諸君、私は幼馴染みが好きだ。
家で、街中で、通学路で、学校で、この地上で出会えるとあらゆる幼馴染みが大好きだ。
肩をならべて歩いていた喧嘩っ早い幼馴染みが轟音と共に私を吹き飛ばすのが好きだ。
空中高く放り上げられた私の鞄の中身がばらばらになった時など心がおどる。
入浴中の幼馴染みのすっかり成長した身体に驚くのが好きだ。
悲鳴を上げて風呂場から飛び出してきた幼馴染みに謝り倒した時など胸がすくような気持ちだった。
毛先をそろえた幼馴染みが見せるはにかんだ笑顔が好きだ。
似合うかなぁ?なんていいながら何度も何度も鏡を覗く様など感動すら覚える。
完璧主義の幼馴染みがふとした弾みで恋愛感情に目覚める様などはもうたまらない。
バカァ!と泣き叫ぶ幼馴染みが振り下ろした手の平とともに、私がばたと薙ぎ倒されるのも最高だ。
哀れな幼馴染みが雑多な調理器具に揉まれながら、健気にも手料理を作ってくるのが好きだ。
憎まれ口を叩きながら口に入れた時など絶頂すら覚える。
朝のアンニュイな時間に滅茶苦茶に叩き起こされるのが好きだ。
必死に守るはずだった掛け布団が蹂躙され剥ぎ取られる様はとてもとても悲しいものだ。
諸君、私は幼馴染みをご近所さんの様な幼馴染みを望んでいる。
諸君、エロパロ板住人の諸君。君達は一体何を望んでいる?
更なる萌えを望むか? 情け容赦のない糞の様な登校風景を望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐の様な三角関係を望むか?
『弁当! 弁当! 弁当!』
よろしい。ならばSSだ。我々は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとする握り拳だ。
だがこの暗い板の底で四半世紀もの間堪え続けてきた我々にただの幼馴染みではもはや足りない!!
幼馴染みとのHを!! 一心不乱のHを!!
我らはわずかにスレの一つ。千人に満たぬROMに過ぎない。だが諸君は一騎当千の古強者だと私は
信仰している。ならば我らは諸君と私で総力100万と1人の幼馴染みスキーな集団となる。
幼馴染みを思い出の彼方へと追いやり眠りこけているROMを叩き起こそう。
髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう。連中に幼馴染みの味を思い出させてやる。
一千人の幼馴染みレスの戦闘団でエロパロ板を萌やし尽くしてやる!!
昨日、不細工な男と話したんです。ブ男。
そしたらなんかめちゃくちゃ好きな娘ができたらしいんです。
で、よく見たらなんか小ぎれいにしちゃって、見たこと無い服着てるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
あんたね、好きな娘ができたぐらいで着なれない服着てるんじゃねーよ、ブ男が。
そのセンスだよ、センス。
なんか帽子かぶってるし。ストリート系だってか。おめでてーな。
よーし俺イケてるじゃん、とか言ってるの。もう見てらんない。
あんたね、普段のがなんぼかマシだから着替えて来いと。
ブ男ってのはな、ダサい服着てるべきなんだよ。
すれ違った女100人が100人とも「今日のダサい奴」にチェックしてもおかしくない、
俺は女に縁がありません、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。
ブーンだのメンズノンノだのは、すっこんでろ。
で、やっと着替えたかと思ったら、どうやってコクるかな、とか言ってるんです。
そこでまたぶち切れですよ。
あのな、あんたはわかってねーんだよ。ブ男が。
得意げな顔して何が、コクるかな、だ。
あんたは何度失敗すれば判るのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
あんた、コクりたいって言いたいだけちゃうんかと。
隣に住んで15年のアタシから言わせてもらえば今回、あんたはやっぱりコクれない、
自爆、これだね。
ベッドの上で叫んでのたうちまわる。これがあんたのコクり方
自爆ってのは相手に言えない。そん代わり相手に避けられる可能性少なめ。これ。
で、相手に彼が出来てあきらめる。これ最強。
しかしこれを続けてるとホモの噂が立つという危険も伴う、諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。
まああんたみたいなブ男は、早いところアタシの気持ちに気付けってこった。
では幼馴染白日祭りをば思う存分ご堪能あれ。
幼馴染ばんざい。
>1さん。深夜のスレ立て、お疲れ様です&ありがとうございます。
それでは、へっぽこな一番手で恥ずかしいですが、
ホワイトデーネタ投下いたします。
ホワイトデーは憂鬱だ。
「……はあ」
今日、もう何度目かわからない溜め息をつく。
「……はあ」
目の前には見慣れた幼馴染みの家。
「は〜あ〜。イヤだなあ〜」
思わず情け無い声を漏らす。
ここに来るまで、何度行くのを止めようと思っただろう。
……「絶対来い」って言われてる以上、そういうわけにもいかないんだけど。
諦めに似た気持ちを抱えつつ、門に取り付けられたインターフォンのボタンを押す。
軽快なチャイムの音がなってしばらくしてから、向こうで聞きなれた声がする。
『はい。どなたですか?』
「……あー。わたしですわたし。春香」
『おー! 来たか、ハル! 悪いが、今ちょっと手が離せん! 裏が空いてる、上がって来い!』
テツ――幼稚園からの付き合いの、熊谷鉄人――の声が、それだけを言って、ブツンと切られた。
仕方なく、自力で門扉を開け、勝手口に向かう。
相変わらず、庶民からすると悲しくなるくらいにお屋敷だ。
庭がとにかく広く、いつも小奇麗にされている。
ああ、沈丁花がもう花をつけている。
なんていい匂いなんだろう。花も実に可愛らしいなあ。
いつまでも、こうして座って見ていたいくらいだなあー!
「……ハルちゃんじゃないかー? 何をしとるんだね、こんなとこで」
後ろから声をかけられる。
「……あ、おじいさん。こんにちは、おじゃましてます……」
「朝からテツがエラくはりきっとるぞー? その、なんだ、ほわいとでーとかいうので、
ハルちゃんにプレゼントらしいなー?」
「うああああああああああ」
――要するに。
「そ、そんなに気合入ってんですか、テツは」
「おー、なんだか今年もずいぶん前からああでもないこうでもないと、台所に篭って色々しとったぞー?
今日なんか、今朝から甘い匂いがずっとしとるしなー?」
――憂鬱の種は、この事だ。
――趣味が料理全般(特に菓子)という男に、バレンタインチョコなどあげるものでは無い。
「うわああああ、イヤだなあああああああ」
「は、ハルちゃん? どうかしたかね? 心配しなくても、鉄人の菓子はうんまいぞー?」
「……問題はそこなんですよう、おじいさん。私が先月、どんなチョコをあげたか、
おじいさんも知ってますよね? 私、おじいさんにも同じ物渡しましたし」
「おーおー、覚えとるよう、なかなか素朴で可愛らしかったがのー?」
……素朴。
……うん、素朴だろうな。
なんせ、ホットケーキの素にココアを混ぜて焼いて、それを適当な型で抜いて、チョコがけにしただけの、
いまどき小学生でも少々手先の器用な子なら、もうちょっと凝った物を作るよってな代物だ。
うおあー、なんだって下手に――下手な――手作りなんかしたんだ、一ヶ月前の私。
まだ市販品に逃げた方がまだマシだっただろうか。
いやでも、去年のしょぼい500円トリュフに返ってきたのが、チョコの風味濃厚。リッチ極まるガトーショコラ。
一昨年の銀紙チョコ詰め合わせに返ってきたのが、純白眩しいふわっふわのエンゼルシフォンだった事を考えて。
考えて――、まあつまるところ、自棄になったという事なのだろう。
――で、その自棄の代償として。
「……胃、胃が痛い……」
今、こんな事になっている。
ちくしょう、テツの馬鹿たれめ。
いくらテスト休みとはいえ、たかがホワイトデーにそこまで気合入れなくてもいいじゃないか。
それともなにか、世間における『ホワイトデーはバレンタインの三倍返し』という戯言を生真面目に
守っているとでも言うのだろうか。
だったら頼むから止めてくれといいたい。おかげで毎年毎年、こうして女として悔しいやら、しょぼいチョコで
申し訳ないやら、来年はどうしたらいいのか途方にくれるやらで、とてもしんどい事になっている。
もう今年はいっその事バレンタインになにか贈るのは止めようかとも思ったのだが、私が何もしていないにも
関わらず、テツがホワイトデーにきっちりと贈ってくるという事態だけは避けたかったため、中途半端な手作り
という事になったのだが。
もう気が重いなんて物ではないのだが、行かないわけにもいかず、勝手口の戸をあける。
「なにやってたんだ? 遅かったじゃないか」
「……ああ、うん。ちょっと庭でおじいさんと話し込んでた」
……わー。
……相変わらず、とんでもないなあ。
身長190センチ近い坊主頭のマッチョが、やたらヒラヒラしたファンシー極まるデザインのエプロンを
身につけているのを見ると、なんというか、異次元に迷い込んだような気分になる。
いや、まあ、これをテツに贈ったのは、他でもない私なんだが。
で、テツがわざわざ着てくれてるのは、私の為だというのも解っているのだが。
……それにしても、シュールだなあ。
「まあ、ちょうど良かった。今、飾りつけがすんだところだ。茶を入れるから、座って待ってろ」
言われるがままに、日当たりの良いいちばん良い席に通される。
程なくして、テツが大きなお盆でお茶と問題のケーキを運んできた。
「今年はなー、いい苺が手に入ったから、苺の菓子にしてみたんだが、どうだ?」
――どうもこうも。
周囲をぐるりと囲む真っ白なダクワーズ(メレンゲ生地の焼き菓子)。
その上にこれでもかと盛り付けられた真っ赤な苺。
1ピース分を切り取られた断面からは、パステルピンクの苺ムースと真っ白なムースの2色が
美しいコントラストを描いている。
――完璧な、シャルロット・フレーズだった。
「あー、こっちの赤いのが苺で、こっちの白いのがホワイトチョコのムースだ。まあ、食べてみてくれ」
「……い、いただきます」
うわあちくしょうおいしいいいいい。
苺ムースに少しヨーグルトが混ぜてあるのだろうか。
甘酸っぱくさわやかで、しかしてホワイトチョコムースの風味とケンカしていない。
側面のダクワーズもさくさくしゅわしゅわでものすごく美味しい。
ああああ、紅茶も程よい渋みがケーキと合ってておいしいなあああ、ちくしょうううう。
一切れをあっというまに平らげる。
ああ、美味しかった。
美味しかったん、だけど――。
「……あのさ、テツ」
「む、どうした? 口に合わなかったか?」
「逆だよ、逆。……いや、毎年毎年、申し訳なくてな。私、バレンタインにマトモなものあげてないだろう」
「……そうか? 今年のチョコなんか、素朴な手作りで俺は感動したが。あれはとても嬉しかった」
「いや、私のとオマエのだと、オマエのほうが良すぎる。不公平だ、申し訳が無い」
いくらなんでも、格差がありすぎると思うのだ。
「それでだな。来年からは、こういうのはもう止めに――「それなら」」
言いかけた言葉を遮られる。
「――それなら、5月の連休あたりに、どこか行かないか」
「え?」
「いやな、潮干狩りに行きたいんだが、ツレにはみんな断られたんだ。
男一人で海というのもなんだし、できたら、ハルにいっしょに来て欲しいんだが」
……そんな事で、いいのだろうか?
「……よし。そんなら、交通費は私が出すよ」
「……む。……あー、うん。頼む」
うん。
それだけでも、だいぶ気が楽になる。
「5月か。楽しみだな」
「……ああ、楽しみだ。絶対行こうな、海。……二人で」
「うん、楽しみ。……ところで、テツ。もう一切れ、おかわりをしてもいいかな?」
苦笑して、テツがもう一切れ切り分けてくれる。
「……できれば、一泊ぐらいしたいものだが」
「テツ? 今、何か言った?」
「いいや、なんでも。それより、ホレ、二つ目だぞ」
「あ、ありがとう。……うん、すごく美味しい」
「……幸せそうだな」
「だって幸せだからな」
「……そうか」
――陽射しは暖かく、お菓子は美味しい。
目の前には、気心の知れた幼い頃からの友人がいる。
世界は、今日も平穏だ――。
以上でホワイトデーネタ終了です。
エロ無しでスンマセン。
いや、なんだろう。気づいたら顔がにやけていた。
出来れば潮干狩りネタも読みたいなんて思ってしまったよ。
まぁ、ようするにGJ!!
>7-11
もしや812さん…?(違ってたらすみません)
楽しく幸せなホワイトデーネタご馳走様でした。ぜひ一泊。
触発されてしまったのでホワイトデー祭りにコネタ便乗します。
もともとスレの流れでのネタだったのと、名前的に埋めが相応しい気がして
前スレにしようかと思ったのですが即死防止のこともあるのでこちらに投下。
梅子は通学用の手提げを取り落とした。
「嘘」
「なんつーか、腹立たしい態度だな」
目を眇めて孝二郎が仕立てのいいブレザーに皺を作る。
屋敷の門から徒歩一分のバス停の前で、朝の空気が涼しくそよいだ。
ちなみにバス停の名前が「屋敷前」であるところからして、彼らの屋敷が古く大きいと良く分かる。
近場の名門私立高校までは送り迎えもありなのだが、孝二郎はそういうことを極端に面倒くさがる。
跡を継ぐわけでもねえのに、というのが名家次男の口癖だ。
その次男は差し出しかけた手をあっさりと引っ込めてポケットに戻そうとした。
「ま、いらねーんならいいや」
「いります。いただきます」
「あっそ」
ぐいと差し出した手に乗せられた梅のど飴に彼女は本気で感動した。
――初めてお返しを貰った。
拾った手提げのポケットに大切にしまって、チャックを閉める。
それから手提げかばんを抱きしめた。
…なにせ物心ついた頃から二月十四日はお坊ちゃまにまとわりつき、
三月十四日は夜中まで待ち続けて結局布団の中で諦めていたのだ。
たとえ梅のど飴だったとしても嬉しい。
今年は覚えていてくれたのだ。
隣から照れたような曖昧な憎まれ口が飛ぶのもおかげで全然気にならない。
「なに涙ぐんでんだよ、馬鹿」
「いいものをいただきましたから」
「……学校では敬語止めろよな、恥ずかしいだろ」
「うん」
「あと鞄持ちも屋敷から見えなくなったら止めろ」
「それは仕事です」
目を逸らして彼が眉を溜息をつく。
梅子が自分のものと一緒に抱きしめたその鞄は、やっぱり彼女のものより質のいい皮で。
だから本当は、
こんなことで喜んだって仕方ないのだけれど。
でも幼稚園の頃から持っていた鞄がだんだん大人っぽくなっていくこととか、
気まぐれで好みの色が変わる孝二郎の変遷を自分だけが覚えていることとか、
そういうことが梅子にとっては大事なのだから仕方がないのだ。
勿論そんな殊勝なことは、言ってあげないと決めている。
「仕事、か」
「そうです」
「なあ梅」
「なんですか」
「敬語止めろ」
「お屋敷が見えなくなったらそうします。」
孝二郎君、と口の中で二人だけのときの懐かしい呼び方を呟いて、彼女は手提げポケットの上をなでた。
バスのエンジンが遠くから閑静な道路に響いて、
屋敷の瓦屋根に雀が飛び立つ空が今日も青くて高い。
今年のホワイトデーは、暖かい春の日和になりそうだ。
以上お粗末さまでした。
(;´Д`)ハァハァ
この続き頼む
即死防止に1つ投下します。
ホワイトデーに全く関係ない話ですが…
「ねぇねぇ、梢、最近彼とはどうなの?」
「へっへ〜ん、聞いて驚けぇ!
これが結構上手くいっているんだ!そういう風夏はどうなのよ?」
昼休みの喧騒に紛れて、彼氏話に花を咲かせている友人二人。
教室内は人もまちまちで、見渡しても授業を受けている半数ほどしか人がいない。
購買やコンビニに買いに行く人や、天気がいいから外や屋上で食べる人、
贅沢にも外に行って外食する人など、様々な理由からいつもの窮屈な密度は消えていた。
そんな教室の後ろ端で三つ机をくっ付け、
お弁当をつつきながら私は二人の話に聞き入っている。
「私?私も順風マンハッタンだよ!」
「風夏…あんた、彼氏の影響受けすぎよ。ギャグがサムすぎる!」
二人ともシアワセそうだなぁ。
私には今現在彼がいないから、二人の話には入っていけないが、
自分の知らないことがたくさん分かるので、話を聞いているだけでも面白い。
そんな友人二人に囲まれてせっせとお弁当に箸をつける。
食べるのが遅い私は、もたもた食べていると昼休みが短くなってしまう。
大好きなあま〜い卵焼きに箸をつけ、口に運ぼうとした瞬間…
「そういえば、雪那(せつな)は好きな人とかはいないの?」
ぽろっ
卵焼きがお弁当箱の中に引き戻される。むしろ箸から転げ落ちていった。
「えっ!わっ、私?」
思わず声が裏返る。
問いかけてきたのは、桜花 梢(おうか こずえ)ちゃん。
梢ちゃんとは、幼稚園の頃からの付き合いがある。
成績優秀、そして何よりスポーツ万能で、所属しているバレー部では
数少ない1年生からのレギュラーである。
高校3年生になった今ではキャプテンとしてチームをまとめ上げている。
そんな梢ちゃんは、同じバレーボール部の男子キャプテン
大柳功馬(おおやなぎ こうま)君と交際をしている。
お互いキャプテンに就任したばかりの新米だった頃、
いろいろ悩みを相談をしているうちに、いつの間にかお互い重要な存在になっていたと言う。
付き合い始めてからもうすぐ10ヶ月の月日を迎えるこのカップルは見ていて微笑ましい。
「あっ!は〜いは〜い!私も聞きたい!」
煽るのは、朝倉 風夏(あさくら ふうか)ちゃん。
ふうちゃんとは、高校入学時に出会って3年間同じクラスである。
明るい性格から男女問わず友人が多い。
勉強も運動も苦手なふうちゃんだが、たくさんの友人に囲まれて生活しているので
学校は楽しいといつも言っている。
そんなふうちゃんは、バイト先で知り合った違う高校の同級生
金本宗一郎(かねもと そういちろう)さんと交際をしている。
そんなふうちゃんに金本さんについて尋ねてみると、
優しくおもしろい人で一緒にいると自然に笑顔になってくるような人だと言う。
プリクラ手帳の中にいる、二人の写真は、
どれも彼氏彼女としてのシアワセそうな日々を物語っている。
「さっきっから、うちらばっかりで盛り上がっていて…ねぇ、風夏?」
「そうそう!雪那の恋話(こいばな)聞きたいなぁ!」
二人の視線が刺さる…
「もう、知ってるくせにぃ…いぢわるだよぉ!」
そう言った後、また卵焼きに箸をとり、口に運ぼうとしたその時…
「おぅ、遅くなってわりいな」
ドアが開き背後で声がする。私にかけられた言葉ではないが気持ちが逸る(はやる)。
「おせぇぞ、雪之介!もう弁当、先に食っちゃってるかんな!」
これから弁当を一緒に食べるのであろう、彼の友人はそういっている。
私の好きな人は…幼馴染の井口雪之介(いぐち ゆきのすけ)、通称ゆきちゃん。
12月の永遠に続く透けるような雪の降った夜に生まれたから「雪之介」と命名されたらしい。
本人はこの名前古臭くてあんまり好きじゃないみたいだけど、
私は名前の由来がとても素敵だと思う。
ゆきちゃんとは、家が隣同士で私たちが生まれるずっと前、
それもかなり昔からの交流があるっていうのをおじいちゃんから聞いたことがある。
今でも家族ぐるみの付き合いは深いし、祖父母同士・親同士の仲も良すぎるほどだ。
ゆきちゃんと私は同じ12月生まれ。一週間ほどゆきちゃんのほうが早く生まれてきているけど、
私たちは同じ場所で同じ時間を共有して生きてきた。
でも、一緒にいる時間が長すぎるからこそ起こる弊害だってある。
私はゆきちゃんが好き…だけどもし思いを告げてしまって
今まで築き上げてきた関係が壊れてしまうくらいなら、
今までどおりのただの幼馴染を演じていたほうがいいのではないか…。
そう思うとこの「好き」という感情から足がすくんで先に進むことが出来ない。
(ゆきちゃんはどうおもっているのだろう…)
当の本人は口笛を軽く吹きながら軽やかな足つきでドアを閉めている。
「雪之介、購買の状況どうだった?」
「いやぁ、すげぇ込んでいたよ!しかも戦利品はとてつもなく微妙ときたもんだ」
そう言うとビニール袋に入ったパンを、がさがさと揺らしながら友人の元へと歩いていく。
その途中、大きな手が私の前を横切り、お弁当箱の中で映えていた黄色いものを抜き去った。
「…………………………………………………………………………」
「んん!んみゃひ!」
「………………………………………………………」
「雪那の卵焼きは旨いなぁ!」
「…………………………………」
「うちのお袋のとは大違いだ!いやぁお前は卵焼きの申し子か!」
「…………………」
「雪那、ごっつぉさん!わざわざ俺の好物の卵焼きを残しておいてくれたんだろ?
いやぁ、出来た幼馴染で僕は涙ちょびひげだよ!」
「………」
「雪那さ〜ん?もしも〜し?」
「…ばか」
「ばかばかばかばか!…ゆきちゃんのばか〜!!!!!!
私が好きなものは最後まで残しておく癖を知っているくせにぃ!」
私は腕力の無い手にこぶしを作り、ポコスカとゆきちゃんのお腹をたたき続ける。
15年近くも柔道を続けている鍛え抜かれた体に、私の攻撃が通用するわけが無いが
それでも叩かずにはいられなかった。許しまじきこの行動!食べ物の恨みは恐ろしいんだぞ!
「ちょ、わっ、分かった!俺が悪かった!分かったからそんなに怒るなよ!」
「怒りたくもなるよ!大体、今朝ゆきちゃんに作ってあげたお弁当どこにやったのよ!」
「腹減ったから2限目に早弁しちまった」
呆れた幼馴染である…。
「はぁ…これから二つお弁当詰めたほうがいいのかしら…」
「二つ詰めてくれたら、それはそれで良いかもな。旨い朝飯が学校で落ち着いて食える」
私は毎日、自分のお弁当の5倍はあろうかというゆきちゃんのお弁当箱をつめている。
ゆきちゃんの両親と、中学2年生の弟の潤樹(じゅんき)くんは、
お父さんの仕事の都合上、2年前の4月から東京での生活を送っている。
2年前の4月というと、私たちは高校に入学したての頃。
両親不在で祖父母も仕事を持っているゆきちゃんにお弁当を詰めてくれる人はいなかった。
しかしいくらなんでも、毎日購買やコンビニ利用では…と不憫に思った私は、
おばさんにゆきちゃんを任された事もあってか、彼のためにお弁当を作るようになった。
高校生になってからは自分で作ろうと思っていたし、一つ作るのも二つ作るのも変わらない。
そう思っていたのだが…ものすごい量を食べるゆきちゃんのお弁当を詰めるのは
入学当初の慣れない私の技量ではその作業をこなす事は容易ではなかった。
今はと言うと、3年目ということもあり多少寝坊しても融通が利くまでに成長した。
「雪那」
「うん、なに?もうちょっとお弁当の量多いほうがいいの?」
「そうじゃない。量も味も文句なしだ。
ただ、いつも弁当詰めてもらって悪いなと思ってさ…」
ゆきちゃんが俯く。そんな顔を見るためにお弁当を詰めているんじゃないんだけどな。
「ゆきちゃん、私が好きで勝手に詰めているだけなんだから悪いなんて思わないで。
わたしはゆきちゃんがおいしく残さず食べてくれるのが何よりの報酬なんだから」
そして、私はそれだけで満足です、と言葉を付け足した後、ゆきちゃんに笑いかけた。
ゆきちゃんは、といえば、バツの悪そうな顔からいつものゆきちゃんに戻っていた。
「ご馳走様でした。いつもありがとな」
「はい、お粗末さまでした」
「ねぇ…どうしてあれで付き合ってないのか、私には不思議でしょうがないんだけど…」
すでにお昼を食べ終えている梢は頬杖をついて二人のほうを一瞥する。
「私もそう思う…。下手したらうちらよりラブラブじゃない?」
「ラブラブねぇ。その言葉は死語だけど、あの二人には一番お似合いの言葉ね」
二人の間には感じの良い空気が流れていた、そんな昼休みの1コマ。
以上です。
後々続きを投下いたします。
>>7−11
料理の出来る幼馴染にコンプレックスを持つ
ハルちゃんに萌えますた(*´∀`)
◆NVcIiajIyg 氏
GJ!良いものをありがとう!
「あ、あのさ。」
「何よ。」
「優子はさ、あの映画見たいって言ってただろう?」
そう言って最近封切られたアクション映画を挙げる。
「・・・だから?」
「あのさ。チケット取ったんだ。もし、もし良かったら」
頭を掻いて。一緒に行かない?と彼は呟くように続けた。
私はバスケットボールが嫌いだ。
丸くて大きくてボールは、私には重すぎるから。
小学校の頃はキャッチボールだって満足に出来なかった癖に、
夢中になって追いかけているのなんて、見たくも無い。
何回か練習している所を見かけた事はあるけれど、
リバウンドを取る為に高く飛び上がる彼とそれを見てなんだかキャアキャアとうるさい女の子を見て。
なんだか気に食わなくって目を逸らせた。
私より小さかった背はメキメキと伸びて今では見上げなくてはならないし、
食事の時間は馬か牛かと思うような量を食べる。
小学校の時はパンが食べきれなくて給食の時間はいつも泣きべそをかいていた癖に。
卵みたいに綺麗だった顔にはニキビが出来ているし、休み時間には友達とイヤらしい話ばかりしている。
小学校の時は一緒にお風呂に入れられても、恥ずかしそうに向こうを向いてばかりいた癖に。
もう帰りに一緒に帰らないし、クラスで話し掛けることも無い。
昔は私が風邪で休むと道に迷って帰れなくなった癖に。
家が隣同士と言ったって偶然顔を合わせることなんて稀。
長い時間一緒にいても心は離れていく事もあるんだよ、優子ちゃん。
なんて離婚した親戚のおじさんが言った事を信じるつもりは無いのだけれど。
勿論私だって変わってない訳じゃない。
背は伸びないけれど、少し胸は膨らんだ。
自慢のストレートの髪の毛は肩先まで伸びておかっぱじゃなくなった。。
少しストレートすぎるのが悩みの種だけれど、まっすぐの前髪は私には似あうんじゃないかなと思っている。
少し目がキツイのが嫌なのだけれど、それは美人になる証拠だってお母さんとお姉ちゃんは言ってた。
ラブレターだってもらった事がある。
差出人不詳だけれど。
冬休みが終って、初めての登校日。
下駄箱を空けたら、ひらひらと紙が落ちてきた。
汚い字で「気持ちだけ伝えます。ずっと好きです。」なんてカタコトみたいな言葉が書いてあった。
無記名で好きです。なんて言うのは死ね。と変わらない位相手にショックを与えるだけの言葉だと思ったけれど。
なんとなく見覚えのある字だったので家の机の中に入れて取って置いてある。
将来有効に使える事を願って。
差出人は判らなかったけど、私は私で2月14日にある物をある人の下駄箱に放り込んだ。
勿論無記名で。だ。
下駄箱には前もって可愛くラッピングされていた物が2個程入っていたけれど、回収しておいた。
チョコレートはニキビに良くないし、新しいバスケットシューズと一緒に入れておくには少し下駄箱が狭かったから。
勿論後で渡したけれど。
そして今日。待ち合わせの時計台の前に私は立っている。
別に待ち合わせなくてもいいのだろうけれど、こういうのは気分なのかもしれない。
春なんだか冬なんだかわからない天気が続いていて。
セーターを着ていいのか、ブラウスにして良いのかもわからない天気。
午後1時15分。待ち合わせは1時だ。
たかたかたか
300M程向こうから走ってくる姿を認めて、私は踵を返す。
目の錯覚で無い限り、向こうから走ってくる者の手に握られているのは花束だ。
不器用なのはわかっている。
お返しとは何か、を色々考えた結果だろう。
しかし、隣同士の家に片方が赤い花束を抱えて2人で帰ってくるという図は承服しかねる物がある。
いや、その前にどうやって映画館に入るつもりなのか。
ボールばっかり追いかけているから、心の機微やお洒落に疎くなるのだ。
そんなにニョキニョキと大きくならなくて良いし、馬のように食べなくても良い。
たまには道に迷って泣いて欲しい。
後ろからスピードを上げて軽快に追いかけてくる足音を聞いて、
やっぱりバスケットボールは嫌いだ。なんて思った。
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即死回避及び白日祭に便乗でした。
いっぱいキテル━━━━(*´д`*)━━━━!!!!
皆様方GJでございます
ところで即死回避はどのくらいでしたか
ほしゅ
ホス
そういや452氏、幼馴染みと強い雨って似合うって言ってましたよね。
強い雨→HARD RAIN→押尾コータロー
ギター弾きの幼馴染みってのもいいなぁ。凄く上手く弾けるのに英語はてんで駄目で、それでも幼馴染みの為にクラプトンのLAYLAなんて一生懸命歌われたりしたら、俺が女なら惚れ殺されるやも。
解りにくくてスマソ
新スレ乙and 記念初ss
春、というにはまだ肌寒く、ようやく桜のつぼみがふくらみはじめたころのこと。
二人の男女は中学校を卒業した。
「何が卒業かね、特に面白いものでも無いのにさ・・・。」
男はゲームのコントローラーを操り、雲霞のごとく押し寄せる敵をなぎ倒しながら呟く。
卒業式が終わったそのままの服で、なんの感慨も無さそうな彼の名前は藤野美秋(ふじのよしあき)
「ほんと、じょうちょ、ってものがわかってないよね秋ちゃんは」
これもまた、セーラー服のまま美秋の傍らで呆れながら抗議する彼女の名前は藤野もみじ。
苗字が同じなのは彼らがいとこ同士のためである。
「何が情緒だよ・・・。ったく、こんな田舎の中学だから市内で一番学力が低いんだよ。だから入試に不利になる。
ま、それでも城高に入れたのはこの俺が優秀だからだけどな。」
城高(しろたか)というのは彼らの住む城都市(きとし)一番の進学校である。当然、レベルは高いのだが、彼の中
学が田舎にある所為で城高に合格するのは難しいとされていた。つまり、彼は苦労して進学したわけである。
しかし、彼が不機嫌なのはそういった理由だけではない。
「何が悲しくて男子校に行かなきゃならないんだよ・・・。」
彼の住む地方はまだ男子高、女子高という区別が存在した。そのため彼は大いに迷ったのだった。
(何でもみじと一緒に高校に行けないんだよ・・・)
情けない、と言おうか思春期と言おうか、彼はそんな事を進学の基準にしていた。無論、どんなに難しい高校で
あっても、美秋はもみじの進学する高校に行くつもりであった。
「まあまあ♪別にいいじゃない、秋ちゃんじゃ共学いったってどーせもてないんだしさ!」
しれっと言うもみじではあったが、本気でそう思っていたわけではない。実際のところ美秋は女子に人気があった。
弓道部部長で、県大会優勝もした腕である。なおかつ、彼はやせがたで凛々しい印象の好男子であった。が、彼
に恋人が居ないのはもみじのせいであった。彼らの母親同士が仲の良い姉妹だったため小さい頃から一緒であ
った二人は、中学内でも常に一緒だった。なにせ3年間同じクラスで3年間ずっと二人で学級委員を勤め上げた
ほどである。その姿があまりに自然なために同級生もからかう気がおきないほどであった。
つまり、誰もが二人を恋人同士と思っていた、ということだ。
実際にはそうでなかった。だが、そんな男を取ろうとする女子はいなかった。逆もまたしかりである。
そうして中学校の3年が過ぎ・・・今に至る。
「じゃあさ、お前の行く城女と交換しない?なーんて・・・」
「だめだめだめ!!!ぜーーーったいダメ!!!!だめだからねっ、そんな、秋ちゃんがそんな、女ばっかのとこ
なんか、何かおきないわけがないんだから、絶対ね、私がね・・・・」
「わかってるわかってるわかってます冗談です冗談、ね、ね、もみじ、ね、だからね・・・」
城女(しろじょ)というのはやはり市内一の進学校なわけで、その名のとおり女子高である。すぐに冗談だとわかるのに
ムキになるもみじのほうには相当の問題があるわけで、美秋のことになると我を忘れるのである。いささかやりすぎの
感があるのだが、こうして美秋を押し倒すもみじの身体が女の子らしくやわらかいこと、そして美秋によるともみじの必
死な顔がかわいい、とのことでやはり、美秋はもみじに夢中なのだった。
「だから、何よぉ・・・?」
まだ落ち着かないもみじに美秋は告げる。
「その、学校はちがくなるけど、でも、やっぱり、俺、もみじと一緒にいたいと思うから・・・えと、高校行ってからも、一緒に
勉強したり、しよう?」
第三者から見れば、告白におもえるようなこんな言葉も、絆が深い分、二人にはそこまで思い意味をもてなくなる。しか
し、男のほうにこれ以上求められるような度量もなく、女のほうも、この言葉からそのままの意味を抽出するのが限界で
あった。・・・二人とも、幼かった。
「うん、そうだね・・・秋ちゃん・・・。」
美秋に覆い被さったまま、笑みを浮かべ、もみじが呟く。
((このまま時が止まればいい・・・))
二人が二人ともそう思い、見つめあい、しかし、時間は過ぎてゆく。そして、そんな時間は唐突に終わる。
「二人とも、いつまでやっとるかねぇ・・・」
開けっ放しの部屋の入り口から、母親達にずっと見られたのに気付いても、もはや手遅れだった。
これは、そんな幼なじみたちの物語・・・。
駄文ながら、以上、うぃすてりあですた。
まだ続く予定です。今日はもう眠いんでまた明日。ノシ
⊂⌒~⊃。Д。)⊃ なにこの神ラッシュ
いつから見てたのだ母よ。。。
GJです
…だがエロがちと足りない
>>36 ギターっていうと何か格好付けみたいな感じで嫌だな
押尾さんが、ビクビクしながらもギター弾いて不良を大人しくさせたって話があるけど、そんな感じのキャラの方が良いな
ほとんど最近、というか数年間ろくに話もしてなかった幼馴染からチョコをもらった。といっても母親経由できた
わけだけど、それがちょうど1ヶ月前。お返しに何をあげるべきか悩んでいたら母親がいつの間にか買ってきて
いて中に何が入っているのか知らないまま渡す羽目になった。放課後、彼女の名前を久しぶりに呼んだ
ときにはいささか声が震えていたけれど、小走りでやってきた彼女は目を伏せ頬を染め僕以上に緊張の色が
出ていた。お返しに渡した小さな箱の中身を見て彼女は涙していた。やばい物を渡してしまったんだと僕は驚
いて中をのぞくと、そこにあったのは銀の指輪だった。
お返しに指輪は迷惑なんじゃないかと思って彼女に聞くと、彼女は一言「今までで一番うれしいよ」。そして指
輪を左手の薬指にはめて見せた。そのときの涙をのせた彼女の笑顔が壊れそうなほど綺麗で僕は言葉に
詰まってしまって、惨めに突っ立っていると彼女が僕を落ち着かせるようにやさしく抱きしめてくれた。まるで
手品師の様に僕の心を操っているようだった。僕は自分の気持ちを表すように彼女を抱き寄せ頬にキスをし
た。涙の味がしょっぱかったし、後になってこれが彼女と母の陰謀だとわかったけれどそれはまた別の話。
そんな思わせぶりで続かない縦読み
神がたくさんいるスレはここですね?
48 :
名無しさん@ピンキー:05/03/15 16:35:03 ID:CIO+ecL3
うぃすてりあ氏>
ゴッドジョブ!!!です。
>>44 ああ、なるへそ。あながち「いつの時代の観念だ」なんて言えないかも。
そういや、ただ格好良いだけの男って感情移入しづらくて読みにくいよね。その逆、とにかくヘタレな男も同じだし。かといって、「普段三枚目だけどやるときはやります」的なキャラって出回っちゃってるからあざといし。
ムズいな。
50 :
名無しさん@ピンキー:05/03/15 19:37:40 ID:vUNKqyuY
「普段格好よいけど、ヤるときだけヘタレでヤってくれずに
読者はいつまでも寸止め状態。ここエロパロ板っすよ」
的なキャラでも見たいのかね君。
真逆と言ってみる
「普段はヘタレだけど、ヤる時だけ格好よく決めて読者はいつも枯死状態」的なキャラなら(ry
新スレ冒頭から賑やかで素晴らしい。
その49です。
が、分割投下しないと相当長くなりそうなことと、私事ですが引越し前で
PC運搬中にデータ消失のおそれがあること、等の理由を
考慮したうえで、まず書けたところまで投下させていただきます。
49、その1。
・・・・その49
白いマットに水滴が落ちて、ふと、ボタンを留めるのを中断した。
どうしてか幼い頃の情景が目に浮かんだのだった。
なんであんな幼い頃のことを思い出すのかよく分からない。
あの時も玄関で泣いていて、「うちで預かっていた近所のお兄さん」が傍にいた。
気分的に下着だけは綺麗なものに変えた。
お風呂場の隙間から湯気が漂ってくる。
靴下と下着だけ洗濯機へ放り入れ、服を元通りに着込んだ。
溜息を沈ませてタオルをすくう。
聞かれて初めて私も身体は洗っておいたほうがいいとか、そういうことに気づくのだから困ってしまう。
脱衣所を片付けて、換気扇をつけたまま裸足で玄関を覗いた。
避妊しなきゃだめだろうと現実的なことを思い出させてくれた幼馴染はさっさと家に引き返してなにやら取りに行った。
ご両親の話に、反面教師にして気をつける、と付け加えて草の隣で笑っていた影を思い出して、
鍵と傘だけ貸して玄関で送って、それからシャワーを浴びたのだった。
スニーカーがあってジャンパーも傘も置いてあった。
かけ忘れのチェーンを右手でいじる。
さっきは夢中で気づかなかったけれど左手の怪我は僅かにじんと痛んでいた。
絆創膏を貼っていくのもどうかと思うので、血が出ていないことだけ確認してタオルを廊下にかけておく。
雨はいつやむんだろう。
「ひーこ?」
後ろから呼ばれて玄関と逆を眺めた。
振り返ったけれど見えなくて、居間の方に向かうと私の部屋の前にいた。
立ち止まってから、また近寄る。
見上げると少し心臓がはやまる。
「…おかえり」
「うん。いいかい」
「イトくんも、身体は大丈夫なの」
社交辞令みたいだなあ、とイトくんが苦笑する。
風で僅かに建物が軋んだ。
私はそこまで余裕がないので、なんだか悔しい。
「あの」
「ん」
「あんまり知らないから、私」
…声が震えているのは隠せているだろうか。
「うん。嫌になったら言いなさい」
頭をなでる手が、あたたかくて黙って頷く。
イトくんの声が聞き逃しそうにささやかだけれど確かに硬いのは、
安心したいための錯覚ではないように思えた。
そうだといい。
小さな部屋に踵をそろりと踏み込んで後ろ手で閉め、薄くカーテンのひらめく小窓を見上げた。
ガラスの向こうを水滴が伝い、昼だというのにそれだけでも薄暗い。
イトくんが肩越しに窓際へ歩いていき、カーテンを閉めて鍵を確認した。
でも、真っ暗というわけにはいかなくて電気がつかなくてもイトくんのことが見えた。
いつも部屋に邪魔しに来るときみたいに、傍にいるけれど意味が全然違った。
どうやって毛布を剥いで、シーツに座ったのかは曖昧で、そうしていると気づくまで思い出せなかった。
狭い部屋だから歩くまでもなかっただけで、ただ二人分の重さで軋んだことだけが記憶の底でさらわれず残った。
しばらく、触れ合いもせずに、向かい合って座っていた。
時計の音だけが雨音に邪魔している。
それからイトくんが静かに屈んで頬に触れた。
腰の下で柔らかい枕が僅かに形を変えて、それよりも柔らかい唇の触れ合いで気持ちが緩々とほぐれた。
さっきまであんなに深くまで食みあっていたのにこれだけなんて、どこか不思議ででもとても自然だと思った。
手を伸ばして触れる。
私と違ってシャツの下は何も着ないでいるのか、布の下で男の人の少しかたい肌の感触が
手にじわりと伝わって、そこからゆっくりとイトくんに満たされていく。
睫毛を緩く浮かす。
視線が間近で吸い付いて絡んで、もう一度唇が触れ合う。
こちらの動きを遮るように私の顔をそっと引き寄せて顔のあちこちにキスをしだした。
ゆっくりゆっくり、確かめるようにそうするので心地よくなって腕を回して引き寄せる。
耳に息がかかって試すみたいに濡れた熱いものが一度だけぞろりと触れて、一瞬背中が震えた。
「あの、それ」
「分からないから、嫌なら言って。努力する」
いったんやめてそれだけ囁いて、また耳に顔が埋まった。
嫌ならやめる、と言わないのはいつもの幼馴染らしくない。
でも耳元で直接届くのは聞き間違いようのない人の声で、だから、答えも思いつかずに
私もただ触れ合う体温に手を寄せて、心もち大きくなる息で彼にできるだけ身体を寄せた。
密着した下の方にそれらしいものが当たるのも恥ずかしいのかよく分からなくて、
変になっているのが私だけではないのだということくらいしか意識が及ばない。
しばらく耳を味わっているので、何がいいのだろうとぼんやり思いながら浅い息で膝をずらす。
この前みたいにそれから首筋にまで丁寧に舌が降りて、髪がくすぐったいのも変わらず、
だから今度はそのくすぐったい髪の中に私の手を埋めた。
膝立ちのままだと少し無理な体勢になってきたので腰を落とした。
ベッドがきしりと唸った。
身体の線にそって丁寧に丁寧に面積のあるものが移動していく。
布越しなのに自分で足の間に触れたときより何倍も体温の上昇が早くて広い。
気がつくと喉から感触が消えていた。
影ができて、顔を無言で覗き込まれたと思うとまた唇が包まれて、軽く吸われた。
それをやめて欲しくなくて頭に回した手を自分で引き寄せて、
私からぎこちなく唇を舐めてみて、もう一度、もう一度そうした。
舌先を触れ合わせて、またしばらくゆっくりと口の中を味わいあう。
…唾液が甘い。
途切れたところでイトくんが無意識のように呟いたのはまるで、私の名前ではないみたいだった。
「イトく…」
呼び返す私に目を伏せて、また無言で鎖骨の下まで唇が移動する。
唾液が擦り付けられて襟元が湿っていく。
それから吸われる。
手が下のほうへ伸びた。
スカートの上を撫でられるので自然に視線が泳ぐ。
意識がとろとろとして、曖昧な痛みだけが左手から脳髄を押し続けていた。
柔らかい刺激に背が傾いで指をついて体重をかける。
左手だったので痛みに軽く顔を歪めた。
右手で縋りついたまま、支える手を交換しようと身じろいで呼ぶ。
「あの、待って」
「ん」
あたたかい感触が遠ざかって消えた。
衣擦れた余韻がふわりと膝にかかる。
影がかかったので覗き込まれていると分かった。
「痛そうだったけど、怪我した指かい」
「うん、ちょっと」
「見せて」
取られた手を持ち上げられるので、中途半端だった体勢を起こした。
医療関係に進みたい身として気になるんだろうか。
なんとなく気持ちが静まるのでされるままにしておく。
――と前触れもなく、
傷口を舐められてひくりと腕が怯えた。
「……っ、」
そのまま気遣っているのかなんなのか、口に含まれて舌で遊ばれて意味が分からなくなる。
でも気持ちよくて空いた右手で縋って、解放されるのを待ちながら目を瞑ってシャツに埋めた。
イトくんの肌も熱くて、霞んだ視界で喉が脈打っているのも分かるけれど
そんなのは感覚を和らげるためになんにもならない。
小さい窓を風がかたかたと揺らしている。
身体の端からこんなふうに別の存在に浸されて塗り替えられて、熱い意識が朦朧としていく。
どれだけ経ったのか、解放されたかと思うと、優しくなでられて薄目が開いた。
風が弱くなって、鼓膜を雨が染めかえる。
「服脱いでもらっていい?」
血の上ったままの顔で、ぼんやりと心臓の音を聴く。
言葉の意味が意識に沈むまではしばらくあった。
脈がとくとくと聞こえて指の中で彼のシャツが皺を増す。
頷いて、イトくんを見上げて腕を緩め、どうしようか迷ってからそのままボタンを外した。
いつもなら簡単なことが、着慣れない服だったからというのを差し引いてもありえないくらいの時間がかかった。
五つめのボタンまでを外すと、前が僅かにはだけた。
少しだけ肌寒い。
袖を抜いて、膝の上で小さくたたんだ。
そこで手が自然と止まった。
近い視線が動かないで集中しているのを感じる。
無性に、見られているのが恥ずかしくなった。
「後ろ向いてて」
イトくんがあからさまに残念そうな顔をした。
でももうここは譲らないでとりあえず後ろを向いてついでに彼にも脱いでもらう。
ちらりと見るとズボンは脱いでくれていなかったので、
私もとりあえずスカートはそのままにしておいた。
微妙に格好悪いような気がするけれど、なんだか不公平だし。
…でも考えてみたら、また脱いでといわれて同じようなことを
するのだったら、今脱いでいたほうがいいのかもしれない。
思いなおして後ろのファスナー部分を前に回した。
スカートの裾を広げてファスナーに指をかける。
降ろしてから足をそっと抜き、たたんで、ベッドの脇に重ねてそろえた。
下の薄布が濡れている気がしたけれど彼の傍で確かめることもできず、意味もなく溜息を漏らす。
こちらを見るのを待ちながら、まだ外していない下着をどうしようかなあと肩紐に指を掛けてみる。
どれくらいの大きさがいいものなのだろうとか、気にしたことも
ないことを脈のはやさを誤魔化すように考えてみたりする。
イトくんの背中は細かった。
肩も広くなく、兄さんや弟のようにしっかり筋肉がついているわけでもなく、だけど依斗くんだった。
私から触ったら嫌だろうかと思い、でも、私が触られても嫌ではないし、などとつらつら思う。
振り返らないまま声がやっとかかったので、思考を中断した。
「もう見ていい?」
「いいよ」
幼馴染が肩越しにちらと振り返ってから、身体ごとこちらに屈んだ。
何も言わなかった。
指先だけで裸の肩へと静かに触れられた。
下着の肩紐を指先で弄られて、僅かに胸が擦れる。
空気を浅く喉が欲して口がからからに渇く。
遮るものがない肌同士がこんなに熱いとは思わなかった。
低く掠れた吐息の方も僅かに荒い。
シーツが心なし膝下で湿り気を帯びている。
肩の線を確かめていくように撫でて腕まで指が伝っていき、それから私の指に骨ばったそれが重なった。
どちらともなく震えて指を一本ずつ絡めあい、シーツに押しこむ。
「あ、これも外してくれると助かる」
肩紐をもう片方の手で軽く引かれて、僅かにその緊張が緩んだ。
何秒間か時計の秒針が聴覚に戻る。
混じれて穏やかな口調が囁いていた。
「なんで?」
「外し方分からないし」
イトくんがこういうことを始めてから初めて、
薄暗いカーテン越しの昼の雨だけを灯りに、肩を竦めて小さく笑った。
息が止まった。
そ。
―そこで、笑うのは、だめだ。
…だめだ。
私がだめなのだ。
耳の裏まで熱くて上手く顔が見られない。
微妙に半端ですが今回は以上で。
ここまできてやっと脱衣。脱衣ばんざい。
続きは時間ができましたら、また。
⊂⌒~⊃。Д。)⊃
⊂⌒~⊃。Д。)⊃
⊂⌒~⊃。Д。)⊃
GJです。・゚・(ノД`)・゚・。
言葉にならないほどグッジョブ
…そこで何で、自分で脱がせちゃうんだイトくんーー!?
勿体無いじゃないかw
って、まぁ、いろいろ理由はあるけれどw
ともあれ、引越しお疲れ様です。
激しくGJです!!うはぁあぁ焦らされる
この後数日間が待ち遠しいぃぃ
66 :
箸休めに:05/03/16 18:26:23 ID:xh5BfI29
煙草をふかしながら、俺は空を見上げていた。曇った空は今にも雨が降りだしそうに見える。
待ち合わせの時間からもう既に三十分は経っていた。とは言え予想の範囲内ではあるのだが。
アイツが遅れてくるのはいつもの事だしな。予想がついてるんだから俺も遅く行けば良いんだろうけど。
「やれやれ」
溜め息を吐きながら煙草を踏み消す。足元には既に何本か吸い殻がある。最近煙草の消費量が増えてるな……。まぁだからといって減らすつもりがある訳じゃ無い。
新しい煙草をくわえ、火をつける。肺に煙が満ちる独特の感覚。美味い。
「ごめん洋、待った?」
聞き馴染んだ声がうしろからかかる。あまりに脳天気な声に振り向いて睨み付けてやる。
「待ってないと思えるんならたいしたものだと思う」
「じゃ、煙草消して。行こっか」
コイツ聞いてねぇ。
「もう少しすまなそうな顔をしてみようか、果林」
「いつものことだしお互い様でしょ」
「いつものことだから尚更だろうよ」
「え、お互い様は無視?」
「遅れてくるのはほとんどお前だろ」
「ほとんどってことはアンタも遅れてきてるってことで、やっぱりお互い様じゃない」
「……お前なぁ」
67 :
箸休めに:05/03/16 18:29:33 ID:xh5BfI29
減らず口は一流だなコイツ。呆れると言うより感心しちまうよ。
「ほら。無駄口叩く暇があったら行こ。買い物、付き合ってくれるんだよね?」
「あー。俺帰っていいかー?」
「駄目。それに、帰るつもりだったら今ここにいないよね?待ち合わせの時間過ぎたら帰ってたよね?」
ニヤニヤと笑って果林が言う。……コイツ。
「じゃ、な」
「あっ、ちょっと?」
聞いてられるかっての。ロクに吸ってない煙草を捨てて、歩を進める。
「付き合いきれねぇよ」
「待ってよぉ」
「待てと言われて待つ馬鹿はいないよな」
「わかったよぉ。昼御飯オゴるからさ」
「最初からそう言えばよかったんだよ」
メシの話を聞いて意識しても口の端が上がっちまう。何を食おうか。なんたってタダだしな。
「まぁ嘘だけど」
「オイ」
嘘かよこのアマ。
「……そんな怖い顔で睨まないでよ」
「睨んでない」
「普通昼御飯くらいでそんなに怒る?」
「期待させといて……この野郎」
「私女だから野郎とか言われても」
外れるんじゃないかと思うくらい肩が下がる。
「そうだったな。お前に期待した俺が馬鹿だったんだろうな」
「そうだね。付き合い長いんだしそのくらい分かってたでしょ?」
68 :
箸休めに:05/03/16 18:32:18 ID:xh5BfI29
柔らかそうな果林の髪がふわりとゆれる。見慣れた笑み。
「誤魔化すのは巧いよな」
「多分洋の学習能力不足だと思うけど」
「人はそれを開き直りと言う」
「言わないよ」
「……呆れたヤツだな」
「え?洋が?」
「こんな不毛な会話したくないんだが」
言いながら気付くと煙草を取りだしちまっている俺がいる。なるほど。
「いや、確かに呆れたやつかもな。俺」
「でしょ?」
「それをお前に言われるとムカつく」
「なんでさ」
「そんなもんだろ」
「そんなもんかもね」
いつもどおりの実の無いやりとりに、軽く溜め息を吐いて。
「で、買い物どこに行くんだ?」
「へ?」
「いやそんな間の抜けた声出されても困る」
お前が付き合えって言ったんだろうに。
「なんだ。本気で帰るつもりなんだと思ってた」
「これで帰ったらただの馬鹿みたいだろ俺。待った時間も無駄だし」
「えっ……と。馬鹿じゃなかったの?」
「貸し一つな?」
取り敢えず馬鹿よばわりは無視する。
「そっか。否定しないってことは馬鹿なんだねー」
「あのなぁ」
「可哀想だねー」
「貸し一つは無視か!?」
都合の良い耳してんなオイ。
「だって馬鹿って言ったのも無視したし」
69 :
箸休めに:05/03/16 18:36:35 ID:xh5BfI29
「そりゃするだろうよ」
この会話自体馬鹿みたいなもんだけどな。
「まぁでも付き合ってくれるんなら馬鹿でもいいよ。行こ」
こういう関係も悪くない、か。
243師にはそのうち萌え殺されそうだ……。
やばいえろい。
寒いところで書いてたから風邪をひきました。うぃすてりあです。
243氏はいつも素晴らしいです。連載開始時から読んでます。
感想書いてくれた方・読んでくれた方に心からの感謝を。続きいきます。
・・・辺りには紅葉のもみじ。狂おしいほどの赤色。落葉で地面まで真紅のじゅうたんのようだ。
でも、僕には、そんな幻想的な風景さえ、目の前の少女を前にしてはとりたてて美しいとは思えなかった。
「秋ちゃん・・・。私、わたしね・・・?」
赤く映えるワンピースをまとい、頬を赤く染める僕の幼なじみ。彼女が言うだろう言葉はほとんど僕はわかってる。
(そうじゃないそうじゃない!彼女からじゃだめだろう!)
だって、僕は男だから・・・。理由なんてそれだけだけど、僕には一番説得力があるように思えた・・・。
「待って、僕から言うから・・・」
ありえないくらいの心拍、意を決して、僕は告げる。
「ずっと、ずっと前から、僕は、もみじのことが・・・」
いい終わらないうちに、彼女に涙ひとしずく、僕の背中に、彼女の細い腕、目の前の彼女の唇。
(僕は、僕は…)
「美秋くん?ねえ、美秋くーん?」
・・・え?
「美秋くん、寝てちゃあだめじゃないの?」
あれ?もみじのくちびる・・・。
「・・・?どうしたの?そんなに惜しい夢だったの?」
本当に疑問に思ってるのだろう、もみじは不思議そうな顔でぼくに訊く。
(ああ、そうか・・・)
ようやく目が覚めてきた。
僕の名前は藤野美秋。今日は図書館で幼なじみで・・・僕のおもいびとの・・・藤野もみじと勉強のはずだった。
そうだよな、僕がもみじとキスなんて・・・。
「美秋くん、無意味におちこまないでよ。・・・ま、いっか。結構やったしね。商店街いこっか!」
もみじはそれなりに勉強が進んだのだろう。僕は、そんなに進んでないけど、もう嫌になってしまった。
「・・・そうだね。そうしようか・・・」
・・・夏休み、そこらじゅうから蝉の声。意地悪な太陽のひかり、やけるような空気。でも。
となりには、真っ白のワンピースを着たもみじ。長くて黒い彼女の髪がよく似合う。・・・すごく、かわいいと思う。
彼女と居れば、暑さを感じない僕は、多分、彼女の熱でやられてる。
(あーあーあー!違う違う、こんなこと考えてるのはまだ頭が眠ってるからだ!)
いまどきこんな表現考えるのは夢見る文学少女くらいだよ!・・・と、否定しても、僕はそう思ってるんだろうな。はぁ。
アイスでも食べようかな。やっぱり暑いや。そんなことを考えながら、夕方に二人で商店街を歩く。と、ふと、もみじが
尋ねてきた。
「ねえ、美秋くん。いったいどんな夢みてたの?やけに真剣な顔だったけど」
うわぁあぁぁぁぁ!!言えるわけねーだろ!てか、いったいどんな顔してたんだよ!・・・あぁ、いかん!顔が熱い!
「い、いや、まあ、なんだ、その、な?」
だから、何言ってる!僕!こら、もみじ、そんな目で見るな!
「もしかして・・・美秋くん、えっちな夢でもみてた?」
「な、何てことを言うのだね?君は」
おいおいおいなんだって?
「友達が言ってたよ?・・・あーあ、女子高だとこんな話ばっかり。私までうつっちゃったよ。」
ああ、なんだかなあ・・・。いや、そうじゃない!なんとか否定しろ!
「いや、待つんだ。いいか、落ち着いて聞けよ、そうじゃない、僕は、もみじの・・・」
「・・・」
はっ!墓穴を掘った!なんてことを!いかん!なんとかするんだ、なんとか・・・。ああ、もみじが僕をジト目で、睨ん
で・・・あれ、少し赤くなった?で、少し目を逸らす、やっぱりかわいい。そして、
「まあ、いいか。」
と、言ってくれた。よかった・・・。
で、安心したのが悪かった。調子に乗って、僕は言ってしまった。
「腕、組んでみない?」
なんてことを。
言ってしまったものは仕方ない。なんとか冷静に、男らしくだ。なんとかなる。
もみじを注視する。さっきよりも少し恥らう。かわいい。そればっかりだが仕方ない。が、もみじは、言葉ではなく、行動
で応えてくれた。僕の右腕に抱きつく、という行動で。
「・・・いい?」
少し恥ずかしいのだろう、小声でつぶやく。僕としても、当たり前だろ!なんて答えるわけはないから
「うん・・・」
と、呟く。・・・胸、あたってるよ・・・。やっぱりやわらかいな・・・。
「アイス、食べようか・・・?」
照れを隠すように僕は聞いた。もみじはうなずいてくれた。
二人とも赤くなりながら商店街を歩く。もみじは僕の腕にしがみついたまま。第三者が見れば恋人に見えるかな?
・・・何をやってるんだろうね、僕らは。
「藤野じゃん!よう!夏は暑いねえ・・・、って、おっと。邪魔するとこだったか。悪い悪い!」
・・・あはは。だいさんしゃだ。いやあばつぐんのたいみんぐだなあ。
「あ、いや、そうじゃな・・・」
「じゃあな!仲良くやれよ!」
言うまもなく去ってしまった。うわあああ、なんてこった・・・。
「えーと・・・もみじ?」
「・・・」
ああ、うつむいちゃったよ・・・。いやや、なんとか、雰囲気を回復せねば!気を利かせろ!美秋!
「とりあえず・・・、アイス食べて帰ろうか?」
「・・・うん」
・・・もっと頑張ろうよ、僕・・・。
とりあえず、ここまで。
直接書くのはキツイっぽいので、一度書いてから投下する事にします。
今日中に書いちゃうかもしれません。よろしかったらもうしばらくお付き合いください。ノシ
期待sage
ネ申々来たりぬ
しかし「ペナルティとして果林のパンティ1日取り上げ」とか妄想するのはやはり駄目人間か
続き
結局、僕たち二人、バスで帰る。混んでいるわけでもないけど、二人がけの席に二人で座り、とりとめのない話をして
、同じバス停で降りて、また明日、なんて言って家に入る。
鍵を開けて、もみじの家から少し離れたところにあるアパートに入る。僕の自宅である。我が藤野家は、ちょっとした
地主だ。古い農家らしい。このアパートも藤野家のものだという。もみじの家が本家筋で、もみじの母さんのかえでお
ばさんが長女、僕の母である夕美(ゆみ)が次女。もみじの父さんは入り婿、という形になる。
僕はこのアパートで母さんと二人で暮らしている。父親はいない。死んだわけではない。母さんの大学時代、上京し
ていたときに付き合ってた男らしいが、母さんが妊娠したとたん、逃げ出した、ということだ。当然、大問題になったのだ
が、母さんは僕を生んだ。母さんは城都市に戻り、就職。この部屋を借りて、働きながら、僕を育てた。とはいえ、母さ
んが仕事のときは、僕は本家に預けられた。だから、もみじとは長い付き合いになる。
「そんなに、長いのか・・・」
改めて考えると、すごいことだと思う。と、いうかほとんど兄妹の域に達しているかもしれない。もみじが僕のことを慕っ
てくれるのも無理はないのかもしれない。
「じゃあ、僕は、もみじのことをどう思っている?」
もみじのことは好きだ。これは偽らざる本心だ。でも、女の子として好きなのか?多分、そう。好かれているから好きな
のではないか・・・?そんなことは、無い、多分。いや、どうなんだろう?どうしたんだろう、僕は。今日は何かおかしい。
もみじのことを意識しすぎだ。いつもならばもみじから腕を組まれる事はあっても、自分から組むことはなかったはずだ。
・・・理由はわかっているんだ。図書館で見た、あの夢。あの夢が、今日まで延ばしてきた僕の想いの回答を、出させよう
としているに違いない。
「今日はまた、随分とお悩みのようだな?少年よ。」
「・・・母さん。」
母さんが帰ってきた。・・・もう、そんな時間か。
「いや、別にたいしたことじゃないよ。」
母さんに口出しされても、こんなのは恥ずかしいだけだ。そう思っているのに、母さんはため息をつきこう告げた。
「たいしたことじゃない・・・わけないでしょーが!あんたがそんなに考え込むようなことは、もみじちゃん以外にはなに
もないでしょ!」
晩ご飯の準備をしながら、核心をついてくる。どうしてわかるのだろう?
「図星、って顔ね。そのまんまの意味よ、あんたが悩む事はもみじちゃんのことだけ。・・・子供の頃からそう。バレンタイン
で初めてもみじちゃんからチョコをもらったとき・・・」
「か、母さん・・・。そんな昔のことやめてくれよ・・・」
うあうあうあ、思い出すだけで恥ずかしい。たしか、ホワイトデーにお返しするものと知ったときに、お返しを何にするか
決めるのに、何日間も悩んだんだっけ。
「毎日のように私と二人で買い物に行って、結局、あんたがアクセサリーを選んだのよねー。」
母さんが楽しそうなのは、キャベツを切る軽快な音のせいだ。
「子供にあげるには少し高かったはずだけど、どんなのだったっけね?」
忘れるわけがない。真紅のもみじのブローチ。数千円したはずだ。幼かった僕には、すごい大金に思えたのだが、こども
の僕は最後まで譲らず、結局、ホワイトデーにもみじに渡せたのだった。・・・けど、母さんに話す必要も無い。
「さあ?忘れたね。それに、別にもみじのことを考えていたわけじゃないよ。」
と、答えてみても、僕の性格のせいだろうか、ひどく嘘っぽく聞こえるのが自分でもわかった。母さんも察したらしく僕の目
から真意を探ろうとしている。・・・やっぱりだめか。
「わかったわかった、母さんの言う通りだよ。もみじのことを考えていたさ。」
あからさまにニンマリとする母さん。だから嫌だったのに・・・。
「はは、まあ、そう拗ねるな、美秋。悩む、っていうのは若いときの専売特許さ。うらやましいねえ。・・・それに、そんなに
考え込むくらい、もみじちゃんのこと、大切に思っているんだろ?」
途中から、やけに真剣な声になったことに少し驚きながらも、そう、と答える。
「だったら、それでいいじゃないか。美秋がもみじちゃんのことを本気で想っているのなら、それが全てのこたえ。人を
愛する理由を探すなんて、バカのする事さ。・・・美秋、よく覚えておきな。女を本気で愛せない男に、価値なんてひとつ
も無いんだからね・・・。」
そう告げる母さんの背中はやけに悲しげで、凛々しくもあって、多分、この言葉は母さん自身の体験によるものなのだろう。
それきり、母さんは何も言わなかったけど、僕には、もうこれ以上の言葉は必要無かった。
「・・・ありがとう。」
母さんは返事をしなかったけど、もしかしたら、泣いていたのかもしれない。
母さん、ありがとう。僕は迷わないよ。僕は、もみじのこと、愛しているから・・・。
僕は、一つの決心をした。
美秋くんとバス停で別れて、家まで歩く。自分の家の門から玄関までの坂道を登り、ただいま、と告げてまっすぐに
私の部屋へ。荷物も片付けないで、ベッドに寝転がる。今日一日と、美秋くんのことを思い出す。
美秋くんは、高校に上がって、自分の事を僕、と言うようになった。中学時代、バカにされないように俺、と言ってい
たけど、高校に入って気負う必要がなくなって僕、に戻った。私にはよくわからないけど、そうなんだって。私は、今
のほうが美秋くんらしくて好きだけど。・・・そして、私は彼の事を秋ちゃん、と呼ばなくなった。恥ずかしいから、っての
もあったけど、なにより、彼の事を男の子だってだって、ちゃんと認識できるから。
「美秋くん・・・」
そう呟くだけで、胸の奥が苦しくなる。仕方がなくって、枕を抱きしめる。この想いは、いつからはじまってたんだろ?
気が付けば、彼は私のとなりにいた。秋ちゃんにはお父さんがいないから、やさしくしてあげなよ。いつも私は言っ
て聞かされていた。意味はよくわからなかったけど、私は美秋くんに優しくしたつもりだった。そして、美秋くんが私に
返してくれる、優しさが、大好きだった。少し大きくなって、よしあき、という名前の漢字が他の子と少し変わってること
に気付いた。気になって、夕美さんに聞いてみたら、ちょっと迷ってから答えてくれた。
「美秋が私のおなかの中にいたとき、私はもみじちゃんの家に住んでいたのよ。そのとき、ちょっとした悩みがあってね。
無駄に過ごしていたんだけど、その年の秋は、とても綺麗で。ほら、もみじちゃんの家、お庭には楓とかばかりでしょ?
・・・それを見てたら、私、バカみたいに思えて。だから、つまり、美秋には人の心を洗ってしまうような、そんな人になっ
て欲しいって思ったの。本人には、私は綺麗な秋が好きだからって言ってるけどね。」
きっと、夕美さんはおなかの中の美秋くんのことを悩んでいたに違いない。このころは大変だった、お母さんがそう言
ってた。でも、そんなことは関係なく、私は美しい秋に見惚れるように、美秋くんに恋してた。
「ね、今日ね、美秋くん、私の夢を見てたんだって。どんな夢だったんだろうね?」
ベッドの上の犬のぬいぐるみに話し掛ける。いくつもあるぬいぐるみは、全部美秋くんのプレゼント。夕美さんによると
、いつも美秋くんが悩みながら買ってくるんだって。ぬいぐるみ売り場で独り悩む美秋くんを想像して、すこし可笑しくなる。
それから・・・今日は、彼のほうから腕を組もうって、言ってくれた。いつもは私から。私の胸が彼に触れて、赤くなって目を
逸らす、彼を見るのが好きだった。それに、私も、彼に触れられるのが嬉しかった。
ここまで考えて、もう、胸の痛みは耐えられなかった・・・。
真っ白なワンピースの肩紐をずらす。すぐに私の胸はあらわになる。今日は下着なし。ちょっと冒険。すでにかたい胸の
てっぺんを指で刺激しながら、胸を揉む。
「ふあぁ・・・美秋くぅん・・・」
確かに、女の子の胸はやわらかいけど、なんで男の子はこんなものに興味があるんだろう?平均よりすこし小さめの
私ので、美秋くんは、よろこんでくれるかな?なんて、情けない声を出しながら考えてしまう。気付けば、ベッドのぬいぐるみ
たちが私を見ている気がして、恥ずかしくなる。思わず、枕を抱いて顔を隠すけど、布団に胸が擦れるのが気持ちいいこと
に気付いて、枕に顔を隠したまま、シーツに胸をこすりつける。
「わ、わたし、わたしい・・・」
こうなるともう止められない。体が燃えるように熱くなり、腰の辺りなんて焼けてしまうほどになってくる。股間に手をの
ばす。下着の上からでも濡れているのがわかる。割れ目に沿うように指をあて、何度も何度もすりつける。
「はふぅ、はぁっ・・・ひゃあ・・・」
指も濡れてしまい、下着は私自身の中に食い込んでいく。
「はひゃっ・・・!」
私のいちばん敏感な部分に触れてしまう。もう、自分で自分をコントロールできなくなり、そこばかりせめてしまう。
「はふっ、ふわぁぁ、よしあきくん、よしあきくぅん・・・!」
ひきずりこまれるような性感を観じながら、そのままベッドに突っ伏す。
「何やってんだろ、わたし。」
いつもの虚無感。私、またこんなことを・・・。乱れた服を直すこともなく、のろのろと机に向かい、私の一番のたからもの
・・・真っ赤なもみじのブローチ・・・を取り出す。私の胸に押し当てる。素肌にブローチがひんやりと感じる。
「美秋くん・・・」
いつになったら、こいびととして、わたしを求めてくれる?
いつになったら、わたしを、抱きしめてくれるの?
切なくて、私はまた、ベッドに身を沈めた・・・。
女の子自身の姓描写なんて、男には無理だろ、と思ううぃすてりあです。
ようやくここまで書けました。いよいよ風邪が悪化して手がつけられません。
住人の皆さんもご注意を。
・・・次くらいで終わりになると思いますが、まあ、今月内には書けるかな、といったところです。
では、また今度。
萌え。
あと一歩踏み出したらラブラブだけどその一歩が出せないのが幼馴染み。
と言うわけでもう一歩が来るのを待ちますよー。
86 :
箸休めに2:05/03/20 22:07:38 ID:2dAOGjVx
ノーパン羞恥は好きだけど書き手のレベルが低くて無理です
───
こういう関係も悪くないってのは嘘でしたごめんなさい神様。
なんで俺は買い物に付き合うなんて言っちまったんだ……。
俺は一人で呆けていた。よりによって女しかいない場所で。
服を買いたいってのは分かる。別にそれはいい。
ただ付き合ってもいない男が、だ。女物の服しか売ってないところに連れ出されても。
なんとなく恥ずかしい。しかも禁煙だし果林のヤツは試着するって言ったきり帰ってこねぇし。
などと一人所在なさげにしていたからか店員さんが話しかけてきた。
店員まで御丁寧に女だ。
「一緒に来たの彼女ですか?可愛いですね」
気を紛らわせようとしてくれているのだろう、軽い感じだ。
彼女ではないのだが説明するのが面倒だし話を合わせる。
「そうですか?そんなでもないじゃないですか」
そうは言ったものの正直果林は可愛いと思う。幼馴染みと言う贔屓目を差し引いても。
肩まで伸ばした栗色の髪。人を惹き付ける瞳。底抜けに明るい笑顔。
同性からも異性からも好かれるような不思議な魅力が果林にはある。
そういう女性と二人で出かけるのはオイシイ状況なのかもしれない。
いつもありがとうございます。
区切りのいいところで一度投下しますがまだ49がもう少し続きます。
49、その2.
88 :
箸休め:05/03/20 22:10:47 ID:2dAOGjVx
幼馴染みと言うある種の壁がなければ。
俺の言葉を謙遜と取ったのか店員が続ける。
「お似合いのカップルじゃないですか。妬けちゃいますねー」
社交辞令だとは分かっていても悪い気はしない。
「はは、ありがとうございます」
我ながら間の抜けた答えだが仕方がない。
実際には果林と恋人同士というわけではないし。
大して実のない世間話をすること数分。
他の客が来たために店員は俺をおいてそちらの方に行った。
なんとなく、店員の言葉を反芻する。
彼女……か。果林のことをそういう風に考えたことが無いわけじゃない。
ただ、ガキの頃から腐れ縁でそんな雰囲気じゃないんだよな。俺達。
お互いそれなりに大人になって。少なくとも俺は現状維持で良くなっちまった。
今更好きだ嫌いだとかってのもおかしな話だからな。
果林がどう思ってるかは知らんが。
「やっ。お待たせー」
むやみやたらに明るい声がかけられる。
「待たせすぎだっての」
「で、この服どうかな?」
相変わらず人の話を聞かない女だ。
「一応聞いておきたいんだがこういう所は女友達と来るもんじゃないのか?」
「質問に質問で返さないでよ」
軽く唇をとがらせて果林が言う。
ぎゃあΣ(゚Д゚)
自分のリロードミスです。すみませんすみません >86氏
明日になってから出直します。
90 :
箸休め:05/03/20 22:12:43 ID:2dAOGjVx
「似合う似合う似合う。よし、これでいいな?じゃあ俺の質問に答えろ」
「真面目に答えてよー」
言われて仕方なく果林の服を見る。
パステルカラーの上着に白いインナー。それに、細身のジーパン。
淡色系の服は果林の柔らかい表情に良く似合うし、魅力的に見える。
「似合ってるんじゃないか?多分」
取り敢えず無難に答えておく。
「多分て。なによそれ」
不服そうだが無視だ。構ってたら日が暮れる。
「ほら、答えたんだからお前さんも俺の質問に答えろよ」
「質問?なんだっけ?」
お前はニワトリか。
「こういう場所は普通女友達と来るもんじゃないかと聞いたんだ」
「んー、そうなんじゃない?じゃなきゃ彼氏とか」
果林があっさりとそう答える。
「じゃあなんで俺なんだよ?」
「みんな今日忙しいんだってさ」
「別の日来れば良かったろ?」
「今日逃すとしばらく暇無いんだもん」
だから仕方なく、ってことか。なんとなく面白くない。
「つーか一人で来れば良かったんじゃないか?」
思い付いたままに呟く。多少の不満も含めて。
耳聡く聞き付けた果林が文句をつける。
「私と出かけるの嫌?」
「誰もそんなこと言ってねぇだろ」
こういう場所は勘弁してほしいが。
「じゃあ別にいいじゃない」
「ここはあんまり男が来る場所じゃないんだろ?それだったら俺は場違いだよな」
一応突っ込みを入れる。
91 :
箸休め:05/03/20 22:20:30 ID:2dAOGjVx
「んー、だって一人で服買うのなんて面白くないし」
「服を買うのに面白さを求めるなよ」
「まぁあと会計だけなんだから我慢してよ」
「そうか。じゃあ俺は外で待ってるぞ?」
「なんで外?」
「ニコチン補給だ」
「そ。じゃ、待ってて」
よし、これで取り敢えず煙草が吸える。
「着替えてくるね」
「おう」
軽く果林が手を振って試着室に戻るのを見たあと俺は外に出た。
煙草に火をつける。独特の甘い香りが広がる。
アイツも何考えてるか分からないな。急に買い物したいなんて言い出して。
昔は何を考えてるかなんて分かってた気がしたのにな。
それだけ、お互い大人になったってことか。
92 :
箸休め:05/03/20 22:21:58 ID:2dAOGjVx
私は試着室に戻って着替えを始めた。なんとなく笑みがこぼれる。
「似合ってる……か」
うん。悪くない。あんな言い方だったけど多分本音なんだと思う。
なにせ誰よりも私を分かっている幼馴染みの言葉なんだから。
誰よりも。多分、両親よりも。お互いのことを知っている。
客観性も含めればもしかしたら私よりも私のことを分かってくれているかも知れない。
幼稚園の時からずっと一緒で。最近では昔ほど側にはいないけどそれでも近くにいる洋。
良いところも悪いところもお互いに知ってる。だからかな、二人でいると凄く安心できる。
これが恋愛感情なのかどうかは分からない。あまりにも馴染みすぎた感覚だから。
大学生になっても関係は変わってない。近くて、遠い。
そんなことを考えてるうちに着替え終わった。試着室を出てレジに並ぶ。
洋には悪いけど服を買ったらおごる余裕なんて無くなっちゃうな。
多分アイツは別に良いって言うんだろうけど。まぁいいか。それならそれで。
会計を終えて私は洋の待っている外に出た。
あーいやあくまで自分のは箸休めなんでお気になさらずに。
>93
いやほんとタイミングが悪く。気を使わせてしまい申し訳なかったです。
二人が今のままのいい雰囲気でいくのか恋愛へと発展するのか楽しみにしております。
日付が変わりましたので投下させていただきます。
連続ですみません。
>>87のとおり、49−2です。
>>60続き
これだけ暗ければきっと顔色なんて分からないだろうと願って視線をそっと戻し、また逸らした。
雨はいまだに降り続けていた。
外からかすかに聞こえる車の水をはねるタイヤ音が、近くなりやがて遠ざかる。
「そんなに難しくないと思うけど」
「そうかな」
「後ろ、外すだけだし」
暗がりでもより濃い影が、頭上にかかった。
絡んでいた指が手の甲を撫ぜるようにしてから離れ、両腕ともが紐を手繰る。
ごそごそと背中でされるのがくすぐったい。
数秒間弄くった後、指先が少しだけ止まった。
そして軽い溜息が髪を揺らして、かすかな笑いが間近で響いた。
「よくつけられるね、こんなの」
振動が全身にしみこんでじわりと溢れる。
いいから早く外してほしい。
また肩甲骨の辺りが擦れ、少しするとやっとかすかな響きでホックが外れた。
肩紐が緩んで、僅かに薄水色のレースが浮き上がる。
肩から浮かせて身を捩るだけで静かに両側とも毛布へと落ちた。
背中の腕が力を強めた。
髪の横で吐息が、熱くなってそれが伝染して唾が湧いてくる。
さっきみたいに耳を唇ではさまれてさらに溢れた。
「…っ、ぃ」
「いい?」
頷いて身をそっと離すと、頬に唇が移った。
胸を温かいなにかが探ってそっと包みこむ。
大きな手の動くたび目端が滲んで喉が震えた。
呼吸が大きくて不規則になる。
あちこちにゆっくりと舌が這っていくうちに、視界が傾いでいた。
いつの間にか枕に頭が押し当てられていてシーツが背中に柔らかくあった。
ぎしりと軋んでベッドが体重に耐える。
頬から、唇から歯茎の裏へと移って、湿る呼吸は彼の肉に擦り付けられてそこで別のものに浸されてしまった。
あまり大きくないのでイトくんの大きい手でほとんど見えなくなってしまうそこが捏ねられて少しだけ痛いのに変な感じがする。
圧し掛かる体重が心地よい重さで、僅かに立てた脚に押し当たるものに勝手に腰がひくりと動いた。
そこを無意識にどちらともなく押しつけると舌を吸う動きが自然と深くなる。
伝った唾液は顎から喉に伝ってシーツを時折濡らした。
「…は……、ん、っ」
舌が別の場所に移ったので勝手に喉から空気が漏れる。
尖端を摘まれたところに舌が触れて顎が僅かに反った。
漏れる空気が押し殺しきれずどうやっても上擦る呼吸に変わっていく。
脚の間の下着は擦れ合う腿の間で確かに濡れているのが分かって余計に腰から熱さが増す。
窓がかたかたと揺れたのも、風のせいなのかこの部屋のせいなのか判然としない。
気持ちいいのか聞かれたので朦朧と頷いたような気がしたけれどそれも気のせいだったかもしれない。
片方の手が僅かに浮く背中に回された。
いつしか当然のように下の方にも私のとは全然違うあの指先が伸びていて、
薄布越しに湿る場所を探り当てて円を描くように撫でた。
想像と全然違った。
自分でするのなんて別のことで、もっとこれは違っていて、名前を呼ぶ声なんて言葉にもならなかった。
絶対下着をはいている意味がない。
噛まれる。
胸の尖端というものはもっと柔らかくなかったろうか。
強く吸われて思わず喉が詰まった。
外はもっと涼しくなかったろうか。
服を着ていないのに汗が伝うし、擦れ合う肩からも汗が時折零れ落ちている。
手首から肘の裏を撫でて掴むのは私をいつもなでてくれたあの手で、
脇を舐めるこのざらざらした肉はさっきまで私の舌を食べていた。
――おかしい。
変になる。
誰なのかということを意識するだけでもう、声が泣きそうに高くなる。
少し上のある部分を探り当てられて逃れたくて身を捩った。
腰が勝手に浮きあがって足先が震えてくる。
下着の隙間から直接そこに触れられさえしてもうわけが分からなくなる。
暑すぎて意識なんてどこかに浮いてなくなっていく。
もう勝手に溢れてシーツが思い出したように落ちる腰の下で濡れて冷たい。
どこかで浮かされたように私の名が呼ばれるのに気付いたときもうだめだと思った。
縋りついてさっきとは別の箇所に唇を落としている髪の毛に手を埋めて、脚の奥を探る方に無意識に腰を押し付ける。
シーツが足指の先でずれてくしゃりとどこかによっていく。
「あっ、いとく、ん……、」
来ると思ったのに来ない。
この前より深く広く満ちているのにまだ来る感覚が押し寄せて溢れても溢れても来る。
でも来た。
抱きついて、時折求められる舌を私からも必死で求めて、何度名前を呼んだか分からないころに涙が出た。
どれだけそうして全身を唇で辿られて、撫でられているのか分からなくなったせいか、やっと満ちて視界が閉じた。
意識が溶けた。
やっぱり声が声にならない。
でも、抱きしめられている腕の硬さと密着するあたたかさが、あることにひどく安心して、流されるままに私はそこにすべてを預けた。
シーツのぬくみを、雨を聞きながら知っていた日があった。
あたたかい春雨の降る日だった。
小学校に入学してすぐだ。
シューズが取られてしまってそのままで帰ってきた。
靴下にしみた水がきもちわるかった。
熱をもつ手のひらを憶えている。
白い濡れタオルの気持ちよさも。
あの日の玄関も肌寒く、雨音の中、熱を出して預かられていたイトくんと二人でお昼ごはんを食べた。
たいしたことじゃなかった。
サンドイッチだった。
夕暮れにはおじさんが迎えに来たので私の部屋で寝ていた彼は帰っていき、
幼い私は暇だったので空いた自分のベッドに潜りこみ――
視界がうっすら戻ると天井のしみが見えた。
髪の脇にくすぐったい感触があったのはキスされたのだろう。
深く静かに耳に届いた言葉に息が震えて、じんと熱くなった。
「ひーこ。ごめん、大丈夫だったかい」
薄暗い自分の部屋で、背中にはシーツが湿っていた。
僅かに顔を横にずらすと幼馴染が覗き込んでいる。
頬にある手のひらが熱くて気持ちがほわりと温まっていく。
すまなそうな顔をしているなあとぼんやり観察しながら、無意識に頬の手に重ねた。
あたたかくて嬉しかった。
「うん…」
「なんか、悪い。やりすぎたかな」
尋ねる言葉に首を振って、黙って脇から覗き込む人に手を取ってもらって、僅かに背を起こした。
汗ばんだのに涼しく流れる湿った空気が、身体を適度に冷やしてくれて溜息がこぼれた。
辺りを見回すと毛布が完全に床に落ちていた。
雨がまだ降っている。
どちらともなく唇を合わせて、ほんの少しだけ舌先で触れて、もう一度長く触れるだけのキスをした。
さっきの感覚を底が引きずっているのか、身体全体が朦朧とあたたまっている。
それからもう意味を成さなくなっている下の薄い布をそっと脱がされた。
かすかに水音がして糸を引く。
イトくんが黙ったので、余韻で遠のきかけていた羞恥心が微妙に舞い戻ってくる。
さっきからイトくんが下を脱がないのは苦しそうなのではないかなあとか、
そういう方に無理矢理思考を戻そうとするけれど上手くいかない。
たっぷりの沈黙が過ぎてから、聞き取りづらい囁きを添えて、見間違いようのない瞳が穏やかに目を細めた。
「ん。…綺麗だ」
「そう」
細く答えて熱い顔を下げた。
そんなことを自分で考えることなんてないけれど、イトくんがそんな風に誉めてくれるとそうなのかなと思ってしまう。
本当はどうかなんて分からなくても、やっぱり嬉しい。
眺めて、見上げて、私から少しの短いキスをしてみた。
自然とこちらからも触れたくなって、顔を僅かにずらす。
指の腹で肩までなぞって、真似ではないけれど、幼馴染の首筋に唇を押し当てた。
一秒間。
放すのが惜しくて溜息が出た。
…この人がしている気持ちがわかるような気がした。
彼がおかしそうに身じろいで頭を抱え込み引き寄せたので瞬く。
「貧相なんだから、あんまり確かめられると困るよ」
その言い方がおかしくて私も少しだけ笑った。
なぜだろう。
今までで一番自然にいられるのはとても嬉しいけど。
肌に直接触れる外気が涼しくてもおかしくないはずなのに、あたたかくて心地が良い。
「イトくん」
「ん?」
支援
「昨日も今日も、心配してあげられなくてごめんね」
幼馴染は何も言わずに、頭に置いた指を僅かだけ動かした。
そしてうん、となんとはなしに呟いて予想外のものと出会った人のような、溜息をゆっくりと漏らした。
それからまた僅かに沈黙して天井のしみを仰いだ。
触れ合う肌から伝わるのは体温だけではないだろう。
脈が皮膚の裏で血管を通って、身体をめぐって、温めているけれどそれは、私とこの幼馴染と別々の血に他ならない。
だからこそこうして少しでも肌を触れ合わせると、交わらないものが近くなるように心の膜くらいなら溶け合ってくれるのだろうか。
―それはとても、不思議な行為だ。
「緋衣子」
頭の脇で囁きが髪を撫ぜて視線を浮かす。
「なに」
「そういう気負いのない気遣いは、おまえの家族みんなに感謝してた。ずっとする」
「うん」
「だから、そうだね。かっこつけても隠しても、見抜かれることくらいは分かっていたんだ」
そうしてかすかな諦めたような、でも喜んで受け入れるような、笑みを含んだ余韻があった。
私は睫毛を数回上下させて、聞き慣れすぎた声を聴いていた。
脈打つ胸元にささやかに触れる肌は確かに細く、きっと生まれた頃から
頻繁に熱を持って気だるく風邪を受け入れ続けている。
勿論それを悔しく思っているイトくんだって、いつもどこかにいるだろう。
雨がまだ降っていた。
何度も降るように。
幼い頃の春のように、いつか看病していた秋のように、小さな窓に水滴を伝わせながら降っていた。
「おまえはいい子だね」
不意に幼馴染が小さく笑った。
そして何気なく、でもとても深い声であの一言を耳元で伝えた。
髪が俯いた頬に、かかって汗ばんでいたので張りつく。
心臓の鼓動ははやいのに穏やかな音をしていた。
「うん」
頷いて、なんとなく笑う。
「知ってる」
そう、とおかしそうにイトくんが耳の上で笑って幸せそうに腕を寄せた。
今度は冗談ではないと分かっているから、きっと忘れないでおこう。
では続きは時間ができましたらまた。
なんだろう、ものすごく幸せだ…。
読んでて、本当に嬉しくて楽しくて幸せで涙が出た。
文章の力だけでここまで感動したのは、
はじめてかも知れん。
とりあえず、何が言いたいかというと、
243神、まさにGOD JOB。
こんなに素晴らしいものを有難う。243神。本当に幸せだ。
今はそれだけしか言葉が浮かんでこない。
箸休めさんもGJです。
まったりとした幼馴染まんせー。
確かにお見事と言わざるをえん。
続きを淡々と待つ。
萌え転がった。悶絶した。なんだこのやばいくらいにがつんがつんとくるエロさは。
ありがとう。エロパロ板を見ててこんなに強烈に来たのは初めてです。
SS倉庫行ってまた最初から読んでこよう……(*´∀`)
243師、GJ!!!
243神GJ!!
ヤバい可愛いしエロい。
良いなぁ、こういうの。
筆休めさんの続き期待してます!
「箸」休めじゃないかい?
職人さんいつもすばらしきお話をつくっていただき
ありがとうございます。
長い間ゆっくりと恋をはぐくんでいくのも
幼馴染の醍醐味の一つですが、
突然の別れ(引越しなど)から互いに成長し、劇的な再会をするのもまた
幼馴染の醍醐味ですよね。
>>111 禿同。
そして一方が幼い頃に交わした誓いを報われないと分かっていながらも
愚直に守り続けているというのもまた良し。
それが幼馴染クオリティ。
>112
問い詰められるのとか、好き?
なんとなく、生暖かい一日だった。
「ゆう。ゆう!」
長かった髪をこの夏ばっさりと切った鈴木伊夏に蜂須賀優太は肩を叩かれた。
「何?」
「きっこは?」
今日はまだ教室に現れていないクラスメイトの瀬良紀久子の事を聞かれる。
村が違うんだから判る訳が無い。
あまり自分の事を話さない、学年で言えば一つ下の瀬良紀久子に伊夏は興味津々でありながらも少し扱いかねている所があるので
俺に聞かせようというつもりなのかもしれない。と蜂須賀優太は思った。
伊夏は期待に満ちた目でこちらを見つめている。
「俺に聞かれても。」
「じゃあ誰に聞くのよ。」
「藤菜ちゃんに聞けよ。」
そりゃそうか。と伊夏は首を回して後ろに座っている桜岡藤菜に声をかけた。
「藤なぁ、今日きっこは?」
その声にぼうっと教科書を眺めていた藤菜ちゃんがついと顔を上げた。
長く伸びた髪がふわりと浮かんで、優しげな顔の輪郭が浮かび上がる。
ぼんやりとしている所があるのが玉に傷なのだけれど、
いつも優しくて同学年でありながらお姉さんの風格があって、
蜂須賀優太は最近さりげなく授業中彼女の動きを目で追ったりしている自分に気づく事もあった。
ブラウスから突き出るような胸にも興味は尽きないし。
慌てて不純な考えを頭から追い出す。
「紀久子ちゃん?今日は寝坊しちゃったから、少し遅れてくるって。」
小首を傾げながらこちらを向いた藤菜ちゃんは、にこりと笑いながらそう言ってきた。
伊夏はふう、と溜息を付く。
「藤なぁ、ちゃんと起こしてあげなきゃ。」
肩を竦ませながらそんな無茶を言った。
「藤菜ちゃんと一緒に住んでる訳じゃないんだから。」
「そんな事言ったって。藤菜はどっちにしろ一緒にくるんだからさ。ゆうは私が起こしてあげてるから遅刻しないんじゃない。」
腰に手を当てて膨れる。
「それはそうだけど・・。大体お前おこすったって」
伊夏のは自分の家から叫ぶだけじゃないか。蜂須賀優太がそう言い掛けた時、
ガラリとドアが開いてこの学校の校長先生であり、唯一の教師でもある中村雄大先生(55歳独身)が教室に入ってきた。
「起立」
藤菜ちゃんの声が響く。
「礼。着席。」
「おはよう。」
ガラガラと席についた俺達に手に持ったプリントをひらひらと弄りながら中村先生は教壇についた。
「ええと、瀬良は」
一つだけ空いた席を見て意外そうな顔をする。
「先生、紀久子ちゃんは少し遅れるそうです。」
「きっこ寝坊だって。」
伊夏が茶々を入れる。
「ああ、うん。そうか。」
しようが無いな。などと呟きながら中村先生は椅子に座り込む。
窓から入ってきた風が、教壇の上のプリントを少し、くすぐるように動かす。
一学年下の紀久子ちゃんの事を先生がこの教室で聞くのには訳がある。
ここが、過疎だからだ。
蜂須賀優太と鈴木伊夏が住んでいる西山馳村は過疎である。徹底的に。
桜岡藤菜と瀬良紀久子が住んでいる西山馳村の隣村である遠武倍村も過疎である。徹底的に。
温泉も出ない。さりとて登攀意欲をそそる山があるわけでもない。
バブルの時代にマンションが建設される事も無く、高速道路のインターチェンジも無い。
人口は順調に減りつづけている。
両村ともなるべくしてなった過疎であり、対処法は無く、過疎に喘いでいた。
当然平均年齢は恐ろしく高く、若者はいない。
両村合わせて10代の若者がいなくなった一時期、当然両村の中間地点にあるこの学園は閉鎖されていた。
しかし17年ほど前、奇跡的に両村それぞれで2組ずつが同時に結婚した。
順調に子供も産まれ、当然両村は沸きに沸いた。
喋ったと言っては酒を飲み、たって歩いたと言っては祭を開いた。
しかし子供達が育つにつれ問題が起こった。
教育施設である。村中で育てたと言って良いから幼稚園、保育園などはいらない。
空腹になればとある家で団子とお茶をご馳走になり、お腹が痛くなればワカモトを飲まされ、
足が疲れれば村のどこの家に上がりこんでテレビを見ていても怒られる事は無かった。
暇な隠居に教え込まれ、全員小学生の頃には一通り文字も書け、時計も読めた。
簡単な計算すら出来たし、桜岡藤菜は糠漬けのやり方を覚え、鈴木伊夏は盆栽に水をやり、
蜂須賀優太に到っては囲碁と将棋も打てた。
しかしいくら教育に自信と暇のある年寄りが多いとは言っても義務教育は別である。
資格を持った教員が資格のある場所で教えなければいけない。こればかりはどうしようもなかった。
子供達の両親は深く悩んだ末に、教育のために片親が子供達と共に村を離れる決心までした。
しかしそれを伝えられた西山馳村の住民の反応は素早かった。
村長は真夜中に叩き起こされ、我々の楽しみを奪う気か、と村中の年寄りに詰問された。
どうにかして村から街の学校に通わせる訳にいかないものなのか。と。
意見を聞いた村長は村民の想像よりもさらに過激な行動を取った。
村長は遠武倍村に夜中の2時に乗り込み、両村で連携する約束を即日取り付けた。
さらに捻り鉢巻に白装束を着込んだ両村の村長は翌日から県議会の前に座り込んだ。
「過疎地の教育が切り捨てられている。」と濁声を張り上げ、
村民からの重圧を受けまくった両村村長の何だか必死なその姿は全国ネットのテレビ番組にまで取り上げられた。
西山馳、遠武倍両村の村長の粘り強いゴリ押しとも取れる政治活動は
別段切り捨てたつもりも無かった県担当者の「教師がいれば良いんじゃないですか。別に。」との金言を得る事に成功し、
村立武倍第1学園は唯一人、教員免許を取得していた村役場役員、中村の協力もあって再開し、未だ存続している。
当然生徒は学年全体で4人しかおらず、教師は中村ただ一人。
一学年に一人の先生などという必要も無い。
何倍かの速度で成長する子供が産まれるか、奇跡的に転入生でも来ない限り3年後には確実に再度閉校になる事は確定している。
だから当たり前だけれど、一学年下の瀬良紀久子も4人机を並べて一緒に授業を受ける。
つまりは、全てが過疎だからで片付くのだ。
@@@@@@@@@
瀬良紀久子が教室に到着したのは丁度昼前に近い頃だった。
「お、来たか。」
中村は眼鏡を外し、瀬良紀久子に近づくと体調は大丈夫なのか?と耳打ちした。
「・・・」
紀久子はかすかにコクンと頷く。
最近体調が悪く、遅刻する事が増えている。貧血気味だと両親からは聞いている。
思春期の女の子にはありがちだし、透けるように白い肌を持つ紀久子を見ると納得してしまう所でもあった。
特段病気の心配も無いそうだ。
しかし貧血になる事、それ自体を瀬良紀久子自身が非常に気にするので
中村は皆の前ではあまり大っぴらには体調を聞かない事にしていた。
「じゃあ、席に座って。瀬良は昨日の続きからだな。」
そう言ってぽんと肩を叩いた。
てくてくと後ろを通って一番窓際の自分の席に歩いていく紀久子に、蜂須賀優太は
「きっこおはよう。」
と声をかけた。その隣の席では伊夏が手を振っている。
「・・・」
ゆうく、おはよう。
聞こえるか聞こえないか位の声で隣にそう声をかけると、
瀬良紀久子は顔をそむけてぱたぱたと教科書を鞄から取り出し始めた。
瀬良紀久子が教室に来てからおよそ30分後。
----ジリリリ
「お、おわったぁーーーーー」
教壇に置いてある目覚し時計が騒ぎ出し、同時に隣に座っていた伊夏が机に突っ伏す。
バタバタと足を動かした。
「伊夏ちゃんだらしない。」
さらにその隣に座る藤菜ちゃんが嗜めるように言う。
伊夏は集中力の欠如が甚だしい。それでも国語の時間はまだ我慢しているのだけれど
今日のように昼前に数学なんて物がくるといつの間にか中村の目を盗んで遊んでいたりする。
「ぜんっぜん判んない。微分って何。ゆうはスラスラ解いてるしさあ」
「伊夏は集中しなさすぎ。」
ぐるりと顔をこちら向けてくる伊夏に言い放つ。
「紀久子、大丈夫?」
机の中に教科書を仕舞ってお弁当を片手にぶら下げながら藤菜がきっこに近づいていくのを優太はついと目で追った。
「藤ね、ごめんね。今日。」
一節一節区切るような独特の話し方で話す。ふじねえ。がふじね。と聞こえるのはそのせいだ。
「ううん。紀久子ちゃん、今日休めばよかったのに。」
きっこの弁当を鞄から出してあげながら藤菜は言った。
「でも、起きられたから。」
周りを気にしてか聞き取れないくらいの声で紀久子は答える。
窓から差し込む光はかなり高くなっていた。
きっこは妙な所で気にしいだと優太は思う。
体調が悪いのならば休めば良いし、来て寝ていたって良い。町の学校なら問題になるのかもしれないけれど
ここでなら後ろで横になっていたって何の問題も無いのに。
「お弁当、食べよう。」
食べなきゃ死ぬといった感じの伊夏の声に合わせて皆が机を持ち上げる。
がたがたと机を動かして、中村先生も入れて5人で輪になってお弁当を食べる。
冬には石油ストーブの横だし、それ以外の季節は窓際で食べることになっている。
がらんとした教室に5人で机を寄せ合うのは、外から見ると少し寒々しく見えるのかもしれないけれど、
この雰囲気を蜂須賀優太は嫌いではなかった。
隣にはいつも通り伊夏が陣取る。
藤菜ちゃんが弁当を取り出して、中村先生に渡す。
「お、おお。桜岡、いつもいつも悪いな。」
「ううん。お手伝いくらいで私が作ってるわけじゃないから。」
そう言って笑った。
「うん。うん。お母さんに宜しく言っておいてくれ。大変助かってますって。」
そう言ってぱかりと弁当箱を開けると卵焼きに真っ先に箸を伸ばした。
「先生、頂きますは。」
藤菜ちゃんが嗜める。弁当箱を開いて続けとばかりに箸を下ろした紀久子ちゃんがぴたりと止まる。
「藤菜のお母さん美人だしねえ。さっさと食べたいよねえ。」
未亡人だし。と伊夏が混ぜっ返す。
「こ、こら。」
卵焼きをほうばりながら、冗談でもそんな事は言っちゃいかん。と言って。
真っ赤になって中村先生は怒る。
過疎村いいね支援sage
連投に引っかかっちゃったカナ?
村ぐるみ幼馴染ブリーダー支援
@@@@@@@@@
村立武倍第1学園でお弁当の時間が終わり、午後の授業が始まり、伊夏が舟を漕ぎ始めた頃。
村役場の会議室は薄暗くカーテンが閉まり、陰鬱な雰囲気を醸し出していた。
午前中の畑仕事を終わらせて、ぱらぱらと集まった村議会議員の面々に一人づつ、緊張した面持ちで助役はファイルを手渡していく。
手渡すと同時に一人一人の顔をしっかりと見つめ、頷く。
提出したファイルの先頭にはこう書かれている。
『西山馳村を中心とした副都心化計画基本構想の概要』
表紙に赤く大きな文字で秘と書かれたファイルにはびっしりとコピーされた手書きの文字が踊り、
先端には右上がりの村長独特の力強い字体で「立ち上がれ、西山馳村村民達よ!」と書き記されていた。
村議会期待の若手のホープ。山下の次男坊(45歳独身)は肩にかけていたタオルを外し
ファイルをぱらぱらと捲りながら会議室の奥に座っていた村長に恐る恐る声をかけた。
「村長、なんでしょうかこれは?」
深くパイプ椅子に座り込んでいる村長は、窓から差し込む光に目を細めながら番茶を啜る。背もたれがきいと音を鳴らす。
周りを見渡し、拳を握り締め、頷きながら言った。
「私は、この議題に私の政治生命を賭けるつもりだ。」
何かが起こる。村議員たちのどよめきが公民館の第1会議室中を覆った。
大きな声が掛かる。
「村長!」
皆から古老、と呼ばれる西村正彦(90歳既婚)は力強い声をかけ、村長の肩を掴むとゆっくりと頷いた。
やっと来たと思った。いつかやると思っていた。
何かはまだわからないけれど子供の頃から神童と呼ばれ、中学を卒業してから政治一筋に身をおいてきた目の前の若者の
勇気ある決断を見て古老は引退を考えていた己を恥じた。
中身はわからないけれど俺たちはついて行こう。若者達はそう思った。
パイプ椅子に座った村長の深い皺に覆われた顔。そこに苦悩の表情が見て取れる。易しい道ではないのだろう。
しかしその時、議員達にははっきりと見えた。
50年近く年間村を守ってきた。その自負と気概、青白く燃え盛るオーラが村長の背中から立ち上っていた。
そんな中、村長は湯飲みを置くとゆっくりと搾り出すように議員たちに語りかけた。
「---過疎は、私の代で止める。」
その後、会議はおよそ2時間に及んだ。
山下の次男坊(45歳独身)は会議室のカーテンを開けた。
爽やかに晴れた夏の日。第1会議室で交わされた握手。
山下は肩にかけていたタオルを高く、天井に向けて投げ上げた。
思い切りジャンプすると、最近少し気になり始めた頭髪が頭の上で跳ねるのを感じた。
何故だか判らないけれど、いてもたってもいられなくてガラリと窓を開けて大きな声で叫ぶ。
「西山馳村ばんざーーーーーい!!」
野太い声が青空に吸い込まれて行くように広がる。
若者らしい、ストレートでてらいの無い行動に会議室中に笑顔が広がる。
西田が大声で村歌を歌い出した。
西山馳村にどことなく汗臭い風が、吹く。
アイスを齧りながらのんびりと坂道を歩いていた学校帰りの蜂須賀優太は体を撫でつける風と
その後感じた悪寒に体調を崩したかな。と少し思った。
夜遅く隣村の村長宅にホットラインがかかる。
合同で会議を開きたい。大変重要な案件である。
いつに無い電話向こうの緊迫した声に、遠武倍村の村長は重々しく頷いた。
---------------------------------------------------
aboneが狂ってました。
支援ありがとうございました。
では。
ノシ
この作者寝取られ属性な人だったような……。
>127
すみません。中の人が寝取られ書いたりする人なのは確かですが
寝取られはないです。
スレ汚しスマソ
ノシ
相変わらず、村人たちが素敵すぎる(w
先生も入れて、五人でお弁当とか、ほのぼのしてていいですねえ。
>128
作風と作品はときにイコールでは結ばれないよねっ
続きはどうなるのかなー
キタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!!
好きに書いて下され。他のところで目にしましたが最高でした。
243氏に箸休め氏にうぃすてりあ氏に加えて◆3JdH7tKSnk氏
このスレ凄い事になってきたなあ・・・
やべ、一発ネタかと思ったらホントに書くか! GJだ!
そ、村長かっこええええええええ
134 :
箸休め:2005/03/24(木) 21:42:06 ID:K9T/Geng
「終わったよー」
ちょうど二本目の煙草に火をつけようとしたところで果林が店から出てきた。
「思ったより早かったな」
「着替えて会計するだけだったからね。当然でしょ」
「その着替えるだけの試着に随分と時間がかかってた気がするが」
「何着か着てみてたから。好みの服、結構あったし」
そう言って笑いながら果林が紙袋をこちらに寄せる。
「なんだ?」
「持って」
「い・や・だ」
噛みきるようにして断る。俺を買い物に付き合わせた理由はこれか。
「なんで俺が荷物持ちにならなきゃいけないんだ」
「だってそのために一緒に来てもらったたんだし」
さらりと果林が答える。予想通りかよ。当たってほしくない予想だったんだがな。
「大して重くないんだろ?そのくらい自分で持てよ」
「大して重くないんだから持ってくれていいじゃない」
駄目だ。コイツ折れねぇよ。
「分かったよ。持てばいいんだろ持てば」
俺は半ばヤケになって紙袋を受けとった。
「ありがと」
はにかむように果林が笑う。
「ったく」
愚痴りたくなる衝動を押さえながら俺は溜め息を吐いた。
まぁ愚痴も溜め息も後ろ向きと言う点で違いがないんだが。
135 :
箸休め:2005/03/24(木) 21:43:44 ID:K9T/Geng
「で、昼飯どうする?」
言いながら軽く空を見上げた。ぽつぽつと雨が降り始めている。
「下手すると雨が強くなっちまうけど」
「私は折り畳み傘持ってきてるから大丈夫」
「俺は持ってきてない」
「降水確率、結構高かったよ?天気予報くらい見てくればいいのに」
今度は果林が溜め息を吐く。
「しょうがないなぁ。傘、入れてあげるから。行こう?」
「どこに行くかも決めてないだろ」
「ファミレスかなんかでいいでしょ?」
「まぁな」
別に嫌がる理由もない。二人で飯を食いに行くのも久しぶりだし。
「じゃ、さっさと行こうぜ」
「おごらないよ?」
「期待はしてなかったよ」
苦笑して答える。どうせ服買って金に余裕ないんだろうしな。
「おごるって言った時は目輝かせてたのに?」
「つまんねぇこと覚えてるな。まぁアレだ、予想の範囲内だな」
「あっそ。別にいいけどね」
どちらからともなく笑って、俺達は近くにあるファミレスに歩を進めた。
◆m57W70yg/k 氏
続きが気になるので家紋!щ(゚д゚щ)
137 :
箸休め:2005/03/24(木) 21:46:22 ID:K9T/Geng
二人で並んで歩きながら、ちらりと洋の方に目をやる。
二人で外食するのなんて久しぶりだ。だからと言って何かあるわけでもないけど。
「ねぇ」
「なんだ?」
「なに食べようか?」
「まだ決めてねぇよ。つーか急になんだよ?」
「いやなんとなく」
聞いてみただけで、特に意味はなかった。
「大体、メニュー分からないだろ」
「ファミレスのメニューなんてどこも似たようなものでしょ?」
「そりゃそうだろうけどな」
実のないやりとりだと思う。けど、私はこういう会話は嫌いじゃない。
「無難にランチセットとかかな、やっぱり」
「だろうな。日替わりのセットがあるならそれでもいい」
「日替わりのセットなんてあるの?」
「さあ?知らねぇよ。言ってみただけだ」
洋とのどうでもいい会話。
それも最近は、だいぶ減った。今日みたいに二人で出かけるのも。
減ったって言っても普通よりはずっと多いんだろうけど。少し、寂しい気もする。
「それにしてもさ……久しぶりだよね」
「ん?二人で飯食うのがか?」
「うん」
「そうだな」
言いながら洋が頬を緩めた。
「さて、着いたみたいだな」
洋の言葉に足を止める。目の前には全国チェーンのファミレス。
138 :
箸休め:2005/03/24(木) 21:48:09 ID:K9T/Geng
「じゃ、入ろ?」
「おう」
中に入ると店員が来て、愛想を振り撒く。店員って言ってもバイトなんだろうな。
「いらっしゃいませ。禁煙席と喫煙席とございますが」
「禁煙席で」
「こちらへどうぞ」
店員のマニュアル化された問いに洋が答える。
案内されたのは窓際の席。
「煙草、吸わないの?遠慮しなくてよかったんだよ?」
「酒の席ならともかく、飯食う時は吸わないから気にすんな」
「そうなんだ」
言われてみれば確かに洋は食事時に煙草を吸っていなかった。
「それに遠慮なんかしねぇよ、今更」
「そっか。それもそうだね」
確かに、遠慮しなきゃいけないような関係だったら幼馴染みなんてやってられないか。
「それより、何食うか決めようぜ」
「うん」
頷いて、私はメニューに目を落とした。
(・∀・)イイヨーイイヨー
GJ!! もっとщ(゚д゚щ)
久々に投下いきます。
(題名)約束
(主人公)川崎達也
(幼馴染み)河崎香澄
視点がコロコロ変わりますがご了承下さい。
「ようやく終わった〜。」
今日最後の授業が終了すると同時に俺―川崎達也はたまった疲れに負け机に突っ伏した。
そして瞼を閉じ・・・。
「痛いッ!」
ようとすると何者かに頭をはたかれた。
「あたたたたた・・・、何すんだよ!」
俺は寝込みを襲う不埒物に抗議の声を上げた。
そこにはイヤと言うほど見慣れた少女がいた。
「寝ようとするアンタが悪いんでしょ。」
目の前の少女は背中を覆うほど長い黒髪を揺らしながらこちらをビシリと指さした。
「人を指さすのはやめなさい行儀悪い。」
「仕方ないでしょクセなんだから。」
「まあどうでもいいや。それよりホームルームまでくらい寝かせてくれよ。
僕はもう眠いんだよパトラッシュ・・・。」
「誰がパトラッシュよ。っていうか今日谷本先生が会議だから
ホームルーム無いって聞いてなかった?今日朝のホームルームで言ってたはずだけど。」
「聞いてなかった。その時から既に寝てたし。」
「そんな情けないこと即答しないでよ・・・。まあそう言うわけだから帰るわよ。」
「へーい。」
俺はやる気のない返事を返すと空っぽの鞄をつかんで立ち上がる。
こうして並んで立つと彼女の171センチと女子にしては高い身長が実感できる。
「今日って親父さん達いたっけ?」
「今日も残業。そっちの方も出張から帰ってないでしょ?」
「まあね。そういうわけ何で夕食は任せた。」
「仕方ないわね。他に出来る人いないし。」
そういうと香澄は肩をすくめる。
「悪いな。こういうときは香澄に頼りっぱなしで。」
俺は謝罪と感謝の気持ちを込めて香澄の頭を撫でてやる。
「・・・良いよ別に。私が好きでやってることだし。」
彼女―香澄は幸せそうな顔でそう答えた。
河崎香澄。
彼女は俺とは幼稚園どころか生まれた病院から今現在までずっと一緒な―いわゆる幼馴染みだ。
しかも家も隣同士で部屋は窓伝いに行き来可能で
それを使って毎日俺を起こしに来るという絵に描いたような幼馴染みである。
その上両親もみんな仲が良く昔から「お前ら将来は結婚しろ」だの言われてきた。
それと二人とも名字が“かわさき”な為
周囲からは「かわさき夫妻」とからかいのネタにされていた。
それは何故か香澄とはずっと同じクラスで受ける高校まで一緒なのも原因の一つだが、
流石に十年以上もそんなことをされると慣れた。
そんなわけで俺達は大体二人セットで扱われるのが基本だし、
俺達もそれが当たり前だと思いそのことについて深く追求はしなかった。
「・・・遅い。」
俺は既に料理が並べられた食卓に顎を乗せて不満の声を上げた。
「あんにゃろーまだ帰ってこないのかよー。」
「それくらい我慢しなさいよ。さっちゃんも私も待ってるんだし。」
隣で同じように食卓に着いた肘に顎を乗せた香澄はそういって視線で目の前の小柄な少女を示す。
「私はいくらでも待ちますけど・・・。」
「良い子よねえ、皐月ちゃんは・・・。アンタも少しは見習いなさいよ。」
苦笑する彼女。
彼女―皐月は俺の二つ下の妹だ。香澄の弟が同い年で幼馴染みという縁もあり、
俺達とはしょっちゅう一緒にいたりする。
まあその弟が部活で帰ってくるのが遅いからこうやって腹空かせて待ってるわけだが・・・。
「ンなコトいわれたって、目の前にうまそうな料理があるのに待てなんて・・・。」
その言葉に香澄は顔を赤くする。
ちなみに目の前の料理は全部香澄が作った物だ。
両親が不在の時はこうやって作りに来てくれるのだ。
当然味も良いし栄養バランスも偏ってない。
普段は乱暴なくせにこういうたまに見せる女らしさが可愛い・・・。
「ただいまー。」
考えを中断するようなタイミングで待ち人が帰ってきた。
「遅いわよ良太。帰るのがあまりにも遅いから先に御風呂入らせてもらったわよ。」
彼―良太は同じく香澄の二つ下の弟だ。
バスケ部に所属しており、低い身長にも関わらずレギュラー入りしている。
「ゴメンゴメン。そういや姉ちゃんって皐月と一緒に入った?」
「はい。久しぶりに一緒に入りました。」
その疑問に答えたのは皐月だった。
「香澄お姉ちゃんがすっごくすたいる良くてびっくりしました。」
さりげなく言われたその発言に即座に俺達3人は思わずつばを詰まらせてむせかえった。
「どうしました?」
皐月はむせかえる俺達に邪気のない目を向ける。
「い、いや・・・何でもない・・・。」
いち早く回復した俺は一同を代表して返事を返すと、香澄達がまだ回復していないのを確認する。
よし、今のうちだ!こいつらが回復する前に詳しく聞き出す!
俺には幼馴染みとして香澄の成長を確認せねばならない義務がある!
「で?具体的にはどれくらい?」
「えっと胸が私より十センチ以上・・・。」
「さっちゃーん♪野菜炒めに嫌いなピーマン私の分も入れてあげるねー♪」
「ごめんなさいこれ以上はいえません。」
いつのまにか回復した香澄の思わぬ攻撃に皐月は即座に謝った。
見ると良太もどうにか回復した様だ。
・・・惜しいところで邪魔が入った・・・。
しかし皐月は重大なことを教えてくれた。
まあ確かに皐月はそんなに胸があるようには見えないがそれより十センチ以上デカイとは・・・。
いつの間にそんなに成長したんだコイツ。
まあまだ成長期だろうしこれから将来が楽しみ・・・。
「今なんかヤらしーこと考えなかった?」
「いえ何も。」
こちらを射抜くというか貫くような視線で見る香澄に俺は即座に否定の返事をした。
怖ぇ・・・。本気で殺されるかと思った・・・。
「「「「いただきます。」」」」
俺達は手を合わせてそう言った後、かなり遅い夕食を開始した。
香澄から目をそらしつつ唐揚げを口にする。
うん。やはりうまい。
と、俺に鋭い視線―香澄には及ばないが―を向けている良太が口を開いた。
「巨乳好き。」
「シスコンでその上貧乳フェチよりはマシだと思うぞ。」
「なななな何を言ってるのかな達兄はっ!?」
俺がさらりと言ったその言葉に激しく動揺する良太。
その態度が俺の反撃が図星であることを何よりも証明している。
「だいたい何を根拠に・・・。」
「俺が話に食いついたときからお前の目つきが鋭くなったところと
その後に皐月の胸を見て若干頬がゆるんだところ。」
反論を遮って俺に証拠を突きつけられ、良太の動きがピタリと止まる。
とそこに首をかしげた―状況がいまいち理解できてないらしい―皐月が口を挟む。
「ふぇちってなんですか?」
「はっはっはっ、それはお兄ちゃんの口からはとても言えないなあ。
まあそこの良太君なら教えてくれるんじゃないか?」
その言葉にも俺は慌てず騒がず良太に話を振る。
「良太君は知ってるんですか?」
「あ、えっと・・・その。」
思わぬ質問をされた良太は途端にしどろもどろになる。
フッ、勝った。
俺は勝利宣言を良太にしようと口を開く。
その時、何かがぶつかる音がする。
その衝撃で食卓の上の物が一瞬浮いた。
それと同時に俺達は雑談をやめ、
錆び付いたブリキのおもちゃの様にギギィッと音がした方に首を回す。
そこにはすさまじい闘気を放つ香澄が握りしめた拳を食卓に叩きつけていた。
「食事中は静かに。」
「「「はい。」」」
香澄のその一言で我々は即座に食事を再開した。
香澄も不機嫌な表情はそのままで再び夕食に箸を付け始める。
だが俺は見逃さなかった。
―香澄の頬が少し赤くなっているのを。
昔からそういう話題には免疫がなかったからなコイツ。
・・・後で思いっきり頭撫でて機嫌取っておこう。
そう思いつつ良太の方を見ると皐月の訴えかける様な視線から逃げる様に目をそらしていた。
当然俺も香澄も助けてやるつもりはさらさら無い。
ガンバレ良太!この逆境の中で強く生きてゆくのだ!
心の中で弟分に無責任な激励を送りつつ俺は夕飯の卵焼きの味を噛み締めた。
夕食の後、私は良太と一緒に帰宅し、自室でくつろいでいた。
食器も洗おうと思ったのだが達也に「それくらいは俺がやる」と断られた。
彼のそういう細かい気遣いは昔から変わらない。
「まあそれがアイツの良いところなんだけどね。」
苦笑して誰にともなくつぶやく。
ふと夕食の時の会話を思い出す。
「・・・バカ・・・。」
私は顔を赤くして周囲に誰もいないのに自分の胸を抱きしめる様に隠す。
あのバカいつの間にあんなエッチになっただろう。
まあ少なくとも私を異性として見てくれているというのは分かったが。
そのことに喜んでいる自分に気付く。
「なんでだろ・・・。」
いつ頃からだろう。彼を「幼馴染み」ではなく「男の子」と意識する様になったのは。
このところ彼は体つきもガッシリしてきたし、
いつの間にか背も彼の方が―ほんの2センチ差だが―高くなっていた。
でも多分それよりずっと前に、私は達也を―
って何考えてる私。よりにもよってアイツ相手に。
それ以前に向こうが私のことをどう思ってるか。
長く伸ばした髪に触れてみる。
アイツは気付いているだろうか。
私が髪を伸ばしたのは子供の頃彼が「長い方が良い」と言ったからだということに。
料理だって「出来る方が良い」といったからがんばって出来るようになったのだ。
それにあの時の約束も―
そこで私はさっきから思考が堂々巡りしてることに気付く。
・・・何やってるんだろ私。
「・・・もう寝よう・・・。」
明日には答えは分かるだろうし。
私は考えを中断してノロノロとベッドに向かった。
―あの時のこと覚えてるかなアイツ。
そんなことを思いながら。
時計をにらみつける。
後少しで日付が変わる。
―約束をしたあの日に。
「そろそろ行くか。」
とりあえず俺は意を決して部屋の窓を開け、香澄の部屋の窓をノックする。
「空いてるよー。」
香澄の返事を確認すると俺はその窓を開け彼女の部屋に入る。
そこは何故か照明がついておらず、部屋に差し込む月明かりでようやく見える程度だ。
とりあえず他に人がいないか確認。
誰もいない。
―香澄さえも。
そんな馬鹿な。さっきはたしかにこの部屋から返事が聞こえたのに・・・。
慌てて周囲をもう一度注意深く見るが、やはり誰もいない。
まてよ・・・。
もしやと思った俺はベッドの方を見る。
そこにはベッドの上で爆睡してる香澄がいた。
「・・・達也ぁ、チャック空いてるよ・・・。」
どうやらさっきのは失礼な寝言で返事していたらしい。
・・・人が一大決心して来たっつーのにこの女は・・・。
こんな時間に突然訪問した俺の方が悪いという思考はこの際棚の最上段にあげておく。
辺りをもう一度見回すと布団は既に遠く彼方へ蹴飛ばされている。
どうやら昔からの寝相が悪いところは治ってなかったようだ。
ついでに寝乱れた寝間着の隙間から胸の谷間や形のいい臍、白い下着が目に飛び込んでくる。
・・・ていうかやっぱコイツってスタイル良いよな・・・。
寝間着一枚な為彼女の体のラインが浮き彫りになる。
胸、デカっ!腰、細っ!
俺はいつの間にか「女」になっていたその体を見て思わず生唾を飲み込み・・・、
ってそうじゃねえ!
日付が変わる前になんとしてでもコイツを起こさねばならないんだった!
危ない危ない。危うくこのまま時間を無駄に費やすところだった。
いやある意味凄く有意義な時間だったが。
ともかく当初の目的を思い出した俺は気を取り直して香澄を起こすべく行動を開始した。
まずは・・・。
「起きろー。」頬を叩く。反応なし。
「起きろーい。」頬をつねる。やはり反応なし。
「起きてー。」くすぐってみる。
「・・・っん・・・!・・・っうあぁ・・・!」
なにやらエロい寝言を言い始めた。でも起きない。
「起きろおおおおおおお!!」
耳元で絶叫。
「・・・あと5ふ〜ん・・・。」
きょうび漫画でも聞かんような台詞が返ってくる。
これでも起きない。
むう困った。
昔から一度寝たらなかなか起きなかったがここまで熟睡してるのは久しぶりだ。
・・・よく毎朝俺を起こしに来れるよなコイツ。
それはそうとコイツを起こさないと話は始まらん。
どうにかして起こさねば。
しかし並大抵のことでは起きないことは明白。
俺はどうにか目の前のねぼすけを起こすべく彼女の頬を弄りながら
―感触が気持ち良くて気に入ったのだ―頭をひねらせた。
「・・っん・・・。」
そんなことを考えてると香澄が寝返りを打った。
その時に目をそらしていた胸の谷間をうっかり見てしまう。
・・・まてよ!そういえば・・・!
ふと夕べの会話を思い出す。
こうなったらやむをえん!
―乳を揉もう。
乳を揉む。→慣れない感触に驚いて香澄起きる。→恥ずかしさで完全覚醒。
おお!完璧な流れだ!我ながらスバラシイ理論だ!!
殴られるかもしれんが揉む為の料金と思えば安いことよ!!
・・・いやあくまでコイツを起こす為ですよ?
まあやましい気持ちが全くないわけではありませんが。
誰にともなく言い訳してみる。
というわけでパジャマ越しに大きさを自己出張してるその双丘を鷲掴みにする。
どうやらノーブラらしく割と豊かな質感が手に返って来た。
・・・すっげえ柔らかくて気持ちいい・・・。
思わず顔を埋めたくなるがそれは流石に我慢。
俺の手に収まりきれないほどでかい。その上形も良いみたいだ。
どうやらこの眠り姫様はなかなかいいものをお持ちになられているようだ。
いや服の上だし他の女の見たことも触ったことないからよくは分からんが。
とにかくこのことを教えてくれてありがとう妹よ。
せっかくなのでしばしこの感触を味わってみる。
・・・しかしよく育ったもんだな・・・。
「・・・ううん・・・?」
とかやってると香澄がようやく目を覚ました。
俺と目が合う。
そして彼女は―多分違和感を感じた為だろう―自分の胸の方に視線を向ける。
硬直。
ちなみに俺はまだ胸を揉む手は止めてなかったりする。
「#$%<*+&|^>=@¥ーー!!?」
彼女は状況を理解した途端形容しがたい―というか人語ですらない―
悲鳴を上げながらシュンと効果音がつきそうなスピードで俺から離れた。
チッ。残念。
そんな内心を悟られないように俺はさわやかに挨拶した。
「よっ。おはよう!」
「お、おはよ・・・じゃなくて!なんで私の胸揉んでるの!?」
顔を真っ赤にしながら胸を手で隠しつつ香澄が―至極もっともな―ツッコミを返す。
ていうか怒るよりも先に恥ずかしがるところがまた可愛い。
「あの・・・その・・・夜這い?
ええとどうしてもしたいって言うのならその、出来るだけ優しくしてよ私経験ないし。」
「いや夜這いじゃないから。」
こちらを上目遣いに見ながらとんでもないことを言おうとする彼女の声を遮る。
て言うか夜這い自体はOKかよ。
内心突っ込むが話がこじれるから黙っておく。
「で、こんな時間に何の用?」
胸のことについて俺が謝り倒した後。
ベッドに腰を下ろした香澄は恐ろしい視線で俺を睨んできた。
まあ俺が先ほどたっぷりと頭を撫でてやったせいで
顔のニヤケがまだ引いてないのであの時ほど怖いとは思わないが。
もう既に部屋の明かりはつけられ、香澄と部屋にいる大量のぬいぐるみ
―半分は俺がホワイトデーにプレゼントしたもの―の姿がよく見える。
「まあ、何というか・・・。」
俺は部屋の真ん中で正座しながら意味もなく縮こまった。
そのことを言うべきかどうか今更ながら迷う。
さっき決心したはずなのに・・・。
こんなに優柔不断だったかな俺。
なんだか自分が情けなくなってきた。
でも・・・。
ふとあの時のことを思い出す。
約束、したもんな。
ここで言わなければ俺は一生後悔すると思う。
いい加減腹括ろう。
そう決心した俺はゆっくりと立ち上がる。
「香澄。」
「何?」
もうこうなったらヤケだ。直球勝負。ど真ん中ストレート。
時計を見る。後三秒。二、一・・・。
今だ!
俺は香澄の目を正面から見据えて、言った。
「好きだ。」
「・・・・・・・・・・・え?」
俺の直球すぎる突然の告白に香澄は目を白黒させた。
それにかまわず俺は言葉を続ける。
「十八になったらって約束だろ?」
俺はそういって部屋にある日付表示の時計を視線で示す。
それはすでに日付が変わっているのを教えていた。
―俺の十八歳の誕生日に。
「覚えていてくれたんだ・・・。」
その言葉に俺はうなずく。
俺達がの頃。
「けっこんてどういういみかしってる?」
「んーん。しらなーい。」
「けっこん」という言葉を覚えたばかりだった当時の俺はその知識を自慢したくて仕方がなかった。
「あのね、すきなひとどうしがずーっといっしょになることなんだってー。」
「ほんと!?」
「うん!だからね、かすみちゃんとけっこんしたらぼくたちずっといっしょだよ。」
「じゃあわたしたつくんとけっこんする!」
「でもね、じゅうはっさいにならないとけっこんできないんだって。」
「えー。」
途端に不満の声を上げる香澄。
「じゃあ、じゅうはちになったらけっこんしてくれる?」
俺が言った言葉にすぐに顔をパッと輝かせ、
「うん!じゅうはちになったらね!」
満面の笑みで答える。
「わかった!じゅうはちになったらもういっかいけっこんしてっていうね!」
「うん!」
そう言って俺達は笑い合うと指切りをする。
そんな子供の頃の他人から見れば他愛もない
―けれど、俺達にとっては大切な約束。
「約束、守ってくれたね・・・。」
香澄の目から大粒の涙が流れる。
「ずっと・・・、待ってたんだよ・・・!」
香澄は涙をボロボロと流しながら俺に抱きついてくる。
泣きながらすがりつく香澄も悪くないな。うん。
そう思いながら香澄の涙をぬぐってやる。
ふと彼女と目が合う。
俺達はこれまでにないくらい顔を近づけていた。
顔に香澄の吐息がかかる。
やがて俺達はどちらともなく瞳を閉じる。
そして唇を―
「姉ちゃーん?」
突然良太が部屋のドアをノックしてきた。
慌てて音もなく離れる俺達。
「なななななななななななな何の用!?」
「・・・さっき姉ちゃんの部屋の方から凄い音がしたんだけど・・・。」
「気のせいよ気のせい!」
「・・・そう?」
「そうなの!」
「・・・分かった・・・。」
いまいち納得がいかなかった様だがそれ以上は何も言わずに良太は退散した。
再び向き直る俺達。
だが先ほど良太のせいで二人とも素に戻ってしまい、
とてもじゃないがさっきの続きなど出来る空気ではなくなっていた。
「・・・じゃ、おやすみ・・・。」
「・・・うん・・・。」
名残惜しいが俺は香澄の部屋の窓を開け自分の部屋に戻り―
「達也!」
「ん?」
呼びかけに反応し、俺が窓から顔を出すと香澄も部屋の窓から身を乗り出し
いきなり俺の頬に手を添えて目を閉じ、
―唇を重ねてきた。
「――――!?」
突然のキスに俺は面食ってしまう。
それはただ唇を重ねるだけのキスなのに、何故かその時間がとても長く感じた。
唇を離した香澄の顔は今までで一番赤く染まっていた。
「ほ、本日は・・・、どうもありがとうございました!」
彼女はお辞儀をすると勢いよく窓を閉めた。
俺は・・・、それをただ呆然と見ているしかできなかった。
朝の雰囲気によく似合う小さな小鳥の囀りが耳に入ってくる。
いつもなら爽やかな目覚めに気分がよくなるところだが
あいにく寝不足でご機嫌斜めな俺にとっては騒音にしか聞こえない。
・・・ていうか全然寝れなかった・・・。
ふと唇に手をあててみる。
そこにはあの窓越しのキスの感触がまだ残っていた。
・・・気持ちよかったなあ。あのときのキス・・・。
いやおちけつもといおちつけ俺。相手は香澄だぞ。
ずっと顔付き合わせているのに何を今更。
ずっと・・・。
――ずっと・・・、待ってたんだよ・・・。――
昨日の香澄の言葉をつい思い出してしまう。
いかん。ダメだ。どうしても顔が・・・。
こんな調子でこれから先大丈夫なのか俺。
途端に不安になってきた。
「達也。」
「うおっ!?」
不意に窓の方から香澄の声が聞こえる。
「寝てた?」
混乱しながらも俺は返事を返す。
「いやもう起きてるけど!準備まだだからもうちょっと待って!」
「じゃあ先に玄関で待ってるね・・・。」
それだけ言うと、香澄の気配が遠ざかっていった。
・・・。
まああれこれ考えていても仕方ない。なるようになる。ケセラセラ。
俺はそう思い直すとパジャマを脱ぎ捨て制服に着替え始めた。
「あ・・・。」
登校の準備を終え玄関のドアを開けるとそこには制服姿の香澄がいた。
「お、おはよう・・・。」
「うん、おはよう・・・。」
二人とも最低限の挨拶を交わすが、思わず目をそらしてしまう。
そんな状況がしばらく続き、やがてどちらとも無く通学路を歩き始めた。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
無言のまま時間と風景だけが通り過ぎていく。
お互いがお互いを意識してうまく声をかけることが出来ない。
そんな状況が続く。
しばらくすると達也が私の手を取ってきた。
「あ・・・。」
私は少し驚く。
が、すぐに彼の手を握り返した。
お互いの手の感触と暖かさが伝わっていく。
思わず俺は手に少し力を入れてしまう。
ふと彼女と目が合うが、照れくさくなってどちらとも無く目をそらす。
でも、つないだ手は決して離さなかった。
まあその後友人連中に会うとき手を離すのをうっかり忘れてからかわれもしたが・・・。
――俺達は今日、幼馴染みから恋人同士になった。――
以上です。
かなりの長文ですが暇なときにでも見てやって下さい。
以上です。
かなりの長文ですが暇なときにでも見てやって下さい。
二重投稿スミマセン・・・_| ̄|○
神来まくり。
このスレ凄いなオイ。
妹と弟も良さげですな。
1話目から恋人モード突入ということは〜
今後は濃ゆいらぶえろが期待できますかムッハー
423氏GJ!!毎度ながらすごいです。
まあ、反面自分に鬱になりますが・・・orz
しかし、比べても仕方ないのではりきっていこうと思います。
翌日も、僕はもみじと図書館にいた。向かいの彼女は白のブラ
ウスに黒のミニスカートと、僕には少し不思議な感じがして、何か
引き込まれそうな気がした。
(いずれにしても・・・)
二次方程式とにらめっこしてるより、もみじを眺めていたほうが楽しいわけで。
「美秋くん。」
と、控えめにもみじが言う。
「だめだよ?・・・ぼーっとしてちゃ。」
彼女がうつむき気味なのは、やっぱり、僕の視線に気付いたからで、そりゃ、こんな近くで見つめてれば気付かれないわけなくて、今更ながら、僕のほうも赤くなる。
「えーと・・・」
ま、いいか。
「お昼にしよう、もみじ。」
僕はずっと前から考えていた。もみじに僕の思いを伝える方法を。
だけど、もみじと僕は、自分で考えていた以上に近すぎて、お互いに、想いはほとんど通じていた。
でも、あまりにも中途半端で、便利で、だけど不便で。
それでも、僕はもみじのこと好きだし、やっぱり、繋ぎとめたいと思う。それに・・・
「あ、いや、それが目的じゃないよ!?いや、そりゃ、僕も男だしさ!」
「・・・美秋くん?」
うあ。もみじに不審がられる。ああ、レストランでトリップしちゃった。
まあ、いつまでもこんな調子じゃあまともに生活できないしね。もみじのことを意識しすぎる。
「あ、いや、なんでもないなんでもない。」
「・・・美秋くん、なんでもない、って言葉はね、何かあるときにしかでてこないんだよ?」
そのとおりです。いや、まあ、とりあえず置いとこうじゃないか。
「いや、まあ、また後でね。ほら、料理もきたしさ。」
まだ納得できないといった眼差しを流しつつ、ぼくのお昼を受け取る。ないすたいみんぐ。
(カルボナーラ灰吹き職人風って・・・)
意味かぶってるよね?というどーでもいい感想を抱きつつ、食べる。甘くて、塩味で、僕が好きな味。
でも、今日はそんなものには集中しない、昨日の決意を、もみじに伝えよう。
「ねえ、もみじ。」
僕に視線を向ける。くわえたフォークがちょっとかわいい。
「旅行に行かない?夏休み、二人で。」
!?リアルタイム執筆!?
驚きつつ支援
・・・すっかり暗くなっちゃった。今日もバス停で二人別れて家路に。
「美秋くん・・・」
今日、彼が私にした提案。泊まりで海に旅行。ふつーに考えて、恋人でもない男女が二人で旅行なんて、と思う。
お昼のことを思い出す。
「旅行に行かない?夏休み、二人で。」
「え?」
聞き違い、と思った。
「いや、そのまんまの意味。二人で、海とか、・・・どうかな?」
唐突、と思ったけど、美秋くんの瞳が、真剣だった。私の好きな、美秋くん。本気のお誘い。
断る理由なんて、ないじゃない。
「美秋くん・・・。」
彼の目を見つめすぎた。ちょっと照れる。一回逸らして、私も、真剣に返す。
「うん。お願い。私を海に連れてって!」
ひゃあー・・・。思い出しちゃった。彼の、私だけにむけるあの眼差し。それに・・・
(美秋くんと、二人で旅行・・・。お泊り、二人きり。ってことは・・・)
「ひあっ!違うの!これは違うの!ふにゃ!ひゃあーー!」
胸が高鳴る。体中が熱い。止められない。
「美秋くん!美秋くん・・・美秋くん!」
恥ずかしくて、家まで全力疾走。はたから見れば、多分危ない人かもしれない。でも、それでもいい。
「ただいま!」
今日もまっすぐ私の部屋へ。ベッドに入って、くまを抱く。
「うにゃぁ・・・美秋くん、よしあきくん・・・」
くまを抱いてのたうちまわる。あー、もうくまじゃ足りないよ・・・。
まだ、彼は抱けないから、代わりに、今日も、わたしを抱こう。
「美秋くん・・・」
でへへと笑う。早く旅行に行きたい。そう思うよね?美秋くん・・・。
鍵を開けて我が家へ。今日は疲れた・・・。
レストランで旅行の約束をした後、一日中、僕の腕にはもみじがひっついていた。
彼女のぬくもり、彼女のやわらかさ・・・。もう、今日はそれしか思い出せない。
そんな仲なら、もう告白してもいいんじゃないか?それは、ずっと考えていた。
だけど、もみじと、そういう仲になるんだったら、相応の場所っていうか、シチュエーションを整えておきたい。
馬鹿にされるかもしれないけど、そう思う。
「だってなあ・・・」
考えてみる。今日だって、客観的にみれば充分デート、と呼べるだろう。
だけど、僕にはそう思えない。たぶん、もみじにも。そんな日常で告白ってのもなあ・・・。
11時のお茶の時間にクリスマスケーキを持ち出すくらい不自然だ。
とりあえず、母さんに旅行だけは報告。相手は伏せるけど。これ、当然。・・・なのになあ。
母さんと晩ご飯。二人だけの食卓。寂しいとは思うけど、不満は全然ない。
「母さん。」
呼びかける、いつもどおり、顔を向ける。よし、不自然じゃなくするんだ。嘘を言わなきゃOKだ、美秋!
「夏休み、親しいやつらと旅行に行こうと思うんだ、一泊で。お金は僕のバイトの分で。」
少し嘘が混じった。ま、これくらいなら平気だろう。
「ふぅん、まあ、あんたももう高校生だしね。せいぜい楽しんできな。」
心なしか寂しそうだけど、まあ、作戦成功。ばっちおっけー。やったね。
その後は、いつもどおり母子で談笑。絶対に言わないけど、母さんはもみじの次に好きだから。
『trrrr・・・』
そんなひと時を壊す電話の音。電話に出る母さん。
「藤野ですが・・・、あぁ、かえで姉さん?どうしたの?」
僕の作戦も潰えたことを知る。
「え?なに?もみじちゃんが美秋と旅行?そうなのー、え?よろしく?こっちこそよろしくよ、もう、いろいろとね」
その夜は、母さんの質問攻めで眠れなかった。僕の、バカ・・・。
もう少し続くです。なんとか、がんばりますのでこれからもよろしくです。
では!ノシ
親公認だw
GJ!
公認でできるのか羨ましいw
続きも期待してますがんがってください。
少々長いですが49のラストです。
クル━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
>>101続き
そうして、抱きしめられているのは心地がよかった。
ずっとこうしていてもいい気がする。
時折撫でられる手があたたかくて優しくて、本当にそう思った。
…肌も熱かった。
それでもというのかそれだからというのが正しいのか分からないけれど、
やっぱりずっとそうしているわけにはいかなくなった。
お互いのにおい混じった中で呼吸を聴いているとどちらともなく身体が熱くなってくる。
ゆっくりと心拍数もさっきのようにはやまりだした。
髪を梳いていたのを移動するままに肩に触れさせておいて、抱き返して、
どちらともなくうっすらとそういう空気を持て余す。
幼馴染が先に、腕を緩めて深く息をついた。
ちょっと待ってて、と言うので身を離し、彼が同じように
何も着なくなるまでなんとなく俯いて待った。
鼓動が肌の中から湿り気のある部屋を打っている。
少しだけ怖くなる。
正確には始めてから随分経っているのだけれど、
それでもすぐするとなると心の準備が足りなかった。
髪がさらりと流れて視界が変わって、触れられていると知った。
それから、僅かに強張る。
目が離せなくなって、戸惑った。
……だって、無理じゃないんだろうか。
考えながら、でも髪が撫でられるのは心地よかったので、重ねられる唇におそるおそる応えた。
数分振りに、腿の上を骨ばった感触がなぞりだしたのでまた体温が緩やかに上昇し始めてくる。
ゆっくりめの動きなので落ち着いてきて、深い息を間近で交わした。
唇の合間で呼ばれた声が知っている声ではなかった。
触れていた部分が熱くなって脳髄が灼ける。
睫毛を浮かせる。
視線を伏せて私から重ねて、舌を差し込む。
イトくんが薄く開いていた目を閉じて応えてきたので深めに貪りあった。
抱き寄せられて、今度は直接に硬いものに臍の辺りが触れたので腰が震えた。
「っ、…ぁ」
「やめたい?」
気遣うように、髪を掻き遣られたけれどそんな顔を見てはどうしようもなかった。
そんなに心配してくれなくてもいい。
切なくなって首を振った。
そして唇を求めた。
しばらくキスされてから、顔を窺われつつ指が直接に脚の間をなぞった。
背中が勝手に折り曲がって脚が閉じる。
「あ…は」
数回往復されるだけなのに、段々溢れる温水が多くなってきて目が潤んできて熱くなりだす。
伏せて霞んだ視界にうつるものが、どうしても気になって無意識に視線が固定された。
緩慢な刺激に震えながら、荒い呼吸を飲み込んで肩の手を下げていく。
怖いのに気になるものを、おそるおそる触った。
かすかに反応したので手のひらが脇の方へずれる。
イトくんが動きと呼吸を一泊遅れて止めた。
私を弄る感触もそれでずれたので声帯が痙攣して喘いだ。
それ以上動けなくて、しばらく落ち着くまでただ身体を預けて息を殺した。
時計の針が風にかかった。
髪が擦れて頭を抱えられる。
風邪を引いたような掠れ声が耳元で、弱く囁いてきたので呼吸が震えた。
言われたとおりに手のひらで包んでみると温かい重みを感じた。
耳の上に彼の鼻先が埋まって、かかる吐息の熱さに急きたてられて伝染する。
イトくんがこういう風になっているのは、私のせいならどうしても嬉しい。
「こう?」
「…ん。そう」
ぎこちなく指先で覆って、ゆっくり扱くと抱きしめる力が強くなって髪にかかる息が荒くなった。
ゆっくりと彼の手もまた探るのを再開したので埋めた額に汗が滲んだ。
あまり弄り合いは長くも強くも続けられなかった。
でも気持ちよくて泣きそうに熱が全身に満ちた。
呼吸が荒くて水音がする。
雨の音だけではなかった。
押し殺した吐息が聴覚を押す力が強くなりだして室温がいつの間にか先程よりも上昇しているのか
汗でお互いに抱き合いにくくて思い出したように舌を触れ合わせては離した。
何をしているのか多分良く分かってはいなかった。
手の中の反応が身のうちを熱く波打たせることだけは分かった。
耳にかかる息に上擦った声が何度か混じるのが無性に脈を満たしてきた。
名前を囁いて、少しでも触れたくて身体を寄せて唇を下手だったけれど肌に落としてもう一度呼んだ。
イトくんが先にやめた。
脚の奥から手が抜けて、肩にかかる。
何か止めようとされたのだろうけれど気付くのが遅れた。
手を離す間がなかった。
肩と頭に回された長い腕が震えて、無意識のように力がひどく強くなった。
手の中の熱が脈打って温かいなにかが肌にかかって伝った。
耳元で深い呼吸がしばらく、髪を浮かせて背の力がぐったりと緩まる。
謝罪が弱く聞こえたので顔をずらした。
顔が見えないので諦めて、抱き寄せている汗ばんだ肩に頬を預けた。
腕を背に回すと自然と溜息が穏やかになる。
でも少しだけ不安だったので一応聞いた。
「嫌じゃなかった?」
「…何を言うかな」
頭上の重みが、苦笑気味に脱力する。
掻き乱れた髪を撫でつけられながら、呼ばれる声が優しかった。
「よかった。ありがとう」
「どういたしまして…」
変な会話をしているような気がする。
背中の腕が緩んでほどけて、身体が離れた。
傍の机からティッシュを取ってきて拭いてくれたのがあたたかくて、ぼんやりと膝元を見ていた。
タオルを用意しておけばよかったなあと少しずれたことをぼんやりと思っていると、
あたたかい指先がもう一度肩を引き寄せ、短く唇が触れてきたので目を閉じた。
手が当たり前のように滑って、彼の背に回った。
初めてしてからの回数を今日だけで超えているような気もする。
膝上に緩々と体温が辿って薄目が開いた。
溜息が彼の肩を湿らせる。
入り口を探すように温水を掻き分けられる間、喉に伝う舌を感じて肘の先が甘さに蕩けた。
それから、かすかな異物感に喘いだ。
指を僅かに差し込まれて、弱く動かされる。
浅い動きなのででしばらくすると慣れてきたような気がして、縋りつく手を、僅かに緩めた。
何度か往復されると異物が抜けて、首にかかる息が熱さを増した。
鎖骨の下から、しばらく胸の周辺に舌が這ってそれから、もっと下まで感触が移った。
自然と回していた腕が外れて、身体を支える。
どこか痛いような気もしたけれどそんな感覚がこの甘さとどう違うのかなんて分からなかった。
さっきあげた分までが還ってくるみたいな緩やかな感覚に意識を浸して目を瞑った。
時折イトくんが呼んでくれる声は知らない声で、でもそのたびに足指までが鼓膜を通してじんと痺れる。
ざらつくぬめりが辿るたびに喉が汗ばんで切ない息がこぼれた。
脚のあたりを吸われると腰が弱々しく震えた。
首が反ってどうしようもなくて上半身がシーツに埋まった。
耳の端に枕を感じる。
身体を撫ぜる手が今は背中の下にあって、視界が暗くて上半身がないみたいな気さえする。
濡れた熱い場所に、柔らかくてそうでない肉が、不意にきた。
舐められていると気づくには一瞬で熱くなって飛んだ意識が波打ちすぎていた。
「っ――」
強い感覚が足先から背中まで通り抜けてはまた送り込まれ、
跳ねる脚を抑える手の力が強くなる。
下半身だけが言うことを聞かないで勝手に浮く。
まぶたが自然に持ち上がってその光景を見て涙が滲んだ。
でも溢れるあたたかいのを舌先ですくわれて一箇所に擦り付けられて完全に理性が飛んだ。
繰り返される。
苦しかった吐息が泣き声になった。
「あ、あ…っ、や」
全身がねだるように勝手に動いているのにも気づかなくて、ただ耐え切れなくて枕を引き寄せて抱いた。
こんな風に動けるなんて知らなかったほどに激しく背中がのたうつ。
視界が涙で霞んで声が声にならない。
逃げられないまま繰り返されて自分の吐息が更に変わった。
僅かに唇が腰より上の方に移動した。
数度表面だけを往復されてから、また指が入ってくる。
入ったときの感覚がさっきと違った。
中と往復されても変な感覚で背中が痺れて腰ががくがくと震える。
感触が胸の方にもあって、先の方を舐められているので何も言えない。
天井が見えなかった。
膝頭にあたるものがまた硬くなっていて熱くて、
それが入るのかと思うとなぜか心が震えてくる。
肺の奥から何かが溢れてそれで一気に流された。
先程よりは小さく、でも充分に体積のある波が脳の芯までを痺れさせてすべてを満たしてすべてを止めた。
指をそこが勝手に締め付けて、脈打つように時折痙攣する。
それからゆっくりと、全身から力が抜けて滲んでいた涙が目尻で集まって薄く流れた。
「………ぁ…あ、は」
指が抜けて、上にあった体重がなくなった。
息が苦しいので、酸素を求めて乾いた喉に唾液を無意識に飲みながら張り付く髪を感じ天井を仰いだ。
今何時だろうと秒針が意識を掠めたのでとりとめもなくそちらに漂う。
イトくんはどうしたのだろう、と、思い至った頃には、また影ができて頬に優しい大きな手が乗せられた。
あたたかかった。
荒い息が僅かにでも落ち着いてくれる。
イトくんの手のひらがどれだけ大切かなんてきっと自分でも分かってはいない。
影が頭上に伸びて顔が近付き、前髪が擦れ合う。
様子が違うのでどうしたのかと視線を浮かせた。
頬の手が肩に移って眼を伏せられる。
…それからイトくんらしくなく、
ぎこちなさを伴って唇を重ねてきたので分かった。
手の下で肩がほんの僅か強張って、睫毛がなにかで滲む。
でもなぜか私ではないみたいな柔らかさが喉からせりあがって声になった。
「イトくん」
「ゆっくりするけど、辛いならやめるから」
遮るようにしてまた呼んだ。
最初に誤解したのはいつだったかなんてはっきりと思い出すことはなく、
一生こう呼んでいるかなんて想像もつかない。
だけど私にとっては、幼い頃からずっとずっと、
「イトくん」
「…ん?」
三度目の呼びかけに僅かに瞳を和らげて、幼馴染は私の上で促すように応えた。
ずっとこの人は大切な人だ。
―どんな意味をもって大切なのかが、少し変わっただけのことでしかないのだろう。
イトくんがしばらく黙ってから穏やかに頬を撫でて、優しく笑った。
「いい?」
「うん」
伝わっているのかいないのかよく分からない。
どちらでもよかった。
もう一度唇を触れ合わせて、何度かやり直しながら、
吐息を混じり合わせて抱き合ってやっと少しだけ入れられた。
本当に痛くて、進むにつれて反射作用なのかなんなのか勝手に涙が溢れて流れた。
汗がその上に落ちるので、背中に回した手のひらを僅かに緩めて見上げると、同じように見られていた。
視線につられて泣きそうになった。
もう涙が出ているけれど別の意味で溢れて滲む。
胸が熱くなってまた腕を寄せた。
それから続けた。
時折苦しげに漏れる息が髪にかかって、そこにさっきのような蜜を感じて心が波打つ。
痛くて苦しくても辛くは全然なかった。
言われるまで入ったことが分からなかった。
よく分からない。
全身が麻痺しているのでどこまででも同じような気がする。
ただ肺が圧迫されるみたいに呼吸が苦しかった。
朦朧としたまま涙を拭われ唇を重ねられてそのあたたかさだけに意識を沈めた。
撫でられるのが気持ちいい。
「ひーこ」
優しい響きが身体の奥までしみたので薄目を開けた。
そうして頬に触れた唇が離れて、間近で幼馴染の顔が覗いた。
「痛い?」
「うん…」
「ごめん」
唇が気遣わしげに何度か顔に触れて、荒い息が湿り気を帯びて前髪を額の脇で揺らした。
くすぐったかった。
嬉しいけれど、イトくんは心配性だ。
異物感の隙間を縫うようにして呟く。
「一生痛いわけじゃないから大丈夫だよ」
「……相…変わらず、すごいこと言うなぁ」
何がおかしいのか耳元で笑われて圧し掛かる重みがかすかに増した。
それも痛くて腕が強張るけれど、少しするとそれにもなんとか慣れる。
肩越しに、天井の薄暗いしみを見上げているとささやかな雨が窓を打つのに鼓膜が静まる。
髪の脇にかかる息の不規則さが変にあたたかくてぼんやりした。
でもすぐに、動いていいか聞かれて、頷いたので続きがあった。
正直痛くてよく憶えていない。
あまり長くもなかった。
軋んだベッドと、薄く混じり合う声と、
汗のにおいや滑るのに絡めた指とか、あとはやっぱり痛かった。
記憶はとても薄くてでも身体の奥にまでその温みは残っている。
後はイトくんの目を憶えている。
休みになった平日の午後は、窓の外で雨が降り続いていた。
秋の風は肌に涼しいはずなのに汗がこぼれてお互いの肌より熱いものを知らなかった。
終わってから、どちらともなくまどろんで、毛布もかけないでうとうとと寝た。
最低限のことしか始末もしないでそうしたのでシーツは居心地がいいとはいえなかったけれども、
イトくんがとろとろと謝るか謝らないかのうちに腕を回して先に寝てしまったので、私も眼を閉じてしばらく意識を鎮めた。
誰かと寝るのは物心ついてから初めてだ。
それはあたたかくて、浅くても柔らかい眠りだった。
薄目を開けると細い淡い光が、床に落ちていた。
間近で寝息を立てる気配が近く、脈拍が僅かにはやまって血液を流す。
隣を起こさないようにしてそっと肩から腕を外し、起き上がって時計を見た。
四時前だった。
髪が乱れていたのでなんとなく撫でつけて深い息をひとつつく。
裸のままではやっぱり涼しくて寒い。
とりあえず服だけ着て後でシャワーを浴びよう。
脇にたたんであった服を持ち上げてのろのろと着て、カーテンに手をかけた。
上手く立てないので傍の椅子に腰を落とす。
風邪を引かないか少し心配だったのでかけた毛布の下で、幼馴染が僅かに身じろぐ。
雨音がしていないことにふと気付いて、もう一度ゆっくりと窓を眺めた。
…雲が吹き散れて鳥が飛んでいた。
膝上の指先に何かが触れた。
―薄目を開けた幼馴染の毛布から出た指先が私のものに緩く絡んでいた。
汗の名残から脈が伝わり、指を絡めあいながら屈んで覗く。
私は幼馴染の名前を呼んだ。
ちり紙交換のテープが緩やかにどこかで聞こえている。
彼が私にゆっくりと焦点を合わせて、穏やかに目を細めてそれから笑った。
少し気恥ずかしいけれど穏やかな響きが嬉しくて笑み返す。
「身体、平気かい」
「…うん。大丈夫」
手のあたたかさはきっとその時々で多くの意味に変わるだろう。
イトくんの表情を忘れないだろう。
私もとても、同じような顔をしている気がして仕方ないのだけれども。
しばらくそうして手を繋いだままで何も言わずにいると、ぽつりとイトくんが呟いた。
「…おなかすいたなぁ」
「すいたね」
確かにすいていたけれど、いきなりそうくるとは思わなかったので苦笑気味に溜息が出た。
とにかくシャワーを浴びよう。
確かお母さんがコンビニで何かを買っておいてくれたはずだからそれから、少し遅めの昼にしよう。
それから勉強をしようか。
話でもしようか。
今から散歩に二人で行くのもいいけれど、正直歩くのは辛いのでそれは困る。
まあでも。
どうするかは、二人で考えることにしよう。
◇
――これが十七の時だった。
もうひとつ、憶えているのは今のような空に澄んだ青と雲。
雨の上がった受験生の秋の、あたたかくて何にも替えがたい、思い出だ。
では続きは時間ができましたらまた。
⊂⌒~⊃*。Д。)⊃
平日の昼間っからキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
243氏GJ!萌え転がったぜ!!
殺せ!いっそ一思いに殺ってくれ⊂⌒~⊃*。Д。)⊃
しかしラストの引きが気になる
うわ、やべ、悶々としてきた
GJ過ぎてもう体がもちません!!
前戯の部分だけで既にビソビソだった。
SIEG EROS!! SIEG EROS!!!
一応一区切りついたということなのかな。お疲れ様でした。
キタ━━━(・∀・)━━━!!
うひょー。可愛いな。好きだなぁ、こういうの。
まだ続くんだ…
何か終わるっぽかったのは気のせいか
残念。
淡々とした語り口調がなんともエロスですな・・・
ゴッドジョブであります。
さて、このあとどう続くのだろう?
243氏は神などではない!人だ! と言ってみる
初めて、人が神を超えた瞬間を見た……
>>173 いま気付いた・・・。243氏申し訳ない・・・。orz
は、ともかくGJ!です。文章力の差ですなー。
続きも期待しております。私はまだです・・・。
ファミレスを出ると予想通り雨は強くなっていた。
「雨、結構強いね」
果林が呟く。
「だな。悪い、傘入れてくれ」
「貸し一つね?」
「俺は待たされたうえに買い物付き合って、荷物持ちまでやってるんだが」
むしろ感謝されてもいいくらいだと思う。
「うわ、ケチくさ」
「あのなぁ」
「冗談だよ」
小さく果林が笑う。
どこまで冗談なんだか分かりゃしねぇ。
「傘、ちっちゃいけど。いいよね?」
「仕方ないだろ」
折り畳み傘の大きさなんてたかがしれてるし。
「取り敢えず、途中でコンビニ寄ってくれ」
「え、なんで?」
「ビニーそういうこと」
「このままだと二人とも濡れちまうからな」
「うん。そうだね」
果林が傘を開く。思ったより大きい。
これならくっつきゃそんなには濡れないかも知れねぇけど。
密着なんかしたら照れるよな、お互い。
「じゃあ、傘持って」
「俺は手塞がってるぞ?」
「だって洋の方が背高いし。頭を傘にぶつけたいなら話は別だけど」
「分かった。その代わりこれはお前が持て」
紙袋を果林に手渡す。
「えー」
「買ったばっかの服、濡らしたいのか?」
「しょうがないなぁ」
渋々、といった様子で果林が了承する。
198 :
箸休め:2005/03/30(水) 01:14:45 ID:Njwj1gAA
「それじゃ、帰るか」
「うん」
二人並んで、歩き出す。
傍目には恋人同士に見えてるんだろうか。服屋の店員と同じように。
少なくとも俺が見たらカップルだと思うだろうが。
「……ねぇ」
果林が囁くように話しかけてくる。
「ん?」
「私達さ、友達には見えないよね?」
コイツ、似たようなこと考えてたのか。
まぁ、この状況だし当然かもしれない。
「だろうな」
「そうじゃないのにね」
「まぁ別にいいだろ」
他人の目を気にしてたら、俺は傘に入ってられねぇし。
「ん。そうだね」
ガキの頃もこうやって二人で帰ったことがあった。
その時はまわりにからかわれたりもした。
それが恥ずかしかったし、ムキになったりもした。
今は、そんなことがあるわけじゃない。
就職して、働き始めたら多分一緒にいる時間も減る。今以上に。
だから二人でこうしている時間は、大事にしたい。そう思う。
果林は、どうなんだろうな。気にならないと言えば嘘になる。
「どうしたの?」
不意に、聞き慣れた果林の声がかかる。
「なにがだ?」
「黙っちゃってさ」
「何でもねぇよ」
「そ。別にいいけど」
お互いに小さい笑みがこぼれる。気にしてもどうしようもねぇか。
199 :
箸休め:2005/03/30(水) 01:18:04 ID:Njwj1gAA
「コンビニ、どの辺にあったっけ?」
適当な質問を果林に投げ掛ける。
「この辺だと……もうちょっと行ったところにあった筈だけど」
「そうか」
ゆったりと時間が流れている気がする。悪くない。
お互いに変わらないわけが無い。でも、変化は最小限でいい。
そう。これでいいんだ、きっと。
買い物の帰り道。いつもとなにか変わるわけでもなく。
果林と一緒に、場所も分からないコンビニに向かって歩く。
そんな三月の末。桜は……まだ咲いていなかった。
──────
すいません、まだ続きます。
箸休めの分際で。
GJ!ガンガン続けちゃってください。
@@@@@@@@@@@
西山馳村の2丁目3番地あたりでは平日の朝7時15分にニワトリのような正確さで毎朝一定の騒ぎが起こる。
「ゆう!!起きた!?」
ガラリ。と窓が空く音と同時に朝っぱらからテンションの高い声が聞こえてくると
歯を磨いていた蜂須賀優太は同じように洗面所の窓を開けて
「起きてる!」
と声を返した。
最近伸びるようになってきた髭を剃る為にワシャワシャとシェービングクリームを顔に塗りたくる。
私達の両親が結婚する時に村が援助したからという理由で
蜂須賀優太と鈴木伊夏の家は間取りから何から似通っている。
いっぺんに建てちまえと言う理由で村の人間が建てた家なのだから当たり前ではある。
よって鈴木家の洗面所と風呂場と蜂須賀家の洗面所と風呂場は窓を隔てて1Mの距離であり、
毎朝7時15分に伊夏は髪を梳かしながら洗面所の窓を開けて優太を良く通る声で呼ぶ事になっている訳だ。
確かそれが始まったのは小学校一年生の頃だった。とゾリゾリと剃刀を動かしながら蜂須賀優太は思った。
いい加減あんたも一人で起きなさいと小学校入学と同時に母に言われたものの中々起きられなくて
しょっちゅう伊夏は一人で先に学校に行く羽目になっていた。
最初のうち幼かった伊夏は我慢していたが、
一人で学校に行かなければならない事が月に5回を超えるようになった頃、
一つの方法を思いつき実践するようになり、そして学習した。
自分と一緒に学校に行くべき隣人の人間の家は隣であり、
自分が起きた後に「ゆう!起きた!?」と窓越しに声をかければ目を覚ますのだと。
それから10年とちょっと。
当初はこの声の掛け合いもすぐに終わるだろうと考えていた両家の家族の予想は裏切られる事となる。
もはや優太は一人で起きており、特段その行為に意味は無いのだけれど。
どちらかと言うと2人とも特にやめる理由も無いということでこの呼びかけはなんだかんだと未だに毎朝繰り返されている。
「で、ゆうは宿題やった?」
鈴木家の窓の外からひょいとと顔を出した伊夏が声をかけてくる。
髪を梳いていた途中らしく、ピョコピョコとあちこちが飛び跳ねている。
「うわ、ヒゲなんて生えてるの?ゆう。」
シェービングクリームをつけた優太の顔を見て、ぐいぐいと寝癖を押さえつけながら伊夏は眉を顰めた。
「そりゃ生えるよ。髭くらい。」
うわー、伸ばさないでよね。と言いながら伊夏はもう一度、宿題やった?と聞いてきた。
窓枠から見える伊夏の上半身はブラウスのボタンが2つほど外れていて、制服のベストもまだ身に付けていない。
真っ白のブラウスときわどい位置まで除く胸元に目が行って、優太はついと目を逸らせた。
「やったよ。あってるかはわかんないけど。」
「えええええ!」
やったの・・・とガクリと肩を落とす。
「又やってないのか伊夏。」
苦手な教科は徹底してやらないという姿勢もここまでくればたいしたものだと優太は思う。
「だってわかんなかったし、窓見たらゆうはもう寝ちゃってるみたいだったし・・・」
ふう、と頭を上げて伊夏はしょうがないか。と言ってまた髪の毛を梳かし始めた。
「あ、遅れる!ゆうは準備できてる?」
「ああ。もう終わる。」
ざばざばと顔を洗う。
「じゃあ、5分後に玄関ね。」
伊夏はそう言って、洗面所の窓をバシン。と閉める。
窓の向こうからバタバタと離れていく足音とお父さんおはよ!というくぐもった声が聞こえてきた。
@@@@@@@@@@@
その頃、遠武部村ではのんびりとした空気が流れていた。
今日は珍しく紀久子の方から藤菜を迎えに来ている。
「紀久子、踵踏んでるよ。」
べっこりと踵の部分を踏み潰しているのを見つけて藤菜はそう紀久子に声をかける。
「藤ね。今日ね、お父さん達ゆうく達の所と会議があるんだって。」
紀久子の父は村会議員をやっている。もちろん両村には議員だけをやっている人間などいなく、
紀久子の父も本職は林業業者であり、会議がある日だけ仕事を早引けして議会に参加していた。
「へえ、珍しいね。何かあるのかな?」
藤菜は靴を履くためにとっとっと飛び跳ねてつま先を打ち付けていた紀久子に靴べらを渡しながら藤菜はそう聞いた。
「良く判んない。大事な話なんだって。でもね、お父さん私の顔見ながらお前は一つ年下だもんなって。」
「じゃあ、私達の事?何だろう?ね。」
最近どうも村ぐるみで色々なイベントをやるなどと言っていたから、その事かもしれない。と藤菜は思った。
此処の村の人たちは桜が咲いたとか暑くなってきただとか
色々な事を口実にしては学校や公民館に集まってワイワイと何かをやりたがる。
優太や伊夏はそういうのを億劫がるけれど、意外とそういうことも重要なんじゃないかな、
と藤菜は最近思うようになっていた。
藤菜と紀久子の家は隣同士だし、伊夏と優太の家は隣同士だ。
だからしょっちゅう会うし、普段は気づかないのだけれど基本的に村内の家と家との間は離れている。
学校が休みの日、少し出歩いても誰とも会わない事だってしょっちゅうだ。
都会の事はわからないけれど、そんな環境で村の人間達が相互に関わっていく為には
色々と口実をつけて集まる機会が必要なのかもしれない。
「ほら、リボンずれてる。」
髪を結んでいるリボンがずれているのを見つけて、紀久子の前にまわって藤菜はリボンを調えてやる。
肩に掛かるくらいの部分でフラフラと揺れているリボンを藤菜が弄ると、紀久子はギュッと目を閉じた。
色が白くってストレートの髪質で前髪が揃っていて、紀久子はお人形みたいだと藤菜は思う。
本人は背が伸びなくて小中学校の体操服を未だに着る事が出来たりすることを気に病んでいるのだけれど。
「赤いのも似合うね。紀久子。」
「似合う?」
つぶっていた目を開け、少し嬉しそうにしながら紀久子は言った。
本当に女の子だ。まあ、一つしか違わないのだけれど。
「うん。・・・と、髪の毛はコレでいいかな。」
ぽんぽんと頭をたたく藤菜を上目遣いで見上げながら紀久子はぽつりと言う。
「ゆうくも好きかな。こういうの。」
ゆっくりと紀久子が体を振ると、夏服のスカートが体の動きにあわせて揺れた。
時々、紀久子は藤菜がドキッとする位可愛い事を言う。
言葉にする前に考えて、考えてそれでも上手く言い表せない事が多くて。
家に帰って自己嫌悪に浸ることの多い藤菜は紀久子のそういう所を少し羨ましく思うことがあった。
何と答えていいか判らなくて、藤菜は紀久子の襟を直してやりながら少し考えた。
「ん、ばっちり。紀久子いこっ。」
結局聞こえなかった事にする。
「今日のお弁当はね。」
話を変えると最近料理に興味が出てきたらしい紀久子は食いついてきた。
空が高く見えて、今日は暑くなりそうだった。
2人は卵焼きの焼き方の話をしながら、とつとつと村境近くにある学校へ歩き出した。
@@@@@@@@@@@
伊夏と一緒に少し急いだからか、登校中の道はなんだか少し蒸し暑く感じた。
校門前の桜も全て散って、四方にしっかりと張った枝の先に青い蕾が付いているのが見える。
てくてくと伊夏と二人、校門に向う坂道を登っていくと向こうから見慣れた顔が歩いてくるのが目に入った。
「あ、藤菜ちゃんときっこだ。」
ぶんぶん。俺が声を出す前に早速隣にいる伊夏は既に大きく鞄を振っている。
「ね、藤菜宿題やった?」
近づいた途端宿題の有無を聞く伊夏。そんなに仲間が欲しいのだろうか。
「?やったよ。」
藤菜ちゃんがやっていない訳はないのに伊夏はよくそうやって巻き込もうとする。
「やっぱり・・・」
「伊夏ちゃん、やってないの?」
「聞かないでよ。全然わかんないし、ゆうはさっさと寝てるしさ。」
「え?伊夏は優太君と一緒に勉強してるの?」
驚いたように藤菜ちゃんは伊夏に聞いている。
「え?え、ええと。たまに、わかんないときとかね。ほら、部屋から呼べるし便利だし・・」
わたわたと勝手な事を言う。
優太は2人の会話を聞きながらぼうと校舎への道を歩く。
いつの間にか前を歩く2人の服は夏服一枚で、そのうち登下校中に汗をかくようになるのだろう。
そんな事を考えていたらふと、伊夏と話しながらこちらを見ている藤菜ちゃんと目が合った。
何?と目線を返すと藤菜ちゃんはすす、と近づいてきた。
前を向いて一人で喋っている伊夏は気づいていないみたいだった。
近づくと柑橘系っぽい藤菜ちゃんの匂いがふわりと鼻をくすぐる。
そのままそっと顔を近づけてきて、藤菜ちゃんは俺に耳打ちしてきた。
「優太君。紀久子にリボン似合ってるって言ってあげて。」
息が耳に掛かる。
え?と見返すと、藤菜ちゃんはにこっと笑って<お願い>という風に口を動かすと、唇に指を当てた。
藤菜ちゃんはくるりと伊夏の方に振り返って2人でまた話し出す。
少し不思議に思いながらいつの間にか左隣で歩いているきっこを振り返った。
宿題の話にも加われないきっこは、こつこつと石を蹴飛ばしながら校舎に向って歩いている。
「きっこ、赤いリボンなんだな。今日は。」
そのまんま言うのも芸がないのだけれど。前にまわってそう言ってやる。
確かに耳の間で揺れているその赤いリボンは藤菜ちゃんに言われずともとても似合ってはいた。
かわいいよ。なんて言ってあげられたら良いのだけれど。そんな度胸はない。
「・・・」
俯いたまま返事をせず。
あまり話さないし、物静かだけれど。紀久子は待ってあげればきちんと返事をする事を優太は今までの経験上判っていた。
紀久子は暫く考えた後に少し首を傾げ、上目遣いにこちらを見て。
「似合う?」
なんて聞いてきて、またこちらから視線を逸らせてしまった。
@@@@@@@@@@@
ドアには大きな文字で「重要会議中、立ち入り禁止」と書かれていた。
そしてその会議室の中ではまさに喧々諤々の議論が交わされている。
「ちょっと待て。我が村としては蜂須賀優太と鈴木伊夏。この線は既定路線だ。その路線を元に、遠武倍村に協力してもらいたい。」
西山馳村の助役が口から泡を飛ばす勢いで話す。
「冗談じゃない!それじゃあ西山馳ばかりが有利すぎる。」
到底承服できない。と遠武倍村の助役は机を叩いた。
長机の両端に座った村長2人は目を閉じて座り込んでいる。
「むしろ両村の団結を表す為にも桜岡藤菜と蜂須賀優太で押すべきだ。
桜岡の娘なら若いと言うだけでない落ち着きもある。見た目だって申し分ない。」
「最近乳も張ってきたしな。」
遠武倍村の助役の下品な冗談に面々が眉を潜める。
「まあ、そんなことはどうでもいいとして、はっきりと言わせてもらうが鈴木伊夏の健康的な雰囲気こそ相応しい。
見た目だって負けちゃいないし、子供の頃からの付き合いだ。桜岡藤菜はどちらかと言うと都会的過ぎる。」
「いんや。子供のときからの付き合いじゃ同じだ。桜岡の娘の方が似合いの夫婦になるさ。」
自信たっぷりに遠武倍村の議員が藤菜を推す。
「何を言っているんだ、鈴木んとこの娘じゃなきゃあこの企画の意図は伝わらない。
そんな考えだからおめえらはいつまでたっても田舎根性が抜けきらねえんだ。」
「何だと?もう一度言ってみろ。」
「お前は田舎者だと言ったんだ。」
「なんだテメエ、俺はこないだ東京行ってきたぞこのヤロウ。」
会議室を緊迫した空気が流れる。
「あの・・・」
そんな時、後ろの席から小さな声が掛かった。
「あの・・うちのなんかは、どうなんだろうか。話にのらねえもんなんかな。」
そんな中、後ろの席からおずおずと声をあげたのは議員になってまだ日が浅い瀬良武則だった。
言わずと知れた瀬良紀久子の父親である。
紀久子の父とは思えないほど顔面は髭に溢れ、チェーンソーを持ちなれた両腕は見事に張っている。
見事な肉体とそれに相反した気弱な性格なこの紀久子の父親の事を伊夏や優太達はこっそりと熊さんと呼んでいたりした。
「いや、あの喋らねえのが、最近は食事のたんびにゆうく、ゆうくて悪からず思っているようだから。」
こんなこと言うと、母ちゃんは怒るんだけど。と大きな肩を縮こめるようにしてそう言った。
「紀久子ちゃんか?紀久子ちゃんは一つ下だからなぁ。卒業と同時にがベストだからな。」
体も弱いみたいだし。と言った西山馳の議員を遠武倍村の議員が睨みつける。
「いんや、絵としては色白の紀久子ちゃんと優太君というのは見る人に新鮮に写るかもしれん。
優太君の卒業後、一年すれば瀬良も卒業。なんだかんだいって一つしか違わないんだからな。
優太君にはそれまで役場で色々と仕事を覚えてもらえばええ。体なんてのはすぐ丈夫になるもんだ。」
「おい、瀬良の。そんなことより紀久子ちゃんは料理の一つも出来んのか?」
瀬良武則の一言を切っ掛けにまた会議室は活気を取り戻した。
その様子を、一言も口を挟もうとせず、両村の村長はじっと見詰めている。
喧喧諤諤と議論を重ねる。廊下にはビールが山と詰まれていて、これから夕食と共に宴会が始まるのだ。
普段はいがみ合っているとは言え、有事の際にはこうやって良く集まる。
なんだかんだと言って皆仲は良いのだった。
全員が発言し議論が煮詰まった頃、西山馳村の村長はゆっくりと腰を上げ、話し始めた。
「皆、勘違いしているな。そもそも相手だなんだなんて言うのは我々が決める事じゃあない。」
「村の面子などどうでもよい。ワシ等がする事はこれからの農村のモデル的な家庭を全国に示す事だ。
地方の農村での生活をリアルに想像してもらう為のモデルケイス。村で育ち、村に根付いて生きていく、
そういう若者達の姿を全国に示さねばならん。その為に蜂須賀優太達に協力してもらえれば良い。とそういう話なんだからな。」
先走った議論は良くないな。とそう言ってぐるりと周りを見渡した。
遠武倍村の村長も声をあげる。
「重要なのはお互いの気持ちでもある。若者の気持ちを我々がどうしようだなんておこがましいことはできん。」
「でもあいつら以外に若者なんておらんし。」
自然と優太達を除けば最も年が若い西田に全員の視線が集まる。
「お、おれはもう理想の若夫婦なんてのは無理ですよ。」
「そんなこたあ判ってる。大体てめえのその顔じゃ無理だ。」
「何だとこの野郎。俺だって、俺だってなあ!」
怒号が上がった。
「まあまあ、無論我々は強制はしない。が、もし、若者達が結婚し村に残るようであれば村は支援を惜しまない。
我々はその若者達を両村上げて歓迎し、その代わりに少しPR活動を手伝ってもらおう。と、そういうこった。な。」
遠武倍村の議員の発言を手を振ってさえぎり、遠武倍村の村長は自慢のあご髭を弄りながらニヤリと薄く笑った。
「それにな。若者なんつうのは切っ掛けでもありゃあ磁石みてえにくっつくもんだ。なあ、西山馳の。」
「そうそう。わしらの若い頃もそうだった。もし事が成れば、理想的な若者と農村の関わりなんて話になってだな。
都会のマスコミなんかも取り上げてくれるかもしれんぞ。」
そうすればあれだ、農村に結婚に来る若い娘なんかが増えるかもしれんなあ。
村内政治にかけては日本有数のベテランでもある村長達は独身議員達の方をぐるりと見回してそう言うと、カカカと高笑いした。
---ゴロゴロ。
朝から晴れ渡っていた空が急に曇りだして空が鳴り出す。
少しひしゃげた教室の窓から顔を出しながら、蜂須賀優太は後ろで喋っている3人に声をかけた。
「雨降りそう。皆傘持ってきた?」
後ろの2人はゆっくりと首を振り、1人は無言で置き傘を取り出した。
---------------------------------------------------
>>129-133 感想ありがとうございます。
他の書き手の方と交互に書けてなんだか楽しいです。
では。
ノシ
リアルタイムでかっこいい村長キタ━(゚∀゚)━!!!!
ブリーダー村GJ。
(法的にはともかく実質的には)一夫多妻エンドを考えてしまった
ワシはもう穢れきっとる……。
保管庫に(かつて)あった、紐と輪(要英訳)みたいにマルチエンドにすれば
いいジャマイカと空気嫁無い発言してみるテスト。
きっこちゃんかあいいなあ。
職人様方おつかれさまです。
ご感想も本当にありがとうございます。区切りも付きました、これで終わりです。
>>184の続き。
最終回で、その50です。
三年が過ぎた。
・・・・その50
帰り道が一緒になってしまった。
地方国立大のキャンパスを出ると桜並木があって、その途中でばったりと会った。
背の高いその人は昔と変わらない顔で驚いたみたいに携帯から顔を上げた。
散りかけの桜が昼過ぎの青空に映えている。
「緋衣子。おまえ講義は?」
「休講だった」
呟いて並んで、交差点をなんとも言わずに二人で歩く。
まだ西にかかる雲は薄くて、日が高い。
「ふうん。花見でもしようか」
「なんで?」
「綺麗だし」
「うちから充分見えるじゃない」
私の住んでいるアパートは川沿いで、ちょうど桜が賑わって咲く。
去年も一昨年も、春は彼がしょっちゅう訪れて本を読みながら窓際にいた。
邪魔ではないからいいのだけれど。
「じゃあ緋衣子の家で花見をしよう。スーパーで団子を買っていけば」
嬉しそうなのでなんとなく肩を竦める。
相変わらずそういうことが好きな人だ。
そうして青い空を見る。
線路沿いに通学路はあって、小さな本屋があって幼馴染はそこに毎日寄って行く。
私は傍のベンチでぼんやりと待ったり、時には参考書を買ってみたり、
実験のレポートについて考え込んでみたりする。
陽射しがあたたかくて、海に電車一本で行けるせいだろうか雲の形は実家の方とはまた違っている。
それから幼馴染が漫画雑誌や文庫本を抱えて出てきて、電車が脇を通る。
大学は一緒ではないから一緒に帰る機会は多くない。
だからそれなりに嬉しかった。
まあ、家は近いけれど別の場所だから、一緒に帰るというのもおかしな話なのだけれども。
線路の響きが遠くに去って、踏切がどこかで上がる。
鍵に結んだ古い刺繍リボンはそろそろ寿命だ。
私は立ち止まって、道路を眺めた。
車の通りも少なくて地方都市の片隅なんてどこもたいして変わらない。
傍にいる人だって昔とそうは変わらないのだ。
ちらりと見上げて、同じく立ち止まった人の視線を受けて呼んだ。
「依斗くん」
「ん?」
「どうしてフランスに行ったの?」
風が弱く吹いて香りもしないのに海のようなはためきでスカートを揺らした。
依斗くんが瞬いてから肩を竦めて、歩き出す。
薄手のシャツは春の色だ。
斜め前で穏やかに聞きなれた声が笑みを含んで木々に溶ける。
「憶えてないよ」
「そうなの」
「うん。もっと早く聞いてくれないと」
「ふうん」
まあそういうものなのかもしれない。
記憶なんて結構、曖昧で薄くて、幼い頃のたくさんの出来事や約束や、
些細な会話なんてただの塵の様に積もっていく。
例えば文化祭の思い出だって鍵に結んだ古い刺繍のように褪せて、細かいことなんて忘れている。
だけれどいくつかのことは同時に、不思議なくらい忘れないものだ。
依斗くんが引き寄せてくれた腕の温みとか、夏の花火とか、
初めてが終わったあとの空の青さとか、そういうものを忘れない。
追いつきながら手を握る。
…手を握らないで歩く方が楽だったりするので、いつも握るわけではないのだけれど。
握り返しながら、当たり前のように歩調を緩めてくれるので心が和んで空を仰いだ。
「まあ、『夜間飛行』の作者がフランス人だったからかな」
「それは聞いたよもう」
「あとは好奇心かなあ」
呟くともう一度幼馴染は肩を竦めた。
そして懐かしそうに笑った。
…それも聞いたような気がする。
軽く溜息をつく。
それから絡められる指に応えて笑って、風に髪を押えた。
別方向から電車が通る。
あれに乗れば海に行けて、彼のお母さんのお墓に挨拶をすることができる。
春の天気は緩々と変化する。
空がゆっくりと午後から夕暮れになっていく。
いちいち語り合うこともない。
交わすのは他愛無いことばかりで、傍にいる以上の温みなんてあまりない。
イトくんが昔から好きだった本の作者のように言うなら、
あげつらう必要はなくて存在していればいいなにかは確かにある。
もっと違う言い方をするなら、例えば擦り切れかけているこのリボンのようなものだ。
十七の夏から秋に私がせっせと縫った模様そのものは大事ではなくて、
形として残っているのは、今もこの手にあるのは、綺麗なリボンひとつなのだ。
それがあるならよくて、細かい模様の縫い方なんていちいち憶えていなくてもいい。
だって何かを作るということは作っただけでは終わらなくて、
糸を結んで切った後はきっちり形が残って使われていくものなのだし。
それでも布が擦り切れくすむように、目に見える形は一生取っておくことが難しいと分かっている。
でも見えない。
一緒に帰りながら伝わるあたたかさは目には見えない。
だから残そうと思えば残していけるのだ。
大事に守れば擦り切れても物質みたいに消えることはない。
呼び方が変わっても、背の丈がほんの少し伸びても、それは小さな変化でしかない。
桜が吹く。
線路は春の色になった。
私は最近二十歳になった。
幼馴染は相変わらず身体が弱いけれど、前より風邪を引かなくなった。
返し忘れた古い写真は、今でも机の上で欧羅巴にいる。
写っている人は数年分成長してその隣で窓を眺めて嬉しそうにしている。
私は団子の包みを開けた。
窓から見える川はいつか唇を重ねた緑の土手へと桜をのせてくだっていくだろう。
終
ひーことイトくんの物語はこれで終わりです。
今まで感想をくれた方々をはじめ最後まで書くことを許してくださったスレの皆様に深い深い感謝を。
長い間本当にありがとうございました。
言い忘れた。
幼馴染ばんざい!
一番乗り乙
くはぁ〜っ!!たまりませぬ!! 一話目からずっと読ませて頂いておりました。
丁度引越しでネットからしばらく離れる直前にこの神作品の最終話を読めて感動です!!
243氏 GJ!!!!
そして幼馴染万歳!!
226 :
名無しさん@ピンキー:2005/03/31(木) 01:25:39 ID:s53epgYw
GJGJGJGJGJ!
幼馴染み万歳!
つーかスレに来てる神全員スゲェや!
みんな頑張れ。超頑張れ。
超絶乙
ほんとに
ほんとーに
知ってはいたが使い道の無かった英単語がここで使えそうだ。
インクレディブル。本当に、最高に素晴らしい。
特別な事なんか何も無い、只普通の日常を描いているだけなのに
いや、だからこそぎゅーっと心の底まで染み渡るような物語が読めて、本当に幸せです。
お疲れ様でした。お体に気をつけて。
おおおおGJ!
完結おめでとうございます。
◆3JdH7tKSnk氏もやたらと期待感高くて楽しみ!
243氏お疲れ様でした。
連載開始からずっと読んでましたけど、独特ですばらしい雰囲気の世界に
毎回浸らせていただいてました。
本当に毎回楽しませていただきました。
長い間お疲れ様でした。
God Job!!
243氏乙です!超乙です!!
思えばこの作品が楽しみでこのスレを追いかけてました。
完結まで立ち会えてとてもうれしいです。
幼馴染万歳!!!
243氏、完結おめでとうございます。
良い意味で私の予想は氏に裏切られました。
淡々と日常描写を積み重ね、人物の感情を丁寧に掬い上げる氏の文章は、
非常に自分の好みで一目で引き込まれました。
ですが『辞書』が投下され、その続きを願い連載がはじまってからも、
この手の文章で中だるみせず、文章の質の高さを保ったまま最後まで書き通す事が出来るのか疑問に思っていました。
最初から最後まで変わりませんでした。その繊細さも匂い立つ情緒も求心力も。
この一年近く本当に楽しませてもらいました。
ありがとう、そしてお疲れ様でした。
ログを紐解けば、遡る事約十ヶ月。
当初このスレは覗く程度の物でした。243氏の物語も斜め読みでした。
でも、いつの間にか毎日のようにスレを覗くようになって、いくつか稚拙な文も投下して。
気付いたら243氏の投下を心待ちにしていた自分がいました。
丁寧な描写、景色や雰囲気が浮かんでくるような文、細やかな心理の表現。
同じ物書き(自分はそのはしくれ)として、ただただ勉強になり、かつ記憶に残る物になりました。
連載お疲れ様でした、そしてありがとうございました。全五十話、残さずPCに保存したいと思います。
そして、触発されたので忙中ながらまた少し書いてみようかなと思ったり。
……そして田舎のお話がツボにきてしまった自分がいるw
>>215 心配せずとも、実は自分も(ry
何はともあれ、幼馴染み万歳!!!
243氏、長い間お疲れ様でした。私も「辞書」のときから楽しみにしていました。
触発されて今書いているわけですがなかなか大変で、改めて243氏はすごいな、
と感じています。
素晴らしい作品、ありがとうございました。
243様、本当におつかれさまでした。
ひーこさんとイトくんの物語、本当に楽しませていただきました。
繊細で優しい、涙が出るほどうつくしい文章に、いつも本当に感激していました。
またいつか、帰ってきてくださいね。
待っております。
それでは、神の御業を称えて、「幼馴染み万歳!」
夏の終わりからずっとロムってた。
終わったら感想書こうと決めてたので初めて書き込む。
243さん、おつかれ様でした
毎回すごい楽しみにしてました
ここで幼なじみ萌えに目覚めました。ありがとう
うに氏ってここでも書いてたのか知らんかった。
というか知っても別にうれしかないんだが。
>238
affair with a mouthのブログ見るとわかるよ。
>217
一年もの長期、連載お疲れ様でした。
もう一度読み返させてもらいます。
幼馴染み万歳!
◆3JdH7tKSnkに中の人はいません。
ご了解頂けると幸いです。ペコリ
ああ、本当だ
これ、あれだったのか
242 :
名無しさん@ピンキー:皇紀2665/04/01(金) 22:29:59 ID:LFvc6P1N
(´-`)。oO(自慢気に晒したところで迷惑考えないのかなぁ)
243様
遅ればせながら、完結お疲れ様でした。
毎回毎回続きを心待ちにしていたので読者の一人として完結は感無量です。
私もSS書きのはしくれですが、何気ない日常を読む人の興味を引くように書く
というのはかなりの文章力がないと出来ないことだと思います。
243様の、繊細な心理描写や状況描写はそれを美しい形で成し遂げていて、
読むたびに感心&感動させられました。
私が今、文章を書いているのも243様に影響を受けてのことです。
あなたは私の心の神様なので、これからも応援しています。
すばらしい萌えと感動をありがとうございました。
245 :
箸休め:2005/04/03(日) 00:18:29 ID:LyZI7lIx
朝。俺は携帯電話の着信音で目を覚ました。
「今……何時だ?」
時計に目をやる。午前七時。普段なら、まどろんでいる時間だ。
「誰だよ……こんな時間に……」
まだ半分以上眠った頭でサブディスプレイを覗き込む。
「……果林か」
無視しようか迷う。貴重な睡眠時間を削られたくねぇし。
ぐったりと身を起こして、目をこする。眠い。
……無視しよう。そう心に決めて、俺は布団をかぶりなおした。
それでもなお、携帯は無機質な着信音を鳴らし続ける。
まるで急かしているかのように。ちょっとした騒音だ。
「……しつけぇな」
これじゃあ寝るに寝れない。仕方なく、通話ボタンを押す。
「……もしもし」
「おはよ。寝てた?」
「寝てた。大学があるわけでもねぇし」
そもそも果林も普段はこんな時間に起きてない筈だ。
「で?なんの用だよ。こんな朝っぱらから」
あくびを噛み殺しながら聞いてみる。どうせ大した用もないんだろうが。
「んー。用って言うか」
用事すらねぇのかよ。
「お前、用もないのに電話してきたのか?貴重な睡眠時間をなんだと思って……」
「まぁほら、早起きは三文の得って言うし」
遮るように果林が口を挟む。完全に果林のペースだ。
246 :
箸休め:2005/04/03(日) 00:20:48 ID:LyZI7lIx
「早起きってほどの時間でもねぇだろ」
「細かいことは気にしないの。取り敢えず話くらい聞いてよ」
「話ってのは?」
「うん。あのさ……」
妙に神妙な声。
「私、洋のことが好き」
「…………は?」
「ずっと前から、好きだったよ」
一気に目が覚める。脈が有り得ないほど速い。
「何を……急に」
「急じゃない告白なんてないと思う」
「そりゃそうかも知れねぇけど」
訳が分からない。なんで告白なんだ?この間まで、そんな様子はなかったのに。
「……だから。洋はどうなんだろうって」
「どうって言われてもな……」
なんて答えりゃいいんだよ。「俺も好きだ」とでも答えればいいのか?
そういう問題じゃねぇよな。じゃあどういう問題だ?
くそ、混乱してる。もうなにがなにやら。
「……冗談だろ?」
やっとの思いで口に出した言葉がこれってのも情けない。大丈夫か俺。
247 :
箸休め:2005/04/03(日) 00:22:35 ID:LyZI7lIx
「うん」
あっさりと果林が肯定する。ちょっと待て、冗談ってオイ。
「洋、今日は何月何日?」
慌ててカレンダーを見る。四月一日。
まさか。まさかとは思うが。
「エイプリルフール……か?」
「そうだよ?」
「いや、つーか……お前」
「なに?」
「冗談にして良いことと悪いことがあるだろうが」
動揺はおさまった。取り敢えず。代わりに、空しさがこみあげてくる。
「さすがに信用できなくなるぞ。こんな嘘つかれたら」
「ごめんごめん」
けらけらと笑いながら果林が答える。
「頼むからガキっぽい嘘はやめてくれ」
「ん。そうだね」
「本当に分かってんのか?」
「分かってるって」
何で説教をしてるんだ俺は。苛ついてんのか、こんなことで。カッコ悪。
248 :
箸休め:2005/04/03(日) 00:24:14 ID:LyZI7lIx
「危うく本気で答えるところだったぞ」
「えぇと。嘘?」
「いや嘘とかじゃなくて」
ガキっぽいと指摘したすぐあとに、同じような真似をするかっての。
「そう……なんだ」
「あぁ」
「じゃあさ、どう答えるつもりだったの」
「さぁな。少なくとも真面目に考えてはいたけどな」
要するにどう答えるか決まってはなかったんだが。
「あんまり長話すると電話代かかるし、切るぞ?」
「あ、うん。じゃね」
「おう」
電話を切って溜め息をつく。
しかし、俺もガキだよな。エイプリルフールのネタに騙されてマジになるなんて。
果林のことをどう思っているのか、か。
情けないことに考えたところで、結論は出ないのは分かってる。
煙草を取り出してくわえ、カーテンを開けて。
朝日を浴びながら俺は煙草に火をつけた。
GJ!楽しみにしてるよー。
こういうやり取りも幼馴染みならではだよなーハァハァ
面白い。続き楽しみにしてます
「箸休め」って銘打ってあるはずなのに、読んでる内に心がウキウキウォッチングしちゃって箸が全然止まらないワケなんですが。
箸休めさんGJです。甘い方面に動きが出てきたようでかなり楽しみです。
一度だけお礼のみの発言を失礼いたします。
長い間読んでいただいただけでなく多くの丁寧なご感想本当にありがとうございました。
あれだけの長編を、しかも「恋愛もの」を書くこと自体も初めてでしたので、
上手くいったところも未熟だった部分も含めて書ききることが出来て
本当に勉強になりましたし、何より10ヶ月間楽しかったです。
ありがとうございました。
エロくないスレに番外が三本だけあるのでもし宜しければそちらもどうぞ。本当に番外ですが。
では幼馴染スレの益々の繁栄と多くの職人様の新作&続きを期待しております。
幼馴染ばんざい!
253 :
平々凡々:2005/04/05(火) 00:05:39 ID:O6SE7S6X
「…きろ…お、きろ」
いつものように誰かが私を呼ぶ。
「おい!千晶!いい加減起きろ!」
「ん〜…あ、海斗おはよ…」
私の名前は「七瀬 千晶」そして、毎日私を起こしにに来くる彼の名は「高柳 海斗」私の家の隣に住む世間で言うところの幼なじみである。
「おはよ…じゃない!今何時だと思ってる!まったくお前はいつもいつも…」
「はいはいその説教は聞き飽きたから」
「聞き飽きるぐらい言わせるのは誰だ?」
「はいはい私です反省しております」
「反省はいいから!早く支度しろ!」
「あっ!そうだ!すぐ行くから外で待ってて!」
「はいはい…」
ガチャン
海斗が出ていったあと着替えながらふと考えた。
(なんであいつは高校生になってもわざわざ迎えにきてくれるんだろう…)
昔から朝が弱い私を海斗が起こしに来てくれる事が当たり前だった。
(少し前までこんなこと考えなかったのに…もしかして私…)
「コラ〜!千晶早くしなさい!海斗君待ってるでしょ!」
「は、は〜い!」
お母さんに呼ばれ私はカバン持ち急いで階段を降りて玄関に向かった。
254 :
平々凡々:2005/04/05(火) 00:08:35 ID:O6SE7S6X
何となく書いてみました、暇が出来たら少しずつ駄文を投下させてもらいます。m(__)m
>>253 少しずつだと感想つけるの難しい・・・。
>>252 >番外
誘導!誘導きぼんぬ!(つД`)
>>256 ・・・
「エロくないスレ」があると言うのをシラナカッタっす。感謝。
しかし、それは携帯用アドでは・・・(・∀・)
259 :
名無しさん@ピンキー:2005/04/07(木) 07:31:45 ID:YO9Aiii3
保守
■■ 注意事項 ■■
*職人編*
スレタイがああなってはいますが、エロは必須ではありません。
ラブラブオンリーな話も大歓迎。
書き込むときはトリップの使用がお勧めです。
って書いてあるしある程度はいいんじゃねーの?
>>260 >>258の
> ・萌え主体でエロシーンが無い
> ・エロシーンはあるけどそれは本題じゃ無い
> こんな作品はここによろしく
---------
この文章、向こうの1からの引用じゃない?
どっちに書くかは職人さん次第かと。
落ちそうで怖い
おひさしぶりです。
ちと今から保守代わりに投下しますー。
「あのー、みいちゃん。お願いがあるんですけど、いいですか?」
真由子がそんな事を言ってきた事について、もう少し深く考えれば良かったのかもしれない。
「んー? 別にいいけど? 一体何よ?」
あああ何だってあんなに適当に返事をしたんだ昨日の私。
いくらゲームがいいところだったからって、せめて内容を聞いてからにしてればこんな事には―――。
「……ぃちゃん? ちょっとみいちゃんっ? 聞いてます?」
「――ならなかったよなー。あークソ私はこんな所でなにやってんだ?
少なくとも何か別にやるべき事がきっとあるはずなんだが――」
「――……もー! 話し聞いてくださいよっ! 現実逃避禁止ー!」
あーもう、うるせえなあキャンキャンとよー。
「なんだよ、さっきからうるさいヤツだなあ」
「みいちゃんは、買い物しないんですか?って聞いたんですっ」
「……アタシが? ここで?」
「そうですよ? 何でそんな変な顔するんです?」
はっはっは。うわクソ今すげえ最大級におもしれえ冗談聞いたぞコンチクショウ。
「…あー、その、なんだ。真由子よ」
「はい」
「……アタシが、女性用下着売り場で、なにを買えと?」
そう。
何の因果か、真由子に付き合って、こんなところに来るハメになっている。
……泣きたい。
『ふたつのむねのふくらみはなんでもできるしょうこなの』
「……言っとくがなあ、自慢じゃないが、アタシの胸にブラジャーなんざ必要ないんだよ」
もう見事なまでに真っ平らだからな。
ちょいと前に真由子が言っていた、胸の辺りが固くなってきたとかふくらみかけで痛いとかも無いし。
「つーかさー、ヒマなんですけどーまゆこサンー? アタシちょっと他所行って来て良い?」
もうここから離れられるならなんでもいい。
「え、だ、ダメですよ。わたし一人じゃ心細いから付いて来てもらったんじゃないですか」
……そうなのだ。
これというのも、来月に迫った修学旅行のせいだったりする。
小学校六年間の締めくくり。一大イベント。
だからって何でわざわざ『可愛い下着』を買いに来るのかね。
しかも、『一人で下着売り場なんて恥ずかしい』って私まで付き合わせるし。
「だって、あんまり子供っぽいのだと、恥ずかしいじゃないですか」
いいだろ別に子供なんだから。そもそもだな、小学生が華美な下着なんぞ着けるのが間違いだろ。
乳バンドなんざいつもの白いヤツで充分じゃねえか。破れてなきゃいいんだ、あんなもん。
「……乳バンドって。一体いつの生まれなんです、みいちゃん」
試着室のカーテンの向こうから真由子が言う。
うるせえ早くしてくれ。
なんかもー、ここは本当に駄目だ。ケツがむずがゆくて仕方ない。
「はあい。……あのー? みいちゃん?」
「なによ」
「あのですね、変じゃないか、ちょっと見てくれません?」
見ろ?
何を?
……まゆこの、乳をですカ?
いやえーと待て待てちょっと(お)それはマズくないかイヤイヤ私ら女同士だろ(おっぱ)
なに動揺してんだよ私いやでもそのブラジャーが本当に似合うか(おっぱい)どうかはやっぱり
キャッカンテキな(まゆこのおっぱい)視点が必要ナワケでこれはなにもやましいことなんかない
フツーの事で真由子の乳の育ち具合を(乳乳乳乳乳乳ー!)すこぶる確認してえー!
「スイマセン失礼しますっ!」
ガシャア! と試着室のカーテンを思い切り引き開ける。
「わ、ちょっと、そんなに勢いよく開けないでくださいよ」
………白地に、うすいピンクの小花模様の可愛らしい……、スリップ? を着ていた。
「……………なにソレ」
「なにって、可愛いでしょうー? このキャミソール。どうです? ちょっと派手ですかねー?」
「……………ぶらじゃー、は?」
「もう決めましたよー。このキャミとお揃いなんです。可愛いですよー」
ニコニコニコニコ、ものすごく嬉しそうに照れくさそうに笑っている。
その顔はすごく可愛い。可愛い、んだけど。
「………なんでそんなに疲れた顔してるんです? みいちゃん」
イヤ別に疲れたわけじゃないんだよ、ただちょっとがっくりきただけ。
「だいじょうぶですか? これだけ終わったらちょっと休憩しましょうか」
そだな。そうしてくれ。妙な期待しただけに、反動がきた。
そのまま試着室から出ようとすると。
「あ、待ってください、みいちゃん。こっちなんですけど」
今着ていたものと、同じ柄で色違い――さっきのはピンクでこっちは青だ――のキャミソールを
片手に、真由子が私の腕を掴んで引き止める。
……なんか、さっきのより少しサイズが大きいような。うわすげえヤな予感してきた。
「これね、今わたしが着てたのとおそろいなんですよー。
キャミとホットパンツのセットでね。みいちゃんも、試着してみてください」
――予感的中。
「イヤだ絶対にイヤだ。なんでンなモンアタシがわざわざ着なくちゃならねェんだっ!?」
「えー、いいじゃないですか、部屋も一緒なんですし、パジャマ代わりにおそろいで着ましょうよー」
「アタシゃ寝る時はTシャツに短パンって決めてんだよっ!
それでなくても、ンな下着みてェな薄っぺらいモン恥ずかしくて着れるかっ!」
「そんなに薄くないですよう。それに部屋の中だけです。外に着て出るものじゃありませんし」
「イ・ヤ・だっ!」
「……せっかく修学旅行なのに……。みいちゃんとおそろいの可愛い部屋着にしたかったのに……。
……みいちゃん、わたしとおそろい、イヤですか……?」
「………………………………………………」
買う事になった。
「あ、やっぱり似合いますよー! すごい可愛いー!」
「……………………………………………そうか」
着るハメにもなった。
帰りに、一階のフードコーナーでクレープを食う。
「ハムエッグ。あ、チーズ足してもらうのって、出来ます?」
横を見ると、真由子が真剣な顔でガラスケースの中のサンプルを見比べている。
「……はーやーくー。さっさと決めなよー、まゆー」
「うや、ちょっと待って……! ……ううん、ええと。……それじゃ、チョコバナナにします」
嬉しそうに、クレープをパクつきはじめる。
本ッ当、楽しそうにメシ食うよなァ、コイツ。
「……まーゆー、ちょっとくれー」
「あ、食べてみます? はい、どうぞ」
真由子の差し出したクレープに、あ。と口をあけてかぶりつく。
「……うっわ、甘ッ!」
「そりゃそうですよ、チョコバナナですもん。それより、みいちゃんのも、一口ください」
何故か私のかじった跡をじとりと見てから、言ってくる。
「え、なんで?」
「そ、そういう事いいますかあなたー! わたしの、一口どころじゃない量食べたくせにー!」
「冗談だ。悪かったよ、……ほれ」
大きく口を開けて待っている真由子に、自分の分のクレープを差し出す。
……なんで眼ェつぶるかな。
あんなに大口開けて。口ン中丸見えじゃねえか。
……舌、可愛い色してるなァ、こいつ。赤ン坊みてェなピンク色だ。
……くそ、無防備な表情しやがって。
「……んぐ。塩味のもいいですね。チーズが美味しいー」
口の端にケチャップ付いてるぞー。
「ふぇ、どこですか?」
ここだここ。手を伸ばしてケチャップを拭ってやる。
「あ、ありがとうございます」
指先に付いたケチャップ。一瞬迷ってから、ぺろりと舐め取る。
「拭くもの、取ってもらえます? まだちょっと付いてません?」
……全然気にした様子もなく、そんな事を言ってくる。
ほれ。と机に備え付けの紙ナプキンを取ってやりながら、顔が赤らんできている事を誤魔化すように、
残ったクレープに噛り付いた。
チクショウ、何やってんだかな、我ながら。
……私と真由子は女同士だっつーの……。
……以上、保守代わりの番外編でした。
12歳ぐらいの時の話です。
本編も書けたらお邪魔させていただきます。
それでは、またー。
以下私信。
243様。名無しでも書き込みさせていただきましたが、
連載完結、お疲れ様です&おめでとうございます&ありがとうございました。
長い間、素晴らしい物語を本当にどうもありがとうございました。
>14 ◆NVcIiajIyg様。
はい、そうです。
バレバレですねえ。イヤお恥ずかしい。
GJ!!
本編も楽しみにしてます。
以前の投下から随分間が開いてしまったけど、時間が出来たので書けた分だけ投下。
ここ数日、関東では桜が綺麗ですね。お花見シーズン真っ盛りといった所でしょうか。
前スレ840辺りの後日談と言った感じで……
「もー、また私の負けだし」
「はっはっは、俺に勝とうなんて3年早いな、沙穂」
「私の方が強いチーム使ってるのに……」
もう三度目になるだろうか。私はコントローラを握りながら、視線をテレビ画面と隣に座る幼馴染の顔の間で行ったり来たりさせる。
時刻は午後十時。一応高校生であり、健全で真面目な学生であるはずの私が自分の家にいないというのは珍しい。
今日の私は、幼馴染であり今は一応恋人関係となった結城慶太の家に遊びに──と言うか、お泊りしに来てる。
慶太とはご近所関係から含めてもう十年以上の付き合いだから、別に家に行く事なんて珍しくない。
遊びに行った回数は数知れず、泊まった事だって一度や二度ではない。
でも、それはただの幼馴染だった時までの話。
私と慶太はかなりの紆余曲折を経て、2月の半ばにちょっとしたきっかけと勢いもあって一気に結ばれた。
今では周囲公認の(と、言っても元々そんな感じだったのだけれど)彼氏と彼女、つまり恋人同士である。
それから一月と半分くらいが経って、ようやく一歩進んだ関係にも慣れ始めてきたところなんだけれど……。
「どうする? もう一試合やるか?」
私は今、慶太の部屋で最近発売されたゲームをやっている。
日本代表の監督がパッケージに写っている、あのゲーム。
ご飯を食べて少しまったりとテレビを見てから、慶太の部屋に移動してこうしてゲームをしていたのである。
「もういいよ、慶太強すぎるし。何か別のことしよう?」
時刻は9時過ぎ。テレビは番組入れ替わり期なおかげで、つまらない特番ばかりだ。
「別のこと、ねえ」
慶太は立ち上がると、窓の外を見ながら、少し考える。
結城家の窓の外から見える公園には、電灯に照らされた夜桜が映えていた。
「んー。親父達も今日は完全に不在だからな……」
慶太の家は個人商店をやっている。代々続いた店で、近くに建ったコンビニをことごとく撃退したり、
たいした売り上げを出させていないほどの盛況ぶりである。商店街での通称が、コンビニ殺しだとか何とか。
そんな慶太のご両親も、結婚記念日ということで小旅行に行ったそうだ。
で、その隙にこうしてお泊りを計画したというわけである。無論、私は同じクラスの女子の家に泊まりに行ったことになっているけど。
私が料理を作って、二人で食べて。今はなんとなくゲームしたり喋ったりしていた。
「ふむ」
慶太が座り込み、あごに手を当てて考え込む。そして少しの間を置いて、何かを思いついたのかすっと立ち上がった。
「よし、んじゃちょっと待ってろよ。俺が"いいもの"を持ってくるから」
「何か慶太がそういう事言うとすごい不安なんだけど」
実際昔からその通りなので、ついそんな事を言ってしまう。
「いいからいいから。悪いようにはしないって」
笑顔で言われると、余計不安になる。
「もう……」
だと言うのに、それに流されてしまう自分はもっと駄目かな、なんて思ってしまったりもする。
「何か、自分がどんどん駄目になっていっちゃってる気がする……」
面白い事を思いついたらしく、早足で部屋を出て行った慶太を見て、私は一人呟いた。
「……で、これは何」
「何って、見りゃ分かるだろ」
それから待つ事五分。
私の目の前に置かれている物は。
瓶のボトル。氷。ジュースのような液体。ついでに缶がいくつか。
それは、つまり。
「慶太のバカ! なんでお酒なんて持ち出してるのよ!」
予想外の物が来たせいか、つい大声になってしまう。
「商品じゃないし別にいいだろ。酒飲むと楽しくなるし、けっこう美味いぞ?」
「そういう問題じゃなくて、私達まだ未成年じゃない! ばれたら部活動禁止に停学よ?」
慶太がお酒を飲めるって言うのは前から知っていたけど、さすがにこうもストレートに出されるとちょっと引いてしまう。
「俺達二人だけなのに、誰がばらすんだ? 沙穂?」
「……えーと。それはないけど」
「なら、いいじゃん」
確かにそうだけど。それでもやっぱり引っかかる。
「でも、未成年のうちにお酒飲むと脳が駄目になるって言うし」
「適量なら酒は百薬の長って言うぞ?」
「うー……」
私はお酒をそんなに飲んだことがない。お正月とか、そういう時にちょっと飲むくらい。
正直、興味があるといえば、ある。
「それとも沙穂、お前酒の一杯も飲めないのか?」
私が少し反論に詰まったのを見て、少し冗談っぽく言う慶太。
それに、なんかカチンときた。
「そんな事ない。あんまし飲んだことないだけで、その気になれば二杯や三杯はいけるわよ」
「ほーう。じゃあ飲んでみようぜ? 都合よく明日は日曜、俺も部活無いし」
「う……いいじゃない、私だって子供じゃないんだから、そのくらい楽勝よ」
──ちなみに、私は乗せられ易いとかよく言われる。
「沙穂はあんまし飲んだ事ないんだろ? なら、それなんかいいんじゃない?」
覚悟を決めた私に慶太が差し出したのは、緑色の小さい缶。梅酒のソーダ割りというやつだ。
ちなみに慶太は慶太で、台所にあったものと思われる焼酎のボトルを開けている。
「うん。じゃあこれにする」
「酔っ払うなよー?」
「そんな事ないわよ。お正月とかに甘酒飲んでも平気だったし。よく子供の時は慶太とも初詣に行ったりしたから、知ってるでしょ?」
「はいはい」
何だか小ばかにしたような態度。やっぱりなめられてる。
ここは一つ、私だってお酒の一杯や二杯は楽に飲めるって事を見せないと。
缶を開けて、コップにお酒を注ぐ。氷を入れてかき混ぜると、炭酸の泡が盛んに出た。
その場の勢いで、なんとなく乾杯する。
「何に乾杯する?」
聞かれて、少し戸惑う。
「えっと……じゃあ、進級に乾杯とか、受験頑張ろうとか、それと……」
もうすぐ私達が付き合って二ヶ月に乾杯、とか。
プラスチックのコップが、軽く重なった。
「あれ……慶太は飲まないの?」
水割りをコップに入れている慶太を見る。乾杯をしたのに慶太はまだ飲もうとはしていない。
「飲むよ。……まあ、せっかくだから幼馴染が始めて本格的に酒を飲むのを見届けようかな、と」
言って、チー鱈を一つ齧る。どうやら私に先に飲ませるつもりらしい。
「いいよ、それならご希望通り……」
別になんてことは無い、ただのジュースみたいなものだし。
意を決して、一気にぐいっと飲む。喉がちょっとだけ熱かった。
「ぷは」
「おおー、いい飲みっぷり」
続けて慶太もぐいっと杯を空ける。
「梅酒ってけっこう、美味しいんだ」
一杯目をすぐに飲み干して、感想を言う。正直、思ったよりずっと飲みやすくて美味しい。
「だろ? ほら、遠慮しないでがんがん飲めよ。ほら、つまみ」
「うん、ありがと。何かジュースみたい」
促されるまま、二杯目を口にする。思ったほどじゃないかな、なんて思った。
そう、その時点では。
「うー……けーた」
それから約30分。私達はくだらない事で笑いあいながら、お酒を飲み続けていた。
私は最初のペースで飲んでいたんだけど、段々頭がぽーっとしてきた。
顔も何だか恥ずかしい事があったときみたいに火照ってるし、難しいことが考えられない。
「大丈夫か、沙穂?」
慶太はお酒を飲むペースが分かっていたのか、そんなに顔も赤くない。って言うか、慶太はお酒に強いのかも。
「なんか、暑い」
「そりゃそうだろ。水、飲むか?」
やっぱりぼんやりする。慶太の優しさがちょっと嬉しかった。
でも。
嬉しいけど、ちょっと気になったこともあったのを思い出す。
あんまり言いたくなかったけど、この際言ってしまおうか。うん、言っちゃおう。
「ねえ、慶太」
「どうした? 気分悪いか?」
「へーき。むしろテンション高い」
少しだけぶすっとして言う。普段は適当なのにこういう時優しいのは嬉しい。でも。
「慶太、一昨日の放課後、なんで潮崎さんと喋ってたの?」
瞬間、慶太の動きが硬直した。
「……なっ、えっとだな、それは」
昔からそうだ。私の幼馴染は、言われたら困る事を直球で訊かれると、妙にしどろもどろになる、
「それは?」
──潮崎さんというのは、バレンタインの時に慶太にチョコを渡した人。私と慶太がくっつくきっかけになった人で、慶太もきちんと断ったって聞いているけど、やっぱり気になる。
「……体育系の部活の会議があったんだよ、その時に会って。ほら、潮崎さんはバドミントン部だから」
「ふーん」
「普通に体育館の割り当てとかで事務的な話をしただけだから」
「ふーん」
私は同じように言って、コップに入っていたチューハイをぐいっと飲み干す。気分は良いのに、なんだか感情がストレートすぎる。
「前にちゃんと断ってから、何もないから、ほんと」
「信じていい?」
思考はもうコントロールできなくなってる。身体が火照って気持ちよくて、考えるより先に動く。
「ああ、絶対だから」
「じゃあ、確かめさせて」
口から勝手に言葉が紡がれる。お酒の力なのかは知らない。
私は立ち上がって、何かを言おうと開きかけていた慶太の口を、自分のそれで塞いだ。
「んっ……さほ、んーっ?!」
いきなりキスされてびっくりしてる慶太を見つめながら、私は言う。
「私が確かめるんだから。今夜は慶太がどうこうする権利はありません」
お酒が回っているはずなのに身体が動く。
私は慶太の上半身をとん、と押し倒して。
さらに、自分から衣服を乱す。暑かったので脱ぐのも気にならない。
「他の子より私のほうが絶対いいんだから。年季も、こういうのも、全部」
いつもは絶対に言えないような台詞を口にする。
理性とかそういったものは本能の炎で焼き切れて、思考がホワイトアウトしていった。
くっついてからの幼馴染カップルには今まで知らなかった新鮮さを知るというのが醍醐味では、なんて思ったり。
アルコールは諸刃の剣ですが、そういうのもいいのかなー、と。
続きはそのうちに投下します。
それと、投下の時期を逃してお蔵入りしていたホワイトデーネタがあるのですが、時期が時期なのでtxtにしてうpろうかなと思います。
ttp://haiiro.info/up2/file/185.txt 保管庫管理人様、もしここを見ていらっしゃったら、こちらの方も保管していただけると嬉しいです。
うはーいいないいな。ホワイトデーの方もいいないいな。
エロと萌えが適度に混ざり合って実に良い
乙です!
激萌え……
、ここまで
揚げ
452氏乙です。好きです。こういうの。
と、忘れられてるかもですが、うぃすてりあです。
引越ししてネット環境が整ってません。
続きは書いてるので、来週あたりに投下しようと思います。よろしくです。
行ってまえ!行ってまえ!
test
「愛は馴れアイ」とどこかの誰かが言っていたような気がしないでもないけれど、
恋愛なんてものは結局非日常なものだと孝二郎は思う。
梅子は眼鏡が似合う可愛らしく涼やかな和服少女かもしれないが、
毎日見ていると改めてそれにときめいたりはしないものだ。
非日常性においても、くびれがある方が寸胴より魅力があると彼は判断する。
まあつまるところ、世の中は恋愛映画のように出会いで恋をゲットするべきなのだ。
縁側で冷水から雑巾を搾り取る梅子が自分を見て何が嬉しいのか一瞬だけ頬を緩めた。
*
梅子は孝二郎が好きだ。
それはもう、喧嘩ばかり説教してばかり、いろいろ参るような思い出もあるし、
昔は一緒にお倉の奥で拾い集めたいやらしい本を好奇心に駆られてこっそり見ては
幼いゆえの無謀さ無邪気さで真似しようとしてみたりもしたのだが、そういうことは孝二郎は忘れたいらしい。
梅子も流石にあれは蒸し返したくないのだけれど、それはまた別問題として。
孝二郎は遅い思春期が来てからいつの間にか彼女に見向きもしなくなった。
日常に染まりすぎているのがいけないのだろう。
なにせ朝は彼が起きるか起きないかのうちから朝餉の仕度や雑巾掛けに傍を行き来し、
学校へは鞄持ちとしてしっかと寄り添い、夜は遅くまで傍にいる。
でもそれは梅子がストーカーなのではなくお手伝い、れっきとした仕事なのだ。
先祖代々の本家仕えの由緒ある職業である。
(現代なので時代錯誤も甚だしいのだけれど、本家の巨大さに大抵の疑問は皆忘れる。)
…で、まあ話を戻せば、梅子は孝二郎に全くそういう意味で好かれていない。
むしろ一般家庭の思春期男子が家族に抱く感情(=うぜえ)をもたれてしまうわけだ。
分かっているんだけどなあ、と雑巾からしたたる水から視線を奥に向け、梅子は瞬く。
苛められても、女に見られなくても、本当は「孝二郎坊ちゃま」が全くかっこよくなくたって傲慢だって。
「よぅ、梅」
「はい?」
「何おまえヘラヘラ笑ってんの」
「…笑ってませんっ!」
手の中の雑巾がぎゅうと絞れて水が指の股に滲みた。
仕方ない。
理由は分からなくとも、生まれてこの方十五、六年。
彼女は真理を知り続けている。
…惚れた方が負けなのだ。
だけど悔しかったので梅子は幼馴染権限で身分違いの相手に
躊躇なく絞った雑巾を振りかぶって投げた。
勿論当たった。
保守代わり。452氏、うぃすてりあ氏はじめ職人様たちの続きを待つ。
なんだか淡々としてて。いい。
うんうん。続き期待
机の上には薄いピンクの口紅が3本並んでいる。
ことりとその中のひとつを持ち上げ、化粧入れに仕舞った。
「ワンピースは、まずいかな・・。」
少し大胆すぎるかもしれないし、それに寒いと困る。
なによりもだらしないと思われるのも嫌だった。
ベッドの上には青色のワンピース、春用の薄手の白いセーターとチェックの赤のスカート、ブラウスと青い長めのスカートの3種類が置いてある。
じっと見つめた。
紀久子のことを思い出し、少し心が逸っている今の自分の気持ちに罪悪感を少し感じたのだけれど。
春用の薄手の白いセーターとチェックの赤のスカートの取り合わせを手に取る。
ワンピースは夏に取っておいた方が良いかもしれない。
午後9時半。桜岡藤菜は今、非常に悩んでいた。
@@@
「清潔感が一番、話題も切らさないように。帰り際に次に会う約束を取り付けられたら君もデートの達人だ!」
ぱたりと雑誌を閉じる。眉唾物の情報であろうと、今は信じざるを得ない。
ベッドからムクリと起き上がるとベッド脇に積み上げられている雑誌の中に今まで読んでいた『ホットドックプレス』を突っ込む。
階段をとんとんと降り、洗面所へ向う。
午後9時半。蜂須賀優太も今、それなりにマジだった。
洗面所で鏡に向うと眉毛を見る。
足、前髪も少し捻る。結局いまさら悩んでも仕方が無いという結論に達するのだけれど。
そんな事よりもそれよりも何を話すのか考えておかなくてはいけない。
いつも学校で話しているような内容じゃつまらないのだから。
と先ほどから3回目の結論にもう一度達する。
しかし3回目ともなれば名案も浮かぶ。
「さっきから何をトントンと行ったり来たりしてるの!」
居間から聞こえる母親の声を背に、もう一度部屋に戻り、机の横にある本棚をごそごそと漁った。
数冊の漫画をベッドに放り投げると、その後ろから小説が何冊か出てきた。
数週間前に藤菜ちゃんから借りた物だ。一冊はスティーブン・キングの「スタンド・バイ・ミー」、
もう一冊はアガサ クリスティーの「そして誰もいなくなった」。
「そして誰もいなくなった」の方は途中で読むのを止めてしまったけれど、「スタンド・バイ・ミー」はとても楽しめたのだった。
閉鎖的な町の中で何かをしたいと考えている少年達の気持ちは今の自分になぞらえて見るととても共感できて、
一週間ほどで全て読みきってしまったのだ。
明日は、藤菜ちゃんとはこの本の話をすればいい。
他にも色々と面白い本を教えてもらおう。そう考えて、一人頷いた。
@@
こちらはこちらで5回目の決定の末、やっと決まる。
結果はと言うと、薄手の白いセーターとチェックの赤のスカートである。
(どちらかと言うと清楚に見えるし、
それにセーターから浮き上がる胸はワンピースほどではなくても女らしく見えるかもしれないと思ったからでもある。)
「下着は・・」
当たり前のように考えた自分にビックリして、思わず周りを見渡す。
首を回すとベッド脇にある熊のぬいぐるみがよく光るガラスの目でこちらを見ていた。
「ば、ば、馬鹿みたい・・。」
ばたばたと手を振る。
だって伊夏の誕生日プレゼントを買いに行くというだけで、他には何の目的も無い。
「うう、馬鹿な事・・。」
藤菜はもう一度自分に対して馬鹿。と言うとベッドの上にごろりと横になった。
ゆっくりと目を閉じる。変な事ばかり考えて寝不足になる訳にもいかなかった。
暖かいベッドに潜り込みながら目を閉じて。
優太に「これってデート?」なんて聞けばよかったかな。と藤菜は少しだけ考えた。
そしてもう一度起き上がり、この前一人で少し背伸びをして買った一番のお気に入りの薄いピンクの下着を箪笥から取り出すと、
明日着ていく予定のセーターとチェックのスカートの間に挟み込んだ。
今度こそ寝なくっちゃいけない。
@@@
何でこんな事になっているかというと。まあ別にどうという事はないわけであって。
一週間後に鈴木伊夏の誕生日を迎えるに当って、優太は藤菜、紀久子の3人で明日街に出て買い物をしようという約束をしていた。
誕生日のプレゼントを買いに行くということは4人の中で毎年4度ほど起きる行事の一つであり、
今でこそ違うけれど、小さい頃はそれを口実に他の3人で町まで遊びに行く唯一の機会でもあった。
当然今回も伊夏へのプレゼントを買った後はまだ少し寒いけれどもアイスクリームを食べたり、
本屋に行ったり、ついでに藤菜と2人で紀久子に小さなぬいぐるみでも買ってあげる予定をたてていた。
その予定が崩れたのは、つい2時間ほど前。
藤菜からの電話で紀久子が貧血を起こし、父親から外出を止められたと聞いてからである。
「どうしようか。優太君。」
電話越しに迷った声を出した藤菜に、優太は微かな期待を胸に秘めながら言った。
「もう誕生日は来週だし。二人でいかない?」
<いかない・・いかない・・>頭の中でリフレインされながら。
残念ながら語尾は自然と小さくなっていたけれど。でも、そう悪い誘い言葉じゃなかったと思う。
「・・・ん。そうだね。じゃあ、紀久子には私から言っておくね。」
ふふ、でも紀久子、楽しみにしてたんだからお土産を買ってあげなくちゃね。
電話越しに藤菜ちゃんはそう答えてきた。
そういう事で、優太は電話を切った後、部屋に積みあがっていた雑誌を全て引っくり返して「デートの達人特集」を引っ張り出し、
桜岡藤菜はなんとなくいつもより服を選ぶのに手間取ったりしている訳だった。
@@@
西山馳村と長坂町を結ぶ長馳観光バス、通称長カンの運転手を19年程やっている渡辺俊夫(49歳)はどちらかというと柔軟性のある人間だと自分の事を分析している。
更に言えば自分の事を田舎的な優しさを持つ、ナイスガイであるとも思う。
長馳観光バスとは名ばかりの観光客など一人もこないこの町ではバスの運転手とは言っても杓子定規的にバス停に止まるだけではあまりに暇である。
何より西山馳村と長坂町を結ぶラインに、バス停は3箇所しかない。
だから、田んぼの脇を歩いているお婆ちゃんがいれば止めて乗せてやり、雨が降っていればルートを外れて家まで送り届けてやった。
その代わりもう客がいないと思えば早々に切り上げたし、
暑い夏にはバスを止めて蝉の鳴く音を聞きながら縁側に座り込んで近所の年寄りに麦茶をもらう事もあった。
むろん厳密に言えば社則違反である。バスは時間通りに運行するのが当たり前でもある。
渡辺も新人の頃はそう教え込まれ、そう信じていた。しかしそもそも採算性など度外視の田舎バス。
すぐにあまり厳密にしてもしかたないだろうと考えは変わった。
要は田舎には田舎のルールがあって、一見不都合だったり、
ルール違反に見えてもそれに則って何かをすればそれなりに上手くいくのだった。
そう、一見不都合に見えてもだ。
バスの後ろに座って仲良さそうに何事かを話している蜂須賀優太と桜岡藤菜を見て渡辺はそう呟いた。
本日朝の10時ちょうどの長坂町行きのバスには2人の客が乗った。
そして今、渡辺は背中にひやりとした汗がつたうのを感じながら、長坂町へとバスを走らせている。
今年の正月、渡辺は西山馳村の村長から不思議な要請を受けていた。
新年の挨拶も兼ねてかバス会社に土産の羊羹を持ってくると村長はいきなりこう切り出した。
蜂須賀優太、鈴木伊夏、桜岡藤菜と後は瀬良紀久子がバスに乗る事があったらこっそりと教えて欲しいと。
--こいつは何かあるぜ。--
村長が言いにくそうに話してきたその時、渡辺は土産の羊羹をほうばりながらも素早く何事かを察知した。
村の誰かが自家用車以外で村の外に出るには基本的にバスを使う以外には無い。
それを知りたいということは・・。
今年になってから村の議会で何度か過疎についての議題が上がった事を渡辺は乗客の会話から知っていた。
確証はとれないもののつまりはそういうことかもしれない。
無論乗客の行動を伝えることはプライバシーの侵害に当る。しかし村にそんな物は無い。
何よりもスパイにでもなったようで面白いと思った。
それ以降、渡辺は村長の求めに応じて4人がバスに乗る事があると必ず連絡するようにしていた。
連絡した時の村長の反応は様々だった。興味深くそのときの様子などを聞くこともあれば、そうか。の一言だけの時もあった。
そうやって何度か報告するうちに渡辺には段々と村長が何を知りたいかがわかるようになった。
村長が根掘り葉掘り聞くのは、蜂須賀優太が3人のうちの誰かと出かけた時だけなのだ。
そして、蜂須賀優太と3人のうちの誰かが2人でどこかに出かけるのは、渡辺の記憶が正しいとすれば今日が初めてだった。
「渡辺さん、今日もありがとう。」
長坂駅前停留所にバスがつくと、桜岡藤菜はステップの上に立ったままそういってこちらを向き、白い歯を見せてにっこりと笑った。
いつもの緑がかった制服姿も似合っているが、今日のような私服を見ると最近また綺麗になったように見える。
薄手の白いセーターから細身の体からは想像できないように突き出ている胸に目を移ろわせている自分に気づいた時、
渡辺は心の底で少しだけ自分が高校生時代に戻ったような気持ちになり、一瞬後首を振って自分の行動を恥じた。
「いってらっしゃい。楽しんで。」
「うん。渡辺さんも運転、気をつけてね。」
遅くならないようにね。と言うとうん。ともう一度頷いて。
先に降りている優太の方にくるりと向き直るとバスのステップを駆け下りた。
「いいなあ。」
思わず自分の口から出た言葉に驚く。
運転席から目で追うと、2人は既に暖かい日向に向って歩き出してした。
2人が見えなくなるとすぐ、渡辺はバスから駆け下りた。少し気は咎めるが、どうなるにせよ仕事は果たさなくてはならない。
20M程先の煙草屋に走りこみ、公衆電話に10円玉を放り込む。
たったそれだけの行動で体中から汗が吹き出る。
バスはボンド・カーではないし、俺はジェームスボンドには少し年を取りすぎている。
それでも抑えきれない興奮が体中を包んだ。
がちゃがちゃとダイヤルを回す。数回の呼び出し音に続いて役場の受付に繋がった。
流れる汗を拭いもせずに渡辺は受話器に語りかけた。
「村長に伝えてくれ。」
隣に並んだ藤菜の格好はとても大人びて見える。
いつも並んで歩くのだけれど、今日はなんだか違う気がする。
少し暑くなってきたし、もうすぐ蝉も鳴きそうな陽気。
伊夏の誕生日が終われば、テストがあって夏休み。
どちらにせよ。そう。どちらにせよだ。
今日をどう過ごすかで、今年の夏休みは大分変わりそうな気配だった。
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>>214-217 ご感想ありがとうございます。
他の書き手の方も沢山で、続き読むのを楽しみにしています。
では。
ノシ
ブリーダー氏、乙!
相変わらずおもすれー( ^ω^)
続編キター!!
幼馴染四人、それを利用しようとする大人たち、都会にあこがれる若者…
毎回楽しみに読ませてもらっています。
いつ4人は大人たちのたくらみに気がつくんだろう?とか
相手が好きな人でも大人の都合でくっつけられたら、どう思うんだろう?とか
もう楽しみでしかたないです。
乙でした!!
「何にせよ、だ。美秋。」
まだ何かあるの?と、まあ小一時間問い詰められた僕にしてみればそんな感想が来るのは仕方ないとは思うけど、
今までとは異なり真剣な表情の母さんを見て少しばかり身構えてしまう。
次の言葉を待つ。
「まあ、あんたら二人、泊まるとなると、多分、そういう状況になると思うんだけど・・・」
まだよくわからない。やけに言いにくそうだけど、なんだろうか?
「鈍い男だね・・・。だから、まあ、これを持っていきなさいってこと。」
棚でゴソゴソやって箱を取り出し、僕に手渡す。
「これは・・・?」
「だーっ、もうっ!我が息子ながら情けないっ!!避妊具だよっ!避妊具!!」
えーと、避妊具っていうと、要するに、って
「えーっ!いや、母さん・・・」
「ああ、もう!少し黙って私の話を聞きなさい!」
怒られてしまったので、おとなしくする。
「あんたは、もみじちゃんのことが好きなんでしょう?」
わかってるんでしょ、思いながらもとりあえずうなずく。
「で、この旅行で関係を変えたいと思っている。」
「いや、母さん・・・」
「どうなの!」
「ひっ、いや、そう、そうだよ!」
いきなり、すごい剣幕。答えないわけにはいかないじゃないか・・・。
「だったら、持っていきなさい・・・」
いや、それでも・・・。
「でも母さん、僕はそういうのが目的で行くってわけじゃないよ!」
そりゃ、そういう考えだってないことはないけど、僕は、純粋に、もみじのことを・・・。
「それは、母さんだってわかってるわよ・・・」
母さんは、少し申し訳なさそうな顔をして、
「でもね、私から見たって、もみじちゃんはあんたのこと好きだよ。間違いなく。
あんただって、私の自慢の息子だよ。二人のこと、私は大賛成だよ。それは
かえで姉さんたちも同じ。美秋たちがそういう関係になっても、みんな認めてくれる。
だけどね・・・」
一呼吸おいて。
「もしもあんたたちに、子供ができたりなんてしたら、あんたたち、ダメになってしまう
かもしれない。私だって、そんなのは、不幸だと思うよ・・・?」
「母さん・・・」
ここまで来て、母さんの言葉が止まってしまった。そうか、母さん、自分のこと・・・。
「だから、だからね?わたし・・・っ、よしあきに、・・・すごく、ゴメンねって・・・」
「母さん、いいから・・・。僕は、母さんの子供で、本当に良かったって思ってるから・・・」
なにより。
「ありがとう。母さん・・・」
ほとんど涙声の母さんを残して、一人部屋に戻り、様々なことを考える。
もみじとの関係。もしかしたら、もみじと、その、交わるということ。
その行為によって人生を狂わされた母さんのこと。支えてくれる、母さんと、
かえでおばさんたち。
「って!」
ここまできていまさら気づいたけど・・・!
「親戚みんなで僕ともみじのこと話し合って、子供がどうのなんて話してるって・・・!」
僕ってものすごく恥ずかしいやつなんじゃないだろうか?うわぁ・・・。
デートのことでも考えながら寝よう・・・。寝よう・・・。
ようやくネット復活です。PCが変わったので名前が少し変わりましたが
まあ、それはそれで。
これしか書けてなかったのですが随時書き込むです。
と、いうわけでよろしくです。
う、きっこちゃんかわええと思ったら藤菜ちゃんも可愛えなあ。
毎回出てくる新村人もおもしれ。
うぃすてりあ氏、GJなんだけど間4時間での投稿は書き手さんにちょっとマナー違反と思われ。
新たな書き手として参加したいんですが、今はまずいようですね。
明日以降投下します。
>>うぃすてりあ氏
乙です。お母さんいいキャラですね。
あんまり厳しく考えなくてもいいと思うんだけど。
書き手もまた読み手、他の人のSSをもっと読みたいんだから。
一読者としては特に問題を感じません(´ω`)
両方面白いし。
マダーチンチン
307です。
投下させていただきます。
別スレでエロパロ(ゲーム)の幼馴染系を書いていたものですが、
オリジナルが書きたくなりました。
とりあえず大まかなプロットは頭の中で出来てますが、長期連載を考えているため流動的です。
色々指摘していただけるとありがたいです。
春眠暁を覚えず。
全く昔の人はいい事を言ったもんだ。
そう思いながら俺はベッドの中でまどろんでいる。
「いや、今はもう秋なんだが」
全く、暖かい布団にくるまれ、起きるでもなく眠るでもなく過ごす時間。
これ以上の幸せがあるだろうか、いやない(反語)。
「古文が苦手なお前が気取った事いうな」
外野は無視。あと10分、いや5分だけこのままでいよう。
まだ起きるには早い。朝飯の準備もまだだろうし。
「お前の目覚まし、止まってるぞ。飯ならとっくにおばちゃんが片付けた」
そう、俺は目覚ましをかけてるから、遅刻なんてことはありえない……え?
止まってる?
「そうだ、お前の目覚ましがならないから、今日は飯はいらんのかと思ったぜ」
呆れた声に、初めて意識がはっきりとする。今何時だ?
がばっと跳ね起き、枕もとの目覚ましを引っつかむ。
時刻は午前3時を示しているが、窓の外ははっきりと明るい。
「やべっ!」
そう叫んだ俺は、慌てて着替え始める。
俺の名前は、御堂創一郎。15歳、高校一年生。まあどこにでもいる平凡な学生だ。
勉強もスポーツも人並み。背は170少しでちょっと痩せている。特技は……これといってない。やっぱ平凡だ。
さっきまで俺に声をかけていたのは、残念ながら男だ。
小生意気な妹でも、弟をからかって楽しむ姉でも、ましてや毎日起こしに来てくれる幼馴染や恋人でもない。
初芝和馬。中学からの友人だ。まあ一番つるんでる時間は長いだろう。
和馬はとっくに学生服に着替えており、カバンを持って俺が着替えるのを半笑いで見ている。
全く、起こすならさっさと起こせばいいものを。
だが、文句を言っても通じる相手ではないので俺は黙っておいた。
そもそも、なぜこんな奴が俺の部屋にいるか。
それは俺たちが住んでいるのが寮だからだ。
俺たちが通う私立泰山高校は、中高一貫の男子校だ。
中学三年の終わりごろ、俺は父親の仕事の関係で転勤する事になった。当然俺は転校ということになる。
しかし、中高一貫の学校に通い、今までろくに勉強もしなかった俺に高校受験の準備などあろうはずもなく。
俺はこの学校が気に入っていたから、高校卒業までこっちに残りたい、と主張した。
幸運にも、ウチの親は二人とも放任主義で、俺の自主性という奴を尊重してくれた。
しかもウチの学校はそこそこ全国に名の知れた学校だったから、寮が完備されていた。
そんなわけで、俺は高校一年生から学生寮で生活する事になったのだ。
そして、和馬は俺の部屋の相方なのだ。こいつは中学から寮生活をしている。
「起こせよな」
無駄だと分かっていても、一応言ってみる。
だが和馬はニヤニヤと笑っている。
「『睡眠時間ぐらい俺の自由にさせろ、お前の朝練に合せて起こされてたまるか』と言ったのはそっちだろう」
和馬は合気道部だ。だから朝が早い。
しかし今日は練習日ではないはずで、ならば今日はついでに俺を起こしてもいい時間に起きたはずだ。
まったく、理屈として間違ってる。
「それとこれとは」
「文句を言ってる暇があったら用意しろ。もう行くぞ」
「分かってる、すぐ終わる」
あわただしく学生服に身を包み、俺はぺったんこの通学カバン(中身はほとんど学校だ)を手に取った。
「行こうぜ」
そう言って俺たちは部屋を出た。
俺と和馬は並んで学校までのわずかな道を歩く。
俺たちの高校は、住宅地から少し離れた、小高い丘の上に建っている。
寮はそのふもとにあるが、ゆっくり歩いても15分程度の距離だった。
寮の朝飯の時間には遅れたとはいえ、まだ予鈴までには十分余裕がある。
「『チチヤス』に寄っていいか?朝飯買いたいんだ」
「ああ」
「チチヤス」というのは寮と学校の間にある駄菓子屋の名前だ。
本当の名前は別なのだが「チ○ヤスヨーグルト」のでかい看板があるので皆「チチヤス」と呼んでいる。
学校の行き返りにジュースを飲んだり、小腹を満たしたりするのにうってつけの店だ。
俺は大体この店でいつも昼飯用のパンと飲み物を買っていく。学校の購買より種類が豊富なのがお気に入りなのだ。
「チチヤス」の店先が視界に入ったとき、俺はある人影を見てちょっと舌打ちした。
そして和馬の方に目をやる。
和馬もその人影を目ざとく見つけ、俺の方ににやりと笑って見せた。
「愛しい彼女がお待ちだ」
こいつのからかいには慣れているが、慣れたからといって気分が良くなるわけでもない。
俺は「チチヤス」へとしぶしぶ足を向けた。
店の前にセーラー服に身を包んだ少女が二人立っていた。
「おはよう。創一郎くん」
そう言って一人が笑いかけてきた。
こいつの名前は古鷹青葉。俺の親の転勤が決まるまで、俺たちの家は隣同士だった。
幼稚園から小学校までは一緒に通った仲だ。というか、俺たちの家は家族ぐるみで仲良く付き合っていた。
背が低く、髪を長いお下げにしているせいで年より幼く見えるが、年は俺と同じ。
近くにある私立のカトリック系女子高に通っている。
「ん」
簡単に挨拶して、俺はさっさと「チチヤス」のパンの棚をあさる。
今日は少し遅れたので人気があるパンは売切れてしまっている。俺は小さく舌打ちした。
そんな俺を、青葉はおっとりとした表情で見ている。俺は思わず顔をそらす。
小さい頃から少しとろくさいところがある奴だったが、それは高校生になってもあまり変わってない。
世間知らずなところも、いわゆるお嬢様女子高に通っているせいで一向に改まらない。
そんなわけで、俺としては同い年とはいえ、青葉をどこか妹のように感じていた。
「あ、おはよう初芝くん」
背後で青葉が和馬に挨拶しているのが聞こえた。
「おはよう、青葉さん」
かしこまった和馬の声。
こいつ、女の前では礼儀正しい武人みたいな態度を取りやがる。本当はただの格闘技マニアの癖しやがって。
お前が以前「殺人カ○テ」なんて変なものにはまってたことを俺は忘れんぞ。
「ちょっと御堂。ちゃんと青葉に挨拶しなさいよ」
後ろからもう一人の女の声が聞こえた。
こいつは妙高那智子。青葉の高校の友達だ。
青葉がどちらかと言えばおとなしめの性格なのに対して、こいつは男勝りを地で行くタイプ。
短く切りそろえたショートヘアに、鋭い視線。それに……凹凸の少ない(色気のない)体。
セーラー服じゃなければ、男と思われかねん奴だ。
「うっせえな。俺は今腹が減ってるんだよ。朝飯食いそびれたんでな」
そう言って俺はいくつかのパンを引っつかむ。
「どうせ寝坊したんでしょうが。自業自得じゃない」
那智子はうるさい。というか、青葉とは気が合うようだが俺とは全く気が合わない。
俺は那智子などどうでもいいのだが、向こうはやたら俺が気に触るらしく、なんだかんだと突っかかってくる。
那智子を無視して俺がパンを清算しようとすると、青葉が俺に声をかけた。
「創一郎くん、今日もお昼はパン?」
ああ、と答えてレジに向かおうとする。
すると、俺の袖を青葉の手がそっと引っ張った。
俺、振り向く。
「……なんだよ」
「これ、お母さんが。創一郎くん一人暮らしなんだし、栄養バランスも考えないと……」
差し出された青葉の手には、大きな弁当箱が握られていた。
「寮で飯食ってるから大丈夫だよ。味は最低だけど、バランスは取れてるらしいからな」
「でも、いつもお昼パンじゃ体に良くないし……たまにはウチでご飯食べたらって言ってたよ?」
「俺はチョココルネとソーセージドッグが好きなんだよ」
毎日「栄養バランスのみ」の寮の食事だからこそ昼ぐらい自分の好きなものが食べたいのだが……。
「お弁当、いらないの……?」
青葉が悲しそうな表情を浮かべて俺を見ている。こいつは困るといつもこんな顔をする。
母親に渡せ、といわれた弁当を俺が受け取らないものだから、どうしていいのか分からないんだ。やれやれ。
しかし、正直なところ青葉の母親の料理は絶品だ。小さい頃はよくご馳走になったもんだ。
だから、弁当はありがたく頂いておくことにする。
「おばさんにありがとうって言っておいてくれ」
「……うん」
ほっと安堵の笑みを浮かべると青葉は那智子に「行こう」と声をかけた。
俺はパンを棚に戻すと、青葉といっしょに店の外に出る。
青葉と那智子の学校は俺たちとは反対方向だ。青葉は俺と和馬に手を振ると、背を向けて去っていった。
去り際に、もう一度青葉はこちらに小さく手を振ったようだったが、俺は振り返さなかった。
「わざわざ弁当を渡すために待っていた……か。いい子だなあ、青葉ちゃんは」
和馬がそう言って笑う。こいつ、前から青葉ファンを自称している。
小さいときから知っている俺としては、あんな女のどこがいいのかさっぱり分からんが、和馬に言わせると
『いまどき珍しい清純派』
だそうだ。……そんなもん、この平成の世の中にいるのか?
「ま、一食浮いたな」
「贅沢なやつめ。青葉ちゃんの手作りだぞ?」
和馬はそう言って俺の肩を強く叩く。
「ちゃんと聞いてろよ。青葉の母親が作ったんだよ」
「馬鹿だなあ……いきなり手作り弁当なんて渡したら、お前絶対受け取らないだろう?だからわざと母親が作ったと……
泣かせるじゃないか」
そういって和馬はおお、麗しき愛情かな!と大げさに叫ぶ。
どうやらこいつは青葉のファンというより、俺と青葉を煽って楽しんでいる節があるが、俺はまたその確信を強めてしまった。
「馬鹿言ってないで、行くぞ」
そう言って俺は「チチヤス」の前を離れようとする。
と、その時、背後から何者かが駆け寄ってくる音がした。
さっと振り返る俺と和馬。
……いや、和馬よ。構えなくていいから。お前は植芝盛平みたく刺客に狙われたりしないから。
そこにいたのは、和馬への刺客ではなく、どっちかと言えば俺への刺客だった。
那智子だ。
「なんだよ。どうして帰ってきた?」
「ちょっと……あんた達に相談したい事があるの」
那智子の顔はどことなく憂いを帯びている。いつもの刺々しさがあまりない。
「じゃあさっき言えよ」
思わず俺が突っ込む。だが、那智子はキッと俺を睨んで叫んだ。
「青葉のことなの!青葉の前で言えるわけないでしょ?」
その勢いに黙る俺。なんだ、そんなにムキになる事ないだろうに。
「いいから、黙って聞いて。とくに御堂。あんたは真剣に聞いてよね」
そう言って那智子は俺と和馬に顔を近づけるよう手招きした。
俺と和馬は顔を一瞬顔を見合わせ、それから肩をすくめながら那智子の言うとおりにした。
那智子はわざとらしいほど声を潜め、言った。
「青葉がね……男の子に告白されたのよ」
さて、ようやく楽しい飯の時間だ。
といっても昼休みではない。まだ三限目が終わったところ。
つまり早弁だ。
俺はさっそく朝青葉から手渡された(和馬曰く青葉手作りの)弁当の包みを開けた。
男用の大きな弁当箱の蓋をとり、さっそく食事にかかる。
メインにハンバーグとエビフライ、サラダやらちょっとした煮物やらが入って、豪華幕の内弁当といった感じだ。
しかも冷食は一切使ってない。俺はさっそくそれをかきこみ始めた。
俺が夢中で弁当をほおばっていると、後ろから和馬が声をかけてきた。
「お前なあ……せめてもうちょっと味わって食えよ」
だが、俺は食事の手を緩めない。
早弁はスピードが勝負。片付けを含めてわずか10分で食うには結構テクニックがいるものだ。
「せっかく作ってくれた青葉ちゃんに悪いとは思わんのか」
そう言って和馬は俺の弁当からおかずを盗もうとする。
「盗るな……それと、どうしてもお前はこれを青葉の手作りと言いたいようだが、
残念ながらこの味付けは間違いなく青葉のおばさんの味付けだ。俺にはわかる」
弁当を和馬の手から守りながら、俺はさらに弁当をほおばる。
小学生のころ、青葉の料理とやらを一度食わされたが、本気で戻しそうになったもんだ。
そんなあいつにこんなうまい弁当が作れるわけがない。やはり青葉の母親の料理は最高だった。
「……それはそうと、お前は気にならんのか」
和馬がため息をつきながらそう言った。
何が言いたいのかすぐにピンと来た。和馬とは伊達に三年以上も付き合ってない。
青葉のことだ。
「そうだなあ……相手が同じキリ系の北星だし、あそこはエリートだし、ちょうど良いんじゃね?」
そう言って俺は食事に戻った。
青葉たちの学校はカトリックの聖マリア・マッダレーナ女子、その姉妹校にあたるのが北星だ。
はっきり言って俺たち泰山なんぞ目じゃないくらいのエリート校だ。
俺たちの学校は全国に知られていると言ったが、それはどっちかと言えば歴史が長いからという理由と、
自由な校風で評判だからであって、受験とかスポーツで優れているということではない。
はっきり言って平凡な高校だ。そして俺はその中で成績も中くらいならスポーツも大して得意ではない。
それに比べて北星の男なら並でも俺では手が出ないような大学に受かるだろう。
それに北星はガリ勉の集まる学校じゃない。
軽音でギターやりながら国立一流大学に軽く入る奴、陸上で国体にでながら医学部に行く奴などなど、天才ぞろいだ。
それを考えれば、青葉もなかなかいいのに当たったんじゃないかと俺は思った。
「そういう問題じゃ、ないだろう」
そう言って和馬はデカイ体をこっちに曲げてきた。
こいつ、タッパは180以上、格闘技好きだけあって筋肉質、しかも顔は魔○加藤似、というただでさえ威圧感のある男だ。
俺はうっとおしそうに和馬に背を向けた。
「幼馴染なんだろう。ちょっとは真剣に考えてあげたらどうだ」
「真剣にってなあ……」
和馬のしつこさに辟易しながら、俺は食事の手を止めた。仕方ない、この残りは昼休みに食おう。
「相手の顔も知らんのに、どう考えろっていうんだ。青葉が相手を気にいりゃOKするだろうし、嫌なら断るだろ」
「まあ、そりゃそうなんだが」
和馬はうまく口に出来ない、といった風に頭をかいた。
「創一郎よ……青葉ちゃんが他の男と付き合ったとして、それでいいのか?」
そう言われて、俺はちょっと考える。青葉が誰かに告白される。そして付き合う。
頭の中でシミュレーション。
手をつなぐ、デートする、キスする、でもって、男と女の関係になる。
そうなったとしたら。
「別にいいんじゃねえ?」
俺はあっさり言った。和馬はそんな俺の目をじっと見ている。
俺も和馬の目を見つめた。いや、男同士で見つめあったって嬉しくもなんともねえよ……。
しばらく俺を覗き込んでいた和馬が、ふむ、とひとりごちた。
「ま、お前がいいなら、それで良いんだろう」
そう言うと和馬は自分の席に戻っていった。
和馬のいいところは、自分の意見を決して押し付けないところだ、と俺は改めて思った。
俺は青葉に特別な感情などびた一文持っていない。
確かに結構かわいい顔はしてると思うし、最近体つきも女らしくなったと思う。
しかし、だからといって好きかと言われれば、それは全く「否」だ。
例えば、高校生になっても、たまに小さい頃のように手をつないで歩くことがあるが、なんとも思わない。
つまり、俺と青葉の関係というのは「ちょっと付き合いの長い友達」以上の何ものでもない。
和馬もこの三年以上の付き合いでそれは分かっているはずだ。
だから平然と俺たちの間柄をからかうし、さっきもあっさり自分の主張を引っ込めた。
和馬は無骨な男だが、頭はいいし人情の機微には通じた奴だ。
俺が本当に青葉が好きなら、逆に絶対けしかけたりはしない真面目さがある。
まあ、だからツレなんだが。
(それにしても)
と俺は弁当をしまいながら考える。
青葉が告白されたことをあんなに切羽詰った様子で訴えかけてきた那智子の方が俺には謎だった。
『青葉が北星の男の子に告白されたの。付き合ってくれって。……ねえどうしたらいいと思う?』
そう言われても、そもそも俺たちに相談してどうなるっていうんだ。
(まさか、那智子の奴、俺と青葉のこと誤解してるんじゃないだろうな)
俺は那智子が苦手なので、あまり話したことはない。
俺が青葉のことをなんとも思ってないなんて、言ったこともないし、それが伝わるほどの付き合いもない。
あいつが俺たちの「幼馴染」という関係を拡大解釈していることは十分ありえる。
「うーむ。まいった」
俺はそう口に出していった。
それを口にするのは大して困ってないときなのだが、まあ口癖のようなもんだ。
実際、誤解されようが特に困った事はない。
俺には彼女も好きな相手もいない。誤解されて困る相手がそもそもいないわけだ。
……念のためいっておくが、俺はホモじゃない。
ヘアヌードもエロ小説も、エロマンガも大好きだ。AVも寮生みんなで鑑賞会を開いて見てる。
いわゆる健全な男子という奴だ。
だが、普段周囲に女っ気がないせいか、彼女が欲しいとか、そういった感情がリアリティを持って沸いてこない。
たぶんそれは和馬も同じだろう。
もちろんクラスの中には他校の女子と付き合ってる奴もいるし、女目当てで他校と交流のあるクラブに入る奴もいる。
だが、ほとんどの連中にとって、「女と付き合う」ということに現実感はないんじゃないかと思う。
(まあ、セックスはしてみたいと思うけどな)
そう考え、だからといって青葉を抱きたいか自問してみると、何やら薄気味の悪い嫌悪感がこみ上げてくる。
俺は一人っ子だからよく分からないが、近親相姦を想像した兄弟持ちはこんな気持になるんじゃないか、と思う。
(やっぱり、那智子には「青葉の好きにさせろ」と言うしかないよなあ)
案外、向こうも女子校だから、男と付き合うってことが直感的に理解できないのかもしれない。
だから那智子なんかがパニックに陥って、身近な男の俺たちに相談してきたのか……?
そうかもしれない。それは俺にとってとても妥当性のある答えに思えた。
そんな事を考えていると、次の授業の教師が教室に入ってきた。
だから、俺はもう青葉のことを考えるのをそこで止めることにした。
(続く)
とりあえず以上です。
いきなりキャラがたくさん出てきて混乱したがGJ
う〜〜〜〜〜ん……?
GJ
面白いよ、続きに期待。
ちょっとモノローグが長いとは思ったけど、
おおむねGJ。
327 :
名無しさん@ピンキー:2005/04/21(木) 00:19:19 ID:FnXxivl1
>魔○加藤似
ウケた
どことなく寝取られ風味だがそうならないことを祈る
そんなことよりGJ
>>328 そうか?
なんとなく先が読めるってのは解るけど
まあ乙
>>329 「お約束」で成立してるジャンルではあるしな
「美秋、いつまで寝てるの?早く起きなさい。」
・・・んん、と、まだ7時ちょっとすぎ。まだ眠ってたいのだが・・・。
「ほら!今日はもみじちゃんとデ・エ・ト!なんでしょっ!」
「うわぁぁっ!声が大きい!母さん!」
ああああ、そうだ!今日は!もみじと・・・。
「・・・いまからそんなでどうすんの?さっさと仕度して起きてきなさい。」
言うだけ言って部屋から出て行った母さんを見届け、まずは着替える。
とりあえずは靴下。で、お気に入り(というか、これしか持ってない)ジーンズを履いて、
ほんの少しだけ今風な長袖シャツを着る。しかし・・・。
「もう少しマシな服、買ったほうが良かったかな?」
ま、いまさら言っても仕方ない。部屋を出ると、朝食はできていた。
「「いただきます。」」
二人で、食べる。そして、今日も朝から母さんにいじめられた。
「ね、今日、ってことは、朝からもっといいもの食べたほうがよかった?」
「いいものってなにさ?」
「スッポンとか?」
ああ!もう!
「一度も食べたことないよ!っていうか!息子にセクハラして楽しいかね!?」
あはは、と母さん。で、「なんにしろ、」と前置きし、
「いいよね、あんたともみじちゃんさ。わたしもあなたたちみたいな関係の子がいれば
楽しい学生生活だったのにな。」
と、からかってるはずだけど、その言葉には、別の感情も、混ざってる気がした・・・。
「いってらっしゃい」
と言った母の眼は、嬉しそうで、少し寂しそうで、ほんの少しだけ、泣きそうだった・・・。
1時間に2本しか停まらないバス停には、すでに、きれいな女の子が待っていた。
・・・まあ、もみじなんだけど。
「・・・おはよう、美秋くん・・・」
「・・・あぁ、おはよう・・・」
それしか言えない僕も情けないけど、でも、贔屓目じゃなくても、今日の彼女にすぐに反
応できる男はそうはいないね。白の半袖ブラウスのひらひらは遠慮がちに、小さな黒いネ
クタイが目を引いた。紺のロングスカートは朝の静かな風にゆらり揺れて、涼しげな雰囲
気を纏っていた。今気づいたけど、ネクタイについている赤いブローチはきっと・・・
「ねえ、美秋くん・・・」
僕の思考を中断させ、頬を軽く染め、うつむき加減に、
「その・・・どうかな?」
って、尋ねたもみじに、僕は選択肢があるはずもなく、顔を背けながら、
「その・・・、すごく、きれいだよ・・・」
と、バカみたいな答えしか返せなかった・・・。
夏休み、朝早い時間。バスには他に乗客もおらず、一番後ろの五人席に二人で座り、どち
らからともなしに、互いの手を重ねあう。特に言葉も交わさないけど、気まずい、という
こともなく、見慣れた景色を二人で眺めながら、ふと相手を見つめ、視線が交わって、あ
わててそらして、なんて、恥ずかしいことを延々と繰り返して、思い出したように、空が
青いね、なんて。
「楽しいね?」
って、もみじがそんな表現を使うんじゃ、僕には返す言葉が見つからないよ。そんなだか
ら、今まで、一歩進もうって、思えなかったのに。
・・・旅行はまだ、始まったばかりなのに。僕の心は乱れに乱れていた・・・。
乱文な上に、遅筆なのは申し訳ないなのですが、
自分のペースでがんばります。
あんまり短いのばっかり投下するのも指摘があったように問題があるので
なんとかまとまってから書き込めるようにします。ノシ
あぁぁぁっ!!
なんかこの!へたれ主人公っぷりが!
もどかしい!!
続きも期待してます。
キタキタキタキタ!
SS投稿しようと思います
忘れられたと思いますが、前スレ(だったかな)のさつきと大介のお話
この日、さつきに告ろうと決意した。
「延ばせば延ばした分だけ、幸せが遠くなっていくぞ」
何て、龍に脅されたからじゃないぞ。
……たぶん……きっと……
と、ともかくっ、オレはさつきに言うんだっ、絶対っ!!
たとえ玉砕したって……したって……したって……
「ま、これで砕け散ったら、残りの学園生活ずっと欝になるけどな」
うっさいわっ!!
なのに……
こういう日に限って、さつきと二人っきりになるチャンスが全然無いのである。
登校も別々だったし(普段は一緒になる事が多い)
休み時間はあっという間だし、
昼休みではさつきの姿を見失うし……
「……」
き、今日は日が悪いのかな……あ、明日に……
て、ダメだダメだっ!!
今日するって決めたら今日じゃなきゃ、ダメなんだ。
決心が鈍らねぇうちにしなきゃ、オレって人間はこの先絶対告れねえっ。
そういうわけで、オレは部活を終えた後、さつきが来るのを待っていた。
さつきが部活を終えるのも同じくらいだし、それから家に着くまでは誰の邪魔も入らない。
そういうわけで、校門脇で緊張しつつ待ってるんだけど……
「お、遅え……」
とっくに部活は終わっているはずだ。
さっき、演劇部の見知った連中が帰るのをオレは見ているし。
仲間とくっちゃべってるのか……?
ああ……せっかく
『たまたま同じ時間に部活が終わったから一緒に帰ろうぜ』ていう計画だったのに……
これじゃ明らかにさつきを待ってたとしか……
「……」
こ、こんな姑息な事考えてるから、オレって奴はダメなんだあああああああああああああっっっ……
なんて、一人でアホな事をして悶々としてたんだけど……
「……」
さつきの奴、遅すぎないか……?
最終下校の放送はとっくに流れた後だ。
演劇部公演間際でもない限り、こんなに遅くなるなんて絶対に無いはずなのに……
「……」
胸騒ぎがしてきた。
何かあったのか……それとも入れ違ったのか……
オレは校舎に向かった。
だんだん胸騒ぎがひどくなってくる。
そして忌々しい事に、こういう時の勘は何故か良く当たるのだ。
昇降口の前に着いたところで、
「さつきっ!」
「あ……」
良かった、さつきはいま靴を履こうとしているところだった。
「大介……どうしたの?」
「え、あ、いや……」
オレは口篭ってしまうと、
「……待ってて、くれたんだ」
「べ、別に……」
何か言う前に、ズバリ言われてしまった。
言い訳しようと思ったんだけど
「……」
何だろう……? さつきの様子がちょっとおかしい……。
オレを見てホッとしてるというか……。
結局、
「……ま、まあ、そんな事より、帰ろうぜ」
「……うん」
強引に話を逸らして、さつきに帰りを促すのだった。
「……」
「……」
二人、黙々と歩いている。
お互いに会話が無いのは今に始まったことじゃない。
オレはというと、告ろう告ろう、と思ってさつきを横目で見るんだけど……
「……」
ダメだ、何というかタイミングが掴めない。
それに、先程からさつきの様子がおかしい。
ボーっとしてるというか、上の空というか……
だけどこのままじゃラチがあかねえ。
家の近所の公園前まで来たとき、オレは意を決して、
「さつき」
「大介」
……………………
何で、二人同時になんてベタな事をしちゃいますか、オレ達。
「あー……さつきからどうぞ」
「大介からで、いい……」
オレ達の間に沈黙が降りる。
オレは、さつきの顔をじっと見つめて、
「さつき、その……何かあったのか? さっきから様子がおかしいけど……」
って、何を言ってるんだ、オレええええええええええええええええええっっっ!!
自分で自分にツッコミを入れるけど、もう遅い。
「まぁ、言いたくないなら別に……」
「大介……」
さつきが、ポツポツと喋りだした。
「うん……」
「さっき……部活の後で……」
さつきの表情は困ったような、途方にくれたような、
オレはこんなさつきを見るのは初めてである。
「どうかしたか?」
「うん……その……先輩に、告白された……」
「……は?」
告白された……された……された……
「な、な、な……」
なにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっっっ!?!?
「ど、ど、どこのどいつだっ!!」
「だ、大介……?」
さつきがオレの剣幕に驚いている。
「あ、わ、わりい……その……」
「……」
オレは息を整えた。
「だ、誰なんだよ、そいつ……」
「だから……部の先輩……」
「先輩、ね……ん?」
あれ……? えっと……?
「あ、あのさ……先輩って、演劇部の、だよな……」
「……ん」
さつきが頷く。
いや……でも……演劇部って……
「女子しかいないはずじゃ……」
オレはさつきの顔を見つめた。
「……」
マジかよ。
「うぁ……」
思わず目まいがした。
さつきがさっきからボンヤリしてた訳が分かった気がする。
第3者のオレでもよろめきたくなるのだから、さつきが受けた衝撃は相当なものだろう。
「じ、冗談とかじゃないのか? からかわれたとか……」
さつきがげっそりとした表情でオレを見た。
「それだったらどんなに良いか」
と、言葉以上に目が雄弁に物語っていた。
「マジモンの告白?」
「……ん」
さつきが頷く。
「その人、副部長なんだけど……完全にそのケの人で……部じゃ有名……」
「副部長って……髪の長い、背の高い人だったか?
去年の公演で、女子からキャーキャー言われていた……」
「……ん」
「そ、それで……お前、何て答えたんだ?」
これで、『告白を受けた』なんていわれた日には……。
「後で……返事をしますって……。
今は頭がパニクってまともに考えられないからって……」
「……」
口には出さないが、その場で断れよ、ってオレは心の中で呟いていた。
我ながら身勝手だとは思う。
「私……私ね……その人のこと……
部の仲間とか、先輩後輩とか……そういう意味では好き……。
でも……」
言うまでも無いが、そっちのケはさつきには無い。
が、さつきはポツポツと喋りだした。
その人には入部当初からすごく面倒を見てもらったこと、とか
すごく尊敬してる人だ、とか
これで断って、今後部内で気まずくなったりしたら、とか……
さつきはまだ混乱しているのか、心の整理がつかないのか、
何度も同じ事を口にしたり話題が戻ったりと、話がなかなか進まない。
オレは辛抱強くさつきの話を聞いてたんだけど……
「……」
次第に腹が立ってきた。
いや、当然さつきに対してではない。
今日という、一大決心をしたそんな日に
こんなとんでもないイベントというかトラブル、を用意しやがった運命というか
そういうものに対して猛烈に腹が立ってきた。
「それで、それで……」
「さつき」
オレはさつきの言葉を遮った。
「……」
さつきはオレを見つめた。
オレもさつきを見つめ返す。
「お前は、その人のこと……そっちの意味で、好きなのか?」
「……」
さつきは頭を振った。
「なら……」
オレは毅然と言い放った。
「断っちまえ」
「……」
「好きじゃないなら断ればいい……つーか、絶対断れ」
「……」
さつきが怪訝な顔を俺に向けた。
何でオレにそこまで言われなくちゃならない、と書いてある。
「大介……なんで……」
「オレはお前のことが好きだからだ」
言った。
言ってしまった。
もう止まらない。
「ちょ……だい、すけ……?」
「オレは、オレの方がさつき、お前のことが大好きだからだ」
あまり感情を表さないさつきが、思いっきり狼狽している。
「ちょ、ちょ……じょ、じょう……」
「冗談なんかじゃないっ!
女なんかに、いや、他の誰にも、さつきを渡したくないっ!!」
オレの口調が次第に激してくる。
「な、な……なんで、きゅうに……」
「急なんかじゃないっ!! ずっと……ずっと前から悩んでた。
言おうと思って、でも、決心つかなくて……。
だから、今日絶対言うんだって。それで、お前が来るのをずっと待っててっ!!
だっつうのに、何でこんな相談受けなくちゃなんねえんだっ!!」
…………………………
我ながらとんでもない告白だと思う。
後になって思い返せば返すほど、恥ずかしくて死にたくなってくる。
が、この時は完全に頭に血が上っていた。
「えと……その……ごめ……」
「別にさつきに怒ってるわけじゃないっ!!
オレは……オレは、ただ……」
この時点で、ようやく俺の頭は冷めてきた。
そして、たぶん、この時の今度のオレは顔面蒼白になってたと思う。
「ぅぁ……」
オレは……オレってやつは、何つー事を……。
他にも言い様ってもんが……いや、そんなことより……
「さつ、き……?」
恐る恐るさつきを見る。
さつきは……
「……」
完全に固まっていた。
目を見開いて、口をポカンと開けて……
「あの……さつき、さん……?」
「……」
さつきは、突然回れ右をするなり、
「はやっ!?」
猛ダッシュでオレの視界から消えたのだった。
オレは……
「……」
後を追えなかった。
「……」
オレってやつぁ……オレってやつぁ……
……すっげえ欝だ……
それから、どうやって家まで戻ったのか、記憶に無い。
夕飯も断り、部屋のベッドにうつ伏していた。
「……」
思い返すほど、恥ずかしさやら後悔やらが湧き出てくる。
オレなんかに相談を持ちかけるくらい混乱してたさつきに、
さらに追い討ちをかけるようなことをしてしまって……
他にも言いようがあっただろう、とか
今日じゃなくて、後日でも良かったじゃないか、とか
そもそも告ろうとしたこと自体間違いだったんだ、とか……
「うわぁぁ……」
明日からどんな顔してさつきに会えば良いんだ……。
そんな、後悔の念に苛まれながら、オレは何時の間にかまどろんでいった……。
………………………………
「う……」
寝苦しくて目が覚めた。
嫌な夢を見ていた気がする。
まあ、飯も食わず、着替えもせず、部屋の明かりもつけたまま。
では寝苦しいのも当然か……。
オレはゆっくりと部屋を見渡して、
「うわあぁっ!?」
危うくベッドから転げ落ちるところだった。
いや、だってその、さつきが、さつきのやつが
ベッドのすぐ横で正座して俺の顔を覗き込んでいるものだから。
「さ、さ、さつきっ!?」
すっげえ心臓に悪いぞ、おいっ。
「ん……おはよう……」
いつもの、ごく淡々とした口調。
「い、いつからここに?」
「……9時。おばさんに上げてもらって」
ちなみに、今は11時。
「起こせよ」
「……ん」
つーか、こんな時間になっても帰さんのか、うちの親どもは。
いくら幼馴染みだからって……
いや、まあ、そんな事より……
「……」
「……」
二人して、沈黙してしまう。
「あ、あの、さ……」
さっきのこと……なんて言えばいいんだ?
ごめんて謝るべきか、あれは全部冗談とでも言えば良いのか……
えっと……
「……」
言葉が続かなくなったオレに、さつきは
「……びっくりした」
「……」
「……本当に驚いたんだからね……」
「う……」
「ただでさえ混乱してたのに、急にあんなこと言われて……」
まったくもって、さつきの言うとおりなわけで
「その、ごめ……」
謝ろうとするオレに、
支援
「ここに来る前に、先輩に電話した」
「……」
俺の言葉を遮り、さつきは淡々と言う。
「『ごめんなさい』って。『そう言ったお付合いはできません』って」
「あの……さつき……オレの言葉、そんなに真に受けんでも……」
ぶんぶんと、さつきは強く頭を振った。
「それで……それで、ね……」
まだ、何かを言おうとするさつきの前に、オレは沈黙する。
「『私には、もう、好きな人がいます』って」
「……」
「……」
…………………………
さつきが、オレを、上目遣いでじっと見つめている。
オレは、ちょっとたじろぎ、そして
「……さつき」
しっかりと腹を据えた。
ベッドから降り、さつきの前に正座して向き合う。
「改めて……オレは、ずっと前からさつきの事が好きなんだ。
……オレと、付き合ってほしい」
さつきは俯き、ややあって顔を上げて、
「私も……私の方が……もっと前から大介の事、大好きなんだから」
そういって、涙と一緒に笑顔を浮かべるさつきの顔は、
オレの知るかぎりで一番の笑顔だった。
「……さつき」
喜びとか、幸福感とか、とにかくいろんな感情で、胸が一杯になる。
オレはたまらず、さつきを抱きしめた。
「……ん」
さつきは黙ってそれを受け入れてくれる。
「さつき……さつきぃ……」
「大介……」
さつきの体はすごく華奢で、柔らかくて、良い匂いがして……
まあ、さすがに、親のいる自宅でアレまでしようとは思わないけど……
キスぐらいなら……
「さつき……その……」
じっと、さつきの顔を覗き込むと、さつきは……青ざめていた。
「大介……後ろ」
「うし、ろ……?」
壮絶に嫌な予感がして振り返ると案の定
「か、母さん……おばさんまで……」
オレ達の母親ーズが、ものすんごい笑顔を浮かべて立っていた。
「帰りが遅いから迎えに来てみれば……」
「いいもん、見させてもらったわぁ〜、だ〜い〜す〜けぇ〜♪」
「あ、あははははははははは……」
「……」
もう、笑うっきゃねえや、こんちくしょう……。
こうしてこの日、オレとさつきは幼馴染みから恋人同士となった。
その日のうちに親バレというオマケつきで。
352 :
書いた人:2005/04/21(木) 22:19:15 ID:q1DbtfFI
というわけで、以上っす
書いてて予想以上に長くなってしまいました
一応話としてはこれで完結なのです
恋人同士になるまで、をテーマにした場合ですと……
ここから先の話は恋人同士になって以後の、ひたすらイチャつくバカップルな話になってしまって
終わりというものがなくなってしまいますので……
でも、まあ……その後のエロい話を書いたほうがいいでしょうか?
『嬉し恥ずかしな初めて』
とか幼い頃以来の
『一緒にお風呂〜♪』とか……
書きたきゃ遠慮なくどんどこ投下!投下!
需要は間違いなくある
GJ!!!!
続編見れて感激です!
続き期待!!
…………。
職人さんは悪くないのに…、「である」が…、「である」が一つあるだけで…。
ガッデム!俺を洗脳しやがって!許さねえネンnうわ何をするやめhmtfjayふじこpkcgmブツン!ズッニュー!
壮絶スレ違いスマソ…orz
┏━━━┓
┃ ハァハァ ┃
┗━┳━┛
(*´Д`)ノ
親バレワロタ
moebius1です。
>>313-321の続きです。
感想を下さった方、ありがとうございます。
とりあえずもうしばらく投下させていただきます。
「登場人物が多くて混乱した」という意見をいただいたので、冒頭に登場人物紹介をつけてみました。
(自分でも固有名詞多すぎとは思ってますので。要らなければ止めます)
登場人物etc紹介
御堂創一郎…泰山高校一年生。親元を離れ寮生活をしている。
古鷹青葉…聖マリア・マッダレーナ女子高一年生。御堂の幼馴染。
初芝和馬…泰山高校一年生。創一郎の友人。合気道部所属。
妙高那智子…聖マリア・マッダレーナ女子高一年生。青葉の友人。
私立泰山高校…中高一貫の男子校。自由な校風で知られる。寮完備。
私立聖マリア・マッダレーナ女子高校…カトリック系の女子校。お嬢様学校として有名。
私立北星高校…カトリック系男子校。聖マリア・マッダレーナ女子高の姉妹校。
駄菓子屋「チチヤス」…泰山高校の近くにある駄菓子屋。正式な屋号は不明。
***********************************************************
「青葉が男から告白された」
そんな話を聞かされた、その日の放課後。
俺は一人で寮へと帰っている。
和馬は合気道部で道場へ行った。とくに用事もなければ帰るに越したことはない。
そんなわけで足早に学校を離れ、校舎のある丘を下り、駄菓子屋「チチヤス」のそばを通りかかったときだった。
「創一郎くん」
声をかけてきた相手に俺は驚いた。
青葉がこんなところで待っているなんて、めったにない。
しかも、いつも一緒の那智子もいない。
「どうしたんだよ。珍しいな」
朝青葉たちに会うのも、月に二、三度あるかないかといった頻度だが、帰りに会うのはもっと珍しい。
「うん……創一郎くんに用事があったから」
「合唱部は」
「今日は部活はお休みなんだ」
青葉は合唱部に所属している。ソプラノらしいんだが、俺はまだ一度もこいつが合唱しているのを見たことはない。
「ふーん」
俺はそっけなく答える。でも、青葉の用事が何かぐらい、すぐにぴんと来た。
「今日、忙しい?」
青葉はためらいがちにそう聞いた。おれは首を横に振る。
ほっとした表情で、青葉は俺の方に近づいてきた。
「じゃあ、一緒に帰ろ? たまには、いいでしょ?」
ああ、と俺は答えた。
俺たちは並んで歩く。こうやって帰るのも高校に入ってめっきり減った。
青葉が合唱部に入部したことも含め、段々俺たちの生活のリズムは合わなくなっている。
だから共通の話題も思いつかない。
黙って歩くのに耐え切れなくなって、俺はカバンから今朝青葉から渡された弁当箱を取り出した。
「これ、ありがとうな。一応洗っておいた」
急に言われて、青葉は少しびっくりしたようだったが、黙って俺から弁当箱を受け取った。
「……おいしかった?」
「ああ、うまかった。おばさんにお礼言っといてくれよな」
「……良かった」
俺の言葉に、青葉の顔がぱっと笑顔に変わった。
……なんだ? 母親の料理ほめられるのが、そんなに嬉しいのか?
それはそうと、用事とやらをそろそろ聞かねば。
まあ「あれ」のことだろうとは分かっているんだが。
「それで……用事って?」
芸のない聞き方だが、長い付き合いの青葉に、いまさら遠回しに質問できるほど俺も器用じゃない。
だが、青葉の方は単刀直入に切り出され、少し言いにくそうだ。
仕方ない。こっちから言ってやるか。
「お前、北星の生徒に告白されたんだってな」
「なっ何で知ってるの!?」
慌てた青葉は、思わず立ち止まる。
「今日な、『チチヤス』で別れたあと、那智子が教えてくれた」
「……なっちゃん、忘れ物したって言ってたのに」
「那智子を、責めてやるなよ。あいつもえらく悩んで俺たちに相談したみたいだからな」
と、一応フォローを入れておく。こんなことで女の友情にヒビが入ったら、俺も寝覚めが悪い。
「初芝くんも、知ってるの?」
ああ、とつぶやき、俺は歩き出す。青葉も我に帰ると、再び俺と並んで歩き出した。
「……ねえ、どうしたらいいと思う?」
青葉の声には困惑の響きがあった。
当然だと思う。俺が知っている限り、青葉が男から告白されたのはこれが初めてだ。
しかも、青葉は小さい頃から引っ込み思案で、それは今もあまり変わっていない。
そんな青葉が、突然見知らぬ他人から告白されれば、まず最初に来る感情は困惑だろう。
「どうしたらって……そんなこと、俺が答えられるかよ」
一応定番の答えを返す。というか、俺だって困惑してる。どう答えろっていうんだ?
「ねえ、真剣に考えてよ……私、どうしていいか分からないの」
青葉はちょっと口を尖らせて不満げな表情を見せた。
「……とりあえず、相手がどんなやつか、言ってみ?」
仕方なく俺は基本的なことから聞いていくことにした。
「えーっと……」
口ごもる青葉。まあそうだろう。言葉だけで見たことのない人間を説明するのは難しいもんだ。
「とりあえず名前と学年。後は、たとえば、背格好とか、性格とか、そういうの」
ヒントを与えられて、青葉は少しだけ顔を緩めた。
「えっとね、名前は望月近衛くん。私たちと同じ一年生。……背は、創一郎くんと同じぐらい。でもちょっとだけがっしりしてるかな」
そう言って俺の顔を見ている。おいおい、もっと他にもあるだろうが。
「髪型は」
「創一郎くんみたいに、短くしてる。あ、ちょっとだけ茶色に染めてるみたい」
ちょっとおしゃれクンか。ちなみに北星は「勉強さえできれば、あとは何でもいい」って校風だから、その辺は自由らしい。
青葉の通う「マリ女」は校則が厳しいから、そういったことが印象に残るのかもしれないが。
また青葉は黙る。
仕方なく俺は質問を続けた。肝心なのが抜けてるからな。
「顔は」
「え?」
俺の質問に、青葉は少し首をひねる。
「いい男かって聞いてんの」
「そ、そんなの……わかんないよ……」
何気なく言ったつもりだが、青葉は何故か照れている。
ふーむ。これは結構いい男なのかも知れんぞ。少なくとも悪印象ではない、か?
まあ、いい。とりあえず俺と背格好は似てる男で、顔は悪くない、と。
「で、どう答えたんだ?」
「え? あ、うん……とりあえず、『まだあなたのこと全然知りませんから、答えられません』って」
「月並みな返事だなあ……」
そんな俺の感想に、青葉はむっとした顔で答えた。
「だって、本当なんだもん」
青葉は素直で、それはそれでいい事なんだが、あまりに素直なのも困りものだな、と俺は思う。
そんな事言ったら、相手の言う事なんて分かりきってるのに。
「そうしたらね……」
「『じゃあ、まず俺の事知ってください』とか言われたんだろ」
「なっなんで……」
知ってるの、と言いかけたまま、青葉は固まっている。何で分かるかって? そりゃ俺だってそう答えるからな。
呆れ顔の俺を見て、青葉は落ち着きを取り戻したみたいだった。
うつむき加減に俺と並ぶ。
「ねえ……」
「ん?」
「男の子って、女の子のどんなところが好きになるのかな」
青葉はそうつぶやく。どうやら、なぜ自分が告白されたのか、よく分かってないらしい。
前にも言ったが、客観的に言って青葉は結構かわいいと思う。
ちなみに青葉の母親も町内で評判の美人だ。そして、青葉は最近ますます母親に似てきたと思う。
というか、俺の初恋の人は青葉の母親だ。いや、それはどうでもよくて。
だから、青葉を見て一目ぼれする奴がいてもおかしくはないだろう。
それに、体つきも中学の頃に比べてぐっと女らしくなった。
まあ、尻に比べてちょっと胸が控えめかもしれないが、十分な発育だ……って、俺はオヤジか。
「ねえ、創一郎くんなら、どんな女の子が好き?」
そう言われても、俺は答えようがない。何しろ、青葉の母親以外女を好きになった事がないからだ。
「まあ、美人で、優しくて、スタイルがよくて……料理がうまけりゃ言うことなし、かなあ」
青葉を平凡と馬鹿に出来ないな、俺。でも、具体的な相手がいないし……。
「そう……」
そういうと、青葉はまた寂しげにうつむく。
「で、どうすんだよ。OKすんのか? 断るのか?」
俺の女の趣味より、とりあえず青葉のことだ。だが、青葉はちいさく首を振る。
「わかんないよ。だって望月くんのこと全然知らないんだもん」
「かと言って、付き合ってみなけりゃ相手の事を知りようもないぞ」
青葉は真面目に考えすぎだ、と思う。付き合うにしろ断るにしろ、それ相応の正当な理由がいると思っているらしい。
一目ぼれしたんなら付き合っちまえばいいし、嫌なら「今は誰ともお付き合いしたくありません」とでも言えばいい。
要はフィーリングの問題じゃないか?考える前に飛べ、ってな感じで。
でも、青葉はそういうとき、飛ばずに立ち止まるタイプだ。
そのとき。
「……創一郎くんが告白してくれたんなら良かったのに」
青葉がうつむきながらぽつりとそんな事を言った。
はい?
俺はとんでもないことを聞いたような気がして、思わず青葉の顔を覗き込む。
青葉がはっと口を手でおさえた。
「あの、ち、違うよ? わ、私が創一郎くんのこと好きとか、そういうんじゃなくて……」
腕を振って慌てて否定する。
「創一郎くんのことならちっちゃい時から知ってるし、それなら、好きとか嫌いとか、すぐ答えられるから、あの、だから……っ」
みっともないぐらい取り乱してる。
いや、俺だって目茶苦茶動揺してるんだが。
と、とりあえず青葉を落ち着けなくては。
「だって、創一郎くんのことは、その、何でも知ってるから……」
「わ、分かったから落ち着け。叫ばなくてもいいからな?」
両手でよしよし、となだめる。
そのうち、青葉はようやく落ち着きを取り戻した。
でも青葉、顔が真っ赤だ。
……うん、俺も頭に血が上ってる。顔が火照ってるのが自分でも分かるよ。くそっ。
それからしばらく、俺たちは黙って歩き続けた。さすがに俺も声をかけづらい。
そうしているうちに寮に着いちまった。俺が住む「泰山寮」だ。
俺が寮の門のところで立ち止まると、青葉が思い切って口を開いた。
「今度の日曜日、空いてる?」
「……なんでだ?」
「望月くんがね、一緒に遊びに行こうって……」
いきなりデートかよ、なかなか強引だな望月くん。
「でもね、いきなり二人っきりは嫌だったから『誰か他の人と一緒ならいいです』って言ったの」
おいおい、だからって俺が付いて行ったら望月くん確実に引くぞ。
「そしたら、なっちゃんが『ダブルデートならいいんじゃない?』って言って、望月くんが自分の友達を呼ぼうかって言うから……」
ああ、なるほど。やっと俺は理解した。
「つまり、俺と那智子を入れた四人で遊びに行こうってわけか」
こくん。青葉がうなづく。
「知らない男の人ばっかりじゃ、怖いし。でも、創一郎くんが一緒なら安心だから、ね?」
「……俺が駄目だって言ったら?」
はっきり言って気が乗らない。断れるなら断りたい、こんなの。
「それなら……初芝くんにお願いする……けど」
青葉が泣き出しそうな声でそう言った。そんなにおびえなきゃいかん相手なのか、その望月くんは?
はぁ。仕方ない。これも幼馴染のためだ、付き合いましょう。
「分かったよ。もし俺が駄目だったら、和馬に頼んでやる」
まあ、ほぼ確実に俺が行く事になるんだろうな。俺暇だし。
「……ありがとう」
青葉はやっと笑ってくれた。
「どこに行くんだ?」
「セブン・オーシャンズだって」
ああ、あの水族館と遊園地が一緒になったテーマパークか。
「わかった。明日の夜にでもまた電話するから。じゃあな」
青葉に軽く手を振ると、俺は後も見ずさっさと寮に入っていった。
なぜって、まだ顔が火照っているのを青葉に見られたくなかったから。
その夜、風呂から上がって部屋に帰ってきた俺は、さっそく和馬に「青葉のお願い」について話した。
「青葉ファン」のこいつなら、もしかして喜んで付き添いをしてくれるんじゃないかという、かすかな望みを託して。
だが。
「駄目だな。その日は合同練習で隣の県まで行かなくちゃならん」
あっさり望みは打ち砕かれた。
……それはそうと和馬よ。風呂上りにパンツ一丁で、腰に手を当てながらプロテイン入り牛乳を飲むのは止めてくれ。
お前は「薔○族」か「さ○」のモデルか。
「というか、青葉ちゃんはお前をご指名なんだろ。お前が行けよ」
「気がのらねえ」
俺はそう言ってベッドに横になる。でも、なぜ気が乗らないのか俺自身よく分からない。
だが、和馬は意味深な笑いを浮かべてこちらを見ている。
「なんだよ」
「いやあ……なんだかんだ言って、お前青葉ちゃんを取られたくないのかなと思ってな」
「そんなんじゃねえよ」
そう言って和馬に背を向ける。和馬はそれっきり黙ってしまった。
確かに、一抹の寂しさはある。
ずっと青葉は俺の後ろを追っかけてきたようなところがある。
友達を作るのが苦手な青葉を心配して、青葉の母親は俺に「青葉をお願いね」といつも言っていた。
俺が遊びに誘うと、青葉ははにかみながらついてきた。そして、走る俺の後を一生懸命追いかけてきた。
ずっと俺は青葉の保護者のつもりでいた。
そんな役目も今度で終わりかもしれない。
だから俺は感傷的になっているんだ。俺はそう思おうとした。
『……創一郎くんが告白してくれたんなら良かったのに』
……くそっ。なんであんな台詞、今思い出すんだ?
あんなの、大した意味はない。青葉がそう言ったじゃねえか。
俺は頭まですっぽりと布団をかぶった。
今は何も考えたくない。寝ちまえば、変な事考えずに済む。
だがその時、部屋の内線電話がけたたましく鳴った。
和馬がとる。
そして、俺を揺り起こす。
「お前に電話だとよ」
俺は黙って起き上がり、受話器を受け取る。
「代わりました、御堂です」
電話が切り替わるノイズがして、なじみ深い女の声が聞こえてきた。
「あ、御堂? 私」
「那智子か。どうした、珍しいな」
今日は珍しい事続きで、もう驚かないが。
「さっき青葉から聞いたの。今度の日曜、あんたが来るんでしょ?」
「決定事項かよ」
「違うの?」
意外そうな那智子の声。俺は聞こえないように舌打ちしてから話し続けた。
「ああ、和馬は練習で無理だからな。俺が行く事になると思う」
「……やっぱり。ねえ、あんたどう思う?」
「どう思うって、何が」
「青葉、OKするかな」
俺に聞かれても困る。というか、それを決めるためのデートじゃないのか?
「そんなこと、俺も分からねえよ」
「私ね……青葉は断ると思うの」
那智子の声は暗い。全く、今日はいつものうるさい那智子らしくない。
「なんで」
「だって、あんたを誘ったって事は、望月くんにあきらめさせようってことでしょ?」
はあ、俺は心でため息をついた。やっぱり勘違いしてる。
だが、ここで俺と青葉のこれまでの付き合いとか、俺たちがお互いをどう思ってるか説明するのも面倒だった。
「別に俺でなくてもいいんだよ。和馬でもいいって青葉は言ってたんだから」
「あ……そうなの?」
「知らない男と出かけるのが不安だったんじゃないか?……あと、お前な」
「何よ」
俺の言葉に挑発的な響きがあったのを、那智子は聞き逃さなかった。
「気を回しすぎなんだよ。青葉が付き合うかどうかなんて、あいつが決めることだろ」
「そりゃ、そうだけど……出来れば青葉の思うようにしてあげたいじゃない」
「今度のデートで青葉が相手を気に入れば付き合うだろうし、そうじゃなきゃ断るよ」
「それって冷たくない? 青葉が付き合いたいなら応援したげたいし、断りたいならそういう雰囲気に……」
「そりゃ分かるけどな。俺は青葉の意思を大事にしたい。それに……」
「それに?」
「あいつを信じてる。あいつの判断なら、それは間違ってないって」
那智子が電話の向こうで黙る。俺も何も言わなかった。
「青葉の事、よく分かってるんだ」
「付き合い長いからな」
電話口で、那智子がふっと息を吐いたのが聞こえた。
「……分かった。私も青葉の判断を信じるわ。……ごめんね、夜遅く電話して」
「気にすんな」
「ありがと。お休み」
そこで電話は切れた。そっと受話器を戻す俺。
和馬がすぐ後ろに立っていた。
「信じてる、か。でも、悟ってるような事言っても、お前も迷ってるんだろ」
「かもな」
そう言って俺は再びベッドに横になる。
さっき俺は那智子に嘘をついた。どこがどう嘘とは言えないが。
でも、俺がさっき言ったのは建前にすぎないってことを俺は知ってる。
布団を頭までかぶり、寝る体勢。今日は本当に疲れた。
「創一郎よ」
不意に和馬が声をかけてきた。俺は黙っている。
「デート、ぶち壊そうなんて思ってないだろうな」
どきり。
和馬の言葉が俺の胸を刺す。
そうだ。俺は心のどこかでそんなことを考えていた。そして、和馬の言葉に言い当てられ、俺は動揺している。
「……んな事しねえよ」
「分かってる、冗談だ」
和馬が部屋の電気を消した。奴が自分のベッドに入る音がして、すぐ静かになった。
もう寝ちまったようだ。
だが、俺はその夜なかなか寝付けなかった。
(続く)
さ、先が……
面白い展開になってきたぁ!
プロテイン入り牛乳は、漏れも投下しようとしている小説に
そのフレーズが入っていたり…
GJ
さあ加速してきました
「よし、連絡事項は以上だ」
「起立、礼!」
委員長の凛とした声が響き、一瞬後に2―D教室全体の緊張が解ける。
金曜日の放課後ともなれば無理も無い。
ただでさえこの銀城学園は繁華街の近くにあるし、これから土日の休みが待っている。
めいめいが散らばり、友人と他愛の無い雑談をかわしながら下校していく。
そんな中、他の生徒達と同じように、友人達が俺の方へと向かってくる。
「晶ぁ。これから楠木達とカラオケ行くんだけど、晶もどうよ?」
「高杉君も行こうよ。最近皆でつるんでないしさー」
安田と鍔村、相も変わらずワンセットの二人――人のことは言えないが――が俺を誘ってくる。
折角の誘いだが、今日は駄目だ。俺はかぶりを振って鞄を閉める。
「悪い、今日は亜矢ネエの検診の日なんでな」
「あー……そうだっけか、こっちこそスマン」
「そっか。遠野さんの付き添いなら仕方ないね」
「いいさ。今度また誘ってくれ」
どことなくションボリとした二人の雰囲気を吹き飛ばすように、笑ってみせる。
多分に軽薄なものが混じった表情だったが、それでもその場が和やかになった。
「それでは、失礼するよ」
片手を上げて挨拶をし、そのまま教室を出て行く。目標は隣の教室、2―Cだ。
見れば、隣も今終わったらしく、こちらの教室と大差ない喧騒を見せている。
俺は教室を一瞥し、目当ての顔を見つけてそちらへと向かう。
目標、遠野亜矢は他の女子生徒となにがしかの雑談をかわしている様だった。
「亜矢ネエ」
俺の短い呼びかけに、亜矢ネエが友人との雑談を止め、こちらを向いてにっこりと微笑む。
儚い、という表現がぴったり来るような淡く、それでいて印象に残る笑みだ。
「今日は検診だろ。付き添うよ」
「晶ちゃん……うん、ありがと」
「……礼を言われる事じゃないさ」
笑って見せる俺に、亜矢ネエも微笑を深める。相も変わらず、脆い笑顔。
そこに先程まで亜矢ネエと話していた友人が割って入ってくる。きりりとした眉の、凛々しい女学生だ。
「そうは言っても愛しい弟分がこうして迎えに来てくれれば、心はドキドキ、顔は微笑み、言葉は弾むってもんさ」
「何だ新谷、居たのか」
「……アタシは最初から居たわよ。相変わらず失礼な奴だねアンタは」
「冗談だよ。お気に召さなかったか?」
くっくっと笑う俺に、新谷のこめかみに青筋がピクリと浮き上がる。
新谷はいつもこの調子で俺を、――若しくは俺達を――からかってくる。なので、自然と返しもこのようになる。
「全ッ然笑えないね。亜矢もこんなのの何処がいいのか」
「万年男日照りのお前には分からんのさ。この俺の一晩煮込んだカレーのような人間性の素晴らしさが」
「そもそもカレーと人間性の例えの関連性があたしには理解できないっつの」
「いかんなあ……いかんぞ新谷。もっと視野を広くもて。でなければいつまで経っても独り者だぞ」
「誰がいつ彼氏欲しいったのよ!」
「おや、違ったのか? てっきり俺達の仲を妬いてちょっかいをかけているのかと思ったが」
「誰が……ッ、ってあーもー、相変わらずあんたと話してると気が抜けるわ……」
始終ニヤニヤと笑いながら言葉を紡ぐ俺に辟易して、はぁ、と溜息をつく。
「気を抜きたくないのなら、お前のからかい癖をどうにかする事だな。そうすれば俺もお前をレディとして扱ってやろう」
「言うに事欠いてレディと来ましたか……ホントお前って、変な奴だな」
「お前に言われたく無いな。亜矢ネエ、行き遅れは放って置いて病院に行こう」
「あ……うん。雪ちゃん、じゃあね」
誰が行き遅れか!と憤慨している新谷を尻目に、俺は亜矢ネエの手を引っ張る。
俺の名前は高杉晶。そしてこの人は遠野亜矢。
軽薄な男と、一年遅れの年上の同級生。
銀城学園二年生所属の、それが俺達幼馴染だ。
何となく思いついたので投下してみました。
で、その後気付いたのですが、設定が243氏の作品にもろかぶりだった……がふ。
でも折角思いついて、ちょろちょろ書けそうなので、マターリと投下していきたいと思います。
生暖かい眼で見守ってやってくれるとありがたいです。
マターリ待ってるよ
ヤレヤレ、神が多くてボク困っちゃいますな!
もう一つの常駐先スレにはなかなか神が現れないけどなあ。(´・ω・`)
>375
そこで君が何か投下すれば神に
fox2!fox2!
378 :
箸休め:2005/04/23(土) 21:51:38 ID:9MN6boZD
「花見?」
生暖かい風が吹くなか、大学の中庭で。
突拍子もない提案に、私は呆けた顔で聞き返していた。
「そう、花見」
洋が気にした様子もなく返す。
何が問題なのかと言うかのように。
「もうだいぶ散ってると思うんだけど」
四月の下旬になった今、花を見られるのは地面でだけだろう。
「少しは残ってるだろ、多分」
「花見じゃないじゃん」
「確かにな」
苦笑する洋を見て、私はため息をついた。
「そもそも私行ったし。花見」
「まぁ無理にとは言わねぇよ」
洋がこうやってどこかに行こうと誘う時は、大抵何かある。
例えば初めてバイト代が入った時に、意味もなくなにかおごってくれたり。
全く意味のない時も、ないわけではなかったけれど。
「別にいいけどさ、私だってそんなに暇じゃないんだし」
そんなに急に言われても困る。
「いや、だから無理だったら別にいいって」
繰り返しながら、洋が煙草を取り出す。
あまりにも淡白で、今回は何かあるようにも思えない。
379 :
箸休め:2005/04/23(土) 21:52:48 ID:9MN6boZD
「んー。じゃあさ、なにかおごってくれる?」
「無理。今月厳しいからな」
「えー」
「バイト代だってそんなに多いわけじゃねぇし」
煙草に火をつけて洋がぼやく。
「家庭教師やってるんだっけ?」
「あぁ。時給はいいんだけどな。時間数が少ないから」
仕送りが少ない洋は、バイトで生活費をまかなっている。
奨学金を使う気はどうやらないらしい。
「じゃあ、煙草やめたらいいじゃん。結構お金かかるんでしょ?」
いつも洋が喫っている煙草は海外産で、国産のものより割高だ。
「やめる気はないんだろうけど」
「まぁな」
細く煙を吐き出し、薄く笑う。
「で、どうするんだ?」
「どうしようかなぁ」
ちらりと時計に目をやる。もう次の講義が始まる時間だ。
「ごめん、あとでもいい?」
「あぁ。余裕があるようなら、あとで連絡してくれ」
「分かった」
「じゃ、な」
「ん。またね」
軽く手を振って、私は講義室に足を向けた。
いいなぁ花見。
幼馴染ってものは不思議なものだ。
腐れ縁の男女を、友達以上恋人未満なんて良くいうが、さしずめ幼馴染は他人以上家族未満という所か。特に、何がしかの理由でお互いが側に居続ければそれは如実になる。
それは俺たち二人も例外ではない。
「で、どうだったって?」
「うん……変わりないって。今月も学校を休まないで良さそう」
そう言って淡く笑む。粉雪のような微笑。ほっそりとした顎が、本当に安心したようにかすかに揺れる。
亜矢ネエは体が弱い。
何が、とか何処がとかじゃなく、全体的に普通の人より少しずつ弱い。
言ってしまえば、同じスライムでもメタルスライムぐらいにHPが少ない。
いや、メタルスライムはアレで固いな。
柔らかいメタルスライム。それが亜矢ネエだ。
違う。そもそも、柔らかかったらメタルじゃないな。
ガンダムとジム……いや、ザクと旧ザク。これだ! 亜矢ネエは旧ザク!
……話が脱線した。
兎も角、そんな事もあって亜矢ネエにはこうして定期検診が必要だし、時には寝込んでしまったのを介護する事もある。
だから、俺がこうして側に居る。
そうして、今の関係がある。
「そっか……でも無理は禁物だぞ。今度目の前で倒れたら、人工呼吸と称してちゅーしてやるからな」
検診へのご褒美としてくしゃくしゃと頭を撫でながら、俺も笑う。こちらは多分に軽薄な笑み。
「ちゅー……するの?」
子供じゃないのに、と言いながらも毎回撫でられるがままにしている亜矢ネエ。
「おう。しかもそれは生半可なものじゃないぞ。ディーーーーップなちゅーだ。舌も絡めちゃうよ」
俺の下品な台詞に、流石に亜矢ネエも赤くなる。
とは言え、二人ともそういう冗談には慣れっこだ。だから、
「それも……いいかも」
なんて顔を赤くしながらも亜矢ネエも頷いて見せたりする。
「馬鹿、それ目当てでぶっ倒れたら本当に怒るからな」
言って、撫でて乱れた髪を整える。コミュニケーションにはきちんとしたアフターケアも必要なのだ。言葉然り、行動然り。
「うん……ありがとう」
そう言って、今度はなんのてらいもなく純粋に微笑む。
やり取りは違えど、俺たちはいつも最後にこの言葉をかわす。
即ち、
「謝る事じゃないって。俺が好きでやってんだからさ」
そう、俺は本当に好きでやってるのだ。
亜矢ネエの世話を。
亜矢ネエとの関係を。
亜矢ネエの側に居る事を。
俺は、俺達はそうして十六年間、心地よくも停滞した関係を保っていた。
>>372の続きです。
勢いで書けたのはここまでですので、これからはマターリと頑張りますです。
茜色の空氏
乙です。年上の幼馴染…なんか儚げでいいっすね。
マターリ頑張ってください。
↑
失礼。専ブラのコテハン記憶にチェックが入ってました。
コテハンで雑談する気はありません。すいませんでした。
登場人物etc
御堂創一郎…泰山高校一年生。親元を離れ寮生活をしている。
古鷹青葉…聖マリア・マッダレーナ女子高一年生。御堂の幼馴染。合唱部所属。
初芝和馬…泰山高校一年生。創一郎の友人。合気道部所属。
妙高那智子…聖マリア・マッダレーナ女子高一年生。青葉の友人。
望月近衛…北星高校一年生。
******************************************************************
思いがけず俺は、青葉、那智子、そして望月近衛とダブルデートするはめになった。
デート当日、俺はいつもより少し早く起きた。
同室の和馬はすでに合気道の練習に出かけたのか、ベッドは空だった。
着替えを済ませ、糞まずい朝飯を胃袋に流し込むと、俺は寮を出た。
空は「秋晴れ」という言葉がぴったりな天気だ。これで青葉のデートのお供でなけりゃ、心も弾むんだろうが……。
青葉と那智子とは駅で待ち合わせる事になっている。
今日の目的地「セブン・オーシャンズ」は電車で1時間ほどのところにある、数年前で来たテーマパークだ。
望月近衛は別の町に住んでいる(らしい)ので、セブン・オーシャンズの入り口で合流する予定だ。
ここまでくると、望月がどんな男か、俺も少し楽しみになってきた。
そんな風に思いながら、俺は駅前の広場に足を踏み入れる。
すぐに改札前で待っている青葉と那智子の姿を見つける事が出来た。
ほぼ同時にお互いを見つけて、俺たちは軽く手を振りあう。
「おそいぞ、御堂!」
那智子がびしっと俺を指差しながら言う。朝からテンションの高い奴だ。
「おはよう、創一郎くん」
反対に青葉は、まだ寝てるんじゃないかと思うぐらいおっとりと俺に挨拶した。
俺は軽くうなづいて、青葉への挨拶代わりにした。
「創一郎くん、今日はちゃんと起きれたんだね。遅刻しなかったしね」
青葉の言葉に、俺は憮然とした顔を返す。
確かに、俺は遅刻常習犯だがな。
「人を子ども扱いするんじゃねーよ」
そう言って俺は青葉のおでこを人差し指で軽くはじく。
やられた青葉は自分のおでこをさすりながら、それでも笑っている。
次の瞬間、その顔がちょっとだけ曇った。
「ねえ……」
青葉が尋ねてくる。
「なんだ」
「私の格好、変じゃないかな?」
改めて青葉の姿を見る。
目にまぶしい白のワンピース。ピーチピンクのデニム地の上着。
ワンピース一面に散らされた花柄が少し子供っぽいが、青葉には似合っている。
「ああ、いいと思う。よく似合ってるぜ」
俺は率直に感想を述べた。そう言われて青葉ははにかんでいる。
まあ、生まれて初めてのデートだ。不安になる気持は分かる。
逆にものすごく気合を入れた格好をしてきても、それはそれでおかしいし。
それより俺が驚いたのは、青葉の髪型だ。
普段の三つ編みを解いて、シンプルなストレートヘアにしている。
そして、腰まで伸びた髪の先をリボンで束ねている。
……はっきり言って、俺は青葉のこんな髪型を見た事はない。
俺の記憶が正しければ、初めてあったときから青葉はずっとお下げ髪だったはず。
俺は服装より髪型に、青葉の今日のデートに対する意気込みを感じた。
あ、ちょっと嫉妬してる俺。いかんいかん、今日はサポートなんだからな。
「創一郎なんかに聞いても当てになんないってば。私が太鼓判押してるんだから、大丈夫っ」
俺が複雑な心境でいると、那智子が俺たちの間に割り込んできた。
那智子は青葉の肩をつかんで、「ね?」と笑いかけている。
つられて青葉も首を縦に振っているが、まだ表情はどこか不安げだ。
「大丈夫だって。青葉、十分かわいいぞ」
「あ、ありがと……」
青葉はびっくりしたように俺の方を見ると、恥ずかしげにうなづいた。
あー、俺だって恥ずかしいわい。
青葉相手に「かわいい」なんて、幼稚園以来言わなかった言葉だ。
「……ところで御堂、私の格好はどうよ?」
そう言って、那智子は腰に両手をあててちょっと体をくねらせる。
それはセクシーポーズのつもりか、おい。
那智子はどっかのブランドロゴの入ったTシャツに、膝丈のパンツ。
それに淡い黄色のパーカーを羽織っている。背中にはリュックサック。
……まあ、男っぽい那智子らしいわな。
「うむ、どっからどう見ても男の子だ。間違っても痴漢には合わないだろう」
あくまでさらっと言ってやる。那智子の目が吊り上がった。
「ねえ、殴られたいわけ?」
「感想を求めたのはそっちだろうが。思ったままを言ったまでだ」
平然として答える。那智子は何をー!と言うと腕まくりをしてこっちに向かってきた。
からかい甲斐のある奴だ。
那智子が俺の目の前で威嚇するように睨んでいるが、頭一つ小さい奴に脅されても怖くねえって。
「だ、駄目だよ。朝から喧嘩しちゃ……」
青葉が慌てて俺たちの間に割って入る。そして、那智子を押して俺から遠ざけた。
「なっちゃん、今日だけは創一郎くんと喧嘩しないって、約束したじゃない」
「そりゃそうだけどさ……」
不満げな那智子の顔。喧嘩が不完全燃焼だからか、青葉にも聞こえないような声で何かぶつぶつ言ってる。
青葉はそっと那智子の肩に手をおいている。それから、俺の方を振り返った。
「創一郎くんも駄目だよ。もっとなっちゃんを女の子らしく扱ってあげなきゃ……」
青葉、ちょっと俺を睨む。
はっきり言って、青葉の機嫌を損ねる方が俺には恐ろしい。
那智子と違って凶暴ではないが、機嫌が直るまでに結構時間と手間がかかるのだ、こいつは。
仕方ない、ここは折れるか。
「……わかったよ。那智子、今日は休戦な」
那智子はまだ睨んでいる。だが、最後にしぶしぶ了承したみたいだった。
それを見た青葉もよろしい、と演技がかった様子で頷いている。
「電車、もうすぐ来るよ。さ、行こ?」
青葉の言葉に促されて、俺たちは駅の改札をくぐった。
ああ、今日は疲れそう……。
さて、現在俺たち三人はセブン・オーシャンズのゲート前で望月近衛が来るのを待っている。
現在朝8時40分。約束の時間まではまだ20分ある。
ちなみに、俺は電車の中で、那智子から望月近衛についてひとくさりレクチャーを受けた。
曰く、成績は学年十位以内。全国模試でもトップクラス。
曰く、小さいときからピアノとチェロ(ってなんだっけ、ヴァイオリンのでかい奴だっけ?)をやっている。
曰く、陸上競技は少し苦手だが、球技系はかなり得意。
そして那智子が強調するには、
「すっごい美形なの。噂じゃ入学した当日にそのケがある先輩から誘惑されたとか、何とか……。
それに、私たち『マッダレーナ』でもファンの子が結構いるし。特に二、三年生の先輩たちのハートをくすぐってるって話」
望月の通う北星高校も、俺たち泰山高校と同じく男子校。
俺たちの間でもたまに「ホモの先輩がどうたらこうたら」なんて話を聞くが、大概根も葉もない噂だ。
マジな話とは思えないが……いや、北星ならありえるのかも。
それにしても青葉たちのマッダレーナ女子と北星は交流が深いから、顔や名前ぐらいならすぐ分かるんだろうけど。
詳しすぎないか? 望月がいかに有名人とはいえ……。
そう思っていたら、青葉が困ったように打ち明けてくれた。
「あのね、私が告白された次の日、学校の靴箱開けたら、こーんな分厚い封筒が入っててね。
望月くんの事を説明したレポートとか、写真とかがぎっしり入ってたの。望月くんのお友達が作ったんだって……」
ああ、やっぱり天才どもの考える事はよく分からん。
つーか、いかにハイスペックな男だとしても、それはやりすぎだろう。
案外望月の友達の妨害工作なんじゃねえか、それ。
で、青葉はどう扱っていいかわからず、その「望月レポート」を那智子に預けたらしい。
それで那智子が妙に望月について詳しいのか。
「那智子はどう思うんだ。望月近衛を」
俺は一応那智子にも聞いてみた。青葉だけじゃ女の目から見た「望月近衛」像がよく分からないからな。
那智子はちょっと考えてから、さらっと答えた。
「あんたが1000人がかりでも勝てない相手ね」
はいはい、分かってました。どうせそう言われると思いましたよ。
でも駅前での俺の暴言もあるし、今日は休戦と言った手前、俺は「ああそうですか」とだけ言っておいた。
そんな俺たちのやり取りを見て、青葉はもう、と一人困った顔をしていた。
「望月くん、遅いわね」
約束の9時を目前にして、何気なく那智子が言う。
確かに早く来たのはこっちだが、やっぱり約束の10分前ぐらいには着いておくべきじゃないのか?
「デートの待ち合わせで相手を待たせる、減点10、と」
そう言って、那智子は手のひらにメモを取る振りをする。
青葉が「なっちゃん!」と小さい声でたしなめた。
とりあえず聞いておきたい。あなたのテストは何点で合格なんですか、那智子サン。
「早く来すぎたのは私たちの方なんだし、まだ9時前だよ?」
青葉はそんなことは気にしていない風だ。待ちあわせが9時なんだから、9時にくればいいってことか。
駅前でも指摘されたとおり、俺は遅刻の常習犯だ。
中学の頃、青葉を一時間待たせたこともある。
さすがの青葉もその日一日機嫌が悪かったが、そんな俺に比べれば約束10分前到着なんてどうでもいいのかもしれない。
俺は二者二様の時間に対する考え方にぼんやり思いをはせながら、望月を待った。
ちなみに、とっくに夏休みは終わったとはいえ、さすが日曜日の遊園地は混んでいる。
ぞくぞくとゲートへと向かう人波が途切れることはない。
こんな所で相手を見つけられるのか……と思っていると、遠くからすごい勢いで走ってくる男の姿が見えた。
あいつだな、と俺はピンと来た。
遠くで顔はよく分からないが、あの必死さはたぶん……。
そう思っていると、はたして、その男はゲートの方にまっすぐ向かってくる。
きょろきょろと周囲を見渡していた那智子がそれに気づいて、大声で手を振る。
「望月くーん! こっちこっち!!」
その声に青葉も那智子の視線の先に目をやる。
俺のそばで、望月に気がついた青葉が身を固くするのが分かった。
俺はそっと青葉の頭に手を置いてやった。
「緊張すんなよ。今日は一緒に遊ぶだけだろ?」
だが、青葉は何か言いにくそうに「でも……」と呟く。
俺はちょっと咳払いをしてから言った。
「……もし相手が嫌な男なら、俺が断ってやるから」
それを聞いて、やっと青葉はほっとしたように俺に笑顔を向けた。
「うん……そうだね。今日はなっちゃんも創一郎くんもいるもんね……ありがとう」
俺は二、三度青葉の頭を撫でてやると、手を戻した。
そうしているうちに、望月が俺たちのところに到着した。
「ご、ごめんね! 一本早い電車に乗るつもりだったんだけど、出掛けにちょっと手間取っちゃって……」
そう言って望月近衛が頭を下げる。
息が荒い。どうやら駅を下りてからずっと走ってきたらしい。
「大丈夫、私たちも今来たところだから……」
青葉がそう言ってフォローする。……まあ20分前は「今来た」の範囲かなあ?
その横で那智子がまた手にメモする振り。今度はなんだ、「遅刻の言い訳、減点5」ぐらいか。
望月が息を整え、ゆっくりと体を起こした。
確かに顔はいい。まるでファッション雑誌のモデルみたいな、爽やかな笑顔が似合う顔だ。
顔の輪郭は細すぎず丸すぎず、優雅な曲線を描いている。
眉は細いし、まぶたはくっきり二重。おめめぱっちり、高くて細い鼻。髪は綺麗なブラウン。まるで外人さんみたいだ。
口元に浮かぶ笑みも、いやらしさのかけらもない。
だがな……青葉。俺が「望月近衛はどんな男か」と聞いたとき、お前はこう言ったな?
『背は、創一郎くんと同じぐらい。でもちょっとだけがっしりしてるかな』って。
青葉、確かにお前は背が低い。155センチ切ってる。
だから、男がみんな大きく見えるのは分かる。
しかしな。
どう見たって、望月、俺より「頭一つ以上」背が低いぞ?
俺の目の前で照れ笑いを浮かべている小柄な男。
噂の美少年、望月近衛は――。
まるで女の子みたいな奴だった。
(続く)
======================================
連投スマソ。
保守代わりにぼちぼち投下しますんで、よろしく。
なんとなく思っただけだけど幼馴染同士が舌を突き出しあって舌の先っぽだけでするキスって凄くエロい希ガス
つーか幼馴染に似合うキスってどんなんだろ
女装フラグ来たー?
…いや、冗談ですが。
>393
ほんの少し、触れるくらい口付けてすぐにお互い顔を真っ赤に染めてプイッと反対側を向いてしまう
そんなキスがいい
ショタキター
>>393 俺的にはちとシチュがずれるが
女「ねえねえ、○○(男)ってさ、女の子とキスしたこと、ある?」
男「えっ! ……そんなの、ねえよ」
女「本当〜?」
男「本当だよ」
女「嘘。……私と、小さいときした事あるじゃない」
男「えっ……(絶句)」
というシチュが好きだ。
>>398 その手の王道ならば、
女「ねえねえ、○○(男)ってさ、女の子とキスしたこと、ある?」
男「えっ! ね、ねえよそんなの。お前だってないだろ」
女「え、あるよ?」
男「そうだよなぁ、お前みたいながさつな女がキスしたことあるなんて……」
男「えっ! い、今なんつった!?」
女「キスしたことくらいあるってば、もう」
男「えっ……(絶句)」
男(だ、誰だ誰だ誰だ誰だ。こいつがキスだと。そんな、そんなぁ……)
女 「くすり(やっぱり、私と小さいときにキスした事忘れてるんだ、仕様が無いなあ)」
というシチュも欲しい。
「バカ英太郎!」
そう言うや否や、花房美香の平手打ちが松原英太郎の頬を直撃した。ちなみにここは、
くねくね市立第一小学校の五年三組の教室内である。
「いってえ!何すんだ、美香!」
「あんたなんかに美香なんて呼ばれたくないわ!バカ英太郎!」
「じゃあ、ブスって呼んでやる!やい、ブス。何しやがるんだ!」
「誰がブスだあッ!」
美香の拳が英太郎の水月にめり込んだ。手首のひねりが効いた、良いパンチである。
「ぐわッ!」
強烈な打撃を食らい、ごろごろと床を転がる英太郎。実を言うと、美香は女だてらに空手
なんぞを使うので、喧嘩では男子にだって負けた事がない。しかし、英太郎だって怯んで
はいなかった。二、三度床を転がると、身をすぐに翻し、美香を睨みつけながら立ち上がる。
「俺が何をしたっていうんだよ!」
「あんた、沙織ちゃんを泣かせたんでしょう?女の子泣かすなんて、最低!だから、あたし
が天誅を喰らわせてやるの」
美香の後ろには、クラス内で泣き虫と呼ばれている日野沙織がいた。沙織はそのあだ名に
相応しくすでに涙目で、英太郎の顔を恨めしげに見つめている。
「もしかして、俺がさっきあげたカメムシの事か?あれは、プレゼントだぞ。この辺じゃ、カメ
ムシなんて滅多に取れないのに!」
英太郎は先ほど、学校に来る途中でゲットしたカメムシを、沙織にくれてやっていた。泣き
虫とあだ名される彼女に気合を入れてもらおうと思って、善意のつもりで差し上げたつもり
だったが、どうやらそれが裏目に出てしまったらしい。
「あんなに臭いオナラをする虫をもらって、喜ぶ女の子がいるかッ!喝ッ!」
「ぐわッ!」
バシッと、今度は美香の回し蹴りが飛ぶ。すると英太郎は、机をと椅子を巻き込みなが
らロケット花火のようにすっ飛んで行った。いささか情けないが、英太郎の負け。
「今度やったら許さないからね!」
ふん、と鼻を鳴らして勝どきを上げる美香。しかし、その声は気を失った英太郎には届か
なかったという・・・・・
その日の放課後──小学校からの帰り道で、美香は英太郎に詫びてばかりいた。
「ごめん、英ちゃん」
頭に大きなこぶを作った英太郎は、むすっと顔をしかめたままである。美香は黙々と歩く
英太郎の回りにつきまとい、なだめたりすかしたりに必死だ。
「お前、強く蹴りすぎなんだよ!見ろ、このたんこぶ!」
「だからぁ・・・ごめんって言ってるじゃない」
美香は先ほどとは打って変わり、ずいぶんと殊勝な態度である。呼び方もバカとかアホ
ではなく、英ちゃんになっていた。
「なんで、日野の肩を持ったんだよ」
「だってさあ、あたし女子の中じゃ割と頼られるタイプじゃん、ね。沙織ちゃんは泣き虫だ
し、ああいう場合は英ちゃんの味方は出来ないよう・・・あ、ランドセル持とうか?」
美香はなんとか英太郎の機嫌を取ろうと必死だった。実を言うとこの二人、本当は仲が
良いのである。学校では体面などがあるのでケンカ腰のお付き合いをしているが、本当
の二人の姿は同じマンションに住む幼なじみ同士なのだ。
「もう怒ってないから、ほら」
英太郎がそっと左手を差し出した。手を繋ごう。そう言っているのだ。
「ウン」
満面の笑みを浮かべた美香が、英太郎の手を取った。これが、本来の二人の形である。
そしてどちらともなく身を寄せ合い、自宅へと向かった。
「今日、お前んち誰かいる?」
不意に英太郎が問うと、美香はちょっぴり頬を染め、
「ううん。いない。パパもママも、遅くまで帰らない・・・」
と、うつむき加減に答えた。
「い、一緒に宿題しないか?俺んち、妹がいてうるさいからさ・・・」
「い、いいよ」
二人の心を繋ぐ手に力が込められている。見れば英太郎、美香ともに恥ずかしそうに顔
を寄せ合っていた。もう自宅マンションは目の前である。二人の足が速まった。
「美香」
「英太郎」
英太郎と美香はカーテンを閉め切った部屋の中で、キスをした。そしてそのまま、ベッドへ
倒れ込む。リードするのは英太郎で、慣れた手つきで美香の胸をやんわりと揉んだ。
「お前、胸がずいぶん大きくなったな。そろそろ、ブラジャーが要るんじゃないのか?」
「まだ要らないよ。クラスの中じゃ、小さい方だし」
「でもさあ、お前の胸・・・見てるやつがいるんだ、男子の中に。ほら、最近薄着になったか
ら、ここが透けちゃうんだよ」
胸を触っていた英太郎が乳首を摘んだ。まだ熟れかけの蕾は幼く硬いので、美香はここを
責められる事に弱い。
「あん・・・そんなに透けてるかしら」
「体育のときなんかさ、汗で濡れるだろう?結構目立つよ、これ」
英太郎の手が美香のブラウスのボタンを弾き、白い生肌を露にさせた。少女の胸は僅か
だが穏やかな曲線を描いており、儚げな美しさを持っている。英太郎はその膨らみの頂点
に顔を近づけ、唇で蕾を包んだ。
「あうんッ!」
美香の背が反った。急所への刺激がたまらないらしい。
「まだ、吸うと痛いか?」
「ううん・・・ちょっと怖いだけ。優しくしてくれれば、大丈夫」
「分かった。指でいじるよ」
英太郎は乳首を吸うのをやめ、人差し指と中指を使っての愛撫を始めた。この方が力を加減
出来て、美香には負担がかからない。
「ああ・・・」
「気持ち良いか?美香」
「うん、すっごく・・・クリクリされると、頭の中がボーっとなって・・・」
目を細め、美香は息遣いを荒げる。気が付けば、手が勝手に英太郎の股間へと伸びていた。
「もう、これ入れるか?」
その問いに、美香は無言で頷くだけ。さすがに欲しいとは言えなかった。
「その前におしゃぶりしてあげるから、英ちゃんズボン脱いでよ」
「うん。だけど、この前みたいに噛むなよ。傷がずいぶん残ったからな」
「疑り深いなあ。アイスやバナナで練習したから、大丈夫よ。多分」
美香は好奇心いっぱいの笑顔で、ズボンのジッパーに指をかける。この向こうにお目当ての物
があると思うと、自然に彼女の心は弾んだ。
「最近、英ちゃんのコレ、皮が剥けっぱなしね。大丈夫なの?」
「ああ。これでいいんだってさ。というか、剥けてないと困るらしい」
「あたしは、皮があった方が好きだなあ。あっちの方が、カワイイよ」
直立した英太郎の男根を手に取り、美香はそっとそれを口に含んだ。一瞬、少年の持つ
性臭に顔をしかめたが、すぐに舌を使い始める。
「ちんちんが食べられてるみたいだ」
英太郎は男根にかぶりつく美香を、そんな風に見た。子供らしい、無邪気な感想である。
「英ちゃんのおちんちん、ちょっぴり毛が生えてきたね、すごい」
「うん。でも、クラスの中じゃ俺より早く生えたヤツもいるぞ。山田なんか、もうボーボーだ。
男は小便する時、見せ合いやるからすぐ分かる」
「女子は見せ合いとかしないからなあ・・・あたしなんて、生理もまだだし」
しゃぶられている男根は唾液で濡れ、先端からはいやらしい粘液をほとばしらせていた。
それを見て、美香の体にも変化が表れる。
「お前、パンツびしょ濡れじゃん。脱がないとシミがつくぜ」
「ホントだ。よーし、脱いじゃおう」
気が付けば美香の女陰は濡れそぼっていた。まだぴったりと閉じているはずの二枚貝の
口が僅かに開き、何かを待っているように潤っている。英太郎はこれを挿入の好機と心得、
美香の体をベッドへ押し倒した。
「足開けよ。入れるぞ」
「あッ!」
体が重なってすぐ、美香の女穴は英太郎の分身で満たされる。正常位という言葉すら知ら
ないが、美香は英太郎の顔を見ながら『する』のが好きだった。
「ううッ!」
挿入直後はその衝撃で、体ごとベッドの上へ逃げようとする美香。それを、英太郎は
抑えながら、己の分身を送り込む。
「中がぐちゅぐちゅになってる。美香、動くぞ」
「う・・・うん」
両足を英太郎の肩に担がれ、身動きが出来なくなった所でいよいよ美香は、本格的に
男根を受け入れる事となる。ぐぐっと女穴が開くと、お尻の穴がちょっぴり開くような気
がして、お年頃の少女には恥ずかしいところ。
「ああッ!」
英太郎の男根が根元まで入ると、美香は自然と腰を使うようになっていた。入って来る、
出て行くを繰り返されるたびに、自ら女穴をかき回すように腰を振るのだ。
「あっ、ちんちんがキューッってなった。美香、気持ちいいのか?」
「い・・・いい・・・すごく、いい・・・」
無意識の内に膣口を締め、男根をさらに奥へ──美香はじりじりと身を焦がす官能の
炎にすっかりさらされていた。自分を喜ばせてくれる英太郎が、心の底から愛しい。そ
う思っているうちに、女に生まれて良かったと思える瞬間が近づいてきた。
「ああ・・・英ちゃん。お願い、強く抱きしめて・・・あたし、いくかも」
「俺もだよ。いく時は、一緒に」
男女問わずの粘液が、それぞれの性器を濡らしていた。叩きつけられる生肉が聞くに
耐えないような淫らな音を放ち、いっそう二人の官能に火をつけてくれる。英太郎も美香
も、狂ったように腰を振り快楽を貪り合っていた。
「美香、ちょっとむこうを向け」
「あっ、ちょっと・・・何するの?」
いい感じに高まってきたところで、英太郎が美香の体を裏表逆に入れ替えた。そしてその
まま、バックスタイルを取る。
「やだ!お尻の穴が見えちゃう」
「いまさら、ガタガタ言うなよ」
美香の背へ覆い被さった後、ぐぐっと体重をかけた英太郎。すると、真正面で交わっていた
時とは違う、新鮮な快楽が二人の合体部分に伝わった。
「いやあ・・・何か、すごく奥まで入ってきてる感じ・・・ちょっと怖い」
「でも、いいだろ?これだと、胸も触れるしさ」
英太郎の手は美香の胸へ伸び、柔らかな乳肉と蕾を犯していた。これが案外、美香のお気
に召すのである。
「乳首がすごく勃ってるぞ。気持ちいいんだろ?」
「・・・知らない・・・バカァ」
乳首をひねるたびに美香の女穴はキュッ、キュッと締まった。駄々をこねるような風を見せて
はいるが、なかなか愉しめているらしい。
「じゃあ、あらためて動くぞ」
「あッ・・・」
ぎしっとベッドが揺れる。ついで、ぎしっ、ぎしっと断続的にベッドは揺れていく。それにあわせ
るかのように、美香の鳴き声も上がった。
「あッ!あッ!あッ・・・」
「いつもより美香のココ・・・せまく感じる。ちんちんも吸い込まれそうだ」
背後から突く側も、突かれる側も初めての経験だった。美香はシーツをきつく握り締め、挿入
の激しさに耐え、英太郎は目も眩むような快感の中で、腰だけを懸命に動かしている。互いに、
刹那のきらめきはすぐそこまで来ていた。
「イクぞッ、美香!」
「英ちゃん!」
腰を浅く引き、男根を戦慄かせる英太郎。ブルブルと身もだえ、大量の子種を美香の
膣内へ放出し、男として最高の瞬間を得る事が出来た。そして、美香もまた女としての
今際を迎え、激しくのぼりつめていく。
「気持ちよかったね」
「ああ」
事が済むと、二人は一緒にシーツを体に巻いてベッドに横たわる。服は着ない。どちらか
が帰るまで、裸で過ごすのである。こういう時、美香は決まって英太郎に甘える素振りを
見せた。
「英ちゃん、あたしの事、愛してる?」
「そりゃ、まあ」
「ちゃんと、愛してるって言ってよ」
美香の目が媚びていた。好きな男に甘えて何が悪いわけでもないが、英太郎はこれが
少し苦手である。
「愛してるよ、美香」
「うふッ、よろしい。じゃあ、もう一回しようか?」
シーツの中がごそごそとなにやら怪しい動きを始めた。言うまでもないが、美香と英太郎が
じゃれあっているのだ。まだ時間はたっぷりとある。何度でも愛し合える。
「ああ・・・」
薄暗くなった部屋の中に美香のため息が漂う。そしてまた、生肉がもつれあう音が──
「もう一回だけ、愛してるって言って・・・」
「愛してる、美香」
「あたしも愛してるわ、英ちゃん」
おしまい
恥らいました。
411 :
名無しさん@ピンキー:2005/04/29(金) 20:00:34 ID:NpAELOZb
ダルシム
肛門丸氏GJ!
幼い二人の行為に萌えました。
413 :
名無しさん@ピンキー:2005/04/29(金) 23:48:09 ID:ki3aqxjh
小5で向けてる英ちゃんが羨ましい。
俺なんて物心付いたころから仮性だったがいまだに仮性w
小5といえば、俺の実体験なんて犬(♀)を連れて女友達の家に行ったら
俺の馬鹿犬がそこの家の犬(♂)と交尾しだしてマズーな雰囲気になったということくらい。
orz
イタイ体験談乙!
幼馴染みー、幼馴染み、お、おさなー!おさなるぁー!!
>>383の続きです。
書いてて、全然萌えになっていない事に気付きました。
萌えって難しいですね……。
文字通り、夕焼けが空に焼き付いた茜色の世界。
その下を俺達は歩いていた。
話の種はいつも同じような事。
勉強の事、クラスメイトの事、新谷の事、先生の事。
つまりは学校の事。
例外は、俺との時間の事だけ。
誰でもない、俺だけが学校外で亜矢ネエと時間を共有している。
それが心地よくて、不謹慎だが俺はいつもこの時間に浸っていた。
「それで、雪ちゃんが言ってたよ。『高杉の奴はもう少し人に優しくするべきだ!』って」
「ううむ……俺は充分優しいと思うんだがなあ」
「晶ちゃんは雪ちゃんには酷い事ばかり言ってるじゃない」
「あれも俺なりの優しさだって。
良く言うじゃないか。
踏まれても踏まれても大きく育つ麦になれーってな。
新谷は今よりもっと育つ! それこそ麦のように育って……伐採されるのかな?」
「うわーん、父ちゃーん! って?」
けらけらと笑う。
そんな他愛の無い冗談に、亜矢ネエも頬を緩めながら合いの手を入れた。
「ふむ……それとも新谷は俺個人に優しくして欲しいのかな?
労わるように見つめて、優しく手をとって
『いつも亜矢ネエを有難う……感謝してるよ、雪』
って言って欲しいのかねえ」
「なんで私がダシにされてるのよう……しかもちゃっかり下の名前で呼んでるし」
これには不満だったようで、頬を膨らませる。
亜矢ネエは身体事情のせいか線が細く、色も白い。
それなりに整った小さなパーツとも相まって、儚げな美女という言葉が良く似合う……と思う。
そのくせ、こういった子供のような仕草をよくする。だから、そのギャップにどきりとしてしまう。
最も、クラス内では大人しく、物静かな女の子と思われているようだから、もしかしたら俺の前だけでそういった所を見せてくれているのかも知れないが。
もしもそうなら、少し嬉しい。
その思いが顔に出たのか、一人でニヤニヤと笑みを浮かべる俺を亜矢ネエが突付いてきた。
しなやかな指が、俺の頬を微かにくすぐる。
「晶ちゃんって、たまに怪しいよね」
「……面目ない」
それには自覚があったので、顔を顰めつつも謝る。
と――
「ん……?」
制服の内側で振動とけたたましい音楽が鳴り響いた。携帯の着信音だ。
取ると、手紙のアイコンがピコピコと輝いていた。メールが来たらしい。
隣では亜矢ネエが小首を傾げて「ハッチポッチステーション……?」などと呟いている。
この着信音が気になるのだろうか。
開くと、画像が映っていた。
写メールでとったらしいそれは、賑やかなカラオケボックスの中だった。
安田と唾村、そして他の奴らが楽しそうに笑っている。
本文は『今度は遠野さんも連れてお前も参加しろよー』等と書かれていた。
事情があったとは言え、断った俺にこうして気を回してくれる。気のいい奴等だと思う。
返信メールを打ちながら、ふと思い立って隣を見やる。
ゆっくりと歩いていた亜矢ネエが、視線に気付いて微笑む。
逆光に浮かび上がったそれは溶けそうなほどに儚く、そして眼に焼き付いた。
「どうかした?」
答えず、ボタンを押す。カシャリとシャッターがおり、今見たままの映像が俺の携帯へと映りこむ。
同じ場面を切り取ったはずの画像は、けれど手ブレやら光量不足やら俺の技術不足で酷いものだった。
しかし画面の中で微笑む亜矢ネエは俺にとっては綺麗な人で。
俺の才能の無さを示すその写真も、俺にとっては綺麗な一枚で。
「何でもないさ」
言いながら、何となくこの画像を誰かに見せるのが惜しくなって、結局文章のみのメールを返した。
>>385氏
有難うございます、励みになります。
385氏の作品も楽しみにしております。
久しぶりですが、前スレからの続きです。
月並みな表現だけど、本当に、時間が止まった気がした。
風に流された前髪が額に張り付いて、私はそれで自分が汗をかいている事を知る。
頭上を横切っていた雲がさらわれ、視界が少し明るくなる。
瞬きすら忘れてしまった私の目は剣太で一杯で。
逆光で表情はよくわからないのに、剣太の視線が私に向いていることははっきりとわかった。
世界に私と剣太しかいないような、不思議な緊張感と安心感が私を包む。
――――不意に、風が吹き抜けた。
それを合図としたかのように、二人同時に瞬きをする。
「…そうゆうことだから」
ボソリと呟かれた剣太の言葉に、ようやく私の思考が現実に追いついてくる。
告白……された。剣太に。『好きだ』って。
「えっ…え?……ええええぇぇぇぇっっ!!」
今、自分が置かれている状況を理解した途端、止めるまもなく私の口から悲鳴があがった。
私の大声に、剣太の体がビクッとはねる。
驚いたように私を凝視している。
というか、驚いているのはこっちの方だ!
『好きだ』って、あの、『好き』って感情だよね?!
家族とか姉弟とかではなく、異性としての。
(どっどっどうしよう……!!)
嬉しいよりも恥ずかしいよりも、困惑の方が私の心に広がる。
だって、私と剣太は幼馴染みで。
こんな田舎町に住んでいる分、きっと世間の幼馴染みよりも近くで育っていて。
姉弟の様なものだと思っていたのだ。
…少なくとも、剣太はそう思っていると思っていた。
どうしよう。
本格的にどうしていいのかわからない。
「そんな顔すんな」
いつのまにか、私と同じ目線まで下がってきた剣太が困った様に笑った。
どうしてもまともに顔を見れなくて、私はまた視線を下げる。
剣太の前だと、最近の私は地面を見てばっかりだ。
「困らせてごめん。ただ言いたかっただけだからあんま気にしないでくれ」
剣太の手が、ためらいがちに私の頭にのる。
ポンポンと伝えられる、『気にするな』の合図。
今日何度も感じた剣太の温もりが私の涙腺を刺激する。
泣き虫で頼りなかった小さな幼馴染みはもう、どこにもいない。
今、私の側にいるのは。
「剣太…」
背も、手も、力も、私よりも全然大きくなった、よく知っていると思っていた男の子。
(ああ…)
変化は、もうとっくに最終段階にきていたんだ。
始まりは、私の初潮がきたときなのか、剣太の声変わりがあったときなのか…それとも、「さやちゃん」
から「鞘子」に呼び名が変わったあの夜からなのかはわからないけど。
油断したら溢れてしまいそうな涙を堰き止めるために、小さく深呼吸をする。
幼馴染みじゃなきゃ、剣太の側にはいられないと思っていた。
剣太は、私をそういう風に見ていないと思っていたから。
だから自分の中に生まれていた気持ちからずっと逃げていて、剣太を男として見ないようにしていた。
…けど。
「…剣太…」
剣太は言ってくれた。
だから私も、もうきっと、逃げている場合じゃないんだ。
ずっと恐れていた変化を、私も受け止めなきゃいけない。
私は女で、剣太は男で。
そして私は。
「私…も……」
渇いた喉から絞り出した声は、非道く弱いものだった。
ちらり、と自分の意気地のなさに嫌気を持つ。
私達は長く一緒にいたから、言わなくてもわかることはたくさんあるけど。
でも。それでも。
「剣太が、好き」
これきっと言わなきゃ伝わらないことだから。
だって私も言われるまで知らなかったから。
小さかった私の声は、剣太に届いたのだろうか。
反応がないので心配になって視線を上げると、口を開けたままポカンとする剣太の顔があった。
そんな間抜けな表情はやっぱり私がよく知っている剣太で。
強張っていた私の頬が少しだけ緩くなる。
「…ほんとかよ?!」
勢いよく裏返った剣太の声に、私はとうとう笑い声をこぼしてしまった。
間が開いた割には短いですが今回はここまでです。
このスレ、最近活気があっていいですね。
落とされている作品は全部読んでます。
エロに持ち込むか悩み中ですが、続きは近日。
それでは、また。
>>526氏
乙ですー。
出来ればこのまま素朴な二人の素朴な初えっちが見てみたい…。
でもその前にもう一波乱あると面白いかも、と思ったり。
このまますんなり二人が付き合ってしまうより、小さな村ゆえのちょっとしたトラブルが起こるとか。
まあROM者の独り言なんで気にせず526氏の思うまま書いてください。
ここの住人、レスは多いけど
書き手を労る気持ちはほぼ無いんだな
華麗にスルーしつつ、526氏乙であります。
GJであります!
いやぁ、スタンダードな展開ながら
やはりこういうの、グっときますな!
「お見合いをしてもらおう、うん」
と兄の宗一がすっとぼけた口調でさり気無く言った。
そうして男性写真の山を孝二郎の前に置いたので彼は兄の頭がおかしくなったのではないかと思った。
葉桜が散る。
庭園の風景は若葉を迎えて美しい。
日本の法律では高一で男は結婚できない。
まだ自分は十五である。
というかなぜ野郎の写真ばかりなんだ。
目だけで睨んで久々に顔を見た相手に黙って問うた。
「先月十六になったわけだし、実際してもらうというよりはね。
梅子ちゃんもね。高校のうちからそういう心構えをしておいたほうが、良いと思う」
沈黙に風が吹く。
孝二郎は片耳からぶら下げていたイヤホンを外した。
―なんだ、梅の見合いか。
と心の中で呟く。
「若葉さんが見立ててくれたのはざっとこれくらいなのだけれども、
なにぶん数が多いからね。とりあえず十人くらいに絞るのがおまえの使命」
「…んで俺にゆーんだよ」
「梅子が世話しているのはおまえだから、結婚の世話するのもおまえ。
梅子ちゃんのご両親だって親父が間に立って仕切ったんだぞ、しらなかったか?」
細い目で顔を二つに割るような笑みをそうして兄は浮かべる。
鼻が低いのでよけいのっぺりとして見えた。
孝二郎は兄が嫌いだ。
こんな顔をしてすべてが敵わないだけの能力を持ち、結構人格もいいので嫌になる。
大体あの天然なのか策略なのかいまだに分からんあたりが苛立つのだ。
何が使命だ。
「知るか」
「それに梅子ちゃんの好みはおまえが一番知っているだろう」
「…知ってんだろ、兄貴。あいつの好みは俺なんだよ」
だっていつもそういっているんだ、あの同い年の女中は。
言い捨てる。
そうしてまたイヤホンをつける。
「でもおまえは別に梅子ちゃんを好きではない。」
「…好きじゃねぇよ」
「じゃあ構わないね。おまえからそれとなくそういう話が準備されていると、
伝えておいてもらえるかな。孝二郎」
孝二郎は手元のリモコンに指の腹を押し付けて音量を上げた。
ロックが聴きたい。
いつもだらだらとした邦楽(伝統芸能系)を聴いているので詳しくなかったけれど、
彼はなんとなくドラムやら大きい音やらが耳を打ちつけるような音楽を聴きたいと思った。
そうして積み上げられた写真の山を足先で蹴り飛ばして崩した。
保守代わり。
◆oL/gQPdy0M氏 526氏初め多くの職人様たちの続きを願い待つ。
ところで
弟の鯉のぼりをしまう手伝いをしに近所の気になるアイツがやってくる。
まああんたも一応男だし力だけがとりえなんだからせいぜい役に立ってよね、
とかいって鯉のぼりを降ろしたところで突風、二人でもつれて
鯉のぼりの下で重なり合って下の芝生が陽射しで暖かかったのでとか
そういうシチュエーションは良い
ああ、良い。
実に、良い。
よし、
書け
>>427 乙です。
いつも楽しく読んでます。
保守代わりなんてもったいない事言わずに、ぜひこれからも続けてください。
季節感あるネタは大好きです。
ぜひ読みたい
>430>432
ぐ、ぐ、と力強い指が紐を引くたびキイキイと高い棒がきしむ。
金属の棒を抑えながら、弱風にはためく布と青空を見上げてあたしは目を細めた。
そうしてすぐ近くの落ち着かなくさせるでかい図体に、かかとでちょっと蹴りを入れる。
ごん。
そうして何で自分でもこんな嫌な言い方できるんだろうって感じに突っかかる。
「ちょっとー。もっと早くできないわけ?」
「はいはい。もうちょっとだ」
「早くしてよ、この後、みいこと映画行くんだからねー」
「じゃあ行けばいいだろ」
すっかり我侭に慣れられている。
すごく悔しい。
庭の土を今度は掘りかえしながら、かかとを遊ばせた。
あたしは愛で、こいつは勝利だ。
何がって名前がだ。
まったくどこの少年漫画かという。
隣同士のパパ達がいわゆる竹馬のなんとやらで、そういう悪乗りをしてくれたわけである。
関西から来たうちのママもお笑い大好きだからノリに乗ったらしい。
ちなみにあたしの弟が友だ。
何がって名前がだ。
愛・友情・勝利。
なんともいえないがっくりした気分に、二つ結びの髪が風に吹かれて騒いだ。
アイアイアイおさーるさんだよー♪
勝利が無意識みたいにさっきから吹いてる口笛がそのメロディなのに今更気付いた。
大袈裟にもう一度蹴る真似をして睨んでみて、意外に高くなっていた背に見下ろされたので顔ごとそむけた。
勝利は少しだけあたしより高い。
少しだけ、だったのは去年のことだけれど。
キイキイとまだ紐を手繰る音が口笛にあわせて空に消えていく。
「あーもう!その口笛、やめてよね」
「おう」
「っていうかほんと早くしてよ。あんたのとりえなんて力が強いだけじゃ―」
ぱさり。
はたりばさり。
七分袖の右肩にやっとお父さん鯉までが重なってかかって、落ちて来る。
勝利がまだ声変わり途中の声で、わははと笑った。
「ほら、終了。しまっちゃおうぜ」
「…ばか」
ずるい笑顔だ。
雲に太陽が隠れたのか少しだけ風が涼しさを増す。
「しまう前に洗うんだから。縁側に持ってってくれればいいわよ」
「おう。お前はじゃあ、こっちな」
軽い方の子供の鯉のぼりが一匹だけ腕の中に放られて、受取る。
勝利が重いほう二匹と吹流しを持ってくれているのは当然だ。
当然だったら当然なのだ。
なのに勝手に足が動いた。
「あたしだってもう一個くらい持てるんだから。よこしなさい」
「いいよ、持つよ」
「いいから!」
奪い取ろうとした瞬間。
空が真っ青に太陽が雲から顔を見せ、
――突風が襲った。
もつれる。
ばさりばさり、と視界が暗く染まり、背中を打ち付ける、と思った。
実際そういう音がしたけれどあたしが倒れこんだのはなぜか、土じゃなく。
頭の上でがさがさと鯉がひらめいて、その影の下で膝を何かに跨らせて顔を少しだけ上げた。
スカートから伸びた膝が土と芝生に軽く埋まる。
倒れこんだ下で、幼馴染が、あたしを見上げていた。
顔が、ものすごく、近い。
「勝利」
「まあ、力がとりえだからな」
ばさり、と。
突風がもう一度吹いたらしい。
「…力っていうか」
「おう」
「強引だよ」
背中を覆っていた鯉がひらめいて吹きあがり、あたしたちを光の下にさらした。
芝生が暖かい。
勝利が笑った。
「さっき言ってた映画はいいのか」
「行くわよ。馬鹿」
「じゃあのけろ」
声変わりなんてまだ早い、あたしを置いて大人になるな。
「やだ」
「我侭だな」
「うるさい。ばか」
そんなこどもの日。
鯉のぼりを降ろすのはむしろ次の6日ではないかとかそういうことは気にしてはいけない。
以上イベント物とはいえ、連続投下大変失礼しました。
改めて作品たちの続きを幼馴染風に待機。
(*´д`)←こんな感じ
ああ、カツトシなのか。
GJ。
スカートもめくってくれなきゃヤダー >風
登場人物etc
御堂創一郎…泰山高校一年生。親元を離れ寮生活をしている。
古鷹青葉…聖マリア・マッダレーナ女子高一年生。御堂の幼馴染。合唱部所属。
初芝和馬…泰山高校一年生。創一郎の友人。合気道部所属。
妙高那智子…聖マリア・マッダレーナ女子高一年生。青葉の友人。
望月近衛…北星高校一年生。
******************************************************************
青葉に告白した望月近衛。
俺の目には、「美少年」っていうより「美少女」に見えた。
身長はおそらく160あるかないか。
顔つきは幼い。髭なんて生えた気配すらない。
短めの髪はきれいに櫛を通され、時折さらさらと風に揺れてる。
とは言え、もちろん格好は俺と同じような男の服装だ。
間違ってもピンクハウスに身を包んでいるわけじゃない。
でも最初感じた望月への違和感は、やはりどう見ても変えようがなかった。
こうして俺たちのダブル?デートは、かなりぎこちなく始まった。
というのも青葉は緊張しちまって俺と那智子にしか話しかけないし。
望月は望月で、青葉に加え、俺という存在にどうアプローチして良いのか分からないようだった。
……那智子はただはしゃいでるだけだし。
いや、那智子は那智子なりに、このデートを何とか盛り上げようとしているのは分かった。
そして、俺もそれを手伝っているつもりだった。
でも、所詮俺も那智子も男女の付き合いとかデートなんてものに無縁で15年間生きてきたわけで。
張り切れば張り切るほど何かが空回りして、青葉と望月の固い空気をほぐすことは出来なかった。
そうやって途切れがちな会話を無理やりつないで、いくつかアトラクションに乗って……。
ようやくお昼時。
神経を使うデートであれなんであれ腹は減るはず。
だが俺は全く空腹感を感じなかった。
那智子だけが「腹減った」を連発していたが、それが逆に痛々しい。
そんなこんなで俺たちは、パーク内の広い芝生がある公園にやってきた。
周囲にはおしゃれなレストランや、ハンバーガーなどのスタンドが立ち並んでいる。
そこ此処で、家族連れがお弁当を広げたり、カップルがベンチでご飯を食べている姿が目に入った。
「さーて。俺たちも飯にしようぜ」
そう言って俺はレストランの方に目をやった。
雰囲気のいい店で飯を食いながら楽しく話せば、ここから挽回できるかもしれない。
俺はそんな考えで、飲食店街の看板を見渡した。
そこへ。
那智子が突然ふふふ、と笑う声が聞こえた。
「どうした、那智子」
「妙高さん?」
男二人がそろって那智子の方を見る。
那智子は俺たちに背を向けると、なにやらごそごそとリュックから取り出している。
「じゃーん。これなーんだ」
笑いながら那智子が取り出したのは、大きな重箱。
得意げな那智子と、その後ろではにかんでいる青葉。
「今朝、私と青葉で作ってきました。お弁当でーす」
ぱっと場が和むのが分かった。
なるほど。手作り弁当なら嫌でも話が弾む。
那智子にしちゃあ良い思いつきだ。
……ただ、俺はその計画の唯一の欠点に気づいていたが。
まずい。これは非常にまずいぞ。
何も知らない望月は驚きと期待に目を輝かせている。
「知らぬが仏」とはよく言ったもんだ。
青葉の料理の腕は、はっきり言って大したことない。
前にも言ったが、小学校時代俺は青葉の作ったものを食って本当に戻した。
そして、那智子。
こいつの料理を食った事はないが、普段の態度からいって、まともな料理が出来るとは思えない。
というか以前はっきり「料理したことない」と言ってたような……。
「ささ、早く食べよ? 私もお腹空いちゃってさ」
そう言って那智子は俺たちを芝生の方へ誘導する。
自分の秘策が今のところうまく働いているのに気をよくしているようだ。
俺にとっちゃ刑場に引っ張られる死刑囚の気分だが……。
いやいや、流石にデートの弁当だ。味見ぐらいしてるだろうし、青葉のおばさんが手伝ってるかもしれない。
それなら何とか食えるだろう。今はそれに希望をつなぐしかない。
そんな俺の気持にはまるで気づかず、青葉と那智子は嬉々として食事の用意をしている。
やがて、ビニールシートの真ん中に鎮座した重箱を中心に、俺たち四人は腰を下ろした。
青葉は俺の側に座ろうとしたが、那智子はそれに先回りして俺の隣を占める。
それを見て青葉は仕方なさそうにおずおずと望月の横に座った。
「うわあ。すごいね」
望月が嬉しそうな声を上げる。確かに、お弁当の見た目は綺麗だった。
ゴマやふりかけをまぶしたおにぎり。玉子焼きやから揚げ、ミートボールといった定番から、鰤の照り焼きまで見える。
青葉は望月の言葉に顔を赤らめながら、お弁当を取り分けている。
那智子もすごいでしょー、と得意げに言いながら、青葉を手伝う。
やがて、青葉から望月に、そして那智子からは俺に、料理がきれいに盛られた紙皿が手渡された。
「ささ、食べてみて」
「もし嫌いなものがあったら言ってね。望月くん」
そう言って笑う女の子を目の前にして、食わないという選択肢があるか?
望月は心から嬉しそうに、から揚げを頬張ろうとしている。
ええい、俺も男だ。望月よ、戦友として一緒に逝くぜ!
俺は思い切って玉子焼きを口に入れた。
……。
…………。
………………あれ?
これ、普通だぞ?
俺は不思議に思って、皿の上のおかずに片っ端から箸をつける。
うん、どれもまともだ。
確かに「ミートボールの塩味が足りない」とか「玉子焼きダシが少なくて焦げてる」とか
「ポテトサラダのジャガイモがきちんと潰せてない」とか「おにぎりの形がおかしい」とか、問題点は多いが……。
割といける。つーかうまい。
ほっとすると同時に、俺の体の奥から猛烈な空腹感が込み上げてきた。
俺は目の前の料理をがつがつと食らいつく。
望月の奴も、おいしいおいしいと連発して食べている。
それを見た青葉が安堵の息を漏らしたのを俺は見逃さなかったが。
「創一郎くん、どう……?」
青葉が尋ねる。
俺は無言でうなづき、空になった皿を示すことでそれに答えた。
そこでようやく青葉は自分の皿に手をつけた。
そんな青葉が、ちょっといじらしい。
「あんたねー。もうちょっと落ち着いて食べなさいよ」
那智子がそう言って俺の皿におかずを取る。
だが、俺はそんな言葉を右から左へと流して、またあっという間に全部平らげてやった。
また那智子がそこにおかずを取って乗せる。
二皿目を空にしたところで、ようやく俺は落ち着いて味わう余裕が生まれてきた。
ゆったりと料理を味わいながら、俺は言う。
「うん、たいしたもんだ。青葉のおばさんにはまだ敵わないけど、前にお前が作った料理に比べりゃ……ぐほっ!!」
俺の背中を那智子が思いっきり殴りやがった。
つーかそこは腎臓だ。ボクシングなら反則だぞ……。
「あらあらー。慌てて食べると喉に詰まるわよー。はいお茶」
白々しい笑みを浮かべながら、那智子が俺にお茶の入ったコップを渡す。こいつ……。
「本当、すごくおいしいよ。古鷹さんも妙高さんも、料理が上手なんだね」
望月の言葉にお世辞とか打算とかは何も無いようだった。
そういうところは青葉に似ている、と俺は思った。
「あ、ありがとう、望月くん」
青葉はお礼を言って、一つ一つの料理について色々と説明し始めた。
那智子も傍からそれぞれがどれだけ作るのに大変だったかを語りだす。
俺はそれに適当に合いの手を入れつつ食事に専念する事にした。
だって、下手な事言うとまた那智子に殴られそうだったから。
俺は食べながら、ふと、この前青葉から渡された弁当の事を考える。
和馬は、「あれは青葉の手作り」と主張していたが、案外的を射ているのかもしれない。
あっちの弁当の方がうまかったから、青葉のおばさんが相当手伝ったのかもしれないが。
いやいや、青葉が俺のために弁当を手作りする理由がないぞ。
あ、でももしかして今日のこの弁当の予行演習として、俺に弁当を……?
俺がそんなことを考えているうちに、昼食は和やかな雰囲気のまま終了した。
『ごちそうさまでした』
俺と望月が声を合わせる。望月なんか、手を合せて頭まで下げてる。
「おそまつさま」
青葉がそれに答える。
那智子は「どんなもんよ?」とでも言うように、俺に挑発的な視線を向けていた。
不意に青葉が那智子を手招きした。
青葉が那智子の方に顔を近づけると、そっと耳打ちする。
那智子は黙って頷いている。それから空の重箱を持って立ち上がる。
「私たち、お弁当箱洗ってくるわね。ここで待ってて」
そう言うと、青葉と那智子はお手洗いの方に去っていった。
俺と望月は黙って食後のお茶を飲んでいる。
「あの……」
突然望月が口を開いた。
「なんだ」
俺も淡々と返す。
「古鷹さん、どうしたんでしょう。妙高さんに耳打ちして」
望月が不安そうな視線をこっちに向ける。
正座して膝の上にコップをちょこんと乗せた様子が、妙に似合っている。
「……ああ、どうせトイレだろ。弁当箱洗うとか言ってたから、便所に行く口実が欲しかったんだろ?」
俺がそう言うと、望月が感心したような声を上げた。
「よく分かりますね」
「ま、付き合い長いからな」
青葉の性格から、初めてのデートで「ちょっとお手洗い」と言えないぐらいのことは察しがつく。
今の食事で少し打ち解けたとはいえ、まだ望月と青葉の間には壁が厳然と横たわっている。
俺の前では平然と言うもんな。「トイレ行ってくる」って。
「あの……」
「まだ何か」
「御堂くんと古鷹さんは、やっぱり……お付き合いしてるんですか」
俺がちらり、と望月をにらむと、奴はちょっと縮こまったように見えた。
「何でそう思う」
「だって、古鷹さん、御堂くんのことを『創一郎くん』って呼んでるし、前から親しいような口ぶりで……」
俺は黙ってお茶を飲む。
「もしかして、今日御堂くんを誘ったのは、僕に暗にあきらめるようにするためか、と」
そう言って望月はがっくりと肩を落とす。なんだか、しおれた花みたいだ。
まああんまり引っ張るのも意地が悪いか。
「付き合ってねーよ」
俺の言葉に、望月がぱっと顔を上げた。
「本当……ですか?」
「ああ、ただの幼馴染だよ。それに、青葉はそんなもってまわった事する奴じゃないし」
「そう、なんですか?」
望月の顔には、期待と不安がないまぜになったような表情が浮かんでいる。
俺はふっと息を吐いて、望月に笑いかけた。
「安心しろよ。青葉が二、三度あっただけの男と遊ぶなんて珍しいぜ。脈ありだと思う」
「そ、そうでしょうか?」
思わず腰を浮かせて、望月はこちらに顔を近づける。
その期待に輝く目に、俺は何だか照れくさくなって目をそらした。
「だが、安心すんのはまだ早い。あいつは結構頑固だからな。まあ、じっくりやれや」
はい、と頷いて望月が座りなおす。でも、その顔はさっきと違って晴れ晴れとしている。
俺は黙って茶を飲み干した。
「それはそうと、お前、よく女っぽいって言われないか」
そんな質問に望月は慣れっこになっているのか、爽やかに笑みを返してきた。
「ええ。よく言われます。年の離れた姉が三人もいるせいでしょうか。小さい頃はいつも姉たちと遊んでましたし」
その言葉に、何となく望月の家の様子が想像できた。
やっと生まれた待望の男の子。
親にとっては大事な長男であり、姉たちにとってはかわいい唯一人の弟。
親も姉たちも、期待と愛情を込めて望月を育てたのだろう。
望月の柔和な笑みにはそんな家族の愛情がはっきりと表れているように思えた。
「……でも、良かったです。御堂くん、最初はもっと怖い人かと……」
「そんなに俺冷たかったか?」
「ええ。でも、杞憂だったみたいで安心しました」
とうなづく望月。
うーむ、やはり女といわれても違和感無いな、こいつ。
この際、俺は望月に色々と聞いてみる事にした。
「ところで、何で俺に敬語なんだ?」
俺はもう一つ疑問をぶつけてみる。望月は恥ずかしそうに肩をすくめた。
「癖なんですよ。同級生にも思わず敬語を使っちゃうんです。……不快なら止めますよ?」
「……いや、いい」
相変わらず華やかな笑みを浮かべる望月を見ながら、俺は首を振った。
しばらくして青葉たちが帰ってきてから、俺たちは一緒に後片付けをした。
「さて、次は何に乗ろうか?」
「えっと……」
楽しそうに望月に相談する青葉を見ながら、俺はこっそり苦笑する。
「俺はちょっと休ませてもらうわ。食いすぎた」
それを聞いて、青葉がえーっと顔をしかめる。
「創一郎くん、来ないの?」
「ああ、この辺で休んでる。三人で行ってこいよ」
そう言って、俺はそっと那智子の方を見た。那智子が俺の視線に気づいてそっとうなづく。
「あ、私もパス。午前中ちょっと飛ばしすぎちゃった」
「え。な、なっちゃんも来ないの?」
青葉が状況を理解して、少し慌てる。
青葉が那智子に心細げな視線を向けている隙に、俺は望月に軽くウインクして見せた。
あ、と望月が何かに気づいたような顔をする。……いや、遅いって。
「じゃ、じゃあ、僕らだけで行こうか。古鷹さん?」
望月がぎこちなく声をかける。青葉の背中がびくっと震えた。
青葉がうつむき加減で望月の方へ向き直る。
「い、嫌かな?」
ふるふる。望月の言葉に黙って首を振る青葉。
「それじゃ行ってらっしゃい。一時間ぐらいしたら、またここに集合ね?」
那智子の言葉が二人を後押しした。
去り際、青葉が振り返って俺たちに手を振ったが、その顔は真っ赤だった。
俺は心の中で頑張れよ、と声援を送る。どちらを応援しているのかは自分でも分からない。
やがて二人が視界から消えた。
「……さてと。御堂、これからどうする?」
ふう、と息を吐いて那智子は俺に振り返った。
「休むんじゃないのか?」
「あんなの嘘に決まってるじゃない。どうせなんだし、遊びましょ。めったにこれないんだしさ」
そう言って那智子は俺に「ね?」といたずらっぽく笑う。
「一応『ダブルデート』ってことなんだし、御堂が私をリードしてよね」
「おいおい……」
そこ、一番触れたくなかったポイントなんだが……。
だが、那智子はさも当然のように俺の手を取った。
「アトラク系が無理ならさ、水族館でもいいよ。もうすぐイルカショーの時間だし」
セブン・オーシャンズは海のテーマパークだから、水族館も併設されている。
ま、それなら食後の休憩代わりになるか。
「そうだな。ただ待ってるのも暇だしな」
「よし。きまりっ」
那智子は俺の腕をぎゅっと抱きしめて、俺を引っ張るように歩き始めた。
うん。相手は那智子だけど、こういうデート気分ってのも悪くないかもしれない。
並んで歩きながら、俺はそう思った。
あ、この腕に当たっているものは……。
うーむ。ぺったんこだと思っていたが、やはり女だ、出るところは出てるんだなあ。
……いやいや、こんなこと考えてると分かったら、那智子に何を言われるか……。
とりあえず顔を緩めないように……。
「御堂」
「な、なんだよ」
「……スケベ」
「べ、別にお前の胸なんか……!」
それを聞いて、那智子がしてやったり、と笑う。
「誰も胸の話なんかしてないわよ?」
あ、くそっ。やられた……。
「とりあえず、罰としてソフトクリームおごって」
「なんでそんな」
「おごってくれなきゃ、青葉にこのこと話す」
「……おごらせて下さい」
駄目だ。一瞬でも「こういうのも悪くないかも」と思ったのが間違いだ。
心の中にいるもう一人の俺が、「この後も疲れそうだな」とため息を混じりに俺を慰めてくれた。
(続く)
===========================
連続投下の勢いに乗って俺も…
◆NVcIiajIyg氏いつも萌えさせてもらってます。正直貴方の文章力がうらやましい。
GJ!
どうしよう凄い先が気になる。
とりあえず3つのルートは確保できたわけだ
そしてマルチシナリオ
>>451 青葉ルートと那智子ルートと望月ルートか。
腐女子の期待も一手に引き受けた◆ZdWKipF7MI氏に幸あれ。
>453
いや実はそこで望月タンも男装っ娘だったとか
ハーレムルートマダー?(ぇ
何故「ある」ことを前提に話すw
職人さんが一個しか考えてなかったらえらい負担になるぞw
まちゃーり待とう
今回の重要選択肢
「さて、次は何に乗ろうか?」
>1.疲れたので休む
2.観覧車
3.お化け屋敷
登場人物
御堂創一郎…このSSの語り手。泰山高校一年生。親元を離れ寮生活をしている。
古鷹青葉…聖マリア・マッダレーナ女子高一年生。創一郎の幼馴染。合唱部所属。
初芝和馬…泰山高校一年生。創一郎の友人で、寮では同室。合気道部所属。
妙高那智子…聖マリア・マッダレーナ女子高一年生。青葉の友人。
望月近衛…北星高校一年生。少女と間違えられるような容姿を持つ天才。
******************************************************************
青葉、那智子、そして望月とのダブルデートもようやく終わり、俺たちは帰りの電車に乗っている。
デートが終わる頃には、青葉も望月に慣れて、自分から積極的に話しかけるまでになっていた。
そして俺はと言うと、とりあえず望月が変な奴でなくてほっとしていた。
というか結構意気投合してしたといってもいい。
そんなわけで、俺たちは互いに連絡先を交換し、夕方セブン・オーシャンズ前の駅で別れた。
帰りの電車で、青葉は望月のことは一言も触れない。
だけど、今日がどれだけ楽しかったか語る様子から、望月に好意を抱き始めているのは分かった。
「ほんと、今日は楽しかったね」
「ああ」
那智子は遊びつかれて寝てしまい、俺と青葉は小声で話している。
「こうやって、創一郎くんやなっちゃんと遊ぶのも、久しぶりだったしね」
「そうだな。最近お互い時間も合わないしな……」
そうだね、と呟く青葉の声が少し寂しげだ。
確かに俺も少し寂しい。
だが、それも仕方ないことだと思う。
もう、自分達の周りだけで世界が完結していた、小さい頃とは違う。
俺には俺の世界があり、青葉にも青葉の世界がある。
お互いが、お互いの世界に占める割合をだんだんと減らしていく。それが自然なことだ。
もし望月と青葉が付き合い出せば、青葉にとって世界の大半は望月で占められることになる。
そうすれば、俺は青葉の世界の中で、ただの幼馴染として残るだけなのかもしれない。
俺が黙っていると、青葉がそっと俺の手に触れた。
驚きもせず、俺は青葉の方を見る。
小さな青葉が、俺をじっと見上げている。
「ねえ、創一郎くん……」
青葉も俺と同じような寂しさを感じているのだろうか。
俺を見つめる目からは、俺は何も読み取れなかった。
「創一郎くんは、どう思ってるの?」
不意に青葉がそんな事を言ったので、俺はちょっと混乱しちまった。
「どうって……何が」
青葉は俺から視線をそらし、うつむいた。
なんだ? 何が言いたいんだ?
「創一郎くんは、私が望月くんと付き合ったらいいと思ってる?」
「お前、馬鹿な……」
馬鹿な事聞くな、そう言いかけて、俺は口ごもった。
青葉の瞳に浮かぶ、不安の色。
どう答えろって言うんだ。そんなの、俺がどうこう言うことじゃない。
「そんなの……わかんねえよ」
俺の答えに、一瞬期待の色を浮かべた青葉が、またうなだれる。
「創一郎くん、言ったよね。相手が嫌な人だったら、創一郎くんが断ってくれるって」
「確かに、言ったけどさ……」
でも、それは青葉の意に染まない相手だったらって話であって。
「お前、望月のこと嫌いなのか」
俺の問いに、青葉はううん、と首を振って否定する。
「まだ、わかんない」
青葉は身動きもせず、じっと床を見つめている。
「じゃあ、もうしばらく考えてみろよ。もしかしたら望月の嫌なところが見えてくるかもしれないし。
……そしたら、断れ」
「でも……」
青葉は不満げにつぶやく。
「それにな。誰かと付き合うかどうかなんて、自分で決めろ。人に聞くことじゃねえよ」
俺はそう言って、青葉の肩をぽん、と叩いた。
その時だった。
青葉が一瞬肩を震わせ、俺の方にぱっと顔を向けた。
「でも……でも、私は創一郎くんの気持が知りたいの」
「青葉、お前何を……」
青葉の顔を見て、俺ははっとした。
うっすらと涙を浮かべている。
俺は突然の涙にうろたえた。
「だって、創一郎くんいつも分かってくれた。
私が喜んでるとか、嫌がってるとか、言わなくたって分かってくれた……。
なのに、なんで今日は分かってくれないの?
なんで『自分で決めろ』なんて言うの? なんでそんなに冷たいの……?」
そこまで言って、青葉はふっと体の力を抜いた。
そして静かに座りなおす。
「創一郎くんが、私の気持ち分かってくれないの、初めてだよ……」
そんなこと、今まで言われたこともなかった。
返事に詰まって、何も言えない。
俺が、冷たい?
俺が、青葉の気持ちを分かってない?
違う。俺は分かっている。
青葉は自分で決めるのが怖いだけだ。
だから俺に決めてもらおうとしてる、自分の気持ちまで。
お前は望月を好きになるとか嫌いになるとか、そんなことに責任を取りたくないだけじゃないか。
俺の頭に血が昇る。
頭に浮かんだその言葉を、そのままぶつけようと口を開きかけたとき。
「……ごめん」
青葉が俺に頭を下げた。
「私、変な事言ったね。……忘れて」
上げた拳を振り下ろす場所を失って、俺は黙り込む。
嫌な沈黙が俺たちを包んだ。
もう、青葉の手は俺に触れてはいなかった。
こつん。肩に軽い衝撃。
ふと青葉と反対の方を見ると、居眠りをしていた那智子が、俺に体を預けている。
ふふ、と青葉が小さく笑った。
「今日は、創一郎くんとなっちゃん、喧嘩しなかったね」
青葉の笑顔に、俺の心は少しだけ和らいだ。
「……そうだな、それだけでも今日は有意義だったかもな」
俺はそう言って今日の事を思い出し、自嘲気味に笑う。
ま、ソフトクリームをおごらされたぐらいは、安い代償だろう。
それから俺たちは黙って、俺たちの住む町に着くまで電車に揺られていた。
少なくとも嫌な沈黙じゃあ、なかった。
「ただいま……」
部屋の扉を開け、俺は力なく言う。
「おかえり」
ベッドに横になっていた和馬が身を起こして返事をした。
俺は首をごりごりと鳴らしながらジャケットを脱ぎ、俺の椅子に放り投げた。
そして、ベッドにあおむけに転がる。
はあっと大きく息をつく。
「それで? どうだったんだ。ダブルデートは」
和馬が特に興味がある風でもなく、そう尋ねた。
天井を見つめていた俺は、ちらりと和馬を見る。口元に軽く笑みを浮かべて俺を見てる。
相変わらず、ひょうひょうとした野郎だ。俺は苦笑する。
また視線を天井に戻して、今日の事を話し始めた。和馬は黙って俺が話し終わるまでそれを聞いていた。
話が終わり、俺たちの間に短い沈黙が流れた。
それを破ったのは和馬の方だった。
「美少女風ねぇ……青葉ちゃんもなかなか面白い男に惚れられたようだな」
「面白い、か」
そう言って俺は望月の事を考える。
まあ、見た目には驚かされたが、それ以外は至極まっとうな男だと思う。
あ、いや頭はいいし、運動も出来るし、特技もあるんだから「まっとう」以上かもしれない。
セブン・オーシャンズからの帰り道、並んで歩く望月と青葉を後ろから見ながら、
「結構お似合いじゃないか」
と思ったのも事実だ。
あれだけ人より秀でたものを持ちながら、女に対して妙に自信なさげなのは面白いと言えるだろうか。
でも、そういう控えめなところが青葉にはふさわしいかもしれない。
少なくとも、きざな言葉と態度で女心をくすぐるような奴に言い寄られるよりは良かったと思う。
でも。
やはり何か納得できないものがある。
帰りの電車で、俺は、お互いがお互いの世界に占める割合が減るのが自然だ、と思った。
でも、本当にそうなのか。俺には自信を持って言い切れない。
俺はまたため息をついた。
「なあ、和馬」
「なんだ」
和馬は黙って俺を見ている。
「お前も、青葉の事が好きなんだろ」
何気なく聞く。和馬はちょっと黙ってから、口を開いた。
「まあ、好きだな。『ファン』として、だが」
それはテレビのアイドルの話をするような、そっけない口調だった。
「和馬さ」
俺は次の言葉を言うのに、少しためらいを感じながら、それでもやはり言わずにいられなかった。
「お前、今からでも青葉に告らないか」
言ってから、俺は横目で和馬を見る。和馬が苦笑しているのが目に入った。
「何を言ってるんだ、お前」
「いや、マジな話さ。お前が告白すりゃ、青葉もうんと言うような気がするんだよ」
同年代の男で、俺の次に青葉が懐いているのは間違いなく和馬だ。
俺にだって和馬以外の友人は何人かいるし、青葉はそいつらに会ったこともある。
だが、青葉が心を開いているのは、間違いなく和馬だけだ。
今日それに望月近衛が加わったが、それでも和馬が一歩、いや十歩はリードしている。
「お前と青葉が付き合ってくれれば、俺も安心なんだが」
俺の言葉に、苦笑いを浮かべたまま和馬が立ち上がるのが見えた。
「なあ。お前だったら、俺協力するぜ」
そう言ったとき和馬の動きがぴたりと止まった。
俺に背を向けたまま、和馬が呟く。
「お前は何様のつもりだ?」
「え……」
「お前は青葉ちゃんの何だ? ただの幼馴染だろ。責任も取れないくせに、青葉ちゃんの人生に口出しするな」
和馬の口調は淡々としているが、その飾り気のなさが、逆に俺には恐ろしかった。
「それから、俺の人生にも土足で足を踏み入れるな」
「……悪い」
俺は身を起こして、和馬に頭を下げた。もちろん、和馬には見えていないだろうが。
ふっと、和馬の体から緊張が抜けるのが分かった。
「創一郎、何でもお前がコントロールできると思うなよ。世の中、なるようにしかならんと思う。
それに、土足で足を踏み入れるなと言っても、お節介だって世の中には必要だしな」
和馬は、ジュース買って来る、と言って静かにドアを開けて部屋を出て行った。
「責任、か」
俺は呟いて、またベッドに横になった。
青葉を突き放せばいいんだろうか。
それとも、青葉の気持ちを決めてやった方がいいんだろうか。
そんな事を考えているうちに、俺は深い眠りに落ちていった。
(続く)
=========================================
他の職人さんを待ちつつ投下。
マルチルート等、盛り上がってもらえて嬉しいです。
ニーズと書く時間さえいただければ、マルチエンドも挑戦したいと思います。
どのキャラにも愛着がありますし。でも……
「望月ルート」←これってマジですか? 801は一度も読んだ事がないので自信が……。
このスレってヤオイスキーの人はどれくらいいるんだろう?
さつきと大介の導入部だけ、投稿いたします
一応エチにする予定っす
464 :
さつきと大介:2005/05/09(月) 22:52:25 ID:4zTPz38d
「というわけで、私たちは温泉旅行に行ってくるから、あんたはお留守番ね」
「いきなりだな、おい」
GWに入る3日前のことである。
夕飯時にいきなり母さんに言われた。
「お父さんと二人っきりでイチャイチャするんだから、あんた邪魔」
「実も蓋もねえな、おい」
まあ、別にいいけど。
いまさら親と一緒に旅行って年でもねえし。
それにGWは部活があったりと、どっちにしろ余裕なんて無い。
「ま、そういうわけだから気楽な一人暮らしでも満喫してなさい」
「へ〜い」
それから、火の元注意しろーだの、ちゃんと飯食えよーだの、耳たこなくらい言われて、そして
「あー、そうそう」
母さんがわざとらしい声を上げた。
「夏姫達も旅行だって。さつきちゃん、一人でお留守番らしいわよ〜」
にやぁ〜と母さんが笑う。
「……だ、だから何だよ」
「……」
ふっふーんと母さんがオレを見て笑っている。
「心配よねー。年頃の女の子が一人でお留守番だもんねー」
「……さつき、旅行に行かないのかよ」
「あんたと同じ理由。部活だって」
「そうかよ……」
「誰か信頼できる人が側にいれば安心よね〜」
「おい……母さん……」
つーか、裏で示し合わせてないか、あんたら。
「父さん……何か言ってくれよ、このダメ母に」
先ほどから静かに食後のお茶を啜っていた父さんは……
465 :
さつきと大介:2005/05/09(月) 22:53:29 ID:4zTPz38d
「大介……男になって来い」
笑顔とサムズアップをオレに送ってよこした。
「……」
オレの両親、揃ってダメ人間です。
「お前らっ! 子供に不純異性交遊を進めてどうすんだよっ!!」
「……何の気兼ねもなくさつきちゃんとイチャつけるチャンス、本当に嬉しくないの?」
「すっげえ、嬉しいっすっ」
しまった、つい本音が。
「あんた……やっぱりウチの子ねぇ」
「そうだな」
「……」
……すっげぇ敗北感……。
「なんて事があった……」
『……』
夕飯後、さつきと携帯電話で話していた。
あれ以来、夜電話でいろいろお喋りするのが日課になっている。
ちなみに、オレとさつきの家は三軒ほど離れているのでさすがに、
窓を開けたらこんにちは
ではない。
『私も……けしかけられた……いろいろ……』
「そ、そっか……あはははは……」
もう、乾いた笑いしか浮かばない。
466 :
さつきと大介:2005/05/09(月) 22:54:23 ID:4zTPz38d
「まあ、なんだ。バカ親ーズのお膳立てに乗っかるのもなんか癪だし」
『……』
「ご飯くらいは一緒に食べるとして……後はまあ、その……」
そういや小学校の低学年くらいまで、頻繁にお互いの家に泊まり合ってたっけ。
本音を言えば、二人でずっと昔のように、それこそ一日中一緒にいたいけど……
でも、さすがにそれは……オレたちはもうあのころのような無邪気な子供じゃないわけで。
泊まるということがどういう事になるか、もう、言うまでもないわけで……。
『……』
「あの……さつき、さん?」
『……』
さつきはさっきから全然喋らない。
「……そのさ、お前、オレんちに来たい、とか……?」
『……』
「ま、まさか、な。あはは……」
『うん』
「はは……は?」
『休みの間……ずっと、大介のとこに、行くから』
「さつ、き……」
『それとも……大介が私の家に来る?』
「……」
オレは……まともに言葉を出すことが出来なくなっていた。
「さつき……お前……」
本気か、といいかけて……
『……お、お休みっ』
いきなり切られてしまって……
「……」
オレは……
携帯を持ったまま、何時までもアホみたいに呆けていた……。
そうして、GW当日を迎えることとなる。
467 :
書いた人:2005/05/09(月) 22:56:40 ID:4zTPz38d
というわけで、ここまでっす
これからひたすらイチャでラブなエチ三昧な爛れたGWに……
なんか自分で書いてて嫌んなってきます
>462
乙です
そうか望月女装説は消滅か(苦笑
>464
どんなカップルだったか失念してしまったので
過去ログの海に潜ってきますotz
>>467 乙です!GJです!
次回を楽しみにしております。
>>467さん乙です。
「お前らっ!」というところがちょっと気になりました。
>>462 望月ルートは俺が冗談で言い出したことなので、無視してくれてもOK。
っつーか本気にされるとは思って無かったw
それにしても、和馬の言葉ってキッツイなあ。というより、重みがあるというか。
どっちかっていうと親父臭くぁwせdrftgyふじこlp
夕から小雨が降り出した。
洗い済みの着替えを持ってくるのは昔から梅子の役だ。
流石に数年経てば思春期中でも恥ずかしさなど消えて、
堂々と抱えて廊下を歩けるようになってくる。
「坊ちゃま。着替えです。開けますよ」
一応跪いて着物を置き、ふすまだけは丁寧に開ける。
ついていた両膝を裾を乱さず浮かせて立ち上がり、抱えなおした着物を畳に置いて梅子が孝二郎を瞬きして見つめた。
ごそりと音がする。
読んでいた本を傍に隠した幼い頃から馴染みの主人を、しばらくじっとそうして観察する。
別にそういう雑誌でもあるまいになぜ隠すのかさっぱり分からない。
孝二郎があからさまに顔を逸らして嫌そうな舌打ちをした。
思わずむっと眼鏡の奥で眉をしかめる。
―相変わらずやる気がないくせに気分屋なのだから。
結い上げた髪からこぼれる後れ毛に、指先を遊ばせて彼女は心中ひとりごちる。
昔からこの偉そうなお坊ちゃまはそうだったのだ。
気分が悪いと八つ当たりばかりで、自分も本当に可愛くなく言い返して
手まで出るものだから、喧嘩はいつもこじれにこじれた。
だのに機嫌が直れば、裏の倉庫探検なんかに自分を無理矢理誘いに来るのはいつも「坊ちゃま」の方で。
雀百まで踊り忘れずというくらいなのだから、この短所が治るだろうことなんて想像もしないのだけれど、
好きこそ物の上手なれというくらいなのだから、それにいちいち自分がつっかかりたくなる衝動は
努力次第で抑えられるはずだ(使い方がちょっと違う気もするが)。
*
「梅」
黄ばんだ白秋を放り投げたままで、孝二郎はあっさり去ろうとする梅子の尻を睨んだ。
はい?と肩だけで振り返る仕草はおそらくそのあたりの十六歳とは全く違うのだろうし、
不細工だとはいくら孝二郎でも言えない風情がある。
下働きの小娘だからと見合いが断わられることは、まあそうないだろう。
結果は知らんがきっといい縁にでもめぐり合ってさっさとこいつは俺のことなど忘れるだろう。
世話なんて他のやつに任せてしまったって構わない。
「…あのよ。宗一に聞いたか」
「何をですか」
梅子がいつの間にかすっかり流暢になった敬語で答える。
孝二郎は指先で畳を掻いた。
指の腹が汚れるような錯覚を覚えた。
「あのな」
「宗一様の頼みでも宿題は教えませんけど」
梅子が身体ごと振り返ってこちらに向き直るのを見上げて口をゆがめる。
「は。そういう風にな。
おまえがいつまでも俺にくっついてられると、家としては困るんだってよ」
流石に今の言い方はなかったろうと、気付く間もなく、空気が変わった。
梅子を見上げると表情をなくした目で彼を見ていた。
ああ。
ああ、泣くな、と。
もう何年もそんな顔は見ていなかったくせに孝二郎は思った。
それでも彼の幼馴染は、泣かずに無表情のままでいた。
夜半の薄雨が、障子越しに湿りを伝える。
「梅」
「はい」
硬い声でそれでも、幼馴染の少女が泣かないので少年は写真の山の押し込まれた押入れへ目を逸らした。
泣け。
「それくらいは分かってるよな」
「…はい」
それでも梅子は泣かなかった。
ただ表情だけが薄く薄くなった。
「見合いしろ。写真がきてる。近いうちに見せてやる」
――でもおまえは梅子ちゃんのことが好きではない。
ああ好きじゃねえよ。
恋愛なんてものは結局非日常なものでおまえだってそろそろそれに気付くべきだろう。
「話はそれだけだ」
梅子が頷いたかどうかは分からず、ふすまがいつ閉まったのかも分からなかった。
かすん、という乾いた音で、顔を上げれば、いつも自分を嬉しそうに眺めている
幼馴染のうっとうしい女中は、もう部屋の中にはいなかった。
ひとときだけ、雨音が孝二郎の耳を攫った。
前作と混乱を避けるのに番号外していましたが時間も経ちましたので復帰。
>431さんありがとう。
引き続き数々の幼馴染職人さんたちの続きを待つ。
おかえりなさい。
まってました。
待っててよかった…
なんかこの切なさがたまらん
この中に一人
実際待つことしかせえへんのに「待ってて良かった…」としか言わん奴がおる
>>477 お前やろ!
いえ、違います!
>>480 ほんならSS一つ書いてみい
よし、誘導成功
_, ._
( ゚ Д゚)
( つ O
と_)_) __
(__()、;.o:。
゚*・:.。
最近行く先々で「この中に一人」ネタを見るのだが、嘉門ってまたはやってるの?
一時期社会派きどっててネタが面白くなかったから気にしてなかったんだが。
それはどうでもいいとして、
>>243氏GJ!
孝二郎の自分に対する鈍感さがたまらなくもどかしい。
いい話をいつもありがとう。
鈍感なんじゃなくて、
恋愛を「日常」の中に求めたくないんじゃないのか。
幼馴染に恋するなんて自分の世界があまりに狭いみたいでイヤになるじゃないか・・・
だがそれがいい
まぁ、俺は幼馴染もの書く場合でも、複数ヒロイン出すのが普通だけど…
台詞が多くなって、文章が長くなる長くなる(汗
例えば、
A(男)、B(男)、C(女)
AとCが幼なじみ、BとCは付き合ってる、AとBが親友という場合。
BとCが少し口げんかをして、自分とCをくっつけてくれたAに、Bが相談している。
B「なんかお前がうらやましいよ、Cとお互いに理解しあってる感じがして」
A「大丈夫、お前たちは別れないよ。それにたとえ別れても、Cと付きあう男は
オレじゃないから」
B「なんで?」
A「Cはオレのことが大好きだからさ」
B「……そっか」
A「……怒るとこだぞ」
B「いや、妙に納得できちゃって……」
A「……」
そういうことだ!!
>>487 おい、おい。そんなこと言うと、リアルで幼なじみと恋愛していた俺の立場がないじゃないか。
>>489 H2かよ!
連レススマソ。さっきツッコムの忘れてた。
>>489 某野球漫画ですか。
うーん、書いてみようか、という気はあるのだが…たぶん時間の関係で夏休みに入る前にいけるかどうか、だな…。
たとえやすい脳内想定は「ときメモ2」の逆、つまり男でなく女が引っ越して戻ってくる感じ。
もちろん、あれをSSにするんじゃなく、まったくの創作だが。
場所はちょっと小さめの町のほうがいいかなとは思ってるが。
なんだか久しぶりに幼なじみに会いたくなった…やっぱ離れてからその大切さに気付くことってあるよね…
>493
郷愁を恋と勘違いしてるだけだ、現実はそんなに甘くない
…でもまぁ、取れるんだったら連絡取った方がいいかもね、
飲みにでも誘ってさ、昔話に花が咲くと楽しいし
そんな俺にも……まぁ、いいや
何このかつてない流れ
正直キモチワル('A`)
纏めて言うなら「聞 い て な い よ」
おk、聞いてないならコメントすんなや m9(^ω^)
俺はスルーしている。
ところでここはSS書きでないと書き込みしてはいけないのかな
初期スレから感想レスは頻繁に入っているし、ROM専と言ってる人もいた。
なぜ書き手でないといけないと思ったの?
まあ正直「自分の幼馴染体験」告白が始まったのは驚いたが。
俺はどっちでもいいよ。
書き手さんが投下しにくくならなきゃ。
>>487 ……っていう気持ちと、幼馴染に惹かれる気持ちが止まらなくて
相反するふたつの感情がせめぎあうってのも、なかなかいい題材ではないかと。
こういう場合、主人公は男の方が嫌味がなくて書きやすいんだろうな、きっと。
今からSS投下しますね。
携帯からなんでかなり時間がかります。
途中で力尽きてしまうことがあるかもしれませんがお許しを。
では拙作ですが楽しんでいただければ幸いです。
「ふぁっ…あっ、ゆぅいちぃ……すきぃ…んっ、あんっ!」
今、俺の目の前で艶っぽく、それでいて十七才という年齢に違わず、かわいらしい様子で嬌声を上げている少女、遠藤綾音は俺の恋人で、
幼馴染みだ。
『あいのかたち』
思えば綾音とこういう関係になったのは、いつ頃からだっただろうか?
確か初めてのキスは小学生……いや違うな幼稚園の年長、五才のときだったか。結婚式ごっこで「えいえんのあい」を誓い合ったのが最初だな。
もっともそれは記憶を遡れる範囲内のことで、本当のファーストキスがいつだったのかは分からないけど。
初めて互いの裸を見せ触れ合ったのは……これは、はっきり覚えている小学校五年生だったな。
保健の授業で男女の体について学んだとき、いわゆる「女の子だけ視聴覚室に集まってください」的な教育
(どうでもいいが生理という問題は後々男にも深く関わるのだから最初にきちんと説明したほうがいいと思うのだが)
を一通り受け終わって、実際どうなっているのか見てみようという話になって……それが最初だな。
もっともこれも性的な興味感心、そして興奮を持ってという意味で、それ以前にもお互いの裸など飽きるほど見ていたわけだが。
そのときの綾音の反応は新鮮で刺激的だったなぁ。俺がちっちゃなふくらみに手を触れると、顔を赤らめて小さな喘ぎ声なんて漏らしちゃって、本当に可愛かった。今でも綾音は本当に可愛んだけどね。
ちなみに俺はそのとき初めて「ぼっき」という現象を体感した。
初体験、初めてのセックスはそれまでの経緯から考えると少し遅めだったな。高校に入ってからだ。
これは、やっぱりセックスは最低限義務教育を終えてからにしよう、という今時の若者にしては立派な(?)意見が一致していたからである。
ああ、初めてのとき綾音がちゃんと安全日を計算していて、膣内射精させてくれたことには本当に感動した。そんな綾音の気遣いに応えるべく、俺も精一杯優しく挿入を行ったのだが。
いやー、しかしあれは激しかったなー。多分もう二桁も半分以上過ぎた俺達の愛の儀式の中でも一、二を争うだろう。綾音が感じだしてからは本当もう信じられないくらいヤリまくったからな。
紫煙
回数なんて覚えてない。気付いたら小鳥が鳴いてて朝だったってぐらいだ。連休中でよかったと思ったね。お互いの家族はその連休を利用して旅行中だったわけだし。
俺達はテスト勉強があるからと言って(もちろん大嘘)中村、遠藤両家の毎年の伝統をその日はキャンセルしてことに及んだのだ。
しつこいようだが本当に激しかった。やっぱりお互い溜まっていたんだな。しかしいくらなんでもヤリ過ぎた。連休明けの体育の授業、そろって筋肉痛でろくに運動もできなかったからな。
おかげでクラスメイトにみんなばれてしまって、比較的新しい友達には、
「え、俺遠藤狙ってたのにー、ショックー!」
なんて言われたりした。
自慢するが綾音はかなり、いや凄く、いや究極に、いや……ここらへんで止めておこうか。とにかく可愛いのだ。具体的にいうと某大手、アイドルプロダクションで一番可愛いといわれてる娘の倍は、いや十倍、いや百倍、いや……いい加減くどいか、ここらへんで止めときます。
昔からの友達は、
「えっ!お前らまだやってなかったの?」
とか言って意外そうにしていたな。そんとき俺は、
「失礼な!俺達は純粋なんだよ。ピュアなんだ。ピュ・ア」
とか言ってやったっけ。
後から聞いたんだけど綾音の方も何人かの女子から、
「えっー!中村くんと綾音そういう関係だったのー!中村くんいいなーって思ってたのに……あーマジショックなんけどー」
とかなんとか言われたらしい。俺としては綾音以外の女子とどうにかなる気なんて、さらさらなかったのだが、やっぱりもてることに悪い気はしなくてつい頬を緩ませてしまった。もちろんその緩みは綾音のかなり強い抓りのおかげで、すぐに引き締まったのだが。
初体験を終えてからは平均週二ぐらいのペースで交わり続けている。友達に、
「それほどやってるといくらなんでも飽きね?」
とか言われるのだが、とんでもない。むしろヤレばヤル程、綾音との行為はまるで酒や(飲んだこと無いけど)危ないクスリ(使ったこと無いけど)の依存性の如く俺を魅き付けるのだ。
あー、悪い。上の表現忘れてくれ。綾音との行為を酒やクスリ等のマイナスイメージを持つものに例えるなんて、俺どうかしてたわ。
でも本当に依存性は凄いからな。いろんな事情が重なって二週間程できなかったときがあったのだが、発狂寸前になった。いや、マジで。
一人ですりゃーいいじゃん、とか思うだろ。でも違うんだ。綾音とのアレを体験したら一人でヤル気なんて兎の毛程もおきない。
綾音と交わったことの無い男には一生分からないことだがな。ああ、ちなみに綾音の事考えて一人でヤルやつ気をつけろよ。明日ぐらい家が全焼してるかも知れないからな。
まあ、なにより一人でやるなんて綾音に悪いしな。
嬉しいことに、いや当たり前のことにそれは綾音も同じだったようで、その二週間ぶりのセックスはそりゃあそりゃあ激しいものになった。
ベッドどころか家が軋み傾くぐらいの勢いだったからな。家の近所の人、数人が地震と勘違いして飛び出して来たぐらいだ。
例によってお互いの家族は旅行中、本当旅好きの人達で助かったぜ。いや、別にラブホでもいいんだけど、金銭的な面や時間制限、おちつき、その他諸々考えるとやっぱり我が家が一番なわけで。
あー、早く金貯めてマイホーム買いたいなぁ。
んっ?ああ、そうだよさっきの一、二を争う激しさのもう一つはこっち。
そういえばあんなこともあったなぁ………
「……………」
さっきからあたしは必死に腰振っているのに、裕一はどこかうわの空で中空をぼぉーっと、眺めている。他のところにはたいてい不満は無いのだが、裕一のこの癖だけはやっぱり許せない。
どうせ考えてることはいつも通りあたしとの「愛の遍歴」とかいうやつで、変な自問自答を繰り返してるだけなんだろうけど。いい加減、腰も疲れて来た。一旦動きを止め、
「裕一ぃ……他の女の子のこと、考えてるんじゃないでしょうねぇ?」
裕一のほっぺを少し強めに抓り、答えの解りきった質問をしてみる。裕一は、はっと我に帰ってあたしの目をじっと見た。
うー、かっこいい。もう反則!その目線だけであたしイっちゃいそうだよ。
「んなわけねぇだろ」
裕一の低くて渋い声。背中がゾクゾクする。
「じゃあなに考えてたの?」
「俺と綾音の愛の遍歴」
ほうら、やっぱりね。
予想通りの答えに満足したあたしは、裕一にさらなる快楽を求める。
「あたしちょっと疲れちゃったわ……今度は裕一が動いてよ」
「ん、分かった」
そう言って裕一はさっきのあたしが上に乗った状態から、身を起こし向かい合うようにした。
「ーーーっ!!」
挿入したまま体位を変えたので、あたしの敏感な部分がこすれて危うくイキそうになってしまった。そんなあたしの様子を見て裕一は意地悪そうに微笑む。
「ったく。座位にした途端これかよ。綾音、本当にこの体位好きだよな」
裕一の言う通りあたしは座位が大好きだった。
挿入の深さでいうと、ほぼ垂直に貫かれる騎乗位も好きなんだけど(あたしの方から激しく動けるし)こっちは密着度も高いし、何より大好きな裕一の顔が正面に、それもかなり近いところにくるのが堪らない。
ちなみに嫌いな体位はバック系全般。それを伝えると裕一は、
「なんでだよ。俺は結構好きだけどなバック系」
と不思議そうな顔をした。
「だって……大好きな、ダイスキな、だぁーいすきな裕一の顔、見れなくなっちゃうんだもん……」
「……あー!もう!可愛いなぁ綾音は!」
暫くの沈黙の後、裕一はクシャクシャっとあたしの髪を撫でながら言った。
裕一が誉めてくれた。頭を撫でてくれた。それだけであたしの心は幸福感で満たされる。
「分かった。綾音が嫌ならもうしない」
「あっ、でも裕一がしたいならいいよ」
「いーや、もう二度としない」
「いーってば」
「絶対しない」
「いいって」
「ダメ」
「いい」
「じゃあ五回に一回だけ」
「多いよ……十回に一回」
「六回」
「八回」
「「七回」」
声が被った。あたし達はくすくすと笑いあう。
「じゃあそれぐらいで」
「うん」
他愛ない、他人が聞いたら鼻で笑って呆れ果てるようなくだらなく、幼稚な会話。
でもそれはあたし達にとってはかけがえの無い大切な、大切な会話。一つ一つ積み重なってあたし達の今を創ってきたもの、これからのあたし達を創っていくもの。
そんなことを思っただけで、なんでこんなに……こんなに幸せな気分になれるんだろう?
答えは決まってる。愛してるから。世界中の誰よりも裕一のことを愛してるから。
「裕一……」
「んっ?」
「愛してるわ」
「俺も綾音のこと愛してるよ」
あたし達は抱き合った。強く、強く、互いの骨が軋む程。そしてまた、
「愛してるわ」
「愛してるよ」
その言葉を口にする。
他人はこんな軽々しく愛してるなんて言い合うあたし達を訝しむかもしれない。でも仕方がない。愛してるって気持ちが溢れて、どうしようもないのだから。
それにあたし達の愛は決して軽々しいものなんかじゃない。
だいたい結婚して、愛を誓い合うカップルの付き合いがどれ程のものだと言うのだ。その伴侶に注ぎ込む愛がどれ程のものだと言うのだ。せいぜい十年。何人かと付き合った後、適齢期になったから。そんなのは愛じゃない。
あたし達は違う。生まれてから十八年近く、ずっと同じ相手に愛を注ぎ込んで来た。狂おしい程愛おしい幼馴染みに。
歪んだ価値観だと言われてもいい。馬鹿な奴らだと蔑まれてもいい。あたし達は知っているから。愛でるべきたった一つの、あたし達だけのあいのかたちを。
あいのかたちは一つじゃない、なんてどこかのお偉いさんが遺した箴言なんて知ったこっちゃない。
あたし達のあいのかたちはこの一つだけ。愛する人と幼馴染みとして育んできた、そしてこれからも永遠に育んでいくこの一つだけ。
愛を言葉にしてから、綾音は俺にしなだれかかるようにして密着して黙っている。またきっと俺との愛の深さを感じたりしているのだろう。
「ねぇ、キスしてぇ」 綾音の甘い声、そして髪から漂う鼻孔をくすぐる甘い匂い。それにうっとりしながら、俺は綾音の上唇をくわえる。
はむ。
続いて下唇を。
はむ、はむ。
決していきなり舌を入れたりしない、お互いまるで壊れやすい宝物を扱うよう、唇を求めあう。
「うっ…はぁん…はぁっ、ゆういちぃ……」
「綾音、…ふぅ、はぁっ…はぁー……」
「舌……ちょうだい」
十分唇の感触を楽しんでから舌をからめる。ここからは激しい。ハリウッド映画など比べものにならないほど、深く激しいディープキス。
歯列、歯茎、頬の裏、相手の口内を余すとこなく愛撫する。舌が激しく絡み合い、二人の境界線が無くなったかのように動き回る。ときに垂れる唾液に赤い色が混じる程、俺達は激しくキスをする。
「うぅんっ!はぁんっ!あっ……」
「んうっ…くっ……」
くちゃ、くちゅっ、くちゃっ………
ディープキスの音がさして広くない俺の部屋に響く。
二人の唾液が混ざりあい、泡立つ。
キスに没頭しすぎて呼吸がおろそかになる。そうしてお互い酸欠気味になり、ぼぉーっとしてきたところでやっと唇を離す。二人の間をつぅーっと糸が引き、カーテンの隙間から差し込む夕日によってそれは紅く煌めいた。
そして綾音は微笑む。いつもと変わらない。いつまでも変わらない無邪気な顔で。
「ふふっ……やっぱり裕一のキス最高だよ」
「俺も最高……そろそろ動くか?」
「うん。また二人一緒にイこうね」
俺は綾音の背中に手を回し、しっかりと抱き締める。綾音は俺の頭に手を巻き付けるようにして、頬と頬を接触させた。綾音の長い黒髪が鼻をくすぐってこそばゆい。
「綾音、髪の毛くすぐったい」
「あっ、ごめん、ごめん。……よっと」
綾音は一旦俺から手を離し、手首に巻いてあったゴムで髪をまとめ上げた。
「ポニーテール萌えっ!」
「ポニーテール萌え萌えっ!」
そんな意味不明な会話をしつつ先の体勢に戻る二人。
「じゃあ、動くぞ」
「うんっ!」
俺は腰を軽く浮かせるようにして前後上下に振る。俺のものが綾音の膣内を掻き回すと同時に、凄まじい快楽が襲ってきた。綾音の膣内は、もうありえない程の締め付けで俺をぎゅうぎゅうと圧迫する。
「うっ…うっ!綾音の膣内、いつもどうりあったかくって、ぬるぬるで、凄くきつくて……気持ちいいよ」
あまりの快楽の奔流によって情けない声が出てしまった。
「あっ!あたしもっ……裕一の、お、おちんちん硬くて大きくて、あたしの一番気持ちいいところにあたるのっ!いいっ!気持ちいいよぉ〜」
「綾音!あやねっ!はぁっ、はあっ……」
「裕一!ゆぅいちぃ!あんっ、ふわっ!あっ……!」
俺達は涙を唾液を垂れ流しながら醜く、美しく、その矛盾する二つの要素を孕みながら快楽の海に溺れる。
二人の結合部からはずちゃ、ぐちゃっといった、おおよそ上品とはいえない音が漏れ。ベッドは激しい動きでギシギシと音をたてる。
俺達は絶頂を求めさらに激しく腰を振り、互いの性器をすりあわせる。
「綾音、すっ、すごいよ!ヒダが絡み付いて……くうっ!もう射精るっ!」
「だっ、だめっ!もう少し、ああっ!も…う少し…あんっ!」
「くうぅぅぅっ!」
綾音の要望に応えて射精を必死でこらえ、さらに激しく腰を振る。
「あっ、くる!あ、あたしももうっ、ふぅっ!おっ、奥で、裕一!一番奥に射精してぇ!」
俺は綾音の一番奥に自分の分身を叩き付ける。
その瞬間綾音の膣内が痙攣したように引き攣った。その最後の攻撃を受け俺は綾音の一番奥に射精した。
「くうううっ!」
「ああんっ……」
どくんっ!どぴゅっ!びゅるっ!びゅるるるっ………
大量の精液が俺の先端から綾音の膣内に注ぎ込まれていく。
「あっ…熱いよぉ……はっ、はぁっ。ゆういちぃ……」
綾音はすっかり上気した顔で俺を見つめている。恍惚としたその表情は綾音も達したことを示していた。
俺達はもう一度強く抱き合いキスをした。
そして――
――未だ猛々しくそそり立つものを引き抜いた。
「えっ………」
綾音は信じられない事が起きたかのような驚きの表情を浮かべている。
そりゃそうだ。俺達は一回達したぐらいじゃあ決して満足しない。安全日のときは繋がったまま二回、三回と行うのが常だった。
「あ、れっ?ゆ、裕一……どうしちゃったの?」
「…………」
俺は応えない、応えてやらない。
「ひょっとして疲れちゃった?じゃあまたあたしが上に……」
四つん這いで近づいてくる綾音を手で制した。
「えっ!」
驚愕の表情。
「だめっ!今日はこれでおしまい」
なるべく感情を押し殺し、冷たく聞こえるように言う。
「なっ、なんで裕一だってまだそんな大きくなってるじゃない。ほっ、ほら、そのこはピクピクしてあたしの膣内に入りたがってるよ」
「綾音のおまんこも俺の欲しそうにヒクヒクしてるよ」
「う、うん。だからほら早く、早く入れてよ。お願い」
そう懇願する綾音の声は涙声で、俺を上目づかいで見つめる瞳には涙が溜まっていた。
「だめ」
まだだめ。もっともっと焦らす。
「!?」
さすがにこれほど焦らしたことは初めてだったので、綾音はかなりショックを受けているようだ。まあ、俺の思惑なんてとっくにばれているかもしれないが。
「そっ、そうか!口、口でして欲しいんだよね?裕一フェラ大好きだからなぁ。やだなぁー、そうなら早く言ってよ。じゃあ……」
俺の醜悪なものに桜色のぷるんっとした唇を近づける綾音の両肩を掴み、その動きを止める。そしてじっと瞳を見つめる。
「だめ」
その言葉を聞いた瞬間、綾音はついに泣き出してしまった。
「うっ、うっ、う〜〜〜〜っ」
ダイヤモンドより綺麗な瞳から美しく輝く涙がこぼれだす。
「えぐっ、ひっ、ひぐっ、やぁ、やぁだぁ!これでおしまいなんて言わないでよぉ。ゆういちぃ、だ、大好きだから。あ、愛してるから。もっといっぱい、いっぱいしてぇ。お願い、お願い……」
声を震わせて繰り返す綾音。
やべぇ、やべぇって。もう可愛過ぎる。小さい頃から何度も見てきた泣き顔なのになんでこんなに新鮮で可愛く見えるんだ?
俺ももう我慢の限界だ。
「わかったよ。じゃあ十秒数えたらしてやる」
綾音はぱあぁぁっと表情を明るくして微笑んだ。そして元気良く、まるで無邪気な子供のように、
「うん」
と頷いた。
「いーち、にーぃ、さーん」
明るい微笑みと共にカウントが始まる。
「ごーぉ、ろーく、しーち」
期待の笑いと共にカウントが続く。
「きゅーう、じゅっ!」
満面の笑みと共にカウントが終わる。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………ふぇっ」
「冗談だよ」
綾音の顔が再び崩れる前に言って、唇を重ね、押し倒した。
そして、俺の焦らし攻撃によってぬれそぼったそこに、限界まで張り詰めたものを挿入する。あっというまに奥までたどり着き先程以上の快楽に襲われる。
「はぁ、やっぱり焦らしたから最高!綾音もそうだろ?」
「うんっ!」
笑顔で応える綾音、しかしその瞳には喜び以外の感情があることも、俺は勿論気付いていた。
「ーーってんなわけないでしょ!」
「ははははっ……いででで」
目の前で微笑む裕一のほっぺをおもいっきり抓ってやった。あたしは焦らされるのは好きだけど、今日のはいささか長過ぎた。裕一の演技力も手伝って本当に今日はもうおしまいかと思ってしまった。だからさっきの涙は半分は演技、半分は本気だ。
「でもやっぱり今最高に気持ちいいだろ」
「うっ……」
図星だった。そうなのだ結局のところあれはセックスを楽しむための演技。裕一はあたしが本当に哀しむことなんてするわけないのだ。
でもそれでも騙されそうになってしまう。いっけんおかしく聞こえるかもしれないが、その矛盾こそがあたし達のセックスを何倍も気持ち良くさせてくれるエッセンスなのだ。
それはこの長い付き合いがあり、幼い頃から互いの性格を熟知しているからこそ出来る、幼馴染み、いやあたし達特有の楽しみ方だ。
試演
それは分かってる。分かってるけどやっぱり今日のはちょっと酷かった。
今度何らかの復讐を……そうだ!フェラのとき裕一の手を後ろに縛って、舌と手でいきそうになる寸前までやってあげて、寸止め。これを何回も繰り返してやろう。小さい頃のようにわんわん泣かしてやるんだ。
「綾音……なんか恐いこと考えてるだろ?」
エスパーかあんたは。
まあ、あたし達の間ではテレパシーなんて当たり前なんだけどね。
「そんな、おこんなよ……綾音だって感じてんだろ?ほら、乳首だってこんなにかたくして……うんっ、綾音また少し胸大きくなったか?」
裕一は優しくあたしの胸を愛撫しながら、聞いてきた。
「うん。やっとDカップになったよ。裕一がいっつも揉んでくれたおかげだね」
「うーん。よっ、うん。おー!」
あたしの胸を色んな角度から揉んだり押したりする裕一。
「ちょっと、そんなにされたら、感じちゃうよ……」
「いい感じだな。これがベストだ。これぐらいならパイズリもできそうだし」
「んっ……はぁっ、そ、そう?ならもうこれ以上大きくならないわね」
「何故に?」
「わかってるでしょ?だってあたしの体は裕一のためだけにあるんだもん」
そうあたしの体は裕一のためだけにある。そして裕一の体はあたしだけのためにある。今も、これまでも、これからもずっとそれは変わらない。
裕一はふっと笑った。
「そうだな、じゃあそろそろ激しく動くぞ」
裕一はあたしの乳首にむしゃぶりつき、腰を激しく振り始めた。裕一の手が二人の間に滑り込み、あたしの敏感な部分に触れる。
乳首、クリトリス、膣内、最強の三点攻めだ。
「あっ、ああんっ、いいっ、裕一!いいっ!」
自分の膣内にもう一つの鼓動を感じる。熱くって激しいもの、しかしそれでいてそこにあるのが当然であるかのようなもの。
「うっ、うっー!いいよー!膣内も、おっぱいも、全部、全部気持ちいいっ!」
「お、俺も、綾音ぇ……ふっ、ふっ」
裕一があたしの入口から奥まで何度も、何度も往復する。裕一の先端が、ひっかかりが、熱い棒があたしの敏感な部分を何度も、何度も刺激する。
「ひっ……気持ちいいよおっ!なっ、なんで?なんで?裕一のおちんちんこんなにっ〜〜〜っつ!!」
あまりの気持ち良さに声が出せなくなる。裕一はそんなあたしの顔を見て、
「はぁっ、あ、綾音の感じてる顔、す、すごく可愛い!やべぇってそんな顔されたら俺もう、射精しちゃうって。綾音の膣内に、膣内にっ!」
さらに激しく動き出す。
「も、もう変になっちゃうよぉ。だめ!だめぇ!なんかくるっ!!」
あたしはもう頭で考えることすらあまり出来ない。それでも裕一をもっと楽しませるため、自身ももっと気持ち良くなるため必死でろれつの回らなくなった口を開く。
「ひゃ、ら、なかれっ、なかでだしてぇ!いっぱい、いっぱいだしてぇ」
「うっ……射精るっ!射精るっ!!」
裕一があたしの膣内で大きく脈を拍った。
「ーーーー!!」
音にすらならない声を上げてあたしは絶頂に達した。おなかの中に裕一の熱い精液がどくどくと流れ込んでくる。
意識が、遠のいてい、く…………
「さっ、最高……綾音大丈夫か?」
裕一の呼びかけによってあたしは意識を取り戻した。一瞬気を失ってたような気がする。
「ふあっ……らっ、大丈夫かなっ?もう一回ぐらいなら……」
今日はもう無理っぽかったけど裕一のために強がってみる。でもこういうときはたいてい………
「そうか……俺も今日はもう無理っぽいわ」
前後の会話は噛み合っていない。でも会話が噛み合ってないからこそ心はしっかりと通じ合う。そんなありえないパラドックスが、あたし達の間には確かに存在する。
裕一はイったばかりで敏感なあたしを刺激しないよう、ゆっくり萎んだものを引き抜いた。
「ふぅっ」
息を吐きながら、ボフッという音をたててあたしの隣に倒れ込む裕一。
「今日もよかったな……綾音は?」
「へっ?ああっ、さいこー」
まだ頭が少しぼぉっーとする。
「親が帰ってくるまで時間あるし。少し寝ていくか?」
「ううん、もう……大丈夫。それより……ねっ、あれして」
こういう時間制限があるとき寝てしまうのは少し勿体ない。裕一の腕の中で眠るっていうのは、すごい幸福になれるんだけど今はこっちが優先。
「わかった」
裕一が頷いて、布団を二人に被せる。そしてほとんど頭までそれをかぶり、中でいちゃいちゃする。
これは小さな頃からの習慣だった。本当に覚えてないぐらい小さな頃からの。多分お昼寝したときにはじめたんだと思う。
あたしはこの瞬間が大好きだった。もちろん裕一と繋がるのも大好きだけど、このまったりとしたなんともいえない雰囲気はやっぱりすごく好きだ。
「裕一、大好き」
あたしは裕一の髪を、頬をなでながら裕一の鼻やおでこに軽くキスをする。
「綾音、大好きだよ」 裕一はあたしを抱きながら優しく髪を撫でる。その黒くて長い髪はあたしの自慢。裕一がいつも、
「綾音の髪さらさらでつるつるで気持ちいい……」
こう言って褒めてくれるから。
あたし達は欲望を吐き出した後、いつもこうやって甘い言葉を囁きながら永遠と布団の中で過ごす。
喧嘩したとき、なにか嫌な事があったときもいつも布団に入っていちゃいちゃする。すると嫌な事とかもたいてい忘れることができて、いつもの二人に戻れるのだ。
「んっ、そろそろ時間だな」
俺は時計(綾音から誕生日プレゼントとしてもらった一流ブランドのもの)を見て。両親の帰宅時間が迫ってきてることを確認して言った。
「んっ、分かったわ」
綾音は布団から出ると用意してあったバスタオルを手にとり、それで体を隠しながら、綺麗にたたんであった服を着る。
綾音はセックス以外のときは裸を見せたりしない。むしろ極力それを避ける。そんな少し古風なところも俺が綾音を好きな理由だ。
んっ!なんか今違和感があったな……そうか俺が綾音を好きな理由なんて存在しない。強いて言えば綾音が綾音だから好きなのだ。
そんな古風な綾音が好きだ。
これなら問題ないよな?まだ少し変な気もするけどこれ以上の表現は思い付かねぇや。おっと俺も服着ねぇと。
「どう?」
制服を着替え終わった綾音は俺の前でくるっとターンをして見せた。
制服の着こなしは完璧、白い学校指定のニーソックス。これ以上ないほどの絶妙な長さのプリーツスカート。県内でも可愛いと評判なちょっと変わったデザインのセーラー服。胸のリボンは蝶々結びにされている。
「完璧、さすが二年連続、ミス清白学園優勝者」
「ふふ、ありがと。まだ時間大丈夫?」
「ああ、後十分ぐらいなら」
「そう。なら少し話しましょ」
綾音は俺が腰掛けているベッドに並ぶように座った。
「そういえば……今日本当に膣内射精して大丈夫な日だったっけ?」
「大丈夫よ。裕一も知ってるでしょ?」
「まあ、そうなんだけど……ほらちょうど去年の今頃、<生理が来ないの事件>があっただろ」
「ふふっ、あれねー。結局ただの生理不順だったけどね」
「笑い事じゃねーよ。俺あんとき親父さんへの挨拶の言葉も考えたんだぜ」
「大丈夫よ。大丈夫。それに万が一赤ちゃん出来ても今ならおっけーじゃない?」
「何故に?」
「だって今九月でしょ?二人ともほとんど推薦で東都大の合格決まってるようなもんだし、大学入ったら両親にちゃんと話して同棲するって決めてたじゃない」
「んっ、そりゃそうだな……でも赤ちゃん出来たら今みたいにはいっぱいできないぞ」
「うっ、それは辛い……」
「だろ」
「……でもそれなら裕一がちゃんとコンドーム着ければいいじゃない。膣内射精してもいいよって言うといつも以上にはりきるくせに」
「それは確かに……」
「でもまあできたらできたでいいわよ。遅かれ早かれ結婚はするんだし」
「それもそうだな……おっ、そろそろやばい」
俺がそう言うと綾音は立ち上がり、机の上の鞄を取った。
「送っていくよ」
俺も立ち上がる。
「送ってくって……家隣よ。いいわよ」
「いや送る」
「じゃあお願い」
いつもどおりの応答を終えて、俺は綾音の手を握り部屋を出る。階段を降り玄関へ。そして綾音の家までの十数歩を二人で歩く。
「ありがと」
「どういたしまして」
「じゃあいつもの」
「ああ頼む」
「愛してるのキス」
ちゅっ。
「ありがとうのキス」
ちゅっ。
「また明日のキス」
ちゅっ。
綾音は俺の唇に三回、軽くキスをした。
「じゃあね」
「じゃあな」
綾音が家に入って完全にドアが閉まるのを待って俺は自分の家に帰る。
自宅に着き二階に上がると、意外なことに一人の少女が俺を待っていた。
「まっ、舞!おっ、お前、今日部活で遅くなるって……」
「それがちょっと怪我しちゃった子がいてさー、顧問の先生が病院まで付き添って私達は解散ってわけ」
「そっ……そうか。その子は?」
「んっ、たいしたこと無いってさ。結局ただの捻挫。それより兄貴ぃ……」
ここで舞はにこぉっと不気味な笑顔を作り、俺が恐れていた事を口に出した。
「今日は激しかったねっ」
「ぐうっ……」
「はいっ」
舞は右手を差し出した。口止め料要求のポーズ。俺は財布(綾音が誕生日プレゼントにくれた若者に人気のブランドのもの)から千円札を一枚抜いて妹の手の上にのせてやった。
「毎度ありっ!……しっかし兄貴と綾姉ぇ本当仲いいよねぇ。聞いてたこっちが赤面しちゃったよ」
「まあな。でも舞と亮太も仲いいだろ」
「なっ!私と亮太はそんな関係じゃないよ。あいつはただの……ただの幼馴染みなんだから」
舞は最初怒ったようにして大きな声を上げたが、最後の方はなんだか寂しそうだった。
「ふーん。まあいいや。そこ通してくれ」
「だめぇっ!追加料金」
「はぁ?」
「いいからよこす!明日買いたいCDが発売されるの思い出した」
「おいおい、いい加減にしろよ。お兄ちゃん怒っちゃうぞ」
「俺と綾音の愛の遍歴」
うっ。
「七回」
ううっ。
「ポニーテール萌えっ!」
うううっ。
「生理が」
「わかった!わかったよもう!」
俺はもう一枚舞の前にお札を差し出した。
「足りない」
「へっ?」
「アルバムだから」
「…………」
「ベッドの中でいちゃいちゃ」
「どうぞ」
さらに二枚差し出した。野口英世と夏目漱石混合の四枚の千円札を受け取り、舞は自分の部屋へと意気揚々引き返して行った。
それをただ呆然と見送る俺。なんかみじめだ。
「ふうっ」
部屋に入り溜息一つ、しかし壁薄いのかなぁ?あそこまでよく聞こえてたなんて………
「あっ!」
ベッドの中でいちゃいちゃなんて言ってねぇぞ。あの小娘覗いてやがったな。そういやぁ今日は鍵確認すんの忘れてた。
くそうっ。
妹を怒鳴りに行こうと思ったがやめた。後で何言われるかわからんしな。
ベッドへとダイブする。綾音の匂いがした。すごく、すごくいい香り。綾音と赤ちゃんの話をしていたからでもないが俺は二人の未来に思考を巡らせる。
まあ間違いなく俺達は結婚するだろうな。これは決して子供の甘い憧れなどでは無い。もはやそうなることが決まっているのだ。それこそ俺達が生まれたときから。
無論俺達の関係は全くの順風満帆といったわけではなかった。それなりに嵐あり、大波ありだった。二人の大好物「ベッドでいちゃいちゃ」でも修復できないときも何度かあった。
でもそれは乗り越えてきた。だからこれからも乗り越えていける。それほどに俺達の十八年は重く尊い。
もし二人が別れることがあればそれはまさしく「死が二人を別つ」場合しか……いや俺達の関係は死ですら別つことはできないだろう。
俺達は片方を失うようなことがあったらすぐさま後を追う。死んだ人は生きている人の死を望んじゃいないなんて、そんなエゴイズム俺達には通用しない。
綾音に何かあったら俺は迷わず死を選ぶ。そしてそれは綾音も一緒だろう。
何故なら俺達は愛し合っているから。そしてまたあの言葉を呟く。
「おかえり、ねーちゃん」
あたしがリビングに行くと、亮太が一人でテレビを見ていた。
「ただいま」
「そーいえば、ねーちゃん宛に手紙きてたぞ」
亮太に差し出された手紙を受け取る。
「なんだろう?……あっ!」
それはあたしと裕一が大好きな女性ソロシンガーのシークレットライブのチケットだった。
「やった!当たった!当たった!」
携帯(裕一からもらったお揃いのストラップ付き)を取り出して、短縮の0のボタンを押そうとしたが、少し考えて思い止まった。どうせ明日会うんだし、いきなり目の前に突き出して裕一の驚く顔を見てやろう。
「まーた、ねぇちゃん顔にやけてるよ。裕一兄ちゃんのこと考えてたろ?」
「うん!考えてた」
「……そこまでおおっぴらにのろけられると冷やかす気にもならないね」
亮太はふぅっと大袈裟に溜息をついて、肩をすくめた。
「それに髪形、朝と変わってるし……またヤッてきたんだろ?」
「えっ!?」
あたしは慌てて頭の後ろに手を伸ばす。
「あっ!」
さっきポニーテールにして、そのまま帰って来てしまったのだ。
「ち、違う。これは今日体育の授業があったからその時に……」
「はい、はい。でも気をつけてくれよ。俺この年でおじさんになるのは嫌だぞ」
「亮太!」
あたしが少し大きめの声を出すと、亮太は一目散に二階へと駆け上がって行った。
「まったく……」
つけっぱなしになっていたテレビを消してあたしも自分の部屋に向かう。
クローゼットを開けて制服をハンガーに掛ける。その時、
「あっ!……裕一のでてきちゃった」
ショーツを脱ぐと裕一の精液がぬとーっとあそこから糸を引いた。これをそのまま洗濯機にほうり込むのは抵抗がある。
「お風呂に入ったときにでも洗えばいいか」
一人呟き、下着も取り替えて部屋着を着た。そのままベッドへと寝転がる。ベッドの周りに配置されたぬいぐるみ(主に裕一がUFOキャッチャーで取ってくれたもの)を手で弄ぶ。
裕一と赤ちゃんの話をしていたからでもないけどあたしは二人の未来に思考を巡らせる。
「赤ちゃんか……どうしようかな」
思えば裕一との出会いも赤ちゃんの頃だった。
もともとあたし達の親同士が大学のサークル仲間。ほとんど同時期に結婚、妊娠して病室も同じで、なんとあたし達のベッドも隣どうしだったというから驚きだ。もちろん誕生日も近くて、あたしの方が三日ほど早い。昔はそれで、
「あたしの方がお姉さんなんだから言うこと聞きなさ〜い!」
とか言っていばってたっけ。
う〜ん。考えれば考えるほど、思い出せば思い出すほど、なにか感じてしまうものがある。
個人的には好きな言葉じゃないけど、やっぱり運命というのはあるのかな、と思わされてしまう。
「運命か……あたしと裕一がこうなるのはやっぱり運命だったのかな?」
でも運命よりも、なによりも大事なものがある。それはあたしが裕一のことを愛しているという気持ち。そして裕一があたしのことを愛しているという気持ち。
そう、あたし達は愛し合っている。馬鹿なのろけかと思われるかもしれないがあたし達には自信がある。
あたし達の愛は世界中の他のどんなカップルよりも深いと。そう思わせるほどあたし達の十八年間は重く尊い。
あたし達の愛はたとえ死ですら引き裂けないだろう。死んだ人を永遠に思い続けるなんて、そんな歪んだロマンチシズムなどあたし達には通用しない。
もし裕一に何かあったらあたしはもう生きていけない。あたしにとって裕一が世界そのものなのだ。そしてそれは裕一にとっても同じだ。
裕一が死んだらあたしも死ぬ。あたしが死んだら裕一も死ぬ。
何故ならあたし達は愛し合っているから。そしてまたあの言葉を囁く。
「綾音、愛してるよ」
「裕一、愛してるわ」
fin.
ここまでオナニー的だとむしろ清々しいですね
お疲れさまでした
543 :
おまけ:2005/05/13(金) 06:21:09 ID:bZdgsX7+
『ちいさなあいのかたち』
部屋の中に入って、兄貴から巻き上げた四千円をしまおうと、机の上の財布を手に取る。そのとき机の本棚に置かれた写真立が目に入った。
飾られているのは私と亮太の写真。小学生の修学旅行のときのものだ。くっついて二人とも照れ臭そうにしている。
二人が触れているのと反対側の肩には数人ぶんの手が押し付けられていて、無理矢理にくっつけられたようになっている。もちろんその手はおせっかいな友人達のものである。
「写真の中ではこんなにくっついてるのにね………」
私は少し自嘲気味に笑った。そして言葉を紡ぐ
「兄貴達と私達は違う………」
手を伸ばしてその写真にそっと触れる。
「恋人同士になんて、なれないよ………」
鼻の奥にツンとした感覚、しばらくして視界がぼやけた。頬に何か液体が伝う。
「泣けちゃうほど、好きなのに、ね」
写真立に指をかける。
その指を引くと写真立はゆっくりと倒れパタンと音を立てた。
その小さな音は、私の中だけでやけに大きく響いていた。
本当に長々とすいませんでした。
自分のせいで予定の狂った職人さんがいたらごめんなさい。
途中で支援してくれた人、ありがとうございました。
GJ!!朝からいいもの見れました
GJっすよ〜。
いやぁ、エロだらけってのもいいもんですな。
たまに引いてくんないとなあ 押されっぱなしで飽きたかな
でも若いってこんな感じなのかもね イイ感じにムカつけました(笑)
>>547 ああ解る解る。
「○○が死んだら私も死ぬ」
もう死ねよwwwwwwwwwww
っていう
まあ、そういうのが普通に許されるのもこのジャンルならではだ
もしかして書き手さんが現役女子高生かと興奮しました。
>>548 折れもだw
法が許すなら「なら俺が愛する者のもとへ送ってくれる」とか言ってそうでwww
前スレ600付近からの続きを、今更ですが投下させていただきます。
続きが気になる。と言ってくださった方、その節はありがとうございました。
『おしいれ 2話』
月曜日の教室は、どこかよそよそしく見える。
土日を挟んでいる間に、ぼくらが五日かけて染み付けた匂いが消えてしまうのかもしれない。
なんとなく『オマエら普段我が物顔で使ってるけど、本当はこっちは迷惑してんだよ』とでも言われている気分になる。
休み時間に友達と、今日発売の漫画雑誌や、最近出たゲームの話題に興じているとき、
ふと窓際の席に目をやると、とおこがぽつん。と、座っている。
周りの喧騒から浮くわけでもなく、馴染むわけでもなく、ただそこにぽつりと座って文庫本を読んでいる。
……ようやくぼくらの教室になりかけた空気の中で、その姿だけが、未だによそよそしさを保っていた。
ぼくらは学校では殆ど話さない。
話すとしても、ごくごく事務的な内容だ。
ぼくらが幼馴染みだと知っている人間は、小学校から付き合いのある、ごく一部の連中だけだし、
……そいつらも、ぼくととおこの関係までは知るはずも無い。
「――久谷? どーした、ぼうっとして」
「……ん、いや。呆けてたかな? なんでもないよ」
とおこの方をじっと見ていた事に気づかれてしまい、慌てて誤魔化す。
「なんだよー、くーちゃーん。誰見てたんだよー?」
……誤魔化しきれないヤツがいたか。
キムやんは小学校が同じだったから、ぼくととおこの家が隣同士だという事も知っている。
「別に、どこも見てないよ。ただちょっとぼんやりしてただけ」
「……ふーん? あー、ところでさー、くたにんー。ノート見してくんないかなー、お願いー」
ニヤニヤ笑いながらそんな事を言ってくる。
……くそ。
「……いいけどさ、別に。ところでさー、キムやん。
いいかげん仇名コロコロ変えるの止めてくれよ。返事しにくいじゃないか」
「じゃあ、りっちゃん?」
「それは嫌だ。男にちゃん付けで呼ばれたくないね」
ワガママ言うなーと、ぎゃあぎゃあうるさいキムやんこと木村くんにノートを投げつけて黙らせる。
とりあえず、それでもうみんな、興味を無くして、そこで、その話題は終了した。
――以前、キムやんに何でとおこと話さないのか聞かれた事がある。
あの時、ぼくは何と答えたのだったか。
……元々、内に篭る気性のとおこは、中学に上がった頃から、殆ど人と接さなくなった。
思えば、とおこの両親の不仲が決定的になった頃とほぼ同時期だったように思う。
以前には、ぼくもとおこの家に遊びに行ったことが何度かあったが、とおこの両親が揃うと、
最後は決まって派手な諍いになって、とおこはその間で哀れなほどにおろおろとしていた。
どうにかして、両親の間に横たわる険悪さを和ませようと、下手な冗談を言って道化ていた姿を思い出す。
そうして、結局両方から罵られ、親が子に向かって言うにはあまりにも惨すぎる言葉を投げつけられていた。
――わたしが悪いの。なんにもできない、馬鹿な子だから。
いつもいつも家の外では暗い顔の多かったとおこが、唯一、安らいだ顔を見せたのが、今は、ぼくの部屋に
なっている、離れの一室でだった。
――正確には、以前にこの離れを使っていたぼくの曾祖母にだ。
曾祖母は穏やかな人で、いつもぼくたちに優しくしてくれた。もちろん、悪さをしたときにはとことん怒られたけれど。
人見知りするとおこが、いちばんに懐いている人だった。
――りっちゃん。おばあちゃんが、おまんじゅう、くれたよ。縁側で食べようよ。
――りっちゃんはいいなあ。おうちに、やさしいおばあちゃんがいて。
――わたしね、おばあちゃんとりっちゃんが、だいすきよ。
懐かしい、幸福で無邪気だった頃。
よく、庭に面した縁側で、曾祖母の膝に頭を乗せて甘えていたとおこを覚えている。
……曾祖母が、鬼籍に入って、もうずいぶん経つ。
その時の、世界が終わったみたいなとおこの泣き声も。
はっきりと、覚えている。
……その後、しばらく使われていなかったのだが、進学祝いに、ぼくが自分の部屋として離れを譲り受けた辺りから、
時折、とおこが夜中に訪れるようになった。
とおこにとって、この離れはそのまま曾祖母との優しい時間の思い出に繋がっているのだろう。
どうにもならないほど、精神的に追い詰められた時、押入れに篭るようになって、その時間も長くなっていった。
……身体を重ねるようになったのは、それからしばらくしてからだった。
そのせいで、昼間の明るい光の中で、とおこと真っ向から向かい合って何を話せばいいのか解らないのだ。
どうにもこうにも、気まずいというか、気恥ずかしいというか――。
……普段、陵辱している好きな女の子と、昼間の学校なんていう健全な状況下で、どんな顔で会話をしろというのだろう。
……とてもではないが、そんな事、正直に話せる物ではない。
とおこはとおこで、元々内に篭るタイプということもあって、こちらに関心を向けないから、お互いに無関心を決め込む
今の状況に落ち着いているのだ。
また、適当なバカ話に混ざりつつ、横目で窓際の席を伺う。
とおこは、相変わらずぽつん。としていた。
――部活動を終えて、夕方家に帰ると、買い物袋を抱えたとおこに門の前であった。
なんとなく、会釈をして話しかける。
「――元気?」
聞いてから後悔した。
馬鹿みたいな事を聞いたと思う。
とおこは元気じゃなくなれば、ぼくの所に来るのに、解りきってる事を聞くなと思われたかもしれない。
ぼくが固まっていると、とおこは、うん。と肯いた。
「大丈夫。元気だから」
少し、ホッとした。
「あー……、おつかいの帰り? 今日、晩御飯、何なの、そっち」
とおこはちゃんと家の手伝いをしてて偉いよな。と、ただの世間話で切り出したつもりの言葉に、
見る見るうちに表情が硬くなっていく。
「え。……とおこ?」
どうした。と聞くより早く。
「やきそば。私、もう帰るから。ばいばい」
いい終わるより早く、家の中に入ってしまう。
「しまった……」
なにか、とてつもなくマズい事を言ってしまったようだ。
夕食が終わると、宿題があるから。と、早々に離れの自室に戻る。
母屋からの物音が途絶え、夜の、しん。とした音が耳に痛い。
予感めいたものがあった。
とおこは、きっと来るだろう。
夜も更けた頃、部屋の窓――、母屋からは死角になる面のガラス戸が鳴る。
怪談でこんなのがあったな。と思う。
毎夜のように訪ねてくる、この世の者ではない女と交わる男の話だ。
――最も、ぼくが取り憑いているのか、とおこが取り憑いているのか、わかった物ではないが。
……むしろ、彼女を貪っているのは、ぼくの方じゃないか。
自嘲気味にそんな事を思いながらガラス戸を開けてやると、いつものように、すう。ととおこが部屋に入ってくる。
普段ならば、まっすぐおしいれに行くのに、今日は、ぺたり。と畳の上に座り込んでしまう。
「……とおこ?」
どうした。と顔を覗き込んで、息を呑んだ。
虚だ。
元々黒目がちの大きな眼が――矛盾しきった、奇妙な言い方だが――虚に満たされているように、ぼくには見えたのだ。
「――とおこっ!」
思わず悲鳴のように名前を読んで、肩を掴む。
力加減をする余裕もなく全力で握り締めたから、かなり痛かっただろうに、そこで初めて、ぼくがいる事にやっと
気づいたのだとでも言うように、とおこの虚が、ぼくを見た。
いつからだ。
いつから、こんな。
「――離婚、するんだって」
ガラス玉みたいな眼をしてそういった。
「律、は。知らない、よね? ……二人とも、もうずっと家にいない、こと」
……とおこの両親は、ここ数ヶ月では、もう殆ど家に寄り付かなくなったそうだ。
二人とも、恋人を作って出て行ってしまったのだという。生活費だけは振り込まれているのだと。
ずっと。
――とおこは、たった一人であの暗い家にいたのだ。
口を開く。
そこも、真っ黒な洞穴のように見えた。
「――今日ね。いきなり、携帯にメールが来て。どっちと来るか、選べって」
恐ろしいくらいに平静だった声が、徐々にひび割れはじめる。
「……いけない、いけないよ。だって、おとうさんも、おかあさんも、わたしのこと、いらないん、だもの…っ!」
だからわたし、どこにも行けない――。
ガラス細工が壊れるような。
そんな音にそっくりの悲鳴をとおこがあげる。
意味の無い音。
言葉にならない悲鳴。
――それでも、ぼくには解ってしまった。
(いや)
ぶるぶると震えるとおこの身体を抱きしめる。
(いや、いや)
とおこの震えが激しくなる。
やせっぽちのとおこのからだ。
薄い、あばらの浮いた胸、まだ柔らかさの無い腰の線。
『女』というにはまだあまりにも固い、少女の身体。
どうしてぼくは子供なんだろう。
どうしてぼくは男なんだろう。
いっそのこと、女だったら良かった。
それなら、こんな方法じゃなく、とおこを心の底から安心させてやれるだろう。
こんな固い腕ではなくて。
とおこを貫く、棘ではなくて。
もっと、柔らかければよかったのに。
ぼくは、できるならばとおこの母親になりたい。
温かな腕の中で、とおこは安堵して微笑むだろう。
柔らかな胸の中で、嬉しそうに頬擦り、甘えるだろう。
――戯言だ。
現に、今、ぼくは。とおこの涙を止めることすら出来ていないじゃないか――。
とりあえず、今日の所はこのくらいで勘弁してください。
また続きが書けたら、勝手に書きに来ます。
それでは、みなさん。
よい幼馴染みを。
文章うまいねー。
GJ!でした。
描写がとても素晴らしい!
文章からその情景が浮かんできます。
次の投下も楽しみにしています。
564 :
名無しさん@ピンキー:2005/05/14(土) 17:21:29 ID:fXNvjUYv
ちょっと書き手さんに訊きたいんだけど、
「クビキリサイクル」っていう小説知ってる?ww
西尾維新
>>564 それがどうかしたのか?
読んだ事はないが。
なんかカブってるのか?
登場人物
御堂創一郎…このSSの語り手。泰山高校一年生。親元を離れ寮生活をしている。
古鷹青葉…聖マリア・マッダレーナ女子高一年生。創一郎の幼馴染。合唱部所属。
初芝和馬…泰山高校一年生。創一郎の友人、寮で同室。合気道部所属。
妙高那智子…聖マリア・マッダレーナ女子高一年生。青葉の友人。
望月近衛…北星高校一年生。少女と間違えられるような容姿を持つ天才。
******************************************************************
数日後、俺は商店街で買い物をしていた。
相変わらず青葉や那智子と出くわすこともなく、和馬は部活で忙しい、そんな平穏な日々が続いていた。
俺はその日、スーパーの特売のカップラーメンを買うために商店街に出向いていたのだが。
かご一杯のカップ麺を持ってレジに向かおうとすると、突然俺は呼び止められた。
「創ちゃん」
その懐かしい呼び方に、俺は慌てて振り返る。
「陽子さん」
立っていたのは、青葉の母親の陽子さんだった。
俺の顔に笑顔が浮かぶ。陽子さんも懐かしげに俺を見つめている。
「お久しぶりです」
俺が頭を下げると、陽子さんはぷっと吹き出した。
俺は怪訝な顔つきで陽子さんを見る。
「俺、何か変なこと言いました?」
そう言うと、陽子さんは笑いながら首を横に振った。
「ううん。創ちゃんがそんな風に挨拶するとは思ってなかったから、ちょっとおかしくってね」
「いや、いつまでも幼稚園児ってわけじゃないんですから」
陽子さんはそれでも笑っている。つられて俺も少し笑う。
小さい頃、俺は引っ込み思案な青葉のほとんど唯一の遊び相手だった。
だから陽子さんも俺を実の息子のように可愛がってくれた。
俺の両親は共稼ぎだから、夜遅くなるとき、俺はよく青葉の家で晩御飯をご馳走になった。
青葉と陽子さんと三人でお風呂に入ったこともある。
俺が泰山に入学すると、青葉の家に行く事もめったになくなり、陽子さんにも会わなくなったが。
でも、今目の前にいる洋子さんは、やはり俺が小さかった頃の陽子さんのままだ。
本当はもうすぐ40のはずなんだけど、とても若々しい。
「創ちゃん、ちゃんとご飯食べてる? ラーメンばっかり食べてるんじゃないの?」
「そんなことありませんよ」
俺のカゴを見て、陽子さんが不安げに言う。
「……ねえ、この後、暇?」
「ええ、暇ですけど?」
陽子さんがぱっと華やいだ笑みを浮かべる。
「うちにきて、お茶していかない?」
それは、俺にとっても嬉しい提案だった。
そういうわけで、俺たちは買い物を済ませると一緒に古鷹家へと向かった。
「そういえばねえ、創ちゃん」
ダイニングキッチンでお茶してたら、陽子さんが突然真剣な顔をした。
俺は思わず姿勢を正す。
「最近、青葉に新しいお友達が出来たみたいなの。知ってる?」
俺はすぐにピンと来た。
「ええ、北星高の望月でしょ。俺も会いましたよ」
「あら、そうなの?」
陽子さん、本当に驚いたように目を丸くしている。
それからやーね、と言ってちょっと笑った。
「てっきり『青葉が浮気してる!』って創ちゃんが怒るかと思ったのに」
「あー、いや、何ですかその『浮気』ってのは」
訂正しなくちゃいけないのはそれだけじゃないが、それ以外もどう突っ込んでいいのやら。
「だって、小さいときから創ちゃんと青葉は一緒だったじゃない?
だからいつかきっと恋人同士になると思ってたのよ。
そしたら、最近は何だか別の男の子の話ばっかりするし、結構楽しそうだし……」
へえ、と俺は感心してしまった。
青葉が望月の事を陽子さんに話しているのも意外だったが、ちゃんと友達づきあいしてるのも驚いた。
「残念ねえ……私、創ちゃんが青葉と結婚して、私のこと『お義母さん』て呼ぶのを楽しみにしてたのに」
「いや、そんなこと決められても……」
ウチの親も昔言ってたな。『早く青葉ちゃんを嫁に迎えて、正式に娘にしたい』って。
まあ、親が盛り上がるのは勝手だが、当人同士の気持ちってものも考えて欲しい。
……なんて、冷静に思えるようになったのも最近だ。
以前なら顔を真っ赤にして反論してた。もちろん青葉も。
今から思えば、そうやって俺たちを互いに意識させる作戦だったのかもしれない。
でも、俺たちが違う学校に通い物理的に離ればなれになると、親からもそんな言葉は出なくなったが。
「あの子、創ちゃん以外の男の子とは口も聞けなかったのにねえ……」
陽子さんが感慨深げにつぶやく。
俺以外の男と話が出来るようになる、それって良い事なんじゃないのかと思うのだが。
自分の娘が成長していくのにも、なにかしら寂しさを感じるものなんだろうか。
もちろん人の親になった事のない俺には知りようもない。
「あ……でもねえ。青葉もぼーっとしているようで、色々考えてるのよ、創ちゃん」
陽子さんがふっと沈んだ表情を見せたかと思ったら、またにっこりと笑みを浮かべた。
「ねえ。一週間ぐらい前、青葉が創ちゃんに私のお弁当持っていったでしょ?」
陽子さんはそっと身を乗り出してくる。まるで秘密の話でもするように。
「あれね、実は私が作ったんじゃないの」
陽子さんがさも一大事件のように言うから、俺は笑ってしまいそうになった。
俺は、ははぁやっぱりか、としか思わなかったけど。
わざと驚いたふりでもしようかとも考えたが、止めておいた。
何とまあ、和馬のあてずっぽうが当たるとはね。
俺は皮肉な笑みを浮かべた。
陽子さんはそんな事に気づかないようで、俺にそっとささやいた。
「実は、あのお弁当ねぇ……那智子ちゃんが作ったのよ」
はいはい、やっぱり青葉の手作りなんですね……って、はい?
何だって?
「あの、陽子さん? 今なんと……」
「だから、那智子ちゃんが作ったの。ちょっと前にね、私のところに来て
『御堂くんの好みの味付けが知りたいから、教えてください』って。
で、青葉も一緒になって私に頼むから、教えてあげたの。
あの日も朝早くうちに来て、一生懸命作ってたのよ?」
そう言って陽子さんは俺の目をじっと見た。
な、何で那智子が俺の好みなんて知りたがるんだ?
え、まさかそれって……。
「言ってる意味、わかるわよね」
当然とでも言いたげな様子で、陽子さんは俺を軽く睨んでいる。
俺の口が答えを吐き出そうとして、ためらう。いや、まさか。
俺が答えるより先に陽子さんが口を開いた。
「……那智子ちゃん、創ちゃんの事が好きなんだって」
俺、一瞬息が詰まる。
そんな。
そんな馬鹿なこと、あるわけない。
……だって、那智子はいつも俺に突っかかってきて、喧嘩ばかりして……。
俺を青葉のお邪魔虫みたいに言ってるじゃないか。
それなのに、『好き』だって? 俺の事が?
俺の頭の中で、『好き』、その単語だけがぐるぐると回る。
何をどう考えて良いのか分からない。
その時、俺は相当間抜けな顔をしていたらしい。
陽子さんはちょっとむっとしたようだった。
「……やっぱり、気づいてなかったのね。全く、創ちゃんは肝心な時に鈍感なんだから」
そう言われても、混乱した俺はどう答えていいか分からない。
確かに、全く気づいていなかった。
俺は、青葉の友達だから仕方なく那智子と付き合っていたつもりで……。
当然那智子もそんな気持ちなんだろうと思っていた。
でも。
冷静になって振り返ると、いくつか思い当たる事がある。
『お弁当……おいしかった?……良かった』
『なっちゃん、今日だけは創一郎くんと喧嘩しないって、約束したじゃない』
『創一郎くんも駄目だよ。もっとなっちゃんを女の子らしく扱ってあげなきゃ……』
『今日は、創一郎くんとなっちゃん、喧嘩しなかったね』
そんな青葉の言葉が次々と蘇る。
そうか、そうだったのか。
まだ頭の中は真っ白だったが、俺はようやく一言だけ口を聞く事が出来た。
「青葉も……この事は知ってるんですね?」
陽子さんが静かにうなづく。
「那智子ちゃんが、青葉に相談したんだって。大好きなのに、どうしていいか分からないって」
「そう……ですか」
俺は黙ってうつむく。
馬鹿だ、俺は。
青葉の恋愛をリードしてやるつもりで、逆にリードされてたことにも気づかないなんて。
俺はあいつを子供扱いして、保護者気取りで。
そのくせ、肝心なことは全部青葉に押し付けていた。『自分で考えろ』って言って。
でも、青葉は。
自分の悩みだけじゃなく、親友のこともちゃんと考えることが出来て、デートのお膳立てして。
望月の事で頭が一杯だったろうに、そんな様子も見せずに。
昨日までの思い上がった自分を、張り倒してやりたかった。
俺は思わず尋ねていた。
「陽子さん。俺は……俺は、どうしたらいいんでしょう」
「……それは、創ちゃんが決める事じゃないの?」
陽子さんの言葉に俺はまた頭を殴られたようなショックを受けた。
ああ、俺は最低なヤツだ。
青葉には自分で決めろと偉そうに言っておきながら、いざ自分の事になれば陽子さんに泣きついてる。
陽子さんの口調が、ふっと緩んだ。
「……すぐに答えを出しなさいって言ってるわけじゃないのよ。
那智子ちゃんの気持ち、受け止めてあげられるなら、そうしてあげなさいって言ってるの。
それまでは、普段どおりにしてたらいいのよ」
そう。
俺も青葉にそう言った。
それを青葉は「冷たい」と責めた。
初めて俺は青葉の言った意味が分かった。
……俺が何にも分かってないガキだってことが。
俺は、ショックで動く事も出来なかった。
陽子さんが優しい声で、お茶冷めたから代えるわね、と言った。
そして俺は、その冷めたお茶の入ったコップをじっと見つめていた。
その時。
玄関のドアが開く音がして、ただいま、とあいつの声が聞こえた。
青葉が軽やかにダイニングに入ってくる。そして俺を見つけて驚いたような声を上げた。
「創一郎くん、来てたの?」
嬉しそうに微笑む青葉に、俺はああ、と短く答える。
新しく淹れたお茶を持って、陽子さんがキッチンから出てきた。
「あら、今日は部活じゃなかったの?」
「うん、ボイトレ(ボイストレーナー)の先生が急に来れなくなったから、早く終わったの」
青葉はそう言いながら、戸棚から自分のコップを取り出している。
「もうすぐ文化祭なのに大丈夫? 練習間に合うの?」
「大丈夫だよ。歌う曲はコンクールと同じ曲だから、結構練習してるし」
そう言って青葉は俺の隣に座る。
「そうだ、創一郎くんも聞きに来てね、文化祭」
快活な青葉に俺はぎこちなくうなづく事しか出来ない。
なんだ、俺。青葉にまで動揺してるのか、情けねえ。
「青葉、一年生でソロに抜擢されたのよ、創ちゃん」
「ソロ?」
俺が陽子さんに尋ねると、代わりに青葉が答えてくれた。
「もー、お母さん大げさに言いすぎ。アンコールでちょっと歌うだけだよ」
「それでも先輩を差し置いて選ばれたんだから、すごいじゃないの」
どうやら青葉が独唱するらしい。俺はぜひ聞きに行こうと思った。
「青葉、楽しみにしてるぜ、お前の一人舞台」
青葉、はにかんでいる。俺はそんな青葉の頭を撫でてやった。
「そういえば、創ちゃんの学校ももうすぐ文化祭ね」
陽子さんが突然思い出したように言った。
「中学校以来、創ちゃんの文化祭も見てないわね。ねえ、いつなの?」
「ええと、再来週の土日ですけど……」
俺の答えに、陽子さんは楽しそうにぽん、と一つ手を叩いた。
「じゃあ、見に行っていいかしら? 青葉も一緒に」
その言葉に、青葉の顔もぱっと輝く。
「うん、私も見に行きたい! あ、そうだ、なっちゃんも誘っていいかな?
一度男子校の文化祭、見てみたかったんだって」
たぶん、それは今青葉が思いついた理屈なんだろうな、と俺は思った。
那智子が男子校の文化祭を見たがる理由が無いし。
本当に行きたい理由があるとすりゃあ……俺だよな、当然。
複雑な気分で、俺は黙り込む。
「ね、いいよね……?」
黙ったままの俺に、青葉は少し不安そうな顔を見せる。
俺は、横目で陽子さんをちらりと見た。
黙ってうなづく陽子さん。
「……ああ、三人で来いよ。俺が案内してやる」
俺がそう言うと、青葉はやったぁ、と嬉しそうな声を上げた。
「私、なっちゃんに電話してくるね!」
そう言って、青葉は廊下にある電話へと駆けていく。
俺は心の中でぼんやりと納得する。
そうか。
それが、青葉の願いなのか。
青葉は、俺と那智子に付き合って欲しいんだな。
そう分かった瞬間、俺はなぜか無性に悲しくなった。
静かにお茶に口をつける。
陽子さんの淹れてくれたお茶が、妙に苦かった。
(続く)
============================
>>544氏も現れないようなので、投下。
それにしてもこのスレは職人さんが多くていいなあ。
いろいろインスピレーションを受ける事が多いです。
>>574 目欄にワラタw
ツンデレ路線急速浮上?
無いのかよ!
はっ、もしや二週目か追加ディスクに?!
梅子は孝二郎の例えば奥さんになれるというような夢を、抱いたことはない。
何度か仮定の仮定、という形で思い浮かべてみることがあったにしても、
そうなるように本気で夢見ていた頃がない。
女の子は女の子と基本的には結婚しないし、
お姉さんは弟と、お兄さんは妹と、普通は結婚したりしない。
そういうレベルだった。
そういうことだった。
彼らは主人で、あたりまえに対等ではありえなかった。
だから不思議な話だ。
夕焼けが峠に眩しいのも、手に抱える「坊ちゃま」の鞄をふとここに落としていってしまおうかな、
なんて心の端で思うのも、梅子の想定外の動揺だった。
どこかで期待、していたわけでもないというのに、不思議な話だ。
深い色のプリーツスカートの裾が揺れ、後れ毛がふわりそよいでいる。
梅子は隣の孝二郎を見る。
今日からは視線をとどめないようにしようとそうして思う。
憎らしくて喧嘩もして、お節介を焼いて、たくさんのことをしてきたけれども、
それらの些細なことも仕方のない気分屋な様子すらも大好きでしようがなかった。
――でもいいのだ。
昨日の彼の言い方は、とてもひどいと思ったけれど、怒るより前にそうか、と思ってしまったのだから。
だって梅子は幼馴染でしかなく、それ以前に旧家の召使い風情、という身分で、
この現代社会で何をと思っても、あの「家」というのはそれが間違いなく通用している空間なのだから。
孝二郎は嫌いだ嫌いだと言い張っていても、彼はあの家の人間だ。
そういうことだ。
そういうことだ。
*
『二人で居たれどまだ淋し、一人になったらなお淋し、
真実二人はやるせなし、真実一人は耐えがたし。 』
唄うように朗読してうふふと笑う女性を目の前に学生服のまま孝二郎はふすまを閉めた。
この日は初めて梅子が帰り際、喧嘩のせいでもなく一言も口を聞かなかったので、
なんとなく翳る気分のままだらだらと戻ってきて、自室のふすまを開けた途端のことだった。
――よりによってこんな時期に、マジか。
滅入る気持ちを僻み胃袋に放り込み、もう一度眉を顰めてふすまを開ける。
…やっぱりいた。
どうしようもなくいた。
確かに自分の部屋だが間違いなくいた。
敢えて深く突っ込まずに黙って部屋を横切り上着を脱ぎ捨て、鞄を放った。
視線が来てるがとにかく無視する。
「孝二郎」
艶やかな声が聞こえても気にしない。
もう一度呼ばれたのも気にしない。
ここでの着替えは諦めて風呂にでも入ろう。
「…無視する気ね。無視する気だと確信した。気にしないわよ別に。
いっそ何様のつもりかと襟を掴んで脅したいくらい気にしない」
「……うるさいな」
げんなりして孝二郎は眉間の皺を深くした。
こんななら梅子との沈黙の帰宅時間のほうがまだましだったかもしれない。
と、気配が不意に浮き上がって近付いて止まった。
振り返れば、颯爽と立っていた二十歳半ばの女性は彼より
頭ひとつ分低い顔をくいとあげ、薄い肩でふんぞり返っていた。
すらりと人形のようにまっすぐな長髪が肩の脇でぶれる。
「んだよ」
「私が今この部屋で読書していたのね。それはもう陶然としていたの」
「だから?」
「随分よね。いきなり邪魔したくせに随分な反応だと思う。あなたはきっと失格。怒涛の勢いで失格。
もれなくこの部屋から出て行った方がいい。本当は私が出て行ってほしいだけ」
ぽん。
と肩を叩いて真剣に言われたのでお前が何様かという言葉が出口を見つけそこなった。
読書をしていたとか言っているがそれは孝二郎の愛読書だということも言いそこねた。
しかしここで出て行くのは何か明らかに間違っている、と思っているところに
運良く古株女中の若葉が通りがかったので、孝二郎は一息をついた。
「―あらあら。お嬢さま、いらしてたんですのねえ」
「久し振りに来たんだけど、若葉も元気そうでよかったわ。よかったよかった。
孝二郎は背が高くならないけどにいさまに似てきたと思うの。
私は背が低い方が好きだけど。大好きよ孝二郎」
「余計なお世話だよ」
建前の後にもれなく本音を付け加える癖が大人になっても治っていない。
そんな春海へとじと目を向けて孝二郎はぼそりと呟く。
自分より七つだけ年上の彼女は、孝二郎の祖父の末娘である。
言い換えれば父の歳の離れた妹であり、宗一と孝二郎兄弟の叔母にあたる。
難しいが、なんのことはない。
――ちょっと微妙な変人の親戚である。
ちなみに春海は一卵性双生児なのだが、姉の琴子はもっと分かりやすい高慢お嬢様をしている。
それはそれでたちが悪く、どちらが来ても孝二郎に迷惑なのはかわりがない。
しかも二人とも幼い頃からの孝二郎を逐一知っているのがこれまたやりにくいこと限りない。
要するに孝二郎はこの家が嫌いだ。
兄も親戚も父も母も祖父も祖母も、憎むほどではないにしても、所謂「金持ち」の匂いがするからである。
「孝二郎。一緒に牛乳を飲みに行きたい」
「叔母さん一人で行けば」
「春海姉さんと呼んで」
相変わらず親戚は鬱陶しい。
幼馴染の女中とは近頃距離を取れなくなった。
昨夜の小雨の代わりに花は庭に揺れ、遠くの方からかすかに夕餉の香りがしていた。
押入れの写真の束は、変人の叔母に見られてはいないだろうか。
その晩夕飯に呼びに来るのが梅子ではなかったことを孝二郎はあたりまえのように受け止めた。
困った人たちのオンパレードですいません
職人様たちの続きを楽しみに待ちつつ。
イイヨイイヨー
このスレに投下されてるSSは主人公(&幼馴染)が大体小学生から大学生くらいなんで
もう少し年齢層の高い2人組の話もあっても面白いんじゃないかなって思った。
望郷の思いとか子供時代の郷愁とか、あとそういうのと今の生活の落差を絡めてさ。
え、お前が書けって?
文才ないから無理です、俺。 ムセキニンナコトイッデスマン ... orz
例えばこんなんか?
山林の小さな村、坂の多い寂れたそこは俺の故郷。
今、俺は懐かしさを感じるその場所へと帰ってきた。
―――幼馴染みの、葬式に出るため。
俺たちはいつも一緒だった。
小さな村で年も同じ、仲も良くいつも三人一緒で遊んでいた。
それが崩れたのは高校最後の年…幼馴染みの一人、健市が、もう一人の幼馴染み、真美子に告白したことがきっかけだった。
結婚してくれ、とずいぶんストレートな告白だったらしい。
真美子は最初は断る気だったらしい。幾度も相談を受けた。
だけど、俺の言葉でその告白を受けた。それからだ、三人がつるまなくなったのは。
そうして卒業を向かえ、俺は東京の大学へ、健市と真美子は結婚し、農家を継いだ。
そして俺たちは、いや、俺は幼馴染みから離れることになった。
こんなん?未亡人になった真美子と俺のドロドロなセックスとか考えてたんだけど
筆力不足で断念した。
>>561 キタ━━━(゚∀゚)━━━ッ!
1話目でかなり私的にツボだったのでこのまま連載を
がんばって下さい。
ところで243氏の新作が保管庫に無いのは何故?
成程君からしたら僕は紛れもなく幼馴染みだろう。君にとっては一番最初に親しくなった「他人」なのだからね。
僕は君が生まれたときから知っている。
君が小さいときには公園で遊んだり、一緒にご飯を食べたり、隣で一緒に眠ったり、時には
一緒にお風呂にはいったこともあった。
「お兄ちゃん」と僕のことを呼んでくれ、「あたし、大きくなったらお兄ちゃんのおヨメさんになるの!!」
と言ってくれた時には僕は「うん、君が大きくなったら是非僕のお嫁さんになってね」と返事をしたかもしれない。
君も僕も成長して、君はもう高校生になった。君はとても綺麗になったね。おっと、もちろん可愛らしさが
消えたという意味じゃない。つまり、可愛らしさを残したまま君は大人になりつつあるという事だ。
そんな君が、いまだに僕のことをお兄ちゃんと慕ってくれるのは嬉しい事だよ。ましてまだ君が僕の
お嫁さんになるなんて言い続けていることは世界一の幸運だと喜ぶべきことなのかもしれない!!
けどね、やっぱりこれはおかしなことだと思うんだ。もし君がクラスメイトに僕のことを「幼馴染みのお兄ちゃん」
だと紹介したら、おそらくその殆どが不思議な顔をするだろうし、信じられないだろう。
けどね、君のお父さんが友達に僕のことを「幼馴染みだ」と言っても誰も疑うことは無いだろうね。事実、それは
本当のことなんだから。
君が結婚できる歳を目前にしてるのと同時に、僕はもう四十路を迎えそうになっているんだ。
おそらく
>>584が望んでいるのとはぜんぜん違う形だろうなぁ。
年齢層の高い二人は書けないが、年齢差のでかい二人は思いついた。
……でもこれ幼馴染みとは違うよなぁ。
590 :
584:2005/05/20(金) 03:01:28 ID:GgGFHTH/
>>585 おお、いいねえ。
都会の大学を出た主人公と、地元に残った幼馴染と。
その擦れ違いを文章にしたらちょっと切ない幼馴染SSになりそうな気がする。
以下俺の妄想。
--------
浩二は三十路手前の男。かろうじて東京都内まで電車で通えるか通えないかという半農村半都市の街に育つ。
偶々成績が良かったため中学から遠くの進学校に進み、東京の一流大学に合格。都内で一人暮らしをする。
中学受験の段階で地元の同級生とはほとんど縁が切れてしまい、幼馴染の真由美が唯一残った繋がり。
狭い世界の中で日常が自己完結してしまう地元の安易な空気に対し小さい頃から嫌気が差していた
浩二であったが、そんな彼にとって真由美だけは素直な気持ちで接することができる唯一無二の存在だった。
時は流れ浩二はアメリカの大学院で研究生活を送っていた。以前とは全く異なった世界の中で
浩二は忙しくも充実した日々を過ごすが、ふとした瞬間に日本の故郷のことを思い出す。
昔はあれほど地元の人間に対する言い様のない苛立ちとそんな場所から出て行きたい気持ちで
一杯だった浩二だったが、長く国を離れているうちにささやかな望郷の思いが募ってくる。
「今だったら、もう少し素直な目で故郷を見られるんだろうか」
研究に一区切りがついた彼は、そんな思いを胸に抱きつつ渡米以来数年ぶりの一時帰国を果たす。
久しぶりに見る地元は相変わらず寂れていてみすぼらしかったが、それでも懐かしさは隠せなかった。
色んな感情が交錯した複雑な思いが胸に去来する中、実家の手前で彼は真由美に出会う。
「真由美!?」
「久しぶり、浩二。元気にしてた?」
「ああ」
591 :
584:2005/05/20(金) 03:02:08 ID:GgGFHTH/
そんな会話から始まった2人の再会。近所の居酒屋に移った彼らは数年分の空白を埋め合わせるかのように
止め処なく話し続ける。
「数年ぶりの地元はどう?」
「以前と変わらずしょぼいな。駅前の通りも閑古鳥が鳴いたままじゃないか」
「商店街はお店を畳むところが多くてね、皆国道沿いの大型店に流れちゃってる」
「相変わらず展望のない街だな」
「地元の皆は今何やってるんだ?」
「大久保君と西田さん、三谷君は遠くに働きに出ちゃったよ。」
「あいつらか」
「遠山君は今もここに残ってる。彼は県内で就職したんだけど、会社が潰れちゃったって聞いた」
「厳しいな」
「他の連中は?」
「小学校の時の加藤君と綾子ちゃんっていたでしょ?あの2人は高校出てすぐ結婚して、今は加藤君の
実家の後を継いでいるんだって」
「へえ、結婚か。早いな」
「もう子供が3人もいるよ。家の商売だけじゃ食べていくのが大変だって」
「家庭、か……」
時間の流れを改めて認識した浩二。久しぶりの地元は懐かしさだけでなく現実の厳しさも否応なく
浩二に突き付けるものだった。
「真由美は最近どうなの?そろそろ結婚の話とかないのか?」
「ん?うーん……。いい人とかいない訳じゃなかったんだけどね、なかなか機会がなくて。ずるずると
今まで来ちゃった。
浩二は?浩二は向こうで付き合っている人はいないの?」
「さっぱり。これまで研究で忙しかったしな。それにポストを見付けるまでは結婚する訳にもいかんし」
「学者さんも大変なのね」
「ああ、因果な業界だよ。もっとも、忙しさを口実に面倒事から逃げてただけかもしれんけどな……」
――2週間の滞在の間に、浩二は故郷で何を感じ、何を得るんだろうか。そして浩二と真由美はこの短い
期間の中で、お互いに対してどんな関係を築こうとするのか。もはや子供時代が遠くに過ぎ去り「大人の選択」を
余儀なくされつつある年代の、ちょっと感傷的なものがたり。
--------
以上、駄文スマソ。
予告編というか帯の紹介文みたいな文章を書こうとしたんだけど会話部分が冗長になりすぎて失敗した。
とりあえず
>>584で俺が考えていたのはこんな感じのSS。(誰か文才がある人が書いてくれないものだろうか。)
かなり私小説っぽい気もするがそこはスルーしてくれ。
モットモ オレニハジモトノオサナナジミナテ イナイガナー ... orz
593 :
584:2005/05/20(金) 03:18:44 ID:GgGFHTH/
お、
>>590-592を書いている間に
>>588のSSが。
年の差幼馴染(?)というのも面白そうだね。
主人公の微妙な心理描写が読み応えありそう。
それと今
>>590-592を読み返してみたけど、これ全然萌えがないやんけ orz
本当は結婚を意識する年頃になった幼馴染同士の微妙な心の距離感を表現したかったのに
舞台設定の説明だけで終わってる。やっぱり筆力ない上に初SSだとこんな程度なのか(つД`)
>>418の続きです。
今度からはもう少し速いペースで投下したいとは思います……。
俺の朝は早い。六時に起きて六時半に食事。七時にはもう家を出る。
父と母は共に昼からの仕事をしているので、この時間に会う事は殆ど無い。
別段部活に所属している訳でも、朝早く学校に行くわけでもない。
家を出て向かう先は、亜矢ネエの家。
歩いて三十秒。家の真向かいに亜矢ネエの家はある。
俺の家と殆ど同じつくりの、一軒家。
勝手知ったる遠野の家。俺は合鍵で開錠して、そのまま上がる。
「おはようございます」
居間に行き、挨拶をする。
いつもの通り食卓にはおじさんと亜矢ネエが居た。
「む、おはよう」
「晶ちゃん、おはよう」
もぐもぐとパンを齧りつつ、亜矢ネエが挨拶を返してくる。両手で小さくパンを持つその姿は、どこかげっ歯類を思い起こさせる。
無口なおじさんは新聞から顔を上げ、目線と微かに頷くのみだ。
「ほいっと、追加の目玉焼きお待ち〜」
そこに、台所からおばさんがフライパンを手にやってくる。
「お、晶ちゃんおはよう。いつも早いねえ。ありがたいけど、大丈夫かい?」
にかっと、快活な笑みを浮かべる。亜矢ネエとは全く違うが、この顔も俺は嫌いじゃない。
亜矢ネエのそれが引き込まれるものだとしたら、おばさんのそれは力が湧くもの――丁度月と太陽の対比だ。
「いえいえ。日課ですから」
と言って、亜矢ネエのおでこに掌を当てる。
「ん……」
俺の体温にか、亜矢ネエが猫のように目を細める。このまま喉を撫でるとゴロゴロと鳴らすのだろうか。
試したい衝動に駆られたが、恐らくは頬を膨らませて不機嫌になるだけだ。諦めて手に平に神経を集中させる。
「今日は平熱だな」
「うん!」
そこだけは元気に頷く。何事も無く学校にいけるのが嬉しいのだろう。
亜矢ネエは小さい頃から学校を休みがちな分、行ける日は機嫌がいい。
長じてかなり丈夫になった今も、それは変わらない。
「それじゃあ、晶ちゃん。今日はコーヒーと紅茶、どっちにする?」
「紅茶でお願いします」
それでも俺がこうやって体調を調べるのは、ともすれば亜矢ネエが自分の体調を誤魔化すためだ。
亜矢ネエが今よりもっと学校を休みがちな頃、微熱を隠して学校に行って、倒れた事があった。
その時はおばさんが熱を測らせていたのを氷で誤魔化し、朝食も口に含んで食べた振りをしてからから捨てていたと言う徹底振りだ。
勿論、事が露呈した後はおじさん、おばさん、俺の順に怒られてびーびー泣いていたが。
それ以来、こうやって朝の用意する前と出る前に熱を、朝食もきちんと摂れているかきちんと見張っているのだ。
結果としては体調が思わしくない時はちゃんと休ませる事が出来ているし、健康な時はなんの心配も無く送り出せている訳だ。
「はい、どうぞ」
「有難うございます」
亜矢ネエの隣に座り、おばさんが差し出した紅茶を受け取る。
「今更なんだけどさ」
「はい?」
俺の向かいに座りながら、おばさんが切り出す。この人はいつも単刀直入だ。
「毎日毎日こうやって来てくれるなら、うちで朝ご飯食べてけばいいんじゃないかい?」
思いもがけない――とは言えなくも無い提案に、俺は紅茶を一口啜って黙考する。
「ね? いいじゃないか。いつも亜矢が世話になっているんだ。少しでもお返しをさせておくれよ」
半ば懇願するように、言ってくる。
実の所、これまでもそれらしき誘いは何度も受けていた。でもこれほど真っ向から言われたのは初めてだ。
この家で朝食を採る。楽しくて、和やかだろうというのは容易に予測がつく。そして、自分が違和感なくそれに馴染むだろうという事も。
「……」
ふと、周りを見ると、三対の目が全て俺に集中していた。亜矢ネエは、興味津々、期待一杯で瞳を輝かせている。
その子供のような仕草に、少しだけ苦笑する。
やっぱり俺は――
「ごめんなさい」
少しだけかぶりを振る。
吐息混じりに、おばさんが顔を曇らせる。
「どうしてだい? 嫌じゃないんだろう?」
「ええ、だけど――」
少しだけ思う。それは亜矢ネエと俺が今のような関係になって、つい最近から思うようになってきた事。
でもそれは決して本人には言えない、俺だけのくだらない秘め事。
そしてもう一つ重要な事。
「やっぱり俺は高杉の人間ですから。例え一緒でなくても食事ぐらい家でしないと、あの人たちが寂しがります」
言って、笑う。私生活ではぐうたらな両親を思い出し、笑みが深まる。
それを誤魔化すように紅茶を飲み下す。
「それに、お返しとか、そういうので俺は亜矢ネエの側に居るんじゃないですし」
おばさんが一瞬だけぼうっとなって、そうして深く頷く。
「そうだね……そういわれたら仕方が無いか」
その一抹の寂しさを湛えた声に、からかい半分、本気半分の提案を口にする。
「まあ……一緒の食卓は亜矢ネエと結婚した後にでも」
「そうだね……そりゃ楽しみだね」
お互いにやりと笑う。
そんな俺たちを、残りの二人が意外な反応を示す。
「け……けけけけけッ――」
「結婚!?」
亜矢ネエの後を何故かおじさんが継ぐ。見ると、俺を注視しながらも、微妙に動作が揺れている。
「……おじさん、もしかして俺じゃ駄目だった?」
「う……ぬう」
真面目なおじさんの事だ、漠然と思ってはいてもいざ言葉にされると抵抗があるのだろう。
何となくその生真面目な反応が新谷に似ていて、つい俺は余計な一言を紡いでしまう。
「大丈夫、ちゃんと許可は貰うから。腕相撲でも将棋でも俳句でも、勝ってからさ」
くつくつと笑いながら、提案する。しかしおじさんはそれで平静を取り戻したのか――ここらが新谷とは違う所だ――ゆっくりと湯飲みを傾けた。
「まあ……そのうちだな」
そこは一家の長、渋い貫禄を見せて、視線を新聞へと戻した。先ほど読んだ一面をまた読み返している辺り、微妙に動揺が残っているっぽいが。
一方、亜矢ネエといえば
「結婚……私と晶ちゃんが……結婚かあ……」
どうやらどこぞの世界に旅立っていたらしい。
どことなく夢見るような瞳で、なにやら体をくねくねとさせている。ちょっと、怖い。
文字通り夢から覚ますように、俺は亜矢ネエのおでこを突付く。
「ほら、そろそろ食べてしまわないと、遅刻するぜ」
「うえ……!?」
我に帰った亜矢ネエが、急いで――しかし一口は相変わらず小さく――パンを齧りだす。
そんな亜矢ネエをおばさんが苦笑混じりにたしなめ、おじさんはゆっくりと湯飲みを傾ける。
そして俺は紅茶を啜って空を見る。
たまにこんなやり取りが挟まるが、これもいつも通り。
高杉晶の、それがいつもの一日の始まりだ。
ちょっと気になったんですが、書き込み前に前の書き込みへの>>をするのと、
書き込んだ後にするのと、どちらが皆さんにとっては読みやすいでしょうか。
瑣末事ですが、ちょっと気になって……。
前でよろ。
そしてGJ
>>584さん。
正直、俺は萌えております。
続きを期待させてもらってかまわないですか?
そろそろゆずの「夏色」のような爽やかな幼馴染み分が欲しくなる季節ですね
603 :
584:2005/05/21(土) 23:09:13 ID:Hmwh9H8T
>>601 感想ありがとう。
まさかあれで萌えてもらえるとは、正直言ってかなり嬉しいです。
プロットも何も考えずに書いた代物で本編を書く予定はなかったんだけど、
もし筆が乗るようだったら続きを書くかも。
(まあ、あまり期待しない方が・・・苦笑)
?
誘い受けウザイってこと?初投稿とかなら多少はよくね?
最初は「こんなんでいいのか?」って思うもんだろうし。
俺も以前叩かれた経験あるから弁護してるんだけどw
まぁ誇り高き幼馴染みスキー同士、仲良くいければ良いじゃないか。
ここは我々にとっての聖域なのだから…
週ジャンでTAKAYAが連載開始。
以前に読み切りで掲載された幼馴染みモノのラブコメが正規連載となって再登場。
基本はギャグだけどね。
>609
それはむしろツンデレスキーに対する話題だろw
まぁ、ここにもツンデレスキーはかなりいると思うが…
幼馴染とツンデレは親和性高いしな。
ツンデレって何?
教えて得ろい人
皆の周りではツンッってしてるけど
二人っきりだとベタベタしてくる
なのかな……?
なるへそ
幼馴染みと相性が良さそうだ
最初は主人公にツンツンしてるけど、
段々と惹かれはじめ、最後にはデレデレになっちゃう=ツンデレ
だと思っていたのだが、違うのか?
サクラ大戦のマリア・タチバナはツンデレだ、と誰かが言ってたのでそう理解してた。
俺のお気に入りの幼馴染みツンデレはTLSSの向井弥子なんだが。
>>610 そうか?
だって子供の頃の初チュウの思い出もあるんだぞ。
>611
ツンデレでぐぐるべし
いまさらですがタイトルは『カナリヤ』で。
梅子が知らない間に見合いをしていた。
叔母の春海が勝手に押入れで見つけた写真の山から選び、
宗一に詳しい話を聞いて二人でさっさと勧めてしまったらしい。
「孝二郎坊ちゃまに関係ないですから」
廊下を掃除している姿を見かけて逃げられるまえに袖を掴むと、そんな憎たらしい口をきかれた。
さらにぞんざいに腕を払われそのうえ雑巾を投げられた。
自分の名前をこの女中に呼ばれることすら数週間ぶりだったというのに、なんという仕打ちだろう。
雑巾を投げ返すと梅子があっさりと受け止めて膝を屈めた。
もう話は終わりだとばかりに金属盥に張った水へ、雑巾と手首までをつけて擦り合わせる。
態度と逆に、肘先だけが蠢きながら柔らかい。
孝二郎は口を開きかけて閉じ、持て余す苛立ちに梅子を睨みながら同様に膝を折った。
わざとらしく雑巾の水が飛んだ。
「坊ちゃま。邪魔です」
「お前な…」
「御用がないなら他へいらっしゃってください。そっちが迷惑だって言ったんでしょう」
梅子は雑巾を絞る指先を、少し止めてから何気なく硝子戸を仰いだ。
ぽつりと庭園の玄武岩に、黒いしみが落ちかかり風が湿気る。
絞られた後の雑巾のように。
ぽつりぽつりと、少しずつ雨が降る。
梅子は結い上げた髪を風に揺らすままに、片手を伸ばしてガラス戸を締めた。
がらがらと古びた響きが床板にしみる。
無視するようにただ彼女は暗がりの庭だけを見ていた。
埒が明かないので孝二郎は黙って立ち上がって傍の柱を蹴り、彼女を追い越して自室へと向かった。
「……」
絞られた雑巾のような、泣き声でも聞こえるかと思ったのに、聞こえなかった。
一度振り返って耳を澄ませてからいつも自分が泣かせていた女中の面影をふと手のひらで思い返して、
いつまでもあれが泣き虫だと思っていた自分がばかばかしくなり妙に気分が淀んだ。
いつまでもああしてくっついていられたら迷惑だった。
もう高校一年で、孝二郎だってそろそろ彼女が欲しい。
「そうだな」
一人ごちる。
そうして踵を返した。
廊下を曲がって、梅子の掃除をしていた離れの近い客間の廊下へ、無言で戻った。
廊下にいなかったので客間を覗いた。
相変わらず掃除をしていた。
ただ呼んで、見合いがどうなったかだけを、もう一度事務的に尋ねる。
梅子は孝二郎を睨んだ。
「断わったのか」
「…うるさい。しつこい」
丁寧語でなく話されるのは本当に久々だった。
ものも手も飛んでこないのも珍しかった。
「断わったのかよ」
梅子はそれでも無言だった。
もっと別のことを言おうと思っていたはずの孝二郎はそれで気分を変えた。
睨み合う。
雨だけがうるさい。
なぜこういうときに限って人がこの場所を通らないのだろう。
おそらくこんな静かな諍いは、お互い生まれて初めてだった。
先に折れたのは我慢の足らない方だった。
孝二郎が嫌そうな顔のまま、考えるより先に口を開いた。
「お前、出てけ」
後戻りができない一言というのがあるとしたらこれだった。
命令ですか、と梅子が尋ねた。
殺伐とした展開なのでひとつ好ましい幼馴染について語って他作品の続きを待つことにする。
朝錬をしに学校に言ったら降られた。
教室で帰りどうしようか考えている。
そこで文句を言いながら学校に傘を届けに来る幼馴染はとてもよい。
(でも自分の傘はお人よしで友達に貸しちゃったので相合傘も気にせず
帰り道で傘にもぐりこんでくるともっとよい。
道路の水しぶきで盾にされ背中に隠れられたときの指先の感触とかがよい)
以上
言ったら→行ったら
朝、何を錬るん
先が気になる展開になって来たですね。
ところで、
個人的には背中を盾にされる方がいい。
文句を言おうとしてふと幼なじみが自分に抱きついている格好に
なっていたりしてすると尚良い。
>好ましい幼馴染み。
お互いベタベタに依存しあってるのが好きだ。
そのまま破滅一歩手前で片方が我に返ったり、
外からの何かの要因で、手を離してしまった瞬間が好きだ。
その時の、手を離したほうと離されたほうの気持ちなんか考え出すともうたまらない。
そうして、『ああ、自分とコイツは、違う生き物なんだな』と自覚してから
関係を再構築していく所なんかは、もう絶頂物ですよ。
ところでジャンプの新連載は、よいツンデレ幼馴染みですよね?
あれツンデレか?幼馴染み系ラヴラヴ格闘マンガかと思ってた
読み切りの時は割合ツンデレだったが、連載に際してツンが抜けてデレが多くなったな。
あててんのよ、ももう少しツンとしていたが。
登場人物
御堂創一郎…このSSの語り手。泰山高校一年生。親元を離れ寮生活をしている。
古鷹青葉…聖マリア・マッダレーナ女子高一年生。創一郎の幼馴染。合唱部所属。
初芝和馬…泰山高校一年生。創一郎の友人、寮で同室。合気道部所属。
妙高那智子…聖マリア・マッダレーナ女子高一年生。青葉の友人。
望月近衛…北星高校一年生。少女と間違えられるような容姿を持つ天才。
******************************************************************
泰山高校の文化祭当日。
俺は少し落ち着かない気持ちで青葉たちを待っている。
それは……たぶん、泰山という俺の日常世界を覗かれる不安なんだろう。
和馬に言わせりゃ、普段の行いがやましいからそう感じるんだそうだ。
さて、男子校の文化祭に臨む気持ちは二つしかないと俺は思う。
一つは「出来るだけ盛り上げて、女の子も一杯来てもらって、あわよくば彼女ゲット」
もう一つは「面倒くさいから適当にお茶を濁しておこう。彼女ゲットする甲斐性もないし」
で、俺たちのクラスは圧倒的に後者。
ちなみに俺たちのクラスの出し物は「射的場」だ。
射的場にしたのは、「輪ゴム鉄砲10個ほど作って、的しかけりゃ終わりだから楽」だから。
典型的な駄目出し物……のはずだったんだが。
まず、男子校ならクラスに必ず一人入るガンマニアが妙にやる気を出した。
最初は電動エアガンを持って来ようとしたんで、「危険だから止めろ」と俺たちは言った。
するとそいつは輪ゴム鉄砲、銀玉鉄砲からピン球を発射するバズーカまで、ありとあらゆる「武器」をかき集めやがった。
そうしたら今度は漫研部員が、「的は世の中のにくいヤツの似顔絵にしよう」とか言い出して。
最終的に俺たちの射的屋は「晴らせぬ恨みはらします。必殺射的屋家業」というわけの分からんものになっていた。
つまりどういうことかというと。
的は「最近パクリがばれた歌手」「売春で失脚した政治家」「税金の無駄遣いと叩かれてる万博のマスコット」などなど。
それを好きな得物でひたすら穴だらけ、木っ端微塵にするという悪趣味企画なのだ。
お金さえ出せば、その場で例の漫研部員がお好みの似顔絵を書いて的にするというサービス付きだ。
「見られたくねえ……」
頭を抱える俺をよそに、俺たちのクラスは割りと盛り上がっていた。
まあメインの客はお子様なんだけど。
そんな暗い気分でクラスの入り口で青葉たちを待っていると、来た。
青葉、那智子、それに陽子さん。
すぐに俺を見つけると、青葉は手を振りながらこっちに走ってくる。もう一方の手で那智子の手を引きながら。
「創一郎くんっ!」
でっかい声出すな。廊下を歩く人が振り返ってるじゃねえか。
パタパタと俺のところに走りこむと、肩で息をしながら俺に微笑む。
「ごめんね、支度するのに時間かかっちゃって」
「たかが文化祭だろ、何に時間がかかるんだよ」
俺はつっけんどんに言い返す。学校で青葉と那智子に会う、それが妙に恥ずかしいからだ。
「女の子はね、ちょっと出かけるにもたくさん準備がいるのよ。そんなことも分かんないわけ?」
突っかかってくるのは那智子だ。
「そ……そうかよ」
普段どおりに返そうとしても、俺はどぎまぎする。
那智子は、俺の事が好き。
それを知ってから初めて会う那智子。
普段どおりの那智子なのに、俺の方は普段以上の「女の子らしさ」を、知らず知らず感じてしまう。
「ところで。ねえ、なっちゃんカワイイでしょ?」
そう言って青葉は那智子を俺の方に押し出す。
那智子の私服はパンツルックが多いが、今日は違った。
上はTシャツにブルゾンといつも通りだが、下は……膝上丈のミニスカートに、黒のニーソックス。
短いスカートから伸びる、すらりとした曲線を見せる那智子の脚。
俺は思わずじっと見つめてしまう。
「……じろじろ見るな、スケベ」
笑いながら那智子が俺の体をちょっと突く。俺は顔を赤らめ、目をそらした。
「そ、そういう青葉は、いつも代わり映えのしねえ格好だな」
照れ隠しに俺は青葉に絡む。薄いオレンジのフレアスカートに白いブラウス。そして、いつものお下げ髪。
俺と遊びに行くときの定番の格好だ。
望月と会うときは、どんな格好をするんだろう。俺は何か居心地の悪い感情を覚える。
「そ、そんなことないもんっ。このスカートこの前買って、着るの今日が初めてだもん」
「いや、そーいう意味じゃねえんだって」
俺はさらに馬鹿にしたように言う。
だが、それが那智子の方をまともに見れないからだってこと、俺はよく分かっていた。
青葉、ごめんな。俺は心の中で頭を下げる。
「ほらほら、喧嘩しないで。今日は案内よろしくね」
陽子さんがようやく到着し、俺と青葉の間に入ってくれる。
正直ほっとした。今の俺は那智子に動揺してて、青葉を泣かすまでからかいそうだから。
教室に入ったとたん、中の空気がざわめいた。
お子様相手にやる気のない愛想笑い浮かべていた奴らが、突然俺たちの方に目を向ける。
確かに青葉はカワイイし、那智子もいけてる方だし、陽子さんも美人だが。
明らかに俺が「場違いなポジションにいる」と言いたげなヤツがちらほら。
ああそうかい、俺が女連れだとそんなにおかしいかい。
「あ、初芝くんだ」
会計のところにいた和馬に、青葉が嬉しそうに駆け寄る。那智子もそれに続く。
和馬は会計と銃の貸し出しを引き受けている。
背後に銃を並べ、小型金庫を置いたテーブルに座った魔○加藤。何と言うか、闇の武器商人といった風情だ。
「ああ、いらっしゃい。ま、のんびり遊んでいってよ」
和馬はそう言ってのんきに二人と何かしゃべっている。
俺はそれを少し離れたところからぼんやりと見ている。
「……駄目ね、創一郎くん。那智子ちゃんのことで色々考えてるでしょ?」
「分かりますか」
そりゃあね、と陽子さん。俺はあきらめ気味のため息をついた。
「そりゃ、本人を前にしたら緊張もするでしょうけど、気にしちゃ駄目よ」
「そう言われても……」
俺は人を好きになった経験も乏しければ、人に好きと言われたこともない。
好意を寄せられるってこんなにプレッシャーなのか、というのが正直な感想だ。
「あのね、那智子ちゃんがはっきり告白しないってことは、まだ心の準備が出来てないからなの。
あるいは、那智子ちゃんは創一郎くんとの今の関係を壊したくないのかもしれないけどね。
とにかく、それなら創一郎くんが無理に距離を縮めようとしなくていいの。
……それとも、那智子ちゃんが嫌いだから、さっさと振ってしまいたいわけ?」
「いや、そういう訳じゃないんですけど。……大体、陽子さんが秘密をばらすから、こんなに悩んでるんですよ?」
抗議しておく必要があると思って、俺はちょっと陽子さんを睨む。
それを陽子さんは済ました顔で軽く流した。
「だって、那智子ちゃんにも青葉にも『黙ってて』とは言われなかったもの。
それに、鈍感な創ちゃんと、不器用な那智子ちゃんじゃ、百年たっても一歩も前進しないだろうしね」
同意を求めるように俺の方に首をかしげる陽子さん。反論できず俺は黙り込んだ。
いつも通りに、と陽子さんは言うけれど、俺は「那智子とのいつも通り」がどんなのだったのかも思い出せない。
目の前にいる女の子、那智子は俺の事が「好き」。その事だけが俺の頭を占領してる。
いっそ知らなきゃ、楽だったのに。俺は陽子さんを恨んでしまいそうだった。
「それで、どういう出し物なの?」と陽子さんが聞いてきたので、俺は口ごもる。
困っている俺の代わりに和馬は淡々と射的場の説明をした。
陽子さんがいたずらっ子をとがめるような目で俺と和馬を見る。照れ笑いを浮かべる俺たち二人。
「もう……。男の子って、そうやってすぐ悪いこと考えるのね」
「校長先生の写真まで的にしちゃって……怒られないの?」
困ったわね、と言いつつ笑っている陽子さんに対して、青葉は真剣に俺たちを心配している。
真面目なクリスチャン校であるマリア・マッダレーナでやれば生徒指導室に呼び出されるだろうが。
そこはそれ、「自由な校風」を売りにする我が泰山の校長は度量が広い。
諦めてるだけかもしれないけど。
そんな中、那智子だけが妙に浮かれながら射的用の銃の品定めをしていたが、
「そんなことよりさあ、わたしこれ、これがいい」
そう言って手に取ったのは、並んだ銃の中で一番デカい、スポンジ弾を発射するショットガンだった。
「……那智子らしいと言うか、何と言うか」
思わず俺がそう言うと、那智子はぎろっと俺を睨む。
ガツッ!
いてっ! ……黙って足を踏みつけられた。
「あーら失礼。そんなところに御堂さんのお御足があるとは気づきませんで」
そう言ってほほほ、とお嬢様笑い。
「お前なあ……ちょっとは心に余裕ってものをだなあ……」
俺が痛みに耐えていると、陽子さんが俺の方を見ているのに気づいた。
黙ったまま、「その調子よ」と陽子さんの口だけが動く。
いや、この調子だと、文化祭が終わる頃には俺は傷だらけじゃないだろうか。
とまあ、すったもんだのあげく。
那智子はショットガン、陽子さんは吸盤付きの矢を発射するボウガン、青葉は縁日で使うコルク銃を選んだ。
命中率に応じてお菓子が出ると聞いて、三人は勇んで射撃ブースに向かう。
そんな様子を俺は和馬と見ている。和馬がちらりと俺を見上げた。
「……那智子さんと何かあったのか」
相変わらず鋭い……。お前ならそのうち銃で撃たれても、「光のツブテ」を見て回避できるようになるかもな。
「何で分かる」
何もないと言ってもごまかせないと悟って、俺はそう問い返す。
和馬も「何があったのか」は聞いてこない。俺が言わないことぐらいは分かっているらしい。
「いつもより那智子さんに優しい。言葉が柔らかい。遠慮がある。……それに視線が泳いでる」
和馬は指折り数えて見せた。全く図星で、俺は黙るしかない。
「話たくないなら、これ以上は聞かないぞ。ま、女の子に優しくするのは悪い事じゃないし」
俺は和馬の好意に甘えさせてもらうことにした。那智子の事を和馬に話していいのか、俺も決めかねてる。
「ねえ、創一郎くん!」
突然青葉が俺を呼んだので、俺は我に帰った。
「私だけ全然当たらないよー。ねえ、どうしてだと思う?」
俺はゆったりと青葉の横に立った。
青葉がぷうっと頬を膨らませながら、的の方を差している。
「全然当たらないんだよ? ねえ、創一郎くんこういうの得意だよね?」
「得意って、何を根拠に」
「縁日の射的、上手だったじゃない」
青葉と縁日に行ったのなんて、小学校三年生のとき以来だ。よく覚えてやがる。
「……とりあえず、撃ってみ」
俺がそう言うと、青葉はうん、とうなづいてコルク銃を構えた。
これ以上入ってはいけないラインぎりぎりから思い切り身を乗り出して、的を狙っている。
一目見て、こりゃ駄目だと思う。
そもそも身長が低いから銃は的に全然近づいてないし、腕力がないから銃はプルプルと震えている。
「とりあえず、片手撃ち出来ないなら、無理するなよ」
「でも、それだと的から遠くなっちゃうよ」
別に縁日の射的みたいに倒す必要はなく当たればいいんだから、身を乗り出して撃たなくてもいいんだが。
まあそれでも青葉の腕じゃ的に当てるのも一苦労だろうな。
「よし」
俺はちょっと考えると、青葉の後ろに立った。
そして、青葉のお腹の辺りを両手でぎゅっと抱いた。
「そ、創一郎くん!?」
驚いて青葉が振り返る。
「俺が支えててやるから、両手で持って撃ってみ」
俺は淡々と言う。
青葉の体なんて触り慣れてる。いまさら恥ずかしがるほどのことはない。少なくとも俺は。
「う、うん……」
顔を少し赤らめながら、青葉は倒れこむようにして身を乗り出す。
俺は腕に力を込める。青葉の柔らかい体の感触が、手に伝わってくる。
いまさら恥ずかしがる事はない……はずなのに、俺の顔も少し熱っぽい。
昔はガリガリだったくせに、今はなんでこんなにふわふわしてやがるんだ、青葉の体は。
ブラウス越しにも青葉の体温を感じる。手の中で少しへこんでいるように感じるのは、青葉のおへそだろうか。
突然、生々しく青葉の裸を想像してしまい、俺はうろたえる。
昔と違って、しっかりと張ったお尻、なだらかな曲線を描くお腹、小さなへそ。そしてその上に連なる……。
馬鹿莫迦ばか。俺は何を想像してるんだ。
変な妄想を頭から振り払うように、俺は頭を何度か振った。
「やった、やった! 創一郎くん、当たったよ?」
青葉が嬉しそうに俺に振り返る。ちょうど最後の一発が、見事に的に当たったところだった。
「……ふん。よかったな、俺に感謝しとけ」
そっと青葉の体を起こす。青葉は俺の言葉に何度もうなづいている。
俺は今まで想像していたことを知られるのを恐れるかのように、そっぽを向いた。
もちろん青葉は俺のそんな様子に気づくはずもなく、景品のチュッパ○ャップスをもらってはしゃいでいる。
「ねえー。御堂ー」
那智子の声に、俺は振り返った。
「私もさー、何だかうまく当たんないんだけど」
そう言って那智子は手に持ったおもちゃのショットガンを振る。
俺は思わず周りを見渡す。陽子さんと目が合う。
陽子さんの目が、優しく俺を励ましているように思えた。
平静を装い、俺はゆっくりと那智子の側に寄った。
「じゃあ、とりあえず構えてみろよ」
俺は出来るだけ青葉と同じ態度になるよう注意しながらそう言った。
うん、と頷いて那智子は銃を構える。
「……とりあえず、ストックは脇に挟むもんじゃないぞ。鎖骨と上腕骨の間の筋肉に当てろ」
那智子が首をひねる。
「うーん、よく分かんない。何『ストック』って?」
俺は那智子の握っているショットガンの台尻を叩きながら説明する。
「ここだよ、銃の後ろのここを、体のこの部分……」
と言って、俺は自分の鎖骨と上腕骨の間のあたりを触れながら言う。
「この骨の間に当てるんだ。そうしないと狙ったところに飛ばない」
そう言われても那智子は顔をしかめたままだ。
「……口で言われてもよく分かんないよ。もう一回構えるから、御堂直して」
そう言うと那智子はまた銃を構える。
仕方なく俺は那智子の横で、姿勢を直す事にした。
「だから、脇に銃を挟むんじゃなくて、こう、肩のところに……」
「……こう?」
「違う違う、肩に担ぐんじゃなくて……ああ、もう違うって!」
思わず俺は那智子の後ろから両手を回し、ショットガンを構えさせていた。
「だから、こうすんだよ」
そう言ってから、俺はこの体勢がえらくヤバイことに気づく。
体はぴったり密着し、両手は銃を持つ那智子の手を握っている。俺の顔のすぐ前に、那智子の頭がある。
腕が後ろから絡んで、まるで抱きしめているような……。
その時、俺はふんわりと那智子の髪から、いい匂いがするのに気づいた。
男の体臭とは全く違う、女の子の匂いが。
それは、俺が今までかいだ事のない爽やかな匂いだった。
……香水じゃないな、シャンプーか?
女の子ってこんなにいい匂いがするものなのか?
それとも、今の青葉もこんな匂いがするんだろうか?
その瞬間、さっきの青葉の裸の想像、そして那智子が風呂に入り頭を洗う姿が頭をよぎった。
俺の体に異変が起こる。……いや、俺も男の子だからさ。
まずい。こんなことに気づかれたら、洒落にならない制裁を……。
慌てて俺は那智子から離れる。
だが、那智子は何事もなかったかのようにおもちゃのショットガンをぶっ放していた。
「おっ! やった。これで三発命中っ。御堂、ありがと」
振り返りながら微笑む那智子を見て、俺は「ああ」と、どもりながらも返事をする。
そんな俺を見て、那智子はもう一度にっこりと笑うと、的の方に向き直った。
そんなわけで、三人は全弾撃ちつくし、それぞれの成績に応じた駄菓子を手に入れた。
陽子さんが一番うまかったのには全く驚かされたが。
「さて、これからどうしようか?」
陽子さんが俺たちを見ながら言う。
「さっき校門のところで、特製パフェが食べられる喫茶店があるって聞いたんだけど」
「あ、それいい。とりあえずお茶しようよ」
青葉と那智子はそう言って頷きあっている。
「……創ちゃんは、それでいい?」
陽子さんの問いかけに俺は黙って首を縦に振る。
陽子さんも、女の子のように笑った。
「それじゃ、みんなでパフェ食べに行こうか」
おー、と青葉と那智子が腕を振り上げ、教室から飛び出していく。
俺と陽子さんはそれをゆっくりと追いかける。
振り返ると、まだ当番の時間に当たっている和馬が、会計テーブルの向こうから手を振った。
「がんばれよ」そう口が動くのが見え、俺は軽く手を挙げて、教室を出た。
(続く)
==================
好ましい幼馴染み…俺はやっぱりツンデレ系ですかねえ。
「あんたなんか、ただの幼馴染みなんだから、気安くしないで」とかいいつつ内心ベタぼれ。
青葉みたいな奥手なのも大好きなんですけどね。
ああ、幼馴染欲しかったなあ。
おぉ、いつにも増してGJ!!相変わらず萌殺されております
>あぁ幼馴染欲しかったなあ
家が1軒挟んだ隣にあっても
少中高同じ学校でも
スッゴい可愛くても
801マンガ以外に目もくれない幼馴染はどうやって落とせば良いのだろう_| ̄|〇
>>637 いきなり抱きしめてちゅ〜して
「お前が好きだっ!!」と言えばいいと思う。
あるいは、なりきり801ごっこから
微妙な雰囲気に持ち込むとか。
やっぱり告白か、やってみる
ヤベェ。
那智子萌え。
那智子もだが、和馬の『那智子さん』という呼び方に、
なぜかキュンときている。
しかしみんなかわいいなあ。
>637
がんばれ。
上手く行ったら報告を頼みます。
>>637 801大好き女でも普通に彼氏がいたり結婚してたりする人はいるから、
大抵の人は別に男女交際に興味がないわけじゃないでしょう。
単にフィクションの世界ではそっちの方向に萌えている、というだけの話。
つ〜わけであれだ。
とっとと告白して報告してください頼みます。
当たって砕けてみろ。
幼馴染みなら砕けても再アタックのチャンスはあるはずだ(と信じたい)
>>643のレス番を見て、ふと思う
6-4-3のダブルプレー、
出塁できず(恋人になれず)、
ランナーもいなくなった(幼馴染みの関係も壊れた)
山田君。座布団5枚持ってきて
みんなありがとう(つД`)
近いうちに告白するよ
頑張れ〜
とはいってもここはSSスレなんで、
続報はリアル幼馴染スレにでも頼むね。
SSで報告すればいいじゃない
頑張れ、幼馴染男!
「どうしてわからないかなあ。こんなに素敵なのに。」
わからない。わかりたくもない。
何が悲しくてこんな話に乗らなくちゃいけないんだろう。
僕の前に散らかっている本の表紙には、男同士が抱き合っているイラストが印刷されている。
といっても彼らはレスリングをしているわけではなく、
また星雄馬と左門豊作が試合後に抱き合うような熱い友情の産物でもない。
ストレートに言って、恋愛している。好き合っているのだ。
まあ僕は別に同性愛排斥論者ではないしPTAの頭の悪い連中でもない。
男同士が恋愛するような物語があっても悪いことなんて一つもないはずだ。
だけど……どうして女である君が、ホモであるはずもない君が、
部屋中をこんな本で埋め尽くすのだろうか?
「ごめん、僕が理解するのは無理だ」
そう言うと君は少しだけがっかりしたような表情を浮かべ、すぐに元気になった。
「うん、やっぱり男には分からないよねこういうの。
ごめんごめん押し付けちゃって」
君は屈託のない笑顔を浮かべ照れくさそうに頭をかいた。
その仕草は子どもの頃となんら変わるところが無い。
無邪気でかわいらしい笑顔だった。
頭がかっと熱くなり鼓動が否応もなく高まる。どうしようもない。
僕は、もうずっと昔から君のことが好きなのだ。
出来ることならば今この場で君を抱きしめて「好きだ」と言ってしまいたい。
だけど……率直に言おう。
僕は怖かった。
つづきは637に任せた
652 :
637:2005/05/26(木) 16:10:12 ID:w0rjRRua
漏れそんなにカコイクないよ
あと今日、8時に告白しまつ
637ガンガレ、超ガンガレ
637、お前はこのスレの希望だ
思い切って逝ってこい
後はVIPにでも言って続けてりゃ皆構ってくれると思うよ
あと33分
報告はここでSS風にやります
>>656 なるべく自然に行けよ。唐突な印象を与えてはマズイだろうから。幸運を祈る。
ただいまみなさん
書きながら投下するからその間に雑談してて
一応謝らないといけないことは、漏れ今年から高校入ったリア房なこと。本当に申し訳ありません
帰れ
>>658 悪いが出て行ってくれ。
板のルール違反を見逃す事はできんよ。
個人的には応援してるけど。
恋愛相談とか、適当な別板で報告はしてくれるかな?
つーか、黙ってりゃ良いのに…
おk
恋愛板からさがしてかきこんでくる
なんか梯子を下ろされた気分だ。
つーかもともとネタだったんじゃないの?
本当だったら書き込んだ板へのリンクを貼ってほしいよね。でも
>>637はもうこれないだろうからな……誰か見つけた人いたらよろしく。
仕方ないから誰かVIPの幼馴染の女の子が同人やってましたとか
そんなスレのログをうpするんだ
おまいら
>>637の時点で違和感も不快感も沸かなかったのが
意外と言うかぬるぽと言うか
すみません637です、
来るなと言われたのに来てしまって申し訳ありません
書き込んだスレの報告と、アク禁依頼でやってきました。
必ず誰かが真面目に相談に乗ってくれる☆パート284
http://love3.2ch.net/test/read.cgi/pure/1116937981/ に書き込みました
あとfusianasanしたので誰か運営スレにアク禁依頼してきてください。
自分でやろうとすると次の日次の日と先延ばししそうので
もうここpinkちゃんねるには来ません。
応援してくれた人へ、今まで本当にありがとうございました。
>>667 見てきたけど、何だかなあ・・・。
スレに触発されて衝動的に突っ走ってみたはいいが
戦略も準備も一切なく銃剣突撃して呆気なく玉砕、というか。
まあこういうのも若さのうちなのかな。
もとよりスレ違いな話題だった
つーことで、もう終了
誰か口直しに何か投げて
ウンコー( ・∀・)ノ≡●
メロンパーン( ・∀・)ノ≡(♯)
672 :
箸休め:2005/05/28(土) 21:25:45 ID:G1NP0dYk
さて。どうしたもんかね。
約束の時間の五分前、待ち合わせの公園で、ぼんやりと煙草をふかしながら考える。
特に何かあるわけでもねぇんだよな、正直。
花見って言っても花は散ってるから花見じゃねぇし。
もう葉桜だから、言い換えるなら葉見になっちまう。
「どうしたもんだろうね、マジで」
すっかりぬるくなった缶コーヒーをすすって呟く。
花見のあとに何をしようかなんて、まるで考えちゃいない。
「ま、適当に流しゃいいか」
果林にゃいい迷惑だろうが、たまにはこういうのも悪くないだろ。
残っているコーヒーを、あおるようにして流し込む。不味い。
ぬるいコーヒーなんざ飲むもんじゃねぇな。
空き缶をゴミ箱に投げ入れて、空を見上げる。春の日差しが暖かい。
初夏といっても差し支えのない時期なんだし、当然ではある。
視線を腕時計に移す。約束の時間はもうすぐだ。
「どうせ遅れてくるんだろうが」
ちょっとした絶望を感じながらぼやく。
果林が時間通りに来ないのは分かりきっている。
それなのにきっちりと五分前行動している自分は、他人から見たら滑稽だろうか。
なんとなくジッポの蓋を開け閉めしてみて、自分の間抜けさに苦笑してしまう。
673 :
箸休め:2005/05/28(土) 21:28:43 ID:G1NP0dYk
初めてのデートで、約束をすっぽかされた男。そんな風に俺は見えるかもしれない。
別にそんなに惨めな状況じゃねぇけどな。
短くなった煙草を踏み消し、新しい煙草に火をつける。
クリームやバニラのような、甘ったるい香りが広がっていく。
ジッポをしまいこんで、辺りを見回す。
果林は今日どれだけ遅れてくるんだか。
たっぷりと煙を吐き出しながら、俺は古ぼけたベンチに腰を下ろした。
━━━
あー。マズいなー。
バスが時刻通りに来ないことにやきもきしながら、私は思う。
バスを待っている時点で、もうすでに待ち合わせの時間になってしまっているこの状況。
あまり望ましいとは言えないよね、やっぱ。
「……電話くらいしといた方が良いかな」
やはり一言伝えておくべきだろう。まぁ、「遅れる」としか言えないのだけれど。
鞄の中から携帯電話を取り出し、履歴を開く。
一応、履歴に洋の名前は残っていた。
通話ボタンを押して、無個性な電子音を聞きながら考えてみる。
洋は、どんな反応をするだろうか。
いつもは遅れそうになっても連絡をしてないから、驚くかもしれない。
それともあきられるかな。たぶん、怒りはしないだろう。
それこそ、自分でもあきれてしまうくらいに、常習だから。
ぼんやりとそんなことを考えて、溜め息をつく。
674 :
箸休め:2005/05/28(土) 21:33:50 ID:G1NP0dYk
情けないな、私って。昔から変わらない。
本当に、昔から幼馴染みとの待ち合わせには遅れてばかりだ。
洋以外との待ち合わせには、滅多なことでは遅れないのに。
要するに、甘えているのかもしれない。洋に、幼馴染みとしての関係に。
洋はまだ電話に出ない。コール音だけが私の耳を打つ。
「どうしたんだろ」
顔を上げて道路に視線を移すと、バスがもうそこまで来ていた。
「ま、いいか」
電源ボタンを押して、私はバスが止まるのを待つことにした。
━━━━
【はし-やすめ はし休め(箸休め)】
主な料理の間に、味覚を新鮮にするために食べる軽い副食物。
ということなので。口直しとは多少意味は違いますが。
待ってたよ。箸休めさん。今後の二人に期待大!
乙!
楽しみになってきますた
あんまり関係ないけど、俺の友達に幼馴染み同士の男女がいて、女の子の方は彼にぞっこんなんだが…
彼の方は彼女のことをただの幼馴染みとしか見ていないみたいなんだよ。
昨日も彼女の方に相談されたんだが…
進展する気配なし
つーか俺は彼女の事が好きなんだが、言いだせるはずもなく…
俺どうすればいいんだろな?
スレ違いスマソ
それこそ667の書き込んだスレにでも行くべきでは?
いや、突き放すようで悪いんだけどさ。
いや突き放してない。
実に然るべき対処方法だ。
最近、自分語り多すぎ。
暇をもらって新しい勤め口で今日も目覚めた。
朝日の方向に未だ新鮮さが抜けない。
孝二郎の声を聞かずに幾日過ごしてきただろう。
金糸雀色に芥子の帯。
髪をまとめて仕事にかかる。
同室で年齢の一番近いあざみについて仕事を始めて数週、
景色の歪む古硝子の引き戸にもようやく慣れてきた。
「琴子お嬢様は気まぐれなんだ。
ていっても清助さん次第のご機嫌でいらっしゃるから、
分かりやすいって言えば分かりやすいのかな」
「清助さん?」
「幼馴染なんだって噂よ。あたしも住み込み始めたの最近だから、よく知らないんだけど」
通いの庭師と婚約済みのあざみは二十歳、ひどくさばさばしていて
孝二郎付きの上流学校で十年近く過ごした梅子が初めて出会うタイプであった。
旦那様は孝二郎への口止めを梅子が思わぬほどあっさりと引き受けてくれて、
梅子の亡き両親に代わる保護者達にも丁寧に説明と対応をしてくれた。
そうして春海と琴子の住むだいぶ北に行ったところのお屋敷に、働き口を世話してくれた。
ひどく親切だったものだから感謝半分、猜疑心半分というかたちである。
梅子はそういう自分を可愛くないと確かに思う。
それだけ孝二郎の傍を離れることを本家に喜ばれてしまったのか、なんてことを
未練がましく邪推している自分には、まだまだ幼い恋心が残っているのだろうか。
諦めたのになと梅子は心中呟く。
どうでもいいともう思う。
だってあれだけ言われて、それでも孝二郎は梅子が自分を好きでいると信じていて、
あの傲慢さといったら百年の恋だって一瞬で蒸発して積乱雲に溶け込んでしまうのだ。
帯の上で指を絡める。
まだ考えている時点で、負けなのかもしれないけれども。
「梅子ちゃん」
「はい」
呼ばれてあざみの高い身長に首を向ける。
「あたしは春海お嬢様のお部屋、やっておくから玄関を掃いてきて」
「塀の外も掃きます」
そう言って笑うとあざみはエライエライ、と朗らかに傍の部屋へ消えた。
春海は孝二郎の叔母だ。
彼女は既にかけだしの学者として外の貸しマンションに住んでいるが、時折戻ってぐうたらする。
彼女はまさに変わり者という言葉がぴったりで、いくら連絡無しに帰っても、
部屋には塵ひとつないことがあたりまえであるとお金持らしく信じ込んでいる。
そうでないと部屋で実験を始めて屋敷が怪しいガスに包まれる。
その姉の琴子は機嫌が悪くなると清助を苛めて琴のバチを振り回し部屋を壊す。
困った双子だ。
というより、孝二郎のことしか見えていなかった時分は気付かなかったのだが、
この「家」は本家を初め親戚一同どれもこれも困った人間ばかりであるような気がしてきた。
幼い頃の慣れは怖ろしい。
箒を往復させながら、梅子は初夏の空を仰いだ。
孝二郎は幼い頃、機嫌が悪いと籠もっていたから、春海タイプなのだろう。
乾燥した風が吹く。
裏手の山は夏を間近に青く茂っていた。
結婚してしまえばよかった。
空の青さに睫毛を揺らして、梅子は遠い主人を思った。
もう朝の時間にあの生意気でやる気のない表情を起こすことがない。
それに魅力を感じなくなってしまった。
だったら本当に。
なにもかもが、どうでもいいのだ。
固有名詞が多くなってきましたが梅子と孝二郎だけ識別していただければ問題ないかと。
では食前酒としてメインディッシュを待つ心構えで。
243 ◆NVcIiajIyg氏って文章うまいなぁ。
ひーことイトくんの人ぐらいうまいなぁ・・・と思ってたら、同じ人でしたか・・・orz
どうしよう、私すっごい鈍い。ともかく素晴らしいです。
食前酒にはもったいないほどの美酒ですな、いやはや。
個人的に古ガラスの〜という描写が良いなぁ、と。
686 :
名無しさん@ピンキー:2005/05/30(月) 08:34:54 ID:XJro/00d
なんか野菊の墓を思い出した。
243氏の文章は相変わらずイイですなぁ・・・
しかし保管庫に追加されてないのは何故?
保管庫の中の人もたいへんなのだろう
>>687 始まりがリレーだったので下の方、ちょっと違う場所にあったりする
243氏キターーー!!
なんつーか、非常に描写が細かくて、ただただ脱帽するばかりであります。
ソレはそうと、このスレの住人にピッタリな曲を発見しましたよ。
現在、全国のゲーセンにて稼働中の音ゲー「GUITARFREAKS V & DRUMMANIA V」に収録の「DOKI☆DOKI」がソレ。
なんか、妙に幼なじみの初デートっぽく感じます。
>>690 バンプの「車輪の歌」なんかモロに幼馴染の別れって感じだよね。
誰かあれをモチーフにしたSSや漫画を描かないだろうか。
俺的に幼なじみBGMといえば米倉千尋の「10 years after」かな
08小隊のED曲だったんだが、本編に燃えた後で萌えるとは思わなかったよ…
>>691 手元に「車輪の歌」が入っているアルバムがあったので聞きながら書いてみました。
歌の内容そのままではなんですのでだいぶ変えてあります。
気に入っていただければ幸いです。
694 :
『タンデム』:2005/06/03(金) 02:39:46 ID:UOhV5gYK
駅へと続く長く急な坂道。ここを自転車でタンデムして走る。それはぼくの日課。
後ろに乗っているのはぼくの幼馴染の少女だ。
「もっと急いでよ! この電車乗り遅れたら次は30分後なんだから、遅刻しちゃうわよ!」
ぼくは応えない。というか応えられない。
高校に入学してからほぼ毎日、こうやって君を自転車の後ろに乗せて駅までの道のりを
タンデムしているけど、二年以上が経った今でもこの朝一の全力疾走はつらいんだよ。
しかも今は七月、太陽の光が無情にもぼくの体力と水分を奪い取っていく。
息切れしてしゃべることなんて到底無理だ。
「ほらもう少し。あっ! 電車来た! 急げ〜!」
ぼくたちの後ろから電車が迫ってきているらしい。普段ならその迫りくる音が聞こえるのだが、
今は全力疾走中だ。聞こえるのはぼくの荒々しい息遣いと脈拍、君の澄んだ声、
そしてさびついた自転車の車輪が出す悲鳴のような音。
駅の駐輪場に着き、見事なターンを決めて駐輪。素早く鍵を引き抜き、チェーンロックを後輪に掛けて走り出す。
全く無駄の無い動作、さすがに二年も同じことを繰り返しているだけはある。
「さあ、ラストスパート!」
駅の構内に入り、制服のポケットから定期を取り出す。すでにベルが鳴っている。
自動改札が導入されていない我が最寄駅に感謝。市内高校の最寄り駅を利用するときに思うのだが、
自動改札は定期を持っている人にとっては無用の産物である。
もちろんこの地方都市の駅たちはスイカやイコカといったしゃれたものとは無縁だ。
ぼくたちが電車に乗り込むと同時にドアが閉まる。それほど利用者の多い路線ではないが朝の通学、
通勤時間なのでそれなりに人はいる。ほかの乗客からの視線が痛い。
695 :
『タンデム』:2005/06/03(金) 02:54:37 ID:UOhV5gYK
「ギリギリだったね」
君はそう言いながらぼくに微笑みかけてくる。
人事みたいに言うなよ。
誰のせいでギリギリになったと思ってるんだ。
最近太ったんじゃないの?
言いたいことはたくさんあったが、今は息を整えるので必死で声なんて出せない。
ひざに手を置き下を向いて肩で息をする。
「ひょっとして怒ってる?」
多少はね。
「ごめん、ごめん。昨日夜遅くまで友達と電話してて朝起きれなかったんだ」
君の寝坊に付き合わされるされるこっちの身にもなってくれよ。
君は昔っからぼくを振り回してばかりだ。
「あれ? けっこうマジ怒りですかぁ?」
けっこうマジ怒りですよ。
「もう! だからごめんって言ってるでしょ。ゆるしてよ、ねっ?」
君は体を傾けながら、下を向いて息を整えているぼくをのぞきこんでくる。
その表情は今朝の太陽よりまぶしい笑顔。ここで負けてしまってはいけない。
顔を上げて、もう怒ってないよなどと言ったら、君をますます調子に乗せるだけだからね。
そのことは君との長い付き合いでよく知ってるよ。
「しょうがないな。じゃあ……」
君の顔が近づいてくる。
君の吐息を頬に感じる。
そして君の唇がぼくの頬に触れた。
やわらかくて、少しひんやりとしている湿った感触。
だめだ。負けてしまった。
「これでゆるしてくれる?」
反則だよ。そんなことをされてぼくが首を横に振れるはずが無いだろ。
ぼくは顔を上げて君を見る。君はさっきの笑顔のままぼくを見つめている。
ぼくは君の頭に手をのせて髪をなでる。そしてこれ以上ない笑顔で君に応える。
ほかの乗客からの視線を感じるがそれはもう痛くなかった。
ゲーマーでバンプ好きな俺が来ましたよ
車輪の唄の歌詞、需要があれば書こうかな。
>>694-695を読むなら、歌詞を知ってる方が良い。
>>690 プレイ中は必死だから歌詞とか聞いてる暇ないんだがorz
>>693 GJ。車輪の唄の世界観が出てた
>>696 JASRACの者ですが・・・
とならないうちにやめておいた方が吉。
698 :
691:2005/06/03(金) 23:56:33 ID:MwiTrEFi
>>693-695 グッジョブ!
曲の雰囲気が上手く表れてて良かった。
こういう甘酸っぱい感じの短編もいいね。
>>696 著作権に絡む問題が生じてもナンなんで各自ググってもらう方向で。
「需要があれば」
「書こうかな」
このスレ的には
「二人は今まで兄妹のように育ってきた(男が年上)んだけど、
実は女の子の方はずーっと男のことがすきだった」
とか言う展開はナシですか?(´・ω・`)
>>700 幼馴染なんでしょ?アリですよ。
てか、そろそろ悲恋モノ書いてくれる人出てこないかなぁ。
>>700 ちょっと待って
何でアナタ、俺の脳内嫁の事をご存じなのですか?
もしやエスパー伊藤?
>>702 エスパー伊藤にそんな能力があるのでしょうか。私にはそうは思えません。
ところで現在481KBなわけだが。
次スレ移行の時期か。
だね。
何もしないと一週間で落ちるんだっけ?
俺は最近この板で新スレ立てたばっかりだから無理だとオモ。
誰かよろすこ。
706 :
名無しさん@ピンキー:2005/06/04(土) 21:23:00 ID:ew2k/zrO
うわあ…こんないいスレがあったのか。
一通りここを読んでみたけど、いいね。
特に「ちいさなあいのかたち」。
おまけとして書かれたんだけど、幼馴染だからこその切なさというか。
本編以上にイイね。
そんなこと言われても俺には「本人光臨乙」としか
709 :
名無しさん@ピンキー:2005/06/05(日) 00:47:59 ID:+ZRYK9K2
>>707 まあ、そう言わず。
とりあえずマターリ新スレに移行しようや。
>>707 初めてこのスレに来た706が素直に一番面白いと思ったSSを挙げただけだろ?
そこで自演扱いするはいくらなんでも酷いんじゃないか?
新スレがたった今なら言える。
幼馴染の歌といえばなごり雪。なごり雪。なにはなくともなごり雪。
春が来てきれいになった幼馴染が去ったホームに残り落ちては融ける雪を見るんだっ
712 :
◆fwEqM5TUkg :2005/06/05(日) 21:29:40 ID:rX+OJoCC
>>711 あれって、幼馴染の別離の歌かなぁ。
どっちかって言うと、別々の地方から2年差くらいで上京してきて同じ大学に通っているのが縁に
なって付合い始めたカップルがいて(男が年上で、女が年下)、男は東京で就職して卒業後も女と
付合っていたけど、女は卒業を期に地元に帰るっていう歌だと思ってたんだけど。
もちろん、
>>711さんが仰るようなシチュもかなり萌え〜なんですけど、その場合、男の方が
分かれのホームで初めて自分の気持ちに気付くっていうのが個人的にツボです。
>712
二番の歌詞!二番の歌詞!!
>>711 「なごり雪」もいいですが、個人的には「木綿のハンカチーフ」もおすすめです。
最後はアレですが
漏れ的にはなごり雪はやっぱイルカVer'の方が・・・・・・
>二番。
幼い〜君〜も〜大人〜にーなるーとー、んんーんーんーんんんーってとこでしょうか?
個人的幼馴染みソング。
MY LITTLE LOVERの「Hello,Again」
コッコの「やわらかな傷跡」
……なんか、別れとか悲恋の歌が多い気がしてきた。
誰か知りませんか、ひたすらラブい幼馴染みソング。
前にバンプの「車輪の唄」が話題にでてたけど、バンプの幼馴染みソングっていったらやっぱり「天体観測」でしょ!
サビ前の震える手を〜と、背が伸びる〜からの一連の歌詞は正しく幼馴染への恋愛感情って感じ。
でもこれは幼馴染みが遠くにいっちゃった(もしくは死んじゃった)悲哀系の歌詞なんだよね。
最近のお気に入り幼馴染みソングはアンダーグラフの「ツバサ」だけど、これも別れの曲だしなぁ……。
倉木麻衣の「Time after time」も幼馴染みソングだけどラブラブじゃないしな。
そういえばコナンは幼馴染み度がかなり高い漫画だよね。
うーん。ラブラブな幼馴染みソングは思いつかんな。
ジュディマリとかでありそうなんだけどな……。
誰か見つけた人いたら教えてくれ。
718 :
691:2005/06/06(月) 03:19:47 ID:FvtJLzp4
>>717 > 「天体観測」
俺も最初はそう思ってたけど、どうやらPVとかによると(異性の)幼馴染ではなく少年同士らしいよ。
ところでこの曲もSS化してくれる神はいないだろうか?w
>>717 嘘だぁっっ!!
俺は信じない! 信じないぞ!!
だってそれは、それは……。
ああ、もう!
ショックすぎてアンカー間違えちゃったじゃないか。
>>717じゃなくて
>>718です。スマソ。
>>718の設定で
「君の震える手を握ろうとして握れなかった」とか言ってるってことは
フォモってことかYO
そうなのか…それはそれでいいな
いいのかYO!
じゃあここはもう一つ捻って男装の美少女という事ではどうだろうか。
「ば、ばっかじゃないのっ!?」
三間コオリは最近切り揃えた髪の下で顔を真っ赤にした。
かつては公園と呼ばれていたはずの空き地は廃れて草が生えっぱなしだ。
土が彼女と向かいの男の下で散乱している。
どちらも二十歳を周り三十路に近付く頃合だ。
図体の大きな男は厚い肩を僅かに落としてそれをぼんやりと眺めた。
そして低い息をほうとはいてから、らしくもなく似合わぬ赤面をした。
「…ミコがこう来るたぁ思わなかったわ、俺」
「う、うるさいな二度も言わないで。気の迷い。
ちっちゃいころのね、気の迷いって奴なのよ!
別にそんなだってあたしは硬派だったし、これはそう、あのねっ」
彼女達の下では古いクッキーの缶が泥にまみれている。
開いた蓋の下には色褪せたドロップ缶がふたつきり。
――いわゆるタイムカプセルだ。
太いごつごつとした指の間ではクーピーで書かれた落描き帳の紙が微風に踊っている。
「…『わたしはいつも陽太に冷たいたいどばかりとってしまうのでごめんなさい。
ほんとうはいつかやさしいお嫁さんになりたいとおも』」
「音読するなばかぁあ!!!」
「おっと」
コオリが半泣きで飛び掛り、彼女なりに鍛えた細腕で手紙をひったくる。
ひったくろうとしたというのが正解。
高い位置に持ち上げられた手紙が無情にも背の低い彼女の上でふらふらしている。
「スーツ台無しだぞ。生徒に笑われるんじゃないの」
「ううう」
「それよりこっち、何入れたっけかな。忘れちまった」
じと目で古き恥辱(二十年もの・熟成)を奪い返す機会を狙うのを中断し、コオリがすいとそちらに興を移す。
「えー。陽太のことだから柔道の茶帯とかじゃないの」
「あーどうかな?あの頃はまだ白帯だったはずだがなあ」
比較的体温の伝わる近さで屈む陽太をしばし見つめてから、コオリも同じくドロップ缶に屈む。
ざぐ、と鈍い音がして錆びかけた金属が難なく開く。
夕も暮れ掛けた薄暗さに良く見えず、二人で腕を寄せ合い覗き込む。
先に女の方が丸い肩から身を硬くして真っ赤になった。
「……ようたー。なんなのこれぇ」
「あー。忘れてた、これか」
気まずそうに熊みたいな図体を脱力させて陽太が呻く。
小学生というのは無邪気で怖いもの知らずでなのに無駄に助平なのだ。
「笛ガムとかじゃないわよね…」
「開けてみるか?」
「だーれが屋外でコンドームなど開けるかー!」
すぱーんとチョークを投げる如く素晴らしい手首の返しで高等部に平手が決まる。
コオリの引っ叩くタイミングも力の入り具合も、手先の女っぽさが加わっただけで二十年前と変わりない。
昔は陽太のほうがいつも彼女に振り回されていた。
去りかける手首をなんとなく掴んで陽太が幼馴染を無言で眺める。
コオリはそれで突如として顔をそむけて真っ赤なままわめいた。
小学生を指導する立場にあるものとは思えない表情はかつてここでなんども夕陽を浴びていたものだ。
「ああもうなんなの!?これ埋めたとき小学生だったはずでしょう!
すけべ!エッチ!何でこんなの、へ・ん・た・いー!」
「兄貴に冗談でもらったんだよ。そう怒るなって初めて見るわけでもあるまいし、だいたいつけてくれたこ」
「うるさいうるさいうるさいっ」
本来なら自身が恥ずかしさのあまり自己嫌悪になるところだったはずが、
あまりに相手が取り乱した結果、男の方がどんどん肝が据わってしまった。
コーチとして引退しているとはいえまだ本番になると落ち着きがやってくる体質は去っていない。
いざというときになると途端にパニックになりだす幼馴染とは絵に描いたように正反対で、だからこそずっと一緒にいたわけだけれども。
掴んだ手首をそのまま引き寄せて顔を近づける。
「…言っとくけどな、ミコと結婚したいんだけど何か道具になるものないかって聞いたら兄貴がよこしたんだ」
「う、そ、そんなの、言い訳にならな」
「折角だから使うか?今」
沈黙が夕陽に消えた。
息が弱々しく震える。
コオリが薄い化粧の奥から肌を赤らめ、小さな声で呟いて体を押した。
「…そんな昔の、危ないに決まってるでしょ」
「冗談だ馬鹿」
「あたしに一度も成績でかなわなかったくせに、えらそうに」
そしていつ切り替わったか歳相応の笑みで女性が唇をほころばせ、軽く男の口を塞いで愛しげに吸った。
首に絡めた腕をほどき、柔らかな身体を抱かれるままに自ら寄せる。
「陽太には冗談にする権利なんかないのよ。いつまでだって」
「そう来ると思ってた」
微かに欲情で笑いが震え、男は女性の髪を掻き乱した。
陽が峠に沈んだ。
タイムカプセルの空き缶が、湿度のある匂いと何かの動きに弾かれてころころと転げた。
以上。
埋めようと思ってやった
容量を10KB勘違いしていたので結果としては埋まらなかった
いまははんせいしている
>>725-728 GJ!! 小学生の癖に風船をタイムカプセルに入れるなんてとんだマセガキですな(w
逆に幼馴染の方は20代後半なのに子供っぽいところがまたギャップがあってチョト新鮮。
730 :
名無しさん@ピンキー:
あっ!
そういえば、俺も埋めたんだった。
すっかり忘れてたよ。
まあいい。ほかの奴らもみんな忘れてるだろう。