【従者】主従でエロ小説【お嬢様】

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1名無しさん@ピンキー
ぐぐってもぐぐってもホモばかり出てくる主従エロ

生意気な女主人を陵辱する従者
大人しい清楚なお嬢様に悪戯をする従者
身分を隠しながらの和姦モノも禿しくいい

俺はそんなエロ小説が読みたい
誰か 書 か な い か
2名無しさん@ピンキー:2005/08/24(水) 18:36:58 ID:njh6kziU
2
3名無しさん@ピンキー:2005/08/24(水) 19:26:23 ID:V4NpjHJw
期待age
こういうスレを待ってたよハァハァ(;´Д`)
4名無しさん@ピンキー:2005/08/24(水) 20:19:40 ID:p6Q9r0Vf
ちょっwwwwwwおまっwwwwww
激しくツボにもほどがあるので、ちょっと書いてくる
一応リクとかあったらできる範囲で受け付けるかもしれない
5名無しさん@ピンキー:2005/08/24(水) 20:31:59 ID:njh6kziU
>>4
お前に蝶期待(σ´∀`)σ
6名無しさん@ピンキー:2005/08/24(水) 20:39:08 ID:njh6kziU
>身分を隠しながらの和姦モノも禿しくいい

身分の差を気にしながら、だな
まぁどうでもいいか
74:2005/08/24(水) 20:46:41 ID:p6Q9r0Vf
ちなみにオレが書くとラブラブ和姦ものにしかなりません
つーか、主従っていうとお嬢様と執事っつーのが
ぱっと浮かびそうなもんだけどほかになんかあるかに?
ファンタジー、伝奇スキーなオレは使い魔とか考えちゃうんだけど
8名無しさん@ピンキー:2005/08/24(水) 21:14:03 ID:ROULSXJP
すげぇツボスレ発見age

>>7
俺はなんか、昔の姫と従者みたいなのが一番最初に頭に浮かんだ>主従
使い魔と魔法使いなんてのもいいな
期待してるよ
9名無しさん@ピンキー:2005/08/24(水) 21:35:33 ID:DkwFjyG5
女主人という言葉だけで萌える
10名無しさん@ピンキー:2005/08/24(水) 22:00:05 ID:QZy+8n9H
素直になれないお嬢様が召使に「抱いて」と言えずに「抱きなさい」と命令するのもいいな
11名無しさん@ピンキー:2005/08/25(木) 00:31:42 ID:eXVh/lyG
保守
12名無しさん@ピンキー:2005/08/25(木) 01:31:25 ID:sBevkTQV
お嬢様と聞いて俺が飛んできましたよ
13名無しさん@ピンキー:2005/08/25(木) 02:52:55 ID:w62kZ51P
姫様と侍女ネタも読みたい。
14名無しさん@ピンキー:2005/08/25(木) 10:17:05 ID:Y7qXuHfu
主従は「禁断」な感じで萌える
15名無しさん@ピンキー:2005/08/25(木) 21:19:54 ID:YYbw3d9G
このシチュすごい萌えるよな。
そのうちSS出来たら投下させてくれw
16名無しさん@ピンキー:2005/08/25(木) 21:36:09 ID:qOrvS2Ke
17名無しさん@ピンキー:2005/08/25(木) 23:49:03 ID:Y7qXuHfu
>>15
待ってますよ

>>16がよく判らなかった件
18名無しさん@ピンキー:2005/08/26(金) 01:14:11 ID:HoKx8WFW
>>17
>>16のURL先に主従物があるって話。
前スレまで遡るとエロもある。
しかしここに張る意味は分からん。
19名無しさん@ピンキー:2005/08/26(金) 18:46:04 ID:5N5DAKRU
SS待ちage

+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・) 
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +
20名無しさん@ピンキー:2005/08/26(金) 20:37:04 ID:eUMlk7Ph
谷崎の春琴抄なんかは主従モノだな
21名無しさん@ピンキー:2005/08/26(金) 23:22:06 ID:UcUnSHl1
下克上!
22名無しさん@ピンキー:2005/08/26(金) 23:32:51 ID:I109ATZt
女社長と従業員
23名無しさん@ピンキー:2005/08/27(土) 01:59:23 ID:hWm4ON4e
ここは一つ、王道のお嬢様と召使を押したい
24名無しさん@ピンキー:2005/08/27(土) 15:29:00 ID:aaJ9Df2F
召使を奉仕するお嬢様とかモエス
25名無しさん@ピンキー:2005/08/28(日) 00:00:42 ID:pQcIODz+
逆に、旦那様と下女ってのは駄目?
メイドスレ行けって言われそうだけど、メイドとはまた違うんだよなぁ・・・
26名無しさん@ピンキー:2005/08/28(日) 09:54:38 ID:C1g/im3i
メイドスレ行け
27名無しさん@ピンキー:2005/08/28(日) 12:15:24 ID:9i8XpCCu
ここは女のほうが位が高いところに価値がある
28名無しさん@ピンキー:2005/08/28(日) 22:26:37 ID:exjGRs72
今日の恋愛運は『目上の人から告白されるかも』であり、ラッキーカラーは『ラグーン』。
……え!? 何色!?
ラグーン色なんてgoogleにも出てこないよ!?

──「ということでなんとなくブルー色なのです」
と私はご主人様に報告した。
ご主人様はちょっと憂いを秘めて、秋風のように微笑んだ。
大きな窓から斜めに射し込んだ朝日が、食堂全体に満ちていた。
遠くから届く、今年最後の蝉の声。
──私はご主人様に見とれてしまう。
私はご主人様が死ぬほど好きだ。
同性だとかそういうのは関係ない。好きになってしまったのだからしょうがない。

「……それ、当たってるわ」

ご主人様がスプーンを置いて、言う。
私はトレーを胸元に引き寄せて、小さく首を傾げる。

「ブルーが、ですか?」
「それは知らないけど、その目上の人に、の方」
「それは……、ありえないのです。だって私の目上の人はご主人様だけなのですよ?」

すっ、とご主人様が立ち上がる。
すぐにルレクチェのようなたわわな胸に目がいってしまう私はもうだめかもわかりません。

「ありえるかもよ? というか、ありえるのよ」
ご主人様の手が私の肩に触れる。
メイド服のフリルをぴんっと指で弾いて、私の唇をその指でなぞる。

な、なんでしょうか…?

「好き。ずっとずっと好きだった」
──もう一方の手はスカートの中に入ってきていて、私の太股を這い上がってくる。
あぅ、と思わず声を上げて後ずさる。
けれど私の後ろは壁だった。

「ふふ。奉仕、してあげる」
少し乱暴に壁に押しつけられる。
トレーを放り投げられる。ぐいっとご主人様の脚が私の太股の間に入ってくる。
あごをぷいっと掴まれ、あっという間に唇を奪われてしまう。
──ああ、幸せ。
しかし、これが私の中の悪魔を呼び覚ましたのだった。

「……ご主人様。奉仕するんだったら、メイド服、ですよ?」
「え? 何か言った?」
「私のことが好きで私とこういうことしたいなら、メイド服着れよです!」

我ながら暴走しすぎだと思う。
でも、私の中の悪魔が止まらない。
ご主人様は目を丸くして思考停止している。
私は自分のメイド服を脱いで、ご主人様に投げつける。

「着れよです。そして私のことをご主人様って呼べよです!
そしたらえっちなことしてもいいよです!」
29名無しさん@ピンキー:2005/08/28(日) 22:27:45 ID:exjGRs72
ご主人様が目に涙を浮かべた。
そして、うん、と小さく頷いてドレスを脱いで、私のメイド服を拾った。
私の頭の中は沸騰状態だった。
──憧れのご主人様が私のメイド服を着る。
私はご主人様のドレスを着る。
それだけでもう半分イッてしまう。脚が震えてしまう。

深層心理ではそうなのだった。
私はメイドに徹してご主人様に奉仕しながら、ご主人様に奉仕されることを妄想していた。
私はご主人様に自分自身を投影していた。
そして、メイドをするご主人様を演じてもいた。
でもそんな後付けの理屈はどうでもいい。
──ご主人様のメイド服姿は犯罪そのものだった。
豊かな胸がメイド服をぱつんぱつんにしていた。
ゆえに床にへたりと座っているご主人様をぐぐっと抱き寄せて、その膨らみをわし掴みした。
「ご主人様っ! メイドってのは怖いのです。大変なのです。
そこらへんわかれよです」
「う、うん。わかってるつもり、だけど……」

近くにあった蝋燭をご主人様の胸に押しつける。
それはメイド服ごとご主人様の胸の谷間に沈んでいく。
ご主人様は不安そうに蝋燭と私を交互に見る。
蝋燭をゆっくりと前後に動かしていく。

「ご主人様。お客様が来ると、メイドはこうされてしまうのです。
服の上からパイズリされてしまうのです。
そして顔に掛けられてしまうのです。
ご主人様に知られない処でメイドはひどい仕事をしているのです」
「ん……んっ、知らなかった……。ごめんね……」

捏造だった。
私はご主人様の胸を揉みしごきながら、
いつもこんなひどいことをされている、とウソを並べた。
ご主人様は本当に申し訳なさそうに悲しそうな顔をしていた。
だから、そのあと私がご主人様の乳首を口に含んでも怒らなかった。

──「では、私はご主人様のご主人様として、ご主人様の初めてをもらうのです」
ご主人様の可愛らしい割れ目を開く。
ご主人様はもうぐったりとして抵抗もしない。
私は舌を伸ばしてピンク色のびらびらを分け入って、膣口にねとりと入っていく。
やさしく拡張していきながら、私の愛液で湿らせた中指をゆっくりと挿入していく。
つぷりと空気が逃げる音がする。痛くないようにと舌を這わせる。
ふと顔を上げる。
ご主人様がメイド服の上から自身の胸に手を這わせている。
──いい淫乱メイドになれそうですね、ご主人様。
30名無しさん@ピンキー:2005/08/28(日) 22:36:52 ID:exjGRs72
ご主人様が、痛いよ……、と小さく言い、
私の欲望は達成された。

──
「…… あれ? これってご主人様のメイド服ですか?」
「うん。そう」

あの日から、私たちは2人ともメイドになった。
ご主人様はご主人様だけど、メイド服を着たご主人様だった。
それは傍から見たら、不条理で奇妙な光景なのかもしれなかった。
でも私たちの中の真実はこれで合っているのだった。
……とかいう強引な締めはどうでもいい。

「ご主人様。とってもメイド服が似合うのです。今度、お客様に奉仕すれよです」
「う、うん。メイドがすれっていうならしてみるよ……」
「じゃ、練習するのです。私のここを、舐めれです」

ご主人様の黒目がちな瞳に憂いが灯る。
私はご主人様の頭を掴み、強引にクンニさせる。
不器用に恐る恐る、私の割れ目に舌を這わせていく。
──ふと、私は遠景に目が行く。
私たちのいる孤島。
ラグーン。
それは何色なんだろうか。
夏は終わりを迎えていた。
ゆっくりと秋が近づいてきているのを、
頬に当たる風から感じてしまう。
……ラグーン色、かあ。

ご主人様の髪の色はまるで空と同じような青だった。
だったらラグーン色は青でいいや、と思う。

だって、メイドはご主人様がいなければ存在しない相対的な物だし、
ラグーンだってご主人様がいなければ存在しないものね。

……違う。全然訳わかんない。
そんなやって話を無理矢理回収する必要もない。
ご主人様の奉仕を受けながら私はそう思う。
メイド服のご主人様に奉仕されて頭がおかしくなったメイドが私なのか。
でも、ラグーン色ってどんな色なのかなあ。
本当に。
本当に。

終わり。
31名無しさん@ピンキー:2005/08/28(日) 23:03:26 ID:ERsMVS3A
乙。下克上と言って良いのか?どちらかというとメイドものに見えるのだが。
32名無しさん@ピンキー:2005/08/28(日) 23:38:02 ID:9KXk7ZQc
女上位萌えがこのスレのテーマだとは分かっちゃいるんだが、
バカ王子とお目付役なんてのは如何か?
33名無しさん@ピンキー:2005/08/29(月) 00:17:21 ID:igrG8MyG
>>28
GJ!
「私とこういうことしたいなら、メイド服着れよです!」に禿しくウケた。
可愛いご主人様だなあ。
34名無しさん@ピンキー:2005/08/29(月) 15:29:49 ID:j/WdjOWy
発見
お姫様+盗賊で書きたかったのがあるんで今度投下させてもらう
従者じゃないがな…

イヤだと言っても置いていく
一週間後だ
じゃ
35名無しさん@ピンキー:2005/08/29(月) 17:02:42 ID:VDUs6WZe
>>28
イイ!すげえ萌えた。
36名無しさん@ピンキー:2005/08/30(火) 01:09:36 ID:U0myuD4h
姫×親衛隊なんてどう?
誰か書いてくれないか!?
37名無しさん@ピンキー:2005/08/30(火) 16:30:24 ID:whzIbIER
>>36
何だその萌え。よし、お前のためにいつか書いてやる!
38名無しさん@ピンキー:2005/08/31(水) 13:14:58 ID:ZlNzhPpq
36じゃないが待ってるよ
39名無しさん@ピンキー:2005/08/31(水) 14:16:59 ID:PNrvUDRE
もうだめかもわからんね
4036:2005/08/31(水) 21:32:44 ID:yFdL3eOk
姫×親衛隊 ほらよ…ってエロ薄くてごめんな_| ̄|○

この国には三国一美しいと謳われる姫君が居た。
透き通る様に白い肌に、太陽の光を浴びると純金より美しく輝く金の髪。
何よりその姫君が美しいと言われるのは色の異なる両目であった。
片方は海を溶かした淡い蒼。
もう片方は木々の緑を宿した深い碧。
美しく、そして心優しい姫君は、国の民全員から好かれていた。
そして、その美しい姫君の後ろには、何時も一人の青年が居た。
姫君がその親衛隊の青年を見つめていたのは、誰も知らない姫君だけの秘密。


或る姫君と、不忠の騎士の秘め事


夜の静寂に金の髪が舞う。
姫君は金の髪を躍らせながら、夜の宮殿を歩いていた。
その後ろに、影のように寄り添う黒髪の青年は、静かな低い声で告げる。
「姫様、明日は早いのですから早くお休みにならないと」
姫君はその声を聞くとふふふ、と楽しそうに笑い、騎士に告げた。
「承知しています。明日は年に一度の収穫祭ですもの。
とても楽しみにしている行事です、今日は早く体を休めないと」
部屋の前まで来ると姫君は金の髪を揺らして、そして騎士の方に振り向いた。
形の良い唇が笑みを作り、そして目元に優しい光を浮かべている。
「護衛はここまでで結構です。今日も有り難う。
明日も早いのですから、今日は早く休みなさい」
騎士はその言葉に頷いて、姫君に一度畏まって敬礼をする。
無駄な動きの無い、鍛錬された仕草だった。
「は。明朝一番、お迎えに上がります。姫様も早くお休みになられる様」
騎士は手短にそう告げて、そして姫君に頭を下げて、その場を去った。
姫君は立ち去る騎士に静かに手を振りながら…その姿が完全に見えなくなるまで、
手を振っていた。彼は一度も振り向かなかったが、姫君はずっと手を振っていた。
4136(2):2005/08/31(水) 21:33:28 ID:yFdL3eOk
この国では年に一度、実りの秋の初めに収穫祭を行う。
去年一年の恵みを感謝し、そして今年も良い作物が採れる様。
国を揚げての最大の祭りであるこの祭りは、日頃はしゃぐ事が出来ない姫君にとっての
数少ない少女に戻れる時だった。
「私は今年で十八の年を数えますから、今年から果樹酒を口にしても良いのです」
会場に向う途中の馬車の中で、姫君は同乗している騎士に嬉しそうに言った。
「父上が、お前ももう立派な成人だと仰ってくださったのですよ」
幸せそうに笑う姫君に、騎士は何時も通り、眉一つ動かさずに
「そうですか。ですが、飲みすぎにはくれぐれも注意して下さいね」
と告げた。
「勿論です。節度は心がけます」
「無論です。姫様が自分で好きな量を飲むのは危険ですから、私が用意させて頂きます。」
騎士が言うことは毒見も兼ねている、ということは姫君も勿論知っていた。
しかし、そうまで厳しく言われると何だか少し悔しい。
「け、結構です。私とて一人前の女性なのです。
酒に溺れない、嗜む程度の量は判りますわ」
姫君はそう騎士にきつい口調で突っぱねて、そして騎士から視線を反らした。
これは命令なのだ。
そして、自分が命令すればこの青年は逆らえないことを知って言ったことだ。
真っ直ぐに自分を見つめる――――自分の身を案じている、ということは判っている
のだけれども――――その漆黒の瞳が、今の姫君には痛々しかった。



収穫祭は終日盛大な盛り上がりを見せた。
侍女が姫君に今年取れた一等上等な葡萄で出来た果樹酒を手渡し、姫君は
初めて味わうその濃厚な味に心から酔いしれた。
「姫様、初めてなのにそんなに飲まれては…」
後ろで見ていた騎士が、姫君が三杯目の果樹酒を飲もうとした刹那、見かねて
口を出した。
が、姫君は故意に騎士の言葉を無視して、三杯目の果樹酒に口を付ける。
今度は苺だ。甘酸っぱくて、とても優しい味だ。
(ふふ、私の大好きな果実)
姫君はすっかり上機嫌で、豊作を祈り、そして果樹酒をあおり続けた。


収穫祭の宮殿は眠りに着くことを知らない。
朝まで盛大な宴が催され、多くの貴族が一夜の夢の世界に酔いしれる。
が、毎年その中心に居る、美しい姫君は居なかった。
4236(3):2005/08/31(水) 21:34:03 ID:yFdL3eOk
逞しい腕に抱きしめられ、姫君は自分の部屋へ案内されていた。
地に足は着いていなく、それどころか頭がふわふわと宙を漂っている気持ちだった。
体が酷く熱い。しかしその熱は不快なものではなかった。
「姫様、大丈夫ですか」
自分を抱いている男が声をかける。何時もと違う、不安そうな声だった。
「あれ程お願い申し上げましたのに。
初めて酒を口にしたのに、あれだけ飲むと体に毒です。明日まで抜けませんよ」
「……」
何も言い返せなかった。
ただ出来たのは、彼の服の袖をきゅっと強く掴むことだった。
自分とは違う筋肉のついた体、鍛え上げられた鎧を纏っている様な肉体。
微かに漂うのは汗の匂いと、彼自身の薄い体臭だった。
(…何だか、変な気分…)
胸がどきどきする。体が益々熱くなる。
そういえばこうして抱きかかえられることなど初めてかもしれない。
何時も一緒にいるのに、何時も自分はこうして欲しかったのに。
騎士は無言で姫君を抱きかかえて、そして姫君の部屋に入った。
姫君をベットの上に寝かせると、耳元で静かに囁いた。
「姫様、着きましたよ。今水を持ってきますから、暫しお待ちを」
騎士は一度も振り返らず、言葉どおり水を汲みに一度部屋を出て行った。
一人部屋に残された姫君は、体と胸が熱くなるのを、じっと耐えていた。
4336(4):2005/08/31(水) 21:35:14 ID:yFdL3eOk
騎士の酌んできた水を飲み、姫君が落ち着いたのはそれから暫し立ってからのことだった。
体の火照りもだいぶ収まり、騎士とまともに顔をあわせられる様になった。
ナイトガウンに着替えるのも、騎士の手助け無しに一人で出来た。
「今日は早めに眠った方がいいでしょう。明日は、具合が良くなったら私を
呼んで下さい。貴方を起こしに来ることはしませんから、ゆっくり休んでください」
「…もう行ってしまうのですか?」
「…もうお眠りになったほうがよろしいでしょうから。…姫様?」
姫君の腕はしっかりと騎士の腕を掴んで離さない。
陶磁器の様に白い肌にはうっすらと赤みが差し、吐息も荒い。
潤んだ蒼と碧の瞳が、騎士を真っ直ぐに見つめていた。
何かを訴えかけるその瞳に、騎士は心臓が高鳴るのを感じた。
「…姫様、どうなさいました」
「…行かないで…」
切ない声で、それでも懸命に。
姫君は騎士に哀願した。
「いや、行かないでください。こ、今晩だけで良いのです。
私と、一緒に居てください」
「…・・」
起き上がろうとする姫君の体を騎士は優しく拒否し、寝かせようとする。
しかし姫君は騎士の肩に手を回し、いやいやと子どもの様に頭を降った。
いつの間にか両目から涙が溢れ出し、頬を伝った。
「ずっと貴方のことが好きだったのです…。
もう私は、立派な大人になりました。だから、私のことを抱いてくださいませんか?」
「…姫様、今晩は酔っているから、そんなことを仰る。
姫様を抱くことなど、私には出来ません」
騎士は姫の体を優しく抱きとめながら、静かに言った。
優しい声色だったが、表情は苦渋に満ちていた。
「違います…。やっと勇気が出たのです。
私は、何時も私のことを優しく守ってくださる貴方が好き。
でも、貴方は、私のことを、姫だからと言って女として見て下さらない…」
「…当然です。姫様は、永久の憧れの人です。」
「……」
騎士は真っ直ぐに姫君を見つめて、そしてその唇と己と唇を重ねた。
微かに、果実の甘い香りがした。
「んっ…」
姫君はそれを目を閉じて静かに受け入れ、そしてそのまま騎士に身を委ねた。
唇を重ね合わせるだけだったキスが、次第に激しいものになっていく。
姫君の口の中に、静かに舌を進入させると、姫君は最初身をびくりと震えたが、
やがて自分からも舌を絡め合わせてきた。
ぴちゃ、ぴちゃと淫らな唾液の絡まる音が響く。
「ふぁっ…あああ…」
一度唇が離れ、頬を真っ赤に染めた姫君に、騎士が囁いた。
「…私の全ては貴方のもの。貴方をお守りするという使命があるから、自分はここに居ます。
愛しい貴方が望むのでしたら、私は貴方の為に何でも致しましょう」
それは、決して想いを告げてはいけない男の、精一杯の告白だった。
愛しく、敬愛しながらも誰よりも可愛く想っていた姫君が、自分に抱かれたいと願っている。
それならばその願いを叶えてあげたい。
それはずっと、自分が望んだことでもあったのだから。
こうして背徳の一夜は、幕を開けた。
4436(5):2005/08/31(水) 21:36:11 ID:yFdL3eOk
月の光に晒した姫君の素肌は、透き通る様に白かった。
その柔らかな体を抱きしめ、唇を重ね、そして愛撫する。
少女らしい小ぶりで形の良い胸を、手の平にそっと包み込む。
中心の果実には触れない様にこねる様に揉みしだくと、姫君の口から甘い吐息が漏れた。
「あっ…」
頬を赤く染め、恥らう様に両手で顔を覆うとする姫君は、何とも可愛らしいものに見えた。
乳房を捏ね繰りまわすと、桃色の乳首がぷくりと固く勃った。
(ひゃっ…あ、な、何だか、くすぐったい…)
姫君は声を必死で堪えながら悶えていた。
こんな声をあげてしまうなんて、はしたないから嫌だと思う。
だけれども彼の指が自分の体を這い、濃厚な口付けを交わす度に、淫らな声が漏れてしまう。
「んっ、ふうっ…ふうぅっ!!」
唇を交わしながら騎士の指が姫君の秘所に滑り込んだ時、姫君は大きく体を震わせた。
そこはすでに熱い湿り気を帯びていて、騎士の指を容易く受け入れる。
「あ、はぁっ…な、何ですか、これはっ…」
震える吐息で姫君が問うた。
「か、体が熱いの…。た、助けてくださいっ…くぅうんっ!!」
蜜を襞にこすり付けながら、指をゆっくりと内部に滑り込ませていくと、
姫君の体がびくびくと震える。
「はぁ、ああ、あっ…!」
すでに充血しパンパンになった肉芽を軽く弾くと、姫君の体はびくりと跳ねた。
ぶるぶると痙攣し、そして姫君の体から力が抜けるのが伝わる。
それでも、騎士の指は姫君の内部への進入を止めない。
深部からとろりとした蜜が次から次へと溢れ出し、くちゅくちゅと淫らな音を立てた。
「もう我慢が出来ませんか?」
騎士が姫君に、耳元で意地悪な声色で囁く。
姫君は素直にこくこくと頷くと、騎士はその体を一度強く抱きしめ、自分の体の下に寝かせた。
「体が熱くて、もう我慢出来ないのです…。」
姫君が震える声で、擦れた吐息で騎士に哀願した。
姫君の哀願に口付けで返し、そして騎士は固くなった己自身を姫君の秘所に当てた。
入り口を自身の先端でぐりぐりと弄くり、蜜を擦り付ける。
4536(6):2005/08/31(水) 21:37:22 ID:yFdL3eOk
「……」
騎士が耳元で姫君の名前を呼び、姫君は両腕を騎士の背中に回す。
それを肯定だととった騎士は姫君の膣内にゆっくりと進入を始めた。
「んっ…!!きゃああぁっっ!!」
処女喪失の余りの痛みに、姫君が絶叫をあげる。
「姫様、力を抜いてくださいっ…」
騎士は苦しそうに息をしながら、姫君の中に、姫君がなるべく痛くない様にと
気遣いながら己自身を挿入させる。
アルコールのせいで姫君の内部は燃える様に扱った。
幾つもの襞が騎士の肉棒を擦り、そして咥え込む。
姫の秘所から幾筋もの鮮血と、それに勝る蜜が溢れ出す。
「熱い、熱いよぅっ!!」
姫君の体が騎士の肉棒を深く受け入れる度にびくびくと震え、甘い悲鳴をあげた。
熱いのはきっと酒のせいだけではない筈だ。
こうして二人は朝まで獣の様に交わっていた。



朝の光は、姫君の髪の色の様に穏やかな輝きだった。
「姫様、お体大丈夫ですか?」
姫君が目を覚ますと、隣に眠っていたはずの騎士はすでに平常の服装に着替え、
姫君が起きるのを待っていた。
体はまだ少し痛かったが、起きられない程ではない。
大丈夫です、と笑顔で答えて、姫君は差し出された手を取り立ち上がった。
「…昨晩は無茶をさせてしまい、申し訳ありませんでした」
申し訳なさそうに自分に謝る騎士に、姫君はにっこりと笑いかける。
「私からお願いしたことですもの。貴方が謝ることはありません。
ああ、もうこんな時間。早くしないと、侍女たちに怒られてしまうわ」
姫君はするりと重い空気を交わして、窓を開け放ち、清清しい朝の空気を取り入れた。
「良いお天気です。…今日も一日、よろしくね」
姫君はにっこりと騎士に微笑みかけ、そして、静かにその手を差し出した。
秘められた恋の物語は、まだ終わらない。
4634:2005/08/31(水) 21:59:54 ID:6pZtZC7f
大変GJ!
騎士もいいもんだな

つーか困ったのよ
一週間後とか言っといてできてしまったので
こそこそと俺も投下しに来たんだが

まあいいや置いてくわ
すまん連続で
47姫と盗賊1:2005/08/31(水) 22:00:29 ID:6pZtZC7f
王国北部の要であるエデュの街には由緒ある建物が多いが、旧市街のただ中に他を圧してひときわ壮麗なそれがある。
街の名の由来ともなった古の聖女を称えて作られた教会と北部駐屯軍の広大な軍舎に挟まれるように立つ白亜の建物。
王国有数の格式を誇るサンテデュ女子修道院である。



「姫様、イヴァン様から書簡が参りましたよ」

三階の窓辺に拠り、目の下の広場の練兵風景を見るともなく見ていたコリーヌは、呼びかけた女官に振り向いた。
明るい灰色の衣裳に身を包み、あっさりまとめて真珠の櫛を刺した濃い茶色の長い髪、落ち着いた薄い琥珀色の瞳で色白の、見た目の派手さには欠けるが相当に美しい娘だ。
だがどこか線が細く危うげで、背が高いわりには華奢に見えた。
実際、年齢は二十代半ばなのに小娘じみて見えるのはそのせいか。

コリーヌはおっとりと口を開いた。
「来週には私は出家するのですよ。ミシェル、『姫様』はそろそろおやめ」
中年の女官は決まり悪げに一礼し、手に捧げていた文筒を差し出した。
「どうぞ。そういえばコリーヌ様、駐屯軍のオベル連隊長が今度退役なさるとかで」
「そう。挨拶にいらっしゃるの?」
コリーヌは筒の中から、丸めた羊皮紙をぽんととりだした。
「明日夕食をご一緒なさいませんと。国王陛下のご名代も大変ですわね」
「そうねえ。でも、それも来週までだと思うと不思議な気分…」
羊皮紙を延ばし、コリーヌは弟からの手紙を読み始めた。
「まあ」
すぐに唇に微笑が浮かび、彼女は女官に声を掛けた。
「ミシェル、おめでたい知らせよ。ナタリー様がご懐妊なさったわ」
「まあ!」
世継ぎの若い王子夫妻に早くも子供ができた事を知り、女官は手を打ち合わせた。
「さぞかし両陛下がお喜びでしょう。なにしろお世継ぎにはご苦労なさいまし…」
そこまで言って、女官は急に言葉を濁し、筒を点検するふりをした。
コリーヌは笑った。
「気を遣わずともよいのよ。それよりイヴァンに祝いの文をやらなければ…紙とペンを」
女官が急いで用意をする気配を後ろに、コリーヌは琥珀色の目をまだ冬の残る薄曇りの空にあげた。

コリーヌは国王と王妃の一番目の王女である。
不幸なことに父の国王は結婚後、十年近くも子供に恵まれなかった。
やっと生まれたコリーヌの兄たちが二人続けて夭折し、王子で残っているのは彼女の弟のイヴァンだけだ。
妹の王女たちがあと三人いるが全員蒲柳の質であり、長姉のコリーヌも例外ではない。
女子修道院に入ると決めたのは穏やかで学問を好む性質の彼女自らの意思だったが、それを了承した両親の気持ちもわかる気がする。
政略結婚に供するには躰が弱すぎる娘なりの幸せを思えばこそであろうし、その思いやりには感謝するばかりだ。
弟の婚礼を機に、この由緒ある修道院に彼女は移った。
仲の良かった世継ぎのイヴァンは兄弟姉妹中例外的に頑健な体質の上姉と同じく聡明でもあり、それもこうして無事に妃との間に跡継ぎを得られる事がわかってみればもはや後顧の憂いは何一つない。

ない……はずなのだが。
48姫と盗賊2:2005/08/31(水) 22:02:21 ID:6pZtZC7f


「しかし、最後の最後にこうしてコリーヌ姫様に拝謁を賜りますとは、誠に思いがけない事であります」

連隊長のオベルは声の大きい、いかにも軍人らしい態度の初老の男だった。
「北部は北部でよい所ではありますが、なにぶん寒うございましてな、長年の軍隊生活が祟り…」
昨年から持病のリューマチが悪化して、進退願いを出していたのがやっと先週聞き届けられたのだという。
「私の後がまはジェイラス将軍の甥で、現在王宮付衛兵隊長を務めておる男です。ご存じでしょうかな」
コリーヌは、巨大な体のわりにはきびきびと動く寡黙な衛兵長を思い出した。
「サディアス・ダジュールですね。若くとも彼ならば安心なさって結構だと思いますわ」
「よくは知りませぬが、将軍の推薦であれば甥でも実力がありましょう。ご存じかな、私はストラッド攻防戦の折には将軍と同じ隊でして…」
聡明で美しい王女相手に思い出話と食事を楽しみ、オベルは終始上機嫌であった。
これからどうするのかと王女が尋ねると、田舎の領地に引っ込んで経営に明け暮れるつもりです、と大声で笑い、やがてオベルは立ち上がった。
「では、ご寛容に甘えてついつい居座りましたがこれにて失礼を致します。コリーヌ様、ご歓待いただきまして誠にありがとうございました。爺の自慢としてこれも孫に語ってやる事どもになりましょう」
王女が見送りのために立ち上がろうとするのを固辞し、初老の連隊長はふと、彼女に視線をやった。
「コリーヌ様は先月お越しになられたばかりだからご存じありますまいが、このところエデュでは夜な夜な不逞の輩が出没しておりましてな」
コリーヌはにこりと笑った。
「『盗賊アルディ』の事でしょう。なんでも宝石や貴金属が大好きとか。修道女の間でも評判ですわ」
オベルは慨嘆した。
「なんと。修道院におられようが女性というのは誠に耳の早いものだわい!…おっと、ご容赦を」
コリーヌは興味津々に尋ねた。
「まだ捕まりませんの」
「これがなかなか腕がいいと申すか、はしっこい盗人でしてな」
オベルは半白の眉をしかめた。
「警察も憲兵もやっきになっとるがまだまだのようです。ものがものだけに金持ちの商人や貴族の館だの大きな寺院だのを狙います。幸いまだこのサンテデュは押し入られてはおりませぬが…」
「隣が北部駐屯軍の本部では、入る気が失せるのも無理はありませんわね」
コリーヌは頷いた。
オベルは誇らしげに胸を張った。
「ま、そうであればよろしいのだが。一応こちらにも憲兵はおつけしております。それにしてもお気をつけくだされよ、うっかり窓など開けておかれませんようにな」
「ご安心くださいな」
コリーヌは微笑した。
「出家するのですもの、狙われるような宝石など持って参っておりません」
「いや、相手は下賤の輩ですぞ、姫様。そのような事情は何もわかってはおりますまいよ」
オベルは肩を竦めた。
49姫と盗賊3:2005/08/31(水) 22:03:43 ID:6pZtZC7f


この髪をくしけずるのもあと数日というところだ。
就寝前の儀式のように生まれてこのかた続けてきたが、この髪も短く切りそろえれば、慣れるまではさぞ寂しいことだろう。
つややかな茶色の髪を寝間着の肩に流して、コリーヌは立ち上がった。
オベルとの会食が終わって三日たち、彼女の誓願の日までの日にちは二日と迫った。
もっとも出家とは言い条、実際の儀式はかなり賑やかなものである。
彼女の身分が高い事もあり、この修道院の院長に迎え入れられる故もある。
神との婚儀を執り行うその日には同じく出家する貴族の子女たち6名も含め、サンテデュあげての壮麗な催しになる予定だった。
コリーヌは窓の傍にうちかけてある儀式用の衣裳をちらと眺めた。
レースをふんだんに使ったそれは贅沢で純白の、それこそ普通の婚礼衣装と変わらぬ豪華さを漂わせている。

殿方のために着てもよかったのだけれど…。

コリーヌは物思いに耽りながら窓辺に近づき、背の高い窓を開けた。
細い雨の糸が無限に、室内からの蝋燭の弱々しい灯りに浮かび上がっている。
いつの間にか降り始めたらしい。もう雪ではないが、とても冷たい雨だ。
狭いベランダが続いていたがそこには出ず、椅子に腰掛けた彼女は冷え冷えとした湿った夜気を吸う。

…無事に子供が望めるならともかく、無理を通したあげく産褥の床で死ぬのも気が進まない。

恋でもしていればそれでも良いと思えたのだろうが、特段惹かれる男性に出会うこともなく深窓の姫としてここまでうかうかと生きてきてしまった。
もっとも病弱の彼女が無事に成人するとは両親も思っていなかったらしい。
幸い彼女は勉学が好きで、しかも博士たちから太鼓判を押されているほどの探求心と考察力を兼ね備えている。
ここサンテデュ女子修道院の院長として、歴史ある附属図書館の管理をし、躰をいたわりつつ学究の日々を送るという道も得た。
たいして事件が起こることもなさそうな日々だが、それはそれで穏やかな人生だ。
悪くない。

…そう思いつつ、コリーヌは衣裳に手を伸ばして撫でてみた。
レースの、繊細に爪にひっかかる感触がすがすがしく、新鮮だった。
その時、ベランダで小さな音がした。
上で差し交わした大木の枝が軋み、やがてがさがさと一気に葉ずれの音。

コリーヌは立ち上がり、急いで窓に近づいた。
窓枠にかけたその指を掴み、引き剥がしたのは男の手である。
「しっ」
目を丸くしたコリーヌの口元をもう一方の掌で覆い、手の持ち主は勢いよく部屋の内側に入ってきた。
「しめた、まだ運の尽きではないらしい」
コリーヌは目だけでちらと男を見上げた。
背の高い彼女よりさらに背が高い人物である。
黒っぽい地味な服装、荷物は持っていない。いや、腰帯に短剣かナイフのようなものをつけているのが唯一の武器だ。
全身雨に打たれていたらしく濡れている。
顔は疲労の色が見えるがまだ若い。
「なんて建物だ。こんなに滑りやすいとは思わなかった」
男は呟きながら掌に力を込めなおそうとした。
だが、コリーヌがおとなしくしているのに気づいたらしい。
ひきよせていた彼女の手首を離すと、目を合わせた。
男の目はほとんど黒に近い焦げ茶糸だった。

「大声を出さないなら、手を離してやろう」
男が言い聞かせるように呟き、コリーヌは目顔で頷いた。
「聞き分けのいい女だ。珍しい」
男の手が離れ、彼女は急いで深呼吸をした。
自分が落ち着いてはいる事はわかったが、我が身に降りかかったこの珍しい事件に奇妙に胸が高まっている。
「…では、おまえが『盗賊アルディ』なの?」
50姫と盗賊4:2005/08/31(水) 22:04:26 ID:6pZtZC7f
男は黒っぽい目をすがめた。
「どうして?」
「それ以外に考えられないわ」
男はまじまじと彼女を眺めた。
コリーヌも負けじと彼を見つめた。
正面から見ると、まだかなり若いらしいことがわかる。
おそらく彼女と同じくらいの年齢だろう。

「で、アルディだとわかったら?」
「ここに来た望みを聞きましょう。聞くだけですよ。叶えられるかどうかはわかりません」
男は頭を振り、髪の水滴を跳ねとばした。
「それでは意味がない」
「大体の察しはついております」
コリーヌの言葉に、男は顔をあげて口元に微笑を浮かべた。
卑しげな笑い方ではない。
盗賊にも感じのいい…といって悪ければ、人当たりの悪くない者もいるらしいという発見をコリーヌは興奮とともに心に刻んだ。
「では、教えてもらえないか。どこにある?」
「ありませんよ」
簡単にコリーヌは言った。
「ここは修道院ですから宝物などありませんし、特に今はおまえが活躍しているという事で先日来、聖遺物なども全て駐屯軍に預けております」
「駐屯軍」
男は舌打ちした。
「さすがにあそこには歯が立ちかねる。聖遺物は好きではないし」
「残念でしたね」
コリーヌは微笑した。
「それにここの修道院の石材は濡れると本当に滑りやすいのよ。石英を含んでおりますから。ちゃんと調べないと危ないわ」

男は眉をよせて彼女を見た。
盗賊におびえるどころか理路整然と喋る彼女にとまどっているらしい。
「では」
彼はゆっくりと言った。
「今、こちらには新院長としてこられた王家の姫君がおられるはず。その寝所はどちらかを教えて欲しいのだが」
「ここです」
コリーヌはまたあっさりと答えた。
「でも、ここには宝石もなければおまえの好きそうな金銀もありませんよ。嘘だと思うなら、探してみてもよいけれど」
「……なるほど」
男はじっとコリーヌを見た。
「あなたが姫君か」
「コリーヌといいます」
彼女は初めて落ち着かない気分で男を見上げた。
いかに深窓の姫とはいえお付きの者が常にいる生活なので人に見られるのは比較的慣れているのだが、こう一人の人間に間近で興味を示されたことはない。
「私が珍しいですか?」
思わず尋ねると、男は苦笑した。
無遠慮に眺めていたことに気づいたらしい。
「いや、初めて王家の姫を拝見したもので。弟君の顔は知っているが」
「私ども姉妹はみなあまり人前に出ません」
コリーヌは呟いた。
「弱いものですから」
顔を伏せた彼女の、ほっそりとかぼそい首に男は視線を落とした。
「そのようですな」
彼はつぶやき、コリーヌから離れた。
男の言葉がやや丁寧なものになった事を彼女は感じている。
「それにしても王女ともあらば一つや二つはなにかお持ちのはずだ。悪いがお言葉に甘えて探させてもらおう」
「どうぞ」
51姫と盗賊5:2005/08/31(水) 22:05:13 ID:6pZtZC7f

男が部屋を手早く調べて回るのを、コリーヌは長椅子に座って眺めていた。
てきぱきとした動作を見ていると、このような深夜に盗賊と一緒に部屋にいるということが、面白い夢のような心地である。
連隊長オベルはずいぶん下賤の者のように言っていたが、実際の『盗賊アルディ』は結構紳士的で乱暴ではない。
言葉から察するに、中流以上の市民階級の出のようだ。王宮に出入りする商人や議員のしゃべり方によく似ている。
どういう素性の男だろう、と彼女は思った。
「おまえのその名は、本名ですか」
男は声をかけられた事に驚いた様子で、彼女の紙ばさみを持ったまま向き直った。
「『盗賊アルディ』」
コリーヌがつけたすと、彼はまた肩を竦めた。
「もちろん違う。本名はもっと平凡です」
「教えてくれませんか?」
彼はもっと驚いた様子で紙ばさみを置いた。
「なぜ?」
「………あら。そうね。教える人はいないわね」
コリーヌも驚いた。
本名を知ってどうしようというのか。
いくら物腰が穏やかといっても相手は盗賊である。
「では名前はいいわ。今はアルディと呼びましょう」
「お好きに」
男……アルディは呆れたような視線を残し、探索に戻った。
その後ろ姿に、彼女はまた声をかけた。
「なぜこんな仕事を?」
「………それがあなたになにか関係がおありで?」
その声に少々うんざりしたような響きを察知し、コリーヌはさっと頬を紅潮させた。
確かにその通りである。
「それもそうね。続けてください」

あまり時間もかけず、アルディは部屋の中央で腰に手をあててそのへんを眺め回していた。
「言った通りでしょう」
コリーヌが控えめに言うと、彼は頷いた。
「王侯貴族にしては実に珍しい部屋だ」
「女子修道院などに入ったのが間違いでしたわね」
コリーヌが思わず頬をゆるめると、アルディは焦げ茶色の目でじっと彼女を見た。
「確かに。なぜあなたのような人が修道院に?間違いだ」
「…………」
思わず顔をあげると、アルディは至極不思議そうな表情をしている。
「あなたは美しいし、頭もいい。多少詮索好きのようだが」
「言ったでしょう」
コリーヌは返した。
「虚弱で結婚生活には耐えられそうもないんです」
「修道院のほうが厳しいだろうに」
「何もわかっていないのね」
王女はため息をついた。
「王族の結婚には必ず義務が課せられるのです。子を身ごもり、産むというね。それが無理ならば他に道はありません」
52姫と盗賊6:2005/08/31(水) 22:06:05 ID:6pZtZC7f
「なるほど」
アルディはゆっくりと言った。
「身分ゆえの悲劇というわけですな」
「……幸い、仕事や勉強は好きですのよ」
顔をさっと振り、彼女は明るい声で言った。
「それはともかく。さあ、嘘ではありませんでしたでしょう。これからどうするの?」
「退散するしかなさそうですな」
彼は顔をしかめた。
「どこから?」
彼女はアルディを見た。
「入り口には憲兵が張り付いていますよ。連隊長が言っておりましたもの」
「では、来たところから」
コリーヌは立ち上がり、窓を押し広げた。
強まった雨足の音が響き、それをアルディが聞いたことを確かめて彼女は窓をそっと閉じた。
「…今度はベランダではなく地面まで真っ逆様に落ちそうですわね」
「くそ」
アルディはイライラと髪をかきむしった。
コリーヌはきっぱりと言った。
「私の前でそんな汚い言葉はおやめなさい」
あっけにとられたようにアルディが顔をあげると、コリーヌは頷いた。
「弟もたまにそんな言葉を遣います。聞くといやな気になるものだわ」
「…………」
なんとも複雑な顔になった男に、彼女は言い聞かせた。
「雨が小やみになるまでここに居てもいいですから。お話でもしていましょう」
「…………………」
アルディはもっと複雑な顔になった。



「このような事はよくあるのですか?」
彼女は、向いの重い革張りの椅子に座ったアルディに尋ねた。
「このような事といいますと」
相変わらず丁寧な口調なので、本当に世間話をしているような気分になってくる。まさか姫君と盗賊との会話とは誰も思うまい。
「何も収穫がない場合です。労力に見合うとは思えません」
アルディは微笑した。
「対象が高価なものなのでね。それなりに埋め合わせはつく」
オベルが、盗賊アルディは宝石や貴金属を主に狙うと話していたことをコリーヌは思い出した。
「盗んだものはどうするの?」
興味津々で彼女が尋ねると、彼はぼそぼそと言った。
「ま、換金しますが…そこまで知りたいものかな。どうも不思議ですな」
「怪しまれないの?」
「それは蛇の道はヘビでして…いや、しかし」
アルディは急に自分の妙な立場に気づいたらしく、頭をあげた。
「なぜあなたに詳しく喋らねばならないのです?」
「知りたいのよ。世界は広いのね」
コリーヌは熱心に言った。
「知らぬ事を聞くのは面白いわ」
「………」
アルディはため息をつきかけ、その拍子にくしゃみをした。
53姫と盗賊7:2005/08/31(水) 22:06:50 ID:6pZtZC7f
「あら、まあ」
王女は立ち上がった。
急いで寝台に置いていたガウンをとってくる。
アルディに着せかけようとすると、盗賊は抵抗した。
「余計な世話です」
「びしょぬれではないの。風邪をひきます」
その手首を握り、アルディはじっとコリーヌの顔を見た。
「あなたには関係ない」
そう言われればその通りである。
コリーヌはそっと言った。
「では、せめて髪だけでも拭かせてちょうだい」
アルディは深々と息を吐き、細い手首を放した。
「………ご勝手に」



コリーヌはガウンを握ってせっせと盗賊の髪の水滴を拭った。
本当はもっと用途に合った布もあるのだが、ミシェルを呼ぶわけにもいかないしハンカチではすぐにびしょびしょになってしまう。
雨とこの男の頭皮や髪から立ち上る生々しい臭いが入り交じるが、コリーヌは初めて嗅ぐにも関わらずそれをイヤだとは思わなかった。
「いい匂いがする」
低い声でアルディが呟いた。
「そうですか。洗濯の時、濯ぎに香草の根を煎じたものを使うから」
男の首すじに垂れた水の流れを拭いながらコリーヌは応じた。
「あなたの匂いでしょう。ガウンだけではない」
コリーヌは手を止めた。
椅子に座ったアルディが、すくい上げるように彼女を見上げていた。
「見知らぬ男にこんなに親切にするはやめたがいい」
コリーヌは呟いた。
「でも放っておけば風邪をひきます」
「構わないでしょう。おれは盗賊だ」
コリーヌは困惑を滲ませた琥珀色の視線を間近の男のそれに絡ませた。
「盗賊でも、おまえは、そう悪い者ではなさそうです」
「深窓の姫君らしく、やはり世間知らずですな」

腰に腕が廻されていた。
抱き寄せたコリーヌの唇に男は唇を触れさせた。
すぐに男は離れたが、コリーヌはガウンを握ったままの片手を解放された唇にあてた。
「せめて唇を戴いていく」
盗賊の男は囁いた。
「ご勘弁願いたい」
「ずうずうしい男ですね」
コリーヌは眉を少しひそめ、唇から手を放す。
「いつもそうするのですか?」
「は?」
アルディは彼女の琥珀色の目を見た。
「思うような宝石がないと、おまえはその館の子女の唇を奪うのですか?」
彼はふっと笑った。厭味な笑いではない。
「好みの女ならね」
「そう……」
コリーヌはアルディの腕の中で考え深げに首を傾けた。
「私は明後日、修道女の誓願をするのですが──」
男は呟いた。
「もったいない話だ」
「ありがとう」
真面目に答え、彼女は続けた。
「──誰にも言えぬ事ですが、神の花嫁になる前に、一度でよいから体験してみたかった事があるの」
54姫と盗賊8:2005/08/31(水) 22:07:40 ID:6pZtZC7f
「どのような」
コリーヌはじっと盗賊の男の顔を眺めた。若々しいその顔を改めて見ても嫌悪感が浮かばぬ事を確認する。
「殿方に抱かれる事です」
あまりにも普通の口調だったので、アルディは一瞬聞き逃したらしかった。
頭にその言葉がやっと到達したらしく、彼は口をかすかに開けた。
その反応を見たコリーヌはさすがに少々頬を赤らめた。
「……はしたないと思いますか?」
「いや──」
盗賊は首を振った。
「驚きはしたが」
「良かった」
コリーヌはほっとしたように微笑した。
「納得したつもりでもやはり女に生まれたのですから、できるだけ人並みの体験はしてみたいのです。でなければ、後々までも悔やむと思うわ」
「あなたならそうだろう」
アルディは面白そうに呟いた。
「でも私は王の娘でしょう。誰も言い寄ってはくれないの」
王女は訴えた。
「意気地なしばかりだ」
アルディは彼女にもう一度キスをした。
おとなしくそれが終わるのを待ち、コリーヌは目を開けた。
「……間に合って良かったわ。おまえ、私を抱いてくれませんか」
アルディは不思議なものを見る目つきで彼女を見た。
「──答えはわかっているが、一応聞かせていただこう──初めて?」
「はい」
「おれは初めての女は面倒で苦手なんだが──」
コリーヌは至極穏やかな視線を彼に向けた。
「できるだけ迷惑をかけぬよう、努力するわ。出家するのですから、今後おまえにつきまとう事もありません」
盗賊の頬に微笑が浮かんだ。
「──いいでしょう」



奇妙な話である。
まさか修道院に忍び込んでこんな事になるとはアルディも予想だにしていなかったに違いない。
コリーヌは窓を閉め、扉の鍵を確認して振り向いた。
たおやかな手を動かして寝台を指し示す。
男は寝台に到着すると、丁寧に整えられたカバーの上に腰をおろした。
靴紐を解き、脱ぎ捨てる。
それを見ながらコリーヌは寝間着の胸に手をやった。
男女の交わりに衣服が必要ないことは知っている。
自分で言い出しておいてもたもたするのはイヤだった。
だがアルディは目顔で止めた。
「──こちらに」
コリーヌは解きかけた胸のリボンをそのままに、急いで寝台に向かった。
アルディがその腕を掴み、引いた。
男の上に倒れ、寝台ごと軽く弾む。
「こういうものは解いてもらうほうが、あなたも愉しいと思う」
彼はそう言うと、コリーヌの脚を寝間着の裾ごと引き寄せた。
彼女を寝台の上に降ろし、唇を覆う。
さっきの、合わせるだけのキスではなく、コリーヌの口中に男の舌が潜り込んできた。
彼女は目を閉じ、力を抜いた。
55姫と盗賊9:2005/08/31(水) 22:08:21 ID:6pZtZC7f

──たぶん、私はこの男のことが好ましいのね。

思った通り、アルディの唾液にもその臭いにもそう違和感を覚えぬ事で彼女は確信を持った。
自分でも意外なほどに見知らぬ男を大胆に誘い、しかもその男が厭がりもせず応えてくれるとは。
彼女は自分の美貌を知性ほどには把握しておらず、男というものにも無知だったのでこの顛末が奇跡のように思えた。

ごく自然に柔らかな舌が絡んできたので、男は口元を緩めた。
面白い女だ。
王女、しかも明後日修道院長になるという身でありながら自らなんという事を提案するのか。
たぶん普通の泥棒ならこんな面倒は御免だろう。
だが彼は興味を持った。
コリーヌの美しさもだが、穏やかでいて破天荒というこのギャップにひどく惹かれた。
王女を抱く機会などたぶん一生巡ってはこないだろうし、後腐れがないのも魅力的だ。
無事に退散する事だけは忘れぬよう、彼女の望みに協力するのもいいだろう。



解けかかったシルクの細いリボンをはずし、彼は掌を滑らせて王女の細く薄い肩を露にした。
肩幅といい丸みといいいかにも華奢で、病弱というのも頷ける。
だが肩から落ちた寝間着があらわした乳房は思いのほか豊かだった。
仰向けになっていてもふっくらと盛り上がって見える。
男はコリーヌの胴を両手で掴むようにして纏いつく寝間着を引き下ろした。
ほっそりとした躯だった。
布を放り、躯の両脇に掌をついた盗賊を、彼女はやや恥じらいながら見上げた。
「……痩せておりますでしょう」
「そうでもない」
アルディは彼女の乳房の先端に頭を下げた。
「ん」
ぴくん、とコリーヌは肩を竦めた。
淡い紅色の柔らかなそれを唇に軽く挟み、ほんの先を舌でなぞる。
白い肌の奥から早い鼓動が伝わり、アルディは思わずまた微笑した。
顎を大きく開けた彼が乳暈ごと口中に吸い込むと、コリーヌはその感触に小さくのけぞった。
「あっ」
舌が絡み付き、見えない場所で乳首に芯が通っていく。
男の口の中で自分の躯がどんな反応を返しているのか、コリーヌには感覚でしか察知することができない。
捏ねられている芯はとても敏感で、アルディの口元から濡れた音がたつたびに硬く尖っていくのがわかった。

コリーヌは唇を開き、熱い呼吸を逃した。
呼吸が勝手に早くなっていく。
男が身じろぎするたびに、顔の角度を刻むたびに、それに反応したくてうずうずする。
コリーヌは腕をあげた。男の頭におき、まだ湿っている暗い色の髪の毛に指先を潜り込ませる。
男が顔をあげた。ふるりと、吸われて伸びていた乳首が落ち、頼りなげに揺れた。
コリーヌは首を軽く曲げ、紅潮した顔で男を見た。
濡れた自分の乳房と、はちきれんばかりに硬く尖った乳首越しにアルディが視線を返す。
彼は唇を開いた──それが濡れているのを彼女は見た──「…なかなかに、みだらなお躯だ」
「そうですか…」
コリーヌは表情の選択に迷い、曖昧に微笑した。
「それは……悪い事ですの?」
「良い事です」
男の目に薄い笑いが浮かんだ。
「あなたにもだが、おれのほうにも。感じてくれる女を抱くのは愉しい」
「それは、ようございました…」
コリーヌは思わず喘いだ。
男の指が腰の曲線を辿り、太腿の内側に滑り込む。
彼女のような身分の女性は生理時でもなければ下着をつけない。その進行を妨げるものはなかった。
「力を抜いて」
コリーヌは頷き、ぎこちなく力を緩めた。
56姫と盗賊10:2005/08/31(水) 22:09:02 ID:6pZtZC7f

その素直さに、指示をしたにも関わらずアルディは胸をつかれた。
おそらく彼女は、さきほど彼が処女はなにかと面倒だと言った言葉を忘れていない。
これはこの王女の生真面目さなのか、それとも記憶力の優秀さを示すものなのか。
盗賊は頭を軽く振った。
余計な事を詮索するくらいなら最初から話にはのっていない。
とりあえずこの奇妙な姫君は美しく、敷いている彼女の躯は心地いい。
──だが、あまり時間をかける事はできまい。
調子に乗って捕縛されるはめになるのは御免だ。たとえそれがコリーヌを思う存分に抱いた後だとしても。

両脚と下腹部の交わる場所、ささやかな茂みにアルディは掌を這わせた。
覆うように指を揃え、コリーヌの紅潮した頬を見ながらゆるりと揉んで様子を見る。
かすかに姫君の唇が開き、かすかな喘ぎが漏れた。
「ああ…」
少しひそめられたくっきりとした細い眉には嫌悪の気配は漂っていない。
掌を押し下げ、中指に力をこめる。狭間の溝に沿わせ、さりげなくぬめり込ませる。
「んっ、あ…」
コリーヌが悶えた。その花びらの内側が潤っている事を確認し、アルディは染まった耳朶に囁いた。
「…お嫌ならお言いなさい」
「あ、あっ…ま…待って」
コリーヌは太腿をすりあわせるようにしてアルディの手を挟んだ。男の動きを抑えようとする仕草だ。
肩で息をしながら、彼女は盗賊の目に視線を絡ませた。
「も、ものを尋ねるときには、一旦やめてからにして」
男は口元を緩めかけ、無言で指を元通りに揃え、茂みから離した。
コリーヌは呼吸を整えようとしたが、狙いすましたように今度は彼は反対側の腕で彼女の脚の膝を握ってくる。
「え?」
王女のすらりとした片脚を肩に跳ね上げ、もう一方の足首をしっかりと握った男はかがみ込んだ。
コリーヌは細く叫んだ。
声が抑えられず、それは閉じた部屋の中で思いがけず大きく響く。
くねらせる腰から艶かしい水音がたち、コリーヌは必死でなにかしがみつけるものを探した。
男の躯も頭も彼女の下半身の上で、仕方なく手に触れた寝台のカバーを握りしめる。
アルディの唇と舌が、彼女の股間に潜り込んでいる。
煽るように音をたてて舐め上げるかと思えば舌先を尖らせてつついてくる。
攻め込まれているうちに、その舌が触れるとひどく気持ちのいい部分があることに気付く。
かすかに触れられただけで電流が流れたように背筋がこわばり、思考が漂白されかけてしまう。
「あっ、あっ…!ああっ、あっ」
声がいつまでもとまらず、不安になった彼女は拘束から逃れようと男の側頭部を膝で押した。
太腿の内側を押し付けることになったため、アルディは勘違いしたらしくその脚を抱え込んだ。
「──これがお好きか」
くぐもった声を股間に残して、彼が顔をあげた。
髪と同じく濃い色の目がひどく輝き、その口元から顎にかけてしとどに濡れている。
何に濡れているのか、思い当たったコリーヌの脚から力が抜けた。
「あっ、あ、おまえ、嫌なら言えって、今の質問は、どっ、どうでもいいの?こんなことをして」
何度も途切れさせながらそれでも懸命に尋ねると、アルディは目を丸くした。
頭を仰け反らし、彼は大声で笑い出した。
慌てて姫君は男を叱りつけた。
「しっ!人が、来ます」
「おっと」
盗賊も気付いたらしく、急いで口を引き締める。彼は回答した。
「……嫌と仰ってもやめるつもりはない」
コリーヌは唖然として男を眺めた。
「それでは、さきほどの言葉には何の意味もないわ」
「ありません」
アルディはにやりとした。
「これに意味などない。互いに溺れあうだけだ」
そういうものだろうか、とコリーヌは思った。
考え込んだ彼女の頬をひと撫ですると、アルディはかがみ込んだ。
「あっ、ちょ……」
また始まった。
57姫と盗賊11:2005/08/31(水) 22:09:45 ID:6pZtZC7f



もう腰に力が入らず、つつかれるたびに、吸い上げられるたびに反応してしまう恥ずかしさにもコリーヌが馴れてきた頃、やっと男は上体を起こした。
男が抱え込んだままに膝をたてた姿で姫君はぼんやりとした焦点を彼の顔に向けた。
「かなりお愉しみいただけたようだ」
彼は呟いた。
コリーヌの乱れきった長い茶色の髪を寝台に押し込まないように注意しながら、男は彼女の上に被さった。
「おれもそろそろ愉しみたい」
「おまえも……?」
蕩けるようで重い腰を、コリーヌはゆるやかにくねらせた。
男の重みがかかっているだけで快感が浮かぶ。
アルディは彼女の琥珀色の目に視線をあわせた。
「ご理解いただきたい。あなたはまだおれに抱かれたわけではない」
「そう…ですね」
コリーヌは頷いた。
「だが……」
アルディの声がふと暗くなった。近づいていた躯が固まった。

「…抱くと、子供が出来る」
「…そうです」
「そして、あなたは出産には耐えられない」
「………そうです。よく聞いていたのですね」

彼女の長い髪にアルディは顔を落とした。
「今思い出した。──それでは抱くなと言っているようなものだ」
「……………」
美しい姫君は不思議そうな目を男に向けた。
「…でも、おまえがそこまで気に病む必要はないのですよ」
盗賊はむくりと起き上がった。
「死ぬかもしれぬとわかっていて抱けるはずもなかろう」
「どう言えばよいのかわかりませんが」
彼女は男の頭に手を伸ばした。
「子供ができると決まったわけではありません。──どちらかというとその心配のほうが大きいのです」
アルディはゆっくり彼女を見下ろした。
コリーヌは囁いた。
「侍医が申しておりました。おそらく私には子供は望めぬのです。言ったでしょう、王族は子孫を残すことが義務なのだと」

しばし男はじっと彼女を見つめていた。
コリーヌはその髪を撫でていた。

「それが本当なら」
やがて彼は呟いた。
「──あなたが嘘をついていないのなら」
「良かった」
彼女は囁いた。
「続けてください」
58姫と盗賊12:2005/08/31(水) 22:10:45 ID:6pZtZC7f


アルディが上着を脱ぎ、シャツのボタンを外していく姿を眺めながら、コリーヌは濡れそぼった谷間を気にしていた。
剥き出しの背中が現れる。
その広さと逞しさに動悸が一層はやまった。
盗賊はシャツを脱ぎ捨て、ズボンを下着ごと脱いでしまうとコリーヌに向き直った。
その腰から勃ちあがり、腹を背景に揺れているものに彼女の目は吸い付いた。
それは彼女がなんとなく予想していたものより複雑なかたちで、しかも大きかった。
王女は低く囁いた。
「アルディ」
その躯を引き寄せながら、男は呟いた。
「何か?」
コリーヌは首を振った。
「弟のと違うわ」
「………」
ちら、と男は自分のものに目をやり、コリーヌの耳朶に質問を落とした。
「最後に弟御のものを見たのは?」
「あの子が赤ん坊の頃です」
「無理もない」
コリーヌが何を言う間もくれず、男は彼女を抱きしめると唇を重ねてきた。
最初のキスよりも激しかった。
「──は…」
解放されて喘ぐと、そのあえかな声に男は目を細めたようだった。
「お喋りはもうおやめなさい」
「でも」
コリーヌは男が太腿を持ち上げてその間に膝をつくのを感じて、動揺を抑えつけた。
男が急に性急になったように感じた。
「黙らなければいけませんか?」
「できれば」
男は彼女の太腿を持ち上げてその間に膝をついた。
腕が、しっとり汗ばんだ腰に巻き付く。
「──名前を呼ぶくらいは?」
「ご自由に」
コリーヌは琥珀色の視線を男に投げた。
「アルディ……」
男は顔をあげた。
その若々しい顔が、率直な、そして不満げな表情を浮かべた。
「…あなたにどうせ呼ばれるなら、本当の名がいい」
ぐい、と男の腰が沈んだ。
コリーヌは思わず男の躯にしがみついた。股間に押し付けられた男のものは熱く、硬かった。
「ん」
姫君は呻いた。
濡れた谷間を探るように突き立て、付け入る隙をすぐに見つけた彼は腰の位置を落とした。
「本名はジャンだ」
コリーヌの耳に囁くと、彼はゆっくりと力をいれて押し入って来た。
申し分なく濡れていたためか、それともコリーヌの協力ゆえか、それは最初は楽に進んだ。
彼女は喘ぎ、その滑らかな違和感に少し安堵する。
これならば醜態を見せることなく耐えられそうだと思ったその時、衝撃がきた。
「……は…っ…」
コリーヌは呼吸をとぎらせた。躯の芯をえぐられるような、だが鋭さには欠ける、強烈な圧迫感。
押し上げるように彼女の躯の奥まで一気に貫くと、男は動きをとめた。
「──辛いですか」
男の声はややうわずっている。
「やめる気は、ないが」
その腕を、コリーヌは握りしめた。
「……」
生まれて初めて、言葉が出てこない。
彼女は脈拍のたびに腰の奥を覆う痛みと重量感に圧倒されていた。
男を躯に迎え入れている状態の実際の感覚は、ひどく感覚的で、言葉にしにくいものだった。
59姫と盗賊13:2005/08/31(水) 22:11:31 ID:6pZtZC7f
「…わかりません」
やっとの思いで正直に彼女は答えた。
痛いといえば痛く、辛いといえば辛い。
だが熱くて逞しい躯に覆われ、抱きしめられている感覚は悪くない。
盗賊の男は首を曲げ、ぴんと尖ったままの乳首を唇で弾いた。
「あ…やめ…」
不穏な気配がした。
腰に埋め込まれたものまで乳首に与えられた刺激が鮮烈に糸を張り、コリーヌは悶えた。
懸命に頭を押しやろうとするがアルディ──ジャンはびくともしなかった。
「──やはり、相当にこちらの才能がおありのようだ」
ジャンは呟いた。
「それなのに修道院に入るという。つくづく惜しい」
コリーヌは細い啼き声をあげた。
自分がどれだけ獣じみた声をあげているかすらわからなかった。
「これなら初めてでも、あなたを気持ちよくさせてあげることができるかもしれないな」
遠慮のかけらも見せず男は乳首をしゃぶり、腰を動かし始めた。
「あ…あ……あ……!!」
自分の狭い場所を男のものが往復している様をつぶさに感じ取り、敏感な乳首を舐め上げられてコリーヌは乱れた。
狭いながらも動きは滑らかで、男の腰の力は緩まない。
動きにくいのか、男は顔をあげた。
コリーヌの細い躯に沿って、ジャンは片手の指を繋がっている場所に送り込んだ。
乳首よりさらに敏感な場所を撫でられた姫君は躯を震わせた。
彼女と自分の液体にぬるぬると塗れたそれを摘んで転がしながら、男は動きをはやめていく。
「ふ……あ……っ」
押し拉がれた躯を震わせて、コリーヌは高まっていく不穏な気配に囚われていた。
ジャンが抉るたびにそれは内圧を高め、どこまでその圧力が高まっていくのかがわからない。
彼女の躯は男が送り込む感覚を容れる容器になったようで、ただただその感覚に耐えていると勝手に声が漏れ、肌が紅潮し、鼓動が激しくなるばかりである。
自分でも気付かぬうちに彼女の腰はゆるやかに男に応じ、動き始めている。
ジャンが、歪めた顔を彼女の頬に近づけた。
余裕が消えていた。彼は喘いだ。
「コリーヌ」
かみつくように唇を貪り、両腕で彼女の胴を抱いた。猛然と動き出す。
「ああっ、だめ!」
コリーヌは押し上げられるままに躯を仰け反らせ、カバーに背を擦り付けられながら叫んだ。
限界がきそうだった。
男の動きの激しさが彼女を煽り、定かではないものの這いよるものの気配が露になる。
「あぁ、あぁ、あぁ……!」
彼女の喉から漏れるのは完全に男の動きに同調したリズムだった。
コリーヌは、男の腕に指を絡めた。
しがみつかねばどこかに流されてしまいそうなものが、気がつけばすぐそこまで迫っていた。
男がいきなり彼女を押さえ込み、猛ったものを細い躯から引き抜いた。
その動きで彼女は弾けた。
圧力が解放され、彼女の輪郭をぬぐい去り、思考を真っ白に染め変えた。
男の腕に鋭い小さな爪先をたて、コリーヌは叫んだ。
「ジャン…!」
それではこれが快楽というものなのだと彼女は思い、躯を小さく震わせた。
力という力の失せた女の躯を抱き、声にならない喘ぎを男は漏らした。
細く引き締まったぬめる腹に、白濁した滾りを迸らせる。
生々しくくっきりとした臭いが立ちこめた。
温かなそれが自分を穢すのを感じ、それでも嫌悪の浮かばない事にコリーヌは満足して、うっとりと目を閉じた。
60姫と盗賊14:2005/08/31(水) 22:12:17 ID:6pZtZC7f


やがて男が深い吐息をついた。
己の欲望をぶちまけた姫君の肢体を眺め、複雑な顔になる。
ゆっくりと腕を伸ばすと彼は自分のシャツをとり、彼女の躯を拭いはじめた。
コリーヌはされるままになりながら、ジャンの顔を見つめた。
「……あなたは、優しいのね」
声は少し掠れていた。
ジャンは目をあげず、苦笑した。すっかり綺麗にした彼女の腹を眺め、シャツを床に放る。
「優しい男なら、言われるままに抱いたりしない」
「いいえ」
コリーヌは首を振った。乱れた髪を寝台に残し、彼女は躯をひねってジャンに手を伸ばした。
「……今のは、子供ができないようにしたのでしょう」
その細い手を握り、彼は表情の選択に困ったような顔でコリーヌを眺めた。
「…まさか、修道院に入る女を妊娠させるわけにもいかないから」
それもあるだろうけれど、と彼女は思った。
出産が命に関わる事だという彼女の事情を、この行きずりの男はちゃんと覚えている。
「ありがとう」
コリーヌはそっと手を振りほどくと、寝台の上に起き上がった。
周囲を見回して、ぐしゃぐしゃになった寝間着を探し出す。
「見ないでいてくださる?」
ジャンは肩を竦めて向こうをむいた。
素早く躯を通し、最初に出会った姿になると、彼女は髪を肩から払った。
「……もうお帰りになるの?」
「それがいいでしょう」
振り返ると、男はあらかた衣装を整えていた。
シャツだけは着ずに、彼女が見ているのに気付くとにやりと笑って懐に突っ込んだ。
「残していくわけにもいかない」
「そうね」
少々頬を赤らめて、コリーヌは床に降り立った。
靴を履いている男を残し、彼女は窓べに近づくと空の気配を窺った。
雨はやんだようだった。
61姫と盗賊15:2005/08/31(水) 22:12:56 ID:6pZtZC7f

彼女が振り向くと、ジャンはすぐ背後に来ていた。
顔をあげると、彼は彼女の躯に腕をまわして抱き寄せた。
唇が軽く重なった。
「──覚えていてくださる?」
顔が離れると、コリーヌは沈んだ口調で言った。
「そういえば、抱いた女の中にあんなはしたない王女も居た、と」
「忘れないと思う」
男は呟いた。
「この修道院を見るたびに思い出すだろう」
「口が巧い殿方は素敵ね」
コリーヌはじっと男の濃い色の目を見つめた。
「ここで生きていく楽しみができたわ」
ジャンはその琥珀の目を見つめ返した。
「──時折、忍んできてはいけないかな」
「だめよ」
臈たけた姫君は顔をしかめた。
「院長がそれでは、ほかに示しがつきませんわ」
ジャンは笑った。
「…あなたなら、そういうと思った」
彼は窓の傍にかけてある豪華な衣装に視線をやった。
「明後日の衣装?」
「そうよ」
コリーヌは微笑した。
「きれいでしょう」
「見られないのが残念だ」
男はもう一度彼女の唇にキスをした。
躯が離れ、その熱を追うようにコリーヌがベランダに足を踏み入れると、もう男の影は手すりの上に立っていた。
「いつまでも捕まらないで」
王女は小さく声をかけた。
「お元気で」
低い声がした。
「忘れない、コリーヌ」
そのままがさりと木の葉が触れ合い、気配は消えた。

コリーヌは足を止め、静かに雨あがりの夜気を吸い込んだ。
湿度の高い空気は冷たく、夜明けにはまだ遠い時刻だった。
この闇の続く世界のどこかにいってしまった男、おそらくもう二度と会うこともない男。
彼女はそろそろと部屋に戻り、窓を閉じた。
ひときわ冷たいガラスに額をつけ、向こうの闇に囁きかけた。

「あなたで良かったわ」



サンテデュ女子修道院の院長は、その後本人も周囲も意外なほどに長生きすることになった。
盗賊アルディが捕まったという噂はその穏やかな生涯の間、王国中で囁かれたことは一度もなかった。



おわり
62名無しさん@ピンキー:2005/08/31(水) 22:35:01 ID:ZlNzhPpq
>>40-45
姫騎士GJ!
この身分の差を感じさせる描写が(・∀・)イイ!!

>>46-61
こちらもGJ!
ちょっと泣いた。SETUNEEEEEEEEE!
63名無しさん@ピンキー:2005/09/01(木) 19:19:36 ID:qk4LuJuD
>>46-61
GJ!!
まさか此処で貴方に遭遇するとは思わんかった。
64名無しさん@ピンキー :2005/09/01(木) 21:53:27 ID:MkrlC/2S
両者ともGJ!
いい話やぁ(ノ∀`)
65名無しさん@ピンキー:2005/09/02(金) 20:31:48 ID:zxu6Okv6
GJ!
切ないのにお涙頂戴にならない話、ネ申 の 仕 事 だ。
聡明で美しくてでもどこか間の抜けた王女様すきたー
盗賊の癖にベッドマナーのいいジャンかっこよすぎだー
続きもぜひ読んでみたい!
王女あいたさに忍んでくるのもいいが
何か大事なものが盗まれて苦境に立った王女様を助けるとか、
そういう話の展開も面白いなー
66奴隷と四人の娘:2005/09/03(土) 00:42:56 ID:jIK1nJMy
「あははは、お馬さん、お馬さん、パッカパッカ。」
パシッパシッと、尻や腰に平手が飛ぶ。子供の力だ。痛くもなんともないが
長時間同じ姿勢をやらされてる上、固いフローリングに押し付けられて肘や膝が
ガクガクしてくる。最初はなんとも思っていなかった背中の少女の重みも次第に
ズシリと堪えてくるこんなこと、いつまでやってなきゃならないんだ!?
「ほらぁ、もっと早く走ってよ!」パシッとまた尻を一叩きされる。
「フゥーン、フゥーン!」俺は馬の鳴き声を真似して叫び、床を這いずるスピードを
さらに 上げる。くつくつ、と笑い声が上がった。「見てよ、あのかっこ!!」嘲笑の
主が誰かよくわかってる。振り向いて 暖炉の脇に立っているはずのそいつをにらみ
つけようとした矢先、口にくわえている 手綱代わりの紐をぐいっと引っ張られた。
「んくっ!?」「はぁい、どうどう!」
そして、俺の背中に乗っている奴はとんでもない事を言い出した。
「ねえ、そこの火かき棒をとってよ。あんまりひっぱたいてると手のひらが痛くなって
きちゃう。」「ええ、いいわよぉ。」視界の隅で太い鋼の火かき棒が手渡されている。
おい、冗談だろ!?「さあ、いくわよ。走りなさい!」ビュッと棒が振り下ろされる。
尻に硬い棒がめりこみ、骨にまで響く。「いってえっ!!」俺は馬が躍り上がるかの
ように反り返って尻を右手で抑えた。ドサッと背中に乗っていた奴が床に落ちる音
を聞きながら。「いったぁーい!!」金切り声が背後から上がる。俺は怒りに震え
つつくるっと体を180度回して今まで騎手気取りだった奴の顔をにらみつける。
「ジェシー!!」床に落ちた痛みで目に溜めていた涙が、俺に怒られてみるみる
あふれ出し頬を伝い落ちる。やがてダムの決壊を思わせる勢いでジェシーは
大きく口を開けて泣き始めた。
「うわぁあぁあぁん!!」俺はイライラしながら叫んだ。「泣きたいのは俺の方だよ!!」
もうどうにでもなれという気分だ。いったん泣き出したらジェシーはなかなか泣きやまない。
きらめき輝くような美しい金髪を振り乱してひたすら泣き叫ぶのを困惑しながら見守って
いるその時…。
67奴隷と四人の娘(2:2005/09/03(土) 00:48:28 ID:jIK1nJMy
ゴギッという鈍い音とともに身体の一番下から衝撃が走る。衝撃は言いようの
無い痛みと気持ち悪さに変わっていく。息が詰まり、目がくらみ、油汗があふれて
額から滴り落ちる。後ろから股間を蹴られた!「うああああっ!?」俺は股間を
押さえ て床の上をゴロゴロと転がりまわった。
「ジェシーを泣かしたわねえ、この薄らトンカチ。」
エリが怒りに燃える目で俺を見下ろしながら吐き捨てた。
「あんた何様だと思ってんのよ。この間抜け!」
そう罵りながらエリはのたうちまわる俺を息継ぐ間もなく何度も蹴り飛ばす。
おれは股間と腹を守るために身体を九の字に曲げて弱い部分を上から両腕で
押さえガードした。。 その間にも何度もエリの固い靴先が俺の背中にめりこんでいく。
「あーら。エリったらまたヒースと遊んでいるの?」軽やかだが氷のように冷たく
蔑むような声 が耳に流れてくる。エリがその声に応じた。
「デイジー。ヒースの奴がジェシーを泣かしたのよ。地面に叩きつけてね。」
「しょうがないわねえ。」俺には見えないがそう言って肩をすくめているのだろう。
「殺さない程度にほどほどにしときなさい。」デイジーは足音を残して部屋から出て
行った。 「エリ…。」今度はルビーの声だ。「このぐらいにしておきなさいよ。」
エリは荒く息をつきながらルビーに答えた。
「ええ?まだ蹴り足りないわよ。あんたも一緒に蹴らない?」
ルビーは言った。「ヒースにはまだいろいろやらせなくちゃいけない用事があるのよ。
もし骨とか折れたら面倒じゃない。」エリの蹴りがようやく止まった。
「それもそうね…。」エリはつぶやいた。「さあ。もうお仕置きはこれで勘弁しておいてやるわ。」
やっと終わった…背中がズキズキする…かなり青アザをつけられたに違いない…。
「さっさと起きなさいよ!」最後の一発とばかりに思い切りエリは俺の背中を蹴り上げた。
息が止まりそうになるのに耐えながら俺はヨロヨロと立ち上がった。
やっと黒髪でクリッとした丸い青い目、高くて形の良い鼻が特徴のエリとブラウンの髪で同じ
色の大きな 瞳、可愛い赤い唇の持ち主のルビーの二人の顔をはっきりと見ることができた。
ルビーはきっぱりとした口調で言った。「ヒースクリフ。あんたが悪いのよ。可哀想な
ジェシーの ためにフォルックさんのお店でキャンデーの詰め合わせを買ってきてやりなさい。」
「はい…。」俺はフラつきながら玄関に向かった。ふと振り向くと泣き腫らしたジェシーの目と
視線が 合ってしまった。ジェシーはベーッと俺に向かって舌を突き出した。
68奴隷と四人の娘(3:2005/09/03(土) 01:19:53 ID:jIK1nJMy
俺の名前はヒースクリフ。この屋敷に来る前には別の名前があったが
旦那様がつけてくださった今の名前以外に俺の名前はないと思っている。
俺は両親の顔を知らない。俺が赤ん坊の頃から知っているという年老いた
片目の爺さんが俺は辺境の遊牧民の子供で両親は生活に困って、まだ
赤ん坊の俺を将来の奴隷として売ったらしい。ガキの頃から俺は
売られた先の家で揉め事を起こして、また二束三文で奴隷として
売りに出された。いくつの家屋敷を転々としたことだろう。
三年前、俺はモードント様、すなわち旦那様のお眼鏡にかなって
小貴族のエルバンジュ家に迎えられた。エルバンジュ家は戦士の家柄
だった。俺は戦場ではモードント旦那様の側近く仕え、共に剣を取って
戦う奴隷戦士、マムルークとして働くことになった。
旦那様は俺にヒースクリフという名前を与えてくださった。そして、
戦い方はもちろんのこと読み書きや計算まで、厳しさの中に優しさと気遣い
を秘めて俺に教えてくださった。奥様のジョアンナ奥様もとても優しい方だった。
時々、俺は旦那様の機嫌を損じてひどく叱られたがそんな時、奥様は俺を
許してくれるよう、旦那様にとりなしくてくださった。旦那様と奥様には
四人の娘、上からデイジー、エリザベス(エリ)、ルビー、ジェシーの四人の
娘がいたが俺をまるで実の息子のように扱ってくださった。俺も旦那様と奥様
を実の親のように慕っていた。だが…そんな暖かい日々は半年前に終わった。
俺と旦那様は北方の遊牧民との戦いに参加した時だった。旦那様はかすり傷から
菌が入ってそれが元で重い病気にかかり、俺に看取られながら亡くなられた…。
奥様は可哀想にハウゼンの都のお屋敷でその悲劇を知り、最愛の夫と最期まで
一緒にいてやれなかった事を悔やみ、やがて病にかかり…旦那様の亡くなった
三ヶ月後に後を追うように亡くなられた。
エルバンジュ家の当主は長女のデイジーが継いだ。その日からだった。
俺が家族から再び奴隷、いやそれ以下の存在になったのは。
69奴隷と四人の娘(4:2005/09/03(土) 01:52:35 ID:jIK1nJMy
風呂場をもうもうと湯気が覆いつくしている。俺はそんな中、シャツと
パンツ姿で二つの美しい背中を前に立ち尽くしていた。彼女達と風呂に
入る…奥様が息を引き取る三ヶ月前までは考えられなかった。
自分達の裸を見られても平気ということは俺を同等の人間、異性と考えて
いないのだろう。そう良くて下位の人間、あるいは動物、果てには物、に
見えるのだろう。だが…俺は物じゃない。平静でいられるわけがないんだ。
エリザベスことエリとルビーは15歳になる双子だった。ただ、双子という
わりには二人とも似ていない。髪と目の色が違うし性格もまるで違う。
目の前の背中もまた違っていた。エリはやや色黒で女の子としては肩幅も
広い。だが俺を迷わすのは優雅な背から腰に至る曲線と豊かな肉のついた
見事なまでに丸い尻だった。俺の好みにぴったりの形だった。
それに対してルビーは身体の色は抜けるように白いものの、背から腰に
至る線は平坦で尻の肉も薄かった。エリとルビーの体型が逆だったら
良かったのに、俺は残念でならなかった。エリはいつも気にいらない
ことがあるとさっきのように俺を蹴ったり鞭や棒で殴るからだ。
それとうってかわってルビーは優しかった。俺がエルバンジュ家の
息子から奴隷以下に落ちたあの日と変わらず優しく接してくれている。
ただし、デイジー、エリ、ジェシーの目に隠れてだが…。
「早く流しなさいよ。」エリの声に俺は物思いから覚めた。
「はい。」俺は洗面器にお湯で満たし、ざーっとルビーにかける。
その後、同じように湯をエリにかけた。「熱いわね。」
エリがきつい口調を俺に投げかけた。「すみません…。」
俺は謝った。ちょうど良い湯加減だったはずだ。現にルビーは何も言わな
かったのに。俺は石鹸をつけたタオルで気を使いながらエリの背中を
洗い始めた。湯を弾く艶やかな肌。タオルから伝わるゴムのような固さと
柔らかさ。腰の曲線。脇の下からのぞく優雅な球体…俺は唾を飲みこんで
音を立てないように注意しながら…そして股間に血が入りこんでくるのを
感じながらできるだけ優しく少女の背中をこすっていく。
70名無しさん@ピンキー:2005/09/03(土) 20:19:51 ID:eFEIRJo4
愛が足りない
71名無しさん@ピンキー:2005/09/03(土) 20:38:53 ID:yiTK2O1/
スレ違いだったらすみません。
ようやくスレが立てられるようになりましのでそちらに移動します。
申し訳ありませんでした。
72名無しさん@ピンキー:2005/09/04(日) 20:55:43 ID:oaIhENVb
保守あげ
73名無しさん@ピンキー:2005/09/04(日) 22:37:12 ID:MNt6t9uo
GJ!
続きキボン
74名無しさん@ピンキー:2005/09/05(月) 00:37:22 ID:Fz1OodE8
エロパロ板初カキコミの漏れも応援するよ(´・ω・`)ノ
75名無しさん@ピンキー:2005/09/05(月) 00:46:34 ID:nGH38kL2
女の子にいじめられる
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1125747451/
こちらのスレに移りました。もし興味のある方がいらっしゃるのならこちらの方へ…
76名無しさん@ピンキー:2005/09/05(月) 05:38:23 ID:J/CHUgTk
>>46-61
いい物語でした(*´∀`*) GJ!
77名無しさん@ピンキー:2005/09/07(水) 23:45:59 ID:bvXWY/NC
保守あげ
78名無しさん@ピンキー:2005/09/08(木) 22:23:38 ID:dmYLLoOV
護衛か教育係がやんちゃをやらかした姫にたいしてお仕置きをするという話キボン

護衛はもちろんさわやかにきちくで
79名無しさん@ピンキー:2005/09/09(金) 21:10:32 ID:MHZZe6ZI
立場を気にして女として見てもらえないお嬢様が教育係を罠にかけ、自分を犯させる
強姦だと思っていたのが罠だと知り唖然とする教育係に、更に旦那様公認だと知り、完全に逃げられなくなる

そういや、お嬢様と教育係って、妹の持ってる漫画にあった
ろまんがって奴で、少女漫画にあるまじき下ネタ満載の漫画
ちょっとお嬢様が幼いけど、それとなく匂わせてて結構いいかも
80名無しさん@ピンキー:2005/09/10(土) 00:42:43 ID:5J4cR+G4
>>46
久しぶりにツボにはまる小説を読みました。これ好き!!
とても良かったです
また何か46さんの小説読んでみたいです
81名無しさん@ピンキー:2005/09/12(月) 14:40:21 ID:UgD5/VD5
保守
82名無しさん@ピンキー:2005/09/13(火) 01:06:22 ID:zhMM2Ljq
>>80
46さんの小説なら、男装少女萌えスレにもあるぞ。
ここの話と少し関係のある話で、そっちも非常にイイ。
読むべし。

46さん勝手に宣伝しちゃってスマン
83名無しさん@ピンキー:2005/09/16(金) 01:03:26 ID:IMBo8k6h
ここはひとつ、和モノなんかも読んでみたいな
84名無しさん@ピンキー:2005/09/16(金) 01:30:50 ID:pdKtypmz
「ハヤテのごとく!」スレがすぐ上にあるのがワラタ
85名無しさん@ピンキー:2005/09/18(日) 11:22:38 ID:W5d38i4c
お転婆お嬢が木登りしてて、落ちるところを従者が抱き止める。
殿方の身体にそんなに密着したのが初めてで「無礼者!」とか言いながらも
従者相手なのにドキドキしちゃうお嬢…みたいなのが見てみたいなぁ〜。
86名無しさん@ピンキー:2005/09/18(日) 18:30:25 ID:jumgzltr
裏切騎士とその所為で国を亡くした姫の純愛モノを書いてますが、
前半はカンキーン陵辱っぽいのはNGでつか?
87名無しさん@ピンキー:2005/09/18(日) 19:46:41 ID:xQnfSSVE
俺は大歓迎だが
88名無しさん@ピンキー:2005/09/18(日) 20:20:16 ID:vekGwCLP
俺も大歓迎だが
89名無しさん@ピンキー:2005/09/18(日) 20:43:26 ID:9gltJJCV
俺を大歓迎だが
90名無しさん@ピンキー:2005/09/18(日) 21:28:02 ID:qApDvPbO
弟姦ゲイ
91裏切騎士と亡国姫 1:2005/09/19(月) 00:06:14 ID:1s3if53Q
オッケ〜イ!それじゃお言葉に甘えて投下するぜ、フゥーーーーー!!
※取りあえず導入部分につき、非エロ。

*****

「…………ここは…………?」
サシャは目を覚ましたその場所に見覚えは無かった。
だが、そこは彼女の部屋にも劣らぬ位、仕立ての良い調度品でコーディネートされた部屋の、
これまた豪奢なきらびやさこそないが、手抜きのない繊細で緻密な彫刻の施された寝台の上に
彼女の身体は横たえられていた。
「お目覚めですか、姫様」
まだ完全には覚醒しきれていない身体を声がした方向に向けると、
そこには彼女の親衛隊長であるレザンが立っていた。
いつもの穏やかな口調に、真摯な表情。
レザンは彼女の知っている人物そのままなのに、サシャは何故か違和感を覚えた。
(……あぁ、いつも親衛隊の白い制服のレザンを見慣れていたから、黒い衣装が不思議に感じるのね)
だが、少し長い黒髪に黒い瞳を持つレザンには黒を基調にした軍服が似合わないとは決して思わない。
むしろ鋭さと凛々しさが増して男らしくさえ感じる。
「ごめんなさい、私、少し寝ぼけている様なの。ここはどちらのお屋敷だったしら?」
サシャが12の時から5年間、ずっと彼女の傍らにいて身を挺して護り続けてくれた存在を確認して、
少し安心した。
「ここは私の屋敷です」
瞳はいつもの穏やかで優しいそれなのに、口角だけを歪めた爬虫類を思わせる嫌らしい笑みでレザンが答えた。
こんなレザンの表情を一度も見た事が無かったサシャの心臓がドクン、とひとつ大きく震えた。
続けられる言葉の続きを知っているかの様に、青ざめたサシャの顔から瞳を逸らさずレザンは残酷な声で告げた。
「……………メージ国の、ね」
92裏切騎士と亡国姫 2:2005/09/19(月) 00:09:12 ID:1s3if53Q
サシャが彼に違和感を感じたのは服の色の所為なのではなかった。
その胸に輝いていたのがサシャの国であるロッテン王国の勲章ではなく、敵対しているメージ国の物だったからだ。
そして今、サシャの寝台に片膝付いて彼女の頤を掴んで上向かせている、
意地の悪気な表情を浮かべるレザンは彼女の知る彼では無かった。
「ロッテンは墜ちました。
貴女はもうロッテン国第一王女ではなく、…………俺の戦利品だ」
「…………冗談………よ、ね……?」
声が、唇が震えているのが自分でも分かる。否、身体全体が震えている。
いつの間にかレザンに身体を支えられていたので寝台の上に起こした上体が崩れ落ちる事は無かった。
93裏切騎士と亡国姫 3:2005/09/19(月) 00:15:13 ID:1s3if53Q
しかし、もう片方の手で頤を掴まれている体勢に変わりはなく、
レザンの冷たい漆黒の瞳から眼を逸らす事も出来ずにいた。
それでも、彼がいつもの優しい顔に戻って『申し訳ありませんでした』と笑ってくれるのを期待した。
そんなサシャの怯えた心中を察したのか、レザンはふっと笑って優しく告げた。
「残念ながら、冗談ではございません」

「………覚えていらっしゃらないようですから、私が教えて差し上げましょう。あなたのロッテンの最期を」



ロッテン王国は古くから続く血統を重んじる国で、小さいながら立地条件の良さに恵まれた豊かな国だった。
ただ、この国にはいくつか頭を悩ます問題あった。
ひとつは最近めきめきと勢力を付けて来たメージ国の侵略。
こんな小国ではとても太刀打ち出来ずに、ロッテンと似た境遇の近隣小国と
小魚の群れの様に固まって対抗するのが精一杯の現状。
最もメージ国の進軍から一番遠隔に位置する為、ロッテン国軍は余裕の面持ちでいた。

もうひとつは世継ぎの問題。
ロッテン国は常に男王が治めるという法がある為、
サシャは近々、婚約の決まった相手の元に降嫁させられる事が決まっていた。
それは勿論、恋愛感情の末の婚姻などではなく、王位を継ぐ事の出来ない王女達を
有効的な駒として差し出される政略的なものだ。
そして、対メージ国戦の為の武器を調達する為の資金援助を公約したブルボ国のアルフォー公爵が、
サシャの嫁ぎ先だった。
17歳になったばかりのサシャとは倍以上も年の離れたアルフォー公爵は
『脂ぎった助平中年』という形容が驚く程に相応しい人間だった。
しかし、国の為、王女の運命、と諦めていたのか、
サシャは未来の旦那と顔合わせした後、一度も不平を口に出す事は無かった。
94裏切騎士と亡国姫 4:2005/09/19(月) 00:18:09 ID:1s3if53Q
そんなある日、サシャが婚礼衣装の仮縫いに時間を取られていた矢先の事だった。
戦の炎は街を焼かずして、城から上がった。
アルフォー公爵からの献上品として送られて来た荷の中にメージ国軍の戦士が紛れ込んでいたのだ。
国への進行は遠い未来とたかを括っていたロッテン国軍は中核をいきなり攻められ反抗する暇すら無く陥落した。
サシャは城内が何やら騒がしいと感じた直後に、後ろから甘く強い香りのする布に口を塞がれ、
そのまま意識を失い、今に至る。

サシャは『支えられている』と認識しているが、端から見れば『抱き寄せられている』という体勢にも気づかない位
ままならぬ思考で、それでも現状を整理しようとレザンの腕の中で必死に考えを巡らせた。
「………そんな……でも、それでは……父上や、母上……それに妹達は……?」
サシャは縋り付くようにレザンの軍服の袖をきつく握り締める。
「御母上や妹姫様達は今はご無事でいらっしゃいます。
………ただ、残念ながらロッテン国王に存命されると今後に障ります故、先日処刑されました。
しかし、御遺体は丁重に取り扱わせて頂きましたので、ご安心下さい」
淡々と事務的な口調で告げられた一言一言が言葉の刃となってサシャの心を深く抉る。
「なんで……!アルフォー公家の紋章がある物以外は城には入れない筈……。
………メージ軍が荷馬車を襲撃したの……!?…それともアルフォー公爵が裏切っ……」
涙をぽろぽろこぼしながら、父王が処刑されたショックで取り乱すサシャの姿に少し哀しそうな笑顔を向け、
レザンは彼女の頤にかけていた手をほどき、乱れた髪を撫でてやる。
黄金、というよりは白金に近い髪は、癖も腰も無く、輝く滝の様にその背まで流れている。
「………姫様には、もうご理解なさっているのでしょう?
……………私が裏切り者です」
ハッとしてレザンの顔を見上げてみせたが、サシャは彼の胸にメージ国の勲章を見つけた時に薄々覚悟はしていた。
だが、5年もの間、サシャの親衛隊長として常に傍にいた彼が祖国を裏切る様な真似をするとはどうしても思えなかった。
真面目で正義感が強くて頼りになって優しい、サシャにとって少し年の離れた兄の様な存在だった。
「………何故、……レザンが……その様な……」
レザンは髪を撫で付けていた手をサシャの頬に添え、
未だに涙が溢れて止まないエメラルドグリーンの瞳を真っ直ぐに覗き込む。
「貴女をどうしても私のものにしたかったから」
95裏切騎士と亡国姫 :2005/09/19(月) 00:20:13 ID:1s3if53Q
すいません、『ここまで』入れるの忘れた。
逝って来るorz
96名無しさん@ピンキー:2005/09/19(月) 00:44:42 ID:gWVRTBM8
新作キタ!
このシチュ萌えまくりです。
GJ!
サシャ=チョコレート
レザン=レーズン
ですな。
いろんな意味でおいしそうですw。
続き熱烈キボン!
97名無しさん@ピンキー:2005/09/19(月) 01:04:05 ID:CagzNpaJ
まだあえてGJは控える。
が、イイ。続き待ってるぜ〜〜ッ!!!
98名無しさん@ピンキー:2005/09/19(月) 10:35:42 ID:pVRgMoud
これはとてもいいものだ
99裏切騎士と亡国姫 5(※陵辱注意):2005/09/20(火) 01:52:30 ID:lUmmiNpA
その言葉を聞いた瞬間、サシャの中で何かが弾けた。
「………この……!裏切り者!!卑怯者!!!亡き父に代わって、私がお前を討ってくれる!!!」
生まれてこの方17年、待望の世継ぎでこそなかったが、王女として完璧な容姿と品格を持ち、
蝶よ花よと育てられたサシャが他人に対して真剣に怒りの感情を向けた事は無かった。
だから、自分の中のこの感情を何と呼んでよいのか分からなかったが、ただ一つ、目の前の男だけは許せない。
父を殺した。国を潰した。民だってただでは済まないだろう。
そんな大事とこの身ひとつ、ものにする事を秤にかけるだなんて………!!
頬に添えられたレザンの手を乱暴に振り払って、サシャは彼に掴み掛かった。
しかし、哀しいかな、ただでさえ成人男性と少女の体格差に加え、
片や軍人、片や護身術のひとつも知らない細腕の姫君。
勝負以前の問題で、サシャは簡単に取り押さえられてしまった。
だが、身体を拘束されてもレザンを見上げる瞳だけは憎しみに満ちている。
ひと睨みで他人を射殺せるという邪眼もかくやといった形相で睨まれている当のレザンはどこ吹く風、
涙を表面張力いっぱいまで張ったサシャの深い湖の色の瞳を純粋に美しいと思った。
だから、許容量を超え、塞き止めきれなくなった涙が新しい筋を作った時、
自然とレザンは己の唇で零れ墜ちる雫を受け止めた。

「………なっ!?放して!!……放しなさい!!この無礼者!」
抵抗を試みるが両腕を拘束され、両膝を突き合わせた体勢で彼女に出来る事は、
せいぜい虚勢を張って声を上げる事だった。
「……さっきも言っただろう。お前はもう俺の『戦利品』で、俺はメージ国の軍人だ」
慇懃無礼な口調でそう言うと、片手で彼女の両腕をまとめて捕らえ、
もう片方の手で無理矢理その頤を上向ける。
真上から見下ろしたサショの顔は、最早隠し様が無い程、怯えの色が滲んでいた。
その血の気の無い表情に、レザンは宥めすかす様に、クスリと優しい笑みを浮かべ猫撫で声で言った。
「悪い様には致しませんから、どうぞ、そんなに怯えないで下さい」
そしてその桜色の唇にそっと口付ける。
触れていたのは一瞬の事なのに、まるで火掻き棒を当て付けられたみたいに、体中が一気に熱くなった。
サシャがその口づけの熱さに驚き、怒りの声を上げる間も無く、
レザンは手際よく彼女の身体を組み敷いて激しい口付けを降らせた。
最初の触れるだけのキスにすら衝撃を受けたのに、飢えた獣が獲物を貪る様に唇ごと吸い上げられた時には、
その行為に恐怖を感じた。
そして、病人の様に熱っぽい癖に、眼光だけはやたらとギラついた瞳で自分を見下ろすレザンの瞳を怖い、と思った。
今まで挨拶としてサシャが受けて来たキスの数を越す勢いで、ある時は激しく執拗に、
またある時は優しく繊細に口付けし漸く満足したのか、レザンの顔が少し離れた。
「ずっと、こうしたかった」
その口調は彼が親衛隊長をしていた時の穏やかなものだったが、サシャを捕らえた瞳は相変わらず獣じみていて、
その表情のちぐはぐさが彼女の恐怖心をより強いものにした。
100裏切騎士と亡国姫 6(※陵辱注意):2005/09/20(火) 01:55:36 ID:lUmmiNpA
「……レザン、お願いだから、もうやめ………っん!」
度重なる口付けにより呼吸もままならず、息も絶え絶えながらに懇願されたサシャの言葉は
レザンの唇に閉ざされ最後まで紡げなかった。
先程までのキスとは違い、一向に重ねた唇を離す気配が無い。
酸素を求めてサシャが口を開いた瞬間、生暖かくぬめったものが口腔に侵入した。
レザンの舌だ。レザンの舌がサシャの口腔中を這いずり、歯列の表裏、上顎、所構わず舐め回している。
気持ち悪い様なくすぐったい様な未知の感覚に、サシャは背筋から震えが走るのを感じ、
何とかレザンを引き剥がそうと彼の袖を握り締める。
その抵抗にレザンの嗜虐心が煽られたのか、口付けは角度を変え、一層深いものになっていく。
無目的に口内を犯しているように思えたレザンの舌は、確実にサシャの舌を追いつめていた。
本能の為せる業だろうか、逃げに走っていた彼女の舌がついに絡め取られ、きつく吸い上げられたその瞬間、
「……ぅ……んっ!?」
脳髄から電気を流された様な、ビリビリとしたショックにサシャの背がしなった。

引き剥がそうとしているのか縋り付こうとしているのか、分からない程強く袖を掴まれてもお構い無しに、
レザンは絡み繋げた自分の舌から彼女の口腔へと唾液を流し込む。
(……嫌……生暖かくて、気持ち悪い……)
何とか拒絶を試みるが、口を塞がれたままでは吐き出しようもなく、唇の端から流れ出なかった分がサシャの唾液と混じって体内に落ちていくのが分かった。
こくん、とサシャの咽が唾液を飲み込む音を立てたのを聞き届けて、漸くレザンが唇を離した。
「……ハァ……ハァ……」
上がった息を整えるのに精一杯で、口角から伝わり流れる唾液を拭う事すら出来ない。
サシャの方は既に満身創痍といった態なのに対して、レザンの方は淡々と、
しかし興奮冷めやらぬ調子でサシャの額や頬、その顔に口付けを落としていく。
いつの間に流れていたのか気づきもしなかった涙や先程、流れ落ちた口端の唾液を唇で拭い取っていく。

「……も…………や…め……」
焦点も覚つかず意識も朦朧としているだろうに、それでも懇願を止めないサシャの耳元でレザンが囁いた。
「何を言っている。ここからが本番だろう?」
熱い吐息を吐き出し、サシャの小さくて柔らかい耳朶を軽く噛んだ。
「……ひゃっ!」
突然、吹き込まれた息と甘いつままれた感触に、今まで出した事も無い様な声サシャの咽から漏れた。
「良い反応だ。これなら随分と愉しめそうだな」
その声を聞いたレザンはサシャの耳朶を弄びながら薄く笑った。


今日はここまで。
101裏切騎士と亡国姫:2005/09/20(火) 02:05:00 ID:lUmmiNpA
レス下さった皆様、有難う御座居ました。
本日、仕事だったのであまり書けませんでしたが投下。
次は2〜3日後にまとめてエチー分投下する予定です。

>96氏
 早速、名前ネタばれましたか^^;
 国がメーカー、名前がチョコ関係の商品名だったりします。名前考えるの苦手なもので。

>98氏、99氏
 GJ言って貰えるよう、漏れガンガルヨ!
102名無しさん@ピンキー:2005/09/20(火) 02:16:45 ID:Nsf43JIf
ものすごくGJ!
ハァハァしながら読んだ。
続きがすごい楽しみだv
103名無しさん@ピンキー:2005/09/20(火) 10:47:28 ID:4v+nGzBj
ああ、明治にロッテにブルボンか!
気付かなんだ〜〜〜〜。
凄くいい!続き待ってますよん!!
104裏切騎士と亡国姫 7(※陵辱注意):2005/09/23(金) 00:44:30 ID:7U6DYe9Q
顔から首へ、首から鎖骨へと強弱を付けながら、レザンの唇が降りていく。
少し強く吸い上げるとサシャの真珠の様な白い肌に、紅い花びらの様な跡が浮かぶ。
レザンにはそれがとても愉快で、新しい玩具を手に入れた子供よろしく、彼女の身体の至る所に花を散らしていく。
「………っくッ……ふぁっ……」
サシャは何とか声を上げるのを堪えているが、こういった経験が皆無な為、
少しでも強い刺激を与えられると知らぬ間に切ない溜め息の様な声が漏れてしまう。
今までは所有の証を付けるのに夢中になっていたレザンが、
今更ながらにサシャの着ている衣装に気付いたのは
彼女の胸元近くまでその唇を落とした時だった。
「そういえば、城が奇襲された時、婚礼衣装を合わせていたのだったか……」
最高級のシルクや柔らかなシフォンで作られた純白のドレスは若く清らかな王女の花嫁衣装に相応しく、
惜しげも無く付けられたレースと金糸銀糸で縁取られた刺繍は華やかさの極みで、
サシャの瑞々しい魅力に拍車を掛ける。
「今となっては俺の為の花嫁になるみたいにしつらえたみたいだ」
レザンが笑ったのを聞いて、サシャは身動きが取れないながらもキッと睨み、視線でその言葉に抗議する。
その可憐でたおやかな容姿とは裏腹に、飽くまでも高潔な態度を崩さない強気な態度に男心がくすぐられる。
「……貴方みたいな裏切り者の妻になる位なら、死んだ方がマシです!
これは、もう花嫁衣装なんかじゃない……、祖国を奪われた、王女としての私の死に装束だわ……」
先程までの口付けによって随分、大人しくなっていた筈のサシャの反撃の声を受けて、
レザンは少しだけ我に返った。

確かに、この純白のドレスはサシャによく似合っていたが、
元を正せば、これは婚約者であるアルフォー公爵から未来の花嫁への贈り物だった。
そして、メージ国の奇襲が無ければ、このドレスを纏ったサシャの隣に立つのはあの脂ぎった中年親父だったのだ。
そして、おそらく今のレザンの立ち位置で、好色じみた表情を浮かべて
サシャの身体を貪り尽くしていたのだろうと思うと、沸々と怒りが込み上げて来た。
だから、そのドレスに八つ当たりとして、乱暴に胸元から引き裂いた。
「ーーーーいやぁあぁっっッ!!」
ビーッと派手な音を立てて、レザンの手により、簡単に只の布切れになっていくドレスを見て、
サシャの恐怖心は頂点に達した。
組敷かれた身体を遮二無二に動かして抵抗を試みるが、レザンに軽くいなされ、
最後まで彼女の身を隠していた下着すら一切れのレース辺を残して無惨に破り捨てられた。
咄嗟に胸を隠そうとしたサシャの両手を、ドレスに付いていた白い飾りリボンでひと纏めに縛り上げると、
レザンは5年間、自分が身体を張って大切に守って来た娘の、生のままの姿をじっくりを鑑賞する。
105裏切騎士と亡国姫 8(※陵辱注意):2005/09/23(金) 00:45:19 ID:7U6DYe9Q
「……見ないで……おねがい……」
固く閉じられた瞳からは大粒の涙が零れ、上気して薄紅に染まった身体にはレザンが刻んだ紅い花が舞っている。
「恥ずかしがる事はない。とても綺麗だ」
レザンの賛辞の言葉に、サシャはハッとして目を開けた。
どんなにめかしこんでも世辞のひとつも寄越さず、護衛役に徹していたレザンに、
いつか必ず自分の容姿を賞賛させるのだ!と息巻いて飾り立てていた時分を思い出した。
その願いは漸く叶ったが、こんな状況下で言われても、全然嬉しくない。
むしろ無邪気にレザンを兄の様に慕っていた過去の自分の愚かさに哀しくなるばかりだ。

そんな事を考えながら、まだ膨らみかけの乳房を揉みしだく事に夢中になっているレザンをぼんやり見ていた。
頭の中に靄がかかったみたいで、まるで他人事みたいに思えてくる。
小さくなった反応が面白くないのか、レザンは片方の乳首を口に含み、軽く歯を立てた。
「……ッ!……くゥんっ!!」
目が醒める様な衝撃を与えられ、反応が再び激しくなったのを見て、胸全体に加えていた愛撫を止め、
すっかり桜色に染まったその頂点を集中的に責め立てる。
「はぁ……っふあ…!!…やぁ…ん……!」
その敏感な部分を指の腹で押しつぶされたり、触れるか触れないかぎりぎりの所で掠めたりされる内に、
サシャの口から漏れる声にも、甘く苦しげそう吐息が混じり出す。
「そんなにここが良いのか?……本当に素直で可愛いな」
レザンは揶揄る様に嘲笑うと、胸への攻撃は続けたまま、甘い声を紡いでいる唇を塞ぐ。
最早、抵抗する気力もないサシャはされるがままにレザンの口付けを受け入れる。
「……本当に、愛しいな……」
ふと、呟いたレザンの顔がとても優しい表情をしているのに気付いた。
サシャはすっかり思考のぼやけた頭の片隅で、もっと冷酷な顔をしてくれていたらもっと憎めたのに、と思った。
106裏切騎士と亡国姫 9(※陵辱注意):2005/09/23(金) 00:46:48 ID:7U6DYe9Q
胸を中心に責められていた愛撫は汗ばんだサシャの身体の降りていく。
すっかり感度の高められた素肌は、レザンの唇や節ばった指に触れる度に、ビクリと震えて切ない声を漏らす。
(なんで、こんな事になったんだろう……)
自分の声であるのがおぞましいとさえ思える嬌声をあげながら、今更ながらに自分の置かれた境遇を思った。
アルフォー公爵との婚姻の話が出始めた時から男女の性の営みについての一通りの知識は教えられてきた。
勿論、父親程の年齢の離れた異性と関係を結ぶ事に抵抗が無い訳ではなかったが、
身体を張って国交を保つのが王女として生まれた者の義務、と割り切って考える様にしていた。
ただ、性行為は子孫を残す為の儀式としてしか教わらなかったので、
国家レベルの金額援助をしてまで他国の王家の血筋を取り入れたがる公爵の考え方が不思議だった。
高潔に育てられた王女には、よもや自分が欲望の対象になっているなどとは、夢にも思わなかったのである。
だから、レザンがこの行為にここまで固執する理由が分からない。

「……ねぇ…レザン、そんなに王家の血を継ぐ子が欲しいの……?」
サシャの身体に快楽を刻む事に夢中になっていた為、突然投げかけられた突拍子も無い質問にレザンの思考が一瞬停止した。
「………何が言いたい?」
「還る国の無い私を抱いて、子孫を残そうとする貴方の考えが分からないの」
本当に皆目見当がつかないといった様子のサシャを見て、彼女が受けていた性教育の授業風景を思い出し、なるほど、と独りごちた。
「……本当に可哀想なお姫サマだな。
 ……まぁ、いい。子孫を残すためだけに男女が交わる訳ではない事を俺が教えてやる」
口角は笑みの形に持ち上げられているのに、瞳だけは泣きそうに哀し気な表情を浮かべたレザンを見て、
何故だかサシャの胸がドクン、とひとつ大きな音を立てる。
そして、彼の言葉から質問の回答は得られなかったが、レザンが行為を止めるつもりは無い事だけは分かった。
107裏切騎士と亡国姫 10(※陵辱注意):2005/09/23(金) 00:52:58 ID:7U6DYe9Q
レザンはサシャの細い腰から柔らかい太腿を愛でていた指の動きを止め、両膝を掴んで大きく左右に開く。
「ーーーッ!!」
覚悟を決めたつもりだったが、実際に自らの恥部が人目に晒されると、恐れの方が勝ってしまう。
黒い軍服の上着をを脱ぎ捨てたレザンは、無理矢理開けたサシャの両足に間に身体を割り込ませる。
「結構濡れているな」
サシャの秘裂に指を沿わせると、そこはすっかり潤っていて周りの薄い恥毛もしっとりと湿っているのが分かる。
「……そんな事……言わないで……」
震える声で懇願するサシャの羞恥心を更に煽る様に、レザンは指でその秘処を上下左右に嬲り、
わざとくちゅくちゅと粘った水音を立てた。
「……はぁ……や…ぁん……こんなの……やだ…ァ……」
サシャはうねる様な腰つきで身を捩って、レザンの指から逃れようとするが、
その艶かしい動きこそが男を誘う仕草と気付いていない。
「今、しっかり濡らしておかないと、後で痛い目を見る事になるぞ」
荒い息を隠す事無くサシャの身体に覆い被さったレザンは耳許でそう囁きながら、随分と解れて来た彼女の秘裂に指を忍び込ませる。
「ーーーッひやァあぁッ!」
身体の中に異物が侵入する恐怖に、サシャは悲鳴と嬌声の入り交じった声で啼いた。
サシャの激しい喘ぎと、その秘裂を出入りする指が奏でる水音の淫靡な二重奏に、レザンの興奮も徐々に追いつめられていく。
「……もう、そろそろ頃合いか」
秘処から溢れた蜜で濡れそぼった指を一嘗めすると、聳り立った怒長をズボンから取り出す。
男性の赤黒く光るグロテスクな昂りを初めて目の当たりにしたサシャは咽の奥で小さな悲鳴を上げたが、
そんな事には全く気づかず、レザンはサシャの身体に覆い被さり、ぴったりと肌を密着させる。

男の熱い欲望が自分の内股に宛てがわれたのを知り、サシャは恐慌状態に陥る。
「……いやぁあっ!!やめてぇえッ!ーーー怖いっっ!!」
髪を振り乱して、泣きじゃくり怯えるサシャの姿を目にしたレザンは、
彼女の両手の戒めていた純白のリボンを解き、その手を自分の肩に導く。
「怖いなら爪を立ててもいいから、しっかり俺に掴まっていろ」
パニック状態のサシャには、最早その声も届いていないかも知れないが、なるべく諭す様に穏やかに囁きかける。
それでも、何とか本能的にサシャが固く抱き付いてきたのを確認すると、レザンは一気にその身体を貫いた。
「ーーーーーひっ……ぃやぁあぁあぁっっ!!!」
破瓜のショックと痛みで、レザンにしがみ付いていた指先に力が籠る。恐らく彼の背中には既に幾筋かの引っ掻き傷が出来ているだろう。
涙と汗でクシャクシャになっらサシャの頬を愛しげに撫でながら、彼女の上がった息が治まるのを待つ。
「……レザ……いたい……恐………たす……け…て……レザン……」
サシャは混乱した頭で自分を犯している相手に助けを求めている。
その声が大分しっかりした口調に戻りつつあるのをを聞いて、レザンは腰がゆっくりと動かし始める。
「………ふぁあ……あぁ…ん……!……も…おかし……なる…ンくぅっ…!」
ぬちゃぬちゃと次第に大きくなる水音に合わせる様に、サシャの口からは意味を為さない言葉が漏れている。
焦点の定まらぬその瞳を覗き込みながら、快楽に溺れて自分の言葉が彼女には届かなくるのをを見計らって、
耳許に何度も「愛してる」と囁いた。
そして囁く度にその腰の動きを一層早めていく。

一方のサシャは自分の意思とは関係無く揺すぶられる振動に頭の中が真っ白になっていく感覚に襲われた。
レザンに身体の芯の部分を突かれる度に、痛みとは異なる甘い痺れが身体中を支配していく感じた。
そして、その痺れはレザンの動きが早まるにつれ、徐々にサシャ自身の身体を追いつめていく。
「……ハァ……ハァ……そろそろイクぞ……!!」
最早、止めようもないくらいお互いが高め合ったのを認め、
レザンは自身の哮る怒長を秘処の入り口から子宮の奥までねじり込んだ。
「……やぁ…、も……だめぇええっっ!!!」
身体の最奥を貫かれた瞬間、サシャの背中が大きく反り、
次の瞬間には糸が切れた操り人形の様にぐったりとにベッドに沈み込む。
サシャが果てたの見届けてから、レザンは彼女の中から自身を抜き出し、
その欲望をサシャの白い腹に勢い良く吐き出した。
自らの破瓜の血とレザンの放った白濁という2人の欲望が混じり合った液体に濡れた腹部を妙に冷めた目で見ながら、
自分の身体がすっかり汚された事を知り、静かに涙を流していると知らぬ間に意識の闇に落ちていった。


今日はここまで。
108裏切騎士と亡国姫:2005/09/23(金) 01:01:20 ID:7U6DYe9Q
とりあえず陵辱編エチー終了。
次回は週末予定。しばらくは非エロになりますスマソorz
後3回くらいでケリつけますんで堪忍して下さい。
109名無しさん@ピンキー:2005/09/23(金) 02:32:05 ID:EcqxTkiy
お疲れさまです〜。
今まで十分エロかったので、しばらく非エロでも大丈夫だと思いますよ。
この後二人がどうなるのかドキワクです。

ああ、やっぱり主従エチーはいいなあ。和姦もゴカーンも萌える。
下克上万歳!!
110名無しさん@ピンキー:2005/09/23(金) 03:07:14 ID:r+t6Bwy1
GJ!
続きが楽しみだ
111名無しさん@ピンキー:2005/09/24(土) 14:10:09 ID:yL/Sfhe4
>>108
乙です
主従萌えるハァハァ
今後和姦もあるということですね、楽しみにしてます
112裏切騎士と亡国姫11:2005/09/25(日) 20:45:55 ID:3bYF5hlt
初めに寝ぼけ眼に感じたのは、ぬるま湯のような温もりに包まれている心地よさだった。
次に感じたのは、優しく髪を梳かれる感触。目を瞑っていても、上下に滑る動きが分かる。
あまりに気持ち良いので、しばらくはされるがままに身を任せていた。
目を閉じていると自分のものとは違う鼓動の音が聴こえる。
ノロノロを重い瞼を持ち上げたサシャの瞳に飛び込んで来たのは、見慣れた彼女の親衛隊長の顔。
「……起こしたか?」
レザンの逞しい腕を枕に、もう片方の腕で抱き込む様に、サシャの小さい身体はすっぽり包み込まれている。
何も知らない人間が見たら、仲睦まじい恋人同士にしか見えないだろうその光景に、
一気に目の醒めたサシャは昨日の陵辱劇を思い出す。
汗と欲望でドロドロになっていた身体はいつの間にか清められており、
上半身には男物の黒い寝間着が羽織らされていた。
しかし、シルクで織られた寝間着は薄過ぎて、嫌でも密着したレザンの身体の一部始終が伺い知れてしまう。
「ーーー嫌っ!離して!!」
サシャは盲滅法に暴れてレザンの腕から逃れようとするが、下半身がだるくて思う様に動けない。
「もうじき、朝食が届くから大人しく寝ていろ」
力を込めて押さえ込まれると、サシャには僅かばかりの勝ち目も無く、レザンの逞しい胸に頭を押し付けられる。
少し汗の匂いがする男の香りに軽い目眩を感じた。

113裏切騎士と亡国姫 12:2005/09/25(日) 20:47:09 ID:3bYF5hlt
「……朝食をお持ちしました」
沈黙を破る控え目なノックの後に、まだ若そうな女性の声が響く。
「……ーーっ!」
こんな娼婦の様な姿を誰かに見られたくない。ましてや同性の目に晒されるなんて惨め過ぎる。
サシャは慌てて布団を頭から被って顔を隠す。
己の今の状況を恥じて身を隠すサシャには目もくれず、レザンは寝台を出て行く。
朝食の支度をしている侍女に二言三言、指示を出した様だが布団に遮られてサシャの耳には届かない。
だが、侍女の発音がロッテン国のそれに似ている為か、どこかで聞いた事のある様な彼女の声が気になった。
(でも、まさかメージ国に知人なんている筈ないし……気の所為よね)
と、突然、被り込んでいた布団を引き剥がされた。
悶々と考え込んでいる内に朝食の支度を済ませ、侍女は退室したようだ。
「朝食だ。……食べられるか?」
レザンに対する対抗心もあったが、実際、空腹より身体のダルさが優先して食事を採る気になれなかったので、
サシャは黙って首を横に振った。
その気怠げな様子を見たレザンは、熱い紅茶が注がれたティーカップをサイドテーブルに置いた。
「無理に食べろとは言わないが、水分だけは取っておけ」
紅茶からはほのかに甘い蜂蜜の匂いがする。
それはロッテン国にいた頃のサシャが、食欲の沸かない時にいつも煎れてもらっていたものだった。
まるで心の内側から懐柔する様なレザンのやり方に腹を立てたサシャは、そっぽを向いてカップに手を掛けない。
「………勝手にしろ。冷めたら不味いだけだぞ」
すっかり表情を強ばらせたサシャを尻目に、レザンは独り静かに朝食を採る。
沈黙の落ちた部屋にカチャカチャと食器同士のぶつかる音が響く。
食事を終えると、レザンは黒い軍服を纏い身支度を整えていく。
そして、続き部屋の鍵を開けると再びサシャの元に歩み寄って来た。
「仕事に行く。隣の部屋は好きに使えば良い。夕刻には戻る」
「…………」
何の反応も無いサシャの前髪をかき上げ、白い額に唇を落とす。
サシャは触れられた瞬間、キッと睨んでその手を振り払おうとしたが、それよりも素早くレザンは身を離していた。
「良い子にしていろ」
そう言い残すと、レザンは部屋から出て行った直後、カチャンと金属音が鳴った。
恐らく外側から鍵を掛けられたのだろう。
114裏切騎士と亡国姫 13:2005/09/25(日) 20:48:13 ID:3bYF5hlt
相変わらず身体の倦怠感は抜けないが、陵辱の行われたこの寝台にこれ以上いるのは苦痛だったので、
他に身体を休められそうな場所を探す。
ふと周りを見回すと、サイドテーブルに置かれたティーカップが目に入った。
先程は頑として拒絶して見せたが、本当は咽が乾いてしようがなかったサシャは傍らの紅茶を口にした。
(ぬるいし……あまり美味しくない……)
冷めた所為で蜂蜜のくどさだけが浮き立ち、咽を灼く。
いつも飲んでいたそれとはあまりにかけ離れた味に、サシャの心は一層萎れる。
(レザンは私の事を何もかも知っているけど、私は護衛していた彼しか知らなかったんだ……)
彼女の親衛隊長をしていた頃のレザンは慇懃無礼な仏頂面で女官の一部では恐れられていたが、
サシャの前では涼やかな笑顔を見せてくれていた。
その事がサシャにとっては密かな自慢だった。自分は他の誰もが知らないレザンを知っているのだと。
だが、彼女はレザンの事など、何一つ分かっていなかったのだ。もっともその事実を知るのは遅過ぎたけど。
否が応にも昨日のレザンの残酷な顔が脳裏に浮かぶ。
(大好きだったのに……)
大切な想い出が壊された気がして、知らずに涙が頬を伝う。
あまりに居たたまれなくなったサシャは乱暴に涙を拭うと、ノロノロと寝台を降り、続き部屋を覗いてみた。

そこは客間らしく、レザンの部屋よりも豪華な調度品に飾られていた。
クィーンサイズの寝台に、年代を重ねた木製の本棚。そこにはサシャの気を引く題名の書物が並べられてある。
本棚と同じ素材で作られた箪笥を開くと、女性用の部屋着が何枚も掛けられていた。
レースのカーテンが引かれた窓際には御丁寧に白いクラシックローズが生けられていた。
何から何までサシャの好みで仕立てられた部屋に、レザンの息がかかっているのが感じられ不快ではあるが、
それより何より、十中八九、彼の物であろう寝間着を着ているのは耐えられない。
箪笥の中から適当に、薄緑色の室内着を引っ張り出して着替えた。
昨日の出来事を彷彿とさせる白い服はわざと避けた。
はしたないな、とは思いながらもその格好で寝台に倒れ込む。
シーツの温かな陽の光を空気いっぱい吸い込むと、落ちる様にサシャは眠りに誘われた。
115裏切騎士と亡国姫 14:2005/09/25(日) 20:50:19 ID:3bYF5hlt
サシャが再び目を覚ますと、傍らでレザンが手持ち無沙汰に書物を読んでいた。
「随分とぐっすり眠っていたな」
からかわれる様な口調で声をかけられ、サシャが顔を逸らすとすっかり暗くなった空が見えた。
「……夕食の支度が出来ている」
サシャの眠っている寝台に書物を放り出したレザンは、寝ぼけ眼のサシャを軽々と抱き上げた。
「放してっ!!自分で歩けますっ」
一気に覚醒したサシャはレザンの腕の中で暴れるが、腕力で彼に敵う筈もなく、
食事の準備されたテーブルまで運ばれてしまった。
テーブルに並ぶ食事に見向きもしないサシャの姿に、痺れを切らせたレザンが声を掛けた。
「……強情を張るのもいい加減にしろ。お前にもしもの事があれば家族が悲しむ」
その言葉に、ぴくん、とサシャの顔が持ち上がる。
「……お母様や、妹達は無事なの?酷い事されていない!?」
悲哀に満ちた表情で詰め寄るサシャとは対称的に、レザンは冷静に答える。
「今は俺が保護している。どのような境遇で生きる事になるかはお前の心持ち次第だ」
「……この卑怯者!」
どこまでも冷徹なレザンを憎々しげに睨み上げ、サシャは手許のフォークとナイフを手に取り食事を始める。

言葉一つ交わされなかった食事の後、レザンは隣にサシャを侍らせて先程の書物の続きを読んでいた。
時折、手持ち無沙汰に酒杯を傾けながらサシャの髪を梳く。
サシャもその書物の文字を追う事でレザンの指の感触を意識下から追い払おうとするが、
返って逆効果になるだけだった。
そんな状態が2時間程過ぎた頃、読書に一段落付けたレザンが静かに本を閉じた。
長時間緊張したままでいた為、すっかり身体の固まってしまったサシャを再び抱き上げ、
レザンは自分の寝台にそっと降ろした。

すっぽりと覆いかぶさられた体勢に、昨日の陵辱劇が鮮明に蘇り、知らずとサシャの声が掠れる。
「……お願…い、酷い事…しないで……」
何もされる前から涙目で怯えるサシャを、苦笑を浮かべたレザンが抱き寄せ、その耳許で優しく囁く。
「今日は何もしないから、ゆっくりお休み」
自らの言葉を裏付ける様に、暫く後、規則正しいレザンの寝息が聴こえて来た。
今が好機、とばかりにサシャはその腕の拘束から逃れようと試みたが、流石にそれは敵わなかった。
そんな風に抱き締められていると、まるで子供が添い寝しているぬいぐるみにでもなったみたいだ、
などと思う内に
サシャも深い眠りに付いていった。

116裏切騎士と亡国姫:2005/09/25(日) 20:57:26 ID:3bYF5hlt
純愛ED迎えれる様ガンガッテますが、昨日おかんと見た韓国ドラマの所為で予期せぬ展開を迎えるやも知れませぬ。
次もダラダラ長文非エロが続きます。スマソorz
117名無しさん@ピンキー:2005/09/26(月) 00:37:44 ID:GnyHpqZ7
できたら純愛エンドでお願いしますー。

なんかもうレザンさん切ないですよキュンとしますよ。
幸せな二人が見たいと思いつつも、報われなさとかすれ違いっぷりにハアハア。
118名無しさん@ピンキー:2005/09/26(月) 00:52:26 ID:aDlkyPXD
なんつうか続きが気になるな
出来たら>>117と同じく純愛キボン

姫かわええハァハァ
119名無しさん@ピンキー:2005/09/26(月) 16:09:08 ID:CmwwCm2c
ををっ、ツボなスレ発見っ

>裏切騎士と亡国姫
いいですね〜。とっても続き希望です。
しかしこれで、純愛ENDになんかなったら、すごいことに……期待ッス!


ついでに、お気に入りな従者&お嬢様ものを置いときます。
あんまり新しい作品は無いのですが・・・
ttp://toaru.muvc.net/16a_txt.html
ttp://members3.jcom.home.ne.jp/juvenile2/novels/gosui/gosu-top.htm
ttp://www.geocities.jp/dark_d_blue/story02_01.htm#start
120エセ平安物:2005/09/26(月) 22:15:33 ID:U60DXgUS
和風物はアリでしょうか。
後、あんまり主従っぽくなかったらごめんなさい。
121エセ平安物:2005/09/26(月) 22:16:13 ID:U60DXgUS
――いい天気。
見上げると、抜けるように高く青い空に、白く鰯雲がたなびいている。
美しく色づいた楓の葉が、ひらり。と、少女の袿の袖に落ちてきた。
秋らしい、濃紅と濃黄の朽葉の重ね色目の袿に、楓の鮮やかな赤色が良く映えて美しい。
――都の秋も、悪くは無いのだけれど。
それでも、懐かしく思い出すのは、生まれ育った山々の錦のような紅葉の美しさだった。
――帰りたいなあ。北山の僧都殿はどうしておられるのかしら。おばあさまの菩提にも、もうずいぶん長く
行けずにいるもの。塚の周りは荒れてはいないかしら。花なども手向けてあげたいのだけれど――。
見下ろすと、少女の住む部屋がある対屋の簀子(外廊下)や渡殿(渡り廊下)を、女房や女童がうろうろと
藤花様。と少女の名を呼びながら、行ったり来たりを繰り返している。
もうしばらくは、見つからないだろう。と思いながら、ここからでは見えるはずも無い、侍所のある方に目をやった。
――犬鬼は、元気にしているかしら。
4年前、あの粗末ながらも丁寧に整えられた、小柴垣で囲まれた山中の小さな庵から、こうして都の大路に面した
立派な築地塀がぐるりと張り巡らされ、大きな寝殿に対屋が三つもあるような大邸宅に来る事になったときも、
一緒に付いてきてくれた少年の事を思う。
最近では、滅多な事では逢えなくなってしまった。前に顔を見たのは、もう2週間も前の事だ。
――おばあさまの庵にいたときは、毎日、一日中でも一緒だったのに。
ふう。と溜め息をついて、体の位置を調節する。その拍子に、座っていた枝が、がさりと揺れて、
楓の葉がはらはらと落ちた。
しまった。と思う間もなく、下を見ると、庭を探そうとでも思ったのか、ちょうど階を降りてきていた女童と
ばっちり目が合った。
「きゃあ―――――っ!? と、ととと、藤花姫様―――っ!?」
まずい。と思うまもなく、最近になって邸に勤め始めたばかりで、自分の使える姫君の日頃の行状を知らなかった
女童は、ものすごい悲鳴を上げたあと、そのまま失神したのが見えた。
先ほどの声に、わらわらと女房達が集まってくる。
まずいなあ。と舌打ちをひとつして、袿の裾を手早く束ねて脇に挟み、切袴の裾をからげ、殆ど猿(ましら)の
ように素早く枝を伝って、やんごとないはずの姫君は桧皮葺の屋根の上に逃げた。
「(誰か、犬鬼丸を呼んでおいで――)」
ざわざわとした女房達の声の中、一際通る凛とした美声がそのように命じているのが、微かに聞こえた。
ちょうどいいわ。とにやりと笑って、姫君は屋根の上に大の字に寝転んだ。
122エセ平安物:2005/09/26(月) 22:16:58 ID:U60DXgUS

―――それから、程なくして。
「……藤花さま」
音も無く、屋根の上に17歳ほどに見える少年が現れた。
その身に纏う水干も小袴も、清潔ではあるが何度も洗濯してくたびれている。
少年らしく、折烏帽子はかぶらずに、日焼けして赤茶けた硬そうな髪を、無造作に首の後ろで縛っていた。
普通ならば、とても貴族の姫君が直接顔をあわせる事など、まずありえない郎等(雑用係)の少年だった。
「犬鬼!」
その姿を見た途端、子供のような、ひどく無邪気な笑顔になって少女が飛び起きる。
「……まったくもう、少納言様、かなり怒っていらしたようですぜェ?」
先ほど、少年を呼びに命じていた美声の主、教育係でもある女房の少納言の、冷静なだけに余計に恐ろしい
叱責を思い出し、思わず知らず首をすくめてしまう。
「……だってさあ」
「だって。じゃ、ねェでしょう。新しいお衣装の仮縫いの予定だったんでしょう? その最中に、主役のはずの
 姫様がいなくなったら、そりゃァ大騒ぎにもなるってもんでしょうが。オマケに、新しい子まで失神させて」
「あ――、あれは、私が気絶させたわけじゃ――」
「普通、貴族の姫君ってなァ、猿(ましら)みてェに樹によじ登ったり屋根に跳び移ったりはしねェんです。
 そもそも、こんな名門のお邸の女房殿になろうってお人ァ、それなりに良いお家の出なんですぜ?
 そんな育ちの良いお嬢さんが、いきなり猿の仔よろしく樹の上にいるお姫さんなんてモン見ちまったら、
 それァ、気絶のひとつやふたつ、しちまうだろうってモンでさァ」
立て板に水。とばかりにとうとうと説教され、両手を挙げて降参の意を示す。
「わかりましたっ! 私が悪かったわよ! あの子――、えっと、小春にはちゃんと謝っとくから!」
「そうしてくだせェ。後で、俺の倍は、少納言様からの説教が待ってると思いやすが、途中で逃げちゃいけませんぜ」
その言葉を聞いて、がっくりと肩を落とす少女を流石に気の毒に思ったか、先ほどまでより口調を和らげる。
「――ところで、今日はなんで屋根の上まで逃げたりしたんです? いつもならせいぜい厨(くりや)にいって
 ツマミ食いしたり、雑舎で俺らの仕事の邪魔したり、犬かまったり猫かまったりとか、その程度でしょう?
 それだって、今日みたいに女房殿たちに見つかって大騒ぎにならないよう、こっそりやってのけてるじゃねェですかい」
「……少納言にはすぐにバレて怒られるんだけどね……」
なんでかなあ。と、おもわず遠い眼をして呟く。
「姫様―――」
わかってる。と、非難を込めた少年の声に、言葉を返す。
「別に、誤魔化そうとしてるわけではないったら。……あの衣装ね、裳儀の衣装なのですって」
裳儀。と鸚鵡返しに言ったまま、少年は沈黙してしまう。
「ええ、裳儀。……これで私も成人して、いつでもどこでも嫁にやれる立場になってしまうのよ」
「……そ、それは――、その。その――」
おめでとうございます。そう、言うべきなのだろうが、どうしても言葉が出ない。
冷や汗をたらしながら硬直する少年に、視線は秋空を向いたまま、声をかける。
「――ねえ、犬鬼。覚えている? おばあさまの庵に住んでいた時の事」
は。と、思わず間の抜けた声をあげてしまう。
「……覚えてない? 忘れちゃった?」
「――い、いえ。無論、覚えておりますぜ。……忘れるわけが、ありやせん」
そう。と呟いて、空を見上げる。

――あの日の空も、このような美しい秋空だったわね――。
123名無しさん@ピンキー:2005/09/26(月) 22:17:56 ID:U60DXgUS
とりあえず今日はここまで。
スレ汚しスマソ。
124名無しさん@ピンキー:2005/09/26(月) 22:44:21 ID:8AAsGRjB
>>120
GJ  続き楽しみにしてます
125名無しさん@ピンキー:2005/09/26(月) 23:44:09 ID:0tfVdFkh
>>119
正直、きちんと投下のあるスレで、
他人の作品、サイト晒しは嫌がれると思うんだ。
126名無しさん@ピンキー:2005/09/27(火) 01:08:07 ID:E8k+cMep
和風もいいなGJ
風情があって

>>119
そうだな、個人のサイト晒すのはまずいな

だが楽しませてもらった
127119:2005/09/27(火) 01:30:41 ID:IkWAXXZf
>>120
導入部のみでしたが、おもしろい感じですね。
是非、続きを。

>>125、126
>きちんと投下のあるスレで、 サイト晒しは嫌がれる
ああっ、そういうものなのでしたか。
スミマセン。ルールをきちんと理解していなかったようで・・・気をつけます
128裏切騎士と亡国姫 15:2005/09/28(水) 00:00:06 ID:+H5NXVSL
初めて陵辱された日から数週間が過ぎた。
レザンは3日に一度はサシャを抱いたが、交わらなかった日もしっかりと彼女を抱き寄せて眠った。
初めは無駄と分かっていても抵抗するのを辞めなかったサシャだが、最近ではすっかり抗う気を無くしてしまった。

彼女が大人しくなすがままに身を任せるようになると、それまでは力づくで何事も済ませていたレザンが、
まるで親衛隊長を務めて頃みたいに、壊れ物でも扱う慎重さで彼女に接し始めた。
その事実に一旦気づいてしまうと、サシャは自分の心が徐々に波立つのが分かった。
21歳の時から片時も離れず、サシャを護衛していた頃から変わらぬ真っ直ぐな瞳で見つめられていると、
サシャはその熱い視線で胸を射抜かれた様な錯覚に陥る。
只でさえ、王女として生まれた義務感から諦めこそしたが、一時は最も身近な異性として淡い恋心を抱いた相手に強く求められて心が揺れないでもない。
だがその一方で、飼い猫の様にレザンに飼われていく事を受け入れ始めている己を、苦々しく思うサシャがいた。
(どんなに優しくされてもレザンは父上の、国の仇。私の事だっていつ捨てるか分からない裏切り者なのだ)
そう自分に言い聞かせる事で、彼の腕の温もりを心地よいと感じる気持ちを振り払った。

サシャの心がぐらつき始めたのと同時期に、彼女はレザンの屋敷の侍女から身を隠さなくなった。
もう彼女達にどの様に思われようと構わない、という投げやりな心境になったからかも知れない。
事実、彼女達の想像と実際のサシャの立場に恐らく相違はないだろうから。
そのある日、サシャの昼食の支度をしてくれている侍女、名前をチェルシーと言ったか、に
ひとつ心掛かりになっていた事を尋ねた。
「この屋敷にロッテン国訛りの使用人はいらっしゃる?」
初めの日に聞いたあの声の持ち主の事がずっと気になっていたのだ。
「えぇ、それでしたら最近はロッテン国から優秀な人材が多く登用されておりますから。
この屋敷にも何人か勤めさせて頂いておりますよ。
侍女でしたら、フランの事かと思うのですけど……」
特に質問の意味も考えずに躊躇無く答えたチェルシーが挙げた名前に、サシャの脳裏に一人の娘の顔を思い浮かぶ。
「……ひょっとして、そのフランって子、……栗毛の髪を肩の処でカールさせて……」
「あぁ、やっぱりご存知だったんですね。彼女、ずっとサシャ様の事を心配してたんですよ」
嬉しそうに語るチェルシーとは対称的に、サシャは頭の中はすっかり混乱していた。
フランはロッテン国にいた頃、サシャの身の周りを世話していた侍女の一人だった。

「でも、やっぱり、同郷の方が近くにいるとサシャ様に……お里心付かれてはお可哀想だから、と
旦那様が担当を交代なさったんです」
サシャの置かれた立場を全く知らされていない訳ではないようだ。
漸く言葉を選ぶ様にサシャの顔色を伺い出したチェルシーに、サシャは重ねて質問をする。
「ロッテン国の人間がこちらに流出しているという話だけど、どれくらい規模でだか分かる?」
「旦那様もそうですけど真面目で仕事熱心な人が多いですからね、ロッテンの人は。
……元々この国は、地方の国を吸収して大きくなった国だから、他所の国の人を雇う事に偏見がないんです。
私も移民の出身だし。能力さえあれば出身、家柄の分け隔てなく採用してくれるから
ロッテンの人達も優秀な人程、こちらに流れて来ているんじゃないかな……と思うんですけど」
129裏切騎士と亡国姫 16:2005/09/28(水) 00:03:17 ID:+H5NXVSL
それから半日、サシャは魂が抜けた様に呆然と過ごした。
気の遠くなる程の長い時間をかけて伝統と血筋を重んじて来たロッテンと、
実力だけを頼りに一大勢力となった若きメージ国。
もう何が正しくて、何が間違いなのか分からない。
ロッテン国の存続を思えば、レザンは裏切り者以外の何者でもないが、
真に能力のある国民からすれば、彼の行動は間違いなく英雄的決断なのだろう。
そして、サシャ自身、ロッテン国最後の王女として、この結果をどう受け止めればよいのか。
レザンを国の仇として憎めば良いのか、国民の新しい導き手として認めれば良いのか。

レザンが部屋に戻ると、そこには灯りも付けずに膝を抱えて丸まったサシャが居た。
「どこか体調が優れないのか?」
気遣わしげに声をかけられ、顔を上げた途端、サシャの瞳から大粒の涙がぽろぽろと零れた。
「……レザンは何を考えて、国を捨てたの?本当の事が知りたいの……」
レザンは黒い前髪をかき分けて苦しげにひとつ大きな息を吐いた。
サシャの張りつめた様子に、もう彼が何を言っても彼女には誤摩化しが効かない事が分かった。
「誰に、何処まで聴かれたのかは存じませんが、姫様のご想像の通りだと思います」
レザンは長椅子に座っているサシャの前に跪き、彼女を見上げる様に語り出した。
その姿は姫君とその身を護る騎士そのものだった。

「私は姫の親衛隊長まで勤めて参りましたが、それでもロッテンの国ではかなり異例の出世だったのです。
姫もご存知かと思われますが、ロッテン国は何より血筋を重んじます。
只でさえ、王家の方々の身辺をお守りするのは、最低でも上流階級の嫡男、
もしくはその家の嫡男以外の男子でも有力貴族のお墨付きの者とされています。
その中で、妾の子として家での立場も低い私が登用出来たのも、
やはり異端な考えの父が手筈を整えてくれたからだったのです。
本来なら嫡流でなければ、平民同様に扱われる筈だった私の戦の腕を惜しまれた父が
表に裏に、手を回してくれたお陰で今日の私があるのです。
私は理解ある父に恵まれたから良かったものの、生まれの差により、才能を活かせぬまま一生を終える人間を
私は多く見て来ました。
それとは逆に大した能力もないのに、重要な官職に就いては無駄な法ばかりを作っていく人間も」

レザンの静かな怒りが王女として生まれた自分に向けられている気持ちになり、サシャは気弱げに尋ねる。
「……レザンは、……本当は私の護衛をするの、嫌だった……?」
まるで叱られた子供みたく俯いたサシャの頭を、あやす様にレザンの大きな手が優しく撫でた。
「姫様の事は御役を任せられた時から、ずっと大好きでした。
素直でお優しくて、花の様に可憐で…それでいて時々、手がつけられなくなる程、拗ねられる処も全て」
サシャは涙目で、酷い、とふくれて笑って見せる。
「だから、そんな貴女が国の為に御自分の心を偽らなければならなくなるような、
ロッテン国の伝統を重んじる体勢が許せなかった。
………姫は誰にも気づかれてないとお思いでしょうが、アルフォー公爵との婚姻話が決まってから、
貴女は毎晩の様に枕を濡らしていたのでしょう?」
まさか気づかれていたなんて。サシャは思わず瞠目する。
「ずっとお傍で見て来たのです。どんな小さな変化だって、貴女の事なら見逃しはしません。
ですが、貴女は最後まで、不平を口になさらなかった。それがいじらしくて、……………憎かった」
130裏切騎士と亡国姫 17:2005/09/28(水) 00:04:53 ID:+H5NXVSL
「望みもしない相手の元に貴女を取られるのを、指をくわえて見ている事しか出来ないなら、
いっそ自分の我がままを優先してしまおうと思ったのです。
……私は貴女を縛る全てのものから解き放って、ただの一人の女にしてしまいたかった」
レザンは辛そうに笑うと、撫でていたサシャの頭から手を離し、彼女の視線から目を逸らした。
「……確かに元々はロッテン国の選民思想に異を唱えての行動でしたが、
貴女の事が引き金ではないとは言えません。
その為に、貴女の父上をはじめ、多くの血を流してしまった。
……私の……浅ましい願望と引き換えに……」
自嘲の笑みを浮かべるレザンがノロノロと顔を上げて見せた。
サシャはこんな頼りなさそうな彼の顔を初めてみた。
「……私の甘い夢も覚める時が来ました。もう、姫は自由の身です。
お母上様はカヴァ=ヤの修道院にいらっしゃいます。
他の妹姫達は既に養子として引き取られてしまいましたが……。
お二人でロッテンの同盟国にでも亡命なさるのが宜しいでしょう」
これを見せれば、メージ国では大体の要望は通りますから、とレザンのサインの入った証書を手渡される。
展開が急過ぎて思考が追いつかないサシャは、差し出された証書を呆然と受け取った。

「今までの無礼の数々、誠に申し訳有りませんでした。
………それでは、姫様の御身がいつまでも健やかでいらっしゃいます様、いつもお祈り申し上げております」
レザンはそう言うと、未だに惚けているサシャに哀しい笑みを寄越すと、黒い軍服を翻して扉の向こうに消えた。
いつもの様に鍵を掛ける音は、ついにしなかった。

今日はここまで。
131裏切騎士と亡国姫:2005/09/28(水) 00:17:20 ID:+H5NXVSL
毎度反応下さる皆様有難うございます。

次はラストまで全力疾走の予定ですが、鬼畜ED考えてたら、レザンタソの呪いか体調崩してしまいました。
胃カメラ検査宣告されちまったぜ、フォウーー!!という訳ですのでしばらくの間、他職人様の作品と焦らしプレイをお楽しみ下さい。

>>199
他サイト晒しはよろしくないが、漏れもそのサイト読んだ事あるさ。(・∀・)人(・∀・)主従ナカーマ

>>120
和モノ主従萌えです。続き楽しみにしてます!
132名無しさん@ピンキー:2005/09/28(水) 01:36:41 ID:9jJI2ICz
>>131
そ、そんなああああああああああああうわあああああああああああああ
究極の焦らしだぜ
早く良くなって帰ってきてくださいね。
続き死ぬほど楽しみに待ってます

つうか鬼畜EDなのかよwww
133名無しさん@ピンキー:2005/09/28(水) 03:43:59 ID:TcHuM69g
>>131
gj!!
早く良くなって下さい
鬼畜ED楽しみに待ってます(*・∀・)
134名無しさん@ピンキー:2005/09/28(水) 19:18:40 ID:pimMRVRG
ゑ"っっ、鬼畜EDケテーイなの!?
純愛もキボンなんだけどなぁ〜。しかし韓国ドラマで鬼畜を思いつくとわ…どんなんだ?
ともかく、お身体大事にしてゆっくり養生して下さいねー。お待ちしておりんす。
135裏切騎士と亡国姫:2005/09/28(水) 21:31:18 ID:m/FTNnMH
下手な書き方して混乱させてすまんかったorz
鬼畜EDは漏れの得意技、『THE☆妄想』だ。流石にこの長さでキティークEDだと自分が鬱るよ…。

取りあえず検査が10月中旬に決まったので、それまでには投下する(予定)。
136名無しさん@ピンキー:2005/09/28(水) 22:27:50 ID:uldq4sPY
今日はじめてレザンに出くわした。というかレザンが何か分かった。
どういう顔をすればいいのか、困るね。
カヴァ=ヤもワロス

検査結果、大事無いといいですね。
137名無しさん@ピンキー:2005/09/30(金) 22:02:53 ID:BBgduig4
ちょっとあげますよ
138名無しさん@ピンキー:2005/09/30(金) 22:07:43 ID:uX2NiL77
4は・・・?
139エセ平安物:2005/10/02(日) 02:26:33 ID:wKgODbLJ

――これは、すこしばかり、むかしのこと。





犬鬼丸には、親がいない。

とはいえ、昨今ではそんな事は珍しくも無い事だし、それなりに大きな、身分卑しからぬ人たちが良く参詣に
訪れるような、羽振りの良い寺に拾われたのだから、破格に運が良かったといえるだろう。
犬鬼丸。という聞き様によってはかなり仰々しいというか、おどろおどろしい名前にしたって、誰かが特に意味を
持って名付けたわけでもない。
そのころ寺にいた、鬼若という僧兵見習いの飼っていた犬が咥えて拾ってきた赤子だったから、犬鬼丸。
正直言って、寺の僧達はかなり困ってしまった。
普通だったら、そのまま里の者にでも預けてしまって終わりにしていただろうし、そうしたかったのだろうけど。
その鬼若の犬は、ご丁寧にも口から赤子をぶら下げたまま、参詣に来ていたやんごとなき貴人の奥方様や女房殿たちの
真ん前を堂々と通って、この寺のいちばん偉い僧都の前に、これ見よがしに赤子を置いたのだ。
そうなっちゃうと、もう見捨てるなんてわけにも行かない。だってその奥方様、寺にいちばん寄進を良くしてくれる、
犬鬼丸なんかには思いもつかないような、とんでもなく偉い大貴族の北の方で、しかも無類の子供好き。
そのときも、犬が死に掛けてたかわいそうな子供を拾ってきたっていうんで、大感激したらしい。
『きっとこれも、御仏のお慈悲のなせる事でしょう。流石は、徳の高い阿闍梨殿のおられる寺ですね』と、お褒めの言葉を
賜れたそうな。
で、そうなっちゃうと、次の年あたりに『あの時の赤子はどうしていますか?』なんて聞かれて『里にやりました』
とはちょっと言えないよなー。と、いう事で、そのまま寺で育てられる事になったのだ。
そんな事を、育ててくれた僧達からよく聞いていた事もあって、犬鬼丸は良く働く子供になった。
いくらそれなりに羽振りが良いからといって、何もしない子供を食べさせておけるほど、寺というのは金持ちでもないし
甘くも無い。
犬鬼丸も、それはよく解っていたし、恩返しをしたいという気持ちもあったから、僧達を見習ってよく働いた。
誰よりも早く起きて厨仕事や掃除をしたし、人より体が大きくて力も強い子供だったから、寺にいる僧兵や、
参詣にくる貴人方の随人に、武術を教えてもらいもした。
だから、大人になったら寺男か僧兵になって、一生をこの寺で過ごすのだと、漠然とそう考えている子供だった。

――だけれど、ある日。

とある尼僧の庵に行けと、寺でいちばん偉い坊様に言われたのだった。
当然、何故かと犬鬼丸は聞いた。自分は何か悪い事をしただろうか。と。
いやいや違ゃうでェ。と坊様は笑って言われた。
――まあ、さるやんごとなきお方の、北の方(正妻)であらしゃったお人や。その尼御前は。赤子やったお前が覚えとる
  ワケもあらへんやろうが、鬼若の犬がお前を拾うてワシの前に連れてきた時に、取り成してくらはったお人やで。
犬鬼丸にしてみれば、そんな赤子のころのことを言われても。という気分である。そもそも、そんな雲の上の人の事を
言われた所で、ピンとくるはずもない。なにしろ、拾われてからこのかた10年の間、山寺育ちの子供なのだ。
参詣者の泊まる僧房に近づくと酷く怒られるので、犬鬼丸の知っている僧以外の人は、里の村人たちぐらいのもので、
都人などというものは、貴人の乗る牛車や牛を世話する牛飼童や郎等くらいのものだった。
だから、その方がどれほど高貴な血筋や身分かという事を説明されても、なんだかよくわからなかったりする。
その時も、その立派な尼さんが自分にどう関係するのか。と、坊様に正直に聞いてみた。
140エセ平安物:2005/10/02(日) 02:27:09 ID:wKgODbLJ
――まあ、最後まで聞かんかい。そのお方はな、前は都にいてはったんやけどな。  
  お気の毒にも、娘さん夫婦が若くして身罷らはってな。
  その子供――まあ、孫さんやな――を、引き取らはったんや。
  まあ、そんな色々があったからな、娘さん夫婦の菩提を弔う為にも、都から離れた辺りの静かな山中に
  庵を結んでな、俗世から離れて静かに暮らしたいと思ってはるそうや。
  ただな、昔からのお付の女房達はおるそうやが、下働きの者が足りんで困っとるそうでな。そこでな、犬鬼丸。
  お前はな、まだ子供やゆうのにホンマによう働くし、気ィもつく方や。この辺の山の事もよう知っとる。どうや、行ってくれるか―――――。
そこまで言われては、犬鬼丸も断る事は出来なかった。
別に、どうしても寺に居たい訳ではなかったので、その、都から来た尼さんが住んでいる。という庵に働きに行く事にしたのだった。
行ってみた先の庵は、思っていたよりも大きかったが、あちこち微妙にボロかった。
裏の木戸の方に回って声をかけると、とてもじゃないけど自分みたいな下働きの子供に直接指示を与えるような
立場の人にはどうしたってみえないような、山の中だっていうのにきっちりと女房装束を着込んだ中年の女性が
立ち居振る舞いも優雅に出てきたものだから、もうものすごく驚いた。
そのいかにも貴人に仕える雅やかな女房殿といった風情の人の、優雅極まりない裾捌きに、廊下の埃がもうもうと
立った事にも驚いた。
あまりの事に、犬鬼丸が唖然としていると「ああ、おまえが僧都殿が仰っていた下働きだね? 早速で悪いのだけれど、
掃除をしておくれ。埃っぽくてかなわない」と、仰られたので、想像よりもかなり酷い状態に驚きつつも、
掃除をするために腕まくりをして箒を握り締めた。


――てっきり、そこそこに広い庵を全て自分ひとりで片付けなければならないのか。と犬鬼丸は思っていたが。
単に、少しばかり予定の調整が上手く行かず、先に里から下働きの者を雇って片付けておく手筈のはずが、何かの
手違いで庵の主人となる尼御前とその女房殿たちのほうが先に到着してしまったらしい。
犬鬼丸は下働きの中でもたまたま一番乗りで来ていただけだったようで、その後すぐに里の女たちや子供達が手伝いに
やって来て、見る見るうちに庵はどこもかしこも清潔で気持ちの良いふうになっていった。
いちばん最初の大掃除。という事もあって、雇われた人間は多く、その辺の里の男衆や女衆、そしてその子供達まで
かなりたくさん来て入り乱れ、ぺちゃぺちゃとお喋りをしながら働いていたから、その時に犬鬼丸が気がつかなかった
事を叱るのは、少しばかり可哀想。と言えるだろう。

犬鬼丸が、簀子縁を拭いて汚くなった桶の水を替えるために、裏にある井戸まで水を汲みに行くと、
まだ少し小さな子供らが、わらわらと井戸の縁に取り付いて遊んでいた。
どうも、井戸に石を投げこむと音がするのが楽しく、誰がいちばん大きな音をたてるかを競っているらしい。
一人の子供が、赤子の頭ほどの大きな石を放り込もうとしているのを見て、慌てて井戸から引き剥がす。
「なァに悪さしてンだ、お前らッ! ンなことしたら、井戸の水が濁るだろうがッ!」
悪ガキどもをとっつかまえて、順番に脳天に拳骨を振らせていく。
141エセ平安物:2005/10/02(日) 02:33:58 ID:wKgODbLJ
びいびいと泣き喚く子供らの中で一人だけ、涙をその大きな目にいっぱいに溜めながら、犬鬼丸を睨み返してくる、
年の頃は七つかそこいらの女の子がいた。
(……なんだァ? こいつ)
よく見れば、一緒にいる子供らの着ている着物とはまるで違う、明らかに貴族の子供の着るような単衣に切袴を
履いており、顔立ちもどこか雅やかで里の子供らとは明らかに異質なはずなのに、田舎育ちの悪ガキどもと、
恐ろしいくらいに馴染んでいた。
その、違和感におもわずあっけにとられていると。
「まあ、姫様! こんなところに居られたのですかっ!」
先程、厨であった女房殿が、簀子縁からそう呼んだ。
「あ、讃岐」
「まあまあまあ、何てことでしょう! こちらの房は片付きましたから、早く中に入ってくださいまし!」
はあい。と返事をしてから、犬鬼丸のほうを振り返ると。
「おまえ、名は何というの?」と、実に尊大に呼ばわった。
「……犬鬼丸、と申しやす。姫様、ご無礼の程、申し訳――」
「そう、それよ。先程は、どうして私をぶったりしたの?」
む。と眉をひそめる。――正直に、言うべきか少しだけ迷い。
「……恐れながら、申し上げやす」
結局、不興を買うことを覚悟で、ありのままを述べる事にした。
「井戸に、石を投げ込まれると、水が濁ってしまいやす。そうなったらしばらく井戸が使えなくなっちまうんで。
 もうじき夕餉の支度も始めなけりゃァなりやせんし、あんな悪戯をされちまったら、困るんでさァ」
そういうと、その悪戯な姫君は形の良い眉を可愛らしくひそめ。
「……私、何かとても酷い悪さをしてしまったのね?」
そう、困ったように呟いた。
「ごめんなさいね。音がするのが楽しくて、やってしまったの」
ぺこり。と頭を下げられて、今度は犬鬼丸が慌てふためいた。
「い、いや、顔を上げておくんなせェ。あなた様みてェな身分の方が、俺なんぞにそんなふうに謝られちゃアいけやせんぜ」
その言葉を聞くと、いかにも不思議そうにきょとん。として。
「どうして? 私が悪かったのだから、謝らなければならないわ。私、こちらの事は、何も知らないの。
 いつも、お水をどうやって汲んでいるのかさえも知らなかったわ。ねえ、犬鬼は山の事や色々に詳しいの?」
「え、ええ。まあ、俺ァずっとここで育ちましたから――」
そこまで言ったところで、先程の女房が子供を呼ぶ声がもう一度聞こえた。
「ああ、もう行かないといけないわ。――じゃあね、犬鬼。また、山の事など教えてね?」
それだけをいうと、ぱたぱたと単衣の裾を翻して走っていった。


――そうして、宮家にも繋がるやんごとなき血筋の姫君と、山寺育ちの孤児の少年は出会ったのだった。
142エセ平安物:2005/10/02(日) 02:39:12 ID:wKgODbLJ
続きを書きに来ました。

続きを楽しみにしている。と言ってくださった方々、本当にありがとうございます。
もともと拙い上に遅筆ですが、最後まで頑張りたいと思います。
143名無しさん@ピンキー:2005/10/02(日) 03:47:04 ID:ECL9HpQM
なんだかますます良作のヨカーン。
期待してます。
144名無しさん@ピンキー:2005/10/03(月) 00:51:53 ID:6VHAVVkT
>>142
丁寧で優しい描写が大好き。
続き楽しみにしてます。
145名無しさん@ピンキー:2005/10/04(火) 12:44:23 ID:0hVgxn4a
良スレあげ
146名無しさん@ピンキー:2005/10/08(土) 11:14:06 ID:Lt1pebTn
あげ
147名無しさん@ピンキー:2005/10/10(月) 19:02:58 ID:wNmUM4ht
あげあげ〜
148名無しさん@ピンキー:2005/10/11(火) 22:58:02 ID:XFnDguQn
age
149名無しさん@ピンキー:2005/10/12(水) 06:28:07 ID:ZdYwD7LR
そんなにageなくていいよ
150名無しさん@ピンキー:2005/10/12(水) 20:34:52 ID:24/RME9P
一度見失ってしまったスレなんで個人的にGJ。
151名無しさん@ピンキー:2005/10/15(土) 06:55:54 ID:fnBPb9Hk
爽やか腹黒家臣×ツンデレ姫キボン…
152名無しさん@ピンキー:2005/10/15(土) 20:50:35 ID:Xq/hXk8Z
>>151の希望にすげー沿ってるようなのがSM板で書かれてるよw

自演と思われても嫌なのでどこかは一応伏せとく。
153名無しさん@ピンキー:2005/10/16(日) 01:07:08 ID:qvEcHwoa
>>152
kwsk。板からさがすの無理。
154名無しさん@ピンキー:2005/10/16(日) 18:41:04 ID:FJRl/WEl
悪い。そりゃそうだ。膨大だもんな。
メル欄でも使えば良かったね。

書いちゃうと、囚われのお姫さまとかいう名前のスレ。
そこで現在進行中。

>153が気にいるかは分からないけど自分は結構面白かった。
155名無しさん@ピンキー:2005/10/17(月) 01:58:10 ID:rQ1d8uDI
>>154
トン。見てきた。姫が気丈で良かった。
156名無しさん@ピンキー:2005/10/17(月) 12:49:48 ID:2VYPTErG
爽やかではなかったよね、スマソ。最初の三文字がすこーんと
自分の中で抜けてた。でも気に入ってもらえたようでよかった。

裏切り騎士と平安ものの投下者さん、続きを禿げ上がるくらい待ってます。
楽しみにしてますage
157名無しさん@ピンキー:2005/10/19(水) 22:56:02 ID:3r32rr+o
保守あげ
158名無しさん@ピンキー:2005/10/23(日) 08:58:57 ID:+ceMdsl/
あげときますね
159名無しさん@ピンキー:2005/10/23(日) 14:52:36 ID:/FGjzJw7
ベルセルク関係スレでもあるよ
160名無しさん@ピンキー:2005/10/23(日) 20:15:55 ID:ecixztYh
従者の男が人間でないのもありですか?
161名無しさん@ピンキー:2005/10/23(日) 20:56:05 ID:zvYV63de
俺的にはアリだ。
162名無しさん@ピンキー:2005/10/23(日) 23:55:50 ID:I1EeN5Vh
獣辱はちと勘弁だ・・・俺はな。
163名無しさん@ピンキー:2005/10/24(月) 03:52:34 ID:AYQzaJAZ
自分は人型であれば無問題
164裏切騎士と亡国姫 18:2005/10/25(火) 01:37:00 ID:3qeNgDFn
「どうぞ、お気をつけてお降り下さい」
御者のうやうやしい言葉にサシャは我に返った。
レザンが部屋を出て行った後、すっかり呆然自失となったサシャは侍女に促され、
無意識のまま部屋を出て、用意された馬車に乗せられた。
久し振りの外出だというのに、馬車の小窓から見える景色も何も覚えていない。
実はもう、屋敷を出てから何日か経っているのかも知れないがそれすら分からない。
まるで心にポッカリと穴が空いたような、自分が自分でないような錯覚を覚える。
(知らずと目を背けていたロッテン国の欠点をまざまざと見せられた所為かしら、それとも……)
モヤモヤと悩んでいる頭とは別に、足はまっすぐ教会へと続く道を行く。
そこは海の見える丘の上に立つ白い建物で、飾り気はないが、楚々としたモダンな造りだ。
馬車が近づく気配に気づいたのだろうか、建物の中からシスターとおぼしき姿の女性達が出て来た。

「…………サシャ……!?」
その中から少し年配の女性がサシャの姿を認め、駆けて来る。
「……お……母様????お母様っ!!!」
サシャの金髪と良く似た色の髪を真っ黒なベールの中に隠していた所為で、
遠目には他のシスターと見分けが付かなかったが、それはサシャの母親、ロッテン国最後の王妃だった。
ひと月も会わなかった訳でもないのに一気に老け込んだ母の表情に、
サシャは母妃の辿って来たこれまでの心労を思うと胸が痛んだ。
「……よくぞ、ご無事で……」
なんだか一回り小さくなったように思える母に抱きつくと、先程までは無気力だった筈なのに、
涙が後から流れて止まらない事に気付く。
「貴女も無事な様子で、何よりです……。サシャの事はずっと気になっていたから……
会えて、顔を見れて本当に良かった……」
幼子のように泣きじゃくって止まない我が子の髪を優しく梳いてやりながら、亡国の王妃は微笑んだ。
「他の妹姫達も皆、良いご家庭に養子縁組が決まってね。3日前に末姫のアンシスが出てしまって、
ここもすっかり寂しくなってしまったけれど貴女が訪れてくれて嬉しいわ。……レザンも一緒なの?」
その名前にサシャの涙も一息に止まる。
どんな想いで母がレザンの名前を出したのだろうか?
母妃は、彼とサシャの関係を知っているのだろうか?
色々な想いが交錯する中、サシャは小さくかぶりを振って答えた。
「……レザンなんて……ここに来れる筈ありません……あんな……人………」
震える声で呟く。
「そう。……彼がメージ国王に助言してくれたお陰で、こうして私達が今なお生き延びているという話を聞いたものだから、
もし会う機会があればと思っていたのだけれど……」
その様子に気付かなかったのか母妃は一人ごちる。
「……レザンは……来てないの……もう、私…前には………二度…と……」
声に出してみると嗚咽に遮られて、最後まで言葉を紡げなかった。碧い瞳から再び大粒の涙がこぼれ落ちた。
だが、それは先程までの堰を切ったような涙ではなく、静かににじみ出るものだった。
(自分の身体なのに、全然思う様に動かない……。あんなに憎んでいた筈なのに……。
何故、レザンの事を思い出すとこんなに涙が出てくるのだろう……)

「……もう、私達は自由にしていいって……、どこに行くのも自由だって……。
お母様、この国を出て、2人で暮らしましょう……、ね?」
ロッテン国の滅亡も、レザンに受けた陵辱も、王国の真実も、サシャに対する彼の想いも……。
全て忘れてしまえば、いつかはこの不可思議な感情も消えてなくなるかも知れない。
そう思ったサシャの提案を、王妃は静かに、しかし確実に拒絶した。
「……よくお聞きなさい、サシャ。ここには父王が眠っておられます。
私は妃として、妻としてこの地を離れる訳にはいかないのです。
確かに、あの人は決断力が乏しくて国を纏める器ではなかったのかも知れない。
貴女にだって、国が有利になる為だけの道具の様な育て方をしてしまった、駄目な父親だったかも知れない。
……でもね、それでも、私はあの人が大好きだった。だから、お父様のお墓を最期まで護って生きたいの」
我がままな母親でごめんなさいね、と少し寂しそうな顔でサシャに笑い掛ける王妃の顔は、確かにくたびれてはいたものの、誇り高く輝いていた。
サシャのよく知っている優しくて清々しい母の笑顔だった。
「貴女も自分の思う道を行きなさい。……何も慌てて結論を出す事はないわ。
答えが出るまでこの教会でゆっくり考えてご覧なさい」
165裏切騎士と亡国姫 19:2005/10/25(火) 01:39:26 ID:3qeNgDFn
それからしばらくの間、サシャは教会で穏やかな日々を過ごした。
小さなものではあったが父王の墓には毎日参ったし、生まれて初めて自分が食べる為の野菜を栽培した。
刺繍は一般教養として一通り身につけていたが、古布を繕い直して再利用する事など考えた事もなかった。
何から何までサシャにとっては新鮮で楽しい体験だったし、
祈りに始まり祈りに終わる緩やかで優しい生活を送る内に、
このまま母妃と一緒にここで暮らすのも悪くないと思わないでもなかった。
だが、何をしていても、心に大きな穴が空いたような空虚な気持ちに突然襲われる。
朝、起きた時の一人きりの寝台の冷たさに不意に涙が零れる。
……原因は既に分かっている。
だからこそ、敢えてその事を考えないようにすれば、いつかは忘れてしまえると思っていた。
でも、出来なかった。むしろ一層、その存在が日一日と心の中で大きくなるばかりだった。
「………レザン……」
口に出して呼ぶ。当然、返事はない。
分かり切った事なのに、胸が刺すように痛い。
声に出して名前を呼んでしまった事でその想いもひとしきり強くなってしまった。
レザンに、会いたい。
根本的に向こうが会ってくれるのかすら確証も持てないが、とにかく会いたい。声が聞きたい。
彼に対して怒りたいのか謝りたいのか、はたまた許したいのか許されたいのか、
自分でもどうしたいのかすら分からないが、レザンに会えば何らかの決着が付くであろうと、
根拠のない確信がサシャの中で大きくなる。
一度そう思い至ってしまうと、もはや居ても立っても居られなくなってしまった。
サシャは寝台から飛び降りると、恐らく今の時間なら父の墓前にいるであろう母の元に駆け出した。
もう、涙は流れていない。

「もう貴女はレザンに会いに行くと決めたのでしょう。
ならば私に貴女を止める権利はありません。
貴女の選んだ道をいきなさい。
ただし、これだけは約束して。
例えどの様な結果になろうと決して後悔しない事、そして自分で下した行動に最後まで責任を持つ事。
これがロッテン国最後の王女として生まれた貴女が出来る最後の公務です」
サシャの決意を聞いた母が静かに、だが厳格に応えた。
そう言うと母はてきぱきとサシャの旅支度を調え、シスターに馬車を手配させた。
固い抱擁を交わして別れた娘の乗せた馬車を見送りながら母后は傍らの墓に語りかけるように呟いた。
「貴方は国を滅ぼした相手の元に娘を行かせた事をお怒りになるかしら?
それでも、私は誰かの言われるがままに生きてきたあの娘が自分の足で道を進んで行く事の方が嬉しいの。
今までは誰かの言われた様にしか生きる事が出来なかったのに……。
私達は上手く親の役目も、王族としての責任も果たせなかったけど、
それでも何でもあの娘には幸せになって欲しい私を貴方はお許しになって下さるかしら?
………それとも私達よりも、もっとずっとあの娘を幸せにしてしまう誰かに嫉妬なさるのかしらね……」

166裏切騎士と亡国姫 20:2005/10/25(火) 01:41:26 ID:3qeNgDFn
行きはいつの間にか教会に着いていた筈なのに、帰りの道のなんとじれったい事。
御者に頼み込んで、出来る限りの速度で走って貰ってまる1日かかって懐かしい屋敷に辿り着いた。
だが、サシャが知っている屋敷の様相とは少し面持ちが変わっていた。
何かあわただしい気配。
使用人も侍女達も上へ下への大騒ぎで、こっそりと屋敷の中に入って来たサシャに気づく者もいない。
とはいえ、実際、この屋敷で彼女の顔を知っている者も限られてはいるのだが。

大きな木製の扉の前に立つ。内側から見慣れたレザンの部屋の扉。
小さくノックをふたつ。扉を叩く拳が震えているのが分かる。
「入れ」
すっかり聞き慣れたレザンの低い声。
もう泣き癖はすっかりなりを潜めたと思っていたのに、その声だけで鼻の奥がツン、とする。
押し遣るように扉を開けると、漆黒色をした戦支度に身を固めたレザンが立っていた。
「……姫…なぜ……」
冷静沈着が常だったレザンがすっかり目を丸くしてサシャを見ている。
そんな表情の彼をついぞ見た事がない。
吹き出したいくらい滑稽な筈なのに、サシャに出来る事と行ったぽろぽろと瞳から涙を落とすくらいで、
身体はまるで金縛りにあったみたいにちっとも動かない。
レザンも同じ状態のようでお互い一歩も動かず見詰め合って、一刻。
「―――……レザンに…会いた…て…」
喘ぐ息の中、なんとか言葉を紡ぐ。
水中で空気を求める様に伸ばされたサシャの手に、レザンは後じさって避ける。
「何故戻って来たのです。せっかく自由になれたのに…」
苦しそうに顔を背けるレザンに、サシャはそれでも手を伸ばす事を止めない。
「……私だって、ずっと貴方の事を忘れようしました。どこか他の地で新しく人生をやり直そうとも。
…………でも出来なかった。何をしていても貴方の事を考えてしまうの。貴方の声を思い出してしまうの。
笑顔が浮かんでしまうの。ぬくもりを求めてしまうの。
お願いだから、ずっと傍にいて……もう、お姫様扱いされなくても良い、只の小間使いで構わないから……
……睦言にも『好き』と言ってくれなくても良いから……だから……だか…ら…」
泣きながら自分に手を伸ばし続ける少女の姿に、深く息を吐いた後、レザンが呻くように呟く。
「…………離れたい、と言っても二度と手放しませんよ?」
その言葉を合図にサシャはレザンの胸に勢いよく飛び込んだ。
167裏切騎士と亡国姫 21:2005/10/25(火) 01:45:38 ID:3qeNgDFn

………くちゅ……ぴちゃ………。
すっかり日も落ちた暗い部屋に水音と荒い息遣いが響く。
2人は生のままの姿で、互いの体温を守るかのようにきつく絡み合い、蕩けるような口付けを交わしている。
そして、唇が重ねられる度に、交わされる瞳。
未だにこの行為に羞恥を隠せないサシャは、レザンの情熱的な視線にぶつかると恥ずかしそうに逸らしてしまう。
その一瞬後、おそるおそる瞳を掬い上げる。
そこには熱に浮かされ、目前にある水を求める様に自分を見詰めるレザンの瞳と、彼と全く同じ眼をした己の姿があった。
度重なる口付けにほだされたのか、どちらからともなく互いの身体に指を、舌を這わせる。
「…っ、やぁ、レザン……くすぐったい……」
腋と胸の中間点辺りを触れるように舐められて、サシャはクスクスと笑った。
と、次の瞬間、笑っていたサシャがレザンの手を捕らえて、まだ実りきっていない緩やかな胸に押し付ける。
「……優しくしてくれなくて、いいから……レザンの感触をしっかり刻み付けて欲しいの……」
羞恥で耳の先まで真っ赤にしながら、それでもまっすぐに自分に向けられた言葉にレザンは言葉を失う。
だが、今にも泣きそうな顔でこちらを見上げる亡国の王女に、今まで以上の愛しさを感じ、身体の中心から熱が生まれる。
「―――至らず、申し訳ありません」

「………はぁ、ん……っう、くぅ……」
以前、レザンがつけた跡がすっかり消えた肌に新しい花が咲く。
サシャは上に下に跡を残していくレザンの頭に縋り付いている。
「――――っひぁあ!!……んくぅ、ふ…ぅ…」
思い出した様に、既に固くなった胸の突起を弄ってやれば、荒い息の中、一際極まった声で啼く。
そして、その差し迫った息は刻一刻と激しさを増していく。
サシャの秘所に手をやれば、これまでの愛撫に解されたのか、すっかり潤っていた。
指についた蜜を舐め取ると、その味に一層欲望が深くなる。

レザンは力なく横たえられたサシャの足下に跪き、その股間に顔を埋める。
「………?……レザン、何、し???キャッ!駄目―――――ッ、そんなとこ……」
秘処に触れる、指とは異なる生暖かく滑る感触にサシャは驚愕の声を上げる。
その感触の主がレザンの舌だと知ると、より慌てふためいて離れようとするが
脚を押さえられていて、それも叶わない。
……ヌチュッ……ズニュ……
とめどなく溢れる蜜を吸い上げられる水音に、サシャは気が触れてしまいそうになる。
身体の最奥が熱を放出したくて疼く。
「……ハァ、……ハ……レザ、……もう……お、願…!!」

瞳いっぱいに涙を溜めて懇願する少女の頬に軽い口付けをひとつ落とす。
レザンは彼女の身体に割入り、その両脚を自分の肩に掛ける。
「……行きますよ?」
もう、届いていないかも知れないが、レザンは激しい呼吸を繰り返すサシャに声をかけ、
ゆっくりと彼女の中に侵入した。
何度も体験した筈なのに、まるで初めての交わりかの様にきつく締め付けて来るサシャの中に、
思わずレザンもクッと声が漏れる。
汗の滲む額に、そっと触れるものがあった。
息も絶え絶えだった筈のサシャの細い指が、レザンの顔をなぞる。
「………姫……」
呼ばれてにこりと微笑むサシャの表情には、花の様な可憐さと華の如き艶やかさ。
恐らく、彼女のこんな顔を知るのは自分一人。
その至福の笑みにレザンは一瞬、このまま死んでしまっても良いさえと思ってしまった。
身体の中心に着いた火はますます熱く燃え滾る。
その昂りを組み敷いた少女の最奥に向かって何度も何度も叩き付ける。
「――ひャぁっ!……レザ、ン……はぁ……レザ、っっくぅあぁああ!!」
荒い息の中でも必死に自分の名を呼ぶその声にレザン官能が刺激され、腰の動きが激しさを増す。
その律動に合わせる様に拙く動くサシャの腰。
(……もう、限界、か―――)
「――く、ぅ――!」
レザンの切羽詰まった様子から彼の次の行動を感じたのか、サシャは渾身の力でレザンにしがみついた。
「―――行かないでッ!!」
その突然の行動に動きを封じられたレザンは、自身の欲望をサシャの身体の最奥に吐き出してしまった。
168裏切騎士と亡国姫 21:2005/10/25(火) 01:47:11 ID:3qeNgDFn
「……そんなに謝らないで。私が望んでした事なのだから……」
ひたすらに謝罪の文句を並べる彼女の騎士の胸に頬を寄せて、サシャは言った。
白魚の様なその指で、剣ダコの出来たレザンの無骨な手をぎゅっと握り締めている。
「………戦に行くの……?」
屋敷に辿り着き、その様相を見た時から覚悟はしていた。
「………はい。明日の夕刻には出立致します」
およそ甘い情事の後に交わす睦言とはかけ離れた会話だと思いながらも、レザンも会話を続ける。
「…………そう」
サシャは一言呟くと、愛おしそうに握りしめた手に頬擦りをする。
…………国を、父を斬った、そして私を護り、愛した、不器用な手。
「……必ず、帰ってきて」
「私が姫の命を違えた事がありましたか?」
真剣な面持ちの元主に、レザンは優しく笑って答える。
「…………命令ではなくて、『お願い』では駄目?」
少し考えて、上目遣い気味にレザンを見上げるサシャは子供がものをねだる表情そのものだった。
彼女のその表情の可愛らしさに心を奪われたのか、はたまたその問いの意味に瞠目したのか、
すっかり言葉を失ったレザンにはお構い無しに、サシャは『お願い』を続ける。
「……絶対に、生きて帰ってきて。そして………」



169裏切騎士と亡国姫 22:2005/10/25(火) 01:50:49 ID:3qeNgDFn
海風が教会までその潮の匂いを運んで来る。
海の見える丘の上に建てられたその建物はいつか訪れたその時と変わらぬまま。
あれからひと周り季節は巡った。
きっとこれからも、天気の良い日もどしゃ降りの日も変わらず、そこに在るのだろう。
講堂には少女とも女性とも言い難い、微妙な年頃の娘が一人。
天井の窓から刺す明るい真昼の光に似合わぬ、真っ黒な衣装とベールでその白い肌も金の滝の様な髪も隠している。
(全身真っ黒で、まるで彼になったみたい)
白い軍服を纏っていた頃の記憶は朧げになり、漆黒のイメージの彼の方が定着してしまっている。
手には純白のカラーを一輪。

と背中で重い扉を開く音がした。
すぐには振り向かない。こんな日に遅れて来る方が悪いのだから。
珍しく息を切らせながら、靴の音を響かせながら足早に近づいて来る。
「………遅れて申し訳ありませんっ!」
漸く彼女の許までたどり着いたが、まだ、許してやらない。
謝る相手にそっぽを向いて顔を合わせない。
と、息を飲む音がして、そっとベールを持ち上げられる。
その相手は彼女と同じく真っ黒な軍の礼服に身を固め、黒い髪と瞳を持つ男。
「………変?黒い婚礼衣装なんて……」
この国では『誠実』を意味する黒が婚礼の色として用いられているが、なじみのない彼女には少し面映い。
「――すごく綺麗だ」
なのに、何のてらいも無く男は答える。そして、その真っ直ぐな瞳を逸らす事無く、彼女に告げる。
「これからも、ずっと側にいて頂けますか?」
ずっと焦がれていた言葉に、彼女は満面の笑みを浮かべて男に抱き着いた。
そんな彼女の耳許で男が囁く。

「……愛してる―――――サシャ」





おわり
170裏切騎士と亡国姫:2005/10/25(火) 02:02:54 ID:3qeNgDFn
『従が主を呼び捨てに出来るまで物語(心のメインテーマ)』完結です。
長い間放置プレイしていて正直スマンかったorz
あと、色々心配して下さった方々にも感謝。
(ちょっと胃に穴が空きかけてただけだったので無問題です)
心残りは最緒までレザンの元ネタ菓子見つけられなかった事!(そこかよ)

なので>136氏は、「そんな時は笑えばいいと思うよ!」とか懐かしのアニメの名科白吐いておきます。

139氏と160氏を筆頭に他職人様の作品を楽しみにしてます。
ちなみに漏れは里見八犬伝レベルまでならオゲですよ!>獣辱

171名無しさん@ピンキー:2005/10/25(火) 02:22:02 ID:Py5Pi3mT
神乙!!!
さんざんじらされた挙句のハッピーエンドだなんて……この野郎大好きだ>170
172名無しさん@ピンキー:2005/10/25(火) 02:46:56 ID:NBsJoYEz
ええもん読ませていただきますた
173名無しさん@ピンキー:2005/10/25(火) 11:44:27 ID:ToVTZqr9
GJ!!!
次回作に期待!!
174名無しさん@ピンキー:2005/10/25(火) 14:13:55 ID:mkNgopRu
キテタキテターーーーーーーーーーーー!!!!
>>170 GJ!
175名無しさん@ピンキー:2005/10/25(火) 23:27:15 ID:rSYoJbJB
>>170
はぁ…サイコーだったぜ…
久々にSSに神を見た。
176名無しさん@ピンキー:2005/10/29(土) 18:48:16 ID:vL6PelA9
久々に覗いたら完結してたーーーーー!
GJ!!!!!!
ハッピーエンドでよかったス
177名無しさん@ピンキー:2005/10/29(土) 18:48:50 ID:vL6PelA9
いつものクセで上げてたスマソ
178名無しさん@ピンキー:2005/10/30(日) 19:08:39 ID:7CxPxJTw
>170
遅レスすまそ。
GJGJGJ−−−−!レザン、よかったなぁー(つД`)
ひそかに応援してたんで、ハッピーエンドでよかったよー


神の後に投下するのはチョト気が引けるけど、とりあえず書けたんで投下。

王国再興を誓うお姫様と剣士のお話。
前フリがながいんで、めんどくさい人は2レス目の区切りのマークの所から
読んでください。
あと、後半部分に微妙に触手モノが入るので、苦手な人はスルーでヨロ。
179魔法王女と聖剣士:2005/10/30(日) 19:09:41 ID:7CxPxJTw
 沈黙の中を、雨音が滑る。
 断続的にさぁさぁと、二人の間にたわむ距離を縫って、夜の寒々しさを強調してくる。
 固形燃料の火を気にしながら、剣士は視界を奥へと向けた。
 身じろぎもせずに身体を横たえているのは、この1年、彼と共に旅を続けた少女だった。
 ――1年。よくも続いたものだと、彼は密かに嘆息を漏らす。
 そもそも、この旅路自体、決して楽な物ではなかったのだ。


 彼女の名は、セラフィーヌ・ケスウィル・デ・ラクシーディア。大陸の北西部一帯を
統治するラクシード王朝の世嗣だった王女だ。――2年前、魔物の大群に王都が襲撃され、
王国が無残にも責め滅ばされる前までは。
 その際の戦闘で王と王妃は命を落とし、彼女はわずかな供に守られて王城を脱出した。
 だが、そこで他所の大国に身を寄せ、力なく涙をこぼすような真似をセラフィーヌ姫は
為さなかった。
 そもそもこの国は、太古より存在する【魔の軍勢】を異界へと追いやった英雄達によって
作り上げられた場所だ。仇敵たる【魔の軍勢】が再び現界し、攻め寄せてくる事は王家の者には
想定の事象であったのだ。――ただ、数百年の長きにわたる平和が、とっさの対応を怠らせる
ほどに王家の者を堕していたのは事実だが。

 一度の失態を雪ぐ事を誓った彼女は、全国土に駐屯する軍隊を東の副王都に終結させる。
ラクシード王家の名声と、戦後の十分な褒章を巧みにちらつかせ、この機に領土拡張を画策する
隣国を牽制し――およそ人智が尽くす限りの備えを施し、幾人かの有能な補佐役を容れながら、
このわずか16歳の少女は、完璧な王者としての資質を開花させて決戦に臨んだ。王都陥落から、
一年の日々が過ぎていた。

 そして――ラクシード軍は再び魔族の軍勢に敗退した。
 通常の戦争ならば、セラフィーヌ姫を旗頭に掲げる国家軍に非は無かった。統一された指揮系統と
有能な将軍を持ち、自領土の奪回を美しい主君に誓う兵士の士気は高かった。
 それでもなお――力弱き人間の軍隊は、一騎当千の怪物を何万と召喚可能な魔王ルーファウス
率いる魔軍の敵ではなかったのである。

 壊走する自軍を集結させ、再編を将軍たちに一任したセラフィーヌ姫は、最高神ラクサスと
軍神ティアルスの神殿に託宣を得るべく馬を走らせた。
 過去に、彼女の先祖は彼奴ら魔軍に勝利していた。ならば、彼ら英雄にあって自分に
無い物は何か。――それは、人智を越えた魔道や神の領分であると彼女は考えたのだ。
 そして、その推論は正しく報われる。両神殿の託宣と、密かに伝令を遣わせていた、俗世に
関わらぬ『七賢の魔導師』はまったく同じ回答をセラフィーヌ姫によこしたのだ。

『召喚される魔の数は膨大なれど、それを支えるのは魔王が御する龍脈の力である。末端を
叩いていても効果は無い。魔王を倒せ。そして、魔王を倒す事が出切る属性を持つのは、
ラクシード建国の祖が一人、剣王が所持していた『聖剣』のみである』――と。

 ラクシード王国は二人の兄弟によって建国された。
 剣士の兄と、魔導師の弟。共に偉大な力をもつ兄弟のうち、国土を統治したのは弟魔導師の
方だった。
 兄剣士は、強大な力を有する『聖剣』を封印する為に王権近くから身を隠し、そのまま
いずこかの歴史の隅に埋もれてしまっていた。
 だが――弟魔導師の子孫であるセラフィーヌ姫は、王家に伝わる口伝により知っていた。
兄剣士の血筋を引く者は山間に幾つかの里を作り、剣士の後継を育て、危急の時には再び
『聖剣』を握る為にそれを守っているのだと――。

 セラフィーヌ姫は兄剣士の血筋を引く「隠れ里」を探す決心を固めた。おおよその位置しか
判らぬ里を、人を使ってなんとか当たりをつけ――数人の従者だけと共に、セラフィーヌ姫は
自らその地に向かった。
 ――確かに、うかつと言えばうかつであったと言える。自軍の勢力圏であるとはいえ、国内は
非常の時期にあり、治安の悪化は必至だった。同祖への敬意を表そうと、少数の随員で赴いた
彼女の誠意は裏目に出た。心無い山間民の略奪と、そこに追い討ちをかけるように襲ってき
た魔軍の遊撃部隊によって、彼女の行為は踏みにじられようとしていたのだ。
180魔法王女と聖剣士:2005/10/30(日) 19:10:22 ID:7CxPxJTw
 王都が陥落してより、ただの一度も弱音を吐いた事の無い王女は、この時初めて心が挫けて
いくのを感じた。幾ら心を砕こうと、乱世の空気は国民の意識を蝕み、そして情け容赦の無い
魔軍は今まさに彼女を絶対の危機に陥れていた。
 ここまでか、と。結局、仇である魔王に一矢報いる事もできずに、自分はここで朽ちて
しまうのか、と。
 深窓の姫君でありながら、奇跡的なまでに聡明で不屈の人であったセラフィーヌ王女が
死を覚悟したのは、眼前の半人半獣が血錆に汚れた大鉈を振りかざした、まさにその瞬間だった。



 後に、王女は彼に――剣士パデスタ・ルードフィールドにこう語った。
 『おとぎ話に祖母から聞いた剣王が、目の前に現れたのかと思った』、と。
 ――結果的に、振りかぶられた大鉈は、セラフィーヌ王女の頭蓋を西瓜のごとく叩き割る
事はできなかった。掲げる両の腕を一刀の元に切り捨て、群がる10を越えた半獣の群れを
瞬く間になぎ倒したのは『隠れ里』に住まう若者だった。
 歳は王女より二つ上の18歳。剣士が数多く集うこの里の中で、一番の実力を持つ青年――
パデスタは、里長の命を受けて王女に協力する事になった。

 だが、それで何もかも上手くいくようになった訳ではなかった。
 肝心の『聖剣』が、数百年の時を経る内に、行方知れずになっていたのである。
 状況が彼女たちの背を押し、王女と剣士はそのまま二人きりで聖剣探索の旅につく事に
なってしまった。
 理由の一つとして――魔王ルーファウスは『王女の身柄確保』にしつこく固執している事が
判明した所為でもある。彼の目をくらませ、逃げおおせる為には居を一つ所に構えない方が
有益だろうとセラフィーヌ姫は判断した。
 だが、理由はそれだけではなかった。聖剣探索を彼女に志願させた最大の理由は、彼女が
持っていた使命感だった。王女は、自力で国家の騒乱を収める事の出来ない自分の無力を恥じ、
少しでもその現状を自らの手で打開する事を己に課していたのだった。

 狼狽したのは、『聖剣士』として選ばれてしまったパデスタだった。確かに『聖剣』の探索に、
祖王魔道士の魔術を収めている王女の力は有益だった。しかし彼女はこの戦争の旗頭である。
最も守られるべき存在が、第一線で危険に晒されていいはずも無く――なにより、山野を
野宿する事も頻繁であろうこの過酷な旅に、王室育ちのひ弱な少女が耐えられるとは思えなかった。
 だが、彼女は頑として引かなかった。そして――結局、この1年、ただの一度も弱音を
吐かなかったのだ。


                  ●○●○●


 固形燃料の火が作る光が洞穴の奥に影を揺らしている。ほっそりとした少女がかすかな寝息を
立てているのが感じられて、剣士パデスタは表情をかすかに和らげた。
 ――聖剣は見つかった。幾多の困難と、8ヶ月の月日をかけて。その聖なる力は疑い様も無く、
これならば恐らく、どんな『魔』の力をも打ち滅ぼす事ができるだろう。
 密かに副王都へと連絡をつなぎ、王国軍は明後日を以って再び挙兵することが決まっていた。
 だが、魔王軍打倒の主力は、剣士パデスタとセラフィーヌ王女の二人きりだった。王国軍は
『おとり』だ。魔王と魔王軍の意識をそちらに集中させ、その隙を突いて魔王の城――かつては
ラクシード王国の王城であり、セラフィーヌ王女が生まれ育った場所でもあったそこに忍び込み、
魔王ルーファウスを打倒するのが目的だった。
 明日になれば、彼らは終局の決戦地へ赴く。これは最後の休息だった。
 
 最後、という言葉を脳裏に横切らせ、パデスタは軽く眉をしかめた。
 言葉の不吉さに慄いたのではない。明日をも知れぬわが身を嘆いたのでもない。
 ただ――胸によぎる寂寥感に気が付き、パデスタはその出所に思い至ってしまったのだ。

 夜が明ければ、自分と王女は城へ向かう。そこで、魔王と対峙する。
 それがこの旅の、当初からの目的だった。負けてしまえば、それでおしまい。恐らくパデスタは
四肢をもがれて無残に殺され、セラフィーヌ姫は彼女に執着する魔王の慰み者となってしまうだろう。
勝ったとしても――王女は国家の指導者だ。建国の剣士の血筋を引いているとはいえ、パデスタが
彼女の傍らに今後もありつづけるなど、できない相談にちがいない。
181魔法王女と聖剣士:2005/10/30(日) 19:11:07 ID:7CxPxJTw
 勝っても負けても、そこが二人の終着点なのだ。
 それが、嫌だ――。
 そう考える自分に、かなり前からパデスタは気がついていた。この旅を、終わらせるのが、
彼はとても惜しかった。
 いつまでも、終わらなければいい。そう思うようになっていた自分が後ろめたかった。
 勿論、言葉に出した事など一度も無いし、むしろ王女には『早くこの旅が終わればいい』
などと、本心とは反対の憎まれ口や――もしくは励ましを向けたことも片手の指では効かなかった。
 すべてが、嘘っぱちだ。
 同じ目的を持ち、寄り添い、そして――全幅の信頼がこもった眼差しを無向ける王女を
いつまでも自分の傍らに置いておきたかった。

 ――未練なのは、判っている。それでも、暗闇に揺れる焔の色を映しながら、パデスタは
妄想を脳裏にぼんやりと紡いでいた。

(――逃げてしまえばいい。)
(彼女を連れて、山脈を越えて……海を越えて遠い国に逃げてしまえば)
(俺は何をしてでも暮らしていける。彼女も、この1年の窮状に文句一つ言わなかった。
庶民の暮らしだって絶対にできる)
(山で羊でも飼えばいい。炭焼きでもいい。人目につかないところで――二人で)
(この国から遠く遠く離れて……子供を作って――そして)

 自分勝手な、ひどい妄想。――パデスタには解っていた。何よりこの国の行く末を案じる
この誇り高い王女が、国を見捨てて彼と共に逃亡する事などありえないのだという事を。
 1年間、彼女を見てきた。当初は反発と義務感から。その後は――どうしようもなく
彼女に惹かれていく自分を気取られないよう、注意しながら。そして、今では彼が心の底から
崇拝する君主にして女主人となったセラフィーヌは、同時に彼の中で最愛の女性となっていた。
信義を重んじ、誠実で、生真面目で、自負心が強くて――だが少しだけ傲慢で、それでも
かなりのお人よしで、一度心を許した相手には猫のように甘えてくるこの少女が、愛しくて
ならなかった。
 だからこそ、パデスタには解る。セラフィーヌは絶対に王女である事を止めない。
 やめてしまえば、彼女は『彼女』でなくなってしまう。
 それが解るから尚更、彼女のその強さが、信念が――愛しいと同時にどうにも恨めしかった。

 その時――。
「パディ」
 雨音を縫って空間に響く、彼の名前。
 その涼やかな声で愛称をよびかけられ、パデスタはどきりとして伏せていた面を起こした。
 姿勢は変えぬまま。寝ていたと思っていたセラフィーヌが、じっとこちらを見つめていた。
 忘れな草色の瞳が固形燃料の焔に揺らめき、濡れているように見えてしまう。
 オレンジ色に染まる頬と青銀の髪がかすかに揺れ、パデスタは彼女が吐息と共に小さく笑った
のが判った。

「……どうした、眠れないのか」
「ええ。体を休めておかないといけないのは解っているのだけれど……でも、落ち着いて眠れと
いう方が無理だと思うわ」
 少し姿勢を変えながら、セラフィーヌはそれでもパデスタから視線を外そうとはしない。
 彼女に穏やかな視線を返しつつ、パデスタは軽く肩をすくめた。
「気持ちはわかるが、それでも寝ておけよ。明日の朝からは強行軍だ。将軍たちが陣形を整える
前までに城の二番城壁までには忍び込んでおかないと、…って言ってたのはセラのほうだろ」
 二人きりの時、パデスタもこうやって彼女を愛称の『セラ』とよぶ。
 最初は、一般の町や村を通り抜ける際の偽装として使っていたのだが、今ではざっくばらんに
なってしまって、周囲にセラフィーヌ王女の身分を知る者がいない時はこうして気安く
呼びかけてしまう。 
 王女がそれを好んでいる事を、今ではパデスタも知っていた。

「俺はともかく――セラは体力が無いんだしな」
 いつものように紡いだ軽口に、セラフィーヌは舌を出して顔をしかめる。
 ――…こんな、打ち解けたやり取りを交わすのもあと少し。
182魔法王女と聖剣士:2005/10/30(日) 19:11:43 ID:7CxPxJTw
 内心の焦燥を押し隠して、パデスタはからかうような表情を崩さなかった。彼女と自分の関係は、
表面上はずっとこうだった。世間知らずの高慢なお姫様と、生意気で不忠な守護剣士。だが、
少しずつ――本当に少しずつ、自分たちの関係は変わっていったのだ。

「……あのね、パディ。ひとつ、お願いがあるのだけど」
 ――そんな彼の思惑を知ってか知らずか。セラフィーヌはするりと、彼の諾もなしに言葉を続けた。


「私を――抱いてほしいの」


 何を言われたのか――その瞬間、わからなかった。高い所にある物を取って欲しいとでも
言わんばかりの平淡な調子で、セラフィーヌはその望みを口にした。

「何を――言って」
 パデスタは肌が粟立つのを感じた。耳の裏から首筋にかけて、なにかがちりちりと彼を
苛んでいく。
 幾分拗ねたような表情で、セラフィーヌは口早に彼の反論を封じた。

「だって――魔王ルーファウスが私の処女を狙っている事は知っているでしょう? いくら
なんでも、国を滅ぼした魔族にそんな物をささげるなんてゴメンだわ。」
 上気した頬はバラ色に染まり、湖面を思わせる碧水の瞳はじっと彼の所作を見つめていた。
 その表情に驚愕と困惑しか見て取れなかったのか――拒絶や嫌悪が浮かんでいないことに
安堵したのか、セラフィーヌは口の中でもぐもぐと、理由を付け加えていく。

「そんな事をするのは、もう今の機会しか無いし――それに、私だって女だもの。初めての
交わりが、異界の魔物に陵辱されるなんて、そんなの絶対に嫌!」
 声に弾かれたように、セラフィーヌは身を起こした。ちろちろと揺れる炎の向こう側で、
ほっそりとした彼女の肢体が、洞穴の奥に長い影を落としていく。
 パデスタが声も無く彼女を見つめていると、セラフィーヌは思いつめたように、そっと
瞳をすがめた。
「それに、魔王もパディ達も勘違いしているようだけど、別に『祖王の魔道』を使うのに、
処女かどうかなんて関係無いのよ? 私は巫女じゃないんだし。だから、心配しなくても
大丈夫よ」
 そもそも、祖王は男性だったじゃない、とセラフィーヌはおどけた表情で続けた。
 しかし、パデスタは見逃さなかった。強く抱けば折れてしまいそうな彼女の薄い肩が、
わずかに揺れている事を。だが――彼は言葉がでない。
 そして、セラフィーヌは少しだけためらった後に、彼女らしからぬオドオドとした風情で
ぽつりと呟いた。

「……パディなら、私は嫌じゃない。――だから」

 視線は彼に向けたまま。だが、敷布代わりにしていたマントを掴む王女の指は、小刻みに
震えている。哀れなまでに痛々しい彼女の様子に、パデスタは胸奥がきつく締め付けられて
いくのを感じた。
 彼女が口にしているのは、嘘ではないが、本当の理由ではない。
『魔王や触手が初体験になるのは嫌だから、せめてパデスタに事前に抱いておいて欲しい』
というのは、単なる口実なのだと――そう言うことで、パデスタが彼女を抱くための
大義名分を無理やり掲げているのだという事を、彼は看破した。
 
 そう、口実だ。彼女はそれ無しに、パデスタを篭絡する事が出来ない。生来の性格と
使命感の強さ、そして王族としての自負が、彼女の言葉を曲げさせてしまう。
 恋情と、義務と――そして、彼女が引っかかっているもう一つのことを、パデスタは
完全に察していた。
183魔法王女と聖剣士:2005/10/30(日) 19:12:50 ID:7CxPxJTw
 応えに窮して、パデスタは口をつぐむ。しかし、その様子を誤解したのか、セラフィーヌは
諦観の光を瞳に浮かべながら、弱々しく言葉を紡いだ。

「……いいわ。ごめんなさい。馬鹿なことを言って」
「セラ」

 あっさりと引き下がったのは、彼女の矜持がさせてしまった為だ。セラフィーヌは
拒絶を恐れている。何故なら――。

「パディには、故郷の里に許嫁がいるんですものね。身重の彼女を裏切れだなんて、
愚かな事を口走ってしまった。忘れてくれると嬉しい」

 ――それが、二人の間に横たわる最大の亀裂だった。

 セラフィーヌと知り合う前から、パデスタには恋人がいた。小さい頃からの幼馴染で、
里長の娘から思いを寄せられていた彼は、別段疑問に思う事も無くその立場を受け入れて
いた。もとより、小さい頃に親を無くし、天涯孤独の身として『里』に育てられていた彼に、
選択の余地は無かったのだ。
 幼馴染の事は嫌いではなかったし、むしろ愛していると言っても多分差し支えない。
だが、その感情に名をつけるのとしたら、「家族」や「姉」に対する『愛』なのだろうと、
今のパデスタは思う。
 セラフィーヌに出会いさえしなければ、彼はそのまま幼馴染と婚姻を結び、大過なく
その一生を終えた事だろう。しかし、パデスタは出会ってしまった。彼の運命の相手と。

 ――だから、パデスタは楽観していた。彼女と出会う以前の女性関係自体は、恋愛成就の
障害とはなりえないし、特に負い目に感じる事も無いはずなのだと。
 確かに、それは愁嘆場を生み出しはするが、真っ当な認識であっただろう。
 恋人同士の健全な男女が営む行為の、結果さえ違っていたのなら。


 2ヶ月前。未だ聖剣の探索行が終わっていない頃。彼の故郷である里に立ち寄った時。
 幼馴染は、頬を染め、喜色を一杯に浮かべて彼と王女を出むかえた。
 胎児を抱えて大きく膨らんだ腹を揺すりながら――。

「…セラ」
 パデスタは寄りかかっていた洞内の壁に手をつき、四つんばいになると、火の奥にいる
彼女に近付いた。
「――パディ?」
 セラフィーヌは、不思議そうに彼を見上げる。
 その瞳が、今度は見紛えようも無く涙で潤んでいる事を、パデスタは視認した。
 強情で、毅然とした態度は彼女の根幹を為す姿勢だった。パデスタが彼女の脇に手をつき、
覆い被さるようにしてセラフィーヌの顔を覗き込んだ時、初めて彼女はこの体勢の危険性を
察知したようだった。

「――あの」
「セラ」
 拘束などしていない。それでも、王女は身じろぎ一つしなかった。
「頼みがある」
「――」

 真摯な声音と、真っ直ぐに見下ろす琥珀色の瞳。いつでもまばゆいばかりに光をたたえる
彼の眼光に射抜かれ、セラフィーヌは身じろぎする事もままならなかった。
 胸の奥が熱い何かで一杯にふさがれ、息をする事も忘れそうだ。
 だから、言ってしまった。
「私でできることなら、なんでもどうぞ。パディには……その権利がある」
 そう応えると、パデスタは明らかに不機嫌になって眉根をゆがめた。
「そんなの、俺には無いって何度も言った。王城に殴り込むことを決めたのは俺だ。」
 この決戦を強いたのが自分だと、これまで何度も繰り返して己を責めてきた王女の言を、
パデスタは苛立たしそうに切って捨てる。
184魔法王女と聖剣士:2005/10/30(日) 19:13:20 ID:7CxPxJTw
「確かに、【聖剣】を扱う事ができる剣王の血筋は、あの時の里には俺しかいなかったから、
選択の余地はなかったのかもしれないけど――」
 その言葉に、つらそうな表情を浮かべたセラフィーヌの頬に手を添え、パデスタは幼子を
諭すようにゆっくりと優しい声音で話し掛けた。

「セラが、負い目を感じる事なんて、無い。」
「――パディ」
「俺が、そうしたかったんだ。たとえ【聖剣】を使えるのが俺じゃなくても、絶対にここまで
ついてくるつもりだった。セラをたった一人であの糞魔王野郎のところに行かせるなんて、
死んでも嫌だった」

 もはや、留める事は不可能だった。セラフィーヌの双眸から、ぼろぼろと大粒の涙がこぼれ、
彼は優しく幾度もその雫を指で拭う。
「私――わたし……」
「さっきの、続き。頼みを聞いてくれ。『死地へ飛び込む為の見返り』とかじゃなくて。
セラへの、これは『お願い』だ。」

 彼女のマントにその身体を押し倒し――彼は自嘲するように表情を歪めた。

「ルーデシア(幼馴染)との婚約を解消する気は無い。腹の子には父親が必要だ。
――それはみなしごの俺が一番よく解ってる。」
「――…」

「だけど、俺は……セラが好きだ」 
 言ってしまった。一度口に出したら、もう感情が止まらない。
「もっと早く出会いたかった。セラともっと一緒にいたい。セラのことを助けてやりたい。
セラに――笑っていて欲しい。……セラを、抱きたい。」


 彼女は、数度まばたいた。今度はセラフィーヌの方が、得心に数瞬の時間を要したのだ。
 パデスタが――自分を望んでくれている?
 考えても見なかった。彼には初めて会った当初から恋人がいて、この想いが成就する事など
欠片も期待していなかったはずなのに――。
 だから、彼の言葉に驚いた。驚きすぎて、何も考えずに彼に抱きついた。
 歓喜が罪の意識を押し流した。

「パディ、わたし……」
 囁く彼女の唇に、パデスタはそっと指を当てる。
「勝手な事を言ってる。あれもこれも、なんて絶対無理な話だ。だから、この戦が終わったら
俺は里に帰る。帰って、ルーディ(ルーデシアの愛称)の側にいる」
「――パディ、パディ。それは……だけど」

「だから」

 セラフィーヌの上衣をはだけ、パデスタは沈痛さを孕ませた笑顔で、卑怯な望みを低く告げた。
「今だけ――彼女の事は忘れていてくれ。セラの今夜一晩を、俺にくれ」


 ゆっくりと、パデスタの唇が彼女のそれに覆い被さった。初めて重なるそれは、まるで
幾年も合わさっていたかのようにしっとりと互いに馴染んでいく。
 唇の淵を彼の舌がなぞり、セラフィーヌの舌はパデスタの口腔に吸われていく。
「ん……ん、ふっ…」
 甘えるような鼻息がこぼれ、パデスタは満足そうに目元だけで笑み崩れた。
 彼女が愛しかった。背徳感は彼女の甘い唾液に溶かされてしまう。二人は意識的に里の
幼馴染を意識の外に追いやった。――批難を受けるのだとしても、この時の彼らには他に
道は存在し得なかった。

 パデスタの舌が、唇を外れ、セラフィーヌの首筋を辿る。わずかに身をよじり、切なげな
吐息をこぼす事しか彼女にはできない。剣を握る節くれだった指が、下着の上から胸のまろい
双丘を揉み掴むと、セラフィーヌはびくりと背を弾けさせた。
185魔法王女と聖剣士:2005/10/30(日) 19:13:49 ID:7CxPxJTw
「――あ……や、パディ…」
 しかし、彼は無言のまま指を蠢かす。少し痛いくらいの、だが手馴れた動きはセラフィーヌの
身体を奥底にじわりと火を点していく。
 なにか、甘い感覚が満ちていくのを感じ、セラフィーヌは当惑に首を軽く振った。
「な、なに……これ。パディ、私……なにか変…」
「変じゃない。ほら、ここが硬くなってるのが分かるか?」
 下乳からすくい上げるようにしていた彼の指が、下着にもぐって両の乳首を指先で挟む。
 感覚が鋭敏になっていたセラフィーヌは、鋭い快感が突き抜ける衝撃に、思わず悲鳴を上げた。
「あ……あぁっ!! やっ……パディ…っ!」
 しかし彼女の制止にパデスタは動きを止めない。しこっていく胸の先端を押しつぶしたり
――捻り上げたりしながら、剣士は彼女の乳房を丹念に愛撫していく。
 王女は初めての衝撃に為す術も無かった。彼の意に転がされ、自分でも信じられないような
媚びた嬌声がこぼれていくのを止められない。
 だが、その羞恥は幸福味を帯びていた。彼の愛撫の一つ一つが、セラフィーヌには愛しく、
――嬉しかった。
「パディ……」
「セラ。……脱がすから、手を上げて」
 貫頭衣と下衣を脱がされ、完全に素裸になった上半身に、パデスタの舌が滑る。時折
きゅうっと痛みがはしり、セラフィーヌがその箇所に視線をやると、そこには赤い吸い跡が
花びらのように彼女の肌へ散らされていた。
「――あ、これ……」
「セラが、俺の物だっていう、しるし……」
 視線を絡め、パデスタはふわりと柔らかく微笑んだ。その表情にセラフィーヌはうっとりと
見とれてしまう。そして、彼女は思わず頷いていた。
「もっと、つけて。パディ――好きよ」
 二人してくすくすと笑い、彼らはそのまま唇を重ねた。
 ――言葉のとおり、パデスタは彼女の乳房や脇下や首筋にキスマークを散らしていく。
セラフィーヌが彼にねだり、パデスタは自らも上衣を脱いで彼女に身体を差し出した。
 当初はおずおずと、だが次第に大胆になって、セラフィーヌもまた彼の肌に口付けを
落としていく。鍛え上げられた胸筋や、大剣を振るう鞭のような上腕を赤い舌がなぞり、
セラフィーヌも彼女の『しるし』をパデスタの肌に刻み付けていく。
 パデスタは彼女の乳房を甘噛みし、歯形をつけてしまったが、彼女は小さく喘いだだけで
何も言わなかった。


「……あ、ぁああっ」
 すでに痛いほどに尖りきった乳頭を啄ばまれ、セラフィーヌは喜悦の声を高く上げた。
口の中で転がされ、時折軽く歯を立てられ、ちゅうちゅうと吸い尽くされる感覚にセラフィーヌは
嫌嫌と何度か首を振った。だがそれは拒絶ではなく、未知の感覚に対する怯えに過ぎなかった。
その事を承知していたパデスタは、容赦なく口中の果実を堪能する。
 交互に双方の尖りに吸い付く一方で、彼の手は徐々に下へと下がっていく。
 滑らかな脇腹を経てヘソを弄り、長旅にくたびれた皮製のズボンと綿のタイツを、
パデスタは一気に引きずり下ろそうとした。
「きゃんっ!! や、だ、だめっ…」
「腰を上げて。…脱がせにくい」
 恥じらいの言葉は苦笑と共に一蹴された。セラフィーヌは頬どころか全身を真っ赤に
染めて、だが彼の言葉に従ってパデスタの首にすがりつき、彼の言う通りにした。
 まとわりつく皮地とブーツを無造作に放り、パデスタは最後に残る小さな布地の上に、
ひたりと指を添わせた。
「――あ、やだ、そこ……駄目」
「セラ」
 くすりと、パデスタは笑った。胸への愛撫で感じすぎていたのか、そこはしっとりと
濡れていて、割れ目の形すらくっきりと判るようになっていた。
「初めてなのに……すごいな」
「――え…?」
 言われている事の意味が解らずに、潤んだ瞳でセラフィーヌが彼を見つめる。その表情に
堪らなくそそられる自分を感じながら、パデスタは少し意地の悪い笑みをセラフィーヌに向けた。
「セラがえっちな身体をしてるって事さ。」
「パ、パディ!?」
186魔法王女と聖剣士:2005/10/30(日) 19:14:22 ID:7CxPxJTw
 驚いて目を見開きながら、セラフィーヌは思わず上体を起こした。しかしパデスタは彼女を
そのまま押し倒し、下履きの上からゆっくりと溝をなぞっていく。
「ひど…私、そんな――あ、っ…」
 愉悦に感じきった声を出す彼女の耳たぶを食みながら、パデスタはそっと笑いながら囁いた。
「俺は――嬉しいんだけどな。これなら、セラにあまり痛い思いをさせないで済むかもしれない」

 布地の脇から指を差し入れ、パデスタは直に過敏な花びらを『つい』と撫でる。
 王女はびくんと背を弾けさせ、未だ彼の首に絡んだままだった腕に力が入った。
 そのまま、指が一本最奥へつぷりと沈む。セラフィーヌは眉をしかめ、ぎゅっと彼に
しがみ付く。
「……痛いか?」
「少し、だけ。……でも、平気。パディの好きなようにして」
 しがみ付く腕をやんわりと引き剥がし、パデスタは敷布のマントに力なく身を投げ出す
セラフィーヌをまじまじと見つめた。
 彼女は快楽に息が上がり、全身に汗の珠を浮かべていた。改めて王女の裸体を視界に入れ、
パデスタは己の中に残る自制が弾け飛びそうになっている事を自覚していた。
 幼さの残るほっそりとした彼女の肢体は、青い妖艶さに満ちていた。
 横たえられてもつんと上を向く、丸みを帯びた乳房。
 細くくびれた腰と、無駄な肉の無いすべらかな腹。
 膝を閉じても隙間の残る、しなやかな太腿。
 我知らず息を呑み込み、パデスタは彼女に覆い被さると、そのままセラフィーヌの唇を
強く貪った。
「ん、んんっ……――パディ…?」
「セラ……セラ! 好きだ…」
 キスの合間に睦言をこぼし、パデスタの指は再び彼女の秘所へと潜り込んだ。
「んぁ、あああっ!! やぁっ…」
 舌を絡められ、セラフィーヌが陶然とする中で指が彼の存在を認識させる。再び犯された
肉壷は、今度はすんなりと彼の指を受け入れた。膣襞を優しく擦り上げ、幾度も抜き差しが
される中、唾液と愛蜜の湿った響きが洞穴の壁に反響して、彼女の羞恥を煽っていく。

「は……ふ、んんっ! や、パディ……熱ぅ…」
「お前の中が熱いんだ、セラ……指がとろけそうだ」
 胸を愛撫する手も止めず、パデスタは幾度も彼女の唇を啄ばむ。蜜壷を手繰る指先は小さな
肉豆を探り当てる事に成功した。
「あっ…!?」
 今までの快感とは圧倒的に異なる愉悦が、セラフィーヌの全身を強張らせる。パデスタの指は
繊細に彼女の肉芽を撫でていく。そのたび意識を蕩かす甘い感覚が背を走り、セラフィーヌの
自我を真っ白に染めていく。
「あ、う、ぁぁっ……いや、いやぁっ! 駄目ぇ…パディ、私っ…」
「セラ。息を吐いて、力を抜け。俺の指を食いちぎる気か?」
 生まれて初めてなぶられたクリトリスからの愉悦に硬直し、彼女のクレバスは差し入れられた
指をきゅうきゅうと締め付けていた。
 幾分笑いが含まれていたものの、彼女を気遣うパデスタの声は優しさと愛しさに満ちている。
「パディ……わたし、私っ…」
「――うん。大丈夫だから。ちょっとだけ力を抜くんだ」
 こくりと子供のように頷き、セラフィーヌはゆっくりと身体を弛緩させようと努めた。その
タイミングを見計らって、彼の指がぐるりと内奥を擦りながら引き抜かれた。
「ああああぁっ!? やぁぁーーーーっ!!!」
 背を痛々しいまでに反り返らせて、セラフィーヌは絶頂の悲鳴を高く上げた。何かが下腹の
奥から凄まじい勢いで駆け上がり――彼女はしばらく息も出来ないほどの悦楽に浸って
身動きが取れなかった。


「――……セラ。セラ? 大丈夫か」
 心配そうな声が、王女の意識を浮上させる。ようやく息がつけるようになり、セラフィーヌは
しばらく肩を上下していた。そんな彼女を覗き込んでいた暗褐色の髪の青年に、
セラフィーヌは恨みがましい視線を向けた。
「パディったら……ひどい。私、あんなに乱れてしまって……恥かしい」
 快感のあまりこぼれた涙をぬぐってやっていたパデスタは、彼女の言葉に頬を紅潮させた。
「その、ごめん」
187魔法王女と聖剣士:2005/10/30(日) 19:15:55 ID:7CxPxJTw
「ごめんじゃないでしょうっ! 私……」
「本当に、ごめん。セラがあんまり可愛かったから……つい」
 臆面も無くそう言い切られて、セラフィーヌは自身も頬が火照っていくのを感じた。
 それくらいパデスタの表情が穏やかで――嬉しそうだったのだ。
 セラフィーヌはひとつため息をつくと、パデスタの背に腕を回した。
「セラ?」
 無言のまま抱きつかれ、パデスタはおろおろと彼女をそのまま抱きしめる。腿の所に熱く
硬い物が当たっている事に気が付き、セラフィーヌは自分の鼓動が早くなっていくのを感じた。
幾ら処女とはいえ、一般的な性知識くらいは持ち合わせてる。
 だから、彼に言った。
「本当に悪いと思っているのなら――優しくしてくださいね」
 そう言いながら、彼女は彼のズボンの前に手を添える。驚きのあまり目を見開くパデスタに
悪戯っぽく微笑みながら、王女は彼の腰紐をゆるめてしまった。

「…セラ。待て、ちょっと待て」
 幾度か唇を舌で湿らせてから、パデスタは大胆な処女姫を制止した。
 きょとんとした表情で彼を見上げておきながら、すでに彼女の手の中には見苦しいほどに
赤黒く膨張した彼のペニスがびくびくと脈打っている。
「……でも、こんなになっているし。男性の方はこうなるとつらいのでしょう?」
「どこからそんなことを……いや、まちがいじゃないが」
 やわやわと竿の部分を擦られて、パデスタは思わず呻き声を上げそうになった。
 セラフィーヌは先走りの液が滴るのも構わず、先端の亀頭や鈴口をゆっくりと撫でつける
ように指を動かし始めた。
「セラ! 駄目だ、やめろ……」
 ひりつく興奮が喉を焼く。実際、その愛撫自体は決して上手いといえる物ではなかったが
――王女が、ラクシード王朝の世継ぎにして、偉大なる政治手腕をも発揮した美姫が、
パデスタの怒張をしごいている! それだけで射精してしまいそうだった。
 ただでさえ、半年以上も恋焦がれていた――そして、決して成就しないだろうと思っていた
想い人を組み敷くことができて、急いているというのに! パデスタは懸命に奥歯を噛み締め、
湧き上がる解放の衝動を押さえ込むのに必至だった。
「セラ……頼む、俺は…」
「――やっぱり、駄目?」
 おずおずと上目遣いに彼の顔を覗き見る王女の表情に、パデスタはほとんど泣きたい気分だった。
「駄目って、何が…」
「その……やっぱり、下手でした? 気持ちよくなかった?」

 ――などと、彼女は言ってのける。
 思わず爆発してしまいそうな衝動を押さえつけて、パデスタは彼女を押さえ込み、無理やり
口づけた。肉棒に添えられた両の腕を押さえつける事も忘れずに――。


「…ん、んんっ! パディ、ちょ、……そんなに駄目だったのでしたら謝りますから…」
「そうじゃない、そうじゃないんだ。ああ、もう。おまえ、最高…!!」
 そう言って、パデスタは貪るように彼女の口腔に舌を差し入れる。
「あ、ふぁ……パディっ! やぁ」
 舌を上あごに擦り付け、歯茎を辿り、溢れる唾液を互いに飲み干してから、ようやく彼は王
女を解放した。
「セラ……好きだよ。本当はもっと慣らしてやるつもりだったけど、我慢できない」
「――パディ?」
 パデスタは彼女の下肢を膝裏で抱え、大きく広げて、その中心で蕩ける秘所に猛りを押し当てた。
「あ……パディ、熱…」
「――うん。セラ、力を抜いて。……ごめん」
 その言葉と同時に、灼熱の塊が王女の中心を一気に貫いた。引き裂かれる痛みと、押し広げられる
苦しさに、セラフィーヌは全身を硬直させ、絶叫した。

「あ、あああああああっ!! あ、くぅ……は、あぁ」
 眉根をゆがめ、喉を反らして全身を揺らす王女はそれでも美しかった。彼女の処女を
奪い尽くした剣士は、己の猛りを包み込み、絞り、びくびくと脈打つ女陰の感触に恍惚と
なりながらも、腕の中の少女を気遣う事は忘れなかった。
「……セラ。セラ。大丈夫か……」
188魔法王女と聖剣士:2005/10/30(日) 19:16:59 ID:7CxPxJTw
「パディ……痛い、痛いの……あ、でも――これで、私…」
「うん。もう、処女じゃないな。」
 先刻の『建前』をおどけた声に乗せ、パデスタは額に乱れかかる彼女の髪を梳いてやる。
「全部……入ったの?」
「――…一気にやった方が、痛みも一度で済むかと思ったから。うん、入った。セラの中は
凄く気持ちがいい。」
「あ……」
 それまで激痛と圧迫感にさいなまれ、ぼろぼろと涙をこぼしていたセラフィーヌは、
そこで幸福そうな笑みを浮かべた。愛している男性から受ける賞賛の言葉は、どうして
こんなにも胸の内を温かく満たしていくのだろう。
「嬉しい……」
 セラフィーヌは潤んだ瞳をパデスタに向け、苦しい吐息の中から艶やかに微笑んだ。
その表情になお一層この王女に惹きつけられる自分を自覚し、パデスタは彼女の唇を
無言のまま貪った。
 姿勢を変えると、わずかに収まっていた痛みが再び彼女を苛む。それは解っていたが、
びくりと背を弾けさせる彼女を押さえつけて、パデスタは彼女の咥内で舌を絡ませた。
 くちゅくちゅと唾液を混ぜ、その動きに下肢奥の交わりも蜜音を響かせる。
 荒くなった鼻息の音が、耳につく。身じろぐ彼女が破瓜の苦痛にこぼす呻き声が、
どうしようもなくパデスタの飢餓感を煽り立てた。

「は……あ、あぁっ…」 
 唇を放すと、セラフィーヌは背を反らして幾度か身を痙攣させた。だが、逃れるような
動きを押さえつけ、パデスタは再び彼女を抱きしめる。
「あ、パディ……私……」
「――少し、待つから。落ち着いたら言ってくれ。」
 パデスタは彼女の両腕を自分の背中に誘導し、安心させるように彼女に微笑んでやる。
「痛いなら、爪を立てていいぞ。」
「馬鹿…」
 激しい痛みに蒼白になっていた彼女の顔色は赤味が差し、早くなっていた呼気も少し
収まっていた。セラフィーヌは一度大きく息を吸い込み、そのままゆっくりと身体を
弛緩させていった。
 同時に、ぎゅうぎゅうと彼の男根を締め付けていた王女の内奥が硬直を解き、
緩やかに蠕動を繰り返し始めた。強張っていた当初とは違う、明らかな愉悦の締め付けに
パデスタは息を呑み、心の奥底で狂喜した。
「大丈夫か?」
 恐らく弾んでいるだろう声音で、男は組み敷く王女に問う。彼女は涙を目の端に丸く
溜めながら、喘ぐように頷いた。
「まだ、痛いけど……でも、いいの。パディの思う通りにして」
「――」
 肩でゆるく息を継ぎながら、王女は強張った笑みを浮かべた。思わずパデスタが
息を呑むほどに、その表情は彼の劣情を強く揺さぶった。

 
 十分に滑る蜜壷から、ゆるりと肉の杭をパデスタは引き抜く。そして、抜け落ちる
ギリギリのところで、再び彼はそれを彼女の内へ突き上げていく。
「あ! く、うぅうんっ……!」
「――セラ」
「だい、じょ……ぶ。続けて、お願い…」
 激痛に呻くセラフィーヌに彼は気遣わしげな声をだす。健気な王女はにこりと
微笑みかけてパデスタの心を奮い立たせる。
「俺につかまってろ。声を出した方が楽になるから。――どうしても我慢できなかったら、
必ず言うんだ」
「嫌です。絶対に……途中で止めたり、しないで…」
 ふるふると首をふり、王女は彼の背に回した腕に力を込める。密着する腰と胸が、
ふたりの鼓動をシンクロさせていく。
 意を決した剣士は、腰を動かし、抽送を再び始めた。ストロークは短く、彼女の中を
円を描いてかき回すように緩急をつける。
「あ、ああぁっ! ん、くっ……あ、あ、あっ」
 苦痛の声をあげるセラフィーヌ。しかし、その中に甘美な響きが混じっているように
思えるのは希望的観測でしかないのだろうか。
189魔法王女と聖剣士:2005/10/30(日) 19:17:34 ID:7CxPxJTw
 少しでも彼女に快楽を与えてやりたくて、パデスタは彼女の胸を優しくまさぐってやる。
尖りきった乳首を口中に加えると、王女はびくりと肩を跳ね上げ、同時につながっている
箇所が甘い締め付けを返してきた。

「あ、やぁ、……え、なに……これ…」
 完全に息の上がった王女の顔に当惑が浮かぶ。その変化に彼は目聡く気がついた。
「セラ」
「――パディ、私…」
「痛いだけではなくなってきた?」
 少しためらった後、セラフィーヌはおずおずと首肯した。
「なんか、変なの。痛くて、大きくて苦しいのに……胸の奥が熱いの」
 胸の頂きをつまみながら、パデスタは腰の動きを少しだけ早める。
「あ、きゃあ! あ、やっ! やだ、やだやだ! 何……この感覚。いやぁ、パディ! 私……怖い…」
 びくびくと従順に快楽に反応し、王女は可愛らしく身悶える。
 その様に、己の中で彼女への愛しさが膨れ上がるのをパデスタは感じた。
 もっと、彼女をあえがせてやりたい――、もっと自分を感じさせたい。
 もちろん、無理をさせては元も子もない。パデスタは彼女の膝を折り、より深く己の肉牙を
セラフィーヌの最奥へと突きたてた。

「ああぁぁあああ! あ、や、深い……奥、おくに…」
 最奥の天井――ざらついた部分が女の急所である事を、この男は知っていた。強く突きすぎれば
痛みを訴える。そのぎりぎりの所でパデスタは身を留め、ゆったりと膣全体をかき回した。

「あ――あ、あ、ああっ! パディ……イヤ、これ……あふ、ん、んぁ…!」
 破瓜の傷口から漏れる血液と、感じきって白濁した彼女の愛液が混じりあい、パデスタの
ペニスはどろどろになって滑りを良くしている。今や抽送はスムーズになり、彼女を
突き上げるたび、セラフィーヌは悩ましげな嬌声をあげて彼の耳を楽しませる。
 苦痛が無い訳ではないだろう。しかし、それ以上の愉悦が彼女を包み、彼の剛直を嬉々として
受け入れる王女の感度の良さに、パデスタは深く感謝した。

「セラ……ホントに、お前、可愛いよ……愛してる」
「あ、あぁ、パディ、私も……わたしもっ…」
 ぐちゅぐちゅと体液を粘膜で交わし、一つとなった所から快感が渦となって二人を
飲み込んでいく。
 ピストンのスピードが速くなり、交わりの水音が更に高く響いて、彼らの焦燥を煽る。
 彼に抱え込まれ、宙を掻いていたセラフィーヌの白い足が時折ぴんと爪先まで力がこもり、
パデスタの呼気音が王女の嬌声と交じり合って重奏曲を奏であげる。

「あん、あぁん! パディ、パディ……駄目、なにか、なにかが…くるのぉっ!」
「――セラ。いいよ。一緒に――逝こう」

 絶頂の火柱が目前に佇んでいた。パデスタは彼女が特に感じて声を出すところをぐいぐいと
擦りつけてやり、応えて彼女の膣襞は最大級の官能を彼の肉棒へと還してきた。


「あ、あぁぁあああああん! やぁーーーーーーーーーっ!!」
「は……ぐ、あぁ、セラ…っ!!」

 ちかちかと脳裏に火花が幾重にも散る。腹の奥から甘すぎる衝動が凄まじい勢いで
駆け上ってくる。
190魔法王女と聖剣士:2005/10/30(日) 19:18:44 ID:7CxPxJTw
 パデスタは半瞬もためらわなかった。欲望の証である白濁を、彼女の中に余す所無く注ぎ込み、
王女はその衝撃に愛らしく悶えながらなお一層高みへと上り詰めた。


                  ●○●○●


 吐息が絡まり、永遠にも思われた時間がやがて儚く消えていく。
 気だるい身体をむりやり覚醒させ、セラフィーヌ王女は拘束されてる台の上で、自分が気を
失っていた事をぼんやりと認識していた。

 ――夢を、見ていた。3日前の、幸せだった、ただ一度の夜。
 彼女は、剣王の子孫として選ばれた【聖剣】の担い手を、ずっと密かに想っていた。
出会った時の印象は最悪だったというのに――いつのまにか、誰よりも側にいて欲しいと
願うようになってしまった青年。
 許嫁もいる彼に思いを寄せるのは無為な事だと、半ば諦めかけていたのに――玉砕を覚悟して
一夜の思い出を請うた彼女は、剣士も同じ思いである事を知った。
 嬉しかった。彼に抱かれた時は、このまま死んでも良いとすら思った。
 ――勿論、王族としての責務を放棄するつもりなどは爪の先ほどもありはしなかったのだけれど。
 

 彼と二人、王師を囮にして魔王の城へ忍び込み、あと一歩の所まで魔王を追い詰めたところ
まではよかったのだ。だが魔王ルーファウスは――いや、『魔軍の怨念』は狡猾だった。

 まさか、ルーファウスがただの傀儡に過ぎなかったなどと、誰が思おうか?
 哀れな【森の民】よ! 彼のセラフィーヌ王女への隠された思慕と、身に備わった優れた
魔道資質が、不運にも異界の邪悪どもの目にとまり、彼を暗黒の闇へと引きずり込んでしまったなどと。
 なんて真実は残酷なのだろう――。

 対峙し、あと一歩の所まで魔王を追い詰めた王女と剣士は、ルーファウスもまた犠牲者で
あった事を知り、躊躇した。ほんの少しだけ正気を取り戻した彼に気を許した瞬間、異界の
憑依者は今度こそ完全にルーファウスを支配し、彼らを撃破した。

 パデスタが左腕をもがれてしまった瞬間が、セラフィーヌ姫の胸を今でも恐怖と共に
焦がしつづけている。王女は囚われの身となってしまい、パデスタはあの後どうなって
しまったのか解らないのだ。
 胸が張り裂けそうだ。パデスタは――王国軍はどうなってしまったのだろう。
 それでも、泣く事だけは彼女の矜持が許さなかった。
 たとえ今は、虜囚として触手の慰み者となっている身であろうとも。
 必ず、パデスタが――王師の将軍たちが助けに来てくれる。今はそれを信じるしか彼女に
術は無かった。

 ――そういえば。
 ルーファウスは(便宜上魔王をこの名で呼ぶ事には、今では抵抗もあるのだが)、彼女が
処女でなかった事に大層衝撃を受けていた。魔道王の子孫が処女喪失の時にこぼす破瓜の血に、
絶大な魔力があったはずなのだと魔王は言った。それがルーファウスを介して彼女を執拗に
狙っていた理由なのだと。
 あまりにもばかげていた。一国の王都を灰燼に変え、何万もの人々を殺し、苦しめておいて、
その目的が自分の処女の印だったというのか。
 しかし、本気で異界の魔王はそれを信じていた。だからその魔界伝承は、あながち虚偽では
ないのかもしれない。意図せず、彼奴らの目論見をくじいていた事を知り、それだけが王女の
自負心をかろうじて救っていた。

「――あ…」
 びくりと、セラフィーヌ姫は身をよじる。拘束台も兼ねた触手の群れが、再び蠢くのに
気がついたからだ。触手はずっと彼女を陵辱しているのではなかったが、その動きはおぞましく、
いつまで彼女を弄るつもりなのかもわからない。底なしの沼に引きずり込まれたような絶望感が、
彼女の抵抗心を磨耗させていく。
「あ、ん……いや、あ、ぁぅ」
191魔法王女と聖剣士:2005/10/30(日) 19:19:50 ID:7CxPxJTw
 触手は彼女の乳房を形が変わるほど揉みしだき、彼女の秘所や不浄の菊穴にも粘液を散らして
入り込む。
「あ、あーーーーーっ! いや、いやぁぁ!」
 生理的嫌悪感に身をよじろうと、拘束はびくとも揺るがず。彼女の口にも触手が幾本か
ねじ込まれる。
「ん、んん! ふ、うーーーーー! ん、ぐっ…」
 ちゅぐちゅぐと溢れる触手の分泌物。それに媚薬にも似た成分が混じっているらしい事を、
今の彼女は知っていた。膣奥で蠢く触手がもたらす快感が脳を焼き、王女は狂わんばかりに
身をよじる。その抵抗が無駄だと知りながらも、彼女にはそれしか道は残されていなかった。

(パディ――パディ、パディ! パデスタ・ルードフィールド!! 助けて……助けて、パディ!!)
 
 心の中でセラフィーヌ王女は絶叫した。
 脳裏にめぐるのは、この一年間共に過ごした時の思い出。誰よりも強く、腕が立ち、
きさくで、優しくて、少しだけ意地悪で――彼女が愛した、最高の剣士。
 そして、フラッシュバックするのは3日前の甘い夜。彼と結ばれた、人生で最良の一瞬。
 そして彼女を打ちのめす、2日前の、あの悪夢。セラフィーヌを庇い、袈裟懸けに
なぎ払われ、宙を舞った彼の左腕――…。

(いや、嫌、いやぁ! パディは死んでない! パディ! お願い、死なないで……
死んでは嫌! パディ! パディ――!)

 触手が彼女のクリトリスをなぶり、膣奥に潜り込んだ数本が一斉に蠕動を増す。セラフィーヌは
自身が望まぬ頂点に追いやられる事を悟り、きつく視界を閉ざしてその衝撃に備えた。
「――ふ、ぐ、ん、んーーーーーーーっ!!?」

 びくびくと全身が快楽に揺れる。屈辱と無力感が彼女の気力を奪い、王女はこのまま
気絶できればいいのに、と霞む意識の中でぼんやりと思った。
 永遠にも続くと思われる快楽の責め苦が、彼女の肉体を打ちのめす。
 滴り、床に丸く溜まる愛蜜の白濁にも触手がたかり、まるで砂糖水であるかのように
群がって舐め取ろうとする様に、セラフィーヌは己の属性を自覚した。確かに、この身は
魔力にあふれ、体液すらも魔族の力となってしまうらしいと。
 ――正気の欠片をつなぎ止めるのは難しかった、愉悦が霞となって彼女の理性を侵食し、
再び始まろうとする陵辱が、彼女の気力を萎えさせる。

 その時。彼女は声を聞いた。
 最初は幻聴なのだと思った。とうとう都合のいい、ありもしない声を恋しさ故に聞いて
いるのだと。
 しかし、遠くから響くそれは、近付いてきて鮮明さを増す。
 その声が間違いなく現実なのだと気が付き、王女は歓喜に打ち震えた。施され、全身を
狂わす触手の愛撫すらも、この一瞬彼女の意識から追いやられた。
 彼女は意識を集中する。膣奥でのたうつ触手達の狂楽に幾度も乱されながら、それでも
彼女は必死になって呪(しゅ)を紡いだ。

 触手達によって、快楽と共に吸われ続けた魔力を何とかかき集め、一瞬だけの火花を作った。
 ばちん、と鈍い音がして、彼女を戒める触手達が一瞬だけ怯みを見せる。王女は無理やり
咥内を犯す触手を吐き出し、最後の力を振り絞って絶叫した。


「パディーーーーーーーーー!!」
 


 ――そして、剣閃が衝撃波となって、虜囚の戒めを解き放つ。
 彼女は、懐かしい声が自分の名を連呼するのを、遠くなった意識の底で確かに聞いた。



192178:2005/10/30(日) 19:23:36 ID:7CxPxJTw
<おしまい>


なんかあんまり「主従」っぽくない会話の二人でスマソカッタ(;´Д`)
193170:2005/10/31(月) 00:22:01 ID:Q4eby1Ww
>178 GJ!
パディキターーー!!な終り方、格好良いよ!セラタソ可愛いよ!!
漏れももちっと頑張るので、この調子でこの板も盛り上がれば良いと思うよ!
194名無しさん@ピンキー:2005/11/01(火) 22:49:14 ID:D0h8QJ1/
っとに神だらけのスレだな。GJGJGJ!
195名無しさん@ピンキー:2005/11/01(火) 23:58:55 ID:GQnTcN5n
GJと皆で連呼だ
1961:2005/11/02(水) 09:19:34 ID:Gr+bP4TR
マジ立てて良かった
神様達、ありがとう

ゴ ッ ド ジ ョ ブ !
197名無しさん@ピンキー:2005/11/03(木) 12:49:52 ID:ap/TfwsQ
スレ立主様が降臨だ。
あなたがスレを立てた感性にGJ!!
198名無しさん@ピンキー:2005/11/04(金) 02:01:12 ID:cEzojO/X
>1
最初の1文で、世の中同じ事してる人いるんだなーとニガワラしましたよ。
そこで投げ出さずスレ立ててくれてありがd
199名無しさん@ピンキー:2005/11/06(日) 23:43:02 ID:QJIc0nIl
age
200名無しさん@ピンキー:2005/11/12(土) 23:52:46 ID:iE9mn8zq
近々また投下する予定ほしゅ
201名無しさん@ピンキー:2005/11/13(日) 10:44:06 ID:BiHmSRig
楽しみに待ってるよ>>200
202名無しさん@ピンキー:2005/11/16(水) 01:10:15 ID:Q2iVz/go
あげ
203名無しさん@ピンキー:2005/11/19(土) 16:57:45 ID:wWlJOnE5
現代モノで、女社長と部下(男)はスレ違いスか?
204名無しさん@ピンキー:2005/11/19(土) 19:20:52 ID:ik2LXj/3
読んでみないとわからないなぁ。
205名無しさん@ピンキー:2005/11/20(日) 00:15:41 ID:TUJdzJ2k
女社長と秘書ならば主従になるのでは?
秘書以外だとイマイチ従者って感じがしない気がする。
206名無しさん@ピンキー:2005/11/20(日) 11:56:55 ID:uhAPtfP3
女社長と女社長をめちゃくちゃ尊敬してる平社員とかもありかも。
207名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 01:44:40 ID:A/LW9aam
男が従で女が主ってのが多いけど、逆もありなのかね。
208名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 11:09:24 ID:m7O1KMtu
>>203
俺は有りだと思う。
上下関係はっきり分かれていれば主従になるんじゃないか

>>207
ここは女が主であることを前提としたスレだから、逆は無し。
男が主で女が従のスレは他にあるから、そっちへどうぞ。
209名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 13:16:31 ID:A/LW9aam
>>208
なんてスレかヒントプリーズ
210名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 13:52:18 ID:m7O1KMtu
>>209
基本中の基本「ご主人様」または「メイド」で検索
211名無しさん@ピンキー:2005/11/21(月) 23:23:54 ID:A/LW9aam
>>210
見っかった。ありがd
212203:2005/11/22(火) 01:42:37 ID:O4CfLZuW
レス遅くなったけど、みんな意見ありがとう。女社長と部下(秘書等)はアリ、と…。
いま忙しいからしばらく日にちかかるけど、書いてみたい。
213名無しさん@ピンキー:2005/11/22(火) 13:31:27 ID:IIGmMHHC
ZZガンダムのハマーン×マシュマーみたいなものか
214名無しさん@ピンキー:2005/11/23(水) 05:02:06 ID:PHtUW/uI
キシリア×マの方がいいな…
215名無しさん@ピンキー:2005/11/26(土) 23:21:21 ID:PycuYt8y
職人待ちage
216名無しさん@ピンキー:2005/11/27(日) 01:38:25 ID:Xi+go3AY
俺はハマーンとアッシマーがいいな
217名無しさん@ピンキー:2005/12/02(金) 00:02:13 ID:jspSlrm3
保守
218名無しさん@ピンキー:2005/12/03(土) 02:11:10 ID:SF5yYslu
>213-214
スレが他にあるからおまいら。

でもキシリア×マは旨そうだ
場合によっては攻受逆になりそうだし
219名無しさん@ピンキー:2005/12/03(土) 03:53:16 ID:VhWR1z1G
>218
壷プレイも楽しめそうだなw


やっぱお嬢様はツンデレがイイ
主導権はお嬢様だけど実際は従者のペースになってるみたいなのとか
220名無しさん@ピンキー:2005/12/03(土) 14:15:19 ID:r71YY1ln
ツンデレに萌えない俺は、されるがままのお嬢様がいい
221名無しさん@ピンキー:2005/12/04(日) 12:40:00 ID:gaFxIrL5
ツンデレもいいがシンデルも捨てがたいw
222名無しさん@ピンキー:2005/12/04(日) 18:18:46 ID:8bINhfBM
ままままさか、ネクロフィリア?
223名無しさん@ピンキー:2005/12/04(日) 19:06:28 ID:KCJbD1P6
ヤンデレ好きはダメですか?
224名無しさん@ピンキー:2005/12/04(日) 22:00:09 ID:gaFxIrL5
225お堅い従者×ツンデレお嬢様01:2005/12/04(日) 22:21:23 ID:5izcm5BX

「ん・・・・・・あっ・・・」

とある豪邸の一室にて男女が絡み合っていた。
女は17才の娘であり、年頃としては少女なのだが。
しかし少女とは思えない程に酷く妖艶であったのだ。
かわいらしい、よりも美しいが相応しい。
男の大きな掌で包み込んでも有り余る豊かな乳房。
胸、腰、脚へかけてのくびれのライン。
そして流れるように美しい銀髪の髪。
男は勿論のこと女ですら溜め息をついてしまう美貌を持つ少女の名はノウェレ。
屋敷を含め、山や近くの街などの広い地域、アーヴァナルド地区を治める領主の一人娘であり、
候爵の階級を持つ父親の娘という肩書きもあった。
気高いお嬢様という通り名でこの地区に住んでいる者の間では有名でもある。
そのお嬢様を押し倒し、四肢に愛撫している男の名はヴェルナーク。
大事な一人娘の身を安じた父親が雇った護衛の男である。
年は24と、ノウェレより7つも年上の男。
護衛として雇われただけあって背の高く、適度にがっしりとした体格の持ち主。

「・・・・・・ノウェレ様、これ以上はできません」

愛撫を終え、後は挿入だけだというのにヴェルナークはそう告げた。
紫紺の瞳は真っ直ぐノウェレを捕らえながら。
226名無しさん@ピンキー:2005/12/04(日) 22:24:12 ID:5izcm5BX
・・・こんなのを書いてみた訳だがオリキャラってOKだよな?

投下してしまった後に聞いてみる俺が通りますよ
227名無しさん@ピンキー:2005/12/05(月) 00:22:11 ID:N5N5qhAH
イイヨイイヨー(・∀・)
オリキャラ全然おk
続き待ってるよ
228名無しさん@ピンキー:2005/12/05(月) 00:26:50 ID:cmUELAzb
スレを読んだりしないのかね?
ほとんどオリジナルだよ。
つまり、大・歓・迎!
(オリジナルじゃなくても大・歓・迎!だけどナ)
229お堅い従者×ツンデレお嬢様02:2005/12/05(月) 19:40:43 ID:32EydLnk

押し寄せる快楽の波に翻弄されているノウェレは、
その言葉を聞くとぼんやりとしていた頭が一気に覚醒した。

「・・・どういうことだ、ヴェルナーク?」

ベッドから上半身を起こし、睨むようにして相手を見据える。
しかしヴェルナークの方はノウェレの視線も大して気に止めることなく頭を左右に振る。

「本来、俺は貴女に触れてはならぬ身。これ以上は度が過ぎます故・・・」

黄緑色の頭を下げ、彼は答える。
相変わらず外見に似合わない生真面目さにノウェレは頭痛を感じた。
外見からは戦場を駆けるこの男、傭兵のようなどこか荒々しい性分ではないかと言った印象を受ける。
しかし意外にも中身は礼儀を弁え、教養もある生真面目な男であった。

「いまさら何を言っている。私を女に変えたのはお前だろう?」

ただの気紛れの戯れだと言い張り初めての経験をヴェルナークに任せたのは記憶に新しい。
あくまでも、ただの気紛れだと言い張って手慣れているかのように振る舞った。
しかし彼は気付いていたのだろう。
気付いていてもなお、女主人に忠実な従者として抱いたに違いない。
それが何故いまさら止めると言い出したのか。
ノウェレは不思議で仕方がなかった。
230お堅い従者×ツンデレお嬢様03:2005/12/05(月) 19:45:20 ID:32EydLnk

「俺はこれ以上、己の手で貴女を汚すと思うと心苦しくて仕方がありません」
「・・・・・・・・・」

ヴェルナークは手早くシーツの上に放り投げられていたガウンを手元に引き寄せ、
ノウェレの細い肩にかけた。
いつもならば彼女の性分からして直ぐさま抗議の声を上げるが、
言葉通りに少々困惑している風である相手を見ると反論できずに言葉を飲み込んだ。

「罰であればなんであれ受けるつもりです。ですから・・・」
「もっと身を大事にしろと言うのだろう?とうに聞き慣れた」
「・・・分かっていただいたのなら幸いです」

半ば乱暴に肩にかけられたガウンを身に纏う。
このまま簡単に引き下がるのも借なので何か皮肉でも言ってやろうかと考えを巡らせる。

「・・・ヴェルナーク」
「は」
「今夜はこのまま諦めてやろう。だが、一つ貴様に命ずる」
「何なりと申し付け下さい」

ノウェレとは異なり、上半身のみ空気にさらけ出していたヴェルナークは着込んでいた手を休める。
ノウェレが命じたことであれば自分が傷つかぬこと以外は何だろうと聞き入れる。
忠誠は厚く、ノウェレにとっては良き飼い犬でもあった。
無論、ノウェレが彼に恋心を抱く以前であればの話なのだが。
231名無しさん@ピンキー:2005/12/05(月) 23:41:32 ID:XM0HJeYO
続きを…続きを頼む…
でないと俺は…
232訂正:2005/12/06(火) 00:47:56 ID:c6erV5Vv
230の文法間違い発見・・・スマソ

ノウェレが命じたことであれば自分が傷つかぬ
→ノウェレが命じたことであればノウェレ自身が傷つかぬ

だった。
233名無しさん@ピンキー:2005/12/06(火) 04:27:26 ID:1q0ORGFS
完全に男言葉なのがカコイイね
貴様呼ばわりとかゾクゾク来る
234名無しさん@ピンキー:2005/12/06(火) 12:40:20 ID:zBfqdXJQ
女が強気なのもいいね
235お堅い従者×ツンデレお嬢様04:2005/12/06(火) 17:44:50 ID:c6erV5Vv

「私に相応しい花を持ってまいれ」
「花ですか・・・」
「そうだ。朝までに私の元へ持って来るのだ」

この男はどのような目で私を見ているのだろうか・・・
それが些か気になりつつも言葉では表すことが出来ない己の不器用さを嘆いた。
今の時期、大地の恩恵を授かる春ではないので咲いている花は数種類しか存在せず、
ヴェルナークはどうするのかという単純な好奇心もあった。

「承知致しました」

いつも何か命令を下した時となんら変わらぬ素振りで私の愛しい男は頭を下げるのであった。










コンコンと部屋の扉をノックする音で目が覚めた。
未だ眠気の残る身体をゆっくりと起こして室内に入ることを許可する。
部屋に入ってきたのは屋敷で下働きするメイドの一人であった。
起こしに来たという風でもなさそうで、
それが分かるのは彼女が水瓶を抱えていたからなのか。
メイドは「おはようございます」とお辞儀をするとテーブルの上へと水瓶を置いた。

「・・・それは?」
「今朝、ヴェルナーク様がこの花をノウェレ様の部屋に飾るようにと要請がありまして・・・」
236お堅い従者×ツンデレお嬢様05:2005/12/06(火) 17:47:30 ID:c6erV5Vv

昨夜のやり取りを思い出して早い仕事に満足する半面、
早く終わらせたことに何とも言えない苛立ちが湧きあがる。
己の心情が理解できぬまま不愉快さを表情には極力出さないように心がける。
瞼を擦り、そちらに視線を向ければ水瓶の中に生けてある白く小さな花が見えた。

「これが?」
「はい」

肌蹴ているガウンを着直してメイドから手渡されたカーディガンを羽織った。
広いベッドから降りると素足のままテーブルに近寄り、花に触れる。

「・・・・・・何故このようなものを」

小さな白い花は一見、野分きに生えていそうな野花に見える。
一瞬その類だと思ったがよく見ればそうではない。
人の手によって手入れが施された、それこそ温室か何処かで時間をかけられ育った花である。
その証拠に白い花弁が一枚一枚鮮明な色合いをしており、
野分きに生えている草花よりも、花屋で売られている花よりも愛らしい花であった。
思わず普段花などに興味のないノウェレも花に見入った。
しかし、とある考えが思い当たって視線を外した。

「私はこれから出掛ける」

メイドに告げればドレッサーからワンピースを取り出して素早く着込むのだった。
237名無しさん@ピンキー:2005/12/07(水) 18:12:11 ID:2dzLYGmN
ツンデレお嬢様の中の人。
投下する前に一度推敲したほうがいいぞ。
せっかくいいもの書いてるのに、なんか読んでて勿体無いよ。

野分とドレッサーは辞書引いたほうがいいよ。
238名無しさん@ピンキー:2005/12/07(水) 21:01:04 ID:2/tz0iBD
自分でも何書いてるかよく分からなくなってきたから
誰か違う人書いて・・・もう無理・・・
239名無しさん@ピンキー:2005/12/08(木) 00:13:06 ID:9PP+rQov
野分き→野原など
ドレッサー→クローゼット

で無問題。ガンガレ! 
小さな白い花の描写がステキだ。無理なんて言わないで。
240名無しさん@ピンキー:2005/12/08(木) 01:48:49 ID:rwNLrZWM
あら、私も  >昨夜のやり取りを思い出して早い仕事に満足する半面、
早く終わらせたことに何とも言えない苛立ちが湧きあがる。  
なんてところは特に「上手〜い!!」って思った。 

私の家は会社をしてて、なにか記念の祝賀会とか社の懇親会とか、そういうパーティーの席で
小さい頃から「お嬢様」と呼ばれてちやほやされてた。
でもその 「ちやほや」 は、お世辞というものなんだなって、大きくなるにつれて
わかってはきたけど、それもまあ、挨拶として言われても当然、だなんて生意気ざかりの
子供の頃は思ってた。


中1くらいのあるとき、我が家に中堅どこの社員の人が何人か来て、くつろいだ感じに
なってたとき、遅い時間になって、ある社員とほんの短い間2人きりになった。

私はいつもの調子で、子供っぽい自慢話・・最近、父に買ってもらった何かがけっこう
かわいくて、そのわりにはどうのこうの、、みたいな(その品物は何かは忘れました。)
たわいない話を彼にして、「いいでしょ」みたいなことを言った。
もちろんそのとき、彼から「それはよかったですねえ、お嬢様。」的な言葉と
にこやかな表情が、当たり前のように返ってくるとばかり思っていた。

ところが彼は、お酒のグラスを揺らしながら、ちょっと上目遣いでじ〜っと私を
見てたかと思うと、ふっと笑ってゆっくりと「そんなのは子供だましだ」って言った。

それが、「人の裏表を見たショック」でも「いつもと違う対応をされて悲しい、ムカツク」でも
なく・・けっこうドキっときちゃって。。

そんな私にとってこのスレは、ああ同士が・・  みたいな。(笑

241236:2005/12/08(木) 19:32:42 ID:3LuDOhfL
とりあえず続き書く
今度から極力気をつけます・・・色々と申し訳ない
242お堅い従者×ツンデレお嬢様06:2005/12/08(木) 19:35:02 ID:3LuDOhfL

身支度を適当に済ませた後、朝食をとることなく馬車に乗り込む。
屋敷の者には先程のメイド以外誰にも告げておらず、
護衛であるヴェルナークにも当然のことながら告げていない。
・・・1番告げてはならない気がした。
思考を巡らせれば巡らせる程に彼のことだけを考えてしまう自分に思わず自嘲する。
その間にも馬車は特定の場所へと向かうのであった。
彼が花を持って来たと思われる場所に。
確信めいたものがノウェレの中には存在した。
その場所がノウェレ自身も通い慣れた場所であるが故にか。
しかし、一々場所のことを考えている余裕は彼女の中には存在せず。
淡々と思想を深めるのは何故あの男があの花を贈った理由のみ。




「マリエッタはいるか?」
「あら、ノウェレ」

辿り着くなりノウェレの屋敷にも負けない大きな屋敷。
屋敷の使用人達は突然の客に戸惑っていたがすぐに主人の元へと通す。
壁もアンティークも緑色に統一されたその部屋には純白のワンピースを着た少女が一人。
持ち上げていたカップをテーブルの上に置く小さな動作すら優雅なもので。
金色の肩にかかる程度の髪はウェーブがかっており、
ノウェレとどこか対称的でもあった。
243お堅い従者×ツンデレお嬢様07:2005/12/08(木) 19:37:15 ID:3LuDOhfL

「こんなに朝早くから・・・何かご用かしら?」

やんわりと微笑み、髪と同じく金色に輝く瞳はノウェレを映す。
突然の客にも慌てずに一先ずは向かいの椅子に座るよう勧めるのか。
そして一度は下げたティーカップを再び持ち上げ、ゆっくりと紅茶を味わうのだった。

「貴様があれに花を渡したのか?」

しかしノウェレの方と言えば優雅にお茶を楽しむマリエッタと異なり、
彼女に近付くものの椅子には座らず、座っている彼女を見下ろすように率直に尋ねた。

「あらあら、挨拶もなしに唐突ですね」

慣れてはいるけれど、と言葉を付け足してマリエッタはのんびりとした口調で答えるのだった。
彼女自身、このような調子で答えればノウェレの苛立ちが増すのを知っていて答えるのだが。
予想通りノウェレは苛立ちを隠さなくなった。
隠せなくなったと言っても過言ではないのであるが。

「いいから答えろ」
「ノウェレ・・・私、貴女の怒った顔は見たくありません。笑って下さい・・・ね?」

母親が子供をなだめるかのように、そっと手を伸ばしてノウェレの頬に触れるだろうか。
掌で頬の柔らかさを確かめながら何度か撫でてやればノウェレは小さく溜め息を零す。
244名無しさん@ピンキー:2005/12/08(木) 20:25:59 ID:t+/CS//q
消えた方がいいよvvvvv
245名無しさん@ピンキー:2005/12/08(木) 21:47:20 ID:kLI1qNLE
>お堅い従者
楽しんで読んでるよ。続き待ってます。
できる範囲でいいんだ、ガンガレ!
246名無しさん@ピンキー:2005/12/10(土) 02:36:02 ID:Ce74BuJQ
>>221
遅レスだがおねがいマイメロディの5巻を借りてくるんだ!
5巻に入ってる20話にはツンデレでシンデルなお嬢様が出てくるぞ!
お嬢様と執事の話なので、主従関係もあるぞ。
とにかくあのお嬢様はいいツンデレだった。
247名無しさん@ピンキー:2005/12/14(水) 23:26:35 ID:URbFXlzC
続き待ちhosyu
248お堅い従者×ツンデレお嬢様08:2005/12/15(木) 08:22:05 ID:5+U7W0+5

「・・・・・・」

漸く冷静になったのかノウェレは当初勧められた席に腰を下ろす。
気だるそうにテーブルに肘をついて額を押さえた。
その姿は己の失態を恥じているようでもある。

「それにしても、何がそんなに気に入らないのです?」

白く小さい花だから?と付け足しながらマリエッタは不思議そうな面持ちで尋ねた。
やはりノウェレの考えていたことは正しかったようで、
ヴェルナークはマリエッタに花を分けてもらったのだと確信した。
それもその筈、ちらりと視線を窓の外に向ければ大きな温室が見える。
マリエッタの部屋からも見えるそこはマリエッタ専用の温室と言っても過言ではない。
それにマリエッタはノウェレと交友が深い、いわゆる幼なじみという間柄。
加えて常に、誰に対しても穏やかな性格。
何か困っている人がいれば手を貸す彼女の手をヴェルナークは借りたのだった。
ノウェレはマリエッタに対して首を小さく左右に振り否定を表す。

「そのような訳ではない・・・」

あれが貴様の手を借りたというのが嫌だ。
一瞬、そう言葉を思い描いたがあえて口に出すことなく言葉を飲み込んだ。
249お堅い従者×ツンデレお嬢様09:2005/12/15(木) 08:23:35 ID:5+U7W0+5

「貴女も強情ですね」

それとも、頑固というのかしら?
一人でマリエッタは呟きながらもノウェレは否定できずにいた。
己の可愛いげのない性格にはよく理解していた。
治せるものならば治したい。
だが、現状としてはとてもじゃないが治せそうには思えないのだった。

「・・・ヴェルナークさんがわざわざ此処まで出向いた理由を理解したらどうです?」
「それは私が命じたからだろう?」

主人の命令には絶対服従。
奴の忠誠は何によるものか。
傭兵時代、上官に対してもあのような対応だったのか。
上官がいたのか定かではないのに、
私は、マリエッタの次には見えぬ奴の上官を想像しては苛立ちが増していくのか。
私以外の人間に服従しているのを考えれば考えるほどに。
それは酷く。

「貴女はあの方がいないと随分と不安定なのですね」
「不安定・・・私が?」

馬鹿を言え、と鋭い視線を向けるが彼女は臆することはない。
それどころか余裕そうにティーカップを持ち上げた。
一つ年下の幼なじみは落ち着いていて年相応の少女には到底思えない。
250名無しさん@ピンキー:2005/12/17(土) 22:55:47 ID:i1oAr/KF
ここ読んでたら司馬遼太郎の韃靼疾風録を思い出した。いや、エロくはないが。
姫の奔放っぷりと、主人公の主命と姫への思慕との板ばさみっぷりがなかなか微笑ましい。
251名無しさん@ピンキー:2005/12/18(日) 18:45:43 ID:vxjPqVdC
しまった…俺としたことがこんな神スレを見逃していたとは…。
コンゴトモヨロシク…。
252名無しさん@ピンキー:2005/12/23(金) 14:22:28 ID:LwGZHXzH
ほs
253名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 00:52:31 ID:9jXqzAhY
主人公は王家のお姫様。寡黙で思慮深い従者に片思い(だと自分では思っている)。従者も人知れず姫を想っている。
主人公はもうすぐ隣国のスケベ国王の元へ政略結婚させらる。
嫁ぐ前夜従者に告白。そして従者と結ばれる。
でももう一生触れ合えないと泣く。
翌日隣国に嫁ぐ姫。それを見つめる従者。遠い昔の悲恋の物語…。


っていう話を書きたかったんだけど物語なんて書いた事も無いし文才も無いので職人さん頼みます!!
254名無しさん@ピンキー:2005/12/24(土) 02:42:13 ID:4hKMsE6w
>>253
(・∀・)イイネ!!
255双子従者と人外お嬢 1:2005/12/24(土) 23:31:19 ID:F81HE946
「お嬢様、お迎えに上がりました」
毎日、時間ぴったりに現れる男は、その几帳面な性格を絵に描いたようで、
まだ20代前半の若さだというのに執事服を完璧に着こなしている。
そこそこ裕福とされる子女が通う学校なので、こうした送り迎えの者が参上するのは珍しい事ではないが、
『若くて格好良くてキナ臭さを感じさせない』召使いとなると、それだけで紅子は羨望の的となる。
「それでは皆様、お先に失礼致します。ご機嫌よう」
級友達に挨拶をして教室を出て行く紅子と、
彼女の鞄を小脇に抱えて半歩後ろにつき従う執事風の男。
毎日定時刻に下校する2人の姿はいつの間にか学校の名物になっていた。
だが、当の本人達はそんな噂など露知らず、正門までの道のりを振り向きもしないで歩いていく。
正門前に停まっているのは4つの環がきらめくエンブレムが眩しい、いわゆる『高級輸入車』。
だが、現行よりもひとつ古い型式である処に上流階級者のこだわりを感じさせている。
後ろを歩いていた筈の執事がいつの間にか開けた後部座席に乗り込む紅子。
それを見届けると執事は助手席に着いた。
運転席にあるのは執事と全く同じ顔。
ただし、こちらはいかにも大学生といった装いで、ジーンズに重ね着したシャツ。足元はスニーカー。
だが、運転席の彼の方が『現実的』と言える格好をしているとも言える。
大学生風の運転手は後ろの主を気にするでも無く、大あくびをしながらエンジンキーを回す。
「……ったく、こっちは糞つまらん講義受けて、速攻迎えに来てやってるっつーのに、イイ身分だな」
ルームミラーに写った少女の姿に愚痴をこぼす。
そこには器用に体を丸めて、横になっている少女がひとり。
「家帰ったら好きなだけ寝かしてやるから、つっつと車出せよ、葵」
助手席の執事は、その格好にしてはやや砕けた調子で隣の男に声をかけた。
256双子従者と人外お嬢 2:2005/12/24(土) 23:34:28 ID:F81HE946

渋々、葵と呼ばれた男は発車させたが、直ぐに道路脇に車を寄せると運転席を降りた。
「碧、悪ィ。今日はまじで眠いから代われ。うっかり居眠り運転して事故ったりでもしたらヤバイだろ?」
頼み文句なんだか脅迫なんだか分からない口調で言いながら、運転手の筈の葵は後部座席に乗り込む。
気持ち良さそうに寝息を立てて座席を占領している紅子の頭を、
まるで荷物みたいにぞんざいな手つきで持ち上げて自分の膝の上に下ろす。
「あぁっ!!ばっか、テメ!お嬢様が起きたらどーすんだよ!!」
その葵の一連の動作をミラーで見ていた碧が、丁寧な言葉使いも忘れて激昂する。
「………お前のその声の大きさの方がよっぽど、目ェ覚ますと思うぞ………」
冷静に突っ込みを入れながら、葵は膝の上の紅子の黒髪を撫で、その感触を楽しみながら目を閉じる。
愛しのお嬢様に無礼な真似を働く輩を視界に入れながらも、
心の中でキリキリ爪を噛みながら碧は黙って車を走らせる。
葵がそういうポーズを取った以上、最早何を言っても聞く耳を持たない事が分かっていたから。
そういった意味では、性格は正反対に違っても碧と葵はどこまでも限りなく双子だった。
「よく寝た〜v」っとご満悦な主には「それは大変よろしゅうございました」と心底喜び、
同じ科白を吐いた弟には手加減なしのゲンコツをお見舞いしながら、碧は夕食の準備に取り掛かる。
山手の閑静な一等地に建つマンションの最上階が彼らの居城だが、
そこに3人以外の人間は住んでいない。ヘルパーすら雇っていない。
だから、家事はほとんど碧が担当している。
執事服もエプロンも着こなす、ある意味、大変器用な男である。
一方、その弟の葵はリビングのソファに横になってダラダラしている。
その様はまるで休日の中年サラリーマンである。
257双子従者と人外お嬢 3:2005/12/24(土) 23:37:11 ID:F81HE946

そして『お嬢様』である紅子はというと、つつっとキッチンで台所仕事している碧の元に寄り、
「ちょっとお腹空いちゃった」と可愛らしくおねだりしてみる。
これが葵相手ならすげなく断られるのだが、紅子に甘々な碧だと効果てき面、
『困ったお嬢様ですね』とはにかみながら左手の人差し指を差し出す。

…………かぷっ。

そんな擬態音を感じさせる勢いで、紅子はその人差し指にかぶりつき。

ちゅーちゅーちゅー。

ある程度、満足して紅子が口を離した碧の指には小さな牙の痕が2つ。
「ご馳走様でしたv」
紅子は人の血を吸って生きる物の怪の末裔だった。
とはいえ、長い歴史の中でその血は薄れ、日常生活は一般の人間と変わりないし、
食生活にしても年相応の娘にしてはやや細めといった程度である。
ただ、薄れたと言え、腐っても昔は名を馳せた吸血鬼の末裔。
たまに人の血を補給せねばならない時がある。
そして、その供給先となったのが、碧・葵兄弟。
最初はたまたまその矛先を向けられたが、今ではすっかり(少なくとも碧は)紅子に
限りない敬愛と忠誠を誓っている。
元々、裕福だったのは紅子の家庭ではなく、双子兄弟の家の資産で
16になった年に『修行』と称して家を出された紅子に目を付けられたのが運の尽き、
『家来のものは主人のもの』と言う唯我独尊的な古語?に従って、奇妙な生活を過ごしている。
ちなみに1年近く一緒に暮らしているが、未だに碧も葵も『吸血鬼の修行』とは何か詳しく聞いた事はない。

とりあえず、細かい問題はあるけれど特に今の生活に不満がある訳でもないから、
まぁいいかというのが3人の現状である。


258双子従者と人外お嬢:2005/12/24(土) 23:48:22 ID:F81HE946
ご無沙汰してます、170です。メリクリ。
スレ違いかもしれんが構わず投下してみた。怒られたら止める。
取りあえず次は3Pですよと予告だけはしておく。

249氏>ツンデレお嬢様GJ!!
    自分がツンデレ受け書けないので羨マシス。続き期待してます。

253氏>取りあえず自分で書いてみては?と思う。
    俺も本当は絵描きで前作が初めてのSSだったし。ここでは文才云々より萌えるか否かだ。
    ……エラソでスマンorz
259名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 00:28:09 ID:q9Z0HDLY
あぁ〜ん!神170さんおかえりなさーい。
双子、現実でも見るの大好きなので、もぉ耐えられ〜〜ん!
普通、漫画なんかでは生真面目な片割れは終始敬語キャラだったりするけど
碧は普通喋りもするのに、お嬢にだけ敬語なのね。葵も顔はそっくりなのに他はまるで違う、と。
くぅ〜タマランっす!素晴らしいです!は・早く続きを〜…
男性の方々だけでなく女ですが凄く楽しんでますよ、このスレ。いつもうっとりしてしまいます。
260名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 01:13:36 ID:rPssN0dJ
>>259
なぜそんなキモいレスをつけたり、
無駄に女であることを主張するのか。
3年ROMれ。
261名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 02:29:56 ID:zvuXMJ9A
前作読み返してたら神キテタ――(゚∀゚)――!!
今回の心のメインテーマは何だろなと思いつつ続き期待してます。
262名無しさん@ピンキー:2005/12/25(日) 14:55:03 ID:jbWp0zgt
GJ!
3P楽しみにしてます
263名無しさん@ピンキー:2005/12/26(月) 01:01:08 ID:6x1sZ8ie
お姫様スレに主従ものがあった
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1133193721/116-129

ドS処女姫に勃起萌え!ヽ(*`Д´*)ノ
264名無しさん@ピンキー:2005/12/29(木) 03:38:06 ID:llTceaeo

>このスレに投下する事は>>1にような荒らしに餌を与える行為と同等で、叩きの対象になります。
>また、このスレは削除待ちですのでコレ以上のレスも荒らし行為と見なされます。

こんな出鱈目で自己中心的な誘導、初めてみた。

当該スレ「以外」のスレへの書き込みがなぜ荒らしになるのか理解に苦しむ。
分割したいのなら新スレ主としてそちらを頑張って盛り上げたらいいのに、類似スレを
叩く=荒らすことでしか住人を呼び込む自信がないのだろうか。

きっと作品が投下された時点で誘導と称して荒らしにくるんだろうね。
うんざり…。
265名無しさん@ピンキー:2006/01/02(月) 19:03:20 ID:qSxF8KTS
ageましておめでとう
266名無しさん@ピンキー:2006/01/03(火) 23:28:05 ID:OOzESVvA
久しぶりに見たら170さま。。
あのssのおかげで時々レザンを頂いております
267名無しさん@ピンキー:2006/01/11(水) 12:15:10 ID:x1fguaTb
あげますぅ><
268名無しさん@ピンキー:2006/01/17(火) 18:58:13 ID:P+doHGxg
保守
269名無しさん@ピンキー:2006/01/22(日) 14:41:18 ID:FOffJXFY
ほしゅ
270名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 19:01:35 ID:E7QlSESk
圧縮警戒保守
271名無しさん@ピンキー:2006/01/24(火) 19:17:21 ID:7pFbZus8
ツンデレお嬢と吸血姫の続きをのんびりといつまでも待ちつつ保守
272名無しさん@ピンキー:2006/01/28(土) 21:54:09 ID:hmqHh7SX
sage
273名無しさん@ピンキー:2006/02/01(水) 19:55:53 ID:iiCp+NX4
ホス
274名無しさん@ピンキー:2006/02/01(水) 23:59:29 ID:8LzOFYCi
ネ申降臨↓
275名無しさん@ピンキー:2006/02/08(水) 13:08:46 ID:MT8mWtne
私が神です
276 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/13(月) 18:32:18 ID:YageBVpe
<<琥珀>>

身分の差、というのは越えられない壁なのだ。と人は言う。
ある人は匂いが違うのだ、と言う。
ある人は色が違うのだ、と言う。
そしてある人は血が違うのだ、と言う。

私にとってはどれも違うように感じられてならない。
確かに色も、匂いも、そして血も違うのかもしれない。
しかしそれらの意見は私にはどうにも強引さが感じられる。
何か他の主義主張を伝えたいばかりに発せられるその、言い訳めいた感触を感じるのだ。

私にとって身分の差、とは色や匂いや血ではない。
なんというかそれよりも如何ともしがたい住む場所の差。のような気がする。
277 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/13(月) 18:34:11 ID:YageBVpe
身分の違いとは多分こういう事だ。
それは例えば、そうだな。

私にとって週末の酒場で当代人気の作家の文庫を広げながらブランデーを一杯飲む、ささやかな楽しみな一時が
彼女にとって紅茶を持って屋敷の図書室に向かう一時だという違いのような、そういうものだ。
ブランデーに砂糖を溶かしても、紅茶にはならない。
そう、身分の差とは彼女の好きな琥珀色の紅茶と、
私がささやかな楽しみにしている琥珀色のブランデーがまったく違うような。
同じ色で、一見同じに見えても中身はまったく違う、そういったものだ。。

酒場で身分についての下品な冗談が飛び交うとき、私は時々こんな自説を披露する。
日に焼けた俺らとお坊ちゃまお嬢様じゃ色から違うじゃねえかなどと混ぜっ返される事もあるが、
大抵ふんふんと真面目に聞いてもらえる。
案外皆、そういうふうに思っているのかもしれない。
278 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/13(月) 18:35:01 ID:YageBVpe
@@
「困ったわね。」
ふう、と息を吐きながら手元の紅茶を引き寄せ、お嬢様は長い長い睫を伏せるようにした。
お嬢様は紅茶に砂糖を三杯も入れる。
舶来から取り寄せたという真っ白なその砂糖の塊は紅茶に溶けても、綺麗な紅茶の琥珀色を失わせはしない。

「困りましたね。」
私も声を返す。

「怒られるわ。」

「殺されますね。」
私の言葉にお嬢様は驚いたように顔を素早くこちらに向けた。
何事にもゆっくり、一挙一動まで使用人とはまた違った意味でルールに縛られているお嬢様にとっては珍しい動きだ。
まあ育ちの良さがお嬢様から活発さを奪っているけとは言え、
元来がお転婆な彼女は気楽な時間には節々にこういった表情を見せる。
279 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/13(月) 18:35:36 ID:YageBVpe
「まさか。」

「まさかではありません。旦那様のお留守の間に、お嬢様をお守りできなかった。使用人としては万死に値します。
聡明な旦那様は帰宅し、お嬢様から事の次第を把握した瞬間、
机の中に大事にしまわれているあの大戦時代、野蛮な敵国の兵隊達を何百人と屠ったという拳銃で私の眉間を」

「ちょちょ・・・ちょっとやめてよ。」

「やめません。旦那様はきっとこう言われるでしょう。『おまえなど、拾ったのが間違いだった。この恩知らずめ!』と。
そして跪き、許しを請う私の頭に拳銃の照準を合わせ、」

「わかった!わかったわよ!ストップ!あなたの例え話は心臓に悪いわ。」
ぶんぶんと両腕を振り回しながらお嬢様は私の話を遮った。

「では、私の提案を受け入れてもらえるのですか?」

「それも嫌よ。」
280 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/13(月) 18:36:26 ID:YageBVpe
「あれも嫌、これも嫌ではいけません。」
鉄のような私の言葉にお嬢様はキッと私の事を睨みつけた後、いかにも名案を思いついたという風に指を微かに揺らせた。
薄く巻いた洋風の髪が指の動きと同じだけ揺れて。
私はお嬢様はとても綺麗だ、と毎日何度もそう思うのだけれど、又そう思った。

「その代わり、こういう提案はどうかしら。内緒にするの。」
いかにも名案を思いついた。と言う風に自慢げに指を揺らすお嬢様は、とても愛らしく見える。

「内緒に。ですか。」
一仕事を終えたように又紅茶に指を伸ばすお嬢様に重ねて問い直す。

「そうよ。それであなたが殺される心配もないし、私も怒られずに済むわ。」

「しかし、お嬢様に隠し通せますかね。」

「あら、あなたは私の事を見くびっているわ。私に隠し通せない事なんて、一つもないもの。」

「しかし、先週お稽古事をサボって買い物に出かけた事はほんの数時間でばれましたが。」

「あれはあなたがのそのそとしていて壁を乗り越えるのに時間が掛かったからじゃない。」

「その前に教師の方に風邪を引いたと嘘を吐き、旦那様に今日はお休みだと嘘を吐いたお嬢様に問題が。」
むむむ、と2人で睨み合う。
しばし睨み合った後、お嬢様はまあ、あれは私も悪かったけど。と呟きながらついと視線をそらした。
そして、いつもの悪戯めいた睨み方ではない、少し悲しそうな瞳でお嬢様は私に声を掛けてきた。
281 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/13(月) 18:37:37 ID:YageBVpe
「じゃあ、あなたが言うとおり、私は忘れた方が良いって言うの?」

「はい。」
一瞬の間もおかず、即答する。

「私は良くわからないわ。あなたは毎週、こっそりと酒場にお酒を飲みに行くし世界の事を沢山知っているのかもしれない。」

「そんな事はありません。」
酒場で世界の全てが判れば苦労等いらない。あそこは何も得る事などできない、逃げ場所でしかない。

「私は狭い世界しか知らなかったし、これからだって自由に羽ばたく事はできないかもしれない。
 私が何にも知らない事を私は知ってる。でもこれだけは私にだって判るわ。あなたが好きなの。だから私は今日、」

「それは近くに私しかいなかったからです。」

「小さい頃からずっと一緒にいて、好きになった。それでいいじゃない。近くも遠くも関係ないわ。」
私は溜息を吐いて、書架の中央にある、分厚い辞書を取り出す。
そしてその辞書を開くと、中に隠しておいた,
まさかお嬢様の説得用に使う羽目になるとは考えてもいなかったとっておきのブランデーの小瓶を取り出した。
282 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/13(月) 18:38:55 ID:YageBVpe
「お忘れ下さい。お嬢様は、いつか素敵な男性と巡り会います。良いですか、私とお嬢様では身分が違うのです。
これを見てください。お嬢様が飲んでいる紅茶と、ブランデー。色は同じですが、中身は全く」
その瞬間、私の言葉は私の手元から無言でブランデーの小瓶をひったくったお嬢様に遮られた。

お嬢様は私の手元からひったくった勢いのまま、小瓶を開けると、ポットにダバダバと中身をあけた
その後、たっぷりと高級ブランデーの入ったポットから手元のティーカップに毀れんばかりの勢いで注ぐ。

「私は欧米人じゃないの。キスなんて一大事、絶対に忘れないわ。私は絶対にあなたにキスをした事、忘れないもの。
 いつか素敵な男性と巡り会うのなら私はもう巡り会ってる。その点だけは私は私の幸運を信じます。
 色が同じなら、中身も似たようなものよ。混ぜてしまえば良いのよ。」
283 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/13(月) 18:39:54 ID:YageBVpe

「お嬢様、それを飲んではいけません。」
あまりの事に固い声で止める私をきっと睨み付けるとお嬢様は宣言するようになみなみと注がれたカップを口の前まで持ち上げた。

「本日、お父様がご帰宅されしだい、あなたとキスをした事を報告します。」

「カップを下ろしてください。それからその事に関してはせめてお嬢様からという事を始めに」

「紅茶もブランデーも混ぜてしまえば一緒よ。だって色が一緒だもの。
私はあなたが好きだし、お父様に拳銃なんて出させないわ。」

私はあなたが好き。
お嬢様は何度か繰り返すようにそういうと、ふんと顔を逸らしてカップの中の紅茶を思いっきり口に含んで、



---ばったりと倒れた。
284 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/13(月) 18:42:11 ID:YageBVpe
--------------
甘い短編を書きたかったので書かせてもらいました。

では。
ノシ
285名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 20:26:47 ID:EBq0kT5C
ゴミだな
はい
↓自演GJレスどうぞw
286名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 21:51:54 ID:rY8XIOaJ
>>285
うんお前はゴミだな。


>>224
God Job!!
287名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 21:59:17 ID:rY8XIOaJ
>>284
あらためてGJ!!

こいつらの他の話も見たいもんです。
288名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 22:01:34 ID:ZqDyngSf
紅茶と酒混ぜたら、旨そうだなw
289名無しさん@ピンキー:2006/02/13(月) 22:44:43 ID:ry3N/NF4
>>288
ヤソ・ウェンリーですか
290名無しさん@ピンキー:2006/02/14(火) 10:14:13 ID:KCXW8H5W
紅茶にブランデーを落として飲むのは、普通にアリですよ。
ナイトキャップに最適。俺も昔よく飲んでた。

……このお嬢の場合、分量が問題だがw
とにかくGJ。
291名無しさん@ピンキー:2006/02/14(火) 19:10:12 ID:PWTNYvbm
うに氏ktkr
292名無しさん@ピンキー:2006/02/14(火) 22:03:47 ID:PjUY54xB
GJですた
293名無しさん@ピンキー:2006/02/15(水) 03:41:11 ID:/Rz7rzTS
GJ!!
楽しかったです
294 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/15(水) 11:23:30 ID:gxKqsFnV
<What's Going On>

「なあ、身分の差ってなんだろうな?」
私の問いかけに隣でしこたま酔っ払っていた年かさの男はむっくりと顔を上げた。

「お偉い人々はビールを飲まねえし、下賎の俺らは料亭で飯を喰わねえ。そういうことだ。」
ポツリと呟いたつもりだったが、しっかりと聞いていたようだ。
まるで用意していたように年かさの男は答えた。

「でも金がありゃ俺達だって料亭で飯を喰うだろう?」

「いいや、喰わねえ。」
295 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/15(水) 11:24:08 ID:gxKqsFnV
「何でだ?金さえあれば行ってみたいと思うのが普通だろう?」
そう言うと、年かさの男は少し首をめぐらせてから答えた。

「お前はそう思うのか?」

「ああ、思うね。金さえあれば、そういうところに行って美味いもん沢山食ってみたいと考えるに決まってるさ。」

「そりゃあ・・・お前が若くて、そしてまだこっち側の人間じゃないのさ。」
年かさの男はそう言ってにやりと笑った。

「こっち側?こんな所で飲む人間なんか皆一緒だろうよ。皆、貧乏人だ。」
そう言うと、その声を聞きとがめたか、酒場の婆がぎろりとこっちに視線を向けてくるのを感じた。
婆、その男、そして私。狭い店には3人しかいない。
構わず会話を続ける。
年かさの男は会話に興が乗ってきたのか、婆にビールと怒鳴ると腰をすえたように此方に振り向いた。
296 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/15(水) 11:25:02 ID:gxKqsFnV
「そりゃあ、自由主義ってくらいだ。金さえあれば俺らだって料亭だろうが何だろうが行けるさ。」

「だろう?だったら。」

「だがいかねえ。」

「何でさ。」

「お偉い人たちはこっちにこねえだろう?」

「そりゃ汚いからだとか、危ないからだとかじゃないのか?」
又ぎろりと睨まれる。

「違うな。」

「なにがさ。」

「違うといってるんだ。俺達だって金を持てばあっちに行ける。
好景気とやらで給金だって最近は上がってるんだ。行こうと思えば年に一度くらいはいけるさ。
でもここに来る連中の中に料亭に行った事がある奴なんていねえ。
行こうと思う奴だってそうはいねえ。俺もいかねえ。
お偉い人たちはこっちにこねえ、俺たちはあっちにいかねえ。」
一息にビールを煽る。
297 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/15(水) 11:26:28 ID:gxKqsFnV
「料亭の料理だって美味いだろうが、ここのビールだって悪くねえ。」
そう云って年かさの男は婆にウインクをして見せた。婆はぐっと親指を立てて返す。

「でも同じ所で、同じ物は食べねえ。それが身分の差ってやつだ。」

強引だが、なんだか筋は通っているような気もする。
私だってお嬢様に連れられて共をする以外に自分の給金で料亭に行こうなどと考えた事も無い。
しかしなんとなく理屈で言い包められたような不愉快な気持ちになって、私は店の奥に視線を逸らし、

そして異常な雰囲気を感じた。
なんだろう、とふと考えて、
水場で洗い物を始めようとした婆があんぐりと口をあけて入り口の方を見ているのに気づいた。
ふと視線を戻すと、今まで熱弁を振るっていた隣の男もいつのまにかあんぐりと口を開けている。

完全に店の空気は凍りつき、どことなくホラーだ。
私はなんとなく恐怖心を感じて、ゆっくりと入り口を振り返った。
298 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/15(水) 11:27:25 ID:gxKqsFnV
---すると。
そこには寝間着にコートを羽織っただけの若い女性がいた。
胸元は薄く開いていて真っ白な肌が覗いている。
着ている物も寝間着とはいえどちらも高級な素材を使っている為、娼婦のようには見えないが、
とにかくやたらと派手だ。目に付く。

週末とはいえ、時刻は日付を通り過ぎようとしており、町も静まる時間帯。
最近、一時期よりも治安も良くなってきたとは言え、普通こんな時刻に歩くのは男しかいない。
あまりの事態にふっと意識が飛びかけるのを感じた。
何とか持ち返し、そしてゆっくりと叫んだ。

「何をしているのですか!!!お嬢様!!」
と。
299 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/15(水) 11:29:12 ID:gxKqsFnV
@@

物珍しげに狭い入り口に放り投げられていたビールの樽を覗き込んでいたお嬢様は私の声に悪戯っぽく笑い、ついと顔を上げた。

「あら、こんな所で会うなんて奇遇ね。」
全然奇遇ではない。私はパニックになって叫んだ。

「ええ奇遇ですね。全く驚いた。吃驚させるにも程がある。さあ私と帰りましょう。
ああ、どうしようこんな時間にお嬢様が外に出ていただなんてそれこそ旦那様に殺されてしまう。」
がたがたとガラクタをどかしながら入り口へと走る。

「あら、その時こそこの前言いそびれた私とあなたが恋なむむむぐうっ!」
慌ててお嬢様の口を塞ぐと私はお嬢様の肩を掴み、首だけ振り返って婆に怒鳴った。

「明日払いに来るから、つけといてくれ!」
300 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/15(水) 11:30:07 ID:gxKqsFnV
しかしその瞬間、お嬢様はあんがい強い力で私の腕を振り切るように解いた。
乱暴だったかと思わず手を離すと、乱れた髪を押さえながら、
私の言葉にこくこくと頷きかけた婆にびっと指を突きつけるとお嬢様はまるで重大事を宣言するように言った。

「あら、折角だもの。一杯くらい飲んでいくわ。」
そして止める間もなく背筋のすっと伸びた格好ですいすいと私の座っていた横に来ると、
背の高いカウンターの椅子をしばらく眺めそれから意を決したように息を吸い、
それからよじ登るようにして椅子に座った。

そしていかにもレディー然とした装いをしようと努力していますという感じでちょこんと膝に手を置くと、
「紅茶をいただけませんでしょうか?そうね、夜も遅いからアップルティーかカモミールが良いわ。」
と料亭で何かを頼む時のような声で言った。
301 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/15(水) 11:30:51 ID:gxKqsFnV
賭けてもいいが、こんなところにアップルティーやカモミールは無い。
飲む奴がいないからだ。
婆は困り果ててじっと俺の方を見ている。
年かさの男は口をあんぐりとあけたままだ。
私もなんと言って良いかわからない。

三者三様に固まったまま、それでも婆はこの界隈で長くやってきた飲み屋の誇りを思い出したのか、
ゆっくりと動いた。

「紅茶と言っても・・ティーバックマシーンのリプトンくらいしかないですが・・・」

お嬢様の顔が綻ぶ。。
「あら、リプトンは私大好きなの。ロイヤルは毎年取り寄せてるくらいですもの。
 じゃあ少し薄めにして、そちらをくださいな。」

だれも『そのリプトンは名前ばかりの安物だ』とは言えなかった。
婆は観念したようにごそごそとカウンターの後ろの下のほうから埃まみれのティーバックマシーンの袋を取り出す。
302 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/15(水) 11:33:10 ID:gxKqsFnV

かちりとガスが燃やされると、うす暗かった店内がかすかに明るくなる。
その上に婆の手で古ぼけたやかんが置かれた。

何が珍しいのか、お嬢様はうっとりと婆の手元を見つめている。
ふと横を見ると、年かさの男がお嬢様の胸元を舐めるように見ていた。
お嬢様に判らないように足を思い切り踏んづけてやると、年かさの男は声も出さずに仰け反った。

「一杯飲んだら帰りますよ。」
溜息混じりにそういうと、お嬢様は素直に頷いた。
ニコニコと笑っている。自分何をしているか、判っているのだろうか。
危険とかそういう問題ではない。
悪意のない世界を信じるお嬢様は素敵だが、世界に悪意が無い試しは無いのに。
そしてそういう悪意にとって、お嬢様は格好の獲物だというのに。

「こういうところに来てはいけないのです。」
そういうと、何故かしら。と言ってお嬢様は首を傾げた。
303 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/15(水) 11:37:38 ID:gxKqsFnV
「お嬢様が来るようなところではないからです。それに自分が今、どのような格好をされているかも考えてください!」

強い調子で言ったにも拘らず、お嬢様は全く気にしていない風にまた婆の手元に視線を移しながら、
「あら、あなたが行く所ならきっと私が行っても大丈夫な所の筈だし、
あなたが行かない所には私は多分行かないし、行けないわ。
今日だって、もし危険だったとしたらあなたが連れて行ってくれなかった所為よ。」
と涼やかな声で言った。

「私が来るようなところに来てはいけないのです。」
私は繰り返した。

「私はあなたが行く所には行くわ。たとえ誰に禁止されたって。
だって私は行きたいと思うし、きっと楽しいと思うもの。
・・まあ、勿論あなたの楽しみの邪魔をするつもりは無いけれど。」
即答される。

詭弁だ。
だけど私は何故だか言い返せずに黙った。
お嬢様は私は何でもお見通しなの。
という顔をしながらしゅんしゅんと音を立て始めたやかんを楽しそうに見ている。
304 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/15(水) 11:38:46 ID:gxKqsFnV
そして・

お嬢様はやかんから目を離さないまま、こっそりと私の耳に口を近づけて。

「安心したわ。私、酒場と云うからにはお酒しかないのかしらと心配していたのだけれど紅茶も置いてあるのね。
それにポットではなくて、お水を沸かす所から傍で見られるなんてとっても楽しいと思うわ!
これからは毎週週末にはここで紅茶を頂きましょう。」
と、なんだかまるで全然懲りていない顔で笑った。
305 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/15(水) 11:43:24 ID:gxKqsFnV
--------------
紅茶の事は何にも知りません。調べなきゃ。

では。
ノシ
306名無しさん@ピンキー:2006/02/15(水) 21:48:22 ID:gpRx/SzB
場末の酒場に来るお嬢様かわいいよ
GJ
307名無しさん@ピンキー:2006/02/16(木) 02:47:29 ID:xvvzq94s
GJ!!
埃まみれでも一応紅茶を備えていた婆かわい(ry
308名無しさん@ピンキー:2006/02/16(木) 14:49:31 ID:lS0u/YHA
GJ!
お嬢様かわいいぜー。今後の展開も期待してまっせ。


ちなみにこんな実話がある。

あるBarで常連が楽しく飲んでいるところに、妙に気取った女(ハイミス風)がやってきた。
お高くとまった様子に常連が反感を持っていると、その女が「コーヒー」を注文した。
マスターも内心いらついていたが、黙ってコーヒーを出した。
「マスター、素敵なコーヒーね、なんてブレンド?」
「『ゴールド・ブレンド』です」
「さすが、ね」
常連爆笑。
309名無しさん@ピンキー:2006/02/16(木) 16:10:58 ID:l9vGQGZp
なんか素晴らしいな。GJ!
310名無しさん@ピンキー:2006/02/16(木) 22:42:38 ID:aZggySxS
従者が年下というのをリクしてみたい。
311名無しさん@ピンキー:2006/02/21(火) 23:18:23 ID:1mZMwtvH
はげ



とりあえず上にある小説の人再臨希望。
312 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/22(水) 12:44:45 ID:RcSdGZwL
<条件>

「結婚?あのお嬢様とか!?」
いきなり叫んだ年かさの男の口を私は慌てて塞いだ。
旦那様のお使いの用事があって偶々早く店に来れた為、狭い店内には仕事帰りで薄汚れたなり男達が数人いる。
日の差さない裏通りに面している為、夕方といっても店内は真夜中のように暗い。
バーカウンターの横と、壁の要所についてあるランプだけがぼうと光っている。

「例えばの話だ例えばの。大きな声を出すな。」
慌てて男達の方に目を配りながら小さな声で囁くと、年かさの男はこくこくと首を振った。
手を離すと慌ててジョッキに齧りついてビールをごくごくと煽る。

「それは、なんとも羨ましい話だな。旦那様に目を掛けられたって事か。」
年かさの男の目には羨望が漂っている。
お前は若いからなあ、と言ってふうと息を吐いた。

「それが、そうじゃないんだ。」
「そうじゃないと言ったってお前、そりゃあたしかに婿殿は大変かもしれないが今の暮らしとは段違いだ。」
酒だって飲み放題だ。と言ってまた溜息を吐く。
313 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/22(水) 12:45:23 ID:RcSdGZwL
「違う違う、そうじゃない。違うんだ。旦那様はご存じないんだ。」
がっくりと肩を落とす男に向かって慌てて言いつくろう。
「何がだ?」

「結婚すると言っているのはお嬢様だ。旦那様はご存じないんだ。」
「何?どういうことだ。」

「つまり、お嬢様が私と結婚すると言っている。旦那様はご存じない。」
「すると何か。お前・・・手、出したのか。」

「いやいやいや、出してない出してない。出してないぞ。断じて出してない。」
ぶんぶんと手を振る。そのような軽薄な男と誤解されては堪らない。
「出してないのか。」
疑わしい目つきで年かさの男が睨んでくる。いつの間にか婆まで寄ってきている。
314 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/22(水) 12:46:04 ID:RcSdGZwL
「いや、出された事はあるが、それは過ちみたいなものだ。私は出してない。絶対に出してないぞ。」

「出したのか、出してないのかどっちなんだ。正直に言え。」
ダン。とカウンターを叩かれる。

「だから出してない。断じて出してない。手を繋いだ事くらいはあるが、その位だ。」
それにそれだってお嬢様から繋いできたのだ。と言うと年かさの男と婆は白けた目で私を眺め回した。

「それだけじゃないね。口を吸って抱きしめて気の利いた言葉くらい言ったんだろう?
 それでころっと騙されたんだ。そうに違いない。正直に言いなさい。」

「うるさいぞ婆。何処で見て、いやいや違うぞ、大体がお嬢様からで私は決して、いやいや違うんだ。」
言いよどむと、年かさの男ははあ、と又溜息を吐いた。
ついでに婆まで溜息を吐いている。
婆、なんか魚でも焼いてくれ。と言ってから年かさの男は私の方に向き直った。
315 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/22(水) 12:46:34 ID:RcSdGZwL
「それはお前、大変な事だぞ。お嬢様には許婚なんかがいるだろう。」
「ああ、遠縁の財閥の子息だかと言うのがいる。なんでも生まれた直後にもう許婚だったとか。」

「そうだろう。そういうもんだ。それでのこのこと結婚させてくれなんぞと言った日にはお前、旦那に殺されるぞ。」
「私もそう思う。」
実際に殺される事は無いだろうが、ただで済まない事は確かだ。
半殺しの目に遭って屋敷から叩き出される事は間違いない。

「何とかならんのか。」
「お嬢様が次のお誕生日の日に皆にお披露目すると息巻いている。止まらないな。あれは。」

「誕生日っていつだ。」

「来週。」
ああ、と言って年かさの男は頭を抱えた。鯵の干物を焼きながら婆まで頭を抱えている。
316 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/22(水) 12:47:04 ID:RcSdGZwL

「お嬢様に何とか思いとどまって頂く方法は無いのかとそれを相談したいんだがな。」
やっと本題に入れた、と身を乗り出すと、年かさの男は無理無理、と素気無く手を振った。
「口止めか?そんなもの無駄だ。そんなものはな。どっちにしろばれる。」
「ばれるか。」
「ばれるな。しかもそういうのに限って思いがけない最悪の場所からばれる。」
ああ、といって今度は私の方が頭を抱える。
そう言えば小間使いの少女とこの前すれ違った時に、
こましゃっくれた顔で最近お嬢様と仲が宜しいんですのねなどと言ってきた。
いかにもそういうところから漏れそうだ。

しばらく腕を組んで悩んだ後、年かさの男は重々しく口を開いた。
「逃げるしかないな。殺されるよりましだろう。」

「一人でか?」
「お嬢様と逃げてどうする。お前人攫いで追われる気か?」
「冗談じゃない。」
ぶんぶんと首を振る。逃げ切れるわけが無い。
317 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/22(水) 12:47:38 ID:RcSdGZwL

と、そこに焼きあがった鯵の干物を盆に載せた婆が戻ってきた。
「私はそうは思わないね。あんた、お嬢様と逃げるべきさ。」
と言って魚を置くと、カウンターの向こうにずずずと椅子を持ってきて腰を下ろす。

「婆には相談していないぞ。」
ぎろりと睨みながら言うと、婆はあんた判ってないね。
と言いながら逆に椅子を引きずって近づいてきた。

「お嬢様はあんたの事を好きなんだろう?だったら連れて逃げるべきさ。」
「そんなもの直ぐに捕まる。」
「捕まってもさ。例え一日でも惚れた男に連れられて全てを捨てて逃げる。女冥利に尽きるじゃないか。」
婆はうっとりとしている。

「身軽な婆とは違うんだよ。大体婆を誰が連れて逃げるんだ。」
私がそういうと、婆は憤慨したように声を返した。
「なんだい、これでも昔は横丁小町と言われてたんだからね。
 店が終わった後は私を誰が誘うかで何人も争ったもんさ。」
318 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/22(水) 12:48:13 ID:RcSdGZwL

まあまあ、とそこに年かさの男が割って入る。
「まあ、それはどうでもいい。問題はお前がどう思ってるかさ。」
「私が?」
声を返すと、男は頷いた。
「お前がお嬢様に惚れてるなら、連れて逃げるのもいいさ。そうじゃないなら一人で逃げたっていい。
まあえらく美人のお嬢様じゃないか。惚れてるも惚れてないもないだろうがな。」

「旦那様は恩人だ。そのお嬢様に美人も惚れてるも惚れてないもない。」
意味は違うが同じような言い回しで言って、わたしは男を睨んだ。

「恩人も何も旦那様を嫁にくれってんじゃないんだ。お嬢様は別だろう?」

「そうはいくもんか。相談しなきゃ良かった。」
そういって私は横を向いた。
混乱していた。
319 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/22(水) 12:49:38 ID:RcSdGZwL


私にはわからなかった。
お嬢様の事が嫌いなわけはない。
旦那様に拾われてからずっと一緒にいたけれど、お仕えしていてお嬢様を嫌いになった事など一度もない。
私のつまらない合いの手に真面目に返事をしてくれたり、私には判らない難しい話を教えてくれたり。
お嬢様が笑ってくれると嬉しい。
そしてなにより、最近のお嬢様の行為が私は嫌ではなかった。

それはもしかしたら私の恋なのかもしれない。
確かにそう思う。

でもそれはそれとして、結婚やなんやかんやとなるとどうなのだろうか。と私は思う。
それが恋として、立場を超えてまで成就させなければならないものなのか。
お嬢様が私の事を好きとして、それがずっと一緒にいたからという理由だとして、
それならば、そうなのだとするならばお嬢様には許婚の方の方が適任だと思えてならないのだ。
320 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/22(水) 12:56:42 ID:RcSdGZwL

結婚して、それから時を重ねて仲良くなる。
そういう夫婦の方が普通だろう。
それならば今、仲が良いからといって無理やりに身分の低い私と条件の整わない結婚などして、上手くいくのだろうか。
私には最低限の学しかないし、上流社会の何たるかはわからない。
お嬢様はこちらの事は判らない。
それは深くて越えられない谷であり、高くて越えられない壁だ。
それより条件の合った相手と恋を育まれるほうが、お嬢様には適していると思う。

そしてふと思った。
叩き出される、半殺しの目に遭う。そんな事はどうでも良いのだ。
お嬢様が許婚の方を選ばれても良い。喜んで祝福しよう。
旦那様への不義理でも良い。そうしたら何かで恩返しが出来るようにしよう。
小さい頃に拾われた頃から、少し年下のお嬢様のよき遊び相手でいられたと思う。
お嬢様の勘違いでも、お嬢様の気持ちは、私には嬉しい。
そして私はお嬢様が好きだ。
でも私はもし艱難辛苦を超えて私と一緒になったとして、それから条件の差に気づくお嬢様を見たくはなかった。
それは深く、暗い絶望になると思った。

先行きの事を考えると不安になる。
何処となく屋敷の門が遠い物に思えて、私は溜息を吐いた。
321 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/22(水) 12:58:05 ID:RcSdGZwL


--------------
感想ありがとうございます。

では。
ノシ
322名無しさん@ピンキー:2006/02/22(水) 14:37:26 ID:AY83ddKW
>>321
横町小町いいねいいね!
323名無しさん@ピンキー:2006/02/22(水) 15:48:38 ID:RYBDmg14
全然出てこないんだけど、語られるお嬢様の振る舞いを想像したら萌えてきた。
超GJ!
324名無しさん@ピンキー:2006/02/22(水) 16:50:27 ID:AiokIYZV
これマジでどうなるんだろうか……。
325名無しさん@ピンキー:2006/02/22(水) 19:00:51 ID:awqArWcB
登場人物の名前が出てこないのに、非常に読みやすく、光景も目に浮かぶようで実にGJです。

…八方丸く収まって欲しいところだなぁ。
326名無しさん@ピンキー:2006/02/25(土) 00:10:19 ID:m0tvBZw4
愛と生活とのギャップをどう解消してくれるか非常に楽しみだ。
327名無しさん@ピンキー:2006/02/25(土) 07:05:02 ID:DUo+Wi2q
こいつらに幸ある未来あれ。

……難しいだろうなあ……
でも願う。
328名無しさん@ピンキー:2006/02/26(日) 19:16:52 ID:yLI4BwLC
あげ
329名無しさん@ピンキー:2006/02/26(日) 21:00:48 ID:zkgIIqtW
かなりの名作になる予感。
時間かかってもいいから(…本当はあまりかからない方が嬉しいけど)
なんとか完結して欲しいですバイ。
330名無しさん@ピンキー:2006/02/26(日) 21:32:42 ID:9roF8I9M
くっついたとしても元々の生活レベルから何から違っているから、十中八九、
悲劇的な結末になりそうな予感が…
ハッピーエンドになって欲しいけれども。
331 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/27(月) 13:52:04 ID:rmPQPg3s
<かささぎの群>

「はい、ありがとうございます。」
私がそう云い、頭を下げると旦那様は優しく微笑まれた。
肩に手が置かれ、ぐいぐいと揺さぶられる。

「お前には期待を掛けている。立派になって帰ってくるんだぞ。」
温かく、情愛の篭った言葉に聞こえた。
す、と顔を上げると、私を拾って下さった時のままの旦那様の優しい笑顔が見えた。
私にとっては父親代わり、いや、父そのものでいてくれた方だった。

「お心遣い、感謝いたします。精一杯、努力して参ります。」
もう一度深く、深く頭を下げる。
もうお会いする事も無いだろう。
向きを変え、扉へと向かった。
332 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/27(月) 13:52:40 ID:rmPQPg3s
@@

お嬢様の誕生日は、昔は盛大に行っていたものだった。
戦争が終わり、浮かれかえった空気というのもあったのだろう。
様々なお客様は数百人にも及び、屋敷は人で溢れ帰り、
お嬢様が綺麗なドレスを着て登場し、皆が拍手で迎えると
お嬢様が文字通り物語の中のお姫様のように眩しく見えたものだった。
屋敷内には歓声が溢れ、私はお嬢様の挨拶回りに後ろからくっついて付いて回っていた。

近年では身内で行いたいというお嬢様の意向もあって、
ご商売の方は呼ばずに身内の親戚一同で執り行ってはいるが、
パーティーの人数に関わらず、ドレスを着たお嬢様は変わらず美しく見える。
いや、年々美しくなっていくように私には思える。
333 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/27(月) 13:54:32 ID:rmPQPg3s

そう、今年もバラの刺繍の入った真っ白なドレスを着た今年のお嬢様はいつにも増してとても綺麗に見えた。
今迄で一番、綺麗に見えた。
私が愚かだった。止めるべきだった。
私はそれに目を眩ませてしまったのだ。
世界を手に入れようと目を眩ませたあのドイツ人のように。
身に余る物でも、両手を広げさえすれば受け止められるとでも思っていたのだ。

私は耳元でそっと囁くお嬢様を止められなかった。
止めようともしなかった。
私は嬉しかったのだ。
334 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/27(月) 13:56:23 ID:rmPQPg3s

それは破滅的な喜びではあったかもしれないけれど、
耳元でそっと囁いたその時から、お嬢様が乾杯の合図と共に
「私、結婚相手を決めました。」
と首まで真っ赤に染めて皆の前で私を連れて宣言したその時まで私は不思議な浮遊感にも似た歓喜の渦の中にいた。

お嬢様の新しい冗談と受け止められ、
大きな笑いと共に皆に好意的に受け取められ、そして傷ついたお嬢様の顔を見て私が初めて自分の過ちに気づくその時まで。

そして私は今日、旦那様に呼ばれる事となった。
イギリスへの長期留学。戻った暁にはグループの重要な仕事も与えられるという。
考え付く事もなかった身に余る栄誉だ。
聡明な旦那様は悩んだのだろう。
そしてこれは旦那様の最大限の配慮で、好意であるのであろう、と私は思った。
335 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/27(月) 13:57:16 ID:rmPQPg3s
@@

扉を出て、自室へ帰る途中。
コツン、と脇の窓がなったので庭に目を向けるとお嬢様がぼんやりと立っていた。
ちょいちょい。と手招きをされ、それにつられる様に庭へと降りる。
夕暮れが過ぎ、庭を覆っていた光が徐々に薄れていく時間だ。
お嬢様の顔は良く見えなかった。

「お父様に呼ばれたの?」
聡明なお嬢様は判っているのだろう。声は硬かった。

「はい。イギリスへ留学させて頂ける事になりました。」

「それで・・・あなたは行くの?」

「はい。行きます。」
私はきっぱりと答えた。
336 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/27(月) 13:59:04 ID:rmPQPg3s
「どうして?」
薄く闇に覆われたお嬢様の顔は見えない。
私はお嬢様にゆっくりと近づいた。そして薄く見えてきた空に瞬く星を指差した。

「覚えていますか?昨年の夏頃でしたか。お嬢様が寝られないとおっしゃられていた時に一緒に庭に出て、アルタイルという星を見ました。」
お嬢様はきょとんとしている。それからゆっくりと笑った。

「彦星よ。アルタイルは洋名ね。」

「私は昨年まで星の事など、一つも知りませんでした。彦星という名もお嬢様に教えられて、初めて知ったのです。」

「興味を持ったみたいね。その後よく天文の本を読んでたでしょう?知っているわ。」

「ええ。とても面白いですね。星一つ一つに名前だけでなく、話まである。
 それにいまではどれくらい離れているだとか、大きさまで判るようです。
 で、そのアルタイルですが、あれは大きく見えるだけあって案外と近いそうです。
 ここから光の速さで17年程度だとか。
 だから今見えているのは、17年前のアルタイルなのだそうです。」
337 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/27(月) 13:59:46 ID:rmPQPg3s

「近いといってもずいぶん遠いわね。」
お嬢様は少し考えてから、答えた。

「そうですね。行って、帰ってきたら34年です。」

「光の速さの乗り物はないわ。それに宇宙というのは空気がないのよ。行く事なんて出来ないわ。」

「そうです。不思議ですね。決して行けないのなら、距離なんて何故計るのでしょうか。」
私は声を続けた。

「お嬢様はあの時仰っていましたね。星の向こうにも同じような星があって、住んでいる人がいて、
 そしてこちらを見ているのかもしれないと。」

「ええ。そうね。私はきっといると思うわ。でも。」

「私もいると思います。行けない限り本当にいるかどうかは決して判らないでしょうが、その考えはとても素敵だと思います。」
私はお嬢様の言葉に被せてそう言うと、お嬢様の前に膝をついた。
338 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/27(月) 14:00:54 ID:rmPQPg3s
「あなたの考えは間違ってる。決して判らないかどうかなんて判らないわ。
 いつか行けるかもしれないじゃない。」
お嬢様の声が、激昂したように震えを帯びて、私は下を向く。

「本に書いてありました。光の速さより早いものはないのだそうです。行って、帰ってきたら34年。
行くだけで、帰るだけでそれだけの時間を使ってしまうのです。」

「それでもきっと行けるわ。」
今にも足踏みをしそうな切迫した声で、お嬢様は叫ぶように言った。
私は顔を上げ、お嬢様の顔を見つめた。
眉根を寄せ、今にも泣き出しそうに歪んではいるけれど。
それでもその美しさは全く損なわれてはいない。
ふと小さい頃の思い出を思い出した。
昔から優しい方だったけれど、欲しいと思ったものは梃子でも欲しがる強情さも持っていた。
私は夏になる度、綺麗な模様の蝶を捕まえるために走りまわらされたものだった。
339 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/27(月) 14:01:59 ID:rmPQPg3s

「来てはいけません。これでお別れです。星の彼方の人間にするのは、恋ではありません。」
薄暗い庭の中でも、お嬢様の目に涙が溢れたのが見えた。

「あなたは星の彼方にいるわけじゃないもの。ずっと私の隣にいたじゃない。」

「いえ、近くにいて手に取れるように感じられても、それは錯覚でしかないのです。
 元から私は向こうにいたのです。今までもそうです、これからもそうです。」

「手は届くわ。あなたは向こうになんかいない。
 今までも、これからもあなたはずっと私の隣に」
近づいてくるお嬢様を避けるように私は立ち上がった。背を向ける。
後ろからは、なんだか子供の時に聞いたようなお嬢様の声が聞こえる。
蝶が取れなくて、駄々を捏ねるような。
私はゆっくりと歩み去る。
340 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/27(月) 14:02:53 ID:rmPQPg3s

イギリスなどに行く気はなかった。
女王の国だそうだが、残念ながら忠誠を誓うに足る人物であるとは思えない。
忠誠を誓うに足る人など、恋い慕うべき人などそういるわけがないのだ。

そう、これも本に書いてあった事なのだが。
地球には20億人も人間がいるらしい。私には想像もつかない数字だ。
しかしそれでもきっと見つからないに違いない。

もしかしたら星の彼方にだったらいるのかもしれないけれど。
341 ◆/pDb2FqpBw :2006/02/27(月) 14:06:15 ID:rmPQPg3s


--------------
感想ありがとうございます。
後2回程度ですが、少し時間が掛かるかもしれません。

では。
ノシ
342名無しさん@ピンキー:2006/02/27(月) 14:34:25 ID:hqWofFis
ウホッ リアルタイム!
お嬢様、せつねえ―――――でも感動した!GJ!
343名無しさん@ピンキー:2006/02/27(月) 15:29:11 ID:gm4SUYNa
毎度毎度よくたとえ話色々思いつくもんだ。

ここエロパロ板だけどんなことどうでもいいやホント。
しっかりと完結したげてください。GJでした。
お嬢様……
344名無しさん@ピンキー:2006/02/27(月) 19:35:44 ID:Bdiv2FCm
お嬢様ガン( ゚д゚)ガレ
続き待ってますGJ
345名無しさん@ピンキー:2006/02/28(火) 00:03:05 ID:y7wjRPP1
どうしてうに氏の作品を見た人が大抵「エロ無しでもおk」と言うのはなぜ?

GJ
346名無しさん@ピンキー:2006/02/28(火) 00:14:11 ID:c7KMmmst
おまえにもその答えはわかってるんだろ?


面白いから。
347名無しさん@ピンキー:2006/03/04(土) 23:21:12 ID:rPobMkaW
定期あげ
348名無しさん@ピンキー:2006/03/05(日) 02:49:17 ID:nWoS8gMr
ほしゅあげ
349 ◆/pDb2FqpBw :2006/03/06(月) 20:22:53 ID:o/o+Yxwa
<恋衣>

屋敷の皆はもう寝静まっていて、しんと音がなるくらいに思える。
時折風が木の葉を揺らす音が窓の外から聞こえてくる。
図書室はいつも落ち着いた空気だけれど外が暗いからか、肌に感じる温度よりも寒々しく感じられた。

あの人がいなくなってから一ヶ月。
私は夜になるとここへ来て、あの人が読んでいた本を片端から読んでいる。
なんて女々しいと自分でも思うけれど。

でもぼんやりと星の本や、とりとめもない冒険活劇などを読んでいるとなんとなく気が紛れた。
部屋に篭っていると煩い位に声を掛けてくる父親も
夜中にそうして本を読んでいると気づいてからは見守ろうと思ってくれているのか、
あまり声を掛けてこなかった。
350 ◆/pDb2FqpBw :2006/03/06(月) 20:24:06 ID:o/o+Yxwa

そうしてぼんやりと一時間ほど幾つかの本をめくっていた時、私は意味の判らない単語に行き当たった。
判らなくてもなんとなく文脈はつかめるものの、気になるような単語。
ゆっくりと立ち上がり、膝掛けを椅子の背もたれにかけて辞書のある棚へと歩く。

そして急に思い出した。
ある日私があの人にキスをした時。
あの人はここの辞書の箱からブランデーの壜を取り出していた。

慌ててひっくり返すように手に取った辞書を確かめる。
百科事典の棚じゃない。国語辞典、会話辞典、違う。そう。その向こうの棚。その辞典。
351 ◆/pDb2FqpBw :2006/03/06(月) 20:24:44 ID:o/o+Yxwa

これだ。辞書の中身は何処へやったのだろう。
手に取った古ぼけた辞書のカバーの中には小さい壜が入っていた。
私が半分紅茶に混ぜたから、半分しか残っていない。
大事な物らしかったけれど、あの人は持っていってはいなかった。

思い出して、くすくすと笑いながら私は壜を手に取った。
あの時、あの人は目を丸くしていた。
あの人は鈍いから気づいてくれなかったから。
そう、全く気づいていなかったような顔をして分別たらしくこの辞書からブランデーの壜を取り出したのだった。

辞書の事などすっかり忘れて椅子へと戻る。
あの人の小さな壜の中で、琥珀色の液体が揺れている。
あの人のブランデーをもう一度、少しだけ口にしてみようと思った。
あの時のように倒れない位に少しだけ。
蓋をきゅいきゅいと開けると、アルコール特有の匂いと、
果実のような甘い香りが混じったような匂いが部屋へと広がる。
352 ◆/pDb2FqpBw :2006/03/06(月) 20:25:27 ID:o/o+Yxwa

私はゆっくりと丸く開いた壜の口に唇を寄せた。
目を閉じて、あの人の事を思い出して、壜の口を舐めた。
そして壜を傾け目に写る琥珀色の液体が喉に流し込む。

その液体が流れ込んだ瞬間、まるでそれが火のように感じられて私は慌てて口を離した。
吐き出さないように慌てて飲み下す。
物凄く刺激が強い。気が遠ざかりそうになって、
私はへたり込みながら慌てて椅子から滑り落ちないように背もたれに捕まる。
カッカと胸が火照るように感じられ、慌てて両手で胸を抑える。
濡れた唇を舌でぺろりと舐めた。

「不味い・・・」
何であの人は、こんな物を大事に持っていたのだろうか。
どう考えてもあまり美味しい物ではない。
353 ◆/pDb2FqpBw :2006/03/06(月) 20:26:04 ID:o/o+Yxwa

それでも壜の中に1/4程残った液体を眺めて、もう一度口をつけた。
悪戯をしても叱ってくれる人はもういないから。
「・・・なにが宇宙よ。そこにいた癖に。」
なんだか気分がよくなって、あの人がいつも座っていた椅子に向かって壜の蓋を投げる。
でも私の非力な力では椅子までは届かない。壜の蓋は分厚い絨毯に音もなく転がる。

もう一度壜を呷った。喉が焼け付くように痛む。
こんなもの、もういらないのだ。全部飲んでしまえばいい。
もう一度壜を傾ける。
「私は宇宙にはいけないわ。でもあなたはそこにいたじゃない。」

いつのまにか私は椅子の上にしゃがみこみ、子供のように膝を丸めてながら喋っていた。
子供と違うのは酒壜を抱えこんでいる事くらい。
354 ◆/pDb2FqpBw :2006/03/06(月) 20:27:32 ID:o/o+Yxwa

「星の彼方になんかいないくせに、私が困ったら直ぐに来られる所にいたくせに。
遠くに行きたいのなら、例え星の彼方でも私をさらって行ってくれれば良かったのに。」

壜の残りはあと少しになっていた。
そういえば小間使いの女の子が言っていた。お酒を飲むと泣いたり怒ったり、そういう風になるんだって。
今の私のがそうなのだろうか。
お酒を飲んだらこんなに悲しくて悲しくて、胸が潰れそうな気持ちに皆なるのだろうか。
あの人は毎週毎週お酒を飲んで、こんなに悲しくて胸が潰れそうな気持ちになっていたのだろうか。

そんな事を考えていたら、いつの間にか涙が毀れて滴り落ちた涙が壜の中へと入った。
抑えようとして、抑え切れないことを感じて私は下を向いた。
一人になってから今まで泣かずにいたのに、私は悲しくて悲しくて涙を止める事ができない。
喘ぐように酸素を求めて呼吸をし、落ち着くとまた止め処もなく涙が毀れた。

悪い事をしたら叱ってくれて、いつも隣にいてくれて、一緒に星を見て。
もしこの琥珀色の壜の中が涙で満たされたら、あの人は帰ってきてくれるだろうか。
なんてとりとめもない事を考えて、私は頭を振る。
355 ◆/pDb2FqpBw :2006/03/06(月) 20:28:14 ID:o/o+Yxwa

考えなきゃいけない事は沢山あって。
私にも父の云う言葉の意味くらい判る。
あの人の言葉の意味も。
あの人は私に相応しくないと父やあの人は言う。
でもあの人が相応しくないだけじゃない。
私だってきっとあの人には相応しくなんかない。
だって私には毎週、こんなに悲しくて胸が潰れそうな気持ちになってお酒を飲む事はできそうにないから。

父のいうこともあの人のいう事も判るけれど、全然判らなかった。
きっとこの気持ちよりも大事な事が世の中には沢山あるっていうこと。そうなんだろう。
無理をしたって良い事なんか一つもない。そんな話だ。
時間を掛けて、あの人の事を忘れてそして相応しい人を好きになる方がきっと良いのだって。

「でも、そんなものは嫌よ。」
泣きはらした私の声は、空ろに響いた。
こんなにわんわんと泣いたのは、いつ以来だろうか。
汚い言葉を使うと怒られるけれど。
356 ◆/pDb2FqpBw :2006/03/06(月) 20:28:51 ID:o/o+Yxwa

「だってそうじゃない。私は紅茶が好きだわ。飲んじゃ駄目っていわれたって、忘れられるはずなんてないもの。」
又ブランデーを呷る。

そう、泣いている暇があるのなら、私は迎えに行かなくちゃ。
学園に行く以外、あの人と一緒でないかぎり一人で出た事など無い屋敷の外へいこう。
何処にいるか判らないけれどきっと探し出してみせよう。
17光年の遠くに行くのなら、早く行かなくちゃ間に合わない。

お尻を押してくれる人はいないけれど、私にあの塀が登れるだろうか。
隣を歩いてくれる人はいないけれど、一人で街を歩けるだろうか。
あの人を見つけて、連れて帰ることが出来るだろうか。

きっとできる。あの人はきっとまだ星の彼方にまでは行ってはいないから。
357 ◆/pDb2FqpBw :2006/03/06(月) 20:29:42 ID:o/o+Yxwa

あの人の気持ちを知りたいのだ。そして言おう。
星の彼方に17年をかけて行く事はとても難しいかもしれないけれど。
でも両方から出発すれば8年で会えるかもしれないって。
もし良かったら、嫌じゃなかったら早く会えるようにあの人にも一緒に手を伸ばしてもらって。
いや、8年だなんて。
もっと速く。光の速さよりも速く。
私は、私のこの胸に残る思いをもっと速く届けたい。ちゃんと伝えたい。
あの人に今すぐ会って、そして頭を撫でてもらいたい。手も繋いで欲しい。

イギリスにでも星の彼方にでも何処にでも一緒に行くから。
358 ◆/pDb2FqpBw :2006/03/06(月) 20:31:31 ID:o/o+Yxwa

私があの人に相応しくなればいい。あの人が私に相応しくなればいい。
2人で手を伸ばせば、きっと8年も掛からない。
紅茶とブランデーを半分ずつ混ぜた物はとても飲めたものではなかったけれど、でも私は飲んだもの。
手元の壜を眺める。

「紅茶を入れてくるわ。」
半分ほどあったブランデーの残りはもうちょっと。私は酔っているのかもしれない。
もう一度飲んで、涙を拭いてそして落ち着いたら支度をして出かけよう。
私のこの心を忘れないように。この気持ちを捨てないように。
あの人の胸に飛び込んで、
あなたがいなくてとても悲しいから一緒にいて私の胸が張り裂けないように見張っていて欲しいのだと、
そう伝えよう。
359 ◆/pDb2FqpBw :2006/03/06(月) 20:36:08 ID:o/o+Yxwa


--------------
感想ありがとうございます。


次回最終話。
少し時間が掛かるかもしれませんが。

では。
ノシ
360名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 20:58:53 ID:FGvCJGFV
相変わらず素晴らしいです。がんばれお嬢さん。
361名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 21:28:45 ID:Sn7XQ5wl
ついにクライマックス、ハッピーでもバットエンドでも応援するぞ。
362名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 22:52:50 ID:mOUu2Hxb
読んで心が暖かくなりました、頑張れお嬢様
363名無しさん@ピンキー:2006/03/06(月) 23:45:10 ID:ltSGTU3B
ムチャクチャお嬢様の旅が不安ですがな。
つか今までGJGJ言ってきたけど今回は神と言わせてもらう。素晴らしかよほんと…

最終話、裸で正座しながら待ってます。
364名無しさん@ピンキー:2006/03/07(火) 10:47:14 ID:vMqaZWmq
オトコの逃げ口上とオンナの追撃描写
365名無しさん@ピンキー:2006/03/07(火) 10:50:06 ID:vMqaZWmq
364です・・・・途中で書き込んでしまった・・・・

オトコの逃げ口上とオンナの追撃描写がもうGJとしか。
366名無しさん@ピンキー:2006/03/08(水) 15:46:48 ID:+czb01qw
エロ入れなくてもいいから楽しみにしてる。
神だ。あなたは。
367名無しさん@ピンキー:2006/03/13(月) 20:37:49 ID:aPOUEj3z
浮上
368名無しさん@ピンキー:2006/03/15(水) 06:27:17 ID:vubdxEd6
保守
369名無しさん@ピンキー:2006/03/18(土) 01:20:54 ID:PsMf4j9j
淡々としていながらも心にスッとしみこんでくるような文章と、
巧みなセリフ回しにただただ圧巻。
最終話が待ち遠しくて仕方がないよ。
ああ、
このスレに来てみて本当に良かった…!
370名無しさん@ピンキー:2006/03/25(土) 15:49:57 ID:+/m2UMGw
ほっしゅ
371名無しさん@ピンキー:2006/03/30(木) 02:33:01 ID:wK+2GVE8
ほしゅ
372名無しさん@ピンキー:2006/04/03(月) 00:10:41 ID:2KaN4uRT
ほしゅ
373名無しさん@ピンキー:2006/04/04(火) 22:40:43 ID:KFPGdtJ5
hoshu age
374名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 00:19:50 ID:IJK4tHNK
ここって和モノの需要はアリマスカ?


とりあえず期待あげ。
375名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 00:25:48 ID:IJK4tHNK
ちっ!あがってねぇ!!
376名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 00:27:31 ID:r1ZWcBFD
>>374
むしろ和姦マンセー
377名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 01:10:45 ID:22pXLy3Y
>>374
憶えておいてくれ。 俺は着物萌えだ。
378名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 05:11:24 ID:7HD/EvUa
んじゃー、中華モノは?
379名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 07:05:55 ID:Pg5LOz7r
>>378
和洋中なんでもおk
380鳴海屋:2006/04/09(日) 21:31:59 ID:AZ4FvM6e
初投下させて頂きます。

一応キャラ紹介をば。


エリス・カティーヌ
(17歳♀)
大富豪カティーヌ家の娘。
兄が一人居る。シグリアは婚約者。しかしシグリアの人柄にあまり好感を持てないでいる。


ラルウ・M・シザーランス(14歳♂)

代々カティーヌ家に仕えているシザーランス家の息子。兄二人も共にカティーヌ家で働いている。エリスの専属従者。
エリスには恋心を抱いていて、シグリアを目の敵にしている。


シグリア・ルスティーヌ(21歳♂)

エリスの婚約者。双方の両親同士が仲睦まじいという事で婚約。
エリスをとても気に入っている。ラルウがエリスに恋心を抱いている事は知らない。シリアーナ家の長男。


一応、主なキャラはこんな感じでストーリー的には悲恋混じりの‥で書こうと思ってます。


どうでしょうか?
381名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 22:18:33 ID:NiuINlpl
誘い受けの小出しウザイ
382名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 23:13:26 ID:SRzEXwPU
期待。マジ期待。
383名無しさん@ピンキー:2006/04/09(日) 23:49:35 ID:keQkZpbn
とりあえず載せてみてくれよ。
じゃないと何も胃炎。
384名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 04:22:02 ID:y0/mBKeU
流れを読まずに教育係モノに挑戦。

前置きが激しく長くなりそうな事を前述しておきます。
あと爵位云々とか知識のないまま書いてるので
おかしい所はファンタジーという事でひとつ。
385プレアムブルム-1:2006/04/11(火) 04:23:38 ID:y0/mBKeU
ここはやはり最高の場所だ。
暖かい木漏れ日に包まれながらリンデンバウムの若い葉と樹皮の香りを
胸いっぱいに吸い込めば、そのあまりの幸福感に意識を奪われそうになる。
それに眺めも極上だ。新緑と花に覆われた美しい庭は勿論、
丘陵に広がる草原が一望できる。
景色を眺めるだけなら屋敷のテラスからでも構わないのだが、
風が葉を撫でる音や大樹の肌の感触、鼻をくすぐるこの青い匂いはここでしか味わえない。

それに。庭に接した回廊を走る影だって、一目で認められる。
緑とパステルカラーに包まれた世界にそこだけぽつりと浮かぶ黒。
こちらに気付いた様子のそれは、眩しい陽光を手で遮りながら、こちらへずんずん近付いてくる。
ほとんど樹の真下まで歩み寄ったそれ――貴族風の男は、樹を見上げて呆れたように言った。

「お嬢様! ここにいらしたのですか」
「あなたも上ってみたら? すっごく気持ち良いわよ」

少女は樹の上から男を見下ろしながら、くすくすと笑った。

「木登りは卒業されたのではなかったのですか。もう子供ではないからと仰って」
「だって、リンデンバウムがあまりに気持ち良さそうにそよぐんですもの。勿体無いわ」

何が勿体無いのか。男は溜息をついた。
15になる伯爵令嬢が、ドレス姿のまま――枝に引っ掛かるのを考慮してか装飾の少ない
デザインではあるが、そこは問題ではない――大樹の枝に座っている絵は、かなり異様だ。

「とにかくテオドール様に見つからないうちに降りてきてください」
「今日、お父様はお兄様と一緒に遠駆けでしょう。聞いているわ、脅しても無駄よ。
ノイフォルストまでならきっと夕暮れまで帰らないわね」
「……」
「――でも、そうね…わかったわ」

少女は諦めた様子で頷くと、腰を上げた。枝から足を滑らせやしないかとはらはらした
男に、少女は笑顔で言った。だが、その表情はどこか陰っていた。

「あなたのレッスンを受けられるのもあと少しだものね。貴重な時間が潰れるのは嫌だわ」
386プレアムブルム-2:2006/04/11(火) 04:25:37 ID:y0/mBKeU
◇◇◇

時は今から5年前に遡る。

グラスドルフ伯テオドールは、妻アマリアとの間に、長男トーマスと
7つ離れた長女アルマをもうけていた。
生来体の弱かったアマリアは、アルマを出産後間もなく病を患い他界した。
だが伯爵は後妻を取ろうとはせず、成長と共に妻の面影を表してきた娘を
溺愛するようになっていった。
古くからの友人であったハイゼンベルク男爵の長女とトーマスの婚約が決まり、
後はアルマの幸せを願うのみとなったテオドール。
アルマが10歳を迎えた頃、テオドールはクヴェレ伯爵とその次男を私邸に招いた。
社交界でテオドールと話しアルマに興味を持った、クヴェレ伯爵の希望だった。
アルマを次男の婚約者候補にしたいというのだ。
クヴェレ伯と言えばこの辺りでは言わずと知れた大地主で、同じ伯爵位でも
僻村の領主であるグラスドルフ伯にとっては願ってもない話だった。
クヴェレ伯の次男も12歳とまだ若かったが、良縁を結ぶのは早いに越した事はない。

幸いにして、アルマはクヴェレ伯爵のお眼鏡に叶った。

「いやはや、想像以上にお美しいご令嬢ですな。ヴァイオリンも素晴らしかった。
いっそ私の妻として迎えたいくらいだ」

クヴェレ伯爵はやや膨らんだ腹を揺らして、はっはっはと笑った。
こちらは40代半ばという年の割に引き締まった体のテオドールが、
白茶の口髭を触りながらそれに応じる。

「はは、光栄でございます。伯のご令息こそ、この若さで既に武芸の才能が
開花しておられるとか。ご立派な事です」

アルマはドレスの端を抓んでお辞儀をすると、披露したヴァイオリンを下女に渡し、
再び席に着いた。
中年同士の会話を聞き流しながら、昼下がりの庭を切り取る窓をぼんやりと見つめて思う。
(――早く終わらないかな)
387プレアムブルム-3:2006/04/11(火) 04:26:23 ID:y0/mBKeU
アルマは確かに良くできた娘に見えるだろう。幼少時から躾られてきた甲斐があって、
社交界での立ち居振舞いは既に一人前の女性だ。勉学も人並み以上にこなし、
更に音楽の才能すら見られる。母親の遺伝子を色濃く受け継いだ容姿も美しい。
肩のあたりでふわりと波打つハニーブロンドと、長い睫毛に縁取られた碧の瞳が目を引く。
クヴェレ伯爵もすっかりアルマを気に入った様子だ。
しかし今の顔は父の為を思っての演技であり、普段のアルマはこんな淑女ではない。
そこはまだ十になったばかりの少女。年齢故の奔放さは抑えきるものではないのだ。

(こんなに良いお天気なのに。ヴァイスと駆けたら、どんなに気持ちいいかしら)
床に届かない足をテーブルの下でぶらぶらと遊ばせながら、アルマは外の風に思い巡らせた。
ヴァイスとは、アルマの愛馬の名である。アルマは乗馬が好きだ。
景色を愛でながらのんびりと歩くのもいいし、走らせて風を感じるのも気持ちいい。
こっそり家を脱け出すのは至難の業だが、身分を隠して下町を歩くのも楽しい。
何よりも大好きなのは木登りだ。曾祖母の代からあるらしい、庭の大きなリンデンバウム。
特に夏、白い花が咲いた頃に上ると、甘い香りに包まれてうっとりしてしまう。
はしたないと謗られてもこれだけはやめられない。

要するに、アルマは困ったお転婆娘なのである。
父の顔を立てる為、また父の思いに応える為とはいえ、こういう場はやはり息苦しい。
外の空気に焦がれるあまり溜息をついたアルマは、ふと自分を刺す視線に気付いた。

顔を向けた視線の先、アルマの向かいの席には、プラチナブロンドの少年がいた。
耳の上あたりで綺麗に切り揃えた髪と切れ長の目がどこか冷たい印象の、
クヴェレ伯爵の次男、ヨハンである。
それがあまりに無遠慮な見方だったので、アルマはすぐに視線を外した。
(…何をそんなにじろじろ見てるのかしら。無表情で怖いわ)
アルマはその不快感を表情には出さず、胸の内だけで呟いた。

「――してアルマ令嬢、先刻ここまで案内頂く際にフォルテピアノがある部屋を拝観したが、
そちらも嗜んでおられるのかな?」
388プレアムブルム-4:2006/04/11(火) 04:27:48 ID:y0/mBKeU
クヴェレ伯の問いにはっと顔を上げたアルマは、一瞬戸惑ってから《いいえ》とだけ返答した。
口をつぐんでしまった娘の代わりにと、テオドールが続けた。

「あのピアノは家内が使っていたものでしてね。
あれが逝ってからはただ眠っておるのです。娘は鍵盤よりも弦を好んでいるようで」

アルマが戸惑った理由は、つまりそういうことだ。
アルマの亡き母アマリアはピアノが趣味だった。彼女はアルマが2つに満たないうちに臥せり
他界してしまったが、アルマの記憶の中にはフォルテピアノの切ない調べが残っていた。
4歳頃まではアルマもそのピアノで遊んでいたのだが、ある時その姿を見た父が
陰で涙を流しているのを見てしまってから、アルマはピアノに触れるのをやめてしまった。
その時はただ、これを弾くと父が泣いてしまうようだからやめよう、と思っただけだった。
だが物心も付いた今はわかっている。父は娘に母の影を見て泣いていたのだ。
そんな父が惨めで、気の毒で。アルマは二度とピアノを弾かないと誓っていた。

クヴェレ伯が、白い顎鬚を撫でながら言った。

「奏者を雇ったりはしないのかね?」
「ええ…」
「ふむ、しかし勿体無いものだな。私は音楽に明るい方ではないが、
一目見ただけでもあれが名品であることくらいはわかる。
…うむ、伯爵。少しあれを拝借してもよろしいですかな?」
「は? ええ、構いませんが…もしやヨハン様に鍵盤のお心得がおありで?」
「いえ、これは私に似てその方面はからきしで。
だが他に良い弾き手がおるのです…おい、ロベルトを呼べ!」

クヴェレ伯は自分の従者にそう命じた。

ほどなくして、広間の扉から慌ただしくひとりの青年が現れた。

「お呼びでしょうか、伯爵」

青年は優雅に一礼をして、顔を上げた。
細身の長身。フロックコートにクラヴァット、と貴族然とした装いだが、
顔の造作自体は平凡な男だ。細面に黒いフルリムの長方形眼鏡が目立っている。
389プレアムブルム-5:2006/04/11(火) 04:30:09 ID:y0/mBKeU
「ご紹介しましょう。これは倅の教育係、ロベルト・フォルスターです。
勉学のほかに鍵盤楽器の素養がありましてな、無名ながら、腕は中々のものです。
以前、これに弾かせる為だけにチェンバロを一台手に入れたのですよ」

主人の紹介を受けて、ロベルトと呼ばれた青年は改めて丁寧に礼をした。
緩い癖のある褐色の髪が揺れる。
ふとアルマとロベルトの視線が交わった。先程の会話で気分を害していたアルマだったが、
ロベルトがにこりと微笑んだので、なんとかつられて営業スマイルを返すことができた。
ロベルトとは別の場所からも鋭い視線が注がれていたが、彼女がそれに気付く事はなかった。
この後に予想される展開を憂慮していたからだ。

「歓談の間、これに演奏して貰うというのはどうかね、グラスドルフ伯?」
「おお、それは名案ですな! それではアフタヌーン・ティーはあちらの部屋で。
ピアノの音色と共に語らうといたしましょう…よし、急いで準備しろ!」

テオドールが手を叩いて下女に指示をした。
大人たちが《楽しみですな》などと軽口を叩く中、アルマは内心父の行為に憤慨していた。

あのピアノに誰も触れなくなった今も父は、下女に毎日手入れするように命じている。
お陰でその木目が曇る事はないし、月に一度調律師が訪れるので音程も完璧なままだ。
弾き手がいないのだからいくら磨いても無意味じゃないか、とアルマは馬鹿馬鹿しく思うのだが、
それは父の、母を想い悼む気持ちの表れなのだろう。
まるでピアノを母に見立てたような寵愛。
――そういえば父は母が逝った後、仕事に感けてあまり労わってやれなかったことを
悔やんでいた。
彼女の遺品を当時の姿のまま保ち続けることで、自己満足の贖いとしているのだと思う。

しかしそれがどうだ。大切なはずのそのピアノを、軽々しく他人に触らせようとは!
アルマは父の気持ちがわからなくなり、思わず愛らしい顔を顰めた。
390プレアムブルム-6:2006/04/11(火) 04:31:57 ID:y0/mBKeU
◆◆◆

「邪魔にならないような曲を頼むぞ」
「畏まりました」

南の庭に面したその部屋はフォルテピアノの他に譜面を収納する棚しかないはずだったが、
今はピアノがやや窓際に寄せられ、空いたスペースに豪奢な椅子とテーブルが並べられていた。
がらんとした状態を見慣れているせいか、アルマは少し窮屈に感じた。
マホガニーの木できたフォルテピアノが、午後の日光を浴びて艶めいている。
主人に促されたロベルトはフォルテピアノに向かい、残りの4人はそれぞれ椅子に座った。
テーブルの上には蜂蜜の香りがするレープクーヘンとハーブティーが並んでいる。
先程からの下らない会話の続きをするのかと思ったが、まずはロベルトの演奏に
集中する様子だった。アルマは胸がむかむかしていたので、ハーブティーを流し込んだ。
ロベルトの方を見ると、何のつもりか、フォルテピアノのボディを撫でている。
ペットを愛玩するような手つきだ。こちらには背中を向けているが、おそらく表情もその行為に
相応しいものだろう。母親のピアノに馴れ馴れしく触れる青年にアルマは首を傾げたものの、
その奇行によってなぜか不快感が和らいでいることに気付いた。

やがて少し緊張した面持ちでピアノの椅子に掛けたロベルトは、音を確認するように
人差し指でAの音を鳴らした。弦楽器よりも少し柔らかく、しかし透明に通る音が
静かな部屋に響いた。
ピアノを叩く音くらい調律師が来るたびに嫌でも耳にしているが、それとは明らかに違う
音の色に、アルマは細い肩を震わせた。
アルマの前に座るヨハンは無表情のまま、その隣のクヴェレ伯は胸のあたりで腕を組み、
更にその向かい、アルマの隣のテオドールは膝の上で手を組んで、ロベルトを見ている。
音色と鍵盤の感触を確認して頷いたロベルトは、しばらく手を組んで手首を回したり
首を左右に倒したりと(こきっと関節の音が鳴った)準備運動らしきものをしていたが、
ふう、と一息をついて、漸く両手を鍵盤に乗せた。
391名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 05:22:06 ID:nVFoEXW6
えーとここまでかな?

GJ!いいふいんき(ryですね。
続きをwktkして待ちます
392名無しさん@ピンキー:2006/04/11(火) 22:57:39 ID:fcUvmnCj
長くなりそうだ。
結構期待。
393名無しさん@ピンキー:2006/04/12(水) 00:34:31 ID:xdZ77NHB
GJ!!とても良い趣味の文章だと思う。筋運びの手際も良い。続き待ちますです。
394384:2006/04/14(金) 01:50:51 ID:FNiGy08f
レスどうもです!
>>385-390の続き投下します。
まだ非エロ・未完かつ少女漫画っぽさに拍車がかかっていますが
お許しください。
395プレアムブルム-7:2006/04/14(金) 01:52:11 ID:FNiGy08f
ロベルトが小さく吸った息を吐くと同時に、フォルテピアノが歌い始めた。

しののめの雨ような、哀愁漂う幕開けだった。しかしその憂いは巧みな転調と共に晴らされる。
トリルやオクターブの跳躍を散りばめた旋律はさながら朝日に歓ぶ小鳥のさえずりのようで、
その伸びやかな音色にアルマはぞくぞくと背筋を震わせた。
派手な盛り上がりはないが、その分繊細な音運びに思わず溜息を漏らしてしまう。
ピアノとはこれほどまでに魅惑的な楽器だっただろうか?
いや、これはきっと彼の才能によるものだ―――穏やかな表情で、幸せそうに演奏する
ロベルトの姿をぼんやりと見つめながら、アルマは思った。
やがて眠りにつくかのような静けさを纏い、その幕は閉じた。

「いやはや、素晴らしい演奏だった!」

テオドールが大袈裟な拍手をした。夢現つ状態のアルマもそれに合わせる。
クヴェレ伯もうん、と頷きながら軽く手を鳴らしたが、ヨハンだけはハーブティーに口をつけていた。
ロベルトは席を立ち、笑顔で一礼をした。

「礼を言う、フォルスター殿。貴殿に目覚めさせて貰って、さぞピアノも喜んでおる事だろう…
…私も、嬉しいよ」

そう話す父の目が、日光を受けてきらりと光ったのをアルマは見た。
自分があれを弾く姿を見た時と同じで、母を思い出して涙を浮かべているのかと思った。
だがその表情は演技ではない晴れやかさに満ちていて、アルマは困惑した。
396プレアムブルム-8:2006/04/14(金) 01:53:12 ID:FNiGy08f
◆◆◆

ロベルトの好演の中で行われた茶話会は、アルマとヨハンの直接の会話がほとんど
交わされぬままに幕を閉じた。
しかし今後もこの縁は続いていくらしく、当人の気持ちはともかく婚約は近々成立するようだ。
傾きかけた太陽の中を帰って行く伯爵の馬車を見送りながら、アルマは隣の父に訊ねた。

「あの、お父様…お父様は、お母様のピアノをあの方に弾かれて、本当に嬉しかったの?」

テオドールは愛娘に優しく微笑みかけて言った。

「勿論、他人に触れさせるのに躊躇しなかったわけではない。
だが伯爵のご提案を退けるわけにもいかぬだろう?
しかし実際に彼の演奏を聴いて、嬉しかったのは事実だよ。
…フォルスター殿のピアノは、あれの音色によく似ておった」

アルマの顔を通り過ぎて遠くを見るような父の目が、アルマの胸を締め付けた。
やはり父は、あのピアノによって母に縛り付けられている。
テオドールは腰のあたりにある、自分を見上げる小さな頭を撫でた。

「それを抜きにしても、あのピアノを誰かに弾いてもらう方がアマリアも本望だろうしな。
近いうちに奏者を雇うとするか。本当なら、お前が弾いてくれるのが私としても一番嬉しいのだが」
「じゃあ、あの、あの時、泣いていた理由も…」
「あの時?」
「私がピアノを触っていた時よ。もっと小さい頃」
「――ああ。知っていたのか? あの時、私が――」
「嬉し涙だったのね?」
「まさか!
あの時のお前ときたら、鍵盤を力任せに叩くわ、貴重な楽譜に落書きするわ、挙げ句に分解
しようとするわ…アマリアの遺品を壊さんばかりに扱いおって。涙が出ないわけがないだろう。
お前が興味をなくした時、どれだけほっとしたことか」
397プレアムブルム-9:2006/04/14(金) 01:53:57 ID:FNiGy08f
がん、とアルマは脳天にショックを受けた。
そんな記憶は無い―――わけではない。ただ、母の真似をしてフォルテシモを弾いてみたり、
五線譜に指示を書き加えたり、あとはピアノの構造に興味を持ってあちこち触っただけだ。
それだけ、と自分では記憶していたのだが。3つや4つの、やんちゃ盛りの幼児の行動が
まともであるとは考えにくい。おそらくは父の証言が正しいのだろう。
アルマは恥ずかしさと申し訳なさで頬を染めて俯いた。
が、ふと思いついたように顔を上げた。

「今の私はもうそんな事しないわ。あの頃よりずっと大人だもの。だから、その、
私もあのピアノを弾いてもいいわよね? お父様」
「……アルマ? 気を使うことはないんだぞ。お前はヴァイオリンの方が好きなんだろう」
「違うわ、気なんか使ってない。私は本当はずっとピアノが弾きたかったの。
ううん、気付いたのは今日あのお方の演奏を聴いてからなのだけど…いけないかしら?」

アルマの顔は硬い布の感触に押し潰された。テオドールがアルマを強く抱き締めたのだ。
それがあまりに容赦なく、アルマは身をよじった。

「お、お父様苦しい」
「アルマ…アルマ、私は嬉しいぞ! お前は物心がついてから、女々しい私を嫌って
ピアノも避けていたのだとばかり思っていたが」
「ええと、ということは弾いてもいいのね?」
「ああ、勿論だとも! 早速今日のうちにでも講師の手配をしよう。
そういえばハイゼンベルク男爵の知人に良いチェンバロ弾きがいると聞いて」
「それはダメよお父様」

ようやく父親の腕から逃れたアルマは、はしゃぐテオドールを見上げてぴしゃりと言った。

「私はあのお方がいいの。あのお方じゃないとダメなの」
「あのお方…フォルスター殿のことか?
うむ、気持ちはわかるがしかしアルマ、あれはヨハン様の」
「わかってるわ。今ならまだ間に合うわね。掛け合ってみましょう」

アルマの本性――もとい、本領発揮である。
娘の心理と行動が読めず唖然と立ち尽くすテオドールを置いて、
アルマは厩舎へと一目散に駆けて行く。

「ヴァイス! 行くわよ!!」
398プレアムブルム-10:2006/04/14(金) 01:55:07 ID:FNiGy08f
◇◇◇

「――どうされました、アルマ様?」

通し演奏の途中で手を止めてしまった生徒に歩み寄って、ロベルトは言った。

「…あ、ごめんなさい」
「ご気分が悪いのであれば、少しご休憩されては」
「違うの。五年前のことを思い出していたの。あなたと初めて会った日のことよ」

五年前のあの日。アルマはヴァイスを駆け、クヴェレ伯爵の馬車を追いかけた。
馬車の前に立ちふさがった、馬に跨る令嬢を見て、伯爵をはじめとする3人は呆然とした。
更にそのお転婆な令嬢がロベルトをピアノ講師として寄越せと要求したのだから、
呆れるなという方が無理だろう。当然ながら難色を示すクヴェレ伯爵の代わりに、
意外にも、寡黙だと思っていたヨハンが口を出した。
要求を呑む代わりに、自分との婚約を決めろというのだ。猶予期間は五年。
アルマが15になったら自分と結婚する。それ以降はロベルトはクヴェレ伯爵家に戻り、
アルマの希望があれば、レッスンも続けられるというものだった。
そして、アルマはそれを受け入れた。
元々この縁談は父の望みで、アルマも逆らわないつもりだったからだ。
アルマのこの行動にショックを受けたクヴェレ伯爵がヨハンと少し揉めていたが、
結局渋々承諾したようだった。
そしてロベルトは流されるままグラスドルフ伯爵家に移り――今に至る。

「ああ。あれはなかなかに衝撃的でした」
「もう、笑わないで。私は真剣だったんだから」

真剣だったのは本当だが、やはりはしたな過ぎたかと今になってアルマは思う。
先日15歳の誕生日を迎えたアルマは、今や実に美しい女性に成長していた。
艶やかな金髪は胸を覆うまでになり、小柄ながら手足はすらっと長く伸びている。
目鼻立ちも華やかな、紛う事なき美少女である。
それに伴い、昔のような破廉恥とも言える行動には比較的、ブレーキがかかってきている。
その分爆発する事も、ままあるけれども。
399プレアムブルム-11:2006/04/14(金) 01:56:28 ID:FNiGy08f
「でも、あの…そういえばロベルトの意見を聞かないまま連れて来てしまって。
本当に今更なのだけど、もしかして…嫌だったかしら」

アルマはもじもじと上目遣いで訊ねた。
思春期ゆえだろうか、最近の彼女は普段周囲のお咎めを耳に入れずはしゃいでいるくせに、
時折、思い出すかのようにこうして恥じらう様子を見せる。
そのギャップがひどく可愛らしく、周囲の男性――主に父親だが――の動悸を
招いているのだが、本人に自覚はないらしい。
そんな無邪気な攻撃を受けつつも、ロベルトは普段通りの笑顔で答えた。

「気になさる事ではありませんよ。私は主のご意志に従うだけですから」
「違うのよ。私はあなたの気持ちが知りたいの。や、やっぱり、嫌だったの…」
「それはありません」

ロベルトがアルマを遮った。俯きかけていたアルマははっと顔を上げた。

「正直に申しますと最初はただ驚きました。あまりに唐突だったもので。
でも、アルマ様の情熱はとても嬉しかった。あれほどストレートにピアノを
誉めていただいたのは、初めてでしたから」

アルマは、自分があの時何を口走ったのか覚えていない。
はにかむようなロベルトの笑顔を見て、もしや一歩間違えれば
愛の告白のようだったのではないかと思い出し、アルマはかっと頬を熱くした。
それに、彼のピアノに惚れこんで屋敷に連れ込んだのは事実だが、
五年間共に過ごした今―――正直、それだけではなくなっている。
400プレアムブルム-12:2006/04/14(金) 01:57:23 ID:FNiGy08f
斜め上にあるロベルトの顔を見つめながら、アルマは胸がもやもやするのを感じた。

勿論ロベルトをピアノ講師に迎えたのは純粋に彼のピアノに惚れこんでしまったからで、
当時のアルマにそれ以上の理由などなかった。10歳の子供が一回り以上も年上の男に
妙な感情を抱く事はまずありえない。
恋愛を知らなかったから、父に薦められるままヨハンと婚約するのも受け入れられた。
父が喜ぶならそれでいいと思っていたのだ。
だが、この五年間で、アルマは成長した。外見だけでなく中身もだ。

ピアノ講師としてだけではなく、普段の話し相手や散歩のお供など、
アルマは可能な限りロベルトと一緒に過ごしてきた。父は最近留守がちだし、
結婚してから兄と話をする時間も減った。兄嫁と話したくても、《お前と二人にさせたら
リリーに悪い影響が出る》と兄に抑止されている。酷い話だ。まあこれは、兄が兄嫁を
愛するがゆえの言動なのだろうとアルマは理解しているが。
とにかく、欠けた家族の代わりにでもするかのように、アルマはロベルトを連れ回した。

きっかけがいつ、どうしてだったかは覚えていない。だがそんな日々を過ごすうちに、
いつの間にか、アルマはロベルトを男性として強く意識するようになっていた。
指導中、自分とは違うごつごつとした指に気付いて胸が高鳴ったり、
その指で自分の手に触れられて、顔を熱くしたり。
彼がピアノを演奏する時に滲み出る色っぽさに気付いたときはもう、たまらなかった。
これが恋、と呼ばれるものなのだとアルマが気付いたのは、ごく最近の事。
そう、件の『五年間の約束』の期限――ヨハンとの婚礼の儀式が、迫ってきてからだった。

アルマの15歳の誕生日以降、着々とその準備が進められている。
儀式まではあと二週間。直前の一週間はアルマも準備に専念することなっているから、
ロベルトのこうしていられるのもあと一週間だ。
401プレアムブルム-13:2006/04/14(金) 01:58:30 ID:FNiGy08f
何度この気持ちを伝えようと思い、留まったことか。
喉まで出てきた言葉を、これは周囲の人を傷つけるだけだと言い聞かせて飲み込んで。
今も、とんでもない言葉がアルマの喉に引っ掛かっている。
《このまま結婚するなんて出来ない》
《あなたと一緒に逃げてしまいたい》
《あなたが好き―――》

ともすれば滑り出してしまいそうな言葉を、アルマはロベルトの顔を見つめて必死で飲み込んだ。

この言葉はこの人をも傷つけてしまう。ロベルトがアルマの気持ちに応えようが応えまいが、
その事実が明るみに出ればグラスドルフ伯爵家の名が落ちてしまうだけでなく、
婚約相手を誘惑したとして、きっとロベルトもクヴェレ伯爵家によって貶められてしまう。
アルマはそれが耐えられない。あの自由な風のような彼の音楽が失われてしまうのが怖い。
それにもし拒否されて、自分の前から去ってしまったら―――

「……アルマ様? やはり、今日はもう終わりにしましょう。顔色が優れませんよ」
「あ、だ、大丈夫よ! 続けましょう。もう一度最初から通せばいいかしら?」
「いいえ、無理をなさらないでください。大事なお体なんですから。
もし今倒れられでもしたら、私が叱られてしまいます」
「だから、平気よ。今日は暖かいから、ちょっと眠くなっちゃっただけ。
それにこの曲をお披露目するまであまり時間がないもの。頑張らなきゃ」
「大丈夫ですよ。アルマ様は呑み込みが早いので、私も助かっています」
「ふふ、ありがとう。なら、やっぱりちょっとだけ休んでもいいかしら?
その間、あなたの演奏を聴きたいの」
「畏まりました。では、こんな良い日和に相応しい曲をひとつ」

自分がヨハンと結婚しても彼はピアノを弾き続けられるし、
傍で聴き続けることもできるのだ、自分がこのはしたない感情を口にさえ出さなければ―――
鮮やかなピアノに耳を傾けながら、アルマは自分に言い聞かせた。
402384:2006/04/14(金) 01:59:30 ID:FNiGy08f
過去回想いらんかったかもしれませんね。次はエロに行きたい…

それはそうと、/pDb2FqpBw氏と鳴海屋氏の投下を心待ちにしております。
割り込んでしまってすみません。
403名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 02:08:11 ID:QMorOVII
GJ!! いつも思うことだが八方丸く収まればいいなぁと切に願ったりする。
404名無しさん@ピンキー:2006/04/14(金) 21:27:07 ID:q8jTLlLb
そういや21禁板だったなここ。
このスレいるとつい忘れがちだが。
405名無しさん@ピンキー:2006/04/15(土) 01:08:45 ID:H8TosTtz
GJ!!過去回想、いらんなんてことはないです。とても面白く書けていると思います。
ロベルト、父親、許婚、将来の舅、といった面々を幾つかの短い描写でうまく読者に印象付けているのも巧いと思いますです。
冗長に流れず、しかし書くべきことはきちんと押さえられているので、読んでいて気持ち良かったです。
406名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 12:27:44 ID:TOh3fGIs
初SS投下させていただきま!
現代のお嬢様と使用人。
407お嬢様と使用人○導入:2006/04/16(日) 12:28:54 ID:TOh3fGIs
 白河家は辺り一帯の大地主で、古くは領主として名を馳せ、宮家の血筋を継いでいるとも言われている。
 だが昨年当主の孝三郎が亡くなってからは、あれだけ人の声の絶えなかった大きな屋敷から、音が消えたようになってしまった。
 白河の後を継いだ孝三郎の長男が、ニューヨークを拠点に動く実業家であるからでもある。現当主とその妻は、古い因習に囚われたまま

のようなこの屋敷を嫌い、一年のほとんどを外国で過ごしていた。
 しんと静まり返る広い敷地で、厳しい門扉がそっと動いた。
 セーラー服姿の少女が、まっすぐな黒い髪を風になびかせながら、門の向こうへ歩いていく。続くのは長い石畳だった。
 ようやく古い木造の母屋へたどり着き、引き戸を開ける。長身の男が頭を下げたまま言った。
「おかえりなさいませ」
「ただいま」
 そこに存在するものが棚か何かでもあるように、少女は視線を向けずに靴を脱いだまま上がっていく。
 少女は現当主の一人娘で、名を桜子という。なるほど頬は薄く紅をはいたような桜色で、美しい容貌をしていた。
 だが醒めたような目は少女らしさよりも妖艶なおんなの色を湛えていて、体つきは既に成熟している。そんな桜子が紺色の制服と白いハ

イソックスに身をつつむ様は、一種のエロチックさを醸し出していた。

 桜子は部屋にあがって、今しがた玄関ですれ違った男のことを考えていた。
 雨宮という男。いつからこの家にいるのかもわからない。物心ついたときには白河家に仕えていた。
 いつも仮面を貼り付けたような無表情で、何を考えているのかわからない。この家には近所に住む家政婦を抜かせば桜子と雨宮だけしか

いないのに、数えるほどしか会話を交わしたことがない。
 だが桜子は気づいていた。学校で、街中で、よく男たちから向けられる視線と同じ温度を、たまに雨宮から感じることを。それを思うと

、彼女の自尊心は少し満たされる。私にかしずかない男などいないのだわ。
 少女の肉感的な唇は端を上げた。心の中に意地悪な衝動が集まりだす。
「雨宮!」
 桜子は声を上げて男を呼んだ。
408お嬢様と使用人○1:2006/04/16(日) 12:30:32 ID:TOh3fGIs
「お呼びでしょうか」
 少しも経たないうちに、桜子の部屋のドアの向こうから声がした。
「入って」
 失礼いたします、と声がして、ゆっくりとドアが開けられる。ついぞ招き入れられたことのなかった部屋におずおずと足を踏み入れる男は、しかし感情を見せることはなかった。
 桜子は椅子から立ち上がり、雨宮の正面に立ってその顔を眺める。年の頃は23、4くらい。まだ欲望の盛りであるはずなのに、自分に見つめられても妙に落ち着いた物腰が気に障る。
 手を伸ばして、男の手を掴むと、さすがに面を喰らったような顔になった。
 それに勢いをつけられ、桜子はそっと男の手を自分の胸元に這わせる。
「お、お嬢様……」
 引き下げられようとする手に力をこめ、逃さないようにする。桜子は雨宮の目をひたと睨みすえた。
「知っているのよ、雨宮。お前がいつも頭の中で私を犯していることを」
「何を……」
「だから私を気持ちよくさせなさい」
 呆気に取られて力を失った手を、桜子はセーラー服の上衣の下から滑り込ませた。肌にじかに触れるその手は、冷たくて骨ばっている。滑らかな柔肉に導かれて、びくっと雨宮が神経を張り詰めさせたのがわかる。
「できないの?」
 鼻で笑うような、挑戦的な態度。それは桜子の美貌を際立たせ、いっそうこ惑的に見せていた。
 雨宮はしばらく理性と闘っていたが、掴まれたままの手が下着の中まで導かれ、胸の頂点を感じると、膨れ上がった欲望に押しのけられるようにして陥落した。
409お嬢様と使用人○2:2006/04/16(日) 12:31:26 ID:TOh3fGIs
「ああん…」
 ぴちゃ、ぴちゃと水音が響き渡る。そのまま雨宮は桜子の細い躯にむしゃぶりつき、制服と下着を持ち上げてよく育った双丘をあらわにし、舌を這わせていた。
 桜子は立ったままで、雨宮はひさまずいている。その体勢のまま、執拗に胸を愛撫し続ける。
 舌で頂点を転がされ、口に含まれ、片方の胸は雨宮の大きな手に優しく揉まれたまま、人差し指で先の部分を擦られる。
「ん…あっ…」
 無愛想な使用人が落ちたという喜びと、ねっとりとした快楽に、桜子は興奮を抑え切れず、甘い声を出していた。
 雨宮は無言で、これも仕事だと言わんばかりの丁寧さで愛撫を続ける。先をすぼめた舌先で硬くなった頂点をつつき、唇で甘噛みをすると、今度は平らにした舌全体で胸を舐め上げる。
「あああっ」
 つぼを心得たような舌使いに、桜子はどんどん乱れていくのを感じた。
 足の力が入らない。休むことのない攻めに、腰までとろけそうになりながら、しかし桜子は不安を感じていた。
 ――この男は、本当は私のことを憎んでいるんじゃないかしら。
 黙って奉仕しているだけで、心のなかでは馬鹿にしているとしたら……
 目を閉じて快楽に没頭したい誘惑を振り切って、桜子は眼下にある雨宮の顔を見つめた。
 予想に反して、男は赤子のように恍惚とした表情を浮かべて、愛おしげに乳房に顔を寄せている。
 そのひたむきさは、桜子の胸を打つものがあった。彼女は再び快楽に体を委ねる。
「あ…はぁ…雨宮ぁ…」
 ぴちゃ、ぴちゃ。舐める音が返ってくるだけで返事は聞こえない。
「もっと…もっと気持ちいいこと…しなさい……」
410お嬢様と使用人○3:2006/04/16(日) 12:32:16 ID:TOh3fGIs
「はい、お嬢様」
 いつものように礼儀正しい返答がされたが、雨宮の普段暗い目は、熱に浮かされたような色を帯びていた。
 立ったままの桜子をベッドに座らせると、しゃがみ込んだ雨宮は、広げられた脚の間に指を這わせた。
「あ」
 スカートのなかで雨宮の細長い指が、柔肌の感触を確かめるようにゆっくり動く。ふとももの内側をなぞっていくのを、桜子はじれったく感じて身をよじった。
 やがて指は敏感な部分にたどり着く。下着の布越しでもわかるほどに、桜子のその部分は濡れていた。
「お嬢様…」
 はじめて雨宮が感情をあらわにした。スカートをまくりあげ、顔を近づけて指を動かす雨宮の声には、間違いなく喜びがあった。
 つつつ、と筋の部分を触られると、先程の愛撫で体が熱くなった桜子の腰が上がる。
「ああん…直接触りなさいよ…」
 言われたとおりに指が薄い布の隙間を伝い、なかへ入っていく。待ち侘びた感触に桜子は歓声を上げる。雨宮の指は、蜜の量を検分するかのように蠢いて、襞を弄ぶように触る。
「はぁ…あぁん」
 ひとしきりの快楽を与えられたところで、指は引き抜かれた。次はそこに熱い息がかかる。
「あぁぁっ」
 焦らすように舌の先が触れる。桜子はたまらなくなって腰を動かした。薄い布は柔らかい舌の愛撫を伝え、もっと強烈な快感を望ませる。雨宮も興奮が高まったのか、息を荒くしたまま桜子の脚を持ち上げて、その部分に口を近づけじゅっと音を立てて吸った。
「ひゃあん」
 いやいやをするように、桜子の白い臀部が震える。下着がずり下ろされていく。脱がしやすいように桜子は腰を浮かした。
 ひんやりとした空気に濡れたところが晒されたかと思うと、すぐに生暖かい舌に蓋をされた。
「んん…あ…」
 柔らかい感触が電撃のような快感となって体中に走っていく。先程愛撫された乳房の突起にまた硬さが生まれる。浮き上がりそうな意識を懸命に残し、耐えるような顔で桜子は喘いだ。
 少女の愛液を、雨宮は一心不乱に味わっていた。献身的な舌の奉仕は緩急をつけて、猫がミルクを飲むような音を響かせて続く。触れるか触れないかというタッチから、肉芽を結んだ唇で嬲るように触り、溢れた蜜が零れないように吸い尽くす。
 桜子の腰は浮いたままで、いやいやをするように揺らしては雨宮の顔にそれを押し付ける。長い舌に蹂躙尽くされて、意識はもう飛びそうだった。
「い…ちゃうぅ」
 悲鳴のような声が上がる。それに勢いをつけたのか、舌の動きはますます強まっていく。
 ――この男、私にこんなことをするのをいつも想像してたんだわ…
 股の間に顔を埋める雨宮を見下ろして、桜子はなんともいえない高揚したものを感じていた。
411お嬢様と使用人:2006/04/16(日) 12:36:12 ID:TOh3fGIs
ちょっとつまったので続く。

職人様方、割り込みすみませんでした。
続きを楽しみにしています。
412名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 15:29:20 ID:JVTzEPCa
GJ!
413お嬢様と使用人○4:2006/04/16(日) 15:29:27 ID:TOh3fGIs
 目の前が白くなってきた。無意識に桜子の手が自らの胸の膨らみに伸び、先端をつまんで擦り合わせる。
 それに気づいた雨宮が、股間から顔を離さないままに腕を伸ばし、胸の愛撫をも代わる。桜子は両腕をベッドに置いて、いやらしく蠢く

雨宮の頭と、たわわな乳房が揉まれて形を変えていくのを、恍惚とした目で眺めているだけでよかった。
「あんん…はぁぁ……っ」
 すっかりスカートはまくれ上がり、胸もはだけ、忘我の淵にいる桜子は、雨宮の舌の動きにあわせて腰を動かしていた。
 達したい願望が伝わっているかのように、肉芽を重点的に攻められる。怠惰な快感が突き上げ、どんどん腰が上がっていく。雨宮はしっ

かりとふとももを押さえつけ、にゅるにゅる、ぴちゃぴちゃと意識的に音を立てながら、攻撃を緩めることをしない。
「ぅぅん…くぅん…」
 長い舌が上下にいたぶる。
「あ…あ…あ…あん…」
 平らにした舌が舐めあげる。ざらついた感触に桜子はまたひときわ大きな声を上げた。
 それからは持続的な肉芽の往復だった。
「あ…ふあ…あーーーーっ!!!」 
 開脚したつまさきまで力が漲り、白い光が見えたかと思うと、桜子は絶叫して、頂点に達した。その間も唇は離れない。
「はあ…ん」
 びくびくと痙攣した場所から、雨宮は顔を上げた。
414お嬢様と使用人○5:2006/04/16(日) 15:30:57 ID:TOh3fGIs
「失礼いたしました」
 少女のはだけた着衣を整え、いつもの様子で立ち上がろうとする雨宮の様子を見て、桜子の胸はちくりと痛んだ。
 このまま押し倒されるものだと思っていたからだ。
 そして快感を頂点まで迎えた桜子のそこは、足りないものを補いたくてひくついていた。
「途中でやめるの?」
 心なしか、桜子の声は普段と違い、弱々しく響く。
 乱れた髪を直しながら、ドアに向かおうとした雨宮は振り返った。その目には充足感と、根の深い諦めが浮かんでいた。
「これ以上お傍にいると、私は自分を抑えられる自身がありません」
 きっぱりとした物言い。その言葉に、桜子はいまの行為によって雨宮がこの家を去ろうと考えたことを悟った。
 お嬢様のわがままで、奉仕させられたに過ぎないというのに。
 気持ちよりも先に、体が動いていた。

「やだっ」
 ベッドから駆け下りて、背中に抱きつく。戸惑った雨宮が向きを変える気配がある。
「お嬢様……」
「抱いてくれなきゃやだっ」
 駄々っ子のように頭を振る少女に、青年はふっと無表情を解いて笑みをこぼす。
「どうされたのですか、一体……」
 桜子は答えず、雨宮の胸に埋めたまま顔を上げなかった。自分でも信じられないことに、泣いていたのだ。
 彼の胸はあたたかく、やがて優しい指が降りてきて髪を撫でた。
 そうだ、ずっとこれを望んでいたのだ。
 雨宮の腕が細い肩にまわる。顔を上げると、見たことのない優しい目が、桜子を包み込んでいた。
415お嬢様と使用人○6:2006/04/16(日) 15:32:24 ID:TOh3fGIs
「桜子様、私は孤児です。先代に3歳の時に拾われてから、20年間、この白河家を守ることだけを考えて生きてきました」
「それがどうしたのよっ」
「かたや桜子様は白河家のお嬢様。触れてはならない場所に触れたばかりか、この先も進めるなど、してはならないことです」
「なんで?」
 あどけない瞳で見上げる少女は、いつもの傲慢さを忘れていた。その様子に愛しさという感情を揺すぶられた使用人の男は、精一杯優しく彼女の顔を手で包むと、抱きしめた。
「お嬢様はいつかは身分の高い男性のもとへ嫁いでいく身。その前に私のようなものがお体を汚してしまっては、亡くなった先代に申し訳が立ちません」
「ちょっと、いつの時代の話をしてるのよっ」
 抱きしめられてぬくもりを味わいながら、ストイックな考えに囚われた雨宮に桜子は腹が立った。
「いいこと、雨宮は私がもしどこかへお嫁に行っても、一緒についてくるのよ! どうせ嫁がされるのは金持ちじじいとかなんだから、あなたがこの体を悦ばせるのよ。わかってる?!」
 平生の勢いで命令をする桜子に、雨宮は驚いて体を離した。その隙を逃さぬよう、桜子はぴったりと密着させる。
「雨宮が私を頭の中で犯していたように、私だって頭の中で雨宮に犯されたかったんだから…」
「お嬢様…」
 しおらしくうなだれた桜子の姿に、雨宮は欲情を再び灯されて、腰に手を回した。
 潤んだ黒目が見上げる。どちらからともなく唇が引き付けあい、お嬢様と使用人はくちづけを交わした。

「んっ…」
 雨宮の熱い唇に塞がれて、桜子はまた悩ましげな声を上げた。
 彼の軟体動物のような舌が、桜子の口内を味わいつくすように舐めまわす。
 唇が離れると、熱い吐息が漏れる。雨宮は桜子の体を難なく持ち上げ、ベッドへと運んだ。
「お嬢様、本当によろしいのですか…」
「もう…くどいわよ」
 戸惑ったような雨宮が、仰向けに横たわった桜子に覆いかぶさる。桜子は腕を首に回して、その唇に唇をあわせた。
「んぅ…はぁ…」
 青年の手が器用にセーラー服を脱がせていく。素肌を指が通るたびに、敏感になった桜子の体は反応する。
 カッターシャツを脱ぎ捨て、無駄のない滑らかな胸板が桜子の膨らみに合わさる。
「雨宮ぁ…」
「桜子様…」
 雨宮の息が桜子の耳にかかり、柔らかに耳朶を噛まれる。耳まで流れ込むような熱い吐息は、仮面を脱ぎ捨てた青年の燃え盛るものを表現していた。
 慈しむようなキスの雨が体中に振り、桜子はまたその部分が蜜でいっぱいになるのを感じた。
 体が熱い。胸に感じる青年の鼓動と、初めて知った彼の温もりに幸福感を覚えながら、桜子は吐息と共に希望を口にした。
「はやく…欲しいの…」
416お嬢様と使用人○7:2006/04/16(日) 15:33:32 ID:TOh3fGIs
 着衣の上からでもかわるほど張り詰めていたものは、下着まで脱ぐと赤黒くそそり立った姿をあらわした。
 それが桜子の濡れた茂みに這わされると、狙いを定めたようにゆっくりと侵入する。
「あぁっ…おっきぃ……」
 桜子は歓声を上げる。
 雨宮はその様子で彼女が初めてではないことを確信し、複雑な気分になる。しかし痛みを訴えられようものなら、自分にそれ以上進められるかはわからない。そんなもやもやする思いも、桜子のなかで動かすにつれ、快楽に飛んでいった。
「うっ…」
 思わず雨宮が呻き声を上げるほど、少女のなかは窮屈で、滑らかだった。まるで怒張したものを吸い尽くそうとしているようだ。
「あぁん…ぅん…」
「く…」
 腰をゆっくり動かし、粘液が音を立てる。少しの動きでもお互いの声が漏れてしまう。
 雨宮の抗えない衝動が腰の動きに激しさを加えていく。桜子はかきまわされるような快感に再び頭の中を真っ白にさせ、動きにあわせるように嬌声を上げる。深い緑に包まれた広大な屋敷にいるのはふたりだけ、音を聞かれる恐れもない。
「ああっ…あ…いぃ……」
 ぬぷ、ぺちゃ。
 体液が摩擦にいやらしい音を添え、全身を桜色に染めた少女は、布団に沈み込むようにして侵入を味わっている。その様を見てさらに高められた雨宮の腰は、溶け合おうとするかのように桜子を貫き、肌と肌がぶつかり合う。
「雨宮ぁ…あ…ぁあ…いいのぉ…」
 切なく歪む少女の口内にまた舌を這わせると、激しい力で吸われ、渇きを癒すかのように切実に求め合う。
 ぱす、ぱす。
 腰の動きはいよいよ勢いを強めていた。桜子を抱く雨宮の腕にも力が入り、顔を上気させている。
「あはぁ…あぁ…」
「いっ…」
 腰が完全に溶け合うような感触。舌を絡めたまま、貫くそれはもう限界をむかえそうになっていた。
「はぅん…」
「く…」
 雨宮のあえかな悲鳴と共に、真っ赤になって張り詰めたそれは引き抜かれ、急いで手にしたティッシュに包まれたまま精を放った。
 ぴしゅ、ぴゅしゅと勢いをつけて飛ぶそれは、自らの手には収まりきれずに、熱い白濁とした雫を桜子の腹に落とす。
 法悦に浸りながらも興味深そうにそれを眺めていた少女は、ゆっくりと指の腹でこぼれたものを掬い上げる。
「ああ、桜子様…」
 雨宮の上げる悲鳴も空しく、彼女はそれを口に含んだ。唇の端が妖艶につりあがっている。
「おいしい」
417お嬢様と使用人:2006/04/16(日) 15:36:26 ID:TOh3fGIs
お目汚しスマソ。
418名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 15:43:25 ID:71Hl+5wR
イイヨイイヨーハァハァ
419名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 16:12:46 ID:K8gXJUpa
続きを…(*´Д`)ハアハア
420名無しさん@ピンキー:2006/04/16(日) 16:15:43 ID:NTVDIfbO
GJ!!!!続きwktk
421お嬢様と使用人:2006/04/16(日) 16:23:44 ID:TOh3fGIs
おお(*´Д`*)みなさまありがとー。
続きは後ほど投下させていただきます。(いま思い浮かばないので)
422大河エロ話っぽいの。:2006/04/20(木) 21:01:27 ID:MUjyeUtx
最初に謝っておくよ。



いまだに終わりが見えません。
そんな状態で投下しるよ。
しかもエロまでの前振りがなげえよ。ごねん。
423大河エロ話っぽいの。:2006/04/20(木) 21:07:15 ID:MUjyeUtx
 □ □ □


「巫女殿!何をしておられる!!」
「あ、おはよう重虎。」

入り組んだ城内の広い中庭にある巨木の下。
朝というにもまだ早いこの時間、人々の眠りを邪魔する怒声が響く。
眠りを邪魔するといっても、下働きの者はすでに仕事をしており、実際にこの怒声でおきるのはそこそこの位を持った者たちである。
しかし城内の人間にとってはもう慣れたもので、中にはこれを時刻番代わりにする強者もいる。

ちなみに当事者たちは迷惑だとはこれっぽっちも思ってはいない。
一方は何に対しても無頓着なため、もう一方は必死さ故。

「お前、朝から元気ね。父上朝弱いから羨ましがってるわよ。」
「そんなことより!!早く降りなさい!!!」

巫女殿と呼ばれる少女がいるのは巨木の上。
高さは大人2人分ほどの高さである。
渋々と降りてくる少女を不安げに見守る青年は毎度のとこながら酷い眩暈を感じていた。

少女はこの国の姫の身分にある。たとえ本人にその意識がかけてても毎日泥まみれになって遊んで勉学をサボっていても、腐っても鯛。姫である。
今まさに慣れた様子で木からスルスル降りていく様は猿そのものだが、それでも姫である。
巫女と呼ばれるのは少女の強運と感の強さが原因だ。
これまで同盟国の裏切り、敵軍の奇襲、密偵の城内侵入など様々なことを言い当てた。
下女に成りすまし、自軍の野戦の光景をこっそり見に行ったときは家臣に見破られ保護されたが、圧倒的に不利だった戦況が次の瞬間から一変した。
親馬鹿な主君は少女を咎めもしたが「危険の無い範囲ならよいだろう」と言い出し、ここ数年の戦では本陣にこの少女がちょこんと座って白湯をすすってる光景が常となっている。
ちなみに少女が付いて回った戦は全勝している。
そのことに気分を良くした主君は少女を「わが国の戦巫女だ」などとよく口にしているのがもっぱらの原因である。
親馬鹿っぷりは想像を絶する。

重虎と呼ばれる青年は、初め主君の小姓として働いていたがその武芸と誠実さと若さに似合わぬ頑固さを買われ、いまではこのお転婆のお目付け役兼護衛役として働いている。
なまじ「戦巫女」などと呼ばれ、胡散臭くはあるものの、少女がいるだけで自軍の士気が上がる。
敵国から見ると非常に厄介な存在である。特に心理戦を用いたい戦には。
少女の名が広まれば広まるほど少女を暗殺しようとする国が増えていく。
彼はそんな少女を守るよう、主君から命じられていた。

(なのに何故この御方は・・・ッ!!)

ほんの一月ほど前に城内で命を奪われかけている。

(女子が敵方に捕らえられたらどんな陵辱を受けるか分からぬ年でも無いだろうに!!!)

ちなみにその時は先々代が作った城の抜け道を通り、城下へ行こうとしていた時である。

(今日という今日はみっちり言って聞かせねば!!)

ひらり、と。
少女は目の前に飛び降りた。
重虎は躾のための第一声を放とうとした瞬間。

「ほら、降りたわよ。じゃあね。」

悪びれた様子も無い軽い言葉をかけ、父上を起こさなきゃ、とかなんとか言いつつ少女は小走りに駆けていった。

朝もまだ早いこの時間、呆気に取られた重虎は巨木の下で一人、取り残された。
声にならないほどの怒りがこみ上げるのにはまだ少し時間がかかる。

 □ □ □
424大河エロ話っぽいの。:2006/04/20(木) 21:08:24 ID:MUjyeUtx
 □ □ □


「やぶき、お前今日も重虎に告げ口したね?」

憮然とした様子で言い放つ。
しかしそこには威圧感はまったく無い。

「伊緒様が屋敷から飛び出すからでしょうに。」

やぶきはまるで自分の妹に言い聞かせる様に、柔らかい笑みで返す。
今でこそ侍女の格好をしているがやぶきはくのいちだ。
十年ほど前に伊緒に拾われて以来、彼女はこの小さな主君に忠誠を誓っている。
重虎が伊緒の護衛に任ぜられた際、一番に反対していたのはやぶきである。

彼女曰く、
未来ある姫君に男の護衛をつけるのは得心できませぬ。
せめて屋敷の中での護衛は私めにお任せ下さりませ。
だそうだ。

「かように重虎殿を疎ましく感じるのならば、護衛解任をお父上に仰いなさいな。」

「別に、重虎が嫌いなわけではないのよ。」

伊緒は一見暴君のようではあるが、気に入った者には好意を隠さない。
やぶきがいい例である。
重虎に我侭を繰り返し、突飛な行動に出て困らせたり、悪戯を仕掛けて怒られるのも、重虎に対して心を開いている証拠である。
だが、重虎はそんな伊緒の気持ちに気付いてはいない。
というか、常日頃の伊緒の行動を叱ることに一生懸命になっており、そこまで考えるほどの心のゆとりが重虎には無い。

「私が重虎を嫌うとしたら理由はひとつしか無いけれどね。」

私を真っ直ぐに怒ってくれる。
それは私の身を案じての事だとすぐ分かる。
良いことをすれば優しい声でほめてくれる。
ただ、どうしても気に入らないことがある。

「頑固で融通の利かない性格も別にいいのよ。時々引っ叩いてやりたくなるけど。」

酷い言われようである。

「ねえやぶき、どうして重虎は私を名前で呼ばないのかしら。」

いつもいつも巫女殿巫女殿巫女殿と、正直うるさい。
そしてそれが一番気に食わない。

「それは、やはり頑固で融通の利かない性格だから・・・でしょうか。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・ちょっと引っ叩いてくるわ。」

「いってらっしゃいませ。」


伊緒がいなくなってしばらくしてから、やぶきの元までパツーーン!と小気味良い音が届いた。

 □ □ □
425大河エロ話っぽいの。:2006/04/20(木) 21:17:07 ID:MUjyeUtx
 □ □ □

重虎は伊緒の自室に呼び出されていた。
伊緒のやや後ろ斜めにはやぶきが控えている。
侍女の姿で何もせず主人の命を待っているように見えるが、そうでないことを重虎は知っている。
伊緒が屋敷にいる間は常に気を張って辺りを警戒している。
手には何も持ってないようにしているが、着物の下には様々な暗器が隠されている。
やぶきから伊緒へと目を移すといつも以上に怒りの感情を表していた。

「巫女殿が屋敷に私めを入れるとは、珍しいですね。」
「おだまり。」

これはますますもって機嫌が悪いらしい。

「・・・重虎、戦があるそうね。お前先鋒を任されてるんですって?」
「・・・随分と早耳ですね。」

重虎はそう言ってちらりとやぶきを見る。
相変わらず、やぶきは済ました顔でそこにいる。微動だにしない。
彼女は忍だ―――・・・己が主人のためになるなら味方を欺くことも・・・殺すことも厭わない。

「やぶきから聞いたのよ。二日も前には決まっていて、お前にも知らされていたそうね。」

やはり、と重虎は表情を変えずに腹の底で舌を鳴らした。

「は。大殿が軍師殿と決めたそうです。期待を裏切らぬよう――・・・」

「何故私に黙っていた?」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「黙るな。私が納得いくようお話し。」

「巫女殿は、私がそれを伝えたら共に行くと、仰るでしょう?」

伊緒の腿の上に置かれた手が強く握り締められた。

「・・・・・・お前は、私に戦場にくるな、と、言いたいの?」

「・・・戦場は危険です。御身、大切にして頂きたく思い・・・」

「重虎は戦に出るのに私は駄目だというの?やぶきもいるのに?」

 □ □ □
426大河エロ話っぽいの。:2006/04/20(木) 21:23:03 ID:MUjyeUtx
声が怒りで震えている。
握られた拳も真っ白になり震えだしている。
伊緒の目がうっすらと充血していた。

「巫女殿は戦を甘く見ておられる。
 やぶき殿がいる?それだけで敵を防ぎきれるとお思いか?
 巫女殿が戦場に出向いた時の、貴方の兵糧は誰が運ぶのです?それも数日分を。
 兵が運ぶのをお分かりか?貴方が本陣にいるだけで護衛の兵を増やさねばならぬのはご存知か?」

「私が行けば戦は有利になるわ!!」

(本当のことを言えば)
貴方は怒る。そんなことで、と。
きっと。否。絶対に。
(だったら言わない。言わなければいい。)

「残念なことですが、私はそのような不確かなものを頼るつもりにはなれません。」
「お黙り!!」

伊緒が勢いをつけて立ち上がる。
殺気を放ち始めたのはやぶき。
そして重虎は淡々と言葉を放ちながら、心が暗く冷えていくのを感じていた。

重虎の横を通り抜け、襖の前で伊緒が立ち止まる。やぶきがそれに続く。

「・・・重虎、今日を持ってお前を私の護衛から外すわ。」

互いにそちらを見向きもせずに。

「・・・・・・承知しました。至らぬ点が多々ありました事、お許しください。」
427大河エロ話っぽいの。:2006/04/20(木) 21:23:58 ID:MUjyeUtx
襖を勢い良く開け、伊緒は飛び出していった。
重虎は小さくため息をつき、のっそりと立ち上がり部屋から出ようとした。
襖の前にやぶきが立っており、こちらを見据えていた。

「やぶき殿。私の代わりの護衛はすぐに任命されるだろう。
 それまで一人で護衛をするのはつらいかと思うがご容赦願いたい。」

「呆れました。あなたは本当に何も分かっていないのですね。」

やぶきの言葉に重虎が眉を顰めると、やぶきはますます呆れた様な顔をした。
外は暖かい春の日差しが差して、鳥の鳴き声が聞こえてくる。
外の陽気さとは反対に、室内は暗く、空気は冷たかった。

「伊緒様が戦場に出るようになる前、重虎殿は既に戦に出たことが幾度かありましたわよね」

「それが如何した。」

「その間、伊緒様が城で何をしていたか、どんなお顔をしていたか、考えもしなかったのですか?」

「・・・・・・・・・・。」

「伊緒様が何故戦に行きたがるか、それも考えたことは無いのでしょうね。」

「・・・何が言いたい。」

「甘えないで頂きたいですね。ご自分で考えてください。」

では、と一言残しやぶきは伊緒を追った。

重虎は冷たい部屋の中から動き出せずにいた。
428大河エロ話っぽいの。:2006/04/20(木) 21:24:54 ID:MUjyeUtx
とりあえず、ここまでで。
429名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 22:07:04 ID:6DReBB0k
うぉー和風っぽいのktkr!
wktkして待ちます
430名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 22:17:20 ID:KllT4Pqv
いかん、重虎とやぶきのほうで妄想を膨らましてしまった。
続きを楽しみに待ってます。
431名無しさん@ピンキー:2006/04/20(木) 23:51:44 ID:70ZK9WUX
>大河エロ話っぽいと
というより普通に恋愛物の時代小説ですな。
座して待つ所存にてございまする。
432名無しさん@ピンキー:2006/04/21(金) 17:42:46 ID:MmxvQQi9
大好きな和風物ktkr!!!!
職人頑張れ!超頑張れ!!
433名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 23:12:54 ID:+kf8Sdgy
wktkあげ
434名無しさん@ピンキー:2006/04/22(土) 23:13:51 ID:+kf8Sdgy
まちがえた

おだまりっていいよな
435給料日前:2006/04/25(火) 04:05:57 ID:k2/lWv9N


 カツ、カツ、カツ、カツ・・・・・・・・・・・。

 誰かが、この地下牢に降りて来る気配がする。
 足音は二つ。その一つが廊下に響くこのヒール音という事は、二人の内の一人は女、という事になる。
(こんな場所に一体、誰が・・・・・・・・・? 物好きな女もいるものだ)
 そう思いながら、リールは鉄格子の方に首を傾ける。
「―――――がぁっ!!」
 僅かに身体を動かしただけで全身に激痛が走る。
(今日の拷問はえげつなかったからな・・・・・・・・・)
 しかし、まだまだリールは死ぬわけにはいかない。そう思うと、この痛みさえ、自分の生存を確認させる道標に思えてくる。

 実際、革命派のリーダーとして獄吏に喋っていない秘密は山ほどある。その内の重要度の低い情報から小出しにしていきながら、彼は待っていた。来るアテの無い仲間の救出を。

「―――――お止まり下さい!この先は国事犯の房でございます。お名前と御用の向きを承ります!」

 夜勤の獄吏が、足音の主に尋問している。こんな夜中だから当然といえば当然の事だが、それにしても、あのヒゲ野郎に敬語を使わせるなんて、よほど身分の高そうな女のようだ。

(・・・・・・・・・・・・・と、なると・・・・・・まさか、あいつなのか・・・・・・・・・?)

「無礼者!! 獄卒風情が誰に向かって大声を立てておる!」
「なっ・・・・・なぁにぃ・・・・・・!?」
「―――――およしなさいセバスチャン」

(間違いない! あいつだ!!)
436名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 13:55:43 ID:HdNxbM0r
…おわり?
437名無しさん@ピンキー:2006/04/25(火) 17:35:15 ID:88PlJktP
誤爆??
438大河エロ話っぽいの。:2006/04/26(水) 12:27:26 ID:ylrOGhmo
レスdクスですよ。
調子に乗って続き投下。
こういう主従もありだよな、とビクビクしてるよ。
439大河エロ話っぽいの。:2006/04/26(水) 12:28:29 ID:ylrOGhmo
 □ □ □


戦場の空気はいつまでたっても嫌なものだ。
重虎が先ほど同輩にそう言ったら飯を食うのと同じくらいに慣れねばなるまい、と返された。
此度は野戦。
飯を炊く匂いに様々な不快な異臭が混ざり合う。
己の汗、民家や草木が燃える匂い、負傷したものからは血の臭い、死体からは腐乱の臭い。
春先の雨が降り、足元は泥に奪われ常より兵は疲弊していた。

ふと見渡すと、桜の木が数本並んでいた。
大部分が焼かれてしまい、一番隅にある枝のみが本来の姿をかろうじて保っていた。

 ―――重虎!満開になったら城内の者すべて集めて宴会を開くわよ!!

そんな事、無理だと分かっていても無理やり交わされた、約束。

 ―――そうしたら、そうね。お前、芸のひとつでも習得して皆にお披露目なさいよ。

しかし、その桜も、戦が長引いているうちに季節を過ぎていた。
今目の前にあるこの小枝も、少し華をつけているだけで、それ以外は既に萎れていた。

(約束は守れなかったな)
 あの方は約束を破ると酷く癇癪を起こすから。
 いや、それ以前に、私はもうあの方と間接的な主従関係でしか、無い。

最後に見た伊緒の顔には涙の気配がした。
目を真っ赤にし、頬は怒りで紅潮させ、声が震えていた。

(あんな顔、させるつもりは無かった)

戦巫女の異名を裏付けるかのように、戦況は思わしくなかった。
戦場に戦巫女がいない。それだけで士気は下がりつつあった。

(帰ったら、詫びを入れよう)
 何をわびればいいのか。
 なんと謝ればよいのか。
 未だ分からないが、それでも。

気持ちを奮い立たせるように、重治は愛槍を握り締めた。
その時、休ませていた自分の兵に動揺が走った。

味方本陣から黒煙が立ち上っていた。


 □ □ □
440大河エロ話っぽいの。:2006/04/26(水) 12:29:23 ID:ylrOGhmo
 □ □ □

山頂近くにある本陣には主君が憂鬱そうな顔をして地図を睨んでいた。
軍師がそれを見やり、ため息をついた。

「殿、そのような顔をしておられると兵たちが不安がります。」

「しかしだなぁ、やはり重治と伊緒の間に何があったのかと思うとなぁ。」

そっちか。
今の戦況を憂いている訳ではないのか。

「ここは戦場ですぞ、殿。伊緒様と重虎のことは城に帰還してからお考えなさりますよう。」

「しかし気になるもんは気になるんだ。あぁ・・・伊緒・・・・・・ん?」

主君が目を瞬かせて見る方角に軍師も目をやる。
僅かにではあったが黒煙が上がっていた。
数日前に敵が火を放ち、昨夜大雨の助けもあって消火活動が終わったばかりである。
まさかと思い、軍師は布陣図を確認する。
本陣のある山の麓には大きな河。火事はその対岸の近く。
そしてその一直線上の先には重虎を先鋒とした軍が三つ。
幸い火が本陣の山に届くことは無い。
しかし。

「のう、軍師殿。これは先鋒の退路が絶たれたのではないか?」

ざわめきはじめた中、重鎮の一人が言う。
河は昨日の大雨で流れを増し、人馬共に渡れぬ程になっている。

「・・・いえ、おそらくそれだけではありますまい。
 先鋒から見れば本陣麓に火を放たれたように見えるでしょう。
 彼らはきっとこちらに来る。なれば・・・・・・・。」

河の向こう側。火の放たれた場所の近く。
布陣図を指し、軍師が言い放った言葉は、その場に重い空気を招いた。

「・・・伏兵がいるはずです。先鋒三軍に伝達を。
 遊軍には救援に回る様に伝えなさい!!」


事態は急変した。


 □ □ □
441大河エロ話っぽいの。:2006/04/26(水) 12:30:15 ID:ylrOGhmo
 □ □ □

伊緒はいつもの巨木に登り、呆けていた。
何十年もこの城を見守っているこの巨木は高さもあるが、枝の一本一本が太い。
伊緒の見つめる先は戦場になるであろう他国の地。

(あの、大馬鹿者。)

遠い地を睨みつけ、心の中で一人愚痴る。
その時、やぶきが隣の枝に現れた。

「伊緒様。」

「・・・どうもお前が忍だと言う事を失念してしまうわね。」

伊緒は一瞬驚いた表情になり、やぶきの姿を確認すると苦笑した。
普段それらしいそぶりを見せない所為か ―忍びとはそういうものだとやぶきは言うが― つい、忘れてしまっている。

「驚かせてしまった様ですね。申し訳ございません。」

「いいのよ。それより、戦況はどうだったの?」

「放った『草』によりますと、どうも思わしくないようですね。
 敵軍は今回忍を雇ったようです。本陣奇襲や大殿暗殺を恐れ、本陣に兵が集中しています。
 二日程前に敵軍が近くの集落や草木に火を放ったようで、消火活動もしていたようです。
 昨夜の大雨で火は消えましたが、足場の悪化、兵糧も三分の一程やられてます。
 士気は下がる一方ですね。」

そう、と伊緒が呟く。
視線は未だ遠い戦場にある。

「ありがとう。お前にも『草』にも迷惑をかけたわね。」

「いいえ、これしきの事なれば。」

(本当、馬鹿ね。)
 行けたらいいのに。
 見栄も立場も外聞も何もかも打ち捨てて、あの地に駆けつけられたらいいのに。
 素直に、心配だからついていくと言えたらいいのに。
(・・・大馬鹿者は、私のほうだわ。)

やぶきは押し黙ってしまった主君の顔を、無礼と知りつつ盗み見る。
その表情は数年前、伊緒がまだ戦場に赴いた事の無い頃の。
大切な人を案じる、そして何も出来ない自分に腹を立てている、その頃の表情で。
442大河エロ話っぽいの。:2006/04/26(水) 12:31:52 ID:ylrOGhmo

今まさに戦場にいる重虎に怒りをぶつけられたらどんなに清々するだろう。
そんなどうしようもないことを考えながら、やぶきは伊緒の手を取る。

「・・・やぶき?」

「正直申しますと、伊緒様の御心が重虎殿で占められているのは不満ですが。」

やぶきはご無礼を、と言うと素早く伊緒を抱きかかえると巨木を飛び降りた。
静かに着地し、そっと伊緒を地に立たせ、伊緒の柔らかな頬に手を添えた。
常ではありえないやぶきの行動に、伊緒は頭一つ分程高いその表情を伺うが、読み取れるものは無かった。

「私は、貴女にそんな顔をさせたくはありません。
 私には、伊緒様が何故戦に出たがるのか、存じております。
 今私に出来ることは、伊緒様をかの戦場へお連れすることだけです。」

やぶきは無表情ではあったが、しかしその目は常より深く、暖かかった。
伊緒は戸惑うように顔を俯け呟く。

「でも、重虎の言う通りだもの。戦で私は足手まといだわ。」

「私は貴女に教えられる忍の武術をすべてお教えいたしました。身を守る術も。
 基本、武士は忍術には免疫がありません。
 貴女は戦に出ても誰にも迷惑をかける事はありません。」

「、私、には、戦に出る資格も理由も無いわ・・・。」

やぶきがもう片方の手も伊緒の頬に添え、視線を上げさせる。
今にも幼子が泣き出してしまいそうな表情になった伊緒の目を、やぶきが捉える。

「御自分に嘘を仰るのはおやめなさい。
 己につく嘘は己を追い詰め、その身を滅ぼします。
 伊緒様には伊緒様の、きちんとした資格も理由も御座います。
 それでも理由が足らぬと仰るのなら、私をお使いなさい。」

「やぶきを?」

「・・・『草』の話を聞くと、敵軍が雇った忍は私があなたに使える前に属していた里でしょう。
 彼の者たちの手段は私が良く知っております。
 私の情報をうまく使えれば、今の戦況を覆すことも可能でしょう。」

同郷の者を陥れる、そう言ったやぶきに伊緒は驚く。

「お前は、それでいいの?」

「私が守るべきは貴女と、その御心です。
 十年前に、私はそう己に誓いました。
 今害を成してくる過去の同輩など、何故気にかける必要がありましょう。」

443大河エロ話っぽいの。:2006/04/26(水) 12:32:28 ID:ylrOGhmo
伊緒の両頬から手を離し、やぶきはその場に片膝を付いた。
強すぎる決意の視線を伊緒に向けたまま、主従の形を取る。

「・・・十年前もお前はそうやって私に忠義を誓ったわね。」

「・・・十年経てど、その気持ちに変わりはありません。
 伊緒様、理由も資格も全て揃いました。
 ご決断を。」

(私は・・・。)
 何も出来ず、踏ん切りが付かずに立ち止まっていた。
 けれど、やぶきに背を押してもらった。
 ならば、この勢いのまま走り出せばいい。

「・・・いくわよ、やぶき。あの大馬鹿者の面、引っ叩いてやるわよ!準備なさい!!」

「承知いたしました。」


重虎の護衛解任以来、伊緒は本来の気の強そうな笑みで高らかに宣言した。
普段然程表情に変化の無いやぶきの顔にも、柔らかな微笑があった。


 □ □ □
444大河エロ話っぽいの。:2006/04/26(水) 12:35:42 ID:ylrOGhmo
自分はやぶき贔屓な様ですよ。
やぶきと伊緒が百合っぽくなってしまったのは予想外。プラトニック。
こういう主従はおkなのかどうか微妙だな。

とりあえず、ここまで。

個人的には悪さを仕出かした姫に教育係がお仕置きする話を待ってたりするw
445名無しさん@ピンキー:2006/04/26(水) 14:40:46 ID:imEUtxlJ
GJ! いや、ありでしょうよ。この手の話読むといつも思うが、八方丸く収まってくれるといいなぁ…

ところで、重治と重虎は同一人物と解釈してOK?
446大河エロ話っぽいの。:2006/04/27(木) 00:26:44 ID:kfus0Qe3
>>445
うわ恥ずかしい!素で間違ってた!
重治じゃないや。重虎だ。指摘豚クス。
447名無しさん@ピンキー:2006/04/27(木) 11:26:21 ID:hPs0MZ+m
おおおおGJ!
続きお待ちしておりますよ
448名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 11:54:58 ID:vvliDqij
念のため保守
449名無しさん@ピンキー:2006/05/04(木) 21:11:39 ID:1pJKPk92
お嬢が年上従者が年下モノをきぼーう。
450名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 02:18:19 ID:nXT3Y1gZ
国が攻め滅ぼされて、部下って言うか護衛の兵士がせめてお姫様だけでも逃がして・・・って話を考えてるんだが、どうも人名とか国名とかを考えるのが苦手で進まねぇ・・・・。
正直ちゃんと書ききれるか自信ないんだけど、誰か名前考えてくれないか?
主(姫)従(兵士)と国名二つ。
あつかましくてごめん・・・・。
451名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 02:31:36 ID:3rz+ZvK3
>>450
和洋どっち?
452名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 13:23:56 ID:c6zu8J7t
中世ファンタジーぽいなら
フルダ姫に兵士オスマル、
ゴートン国とイェレンカ国ってどう?
気に入らなければまた考えるけど。
453名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 14:10:36 ID:3n8lifUz
454名無しさん@ピンキー:2006/05/10(水) 17:07:32 ID:lhmDTaem
>>450
人名を取ってくる国を決めたら
昔使っていた地図帳を開いて、人名を取った国周辺の
語感が良くて聞き覚えのない地名を取ってくればよかんべ。
455450:2006/05/10(水) 21:33:35 ID:wKVngnwb
ありがとう。
取り敢ず頑張ってみる。

・・・・自分結構へたれだしちゃんと書ききれるかわかんねぇけど。
456名無しさん@ピンキー:2006/05/14(日) 11:50:16 ID:301L8ff+
あげとく
457名無しさん@ピンキー:2006/05/15(月) 18:03:44 ID:kUaVteI7
ほし
458名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 04:13:00 ID:Pq7P7f0N
>>358をずっと待ってる。
459名無しさん@ピンキー:2006/05/16(火) 04:14:30 ID:Pq7P7f0N
>>358の続きを待ってる。
460名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 00:06:23 ID:A2z/m94x
今、わがままなお嬢様と、そのお嬢様に仕えるへたれな吸血鬼の青年の話を書いてる。
461名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 00:30:05 ID:Z4MMLt1n
全部待ってる
462お嬢とへたれ:2006/05/17(水) 03:13:49 ID:A2z/m94x
……吸血鬼だとネタがかぶるよな、すんません。
ぶっちゃけ人外であれば何でもよかったんだが……でも書いてしまった。




 投げつけられた花瓶がロヴィーウースの額に当たった。鋭い痛みに襲われたロヴィーウースが額に手をやると、赤い液体がべったりとついた。
「血――あんた、血は、一応赤かったのね、知らなかったわ」
 そう吐き棄てるユーウィアの声は震えている。ユーウィアはロヴィーウースを化け物だと罵る。事実ロヴィーウースは『化け物』だ。けれど、傷つけば赤い血が流れる。それは人間と変わらない。
「自分の血じゃあ餓えは渇かないの?」
「……自分の血は、まるで水のようだ」
「そう」
 ロヴィーウースは吸血鬼だ。およそ六十年ほど前は人間だったが、吸血鬼に襲われ死にかけたときからその体は人のものではなくなった。
 彼はユーウィアとその祖母によって生き長らえてきた。死にかけたロヴィーウースを救ったのは、彼の乳兄弟であったユーウィアの祖母エイフィアだったからだ。
 以来ロヴィーウースはエイフィアとその家族の血によって生きてきたが、今はユーウィアしか居ない。エイフィアもユーウィアの両親も、十年ほど前の大洪水で死んでいる。
 ロヴィーウースはユーウィアを大事にしてきた。けれどユーウィアはロヴィーウースに反発するようになっていた。彼女のからだが弱くなりだしたころからだと、彼は認識している。
「ロヴィー。喉が渇いたわ」
 ユーウィアが求めることには、なんでも応えるようにしている。彼女が本当はなにを求めているのか分からないから、せめて口に出すことだけでも応えようと思うのがロヴィーウースの精一杯であった。
 ロヴィーウースはエイフィアに感謝している。化け物になった自分を受け入れてくれたのは彼女とその家族だけだったからだ。
 彼女の親戚――このアンヴェ王国の名門・ティアシェロ家には見捨てられた。化け物に襲われ化け物に成り果てたロヴィーウースを、エイフィアに仕えさせるわけにはいかないと。
 けれどエイフィアはこっそりロヴィーウースを保護し、彼が狂わないように血を分け与えた。
 ロヴィーウースはユーウィアと守ると誓っている。彼女の祖母に、エイフィアにそう誓っている。
「なにが飲みたい?」
「レモネードをはやく持って来て。役立たず」
 この思いが報われなくてもいい。ユーウィアが心底自分を嫌ってないといい――そう、思っていた。
463お嬢とへたれ:2006/05/17(水) 03:15:33 ID:A2z/m94x

 ロヴィーウースは吸血鬼だ。
 だからかなんなのか、彼はいつも一歩引いたところにいる。一歩引いたところの、すぐそばにいつもいる。
 堂々とすれば良いのにできない彼を見ているといつもイライラする。だから私は彼にあたる。自分の癇癪を抑制できないというのもある。我慢ができない。
 そうしてロヴィーウースにあたって、後悔するけれど、どうすることもできない。
 ロヴィーウースが私に付き従うのは、お婆様が居たからだ。
 お婆様はロヴィーウースを助けた。だから彼は私達家族を――今は私を守ろうとしてくれている。
 きっとお婆様への恩義がなければ、私なんかとっくの昔に見捨てているだろう。
 私はそのくらいわがままで、どうしようもなくて、ロヴィーウースに迷惑ばかりかけている。
 でもだからって今更どうすることもできない。どうすればいいっていうの? もうこの状況を変えることはできない。今更変わるなんてできない。


 ――そう思っていただけだったと気づかされたのは16を迎えた秋の日。


「結婚?」
 ユーウィアは自分が青ざめるのを自覚しながら、繰り返した。
 今、目の前に立つこの男――一応は自分の保護者であるティアシェロ家の当主が放った言葉を、ユーウィアは一番恐れていたような気がする。
「わたくしが、ファスダインの当主と結婚と。そう、おっしゃいましたの?」
 どういう返事が来るかなんて分かる。この男はそうだ、と答えるのだ。私は所詮この程度の駒。血の繋がりなど感じない。
 ファスダインの当主はもう七十にもなる老人だ。好色だという噂を聞いたことだけある。その老人が私の夫になると。
 冗談じゃない。でも私はここにいる以上逆らえないのだ……。
 私は弱い。
 ロヴィーウースに甘えティアシェロ家の恩恵に甘え、ここでこの男に反抗することすら出来ない。ロヴィーウースには子供のように癇癪をぶつけるばかり。
 弱いと言うことを知りながら強くなれない。
 耐えられない。くやしい。世界が崩壊してしまえばいいのに。
 願うだけでは叶わないと知りながら私は願った。そして、顔を上げた。
464お嬢とへたれ:2006/05/17(水) 03:17:05 ID:A2z/m94x
 ユーウィアは帰ってくるなり部屋に閉じこもった。声をかける者を全て退ける。応えたのは、ロヴィーウースにのみだった。
「ロヴィー? ロヴィーなの? なぜもっと早くに現れないの。入って」
 遠慮がちなノックの主がロヴィーウースだと分かるなり、ユーウィアは彼を部屋に招きいれた。ロヴィーウースはわずかにいぶかしく思いながらも、部屋に足を踏み入れる。
 部屋の中はカーテンが引かれて薄暗い。ユーウィアはベッドにもぐりこんでいた。
「ユーウィア……どうしたんだ? お前が閉じこもっているから、みな心配している」
「そんなの分かってるわよ! いいから、ロヴィー、こっちに来て」
 意図のつかめない、ユーウィアの行動に眉根を寄せながら、それでもユーウィアの言うとおりに動く。
 彼はユーウィアの言葉に逆らったことは、ついぞ一度も無い。それが彼女のためになっているかは、ともかくとして、ロヴィーウースにはそれしかできない。
「……そこに座って」
 ベッドの端を叩くユーウィアの言葉に従いロヴィーウースがベッドの上に座ると、ユーウィアは顔を覆った。普段とは違う態度のユーウィアに気付いて、ロヴィーウースは気遣わしげに彼女を覗き込む。
「ユーウィア? なにがあっ」
 ロヴィーウースの言葉はそこで途切れる。封じられたのは彼の唇。封じたのはユーウィアのそれ。強引に押し付けられる彼女の柔らかな唇。驚きによって白く染められた思考は、一瞬で霧散した。
「う、」
 力いっぱいユーウィアを引き剥がすと、真っ赤な顔をした彼女が潤んだ瞳で自分を見つめているのに出くわして、ロヴィーウースは心底当惑する。今まで――こんな目で見られたことが無かったから、とにかく困った。
「ロヴィー。私の言うことを聞くわね?」
 その声は震えていた。よくよく見れば赤いのは顔だけではない。目元もだ――泣いたように。なにがあったのだ、と問う前に、彼の口は動いている。
「もちろん、聞く」
 ユーウィアは熱い。彼女が自分の胸に伸ばしている手は柔らかく、熱を帯びている。彼女を掴む自分の手は、彼女の腕の熱で火照る。
 ロヴィーウースは軽い酩酊を覚えた。
465お嬢とへたれ:2006/05/17(水) 03:18:20 ID:A2z/m94x
 ユーウィアの、ぬれた唇が動く。
「じゃあ、私を抱きなさい。私を……」
 会話が途絶える。言葉につまったユーウィアが、それを放棄してロヴィーウースに抱きついたのだった。
「ゆ、ウィア。なにがあったんだ?」
 自分の胸に顔を押し付ける少女に囁く。彼女は答えず、ただ沈黙している。
 ロヴィーウースは初めて見るユーウィアの扱いに困り、彼女を振り払えない。扱いに困って振り払えないだけではない――彼女のぬくもりが、手放しがたいからと言うのもあるが。
 おそるおそる手を伸ばし、ユーウィアの頭を撫でてやる。するとユーウィアは彼の手をはじいた。
「子ども扱い、するんじゃないわよ!」
 絶叫にも近い声を上げると、ユーウィアはおもむろに服を脱ぎ始めた。
「な、ユーウィア!」
「私は本気よ。冗談で抱いてなんていうもんですか」
 脱ぎながらユーウィアは言い放つ。ロヴィーウースは呆然としつつも止めるが、勢いが上のユーウィアにはかなわない。彼女はあっという間に一糸まとわぬ姿になった。
 ごくりと唾を飲み込む。やわらかそうできめ細やかな肌と、ぷっくりとした小ぶりな胸と、すらりとした身体と。すべらかな金髪が肩にかかるのすら扇情的で。
 この柔肌にかぶりついて、あたたかな血をすすり、そのまま自分のものにしたい、貫きたいと言う欲望が、ロヴィーウースの胸中に芽生えた。だがそれはならない――かき集めた理性がロヴィーウースを抑制する。
「服を着」
「あぁ、もう、どうすればいいのよぉ……」
 小さく呟きながらユーウィアはロヴィーウースの言葉をさえぎり、そして思いついたように身を乗り出した。そして赤く染めた顔のまま、ロヴィーウースの服を脱がし始める。さすがにここではすぐに動けた。
「ユーウィア!」
「私の言うこと聞くって言ったじゃない!」
「それとこれとは話が違う!」
「違わないわよ、逆らうんじゃない、役立たず!」
 上に着る服は全て取り払われてしまった。そもそもロヴィーウースが着ていたのは簡易な作りのシャツだったから、脱がしやすくもあるだろう。
 ロヴィーウースの胸板を見つめるユーウィアはしばらく逡巡していた。そしておもむろに、ロヴィーウースの胸に顔を埋め舌先で彼をなぶり始めた。
「ユーウィ……ア!」
 力が抜けて、興奮で、声のかすれるロヴィーウースが名を呼ぶけれど、ユーウィアは動きを止めない。ズボンに手を伸ばし、脱がし始めてすらいる。
 そして彼のものが空気にさらされた。今度は、張り詰めたそれを見たユーウィアが唾を飲み込んだ。
「やめ、ろ、ユーウィア……」
「こんな風になってるくせに、なに言ってんのよ。興奮してるんでしょ? 私に。だったら思うようにすれば良いじゃない」
 吐き捨て、ユーウィアは身を屈めた。同時にロヴィーウースのものは彼女の手に包まれる。――つたない動きでいじられて、とうとう彼の理性は決壊した。
466お嬢とへたれ:2006/05/17(水) 03:20:24 ID:A2z/m94x

 強引にユーウィアの体を仰向けに押し倒し、深く口付ける。舌を相手のそれに絡ませ貪る。
「ん、う、ううん」
 ユーウィアが苦しそうに小さくうめくのも今のロヴィーウースには構えない。
 今やロヴィーウースの中に彼女に尽くし彼女を思いやる心はほとんどないといっていい――彼の中の、吸血鬼としての性が、自分の悦楽と彼女を女として悦ばせることしか望んでいないからだ。
「ぁ……ロヴィー、」
 ロヴィーウースの手がユーウィアの胸をいじる。つねり、撫で回し、次第に下腹部に伸びていく。
 彼の指がユーウィアの秘部に伸びると、ユーウィアはぴくりと震えた。しっとりと濡れたそこに指を滑らせると、彼女の表情が歪み出す。眉根がしかめられた。
「い、う、ぅ……」
 初めて、だ。そう気づいた瞬間、ロヴィーウースの胸に溢れたのは、歓喜。自分をユーウィアの中に刻みつけられるという
 唇を胸をそこそこに、彼の舌はユーウィアの秘部をなぶり出す。
「やぁ、だ、ロヴィー……はぁ、ん」
 水音とユーウィアの小さなあえぎばかりが、薄暗い室内に響く。ユーウィアは手で口を覆った。
「ん……ん、ぅ、んっ」
 その声を聞きながらロヴィーウースは舌先を秘部から離し、指で再び触れる。差し込むとするりと入った。
「ユーウィア……もう、挿れて、いい?」
 そこは十分濡れていた。ロヴィーウースがかすれた声で尋ねるとユーウィアは、
「わざわざ、聞かないでよ……ばか!」
 と呟いた。
 ロヴィーウースはユーウィアに覆い被さる。目の前にユーウィアの真っ赤な顔がある。
 彼女に口付けると、今度は相手から舌が絡められ、再び歓喜する。そして、空いた手で自身を彼女の秘部にあてがった。期待と羨望をないまぜにしたなにかがロヴィーウースを通り過ぎていった。
「あ、ぁやぁああ、いたぁいっ……いっ!!」
 ユーウィアの悲鳴を聞きながら、ロヴィーウースはゆっくりゆっくりと己を押し進めていく。
 苦痛に歪んだユーウィアの顔に、うっすらとした汗が浮かんでいるのは苦痛か快感か。ロヴィーウースは口付けの雨を降らせる。
 己がすべて彼女の中におさめられ、ロヴィーウースはホッと息を吐いた。動きを止める。
「……ロ、ヴィー」
「ユーウィア……大丈夫か?」
 吐息のような問いに、ユーウィアは小さく頷いた。破瓜の痛みを散らせるようにロヴィーウースは彼女の体の至る部分をなで始める。
 そして彼女の呼吸が整い出すと、彼はまたゆっくりと、動き出した。
「あぁ……」
 眉根をしかめるユーウィアの、熱い息がロヴィーウースの耳に掛かる。それがまたたまらなくて、腰の動きが早まった。
「んっ、ひゃ……は、う、ロヴィー、ロヴィー……ッ」
 次第に腰の動きが早まっていくにつれ、ユーウィアはロヴィーウースに強くしがみ付き、より密着していく。
 ぐちゅ、ずっちゅという水音。お互いの肉のぶつかり合う乾いた音。消えていく理性。獣の本能が表出していく。
「あっ、あぁっん、ロヴィー、も、っだめえ……ロヴィー、んっんっあぁっ」
 もはやなんの遠慮もなくロヴィーはユーウィアを攻め立てる。激しすぎる動きにユーウィアの絶頂も、ロヴィーのそれもまた近い。
「ユーウィア、っは、……っ」
「だめ、ひ、くっ……いぃ、っちゃう、もう、ロヴィー、あっ……は、あぁぁっ……!」
 ユーウィアの秘部がきつくしまる。イったのだと分かったのと、きついそのしまりに目の前がくらんだ。
「ユ、ウィア……!」
「あぁっぁぁぁ……」
 どくどくん、という衝撃。己の欲望をユーウィアの中に吐き出す。
 後悔と、達成感がないまぜになりロヴィーウースは複雑な気持ちになるが、それ以上に今はユーウィアへの愛おしさが勝っていた。

 ――長い間夢見つづけたこの状況。けれどそれはロヴィーウースにとって、見てはいけない夢だった。



正直途中でエロがめんどくさくなったりした。エロ初めて書いたんだ、萎えたらごめん。続きはまたいずれ。
467名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 03:54:32 ID:eNG01B9z
GJ! 楽しめました。
ユーウィアの素直になれない高飛車なところが良かった。
468名無しさん@ピンキー:2006/05/17(水) 21:50:50 ID:Ly/eJSgf
>「わざわざ、聞かないでよ……ばか!」
コレイイ。
469名無しさん@ピンキー:2006/05/19(金) 18:05:41 ID:F4h/eIYJ
>>462-466
「子供扱いしないで!」っていうお願いじゃなくて
「子ども扱い、するんじゃないわよ!」って命令系なとこに萌えた。

そしてエロもいいが
エロに突入する前の部分の方がもっと好きだ。
エロパロ板来て何言ってんでしょうか。
とりあえずワクテカしながら続きを待ってます。
470お嬢と犬1/9 ◆DppZDahiPc :2006/05/20(土) 20:52:49 ID:BqA2c7E1
(*´∀`)ノなんか思いついたんで書いてみた。スレ違いならスルーにょろ。

・前言い訳
どうやら、作中では語られていませんが。893関係っぽい。
携帯で書いたため、PCでどう表示されるかわからず。36文字で区切ってます。
読んだ後、(´・ω・`)←こんな顔になること間違いなし!

ではでは↓


――ダメだ。
 蓮は豪奢な造りの机、その上に広げたテキストに向かいながらも、心の中で
そう声をあげていた。
 ダメだ。
 自身で理解していながら、身体が熱く、顔は朱く。
 どうにもならない感情、
 どうしようにもない想い、
 決して届かない/面と向かっては伝えられないそれらを、蓮は心という包装紙
でくるみ込み。
 決して彼/あの背中に伝わらないようにする。
……だめ、
 理解しながら/していながら/それでも抑えようと必死に抵抗しながらも。
いつもの如く蓮は感情に、想いに抵抗しきれず。
 その細い指先を、堅牢な机の中――スカートの中へと滑り込ませ――そして、
白いレース模様のショーツの中へ潜らせ。その中で、更に奥へと指先を突き進ま
せる。
 実戦経験のない、蓮の隠された部分は。
 触れる指先に喜び、過敏な反応を見せてくれる。
――撫でるだけ。
 そう決めながらも、指先は奥へと進んでいき、半分ほどまで入れて。
 そこで
「…………ぅ」
 第一関節を折り曲げた。
 中が、少しだけ拡がったように感じ。
 しかし、直ぐに指は抜いた――彼が蓮の方を視たのだ。
 それでもいつもならば、表情を押し隠して、続けるのだが。
471お嬢と犬2/9 ◆DppZDahiPc :2006/05/20(土) 20:54:12 ID:BqA2c7E1
 今日はそうもいかなかった。
 彼が精悍な相好に怪訝な色合いを孕ませ、蓮へと歩み寄ってきたからだ。
 蓮は慌てて、着ているワンピースで指先を拭いながら、
「な、なに、何かあったの?」
 自分の顔を覆い隠したくなるほど動転して答えたが、烏色のスーツを着た青年
は。その様子に眉を僅かに動かした他は、気にした風もなく。蓮のような少女が
使うには豪奢過ぎる机の前に直立し。
 そうしているだけで威圧感のある双眸を蓮へ向け、
「お嬢、御加減でもよろしくないのですか?」
「え?」――蓮は林檎の様な顔のまま、彼が何を言っているのか理解できず。
反射的にそう返していた。
 加減、具合という意味なら、今直ぐベッドの中でも、トイレでもいいから。
一人きりになりたくはあるが。
 さすがにそんな事を言って。そこで何をするか、今何をしていたのか、感づか
れでもしたら――例え、彼が無口で何も言わなかったとしても。その場で死んだ
方がマシな恥ずかしさなのに変わりない。
 ならば、しなければ良いのだろうが。
 人間、一度知った蜜の味を忘れられる訳もなく。それが破滅への道筋であろう
と、進んでしまう。
 しかも、ようやく中学校に入ったばかりの蓮。
 知ったばかりの蜜の味を忘れる必要も感じず、むしろソレを肯定し、溺れてい
くように。ソレの頻度が増えていっているのに、気づくこともなかった。
「お嬢、お嬢」
 彼が自分のことを呼びながら、一瞬の躊躇いの後。肩に触れ、軽く揺さぶり。
更に名前を呼ぶ。
――ふふ、そんなに呼ばなくても聞こえてるのに。……ああそうか。
 そんなことを考えて、ようやく蓮は自分が彼との会話中に、気を失ったかの如
く。惚けていた事実に気づき。「なに」と、冷たく、いかにも私は落ち着いてい
ますと聞こえるような声音で言うと。
 彼は小さく息を吐き、安心したように――けれど、その顔色は優れない。
「お嬢、本当にどこも悪くないんですね?」
「ええ。それより、言ったでしょ。二人きりの時は、名前で呼びなさい、って」
 蓮が上目遣いに睨みつけて言うと、彼は少し困ったように身体を揺らし。
「お嬢――」
「名前で、呼びなさい」
 彼は本当に困り果て、そして諦めたのかの如く。小さく
「蓮様」
 妥協してくれるであろう呼び方で呼ぶ。
 蓮は『様』は要らないと思ったが、自分の忠実な飼い犬をこれ以上困らせて、
472お嬢と犬3/9 ◆DppZDahiPc :2006/05/20(土) 20:55:50 ID:BqA2c7E1
蓮の父親である、彼の上役に「仕事を変えてください」などと嘆願に行かれては
困る。
 彼は次期若頭筆頭であり、なにより蓮の父が今一番目をかけている。優秀な部
下であり。もしかすれば、後継となるかもしれない人なのだ。
 それ故に「変えてくれ」と頼みに行けば、二つ返事まではいかなくとも。嘆願
通り異動となる可能性は十分だ。
 だから気をつけなくてはいけない。
 彼が離れないように。
「ですが。先程から進まれていないようですが」
 一瞬なんのことか分からなかったが。
 彼の視線が、机上のテキスト/学校の宿題類に注がれていることに気づいて、
納得し。いつものことながら、彼が自分に対し、細心の注意を向けてくれている
事へ。少しの気恥ずかしさを覚えながら、
「今日は体育があったから、少し疲れただけよ」
 と空々しい言い訳をした。
 彼は疑う理由がないと言うように、「なるほど」と頷き。
「失礼しました」
 身体を直角に折って頭を下げた。
 蓮は二呼吸ほどそのままにさせ、
「よし」
 まるで犬を躾るように言うと、彼は頭を上げ。素早く元の定位置へと戻ってい
く。その背中を見ながら、蓮は満足げに口端を緩め……ふと、考えた。
 僅かな思案の後。
 その少し厚い口唇を濡らしてから、
「吾郎」
 呼び止めていた。
 彼は足を止め、その場でくるりと振り返り。
「はい」
 謹厳な彼の顔つき、厳しくありながらも、どこか寂しそうに見えるその眼。
 思わず胸を押さえたくなる程、鼓動がとくんとくんとテンポをあげていく。
 できるだけ表情に出さないようにしながらも、顔が熱く、トマトのように赤く
なっていくのを理解しながら。
「今日は体育だったの」
「はい」
「だからね……」
 言葉を切る、彼は何も言わず待ち続けている。
 飼い主である蓮の言葉を。
 20歳年下の/頭二つ分も背の低い/小さな少女の言葉、今の彼にとってはな
により重い至上の命令を、彼は待ちづける。
 蓮はもう一度口唇を湿らせてから、
「マッサージして」
 平然とした/少なくとも本人はそのつもりで/口調で言うと。
 彼は僅かな間の後、
「はい」
 いつもと変わらぬ声色で答えた。
 蓮は革張りの椅子を回転させて、横を向く。
 彼は静かな足取りで蓮の前に立ち、
「失礼します」
 頭を下げ、今度は直ぐに上げ。背側へ廻ろうとしたが。
 蓮はスーツの裾を掴み、それを止め。
「先に足を揉みなさい」
473お嬢と犬4/9 ◆DppZDahiPc :2006/05/20(土) 20:57:06 ID:BqA2c7E1
「……はい」
 彼は蓮の前に膝をつくと。投げ出されている脚をゆっくりと持ち上げ、足裏か
ら揉み始めた。
 体勢的に揉みにくいはずであろうに、彼はその分厚い手を器用に操り、優しく、
ゆっくりと。蓮の足を揉み、少しづつ上へと手を滑らせていく。
 蓮はその様子を見下ろしながら、静かに。
「靴下脱がせて」
「はい……」
 彼は揉む手を一旦止め、右足の靴下に手を掛け、いかにも馴れた手つきで紺の
ハイソックスを脱がしていく。
 蓮の滑らかな肌に彼の指があたるのをかんじながら、揉まれていた時とは違う。
生の感触に、思わず身悶えそうになりながらも、それを押し隠し。
 彼の太い指先により、靴下を脱がされていき、自身のモノながら細く白いソレ
が露出していく光景。
 脱がされるという事実。
 背側へ放り出している指先をもし自由にしても良いのなら――頭の中に邪な想
いが募っていく。
 そのせいかは分からないが、視界がまるで、水彩画に水を垂らしたように滲ん
でいた。彼がブレて見える。
 頭の中に降り積もる邪な陰の気。
 まるで頭の中にある、蓮の淫らなものを解放していくように、降り積もってい
く。
――心を、解き放つように。
 両脚の靴下が脱がせられ。
 まるで大理石で創られた人形のような、きめ細かく、白い。細すぎる御脚。
 それは蓮が護られてきた存在だということを、端的に示す清流だ。
 血と闇に塗れてきた寡黙な男が、一心を捧げ続けてきた一点の濁りも傷もない
無垢の宝石。
 彼の命では同じ秤に載せることすら赦されない、その身体に、
……一点の淀みができていた。
「これは……?」
 思わずこぼれた言葉へ、蓮は濡れた瞳を向け。
「体育の時間に、ちょっと、ね」
「……ちょっと」
 彼は蓮の指先を見つめたまま、呟く。
 蓮はとろんとした瞳を細め、
「体育祭のね、練習。走ることになったの、400m。すごい?」
「……ええ、とても」
 彼の言葉に、蓮はにへらっと頬を緩めた。
「痛いんだよ、マメって。潰れると」
「はい、見ているだけでも。とても」
 白い肌に浮かぶその痕は。肌の白さ、きめの細やかさのせいで、余計痛々しく
見える。
「……私なら、倒れてしまいそうです」
 蓮は笑いそうになったが。
 その言葉通りに彼の顔が蒼白になっているのを見て、笑いを喉へと引っ込めた。
 その代わりに、という訳でもなかったが、ある考えが蓮の頭によぎり。
474お嬢と犬5/9 ◆DppZDahiPc :2006/05/20(土) 21:11:29 ID:BqA2c7E1
 熱に絆された理性は、その――普段ならば絶対に採用しない――考えを、実行
に移していた。
 実行と言っても、なんのことはない。
 一言、命じるだけだ。
「いたいの」
「はい。今、手当を……」
 立ち上がろうとした彼の肩に、長くしなやかな左脚を乗せ、止めると。
 彼は僅かに眉をひそめ、口を開こうとした、
「だからね」
 その口の前に、親指の側面にマメを潰した痕のある右足を差しだし。
「なめて」
「…………はい?」
 蓮は挑発するように肩に乗せた左足を、彼の首にからませて近寄らせる。彼の
頬に親指があたり、僅かに痛んだが今の蓮にはどうでも良かった。
「いたいのいたいの飛んでけぇって、なめなめしてよ」
 今はとにかくそうしてもらいたい/そうしてもらうこと以外何も考えられなか
った。
 頭がくらくらしていたが、蓮は楽しそうに笑っていた。
 彼は蓮のそんな様子をみながら、黙考した後。
「……それは命令でしょうか?」
「そうよ」
「…………はい」
 彼はマメの潰れた痕を、舌でできるだけ痛まないように、そっと舐めようとし
たが。
 舌先が傷跡に触れただけで、
「――ひッ……んぅ」
 連は辛そうな声をだした。
 触れる度に、蓮は身を竦ませ、声をあげる。
 外の音から断絶された室内は、蓮の喘ぐ声だけが響く。
 蓮は舐められる度に走る小さな痛みに、脚同様細い両腕で自分自身を抱きしめ
ていた。そうでもしていなければ。腕は、手は、彼の前で見せられない行いを犯
しそうで。自分を呪縛していなければ、まるで『そうしている時』のような声を
出してしまいそうになる。
 彼は丁寧に舐めてくれている、なんとか痛まないようにとしてくれている。
 それはまるで至極の宝石を扱うように、丁寧に、優しく、抱くように愛撫して
くれている。
 愛撫されている。
 彼が私の体を舐めている/舐めてくれている。
 この姿を他人が見たらどう想うだろう?
 私たちをどんな関係だと考えるだろう?
 姫と騎士?
 少女と変態男?
 それとも変態少女と、それに付き合わされている男?
 分かりやすく。飼い主と忠犬?
――違う。
 私が、
 蓮が真に望んでいるのは、もっと単純な――
 恋人。
「いたっ」
「……申し訳ありません」
 謝り、直ぐに再開する彼を見ながら、蓮は口端をむにっと曲げ。
「血が、」
475お嬢と犬6/9 ◆DppZDahiPc :2006/05/20(土) 21:12:23 ID:BqA2c7E1
 いつのまにか、自分を抱き締める力が半分になっていた。
「そこ、血が溜まってるみたいね」
「…………」
 そんな様子は無かった。
 マメが潰れた痕に血が溜まるわけもない。
 分かりやすい嘘をつきながら、蓮は笑みを深め。
「キスして」
「……はい?」
「私の指をね、口の中に入れて良いわ。だから、もっとしっかりやって。
手加減なんかしないで」
「……はい」
 彼が親指を口の中に含むと、連は満足げに。
「うれしいでしょ、私のゆび舐めれて」
 彼は口に含んだまま頷いてみせた、その様子に蓮は鼻息も荒く笑ってみせた。
いつの間にか抱いていた/自分を呪縛するための力が消えていた。
 彼は、それが蓮の要望だろうと言うように。
 強く、烈しく、まるで傷口を痛めつけるように。親指を口の中で弄んだ。
 幼い頃、
 今の蓮と同じくらいの年の頃、させられていたように。アレを舐める要領で、
親指を弄くり回していた。
 傷口に滲む血を吸い、歯を立て、甘噛みする。
 そうするだけで、寝乱れている女のように喘ぐ蓮。
 かつて、彼の命を買い救ってくれたあの人の娘に対し、こうしていることへの
罪悪感。
 二年前までは背中を流していた間柄だった少女が見せる、一人前――いや、そ
れ以上の。魅力的な女へと変化していく、その過渡期の少女を弄んでいる征服感。
 それらがない交ぜになっていき。
 危うい所に立っていた。
 後、一押し。
 背中を押されれば、侠も、義も、信も踏みにじり。越えてはならない一線を越
えてしまう。
 それはしてはならない。
 侵してはならない一線だ。

――だが、

 親指をしゃぶりながら、頭の中ではその事で支配されていた。
 細い、折れてしまいそうな身体を抱き。
 侵されていない、いないと知っている、蓮の処女を犯し。血と精液で汚す姿が
頭の中で繰り返される。
 無毛の、或いは、柔らかな陰毛に覆われた。割れ目へ、既にたぎっているソレ
をぶち込み。涙を流し、泣き叫び――今まで護衛として侍らせていた男の本性に、
喚き散らし、暴れ。そうしても止まらない事実に、怒り狂うまだ幼い蓮を。力で
押さえつけ、抵抗をやめるまで――
「あっ……う、…………ぁ」
 そこまで頭の中に浮かべて、ようやく我に帰れた。
 馬鹿なことだ、そんなことはあり得ない、してはならない。
476お嬢と犬7/9 ◆DppZDahiPc :2006/05/20(土) 21:13:31 ID:BqA2c7E1
 彼は頭の中で繰り返した。
 そうしないように。
 そう、これは、ただの遊びだ。他愛のない遊びだ――と。
 一旦眼を瞑り、舌の蠢きを止め、速まっていた心臓の鼓動を整える。
 頭の中に張り付いた、乱れる蓮の幼い肢体を消し、蓮を襲いたくなった自分を
殺し。
 そうしている間も、短く声を漏らしている蓮に気づいて。
 彼は十分に心を落ち着けてから、眼を開き、視線をあげていき。
 思わず自分の目と頭、ついでに世界を疑った。
 僅かに視線をあげた先に、ショーツがずりおろされ、スカートがまくられ。
そこへ、ちょっとした力で折れてしまいそうな腕が、細い手が当てられ。
 蓮がしているとは思えぬほど淫らに、指先が蠢いていた。
 口から指がこぼれ落ちる。
「……お嬢」
 驚きを隠せぬまま、顔をあげ、思わず眼を抉りたくなった。
 こんなのは嘘だ、質の悪い冗談だ、と。念じてみても、なにも変わらない。自
分も、そして蓮の正気を疑いたくなった。
 蓮の秘部にあてられている手、その反対の空いている手がワンピースの上から、
揉み潰すように。まだ未発達な乳房をまさぐっていた。
 そして、蓮はまるでヤバい薬でもキマっているように。
 気だるげで、とろけていながら。ヒドくハイに、愉しんでいた。快感を、
「ひぃ……ぃぃ……ぅっん…………ひあ……」
 まるでそうしていなければ、狂しいというように、自分を犯し。
 肌は赤く、眼や口からは涙と涎がこぼれ続け、息は荒く、ぐらぐらと身体を揺
らし続けている。
 蓮と眼があった。
 彼は、思わず唾を飲み込み。
 蓮は にたり と口元を歪ませ、荒い息と涎にまみれて
「ごろー」
 彼の名を呼び。
 両脚を彼の頭に絡ませ、引き寄せ、秘部に押しつけた。
 鼻一杯に臭いが広がる。
 蓮は、
「ごろー、私の、まんまんなめな……ちゃい…………」
 それだけ言うと、椅子にもたれるようにして気を失っていた。
「…………む」
477お嬢と犬8/8 ◆DppZDahiPc :2006/05/20(土) 21:14:25 ID:BqA2c7E1
「……ぅろっくあっぷぅ――ふに?」
 蓮が眼を覚ますと、見慣れた天井がそこにあり、額が少しひんやりしていた。
 なんだろう? と身体を起こすと、それがずり落ち。掛け布団の上に、濡れタ
オルが落ち――首を傾げ。
 先ほどまでしていたことを思いだし、部屋の中には他に誰もいないと言うのに。
布団を被って隠れると。
 徐々に鮮明になっていく記憶に、顔が赤くなるのを理解し、それにより更に顔
が赤くなる。
 穴があったら入りたい。その言葉通りだと思い、「穴」という言葉にハッとし。
「ああぁぁあぁ〜〜っ!!」
 なんであんな事をしてしまったんだろうと、蓮は自責の念に狩られていると。
 それ以前に思い出さねばならない事を思い出し、布団の中から顔を出し。
 彼の姿を探したが、広い室内には蓮の他には誰も居なかった――
「……吾郎、吾郎…………吾郎っ、出てきなさい。吾郎!!」


「――呼びましたか」
 扉が僅かに開かれ、喋った。扉が――ではなく、
「吾郎っ」
 蓮は、犬ならばしっぽをばたばたと振っていたであろう、
喜びようで扉に走り、開けようとしたが。
 開かなかった。
「あ、あれ? なんでー」
 1cmほど開かれたまま、そこからピクリとして動かなかった。
 蓮が困っていると、扉は更に困ったように。
「風邪をひいてしまいまして、奥様からお嬢の部屋へは入らぬよう、言いつけら
れておりますので」
「カゼ? ふーん」
「……はい」
 蓮は少しの間、
「…………お嬢?」
 黙り続け、それからようやく。
「昨日の夜さ、私たち――」
 蓮が言い切る前に、彼は言葉を遮った。
「なにもありませんでした」
「でも……」
「なにも、ありませんでした」
「だけど……」
「なにも、ありませんでした」
「…………」
 蓮は小さくため息をついた、そういうことにしておこう。
 その方が今後には良く働くに違いない、
「ま、いいか」


〜fin
478 ◆DppZDahiPc :2006/05/20(土) 21:23:55 ID:BqA2c7E1
(´・ω・`)うん、分かってる。
なんであそこで止めたか、っていうのは。正直、俺にも分からない。


ところで、コレはここに投下して良かったんだろうか?
479名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 21:45:15 ID:gUyzpIPD
寸止め残念。でもなかなかエロかったよ。
投下するスレもここで問題ない。

途中で突然吾郎視点に変わってしまったのが惜しかった。
蓮のオナニー突入がやや唐突に感じられたので、そのへん読んでて納得できるように、
あそこは蓮視点を貫き通したほうが良かったと思う。
吾郎の逡巡は蓮視点でも描写できたと思うし。

ともあれ投下乙です。
480名無しさん@ピンキー:2006/05/20(土) 22:09:01 ID:BqA2c7E1
>>479
勉強になった。次から(あるかは分からん)気ぃつけます。
そん時ゃ本番も、頑張ります、できる限りは。
481名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 01:54:16 ID:J1UD352u
おおおGJ
お嬢萌ゆ
482名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 13:38:00 ID:p+fQ0UHd
GJ〜
ただ気になったのは文章の癖かな。
述語を最後まで書かずに文を切るってのはたまに使うとすぱっと効果的なんだけど、
それを立て続けにやってしまうとどうにも目についてしまうんだよな。
これは俺も癖で、普段から注意してるつもりだから自然と目についたんかも知れん。
483 ◆DppZDahiPc :2006/05/21(日) 16:52:08 ID:8XuuKODv
>>482
なるほど。言われて見りゃ確かに。
勉強になります。

>>481
励みになりますです、はい。
484名無しさん@ピンキー:2006/05/21(日) 23:45:09 ID:JHy2tklU
GJです。同じく文体の癖と、頻出するスラッシュ(/)が気になったけど、
こういう雰囲気、お嬢さまは好き。

あと、おみ足フェチな属性がツボにキタ(*´Д`)
せっかくだから、流行りの足こき責めしてほしかった。
485名無しさん@ピンキー:2006/05/30(火) 20:27:35 ID:BaAXN0v3
あげ
486名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 01:34:24 ID:8TyORxCy
 深艶なる夜の支配者たる吸血鬼にとって、血を分けた血族は子であり、兄弟で
あり、家族であり、恋人であり――僕だ。

「我慢ならない?」少女が言った。
 その言葉に若い女は、小さく身悶え、痙攣するように頷いていた。
「はッ――ぁ、あう、あ…………ううっ……チを……血をください」
 スカイブルーの瞳は熱っぽく潤み、口唇の端からは涎がだらだらとこぼれてい
る。顔は真っ赤に染まり、動悸は激しく荒々しく、その度に胸が脈打つ。
 生まれ変わったばかりの身体は、触れるもの全てが快感にかわりそうで、全て
に陵辱されている錯覚に陥る。
 今まで抱いてきたどの男よりも巧みに、血――少女の一部は。中から女を犯し
てくる。
 女は少女により、今日転(吸血鬼)化した。
 少女――真祖混沌の血を受け継ぎし、破滅を免れし者の始祖でもある、既に名
を失い。代わる名を世界から拝謁した大吸血鬼は。どこまでも卑猥に、扇情的に。
「血がほしい? ならもっと淫売らしく、イヤラしくしなさい」
 少女はくすりと笑み。
「そしてこう言うの――」
 女は言った「保守」
487名無しさん@ピンキー:2006/06/01(木) 01:40:46 ID:645vm+ro
―――って保守かよ!!
488名無しさん@ピンキー:2006/06/06(火) 20:27:06 ID:nWGoa5Y7
ツンデレお嬢の続きマダー?
489名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 08:51:08 ID:C06sAcgz
続けてみる


 言ったものの女は
「――い、意味が分からないんだけど」
 そう訊かずにはいられなかった。
 少女の右眉が跳ね上がり、整った顔立ちが怒色を示す。――女は本能的に危険
を察し、身を竦ませていた。
「わからないの?」少女の言葉は冷たい。「吸血鬼の本質とは肉ではなく、血。
血なのよ」
 月明かりの元、歌うような少女の声が言う。
「あたし――いえ、あたしたちはいくら肉体を滅ぼされようが、血さえ遺っていれば甦れ
るの」
「…………はあ」
「だから、あたしたちにとって『保守』って言葉は。なにより重く大切な言葉なのよ―
―わかった」
「あ、……はい」
 女の返事に少女は満足したように、にへらと頷き。
「ならばよし」



――満足したからいいけど、やっぱり意味が分からないなぁ……
 そう思う転び立て吸血鬼。
490名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 20:57:41 ID:zmnYffqb
ハッピーエンドとバッドエンド。
どっちがいい?
491名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 21:22:50 ID:evtjSCZ6
萌えるほうで
492名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 21:28:53 ID:Y28AIwOH
個人的に八方丸く収まる展開が大好き。
読むならば気持ちよく、気分よく終われるに越したことはない派。
493名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 21:44:43 ID:/zyWlzVy
納得できる最後ならどちらでも可
494名無しさん@ピンキー:2006/06/07(水) 21:54:11 ID:zmnYffqb
了解。参考になった。
誰も望んでないかもしれんがお嬢とへたれの続きを書いてる。もうしばらくしたらできると思うので、そのときは世話になりまつ。
495名無しさん@ピンキー:2006/06/08(木) 00:01:29 ID:udqaal28
がんばれ!
496名無しさん@ピンキー:2006/06/09(金) 23:58:49 ID:EGXwbs66
今途中でとまってる作品全部に期待中
497名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 19:29:18 ID:G+Q9FihM
お嬢様(ロリ)と従者の関係が描かれてるお勧め小説・マンガってある?
エロ非エロ関係なく。

個人的には桂明日香氏の「螺子とランタン」。
ツボに入りすぎてヤバい。私のバイブル。
498名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 22:13:53 ID:ALiigFh4
古典だけどエミリー・ブロンテの「嵐が丘」
ヒースクリフが主従萌えの原点だったなぁ
あーまた読みたくなってきた
499名無しさん@ピンキー:2006/06/10(土) 23:41:45 ID:/e+0MTXM
「春琴抄」(谷崎潤一郎)に決まっておる。
500名無しさん@ピンキー:2006/06/11(日) 20:48:36 ID:sD3kAUUi
>>497
確か血+のエースの漫画描いてる人だよね?
絵が好みなので見てみようかな・・・
すれ違いゴメン
501名無しさん@ピンキー:2006/06/13(火) 12:18:19 ID:s9aq3Fnr
>>498-499
dクス!今度読んでみるよ。

>>500
そう。ただ、血+に比べると絵柄が若干柔らかくなってる。
基本ラブコメだし、絡みもほとんど無いけど、かなりお勧め。
502名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 00:19:13 ID:h8WEJofY
>>497
新井理恵の「うまんが」「ろまんが」オススメ
元々うまんがは違う女の子が主人公だったのだが、
人気出たのかろまんがから主人公が従者&お嬢様に変更になってます。
ただしお嬢様は小学生だけどダイナマイトバディw
個人的にすごいツボ。
503名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 00:37:40 ID:2nY+L/pD
こんな流れなので俺も聞いてみよう

ロリじゃなく(でも高校生くらいので)大人しめのお嬢様とかお姫様、ってのはなんか無い?
個人的にツンデレより従順な女の子に萌えるもんで
504名無しさん@ピンキー:2006/06/15(木) 14:49:43 ID:1w6c2hyQ
>>497
ギャグコメディでも良ければ、加藤四季の『お嬢様と私』もオススメ。
ただし、お嬢様なのは1巻くらいだったかと。
505名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 01:07:31 ID:7PH6cSIr
前彼女のウチで読んだツンデレお嬢様の漫画がよかったなぁ。
少女漫画で忍者のやつ。
タイトル忘れたorz
誰か知ってる奴いる?
506名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 01:13:26 ID:wKy+a56r
てるてる×少年かな
507名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 01:16:36 ID:jC2R6wdo
お嬢様と従者で忍者つったら忍者飛翔しか出てこない俺はもう年ですか?
508505:2006/06/16(金) 11:19:15 ID:7PH6cSIr
>>506
サンクス。勇気出して買ってみる。

>>507
すまん、俺には分からないw
509名無しさん@ピンキー:2006/06/16(金) 15:21:50 ID:t0s90a9y
忍者飛翔はこのスレに来てる人向けな作品だよね。
いまだにお嬢様の風呂上り後従者が服を着せているシーンが頭から離れないです。
510名無しさん@ピンキー:2006/06/18(日) 02:59:59 ID:SpcKm09w
話題の忍者飛翔読んでみた。
面白かったよありがとう。

他にも住人のオススメあったら知りたいなあ
511497:2006/06/19(月) 19:49:59 ID:obMBggsF
>>502>>504
ありがてぇ…ありがてぇ!
ここの住人親切だなぁ。
512名無しさん@ピンキー:2006/06/20(火) 22:36:31 ID:/eaxpgv/
ガイシュツかも知れんが、川原泉の「笑うミカエル」はなかなかオススメ
和音さんはあんまりお嬢様じゃないが、若月さんとの関係は激しく萌える
文庫版二巻の二人の話が大好きだ

それに感化されて現在一本執筆中
出来上がったら投下しにくるよ ノシ
513名無しさん@ピンキー:2006/06/21(水) 00:57:00 ID:Lmwjs8wE
銀英伝の金髪&赤毛の小僧と金髪の姉
直接主従ってわけでもないし、ましてや片方は姉弟なわけだが皇帝に奪われた姉を慕って帝位奪還を誓うあたりとか結構萌えた
いざ皇帝の座を奪ってみたら、姉にやんわり拒絶されたりしたとことかも切なくていい感じです

書いてて思い出したが、傷心のラインハルトを秘書のヒルダが思わず慰める行もいいなあ
お嬢様に仕える従者ではないが、雰囲気は似た感じ?

514名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 20:12:16 ID:Jf+yy9Do
なんだよ!俺好みのスレあんじゃん!
よし、今からツンデレお嬢様と使用人のSS書いてくる
515名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 20:30:34 ID:jsW8bQot
あっそ
516名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 21:30:40 ID:pp1e2+yy
>>514 待ってる
>>515 墓参りでもしてろ
517名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 21:58:18 ID:Jf+yy9Do
別スレ投下作品と平行して書くので時間かかるかも
518名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 22:03:46 ID:CbDrw2Rq
いままで出たお勧め漫画見ながら待ってます
519名無しさん@ピンキー:2006/06/22(木) 22:09:04 ID:o48WzOH8
>514
首長くして楽しみに待ってるから、がんがってくれ。

笑うミカエル大好きなので、>512の投下もwktkしながら待ってる。

ジュビロの、からくりの君も良いな。
従者(下忍)と姫。作品自体も微エロだし。
グロ描写も多いがw
520名無しさん@ピンキー:2006/06/23(金) 00:36:12 ID:w0iEsOn0
>>512
笑う大天使に感化か。いいね〜。
今度映画も公開されるらしいし、まさに旬だね。
作中でアンドレ×オスカルに例えられてるように、
従者とお嬢の王道だな。
521名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 20:44:25 ID:nmwieYZ2
圧縮が心配なので書き込んどく。
522名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 21:27:07 ID:o8EEeikd
同じく保守。そう遠くない先に紅茶のお嬢様の続きが来るそうです。
523名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 22:36:11 ID:1IzHke03
>>522
ktkr

ろまんが面白かった。
保管庫にあったパロまで読んじゃったよ。
まだ出てきてない主従で好きなのは、
HELLSINGのアーカードとインテグラかな。
吸血鬼と伯爵はヨイ。
524名無しさん@ピンキー:2006/06/24(土) 23:14:59 ID:qogITQMc
カゲトラとかいう漫画はどーよ?
姫と忍者だけど現代もの。あんま読んだ事ないんだけど。
525名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 01:50:31 ID:9KgLu5vB
あーあれね。
モロそれ路線っぽいけど。

途中で連載雑誌が変わってからお目にかかってない。
何に移ったんだっけ?
526名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 02:49:07 ID:5cBjYah+
設定は思いつくが核だけの技量が無いぜorz
527名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 11:03:24 ID:GFBRGts5
>>526
設定だけ書き込んでみるとか
それを気に入った職人さんが書いてくれることを祈って
528名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 12:46:29 ID:A8FXgh5t
>>524
読んでみた…
まだ一巻しか読んでないけどただのラブコメにしか見えない。主従分が足りない。
主観はいりまくりで言わせてもらえば、イマイチかな、と。

>>526
設定思いつくなら、その次にセリフ。
そのセリフを埋めるように心情、情景を描写していけばSSになる。
まぁだれにでも初めてっていうのがあるから、これをきっかけに職人への道を歩んでみては?
529名無しさん@ピンキー:2006/06/25(日) 20:47:17 ID:iWixJ8JV
回想で設定をさらっと流してしまうという手も。
530名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 04:12:49 ID:YZxbBdxl
クレヨンしんちゃん映画版の「戦国大合戦」の廉姫と又兵衛に萌えた
自分、歳の差カップルも好きなんで、萌えすぎて転げまくるくらいツボだった
本編はああいう結末だったけど、おじさんの奮闘が認められて
廉ちゃんが降嫁する事になった幸せな未来とか夢見たい
妄想が現実になって大興奮の余り、「姫!姫!姫ぇ!」しか言えないおじさんとか
片想い時代の罪悪感を感じながらのソロプレイwとか萌える
531名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 07:06:48 ID:HLVozfRR
その映画なんか評判いいと思ったら、皆そこに萌えたんだろうか?
今度見てみよう。

古典中の古典だけど尾崎紅葉の「金色夜叉」がおすすめ。
学者のお嬢さまと書生の恋。
宮が結婚の重大さを知らずに
無邪気に「こうすれば皆幸せになれるのね♪」と嫁に行くところや
裏切られたと思って宮を憎む寛一の頑なな態度がいい。
未完だけれど最後のほうは勢いがあってすごくドキドキする。

青空文庫でも読めるのでお気軽にどうぞ。
ttp://www.aozora.gr.jp/cards/000091/card522.html
532名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 10:38:23 ID:nlPjG9OD
戦国大合戦は萌えるし泣ける
533名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 19:48:56 ID:UNzb1+BX
あれは萌える映画じゃないな。個人的には燃えと泣きの映画だ。
534名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 19:51:40 ID:rAlXn1+F
クレヨンしんちゃんがPTAに嫌われる理由が未だに理解できん。感動できるのに。
535名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 19:56:04 ID:guay2eJu
うん、ありゃいい映画だった
しみじみとくる話だった
ただしんちゃんである必然性はないな
536名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 22:33:52 ID:YIeFkeQQ
住人大絶賛だなぁ>クレヨンしんちゃん
今度レンタルしてみよう…。
537名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 22:38:32 ID:I0RNetB1
クレヨンしんちゃんの映画なら「オトナ帝国」
で大泣きしたよ。
スレ違いスマソ。
538名無しさん@ピンキー:2006/06/26(月) 23:27:14 ID:bx04tl66
しんちゃんのアニメは子供の頃から受け付けなかったが
友達に誘われて見に行った映画は感動した覚えがある。
そんなこんなで今からDVD探しに行くノシ
539名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 01:37:43 ID:g5GdlK40
紅茶のお嬢様の職人さんの別作品は他のスレで読める?
もっと読んでみたいです。
540名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 01:53:26 ID:1NVDsAxO
他所でだったがご本人が公開されていたので大丈夫かな?
とりあえず個人的に代表作と思うやつの保管庫。
ttp://uni.lolipop.jp/Rock_Frame.html
あとはHOMEに飛んで、そこからもいろいろ。

最新作は気の強い〜スレで投下されてた。
541名無しさん@ピンキー:2006/06/27(火) 20:07:53 ID:g5GdlK40
>>540
ありがとう。これから読みにいってきます。
542名無しさん@ピンキー:2006/06/28(水) 21:51:12 ID:i7MmRCBq
このスレってさ、ベルセルクのファルネーゼとセルピコみたいな関係もストライクゾーン内なのか?
543名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 02:56:29 ID:iC8yzJn5
当 然
544名無しさん@ピンキー:2006/06/29(木) 16:32:40 ID:xNDW4c7e
>>537
オトナ帝国は自分も大泣きした
だがそれ以上に敵役二人の関係が気になって仕方なかった
主従ではないけどいろいろと妄想できて萌える
545名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 14:53:46 ID:AUFnvtJ6
>544

ああ、あの2人なかなかイイ味出してたなあ。
546名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 17:11:38 ID:F4VDddkg
前に誰か書いてたが、歴史ものだと司馬遼太郎の韃靼疾風録はなかなかよかった。
従者の主人公の振り回されっぷりが微笑ましい。
547名無しさん@ピンキー:2006/06/30(金) 17:48:55 ID:P1tqSJQB
>>546
日本に漂着した満州のお姫様を故国に送り届けるため、
サムライの庄助が命をかけて海を渡り、大陸での冒険を
するという話なんだけど、このお姫様(最初は言葉も通じない)が
ツンデレ。もう、ガチツンデレ。で、従者はサムライ。
主命は絶対! 命をかけまくりの格好よさ。オヌヌメ。
548名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 03:44:59 ID:U0pQ5yBD
男の主人と女従者はどこのスレ?
従者がメイドでもなく、戦士でもなく、まして男装もしてない場合
549名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 09:23:41 ID:lZub4ASY
ファンタジー総合とか。
550名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 14:22:34 ID:TqFXzuEn
>>548
主従だからここでもいいんじゃない?
男女どちらが主かまでは明記されてないし。
551名無しさん@ピンキー:2006/07/01(土) 15:56:27 ID:zmOBfNp4
>>550
>>1

スレタイにもお嬢様と書いてあるから、ここは女主人専用なんじゃないのか
男が主人じゃかなり趣向が変わってしまう気がする
552名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 01:09:16 ID:QOJlceuR
女主人ってところがミソだろ ココは。

しかし興味があるので書いたら教えてほしい、俺の我儘。
553名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 01:18:34 ID:p4D8JK9L
>>547
ガチというほどツンデレだったかな?しかし非常に威厳はあったし愛らしくもあったよね。
そんな姫を護り本国に送り届けることが藩主からの主命、それに従う以上姫を愛することはできない、
しかし姫を妻と言わないと姫を護れない状況に、しかし手を出すと主命に反する、以下ループ…
姫の奔放さと主人公の葛藤は読んでて微笑ましかったよ。
554名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 01:18:52 ID:blRVw+ei
おれもれも
555名無しさん@ピンキー:2006/07/02(日) 01:19:59 ID:blRVw+ei
ああリロードしてなかった。

>>548
俺も書いたなら投下先を教えてほしい。
556名無しさん@ピンキー:2006/07/04(火) 23:27:44 ID:F+m0PUey
>546 >547 >553
韃靼疾風録、読んでみたよ
薦めてくれてテラサンクス かなりツボった(*´∀`*)
557名無しさん@ピンキー:2006/07/07(金) 23:27:32 ID:F80UcTYb
神は夏バテなのだろうか


ほしゅ
558名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 01:16:36 ID:W90MAKWm
「しのぶ。忍」
名を呼ばれたことに気づくと、彼は自分の主に近づいた。小さな小さな、お姫さま。彼にとって少女こそが唯一の存在。
「お嬢さま、どうしました?」
闇のベールが世界を覆っている。外はしとしとと涙していた。月は隠されている。仄かな青と淡いオレンジの光だけが、ふたりを照らしていた。
「しのぶ。眠れないの」
「またですか?」
少女は唇を尖らせて、仕方がないじゃない…とこぼす。そんな幼さの残る行為が愛しくて、彼は知らぬうちに微笑んだ。
少女の額をなでてやる。柔らかな髪が気持ちよい。
「眠れるまでここにいてあげますから」
「手ぇつないでくれる?」
「ええ」
差し出された小さな手を握る。柔らかな手。ほのかな暖かさ。雨の音。愛おしさが募る。
少女は安心したように目をつむった。
「おやすみ忍」
「おやすみなさい、お嬢さま」




そんなふたりによって保守。
559名無しさん@ピンキー:2006/07/13(木) 01:38:25 ID:wlOoi1Wv
E☆2っていう雑誌の羊くんならキスしてあげるは既出?
560名無しさん@ピンキー:2006/07/15(土) 20:52:19 ID:jnJJ67vh
ほっしゅ
561名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 01:48:24 ID:yCQXzXcs
そういえば遠藤淑子って何気に主従もの多いなあ…。
「マダムとミスター」シリーズ
「狼には気をつけて」
「エヴァンジェリン姫」シリーズ
「ぐーたら姫」シリーズ
どれも大好きだ。
562名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 15:01:56 ID:MCsYANoU
>>.497
釣られた事に後悔はしていない
BLOOD+読んでて好きだからつい買ってしまった
ウハー(*´Д`)ハァハァ
563名無しさん@ピンキー:2006/07/16(日) 15:02:43 ID:MCsYANoU
すまんアンカーに点入ってたw
正しくは>>497
564名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 19:43:09 ID:4fye0Rsy
これってあげなくても書き込むだけでいいの?
565名無しさん@ピンキー:2006/07/17(月) 23:23:46 ID:Nz+3ibYT
>>564
うん、OK。
566名無しさん@ピンキー:2006/07/21(金) 12:46:35 ID:SDyGnDZO
保守するよー
567名無しさん@ピンキー:2006/07/22(土) 21:47:43 ID:kTlmr1+o
あげ
568名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 06:28:56 ID:6qX9c20m
エセ平安モノの人はもう書いてくれないのかなあ・・・

さっきココ初めて読んでツボったから続きを死ぬほど読みたいのだが・・・
569名無しさん@ピンキー:2006/07/23(日) 21:11:18 ID:6LTVX34k
わたし待つわ
いつまでも待つわ

たとえこのスレが底辺這い擦ってても

待つわ
いつまでも待つわ

いつか神々がSS書き込む日まで
570名無しさん@ピンキー:2006/07/24(月) 18:57:12 ID:fbGdfon/
プレアムブルムの続きが読みたいなあと言ってみる
571秘密 1:2006/07/25(火) 16:57:11 ID:tayPJDZg
SS投下します。
お嬢様の弱みにつけ込む鬼畜気味従者。




―秘密の時間――

―どこかの街の―――とあるお屋敷で―――

―少女は彼のために――その華を開かせる――


「お休みなさいませ…麗葉様」
麗葉と呼ばれた見目麗しい少女は夜着を纏い鷹揚に頷く。
丁寧なお辞儀をして侍女達が部屋を次々と退室してゆく。
侍女達を見届け残された彼女はそっと寝台を抜ける。
ガウンを羽織ると足音も立てずテラスまで歩いていきガラスのはめられた扉を開け放つ。
「いつまでそこに居られるつもりですか?貴方も早く私の部屋から退室なさったらいかがです」
麗葉は冷えた瞳を外側の壁に背をつけた青年に向ける。
屋敷の令嬢に睨まれた青年は腕を組んだまま不敵に口元を歪める。
「ここは部屋の外ですよ?」
「それでもここは私の寝室のテラスではありませんか!ならば私の部屋と同じでしょう!?」
そこで初めて彼女の顔に赤みが走り怒りを露わにする。
白い頬に血の気の昇った彼女の顔は美貌が損なわれることなくそれどころか華が開いたように美しい。
青年は彼女の顎を掴みその顔をじっくりと見つめる。
怒りの気配をいっこうに隠そうとしない彼女の引き結んだ唇を半ば強引に奪う。
「…っぅん、…んっ…」
一時の間、貪られた唇が離されると即座に平手が青年の顔に飛んでくる。
「き、如月……この不埒者!」
打たれた彼・如月は特に気を悪くしたでもなく、熱の灯った頬を手の甲でさする。
「俺にそんなに邪険にしてもいいんですか?」
興を得たように彼は目を細めて麗葉をのぞき込む。
はっと息を呑んで麗葉は憎々しげに唇を噛んで顔を背けた。
572秘密 2:2006/07/25(火) 17:02:43 ID:tayPJDZg
闇の中で蠢く肢体。それは折り重なり絶えず湿った熱を外気に晒している。
白くきめの細かい少女の身体を男が貪っている。
「…あっ…ん…、はぁっ…」
「まったく、お身体の方だけはお利口になったようじゃないですか…」
潤みの帯びた勝ち気な瞳で麗葉は自分にのしかかる男を睨む。
彼女の両足の間には如月の身体があり閉じられないようにしてある。
「は、はやく済ませてしまって…!」
彼女を己の下に組み敷いた如月は柔らかな胸の膨らみに唇を落とす。
「…ひっ」
「……お断りいたします。外で貴女がお一人になるまでずいぶん待たされたのですから、
その分は貴女のお身体で償って頂きます」
そう言って彼は麗葉の乳房の尖端を舌の先で転がした。口をすぼめて吸い上げれば
悲鳴に近いような息の音が麗葉の唇から漏れる。
それを見て如月は薄い唇に笑みを刻み込む。
「じっくりと堪能させて頂きますよ」
「いやっ…、ぁあっ……」
如月は熱く熔けるような彼女のそこに己の欲望を宛ったままそこを蜜を絡ませるようにして擦りあげている。
いつそれは入ってくるのかわからぬ状況はかえって彼女の恐怖と其処に潜んだ興奮を煽らせる。
「実にお可愛らしいですよ…麗葉様」
麗葉はその声音に彼の暗い情念を感じてぞわりと肌を粟立たせた。
如月の冷えた手が麗葉の内側の腿をなで上げる。繊細な指使いで湿っている場所を暴いていく。
彼の指先が麗葉の敏感な部分を擽る。
執拗なその刺激に彼女自身認めたくはないことだが耐え難い疼きが麗葉の身体の内を駆けめぐる。
「ふぁ……あ…、きさ…らぎ…」
「どうしました?」
麗葉の呼びかけに如月は悪魔の誘惑のように優しげに応える。
「お願い…」
麗葉の可憐な唇が泣き出しそうの震えている。
「いつもお教えしているようにちゃんとお願いできますでしょう?」
気遣うような声音と裏腹な残酷な言葉に泣き出してしまいそうな麗葉は屈辱を必死で顕わすまいと目をきつく瞑る。
「…い、いれて…中に挿入して下さい…」
瞑ったままの瞳から一筋の屈辱の涙が零れる。それを如月が舌先で追う。
やがて彼の舌は麗葉の涙の根源である目蓋、雫の絡まる睫毛も舐めていく。
「如月ぃ!」
堪えきれず麗葉は彼の髪の毛をいささか乱暴に引っ張る。
「…っ、痛いですよ麗葉様。まったく堪え性のない方だ」
そう言いながらもようやく如月は麗葉の願いに応えて彼女の腰を掴む。
麗葉は屈辱にすすり泣きをしながら如月に身体を任せる。
「入りますよ…麗葉…様」
573秘密 3:2006/07/25(火) 17:04:38 ID:tayPJDZg
「ひぅ…っ」
ず…ずぶ…
彼の腰が沈みはじめると麗葉のつま先がぴくっと震えた。
かまわずそのまま如月は彼女の花芯に己を深くすすませる。
「…ぁ…あ…きさら…ぎ…ぃ……っ」
麗葉の鈴を鳴らしたようなか細い声が如月の耳朶を震わす。
出迎えた時とは比べ物にならないほど甘い麗葉の吐息が彼の胸を擽っている。
「…はぁ…少し…締めつけすぎですよ…いい子ですから、緩めて貰えませんか?」
「…やぁっ」
幼子をなだめるような男の口調と駄々っ子のような少女の声。
実際にはそれと裏腹な淫靡な光景が部屋では繰り広げられていた。
「無茶をして、この前の朝のように起きあがれなくなっても知りませんよ?」
耳を舐められていた麗葉はその言葉に目を見開く。
「やっ、…そんなの…ォ、困るわ!…明日は海外からお父様が帰ってくるのよ!」
「そうですよ…お出迎えの準備がありますから寝てることはできませんね」
如月が麗葉の様子を見計らって抽送を開始する。
麗葉は彼からもたらされる感覚に震えが止まらないでいる。
異物が麗葉の内部をまるで我が物のように傍若無人に荒らしていく。
「…くぅ…ん、あぁっ…、はぁぅ、…あん…」
「お辛くはないですか…?」
如月が突き上げながら聞いてくる。
それは一種の義務のようなものだと麗葉は思っている。
「つ、辛いって…いったら…あっ…止めて、くれる…ンっ…とでも?…」
「いいえ」
即答して答える彼にやはりと思った。
「…んっ…ぁあんっ…はぁんっ…いつか…お父様に…言いつけて…やるわ…」
ふっと息がかかる。如月が笑ったのだ。赤く色づいた耳元に囁くように唇が寄せられる。
「できないでしょう?」
「んっ…んっ…そんなこと……ひゃぁん」
体の重みをかけてぐりぐりと如月の怒張が奥にねじ込まれる。
「お忘れですか?そうなれば…私も貴女の秘密も、貴女のお父様にばらすことになるのですが…」
彼女は喘ぎながら弱々しく首をふる。
「…はぁん…そんな卑怯よ…ぁ…あ」
「そうですよ…私は狡いんです…いい加減わかったでしょう」
汗が二人の身体から混じり合って滑り落ちる。
熱い息が何度となく絡み合う。

574秘密 4:2006/07/25(火) 17:06:43 ID:tayPJDZg
「あっ…あんっ…はぁっ…如月…もう…私……あぅぅっ」
と、そこで麗葉の身体が痙攣し彼女は達してしまったようだ。
だが如月はいまだ急速も与えず更なる高みへと彼女を追い上げる。
「…ふ…ぁあんっ…ひゃぁっ…だめ…休ませて…あぁん」
悦楽に狂わされた泣き顔はどこかあどけなさを彼に感じさせていた。
華奢な少女の身体はいまや男の情欲をひたすらに受け止めて可哀想なくらい震えている。
ぶつけられた強い衝撃に肉の薄い細い脚が跳ねる。
柔らかそうなお椀型の乳房が上を向いて惜しげもなく晒されている。
そのすべてが如月の情欲をどうしようもなく駆り立てた。
狭い内部がより窮屈になった気がする。
「はぁあんっ…如月…もうこれ以上…は……あぁ……だ…だめぇっっ!」
きつく締め上げられて射精感が限界に近くなる。
如月の額から汗が零れて麗葉の肌に玉をつくる。
「…は…っ……共に…昇りつめましょう…」
熱情に浮かされた声を吐く。
そして如月は荒々しいまでに麗葉の身体を突き上げた。
「…はぁぁンっっ…あっあっあっ…あああぁあ…あんっあんっっ…」
その瞬間、快楽に溺れきった麗葉は雷が落ちたかのように裸身を痙攣させ…
「…っく」
「……あ…あぁああーーーー―――」
彼女の内部が怪しく蠢き如月は堪えきれずその中に熱い情を叩き付けたのだった。
たおやかな白い腹の底で男根を銜え精を絞る少女の様を如月は淡々とみつめていた。


「お父様、お帰りなさい」
翌日、麗葉はにこやかな笑みを称えて父を出迎えた。
穏やかな性質と厳格な雰囲気を併せもつ初老に近い風貌の紳士が麗葉の父だ。
「おお、麗葉…ただいま。如月、何か家で変わったことはなかったか?」
父が如月に目を向ける。麗葉もはっと食い入るように彼を見つめる。
そんな彼女を瞬きにも満たない間一瞥すると「変わりありません」と簡潔に答えた。
瞬間麗葉の肩から力が抜ける。
「お父様…お茶を煎れて差し上げますわ。あちらでお待ちになってて」
彼女はできるだけ平静を装いその場から離れた。
575秘密 5:2006/07/25(火) 17:10:28 ID:tayPJDZg
麗葉が父のためにお茶の準備をしていると誰かが入ってくる。
「お手伝いいたします」
「北都…」
麗葉の表情が自然と柔らかいものになる。
彼女の幼なじみであり乳兄弟でもある北都。
麗葉の乳母の息子で幼い頃から屋敷に出入りし幼い頃は麗葉の良き遊び相手であった。
成長した今は屋敷の使用人として働いている。
今でも仲の良いことに変わりはなく暇を見つけてはこうして麗葉の元へ顔をだす。
麗葉にとって彼は幼なじみ、乳兄弟というだけでなく…この世で最も大切な人でもある。
「麗葉様?」
彼女が難しい顔をしていたからだろう…北都は顔を傾け心配そうに覗きこむ。
麗葉は何でもないと口の端を持ち上げて首を振る。
「…様は要らないと言ったでしょう?」
そんな自身の言葉に気恥ずかしさを感じながら傾げた彼の顔に唇を寄せる。
「…ん…」
口付けを交わしながら背中に彼の腕が廻されてすっぽりと抱き込まれる。
優しいぬくもりがたまらなく嬉しい。
愛しい人…愛しい時間…

――彼のためなら…彼と一緒にいるためならたとえどんなことでも堪えてみせる。
576秘密 6:2006/07/25(火) 17:12:49 ID:tayPJDZg
父に茶を煎れて少し会話をしてから部屋を退室する。
廊下の角を通り過ぎるところで何者かに腕を掴まれる。
「…如月!」
驚き見上げれば憎い男の顔があって麗葉は厳しく顔を歪めた。
「おや…先ほどの北都の時とはずいぶんと対応が違いますね?」
「いやらしい男!見ていたのね?!」
その様子に如月は鼻先で笑った。
「図星ですか」
かぁぁ…と麗葉の顔が羞恥に染まっていく。
腕が上がるが受け止められる。
か細い腕ではとても男の力に対抗はできない。
壁に押しつけられて悔しげに拳を握る。
首筋を如月の舌が這い唾液の道筋を残す。
「…やぁっ…」
「約束しましたよね…貴女と北都の関係をばらされたくなければ私に従うと」
麗葉はこれまで如月のこうした行動を許せず何度父に屈辱をうち明けようかと
迷ったことか…だがそうなれば如月もまた北都との関係を父に話すだろう。
如月は若いながら器量が際立って良く父の信頼にも厚い。
その彼に関係を父へばらされればその時点で北都は屋敷を追い出されるかもしれない。
そんなことになるくらいなら…!
「例のお時間にお会いしましょう…」
そう囁き彼が手を離すと麗葉はその場に力無く崩れた。

――だからこれは愛する人との関係を続けるためには受け入れるしかないのだ。

それがその愛する人への裏切りだとわかっていても。
麗葉の頬に透明な雫が滑って零れた。


「入って…」
「遠慮なく」
夜の帳がおりて静かな寝室に湿った熱がこもる。
二つの息遣いが艶めかしく空気を震わす。
いつか…すべての秘密が明るみにでることになったらどうなるだろう。
北都も如月もこの屋敷をでてゆくのだろうか…
北都はこの裏切り行為を知ったら私を軽蔑するのだろうか…
如月はやはり笑って立ち去るのだろうか…
その時は私はどうなってしまうのか…
「…ぁあ…」
やり場のない吐息が麗葉の唇から虚しく吐き出されたのだった――。



秘密・終
577名無しさん@ピンキー:2006/07/25(火) 17:24:27 ID:yfLeAbNe
神キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ ッ!!!!!

578571:2006/07/25(火) 23:04:53 ID:tayPJDZg
>>577
読んでいただき感謝です。まさか神とまでいってもらえるとは!

一応続く予定です。
できたらまた投下したいと思います。
579名無しさん@ピンキー:2006/07/25(火) 23:55:21 ID:mRnqBeiv
鬼畜従者萌え
楽しませてもらいました。次回もあるようで楽しみにしています。

話は別だけど騎乗位であんあんするお嬢様が読みたいでつ
どなたかずうずうしいお願いだけど神様願い
580名無しさん@ピンキー:2006/07/25(火) 23:57:12 ID:oNX9HkzS
超GJ!!
これは激しく萌える展開ですね!
続きwktkしてます。

お嬢さまの名前はレイハさまでいいんでしょうか?
581571:2006/07/26(水) 15:59:54 ID:5qAsCgoh
>>580
はい。レイハさまでおk
582名無しさん@ピンキー:2006/07/26(水) 22:47:22 ID:LC0qTPKN
下半身丸出しで身動きとれんように縛られた北都きゅんの目の前で
如月に凌辱される麗葉お嬢様……
いかん、妄想してしまった…orz
583名無しさん@ピンキー:2006/07/27(木) 00:31:16 ID:o8VTLb0e
自分は如月と麗葉お嬢様が>>579さんに影響されて気上位でやっているところを
北都に見られているのを妄想してしまった…orz
584名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 08:12:05 ID:QuqlbmyF
神々の次の投下を願いつつ保守
585名無しさん@ピンキー:2006/07/28(金) 22:11:28 ID:z6+8jqZe
神キター!!!
めちゃくちゃ萌えました。
>583設定とかイイ!!
続き激しく期待しております。
586名無しさん@ピンキー:2006/07/29(土) 07:06:22 ID:JQ7vF/t4
乱取オールの小さいのに大きい54さんは激しく萌だ。
マイナー過ぎるか…
587名無しさん@ピンキー:2006/07/30(日) 01:35:14 ID:QNYAkOfj
>586
うん、彼女はいいよな。
姫と65もいい具合に萌える。
588秘密U・1:2006/07/31(月) 00:02:59 ID:8/QIrUo8
秘密の続きを投下します。
今回は鬼畜気味従者如月と若干鈍感気質北都との対比ということで



―――こつ、こつ

幾分控え目な感じで扉は叩かれた。
北都は脱ぎかけていたシャツに再度腕を通す。
これから床に就こうとしていたところだった。誰だろうと扉に手を掛ける。
「今、開けます」
かちゃ、と音を立てて扉を開けると薄い闇の中にぼんやりと人影が浮かび上がる。
そこに立っていたのはしどけなく夜着だけを纏った少女。
「――麗葉様…?」
少女は彼が扉を開けると儚げな笑みを浮かべた。
北都は驚きに目を開かせとりあえず部屋の中に招こうとすると彼女は首を軽く振った。
「北都…少し外にでませんか?」
「今からですか?」
突然の訪問に唐突な要求とで戸惑いながら訊ねるとこくりと目の前の小さな頭が動いた。


「ごめんなさい…もしかして就寝中だったかしら?」
「いえ、大丈夫です。それよりどうかされたんですか」
夜着のままだった麗葉は肩に北都の上着を借りて掛けている。
その麗葉は顔をどことなく曇らせながら北都の横を歩いている。
歩くたび彼女の髪が夜風に揺れて微かな甘い匂いが北都の鼻腔を擽る。
「理由がなければ会いに来てはいけない?」
「いいえ、そんなことは…。でもいつもよりお元気がないようですから」
心配になった北都にくすっと麗葉は笑った。
月のあかりが彼女の髪を縁取り淡い光り弾かせている。
「あなたがそばに居てさえくれれば何があっても…私は平気です」
麗葉は頭を北都の胸に預けてくる。
そんな彼女に北都も静かに細い肩を抱く。
「ねぇ…?」
心許なく揺れている彼女の声。
「このまま二人でどこかへ行ってしまわない?」
彼のシャツを掴む微かにその手は震えていた。
「麗葉…?」
「…北都…私は貴方を失いたくない…何があっても何処にもいかないで側にいると約束してくれる」
北都は彼女の背中に腕を廻す。柔らかな髪を愛おしげに撫でる。
「約束します。麗葉…どうかされたんですか?」
いつになく不安げな彼女の顔を両手で包む。
「俺にとってあなたは自分の全てです」
言葉に偽りはない。
いつかの未来、引き離されそうになったとしても変わらず側で寄り添っていたい。
ただ北都は知らなかった。彼女の身に今なにが起きているかを。
彼女の言葉に秘められていた本当の意味に彼はまだ気づいていなかったのだ。
雲が二人の道筋を隠すように月を覆い隠していった。
589秘密U・2:2006/07/31(月) 00:05:33 ID:8/QIrUo8

「こんな所に呼び出して何の用ですか?」
物置部屋には不釣り合いに響く可憐な声。刺々しい口調は麗葉のものだ。
彼女の眼前にいるのは如月。いつもながらの彼女の口調に彼は肩をすくめた。
「麗葉様こそ、昨日はお部屋にいらっしゃらなかったようで。一体どこへいっていたのやら…」
言葉とは反対に検討はついているのだというそぶりな彼に麗葉は目つきがきつくなる。
「なぜあなたにそんなことまで逐一話さなくてはならないのです?!」
怒る彼女を前に如月は余裕の構えを見せる。口元には微かに笑みすら浮かんでいるようにみえる。
しかしそれは少しも優しげには思えずむしろ麗葉に対するいたぶりのようにさえ感じさせる。
「…屋敷の人間が夜中に消えた令嬢を心配するのがそんなに不思議ですか?」
「心配ですって?どの口がそのようなことをいうの…!」
すいっと如月の顔が寄ってくる。唇に彼の感触があたる。
軽く口付けされて麗葉は口元をすかさず拭うように手をあてた。
そして彼はからかうように「この口ですが?」とうそぶいた。
「な…っ…!」
「し…誰か来たようです」
はっと口をつぐむ。物置部屋で二人でいるのを見られたら相手が何者でも不審に思うだろう。
その場に麗葉はかがみ込む。すると後ろから如月が腕を彼女の身体に回し閉じこめる。
(なにを…)
「静かに…」
唇に彼の指があてられる。
入ってきた人間は何かを探しているのかなかなか出ていってはくれない。
いつみつかるかわからない状況のためうるさいほど心臓が鳴っている。
不安で押しつぶされそうだ。そんな時なのに…
「…ぁっ」
胸に如月の指がくい込む。そのため思わず小さな悲鳴が麗葉の唇から漏れた。
もう一方の手が彼女のスカートをまくり上げて下着へと忍び込もうとしていた。
後ろから如月がひっそりと囁く。
「声を出してはおしまいですよ…。堪えられますか?」
身体は彼の腕の中にある。これでは抗議しようにもできない。
如月の長い指が麗葉の下着の中に潜り茂みを掻き分けて敏感なそこに触れる。
状況のせいもありそれだけでも麗葉は気がどうにかなりそうな感じであった。
人の気配はいまだあり早く去ってほしいと彼女は願った。
590秘密U・3:2006/07/31(月) 00:08:07 ID:8/QIrUo8
胸の尖端を弄る指を麗葉は止めてくれるように掴んだ。
それも虚しく下に伸ばされた手は彼女の秘所をさぐりついに指が彼女の湧き始めた泉に突き立てられた。
ぴくっと脚が引きつる。
「…んっ…っ」
声が零れぬように唇を噛む。
それに気づいた如月は胸を弄んでいた指を止めて再度彼女の口にそれを持っていく。
指は噛まれている唇をこじ開けて口の中へ侵入する。
そのため麗葉は唇を噛むことができず彼の指を銜えることになってしまう。
「ふぅ…ぅっ…っ」
気づけば上と下の口を両方とも如月の指で犯されていた。
ちゅぷ…ちゅぷと微かな水音が腿の付け根から漏れている。
口を開けばいつ嬌声を発してしまうかわからないから必死で彼の指を唇で噛む。
口腔を指で確かめるように撫でられて潤んだ視界の中、如月を振り仰ぎ睨む。
ふっと上気した頬に息がかかる。
「…いつも以上に濡れてますが?」
耳元で小声で囁かれ背筋がゾクゾクと粟立ち痺れてしまう。
わざわざ自覚させるように中で掻き回すものだから尚更のこと質が悪い。
泉に沈み込ませた指はそのまま親指で彼女の快楽の芽を押しつぶす。
「…っぅ」
軽い絶頂感が身体を襲う。脱力して如月に背中を預ける。
だがその際うっかり麗葉は近くの箱を足でぶつけてしまった。
(…あ!)
人の気配がこちら側に向く。
足音が近づいてきて麗葉はみるみる血の気が引いていくようだった。
すっと後ろで如月が立ち上がる気配がして麗葉は驚愕する。
「…如月さん?なんでこんなところに…」
「あぁ、見つかってしまいましたね」
如月とはべつに聞き馴染んだ声がしてさらに驚く。
(北都!?…そんな)
乱れた胸元をかき寄せて麗葉は縮こまる。よりにもよって最悪の状況。
この世の終わりのように目の前が真っ暗になる。
「昨夜、徹夜で仕事を片づけていたもので…つい眠気に負けてサボってしまいました」
麗葉の心配をよそに如月は北都にあっけらかんとしてみせた。
微かに北都の笑い声が耳に届く。
「如月さんでもそんなことがあるんですね。しっかりしてるから全然想像できませんでしたけど」
朗らかな会話が二人の間で交わされているようだ。
「何か探していたんですか?」
「あ、ええ。照明が切れたとかで工具を…」
「これじゃないですか?」
「ああ、それです。ありがとうございます」
いままで散々と麗葉を嬲っていた人物とは思えないような青年がそこにいた。
「…私はもう少しここで眠らせてもらいます。できれば秘密にしてもらえますか?」
「ええ。工具を探すのを手伝ってもらったことだしいいですよ。そのかわリ貸しにしておきますね」
そんなやりとりを最後に北都は物置部屋から出ていった。
「行ったようですが…」
麗葉は疲れたように背中を壁につけていた。
如月が彼女を抱き寄せる。再び彼の指が麗葉の乱れた服の中に潜り込む。
「…やぁっ…ん」
一度引いた快楽の波が再度巡ってきて麗葉は眉を寄せて訴える。
しかしその声は鼻にかかったように甘い。
自らの声に麗葉は驚くと同時にそれは北都への罪悪感を呼び起こす。
「北都はまだ近くにいるんですよ。…そんな声をだしたら戻ってきてしまうかもしれませんね」
591秘密U・4:2006/07/31(月) 00:14:07 ID:8/QIrUo8
「ぃやぁ…ぁん、如月…お願い、やめて」
麗葉の下着は既に如月の手によって片足を引き抜かれ彼女の脚に丸くなって引っかかっている。
如月の手が麗葉の両足を大きく広げる。
何も妨げる物がないそこはいやらしくぬめっている。
麗葉は羞恥に全身が熱くなる。
如月の指が熱い滴りをすくい取る。
「…麗葉様、どんなに貴女が否定してもここはこんなに蜜を零して男を誘っている。まるで蝶を誘う花のようだ」
麗葉の愛液をその指でぺろりと舐める
「本当は北都にこそ捧げられるはずの華でしたでしょうが…」
「…ひゃぅっ」
広げられた腿の間に如月が顔をうずめる。
如月の舌が秘裂を舐める。
「ぁあっ…ああん、如月ぃ…だめぇ」
哀願する麗葉の腿に如月の指がくい込む。
舌先で蜜の溢れるそこを掻き出すかのように嬲られる。
止めるどころか尚更火をつけたような動きに麗葉は身体を震わせながら堪えた。
彼が麗葉の秘部から顔を離した頃にはすっかりと麗葉の身体は熱く火照っていた。
「…ごちそうさまでした。なかなか美味でしたよ」
麗葉は荒く息をついている。
「……っ…はぁ…如月」
「はい」

「………――いつものを、して」

敗北の涙が零れた。
「かしこまりました」
如月は物置部屋にあった机の埃を軽く払うとそこに彼女の上半身を預けさせた。
如月にたいして尻を突き出すような姿勢をとらされる。
朦朧とした意識のなか後ろで如月がベルトをはずす金具の音が聞こえた。
麗葉は目を瞑ってその時を待った。
腰を掴む手に力が加わった。
「…ぅううんんっっ」
狭い其処を突き破るように硬いモノが押し入ってきた。
無遠慮に入ってきたそれに膣口がきつく締まる。
最奥に到達すると如月が呻く。
「…ひどく狭い……ですが男にとってはかえって魅力的だ…」
如月はそう言うと動きだした。
熱い体温の放出を背中に感じる。
「くぅっ…うっ…あ、…あっ」
汗ばんだ肉が何度もぶつかる。
そのたびに湿った音が薄暗い部屋の中に響き渡る。
「北都も可哀想に…。こんな悦楽をあの男は知らないなんて」
「ぅっ…く、誰の…せいで……ぁあぁんっ」
小刻みに腰を揺らして麗葉を刺激していたと思ったら今度は大きく擦りあげていった。
麗葉の半開きの口から絶えず艶めいた泣き声があがる。
「はぁっ…き、きさらっ…ぎっ…あっ…あんっ」
「…やはりいつもより…濡れておられますね…何故ですか?」
592秘密U・5:2006/07/31(月) 00:16:32 ID:8/QIrUo8
背中に降りかかる如月の熱っぽい息。
後ろから乳房を揉みしだく。
「そんな…こと…ぁ…ああっ」
「すごいですよ…きつく私を締め上げて離さない…」
内部で異物が脈を打って質量を増す。
激しい突き上げに脚ががくがくと震える。
机を爪で引っ掻き、跡をつける。
「…いけませんよ。爪が割れる」
麗葉の手の上に如月の手が乗りそれを制す。
その間も動きは止むことはない。
麗葉は藻掻くように頭を振る。
「…北都でしょう?そこまで貴女が乱れる理由は」
「何を…?」
なぜその名をこんな時に出してくるのか―
「ほら、また…きつく」
「ぁあっ…いやぁっ…あぁんっ」
「貴女は北都に知られてしまいたくないと言いながら、その本音はまるでこの危うい状況を愉しんでいるみたいじゃないですか」
如月の言葉に麗葉は目を見開く。
「ち、ちが…あっ、…あぁ…は…ぁああんっ」
びくんっと麗葉の背中がしなる。
腿の内側を二人の淫液がつたっていた。

「…違ぅ…そんなんじゃ…」
うわごとのように呟き崩れる麗葉。
如月が彼女の背中を抱き起こす。麗葉の唇が微かに動く。
「―――…」
彼女の乱れた着衣を直していた如月の手が止まる。
「……」
黙って意識を失っている麗葉を見つめていた如月。
やがて彼は奇妙な笑みを浮かべたのだった…
593秘密U・6:2006/07/31(月) 00:17:13 ID:8/QIrUo8
「え…、電球が足りない?」
「ああ、すまないがもう一度物置に行って取ってきてもらえるかい?」
凝ったデザインの照明を見上げる。
確かに照明は一つきりだが電球を取り付ける場所は数個あるように見える。
北都はため息をつき先ほどの物置部屋に戻る。


薄暗い物置部屋に人の気配があった。
おそらく如月がまだ残っていたのだろう。
「如月さん、まだいるんですか?」
すると人影が立ち上がる。
「……北都、まだ何か?」
「ああ、すいません。電球が足りなくて…」
「やれやれ君は…」
呆れ気味に彼は近場にあった電球を放り投げた。
それを慌ててキャッチする。
「そろそろ私も仕事に戻らなくては…」
そう言って如月は北都の横を通り過ぎる。
その時、微かに甘い匂いがしたような気がした。
「…―如月さん」
如月は既に彼と距離を置いて前を歩いていた。
「早く届けに行かないと困ってると思いますよ」
振り向いた如月にそう言われはっとして北都は彼を追い越していった。


如月は早足で通り過ぎていった北都の背中を見ていた。
「北都…、いつか私は君のその『全て』を奪ってしまうかもしれませんよ…」
そして麗葉からも…
彼は微かに笑みを刻んだのだった。
物置部屋では如月の上着を掛布がわりに麗葉がまだ静かな寝息をたてていた。



秘密U・終
594名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 00:22:39 ID:0I5PBHV7
イイヨーイイヨー!!
お嬢さまの体が正直なところがすごく萌える。
如月が冷酷なようで優しげなのもツボ。
超GKでした!
595名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 00:24:23 ID:0I5PBHV7
うわっ!打ち間違えた。GKって全然別モノじゃないか。
あらためて超GJでした。続きを期待してます。
596588:2006/07/31(月) 00:25:34 ID:8/QIrUo8
ごめんなさい、騎乗位はまた今度がんばります。
素敵な妄想を有り難う!

そしてまだ秘密は続きます…
597名無しさん@ピンキー:2006/07/31(月) 01:55:36 ID:2Nc+xuSP
寝る前にめちゃめちゃ萌えた!!
寝れなくなっちゃったじゃないかバカー!w
この三角関係どうなるのかなー。GJです。
598名無しさん@ピンキー:2006/08/02(水) 20:13:41 ID:bcTup6Bd
保守します
599名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 11:26:14 ID:tjSd+z4a
ほしゅあげ
600名無しさん@ピンキー:2006/08/04(金) 16:40:01 ID:5dPKUnrn
・・・・神キター!!!!!!!!!!
現人神!!!!!!
601名無しさん@ピンキー:2006/08/07(月) 10:34:20 ID:j5jOmi0z
保守
602名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 10:37:40 ID:AKgzselm
ほしゅ
603秘密V・1:2006/08/09(水) 19:14:04 ID:7ygOVzkb
―――貴方を失いたくない

―――少女はいつかの夜、そう彼に告げた…


「あっ…、あん…ん…、はぁ…」
冷たい月明かりの差し込む部屋の中。
汗に濡れた白い肢体が月光に晒される。一糸纏わぬ少女の裸体。
その肌…汗に濡れた首筋、乳房には薄紅色の花びらが散っていた。
「んぁっ、…やあぁん…、如月…っ……ひああっ」
汗ばんだ乳房が跳ね上がる身体にあわせ上下に弾んでいる。
男の身体の上に跨りくびれた腰を懸命に振るう少女・麗葉
「はぁぅ…お、奥、…奥に、とどいて…っ…んんっ」
そのたびごとに水滴が双丘の間をつたい落ちて腹へとくだる。
「麗葉様…いつからそんな、厭らしい言葉を使うようになったんですか?」
彼女とは対照的に彼女の腰を支えている男は底の見えない冷めた眼差しで彼女を見つめている。
身体の熱さとは正反対に心は刃物をあてられているかのように冷え切っている。
熱い…苦しい…………
「…ぁああっ…、だめっ…もう…、ぅうっっ…如月ぃぃ…っ」
麗葉の頬を濡らす塩辛い涙が顎をつたい如月の胸の降りかかる。
乱れた黒髪が揺れると汗が零れて弾けた。
腰を降ろしたと同時に如月が下から突き上げて麗葉は息を詰める。
「…ぁぁああ…」
背筋を昇る強烈な快感。麗葉は顎を天井に反らし背筋を痙攣させる。
「…また達してしまわれましたか?」
呼吸を鎮める間も許さず如月が彼女の腰を掴み揺さぶる。
ぐちゅぐちゅと粘液が卑猥な音をだす。それが自らの身体から発するものだとは思いたくもなく
聞きたくないとばかりに頭を振る。
「ぃあぁっっ……やぁっ…ぁ…お願い…もう、許して…壊れちゃ…あぁっっ」
「いえ…許しません。もっと貴女の淫らに狂う姿を見せて下さい」
「はぁああッッ」
ズンっと強烈な突き上げに悲鳴を上げる。
下方から突き上げる感覚にどうしようもなく身体がのたうつ。
麗葉の内部が如月のそれを受け止め妖しく蠢くのを止められない。
「ぁあああっ…ああぁん…はぁっ…ひぁああ…」
思わず腰が浮いてしまい身体をくねらす。自身に埋め込まれた硬い肉棒が弱い内壁を擦りあげてゆく。
与えられる刺激に男根を銜えたそこがひくついて麗葉は苦悶と悦楽に身を酔わせる。
「いい眺めですね」
再度深く沈めた腰を強い力で押さえつけられ最奥まで如月の熱を感じてしまう。
彼の腰を挟んだ足を突っ張らせる。
「ぁあん…、はぁ、」
彼を締め付ける肉が強い圧迫感を受ける。
「…っ…麗葉様…『また』ですか?」
「…ひぃ…ぁ…ぁ…あ…」
麗葉は身に過ぎる感覚にろくに声もだせず絶頂に導かれる。
つづいて如月がまだ硬度をたもったままの己を引き抜く。
麗葉の腹や胸が白く汚されていった。
「…はぁ…っ、…はぁ…」
その感覚すら生々しく麗葉は身体を震わす。
604秘密V・2:2006/08/09(水) 19:15:23 ID:7ygOVzkb
やがて呼吸が緩みはじめた頃、如月の胸に少女の柔らかい胸が被さりようやく休息を麗葉は許された。
「ご苦労様でした…麗葉様」
頭を撫でられ麗葉は目を閉じる。
しばらくそうしていたが、我に返ったように麗葉は下に敷いた男から離れようとする。
だが逆に強引に腕を引かれより身体を彼と密着させられてしまう。
「…離してっ」
抵抗するがやすやすと唇を奪われてしまう。
「…ふ…っ…んんっ」
藻掻くが後頭部に手を廻されて思うようにならない。
月下に照らされ床に映った二人の影が艶めかしく蠢いていた。


枕に頭を沈めたままぼんやりと月を眺めている。
いつまでこんな夜が続くというのか…
涙は流れていない…この胸は既に空虚に等しい。
ただ…北都、あなたはこんな私を知らない。私は怖い。あなたに知られてしまうことも…
『貴女は北都に知られてしまいたくないと言いながら』
いつかの如月の言葉が頭をよぎる。
『その本音はまるでこの危うい状況を愉しんでいるみたいじゃないですか』
(違う…違う違う!そんなこと絶対ありえない)
麗葉は忘れてしまっていた涙を取り戻す。
北都さえ側にいてくれればと思い今まで唇を噛み如月の行為に堪えてきたのだ。
愉しんでいたなんて絶対にない。あるのはそう、苦痛…
救済を求めるように月に手を伸ばす。だがそれもやがてぱたりと音をたてて布に落とされる。
(…北都…)
愛おしい人の顔を思い浮かべ麗葉は眠りに落ちていった。


如月は麗葉が眠ったのを確認し身を起こす。
逃れようとする囚人のように外へ伸ばされた手を引きよせ強く掴む。
「…ぅん」
麗葉が目をつむったまま眉を寄せたのを見てそれを掛布のなかに戻す。
「……」
頬をたどった涙の跡をみて苦々しく如月は顔を歪めた。
605秘密V・3:2006/08/09(水) 19:17:38 ID:7ygOVzkb

翌日、麗葉は本棚から古い絵本を取り出す。本の表面を優しく撫でる。幼い頃、北都と一緒に読んだ絵本だ。
ページを捲っているとその頃の思い出が沸々とわき上がってきて麗葉は目を和らげる。
「…あ」
開け放たれていた窓から風が吹き込んでひらりとしおりがとばされてしまう。
慌ててそれを捕らえようとするがするりと逃げてしまう。
薄くて軽いそれは風に舞って…
「…麗葉」
柔らかい口調で自分を呼ぶ男の声がして麗葉は振り向いた。彼は風に飛ばされたしおりを手にしていた。
思わず麗葉は顔を緩める。麗葉の手にした絵本に気づくと北都も懐かしそうに目を細めた。
「昔よく読んだ本ですね…」
「ええ…。懐かしいでしょう?」
しおりをそっと開いた本に挟ませた。麗葉は目をつむり優しい思い出に心を浸す。
「あの頃は、よくあなたが幼い私に読んで聞かせてくれていた…」
部屋で、または中庭で睦ましく肩を並べて笑っていた。
あの頃、ほぼ同じ高さ並んでいた肩は時が経つにつれ麗葉を追い越して彼女より高い位置にある。
麗葉が女性として身体の線が柔らかい曲線を帯びるのと反対に彼は背が伸び身体のあちこちが引き締められて堅くなった。
幼くて柔かかった手の肉も削げ麗葉よりひとまわり大きいその手は堅く骨張っている。
その手に麗葉は自分の白くて頼りなげな手を滑りこませる。
北都がそれに気づき麗葉と目を合わせて高さの違う肩を並べる。
温かな体温を脇に感じて麗葉は安堵にも似た感情がわき起こる。
「…そういえばこのしおりもあなたが作ってくれたんですよね」
押し花のしおり。麗葉の好きな菫(スミレ)の花。
「身体が弱かったから…部屋に閉じこもっていた私を励ましてこれをくれたんでしたね」
しおりに静かに唇を触れさせる。唇を離して北都の方へ向き直る。
「…北都…私…」
穏やかな北都の眼差しに心が揺れる。
何かを言おうとした唇に北都のそれが重なる。唇がかすかに震えた。
抱きしめられて胸が詰まる。言葉にできぬ想いを抱擁に替える。
深く…深く、互いを求めあい舌を絡める。
「…んっ……ふぅ…」
いとも簡単に砕けてしまう腰に北都の腕が支えとなる。
ようやく唇が解放されてソファーに腰を落ち着ける。
606秘密V・4:2006/08/09(水) 19:18:55 ID:7ygOVzkb
「麗葉……、あなたは俺の全てです」
北都の唇が麗葉の肌を滑り彼女の首筋に顔を埋める。
彼の髪の毛が顔の側まですり寄って吐息が首を撫でる。
首筋に彼の舌が這う感触がして息を鋭く吸い込む。
「…ほ、北都…」
「できることならあなたの喜びも苦しみも…全てあなたと共有したい」
首の皮膚に彼の湿った舌の熱を感じ、吸いつかれてジン…と痛みが広がる。
「…っ」
鎖骨を舌先でなぞられ身体が甘く疼く。
常は穏やかでわりと物静かな青年が狂おしいまでに麗葉を求めてきた。
そんな彼は麗葉に少し意外にさえ感じさせるほどだった。
ずるずると背もたれから滑り落ち背中がソファーに埋まる。
押し倒されたような形に麗葉は戸惑いがちに北都を見つめる。
「…麗葉、抵抗してください」
「え…?」
前髪に隠されたうえ、彼女の視線から逃れるように臥せられた彼の顔は伺い知れない。
「このままだと本気であなたを奪ってしまいそうです…」
呻くような彼の呟きに麗葉は驚きに目を開かせる。とくとくと胸が早鐘を打つ。
「かまいません。あなたが望むなら…」
麗葉はそう告げる。掻き抱く腕が緊張に強張る。
…なのに
するりと腕がほどけ麗葉はソファーに背中を預けた格好のまま、北都は離れてしまった。
理由もわからず言いようのない不安に麗葉か駆られる。
「北都…?…どうして」
泣き出しそうな瞳で北都を見上げる。北都は痛ましく表情をうかべ彼女から顔を背ける。
「…すみません」
部屋から出ていこうとする彼を麗葉が追いすがり背中に抱きつく。
「いやっ…行かないで…ください」
すると麗葉は胸に伸ばされた腕をほどかれ胸の中に抱き寄せられる。
「…北都…いかないで」
彼の胸のなかで籠もった声で懇願する。
顔を上げると額、頬、両目蓋に唇が落とされる。
「――…仕事がありますからまた今度」
子供を宥めるような彼の言葉。彼女の良く知る人当たりのよさそうないつもの顔に戻っていた。
これ以上引き留めたら彼を困らせるだろうと判断した麗葉は了承して彼を見送った。
607秘密V・5:2006/08/09(水) 19:22:10 ID:7ygOVzkb

部屋を出た北都は後ろでに扉を閉めた。
彼女の滑らかな首筋に吸いついた時見てしまった無数の小さな内出血の跡。
「…下手な嘘ですね」
声が掛けられるて北都は正面を厳しい目つきで睨む。
鏡越しに見えた薄く開いた閉めたはずの扉の隙間。
不審に思っていたら…男の影が見えたのだ。すぐに検討はついた。
「……いつも、そんな風にして俺達を覗いていたんですか?」
低く唸る北都。ふっと笑い声が如月から吐かれる。
「失礼。いつか、同じようなことを麗葉様に言われましたのを思い出しまして」
笑みを刻んだ彼の口の端は傷がありそして頬は若干赤く腫れているように見える。
「ですが、貴方も昨日の夜に同じように私達を覗いていたではありませんか」
「…なっ…、ふざけたことを…誰が貴方と同じだと!」
激しい怒りの気配にすら如月は動じた様子はない。ただ冴えた笑みを浮かべるだけだ。
昨夜、北都は最近どことなく沈んだ様子の麗葉を気にして彼女の部屋へ出向いた。
そして見てしまったのだ。麗葉と如月が身体を交えさせる、あの…

月の晩、重なり合った男女の影。
『…ぁあん…如月ぃ…』
自分ではない男の名を呼び嬌声をあげる少女。
彼女は肌に何も身につけず男の身体の上で月の光に青白く染めたその肢体を揺らしていた。
そそり立つ男の欲望を胎内に受け入れるその少女は紛れもなく麗葉であった。
『麗葉様…』
酔いしれたような男の声を聞いたときは怒りよりも驚愕を感じた。
いつもつかみ所なくまたどこか冷えた雰囲気を漂わせる青年…如月である。
『…あぁっ…あっあっあっ…』
ほんのり頬を朱に染め恍惚とした声を聞いた時は、すぐさま扉を開け放ってしまいたかった。
そして二人の身体を引き離し麗葉の前で如月を殴りとばしてやろうと思った。
…それができなかったのは―
麗葉はどんな態度をとるかわからなかったからだ。
608秘密V・6:2006/08/09(水) 19:24:51 ID:7ygOVzkb
「いつから…麗葉と…貴方は」
絞り出すような呻き声。
「…麗葉様の肌は吸いつくように柔らかかったでしょう?」
北都の問いに答えることなく如月に顰めた声で囁く。
ガッ、と壁に如月が叩き付けられる。彼の胸元を掴みかかる。
「…北都。ここは麗葉様のお部屋のすぐ側です、お静かになさい」
沈黙が流れる。やがて口を開いたのは北都だった。
「麗葉は…あなたを愛していたんですか…?」
その瞬間、如月から嘲るような笑みは消えた。ごく静かな顔で告げた。

「いいえ。麗葉様は貴方を愛していましたよ…いつも最後には貴方のことを想っていたようです」




秘密V・終


騎乗位はこんなんでよろしいですか?w
609名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 20:09:31 ID:NfFPoh70
秘密wktkしながら待ってたんだけど…
ちょ、引きが過ぎるw
続きが気になるじゃないかGJ!

ついでに処女喪失麗葉タソが見たくてたまんないと言ってみる
610名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 21:00:13 ID:oBdme+u5
超絶GJ!!!
今回もエロエロで、心情描写もぐっと来て素敵でした。
続きが気になってしょうがない。

あと私も処女喪失の回が見たいです。よろしくお願いします。
611名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 23:38:18 ID:9aCD/oYx
待ってました。続きGJ!!!
そしてまた更なる引きに土器がムネムネしてしまいますw
612名無しさん@ピンキー:2006/08/09(水) 23:56:53 ID:Uv2QCJEy
騎乗位キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ッ !!!!!


613エセ平安物:2006/08/10(木) 23:46:30 ID:xP9jj0G3
うわもう、本当GJ!
ドラマティックというのか、三人がどうなるのか続きが凄く楽しみです。


すいません、ずいぶん前に少しだけ投下した者ですが、帰ってきました。
>121-122
>139-141の続きを投下させていただきます。
614エセ平安物:2006/08/10(木) 23:47:59 ID:xP9jj0G3

「ねえ、犬鬼、あれはなに? これはどうすればよいの?」
「ああ、それは箒でさァ。そっちはハタキで。
 ……その、姫様?お部屋に戻っちゃア、くれやせんかね?」
何故かハタキを珍しそうに逆さまのまま持っている藤花姫に、そのまま振り回されて
物を壊されたりしたら一大事。と犬鬼丸がおずおずと声をかける。
「だいじょうぶよ。今日のお勉強はすんだもの。二条もね、遊んできていい。って言ってたもの」
だから平気よ?ときょとん。とした顔で見上げてくる姫君に、少年は溜め息をひとつ吐いた。
「ねえねえ、犬鬼。これはどうやって使うものなの? 掃除というのをするのでしょう?
 わたくし、ちゃんと讃岐に聞いてきたのだから」
ハタキを逆さまに持ったまま、えへん。と小さな身体を反らせて得意満面になっている姫君に、犬鬼丸は苦い顔で言葉を返す。
「……俺にとっちゃア、これァ仕事なんでさァ。遊びじゃねェんで。
 申し訳ありやせんが、邪魔なんです。
 後でおやつを作ってさしあげやすから、女房殿か庵主様の所にでも行っててくだせェ」

しっし。とばかりに手を振っておっぱらう。
仮にも主家の姫君に対して、あんまりといえばあんまりにぞんざいな扱いだが、
この小さな庵に人が住み始め、犬鬼丸が下働きとして勤め始めてからの半月ほどの間。
毎日毎日、何かといえばちょろちょろと顔を出し、手伝いと称して仕事の邪魔をしてくる 
この小さな姫君に、最初のうちは戸惑い『貴族の姫様にそんなことはさせられん!』と思うものの、
さて、どうやって断ればよいのかも解らずに困り果てていた犬鬼丸だったが、
姫君の祖母であり、この庵の主である尼君自ら。
『孫はあなたのしている仕事が珍しいのでしょう。良ければ、様子を見せてやってくれませぬか。
 邪魔になるようであれば、断ってかまいませんから』
……こうまでおっしゃられると断りにくい。
615エセ平安物:2006/08/10(木) 23:50:30 ID:xP9jj0G3
なので、水汲みや庭掃除などの簡単な事は一緒にやってもみたのだが。
本人にやる気と好奇心はあれど、なにせ今まで屋敷の奥深くに引きこもり、禄に太陽にも風にも当てずに
蝶よ花よと育てられた、それこそ箸より重いものなど持った事は無い姫君で、庭を掃かせれば葉っぱを散らかす。
水汲みをすれば桶を引っくり返すといった有様で、とてもではないが、壊れやすい調度品もある部屋の掃除などはさせられない。
ぷくー。と可愛いほっぺを膨らませて拗ねていた藤花姫だが、犬鬼丸のおやつ。の一言に目をたちまち目を輝かせる。
「本当!?あのね、あのね犬鬼。わたくし、あれが食べたい。こないだの黒いお団子がいいな」
……ちなみに『こないだの黒いお団子』というのはそば粉を練って丸めて炙っただけの、
シンプル極まるもので、犬鬼丸の昼食を藤花が食べてしまったのだが、あの味が忘れられなかったらしい。
ちなみに、孫が勝手に食べてしまったお詫びに。と、尼君様の命令で、その日の夕食の膳を藤花と取り替えることになってしまい、自分が口にする事など想像もしなかった米や魚や、上等の唐菓子などを食べる事になって、
犬鬼丸は相当に慌てる事になった。
それはさておき。
「……いえ。そんなもんじゃなくても、麦粉も米粉もありやすし、唐菓子の真似事みたいなのなら
 俺でもどうにか作れやすぜ? なんなら、山で果物でも探してきやすが……」
短い間に、すっかり味覚が平民ナイズされた姫君に、戸惑いながら言葉を返す。
その言葉に、藤花は、さきほどよりもさらに顔を輝かせる。
「果物? 果物が山にあるの!?」
内心、しまった。と思いながら肯きを返す。
「え、ええまあ。でも、山に行くのは大変なんでさァ。ですから、すいやせんが今日はちょっと……」
「そうね、もう午後だものね。それじゃあ、明日ならば良いでしょう?
 わたくし、果物が生えているところ、見てみたいわ。ねえ、山に連れて行って頂戴。良いでしょう、犬鬼」
駄目です。と言おうとしてこちらをじーっと見つめてくる姫君の視線に根負けする。
「……わかりやした……」
わーい。と嬉しそうにはしゃぐ藤花を見て、これだけ喜んでもらえるならば、よいか。と思う。
さて、問題は庵主さまの許可が下りるかどうかだったのだが、これもあっさりと許可が下りた。
朝から大はしゃぎで待っていた姫君に朝餉を取らせ、籠を背中に背負い、山刀を腰に差して出発する。
「ねえねえ、犬鬼。果物って、どんなのが取れるの? 甘い? わたくし、たくさん採って帰るわね。
 きっとおばあさまも讃岐も二条もびっくりするわ。みんながお腹いっぱいになるくらい、採れるかしら」
「……そうでございやすねェ。今の時期はヤマモモや枇杷がなっているはずですし、たくさん採れると思いやすが」
いつもの単衣に切袴といった、いかにも貴族の子女という服装ではなく、今日の藤花は犬鬼丸が里の家から借りてきた小袖に紐を巻き、犬鬼丸の一足しかない草鞋を履いて付いてきている。
普段、藤花の身の回りの世話をしている女房の二条は、その格好を見て卒倒せんばかりであったが、
まさか、普段着にしている豪華な絹の単衣で山の中を歩かせるわけにはいかないので、どうしようもなかった。
頼むから、山になど行かないでくれ。という二条の涙ながらの懇願も、姫君の固い意志とはちきれんばかりの好奇心の前に、あっさりと拒否された。
里の中の道を、裸足の少年といかにも履きなれないように、草履を履いた少女がとことこと歩いていく。
616エセ平安物:2006/08/10(木) 23:52:07 ID:xP9jj0G3
さて、今回二人の目的地であるヤマモモの木の場所は、子供の足でも庵からさほどかからない所にある。
山の中に何本も生えているヤマモモの木に、まんまるの深紅の実がたくさん実っている様子をみて、
うわあ。と歓声をあげて小さな姫君が走っていく。
「犬鬼、犬鬼!すごいわ!こんなにたくさん!」
はしゃぎながら、小さな手のひらを精一杯伸ばし、実を摘もうとする。
「ああ、青い実は採っちゃアいけやせんぜ。赤くなってるぶんだけです。……そうそれ」
手の届く枝になっている実は少なく、犬鬼丸の肩に登って腕を伸ばしては赤い実を摘む。
すぐに果汁でべたべたと手が汚れたが、構わずに実を採り続けた。
「……甘い。美味しいのねえ、ヤマモモって。わたくし、桃か李しか食べた事がなかったわ」
籠に半分ほどを摘み終わり、よく熟れた真っ赤な実を頬張る。
幸せそうな笑顔に、犬鬼丸のほうも自然と頬をほころばせた。

……枇杷の木には、残念ながらまだあまり熟れた実がついてはおらず、結局、ヤマモモだけを籠に入れて庵へと帰った。
その帰り道に。
「……足がいたい」
もう一歩も歩けない。と泣き声で姫君が言い出したのは、まだようやく、里へ下りる道に差し掛かった時だった。
言われてみれば、当たり前の話で、今まで屋敷の外に出た事も無いような姫君が、むしろよくこれだけの間
頑張って歩けたものだといえよう。
草鞋を履いていたとはいえ、柔らかい足は擦り切れて赤くなり、血が滲んでいる所すらあった。
仕方が無い。と籠を首から下げ、姫君をおんぶして庵へと帰る。
「……ごめんなさい、ごめんなさいね。犬鬼」
「謝らねェでくだせェ、俺が悪いンでさァ。……あの、傷、痛みやすかい」
「ううん、だいじょうぶ、少しだけだから。……あのね、降ろしてちょうだいな。わたくし、もう歩けるもの」
「駄目です。歩いたりしたら、傷が酷くなっちまいやすぜ。それが元で悪い病魔にでも取り憑かれたら、
 そっちのほうが一大事でさァ」
いくら犬鬼丸が歳よりも大柄で力があるとはいえ、まだ十にしかならない子供が七つの子をおんぶして
帰るのは骨が折れる。
だのに、犬鬼丸は泣き言一つ、重そうな素振り一つ見せずに庵までの道を歩いたのだった。
途中、一度だけ姫君を下ろし、里の中を流れる小川の川縁に生えている濃緑の葉を摘んだ。
「犬鬼、それはなあに?」
「ドクダミでさァ。キズにはこれがよく効くンで。さ、遅くならねェうちに帰りやしょう」
「犬鬼は、凄いのね。なんでも知ってるのねえ」
心の底から感心したように、こっちを見上げてくる姫君になんとなく気恥ずかしい思いを覚えつつ、
少年と少女は家路を急ぎ、帰っていった。
617名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 01:02:51 ID:daf+z9+O
一時間以上経ってるから、投下は終わったと判断して良いのかな……?

GJでござい。
どうでも良いけど、犬鬼の話し方が薬剤師から医師を抜いた人みたいだw
618名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 20:53:38 ID:/bEyzzOX
直接的な主従じゃなくてもこのスレに投下していい?
国王直属親衛隊隊員と国王の娘で神官な姫君の話を書きたいんだが。
619名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 20:58:26 ID:HbU2pj1d
>>618
俺はありだと思う
620名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 21:04:19 ID:SEh1yTl1
>>618
多分、こっち。

お姫様でエロなスレ3
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1148836416/
621名無しさん@ピンキー:2006/08/11(金) 21:25:17 ID:k8hxnHRH
>>618
どちらでもおkだと思われます。
親衛隊と姫は前にもあったし。つか、読みたい。
622 ◆DfXlBG8vLc :2006/08/11(金) 23:16:08 ID:/bEyzzOX
大丈夫そうなので投下します。
改行変かもしれませんが携帯からなのでご容赦を。
タイトル考えるの苦手なので変わりにトリつけます。
623 ◆DfXlBG8vLc :2006/08/11(金) 23:17:57 ID:/bEyzzOX
 供物を納めにいく者、神への祈りを捧げにいく者、日々の神殿へ向かう人々の数は少なくない。
 ローランもまたその中の一人だった。
 敬虔な信徒とは到底言えないが、年に数回は神殿で神に祈りを捧げている。年に数回が多いか少ないかと問われれば、それは言わずもがなというところ。
 しかし、ローランはここ数ヶ月足繁く神殿へ通っていた。
 淡い鳶色の瞳に厳かな神殿を映し、ローランは小さく息を吐く。
 どうして急に敬虔な信徒のように神殿へ通う気になったのか。原因は一つしか思いつかない。
 ローランよりいくつも年上だというのに、少女といってもよいほどに無邪気な女性。それでいて匂いたつような美しさはまさに熟した果実のようで、その不思議な魅力がローランをとらえて離さない。
 初めて会ったのは弟のように可愛がっていた元同僚──セシルに連れられて神殿へ赴いた時だった。まさか神官長に引き合わせられるとは思っておらず、あの時はセシルの世間知らずぶりを心の底から呪ったものだ。
 ローランはいつものように神殿の裏へ回り、泉のほとりに腰掛けた。こうしていれば、姿を見かけた神官長が嬉々として現れるのだ。
 初めの内こそ正装で行くべきなのではと悩みはしたが、今のローランは休日に街に出かける姿と何ら変わりない。さすがにくたびれたシャツを着るほど礼は失していないが、畏まった様子は微塵もない。

「ローラン!」

 ふわりと甘い香りが風にのり、ローランの鼻をくすぐる。
 香りの先を見やれば、神殿の窓から身を乗り出した絶世の美女と謳われる神官長の姿があった。
 ローランが軽く手をあげてみせれば、花開くような笑みを見せる。

「今からそちらへ参ります」

 言うが早いか窓から体を引っ込める。
 ローランは苦笑を浮かべて手をおろした。
624 ◆DfXlBG8vLc :2006/08/11(金) 23:19:29 ID:/bEyzzOX
 ──秘密の逢瀬とはこのことですのね。
 先日訪ねた際の彼女の言葉を思い出したからだ。あのように大きな声で名を呼び、人目などまるで気にしない逢瀬が果たして秘密と言えるのかどうか。
 甘い香りが近づいてきたことに気づき、ローランは表情を和らげる。走ってははしたないと教えられているせいか、彼女はゆっくりと──それでも彼女にしては早足なのだろう──ローランの元へ近づいてきた。

「リズが不機嫌な顔をしていましたから急いでこちらへ参りましたのよ。あなたがいるとリズは不機嫌になるのだもの」
「それはそれは。神官長を急がせるなど恐れ多い」
「ローラン。神官長は嫌と申したでしょう。それから、姫様も嫌ですわ。私はあの子にするように接してほしいのです。何度も申したのに意地の悪い人ですのね」
「そういうわけには参りませんと私も何度も申し上げているでしょう」

 黒く艶のある長い髪が白い肌と同じく白一色の衣装によく映える。足の爪先まで隠す長いスカートをちょんとつまみ、彼女はローランの隣に腰掛けた。
 桜色をした頬が彼女が彼女の言葉を裏付ける。確かに急いできたようだ。
 彼女に近しい女神官の苦々しい顔を思い出し、ローランはなんともいえずにただ笑んだ。国王と正妃の間にもうけられたただ一人の姫御子であり神官長まで務めるディアナが、どこの馬の骨ともしれない男の訪問を心待ちにしているのだ。リズの立場ならばさぞ頭が痛かろう。

「わかりました。でも、私はあなたが改めるまで何度もお願いしますから覚悟していなさい」

 拗ねた顔が愛らしく、ローランは困ったようでいて楽しげな複雑な表情を浮かべた。
625 ◆DfXlBG8vLc :2006/08/11(金) 23:20:45 ID:/bEyzzOX
「今日は私、あなたにお願いがありますの」
「お願い、ですか?」
「ええ。今日はここで夜を明かしていただきたいのです。よろしくて?」

 たっぷり三十秒は経ってからローランは唐突に立ち上がった。

「あら、どうしましたの?」

 あまりの驚きに声さえ出ないようで、ぱくぱくと口を開閉させてディアナを見下ろす。
 きょとんと首を傾げてローランを見上げるディアナ。

「ローラン?」

 ローランは落ち着かない様子で口元に手をあて、ディアナから目をそらした。

「夜を明かすといいますと……あー、なんといいますか……いや、嫌ではないですが、その、俺にも一応立場というかなんというか」
「心配せずともあなたの部屋は用意させます」
「え?」
「私、あなたに見せたいものがあるのです。次にあなたがきたら部屋を用意するようにリズにも話してありますの」

 屈託なく笑うディアナの顔をローランは脱力して見下ろした。

「そうですか。……そりゃそうだよな。当たり前か」
「何を一人で話しているのですか」
「いえ、何も。あなたの箱入りぶりを失念していただけです」

 不思議そうに瞬きをするディアナの隣にローランは再び腰掛ける。
 それからの数時間、ローランはねだられるままに俗世間の話をディアナに語ったのだった。


つづく
626 ◆DfXlBG8vLc :2006/08/11(金) 23:21:46 ID:/bEyzzOX
とりあえず今日はここまでで。
エロは後編に入れます。
627名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 00:58:36 ID:EpG5mpW9
ほしゅ
628名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 01:11:16 ID:cL63pnrN
あ、なんか好きな感じだ。
続き待ってます。がんがれ。
629名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 03:03:00 ID:Ak20PLfK
>>614-616
GJ!続き楽しみにしてました

>>623-625
GJっす!
630名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 18:58:25 ID:URsRU6pB
>>614
かわいい…ほのぼのします。

おお!新作だ>>623GJ!携帯ですか、お疲れ様です。
631名無しさん@ピンキー:2006/08/12(土) 23:45:01 ID:kPtMWLzK
>>626
GJ!こういうの好みです〜^^
632 ◆DfXlBG8vLc :2006/08/13(日) 01:20:06 ID:Gez38JK/
>>623の続き投下します。
今回で終わりです。
633 ◆DfXlBG8vLc :2006/08/13(日) 01:24:08 ID:Gez38JK/
 用意された部屋は目立った家具は寝台だけという実に簡素なものだった。しかし、真新しいシーツは陽の香りがして心地よい。
 食事を終えて部屋へ案内されたローランは特にすることもないので寝台に転がり目を閉じた。
 眠くはなかったが、起きているとあらぬ欲望に突き動かされてしまいそうで怖かった。
 一度だけ訪れたことのあるディアナの私室へ忍び込んでしまいそうだ。
 ふっとローランは自嘲気味に笑う。

(忍んでどうする? 身分が違う。あの女は俺の手におえない)

 とはいえ、欲望というのは厄介なものでローランは今まで何度となくディアナを組み敷く夢を見た。白い肌に口づけの痕を散らしてみたいと何度となく思った。なかせてみたい、と。
 ローランは目を開いて、深々と息を吐いた。
 やり場のない欲求を持て余すローランの耳に戸を叩く音が届いた。
 リズが小言でも言いにきたのかとローランは黙ったまま人の気配が去るのを待つ。
 しかし、ローランの意に反して戸は開いた。

「あら、起きていましたの」
「なっ!」
「返事がありませんから眠っているのかと思いましたわ」

 昼間の肌は全く晒さないとばかりの衣装とは違い、薄い夜着を纏っただけのディアナが後ろ手に戸を閉めてローランへ近づいてくる。
 ローランは上半身を起こし、ディアナを呆然と見つめる。これは夢かと疑いながら。

「何をしているんですか」
「あなたに見せたいものがあると申したではありませんか」
「それはそうですが、しかし」
「夜でなければ駄目なのです。さあ、参りましょう」

 なるべくディアナを視界に入れないようにと顔を背けたローランの傍らに立ち、ディアナはその腕をぎゅっと掴んだ。

「ローラン」

 先ほど押さえたばかりの欲望がまたしても頭を擡げる。
634 ◆DfXlBG8vLc :2006/08/13(日) 01:25:40 ID:Gez38JK/
 息をする度にディアナの甘やかな香りを吸い込んでしまう。まるで媚香のようにそれはローランの思考を麻痺させる。
 ぐいぐいと腕を引かれ、ローランは深々と息を吐く。一体これは何の拷問なのだ。

「ディアナ様」
「はい。何ですの?」
「体調が優れません。また次回というわけには」

 ローランの言葉が終わるよりも早くディアナの手がローランの額に添えられる。そして、顔が至近距離に現れた。

「熱があるのかしら?」

 ディアナに他意はない。ローランは自信に必死でそう言い聞かせる。
 しかし、間近で動く赤い唇が目に入った瞬間、欲望が理性に勝った。

「んっ、ローラ……」

 逃げられぬよう細い首に手を回し、ディアナの唇を塞いだ。思っていたよりもずっと甘く柔らかな唇の感触をローランは貪る。
 ディアナはローランのシャツを強く握り、乱暴ともいえるローランの口づけを受け止めた。

「……ローラン」

 唇が離れるやいな、ディアナの背にはシーツに押しつけられていた。
 ディアナはぱちぱちと瞬きを繰り返してローランを見上げた。
 覆い被さるローランはディアナの知らない顔でディアナを見下ろす。

「あ、あなたが何をしようとしているかわからぬほど無知ではありません」
「では、どうなさいます? 逃げますか?」
「逃がしてくれるのですか?」
「さあ」

 ローランはそう言うが、おそらく逃げようとすればあっさりと離してくれるのだろうとディアナは思う。

「逃げたいのならそうなさればいい」

 手首を掴まれ、シーツに縫い止められる。ローランの唇が耳に触れ、項を辿る。
 ディアナはびくりと震え、きつく目を閉じた。
 ローランはディアナが目立った抵抗を起こさないことを不審に思いながらも、自身の欲望に正直に動いた。
635 ◆DfXlBG8vLc :2006/08/13(日) 01:27:34 ID:Gez38JK/
 一目見た時から触れたいと願っていたディアナの体。夜着を剥ぎ取り、露わにしたディアナの肢体の美しさに息を飲む。

「綺麗だ」

 感嘆の吐息とともに呟けば、ディアナの睫毛が恥じらいに震えた。

「待って」

 たわわな乳房に触れかけたローランの手をディアナが制止する。

「一つ、一つ尋ねたいことがあります」

 微かに潤んだ漆黒の瞳がローランを見つめる。

「あなたは何故私にこのようなことをなさいますの? て、手近なところにいたから?」

 不安な面もちでディアナはそう問う。
 ローランは身を屈めてディアナの額に口づけた。

「私は一目見た時からあなたに魅せられていましたから」
「そう、なのですか」
「ええ。無邪気なあなたの人柄にも惹かれていますしね」

 腕を押さえるディアナの手から力が抜けたのを感じ、ローランはディアナの乳房に触れた。
 手のひらから溢れでるほど豊かな乳房の感触を確かめるように揉みしだく。

「ふっ…ぁ、ん」

 ディアナの唇から艶めかしい声が漏れ、ローランは再びディアナの唇を塞いだ。
 赤く染まった胸の頂を指の付け根で挟むようにして刺激しつつ、乳房の形が変わるほどこねまわす。
 甘く吸っていた舌を解放し、唇の端に漏れた唾液を舐めとる。
 かたくそそり立った乳房の先端を舌でつつき、唇に含んだ。唇で挟み込み、強弱をつけて吸い上げれば、ディアナの甲高い喘ぎが耳に入る。
 ローランは夢中になって彼女の乳房を愛撫した。

「あ…ぅん……ひあっ、ローラン!」
「感じやすい体だ」
「いやっ、わ…たくし、あっ、ああっ! ぁ…そんなっ」

 ローランの腕がディアナのすらりとした腿に触れた。撫であげるように触れ、腿の間に消えていく。

「ぁ…あん、い、ぃや! ああっ」
636 ◆DfXlBG8vLc :2006/08/13(日) 01:28:53 ID:Gez38JK/
 溢れ出る蜜を指に絡ませ、ローランはゆっくりと中へ侵入させる。しっとりと濡れた女の肉が指にまとわりつく。

「あ…あぁ……」

 ローランの首に腕を回し、ディアナは胡乱な目で彼を見上げる。唇をよせれば、彼女の方から吸いついてきた。
 触れ合った唇から時折ディアナの呻きが漏れ、ローランはその呻きさえ吸い取ろうと口づけを深めていく。

「ぅん……っふ、あっ」

 唇を離すのとほとんど同時にローランはディアナの足を広げて体を割り入れた。限界まで勃ち上がったものを取り出し、こすりつけて蜜を絡める。

「少し早いかもしれませんが、俺はもう我慢できそうにない」

 ぐっと押し当てると先端は意外なほどあっさりと潜り込んだ。しかし、そこから先はさすがにきつく、ローランはなるべく苦痛を与えぬように慎重に腰を進める。
 たっぷり時間をかけて奥まで押し入った時には、思わず大きな溜め息を吐いていた。

「ディアナ様、平気ですか」
「え、ええ…ん、平気、です」

 目に涙を溜め、吐息を震わせ、ディアナは健気にもそう答える。
 実際はつらいのではないかとローランは思うが、だからといって今更止めることもできないのだから彼女の言葉を信じるしかない。
 男根を包み込んだ襞はディアナの意志とは無関係に蠢いてローランの動きを誘う。その動きだけで高みへと追いつめられてしまいそうで、ローランはたまらずにディアナの腰を掴んだ。
 ディアナに啄む口づけを落とし、ゆるゆると腰を動かしはじめる。

「はぁ…あっ、ああん」

 蜜で潤っているおかげで抽送はわりあいスムーズだ。しかし、襞や肉壁が複雑に絡みつき男根を逃すまいと離れないために得る快感は強い。
 なによりも痛みだけではないディアナの喘ぎやとろんとした表情が否応なしにローランを興奮させる。
637 ◆DfXlBG8vLc :2006/08/13(日) 01:30:05 ID:Gez38JK/
 ローランは欲望のままに何度も何度も強く腰を叩きつけた。遠慮などいつの間にか消えていた。

「あっ、だめ…ああ……いやっ、あっ! ああっ、ローラ、ン」

 桜色の爪のほぼすべてをローランの背に立て、ディアナは頭を振ってローランの与える感覚から逃がれようとする。
 けれども、ローランはそれを許さずにどんどんディアナを追いつめていく。ローラン自身ももう限界に近い。

「ああ、だめだ」
「いや、んんっ…あっ、ロー、ラン…はげし……っ」
「ディアナ! ディアナ、愛してる」

 快感が一番高まった瞬間を逃さず、ローランは最奥へと叩きつけて精を放った。全身が空っぽになるほどの強い射精感に体が震える。
 どさりとディアナの顔の横に突っ伏してローランは深々と息を吐いた。
 荒々しいディアナの息づかいが耳に入り、ローランは無意識にディアナの腿を撫でさする。
 あまりの心地よさに身動きがとれなかった。ディアナもまた動けぬようで肩で息をしている。
 ローランは胸や腕に触れる柔らかな感触を楽しみながら、互いの呼吸が整うのを待った。
638 ◆DfXlBG8vLc :2006/08/13(日) 01:32:23 ID:Gez38JK/
***

 大変なことをしでかしてしまったが、今更後悔しても遅い。ローランは胸にすりついて微睡むディアナの髪を梳いてやりながら先のことを考えるのを止めた。
 ぴったりと寄り添った胸に触れる弾力も絡みついた足の滑らかさも、どうしようもないほどに魅力的だ。どうせなら朝がくるまでにできる限り堪能しておきたい。

「ローラン」

 そろそろ再試合を申し込もうかと思い始めた矢先、ディアナが不意に顔を上げた。

「今夜は無理な気がしてきましたから次回にしますわ」
「何がです?」
「まあ、忘れてしまいましたの? みせたいもの、ですわ」

 二回目の話かとローランは思ったが、そうではなく昼間のお願いのことらしい。そう言われればディアナは見せたいものを見せるためにこの部屋へきたのだ。

「結局何だったのですか」
「秘密といいたいところですけれど運が悪ければ次の機会は来年になるかもしれませんもの、話してしまいますわね」

 少し残念そうにディアナは吐息を漏らした。

「ミテアが咲いたのです」
「ミテア?」
「年に一度六日間しか花をつけない植物です。夜には淡く光るという珍しい花ですからあなたに見せたかったのです」

 花が咲いてからローランが訪ねてくるのを心待ちにしていたのだと語るディアナが愛らしく、ローランはだらしなく口元を緩める。

「では、明日も泊めていただきましょう」

 やんわりとディアナの腕を掴んでローランはその体に覆い被さる。

「今宵はもう一つの花を心行くまで愛でるつもりですから」

 何か言いかけたディアナの唇をローランは塞ぎ、指と指を絡めてしっかりと手を握りしめた。


おわり
639名無しさん@ピンキー:2006/08/13(日) 08:49:14 ID:PWSIP3GM
GJ
640名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 00:17:39 ID:NfwQEWWE
ディアナ
ローラン





















ターンA?
641名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 00:20:24 ID:20cvtK+s
自分も思た
642 ◆DfXlBG8vLc :2006/08/14(月) 00:37:06 ID:EvjA5EV6
前書いた人と名前かぶってたならすみません。気づきませんでした…orz
643名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 00:40:39 ID:EvjA5EV6
ageてしまった。
なんかもういろいろすみません。
644名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 01:12:12 ID:EKhR6nQ7
>642
かぶってた云々の前にこれはターンAのパロだよな?
まさかターンA知らないで書いたわけじゃないよな?
645名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 01:21:06 ID:EvjA5EV6
ターンAが何かわからないんですが。マンガとかですか?
646名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 05:58:08 ID:CMf/dvjI
647名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 11:15:56 ID:EvjA5EV6
ありがとうございます。そんな作品があるなんて知りませんでした。てっきり以前ターンAというタイトルの作品を誰かが投下していたのかと思いました。
男装少女に投下した話と同じ世界観で書いたので何かをパロったりしたわけではなかったのですが意図しなかったとはいえ設定が似ていて申し訳なかったです。
名前もデュランにするかローランにするか迷って適当に決めたんですがこんなことならデュランにすればよかったです。
ターンAファンの方を不快にさせてすみません。
もう投下はしませんのでご安心下さい。
648名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 11:36:27 ID:qh6AKVsk
俺もターンAとやら知らんから、そんなに気にせんでもいいと思うけど
>>640〜の人たちも別に不快に思って発言したようには見えないが

何はともあれGJ
雰囲気がすげー好き
649名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 17:25:10 ID:gqt0YFql
んだ、んだ、自分もターンエー思い出したけど、被っちゃったのかな
位にしかおもわんかったし。
そんなこといわずに股書いてくださいねー。
650名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 23:22:34 ID:7/TExHgn
てかターンAしらんてかなりの高確率で21以k(ry
651名無しさん@ピンキー:2006/08/14(月) 23:30:42 ID:zX8i0qT+
>>650

自分23だがターンA知らなかったぞ…
652名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 00:10:14 ID:AEX3aqhu
おれっちもしらなーい。26だけど。
タイトルは聞いたことあるくらい。

SSに萌えたから問題なしだ!
653名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 00:30:51 ID:+oDjtBMV
つーか最初の方には名前がお菓子関連なSSも存在し
なおかつOKを貰っている訳で。
ターンA好きだけど全く問題無いので>647がへこむ必要はナシ
654名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 02:05:40 ID:79Oferh/
ガンダムなんて
「あむろいきます」と
「認めたくないものだな 若さ故の過ちとは」
の二つのセリフしか知らん
655名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 03:17:17 ID:bhWcMBP8
ガンダムって一部のキャラやセリフ、歌なんかがあまりにも有名だからつい忘れがちだが、ガンダムを全く知らない人もいるんだよな。
俺も>>654が挙げたセリフや、最近のガンダム(種や種死)の監督だか脚本家だかがすごい不評だってことくらいしかわからん(といっても周りに種シリーズを語れる奴が二、三人くらいしかいないから信憑性には欠けるが)。
656エセ平安物:2006/08/15(火) 03:19:31 ID:cRYxKlS6
622様、GJです。
ディアナさまが超かわいいです。

名前被りの件ですが、失礼ながら、奇抜な名前ではないわけですし、
たまたま同じだったからといって、気になさる事はないと思います。

私のもパロディといえばパロディですし。
まだパロ部分に達してはおりませんが……。

続きや新作の投下を心待ちにしております。
どうかまた、よろしければ来てください。
待っております。




ええと、拙作の続きを投下させていただきます。
短いですが、すいません。
657エセ平安物:2006/08/15(火) 03:23:45 ID:cRYxKlS6
――それからしばらくたったある日の事。
小さな事件が起きた。
特に何という事も無い、小さな小さな事件だったが、犬鬼丸にとっては大きな事だった。
「犬鬼のばか! いじわる!」
「……いくらお怒りといえども、こればっかりは聞けやせんぜェ。
 お願いですから、しばらくはお部屋で大人しくしていてくだせェ」
さて、小さな姫君が愛らしい顔を真っ赤にして怒りながら怒鳴っているのには、訳がある。
大好きなお婆さま。すなわち、この小さな庵の女主人である尼君さまが、夏風邪をお召しになってしまわれたのだ。
最初のうちは、ただの風邪だと、みんな軽く考えていたのだが、
尼君さまの身の回りのお世話をしている女房たちまでもが、ばたばたと病に倒れ、
庵の大人たち全員が病の床につくハメになってしまったのだった。
さて、こうなってしまっては犬鬼丸1人ではどうにもならない。
幸か不幸か、ちょうど真夏という事もあって、近くにある貴族の山荘に避暑に来ている人がいたため、
尼君さま自ら病の床の中で書いた手紙をもって、助けを求めに言ったところ。
いたく同情されてしまい、身の回りの世話に。と、女房を幾人かよこしてくれたので、どうにかまともに看病が出来るようになったのだった。
かといって、犬鬼丸が楽になるわけでもなく。
結局は、現在ダウンしている女房と同じく、貴人の身の回りの世話をするために来てもらっている訳である。
従って、雑用の類は犬鬼丸が一手に引き受けることとなる。
具体的に言えば、病人三人分+子供一人+自分の洗濯物や繕い物。前途の人数分に加えて助っ人の分の食料調達&食事の支度。
果ては、今まで女房殿たちも多少は手伝ってくれていた、屋敷中の掃除など多岐に渡る。
話を戻す。
姫君のお怒りの理由である。
「だって、こないだ犬鬼が取ってきた枇杷、おばあさまもみんなも美味しい美味しいって食べてたでしょう?
 熱があっても、あれなら甘くて美味しいから身体に良いと思うのよ」
「……ですから、今日は忙しいンでさァ。洗濯も沢山残ってやすし、布団も洗っちまいたいンで。
 庵主様や女房殿たちも、少し回復してきたようですし、今日は鯉を釣りに行こうと思ってやす。
 そういう訳で、山には行きやせんぜ。行くなら、明日にしやしょう? よろしゅうござんすね?」
「――……わかったわよ、もういいわ」
ほっぺを膨らませたまま、ぷい。と横を向いて自分の局へと帰ってゆく。
その後姿を見て、やれやれ、解ってくれたか――、と。内心ほっとする。
その安堵が大間違いであったことを思い知らされるのは、犬鬼丸が大物を釣り上げて夕方帰ってきたときの事であった。
658エセ平安物:2006/08/15(火) 03:24:29 ID:cRYxKlS6
ちょうど夕立に会い、濡れ鼠のままで帰ってくると、普段静かな庵の中がやけにざわついており、
ようやく起き上がれるようになったばかりのはずの、寝込んでいた女房までがうろうろと何かを探し回っている。
「ああ、犬鬼丸!お前、姫様と一緒では無かったの!?」
何が、と聞く前に、そんな言葉を投げかけられる。
「い――、いえ。違いやす。……まさか、居ないんで?」
なんてこと。と呟き、今にも卒倒しそうなほどの、紙の様な顔色の女房に逆に聞き返す。
「……ええ、どこにもお姿が見えないの。皆で探しているのだけど、一体何処に行ってしまわれたのかしら。
 もし、もしもの事がありでもしたら……!」
そこまで言うと、わっ。とその場に泣き伏してしまう。
折りしも、外では雨が強くなり、雷鳴が轟きはじめる。
「お、俺、外を探してきやす! 誰か! 讃岐殿を奥にお連れしてくだせェ!」
まさか。
まさか、山へ、枇杷の木のある場所へ行ったのではないのだろうか?
昼間、分かれる直前に言っていた事を思い出し、どしゃ降りの中を山へと走った。

「姫様――っ! 藤花さま!どこにおられやすかァ――っ!」
轟く雷鳴の轟音に負けじと、必死に声を張り上げて姫君の姿を探す。
途中、出会った顔見知りの里の子供に聞くと、山の方に向かう藤花姫らしき子供の姿を見ていたらしい。
『このへんの子供じゃない、見たことないようなきれいなおべべ』との証言から、おそらくは間違いないだろう。
枇杷の木の近くにも、ヤマモモの木の傍にも、姫君の姿は見えなかった。
おそらく、雨と雷をさけてどこかに移動したのだろう。
さほど深い山ではない。ないが、危険な場所がないわけではない。
川に落ちて溺れていたら。切り立った場所から落ちていたら。数は少ないが、山犬や熊といった危険な生き物も
存在する。もしもそんなものと鉢合わせていたら。
雨を避ける為に、木の下や洞の中に居て、雷が落ちたりしたら――?

焦りながら、必死で覚えている限りの洞穴や人が隠れられそうな木の洞を探していく。
――探し始めて、小半時ほど経っただろうか。
七つ目に見た洞穴の中で、すすり泣く小さな人影をようやく見つける事が出来た。
659エセ平安物:2006/08/15(火) 03:25:12 ID:cRYxKlS6
「――姫様」と、脅かしてしまわぬよう、そう、小さく声をかける。
その人影は、びくり。と涙と泥で汚れた小さな顔を上げて、犬鬼丸の姿を確認すると、
「――うあ。うわあああああんっ!犬鬼、いぬき――っ!」
泣きじゃくりながら、しがみついてきた。
みると、ひどく転んだり、藪に引っ掛けでもしたのか、高価な絹に、丁寧な刺繍が施された単衣は
泥まみれで、あちこちに酷いかぎ裂きがいくつも出来ていた。
そんなひどい有様だというのに、懐には大事そうに枇杷をいくつも抱えている。
「かみ、かみなりがね。ごろごろってなって、雨もいっぱい降ってきて、くらくなって、
 わたくし、どっちから来たのかわからなくなってしまったの。ごめんなさい、ちゃんとすぐに帰るつもりだったの。
 心配をかけてしまうつもりはなかったの。本当にごめんなさい……っ」
べそべそと泣きながら、何度も何度もごめんなさい。と謝る。
姫君の小さな身体を抱きしめながら、慰めるように頭をなでた。
最初は、何と言って怒ってやろうか。と思っていたが、すでにそんな気は消えていた。
「――謝るのァ、俺にじゃアねェでしょう。讃岐殿、卒倒しそうなほどに心配しておられやしたぜ。
 それに、庵主さまたちァ病み上がりなんですから、心配かけちゃア、いけやせん」
「…………うん。本当に、ごめんなさい……」
しょぼん。と肩を落とす姫君を、雨がやんだし、もう帰りやしょう。と促して立ち上がらせる。
よく見ると、草で切ったのか、足のあちこちに傷があったので、いつかのように少年は少女を背中に背負う。
どうも、この姫君は自分が思っていたよりも、余程無鉄砲であるらしい。
また、今回のような事が起きるかもしれないし、次があれば、その時も無事でいられる保障は無い。
「――姫様」
「なあに、犬鬼?」
「山の事、今度はちゃんと教えやす。どういうときに、どんなことに気をつければいいのかとか、
 何が食えて何が食えないかとか、天気が変わる前兆とか、そういうことを」
返事がないので、恐る恐る背中を振り返ってみると、目をまん丸にした姫君と目が合った。
「……いいの?」
「……はあ。と、いいやすか、姫様の場合、覚えておかないほうがマズそうなンで――」
そう言いかけた途端、背後からぎゅうっ。と抱きしめられる。
「ありがとう、ありがとう、犬鬼! だいすきよ! わたくし、がんばって覚えるわね!」
――その後、家に帰ってから、姫君は心配していた女房たちにもみくちゃにされたり、
憔悴しきった尼君さまのお姿を見て、心の底から申し訳なく思い、反省したりする事となった。

「ねえ、ねえ犬鬼。これ、食べられる?」
「――それ、毒キノコでさア。籠に入れちゃアいけやせんぜ」
秋には、そんな会話をしながら山中を歩き回る少年少女の姿が見られたという。

――俺が、姫様を守らねェと。
この日から、犬鬼丸は藤花の師で、従者で、兄で、友で、守護者だった。
二人にとって、蜜月とも言える幸福な子供時代は、それから三年ほど続く事となる。
660名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 03:27:34 ID:C/8Ee4za
>>647さん
ターンAを知らずにディアナとローランだなんて
不快どころか興奮しちゃったよ!
あんたはアニメの申し子か!
また何か投下してくだされ
661エセ平安物:2006/08/15(火) 03:27:58 ID:cRYxKlS6
すいません、以上で今回分投下終了です。

あと、>>568さま、こちらに戻ってくるきっかけを、どうもありがとうございました。
本当に感謝しております。最後までがんばって書くことで、お返ししたいと思っております。
662名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 16:17:53 ID:Wvjz4EBG
平安物さん、私も好きです
続き楽しみにしてました。
今回の続きもまた待ってます!
663名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 19:56:57 ID:A4CE0+Wr
京極夏彦の『巷説百物語』を思い出す。
GJ
664名無しさん@ピンキー:2006/08/15(火) 23:42:37 ID:ucgCQAEP
ちょ、なにこの俺的良スレ。
ログを一気読みだよコロヤロー! 最高ですもまえら…
戦巫女もの平安ものの続きをwktkして待ってるよ。

感想だけではなんなので、ちょっと前に話題のネタになっていたおすすめ
主従萌え物をさらしてみる。
アニメでちょっと古いんだがOVA版マスターモスキートン。
へたれ吸血鬼が我が儘お嬢に振る舞わされるんだが、ラストでばっちり
キメが入ります。前妻とのコメディ修羅場ありーの微エロありーのです。
TV版は主従萌えはないのでおすすめできない。
665名無しさん@ピンキー:2006/08/17(木) 05:11:00 ID:Om7z8X7L
てか誰もターンAをガンダムって言ってなくね?
むしろアムロ行きます発言をした香具師は墓穴を掘ったのでは?




もしかしてガンヲタか?
666名無しさん@ピンキー:2006/08/17(木) 10:00:37 ID:bEYhXjmu
荒らすなカス

>>661
ずっと楽しみに待ってましたよ
GJ!
667名無しさん@ピンキー:2006/08/17(木) 16:41:46 ID:shTlb8s+
うへー。一気読みしてしまった。
いいぞいいぞ 私は こんなスレが 大好きだ!

平安さん、昔語り風の文章が好きです。
続き期待してます。

まだ上がっていない、主従もの作品といえば、
・「トッペンカムデンへようこそ」
・「まずは一報ポプラパレスより」
・「パヴァーヌ」の中の「コーフ・ゲートの城」
かな。エロじゃないが。
あと、RS3のシャールとミューズとか、好きな人多そう。
668名無しさん@ピンキー:2006/08/17(木) 23:31:17 ID:x9ajWojb
『トッペンカムデンにようこそ』はいいよな。自分も好きだ。

ただものすごく好きなんだが、
基本がほのぼのなのでエロがさっぱり思い付かんorz
6691/2:2006/08/18(金) 22:52:11 ID:JWe90eCE
 眩暈がする。
 触れたいと願ったことはあれど、それは叶うことなどないと思っていたからこその戯れに過ぎない。いつかそうすることができればと叶わぬ願いを抱くことで自らを慰めていただけだ。
「妾に触れるがどういう意味をもつか、そなたほどの男であれば理解しておろう。どういうつもりじゃ」
 髪を一房。ただそれだけだ。床に広がる艶やかな黒髪を一房。目の前の男がそれを手に取りおもむろに口づけた。それだけで娘の心臓は壊れたように早鐘を打つ。
 髪に感覚などない。触れられたからとこんなにも動揺することなどない。
 しかし、この甘美な感覚はなんだろう。ずっと御簾越しに見つめてきた繊細そうな、それでいて武人らしさを損なわぬ指。少し薄めの形のよい唇。それらが髪に触れただけでどうしようもないほどに心をかき乱される。
 男は顔を上げ、娘の顔をじっと見つめた。
 頬に影を落とすほど長く濃い睫を瞬かせ、娘は微かに震えているようだった。声にもいつもの毅然とした響きはない。
「私をここに招き入れたのはあなただ」
「……触れてよいと言った覚えはない」
「この状況で触れぬとはかえってあなたに失礼かと思いましたが」
「戯れ言を。……もうよい。そなたの役目はしまいじゃ」
 下がれと言われても男は身動き一つとらない。それどころか逆に娘との距離を狭めた。
 娘の頬が朱に染まる。それが怒りからではないと確信している男はそっと唇に指を触れた。
 ゆっくりと撫でて離す。娘の手が唇に添えられ、ほとんど無意識に男の指の感触を追う。
 娘の鼓動が微かに聞こえる。男はおっとりと笑んだ。
6702/2  ◆DfXlBG8vLc :2006/08/18(金) 22:56:40 ID:JWe90eCE
「初めての恋に心の臓を焼き付くされ、哀れな男が黄泉路へ発つ前に」
 拒絶しなければならない。臣下風情がといつものように一蹴すればよい。
 頭では理解しているものの娘の体はぴくりとも動かない。男の顔が徐々に近づいていることに気づいていながら、きつく手を握りしめることしかできない。
「どうか一夜限りの情けをかけては下さらぬか。その思い出があれば私はこれからも生きていけましょう」
 いつか願ったように男の唇が微かに唇をかすめた。かすめただけだというのに眩暈がするほどに甘美な口づけ。
 再度近づく唇から逃れるように娘は傍らの扇子で男の唇を押さえた。
 ゆっくりと体が離れる。
「そなたは阿呆じゃ」
「あなたをこの腕に抱けるなら命すら厭いません」
「成嗣……」
「あなたの気持ちを聞かせていただきたい。本気で拒まれるのであれば私も潔く退きましょう」
 娘は大きく吐息をつく。深く深く、諦めに似た色を混ぜて。
 そして、小さく呟いた。

 ──保守。





ディアナとローランの件、ちょっとマイナスにとらえすぎてたみたいです。すみません。
気にするなと言って下さった方々にお礼申し上げます。ありがとうございました。
これだけではなんなのでついでに保守文書いてみました。1レスのつもりが2レスも使ってしまい申し訳ないですorz
671名無しさん@ピンキー:2006/08/19(土) 01:00:49 ID:iiyaqYzD
>>670
すげー萌えた。
これで保守とは勿体無い・・・
672名無しさん@ピンキー:2006/08/19(土) 18:36:39 ID:w4wSGgO+
>>670
たまらない。悶え死にそう。
巧いですねえ…。
673名無しさん@ピンキー:2006/08/19(土) 21:34:50 ID:QMXoc77s
距離感たまらん
保守だけじゃもったいナス
674名無しさん@ピンキー:2006/08/19(土) 23:25:04 ID:jbEFBySd
続きが読みたいのは自分だけじゃないはずだ…!
GJGJGJJ!!

>>670
非常に蛇足だが、
4096Bytes、60行までオケーなので、1レス以内に収まるよ。
続きでも新作でも保守でもイイ。
次の投下を待ってる。
675 ◆DfXlBG8vLc :2006/08/20(日) 20:10:05 ID:D5K0pnww
>>674
自分携帯からなので。機種にもよるんだろうけど一回の書き込みで最高1024文字しか打てないから一レス以内にまとめられなかったんです。
676名無しさん@ピンキー:2006/08/20(日) 22:02:43 ID:DJk918vt
このくらい分量があれば細切れ感はないのでオッケー。
レス数は気にせずにどんどん投下してくださいな。
677秘密:2006/08/23(水) 23:10:36 ID:tU+1O/wi
間が開いてしまいましたが「秘密」投下します。
4話目ですがここで「秘密」は一応の最終回という形になります。
ちなみに如月による麗葉処女喪失編は違うタイトルを考えています。
読んで下さった方々、本当にありがとうございました。
678秘密W:2006/08/23(水) 23:11:13 ID:tU+1O/wi
いつかの記憶――
思い出すのは日だまりと、そして少女の笑顔



軽い足音がして青年は微笑む。
「北都…仕事は終わりましたか?」
かすかに甘い匂いのする少女を掻き抱く。
「…北都?」
突然抱きしめられて彼女は少し戸惑っているようだった。
腕に大人しく抱かれたこの少女は何度も如月と…
(…麗葉…)
だがそれを裏切りだとは思わない。
なぜなら彼女は自分との想いを貫くために己の身体を犠牲にしていたのだから。
「なに…?」
黙りこくってしまった彼を不思議そうに麗葉が見上げた。
腕の中のぬくもりが首を傾げる。愛らしい仕草に胸が詰まる。

『…これからも麗葉様とつき合っていきますか?』
ふと如月に尋ねられた言葉を思い出す。
その時北都はこう答えた。
『何があろうと私たちの関係は揺らぎません。――ただ俺ははあなたを許さない』
『そうですか…。貴方ならそういうと薄々思っていましたよ』

麗葉を決して責めはしない。
彼の真意はわからないが責められるべきなのは如月なのだ。
「北都…、どうかしたの?」
かすかに不安そうな揺れた声に北都はなるべく安心させるように微笑んだ。
いつかの麗葉は自分を失いたくないそう言った。
(…許してください…)
北都は今まで気づかなかった自分自身が情けなかった。
だがそれでも彼もまた彼女の側にいたいのも事実だ。
「…俺はあなたの側を離れません」
背中に華奢な腕が回りそっと二人の顔が重なった。


麗葉は北都のいつになく情熱的な抱擁と接吻にくらくらと酔っていた。
しっかりと両腕で抱き寄せ顔を寄せあい呼吸すら貪り尽くすような口付け。
彼は合わさった口の中で麗葉の舌を絡めて吸い出そうとする。
「……ん……ふ……ちゅ…」
ようやく解放されると二人の唇の間から濡れた唾液の音がした。
腰に力が入らず思わず北都に寄りかかる。
「…本当にどうかしたの?…なんだかいつもと違うみたい…」
胸に頭を預けたまま感じた違和感を口にする。
北都はそれに答えず黙って彼女の黒髪を撫でる。
麗葉が自分の力で立てる頃になると北都は静かに身体を離した。
「北都…部屋に、部屋に行きたいです…貴方の…」
こく、と北都は了承した。彼女を横抱きにして抱え上げる。
彼の首に手首を回す。
麗葉の胸はせわしなく鼓動が早鐘を打っていた。
679秘密W・2:2006/08/23(水) 23:16:06 ID:tU+1O/wi
艶やかな髪の束がシーツの上に広がる。
「…はぁ…」
首筋を軽く噛まれて麗葉は切なげに吐息を零した。
はだけられた胸元の柔らかな膨らみに北都が口付けを落とす。
「北都…愛してます」
率直で純粋な気持ちを彼に伝える。すると身体に加えられる愛撫に熱がこもる。
「…私もです。この先、なにがあろうと誰にもあなたを渡したくはありません」
彼の言葉に麗葉は胸が針で刺されたように痛んだ。この身体はすでに汚されている。
できるなら彼にこそ自分の全てを捧げたかった。
痛む心を隠して彼の愛撫に答えて甘い呼吸を繰り返し彼に捧げる。
「…ん…やぁ、北都…」
あまりの恥ずかしさに顔に血の気が昇っていくのがわかる。
白い肌に新しい朱を刻み北都の舌が下腹を下っていく。やがてたどりつくだろうその先への
期待とも不安ともしれぬ感情に麗葉は身を震わせていた。
薄暗い闇の中で浮かび上がる細い肢体。
「綺麗です…麗葉」
いつの間にか浮かんでいた涙を目元から軽く拭われる。優しい仕草が心地よい。
「…あ…っ」
下着の上から秘部をつぅ…と指でなで上げられる感触がして思わず声が漏れる。
布越しからでもきっと濡れてしまっている。そう思うと羞恥から北都の視線から逃れたいような気さえしてくる。
決して強引ではないその仕草。軽く触れてくる指先の感触。
(やだ…私…何を望もうとしているの)
麗葉はいつしかむず痒いような焦れったさを感じ始めていた。
もっと刺激を…強い刺激を待っている。それに対して麗葉は自らを叱咤する。
この身体、如月に何度も慰み者にされたこの身体。
弱い刺激になれてはおらずもどかしさに頬の内側を噛む。
…あの男が憎い―
「……俺に触れられるのは嫌…?」
きっと悔しそうな顔をしていたのだろう、北都が顔をあげこちらを見ていた。
「ち、違うんです…!…その緊張してしまって…」
驚いて目を開き頭を振る。
「嫌でないんですね…良かった…」
北都は安堵するように息を吐いた。
純粋で思いやり深い北都。せめて今は彼のことだけを考えていたい。
「嫌なんて、そんなことないです。私が貴方を望んでいるのですから…」
飛び出してしまいそうな心臓の鼓動のなか愛撫する彼の手を掴みもう一方の手で
麗葉は自ら下着をずらし始める。
絹でできた小さな下着は寝台の下に音もなく落とされる。
「…私に、ふれて…」
耳をすまさなければ聞こえないような麗葉は小さな声でお願いした。
北都に食い入るように見られた彼女は顔を真っ赤に火照るのを感じた。
680秘密W・3:2006/08/23(水) 23:17:46 ID:tU+1O/wi
「……麗葉…」
その時北都の咽が微かに動いたような気がした。
「きゃっ…!」
片足を持ち上げられる。開かされた脚の間に北都の頭が割り込む。
「え?…んっ…あぁ…っ…」
遮るものがなに一つないそこはしとどに潤み、北都の精神を揺さぶる。
蜜を滴らせた秘裂をなぞるように舐めあげる。
ぴちゃぴちゃと湿った水音が部屋の空気を震わす。
「…はぁ…ぁん、…北都、私…どうにかなってしまいそう…」
「どうして…?」
「恥ずかしいから…こんな格好…で…貴方に……」
麗葉の恥じらう姿に愛おしさを感じる。くすりと笑う。
「もっと俺に見せてください。すべてを、貴女のいやらしいところをすべて」
そう言って、ぷっくりとした肉の芽を啄む。同時にびくんと麗葉の身体が跳ね上がる。
軽く歯を立てれば泣き声が麗葉の唇が零れ出す。それは甘さを含んだ泣き声だった。
髪の毛に細い指が差し込まれる。どうやら本当に嫌がってはいないようだ。
「…あまり、見ないで…恥ずかしいの…本当に」
言葉とは裏腹な彼女の身体の反応に北都は苦笑する。
もっと、もっと彼女の泣き顔を見たい。声を聞きたい。
「……北都…ぉ…っ」
余裕のない声で名を呼ばれると熱い血が駆け巡り更なる欲望が身の内で膨れ上がる。
溢れた蜜壺に指を差しこみ熱いその中を掻き回す。
「そこっ…は、…ぁああん」
ある一点に指が触れた時、麗葉の身体が跳ねる。そこが弱点だったとでもいうように。
「やだ…そんなに、したら…ぅぅん…」
見つけたその場所を何度もこづいては彼女の反応を楽しんだ。
「…は…ぁ……、ぁ…ぅうんんん……っっ」
指に絡む肉が収縮する。麗葉の背中が反り返り、胸に浮かんだ汗が零れた。
「もしかして、…麗葉…?」
くったりとして麗葉は熱っぽい息を繰り返し吐いている。
潤んだ麗葉の瞳を覗くと恥じらいをみせて軽く頷いた。

「では、いいんですね。本当に」
北都が硬くなった先をあてがわせ、もう一度確認をとる。
「もう、何度も言わせないでください…」
麗葉は北都にちょっと怒ったような言葉を吐息と一緒に吐く。
次ぎの瞬間には照れたように口付けをかわす。
これ以上ないくらい心臓が高鳴っている。
「…はぁぁ…っ…ぁ…あぁあんっっ」
硬く猛った尖端が秘部を割り中へそして奥へと入ってくる。
下腹部に昇ってくる感覚にシーツを握りこらえる。
「…っ…はぁ…。動いていいね?」
彼女の様子を見ていた北都は息を整えると動き始めた。
681秘密W・4:2006/08/23(水) 23:19:33 ID:tU+1O/wi
「ぅっ…はぁっ…あん…ぁあん…」
「…苦しくない?」
首を横にふる。
処女のそれとは違う反応を示す自分に北都はどう思っただろうと今更ながら思った。
痛くて、苦しくてそして恐ろしかった…
あの時のことは思い出したくなくて心のそこに封印していたのだ。
初めてがどうだったとかは今までの気持ちだけで一杯一杯だったため失念していたといっても過言でない。

「麗葉…っ」
徐々に早くなるなる呼吸、切なげな甘い声。
男の情欲を煽る甘美な誘惑。
それが今、自分に捧げられている。
北都は猛りを露わにし彼女の内部を己の異物で埋めていった。
何度も何度も往復を繰り返せば痺れるような背中を駆け昇っていく。
「…ぁはぅ…んんっ…、…北都…の…、あ…熱い…あぁんッ…」
汗ばんだ身体を何度もぶつける。
衝撃に彼の身体から伸びたすらりとした二本の脚が幾たびも跳ね上がる。
「…はぅっ…あん…私…ぃ」
自らも腰を揺らし北都に快楽を与える麗葉。身をくねらして北都の雄を刺激する。
内部の秘肉が妖しく蠢き収縮をする。北都もはち切れそうな己を最後までうち振るう。
「…もう…だめ…ぇ…いちゃぅ……はぁんッ…」
窮屈な膣中で今まででないほど強く引き絞られる。
「…ッは…ぅっ…」
北都は堪えきれず精を吐き出す。
「あぁーーっ…」
感極まった声が麗葉の唇から溢れ出す。自らも何度も精を彼女の下腹へ飛び散らせていた。

「…はぁ…は…ぁ…」
二人は情交後の甘い余韻を噛みしめる。
顔にかかった髪を北都が背中へと流す。
麗葉は息が整うのを待った。
(…北都、もしかして知ってしまったの?)
口に出さず心の中だけで問いかける。行為の前から何となく感じていた。
どんな気持ちだったのか聞きたい気もした。だが怖くて聞けなかったけれど。
682秘密W・5:2006/08/23(水) 23:21:11 ID:tU+1O/wi

それから数日後
麗葉はいつかの上着を返しに如月の部屋へ訪れた。
戸を叩くが反応はなかった。この時間になら部屋に居ると思ったのだが…
しかたなくまた後にしようと踵を返す。
窓から外をみながら廊下を歩いていた。…その時、正面玄関の向こうに男の背中を発見した。
「…――如月?」
足を止めて目を凝らす。間違いない!
「如月っ!待って…っ」
気が付けば駆けだしていた。彼の上着に皺を作るのもかまわず胸に抱きしめ走る。

「…麗葉様」
彼は玄関先の門で待っていた。もしかして気づかずに行ってしまっていたかもしれない。
というか気づいてもらえる方が奇跡な距離であった。
「如月、これを返しに私…」
走ってきたため息を整わせるのに時間がかかった。
ここ数日、彼とは顔をあわせてはいなかった。
如月の方も以前のように麗葉の部屋へ訪れなくなっいたのだ。
「…何処かへ…?」
長身の彼を見上げて訊ねる。
いつもの見慣れた服装ではなかったため何か予感めいたものがあった。
食い入るように如月を見つめる。
「ええ。故郷へ帰ろうと…」
静かな声音。麗葉は目を見開く。
「そう…なの。…お父様から許しをもらって?」
なぜだろう、声がかすれてしまう。
「ええ」
「そう…。…じゃあ、これはもう要らないのね」
「屋敷のお仕着せですか?」
以前、物置部屋で交わった際、彼女は疲れ果て寝入ってしまったのだ。
その時、彼女の肩に被せられていたものだ。
如月は頷き背を向けようとする。
「待って!」
彼の服を引っ張る。迷惑そうに彼は麗葉を見下ろした。
「まだ何か……――」
683秘密W・6:2006/08/23(水) 23:22:32 ID:tU+1O/wi
言葉が不自然に途切れたのは彼の唇になにか柔らかいものが接触したからだ。
瞳を閉じた麗葉の顔が間近にある、臥せられた長いまつげが微かに揺れている。
「……なんのつもりですか?」
唇を離されると如月はすぐさま言葉を返す。
麗葉は首を振っている。わからないとでもいうように。
「やっぱり、これを持っていって。私が持っているのはおかしいでしょう?」
上着を胸に押しつけてくる麗葉。顔は下をうつむき残念ながら見えないがその耳は赤く色づいている。
形容しがたいなんともいえない感情が胸の奥で疼いている。
「餞別にもらっておきます、先ほどの口付けと一緒に」
麗葉の旋毛が揺れる。まだ赤みを帯びた耳朶につい吹き出しそうになるのをこらえる。
咽の奥をくっくっと鳴らすと麗葉が顔を上げ睨みつけてくる。
「すみません、驚いたんです。貴女から私に口付けたのは初めてだったものですから」
彼女の髪を一房掬い視線を絡ませる。艶やかなそれに口付ける。
「ここに立つと初めてこの屋敷の門をくぐった時のことを思い出します」
遠い記憶をたどりあの日へ想いを馳せる。
「日だまりの中で笑顔を振りまく貴女。そして貴女に付き添って同じように笑っていた北都を見ました」

――ほくと、大好きよ。

甘い声、幼なじみあり恋人である北都にだけ捧げられる言葉。
それを受ける青年は穏やかな笑みで彼女を見つめていた。

「あなた方が羨ましかった、ひどく…妬ましいほどに」
如月の瞳が陰りを帯びる。麗葉は目を見張り彼を見つめる。
「…だから、私を犯したの?」
鈴の音のような声がか細く震える。
「それでもとうとう貴女と北都を引き離すことは叶わなかった…」
如月はそれ以上は何も言わなかった。
麗葉も何も言わずにいた。
「…お別れです」
沈黙した麗葉の額に唇を落とす。そして彼は去っていった。


ひとり残された麗葉。
その頬に透明な雫が滑っていく。
もう如月にもうこれ以上、身体を汚されることはなくなった。
北都を裏切ることもない。
安堵するべきなのに、解放されたはずなのに…
「…如月」
この名前を呼ぶことももうないと思うとなぜだかひどく寂しくて…
溢れる涙。切ないなんて感じることはあるはずないのに…
「ばか…こんな顔してたら北都が心配するでしょ…」
顔を拭って自分自身を窘める。
麗葉はその涙を止める術を知らなかった。
彼女はその場に涙が止まるまでひたすら留まっていた。
庭の風はそんな彼女を慰めるように優しく通り過ぎていった。
彼の冷たい指のようだと麗葉は思った…



秘密W 終
684名無しさん@ピンキー:2006/08/23(水) 23:25:05 ID:ivf9tW1G
秘密キター!
お嬢様は結局北都とくっついたの…か?
麗葉お嬢様の処女喪失編も楽しみにしてます
685名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 01:17:03 ID:IEQJt/+R
現人神様ご降臨ー!!!

・・・もしかして完結編とかあったりする罠?
686名無しさん@ピンキー:2006/08/24(木) 12:10:22 ID:DPL+2OSM
>>677
とても良かったです

お嬢様の複雑な乙女心に萌えました
687677:2006/08/25(金) 20:55:15 ID:wKEoiQrY
>>685
さすがに中途半端な締めだったかなと思ってきた…
もしかしたらこの後の展開を更に作るかもしれない。麗葉処女喪失書いた後にでも。
688名無しさん@ピンキー:2006/08/26(土) 07:45:40 ID:DIbMEaM7
期待保守
689名無しさん@ピンキー:2006/08/27(日) 00:47:00 ID:vsaNESjS
>>687
そんな事ないです。余韻が残ってよかったですよ〜。
でも続きがあるというのなら待ってます。
処女喪失編期待してます!
690夜這いする者:2006/08/27(日) 22:41:59 ID:TggJ21da
投下 奔放なお嬢様と振り回される執事さん



ある大きな別荘に一人の男が働いていた。
半月前、ここに夏の期間人手不足を補うため執事として雇われたのだ。
給料もよく待遇にも不自由はない。
ただひとつの悩みをのぞくとしたら…


「洵!まーこーとー!」
追いすがってくる可愛らしい声に背を向け、聞こえてなどいませんとばかりに歩をすすめる。
ドカッ
背中に強い衝撃が当たる。
「…ぅッ…お…」
顔を顰め視線を背中にはりついた物体を見下ろす。
「洵!お父様が川へ連れていってくれるんですって!」
輝くような笑みを浮かべた少女が青年の顔を見上げている。
「そうですか」
少女を引き剥がすとおよそ愛想もなく立ち去ろうとする。
慌てた様子を見せた彼女は青年を引き留めよめるべく彼の前に立ちふさがる。
「待ってっ!お願い、一緒に行きましょう?きっと楽しいわ」
手を合わせお願いの姿勢をとる少女を見やる。
「いいえ、どうか別の方をお誘いくださいませ。なにもこんな使用人風情などと…」
視線から逃れるように目を逸らし彼女から離れる。
「…でも…」
もごもごとまだ何か唇に言葉をため込んでいる彼女から逃げるように立ち去る。
背中に、「あっ」と小さく切なげな声が聞こえた気がするが無視を決め込む。
どうも彼女は苦手なのだ。自分はお世辞にも愛想の良い人間ではない。
気の利いた言葉をかけたりするのも苦手だ。
反対に彼女は明るく人なつっこい性格の少女であった。
彼女の名前は暁良(あきら)。
彼女はこの別荘の主である大旦那の一人娘でもある。
夏の間、避暑地に立つこの別荘へとやってきたのだ。
なにを好んでか知らずが自分にやたらと構いたがる。元々夏の間だけ主が戻ってくるというだけあって
使用人の数も多くはなく今は最も忙しい時期であり彼女の相手をする余裕はない。
申し訳ないがいつも今のような形になってしまう。
691夜這いする者:2006/08/27(日) 22:43:30 ID:TggJ21da
……とここまではどうでも良いのだが『本当の問題』は――

ちらりと時計を見る。
時間は午後11:30。
寝室には自分しかいない。鍵を閉めたのを確認する。
用心を重ね窓の鍵も同様に確認しカーテンを閉める。
これでようやく落ち着ける。ほっと息を付く。
寝台にくつろぎ腰を落ち着けて着替えを始める。
その時、窓がカタ、と音をたてた。
思わず視線を窓に走らせる。しばし目を凝らしてみる。
特に変わった様子はない。
「風…か」
どうやら物音の原因は風らしい…。拍子ぬけして寝台に滑り込む。
何気ない物音でも警戒する自分は多分、人の目に映ったらどんなに滑稽なことだろう。
灯りを落として目を閉じる。

……しゅる
衣擦れの音がする。部屋の中で自分の呼吸の音に交じる別の気配。
闇の中で隠れるように動く細い人影。
掛布の中で滑り込む…華奢な手。
(……いつの間に!?)
背中をすべり胸に廻される手に内心どきりとしながら身を起こす。
急いで手元の灯りをつける。
「一体どこから入ったんですか!自分の部屋にお帰りなさい!暁良お嬢様!」
灯りに照らされた可憐な少女がそこにいた。
「…だって…ひとりで眠るのは苦手なのですもの…」
彼の剣幕を恐れるように身を引いた彼女は小さな呟きをもらした。
「いくつですか、貴女は。お嬢様の年頃では独り寝が怖いなんて言ってられないでしょう」
そうして窘めていたが泣き出しそうな彼女の表情を見て嘆息する。
「では…侍女に、添い寝を頼んでみたらどうです?」
同じ使用人でも同性であれば問題はないだろう。
「いや…洵がいい」
ここまで言われたらもう絶句するしかない。
692夜這いする者:2006/08/27(日) 22:46:05 ID:TggJ21da
すぅ…とか細い寝息が胸を擽る。
可愛らしい丸みのある頬は微かに色づいている。
息を吐くと彼女の前髪がそよ風に吹かれたように揺れた。
「ん…」
彼女が短く呻いたのを聞いてそっと背中を撫でてやる。
安心したように身を寄せてくる彼女に微かな苦笑すら漏れてくる。
まったく現金なものだ。
すっかり眠ったらしい彼女に自分も眠ろうと背を向ける。
「……」
背中に柔らかい温もりがある。
吐息が背に吹きかかる。
「……」
胸に腹に伸ばされる華奢な少女の腕の感触。
「…まだ、眠ってなかったんですか。……ってどこを触ってるんですかぁ!?」
背中には二つに丸みを押しつけたままの感触がある。
そして彼女の手は腹より下へと降ろうとしていた。
「ちょ…っ、な…なにをする気です!貴女は?!」
洵はぎょっと目を剥いた。
彼の下履きを潜ったその手はもっとも触れて良からぬ場所に到達する。
「…これは、何?」
天使のような愛らしい声が耳を打つ。悪戯な手つきで敏感な膨らみを弄ぶ。
あどけなさを含む声音とは相反し、くす…と笑う彼女は妖艶ささえ帯びている。
それに思わず、ぞくと背中が粟立つ。
「…うあ…」
少女の手が熱を帯びた塊の頭頂部を、揉みしだくように握りしめる。
自身の熱が身体の中心部に集まっていく。
それはじんじんと張りつめて行き場を求めて彷徨う。
「…ふふ…面白い、洵って」
柔らかな温もりが背中に抱きついてくる。
まろやかな胸が背中に押しつけられた。
「止めてください…こんなこと大旦那様に知れたら…」
「…お父様…?…がどうかしたの?」
彼女は背中の後ろで首を傾げた。
その仕草はまるで自分のしていることの卑猥さがわかっていないようにも見える。
その間も刺激は休まることはなく彼を苛んでいる。
「あら…?濡れてるみたい。どうしたのかしら」
彼女の指先、手の平には彼の先走りとおぼしき粘膜で滑っている。
それを彼女は己の唇へ運ぶ。赤い舌先が指、そして手の平を舐める。
緩慢なその仕草は猫の毛繕いを思いおこさせた。
「…苦い」
ぽつりと吐き出された言葉。
「…?」
それきり黙ってしまった彼女を振り返っていぶかしげに見つめた。
ぽすん、と寝台の布団に頭を落とす少女。慌てて彼女を覗き込む。
「…眠いの…おやすみなさい……すぅ」
瞳が目蓋の下に隠されていく。それとともに安らかな寝息が聞こえ始める。
「………」
どうやら今度は本格的に深い眠りの中に落ちたようだ。
「…はぁぁ」
疲れたようなため息が漏れる。
彼は何もいえず持て余した身体の熱をどうしたらいいものか考えていた。
693夜這いする者:2006/08/27(日) 22:48:01 ID:TggJ21da
夜が明けて寝起きで潤んだ瞳の彼女が身を起こす。
「おはようございます」
洵は事務的に朝の挨拶をした。
「…洵…?…?わたくし、いつのまに?」
「やはり、『また』覚えてらっしゃらないんですね…」
『また』を強調して言うのは前にも同じようなことがあったからである。
「一応聞きますが、いつごろから記憶にございませんか?」
一瞬沈黙があって、
「えぇと…わたくしが自分の寝室で横になったあたりからかしら」
がっくりと彼はは肩を落とした。
悩みとはこれなのだ…
彼女はあろうことか、夜中に自分の寝台に潜り込んできたこともあまつさえ自分に淫らな行為をしてきたことも
まるで覚えてはいないのだ。
彼女は時折、眠りにつくと徘徊する癖があるらしい。
そしてなぜか徘徊し行き着く先がこの部屋なのだ。
いわゆる夢遊病者というものなのだろうか…。
いつもどこからともなく入ってきては添い寝を要求してくる。
「昨夜…わたくし、貴方に何かにしてしまったの?」
おず…と少女が聞いてくる。
彼女曰わく、幼い頃からそのような癖があったらしいが一度は治ったらしいのだ。
それがどのような原因かはわからぬが今頃になって再発しだしたのだとか。
一拍おいてから彼女の問いに答える。
「…さぁ、ご自分の胸に手をあててお聞き下さいませ」
さすがに記憶もない令嬢にまさか淫行を働いていましたなどとは言えまい。
暁良は首を傾げて彼に言われたとおり胸に手を宛てていた。
「ほら、早くご自分の部屋にお戻りなさい」
「いけない!侍女が来てしまうわ」
慌てて寝着を乱して部屋を出ていく暁良。それを見る限り
自分でも夜中に異性の部屋に忍び込むのがはしたないことだとは思っているらしい。
しかし昨日は一体どこから忍び込んだのやら。
これでは『夜這い』と変わりないではないか。
昨夜の無邪気ながら妖艶な彼女を思い出し思わず背中が粟立った。

このままだと身がもたない…
そう思った時、ひょこっと扉の隙間から部屋へ戻ったはずの暁良の頭がみえた。
「あの、今夜もよろしくね」
「………」
ぱたぱたと駆けていく後ろ姿。
瞬きをする洵。
「…いつのまに着替えたんだ」
…じゃなくて、本当はすべてわかっいて夜中に潜り込んできているのではないかと思うこともある。
実は、彼女は狐の生まれ変わりとかで自分は狐の彼女にただ化かされているのではないか。
化かされている間抜けな男を見ては腹の底で愉快そうに笑っているんではないか。
そうだとすれば納得…………できるのだろうか。
「…馬鹿げた話か」
いずれにせよ、今夜も自分は彼女に悩ませられるらしいことを確信した洵であった。




 夜這い。お終い
694名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 00:14:16 ID:J+0zvc+R
GJ!
天真爛漫なお嬢さまも萌えるな。
695名無しさん@ピンキー:2006/08/28(月) 00:20:17 ID:IN2euuDJ
GJ
さて、480kbになることだし、次スレをだれかplz
696名無しさん@ピンキー:2006/08/30(水) 21:35:06 ID:nOlJqKE7
697名無しさん@ピンキー:2006/08/31(木) 18:49:04 ID:WZ6leTkw
>>696
おつつつ
698次スレの5:2006/09/02(土) 01:06:40 ID:7OlNuGJh
ここまでに投下されているSSの保管作業を終了しました。
不具合がありましたら管理用BBSまでよろしくお願いします。

http://vs8.f-t-s.com/~pinkprincess/lady_servant/
699名無しさん@ピンキー:2006/09/02(土) 11:57:43 ID:fIo/UmlK
>>698
超乙!!
700名無しさん@ピンキー:2006/09/06(水) 23:55:03 ID:YELs2eRh
埋め

701名無しさん@ピンキー:2006/09/07(木) 15:52:59 ID:GzglNy4w
良スレ埋め
702名無しさん@ピンキー:2006/09/07(木) 23:56:08 ID:bNzWLNQr
703名無しさん@ピンキー:2006/09/08(金) 20:06:49 ID:zrrP4mmU
産め
704名無しさん@ピンキー:2006/09/09(土) 22:49:15 ID:D9/OZ8XQ
今日も産め
705名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 02:17:55 ID:KmjWAETh
「だ、だめですっ…王子!」
「んー?なんで?」
「…っ〜何でって、わ、私の役目は!貴方様の護衛でっ…あっ!」
「あぁ、ウチの国で一番強い女騎士を護衛につけるって話だったからどんな化け物が来るかと思えば…よっと」
「そこはダメ!ダメですっ!あぁっ!」
「お前みたいな美女が来るとは…嬉しい誤算だったな」
「んんっ!やぁっ…」
「相変わらずいい声で鳴くなぁ、お前は」
「そ、そんなことは・・・!ひゃん!」
「さってと、そろそろいいかな〜」
「ぁっ…って、ダメ!!入れちゃダメ!絶対ダメです!」
「……人間ってダメって言われると、どーしてもやりたくなっちゃうよな?」
「知りません!とにかくダメです!今日はきけっ…ああぁぁ!?」
「この状況で、我慢しろって方が、無理だし、な」
「やっ…で、も…はぁっ、あか、ちゃん…でき…あぁっ」
「いいよ、出来ても。そしたら産んでくれ。っつーか『産め』」

あんまり産め産め言ってるからこんな産めネタ浮かんじゃったよ。
てか、ここは男(主)×女(従)ってokなんだろうか?(汗
706名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 02:46:34 ID:uxKoopUc
基本的に男が従、が原則のはず。
こういう話の場合は女兵士かファンタジーが適切じゃないかな?
707名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 05:45:55 ID:vOZjmpa3
「だ、だめですっ…姫!」
「んー?なぜじゃ?」
「…っ〜何でって、わ、私の役目は!貴方様の護衛でっ…あっ!」
「あぁ、ウチの国で一番強い騎士を護衛につけるという話であったからどんな化け物が来るかと思えば…ほれ」
「そこはダメ!ダメですっ!あぁっ!」
「お前のような優男が来るとは…嬉しい誤算であったな」
「んんっ!くっ…」
「相変わらずそそる声で鳴くのぅ、お前は」
「そ、そんなことは・・・!あうっ!」
「さてと、そろそろ頃合かのう」
「ぁっ…って、ダメ!!入れちゃダメ!絶対ダメです!」
「……人間とはダメと言われると、どうしてもやりたくなってしまうものよな?」
「知りません!とにかくダメです!今日はきけっ…ああぁぁ!?」
「この状況で、我慢しろという方が、無理だし、な」
「やっ…で、も…はぁっ、あか、ちゃん…でき…あぁっ」
「よい、出来ても。そうしたら産む。否、『産ませろ』」

705に萌えたので706を踏まえて改変。
705タン勝手にごめん。
708名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 09:34:16 ID:5Fr+6sAG
姫ー!?なんて破廉恥な真似を!
でも、姫の力で押し倒されてる騎士って…護衛だめじゃん!w
709名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 10:04:05 ID:yX4QBNHb
きっと姫が並の護衛じゃ敵わないほどマッチョで屈強なんだ
有り余る腕力と権力を活用し、自分好みの男を食っては投げ食っては投げ…
710名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 10:04:30 ID:il+R7sra
いや、姫の魅力の虜になって抵抗できないに違いない。ハァハァ
>>705>>707もGJ。
711名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 11:56:32 ID:6A+PLPYW
姫の危険日を把握してる>>707の騎士に萌えw
712705:2006/09/10(日) 12:23:21 ID:MFfg8CL9
>>706
ん、そうかやっぱ男(主)×女(従)はダメか。

って、ここの神々みてたら>>707タンのが適切って気付けよ俺。
…『産め』って言わせるのにいい鬼畜執事が浮かばなかったってのもあるけど。

>>707
姫ー!!(*´д`*)
埋めネタだし、萌えるから問題なし!ありがとー!
男の台詞があんまり違和感なくてびっくりだw
713名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 15:33:28 ID:5Fr+6sAG
>…『産め』って言わせるのにいい鬼畜執事が浮かばなかったってのもあるけど。

ならば、若奥様に旦那様の子を孕んでほしくなくて、自分の子を産めーって犯す執事ってのはどうだ?
714名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 15:47:37 ID:bvYvCl6a
>>708
背後からしびれ薬嗅がされたとか。
715名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 16:04:14 ID:YFd+ijRI
姫様はそれは清楚可憐な外見で、騎士は密かに憧れ忠誠を誓っていた
騎士は国1番の使い手と呼ばれるくらい、ストイックな修練の日々を送り、
女性に接する機会もほとんどなかった
もちろん、優男な外見に言い寄る女もいたものの、見向きもしなかった

間近で護衛するために、憧れの姫に初めて近くに寄るチャンスができて、
騎士は緊張しつつも感動していた
しかし姫はそんなことお構いなし。戯れに騎士に襲い掛かる

もちろん騎士の方が体格も腕力も上だ
だが近くで見る姫は、あまりに華奢で壊れてしまいそうで、騎士は手出しできない
経験のなさも手伝って、力加減がわからずにおたおたしているうちに、
姫の技術と、憧れていた女の体の前に…

――――――ここまで妄想した――――――
716名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 17:41:00 ID:gPaSNZ/G
オタカさんみたいなお姫様かと思った
717名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 18:12:54 ID:ZZLOxihA
>708
かつて戦場で負った傷のために障害が残ってるとか。
で、そのときの勇敢な振舞いから国王に目を掛けられて、姫の専属護衛官として採用。
718名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 18:57:01 ID:NASQffZi
>>713
こう?

「だ、だめですっ…セバスチャン!」
「ん?なぜです?奥様」
「…なっ〜何故って、あ、あなたはこの邸の執事でっ…あっ!」
「禿で脂ぎった旦那様よりも、私と結婚したかったとおっしゃったのはあなたですよ…ふふ」
「そこはダメ!ダメですっ!あぁっ!」
「めったにお帰りにならぬ旦那様よりも、私のほうがよほどこの邸の主らしい、ともね……」
「んんっ!やぁっ…」
「相変わらず良い声でお鳴きですね、奥様」
「そ、そんなことは・・・!はぁっっ!」
「さて、そろそろよろしいでしょうか」
「ぁっ…っ、だめ!!入れてはだめ!絶対駄目です!」
「……人間、駄目と言われると、どうしてもやりたくなるものですよ?」
「知りません!とにかくだめです!今日はきけっ…ああぁぁ!?」
「この状況で、我慢しろと言う方が無理です。奥様」
「やっ…で、も…はぁっ、あか、ちゃん…でき…あぁっ」
「よろしゅうございます。私の子を産んでください。いや、『産め』」
719名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 21:24:15 ID:bvYvCl6a
産め!!産むんだ!!
産みなさい!!
産むのです!!
奥方様!!
720名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 22:00:05 ID:vceqabaC
>>718
俺このパターン一番好きかもw
そういや若奥様って無いな

次スレでも奥様を希望する!






産め
721名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 23:09:09 ID:5Fr+6sAG
>>718
そう、それ!
やはりイイ!萌えたよ。





しかし、なんで執事さんって「セバスチャン」って名前多いんだろ?
よく執事さんは、この名前を使われている…気がする
722名無しさん@ピンキー:2006/09/10(日) 23:22:35 ID:uxKoopUc
>>721
アルプスのハイジか何かで出てきた執事がセバスチャンとかいったような気がする。
723名無しさん@ピンキー:2006/09/11(月) 19:16:42 ID:AVIS3FdE
ある程度インパクトのある響きをもちながら
全く主人公っぽくないところが役どころにぴったり
な気がしないでもない
724名無しさん@ピンキー:2006/09/11(月) 19:20:19 ID:+RvyAqq2
「…どうして、躊躇うの?」
夜目にも白い美しい裸身が晒される。
「いや…しかし、姫…そんなこと私には…」
「迷う必要などないわ…。我が騎士よ、さぁ、私の中にありったけの貴方の欲望を埋めなさい…」
戸惑う騎士に姫は毅然と顔を上げる。
騎士はいよいよ困惑し、白い裸身から目を背ける。
「しかし、貴女様を汚すことはできません…どうかお許しを…」
「いいえ、許しません。…このまま、他の誰かの物になるくらいなら…」
女神の化身のような美しい乙女が騎士の胸に飛び込んでくる。
柔らかな金の髪がふわりと舞い乙女の身体を包み込む。
「…いけません、姫。そんなこと…あぁ…」
姫は細い指先で騎士の甲冑を解いて、彼の鍛えられた胸元を露わにさせる。
彼女は堅い胸に指を滑らせ、ため息を零す。
「…素敵よ…」
「…ひ、姫っ…そこは……ッ……」
姫は立ち竦む騎士の前に跪き、唇を寄せる。
「はぁ…っ…」
「ふふ…」
騎士の荒く、しかし切なげな息と姫の妖しい笑い声が混じり合う。
「姫、もう…お許しを…!」
「ええ…!もう良いでしょう。さぁ…来て」
「いえ、違っ…!そうではなくて!……ぁぁああっっ」




「ふふ、これは貴方の子ですわよ」
姫は騎士の前で微笑みを浮かべた。
それは、まるであの時のように…
「まさか…」
騎士は呆然と姫を見つめる。
「…くす…、往生際が悪い人ねぇ…」
姫の衣が静かに床に、落とされた。



「…貴方の欲望を私に埋めて」
725名無しさん@ピンキー:2006/09/11(月) 23:08:20 ID:mX7bC68g
梅シリーズ最高です'`ァ'`ァ'`ァ(;´Д`)'`ァ'`ァ'`ァ
726名無しさん@ピンキー:2006/09/13(水) 11:46:20 ID:8lqIvnrh
セバスちゃんの日記


梅干し好きのお嬢様のために、梅の種を埋めてみた。


お嬢様の股ぐらに。
727名無しさん@ピンキー:2006/09/14(木) 21:46:54 ID:YGD3al1r
梅梅梅
728名無しさん@ピンキー:2006/09/16(土) 14:21:26 ID:8V/sypTA
「……こ…こんなことが許されると思っているのですか」
「何か勘違いをしていないか?お前が姫と呼ばれてかしずかれていたのも昔の話だ。
今のお前は淫売だ。せいぜい股を開いて老いた母親と幼い弟妹のために俺の機嫌を取ればいい」
「ひっ…卑怯者!……あっ!……あああ」
「なかなか良い声で啼くじゃないか。心まで淫売に堕ちたか」
「くぅっ…ふっ…そ、そんなことは……はあっ!」
「さて、そろそろ俺のほうも良い気分にさせてもらうぞ」
「そんなことをしては子が……やめっ!!……許して!それだけは……」
「いいや、孕め。そして産め!そうしなければお前と家族に未来はない。」
「嫌、いや……ああ…あっ!……ああああぁぁっっ!!!」
729名無しさん@ピンキー:2006/09/16(土) 15:35:21 ID:+278qvWB
「だ、だめですっ…お嬢様!」
「えー?なんで?」
「…っ〜何でって、お、俺の役目は!貴女の家庭教師でっ…うっ!」
「あぁ、パパの学校で一番頭がいい講師を家庭教師につけるって話だったからどんなガリ勉が来るかと思えば……よいしょっと」
「そこはダメ!ダメですっ!わぁっ!」
「あなたみたいな美形が来るとは…嬉しい誤算ってやつよね」
「うっ! あぁっ…」
「そんなこと言っても体は素直よ、センセ」
「そ、そんなことは…!くっ!」
「さってと、そろそろ挿れたい?」
「ぁっ…って、ダメ!!挿れちゃダメ!絶対ダメです!」
「……人間ってダメって言われると、どーしてもやりたくなっちゃうのよね?」
「知りません!とにかくダメです!今日はたまっ…てうあぁぁ!?」
「この状況で、我慢しろって方が、酷でしょ、ね?」
「やっ…で、も…はぁっ、もし……こど、も…でき…くぅっ」
「いいわよ、出来ても。そしたら産むから。てゆーか『産んであげる』」


家庭教師(父親の部下)とお嬢様で改変してみた。
ありがとう、705
730名無しさん@ピンキー:2006/09/17(日) 16:46:37 ID:4AGAGisn
>>728
短くも、物語の状況が分かるという点はスゴイと思う。

>>729
今日はたまっ…てって、www
お嬢様、GJ
731姫君×騎士:2006/09/23(土) 23:17:20 ID:bksurKbG
>>724で書き込んだものを単に、ちょっと弄り長くしただけのものです。
埋め用


その肌にふれると冷たいだろうと、思っていた。
透き通るような銀色の長い髪が細い腰を包んでいる。
力を込めて、その身体を抱けばきっと壊れてしまうのではないかと、思った。
磨き込まれたガラス玉のような透き通った、アメジストの瞳。
その瞳は、今目の前の一人の騎士に注がれていた。
静寂は、本来の時間よりも、より時を二人に長く感じさせ…
アメジストの瞳が一度だけ瞬きをする。
「わたくしに、ふれて…」
騎士は、咽に溜まった唾を、思わず飲み込んだ。
そんな言葉を、まさか彼女の口から、聞くことになるとは想像もできなかった。
しかし、騎士は戸惑い、微動だにせず立ちつくしていた。

「我が、騎士…」
彼女は、騎士に近づき手を差し伸べる。
騎士は、それでようやく金縛りから解き放たれたように、動きだし
その小さな手の甲に接吻を落とす。
接吻を受けた手は、するりと引っ込められてしまった。
惜しくもあり、安堵もあった。
これ以上の一線は越えては、いけないことを重々承知しているのだから。
その気持ちが伝わってしまったのか、相手からは短いため息が一つ、彼の頭上に落とされた。
そのため息の意味は何なのだろう、騎士は、胸を苦しげに押さえつけた。
細く、華奢な腕が騎士の頬に、伸ばされる。
その輪郭を確かめるように、手が頬をなで、指が顎をなぞる。
汗ばんだ首筋を、指先が撫でてゆく。
やがて、甲冑に行き着き、それを指が悪戯のように留め具を外そうとする。

「いけません、姫」
騎士は姫君を制止する。しかし、彼女は騎士の制止を聞こえてなどいないかのように、それを止めようとはしなかった。
もどかしい手つきで、ようやく甲冑のひとつが、床に落とされた。
姫君は、以前手を休めず、次ぎのそれを剥がすことに夢中になっている。
騎士はその様子を、ただ黙って見ていた。
そんな彼女を見ていた騎士の胸の内に、切ないうずきのような物が生じる。
そしてついに、こらえきれず騎士は思わず、姫君の細い手首をつかんだ。
加減を忘れていたせいか、彼女は微かに顔を痛みに歪めた。
騎士は、はっとするように力を緩める。
そのまま、手を離そうとすると、逆にその手に押しとどめるように姫君の掌が重なってくる。
自分の堅く骨張ったそれとは、まったく違う華奢な手…。
やわらかで、それでいてしっとりとしている女性の手だ。
胸の鼓動が、早鐘を打つのを否定するように、騎士はその手を押しやった。
押し戻された手を姫君は、そっと胸の上に大切なもののように撫でた。
「…もう、あの頃のように、わたくしの手を引いてはくれないの?」
732姫君×騎士:2006/09/23(土) 23:20:07 ID:bksurKbG
あれは、まだ彼らが幼い日だった。
騎士がまだ活発な少年だった頃、悪戯で城に忍びこみ一人の少女とであった。
固く無機質な表情の少女。冷たそうな銀髪。
精巧に作られた人形のように美しい姫君。
塔の中で、大切に守られてきた彼女は、国王の愛娘であった。
少年は、少女との出会いをまるで宝物を発見した時のように、嬉しさ、あるいは興奮のようなものを感じた。
幼い姫君は少年をみると表情を変えずに、だが不思議そうに首をかしげた。
彼は悪戯心も手伝い、彼女を城の外に連れだした。
なぜか彼女は、手を引く彼に、騒ぎもせずついてきた。


切なげな問いかけ。瞳は熱く潤んでいた。
白い頬は微かに朱をはいている。
口唇が微かに震える。
「…他の殿方の物になるぐらいなら、いまここで、貴方に奪われてしまいたい…だから
…一夜でいい…どうか、わたくしを欲して…」
衣擦れの音がして、姫君の薄い衣が床に落とされる。
姫君の清らかな裸身が、騎士の目に晒される。
呼吸のたびに、揺れる柔らかそうな乳房。
細い腰。すらりと伸びた脚。
甘い…香り――


その時、一度誤って姫君の裸体を見てしまったことを思い出した。
初めて城の外にでた彼女は、森の緑の美しさに目を奪われていた。
そして、その光景に少年は心を奪われていた。
森の泉で彼女と遊びのつもりで水浴びをしたとき、初めて身体の違いに気がついた。
華奢な身体つき。なだらかな曲線。
胸は、その頃はまだ大きくなかったが、それでも明らかに少年のそれとは違い
柔らかく膨らんでいた。
なんだか、とてつもなく恥ずかしいような気がし、彼は服を着たのだが
頭の中で、焼き付いて忘れることも出来ずにいた。
時を経て、より美しく成長した姫君。
より女性的になるにつれて、そして立場を自覚するにつれて距離をとってきた。
そして、その彼女が今にいたり彼を悩ましていた。
733姫君×騎士:2006/09/23(土) 23:23:53 ID:bksurKbG
「お許しを…」
騎士は呻くように声を発し、視線を姫君の裸身から外した。
このままでは、己を制す術を失ってしまいそうだ。
誘惑と自制心がせめぎ合う。
「…目を逸らさないで、貴方の欲望を私に下さい」
その言葉に騎士は、吸い寄せられるように姫君の瞳の中に捕らわれた。
熱に潤んだような瞳の中に、自分自身が映っていた。
懇願するような表情は、騎士が初めて目にするようなものだった。
記憶の中にある彼女は、常に聡明で冷静な、弱みなどみせないような非の打ち所のない姫君だった。
このように、今にも儚く壊れてしまいそうな表情など想像もしたことはなかった。

「……ああ」
観念したように騎士は息を吐く。
姫君の腰が騎士の腕の中にさらわれる。
顔を寄せ吐息が混じり合い、言葉もなく唇が重なりあう。
逞しい騎士の背中に姫君のほっそりとした腕が廻される。
口の中で、舌が、絡み合う。長らく会っていなかった恋人と再会するように――
「…ん……」
咽が動き唾液を飲み干す。

姫君は騎士の前にかがみ込んだ。
「姫…!そこは…っ」
姫君の手が再び騎士の腰を、股間部を守る装具を外しにかかる。
「…っ、…それ以上は…いけません!」
「…これほどになっていても?」
騎士の男性器が空気にさらされる。
それは、既に硬くなり、そそり立ちその存在を主張していた。
柔らかな口唇がそれを含む。
「…ちゅむ…」
拙い仕草でそれを、舌先で舐める。
舌の動きが、艶めかしく騎士の雄を刺激する。
「……っ」
歯が軽く尖端をかすめ、思わず騎士は呻く。
「ぁ…くっ…!」
一旦はなんとかやり過ごした絶頂を、姫君の口が強く吸い上げたことにより、
ついに、騎士は姫君の口の中に白濁を吐き出してしまった。
ぽた、と閉じた唇から白濁がこぼれ落ちた。
騎士の見ているそばで、姫君は口の中の白濁を飲み込んでしまった。
「…姫…」
姫君は騎士に、くすりと微笑する。
達してしまったばかりのそれが、またすぐに硬さを取り戻していく。
「わたくしはとうに覚悟は出来ているのです…だから――」
姫君の言葉が途中で、途切れる。
姫君の裸身が騎士の腕によって浮きあがり、寝台の上に沈む。
734姫君×騎士:2006/09/23(土) 23:26:14 ID:bksurKbG
熱に駆られたように騎士は、姫君の肌を吸った。
手で身体の曲線を、撫でていく。
乱れた呼吸を整え、もう一度深く口づけあう。
騎士は、己の身につけていた服も何もかも脱ぎ捨て、姫君の身体に覆い被さっていった。
乳房の頂を摘み、唇に含むと姫君の口から、「あっ…」と短い声が漏れた。
もう、片方の乳房をこねるように揉む。

「…っぁ…、…あぁん…」
悩ましい声が騎士の耳を打つ。
騎士は姫君の乳房に吸いついたまま、手を下腹部に移動させる。
へそをかすめた指は、そのまま淡い茂みに潜り、敏感な在処を探し探索する。
「…姫…?」
掠れた声で尋ねる。具合を確かめるように、指で反応の強い部分を探していく。
「…ぅ…ぁ…っ…」
小さな突起を見つけると、騎士の指はそれを弄びはじめる。
秘部をなぶる指が、蜜の溢れるそこに気づいた。
指に付着した粘膜を、小さな突起にまぶし、弄りまわす。
やがて、「…あぁっ」という甲高い声と共に姫君の身体がビクッと痙攣する。

荒く姫君の胸が呼吸に上下している。
それを見た騎士は、姫君の身体から手を離した。
「…もう、…よろしいですか?」
恍惚としていた姫君は、騎士の言葉に驚き身を起こす。
「え…?」
驚いた瞳は、見る間に悲しげに潤み始める。
「だめっ…!いやです!」
「姫!駄々を捏ねないで下さい!大事な御身を想えばこそです」
「わたくしを想うのなら、今すぐわたくしを抱きなさい!」
姫君の強い眼差しが騎士を射抜く。
「…姫」
既に、彼女の言葉を予想していた部分があったが、それ以上に
きっぱりと口にした姫君に、彼女の覚悟をみたような気がした。
「私達は、きっと許されないでしょう。それでも…?」
「ええ…。たった一夜でも構わない…。わたくしを愛して…」
観念したように騎士は息を吐く。
姫君と騎士の身体が重なり、一つの影になる。
姫君の身体は思っていたより、ずっと柔らかかった。

騎士は息を吐き出した。
森の泉で、彼女に見とれていた時…
あの日から、こうなることをどこかで夢想していたのだ。
735姫君×騎士
「…あっ…、あぁん…、はぁっ…あんっ」
「姫…っ」
絡み合いながら、激しく身体がぶつかりあう。
姫君は普段の落ち着いた雰囲気とは想像もつかぬほど、淫らに乱れた。
「ひゃぅん…もっと、…ぁぁあん、もっと、…ぁ…激しく…」
彼女はいつしか自ら、腰を揺らし、騎士に快感を与えていた。
騎士は己の腰をぶつけながら、ふと姫君の身を案じて眉を寄せた。
「…その身体が壊れてしまっても…?」
「…そうよ…、壊れるくらいに、…っ…、忘れられないくらいに…」
姫君は、嬌声を上げて、とぎれとぎれに言葉をつくる。
汗が、突き上げるたびに弾ける。
「…ぁあんっ」
姫君はひときわ、高く嬌声を上げた。
根本まで埋められた騎士を、強く締め上げる。
「…もうっ、…もうっ…、ぁあっ…」
騎士も、それに応えるように、姫を掻き抱く。
「あっ、あっ、ああっ、…ぁああああーー!!!」
強い締め付けに、姫君の内部で騎士の肉棒が激しく脈打つ。
限界まで膨れ上がった肉棒が、姫君の最奥部に向かって勢いよく精液を吐く。
それにあわせ、ビクンビクンと姫君の身体が痙攣していた。





「この子は貴方の子です…」
眠る幼子をその母親は、優しく撫でる。
幼子は、母親ゆずりの銀の髪をしていた。
「色は違うけど、猫っ毛な所はやはり貴方に似ているわ」
くす、と彼女は笑みを浮かべる。
アメジストの瞳に呆然としている男が映り込む。
「相変わらず、往生際が悪いのね…」
衣擦れの音がして、男に近寄っていく。
布が、静かに床に落とされる。
それは今まで彼女が纏っていた衣であった。
「姫…まさか」

白い肌、艶めかしい肢体。
彼の、姫君―

「我が騎士…」
騎士の咽が上下する。
耳元に姫君の吐息が吹きかけられる。

「…貴方の欲望を、私に埋めて…」