみたいです。w
140名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 05:25:07 ID:K07uSoqP
どうしてもコテでいたいなら紛らわしいのでトリップ付けるとか
141変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/04/04(火) 05:45:37 ID:0OtnusE0
こうでしょうか?
142変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/04/04(火) 05:46:45 ID:0OtnusE0
ああ、初めて使いました。ありがとうございます。;;;;
143変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/04/05(水) 16:54:31 ID:lUERclEW
綺麗な夕焼けを建物の屋上で見た後は再びインコになって地面に降り立ち、
人間に戻って隠してあった下着や制服を着て鞄を持って何食わぬ顔で自宅
に戻ります。家に帰れば学校の宿題もあるし、友達と携帯でのお話もした
いです。私は夕食をそそくさと済ませるとゆったりとした服に着替え、ま
ず友達との会話に花を咲かせます。もちろん、普通に携帯で会話する訳が
ありません。私の携帯を持つ手は白い産毛のような綺麗な毛で覆われ、全
身白い毛で覆われたウサギの少女に変身して会話しています。もちろん耳
は頭の方に移動していて長い耳をぴくぴく動かしながら携帯からの友達の
声を聞き取り、会話を楽しんでいます。どちらかと言うと携帯越しに聞こ
えるわずかな音から友達が今何をやりながら会話しているのか想像して楽
しむ方が大きいですね。人間の耳では聞き取れなくても電話の先の夕食は
天ぷらとか、向こうで何のテレビを見ているのかとか、微細な音も聞き逃
すことがないんです。だから友達の興味の傾向とか後で生かせたりする場
合もあるんですね。もっと知りたいときは...ねずみに変身して、いや
ハムスターに変身して直接お友達の家に潜り込んだりすることも出来ます
が。

さて私は単に思った動物に変身出来る訳ではなくて、大まかな動物にはそ
のまま願えば変身出来るんですけれど、特殊な動物、例えば動物園にいる
ような珍獣などは変身の練習をしないとうまく変身することが出来ないん
です。私の部屋には両親にせがんで全身の姿見が壁に取り付けてあって、
動物や獣人に変身した時の調子がどうかチェック出来るようにしてありま
す。今日のテーマは「スカンク」。なぜスカンクかと言うと、例えば追い
詰められて変身だけでは逃げ切れなくなった時にスカンクに変身すれば臭
い臭いで相手をたじろかせられるでしょ。でもそこは私、エロティックな
スカンク少女に変身して魅了しながら臭いをお見舞いしようかと思ってい
るんです。この間なんか猫に変身していて夕方の散歩途中の犬に追い詰め
られたものだから思わずトラに変身してしまって、散歩の男性を驚かせて
慌てて逃げられてしまって...。それからしばらくトラが出るとかで大
騒ぎになったことが...。でも結局同じかな。スカンクに変身したらし
たで、きっと騒ぎになるんだろうな〜。どうせ夕方や夜限定にするつもり
だし、ま、いいか。

ウサギ少女から一旦人間の姿に戻り、ゆるい服を脱いで下着も脱いでしま
うと大きな姿見の前で両手を横に上げた変身前のポーズを取る。じゅうた
んの上には動物図鑑のスカンクのページが開かれていて、そのイメージに
従い体を変身させたいと心に願う。すると体はぴくぴくと変身の歌を歌い
始め、全身に黒い毛が生えてくる。お尻からもぐっぐっと快感と共に尻尾
が生え始め、ふさふさの黒い毛が生えてくる。背中には太い一筋の白い毛
が生えてきてスカンクらしくなってきた。耳は小さいながらも丸く可愛ら
しく整え、指や足も動物の肉球を生じさせながらペンが持てる程度の形は
残しておく。もうすっかり鏡の前にいるのはスカンク少女。そう、腰つき
が人間の女の子のなまめかしいスカンク少女が腰にポーズを取って下手な
ウィンクをしている。胸は...本当なら複乳なんだろうけれど、やっぱ
り人間のおっぱいの方がいい。スカンクと言えば臭い「おなら」なんだけ
ど、ここは私の部屋。今度河川敷で闇に包まれた中で野犬相手に試してみ
よっと。ひとしきりスカンク少女を試した後は完全獣化。本物のスカンク
のサイズに小さくなりスカンクらしい行動が出来るように練習。そう、動
物に変身するには練習が必要なのです。


(続く)
144 ◆kLmjwHDUPs :2006/04/05(水) 21:33:11 ID:xvoWBRs6

145名無しさん@ピンキー:2006/04/05(水) 22:05:59 ID:OszdNIro
>143
質問なんですが
話の起承転結で言う所の起の部分が延々と繰り返されてるように
自分は感じるんですが今後何か話が展開する予定はあるんでしょうか。
146変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/04/06(木) 04:29:57 ID:8REAV6eA
>>145
どうも、お世話になります。
起の部分が繰り返されているというお話ですが、小説を趣味で書く
関係上断片になりやすく、自分の萌えを維持するためにそうなって
しまっている可能性はあります。今回のはまあ変身少女の一日を書
いているだけなので大した意味合いはありませんが。

これを書き切った後の展開は、実はネタがありまして未完成ながら
シリーズ化するようなものがあります。予行としての小説が今回の
これらの内容だと思っていますが...。

あんまりすぐ期待しないで欲しいですが。;;;
147変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/04/06(木) 16:43:15 ID:8REAV6eA
スカンク少女の姿に戻って(?)宿題を済ませ、人間の姿に戻って服を着た
後は居間で両親とテレビを見たり一緒にいる時間を作って、そして寝る挨拶
をした後はいよいよ一番好きなものに変身する時間が来るのです。

それは...やっぱり人魚姫。自分が動物に変身出来ることを発見する前は
人魚姫になれたらいいな〜って思っていたけれど、本当に自由に変身出来る
ようになってしまった今は毎夜これに変身しなければ気が済まないくらいの
めり込んでしまうようになってしまったのです。まずは裸に...っていつ
でも裸になっている気が...。それは置いておいて、白いベッドの上に横
たわり、枕のある所で上半身を起こすと私は両脚を揃えて人魚になりたいと
願うのです。すると体はぴくぴく変身の歌を歌い始め、次第に両脚がくっつ
いていって隙間が分からなくなっていきます。変身するスピードを極端に落
とし、じわり、じわりと下半身が魚の形へと丸みを帯びながら整っていくよ
うにします。両足はくっついて次第に平たくなり、魚のひれへと形を整えて
いきます。ここで変身の寸止め。肌色の魚の下半身がなまめかしくて不思議
な感じがするんです。変身も一気にすれば快感も一気に来てあっという間に
終わってしまうのですが、ちょっとずつ、飴玉でもなめるかのように変身す
る方が長く楽しめてどちらかというと好きなんですね。昨日は紅色だったか
ら今日は青色...マリンブルーにしようかな? そう願うと体の皮膚の表
面から真っ青の細かくて綺麗な鱗が染み出してきて徐々に下半身を青色に染
め上げていきます。腰の辺りでV字型にグラデーションになるようにして人
間の上半身との境を自然に保ちます。V字型は私の趣味。この方がエッチっ
ぽくていいと思うから。

すっかりマリンブルーの人魚姫に変身してしまった私の体。髪の毛も長めに
伸ばして、乳房の上にさらさらっと垂れ流してみせる。あえて金髪にはせず、
黒髪の美しいマリンブルーの人魚姫になってしまったのでした。私は引き出
しからお小遣いで買った安い真珠のネックレスやガラス玉の宝石のネックレ
スを首に掛けたり腰に巻いたりして本当の人魚姫のような演出をしてみせる
のです。そして、気分が盛り上がってくると次第に私の片方の手は乳房の先
に、もう片方の手は下の.....それ以上は言えない。変身が楽しくてこ
んなことしているんだけど、本当は普通の男の子と親密になりたいという気
持ちの方が大きくなってきて....。どうやったらこんな私を受け入れて
くれるのか、それが今の大きな悩み。人魚の姿のまま告白されてみたい。鱗
も細かくして刺さりにくくしたり、魚独特の尖った部分を丸めたり引っ込め
たりして工夫しています。いつか人魚の姿のまま愛してくれる人が現れて欲
しい...。自分を愛撫するたびに魚のひれが揺れて、最後には絶頂に達し
て気絶しそうになります。私はもうろうとする意識の中でリモコンで天井の
明かりを消し、眠りに落ちていってしまうのです。

変身....それは楽しいことだけれど、寂しいことなのかも。でも私は、
いつか誰かの役に立ったり愛されたりしたい...私はいつもそう願ってい
るのです。


(終わり)
148変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/04/06(木) 16:47:19 ID:8REAV6eA
イメージお借りします。;;;

ttp://www.nekobox.org/images/shiokaze-rocks.jpg
149名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 00:24:50 ID:oHTRHgOG
予行版乙
150名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 02:27:06 ID:4dY7lvVl
保守
151名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 07:14:49 ID:Wx577wLy
保守
152名無しさん@ピンキー:2006/04/13(木) 02:15:00 ID:PnvElQ2q
153名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 04:32:08 ID:0mMmUDwm
住人がッ!スタンド攻撃をッ!受けているッ!
154名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 13:34:10 ID:bVkr9ZpF
そして時はまた動き出す
155変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/04/16(日) 04:50:48 ID:F8hJZPD2
新作をちょっとずつアップします。昔から考えていたネタです。
代わり映えしませんが。ネタ的に安定していませんので後で改変
することがあります。ご了承下さい。
156変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/04/16(日) 04:51:49 ID:F8hJZPD2
「メタモル」


ここはとある研究所。片田舎の海のあるところより小高い森林に囲まれた中
に一軒だけ近代的な建物が建っている。研究所兼住居のちょっとおしゃれな
建物の中で、一人の女性が一糸まとわぬ姿で床に手を着き這いつくばる格好
で快感にあえいでいた。


「あ...あ....」


傍らには白衣が無造作に床に落ち、ぴくぴく気持ち良さそうに体をけいれん
させていると次第に両脚がくっついていって隙間がなくなっていき、足先も
くっついてしまって平たく広がって魚のひれの形に広がっていき、下半身全
体が少し大きく丸みを帯びていく。そして皮膚の表面から紅くて細かい綺麗
な鱗が生えてきて、下半身全体を紅く染め上げていく....。そして彼女
の体の変化は止まった。

彼女は床に座り直し、乳房に長い黒髪を垂らしながら人魚になったばかりの
自分の体を見つめる。そして、こうつぶやくのだった。


「完成。それじゃ...誰を変身させようかしら?」
157変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/04/17(月) 04:02:08 ID:tv7xTLPF
私は今日も何気ない学校生活を終えて海がすぐ側に見える無人駅のホームに
立って、海に沈む夕日を眺めていた。私の名前は彩井奈留。高校1年生。眼
鏡掛けていて特に取り柄のない女子高生。あ、でもちょっとは顔とスタイル
には自信はあるかな。私は昔から内気で友達が出来ず、いつも一人でいるこ
とが多かった。大きな町が近いのにわざわざ田舎の高校を選んだのもそんな
性格が災いしたのかも。こうして無人駅より綺麗な夕日の落ちる風景を楽し
むのが好きで、こうして帰宅部をやっていたりする。

ホームには珍しく待ち合わせの客がいる。っていうか、少し背の高い黒い服
を着た怪しい人。視線は私の方を向いているみたい。あっちの方向に向いて
いるようだけれど、着かず離れずの距離を保っている。そして私が大きな町
方面に行くのとは反対の田舎の方に行く列車が来ると、その男の人はすっと
私のところに来て茶色の紙袋を足元に置いた。


「これ、あげますよ。」

「え....ちょ、ちょっと!」


怪しい男の人はぎりぎりで列車に乗り込み、田舎の方面に列車ごと立ち去っ
てしまった。私は仕方なく体に持たれ掛けられている紙袋を拾い上げて中身
を確かめてみると、何とそこに入っていたのはレオタードだった。


「な...ちょっと何よこれ....。」


夕日のせいかもしれないけれど、濃いピンク色というか紅に近い半袖のレオ
タードが透明なビニール袋に丁寧にたたんで入っていて、飾りも何も付いて
いないけれど布地がきらきら光って美しい宝石のようだった。私は周囲を見
回したけれど誰もいなくて、捨てようかとも思ったけれど放置しておくのは
恥ずかしいと思ってとりあえず手提げかばんの中にしまった。そして町方面
の列車が着たので急いで乗り込んで自宅へと帰っていってしまった。

(続く)
158変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/04/17(月) 04:04:05 ID:tv7xTLPF
家に到着して自分の部屋に戻ると、改めて茶色い紙袋の中にあった濃ピンク
のレオタードを眺めてみた。レオタードというと私には何となくやらしいイ
メージがあって、いくら体操や新体操の競技で着るからといってあまり良い
イメージではなかった。でも....こうして目の前にしてみると、一度着
てみたいという感覚になってきてしまう。あの妖精のような体を舞い上がら
せて踊る体操選手に近い感覚になれるのかな...と興味が湧いてきて、私
は決心して透明なビニール袋を開けてみることにした。すると畳んであった
レオタードの間から白紙の紙が落ち、拾い上げてみると突然文字が浮き出し
てきてしまったのだった。慌てて地面に落とすと文字は消え、私が再び手に
するとまた文字が浮き出してきた。文面は以下のようなものだった。


彩井奈留様、この紙は特殊加工がしてあってあなたが持った時だけ文字が浮
き出すようになっています。ご安心ください。このレオタードは「あにゅま
る」という名前のレオタードです。これを着るといろいろな動物、獣人に自
分の意志で自由に変身することが出来るようになります。体の一部分の変身
も可能です。一度あなたが着用するとあなたをご主人と認識し、以後あなた
の持ち物として多大な助けを与えてくれることでしょう。この変身レオター
ドの取り扱いの注意点としては人前では変身しない、これだけです。特に機
能の制限はありませんが他の人に秘密をばらさないように注意して下さい。
それではあなたの変身ライフを楽しんで下さい。


何これ...。何で私の名前を知っているんだろう。それにこの「あにゅま
る」という変身レオタードって...本当に変身出来るのかしらと疑いを持
ってしまうけれど、そのレオタードを眺めているうちに自分のプロポーショ
ンを確かめてみたいというのもあって、自然に学校の制服を脱ぎだし、Tシ
ャツやブラやショーツを脱いで一糸まとわぬ姿になってしまうと、その変身
レオタードを脚から袖を通し、体に密着させて腕も通してすっかり着込んで
しまった。部屋にある姿見で自分の体を眺めてみると、私の体ってこんなに
プロポーションが良かったのかと思うくらい引き締まっている。胸やお尻も
出るところは出ていて思わずエッチさを感じてしまう。濃いピンク色の半袖
レオタードに包まれた私の体は、まさに妖精のような美しさを醸し出してい
た。

(続く)
159変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/04/17(月) 04:30:53 ID:tv7xTLPF
「綺麗...。」


そううっとり姿見の前で自分の体を眺めていると、急に体が熱くなってきて
皮膚にレオタードがのめり込んでくるような感覚にとらわれた。見るとレオ
タードの表面がだんだん私自身の皮膚の表面になり、濃いピンク色に染まっ
た私自身の体になってしまうと、濃いピンク色も消えていってまさに一糸ま
とわぬ姿へと変わってしまった。


「ちょっと何よ、このレオタード二度と脱げないの?」


そう思うとすぐに私の裸の皮膚が濃いピンク色に染まり出し、レオタードの
縁取りを取ると元の着ている形へと戻っていってすっかり濃いピンク色のレ
オタード姿へと戻ってしまった。試しに脱いでみても何の変哲もない、ただ
の普通のレオタード。でも...ますます興味が深まってきてしまった。私
は再びレオタードを着てしまうと、姿見の前で心に強く思ってみた。


「変身したい。何か素敵なものに....変身したい。」


すると今度は濃いレオタードが体の中に溶け込んでしまうと、ぴくぴく体が
けいれんし出して体を締め付けるような気持ち良い快感に包まれてしまった。
そのうち立っていられなくなって姿見の前で寝転んでしまうと、一糸まとわ
ぬ私の体は両脚がくっついていって隙間がなくなっていき、足先もくっつい
てしまって平たく広がり、魚のひれの形に広がっていく。


「何、何に変身するの....?」

(続く)
160変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/04/17(月) 04:32:24 ID:tv7xTLPF
見てる間にも体はぴくぴくけいれんしながら体を快感に包み込み、下半身は
丸みを帯びて少し大きくなり、皮膚の表面から紅くて細かい鱗が生えてきて
下半身全体を紅く染め上げていく。髪の毛も肩のところより腰のところまで
長くなり、乳房の上に垂れ下がっていく。そして体の変化は止まった。


「人魚...? 私、人魚になってしまったの? 何も考えずに変身したの
に....。」


姿見の前に横たわっているのは一人の人魚だった。確かに顔は私。体のプロ
ポーションは私だけど、魚になってしまった下半身に腰まで伸びた長い髪。
本当にこれが私なのか、こんなに綺麗な体だったのか目を疑ってしまったけ
れど、そのうち下半身をあちこちに動かしてみたり、寝そべってみたり、タ
ンスから黄色いドレスを引き出して着込んで魚の尻尾だけ出してポーズを取
ってみたり、楽しむようになってしまった。


「素敵...素敵だわ! 他のものにも変身出来るのかしら? 変身したい。
もっと変身してみたい....。」

(続く)
161変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/04/18(火) 04:54:38 ID:LxZtdXER
まずは人魚より人間に戻りたいと願う。するとぴくぴく体は気持ち良く変身
の歌を歌い出し、紅くて細かい綺麗な鱗は体の中に消えていき、魚のひれが
縮んでいって丸みを帯びていた下半身も一回り小さくなり、下半身の真ん中
に切れ込みが入って両脚へと変化を遂げていく。髪の毛も短くなり体が元に
戻るとまるで何事もなかったかのように私の裸の姿が姿見の前に横たわって
いる。私は立ち上がって裸のまま思案し、美味しい料理のメニューを選ぶか
のような感覚で変身したいものを次々と思い付いた。


「うん、まずは猫。猫よ。ううん〜猫の女の子に変身したい。」


両腕を横に上げてエッチっぽくポーズを取った私の裸の体はぴくぴく気持ち
良い変身の歌を歌い出すと体全体から猫毛が生え出し、お尻からぐっぐっと
尻尾がぐんぐん生え出し、耳も大きくなりながら頭の方へと移動し始めると
口元も猫らしい少し前に飛び出した可愛らしい口元に変化していく。両手両
足も肉球を形成しながら両手はペンの持てる状態を維持し、爪の出し入れも
出来るようになってしまった。そしてすっかり茶トラの可愛い猫の女の子に
変身し終わってしまった。


「ううん〜猫〜。ネコよ〜。尻尾がこんなに自由に動く〜。」


姿見に映る私の猫少女姿は人間の髪の毛の中から可愛らしい大きな耳をちょ
こんと突き出し、全身を猫毛に覆われ女の子のエッチな体のラインを維持し
ながら尻尾が元気に動いている。猫のひげが生えている顔なんて初めて。私
はエッチっぽそうなポーズを取り、尻尾を両手で持ってわざとぐいぐい尻尾
を動かしてみたり、絨毯の上に仰向けに寝そべって猫毛に包まれた乳房を下
から持ち上げてみたりする。乳輪を残して猫毛に包まれた私の乳房は気持ち
良く揺れるのだった。

(続く)
162変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/04/18(火) 04:55:39 ID:LxZtdXER
「今度は本物の猫に変身したい。変身〜!」


すると体はすぐにぴくぴく気持ち良い変身の歌を歌い出し、体はぐっぐっと
小さくなっていってそのうち立っていられなくなり、脚は猫のようなバネの
ある形にびくんと反転して形を変え、すっかり本物の猫の姿に変身してしま
った。目はぎょろんと猫らしい瞳に変わっているけれど顔全体は元の私の顔
の雰囲気を残し、髪の毛らしいイメージを望んでいたので頭にも普通の猫よ
りはふさっとした毛が生えていていかにも私らしい猫の顔立ちとなっていた。
ニャーと鳴いてみたり、尻尾をふりふりしてみたり、口で体を舐めて毛づく
ろいの真似事をしてみたり、猫になった感覚を姿見の前で楽しんだ。

その後も一旦人間の姿に気持ち良く戻り、白い犬少女になってご主人様にか
しずく姿で白い尻尾を振ってみたり、本物の白い犬になって部屋の中を犬ら
しく歩き回れるように工夫したり、また人間に戻って今度は人間の大きさの
鳥のインコ少女に変身して大きく翼を広げたり、本物のインコの姿になって
部屋を飛び回ったりした。

ひとしきり私の体で変身を楽しむと少し疲れた感じがして、ふと足元に目を
やると何か金属のようなものが落ちていた。歯の詰め物が落ちていた。試し
に口の中を姿見で見てみると虫歯だったところがすっかりなくなってしまっ
ていた。そして気付いたことに、私の目は眼鏡を掛けなくてもよく見えるよ
うに直ってしまっていたのだった。


「うそ....。これから眼鏡掛けられないけれど、度の入ってない眼鏡で
も掛けてごまかそうかしら?」


一糸まとわぬ姿の私。その体に濃いピンク色のレオタードを浮かび上がらせ
る。脱げないように、脱がされないようにイメージしてみると表面はレオタ
ードの肌触りを維持しながら手も隙間に入らないようになった。もう脱ぎた
くない。このまま体の中にレオタードを溶け込ませて明日学校に行ってみた
いと思う私だった。

(続く)
163『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/04/18(火) 06:43:39 ID:jG8b5GZr
「この四ヶ月、君からは実に様々な感情を味わわせてもらえた」
死にたい、死にたい、死にたい。
「糞尿を喰らうことへの羞恥と自責。自己憐憫。私に対する恐怖。かと思えば現在の
生活に慣れていくことへの不安。魔道書を理解するたびに高まる希望と喜び。脱出計画を
練りながら湧き上がる興奮。そしてクライマックスの今日は、絶え間ない緊張、解放感、
じわじわとこみ上げる歓喜、そこから一転しての虚脱感と絶望……」
死にたいのに死ねない。今のわたしはただの蛆虫だから。崖から飛び降りることも舌を
噛み切ることもできはしない。
「正直、私は驚いているよ。君が我々の言語を大まかにとはいえ理解し、私が準備した
脱出のための手立てをきちんと活用して、ここまで自力で戻ってきたことにね。そんな
人間は今まで一人もいなかった」
ベルゼブブはそう言うと、わたしの前に膝をつく。
これまでよりも近い位置でわたしを見下ろし、続けた。
「今から君は蛹になり、五週間後に成虫になる。魔法も解けた今、本来なら君は私の元で
生きていく他ないのだが……」
悪魔の言葉に意識が遠くなる。そうだ、よりにもよって自分で魔法を解除してしまった
結果、わたしはもう人の姿に戻れない。
いや。戻る手段が完全になくなったわけじゃない。でもここで悪魔に追いつかれた以上、
そんなことは期待するだけ無駄なのだ。
「独力でここまで辿り着いた君に敬意を表し、君には多少選択の機会を与えようと思う」
そう言うと、悪魔はわたしの身体に指先を当てた。何かが身体の中で変化を起こすのを
肌で感じる。
「相変わらず君に分の悪い賭けであることは確実だ。だが、もしもその賭けに勝ち、
人に戻ることができたなら、私は君に自由を与えることを誓う」
その声を聞きながら、わたしは闇に吸い込まれるような深い眠りに落ちていった。
164『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/04/18(火) 06:44:49 ID:jG8b5GZr
目を覚ますと、全身が何かに拘束されていた。薄く硬い殻のようなものに。
わたしは不思議に身が軽くなっていて、全身を動かしたい気持ちでいっぱいだ。だから
その殻をこじ開けようと動き回って、頭の上の部分に脆くなっている箇所を見つけた。
強いて例えれば、樽の上蓋が外れるような感じ。
そこをこじ開けると、太陽の眩しい光がわたしを包んだ。
わたしは解放感に満たされて、全身を持ち上げて穴から日の光の下の地面に這い出る。
どうやらわたしは、今の今まで地面の下に埋もれるようになっていたらしい。吹く風の
心地好さに全身を震わせ、新鮮な空気に感謝する。
だが周囲を見渡そうとした次の瞬間、心のすべては混乱と恐怖で占められた。
無数の視界がわたしの脳に飛び込んでくる。異常に広い視野。細かく捉えられる周囲の
ものの動き。
そして、その視野の片隅に映った、わたし自身の姿。
人間ほどの大きさを持つ、醜い蠅。
「嫌っ! 嫌っっ!! 嫌ぁぁぁぁっっっ!!!」
人間のそれとは異なる形の口吻から、なぜかわたし本来の声が悲鳴となって迸った。
だがそれを落ち着いて考える余裕などない。手とも足ともつかない六本の肢をじたばたと
振り回し、次第に広がりつつある背中の羽をばたつかせ、わたしは変わり果てた自分の
姿のおぞましさにのた打ち回り続けた。
165『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/04/18(火) 06:46:04 ID:jG8b5GZr
もがくように羽を動かすうちに、わたしは宙に浮いていた。理性で意識するよりも早く、
この身体は飛ぶことを本能で悟っているということか。
だが人としての意識は蠅としての行動に適応などしていない。急に不安定になった態勢に
怯え、わたしは身近な木の幹にしがみつこうとしていた。
するとわたしの六本の肢は、その幹にぺたりと貼りついた。どうやら肢の先にはいくつも
吸盤があり、それによって垂直な場所にもこうして留まることができるようだ。
と、その吸盤がはがれそうになる。地面をのた打ち回るうちに土や砂にまみれたせいで、
吸着力が弱くなっているのだ。
わたしは思わず肢を摺り合わせた。それによって吸盤の汚れが落ち、吸いつく力が回復
できる。そうと気づいたわたしは四本の肢で身を支えながら、前の二本、真ん中の二本、
後ろの二本を、交互に摺り合わせていった。
しばらく無我夢中だったわたしは、やがてそんな自分の姿を客観的に意識した。
宙を飛び、木の幹に張りつき、肢を摺り合わせる。何と立派な蠅だろう。
本当のわたしは、フローランス・ベルは、人間なのに。
天才少女なんて呼ばれ、将来を嘱望された僧侶だったのに。長いきれいな髪やそれなりに
整った顔とスタイルで男性の好評を博し、気取らない笑顔で女性や子供さえ魅了した、
ちょっとしたアイドルだったのに。
今のわたしは、ただのおぞましい化け物蠅。
166『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/04/18(火) 06:46:45 ID:jG8b5GZr
「こんなの嫌……やだ……」
呟く声は、人間だった時から唯一変わらないソプラノ。だが浅ましい姿と声のギャップが
耐え難く感じられる。
しかし、その時わたしの思考に一筋の光明が射し込んだ。
都には、身体に回復不能の深刻な傷を負った人の魂を新たな器に受肉させ、健康な本来の
姿を取り戻させる秘儀がある。
蘇生呪文などと同様、功績なり教会上層部とのコネなりがなくては施してもらえない。
だが幼い頃から教会に勤めて、教区民の治癒や聖典の翻訳、さらにモンスターの討伐まで
こなしてきたわたしなら、たぶん期待できるはずだ。
もちろん、こんな姿で都に行ったところで殺されるに決まってる。しかし教会関係者や
仲間の冒険者の口利きがあれば、きっと……。
そして、最初に彼らと接触する上で、この声は大きな助けになるだろう。わたしのことを
フローランスだとわかってもらうのは、決して不可能じゃない。
悪魔の……ベルゼブブの言葉を思い出す。どうやらこの声は彼からの贈り物らしい。
彼の最後の言葉まで信用できるかは怪しいが、とにかく今は与えられたチャンスを最大限
活用するとしよう。わたしはそう心に決めた。
167名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 14:27:18 ID:R1CYYiHO
ベルゼブブ続きキター
成虫になってさくっと終わるかと思いきやまだ続きそうだね
GJ!続きが楽しみです
168名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 14:35:41 ID:qVusgpR4
ベルゼブブキテター
相変わらず素晴らしい描写です。

#あぶなく見落としそうだったのは内緒だ
169名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 14:40:34 ID:+J/SUfDP
おお、ベルゼブブ!!GJ!!
相変わらず面白い

諦めないで覗いて良かったー!!
170名無しさん@ピンキー:2006/04/18(火) 16:09:34 ID:Ub+kWVxf
超GJ!
171変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/04/18(火) 21:46:00 ID:LxZtdXER
負けるなよ!
172名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 00:22:54 ID:lhc+PHEL
久しぶりにキテル━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!

ウレスィ
173名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 01:14:35 ID:HdO4/Z7q
流石だな。
すばらしい。
174『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/04/20(木) 00:27:37 ID:ONlw0ytR
息絶えた羊が岩肌に横たわっている。群れからはぐれ、魔物が巣食うこんな地域まで
迷い込んでしまったのだろうか。
その死骸は真夏の日射しに炙られて腐敗臭を漂わせ、普通の大きさの蠅がびっしりと
群がっている。
腐肉の臭いに釣られて飛んできたわたしは、死骸に降り立つと腐って柔らかくなった肉に
口吻を突き立てて、貪るように腐汁を舐め取っていく。
化け物蠅として目覚めて三日。わたしがこれまで食べてきたのは果物の実だけだったが、
この羊の死骸は果実など比べものにならないほど美味だった。
爛れた屍肉を漁ることへの抵抗も、この悦楽が打ち消してくれる……そんな風に考え、
そう考えてしまった自分に愕然とする。
四六時中蠅として過ごす中、自分が人の感覚を失いそうになっていくのを感じる。早く
街に降りていき、仲間と接触しなければならないのに。
けれど……今のこのわたしを、みんなはわたしだと認めて助けてくれるだろうか?
それを考え出すと怖くなる。
魔法で姿を変えられるという話は、珍しいけれどないわけじゃない。でもたいていは、
猫や犬や馬などの獣または鳥といったところ。酷い場合でも蛙が関の山。
虫に……それも、糞尿や屍肉にたかる蠅に……変えられたわたしは、どんな風に扱われる
のだろう。
そんなことを悩んでしまい、わたしはこの三日間、洞窟の近くをあてもなく飛び回ること
しかできずにいた。こうして羊の臭いに惹かれ、これまでで一番人里に近寄りはしたが。
175『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/04/20(木) 00:29:41 ID:ONlw0ytR
と、真後ろの茂みががさがさと音を立てた。蠅の視野でも捉えることはできない位置だ。
また野良の魔物だろうか。それなら額の紋章を見せればおとなしく引き下がる。
そう考えて振り向いたわたしは、人と目を合わせることになった。
十二、三歳ほどの、羊飼いの女の子。今わたしの肢の下にある、いなくなった羊を探しに
こんなところまで来たのだろう。
わたしはその子の顔に見覚えがあった。一年ほど前、この子の弟たちが食あたりで倒れた
のを癒してやり、涙を流して感謝されたことがある。
痛んだものを食べては駄目よと子供たちを教え諭してあげた、あの時のわたし。
なのに今のわたしは、腐り果てた肉からしたたる汁を喜んで啜っている。
そんな皮肉を感じていると、女の子は悲鳴を上げて脱兎のごとく逃げ去った。
風に乗って聞こえてくる意味を成さない喚き声の中に、「魔物!」や「お化け蠅!!」
などのフレーズが混じっている。
当然の反応に過ぎないのに、自分でも事前に予想はしていたのに、それらの言葉を実際に
ぶつけられると心が痛んだ。
……でも。
これは却って好都合だと気を取り直す。
魔物が人里近くに現れたとなれば、きっと討伐の話が出る。そうなれば、ジェラールや
イヴォンヌ、ユベールが乗り出してくることだろう。
わたしが街に行けば人目について大きな騒ぎになるかもしれない。それよりはここで
話をした方が、よい方向に運ぶ気がする。
自分を慰めながら、わたしは改めて食事にとりかかった。
肉の奥に潜んでいる内臓が、とりわけおいしく感じられた。
176名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 01:16:14 ID:rJ+ZOnoZ
おっと早くも続きが(・∀・)
177名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 23:47:25 ID:iYaTr5wD
素敵すぎます。
がんばって(*´д`*)
178名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 04:30:46 ID:WMcxkZUS
179名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 21:09:29 ID:MPosdN09
hosyu
180変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/05/06(土) 04:11:43 ID:z5maXCx7
私が書くとスルーのようでつ。

こちらもそのうち再開します。何もないよりはいいかと。
でもやっぱり私は中京のひきこも(ry
181名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 04:53:23 ID:YUmyq6lW
もう来んな
182名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 13:26:26 ID:nbuWnYYw
変態マニアさん


実は











二度と来るな





氏ね
183変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/05/06(土) 20:11:25 ID:z5maXCx7
ムダ。w
184変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/05/06(土) 20:24:56 ID:z5maXCx7
うpれカス。w
185名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 08:39:47 ID:HZrRinl2
>180
>162まで読んだ感想は
毎度話に山が無く、複線も消化しないまま唐突に終わった前回の話と
ほぼ同じ設定なので同じ展開になるんだろうなと思いました
内容がつまらない上に希望が持てないので読んでいて苦痛です
186名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 09:33:25 ID:TQxSzGG2
あくまで個人的意見なんだけど、変身マニアさんの作品は変身が楽しいことで、人外に変身するもしくはさせられる苦しみがないんだよね。
本当はしたくないのに異形化して、したくない行動をせざるを得ないとか、人外になることで人間としての意識や尊厳が失われていくという苦しみが好きな漏れとしては萌えないんですよ。

これはあくまで漏れ個人の意見ですからお気になさらず。
187名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 09:57:40 ID:sVDxkl5r
>>186
漏れと萌えポイントが似てるかも。
「まだ女の子でいたい…」
「苦しい…助けて…ぁ、ぁ、ぁ…うがー!」
みたいなの。
188名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 10:26:29 ID:Y1lfJcW7
変身マニアさんに罪はないんだけど(煽りに反応する云々は別として)、
多分このスレの大勢は>>186とか>>187とかの考えの人なんだよね。
ほんとはここで自発的変身娘スレを建ててそっちの趣味の人と分けて・・・ってするんだろうけど、
多分1スレを要するほど需要があるとも思えないしねぇ・・・
分けたところで分けた先は変身マニアさんのオナニースレになりそうな気もするし、変身マニアさんがいなくなった現スレも過疎化の一途をたどるだけだと思うし・・・

微妙なところだね。
189名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 10:36:05 ID:THJCmEYc
中京の引篭もりこと変態マニアってさ、閉鎖したサイトでも
ワンパターンだしね、全然進歩が無い
190名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 11:54:45 ID:p1m79Bmf
なんか自分のなかだけで盛り上がって
それを他人にも要求しているような
文章だし、掲示板でスルーされている
のを自分が何かおかしい所があるとか
思わないで一方的に突き進むのは良くないよ。
191名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 12:10:18 ID:k4hiMKy+
あいやー
スレ伸びてたからワクテカしてきたのに・・・
192名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 14:48:17 ID:adguZQKD
ちょっと叩かれただけで荒らしに走るとはな。
何というか・・・
193名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 15:58:40 ID:NBfouoQ0
\               U         /
  \             U        /
             / ̄ ̄ ヽ,
            /        ',      /    _/\/\/\/|/|_
    \    ノ//, {0}  /¨`ヽ {0} ,ミヽ    /     \            /
     \ / く l   ヽ._.ノ   ', ゝ \       < これが若さか! >
     / /⌒ リ   `ー'′   ' ⌒\ \    /            \
     (   ̄ ̄⌒          ⌒ ̄ _)    ̄|/\/\/\/ ̄  ̄
      ` ̄ ̄`ヽ           /´ ̄
           |            |  
  −−− ‐   ノ           |
          /            ノ        −−−−
         /           ∠_
  −−   |    f\      ノ     ̄`丶.
        |    |  ヽ__ノー─-- 、_   )    − _
.        |  |            /  /
194名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 16:19:07 ID:WfFVLzJ0
俺はベルゼブブが読めればそれでいいよ
195名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 16:36:28 ID:x58hXkUd
哺乳類系の獣化は亜人の少年少女スレに持っていかれてるけど、(まぁ向こうの方が先に書いてたんだから仕方ないけど)
「獣人×獣人」にならない獣化ネタはこっちの方がいいのかね?
例えば獣人止まりじゃなくて完全四足動物化とか、「動物×獣人」だとか「人間×獣人」とか。

ただ哺乳類系は全部向こうに任せてしまって、
こちらは昆虫や不定形とか濃いめの異形に特化する、というのもそれはそれでアリかとも思うけど。

いや別に今書いてるとかネタがあるとかじゃなくてふと思ってみただけでスマン。
196名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 17:42:14 ID:GeKuKm5O
異形化と蟲化を謳ってるんだから
昆虫とかの濃いめでよくない?自分はそれ目当てで見てる
テンプレの"獣"ってのはキメラっぽい獣でも異形なの対象とか

とりあえず文とか絵が拝見できれば投稿者の判断に・・・
197名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 19:14:59 ID:rL2jK2gB
とりあえず保守
198『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/05/13(土) 07:54:41 ID:yNVzANI1
月が中天にかかる頃、一陣の風が吹き過ぎた。真夏とは言え夜風は涼しく、何も身に
まとっていないわたしは蠅の身体を縮こませる。
と、その風に乗っていくつかの音が聞こえてきた。
ずっと警戒してその音を待ち構えていたわたしは、まだ食べ続けていた羊の死骸から
口吻を抜く。羽を震わせ宙に飛び立ち、すぐ近くに立つ背の高い木の幹にへばりついた。
相手の死角にあたる位置で、ここなら最初に声だけを聞いてもらえるだろう。
物音は近づいて来る。複数の人の足音。身につけた鎧や武具がかすかに打ちつけ合う
金属音。魔物を警戒して低く落とした話し声。
緊張が高まる中、他にすることもなく肢を擦り合わせていたわたしの視野の一角に、
月明かりに照らされた彼らの姿が入った。
先頭に立つのは斧を構えた戦士のジェラール。狩人の家に育った彼は勘が鋭くて、何度も
奇襲を防いでくれた。後衛のわたしを狙った敵の一撃から身を挺してかばってくれた
ことも多い、優しい人。
次に続くのは剣士のユベール。抜き放ったサーベルは、最後にわたしが見たものとは別。
あれから半年近く経っているし、また買い換えたのだろう。皮肉屋だけど冷静沈着で、
よくパーティの危機を救ってくれた。
二人からやや離れて後ろを行くのは、魔術師のイヴォンヌ。頭が切れて合理的な判断を
下せる、パーティの知恵袋。月光の下、長い黒髪と黒い瞳が神秘的に光っている。
そして、さらにその後ろ。イヴォンヌの背中に隠れるように歩いている人影がある。
わたしの代わりに加入した僧侶だろう。
と思っていたら、その顔に馴染みがあった。教会でわたしの二年後輩にあたるコゼット。
わたしによく甘えていた、まだ子供じみた可愛らしい子。
半年前とほとんど変わらない、あどけない顔立ちの彼女が、強張った顔で戦闘の場に足を
踏み入れている。それも、わたしの占めていた位置に立って。
わたしがそんなことに戸惑いとショックを受けているうちに、四人は羊の死骸に気づいて
歩み寄って来た。
199名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 09:58:52 ID:q5HVz+JV
wktk
200名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 10:25:17 ID:pdVz9yLA
ベルゼブブキタ━(゚∀゚)━(∀゚ )━(゚  )━(  )━(  )━(  ゚)━( ゚∀)━(゚∀゚)━マワルノメンドクセ♪
201名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 13:32:22 ID:aXJXMw8i
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202名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 12:23:35 ID:8Anvj9et
GJ!
後輩の登場でなんだか先が読めたかも知れない
203名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 17:20:21 ID:moJonCLp
でも、余計に先が楽しみでわくわくする。
ガンガレー。
204名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 13:08:56 ID:ZF1eh9Lc
死ねよカス死ねよカス死ねよカス死ねよカス死ねよカス死ねよカス死ねよカス
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205変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/05/16(火) 20:57:16 ID:NEH/l/7g
空気読まない私が来ましたよ。カスは私のことですか?w
206名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 01:19:27 ID:6EO/i3sl
自己紹介でしょ。
207名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 01:22:02 ID:4ikNFJ8J
>>205
一つ質問していい?
空気読めないって言われたら読めるように努力するもんじゃないのかね?
なんで開き直ってんの?
208変身マニア ◆Sa4Nm3cpqM :2006/05/17(水) 03:49:15 ID:Ti03i/21
>>207
やめれ、板が荒れる。w
209名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 06:07:46 ID:4ikNFJ8J
>>208
ちゃんと空気読めるじゃん?
210名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 08:17:07 ID:6pNlULDF
自意識過剰なのもガキ
211名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 19:24:43 ID:2JXmM71P
>>208
『板』が荒れるってのは、「ここを追い出されたら、エロパロ板の他の獣化関係スレに出没し、そこも荒らしていくぞ」って意味か?

そういやこの前、角煮の獣化スレも荒らしてたな、お前。
あそこでも「空気読め」って言われやがってwwww
212名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 20:18:50 ID:JU+u9/b1
はいはい変人マニアはヌルーヌルー
そうやって煽るから五月蠅くなるんだお
213名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 23:52:36 ID:X2MaSEqg BE:284522764-
>>208
あんまふてくされんなよy
お前は2,3作ぶんの力を一作にそそげば
神投下師になれるかもしれんぞ。
214名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 23:31:54 ID:pRQ0Rtr1
伸びてると思ったらまたこの流れか…
215名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 03:25:07 ID:BS6BAFEp
>>208
同意。文章力あるんだから玉にはクライアントの望むものを
書いてみるのも面白いと思うぞ?幅も広がるし。
216名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 03:27:01 ID:BS6BAFEp
あー間違えた213に同意って事です。
217名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 12:53:05 ID:rZ08DLK+
なんにせよベルゼバブ期待保守
218名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 20:39:27 ID:j+FlS6X1
次はバッタ化辺り希望
219名無しさん@ピンキー:2006/05/26(金) 03:05:02 ID:MeqGPixO






     a   g   e





220名無しさん@ピンキー:2006/05/26(金) 08:52:50 ID:b4AXDZse
>>218
ショッカーに改造されるの?
221名無しさん@ピンキー:2006/05/28(日) 07:03:40 ID:+ILdZqIv
>>219 ねーよ
222名無しさん@ピンキー:2006/05/29(月) 23:12:09 ID:8VFrLMBa
『真・仮面ライダー 序章』みたいなのはここの管轄だろうか?
223名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 03:07:49 ID:Jh+BpN7x
ほす
224名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 11:09:26 ID:5O3Nak0q
>>220
蟲化スレなんだから、普通に人間からバッタ人間(蟲化人)じゃないの?
ショッカーが作ったのは改造人間なんだからスレ違いだし、そもそも特撮板なんじゃないの?
225名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 16:24:36 ID:zQwpMyu/
変身≠改造
226名無しさん@ピンキー:2006/06/03(土) 18:14:41 ID:D75P2SNW
>>220はギャグで言ったんだろ…

突然何者かに誘拐されて、目が覚めたら異形の姿になってて
「嫌ぁあ!」ってのはそれはそれでアリだと思うけどねぇ改造。
「グロい手術は嫌だが異形化のシークエンス場面は欲しい」って言うなら、
細胞とか何かの器官を埋め込んで徐々に全身が変化していくとか、改造光線とか。

つーかただでさえ人少ないのに排他的になってどうするのか。
227名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 21:48:12 ID:AmcQhs1T
クレクレ厨はどんなジャンルでも排他的だな
228名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 01:25:06 ID:p0lwsoXY
作者逃亡age
229『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/06/09(金) 02:44:56 ID:zZfbsajB
「ひどい臭いね」
イヴォンヌが顔をしかめると大袈裟に鼻をつまんだ。
「こいつは殺した魔物のつけた臭いかな? 出たのは蠅の魔物という話だし、これぐらい
臭くてもおかしくないよな」
ユベールが軽い口調で言う言葉が、わたしの胸には痛い。蠅になった自分の体臭なんて
わからないが、今のわたしはそんなに臭いのだろうか。この姿になってから糞を食べる
ようなことはまだしていないのだけど。
「いや、こりゃ単に肉が腐っただけだね。森を歩いてれば動物の死体はよく見かける
けど、そいつらの臭いとおんなじだよ」
羊の死体を調べていたジェラールが、わたしの聞き慣れた呑気な声音で言った。
「ついでに言えば、魔物につけられたような傷もないよ。この羊は殺されたわけじゃ
なくて、そこの岩場から落ちて死んだのを、通りかかった魔物が漁ったってところ
じゃないかな?」
「死因なんてどうでもいいわよ。化け物蠅がこの辺をうろついてることには違いないん
だから」
イヴォンヌが煩わしそうに言う。
「まあ、一匹なら余裕だろう。さっさと見つけて倒して引き上げるとしようか」
ユベールが剣を振りながら言った。
三人が話している間、硬い表情のコゼットは無言のまま周囲に落ち着きなく視線を
走らせている。
さて。どうやって声をかけ、どう話を切り出すか。
不安な気持ちは膨れ上がるばかりだが、このまま隠れていてもしかたない。
四人の頭上、木の幹の影から、わたしは思いきって声を上げた。
230 ◆eJPIfaQmes :2006/06/09(金) 02:48:37 ID:zZfbsajB
今回も短くてすみません。
とりあえずのラストまで道筋は考えているのですが、ちょっと現在余裕がないもので……。
続きはもうしばらく先になってしまいそうです。ごめんなさい。
231名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 07:41:11 ID:I+vBquZz
>>230
wktkしつつ待ちます。
232名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 16:31:13 ID:Xiok37+/
wktk保守
233名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 05:46:01 ID:dEisWN3N
糞スレ上げますね
234名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 02:30:22 ID:m0ykSntD
下がってるから上げますね^^











^^v
235名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 03:17:10 ID:RK3YYYCn
保守
236名無しさん@ピンキー:2006/06/17(土) 03:18:22 ID:RK3YYYCn
保守
237名無しさん@ピンキー:2006/06/19(月) 22:28:10 ID:DCr3Lf7Z
238名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 01:49:40 ID:r6F7iOpB
上げますね^^
239名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 01:43:00 ID:47eXiRl7
私の戦闘力は530000です^^
240名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 02:38:06 ID:4zZ8KohS
ウホッ!いい男^^;
241名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 05:32:57 ID:e3+0qCnL
242名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 22:10:28 ID:zcUw/ak3
保守age
243名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 15:51:47 ID:pxFgHzN8
>>242 ageとかいいながらsageると、sageとかいいながらageる人が来るよ


sage
244名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 00:12:55 ID:/NQGIdMq
ベルゼブブ期待保守
245名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 20:53:04 ID:wtCkqoTD
もうじきネタ投下するのでそれまで保守

http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148670186/68-74
246名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 08:54:17 ID:qKVinjeG
死ね
247名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 19:40:08 ID:m73SSGGV
捕手
248名無しさん@ピンキー:2006/07/05(水) 23:37:28 ID:4zmAHmlb
ん〜
249名無しさん@ピンキー:2006/07/06(木) 20:27:15 ID:TKJW9LBN
何度もあげんなカス
250名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 02:59:16 ID:QT7uYtG6
まってますよん
251名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 01:27:50 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(1)】

 あー、あぢぃー。
 ちくしょー、エアコンけちりやがってー、ばかあにきー……
 香織は四畳半の真ん中に転がって、うつろな眼でテレビを眺めていた。
 扇風機は回っているものの、窓も雨戸も閉まっているので、生温かい空気をかき混ぜているだけだ。
 ついでというわけではないが、明かりも消してあるので、テレビがこの部屋の唯一の光源である。
 香織は昼間、テレビの前から動くことはほとんどないから、暗闇でも困らない。
 それならば、電気代を節約できるから、明かりは点けていないのだけど。
 では、雨戸まで閉めている理由は――
 そんな香織の「姿」を、他人の眼から隠すためだった。
 ブラウン管の蒼い光に照らされた香織の顔は、ぱっちりとした眼に、形のいい鼻と口。
 長い黒髪はさらさらで、人形のように愛らしい。
 まぎれもない美少女であった――首から、上は。
 だが、その首から下は。
 手足のない、肉塊のような胴体に、乳房が何対も並んでいた――さながら、芋虫の「腹脚」のように。
 胴体の先には剥き出しの無毛の女性器が、ぱっくりと淫靡な口を開けている。
 巨大な芋虫のような――あるいは、でき損ないの「大人のおもちゃ」のような、その「身体」で。
 香織は座椅子に寄りかかって、テレビを眺めているのだった。
 他人の眼には「化け物」と映るであろう。彼女の、その姿は。
 
 それは「奇病」という言葉では生ぬるい、異常で猟奇的な病気だった。
 性交渉による感染率は、ほぼ100%(唯一、妊娠中の女性だけは感染しないとされていた)。
 そして発症すれば、手足は萎縮してやがて消滅し、胴体は芋虫のように変形する。
【続く】
252名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 01:33:07 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(2)】

 感染した女性の七十二時間以内の発症率も100%。
 それでいて、男性は発症せず、自覚症状もない。
 それが、この病気が一般に知られるようになるまでに、被害が拡大した理由でもある。
 最初の発症者が確認されたドイツの街の名前にちなんで《ニュルンベルク病》と呼ばれるその病気は、
 日本では「特別重要指定感染症」とされ、感染者は男女とも「保護収容」措置がとられることになっていた。
 香織も、ここにいることが見つかれば、そうした扱いを受けるだろう。
 彼女を匿って(かくまって)いる、兄の祐介ともども。
 
 テレビでは断崖絶壁の前に立った真犯人が、お約束通り事件の真相を告白していた。
 そろそろサスペンスの再放送も終わる時間。
 祐介は、じきにアルバイトから帰って来るはずだ。
 香織の食事の世話のために。
「はああ……」
 思わず、ため息が出た。
 毎日、こんな生活をしている自分は、何のために生きているのだろう。
 この「身体」では、携帯でメールも打てないし、ゲームもできない。
 だから一日中、テレビを観ているしかないのだけど、自分ではチャンネルさえ変えられない。
 食事や入浴の世話まで、祐介にさせて(トイレは自分で風呂場まで這って行ってするけど)。
(……でも、いまさら、しょうがないじゃんか)
 ダークな考えを頭から追い払おうと、首を振る。
 自分は、すでに祐介の人生を犠牲にしている。
 いまさら死にたいと考える権利は、自分には、ない。
【続く】
253名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 01:38:36 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(3)】

 祐介にとって「世話の焼ける妹」であり続けること。
 それが、いまの自分の存在理由だろう。
 サスペンスが終わって、何本かのCMのあと、ニュース番組が始まった。
 ちょうどそのとき、外で自転車のブレーキの軋む音がした。がたがたと、スタンドを立てる音も。
 祐介が帰って来たのだろう。あんなにブレーキがうるさいオンボロ自転車は、ほかに誰も乗ってない。
 とんとんと、外の階段を上って来て、がちゃがちゃ鍵を回す。
 ドアが開いて、外の光が差し込み、
「たでーまー」
 祐介が部屋に入って来た。
 すぐにドアを閉め、それから玄関と台所兼用の明かりを点ける。祐介の姿が、照らし出された。
 すらりとした長身に、妹と似た面影のある端正な面立ち。
 よれよれのパーカーとジーンズという格好でさえ、さまになって見える美少年。
 その兄に、さっそく香織は毒づいてみせた。
「あちーよアニキ、なんでエアコン点けてかねーんだよ。あと、ニュースつまんねーよ、チャンネル変えろよ」
「何ほざいてんだ、人が帰って来るなり。先に『おかえり』くらい言え」
 仏頂面をする祐介に、香織は、にっこり微笑んで嫌味たっぷりの口調で、
「お帰りなさい、お兄様。香織はこの地獄の釜のようなお部屋で、お兄様のお帰りを待ちわびておりましたわ」
「エアコンは八月まで待てって言っただろ」
 祐介は靴を脱いで、狭い台所を横切り、四畳半に入って来た。
 もわっと、甘く湿った匂いが祐介の鼻をくすぐる。人ではないモノに変じた、香織の体臭だ。
(やっぱ一日中、部屋を閉めっぱなしだからな……)
 可哀想だとは思うけど、ぎりぎりの予算で二人が生活していることも事実なのだ。
【続く】
254名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 01:44:06 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(4)】

 嫌味を言う余裕があるうちは、我慢してもらうしかない。
「電気、点けるぞ」
 ひとこと断ってから、電気の紐を引っぱる。ぱちぱちと蛍光灯が瞬いて、明かりが点り――
 香織の姿が、露わに照らされた。
 芋虫と女体が融合したような、何対もの乳房が並ぶシュールアートのような肉体――
 祐介が振り返ると、香織は、びくりと身を震わせた。
 その愛らしい顔に不敵な笑みを浮かべ、兄を見上げているけれど。
 瞳が不安げに揺らいでいるのを見れば、作り笑いであることは、すぐにわかる。
 たとえ恋人同士でも、女は明るい場所で裸身を晒すのを恥らうものだ。
 まして、香織の身体は異形のモノ。
 己の姿を光の下で晒すことに、なお抵抗があるのだろう。
 そんな内心を押し隠そうと、香織は精一杯、強がっている。
 だから祐介も、それに付き合って、本心ではない毒のある言葉を妹に投げつけた。
「……相変わらずブスだな。やっぱ電気消しとくか?」
「はあっ?」
 香織は、眼をむいた。
「ちょっと何よ、それ!」
 祐介は返事をせずに、台所へ出て行く。
 追いすがろうとした香織は、座椅子の上で身じろぎして――
 どさりと、うつぶせに床に倒れ込んだ。
 その音に、流しの前に立って鍋に水を張っていた祐介が振り返り、
「暴れてんじゃねーよ」
【続く】
255名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 01:49:39 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(5)】

「うるさいっ! さっきの言葉、もういっぺん言ってみなさいよっ!」
 香織は声を荒らげて、手足のない身体をよじりながら、台所へ這って来ようとする。
 ――芋虫さながらに。
 祐介は、にやりと意地悪く笑って、
「悪かった。お前、『顔だけは』かわいいもんな。訂正するよ、『性格ブス』」
「まっ、まじムカついた! このっ、バカアニキッ!!」
 香織は言葉だけは勇ましく、だが芋虫のような姿では、のろのろとしか進めない。
(……くそっ! ちくしょうっ!)
 本気で悔しくなってきた。涙が出そうになった。
 祐介が、わざと意地悪を言っていることは、香織にもわかっている。
 でも、やっぱり「ブス」と言われれば頭にくるではないか、女として。
 挙げ句に「顔だけはかわいい」呼ばわりとは。
 それって絶対、禁句だろう。いまの「この姿」の自分に対しては。
 せめて、足に噛みつくくらいしてやりたい。歯形から血がにじむくらい思いきり……
「…………」
 祐介が、すたすたと自分から近づいて来た。
 キッと睨み上げる香織に、真顔の祐介は、その場にしゃがんで、
「暴れるなっつーたろ、バカ香織」
 言うなり、香織の顎の下に手をやって顔を上げさせ、そこに自分の顔を近づけて、唇に唇を重ねた。
「…………!」
 香織は、驚きに眼を見開き――
 だが、すぐにその頬は赤らみ、恍惚とした表情で眼を閉じる。
【続く】
256名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 01:54:49 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(6)】

 ――長いキスを終えて、祐介は顔を離した。
 香織は、潤んだ眼で兄の顔を見上げ、
「ずるいよ、バカアニキ……」
「うるせー。すぐメシ作るから、大人しく待ってろ」
 祐介は立ち上がり、台所へ戻って行く。
 だが、背を向ける前にちらりと見えた彼の顔も、確かに赤くなっていた。
 食事の支度を始めた祐介の背中を眺めながら、香織は、くすっと笑う。
(ほんと、バカなあたしたち。大好きなのに、お互い素直じゃないんだから……)
 言われた通り、夕飯ができるまで、いい子で待っていよう。
 のそのそと床を這って、テレビの前に戻り、座椅子によじ登って、ごろりと体を仰向けにする。
 一瞬、バランスを崩して転げ落ちかけたけど、なんとか椅子の上にとどまった。
「はあ……」
 自分の芋虫みたいな体の、一番先――両脚を失ったいまは「股間」とも呼べないその部分に、眼をやる。
 ぱっくり開いた口の奥に、ピンク色の肉襞が、ぬらぬらと濡れ光っていた。
(やっぱ、ずるいよ、バカアニキ。「あたしの身体」が感じやすいの、わかってキスするんだから……)
 香織は頬を赤らめる。
(チャンネル変えてもらうの忘れたけど、まあいいか……)
 キスで火照った脳ミソでは、何の番組でも同じこと。どうせ頭に入らないのだから。
 
 ドイツを皮切りに欧米各国に《ニュルンベルク病》の被害と、それに伴うパニックが広がったのは半年前だ。
 国内への波及も間近いと考えられたが、当時の日本政府の対応は、愚かしいほど後手後手に回った。
 感染者は隔離するべきか。隔離するならどの施設に収容するか。発症しない男性感染者はどう扱うか。
【続く】
257名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 01:59:58 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(7)】

 感染予防策は「行きずりの性交渉はしない」ことに尽きるが、それをどうやって国民に呼びかけるか。
 何一つ決められないまま、国内に数千人の感染者を出す事態になった。
 香織は、いわばその犠牲者だった。もちろん、当人にも責任がないとはいえないが――
 
 祐介の作った夕食は、キャベツ炒めをのせたインスタントラーメンだった。
 一つの鍋に二人分作って、香織の前に用意した座卓に、鍋のまま運んで来た。
「わーい、今日もまたラーメンね。あたし、ラーメンだーいすき」
 ニコニコして言った香織に、祐介は、ぶすっとした顔で、
「おまえは食わねーでも、いーから」
「ちょっと、どうしてそういうイジワル言うかなー?」
「うちにいまコメがねーの、知ってるだろ? 給料日まで待てっつーの」
「だから三食インスタントラーメンでも喜んであげてるんじゃないか。いじらしい妹だと思わない?」
「全然。ほら、バカがバレるようなこと言ってないで、『抱っこ』するぞ」
「あ……、うん」
 途端に香織は、頬を赤らめて眼を伏せる。
(こいつ、こんなときだけ可愛い顔しやがって……)
 祐介は思ったけど、またケンカになりそうだから、口には出さず。
 香織の脇にしゃがみ、彼女の背中と腰の下に手を入れて、その身体を抱え上げた。
 そして、自分が座椅子に座り、あぐらをかいた膝の上に香織を乗せてやる。
 そのとき、香織の「どれかの乳房」に手が触れてしまって(胴体が乳房だらけだから仕方ないのだが)、
「あ……」
 香織は、ぴくりと身を震わせ、小さく声を上げた。
【続く】
258名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 02:05:07 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(8)】

 からかってやりたかったけど、赤くなってうつむいている香織の横顔が見えたから、祐介も何も言えず。
 妹の身体を抱える腕に、ほんの少し、力を入れた。
(こいつの身体、やわらかくて、あったけーよな……)
 それに、髪もいい香りだった。
 使っているシャンプーは同じだけど、自分の髪はこんな香りはしないと思う。髪の長さの違いだろうか。
 その香織が、口を開いた。
「……ちょっと、アニキ」
「あん?」
「前、硬くなってるの、当たってる。ジーンズ越しに」
 祐介の「それ」が、香織の尻に当たっているのだった。香織は、くすくす笑って、
「アニキってば、あたしを『抱っこ』しただけで欲情してるの?」
「うるせー、バカ香織。黙ってろ」
 祐介は、香織の首筋に、髪の毛の上からむしゃぶりつくようにキスをした。
「あっ、ちょっ、くすぐったい、あはは」
 香織は笑って身をよじるが、身体を抱えている腕にしっかり力を入れられてしまって、逃げられない。
「やめやめ、やめてってば、髪によだれがついちゃう、あははは……」
「……やめた」
「えっ?」
 きょとんとして香織は、顔を上げた兄を振り返る。祐介は箸を手にとって、
「ラーメンのびるし。先に食うべ」
「……もうっ、バカアニキッ!」
 言葉では怒ってみせたものの、つい顔は笑ってしまう。
【続く】
259名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 02:10:35 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(9)】

 祐介の膝に座って、一緒に食事をするのが、香織にとって幸せな時間の一つだった。
 もう一つ、幸せなのは――もちろん、祐介とのセックスだ。
 すでに「発症」している香織と、感染者である祐介には、もはや何のリスクもない。
 祐介は、自ら望んで感染者になった。
 感染源は、香織だった。
 
 半年前――
 その日、祐介が予備校から家に帰ったのは、普段と同じ、夜の九時半過ぎだった。
 祐介は高校三年生で、国公立大学の法学部への進学を希望していた。
 父親は自分で法律事務所を構えている弁護士だが、父親の跡を継ごうと考えたわけではない。
 離婚や遺産相続という民事事件が専門の父親は、毎晩、帰宅は十一時を過ぎていた。
 母親も事務仕事を手伝っていて、十時を過ぎなければ帰らない。
 都内で庭付き一戸建てに暮らせる程度は高収入だけど、忙しさを考えれば、割に合う仕事とは思えなかった。
 法学部を志望したのは、文系の学部の中では一番、箔がつきそうだからという消極的な理由だ。
 自分の将来を決めるのは、もう少し先でいいんじゃないかと、祐介は考えていた。
 家に着いてみると、明かりがついていなかった。
(香織のやつ、帰ってねーのかな……?)
 香織は高校一年生である。私立の女子校に通っていて、校則でアルバイトは禁止だという。
「そんなの、みんな守ってない」とは言っていたけど、自分も一緒になって校則を破る勇気はないだろう。
 バイトじゃなければ、友達と遊んでいるのかだけど。
(まー、あいつ要領いーし。オフクロが帰るまでには、帰ってくるだろ)
 たいして気にとめず、玄関の鍵を開けた。
【続く】
260名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 02:15:45 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(10)】

 すると、玄関に香織の通学靴があった。片方ひっくり返った、「脱ぎ捨てた」という状態だ。
(え……?)
 祐介は、眉をひそめる。いつもの香織なら考えられないことだった。
 香織は基本的に優等生だった。兄の前では悪ぶってみせることもあるけど、それも口先だけのこと。
 母親の代わりに家事はするし、自主的に十時と決めた門限も守る。
 部屋はいつだって綺麗に片付いているし、靴は必ず揃えて脱ぐのだ。
 胸騒ぎがした。
 自分も靴を脱ぎ捨てて、すぐに二階に上がり、香織の部屋の外から声をかけた。
「香織? 帰ってんのか?」
 返事がない。
 だが、ドアノブを回そうとすると、鍵がかかっていた。
 香織は部屋にいる。絶対、何かあったのだ。
「おい!」
 もう一度、声をかけ、ドンドンと強くドアを叩く。それでも返事がない。
「……くそっ!」
 何があった? 友達と喧嘩? もしかして、失恋? 返事くらいしろっての。
 声を聞けば、おまえがどの程度の「落ち込み具合」かわかるから。付き合いの長い兄妹だから。
 ――突然、人気の女性ヴォーカルの曲が流れて、どきりとした。
 自分の携帯の着メロだった。発信者を見ると、母親だ。祐介は電話に出た。
「はい?」
『――あ、祐介?』
 母親の声。父親ともども、今日は泊まり込みの仕事になりそうだという連絡だった。
【続く】
261名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 02:21:15 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(11)】

(なんだって、こんな日に……)
 腹が立ったけど、香織がどんな事情で「引き籠もって」いるかわからない以上、迂闊なことは言えない。
 祐介は適当に相槌を打って、さっさと電話を切ろうとした。香織のことは、自分で何とかするしかない。
 どころが、母親のほうから、その香織のことをたずねてきた。
『――ところで、香織は帰って来てるの? 携帯、通じないんだけど』
「えっ? ああ……」
 何と答えたものか迷ったけど、結局、当たり障りのない返事にした。
「うん、家にいるよ」
『そっか。じゃあ、よろしくね。二人とも、あした学校、遅刻しないように』
「わかってるよ。じゃあね」
 祐介は、電話を切った。
「……はあっ」
 ため息をついて、香織の部屋のドアにもたれかかる。
「……お兄ちゃん……?」
 か細い声がドアの向こうからして、祐介は、どきりとした。ドアに向き直り、声をかける。
「香織?」
「……たすけて、お兄ちゃん……」
 泣いているような、泣きすぎて声が枯れたような、震えた声。
 祐介はドアノブを回そうとして、しかしまだ鍵はかかっていて、ドアを殴りつける。
「おい、鍵あけろよ!」
「……あけられない。立てないの……」
 声を震わせている。
【続く】
262名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 02:26:46 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(12)】

「……くそっ!」
 祐介はドアに拳を叩きつけ、しかしそれだけでは、ドアはびくともせず。
「下がってろ、香織!」
 叫ぶなり、片足を振り上げて、ドアノブの真下辺りを足の底で蹴りつけた。
 ……その寸前、「待って」という香織の声がしたような気もしたが……
 ――バンッ!
 ノブが吹っ飛び、ドアが勢いよく開いて。
「――みゃあっ!?」
 ドスンと、途中で何かにぶつかって、止まった。
 祐介は部屋に駆け込んだ。
 明かりの消えた部屋。ベッドの上、机の前、床の上……どこにも香織の姿は、ない。――いや。
「……いたぁ〜い……」
 途中で止まったドアの陰を、祐介は恐る恐る、覗き込む。
 そこに、香織がうずくまっていた。
 いや、本当に香織なのか? 長い黒髪、セーラー襟の白ブレザーという制服は、確かに香織のもの。
 だが、子供のようにずんぐりむっくりの短い手足は……?
「……お兄ちゃん……」
 香織が、顔を上げた。間違いなく、香織の顔だったけど。
 涙でぐしゃぐしゃで、頬に髪の毛が貼りつき、おまけに鼻血を流している有り様だった。
 ――あとで考えれば、その鼻血は、祐介が蹴飛ばしたドアで鼻をぶつけたせいだったが――
「香織、おまえ……」
 祐介は、愕然とした。ドイツで流行している《ニュルンベルク病》のことは、ネットやテレビで知っていた。
【続く】
263名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 02:32:06 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(13)】

 手足の縮んだ香織の姿は、まさしく《ニュルンベルク病》の初期症状ではないのか?
「……病院へ、行こう」
 祐介は言った。
 まだ国内の感染者が報じられていないその病気に、香織がなぜ感染したのか、わからない。
 いや、性感染症である以上、原因は一つしかないのだが、いまはそれを追求している場合ではない。
「……やだよ……」
 香織は、首を振った。その眼に涙があふれた。
 祐介は声を荒らげて、
「嫌だって、おまえ、それ例のドイツの病気だろ!? 放っておいたら、体が芋虫みたいになって……!」
「……ムダだよ、あたしだってニュースくらい見るもん。どこの国でも、治療法が見つからないって……」
「じゃあ、おまえ、どうするんだよ!?」
 祐介は怒鳴った。
 どこに怒りをぶつけていいかわからず、結局、香織を怒鳴りつけるしかなかった。
 優等生が聞いて呆れた。勝手にそう思っていた自分がマヌケだった。
 香織も普通に「女」だったのだ。自分だって中学一年で童貞を卒業したから、香織を非難できないけど。
「……ママに、知られたくない……」
 香織は言って、泣き出した。
 祐介は、立ち尽くすばかりだった――
 
 それから、どれだけ香織は泣いていたのか。
 泣きすぎて涙も声も枯れたか、けほけほと、乾いた咳をし始めた香織に、祐介は言った。
「……家出するか?」
【続く】
264名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 02:37:45 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(14)】

「……え……?」
 香織は顔を上げて、「けほっ」と咳き込む。
 祐介は妹の前にしゃがみ、その髪を、くしゃくしゃと荒っぽく撫でた。
「オフクロに知られたくないんだろ? だったら、どこかに身を隠すしかないじゃん」
「……どうやって? あたし、芋虫になっちゃうんだよ……?」
「俺が連れて行くから」
「……お兄ちゃん、が……? なんで……?」
「おまえが、こんな病気になったなんて、俺もオフクロに知らせたくない」
「…………」
 香織は兄の顔を、まじまじと見つめる。
 それが本心なのか? 確かに世間並みに母親思いの兄ではあるだろうけど。
(……そうじゃなければ、あたしのため……?)
「レンタカー、借りてくる」
 祐介は言って、立ち上がった。
 五月生まれの祐介は、夏休みの間に車の免許をとっていた。
「……え、あの……」
 やっぱり病院に行く。香織は、そう言おうと思った。自分の我がままに、兄を巻き込めない。
 でも、言えなかった。兄が一緒に逃げてくれるのなら、そうしてほしかった。
 香織のセックスの相手は、兄の友人だった。
 何度か家に遊びに来たその彼と、兄が見ていない隙にメルアドを交換して、付き合い始めたのだ。
 自分のほかに何人も付き合っている女の子がいることは知っていた。それでも構わなかった。
 兄と違って遊び人だけど、それでも気が合うらしい、兄の親友。
【続く】
265名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 02:43:10 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(15)】

 いや。兄に黙って、その妹に「手をつけた」くらいだから、本当の親友だったのかは、わからない。
 とにかくその男を、香織は好きになったのだ。
 兄に似ていると思ったから。
 ――そう。香織が本当に好きなのは、祐介だった。
 仕方なかった。自分の知るかぎりで一番格好いい男が、兄だったのだから。
 幼い頃から一緒に育った兄妹ならば、相手のいい面も悪い面も知り尽くしている。
 だから、普通の兄妹は、恋愛感情など抱かない。理想や幻想が入り込む余地がないからだ。
 もちろん香織も、祐介の悪い面は知っていた。
 一番悪いのは、ぶっきらぼうな態度だ。それでいつも誤解を招く。前の彼女と別れた原因もそれだ。
 その人のことは、香織も好きだった。可愛らしくて、優しくて。
 彼女になら、兄を任せてもいいと思った。なのに、別れてしまった。
 だから――やっぱり、兄の悪い面も含めて全てを理解できるのは、自分しかいないと思った。
 そう考えてしまう自分は、普通ではないのだろう。
 でも、普通じゃなくて、何がいけないんだろう?
「兄貴や弟を好きになるなんて、気持ち悪い」
 雑誌やマンガの話題で近親相姦の話が出ると、友達はみんな、そう言った。
 そのくせ、香織の兄のことは「カッコイイ」と、もてはやす。
「カッコイイお兄さん」の妹である香織は、どうリアクションすればいいのだろう?
 照れ隠しに兄の欠点をあげつらえばいいのか?
 開き直ってカッコイイ兄を自慢すればいいのか?
 どちらも嫌だった。香織は、真剣に祐介が好きなのだ。
 友達が祐介の話題を出すたびに、耳を塞ぎたくなった。
【続く】
266名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 02:48:19 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(16)】

 祐介はあたしのモノ。あんたたちには指一本触れさせない。そう言って、皆を黙らせてやりたかった。
 だから――
 祐介と一緒に家出できるなら。祐介を、自分の我がままの道連れにできるなら。
 それこそ祐介を、自分だけのモノにできるということではないか。
 部屋を出て行きかけた祐介に、香織は呼びかけた。
「……お兄ちゃん……」
 振り向いた祐介に、香織は眼に涙をためて、しかし笑顔で、言った。
「……ありがとう……」
「…………」
 祐介は答えず、ただじっと香織の顔を見つめて、それから部屋を出て行った。

 祐介は、自分の感情をどう整理していいかわからなかった。
 妹が「人類史上最悪の病気」に冒され、芋虫に変貌し始めていること。
 妹も「女」だったと思い知らされたこと。
 それが、同時に起きたのだ。
 衝撃。怒り。哀れみ。失望。いろんなモノがない交ぜになって、頭の中をぐるぐる渦巻いている。
(香織は……あいつは、どうなんだ?)
 自分の身体が、芋虫のように変わってしまうことを、どう受け止めているのだろうか。
 母親に知られたくない、それだけを口にしていたけど。
(俺だったら、もっと泣き叫んで、気が狂う寸前かもしんねーけど……)
 いや、香織も恐らくそうだったろう、自分が家に帰るまでのあいだは。
 だから、泣きすぎて枯れたような声で、泣き腫らした顔で、いたのだろう。
【続く】
267名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 02:53:49 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(17)】

 そして、帰って来た兄に、「たすけて」と言った。
 そう。香織は、ほかでもない祐介に、救いを求めたのだ。
(だから、俺が助けてやるしか、ねーじゃんか……)
 香織を連れて家を出ること。いまは、それしかなかった。
 身体が芋虫に変化し始めて、一番混乱しているのは、香織本人のはずだ。
 その彼女が、母親には知られたくないと言っている。
 その気持ちを汲み取ってやるしかない。少なくとも、いまこの場では。
 二人で家を出て、それから先のことは、香織の気持ちが落ち着いてから考えればいい。
 いまは、香織が望むとおりにしてやろう。
 そう決意すると、自分の気持ちも落ち着いた。
 両親は明日まで帰らない。
 とりあえず車を借りて来て、必要な荷物をまとめて、香織を車に乗せて……
 時間は、充分にある。
 祐介は靴を履いて玄関を出て、ドアに鍵をかけた。
 レンタカー屋は駅前にあった。祐介は、駅へ向かって歩き出した。
 
 そして、二人は家を出た。
 借りて来た車は軽自動車だった。料金が一番安いからだ。
 ハンドルは当然、祐介が握り、香織は毛布を巻いて身体を隠させた上で、助手席に座らせた。
 家からは、ありったけの現金を持ち出した。全部で三十万ほどで、当面の出費はまかなえるだろう。
 預金通帳には手をつけなかった。そこまでしたら親も困るだろう。
 両親には、あとで手紙を出して詫びるつもりだった。
【続く】
268名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 02:59:00 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(18)】

 香織には悪いけど、やっぱり何も知らせないわけにいかない。
 こちらの事情がわかれば、もしかすると両親も、無理して自分たちを探そうとしないんじゃないか。
 そんな甘い期待もあった。家出人として警察に手配されることは、できれば避けたい。
 出発前に、小学校以来の友人の高橋京子に電話した。
 高橋の父親はヤクザの組長だった。
 高橋自身は「普通の女子高生」を自称しているが、ヤバイ話を面白おかしく聞かせてくれる事情通だった。
 挨拶もそこそこに、祐介は用件を切り出した。
「――なあ、身元の詮索とか一切ナシで、部屋を紹介してくれる不動産屋に心当たりないか?」
『はあっ?』
 電話の向こうで、高橋は笑った。
『何よいきなり、あんた駆け落ちでもすんの?』
「……ああ」
 そういうことにしておこうと思い、祐介はうなずく。
 高橋は、驚くというよりも可笑しそうに、
『え、ちょっとマジ? あんた、もうじき受験でしょ? 東大受けるんじゃないの?』
「東大は受けねーけど、まあ、いろいろあって……」
『そりゃまあ、いろいろなきゃ、駆け落ちなんかしないだろうけど。でもさあ……』
「あん?」
『久しぶりに電話してきて、用件がそれかい? あんた、あたしを何だと思ってる?』
「マブダチ」
 祐介が答えると、高橋は『はあっ?』と声を上げ、それから、くすくす笑い出した。
『まっ、いいや。連絡先調べて、すぐ折り返し電話するから……』
【続く】
269名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 03:05:00 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(19)】

 高橋は、約束通りすぐに電話をくれて、不動産屋の連絡先を教えてくれた。
 不法滞在の外国人を主な顧客にしているが、いちおうカタギの業者なので安心していいらしい。
 祐介は礼を言って、電話を切った。
 不動産屋は明日、訪ねることにして、今夜は人気のない河川敷にでも車を停めて夜を明かすつもりだった。
 その計画は香織にも伝えてあった。
「……お兄ちゃん」
 助手席の香織が、口を開いた。
 ハンドルを手に、祐介はきき返す。
「あん?」
「高橋さんと……お兄ちゃん、エッチした?」
「……はあっ?」
 祐介は、あきれて香織の顔を見た。こんなときに何を言い出すのだ、こいつは?
 香織は、まっすぐフロントガラスを見つめたまま、
「一度はあるでしょ、中学のとき。お兄ちゃんが一年生のときだったかな、確か?」
「バカ言ってんじゃねーよ、てめー」
 祐介は口をとがらせたが、香織は構わず言葉を続けて、
「知ってるよ、あたし。そのあとしばらく、うちに電話してくるときの高橋さんの態度、変だったもん。
 お兄ちゃんのほうも、変だったしさ」
「…………」
 祐介は前に視線を戻して黙り込む。図星を言い当てられたからだ。
 香織は祐介の顔を見た。潤んでいるのか、妙にキラキラした眼で、
「よく友達に戻れたね、お兄ちゃんたち」
【続く】
270名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 03:10:09 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(20)】

「元から友達だっつーの、ただの」
 祐介は、にべもなく言った。だが、すぐに思い直して、
「……確かに、いっぺんだけ、ヤったけどさ」
 どうして妹とこんな会話をしなきゃならないのか、祐介は我ながら情けなかったけど、でも。
 それで香織の気が紛れるなら、付き合ってやるのも仕方がないと思った。
「やっぱりね」
 香織は、くすくす笑う。
「お兄ちゃんの前の彼女、夏美さん? あの人がお兄ちゃんに一番ぴったりだと思ってたけど、でも違ったね」
「まあ、別れちまったからな」
「そういうことじゃなくて……本当にぴったりなのは、高橋さんだったと思う」
「…………」
 答えないでいる祐介に、香織は微笑み、
「どうして、本気で付き合わなかったの、高橋さんと?」
「……あいつが、それっきりヤらせてくれなかったから」
 仏頂面で、祐介は言った。
「最初は自分から誘ってきたのに、次に俺が誘ったら、断りやがんの。俺、そんとき結構、自信なくしたぜ。
 あいつとヤったのが初めてだったから、俺がヘタクソすぎて二度目は断られたのかとか思って」
「その前に、お兄ちゃん、高橋さんに『好き』とか『愛してる』とか言ったりした?」
「あん?」
「言ってないでしょ、だからだよ。エッチだけの関係には、なりたくなかったんだよ」
「だけど、あいつから誘ってきたのも、いきなり『エッチしよう』だぜ?」
「それが高橋さんなりの告白だったんじゃない? 自分からは恥ずかしくて『好き』って言えなかったんだよ」
【続く】
271名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 03:17:56 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(21)】

「そんな、ややこしー」
「でも、きっとそうだよ。好きじゃなくてもエッチはできるけど、好きじゃない同級生とはエッチしないよ。
 だって、お金もらえるわけじゃないし、その……エッチ自体、ヘタクソでしょ、中学生の男の子なんて。
 だから、ただエッチしたいだけなら誘ってないよ、お兄ちゃんを」
「おまえに恋愛のアドバイスされるハメになるとは思わなかったよ」
 憮然としながら祐介は、香織の顔を見て、
「そう言うおまえは、どうな……」
「え……?」
「……いや、何でもない」
 気まずく口をつぐむ。香織のエッチの相手の誰かが、彼女に「最悪の病気」を伝染(うつ)したのだ。
 だが、香織のほうから、口に出した。
「矢島さん」
「え?」
「初めてのエッチの相手。あたしに病気、伝染したのも」
 ――キキキキキーーーッ!
 祐介は思わず急ブレーキを踏んだ。
「きゃあっ!?」
 香織は前につんのめり、シートベルトで座席に引き戻された。
「ちょっ、あぶないって、お兄ちゃんっ!!」
 抗議する香織に構わず、祐介は声を荒らげた。
「矢島って、おまえ……!?」
「お兄ちゃんの友達だよ。前にお兄ちゃんが家に連れて来たとき、メルアド交換して」
【続く】
272名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 03:23:05 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(22)】

 祐介はハンドルにもたれて顔を伏せた。怒りのもって行き場がなかった。
「あのヤロ、くそっ、なんだって……!」
「あたしが悪いんだよ。ほかに何人も付き合ってる子がいるの、知ってたのに」
 こともなげに香織は言う。
 確かに、ただ処女を奪われただけなら、「あたしがバカでした」で終わる話だろう。
 だが、その結果、香織は人生が破滅するような病気に感染させられたのだ。
 祐介は、香織を睨みつけ、
「おまえ、いったい、なんのつもりで……」
「外国でヤバイ病気が流行ってて、そのうち日本でも広がるとかニュースで言ってたのは知ってたけど。
 だけど、まさか自分がと思ってさ。それより、彼のことが好きだった。……好きだと、思い込もうとした」
「……それで済む話じゃねーだろ……」
 祐介は頭を抱える。
(こいつ、芋虫になるショックで、頭イカレたのか……?)
 あまりに淡々とした香織の態度に、そう思わざるを得ない。
 香織は、祐介に微笑みかけた。
「でも違うの。あたしが本当に好きだったのは、お兄ちゃん。矢島さんは、その代用品」
「おまえ……」
 祐介は香織の顔を見る。怒っていいのか、嘆くべきか。
「おまえ、気が高ぶって、おかしくなってるだろ?」
「ううん、違う。この気持ちは、ずっと前からだもん。ただそれを口にできなかっただけで」
「で、いま告白か? ……いい加減にしろっ!!」
 祐介は、妹を怒鳴りつけた。
【続く】
273名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 03:28:22 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(23)】

「おまえ、いまどんな状況か、わかってるのか? おまえの身体が、芋虫みたいになっちまうんだぞ!」
「わかってるよ、そんなこと!」
 香織も叫ぶ。
「だから、あたし、いま普通の精神状態じゃないよ! 普通じゃないから、普通じゃないこと言ってんの!
 だって言えないもん、自分のアニキが好きだなんて! そのアニキに、面と向かって!
 ずっと隠してた、誰にも言えないで! だからいま言うの! 普通じゃない、いまだから言えるの!」
「…………」
 祐介は、じっと香織を見詰める。
 香織は眼に涙をためて……それでも微笑んで、言った。
「愛してるの、お兄ちゃんのこと。矢島さんなんかじゃなくて、お兄ちゃんとエッチしたかった……」
「…………」
「でも、無理だよね。お兄ちゃんにとってみれば、あたしはただの妹だし……それに。
 あたし、もうすぐ芋虫のバケモノになっちゃうんだから……」
「……くそっ」
 祐介は前に向き直り、アクセルを踏み込んだ。車は急発進した。
 香織は口をつぐんだ。祐介も何も言わない。
 黙り込んだ二人を乗せて、車は走り続け――
 やがて、都県境の川を見下ろす築堤の上で停まった。
 祐介は、エンジンを切った。
「……はあっ」
 ため息をつく。
 香織は、何も言わない。
【続く】
274名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 03:33:56 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(24)】

 まっすぐ前を見たまま、祐介は言った。
「……中学のとき、高橋から聞いた話でさ。元ネタはネットらしいから、あいつにしては信憑性は怪しいけど。
 ある家族が旅行中に、船だか飛行機だかが遭難して、年頃の兄と妹だけ無人島に漂着したんだって。
 で、二人で助け合って生きてたんだけど、ようやく二年後に救助が来てさ。
 そのとき妹は一歳の赤ん坊を抱えて、もう一人の子供がおなかの中にいたんだって」
「…………」
 黙ったままの香織に、祐介は言葉を続けて、
「その話で、高橋と議論になってさ。自分が無人島に漂着したら、同じことをするかどうかって。
 高橋のところは、弟がいるだろ? でも、高橋は絶対、弟とはヤらないって、キショク悪いって言ってさ。
 そりゃそうかもしれないけど。あいつの弟、オヤジの跡継いでヤクザ決定みたいな、海坊主みたいな顔だろ?
 もっともオヤジさんはカタギにしたいらしいけど」
「……お兄ちゃんは?」
 香織が口を開く。祐介は、ふっと表情を和らげ、
「俺は、迷わずヤるって言った。二年もヤらずに我慢できねーって。そしたら、高橋が……」
「うん……?」
「『香織ちゃんの処女をキズつけるのは仕方ないけど、心をキズつけるのは絶対やめな』ってさ。
 『無理やり襲ったりしなければ、そのうち香織ちゃんのほうからヤらせてくれるから』とか言って」
「何それ、勝手に決めつけて……」
 香織は、くすくす笑い出す。祐介も笑って、
「俺もそう思ったよ。だって、香織はエッチなんかしなくても生きていけると思ってたから。
 だいたい、いまみたいな下ネタの会話だって、受け付けてくれてるのが奇跡みてーに思えるよ」
「そうだよね、自分でも不思議。お兄ちゃんとこんな話をしてるなんて」
【続く】
275名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 03:39:24 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(25)】

 香織は祐介に微笑みかけた。
「でも……やっぱりあたしは、エッチしなくても、生きていけるよ。たとえ、ここが無人島でも。
 だって、芋虫になるあたしは、エッチする資格ないもん。エッチしなくても、お兄ちゃんと二人なら……」
「それじゃ俺が困る。ていうか、無人島だったらそんなの気にする必要ないじゃん、他人に伝染す心配ないし」
「あたしは人間じゃない、バケモノみたい身体になるんだよ? それでもエッチしたいと思う?」
「ネットで見たけど、外国には、芋虫になった女房や彼女とヤりまくってる男もいるらしいじゃん。
 だから芋虫になっても、身体の機能としては充分、エッチできるってことだろ?」
「いつかは救助が来て、無人島から出られるかも知れないのに。そのとき後悔しても手遅れだよ?」
「後悔しないくらい、惚れさせてみろよ」
「え?」
「あ、いや」
 祐介は赤くなって、視線をさまよわせ、
「悪い。自分でも言ってて恥ずかしかった」
「……お兄ちゃん」
「あん?」
 振り向く祐介に、香織は微笑んだまま、
「そう言ってくれて、香織は嬉しい。でも、ここは無人島じゃないし、お兄ちゃんは逃げようと思えば、
 いまならまだ逃げ出せるんだよ?」
「香織……」
「うん?」
「好きだ。愛してる」
 祐介の言葉に、香織は眼を見開いた。
【続く】
276名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 03:44:52 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(26)】

 祐介は、じっと香織を見つめ、
「高橋に、そう言わなかったのは、俺にとってあいつはそういう相手じゃないからで。
 もちろん、いまでも友達として付き合ってくれてるあいつには、一生モノの借りができたと思ってるけど。
 いまは中学のときほどガキじゃねーし、だから、自分の気持ちをはっきり言える。香織、おまえを愛してる」
「……お兄ちゃん……」
 香織の眼から、涙がこぼれた。
「そう言ってくれるのが、芋虫になるあたしに同情したからだとしても、あたしは、素直に嬉しいよ。
 だって、あたし、家を出るのにお兄ちゃんを道連れにした悪いオンナだもん。
 お兄ちゃんを独占できるなら、それでいい」
「俺も、無人島に行ったら妹でもヤりたい悪いオトコだし。だけど、絶対、浮気だけはしないと約束する」
「当然だよ。こんな病気、他人に伝染したら犯罪者だよ」
 くすくす笑う香織に、祐介はシートベルトを外し、身を乗り出して顔を近づける。
「香織……」
「お兄ちゃん……。あたしも、愛してる……」
 微笑みながら眼を閉じた香織に、祐介は、唇を重ねた。
 兄妹として十六年間を過ごして来た二人が、初めて一線を越えた瞬間だった――
 
 祐介は、父親へ宛てて手紙を書き送った。
『父さんへ。
 香織と一緒に家を出ます。心配をかけることになって、ごめんなさい。
 香織はニュルンベルク病になりました。僕が何度か家に連れて来た矢島から伝染されたそうです。
 だから責任は僕にもあります』
【続く】
277名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 03:50:47 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(27)】

『香織は母さんに病気を知られたくないと言いますが、何も知らせないわけにいかないので手紙を書きました。
 申し訳ありませんが、母さんには父さんから伝えてください。
 香織は僕が守ります。香織もそうして欲しいと言ってくれています。
 心配しないでとは言えませんが、僕を信じてください。――祐介』
 
 そして、二人で暮らし始めて半年後――
 祐介はラーメンのスープを飲み干して、座卓にドンブリ――ならぬ、鍋を置いた。
 膝の上の香織が、眼を丸くして、
「スープ、全部飲んじゃったの? 身体に悪そう……」
「仕方ねーだろ。九時からまたバイトだし、ちょっとでも腹ふくらませとかねーと」
「あんまり無理しないでね。アニキに寝込まれても、あたし看病できないんだから」
「そんときは、この無駄にいっぱいあるオッパイを、氷嚢(ひょうのう)代わりに俺のオデコに載せてくれ」
 言うなり祐介は、香織の一番上の乳房をわしづかみにした。
「ひゃあっ!? ちょっ、ちょっとアニキ……」
 香織は身をよじって抗うが、祐介は両手で後ろから香織の乳房を弄ぶ。
「メシの間、ずっと我慢してたんだ。さあ、ヤらせろ」
 香織の胴体に複数ある乳房は、一番上の一対が、人間の身体だったときからのものである。
 だが、その下に並ぶ幾対もの乳房も、形といい手触りといい、元からの乳房と遜色なかった。
 身体中の乳房をもみくちゃに弄ばれても、手足のない香織は身をよじるばかりで抗うすべがない。
「あっ、やっ、やあっ、そんな、乱暴、だめっ……」
 ――いや、一つだけ抵抗の方法はあった。
 香織の乳房が、祐介の手が触れていないものも含め、ぷるぷるぷる……と、意思を持ったように蠢きだした。
【続く】
278名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 03:56:27 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(28)】

 芋虫のような胴体に「腹脚」のように並ぶ乳房は、実際、脚としての機能を持つのであった。
 祐介の手をはねのけるように、乳房はぷるぷると蠢いたが、
「暴れるなって、バカ香織」
 ぎゅっと両腕で身体を抱きしめられてしまえば、結局、香織は逃げられなかった。
「やだ、もうっ、アニキのバカッ!」
 わめく香織の顔を、後ろから覗き込み、
「香織……」
「何よ?」
「まだ堅いだろ?」
「……うん。ずっと当たってる、あたしのお尻に」
 香織は頬を赤らめる。意地悪をされて抵抗している間も、「それ」の存在は意識していたのだ。
「だけど、『ヤらせろ』って言い方ないでしょ、身も蓋もない」
「エッチさせろ」
「一緒だってば」
「犯すぞ」
「だから……」
「もういーや、メンドくせー」
 祐介は、香織の唇を唇でふさいだ。お互い、余計なことを言うから喧嘩になるのだ。
「んっ……」
 香織は抗わず、眼を閉じる。
 妹の唇の間に、兄は舌をこじ入れた。前歯をなぞり、舌先に触れ、舌同士を絡め合う。
 唇を離す。唾液が糸を引いた。
【続く】
279名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 04:01:42 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(29)】

 香織は祐介を見つめて、
「……お兄ちゃん」
「ん?」
「もっと、香織に優しくしてよ……。あたし、お兄ちゃんがいなくちゃ生きていけないんだよ……」
「なら人のこと、バカバカ言うな」
「それは……だって、つい甘えちゃうんだよ、お兄ちゃんに」
「俺も、つい苛めたくなるんだよ、おまえを見てると」
「バカ……」
 香織がとがらせた唇を、祐介はもう一度、唇でふさいだ。
 それから、香織の背中を支えながらゆっくりと、その身体を床に仰向けに寝かせる。
 眼を潤ませた、とびきりの愛らしい顔と。
 形のいい乳房が――しかし異様に何対も並ぶ、手足のない芋虫のような胴体と。
 ぬらぬらと早くも蜜液をあふれさせている、淫らで妖しい薔薇のような女性器と。
 香織の全てを祐介は眺めて。
 彼女の傍らに膝をつき、その身体にのしかかるように、口と手で乳房を責め始めた。
 れろれろと舌で乳首を舐め上げ、こりこりと別の乳首を左右の手で弄ぶ。
「はんっ……、くふっ……、あふぅ……」
 きゅっと眼をつむり、陶然と香織は声を上げる。
 祐介が責めるべき乳房は――香織が責められるべき乳房は、何対もあった。
 軽く歯を立て、ちゅっと唇で吸い、舌でなぞって、祐介は一つずつ次々と、ねぶり上げる。
「……んくっ、おにい、ちゃん……はあっ……」
 高まる快感をこらえきれず、香織は身をよじる。
【続く】
280名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 04:06:49 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(30)】

 胴体の一番下の乳房まで吸うと、淫らな蜜壷は、すぐ眼の前だった。
 つるりとした剥き卵のような陰阜と、ぷっくら肉厚の大陰唇と、薄い花弁のような小陰唇。
 莢に包まれた、文字通り豆のような陰核。赤く丸い口を開けた膣口は、とろとろと蜜をあふれさせている。
 芋虫への変化に伴うものか、強烈に甘い匂いを放つようになったその部分は、熟れきった果実を思わせた。
 愛らしい顔をした少女の肉体に、これほどまで淫靡な器官が備わっているとは。
 ぱっくりと自然に広がったその部分全体に、祐介は、れろりと舌を這わせた。
「はあうっ……!」
 香織は、びくんと身体を仰け反らせる。
 それから祐介は、香織の女性器のパーツ一つ一つを、指と舌で丹念に愛撫した。陰阜と、陰唇と、陰核と。
「はあんっ……んあっ……くうっ……いや、あ……とけ、ちゃうよ……」
 芋虫と化した身体をわななかせる香織に、祐介は、もう一度キスをする。
 舌と舌を絡め合う。その間、指は香織の秘部を弄び続ける。
「……お兄ちゃん……」
 香織は眼を開け、とろんとした瞳を祐介に向けた。
「お兄ちゃんにも、してあげる。口と、オッパイで……」
「ああ」
 祐介はうなずいて立ち上がり、パーカーとジーンズと下着と、身に着けていたものを全て脱いだ。
 ついでに邪魔な座卓も部屋の隅に押しやり、床に腰を下ろして、両脚を前に投げ出す。
 色は白いが、引き締まった身体だ。端正な顔立ちと相まって、香織にとって理想的な男性像である。
 香織は、ごろりと床の上を転がって、うつ伏せになり、兄の股間に屹立したモノに顔を近づけた。
 すらりと天を差したそれは、抜き身の刀のような凛々しさだ。
 恥ずかしくて口には出せないけど、(お兄ちゃん、オチンチンまで格好いい……)と、香織は思っている。
【続く】
281名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 04:11:57 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(31)】

「んしょ……」
 口が届かなかったので、もぞりと香織は床の上を這い進んだ。
 そして、大きく開けた口に、兄であり恋人である男のモノを、くわえ込む。
「んっ、んっ、んっ……」
 胴体を反らして頭を上下させ、口全体で肉棒をしごき上げた。
 祐介は手を伸ばし、香織の髪を、手で梳くように撫でてやる。
「……ぷあっ」
 香織は口から祐介のペニスを放した。自身のよだれに濡れ光ったそれに、眼を細め、
「んっしょ……」
 床の上をさらに這い進んで、祐介の下腹部にのしかかる体勢になる。
 そして、胴体に何対もある乳房で、ペニスを挟み込み――
「んんっ……!」
 祐介は、思わず眼をつむって声を上げた。
 幾対もの乳房が、もぞもぞと不規則に蠢き回り、ペニスをしごき始めたのだ。
 芋虫に変貌した女体ならではの責めである。
 しかし、快感を味わっているのは香織も同様だ。人間の身体のとき以上に、乳房の感度が増しているのだ。
 頬を高潮させ、眼に涙さえ浮かべ、香織は、祐介に微笑みかける。
「……感じちゃってる、お兄ちゃん? あたしも、感じてるよ……」
 蠢く乳房に責め立てられて、
「……か、香織……」
 祐介は息を荒くして、妹の髪を、くしゃくしゃと撫でる。香織は慈母のような笑みを浮かべ、
「オッパイでイっちゃう? イってもいいよ、お兄ちゃん……」
【続く】
282名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 04:17:05 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(32)】

「いや、待て……」
 祐介に身体を押しやられ、香織は、仰向けに床に転がされた。
「きゃっ……」
「ちゃんと、中で出させろよ」
 と、祐介がその上にのしかかり、香織が何か言う前に、キスで口をふさいでしまう。
 うっとりと眼を閉じた香織の、胴体に並ぶ乳房の下――女性器を、片手で探り当て。
 祐介はそこに、自身のペニスを導いた。
 しどけなく口を開けているそこに、ペニスを突き立てる。その先端が、膣口に当たった。
 両手で香織の身体を抱え、窮屈な膣口を押し広げるように、ぐっと腰を突き上げる。
「ああっ……あっ、あっ……おにい、ちゃん……」
 熱く火照ったその部分に、めりめりと祐介のペニスが呑み込まれた。
 そして、兄は腰を動かし始める。
「……いっぱい注いで、お兄ちゃんの……」
 妹は潤んだ眼で兄を見上げ、微笑む。
 香織の身体は《ニュルンベルク病》が発症したあとも、月経が周期的に訪れていた。
 つまり、医学的な常識で考えれば、芋虫になった身体でも生殖能力は失っていないということだ。
 この恐るべき病気は、何故か妊娠中の女性だけは感染しない。
 ならば、感染者である香織が妊娠した場合には、何が起きるのか?
「もしかすると、人間の身体に戻れるかもしれないね」
 香織はそう言って、祐介に、セックスのときは中で射精するよう頼んでいた。
 可能性としては、限りなく低いけど。もしかすると、芋虫の子供が生まれるだけかも知れないけど。
 外国でも感染者の女性が妊娠した事例は、まだないらしい。
【続く】
283名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 04:22:12 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(33)】

 だったら、自分たちが第一例目のカップルになってやろうと、香織は思っている。
「んっ……、あっ……、んく……、ああっ……」
 祐介のリズミカルな腰の動きに合わせ、海の波に洗われるように、快感が香織の全身を覆う。
 身体の中が、最愛の兄のモノで満たされている。心の中も満たされている。
「んっ、はっ、くっ、んっ……」
 祐介の荒い息遣いが、耳に心地よい。頬にかかる吐息も心地よい。
「香織……」
 再び唇を吸われた。舌を絡め合った。快感は高まり続ける。
「あっ、あっ、おにい、ちゃん、あっ、かおり、あっ、いっ、いっちゃ、あっ……!」
「んくっ、くっ、んっ、香織……!」
 祐介が腰の動きを限界まで早め、そして。
 二人、同時に、果てた――
 
 汗のにじんだ身体で、祐介と香織は二人並んで床に横たわり、天井を見上げていた。
 祐介が伸ばした片腕を、香織は枕代わりにしている。
「アニキ……」
 香織が口を開き、祐介は答えた。
「あん?」
「……お兄ちゃん」
「だから、何だよ?」
 祐介は妹の顔を見た。香織も兄の顔を見て、微笑み、
「あたし、いつからアニキって呼ぶようになったんだろ」
【続く】
284名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 04:27:20 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(34)】

「俺が中古で買った自転車に、おまえが、もっとマシなの買えとか文句つけて喧嘩になって、それからだろ」
「そうだっけ?」
「ああ」
 祐介はうなずき、天井に視線を戻す。香織は、その兄の横顔を見つめたまま、
「……祐介」
「あ?」
 祐介はもう一度、香織を見る。香織は悪戯っぽく笑って、
「今度から、祐介って呼ぶね。そのほうが、もっと恋人っぽいし」
「じゃあ、バカアニキ呼ばわりも、もうナシだな」
「それはないよ、バカ祐介」
「はあっ?」
「語呂がいいもん、バカ祐介、バカ祐介」
「うるせー、バカバカ言うな、バカ香織」
「やっぱりやめた。アニキでいいや」
「どっちなんだよ?」
「エッチの間だけ、お兄ちゃんって呼ぶことにする」
「それじゃ、いまと一緒じゃねーか」
「お兄ちゃん」
「あん?」
「もういっぺん、エッチしよ?」
 にっこり微笑む香織の顔を、祐介はあきれたように見て。
 やれやれと苦笑すると、体を起こして香織に顔を近づけ、その唇に、唇を重ねた――
【終わり】
285251:2006/07/10(月) 04:32:05 ID:ETwGEYMa
【妹蟲(あとがき)】

連続投下スマソ
まあ、ご覧頂いた通りの話です

【以上】
286名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 21:27:10 ID:ieZcHdrX
287名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 22:42:52 ID:Z+y5UyQa
>>251
GJ!
288名無しさん@ピンキー:2006/07/10(月) 22:52:26 ID:TbJVPWwn
「彼岸島」って漫画の「姫」を連想してしまった。
アッチも一応人間が変化したものなんだが・・・。

ttp://www.amazon.co.jp/gp/product/4063614549/503-6160010-5244707?v=glance&n=465392
289名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 05:31:44 ID:IMwXmrvG
初めてこのスレを見ましたが、ここの作品はおぞましくも斬新なエロスに満ちていると思いました。
間違いなく、吐き気がするほどの良作です。
290名無しさん@ピンキー:2006/07/12(水) 06:52:38 ID:ey6BzwjG
>>251
ふと導かれるようにこのスレに引き寄せられて、
偶然おまいさんのSSに出会った。
なんと言うか、縁のようなものを感じた。

まぁ、なんだ?
GJ! グロ切ねえ。
291251:2006/07/14(金) 00:41:58 ID:M6KeQUY2
>>286
thx!!
って、こんな画像どこから?w

>>287
THX!

>>288
あれ元は人間だったのか
人間からあの姿に変貌するシーンもあったのかな
知性はカケラも残ってなさそうだが

>>289
ベルゼブブの続きに期待する今日この頃であります

>>290
THX!
香織としては兄と結ばれた今は幸せかも
刹那的ではありますが
292名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 04:13:17 ID:T0dKT36L
age
293 ◆eJPIfaQmes :2006/07/14(金) 23:51:45 ID:p47X+kkL
>285
蟲化にして異形化でもありますね。素晴らしい。
エロくて、エロ以外の部分もしっかりしてて、構成がきちんとまとまっている。
いいもの読ませていただきました。


投下されたその日には↑の感想書いたのに、投稿できなくなってて……。
今回は大丈夫かな。
>291
ご期待くださってありがとうございます。
少し余裕がでてきたので、完結へ向けて近いうちに再開しようかと思ってます。
294251:2006/07/16(日) 00:57:10 ID:uLj2sxYO
>>293
ベルゼブブの話がなければ、このスレもここまで続いてないはずで
このスレがなければ「複乳→腹脚」というネタを投下する機会もなく
その意味で全てはベルゼブブあったればこそなのであります

ご多忙中のようですね
気長に待っています (・_・)ノ
295名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 04:57:57 ID:FAbyVycU
定期age
296名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 04:44:32 ID:vbLKkbPy
定期age
297名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 13:16:38 ID:jpXKOATC
芋虫化した女性はそのうち繭になって、繭が破れて出てくるのは…
298名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 15:18:53 ID:XjVrBfdr
繭が破れてスライムになって出てきますy
299名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 17:06:20 ID:Zm77coR5
それじゃあ今度はお兄ちゃんの全身にまとわりついて愛撫したり、
人型に擬態してみようと懸命に練習したりするのですね。
300名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 21:11:04 ID:FGYn5Hre
スライム少女(;´Д`)ハァハァ
ひんやりしてこの時期とても気持ち良さそうだ
301251:2006/07/17(月) 22:40:51 ID:tD94H49x
スライム少女萌えw
人型擬態萌えw
ひんやり萌えw
というわけでどなたか職人様(人任せ)

えーっと、繭になるネタは考えていて、それに備えた伏線らしきものも張ってましたが
この話はここで終わりでもいいのかなと思ったり


話は違いますが
10年以上前ですがモーニングに掲載された読切で「渚の頭足天女」って漫画がありました
主人公と同棲中の彼女が、理由は不明のまま手足が蛸になっていく
さらに下半身まで蛸になるなど症状が進み
ある日、食べかけの菓子パンを残して失踪してしまう
設定は悲劇ですが、可愛い絵柄のおかげで救われている
なんというか切ない話

ネットで検索すると、作者の能勢邦子って人は、他にもう1作短編(こちらは読んでないですが普通の恋愛物らしい)を
描いただけで姿を消しているようです

ぜひ異形化恋愛ネタで描き続けて欲しかったですが
302名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 00:45:39 ID:dxeN19P/
夏はひんやり…ということは、冬になるとちょっと湯煎して適当な入れ物に入れ
湯たんぽ少女の出来上がり?
303名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 02:49:59 ID:G9vxrACX
定期age
304名無しさん@ピンキー:2006/07/18(火) 22:25:34 ID:G9vxrACX
定期age
305名無しさん@ピンキー:2006/07/19(水) 00:15:30 ID:/iXCC8YE
>>301
えーと、その作者さんは蛸になったために失踪したという認識でよろしいのか?
306251:2006/07/19(水) 07:38:55 ID:6zb/5xIc
>>302
スライムになったばかりにすでに人間扱いされてないですな
あー人間扱いされないネタも萌えですなー

>>305
座布団一枚!

ちなみにタイトルは「海辺の頭足天女」が正しかったみたい
307名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:22:53 ID:49QpLp6H
>>306
いえいえ、湯たんぽ少女を抱いてお兄ちゃんは一言、こう言うのです。
「香織、お前、暖かいよ」
308名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:53:35 ID:d+p2f5J3
定期age
309名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 04:18:48 ID:CruWtGej
定期age
310名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 01:46:29 ID:I9AmMz3f
>>307
中の人は地獄だろうけどw
311名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 02:16:57 ID:tUB2Vfqj
定期age
312251:2006/07/23(日) 07:18:01 ID:PSPhzGve
>>307
湯たんぽに入れちまった日には挿入できませんw

>>310
昔ながらの空気でふくらませるダッチワイフに不定形少女を入れて
リアルで喋るダッチドールの出来上がり
というネタもあり得ますな

どなたか職人(ry
313名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 12:05:41 ID:nChK1G0P
>>321
>空気でふくらませるダッチワイフに不定形少女を入れて

焼きたて!!じゃパン…恐ろしい漫画
314名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 16:12:51 ID:Y3vaPB7n
>ジャぱん
あの女では勃たぬ
315名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 22:49:52 ID:dT1HC5xA
>>313-314
kwsk
316名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 23:47:53 ID:72NzWPXY
>>315
敵の女(美人だが性格は最悪)が
主人公のパン食べたリアクションで空気そのものに変身。
 ↓
そのまま空気のままでいるわけにはいかないので、
とりあえず空気人形(ブサイク)の中に空気入れで押し込まれた。

ちなみにこの一連の話は22巻に収録。なんか分かりにくい説明でスマソ。

どうでもいいがジャぱんって、
同じく主人公のパン食べたリアクションで男がパンダや鳥の雛や亀になったりしてるんだよな。
317名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 00:42:30 ID:DLUZdxK2
>>316
なんですか、その素で人外への変身しまくりは
318名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 00:57:27 ID:bIifOaRU
       : .,iilllllllllllllllllllllllllllllllll!!!!!!!llli,,             
       ,illllllllllllllllllllllllllllllllllll゙:   ゙!llli:             
      :illlllllllllllllllllllllllllllllllll:|  : : : ..lllll、            
      :llllllllllllllllllllllllllllllllllll:|: : : :::: `''!l|:            
      :llllllllllllllll!゙l゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゚"゙l、:::::::::: : ゚K            
      :l!!llllllll',,,,,,,,,,,ii、:,iiiiiiiiillll、:::::::: : └。          
       ゚'゙゙lllll,lllllllllllll: ゙!!llllllllll: ::::::::::::: : │          
        `゙llll゙l!!!゙゙”、.'!i, ̄゛,l゙: ::::::::::::::: .゙l,:          
        : ゚ート: : : ゙ ゙″: .|: : :::::::::::::::: `}:          
          "k,_,||ニニ '"`: :::::::::::: : :  ゙l:          
      ,,r‐冖''''': '″ _,,,,,,,,,,,,,,,,,.: :     .|,..、      
     ..,l゙   ,――ー'°: : :          ゙√''i、: 、    
    : .,°  : ,,!         : : : : :      .|::::::‘'l,`''i、   
     |: : : : :,「: : : : : : : : : ::::::::::::,,。,,,:     .|:::::::::;゙l,,: `゚'r、
    .゙ュ_:::::::,レ:::::::::;.,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,/: :       トi、::::::::::゚', : :゙l
 .:r‐‐'"`.ア゙゙|"゚=,,,广: :                  ゙li、: :::::::::゙l、 : ′
 │   ,l°::|::::.,w′      : : : : : : : : : :   : .|:゙l:: ::::::::::|:   
 │  .,r′::::|:,l"゙l: : : : : : : : ::::::::::::::_,r‐―‐:    |│:::::::;:::;|:   
 │ ,i´:::::: : :l′゙l-ι:::::,,,,r''''~゙゙゙゙゙゙″       |::}::::::;;;;;│  
  " : |:::::: : : : : : :l゙ : ‘/゙゙i、          : : : │|:::::;;;;;; |:  
319名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 01:12:57 ID:UIQn1u0Q
動物ならまだいい方だろ。
死んだり、歴史を変えたり、宇宙行ったり、
果てはダムになったり、ゴザになったりしてるんだぜ。
320名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 11:47:04 ID:2mLAcnNR
昇天させたりなんなりとまぁギャグマンガ的な要素が多かった。
ガンダムやらセーラームーンがでてきてたしアレ。
321名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 19:04:46 ID:r+NPvu8e
ドラクエ2の王女きぼんゆ
322名無しさん@ピンキー:2006/07/26(水) 22:21:04 ID:xTyffkjU
定期age
323名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 05:38:15 ID:v3bOHTrF
ゼルダなんかいいんじゃないか?ライクの指輪だとか仮面だとか・・・
ライクライクにされるリンクにモエス
324名無しさん@ピンキー:2006/07/30(日) 00:53:44 ID:xe/tmJU+
ショタゼルダは異形の存在にアレされたりコレされたりするのがいいなぁ
スレ違いだなスマソ
325名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 14:54:15 ID:ymurhqix
ヤバイ。>>323がツボった・・・ハァハァ
>>323 はよ書け
326名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 02:36:47 ID:AOOqe2rN
ほしゅ
327名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 18:22:56 ID:F/cApr2X
ホシュ
328名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 00:38:42 ID:BDbeCf+0
hosyu
329名無しさん@ピンキー:2006/08/10(木) 17:18:20 ID:lV814ScY
定期age
330名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 00:41:27 ID:yIEpULFS
hoshy
331名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 17:32:51 ID:wHZ/Jags
このジパングもうちょいでパンク
332名無しさん@ピンキー:2006/08/18(金) 16:03:20 ID:1DhQIfZ4
こいつあまるで火事場
すげえ熱気溜まっちまう島国デンジャー
ますます上がっちまうカモン!
333名無しさん@ピンキー:2006/08/19(土) 06:17:33 ID:aPoLvGAB
俺がSYA(ry
334名無しさん@ピンキー:2006/08/20(日) 13:59:56 ID:6zbJJq/z
蛆娘の作者はどこいった
335名無しさん@ピンキー:2006/08/21(月) 13:19:02 ID:sp//G/x6
じゃパンというとマンタとかもあったなぁ・・・
目の位置が腹にあってキモかった覚えが
336名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 18:50:56 ID:18tXt77H
hoshu
337名無しさん@ピンキー:2006/08/25(金) 23:16:36 ID:+elsidhC
ベルゼブブの人マダー
338 ◆eJPIfaQmes :2006/08/26(土) 00:48:00 ID:QYX0Dxrt
>334
>337
ごめんなさい。現在パソコンを長時間使えない環境になってしまっているもので……。
来月半ばには本来の環境に戻るはずですので、ベルゼブブはそれから再開するつもりです。
339名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 13:08:02 ID:RGQ9eTrV
wktkして待っております
340名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 18:44:32 ID:LnQFs/ZN
341名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 20:35:36 ID:Cy6rsAQX
>388
いつまでも待ってます
342名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 20:11:37 ID:+PrwjDJX
hey you
343『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/09/03(日) 06:28:04 ID:Wvr5sOUR
「コゼット、ジェラール、ユベール、イヴォンヌ、助けて……」
わたしが声をかけた瞬間、コゼットを除く三人はわたしがいる木の上に視線を向け、
身構えた。コゼットはこんな場所でいきなり自分の名前が呼ばれたことに戸惑ったのか、
ぼんやりと突っ立ってしまっている。
「……フローランス?」
斧を構えながら、まずジェラールが口を開いた。
半年前に悪魔の根城で死んだはずの仲間の声。私が三人の立場なら、まず疑うのは悪魔の
策略。死体にかりそめの命を与えてアンデッド系の死骸人形を作るか、死体から声だけを
抜き取って魔物に移植するか。だがそれらの場合、フローランスの自我は失われる。あの
場にいた三人はともかく、コゼットの名前まで咄嗟に口に出せるはずがない。
よって、残る可能性として、わたしが何らかの手段で生き延びたという選択肢が三人の
脳裏に浮かんでいるはずだ。さもなくばとっくに猛攻を受けて致命傷を負っている。
「生きて、いたのか?」
「油断しないで。心を操られているかも」
ユベールを叱責したイヴォンヌの右手は、すでに赤く輝き出している。火球が形作られる
のは時間の問題だ。
彼女の危惧はもっともである。高位の悪魔となれば人間の精神を束縛することすら可能。
胸に飛び込んで来たかつての仲間が笑みを貼り付けたまま短刀を突き刺してきたりしたら
かなわない。
わたしは急いで次の一手を打った。声だけでなく、知識だけでもなく、人間としての心も
失ってはいないことを示さなければ。
344『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/09/03(日) 06:29:06 ID:Wvr5sOUR
「コゼット、教会のみなさんは元気? 司教様は相変わらず、朝は寝癖を直すのに苦労
してるかしら?」
「は、はい」
冒険者としては新米の僧侶は、裏返った声で可愛らしく答えた。
「イヴォンヌ、街への帰還呪文を唱える余力は残ってたのね。よかったわ」
冷静な魔法使いは、わたしの言葉を吟味するように眉をひそめる。でも手の中の火球が
膨らむ気配は今のところない。
「ユベール、その剣はまたアイゼンの店で買ったの? つけがだいぶ溜まってたんじゃ
なかったかしら」
やや気取ったところのある剣士は、痛いところを指摘されたように顔をしかめる。
「ジェラール、無事でいてくれてよかった」
ケルベロスに襲われた際、わたしの次に重傷だったのはジェラールだった。
「あの時は怪我をきちんと治してあげられなくて、ごめんね」
「いや……俺こそ、すまなかった」
朴訥な戦士は、木陰に潜むわたしを一度見上げると、深々と頭を下げた。
「謝って済むことじゃないけど、あの時おまえを見捨てたのは俺の指示だ。本当に、
本当に……ごめん」
「気にしないで。あなたの判断は正しかったわ」
ジェラールはああ言ってるけど、実際には彼の独断ではない。わたし自身が言い出した
ことだし、イヴォンヌとユベールが同意したのを、最後の最後にリーダー的立場にあった
彼が決断したのだ。
345『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/09/03(日) 06:29:45 ID:Wvr5sOUR
「あなたにもう一度会えて、嬉しい」
「フローランス……」
「ジェ、ジェラールさん、気をつけないと……」
わたしとジェラールが話し込みそうになっていると、コゼットが割って入った。
「心配には及ばないんじゃないかな、コゼット。こうして口をきいている彼女は確かに
フローランスのようだし、その傍に化け物蠅の魔物が潜んでるような気配もない」
ユベールが油断なく剣を構えながらも言い切る。自分がフローランスだと認めてもらった
嬉しさとともに、自分の今の姿が化け物であることを改めて痛感させられた。
「ただ……フローランス、あなたどうして木の上なんかにいるの? あなた木登りなんて
得意じゃなかったはずだけど?」
イヴォンヌが当然の疑問を口にしながら、火球を収めた手を今度は光らせ始める。
まばゆい光の下に蠅となったこの身を晒されるのは耐えられなかった。
「……順を追って説明するわ。それで、お願いがあるんだけど……わたしの姿を見ようと
しないで」
「わかった」
誰よりも早くジェラールが宣言して、口を開きかけていたイヴォンヌたちも黙りこくる。
「ありがとう。……あの時わたしはケルベロスに両脚を食いちぎられて……」
わたしはほとんどすべてを話した。ただ、自分が人でないものに姿を変えられたことは
話せても、蛆虫から蛹を経て蠅になったことだけは口にできなかった。
イヴォンヌやユベールは間違いなく、ジェラールとコゼットもたぶん、わたしが何に
変えられたかは察していることだろう。でも、自分の口からそれを言うことはどうしても
できなかった。
346 ◆eJPIfaQmes :2006/09/03(日) 06:34:53 ID:Wvr5sOUR
予定が早まりまして、パソコンを普通に使えるようになりました。
どんなペースで書けるかはわかりませんが、今後は長期のブランクを作らずに
最後まで書いていければと思っております。
347名無しさん@ピンキー:2006/09/03(日) 23:38:16 ID:+Qyyhsbd
>>343
久々にキタ!激しくwktk!
348名無しさん@ピンキー:2006/09/04(月) 23:10:04 ID:9EoDq3ah
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
349名無しさん@ピンキー:2006/09/05(火) 03:46:23 ID:k6KTOOcM
>>346
お疲れ様です今回もGJでした。
あまり急がず自分のペースで書いていってください
続きを期待してます。
350名無しさん@ピンキー:2006/09/12(火) 07:55:13 ID:trVhZlCM
保守
351名無しさん@ピンキー:2006/09/12(火) 23:23:24 ID:+03sQ3jf
保守!!
352『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/09/13(水) 15:43:09 ID:Ol4DHrFV
「つまり都に行って受肉すれば、フローランスは元に戻れるってことだな?」
わたしの話を聞いてジェラールが口を開いたが、続けて一瞬微妙な沈黙が漂った。
「あの……受肉って、お金、かかりますよね……」
コゼットがその空気を無視するように疑問を口にする。
彼女の言ったことは正しい。教会とて金を取れる時は金を取る。わけても需要と供給が
決して一致しないこんな場合は、莫大な金額を要求する。具体的には、平凡な一家族が
十年は暮らしていけるくらいの金額を。
「……まあ、金の心配は後でしましょう」
「……そうそう。借金は避けられないけど……俺たちの稼ぎなら、少し本気を出せば
短い期間で返しきれるって」
イヴォンヌとユベールがコゼットに言うが、彼らの口調も鈍い。
「しかたないだろう、コゼット。今のフローランスには金を工面することなんか
できない以上、俺たちが肩代わりするのは当然だ」
「…………」
ジェラールの言葉にユベールが視線を投げたが、無言。口を開けば口論になると
考えているからだろうけど、よくない兆候だ。
「あの……ごめんなさい」
なのに話題の中心になっているわたしは木の上から声をかけることしかできない。
吸盤が汚れた肢を摺りながら言うのが、なおさらみじめだ。
「お金は、元に戻れたら一生かけて返すから……だから、今だけ、お願い……」
「そんな当たり前のこと約束されても『だから何?』としか言えないけど」
イヴォンヌはどこか険のある目でわたしを見上げる。木陰に隠れる蠅になったわたしの
姿を見通すように。
353『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/09/13(水) 15:44:42 ID:Ol4DHrFV
「とりあえず、今しなければならないことを考えなきゃね。フローランスの輸送の問題」
「ん? 帰還呪文を唱えれば一発だろ?」
いくぶん表情を和らげたイヴォンヌの提案に、ジェラールは怪訝そうな顔をした。
「いきなり街に連れ帰っても騒ぎになるでしょ。何より、フローランス本人が私たちに
姿を見られたくないと思ってるんだから」
言われて、わたし自身もやっと気づく。みんなに出会えれば色々なことがすぐ解決すると
思い込んでいたけれど、そう簡単ではないことに。
「彼女が姿を隠す入れ物……例えば、檻とか棺みたいなものがいるわね」
「縁起でもない言葉は使うなよ」
「ごめんなさいね。適切な言葉が思いつかなくって」
ジェラールの呈した苦言をイヴォンヌはさらりとかわし、わたしを見上げた。
「もう一日待てるかしら? 一旦引き返して、明日の昼間に入れ物を準備して、また今頃
って感じになりそうだけど」
「それで構わないわ。わたしならこの辺で待っていられるから」
仮に魔物が寄って来ても、額のベルゼブブの紋章を見せれば追い払える。
「水とか食べ物とかは、どうなんだ? いくらか置いていこうか?」
「ありがとう、ジェラール。でも平気よ」
羊の死体という、今のわたしにとっては充分なご馳走がある。飢えも渇きも心配はない。
大丈夫だ。もう一日くらい、何てことない。
354名無しさん@ピンキー:2006/09/13(水) 23:57:32 ID:s5zpV+M1
毎回飽きさせない引きGJです!
すげーこの先の展開がきになるわぁ
355名無しさん@ピンキー:2006/09/14(木) 20:21:13 ID:NuPm9QMQ
GJです!!
続きを期待しております。
356名無しさん@ピンキー:2006/09/16(土) 00:31:40 ID:htCi75zR
GGGGGGGJ!!
今回もすばらしかったです!
でも、焦らされてるみたいで辛いなぁ
続き期待してます!!
357名無しさん@ピンキー:2006/09/19(火) 09:29:31 ID:SZvFrgbT
腐肉を貪るのに抵抗が無くなってる…………。
358名無しさん@ピンキー:2006/09/19(火) 23:28:10 ID:5koCY8e2
鬼とかに変身するSSもこちらですか?
359名無しさん@ピンキー:2006/09/19(火) 23:35:19 ID:qfyULrd2
もしフローラタソが蠅から人に戻れても
食の嗜好が蠅のままだったりしたら、もうね(ry
360名無しさん@ピンキー:2006/09/20(水) 01:14:39 ID:AO5ytFYP
猟奇少女だな。



・・・ちょっといいと思ってしまった。
361名無しさん@ピンキー:2006/09/20(水) 01:35:31 ID:PCtie+DW
「人間に戻ったら腐肉が食えなくなる」と、戻るかどうか真剣に悩むフローラさん…
362名無しさん@ピンキー:2006/09/20(水) 02:02:56 ID:kpTwG2ak
>>358
こちらでしょう。
363名無しさん@ピンキー:2006/09/20(水) 09:52:43 ID:aNaXLesz
ONIか……
364名無しさん@ピンキー:2006/09/20(水) 23:30:47 ID:AO5ytFYP
何への変化が好き?どんな異形化が好き?
365名無しさん@ピンキー:2006/09/21(木) 06:19:36 ID:PD97g7GU
セキツイ動物。
366名無しさん@ピンキー:2006/09/21(木) 11:32:46 ID:r1rw2chN
エゴの鬼神楽の妖怪化エンドとかどうッスかね?
雪女とか良かったんですが
367名無しさん@ピンキー:2006/09/22(金) 02:25:45 ID:dgfviIOS
kwsk
368名無しさん@ピンキー:2006/09/23(土) 16:42:46 ID:YRuhpR2C
保守
369 ◆eJPIfaQmes :2006/09/27(水) 04:08:11 ID:WLVJ9ftj
遅々とした進み具合ですみません。何だか用事が立て込んでいるのですが、
明日の晩くらいに書く暇ができればいいなあと思っております。
370名無しさん@ピンキー:2006/09/28(木) 02:21:05 ID:ClRCh/IX
wktk
371『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/09/28(木) 14:32:22 ID:WKxAvamI
「じゃあ……また明日な、フローランス」
「ええ、また明日……ジェラール」
ジェラールとまた挨拶を交わせるようになったことを嬉しく思いながら、わたしは
四人を見送る。
四人の足音が遠ざかっていく。聞こえなくなってしばらくしたら地面に降りよう。
そう思っていたら、一人だけ戻って来る足音。
イヴォンヌだ。
「どうしたの?」
「あなたを入れる器の大きさを確かめたいと思ったのよ。降りて来て、私にだけ姿を
見せてくれない?」
「…………」
「心配いらないわよ。私も別に新しい呪文覚えたわけでなし、一人で僧侶のあなたを
殺しきれるわけないじゃない」
「そ、そんなこと心配してないわよ!?」
彼女は何を言っているのだろう。そう思った次の瞬間、わたしは自分の今の姿を
思い出す。
フローランスの声で、フローランスのようにしゃべる、巨大な蠅。客観的な視点では
それが今のわたし。悪魔が何らかの仕掛けを施した危険な魔物であるという可能性も、
イヴォンヌの立場では捨てきれないのだろう。
そんな彼女が害意を抱いていないかとわたしが怯えることまで、彼女は考慮に入れて
呼びかけている。
こうした駆け引きを仲間である彼女としなければならないことが、ひどく悲しかった。
「ジェラールもコゼットもユベールも、こっちには来ないよう言い渡してあるわ」
そこまで言われたら、降りない方が不審がられて良くない気がする。
「あの……驚かないでね」
わたしは木の幹から飛び立ち、イヴォンヌの前に降り立った。
372『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/09/28(木) 14:36:16 ID:WKxAvamI
「サイズが大きいだけで、姿形は完全に普通の蠅なのね。羊飼いの子には、角とか牙とか
触手とか生えてたって聞かされてたのに」
身体の大きさはほぼ同じだけど、人間と蠅では姿勢が違う。イヴォンヌはしゃがんで
わたしの全身をあちこちから眺め回す。
「あの子は一瞬しか見なかったから……勘違いしたんじゃないかしら」
どうにか受け答えするが、気分は重い。得体の知れない魔物と見間違われたことが、
寂しく、少しばかり腹立たしい。
と、腹立ちを感じた自分に戸惑う。まるでわたしは、蠅と蠅に似た化け物との間には
何がしかの違いがあると思っているみたいではないか。
「肢が六本と羽があるってのはどんな感覚なの? 人間だった時と違うせいで
まごついたりはしない?」
「そういうことは、ないわ。蛹の殻から出てすぐの時は少し混乱したけれど、その後は
飛ぶのも歩くのも自然にできてるの。何だか、今のわたしには肢が六本あるのが
当たり前って感じ」
話している内容が、つくづく人間離れしている。姿を変えられたことのある他の人々は、
この異常な体験とどう折り合いをつけていったのだろう。
「蛹? あなたいきなり成虫にされたわけじゃなかったのね」
「え、ええ。その……長い間眠ってたと思ったら、目が覚めて、周りの殻を破ったら
こんな姿になってて……」
言葉を濁す。その前の段階、蛆虫にされていたことまでは言えなかった。
もっとも、イヴォンヌはそんな告白を聞いても動揺も何もしなかったかもしれない。
彼女は魔術師らしく実に冷静だ。わたしに色々聞いているのは単なる知的な好奇心から
だろう。
「で、これがその悪魔の紋章ってわけね」
わたしの複眼に、わたしを正面から見下ろす落ち着き払った鳶色の瞳が無数に映った。
わたしを気が済むまで観察すると、イヴォンヌは去って行った。
魔術の実験台に使われる動物もあんな視線で見下ろされていたのかもしれない。
危害は何も加えられなかったのに、わたしはひどく消耗した気分だった。
373 ◆eJPIfaQmes :2006/09/28(木) 14:46:19 ID:WKxAvamI
遅くなってすみません。朝方書き込むことができなくなっていたもので……。
瞳の色が以前の説明と違ってますが、単なる作者のミスです。伏線とかではありません。
374名無しさん@ピンキー:2006/09/28(木) 14:54:38 ID:hcOu+gah
GJ
魔物の感覚に違和感なくなっているのがいいですな
375名無しさん@ピンキー:2006/09/28(木) 18:07:48 ID:FT/Ellky
うおおおおお…
これは何というか…切ないと言って良いのか、不思議な感じだよ。
GJとしか言えないぜ!
376名無しさん@ピンキー:2006/09/28(木) 22:25:53 ID:SnBccMUN
待ってました、全裸で。
377名無しさん@ピンキー:2006/09/28(木) 22:58:25 ID:zKwFFiza
フローランスはちゃんと人間に戻れるよね?(´・ω・`)
378名無しさん@ピンキー:2006/09/28(木) 23:08:12 ID:D2d9TmXS
>>377
他の仲間がみんなハエになると信じて読んでいますが?
379名無しさん@ピンキー:2006/09/29(金) 02:46:11 ID:t/y6y1wU
他人の講釈はいらねぇ。
己が眼で確かめるのみだ。

グッジョブ。
楽しみにしている。
380名無しさん@ピンキー:2006/09/29(金) 10:18:28 ID:LHLClpUb
クールビューティーなイヴォンヌ嬢が何かしてくれると期待している。
むしろここまでしつこいと何かたくらんでるのではと勘ぐってしまう。
381名無しさん@ピンキー:2006/09/29(金) 10:28:52 ID:WbPLqWA2
あんまり予想すんなよ書きにくくなるだろ
382名無しさん@ピンキー:2006/10/02(月) 11:23:30 ID:A14qSTev
イヴォンヌというとキャプテン乙女ことアレを連想してしまいぬるぽ
383名無しさん@ピンキー:2006/10/05(木) 20:01:45 ID:XvNs+i4u
保守
384名無しさん@ピンキー:2006/10/08(日) 10:10:40 ID:FIkBDvHu
385名無しさん@ピンキー:2006/10/11(水) 22:34:53 ID:Knxd8juh
386名無しさん@ピンキー:2006/10/14(土) 21:24:58 ID:FVc5/6Mg
ho
387名無しさん@ピンキー:2006/10/18(水) 12:39:43 ID:4ElckYDZ
フローランスにハァハァしつつ保守
388名無しさん@ピンキー:2006/10/22(日) 00:07:03 ID:tYsM2L4c
続きが読みてえええええぇぇぇ!!
389『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/10/22(日) 04:49:04 ID:7vOujl0f
蠅の眠りは浅く、小刻みだ。
目には瞼などないから、複眼が周囲を広く映し出すまま、不意に意識が途絶える。
そして何らかの変化を感じ取った時、即座に覚醒して動き出す。本能的な不安に
駆られつつ辺りを飛び回ったり六本の肢でうろうろ歩いたりした後、肉体の疲労が
一定量に達すると、どこかに静止して意識がなくなる。また何かの折に意識が戻り、
疲労から回復した身体で動き回る。その繰り返し。
この蠅の身体はどちらかと言うと夜行性のようだが、丑三つ時の今、わたしはひどく
疲れ果てていた。
ジェラールたちと会って、話をして、どうにか自分の状況を理解してもらえた。
その安堵感と、それまでに募らせていた恐怖から解放された反動、主にその二つが
わたしの心を緩ませていた。
蠅の成虫になって以来初めての深い深い眠りに引き込まれた。

なぜか、夢だということは最初からわかっていた。
わたしはジェラールと二人、明るい森の中を歩いていた。子供の頃に絵本で見た
ような、ただひたすら美しくて汚れのない森。昔ジェラールが話してくれた、彼が
生まれ育った森なのだと、夢の中のわたしは理解している。
それと同時に、これが単なる夢の中の想像図に過ぎないことも。
やがて見えてきた小さな家。森と調和した、住み心地が良さそうな家。
ジェラールがわたしと腕を絡める。わたしは彼に寄り添う。
家のドアが開き、中から小さい子供が出て来てこちらへ駆けて来る。わたしにも
ジェラールにも似たところのある、可愛い子供。
夫と顔を見合わせて微笑み、その場にしゃがんで、飛び込んで来た愛しいわが子を
受け止め、両手でぎゅっと抱きしめた。
そこで目が覚めた。

夢を夢と把握していた理由はすぐにわかった。
夢の中のわたしは、今のわたしと違いすぎていたのだ。
現実のわたしは、複眼で世界を眺めている蠅。二本の足で歩く代わりに六本の肢で
地を這う蠅。子供を抱く腕などない蠅。それ以前に、人間の子供を生むことなど
できるわけのない蠅。そもそも、ジェラールと恋人でも何でもない蠅。
暗い気持ちに引き込まれそうになる自分を、強いて奮い立たせようとする。
わたしはもうすぐ人間に戻れる。そうなれば、いつか今の夢だって実現するかも
しれない。
東の空がうっすらと白み始めている。一日が明けようとしていた。
390 ◆eJPIfaQmes :2006/10/22(日) 05:08:43 ID:7vOujl0f
ここから先は小刻みな投下をすると興醒めになりそうなので、次の書き込みは
しばらくの間書き溜めてから……ということになります。
長らくお待たせさせた挙げ句また間を空けることになりそうで、申し訳ございません。

また、皆さんの希望が全て実現する形での結末は書けそうにありません。
あらかじめお詫びいたします。
ただ、登場人物の選択や決断や末路に関しては、なるべくお読みになった方に
納得していただけるように、描写に関しては精一杯努力しようと思います。
391名無しさん@ピンキー:2006/10/22(日) 05:19:49 ID:Niuf22rA
そんなに気負わんでも良いと思うよ
392378:2006/10/22(日) 11:15:13 ID:bNB5V3yU
そのとおり。気負わないでね。
>>378で書いたのは、読者の勝手な予想だから。
裏切ってくれた方がうれしいくらい。
詫びる必要ないよ。
なにより、楽しんで書いて欲しい。
393名無しさん@ピンキー:2006/10/25(水) 23:13:04 ID:QrfryxwR
読めるだけで満足です。
394名無しさん@ピンキー:2006/10/30(月) 07:42:15 ID:US3O0eAq
保守
395名無しさん@ピンキー:2006/11/02(木) 17:34:24 ID:+vPh5lHd
あげてみたりする
396名無しさん@ピンキー:2006/11/07(火) 12:24:35 ID:pHuFGugz
保守
397名無しさん@ピンキー:2006/11/14(火) 13:05:13 ID:PFGl2UVZ
保守!!
398名無しさん@ピンキー:2006/11/18(土) 22:13:46 ID:ovmSv/lj
ほす
399名無しさん@ピンキー:2006/11/19(日) 17:58:16 ID:uMhbt+fr
保守しかできない無力な俺らを許してくれ
400名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 10:06:09 ID:XJPTgxQ0
\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/


    (´・ω・`) ここから超濃厚なホモスレになります!ご期待下さい!


/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\
401名無しさん@ピンキー:2006/11/20(月) 14:03:55 ID:xDphwuf1
>>400
期待を破棄、自爆する
402名無しさん@ピンキー:2006/11/21(火) 04:51:53 ID:yGjHJzKD
>>400
顔か文のどちらかに統一しろ
403名無しさん@ピンキー:2006/11/24(金) 21:51:51 ID:DCBMkq3n
定期あげ
404名無しさん@ピンキー:2006/11/27(月) 14:08:34 ID:emT2q08M
ほしゅ
405名無しさん@ピンキー:2006/12/02(土) 20:54:03 ID:FMNSer/K
保守
406名無しさん@ピンキー:2006/12/06(水) 23:19:12 ID:OYRLssLA


407名無しさん@ピンキー:2006/12/11(月) 08:17:39 ID:O3IYln3Z
作者逃亡age
408名無しさん@ピンキー:2006/12/12(火) 06:50:36 ID:v1VzKwDV
でも変体マニアはこないでね
409名無しさん@ピンキー:2006/12/13(水) 22:24:31 ID:lQVDOzhf
>>408
故人を叩くな
410名無しさん@ピンキー:2006/12/16(土) 16:04:09 ID:+eRaitcG
ベルゼブブの人の消息だけでも知りたいぜ。
411名無しさん@ピンキー:2006/12/17(日) 03:30:30 ID:LPvD2+vo
やっぱ難航してるのかのぉ
412 ◆eJPIfaQmes :2006/12/17(日) 17:04:30 ID:JytOhymM
>410-411
ごめんなさい。ある程度書き進めてはいるのですが、
まだ全然区切りがつかない段階でして。
今年中には投下できるかなと思うのですが……がんばります。
413名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 04:03:35 ID:IS0VE9mF
もういいから死ねゆ
414名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 05:48:37 ID:iaavB+gJ
>>413
変体乙。
415名無しさん@ピンキー:2006/12/18(月) 11:53:09 ID:s7IbiQIr
(´;ω;`)ブワッ
416名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 03:55:20 ID:PDOp/FWq
>>412
最初から読み直してテンション上げつつ
蝿フローラたんをお待ちしております。
417名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 10:57:57 ID:eS0roYK3
ブーン
418名無しさん@ピンキー:2006/12/20(水) 18:56:20 ID:bO6v0ZAs
>>412
小説の方は楽しみに待っておりますw
自分のペースで書いていただけると幸いであります。
419名無しさん@ピンキー:2006/12/22(金) 07:33:45 ID:+daoQrgx
これはひどい糞スレ
420名無しさん@ピンキー:2006/12/23(土) 23:02:50 ID:yox0Kb8b
楽しみだがクリスマスに来たら嫌なプレゼントだよなw
421名無しさん@ピンキー:2006/12/24(日) 02:31:41 ID:B+cSvbH6
いやいや、いいクリスマスプレゼントじゃないか!
422名無しさん@ピンキー:2006/12/24(日) 04:38:47 ID:2R3bhuDZ
うわっ何このスレキモッ^^;
423名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 00:09:18 ID:v3gO0r+j
424名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 00:57:49 ID:K98gCXjy
425名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 02:12:51 ID:60LZbNr1
のあき
426名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 02:32:03 ID:8Q4wndgM
ブーン
427名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 11:54:32 ID:2edNrvzB
クサー
428名無しさん@ピンキー:2006/12/27(水) 17:20:51 ID:FFdGhFec
>>427
でたのははえのまものというはなしだし
これぐらいくさくてもおかしくないよな。
429名無しさん@ピンキー:2006/12/28(木) 13:15:46 ID:46FycfXT
>>412 今年中はもう無理じゃないか。あと3日だぞ。
430名無しさん@ピンキー:2006/12/28(木) 16:48:12 ID:dDJBzZl+
お年玉に蝿フローラたんでいいジャマイカン
431名無しさん@ピンキー:2006/12/28(木) 23:15:15 ID:IaM6bn+n
30日に投下できないなら1月4日以降でいいですよ
年の終わりに●は嫌だろ?
いや、氏の作品は大好きですよ
ただ時期的にめでたい時に
ハイ(;´Д`)つ●
と来られても・・・
432名無しさん@ピンキー:2006/12/29(金) 18:19:40 ID:1hLiqDoO
いつ読もうが傑作は傑作だ。
433 ◆eJPIfaQmes :2006/12/31(日) 03:13:20 ID:G0cMjpA1
あまり区切りのいい形にはなりませんでしたが……14レスほど投下いたします。
434『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/12/31(日) 03:14:17 ID:G0cMjpA1
ジェラールたちが来る夜まではすることがない。こんな醜い身体を眺め回したり
手入れしたりする趣味もない(それでも肢の先を摺ることだけは、せざるを得ない
けど)。
わたしが成虫として目覚めて以来姿を現さない悪魔のことも気にはなるが……それは
もう、考えてもどうしようもないことだ。もし本当に彼がベルゼブブなのだとしたら、
相手は悪魔の中でも際立って位の高い蠅の王。わたしやジェラールたちに太刀打ち
できる相手じゃない。
彼の自己申告を信じるなら、彼の宣言も信じる。結局今のわたしにできることは、
それくらいしかない。ただ、昨夜わたしたち五人があの場で襲われなかったことは、
その根拠の一つと言えるのではないだろうか。
それでも、不安は募る。
「そうだ……」
ふと思いついて、わたしは口を開いてみた。
身体のどこから出ているのか、自分でも判然としない声。けれど人間だった時と
寸分違わぬその声は、意味ある言葉を紡ぎ出し、聖なる呪文の詠唱を成す。
「打ち砕け!」
手頃な岩に意識を集中すると、呪文が生み出したエネルギーがわたしの身体から
発射され、岩を粉砕した。
僧侶が使える数少ない攻撃呪文の一つ。その威力は、人間だった時と何ら変わりない。
たとえ醜い姿に変えられても、わたしは以前と同じように呪文を使える。それを
確認できたことは、わたしをいくらか安心させた。
いざという時は、この呪文で戦おう。わたし以外の皆が逃げる時間を稼ぐために。
最悪の場合、わたしはあいつに捕まっても構わない。けれどみんなを巻き添えに
するわけにはいかないのだから。
435『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/12/31(日) 03:14:54 ID:G0cMjpA1
辺りを飛び、まどろみ、時に羊の死骸を漁る。
そんな風にだらだらと時間を過ごしていると、太陽が真上からやや西に傾いた頃、
不意に風に乗って馬車の音が聞こえてきた。視界にはまだ入らないが、風向きで麓から
来るのだとわかる。
ジェラールたちにしては早すぎる。
近道しようとした商人のキャラバンが、道を間違えでもしたのだろうか。
それとも旅暮らしの冒険者たちが、悪魔の情報を聞きつけて征伐に来たのだろうか。
そう言えば半年前に聞いた噂では、西部のエルスバーグ王国から王子をリーダーとする
精鋭のグループが第何次かの魔物討伐に乗り出したとか。諸国を経巡る歴戦の勇者たる
彼らとベルゼブブがもし戦ったら、いい勝負になるかもしれない。
まあ、商人だろうと冒険者だろうと勇者の一行だろうと、今のわたしが出くわして
いい相手じゃない。高く飛び上がって木の幹にへばりつき、枝葉の茂みに身を隠して、
その場はやり過ごそうとした。
ところが。
馬車を連れてやって来たのは、イヴォンヌとユベールの二人だった。
436『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/12/31(日) 03:15:48 ID:G0cMjpA1
「フローランス、いるんでしょ?」
木々を仰ぎながら、イヴォンヌが呼びかけてくる。その脇でユベールが馬車の中から
布をかぶせた大きな箱状のものを引っ張り出していた。
馬車から地面に下ろされると、ガシャン! と大きな金属音が響き渡る。
わたしは少し怯えに似た感情を抱きつつも、葉陰から返事をした。
「は……早いのね」
「ええ、珍しく早起きして街を回ってみたら、道具屋の店先にこんなのが売ってたの。
思わずその場で買って、ユベール誘ってここまで来ちゃったわ」
彼女がにこやかに微笑みながら布を外すと、鉄の棒を格子状に組んだ小ぶりの檻が
姿を見せた。
「大型犬を輸送するのに使うんですって。サイズはぴったりよね?」
確かに、今のわたしがすっぽり納まりそうな檻である。
動物と同じ扱いを受けることに多少屈辱を感じはするが、今のわたしは化け物蠅。
これでも素晴らしい待遇と考えるべきだろう。
けれど……
「ジェラールとコゼットはどうしたの?」
ジェラールは、昨夜わたしのことを一番気にかけてくれたのに。それは抜きにしても、
この近辺が魔物の生息範囲に接している以上、パーティの一部だけで行動を取るような
真似はするはずがないのに。
437『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/12/31(日) 03:16:48 ID:G0cMjpA1
わたしが疑問を口にするや否や、イヴォンヌは答えてくれた。
「二人は街で起きたならず者の抗争に巻き込まれちゃったのよ。怪我人が多く出たから
コゼットは治療に駆り出されたし、ジェラールはちょっと深手を負って、ね」
「そ、そんな……」
「命には別状ないから安心なさい」
間髪入れずにイヴォンヌがフォローしてくれたが、わたしは激しく動揺してしまった。
「じゃあフローランス、降りてきてこの中に入って。ほらユベール、あっち向いて」
てきぱきと指示を出すイヴォンヌ。わたしはジェラールが怪我したというニュースに
受けた動揺を引きずったまま、ふらふらと地面まで降りて檻の中に入り込んだ。
わたしの背後で檻の扉が閉ざされ、上から先ほどの布がかぶせられる。布はすっぽりと
檻を覆い、蠅になったわたしの姿を隠してくれる。
ここから、わたしごと檻を持ち上げて馬車に載せ、呪文で街に着いた後は教会かどこかで
檻を下ろしてもらうことになるのだろう。ユベールには力仕事をさせることになって
申し訳ない。
だからわたしは見えない外へ声をかけた。布越しで声が聞こえなかったらいけないと
思い、少し大きめに。
「ユベール、ごめんなさいね」
その瞬間。
わたしの胴体に鋭いものが突き刺さった。
438『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/12/31(日) 03:17:44 ID:G0cMjpA1
背中から腹へ抜け地面に突き立ったそれは、しばらくすると抜き取られた。
人間だった時も、冒険者とは言え後衛のわたしは腹を刺されたことなんてない。だから
今の感覚を以前と比べるようなことはできない。
ただ、虫の痛覚は人間より鈍いのか、激しい痛みに襲われるようなことはなかった。
代わりに傷口から全身へ広がっていくのは、強い脱力感。
精神的な混乱と相まって、わたしは声を出せずに檻の中で竦んでいた。
と、再び背中から強く刺される。今度はいくらか場所をずらし、またもわたしを地面に
縫い止める。
まるで標本箱の中の昆虫のように。
「死んだ?」
外からかすかに聞こえてくる、イヴォンヌの声。
「いや、それがよくわからなくて……」
ユベールが地に這うわたしの頭上で応じる。それと同時に、わたしから再度引き抜かれる
ものは……たぶん、彼の剣。
「うわ、べたべたしてやがる。……本当に虫なんだな」
お気の毒様。あなたってば剣のお手入れが大好きなのにね。人間サイズの蠅の体液なんか
ねっとり付着したらさぞかし大変よね。
頭の中のどこか冷静な部分が、声に出さずにくだらない相槌を打った。
「もう一回やって」
「もう大丈夫じゃないか? 悲鳴も上げちゃいないし……」
「あなた、そんな簡単に熟練の冒険者を仕留められる自信があるの? それどころか
相手は魔物になって前より頑丈になってる危険性が高いのよ」
439『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/12/31(日) 03:18:46 ID:G0cMjpA1
イヴォンヌの冷淡な指示が、当のユベールばかりでなくわたしの危機感にも火を点けた。
このままじゃもう一回刺される。
慣れない蠅の身体の感覚からそれでもどうにか判断するに、二度の刺傷で受けた傷は
恐らく深刻。三度目を受けたらたぶん助からない。
そうしたら、死ぬ。
死ぬのは……嫌。
わたしは声を低く抑えて、呪文を詠唱した。これまでにないほど小声で、早口で。
「傷を癒せ!」
治癒呪文が瞬時に効力を発揮し、聖なる光に包まれたわたしはダメージから回復した。
「ほら、生きてる」
光が漏れたのか、イヴォンヌに気づかれた。
ユベールが次の刺突を繰り出す前に新たな手を打たなければ。
わたしは再び高速で呪文を詠唱すると、意識を背中の上へと向けた。
「打ち砕け!」
「うわっ!?」
衝撃が、檻を破り、布を持ち上げ、剣を突き立てようとしていたユベールに向かう。
狙いは正確でなかったし威力は檻や布に減殺されたが、それでも相手を取り乱させる
ことには成功した。
開いた穴から全速力で空中に飛び出す。
と、宙に浮いたわたしを四方八方から小さい火球が襲った。イヴォンヌの攻撃呪文だ。
だがなぜか、前方からの攻撃は薄い。複眼を駆使し、羽を全力で操って身をよじり、
火だるまになることは避けられた。
けれど蠅になって日の浅い、しかも蠅の身体と人間の意識のギャップを抱えるわたしが
すべてを回避できるはずもなく、後方からの一弾がわたしの片方の羽を焼き払う。
飛ぶバランスを崩したわたしは地面に転がり、必死になって六本の肢で体勢を立て直す。
地面に近い位置から見上げ、仲間であったはずの二人と対峙した。
440『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/12/31(日) 03:20:50 ID:G0cMjpA1
「……どうして?」
半年前までの仲間とは言え、信用なんてされずに襲われるかも、とは恐れていた。だから
昨夜だってみんなの前に降り立つことはできなかった(途中からは、今の自分の醜い姿を
見られるのが嫌で降りられないままだったけど)。いつでも逃げ出せるよう、かなり話が
進むまで身構えていた。
でも、こんな風に、騙し討ちみたいな目に遭わされるとは思わなかった。
だからわたしは、わたしを平然と見下ろすイヴォンヌに思わず問いかけた。
彼女はちょっと肩を竦めてみせた。
「あなたが本当にフローランスなのか、やっぱり確信が持てないのよね。悪魔によって
魔物がフローランスの記憶を植えつけられて、自分をフローランスだと信じ込んでると
したら? そして街に入ったところで私たちの不意をついて暴れ出したりしたら?
あっという間に私たちは殺され、戦い手を失った街は簡単に滅ぼされるわ。そんな風に
公共の福祉とか秩序とかを考えると、ね」
立て板に水と正論のようなものをしゃべり続けるイヴォンヌ。かつてのわたしなら反論も
できずに流されてしまったかもしれない。
でもこれは、わたしが生きるか死ぬかの瀬戸際なのだ。
死にたくない。
殺されたくない。
441『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/12/31(日) 03:21:42 ID:G0cMjpA1
「だったら、檻に入れてくれても何でも構わないわよ。ずっと、ずっと、受肉が済むまで
その中でおとなしくしてるから……」
「もう一つ。他の人間を説得できる自信もないのよ。昨夜あなたと言葉を交わして色々
知った私ですら、あなたの姿を見た時にはパニックに陥りそうだったしね」
悲しげに眉根を寄せてみせるが、昨夜から一向に変わらない冷徹な視線とは馬鹿げた
ミスマッチを起こしている。
「自信がないから、わたしを殺すの?」
「言葉にすると単純よね。でも私も一晩悩んだのよ。
私情としてはあなたを殺したいわけなんてないけれど、あなたを連れ帰って今の言葉通り
あなたがおとなしく檻に拘束されていても、私たち四人以外誰にも知られずに、受肉の
処置が終わるまで養うなんてできるわけないでしょ? 餌だって誰かが世話しなきゃ
いけないんだし」
気軽に「檻」や「餌」という言葉を使いながら、説明を続ける。
「そして他人の目に触れたが最後、街が大混乱に陥るのは目に見えてるわ。
ジェラールのパーティって言えばあの街で一番信頼されているのに、そんな彼らが
よりにもよって化け物蠅……ごめんなさいね、これは街の人がどう思うかって話だから
……そんな魔物の蠅に加担してたって誤解されたら、大変な騒動が持ち上がるわ」
442『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/12/31(日) 03:22:34 ID:G0cMjpA1
「……ジェラールは? こんなこと、彼が許すわけ……」
「そうでしょうね。これに彼は関わってないわ。私たちの独断。一仕事終えて、死骸を
焼き払って痕跡を消して、私たちは街に戻るの。そして今夜ジェラールと一緒に再び
ここを訪れて、いもしないあなたを捜索し、あなたが変わり果てた自分の存在に絶望して
姿を消したんだと彼をどうにか納得させる。それでおしまい」
芝居の筋を説明するようにあっさりと語られるわたしの死。
でも別の部分が心の琴線に触れる。
「……じゃあ、さっきの話は嘘なのね。ジェラールは大怪我なんかしてないのね?」
わたしの声には、こんな時なのに露骨なまでの安堵が浮き出ていた。
それを聞き取ったのだろう、イヴォンヌが鼻白んだ表情になる。
「まあその通りよ。昨夜が遅かったし、ようやく寝床から起きたくらいじゃないかしら。
それにしてもこんなに愛されるなんて、ジェラールも果報者だわね」
その言葉に込められた棘は、次の台詞でより露骨になった。
「でもジェラールにしたって、今のあなたを見ても守ってあげようと思うかしら?」
443『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/12/31(日) 03:23:20 ID:G0cMjpA1
言いながらイヴォンヌは隣の剣士を示した。
ユベールは、わたしに嘲るような視線を向けて言った。
「昨夜は必死に姿を隠してたわけだ。どこからどう見ても蠅だもんな。百年の恋だって
冷めるってもんだ」
いつも通り冷静な、いや、今のわたしにとっては冷酷な、声。
「声だけなら惑わせただろうけど、こうして目で見れば間違いない。こいつは人間の女の
声でしゃべるだけの、気持ち悪い化け物蠅だ」
「そんなこと、ない。わたしは……」
「そりゃ自分じゃフローランスのつもりなのかもしれないけどな? 俺たちにとっちゃ
おまえはフローランスの記憶を持ってる蠅なんだよ。悪魔の紋章を戴いた、ベルゼブブの
配下。人間に滅ぼされるべき存在なんだ」
「ユベール……!」
「魔物は魔物らしく、おとなしくくたばりな」
剣の切っ先を、わたしに向けた。
444『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/12/31(日) 03:24:17 ID:G0cMjpA1
仲間二人から向けられた殺気を悲しんでる余裕などない。一触即発のこの状況、隙を
見せたらあっさり殺される。
自分に言い聞かせながらも、わたしの脳裏をふと疑問がよぎった。
「ユベール、どうしてあなた、ベルゼブブのことを知ってるの?」
わたしは昨夜の説明で、ベルゼブブの名前は出さなかった。悪魔の中でも最強クラスの
存在が関わっているなんて、こんな目に遭わされた自分でもどこか現実感がなくて話の
真実味が疑われそうなのが不安だったし、その名からわたしが何に変えられたのかが
皆に悟られてしまうことを恐れたのだ。
「それと、イヴォンヌ……どうしてさっき、わたしが檻に閉じ込められていた時に、
攻撃呪文でわたしを焼き尽くしてしまわなかったの?」
言葉にすることで思考がはっきりすることがある。
わたしの頭の中で、昨夜わたしの額の紋章を熱心に覗き込んでいた女魔術師の姿が鮮明に
思い出された。そして二人が来る直前に連想した半年前のニュース……。
不意に閃くものがあった。
「エルスバーグ?」
わたしの一言に、二人は明白な反応を示した。ユベールの剣先が揺れ、それほど露骨では
ないが、彫像のように佇んでいたイヴォンヌまでも身を一瞬強張らせる。
445『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/12/31(日) 03:25:11 ID:G0cMjpA1
自分の直感が的を射ていたことを知り、わたしは言葉を重ねていく。
「勇者の一行にベルゼブブの情報を差し出そうってことね? だからわたしの額の紋章は
無事に済むよう、最初は呪文を使わなかったし、火球で包囲した時も正面だけは弾幕を
薄くしてしまったんでしょ?」
昨夜イヴォンヌが紋章の形から悪魔の正体を悟り、ユベールに話を持ちかけたのだろう。
どちらがわたしを殺そうと言い出したかはわからないが。
魔物を駆逐したい。それらを使役する悪魔を滅ぼしたい。
その気持ちは、人間である……少なくとも意識の上では今でも人間である……わたしには
よくわかる。
そして人間の、そんな力に恵まれた冒険者の中でも、最も強い力を有しているのが
エルスバーグの一行であり、それだけに彼らを動かすにはきちんとした証拠を示す
必要があることも。
ベルゼブブの下僕たる化け物蠅の首は、充分な証拠足りえる。
けど……。
「けどどうしてわたしを殺さなくちゃならないの? 殺すぐらいなら、蠅の姿のままの
わたしを直接連れて行った方が、詳しい情報を得ることだってできるのに……」
わたしの言葉に、ユベールが開き直ったような表情になって、言い放った。
「金にならないだろ?」
「ユベール!」
イヴォンヌが静止する暇もあらばこそ、ユベールは一気にしゃべりきる。
446『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/12/31(日) 03:26:06 ID:G0cMjpA1
「この子はベルゼブブに姿を変えられた私たちの仲間でございます。そう言っておまえを
差し出して、証言させて、その先はどうなる? エルスバーグのご一行様はベルゼブブを
見事討ち果たすかもしれないさ。でもおまえが元に戻るわけじゃない。
腕利きの僧侶くらい抱えているだろうけど、受肉までできるかどうかはわからないし、
仮にできてもあんな時間のかかって費用も馬鹿にならない面倒な儀式をわざわざ無料で
やってくれるとは思えない。こっちが貧乏にあえいでいるならまだしも、俺たちは
それなりに金の稼げる冒険者だしな。貴重な情報に対して金銭的に見返りはあるだろう
けど、どれほど太っ腹だとしてもおまえの受肉費用をまかなうほどじゃない。
結局のところは俺たちのパーティ全体で結構な額の持ち出しになるってことさ」
「…………」
もう何も隠すことはないと思ったのか、イヴォンヌが言葉を続ける。
「それに比べて、ベルゼブブ配下の魔物の首を渡せば、それだけで悪魔につながる貴重な
証拠と見なされるわね。それなりのまとまった金額を得て私とユベールで折半できるわ。
ユベールは新しい剣の代金を清算できるでしょうね」
女魔術師はわたしに問いかける。
「あなたの首を私たちが求めない理由って、あるかしら?」
447『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2006/12/31(日) 03:27:58 ID:G0cMjpA1
反論したかったけど、反論に意味が見出せない。
わたしを人間だと信じられない。わたしのために無駄な誤解を受けたくない。何より、
わたしを助けるために高い金を払いたくない。それくらいならわたしを殺して臨時収入に
ありつきたい。
それらは二人の浅ましいエゴ。
そう指摘しても、返ってくる反応が予想できてしまう。
死にたくないと思う感情だっておまえのエゴではないか、と開き直って襲ってくるだけ。
今現在と何も変わりはない。
話すうちにも剣士が少しずつ間合いを詰めてくる。その向こうでは魔術師が掌の上に
無数の火球を作り出している。
わたしが羽を癒して逃げようとしても、あの火球に襲われればまた地面へ逆戻り。でも
地面にへばりついていては剣に襲われ、そのうちに回復呪文を唱える魔力が尽きて、
おしまい。詰んでいる。
「無駄な努力はやめときなさいね、苦痛が長引くだけだから」
イヴォンヌの含み笑いを合図にしたように、ユベールが身構え剣を引く。
すぐに鋭く突き出されるであろうその剣は、わたしの頭部を刺し貫くことだろう。目を
瞑りたかったが、蠅には瞼なんてない。
その時。
近くの茂みから素早く飛び出した影が、わたしの前に立ち塞がった。
剣からわたしを庇うように、大きな背中を向けて。
「仲間だってのは、大きな理由になるんじゃないか?」
聞く者の心を落ち着かせる、低いけど優しい声。今は感情を押し殺しそうとするように、
いつもよりも一層低い声。
ジェラールの声だった。
448名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 13:54:10 ID:kvsv6NVu
キテター!
超GJ!
449名無しさん@ピンキー:2006/12/31(日) 15:01:36 ID:KrT3TWnR
ナイス!ナイス!
来年もがんばろうと思った。
450名無しさん@ピンキー:2007/01/01(月) 01:58:03 ID:n+UkFWse
ジェラールカッコイイ!!
451名無しさん@ピンキー:2007/01/01(月) 22:55:50 ID:EKp//I9v
GJ!!
452名無しさん@ピンキー:2007/01/02(火) 20:13:52 ID:Rtssr+Kx
GODJOBB!
453名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 05:24:32 ID:YkLQugNh
続き!続き!
454名無しさん@ピンキー:2007/01/04(木) 12:11:24 ID:Uh5zFtBQ
早く!早く!
455名無しさん@ピンキー:2007/01/06(土) 12:04:20 ID:45EPvGTH
急げ!急げ!
456名無しさん@ピンキー:2007/01/06(土) 14:18:53 ID:Furo/oQS
おまいら、そう急かしてやるな。
457名無しさん@ピンキー:2007/01/06(土) 21:00:56 ID:MFEFtj/K
そうだ!そうだ!
458名無しさん@ピンキー:2007/01/07(日) 11:35:57 ID:NemX0yCF
>>457に不覚にもワロタ

がんばれ!がんばれ!
459名無しさん@ピンキー:2007/01/11(木) 05:27:24 ID:yUE4lKRB
保守
460名無しさん@ピンキー:2007/01/14(日) 19:29:12 ID:kynCztZN
保sy・・・









俺は何も見ていない。
461名無しさん@ピンキー:2007/01/17(水) 19:19:21 ID:W1RBGk7E
ほしゅw
462名無しさん@ピンキー:2007/01/20(土) 03:33:09 ID:nUWEx1P4
城を守っていた兵士が、邪悪な力によって変形してしまったもの。

FF5の「しょうたいふめい」の設定だが
兵士に白魔たんやナイトたんがいると考えるたら萌えないか?
463名無しさん@ピンキー:2007/01/20(土) 19:54:37 ID:FBesiUkD
兵士って何だ ドワーフ王国には城らしきものは無かったし
464名無しさん@ピンキー:2007/01/23(火) 20:41:24 ID:LhwWwSv/
>>462-463 板違い
465名無しさん@ピンキー:2007/01/24(水) 23:05:44 ID:o11+mY6E
しかし一つの小説だけでもってるスレってのも珍しいな。
それだけベルゼバブのクオリティが高いってことだが。
466名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 21:57:27 ID:OWp4RgLy
ほっ
467名無しさん@ピンキー:2007/01/27(土) 23:03:07 ID:SOc+qkM+
しゅっ
468名無しさん@ピンキー:2007/01/29(月) 11:41:33 ID:xEiHmuJi
シュッ!
469名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 01:34:46 ID:8lZPmpYH
シュッ!シュッ!
470名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 13:32:01 ID:Sc+keuSy
【女王蟲(1)】

 リュニは洞窟の岩壁に、蝋のようなもので手足を塗り固められていた。
 美しい裸身を晒していた。艶やかな褐色の肌、細身で引き締まった身体。
 それでいて、豊かで張りのある乳房。小さな乳首は紅色で、花びらが添えられているかのよう。
 なだらかな下腹部の僅かな草叢は、髪と同じ銀色だ。
 その髪は少年のように短くしており、目鼻立ちの整った凛々しい顔立ちも少年を思わせる――
それも、とびきり美貌の。
 しかし、いまは憔悴の色が浮かんでいる。藍色の瞳が、いまにも光を失いそうだ。
 手足を縛められていなければ、その場に崩折れているだろう。
 洞窟の中は、リュニの頭上に開いた穴からの陽射しで、仄かに照らされていた。
 彼女の足元には、兎や狐などの獣の骨が数体分、転がっている。
 そしてまた新たな生贄が、リュニの眼の前で命を絶たれようとしていた。
 仔鹿だった。虚ろな眼を見開いたまま、ひくひくと身を震わせている。
 ――ピチャッ、ピチャッ、ピチャッ……
 生贄の前に這いつくばり、いやらしい音を立てて、その臓腑を貧るのは――《女王蟲》だった。
 ゆるやかに波打つ金色の髪、透き通るように白い華奢な背中。それだけを見れば人間の少女のようだ。
 だが、小さな肩から生えているのは、しなやかな二本の腕ではなく、枯れ枝にも似た節足動物の前肢。
 そして腰から下もまた、節くれだった脚が無数に生えた、鉛色の百足(ムカデ)のような長い胴体。
《女王蟲》が百足の胴体をくねらせ、こちらを向いた。
 邪気のない微笑みを浮かべたその顔は、愛らしい人間の少女のもの。
 しかし、おぞましいことに、口の周りは生贄の血にまみれている。
《女王蟲》はリュニの前まで這って来ると、百足の胴体を反らして体を起こした。
 そして、笑みを浮かべたままの血まみれの顔を、リュニに近づけた。
471名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 13:33:29 ID:Sc+keuSy
【女王蟲(2)】

「……くっ……!」
 リュニは顔を背けようとした。
 だが、《女王蟲》は前肢でリュニの顔を抱え込み、唇を押しつけてくる。
「……んんっ……!」
 リュニは、ぎゅっと眼をつむり、唇も堅く閉ざした。
《女王蟲》は構わず、口の中で咀嚼した仔鹿の生肉を、自らの舌でリュニの唇に擦りつける。
 そして唇を離し、リュニの顔から前肢も放した。
「……ぷはっ!」
 リュニは大きく息を吐き、口の周りこびりついた生肉の欠片を吹き飛ばそうとした。
 二度、三度と唾を吐く。
《女王蟲》が微笑みのまま小首をかしげた。そして、涼やかな少女の声で、言った。
「食べなきゃダメです。おなかが空いているのでしょう?」
「……ふざけるな! こんな、もの……!」
 リュニは《女王蟲》を睨みつけた。眼に涙が浮かべながら。
《女王蟲》は眉をひそめ、同情するような表情で、
「あなただって、わかっているのでしょう? 自分が、変わり始めていることに」
「ぐっ……!」
 リュニは《女王蟲》から眼をそらした。《女王蟲》は首を振り、
「食べてくださらないんですか? あの鹿は、あなたのために狩ったんですよ?」
「…………」
 眼をそらしているリュニに、《女王蟲》は微笑みかけた。
「わかりました。鹿は、私が食べます。そして、あなたには、また私の『お乳』を差し上げますね」
472名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 13:36:05 ID:Sc+keuSy
【女王蟲(3)】

《女王蟲》は仔鹿の前まで這い戻り、再びその肉を喰らい始めた。
 ――ピチャッ、ピチャッ……
 いやらしい音が立つ。仔鹿は、もう動いてはいない。
 眼を伏せたままのリュニは――恐る恐る、口を開けた。
 そして、舌を伸ばすと、唇の周りを、舐めた。舌先についた肉の欠片を口に運び、呑み込んだ。
 涙をあふれさせた。そして、言った。
「……食べさせて……」
《女王蟲》が振り返り、微笑む。リュニは眼を伏せたまま、叫ぶように言った。
「……食べさせて、お願い……!」
「……はい」
 にっこりとして、うなずくと、《女王蟲》は仔鹿の死骸に向き直った。
 獲物の肉を噛みちぎり、口いっぱいに頬ばると、リュニの前まで来て、また体を起こす。
 血まみれのその顔に微笑を浮かべ、リュニと唇を重ねた。
「……あふ……」
 口移しに少量ずつ与えられる肉片を、リュニは涙を流しながら、ごくりと呑み下す。
《女王蟲》は、少しずつリュニの口に咀嚼した肉を送り込んでやる――雛に餌をやる親鳥のように。
 唇を離し、たずねた。
「美味しい……ですか?」
「…………」
 リュニは眼を合わせないまま、黙ってうなずく。《女王蟲》は、にっこりとして、
「いまのあなたには、生肉が何よりのごちそう、ですよね? 身体が、そのように変わったんです。
もっと、どんどん変わっていくんですよ?」
473名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 13:38:10 ID:Sc+keuSy
【女王蟲(4)】

《女王蟲》の前肢が、リュニの無防備な乳房に触れた。
「……はうっ……!」
 リュニは眼をつむり、身を固くする。
 前肢の先端の鉤爪が乳房をなぞり――そのふくらみのすぐ上に、ずぶりと、めり込んだ。
 そして、皮膚を裂いていく。だが、血は流れない。リュニは震えているだけで、苦悶の声も上げない。
「ほら、見てください」
 無邪気な笑顔で、《女王蟲》が言った。
「古い皮膚が簡単に破れるのは、その下で新しい皮膚が作られているからです。じきに脱皮できますね」
 前肢でリュニの腹を指し、
「おなかに産みつけてあげた《卵》が、あなたと同化して、あなたの身体を造り変えているんです。
《卵》がよく育つように、いっぱい食べてくださいね」
《女王蟲》は仔鹿の前に戻り、もう一度、口いっぱいに肉を頬ばって運んで来た。
 それを、リュニに口移しで与える。
 リュニは、もはや何のためらいもなく肉を呑み下した。口の周りにこびりついた血と肉片も舐めた。
「……はあっ、はふ……」
《女王蟲》が顔を離さなかったので、相手の顔についた血まで舐めた。
 うっとり心地よさそうに眼を閉じて、《女王蟲》はされるがままになっている。
 犬にじゃれつかれている飼い主のように。
「あの……『お乳』も、飲んでもらえますか? なんだか、あふれてきちゃいそうで……」
「…………」
 無言のまま、リュニがうなずくと、《女王蟲》は、にっこり微笑んだ。
 百足の胴体を仰け反らして、リュニの眼前に乳房を晒す。
474名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 13:40:50 ID:Sc+keuSy
【女王蟲(5)】

 あどけない顔に似つかわしい、小ぶりだが形のいい乳房だった。桜色の乳頭が、つんと上を向いている。
 蟲の前肢でリュニの頭を抱え、《女王蟲》は自らの乳房へ導いた。
「さあ、どうぞ……」
 リュニは舌を伸ばし、《女王蟲》の乳首を舐め上げた。れろり、れろりと、舌で転がすようにした。
《女王蟲》は眼を細めて、身をよじる。
「……もっと、噛んだり、吸ったりしてください……」
 リュニは言われた通りにした。
 人間の少女とまるで変わらない愛らしい乳首に軽く歯を立て、こりこりと玩んだ。
 唇でくわえ込み、引っぱるようにした。
「あっ……『お乳』が、出ちゃいます……さあ、飲んで……」
 ぶるるっと、《女王蟲》が身を震わせると、左右の乳首から白濁した蜜が二度、三度と噴き出した。
 ――ビュッ! ビュッビュッ!
 口の中にあふれた蜜を、ごくりと喉を鳴らしてリュニは飲み込んだ。
 だが、一度では飲みきれず、むせ返って咳き込んだ。
 口で吸っていない側の乳首からほとばしった蜜は、リュニの髪や顔、身体に撥ねかかる。
 濃厚な甘い匂いが辺りに漂った。
 咳き込んでいるリュニの頬にかかった蜜を、《女王蟲》が舐めた。
「汚れちゃいましたね……、綺麗にしてあげますから……」
 リュニの顔も身体も、髪までも《女王蟲》は舐め回すが、リュニはされるがままだ。
 豊かな乳房と、その頂きの乳首を舐められたときは、リュニは、きゅっと眼をつむり、
「んんっ……!」
 押し殺した声を上げたが、抗うことはしなかった。
475名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 13:42:54 ID:Sc+keuSy
【女王蟲(6)】

《女王蟲》は、自身が爪で切り裂いたリュニの胸元の傷にも舌を這わせた。
 無惨な傷痕なのに、リュニは、やはり痛みを感じていないようだ。
《女王蟲》は微笑んで、リュニに告げた。
「……口づけ、させてくださいね……」
 返事がないことを同意と決めつけて、唇を重ねる。舌を挿し入れられても、リュニは拒まなかった。
 熱く火照った二つの舌が絡み合った。
「んはぁ……、あふ……」
 恍惚と上げた声は、どちらのものか。もはや、ヒトも《蟲》もない。
 二匹の牝として、リュニは美しい少女の顔をした《女王蟲》と、互いの舌を、唇を、貪る。
 やがて、《女王蟲》は唇を離した。糸を引いた唾液が、ぷつんと途切れた。
 リュニに微笑みかける。だが、リュニは眼を閉じたまま――その眼から、涙をあふれさせた。
「……殺して、お願い……」
 声を振り絞り、リュニは哀訴した。
「もう、耐えられない……自分が、自分じゃなくなるのが……心まで、人間じゃなくなるのが……」
「……眼を開けてください」
《女王蟲》は、言った。
「私を見てくださいませんか? ……さあ」
 恐る恐る、泣き濡れた眼を開けたリュニに、《女王蟲》は無邪気そのものの笑顔で問うた。
「私の姿が、おぞましいですか? 私に口移しで食べ物を与えられるのは、穢らわしいですか?
でも、私だって人間だったんですよ? 人間であることに、それほど価値があると思うなら」
「……ごめんなさい……」
 リュニは眼を伏せて、首を振る。
476名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 13:46:19 ID:Sc+keuSy
【女王蟲(7)】

《女王蟲》は笑みのまま、言葉を続けた。
「あなたに《卵》を産みつけて、あなたを《蟲》に変えてしまう私が憎らしいですか?
だけど、あなたも《冒険者》だもの。この《森》が危険だと承知で、足を踏み入れたんでしょう?」
 リュニは答えず、首を振り続ける。涙をこぼしながら。
《女王蟲》は、言った。
「私も《冒険者》でした。いっぱしの《白巫女》気取りでしたけど、ただの未熟な愚か者でした。
仲間と一緒に先代の《女王》をあと一歩まで追い詰めたけど、結局、『こんなこと』になったんです。
仲間はみんな死んで、《女王》も私に《卵》を産みつけてから死んで、私だけが生き残りました――
新しい《女王》として。ねえ、顔を上げて。あなたの名前、教えてもらえませんか?」
 リュニはうつむいたまま、しかし問われたことには答えた。
「……リュニ」
「リュニさん? 不思議な響きの名前ですね。南のほうの生まれですか? 肌の色も綺麗……」
《女王蟲》は、にっこりと笑い、
「《女王》が何故《女王》と呼ばれるか、私は、自分がその立場になって知りました。
この《森》に棲む全ての魔物を、私は支配する力を持つ。だから《女王》なんです。
私がいなければ、魔物たちは《森》を離れて、好き勝手に人里を襲うでしょう。
元は人間だった私が、仮にも《白巫女》だった私が、そんなことを許せるわけありません。
でも、だからといって、《森》の静謐を犯す不用意な旅人まで助けることはしません。
それが臣下である魔物たちと、《女王》である私との間の取り決め。
むしろ私自身、どうしようもなく身体が疼いたときは、男性の旅人を襲うこともあります。
命までは奪いませんが、《白巫女》だったときの自分には想像もできない破廉恥なことをしちゃいます」
 くすっと、《女王蟲》は悪戯っぽく笑う。
477名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 13:53:02 ID:JkPEPUPz
【女王蟲(8)】

「リュニさん。もう一度、顔を上げて私を見てください。あなたと重ねた私の唇は、穢れてますか?
絡め合った舌は、穢れてますか? あなたが吸ってくれた、私の乳房はどうですか?
私の身体の半分は《蟲》になってしまいましたけど。
あなたに眼も合わせてもらえないほど、私は醜くて、おぞましい姿ですか?」
「…………」
 リュニは首を振り、顔を上げた。濡れて震える瞳を、《女王蟲》に向ける。
《女王蟲》は、微笑んでいた。
「私は、この《森》で、ずっと独りでした。仲間がみんな死んで、私自身は《女王蟲》に捕まってから。
その《女王蟲》も、私に《卵》を産みつけたあと、死んでしまってから……。
いまのリュニさんと同じように、この洞窟で私は磔にされて、眼の前には《女王蟲》の屍骸がありました。
おなかの中の《卵》が育つのを感じながら、でも何が起こるのかわからず、頭がおかしくなりそうでした。
私も《女王》に変わるのだとは教えてくれずに、先代の《女王》は死んでしまったんです。
そして、とても空腹でした。私がリュニさんにしてあげたように、餌を運んでくれるヒトはいませんから。
これほど餓えているなら死にそうなのに、いっそ早く死にたいのに、せめて発狂すれば楽になれるのに。
それでも私は、正気を保ったまま数日間、生き続けました。たった一人で、《女王蟲》の屍体を眺めながら。
そのうち、眼の前で傷だらけで死んでいる《女王蟲》が、とても美味しそうに思えてきました。
長くてまっすぐな、私より綺麗な髪をした《女王》でした。死んでいても美しい彼女を、食べたいと思った。
とうとう、自分は狂うことができたと思いました。でも、本当に狂ったなら自分が狂人とは気づきません。
そして、脱皮が始まりました。磔にされていた蝋の塊から抜け出して、自分の腕や脚から抜け出して。
私は《蟲》の前肢と下半身を持つ姿に――《女王蟲》に、生まれ変わったんです。
ようやく理解しました。《女王蟲》の屍骸に食欲が湧いた理由は、自分も《女王蟲》になったからだと。
だから、美味しく頂きました。眼の前に屍骸を残して死んでくれた《女王蟲》に感謝しながら」
478名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 13:56:53 ID:JkPEPUPz
【女王蟲(9)】

 微笑みながら、《女王蟲》は前肢を上げて、リュニの頬に触れた。
「でも、本当は《女王蟲》は、共食いなんかしないんです。それをしたら、独りになっちゃうもの。
男の旅人を襲うのは、身体が疼くせいもあるけど、独りでいるのがつらいから。
でも、人間じゃダメなんです。中には、自分の意思で私の許に留まろうとしてくれた人もいましたよ。
自分で言うとバカみたいですけど……私、顔は可愛いほうじゃないですか? 身体の半分は《蟲》ですけど。
だけど、愚かな《冒険者》が魔物に八つ裂きにされるのを見過ごす私を、彼らは理解しませんでした。
人間には《女王》であることの意味がわからないんです。《女王》を理解できるのは、同じ《女王》だけ。
だから、リュニさん。私と一緒に、この《森》の《女王》になっていただけませんか?」
 リュニは、じっと《女王蟲》を見つめていた。あどけない少女の顔をした《女王》を。
 潤んだ瞳に、畏怖と、哀れみを込めて――。やがて、言った。
「……狂ってるわよ、やっぱりあなた……」
「人間だったときの心とは違ってしまったという意味なら、そうかもしれないです。でもね、リュニさん。
眼の前で死んだ仔鹿の生肉を口移しにされて、喜んで食べたあなたも、もう狂い始めているんです。
人間としての『感情』が、変わっていく自分自身を否定するんでしょうね。
でも、あなたにも《女王》としての『理性』が芽生え始めて、きっと理解しているはずですよ?
自分が、もう人間とは違ってしまったことを。自分をまだ人間だと思うから、苦しむんです。
だから……少し荒療治をさせてもらいますね」
《女王蟲》は前肢を上げて、その先端の鋭い爪を、リュニに示した。
「まだ新しい皮膚ができていない部分まで剥いちゃうかもしれませんから、痛くても我慢してください」
「……何するつもり……、やめて……」
 リュニは表情をこわばらせる。だが、《女王蟲》は、にっこりとして、
「大丈夫です。もし怪我をしても、私の回復魔法で治しますから。元《白巫女》ですよ、私?」
479名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 13:59:23 ID:JkPEPUPz
【女王蟲(10)】

 鉤爪が、リュニの右肩に突き立った。
「……ああっ!」
 声を上げるリュニに、《女王蟲》は、くすくす笑い、
「大げさですね。この辺りは、もう皮膚が張り替わって、痛くないはずですよ?」
 リュニの肩を――腕のつけ根の皮膚を、《女王蟲》の爪が、切り裂いていく。
「磔にされて動かせなかったから、気づかなかったでしょうけど。あなたの腕は、とっくに……ほら」
 裂いた傷口を、《女王蟲》は左右の前肢を使って、さらに広げていく。
 そして現れたのは、筋肉でも骨でもなく――
「ああっ! いやあああああっ!」
 リュニは悲鳴を上げ、激しく首を振った。
 そのせいで、蝋で固められた右腕から――その抜け殻から、それは、すっぽり抜けてしまった。
 脱皮したばかりの昆虫のように白く半透明な、《蟲》の前肢だった。
 リュニの右肩から、それは生えていた。リュニの右腕は、人間ではあり得ないモノに変化していたのだ。
「あああっ! あああああっ!!」
 めちゃくちゃに前肢を振り回すリュニの身体を、《女王蟲》は自らの前肢で抱きかかえた。
「ダメですよ。まだ脱皮したばかりの腕を、そんなにしたら。落ち着いて……ね?」
 自分の胸に、リュニの顔をうずめさせる。リュニは、怯えきった子供のように泣きじゃくった。
「あああ……っ! ああああ……っ!」
「リュニさん……。もう、私たち、人間じゃないんです。この《森》の、《女王》なんです」
 やさしく諭すように、《女王蟲》は言った。前肢でリュニの髪を梳いてやりながら、
「私たち、ふたりで《女王》になるんですよ。この《森》の魔物が、みんな私たちにひれ伏すんです。
すごいことだと思いませんか? ただの人間の《冒険者》として生きていたら、そんな経験できません」
480名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 14:03:25 ID:JkPEPUPz
【女王蟲(11)】

「刺激が欲しくて《冒険者》になったんでしょう? だったら、これほど刺激的なことはないですよ。
《女王》の地位と比べたら、人間の姿を半分失ってしまっても、たいした問題じゃないです。
そもそも、私、自分がそれほどひどい姿になったとも思ってませんし。
こうしてリュニさんを慰めてあげられるオッパイがあって、リュニさんと口づけできる唇もあって。
《女王》になると年をとらなくなるから、私は見た目は十五のままで、少し幼いかもしれないけど。
リュニさん、すごい美人ですけど、私だってリュニさんと釣り合わないことは、ないと思うもの。
私たち、お互い愛し合って生きていけると思いませんか? 私、リュニさんが好きです。
リュニさんが魔物たちと戦っているところ、私、ずっと見てました。
仲間がみんな斃れて一人になっても、あきらめずに剣を振るっていた凛々しい姿が素敵でした。
それにも増して、いまの《女王》になりつつある姿に、ぞくぞくさせられちゃいます。
人間のままでも綺麗な人が、半分、魔物が混じった姿になるから余計、美しさに凄みが出るんです。
リュニさんはどうですか? 私のこと、愛してくれますか?
私、リュニさんのために鹿や狐を狩りました。リュニさんがおなかを空かせないようにお世話しました。
女同士はダメだとか、人間のままの常識は、もうリュニさんも持ってないでしょう?
私と口づけして、舌まで絡めて、それでも嫌だなんて意地悪なこと、言わないですよね?」
 無邪気な笑顔で、《女王蟲》は、リュニにたずねる。
 リュニは、《女王蟲》の幼さを残した乳房の間に顔をうずめて、身を震わせている。
「……どうですか、リュニさん? 私と……ふたりで、《女王》になってくださいませんか?」
「…………」
 リュニは顔を伏せたまま、こくりと、うなずくように顎を引いた。
「ああっ、リュニさん……!」
《女王蟲》は感極まった声を上げ、リュニの頭を抱きかかえた。
481名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 14:06:31 ID:JkPEPUPz
【女王蟲(12)】

「私たち、これからずっと、ふたり一緒ですよ。リュニさんの脱皮が済んだら、一緒に狩りに行きましょう。
鹿や狐を狩りましょう。人間の男性でもいいですよ。《蟲》の身体でどうやって交わるか、お教えします。
下半身が《蟲》でも、ちゃんとあるんですよ、『女の子の部分』が」
 くすくすと、《女王蟲》は笑って、
「私の名前……人間だったときの名前、シルウィンっていいます。
《女王》になってからは、誰にもその名前で呼ばれたことないですけど。《女王》は《女王》だから。
でも、これからは、ふたりが《女王》になるのだから、お互いのことは名前で呼び合いましょう。
リュニさん……リュニ。愛してる、リュニ。私の名前も呼んで。独りでいる間、ずっと呼ばれなかった名前」
「……シル、ウィン……」
 顔を伏せたまま、くぐもった声でつぶやくように、リュニは言う。
「そうよ、リュニ。私はもう、独りじゃないんだわ。ねえ、顔を上げて。もう一度、口づけしましょう」
《女王蟲》――シルウィンに促されて、リュニは、ゆっくり顔を上げる。
 濡れた瞳で、半ば放心した顔で、リュニはシルウィンを見つめた。シルウィンは微笑み、
「リュニ、愛してるわ。あなたはどう? 聞かせてくれる?」
「……シルウィン……、あいし……てる……」
「そうよ。私たち、愛し合ってるんだわ。これが誓いの口づけね。リュニ、ずっと、愛し続けるから……」
 シルウィンはリュニに顔を近づける。リュニは眼を閉じた。シルウィンも眼を閉じる。
 ふたりは、唇を重ねた。
 
 
 こうして、《森》に二匹目の《女王》が生まれた――
【終わり】
482名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 14:07:07 ID:JkPEPUPz
【女王蟲(あとがき)】

やってることは、掘骨砕三氏の『むしさん』と一緒ですね(笑
483 ◆eJPIfaQmes :2007/01/30(火) 17:27:53 ID:TC563orK
>470-482
素晴らしいものを読ませていただきました。
すでに変わってしまったシルウィンと、今まさに変わろうとしているリュニ、それぞれに
魅力的でした。
記憶や意識が保たれているのに、人ではないものへ次第に変わっていく感じが
たまりません。



結局今月は続きをお見せできそうになくて、お待ちしてくれている方にはすみません。
今ちょっと仕事の方が立て込んでいるもので……。
484470:2007/01/30(火) 17:58:39 ID:JkPEPUPz
>>483
どうもです m(_ _)m
ベルゼブブのほう、のんびりお待ちしてます。

シルウィンは人間のときからこの性格だったとしら、
ストーカーに走りそうな地雷女だと自分で書いてて思いました(笑
485名無しさん@ピンキー:2007/01/30(火) 20:49:37 ID:PXvvT9Dl
> 脱皮したばかりの昆虫のように白く半透明な、《蟲》の前肢だった。
このシーンに最高に興奮した。
グッジョブです!

エルム街の悪夢シリーズにこういうシーンがあったなー、と思いつつ
この趣味に目覚めたのもそれのせいかと気付いた…ってのはどうでもいい話ですなw

>>483
楽しみにしておりますが、何よりお仕事頑張ってくださいー。
486470:2007/01/31(水) 00:01:33 ID:08LDR3D6
>>485
でも今回エロシーンは寸止めだったり(^^;)ゞ
キスと乳を吸うくらいしかしてませんね

蟲になるシーンといえば、帝都物語だったか帝都大戦だったかの映画版で
女の子の胴体が蝉の姿になってしまうシーンがカットされそうだと公開当時の雑誌の記事で読んだ記憶が
犠牲者が子供だから、児童虐待になるとかそんな理由で……ただのSFXなのに
結局、映画自体、未見のままで現在に至る
そのシーンあったのかな、カットされたのかな……?
487名無しさん@ピンキー:2007/01/31(水) 03:24:09 ID:UDdaeEJr
>>470-482
読んでいてまさにそれを連想していました>掘骨砕三氏の「むしさん」
もっとも、あの作品では相手はまともにしゃべれないようでしたがw
氏の作品はあれを筆頭にかなり好みなので、これもかなり芯にきました!GJ
むしさんの後日談のように、2人の「女王」のその後の話もぜひ読んでみたいですな

>>483
同じく、のんびりとお待ちしますー
488470:2007/01/31(水) 06:30:05 ID:giI5wnAX
>>487
どうもです。

「むしさん」で気になったのが、むしさんになっちゃった女の子が、監禁中、
膝の辺りで足を切断されてる描写があったことです。
あれって逃げないように、むしさんにやられちゃったのかな?
その割には、むしさんを憎んでる様子もなかったし、どうなんだろう??
489名無しさん@ピンキー:2007/02/02(金) 15:45:08 ID:i99LJ7df
>>470-482
久々の良作ジャマイカ。
エロシーンがあまり入っていない方が良作になりやすい気がしてきた。
>>483 & >>470-482
乙です。
490名無しさん@ピンキー:2007/02/03(土) 04:12:17 ID:YEZSDWyY
久々に覗いて良かった……こういうの凄く好きです。
「むしさん」、すでに体が造り変わりつつあったのかな?と思いながら読んでた覚えが
つまり、真っ先に不要な膝下が"退化"したとか。
と、ここまで書いて読み返したけど「親」はちゃんと膝下ありますね……独自進化?
ともかくGJ!

>ベルゼブブの人
気長にお待ちしてます〜
491470:2007/02/03(土) 13:30:16 ID:bcO8UwFf
>>489
どうもです。
エロシーンは最初書くつもりでしたが、あまりに長くなりそうだったんでヤメてしまいました
根性無しなので(自爆

>>490
どうもです
「むしさん」は単行本の前書きを読むと、構想中にネームがどんどん長くなってったらしいので、
脚を切り落としちゃうシーンは、最初は描くつもりだったけどカットしたのかな……と思ってたです
「親」は腕がむしさんで、「子」は脚がむしさんなんですよね
492名無しさん@ピンキー:2007/02/07(水) 06:15:48 ID:3Jdy7rgl
^^;
493名無しさん@ピンキー:2007/02/11(日) 01:53:21 ID:szFq+pbJ
期待保守
494名無しさん@ピンキー:2007/02/12(月) 09:20:20 ID:qLfLmCu+
もうそろそろスレの半分か。よくここまで持ったなあ。
495名無しさん@ピンキー:2007/02/15(木) 23:40:29 ID:lNtsSpI3
保守
496名無しさん@ピンキー:2007/02/16(金) 05:19:14 ID:b+PHMtkX
>>486
帝都大戦やね
BS2でやった時はそのシーンはあったね。
497名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:06:59 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(1)】

 シルウィンは、夢を見ていた。
 たった「独り」で生きていた、《女王蟲》になったばかりの頃の夢を――
 
 
 そっと繁みから身を起こしたシルウィンは、口笛で振り向かせた野兎に、《従順》の術を放った。
 つぶらな黒い瞳をシルウィンに向けたまま、兎は、その場から動かなくなる。
 シルウィンは、兎に這い寄ると、
「……ごめんね……」
 囁きかけて、やわらかな毛に包まれた首筋に、顔を埋め――
 ひと思いに歯を立て、頚動脈を噛み破った。
 ぴくんと身を震わせて、兎の身体から力が抜けた。
 地面に横たわった兎の腹を喰い破り、前肢の先端の鉤爪で臓腑を引きずり出し、貪る。
「……はあっ……、……あふ……」
 獣のように浅ましく、手も使わずに餌を喰らうしかない自分がみじめで、涙がこみ上げてきた。
 それでも食欲は抑えきれず、ぴしゃぴしゃと音を立て、殺したての獲物の肉を咀嚼し、嚥下する。
 ゆるやかに波打つ金色の髪。白く華奢な、裸の背中。
 羽毛のように生え揃う長い睫毛に縁取られた眼には、翡翠に似た緑色の瞳が宿る。
 小作りな鼻とぷっくりした唇は、十代半ばの少女の幼なさを残す(いまは、それらが血にまみれている)。
 しかし――小さく頼りなさげな肩から伸びるのは、枯れ枝にも似て節くれだった昆虫じみた前肢。
 細くたおやかな腰から下には、鉛色の百足(ムカデ)のような体節が連なる。
 悪魔が造物主を嘲弄するために生んだかのような、美醜渾然の怪物――《女王蟲》。
 いまのシルウィンは、それであった。彼女は、この《森》の《女王》になったのだ。
498名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:08:02 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(2)】

《裁きの森》――
 天を衝くような巨木が立ち並ぶが、木漏れ日の差す場所には花が咲き、蝶が舞っていたりもする。
 兎や狐、鹿などの獣も多く棲み暮らす。
《裁き》などという恐ろしげな名に似合わない、穏やかな空気が流れる場所。
 この《森》で「裁かれる」のは、人間だけだ。
 人間は、《森》を切り開いて道を造る。獣たちの棲み処を、草花の群生地を、踏み荒らす。
 貴族などは生きる糧とするためではなく、ただ戯れに、獣を狩る。
 だから、人間も「狩られる」のだ、この《森》に。
 その代弁者たる、魔物たちに。
 そんな馬鹿な――と、人間だったときから抜けきらない「感情」では、思う。
 魔物どもこそ、嗜虐的に人間を嬲るではないか。
 死すら救済となるほどの理不尽な苦痛を、人間に与えるではないか。
 だが――と、いまや彼女に備わった《女王》としての「理性」では、理解する。
 ならば、なぜ造物主は魔物の跳梁を許すのか。
 彼らへの「裁き」を、世界の終わり――「審判」の日まで先延ばしにするのか。
 なぜ人間であった自分が、魔物の《女王》に堕ちなければならないのか。
 全ては、人間には窺い知れぬ、この世とあの世の理法なのだ。
 だから――
 シルウィンは《女王》として生き続けなければならなかった。
 日々の糧を求めて《蟲》の身体で這い回らなければならなかった。
 
 
499名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:08:53 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(3)】

 人が「焼ける」匂いを、シルウィンは感じた。
 魔物たちが「動いた」気配はない。これは、人間同士の争いだ。
 ならば、シルウィンには関わり合いのないことだった。
《女王》は雑事には拘らわない。《森》の静謐を涜す人間どもへの「裁き」は、魔物たちが下してくれる。
 それなのに――シルウィンは、いたたまれなくなってしまった。
 盗賊が旅人を襲っているのだとしたら?
 剣や魔法の備えがある大人ならともかく、無力な女子供が狙われているのだとしたら?
 いますぐ「裁き」を下すべきではないだろうか、《女王》である自分が?
 自分は「人間」が抜けきっていないのだろう。
 そう思いながらも、シルウィンは、下草を蹴って「駆け出した」。
 その気になれば、百足の脚は、人間が駆けるよりも速くシルウィンを運んでくれた。
 
 
 シルウィンが誰かを――人間を――助けるつもりだったとしたら、手遅れのようだった。
 横倒しになって焼けた馬車が、燻った煙を上げていた。
 二頭の馬車馬の死骸も、尻から後ろ脚にかけて骨が見えるほど焼け焦げている。
 しかし、致命傷は首や胸に刺さった矢であるらしい。
 周りには護衛役らしい剣士たちの死体が転がっていた。
 そのうち半数は、火炎魔法で襲われたらしく黒焦げだった。
 あとの半数は剣か魔法かわからないが、身体中を斬り刻まれて血まみれだ。
 襲撃者の姿は、とうになかった。手際よく目的を果たしたということだろう。
 目的――おそらく暗殺、あるいは誘拐だ。盗賊の仕業なら、いま頃まだ戦利品を漁っていよう。
500名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:09:41 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(4)】

 シルウィンは、死体の間を慎重に這って回った。
 何もしないで帰る気にならなかった。本当に、もう誰も助けられないのか、確かめようと思った。
「う……」
 小さな呻きが聞こえて、シルウィンは、どきりとして振り向いた。
 ――生きてる!
 戦僧のようだった。それとわかったのは、そばに錫杖が転がっていたからだ。
 身に着けていたはずの法衣は、ぼろぼろに焼け焦げ、酷い火傷だらけの半裸体を晒していた。男性だった。
 金色の頭髪は残っていたが、顔は無惨に焼け爛れている。
 だが――
 シルウィンは《蟲》の前肢を戦僧の身体にかざした。前肢の先が、白く穏やかな光を放ち始めた。
 自分の回復魔法なら、この戦僧を救えるはずだった。
 もともと《白巫女》であるシルウィンは、回復魔法は得意だった。
 それに、いまは《女王》として尽きることのない魔力も備わっている。
 彼が眼が見えていない様子なのは幸いだった。
 シルウィンは、おぞましい《蟲》になった自分の姿を人前に晒したくなかった。
 いまの自分は誰が見てもバケモノだろう。それも、経験を積んだ《冒険者》でさえ恐れる《女王蟲》だ。
 戦僧が低く呻き、口を開いた。まだ少年のような声で、
「あ……、誰……?」
「通りがかりの者です。近くに、あなたの敵の姿はありませんから、安心してください」
「……閣下は……?」
「馬車の周りで生きていたのは、あなただけです。馬車は焼けてしまいました。乗っていた方も、
攫われたのでなければ、無事ではないでしょう。閣下というのは、どなたですか?」
501名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:10:23 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(5)】

「……ロイツ尖塔公……」
 少年の答えに、シルウィンは眼を瞠る。大貴族だった――「人間」の。
 継承権を巡って家中で騒動が起きているとは、シルウィンも《冒険者》だった頃に耳にしたことがある。
「……僕たちが護衛していたのは、影武者だったけど……」
「え……?」
 シルウィンは怪訝にきき返す。少年の閉ざされた眼から、涙があふれ出した。
「……この森で『敵』に襲われて、閣下だけでもお逃げ頂こうとして……初めて、馬車に乗っていたのが、
閣下の召使の一人だとわかった。城を出る直前に入れ替わったらしい。護衛の僕たちさえ知らない間に……。
先代から城に仕えていた僕たちを、閣下は信用なさらず、身辺から遠ざけていた。先代のルグジェス様と、
弟君……いまの公爵のヴァイクス様は、仲違いなされていたから。それが、今回の領内巡察で急に僕たちが、
護衛の任務を任されることになった。きっと、閣下は襲撃の計画を察知して、僕たちを捨て石に……」
 シルウィンは、じっと少年を見つめた。
 貴族の家の事情など、自分の知ったことではない。
《冒険者》だった頃でもそう思っただろうし、人間でなくなったいまは、なおさらだ。
 だが、仕えていた主人に見捨てられた少年のことは、哀れでならなかった。
 しばらく――傷が癒えるまでの間だけ。
 行き場を失った彼を、自分の棲み処に置いてやってもいいのではないかと思った。
「……私は、《森》で隠遁の生活を送る者です。傷ついている人は助けますが、争いは好みません。
あなた自身も戦える状態ではないです。急ぎの手当てが済んだら、私が棲み処にしている洞窟にお連れします。
そこで、ゆっくり傷を癒してください。それから先、どうなさるかは、あなた次第ですが……」
 少年は答えない。ただ、涙を流している。
 少なくとも、自分の助けを拒否しているわけではないだろうと、シルウィンは判断した。
502名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:11:07 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(6)】

「体力の回復を早めるために《安息》の魔法を使わせてもらいますが、よろしいですか?」
 少年が、やはり答えなかったので、シルウィンは魔法の術で彼を眠らせた。
 そして《浮遊》の術で彼の身体を浮かび上がらせ、自分の百足の胴体を抱くように、うつ伏せに寝かせた。
 彼に意識があれば、おぞましい《女王蟲》の身体に乗せられることなど、断固拒否したことだろうが。
 シルウィンは少年を背負い、己の棲み処に向かって、ゆっくりと這い始めた。
 
 
《女王蟲》となったシルウィンの棲み処は、《森》の地下にある洞窟だった。
 その入口は、地面から突き出している大きな岩盤だ。
 ぼろぼろに風化して、踏み越えるには足場が悪く、人間の旅人なら迂回して通るであろう。
 そこを《蟲》の脚で這い上がると、その頂きに、巣穴への入口が開いているのだ。
 洞窟の中は、舞踏会が開けそうなほどの広さだった――そこが人間の「女王」の宮殿ならば。
 だが、魔物の《女王》であるシルウィンは、その場所にたった「独り」で棲み暮らしていた。
 天井の高さは、人の背丈の三倍ほど。
 出入口の穴からは、人間ならば縄を伝うか、《浮遊》の術を使わなければ出入りできないだろう。
 しかし《女王蟲》の脚は、岩盤にしっかりと喰い込み、天井から壁を伝って床まで這い下りることができた。
 いまは戦僧の少年を背負っているので、《浮遊》の術を使って降りることにしたけれど。
 洞窟の隅には、先代の《女王》が遺した、人間たちの衣服や装備品が山積みになっていた。
 それらの元の持ち主の運命は、考えたくなかった。
 先代の《女王》は、人間の男性を好んで襲う怪物として知られていた。
「彼女」に捕らえられて、生きて帰った男の話は聞いたことがない。
 かつて、シルウィンは《冒険者》として、仲間とともに《女王蟲》退治のため、この《森》に乗り込んだ。
503名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:11:43 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(7)】

《女王蟲》には致命傷を与えたものの、仲間たちは皆、殺された。
 そして――先代《女王》は死ぬ前の最後の仕事として、シルウィンを新しい《女王》に変えたのだ。
 シルウィンは衣服の山から大きめの外套や法衣を選び、床に重ねて敷いて、少年を寝かせた。
 彼自身のぼろぼろの法衣は、前肢で裂いて脱がせた。
 男性の裸は《白巫女》時代に怪我人の手当てで見慣れている。
 あらためて彼の身体に前肢をかざし、回復魔法を施した。
《女王蟲》が人間に回復魔法をかけている様は、滑稽なものだろうと思った。
 しかし、回復は相当早いことだろう。
 人間の《白巫女》が十人がかりでも生み出せない魔力を、シルウィンは少年に注ぎ込んでいるのだから。
 それだけの力を持つのだ、たった一匹の《女王蟲》が。
 一通りの処置が済んでから、新しく選んで来た外套を布団代わりに少年の身体にかけた。
 それから、別の衣服を裂いて包帯を作り、彼の眼を覆うように巻いた。
 そのほうが回復が早いはずだったし、いずれ視力が戻るはずの彼に、自分の姿を見せたくもなかった。
 だが、指がなく鉤爪が生えただけの前肢では包帯を結べない。
 シルウィンは百足の胴体をくねらせ、尻尾の先から蝋に似た分泌物を出して、前肢で掬いとった。
 先代の《女王》が同じように蝋を出していたのを、真似てみたのだ。
 シルウィンは、その蝋で洞窟の岩壁に磔にされて、《女王蟲》の卵を産みつけられたのだが。
 少年の頭の横で包帯を重ね、蝋を塗りつけた。それはすぐに固まって、うまく包帯を留めることができた。
 あと、怪我人の手当てに必要なことは何だろう?
 そう、食事だ。野草を集め、兎の肉と一緒に煮込んでスープを作ろう。
 防具の山から選んだ兜を前肢に引っかけ、シルウィンは再び天井の穴から外に這い出した。
 兜は鍋の代わりに使うつもりだった。
504名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:12:18 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(8)】

 捕らえた兎の身体を口にくわえて、野草と泉で汲んだ水を入れた兜を両方の前肢で捧げ持つ。
 人間の《冒険者》が見たら眼を疑うであろう姿で、シルウィンは巣穴に這い戻った。
 洞窟に降りてみると、すでに少年が目を覚まして、不安そうに周囲に呼びかけていた。
「ねえ……、どこに行ったんだ……?」
「ごめんなさい。こんなに早く目を覚ますと思わなくて……」
 兎の身体を口から放して謝るシルウィンに、少年は安堵の声を上げた。
「ああ……、見捨てられたかと思った……」
「不安にさせて、本当にごめんなさい。いまスープを作りますから。調味料の用意がないので、
味は期待しないでほしいですけど……」
「君は……隠者と言ったね? でも、声を聞いたら、僕と変わらないくらい若いようだけど……」
「事情があるんです。私……、人に見せられない姿をしているものですから……」
 そう言わなくてはならない自分が、みじめだった。
「だから……私の身体にも、触れてもらうわけにいかないんです。必要なお世話は私のほうでしますから、
できれば、じっと寝たままで、手も動かさないでいただけますか?」
「わかった……」
 少年は、うなずいた。それから、しばらく間を置いて、
「……ごめん。僕がここにいたら、本当は迷惑なんだろう?」
「そんなことは……ないです。話し相手になっていただければ、私も助かります。ずっと独りで、
退屈してましたから……」
「君の……、名前は?」
 少し考えてから、シルウィンは、くすっと笑って答えた。
「名前は……ないです。隠者って、そういうものでしょう?」
505名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:12:56 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(9)】

「……そうだったね」
 少年も笑ってくれた。
 
 
 捕らえて来た仔鹿を前肢と魔法を使って解体し、切り分けた肉を木の枝に刺して《火炎》の魔法で炙る。
 焼き上がった肉を、シルウィンは少年に手渡した――自分の前肢には触れさせないよう、気をつけながら。
 二日間で、少年はかなり回復した。火傷の痕には新しい皮膚が張り、身体を起こせるほど体力も戻った。
 眼の傷も癒えているはずだったが、シルウィンは包帯を外してやらず、少年もそれを求めなかった。
 シルウィンが自分の姿は見せられないと言ったからだろう。
「君は、狩りが得意なの? いつも獣を捕まえて来てくれるけど」
 少年の問いに、シルウィンは笑って答えた。
「はい。この《森》で生きていくには、独りでも、いろんなことができないと」
「危ないことはないの? 盗賊とか……魔物に襲われたり?」
「危険が迫ったときは、うまく身を隠します」
 嘘をついているわけではなかった。
 魔物はともかく、人間の前には姿を現さないよう、シルウィンはいつも気をつけている。
「君は……強いんだね」
 少年は言って、ため息をついた。
「僕は……たとえ怪我が治っても、ここで一人で生きていくのは無理だろう」
「弱いですよ、私は。だから独りで身を隠して生きてるんです」
「君が、この森について知ってることを聞かせてくれるかな? 獣のことや、草花のこと。魔物のことも……」
「ええ。わかりました……」
506名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:13:29 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(10)】

 シルウィンは、少年に《森》について語って聞かせた。
 もっとも、話の中身は、神殿に仕える巫女、あるいは《冒険者》であった頃の見聞に基づくものだ。
 この《森》については、《女王》になって日が浅い彼女も、知らないことが多かった。
 たとえば、魔物たちのこと。人間がいまだ存在さえ知らない魔物が、《森》には数多くいた。
 人間が彼らに気づいたときには、獲物にされているからだ。
 彼らは《女王》であるシルウィンの前では姿を隠さないが、自ら挨拶に訪ねて来ることもない。
《森》で偶然行き会わなければ、シルウィンも彼らの存在を知らないままなのだ。
 そうした「未知の魔物」について、シルウィンは触れないようにした。
 彼らについて語るとなれば、自分がどのように彼らの存在を知ったかも説明しなければならなくなる。
 それでも、少年は感心した様子で、シルウィンの話を聞いてくれた。
 貴族の城に仕える戦僧であった彼よりは、シルウィンの見聞の幅のほうが広かったということだろう。
 話が一区切りついたところで、少年が言った。
「君には、迷惑かもしれないけど……このまま、眼が治らなくてもいいと思えてきた」
「え……?」
「そうしたら、いつまでもここにいさせてもらえるだろ? 君のそばに……」
「…………」
 シルウィンは、じっと少年を見つめ――やがて、彼のそばに這い寄った。
「……ごめん。おかしなこと言っ……」
 謝ろうとした彼の言葉を、唇を重ねて遮った。少年が息を呑むのを感じた。
 シルウィンは唇を離し、言った。
「私……あなたが想像している姿とは、全然違うと思います」
「それは、わかってる。でも僕は……」
507名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:14:03 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(11)】

 シルウィンは首を振って、言う。
「わかってないです。私の顔に触ってみてもらえますか?」
「……いいの?」
 少年は恐る恐る手を伸ばし、シルウィンの頬に触れた。
 なめらかな頬を撫で、顔の横の髪に触れ、耳にも触れて――怪訝そうに問う。
「いったい……?」
「眼や鼻や唇に触れてみてもいいです。そこは普通の人間と変わりないですから。胸に触ってもいいですよ、
私は裸ですけど」
 くすっと笑うシルウィンに、少年は怒ったように声を上げた。
「君……僕をからかってたのか?」
「からかってないです。私が人間の姿をしているのは、あなたが触れた顔と、腰から上の身体だけ。
両腕と、腰から下は……《蟲》なんです。言ってる意味、わかりますか?」
「……《女王蟲》?」
「ええ……」
 うなずいたシルウィンに、少年は黙り込んでいる。シルウィンは、言った。
「だから……私、あなたと一緒には、いられない。私は、バケモノなんです。人間なら誰もが恐れる、
魔物の《女王》です。だから……」
 あとの言葉を、少年は言わせなかった。シルウィンの身体を、強く抱きしめた。
 片手で眼の包帯を剥ぎとり、しばらく眩しそうに眼をしばたたいてから、シルウィンの顔を見た。
 シルウィンは、泣き出しそうな潤んだ眼で、少年を見つめ返す。
 少年は、言った。
「……ずるいよ、君は。こんなに可愛いのに、ずっと僕に姿を見せてくれなかった」
508名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:14:42 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(12)】

「なに言ってるの。私はバケモ……」
 言いかけたシルウィンの唇を、少年は唇で塞いだ。すぐに唇を離して、シルウィンを見つめ、
「君は僕にキスしたろ? 自分を怪物だと思うなら、どうしてそんなことしたんだよ?」
「それは……、だって……」
 眼を伏せたシルウィンの顎に手をやり、顔を上げさせて、もう一度、唇を重ねる。
 少年の舌に唇をなぞられて、シルウィンは、それを受け入れた。舌と舌が絡み合った。
 その心地よさに、シルウィンは涙をこぼす。唇を離し、少年は言った。
「君が普通の人間じゃないだろうってことは、わかってた。この森で魔物も恐れず、独りで生きてるなんて。
でも、君は僕の命を救ってくれた。君は人間じゃないにしても、ただの怪物でもないはずだ。それでも君が、
自分を怪物だと言うのなら、君に助けられた僕の命は、君のものだ。君になら、僕は殺されてもいい」
「……殺すなんて……」
 シルウィンは、首を振る。
「《裁きの森》の《女王》は代替わりしたんです。私は誰も殺したことはないし、殺したいとも思わない。
私は魔物たちの《女王》ですが、私の務めは、ただ君臨するだけ。それだけで魔物たちは、決してこの《森》
から外には出ません。悪意を持った人間に《魅了》の術で操られでもしない限り、勝手に《森》を離れて、
人里を襲うことはないんです。たぶん《女王》の存在を鍵にした、古い呪術のようなものと思いますが……」
「君……もしかして、元は人間だったのかい?」
 驚いたようにたずねる少年に、シルウィンは首を振った。
「いまは《女王蟲》です。あなたが眼にしているのが、私の全て。いまさら『人間になれる』わけでもないし。
それでもいいと思ってくれるなら……もう一度、人間の女の子にするみたいにキスしてください」
「……君ほど綺麗な子に、キスしたことなんてないよ」
 言いながら、少年は唇を重ねてきた。
509名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:15:21 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(13)】

 シルウィンの頬を撫で、髪を撫で、そして彼女の反応を確かめるように、首から鎖骨へ手を滑らせてきた。
 魔物の《女王》は――いまはただの少女のように、唇を離して、少年に囁く。
「……もっと、触れてください……」
 少年の手がシルウィンの胸まで滑り降り、そっとやさしく乳房を撫でた。
 シルウィンの乳房は、あどけない顔立ちに似つかわしく小ぶりではあった。
 だが、上向きに形よくふくらみ、桜色の乳頭がささやかに添えられている。
「手を伸ばせば届くところに、こんなに綺麗な花が咲いてたなんて……」
 少年はシルウィンの耳に囁きながら、彼女の乳首に指を触れた。
 ぴくんと、シルウィンは身を震わせる。
「君は、本当にずるいよ。僕の眼はとっくに治ってたのに、いつまでも包帯を外してくれなかった。
僕には花を愛でる心がないと思ったんだね?」
「ごめんなさい。でも……」
 シルウィンはうつむき、肩を震わせる。泣かせてしまったのだろうか?
 少年は彼女の小さな肩に手をかけ、心配そうに、
「えっと……、君? ごめん……」
 ところが、シルウィンは、くすくす笑っていたのだった。少年の顔を見上げ、「あはは」と声を上げて笑い、
「私のオッパイを、花とかなんとか。それって、元ネタは『ミロン卿の酔いの戯言(ざれごと)』でしょう?」
 少年は、気まずそうに眉をしかめた。
「知ってたの? そうだよ、一昔前に流行った詩集のパクリさ。僧院で修行していた頃、学寮になぜか、
これが一冊だけあって。ほかに読むものがなくて丸暗記したんだ」
 そこで彼は、にっこりとして、
「……でも、今度は僕自身の台詞だよ。君は笑うと、もっと可愛くなるんだね、《女王》さま?」
510名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:15:55 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(14)】

「ばか……」
 赤くなったシルウィンに、少年は再び唇を重ねた。
 それから顎へ、首筋へ、鎖骨へキスをして、さらに乳房のふくらみから――乳首へ唇を這わせた。
「あっ……」
「声も可愛いよ。もっと聞かせてよ、君の可愛い声」
「やっ、だめ……」
 きゅっと眼をつむり、シルウィンは首を振る。
 しかし少年は容赦なく、彼女の乳首を吸い、舌で転がし、甘噛みして弄ぶ。
「ああっ……、や……んんっ、くぅ……んはぁ……だめ、だめぇ……」
 シルウィンは少年の肩を前肢で押しやった。そして彼の顔を見つめ、
「私も……してあげる。その……、クチで……」
 足を伸ばして地面に座った格好の、少年の腰の上にわだかまっていた外套を払いのけた。
 彼の股間には、赤黒く照り光った陽根が、すでに屹立していた。
 自分自身のそれを見下ろして、少年は眉をしかめ、
「火傷は治っても、焼けちゃった下の毛は、すぐには生えてこないんだね……」
「ええ……。だから、あなたは完治してないの。まだ《森》の外には帰らせてあげられないわ……」
 シルウィンは少年の陽根に顔を近づけ、舌を伸ばして、それを舐め上げた。
 ごつごつと血管が浮いた根元から、笠のように発達した雁首へ、二度、三度と舌を往復させて。
 それから、先端の鈴口を、ちろちろと舌でくすぐった。
「んっ……」
 少年は、身を固くする。
 シルウィンは大きく口を開けて、少年の陽根をくわえ込んだ。
511名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:16:39 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(15)】

 頭を上下させ、口蓋全体――舌と、上顎と、唇と歯の全てで、少年の陽根を愛撫する。
「ああっ……」
 少年は切なげに声を上げる。彼の逸物は、シルウィンの口の中で、さらに怒張した。
(私が、彼を『こんなに』させてるんだ……)
 魔物に堕ちた自分が。二度とヒトを愛することも、ヒトから愛されることもないと思った自分が。
 先代の《女王》のように、生け捕りにした人間の男を無理やり「犯す」のではなく。
 男と女として。あるいは牡と牝として。お互いを求め合って、結ばれているのだ。
 いや――本当に「結ばれて」は、いない。
「あっ……、君……ああっ……」
 ぶるりと身を震わせ、声を上げ続ける少年から――その逸物から、シルウィンは口を離した。
「あの……、ね。あなたの命は、私のものだと言ってくれたでしょ? だから、お願い……」
 少年の前で身体を起こし、《蟲》の胴体を反らす。
 そして、人間のままの縦長の臍の下――白磁のような肌が、鉛色の硬質な外骨格に繋がった部分。
 そのすぐ下、最初の体節と第二体節の隙間に、前肢を差し入れた。
 そのまま――第一体節をめくり上げると、鮮やかな桃色に濡れ光った器官が姿を現した。
 少年が驚きに眼を見開く。
「えっ? 君……」
「ここに……ちゃんと、あるの。『女の子』の部分。ここに……欲しいの……」
 人間なら肌に近い色であるはずの部分――大陰唇までが、桃色の粘膜で作られていたものの。
 ぷっくり突き出した陰核や、襞状の小陰唇を伴ったその形状は、人間の女性器そのままだった。
「……そうだね。ちゃんと『女の子』だ、君のここは……」
 少年は手を伸ばして、それに触れた。
512名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:17:33 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(16)】

 びくっと、シルウィンは身を震わせる。
「あっ……!」
「ここに欲しいんだね? 君が回復魔法で治してくれた、僕のモノが?」
「ええ……、ちょうだい……」
「だったら可愛らしく、おねだりしてごらん。《女王》さま」
「ください……。あなたの……」
 シルウィンは前肢を少年の肩にかけて、身をすり寄せる。乳房が、少年の胸を撫でる。
 少年は彼女のなめらかな背中に手を回し、耳元で囁いた。
「僕の……、何が欲しいの?」
「……ばか。じらさないで、早く……」
「わかったよ……」
 少年は苦笑いして、シルウィンの「その部分」に陽根の先を突き当てた。
 ――にゅるっ。
 何の抵抗もなく、むしろ自らの意思に従ったかのように、それは少年の陽根を呑み込んだ。
 そして――
「あっ……! うっ、嘘だろ……? すごい……」
《女王》の秘部が、陰唇が、そして膣の内壁が、不規則に蠢き始めたのだ。
 まるで無数の軟体動物が膣の中に棲みついていたかのような。それが陽根を包み込んだかのような。
 思いもよらぬ感覚に困惑しているのは、シルウィン自身も同様だった。
「やっ、やだ……私、いったい、どうなって……?」
 膣の内側は彼女にとっても敏感な部分だったのだ。それが身勝手にも蠢動し、少年の陽根を貪る。
 シルウィンと少年は、互いに救いを求めるように、強く抱き締め合った。
513名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:18:23 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(17)】

 シルウィンの前肢の先の鉤爪が、少年の肩に喰い込むが、彼には痛みを感じるいとまもない。
 それ以上の快感が、腰から――陽根から背筋へ、脳天まで突き抜けるように走る。
「あっ、あっ……ごめんっ、もうっ……!」
「いっ、いいっ、私も、イッちゃ……ああっ!」
 頭の中で光が弾けたように、シルウィンは感じた。
 彼女は少年と抱き合ったまま、びくっ、びくっと、身を震わせた。
 少年の「精」が自分の胎内に、ほとばしるのを感じた。
《女王蟲》が人間の子供を孕むことはない。
 彼らがどのように「子」を生すかは、シルウィン自身が身をもって知っている。
 生贄となる人間の女の胎に、《卵》を産みつけるのだ。それが、人間を《蟲》に造り替えてしまう。
 シルウィンも、そうして《女王蟲》になったのだ。
 ならば、《女王》が人間の男と情交するのは、己の欲望を満たすためでしかない。
 けれども、情欲のみの性交は、人間同士でも行なうこと。
 少年の「生命の種」を無駄に放たせたことにも、シルウィンが後ろめたさを感じる理由はない。
 むしろ――それによって、彼女自身が救われたのだ。
 自分が、いま、少年によって必要とされていること。自分が孤独ではないこと。
 それを感じることができたのだ。少年の生温かな「精」を、自分の身体で受け止めることで。
 抱き合ったまま、少年と少女――の心を持った魔物――は、お互いの眼を見交わす。
 そして、互いに唇を寄せ合った。いま、ふたりは同じ感情を共有していた。
 そこには人間も魔物もなかった。戦僧も《女王》もなかった。お互いが、ひたすら愛しかった。
 
 
514名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:18:58 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(18)】

「――狩りに連れていってもらえないかな?」
 少年が、言った。
 シルウィンと「ふたり」で洞窟で暮らし始めて、ひと月が過ぎていた。
 彼は《森》の外に帰りたいとは一度も口にしなかった。
 家族についてたずねると、父親は自分と同じく公爵の城で働いていたがすでに亡くなったと答えた。
 母親は、彼が物心つく前に家を出て、いまは生きているか死んでいるかもわからないという。
「僕は城の女中たちに育てられたようなものだ。それを許してくれた先代公爵のルグジェス様には恩義がある。
でも、ルグジェス様は子供を残さずに亡くなられて、奥方様は実家へ戻られた。先代に仕えた女中たちも、
城を去った。だから、いまの僕に家族と呼べるのは……君だけだと言ったら、迷惑かな?」
 迷惑であるはずがない。シルウィンの答えは、口づけだった。
 シルウィンと少年は、日に夜に何度も何度も愛し合った。
 少年が疲れ果てて眠りに落ちると、シルウィンは洞窟を抜け出して兎や仔鹿を狩った。
 彼女の主食は、やはり生肉だったが、それを貪る姿を少年には見せたくなかった。
 洞窟の外で思う存分、殺したての獣の血肉を貪り、少年のためには別に仕留めた獲物を持ち帰った。
 それを焼いて調理して少年に食べさせるのだが、シルウィン自身は申し訳程度にしか口にしなかった。
 彼女の習性を、少年も薄々は感づいていたらしい。
「君の『人間じゃない部分』も、僕は全て受け入れたいと思うんだ。もちろん、すぐには慣れることができず、
君に不愉快な思いをさせてしまうこともあるだろう。でも……できれば僕は、ずっと君のそばにいたい。
いつまでも隠しごとをもつのは、君だってつらいだろう? だから……まず、君がどうやって狩りをするか、
見せてほしいんだ」
「私……あなたには、私の『人間らしい部分』だけ見てほしいと思ってたけど……いいわ、わかった。
いまの私が人間ではないのは、どうしようもない事実だもの」
515名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:19:37 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(19)】

「君を傷つけるつもりで言ったんじゃないんだ」
 慌てたように言う少年に、シルウィンは微笑み、首を振る。
「わかってる。私は自分が人間ではないことを、いまさら嘆き悲しんではいないの。《森》にとって、
《女王》は必要な存在。私は、その務めを果たすだけ。でも、それと同時に人間であるあなたにとっても、
私が必要な存在でいられるなら……半分は人間の部分を残している私にとって、この上のない歓び」
 シルウィンは少年と口づけを交わし、そして《蟲》の前肢を差し伸ばして、誘(いざな)った。
「行きましょう、『狩り』をしに」
 
 
 シルウィンは、いつものように《従順》で兎を眠らせ、その喉笛を噛み破って止めを刺した。
「君……《従順》なんて白魔法の秘術を使えるんだ。もしかして、元は《白巫女》かい……?」
「《女王》はどんな魔法でも使えるの。死霊魔法で、この兎を屍鬼(グール)にすることだってできるわ」
 少年を振り返り、にっこり笑ってみせる。しかし、少年が「引いている」様子だったので、
「ごめんなさい。こんな血まみれの顔で言ったんじゃ、シャレにならないわね」
 口の周りの血を、前肢で拭う。少年は気まずそうに眼を伏せて、
「いや……僕こそ、ごめん。自分から狩りを見せてほしいと言っておいて」
「《従順》は対象の敵意を鎮め、争いを避けるための白魔法。こんな使い方は、確かに罰当たりだわ。
でも、《火炎》や《雷撃》で必要以上に獲物の身体を傷つけたくないの。私は生の肉を食べるから」
「焼いた肉よりも、君にとっては『ごちそう』なんだね。ねえ……」
 少年はシルウィンの前肢をつかんで引き寄せ、唇を重ねた。
「本当に、ごめんよ。ご機嫌をとりたくて言うんじゃないけど、実のところ君が《女王》でよかったと、
思うこともある。君とのエッチは、最高なんだ」
516名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:20:23 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(20)】

「ばか。それじゃ、身体だけが目的みたい」
 シルウィンは、くすくす笑って少年にキスを返した。
「私も、打ち明け話を一つするわ。あなたが一番最初に、私のそばにいたいと言ってくれたとき……私、
ぞくぞくするほど感じちゃった。あのまま、キスだけじゃなくて、あなたを『犯したい』と思ったの」
「怖いね、《女王》という生き物は」
「生き物じゃないわ。魔物だもの」
 くすくす笑い合って、くり返し、唇を重ねる。
 何度目かのキスのとき――
 爆発音が、聞こえた。
 少年とシルウィンは、抱き合ったまま振り向いた。さほど遠くではない。
 シルウィンには、すぐにわかった。《忍び狐》が、人間を襲っている。
 彼らが気配を消せば、《女王》にも容易には察知できない。
 まして、シルウィンの注意は人間の少年一人に向いていた。《女王》としては迂闊すぎることだったが。
 だから《忍び狐》が「狩り」を始めるまで、彼らが近くにいることに気づかなかったのだ。
「《火炎》の術だ。魔物に襲われてるのか? それとも人間同士?」
 走り出そうとする少年の肩に、とっさにシルウィンは前肢をかけた。
「行っちゃだめ!」
 鉤爪が浅く彼の肩を裂き、「うっ」と呻いて、少年は振り向く。
「何で? 誰かが魔物に襲われてるなら、助けなきゃ! 僕は、もう戦えるくらい回復してる!」
「相手は《忍び狐》よ! あなた一人でどうにかできる魔物じゃない!」
 少年は驚きに眼を見開いた。
「君……魔物が人間を襲ってると、わかってるのか?」
517名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:21:02 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(21)】

 シルウィンは眼を伏せた。
「彼らが『狩り』を始めるまで気づかなかった。わかっていたら、この辺りには近づかなかった」
「だったら……君、《女王》だろう? 魔物たちを止めてくれ!」
 叫ぶ少年に、シルウィンはうつむいたまま、首を振る。
「それはできない。人間は獣を狩る。私も獣を狩る。魔物は人間を狩る。誰にも止められないことだもの」
「何を言ってるんだ、君!」
 少年はシルウィンの前肢をつかんだ。
「いまの君が《女王》とか、そんな戯言は、もうやめてくれ! 君は人間だった! そうだろう!?
人間だった君が魔物の《女王》になるって、こういうときのためじゃないのか!?」
「私に、そんな力はないの。《忍び狐》の群れ一つ、魔法で滅ぼすのは簡単よ。でも、それをした途端、
魔物たちは《女王》に叛旗を翻す。この《森》の全ての魔物が私に牙を剥く。私の命だけなら惜しくない。
でも、《女王》がいなくなれば、魔物たちは《森》を離れて、人間の街や村を襲い始める。《女王》の存在は、
《女王》自身を含めた魔物を《森》の中に留めておく、それだけの意味しかない。それが、恐らくは遠い昔、
魔物と――いえ、この《森》と人間とのあいだで結ばれた契約なんだわ」
「君……」
 少年は、じっとシルウィンを見つめる。シルウィンは自嘲するように笑った。
「私は《女王》であると同時に、この《森》の虜囚。人間から《森》に捧げられた生贄なの……」
 もう一度、爆発音がした。少年は振り向き、すぐにシルウィンに眼を戻す。
「いま現実に、魔物に襲われている人間がいる。それを見殺しにするなんて、僕にはできない。僕はこれでも、
戦僧――聖職者の端くれだからね。君が《女王》であることに縛られているように、僕も自分自身の運命に、
縛られているんだ」
 シルウィンに歩み寄り、頬にキスをする。そしてすぐに離れて、微笑んだ。
518名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:21:34 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(22)】

「さよなら、僕の可愛いヒト」
「待って……」
 シルウィンは、少年に抱きついた。前肢で、しっかりと彼の身体を抱き締めた。
「お願い、行かないで……。私を、独りぼっちにしないで……。あなたの命は、私のものでしょう……?
どうしても行くと言うなら、あなたに《従順》の術をかけるわ……。あなたの記憶を、魔法で奪うわ……。
私たち、きょうは洞窟の外に出なかった。《忍び狐》なんて知らない。ねえ、お願い、そうさせて……?」
 少年はシルウィンの唇にキスをした。そして、もう一度、微笑んだ。
「君は、そんなことしないだろう?」
「する……。私、《女王》だもの……」
「しないよ。君は僕が愛したヒトなんだから」
 最後のキス。
 そして、少年はシルウィンの腕をすり抜け、走り出した――
 
 
 独り、洞窟に戻って、シルウィンは泣いた。
 どうして、無理やりにでも彼を止めなかったのか、後悔した。
 魔法で記憶を奪ってしまえば、彼に恨まれることもなく、ふたりの幸せが続いたはずなのに。
 きっと、ヒト――人間だなんて言われてしまったからだろう。
 自分は《女王蟲》なのに。魔物なのに。
 魔物に堕ちた自分を愛してくれる、彼のような人間が再び現れるとは思えなかった。
 だから自分も、彼を愛したように再び人間を愛することは、できないだろうと思った。
 先代《女王》のように、情欲を満たすためだけに人間の男と交わる――そんなバケモノに自分も堕ちるのだ。
519名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:23:39 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(23)】

 それから、シルウィンは、《森》で何人もの人間の男を生け捕りにしては、情交した。
 一度、性の快楽を覚えた《女王蟲》の身体は、欲望を抑えられなかった。
 それに、人肌の温もりも忘れられなかった。たとえ心まで通い合うことはないとしても。
 先代の《女王》とは違い、決して獲物の命は奪わなかった。《森》の外まで無事に帰らせた。
 人間を殺めることは、かつて自分を「ヒト」と呼んでくれた恋人への冒涜になると思ったのだ。
 獲物になった男たちの中には、自らの意思で彼女の許に留まりたいと申し出る者もいた。
 シルウィンの外見上の人間の名残を留めた部分は、それだけ魅力的であった。
 もちろん――性交時の具合の良さも。
 だが、自分の姿を知らないうちから――むしろ「人に見せられない姿」だと言われてそれを信じながら。
 彼女のそばにいたいと言ってくれた、かつての恋人。
 シルウィンの内面の人間性まで愛してくれた彼のような男性は、再び現れることはなかった。
 彼女がかつては人間であったことなど、獲物となった男たちの誰も気づきはしなかった。
 シルウィン自身が、人間を弄ぶ魔物の《女王》を堂々と演じ続けたせいもあったにしろ。
 
 
 そして――シルウィンは「彼女」と出会った。
 そのときの彼女が《忍び狐》と戦っていたのは、ただの偶然であっただろう。
 だが、彼女の敵が違う種類の魔物であれば、シルウィンは彼女に関心を持たなかっただろう。
 シルウィンは、獣かあるいは人間の男を「狩る」つもりで《森》を徘徊していた。
《火炎》の魔法による爆発音を耳にして、近くで《忍び狐》が人間を襲っていることに気づいた。
 かつて――恋人を喪ったときと同じように。
 とっさにシルウィンは走り出した――《蟲》の脚で。
520名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:25:13 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(24)】

 人間を助けようと思ったわけではない。いまさら、それをしたところで、どうにもならない。
 喪ってしまった恋人が還るわけでもない。それでも走った。走らずにいられなかった。
 そして、《忍び狐》に囲まれている「彼女」を見つけた。
 周りには剣士や魔導士の姿をした人間が三人、倒れていた。
 緑と茶色の毛が斑に生えた、狐に似た魔物――《忍び狐》も五、六匹、血まみれで転がっていた。
 それでも、なお七匹の《忍び狐》が、姿を消したまま獲物に襲いかかろうとしていた。
 彼らの放つ禍々しい瘴気を、シルウィンは感じとった。
 獲物となる人間に、より恐怖を与えるため、狩りの態勢に入った彼らは意図的に瘴気を発するのだ。
 姿は隠したままで。
《忍び狐》が姿を現すのは、狩りに成功して全ての獲物を殺したときか、失敗して屍体になったときだけだ。
 ただ一人、生き残っていた「彼女」は、魔導剣士のようだった。
 男の子のように短くした銀色の髪に、やはり男の子のような凛々しい顔立ち。
 それでも女とわかったのは、艶やかな褐色の肌を過剰に露わにした革の軽装鎧姿のおかげだ。
 それは豊かな胸と、腰回りだけを覆っていた。防御力は、恐らく彼女自身の魔力に頼っている。
 だが、それも限界に近づいていた。姿の見えない敵との戦いは、彼女を確実に消耗させていた。
 息が荒かった。頬と脇腹には、《忍び狐》の爪か牙による浅い傷痕があった。
 そして、また。見えない魔物の爪が、彼女の左の二の腕を抉った。血しぶきが散った。
「――ああっ!」
 悲鳴を上げ、よろめいた。そこに、さらに――
「……くっ!」
 だが、彼女は、右腕一本で迫る瘴気に向かって剣を振るった。血しぶきは、今度は彼女の敵のものだった。
 ――ズシュッ!
521名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:25:58 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(25)】

 見えない魔物が、血を吹き散らしながら、どさりと音を立てて地に倒れ――そして、ようやく姿を現す。
 あと、六匹。
 しかし、それは《女王》のシルウィンだから感じられていることだ。
 人間の「彼女」は、敵がどれだけ残っているかもわかっていないだろう。
 わかったところで、ようやく半分倒しただけと知ったら、絶望するだけかもわからないが。
 そのとき、彼女が、シルウィンの存在に気づいた。
「――逃げろッ!!」
 彼女は、シルウィンに向かって叫んだ。戦いの場に迷い込んだ、哀れな旅人だと思ったのか。
 それが、彼女の隙になった。見えない敵に体当たりされ、彼女は、地面に倒れ込んだ。
「GRRRRR!」
 勝ち誇るかのように、彼女にのしかかった《忍び狐》が姿を現し、咆哮する。
 ――バシィィィィィッッッ!
 その胴体に何かが直撃した。
「GYYYYY!」
 苦鳴とともに、魔物の身体が横に吹き飛んだ。
「……《疾風》!?」
 それが風を操る魔法だと気づき、銀髪の女剣士は驚きの声を上げる。
 術を放ったのは、シルウィンだった。
「《女王》として命じるわ。立ち去りなさい」
 魔物たちに向かって、呼びかける。
 女剣士は、近づいて来るシルウィンの姿を見て――息を呑んだ。
 自分を助けた《疾風》の使い手が、人間ではなかったからだ――《女王蟲》だった。
522名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:26:50 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(26)】

 残り五匹の《忍び狐》たちが、姿を現した。
「GRRRR……!」
《女王蟲》を威嚇するように唸りを上げ、そのうちの一匹が、たどたどしいながらも人語を発する。
「……人間ノ味方ヲスルノカ、ヒトカラ生マレタ《女王》ヨ……」
「私が人から生まれようが、瘴気の澱みから生まれようが、あなたたちには関わりのないこと」
 シルウィンは答えて言った。
「私が人間の味方をするのかと問うとは、本当に愚かしい。《女王》は、ただ狩りをするだけ。
己の欲望の赴くままに」
「……獲物ノ、横取リカ……?」
「そうよ。何か不満でも?」
「……《女王》ガ、女ナド襲ッテ、ドウスル……?」
「《女王》が人間の女を獲物にする目的は、一つしかないでしょう?」
「……モウ一匹ノ《女王》ヲ生ム。寿命ガ近ヅイタワケデモナイノニ、例ガナイコトダ……」
「いけないという決まりでも?」
「……我ラハ、知ラヌ。全テハ、古キ世ニ定メラレタコト……」
「なら、その人を私に寄越しなさい。あなたたちには勿体ない獲物だもの。自分が死にかけてるのに、
私に『逃げて』と呼びかけてくれた。男の子みたいに素敵なのに、ちゃんと《女王》になれる女の人。
その人に、私と一緒に《女王》になってもらうのよ」
 シルウィンは、女剣士に微笑みかけた。
「ねえ、そうさせてくださいね? 私が愛したあの人も、《女王》であることの意味は理解しなかった。
男の人は、みんなそう。《女王》を理解できるのは、同じ《女王》だけなんだわ。まさか自分が、
女の人に恋をするとは思わなかったけど、あなたは本当に素敵なんですもの……」
523名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:27:27 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(27)】

「……あたしを、あんたの仲間にだって? ふざけるな!!」
 女剣士の答えは、《雷撃》の魔法だった。
 ――バリバリバリバリッ!
 宙天に生まれた蒼白い稲妻が、大気を斬り裂いて、《女王蟲》を撃つ――はずだった、だが。
 ――バシッ!
 シルウィンを包んだ紅い光が《雷撃》を受け止め、霧散させた。
「《魔力障壁》です。あなたも《冒険者》なら、ご存知でしょう? 《女王蟲》に魔法は通用しないと」
 微笑むシルウィンに、女剣士は舌打ちして、斬りかかって来た。
 ――ズンッ!
 だが、紅い光――《魔力障壁》は、剣の攻撃も寄せつけなかった。女剣士の身体ごと、弾き飛ばした。
「……ぐっ!」
 彼女は地面に倒れ伏し、しかしすぐに剣をつかんで、よろめきながらも立ち上がる。
 シルウィンは眉をひそめ、諭すように言った。
「ねえ、お願い。そんなことをしても、あなたが傷つくだけ。私と一緒に、来てくださいませんか?
どうしても嫌だと言うなら、《従順》の術で無理にでもお連れしますけど。そうだわ。あの人のときも、
そうすればよかったの。だから、今度は失敗しない。さあ、こちらにいらしてください……」
 女剣士の手から、剣が落ちた。
「……くそっ……」
 舌打ちにも、すでに力はなく。
女剣士はシルウィンに差し招かれるまま、歩き出した――
 
 
524名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:28:15 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(28)】

 ――そして、シルウィンは眼を覚ました。
 いつもの洞窟の中。《蟲》の胴体を投げ出し、人間のように身を横たえて。
 隣には、静かな寝息を立てている、銀髪のもう一匹の《女王蟲》――リュニという名の元「剣士」がいて。
 シルウィンは、自分の頬が濡れていることに気づいた。
 ひどく切ない夢を見て――でも最後に、彼女は、宝物を手に入れたのだ。
 だから、これは、きっと歓びの涙。
 シルウィンは身体を起こし、リュニの頬に口づけした。
「ん……」
 リュニは声を上げ、ゆっくりと眼を開ける。シルウィンは謝った。
「ごめんなさい。起こしちゃった?」
「ん……、まあ……」
 リュニは前肢で眼をこすりながら、シルウィンの顔を見て、小首をかしげる。
「……泣いてたの?」
「ちょっと夢を見て。ねえ、リュニ?」
「ん……?」
「私があなたを《女王蟲》に変えてしまったこと、あなたは怨んでる?」
「それは怨んでると言われて自虐に浸りたいの? それとも嘘でも怨んでないと言われて自己満足したいの?」
 リュニの答えに、シルウィンは、くすくす笑い出した。リュニは眉をしかめて、
「何なの、シルウィンあんた? よっぽど、おかしな夢を見たのね」
「違うの。あのね、あなたを《女王蟲》に変えたとき、私、あなたの心まで壊してしまったと思ったの。でも、
きっと、リュニはリュニのままなのね。人間だったときのあなたのこと、よく知らないけど、いまみたいに、
はっきり物を言う、さばさばした人だったんだわ。あなたは私みたいに壊れなかったのね。だから、よかった」
525名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:29:00 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(29)】

「よくわかんないけど……」
 リュニは、シルウィンの顔を見つめて、
「あたしがあんたを怨むかと、たずねたわね? ええ、その通り、怨まないわけないでしょう? あたしを、
こんなバケモノに変えてしまって。でも、逆の立場なら、あたしが《女王蟲》で、ずっと独りぼっちだったら、
やっぱり誰かを自分と同じ《女王蟲》に変えてしまったと思う。だから、あたしが言ってあげられるのは……」
「……なに?」
 不安げに見つめ返すシルウィンの頭を、リュニは前肢で、ぽんっと軽く叩いた。
「あんたが、まだ人間だったときに、あたしたち、出会えればよかったなって。そうすれば、あんたを先代の
《女王》の餌食にはさせなかった。あたしが、あんたを守ってあげた。あるいは、力が足りなくて、
生け捕りにされたとしても……そのときは、あたしたちふたり一緒だから。あんた独りだけに寂しい思いは、
させずに済んだでしょ?」
「……リュニ」
 シルウィンは涙がこみ上げてきた。リュニと、唇を重ねた。リュニは拒まず、むしろ舌を絡めてきた。
《蟲》の前肢で、シルウィンの髪を梳くように、やさしく撫でてくれた。
「リュニ、ごめんなさい、ありがとう。あなたには迷惑だったでしょうけど、私、あなたに《女王》
になってもらって、本当によかったと思う。リュニ、大好き、愛してる……」
「あんたは、リュニはリュニのままと言ったけど、きっと違うと思うわ。私が《脱皮》する前、あんたに、
生肉を口移しで食べさせられてたとき、初めはおぞましかったけど、途中からドキドキしてた。生肉も、
美味しかったけど……あんたみたいな可愛い子にキスされて、あたしも壊れちゃったのね。女の子同士でも、
それも『バケモノの女の子』同士でも、いいと思えてきちゃった。シルウィン、あたしも言ってあげるわ。
愛してる。シルウィン、あたしはあんたが可愛くて、愛しくて、たまんない」
 リュニは、前肢でシルウィンの身体を、ぎゅっと抱き締めた。
526名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:30:07 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(30)】

「でもね……《女王》になりたてのあたしが、こんなこと言うのは、あれだけど」
「なあに? なんでも言って。私、リュニの言うことなら、なんでもきけるわ」
「あたしたち、元は人間だったことは、忘れちゃいけないんだと思う。もちろん、いまは魔物の《女王》で、
古い呪いだか何かに縛られてるから、人間の味方はできないけど。でも、あたしたちが人間の敵になっても、
いけないんだと思う。わざわざ人間が魔物の《女王》になる意味って、そういうことじゃないかな?
シルウィンの前の、人間を殺しまくってた《女王》も、どうしようもなく孤独で壊れちゃったんだろうけど、
そんなふうになっては、いけないんだと思う」
「うん、わかる……。私、リュニに出会う前、《女王蟲》になりたての頃、好きになった人間の男の子がいて、
その子も《女王蟲》の私を愛してくれたの。彼と一緒にいる間は、自分が人間だったこと、ずっと忘れずに、
いられたの。むしろ、自分がまだ人間の、普通の女の子みたいに錯角することもあった。でも、彼を喪って、
私の中の人間の部分が、どんどん壊れたんだと思う。だから、誰も殺しはしなかったけど、男の人を何人も、
生け捕りにして餌食にしたのね。《冒険者》に退治されても仕方のないこと、しちゃってたんだわ、私も」
「まあ……、黙って退治される必要はないけどね。あたしも、いまは《女王》だし。シルウィンが、
ずっと独りでいて、どうしようもなく心が傷ついてたことは理解できるし。だから、守ってあげたいし。
あたしたちを狙って《森》に乗り込んで来る《冒険者》を、殺さない程度に痛めつけちゃうのは、
いいんじゃないかしら? 人間から見れば、どっちにしろ悪役だろうけど」
 くすくす笑って言うリュニに、シルウィンは、涙をあふれさせながら、笑みを返した。
「リュニ、本当にありがとう。あたしたち、これからもずっと一緒ね……」
 ふたりは、抱き合って唇を重ねた。
 愛しい相手と、何度も何度も、口づけを交わした――
 
【終わり】
527名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 05:32:21 ID:P76gvpDh
【続・女王蟲(あとがき)】

えっと、シリーズ完結編ということで。
実はシルウィンが人間だったときの話も書きかけたけど、延々と普通のファンタジーになってしまって、
没にしましたとさ……

>>496
帝都大戦でしたか。ビデオ借りてこよう(^^;
528名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 11:58:02 ID:0NAk5dgK
>>527
読み応えあり、超GJ!!!
乙彼様でした〜
529名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 14:37:39 ID:PeIxVvvI
なんという切なさ。
大変楽しませて頂きました。

蟲の生殖行動に食事が伴いやしないかとハラハラしていたのは俺だけですねw

欲を言えば、リュニに卵を産み付けるシーンを見たかったですw
530497:2007/02/17(土) 21:31:15 ID:u/JlMEIG
>>528
どうもです。
気づいてみたら30レス分。書いてるほうも長かったですw
しかも、こういう話に落ち着く前、没にした本文が別途40レス分……
仕事中も頭の中でネタをひねくってたし、会社の行き帰りは携帯で下書きしてたし、何やってるんだか(汗)
というわけでこれで完結編なのです。当分は何も書けないです……

>>529
ああ、産卵シーンは構想に入っていたのに、書き忘れてました…… orz
《女王蟲》はカマキリさんとは違って、オスを食べることはないです。たぶん。
531名無しさん@ピンキー:2007/02/17(土) 23:57:18 ID:FuUMRQH2
友人に勧められてこのスレに来ました。GJの一言。
532名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 00:46:36 ID:0mfbjTUW
>>530
GJでした。
厚かましいですが、産卵シーンだけでも書いていただけるとものすごく嬉しいです。
533497:2007/02/18(日) 05:44:14 ID:IiRRQFNb
>>531
初めまして。「ベルゼブブとその他」のスレにようこそ(笑)
ご友人様によろしくです

>>532
あー、産卵シーン、うー……そのうちに(汗)
534名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 06:02:04 ID:HWhBneM2
>>532
厚かましいとわかっているなら頼むなよ・・・
535名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 13:06:12 ID:LTImF+2N
「厚かましいですが」とか言う人って
自分の無礼講に気付いていないのかな。
536名無しさん@ピンキー:2007/02/18(日) 13:59:09 ID:FU8GB5pB
厚かましいと言えば許されると思ってるから。
ゴメンね〜あのエピソード書いて〜ゴメンね〜続編読みた〜い ゴメンね〜
537名無しさん@ピンキー:2007/02/20(火) 01:45:40 ID:aqkzdJIH
【続・女王蟲(補遺1)】

 シルウィンは、銀髪の女剣士の裸身を恍惚とした表情で眺めた。
 艶やかできめ細やかな褐色の肌、鞠のように豊かにふくらんだ乳房、細くしなやかに締まった腰。
 完璧なまでの造形美。
 ただし――すらりと長かった腕と脚は、いまは蝋に似た白い粘液の中に塗り込められている。
 それによって彼女は、洞窟の岩壁に磔(はりつけ)となっているのだ。
《女王》としての脱皮が済めば、彼女の「人間としての」四肢は永遠に喪われてしまうのであった。
 代わりに《蟲》の前肢と百足(ムカデ)状に連なる体節、それらに一対ずつ生えた付属肢が与えられる。
 シルウィン自身と同じように。
 うなだれた顔を、顎の先に前肢を当てて、上げさせた。
《安息》の魔法で眠りながらも、見ているものは悪夢なのか、眉をしかめた険しい表情。
 しかし、端整な美貌であった。
「本当に綺麗な人……」
 シルウィンは、眠ったままの相手と唇を重ねた。
「ごめんなさい……。人間のままのあなたは、私を受け入れてくれないだろうから、魔法で眠って頂きました。
これから私がすることを知れば、《女王》になったあとも、許してくれないかもしれませんけど……」
 くすっと笑い、相手の顎から首筋へ、鎖骨へ、胸元へ――乳房へ、舌を這わせていく。
「人間の女だった私が、同じ女のあなたに、こんなことしちゃうなんて……。同じことを、私も先代の《女王》
からされて……あのときは私、自分が何をされてるか一部始終を見せつけられて、殺されたほうがマシと思った
ほどなのに……」
 乳暈をなぞるように、くるりと舌で円を描き、乳頭を二度、三度と吸って。
 剣士らしく引き締まった腹から――下腹部の髪と同じ銀色の叢へ。舌は軟体動物のように這い進む。
「だから、あなたには……眠っている間に、全て済ませてあげますね……」
538名無しさん@ピンキー:2007/02/20(火) 01:47:07 ID:aqkzdJIH
【続・女王蟲(補遺2)】

 前肢で叢をかき分け、姿を現した紅色の秘裂を、舌でなぞる。
「んっ……」
 銀髪の女剣士が、かすかに声を上げた。
 シルウィンは眼を細め、ぴちゃ、ぴちゃと音を立て、獲物とした女の秘部をねぶり上げる。
 秘裂からわずかに覗いていた紅色の肉襞は、いまは舌で抉られて、その淫靡な全容を晒させられていた。
 肉の莢から半ば顔を出した充血した陰核は、文字通り紅玉(ルビー)のようだ。
 前肢の先で軽くつつくと、女剣士は切なげな吐息を漏らす。
 眉をしかめたまま、どんな淫夢の中にいるのか。
「あなたが《女王》になってくれたら……私は、あなたの婢(はしため)に堕ちてしまうかも。でも、
それでも構わない。あなたが、その腕に……《蟲》のようになってしまう腕に、私を抱いてくれるなら。
早く、そうしてほしい。早く、そうなってほしい。だから……私は、あなたを穢して、あなたを《女王》に
堕としてしまうの……」
 シルウィンは《蟲》の胴体を起こした。
 白くなめらかな腹の下、鉛色の《蟲》の体節をめくり上げると、そこに人間そっくりの女性器が現れる。
 桃色の濡れ光ったその部分は、しかし、これから始まる「儀式」では、何の役目も果たさない。
「んっ……」
 シルウィンは眼をつむり、小さく呻く。
 すると――女性器と、めくり上げられた体節の隙間から、鉛色の新たな器官が姿を現した。
 幾つも重なった莢から、新たな莢が現れるかたちで、粘液質の糸を引きながら、それは見る間に長く伸び。
 人間の男根ほどの長さとなった。先端の亀頭こそないものの、つけ根からの太さも、男根と大差ない。
 シルウィンは、女剣士の肩に前肢をかけ、もう一度、唇を重ねた。
 それから、《蟲》の胴体に生まれた男根状の器官の先を、相手の秘部に押し当てた。
539名無しさん@ピンキー:2007/02/20(火) 01:48:26 ID:aqkzdJIH
【続・女王蟲(補遺3)】

 びくんと、《蟲》の胴体を突き上げる。
 あらかじめ唾液で濡らされてもいた女剣士のその部分に、粘液に包まれた器官が、ずぶりと突き立った。
「……はぅ……」
 シルウィンは、男が性交時にするように――
《蟲》の胴体を屈伸させて、銀髪の女剣士の胎内に突き入れた器官を、何度も何度も突き上げた。
「……んっ……、あ……、くぅ……」
 女剣士が声を漏らす。そして――うっすらと眼を開けた。
「あ……」
 女剣士の身体を突き上げ続けながら、眼が合ってしまったシルウィンは、動揺する。
 あり得ないはずのことだった。《女王》の絶大な魔力で施した《安息》の魔法だったのだ。
 いや――違う。これはたぶん、魔法をかけたときに迷いがあったから。
 本当は、眠らせたままでは「したく」なかったのだ。相手の意思に関わりのないやり方ではなく。
 かつて愛した「彼」との関係がそうであったように、「彼女」にも、自分を受け入れてほしかったのだ。
 絶対あり得ないはずのことだけど。《女王》になったあとならともかく。
 人間のままの彼女が、《蟲》の――バケモノの自分を、受け入れてくれるなんて。
 その結果、彼女自身までがバケモノになってしまうというのに。
「ごめんなさい……」
 シルウィンは相手の頬に口づけした。涙がこみ上げてきた。
 謝ったところで許されるはずもないけど――人間の彼女からは。
 だから、早く相手を《蟲》に変えてしまって、そして許しを得なければならない。
 その身に起きていることを知った女剣士の口から出るのは、恐怖の叫び、それとも罵り、何であろうか?
 先代の《女王》に「犯された」ときの自分は、ひたすら救いを求めて泣き叫ぶばかりだったけど。
540名無しさん@ピンキー:2007/02/20(火) 01:49:22 ID:aqkzdJIH
【続・女王蟲(補遺4)】

 だが――銀髪の女剣士の口から出たのは、それこそあり得ないはずの言葉だった。
「いい、から……」
 シルウィンは泣き濡れた眼を瞠り、相手の顔を見る。
 女剣士は――リュニは、微笑んでいた。
 そう、あり得ないはずのことだったのだ。
「あのとき」、本当はリュニは眼を覚まさなかった。《安息》の魔法は完璧だった。
 しかも、シルウィンが自分の名を教えたのは、リュニが《脱皮》したあとのことだ。
 それなのに、これから《卵》を産みつけられようとしている、まだ人間のままの彼女は、言ったのだった。
「……シルウィン、愛してる……」
 
 
 ――どびゅっ!
 
 
「……シルウィン、この、バカッ!」
 ――べちっ!
「……ぶぎゃっ!?」
 鼻の頭に痛みを感じ、シルウィンは、眼を覚ました。
 眼の前には、怒りに燃えた銀髪の元「女剣士」――リュニの顔。
 何故だか白くてどろどろしたものを顔中に塗りたくっていて。
「……どうしたの、リュニ、その顔……?」
「どうしたの、じゃないっ!」
541名無しさん@ピンキー:2007/02/20(火) 01:50:20 ID:aqkzdJIH
【続・女王蟲(補遺5)】

 もう一発、前肢でひっぱたかれた。
「ぎゃんっ! 痛いってばっ!」
「くっそー、どうせならゲンコツ喰らわせてやりたいのに、不便な『手』だ……」
 リュニは自分の《蟲》になってしまった前肢を忌々しげに睨む。
 シルウィンは、まだ事情が理解できず、恐る恐るリュニにたずねた。
「あのー、リュニさん? 私、何かあなた様を怒らせるようなこと、しましたでしょうか……?」
「その、臍の下に生えてる立派なモノは何? 朝ダチして、ついでに夢精までして、いったい何なの!」
「あ……」
 シルウィンは、自分の《蟲》の胴体――第一体節のすぐ下から屹立した男根状の器官を見下ろして、
「えっと……《産卵管》です。てへっ?」
 小首かしげて可愛らしく笑ってみせた。
「てへっ、じゃねーよ!」
 リュニは三発目の「張り手」ならぬ「張り前肢」をシルウィンの鼻面に喰らわせた。
「みぎゃっ!?」
「じゃあ、何? あたしの顔にぶっかけてくれたのが、《女王蟲》の《卵》ってわけ? あたしに《卵》
を産みつけたときって、そのチンポみたいなものをブチ込んで中出ししたって、そういうわけね?」
「そんな身も蓋もない言い方……。まあ、事実としては、その通りなんですけど……」
「こっちは何も聞かされてないからさ。さっき起きてみたら、隣で寝てるあんたの腹に妙なモノが生えてて、
何かと思って顔を近づけたら、いきなり『どびゅっ』って……」
「それ、リュニ、警戒心なさすぎだと思う。生えてる位置的にも形状的にも、そういうモノでしょ、これって」
「っつーか、あたしの身体にも生えてんのかよ、そんなグロいのが……」
 リュニは、しかめ面で自分の《蟲》の胴体を見下ろす。
542名無しさん@ピンキー:2007/02/20(火) 01:51:38 ID:aqkzdJIH
【続・女王蟲(補遺6)】

「えっと、獲物を前にして興奮したときとかじゃないと、伸びてこないんじゃないかと思う。私も、
よくわかってないけど。リュニに《卵》を産みつけてあげようと思ったときは、自然と伸びたけど。
いまも、そのときのことを夢で見ていて、それで伸びたと思うんだけど……」
 説明するシルウィンに、リュニは、にやりとした。
「獲物って……たとえば、《女王蟲》同士でもアリなわけ?」
「……え?」
「たとえば、さっきの顔面大放出のお返しに、あたしもあんたにブチ込んでやろうとか、できるのかしら?」
「さあ……」
 ひきつった笑顔で、シルウィンは首を振る。リュニは、にやにや笑いながらシルウィンに這い寄って、
「どうすればいい? あんたを犯すところを想像しながら、下っ腹に力を入れてみたりすればいいかしら?」
 すると――リュニの《蟲》の胴体の第一体節がめくれ上がり、本当に《産卵管》が生えてきてしまった。
「あっ、す、すごい……あたしにも、こんな立派なのが……」
「す、すごいけど……やめましょ、リュニ、ねえ……? 《女王蟲》がもう一度、《卵》を産みつけられたら、
どんなことになるのか……」
「だいじょうぶ、ちゃんと外で出してあげるから。愛してるわ、シルウィンちゃん」
「いやっ、嬉しいけど……やっぱだめっ、そんな、ああっ……!」
 
 
 こうして――二匹の《女王蟲》は、新たな愛のかたちに目覚めるのであった。
 ちなみに、勢い余ってお互い「中出し」したところ、二匹とも再度の《脱皮》で前肢が六本に増えた。
 いままでにも増して、しっかりと抱き合えるようになったので、結果的には万々歳なのであった。
【終わり】
543名無しさん@ピンキー:2007/02/20(火) 02:18:37 ID:syRPpGTQ
ワラタww
544名無しさん@ピンキー:2007/02/20(火) 02:18:39 ID:DiVc1QAq
>>537-542
終電で帰ってきたらちょうどリアルタイムktkr
シルウィンの夢精w+攻めに転じるリュニが最高

「当分は何も書けない」とかかれていたのに…
素晴らしいものをありがとうございますー
545名無しさん@ピンキー:2007/02/20(火) 05:21:46 ID:ZsXiimZC
なんというバカップルw
間違いない貴方は神!

妙に和んでしまったw
546537:2007/02/20(火) 08:37:53 ID:aqkzdJIH
スレの流れが、どっかに行きかけてたので……

>>543
どもです

>>544
終電ですか。仕事? 飲み会? それとも、デェト? どちらにしろご苦労様です

>>545
ばかですよねえ、この二匹(笑
まあ彼らだけで愉しんでる分には、狩られてしまう男性《冒険者》の犠牲も出ずに、いいのではないでしょうか……
547名無しさん@ピンキー:2007/02/23(金) 03:43:57 ID:nWTcU6AQ
そろそろべるぜばぶもよみたい
548名無しさん@ピンキー:2007/02/23(金) 11:59:46 ID:q6HbpeDn
悪落ち好きな俺と悪落ち嫌いな俺がベルゼブブの続きについて戦ってます。
549名無しさん@ピンキー:2007/02/24(土) 04:52:49 ID:7Y3tCgZI
やはり、正義の蝿僧侶として戦ってほしいかな。
550名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 14:38:07 ID:MBPpnvGD
いや、悪落ちがいい
551名無しさん@ピンキー:2007/02/25(日) 16:26:46 ID:b9IAsmR+
いや蠅のままでジェラールと駆落ちがいい
552名無しさん@ピンキー:2007/02/26(月) 02:03:09 ID:H3MPtlHv
価値観まで根こそぎ変わっちまうのが良い
553名無しさん@ピンキー:2007/02/26(月) 14:28:51 ID:BZXZdk9u
デビルメイクライの地下水路のステージをしてて
ベルセルブブについて妄想してしまったのは俺だけでいい
554名無しさん@ピンキー:2007/02/27(火) 00:00:57 ID:cDHRz2wg
>>537
ある意味において正しい百合小説ですな
555537:2007/02/27(火) 06:10:08 ID:RmDEcW2w
>>554
どもです
ある意味?? どの意味でしょうか(^^;

ユリというと「だーてぃーぺあ」を思い出すなあ
それも安彦良和じゃなく土器手司キャラで……
556名無しさん@ピンキー:2007/03/04(日) 21:37:53 ID:QsT8HMTb
保守
557554:2007/03/05(月) 20:52:02 ID:MCMFSOSQ
>>555
蟲化小説が主題で百合は副次的なものだと思っていたものですから、気に障られたら済みません。
558537:2007/03/06(火) 17:29:17 ID:KQghjdr7
>>554
いやいや気に障るなんてそんな(汗
こちらこそすまんです m(_ _)m

ベルゼブブ先生は、まだご多忙中かのぅ……
559名無しさん@ピンキー:2007/03/10(土) 19:34:55 ID:5S24h2gn
保守
560名無しさん@ピンキー:2007/03/13(火) 19:02:44 ID:mwzL5d5M
保守。ベルセブブに期待。
女王蟲にも期待。
561名無しさん@ピンキー:2007/03/16(金) 01:10:38 ID:iJcgOGiI
ベルゼブブって俺の少年時代ではベルゼバブと発音したもんだが
そんなことはどーでもいい
はよこい
562名無しさん@ピンキー:2007/03/17(土) 00:01:42 ID:JaJ6BLzy
うちの町内だとバアル・ゼブス・ベルゼビュートって発音するぜ
563『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2007/03/20(火) 07:30:17 ID:9SedZIHq
「ジェ、ジェラール……」
ユベールが大きく後退する。その顔が見る見る青ざめていく。
「……今日はずいぶん早起きね」
「嫌な胸騒ぎがしてな。それにコゼットが妙だったから、話を聞き出した」
緊張したイヴォンヌの声音に、ジェラールはひどく素っ気なく答える。
視線を巡らせると、複眼の片隅、ジェラールが潜んでいた茂みに、モーニングスターを
抱えたコゼットが立ち竦んでいるのを見つけた。
彼女もイヴォンヌたちの計画に一枚噛んでいてジェラールの足止めを任されていたの
だろうか。それとも協力はしないけど止めもしないしジェラールも関わらせないという
つもりだったのか。
わたしと目が合ったのに気づいたのか、幼い僧侶はわたしから激しく顔を背けた。
「でもな、口で聞かされただけじゃ信じられなかった。だからここへ来た時、三人が
睨み合って話を始めたところだったんだが、様子を見させてもらってた」
そこで口を閉ざすと、重い沈黙が場に横たわる。

イヴォンヌが焦れたように口を開いた。
「……で、裁判長様、判決は何?」
「二人には街を去って欲しい。コゼットにも冒険者は廃業して教会に戻ってもらう」
「そ、それだけでいいのか?」
「フローランスへの詫びに、有り金と装備は置いていってくれ。受肉はただじゃない」
ジェラールの付け足した言葉に、浮かれそうになっていたユベールが顔をしかめた。
「正気なの? 私たちが抜けたらパーティ崩壊よ。仕事はどうするの?」
嘲るようにイヴォンヌが笑いかけてきた。
「しばらくは休業するさ。フローランスが元に戻ったところで新たにパーティを
組み直す」
「その間に魔物が街を襲ったりしたら?」
「近隣の村の連中に力を借りる。あいつらとはずっと、困った時はお互い様でやって
これたからな。仲間を殺して売りさばこうとするお前たちより、レベルは低くても
よほど頼りになるよ」
ジェラールの即答。プライドの高い魔女は、一瞬唇をきつく噛んだ。
「へえ、大した自信ね。斧振り回すしか能のない戦士が偉そうに」
「敵を殺すしか能がないってことなら、魔法使いも大差ないだろう?」
さっきからジェラールの口調には強い皮肉が混じっている。わたしが初めて聞く声。
彼は、本気で怒っていた。
564 ◆eJPIfaQmes :2007/03/20(火) 07:51:21 ID:9SedZIHq
二ヶ月半ぶり、というか今年初めて……。待っているとおっしゃってくださった皆様、
お待たせしてすみませんでした。
仕事で苦戦した後は確定申告で手間取って、ここ一ヶ月ほど散々でしたが、
どうにか余裕が出てきました。

>女王蟲の方
続編もとても素敵でした。悲嘆と明るさの入り混じった描き方がすごく好きです。
565名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 17:43:03 ID:euCIAGZD
>>563,564
おお、ご苦労様です。
パーティー崩壊……となると、フローランスの後釜の娘がどう出るかですなあ
なにげにジェラールに横恋慕して黒いところを剥き出しにするのでないかと不安が(汗

確定申告……て、自営業の方ですか?(^^;
サラリーマンでも確定申告すると税金が戻ってくるケースもあるみたいですがね
家を買ったりした場合などは
566名無しさん@ピンキー:2007/03/20(火) 18:47:40 ID:ttp1teEx
やったーベルゼブブ
>>564
まじ乙です
このジェラールにならフローラを取られていい
567名無しさん@ピンキー:2007/03/21(水) 00:41:16 ID:RL6ngrjy
>>564
毎回クオリティが凄くて・・・。
本当に乙です、続きものんびり待っていますね。
ご無理なさらずにー。
568名無しさん@ピンキー:2007/03/23(金) 15:36:18 ID:OF8tuYBB
>>564
ずいぶんお仕事いそがしそーですなー
がんばってくらはい
569名無しさん@ピンキー:2007/03/25(日) 21:40:00 ID:TUKTcPz1
ベルゼブブとか蝿って聞くとひみつの犬神コココちゃんの平井セスしか思い浮かばない。
570名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 00:42:58 ID:2DLuT0Bg
せっちゃんー。
571『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2007/03/26(月) 13:37:47 ID:Sj3CSmJo
いつもと違うであろう(わたしが知らないこの半年も、たぶん彼は温和な性格だった
と思う)ジェラールの反応。
それに対し、最初は気圧されていたイヴォンヌだが、次第に不快感が高まってきたのか、
不意に目を細めると言った。
「調子に乗るのもほどほどにした方がいいんじゃない? この場であなたをついでに
始末しても、私たちには不都合がないのよ?」
「俺を『ついでに始末』できるほど、お前さんたちが強いとは知らなかったな」
誇示するように、斧を構え直す。片手で振るうには少し大きすぎるが、ジェラールの
右手にはいかにもしっくりと来る、使い込まれた斧。左腕には大きな盾。
……けれど、わたしもよく知るそれらには、魔法技術の加工は施されていない。飛来する
魔法を防いだり、複数の敵を同時に無力化するような術はない。
「言ってくれるわね」
睨み合う二人の間で緊張が高まっていく。両者の間に位置して棒立ちのユベールも、
わたしたちから離れた場所に立つコゼットも、わたしも、誰も迂闊に動けないような
プレッシャー。
と、イヴォンヌが言葉を発した。
「ユベール、あなた金と剣を巻き上げられたら困るわよね? ジェラールは借金までは
引き受けてくれそうにないし」
「あ、ああ……」
ユベールが剣先を上げるのを見て、魔女は視線を転じる。
「コゼット、その化け物蠅、あなたの目にはどう映るかしら? あの清楚で気高かった
フローランスが、そんな醜い浅ましい姿になっておめおめ私たちに救いを求めるなんて、
想像できる?」
「…………」
まだまだ子供にしか見えないコゼットは、嫌々をするように首を振る。だがそのまま
その場にしゃがみ込んでしまった。
572名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 17:19:09 ID:b8Ibspdy
>>571
おお、続きがキターッ!

ご苦労様です m(_ _)m
573名無しさん@ピンキー:2007/03/26(月) 17:30:34 ID:PhNX1rNN
>>571
もうその世界に引き込まれそうです
乙です、続き期待してます
574『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes :2007/03/28(水) 10:54:15 ID:bwYETMKZ
続けて、イヴォンヌの言葉はジェラールへ。
「ジェラール、あなたはどうなの? そんな、ベルゼブブにどんな細工がされてるか
わからない化け物蠅を庇って私たちと戦うなんて、無意味で馬鹿げたことじゃない?」
イヴォンヌの指摘に、わたしは動揺する。
あの高位の悪魔、蠅の王がわたしに何らかの仕掛けをしていたら? この声のような
ありがたいものとは別の、いざという時に身近な誰かに危害を加えるような習性でも
植え付けられていたら?
自分の陥った泥沼の深さ。それを意識すると不安と恐怖に駆られ、身が縮むような
感覚に囚われる。
ついジェラールに視線を集中する。わたしに背中を向けたままのジェラール。
「俺には難しい理屈はわからんが」
戦士はゆっくりと言葉を紡いだ。
「単なる疑いが、まだ何も悪事を働いたわけじゃないフローランスを殺す理由になると、
助けを求めて俺たちにすがってきたフローランスをなぶり殺しにする理由になると、
お前らは本気で思っているのか?」
……蠅の身体では涙を流せないことを痛感した。

ユベールが顔をしかめる向こうで、イヴォンヌが呆れたように溜め息をつく。
「……とんだ偽善者ね。あなたのそういうところ、昔から嫌いだったわ」
「ならさっさと見切りをつければ良かったんだ。この地方での高収入や勲章なんて一切
諦めて、都に出て名の通った超一流のパーティに入れるよう努力すれば、な」
ジェラールの声に嘲笑が混じった。
「打算に徹することもできずに憎まれ口を叩くのは、一番醜いぞ」
魔女の顔が、一瞬憤怒に激しく歪む。
「ユベール! フローランスを!」
一声叫ぶとともに自らは後ろへ大きく飛び退り、呪文の詠唱を開始した。
575名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 21:01:10 ID:FS17uVPP
>>574
続きキターッ!!
眼を離せない展開っす
576名無しさん@ピンキー:2007/03/28(水) 22:13:19 ID:By3qSx3E
保守!!
577名無しさん@ピンキー:2007/03/29(木) 23:25:05 ID:JVbNLH6o
>>569
セスいいよな。
つーかコココちゃんってこのスレ住人にとってどうなの?
俺にとってはバイブルだが
578名無しさん@ピンキー:2007/03/30(金) 01:20:15 ID:7jeRbkwV
>>577
俺も俺も。
579名無しさん@ピンキー:2007/03/31(土) 00:59:41 ID:m0Q9UtB6
>>563 >>571 >>574
キテター! いつもながらのGJぶりGJ!
続き楽しみに待ってるっす
580名無しさん@ピンキー:2007/04/08(日) 03:47:26 ID:7LB9Mjll
保守
581名無しさん@ピンキー:2007/04/11(水) 22:51:02 ID:NWA20vR0
hosyu
582名無しさん@ピンキー:2007/04/13(金) 20:25:58 ID:Ie7CF16Z
wktk
583名無しさん@ピンキー:2007/04/15(日) 19:05:31 ID:OKrs5NjD
wkt
584名無しさん@ピンキー:2007/04/16(月) 05:58:55 ID:RExKMn0K
先週(4/12発売号)のヤンジャンの孔雀王が、それっぽい話だったな
下半身が蟲状のイザナミが怪物を産み落としてるの
585名無しさん@ピンキー:2007/04/18(水) 19:37:19 ID:aQsYuO+P
孔雀王は割りと怪物変身が多いからいいよね
586名無しさん@ピンキー:2007/04/21(土) 20:18:26 ID:DI7BQxSW
蠅待ち
587名無しさん@ピンキー
ブーン