零総合 漆 

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1名無しさん@ピンキー
【前スレ】
零総合 陸
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1126997175/

【過去スレ 】
零 紅い蝶の繭&澪&千歳でハァハァ 伍
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1121563760/
零 紅い蝶の繭&澪&千歳でハァハァ 肆
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1106840063/
零 紅い蝶の繭&澪&千歳でハァハァ 参
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1090024682/
零 紅い蝶の繭&澪&千歳でハァハァ 弐
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1074090439/l50
零〜紅い蝶の繭&澪&千歳でハァハァ
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1070726539/
2名無しさん@ピンキー:2005/11/23(水) 08:28:06 ID:SV7p2w9q
【関連サイト】
零関連スレ各種保管庫(製作中)/Wiki
ttp://logexp.sakura.ne.jp/
零絵板
ttp://zero283.s9.x-beat.com/

【公式ページ】
零        ttp://www.tecmo.co.jp/product/zero/index2.htm
零〜紅い蝶〜 ttp://www.tecmo.co.jp/product/zero2/
零〜刺青ノ聲〜ttp://www.tecmo.co.jp/product/zero3/index.htm
3月 ◆cpNuNaN3vQ :2005/11/23(水) 13:35:25 ID:CBs/fuMD
>>1
乙です。
4名無しさん@ピンキー:2005/11/23(水) 14:47:19 ID:EH+SUj3K
乙です!

でも、前スレ急に落ちた時、多分スレタイ変わったせいか常連職人さん方が気付く間もなく移ってしまったから、前のスレタイに戻してみる案とか出てなかったかな?

携帯だから前スレ見れなくてうろ覚え
間違いならごめんm(__)m
5名無しさん@ピンキー:2005/11/23(水) 16:27:54 ID:2DhN7IHm
>>1
乙Shot
6名無しさん@ピンキー:2005/11/23(水) 17:46:16 ID:ubL1XQBz
即死回避
7名無しさん@ピンキー:2005/11/23(水) 18:04:29 ID:qHTb+KHg
支援アゲ
>>1乙!乙!さて陸埋めだね。

>>4
そう。陸は自分が立てたんだけど確かに前スレ名で検索出来ない
タイトルにしちゃって申し訳ないと後悔してた。 
スレタイ変えるなら移行が上手くいってからだよなぁ
とはいえ今更戻すのもって感じだろうし・・ホントスマソ。
8名無しさん@ピンキー:2005/11/23(水) 18:29:20 ID:nDHtscJc
>>1タン乙!
9名無しさん@ピンキー:2005/11/23(水) 19:13:40 ID:ZFY9fmPf
検索は零でするだろうと思うので大丈夫じゃないかな
立ったものはしかたないし…
10名無しさん@ピンキー:2005/11/23(水) 23:06:58 ID:8586Ch2Z
>>1
乙ero!

>>4
まー今回はちゃんと誘導できてるし、いいんじゃない?
11名無しさん@ピンキー:2005/11/24(木) 00:26:39 ID:VY562KDT
ageておきますね(・∀・)
12名無しさん@ピンキー:2005/11/24(木) 01:44:05 ID:x0Uqk7MF
上げ
13名無しさん@ピンキー:2005/11/24(木) 03:13:48 ID:t39J3tzS
あげ
14名無しさん@ピンキー:2005/11/24(木) 10:13:36 ID:06yZDHC0
age(´・д・)人(・д・`)age
15名無しさん@ピンキー:2005/11/24(木) 11:46:06 ID:y9m+MXCx
>>1

零、関係の18禁同人誌ってみたことある?
隠しコスチュームじゃ抜けません、、、
零3キボンヌ
16名無しさん@ピンキー:2005/11/24(木) 23:17:21 ID:pMjv/qaB
ジャム王国の「孵卵器」
17名無しさん@ピンキー:2005/11/25(金) 01:31:41 ID:r0+V3W+D
>>15
「零射」っていう同人誌を見たことがある繭×澪のフタナリ本だったな詳しくはググれ
18名無しさん@ピンキー:2005/11/25(金) 01:48:49 ID:iJvlxL8f
>>17
ちったあ句読点入れれw
>>15
刺青の同人誌はまだでてないかも。
初代と紅い蝶はぐぐれば出てくるかと
19名無しさん@ピンキー:2005/11/25(金) 02:02:38 ID:F/pv8QL/
零射は澪繭だったがな。
紅い蝶はレベル高いエロ同人多いんだよね。
ジャムさんは双子巫女も出してる。
20名無しさん@ピンキー:2005/11/25(金) 08:23:35 ID:US9t1wzX
だったがな→だったよな
の間違えですた。
21名無しさん@ピンキー:2005/11/26(土) 19:31:24 ID:+iZ/140Y
>>15
「淫ノ刻」という同人誌は見たことある。
澪の目の前で、繭が三人の男(村人の霊)に犯されまくるという。
繭がいろんな体位にさせられていて、中田氏されていた。
ラストは澪と見詰め合って終わりだったような・・・。

繭が儀式の石壇の上で、霊にやられまくって、最後は澪が
とどめをさすっていうような、同人誌見たことある人いるかな?
いたら詳細キボンヌ


22名無しさん@ピンキー:2005/11/26(土) 23:07:21 ID:K3H/vdX3
・・・鬼畜ですな
23名無しさん@ピンキー:2005/11/28(月) 01:44:55 ID:8rvzjO3c
上げ
24名無しさん@ピンキー:2005/11/28(月) 14:32:20 ID:8rvzjO3c
寂れてますね…澪深紅の人どうなったんだろ?まだ簡潔してないよね?
25名無しさん@ピンキー:2005/11/28(月) 18:04:04 ID:clL82Vod
優雨深紅の人も…
というか、前スレで中途半端に切れちゃったSSが沢山…
何でもいいから投下たのんます。
26名無しさん@ピンキー:2005/12/01(木) 02:35:09 ID:q99a/xXj
今日に誰もいなくなるなや!
27名無しさん@ピンキー:2005/12/01(木) 14:07:22 ID:Z7IUlTYt
保守age
28怜×深紅:2005/12/02(金) 00:50:24 ID:cgviYhWh
ザクッザクッ。
トントントントン。
シュシュシュシュシュ。
コトコトコトコト。
野菜と包丁とまな板。
圧力釜から立ちのぼる蒸気。
沸騰するだし汁。
キッチンを満たす音と香りが、
暗闇で息を潜めていた神経をリズミカルに覚醒させていく。
ブラインドから差し込む光が澄んだ秋空を予感させて、
深紅は心地良いその感覚にゆったりと身を委ねていた。
鼻歌を歌いながら味噌を溶き、
ギャルソン気分でテーブルのセッティングをする。
「フンフンフーン」
食器は茶碗とお箸の純和風ではあるけれど、この際それは気にしない。
「バカみたい」
あまりに楽しいので、深紅はそうつぶやいた。
バカで結構。
努めて冷静でいようとするもう一人の自分に対して、
屈託なくそう返せることがとても嬉しいのだ。
29怜×深紅(2):2005/12/02(金) 00:51:23 ID:cgviYhWh
「怜さーん。朝ご飯の支度が出来ましたよ」
深紅が居候しているこの家の家主は朝が遅い。
その家主、黒澤怜は根っから宵っ張りの人なのだ。
「怜さん、起きて下さい」
足取りも軽く深紅は2階に駆け上がると、
自室の向かいにある怜の部屋のドアを開けた。
雑多な香りが、深紅の鼻腔をくすぐる。
無造作に脱ぎ捨てられた洋服から漂う香水。
テーブルの上の燃え尽きたアロマキャンドル。
そしてグラスには一口ほど残ったウィスキー。

ベッドに目を向けると、規則正しく寝息をたてる怜の顔が見えた。
眉間に寄せられた皺と真一文字にキツく結ばれた口元。
一見すると悪夢にでもうなされているようにも見えて、
先日の出来事のこともあり、深紅も当初は随分心配したものだった。
「フッ…フフッウフフ…」
聞き取れない呟きとともに微かな笑いが怜の口許からこぼれた。
どうやら楽しい夢でも見ているようだ、が寝顔は相変わらずそのままだ。
「怜さんたら…」
器用だな、と感心しつつ深紅は窓際へと歩み寄ると、
一息にカーテンを開け、窓から風を呼び込んだ。
30怜×深紅(3):2005/12/02(金) 00:52:12 ID:cgviYhWh
「さあさあ、朝ですよ。」
一瞬で下がった部屋の気温に、怜は掛布団を掻き寄せ身をすくませる。
常に毅然として凛々しい怜のそんな姿をみることが出来るのは、
同居している深紅だけの特権だ。
そんな怜が無償に愛しくなり、
深紅はベッドの傍らにひざまずくと怜の寝顔に顔を寄せた。
「怜さん、私一人でご飯なんて寂しいですよ」
そっと語りかける。
重ねた両腕にアゴを置きながら、
スッと通った鼻梁がなんと格好良いのだろうと見惚れていると、
怜がうっすらと目を開けた。
31怜×深紅(4):2005/12/02(金) 00:53:08 ID:cgviYhWh
傍らに深紅の吐息を感じ、
それが想像以上に間近であることに気が付いて、怜はちょっと驚いた。
深紅は、そしてまぶしそうに目を細める怜の瞳孔が窄まる様子を、
食い入るようにみつめてしまっていることに気付き、少し慌てた。
「…なあに?深紅」
怜が柔らかく微笑みながら首をかしげる。
「い、いえ…」
身体を起こしながら深紅は軽く咳払いをする。
「…おはよう…深紅」
「おはようございます」
怜の目が赤いのは、お酒が少し残っているせいだろう。
「…あのね深紅…もうちょっとだけ…」
「だめですよ。起きて下さい」
上目遣いの怜の仕草に揺らぎそうになる心をグッと抑えて、深紅は言い放つ。
「深紅…後生だから…」
「だめです。朝ご飯冷めちゃいますから」
ぴょんと飛び跳ねるように立ち上がろうとした深紅の手首を、怜はパシッと掴んだ。
「きゃっ」
そんなに強い力ではないはずなのに、
深紅はもとの位置にペタンと座り込んでしまった。
「けち。…じゃあさ、さっきのもう一度聞かせて」
「えっ」
深紅の視線が泳ぐ。
32怜×深紅(5):2005/12/02(金) 00:53:52 ID:cgviYhWh
「何か可愛らしいこと、言ってくれたように思うんだけど?」
寝ぼけ眼だった怜の顔が一変、
いたずらを思いついた子供のようになった。
サッと顔が赤くなるのを自覚し、思わず深紅は顔を背ける。
「…なんのことですか」
「あれ、とぼけるんだ?」
怜は掴んだままの深紅の手首を口許に寄せ、手の甲に軽く口づけをすると、
そのまま布団の中に引寄せた。
「え、ええっ!?」
タイミングというのか、呼吸というのか、
何がどうなったのか理解出来ないまま、
深紅はいつのまにか怜のベッドで仰向けにされていた。
当の怜は、四つん這いで深紅に覆い被さっている。
「捕まえた…。油断大敵よ、深紅。」
「ちょ、ちょっと怜さん…」
正面からの怜の視線に耐え切れず、深紅は思わず目を伏せた。
目の前にはネグリジェの大きく開いた襟元から、怜の豊かな胸元がのぞいていた。

「えっ…と…」
そこから立ちのぼる、香水とは違う怜の甘い体臭と温かい体温に包まれて、
深紅はカァっとのぼせてしまった。
心臓の鼓動が加速していく。
「れ、怜さん…」
このまま思い切り抱きついて顔をうずめてしまいたい衝動が背中を貫き、
そんな自分の願望に深紅はひどく戸惑った。
「深紅…」
耳元の怜のささやきが、とてつもなく官能的な響きを持って、
自分の背中を押しているように深紅には感じられた。
全てを見透かすような怜の澄んだ瞳が、深紅を見つめていた。
33怜×深紅(6):2005/12/02(金) 00:55:25 ID:cgviYhWh
サァ。
開け放たれた窓から、一陣の風が部屋を吹き抜けた。
隅に寄せてあったカーテンの束がフワリと揺れる。

「あ…」
その時深紅は、風に含まれるかすかな花の香りに気が付いた。
頭に浮かんだのは、白く小さく可愛らしい花。
これは、たぶん柊だ。
「柊だね。深紅」
怜も気付いたようだった。
「はい」

数々の想いが深紅の全身を駆け抜けていく。
消えることなく刻まれた、心の深淵。
それでも深紅はもうそれに囚われてしまうことは無いと、知っていた。
この悲しみも絶望も無力だった自分も、全てを抱えて生きていこうと、
静かにしかし揺るぎ無く決意をしていたからだ。
その力は、目の前の深い藍色の瞳が与えてくれる。
一人ではないのだと、教えてくれる。

「深紅もいいにおいがするよ…」
「怜さん…」
窓の外には、高い真っ青な空が広がっている。
34怜×深紅(7):2005/12/02(金) 00:56:14 ID:cgviYhWh
いつのまにか頬を伝っていた深紅の涙を、
怜はおどけた調子でぺロッと舐めた。
全てを受け入れてしまいそうな微笑みを浮かべて。
それでも後から後から溢れてくる涙を、深紅は止めることが出来なかった。
「怜さん…好きです…好きです…」
そんな深紅を怜は静かに抱き寄せた。
どちらともなく寄せた唇が重なりあう。

今はただ、腕の中のこの人を精一杯感じるだけだ。
心から祈るだけだ。

この瞬間の永劫を。
この想いの永遠を。
どうか…
どうか…

そして深紅はそっとカーテンを閉めた。


《おわり》
35名無しさん@ピンキー:2005/12/02(金) 00:58:05 ID:cgviYhWh
保守SS投下。
駄文失礼しました。

36名無しさん@ピンキー:2005/12/02(金) 07:37:27 ID:zeRng+aG
>>28-34
GGGGGGJ!!!!
最高!!
37名無しさん@ピンキー:2005/12/02(金) 09:44:01 ID:Qa3FR3eN
クソモエタ。妄想してたら(ry
マジGJ!!
38名無しさん@ピンキー:2005/12/02(金) 15:34:16 ID:iYQlJxan
ぇぅぃな
そのまま本番も書いてくれてもいいんだよ?
39名無しさん@ピンキー:2005/12/02(金) 18:06:22 ID:F9A9JnO0
>>28-34
うお!GJ!
心理描写から何からホントGJ!!
漏れの中では文句なしに「ぜろい」の称号でつw
40名無しさん@ピンキー:2005/12/02(金) 22:09:14 ID:mUj+wrhb
私のむすこがおっきしました。
41名無しさん@ピンキー:2005/12/02(金) 22:18:49 ID:jTL+Lq0S
私の装備機能「勃」もおっきしました。
42名無しさん@ピンキー:2005/12/04(日) 22:38:52 ID:eqIwDvIF
age
43名無しさん@ピンキー:2005/12/04(日) 23:24:00 ID:HsJnkerz
ageといえば上がると思ってるやつはDQN!

っていう2ch家族のこぴぺ思い出した。
44名無しさん@ピンキー:2005/12/05(月) 00:57:33 ID:kQVO2M+I
GJ
45深紅(1):2005/12/05(月) 00:59:22 ID:6HH+lIkc
取材と称して家を空けることの多い優雨が、
たとえ週末と言えど、丸一日家にいることは珍しい。

だから、明日のその予定を告げられた怜が、
見ている方が照れくさくなる程に手放しで喜ぶのも、
無理のないことかもしれなかった。

(怜さん、嬉しそう)
普段あまり感情を表に出さない怜のそんな姿は、
蚊帳の外にいる深紅にとっても嬉しいものだ。

本の編集員とフリーのカメラマン。
生活が不規則になりがちな若い二人にとって、
ゆっくりと過ごす休日は、当たり前のものではない。

「怜さんもたまには家でのんびりして下さい。
せっかくの納品明けじゃないですか」
翌日一緒に買い物に行く約束をしていたのだが、
気を利かせるつもりで深紅はそう言った。
「え…深紅、でも…」
その提案に心が揺らいだのだろう、
口篭もる怜を深紅は可愛い、と思った。
46深紅(2):2005/12/05(月) 01:00:09 ID:6HH+lIkc
(恋する乙女なんだ、怜さんは)
からかうつもりはなかったけれど、
自分には久しい感情で心を満たし、
それを持て余している怜を、
微笑ましいと思う深紅であった。

「なんだか色々欲しくなっちゃって。
だから明日は一人で少しフラフラしようと思うんです」
幾分オーバーアクションで、深紅ははしゃいでみせた。
「…いいの?深紅」
「ええ、もちろんです」
その理由は嘘ではなかったけれど、本当でもなかった。
どちらでもいいことなら、怜に喜んで欲しかった。

話が見えなかったためか、
それまで口を挟むことのなかった優雨も、
深紅が何事か気を利かせてくれたことがわかったのだろう、
「ありがとう、深紅ちゃん」
と言って微笑んだ。
47深紅(3):2005/12/05(月) 01:00:51 ID:6HH+lIkc
「じゃ、行ってきます。」
翌日、深紅は玄関の上がり框に腰掛けて、編み上げのブーツを履くと、
居間にいる家主二人に聞こえる声で、そう言った。

「あ、もう出かけるの?早いね」
パタパタとスリッパの音を響かせて怜が出てきた。
お気に入りの水色のキャミソールと、
普段あまりはくことのない薄手のタイトスカートを身に付けた怜は、
深紅から見ても華やかで、色気があった。

「夕方頃には帰ります。
ついでに夕食の買い物も済ませてきますね」
深紅はそう告げて玄関を出た。
居間からひょっこり顔を出し、
片手に持った食パンをひらひらさせながら
「楽しんでおいで」
と見送ってくれる優雨に、
小さく手を振りながら。
48深紅(4):2005/12/05(月) 01:01:33 ID:6HH+lIkc
"気分は上々"というには、
頭上の厚い雲は少々重かった。
それでも、傘マークのない天気予報を信じることにして、
深紅は最寄の駅へと向かった。

久しぶりということもあるし、
なんだかんだ言ってもやっぱりお出掛けは楽しいものだ。
色々と目移りしてしまい、
結局徒歩10分の駅に着くまでにも、
ずいぶんと道草を食ってしまった。

だから改札口を通る直前まで、
忘れ物があることに気が付かなかったのだ。
久しぶりに腕を振るうと張り切っていた優雨の、食材リスト。
「せっかくだし取りに戻ろう」
一言でいえば、律儀という名の深紅の性格だった。
49深紅(5):2005/12/05(月) 01:02:16 ID:6HH+lIkc
(たしか冷蔵庫の扉に貼り付けたっけ)
記憶の糸をたぐり、その場所を思い出した頃に、
深紅は1時間程前に出てきたばかりの我が家に辿り着いていた。

(まだこんなとこをウロウロしてるってこと、
からかわれるだろうなあ)
そう思いながら、
あの二人の呆れたような表情を想像した。
不快ではない。
というよりむしろ、
兄妹という絆を求めて止まない深紅にとって、
そうした関わりあいは涙が出るほどに嬉しいものだった。
「フフッ」
自然と笑いがこみあげた。

深紅は玄関の前を通り、居間のほうへと回っていった。
そこに誰かいれば、
キッチンにあるはずのそのメモを取ってきてもらえるのでは、
と考えたからだ。
編み上げのブーツを脱ぐのは少し面倒だった。
なので、ガラス越しに二人の姿を認めたとき、
ラッキーとしか思わなかったのだ。

深紅は近づき、
ガラスを軽く叩こうとして、
そこで動きを止めた。
50深紅(6):2005/12/05(月) 01:02:57 ID:6HH+lIkc
「あ…れ…?」
厚く垂れこめた雲のせいで、
薄暗い外からは家の中がよく見えた。
二人はそこにいる。
しかし、深紅は何か未知のものにでも遭遇したかのように、
その二人をみつめたまま固まってしまった。
重なる影が目の前にあった。

深紅の視線の焦点が、そこにいる怜を捉えた。
彼女はソファの上で四つん這いになっていた。
水色のキャミソールを身に付けているのは、朝見たとおりだったが、
それはなぜか首元のあたりにまでまくり上げられていた。
レースの散りばめられた白いブラジャーも同じ位置に見えるから、
つまり、その用を為していない。
膝丈のタイトスカートも腰上までめくられて、
細くくびれた腰から下の真っ白な肌を全て露わにさせていた。
左足首に丸く絡み付いている白いものは、
多分ブラとおそろいのショーツだろう。
51深紅(7):2005/12/05(月) 01:03:37 ID:6HH+lIkc
深紅にとって、裸の怜は初めてではない。
遠方での取材が必要になる依頼の場合、
現地で泊まりになることは珍しいことではなく、
大浴場での入浴の機会も少なくはないのだ。
もちろん、恥ずかしがって隠すような怜ではない。

そうであっても、このような怜はもちろん見たことがなかった。
見慣れた自宅の居間の、そこだけが余りに異質だった。
「怜…さん?何…して…?」
いつのまにかカラカラに乾いていた喉は、まともな音声を発しなかった。
深紅はその場から動くことも出来ずに、
釘つけになっていた視線をゆっくりと横に滑らせた。

薄く目を開けて赤く頬を上気させた顔、
露わになった豊かな胸、ピンと立ち上がった乳首、
反らされた背中、白く丸い尻、
そしてその後ろに、
優雨がいた。

彼もまた、下半身には何も身に付けてはいなかった。
目の前に差し出された双丘を両手で掴みながら、
膝立ちになり、その下腹部を高く掲げられている怜の尻へと押し付けていた。
規則的に動く腰の前後の律動が、
ひどく生生しく深紅の瞳に焼き付いた。
52深紅(8):2005/12/05(月) 01:04:21 ID:6HH+lIkc
怜の裸を目にする度、
そのきめ細かな瑞々しい肌や、
スレンダーな体躯に似合わず形よく盛り上がった乳房、
きゅっと引き締まった腰から少し大きめの尻へと続く滑らかなライン、
スラッとした長い足と細い足首などなど、
羨ましいと、深紅は何度思ったか知れなかった。
それどころか、そのまま怜を触りたい、
抱きしめたい、と思ったことも一度や二度ではないのだ。

それなのに、目の前で繰り広げられている光景は、
圧倒的な迫力をもって深紅に、
その怜の肉体が優雨のモノであるのだ、
と告げていた。
53深紅(9):2005/12/05(月) 01:05:25 ID:6HH+lIkc
パンパンパンパンパンパン
怜の尻と優雨の下腹部のぶつかる音が、
リズミカルに響く。
その度に怜の尻の表面はプルンプルンと弾み、
乳房は確かな弾力を持って上下に揺れた。
「あっあっあっあっ」
そのテンポに合わせて、断続的な吐息が怜の口から吐き出されていく。
「あっいいっ!もっと…もっと!」
しばらくそれが続くと優雨の動きは不意に止み、
今度は怜が四つん這いのまま、
グリッグリッと自らの尻を優雨に押し付けるのだ。

怜の視線は、既に焦点の合わないまま恍惚と宙を漂よっていた。
その半開きになった口から、
白く糸を引いた唾液がとめどなく零れ落ちていく。

深紅はただ立ち尽くし、
それをみつめていた。
54深紅(10):2005/12/05(月) 01:06:18 ID:6HH+lIkc
それから数時間の記憶が、深紅には無い。

ただ、財布の中の丸められたレシートから、
その後の行動を推測するだけだ。

鏡に映る腫れた瞼と、
濡れたハンカチで、
自らの悲しみを確認するだけだ。

そして、
自分の中で何かが壊れてしまったと、
寂しく笑うだけだ。


<おわり>
55名無しさん@ピンキー:2005/12/05(月) 01:07:54 ID:bf7o4fZ2
GJ!
56名無しさん@ピンキー:2005/12/05(月) 01:08:18 ID:0MFoavlq
マジ神
57名無しさん@ピンキー:2005/12/05(月) 07:30:45 ID:3HL+U9oz
マジGJ!!
58名無しさん@ピンキー:2005/12/05(月) 13:37:15 ID:TsEnSJC4
(*´д`*)ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
59名無しさん@ピンキー:2005/12/06(火) 12:55:56 ID:Jy/9aprb
NIYAKETE SIMAIMASITA
60澪×深紅(1):2005/12/08(木) 21:40:03 ID:lbLsMt7s
前スレの澪深紅の続きでつ


「ん・・・」

澪ちゃんの柔らかい唇は、すぐにとろけるように熱くなっていった。
きっと私の唇もそうなっているのだろう。とても甘くて温かいキスは
私達を虜にし、夢中にさせた。

「はあ・・」

しばらくしてゆっくりと唇を離す。どちらともなく、吐息が漏れた。
澪ちゃんの涙に濡れた目、綺麗な顔立ちが私の視界に写る。

「深紅さん・・」

戸惑うような澪ちゃんに私は何も答えず、ただ、そっと唇を彼女の涙の跡に
押し付けなぞるようにして、跡をぬぐう。不思議だった・・自分でも。でも、
・・・そうしたかった。

「嫌・・?こんなこと?」
「・・・・・・」

澪ちゃんはただ黙って、頬に当たる私の唇の感触を味わっていた。返事がない
のをいいことに、私は今度は舌で彼女の頬をそっと舐める。

「んあ・・」

澪ちゃんが体をよじらせた、だが私は彼女を抱きしめて動きを封じる。

「じっとして・・」
「・・・どうして?」

澪ちゃんが、不思議そうに私に問いかけた。
61澪×深紅(2):2005/12/08(木) 21:50:52 ID:lbLsMt7s
「なんでかな・・・私にもよくわからないの」

私は澪ちゃんの問いかけに曖昧に答えた。
だが、澪ちゃんのまっすぐな瞳を見ていると、ごまかすことができず、
私は考えをまとめながら・・ぽつりぽつりと答えた。

「・・・澪ちゃんのこと・・好きになったかもしれない」
「・・・会ったばかりなのに・・?」

真面目な問いかけがかえって可笑しくて、私は笑ってしまった。

「そうね・・澪ちゃんを見ていると・・自分を見ているようで」
「・・・・」
「それで、忘れさせてあげたくなるのかも」
「何を・・・?」
「・・・大切な人のことを」
「・・・私、お姉ちゃんのこと忘れたくない・・忘れられない」

再び涙を浮かべはじめた澪ちゃんをなだめるように、私は優しく彼女を
抱きしめる。

「ごめん・・言い方悪かったね」
「・・・深紅さんは・・忘れたいの・・?」
「・・・・・ううん、忘れられない。でも澪ちゃんには忘れて欲しい」
「・・・ずるい」

はじめて、澪ちゃんが笑った。

「・・・すぐに忘れてなんて、言わない・・私のことお姉さんの代わりだと
思ってもいい・・だから」
「・・・・」

・・・しよう・・

澪ちゃんは小さくうなずいた。私は体を離すと、そっと机の上にある
写真を伏せた。
62澪×深紅(3):2005/12/08(木) 22:04:13 ID:lbLsMt7s
私のベッドの上で、少し怯えながら仰向けになる澪ちゃん。
澪ちゃんはもう何も身にまとっていなくて、その体はとても綺麗で、
私はしばらくみとれていた。

「・・・怖い?」
「・・・うん」
「私も・・よ」

そう言って、私は澪ちゃんの前で服を脱ぎ始めた。ゆっくりと見せ付けるように。
その時点で、私はもう悦楽の虜になっていたのだろう。澪ちゃんという少女の
視線を意識しながら、ブラジャーをはずす。

「あ・・」

予想通りの澪ちゃんの驚きの声。
豊満な胸を隠すことなく、私はそのまま下半身の下着も脱いだ。

「・・・澪ちゃん、見て・・」

恥ずかしさで、顔を背けた澪ちゃんに命令するように声をかける。
顔を赤くさせながらも、澪ちゃんは私の方を見る。その視線は私の
胸から・・下へと移っていく。

「深紅さん・・綺麗」
「・・・・」

私は何も言わず、澪ちゃんの上にまたがり、覆いかぶさった。

63澪×深紅(4):2005/12/08(木) 22:28:58 ID:lbLsMt7s
・・・本当は、私が忘れたかったのかもしれない・・
そう思いながら、私はそっと澪ちゃんの頭をなでる。

「ん・・・」
「んん・・・」

そして再び唇を重ねる、さっきよりも、ねっとりと、絡みつくようにして
舌も入れた。澪ちゃんの舌がたどたどしく私の舌に合わせて動く。

くちゅ、くちゅ、くちゅ

唾液が交じり合う水音と、激しい息使いの音だけが聞こえる。

「んはっ・・・はあ・・はあ」
「澪ちゃん・・・」

苦しそうにあえぐ澪ちゃんの首筋から鎖骨を舐めあげる。

「・・・・・っ」

澪ちゃんは、声を殺して、シーツを握りしめながら、私の愛撫に耐える。
その姿がいじらしく、そして愛しくて・・私はさらに愛撫を激しくした。
唇を、さらに下にもって行き、澪ちゃんのまだ小ぶりな胸へと近づける。

「あ、そこは・・・」
「じっとして・・・」
「ああっ・・!」

澪ちゃんの胸に唇を当てたとたん、澪ちゃんははじかれたように体を
のけぞらせた。まったく初めての快感に、澪ちゃんの体は耐え切れない
ようだ。私はなぞるように、舌で澪ちゃんの胸を舐め上げた。

「ふあっ、ああっ!」
「澪ちゃん、可愛い・・」
「あ、お・・お姉ちゃ・・んっ、お姉ちゃん」

お姉ちゃん・・と澪ちゃんは必死で目を瞑りながらあえいだ。
「お姉ちゃんの代わりでいい」と言っておきながら、目の前で
姉の名前を連呼する澪ちゃんを見ていると、・・嫉妬心が生まれた。

「もっと気持ちよくさせてあげる・・・」

そうして、私は片方の胸をゆっくりと手で愛撫しはじめた。

「んあっ・・もう、あああっ」

・・・簡単に澪ちゃんはイってしまった。

私は、物足りなさを感じた。荒い息をあげながら、朦朧としている澪ちゃんに
そっとささやく。

「ねえ、澪ちゃん、今度は私にもして・・・」
64名無しさん@ピンキー:2005/12/08(木) 22:31:46 ID:lbLsMt7s
>>63
スマソ、後半は11日以降に成松。
65名無しさん@ピンキー:2005/12/08(木) 22:37:08 ID:HajFaU2z
>>60-64
ちょwwwwおまwwwwwGJ!!!wwwwwww
66名無しさん@ピンキー:2005/12/08(木) 23:24:51 ID:Z0aIFon4
>>64
澪深紅キタコレ!!
GJ!
67名無しさん@ピンキー:2005/12/09(金) 21:54:48 ID:lMdU7j8J
>>60-64
素晴らしくエロイですね。
この調子でお願いします。

ついでにクリスマスの澪×繭もお願いしまつ
68名無しさん@ピンキー:2005/12/10(土) 00:10:29 ID:THY2GfSg
ぱっぱらぱ、ぱっぱっぱ、ぱっぱらぱ、ぱっぱっぱ、ぱっぱらー。

で判る人、ちょっと手あげて
69名無しさん@ピンキー:2005/12/10(土) 00:45:33 ID:STG5q1Wf
>>54
グッ…ジョブ…(悶死
優雨が死んだ後、深紅は怜を手に入れるわけですね(*´д`)ハアハア
>>64
エロくてイイ(・∀・)!!
続きを禿げ上がるほど期待しておりまつ!
70名無しさん@ピンキー:2005/12/10(土) 21:50:32 ID:7rx3YsGd
>>68
・・・・??
71名無しさん@ピンキー:2005/12/10(土) 21:55:10 ID:sBd6gAbe
>>68
かっぱかっぱらった、かっぱらっぱかっぱらった、とってちってた
なら知っているが?
72名無しさん@ピンキー:2005/12/10(土) 22:14:39 ID:FOrieTHe
パラッパラッパーってゲームがあったがそれ関係?
73名無しさん@ピンキー:2005/12/11(日) 16:40:26 ID:tJMNFcci
加藤茶のタブーだな
74名無しさん@ピンキー:2005/12/11(日) 17:16:42 ID:tX4xnA76
そりゃ、
ぱっぱらぱっぱ、ぱっぱっぱ
だろ?
75名無しさん@ピンキー:2005/12/11(日) 17:42:09 ID:eCizZOpj
さらっと見たら、マジでモー娘。の歌の事言ってんのかと思った。
でも良くみたら全然違うなw
76名無しさん@ピンキー:2005/12/11(日) 21:38:45 ID:tJMNFcci
じゃあ火曜サスペンスだ
77名無しさん@ピンキー:2005/12/11(日) 22:09:55 ID:18CbWo5F
火曜サスペンスって
たんたんた〜ん、たんたんた〜ん・・・とかじゃないの・・?
78名無しさん@ピンキー:2005/12/12(月) 00:28:04 ID:SPPsWOtc
カッパがラッパをぷーっとふいた バカはカンカン 以下忘れた
なら覚えてるユンピョウ
79名無しさん@ピンキー:2005/12/13(火) 21:06:43 ID:pjC2QhzV
クリスマスの澪繭を妄想中・・・
80名無しさん@ピンキー:2005/12/13(火) 21:07:04 ID:pjC2QhzV
ageちまってすまん
81名無しさん@ピンキー:2005/12/14(水) 00:06:00 ID:tfcuRt4G
>>79季節がクル!
82名無しさん@ピンキー:2005/12/14(水) 00:07:36 ID:tfcuRt4G
>>79
期待してるよ! バカップルの季節がクル!

が何故か略されてるorz
83名無しさん@ピンキー:2005/12/14(水) 01:17:59 ID:6jO8MS/+
バカップル上等!!w
遊びまわってやるぜ!!!w
イクぜ!!マイハニー!!!w
84名無しさん@ピンキー:2005/12/14(水) 01:29:55 ID:Lw7rN6jN

み・・澪??
85名無しさん@ピンキー:2005/12/14(水) 04:25:28 ID:B22M9Z7i
そんな妹もモエスwwww
クリスマスバッチコーイ
86名無しさん@ピンキー:2005/12/14(水) 09:40:18 ID:t5NWmXBY
>>83
その台詞を澪の声で想像したらなんか禿萌えた・・・

澪も繭も特徴ある声だからあまりしゃべって無いけど想像し易いなぁ。
というか零キャラって深紅や怜も思い出しやすいしイイ声使ってるね。
87名無しさん@ピンキー:2005/12/14(水) 12:57:10 ID:JgcXCoMe
やっぱ二人(澪繭)でホワイトクリスマスなんだろうなww
シチュ的にはイルミネーションの中、手を繋ぎながらほのぼの・・
88名無しさん@ピンキー:2005/12/14(水) 20:55:05 ID:VFBevfrc
>>68
解った!
名前入力画面だ!

だけど、スレ関係なくないか・・・?
89名無しさん@ピンキー:2005/12/14(水) 21:40:00 ID:NmAheCwW
モンスターハンター?
90名無しさん@ピンキー:2005/12/15(木) 23:50:52 ID:VUsPr/zI
かそちんぽかそちんぽ
91名無しさん@ピンキー:2005/12/16(金) 00:34:32 ID:SVucUzq3

虚の縁で、ぐらりと揺らぐ姉の身体。
妹が駆け寄り助けようするも、既に遅く。

「お姉ちゃん!」

だが、妹は諦めない。とっさに縁へと落ちかけた姉へと手を差しのばす。
足が踏み外れ、姉の身体が自由落下を始めたその時。

「捕まって!」

必死に伸ばした手が、姉の手に触れた。
焦りと喜びを綯い交ぜに、妹がその手を握ろうとした瞬間。

「えっ?」

ぱしりとはたかれた妹の手。
会心の笑みを浮かべて腕を振り抜いている姉。
何故か、差し出された手を退けて。
そして、そのまま姉は落ちて逝った。

「お姉ちゃん何でぇぇぇぇぇぇ!!」
「ギース・ハワードの真似してみたかったのぉぉぉぉ!!」

意味不明な高笑いを残しながら闇へと消えていく姉。
どう反応して良いか解らず、妹は取り敢えず姉の名を叫ぶのであった。

「お姉ちゃんの馬鹿ぁぁぁぁぁ!!」


92名無しさん@ピンキー:2005/12/16(金) 10:35:28 ID:N+bMEZ0f
久世家当主の腕によってtunkoもまれる螢
刺青の女によってtunkoを引っ張られる螢
鎮女の幼女によってtunkoをコツンとやられる螢
髪をとかす女の髪の毛アタックによってtunkoを髪でしめつけられる螢

ラストにはtunkoだけ残して煤となって消える螢
93名無しさん@ピンキー:2005/12/16(金) 14:32:41 ID:cINm1LFt
>>91
ホントに馬鹿としか言い様がないなww
94名無しさん@ピンキー:2005/12/16(金) 22:14:47 ID:5Q7PJ7hW
なぁ、眠ったら出るステージ開始前のムービーあるじゃん。

俺トーマスって聞こえるのは俺だけか?
95名無しさん@ピンキー:2005/12/17(土) 00:09:42 ID:2QUKR+/i
>>94
( ゜Д゜)……


(゜Д゜)ミ
君だけだろ
96名無しさん@ピンキー:2005/12/17(土) 00:56:43 ID:Q/nC0jEN
>>94
オフコース!!
97名無しさん@ピンキー:2005/12/17(土) 01:53:05 ID:WZmL4KfX
>>95
なぜ背ける、なぜ背ける
98名無しさん@ピンキー:2005/12/18(日) 14:42:23 ID:kJyV35Cv
ザッザザッ オレトーマス ムラカミ ヘェー
99名無しさん@ピンキー:2005/12/18(日) 23:51:30 ID:zz3vz9Ve
「助けてぇ…」
カメラを構えた途端見えたその男の周りは血だらけであった。
恐る恐るその男を射影機で撮影してみる。
パシャ ボワン

宮大工の頭と男が繋がっている…
「助けてぇ…」
そこで尻をおさえた男は突然消えた。
何かが燃える音がした。
100名無しさん@ピンキー:2005/12/19(月) 09:40:15 ID:yGbGn3Jv
ポワーン
「ケツを掘られた男」
101名無しさん@ピンキー:2005/12/20(火) 08:25:59 ID:EqBhXyLv
1 ケツを掘られた男
2 ケツを抑えてうずくまる男
3 ケツを抑えて横になる男
4 目覚めた男
5 バイブを持った木工頭
6 大人のおもちゃに興味津々の鎮女(水面)
7 大人のおもちゃに興味津々の鎮女(時雨)
8 大人のおもちゃを経験したことがある鎮女(雨音)
9 今まさに使用している鎮女(氷雨)
10 妄想しながら悪い笑みを浮かべている天倉 澪
11 オナニーの現場を目撃された天倉 螢

おk、霊リスト更新した
102名無しさん@ピンキー:2005/12/20(火) 19:16:55 ID:scOTZ0Rz
謝って回ってます

荒らしてごめんなさい・・・
103名無しさん@ピンキー:2005/12/20(火) 19:43:46 ID:LVHvq+0c
このスレ機能してねーなw
104名無しさん@ピンキー:2005/12/20(火) 20:14:45 ID:RyFfOp7z
廃墟上げ
105名無しさん@ピンキー:2005/12/20(火) 22:38:47 ID:ZxiP3ao3
SS師さまどうかどうか新作を・・・・

ってクリスマスに備えてネタ溜めされてるとか良い方向に
考えてみる。
106名無しさん@ピンキー:2005/12/21(水) 00:23:30 ID:SeRrMtCP
ここも他の関連スレ同様、狭間に呑まれてしまうのか
107名無しさん@ピンキー:2005/12/21(水) 02:33:12 ID:MaiHtW0z
もうすぐクリスマス♪
108澪×繭(1):2005/12/21(水) 18:00:14 ID:nLELq6wU
晴れた空に小さな雲が2つ、
ぽつんと寄り添うように浮かんでいた。

ゆっくりと東へと流れていくそれを、
澪は窓際の席で頬杖をつきながら眺めていた。
苦手な古文の授業中、眠気をかみ殺しながら、
ふと向けた視線の先にあったのだ。

晩秋の深い青空に映える、鮮やかな白。
吸込まれるように見つめてしまっていた。

「澪、何ぼけっとしてんの?」
いつのまにか傍に来ていた友人達が、澪の顔を覗き込んでいた。
「あ、ううん。何でもない」
はっと我に返り、身体を起こす。
「次、生物だよ。早く行こ」
言われてやっと、教室を移動しなければならないことを思い出した。
「あーそうか。ごめん、ちょっと待って」
慌てて支度を始めた澪を、友人達が愉快そうに眺めている。
「澪が物思いとはね」
「もう、そんなんじゃないよ」
軽く受け流しつつ、てきぱきと必要なものを揃えていく。
「よし、と。じゃ行こ」
ばたばたとあわただしく廊下へと飛び出していく友人について、
澪も席を立った。
窓の外の雲は、
校舎の陰に隠れて見えなくなっていた。
109澪×繭(2):2005/12/21(水) 18:01:08 ID:nLELq6wU
特別教室のある向かいの校舎への途中、
渡り廊下を反対側から歩いて来る繭の姿が見えた。
一緒に歩いている友人達の会話に、物静かに相槌を打つ様子が、
妹の目からみてもドキリとするぐらい可憐だった。
「お姉ちゃんっ」
澪は思わず、廻りがびっくりするぐらいの声で、呼びかけてしまっていた。
いずれすれ違うのだから、それまで待てばいいはずなのに、
姿を見れば声を掛けてしまう習性が、澪には染み付いている。
「澪」
15mほどの距離を置いて、繭は澪の姿に気が付いた。
そして、学校で澪に呼びかけられた時いつもそうするように、
少し頬を染めて、控えめに微笑んだ。
「ごめんね、妹なの」
「ふふっわかってるわよ」
と友人達と話している声が聞こえてきた。

(ごめんね、ってなによ)
言葉尻を捉えてプクっと頬を膨らませてみせたが、
澪は繭のその表情が大好きだった。
そんな"お姉ちゃん"な顔をしている繭をみると、
不思議と誇らしい気持ちになった。
 
幼少時の事故の後遺症で、
繭は未だに注意すれば分かってしまうほどに、
足を引きずることがあった。
それを目にする度に、罪悪感は澪の内部で否応なくのたうち回った。
それでも今まで澪の心が押しつぶされずにいられたのは、
謝りながら泣きじゃくる澪を慰めるときの、
繭のその静かな笑顔があるからだった。
『怒ってないから。ね、気にしないで…』
だからこそ、そんな不幸な傷跡も自分達の絆を深めてくれたのではないかと、
今では思えるようになっていたのだ。
110澪×繭(3):2005/12/21(水) 18:02:03 ID:nLELq6wU
「ちょっと先に行ってて」
友人達にそう言うと、澪は繭に駆け寄った。
「授業遅れんなよー」」
「繭さーん、澪をよろしく」
全てを承知している、といった様子で友人達が苦笑しているのが見えた。

「どうしたの?澪」
渡り廊下の端で、そろって手すりにもたれ掛かる。
繭のクラスメートにも、先に教室に戻ってもらっていた。
「ん、別に…」
実際、特に用事はなかった。
ただ一緒にいたかっただけ。

部活の大会が近いせいで、
最近の澪は朝早く、帰宅も遅かった。
まともに顔を合わせるのは久しぶりだった。

「澪」
繭は澪の顔をのぞきこんだ。
陽光を受けた繭の唇が、僅かに光る。
薄いピンクの光沢が、妙に艶かしい。
「あれっ、おねえちゃんリップ換えた?その色、私知らない」
一瞬見惚れた澪は、それが普段の姉の印象と異なることに気が付いた。
そして、指摘するその口調が心なしか非難がましくなってしまったことに、
内心舌打ちした。
「あ、気付いてくれた?一昨日の帰りに見つけたの。
ちょっといいでしょう。この色はね…」
しかしながら、そんな澪の様子を知ってか知らずか、
繭が声を弾ませる。
その姉の楽しそうな姿は、
澪にとっても当然嬉しいもののはずだった。
が、澪は自分の感情がささくれ立ち、
暴走する予兆を感じた。
111澪×繭(4):2005/12/21(水) 18:03:18 ID:nLELq6wU
(あ…まずい)
けれど、深呼吸する暇もなく、
棘を含んだ言葉が吐き出されてしまう。

「教えてくれなかったよね。なんで?」
澪のその唐突な剣幕に気圧されて、
繭は続ける言葉を飲み込んだ。
澪は頬を紅潮させ、
しかし目を逸らすように顔を背けた。
「隠し事なんてひどいよ。」
押し殺すようにつぶやいた。
困惑する繭の気配を傍らに感じつつも、
澪は頑なに虚空を睨みつけ、
涙があふれそうになるのを堪えた。

「澪…」
繭の戸惑いが伝わってくる。
(そうじゃない)
澪は、自分がただの言い掛かりをつけていることは分かっていた。
(そんなことが言いたいわけじゃないのに…)
(お姉ちゃんはなにも悪くないのに…)
ねじれた感情を解きほぐす糸口がみつからない。
(ただ…)
(私は…)
楽しく自分の時間を過ごしている繭が、
憎らしくなってしまったのだ。
一緒にいられる時間が少なくて寂しかった自分と、
同じ思いを共有していて欲しかったのだ。
僅かでも一緒にいられて嬉しいと、
言って欲しかったのだ。
(…浅ましい…)
繭の視線を感じ、澪の視界はますます歪んでいく。
(もう…やだ…)
112澪×繭(5):2005/12/21(水) 18:04:10 ID:nLELq6wU
ふと澪は自分の左手に暖かい体温を感じた。
いつの間にか、肩が触れる距離で繭がぴったりと寄り添っていた。
「ごめんね」
澪はそっと繭の方へ向き直った。
目の前にあの静かな笑顔があった。
「ごめんね、澪。」
そっと目を細め、全てを理解してうえで諭すような口調で繭は語りかける。
「私ね、寂しかったの。忙しそうな澪を見てるのが」
「お姉ちゃん…」
「これだって、ただ気を紛らわせていたかっただけ。
それだけの物なの」
双子だというのにかくも性格は違ってくるものかと、
いいかげんわかってはいるつもりではいたけれど、
澪は感心してしまった。
「だから澪、ごめんね」
欠けている部分を埋めるかのような互いの存在が、
奇跡のようにも思えた。
(ずっと一緒…)
(絶対、離れない…)

「み、澪…?」
いつのまにか二人の顔が、
鼻の頭がくっ付きそうなほどの距離に近づいていた。
すっと澪の両腕が繭の身体に絡みつく。
その細い腰を引寄せる左手と、後頭部に添えられる右手。
身体の前面がぴったりと密着した。
「ちょ、ちょっと…」
「大丈夫、死角になってるはずだから…」
「そうじゃなくて…」
「良い色だね、そのリップ。ちょっと借りるね…」
「……ん…」
互いの髪の香りが鼻腔をくすぐり、
2人は自然と目を閉じた。
113澪×繭(6):2005/12/21(水) 18:05:23 ID:nLELq6wU
「あれ澪、色が違う」
休み時間、机の周りに集まった友人達が澪の唇をみて言った。
さすがめざとい。
「さっき繭さんに借りたんでしょ」
「あやしー、仲良過ぎ」
しかし、そうした好奇のからかいにも澪は余裕の視線を向ける。
「そうだよ。仲良いもん」
双子という絆に、さらに強固な心の繋がり。
今の澪に怖いものはなかった。

キーンコーン
始業のチャイムが鳴り、皆が散り散りに席に着く。
教師の板書の音だけが響くなか、
澪は心の片隅に浮かぶ白い残像を、
不意に思い出していた。

(さすがにもう無いか…)
多少あきらめに似た感情を抱きつつも、
視線を窓の外へと向けた。

乾いた空気は澄み切っていて、
視界を遮るものは何も無いように感じられた。
(きっと見つけられる)
そんな予感がした。

遥かに広がる青い空の下、
遠くに立ち並ぶ都心のビル郡。
澪は目を凝らす。
(あ…)
その隙間で懸命に存在を示すかのように、
相変わらずぴたりと寄り添う2つの雲が見えた。

<おわり>
114名無しさん@ピンキー:2005/12/21(水) 18:07:39 ID:nLELq6wU
クリスマス+年末もの祈願の保守SS投下です。
115名無しさん@ピンキー:2005/12/21(水) 19:04:00 ID:yT37T9Gw
>>114
あまりに好みな文体と内容すぎて涙腺がゆるみますた。
116名無しさん@ピンキー:2005/12/21(水) 21:37:04 ID:jLC3qa6j
>>114
GJです!澪の目を通した情景描写がすごくいいなァ
117名無しさん@ピンキー:2005/12/22(木) 08:14:55 ID:3EIycoR9
>>114
始まりと締め括りでちゃんと一貫性があって、情景描写も上手い。すごい。
何よりお姉ちゃん繭にテラ萌え。悶える!


つかぬ事をお伺いするのですが、ここの壱スレ目で同タイトルのSS書かれてた方・・
じゃないです・・よね?違ってたらごめんなさい。
118114:2005/12/22(木) 12:22:41 ID:1Tl7Lgsy
>>117
前スレまではちょこっとした小ネタ程度で、
ほとんどROM専だったので、
ごめんなさいそれは別の方です。

多少まとまった長さのSSはこのスレの、
『怜×深紅』『深紅』『澪×繭』だけです。

感想くれた方々、ありがとうございます。
119名無しさん@ピンキー:2005/12/22(木) 12:39:25 ID:Th0o7wRe
>>117
それって、初代ハァハァスレのホントに最初の方にあったやつ?
120名無しさん@ピンキー:2005/12/22(木) 13:13:10 ID:3EIycoR9
>>118
いやいやこちらこそすいません。何となく雰囲気似てるかなと思って。
とにかく本当にGJです!出来ればクリスマスネタもぜひに!

>>119
ハァハァってココだよね?多分それかな。ココの初代スレ14レス〜の。
あの作者のSS、大好きだ。
121名無しさん@ピンキー:2005/12/22(木) 13:42:02 ID:Th0o7wRe
>>120
俺もあの作品好きだった。
途中で終わってて勿体無いよな。
続きが見たい…

しかし、あの頃は零のSSがほとんどなくて新鮮だったよな…
122名無しさん@ピンキー:2005/12/22(木) 16:03:24 ID:L8+HTZ2+
初代ハァハァが丸2年前か…。
さすがに色々投下されたし、
ゲームの新作もしばらく無さそうだから、
当分はまったりなスレ進行になるのかな。

職人さん方々の降臨を、
気長にお待ちしてます…。
123名無しさん@ピンキー:2005/12/23(金) 01:55:19 ID:eeKWDjiF
>>121
そうそう。途中で終わってるんだよね。スゴクいい所で。
・・続きを・・・ずっと・・・待ってる・・
って自分は参くらいから参加で保管庫で見たんだけど・・
>>122 
とりあえず青の箱版待ちかな。
124名無しさん@ピンキー:2005/12/23(金) 09:05:53 ID:uJsYnSQG
ちょw今ごろそんな事言われるとは思ってもみなかったw
125名無しさん@ピンキー:2005/12/23(金) 12:23:23 ID:r9dQiVit
>>124
もしかしてその職人さん?
126名無しさん@ピンキー:2005/12/23(金) 13:19:54 ID:1ZMXERDh
>>124
((((;゚Д゚)))マジですか!
その職人さんだったらホント嬉しい!まだいてくれたとは! ぜひ!ぜひ続きを!

>>114さんの投下といい確実に自分にはエロパロのサンタが降臨
してる! そして当日には更に降臨があるといいな!
127名無しさん@ピンキー:2005/12/23(金) 13:30:25 ID:f/dxsLh2
>>114
GJです!やっぱ澪繭はええわぁ…!限りなく爽やかでハァハァ
上手く日常を描き出せていて凄い。
そして>>124
もし職人さんだったら自分も続きを希望します。
気になって夜も眠れないよ…!

自分も保守に澪繭投下します。
128澪繭1:2005/12/23(金) 13:31:46 ID:f/dxsLh2
暗い。
とても人が生活できるようには思えない家の中を歩きながら、澪は目を細める。
二度と明ける事の無い夜に存在し、すでに無人となったこの村には
懐中電灯も無く、蝋燭の明かりを頼りに進んでいくしかない。
歩を進めるたびに、古びた床がぎしぎしと軋む。
まるで何かの悲鳴のような不気味な音に、
思わず逃げ出してしまいたい衝動に駆られるがそれを抑えて振り向く。

「…お姉ちゃん、大丈夫?」

自分の位置より数歩ほど後ろを歩く双子の姉、繭に向かい問い掛ける。
繭はその大きな瞳に弱々しい光を浮かべながら笑いかけてきた。

「うん…大丈夫」

繭はそう言ったけれど、澪は心配で仕方が無い。
地図から消えた村――皆神村に迷い込んで、どのくらいの時間が経ったのだろう。
数分かもしれないし、一時間かもしれない。
無間の闇の中で、時間の感覚は失われているに等しい。
そんな中、『逢坂』という表札がかけられた
この家に入った途端、繭が見せた恐怖に怯える表情。
そして彼女の手をとった瞬間、自分も垣間見た恐ろしい映像。
首を吊るかのように天井からぶら下がった人形、
首に伸びてくる手、若い女性の悲鳴、そして…
澪は思い出すだけでも眩暈をもよおすほど異常な光景だった。
それを直接見てしまった繭には、
想像を絶する精神的な負担がかかっているだろう…
129澪繭2:2005/12/23(金) 13:32:57 ID:f/dxsLh2
(…強がらなくても…良いのに…)

澪はなぜか少しだけイライラしながら、一歩踏み出して繭に近付いた。
そして一瞬のうちに彼女の手を自分の手と絡める。

「み…澪?」

あまりに突然だったため、繭は僅かに戸惑っているようだった。

「お姉ちゃん…怖いなら、言って良いのに…」

ふてくされたように呟いた澪の声に、少しの間だけ呆けたような顔をしてから、
繭は小さく笑い声を漏らした。

「…何がおかしいの、お姉ちゃん」
「うん…澪の手が、あったかいなぁと思って」

くすくすと笑う繭を愛しく思いながら、澪もまた頬を緩め答える。

「そりゃ、緊張してるんだもの。今凄くドキドキしてる」
「そうだね…ここ、誰も住んでないみたいだし、暗いし…少し怖いね」
「うん、誰も住んでいないみたいだから。…お姉ちゃんと二人きりだから」

すると瞬時に繭の顔が赤くなる。
澪はそんな繭への愛しさに胸を詰まらせて、繭の顔に自分の顔を近づけた。
互いの吐息がかかるくらいの至近距離で、澪は囁いた。

「好きだよ…お姉ちゃん」

目を閉じて、唇をやわらかく押し付ける。
甘いいい香りに、こんな廃れた村の中でも幸せな気分になる。

「…ん…」

声と吐息が漏れて、惜しむように離れた舌と舌に銀色の糸が這う。
恥じるように目を逸らす姉が、たまらなく可愛らしく見えた。

「怖いなら言って。怖くなったら、私が助けてあげる」

手を握る力を強くして言った。
心なしか、先程よりも繭の手の温度が上がったような気がした。
130名無しさん@ピンキー:2005/12/23(金) 13:34:19 ID:f/dxsLh2
エロないうえ小ネタ程度で申し訳ないです。
クリスマス&年末年始もの、自分もワクテカしつつ待ってますww
131名無しさん@ピンキー:2005/12/23(金) 14:34:05 ID:Jw2dqV9z
>>130
GJ!
澪も負けないぐらい繭のことが好き、
みたいな描写はやっぱ良いなあ。
132名無しさん@ピンキー:2005/12/23(金) 15:56:16 ID:1ZMXERDh
>>130
GJJJJJJ!!!!エロなくてもエロイ!! もう職人さんは神です。
>>131
わかる。すごいわかる。
133:2005/12/23(金) 22:30:10 ID:kEC8vhGC
螢タン日記12月

外はしんしんと雪が積もっていた。
雪は澪と螢の2人を拘束するように家に閉じ込めていた。
暖房器具から蒸気が舞うように2人の体からも蒸気が立っていた・・・・。

螢「はぁはぁはぁ・・・」
澪「う・・・く」
螢「み・・・澪・・・いいか?そろそろ俺のマグナムをぶち込んでやるぜ!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ズン!!!

澪「はぁう!!」
螢「どうだ澪?いいだろ・・・・う・・・・どうだ?」


澪「お姉ちゃんの方が大きかった」





螢「はぁう!!!」
134名無しさん@ピンキー:2005/12/23(金) 22:59:24 ID:K+kdsseB
>>133
チョwwwwwwwwwだから何で生えてんだよwwwwwwwwwwwww
135名無しさん@ピンキー:2005/12/23(金) 23:13:08 ID:qbicVQTG
>>130
ハァハァ・・何このバカップルっえ霊も襲う気無くすよw

白繭姉だと純愛ぽくなるね。可愛い。
136名無しさん@ピンキー:2005/12/23(金) 23:29:15 ID:kEC8vhGC
>>134
お姉ちゃんは澪のためならチ●コくらい念力で生やすのです。
137名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 00:17:45 ID:SHRM4rV7
>>134のつっこみでワロタ
138名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 00:36:11 ID:4tIRjO5j
>>133
理屈も説明も一切抜き、な
その作風にしびれた。
139名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 01:56:38 ID:ubKbiNaf
螢「ウガツンジャーのみなさ〜〜ん」
鎮女4人「?」
螢「あばばばばばおちんちんびろ〜〜〜ん」(股間おっぴろげ)
氷雨「ちっさいね」
水面「あの射影機もってきたおじちゃんのよりちっちゃいね」
時雨「あははははお兄ちゃん木工頭の人のよりちっちゃ〜いキャハハハハ」
雨音「かなめお兄ちゃんが普通だと思ってたんだけど…プッ」


                                      _
                                     γ´   ヽ
                                     l,ハノ((((、 l
                                      l、- ゚ ,レイ 
                                     (V´^ヽ
               _                         〉!、 _l_l
              / ,;'ヽ                     }コ==U
            / ,;'´  ヽニニニニニi               | | |
           / ,;'´    i,____l      ________ーllーl
         / ,;'´  ∬プシュ… ;・/l    /       ..:::/|_ノヽ_)
       / ,;'´    ,;'´∵; ;;;;;/  l  /       ...:://|
      / ,;'´    ,;'´  ;;;;∴/  / /       ...:::://_|.,!
    / ,;'´    ,、'゛;;・; ;;;; /  / /         :::://
    |゙゙゙゙ヽ   ,、'゛..,,,;∴;/  / /      ....::::://
    |:. ゛二二二二゙i;/  / /      ::::::::://
    |::::...       |  /  i 二二二二二二 !/
    |_、- ───- ,__l/     l | l       | | l
                   |_|.,!         |_|.,!
140クリスマス澪繭(1):2005/12/25(日) 16:06:35 ID:4+B4axmA
闇の中での生活に慣れたころ、気づけばあっという間に2年が過ぎていた。
・・・そう、あの村を出てから2年。

「澪・・もうクリスマスだよ、早いね」
「・・・そうだね」

そう言って私は手をお姉ちゃんの方に伸ばす。
しっかりと私の手を握り、お姉ちゃんは自分の頬に私の手を当ててくれた。

「うわ・・冷たいねお姉ちゃんの頬」
「外に出てたから・・」
「外?」
「うん、ちょっとクリスマスのお買い物・・フフ澪の手あったかい」

私はお姉ちゃんの頬をゆっくりとなでる。やわらかくてきめ細やかな肌。
そしてそのまま口元へ指を滑らせる。

「フフフ・・くすぐったいよ澪」

お姉ちゃんのやわらかい唇が微かに震える。私の頭の中に2年前、
森の中で微笑んでいるお姉ちゃんが浮かんだ。
ああ・・お姉ちゃんは変わってない。私は嬉しくて微笑んだ。

「・・えい」
「あいた」

お姉ちゃんに指を甘噛みされた。慌てて指を離すと、
クスクス、と楽しそうに笑うお姉ちゃんの声。そして同時に感じる肩への重み。
・・・私の肩にお姉ちゃんの頭が乗っている。

「・・・ねえ、澪・・去年のクリスマス覚えてる?」
「え・・う〜んとあんまり覚えてない・・」
「そうだよね・・澪それどころじゃなかったから・・」

そう言って、お姉ちゃんは私の体を抱きしめる。

「・・お、お姉ちゃん」
「何・・フフ、澪顔真っ赤だよ、お姉ちゃんとくっつくの恥ずかしいの?」
「いや・・そ、そんなこと・・ないけど」
「変な澪」

・・そう、確かに私は最近変だと思う・・自分でも。
141クリスマス澪繭(2):2005/12/25(日) 16:21:13 ID:4+B4axmA
目が見えなくなってからしばらくは気づかなかったけど、お姉ちゃんに
抱きしめられたり、手を握られたりするとドキドキして緊張してしまう。
お風呂も一緒に入ってくれるんだけど、そんなときも私はお姉ちゃんに
見られていると思うとどうしようもなく恥ずかしくて。
・・・私はやっぱり変なのかな?

「さ、澪、今日はお姉ちゃんケーキ買ってきたから一緒に食べよう」
「え、ほんと?」

嬉しそうな私の声を聞いて、姉がまた笑いだす。

「ああ〜・・お姉ちゃんまた笑う」
「フフ・・ごめんごめん。あ、今日お母さん遅くなるから、二人で先に
ごはん食べてって」
「・・お姉ちゃんと二人のクリスマスだね」
「・・・そうだね」

少し黙った後、お姉ちゃんは囁くように言った。さびしくなったのかな?

「ごめん・・お姉ちゃん寂しくなった?」
「違うよ・・嬉しいの」
「え?」

そして、私の耳元のすぐ近くでお姉ちゃんの声がした。

・・・澪と二人だから嬉しいの

きっと私の顔はすごく赤くなっているんだろう。
そんな私がおかしいのか、お姉ちゃんが耳元でくすりと笑った。
142クリスマス澪繭(3):2005/12/25(日) 16:45:03 ID:4+B4axmA
ごはんはおいしかったけど、ケーキはもっとおいしかった。

「澪・・もう、ごちそうさま?」
「うん・・と、もうちょっと」

もう、と笑いながら、お姉ちゃんは私の手にケーキのお皿を渡す。
だけど、うまく食べれなくて、それを見かねたお姉ちゃんが私のお皿を取り上げた。

「あ・・」
「お姉ちゃんが食べさせてあげるよ、はい、あ〜ん」

なんだか恥ずかしいような嬉しいような変な気分。でも私がおとなしく
口をあけるとお姉ちゃんはくすくす笑いながら、ケーキを口に入れてくれた。

「・・手がかかるなあ、澪は」
「う・・ご、ごめん」
「フフ、嘘、冗談よ」

そう言って、何度か私の口にお姉ちゃんはケーキを運んでくれる。
なんだか、お姉ちゃんは私よりもすごく大人になったみたい。

「あ、澪、口にクリームがついてる。お姉ちゃんが拭くから、じっとしてて」
「うん・・」

・・ちゅ・・と、口元にやわらかい感触がした。

「?」
「澪・・」

そうして今度は唇に。お姉ちゃんの唇だと気づいたときにはもう口をふさがれていて、声が出なかった。

「ん・・」

長い時間だったようでもあるし、ほんの数秒だった感じもする。
・・お姉ちゃんとキスしてしまった。

「お、お姉・・ちゃん?」
「澪・・・お姉ちゃんとこんなことするの・・嫌?」

そんなことあるわけない。私は声がうまく出なくて、首を左右に振った。

「じゃあ・・澪も・・好き?」
「う・・うん」
「よかった・・」

そうして、私の頭を抱きしめる。お姉ちゃんの胸の感触が心地よくて
私は変な気持ちになる。ああ、そうか私もお姉ちゃんも同じ気持ちだったんだ。

「お姉ちゃん・・・」
「何・・?」
「あの・・私もお姉ちゃんにキスしていい?」

返事の代わりにお姉ちゃんがくれたのは、甘いキスで。私もお姉ちゃんを抱きしめた。

これからはずっとこうしていようね、お姉ちゃん・・。


END

143名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 16:53:48 ID:4+B4axmA
>>142
その後二人はエロエロしまつ・・だが、繭澪ともとれそうだ・・スマソ


144名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 17:38:59 ID:+Ry0wx9v
>>143
GJ!!クリスマスキター!!!!!!!

以前にも作品書かれてましたよね?w
145名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 21:40:08 ID:2nlT4WS3
>>143
クリスマスSS、GJ!
タイムリーなネタは良いね。
146名無しさん@ピンキー:2005/12/26(月) 00:32:00 ID:Mc3iViNi
グッジョブ!!!!!!いや〜萌えた
147名無しさん@ピンキー:2005/12/26(月) 01:29:40 ID:KSGcLca2
一日遅れのクリスマスプレゼントSS


「ねぇ、澪」
「はぁ、何お姉ちゃん?」

夜更けに部屋に忍び込んで来た人物を取り敢えずハリセンでどついたらサンタ姿の姉だった。
忍び込んできた理由が何時も夜ばいではなくてクリスマスのサンタの真似事だったので取り敢えずトドメは刺さなかった。

「何時も澪には迷惑かけているから……プレゼント位渡そうと思って」
「お姉ちゃん……」

迷惑かけている自覚があるなら止めてくれと思ったが、それはぐっと堪える。

「それでね、受け取ってくれる?」
「うん、いいよ」
「良かった。受け取ってくれて!」

眉がそう言った直後、澪の股間に熱い感触が生じた。
感じた感触は見る間に大きくなり、股間部が大きく内側から押し上げられる。

「え、ちょっと、何?」

慌てて、パジャマを捲り、姉の前にもかかわらずパンティに手を突っ込んでみると。

「ちょ、なにこれ--------------------!!」
「見れば解るじゃない。見ての通り、お珍砲よ!」

何でか知らないけど、珍砲生えてます。
しかも、姉が普段夜間強襲を仕掛けて来る際に装着しているディルドより野太いです。
文面で表現すればギャラクチカマグナムです。おまけに、根本にリースとベル2個が付いています。
実に、実に姉らしい下劣な凝りようです。

「どう、気に入ってくれた? 私のクリスマスプレゼント」
「お姉ちゃん……」
「ん、どうしたの澪?」
「私もお姉ちゃんに、プレゼントしたくなっちゃった。受け取ってくれる?」
「え、絶対貰う、今すぐ貰う!頂戴頂戴!」

そう叫んだ繭の頭上に澪が投げ捨てたパジャマのズボンと、シルクのパンティが舞う。
ベットの上に仁王立ちになっている澪。隆々と奮起しているアームストロング珍砲。

「そう、じゃあ今すぐ受け取ってね」

優しげに言いつつ、澪はベットから澪に向かって飛び掛かった------。



澪のクリスマスプレゼント『尊厳破壊』


尤も、姉は懲りるどころか新しい喜びに目覚めてしまい、妹を困惑させるのだがそれはまた別のお話。
148名無しさん@ピンキー:2005/12/26(月) 01:32:36 ID:KSGcLca2
修正文追加orz 脳内で変換してください。

優しげに言いつつ、澪はベットから繭に向かって飛び掛かった------。
149名無しさん@ピンキー:2005/12/26(月) 01:47:24 ID:Mc3iViNi
あまり人いないからSSならなんでも嬉しい。
150名無しさん@ピンキー:2005/12/26(月) 07:21:58 ID:igS2dFmJ
エロい画像ないかな
151名無しさん@ピンキー:2005/12/26(月) 10:21:33 ID:sG8+81B6
>>148
文体や内容の有無を言わさぬ勢いにワラタ。
そのノリで次作も是非。
152名無しさん@ピンキー:2005/12/27(火) 00:53:13 ID:llZA4EiM
感想サンクス。
次は正月にウガツンジャーでも書くかな。
153怜×深紅・年末(1):2005/12/27(火) 02:15:08 ID:G+vlqbWt
窓際のお気に入りの席からは、
駅のコンコースを一望することが出来た。
そこから目にする、
途切れなく人々が行き交う光景は、
各々身にまとうコートの彩りも相まって、
まるで一つの巨大な万華鏡のようだった。

「そう、見えませんか?」
窓の外へと向けていた視線を正面に戻しながら、
雛咲深紅は向かいの席に座る黒澤怜に話し掛けた。
「え、ああ、確かにそう言われると」
鼻先に掲げたコーヒーの香りに目を細めていた怜は、
深紅の言葉にわずかに頷く。
「深紅、あなたなかなかロマンチックなこと言うのね」
相変わらず年の瀬は人出が多い、ぐらいしか思わなかった、
等ぼやきながら苦笑する怜は、
表情にうっすら疲れを滲ませてはいるものの、
しかしすこぶる上機嫌だった。

「とりあえずこれで仕事納めですね」
仕事用のスケジュール帳の最後の欄に、
業務完了を示す丸印を赤ペンで打つと、
「ご苦労様」
と、深紅は手元のそれをパタンと閉じた。
「やっとね。とは言ってもしがない自営業者の休息は束の間だけど」
脱力したように頬杖を突く怜の視線の先で、
太陽は既に半分沈みかけている。
今年最後の日の入りだ。
「今はそれは考えっこ無し。お疲れ様です、社長」
深紅は両手を軽くテーブルに添えると、
怜に向かってペコリと頭を下げた。
「あはは、悪くないね」
そう笑う怜も、同様にして、
「お疲れ様」
と深紅に頭を下げた。
154怜×深紅・年末(2):2005/12/27(火) 02:16:15 ID:G+vlqbWt
眠りの家の一件以降、
二人の置かれている状況にも多少の変化があった。
まず、怜が再び人物写真も手掛けるようになったこと。
そしてスタジオを立ち上げたこと。
取締役1名、社員1名の、
まだまだ産声を上げている最中の弱小企業。
けれど、それを軌道に乗せる、という共通の目標は、
二人の絆を公私ともにさらに深めていた。

「そろそろ行こうか」
レシートをひょいと摘まむと、怜は席を立った。
「あ、はい」
と、その後に続く深紅は、
そのときの、どっこいしょという怜のつぶやきを聞かなかったことにしてあげた。
12月に入ってから、大晦日の今日まで、
週末も祭日も返上して、二人は働いてきた。
特に怜は、本来休日を予定していたクリスマスにも、
急遽入った下請け仕事に飛び出していったのだ。
疲れも溜まっているだろう。
せめて年末年始ぐらいはゆっくりと休んで欲しかった。

「じゃ、おそば買って帰りましょう」
「そうね。あー、お風呂入りたい。」
腕を上げて、一度ぐっと伸びをすると怜はすたすたと歩き出した。
重いカメラケースを下げていても、疲れていても、
背筋を伸ばして、大股で。
深紅はそんな怜の腕にぎゅっとしがみ付きたい衝動に、
ふと駆られた。
後ろ姿が、綺麗で頼もしくて、どこか儚げな…。
けれど深紅はぐっと我慢した。
怜のペースに遅れないように、
ちゃんと自分でついていきたいと思ったのだ。
「深紅、どうしたの?行くよ」
前方で振り返った怜が呼んでいる。
深紅は小走りで駆け寄ると、怜の横に並んだ。
155怜×深紅・年末(3):2005/12/27(火) 02:17:19 ID:G+vlqbWt
「さ、行きましょう」
怜の顔を見上げ宣言し、一歩踏み出そうとしたとき、
「はい」
と、怜が深紅の前に肘を軽く曲げた腕を差し出した。
思わず前のめりになってしまい、深紅はその腕をつかむ。
「……何ですか?怜さん」
「深紅いま、私と腕が組みたいなあ、とか思ってなかった?」
「な…」
カッと一瞬で顔が赤くなるのを自覚し、深紅はひどく狼狽した。
「あれ、違った?そっか」
しかしそんな深紅の戸惑いに頓着することなく、
怜はあっさりとその腕を引っ込める。
「あ、い、いえ…」
「ん?」
「…ち…違ってません…けど…」
「そう?良かった。別に遠慮しなくていいのに。じゃ、はい」
深紅は再度差し出された腕をみつめる。
「もう…怜さんは、なんでそういうことするんですか」
「え?」
「せっかく我慢したのに」
つかんだ両手に力をこめる。
「ひどいじゃないですか」
そう言うと深紅はガバっと怜の首に抱きついた。
怜の体温と香りが伝わってきて、
堪えてみたけれど、どうしようもなく笑みがこぼれてしまう。
「み、深紅、ちょっと」
「何ですか。遠慮しなくていいって、
怜さん言ったじゃないですか」
「それ腕のこと、腕」
「あれ、ごめんなさい」
と、深紅は舌を出してうそぶいてみせる。
そんな深紅を怜は愛しそうにみつめた。

ズボラに見えて、お姉さんの怜。
しっかりものに見えて、甘えん坊の深紅。
こんなにも気が合う理由は、
そこら辺かな、と
深紅は思った。
156怜×深紅・年末(4):2005/12/27(火) 02:18:50 ID:G+vlqbWt
「もーいーくつ寝ーるーとーお正月?」
「ひとつ」
「ぶー、答えはゼロ」
「えーなんでですか」
「今夜は寝かせないよ、ハニー」
「バカなこと言ってないで寝てください。
明日は絶対、揃って振袖で初詣、行きますよ」
「はーい」
取り留めの無い会話。
愚にもつかないじゃれあい。

ひとまずどこかで区切りがついて、
新しい何かが始まるような予感。
過去と未来の境界上を漂う、
大晦日の夕暮れは、
底抜けに楽しかった。

来年のことを言うと、鬼が笑う。
同じく鬼に笑われるなら、
楽しい予定以外、口にすまいと深紅は思った。
例え今ここで色々考えたとしても、
結局なるようにしかならないのだ。

「で、初詣から帰ったら、後は何にもしないんです。
ね、そうしましょう。怜さん」
「いいね。昼間からお風呂入って、お酒飲んで、ルリいじって」
「もう、いじめないで下さいよ。あの子デリケートなんですから」

しっかりと腕を組んで寄り添うと、寒さは何も感じなかった。
疲れているはずなのに、不思議と足取りは軽かった。
そうして振り向かず、二人は歩み進んでいく。

年の瀬のどこか浮かれた雑踏の中へと。

2度と同じ模様を描かない、
人々が織り成す万華鏡の中へと。

<おわり>
157名無しさん@ピンキー:2005/12/27(火) 02:20:19 ID:G+vlqbWt
年末SS投下です。

ちょっと早いですけど、
皆さん、良いお年を。
158名無しさん@ピンキー:2005/12/27(火) 08:34:43 ID:sgQ4kh/r
>>157
うまっ!あなたのSSホント大好きです!日常の何気なさがリアルで本当に爽やか。

いい年がこせそうです。
159名無しさん@ピンキー:2005/12/27(火) 08:36:35 ID:sgQ4kh/r
いい年が向かえられそうです。だなやorz
160名無しさん@ピンキー:2005/12/27(火) 20:01:46 ID:9Ra6OweN
>>157
マジネ申。
刺青本編では殆ど省かれてた、怜と深紅の日常生活が目に浮かぶようだ(*'Д`)
このSSで白ご飯をどんぶり五杯逝けますた。
俺もいい年を迎えられそうでつ。
161名無しさん@ピンキー:2005/12/27(火) 20:51:37 ID:cvq3EHOJ
>>157
年末!年末!楽しく思えてきたぜ!
162名無しさん@ピンキー:2005/12/27(火) 21:39:21 ID:V7J31rqV
>>130
>>142
>>157
すばらしいSSありがとう(*´д`*)ハァハァ
163名無しさん@ピンキー:2005/12/28(水) 01:52:02 ID:zFBDSYX9
>>157
>ズボラに見えて、お姉さんの怜。
ここに萌えたwwwテラGJ!

今年もいいSS見れてよかった、来年も職人さん、投下待ってます!
164名無しさん@ピンキー:2005/12/31(土) 17:46:57 ID:q6x1CYYy
あげ
165名無しさん@ピンキー:2005/12/31(土) 19:37:14 ID:SZQce0C8
今年も終わりだ。今年はホントに零イヤーだった。
怜深紅やら澪繭やら鏡華螢やらetc・・

職人さん方は本当に乙でした。来年もよろしくお願いいたします。

166名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 00:35:42 ID:MXhviETh
今日は・・・・あけおめですね!
167名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 00:53:40 ID:V8L7L87U
あけおめ!
今年も職人さん方の素敵なSS楽しみにしてます!(*´д`*)
168名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 00:59:23 ID:CwGMmspW
あけおめです!
今年も零で盛り上がりましょう。
169名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 03:04:26 ID:It6saoqb
ええい、謹賀新年 !!
今年も澪繭だっ
170名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 04:51:28 ID:kjxbjt2b

謹賀新年

「天倉家のお正月」

「澪、今年もよろしくな」
「ええ、叔父さん。こちらこそよろしくお願いします……」

先年は澪の姉が死去したので、表向きにはお祝いは無い。
だが、それでも年の初め。それなりのご馳走を揃えて楽しむ事にした。
……のだが、

『澪、数の子食べないの? ほら、お姉ちゃんが食べさせてあげる〜』
「ちょ、お姉ちゃん、口移しで食べさせようとするのは止めてよっ!」
『はい、秋人様。お雑煮ですわ…私、腕によりをかけましたの』
「あ、ああ。解った……ずずっ」

若干、余分なのが居るらしい。
尚、その頃寝室では、

『早く来ないかなぁ〜今年の初穿ちしたいのに……』
『母様、ああなると暫く来ないと思う……』
『雨音ちゃん、こんなの落ちてたけどこれで遊ぼうか?』
『そこ、札遊びなどしているんじゃないの!』

今年も今年で、天倉家に平穏は訪れる事は無いらしい……。


その頃、黒澤家では

「あぅ〜深紅、水持って来て〜……」
「もう、だから飲み過ぎちゃ駄目だって言ったんです。ほらほら、しっかりしてください。そんな格好じゃ初詣にいけませんよ」

こちらもこちらで、年始めから相変わらずのようだった。
171名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 07:50:16 ID:lwRTFrpF
>>170
去年披露されたSSの集大成的な要素だね。乙
目に浮かぶよw

現実に乗り込むverの鏡螢職人さん懐かしいなぁ…
丁寧なSS書く螢澪の方の続きが読めなかったのも悔やまれる…

今年はそんな職人さん方が降臨するのを願って………
あけおめ!
172名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 10:24:48 ID:RQiGJfOm
あけおぬ
173名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 13:52:56 ID:CwGMmspW
>>170
おお、さっそく新年SSが。
GJ!
174名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 19:04:36 ID:9VJD1wE4
おめでとう!!!!

>>170
天倉家ワロスwww 
鏡華、澪と繭霊でも幸せならいいな。(螢はどうなんだろw)
怜深紅もウガツンジャもイイ!!!

そして密かに>>124さんに期待
175名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 19:21:29 ID:InicxlEs
結構人いるのかな。
空けましておめでとう。

そして>>170乙。 「腕によりをかけましたの」激モエタ。おせちは鏡華作?
鏡螢はもう一戸建てに新居かまえればいいと思う。
澪繭はこれが平穏だとオモワレw
176名無しさん@ピンキー:2006/01/01(日) 20:47:05 ID:raY3mYg3
感想どうも。今年も出来るだけ投下する所存なのでよろしく。
おせちと言うよりもご馳走という方向で。
マイホームか、その内検討するかもw
177名無しさん@ピンキー:2006/01/03(火) 20:42:02 ID:4gF/bpxX
年末SSへの感想、ありがとうございました。
どうにか三が日に間に合ったので、
新年SS投下します。

ただ以下の点が個人的脳内設定なので、
気になる方はスルーでお願いします。
・蝶は約束エンド。
・眠りの家に天倉の面々は関わっていない。
・優雨、真冬つながりで怜、深紅と螢は既に面識がある。
178新年(1):2006/01/03(火) 20:44:36 ID:4gF/bpxX
芋を洗うが如き人波が、参道を埋めている。
その真っ只中で、澪は常に傍らに置いておかなければならない人物を、
見失ってしまった。
「…あれ、お姉ちゃん?」
しかしそれに気づいたとき、
澪の頭にとっさに浮かんだのは戸惑いよりもむしろ、
ああやっぱり、
とでもいう、ある種の諦観であった。
そんな自分に気づいて、
澪は思わず舌打ちをする。
「…手を繋いでおくべきだったのかなあ…」
フラフラほっつき歩く姉の習性を十分承知してはいたのだが、
人ごみの中で無理に手を繋ぐのは逆に危険ではないか、と思えたのだ。
実際、転んで晴れ着を汚してしまう姉、
という図も、それはそれで容易に想像が出来てしまう。
であるからこそ、自分さえ気をつけていればと思っていながら、
一瞬でも目を離してしまった自分の迂闊さが恨めしい。

(さて、と……どうしようかな)
周りの流れに合わせてゆっくりと歩きながら、
澪は腕組みをして考える。
正直こういう状況には慣れっこなため、
今更あわてたりはしないのだが、
ただこの人ごみだ。
見つけるのに少々手間取るのは覚悟しなければなるまい。
(とりあえず見通しの利くところまで出よう)
振袖をぐいと肘まで捲り上げると、
前方に広がる人の荒海へと、ぐいぐいと突き進んでいった。
179新年(2):2006/01/03(火) 20:45:27 ID:4gF/bpxX
石段を登り切った脇の灯篭の前に、
澪は陣取ることに決めた。
ここならば多少遠くまで見渡すことが出来る。
くるりと振り向き、群集に向かって仁王立ちになる。
この人の流れに乗っていれば、必ず前を通るはず。
そして澪には、
(お姉ちゃんのことは見逃さない)
自信があった。
(双子なめんなよ)
そんな感じだ。

澪が押し寄せる人波をにらみ続けて5分程たったころだろうか、
『…澪…澪…』
自分を呼ぶ声が聞こえた。
鼓膜を振るわせる音というより、
いわゆる、虫のしらせ、とでもいうようなものだ。
(お姉ちゃん…どこ…)
一端目を瞑り、神経を集中させる。
声が除々に近づいてくるのがわかる。
(そう…そう…お姉ちゃんは…)
ゆっくり目を開く。
(そこだ!)
パッとその方向へと顔を向ける。
果たせるかな、繭はそこにいた。
180新年(3):2006/01/03(火) 20:46:12 ID:4gF/bpxX
右へ左へよたよたと頼りない足取りの鮮やかな振袖姿は、
紛うかたなき姉である。
実際の声は聞こえないが、口を開閉させているのは、
多分澪を呼んでいるのだろう。
「お姉ちゃん!」
大声で呼びかけつつ、澪はひしめく人を掻き分けて繭に近づいた。
「澪!」
繭のほうも気づいたようで、必死でこちらに体を向ける。
そしてようやく傍によると、
お互い両手をとって、とりあえずの無事を確かめ合った。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「澪こそ。ああもう、みつけられて良かった」
「うん」
転んだ様子もなく、元気そうな繭の姿を見て澪はホッと胸をなでおろす。
そしてそんな澪をみつめて繭は言う。
「ほんともう、澪は心配させるんだから」
「うん……て、え?」
「お姉ちゃんのそばにいなきゃ駄目、っていつも言ってるのに」
「……」
「すぐふらふらどっか行っちゃうんだから。
でもそういうのが澪の可愛いところでもあるんだけどね」
「……そ…そう…ありがとう…」
なんだかよくわからない話の流れに、
どうにも釈然としない澪である。
181新年(4):2006/01/03(火) 20:47:08 ID:4gF/bpxX
「お姉ちゃん、それ…」
ひとまず感激の再開を果たした澪は、
繭が両方の手首に何かぶらさげているのをみつけた。
「あ、そうそう、綿菓子〜。澪のぶんもあるよ」
そう言うと繭は片方の手首のそれを外し、澪にハイ、と手渡した。
(…私を探しながらこんなもの買ってたんだ…)
澪のこめかみがわずかにぴくりと動く。
が、はっきりそうとは口にしない。
「……お姉ちゃん。
お参り済むまで買い食いは駄目って、
いつも言われてるでしょ」
「うん…。あ、でもね、このおじさん、
すっごく着物のこと褒めてくれたの。
でね、妹もいるんだけど迷子で泣いてるかもしれない、って言ったら、
ひとつ買ったらもう一個おまけしてくれるって言ってくれて」
ぴくぴく。さらにこめかみがひきつる。 
「だからね、これ、ひとつ分でふたつ買えたんだよ」
しかしそんな澪の心境もたしなめる言葉も、
繭にはいまいち通じていない。
さらにまくし立てる。
「ね、澪。得したんだよ」
そしてそんな様子を見て澪には、
繭が何を言って欲しがっているのか、
わかってしまった。
わかるんだけど…なんか言いたくない…。
「2つで一個ぶんだよ」
けれどそんな得意げな繭をみていると、
言わなければならないような気になるのだ。
「……さ、さすがお姉ちゃんだね。買い物上手…」
澪のその言葉を聞いて、繭の顔がこれ以上ないほどの笑顔になる。
「えへへへ。でしょ、お姉ちゃんすごいでしょ」
得意満面、とはつまりこういう顔なんだろう。
(ああもう!)
一言物申したいと思っていた澪も、
自然、顔がにやけてしまう。
(お姉ちゃん可愛い!)
ついさっきまでのモヤモヤした気分も吹き飛んで、
そんな繭を抱きしめたくなる澪であった。
182新年(5):2006/01/03(火) 20:48:03 ID:4gF/bpxX
「あ、そうだ」
「うん?」
一息ついてから再び本殿までの道のりを二人で歩き出したところで、
澪はすっかり失念していたひとつの名前を思い出した。
「螢ちゃんは?」
「え?」
「お姉ちゃん、一緒にいたんじゃないの?」
「えっと…あー…ああ、螢ちゃん」
その様子では繭もすっかり忘れていたのだろう。
それは、二人きりでは危ないからと言う母のいいつけで、
ここまで同行してきた叔父の、天倉螢のことだ。
「そうそう、それがね」
手のひらをポンと叩いて、繭が言う。
「なんか体調悪そうな女の人がいたから、
螢ちゃん見かねて声を掛けたの。
そしたらその人酔っ払ってたみたいで、
螢ちゃんの上着に、その、吐いちゃって…」
「……」
微妙に予想を外すその話に、
澪はなんと言っていいものやら、と無言になった。
『螢は昔から要領が悪くて…』
母親がそんなふうなボヤくのを何度か耳にしたことはあるけれど、
それにしても…、と澪は思った。
初詣に来て、見ず知らずの酔っ払いにゲロ掛けられるのか、あの人は。
女難の卦がある、と自嘲気味に笑っていた螢の顔を思い浮かべながら、
澪は人事ながらちょっぴり悲しくなってしまった。
「いちおう参道の入り口の鳥居で待ち合わせ、
ってことになってるよ」
そんな螢の身の上に、一顧だにするそぶりも見せない繭。
「…ねえお姉ちゃん、せめて私達だけでも優しくしてやろうね」
にわかに芽生えた博愛の精神に促されて、澪はそう言った。
「え?……ああ、その女の人?
ううん、お友達がいたみたいで一緒に帰ってったから、たぶん大丈夫」
「じゃなくて…」
「それより私は澪が心配で心配で、
一人で迷子になって本当に泣いてるんじゃないかと、
気が気じゃなかったの」
「お姉ちゃん…」
ずれまくってはいたけれど繭の愛情が、
澪は嬉しかった。
が、それはそれとして、
間近でみていた姪にすら忘れられているとは。
叔父螢の報われなさが澪は哀れに思えた。
183新年(6):2006/01/03(火) 20:49:31 ID:4gF/bpxX
澪と繭がお参りを終えて参道の入り口まで戻ると、
約束どおり、鳥居に寄りかかって螢が立っていた。
汚れた上着類を捨てたのだろう。
この寒空の下、上半身はTシャツ一枚だった。
事情を知らない人が見たならば、
おいおい、いい年して小学生気分かよ、
とでも思われかねない場違い感がそこにはある。
一瞬声を掛けるのをためらったが、
気をとりなおして澪は呼びかけた。
「螢ちゃーん。お待たせ」
「ああ」
待ったぞ、と言わないところが螢は大人であったが、
唇が心なしか紫掛かっているのが遠目でもわかるのだから、
多分それなりの時間ここで待っていたのだろう。
「ごめんねー、お姉ちゃん行こ」
繋いだ手の繭と共に駆け寄ろうとして、澪は不意に歩調を弱めた。
螢のすぐ傍に、見知らぬ女性が二人立っているのに気がついたからだ。
こちらを時折見つつ、2,3言葉を交わす様子から、螢の知り合いなのだろう。
一人は紫紺の落ち着いた色合いの振袖を着た、モデルのような女性。
もう一人は桜色の華やかな振袖を着た、かわいらしい女性。
二人とも二十歳前後、澪、繭より幾分年上に見える。

「澪、繭ちょっとおいで。紹介するよ」
様子を伺うように少し手前で立ち止まっていたが、
螢に呼ばれて、澪と繭は女性二人の前に進み出た。
「こっちが姪の澪と繭、こちらは黒澤怜さんと雛咲深紅さん」
「は、はじめまして」
螢のあまりに手短な紹介のせいで、たいした心構えも出来ず、
澪はあわててペコリとお辞儀をした。
となりの繭も澪の背中に隠れるようにして、
ぼそぼそと挨拶をしたようだった。
綿菓子屋のおやじには愛想が良いのに、
いざとなると人見知りで引っ込み思案な姉、繭。
「始めまして。お二人ほんと良く似ていて、可愛らしい。
両手に花で、天倉さんお幸せね」
「澪ちゃん、繭ちゃん、始めまして。
螢さん、しっかりボディーガードしなくちゃ駄目ですよ」
二人とも柔らかな表情で、話しかけてきた。
澪は、母親と教師以外あまり接する機会のなかった大人の女性、
というものの所作に、人知れず胸の高鳴りを覚えた。
(おお、格好良い)
いわゆる憧れ、というやつだ。
184新年(7):2006/01/03(火) 20:50:30 ID:4gF/bpxX
(黒澤さんは"天倉さん"。雛咲さんは"螢さん")
艶やかな二人と、寒そうに肩をすぼませている叔父を交互に見て、
いたずら心が芽生えたか、澪は少し探りを入れてみることにした。
「こんな綺麗な人と知り合いなんて。
螢ちゃんも隅に置けないね」
ちょいちょい、っと螢の袖を引っ張って、
皆に聞こえるようにそう言った。
怜と深紅は、目を丸くして顔を見合わせ、
「あら、気をつけないと」
「あはは、狙われちゃうかな」
おどけたように屈託なく笑う。
「ば、馬鹿、澪。この二人はそういうんじゃなくて…」
螢はなぜか動揺していた。
(あーあ。見込みなしか)
双方のこの反応を見て、
ここになんら艶っぽい関係が存在していないことを読み取った。
(そうとわかれば、螢ちゃんに遠慮する必要はないよね)
持ち前の人懐っこさで、
澪は怜、深紅との会話に花を咲かせることにした。

「こんな日にTシャツ一枚で、螢ちゃん、目立ってたんじゃないですか?」
横で寒そうに身をすくませている螢をチラリと見て、澪は言う。
「そう、なんか寒そうな人がいるなあ、と思って」
怜も横目で螢を見る。
どうやら口許がほころんでしまうのを堪えているようだった。
「でも見たことある顔に思えたから、
確認のために近くに寄ってみたの。
そしたらちょっと臭うでしょ。
もうホント、声掛けようかどうしようか迷っちゃって」
「プッ」
堪えきれなくなったように、怜の傍らに立っていた深紅が吹き出した。
「もう深紅くん、ひどいな」
「ご、ごめんなさい。フフ」
口許を袖で隠しながら、深紅は螢を見上げる。
「でも、だって、あのときの螢さんの顔、可笑しくて、フ、フフ」
「クックッ、アハハハハハ」
堪えきれなくなった怜も笑い出した。
繭もその図を想像したのか、俯きながら笑っている。
そんな3人を、途方に暮れた顔で見回す螢の様子が可笑しくて、
澪も釣られて笑い出した。
185新年(8):2006/01/03(火) 20:52:11 ID:4gF/bpxX
女3人集まれば姦しい。
4人いるならさも有りなん。
澪、怜、深紅はもとのことより
いつのまに打ち解けたのか、
繭も既に普段どおりの調子に戻って、
よくしゃべりよく笑った。

年の初めの初笑い。
これだけ笑えば、福の神だって押し寄せてくるかもしれないな、
と澪は思った。
実際、初っ端から怜さん、深紅さんっていう、
こんな素敵な人達と知り合えたんだ。
なんだかこれは幸先良さそう。

空を見上げ、澪は澄んだ冬の空気を思いっきり吸い込んだ。
「なんだかお腹すいちゃった、何か食べに行きませんか?」
そのまま皆に提案する。
「賛成!」
そして重なる4つの声。

途切れることない笑い声と共に、
4人の振袖と一人のTシャツが歩き出す。

去年は色々ありました。
今年もきっと色々あるでしょう。
ならばどうか、良い年でありますように。

「良い年でありますように…」
その澪のつぶやきが、
どこまでも拡がっていくような、
そんな今日の青空だった。

<おわり>
186名無しさん@ピンキー:2006/01/04(水) 08:38:59 ID:tAX+mH0P
GJ!!!
なんか初詣って人混みウザスなはずなのに幸せの場所に思えてきたよ。
和んだ。新年からこんな極上の萌えを有難う。繭がかわゆい…
187名無しさん@ピンキー:2006/01/04(水) 17:09:29 ID:H7I7T9u+
氷雨「ね〜いりゃさ〜よ〜あけまして〜」
時雨「お姉ちゃんそれ無理やりすぎ」
水面「うがちうがちてお正月〜(ゴーン)」
夜舟「もっと腰を入れなさい腰を、いいですか、鐘とは魂をグダグダグダグダ」

別ブース
雨音「おみくじいかがですか〜おみくじ〜」
要「悪い運勢の方はあちらで結んでいくと安泰します」
零華(チッ、この子供め・・・要との二人の時間を・・・)

賽銭箱付近
ゴソゴソゴソゴソ
鏡華「あなた賽銭泥棒ね!」
切子「!!」(カサカサと逃げ出す)
鏡華「もう逃がさない・・・」

ベベンベンベベンベンベン(じょんがら節)
ビョン
天涯「誰じゃああああああ今間違えたのはあああああああああ」
大工「ひいいい助けてええええ」

重臣「こちらタトゥペーパーコーナーです」
楡井「簡単に貼るだけで誰でも簡単に刺青の巫女気分になれます」
辰巳「今なら青模様赤模様深紅たん模様とございます」
戌亥「はいはいちょっと待っててくださいね、今深紅たん模様出してまいりますので」

時雨「ねえおねえちゃん・・・あの人たち誰が誰だかわかる?」
氷雨「いえ、全然・・・同じ顔じゃん」

蝶「・・・」
楔「お客、きませんなぁ」
夜舟「そんな縁起でもない出店しとるからじゃ」

神社前
螢「お穣ちゃん。お祭りは一人じゃ危ないよ、さあ僕と行こうか」
梢「お母さん待ってるの」
螢「おおおおおお母さんならぼぼぼぼ僕が連れて行ってあげるよウヒョヒョ」
老婆「おおここにおったかえ。さあ帰るぞい」
螢「え?何が、ちょっ、まっうわああああああああ・・・」
蒔絵「あら梢、どうかした?」
梢「さあ?」

吉乃「私が悪い・・・もうそれでいい・・・」
影「・・・」
吉乃「好きでお財布を落としたんじゃないわ!」
ガサガサガサ
切子「うにゃぁ〜お」
吉乃「私の財布!行け!影!」
切子「逃げればよかった」カサカサカサ
鏡華「いた!逃がしてなるものか!」


深紅「何でしょうか・・・この末期な神社」
怜「螢さんが呼んだから来たんだけど」
螢「うわああああああああ!」
乳母車からふっとんでく螢
老婆「ペッ、わしの孫娘(妄想)に手を出すでないわ」

深紅「帰りましょうか」
怜「そうね」
188名無しさん@ピンキー:2006/01/04(水) 17:12:37 ID:H7I7T9u+
わざわざゲーム起動して名前探した俺テラアホス
189名無しさん@ピンキー:2006/01/04(水) 17:37:10 ID:MtFhfQQT
>>177
だ・・・・・だわくぁあああ お姉ちゃんかわいいいぃぃぃいい!!!
「迷子になった澪を探す間に綿菓子買った」じゃなくて多分
「綿菓子買ってたから澪とはぐれた」が正解だなこりゃww

>>187
ありゃ時雨は氷雨の妹じゃないべ?
190名無しさん@ピンキー:2006/01/04(水) 17:39:08 ID:H7I7T9u+
>>189
鎮女の年齢の関係でやったことだからなんとか脳内変換をお願いしたい
191名無しさん@ピンキー:2006/01/04(水) 18:41:29 ID:1PL5R2fs
>>177
繭の可愛さと螢の女難ぶりに気を取られた俺は大変な事を見逃していたらしい・・・

繭と手を繋がず見失った澪、これはつまりゲーム本編の幼少時代を現している。その時の繭の反応は「澪に置いて行かれた」だった・・
だがここでの繭は「澪がはぐれた」つまり『私が澪の手をとっていなかったから』
と自分を主体に、かつ澪を心配するという姉心をみせていると解釈できる。

つまりこの物語は単なる正月SSではなく壮大な『繭の成長物語り』だったんだよ!!!!
192名無しさん@ピンキー:2006/01/04(水) 18:55:23 ID:9b5f1t6R
な、なんだてー。



ごめん。噛んだ。
193名無しさん@ピンキー:2006/01/04(水) 22:08:09 ID:44UabGu8
>>191
なるほど!確かに。
あの村の出来事で、妹は決して離れないと確信したんだろうなあ・・。
194名無しさん@ピンキー:2006/01/05(木) 02:14:53 ID:uG9wddzv
凧揚げの凧にされてる楔

鎮女たちに喜ばれてるので断るに断れないわけですよ
195名無しさん@ピンキー:2006/01/05(木) 17:14:25 ID:l20OmETP
あの爆発頭何やってんだw

>>「新年」のSS師
若い子二人は微笑ましく、アダルトチームはなんかリアルでイイ!
昨日帰省ラッシュの中携帯で和ませてもらいますた。

196名無しさん@ピンキー:2006/01/06(金) 02:27:14 ID:416865so
しかし新年早々テラGJな流れですなあ
画面の前でニヤついてる俺ガイル
197名無しさん@ピンキー:2006/01/06(金) 08:32:26 ID:GWQp/jco
螢の固有能力

煤になって隠れる
これで刺青の巫女からも簡単に逃げれるぜ!
198名無しさん@ピンキー:2006/01/06(金) 20:22:03 ID:5eOc3JWi
螢の特殊機能、このスレ的には「勃」だな
ウガツンジャーには効果大、鏡華には無効。むしろ逆効果
199名無しさん@ピンキー:2006/01/07(土) 01:06:05 ID:mQ3NX5jX
なんか久々にきたらSSが!!!GJ!!!!
なんかエロいのよりこーいうののほうが好きかも
200名無しさん@ピンキー:2006/01/07(土) 02:00:38 ID:cfjBTssb
霊リスト


218:雨倉螢

夢の世界に捕われてしまったが
自分の欲望が眠りの力を勝り
第2の眠りの家を作り上げた当主
女性限定で襲い掛かってくる
201名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 03:29:31 ID:FrIq0l3f
螢「セイヨクヲモテアマス」
202名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 08:40:41 ID:SpT01hxF

「ノンフィクション作家の初夢」



「……これは夢なんだよな」
「ああ、夢だよ螢」
「そうだな」

螢は友人二人を前にして、霧の中に佇んでいた。
行方不明、そして死別。再び逢えないだろうと思っていた友人達との再会。

「まぁ、こうして会いに来たのはお前に言うべき事があってなんだよ」
「ああ、そうだね」

優雨の言葉に、真冬が頷く。

「螢……お前に、怜を託したいと思う」
「僕も、深紅を支えて欲しいと願うよ」
「お、お前ら、何でそんな事を言うんだ?」
「「君が、友人だから」」
「……っ!」
「頼む、お前しかいない、いや、お前だからこそ頼める事なんだ」
「僕もだよ。これは、螢。君にしか出来ない事なんだよ」
「……お前達」

螢の目尻に涙が溢れる。
自分は、とても良い友人を持てたと。
怜や深紅に対する感情は兎も角として、これ程に信頼を寄せて貰えるとは。
螢は、快諾の言葉を言おうとして
203名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 08:51:22 ID:SpT01hxF

「……なーんてな」
「うっそだよ〜螢」
「え、えぇっ!?」

気が付くと、友人二人の表情がにやけていた。
おまけに、目の下が黒い。一言で言えば、デビル化と言う所か。

「あのな、俺の怜をヘタレなお前に託す訳ないじゃないか。あのズボラさを愛して、受け入れれるのはこの世で俺位だしな。あっはっは」
「全くだね。僕の可愛い深紅はもっとしっかりした人に貰って欲しいし。螢みたいなヘタレじゃなくて」

容赦の無い二人に思わず後退る螢。
そこへ

「そうよね〜叔父さんってヘタレなんだよね。昔っから女性に頭が上がらなかったし」
「そう、叔父さんはヘタレ。お母さんにも全く敵わないし」
「澪、繭まで……!!」

背後から突如として現れた姪姉妹。
しかも、こっちも毒舌で目の下の隈が真っ黒だ。

「ん、どうた螢。少しは反論したらどうだ?」
「無駄だよ優雨、ヘタレな螢に反論出来るような気力は無いって」
「そうだよね。叔父さんって本当にヘタレなんだから」
「ヘタレに構っていてもしょうがないし、行きましょ澪」
「ははは、良い事言うな繭君。おい真冬、ヘタレ螢はほっといて飲みに行くか」
「そうだね。さようなら、ヘタレ」

散々ヘタレと罵倒し、あっはっはと笑いながら去っていく四人。
螢は彼等を追い掛けようとしたが、足下にぽっかりと開いた穴に吸い込まれてしまう。

「ちがーう! 俺はヘタレじゃな------------い!」

204名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 08:57:30 ID:SpT01hxF

「はっ!」

慌てて起き上がる螢。
そこは、何時もの自室のベットの上だった。

「夢、か」

溜息と共に、頭をぼりぼりと掻く。
そして、いつものように、寝室の入り口へと視線を向けた。

『『『『きゃっ!』』』』

僅かに開いていたドアが素早く閉じ、複数の小さな足音が遠離っていく。
新年が明けても全く諦める様子の無い彼女らに溜息を付きつつ、螢は呟いた。

「これが、今年の初夢なのか……また、受難の年なのかなぁ?」
『うぅ……ん』

そんな、螢の呟きに答えは無く。
隣で寝ている同居人はまだ起きなかった。



205名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 10:14:47 ID:QBFEnl2g
更紗模様の手記 零

欲望に柊を刻んだことで破涯が起きてしまった。
だからあれほど幼女を入れてはならぬ言っておいたのに。

2ページ
あの男 ─螢という男は
だれかれ構わず男女年齢問わず欲望のままに襲っている

3ページ

久しぶりに若い頃を思い出してしまった
206名無しさん@ピンキー:2006/01/08(日) 23:47:57 ID:8SQnqTxi
鬼畜螢復活の悪寒
207名無しさん@ピンキー:2006/01/09(月) 01:50:47 ID:i6aJswlR
久しぶりに思い出した若い頃、をkwsk
208深紅と怜(1):2006/01/09(月) 17:14:48 ID:RckTj6Tt
「ね、深紅。おりいって話が。」
「だめです。」
「なんで! まだ、なにも言ってないよ!」

怜の絶叫に、深紅はため息混じりに読んでいたファッション誌を閉じた。

「えっちなこと考えてますよね。」
「えー。」途端に怜はうれしそうな顔をした。
「あたし、そんなこと一言も言ってないのに。
 深紅は、そんなこと考えてたんだー。やらしー。」

途端に深紅はぱっと顔を紅くした。

「だ、だって、怜さん、最近ずっとそんなこと言ってるから……。」
「意識しちゃったんだね? ふふ、可愛いね、深紅は。」
「分かりました、早とちりしました。ごめんなさい。」
「誤らなくてもいいよ。今回はたまたま当たりだから。」
「……は?」
「やっぱね。えっちしたいなー、とか思ってさ。」

ソファの上で、怜は深紅との距離を詰めた。
ぐっと顔を寄せる。
209深紅と怜(2):2006/01/09(月) 17:15:40 ID:RckTj6Tt
「お願い! 一回だけでもいいから!」
「な、な、な、なにが一回なんですか!」
「深紅のことが欲しいの。もう、我慢できないの。」
「だって……。女同士じゃないですか……。」
「だから、いいじゃない? 絶対に間違いはないし。
 ね? 大切にするから。」
「いや……。いやです。」
「どうして?」
「どうしてって……。おかしいじゃないですか。」
「でも、実際に実害ってないはずだよね。」
「他の人が聞いたら、異常だって思いますよね?」
「誰にも言わない。秘密にする。深紅とあたしだけの。」

そっと深紅の膝の上に怜の手が乗った。
思わずカラダを硬くする、深紅。

「怖がらないで……。大丈夫だから。
 あたし、深紅のこと大好きだよ? だから、触りたいの。それだけ。」
210深紅と怜(3):2006/01/09(月) 17:16:22 ID:RckTj6Tt
膝の上に乗せられた手が、すごく熱い、と深紅は感じた。
怜のもう一方の手が、深紅の肩に回された。
怜はゆっくりと深紅の肩を抱き寄せた。

「深紅……。あたしのこと、嫌い?」
「そうじゃないです、でも……。」

怜の唇が、深紅の髪に押し当てられた。
抱き寄せた深紅の頭に、何度もキスする。

「あたしは深紅が大好き。もう、ずっと前から。」
「怜さん……。やめて……。こんなのいやです……。」
「ごめんね。でも、もう、無理。止まらない。
 深紅、いい匂いがするんだもん。ね。すぐ済むから。」

する、と膝に乗せられた手が、動いた。
そのまま深紅のスカートの中に、差し入れられる。
太股の間を、ゆっくりと怜の手が進んでいく。
211深紅と怜(4):2006/01/09(月) 17:17:04 ID:RckTj6Tt
「〜〜〜っ!」
「お願い。触りたい。触らせて。」
「あ、あの、あたしっ……!」

深紅はぱっと立ち上がった。

「ごめんなさい! 怜さんのこと、尊敬してます。 大好きです!
 でも、こういうのはよくないと思います。
 だから、もう、いじめないでください……!」

一息にまくし立てたあと、深紅はぱたぱたと部屋を逃げ出して行った。
残された怜は、ため息混じりに、ソファに体を投げ出した。

「だめかー!」

ふーっと、息をつく。

「でも、惜しかったな。まだ、脈はあると思っていていいのかな?」
212深紅と怜(5):2006/01/09(月) 17:17:57 ID:RckTj6Tt


その夜。風呂上り、部屋に戻った深紅は、髪を乾かしながら怜のことを考えていた。

怜が深紅の体を欲しがるようになったのは、2ヶ月くらい前からだった。
最初は体にそっと触れてくるくらいだったのだが、
最近はあからさまに関係を求めるようになっていた。
多分、特に嫌がるそぶりを見せなかったので、いけると思われたのだろう。

そして深紅としては……。最近自分の気持ちに自信がなくなっていた。
最初はそんなこと、考えてみたこともなかった。
怜と体の関係を持つ……。ありえないことだと。

しかし、怜に繰り返し聞かれるたびに、どんどん分からなくなってくる。
どうしてダメなのか。その理由が分からなくなってくる。
怜は繰り返し聞いてくる。何故、体を重ねられないのか。
その問いかけに、深紅は答えられない。

ドライヤーのスイッチを切ると、あたりはしんと静まりかえった。
次にもし、と深紅は考えた。鏡の中の自分に問いかける。
(怜さんがあたしの体を欲しがったとき……。
 あたしはあの人を拒むことが出来るんだろうか。)
213深紅と怜(6):2006/01/09(月) 17:18:35 ID:RckTj6Tt


人の気配で目が覚めた。ベッドの中で、うっすらと意識が戻る。
耳を澄ませる。何も聞こえない。でも、誰かがいる気がする。
深紅の体に緊張が走った。
部屋の暗闇に、少しだけ密度の濃い部分があるのを感じた。

やがて。

すー。……。すー。……。すー。

緩やかな呼吸が聞こえてきた。やはり、いる。
何かが。
そんな。深紅は体が震えた。もう、終わったと思っていたのに。
もう、2度とないと思っていたのに。

近づいてくる。また、はじまるの?
ありえないものとの接触。1年前と同じように突然。

目を堅く瞑り、耳をふさいで丸くなった。
しかし気配は消えない。近づいてくる。
いや、いや、いや……! 来ないで……!

ぎし……。ベッドの上に、それが乗ってくるのを感じた。
それの呼吸が耳をふさいだ手の平を突き抜けて聞こえて来る。
そして。

「深紅……。寝ちゃったの……?」
それの声が聞こえた。深紅は、目を開いた。
214深紅と怜(7):2006/01/09(月) 17:19:11 ID:RckTj6Tt


部屋の明かりが付けられていた。
その部屋の真ん中で。怜がキャミソール姿で、正座していた。
珍しく、萎れている。膝の上に手を置いて、小さくなっていた。

「どうしてそういうことするんですか?」

押さえ気味に発せられた深紅の声は、震えていた。

「ごめんなさい。」
「1年前。2人ですごく怖い思いをしましたよね?
 早くこれが終わればいいな、って話し合いましたよね?
 終わったら、また、二人で静かに過ごそうね、って。
 怜さんだって、知ってるはずじゃないですか。
 あの怖さを知ってるはずの、怜さんが、どうしてこんなことできるんですか!」
「すいません。あたし……。我慢できなくて。」
「ホントに怖かったんですよ? また、あの眠れない夜が、って思いました。
 正直あたしは、あたしは……。」

腕組みをして、怜の前に仁王立ちの深紅の目から、
ぽろぽろと涙が零れ落ちた。

「あたしは……。ちょっと泣きそうでした!」
215深紅と怜(8):2006/01/09(月) 17:19:48 ID:RckTj6Tt
「ごめん、深紅……。」
「今日はもう、いいです。でも、今度こういうことをしたら。」
「うん。」
「嫌いになります。」
「うん。」

怜は立ち上がって、戸口にたった。振り返って。

「ごめんね。おやすみ、深紅。」
「おやすみなさい。」

パタン。深紅の部屋の扉を閉じたあと、怜はしばらく、
寒い廊下で真面目に反省した。
そして肩を落としたまま、自分の部屋に戻った。

明かりを消し、ベッドに入った後も、さすがにすぐには眠れなかった。
深紅を傷つけるつもりなんて全くなかった。
それだけに今夜のことはショックだった。
考えてみれば無理もないことだったのだ。
それに思い至れなかった自分の無神経さに腹がたった。
216深紅と怜(9):2006/01/09(月) 17:20:20 ID:RckTj6Tt
部屋の扉をノックする音で目が覚めた。

「誰?」ベッドの上で、半身を起こした。
「あたしです。」
「……深紅? どうしたの?」
「ちょっといいですか?」
「うん。入って。」

かちゃっと部屋のドアが開いて、深紅が入ってきた。
枕を抱いている。

「どうしたの?」
「あの、お願いがあるんですけど。」
「え? 何?」
「一緒に……。寝てくれませんか?」
「……。は?」
「ダメですか?」
「いや! そんな! あたしはかまわないよ!
 ……っていうか、いいの? 深紅は?」
「はい。」
「え、じゃ……、ど、どうぞ! こっちこっち。入って入って。」
217名無しさん@ピンキー:2006/01/09(月) 18:55:33 ID:NfP4o460
>>216
これは最高だ!
まじでGJ!!
再び漏れの中のSS書き魂が再燃しそう!
続きwktkしてます。
218名無しさん@ピンキー:2006/01/09(月) 21:01:11 ID:EjBeoey6
>>216
こ、これは・・・・!
ネ申が降臨なされたぞーーー!!
219名無しさん@ピンキー:2006/01/09(月) 21:06:25 ID:ozXedTqR
>>202
へタレながらやることやってる螢GJ!

>>208
GJ!続きが楽しみ。
220名無しさん@ピンキー:2006/01/09(月) 23:56:29 ID:cuBPbjbr
>>208GJ!!!!!!!
221名無しさん@ピンキー:2006/01/10(火) 01:28:43 ID:KcfnOOX1
>>216
うっほほい!!続きキボンヌ!
222名無しさん@ピンキー:2006/01/10(火) 02:00:33 ID:5QJvcxA0
GJ!!
サイコー君サイコー
223螢×澪 九ノ刻「変化」:2006/01/10(火) 08:55:13 ID:x45XXVa7
それらしい雲は見えないのに、突然空が泣き出した。

「わ、すごい雨!」
「走るぞ」

バケツをひっくり返したかのように、最初から雨足は強かったが、
それでも尚、雨は激しさを増して、数秒も外に出ていると全身
ずぶ濡れになれるくらいの豪雨になった。
堪らず、俺たちは横手に見つけた倉庫の中に飛び込んだ。
多分、資材置き場か何かに使われていたのだろうその古い倉庫には、
今は何もなく、人気もなく、がらんとしていた。

「天気予報で、雨降るって言ってたか?」
「知らない。見てないから……うわぁ、濡れ鼠だ」

俺は額に張り付く前髪をかき上げ、シャッターの開いた出入り口から
雨を降らしながらもほのかに蒼く、明るい空を見上げた。
澪は、ポケットから取り出したハンカチで、濡れた身体を拭いていたが、
小さなハンカチはすぐに濡れそぼって、役に立たなくなる。
薄い鉄板を貼り付けただけの屋根が豪雨に打たれて、大合唱を歌っていた。

俺は澪の顔から、ふと、その首から下の身体に目を向けた。
そして、羽織っていた黒のポロシャツを澪の肩にかける。
雨が浸み込んだそれが防寒の役に立つはずはなく、澪も俺の意図が
わからなかったように小首を傾げる。

「着てろ」

俺は短く言い置いて、見る物も特にない倉庫内を歩き出した。
倉庫は、どことなく木の匂いがしていた。木材を置いていたのだろうか。
俺は、壁際にぽつんと置かれたフォークリフトに背を預けて、ポロシャツ
から抜き取って置いた煙草を取り出した。しかし、それが少し湿気っている
のを見ると顔を曇らせた。
煙草を銜えて火を付けたところで、澪がゆったりとした足取りで傍へ来た。
顔を見れば、気恥ずかしげな、どこか悪戯の見つかった子供のような顔で、
俺を見上げていた。

「……ありがと。でも、叔父さんしかいないのに」
「お前、俺が男だって忘れてるだろ」

俺がどうと言うより、姪がそういう格好をしているということが、
居た堪れなくなっただけなんだが。

「えへへ……色っぽい?」
「馬鹿」

澪が、羽織ったポロシャツの前を少し広げた。白のシャツ、膝上までの
ピンクのスカート姿の彼女。濡れたシャツは肌と下着を透かし見せていた。
ふざけて見せようとする澪を俺は一蹴して、横を向いて紫煙を吐き出した。

胸元に、こつんと触れる感触。
見下ろすと、澪が頭を俺の胸元に当てていた。少し動かして、今度は
頬を当てる。寄りかかるように、俺に体重を預けて。

「こうしてると、温かい……」

澪が囁く。
夏場だからまだいいようなものの、しかし、このままでいたら
冷えて風邪を引いてしまうんじゃないか。俺は、遠くに見える出入り口を
振り返り外の様子を見たが、まだ雨は止みそうになかった。
224螢×澪 九ノ刻「変化」:2006/01/10(火) 08:56:01 ID:x45XXVa7
「……叔父さんの、心臓の音が聞こえる……トクン、トクン……って」

澪は目を瞑って、俺の鼓動を感じていた。
俺はその頭に手を置いて、撫でる。――と、白い指先が俺の手に
触れて、それを自分の顔の前に持ってくると、手の甲に口づけを落とす。

「澪……?」
「……」

させるがままにしていた俺は、そっと呼びかけた。
澪はゆっくり顔を上げて、俺を見上げた。
いつもと少し雰囲気の違う色を、俺はその瞳に見た。

呼びかけに澪は答えず、伸びてきた指先が、俺の頬に触れる。
頬から滑り、唇に触れる。その感触を確かめるように。
不意に、脳裏に浮かぶ記憶。取り乱す彼女を落ち着かせるために唇を
重ねた記憶。夢の中で孤独から救い出そうとしてくれた彼女と交わした
接吻(くちづけ)の記憶。

澪が俺を見つめる。俺も、澪を見つめる。
彼女の唇が薄く開いて、儚げな吐息を漏らした。
まるで惹かれ合うように、唇の距離が狭まる。澪の漆黒の瞳に映る俺の顔が
見える。そんな距離。

しかし、触れ合う直前で俺は顔を背けた。


……何を考えてるんだ、俺は。


「な、なぁ……?」

俺は、とにかく微妙になってしまった空気を戻そうと、何かを言おうとした。
しかし、振り向いて澪の顔を見て、言葉を失った。
澪は、一瞬呆気に取られた顔をした後に、今度は引き歪んで悲しみを表現した。
だが、それが見えたのも一瞬、澪は身を翻すと羽織っていた俺のシャツを捨てて、
背を向けて走り出した。

「澪!」

呼びかけても、澪の足が止まることはなかった。
どこか痛々しい背中は、雨の中へと消える。
俺は、何故かそこから一歩も動けずにその光景を見送っていることしかできなかった。

「澪……」

今のは、何だったんだ。
俺は、どうすればよかったんだ? 冗談でも、そんなことはするもんじゃない、
なんて軽く注意して笑えばよかったんだろうか?
どうして、それができなかった。どうして、澪の瞳に引き寄せられるような感覚を
覚えたんだ。

それを自覚してしまったら後戻りできないような気がして、俺は考えるのをやめた。

今は、とにかく澪を追いかけなければ。追いかけて、それからなんて声を掛けるか
なんて、正直分からないけど。今、あいつを追いかけられるのは俺しかいない。
今じゃなくたって、もう澪には追いかけてくれる人なんていないのかもしれない。
それを再認識すると、腹腔が絞られるような痛みを伝えてきた。
俺はシャツを拾うと同時に駆け出し、澪を追いかけて雨の中へ飛び出していった。
225螢×澪 九ノ刻「変化」:2006/01/10(火) 08:56:45 ID:x45XXVa7
休日の昼下がり。雨のせいか、住宅地に人影はない。
俺は視界を覆い隠そうとする雫を乱暴に拭って、先を急いだ。
まだそんなに差は開いていないはずだが、俺は一向に澪の姿を見つけられないでいた。

さっきまでは――
久しぶりにゆっくりできる時間が取れて、街に出かける澪に付き添い、
以前から澪が観たいと言っていた映画を観て、少し疲れながらウィンドウショッピングに
付き合って、他愛のない話をしながら食事をして、楽しかったっていうのに。
もう、あいつに悲しい想いをさせたくないと誓っていた俺が、悲しませてどうするんだ。

俺は胸の内で自分に毒づきながら、雨の住宅地を走った。

「澪!」

住宅地の一角、その小さな公園の真ん中で探していた背中は見つかった。
反射的に俺の喉から迸った呼びかけが、その華奢な肩をびくりと跳ねさせる。
途端に、澪は振り返らずに走り出そうとした。

「待て、澪! 待ってくれ!」

俺は声の限りに叫んで、公園を囲む柵を飛び越えた。
普段、聞いたことのないだろう俺の大声を背中で受けた澪は、走り出そうとした
足を止めた。命令ではなく、嘆願だったから、優しい彼女は聞き届けてくれたの
かもしれない。

俺は肩で息をしながら、ゆっくりと背を向けたままの澪に近付く。
刺激を与えて、また逃げ出してしまわないように、慎重に。

「……澪」
「……」

俺は、あと数歩で手が届く距離で止まって、そっと呼びかけてみた。
背を向けた澪は少し俯いたまま、答えない。その肩が、寒さのせいか、少し
震えているようだった。――泣いているのかもしれない。気配が、伝わってくる。

「……帰ろう。風邪引く」

止まない雨が容赦なく俺たちの肩を打ち、身体を伝う滴が冷気を取り込んで
体温を奪っていく。が、俺は澪の心情が気になって、そんなことはどうでもよかった。
俺は黙して、澪の言葉を待った。降り続く雨が地を叩く音だけが二人の間を満たす。

「……帰らない」

しばらくした後、澪がぽつりと言った。
少し、掠れた声だった。
その科白に、俺が答えられないでいると、澪は静かに続けた。

「帰れ、ないよ……」
「どうして?」
「……嫌われたから……」

声は囁き。雨音に掻き消されてしまいそうなほどに儚い。
聞き取れなくて、聞き返した俺に今度は、はっきりと聞こえた。

「叔父さんに、嫌われた、から……」
「何言って……」

反射的に出かけた言葉を飲み込み、俺は自分を落ち着かせながら、
冷静に言葉を選んで、言った。
226螢×澪 九ノ刻「変化」:2006/01/10(火) 08:57:31 ID:x45XXVa7
「……嫌うはず、ないだろ?」
「じゃあ、どうして……」

続くはずの言葉を言えなくて、澪は黙り込む。
言われずとも、その意図は俺に伝わった。伝わったが、俺もまたそれに
どう答えていいのか、正直わからなかった。

「澪……俺は、お前が好きだよ? 大事だよ? でも、俺たちは……」
「叔父さんが、好きっ……!」

嗄れた声が紡ぎだした言葉と、振り向いた彼女の表情は、俺の時間を止めた。

澪は――泣いていた。雨ではない滴が、頬を濡らしている。
それを言ってしまうことにどれだけ覚悟がいったのだろうか。幼き頃より
彼女を知るが故に、そこに至るまでの感情の経緯が手に取るようにわかって、
俺の胸を詰まらせる。

でも、俺は……踏まえなければならない一線を、強く意識した。

「……俺はお前の叔父で、お前は俺の姪なんだよ。澪」

話す俺の脳裏に、幼い頃の澪と、それから繭と過ごした日々が甦っていた。
歳が近いせいか、それなりに大きくなってくると、繭はともかく、澪からは
親しみの中にも異性を意識したそれを感じるようにはなった。けれど、それは
特別なことじゃない。多分、俺もそうだったかもしれないし、歳が近くて親しく
在れる異性、そういう位置にお互いが居た。ただそれだけのことだ。時が立ち、
それぞれに恋慕う相手が見つかれば、それは暁の夢の如く儚く忘れ去られる。
そういうものだった。

それだけであれば、いい。ただし、それ以上があってはならないことだ。

「澪を大切に想う気持ちは、変わらない。今までも、これからだって、
絶対に変わるはずはない。けど、それは家族としてだ。だから……」

できることなら、向き合わずにいたかったことかもしれない。
乗り越えられる痛みだとしても、掠り傷さえ、本当は付けたくないんだ。
だが、こうなってしまった以上、はっきりさせなければいけない、そう思った。

「お前を、そういう目では、見られない」

俺は告げた。どんなに取り繕っても、それが心を曝け出してくれた彼女を
傷付ける言葉であることには変わりはない。だから、せめて、俺は眼を背けず、
真摯な眼差しで澪を見つめた。

「……じゃあ」

澪の唇が、微かに動いた。
濡れた前髪が目元を隠して、感情の機微を悟らせない。
それが、俺を不安にさせる。

「……どうして、助けたの?」

静かだが、その科白は俺の頭を横殴りに叩き付けるような、痛みと、
深い悲しみを含んでいた。

「どうして、私を……助けたの? あの館から……」

顔を上げた澪の表情は、俺の心臓を鷲掴みにした。
涙を除けば、只々静かな表情に、目を背けたい喪失感が漂っている。
227螢×澪 九ノ刻「変化」:2006/01/10(火) 08:58:19 ID:x45XXVa7
「どうして……お姉ちゃんのところへいかせてくれなかったの……?
私は……私が助かりたかった訳じゃない。ただ、赦して欲しかっただけ。
どうして、お姉ちゃんのいない世界へ連れ戻したの? お姉ちゃんがいなくなったら、
こっちに私の居場所なんて、何処にもないんだよ? 叔父さんだけなんだよ?」

声が、深い悔恨を含み始める。
雨が、彼女の激昂に同調するかのように激しくなった。

「どうして助けたのっ……? 受け入れてもくれないくせに、どうして
連れ戻したのよ! 背負ってくれるって、赦すって、言ったくせに……!
……結局突き放すくせに、優しく、しな、いでよっ……期待、させない……でよ」

澪は一息に言って、両手で顔を覆って泣き始めた。
彼女の声が遠い。雨音だけが俺の耳朶を打つ。
俺は彼女の涙を止めてあげたくて、でも、彼女を泣かせているのは俺で――

傍へ歩み寄っても、澪は逃げ出さなかった。もう、そんな気力もなくなって
しまったのかもしれない。そっと顔を覆っている手の上に、手を重ねる。澪は、
俺の手を払いのけた。とても、弱弱しい力で。
俺は、払いのけられた手を再びそっと澪の手に重ねる。澪は手を払いのけずに
代わりに身を捩った。俺は優しく、顔を覆う手を外させて、澪の雨と涙に濡れる
頬に触れた。そのまま上向かせても、澪は視線を逸らしている。涙が止め処なく
頬の輪郭を滑り落ちた。

「澪……」

呼びかけてみる。澪は、視線をゆっくりと動かして、俺を瞳に映した。
とても痛々しい表情だった。俺自身が幼い頃、姉に始めて澪と繭を任せられた日
のことを思い出す。絶対に泣かせない。守ってやる。――そんなことを誓った、
はずだったのに。

「俺は……」

言葉が見つからないままに、それでも何か言おうとして、俺の唇は勝手に動いた。
……俺は? 俺は、何を言おうとしている?

「お前の気持ちに……応えてやりたいけど」

――駄目だ。わかっているはずだ。
澪は、澪に俺しか頼れる存在がいないのは、今だけだ。
耐え切れない喪失感に苛まれて、もがいて伸ばした手が届く位置に、今は、
俺しかいなかった。それだけのことだ。この先、彼女が出会う人たちの中に
彼女に救いと癒しと、普通に愛を語れる相手ができるかもしれないんだ。
俺を選ばせて、普通ならぶつかることのなかった障害に出会わせることはない。
傷付けさせることはない。

でも――

「俺で、いいのか……?」

俺は……わからなくなった。澪を大切に想う気持ちが、叔父として、保護者と
しての感情なのか、それとも……それとも、澪を一人の女性として見た気持ち
なのか。そして、その二つには一体どれほどの差があるのか。

「叔父さんが、好き。……叔父さんが、いい」

それは、自分に問いかける呟きだったと思う。しかし、澪はそれに答えた。
俺を選んでる。あとは、俺が受け入れるかどうか。それだけだった。

「俺たちは、間違いを犯そうとしているのかもしれない……」
228螢×澪 九ノ刻「変化」:2006/01/10(火) 08:59:08 ID:x45XXVa7
俺はいつも自分で考えて、自分で決めてきた。自分の答えを出して、それに
従ってきた。守る俺が揺れちゃ、二人を守れないから。でも、今決めようとし
ていることに、俺は自信が持てない。――揺れている。
知らず、俺は答えを求めるように考えを口にしていた。

「こんなことをして……先に何があるのかもわからないのに……お前を傷つけ
るかもしれないのに……」
「先のことなんて、知らない。未来のことなんて、誰にもわからないよ……」

でも、迷う俺を見つめて、彼女は答えてくれる。細い腕を俺の背に回して、
身を寄せた。奇妙な感覚だ。いつも、俺が澪を抱き締めていたのに。気付けば
俺が彼女に抱き締められている。

「間違いでもいい……後悔したっていいの。傷ついたって、叔父さんが傍に
いてくれるならいいの。ずっとずっと……好きだったの……」
「……ずっと?」
「……ずっと。ずっと、前から……」

ずっと、前から……その言葉に、俺の中で過ぎ去りし日の断片が甦る。
澪の笑っている顔。怒った顔。拗ねた顔。泣いている顔。そのどれもが愛おしかった。
過去から今、そしてこれからの未来に生きる彼女のすべてが愛しくて、大切にしたい。
確かに、先のことはわからない。でも、その気持ちだけはこの先もずっと変わらないと
言い切れる。

俺は……気付かない振りをしていただけで、俺も本当はずっと澪のことが……。

「……澪」

呼びかけると、澪は俺の胸元からゆっくりと頬を離して、涙に少し赤くなった目で
俺を見上げた。

「帰ろうか。俺たちの家に」

自然と穏やかに微笑えた。俺は、澪の髪を撫でて、のんびりと歩き出した。
雨は、いつの間にか小雨になっていた。見上げれば、厚い雲の隙間から陽の光が
一筋、地上に向かって降り注いでいる。
先行き不安、だけれど胸のつかえが取れたような少しだけすっきりした気分。
空はそんな俺の内心を絶妙に表現している気がして、俺は無意識に苦笑を漏らしていた。

「叔父さん……」

歩き出す俺について来れず、澪は不安と悲しみの余韻を含んだ声音で呼びかけた。
俺は背を向けたまま、晴れ間を覗かせた空を見上げた。

「時間……くれないか? 立場とか叔父だとか姪だとか、そういうこと抜きに、俺が
お前をどう思ってるのか……ちゃんと考えたい」
「……うん」

振り返ると、澪は遠慮気味に俺を上目遣いで見つめていた。濡れた頭に垂れた耳が
見えるような錯覚を覚えそうな、捨て犬のような気弱さだ。多分、今さらながらに、
自分が言ってしまったことをあれこれ思いあぐねているのかもしれない。
まだ――澪を一人の女性として見られる自信はないけど、俺はいつでも澪の味方で、
やっぱり叔父であることに、家族であることに変わりは無い。それなら、こんな時に俺が
取るべき行動、取りたい行動だって変わらない。
俺は口元に僅かばかりの笑みを浮かべで、手招いた。
澪はぱっと……とはいかないが、それでも安心したように顔を明るくさせて俺の傍ら
に寄り添った。
俺は、すぐそこに戻ってきてくれた澪の頭をくしゃっと撫でた。
229螢×澪 九ノ刻「変化」:2006/01/10(火) 09:00:22 ID:x45XXVa7
「でも、驚いたよ」
「うん……ゴメンね」
「いいよ。正直参ったけど……嬉しかった」

それは嘘じゃない。

「……ずっと前から?」
「うん」
「子供の頃から?」
「うん。……だって、将来叔父さんのお嫁さんになるって言ったら、いいって言った」
「そっ……そんな前から?」


――澪、大きくなったら螢ちゃんのお嫁さんになる。
――じゃあ、繭も……。
――あはは、嬉しいけど無理じゃないかなぁ。俺、二人の叔父さんだし。
――オジサン? 螢ちゃん、オジサンなの?
――いや、確かに叔父さんだけどオジサンじゃない。なんて言えばいいのかな……。


――澪が大きくなったら、螢ちゃんのお嫁さんにしてね?
――いいよ。その時に、まだ澪が俺のこと想ってくれてたらね。
――絶対だよ? 約束だよ?
――ああ、約束だ。


「……ずっとだもん」
「……参ったな」

俺が思わず呟いた言葉に、澪のちょっと険しい視線が刺さった。
目を合わせると澪はぷいっと逸らして、唇を少し尖らせる。

「普通さー……こんな可愛い子にずっと想われたりしたら、嬉しくならない?」
「可愛い、ねぇ……」
「あっ、叔父さんひどっ」
「だって、自分で言うしなぁ……って、引っ張るな。伸びる」
「シャツと私とどっちが大事なのっ」
「シャ……」
「ひっど……このっ!」

掛け声と共に、澪の指がずぶっと俺の脇腹に刺さった。

「おいっ……くすぐったいっていうか、痛いぞ?」
「聞こえません。ふふ、覚悟しろっ」
「ま、待った!」
「待ったなし!」

澪は両手の人差し指を立てて構えて、にやりと笑った。くりくりした黒目が、
俺の弱点の脇腹を狙ってる。慌てて距離を取った俺に、澪は蟹のような
格好でじりじりとにじり寄ってきて、俺が駆け出すと彼女も追いかけるように
駆け出した。

濡れたアスファルトを水を蹴立てて走り、停めてあった車の周りを回って、
行く手を阻むように広がった水溜りを飛び越えた俺を真似して飛んだ澪が、
越え切れずに水の上に着地して、盛大に飛沫が上がった。悲鳴を上げる
彼女の様子を見て、思わず大声を上げて笑った。
彼女は怒ってまた追いかけてきたけど、すぐに俺と同じように笑った。
雨上がりの道、青空が覗き始めた空の下、俺たちはまたいつものように笑えていた。
雨が降る前のように。自然に。それが嬉しかった。
230螢×澪 九ノ刻「変化」:2006/01/10(火) 09:01:48 ID:x45XXVa7
こんな楽しいときが、いつまでも続けばいい。
これは、永遠だろうか。俺が彼女の想いを受け入れても、いれなくても永遠だろうか?
彼女の想いを受け入れることは許されることだろうか、許されないことだろうか?

どうかどうか幸せに――それは、いつも思っていること。祈っていること。

澪……こんなにも大切なお前を、俺は別の愛し方ができるのかな……。

231名無しさん@ピンキー:2006/01/10(火) 11:14:19 ID:xWpoVb/d
ワロスwwwwwww
232名無しさん@ピンキー:2006/01/10(火) 11:53:39 ID:p5JXuvuY
途中からこういう方向に変わった俺は勝ち組

「・・・・・・プッ」
急な笑いに顔に?を浮かべる螢
すると物陰からわいわいと笑い声が聞こえてきた。
「あははははははは!こいつ近親相姦してやんのー!」
「・・・へっ?」
「これで今回は私の総取りだね」
と澪が一枚の紙を見せる
それを手にとって確認する

叔父として諦める:怜予想
今まで以上に可愛がる:深紅予想
イクとこまでイク:澪予想

「じゃあ今回は私の勝ちで、5万はいただきまーす」
「ちぇー」
未だに状況がつかめてない螢が搾り出した声で
「え?澪、ど、どういう・・・?」
「やーだあー私が螢叔父さんの事そんな目で見てるわけないでしょー
あ、もしかして叔父さんそんな目で見てたのー?うっわーきんもーっ☆」
「すんjhぽk@いおえdjgmkgmrsfふじこあsgひゅおdりf@」
キィンキィンキィンキィン
「FatalFrame」
「ギャアアアアアアアアアア」
「さ、二人とも。私の部屋で遊びましょ」
深紅&澪「あぁん、おねえさまぁん」

「ま、ま・・・ゆ・・・」
「人の名前気安く呼ぶんじゃねーよ、ペッ」

螢は崩れ落ちた
233名無しさん@ピンキー:2006/01/10(火) 12:16:15 ID:46J8Iscv
>>223
萌えるとかエロいとかひっくるめて、
文章のレベル高いなー。すごい。
力作GJ!

>>232
それはそれでおもろい。
234名無しさん@ピンキー:2006/01/10(火) 21:28:01 ID:rA4GseDq
>>223
GJ!螢はヘタレキャラで通ってるけどゲーム内では本来こういうキャラなんだよね
カコイイ螢はなかなか新鮮ですた
235名無しさん@ピンキー:2006/01/10(火) 21:37:39 ID:5QJvcxA0
>>223
GJ!「待ったなし!」テラカワユスw
>>232
ワロチwww
236名無しさん@ピンキー:2006/01/11(水) 23:37:17 ID:9y+FdqSp
gj
237螢×澪 十ノ刻「少しずつ」:2006/01/12(木) 04:45:15 ID:9D5Fzq3Z
――言っちゃった。

迷惑になるってわかってたのに、どうして言っちゃったんだろ。
でも……あの時は、耐えられなかったの。もっと確かな……何か、安心
できるものが欲しかったのかも。臆病になっているのかもしれない。
情けないけど、私は……もう大丈夫だ、って全然思えない。思えそうにない。

――澪。

今でも……目を閉じれば、すぐ近くに感じることができるお姉ちゃんの面影。
それを私は、あんな形で永遠に失くしてしまって……気を抜けば、気付か
ない内に心が不安に覆い尽くされて、叫び出したくなる衝動が私を襲う。
ずっと一緒だと思っていた、約束していたお姉ちゃんが、もういない。

解ってる。叔父さんは、いつだって私の味方でいてくれる。叔父さんは
温かい。そんな関係にならなくたって、これからもずっと私の味方でいてくれる。
解ってる。私が縋る限り、伸ばした手を掴んでくれる。でも――考えると怖い。
私が縋るから、叔父さんは受け止めてくれるだけ。私が手を伸ばすから、その
手を掴んでくれるだけ。もし、私が……私から手を伸ばすことがなければ、
叔父さんから私に手を伸ばすことはないんじゃないかって。叔父さん自身は、
もう前から、ううん、最初から、いつでも私から離れる準備は出来ているんじゃ
ないかって……薄々感じてて、本当は知っていて……考えると怖い。

私には、もうないの。何も言わなくても、確かめ合わなくても通じ合えていた
存在が、独りじゃないっていつでも思わせてくれた存在が、お姉ちゃんが、
もういないの。だから、怖い。叔父さんが離れていってしまうことが怖い。
叔父さんが離れていってしまったら、いなくなったら、私……きっと、もうだめだ。
だめになる。

そんな不安が、私にはずっとあって……あの日、あの雨の日に、なんだか
叔父さんが遠く感じて、だから……言っちゃったのかな。ずっと、言わないで
おこうと思ってた気持ち。

……叔父さんは、今、私のことどう思ってるかな。疎ましく思ってるかな……。

でも、叔父さん、受け入れてはくれなかったけど、受け止めてはくれた。
いつものように、静かに微笑って、考えるって、言ってくれた。
叔父さんは優しいね。泣きたくなるほど、優しい。だから……このままじゃだめ
だって、解ってるけど……縋っちゃうんだね。

あの日から、二週間経つけど――。
238螢×澪 十ノ刻「少しずつ」:2006/01/12(木) 04:46:06 ID:9D5Fzq3Z
「んー……スパゲッティなら出来そうだな。澪、ナポリタンでいいか?」
「あ、うん」

叔父さんが、冷蔵庫とキッチンテーブル下の戸棚をごそごそやりながら聞いた。
私が答えると「よし」って小さく気合入れて、愛用のエプロンを着ける。
なすびとかピーマンとか冷蔵庫から取り出して、洗って、切って、プライパンに
油を敷いて、炒めて、パスタを茹でるためにお湯を沸かして、茹でて、その合間に
煙草を吸って一息ついてる大きな背中は、いつもと同じに見える。

叔父さん……どうなんだろ? どう思ってるのかな?

私はクッションを抱えて、ソファーから叔父さんの背中を見つめていた。
そしたら、不意に振り返った叔父さんと目が合った。

「どうした?」
「べ、べつにっ」

いつもと同じ顔して聞く叔父さん。
私もいつもと同じように答えて、点いてたテレビのほうへ視線を逸らした……つもり。
私がそのままテレビを見てるフリをしてると、叔父さんは煙草を吸いながら何も言わずに、
少ししてから、お鍋にパスタを入れた。

なんか……私ばっかり意識してるのかな。叔父さんってば、涼しい顔しちゃって。
いや、いつもと同じ顔なんだけど……なんか、悔しい。筋違いだってわかってるけど。

「……不味かったか?」
「へっ?」

気付けば、向かいの席から叔父さんが浮かない顔して覗き込むように私を見てた。
私は、いつの間にかまた考え込んじゃってたみたいで、見れば手元のフォークが
ずーっとパスタを巻き続けて、ゴルフボールくらいの大きさになってた。

「う、ううん、美味しいよ?」
「そうか?」

叔父さんは、まだ少し納得してない顔で、まじまじと私の顔を見つめてくる。
叔父さんに見つめられることなんて、今さらだし、例え私が叔父さんを好きだと思って
いたとしたって、そんなのずっと隠して今まで接してきたし、なんでもないことなんだけど……
なんでもないはずなんだけど……。
でも、今まさにそのことを知恵熱出るくらい考えていたところな訳で、意識したらダメって
思えば思うほど、頭は勝手にそのことばかり考える。

「あ、それっ!」

私は顔に熱がこもってくるのを感じて、焦って話題を変えた。
叔父さんの手元にあるタバスコの瓶を指差して、

「それ入れると、やっぱり美味しい?」
「ん? ああ……まあな。でも澪はやめといたほうがいいんじゃないかな」
「あ、また子供扱いして。だいじょーぶだよ」
「少しにしとけよ」
「へーき、へーき!」
「おい、馬鹿……!」

私は叔父さんの手元からひったくるようにタバスコの瓶を取り上げて、お皿の
スパゲッティに向かって振った。なんか、ドボドボと出たような気がする。
スパゲッティも、心なしか赤くなったような……? でも、ナポリタンだもん。
最初から赤いよね?
239螢×澪 十ノ刻「少しずつ」:2006/01/12(木) 04:47:09 ID:9D5Fzq3Z
叔父さんが焦ってたような気がするけど、ここで引いたらなんだか動揺してるのが
見透かされてしまうような気がして、私はなんでもないようにぱくっとスパゲッティを食べた。

「あ、結構美味しいかも……」
「……」

今までタバスコかけたことなかったけど、なんだか割りと悪くない。
少しスパイシーな感じが新鮮かも、なんて思ってると、目の前の叔父さんは
何やら深刻な顔をしてる。……あ、もしかして叔父さんも……私のこと、意識してるのかな?

……。

……あれ? なんだか、口の中が……中が……っ。

「……澪?」
「……」

叔父さんが呼びかけたけど、私は答えられなかった。
舌の上にじわりと感じたそれは、今や口の中全体に広がって、喉の奥まで
痺れるような灼熱感が駆け抜ける。

よく漫画であるけど、その時は本当に火を吹けそうな気がした。





「かけ過ぎなんだよ」
「うぅ〜っ……」

私はソファーに横になって唸っていた。
叔父さんは、ソファーに背を預けて床の絨毯に座ってテレビを見ながら嘆息した。
私のタバスコスパゲッティーは、幸いまだ混ぜてなかったから、比較的被害の
少ないところを残して、叔父さんが引き受けた。叔父さんのスパゲッティも、
もう相当辛かったから、交換とはいかずにそうなった。「俺のより辛いぞ?」とか
言いながら、でも叔父さんは普通に自分のと合わせてぺろっと平らげてしまった。
食器を下げて洗って、テレビを見て一息つく。私は叔父さんが食器を洗っている
時から今まで、ずっとソファーの上で唸ってた。
まだ、口の中全部がヒリヒリしてる。もう飲めないけど、まだまだ水が飲みたい
気分。でも、冷たい水は辛さを返って増長させるぞって叔父さんの忠告で、あまり
飲ませて貰えない。だから、私は唸るしかなかった。

……何やってんだろ、私。馬鹿みたい。

座る叔父さんの肩越しにテレビを見る。画面にはどこかの外国の町並みが
映っていて、クラシックな音楽が流れていた。そのままずっと、ただ町並みとか
森とか山脈が映されるだけの番組を、叔父さんは黙って眺めてた。
少し手を伸ばせば届く位置にある、叔父さんの黒髪の後頭部を見つめる。

叔父さんは――なんとも思ってないのかな。
私だけが意識して、ドキドキしたり、不安になったり、口の中が火事だったり、
叔父さんのことでこんなことになってるのに、当の叔父さんは全然いつもと変わらなくて。
私だけが勝手に……そう思ったら、なんだか情けなくなった。なんか、泣きたい。
240螢×澪 十ノ刻「少しずつ」:2006/01/12(木) 04:48:06 ID:9D5Fzq3Z
「まだ、辛いか?」

不意に叔父さんが振り返って、聞いた。

「口の中、火事だよ……」

叔父さんは、なんとも思ってない。だから、叔父さんは悪くないけど。

「お水飲んじゃダメなんでしょ」

なんか、八つ当たりみたいに言っちゃった。悪くないのに、睨むように見ちゃったり。
横になったままの私の視線を受けて、叔父さんはゆっくりとソファーの前にあるテーブル
を振り返って、そこにあった氷水の入ったグラスを手にした。
私の顔を見ながら、これ見よがしに揺らす。

な、なんなのその態度? 人がこんな気持ちの時に、そういう意地悪する普通?

私がむっとした顔で睨むと、叔父さんは涼しい顔をして私の目の前で水をごくごく飲んだ。
飲んだ! 目の前で! なんか、沈んでた気持ちが一気に急浮上する。勿論、怒りで。

私は、もうほとんど反射的に文句言おうと身を起こしかけた。
でも、文句を言うために開けた唇は、文句を言えなかった。
気付いたら、叔父さんの顔がぼやけるくらい目の前にあって、唇に柔らかな感触。
と思ったのも束の間、ひんやりと冷たい水が私の口の中へ流れ込んできた。

「んぅ……」

突然注ぎ込まれた水を、咄嗟に飲み込んでいく。冷たい水は、ヒリヒリと熱い喉に
気持ちよかった。飲み切れなかった水が一筋、唇の端から顎を伝って零れ落ちる。
水を全部飲み干すと、残ったのは唇の感触。水と違って温かなその唇は、少し
啄ばむような感触を残して、離れていった。

「悪かった」

叔父さんは、まだ喋ると息が掛かるくらい近い距離のまま、私を見つめた。
大きな手が、優しく私の頬に触れる。

……え? なに……えっ? 何が「悪かった」なんだろ? ていうか、今……えっ?

私は、何が起こったのか、叔父さんが何を謝ってるのかわからなくて、
目を白黒させた。びっくりした顔の私が、叔父さんの瞳の中に見えた。

「ちゃんと、考えてるから……澪だけじゃないよ」
「あ……」

叔父さんが、安心させるように言ってくれた言葉に、私はハッとした。
叔父さんも……? 叔父さんも、考えてくれてた? すごく、心が温かくなる。

「……肩書きが変われば、こういうことをしても、大丈夫なんだよな?」
「え……?」
「水、まだ欲しいか?」

心がきゅーって、温かくて、切ないような、そんな感覚を覚えていたときに、
叔父さんの一言は、また私をハッとさせる。なんだか、展開についていけなくて
一瞬流しそうになったけど、叔父さん、今、き……キス、口移しした……!?
思い返すと、私の顔にか〜っと血が上った。耳まで熱くなって、ドクンドクンって言ってる。
叔父さんは、私を横目にしながら、またグラスに口付けて、傾けかけた。
241螢×澪 十ノ刻「少しずつ」:2006/01/12(木) 04:49:39 ID:9D5Fzq3Z
「まっ、待った!」

私は慌てて身を起こすと、ソファーの背もたれを飛び越えて、距離を取った。
ソファーを挟んで向こう側で立ち上がった叔父さんは、グラスの水を口に含んで、
そのまま飲み干した。人の唇を奪っておいて、なんだか飄々としている……ように見える。
気のせい?

「い、今……今さ!」

私は唇を押さえながら、指摘しようとした。けど、なんだか口に出せない。
口に出すには恥ずかし過ぎる。

「だめだったか? ……悪かった」
「い、いやっ、いい! 良かった! けど」
「良か……?」
「あ、いや、違う!!」

良かったとか! 何言ってるの私!?

「じゃなくてっ、ちょっと突然過ぎる……ような。だって、その……ふぁ、ファースト
キ……はさ、もうちょっとこう、なんていうか……」
「あ、悪い。ファーストキスじゃないから、と思って……」
「えっ……!! 嘘ッ、叔父さんあの時起きてたの!?」
「え?」

――え? なんか、叔父さん意外そうな顔してる。だって、これがファーストキス
じゃないって知ってた。私がこの前、叔父さんの寝ているときにしたキスがバレてた
ってことじゃ……?

「ああ……やっぱり、あれ……」

叔父さんは、何か考えるようにおでこを指先で掻いてる。

「……じゃあ、澪も人のこと言えないだろ? 寝てる内にしたんなら」
「ちょっと待った!」

うわ、なんかすごい墓穴掘ったような気がする……!
でも、それよりも、叔父さんの反応が気になったから、とりあえず顔が熱くなるのは無視する。

「お、叔父さ……もしかして知らなかった? じゃあ……」

なんで、初めてじゃないって思ったの?
私は問いかけようとした、けど、叔父さんはくるりと背を向けて、一つのびをした。

「さて……そろそろ仕事始めるかな……」
「ちょっ……誤魔化すなッ!」
242螢×澪 十ノ刻「少しずつ」:2006/01/12(木) 04:50:26 ID:9D5Fzq3Z
さっさと仕事部屋へ逃げ込もうとする叔父さんの背中を、私は慌てて追いかけた。
叔父さんは笑って、走って部屋へ飛び込んでいく。私には笑い話じゃない。
いっつもそうだ。私ばっかり振り回されて、叔父さんは肝心なことは教えてくれない。
今日という今日はきっちり聞かせてもらわないと。

部屋に入ると、叔父さんは既に眼鏡をかけてパソコンに向かってお仕事モード。
眼鏡なんて必要な目じゃないのに、そのわざとらしさが気に障る。

「叔父さんってば!」
「あ、悪い。これ、明日の朝一なんだ。今度にしてくれるか?」
「だめっ! これ、明後日でいいって言ってたじゃん」
「澪、よく俺の仕事把握してるな。マネージャーのバイトするか?」
「そんな手に乗るかッ!」

気付けば、いつものお決まりの空気。なんだか、内心ほっとしてる部分もあるけど、
どこかで叔父さんの計算通りなんじゃないかって思えて癪だった。

でも……。

さっきの口移しって……どういう意味だったんだろ。
もしかして、叔父さん……ちょっとずつ、私を違う見方してくれてる?
姪とか妹とかそういう見方じゃない、違う見方、してくれようとしてるの?

少しずつ、私たち、変わっていけるのかな?
243名無しさん@ピンキー:2006/01/12(木) 04:53:37 ID:9D5Fzq3Z
感想下さった方々、ありがとうございます。
では、箸休めに宜しければどうぞ。↓
244怜×深紅(螢×澪) 外ノ刻「雪降る夜に」:2006/01/12(木) 04:56:16 ID:9D5Fzq3Z
夜なのに、どこか仄明るい空から雪が降っていた。

ふわり、ふわり。

風もなくて、降り来る雪は羽のように。ゆっくりと、音もなく降り積もって、
アスファルトの地面に薄く化粧をするように、白く染め上げていく。

静かな雪夜。
それは、あの館を思い出させる。あの、忌まわしい記憶。
けれど、何故だろう。今在るこの寒さよりも、それは身を凍てつかせるような
恐怖の記憶のはずなのに、恐ろしいというより、今はただ切ない。

儚げな雪が落ちゆく向こう側に見えたのは、眠れる館ではなく、
今でも僅かも色褪せずに胸に留めた愛しい人の後姿。

優雨――。

腰掛けていたベンチから立ち上がり、街灯の光が照る下へとゆっくりと進む。
ライトアップされた雪は、やはり儚く、切なく、音もなく空から降り来る。
深夜の公園にひと気はなく、静寂だけがあった。

優雨――いつでも私を許し、受け入れ、包み込んでくれた。
優しい雨のような人。今は、雪になって私を包んでくれているのかな……。

雪は、優しく。
怜の黒いコートにも降り積もり、白く染め上げていく。
もし、そうなら……この夜闇が、降り来る雪が、静寂が、あなたの優しさなら、
受け入れるから。募る寂しさに凍える私の心を、そっと暖めて――。

怜は、我が身を抱き締めた。

怜の願いに答える声は――ない。
受け入れるには、夜闇も、雪も、静寂も、切な過ぎて。
夜気は身体ばかりか、心からも、その温もりを奪い去ろうとしているようだった。

寂しさが募る。四季に関係なく怜の心には、寂しさという名の雪が降り積もる。
その雪の中に埋もれて、眠れてしまえば楽だろうか――?

「怜さん」

聞き慣れた声が、怜を呼んだ。
振り返ると、ベージュのコートにマフラーをした少女が立っていた。

「深紅……」
「帰りが遅いので……」

来てしまいました。そう言って、ゆっくりと怜に近付く。彼女のブーツの底で、
踏み締められた雪が、きし、きし、と微かに鳴った。

「……お邪魔でしたか?」

傍らに来た深紅を、無言で見下ろしていると、深紅は遠慮気味に怜を見上げ、
小さく聞いた。

――私には、まだこうして迎えに来てくれる存在がいる。
245怜×深紅(螢×澪) 外ノ刻「雪降る夜に」:2006/01/12(木) 04:57:10 ID:9D5Fzq3Z
怜は首を振り、淡い微笑を浮かべた。

「ありがとう、深紅」

ポケットから手を引き抜き、手袋を外した手で深紅の頬に触れた。彼女の
頬は柔らかかったけれど、ひんやりと冷えてしまっていた。
頬に触れられると、深紅は気恥ずかしげに視線を逸らした。けれど、そのまま
触れ続けていると、ゆっくりと視線を怜へと戻す。そして、身を委ねるように、
そっと目を閉じた。

「怜さんの手、暖かい……」

違う、と怜は思った。
冷え切った私の心を暖めてくれるのは、深紅のほう。彼女がいなければ、
自分はもうずっと昔に、降り積もる雪の中で、降りしきる雨の中で、あの館の
奥で、二度と覚めることのない眠りに身を委ねていたかもしれない。
いつも、引き戻してくれるのはこの少女。深紅のくれる気遣いや優しさが、
怜の心を寂しさから掬い出して、暖めてくれる。包んでくれる。

「……深紅も、温かい」
「え……?」

怜の呟いた言葉の意味がわからなくて、深紅は目をぱちくりさせた。
その様子を見て、怜は微笑った。

「帰ろうか」
「はい」

怜は頬から外した手で、深紅の腕を取った。その手は手袋をしていない。
ちょっとそこまでのつもりだったのだろう。冷え切った深紅の手を取り、指を
絡めて、怜はそのまま自分のコートのポケットの中に入れた。
少し出足の遅れた彼女を見下ろすと、案の定、頬を染めて目を伏せていた。
ゆっくりとした歩調で歩きながら、彼女が顔を上げてくれるのを待つ。
やがて、寒さのせいか恥ずかしさのせいか、赤い顔で深紅は怜を見上げて、
微笑した。少し泣きそうに見えた。深紅は、そっと怜に身を寄せた。

深紅がいるから、大丈夫。
この子のくれる温もりが、私を救ってくれる。
だから……あなたの欠片を胸に、生き続けられる。
だから……春の桜に、夏の雨に、秋の枯葉に、冬の雪に、これからも
あなたを感じられるの。優雨。

少し切ないけれど、寂しさは消えないけれど、大丈夫。
生きていける。痛みと共に。深紅と一緒に。
246名無しさん@ピンキー:2006/01/12(木) 11:21:56 ID:1rPEKilT
>>245
う…うわーん!!!
超GJ!!!・゜・(つД`).゜・
前スレからファンだったけど予想以上だよ

前スレで誰かにちょっと言われてたけど『螢澪だったから人気でた』じゃなくてさ、これでどんなカプでも繊細に書ける文才が認められたと思うよ!
外伝の怜深紅にほろりときた…

続き待ってまつ
がんがって
247名無しさん@ピンキー:2006/01/12(木) 12:17:54 ID:vEjk9mAp
>>246
それは螢と澪だからじゃなくて「螢だから」だったろ。
澪になりたいとか相手は誰でもいい腐女が多かった。
248名無しさん@ピンキー:2006/01/12(木) 12:26:31 ID:vEjk9mAp
あと>>245の文章は元から皆ベタ褒めしてる。
249名無しさん@ピンキー:2006/01/12(木) 17:35:29 ID:ZSNtmJm7
>>245
GJ!!
久しぶりにあなた様のSS読んだが相変わらず文章がいいっす!
続き待っています!

そして>>216の続きもメチャ待ち遠しくて堪らん・・・・
んで前スレで澪繭書いてた職人さんや他の方の職人さんの新作も読みたい。
250名無しさん@ピンキー:2006/01/13(金) 10:35:37 ID:sAP5I4ss
そういえば螢腐女子は滅亡したの?
251名無しさん@ピンキー:2006/01/13(金) 20:13:13 ID:CrufObMj
>>245
怜深紅も澪螢も最高っす(;´Д`)
澪螢が終わったら是非澪繭を書いてほしい・・・とかぼやいてみたり(ぇw
まぁ、続き楽しみにしてます!
252名無しさん@ピンキー:2006/01/13(金) 20:33:13 ID:hyqSJpvj
怜深紅澪繭も待ってますとかカモフラージュしてもバレバレだぞ腐女子さん達Www
253名無しさん@ピンキー:2006/01/13(金) 20:55:54 ID:zmqBEktD
ところで>>216の続きマダーチンチン
254深紅と怜(10):2006/01/14(土) 10:26:46 ID:hZ2/qILN
>>208-216を書いたものです。連投規制に引っかかって、尻切れトンボになってしまいました。
書きっぱなしみたいになってしまったのに、丁寧にコメント付けてくれた人、ありがとう。
感謝しつつ、残りを投稿したいと思います……。
================================================
(夢じゃないかしら?)

「あったかいですね、怜さん。」
「うん。二人だからね。」

話しながらも、怜は胸の鼓動を抑え切れなかった。
幸せだった。こんなにも人の温もりを近くに感じたのは久しぶりだ。
今は深紅がこんなに傍にいてくれる。それだけで幸せだった。
だから、最初から心に決めていた。この信頼を裏切るような真似だけはしないと。

「さっきはごめんね、深紅。」
「いいんですもう。」
「でも、どうして、急に?」
「怖くなったんです。一人でいることが。」
「ごめん……。あたしのせいだね。」
「違うんです。気がついたんです。あたしも、一人でいたくなかったんだ、って。」
「え?」
「怜さんにあんなふうに怒ったけど。
 でも、怜さんがいなくなって、部屋に一人になって。
 部屋の明かりを消して、ベッドに戻ったとき。
 思ったんです。怜さんに、一緒にいて欲しいな、って。」
「深紅……。」
「ありがとう。怜さん。怜さんが傍にいてくれたから、
 あたしは一人が怖くなかったんです。今までは、それに気づかなかった。
 でも……。あたしは怜さんを支えてあげる事を拒み続けてきた。」
「そんな! あたしも深紅といられて、うれしかった。」
255深紅と怜(11):2006/01/14(土) 10:27:35 ID:hZ2/qILN
「怜さん。怜さんは人の温もりを知ってますよね。
 だから……。あたしよりも、もっと近くに支えてくれる人間がいないと、
 だめだったんですね。あたしは怜さんが傍にいてくれるだけで、
 一人じゃなかった。でも、怜さんは、それだけじゃあ寂しかったんですね。」
「ごめんね。今夜はゆっくり寝ていいよ。あたし、ちゃんと我慢するよ。」

怜はぎゅっと深紅の小さな肩を抱きしめた。
こんどこそこの子を大切にしようと誓った。
だが。そのとき、深紅の唇から意外な言葉がこぼれた。

「我慢……、しなくていいですよ。」
「……え?」
「我慢しなくて、いいです。怜さんがあたしにしたいと思うこと。
 してもいいですよ。」
「……ど、どうして?」
「あたしにも、教えてください。」

深紅が布団の中で、怜に体を摺り寄せた。

「人の肌の暖かさ。知りたいんです。」
256深紅と怜(12):2006/01/14(土) 10:28:21 ID:hZ2/qILN
どくん。

怜の中で、抑えてつけていた気持ちが逆流した。
急速に喉が渇いていく。

どくん。どくん。

「……いいの?」問いかける声が掠れた。
「はい。自分で、決めてきたんです。怜さんの部屋のドアを叩くとき。
 怜さんに。全部、あげようって。」
「いやらしいこと、するんだよ?
 男の人がするみたいに、深紅のことを抱いてよいの?」
「はい。」
「深紅を裸にして、体を押し開いて、指と舌で探りまわしたい。」
「してください。して欲しいです。」
「本当に?」
「優しくしてください。それだけ、約束してください。」

怜の中で、秘めた想いが一気に噴出した。
優しくすると約束した。
そして、怜は深紅の体の上に覆いかぶさると、ずっとしたかったことを彼女にした。

「怜さん、大好きです。」
「あたしも。愛してる。」かすれる吐息の下で、言うべきことを言う。
「指は、入れないでください……。あたし、まだなんです。男の人とも。」
「分かってる。爪があるから、しないよ。でも、ここはいいでしょ?」
「あ、怜さん……!」

怜の優しい指使いが、深紅の体の中心をなぞる。
深紅は、細い喘ぎ声を漏らしながら上り詰め、達し、それを繰り返した。
なんども。なんども。なんども。
怜の部屋に、女同士の暗い蜜の匂いが立ち込めた。

「今日はあたしがする。でも、いつか、深紅もあたしにしてね……?」
257深紅と怜(13):2006/01/14(土) 10:30:00 ID:hZ2/qILN


朝、目を覚ますと、隣に怜の姿はなかった。
上半身を起こすと、掛け布団が落ちて、むき出しの乳房が、
冷たい空気に触れた。
それで深紅は自分が裸なのを思い出した。
同時に、昨夜の痴態が思い出され、思わず頬を染めた。

ベッドの周りを見回したが、昨夜脱ぎ捨てたパジャマや下着は、
見当たらなかった。
深紅はベッドの布団の山からタオルケットを抜き出して、
体に巻きつけた。

部屋を出ようとしたとき、ちょうどドアが開いて、
エプロン姿の怜が入ってきた。

「おはよう、深紅。」
「おはようございます、怜さん。」
「どう? 体の調子は。ごめんね。あんまりしたことないのに、無理させちゃって。」
「いいんです。気持ちよかったです。とっても。」
「深紅……。」

怜は深紅の体を抱きしめた。
258深紅と怜(14):2006/01/14(土) 10:33:10 ID:hZ2/qILN
「ありがとう、深紅。あたしはずっと寂しかった。
 もしかしたら、証拠が欲しかったのかもしれない。
 深紅と。他人じゃない、っていう証拠が。」
「怜さん……。」深紅はそっと目を閉じた。

深紅の体の中に、暖かい気持ちが満ちていった。
開いたままのドアから、卵の焼ける匂いが流れてくる。
幸せという言葉の意味を思い出した。
この人とずっと一緒に暮らしていけたら、と考えた。

そしてそれは、怜も同じだった。
抱きしめる腕に力がこもる。強く深紅の体を抱きしめた。

朝の光が二人を包んだ。
いつかは、それぞれの相手を見つけ、それぞれの生活を始めることになるかも知れない。
でもそれまでは、二人、きっと女同士であればこその気安さで、
幸せな生活を作っていけるだろう。
そんな予感が部屋を包んで、二人はただただこの時間が愛しかった。
259深紅と怜:2006/01/14(土) 10:35:03 ID:hZ2/qILN
おわり

=======================================
以上です。
続きを促してくれた人、ありがとう。
きっかけが出来て、書きやすかったです。
また、機会があったら、別のものも書かせてください。
260名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 10:51:00 ID:M0FWMwyl
GJ!!
261名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 11:59:55 ID:z0NZjqtK
>>259
マジ待って━━━━(゚∀゚)ました━━━━ッ!!
指と舌で探りまわす ちょっwww萌えwwww
262名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 12:33:11 ID:Ee++zmRc
>>259
続きキター!!!
微妙にクールな深紅に萌え。
GJ!
263名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 15:56:46 ID:QMZwpdl5
うーむ、自分は螢澪よりは、螢繭かな。
「螢だから」萌えじゃなくて、「繭だから」萌えの方だし。
前スレにあった、澪の前で繭が螢に・・・・っていうノリが好き。
264名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 16:41:30 ID:pTbg87O3




     私は、悪くない。
     好きで生き残ったんじゃない。
265名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 21:29:21 ID:BxwAhQmO
>>259
グジョブグジョブ。またぜひ書いてくれ。
266名無しさん@ピンキー:2006/01/14(土) 23:13:35 ID:wEw2K+7e
>>263
無理に擬装しなくていいよ
267鏡華(1):2006/01/15(日) 00:58:46 ID:lkTmopdJ
建具の隙間から流れ込む冷気が、
点けたばかりの行燈の灯りを揺らす。
日は既に山影へと没し、
室内を茜に染めていた残照も、
障子の端の薄明かりに、
僅かにその名残を留めるだけになっていた。

全てが無彩色へと転じていく誰彼の時、
白磁の頬をほのかに上気させて、
落ち着かない様子で立ち動く、
未だ少女の面影を残す年端の女が一人。

「ねえ婆。夕餉の支度はもう済んだ?
お吸い物、私にしてはなかなか美味しく出来たと思うの。
盛り付けはなるべく上品にお願いね」

「御ぐしは、うん、いい感じ。
お母様に頂いたお香油なの、素敵でしょう。
おしろい、薄くはたいたつもりだけど…目立ち過ぎてない?」

「ううん、紅はいらっしゃる直前に差すからまだいいの。
あ、そうそう、香を焚かなくちゃ。」

この地方一帯の鎮守を担うお社、久世の宮。
その当主の家系である久世家の住居の一角では、
今ちょっとした宴の準備が進められていた。
とはいっても、人手は二人。
一方は完全にお手伝いに徹しているので、
盛り上がっているのは実質その女一人である。
268鏡華(2):2006/01/15(日) 00:59:31 ID:lkTmopdJ
「鏡華お嬢様、少し落ち着いて下さいな。
お支度は万端、整っておりますし、
お嬢様はいかな殿方でも放っておかない程、
お美しゅうございます」
何本か広げてあった帯を畳みながら、
婆と呼ばれた50代ぐらいの女性は、
見かねてその女、久世鏡華に声を掛けた。

「本当?本当にそう思う?
ああもうなんだかドキドキしてしまって、
でも婆にそう言ってもらえて少し治まったわ」
と言いつつも、鏡華は鏡の前でくるくる回っている。

お気に入りのすみれ色の振袖に、薄い桃色の打掛。
髪には鼈甲の花かんざし。
後世の言葉を借りれば、いわゆる"勝負服"と言える装いだ。
仕立ての良いそれら晴れ着に、
きめの細かい白い肌と艶やかに光る長い濃緑の髪が映え、
睫の長い大きな切れ長の目には、傍らの炎がきらめいている。
乳母という贔屓目などなくても、
鏡華は限りなく美しかった。
「お堅い柏木様でも、イチコロですよ」
「ば、婆ったら!」
269鏡華(3):2006/01/15(日) 01:01:23 ID:lkTmopdJ
連綿と女系の血を繋いできた久世家にとって、
男は客人に過ぎない。
そのニイナエと呼ばれる、
ただ種を落とさせるためだけに招き入れる客が、
現在一人久世家に逗留していた。
その客、柏木秋人を鏡華は今日初めて、
夜の自室に呼ぼうとしている。
未通娘の鏡華にとって、
つまり初めての夜だ。

「柏木様がいらっしゃって、もう半月程になりますか」
畳む手を休めずに婆は鏡華に話かけた。
「ええ、そうね。
秋人様は毎日色んなお話をして下さるのよ。
あんなにお若いのに学者様なんですって。
何を学ばれているのかは私には少し難しいけれど…、
でも、私の琴の音を美しいと言って下さるし、
わらべ唄や子守り唄なんかを唄って差し上げると、
とてもお喜びになるの。
でもね、秋人様ったら…」
水を向けると鏡華はここぞとばかりに喋り続ける。

「お嬢様は本当に柏木様のことがお好きなんですね」
そんな様子を微笑ましくみつめる婆の呟きに、
鏡華はパッと頬を赤らめた。
遠くをみつめるように目を細め、両手を胸の前で組む。
が、不意に我に返ったようにフッと俯いた。
「…こんな世間知らずのわがままな女、
秋人様は呆れてしまうのではないかしら…」
少女のように輝いていた先程までの瞳に、
明らかな憂いと、隠しようも無い不安の陰が差す。
270鏡華(4):2006/01/15(日) 01:02:11 ID:lkTmopdJ
産湯を使わせてから今日まで、
"久世のお宮のお嬢様"として、
ただただ伸び伸びと育って欲しいと願い、
世話をしてきた婆にとって、
このような表情の鏡華を見るのは初めてだった。
天真爛漫で常に屈託のない、
まさに箱入り娘の典型のような鏡華であったのだ。
そしてだからこそ、
秋人への想いの真摯さが痛いほどに伝わってくる。

「何を言ってるんですか。
この婆のように世間擦れしてしまうと、
叶う恋も叶わなくなってしまいますよ」
婆は鏡華の前に立つと、
僅かに頬に掛かっていた髪をそっと除ける。
「ふふ、それは天涯さんのこと?まだお茶には誘えないんだ」
その婆の手を、鏡華は両手で包み込む。
「お恥ずかしながら。でも婆は諦めてませんよ」
空いた腕でグっと力こぶを作ってみせる。
それで何をがんばるのかしら、と鏡華には可笑しかったが、
すっと肩の力が抜けていくのを感じた。
271鏡華(5):2006/01/15(日) 01:03:00 ID:lkTmopdJ
「ありがとう、婆。ごめんね、心配かけて」
「いいええ、とんでもございません。
私が手塩に掛けたお嬢様ですもの。
何も心配はしてませんよ」
ポンと誇らしげに胸を叩く。
「うん」
そして鏡華の頬をそっと撫でた。
「柏木様はお優しい方です。
何も怖いことありませんよ」
「うん…」
「大丈夫です」
「うん…うん…」
いつのまにか鏡華の目に溜まっていた涙が、
ポロポロと零れ落ちた。
「お嬢様…」

悲しいからではない。
怖いからでもない。
ただたぶん、
これで自分は何かを得て、
何かを失うのだと、
そう思うと、
どうしようもなく涙が出てしまうのだ。
「婆が付いていますよ、ね」
「うん……うん…」
婆の手の温もりを感じながら、
鏡華はぼろぼろと泣いた。
272鏡華(6):2006/01/15(日) 01:03:49 ID:lkTmopdJ
「では、柏木様をお招きして参ります」
「…ええ、お願いね」
扉の向こうに婆の姿が消える。
ふう、と鏡華は長く一つ息を吐くと、
自らの部屋を改めてぐるりと見回した。

華美ではないが、堅牢で品の良い調度品、
不自由なく買い与えられる服飾雑貨、
絶やされることのない灯り。
そしておそらく衝立を隔てた次室に用意されているであろう、
暖かな寝具。
これらに囲まれて、
今までの生活のほとんどをこの部屋と屋敷で過ごしてきた。
そしてそれを疑問に思うことはなかった。

けれど、秋人から聞かされる外界の話や、
母の語るこの宮の役割、
巫女と呼ばれる人々の境遇、
そしてなにより、
「血を伝えるための器…」
告げられた自らの生の意味。
273鏡華(7):2006/01/15(日) 01:05:03 ID:lkTmopdJ
今まで触れることのなかった事柄が、
ここ最近になって一遍に押し寄せてきて、
鏡華は為す術なく、立ち尽くしてしまった。
何が正しくて、何が間違っているのかなんてわからない。
何かを変える力も持っていない。
「ならばせめて私は…」
与えられた役割があるのなら、
それを果してみせよう、と思った。
たとえ泡沫の如き刹那の夫婦であったとしても、
精一杯秋人を愛し、子を為そう、
そう思った。
相手が秋人であることに、心から感謝した。

ぎしぎしぎしぎし
廊下を渡る二人分の足音が聞こえてくる。
降り積もる雪に包まれて、
ただその音だけが、
鏡華の鼓膜を震わせる。

自らの心が、驚くほどに平穏で、
澄み切っていることを不思議に思いながら、
鏡華は膝を揃え居住まいを正した。

そして開かれる扉を、真っ直ぐにみつめた。

<おわり>
274名無しさん@ピンキー:2006/01/15(日) 10:49:22 ID:eCzLHFeu
>>266
?自分は澪深紅書いているものです。何も偽装はしてませんが。
275名無しさん@ピンキー:2006/01/15(日) 10:50:53 ID:eCzLHFeu
>>274
あ、失礼263です。
276名無しさん@ピンキー:2006/01/15(日) 18:50:15 ID:N33ENlc2
>>273
いいなぁ。多分このスレ以降新年SSやら色々で頑張って下さってるSS師と見受けますが
学校や色んな現代の描写が上手いなって思ってたけど時代劇風もいけるとは・・婆やと未通娘モエス・・。
277名無しさん@ピンキー:2006/01/17(火) 17:35:01 ID:AQv1L/Sa
>>267-273
秋人への惚れ具合とかがいい感じに補完されててGJ!

昨日零アンソロなんてのが売ってたの買ったんで久々にココ来て見たわけだが
あれのキャラ設定捏造の名前一人歩き状態より余程説得力ある。
278名無しさん@ピンキー:2006/01/17(火) 17:46:10 ID:3cu2iFS4
どうでもいいがメイド姿時の怜のパンツって黒だな
279名無しさん@ピンキー:2006/01/19(木) 12:45:56 ID:3LstXLWt
保守
280名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 01:00:02 ID:wyhYSwsF
ttp://ehoney.b.to/zknot/8

書けているようで書けていないヘタレ
とりあえず適当に言葉を並べときゃ良いとか思ってそう
281名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 01:55:02 ID:EFPdCbL4
>>280

何かSSを書きたいようで書けないヘタレ
とりあえず適当に気に入らないサイトをH抜いて晒しときゃ良いとか思ってそう
282名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 03:06:26 ID:wyhYSwsF
ヘタレだと思ったから晒してんの
しかもコイツヘタレのくせに調子乗ってるし
俺の方がコイツより数倍良いSS書けるね

ちなみにサイト
http://tool-4.net/?ehoney
283名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 08:17:31 ID:TpWJbXV/
じゃあ書けよID:wyhYSwsF
他人の批判して自分は逃げるようじゃ単なる屑だぜヒャアーッハァー
284名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 09:09:53 ID:su6Hmlk+
>>283
釣れた( ´,_ゝ`)プッ
285名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 10:28:08 ID:PmVJO6Sk
どう見ても本人の宣伝です。
本当にありがとうございました。
286名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 10:28:24 ID:c/EenBO+
ここにいるって事は21以上の大の大人なんだろうに
ヲチなんて厨行為しててどうするよ・・・
287名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 18:02:10 ID:wyhYSwsF
>アクセス数滅茶苦茶増えてる
>またどっかで晒されてんのかな('A`)

>でもオチ板見に行っても晒されてないし
>同人板で晒された時はとっくにログ流れてるし
マジでどこ?

>どこで晒されてるかご存じの方、いらっしゃいましたら情報提供お願いします


オチ板や同人板なんてそら見つかる訳ねぇよwww馬鹿じゃねぇのコイツwww
おい誰か情報提供してやれよwww
俺はしないけどなwww

誰か一緒にこのサイト潰してやろうぜ
女のくせにレズとか書いてキモいんだよ
288名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 18:32:39 ID:cjW8nyeQ
日々SS読みたくて零サイトを探し回ってる俺に知らなかったトコの情報サンクス
289名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 18:34:22 ID:wyhYSwsF
お望み通りオチ板とあと本スレにも晒してきてやったwww
290名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 18:37:44 ID:wyhYSwsF
>>288
氏ね
291名無しさん@ピンキー:2006/01/20(金) 19:57:35 ID:PTbqOebZ
NGID:wyhYSwsF
292名無しさん@ピンキー:2006/01/21(土) 00:29:44 ID:7q6gB7Gk
まだ零スレあったと思ったら何この荒れっぷり
千歳タンSSとか桐生姉妹SS書いてくれる人は居ないのか
293名無しさん@ピンキー:2006/01/21(土) 01:11:46 ID:tcg7kYnf
>>292
もうふる(ry
294名無しさん@ピンキー:2006/01/21(土) 03:12:17 ID:Ukk12/nX
古いのか
295名無しさん@ピンキー:2006/01/21(土) 03:47:59 ID:XbgSRFRj
>>292
保管庫行ったらあるよ・・・・

深紅×怜で近いうちに書くわノシ
296名無しさん@ピンキー:2006/01/21(土) 21:08:41 ID:f8gBImQo
>>267-273
GJ!
まだ初々しい鏡華がいいっすねえ。
これ続きないんですか?
秋人との思い出を胸に秘めながらも、次々と訪れる他の生贄の男たちにも
抱かれ続け、子供を生み続ける鏡華の物語を読みたいです。
297名無しさん@ピンキー:2006/01/22(日) 00:56:10 ID:txqI6py+
>>292
ちょっと変なのがキテタだけだからいつもはこんなじゃないよ。

 っていうか千歳タソも桐生姉妹SSも古いとか関係ないぞ!
 元々は千歳タソなんてここのスレタイに入ってたくらいだし。 
っていうか霧絵SSだって読みたいんだ! 
298名無しさん@ピンキー:2006/01/22(日) 19:26:11 ID:OvswNhJE
千歳はいいな
299名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 00:14:54 ID:R69keg3a
俺的には澪とか繭とかが怨霊とかに理不尽に犯されるみたいなシチュも見たいんだよね…
でも、このスレにはそういうの好みの人が少ないみたいなんでちょっと言いにくかったり…
なんか勝手な独り言みたいで申し訳ない
300名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 00:24:56 ID:UmsoKt0n
久しぶりに来てみたら神SS多くてびっくら。クオリティマジタカス。
>>295
禿期待。
301名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 02:16:30 ID:NwetWy3F
>>299
深紅や怜は? 俺は未成年がそいう事されてるの見るの
辛い方だからなるべくそいうのやるなら成人キャラでやって欲しい。
怜や巴や迷い込んだ女とか。
302名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 02:32:58 ID:tfKwLKHZ
>>299
ふっ・・・嫌いじゃないぜ・・・そういうの・・・




てか好き
303名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 02:40:10 ID:lXMP1azh
>>299 302
実は同意
304名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 02:56:50 ID:Q/+sE62n
最終的には繭澪っていう以前の鬼畜螢ものみたいのなら他カプになってるのよりはまだ見れるんだけど

個人的にレイプもんは好かないかな私は。

って言っても要望ばっかでss師がいないと始まらないけど。
305名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 19:35:54 ID:5MFVmMJD
>>299>>302>>303おれもだー
306名無しさん@ピンキー:2006/01/25(水) 02:56:29 ID:iBnMaZZc
>>300
期待してくれてどうもです。

一応予定通り書いてみました。
まだ途中なんで続きは出来次第書きます。
深紅×怜・・・だと思うw
深紅がいい子ちゃんではないと思うので嫌な方はスルーしてください。
307名無しさん@ピンキー:2006/01/25(水) 03:00:02 ID:iBnMaZZc
「今日も雨ですね・・・」
室内に侵入してくる雨音に紛れる深紅の声。
リビングのソファーで体を休めている怜へのものなのか、深紅は誰ともなく呟いた・・・・

外は深紅の言うとおり雨・・・・
風もほとんどないのだろう、地面に向かって垂直に落ちていく雨粒。

怜はレース越しにその風景を見つめていた。

「・・・・・・・」

返される返事はない。

せっかくの休日だというのに、どこか暗い雰囲気の漂うリビング。
それは悪天候のせいだけではない・・・・

ある日を境に雨の日の黒澤家は今のように暗い影を落とすようになってしまった。

怜の前から一番大切なその人が永遠に去ってしまった日も今日と同じように雨が降る夜であった。

無理もないであろう・・・・・降りしきる雨音はあの日のことを嫌でも怜の脳裏に浮かび上がらせるのか・・・・・
あれから怜は雨の日に車で外出をすることはほとんど無くなった。
どうしてもやむをえない時には出かけていたが、それでも隣に深紅を乗せることは一度もなかった。
怜が絶対に乗せてはくれないのだ。

どんなに悔やんでも取り返すことはできない・・・・
・・・・外を振る雨粒が空に登って行くことはないように・・・・

陰鬱とした部屋の空気に耐えられなくなったのか、怜からの返事を諦め深紅が再び口を開く。

「あの・・・怜さん。紅茶でも入れましょうか?・・・」

それを聞いてゆっくりと深紅の方を振り返る怜。

「悪いわね深紅・・・お願いするわ。」

儚い・・・・・・
今にも消えてしまいそうな笑みを浮かべて言葉が返される。

深紅はその笑顔に胸が締め付けられそうになるが、
言葉なくニッコリ微笑むとパタパタとキッチンへ向かった。

怜の悲しさが見て取れる表情は深紅には辛いものであった。
特に今のように自分に心配をかけまいと無理して作る笑顔を見ると深紅はやり切れなかった。
そんな顔をされると、こちらもしつこく気遣うことが出来なくなる・・・・
何もできない・・・・・・そう思うと悲しくなった・・・・・

深紅は怜のことを尊敬している・・・・・・・・大好きであった。
それだけではない・・・・かつては実の兄に抱いていた禁忌と呼べる感情をも抱いていた。
そして深紅自身も自分の中のそれは認識していた。
308名無しさん@ピンキー:2006/01/25(水) 03:09:14 ID:iBnMaZZc
いつの頃であろう・・・深紅が怜に対して敬愛の感情だけではなく男女間でしか抱かれることのない
愛情まで持つようになってしまったのは・・・・

まだ優雨がこの家に一緒に住んでいた頃である・・・・
深紅は怜の仕事のパートナーであり、怜と二人で行動することが多かった・・・・
それは恋人であった優雨以上だったかもしれない。
休日には二人はデートすることもあったが、遊ぶ人間が他にはいなかった深紅に気を使ってか
三人で出かけることも度々であった。

それ故二人きりの時間は恋人の優雨より深紅の方が多かった。
その時間の中で深紅は怜の様々な姿を目の当たりにしてきた。
慣れない仕事について優しく丁寧に教えてくれる怜。
決してあからさまに表情に出したりはしないが、自然に感じられる気遣いの思慮深さ。
リビングに脱ぎっぱなしの怜の上着を深紅が片付けようとした時に、横から少し顔を赤らめて
「ごめん・・・」と呟く照れた表情・・・・

怜と一緒に住むようになって深紅は怜のことがどんどん好きになっていった。
深紅は以前は兄の真冬のことが大好きであった。
性別こそ異なるものの、いつも側にいて、自分に惜しみない優しさを向けてくれる年上という
対象で見れば怜もそれと同じであったのかもしれない・・・・・

そんな楽しい時間がいつまでも続くことを深紅は夢見ていた・・・・・・

しかし、大好きな怜といつも楽しい時間を過ごしていた深紅に変化が訪れた。

茹だる様な暑さが室内にこもるある日の夜中であった・・・
深紅は暑いからといってエアコンに頼るのが好きではなかった・・・
好きではない上に、人の家に住ませて貰っているのに自分のせいで電気代が高く付いてしまうことを
気にしていたのもあってほとんど使うことはなかった。
まあそんな事はおかまいなしに怜と優雨は使っていたのだが・・・・

その日も暑い夜であった。
深紅は悪夢にうなされ、夜中に目が覚めた。
兄の真冬が女の霊に連れ去られていく夢・・・・・

「もう・・・見なくなったと思ったのに・・・・」

深紅は過去にあった出来事を払拭するかのように布団を跳ね除け、
部屋の電気をつけると、酷い汗をかいていることに気づいた。

口の中がカラカラに乾いている・・・・・
あんな夢を見た後ではすぐには眠れそうにはなかった。

深紅は気晴らしも兼ねて何か飲んで落ち着こうと思い時計に目をやる・・・

アナログ時計は2:35を指している。
明日は休日なので幸いであるが、頻繁にこんな夢を見せられたらたまらない・・・・・

少しだけ気が滅入り、頭を抑えながら部屋を出ようとした時であった。
309名無しさん@ピンキー:2006/01/25(水) 03:16:27 ID:iBnMaZZc
ドアを開けた瞬間に目の前に立つ人影!

「きゃっ・・・・」

廊下が暗く、怖い夢を見た直後であったのも手伝い深紅は思わず小さな悲鳴をあげてしまった。

それを聞いてその人影もびっくりしたように体を跳ねさせる。

「あ・・・ごめん深紅ちゃん・・・驚かせてしまったね・・・」

声の主は優雨の物であった。
優雨が部屋から出て、廊下を歩いて深紅の部屋のドアの前を通ろうとした時にちょうど深紅が部屋を出ようとしたのだ。

人影の正体が分かり安心する深紅。

「優雨さんどうしたんですか?トイレですか?」

落ち着きを取り戻し、優雨に話しかける深紅。

「ん?・・・あ、ああ・・・・深紅ちゃんもか?・・・・ってなんか失礼だな・・・ごめん」

何だか挙動不振な優雨であった。

そんな態度を少し不思議に思いながらも深紅は返事を返す。

「いえ。喉が渇いてしまったんで、水を飲もうと思っただけですから、トイレ使っていいですよ。」

「ああ、ありがと・・・・・おやすみ。」

「おやすみなさい。」

深紅は軽く頭を下げるとキッチンに向かい階段を降りる。

優雨が一緒に降りて来ないのも特に気にせずキッチンに足を進め、
冷蔵庫を開けペットボトルに入ったミネラルウォーターを取り出しコップに注ぐ。

コップに半分くらい注ぐと深紅はそれを一気に飲み干した。

「ふぅ〜・・・・・」

コップを置き、一息ついてリビングを見渡すと暗闇の中ソファーの上で怪しく光る二つの物体。

「あ、起こしちゃったね。ごめんルリ・・・・」

深紅はこちらを見ているルリに小声で謝った。
310名無しさん@ピンキー:2006/01/25(水) 03:21:05 ID:iBnMaZZc

暗闇の中、冷蔵庫の駆動音だけが聞こえてくる。
再び床につこうと思い、冷蔵庫の扉を開けた時あることに深紅は気づいた・・・・・

(優雨さんトイレに行くって言ったけど、降りてこないな・・・)

トイレは一階にしかないので、優雨が降りてこないのを不思議に思いながらも、コップを洗い
手を拭い再び階段を足音を立てずに上がっていく。

自室のドアに手をかけた時であった。
背後の壁から話し声のようなものが聞こえるのだ・・・・・

(怜さんの部屋から?・・・・・・優雨さんかな?・・・・・)

深紅はそれほど気になった訳ではないのだが、何の気なしに足を止めていた。

微かではあるが、優雨の名を呼ぶ鼻にかかる甘い女性の声が深紅の耳に入ってくる。

「・・・・!!」

それを聞いて深紅はすべてを察知した。
優雨が怜の部屋に居て、二人が何をしているかも・・・・・

深紅は急いで部屋のドアを開け、すぐさまベットに行き布団を被った・・・・

結婚も控えた二人が同じ屋根の下にいるのだ。
当然考えられる事であるが、それが現実の物となって深紅に認識させたのはこれが初めてであった。

深紅は布団の中で体を震わせていた・・・・・・

(二人で愛し合ってる・・・・・・)

気づくと訳も分からず涙が零れていた・・・・・・

そしてそのことを意識させられてからは深紅の二人を見る目が変わった。
何故かは分からぬが自分に内緒であのようなことをしている怜に裏切られたような不快感を覚えた。
これが深紅が自分の怜に対する想いを気づかせるきっかけとなってしまった。

それからは深紅にとって辛い日々の始まりであった。
311名無しさん@ピンキー:2006/01/25(水) 03:24:09 ID:iBnMaZZc
このカプはやはり書くのが難しい・・・・・

書くと言った以上最後まで書く!
なんでまあ長い目でお願いします。
前置き長くてウザイかも・・・・orz

では続きが出来たらまたです。
312名無しさん@ピンキー:2006/01/25(水) 11:34:20 ID:6bKCbagu
>>311グッジョブ!!続き期待してます
313名無しさん@ピンキー:2006/01/25(水) 16:17:21 ID:3R4zUKiA
ハアハア(*´Д`)=зイイ…
314名無しさん@ピンキー:2006/01/25(水) 16:38:23 ID:46N8dBxB
>>311
おお、待ってました。GJ!!
優雨×怜に深紅ドキドキ的シチュはやっぱエロいな。
続き楽しみにしてます。
黒深紅に期待。
315名無しさん@ピンキー:2006/01/26(木) 05:01:55 ID:rpuZRZH6
ごめん、保管庫どうしたの…?
316名無しさん@ピンキー:2006/01/26(木) 13:17:00 ID:5cUDg1Gj
ほんとだ、どうしたのかね??
317名無しさん@ピンキー:2006/01/26(木) 15:43:38 ID:KrJ5bPZA
携帯だから詳細までは分からないんだけど八号機って何だろ?
動画みたいだけど落とした人いる?
318名無しさん@ピンキー:2006/01/26(木) 20:04:11 ID:VFf9UUF+
>>315
なんか家ゲで、いじるとか宣言してた奴がいたような。
スーパーハカー?
319名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 04:04:24 ID:Z4WaeD1z
ほんとに見れなくなってますね・・・・・orz

続きです
 ↓
320名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 04:08:26 ID:Z4WaeD1z
>>310の続き

怜の笑顔をまともに正視することが出来なくなってしまったのだ。
見つめられただけで鼓動が嫌でも速くなり苦しい胸の疼きを覚えたのだ・・・・・
そして夜になれば、したくなくても想像してしまうのだ・・・・二人の秘め事を・・・・
それを思う度に深紅の瞳から零れ落ちる涙が布団を濡らした。

決して想いが成就することがない・・・・・もちろん忘れることなどできない。
相手が気づくことなど万に一つもない・・・・・
当然である。
同性であり、相手は将来を約束した恋人がいるのだ。
他人に・・・・・ましてや同性に目を向けるなどありえないだろう・・・・・・

それを思うと苦しさが何倍にも増幅した。
家の家事をやることさえ嫌になりそうだった。
二人のために動くことがより一層辛さを増すのであった・・・・・

怜も深紅の心境の変化に気づき、色々気にかけてくるのだが、
深紅はもちろんその辛さを口に出したり、不満を漏らしたり、態度に表すことは決してしなかった。
とてもそんなことは出来なかったのだが・・・・
そして日増しにストレスも溜まり限界が近いと感じた時であった・・・・

あの事件が起きたのである・・・・・・

優雨が不慮の事故で他界した・・・・・・

深紅は連絡を聞きすぐに病院に駆けつけた。
が、既に冷たくなって変わり果てた優雨の姿と、その傍らで
散々泣き腫らし、涙が枯れ廃人のようになった怜の姿があった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この事件を境に怜の表情には常に暗い影がついてまわった。
事件直後は一日中深紅と怜の間で会話がなかったこともしばしばであった・・・・・

最近になってようやく少し落ち着きを取り戻し、肌も以前の綺麗な状態に戻ったがその影が消え去ることはなかった・・・・

優雨の死にはもちろん深紅も深い悲しみを受けた・・・・・・・
ごく身近な人との永遠の別れ・・・・・
過去に二回も味わっているとはいえ、やはり慣れるものではない。
最初はその現実を受け止めることが出来なかったが、自分以上に失意のどん底に落ちている怜を見ると
自分がそうしているわけにはいかなかった。

深紅は悲しくなった・・・・・・

自分が目の前で母親の死を突きつけられたのと同じ境遇に怜が今居るのかと思うと身を切られるような思いがした。
それが愛する人ならば尚更である。

深紅は怜の心の傷が少しでも癒えるのならどんなことでもしようと思っていた。
甲斐甲斐しく世話を焼くことはもちろん、
寂しさを紛らわせるために怜が飲むお酒にも無理をして付き合っていた。
321名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 04:11:20 ID:Z4WaeD1z

深紅は嬉しかった。
怜に必要とされていることが、
怜が自分に依存していることが、
怜が自分無しでは生活できないことが・・・・
一日のほとんどを愛する怜と二人っきりで生活できることが・・・・
それは優雨がいなくなった上で成り立っていることだと考えると
もちろん喜ぶことではないことだと分かってはいるのだが・・・・・

そして三日前のことである。
その日も今日と同じように雨の振る夜であった。

いつものように深紅が夕食を作り、それを怜と二人で食べる。
深紅が洗い物を終えたタイミングで、リビングでテレビを見ていた怜が
深紅を呼び、「真面目な話がある。」と切り出してきたのだ。

深紅は怜の座っているソファーとは別のソファーに腰をかけた。
リモコンを手に取り怜はテレビの電源を切る。
空間が静まり返る・・・・・


「何でしょうか?怜さん?」

怜の目を真っ直ぐに見つめて深紅が尋ねる。

「深紅がここに来てもう二年になるね・・・・」

話を切り出す怜。
その内容を聞いてやや緊張していた深紅が体から力を抜いた。

「ふふ、どうしたんですか?・・・・そうですね、ちょうど二年くらいですね。」

「深紅にはほんとに助けてもらって・・・・・仕事の手伝いだけじゃなく、家事もほとんどやってもらってるし
ほんとに助かってる。深紅が来てくれて良かったわ。ありがとう・・・・・」

怜が少しだけ頭を下げた。

「え?・・・別にお礼なんていいですよ。私の方こそ身寄りが亡くなって一人で暮らしていて寂しかったんですから。
ほんとに感謝しています。」

お返しと言わんばかりに少し顔を赤らめた深紅が深々と頭を下げた。

「そのことなんだけど・・・・・」

深紅が頭を上げると、怜は少し気まずいような表情を浮かべていた。

「深紅。あなた一人で暮らさない?」

深紅の目を真っ直ぐに見据えて言葉を続ける怜。

「え?・・・・」
322名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 04:14:45 ID:Z4WaeD1z

「うん・・・・これは深紅のために言ってることなんだけど、深紅はこのまま私と一緒に居ない方がいいと思うの。
私は優雨が死んで一度は生きることをやめようと思った人間・・・・・今でこそ深紅が居てくれたおかげで生きていられる
のだけれど、私はこの先ずっと暗い過去を背負わなければいけない・・・・・・幸せになることなんかないの・・・・・
だから、そんな私の側に居たら深紅は駄目になる・・・・・私のせいで深紅まで暗い過去の巻き添えにするわけにはいかないわ。
深紅には明るい未来を生きて欲しいの・・・・・・暗い過去とは決別して幸せになって欲しい。ここに来る前も深紅は辛い過去
をたくさん味わっているから・・・・・・・幸せになって欲しいの・・・・・・・」

深紅は放心状態に陥った・・・・・・
あまりに突拍子もないことを言い渡され、
今の深紅の頭で思考できることは、頷けば出て行かなくてはならないということだけであった・・・・

・・・・・・・・・・・にゃあ〜

真後ろから聞こえてくるルリの鳴き声で深紅は呼び戻された。
怪訝そうな顔で怜を見る深紅。

「そんな・・・・・・私は・・・・・・・邪魔なんでしょうか?・・・・・」

今にも泣きそうな顔で深紅が何とか口を開く。

「違うよ深紅・・・・・・邪魔になんてこれっぽっちも思ってないわ。さっきも言ったけど深紅にはほんとに助けてもらってる。
でもこんな私の側にずっと居たら深紅にとって良いはずがないの。深紅ももう大人だし、お金も溜まってるでしょうから、
ちょうどいい時期だと思って・・・・・・・深紅のために言ってるのよ。」

先ほどより険しい表情を浮かべて深紅を見つめる怜。
逃れることの出来ない強い眼差し・・・・

(嫌!怜さんの側に居たい・・・・・ずっと一緒に居たい・・・・・)
深紅は喉まで出かかった言葉を辛うじて飲み込んだ・・・・・

『深紅のため』

この言葉が深紅を思いとどまらせた・・・・・・

ふっと表情を緩める深紅。

「分かりました。でも今すぐには決められません・・・・・・少し考えさせてください・・・・・」

低いトーンで深紅は言葉を返す。

「うん。急ぐ必要はないからゆっくり考えて、結論が出たら教えてね。それじゃ、今日は遅いからもう寝ようか・・・・・」

ソファーから腰を上げて洗面所に向かう怜。

「はい・・・・・・お休みなさい・・・・・怜さん。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
323名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 04:19:18 ID:Z4WaeD1z

深紅も寝る準備を整え自室に入ると電気を消してベットに入る。
目を閉じてみるものの眠れるはずはない・・・・・・

怜の思いもよらない告白が永遠深紅の頭の中で再生される。

(どうして・・・・・・嫌!・・・・・私はずっと怜さんの側に居たい・・・・・・これ以上大好きな人と離れなきゃいけないのは
嫌だ・・・・・・また一人で寂しい思いをしたくない・・・・・・次は・・・・きっと耐えられない・・・・・・)

すぐに深紅の頬を涙が濡らした。
後から後から零れてくる涙・・・・・

自分が想っている程相手は自分のことを想ってはいなかった・・・・・・・
それどころか自分の気持ちも分かってくれてはいなかった・・・・・・
深紅は胸がバラバラになりそうな程痛くなった。
怜への想いが強ければ強い程痛みも鋭いものであった。
気がおかしくなりそうな程であった。

(どうして?・・・・・・どうして二人で生きていこうと言ってくれないの!?・・・・・・・私は怜さんのことが必要なの!・・・
怜さんが一緒じゃなきゃ・・・・・生きてはいけない・・・・・・嫌・・・・・・絶対に嫌!!・・・・・・・)

深紅は一晩中やり切れない想いに身を焦がした。
あまりの胸の痛みに何度も嗚咽を漏らし吐きそうになるほどであった。
結局この夜は一睡もすることが出来なかった・・・・・・・

そして光が部屋に差し込み朝を迎えた時、深紅はある決意を胸に秘めたのだ。
それはとても怜には言うことができない恐ろしいこと・・・・・深紅の中のあまりに強烈な怜への想いが深紅を後の行動へ駆り立てたのだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

紅茶を美味しそうに啜る怜を見つめる深紅。
自分のこの想いに気づかない怜を恨めしく思っていた。

でもそれも今日まで・・・・・・・と深紅は思う。
それを思うと自然と笑いが込み上げてきた・・・・・・・・苦しさから開放されることが待ち遠しかった。

夕食の準備を整える時間になり、深紅はいつものように支度を始める。
メインのメニューはビーフシチューである。
以前、怜と優雨にも絶賛されたことのある得意料理の一つである。

長い時間をかけて料理を完成させ、お皿によそる・・・・・・・・・・・
そして・・・・・・・・・
怜の器によそったシチューに、衣類に忍ばせておいたカプセルの中の粉薬を混ぜる。

準備が整うと、深紅は机に料理を並べ怜を二階へ呼びに上がり、
部屋をノックしてドアを開くと怜を呼ぶ。
324名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 04:21:53 ID:Z4WaeD1z

「怜さん、夕食できましたので・・・・・」

怜はベットで本を読んでいる最中であった。

「分かったわ。あ、いい匂い。今日はビーフシチューかしら?」

「ふふ、当たりです。」

二人並んで階段を降りる。
問題なく薬を忍ばせている皿の前に怜は座る。
怜の使用しているコップが置いてあるので当然である。

「いただきます。」

怜が挨拶をして料理に手を付ける。

その様子を少しハラハラしながら見守る深紅。
特に気づく様子はないようだ・・・・・

「深紅。この間の話は考えてくれたかしら?・・・・・」

食事を進めながら怜が尋ねる。

「そのことなんですけど・・・・・・怜さんにお願いがあるんです。」

深紅が手に持っていた箸を置いて話し出す。

「何?」

食事を休めることなく怜が聞き返す。

「今日・・・その・・・・・一緒に寝てもいいですか?」

深紅の問いに箸を持つ怜の手が止まる。

「え?・・・・・どうしたの?」

「私がここを出て行くことを選んだら、怜さんと離れなきゃいけないじゃないですか・・・・・・・
だから・・・・その・・・・・・決断する前に怜さんの側に居たくて・・・・・・駄目ですか?」

深紅は飛びっきり可愛い顔でおねだりしてみせた。

深紅のことを妹のように可愛がっている怜である。
流石にそんな風に言われたら断れるはずはない。

「別に構わないわよ、それくらい。じゃあ、今日は私の部屋で一緒に寝ましょうね。」

怜はそれだけ言うとまた食べ始める。

すべてが深紅の思うように事が進んでいった。

深紅は心の中で笑っていた・・・・・
怜と離れることなど微塵も思ってなどはいなかった。

皿に盛られたシチューを食べ終えた時点で怜は深紅の仕掛けた遠大な罠に確実に絡め取られていったのだ・・・・・
325名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 04:24:32 ID:Z4WaeD1z
んではまた続きが出来たらです。

怜×零華
とかどなたか書かれないのですか?w
326名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 06:08:42 ID:ClLnZPuO
(*゚∀゚)=3 ウハ
327名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 06:19:35 ID:7Azia5fn
クロミク(*゚∀゚)=зイイ!
328名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 10:21:41 ID:B1T8yOqY
螢「み、みお・・・」ブブブブ「生きてたんだな、よかった!」ブブ
感極まった螢が嫌な笑みをうかべながらこっちに突進してきた。

螢「みお〜〜〜」ブブブシャキーンブブブブシャリーンブブブブブブ
螢「みいいぃぃぃぃぅううううおおおおおおぉぉぉぉぉおぉぉぉおおぉ」ブーーーキィンキィンキィン

バシューン!!

螢「ギャアアアアアアアアアア!!」

F A T A L F R A M E
CLOSE SHOT       237658POINT
MAX SHOT
ZERO SHOT
OVER KILL
SPECIAL KILL

澪「ちかよんじゃねーよペッ」
329名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 12:46:39 ID:ox1UgH4C
>>292とか>>297とかで桐生姉妹オケーっぽいのでこっそり投下します。
えらく長くてまどろっこしい文体でおまけにまだ導入だけで申し訳ないけど。
たぶん茜×薊

とうか保管庫見れないの悲しすぎる…orz
最近ここ来たばっかでちっとも見てないのに
330名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 12:50:03 ID:ox1UgH4C

あの日、薊がいなくなった。

「あざみ…」
双子の部屋。双子のために誂えられた部屋。ふたりのための部屋。そこで茜は一人過ごしている。
揃いの鏡台も、同じ着物しか入っていない二竿の箪笥も、父が作ってくれた二組のお人形も、今となっては
なんの意味も持たなくなってしまった。部屋の主が一人になってしまったから。
「あざみ…」

数日前の茜は明るかった。
元来大人しい性格の子ではあったが、それでも茜は年頃の少女らしい豊かな表情を持っていた。
とくに双子の妹である薊と一緒のときはいつも笑っていた。いつも彼女らは
二人の秘密や約束を作り、二人だけの遊びをしていた。
そしてその仲睦まじい姿を父が仕事がてらに眺める…というのが彼女らのいつもの日々だった。
父である桐生善達の目から見ても二人の仲の良さは大層なものであったように見えた。
茜にとっては薊が、薊にとっては茜が全てであり、姉妹というよりはむしろ魂が半分に分かれて
茜と薊という体を得たようであった。
元々同じものが分裂したというならば、片割れを求めてやまないのは至極当然の理論である。
ふたりが一緒であれば幸せだった。茜は薊が居れば何もいらなかった。父の悲哀の混じった視線の意味も知らずに。

儀式の日、その幸せが壊れた。
壊したのは茜のちいさな指だった。
茜は魂の半分を失い、至極当然のように心を失った。空っぽの体だけになった茜は父の作る人形によく似ていた。

「あざみ…」
双子の部屋。双子のために誂えられた部屋。ふたりのための部屋。茜は今、二人で過ごしている。
揃いの鏡台も、同じ着物しか入っていない二竿の箪笥も、父が作ってくれた二組のお人形も、今になって
再び存在意義を確立できた。部屋の主が帰ってきたのだ。
「……薊」
331名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 12:52:47 ID:ox1UgH4C

『茜…ご覧、薊が帰ってきたよ』
善達がそう言いながら部屋に入ってきた時、茜の瞳が少しだけ見開かれた。
茜の目には、父の腕に抱かれてうな垂れる薊の姿が見えたのだ。
『あざみ…!』
思わず走り出して抱きついた茜の腕に当たった薊の指は硬く、冷たく、微動だにしなかった。
『あざみ…?あざみ、どうしたの?』
呼びかける茜の脳裏にはあの儀式の時に動かなくなった薊の姿が鮮明に焼きついていた。
宮司に言われるがままに薊の首を絞めたとき、事切れた薊のからだは温かく、とても柔らかかったのに。
茜は尋ねるように善達を見上げた。
『茜…、よく聞きなさい。薊は………薊は、
 …儀式のときに病気になってしまったんだ。体がこんなに硬いのも、冷たいのも、話さないのも、動かないのも
 そういう病気なんだ、どうにもならない…。でもこれは薊だ…茜、薊に優しくしてやりなさい』
善達が申し訳なさそうに目を逸らしたことなど茜には解らなかった。
たとえ声を聞けなくても、もう一緒に遊べなくても、茜にとっては構わなかった。
また二人で居れる。茜の心は喜びに溢れていた。幸せな日々が帰ってくると信じていた。

薊は茜の隣に座っている。鏡台の前に座っていたのを茜が自分と向かい合うに動かしたのだ。
「薊、からだは大丈夫…?」
茜が尋ねたが、薊は俯いたまま動かなかった。
善達からは「それ…薊は食事もしないし、眠りもしない。ずっと動かないままだ」と聞いていた。
しかし茜は薊を労わり、たまに体をぬぐってやったり、夜になれば自分と同じように寝かせたり、
朝には違う着物に着替えさせたりしていた。
その姿はまるで大きな人形を使って人形遊びをしているようであったが、茜はそんなことには気付かない。
だって、動かす度に揺れる長い黒髪から見える顔は確かに薊なのだ。眠ったように目蓋を伏せてはいるが、
目を凝らせばその睫毛が震えるようにすら見える。閉じた唇から吐息が漏れているようにも思える。
それほどに「それ」は薊に酷似ていた。薊だった。

茜は幸せだった。昔のように薊と遊べないのは少し寂しかったが
それでも薊を失った日々のことを思えば、薊と過ごす日々は幸福以外の何者でもなかった。

332名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 12:53:57 ID:ox1UgH4C
とりあえずここまで。

sage忘れちゃった…ゴメンネ(´・ω・`)
333名無しさん@ピンキー:2006/01/27(金) 20:19:47 ID:3BrareZ8
GJ!GJ!
茜ちゃんと薊ちゃんがまた見られるなんて幸せだよ!
楽しみにしてる!
334名無しさん@ピンキー:2006/01/28(土) 12:23:12 ID:4gj9ftIp
>>328
地味に重が混じってる
っつうか俺の知識不足だったらスマンけどKILLって1種類のみカウントじゃ?
335名無しさん@ピンキー:2006/01/28(土) 19:31:40 ID:7ecyiCBF
久々に来たらSSイパーイ!

>>325
GJ!でも生殺しかっ(*'Д`) 俺も最終戦闘の零華に抱きしめられる怜
見てその二人の話ちょっと見て見たいとオモタ。
>>328
ワロスwWwwwwWW  澪カコヨス
>>332
桐生姉妹キター!! やっぱ皆神住人は切なくって良い。
336名無しさん@ピンキー:2006/01/29(日) 12:39:16 ID:/t3nnVnx
職人の方々、GJです。
続き楽しみにしてます。
337怜×深紅・春待つ日々(1):2006/02/01(水) 18:26:36 ID:nBoUVa6g
「今日から2月ね」
「ええ、そうですね。ホントあっという間に」
「そういえば深紅、あなた恵方巻って知ってる?」
「あ、なんか聞いたことあります。
確か太巻きを食べるんですよね、節分の日に」
「そう。でもね、私さっき見ちゃったのよ。そこのケーキ屋で」
「ケーキ屋?……何をですか?」
「恵方巻クレープ」
「は?」
「あと恵方巻チョコバナナ」
「……」
「あのね、深紅。私この恵方巻って、
オーラルセックスのメタファーなんじゃないかって思うの」
「???」
「たしかこれ、関西の伝統行事よね。
それがここ数年で一気に広まったでしょ。なんでだと思う?」
「え…それは……なんかこう、行事っぽくていいかなあ…とか?」
「違うわ、深紅。セックスよ」
「セ、セ…セック…ス?」
「そう、セックスがそこに隠されているの。
そもそも節分って何の日?そう立春よ、立春。春!
そんな日に太巻きを一心不乱に食べるとか、
ああ、なんてあからさまな。
いいえ、太巻きならまだいいわ、でもクレープやバナナって、
それっぽければなんでもいいっていうその風潮、
皆ガッついているのよ。ハレンチなのよ、
だからこうもすぐ飛びつくのよ」
「はあ…」
338怜×深紅・春待つ日々(2):2006/02/01(水) 18:28:31 ID:nBoUVa6g
「そうは思わない?」
「…よ、よくわかんないですけど、
…で、でもその恵方巻って家族皆が食べるんですよ…ね」
「ええ、そうよ」
「なら、その…セック…スとか…、やっぱり考え過ぎなんじゃないか…と…」
「いいとこに気付いたわね、深紅」
「え?」
「そこがミソなのよ。
明らかな隠喩なのに、老若男女皆が食べる。それよ。
そのインモラルかつボーダレスな感覚が、今の空気に馴染んだの。
だから受けたのね、きっと」
「はぁ…?」
「つまり大事なのは性別や続柄じゃないってこと」
「ちょ…」
「怖がらないで、深紅」
「れ、怜さん、あの、ちょっと狭いん…です…けど…」
「じゃあ私の膝に乗る?」
「ここ私の席ですよ」
「深紅のお尻、やわらかくて好き」
「そうじゃなくて」
「深紅の匂いも好き」
「……怜さんはその風潮、反対なんじゃないんですか?」
「あら、私そんなこと言った?大賛成よ」
「もう。や、やん変なとこに手入れないで下さい」
「ふふふ、深紅が可愛いからいけないの」

「ていうか怜さん」
「ん?」
「仕事して下さい。年度末忙しいのはわかりますけど」

春まだ遠い黒澤家である。

<終わり>
339名無しさん@ピンキー:2006/02/01(水) 18:32:01 ID:nBoUVa6g
スレが止まっていたので、
時事小ネタで保守です。

職人の皆様、SSの続きを…
340名無しさん@ピンキー:2006/02/01(水) 20:40:44 ID:MJDjEOvT
怜の親父化がいちじるしいw
もうセクハラで訴えていいよ
341名無しさん@ピンキー:2006/02/01(水) 21:03:59 ID:XUTjM4+L
一番最初の刻に出る追いかけられるムービーを想像してください。

螢「うへへへへへへおっぱいおっぱいうへっへへへへへ」
零華「ヒイイイイィィィィ」
螢「美乳おっぱいおっぱい触らせろうへへへ」
零華「うぅぁ〜」
ムニュ
零華「ヒイイイイ」
扉にタックル気味に開ける。
終わりの淵にある祭壇の奥に逃げて急いでドアを閉めて
零華「ガタガタガタガタもう見たくない・・・ていうか出会いたくない・・・」
342名無しさん@ピンキー:2006/02/03(金) 00:20:46 ID:o7bWVtWY
>>341
なかなか難解なSSだな
きっと俺の次元が低すぎて理解できないんだろう
343名無しさん@ピンキー:2006/02/03(金) 06:17:52 ID:1raJRVzV
>>337-339
GJ!!
こーゆーのすごく好きだわ
344名無しさん@ピンキー:2006/02/03(金) 21:51:22 ID:0y51OeDN
鬼畜深紅続きマ━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━ダ????
345名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 01:26:22 ID:RMIshZnb
「ねえお姉ちゃん」
「なぁに、澪?」
「私達、姉妹だよね」
「ええ、そうね。仲の良い、これ以上にない良好な姉妹ね」
「うん、自堕落で変態でどうしようもないお姉ちゃんだけど、私達姉妹だわ」
「澪、何でそんな事を言うのっ」
「普段の己の行動を振り返ってみようねお姉ちゃん?」
「……何か、私悪いことした?」
「……まぁ、良いわ。もう諦めている事だし。それよりも」
「うん?」
「姉妹なのに……双子なのに……なんでお姉ちゃんふたなりなの?」
「なんでって澪……」
「お姉ちゃんにそんな呆れた顔されると凄く頭に来るんだけど……どうしてかな?」
「決まっているじゃない。私達は双子でしょ?」
「うん」
「双子は元々は一つの存在。別れた存在がまた一つになる為には、結合する必要があるからよ。だから、私には生えてあるの」
「……聞いた事、無いわそんな話」
「まぁいいじゃない。それよりも澪、私と一つになろう。それはとてもとても気持ちいい事なの」
「おったてるなぁこの馬鹿姉ぇ!」
346名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 11:19:39 ID:kDS8R/HV
お姉ちゃん、のりのりだな・・・。

性格的には、「抱かれたい」と思っていそうだけどな。
欲望は「したい」でなく「して欲しい」なのに、相手にはその気は全くなし、と。
だから本編では鬱屈するんだろうな。

話的にはやっぱ、お姉ちゃんが攻めの方が可愛いな。
せめて(攻めて?)ここでは∞開放させてやってくれ。


って言っても、一応終わりなのかな。
347名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 11:59:01 ID:o/eWBbnb
さりげなくエヴァだな
348名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 17:41:52 ID:ms4ZDlnR
>>346
自分は作中常に受身な繭は受けで考えてるんだよなぁ。
でも世の中繭攻めが多い不思議。腹黒ってな風に偏っちゃったからかな。

あと>相手にはまったくその気無し
ファンブック読むとそうでもない感じだよ?澪も十分シスコン。 
349名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 17:53:09 ID:4joRrCUF
>>348
> ファンブック読むとそうでもない感じだよ?澪も十分シスコン。
kwsk
350名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 18:35:53 ID:BwrYs0QT
ファンブックファンブックと糞どもうっぜえなあ
351名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 18:49:36 ID:+Ho31Z67
>>350はファンブックも買えないのか。
352名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 18:53:49 ID:ms4ZDlnR
>>349
詳しくすると長くなるから立ち読みとかで頼みますわ・・・。
そこかしこそんな雰囲気だと思うから。
あと約束EDでも澪のシスコンぶりは出てると思うよ。

>>350
あんまりFBFB言いたくは無いんだけど言わないと出せない
ネタとかが多すぎるんだす。
353名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 19:52:10 ID:qddkVDmr
どうなのかなあ・・・。

繭は澪の体狙っていても違和感ないけど、
澪が繭の体欲しがる、ってのはぴんと来ないかな。本編だと。

って、別にSSの設定としては何でもありだと思ってるよ?
どっちがどうでないと、設定的に乗れない、とかそんなのないから。
念のため。
354名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 20:04:01 ID:95ILTxj5
要はおもしろければなんでもよし
355名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 20:31:25 ID:R8E505+O
二人が可愛ければどうでもいい!!!
356名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 20:39:51 ID:ms4ZDlnR
>>353
私は繭は澪の体じゃなくて心を欲しがってると思うから
そっちの方が違和感がある人間なんだよね。
澪は本編中何にせよ感情表現やセリフがあまり無かったから
何考えてるのか分からないって感じだった。

って自分も設定的に〜とかないから結局>>353-355に同意。
357名無しさん@ピンキー:2006/02/05(日) 20:45:54 ID:D1EVtB+x
エロ切ない感じがあれば最高
相手をどんだけ想っても、他人の男女とは違う関係が
百合・近親相姦の醍醐味ではないかな
358名無しさん@ピンキー:2006/02/06(月) 18:34:15 ID:6/XtLPCT
>>356に同意
359名無しさん@ピンキー:2006/02/07(火) 02:27:15 ID:m5UIp2vR
他のカップリングだと、攻め受けに非常にこだわったことが
あるけど、天倉姉妹だとどっちでもいいと思えるから不思議だ。
360名無しさん@ピンキー:2006/02/07(火) 14:24:13 ID:7OdWmazs
>>346
おー、そうそう。
自分的な繭萌えのツボがまさにそこだ。
本質的には生粋の受けなんだけど、
攻めてもらえなくて悶える業の深さ、というか。

報われなさに萌えるというのもちょっと不憫だけど。
361名無しさん@ピンキー:2006/02/07(火) 16:37:48 ID:egWNUUYw
>>360
その報われなさイイ!が俺としてはその場合なら
皆神村事件後は澪もお姉ちゃんラブ(依存)に
気づいていっぱいしてもらったりしたりで報われれば尚更萌えるなぁ。

報われちゃ意味ないのかな・・・
362名無しさん@ピンキー:2006/02/07(火) 18:50:50 ID:9zmiYy4H
>>361
本編で報われなさに萌え、
SSでの姉ラブ澪との幸せ描写に萌える、と。
繭姉は美味しい。

でも、その受け繭路線で行くと、
虚エンドは受け入れがたい、というかアクが強いんだよなあ。
あの笑みはホントくせ物。
363名無しさん@ピンキー:2006/02/07(火) 20:23:17 ID:06Txe+5U
>>362
この間携帯でテクモのサイト行って赤の壁紙見てたら、
その最後のシーンの壁紙があって、
タイトルが

澪を心配する繭

みたいなタイトルで、え?ってなったよw
364名無しさん@ピンキー:2006/02/07(火) 21:01:15 ID:Nf7S8T1b
>>362
それ自分も見た時チト笑ったw

>>363
あの笑みって、自分にはそう黒いようには思えないんだよなぁ。
欲しかったものが手に入った事を喜んでる、けど少し寂しそうにも自分には見えて。

本当うまく表情作ってる。

で、例えば逆に、あんな告白しといて、EDで神妙な顔つきで「私のせいで・・」と自分を責める(そんな自分に酔う)ような
演出なんて入ってたら本当に単なる黒いナルシストになってたキガ
365名無しさん@ピンキー:2006/02/07(火) 21:05:05 ID:Nf7S8T1b
アンカー逆でした
366名無しさん@ピンキー:2006/02/09(木) 01:29:15 ID:/3I2CSHl
それにしても怜の尻は良いよなあ。
367名無しさん@ピンキー:2006/02/11(土) 20:37:03 ID:i9I0KmyO
MEGA様のおっぱいもな
368名無しさん@ピンキー:2006/02/11(土) 21:52:06 ID:aag8P3Vy
零の個人出版の方のアンソロ買った人いる? 売り切れみたいだけど
どうだった?ギャグシリアスの比率やシリアスの内容とか
大雑把にでも教えてくれ〜
369名無しさん@ピンキー:2006/02/12(日) 10:17:41 ID:yYxRarEC
ギャグ:シリアス=6:4くらい
基本は刺青で百合は少ない
ひとつだけ紅蝶ネタがあるけど澪繭とか本編キャラではなく
皆神村にいた昔の双子巫女のお話

ぶっちゃけあんまり面白くなかった。。。
370名無しさん@ピンキー:2006/02/12(日) 23:28:06 ID:VXeLkOvP
>>369
いや、ごめんそれじゃなくて最近同人系の人集めてやってたやつ。
どうせ螢が多いんだろうし別にいいやと結局買わなかったんだけど
虎で見た内容に可愛いのがあったから・・・
371名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 03:30:16 ID:loY3Jrmc
ふぅ〜・・・・・続きです。
     ↓
372名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 03:32:20 ID:loY3Jrmc
>>324の続き


深紅は食後のコーヒーを入れると怜と二人でソファーに座りテレビに目をやる。
見てはいるものの深紅の頭にはその内容は全く入ってはこない・・・・

これから怜がベットに入るまでは約二時間・・・・・
薬が効くのは三時間後である。

深紅は怜の顔をじっと見つめる。

その視線に気づいた怜が深紅の方を振り返る。

「どうしたの?」

深紅は思わず視線を逸らし俯きポツリと漏らした・・・・・

「私・・・・・・ここに居ては駄目ですか?怜さん・・・・」

それを聞いて怜はコーヒーカップをテーブルに置く。

「深紅。前にも言ったけど、深紅はここに居ない方がいいよ・・・・・ここに居る限りいつまでも
暗い過去があなたを苦しめることになるわ・・・・・」

怜はどこか物悲しげな表情を浮かべ口を開く。

「でも!・・・・・怜さんは一人で寂しくはないんですか!?・・・・・・その・・・・・
私が居なくなっても・・・・・・平気なんですか!?」

深紅は自分でも気づかないうちに声が大きくなっていた。気になって仕方がなかったことを
勇気を振り絞り聞いてしまった。

短い沈黙が二人の間を支配する・・・・・・

「深紅・・・・・・・・・・・寂しいよ・・・・・・それは・・・・・・・でもいつまでも深紅に甘えてるわけに
もいかないじゃない・・・・・・・」

少し俯いて言葉を返す怜。

これを聞いて深紅の中で燻っていた想いが再び再燃した。
嫉妬・・・・・・愛する人が自分を愛してくれない苦しさ。
様々な負の感情がない交ぜになり深紅の心を汚していく・・・・・・
悔しくてたまらなかった。
自分の想いを成就させる直前の段階まで来てしまっていた深紅は、怜のその言葉も
自分を愛しているからこその結果であることを理解できるほど正常な思考ができなくなっていた。

怜の表向きの冷たい印象が完全に裏目に出てしまっていた。

今すぐにでも泣き出して抱きつきたい衝動に駆られた深紅だが、強すぎた怜への想いは成人を控えた美しい女性を
恐ろしく計算高い悪女に染め上げてしまった・・・・・
373名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 03:33:28 ID:loY3Jrmc

深紅には最早迷いは無かった・・・・・
後少しで怜に服用させた薬の効果が表れ始める。
それは一言で言ってしまえば媚薬なる物であったが、正常な思考を鈍らせる効果もあった。
怜の心も体も弱らせてから自分の想いの丈の全てをぶつけるつもりであった・・・・

その後はさしたる会話もなく、深紅はルリと遊んで、怜はテレビを見て過ごしていた。
黒澤家の就寝の時間になり二人は眠る準備を整え、予定通り怜の部屋で二人が同じベットに入る。

・・・・・・・・・・・・・・・・

部屋に漂う大好きな怜の香りが深紅の鼻孔を刺激する・・・・

深紅はその香りに酔いながら明かりのない空間でぼんやりと見慣れない天井を見つめていた・・・・・

どれくらい経っただろう・・・・・・

深紅は隣でこちらに背中を向けている怜に気づかれないようその背中に目をやる。

「・・・・・・・!」

暗がりの中、闇に慣れた深紅の目が怜の微かな異変を鋭く察知する。
怜の背中は短い間隔で上下しており、表情を見なくても吐息が荒くなっていることを深紅に確信させた。

「怜・・・・さん?・・・・大丈夫ですか?」

深紅が薄く笑みを浮かべて、怜の背中越しに声をかける・・・・・
その言葉はさも心配しているかのような不安気な色を含ませて・・・・・

深紅はそっと雪のように白い透き通る怜の素肌に手を触れた。

「・・・・ぅん・・・・・・だ・・・大丈夫・・・・・」

辛うじて返事を返したものの怜の体は確実に蝕まれていた・・・・
深紅の手を素肌に感じただけで吐息が漏れてしまったのだ。
怜は自分に起こっている異変に戸惑いを隠せなかった・・・・

怜の火照り上がった体は偽ることも叶わずその体温を深紅の手に伝えていた。

深紅は薬が効いていることを確信する。

「怜さん・・・・・・私、あのこと考えてみました・・・・・・・やっぱり私はここに居たい・・・・・
怜さんの側に居たいです。」

深紅は敢えてこの場で、この状況で、怜に答えを返す、もちろん思う所が有る故に・・・・・・・

「み、深紅・・・・・その話は・・・・また明日にしましょう・・・・・」

浮ついた声で返事が返ってくる・・・・・
374名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 03:35:38 ID:loY3Jrmc
「ふふふ・・・・・それは駄目ですよ・・・・怜さん。私は今言いたいんです。
私は怜さんとずっと一緒に居たい。ずっと側に居たい。怜さんのことが好きです。
誰よりも・・・・・・今では兄さんよりも愛してます・・・・・・これが答えです。
それに怜さん・・・・・・ふふ・・・・・・・・・怜さんの今の状況も・・・・・」

深紅は最早隠すつもりはなかった・・・・最早怜に逃れる術はないと確信したのだ。

「深紅・・・・・ま、まさか・・・・・あなた・・・・」

怜が深紅の言いたいことを察知し、背筋が凍るような感覚に襲われ口を開こうとした時であった。

深紅はすかさず怜の肩を掴むと強引にこちらを向かせ唇を奪う。

「んぅ・・・・ぅ〜・・・・・」

何かを言いたそうに怜の唇が力なく動こうとする・・・・
しかし、それは深紅の唇によって全て虚しい努力と化していく。

深紅はもう止めることはできなかった。
怜の上気づいた吐息が甘すぎた・・・・・溜まらなかった。

怜の柔らかな唇の隙間を深紅の舌先が割って入ろうとする。
唾液で濡れたその舌は抵抗する力を無くした唇の間に易々と侵入を遂げる・・・・

ピチャ・・・・・

舌先が触れ合うと微かな水音が奏でられた。

「ぅう・・・・・くっ」

まだ何かを言いたそうにもがこうとする怜の唇・・・・・
怜を激しく求める深紅には最早何の抵抗にもならないその行為・・・・

深紅の舌によって完全に絡めとられた怜の舌・・・・
深紅のなすがままに味わいつくされ、いいように弄ばれる・・・・

深紅が怜の口腔で舌先の動きを激しくすると、それだけで怜は少し苦しげな表情に顔を歪ませる・・・・
薬の効果はてき面であった。
怜の口の中が唾液まみれになる・・・・・

深紅は極上の料理を味わい尽くすと、舌先を突き出したまま怜の口からそれをそっと引き抜く・・・・
唾液が少しの距離を架け橋となって二人を繋いでいた。

「怜さん・・・・・大好きです。我慢できません・・・・・・薬を使ったことは謝ります・・・・・
でも、怜さんが私の気持ちに気づいてくれないから・・・・・・・酷いのはお互い様ですよ・・・・ふふ。」

深紅が悪意に満ちた表情を浮かべる。

「み、深紅・・・・・どうして?・・・・・」

おぼつかない口調で怜が深紅に尋ねる。

「ずっと前から好きでした・・・・・でも、怜さんの側にはいつも優雨さんが居た・・・・・・
二人が愛し合ってるのを想像した時の私の気持ちを考えたことがありますか?・・・・・・・・
私は辛くて、気が狂いそうでした・・・・・・どんなに自分を慰めても到底満足できない・・・・・
辛くて・・・・悲しくて・・・・・切なくて・・・・・・でも仕方ないことだと思った。
でも、優雨さんが亡くなった後も怜さんは私のことを見てはくれなかった・・・・・・それどころか
私を離そうとした・・・・・・・こんなに好きなのに・・・・・・大好きなのに・・・・・・・
許せなかった・・・・・・怜さん・・・・・・絶対に許しませんからね。」
375名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 03:38:01 ID:loY3Jrmc
大分間が空いてしまって読んでくださっている方申し訳ないです。
中々進みませんw

何とかこのスレが終わる前には・・・・w
では続きが出来たらまたです。
376名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 17:05:55 ID:JijaW3qY
>>375
ネ申キテターーーーーー!!!GJ!!
鬼畜深紅タンたまりまへん
377名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 20:16:57 ID:SYwcU8+9
>>375
おお!GJ!
深紅に篭絡されていく怜(´Д`*)ハァハァ
続き、気長に待ってますので、
是非とも書き上げてください。
378名無しさん@ピンキー:2006/02/14(火) 02:48:46 ID:/qW+PvOF
鬼畜深紅キタ━━━━━━\(T▽T)/━━━━━━ !!!!!
「ふふふ・・・・・それは駄目ですよ・・・・怜さん。」
に萌えっ!
379名無しさん@ピンキー:2006/02/15(水) 00:41:09 ID:Zg2XnSR8
鬼畜螢×女性、というのはこの掲示板では
駄目なのでしょうか?やっぱ相手は男でしょ!ってことで(´v`*)
380名無しさん@ピンキー:2006/02/15(水) 01:43:04 ID:aAot+K7T
>>379
いいんでない。
前スレにかなりの大作があったし・・・・
381名無しさん@ピンキー:2006/02/15(水) 08:28:03 ID:T9yTWSu7
〉やっぱり男性でしょ!

んなことねーよ。レズSS投下されてる直後にそういう事言うな。あと駄目かとか聞く必要ないだろ。
382名無しさん@ピンキー:2006/02/15(水) 09:12:07 ID:3tZo3B0o
仕切るな糞ボケ
383名無しさん@ピンキー:2006/02/15(水) 09:19:21 ID:oI5PcZNV
SS師の誘い受けが増えたな。

駄目かどうか聞くなら俺は男もいいけど何で螢ばっかなんだろと思う。
螢は腐女臭がするからどうせなら真冬とか真壁とかにして欲しい。
384名無しさん@ピンキー:2006/02/15(水) 10:53:31 ID:RrHa36JB
真冬×深紅なら読みたい
385名無しさん@ピンキー:2006/02/15(水) 11:45:28 ID:S8EGdDc4
なんだっていいじゃんか…
書いてもらうの待って読むだけの立場が
アレがイイこれはやめてくれだの言うもんじゃない。
386名無しさん@ピンキー:2006/02/15(水) 12:27:25 ID:oI5PcZNV
>>385
>>379で聞いてきてるから答えただけ
387名無しさん@ピンキー:2006/02/15(水) 16:18:11 ID:uocXIdIZ
楽しく雑談するくらいなら良いのでは?
SSと感想だけだと窮屈な気がするし
388名無しさん@ピンキー:2006/02/15(水) 20:54:18 ID:iBIdDD8T
雑談は本スレでいいんじゃね?
389名無しさん@ピンキー:2006/02/15(水) 23:39:15 ID:J/LY7Hmd
379です。そんなに深い意味で書いたわけでは
ないのですが、お騒がせしてすみませんでした〜。
390名無しさん@ピンキー:2006/02/16(木) 01:02:54 ID:zus4V1gW
書き手側から個人的な意見だけど
雑談とか萌え語りとかでスレが賑わってる方が投下しやすいかな
あくまでも自分の場合はって事ですが
391名無しさん@ピンキー:2006/02/16(木) 01:17:16 ID:mxlWa/Wh
>>390
そうか・・・・・
俺は過疎ってる時のが投下しやすいかなw
基本夜中w
後、荒れてる時なんか流れ変えたくて投下する場合も。
392名無しさん@ピンキー:2006/02/16(木) 14:25:37 ID:dOpUmvTV
普通そうだろな。バリバリレスが回ってて、自分が投下した後、そのSS飛び越えて新しいレスが付いたら寂しいだろうしな。
393名無しさん@ピンキー:2006/02/17(金) 05:56:36 ID:8p24EqgH
鬼畜深紅タンマダー?
394名無しさん@ピンキー:2006/02/17(金) 13:38:35 ID:BSq+kR/e
>>392
普通とか言ってんじゃねぇぞこの糞アホ
395名無しさん@ピンキー:2006/02/18(土) 00:13:11 ID:6VSRve22
>>394
はいはい・・・分かったから餓鬼は黙っとけ・・・
396名無しさん@ピンキー:2006/02/18(土) 10:21:19 ID:z1Hs/Z6k
>>394
屑。
397名無しさん@ピンキー:2006/02/18(土) 20:49:35 ID:crZp6kOD
>>396
はいはい・・・分かったから餓鬼は黙っとけ・・・
398名無しさん@ピンキー:2006/02/19(日) 20:27:06 ID:JSmRa5xf
糞やら餓鬼やら・・・>>382が一人でやってるのか。
399名無しさん@ピンキー:2006/02/19(日) 20:56:44 ID:CxSakE5x
保守
しかし前みたいに盛り上がらなくなったね
400名無しさん@ピンキー:2006/02/19(日) 21:13:36 ID:JSmRa5xf
>>399
まぁ青発売からもう七ヶ月以上立つし、青は萌え系も抑え気味だったし
そうそう回らないのもしょうがないさ。 
その割にはちまちま投下があるだけここはマシだろう。 

とりあえず零華タソ(*'A`)ハァハァ・・
401名無しさん@ピンキー:2006/02/19(日) 21:33:10 ID:M2cLcS34
青の怜×深紅は、今一押しの組み合わせなんだが。
402名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 00:54:50 ID:DVHciF8c
>>374の続き
  ↓
403名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 00:57:21 ID:DVHciF8c

怜は深紅の言葉を聞いて血の気が引いていった。
今の深紅は怜の言うことには従順に従う面影は毛の先ほども感じられなかった。

「ま、待って深紅・・・・・お願い・・・もう・・・あぁっ」

怜の抗議の言葉を最後まで深紅は言わせなかった。

怜の豊満な胸をその手で押さえつけたのだ。
快感に悶える怜の美しい表情と、手の平に感じるふくよかな弾力に確かな満足感を得る深紅。

「うふふ・・・・そんな顔私には決して見せてはくれませんでしたよね?
怜さんのどんな表情も・・・・・・もう全部私の物ですから。」

絶望的な言葉を浴びせながらゆるゆると怜の乳房を揉み込んでいく深紅の右手・・・・
その動きに薬のせいで過剰なほど敏感に喘いでしまう怜。

「ああぁ・・・ぁあ」

深紅は胸に手をあてがったまま、絹のように滑らかな怜の胸元に口付けをする。

「うあぁ」

小さくビクっ!っと体を跳ねさせ小刻みに震え続ける怜の体・・・

深紅はそのまま舌を突き出すと怜の体をゆっくりと這い回る・・・・・

「ふふ、怜さんの肌ほんとに綺麗ですよね・・・・・ずっと欲しかったんです。
優雨さんが羨ましくて仕方なかったんですよ。怜さんの綺麗な体を独り占めにするなんて・・・・」

そう言うと、深紅は自分の体を怜の上に預け体を重ね本格的に怜の体を弄び始める。

怜の頬に手を当て優しく撫でながら、もう一方の手で衣類ごしに既に硬くなっている乳首を摘むと
激しく喘ぐ怜のそれを飲み込むように唇を奪った・・・・・

怜の意識はそれだけで飛びそうになっていた・・・・・愛撫されるだけでこれほどの快感を得た
ことは過去にはなかった・・・・・正常に思考する回路が幾度と無く焼き切れそうになる・・・・・・

乳首を弄られているだけで、怜の一番敏感な女部分は意思とは関係なくじわりと湿り気を帯び始める。

「ぁあん・・・くっ・・・・はあぁ」

怜の胸を弄くる手を止めることなく深紅はそっと唇を唇から離す。

「あ・・・ぅぅあ・・・」

すぐ目の前に快感に悶え苦しげな表情を浮かべている怜がいる。

深紅のイメージにある少し冷たい感じの仕事が出来る素敵な大人の女性、という怜のそれとは
かけ離れた物が目の前にある。

今の怜は深紅の手によって与えられる快感に必死に応えている女の表情である。

深紅にはそのギャップが溜まらなかった・・・・・愛しくて仕方がなかった。
404名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 00:59:21 ID:DVHciF8c

「怜さん・・・・溜まらないです・・・・その表情・・・・・大好きですよ・・・・」

怜の着ているネグリジェの肩紐をずらして両の胸をあらわにさせる。
想像以上の豊満な膨らみが深紅の目に晒される。
それを見て深紅の鼓動は急速に増していった・・・・・

膨らみに向かって顔を近づけると、迷うことなく先っぽを口に含んでみる。

「くぅああ!・・はあぁ・・・」

途端に怜が甲高い喘ぎ声を放つ。

深紅はそれを聞いても止まることなく、口に含んだその突起を舌で絶え間なく転がし続ける・・・・

「あぁ・・・うぅ・・・っく!」

鋭く突き刺さるような快感にどうしようもないほど感じてしまう怜。

深紅はそのまま乳首を舌で弄びながら、右手を怜の下腹部へ向かい体の上を這わせていく。

その腕の動きを肌で感じ、怜は力なく少しだけ開いた足に力を入れ拒もうとする・・・・・
が、足を動かすことが出来なかった・・・・・

頭で巡らせる思考に体がほとんど反応できなくなっていた・・・・
薬のせいで、体が快感に正直になり過ぎたせいなのか・・・・・
怜の恥裂から溢れ出ている愛液がそれを物語っていた。

そして、完全に怜の意識から切り離されたその体を相手に、深紅の右手は易々と怜の秘所に近づいていく。

「怜さん・・・・・拒まないんですか?・・・ふふ・・・・・このまま指、怜さんの中に入れてしまいますよ・・・」

深紅は可笑しくて仕方がなかった。
簡単に侵入することができたのだが、怜の反応を楽しみたくなった。

「うぅ・・・・深・・・・紅・・・・・お願いよ・・・・もう・・・」

荒い吐息と共に怜が言葉を発する・・・・

「そんなにして欲しいんですか?・・・・・怜さん・・・・・・・・そうですね・・・
全然拒む気配がないですもんね・・・・・」

敢えて全く逆の受け止め方をしてみせる深紅・・・・。

「ああぁ・・・・・違う・・・わ・・・・・やめ・・・・あああぅあ!!」

深紅は最後まで言わせなかった。
怜の言葉を途中に右手の中指を怜のビショビショになった秘所に押し当てたのだ。

「もう逃げられないですよ怜さん・・・・・何も言わせませんからね」
405名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 01:02:25 ID:DVHciF8c

クチュ・・・・・・

深紅はゆっくりと中指を怜の体の中へ侵入させて行く・・・・・
感触を楽しむかのようにゆっくりと・・・・

「ああん!・・・・くうぅあはあぁぁ!」

怜の体がビクン!ビクン!と跳ねる。

深紅の指が蠢く度にその刺激が薬によって増幅され怜の脳に致命的なダメージを与える。

「ああ・・・怜さんの中あったかくて・・・・気持ちいいです。」

苦しげな表情を浮かべ続ける怜を薄笑いを浮かべながら深紅は見ていた・・・・
愛する怜を自分の手でもっと喘がせたい衝動に駆られる。

クチャ・・・チュ・・

侵入を遂げた指が怜の膣内をかき混ぜ始める・・・・・

「はああぁあ・・・ああ!・・・・あぅあはあっ!」

深紅の指が肉壁を引っ掻く度に厭らしい喘ぎ声を吐き出す怜・・・・
頭でどんなに否定しても、彼女の体は・・・・・怜の敏感な部位は全く言うことを聞いてくれない・・・・
ただ、ただ登りつめようと必死に与えられる快感を貪るだけであった。

怜の体は喘ぎ声を発することと体を跳ねさせることしかできない深紅の玩具になり下がっていた。

深紅は怜のすべてを奪えたことが嬉しかった。
怜は最早自分だけの物なのだという実感が沸きあがってくる。

深紅によってひたすら喘がせ続けられる怜・・・・・
その秘所からは止むことなく液体が垂れ流される・・・・

「うぅあ!・・・・あああぁ!・・・・あっ・・・ゆ・・・・ぅ・・・・あはあぁ!」

ピタリと怜の秘所をこねていた指が止まる・・・・

空耳ではない・・・・・深紅は確かに喘ぎ声に混じって優雨の名を呼ぶ怜の声を聞いた。

わなわなと体を震わす深紅・・・・・
一瞬にして大粒の涙が深紅の頬を伝わった・・・・

「なんで?・・・・・・なんで!?」

深紅を叫び声をあげていた。

「なんで!?・・・・どうして、優雨さんの名前を呼ぶの!!?・・・・・・どうして!?」

深紅は怜のソコから指を引き抜く・・・・
406名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 01:04:28 ID:DVHciF8c

体へ与えられる刺激が突然無くなり、焼き切れた怜の思考回路が少しだけ戻ってくる。

「はあ・・・はあ・・・・・み・・・く・・・」

「うぅ・・・ぅああああ!・・・・どうして、私の名前を呼んでくれないんですか!?
こういう時くらい、私のことを想ってくれてもいいじゃないですか!!?
今、怜さんの目の前に居るのは優雨さんじゃない!!!・・・・私なんです!!!
深紅です!!!・・・・・・」

涙で滲む視界に怜の姿を捉えて叫ぶ深紅。

怜の体は与える快感の虜になり完全に深紅のものになっていたが、その心を捉えていたのは深紅ではなかった・・・・・
そのことを突きつけられると深紅は悔しくて仕方がなかった。

「みく・・・・・」

静かに深紅の名を呼ぶ怜。

「・・・・悔しい・・・・・悔しい・・・・・どうして!!?・・・・・怜さん!
私は怜さんのことが大好きなんです!!!私のことを見て欲しい!!見てください!!!!
私・・・・ほんとにおかしくなりそうです!!!!つらい・・・・・苦しいんです・・・・・
お願いです・・・・・・お願いですから・・・・・悔し・・・・・・い・・・・うぅうあああああ!!」

深紅は怜の胸元に顔を埋め、声をあげわんわん泣き出した。
怜の体だけではない・・・・・・その心も深紅は欲しかったのだ・・・・

「うああああああ!!・・・・・どうして!?・・・・・・私のこと見てくれないんですか!!!?
うぅぅあああああ!・・・・・・・・怜さん!!・・・・好きなんです!!!
大好きなんです!!!・・・・・」

行為に及ぶ前に告白した時とは違い、深紅の必死の訴え・・・・・

怜は今まで深紅がこれほど取り乱したのを見たことはなかった。
深紅の自分に対する想いが痛いほどに伝わってきた。

自分の胸の中で泣き叫ぶ少女の姿は怜の思考を急速に現実へと引き戻していった。

怜は深紅の頭に右手をそっと運んだ・・・・・

深紅は怜に頭を優しく撫でられながらもしばらくは泣き止むことはなかった・・・・・
407名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 01:12:17 ID:DVHciF8c
ま、まだ終わりではないです・・・・・
また続きが出来たらです。

まだ上に書いたのも書ききっていないのだが、

澪と繭と深紅で三人とも同じ女子高に通っていて、
学園物の妄想が涌いてしまった・・・・
三角関係で澪→深紅→繭→澪・・・・みたいな感じでw

繭の嫉妬心をうまく表現できるかだが・・・・
難しそうw
408名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 01:17:28 ID:/m6pCjyP

リアルタイムで読めてラッキーでした
409名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 01:21:55 ID:/eiNby6q
>>407
G J!!!
こ、これはすごい・・エロ過ぎる(*'Д`) 
410名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 01:26:50 ID:DVHciF8c
ちょww人居たんか!ww
即レスついてびっくりしたw
お二人とも感想ありがとです。
411名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 01:30:26 ID:/eiNby6q
>>410
リアルタイムで見てましたw
続きwktkしながら待ってます
412名無しさん@ピンキー:2006/02/22(水) 20:57:05 ID:tYaHODbH
\(*~∀~)/イイ!
413名無しさん@ピンキー:2006/02/24(金) 18:01:18 ID:ofwnDbKG
>>407
おお続きがきてる!GJ!
何かやたらと業を背負ってそうな深紅がいいね。
414名無しさん@ピンキー:2006/02/26(日) 16:28:02 ID:8sLa3EKx
最近シセイ始めたけど、深紅めちゃ可愛いね。
というわけで深紅SS希望
415名無しさん@ピンキー:2006/02/28(火) 00:10:17 ID:qNnOkehQ
    ||  
 ノ⌒||^ヽ <兄さん・・・・今 逝きます
彡/‖ ̄ ヽ  
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416名無しさん@ピンキー:2006/02/28(火) 12:51:21 ID:cPgvD2Pz
>>415
クォルァ!!
417名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 00:19:57 ID:viadxzDF
>>406の続き
  ↓
418名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 00:22:51 ID:viadxzDF
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

どれくらいの時間が過ぎたか・・・・・・

怜の体の火照りも収まり、深紅から伝わってくる体温も刺激ではなく温もりとして感じられるようになる。

先程まで繰り広げられていた淫行の時とは打って変わって、今は静寂が暗闇を支配していた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「深紅・・・・・・・・・ごめん・・・・・・・・・・」

闇の中、怜の声がポツリと漏らされる。

その声を聞いて、怜の胸の中で目を硬く閉じ、嗚咽を漏らすだけとなっていた深紅が表情をふっとゆるめた・・・・・・

怜の温もりを頬に感じながら、何かを悟ったような表情・・・・・・

深紅は怜に預けていた体をそっと起こすと、怜のベットから降りる。

深紅のその行動を怜は体を動かすことなく顔だけをそちらに向けた・・・・・・・

「怜さん・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・こんなことして・・・・・・
辛かったんです・・・・・・・怜さんのことが好きで・・・・・・辛かったんです・・・・・」

怜の横になっているベットのすぐ側に立ち、怜に背を向けたまま搾り出すように言葉を吐き出す深紅。

「深紅・・・・・」

戸惑いの色を含んで怜の言葉が返される・・・・

「ごめんなさい、怜さん・・・・・・おやすみなさい・・・・・」

深紅は挨拶をすると、そそくさとそのまま足を進め部屋を出ようとする・・・・・

「深紅」

ドアノブに手をかけた時であった・・・・・怜が深紅の名を呼ぶ・・・・・

深紅はノブに手をかけたまま、怜の次の言葉を待った。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「おやすみ」

怒気は少しも感じられない怜の優しい声であった・・・・・

深紅は挨拶を返すことなく部屋を出ていった・・・・
そして、そのまま自分の部屋に入りすぐさまベットに体を横たえた。
419名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 00:26:45 ID:viadxzDF
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

深紅はぼんやりと見慣れた天井を見つめていた・・・・

落ち着かないように何度も寝返りをうつ。

今日までの経緯が深紅の頭の中で再生される。

深紅は後悔はしていなかった・・・・・・
一時でも愛する怜と肌を合わせられたことは幸せであった。
その体にまだ残る怜の肌の温もりが心地よかった・・・・・
愛する人を手に入れたと思えたことが・・・・・・
それも怜には受け入れては貰えなかったが・・・・・・

怜の胸の中で散々泣き腫らして気が晴れたのであろうか・・・・・
深紅の心の中に長い間吹き荒れていた風は穏やかな物に変わっていた・・・・・

そして、怜を卑劣な手段で手に入れることを心に決めた夜と同じように
深紅はある決意を胸に秘めた・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

次の日の朝、深紅は朝早くに起きると部屋の整理を始める。
一通りやり終えると、いつものように今度はキッチンに行き朝食を作り始める。

葱を刻む軽快な包丁音と、水の沸騰する音・・・・・

「にゃあ〜」

物思いに耽りながら葱を刻んでいた深紅の後ろから不意に聞こえるルリの鳴き声。

「いたっ!」

意表を突かれ深紅は手元を誤り、少しだけ包丁で細い指を傷つけてしまった。

血が滲むその指を口に含んで、ルリの方に目をやる深紅・・・・・

「もう・・・・・驚かさないでよ、ルリ。」

ルリは当然深紅の訴えに答えることもなくじっと深紅の目を見つめていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・・・・・・・・ルリとも、今日でお別れだよ・・・・・・・
これからは怜さんと二人で仲良くね・・・・・」

スゥーっと深紅の頬を涙が伝った・・・・・・決して痛みのせいではない。

紡ぎ出された別れを告げる深紅の言葉に何かを感じ取ったのか、目を細めるルリ・・・・

「あ、お湯が沸いちゃってる・・・・」

深紅は煮え立つ鍋の音を聞いて涙を払い、慌てて料理を再開する。

料理が出来上がるとほぼ同時に、二階からドアを開ける音が聞こえ怜が階段を降りてくる・・・・
420名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 00:32:45 ID:viadxzDF

「おはよう深紅。」

キッチンの横を通り、簡単に朝の挨拶をしてそのまま洗面所に向かう怜。

深紅は怜の顔を見るのが怖かった・・・・

そちらを向くことが出来ず挨拶を返すことができなかった・・・・・

深紅がテーブルに出来上がった朝食を運んでいる時に怜が戻ってくる。

「深紅?・・・その指どうしたの?・・・・・血が出てるじゃないの!」

茶碗を運ぶ深紅の左手の指に血が滲んでいることに怜は気づく。

「あ・・・・ちょっと料理してる時に・・・・・切ってしまって・・・・・」

恥ずかしそうに俯き答える深紅。

「見せてごらんなさい。」

茶碗を深紅の手から奪うと、怜は深紅の手を傷口に触れないよう掴んで、切れている場所を確認する。

「まだ、血が完全に止まってないわよ。後は私が運んでおくから、ちゃんと手当てをした方がいいわ。」

滲み出る赤い血・・・・・・・

深紅はポロポロと涙を零し始めた・・・・・怜の変わらない優しさが嬉しかったのだ。

「ありがとうございます、怜さん・・・・・・・・・・・・・」

意思とは関係なく流れ出す涙を空いている右の手で拭う・・・・・

「み、深紅?・・・・」

泣いている深紅に気づいて驚く怜。

「ありがとうございます・・・・・・・・・・・
でも・・・・・・・・・それよりも・・・・・・怜さんに・・・・・・・・・言いたいことがあって・・・・・・」

急に泣き出す深紅を見た怜は、始めは痛みのせいかと思うが、そうではない気配を深紅の口調から感じ取る。
421名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 00:34:26 ID:viadxzDF

「どうしたのよ?」

泣いている子供を安心させるような優しい怜の口調・・・・・・

「あの・・・・・・・私、やっぱり今日でここを出て行こうと思います・・・・・・」

「え?・・・・・」

怜は突然の告白に驚いた表情で深紅を見つめる。

「昨日あれから部屋に戻って考えたんです・・・・・・・・私はここに居たい・・・・・・
怜さんの側を離れるのはとっても辛いんです・・・・・・・」

怜の表情が少し険しくなる・・・・・・

「・・・・・だけど、怜さんに嫌われてまで側に居るのはもっと辛い・・・・・・・・・
だから、出て行きます・・・・・・・・・食事も今日は怜さんの分しか作っていませんので・・・・・・・
怜さんが食べてる間に・・・・・・私準備して・・・・・・・」

涙が深紅の言葉を遮ってしまう・・・・・・・・

二人が真剣な表情でお互いを見る。

「ありがとうございました・・・・・怜さん。」

深紅は怜の手から離れると、身を引き深々と頭を下げる。

頭を上げると深紅は涙を拭いて笑顔を作ってみせた・・・・・・・

そして呆然とする怜に背を向け自分の部屋へ向かおうとする・・・・・・・

「深紅・・・・・・・行かないで・・・・・」

深紅の背中に向かって穏やかな怜の声が投げられる。

「・・・・・え?」

ピタリと足を止める深紅・・・・・・・・

「私も昨日あの後考えたわ・・・・・・優雨のこと・・・・・それに深紅のことも・・・・・・」

深紅が背を向けたままでピクッっと怜の言葉に反応する・・・・・・・
422名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 00:38:17 ID:viadxzDF

「私は深紅のことが好きよ・・・・・・・・だから、深紅のためにここを去って行って欲しかった・・・・・・・
ここを離れて幸せになって欲しかった・・・・・・・でも深紅はそれじゃ駄目なんだね?・・・・・・・
それじゃ深紅は幸せにはなれないんだね?・・・・・・・」

ゆっくりと怜の方を振り返る深紅・・・・・・・

「深紅の気持ちは受け取ったわ・・・・・・・辛い思いさせたね深紅・・・・・・」

深紅はその言葉に目を大きく見開き微笑む怜を見つめる。

「・・・・れ、怜さん、それじゃあ!?・・・・・」

コクリと頷く怜。

「その代わり、もう薬は勘弁してね。」

少しぎこちない微笑を浮かべながら怜は訴える。

「・・・・はい・・・・」

悪戯を注意された子供のように深紅は視線を逸らして顔を赤らめる。

「この先、深紅に大切な人が出来るまで私で良ければ代わりをするわ・・・・・
それまではここに居て欲しい・・・・・・・一緒に居て欲しい・・・・・・深紅。」

「怜さん・・・・・」

ジワリと深紅の目からまた涙が溢れだす・・・・・・ここ最近で幾度となく流した涙・・・・・・
しかし、それは今まで流した涙とは違う・・・・・・

「怜さん・・・・・怜さん!!」

深紅は怜に走り寄ると迷わずその胸に飛び込んだ・・・・・

自分の胸の中で嬉し涙を流す少女を怜は優しく包んでやる・・・・・・



(怜さん・・・・そんな人、私にはこの先ずっと出来ません・・・・・だってここに・・・・・目の前にいるんだから・・・・)


----------------------------------END---------------------------------
423名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 00:41:56 ID:viadxzDF
やっと終わりましたw
呼んでくれた方々どうもです。

今、零華×深紅で妄想が涌いているので、
無事出来上がったらまたお邪魔させて頂きますw
今度はも少し間を置かずに投下したいと思っています・・・

ではノシ
424名無しさん@ピンキー:2006/03/01(水) 20:04:06 ID:S/ROia8p
>>423グッジョブ!次のも楽しみにしてます。またお願いします。
425名無しさん@ピンキー:2006/03/02(木) 08:16:40 ID:WqOAyCAK
age
426名無しさん@ピンキー:2006/03/03(金) 15:30:08 ID:WrKGLC5b
>>423
ごちそうさま
うまかっ です
427名無しさん@ピンキー:2006/03/04(土) 23:48:49 ID:n5lSi6un
428名無しさん@ピンキー:2006/03/05(日) 18:41:29 ID:0zJFWaoT
深紅たんが、縄の巫女に全裸にむかれて
ちっちゃなおっぱいを亀甲縛りにされて、
宙に持ち上げられたまま大股開きで まんこに注連縄みたいに
より集めた太い縄をぶちこまれて
アナルにも一本、尿道にも細いのを一本あわせて3箇所同時責めで
気が狂う寸前までズコズコされる そんな妄想を
ふと思いつく春のうららかな日
429名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 03:29:30 ID:9HznsNyb
はじめてこのスレみた
保管庫の画像みてみた

ワラタ
430名無しさん@ピンキー:2006/03/07(火) 05:47:18 ID:3W1/mG6X
431名無しさん@ピンキー:2006/03/07(火) 06:10:24 ID:flBREGIf
>>430

キャラスレと本スレ
432名無しさん@ピンキー:2006/03/07(火) 23:57:06 ID:flBREGIf
>>429
それはいい意味のワラタなのか悪い意味のワラタなのか?w

自分は天倉姉妹が合体しながら「零!」ってなってたのが好きw
あのノリで連載して欲しかった・・
433名無しさん@ピンキー:2006/03/08(水) 02:01:45 ID:nGqSO6FE
>>432
いい意味のワラタ

Wikiからいける保管庫にいって
エロパロスレ04-977の漫画みてワラタ
434名無しさん@ピンキー:2006/03/08(水) 10:09:17 ID:3Yvm7VjQ
>>433
そうかいい方かw 繭がおかしい系はそれに限らずよく多いタイプだな。
もうやってるかもだが全部あさって見るといいぞ!

そいうのだと俺は澪がパンチラ狙ってハァハァしてる系ので笑ったな。
 あの逢坂家階段置き去りダッシュはかなりの人間がリアル体験してるはずだw
435名無しさん@ピンキー:2006/03/08(水) 10:21:47 ID:3Yvm7VjQ
日本語がおかしいな・・「よく多いタイプ」でなくて「よくあるタイプ」だ。

しかし最近TVのお笑いとか見てても思うんだが悪意を感じさせない笑いって
難しいんだよな。 まったり笑わせっつか。 そういうの見ると感心する。
・・・エロパロでそういうSS希望とか言ったらいけないんかな。。
436名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 01:46:26 ID:WzioI0qU
ぼくは、黒澪が白繭をチョメチョメしてしまうSSがよみたいです!
437名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 16:00:19 ID:DM8V5aCP
ここは21禁だ!ぼくちゃんはお断りだ!!!!!




>>436 ・・・・・激しく同意
438名無しさん@ピンキー:2006/03/12(日) 20:58:23 ID:vuLFGCRF
>>436烈しく同意(*´д`*)ハァハァ
439名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 01:49:09 ID:xIkQeR6W
ん〜今時の未成年が「チョメチョメ」なんて…使うだろうか…
いや、なんでもないんだ。忘れてくれ…。
440名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 03:44:51 ID:HwfJ9LL8
>>439
思わぬ方向から突っ込みワロタwww

今でも結構聞くんじゃないか?チョメチョメ。
若い子は変わりに普通何て言ってんだろ。
441名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 12:28:39 ID:Pbh8eblf
チ ョ メ チ ョ メ な ん て 言 わ な い !


変わりにドックンドックンって言います。
442名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 03:51:49 ID:nXcVAe2P
チョメチョメ話で盛り上がってますね
チ ョ メ チ ョ メ ! !
443名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 05:27:35 ID:0Jjtk3VN
Oh! tyometyome!!
444名無しさん@ピンキー:2006/03/14(火) 06:57:41 ID:oTpT8dDK
いや待てドックんどっくんって言うってのは突っ込むところだよな???
445名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 22:20:10 ID:JeCumNq3
零総合 膝
446名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 23:03:29 ID:WxGulzR6
>>445
また繭が澪いじめですか
447名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 23:26:26 ID:l8/Iultl


しとしと降り注ぐ雨。
気味悪く肌に纏わりつく空気。
薄闇の中、木貼りの床を踏む自分の足音が耳に障る。

この村に迷い込んでから、どれほどの時間が過ぎただろう。
何日も彷徨っているようにさえ、繭には感じられた。

「澪、どこかな……」

何よりも大切な、双子の妹。
自分を探してくれているであろう彼女は、無事でいるだろうか。

――ここに来てから、何度も繭を誘う声。
気がつけば遠く離れた所にいて、その度、澪に迷惑をかけて。

早く合流しないといけない。
恐怖を堪えながら、繭は痛む足を速めた。

『……おねえ、ちゃん』

不意に前の曲がり角から声が届く。
聞きなれた声。間違えようがない、妹の声だ。

『どこに、いるの……』
「澪! ここにいるわ!」

待ち望んだ再会。
駆け込むように、繭は声のほうに急いだ。
角を曲がって、薄闇の中目を凝らす。

――だけど、妹の姿が見えない。

声はしたのに、どうして姿が見えないのか。
首を傾げつつも、繭は辺りを探し回る。

と、その時。

――ぞわり。

背中に、冷たいものが触れた。
448名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 23:27:03 ID:l8/Iultl



「ひゃ……!」

思わず跳び退いて、さっと振り返る。
また怨霊が出たのかと思い、自然と身が硬くなった。
震える足に力をこめて、逃げる心積もりを整える。

『おねえ、ちゃん……』

こんな時に、また澪の声が。

「澪、霊がいるわ! 気をつけ……て……」

叫びかけて、繭はあることに気付いた。

――澪の声がするのに、姿が見えない。
――さっき触れられた、ぞっとするような冷たさ

そういえば、澪の声がやけに高い気がする。

「み、澪……?」

おそるおそる、呼びかける。
応えるかのように、繭の前に姿を見せた―――――澪。

だけど。
その肌は異様なまでに――透けるほど青白く、瞳は虚ろで。

『おねえちゃん……やっと、みつけた』

虚ろな瞳に、微かな光が宿る。
口元が大きく歪んだ。邪な意思を秘めた笑み。

まさか、まさか、まさか。
信じたくない、信じたくなんてないけど―――

「みお……しんじゃった、の?」
『そうだよ、しんじゃったよ……ふふふ』

ああ、この笑い声は。
何度か見かけた、子供の霊とそっくりだ。

――本当に、澪は死んでしまったのか。
私を探すために、この村を彷徨って。

449名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 23:28:05 ID:l8/Iultl



『そうだよ……おねえちゃんのせいだよ』

まるで心を読んだかのように、澪が責める。

『おねえちゃんのせい……おねえちゃんがわるいの』

少しずつ、少しずつ。
邪悪な笑みをうかべたまま、澪が迫る。

『おねえちゃん……さむいよ、いたいよ』

触れ合うほど近くにまで来たのに、繭は逃げられない。
いや、逃げようという気さえ起きなかった。
澪が死んだ、その事実に強烈なショックを受けて。

『おねえちゃん……たすけて』

澪の手が、繭の肩に伸びた。
ぞっとするほど冷たい手。死人の温度。
生者の温もりを欲して抱き寄せる。

襲い来る痛みに備えて、身を竦ませた。
ぎゅっと目を閉じる。そんなことで和らぐ筈もないのに。

――だけど。
いつまでたっても、痛みはやってこない。

不思議に思って、繭はそっと目を開けた。


――澪は、笑っていなかった。
――悲しげに、繭の顔を見つめていた。

「どうしたの……?」
『だめ……おねえちゃん、しんじゃう』

いやいやをするように、澪は首を横に振る。
繭を抱きしめる腕が、離れた。

『おねえちゃん、がんばれ……』

ふわふわと。
澪の霊が、離れていく。

『きっと、でられるよ……』

この村から、きっと。
エールを残して、背中を向ける。
450名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 23:29:26 ID:l8/Iultl



――だめだ、と思った。


今を逃したら、二度と会えなくなってしまう。
そんなのはだめだ。たとえ、澪が怨霊になってしまったとしても。

「――待って!」

手を伸ばす。大事な妹を、引き止めるために。
霊体をつかむことは出来なかったけど、澪が止まってくれた。

『……どうして、とめるの?』
「だって……寒いんでしょう? 痛いんでしょう?」

繭に訴えた言葉。
寒くて、痛くて。助けてほしいと。

「私、きっと出られないよ。澪みたいに強くないし、足も弱いし」

嘘じゃない。本当に、ひとりでは脱出できないだろう。

「だから……」

繭は、言った。

「私のこと、好きにして……いいよ」

451名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 23:30:20 ID:l8/Iultl



『ほんと、に……ほんとにいいの?』

信じられないといった風に、澪が訊き返す。

『しんじゃうよ……わたしとおんなじになるよ……?』
「うん……いいの。澪と同じになりたいから」

ずっと一緒にいたい。そう想っていた。
こんな形で叶えられるのは、なんて皮肉だろう。

「寒くても、痛くても。ずっと暗くても……」

怨霊として永久になるのは、どれほどの苦しみか。
分からない。分からないけど……。

「ふたりなら、きっと辛くないよ」

これだけは、間違いないって言える。

『おねえちゃん……おねえちゃん!』

もう一度、澪に抱き寄せられる。
冷たい澪の体。
抱きしめてもらっても、抱きしめてあげることはできない。

それが切なくて。
だけど、一緒になれる喜びが心を火照らせる。

452名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 23:32:18 ID:l8/Iultl
へたれss書き参上!
この程度でよければチョメチョメ書くよ。目障りなら消えます。


453名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 02:14:48 ID:XtzvNu9J
ドックンドックンでおk
454名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 07:45:00 ID:IzXzLcbw
>>452
切り口が新鮮でイイ!続きみたいなのがあったらいいなと。
455名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 07:47:54 ID:IzXzLcbw
うわ、あげちまった、スマソ
続き・・とか後日談みたいなものでね。
456名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 08:33:37 ID:/PO/C2D/
>>452
ありえそうで泣きますた。
私、何度も澪死亡させてるけどこーいう風になってるって思えたら救われたよ。
457名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 14:32:20 ID:DBjyelA0
是非チョメチョメ書いて下さい!
458名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 16:17:50 ID:3gPB9sHk
え?ちょ 続くんだよね?>>442
「好きにしていいよ」って言ってるんだし好きにするんだよね?
んで精気吸われきって「交わりつづける双子」って地爆霊になるんだよね?


触れられない相手にチョメチョメされてる間掴むものがなくて困る繭ハァハァ・・・
459名無しさん@ピンキー:2006/03/16(木) 21:47:40 ID:mHYrbmXX
>>458

交わり続ける双子・・に激しく萌えた
460名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 02:09:08 ID:KbX1klEx
パシャ
もわゎ〜ん




『攻め続ける澪』
『捕まる物がなく困る繭』
461名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 03:20:20 ID:10Ibazue
地縛霊/八の刻/逢坂家前

「ひとつになろうと魂と体とを交わらせ続けた双子。
既にお互い死を向かえていることに気づかず
方や延々と精気を吸い続け、方や吸われ続けている。」
462名無しさん@ピンキー:2006/03/19(日) 10:18:18 ID:eCDisiId
>>460
>>461
神・・・・ハアハア
捕まるものがないまま、澪に攻められ続ける繭。必死受け・・ハアハア
463452 :2006/03/20(月) 17:32:28 ID:t5sdG4iE
澪の手が、そっと胸に添えられた。
受け入れよう――覚悟を決めていても、身構えてしまう。

これから、何をされるのだろう。
乳房を揉みしだくつもりだろうか。それとも―――

「―――!?」

反射的に目を瞑ってしまう。
瞬間に感じたのは冷気。胸の外からではなく、内側から。
目を開くと――澪の青白い手が、胸の中に埋まっていた。

「やぁ……なに、これ………」

ぬるっとした冷気が胸の中で膨れ上がっていく。
痛みは無かった。代わりに感じるのは切なさ。
まるでこの冷気と混じって、乳房が溶けてしまうような感覚。

「あ……く、んっ………」

胸の冷たさと反対に、身体には微熱が宿る。
切なさ以上に、繭はこの状況に興奮していた。

(澪に、犯されてる……)

いつも、求めるのは自分の方だった。
待って、置いていかないで。何度口にしたことか。

それが今は、澪に求められている。奪われている。
文字通り、自分の全て――命までも。

『もっと……おねえちゃんが、ほしい』

空いた片手が、繭の背に回される。
手はそのまま繭のお尻に下って、弾力ある丸みへと。

「―――み、澪っ! そこはダメ―――」

慌てて止めようとするが、遅い。
添えられた手が、スッと尻肉の中に埋まっていく。
464452:2006/03/20(月) 17:33:19 ID:t5sdG4iE
「くあっ―――!」

繭の身体が大きく揺らぐ。
下腹に霊体を受け入れた衝撃は、胸のそれとは比べ物にならなかった。

「あぅっ……お腹、苦しい………」

お腹から、体中に粘着質な濃気が広がっていく。
身体が内側からドロドロに溶かされる。
血が、肉が、骨がぐちゃぐちゃに混ざってしまう。

『わたしにもたれて、いいよ?』

澪のそんな言葉を待たず、繭は身を預けていた。
顔色は血の気が引いて白く、足はびくびくと痙攣している。
立っているのが辛いくらい消耗していた。

「うくっ………ねえ、みお?」

悶えながら、繭は微かに笑む。

「ずっと……いっしょだよね? やくそく……したよね?」

姉の生命を喰らいながら、澪も微笑んで返した。

『うん……ずっと、ずっといっしょだよ』



どんなに暗くて、冷たいトコロでも。
ふたり一緒にいられるなら、きっと辛くない。

465452:2006/03/20(月) 17:34:33 ID:t5sdG4iE
「くあっ―――!」

繭の身体が大きく揺らぐ。
下腹に霊体を受け入れた衝撃は、胸のそれとは比べ物にならなかった。

「あぅっ……お腹、苦しい………」

お腹から、体中に粘着質な濃気が広がっていく。
身体が内側からドロドロに溶かされる。
血が、肉が、骨がぐちゃぐちゃに混ざってしまう。

『わたしにもたれて、いいよ?』

澪のそんな言葉を待たず、繭は身を預けていた。
顔色は血の気が引いて白く、足はびくびくと痙攣している。
立っているのが辛いくらい消耗していた。

「うくっ………ねえ、みお?」

悶えながら、繭は微かに笑む。

「ずっと……いっしょだよね? やくそく……したよね?」

姉の生命を喰らいながら、澪も微笑んで返した。

『うん……ずっと、ずっといっしょだよ』



どんなに暗くて、冷たいトコロでも。
ふたり一緒にいられるなら、きっと辛くない。

466452:2006/03/20(月) 17:35:53 ID:t5sdG4iE
村の外れ。林の中に、一本の大樹がある。
その下に、手を繋いで眠る双子の霊の姿があった。

村を覆う黒い瘴気も、徘徊する怨霊も知らぬかのように。
眠る双子は、安らかな笑顔をしている。


――ずっと、いっしょ。


幼い頃の約束は、これからも永久に、破られない。



467452:2006/03/20(月) 17:37:38 ID:t5sdG4iE
すみません、一部が二重になってしまいました。
×に身投げしてきます……





468452:2006/03/20(月) 17:51:28 ID:t5sdG4iE
後日談。



町外れの廃品回収屋に就職した澪は、
幽霊暮らしを始め、姉の繭と蜜月の日々を送っていた。

そこへ、蔵の少年樹月が妹の千歳を連れてくる。

千歳は立花家に置き去りにされており、
やむなく澪と繭が保護することになった。

さらに樹月の昔の彼女、紗重も虚を飛び出してきた。
問答の末、彼女までも居座ることに。

澪、繭、千歳、樹月、紗重。
この5人で過ごす、最初で最後の夏休みが始まる。


皆神アフター 〜It,s a wonderful ghost〜 絶賛発売中。
469名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 19:29:37 ID:slQDpyh6
乙ーーーーーーーー!!
470名無しさん@ピンキー:2006/03/20(月) 21:28:57 ID:CWhh0UXs
>>452
せっかく良いネタだったんでもう少し長くやって欲しかったがイイ!
エロかつひとつになってる感じする。
471名無しさん@ピンキー:2006/03/23(木) 15:19:52 ID:HneP9udI
久々にきたけどみんなJ!
472名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 23:34:28 ID:Hk90dbSu
いいね!!感動した!!
473名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 11:25:47 ID:9SuEtVlk
初めてきたけど刺青しかした事ない俺
474名無しさん@ピンキー:2006/03/26(日) 16:36:43 ID:th13W/bB
それはそれは寂しいことで。。
475名無しさん@ピンキー:2006/03/28(火) 03:29:16 ID:qgm/RnpC
刺青の最終回が一番好きな俺がきました
感動的だノД`;
476名無しさん@ピンキー:2006/03/29(水) 17:57:26 ID:m3JNp3Jr
夢の中に入ると、そこは見た事も無いような場所だった。
雰囲気は眠りの家と同じ。幾つかの気配が感じられる。
「…な、なにこれ」
身体を起こそうとして、四肢が縄で縛られている事を知る。
丸い台の上に大の字でいるのは青く、露出の多い服を着ている女。黒澤怜だ。
首を動かして周囲を見渡すと、四肢に繋がれた縄の先に4人の白装束の男がいた。

「貴方も――」

声――低い女の声――が真下から聞こえた。
大きめの膨らんだ胸が、下に視線を向ける怜の邪魔をする。
それでも谷間から微かに人の姿が見えた。

巫女姿の、腕の長い女だった。暗闇の中に見えるその顔は不気味に笑っている。

続?


ハジメテ ショウセツッテノヲ カイタケド
ヘボスギテ カキコメネ('A`)
477名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 21:27:07 ID:1RIWx/Mi
文章は悪くない
あとはじっくり話を作ろう
478名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 22:07:43 ID:ZdlLl1Tc
そうだね〜ばっちし♪
479名無しさん@ピンキー:2006/03/31(金) 02:26:43 ID:zd06LdNb
>>477-478
('A`)




('∀`)
480名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 01:27:27 ID:FX0cBqjO
保守
481名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 21:12:20 ID:db71/jRU
保守
482名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 23:00:52 ID:BRrwq6oh
今日も黒澤家の朝は平穏そのもの。
「怜さん起きてください、朝ですよ」
シャッとカーテンを勢いよく開ける、気持ちの良い光が部屋を満たす。
「うぅん…深紅ぅ、頭痛いぃ」
「知りません、昨日は止めたのにアレだけ飲んだんですから当たり前です!」
「深紅の意地悪ぅ〜」
「意地悪ぅ〜じゃありません、早くシャワー浴びて目を覚ましてください」
「深紅が入らせてぇ」
「何を甘えてるんですか、朝ご飯出来てますから、冷めないうちに来てくださいね」
「うぅぅぅ…深紅ぅ後生だからバスルームまで連れてって」
「う〜ん、仕方ないですねぇバスルームまでですよ」
「ありがと深紅」
そう言って私の肩にに手をかける、否が応でもその豊満な胸が背中に当たる。
顔が赤くなったのだろう、それを見た怜さんはからかうように
「あれぇ?顔真っ赤だよ深紅、私の胸意識しちゃった?」
「そんなことありません、もぉ!からかわないでください」
「あはは照れちゃって、可愛い」
「はい、着きましたよ、私はもう少し準備がありますから」
「ねぇ深紅〜一緒に入ろ」
「な、何言ってるんですかそんn」
言うより早く唇を塞がれてしまった。
「んん、深紅可愛いわよ」
「ぷぁ、怜さん朝ご飯が…」
「そんなの後で良いわよ、だから…ネ?」
そう言うとまた唇を重ねた。
「(もぅ、また朝ご飯が遅れちゃう)んんふぁああ」
服を脱がされ、バスルームの中に連れて行かれる。
「(私って押しに弱いのかなぁ…)今日は手短にお願いしますよ?」
「分かってるわよ、タップリ可愛がってあげる☆」
「全然分かってない!」



エロなしすいません。
483名無しさん@ピンキー:2006/04/06(木) 23:10:10 ID:vwGmC2r0
続き続き!
484名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 00:35:39 ID:izAHhiRX
引っ越しとか、忙しいんで落ち着いたらまた書きまつ
そん時はエロも混ぜつつ
485名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 18:24:33 ID:t5R4jRYM
つか、別に本番(ありえないがw)なくても、結構えろいし。
このくらいのえろさは、割と好みだ。
486名無しさん@ピンキー:2006/04/07(金) 21:09:59 ID:nb9mAaZB
赤い蝶買ったけど
真っ暗すぎてコンボきめれねぇwwww
487名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 04:55:37 ID:uk52lGPm
>>486
ヒント:オプション設定
488名無しさん@ピンキー:2006/04/08(土) 08:42:11 ID:0C+HFZV9
オプション:明るさMAX
TV:明るさMAX
俺:黒澤家階段にて繭撮影会

なんで進めないんだろう?
489名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 12:26:04 ID:f+U2iXAO
保守
490名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 15:42:20 ID:liJUanHB
ただいま不倫中なんですがもう不倫はやめ
ようと思いますセフレが欲しいならここをおすすめ
します    http://home.doramail.com/vum633556:doramail.com/

491名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 07:29:58 ID:8VSj5vh2
ho
492名無しさん@ピンキー:2006/04/10(月) 22:56:40 ID:mDnIQRsd
syu
493名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 00:01:01 ID:v9fKVcbP
今日も保守ですね
494名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 00:23:05 ID:qJEJf6nt
フォシュ
495名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 17:22:56 ID:eAo5ZDIe
ウウウウウウウウうううううううううううううううううう
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

496名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 18:18:52 ID:sJ0ncusa
497名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 00:27:24 ID:r3DYUsgg
ちんこのことをなんて書けばいいのか迷う
498名無しさん@ピンキー:2006/04/19(水) 21:03:28 ID:gHdhRu0J
肉棒。陰茎。怒張(こういう字だったかな)。
己。分身。ペニス。蛇。男根。巨根。
499名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 20:05:34 ID:2ZhfZ89f
螢のは

テラカワイソス。
500名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 17:55:25 ID:EnaVUWH/
あげ
501名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 16:53:08 ID:8quFiN/Y
急に過疎ったな…
502名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 23:48:19 ID:FrzcwK8s
ほしゅ
503名無しさん@ピンキー:2006/04/28(金) 18:58:29 ID:6O043GTU
ほしゅ
504名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 22:30:52 ID:+LYfnv41
タイ人男性、双子姉妹と「結婚」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060429-00000023-jij-int

保守
505名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 22:56:28 ID:BhcUW6LZ
ってか、刺青の聲のEDが気に入らない
何故、澪繭が出てこない…
506名無しさん@ピンキー:2006/04/29(土) 23:38:37 ID:Zty1Sd2z
 せめて澪の姿がはっきりとでていないと、
元気なのかどうかわからないですよね〜。
507名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 00:28:31 ID:wFSTEkBx
そうだそうだ
出来れば繭が生き返るようなEDが良かったな
508名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 01:07:40 ID:UWKxjXjL
そんなミラクルなドリームEDやだ
生き返ったらハッピーってそんな能天気な……
509名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 03:58:54 ID:ub47wfjN
生き返らないからいいんじゃね
510名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 15:42:24 ID:Qm1xM4j6
最後は澪と零体繭のキスシーンで終わるENDに脳内分岐。

さよなら、おねえちゃん。
さよなら、澪・・・。

で、最後に一枚絵で、春の日に晴れた空を仰ぐ澪の一枚絵で〆る、と。
511名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 17:35:35 ID:qwQvVNMc
そんな潔く納得してどうする!

せっかくひとつになる儀式を成功させたんだから
澪は繭に一生縛られて生きていく堕落ED希望!!

あるいは青キャラと対の関係として死人についてっちゃうED希望!

・・でも青で追加されるとしてもこれ以上紅には
触れて欲しくないのが本音か・・・
512名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 17:37:38 ID:qwQvVNMc
青で追加→青箱で追加

まぁついてっちゃうEDならこのスレで結構SSが投下されてて
嬉しい限りではあるな。
513名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 19:59:46 ID:wFSTEkBx
やっぱり繭は生き返っちゃいかんか…
514名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 20:27:20 ID:s9TH19Fd
まぁ別EDでは繭も生きて幸せそうだし良いではないか。

紅蝶ED後もきっと来世ではまた一緒になれるさあの二人は。
つか皆神の双子も皆そうだといいな。

とか言いつつ、生き返ったり別次元で再会とかそういうネタも
オフィシャルではダメだが、二次元ではアリだとオモ。
515名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 20:35:47 ID:M+HZF3em
・・・2次元?
516名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 22:13:19 ID:wFSTEkBx
零4が出るみたいだぞ! 笑
517名無しさん@ピンキー:2006/04/30(日) 23:12:50 ID:wFSTEkBx
にせものED
かなりのにせものです…暖かい目で見ていただけるとありがたい


怜悲しみに浸っていると後ろから複数の足音が聞こえた。

「澪っ!早く!」
「う、うん・・・!」
(螢さんと・・・澪さん・・・?)

怜はそう思いながら二人を見ていた。

「はぁはぁ…お姉ちゃん!!」

澪が叫ぶ先には澪の姉らしき人物が立っていた。

「澪やっと私のこと見てくれたね…」
「お姉ちゃん・・・」

ふらふらと力なく涙を流しながら澪は繭に近づいた。
刺青の痛みも足が濡れるのも気にしないほど澪は繭を見続けた。

「お姉ちゃん…会いたかったよぉ…」

そう言って澪は優しく姉を抱きしめた。
繭は黙って優しく微笑み妹を優しく撫で続けた。

「お姉ちゃんもう…どこも行かないで…私を一人にしないで!!」
澪は泣きながら叫んだ。離れないように力強く繭を抱きしめた。

「ごめんね…澪。お姉ちゃんもう行かなきゃ…。」
はっとした顔で澪は繭をみた。
嫌だ!行かないで!そう澪は叫びたかったが涙を上手く言わせてくれなかった。

澪の刺青が繭の体に刻み移された。
澪の体にもう痛みはない・・・。

「ごめんね…澪…澪のこと大好きだったよ。私、澪に儀式を
してもらったとき今までにないくらい幸せだったよ。」
「私は幸せなんかじゃないよ!一緒にいてよ…傍にいてよ…」

ごめんね。そう繭は言うと澪の額にキスをして澪の耳元で何か囁いて
「叔父さん…澪よろしくね。」
そう言い残して繭は踵を返し歩いていった。
518名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 04:10:05 ID:pKBrBhVk
>>517
うーん>>511も言ってるが蝶でやった事(ひとつになる)
全部無かった事になるぞソレは。

あと叔父はよろしくもなにも結局澪が元気になった後は
あんま関わんないと思うぞ。金銭面くらいでしか。
一応普通に母親がいるし。病弱だけど。回復したなら日常に戻るっしょ。

と・・ごちゃごちゃいうもののGJ。しかし>>516の笑は何だ?笑
519名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 06:45:13 ID:lviIJhUb
零4がでるみたいだぞ! 憎
ならいいのかよっ
520名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 09:24:40 ID:kWZHtjSZ
>511
禿同、やっぱ澪繭は二人でどこまでも堕ちていく・・・ってのが
しっくりくる。そんな神SS結構あったよなあ(遠い目)
521名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 18:47:21 ID:3pIsqSHF
−−それはとても大切だったもの−−

−−それはただ傍にいたかったもの−−

−−それはすぐ壊れてしまったもの−−

私はただ呆然とそれを見つめていた…

「ずっと……ずっと一緒だっていったのに……約束だよっていったのに……」

私はただ涙をことしか出来なかった…

「ねぇ……笑ってよ……いつもみたいに『冗談だよ』って笑ってみせてよ」

もちろん無駄だってわかってる

だけどそれを認めることが出来なかった

もしかしたら……

………

どうしてもそんなことを考えてしまう

だけど周りのかつては人だったもの達の様子がそんな考えを打ち砕く




それからのことはよく覚えていない
忌人が禁忌に大切だった存在(ひと)を投げ込んだ所までは覚えている……
だけどそれから先を全く覚えていない
気が付いたら私は村の外にいた

いつ どうやって村を出たのかわからない…………けど、
きっと………………………………




−−それから1年
私は半身を失った絶望から少しずつではあるが立ち直り始めている
完璧ではないがもう1人だからと泣くことも無くなっていた

「……幸せそうだな………」
家族が寝静まった深夜私は自分の部屋で写真を眺めている
そこにはとても幸せそうに笑っている自分がいた
「……………はは。なんでだろ…涙が止まらないや」
もう泣かないって決めてていたのに
もう吹っ切ることが出来たと思っていたのに
「……弱いんだな……私…」
522名無しさん@ピンキー:2006/05/01(月) 19:20:14 ID:3pIsqSHF

涙を拭う
だけどまた涙が溢れてくる

「………もうやだよ。……うくっ………1人はいやだ……」

もう止まらない
次から次へ涙が溢れてくる
「どうして私だけ……なんで……」
心の奥底に閉まっていた思いが一気に溢れ出す
しばらく何も考えられず泣き続けた


"ガタン"


「……なに?」
外から?

雪の降る夜に外から……しかもこんな時間に
音が気になり窓から外を覗く

「……誰か………いるの?」
真っ暗な外にうっすらと人影が見える
とても見覚えのある顔 それは大好きだった人の顔
「お姉ちゃんっ!?」
私は窓から外に飛び出した
そして走り出す………やはりそこにいたのは大好きだった姉…繭だった

「どうして?なんでこんな所に?」
先程までとは違う涙が流れる

『澪が………泣いているから…私のせいで苦しんでいるから』
そういって私の涙を拭ってくれた

『あのね…お願いがあるの』

「なに?」
私は姉の悲しそうな表情を見逃さない

『もう私のこと忘れて欲しいの』
唐突な姉の申し出
「そ、そんなことできないよ!出来るはずないじゃない!」
523名無しさん@ピンキー:2006/05/03(水) 22:24:01 ID:rLYhWWQp
age
524名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 05:46:26 ID:MvrZNSUQ
sage
525名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 18:27:05 ID:QVOieUDk
珍しく書き込みあったみたいだから覗いてみたんだけど。


なんか上のは何。書きかけ?
526名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 23:00:01 ID:BXf5zZhQ
途中です………ごめんなさいorz

なんか書いてる途中で思い通りにかけずダメだ…ってなって
オチ考えてあるのに書けない
だれかウマく書ける秘訣を……
527名無しさん@ピンキー:2006/05/05(金) 00:08:00 ID:el58Gf5F
>>526
ウマく書こうとせず思いつくまま投下w
まあ、そんなに重たく考えるな、続き待ってるよん。
528名無しさん@ピンキー:2006/05/06(土) 21:03:28 ID:Rn19oNvo
部屋を掃除していたら「刺青」のプレイを録画したビデオが出てきた
懐かしく思い久しぶりにこのスレに来てみる
まだ、生きてたのねw
529名無しさん@ピンキー:2006/05/07(日) 02:33:06 ID:QAIUpx7/
>>526
GJ!
気長にお待ちしてますので、是非とも完結させて下さいな。
530天倉螢の憂鬱 (1/3):2006/05/11(木) 00:36:40 ID:Sw6T+CrM
「それでフィラメントが光ったからって、子供の自縛霊相手にびびって隠れてんのよ」
怜がそう言うと、リビングは笑いに包まれた。もちろん、笑われているのは俺だ。
「えーマジヘタレ!? キモーイ」
「ヘタレが許されるのは五ノ刻までだよねー」
「キャハハハハハハ」
澪と繭は爆笑しているし、深紅さんは養豚場のブタでも見るかのように冷たい目を俺に向けている。
くそう、怜のやつ、プライバシーの侵害もいいとこだ。
明日は日曜日ということもあり、俺たちは怜の家に招かれて深紅さんの手料理をご馳走になっていた。
すでに怜は酔っ払っており、それも手伝ってか、眠りの家での俺をネタにみんなの笑いを一手に引き受けている。
俺はといえば、澪の手前、必死に否定するわけにもいかず「こやつめハハハ」と苦笑するしかなかった。
しかしハラワタの方はすっかり煮えくり返っており、この酔っ払い女をどう懲らしめてやろうかと思案していたが、
どう足掻いても「刻宮の扉が勝手に閉まったときの蛍の顔ったら今思い出しても笑っちゃうわ」
と、嬉しそうに言う怜には勝てそうになかった。
そんな感じで、楽しい週末の時間は流れていった。

――気が付くと、俺は床に転がっていた。いつの間にか眠ってしまったらしい。
身を起こし時計に目をやると、時刻は真夜中を過ぎていた。
辺りを見回すと、怜が逆さ女みたいな格好で白目を剥いたままソファから半分ズリ落ちて眠っており、
その隣では深紅さんもすやすやと寝息を立てている。しかし、澪と繭の姿が見当たらない。
(澪が危ないっ!)
などと、一瞬、姪の貞操を案じたが、いくら繭とはいえ人様の家で澪に襲い掛かったりはしないだろう。
澪が俺を襲ってくるのなら、人様の家だろうが眠りの家だろうが一向に構わないが……
などと考えていると、ふと尿意を催してきた。立ち上がり、ドアを開けて廊下に出る。
そこで視界に飛び込んできたのは、手になにか石のようなものを握り、トイレのドアに耳をあてがっている繭の姿だった。
531天倉螢の憂鬱 (2/3):2006/05/11(木) 00:37:27 ID:Sw6T+CrM
「……なにやってんだ?」
俺に気が付くと、繭は殺気を伴った表情で「喋ったら殺す」と目で威圧してきた。どうやら澪が中にいるらしい。
ジャー。と水を流す音が聞こえ、少しして澪がトイレから出てくる。
何事もなかったかのように手に持った石を後ろに隠す繭。
「あれ、二人もトイレ……?」
寝ぼけ眼の澪はそのまま俺の脇を通ってリビングへと戻っていった。
それを確認すると繭はつかつかと俺の方へやってきて、
「テメー、今のこと澪に喋ったら、桐生家の二階から突き落として周りに『飛び降りた女』のファンだったって言いふらすぞ」
と静かに告げ、澪の後を追うようにリビングへと入っていった。
ショックのあまり、廊下で『立ちつくす男』と化した俺の尿意はいつの間にか消えていた。

翌朝、目を覚ますと深紅さんが朝食の準備をしていた。
「蛍さん、おはようございます」
「……ああ、おはよう」
俺はついにソファから落ちて『首が折れた女』みたいな体勢になっている怜を尻目に、
昨晩しそこねた用を足そうとトイレに向かおうとした。
と、テーブルの上で何やら青白い球体が光っている。アイテムだ。
(……? 万葉丸か?)
調べてみると、それは妙な形の石ころだった。どうやら繭が持っていた石のようだ。
……なるほど、カラクリが読めた。
幸い、深紅さんは調理に忙しそうだし、澪と繭の姿も見えない。
俺は溢れかえるリビドーを抑え、霊石ラジオならぬ尿石ラジオを求め、屋根裏へ向かおうとした。が。
背後に強烈な瘴気を感じる。心なしか世界がモノクロになっているような気さえする。
動かない体を無理矢理ねじるようにして、恐る恐る、後ろを振り向く。そこには、まy――おぐふぁ!
532天倉螢の憂鬱 (3/3):2006/05/11(木) 00:38:42 ID:Sw6T+CrM
目が覚めたのは夜になってからだった。
結局、その日も夕食をご馳走になった俺たち三人は車で帰路に着いていた。
信号で停止していると、澪が「あっ」と思い出したように口を開く。
「叔父さん、怜さんから預かってるものがあるんだけど」
そう言って、澪は後部座席から身を乗り出し、数枚の写真を俺に手渡す。
「なんだ? ……っ!」
それを見た俺は、心の中の鏡石が音を立てて割れたような気がした。
口から泡を吹いて気絶する俺の写真だった。光源、アングル、全てが計算されたその写真から、
怜が撮影したものであることは、写真に関してまったくの素人である俺でも判る。才能の無駄遣いだ。
「ネガはちゃんと取ってあるらしいから、安心していいよ」
何をどう安心すればいいんだ。またひとつ、怜に弱みを握られたかと思うと、気が滅入って仕方がない。
ふと、ルームミラーに目をやると、繭が手で例の石を玩びながらニヤニヤ笑っているのが目に入った。

<終>


初めて書きました。非エロですみません。
ネタが被ったりしていたらごめんなさい。
533名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 01:47:45 ID:cUew0VLE
>>532
畳み掛けるような文体と、ぶっ壊れたキャラが良いね。
GJ!
しかしながら

>「えーマジヘタレ!? キモーイ」
>「ヘタレが許されるのは五ノ刻までだよねー」
>「キャハハハハハハ」

この台詞、だれがどれを言ってるのか気になる……。
だれがどれ言ってても怖いけど。
534名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 07:50:04 ID:irgC+7Qz
GJ。
どうせなら螢は繭も澪も平等に大事にしてるのにヘタレ扱いな方が
リアルっぽい&哀れ度アップでワロエル。

〉ネタが被ってないか〜

んじゃ画像スレみたいな澪がぶっ壊れたのキボンここじゃあんま見ないし。
535名無しさん@ピンキー:2006/05/11(木) 15:54:09 ID:V5ckskrC
本スレの あたる澪とラム繭かみたいな感じとかなwww

千歳に萌え〜首女に萌え〜な澪を追っかける繭。
でもやっぱり最後は元の鞘みたいなのもなんかカワユスwwwWWww
536名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 14:27:44 ID:EaHtYjAa
なんで百合ばっかりなのはどうして?
537名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 19:50:36 ID:geZO5T91
零紅の本編というか根幹だからね〉百合

それでここのスレ今までもったようなもんだから。
紅い蝶組は妄想しがいがあって良い!

まぁ自分は他にも無印の真冬と霧絵、青の鏡華と螢(秋人)なんかも好きだけど。
零の女性霊勘違い愛最高。
538名無しさん@ピンキー:2006/05/12(金) 21:12:01 ID:T28Z8X5H
GJ!かなり笑えました。

細かいことだけど蛍じゃなくて螢ね。
俺も前に間違えてて、投下した後になって気がついて恥ずかしかったw
539吾輩はルリである (1/2):2006/05/13(土) 16:40:50 ID:eDmNQ5/t
吾輩はルリである。エサはまだない。
なぜなら、深紅が食事の用意を忘れたまま出かけてしまったからである。
はたして朝の食事なくして一日を快活に過ごすことなど、一体誰ができようか。
吾輩は空の食器を前に立ち尽くすことしかできなかった。

さて、深紅や怜ほどではないとはいえ、吾輩も忙しい身の上である。
家中をパトロールし、『窓に張り付く子供』が落ちないように見張ったり、
この家に住み着いている四つんばいでおなじみの浅沼さんと拳を交えたりと、
家主の留守を守るべく、家中を走り回るのが吾輩の仕事であった。
これもすべては、仕事と家事を両立させている深紅に余計な気を遣わせたくない故の行動である。

その吾輩の食事を忘れるとは、深紅め!

思えば近頃の吾輩は常に孤独と共にあった。
以前は吾輩が嫌になるほど深紅は構ってくれていたが、今やいつ戻るとも知れぬ深紅の帰りを待つ毎日――。
ようやく帰ってきたかと思えば、食事の用意だの風呂だのと、
尚も忙しそうにしており、吾輩のことなどもはや構ってはくれないのである。
吾輩はもう愛されていないだろうか。家出のひとつでもしてやろうか――。
そんなことを考えながら、とりあえずふて寝でもしようとソファの上に飛び乗ると、
首に付けられた鈴の音が、誰もいないリビングに寂しく響いた。
540吾輩はルリである (2/2):2006/05/13(土) 16:41:55 ID:eDmNQ5/t
「ルリー! ごめーん!」
その夜。スリッパをぱたぱたさせながらリビングに入ってきた深紅は、開口一番に言った。
ソファに沈めていた顔を持ち上げると、深紅は手を合わせて片目をつぶり、申し訳なさそうな顔をしている。
吾輩はひとつあくびをすると、文句の一つでも言ってやろうと思ったが、
吾輩の声帯では「にゃあ」と鳴くことだけで精一杯だった。
「今日は特別! ルリの好きな缶詰にするから許して、ね?」
そう言うと深紅は、キッチンの戸棚から吾輩の大好物を取り出し、セラミックの食器に盛り始めた。
そんな餌に吾輩が釣らr――。
鼻腔をくすぐる、至高の香り。目にも眩しく、つやつやと輝いているではないか……!
深紅が食器を床に置くなり、吾輩は夢中でその中に顔を突っ込んだ。
およそ一日ぶりの食事が、空っぽだった胃を満たしてゆく。
「ハムッ! ハフハフ、ハフッ!」
そんな吾輩の様子を、深紅は屈んだままにこにこしながら眺めていた。

やがて食事が終わると、深紅は服も着替えぬまま吾輩を抱きかかえ、ソファに座った。
「ルリ、本当にごめんね」
謝りながら、喉を撫でる深紅。吾輩はそれに返事をするかのように喉を鳴らした。
思えばこうして深紅の膝に抱かれるのも久しぶりのことである。
吾輩が改めて深紅の顔を見ようと顔を上げると、目が合った深紅はまたにっこりと笑った。

そうだ。
吾輩が深紅に心を許したのは、こんなに可憐な笑顔の持ち主だったからではないか。
この笑顔が見られるのなら、たかだか一回の食事くらい、どうだっていいのである。
吾輩は先刻までの考えを改めると、ゆっくりと目をつぶった。
明日からはまた、パトロールの日々だ。それはもちろん、この愛すべき主人のためである。
541名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 16:49:52 ID:eDmNQ5/t
>>533
件の台詞は澪と繭のものです。
俺の中では、螢に対して繭は敵対視、澪はたまにしれっと酷なことを言うキャラです。

>>534
参考にしてみます。
繭が強烈なイメージがあるので、澪はなかなか壊しにくいです。毒舌キャラ止まり。

>>538
ありがとうございます、以後気をつけます。
言われなかったら一生気づいてなかったかもしれませんw

いろいろ考えてはみたものの、俺は非エロで勢いだけの文章しか書けないようです。
スレ違いだったら消えますが、どうなんでしょーか。
542名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 19:57:13 ID:f6yeOyml
俺は繭の方が壊しにくいんだよな。でも世の中繭壊してる方が多い不思議。

繭は自分勝手とか言われてるけどただ生まれてきてずっと
寂しい思いばっかしてきた寂しい子にしか見えないんだよな・・・
543名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 20:06:06 ID:oPWMLWBm
>>541
乙。
エロなしでも俺は構わんけどな。
ルリネタもちらほら見かけるねw

>>542
カラーが濃いキャラのがいじりやすいんでない?
そういう意味で、深紅、澪繭は書きやすいんだが、
怜はいまいち書きにくい・・・・
544名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 20:47:14 ID:f6yeOyml
>>543
なるほど>カラーが強い方が

怜の事もわかるw事故直後で沈んだ時のキャラしか見て無いから
イマイチどんな性格なのか分からないよな怜。
感情出すシーンもあんまり無いし・・・元の性格は明るいッポイ分なお更。
545名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 23:00:46 ID:roAnCemA
「天倉螢の憂鬱」「我輩はルリである」ものすごく上手いんですが!!
ここの限られた読者だけに読ませるのも、もったいないくらいですね〜。
(この場所知らない人のほうが多いだろうし・・・)

 エロなしでも構いませんvvv
546名無しさん@ピンキー:2006/05/13(土) 23:45:07 ID:88cHjlVp
>>541
乙。ヌコ好きにはたまらん。

>>545
は2ちゃん来て日が浅そうだが・・

多分零好きで2ちゃん知ってる人間は大低が一応知ってるぞここ。
ただ零関連は何処も過疎ってるだけで。

どこで公開しても「限られた」は一緒だ。ただでさえ投下少ないんだから他の職人さんの
投下意欲下がりそーな事だけは言うてくれるな。
547名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 03:02:10 ID:UBpQ6ht1

小鳥の囀る鳴き声が晴天の朝を一層爽やかにする、
そんな黒澤家の朝の風景。

怜は食卓に並んだ料理から、味噌汁の入った容器を手に取り、
未だ眠りから覚めきらない瞼を閉じると、ゆっくりと口に運ぶ・・・・

・・・・・・・・・・・・

その様子をエプロンを身に着けたまま、対面に座り固唾を飲んで見守る深紅。

目を見開く怜・・・・・・・・・・

「まずい!」

怜の口から放たれる第一声に目を丸くする深紅・・・・

「え?・・・・・・」

「まずい!って言ってるのよ!!、こんな気持ちの良い朝にこんな不味いもの
食べてられないわ!!」

深紅を睨めつけ、声を荒らげる怜。

「も、申し訳ございません!!怜お姉さま!!
す、すぐに作り直します!!」

深紅は瞳に涙を溜めながら、平謝りを繰り返すと、椅子から立ち上がる。

「待ちなさい!!」

それを引き止めるように深紅の背中に突き刺さる怜の声。

「はい?・・・・・」

恐る恐る怜の方をゆっくり振り返る深紅。

「味噌汁もろくに作れないような悪い子にはお仕置きしてあげないとね!
深紅!その格好のままこっちへいらっしゃい・・・・」

深紅の瞳に溜まった涙が、染み一つない美しい頬を流れ出す・・・・

「怜お姉さま・・・・・そ、それだけは・・・どうかお許しください・・・」

泣き顔を隠すことなく必死の表情で深紅は懇願する。

「だ〜め!そんな表情されたら尚更やめたくないわ」

不適な笑みを浮かべてつかつかと深紅に歩み寄る怜・・・・

「いや!お姉さま・・・・・駄目です・・・・あぁん!・・・・」



みたいなベタな展開どなたか職人様書いてくれませんかw
548名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 06:09:29 ID:UBpQ6ht1
ちょっと投下させて貰います。
深紅がキャラ違い杉ますので、嫌な方はほんとスルー願います。
俺こんなんばっか・・・・・orz

零華×深紅・・・・・かな?

途中でまだ全然出来上がってません・・・・スマソです。
549名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 06:10:22 ID:UBpQ6ht1

闇に支配された干からびた屋敷の中を彷徨い歩く一人の少女・・・・
周囲の景色と比べればあまりにも不釣合いな可憐な容姿と儚さを漂わせるその少女。

彼女の名前は深紅・・・・・・雛咲深紅。
雛咲家の最後の人間・・・・・一人残された者である・・・・

深紅は再びこの世界との干渉を余儀なくされる立場に身を置かれていた・・・・・
もう見ることはなくなったと思っていた夢を、悪夢を・・・・・・

最愛の肉親が怨霊に連れ去られてからは、強過ぎたその霊感も薄れていった。

深紅はそれからは普通の少女のごくありふれた生活を送るはずであった。
そして深紅もそうするように努力をした。
その甲斐あってか、黒澤怜とその婚約者の同居人として日常の生活を毎日送っていたのだが・・・・・

同居人の突然の事故死・・・・・・・・・
そして、残された者の決して晴れはしない深い悲哀と情念・・・・・
黒澤家を取り巻く空気は一気に重く、陰鬱なものになり代った。
それはありえない者を呼び寄せる引き金となってしまった・・・・・

深紅は否応なしに忌まわしい過去に取り込まれた。
悪霊が存在するこの世界は、深紅の中の深い部分に眠っていた悲しい記憶を鮮明に蘇らせてしまった。

母を死に至らしめた存在・・・・・・・
兄を・・・・・最愛の真冬兄さんを私の元から奪い去った存在・・・・・・

この屋敷で射映機を手にした深紅・・・・・・・
自身を不幸に導く強力な霊力が再び解放される。

深紅は悪霊という存在を許す事はできなかった・・・・・

あの時・・・・・今自身が地に足を着けている氷室邸の屋敷で起こった出来事は、
深紅に取っては耐え難い結末であった。
身が焦がれる程のやり場のない想いを・・・・・・怒り、悲しみ、嫌悪、憎悪、負の感情と呼べるそれらを
心の奥底に押し込めるのに必死になった。
他の誰にも悟らせないよう振舞ってきたのだ。

だが、今や同じ光景を目の当たりにさせられた深紅の中のその感情は、
内なる霊力と共に呼び起こされ深紅を支配してしまった・・・・・・・・

怨霊に対する唯一武器である射映機、そしてその武器を限界まで扱うことを可能にしてしまう強力な霊力、
怨霊に対して渦巻く漆黒の憎悪、そして兄を奪った怨霊という存在・・・・・

深紅はこの四つを同時に手にしてしまった。
深紅は導かれるように成すべき事に従った・・・・・・そうしたかった・・・・・・
550名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 06:12:23 ID:UBpQ6ht1

彼らに対してはいくらでも無慈悲に・・・・・・・限りなく残酷になれた。

偶然遭遇した子供の霊・・・・・・こちらを見ると怯え逃げるように立ち去ろうとする。
背を向けたその子供の霊を後ろから一撃で絶命させる深紅・・・・・

兄を助けることを必死になって訴える巫女装束をした女霊・・・・・
怨霊の癖に自分の姿と重なって見えたその存在は許すことはできなかった・・・・・
恐怖に歪んだその表情をファインダーに捉えては限界まで蓄積した霊力で霧と四散させた・・・・・・

怨霊は深紅に取って許せない存在でなくてはならなかった。
倒すべき敵であった・・・・・・
生きている者を不幸に、道連れにする憎悪の対象であった。

怒りを、憎しみを射映機に込めてはそれを迷うことなく怨霊という存在にぶつけていった・・・・
その時だけが深紅の心の傷を暗い喜びが癒してくれた。

とにかく深紅はこの屋敷を訪れる度に血眼になり怨霊を探し求めた。
すべてを滅ぼしてやりたかった・・・・・
眠っていた深い悲しみに耐える日々を再びもたらしたこの存在を根絶させたかった・・・・・

深紅は縄裂きが行われる部屋に辿り着く、
体が小刻みに打ち震えた・・・・・
どうしようもない想いが体中を巡り回った。
見ていると気がおかしくなりそうな程・・・・・・

そんな深紅の前に格好の獲物が現れる・・・・
縄の巫女。

その存在を目に留めた深紅は怒りで我を忘れる程に体が熱くなった・・・・・
深紅の霊力の前にはその怨霊とて無力であった・・・・・
深紅は怨霊を限界近くまで弱らせると、射映機の装備機能で血がこびり付いた台座の上に貼り付けてやった・・・・・
そのまま体の部分ごとに射映機により光を浴びせ、四肢をバラバラにしてやった・・・・

また、漆黒の歓喜が深紅の中に満たされる。

深い溜息を一つつくと辺りを見回した。

「兄さん・・・・・」

見覚えのあるその扉を見つめ深紅は呟いた・・・・・・
551名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 10:14:14 ID:WwxlY75a
だが断る
552名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 14:44:15 ID:0YjKgGTD
『吾輩はルリである』面白かったよ
こういうのもアリだぁね

俺もエロ無しOKだな
面白ければ何でもいい
553名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 21:53:03 ID:n0UH7E11
最近活性化してきたね、イイヨイイヨー。
554名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 11:02:45 ID:4GryC/Ly
ルリが怜、深紅と
555ちとせのなつやすみ 前編 (1/3):2006/05/15(月) 19:03:23 ID:J7hvMtYk
みおお姉ちゃんから手紙がきた。
押し入れの中で、いそいで、でもていねいに、封をあける。
いつも楽しみにしている、赤いちょうちょの絵がついたびんせんには、いろんなことが書いてある。
さいきん『がっこう』であったこととか、みおお姉ちゃんのお姉ちゃんの『せくはら』に困っていることとか。
ちとせはいつも、自分の知らないせかいのことを、みおお姉ちゃんの手紙から知って、おどろく。
でも今日は、いつもとちがういみで、おどろいた。

『千歳ちゃんさえよかったら、こんど東京のおうちにあそびに来ませんか』

ちょっと前、みおお姉ちゃんとちとせは、血で血をあらうあらそいをくりひろげた。
それはもう、すごいたたかいだった。しゃえいき、まじやばい。死ぬかとおもった。
けっきょく、ぜんぶ、ちとせのかんちがいがげんいんだったけど。
とうきょうに帰っていったみおお姉ちゃんは、よく手紙をくれるようになった。
いつもひとりでいるちとせを心配してくれているみたい。
てがみの中の、みおお姉ちゃんはいつも楽しそうで、ちとせはちょっとうらやましかった。
つい、そのことを手紙に書いてしまったから、みおお姉ちゃんはちとせをさそってくれたんだと思う。
うれしいけど、外のせかいはちょっとこわい。

でも……ちとせはけっしんした。もう、かくれるのはおしまい。脱ひきこもり。
とじこもっていたって、なにもはじまらない。ちとせも、もうおとななんだから。
外のせかいを見て、おにいちゃんたちのようにりっぱになるんだ。
ちとせは、押し入れのつづらから、びんせんとえんぴつを出して、みおお姉ちゃんにおへんじの手紙を書いた。
556ちとせのなつやすみ 前編 (2/3):2006/05/15(月) 19:03:57 ID:J7hvMtYk
みおお姉ちゃんの手紙に書いてあるとおりにでんしゃにのって、ちとせは、ついにとうきょうまでやってきた。
「わーぷ」したほうが早かったけど、人がびっくりするからしちゃいけないって、手紙に書いてあった。
それにしても、とうきょうは人がおおい。そして、みんな着物をきていない。
だから、着物をきているちとせがめずらしいのか、みんなちとせのほうをちらちら見てた。
こすぷれだと思ったのか、しゃえいきを向けてくる人までいる。……やっぱり、外のせかいはこわい。
「千歳ちゃーん、お待たせ」
ちとせがすばやいみのこなしで、しゃえいきからのがれていると、みおお姉ちゃんがむかえにきてくれた。
ひさしぶりに見たみおお姉ちゃんは、前よりちょっとおとなっぽくなっていた。
うっすらと、おけしょうまでしている。
「みんな、とうきょうさ行って、かわっちまうだ」ってばっちゃが言ってた。
ちとせは、そのとおりだとおもった。

みおお姉ちゃんのおうちにいくでんしゃの中で、とうきょうのいろいろなお話をきいた。
みんながきているのは『ようふく』だということ。ちとせに向けられていたのはしゃえいきじゃないということ。
いまはなつやすみで、がっこうというところがおやすみだということ。ぷれすて3がやたらたかいこと。
外のせかいは、けっこうべんきょうになる。

でんしゃをおりて、えきから少しあるくと、みおお姉ちゃんのおうちについた。
おうちのとびらを開けようと、みおお姉ちゃんが手をかけると、中からとつぜん、だれかがとびだしてきた。
「あぁん、澪ー! 遅かったじゃない、心配したんだから!」
その人は、みおお姉ちゃんにだきついて、あたまをぐりぐりとおむねにうずめていた。
「あはは……ごめんね、お姉ちゃん」
みおお姉ちゃんがにがわらいしながら言った。そして、ちとせのほうを向いて、
「千歳ちゃん、この人は私のお姉ちゃん、繭お姉ちゃんよ」
としょうかいしてくれた。
おもいだした。前に、みなかみむらで、うつろな目をしながらふらふらしてた人だ。
あのときはどうみても、やくぶつちゅうどくの人にしか見えなくて、こんないなかのむらにも、
おそろしい、やくぶつのまのてが、おしよせているのかとおもうと、ちとせはまことにいかんのいだった。
さえお姉ちゃんにちょっとにてる、まゆお姉ちゃんは、みおお姉ちゃんにはわからないように、
「よろしくね」と、みけんにしわをよせ、口をとがらせながら言った。
「よ、よろしくおねがいします……」
ちとせはこわかったけど、れいぎただしくへんじをした。
それでも、まゆお姉ちゃんはやっぱりどこかふきげんそうだった。
くすりがきれかかっているのかもしれない。
557ちとせのなつやすみ 前編 (3/3):2006/05/15(月) 19:04:36 ID:J7hvMtYk
まゆお姉ちゃんの見えない『さっき』をびんびん感じながら、おうちにあがらせてもらう。
立花のおうちよりはせまいけどとてもきれいでりっぱなおうちだ。
りびんぐで、お姉ちゃんたちのおかあさんのしずかさんと、おじさんのけいおじさんにあいさつした。
けいおじさんはやさしそうだけど、ちょっとふいんき(なぜかへんかんできない)がたよりない。
しずかさんはにこにこしていて、とてもびじん。お姉ちゃんたちにそっくりだ。
「遠いところを疲れたでしょう? すぐにご飯にするからね」
しずかさんはそういうと、きっちんのほうにむきなおって、りょうりをはじめた。

「さぁ、どうぞ」
しばらくして、てーぶるにならべられたりょうりは、ちとせがはじめてみるものばかりだった。
「いただきます」とみんなが手をあわせて言うので、ちとせもあわててそれをまねした。
「どう? おいしい?」
しずかさんがきいてきたけど、ちとせは、なかなかへんじできなかった。
きんちょうしていたし、なによりおいしすぎて、なんといっていいかわからなかった。
それでもしずかさんは、へんなかおひとつしないで、あいかわらずにこにこしながらちとせを見てた。
だから、ちとせははずかしくなって、うつむいてしまった。
「お母さんの料理、結構おいしいでしょ?」
みおお姉ちゃんがかわりにきいてくれたので、ちとせはなんとかうなづくことができた。
「良かった、これからしばらく一緒に暮らすのに、口に合わなかったどうしようかと思ったわ」
しずかさんがほっとしたように言った。
「姉さんの料理は世界一だから、口に合わない人なんかいないよ」
「螢。おだてたって、何もでないわよ。家賃入れなさい」
ふたりのやりとりに、みんながわらった。ちとせも、ちょっとだけわらった。
ちとせは、とてもひさしぶりに、なんだかあたたかいきもちになっていた。
このじかんが、ずっと続けばいいのに、とおもっていた。
558名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 20:57:59 ID:K1HNnNDw
バロスwwwwwwwwwwwwww
559名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 21:34:10 ID:0pWQjKDs
薬中ワロスwwwww
続きにwktk
560名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 23:18:18 ID:IHEQuyv7
GJ!! …でも、
幸せそうな千歳のSSを読むと
なぜか涙が止まらない(ノД`)
かなり前にあった成仏SSのときも
そうだった…
561名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 02:04:47 ID:ihb5Ecsm
テラワロwww
『ばっちゃがいってた』ってw
562ちとせのなつやすみ 後編 (1/4):2006/05/17(水) 02:05:55 ID:CsPs+lix
とうきょうにやってきて、一週間がたった。
ちとせははずかしがりやだから、さいしょはなかなかうちとけられなかったけど、
みんなが優しくてしてくれるから、おかげで今ではすっかりなれた。
ただ、ひとつ、気になることがあったけど……。

みおお姉ちゃんは、ちとせをいろいろなところに連れていってくれた。
きものだと、とうきょうでは目立ちすぎるから、かわいいようふくも買ってくれた。
すかーとというようふくは、足がすーすーするけど、とてもかわいくて気にいった。

ゆうえんちにもつれていってもらった。かんらんしゃやじぇっとこーすたーにのせてくれた。
ちとせにはちょっとしげきが強すぎて、ちょっとびっくりした。
なかでも、おばけやしきというまっくらな部屋は、どうしてもだめで、ちとせはないてしまった。
みおお姉ちゃんは「ごめん、千歳ちゃんがお化け屋敷ダメだなんて思わなかった」と言ってあやまってた。
ちとせは、おばけやゆうれいは大きらい。

つぎの日は、えいがかんにつれていってもらった。
立花のおうちにも、にたようなものはあったけど、えいがはそれよりもっとすごかった。
まっくらでちょっと怖かったけど、大きな音とえいぞうは、はくりょくまんてんだった。
でも、こうふんして疲れていたちとせは、とちゅうで眠ってしまったので、よくわからないままだった。
えいがが終わったあと、すっかりえいきょうされたみおお姉ちゃんが「しんせかいのかみになる!」とか言ってた。
ちとせは、とうきょうのひとって、おもしろ!とおもった。

しずかさんのおてつだいもした。
ちとせは何枚か、おさらを割ってしまったけど、しずかさんはちっともおこらなかった。
それにしても、しずかさんは本当にりょうりがじょうず。あっというまに、色とりどりのりょうりができあがる。
できるおんなって、ぽいんとたかい。

みおお姉ちゃんのべんきょうのあいまに、ちとせもべんきょうを教えてもらった。
えんしゅうりつはおよそ3。とくいになったちとせが、けいおじさんに教えてあげたら、
けいおじさんは、きんねんのゆとりきょういくのありかたに、ぎねんのいをかんじずにはいられないようだった。
563ちとせのなつやすみ 後編 (2/4):2006/05/17(水) 02:06:44 ID:CsPs+lix
まいにちが楽しくて楽しくてしかたなかった。
でも、ちとせとはぎゃくに、まゆお姉ちゃんのきげんはどんどんわるくなっているような気がした。
さいしょにこのおうちにきたときは、まゆお姉ちゃんも少しはちとせとおはなししてくれてた。
みおお姉ちゃんをおいかけまわしたり、けいおじさんにさついのこもったしせんをむけたりもしてた。
けど、さいきんのまゆお姉ちゃんは、だれとも話さない。ごはんも、あまりたべていないみたい。
ちとせとは、目もあわせてくれなくなった。ちとせ、なにかわるいことしたかな……?
「最近お姉ちゃん、おかしくない? 前はうざいくらいにベタベタしてきたのに。
今日なんか、私がおはようって言っても無視したんだよ。なにか悩みでもあるのかな」
いっしょに入っているおふろの中で、みおお姉ちゃんも、しんぱいそうな顔をしていた。
ちとせは、まゆお姉ちゃんと、ちゃんとおはなししてみようと思った。

まゆお姉ちゃんがおふろに入ったのをみはからって、ちとせもおふろに入った。ほんじつ、にかいめ。
よくそうのへりに顔をのせていたまゆお姉ちゃんは、さいしょは「何?」とあいかわらずふきげんそうだったけど、
ちとせがだまったまま、まゆお姉ちゃんのとなりにつかっても、まゆお姉ちゃんは、なにも言わなかった。
ちとせは何を話していいかわからなかったから、ずっとまゆお姉ちゃんのおむねを見ていた。
みおお姉ちゃんのより、大きい。これがうわさの、『ろりきょにゅう』だろうか。
「何? そんなに気になる?」
ちとせのしせんに気がついたまゆお姉ちゃんが、言った。
ちとせがこくこくとうなづくと、まゆお姉ちゃんはちょっと笑って「あんた、澪みたいね」と言った。
「澪は胸が小さいの気にして、私と一緒にお風呂に入ってくれなくなったの。私は小さい方が可愛いと思うけど……。
……ところで、千歳ちゃん、私に何か話したいことがあって来たんじゃないの?」
まゆお姉ちゃんは、少し気をゆるしてくれたのか、こっちを向いた。
それでもちとせがだまってたから、まゆお姉ちゃんはそのまま続けた。
「私のことでしょう? 澪が気にしてるのもわかってるよ。……でも、澪ったら最近、私のことなんか
ちっとも構ってくれないんだもん。千歳ちゃんが来てからは、特にそう。楽しそうな澪を見るのは嬉しいけど、
私のこともちょっとは構って欲しいんだ……」
そう言うまゆお姉ちゃんは、ちょっとかなしそうだった。
ちとせはみおお姉ちゃんがしんぱいする顔をもう見たくなかったから、まゆお姉ちゃんに、
みおお姉ちゃんとふたりで、ちゃんとお話するようにおねがいした。それをきくと、まゆお姉ちゃんは、
「そうね。私もちょっと大人げなかったかもしれないわ」と、また少しわらって言った。
そのあとも、まゆお姉ちゃんはいろんなことをおはなししてくれた。
ちとせがずっと気になってた、足のけがのこととか、みおお姉ちゃんから聞いた『せくはら』のこととか。
でも、それはぜんぶ、みおお姉ちゃんの気をひくためにやったことなんだそうだ。
まゆお姉ちゃんは、ほんとうに、みおお姉ちゃんのことがすきなんだ。
みおお姉ちゃんのこと話す、まゆお姉ちゃんは、ちとせがいままで見たことがないくらい楽しそうだった。
ちとせはずっと、そんなまゆお姉ちゃんをみてた。けど、そのうちあたまがくらくらしはじめて――
564ちとせのなつやすみ 後編 (3/4):2006/05/17(水) 02:07:58 ID:CsPs+lix
気がつくと、そふぁにねかせられていた。
みおお姉ちゃんがしんぱいそうなかおで、手にもったうちわで、ぱたぱたとちとせのことをあおいでくれている。
ちとせは目はさめていたけど、からだがぐったりしていて、とてもおきあがれそうになかった。
「お姉ちゃん、どういうつもり! ちとせちゃん、のぼせちゃったじゃない!」
みおお姉ちゃんが今までにきいたことがないくらい、こわいこえで言った。
「大体お姉ちゃんは勝手なのよ! いつもみんなを振り回してばっかで、千歳ちゃんにまでこんな苦しい思いさせて!」
「わ、私は……! ……千歳ちゃんがもうお風呂に入ってたなんて、知らなかったから……」
まゆお姉ちゃんが、みおお姉ちゃんのいきおいにおされたように、小さいこえで言った。
そのとおりだ。まゆお姉ちゃんはわるくない。ちとせが、かってにしたことだから。
そのことを、みおお姉ちゃんにつたえたかったけど、ちとせはぐったりしたままうごけなかった。
「言い訳なんか聞きたくないの! 私が千歳ちゃんとばかり一緒にいるから、そんなことするんでしょ!」
「……み、澪だって、ちょっとくらいは私のこと構ってくれたっていいじゃない!」
「だからって千歳ちゃんにこんな――」
ちとせは、もうがまんできなくなって。がんばって、むりやり、おきあがった。
「もうやめて!」
みおお姉ちゃんとまゆお姉ちゃんは、びっくりしてちとせのほうを見ていた。
ふらふらする足で、ちとせはそふぁから立ち上がった。
「……ちとせのせいで、ふたりがけんかするなら、ちとせは……もうかえるから……
 ちとせは、みおお姉ちゃんも、まゆお姉ちゃんも、ふたりがだいすきだから……
 だから……けんかはやめて……」
だせるかぎりのこえを、ふりしぼって言った。
「みおお姉ちゃんは、まゆお姉ちゃんのことしんぱいしてるのに……
 まゆお姉ちゃんは、みおお姉ちゃんがほんとうにだいすきなだけなのに……
……なのに、どうしてけんかしなくちゃいけないの……?」
ちとせは、いつのまにか、ないてた。
ふたりはだまったまま、そんなちとせを見てた。
「……ちとせはずっと、ひとりだったから……ひとりになるのは、さびしいの、よく知ってるから……
だから、ふたりにはそんなきもちに、なってほしくないから……!」
めのまえがぼんやりしてきて、ちとせは、じぶんでもなにを話しているかわからなかったけど、
それでも、ちとせがおもってることを、できるだけふたりにつたえようと、がんばった。
……そしたら、きゅうに目の前がまっくらになって。
ちとせはまた、気をうしなった。
565ちとせのなつやすみ 後編 (4/4):2006/05/17(水) 02:09:44 ID:CsPs+lix
目がさめると、ちとせはまゆお姉ちゃんのベッドでねていた。あれからずっとねむってたみたい。
おきあがって、ちとせはりびんぐのほうにいった。たのしそうなこえがしてる。
「ごめんね。お姉ちゃんはじめてパンツ盗ったから、ごめんね」
「初めてじゃないでしょっ、返してってば!」
みおお姉ちゃんのしたぎをあたまにかぶり、ウヒョヒョーとにげまわる、まゆお姉ちゃん。
それをおいかけるみおお姉ちゃんも、どこかたのしそうだった。
よかった。なかなおり、できたんだ。
「ちょっとー、暴れないでちょうだい」
しずかさんはすこしおこってたけど、ちとせはそんなふたりを見てずっとわらってた。
やっぱり、きょうだいは、なかよしがいちばんだとおもう。
いつきお兄ちゃんも、むつきお兄ちゃんも、ちとせも、いつもなかよしだった。
けんかもたくさんしたけど、いつでも、すぐにもとどおりだったんだから。
「千歳ちゃん。これからおでかけするから、千歳ちゃんも準備しておいで」
けいおじさんが言った。
今日は、けいおじさんのしりあいのおうちに、みんなで、あそびにいくみたい。
もちろん、みおお姉ちゃんも、まゆお姉ちゃんも、ちとせだっていっしょだ。
「ウヒョヒョー!」
「お姉ちゃーん、待てー!」

おひさまがまぶしくて、ちとせは、なつはちょっとにがてだけど。
でも、ふたりにはとってもにあってる気がした。
せっかく、とうきょうまできたんだから、ちとせも、もっともっとたのしまなきゃ。
ちとせのなつやすみは、まだはじまったばかりなんだから。(終)
566名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 02:51:48 ID:Zty8JimJ
ちょwwwwウヒョヒョってwwww
567名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 05:25:11 ID:hFXeqX2T
千歳かわいいのに時々変な言葉使いになるのは何でだwwww
そしてお姉ちゃんの株はもうちょっとあがらんのかとorz

あ、あと静は「しず」ですよ!南海キャンディーズといっしょ!
568名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 08:26:06 ID:eJjDITHd
GJ!ワロスwwwww
569名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 08:37:51 ID:Bz9hAfcq
マジワロスwww
570名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 22:44:50 ID:CdFoWJEV
うわなにこれおもしれー。ワロスwwwwww
それに、いいお話じゃないか…GJ!
571名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 23:27:12 ID:ihb5Ecsm
>>567
そんなん気にしない気にしない
つか、『しず』っての知らなかったw

『なつやすみ』GJ!!!
酒入ってるせいか、思わず涙ぐんじゃったぃ
パンツ被ってる所でビールふいたけどなw
572名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 10:18:42 ID:H/68f6U0
まぁ>>538の螢と蛍の間違いよりは気になるワナwww>しず
へたれはもうKでも何でもいいや。
573名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 10:44:45 ID:9eZT8jBP
>>567
訂正ありがとうございます。恥ずかしい……こんなのばっかでヘコみます……
ということは、天倉操も「そう」と読むのかな?と思って、調べてみたら「みさお」でした。
最近、何を信じていいのかわかりません。
574名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 14:44:08 ID:g/hDYfVD
>>573
俺を信じろw
575名無しさん@ピンキー:2006/05/18(木) 23:53:55 ID:yE7ysBYL
ずいぶんと力のある職人さんが降臨したなあ。
しばらく停滞していたこのスレも活性化して喜ばしい限りだ。
576小説家たらんとする少女に惑う (1/6):2006/05/19(金) 07:39:02 ID:/+LitaO+
「ただいま深紅ー」
仕事を午前中で切り上げた私は、リビングに入ると、キッチンで料理をしていた深紅に言った。
「おかえりなさい、怜さん。ちょうど良かった、もうすぐご飯できますから」
「ありがとう。ところで、前に頼んでおいた資料、もうできてる? 螢が取りに来るの、今日でしょ?」
「ええ、昨日のうちにまとめておきました。悪いですけど取ってきてもらえますか? 私の机の上にあります」
エプロン姿の深紅は、お玉で鍋を混ぜながら言った。
さすがは深紅と、できのいい同居人に関心しながら、私はソファに荷物を置いて、二階へ上がる。

資料、というのは、螢から頼まれていた都市伝説に関する資料のことだ。
新しい本を出版するらしく、深紅の情報収集能力に一目置いていた螢からの、じきじきの依頼だった。
もちろん、私の撮った写真も使ってくれるように(半ば脅迫)してある。

私は深紅の部屋のドアを開けた。相変わらず、私の部屋と違ってきれいに整頓されている。
部屋に入ると、ベッドの上に一冊のノートが置かれているのが目に入った。
私はそのノートに手を伸ばそうとして、ふと気づいた。
(深紅は机の上にあると言っていたような気がするけど……聞き間違えたのかしら)
特に気に留めることもなく、私は何の気なしに、そのノートを開いた。

 「澪の×、もうびちょびちょだよ……?」
 「だめっ、だめだよお姉ちゃん……その中を見ちゃだめえっ……!」
 口にすることすら禁じられている澪のそこを、繭は視姦するかのように眺める。
 恥ずかしさのあまり、澪は顔をそらす――

…………。
私はその場に固まってしまった。これは……深紅が書いたものなのだろうか。
それも、澪ちゃんと繭ちゃんを題材にして……。
夜遅くまで机に向かっている深紅を見て、勉強をしているものだとばかり思っていたけど……。
私は動揺していたものの、湧いてきた興味から、ページをめくる手が止まらなかった。

 「だめえぇっ、強化レンズ『滅』だめぇっ! おーばーきるしちゃうぅっ!!」
 「みおに射影しちゃうよぉぉっ! 射影(で)るっ! 射影(で)るぅぅっ!!」
 ベッドに倒れこんだ澪の体に、繭の白いフラッシュが降り注ぐ。
 ぐったりと体を横たえる澪。はぁはぁと、息を荒げたまま、それを満足そうに見下ろす繭――

そもそも、これは小説と判断していいのだろうか?(つーか「射影る」って何?)
一緒に暮らし始めてずいぶん経つが、まさか深紅がこんなものを書いているとは夢にも思わなかった。
「怜さーん、ご飯できましたよー」
文芸界に新風を吹き込む深紅の作品を手に持ったまま唖然としていると、階下から私を呼ぶ声がした。
慌てて小説のノートを元の位置に戻す私。そして、本来の目的であった資料のノートを探す。
深紅の言っていた通り、机の上にそのノートはあった。
「遅かったですね、怜さん」
リビングに戻ると、すでに食卓に料理を並べ終えていた深紅が言った。
「ごめんね。ちょっと……見てたから」
そう言って私は、手に持った資料のノートをわざとらしくテーブルの上に置いた。
577小説家たらんとする少女に惑う (2/6):2006/05/19(金) 07:39:36 ID:/+LitaO+
ピンポーン。
インターホンの音に、私は玄関に出て、扉を開けた。
「やぁ、深紅くん。お邪魔するよ」
毎週のように、我が家に遊びにくる螢さんが立っている。
その横には澪ちゃん、繭ちゃん、そして話には聞いていた千歳ちゃんらしき子の姿もあった。
「千歳ちゃん、深紅お姉ちゃんだよ」
そう言って、澪ちゃんは自分の後ろに隠れていた少女を私に紹介した。
「深紅さん、この子が千歳ちゃんです」
「はっ、はじめまして……」
おずおずと頭を下げたのは、澪ちゃんたちよりもずっと幼い、可愛らしい女の子だった。
よほどの恥ずかしがりなのか、顔を真っ赤にしてもじもじしている。
私は千歳ちゃんの背に合わせて屈む。
「はじめまして、千歳ちゃん。深紅よ、よろしくね」
「……は、はいっ」
千歳ちゃんは戸惑っている様子だったが、少し間をあけて、ほんのちょっとだけ笑ってくれた。
「怜さんも今日は早めに仕事終わらせて、中で待ってます。さぁ、どうぞ」
私は立ち上がって体をずらすと、客人たちを招き入れた。

いつもの週末が始まった。
みんなでお茶を飲んで、談笑して、遊んで。
頃合を見計らい、私はその場を離れて、夕食の準備にとりかかる。
「いやー、二人にこんな可愛いお友達がいたなんて知らなかったわ。いつでも遊びに来てね」
怜さんが千歳ちゃんにウィンクしてみせた。怜さんも、千歳ちゃんのことを気に入ったようだ。
千歳ちゃんは、はじめはやはり恥ずかしそうにしていたものの、
怜さんがあまりに構うので、今ではもう慣れたみたいだった。
(繭×千歳……いや、普段は受けに徹している澪ちゃんが攻めに回るのもアリ、か……)
私は怜さんの膝に抱かれた千歳ちゃんを眺めながら、
自室でこっそり書いている、ふたなり恋愛小説「みおまゆ!」の新たな展開を考えていた。

楽しい時間は流れていく。
夕食の片付けも終わり、怜さんもすっかり酔いつぶれ、いつもの週末の様相だ。
今、澪ちゃんたち三人はお風呂に入っている。
混ざりたいのはやまやまだったが、私は螢さんに資料を見せるためリビングに残っていた。
怜さんのいびきが響く中、螢さんにノートを見てもらい、おおまかな説明をする。
「――と、こんな感じです。足りないなら、追加で調査しますけど」
「いや、これだけで十分だ。さすが深紅くん、助かったよ。これならいい本が書けそうだ」
良かった。どうやら満足してもらえたみたいだ。
話も一段落したので、私はさっきから気になっていたことを螢さんに尋ねた。
「千歳ちゃん、いつまで螢さんのところで預かるんですか?」
すると螢さんは、資料のノートを鞄に仕舞いながら言った。
「澪の話だと、夏休みの間ってことだったんだが、どうやらあの子、家族がいないらしいんだ。
だから、まだ決まったわけじゃないが、うちで引き取ろうかと考えてる。澪と繭も喜びそうだしな」
螢さんらしからぬ、頼れる発言だった。
578小説家たらんとする少女に惑う (3/6):2006/05/19(金) 07:40:13 ID:/+LitaO+
しばらくすると三人がお風呂から上がってきた。あとは布団の準備をするだけだ。
澪ちゃんと繭ちゃんは和室で、螢さんはソファ。今日はもう起きないだろうし、怜さんもソファかな?
螢さんたちがこの家に来るようになってからの、お決まりのパターンだ。
自然に、千歳ちゃんはどうしようか?という流れになる。
怜さんの部屋が開いてはいるが、千歳ちゃんを一人で寝かせるのも可哀想だ。
私は千歳ちゃんを自分の部屋に誘うことにした。
「じゃあ、私はちょっと部屋を片付けてきます」
そう言って立ち上がると、「なら、俺は澪たちを手伝うよ」と螢さんたちは和室の方へ向かった。

階段をあがり、自室の扉を開けると、ベッドの上に見慣れたノートが置いてあるのが目に入る。
まさか……あれは……。
「なんで……このノートがここに……?」
それは間違いなく、私の書いた「みおまゆ!」のノートだった。
いつもの場所(隠し場所のメッカ、ベッドの下)にちゃんと隠したと思ってたのに……。
そこで私ははたと気づく。
今日の昼間、怜さんが私の部屋に入っていたことを。
そういえば、怜さんは二階に上がったままなかなか降りてこなかった。
怜さんがこのノートを見ていたとしたら……。
隠しておいたエロ本を母親に机の上に出されていた中学生の気持ちが、今なら少し理解できるような気がした。
その時、カチャ……と、ドアの開く音がかすかにした。
「だ、誰!?」
柄にもなく慌てふためいた私を、千歳ちゃんが少し開いたドアの隙間から覗いている。
冷静にノートをその辺に置いて、彼女を迎え入れていれば、何事もなく済んでいたのに。
そんな当たり前のことすら考えられなかった私は、ノートを胸に抱き、部屋を飛び出していた。
どうしよう……急がないとみんなが戻ってきちゃう。早くどこかに隠さなきゃ……。
隠し場所を求め、階段を下りる。隠している姿を千歳ちゃんに見つかってもまずい。
しかし、辺りを見回してみたものの、どこに隠しても誰かに見つかってしまいそうな気がする。
私が、増えすぎたエロ本の隠し場所に困っている高校生の気持ちをわかりかけていると、
ふと、視界にあるものが入った。
螢さんの、鞄。
(そうだ。後はみんな、もう寝るだけ……。一旦ここに隠しておいて、あとで回収しよう)
私は眠っている怜さんを起こさないよう静かにソファに近づくと、螢さんの鞄にノートを忍ばせた。
あとは、他のみんなが眠るのを待つだけだ。
579小説家たらんとする少女に惑う (4/6):2006/05/19(金) 07:40:55 ID:/+LitaO+
ベッドに入った千歳ちゃんが寝息を立て始めたのを確認すると、私は彼女を起こさないように、そっと部屋を出た。
もちろん、螢さんの鞄からあのノートを回収するためだ。時間的にもそろそろいい頃だろう。
(螢さん、どうか、気づかないで眠っていてください……)
そう祈りながら、階上から、リビングの様子をうかがう。
しかし、私の希望は見事に打ち砕かれてしまった。
螢さんは眠っているどころか……あのノートを読んでいた。
ここからではよく見えないが、きっとびっくりしているに違いない。螢さんじゃなくても驚くだろう。
自分の鞄に、誰が書いたとも知れぬ、姪たちが登場人物の成年向け小説(しかもふたなり)が入っているのだから。
どうしよう。
今から無理矢理取り返したって手遅れだし、それでは「自分が書きました!」とわざわざ宣言するようなものだ。

『逆に考えるんだ。「見せちゃってもいいさ」と考えるんだ』

突如、かの英国紳士の名言が頭の中をよぎった。
そうだ。相手は螢さんだ。このまま放っておけば、私を疑いはしても、追求してくることはないだろう。
不自然な動作をせず、いつものように、普段通りの私でいれば、その疑いすらもそのうち消えてしまうはず。
ノートの回収の方は、残念だけどあきらめよう。ここはじっとしているのが一番……いや、ちょっと待て。
ノートを誰かに見せるということは考えられないだろうか。見せるとしたら怜さんくらいだが……
私は冷静に分析を始めた。

 1.螢さんはノートを見せない(ほとぼりが冷めるのを待てば、丸く収まる)
 2.螢さんが怜さんにノートを見せる
  2a.怜さんは昼間、ノートを見ていない(怜さんは私を疑わない。=1)
  2b.怜さんは昼間、ノートを見ていた(人生オワタ\(^o^)/)

……なんとかなりそうだ。最悪の状況に陥ったときは、またその時に考えればいい。
どっちにしろ、今は成り行きを見守るしかないのだ。
私は螢さんに全てを託し、部屋に戻って眠ることにした。
580小説家たらんとする少女に惑う (5/6):2006/05/19(金) 07:41:29 ID:/+LitaO+
「な、なんだ……これは……」
あ…ありのまま、今起こった事を話すぜ!
俺が深紅くんが作ってくれた資料を読もうと思ったら、いつの間にか繭×澪のエロ(?)小説にすり変わっていた。
しかし、催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてないことはすぐに分かった。
鞄の中には別に、ちゃんと資料のノートが入っているからだ。だとすれば、これは一体……?
ぱらぱらと眺めていると、まことに恥ずかしながらオニンニンがヴォッキッキしてしまった。
思いもよらぬところからふってわいた性欲をもてあましていると、「叔父さん」と突然、後ろから声がした。
「くぁwせdrftgyふじこlp!!」
俺の異常な動揺ぶりを見て、繭が不審そうな顔をしている。
「日本語でおk」
そう言った繭の目は、当然のように、俺の手にあるノートに注がれた。
「それ、何?」
「み、深紅くんが作ってくれた資料……」
恐らく一番自然な言い訳をしたと思うのだが、おっきした息子をかばって前屈みになる仕草が不自然だったのか、
繭は「……怪しい」と言って、俊敏な動作で俺からノートを奪うと、それに目を通し始めた。
「らめえぇぇぇっ!」
手を伸ばしてノートを取り替えそうとしたが、繭は足のケガを感じさせないバックステップで間合いを取ると、
こともあろうにノートの内容を声に出して読み始めた。
「なになに?『澪は「お姉ちゃんなら……いいよ」と言うと、ベッドに座り、ゆっくり足を開いた。
赤らめた澪の顔を見て、繭は自分の中のサディスティックな一面が表に出てこようしているのを感じていた――』」
MAYUに音読されるなんて頭がフットーしそうだよおっっ、と、
俺は自分が書いたわけでもないのに、その場から逃げ出したい衝動に駆られていた。
「……叔父さん、私たちのことこんな目で見てたの? 不潔……サイテー」
汚らわしいものを見るかのような、冷たい目で繭が言う。
お前に言われたくねえよ、と思ったが、俺は自分の中のマゾヒスティックな一面が表に出てこようとしているのを
感じていたので、俺は黙ってそのままなじられていることにした。

……結局、例のノートは繭に没収された。繭に握られた弱みがまたひとつ増えてしまった。とんだ災難だ。
それにしても、一体誰があんなものを俺の鞄に入れたんだろう。イタズラにしては手が込んでいるが……
俺は『いつの間にか鞄の中に入っているエロ小説』という都市伝説を資料に追加しようと思い立つと、
鞄の中から、今度こそ、資料のノートを取り出した。
581小説家たらんとする少女に惑う (6/6):2006/05/19(金) 07:42:05 ID:/+LitaO+
翌日。
私はあくまで自然にみんなと接しながら、帰宅する準備をしている螢さんの様子を見ていた。
これといって不自然な様子はない。杞憂だったのだろうか。
そんなことを考えていた私の袖を、千歳ちゃんが引っ張った。
「みくお姉ちゃん、ちとせ、またきてもいい?」
昨日は嫌な思いをさせてしまったかと思ったけど、千歳ちゃんは気にも留めていないようだった。
「うん、いいよ。また一緒に遊ぼうね」
千歳ちゃんは「うん!」と言うと、澪ちゃんたちの方へ走っていった。
「じゃ、そろそろお暇しようか」
螢さんたちが荷物を手に玄関の方へ出ていく。それを見送るため、私も後をついていった。
「資料ありがとう。怜にも伝えといてくれ」
「深紅さん、お邪魔しました。また来ますね」
「みくお姉ちゃん、ばいばい!」
手を振って、帰っていくみんなを見送ると、私はふうっとため息をついた。
(疲れた……もう一度寝なおそう……)
そう思って自分の部屋に戻ろうとすると、今出ていったばかりの繭ちゃんが戻ってきた。
「繭ちゃん、どうしたの? 忘れ物?」
「深紅さん。これ、返すわ」
繭ちゃんはそう言って、手に持っていたノートを差し出した。
それは見紛うはずもない、もうあきらめていた「みおまゆ!」のノートだった。
「えっ!? な、なんで、繭ちゃんが……?」
すっかり取り乱した私をよそに、繭ちゃんは再び玄関の扉に手をかけ言う。
「続き書いたら私にも読ませてね。今度は澪×私がいいわ」
私はショックのあまり、繭ちゃんが出て行った後も、しばらく呆然とその場に立ち尽くしていた。

繭ちゃんがどうやってこれを手に入れたのかはわからないが、結果的にノートは返ってきた。
これ以上被害が出ることがないということを考えれば、私が想像していたよりも良い結末を迎えたようだ。
それに、初めての読者が出来たことも嬉しかった。繭ちゃんのリクに応えるために、頑張ろう。
私はリビングで眠ったままの怜さんを横目に、自室に戻るとさっそく「みおまゆ!」第二話の執筆に着手した。
582名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 09:14:53 ID:Ppr7HXrY
第一感想。
‥GJ。
第二感想。
まじ吹いたww‥。
第三感想。
螢‥‥‥‥‥カワイソス。
583名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 20:05:04 ID:AWtt0ibO
GJGJGJGJの波紋疾走ー!!!!!
俺も「みおまゆ!」が読みてeeeeeeeeeee!
584名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 15:58:38 ID:tgPqyv6x
GJすぎて噴いたwwwwwwww
先生!みおまゆ!を僕も読みたいです!
585名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 21:49:24 ID:0VQiZT+7
「螢さんは――」
「ん?」
 ぱりっ、と煎餅を齧る螢に背後から声が掛かる。
「いつまで私の家にいる気なんですか…?」
 怜が聞きつつ、螢の横に座る。
 煎餅を一枚取って一口齧った。螢も続いて弱弱しく煎餅を齧った。
 テレビでは駆け出しの芸人達が己の腕を見せ合い、戦っている。
 ある者達はモノマネをして笑いを引き出した。ある者は小道具を使って笑いを生んだ。
 だけど、テレビの前の2人は笑顔どころか声すらも出さない。口から漏れるのは煎餅を砕く音だけ。
「もう終わったんですよ」
 ややあって怜がつぶやいた。それを横目で見た螢が明らかに表情を変える。
 ――終わってない。
 そうだ、まだ終わってない。むしろ始まってもいない。
 今いるのはスタート地点なんだ。
 ……深紅、怜。この美人二人の家に男が一人。
「きっとまた、僕が必要になります」
 性欲処理に使ってくれ。何ならお背中お流しします。
 お礼? そうだな、俺の息子を洗ってくれますかな?
 ああ、そう…上手いよ……初めてとは思えないよ。
 え? 初めてじゃない? え、…優雨?
「―――大丈夫ですか?」
 ビクリと身体を震わす。俺はすかさず首を二度横に振って何でもないと呟いた。
 時間はたっぷりあるんだ。
586名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 01:04:00 ID:tzdbpIVx
数日後

俺は亀甲縛りをされ、怜と深紅ちゃんの濡れ場を延々と見続けさせられる…
そんな過酷な生活を強いられることになっていた

「なっ…何故だ二人とも! 俺も混ぜてくれっっ」
不思議そうな顔を二人は俺に向ける
「「螢(螢さん)じゃ絶っっ対に満足できない(できません)」」

587名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 12:49:05 ID:bbQei1wN
職人たん乙!
毎回まじに吹かされるwwww ちとせたんモエス
タイトルはパロディ?最初の二つしかわからないけど
早く続きが読みたいが焦らず頑張ってくれ!
588名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 03:06:05 ID:OIwJzxHh
急に神職人が……?
589名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 15:44:48 ID:ULcqI4sH
「急に神職人が…」
 螢は目の前のノートパソコンに表示される文字列に感嘆の声をあげた。
 『零総合 漆』。
 数多の短編小説書き達が集い、己の作品を公開してゆく場所。
 匿名性の高い2ch内に作られたその場所では、誰でも気軽に作品を公開出来る。
「停滞した所を狙っての書き込みか…。くそ! 僕がやろうとしてたのに!!」
 螢は一変し、ディスプレイを睨んだ。ふつふつと湧き上がる怒り。腕どころか身体が震えている。
「覚えてろよ…僕がお前らを越える作品を作ってやるからな!」
 意味も無く螢はディスプレイを指差して叫んだ。
 ならば早速執筆だ。執筆とはいえ、実際はただのキータイピングだが…気にしてはいけない。
「まずはメインキャラだな。うーん…スレを見る限りでは千歳の話で大盛り上がりしてるな」
 ならばここは千歳の話か…? それで神達を超える、僕を称える言葉が多く書き込まれれば勝ちだ。
 だが、敢えて別の路線で行くのもいいかもしれない。だとすれば…何だ?
 螢はマウスを何度かカチカチと鳴らし、ホイールを転がした。
 必ずこのスレ内に勝利の方程式を完成させるヒントがある。そう信じて螢はホイールを転がしていた。
「! これだ…『>>554ルリが怜、深紅と』」
 獣姦、これはある意味新しい。ただ問題があるとすれば、ルリは猫だ。
 猫と人間は無理があるのではないだろうか…。いや、世の中は広い。有りえない組み合わせではないはず。
「僕自体獣姦の知識が薄い。まずは情報収集だな――」
 グーグル先生のイメージ。検索するのは――うむ、ストレートに『獣姦』。
 電気も付けずにパソコンに向かう螢。暗闇の中でキーボードを叩く姿はさぞかし恐ろしかろう。
 ―それにしてもこの家は、なんでいつも照明が暗いんだろうか。
「お…これは……」
 ふつふつと湧き上がる何か。螢は椅子を引っくり返す勢いで立ち上がって、パソコンに指を差した。
ttp://journal.call-girl.jp/project/post_56.html(馬鹿画像なので安心)
「ふざけてるのかこれは! くそ…グーグル先生は斜め上をいくな…」
590名無しさん@ピンキー:2006/05/22(月) 18:06:59 ID:l2oGgErt
よっぽどこの画像貼りたかったのかwww?GJ!
591名無しさん@ピンキー:2006/05/23(火) 22:18:00 ID:HLKBQNow
>>586 GJ!
螢は究極のかませ犬だな。
592ルリと四人の女霊 (1/3):2006/05/25(木) 20:09:40 ID:RDHBsCfw
お久しぶりである。ルリである。今日は吾輩の一日を紹介しようと思う。

深紅の用意してくれたキャットフードを食べ、ぴちゃぴちゃと水を舐めて喉を潤すだけの簡単な食事を終えると、
吾輩は手始めに、リビングの階段下へ向かう。
そこから上を見上げれば、天窓から少女がこちらを覗いているのを目にすることができる。
この家に出没する霊のひとりから聞いた話ではあるが、彼女は以前この家に住んでいた少女であるらしい。
生前から、屋根に上って遊ぶことを楽しみにしていたという、なかなかアクロバティックな子供だ。
一時のスリルに身を投じることで「生」を実感しているのか――。
吾輩は「にゃあ」と、少女に向かってひとつ鳴いてみせた。
その声が彼女に届いているのかどうかはわからないが、そうすることで、彼女は満足したように姿を消すのだ。
これで彼女が危険な遊びをすることはなくなった、と安心するのも束の間、翌日には再び彼女は天窓に現れる。
吾輩はまた「にゃあ」と鳴く。すると彼女は消え、また翌日、現れる。まさに無限ループである。
毎日、同じことの繰り返しであったが、天窓に上ることのできない吾輩が、
唯一、彼女と交わすことのできるコミュニケーションでもあった。

次に向かうのは廊下である。玄関、洗面所、仏間と念入りに異常がないかを確かめる。
今日はどうやら現れないようであるが、時折、こちら側にも霊が姿を見せることがあるためだ。
もちろん霊たちが姿を見せたからといって、吾輩が何か行動を起こすわけではない。
この家に住む霊たちの大半は、ただそこにいるだけで、深紅や怜に危害を加えるようなことはしないからだ。
無論、もしそのようなことをする霊が現れれば、吾輩は己の体を武器として戦いに身を投じることだろう。
……さて、今日はこの辺で切り上げよう。

そうこうしていると、お昼である。
吾輩がリビングに戻ると、キッチンで女性がひとり、水仕事をしていた。
「やあ、瀧川さん」
吾輩が声をかけるとその女性、瀧川さんはこちらの方を向いて会釈した。
瀧川さんは、吾輩が唯一、言葉を通して会話をすることができる霊である。
飛行機事故で家族と恋人を失った過去があり、似たような境遇の怜や深紅と仲良くしようと努力したのだが、
結果的に二人を怖がらせることしかできなかったという。それで今は、深紅がやり残した家事を片付けたり、
部屋を掃除したりすることでアピールしているらしい。
「ちょっと待っててくださいね。すぐご飯、用意しますから」
そう言って、深紅が片付けていかなかった食器を洗い終えると、瀧川さんはすぐにキャットフードを注いでくれた。
本来はないはずの、吾輩の昼食である。
深紅が「キャットフードの減りが早い気がする」と怪訝な顔をしているのを見ると心が痛むが、やめられない。
「ありがとう、瀧川さん」
吾輩がそう言うと、瀧川さんはどこか影のある表情でにっこり微笑み、
「では、また明日」と言って、ゆっくりとその姿を消した。
吾輩はいつか、瀧川さんと深紅たちと仲良く過ごせるようになる日がくることを願っていた。
593ルリと四人の女霊 (2/3):2006/05/25(木) 20:10:17 ID:RDHBsCfw
お腹がいっぱいになると、吾輩は庭へと続く窓にカリカリと爪を立てた。
すると、音もなく窓が開くので、外へ出てみれば、傍らに乳母車を置いた老婆が縁側で佇んでいるのが目に入る。
「おやネコちゃん、今日も話を聞きに来たのかい」
吾輩が返事もせずその膝に飛び乗ると、老婆は吾輩の背を撫でながら続けた。
「それじゃ、今日は戦争の話をしてあげようかね。あれは私がまだ女学校に通っていたころ――」
遠い目をしながら、老婆が話し始める。
だが、吾輩がここにやってきたのは、彼女の話を聞くためではない。
膝の上という昼寝には絶好のポジションを求めてのことである。
それでも、出会ったばかりの頃は、彼女の口から語られる昔話をよく聞いていた。
しかし、いつからか吾輩はその話を聞くのに飽きてしまっていた。
なにしろ、彼女の話のレパートリーは非常に少ないのである。
戦争の話、初恋の話、意地悪な嫁の話、孫の話、情けない話、今日の当たり目。
以上が彼女の持ちネタであった。
特に今話している戦争の話(略して、センバナ!)は吾輩のもっとも苦手な話である。
平和な時代に生まれた吾輩にとっては退屈な話であるし、
第二次世界大戦の話かと思って聞いていたら、日露戦争だか日清戦争だかの話であったりする。
当時の時代背景をよく知らない吾輩には、大して面白い話ではない。
「その頃の私は『気立てのよい娘だ』と評判で、村の若い衆たちが放っておかない――」
頬を赤らめながら語る老婆の昔話を子守唄代わりに、吾輩は体を丸め眠ることにした。


目が覚めると、いつの間にか老婆は、乳母車と共に姿を消していた。
辺りを見回すと、街は夕暮れに包まれており、近づく夜の気配を知らせてくれる。
吾輩は下がり始めた気温に、体をぶるっと震わせると、家の中へ戻った。
(……?)
室内に戻ってくると、どこか様子がおかしい。
その異様な雰囲気に、つい先ほどまで肌寒さとは対照的に、吾輩の体にはじっとりと汗が滲んでいる。
こんな日には、決まって、彼女が現れる。
「キシャー!!」
切り裂くような奇声と共に、ソファの下から彼女が姿を表した。
大きく開かれた血走った目。低い体勢を支える長い四肢。
まるで蜘蛛のようなポーズをとってこちらを見ている彼女こそ、我が永遠のライバル、浅沼さんであった。
吾輩はぴょんと後ろにジャンプすると、間合いをとった。浅沼さんは攻めるタイミングを見計らっているようだ。
さて、一見、普段ゴロゴロしているように見える吾輩であるが、こう見えても昔はやんちゃした身である。
80年代、ツッパリブーム全盛期には「なめんなよ」というキャッチコピーで全国を制覇したことも――

 !?

594ルリと四人の女霊 (3/3):2006/05/25(木) 20:11:40 ID:RDHBsCfw
突然、吾輩の首が浅沼さんの手によって絞められた。
どうやら自分語りに夢中で、吾輩は俊敏な浅沼さんの動きを追うことを忘れてしまっていたらしい。
吾輩の小さな体が、浅沼さんの手によって持ち上げられた。
薄れゆく視界の中、浅沼さんが口を大きく開いているのが見える。
(“吾輩”を“捕食”(食べ)る気だぜ……!?)
慌てて後ろ足で、浅沼さんの顔に蹴りを浴びせると、浅沼さんの力の抜けた腕からするりと逃げ出す。
危ないところだった。もう少し反応が遅ければ、吾輩は今ごろ彼女の食料となってしまっていただろう。
ここは早々に勝負を決めてしまった方がいいかもしれない。
危うく“不運”(ハードラック)と“踊”(ダンス)っちまいそうだった吾輩は、早くも必殺技の構えに入った。
その名も「ルリバスター」。当時、数多のファミコン少年を絶望に陥れた奥義「猫リセット」を改良した技である。
大地に流れる龍脈のエネルギーすなわち気の流れを全身に巡らせ、その全てを右前足に集中させる。
徐々に集まった気は、さながらロックマンのようにウィンウィン……と吾輩の前足に溜まり始めた。
「みろ! 運動エネルギーが熱エネルギーに変わるぞ!」
急ブレーキをかけるデブとガリの二人組ヲタのような決め台詞を吐くと、吾輩は浅沼さんを見据える。
彼女はいつでもこちらへ飛び掛ってこれるように、体を引いて構えていた。
にらみ合いの状態が続く――。ならば先手必勝!と、吾輩は狙いを定め、ついにルリバスターを放った。
空気が逆流するような風圧と共に、吾輩の手から放たれた高出力エネルギー体が浅沼さんに襲いかかってゆく。
しかし、浅沼さんはそれよりも早く動いていた。
彼女は吾輩の心を読んだかのようにぴったりのタイミングで跳躍し、ルリバスターを避けていたのだ。
目標を失ったルリバスターは「ガオン!」とヴァニラ・アイス的な効果音でもって階段の一部を削る。
(くそっ! 外れた……っ!)
吾輩は残り時間ギリギリで打ったシュートが外れて全国への夢を絶たれたバスケ部員みたいになっていた。
破壊された階段を見て、深紅や怜の驚く顔が目に浮かぶが、今はそれどころではない。
見上げれば、浅沼さんはその跳躍と同時に、腕を振り上げて攻撃の準備に入っている。
慌てて避けようと試みるが、ルリバスターの反動か、体が痺れて動かない。
(もうだめだ、食われる……!)
もはや絶体絶命か……。全てをあきらめ、吾輩が目をつぶった、その時。
「ルリー、ただいまー」
ガチャ、という音と共に、玄関の扉が開く音がした。深紅と怜が帰ってきたのだ。
それに驚いて攻撃することが出来なかった浅沼さんは、バランス悪く着地すると、慌ててその場から姿を消した。
……どうやら、命拾いできたようである。
深紅はリビングへ入ってくると、床に鞄を置いて、吾輩を抱き上げた。
「ルリ、おとなしくしてた? ……って、えっ!? ちょ、れ、怜さん! 階段が!」
「なに? どうした……うわっ!?」
いまだ埃を舞い上げ続ける、崩れた階段の方に目を向けたまま、二人がポカンと口を開けて固まっている。
少しばつの悪かった吾輩は、招き猫のように小さく手をあげて「にゃん」と可愛く鳴いてみせた。


と、こんな感じで(今日はいつもよりハードコアだったが)吾輩の一日は過ぎていくのである。
吾輩が食っちゃ寝の毎日を送っているとばかり思い込んでいる深紅と怜であるが、
それが大きな間違いであることは、皆さんにはお分かりいただけたことだろう。
「どうしましょう、上に行けませんね……」
「個人宅を狙った小規模テロかしら」
……二人には少々、迷惑をかけてしまったようだが。
595名無しさん@ピンキー:2006/05/25(木) 22:59:27 ID:vVXoCgII
GJ!
FF3のラストダンジョンで、ラスボスの手前で猫リセットを喰らった俺が来ましたよ…
今となってはいい思い出。
床下を這う女とルリは密かに闘っているに違いないと思っていたが…
596名無しさん@ピンキー:2006/05/25(木) 23:04:26 ID:lYLa5jfO
後半わけ分からんなwwwGJ
ルリはなめ猫だったのか
597名無しさん@ピンキー:2006/05/26(金) 03:14:51 ID:r7P7UzI5
ワロスwww
深紅に隠れて片付けする瀧川さんに
不覚にも萌えた
598名無しさん@ピンキー:2006/05/26(金) 12:47:56 ID:/cR93gye
 深紅の部屋の前で腕を組み、天を仰ぐ螢が深く、息を吐いた。
 ようやく今日が実行日だ。
 数年前に行った、高校入試前に近い緊張感が螢の全感覚を支配する。
 ただあの時と違うのは、自らの股間にぶら下がるブツが大きくなりつつある所か。
「僕はロリじゃないからな」
 いつの間にか足元にいたルリにそう言って、自分が獣姦を調べていた事を思い出す。
 もしかしたら怜や深紅なら、すでにルリと交わっていたりするかもしれない…。
 この家にはつい最近まで男はいなかったんだし、自慰で満足出来ない二人がルリを使う事も考えられなくない。
 そこに現れたのが救世主、螢。
「今からすぐに楽にしてや…ん?」
 黒澤家二階のT字型をした廊下の南側からはリビングが見える。
 そこに怜の姿が見えたのだ。このまま気にせず深紅の部屋に入る事も考えたが、眼下に見える怜に注目した。
 ゴクリ…と唾を飲む音。胸元を大きく見せる蒼い服から覗く谷間に螢は二度、唾を飲んだ。
 あまりの熱い視線に気付いたのか、こちらに向いた怜が螢に、
「どうしたの?」
「――いいおっぱ…いや、なんでもないよ!」
「そう、あと少しでご飯だから」
 螢は動揺を隠すように平然と頷いて、T字型廊下奥の優雨の部屋に戻った。
 今ではここが螢の部屋になっているが、誰かに見られているような気がしてならないこの部屋が、螢は好きではない。
 見ているのが怜や深紅なら快楽なのだろうが、得体の知れない物は御免だ。
「自己発電でもするか…」
 螢はいそいそとズボンを脱いで、ベッドにもたれる形で座った。
 結局自分の手で快楽を与えてしまう事になってしまった。勃起した男根が悲しく見える。
 ズボンとパンツという壁を取り除けば、男根はすぐに天を指して快楽を待つ。
 ドタドタドタ…。部屋の隅から何かが聞こえる。
「?」
 ドタドタ…。誰かが四つん這いで移動するような音。
 ……。無音が訪れ、螢の目の前に、深紅が教えてくれた四つん這いの女が姿を現した。
「…」
 絶句。優雨はこのような環境で自家発電を…?
 そう考えている内に四つん這いの女は凄まじいスピードで移動し、螢のそそり立つ象徴を咥え込んだ――。
599名無しさん@ピンキー:2006/05/26(金) 16:58:16 ID:MNJslFqP
>>592
今回も激しくワロタwwwwwGJ!!

>>598
上の読んだ後だからか螢の象徴が浅沼さんに食われそうな気がするww
600名無しさん@ピンキー:2006/05/27(土) 00:17:01 ID:5BNO4TnR
GJ!
考えてみれば螢が性交に成功したのは前スレの鬼畜螢以来だな。
601名無しさん@ピンキー:2006/05/27(土) 20:52:18 ID:2pYMM+5P
>>600
性交に成功←突っ込むべきなのか!?

しかしホント螢は女霊とヤル(ヤラレル)のが一番しっくり来るなwww
602みおまゆ! (1/4):2006/05/28(日) 05:22:08 ID:QcX4zWU5
 誰にでも優しく、常に笑みを絶やさぬ澪。そんな彼女は、姉の繭の目にも眩しいくらいに輝い
て映る、自慢の妹だった。
 双子の二人は、生まれてからほとんどの時間を共に過ごしてきた。それでも、繭と澪の性格は
正反対といっていいくらいに違っていた。いつも明るく友人も多い澪と、そんな妹の後を追うよ
うにして生きてきた繭。
(私とお姉ちゃんは、ふたりでひとつだから。ずっと、一緒にいようね)
 幼い頃に交わした澪との約束を、繭はいつまでも信じていた。それでも年齢を重ねるにつれ、
繭はいつか妹が自分のもとから去っていくような、不安な気持ちになることが多くなった。いつ
からだろう、そんなことを考え始めたのは。澪が私を置いて友達と遊びに出かけたとき? 男の
子から告白されたって、嬉しそうに話しているのを聞いたとき?
 妹との約束を信じる気持ち以上に、言い様のない不安が繭の心を支配していくようになった。

 せめて自分が男の子だったら、澪とひとつになれるのに。
 そんな妄想を、悪戯好きの神様が叶えたのか。
 ある朝、下半身に違和感を覚えた繭がトイレに駆け込むと、繭のそこには、信じられないこと
に、立派な男のそれが「私は魔王マーラ。こんごともよろしく」とでも言わんばかりに鎮座して
いた。
 おちんちんが生えちゃったYO!と動揺した繭は、部屋に戻り通学用の鞄から保健体育の教科書
を取り出した。年頃の少女である繭も、人並みに性に関する知識は持っていたが、男性器そのも
のに関することはよく知らなかったのだ。
『思春期における男女の身体の変化』。目的のページを開く。そこにはもちろん、女性の体に男
性器が生えるなどという記述はなかったが、それでも『各部の名称』『仕様』『故障かな?と思っ
たら』など、繭が知りたいだけの情報は得ることができた。
 特に気になったのは次の部分だった。

 男性器について

 ・念珠を追加し、ポイントを消費することで強化することができます。
 ・強化レンズを装備することで、様々な効果を得ることができます。

 ……よくわからなくなってきたが、それよりも繭は、澪とひとつになることだけを考えた。自
身の体に起こった異変に、やはり戸惑いはあったが、それでも、片割れ同士だった澪と自分が本
当の意味でひとつになれると思うと、喜びの方がそれを上回っていた。
「澪、起きて!」
 繭は教科書を閉じ、まだベッドで眠っている澪のもとへ行くと、その体を揺すった。
「う……ん……お姉ちゃ……」
 澪が眠りから覚めたのを確認すると、繭は自分のスカートをバッとめくり上げた。目覚めたば
かりで半開きだった澪の瞳が、目の前の光景に一気に開く。
「ちょっ……お姉ちゃん! な、なにそれ……!」
「生えちゃったの!」
 澪はベッドから起き上がって、夢でも見ているのではないかと頭を振ってみたが、獲物を狙う
蛇のように澪を睨みつける、繭の小さな下着から飛び出したグロテスクなそれは、夢にしてはあ
まりにリアルで肉感的だった。そんな澪の顔を見ているうちに、我慢の限界を迎えた繭は、いき
なり澪に抱きついて、そのまま唇を重ねた。
「んっ……!」
目を白黒させる澪。目覚めたばかりではっきりしない頭は、繭の体の異変と、突然のキスという
二つの理解しがたい状況に混乱していた。繭は、そんな妹の戸惑いをよそに、その口内に舌を突
き入れ、かき回す。ねっとり絡みつくその動きがあまりにも激しく、繭が唇を離そうとしないの
で、息苦しくなった澪はとうとう繭の体を突き放した。
「……っ、ぷはっ……はぁ……はぁ……」
酸素を求めて喘ぐ澪。そんな澪に構わず、繭はその肩を掴んで言った。
「澪……ひとつに、なろう」
603みおまゆ! (2/4):2006/05/28(日) 05:22:58 ID:QcX4zWU5
 繭と同じように、自分の中に欠けた部分があるのを認めていたのかどうかは定かではなかった
が、澪は「お姉ちゃんなら……いいよ」と言うと、ベッドに座り、ゆっくり足を開いた。
 赤らめた澪の顔を見て、繭は自分の中のサディスティックな一面が表に出てこようしているの
を感じていた。
 澪のスカートを捲り、そこに顔を近づけると、繭は薄い布一枚隔てたその上から、そこに触れる。
「もう染みになってるよ……キスだけで濡れちゃったの? 澪って、えっちだね……」
 そう言って、澪の小さな谷に指をあて、動かし始める繭。声をかみ殺すが、自分の意思とは裏
腹に、澪の秘部からは粘着質の液体が滲んだ。白い下着が、汗でもかいているかのように、湿り
気を帯び始める。
「澪、腰あげて……もっと気持ちよくしてあげる……」
 繭が言うと、澪はじっとしていたが、やがてゆっくりと腰を浮かせた。澪の下着に手をかけ、
それを下ろすと、繭は再びスカートの中へ潜り込んで、固く閉じた澪のそこを指で玩び始めた。
「あっ……」
 初めて、小さく声をあげた澪。しかし繭はそれに構わず、妹への愛撫を続けた。他人のそこに
触れるのは繭にとって初めてであったが、不思議と澪の敏感な部分がわかっていた。
「私と同じだね……」
 初めて知る二人の新たな共通点に、繭は嬉しくなって動かす指を早める。そうしていると、そ
のうち薄い包皮に包まれた澪の芽が小さく頭を出してきた。
「感じてるんだ、澪……」
 次に繭は両方の指で、澪の双璧を開いた。何物も受け入れたことのない澪の入り口が顔をのぞ
かせる。小さく震えるそこからは、体自身が受け入れる準備をするかのように、澪の粘液が零れ
ていた。
「澪の中、もうびちょびちょだよ……?」
「だめっ、だめだよお姉ちゃん……中、見ちゃだめっ……!」
 視姦するかのように眺める繭。恥ずかしさのあまり、澪は顔をそらすが、そんな様子を知るこ
ともなく、繭はそこに口をつけた。そして舌での愛撫を始める。金属を舐めたときに感じるよう
な、痺れにも似た感覚が繭の舌に残るが、繭の舌は止まらない。
「やっ……あっ、だめ……っ……」
 口では否定を続けるものの、澪は今まで感じたことのない快感を体全体で感じていた。身をよ
じらせる澪の体を、繭は手でしっかり抑え、舌を動かし続ける。やがてその対象は、澪の突起へ
と向けられる。
「はぁっ、んっ……っ!」
 尖らせた舌の先でつつくようにそれを刺激すると、澪は今までないほどに体をよじるようにな
った。澪の限界が近いことを、その反応から知ると、繭はあっさりと舌での愛撫をやめた。
「だめだよ澪、まだイかせてあげないんだから……」
 繭がスカートの中から頭を引き抜く。数分ぶりに見る澪の顔は、激しい運動をした後のように
上気していた。
「そろそろいいよね、澪……」
 そんな澪を見て、たまらなく愛しい気持ちになった繭は、一刻も早く澪のすべてを自分のもの
にしたくなった。繭の問いに、こくっと小さく頷くと、澪は顔を背けたまま、自分のスカートを
めくりあげる。
「澪のこと欲しくて、こんなになっちゃったよ……」
 痛いほど怒張したそれを澪に見せ付ける。
「澪のはじめて、私がもらうね……」
 繭は自身のそれを、澪の秘所にあてがった。びくんと体を揺らす澪。繭は、澪の秘部から溢れ
る愛液をまぶすようにこすり付け、挿入の準備を始めた。自身の先走った液と混ざりあい、繭の
それはぬらぬらと輝いていた。
「澪、入れるよ……」
604みおまゆ! (3/4):2006/05/28(日) 05:23:43 ID:QcX4zWU5
 澪の小さな穴にそれを押し付ける。
(やっと、澪とひとつになれる……)
 喜びを噛み締めるように、ゆっくりと繭はその腰を前へ突き出した。小さな門が押し開らかれ、
繭自身をずぶずぶと飲み込んでゆく。
「っ、……痛っ!」
 意外にもすんなりと入っていくものだと思っていたが、急に強くなった膣の抵抗と、澪の反応
にびっくりして繭はその動きを止めた。
「ご、ごめんっ、澪……大丈夫……?」
見れば、結合部からは一筋の紅い雫が伝っている。苦しそうに息を荒げる澪。それを見て、繭の
心は揺らいでいた。
「澪……」
 澪とひとつになりたい気持ちは今でも変わらなかったが、それ以上に、澪が苦しんでいる姿を
見ることが繭にとって苦痛だった。
「本当にごめん……無理矢理しちゃって……もう、やめるね」
 そう言って腰を引こうとする繭。しかし、澪の手がその動きを止めた。
「……だいじょうぶ……だから、……続けて、お姉ちゃん……」
 潤んだ瞳で見上げる澪。その目はやはり痛みからか涙が滲んでいたが、澪は繭の目を見つめた
まま続けた。
「私もお姉ちゃんと……ひとつになりたいから、だから……続けて……?」
 嬉しい気持ちと、澪の体を心配する気持ちが繭の中でせめぎ合うが、澪の目がそれを求めてい
た。繭は澪に覆い被さり、今度は小さく、その唇を重ねる。
「じゃあ、痛かったら、言ってね……」
 体を起こし、澪の腰に手を添える。もう一度、今度は先ほど以上にゆっくりと腰を前に動かす。
「澪……」
「う……んっ……大丈夫だよ……続けて……」
 やはり苦しそうな澪だったが、繭は出来る限りの丁寧な動きで、突き出した腰を引いては入れ
を繰り返し、澪の負担を減らすように務めた。澪の狭い膣内は、繭のそれに甘美な刺激を与えて
いたが、当の繭は澪を傷つけないように動くのに必死でそれに気付いてすらいないようだった。
 そうして、ひどく時間はかかったものの、二人は体はひとつに繋がった。
「澪……全部入ったよ」
 その言葉に「うん……」と頷くと、澪は両手を広げて、繭を迎え入れた。その仕草が、自分を
受け入れようとしているのだと気付くと、繭はそれに抱かれるようにして、体を密着させた。
「ひとつに……なれたね……」
 繭の耳元で、囁くように澪が言う。
「でも……痛かったでしょう? ごめんね……」
 そう言って澪の体に手を回し、ぎゅっと抱きしめる。肩に乗せられた繭の頭を、澪の手が包む
ように優しく撫でた。
「うん……でも大丈夫だよ」
 それから二人は黙ったまま動かず、ただずっと抱き合っていた。
605みおまゆ! (4/4):2006/05/28(日) 05:24:35 ID:QcX4zWU5
「お姉ちゃん。私、約束、忘れてないからね……」
 呟くように、澪が言う。
 繭は何も言わなかったが、ほんの少し、澪の肩を抱く腕の力を強くすることでそれに答えた。
 再び沈黙の時間が続く。それでも二人は言葉はなくとも、対話を続けているかのように、少し
ずつお互いを理解をし合っているのを感じていた。
(これが、ひとつになるってこと、かな……)
 自分の中にあった欠けた部分。澪に包まれていることで、それがどんどん埋まっていくような
気がする……。
 そんなことを考えているうちに、繭の目に光るものが溢れていた。それが決壊して澪の体にこ
ぼれたとき、今度は澪が腕の力を強めて、いつもよりもっと小さく見えた姉の体を抱きしめた。


「それ、これからもずっとそのままなの?」
 新しい下着をはきながら、澪が言った。
「さぁ……澪はこいつをどう思う?」
「すごく……大きいです……」
「そうじゃなくて……私のこと、嫌いになったりしないよね……?」
 不安そうな顔で、澪を見る繭。
「当たり前だよ、嫌いになるわけないじゃない」
 それを聞いて、ほっとした表情の繭に近づいて、澪は続けた。
「それに、なくなっちゃったら、もうお姉ちゃんとエッチできないしね」
 そう言って、繭の頬に小さく口付けする澪。
「うれしいこといってくれるじゃないの。……でも困ったわ、下着に収まり切らないし」
 すでに平常時の大きさに戻っていたとはいえ、澪のそれは、女性用の小さな下着からはみ出し
てしまう。澪は顎に指をあて「うーん( ^ω^)」と考えると、ふと思いついたように「トラ
ンクスにするとか?」と真面目な顔をして言った。
「それじゃスカートはけないよ……」
「ま、後々考えたらいいんじゃない? それよりご飯食べようよ、お腹すいちゃった」
 他人事だと思って、と繭は思ったが、無邪気に言う、手の届かないところにいってしまったと
ばかり思っていた笑顔の澪が、自分の元に戻ってきたのだと思うと、それくらいどうでも良かっ
た。
「そうだね。いっぱい食べて、精つけなきゃね」
「もう、お姉ちゃんったら!」
 楽しそうな二人の笑い声が、家の中に響いた。
606名無しさん@ピンキー:2006/05/28(日) 05:27:19 ID:QcX4zWU5
エロパロ板なのに非エロばかりでは悪いので、書いてみました。でもやっぱエロ書けねーわ。
深紅の書いた「みおまゆ!」とはだいぶ形が違ってしまったし。
作風の変わった深紅が書き直した、という滅茶苦茶な言い訳でカンベンしてつかーさい。
607名無しさん@ピンキー:2006/05/28(日) 15:10:00 ID:BYhjwwPI
ぐぁー萌え萌えした。
澪繭派なのにコレは萌えたー!

繭澪でラブラブって珍しいな!
608名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 01:46:58 ID:Hkj1ywcJ
神ったらGJ!エロも全然いけますよ
非エロでもエロでもドンとこいらっしゃあー!!
609名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 07:32:21 ID:VzAYXuyI
みおまゆ!キター!!!ぐ、GJ!
仕事速くてホントGJです。
チ○ポを念珠で強化っていうのが激ワロスw
610名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 05:03:00 ID:R0Y7Ko1y
保管庫!
しね!
しね!
しね!

保管庫!
しね!
しね!
しね!
しね!
しね!

保管庫!
しね!
しね!
しね!
しね!
しね!
しね!
しね!
611名無しさん@ピンキー:2006/05/31(水) 07:20:30 ID:N/jLuWmc
おい!ツンデレ!

デレの部分がねーぞw
612名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 13:26:39 ID:6T+1leuy
エロパロに来てまで何だけど、エロは全くなくてもいいかい?
613名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 19:06:46 ID:nYIDKEDl
あった方が嬉しいけど、無くってもいいよー
614小梅:2006/06/02(金) 22:10:21 ID:6T+1leuy
ごめんね、結局エロは入れられなかったんだけど保守代わりに投下します。
深紅怜なので、嫌いな方はスループリーズ。
615小梅:2006/06/02(金) 22:12:12 ID:6T+1leuy
スカートが汚れるのも厭わず、怜さんは流れるような動作で墓の前に跪いた。
黒いワンピースから覗く白い腕は、ここ一週間の疲れから一層痩せて見える。

花が枯れてゆくのを見るのは嫌だろうから と、花束は買わなかった。
代わりに持ってきた、優雨さんの好きだった饅頭を供える。
食べ物が腐るのはいいんですか と言ったわたしに、怜さんは「好きなものはいいの」と唇を尖らせた。

線香を供え、手を合わせる。
微笑んで岸を渡って行った優雨さんに「どうぞ安らかに」と祈るのも何だかおかしくて、「お饅頭食べてくださいね」と心の中で呟いた。
短い挨拶を済ませて隣の怜さんを伺うと、彼女は静かに墓を見つめていた。


「本当はね」
怜さんがぽつりと呟いた。

「本当は、わたしも死のうと思っていたわ」
細い指で墓の縁をなぞり、ゆっくりと言葉を選んでいるようだった。
それがわたしへの言葉なのか、それとも墓の中の優雨さんへの言葉なのか分からなくて、ただ息を潜める。
きっと両方なのだろう。
これは怜さんの懺悔であり、告白なのだ。
616小梅:2006/06/02(金) 22:13:31 ID:6T+1leuy
「手首を切ろうとしたの、何度も。剃刀だと失敗するかもしれないから、きちんと包丁を使ったわ。こんな風にね」
そう言うと握った右拳を左手首に当てて、左から右に切って見せた。
バイオリンを弾くような軽やかな仕草だった。
まるで本当に包丁を握っているようで、切れていないだろうかとわたしは怜さんの手首を確かめた。
血が通っているのか疑ってしまうほど、真白い手首だった。
うっすらと血管が透けて見えるそれは、温度を伴っているとは到底思えなかった。

血管の一本一本を焼き付けるように、わたしは白い手首を目でなぞった。
何度確かめても、真っ赤な血液や生々しい傷跡を見付けることは出来なかった。


「でも、何度やっても駄目だった。ただ包丁を当てるだけで、力を込めて引くことが出来なかったの」
怜さんは長い睫毛をそっと伏せた。


617小梅:2006/06/02(金) 22:14:24 ID:6T+1leuy
わたしは瞳の奥にその場面を思い浮かべた。
バイオリンを弾くような優雅な仕草で、包丁を手首に押し当てる。
待ちわびた痛みはいつまで経っても訪れず、ただ冷たさだけを伝えてくる。
よく研がれた切れ味の鋭い刃がその肌を傷付けることはない。

肉体的に傷付くことはなくても、何度も訪れる孤独感は確実に心を蝕んでゆく。
見えない刃は一体何度彼女に血を流させたのだろう。
傷は癒えることなく、今もそこに内在している。
618小梅:2006/06/02(金) 22:15:11 ID:6T+1leuy
「帰りましょう、深紅」
そう言って立ち上がると、怜さんはスカートを軽く叩いた。
裾についていた砂がぱらぱらと地面に落ちる。
線香は既に燃え尽きていた。


「怜さん」
「なに?」
「今でも、死にたいと思いますか?」

怜さんはわたしを見つめてゆっくりと瞬いた。
一週間振りの日光の下で、彼女はまるで消えてしまいそうに細い。

「深紅を一人には出来ないでしょう?」
微笑んだ怜さんの顔を直視できなくて、わたしは俯いた。
見えない刃が刺さったように胸が苦しい。
でもそれは決して傷ではないのだと、わたしには分かっている。
619小梅:2006/06/02(金) 22:15:54 ID:6T+1leuy
「死なないでください、怜さん」
「ええ」
「わたしをおいて行かないでください」
「分かってる」
「お願いだから、いなくならないで」
「大丈夫よ、深紅。わたしは死なないわ」

泣きそうになりながら縋るわたしの頬を、怜さんがそっと撫でる。
優しい仕草なのに、胸の奥が切なく痛んだ。


(でも怜さん、一人にするのは何も死ぬことだけじゃないんですよ)

咽喉まで出かけた言葉を飲み込んで、わたしは怜さんの手を強く握った。

白い手は意外なまでに温かく、確かに血が流れているのだとその熱が伝えていた。
620小梅:2006/06/02(金) 22:17:30 ID:6T+1leuy
終わり。
刺青事件が終わった後の、優雨の墓参りにて。

みんな戻ってきてくれるといいなあ。
621名無しさん@ピンキー:2006/06/02(金) 22:52:05 ID:tmjYGIeR
刺青のエンディングで優雨が何て言ってるか知ってる人いない?
歌とインコの鳴き声のおかげで聞き取りにくいんだよね(´・ω・`)
622射影機売りの少年 (1/3):2006/06/03(土) 12:05:06 ID:yvL92YGa
 インターホンの音が部屋に響くと、深紅が「私が行きますね」と、ティーカップを置いて代わりに
玄関へ出てくれた。私は持ち上げかけた腰をもう一度ソファに沈める。よくよく考えてみれば、昼間
からビールをあおっている私が来客の応対に出るのはまずいだろう。
 私は、半開きのドアから漏れる声に聞き耳を立てた。
「雛咲深紅さんですね、お話はうかがってます。黒澤怜さんはご在宅でしょうか?」
「あ、はい……少々お待ちください……」
 深紅が気を利かせてくれたというのに、どうやら客人は私をご指名のようだ。
「あの、怜さんに御用があるみたいですけど……その……」
 ドアからちょこんと顔を出した深紅が私を呼びに来たが、その顔にはなぜか困惑に似た表情が浮か
んでいた。一体、誰が来たというのだろう。私は飲みかけのビールの缶を置いて玄関へ出た。
 深紅が丁寧に応対していたので、てっきり町内会の人か何かだと思っていたのだが、意外なことに
そこに立っていたのは小学生くらいの男の子だった。オシャレだと思っているのか、サンバイザーに
銀縁眼鏡という奇抜な格好をしている。
「初めまして! 黒澤怜さんですね。いやぁ、優雨さんの言ってた通りの人だなあ」
 元気のいい小僧だな。よし、帰れ! と追い返そうと思っていたのだが、少年の口から出た、思い
もしない名に私は驚いた。
「……君、優雨の知り合い?」
 私が尋ねると、少年はハッと気付いたように慌ててサンバイザーを外して、私に頭を下げた。
「申し遅れました。私、麻生心霊科学研究所の麻生キテレツと申します。優雨さんとは親戚でして……」
 そう名乗ったふざけた名前の少年は、一人前に胸ポケットから名刺を取り出して、私と深紅にそれ
ぞれ手渡した。
「麻生心霊科学研究所……」
 そこには確かに、少年の言った研究所とやらの名前が記載されている。
「麻生心霊科学研究所は、射影機を発明した麻生邦彦が設立した、心霊現象等に関する研究を進めて
いる団体です。最近では、簡単便利な除霊グッズなども販売させてもらっています」
 射影機。それに麻生邦彦。どうやら本当に優雨と関係があるようだ。それにしてもコイツはその研
究所営業か何かか? 十五歳未満の雇用は法律で認められていないはずだが……。とりあえず、私は
少年を家にあがらせることにした。優雨の親戚で、しかも射影機のことを知っているとなれば、何か
大事な話があるのだろう。
623射影機売りの少年 (2/3):2006/06/03(土) 12:05:41 ID:yvL92YGa
「キテレツくんは何のジュースが好き?」
 キッチンへ入っていった深紅がカウンター越しに尋ねると、キテレツは「いえいえ、深紅さんおか
まいなく! たしなむ程度ですんで」と小憎たらしいことを言った。私は彼をソファに座らせると、
本題に入るべく話を聞き出した。
「で、私に何の用事?」
 私が尋ねると、少年はにやりと笑みを浮かべて、手に提げていた重たそうな紙袋をテーブルの上に
置いた。
「今回はですね、新型の射影機をご紹介させて頂こうと思いまして……優雨さんから、怜さんが家に
怨霊が出て困っていると聞いたものですから、ぜひ怜さんに使って頂きたいということで」
 確かに困ってないことはないが。優雨はどこかで私たちのことを見てるのだろうか……? そんな
私の思いをよそに、キテレツはごそごそと袋の中から何かを引っ張り出した。
「これが、僕のチームが中心となって開発した、麻生心霊科学研究所の新型射影機です」
 そう言ってキテレツが取り出したのは、見たところ何の変哲もない、ごく普通のデジカメだった。
 それにしてもこのキテレツは営業の他に開発の仕事もしているのだろうか? 見れば、大百科を片
手にいろいろ発明してそうな風貌はしているが……。
「新型……ねえ」
 私がそれを手に取ってしげしげと見ていると、盆にジュースとコップを乗せた深紅がキッチンから
戻ってきた。深紅がコップにジュースを注いでやると、キテレツは「恐縮です……」と相変わらず小
憎たらしいことを言っていた。
「ただのデジカメじゃん、これ。サイバーショットとか書いてあるし」
 デジカメに刻印されたそのロゴに、一瞬、コアショットやダブルショットの類かと思って騙されか
けが、それがソ○ーのデジカメのブランド名であることを思い出して、私はそのインチキ射影機をキ
テレツに投げて返した。
「おっとっと。……それは外側のパーツを流用しただけでして、中身はちゃんと射影機なんです」
 見事、両手でキャッチしたキテレツの口から出る説明に、私はアジア市場で出回っているプレステ
そっくりのファミコンを思い出した。
「この新型射影機は、従来の射影機に比べ、1.8倍(当社比)の除霊能力を持っています。これにより、
霊力をチャージしなくてもそれなりのダメージを与えることができるんです」
 それはすごい。私より、螢にあげた方がいいんじゃないだろうか。
「一番の特徴は、強化という概念を取り払ったということです。基本性能の大幅向上に加え、これま
での強化レンズに相当する機能はすべてこの中に内蔵されていまして、当研究所のホームページから
ファームウェアのバージョンアップを行うことも可能です」
 意味がよくわからないが、射影機もIT化の時代を迎えたという解釈で間違ってないだろう。
「とにかく、何か撮影してみてくださいよ」
 そう言って、キテレツは再び私に新型射影機とやらを手渡した。私は渋々それを受け取ると、改め
てそのどう見ても普通のデジカメにしか見えないものを観察した。
「へえ、これファインダー覗かなくていいんだ?」
「はい。液晶画面がついてますから、これまでの射影機と違って、複数の怨霊に襲われても安全です」
 本当にこれが射影機なら相当便利な物だろうが……。私は何の気なしにキテレツを画面に収めると、
シャッターを切った。
624射影機売りの少年 (3/3):2006/06/03(土) 12:08:05 ID:yvL92YGa
「うわっ!!」
 突然、大きな悲鳴をあげ、後ろに仰け反るキテレツ。
「あっ、危ないじゃないですか!」
「薄々感づいてはいたけど、あんたも霊なのね……」
 わかってるなら気をつけてくださいよ!とキテレツは頬を膨らませた。そのまま消えてくれれば良
かったのに……。優雨の親戚が私をわざわざ訪ねてきたということはきっと大事な話があるのだとば
かり思っていたが、まさか子供という外見を利用して怪しい品物を売りつける悪徳怨霊営業社員だと
は思いもしなかった。
 液晶に目を落とすと、画面左上の方に500ptsと表示されていた。安いな、キテレツ。
「でもねえ、射影機、今はもう必要ないのよ。仮に何かあったとしても、今持ってるので事足りるし」
 そう言って深紅に同意を求めると、お盆を腕で交差させて持っていた深紅も同調した。
「私たちだけでも射影機は二台ありますしね……」
「煩わしいフィルムの装填も必要ありませんよ! メモリースティック対応ですから!」
 聞く耳持たずとはこのことか。
「今ならもう一台、同じものをお付けします!」
 薦め方がだんだん強引になってきた。そろそろお帰り願いたかった私は、さっきから考えていた提
案をキテレツに持ちかけた。
「私たちは買えないけど、その射影機にぴったりな人を紹介してあげるから、その人のところに行き
なさい」
 キテレツ自身も、私たちに売りつけるのを無理だと判断していたのか、急に「えっ」と目の色を変
えて食いついてきた。
「天倉螢って人が近くに住んでるから。その人ならきっと気に入ってくれるわ」
 螢のことだ、きっと飛びつくに違いない。
「ありがとうございました、すぐにその天倉さんのお宅を伺ってみます!」
 外まで見送りにきた私たちに、キテレツが頭を下げた。
「今度は割れない鏡石を発明してきてちょうだい。そしたら買ってあげてもいいわよ」
 私が言うと、キテレツは「それは無理です!」と再び頭を下げて、足早に去って行った。深紅がそ
の姿を見送りながら、視線をそらさないまま言う。
「いいんですか?怜さん。螢さん、きっと買っちゃいますよ、あの射影機……」
「いいんじゃない、あれがあれば、螢も少しは役に立つようになるでしょ」
 そう言って家に戻った私は、せっかくの貴重な休日の時間をつまらないことで浪費してしまったこ
とを悔やみ、冷蔵庫から新しいビールを取り出して、再びソファに体を預けた。<終>
625名無しさん@ピンキー:2006/06/04(日) 02:03:52 ID:TXfBsX9I
神たちGJ!!!!
正直泣いた。
626名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 07:41:03 ID:38FhrV9B
>>624
GJ!面白かった。
勝手に続き考えたんだが、書いてもいいか?
627名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 08:00:20 ID:QJz+A42x
射影機ってさ、射精機にみえる
628名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 09:15:18 ID:RyNLCMKT
>>626
どぞー。楽しみに待ってます。
629名無しさん@ピンキー:2006/06/05(月) 20:21:31 ID:uSFOeL8R
今日、初めてこのスレ来たのだが…

クオリティタカス!w
630続:射影機売りの少年:2006/06/05(月) 22:15:30 ID:38FhrV9B
「つ、つまり、この新型射影機があれば、零式フィルムも使い放題なんだな?」
螢は、目の前にいるサンバイザーに銀縁眼鏡という奇抜な格好をした少年に確かめた。
「それはもう。メモリースティック対応ですから」
「光学3倍ズームで、遠くにいる怨霊も遠距離から除霊できるんだな?」
「その通りです。卑怯も…いや慎重派の天倉様にこそ、相応しい製品かと思いますが」
優雨の親類の麻生キテレツと名乗った少年は、満面の笑みで答えた。
「よし買った!」
「ありがとうございます!今なら専用ケースをお付けして、お値段はこちらになりますが…」
キテレツが電卓に入力した金額を見て、螢は絶句した。
「69,800円かよ!今時のデジカメにしちゃ、いい値段だなあ。今、給料日前だし…」
「今なら36回の分割払いでも結構ですよ。金利、手数料は不要です」
「いや、でもちょっと高いなあ…25,000円以下ぐらいかと思ったぜ…
 今使ってる奴なんか、タダだったのに…」
「天倉様、高級レストランとファミレスを比較しちゃいけませんよ。どうなさいますか?」
キテレツは、慇懃な笑みを浮かべたまま、螢に決断を迫った。
(くっ、このガキ、人の足元見やがって…)
螢は逡巡したが、やはり物欲に負けて、36回分割で新型射影機を購入した。
「ふっふっふ、これさえあれば…そうだ、とりあえずあの女どもに、見せびらかしに行こう!
 今こそ、日頃の恨みを晴らす時だ!」
螢は買ったばかりの新型射影機を握り締めて、意気揚々と黒澤邸に向かった。
631続:射影機売りの少年:2006/06/05(月) 22:16:40 ID:38FhrV9B
「くぉうら!怜!深紅!出て来い!」
黒澤邸の玄関で、螢は叫んでいた。
突然の大声に驚いて、慌てて様子を見に来た深紅が、螢を見つけて言った。
「あ…螢さん!一体どうしたんですか?」
「なによ、一体なんの騒ぎ?」
リビングのソファで昼寝していた怜も、欠伸まじりにぶつぶつ言いながら出てきた。
「お前ら!今までよくも俺を役立たずだのヘタレだの戦力外だの臆病者だの童貞だの包茎だの早漏だのと
 散々馬鹿にしてくれたな!」
「い、いえ私、そこまで言ってませんけど」
「うーん、私は言ったかも…酔った勢いで…」
「しかし!今の俺様は生まれ変わった!神にも匹敵する力を手に入れたのだ!
 見よこれを!『新ー型ー射ー影ー機ぃー!』」
ド○えもんのように高らかに道具の名前を呼びながら新型射影機を取り出した螢を見て、
二人は顔を見合わせた。
(螢さん…やっぱり買っちゃたんだ…)
絶句する深紅の隣で、怜はそ知らぬ顔で言った。
「ふ、ふうん…すごいわね」
「すごいだろ?いいだろ?でも!貸してやらないよーだ」
「子供か、あんた」
「まあそういう事だ。これからは俺の事を螢ではなく、螢さんと呼ぶように。螢様でもいいぞ。
 それじゃ、今から行ってくるぜ!」
それだけ言って、螢はダッシュで黒澤邸を後にした。
「大丈夫かしら螢さん…なんかずいぶんキャラ変わってましたけど」
「いるのよ時々。道具の力を自分の実力と勘違いする奴が」
「行くって言ってましたよね…どこへ?」
「まさか…」
二人はもう一度、顔を見合わせた。
632続:射影機売りの少年:2006/06/05(月) 22:17:28 ID:38FhrV9B
螢は、「眠りの家」の前に立っていた。
「ふっふっふ…それじゃ軽く、序盤の雑魚怨霊を退治するか」
螢は、新型射影機の電源をONにして、眠りの家に入っていった。
しかし、こういう時に限って、何故か、なかなか霊と遭遇しない。
30分を過ぎた頃、囲炉裏の間でようやく、彷徨う母娘を見つけた。
「出たな怨霊!」
螢は、動きの散漫な敵に対し、十分に距離を取って、新型射影機を構えた。
「喰らえ零式フィルム!うりゃあ!…あ、あれ?」
螢は、新型射影機を見て固まった。液晶には「バッテリー残量低下」の警告が点滅していた。
「やばい…」
彷徨う母娘は、次第に迫ってくる。螢は、攻撃する手段を持たない。
螢は敵にくるっと背を向けて、必死で逃げ出した。命からがら、入り口に辿り着いた。

螢は、ぜいぜいと荒い息をつきながら、ベッドの上で目を覚ました。
手には、新型射影機がしっかりと握られている。背中が冷たい汗でびっしょりになっていた。


「使用時は、バッテリーの消耗を抑えるために、こまめに電源を切るナリ。
 ちゃんと取説にも書いてあるナリ」
麻生心霊科学研究所のコールセンターに電話をした螢は、妙な喋り方で応対するロボットに
クレームをつけたが、そういう仕様だと一蹴されてしまった。
「起動に時間かかりすぎるんだよ!咄嗟の時に使えなきゃ、意味ないだろ!」
「それも仕様ナリ。オプションの大容量スタミナバッテリー(別売)を買えば、6時間の
 連続使用が可能ナリよ」
「そ、そうか…いくらだ?」
「25,000円ナリ。振り込めば、すぐに発送するナリよ」
「くそう、仕方ない」
螢は、出版社に原稿料の前借りをして、バッテリーの代金を振り込んだ。
633続:射影機売りの少年:2006/06/05(月) 22:18:19 ID:38FhrV9B
翌日届いたバッテリーを装備して、螢は再び、眠りの家に向かった。
「ふっふっふ、これで完璧!さあ来い怨霊!」
彷徨う親子、生き残った女と順次撃破し、螢は、更に屋敷の奥へと進んで行く。
そして、3人の巫女姿の少女と遭遇した。
「3人まとめて除霊してやるぜ!喰らえ零式フィルム!…あ、あれ?」
液晶には、「メモリースティックの容量が不足しています」の警告が点滅していた。
「やばい…」
螢は敵にくるっと背を向け(以下略)


「当研究所の製品では、著作権保護機能のために、独自の画像フォーマットを採用しているナリ。
 画質を零式に設定した場合、標準の16Mメモリーでは、4枚しか撮れないナリよ」
「普通にJPEGでいいだろっ!」
「当研究所純正の2Gメモリーなら、600枚記録できるナリ。ちなみに4万円ナリ」
「く、くそう…」
螢は、駅前の無人契約機で金を工面し、代金を振り込んだ。

螢は、翌日届いたメモリースティックを交換し、再び眠りの家へと向かった。
襲い来る怨霊を次々と余裕で撃破し、屋敷の奥へと突き進む螢。
「ふはははは!見よこの力!俺こそが最強の霊能力者だ!」
螢は、一度も目覚めることも無く、時刻は深夜零時を過ぎようとしていた。
着物のある座敷へと到達した時、螢は、強力な敵の気配を感じた。
「来た…奴だ。以前から俺だけを執拗に狙ってくる怨霊…どこから来る?」
螢は慎重に辺りを見回し、フィラメントの反応を探った。
突如、正面に「髪を梳く女」が出現し、螢に突進してきた。
「来たな!来い!」
螢は、必殺の一撃を加えるべく、怨霊に新型射影機を向けた。
「行くぜ必殺!螢スペシャルショット!あ、あれ…?」
液晶には、なにも映っていなかった。
「くぁwせdrftgyふじこlp!!」
634続:射影機売りの少年:2006/06/05(月) 22:19:07 ID:38FhrV9B
−数時間後−
「あーあ、心配して一応見に来てやったら、やっぱりこんな事に…」
「ぜんぜん動きませんよ、これ。やっぱり壊れてますね」
深紅は、電源すら入らなくなった新型射影機をいろいろ弄っていたが、やがて諦めて
放り投げた。そして、落ちていた取扱説明書を拾って、ぱらぱらと捲る。
「あ、製品の保障期間は購入当日から3日間って書いてある」
「保障期間が終われば、壊れるようになってたのね…やっぱり、悪徳霊感商法だったか…」
怜は、足元で下半身を露出したまま白目をむいて失神している螢を見て、溜息をついた。<終>


…すまん、あんまり面白くならなかったな。許せ>>628

635名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 00:14:43 ID:0V8kAGa6
GJ!面白かったよ。
コロ助口調なのは>>628がキテレツだからかw
636名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 01:00:04 ID:OYL2J4XX
うおー超GJ!コロちゃん出てくるとは思わなかったダスー。
書ききれなかった新型射影機のダメっぷりも補完していただけてチョ→満足。
637名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 15:11:36 ID:MNvXRHL8
1つだけ・・・デジカメでもサーチはフィラメントなの?
でも、吹いたw
638名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 02:32:40 ID:kE6jufbP
( ゚Д゚)ウマー
639名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 20:00:30 ID:m66qJAra
決勝戦

蛍「やれやれ、うちの連中は、いつも時間に遅れてくる。
  だが、貴様らなど俺一人で充分だ。見るがいい、必殺隠れる。」

楔に絞められる。

蛍「ぐふっ・・まさか切り札を使うことになるとわ。奥義ジャンプ!」

刺青の巫女に絞められる。蛍死亡

玲「蛍の奴め、負けたか。」
深紅「しょせん奴は、我ら四天王の中で、一番格下。こんなものだろう。」
澪「次は、私が行こう。奴らに繭おとり拳の恐怖をとくと味あわせてやる。」

楔「ばっ・・馬鹿な澪が二人いる!」
澪「ふははは、貴様はすでに我が術中にはまっているのだ!」

紗重「まさか、あれは!」
霧絵「知っているか紗重!」

ついに明かされる繭おとり拳の秘密。 次回「双子」
640名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 20:03:20 ID:m66qJAra
霧絵「知っているか紗重!」×
霧絵「知っているのか紗重!」○
641名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 11:52:52 ID:ryVbJD27
男塾テラワロス
だがこれ続けると主人公側が負けるのでは
642639:2006/06/10(土) 19:34:55 ID:otTa9MMN
双子

楔「わかったぞ。貴様らは双子だ!ひとりが、おとりになり、もう一人が、攻撃する。」
澪「そうだ、よくぞ見破った。」
繭「だが、この繭ただおとりになるだけが、とりえではない。いくぞパンチラ!」


「パンチラ」
短いスカートと階段の上を極限まで極めることにより可能となる技。
その威力は、手練のプレイヤーが、パンツを撮ることに夢中になり、浮遊霊をうっかり見逃す程である。

なお、余談だが、「猫に小判」と言うことわざは、
当時、この技の毒牙にかかっり初期装備の14式フィルムを使い果たす者が後を断たなかった。
その時、流行った「お姉ちゃんのパンツに14式フィルム」と言う言葉が、変化したものである。

民明書房「麻生博士の異常な愛情」より


楔「!」
繭「今だ、澪!」

澪の攻撃が楔あたる。

紗重「楔!」
楔「フッ・・みんな・・しけたツラしてんじゃねえ、俺は、最後の最後にいいもの見れたんだからよ・・・ぐふ」

楔(民俗学者 真壁清次郎) 死亡

霧絵、紗重、刺青の巫女「楔〜〜〜!!」

繭「おい、そのババアみたいなジジイを早くかたずけろ。」
刺青の巫女「この腹黒百合が、ぶっ殺してやる!」
紗重「まて、楔とは、虚を共に乗り越えた仲。楔の仇は、この紗重が取ろう。」

紗重!腹黒百合を許すな!。次回「紗重の秘技」
643名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 22:34:23 ID:RYoxtKrX
バロスwww
次の次辺りで紗重死んじゃったら技?の解説は誰がw
644名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 23:08:05 ID:HYGwStbo
男塾零ワロスww
続きにwktk
645639:2006/06/11(日) 15:54:52 ID:IeKhMXno
紗重の秘技

紗重「楔の死は、決して無駄では無かった。お前たち双子には致命的な弱点がある。」
澪「フッ強がりは、よせ。」
霧絵「いや紗重は、はったりを言う様な怨霊ではない。」
刺青の巫女「しかし、あの双子連携は、完璧。どこに弱点など。」

紗重の姿が消える。

繭「クククッ何処に隠れようとこの技からは、逃れられん。くらえ!パンチラ!」
繭が、澪の首を絞める。
澪「馬鹿な・・なぜ?」
澪が、繭の首を絞め返す。
繭(紗重)「澪、お前は、繭がパンチラしているとき一瞬すきができる。」
澪「まさか、見破れるとは、そうだ。お姉ちゃんのパンツを射影機で、ベストショットを撮りそれをじーと眺める。
  その一瞬のすきを見逃さないとは・・・」

紗重の姿が現れ、繭と澪が倒れる。

繭「澪・・」 澪「お姉ちゃん・・」繭、澪死亡
霧絵「見事な姉妹愛。」
刺青の巫女「やったな!紗重!」

紗重が、鼻血を流す。

霧絵「まさか、パンチラをもろに!」
紗重「どうやら、温室育ちの巫女には、刺激が強すぎたようだ。」
刺青の巫女「嘘だろう・・楔に続き、紗重、お前まで・・」
紗重「馬鹿が相手は、まだ二人いる。泣いてる場合か!虚から見守っているぜ。」
虚に歩いていく紗重。「この紗重!屍は晒さん!」虚に身を投げる。

黒澤紗重 死亡

刺青に巫女「紗重〜〜〜!!」
霧絵「あの人らしい最後だ。」

怜「貴様らに悲しむ時間など無い。次は、この黒澤怜が相手だ。二十代前半の若さで、
  一戸建てマイホームを購入した恐るべき経済力を見るがいい。」

底知れぬ経済力。 次回「保険金」
646名無しさん@ピンキー:2006/06/11(日) 20:42:05 ID:/nrSF+aD
元ネタは分からんがバロスwww
経済力つええwwww
647名無しさん@ピンキー:2006/06/12(月) 07:18:59 ID:qcTgMluU
久し振りに到来。
取り敢えずリハビリ代わりに。
648螢の初夏:2006/06/12(月) 07:38:45 ID:qcTgMluU

みーんみんみーん

六月も半ばを過ぎて、陽射しはますます夏を思わせて来た。
自宅のマンションの四階。
今売れ頃のノンフィクション作家である天倉螢にとっても初夏は感慨深いものだ。

「梅雨が過ぎ、夏来る……か」

みーんみーんみん。

日本の四季はいいものだ。
近頃鳴き始めた気の早い蝉も、これはこれで風情がある。
梅雨の時期は、同居人の所為もあってか、室内がヤケに寒々ジメジメとして大変だった。
だが、夏になれば、冷房要らずの現状は返って助かるというものだろう。

みーんみんみん
きーんきんきん

ベランダの手すりに手を付き、青空を見て物思いに耽る。
作家として初夏というものは素敵なものだと、螢は思っていた。
芽吹きの時期である春も良いが、あらゆる生命が勢い付く夏と言うのも感性に訴えるものがある。
その意味では、四季折々がある日本は、文芸が発展してしかるべき国土ではないか。
そんな考えを抱きながら、螢は再び初夏の空を見上げた。

みーんみんみん……じじっ!
きーんきんきん
きーんきんきん きーんきんきん
きーんきんきん きーんきんきん きーんきんきん

やや、現実逃避の方向に流れていた思考を現実に向け直す。
少しだけ身を乗り出し、マンションの壁面へと視界を向けてみる螢。
そこには、壁で鳴いていた蝉を追い払いつつ、無秩序に壁を穿っている三人の幼女が居た。
視界に入る限り、他の階やベランダには人気が全く感じられなかった。
螢は眉間を揉みながら、姿勢を戻す。
頼むから深夜に穿つのだけは簡便なとぼやきながら。
近所迷惑? 最近は考えなくても良くなってきた。

と、シャツの裾をくいくいっと引かれる。
振り向くと、お下げ頭の幼女がこちらを見上げていた。

「母様が……ご飯出来たって」

無言で頷き、軽く頭を撫でてやる。
僅かに照れた表情でパタパタとリビングの方へ去る少女を見送り。
螢はもう一度だけ、初夏の空を見上げた。

きーんきんきん
きーんきんきん きーんきんきん
きーんきんきん きーんきんきん きーんきんきん

夏の到来は、近い。
649名無しさん@ピンキー:2006/06/12(月) 10:37:33 ID:P46gDA83
GJ!
勘違い鏡華と螢の受難は個人的に好きなので嬉しいよ。
続きに期待!
650名無しさん@ピンキー:2006/06/12(月) 11:52:11 ID:0PhpZw3A
久しぶりに来たら神の巣窟になってるw
651時雨ロックンロール (1/5):2006/06/12(月) 18:56:31 ID:FE+K7HFP
「あと一週間しかないんだよ!?」
 私が合唱コンクールの練習でやる気のない男子たちに泣きながら叫ぶ、仕切りたがりの中3女子み
たいになっていると、スタジオ(私の部屋)は重たい空気に包まれてしまった。
 私たちは一週間後に迫った、社を封じた中庭で開かれる琴の演奏会(鏡華おばさんと宗方八重さん
の対バン)に乱入してやろうと、ただそれだけの理由でバンドを結成した。それがおよそ一ヶ月前。
 血の滲むような練習の末、といっても他にすることがないからだが、みんなそれなりに演奏はでき
るようにはなっている。しかし、肝心の演奏会で演る曲が決まっておらず、今日は楽器を置いてミー
ティングを行っていた。
 私はオリジナル曲で勝負したかったのだけど、他の三人は「コピーでいいじゃん」みたいなノリで
早くも音楽性の違いを理由にバンドは解散の危機に追い込まれている。グランジ大好き氷雨ちゃんは
ニルヴァーナ(ナーヴァナのこと?)のコピーがしたいらしく、雨音ちゃんは天野月子、水面ちゃん
に至ってはゴイステだのハイスタだのと青臭いことを言っている。人のライブに乱入しておいて、演
奏するのがコピー曲では格好がつかないと私は思うんだけど……。
「……大体、空気読めてないんじゃない? 琴の演奏会にバンドで乱入するなんて」
 肩からリッケンバッカーの360を提げた氷雨ちゃんが、バンドの存在意義を根底から覆すようなこと
を言った。それでも、私は引き下がらなかった。
「私たちで腐った日本の音楽シーンにでっかい風穴を開けてやろうって決めたじゃない!」
「なら、わざわざ演奏会ブチ壊しにしなくてもいいじゃん。こっちはこっちで別にライブやればいい
んだし。鏡華さんに迷惑かけちゃだめだよ」
 ……まったく、氷雨ちゃんはちっとも分かっていない。┐(´ー`;)┌
 だから「ロックは死んだ」なんて言われるんだ!
「でもオリジナルやるっていっても、私たち曲作れないよね……」
 雨音ちゃんが私たちのバンドにおける根本的な問題点を的確に指摘した。確かにある程度の演奏技
術は得たとはいえ、作曲となると話は変わってくる。
「だから私たちはコピーの方が良いって言ってるんだけど……」
「それはそうだけど、そのままコピーを演っても、なんかこう……インパクトに欠けるし……」

『コピーがだめならカヴァーをすればいいじゃない』

 私が頭を悩ませていると、突如、かのフランスの王妃マリー・アントワネットの(?)名言が頭の
中をよぎった。
 そうだ。オリジナルとコピーの中間であるカヴァーなら私たちでもなんとかなりそうだし、アレン
ジの仕方によってはインパクトも与えられるだろう。聴く側にとっても、馴染みのある曲ならオリジ
ナルより楽しんでもらえるかもしれない。私は三人に尋ねてみた。
「ねえ、もしカヴァーするとしたら、何の曲がいい?」
「ニルヴァーナ」「天野月子……」「ブルーハーツ!」
 変わってないじゃん!と、私は珍しくツッコミに回った。
652時雨ロックンロール (2/5):2006/06/12(月) 18:57:18 ID:FE+K7HFP
 本番までの一週間、私たちは一日のほとんどを練習に費やした。結局、曲は私の独断で決めさせて
もらったが、理解あるメンバーたちはなんとか解ってくれたみたいだった。
 そして当日。
 会場となる社を封じた中庭は、崩れた手水舎や石碑、灯篭、さらにはあの大きな鳥居までもがこの
日のために片付けられ、ステージである刻宮も、宮大工の源さん率いる守谷軍団の匠なリフォームに
よって壁が取り払われ、すっかり開放的になっていた。
 十九時の開演を前に、スタッフと化した宮大工たちが照明のセッティングやマイクテストなど、忙
しそうに走り回っている。私たちは西側の書物蔵に隠れてその様子を覗いていた。
「もうすぐ客入れだね」
「どれくらい来るのかな……」
 鏡華さんはインディーズでは割と有名なアーティストで何枚かCDも出しており、メジャーに最も近
いアーティストとの呼び声も高く、この屋敷に住むほとんどの者たちは見に来るはずだ。かたやアイ
ドルから琴奏者へ転向した八重さんの方も固定ファンが多く、皆神村、氷室邸からそれぞれ大勢のファ
ンが駆けつけることは明白だった。
「かなり来ると思うよ、たぶんここじゃ狭いくらい……」
「どうしよう……どきどきするよ……」
 雨音的には母親の演奏会をブチ壊しにする罪悪感よりも、人前で演奏することへの緊張の方が上回っ
ているらしい。
「ところでどうやって乱入すんの? あんたのことだからどうせロクでもないこと考えてるんだろう
けど……」
「ふふふ、まぁお任せください」
 私は自信たっぷりに胸を叩いてみせた。


「皆様、こんばんは。久世鏡華でございます。本日は『鏡華vs八重・琴の調べ』へようこそおいでく
ださいました」
 そして演奏会が幕を開ける。予想通り、会場は観客でいっぱいになっていた。とはいえ、集まって
いるのは紳士淑女ばかり。席を譲り合ったり、場所を詰めたりと、微笑ましい光景が私たちの眼前に
広がっていた。これは壊しがいがありそうだと私は胸を躍らせた。
「では、さっそく一曲目に入りたいと思います。お聴きください、"秋人 MY LOVE"」
 失踪したという旦那さんに捧げる歌だろうか。物悲しげなメロディーに鏡華さんの切ない歌声が重
なる。私はさすがに鏡華さんに悪いので、二、三曲くらいの間は演奏させてあげよう思っていたのだ
が、あまりに退屈で眠気を誘う琴の音に、私は予定を変更してさっそく乗り込むことにした。
「鏡華さんには残念だけど、この曲が終わったらすぐ乱入するから、みんな準備しといてね」
 やがて曲が終わると、私はスタンバイしている源さんたちにGOサインを出した。
「うまくいくの……?」
「失敗したら大恥だよ……」
653時雨ロックンロール (3/5):2006/06/12(月) 18:57:52 ID:FE+K7HFP
 照明が落ちた。観客の間でどよめきが起き始める。鏡華さんも驚いて演奏を止めてしまい、何が起
こったのかわからないといった様子で辺りを見回していた。髪を振り乱しながら「……ファッキンラ
イト!」と叫ぶが、もちろん明かりが灯ることはない。
 続いてがたがたとステージの奥から宮大工たちが現れ、琴と鏡華さんを持ち上げて終ノ路ことステー
ジ裏へと消えていく。
「ちょっと! どこ触ってんのYO!」と鏡華さんの叫びが会場にこだましたが、突然の暗闇に観客た
ちには何が起こっているか解っていないようで、会場は騒然となっていた。
 それと入れ違いに別の宮大工たちが機材をステージに運び、素早い手つきで設置と配線を済ませて
いく。
「時雨ちゃん、ちょっと強引過ぎない……?」
「これぞ『停電の計』にございます!」
「……あんた、鏡華さんに殺されても知らないからね」
 諸葛孔明みたいな顔をしてふんぞり返っていた私は、そんな氷雨ちゃんの脅かしにびくともしなかっ
た。ここまで来たからには、もうやるしかないのだ。
「じゃ、そろそろ行こうか。準備はいい?」
 暗闇の中、足を踏み外さないように私たちはステージに上がった。持ち場について、それぞれ楽器
を手にすると、私はブレーカーの前で待機していた源さんに向かって言った。
「オッケー、源さん! 付けていいよ!」
 その言葉に、パッと照明が戻る。観客たちは皆、太陽拳を食らったドドリアさんみたいになってい
たが、徐々に目が慣れ始めたのか、私たちの姿を見て驚いているようだった。
 
「ハローベイビー! クゼロックフェスへようこそ!」
 氷雨ちゃんがマイクスタンドに手を添え叫んだ。観客たちは一様に口をポカンと開けていたが、氷
雨ちゃんの曲紹介はそれに動じることなく続けられた。
「全ての眠れない子供たち、そして大人たちに捧げます、"シズメウタ・シックスナイン"!」
 カヴァー曲に決めたのは、誰もが知っている子守唄『鎮メ唄』を大胆にもロックアレンジした、こ
のシズメウタ69(本当は、シズメウタ・ロックと読む)だった。朝から晩まで毎日練習を続け、一
週間という短い期間だったが、なんとか人に聴かせられるくらいまでには完成していた。
 深夜みんなが寝静まった後、私は一人でアレンジや構成を練り直していたせいで、ここ数日、満足
に眠っていなかったが、ついにその苦労が報われる日が来たのだ。

 そしていよいよ、演奏が始まる。
 水面ちゃんのオープンハイハットによる4カウントに、私たち三人はタイミングを合わせジャンプ
した。その着地と同時に、まずはイントロに入る。スネアの連打の中、私のベースがうなりをあげ、
その上に氷雨ちゃんのギターがジャカジャカと重なり、雨音ちゃんのキーボードも乗っかってくる。
そして、氷雨ちゃんのハスキーボイスが歌を紡ぎ始めた。

  ねいりゃさよ はたて
  ねいりゃさよ はたて
  なくこは かごぶね ついのみち
  いちわらきざんで おんめかし
  ねいりゃせな さかみはぎ

「うおおおおおおおおおお!!」
 最初は呆気にとられていた観客たちも、突然始まった私たちの演奏についてきてくれていた。つい
さっきまで琴の演奏にうっとり聞き入っていたご婦人方は拳を振り上げてOiOi言ってるし、今にも成
仏しそうなお爺さんは首が千切れそうなくらい頭を振り回している。
 そんなオーディエンスたちの様子に、私たちのテンションも否応なしに上がってきていた。
654時雨ロックンロール (4/5):2006/06/12(月) 18:58:32 ID:FE+K7HFP
「ギター!」
 ドラムを叩きながら水面ちゃんが叫ぶと、氷雨ちゃんがギターを足に挟んでギターソロに入った。
観客の興奮はどんどん上昇していき、ステージに上ってこようとするキッズたちが現れたので、私は
ベースを弾きながらそいつらの顔面に蹴りを入れてやった。
 ギターソロが終わり、再び氷雨ちゃんが歌い始める。

  ねいりゃさよ はたて
  ねいりゃさよ はたて
  みこさん あわいに おきつけば
  しせいぎ うがって いみいのぎ
  くもん ひらいて やすからず

 ここで私たちは演奏する手を止める。鳴っているのは水面ちゃんの静かなリムショットだけ。それ
をバックに、氷雨ちゃんがメンバー紹介を始めた。
「キーボード、雨音!」
 鍵盤の上で指が踊っているかのような、雨音ちゃんの流れるようなメロディがを会場に響く。
「ドラムス、水面!」
 タタン!とスネアの音が鳴り、水面ちゃんの激しいドラミングが始まる。
「ベース、時雨!」
 そのドラムに合わせ、私は太い弦を叩いてビートを重ねた。
 そして、水面ちゃんがスネアを連打しながら叫んだ。
「ギター! ミスひさーめ!!」
 その声を受け、ギュウウウンと氷雨ちゃんが弦をスクラッチすると、私と雨音ちゃんは目で合図を
送り合い、同時に跳躍した。 
 
  ねいりゃさよ はたて
  ねいりゃさよ はたて

 氷雨ちゃんの最後の大サビに、私たち三人もコーラスを重ねる。観客の興奮は頂点に達し、退屈そ
うにしていた子供たちは危険も省みずにモッシュ&ダイブしているし、老婆たちは円になって激しく
踊り狂っていた。

  ねいりゃさよ はたて
  ねいりゃさよ はたて

 そして大サビが終わると、スネアの連打の音が徐々にスピートを落としていく。氷雨ちゃんはギター
をかき鳴らしながら、ストラップを肩から外してギターを掲げるように持ち上げた。私はピックを投
げ捨て、指で四本の弦すべてを乱暴に弾いた。水面ちゃんの指は音が外れるのも気にせず鍵盤の上を
走り回っている。
「サンキューベイビーズ!」
 氷雨ちゃんが叫ぶと、ドラムの音はやがて途切れ、タタン!と出された水面ちゃんの合図に私たち
三人は最後のジャンプをした。水面ちゃんは横を向いて足を前後に開いて、私は両足を密着させて空
中でしゃがむようにして、そして氷雨ちゃんは最後の決めの一音と同時にギターをステージ叩き付け
た。
「今度は武道館で会おう!」
 そう叫ぶと、氷雨ちゃんはピックを観客たちの方に投げ入れ、マイクスタンドを蹴り倒した。雨音
ちゃんはさっきまでの勢いとは対照的に、丁寧なお辞儀をした。私はベースをステージに無造作に捨
てると、助走をつけて渦巻く観客たちの波の中へ身を投げた。もみくちゃにされる私に、水面ちゃん
の投げたスティックが直撃した。
 それでも、みんなの降り注ぐような歓声を全身で受けていた私は、そんなことも気にならないくら
いの興奮に包まれていた。
(やっぱりロックは死んでなんかいなかった!)
 誰かの肘や頭が私の体に容赦なくぶつかってくる。感覚が麻痺しているのか、痛みは少しも感じな
かった。私はくらくらする頭で、ぼーっとステージの方を見つめていた。
655時雨ロックンロール (5/5):2006/06/12(月) 18:59:18 ID:FE+K7HFP
「いやー、最高だったね!」
「きもちよかった!」
 機材の片付けは源さんたちに任せ、私たちはすぐに会場を後にした。鏡華さんに怒られる(殺され
る)前に逃げようという私の案だった。そして今、私たちは散らかり放題の水面ちゃんの部屋で打ち
上げをしている。ライブが終わった後の、最後の楽しみだ。
「氷雨ちゃん、なんだかんだいってノリノリなんだもん、びっくりしちゃった」
 ビールを一息に飲み干した私が言うと、氷雨ちゃんは照れくさそうに、
「ま、やるからには全力でやらないとね」と言った。
「さすが氷雨ちゃん…………あ、あれ?」
 ……とりあえず打ち上げといえばビール、といった感じで、口にしたこともなかったビールを一気
に飲んだのが悪かったのか。視界が急に狭まってきた。
「時雨ちゃん……大丈夫……?」
 私はそのまま床に倒れるようにして眠ってしまった。
「おい、しぐれー、おきろー」
「寝かせてあげなよ。この子、一人で曲アレンジしたり、機材運んだりして、一番頑張ってたんだか
ら」
「そうだね……おやすみ、時雨ちゃん……」
 夢か現か――。みんながそんなことを話しているのが聞こえた気がした。私は今までの人生で最高
の満足感に浸りながら、そのままゆっくりと深い眠りの中へ落ちていった――。



新聞記事の切り抜き 『氷室邸で女性、自殺未遂』
 xx日未明、氷室邸・桜のある中庭で、この家に住む主婦・宗方八重さんが首を吊っているのを、夫
の良蔵さんが発見した。幸い対応が早かったため、命に別状はなかったが、現場に残されていた遺書
には「女の子たちに演奏会を台無しにされた。私がいけないのです」と書かれており、警察ではこの
事件に深く関与していると見られる少女たちの行方を追っている。
656名無しさん@ピンキー:2006/06/12(月) 19:04:35 ID:FE+K7HFP
フヒヒヒヒ、すいません!長くなったうえ完全に趣味に走ってます。
鎮女の中では時雨が一番好きなんですが変でしょうか。
スレも盛り上がってきたし、そろそろこっちは引退かな……。
657639:2006/06/12(月) 19:38:37 ID:gXDHHemk
保険金

刺青の巫女「こちらも名乗ろう、私の名前は、久・・」
怜「待て!これから、死ぬ奴が、名を名乗る必要などあるまい。貴様の脱ぎっぷりは、なかなかのものだが、
  しょせん上半身裸それだけの話。このシャワーシーンには、遠くおよばない!」


「シャワーシーン」
エロと恐怖、この相反する二つを見事融合させた究極の奥義。
この奥義を極め全年齢で販売するには、神業ともいえる絶妙なアングルが、必要であることは、
言うまでもない。

なお、このシャワーシーンをCMに入れたパラサイトイヴ2は、青少年のメモリカードに今現在も刻まれている。

民明書房「黒澤の名字はなんだ?」より


燃え尽きた死体が、一つ残される。
深紅「何度見ても、恐ろしい奥義だ。それにしてもテクモの倫理基準は、よくわからん。」
怜「フッたわいもない。さあ、次はお前の番だ。」
霧絵「その死体をよく見ろ。まだ決着は、ついていない。」
怜「なにを寝ぼけたことを・・・は!これは蛍!」
空から、刺青の巫女が、怜に突撃。流血する怜。
怜「・・・貴様・・・名は?」
刺青の巫女「久世零華。」
怜「久世零華。覚えておこう。」怜が、蛍の保険金を吸収しはじめた。
深紅「怜が、ついに本気を出すのか。」
霧絵「この勝負、この霧絵の目を持ってしてもわからん。」

嵐の予感。 次回「実は、仮免」
658名無しさん@ピンキー:2006/06/12(月) 20:01:38 ID:M6brFE8b
なんか神がいっぱい来てるwwwwww
このスレの全盛期を思い出すな
みなさん超GJ!
659名無しさん@ピンキー:2006/06/12(月) 22:57:38 ID:69R5X6bO
神たちGJ!!!!
>>656の神
あっちwも見てるんだがこっちに投稿してないのがあるよな。
その逆もあるが、書き分けてるのか?
660名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 03:22:13 ID:I2KSnhRg
神が…神がいる…!!!

お塩先生ネタにクソ噴いたwwwww
欲を言えば最後はテンキュウで終わらせてほしかった…!
661639:2006/06/13(火) 19:37:38 ID:kWhQaW20
嵐の予感。 次回「実は、仮免」

怜「見よ蛍の保険金で、購入したこの新車。」
刺青の巫女「オートマ車。あれなら、駐車も坂道発進も簡単。」
怜「なぜ、私がオートマ車にこだわるかわかるか。」
刺青の巫女「運転しやすいから?」

怜「あれは、マニュアル車で仮免を取り、本試験に挑戦していた時だった。本試験の過酷さは、想像を絶した。
  車線変更、安全確認、教習車であろうと容赦なく鳴らされるクラクション。そのとき、ささえてくれたのが、
  恋人の優だった。」
優「大丈夫きっと受かるよ。まずは、試験の前に緊張をほぐすためとか言って、お酒飲むのをやめよう。」
怜「あるとき、ちょっと夜の運転してみたいと優をさそい一緒に車に乗った時だった。車で恋人と二人。そして、
  酒とくればすることは、決まっている。その時悲劇は、起きた。」
不幸にも怜の足が、車を発進させそのまま、崖へ転落。
怜「なぜ、エンジンを切り忘れてることを指摘してくれなかった!優ならわかったはずだ!」
優「フフ・・怜が、凄かった・・から・・ぐふ。」
怜「こんなに・・こんなにマニュアル車が、難しいのなら、免許などいらぬ!」

霧絵「なってことだ。100%怜のせいだ。」
怜「久世零華!これが、黒澤怜、最後にして最強の技。無免許運転だ!」
猛スピードで、向かってくる車。
刺青の巫女「来いラスボス名物、白黒の世界だ。」
白黒になる画面の中、大破する車と吹っ飛ぶ刺青の巫女。

最後に立つのは誰。 次回「最後の戦い」
662名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 23:49:25 ID:zXvpV2yc
冷たい石の祭壇の上で、私は仰向けに横たわる。
あなたは、私の躰の上で、身をかがめる。
あなたの柔らかい手が、私の首にかかる。
ふたりの顔が近づき、触れ合うほどに見つめあう。
私と同じ顔。同じ躰。

もとは一つの魂だった、二つに分かたれた、私の半身。
私と同じ刻に一緒に生まれた、とてもとても大切な、
私の、双子の、

「お姉ちゃん…」

私はあなたに、囁きかける。

「殺して…」


あなたの手に、次第に力がこもる。
私の喉にしっかりと食い込み、締め付ける。
私は僅かに身を反らし、甘い苦痛に身をよじる。

そして、その時が訪れる。
私は、蝶に…
663名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 23:50:15 ID:zXvpV2yc

そこで、いつものように夢から覚めた。
私は、うっすらと目を開ける。
そして、今の出来事が夢だった事に、失望の溜息を漏らす。
いつものように…



廊下から、誰かが近づいてくる足音が聞こえた。
私は慌ててうつ伏せになり、眠ったふりをする。
障子がすうっと、開く気配がした。

「起きてる…?」

お姉ちゃんだ。私は身じろぎして、今起きたように目をこする。
顔を上げると、お姉ちゃんが枕元で座っていた。

「…どうしたの?」
「ごめんなさい。眠ってたのね…。今、父様が戻られたの」
「そう…こんな遅くに…お出迎えしなきゃ」

私は、布団の上に起き上がって夜着の乱れを整えた。
お姉ちゃんが後ろに立って、櫛で髪を梳いてくれる。
664名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 23:50:55 ID:zXvpV2yc

「父様から、お話があるみたい。昨日の…お祭りの事で…」
「そう…」
「樹月くんと睦月くんの儀式が…失敗したらしいの」
「えっ…」
「だから今度は、私達の番だね…紗重」
「お姉ちゃん…」

私は、振り返って、お姉ちゃんと…八重と見つめあった。



ずっと昔、まだ私達が小さかった頃に、八重と二人で、村の外に流れている川まで行った事がある。
小さい頃から体が弱かった私は、先を歩く八重の後を、一所懸命に追いかけていた。
八重は、どんどん先を歩いていく。次第に、二人の距離が離れる。

「ねえ、八重。待って。おいて行かないで」

私は八重に、必死で呼びかけた。
八重は、立ち止まって私を振り返った。

「ごめんね。紗重。…大丈夫?」
「八重…どこまで行くつもりなの?」
「宗方くんに聞いたの。この村の外に、綺麗な川が流れてるって。
 私達、まだ村の外に出たことがない…その川を、見てみたいの」
665名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 23:51:46 ID:zXvpV2yc

宗方くん。
行商で旅をしているお父さんと時々村を訪れる、私達より少し年上の男の子。
立花家の双子の兄弟、樹月くんと睦月くんとは、とても仲がよくて、村に来るたびによくお話をしている。
話し好きな明るい男の子で、この前、村に来た時には、八重ともよく喋っていた。
私はそれを、隣で聞いていただけだったけど。

「でも、遠いから紗重は無理だよ。だから村で待っていて」
「えっ?」
「大丈夫。心配しないで。すぐに戻ってくるから。ね?」

八重のその言葉に、私は泣き出しそうになった。

「そんな…嫌。嫌だよ…八重。おいて行かないで…お願い…」
「紗重…」

生まれてから今まで、私と八重はいつも一緒だった。どこへ行くにも、なにをするにも。
それが当たり前だと思っていた。私達は二人で一人だと。
でもこの頃、私と八重が別々の人間だという事に、少しずつ、少しずつ気がつきはじめた。
私はそれが、とても恐かった。

宗方くんの話を聞いたときも、私はその川を見たいとは思わなかった。
私と八重のいるこの村が世界の全てで、外を見たいなんて思わなかった。
でも八重は、村の外に出たいと言う。私と違うことを考えている。

どうして?昔はぴったり一つだったのに、生きていくほどに、少しづつ、ずれて来ている。
私は八重と、ひとつでいたいのに。
666名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 23:52:25 ID:zXvpV2yc

しくしく泣き出した私を、八重は慌てたようにぎゅっと抱きしめて言った。

「ごめんね。ごめんね紗重。…一緒に行こう…」
「うん…」

八重と私は、手をつないで歩きだした。八重は、私に合わせて、ゆっくり歩いてくれた。
それがとても、嬉しかった。

森を抜けて村の外にでると、大きな川が流れていた。
村を流れる小さな小川とは、水の量も勢いもぜんぜん違う、綺麗な川だった。

「わあ…」

私と八重は、思わず歓声をあげた。
八重は、嬉しそうに駆け出すと、草履を脱いで、着物の裾を持ち上げて、じゃぶじゃぶと川に入っていった。

「気持ちいい!ほら。紗重もおいでよ」
「う、うん」

私も草履を脱いで、そろそろと川の流れに足を浸した。流れる水が冷たくて、とても気持ちよかったけど、
川底の石の上はぬるぬるしていて、ちょっと怖かった。
667名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 23:53:05 ID:zXvpV2yc


「ほら。紗重。こっちこっち」

はしゃぎまわる八重が転ばないかとはらはらしながら川の中を歩いていると、自分が足を滑らせてしまった。
ざぶんっ、という音がして、私は、川の中で尻餅をついた。

「きゃあっ」
「きゃー、紗重!」

八重が慌ててこっちに向かってくる。今度は八重が足を滑らせた。
さぶんっ。

「冷たーい!」

私達は、二人とも濡れ鼠になって、顔を見合わせた。そして、二人ともぷうっと吹き出した。

「あはっ」
「あははっ」

なんだか可笑しくなって、二人で笑い声をあげた。

「もう、紗重が転んじゃうからいけないんだよ」
「八重だって」

八重は、手で水をすくって、ばしゃばしゃと私に水を浴びせた。
私も、負けずにやり返した。とても可笑しくて、二人で大声で笑った。とても楽しかった。
668名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 23:54:13 ID:zXvpV2yc

それから二人で、大きな岩の上に寝そべって、濡れた着物を乾かした。
私の手を握りながら、八重は、呟くように言った。

「ねえ、紗重」
「なあに?」
「私達、これからもずうっと一緒だよね」
「当たり前じゃない!どうしてそんな事言うの?」
「このごろ、紗重と私とは、違う人なんだなあって、思うようになって…」
「八重…」
「なんだか、紗重がだんだん離れて行ってしまう気がして…ちょっと、怖いんだ…」

八重も、私と同じ事を考えていたんだ…やっぱり、私達はひとつなんだ…
私は、八重の気持ちを知って、本当に嬉しくなった。
繋いでいた八重の手を、ぎゅっと握り締めた。

「大丈夫だよ。八重。私は、なにがあっても八重とずっと一緒だよ」
「きっとだよ。約束だよ」
「うんっ」

急にぶるぶるっと寒気がして、私は大きなくしゃみをした。

「くしゅんっ!」
「大変。紗重。風邪ひいちゃうよ。もう、村に帰ろう」
「うん…」
669名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 23:54:48 ID:zXvpV2yc

その時、川の向こうから、釣竿を持った男の人がやってくるのが見えた。
男の人は、私達を見て、ぎょっとしたように尋ねた。

「お、お前様がた、どこから来なさった?」

私達は、顔を見合わせた。八重が、村のほうを指差して、皆神村から、と答えた。

「なんてこった…それじゃ、紅贄の巫女様でねえか…なんでこんな所に…」

釣竿を持った男の人は、慌てたように村に向かって駆け出した。
暫くして、村から大勢の人たちがやって来て、私達は村に連れ戻された。
その途中、村の人たちが口々に話しているのが聞こえてきた。

「…まさか、逃げ出そうとしてたんじゃあるめえな」
「…いや、まだ童でねえか。川で遊んでただけだって言うし」
「逢坂のじっさまにも、ちゃんと見張っているようにお願えしねえとなあ…
 なにしろ、大事な双子巫女様だで」

皆神村の入り口には、逢坂という大きい家がある。そこに住んでいるおじいさんは、村に出入りする
人達を見張るのを仕事にしている。
おじいさんはとても優しい人で、私達が遊びに行くと、よく昔語りをして可愛がってくれる。
でも、私達が村の外に出ることを、決して許してくれなかった。
今日は、おじいさんの目を盗んで、二人でこっそりと村を抜け出していた。

私は、歩きながら、八重に小声で囁いた。

「八重…紅贄って、何の事?…」
「さあ…わからない…」
670名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 23:55:30 ID:zXvpV2yc

村に戻ると、逢坂のおじいさんが飛び出してきた。

「おお、八重様!紗重様!よくご無事で…爺は心底、心配いたしましたぞ…」
「ごめんなさい、おじいさん」
私達は、声を揃えて謝った。
「祭主様がお待ちですじゃ。ささ、お屋敷へお連れいたしましょうぞ」



その夜、私達は、奥座敷にいた。父様の前で、ふたりで正座して座っていた。
勝手に村を出たことを、父様は怒らなかった。ただ、お前達には大事な役目があるから、
危ないことはしないように、とだけ言われた。
八重が、父様に聞いた。

「父様…紅贄って…双子巫女って、なんの事?」

父様は、驚いた顔をしたけれど、すぐに優しい顔になって、こう言った。

「いいだろう…そろそろお前達にも話す時が来たようだ…」

私達は、普段は入れない祭主の間に通された。そして、そこで初めて聞かされた。
村の地下にある深道の奥、見てはならない、口にしてはならない、禁じられた場所、「虚」の事を。
そして、紅贄祭の儀式、陰祭の事を。
671名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 23:56:13 ID:zXvpV2yc

贄座の祭壇の上で、双子の姉が妹の首を絞めて殺す。二つに分かれた体が一つに合わさる時、
その双子は神の子としての力が生じる。その力を以って、虚の鳴動を抑える。
殺された妹は紅い蝶となる。

話を聞きながら、私は胸がどきどきして止まらなかった。
この儀式をすれば、私と八重はひとつになれる。
ずっとずっと、一緒でいられる。八重と、ひとつに。

突然、八重が涙をぽろぽろとこぼして、泣き出した。

「それじゃあ、私が紗重を殺すの?紗重を殺して、そのあと私は、一人で生きていくの?
 そんなの…そんなのやだ。そんなの嫌!」

私は、はっとした。
そうだ…私は、八重とひとつになれる嬉しさのあまり、残された八重の事を考えていなかった。
父様は、優しい声で、八重に諭すように語りかけた。

「八重…これは、お前が紗重とひとつになるための儀式なのだ。
 確かに、双子の妹や弟を殺して、生き残った者は、その悲しみと苦しみを、
 一人で背負って生きていく事になる。
 だが、かつて、この私もそうだった…私は双子の弟を、この手で殺した…
 しかし、村を守るため、儀式を続けるために、その悲しみを乗り越えてきた。
 お前も必ず、乗り越えてくれると信じている。
 これは、この村で双子として生まれてきた者たちの義務でもある。
 それが、お前と、紗重と、村のためなのだ」

それでも、八重は、両手で顔を覆って、いやいやとかぶりを振って、泣き続けた。
そして、私の躰を両腕でぎゅっと抱きしめた。
「八重…」
私も、八重と抱き合って、一緒に泣いていた。
672名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 23:56:46 ID:zXvpV2yc

それから何年かが経った。
私達は、村の人達から八重様、紗重様と呼ばれ、大切に育てられた。
その呼び方には、この村で最も強い力を持つ祭主の娘に対する畏敬と、
そして…決して露骨に表に出る事はなかったけど、村人達の、双子の巫女に対する畏怖が混じっていた。

だから、私達には、歳の近い子供の友達がいなかった。
村に住む子供達は、その親達によって私達から遠ざけられていた。
私は別に、それを寂しいとは思わなかった。
私には八重がいて、八重には私がいたから。
唯一、立花家に住む樹月くんと睦月くんの兄弟は、似た境遇のせいもあって私達と仲良くしてくれた。
彼らも双子だったけど、紅贄と呼ばれてはいなかった。
過去には稀に、双子の姉妹がいない場合は、双子の兄弟が儀式をする事はあったけど、
今は、姉妹である私達がいたからだった。



私と八重は、あの日以来、ずっと変わらずいつも一緒にいたけど、
紅贄祭や儀式の話をするのは、二人とも避けていた。
でも私は、その日が来ることを、八重と儀式をする日の事を、心待ちにしていた。
八重の手が私の首にかかる事を、ずっと夢見ていた。
はやく、八重とひとつになりたい。儀式をしたい。
八重は…今は儀式の事を、どう思っているんだろうか…
673名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 23:57:21 ID:zXvpV2yc

そんなある日、私は、屋敷に出入りする宮司様の一人から、信じられない事を聞かされた。
私たちのかわりに、立花の樹月くんと睦月くんが、双子御子に選ばれたという事を。

理由のひとつは、私達の黒澤の家に、私達以外、子供がいない事。
黒澤家は代々、この村で紅贄祭の祭主を勤めている。二代続けて双子が出ることも例外だったけど、
私達が儀式をすれば、私はいなくなる。
残った八重に、もしもの事があれば、黒澤の祭主の血筋が途絶えてしまう。
立花家も、代々、双子巫女の禊を勤める大事な役目があるけど、樹月くんと睦月くんの他に、
千歳ちゃんという妹がいる。

父様は、反対したそうだけど、他の家や宮司様達の強い意見があり、
何より、樹月くんと睦月くんの二人が、自ら双子御子になる事を望んだらしかった。


樹月くんと睦月くん…どうしてそんな事を…
私は、八重には内緒で、夜に屋敷を抜け出して、樹月くんと睦月くんに会いに行った。

樹月くんは、隣の村に出かけていて留守だった。
睦月くんは、いつもと変わらない笑顔で、出迎えてくれた。

「やあ、紗重…そろそろ、君が来る頃だと思っていたよ」
「ごめなさい。こんな遅くに…」
「いや、いいよ…儀式の事を聞きに来たんだろう?」
「うん…」
674名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 23:58:01 ID:zXvpV2yc

玄関からは、衝立の向こうで千歳ちゃんが隠れてこっちの様子を伺っているのが見えた。
私は手招きしたけど、千歳ちゃんは恥ずかしそうにして行ってしまった。

二階の高床座敷に通されると、睦月くんは座布団を勧めて、お茶を淹れてくれた。

「驚かせて悪かった。でもこれは、僕達が望んだ事なんだ。
 僕は…紗重、君に死んで欲しくないんだよ」
「どうして?」
「どうしてって…まいったな…」

睦月くんは、困った顔をして、頭をぼりぼりと掻いた。
そして、腰を浮かして、廊下の障子を少し開けて、周りに他の家人がいない事を確認すると、
小声で私に囁いた。

「宗方と手紙のやり取りをしている樹月が言ったんだよ。帝都では、神秘科学の研究が進んでいて、
 この世の「ありえないもの」を映し出して除霊する機械まで作られているらしい。
 だから、いつか、人間の知恵と力は、この村の虚も、完全に封じる事ができる筈だ。
 この村も、いつまでも、こんな儀式を続けていてはいけない。とね」

睦月くんの言葉に、私は本当に驚いた。
立花家は、紅贄祭の祭司の中でも、双子巫女の禊を取り仕切るという大事な役割があって、
それ故、村でも大きな力を持っている。
その立花家の樹月くんが、儀式を否定するような意見を言うなんて。
父様や他の宮司様達に知れたら、きっと大変な事になる…
675名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 23:58:32 ID:zXvpV2yc

「僕も、樹月の意見に賛成だ。だけど、虚を封じることができる人間が現れるのを待つには、
 もう、あまり時間が無いようだ…虚の鳴動が、次第に激しさを増している。
 大償が起こるまでには、もってあと一年ぐらいらしい」

突然、樹月君は私の手を握り締めて、私をじっと見つめた。

「紗重。僕は躰が弱いので、どうせそう永くは生きられない」
「そんな…」
「紗重。君は…八重と儀式がしたいんだろう?」

見透かされて、私はどきっとした。

「どうしてわかるの?」
「わかるさ、僕にはね。でも、駄目だよ紗重…それは駄目だ。僕達が、かわりに儀式をするから、
 君は生きてくれ。そして後は、樹月の言う通りにするんだ。約束してくれ。いいね」
「睦月くん…」

帰りは、睦月くんが屋敷まで送ってくれた。
二人とも、なにも喋らずに黙って歩いた。
私は、儀式をするという二人を説得しに来たのに、反対に説得されてしまった…
自分の命と引き換えに私を助けようとしている睦月くんの言葉に、逆らえないと思った。
676名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 23:59:21 ID:zXvpV2yc


樹月くんと睦月くんが儀式に失敗したと聞かされた翌日から、私と八重は、樹月くんに会うために、
何度か立花家を訪れたけど、会うことはできなかった。
替わりに、千歳ちゃんが、玄関に出てきて、言った。

「樹月おにいちゃん、お祭りの日に帰ってきてから、髪の毛が真っ白になって、ずっと寝こんでるんだ…
 睦月おにいちゃんは帰ってこないし…」


「私のせいだね…」

帰り道を二人でとぼとぼと歩きながら、八重が呟いた。

「樹月くんと睦月くんが私達の替わりに儀式をするって聞いたとき、私は…二人に申し訳ないと
 思ったけど…本当は…すごく、安心したんだ」
「安心…?」
「これで…紗重を殺さずに済むって…」

八重…八重はやっぱり、私と儀式をするのを嫌がっていた…
私は、すごく悲しい気持ちになった。

「でも、私が間違ってたね…紅贄の宿命からは逃れられる筈もないのに…
 私が決心しないばかりに、睦月くんを…ただ…死なせてしまった…
 私…千歳ちゃんに、どうやって償ったらいいんだろう…」

屋敷へ続く嘆き橋の途中で立ち止まって、八重は、両手で顔を覆って、はらはらと涙をこぼして泣き始めた。
私は、泣いている八重の背中を抱きしめて、一緒に泣きながら、八重に言った。

「八重…儀式を、しよう…」
「でも私、紗重を殺したくない…」
「ううん。私は死なないよ。私は蝶になるの。そして、ずっとずっと、八重と一緒に生き続けるの。
 だから、お願い。儀式を…儀式を、しよう…」

八重はしばらく泣きじゃくった後、とうとう、こくりと頷いた。

私達はその夜、父様に、来年の紅贄祭の双子巫女になりたいと申し出た。
父様はただ一言、そうかと言って頷いた。
677名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 23:59:55 ID:zXvpV2yc

それから一年近くの日が過ぎた。お祭りの日が近づくと、私達は、儀式の準備のために、
桐生家と立花家に通って、禊を始めた。
でも、樹月くんとは、会うことがなかった。
禊が進むにつれて、八重は、だんだん無口になっていった。
いつも朗らかで、元気だった八重が沈んでるのを見て、私も辛かった。
でもそれ以上に、やっと、八重と儀式ができる、その期待に、私の胸はときめいていた。



そんなある日、村に久しぶりのお客様があった。宗方くんと、宗方くんの先生の学者様。
宗方くんは、ずっと背も伸びて、逞しい立派な青年になっていた。
八重は、宗方くんに会えて、本当に嬉しそうだった。

「久しぶりだね。宗方くん。…書生をしながら学者様を目指してるなんて、すごいね」
「いや、書生と言っても、小間使いみたいなもんさ。まだまだ先生の書かれた論文を
 読解するのにも精一杯だよ」

宗方君は笑いながらそう答えて、その後、照れくさそうにこう言った。

「君達こそ…綺麗になったね。八重。紗重。驚いたよ」

八重は、宗方くんの言葉に、顔を赤らめて恥じらった。
そんな八重を見て、私は、ちくりと胸が痛んだ。
678名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:00:24 ID:wMIFCJbR

「ところで、樹月と睦月はどこだい?姿が見えないけど」
「・・・・」

村の秘密は、他所の人に知られてはいけない。
樹月くんは、宗方くんと会えないように、村人達の手で村はずれの土蔵に閉じ込められていた。

私達は、宗方くんが来ている事を伝えるために、夜、人目を忍んで、こっそりと樹月くんに会いに行った。

「なんだって?宗方が村に来ているのか?」

蔵の格子窓越しに、久しぶりに会う樹月くんは、憔悴しきっていた。
千歳ちゃんの言ったとおり、艶やかだった黒髪が真っ白になってしまっていた。

「こんな時期に、村に余所者を受け入れるという事は…祭主はきっと、彼らを楔にするつもりだ」
「そんな…」

楔。

虚の鳴動が鳴り止まず、陰祭が間に合わないとき、一時的に虚を鎮めるため、生贄を立てる。
縄のお堂で生贄の人を切り刻み、虚に落とす。生贄の苦痛が大きいほど、楔は力を増す。
話には聞いていたけれど、父様が本当にそんな恐ろしい事をするなんて…

679名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:00:59 ID:wMIFCJbR

「彼を手紙で呼んだのは僕だ。だけど、村の中ではなく、村の外で君達を待っていて欲しかったんだが…」
「どういう事?」八重が尋ねた。
「僕は、この蔵の中で、君達が来てくれるのをずっと待っていた…君達に大事なことを伝えるために…
 八重。紗重を連れて、この村から逃げるんだ」
「ええっ?」

私達は驚いた。樹月くんは今でも、陰祭の儀式に反対してたんだ…
でも…逃げるなんて…

「ずっと村で暮らして来た君達には、理解しがたいのかもしれない。でも、こんな儀式は間違っている。
 なにかきっと、別の方法があるはずだ」
「別の方法?」
「宗方の書いてきた手紙にあった、射影機という機械を使って、虚を封じるか…
 あるいは、途方もない話かもしれないが、村ごと大量の水の底に沈めてしまえば…」
「でも…私達が逃げたら、村の人達が…樹月くんだって…」
「これは、睦月の遺言でもあるんだ。あいつは言っていた。僕達の儀式が終わったら、なんとしても、
 君達を逃がして欲しいと。僕はせめて、睦月の願いを叶えたい。
 宗方には、千歳に手紙を頼んで、村を出るように伝えておく。
 君達は村を出て、後の事は彼に頼るんだ。紅贄祭の夜に、もう一度ここに来て欲しい」
680名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:01:39 ID:a6dXgff4

屋敷に戻ってから、八重はずっと考え込んでいた。
村を捨てて逃げろ、という樹月くんの言葉に、一度は決心した儀式への気持ちが、揺らいでいるようだった。

「八重…どうするつもりなの…?」
「わからない…双子巫女の宿命に従うのが正しいのか、樹月くんの言う事が正しいのか、
 私には、わからないの…」

八重は、睦月くんが死んでしまった事に、ずっと責任を感じてた。
命がけで私達を助けようとしてくれた、樹月くんと睦月くんの気持ちを無駄にしたくない…
八重のそんな気持ちは、私にも理解できた。

私は本当は、逃げなくてもいい。私と八重がひとつになれば、それで済む事だから。
八重と、儀式がしたい…
でも、苦しんでいる八重に、私がそう思っている事を言えば、八重はもっと苦しむだろう。
八重が決めたとおりにしよう…私はそう思った。


八重は、しばらく俯いて考え込んでいたけど、やがて顔を上げて言った。

「宗方くんとあの学者様を、逃がしてさしあげないと…」
「うん…そうだね…」

私達は、家人の目を盗んで、学者様に、屋敷からの抜け道を書いた紙を手渡した。
学者様は、詳しいことを聞きたそうだったけど、これ以上の事は話せなかった。

その日のうちに、学者様からの手紙を預かって、宗方くんに会いに行った。
宗方くんは立花家の樹月くんの書斎で調べ物をしていた。
宗方くんに手紙を渡すと、宗方くんは、立花家の家人の人達の目を避けながら、八重に、
「祭りの日の夜に、村の外で待っている」
と、小声で囁いた。
八重は、一瞬びくっと身を震わせたけど、聞こえないふりをしていた。
祭りの日は、数日後に迫っていた。
681名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:02:15 ID:zXvpV2yc

私達のしたことは、結局無駄だった。
学者様は、座敷牢に入れられて、楔にされてしまったらしい。
私達には、どうする事もできなかった。
でも、宗方君は逃げることができたらしく、村から姿を消していた。


紅贄祭の日がやってきた。
もうすぐお祭りが始まる刻限になって、私達はもう一度、樹月くんに会いにいった。

「さあ、この風車を持って行くんだ。これが、朽木から村の外に出るための鍵だ」
「樹月君は…どうするの?」
「八重…紗重…僕は、儀式に失敗した。睦月を、彼を、蝶にしてあげられなかった…
 僕達は、君達と違って、心の底では儀式を望んでいなかった。
 お互い、別々の人間である事を望んでいた。 
 八重、僕は、いつも君の事だけを見ていた…そして、睦月は…あいつは…」
「樹月くん…」
「さあ、行くんだ。八重。…どうか、気をつけて、元気で…」

八重は、瞳に涙を浮かべて、大きく頷いた。
樹月君の言葉に、村から逃げることを決心したようだった。

「行こう。紗重」
「うん…」
682名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:02:48 ID:a6dXgff4

八重と私は、手を取り合って、朽木に懸命に走った。
途中、何度か村の人達に見つかりそうになったけど、なんとか隠れて切り抜けた。
走りながら、私は自分の胸に、問いかけていた。

(これでいいの?私は…八重と二人で村から逃げ出して、本当にこれでいいの…?)

朽木へと続く抜け道に入った。
ずっと昔に、ここを通って村から逃げようとした双子巫女がいたと、聞いた事がある。
でも結局、深道で落盤の下敷きになって、死んでしまったと。
朽木の中には、鬼籍になった生き残りの双子巫女を奉った、たくさんの風車が、くるくると回っていた。
八重は、風車を使って、抜け道の仕掛けを解いた。

「開いた!さあ、早く。紗重」
「…待って」

私は八重を呼び止めた。
村を出る前に、どうしても八重の気持ちを確かめておきたかった。

「八重…八重は、私と儀式をするのが嫌なの?…私とひとつになりたくないの?」
「紗重…?」
「私は本当は、逃げなくていい。ずっとずっと、あなたと儀式がしたかった。
 あなたとひとつになりたかった…」
「紗重…こんな時に…」
「お願い。答えて八重。八重は、誰が好きなの?…樹月くん?それとも、宗方くん?」

言いながら私は声が震えて、目から涙が溢れて来た。
もし、八重が私と儀式をしたくないと言ったら…そう思うと、怖くて、怖くて仕方なかった。
683名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:03:24 ID:a6dXgff4


「紗重…」

突然、八重が私の頬に手を添えて、顔を近づけて来た。
そして、そっと私に口づけした。

「んっ…」

私のすぐ目の前に、瞳を閉じた八重の顔があった。
私と同じ顔。
八重の唇はとても甘くて、柔らかくて、私の唇にそっと触れていた。

「紗重…」

八重は、私から顔を離すと、私を見つめて囁いた。

「紗重…好きよ。私は、あなたが好き…」

八重は、私の背中に手をまわし、ぎゅっと私の躰を抱きしめた。

「ずっと、こうしたかった…ずっとずっと、あなたが欲しかった
 …あなたとこうして抱き合うことを、ずっと夢見ていた…」
「や、八重…」
「紗重…あなたが、どうしても儀式をしたいのなら、そうしてもいい…
 でもね、紗重。私達、別々の人間だから、こうして抱き合える…
 お互いの躰を、こうして感じあえる…
 紗重…ふたりがひとつになる方法は、儀式だけじゃないよ…」
684名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:04:16 ID:zXvpV2yc

八重は、私の着物の帯をするすると解いた。そして、襟元に手を差し入れて、そっと開いた。
白い着物が、肩からするりと脱げて、地面に落ちた。
八重もまた、自分の着物の帯を解いて、脱ぎ捨てた。

まるで鏡の前に立っているかのように、裸の私達は、向かい合った。
そして、八重は、震える私の躰を、地面の枯れ草の上に、そっと押し倒した。


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枯れ草の褥の上で抱き合って、指先をからめながら、八重は私に囁いた。

「紗重、憶えてる?ずっと前に、ふたりで、村の外の川に行った時の事を…」
「うん…憶えてるよ…」
「あの時、約束したよね。私達、なにがあっても、ずっと一緒だよって」
「うん…」
「私達、この村を出ても、ずっと一緒に暮らそう。そして、何度でも、こうして抱き合おう…」
「うん…」

それも悪くなかった。とても素敵な事だと思った。
八重とふたり、ずっと一緒にいられるなら、それでもいいと思った。一緒にいられるなら…
685名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:04:50 ID:a6dXgff4

私達は朽木を出て、暮羽神社へ向かった。お社の中、御神体の裏側の抜け道を通って、森へ出た。
森の中を、私達は懸命に走った。
後ろから、私達を追う大勢の村人達の声と、松明の炎の明かりが、次第に迫って来ていた。

「紗重!はやく!」
「う、うん」

もう少しで、あの川に出る。子供の頃に、八重とふたりで遊んだあの川に。
もう少し…もう少しで…
その時だった。

「きゃあっ!」

私は突然、足を滑らせて、道の端から滑り落ちた。
道の端は、崖になっていた。

「紗重っ!」

八重が咄嗟に手を伸ばし、私を捕まえようとした。
私も手を伸ばしたけど、その手はわずかに届かなかった。
私の躰は、崖に生えている木や草を折りながら、崖の下に滑り落ちて行った。
ようやく、崖の下まで落ちたとき、私は、全身を強く打った。
幸い、大きな怪我はしていないようだったけど、激しい痛みで動くことができなかった。
686名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:05:22 ID:a6dXgff4


「八重…八重!…」

私は必死で叫んだ。崖の上は暗く、なにも見えなかった。
いくら呼んでも、八重からの返事は聞こえなかった。
私はただ、八重の名前を叫びながら、その場に座り込んだ。
ようやく、全身の痛みから立ち直って、よろよろと立ち上がったその時、背後から声がした。

「いたぞ!」
「見つけたぞ!双子だ!」

私は、はっと振り返った。大勢の村人達が、松明を持って私を取り囲んでいた。




私は捕まって、村に連れ戻された。一人で、黒澤の屋敷に戻された。

父様は、仏間で胡坐を組んで座り、経を唱えていた。
私が仏間に入り、正座すると、父様は読経をやめ、私に背を向けたままで言った。

「紗重か…よく戻った…」
「父様…」
「八重が、儀式の事で悩んでいるのは知っていた…逃げ出したのも、鬼籍となった、
 立花の少年に唆されたのであろう…」
「・・・・・」
「愚かな事だ…この世には、人の力では抗えない事もある…あの東京の書生と付き合ううちに、
 余計な知恵をつけてしまったのだろう…」
「・・・・・」
「紗重、お前は、わかっているな…八重が戻り次第、儀式をはじめる」
「…はい…」
「だがその前に、土蔵に行け。お前達がした事の結果を、見届けるがいい」
687名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:06:04 ID:a6dXgff4

その言葉を聞いて私は、とても悪い予感がした。まさか、樹月くん…?
私は、不安を抱えたまま、土蔵に歩いて向かった。もう逃げ出すことはないと思われたのか、
見張りもつけられなかった。
そして、私は土蔵で見た。縄で首を吊って、自らの命を絶った樹月くんの、変わり果てた姿を。

「樹月くん…」

私は、両手で顔を覆って泣き始めた。樹月くん…私達を逃がすために…私達のせいだ…私達の…
背後で、ちりんという、鈴の音が聞こえた。
振り返ると、千歳ちゃんが立っていた。

「千歳ちゃ…」
「ばかっ!お兄ちゃんをかえせ!」

千歳ちゃんは、憎しみに満ちた目で私を睨むと、履いていた下駄を私に投げつけた。
投げた下駄は私に当たらず、かつんと音をたてて土蔵の壁に当たって落ちた。
千歳ちゃんは、くるっと踵を返して、裸足で駆け出して行った。
いつのまにか、大勢の村人達が私を取り囲んでいた。
688名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:07:25 ID:a6dXgff4

「なぜ逃げた!」
「俺の妹達は双子だった…ずっと昔に赤贄にされた…。下の妹は死んで、
 上の妹も狂い死んだんだ!まだ、お前より小さい子供だったのに…」
「私の産んだ子供は、生まれてすぐに目を縫われて、忌人として取られてしまった…
 とても可愛い赤ちゃんだったのに…」
「祭主様の娘なら、贄の定めに従え!」
「そうだそうだ!」
「儀式を続けろ!」
「儀式を!儀式を!」

村人達は口々に、私を罵倒した。

「ごめんなさい…ごめんなさいっ…」

私はただ、泣きながら謝るしかなかった。
私は、自分達が間違っていた事を思い知らされた。
この村に住む者は、皆一様に痛みを背負っている。それが定めだから。
やっぱり、逃げずに八重と儀式をするべきだった…
そうすれば、樹月くんも死なずに済んだかもしれない…ごめんなさい…千歳ちゃん…
689名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:08:06 ID:a6dXgff4

私は、縄の御堂で、最後の禊を終えようとしていた。
御堂の外の格子の部屋から、父様と若い宮司様が、激しく言い争うのが聞こえてきた。

「なりませぬ、祭主様!紗重様一人で儀式を行うなど!」
「だが、八重がいまだ戻らぬ以上、やむを得まい。過去に先例もある事だ」
「確かに、文献にはそうした記述もございます。ですが、その理由については書き記されて
 おりませぬ。その結果についても…
 私が考えまするに、双子の一人が急死したために、急ぎもう一人を殺すことで魂の和合が
 相成ったものと解釈しております。ですが…」
「ではどうせよと言うのだ?虚の鳴動が鳴り止まぬ。もはや、他に双子はおらず、
 楔では抑えきれぬ。もう、時間がないのだ。大償を起こすわけにいかぬ」
「八重様をお探しするしかありません。今、村の者が総出で、山狩りを行っております。
 必ず、必ずや、八重様を連れ戻します」
「だと良いがな…刻限までに八重が戻らぬ場合、紗重ひとりでも儀式を行う」
「祭主様…」

私は立ち上がり、格子の部屋に出た。
若い宮司様は、私の顔を見て、狼狽した。

「さ、紗重様…」
「大丈夫です。八重はきっと…戻ってきます」
690名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:08:31 ID:knclV1Eg
なげーよ……
691名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:08:48 ID:a6dXgff4

八重が、私をおいて一人逃げ出す筈はなかった。私達はさっき、あの朽木の中で、
お互いの気持ちを確かめ合った。ふたりはずっと一緒だと誓ったから…
きっと、道に迷ったか、まだ私を探しているに違いない。
村人達がきっと、見つけてくれるだろう。

八重もきっと今頃、逃げたことが間違いだったと判っているだろう。
そして、きっと、私と同じ不安を抱えているに違いない…
朽木の中で八重とひとつになれた事は、とても素晴らしかったけど、でも…
躰がふたつに分たれている限り、こうして離れ離れになってしまう事もある。
私達はやっぱり、儀式をするしかないんだ…
八重…私と、儀式をしよう…ひとつになろう…
八重…はやく戻って来て…
692名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:09:37 ID:a6dXgff4


儀式の刻限が迫っていた。私は、贄座の祭壇の上で一人、八重が戻るのを待っていた。
大勢の宮司様が私を取り囲み、祝詞を唱えていた。
八重…どうして戻らないの…?
やがて、父様が厳かに宣言した。

「これより陰祭の儀式を行う」
「ま、待って父様。八重が…八重がまだ、戻ってない…」
「紗重…八重は、もう戻らぬ」
「そんな事ないっ!そんな筈ありません…お願い父様、もう少し、もう少しだけ待って…」
「もう待てぬ」

父様は、私の両脇にいる宮司様に合図した。
宮司様達は、私の首に注連縄をかけた。
周りを取り囲む宮司様達が、錫杖で地面を突いて、打ち鳴らした。

しゃりん しゃりん しゃりん しゃりん しゃりんしゃりんしゃりん

「待って!お願い父様っ!」

注連縄が左右から引き締められ、ぎりぎりと私の首を締め上げた。
それは、夢に描いていたような、八重に絞め殺される恍惚とした陶酔感ではなかった。
私の首にかかっているのは、八重の柔らかい手ではなく、硬くて痛い荒縄だった。
苦しかった。ただ、苦しかった。
693名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:10:17 ID:a6dXgff4

しゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりんしゃりん

やめて、苦しい。こんなのは、嫌だ。こんなのは、違う。

私は、両手で首に巻きついた縄を握り、激しく抵抗した。でも、私の首を絞める力は
弱まる事なく、更にぎりぎりと締め上げた。

八重…どうして戻ってこないの?
どうして…どうして…
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
どうし…て…

「や…八重…」

視界が赤く染まる中、私は最後の力を振り絞って、八重の名前を呟いた。
そして私は、自分の首の骨が折れる、ぼきりという音を聞いた。

694名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:11:01 ID:a6dXgff4


闇の中で、私は漂っていた。そこは、虚の中だった。

…オオ…オオオ…
…サムイ…クルシイ…
…ダシテクレ…ココカラ、ダシテクレ…

そこには、この世に未練を残して死んだ亡者達の呻き声が、絶え間なく響いていた。
とても寒くて、とても暗くて、とても寂しい所だった。

八重…助けて、八重…ここは寒いよ…ひとりは嫌…ひとりはやだよ…
八重に会いたい…八重に…会いたい…
私は一心に、そう祈っていた。

「姉に会いたいか?」

突然、どこからか声が響いてきた。

「誰…?」
「外に出たいか?ならば強くそう願うがいい。我等がお前に力を貸そう」

八重に…八重に会えるの?虚の外に出られるの?

「駄目だ!いけない紗重!」

また別の声が響いてきた。この声は…睦月くん?
695名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:11:44 ID:a6dXgff4

「紗重。彼らの声を聞いてはいけない。彼らは亡者だ。君の想いを利用して、
 大償を引き起こし、外に出ようとしている」
「睦月くん…あなたは、ずっとここにいたの…?」
「そうだ…僕もまた亡者だ。蝶にもなれず、現世に未練を残したまま、死んでしまった…
 いつか、虚が人の力で封じられるまで、紗重…僕とここで…」

「嫌っ!」
「紗重…?」
「睦月くん…どうして、私に儀式をさせてくれなかったの…」
「紗重…」
「どうして、村から逃げろなんて言ったの?私は、八重と儀式がしたかったのに…」
「紗重、僕は…」
「お前のせいだ!お前達が邪魔をしたから、私は蝶になれなかった!八重とひとつになれなかった!」

私の中で、激しい怒りが込み上げて来た。それは、私達の儀式を邪魔した者達に対する怒りだった。
私達を逃がそうとした樹月くんと睦月くん、八重が戻るまで待ってくれなかった父様、宮司達、
八重を連れてきてくれなかった村人達。
全てが憎かった。全てを激しく憎悪した。

「私は外に出る!外に出て、もう一度、八重と儀式をするんだ!」
「いけない紗重!やめるんだ!」
「うるさいっ!」

突然、頭上に光が開けた。私はその光に向かって、ゆっくりと浮かび上がった。
696名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:12:32 ID:a6dXgff4


私は、虚の穴の上で、宙に浮いていた。
穴からは、おびただしい量の、どす黒い瘴気が溢れ出していた。
私の後ろから、無数の亡者が一塊となって出現した。
見るとそれは、楔となったあの学者の姿をしていた。
私はこれが、虚の中で私に声をかけてきた亡者達だと悟った。

穴の周りには、大勢の宮司達が、折り重なって倒れていた。みんな瘴気を浴びて死んでいた。
中には、父様の死体もあった。私はそれを、冷たく見下ろした。なんの感情も沸かなかった。
愚かな父様…私一人で儀式をしようとするなんて…
この人は、儀式を守ることに固執するあまり、儀式の本当の意味も忘れてしまっていた…

「さ、紗重様…」

私の名を呼ぶ声が聞こえた。声がした方を向くと、父様と言い争っていたあの若い宮司が、
地面に倒れたまま、首をもたげて私を見ていた。瀕死の状態だった。

「紗重様…大償が…やはり、無理だったのだ…こんな事なら、紗重様も逃がしてさしあげれば…」

宮司は、息も絶え絶えにそう言った。
私は、ゆっくりと宮司に近づき、宮司の頭の上に足をかけた。

「さ、紗重様…なにを…」

宮司の表情が、恐怖で引きつった。
私は、足に力をこめて、ぐしゃりと頭を踏み潰した。

「ふん」

私は嘲った。愚かな事を。私はもう、逃げたりはしない。逃げた事が間違いだったんだ。

元は学者だった楔は、深道を通って、屋敷の地下に登っていった。
私は悠然と、その後に続いた。
697名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:13:18 ID:a6dXgff4


「ぎゃあぁっ!」
「助けて!助けてくれえっ!」
「く、楔が!楔が来る!」

大広間では、楔が、そこにいた者達を次々に、切り刻んでいった。
もはや学者だった頃の面影はなく、完全に狂っているようだった。
それを冷静に見ている私もまた、狂っているんだろう…そう思った。

楔の通った後は、切り刻まれた死体が累々と横たわり、大広間を埋め尽くしていた。
衝立の陰から、人の気配がした。私は、衝立を倒した。手に刃物を持った男が隠れていた。

「う、うわぁー!!」

男は恐怖に満ちた表情で、刃物を持って私に襲い掛かった。
短い刃物の切っ先が、私の肩にずぶっと突き立った。
でも私は、痛みを感じなかった。
私は、刃物を素手で握って、引き抜いた。
傷口から血が滲んで、私の着ていた白い着物を赤く染めた。
私は、驚愕の表情を浮かべている男の首を掴み、片手で軽々と持ち上げた。
そして、そのまま、首をへし折った。

「がはっ」

男の口から血が溢れ出し、私の顔や白い着物を汚した。
男の体が、糸の切れた操り人形のように、だらりと垂れ下がった。
私は、それを投げ捨てた。
698名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:14:03 ID:a6dXgff4

「あはははははははっ!」

急に、笑いが込み上げて来た。
顔や着物を血で真っ赤に染めたまま、私は大声で笑った。
可笑しくて、可笑しくて、笑いが止まらなかった。

「あはははははははっ!」

私は笑いながら、外に出て、村の中を歩き回った。
村のあちこちで、村人達が瘴気に襲われて、または楔に切り殺されて、ばたばたと死んでいくのが見えた。
渡り廊下の下を通ると、上から、気が狂った女が飛び降りて、どさりと音を立てて落ちた。
首が、へんな方向に捻じ曲がって死んでいた。

「あはははははははっ!」

私はまた、大声で笑った。

私は、まだ生きている人間の気配を感じた。立花の屋敷からだった。
きっと千歳ちゃんだ…可愛そうに…たった一人になって…

私は、立花の屋敷に入り、千歳ちゃんを探した。
座敷の押入れの前で、私は千歳ちゃんの気配を感じ、呼びかけた。
699名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:14:42 ID:a6dXgff4

「千歳ちゃん…どこにいるの?隠れてないで、出ておいで…
 紗重お姉ちゃんと遊びましょう…お兄ちゃん達のところに、連れて行ってあげる…」

私はそう言って、また大声で笑った。
押入れの中から、「ひっ」という声が聞こえた。

私は、押入れの取っ手に手をかけて、そうっと開いた。

「みいつけた…」



村にはもう、誰もいなくなった。みんなみんな殺した。
これでもう、私と八重の儀式を邪魔するものは、誰もいない。
あとは、八重が戻ってくるだけ…

私は、目を閉じて、強く願った。

八重…はやく…はやく戻って来て…私と儀式をしよう…ひとつになろう…

ずっと…待ってるから…

700名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 00:15:13 ID:a6dXgff4

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終わりです。また長くなってすいませんでした。
エロないですし、大部分が日記その他からの引用だし、
しかも、みんな知ってる話なので今更どうよ?wって感じですが、
以前から、脳内に溜まりに溜まった妄想テキストをどうにかしたいって思ってたので、
まとめてドバッと出力してみました。お蔭様ですっきりしました。
零の魅力のひとつには、虚とか涯みたいな人知を超える存在に翻弄される
人々の群像劇みたいなのがあると思うのですが、
紗重は本来善良な人間が、愛ゆえに邪悪と狂気の存在へと変貌するあたり、
なんかダースベイダーみたいで萌えw。
701名無しさん@ピンキー:2006/06/14(水) 01:00:38 ID:y7NxzieX
>>700
まさか刺青が発売されて一年経とうかという今こんな傑作を読めるとは
思わなかった。読んでると蝶プレイしてた頃に戻ったみたいだった・・
ありがとう


702名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 13:37:41 ID:5u4ktc1a
ここまだあったのか。感動w
しかも神が大量に降臨なされてるしw
GJ!!!!!!!
703名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 16:50:31 ID:0TYmEqMD
>>700
かなりGJ!!!長いのなんか気にするなよ!逆にこんなに長いの読めてすげえ嬉しいぞ!次回も期待する!
704名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 03:09:26 ID:DkWn4LPe
久しぶりに来たけどなんだよこの神有スレ
長いとか全く構わないよもっとみてーよ
シリアスもギャグもみんなGJだー!!!
705雨音トライアングル (1/4) 鏡華編:2006/06/20(火) 07:59:23 ID:XhKN6Eop
 深夜、久世家にて。私は蒔枝さんと二人、着物の間でお酒を飲んでいました。夫を亡くした女二人、
同じ境遇の私たちは、蒔絵さんがこの家に来られてからというもの、こうして暇を見つけては、共に
辛い現実から目を背けず、強く生きていこうと、お互いを励ましあっているのでした。
「それにしても鏡華さんはご立派です。お仕事と子育てを両立されていて……」
「そんなことありませんわ、うちは子供も大きいですし……」
 長男の要は零華さんと船に乗って新しい大陸を探す旅に出てしまいましたし、雨音は氷雨ちゃんた
ちとの音楽活動が忙しいらしく、同じ家に住んでいながら、最近では滅多に会うこともなくなってい
ました。
「二人とも手のかからない子だったので、私は特に子育てが大変だと思ったことはありませんわね」
「うらやましいです、うちの梢ももう少ししっかりしてくれたら……」
 そう言う蒔枝さんに、私は子育てを終えた母親として、自分の経験を踏まえた幾つかのアドバイス
をすることにしました。

 そして半時後。
「鏡華さん、いい男紹介してくださいよ!」
「私だって紹介して欲しいわよ!」
 つい先ほどまで話題にしていた、母子家庭における子供の育て方に関する話はどこへやら。誰しも
お酒が入れば、おのずとこういった話題になってしまうのが世の常というものです。
「蒔枝さんこそ、誰かいい人、知ってるんじゃないの?」
「うーん……あ、この間水道の検針に来られていた方、めちゃくちゃイケメンでしたよ! 傷だらけ
だけど、そこがまたワイルドな感じで」
「ああ、槇村さんね。でもあの人、彼女いるじゃない」
 蒔枝さんは「チッ」と舌打ちしながら、悔しそうにドンと畳を叩きました。
 槇村さんは、もともと地質調査員として皆神村に来られた方で、恋人の須堂さんと共に村の地鎮祭
に巻き込まれ、私たちの仲間入りを果たしていました。以前、つまみ食いしようとして須堂さんに殺
されかけたことは、蒔枝さんには秘密にしてあります。
「人間いくつになっても恋をしてなきゃいけないと思うわけなんですよ! 恋は女を輝かせるわけな
んですよ! だから私は! だから私はいつだって恋に身を投じていたいわけなんですよ!!」
 蒔枝さんはサンボマスターの中の人みたいに熱弁していましたが、私も同じ気持ちでした。
「まったく同感だわ! あー、どこかにいい男落ちてないかしら……」

 こんな私を、はしたない女だと思われますでしょうか――。
 さりとて、私も女。眠れぬ夜には体をもてあましたりもするのです。
706雨音トライアングル (1/4) 雨音編:2006/06/20(火) 07:59:57 ID:XhKN6Eop
「え……それでお母さんたち出掛けちゃったの?」
「うん……」
 枕を胸に抱いて、梢ちゃんが私の部屋を訪ねてきたのは、深夜も二時を回った頃だった。
「だから今日は、あまねお姉ちゃんのおへやに泊めてもらいなさい、って」
 お母さんたち、一体どういうつもりだろう……。
 梢ちゃんを泊めてあげたいのはやまやまだったが、私の部屋は私と時雨ちゃんの荷物でいっぱいな
のに加えて、異常に寝相の悪い時雨ちゃんが今もなお、わずかなスペースを占有してくれているおか
げで、とても部屋に入れてあげられる状況ではなかった。
 困った私は、梢ちゃんに提案した。
「……そうだ、この部屋じゃ狭いから……私の知り合いのお家に泊めてもらいましょう」

 そうして、私たちは怜さんの家にやってきた。引き戸を開けると、この家に居候中の氷雨ちゃんが
着替え中で、私たちの来訪に気付いた氷雨ちゃんは「ちょっ、ノックくらいしてよ!」と、ヴィーナ
スの誕生みたいに、ぺったんこの胸を手で隠していた。氷雨ちゃんは最近、自分の写真集がちょっと
売れてるからって、調子に乗っている気がする。
「あれ……? ひさめお姉ちゃん、ここに住んでるの?」
「うん、氷雨ちゃんはお部屋がなくなっちゃったから……この家に泊めてもらってるの」
 不思議そうな顔をしていた梢ちゃんに、私が説明すると、氷雨ちゃんは「嫌なこと思い出させない
でよね!」と膨れていた。
「ねぇ氷雨ちゃん、急で悪いんだけど、今日、梢ちゃんここに泊めてあげられないかな。蒔枝さん、
お母さんと出掛けちゃったみたいで……私の部屋は、狭くて泊めてあげられないから……」
「はぁ……? 別に構わないけど。でも鏡華さんたちなら、さっきここを通って行ったよ?」
 氷雨ちゃんの言葉に、私は耳を疑った。
「えっ? どういうこと……?」
「ついさっき、そこから二人で出てきたんだよ。なんでも、イケメン狩りをするとか言ってたけど」
 子供を持つ母としてそれはどうなの?と、氷雨ちゃんは呆れた様子を見せた。
 と、その時。
「うわあああああっ!!」
 階下から、耳をつんざくような、聞き覚えのある男の人の悲鳴が聞こえた。
「い、今の……螢さんの声だよね……?」
「え? そうだよ、相変わらず今日もみんなでお泊りらしいね。……あれ? ということは、今まさ
に螢が狩られてるんじゃないの?」
 なんでもないかのように氷雨ちゃんは言ったが、私は二人をその場に残して、考えるよりも先に部
屋を飛び出していた。
707雨音トライアングル (3/4) 雨音編:2006/06/20(火) 08:00:35 ID:XhKN6Eop
「鏡華さん、イケメンを発見しますた!」
「よし、さっそく捕獲しましょう!」
 リビングには怜さんと深紅さん、そして遊びに来ていた螢さんたち、そして信じたくはなかったが、
氷雨ちゃんの言った通り、お母さんと蒔枝さんがいて、螢さんににじりよっているところだった。突
然現れた二人に、みんなは唖然とした顔で成り行きを見守っている。
「な、なんだ、君たちは……!」
 ソファからずり落ちたのか、尻もちをついたまま後ずさる螢さんに、二人がじわじわと近寄ってい
く。ただ一人、繭さんはニヤニヤ笑いながらそれを眺めていた。
「ぎゃー!」
 情けない叫び声をあげる螢さんを、米俵よろしく軽々と肩に担ぎ上げると、二人はそのまま玄関の
方へ走りだした。鮮やかな犯行ぶりに私たちは呆気に取られていたが、ハッと我に返った私は慌てて
その後を追った。怜さんたちもその後に着いてくる。
「やめてー! 腕が取れちゃうー!」
 玄関を飛び出すと、お母さんたちに両腕を掴まれ、ちょうど暴れ馬に引きずれられる新米保安官み
たいになった螢さんが、夜の闇に消えていくところだった。
「なに、今の……」
「新手の裂き縄の儀式でしょうか……」
 怜さんと深紅さんが、早くも視界から姿を消した三人の方を見ながら、冷静な面持ちで言った。
 どうしてそんなに落ち着いていられるんだろう。螢さんがさらわれたというのに――。
「私、連れ戻してきます!」
 じっとしていられなかった私は、得意の空中滑空で螢さんの後を追った。

 迷路のように入り組んだ街を空から見下ろすと、引きずられている螢さんが巻き起こす土煙が、そ
の行き先を一本の線で示していた。その後を追うようにして辿り着いた先は、繁華街にある某有名居
酒屋チェーン店だった。
 明らかに場違いな私を怪訝そうな顔で見る店員たちの視線をかいくぐって店内を見回すと、奥に作
られた畳敷きの席に三人が座っていた。柱の影に身を隠すと、私は三人の様子をうかがう。
「な……なんなんですか? ここ、どこですか? なんで俺、連れてこられたんですか……?」
 ボロキレみたいになってびくびく震えている螢さんに、お母さんと蒔枝さんがべったりとくっつい
ていた。
「あ、あなたたちは、確か眠りの家にいた……人違いだって言ったじゃないですか!」
「まぁ、そうおっしゃらないで。螢様は何を飲まれます?」
 お母さんは動揺している螢さんに構わず、メニューを開いてテキパキと注文を済ませていた。

「……へえ、すると鏡華さんは雨音ちゃんのお母さんなのか」
「ええ。いつも雨音がお世話になっていますわ」
 過剰に密着してくる二人に、はじめは「うおお、お母さんとお母さんのはさみ焼き!」と混乱して
いた螢さんも、お酒が入ったせいもあってか徐々に落ち着きを取り戻していた。
「螢さん、料理が来ましたよ、はい、あーん……」
 蒔枝さんが運ばれてきた料理を箸で掴んで、螢さんの口元へ差し出す。
「まぁ、蒔枝さんったらずるいわ。それは私の役目よ。さぁ、螢様、お口を開けてくださいませ」
 あまりのモテっぷりに調子に乗ってきた螢さんはそのうち、お母さんと蒔枝さんの肩に腕を回して
「ガッハッハ!」と、どこかの社長さんみたいになっていた。もう見てられない……。
「あーあ、あんなに鼻の下伸ばしちゃって……」
 いつの間にか、怜さんたちが私の後ろに立っていた。深紅さんや、澪さん、繭さんも一緒だ。
「仕方ないから迎えに来てやったけど、私たちといるより楽しそうね」
「螢さん、見損ないました……」
「叔父さんのバカ……」
「クックック……」
 私たちが冷たい目を向けているとも知らずに、螢さんは相変わらず上機嫌でグラスを傾けていた。
708雨音トライアングル (4/4) 雨音編:2006/06/20(火) 08:01:06 ID:XhKN6Eop
「バカは放っといて、こっちはこっちで勝手にやりましょ」という怜さんの言葉に、私たちは席を取
って飲み物を注文した。
「ごめんなさい……うちの母が……」
「雨音ちゃんが気にすることないよ」
 謝る私に、澪さんが言った。それでも、せっかくみんなで楽しんでいたところを邪魔してしまって、
私は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「ねえ。螢って、雨音ちゃんのお父さんに似てるんだっけ?」
 さっそく運ばれてきたビールを飲みながら、怜さんが私に尋ねた。
「いえ、私の父とは違うんですが……螢さんはお母さんの前の旦那さんにそっくりなんです。お母さ
ん、本当は前から気付いてたんですけど、今はもうなんだか開き直ってるみたいで……」
 そう言って私が溜め息をつくと、対面に座っていた澪さんが私の後ろの方に指を差しているのが目
に入った。そして、何か言おうとしているのか、口をぱくぱくさせている。
「…………」
 澪さんの指差す方に目をやると、私たちは絶句してしまった。
 信じられない光景が、そこで繰り広げられていた。
「きゃー、鏡華さんったら大胆! KO・U・HU・N☆」
 酔い潰れてしまったのか、大の字になって眠っている螢さんのズボンに、お母さんが手をかけてい
たのだ。これには傍観を決め込んでいた私たちも、立ち上がらざるを得なかった。
「深紅、御神石のお守りを使えッ! 『ズボン』を脱がせさせるなーッ!」
 座敷の方に向かって走りながら、怜さんが叫ぶ。
 その声に、私たちに気付いたお母さんは「……いいや!(性的な意味で)限界だ、脱がすね!」と、
何のためらいもなく、一気に螢さんのズボンを引き下ろした。同時に、深紅さんが取り出した御神石
のお守りが効果を現したが――遅かった。それは完全に裏目に出てしまっていた。
 無情にも、露にされる螢さんの下半身。それはとてもゆっくりと、私たちの網膜に焼きつけられて
いた。
 なんとも言い難い沈黙が店内を支配する。
「……久々に『ありえないもの』を見ました」
 深紅さんが呟くように言ったのが、とても印象的だった。


 結局、私たちは晒し者になった螢さんを店に置き去りにして、怜さんの家に戻ってきた。
「おかえり。どうだった? 大好きな螢さんはちゃんと取り戻せた?」
 私が氷雨ちゃんの部屋に入ると、眠った梢ちゃんの頭を優しく撫でながら、氷雨ちゃんがからかう
ように言った。
 私は返事もせずに、部屋の窓を開け放った。差し込んだオレンジ色の朝日が私の体を照らす。
「私は……鳥になるんだ……」
「……は? 何言ってんだ、雨音?」
 窓枠に足をかけると、私は白み始めた空に向かって手を広げ、飛んだ。
「あっ、雨音!!」
 朝焼けの空の下、自由に飛び回る私の元へ、どこからか小鳥たちが近づいてきた。私は自ら先頭に
立つと、小鳥たちとV字編隊を組み、上り始めた太陽の方に向かって翼を傾けた。
709名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 08:09:23 ID:XhKN6Eop
>>706は(2/4)でした。間違えました。

>>659
遅くなりました。
書き分けるというか、元々こちらに投稿したのを書き直して保存しているんですが、
諸般の事情で公開できなかったものも置いてます。
そのせいで、こちらに投稿しているSSだけでは鎮女関連の話に少し飛んでる部分があります。
今回のもしかり。
710名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 09:28:55 ID:DS+LlNs1
>>709
ウガツンジャーものはイイ!GJ!
オチワロスww
711名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 20:37:43 ID:s5CxOKvP
御神石スロー噴いたw
712名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 20:04:38 ID:y0gGqWir
夏が近づいてくると、零の事思い出す。
そんな訳で話書いてみました。八重話です。
紗重の神文の後に投下するのも何だが、どうしても書きたくなったんだ。
かなり稚拙な文章ですが、お付き合いいただければ幸いです。
因みにエロは無いです。スマソ。
713潰えた約束 一:2006/06/24(土) 20:12:20 ID:y0gGqWir
 
短い悲鳴が聞こえた。

振り返ると、一緒に逃げていた筈の紗重の姿が何処にも見当たらなかった。

陽が落ちてしまった山中は闇に包まれ、月灯りがあるとはいえ、視界が良いとは決して言えない状態。
そんな中、妹が消えてしまったという突然の事態に、私は暫く茫然とし、呼び掛けにしては弱い声で呟くように妹の名を呼んだ。

「紗重…?」

私の声に呼応するものは無く、森はひたすら闇を広げ続ける。
妹がいない。いなくなってしまった。
すぐ後ろにいた筈なのに。
彼女の名を呼びながら歩んだ路を辿ると、不自然に擦り減っている土の跡を見つけた。

「紗重…!?」

落ちてしまったんだ、此処から。
慌てて崖下に目を凝らしてみたけれど、見えるのは闇色に染まった木々ばかり。妹の姿は何処にも見えない。

「紗重っ!返事をして、紗重ー!」

妹が滑り落ちてしまった空間に必死で呼び掛けてみたけれど、何の返答も無く、私の声だけが闇に吸い込まれていく。
どうしよう、早く見つけなきゃ。
急斜面な崖下の先は暗がりでよく見えなくて、とても降りられない。私は何とか緩やかな坂を見つけようと迂回し、妹の無事を祈りながら下へと降った。
早くしなければ村の追っ手が来てしまう。

「紗重…紗重…!」

譫言のように繰り返し呼び掛ける。
けれど一向に応えてくれる声は無く、紗重の気配は何処にも感じられなかった。
不安が広がり、締め付けられるように苦しくなった胸を私は強く押さえた。
 
714名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 20:15:17 ID:y0gGqWir
 
妹は無事だろうか。酷い怪我をしていないだろうか。

「紗重…ごめん…紗重…」

手を繋いでいれば良かった。
身体が弱くて早く走れないと分かっていたのに。

「何処にいるの!?紗重!!」

四方八方に言葉を投げ掛ける。
気が急いて、紗重の事を思い遣れなかった自分を悔やんだ。
紗重を守るって決めていたのに。
二人で逃げて、あの忌まわしい儀式など無い所で、これからもずっと一緒に居ようねって約束したのに。

生まれた時から片時も離れた事が無かった紗重と私。
いつも一緒にいた私達。
ずっと一緒だった私達。

なのに今、あんなにも近くに感じていた紗重が何処にもいない。

「紗重ーーー!!」

呼べば聞こえる距離にいた半身は、ほんの一瞬の隙に闇に呑まれてしまった。
 
715潰えた約束 三:2006/06/24(土) 20:25:20 ID:y0gGqWir
 
紗重が落ちてから、随分時間が経ってしまった。

未だ見つける事ができない。

月が雲に隠れてしまった為に視界は更に悪くなり、闇雲に探し回った所為で道に迷ってしまった。
白い着物は土に塗れ、草履の端も所々千切れ欠けていた。

「…あっ」

足が縺れて、私は地面に倒れ込む。

「…紗重…」

何処に行ってしまったの。どうして見つからないの。

「紗重…何処…?」

鳴咽が零れてくる。
心細い。
ひとりは嫌だよ、紗重。

『…八重、置いていかないで…』

不意に、弱々しい妹の声が甦る。私を必死に追い掛けていた声。
その声を思い出した私は、自分を奮い立たせるように首を振った。

「…しっかりしなきゃ…」

そうだ、心細いのは私だけじゃない。こんな暗い森でひとりきりにされてしまった紗重だって同じ。そう思い直して涙を拭った。

もしかしたら紗重は、村の者に見付かり、捕まってしまったのかもしれない。
もしそうなら…と考えて、私は身震いをした。
お父様は、例え私が戻らなくても、紗重ひとりを祀り上げ、紅贄の儀式を完成させようとするかも知れない。

「そんなの駄目…!」

そこまで考え、私は強く首を横に振った。

双子巫女の成すべき務め。
村を守る為、私が紗重をこの手で殺すはずだった。
代々受け継がれてきたこの習わしは、双子である私達にとって、この世に生まれ落ちたその時から、決して逃れる事の出来ない運命なのだと、幼い頃から教え込まれて来た。
受け入れていたつもりだったけれど、次は自分達の番だと聞かされた時、漠然と捉らえていた儀式の存在が急にはっきりと確かなものとして私を苛んだ。
私が、紗重を殺す…。
ずっと一緒に時を過ごして来た自分の片割れを、手に掛ける。
知ってはいたけれど、解ってはいたけれど、その事実に恐怖を感じずにはいられなかった。
 
716名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 20:30:38 ID:y0gGqWir
長いのでここで一旦止めます。
sage忘れてすんませんorz
717名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 03:57:49 ID:al3isQ59
>>709
GJ!!V字編隊吹いたwww
保管庫?の詳細キボン


718潰えた約束 四:2006/06/27(火) 13:21:28 ID:wMAcPQaW
 
紗重は、私に殺されるのなら構わないと言っていた。
蝶になって村を守り、私と皆を見守っているからと、笑ってさえいた。
けれど私は、どうしても自分の中に有る躊躇いを取り払う事が出来なかった。
大好きな妹を手に掛ける。それがどんな苦しみかなんて想像出来ない。
否、目を背け、考えないようにしていたのだ。
そうしなければ、紗重を失うという恐怖に押し潰されてしまいそうだったから。

一年前に行われた立花の儀式。
祭りは失敗に終わり、戻って来た樹月くんの髪は真っ白になっていた。
それを目の当たりにした時、気付かないように仕舞って置いた言い知れない恐怖と哀しみが一気に溢れてきて、堪らなく苦しくなった事を覚えている。睦月くんに自らの手を掛けた樹月くんの喪失感と絶望感は、計り知れないものだったと思う。
その苦しみを、私は身を以って知る事になるんだ。
いくら目を背けても、双子巫女の運命から逃れる事などできない…。

お父様は仰っていた。紗重は居なくなる訳ではない。蝶となり村を助け、いつまでも私の側にいると。鬼隻となった者の喉元に現れる痣は、その証なのだと。だから哀しむ必要はないのだと…。

儀式の刻は確実に迫る。それでも祭りへの恐怖を拭えないままでいた私は、ある日樹月くんから、この古い因習から逃れるように言われた。宗方くんに頼んであるから、紗重と一緒にこの村を出ろと。
紗重を連れて、この村から逃げ出す…儀式から逃れる。考えてもみない事だった。
紗重が死ななくて済む。大切な人を殺さずに済む。
生きてこれからも一緒にいられる。願ってもない事だった。嬉しかった。
その計画の事を紗重に話すと、「八重と一緒なら、どこへでもついていく」と微笑んでくれた。
そして、これからもずっと一緒にいようと、何度も何度も約束を交わした。川のほとりで遊んだ、あの日のように。

私が紗重を守るから。
ずっと一緒だからって…。

そう、約束したのに…。

「紗重…」

私はよろめきながらも土を踏み締め、立ち上がる。酷使し続けた足が鈍く痛んだ。
村に戻らなきゃ。紗重に会わなければ。
そして私が、守らなければ。
 
719潰えた約束 五:2006/06/27(火) 13:24:19 ID:wMAcPQaW
 
顔を上げて前方を見据えた時、ほのかな紅い光が視界に入った。

「……?」

光はゆらゆらと頼りなげに揺れていて、私は目を凝らしながらその光へ向かって歩み進んだ。

「紅い蝶…」

揺れていた光は、一匹の紅い蝶だった。
村の守り神様。
蝶は導くようにひらひらと先を飛んでいく。紗重の所へ導いてくれている気がして、私はその紅い光を追い掛けた。

道標の紅い光一点だけを見つめて山道を進むうち、次第に見慣れた風景が現れてくる。これは村に続く道だと判り、私は安堵した。
村に帰って来れた。
紗重はいるだろうか。無事だろうか。

「…?」

けれど村へ近付くにつれ、異様な空気が流れてくる感覚がして、私は一旦足を止めた。
目指す視界の先は深い霧が立ち籠め、冷たく澱んだ空気が周囲を満たしていた。
私は不安を抱えながらも、止まっていた足を再び前に進める。
一歩一歩、村へと近寄る。

鬱蒼とした木々の空間がひらけた時、目の前に現れた光景に、私は息を呑んだ。

「…そんな…嘘…」

入口の鳥居は崩れ欠け、周りの景色も崩壊し、すべてが歪んでいた。かつての村の面影は無く、どす黒い瘴気が村全体を覆っていた。
人の気配が感じられない。恐ろしい程の静寂。

「…大償…」

起こってしまった。恐ろしい事が。

私達を逃がしてくれた樹月くんは、どうなってしまったの…?千歳ちゃんは…?お父様…皆は…。

これが、紅贄の儀式を放棄した結果…?
 
720潰えた約束 六:2006/06/27(火) 13:34:04 ID:wMAcPQaW
 
困惑しながら、ふと足元に視線を落とすと、土塗れの千切れた鼻緒がそこに落ちていた。拾い上げて見つめる。
私と揃いの、紅い鼻緒。間違いない、紗重の草履の鼻緒だ。
妹は、やはり村に戻って来ていた。
そして、ひとりで儀式をしてしまったんだ…。
ひとりきりで…。

視界が滲んで、頬が濡れた。

「……な…さい…」

引き千切れた鼻緒を握り締め、変わり果てた村を目の前に、私は立ち尽くす。
後悔の念は涙になって、次々と零れ落ちてきた。私は震える両手で顔を覆い、最早誰にも届かなくなってしまった謝罪の言葉を繰り返し呟く。

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

村を捨てて、紗重を手放して、約束を破って。

ああ、結局私は、何ひとつ守ることさえ出来なかったんだ。

「う…あ…」

紗重。紗重…。
ずっと一緒にいようねって言ったのに。

約束、守れなかった…。

「……ごめ…な…さ…」

妹の声が聞こえない。
先刻まで、すぐ側で響いていた紗重の声が、鮮明に思い起こすこともできないくらいに遠く感じる。

頭がひび割れるように痛い。鳴咽が込み上げてきて、喉が酷く苦しい。
ぼんやりと、次第に目の前が暗くなってゆくのを感じた。
 
721潰えた約束 七:2006/06/27(火) 13:42:55 ID:wMAcPQaW
 
「   …」

…何か、聞こえた気がした。
けれどよく聞き取れ無い。
頭が…痛い。

「……重…」

何処か遠くで、声がする。

「…重さん…八重さん!」

男の人の声だった。
覆っていた両手を外し、ゆっくりと顔を上げると、若い男の人が心配そうな面持ちで私の顔を覗き込んでいた。

「八重さん、無事で良かった…。村のこの状態は一体……樹月や紗重さんは?」

男性は私の顔を認識すると、安堵した表情を見せ、その後周囲を見渡しながらそう言った。

「八重…?」

それは、私の名前…?
私……そういえば私は…どうしてこんな所に立っているのだろう…。
何故、泣いているのだろう…。

「八重さん…?」

目の前の人は、私の様子に困惑しているようだった。
意識が酷くぼんやりとする。それでも頭だけは鮮明に痛みを訴え続け、もう…これ以上何も考えられなかった。
突然、目の前が大きく揺れ、身体の力が抜けて行くのを感じる。

「八重さん!」

倒れ込んだ私の身体は、男性の腕に支えられた。
いつの間に手にしていたのか、紅く引き千切れた紐のようなものが、指の間からスルリと抜けて地面に落ちた。

薄れてゆく意識の中で、また名前を呼ばれた。
けれどそれは、望んでいた声では無かった気がする。

…誰の声を望んでいたのだろう。
何か大切な約束をしていた気がするのに、もう…何も判らない…。

ごめんね…ごめんなさい……。

「……紗…重…」

口を突いて出た言葉を最後に、私は意識を手放した。



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終わりです、読んでくれた方、ありがとうございました。
 
722名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 13:32:35 ID:2u+2xnum
(´ω`)ゞGJでつ
723名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 04:42:12 ID:NtDe6Rza
GJ!良かったお!
724千歳フォトグラフィー(仮)(1/4):2006/07/03(月) 13:31:33 ID:IAM/etO5
涼しいというよりは肌寒さを感じさせる風が吹いて、長居していた夏がようやく過ぎ去ったことを
実感する。
 季節は秋、十月。私たちの通う高校は授業そっちのけで、来たる文化祭の準備に追われていた。他
のクラスが演劇や模擬店を企画する中、私たちのクラスは『写真の展覧会』という比較的地味な出し
物で参加することになっている。
 写真部から借りてきたカメラを使って、一人一枚、好きな写真を撮って展示する。ただそれだけの
簡単な出し物だったが、今時の無気力な若者を地でいくクラスメイトたちからは「それでいいんじゃ
ね?」と特に反対の声もなく、あっさりとそれに決まった。

 部活や友達との会話は楽しかったけれど、過ぎていく日々は退屈な毎日の繰り返しで、今回の文化
祭にもあまり乗り気ではなかった私。次々とクラスメイトたちが適当に撮った写真を提出していく中、
どんな写真でお茶を濁そうか考えていた私はふと、それを思いついた。
 千歳ちゃんの写真を撮ろう――。
 カメラを持ち帰った私は、それから千歳ちゃんに頼んで何度か撮らせてもらってはいるのだが、未
だ私は納得がいく写真を撮れずにいた。どんな写真を撮りたいのか、それはイメージとして頭の中に
固まってはいるのだけれど。

「ただいまー。千歳ちゃん、悪いんだけど今日もお願いできるかな……?」
 その日、学校から帰宅した私が、お母さんと一緒に居間でお茶を飲んでいた千歳ちゃんにお願いす
ると、カメラ(射影機)嫌いがまだ治っていないらしい千歳ちゃんは「えー(´д`;)」とあからさま
に嫌そうな顔をした。
「なんでそんなに千歳ちゃんにこだわるの? 嫌がってるじゃない」
 お母さんが湯呑みを啜りながら言う。
「わかってるけど……千歳ちゃんじゃなきゃだめなんだよ」
 私が千歳ちゃんに固執しているのは、怜さんの撮影した氷雨ちゃんの写真集のことが頭にあったか
らだ。千歳ちゃんも氷雨ちゃんに負けないくらい可愛いと思う。それをもっとたくさんの人に知って
もらいたいのだ。
 そんな私の気も知らず、お母さんは「なんなら、私がモデルになってもいいわよ」と流し目&ウッ
フンのポーズをとったので、私は無視して千歳ちゃんの手を引くと、手を腰にあてクネクネしている
お母さんを居間に残してその場を後にした。

「ちとせじゃ、いい写真とれないよ……ひさめちゃんにおねがいした方がいいよ……」
 慣れた手つきで赤い着物に着替えながら千歳ちゃんが言った。
「そんなことないよ、私は千歳ちゃんの写真が撮りたいの」
 実を言えば「氷雨ちゃんに頼もうかな……」そんなことを考えていた時期が私にもありました。で
も写真集のあまりの売れ行きに天狗になっているらしい氷雨ちゃんがそれに応じてくれる保障はない
し、なによりそれでは怜さんの二番煎じでしかない。
「じゃ、撮るよー」
 着替えを終えた千歳ちゃんにカメラを向けると、やはり千歳ちゃんは怯えた顔でカメラから顔を背
けてしまった。
「大丈夫だよ、普通のカメラだから」
「う、うん……わかってるんだけど……」
 頷いたものの、千歳ちゃんの表情はまるで変化を見せていなかった。あまり無理強いするのも悪い
ので、次の撮影で最後にしようと決めた私は、一枚一枚、いい写真が撮れるよう祈るような気持ちで
シャッターを切った。
やがてフィルム一本分の写真を撮り終える。本当に射影機で撮られたかのようにへとへとになった
千歳ちゃんが「……どう?」と私の顔を覗き込んだ。
「うーん……現像してみないとわからないけど、きっといい写真が撮れてるよ」
 無理に頼んで撮らせてもらった手前、そうは言ったものの、私は今回の撮影でも手ごたえを感じて
はいなかった。千歳ちゃんを撮るのはあきらめた方がいいのだろうか。
(怜さんに相談してみようかな……)
725千歳フォトグラフィー(仮)(2/4):2006/07/03(月) 13:32:09 ID:IAM/etO5
 翌日。
 文化祭の開催はとうとう明後日に迫っていた。既にクラスの八割以上が作品を撮り終えているらし
く、聞けばお姉ちゃんもとっくに現像を済ませ提出しているのだという。
 そして放課後。電話で怜さんの在宅を確認した私は、駅へ向かう途中、登校前に現像を頼んでおい
た写真屋さんに寄って、昨日撮ったばかりの写真を受け取った。電車に乗り座席に腰を下ろすと、そ
れに一枚一枚目を通す。
 *ピース。上目遣い。女豹。M字開脚。ありとあらゆるポーズをとった千歳ちゃん。一所懸命撮った
甲斐あってか、何枚か気に入った写真はあったのだけど、人前に展示する写真だと考えると、やはり
千歳ちゃんの表情が気になってしまう。
『まもなく――に到着します。お降りの方はお忘れ物のないように――』
 停車を告げるアナウンスに私は写真を仕舞うと、怜さんからいいアドバイスをもらえることを願っ
て電車を降りた。

「いらっしゃい、澪ちゃん」
 インターホンを押すと、深紅さんが出迎えてくれる。一人でここに来るのは今日が初めてだ。
 怜さんたちは氷雨ちゃんの写真集の驚異的な売り上げによって、近頃はほとんど仕事もせず家で暇
を持て余しているらしく、私が訪ねることを二つ返事で了承してくれていた。
 ソファに座り、鞄から取り出した写真を二人に渡すと、私は深紅さんの出してくれたアイスコーヒー
に口を付けながら二人の感想を待った。
「よく撮れてるじゃない。でもちょっと表情が固いわね」
 思っていた通り、怜さんも千歳ちゃんの張り付いたような表情を指摘した。
「はい……。千歳ちゃん、相変わらずカメラが怖いみたいで、なかなかいい写真が撮れないんです」
「澪ちゃん、皆神村でよっぽど千歳ちゃんのトラウマになるような撮り方したんじゃない?」
怜さんが冗談めかして言う。そう言われてみれば、皆神村で初めて出会ったとき、私はあまりの千
歳ちゃんの可愛さに除霊能力の低い07式フィルムでいたぶるように写真を取りまくっていた。千歳ちゃ
んの射影機嫌いが私に起因しているのは間違いないだろう。
「はは……そうかもしれません……でも、私どうしても千歳ちゃんの写真を撮りたいんです。怜さん
の撮った氷雨ちゃんの写真を見て、すごく可愛かったから……」
「なるほどねえ」
「氷雨ちゃんも最初は表情固かったですよね、今じゃあれですけど」
 怜さんがテーブルに置いた写真を深紅さんは手に取り、目を落としながら言った。
 その言葉に「私、女優よ?」みたいな顔をしている近頃の氷雨ちゃんを思い出す私。
「あの氷雨ちゃんが……ですか?」
「ええ。まぁ氷雨は氷雨、千歳ちゃんは千歳ちゃんだからね」
 信じられない。氷雨ちゃんはバンド活動とモデル業、二束のわらじをアグレッシブに履き分けよう
としているらしく、他のメンバーから批難の声が上がっているということを先週、雨音ちゃんから聞
いたばかりだったからだ。
「……そうね、無理に撮るよりも、自然体の千歳ちゃんを撮る、っていうのはどうかしら」
 腕を組んでしばらく黙り込んでいた怜さんが口を開いた。
「千歳ちゃんはカメラを向けられることを怖がってるんでしょう? それに、文化祭で展示するなん
て言われたら千歳ちゃんじゃなくたって緊張するわ。だから、千歳ちゃんに気付かれないようにこっ
そり撮るの。自然体の、普段通りの千歳ちゃんをね」
 怜さんの意見に、私はなるほどと頷いた。確かにそれなら表情の問題はカバーできる。けど、そん
なにうまくいくものだろうか?
「そう……ですね。やってみます」
 不安ではあったが、提出の期限も近い。時間の惜しかった私は二人にお礼を言うと、「みんなによ
ろしく伝えといてね」という怜さんの言葉を背に家路を急いだ。
726千歳フォトグラフィー(仮)(3/4):2006/07/03(月) 13:32:57 ID:IAM/etO5
「千歳ちゃん、いろいろツッコみたいことはあると思うけど、何も言わずこれを着て! お願い!」
 家に戻った私は鞄を玄関に投げ出すと着替えもせず、千歳ちゃんの赤い着物を差し出した。
「え……? い、いいけど、なんで……?」
「お願い!」
 そうしてなんとか強引に千歳ちゃんを着替えさせた私は、続けて叔父さんの部屋へ走った。扉の前
で乱れた髪を直し、あがった息を整えると、静かにその戸を開ける。
「叔父さぁん、澪、ちょっとお願いがあるんだけどぉ……」
 私の小悪魔的魅力をもってすれば叔父さんを動かすことなど造作もない――と思っていたのだが、
珍しく机に向かって書き物をしていた叔父さんは、振り返りもせず「悪い、澪。今忙しいんだ」とそ
れをばっさり切り捨てた。普段ニートみたいな生活を送っているくせに、今日に限って急ぎの仕事に
追われているらしい。
 しかし引き下がるわけにはいかなかった私は、こんなときのために残しておいたとっておきのカー
ドを切ることにした。
「ねぇ、お姉ちゃんから聞いたんだけど『みおまゆ』――」
「っ!? みみみみみみ澪! なっ、なんでも叔父さんに言いなさい!」
 毛穴中から大量の汗を噴き出した叔父さんはペンを投げ出すと、足をもつれさせながら気持ち悪い
足取りで私の方に駆け寄ってきた。私は叔父さんを動かす魔法の呪文『みおまゆ』を教えてくれたお
姉ちゃんに心の中で感謝した。
 叔父さんに頼んだのは、しばらく千歳ちゃんと遊んでもらうことだった。その様子を写真に収めよ
うという作戦だ。
「千歳ちゃん、叔父さんとサッカーしよう! な!」
 毬を手に叔父さんが声をかけるも、テレビを見ていた千歳ちゃんは「えー(´皿`;)」と、私が撮
影を頼んだときの数倍は嫌そうな顔をした。しかし何かに取り憑かれたように懇願する叔父さんの熱
意に圧されたのか「もう、めんどくさいなぁ……」と渋々立ち上がった。
(自然な表情を撮ることはできそうだけど、楽しそうな顔は撮れないかも……)
 そんな危惧はあったが、私はカメラに「これで最後」と決めたフィルム入れ、物陰に身を隠して撮
影のチャンスを待つことにした。
727千歳フォトグラフィー(仮)(4/4):2006/07/03(月) 13:34:21 ID:IAM/etO5
 そして、文化祭当日。
 マグネットで貼り付けた写真とタイトル、撮影者の名前が書かれたホワイトボードが、教室を囲む
ように設置されている。ぶらぶらと模擬店を回った後、特にすることもなかった私とお姉ちゃんは教
室に戻って、二人で展示された写真を見て回っていた。
「みおお姉ちゃーん、まゆお姉ちゃーん!」
 クラスメイトの岸井さんが撮ったどう見ても心霊写真にしか見えない作品を前に、雑誌「ムー」に
投稿すべきかどうかお姉ちゃんと議論を交わしていると、叔父さんに手を引かれてやってきた千歳ちゃ
んが教室の入り口に立っていた。
「叔父さん、千歳ちゃん、いらっしゃい。ね、見てってよ」
 二人の手を引いて、自分の写真の前に案内する私。
「へえ、すごいな澪。『紅い着物の少女』か。綺麗に撮れてるじゃないか」
夕焼けの庭で、毬を手に満面の笑みの千歳ちゃん。あえて逆光で撮ることで千歳ちゃんの顔を夕日
と同化させ、顔の半分を隠している。恥ずかしがり屋の千歳ちゃんへの配慮もあったが、そうするこ
とでより千歳ちゃんの持つ神秘的な美しさを引き出すことができると思ったのだ。
 オレンジ色の夕日と赤い着物のコントラストがよく映えていて、昨日撮った中で、私が一番気に入
った一枚だった。
「これ、ちとせだよね……? いつ、とったの?」
「へへ、内緒だよ」
 本心を言うと、正面からこの不思議そうな顔をして私の写真を見ている千歳ちゃんを撮ってあげた
かったのだけど、それはまた別の機会でもいいだろう。黙って撮らせてもらった写真だし、今まで無
理を言ってきたこともある。あとで模擬店で何か買ってあげよう。
「ところで繭の写真は?」
 ふと思い出したように叔父さんが言った。
「お姉ちゃんのは……見ない方が……」
 と止める暇もなく、お姉ちゃんが「こっちよ」と叔父さんの手を引く。私は気乗りしない足で千歳
ちゃんを連れ、その後を追った。
「どう? 澪には負けるけど、私のもうまく撮れてるでしょう?」
 『闇に降り立った天才』。そう題された写真には、散らかった薄暗い蔵の中で、麻雀牌を片手に鋭
い視線をこちらに投げかける白髪の少年の姿があった。どうしたら三次元上に存在できるのか、まる
で理解できないそのシャープな鼻は一度見たら忘れられそうにない。
「フォトショップで加工したの。福本先生の作品をインスパイヤしてみたんだけど」
「こ、これは……なんともコメントしづらいな……」
 叔父さんが口を濁す。見れば他のお客さんたちからも「ざわ……」と、どよめきが起こっていた。
「これ……いつきお兄ちゃんだ! まゆお姉ちゃん! いつきお兄ちゃんのことしってるの!?」
その写真を見て、目を丸くした千歳ちゃんがお姉ちゃんの腕を引く。
「え? 千歳ちゃん、知り合い? この間、皆神村にモデルを探しに行ったときに会って、いい感じ
の白髪だったから頼んだんだけど」
「ちとせのお兄ちゃんだよ! こんなに、とがっちゃって……びょうきなのかな……」
 心配そうな表情を写真の中の兄に向ける千歳ちゃん。
 たしかこの写真の人、皆神村の蔵で私にいろいろ教えてくれた人だっけ。まさかこの人が千歳ちゃ
んのお兄さんだったとは思いもしなかった。
「大丈夫よ、もう鼻は治ってるわ。今度一緒に会いに行きましょう。いい写真を撮らせてもらったお
礼もしなくちゃいけないしね」
 画像加工の説明が面倒だったのか、お姉ちゃんは適当なことを言った。

 皆神村に行ってから、私たちはいろんな人たちと知り合うことができた。私たちの写真のモデルに
なってくれた千歳ちゃんたちだったり、そのアドバイスをしてくれた怜さんや深紅さんだったり。
 退屈な毎日だとばかり思っていたけれど、それは私の思い込みだったのかもしれない。
「ほんとうにあの写真、ちとせだよね? びっくりしちゃった」
「ごめんね、勝手に撮っちゃって」
「ううん、いいよ! あんなにかわいくとってくれたんだもん、ちとせうれしいよ」
 嬉しそうな笑顔を私に向ける千歳ちゃん。
「千歳ちゃん、下にたくさんお店が出てるから一緒に行こっか。好きなもの買ってあげるよ」
「うん、いく!」
 昇降口に出てみれば、さっきまで曇っていた空はいつの間にか晴れ渡っていて、差し込む太陽に私
は目を細める。
「みおお姉ちゃん、はやくはやく!」
 私は靴を履き終えると、待ちきれない様子で手を振っている千歳ちゃんの後を追った。
 校舎の間を通り抜けた冷たい風に、私は改めて秋の到来を実感した。
728名無しさん@ピンキー:2006/07/03(月) 23:57:56 ID:vVtBwuYF
お!久々のリアルタイム
729名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 00:03:59 ID:hhlppgzf
興奮して投下時間見てなかったwwwwwwww
ていうかカイジwwwwwwwwwwwwwwww
730名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 06:30:13 ID:/0LuADT4
乙!
731名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 00:39:28 ID:Y8/rzYdp
GJ!!ミカワロスw
732名無しさん@ピンキー:2006/07/14(金) 00:42:59 ID:KO6JfI5i
やあああ ´)・`・(ω

ようこそバーボンハウスバーボンハウス
ンハウスへこそようこそよう

テキララーラこのはサーサービスビスだからららららららら、まず飲んでで落ち着いていて欲しい欲しい。

うんん、「たま」だんな。済まないまないまないす。
仏の顔もって言うしねしねしねしね、あまやっててしるゆもらおもらもらおうとも思ていないい。

ででもも、このスレタイレタスイタイレスを見たときときとき、キミはははは、きっと言葉では言い表せない
「きめときとめとけとおとめきと」みたいななののもを感じてくれたと思うおもうもお。
殺殺殺殺殺とした世の中でででで、そういうそううい気持ちもきちきをををを忘れないで欲しいい、そそそそう思っててもお
このスレスレスレススを立てたんだだんててんだん。


じゃあ、注文を死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死
733名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 19:49:39 ID:DtSMpiL5
とまあ、真夏と零にふさわしいぞくっと来るレスがついたところで。

さあ、パーティを始めようか!
734名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 01:08:36 ID:lVL3je4q
パーティーマダー?
735南南西に舵を取れ (1/3):2006/07/16(日) 06:22:52 ID:5jDpWtMf
 見渡す限りの海。降り注ぐ日差し。
 私たちは今、どういうわけか太平洋の洋上をさ迷っていた。小舟に乗せられ、終ノ淵から流された
私と要が目を覚ましたときにはすでに海の上で、思いもしなかった展開に最初は夢かと思ったくらいだ。
 無論、食料や飲み水など積んでいるはずもなく、ギラギラ照りつける太陽と、吹き付ける潮風、大
型タイフーン、さらにたった今、私たちをエサにせんとする巨大ザメの大群をなんとか追い払ったと
ころで、私は大自然の過酷さを身をもって痛感していた。
「うおおおおおおお! 海賊王に、俺はなる!」
 屠りあげたサメを両手で抱えながら、要が雄叫びをあげる。
 返り血に染まった要。細く華奢だった体は見る影もなく、隆々とした筋肉に覆われていて、磁器の
ように白かった肌は浅黒く日焼けしていて、今や要はすっかり海の男になってしまっていた。
「それどころじゃないでしょう! バカなこと言ってないで手伝ってよ!」
 そう、それどころではないのだ。
 大して頑丈に作られているわけでもない小舟の底には、先ほどの格闘によっていい感じの穴が開い
ていて、そこからお約束のように海水が染み込んできており、さらにベタなことに、この舟の唯一の
貨物として積まれていた一口のお椀で海水をすくっては捨て、すくっては捨てと、コントばりに絶体
絶命の状況だった。
 にも関わらず、要は分厚い胸板をドンドコ叩きながら、ヨーホーヨーホーと謎のパイレートソング
を歌っていて私の言うことに耳も貸さない。
「だめ! 沈むわ!」
 そもそもお椀ひとつで助かるようなら誰も苦労しないのだ。
 舟がどんどん海水に飲み込まれていく。
 要はすでに諦めの境地に達しているのか、それとも海の男として死ねるのが本望なのか、太陽を睨
みつけながらサメの亡骸と肩(?)を組んで熱唱を続けていた。
「もうだめだ……」いろんな意味で絶望する私。
 やがて舟は完全に水没した。要が抱いたサメが、空気を入れて膨らませるビニール製のサメだった
らどれだけ良かっただろう。自力で泳ぐ体力など残っていなかった私たちは、そのまま海へ沈んでい
くこととなった。
 泡をブクブク吹きながら母なる海へ還る途中、「思えば短い一生だったなぁ」と私はこれまでの人
生を思い返した。
 身寄りはないわ、変な屋敷に引き取られるわ、刺青は彫られるわ、目の前で要は頭をカチ割られる
わ、おかげで儀式は失敗するわ、ようやく死んで苦しみから解放されるかと思えば、最後は海で溺死
とは……不幸を通り越して笑えてくる。
 それまで真っ暗だった視界が、徐々に光に包まれていく。
 どうやらお迎えがきたらしい。
 夜舟様、鏡華さん、氷雨ちゃん、時雨ちゃん、雨音ちゃん、水面ちゃん、そして顔も知らぬお父さ
ん、お母さん。要と私は一緒に、海底に沈んだと言われる伝説のアトランティス大陸で暮らしていき
ます――――
736南南西に舵を取れ (2/3):2006/07/16(日) 06:23:30 ID:5jDpWtMf
打ち寄せる波の音。海鳥の鳴く声。
「れーか!!、れーかちゃん!!」
 誰かが私の名前を呼んでいる。
 恐る恐る目を開けると、黒く大きな何かが私を見下ろしていた。それが要であることを理解するの
に、私は四秒ほどの時間を要した。
「かな……め……?」
「j3、要ですわ・・・る」
 目が覚めたばかりでよく聞き取れなかったが、本人曰く要らしい。
 太くたくましい腕に抱き起こされた私は、自分が今立っている場所を見回した。
「ここ……どこ……? 天国……じゃない?」
 そこは『半球体の陸地にヤシの木が一本』というありがちな無人島だった。
「ああ。かと言って地獄でもないが」
 どこかで聞いたようなことを言う要。その言葉通り、張り付いた着物の重さと、体を濡らす海水の
冷たさが、私がまだ死んではいないことを証明していた。

 それから数日の間は、拾った板切れを使って地面にSOSの文字を掘り込んでみたり、のろしをあ
げてみたり、海の神ポセイドンに祈りを捧げてみたりしていたが、半径5メートルあるかないかの無
人島暮らしは、舟の上よりはマシとはいえ辛いものだった。
「要……お腹空いた……」
「無茶言うなよ、こんな何もない島じゃ、食べるもんだって――……ん?」
 わかってたけど。食べることだけが人生の楽しみだった私にとって、この数日の断食は過酷すぎた。
 ごめんね、要。わがまま言って。そう謝りかけた私の口が止まった。
 なぜなら、何を思ったのか、要がこの島のシンボルであるヤシの木に足をかけて登り始めていたからだ。
「な、なにやってんの……?」
 そしててっぺんに生っていた実を器用な手つきで収穫すると、するすると降りてきて、「まあ見て
なって」その端を手刀でスパンと切り落とし「ナチュラル・ピュアテイスト100%なのよン」と私に差
し出す。
「こんなにきれいな果汁がタップンタップンなんだよぉ〜〜ん」と薦める要の言葉通り、そこから漂
う甘い香りは限界まで膨れ上がった私の食欲をそそるには充分なものだった。

「都合よく船が通ったりしないかなぁ」
 要が取ってきてくれたココナッツジュースを啜りながら、ふとついて出た私の希望的観測に「その
うち誰かが見つけてくれるさ」と要が答えた。
「そうだといいけど……」
 私と要が同じ島に辿り着くことができたのはどうやら海流の影響だったらしく、私たちの乗ってき
た舟(の成れの果て)も漂着していた。
「何もしないよりマシだろう」と、その残骸を使っていかだを組む要の姿は、私の知っている頼りな
い要とは違ってどことなく男らしく見えた。
 その後しばらくは要の作業を手伝って過ごしていたが、私たちには再び海に出る気力も体力も残っ
ておらず、いかだが完成した後もただまんじりと、来るかどうかも分からない助けを待つ日々が続い
ていた。
737南南西に舵を取れ (3/3):2006/07/16(日) 06:25:49 ID:5jDpWtMf
 さらに数日後。
(この島に来て何日経ったっけ……? お腹空いたなぁ……)
 唯一の食料だったヤシの実もなくなってしまった。さすがの要も限界を迎えたようで、今日は朝か
ら1ミリも動いていない。ナタで頭を二枚におろされてもピンピンしていたこの男の最期が餓死とは、
一体誰に想像できただろう。
(要のお肉をちょいと拝借して、サッと炒めて、塩コショウで味付けして、おいしく頂いたら、あと
何日かは生きられるかなぁ……)
 限界を迎えた私の頭(&胃)がカニバリズム的なことを考え始めている。
「ああ要……向こうにタイタニックばりの豪華客船が見えるよ……」
 とうとう幻覚まで……。
「なに!?」
 飛び起きる要。生きていたのか。
「本当だ……助けてもらおう!」
 要にも見えているらしい。どうやら幻覚ではなかったようだ。悪役の親玉がパーティーでも開いて
いそうな見事な船が、私たちの前を優雅に煙を吐いて航行している。
「おーい、助けてくれー!! S・O・S! S・O・S!」
 要はさっきまでのゾンビっぷりはどこへやら、いかだに飛び乗ると猛スピードでオールを漕ぎ始めた。
「え!? ちょっ!待ってよ!」私を島に残して。
 船は見えているのに、私のことは眼中にないらしい。要はどこにそんな力を残していたのか、手漕
ぎながらもモーターボートみたいなスピードで島を離れていく。
 取り残された私はしばらく呆然としていたが、最後の力を振り絞って「私も行くッ! 行くんだよーッ!!」
とナランチャみたいに必死に泳いでその後を追った。

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パーティーの前座にもならないですが、最近投下してなかったんで書いてみました。
相変わらずほとんど推敲してないんで、荒いとこは見逃してNE☆
738名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 11:57:57 ID:oe7TyOOZ
要壊れすぎwwwwwwwwwwwwwwwワロタ
739名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 04:08:39 ID:6pHfkYTm
神キタコレ!!!!
食いしん坊零華に萌えたwwwww
740名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 22:11:51 ID:bomxlQ++
GJ!!
それにしてもj3って久しぶりにみたwwwwwww
741名無しさん@ピンキー:2006/07/20(木) 00:24:51 ID:iZNC/vxN
うまいなあ。ネタ特盛でガイドライナー的にも大満足です。
742名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 14:05:48 ID:/hHhU9qm
743名無しさん@ピンキー:2006/07/26(水) 19:34:53 ID:pJ5BI4y5
零の映画化って本当?
744名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 23:44:33 ID:Luc/c2uU
745水面ハッピーデイズ (前編1/4) 樹月編:2006/07/31(月) 20:11:44 ID:Dhh/g7NM

 暗い部屋。テレビから漏れる光だけが、僕の顔を青白く照らしている。
 散らかった部屋。淀んだ空気。ここは、僕だけの楽園。

 不意に、ドンドンと蔵の扉を乱暴に叩く音がして、僕はコントローラーを床に置いた。
「おーい、またあそびにきてやったぞ!」
 ああ、また来た……。
「おらっ、でてこい、いつき!」
 音は激しさを増し、「叩いている」でもなく「殴っている」でもなく、「蹴っている」といった表
現がぴったりのように感じる。客人は加減というものを知らないのか、その衝撃に蔵は揺れ、梁に積
もった埃が雪のようにぱらぱらと降ってくる。
 得意の居留守で切り抜けたいところだが、そうもいかないだろう。
「いるのはわかってるんだ! でてこないなら、ぶちこわすぞ!」
 居心地のいいこの部屋を壊されるわけにもいかない。
(彼女の場合、本当に扉を壊してでも入ってきかねないからな……)
「ちょっと待ってください、今開けますから」
 根を生やした腰を持ち上げると、僕は閂を外した。
「よ! あいかわらずひきこもってるな!」
 開かれた重たい扉の向こうに立っていたのは、屈託のない顔で笑う少女。
 水面さんだった。
746水面ハッピーデイズ (前編2/4) 樹月編:2006/07/31(月) 20:12:29 ID:Dhh/g7NM
「どうしたんです、今日は?」
 訊ねる僕の横をすり抜け、蔵に入ってくると、水面さんは「たいくつしてるだろうとおもってな、
あそびにきたんだ」と顔も向けずに答えた。
「またゲームやってたのか。ぷよぷよやろーぜ、ぷよぷよ」
「……またですか? ちょっと待っててください、今セーブしますから」
 無邪気に言う水面さんに、僕は仕方なくやりかけだったドラクエを中断しようとした。
 その時、データの保存のため教会に向かおうとしていた僕を、悲劇が襲った。
「what!?」
 突然、画面がブラックアウトしたのだ。状況が飲み込めない。
 何事かとプレステ本体の方に目をやれば、ちょうど水面さんの小さな指が電源ボタンから離れると
ころだった。
「なっ!? 何してんですかぁ!!」
 僕の二つの眼球が、アメリカのカートゥーンみたいに飛び出す。
セーブという概念を知らないらしい水面さんは、きょとんとした顔で「どうした?」と僕の方を見ていた。
「……いや、なんでもないです」
 水面さんを責めたところで、僕のレベル上げに費やした十二時間が返って来るわけでもないのだ。

 久世家の当主さんが屋敷と村を繋いでからだいぶ経つ。
「繋ぐだけで満足なんだ、あのババアは」と水面さんは言っていたっけ。その言葉通り、村の土地を
奪うだとか、住民から金や米を搾取するとかいったようなこともなく、それぞれの家の間取りが少し
変わったくらいで、村の生活が一変したというようなことはなかった。
実際、迷惑しているのは僕くらいなものだろう。
 睦月の奴はどういうわけかめっきり姿を見せないし、僕の愛すべき妹・千歳タンは誰に似たのか立花
の屋敷に引きこもりっぱなし。八重はアイドルの仕事が忙しいらしくしばらく村に戻ってきていない
し、紗重に至っては行方不明で、残された僕だけがこうして水面さんの餌食になっているのだ。

「なんだ、ないてんのか?」
「いえ……」
 床に顔を伏せた僕の肩を水面さんが「なにがあったのかはしらんが、げんきだせ!」と叩く。その
衝撃で、僕の真っ白な髪の毛が数十本単位で抜け落ちた。
747水面ハッピーデイズ (前編3/4) 樹月編:2006/07/31(月) 20:13:23 ID:Dhh/g7NM
 彼女と初めて出会ったのは、今から数ヶ月前の事だ。
 そのとき僕は、いつものように引きこもってゲーム三昧で、突然現れた彼女のことを、ゲームの世
界から飛び出してきたキャラクターか何かと誤解したものだった。冴えない少年と無邪気な美少女が
一つ屋根の下で織り成すありがちなラブコメディを夢想したりもした。
 しかし、現実はそううまく運ぶものではなく、水面さんは時間になれば自分の家に帰ってしまった
し、そもそも五歳そこらの少女に恋愛感情を抱くわけでもなく、彼女との奇妙な友人関係はただ、だ
らだらと続くばかりだった。
 さっきも言った通り、僕を取り巻く人々はみんなばらばらになってしまった。一人でいるのが好き
な僕でも、テレビを切った後の妙な静寂に孤独を実感したりもしていたし、だから近頃はこうして一
方的に遊びに来る水面さんの来訪を、気が付けば心のどこかで待ち望んでいるということが多々あった。

(とはいえ、十二時間……)
 悪気があってやったことではないだろうし、元はといえばこまめにセーブしていなかった僕が悪いのだ。
 自分を納得させようとしていると、ドンドンと、またもや扉を叩く音がして、僕は顔を上げた。
「いつき、なにハゲちらかしてんだ、だれかきたぞ」
「はい……ぐすっ」
 水面さんが僕の腕を引いて持ち上げる。
 それにしても最近、来客が多いな。この間もどこか紗重に似た雰囲気の女がいきなりやってきて、
僕の写真を撮っていったが。
「樹月、いるか!?」
 蔵の外から聞き覚えのある声がした。睦月の声だ。
 睦月とも面識のある水面さんが「おう、むつきか! いるぞー!」と僕の代わりに返事をする。
「あっ、水面さん、いらしてたんスか? ご無沙汰してます」
 勝手に扉を開け、蔵に入ってきた睦月が水面さんに頭を下げた。
「おまえからたずねてくるなんてめずらしいな、どうした?」
 すっかり自分の家みたいだ、と僕が思っていると、睦月がハッと顔色を変えた。
「そ、そうだ樹月、それどころじゃないんだ! 久しぶりに家に帰ってみたら……」
 どういうわけか、ひどく動揺した様子の睦月が唇を震わせながら、その信じられない一言を発した。
「どこを探しても……千歳がいないんだ……」
748水面ハッピーデイズ (前編4/4) 水面編:2006/07/31(月) 20:14:48 ID:Dhh/g7NM
「な、なんだってー!(AA略」
 とばかりに、いつきは、めをみひらいた。
「睦月! 僕の可愛い千歳タンを放ったらかして、一体どこで何をしていた!?」
 かみのけをまきちらしながら、つめよるいつき。
「何って、決まってるだろう! 八重ちゃんのライブを追って全国を駆け巡ってたんだ!」
むつきが、むねをはっていう。
 やえってたしか、このあいだ、わたしたちがライブをのっとった、ひむろていのおばさんじゃなかっ
たっけ? そのとしで、じゅくじょしゅみは、どうかとおもう、とおもっていると、わたしのめのま
えでは、なにやらわくわくするこうけいがひろがっていた。
「チッ……アイドルオタが……」
「なんだと、このシスコン野郎!」
 いつきのむなぐらをつかむ、むつき。
「やんのかコラ」
 まけじとにらみかえす、いつき。
「上等じゃねーか、表に出ろ!」
 みにくい『きょうだいげんか』のはじまりに、わたしは「いいぞ、やれやれ!」と、はやしたてて
いたが、ふと、いつきたちのかいわにでてきた、ききおぼえのあるなまえに『いわかん』をかんじ、
くびをかしげた。
(ちとせ……?)
 ちとせって、あのちとせか?
 そういえば、あいつ、みなかみむらのしゅっしんだって、まえにいってたようなきがする。ということは……?
「おい、ふたりともよせ! ちとせのいばしょなら、わたしがしってる!」
 わたしがあいだにわってはいると、ふたりは「え?」とかおをみあわせた。
「まじスか、どうして水面さんが?」「水面さん、千歳タンはどこに!?」
 つめよってくるふたりのてをひいて、わたしははしった。
 いいひまつぶしになりそうだ。
749名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 20:53:50 ID:e3KtxDZR
これは・・・・・・wktkがとまらない!
750名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 21:08:39 ID:tKMuWnuK
次も期待してるよ!

                 ハ_ハ  
               ('(゚∀゚∩ してるよ!
                ヽ  〈 
                 ヽヽ_)

751名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 23:49:15 ID:Ta8HSHMk
き・・・ザザ・・・続きを・・・ザザ・・・
752名無しさん@ピンキー:2006/08/01(火) 12:59:34 ID:Kry9+wDH
み…ザ…澪…ザザ…ぁ…ザザ…あっ…ザザザザ……ザザザ…あぁん…ザザ…澪ぉ…ザ…続けて…
753名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 06:04:41 ID:/oUpd9rR
ザワザワザワ…
754水面ハッピーデイズ (後編1/6) 睦月編:2006/08/03(木) 03:45:54 ID:f3xP1+lH
 辿り着いた先は、蔵からそう遠くない場所にある、逢坂家の前だった。水面さんが急に手を引いて
走り出すものだから、僕はともかく、普段あまり運動をしない樹月は突然始まった短距離走に疲れて
しまったらしく、ぜえぜえと苦しそうに肩で息をしている。
「ここにいるんスか? この家、真澄さんたちの家になったんじゃ……」
 逢坂家改め槇村家を見上げる僕。大償に巻き込まれた真澄さんと美也子さんがこの村に住むように
なってから、一年と少しが経っていた。兄妹三人で引越しの手伝いにやってきたのも、ずいぶん前の
ことにように感じる。
「ここはとおるだけだ。ますみとみやこには、はなしをとおしてあるからあんしんしろ」
 そう言って水面さんは、自分の部屋に友人を招き入れるみたいに玄関を開けて「どーぞ」と僕たち
の背中を押した。
「ずいぶん様子が変わったな」
 玄関を見回しながら樹月が呟く。
 彼の言う通り、以前お邪魔したときと同じ家とはとても思えなかった。
 ボロボロだった床板はライトブラウンのフローリングに変えられていて、薄汚れていた土壁は綺麗
な白い壁紙で覆われている。足元に目をやれば真澄さんたちの物なのだろう、いくつかの靴がきちん
と並べられているし、そこから覗ける着物の間は綺麗に片付けられ、今はキッチンとして使われてい
るのか、冷蔵庫や食器棚が並んでいた。
「こっちだ」
 奥に続く戸を開けると、かつて立派な囲炉裏があったはずの部屋も同じようにリフォームされてい
て、もはや「囲炉裏の間」などとは呼べなくなっていた。間接照明や観葉植物などが置かれていて、
どこかのモデルルームみたいな様相だ。
「やあ、樹月くんに睦月くん」
 部屋に見とれていると、僕たちの来訪に気がついた真澄さんがソファから立ち上がって手を広げた。
その隣には美也子さんの姿もある。
「お久しぶりです、真澄さん、美也子さん」
 殺し屋1に出てくる人みたいに顔中キズだらけの二人は、僕たちを暖かく迎えてくれた。
「今コーヒー淹れるから、適当に座っててね」
 美也子さんがキッチンの方へ走っていく。僕たちは空いていたソファに座らせてもらった。
755水面ハッピーデイズ (後編2/6) 睦月編:2006/08/03(木) 03:46:26 ID:f3xP1+lH
「どうスか? 村の生活には慣れました?」
「ああ、おかげさまで。村の皆さんもよくしてくれるしね」
 嬉しそうな顔で語る真澄さん。
「田舎暮らしは真澄さんと私の夢だったから。こんなに早く叶うなんて思わなかったわ」
 お盆にコーヒーとお菓子を載せ、キッチンから戻ってきた美也子さんもそれに続く。
「おあついなー、ふたりともしあわせそうでなによりだ!」
 コーヒーを受け取った水面さんが足をぱたぱたさせながら言う。僕は彼女の言う通りだと思った。
 
 将来は、こんな風に普通の家庭を持つのもいいかもしれない。
(真澄さんみたいにカッコよくなって、八重ちゃんをお嫁さんに迎えて、それから……)
 と、幸せな将来を想像する僕の肩を樹月が叩く。
「……おいテメー、何くつろいでやがんだ」
 そして樹月は、儀式のときとは比べ物にならないほどの力で僕の首を絞め始めた。ガリガリのくせ
に、千歳のこととなると、戸愚呂120%みたいになるのが樹月の悪い癖だった。
 ちなみに戸愚呂120%とは昨年無事に週刊少年ジャンプ誌上での連載を終えた、優柔不断な少年
と妖怪たちとのちょっとエッチな学園生活を描いたラブコメ漫画のことである。
「わ、わるい……ちょっと悪ノリし過ぎた……」
 顔がどんどんファンシーな色に変わっていく僕。
 その後、真澄さんたちが止めてくれたので、僕はなんとか一命を取り留めることができた。

「お騒がせしました、また来ます」
 二人に頭を下げ、まだコーヒーを飲み足りなさそうな水面さんの腕を引っ張ると、僕たちは先へ進
むことにした。僕は双子御子として、やるべきことはやったのだ。絞殺されるのは一度でいい。
 さて、「お邪魔しました」とは言ったものの、水面さんの案内によると、僕たちの目的地は槇村家
のさらに奥にあるらしい。
 廊下を途中で曲がると、右手奥に引き戸が見える。その前までやってくると、先頭を歩いていた水
面さんが立ち止まって、いつになく真剣な表情を僕たちの方へ向けた。
「このとびらからくぜけにはいるんだが……ふたりとも、きをひきしめろ。ここからさきはあんぜん
をほしょうできない」
「ど、どういうことスか?」
「……くぜのやしきは『だんしきんせい』なんだ」
756水面ハッピーデイズ (後編3/6) 睦月編:2006/08/03(木) 03:47:04 ID:f3xP1+lH
 水面さんの話は恐ろしいものだった。
 古くからのしきたりにより男子の立ち入りを禁じられた久世家。そこに入り込んだ男は皆、手のた
くさん生えた老婆に追い回され、やがて恐怖と疲労で動けなくなったところに、鋭く研がれたナタを
振り下ろされるのだという。
「マジッスか、それ……」
「まじ。わたしのともだちのあにきが、じっさいにころされた」
 水面さんが肩を抱いて体を震わせる。
 ジェイソンじゃあるまいし、と僕は思ったが、樹月は水面さんの話など気にする様子もなく「早く
行きましょう、急がないと僕の千歳タンが……」と相変わらずだった。
「まあ、おとなしくしてればみつからないだろ。ババアのへやとははんたいのほうこうだしな」
「はぁ……」
 どうやらその老婆とは、久世家の当主さんのことらしかった。

 書物蔵を抜けると、神社の境内のような広い場所へ出た。ずいぶん見通しのきく場所だったので、
僕たちはスニーキングミッション中の人みたいに壁に背をつけながら、遠回りして進むことにした。
端から見れば滑稽な姿だっただろう。
 そして結局、何事もなく屋敷の入り口に到達したときには「水面さんの話、冗談だよな」「男子禁
制なんて今時流行らないよな」などという共通認識が僕と樹月の間で生まれていて、水面さんはそれ
が気に入らないのか、扉を開ける前に「ここからが『しょうねんば』だぞ」と再度僕たちを脅かしていた。

 箱庭を囲むように廊下が続いている。先導する水面さんは向かって右の廊下に向かって、物音を立
てないように歩き始めた。
 廊下の途中、膝の高さくらいの小さな扉の前で水面さんは止まった。扉には「HISAME'S ROOM」と
いう木製の可愛らしいプレートが掛かっていたが、どういうわけかマジックで大きく×がつけられて
おり、その横に汚い字で「↑この先、黒澤邸」と書かれていた。
「みなかみむらのとはべつだから、しんぱいしなくていいぞ」
 屈んで扉を開けながら水面さんが言った。

 扉を抜けた先は細く暗い通路になっていた。水面さん、僕、樹月の順で這うようにして進む。
「ここをぬけたら、れいのいえだ」
 皆神村と同じように、久世家はその黒澤怜さんという人の家とも繋がっており、この縦に横にと伸
びた黴臭い通路が近道になっているらしい。
「本当にこの先に千歳タンがいるんですか?」
 後ろの方から樹月が尋ねると、パンツ丸見えの水面さんは「いいから、だまってついてこい」とお
尻をぷりぷりさせながら怒っていた。
757水面ハッピーデイズ (後編4/6) 睦月編:2006/08/03(木) 03:47:42 ID:f3xP1+lH
「ついたぞ」
 最奥にあった引き戸を開けると一転、そこはごく普通の洋室だった。
「うわ! 誰!?」
 部屋には水面さんと同じ巫女服に身を包んだ三人の少女たちがいて、僕たちの方に驚きの表情を向
けて目をぱちくりさせている。
「おのこだ! 氷雨ちゃん、おのこがいるよ!」
 そのうちの一人が顔を真っ赤にして「どうしよう!」と、ベッドに腰掛けていた髪の長い少女の袖
を掴んだ。まさか女の子たちの部屋だとは思わなかったので、驚いたのは僕たちも同じだった。
「どういうつもり? 男連れて屋敷の中通ってきたわけ? 当主様に見つかったらどうすんの?」
 髪の長い少女が水面さんを睨みつけながら矢継ぎ早に問う。水面さんは「わるいわるい」と少しも
悪びれた様子もなく頭を掻いて、彼女からの質問には一切答えずに僕たちの紹介に入った。
「しろいほうがいつき、くろいほうがむつきだ」
 分かりやすい紹介の仕方だと思った。
 どうも、と頭を下げる僕と樹月。
「こっちはひさめと、しぐれと、あまね。わたしのともだちだ」
 続けて水面さんが仲間の少女たちを紹介してくれた。

「…………」
 微妙な沈黙が部屋に漂う。
 氷雨と呼ばれた少女は吊り上がった目で僕たちのことを睨んでいるし、時雨と雨音という子はこそ
こそとこっちの方を窺っている。女の子の部屋だと知っていればノックのひとつくらいできたのにと、
少し申し訳なく思っていると、相変わらずあっけらかんとした水面さんが、
「ちとせ、きてるか?」
 氷雨と呼んだ子に訊ねた。
「……なんなの?」
 それには答えず、僕たちの方に顔を向ける少女。表情を読み取るに「この人たちはなんなの?」的
なことを言いたいらしい。
「僕らは千歳の兄で、水面さんからここに千歳がいるって聞いてやってきたんだけど……」
 樹月が説明すると、「ぷっ、水面さんだって」時雨というショートヘアの女の子が吹き出した。
 水面さんは水面さんではないか。何がおかしいのだろう。
「くくっ、水面も偉くなったもんだね」
 氷雨と呼ばれた少女も笑いを堪えている。まったく意味がわからない。
「うるせーなー。……ちとせ、きてんだろ? あわせてやってくれ」
 何を照れているのか水面さんが頬をぽりぽり掻きながら尋ねると、氷雨という少女は「下にいるか
ら、勝手に会いに行けば?」と部屋の入り口の方を見やった。
758水面ハッピーデイズ (後編5/6) 睦月編:2006/08/03(木) 03:48:30 ID:f3xP1+lH
「千歳タン! どこにいるんだ!」
 樹月が走り出したので、僕は少女たちにもう一度頭を下げ、急いでその後を追った。水面さんも後
から着いてくる。
「いよいよ、かんどうのさいかいだな」
「はい、水面さんのおかげッス」
 僕が千歳がいなくなったことに気付いてから、数時間も経たないうちに解決してしまった。
 やはり水面さんは頼れる僕らのリーダーだ。

 千歳はそこにいた。
 久しぶりに会った妹は以前より少し大人っぽくなっていて、都会の暮らしは女をこうも変えるの
かと、樹月ほどシスコンではない僕も見とれてしまうほどだった。
「いつきお兄ちゃん! どうしてここに……?」
「お前がいなくなったって聞いたから、水面さんに連れてきてもらったんだよ」
 固く抱き合う二人。
 一方、突然現れた僕たちに戸惑いを隠せないでいたこの家の住人とお客さん(?)たちは揃って
僕たちの方を見ていたが、水面さんが先手を打って事情を説明してくれたので、さっきみたいに気
まずい空気になることはなかった。
「むつきお兄ちゃんも、ひさしぶりだね」
「あんまり心配かけるなよ。それで、今はこの人たちにお世話になってるのか?」
 訊ねる僕に千歳は「うん!」と大きく頷くと、僕たちと同じ双子だろう、少女たちの方に駆け寄っ
て、その間に入った。
「みおお姉ちゃんと、まゆお姉ちゃんだよ」
 僕や樹月とそう年は変わらないようにも見える。
 向き直り、彼女たちに挨拶をしようとして――そして、僕は言葉を失った。
 詰まる息。高鳴る鼓動。
「?」
 首を傾げる彼女。
「どうかしました?」
 純粋無垢な子犬のような瞳を向ける彼女。
「う、美しい……」
 無意識について出た言葉に、僕は慌てて口を覆った。
「……えっ?」
「いやっ、あの……その……」
 しどろもどろになった僕の目の前に立つ彼女。
 どうやら僕は、恋に落ちてしまったようだ。
 この気持ちを伝えなくては。
 そんな思いだけが、僕の口をフル回転させていた。
「み、澪さんとおっしゃるんですかっ! うちの千歳がいつもお世話になっております!」
「はぁ……」
「自分は皆神村は立花家の出身、立花睦月という者ッス! どうか、どうか自分とお付き合いして欲
しいッス!」
 腰を四十五度に曲げ、手を差し出し、返事を待つ僕。
「…………」
 彼女はしばらく沈黙したあと、聖女のような笑顔で言った。
「無理ッス」
759水面ハッピーデイズ (後編6/6) 水面編:2006/08/03(木) 03:49:16 ID:f3xP1+lH
 いつきにまけないくらい、かみがしろくなったむつきが、まゆにひきづられていくのをみおくった
あと、「村には帰ってこないのか?」いつきがちとせにたずねた。
 ちとせはちょっとかんがえるようなそぶりをみせてから、
「うん……ちとせ、もう少しここにいたい」とだけいった。
 わたしはてっきり、いつきのことだから、むりやりにでもちとせをつれて、むらにかえっていって
しまうんじゃないかとおもっていたのだが、いがいにもいつきは「そうか。まぁ、これからはいつで
も会いに来れるしな」とあっさりみとめてやっていた。
「それじゃあ僕は村に戻ります、お邪魔しました。これからも千歳をよろしくお願いします」
 いつきがばかていねいに、あたまをさげる。
「水面さんも、今日は本当にありがとうございました」
「おう。ひとりでかえれるか?」
 ついでだったので、ひさめのへやまでおくってやることにした。

「は? あいつ澪にコクったの? いきなり?」
「ああ、そっこうでふられてたけど。たぶんあいつ、やえとみおをかさねてるんだ」
 いつきがかえったあと、わたしはことのてんまつをみんなにはなしていた。
「でも八重さんって旦那さんいたよね……? 有名な人だよ、民俗学者の宗方なんとかって……」
 あまねがはなしているのは、ひむろていのやえのほうだ。『じくう』がねじれているから、やろう
とおもえば、くぜのやしきをかいして、ふたりのやえとあうこともできるのだ。
「ためしに、むつきをひむろていにつれていって、あわせてみるか?」
「やめといた方がいいんじゃないかな。多分それ、タイムパラドックスっていうのが起きるよ」
「あんたわかって使ってんの、それ?」
 そんなたわいもないはなしをしていると、とびらをのっくするおとがきこえた。
「はーい」
 ひさめがへんじをする。
「あの……みなもちゃん、まだいるかな?」
 はいってきたのは、ちとせだった。
「どうした?」
「おれいが言いたくて。ちとせ、まさかお兄ちゃんたちに会えるなんておもってなかったから。本当
にありがとう、みなもちゃん」
「お、おう……」
 わたしはべつに、ちとせのためにやったわけじゃない。
 だいたいわたしは、まえからちとせのことがきにくわなかったのだ。
 いつきたちをつれてきたのは、ただのひまつぶし。
 それいがいのなにものでもないんだから、きゅうにれいなんかいわれても、へんとうにこまる。
「何照れてんの、水面」
 ひさめがにやにやしながら、わたしのほうをみている。
「あはは、赤くなっちゃって、可愛いとこあるじゃん」
 しぐれはあいかわらずばかなことをいっている。 
「さすが『水面さん』……だね」
 ついにあまねまでちょうしにのりだすしまつ。
「うるさいうるさーい!」
 わたしはひさしぶりに『しせいぎ』をとりだすと、てはじめにあまねからうがってやることにした。
760名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 13:03:54 ID:ZA6u3AKn
いつきとむつきヘタレだなwww
761名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 13:54:16 ID:8jk4Pr2z
ただいま 485kb です!
502kbで スレが凍結されますので
  気をつけてね!



しかし、昨晩ふと究極超人あ〜るを読み返したら、
ナリハラ博士さえいれば
零三作の悲劇は全て解決するんじゃないかと思えてきた。
762名無しさん@ピンキー:2006/08/03(木) 14:44:31 ID:6MiAy+HX
後編キテター!!ぐぐぐぐGJ!!!!
763名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 02:57:58 ID:7249BPYD
しばらく見ない間にこんなに進んでいるとは・・・・・
良作が多いですね!GJっす!

夏なんで、零の季節!
ってことでちょい小ネタを久々に投下させてくださいw
4D零をやったらまた書きたくなったんですw
764名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 02:59:31 ID:7249BPYD

「ねえ、澪。こんな番組面白いの?」

澪の隣に座って同じテレビの画面に目を向けている繭が尋ねる。

「え?………………面白いよ!……………ほら、お姉ちゃん、古畑出てきたよ!」

「……………」

一際テンションの高い澪とは対照的につまらなそうに画面を見続ける繭。

「え〜………先生!納得行く説明お聞かせ願いますか?……………」

(また物真似やってるよw………この子ったら……………)

繭は全く似ていない物真似を楽しそうにやらかす澪を愛しそうに横目で見つめていた。

……………

「ねえ、澪。もうすぐ誕生日だね。」

番組も終わり、それまで気を使ってか話しかけなかった繭が唐突に話を振った。

「そうだね〜、後3日だよね私達……………はぁ〜………もう17か〜…………」

澪は間近に迫ったバースディに複雑な思いからか溜息を一つ吐く。

「ねぇ、澪は何が欲しいの!」

繭は先程までとは打って変わって目を輝かせ、澪に迫らんばかりの勢いである。

「う……………何?お姉ちゃん……………」

・・・・・・・・・・・・・・・・

「お、お姉ちゃんこそ、何が欲しいのよ…………?」

すぐには思いつかず、繭の妖しい目から逃れようと澪はとっさにきりかえす。

「え?……私?…………あるよ!」

更に妖しい色を帯びる繭の目……………

「な、何かな?……………」

最早完全に引いている澪。
765名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 03:01:15 ID:7249BPYD

「じゃあさ、澪。お互い、せーの!で欲しい物言おうか!?」

相変わらす目を妖しく輝かせたままの繭。

「わ、分かったわ…………うん。決まった。いいよ、お姉ちゃん。」

澪は10秒程考え込み、欲しい物を見つけることが出来たようだ。

「じゃ、行くよ!」

コクリと頷く澪。

「せ〜の!」

「PSP!」「みお!!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「はぁ!!?」

己の耳が馬鹿になっていることを祈る澪…………

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「そ、そっか……あれ?……お姉ちゃん、そんなにフィギュアスケート好きだったっけ?
私が見ててもあまり興味なさそうだったよね?……た、確かに私達と同年代で私もすごい可愛いと
思うk」

「それは! ま お!!」

視線を逸らして話続ける澪の言葉を最後まで聞かずに繭は突っ込みを入れる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「そ……そっか…………そんなの欲しいって言われても無理だもんね……でも、今売ってるのかな?……
私はよくCMやってたあの頃もそんなに飲んでなかったけど……お姉ちゃんは好きだったのね?…………
何かあの粉溶かして飲む系統の奴あんま好きになれないんだよね…………ほら、何か薬を思いだしt」

「それは! み ろ!!!!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

沈黙……

「全く……何でそんなの私が欲しがるのよ!…………一文字ずつなら当たってるよ……澪」

頬を俄かに染め恥ずかしそうに澪を見つめる繭…………

(うぇwwきめぇwwww)
766名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 03:02:40 ID:7249BPYD

「…………えっと………………ま・・・ろ? 麻呂!?……あはは……は…………」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「絶対言うと思ったわよ!!!もう許さない!!」

そう言い放つと、すかさず澪に襲い掛かる繭。

「ちょ!…………そんなの無理だってば!ってかまだ誕生日じゃないし!!!
やめてってば!!!お姉ちゃん!!」

澪は自分の胸にひたすら顔を埋めようとする繭を必死になって押し返す。

「もう駄目!止まんない!!澪が全部悪いんだからぁ!!!」

澪の体を繭の両手が撫で回す…………

「きゃ!……もう、ほんとにやめてってば!…………怒るよ!お姉ちゃん!!
…………この!!…………えい!!」

ボスッ……

澪のボディブローが隙だらけの繭に直撃……

「ぃや!……ごめん!……お姉ちゃん!!…………強くやり過ぎたかも…………大丈夫だった……?」

お腹を押さえて蹲る繭を心配そうに見つめる澪……

「……………………うぅ……………………ぼはぁ!!……」

「ちょ!…………大丈夫!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「…………退かぬ!……媚びぬ!!…………省みぬ!!!!!」

「とぉ!!」

再び、勢い良く澪に飛びつく繭。

「ちょwwwまじやめれ!!ってか誰だよ!!wwお前!!ww」

…………………………………………………………

母親が不在の天倉家ではこのようなやり取りが誕生日まで三日三晩続いたそうです…………


---------------------------お終い-------------------------------
767名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 03:04:12 ID:7249BPYD
う〜ん・・・・
今のこのスレの流れとは大きく食い違うような感じですがw
まあ、夏なんで許してくださいww

ではまたですノシ
768名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 05:10:13 ID:OCo1igK+
古畑の真似する澪に萌え死んだ
GJ!
769名無しさん@ピンキー:2006/08/05(土) 06:19:01 ID:yPrcQvMb
乙!!
このスレに足りなかったのは萌えだったことに気付きました。GJ!
770名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 02:08:40 ID:kDBRkdbA
じゃれ合いかw結局仲良いのなこの姉妹wwwWWw
最終的にはなんだかんだで蝶EDみたいに
澪が繭の事犯してやって欲しいなw 「オカシテ・・・」

771名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 12:13:50 ID:O2TPWFzN
>>766
ワロタw乙ww
772名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 13:52:04 ID:j+GpnjWE
神たちGJ!!もはやギャグばかりだな。俺は好きだがwww
773名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 21:40:28 ID:kuXkGU6Y
アホ繭はやっぱ良いな
774名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 22:23:39 ID:9fT6LZ10
SS投下〜澪〜


「澪が休みの日に部屋に篭ってるの珍しいね。」

「うわ!……お姉ちゃん勝手に入って来ないでよ!」

突然の背後からの声に体を跳ねさせる澪。

「別にいいじゃないの。女同士だし…それより何してるの?PC触ってるなんて珍しいね。」

「え?…そうかな?………………えへへ、
今ね、私と怜さんのちょっと危ない関係を題材にしたSSが出来上がったから投下しようと思ってた所w」

「#・・・・・(あんの年増野郎!私の澪に……)………どれどれ?
『怜さんは、そう言って私の額にそっと唇を……』………………
ふん!・・・・随分青臭いこと書いてるわね〜」

一文を読んで勝ち誇った様に言い放つ繭。

「何よ!青いって!…私はお姉ちゃんみたいに変態じゃないの!!」

「だ、誰が変態ですって……………
ま、まあいいわ………………………
それで私はどこで澪と絡むの?」

「はあ!?………………そんなシーンないよ!ってかそもそもお姉ちゃん出てこないしw」

ブチッ!

グシャ!!!

繭の正拳がモニターに叩き込まれる。

「うわ!!何すんのよ!お姉ちゃん!!叔父さんに買って貰ったばっかりなのに!!」

「別にいいわ!そんなの……直接犯った方が手っ取り早いし!」

すかさず襲い掛かる繭。

「うわ!離せ!!こら!やっぱ!変態じゃん!!!wwwww」

「だが!それが良い!!!」

「わけ分からんw……ってかお前は2chのやり過ぎだ!!!www……いや!触んないで!!……っ!」
775名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 22:25:19 ID:9fT6LZ10
SS投下〜繭〜


「ふふ……出来たわ…」

モニターを見つめ怪しい笑みを浮かべている繭…

「おねえちゃん!」

「きゃ!……澪、いつの間に居たのよ!?……びっくりした〜……」

「ま〜た相変わらずパソコン弄って……天気も良いんだし、買い物にでも行こうよ!……ね?
ってかこの間から何書いてんの?そんなに熱心に…」

「ふふっ……私と澪のめくるめく熱いラブSSが完成したとこよ!」

「#・・・・・・・(病気だ……こいつ……)……ちょっと見せて…
『私の指使いに応えるように体を痙攣させ必至になって抱き返してくる澪……』……」

ブチッ!

グシャ!!!

澪の後ろ回し蹴りがモニターに叩き込まれる!

「ちょっと!!何てことすんのよ!ようやく完成したとこなのに!!
ってか澪!!速すぎて見えなかったわ!!」

「おね〜えちゃ〜ん!!………こういうことやめてって言ったでしょ!!ほんとに怒るよ!!
そんな破廉恥なもの!公共の掲示板に書いたら捕まるわよ!!断固阻止!!」

「ふっ……澪……このメモリースティックな〜んだ?w」

繭がポケットの中からそれを取り出すや否やすかさず澪はひったくる。

ガキッ!グシャ!

「こんなもの!こうしてやる!」

「あっ……澪何てことを!…………
ふふっ……ククク!………それで勝ったつもりか!!?
見るが良い!!!」

バッ!

立ち上がり着ていた上着を鮮やかに脱ぎ払う繭……
マシンガンの弾のように繭の体に巻き付いている無数のメモリースティック!

「きーーーっ!!………もう!!!お姉ちゃんを消去した方が良さそうね!!!
この!!」

澪は両手を使い本気で実の姉の首を締め上げる。

「ぐぇ………あ………………あぁ………みお………………儀式のつづくぅふぇ………
………さぃ……………こぅ………………………みょ………………っと………………」

「だ、だめだ………………こいつだけは………………………orz」
776名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 22:28:36 ID:9fT6LZ10
SS投下〜深紅〜


自室の椅子に座りモニターを見つめる深紅に背後から忍び寄る怪しい影…

「み〜く〜♪」

「きゃ!……」

「あら〜…可愛い反応ね〜…深紅。」

「も〜う、脅かさないでくださいよ怜さん!…心臓止まるかと思いましたよ!
入ってくるのは構いませんけど!後ろからそうやって抱きつくの止めてください!」

「え〜!だって、深紅の後姿が可愛くって〜、何かこうフラフラっとね…」

「はあ〜………と、とにかく!抱きつくのは止めてください!」

「はいはい……覚えとくわ。
それより深紅、休日まで仕事なんてしなくていいのよ〜!
あら……でも写真の編集じゃないみたいね……何してるの?」

「ふふ……今ですね、私と……その……真冬兄さんのビューティフルメモリーSSを
書き上げたんで、投下しようかなって……」

グシャッ!

前触れなくモニターに叩きこまれる怜の踵落とし。

「きゃ!……何てことするんですか!?……怜さん!」

「いや………私以外に頬を染める深紅なんて見たくないわ!
かっとなってやった!………今も反省していない!………
ってかそんなもの投下しても誰も見たくないわよ………」

「言ってる意味が分からないですよ!………酷いです………せっかく……
…書いた………のに………ひぐっ……うぅ……」

怜を睨む量目に涙が溢れ出す。

「ああ、もう分かったわよ!深紅………泣かないで!」

「だって………うぅ……」

「代わりに、需要が山ほどある題材のSSのネタを私が深紅に提供するから…」

「えっ……そ、そんなのあるんですか?……」

「ふふっ……ええ……あるわよ深紅……とっても良いネタが……」

「ほんとですか!?……って……何です…か?………その…目は?……まさか!」

引きつった表情を浮かべる深紅と、獲物を捕食する猫科の目をぎらつかせる怜・・・

「あったり〜!ふふっこれから起こる事をネタにして書けば良いSSが出来るわよ!深紅!」

「ちょっと!……止めて下さい!!……ひゃっ……そんなとこ舐め……あっ…」
777名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 22:30:19 ID:9fT6LZ10

SS投下〜怜〜


コンコン

「怜さん、ちょっとお話したいことが…開けても宜しいですか?」

部屋の中から返事はない…

「怜さん、すいません。入りますね…」

「怜さ……」

怜は机にうつ伏せになって眠っている…

(昨日遅かったですもんね……)

休憩中の邪魔をしまいと部屋を出ようと思う深紅だが、怜の露出した両肩が目に止まる。

「怜さん……そんな格好じゃ風邪ひきますよ……」

深紅は寝ている怜の背後から肩越しにそっとストールを羽織ってやる。

「……ぅん……」

「あっ……ごめんなさい……怜さん………起こしてしまいましたね………」

「………ぁあ、深紅………寝ちゃったみたいね………」

「風邪引きますよ………怜さん、ベットでお休みになった方が良いですよ………」

「ありがと深紅、でも、ようやく完成したのよねぇ…」

「え?何がですか?」

「ふふ……私と優雨の再会を題材にしたSSよ。」

「怜さん…………もう、すっかり吹っ切れましたね。でも、掲示板に書くのはちょっと………」

「いいのよ………別に軽い気持ちで書いたもんだしね………」
778名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 22:32:10 ID:9fT6LZ10

「そうですか………ちょっと良いですか?………………………
『反魂の儀………………それは亡くなった者を今一度現世へと連れ戻す禁断の術………
その代償に生きている者の命を捧げなければいけない………………
(優雨に会いたい………)
私は、その一心で河の上に孤独に浮かべられた小船に気絶した深紅を寝かせると、
勢い良く………………』」

グシャ!!

深紅の放った強力な霊気に机の上のPCが陥没する………

「ちょっ!………深紅!何てことするのよ!!これには色々仕事関係のデータとかたくさん入ってるのよ!!」

怜はそう言うと椅子から立ち上がり深紅の方を振り向く。

………………………………………………………

「何か文句ありますか?怜さん?」

腕を組み、瞬き一つせず怜の目を見つめる深紅。

「………いや………そ、その………このPCには………………大事な………………いぇ………………何もないです………」

蛇に睨まれた蛙のように縮こまり再び席に着く怜。

「そうですか………それじゃ、早く晩御飯の支度してください。」

「!!!」

再び勢い良く立ち上がる怜。

「ちょっと!!………………今日は深紅が………当番の日…………………じゃ………………ないで………しょうか?………」

先程と体勢をまったく変えずに、ただ無言で怜の顔を見上げる深紅。

「………はい…………すぐに作ります………」

冷や汗を浮かべキッチンへと逃げていく怜であった………
779名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 22:34:37 ID:9fT6LZ10
一気に投下しない方が良かったかな………
連投スマソ………
一応全部同一作品のつもりで書いたんでw

投下しといてこんなこと言うのも何だが、次スレはどうするんでしょうか?
780名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:07:35 ID:iTTipzBU
残り5kだから君が立てると吉。
781名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:20:13 ID:9fT6LZ10
零総合 捌

でいいよな?
行ってくるノシ
782名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:27:41 ID:9fT6LZ10
次スレ

零総合 捌

http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1154874319/


前に連投で埋めちゃったことあったから、今回も投下後容量みて冷や汗かいたw
783名無しさん@ピンキー:2006/08/06(日) 23:38:19 ID:CyOBmoMK
立て乙ナリ

今紅蝶やってたんだけど、朽ち木で寝てる時以外のお姉ちゃんのフェイタルフレームってどこかなぁ?
黒澤家中庭階段とかで試してたけどうまくパ○ツが写らんのですよ
784名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 02:19:26 ID:RTOog7Ve
繭のパンツなら冒頭の逢坂家の階段でも十分撮れるけど、
確か桐生家前の階段がフェイタル。色んなコスで試すべし。
お姉ちゃん可愛いよお姉ちゃん
785名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 20:17:18 ID:2jMYrj9t
サンクス

今終盤のセーブデータないから進めないとなぁ
786名無しさん@ピンキー:2006/08/08(火) 18:25:51 ID:TWvAkAcG
>>782
なんか、零総合 別って見えて、避難所かなんかかと思ってしまった。
787あほぅ ◆0prV3.f55M :2006/08/09(水) 01:41:22 ID:mnAGiliU
何か、逢坂家のどっかでバグ?で真下からの角度になって繭のパンツ丸見えになったことある。
………白でしたw
788名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 22:47:42 ID:SSzQRuUz
789名無しさん@ピンキー:2006/08/13(日) 23:10:08 ID:74+39vYH
保守だよ、と。
790名無しさん@ピンキー:2006/08/16(水) 02:19:36 ID:WFQ5n98m
791名無しさん@ピンキー:2006/08/18(金) 00:23:14 ID:j2TOYmme
792名無しさん@ピンキー:2006/08/19(土) 01:09:43 ID:cASt/01V
おねえちゃん

おねえちゃん

魔王が今

坊を掴んで

逃げてく
793名無しさん@ピンキー:2006/08/20(日) 18:37:14 ID:pkfbKSb9
棒掴んで逃げられたら痛そうだ。
794クスリ(1):2006/08/20(日) 23:01:16 ID:DYsm3R2W
「澪、これ飲んで。」
「なにこれ?」
「栄養ドリンク?」
「なんで疑問形なの?」
「多分まずくはない。はず。」
「はず? あ、でも最近夏バテで元気でないから、飲んでみようかな。」
「どうぞ。」
(くーっ)
「どう?」
「あ、別にまずくない。」
「効いた?」
「そんなすぐわかんないよw」
「うーん。じゃあね。えい。」
繭、襟元の開いた夏服で、胸元ちら。
「どう?」
「いや、どうっていっても。相変わらず、色白だね、おねえちゃん。」
「だめか……。」
「あれ? いっちゃうの? ごちそうさま、おねえちゃん!」
795クスリ(2):2006/08/20(日) 23:01:46 ID:DYsm3R2W
その夜。
ぎしっ。ベッドのきしむ音で目を覚ます繭。
「うーん……。って、うわっ!」
「わあっ!」
「え? あ、澪!?」
「ご、ごめん! そんなおどろかすつもりなかったんだけど。」
「ど、どうしたの?」
「なんか気持ち悪いんだよ……。」
「え。だ、だいじょうぶ?」
「なんかあっつい……。」
「暑いよね。エアコン入れようか?」
「うん。あ、いや、そういうのじゃなくて。」
「いや、あたしも暑いし。入れるよ。」
(ピ。ヴーン……。低い唸りを立て始めるエアコン)
「窓、閉めるね。」
「うん……。」
(からから……。パタン。)
「すぐ、涼しくなるよ。」
「うーん。だめ。」
(こて。繭のベッドに横になる澪。)
「気持ち悪い? おなかとか痛い?」
「それは大丈夫……。でものど渇いた。」
「あ、じゃ、なんか持ってくるよ。待ってて。」
部屋を出て、階段を降り、一階に下りる。暗闇の中で台所まで行き、
冷蔵庫を開けた。庫内の明かりの中で、麦茶のボトルを探し当て、グラスに注ぐ。
二人分を用意して、繭は急いで階上に戻った。
796クスリ(3)
「みおー? 麦茶だよー?」
そう言って部屋に戻ったとき、繭はちょっとドキッとした。
澪がベッドの上で、繭のタオルケットを抱きしめるような格好で横になっていた。
その呼吸は荒い。
(……あれ? もしかして?)
このときになって、ようやく、澪の不調の原因に思い至った。
(まさかあの薬のせい……?)
あわててグラスを机の上に置き、澪の体に手をかけた。
瞬間的に、熱い、と感じる。
「澪? み、お! やだ、しっかりして?」
「あ、だめ、ほんっとあっつい。やー、もー……。」
ごろ、と寝返りを打った澪の胸元を見て、繭の体温が上がった。
パジャマの胸のボタンが、胸元をはるかにとおりすぎて、
へそのちょっと上まで外れている。
ごくっ。つばを飲み込むと、その音が我ながらせっそうなく響いたような気がした。
開いたパジャマの隙間から、澪の白い肌が見えた。ブラは、していない。
思わず引き込まれる。勢い、覗き込む体勢になった。
が、さらに。
「うー。気持ち悪いー。」
澪の手が動いて、上から覗き込む繭の体に回された。
「え、なになに。ちょっと、あぶな……。」
あがらう間もなく、体を引き寄せられる。
ぐるっと視界が周って、天井の照明が光の筋になって流れた。
そして。