諸君、私は幼馴染みが好きだ。
家で、街中で、通学路で、学校で、この地上で出会えるとあらゆる幼馴染みが大好きだ。
肩をならべて歩いていた喧嘩っ早い幼馴染みが轟音と共に私を吹き飛ばすのが好きだ。
空中高く放り上げられた私の鞄の中身がばらばらになった時など心がおどる。
入浴中の幼馴染みのすっかり成長した身体に驚くのが好きだ。
悲鳴を上げて風呂場から飛び出してきた幼馴染みに謝り倒した時など胸がすくような気持ちだった。
毛先をそろえた幼馴染みが見せるはにかんだ笑顔が好きだ。
似合うかなぁ?なんていいながら何度も何度も鏡を覗く様など感動すら覚える。
完璧主義の幼馴染みがふとした弾みで恋愛感情に目覚める様などはもうたまらない。
バカァ!と泣き叫ぶ幼馴染みが振り下ろした手の平とともに、私がばたと薙ぎ倒されるのも最高だ。
哀れな幼馴染みが雑多な調理器具に揉まれながら、健気にも手料理を作ってくるのが好きだ。
憎まれ口を叩きながら口に入れた時など絶頂すら覚える。
朝のアンニュイな時間に滅茶苦茶に叩き起こされるのが好きだ。
必死に守るはずだった掛け布団が蹂躙され剥ぎ取られる様はとてもとても悲しいものだ。
諸君、私は幼馴染みをご近所さんの様な幼馴染みを望んでいる。
諸君、エロパロ板住人の諸君。君達は一体何を望んでいる?
更なる萌えを望むか? 情け容赦のない糞の様な登校風景を望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐の様な三角関係を望むか?
『弁当! 弁当! 弁当!』
よろしい。ならばSSだ。我々は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとする握り拳だ。
だがこの暗い板の底で四半世紀もの間堪え続けてきた我々にただの幼馴染みではもはや足りない!!
幼馴染みとのHを!! 一心不乱のHを!!
我らはわずかにスレの一つ。千人に満たぬROMに過ぎない。だが諸君は一騎当千の古強者だと私は
信仰している。ならば我らは諸君と私で総力100万と1人の幼馴染みスキーな集団となる。
幼馴染みを思い出の彼方へと追いやり眠りこけているROMを叩き起こそう。
髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう。連中に幼馴染みの味を思い出させてやる。
一千人の幼馴染みレスの戦闘団でエロパロ板を萌やし尽くしてやる!!
昨日、不細工な男と話したんです。ブ男。
そしたらなんかめちゃくちゃ好きな娘ができたらしいんです。
で、よく見たらなんか小ぎれいにしちゃって、見たこと無い服着てるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
あんたね、好きな娘ができたぐらいで着なれない服着てるんじゃねーよ、ブ男が。
そのセンスだよ、センス。
なんか帽子かぶってるし。ストリート系だってか。おめでてーな。
よーし俺イケてるじゃん、とか言ってるの。もう見てらんない。
あんたね、普段のがなんぼかマシだから着替えて来いと。
ブ男ってのはな、ダサい服着てるべきなんだよ。
すれ違った女100人が100人とも「今日のダサい奴」にチェックしてもおかしくない、
俺は女に縁がありません、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。
ブーンだのメンズノンノだのは、すっこんでろ。
で、やっと着替えたかと思ったら、どうやってコクるかな、とか言ってるんです。
そこでまたぶち切れですよ。
あのな、あんたはわかってねーんだよ。ブ男が。
得意げな顔して何が、コクるかな、だ。
あんたは何度失敗すれば判るのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
あんた、コクりたいって言いたいだけちゃうんかと。
隣に住んで15年のアタシから言わせてもらえば今回、あんたはやっぱりコクれない、
自爆、これだね。
ベッドの上で叫んでのたうちまわる。これがあんたのコクり方
自爆ってのは相手に言えない。そん代わり相手に避けられる可能性少なめ。これ。
で、相手に彼が出来てあきらめる。これ最強。
しかしこれを続けてるとホモの噂が立つという危険も伴う、諸刃の剣。
素人にはお薦め出来ない。
まああんたみたいなブ男は、早いところアタシの気持ちに気付けってこった。
乙!
絶対的幼なじみ萌えの名の下に!
まだだ!まだ死ぬな!
即死回避
SS書き上げるまで書き込まないハズだったけど即死回避カキコ
死なれたら落とす場所が無いよorz
おさななじめ! おさななじむんだ!
同じく書き終わるまで書き込まないつもりでしたが即死回避
今頑張ってますんでまだ死なないでー
回避ーっ!!
新スレ乙!
続き物も新作も待ってるよん
さて、保守
>1さん乙!
即死回避した?んで
隣のあの娘の家庭科クッキーどぞ!
イキレ
回避
会費
開扉
開披
お好きなのドゾー
幼なじミミモード♥
版権モノではどのカップリングが好き?
幼なじみのためならしねる
>22
…ちと?
すいません、私信で1レスだけ使わせていただきます。
>SS保管庫管理人様
これでよろしいでしょうか?
以前お願い申し上げた、例の件よろしくお願いします。
81様、執筆状況は如何ですか?
続きを楽しみにしています。
>19
カップリング萌えというよりは単体萌えですが。
「からくりサーカス」のミンシア姐さんに(*´Д`)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ
姐さん可愛いよ姐さん
このスレが終わるまでには終了させたいので頑張って書きます。
なので自分も投下場所の即死回避に保守。
フェリオ×ウルク
あれ?削除?
保管庫のトップページだけ落ちてたみたいですね。
hosu!
31 :
243:04/10/13 01:37:08 ID:0zGRhYx3
その33です.
こちらは相変わらず進展が遅々としておりますが、
エロエロ王道ツンデレその他様々の幼馴染が
職人様方によって萌えとともに多く降臨することを祈って。
・・・・その33
『まぁいきなり知らない変なのに義兄さんとか呼ばれるよりかは、
こいつに無理矢理呼ばせてみる方が面白いよな!はっはっはおい呼べ橋田、おにいさまだぞ』
兄さんは蝉の鳴き声にも負けない声で、堂々と笑った。
夏バテで寝ているソファの幼馴染を無遠慮に叩きながら。
実は起きていたのか、橋田依斗くんはむっつりと起き上がって、―兄さんの顔に座布団を投げた。
気色悪いとか恩知らずとか鶏とか仙人とか、そういう子供みたいな喧嘩になってきたので続きは聞かなかった。
頬杖をついて、扇風機にめくれる問題集を爪で押える。
変わったと思ったのにそうしていると昔のままみたいな気がした。
夏頃はまだ、私もイトくんもどこかそういう、幼い頃から変わらない空気の中で触れ合っていただけだったかもしれない。
「……雨、降ってる」
一人で呟いて寝返りを打つ。
浅い眠りから柔らかにさめた手で、肌寒さに毛布を寄せた。
こころなしか熱が上がっているように思う。
薄目を開けて横を見れば、教科書は拾われていて水も替えられていた。
部屋に来ていたのだろうか。
何かが奥を吹きすぎたようだった。
自分でも分からない予感に布団を肩まで抱き込み、指を弱く折る。
どこか越えずにいた深い部分が、最近消えかけている気がする。
糸がほつれかけてきた。
もう一度寝返って頬に枕を押し付けた。
…一ヶ月前の私だったらきっと起こされていた。
それがないのがかえって深みにいるようで、少し怖い。
それとも全部気のせいで、最近、温度や視線を今までよりずっと深く感じることがあるのも、
単にこちらの気持ちの問題なのだろうか。
そうだったら自分がどう思うかすら掴めなくてそっと息を漏らす。
ドアの向こうでお母さんの声がするので、もうお昼過ぎだと知った。
随分寝ていたみたいだ。
窓を打つ水滴が、目の端で白い雲に溶けるのを眺めて目を閉じると、
朦朧とした頭がまた無意識に沈んだ。
―次の日も休んだ。
移った風邪は性質が悪かったらしい。
イトくんは流石に復帰して学校に行った。
熱は私には珍しく高めで、食欲もない。
気分が優れないまま午前中を無駄に暮らしているとなんだか悲しくなる。
あんまり落ち込んでいるのでお昼を持ってきたお母さんが励ましてくれた。
励ましてくれるのに悪いなあと思うけれど『明日は祝日だから三連休、やったね!』は…
…正直、あんまり嬉しくない。
大体明日はお祖母ちゃんのうちにお墓参りで、この分だと留守番だろう。
享が残るかどうかは微妙だけれど、イトくんは来てくれるような気もする。
昔から彼がお彼岸にどこかに行くという話を聞いたことがないし。
でも、折角治ったものをまた移すのは嫌だから複雑だ。
朦朧とした頭で薄い視界を閉じ、耳を澄ました。
電気のない部屋が薄暗くて、雨がぱらぱらと窓を打つ。
私はここで何をやっているのだろう。
普段からこれ以上気分の悪い日々を多く送っている人が傍にいるのに、私はとても情けない。
風邪になると気が弱る。
起き上がり、水をひと口飲む。
ふと、机上に重なった辞書をなんとなく眺めた。
年上のくせにいつもこちらに頼っているなんて思い上がりだったなと思う。
いろいろと支えてもらって、私のことを無言で分かってくれるからと言いたいことを何も言わないで。
―頼ってばかりいるのは本当は私だ。
水が雨樋を通って庇から滴り光っていた。
今更何を気付いているんだろう。
布団に潜る。
分かってくれているというのだって、私の願望に過ぎないのかも、しれないし。
溜息をついて眼を伏せる。
結局あの人がどんな近しい存在に、なったとしても。
私にとっては、ずっと不思議であり続けるのかもしれない。
幼い頃からそうだったのだから、今更早々変わらないだろう。
雨音が静かで、温かい手が静かに私を起こすまで、そのまま浅く緩やかに意識が薄れて眠った。
35 :
243:04/10/13 01:40:32 ID:0zGRhYx3
では、続きはまた時間ができたときに。
ひーこ眠ってばっかりだ。
皆さんに悲しいお知らせです、81氏が執筆をお止めになりました、そのため、保管庫の作品は削除(本人の希望)になりました。
そこで私個人からのお願いがあります。
どちら様か、RIBBON&RINGのバックアップをとられている方いませんでしょうか。
その中で、写させてくれる方いませんでしょうか。
大変身勝手なお願いであることは重々承知しております。
しかしこちら携帯しかネット環境が無いため過去ログが見れないのです。
どなたか携帯から初代スレの過去ログの見方を教えてくれる方、
またはある一部だけでいいのですがアップをどなたかしてくれる方いらっしゃいませんでしょうか。
>36
携帯であれだけの長編を読む(保存する)のは容量的に難しくね?
URLいじればまだ見れるぞ
39 :
36:04/10/13 09:53:41 ID:Sr2pbpXz
>>37 RIB〜の保管庫時二番目のラストだけ切れてるだけです。
>>38 本当ですか!?ぜひやり方を教えてください!
ところで、見れるのは過去ログですか保管庫ですか?
保管庫。数字いじれ
41 :
36:04/10/13 12:36:25 ID:Sr2pbpXz
>>38,40
見れました!有難うございました!
これでゆっくり寝れます〜。
42 :
36:04/10/14 00:28:39 ID:2nx6J8cq
感謝の気持ちをSSで換えそうと思ったので現在ネタを練ってます。
無理スンナ
それよりiMONA入れれ
44 :
36:04/10/14 08:27:46 ID:2nx6J8cq
imonaですよ?
…だったら
>>1から飛べる希ガス
実際、俺行けたし
>>42 熟年夫婦のように一緒にいることが当たり前になった二人の話をキボン
243さん、お疲れさまです。
ひーこちゃんとイト君、2人きり(?)の連休お留守番ムマー!
静かなドキドキに眠れません…。
48 :
葦名 由依:04/10/16 17:59:00 ID:1T19aKWe
遅まきながら新スレ乙です。
……いつかROM脱却してこのスレにも作品投下したいなぁ。
ああああ、名前欄はスルーしてくださいorz
詳細キボーンヌ
三宅裕司は馴染ミストだったのか…
53 :
243:04/10/19 03:09:28 ID:3moog6Du
36さんまだかなー
その34です.
続きは時間ができましたら、また。
幼馴染ばんざい。
・・・・その34
―そう、と溜息をついて、玄関で見上げた。
秋分の日は曇りで、家の中まで白く濁っているようだ。
パジャマに上着一枚で外気に晒されたので少し寒い。
「ひーこ」
幼馴染が目を細めて屈むと、肩掛け鞄が重さに傾いだ。
「なあに」
「ぼくがいないと寂しい?」
「まあ、それなりに」
寂しいけれど。
そんなことを聞かれても困る。
言ったところで、イトくんが今日一日いてくれるとかそういうことでもないのだし。
肩を竦めて幼馴染を盗み見る。
本当に嬉しそうに笑んで、私を見下ろしていた。
ので少し気恥ずかしくて、視線を泳がせた。
雨は昨晩遅くに上がったらしく、傘立てが無造作に溢れている。
お母さんとお父さんは早朝から田舎へ出て行ったし、享はいまだに寝ている。
当分起きては来ないだろう。
風邪が治ってないせいか、少しぼんやりしている頭で息をつく。
間近の気配だけが不思議に落ち着いて息が漏れた。
ふと髪をかきやられたけれど、何もされなかった。
仰いだ視線に応えて、目の色が僅かに深まる。
―もう笑んではいなかった。
脈がはやくなってきたのを感じて目を逸らす。
触れられるのは慣れても、こういう視線はまだ慣れなくて落ち着かない。
なんだか心臓の中まで見られているような、感じがする。
なんとなく後じさって身を離すと、指が掠めるように目の端を追って、耳元をくすぐった。
変に首の裏が痺れて、されるままに応えた。
言葉もなく撫ぜられていた肩が感覚にさわぐ。
呼吸が苦しくなる前に、ひやりとした温度が離れる。
「…じゃあ、行って来るから。あったかくして寝てなさい」
幼馴染の言葉はいつもより静かで、私の声もなんだか小さかった。
「行ってらっしゃい」
「ひーこ」
「なに」
「今の、妻が風邪引いた新婚夫婦みたいだったね」
かすかに笑いを含んだ声に、肩の緊張がゆっくりと降りる。
どこからそういう発想になるのだろう。
「何言ってるの、もう」
溜息混じりに呟いて、玄関のサンダルを素足に滑らせる。
見送りにもう一度開いたドアの向こうでは、涼しい湿り気と曇り空が、秋の空気に沈んでいた。
風邪っぽい身体で鍵を閉め、ぼんやりと留守番の居間に戻る。
享は雨がやんだら部活があるといっていたのに、起きていなかったら意味がない。
ソファに腰を沈めて、パジャマの身体に触れる。
イトくんと違って、自分でも柔らかいと思う。
いつの間にこんなに成長してしまったのかなと、居間の窓から雲を眺めて瞬きをした。
大分時間が経って、もうすぐ昼前なので居間に出てきた。
生姜湯を自分でいれようとお湯を沸かしていると、がちゃりと小さな音がする。
「…はよー。あれ、橋田くん来てねえの」
「お母さんのお墓参りに行くって」
今年は行くのだそうだ。
良く分からない。
「へえ」
意味ありげに見られたので、肩を竦めた。
寝起きの弟が冷蔵庫を開けるのに場所を空ける。
自分用の牛乳パックを口につける享を眺めて、上着を羽織りなおす。
「雨やんだけど、部活は?」
「姉ちゃんの具合による」
ぼそりと言うのに、少し笑った。
意外に律儀だ。
「大会前でしょ。行ってきたら」
「ん」
眉を顰める弟を退けて、湯気を吐き出したやかんを取り上げ火を止めた。
持ち上げると蒸気の音がする。
「子供じゃないんだから風邪くらい大丈夫よ」
「あそ…てかどいて」
弟は冷蔵庫に牛乳を戻したその手で食べ物を漁っている。
私は生姜湯を抱えて、こぼさないように脇を抜けた。
素足に台所の床がしんみりと冷たくて、古いマンションの軋みが秋の部屋に細い。
なんか描写が多杉。
だがそれがいい。
マターリでもいいので続きを期待してますよ。
世の中には、描写で登場人物の心情を表現するタイプの小説があるのだよ。
そういうのが好きかどうかは好みの問題。
ちなみに私はそーゆー小説は割と好き。
下手だと目も当てられないけど…
243氏のは、ずっと楽しませてもらってます。
何気ない描写を重ねて、ゆっくりと心情が変化してるを伝えてる。
たんなる「幼馴染み同士が好意を抱いて恋人同士になりました」
じゃないところも好き。
ビルドゥングスロマンっていうんですか?
60 :
名無しさん@ピンキー:04/10/23 22:16:09 ID:uHf+J41O
保守
61 :
前スレ812:04/10/24 01:05:04 ID:0od8eqzr
コソーリ投下。
前回の続きじゃないです。ごめんなさい。
62 :
1:04/10/24 01:05:31 ID:0od8eqzr
青天の霹靂、という言葉がある。
その日から、十四歳だった私の身に起こった一連の出来事は、まさに、その言葉どおりだ
った。
…想像してみて欲しい。
『自分』というものを定義するのに必要な要素は、人それぞれ、名前とか、人種とか、宗
教とか、所属している社会だとか、色々だろう。
とはいえ、『性別』というものを、全く定義のなかに入れていないという人は、少数派な
のではないだろうか。
…では、そんなものが、ある日突然、ひっくり返ったとしたら?
それが、十四歳のあの夏の日。
私に/俺に、起こった出来事だ。
Heavenly blue
期末テストも終わり、一部の教員も、生徒も、夏休みを目前にいいかげんダレている。
「…暑い」
あまりの暑さに一段高いところにある給水タンクの影に避難する。
中庭から聞こえるアブラゼミの声が暑苦しさを余計に感じさせるが、少なくとも教室より
は蒸し暑さ、という点においてはまだマシだ。
ジーワジーワ、ジ―――。と、セミの声が遠くから聞こえる。
日差しはキツイが、給水タンクの影の中には届かない。
風が吹いて、スカートの裾を通り過ぎるのが心地よかった。
63 :
2:04/10/24 01:08:29 ID:0od8eqzr
弁当をたいらげ、空箱を枕にしてウトウトしかけていたら。
「あっ! やっぱりここに居たんですねー!」
甲高い声に眠りを破られる。
「…まゆこか。いったい、何よ」
「なによ。じゃありませんよ。授業中に何してるんです、みいちゃん」
「授業っつっても自習だろー。ちゃんと課題は出したんだから何してようとアタシの自由だ」
「そういう問題じゃないですよー! 先生が見回りに来ないとも限らないんですよっ!
みいちゃん、ただでさえも生活態度の悪さで、先生の評判悪いんですから。
こんなところでサボってるのが見つかったら、また生徒指導の先生に叱られるじゃないですかっ」
ぷりぷり怒りながらそんな事を言ってくる。
…ふーん、心配してくれてたのか。
「そんなキャンキャン怒鳴らなくても聞こえてる。…なんか、最近、気分が悪くなる事が多くてさ。
腹や関節は痛いし、貧血みたいな目眩はするし、教室ってうるさくて頭痛がするからイヤだったんだ」
「え? だ、だいじょうぶなんですか? 保健室、一緒に行きましょうか?」
「保健室って薬くさいからイヤ。それに校医のおばちゃん、すげえ性格悪いから行きたくない」
「…わがままー…」
「うるさい。とにかくイヤなんだって。…まあ、多分たいした事無いさ。下腹の辺が気持ち悪かったり、
関節が痛かったりするくらいだから。生理痛とかじゃないか? 多分」
「え? みいちゃん、初潮来たんですか?」
「いや、まだだけど」
私の身体は、14になっても、未だ女としての成熟さを見せない。
胸の膨らみなどは一切無いし、初潮が来る気配すらない。
真由子は11歳くらいで毛も生えて、初潮を迎えていたのを考えれば、かなり遅い部類に入るだろう。
実を言うと、そのころ一度、嫌がる真由子を無理矢理押さえつけてパンツを脱がして確認した事もあった。
…もっとも、私自身はその事について、真由子や母が心配するほど気にしてはいない。
むしろ、自分の胸が膨らむとか、子を生む為に生理が来るとか、そういうことに対して、違和感しか覚えない。
64 :
3:04/10/24 01:11:33 ID:0od8eqzr
…でも、真由子のでっかいおっぱいだけはとても好きだ。
まるくておおきくてふかふかしている。何度かふざけて触った事はあるが、いつ触ってもとてもいい。
でかいし柔らかいし触っているだけであそこまで幸福感を得る事が出来るものも、そうは無い。
やっぱりアレいいなあ好きだなあ欲しいなあいつでも好きなときにさわれたらすごくいいだろうなあ。
「――…ちゃん! ――…ぃちゃん!」
別に私が自分で持つ必要なんざ一切無いんだよな真由子がいつでも好きなときに好きなだけ触らせてくれたら
それで別に問題ないわけじゃんそーだよなよしそれで、
「…みいちゃんっ! 聞いてるんですかっ!」
「へ、あ、なに、やっぱ生は駄目?」
「? 何の事ですか?」
「いいや、なんでも? それより、オマエ今なにか言った?」
ふう、あぶないあぶない。
真由子の乳の記憶を反芻しているうちにいつのまにかトリップしていたようだ。
ンな事考えてるのがバレたら、ぜったいもう二度と触らせてくれないだろうしなー。
「…やっぱり、聞いてなかったんですね!」
むー。と、ほほを膨らませ怒る真由子。
うわクソ。かーわいいなあー、コイツ。
「悪い悪い。…つってもよ、どうせ『早く教室に戻りましょうよー』だろ?」
「そうですっ。言わなくても解ってるなら早く帰りましょうよ」
「んー。ま、オマエさんにゃ悪いが、もう無駄だ」
「無駄って、そんな―――」
キーンコーンカーンコーン。キーンコーンカーンコーン。
「はいっ、時間切れー。昼休みになりましたー」
「あ、ああーっ!」
ううー。と、恨めしそうな上目遣いでこっちを見てくる。
…心配してくれるのは嬉しいが、こっちのペースをあわすつもりは毛頭無い。
本当に、教室というのは息苦しいと思う。特に女子の社会というのはややこしくて仕方が無い。
私はどうにも昔から馴染めなくて、親しい女子といったらそれこそ赤ん坊のころからの付き合いの
真由子くらいのものだ。
65 :
4:04/10/24 01:12:53 ID:0od8eqzr
反面、男子とのほうがウマが合う連中が多く、昔からそっちとばかり付き合っている事の方が多かった。
中学に上がった頃、その事で一部の女子とちょいとばかり揉めた事もあったくらいだ。
まあ、思春期の女子の集団によくある「○○ちゃんの好きな男子を藤井瑞穂が取った」とかの、
こっちにしてみりゃ言い掛かりに近いトラブルだ。
私に言わせれば馬鹿馬鹿しいの一言に尽きるような、くだらない諍いだったが、ムカつく事にそいつら、
真由子にまでちょっかいかけやがったのである。
まあ色々、不快な思いをした分はきっちりとやりかえしたのはいいが、その件で他の無関係だった
女子連中も私を避けるようになったため、未だに真由子以外に女友達というものは出来ていない。
「…別にさあ、わざわざオマエまでここで弁当広げなくてもいいんじゃないの」
こんなふうに、メシ食うときまで一緒じゃなくても、良いんじゃないかと思う。
なんでこう、女の子というのは何をするにも誰かと一緒じゃないといけないのだろう。
極端なヤツだと、弁当どころか、便所にまで手をつないで行っていて、何をしてるんだと思うのだが。
「いいじゃないですか、別に。それともみいちゃん、教室で食べます?」
「やなこった。暑苦しい」
…まあ、屋上は気持ちが良いし、真由子が横にいるのは嬉しい。ちょいとばかり照れくさいが、
この場にいるのは私たち二人だけだから、それほど気にもならない。
その事を真由子も解ってくれているのだろう。普段は女子グループと弁当を食っているのだが、
時々、こうして私のところで他愛も無い話をしに来る。
普段、特に誰ともつるんでいない私の事を真由子なりに心配してくれての事なのだろう。
66 :
5:04/10/24 01:16:55 ID:0od8eqzr
自分の弁当はとっくに食べてしまっていたので、おやつ用に買っておいた惣菜パンを食べる。
「…なんでそれだけ食べてるのに、太らないんでしょうね、みいちゃんは」
うらやましいなあ、と溜息をついて、ちっこい弁当箱を同じくちっこいフォークでちまちまと突付きながら
真由子がぼやく。
「アタシに言わせりゃ、オマエこそまたダイエット?ってとこだけどなァ」
むー。と睨んでくる真由子。
「…オイオイ誤解すんなよ? 別にそんなカリカリしてダイエットするほど太ってないんじゃないかって
言いたいだけ」
確かに、どっちかといえば、ぽっちゃりふっくらしてる方だとは思うけど、私らくらいの年齢ならそっちのほうが
普通だし、腕とか胸とかふとももとか、真由子は全身どこもすべすべふかふかしていてとても気持ちが良いの
だからそれでいいと思う。
食事が終わると、真由子は鞄から雑誌を取り出して、パラパラと捲りだす。
「…ガッコに雑誌なんか持って来ていいの? 委員長ー?」
「んー、ホントは駄目なんでしょうけど、休み時間に広げてるくらいならそんなにうるさく言われませんよ?」
「アタシ、前に取り上げられた事あるぞ」
「あれは授業中にパズルなんか解いてるからじゃないですか。それより、これ見てくださいよ。
…みいちゃんはー、せっかくキレイなんですから、もっとこう、オシャレしたらいいと思うんです」
「してるだろ」
見ろこのダイバーズウォッチ。兄貴のお下がりなのだが、なかなか渋くて最近のお気に入りだ。
「そんな男の子みたいなのじゃなくてー。…あ、このワンピ可愛いと思いません?
みいちゃんみたいな背が高くてスタイル良くて髪キレイな人が着るとすごく似合うと思うんですけど」
「…いやマテ? 雑誌抱えて夢見んのは勝手だけどさ。値段ムチャクチャだよ? これ」
よくもまあ雑誌に載ってる服だけでここまでキャーキャー楽しめるもんだ。
そもそも女物の服だの靴だのというのは、何でこんなに高価なのだろう。
ひらひらしたうすっぺらいワンピースだのおもちゃみたいなちっこいサンダルに、恐ろしい値段が付いているのである。
「うわこれ母さんが好きなブランドだ…。…げえっ!」
67 :
6:04/10/24 01:19:19 ID:0od8eqzr
ちょっとまてオイ私のタンスの中のアレってこんな額なのか。
…いらねえ! いらねえよ母さん!
こんな服買わなくていいから新しい自転車買ってくれよ!
思わず天を仰いでひっくり返る。
くそ、あれ古着屋に持っていけばあきらめてた新刊買えるんじゃないか?
「あ、これも可愛いと思いません? …ね、見てくださいよー、これこれ」
私の反応にもまったく動じず、広げた雑誌を持って私の横に真由子が来る。
ふわり。と、フローラル系の制汗剤と少女特有の体臭の混じった、ひどく甘い匂いがした。
「――ふーん、いいんじゃないの?」
生返事を返して、出来る限りさりげなさを装って距離をとる。
夏という事もあって、最近の真由子からは、特にそんな匂いがするようになった。
あの香りを嗅ぐ度に、腰のほうから何か、ざわりとした感覚が背筋を登ってくる。
――ああそうだ。私は、同性である真由子に欲情している。
自分の中の劣情をはっきり意識しだしたのは少し前からだが、いつからそういう意味で好きだったのかは、
正直、よくわからない。
それこそ、赤ん坊の頃からの付き合いだから、当たり前だけどとても好きだった。
そもそも、人付き合いがあまり得意でなく、人間の好き嫌いの激しい私がまともに付き合える人間というのは
貴重なのだ。
「もー、また生返事してるでしょう。みいちゃん、本当に苦手ですよね、こういう話」
はあ。と、呆れたように真由子が溜息をついた。
「…ンな事言われてもさ、アタシゃ本当に服とか化粧とか、興味ないんだって」
「…わかりました。今日のところは引き下がります。
――ところで、みいちゃん、今日は一緒に寝ませんか?
今日、おばさんお出かけになるから、ウチで夕飯にするんですよね?」
68 :
7:04/10/24 01:21:26 ID:0od8eqzr
あとでゆっくり話があるぞ。という顔で笑う。
こいつといい母さんといい、私を着せ替え人形か何かだと思ってないか?
真由子の家はおじさんは出張、おばさんは夜勤の多い看護婦さんの共働きで、ウチも、父は同じく長期出張の多いサラリーマン。
母は料理研究家を仕事にしていて、しょっちゅう家を空けていたので、昔からお互いの家に預けられる事はよくあった。
その事もあって、未だに何もなくてもどっちかの部屋で一緒に寝る事はしょっちゅうだ。
そうなると、当然、風呂や布団も一緒にされる。
異性ならば14にもなればそんな事しないのだろうが、私らはそもそも女同士である。
真由子にしても、お泊り会というのは遅くまでお喋りできて楽しいのだろう。
しかし、風呂にしても布団にしても、私にとっては拷問に近い。
特に寝る前は最悪だ。
時々ふざけて抱きついたりこっちのフトンに潜り込んできたりされる。
はっきり言おう、たまったものではない。
真由子にしてみれば親友同士のおふざけなのだろうが、私にしてみれば本気で拷問だ。
「あ――、いや、止めとくよ、迷惑になるしさ」
「え、別にそんな事ないですよ?
わたしも、おとうさんもおかあさんも、みいちゃんを
迷惑だなんて思うわけが無いじゃないですか。
そんな他人行儀なこと、言わないでくださいよ」
「…とにかくさ、今日は止めとくよ」
これ以上話してると、確実に泊まらされるハメになる。
夕飯の誘いも、おばさんには悪いが断った方がいいな。
慌ててはしごも使わず飛び降りる。
「ちょ、あぶないですよっ!?」
「へーき、へーき。まゆー、オマエ、アタシの運動神経見くびるんじゃ――、」
そんな軽口を叩いた瞬間、
ぐらり、と。
酷い目眩を起こして、目の前が白くなり、いきなり何か、壁のような物が凄い勢いで側頭部にぶつかってきた。
「――みいちゃんっ!?」
真由子の悲鳴。
――ああ、違うな。壁がぶつかってきたんじゃなくて、私が、床に倒れたんだ。
覚えていたのは、それが最後。
69 :
8:04/10/24 01:23:42 ID:0od8eqzr
――かあ、かあ。
昼間の青が嘘のように赤黒い、夏の夕暮れの空にカラスが鳴いている。
空気がねっとりと暑く重苦しい。
昼に学校の屋上で倒れてすぐに意識が戻らなかったため、私は救急車で病院に運ばれた。
「―――――。」
「……………。」
私が病院に担ぎ込まれたという報せを受けて、わざわざ外出先から病院に駆けつけてくれた母と私の間に、
長く沈黙が横たわる。
「―――――かあさん」
呼びかけると、ぎょっとしたような顔で私を見て、それからしまったという風に、ぎこちない笑顔を母は作った。
「あ……、な、何かしら、瑞穂さん…?」
―――ハ。
片頬だけを吊り上げて笑いながら、「――どうしようね?」と聞く。
そうすると、見る見るうちに、母の顔は強張っていった。
さて、何故私ら母娘の間に、こうもギスギスと重苦しい空気が立ち込めているのかというと、話は数時間前に遡る。
倒れた際、私は右半身全体をかなり強烈に打ち付けていたらしく、頭にかなりひどいコブが出来ていると言うこともあり、
心配した母が精密検査を医者に希望したらしい。
私も、目眩なんかの最近の体調不良が気になっていた事もあり、受けさせてもらう事になった。
それで、血液検査だのCTだのレントゲンだの、色々されたあげく、『転んだときの怪我は異常なし』と診断された
のだが、その後、やけに深刻な面をした医者に呼ばれたと思ったら。
「――…先生、すいませんが、もう1回、言ってもらえます?」
「――ですから、藤井さん。検査の結果、わかった事ですが貴女は、本当は男性という事になります」
――なんだって?
70 :
9:04/10/24 01:28:09 ID:0od8eqzr
「いや、先生、確かにアタシゃ胸は無いですが、竿も玉も今までぶら下げてた事はいっぺんだってありませんよ?」
「…いえ、ごく稀な例ですが、外見上の性別と遺伝子学上の性別が違うというケースが あるんです。
発生の段階で、染色体に異常があったり、遺伝子情報の伝達ミスなどの 理由で、外見は女性ですが、
実際は男性であるとか、あるいはその逆のケースが」
「…あー、その、…つまり、アタシは」
「はい。男性です。
…藤井さんの場合は、推測ですが、おそらく外性器の発育不全で、出生時に男性器が確認されず、
女性という事になったのだと思います。
先ほどお母様に伺いましたが、自宅出産だったという事ですし。
改めて詳しく検査をしないと断言しかねますが、最近の体調不良も、思春期になって、本来の男性器が
成長を始めた事と、それに伴うホルモンの分泌と関連があるかと思われます」
それから、医者に色々と説明を受けたがアンドロゲン受容体の遺伝子異常とかテストステロンがどうとか、
言われたところでさっぱりわからない。
理解できたのは、
一、実は私には子宮が無いこと。膣もごく短いもので先は詰まっているという事。
一、私のような人間――半陰陽というらしい――は、今まで暮らしていたときと同じ性を選ぶケースが多いという事。
一、ペニスと精巣は未熟なものだが身体の中にめり込んだような形で存在しているという事。
このまま放っておけば精巣が悪性の腫瘍になる危険性が高い事。
一、このさき男女どちらの性を選ぶにしろ、早期の治療が必要だという事。
それだけだったが、それだけ理解できれば充分だった。
理解は出来たが、どうして良いのかわからない。
だって、私は今日の昼までは、自分が女である事を、面倒だとは思っていても、疑った事などなかったのだから。
それから、まず第一に思ったのは、母は何と言うだろう。という事だった。
71 :
10:04/10/24 01:34:11 ID:0od8eqzr
――私の母は、抑圧的な人だ。
別に虐待を加えられたわけではないし、母にとっては深い愛情を注いだつもりだったのだろう。
もうずっと、幼い頃から『女の子らしく』。そう言われ続けてきた。
お茶にお花、日舞にバレエにピアノ。その他、『女の子らしい』習い事は色々やらされた。
どれもこれもイヤでイヤで仕方が無くて、そのたび抵抗しては、母は溜息をついていた。
私の上には兄が二人いて、私はあまり体が強いわけでもない母が「女の子が出来るまでは」と頑張って、やっとの思いで授かった娘であるらしい。
昔、父にそう聞かされたことがある。
誤解してほしくないのだが、別に私は母を恨んでいるわけでも憎んでいるわけでもない。
ただ、母が私に求める『理想の娘像』に、少々ウンザリしているというだけだ。
『女の子らしい』服、『女の子らしい』仕草、『女の子らしい』性格、『女の子らしい』容姿。
……うんざりだ、吐き気がする。真由子はキレイだと言う、このずるずる長い髪も鬱陶しくてたまらない。
夏場なんぞ、首筋に汗疹ができて痒くて仕方が無い。数年前、一度自分で工作バサミでじゃきじゃき切った事が
あったが、その時母は一週間寝込んでなぜか真由子まで泣いていた。
父にも兄たちにも説教を食らったため、大人しく伸ばしてまた腰のあたりまで伸びてきたが本当にイヤだ。
そんな、母が執念深い愛を注いできた『娘』が実はやっぱり『息子』だったと知ったら――?
不安と得体の知れない恐怖を抱え、診察室から出る。
廊下で待っていた母と、一瞬目が合った。
その母の眼にあったのは――絶望。落胆。嫌悪。――どこまでも深い、拒絶。
72 :
11:04/10/24 01:36:35 ID:0od8eqzr
――なんだ。
その目は、何だ。
あなたが。あなたが、私を拒絶するのか。この私を産んだ、あなたが!
その瞬間、長い間抑え付けていた憎悪が噴き出した。
――ああそうだ。この人は、私の事など何も考えちゃくれない。
今までさせられてきた事、言われてきた事、着せられてきた服。どれだけ、何故それがイヤなのか、
何回説明しても、あなたは聞いてはくれなかった。
母さん、あなたは『娘』が欲しかっただけだ。キレイに着飾ってどこにでも連れ歩ける、上品で従順な人形のような
『娘』が!
――『瑞穂』の事なんて、ちゃんと見てくれた事なんか、1回も無かったんじゃないのか――!?
私の感情が伝わったのか、先ほどまで眼に浮かんだ感情を塗りつぶすかのように、
笑顔を浮かべようとしていたが、頬が強張り、顔を歪めたようにしか見えなかった。
単身赴任中の父と、遠方に就職・進学の為に散らばっている兄達に、事態を説明し、帰ってくれるよう、電話をする。
母は、帰ってから自室にこもってしまったし、何より、私と母だけで冷静な話し合いは出来そうに無かった。
父も兄達も驚いていたが、すぐに帰ると言ってくれた。
これからどうするにしても、とにかく入院する事にはなるだろうし、学校の方にも説明がいる。
そして、それはまだ14の子供である私にはできない事だった。
母は寝室から出てこない。
人気の無いダイニングは、いつもよりさらに空々しい匂いがした。
73 :
12:04/10/24 01:39:07 ID:0od8eqzr
服を全て脱いで、自室にある鏡の前に立つ。
真っ黒な長い髪。血色の悪い日焼けしない肌。
骨の浮いたガリガリの平らな胸。
「――ハ。確かにな、女の身体じゃあ、ねえなあ」
がん! がん! がしゃん!
拳を作って鏡を渾身の力で何度も殴りつける。
「――はあ、はあ、は…。…はは、あははははは――!」
何だ。
わたしは、なんだ。
鏡の中の自分は、あまりに歪で、醜かった。
母さん。
お稽古事はイヤだった。母さんの買ってくる服もイヤだった。
仕草や言葉使いを『女の子らしく』と、うるさく注意される事もイヤだった。
でも。
「ごめんな、母さん…。アタシ、母さんの欲しい娘じゃ無かったよ…」
できれば、私はあなたの望む存在になりたかった。
あなたに愛されたかった。
あなたに必要とされたかった。
――でも、どうすればいいのかわからなかった。
『娘』でいれば、母の望むような可愛く優しい、女の子らしい女の子でなくとも、まだ母に必要とされる気がしていた。
女である事はイヤで。
でも母に愛されない事がイヤで。
男の自分に価値があるのかと、グダグダと考えている。
私は歪だ。
肉体だけではない、魂があまりにも歪だ。
醜い。
あまりにも――、私は、捩れている。
74 :
13:04/10/24 01:41:48 ID:0od8eqzr
――幼い頃の、夢を見た。
そのころも、私の遊び仲間といったら、真由子しかいなくて、何を遊ぶかといえば、決まって真由子のお気に入りの『ごっこ遊び』だった。
ままごとだのお姫様ごっこだの結婚式ごっこだの、色々とやらされた事は、よく、覚えている。
『みいちゃん、おひめさまね、だってキレイだから』
――ふつう、女の子というのは、自分がお姫様なんかの良い役をしようとするものだろうに。
『まゆはね、まゆはねっ! わるいまほうつかいにさらわれたおひめさまを、たすけるやくなのよ』
――ジャングルジムは王様のお城。シーソーは断崖の吊り橋。ポストは宝箱で、非常用の螺旋階段が魔法使いの塔だった。
『ひめーっ! たすけにきましたーっ! さあ、まほうつかいからにげるのですうーっ!』
――ニコニコと楽しそうに笑うまゆ。くたくたになるまで遊んで、マンションの最上階から見た夕焼けの空。
おばさんの作る、焼きたてのホットケーキの甘い匂い。二人でいっしょにくるまった毛布の温み。
――あの時私は、本当は山賊がやりたかったのだけれど。
まゆが笑ってくれるなら、別にお姫様でもかまわなかった。
まゆこのためなら、どんなモノにでもなってやろうと、そう考えていた。
――今でもそれは、変わらない。
75 :
14:04/10/24 01:43:04 ID:0od8eqzr
「瑞穂、居るのか? …入るぞ」
控えめなノックの音と、ノブを回す音で、浅い夢から覚めた。
「――やあ、兄さんか…。おかえり」
上の兄、斎一郎兄さんがぎょっとした顔で立ちすくんでいた。
――無理も無い。
部屋はぐちゃぐちゃで、床に鏡の破片が散らばっており、私はベッドの上に座り込んでいる。
鏡は割ってしまったからよく解らないが、きっと、幽鬼のような顔をしているのだろう。
「――瑞穂…。…とにかく、手を診せなさい。血だらけじゃないか…!」
大人しく手を出して診てもらう。
「…よかった。そんなに深く切ってはいないな。破片も入り込んではいないようだ」
「…ごめん、斎兄さん。わざわざ帰ってきてもらって。研修医って、忙しいんだろう?」
そう言うと、気にするな。とこちらを励ますように笑って、私の頭をぽんぽんと撫でる。
十二も歳が離れているせいか、この長兄はどこか、もう一人の父親のような感じがする。
「父さんと梓も、じきに帰ると僕の携帯に連絡があったよ。
…母さんも、今は少し落ち着いているようだから、安心しなさい」
「――…そう。そりゃ良かった」
自分でも驚くくらい、感情の無い声が出た。
斎兄さんは、少し、驚いたように目を見開いてから、何事も無かったように傷口を消毒して手当てをしていく。
「…とにかく、今日は一度皆で話し合って、病院には、明日行こう。僕が一緒に行くから」
「斎兄さん」
「うん? なんだい?」
「驚かないんだな」
「――そうだね。驚いてはいるよ」
「そうは、見えないが」
「僕は、お兄ちゃんだからね。僕があんまりオタオタしたら、お前や梓も不安になるだろう?」
「――…うん。そうかも。…そうだね」
くるくると器用に包帯が巻かれる。
「これでよし。あまり濡らさないように注意するんだぞ」
「うん、ありがとう。兄さん」
帰ってきてくれて。
76 :
15:04/10/24 01:45:11 ID:0od8eqzr
その後、すぐに父と梓兄さんも帰ってきて、ともかく明日どうするかの相談になった。
で、保護者説明も兼ねて、成人している兄二人に病院に付き添ってもらい、父は、母を落ち着かせる為と、
学校に私の休学届けを出すため、家に残ってもらう事になった。
普段、無口でいつも厳しい顔をしている父が、珍しく口を開いて「お前の好きに生きるといい」と言ってくれたことが、嬉しかった。
嬉し、かった。が―――――
―――――好きに、生きても。本当に、良いのだろうか――――?
「――おーい、瑞穂? どうした? ぼーっとして」
「…つい最近環境が激変したばかりなんでな。いくらアタシが頑丈でも流石に堪えるさ。
っつうかそれがストレスど真ん中に居る兄弟にかける言葉か?あとノックもしないで勝手に人の部屋に入ってくるなよクソ梓」
「…このクソガキ。テメエそれが心配してわざわざ遠くから帰ってきた兄貴にいう言葉か?
梓お兄様って呼べっていつも言ってンだろがコラこのアホ瑞穂」
この猛烈に口の悪いのが次兄の梓兄さんだ。
「梓兄さんも相変わらず元気そうで何よりだな。――アンタも、もう二十歳なんだからいいかげんにもうちょっと
大人になったらどうなんだ? 六歳も年下の妹相手に言う言葉じゃァねえだろう、ええ? 梓お兄様よゥ?」
「それだ」
「…はあ?」
先ほどまでがウソのように真剣な顔になっている。
「今、妹って言ったけどよ。おまえ、結局どうすんだよ?
――その、このままでいるのか、それとも男になるのか」
77 :
16:04/10/24 01:46:55 ID:0od8eqzr
「っ! …アンタ本ッ当にデリカシーねェなあ、オイ!
そんなんだから二年も付き合った彼女に『私達、少し、距離を置いた方がいいと思うの』なんて言われてフられるんだよ!」
「まだフられてねえーっ! イヤ待て!? 何でオマエが美由紀の事を知ってんだっ!?」
本気で殴りあいの喧嘩に発展しかけたその時、
「はいそこまで――っ!!」
斎兄さんの仲裁(鉄拳付き)が入った。
「父さんも母さんももう寝てるんだぞ? 静かにしなきゃ駄目じゃないか」
「「だってこいつが」」
声をそろえて反駁しかけ、その事に気づいて気まずく顔を見合わせる。
ふう。と、呆れたように溜息を斎兄さんがついた。
「まったくお前たちは。…話なら、そんなに喧嘩腰じゃなくても出来るだろう? ずいぶん久々に兄弟三人揃ったんだ、仲良くしなさい」
ドン。と床に酒瓶を置いてそんな事を言う。
「――ええと、兄貴? それは?」
「うん? お互い積もる話もあるのに、酒が無きゃ文字通り話にならないじゃないか」
「いや、俺ァこないだ成人したけどよ、瑞穂はまだ未成年――」
「梓」
「うん」
「――大丈夫だよ。僕は急性アルコール中毒の人の応急処置は何度もしたことがある」
「全っ然大丈夫じゃねえっ!? そういう問題じゃないだろっ!?」
「『豊葦原ノ瑞穂ノ国』の瑞穂だもんなー、米の酒くらい飲めないとなー」
「――すでにだいぶ酔ってるな、斎兄さん」
梓兄さんの言葉を完全に無視して、私の手に無理矢理握らせたコップに日本酒をドボドボ注いで行く。
「ああ、さっきまで父さんとちょっとね、明日以降の段取りしながら飲んでたんだ」
横で、梓兄さんも何かを諦めたような顔になって無言で手酌で注いでいる。
…静かに悩む事もさせてくれないのか、この兄どもときたら。
無言でコップの中身をすすった。
78 :
17:04/10/24 01:48:49 ID:0od8eqzr
一時間後。
梓兄さんも相当酔ってきたらしく、斎兄さんとなにやら話し続けている。
私はといえば、ベッドの上に座って壁に背を預けた姿勢のままでちびちびと酒を啜り続けている。
「――梓兄さん」
「…んあー? なんだー?」
「梓兄さんは、嫌じゃなかったのか?」
「…何がだよ。主語をぶっ飛ばしていきなり言うな、ワケ解らんだろ。オマエの悪い癖だ」
「――昔さ、子供のころ。よく女の子みたいな格好させられてたろ」
梓兄さんは、名前もまるで女性のような名前だし、幼少時のアルバムは、なかなか悲惨だ。
斎一郎兄さんの時は、赤やピンクが多いが、男女兼用の服を着せられているのに、梓兄さんに到っては、
フリルびらびらのワンピースや花柄のスカートなどの、完全に女児用の服を着せられている。
しかも、梓兄さんは赤ん坊のころから眉毛も太く骨太で、どこからどう見ても男児にしか見えないから余計に
悲惨さが増している。
――私が生まれたとき、母はとても喜んだのだそうだ。
母にとって、男系家族のなかで、唯一絶対の自分の味方になってくれる存在が、『娘』だったのかもしれない。
「…あー。まーなー、でも、俺の場合とオマエの場合はまた違うだろうよ。俺ァ何だかんだ言ってもよ、
まだガキの時分だけだったし。オマエが生まれてからは、あんまり妙な格好はさせられなかったしなァ」
「…梓はフリルで、僕のときは着ぐるみなんだよね…。しかし、壮絶だなァ…」
昔のアルバムを引っ張り出しては読み出す兄達。
…そうだった。梓兄さんの乙女チックな服も酷いが、斎兄さんのクマやらネコやらの動物着ぐるみシリーズも相当に酷い。
「でもさ」
「あー、そうだな、けどよゥ、なんだかんだ言っても、俺ら――」
「「このころの記憶ってそう無いもんな」」
覚えてなけりゃ恥ずかしくないという物でもないと思うのだが。
これはこれで、兄達のトラウマなのかも知れない。
79 :
18:04/10/24 01:50:19 ID:0od8eqzr
「…アタシは、嫌だったんだよ」
「…そうだね。僕らは、おまえが母さんの趣味を押し付けられていて、それを嫌がっているのも、知っていた」
「別に、謝って欲しいわけじゃない。ただ――、…ただ、その…」
うまく言えない。
酒精で濁って、うまく頭が働いてくれない。
ちがうんだよ、にいさん。別に、恨み言を言いたいわけじゃない。
私は―――――――、
「…オイ? 大丈夫か? 兄貴ー、こいつヤバイかも。おい瑞穂、吐くんならちゃんと言えよー」
「…認めて欲しいだけなんだ」
「認める?」
そう。と頷く。
頭を揺らすと世界がぐらぐらと歪んだ。
「――好きな女の子がいるんだ」
ぱか。と梓にいさんがマヌケ面をしているのが見えた。
「だったら、女でいるより男になったほうがいいに決まってるんだけどさ、今までの自分を全部捨てる事に
なるわけだろ? 正直に言うと、怖いんだよ。…母さんの態度、見ただろう?」
そう、それが一番怖い。
私は歪だ。14年間『女』をやってきて、いまさらちゃんとした男になれるのだろうかと思う。
それに、生みの親すら私を拒否した。
――もしも、真由子にあんな眼で見られたら、それだけで私は死ぬ。きっと死ぬ。
80 :
19:04/10/24 01:51:39 ID:0od8eqzr
「…どっちにしてもさ、妊娠して子供を産むってことができないんだよ、子宮が無いから。
…母さんはさ、『結婚して子供を産むのが女の幸せ、それが出来ない女はかわいそう』って考えの持ち主だろ?
このままの身体で生きようと思ったら、たぶん一生母さんには『かわいそう』扱いされそうじゃないか?」
ならば。
ならば、私は男として生きていきたい。
もともと、女としての自分には強い違和感しか感じてこなかった。
それは、きっと思春期特有のもので、この違和感も、この気持ちも、きっといつか自然に消えてくれるものだと思っていた。
――だが、それは、当たり前のものだったのではないのだろうか?
もし。
もし、私は本当は男だった事で、『女』としての自分に馴染めなかったのだとしたら?
それよりも、男だったら。
――男だったら、真由子に、本当の気持ちで向き合う事が出来るのではないか?
それは、とても魅力的な考えだった。
私をいつも救ってくれていたのは真由子だ。
彼女がいるから、この歪にも耐えられた。
好きだ。
好きだ好きだ好きだ、愛している。
何度言っても足りないと思う。
女同士でも、『親友』として生きていけると思っていた。
でも違う、我慢していただけだった。
――私は、真由子の全てが欲しい。
81 :
20:04/10/24 01:54:26 ID:0od8eqzr
話すだけ話すと、胸の中に溜まっていたもやもやした感情が抜けてくれたように感じた。
我ながら単純な物で、そうすると今度は急に眠気が襲ってくる。
「…あした、ちゃんと母さんと話すよ」
半分、あくび交じりに斎兄さんにそれだけを言って、ベッドに倒れこむ。
「――そうだね、そうしなさい。…あのな、瑞穂。母さんも、別におまえが憎いわけじゃないんだよ。
ただ、急な事だから、どうして良いか、分からないだけなんだ。…だから、悪く思ってはいけないよ」
「――わかってる。憎いっていうか、いらないだけだろ」
…おやすみ。という声がして電気が消えた。
酔いも手伝って、あっというまに眠りに落ちた。
82 :
21:04/10/24 01:57:27 ID:0od8eqzr
――非常階段の一番上。誰も来ない、二人だけの秘密の場所。
「…みいちゃん、もうさむいよ、かえろうよう…」
「――いい。アタシは、かえらない」
ひざに顔を埋め、一度も上げずに真由子にそう言った。
いつかははっきり覚えていないが、たしか、小学2年の冬だったと思う。
また、母さんが私に無断で習い事を決め、その事に反発して家を飛び出した時の事だ。
――かあさんなんか、だいきらいだ。いつもいつも、私のいうことなんかちっとも聞いてくれないくせに、
私にはあれこれとうるさく言いつけるんだ。もうあんな家になんか、ぜったい帰ってやるものか。
膝に、ぎゅっと額を押し付ける。
そうすると、まるで世界に自分ひとりになったような気持ちになった。
急に、横がふわりと暖かくなって、真由子が自分に寄り添うように座ったのがわかった。
「――まゆ」
「なあに? みいちゃん」
「――アンタは、かえれ」
「かえらないよ。わたしもいっしょにいる」
――だって、ひとりはさびしいでしょう?
83 :
22:04/10/24 01:58:20 ID:0od8eqzr
赤くなった鼻をスンスンと鳴らしながらそんな事を言う。
「――おひとよし。カゼひいても知らないから」
ものすごく嬉しかったのに、憎まれ口ばかりが出た。こんな事が言いたいわけじゃないのに。
ひょっとしたら、怒って帰ってしまうかもしれない。
そう思うと、ますます顔が上げられなくなった。
それから、一体どれぐらい時間が過ぎたか分からなくなったころ。
「みいちゃん、みいちゃんっ! ねえ、見てよっ! すごいよ――っ!」
急に大声で呼ばれて肩を揺すられ、顔を上げると、そこには。
「すごい。すごいすごいすごいっ! 流れ星っ!」
「――――あ」
星が流れる。何度も何度も。
生まれて初めて、魂が震えるくらいうつくしいものを見たと思った。
そのままそうして、ふたり、手を繋いで空を見ていた。
まるで、二人だけ世界に取り残されたようで。
真由子の手が、この世で唯一、私に残された暖かい物のように感じていた。
いつもそうだ。真由子はとても、あたたかい。
だから。
だから、私は真由子が―――――――――。
84 :
23:04/10/24 01:59:41 ID:0od8eqzr
ジリリリリリリリリリリ。
目覚ましの音で眼を覚ます。
なんだか、酷く懐かしい夢を立て続けに見ているなと思う。
「…そういや、そんなこともあったっけ」
まったくアイツは昔から変わらないな。と思うと。
くすり、と二日ぶりに笑みが漏れた。
「瑞穂ー、起きてんのかー。朝飯できてんぞ、早く来い」
温かな記憶を台無しにする梓兄さんのダミ声が聞こえる。
「…今行く」
朝食の席に着くと、両親と兄二人はすでに揃っていた。
「おはようございます、父さん、母さん」
「おはよう」
「…おはよう、瑞穂さん」
「実は、お話したい事があります。――私は、男として生きていきます」
「…決めたのか」
「はい」
「…そうか、わかった」
「学校の事ですが、できれば転校したいんです。どの道手術となれば、入院しなければいけませんし、
男になるなら長期間の薬物治療が必要だといわれました。それなら、完全に終わるまでの間、
どこか知合いのいない所に行きたいんです」
「…わかった、検討しよう」
「ありがとうございます」
85 :
24:04/10/24 02:01:22 ID:0od8eqzr
父の横で、俯いたままの母に視線をやる。
「――母さん。今まで、ありがとうございました」
「…瑞穂さん…」
母が、俯いたまま、私の名を呼んだ。
「瑞穂さんは…、娘でも、息子でも、私の子供だから。私の、大事な子供だから…っ!」
わかってほしいと。ごめんなさい。と、最後の方は、嗚咽で声にならなくなりながらも、そう言った。
横で、ずっと父が励ますように、慰めるように肩を抱いていた。母は、俯いたままだった。
その、自分にとても良く似ている、さらさらした黒髪の頭を見つめて、言った。
「―――うん。わかったよ、かあさん」
まだ私たちは真っ直ぐに向き合えないけれど。
でも、母さんの言葉は、ウソじゃないと思った。
結局、病院には全員で行く事になった。
子供じゃあるまいし、恥ずかしいからいいよといったが、家族の人生に関わる一大事だからと父に一蹴された。
…どのみち、手術すると決めた以上、同意書には親のサインが必要なわけなのだけれど。
だったら、別に父さんか母さんだけでもいいし、兄さん達が付いてくる必要もないのに。
それから、みんなで食事をしながら今後の事を決めた。
私は、斎兄さんに付いて行く事になった。
検査の時に説明してくれた医者によると、斎兄さんの勤めている大学病院に、腕のいい形成外科の先生が居るらしい。
その人も、近くそちらに出向してしばらく勉強する予定だったそうだ。
母さんは、単身赴任中だった父さんのところに行く事になった。
もともと、週に一度は東京にいる父さんの所へ世話をしに通っていたので、これを機会に一緒に住むのだそうだ。
学校には、転校届けを出した。
何度か真由子が来てくれていたが、母さんに頼んで、今はいない事にしてもらっていた。
出発は三日後。
真由子にも誰にも、何も告げずに行く事にした。
86 :
25:04/10/24 02:02:05 ID:0od8eqzr
「瑞穂ー、まだかーい?」
「はいよー! 今行くってー!」
あっというまに三日がたって、出発の日がやってきた。
一週間前まで、こんな事になるとは想像もしなかったなと思う。
かさばる物は先に送ってしまったから、持って行くのはスポーツバッグ一つきり。
車に乗り込む直前、何とはなしに空を見上げる。
いつかと全く変わらない青が、そこにあった。
さて、人生の一大事と言われたが、それほど仰々しい事でもない。
ただ、ほんの少しばかり、形が変わるだけのことだろう。
真由子が、変わった私をどう思うかはわからない。
何も言わずにいたから、きっと彼女は驚くだろう。
拒否するかもしれない。受け入れてもらえないかもしれない。
――それなら、どんな手を使ってでも、認めさせてやろう。私は、私だって事を。
「…さーて、戻ってきたらまゆのヤツ、どんな顔するかなー…」
願わくば、あの懐かしい青空の下。
もう一度、俺と君の道が重なりますように。
87 :
前スレ812:04/10/24 02:05:33 ID:0od8eqzr
…以上、まゆとみいちゃん超番外・『少女に何が起こったか』でした。
ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ。
今度こそ出来るだけ早く本編を進めたいと思います。
乙です。じっくり読ませて貰いますね
乙!
ちょっと感動してしまった。瑞穂がせつない・・・!
はやく真由子が瑞穂の気持ちに気づくといいなあ
続きも期待してます
長文投下お疲れ様でした。ざっと読みましたけどやっぱりいい感じですね。
そこはかとなく某有名ライターの影響受けてるなー、なんて思いましたけど。いい意味で。
マターリ待っているので、これからも頑張ってくださいね。
はじめてこのスレにきたものですが、GJ!
今保管庫で本編を読んでいるところです。
なんていったらいいか良くわからないけれど、激しく乙!!
>91
話すのが嫌じゃなければ詳細キボン
>92
さすがにスレ違いじゃねぇかな…
どうしても聞きたいなら、メンヘル板にでも案内してやった方がいい
性転換話は好きじゃないからスルーしてたけど
なんか(・∀・)イイ!番外編が!
今から改めて読むぜ!
>92
似たような話ならトランスジェンダー系のページを探せばいろいろ出てくると思われ。
少し違うけれど、内面的にはとてもよく似ているんじゃないかと思う。
正直男体化スレでやってほしい
>>94さんと同じく
番外編を読んでから、改めて始めから読んだらカナリ萌えました
本編の続きをお待ちしたいです
ちょっと泣けました……
そしてそんなみーちゃんにいぢめ愛されるまゆちゃんに萌え。
てなわけで、本編も楽しみにしてまっす!
99 :
243:04/10/29 03:47:04 ID:NYpQ3YgG
おっぱいおおきいまゆこ(*´Д`)ハァハァ
812さんの本編に期待しつつ。
ご指摘ご感想、本当に有り難く読ませていただいてます。
その35.
・・・・その35
イトくんは、医療系のもう少し技術的なほうに進むらしい。
医学生は体力関係で到底無理だと、学部を変更したそうだ。
大学は変わらないみたいだけれど。
一昨日、部屋で温かい飲み物を飲みながら、そんなことを聞いた。
生姜湯のカップを洗い上げて、手の甲をタオルに包む。
記憶をすくって、なんとなく思い当たった。
私から唇を弱く重ねた後、黙って深く返されたときの、こととか。
その後の何も言わない長い抱擁とか。
…諦めたのかもしれない。
歩けないほどの高熱と、だるい身体を抱えたあの日に。
推測だけれど。
あの人は、そうして、自分の身体を引き摺りながら狭い選択肢を寂しそうに笑って選ぶ。
周囲のすべてに感謝しながら余裕そうに前を見る。
――不思議な人だ。
私は、彼に代わることはできないけれども。
せめて勉強を頑張ろう。
幼い頃から傍にいた人が、そんな風に私を諦めないように。
テレビはどのチャンネルも同じことばかり放送していた。
参考書も頭に入らないし、なんだか退屈だ。
一人で暇だったので、ぼんやり部屋に戻った。
古い壁と隙間風で肌寒い。
座って熱を測った。
風邪薬を飲んだのに眠くならない。
暇だ。
溜息をついて、立ち上がる。
仕方なく机の整理を始めてみた。
辞書を重ねて、問題集を科目ごとに分ける。
…と、赤ペンが落ちて足先で跳ねた。
「あ」
机の下まで入ってしまった。
手を伸ばして、取ろうとして、
別の物を見つけた。
写真だった。
初夏の夜、イトくんが見せてくれた留学時代の写真だった。
一枚、落として机の裏に紛れてここにあったのだろう。
石の建物に囲まれた、広場だった。
幼い頃から変わらない瞳は、私の知らない街を見ていた。
色の違う空が長身の背後に澄んでいた。
――随分、経った。
イトくんが校門で待っていて、夜道を一緒に帰った日から。
この写真に初めて距離と寂しさを感じてから。
うちわの脇に写真を立てかけて小さく笑った。
帰ってきたら返そう。
整理を終えて、ベッドに入った。
うとうとして、毛布みたいにあたたかい夢を見た。
枕元の子機が鳴ったので、目が覚めた。
お父さんだった。
二人の古い知り合いに会ったので遅くなると言った。
半分覚醒したまま切り、寝返りを打って薄目で部屋を仰ぐ。
部屋の小さな窓から雨雲が見えていた。
毛布にくるまれて、ぼんやりする。
ベッドが暖かい。
なんでそんな気持ちになったのか分からなかった。
―夢の、せいだったろうか。
舌を絡めて吸われたような、震えて熱く心地よい、あの夢の。
あたたかくて暇で、心も緩んでいて。
いろいろと精神力も弱っていたせいか理性がそのときはなかった。
無意識に手が腿の奥に伸び、パジャマ越しに弱くなでた。
緩慢な意識が波打った。
布団からはみ出た足指がかすかに震え、肩の先から痺れが逃げていく。
感覚を追ってもう一度そこを指の腹でなぞると、またそうなった。
もう一度。
息が湿る。
そこで怖くなって、やめかけた。
この部分を触ってこんなになるのは初めてだった。
でもなぜかこの疼きを知っているような気がして、思い出そうとしたのか気がつくとまた触れていた。
ゆっくりと繰り返しているうちに頭が熱くなる。
「は……」
たいして動いてもいないのに息が大きい。
…変だ。
指を軽く立てて押すと腰が勝手に浮いて、腿が閉じた。
手首から先が勝手に柔らかい部分を探り、痺れの強いところを強く撫ぜている。
「…ぁ…っ、あ」
上擦った声が息を押し退けて漏れ、泣き声に変わる。
うつ伏せに身体を捩り、空いた手で枕を抱いた。
枕を痛いほど抱き寄せて息で濡らしながら、声を隠す。
毛布と腰の間に挟みこむように手を押し付けてゆっくり擦ると、
喉から押し戻された声までが身体を溶かす熱湯に変わった。
――随分、長いこと続けていたように感じる。
疲れて重さで痺れてきて、次第に動くのが苦しくなっていた。
どこかもどかしく、でも続けたら戻れなくなりそうで、やめたほうがいいような気がした。
感覚を追うのを深い呼吸とともに、諦める。
寝間着が湿っているのは気のせいかとも考えながら、ゆっくりと手を下から抜いた。
抜きたくなかった。
切なげな溜息がこぼれて枕が唾液で濡れているのに気付く。
熱い胸の奥から心臓が打っている。
「――っ、はぁ、は」
今しばらくの行為の余韻をぐったりと全身で受け止めて、力なく打つ伏した。
身体全体がぴりぴりと火照って、ひどく鋭敏だった。
短めの髪が頬にかかっていることが目を閉じても分かる。
汗ばんだ肌が寒くて頭も熱い。
弱く戻りかけた記憶がなぜか鮮明に誰かの存在を一瞬、流した。
身体が余計に熱に侵されるような気がして振り払う。
面影と余韻を忘れようと首を振って、気だるいままベッドから降りた。
素足が床に冷たい。
目端にとらえた写真をそっと机に伏せ、吐息で部屋をあたためる。
呼吸がまだ不規則なままで、顔の火照りも収まらない。
…とりあえず、手を洗おうと思った。
下着も替えたほうがいいだろうか。
足がふらつくのは熱のせいだと思いたい。
104 :
243:04/10/29 03:54:42 ID:NYpQ3YgG
いかせてあげなくてごめんなさい。
では、続きは時間のできたときに。
萌えるなぁチクショウ……
たまらんです…
この控えめな描写がたまらなくクるのはなぜだ・・・
そういえばえちぃな描写は初めて…
それでこれなら、本番はどうなるか…
そりゃもう本番はえろえろでえちぃくてしかも長くてしつこい描写(をい)
くはぁ……_ト ̄|○
あんまり243氏にプレッシャーを与えてあげないで下さいw
そろそろ脱・非エロを希望したくなってたとこです。がんば。
でだ、
7、9、36氏はどこだ皆の者
ついでに言うなら前スレで活躍していた書き手さん方はどこだ
今、243氏しか書き手さんいない悪寒…
ガンガレ…、ガンガレ243氏!
114 :
36:04/11/01 20:41:32 ID:wBjbbIe5
>>113 現在一所懸命頑張っていますが、なんか被ってるかも。
そして、話を作るのは好きなのですがまとめるのが苦手でして。(/д`)
そんな不安の中「ビバ幼馴染み」の精神で頑張っていますので期待しないで下さい。マジで。
>113
すいません、実は9=812だったりしました。
いつになるかはわかりませんが、
いずれまたお邪魔させていただく事になると思います。
期待sage
前スレ404です
書く書く言っておきながら延々SS放置してました、スイマセンでした
モチベーション上げるため、リアルタイムで短めのものを少し書いてみようと思います
スレ汚し御容赦ください
主人公
女・鈴原冬華
男・飯田和彦
サブキャラ
冬華の双子(姉)・鈴原春華
では、以下より投下
プロローグ
―平行線だと思ってた。
確かに春華姉さんは顔も、スタイルも、頭も良くて、家事も出来て、古臭いコトバで言えば「皆のアイドル」で。
それでも和兄はどっちつかずな態度だったから
私にもチャンスはある、いつもそう言い聞かせていた。
初めから勝因なんて無かったのに。
半年前。
放課後の、夕日が差し込む二人きりの教室。
そんなムードばっちりな場所で、和兄と春華姉さんは、偶然二人を迎えに来た私の目の前で
キスしていた
正確には「しようとしていた」だが、和兄が私に気付かなければ二人は確実に口づけていたのだから大差は無い。
笑顔で取り繕うこともできなくて、
その場から逃げ出した私を敗北感と惨めさが追い掛けた。
ソイツらは私をひっ捕えると
楽しかった思い出と一緒に一晩中、涙を押し出させた。
それからの私は誰にも笑顔を見せなくなった。
「見せられなかった」も「見せたくなかった」も正しい。
そして、自然と和兄との距離も離れていった。
想像以上のショックは最近、言葉の刺を隠せないにしてもやっと和兄と話せる程度になったばかりだ。
邪魔者がいなくなった春華姉さんは和兄にいつもひっついて回った。
それで良かった。
誰も傷つかない選択肢なんて無かったんだし、
それなら優秀な女性が上を行くのが当然だし、
私は授業にも顔を出さない不良少女になってしまっているし…
「とうかー。かずちゃん家、行かないのー?」
「…行かなーい」
「ふーん。じゃあはるかがかずちゃんのお嫁さんになっちゃおーっと♪」
………。
いいもん…。
引き立て役でいいもん。
当たり前だもん。
私が我慢すれば二人は何の隔たりも無く結ばれるもん。
「それでも」――
(プロローグ・終了)
続きマダ-?
スイマセン、小休止…orz
慣れないことはするもんじゃないのかな…
あと、名前欄のはこれからコテハンに使う名前です
ガンガレー!
でも1つ疑問。
双子ってことは同時に生まれた筈なのに、”冬”華と”春”華なの?
どっちの季節に生まれたにしてもちょっと違和感が。
「…冬華ー?」
……?
「授業全部終わったぞー?」
「あ…」
「おお、起きた」
寝起きの目には厳しい夕日の日差しと、ある意味もっと厳しい和兄の顔。
「寝てた…」
「ああ、ぐっすりだったな」
けだるく上半身を起こす。
…最悪の目覚めだ。春華姉さんの性格からしてありえない卑屈な夢と、その元凶との開眼一番の対面。
こんな気分の時はやさぐれた言葉しか出てこない。
「勝手に入ってこないでくださいよ…」
そう。この屋上は私が見付け、私が掛かっていた南京錠をハンマーでブチ壊し、私が代わりに持ってきた鍵を管理している、私専用のサボりスペース…、のはずだった。
鍵を叩き割る音が大きすぎてたまたま下を通った和兄に聞こえてしまったのだ。それ以後は頃合いを見計らってずかずかと乗り込んでくる始末。
「えー、冷てぇなぁ…」
この人は私を冷やかしに来たのだろうか。何故その立場でそんな口が…、ああもぅ。
「…ん、あれ?」
ポケットに突っ込んだ手に手応えが無い。確か箱ごと残しておいた…
「ああ、煙草なら俺が処分しといた。体に毒だしな」
「…はぁ……」
ため息しか出ない。昔はこの心遣いに心打たれた気がしないでもないが、今となっては欝陶しいだけだ。
鞄の中を掻き漁ってみてもあいにく買い置きは無かった。
「チッ…」
舌打ちすら虚しい。私が何をしようとこの人には届かない。
文字通り私は負けた。何か言う資格すら無いのかもしれない。
だが、それならそれで構わないでくれれば良いじゃないか。感傷に浸る余裕すらも与えてくれないのだろうか。
「春華姉さんはまだ教室にいるんじゃないですか?」
最後の手段の逃げ口上。
確実に相手をどこかに追いやることが出来るであろう便利な呪文。
同時に、自分が最も惨めったらしく染まる卑下の言い訳。
隣に腰掛けている和兄の体温が感じられそうで、誤魔化すように夕日に目を向ける。
女々しい。女々しすぎて泣けてくる。
「いや、あいつの教室行ってないから知らない」
「へぇ、てっきり真っ先に向かったのかと…」
また、憎まれ口…。
疲れる…。いっそ私が出ていこうか、それこそ負け犬…
「いやさ、最近冬華見かけないなーって心配になってさ、真っ先にここに来たんだよ」
「――ッ!!」
身の毛が全部逆立った。その言葉が例え私を慰めるモノであっても、
今の私には腹立たしいだけだ
「出てってください」
「え?」
「なんなら二度と顔も見せないでくれますか?」
「ど、どーしたんだよ冬華?」
ああああああぁぁぁっっっ!!!!!
「その鈍感さも!無遠慮さも!もういい加減ウザいんですよ!用が無いならさっさと帰って姉さんとイチャイチャしてればいいじゃないですか!そのために私はここで時間潰してるのに!」
一息で言うとさすがに息があがる。でも止める訳にはいかない。
ちらりと相手の様子を伺う。
呆気にとられた間抜け面だった。いい気味だ。
まだ…、まだまだ言ってやることはあるのだ。
「なんでっ…」
止まるな。動け。罵れ。
それが私に出来る唯一の抗い方。
二人への、そして
私自身への
「なんで私に構うんですかっ…」
違う!こんなことじゃない!もっと汚い言葉で罵倒しなきゃ
ぼろぼろ本音が出て…
「!!?」
いつのまにか手首を捕まれていた。意図が読めない。ただ、異様に恐くて、そこから逃げたい衝動に駆られた。
「いっ、たいです…。放して…」
「何で泣いてんだ?」
「え…?あ…」
両の目から溢れ落ちる涙。自分でも解らない程。とっくに枯れはてたと思っていたのに。
「冬華…」
その一言で我に返る。まだ吠えることはできる。気を抜いちゃダメだ。
「だからって何で手首掴むんですか?そうやって弱みに付け込もうとしてるんですか?」
「……」
せめて凛々しく散りたい。そう思うのは間違いだろうか。
涙を演出に使い、私はなおも続ける。
「本当は…そうやって姉さんも落としたんじゃないですか?」
「ッ!…違う!」
初めて和兄が反攻する。
その勢いで踏み込んだ足がもつれ、和兄が壁に私を押しつける形になった。
「あ…」
さすがに『しまった』と思ったらしい。
もう…、お仕舞いかな…
「姉さんとは…、ヤっちゃった?」
最後に無理矢理口元に笑みを浮かべた。囁くように言ったつもりだったが、声が擦れて上手く出ていないかもしれない。
これで怒って帰らなかったら…
「してないよ」
優しく諭すような、でもしっかりした声。
これで、帰らなかったら、私もぅ…
「私で良いならヤればいいじゃない…」
弱い気持ちしか出なくなっちゃう…
「こんな状況でも…、私は嬉しくなっちゃうんだし…、好きにすれば?」
涙がまた溢れ返してきた。耐え切れずに視線を右に泳がせても、今まで抑えてきた感情が一気に体を掛けのぼり、
「本当は…、口喧嘩なんてしたくなかった…
隣にいるんだから飛び付きたかった…
姉さんじゃなくてっ…、私を好きになって欲しかったっ…」
「冬…華……」
「辛いよ…」
切なさが全身を締めあげる。
手首を握られただけで心臓が跳ね上がっていた癖に、虚勢を張り続けた所為でその反動が倍になって返ってくる。
「私じゃダメなんだよね…。ごめんね、困らせるだけなのに…」
もう、吐き出すものは全部吐き出した。これ以上ウジウジ続けると本当に嫌われかねない。
「でも…、お願いだからもう来ないで…」
そう言うのが精一杯だった。
これでもう吹っ切れる…
スイマセン、自分にはリアルタイム書きは少し無理があったようですorz
また、夜に書き上げます…
いやその・・・
ふつうはリアルタイムでは書かないと思う。
gj!
がんがれ!がんがれ!
134 :
氷爪:04/11/09 18:42:31 ID:XR+BqT7x
>>126 …考えて無ひorz
春っぽい顔と冬っぽい顔ってことで勘弁してください…
>>132 自分、追い込まれないと動かないタイプなので、無理矢理追い込んでみました。もちろん書くのは好きなんですが
>>133 がんがります。がんがってエロまで持ち込みます
期待保守sage
sage
137 :
243:04/11/14 03:59:50 ID:24beP2X9
ただでさえ展開が遅いのに、間が空いてしまって申し訳ないです。
えろ本番になるまでまだ少しかかりそうで、それも心から申し訳ないです。
新作・続き待ちの合間にどうぞ。
その36.
・・・・その36
雨と一緒に、吹き散れて雲が去った。
夕陽が淡く沈んでいる。
冬の寝間着を出してきて着替えた。
少し生地が厚すぎて火照りがこもるけれど仕方ないだろう。
体温がゆっくりと穏やかになっていくのが、少し寂しかった。
居間のソファに腰を沈めて一人でいると、風に吹かれてベランダのタオルが、外れて落ちた。
ガラリと音を立てて網戸を引くと、思わず声が出た。
寝間着姿だと、流石にきつい。
「寒…」
ベランダに出ついでに、洗濯物を家に入れる。
風が涼しかった。
にわか雨で湿ったサンダルが足の裏を濡らす上に、
汗ばんだ名残の肌にひやりと雨を吸って、洗濯物はしんと冷たい。
乾燥機にかけたほうがいいだろう。
どうせ洗濯途中の寝間着と下着も、乾かす必要があるのだし。
吐息に、秋の風が溶け込む。
―ふと遠くで、音がしたような気がした。
チャイムが鳴っていた。
宅急便だろうか。
一応、パジャマなのでインターホンの受話器を取る。
「はい」
『ああ姉ちゃん?俺。鍵忘れた』
「何やってるのよあんた」
溜息をついて、抱えたままの洗濯物を洗面所に放り入れた。
チェーンを外すと向こうからドアが開いたので、指先を引く。
「おかえり」
何気なく呟いて顔を上げたところで、
視線が揺らいだ。
…弟の向こうに、幼馴染もいて、お土産らしき袋を提げていた。
「ドッキリビックリ、下でバッタリーちゃららん」
「…なんかさっきから元気だな、アキラ」
「馬に蹴られたい年頃だから」
珍しく機嫌の良さそうな口調に、疲れ気味の苦笑が重なるのに溜息で答えて短い廊下を踏む。
部活でいいことでもあったんだろうか。
兄さん程じゃないけど、弟も結構気紛れだ。
洗面所に寄って乾燥機を回してから、遅れて居間に戻る。
荷物を放り投げ部屋に入る享から目を離して幼馴染を探した。
―窓際に立っていた。
閉め忘れたガラス戸を引く高い背の向こうに、薄闇が澄んでいる。
雲はもう山の端にだけ薄く被って、陽を翳らせていた。
少し迷って、でも、やっぱり近くにいたくなった。
振り返るイトくんの傍に行くと、怪訝そうな顔が傾ぐ。
「あれ?寝間着、赤かったっけ」
「…着替えたから」
「いいね、あったかそうで」
イトくんが笑って、上着を掛けに部屋の端に歩いて行く。
私は窓の鍵を閉めた。
「あー俺、シャワー浴びる。お湯出しといて」
ドアがバタンと開き、弟がばたばたと慌しくお風呂の方に消える。
幼馴染が台所に当たり前のように足を向け、お湯の設定ついでにお茶を準備し始めた。
…なんだか寂しい。
窓の傍は隙間風で寒かった。
しまい忘れの風鈴が揺らいでいた。
音がならない程度に、かすかに空気が流れている。
裸足のまま居間を横切れば、絨毯に足音が曇った。
冷蔵庫の脇を通って、細身の背に触れた。
「イトくん」
慣れた手つきでやかんに水を入れていた一つ上の幼馴染は、蛇口を止めて私を見た。
「なんだい」
黙って、紺のシャツ越しに額をつけた。
水滴が、やかんを伝って、ぴちゃんと落ちた。
少しの沈黙の後で、幼馴染がかすかに笑う。
「何かあったの」
「…うん」
自分でも、変な気分だと、分かっている。
部屋が寒いのに血があたたかい。
シャツの背を弱く掴んでいた両腕が、無意識に彼の前に回った。
大きな手が少し濡れている。
重ねられて、冷たいなあと思った。
遠くで、シャワーの水音がこもって聞こえてきた。
141 :
243:04/11/14 04:02:53 ID:24beP2X9
では、続きは時間ができましたら、また。
無意識に欲情する女の子は宜しいとおもいます
>無意識に欲情する女の子は宜しいとおもいます
「萌え」を完全に理解してる発言だとおもいまつ
お久しぶりです。
ふー。
ちっともエロくない・・・はずなのに
(↓を見る)
ギンギンですわ。(;´Д`)
243氏のスバラシさは
文章のうまさももちろんなんだけど
>>無意識に欲情する女の子は宜しいとおもいます
>「萌え」を完全に理解してる発言だとおもいまつ
……まさにすべてを理解してるところなんだとおもいまつ
RULは分かんないと言ってみるテスト。
実際、そっから飛べるし。
>>146 dクス
選択肢がリンクになってたの書き込んだ直後に思い出した
243氏の描く主人公(ひーこ)は、なんかちゃんと「生きてる」感じがします。
たまに映画を見たり、お風呂から出たあとテレビを見ながらケーキを食べたり、眠るまえに少し悩んだり……
そういった、彼女の生きる日常を容易に想像することが出来る、良い意味での「生活のにおい」とでも言いましょうか、
そういったものが氏の文章の魅力であり、そこはかとない色っぽさを漂わせる原因だと思います。
つまり何が言いたいのかというと、243氏GJ!!!!!!
ということであります。
149 :
氷爪:04/11/15 23:32:51 ID:2wdGV8y/
>>148 全くです。改めて尊敬します。
行き当たりばったりの所為で続き手付かずの俺とはエライ違いですわorz
いつも楽しませていただいております。
漂っている空気とか色気とかがたまらんです。
>シャツの背を弱く掴んでいた両腕が、無意識に彼の前に回った。
ここ、寝間着姿のひーこちゃんはノーブラなのか否かが
気になってしょうがないですw
ブラしてんなら、その31でイトくんに言われたこと
意識してんだなーと萌えだし、
してないなら、ひーこ無防備過ぎ!と萌えだし。
なら、いいたい。
>150
具合悪くて寝てるから身体に楽な方ということでノーブラ、
というわけで、無防備でイトくん困らせ杉のひーこ萌えに一票!
ひーたんの体型スペック出てたっけ?
無意識にえっちい子はいいと思います!!
155 :
名無しさん@ピンキー:04/11/22 00:01:43 ID:tZkVs6+f
職人勧誘age
とりあえず職人諸氏にはマターリ書いてもらえればいいということで。
気長に待ってますから
157 :
243:04/11/24 04:59:30 ID:vdeIOyvr
氷爪さんも他の職人様も、続き楽しみにしてます。待ってます。幼馴染さいこう。
ご感想本当にありがたく読ませていただいてます。
その37.
・・・・その37
お互いに動かず、
そうしていて、
どちらともなく離れた。
腕を緩めると包まれていた指先がそっと放される。
体温が去る感覚がいつもより深くて寂しかった。
なんなんだろう。
息をついて、遠くのシャワーが響く音を、ぼんやりと思い出す。
イトくんはかちゃかちゃとお茶の準備を始めた。
手馴れていて手伝うことがない。
お風呂の残響がまだ壁越しに届いていた。
周りの音がやけに静かな耳に、響いてくる。
ぼんやりと食器棚に寄りかかって寝間着の袖を弄んでいると、
火がつくチチ、という音に混じって遠くで消防車のサイレンが鳴り、やがて遠ざかった。
台所から見える居間の外は、もうほとんど夜だ。
かちゃり、と、陶器が触れ合う。
なんとなく息が霞んで、寒い。
「ひーこ」
皮膚を通して声がしみた。
イトくんが肩越しに振り返ったまま、私を見ている。
狭い台所の床が冷たい。
読めない視線に鼓動がはやまって、熱が僅かに上昇している。
「なに」
「風邪は?もういいのかい」
「…だいぶ。明日には学校行けそう」
イトくんが安心したように笑って、お土産の封をはがし始めた。
「言ってなかったけど。移して悪かった」
「いいよ」
「最近おまえ、積極的だよね」
「……」
恥ずかしいので無視した。
なんだか芯がぐつぐつする。
「あとね、ひーこ」
「なんなの」
「うん…あちょっと待って」
投げやり気味に返すのに、イトくんは普通に笑って、
手を上げてからガスを消した。
沸騰したやかんが火から降ろされて換気扇も消える。
「えーと、お土産開けてくれる」
「いいよ」
湯気が熱そうな音で立ち昇っていた。
包み紙をたたんでゴミ箱に押し込み、中から三人分のお茶にちょうどいいだけ取り出す。
薄い色の和菓子だ。
夏に行ったお墓のある場所の住所が製造元で、ふと気持ちが緩む。
あの日は空が本当に白くて青くて。
暑いのに、心地がよくて。
狭い台所は床が冷たい。
なのに隣の存在はあたたかいのが不思議だ。
あの時みたいにきっと、長い距離の移動で疲れているのに。
髪が揺れて、そっと横を見る。
伸びた指先に目元から耳までを弱くなぞられて、かすかに痺れた。
そして、
それだけで離れたことが悲しい自分はやっぱり、いつもと違うと思った。
―留守中から私はいちいち、おかしい。
息をついて、お茶を入れるイトくんを眺める。
もう一度さっきのようにしたら困らせてしまうだろうか。
熱湯が傍にあるから、危ないだろうか。
甘く疼く指先で冬の寝間着を掴み、溜息を漏らす。
引いたはずの波がどこかで遠い海鳴りを、血の中に流しているような気がした。
161 :
243:04/11/24 05:07:46 ID:vdeIOyvr
寝間着一枚で抱きつくときに
下着を着けないのは義務です
続きはまた時間のできたときに。
>寝間着一枚で抱きつくときに
>下着を着けないのは義務です
なんか、感動で涙が出そうな言葉だ。
それはともかくGJお疲れ様です。
続きが楽しみで暴れだしそうです。
>>161 朝からいいもの見させてもらった、ありがとう。
あなたのその言葉を噛み締めればこそ、眠たくなるような調べものも出来るというものです。
>
ttp://www.sanspo.com/sokuho/1124sokuho041.html >調べでは、19日午後3時20分ごろ、茨木市の路上で、下校途中の女児が
>白い車のそばにいた男から「おもちゃ買ったろか」と声を掛けられ、女児が
>「いやや」と言うと、いきなり腕をつかまれ、引っ張られた。近くにいた男児が
>男に体当たりし、男は車で逃走した。女児にけがはなかった。
ニュー速からのコピペなんだが、このまま幼なじみとして育てば最強だろうなぁ
まぁこの子達が知り合いかどうかも知らんが…
>>164 そのニュースを見て、そう言う思考に至るお前様が愛しい
>>164 それが2人の初めての出会いだった……って話なら純愛系のエロゲあたりから探せば出てくる鴨
>>161 その言葉が託宣に聞こえる……
神よ。一生ついていきたいです。
>>243 何考えてるんだ?荒らすつもりならスレから出てけ。
預言者キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
>168
何か嫌なことでもあったのか?チラシの裏にでも(ry
煩悩はあっても文章に出来ないのはこれ如何に?
>>172 焦らず足掻け。とことん空回り汁。
決して才能の所為にしてはいけない。
小ネタが浮かんだので投稿します
幼馴染という単語が一度も出てこないですけど
ドアを開けたら、上半身裸のさつきがいた。
「……」
「……」
OK、ちょっと状況を整理してみよう。
部活を終えて、速攻で着替え終わったところで、忘れ物に気づいた。
で、急いで体育館に戻ることにして、近道をしようと殆ど使われることのない舞台側の入り口から入って
で、ドアを開けたら、そこにさつきがいたのである。
「……」
「……」
さつきは、何とも言えぬ表情で凍り付いていた。
俺も多分、同じくらい間抜けな表情してると思う。
「……」
「……」
まあ、いろんな思考が頭を駆け巡ったけど、五秒も経ってはいないと思う。
俺は無言でそっとドアを閉め、そそくさと退散したのだった。
…………………………
校門で待っていると、憮然とした表情のさつきがやってくるのが見えた。
で、そのまま互いに対峙する。
「……その、さっきはすまん」
先に折れることにした。
「……いいわよ、あそこで着替えてた私にも責任あるし」
ああ、良かった。
問答無用で覗き魔にはされないみたいだ。
そのまま二人、並んで帰路につく。
帰り道が同じなのだ、つーか家、隣同士。
「何であんなところで着替えてたんだ?」
「部室、もう閉まっちゃったし」
「いや、だからって……」
「それに、うちの部あそこで着替える人、結構多い」
「うそ、マジかっ!!」
「……」
さつきが殺気のこもった目で俺を見つめて下さった。
「次覗いたら、故意とみなし問答無用でコロス」
「……はい」
「他の連中にも喋ったらコロス」
「いや、それはないから」
こんな天国のごとき秘密情報を他人に喋ったりするものかっ。
「……」
ああっ、さつきの背後からどす黒いオーラが、殺意の炎がっ!!
「……トンカチで頭殴り続けたら、記憶消えるかな?」
「……ごめんなさい、死んじゃいます」
それからは俺たちは無言だった。
もう少しで家に着く、というところで、
「ねえ」
「ん」
さつきが話しかけてきた。
「見た?」
「……」
さつきの顔は相変わらず憮然としたまま。
「いや、はっきり見えなかった。暗かったし、パニクってたし」
これは本当。
むしろ、驚きのあまり凍り付いていたさつきの顔のほうが印象に残ってたりする。
さつきは俺の顔をジーッと見てたが……
「ん、良し」
俺が嘘をついてないと踏んだらしい。
こういう時、付き合いが長いってのは嫌だねえ……
「まあ、お前の身体は結構白いんだなぁ、ぐらい……」
殴られました。
「いちいち解説しなくて良いっ!!」
さつきがずんずん行ってしまう。
耳が赤くなってるのは気のせい、じゃあないよな。
「さつき」
玄関に手をかけたさつきに声をかけた。
「なによ」
振り返りもせず、不機嫌な声だけで応える。
「……その」
「……」
「あそこで着替えるの、もうやめろよ」
「……」
「その、なんだ。人が来ないからって、俺みたいに誰か通るかもしれないし……。
今回は俺だったから良かったけど、その……もし他の奴だったりしたら、その……」
俺以外の奴にさつきの裸を見せてたまるかっ、何て恥ずかしすぎる台詞、言えるわけなくて。
「……」
さつきが振り返った。
なぜかニンマリと笑っている。
「ん、分かった。なるべくそうする」
さつきは何でか機嫌よく言うと、鼻歌交じりに家に入っていった……。
「……」
まさか……俺の心の声が聞こえた、なんて事ないよなぁ……。
おしまい
>>178 GJ!
是非ともこの二人で続編を書いてもらいたいです。
おお、新作!GJです。
やはり続編を希望します。
いいですね!好きです、こーゆーの。
ネタが降りたときにでも、また載せてほしいです。
素敵(ぽ)
183 :
243:04/11/30 02:03:54 ID:qv8/sXcG
その38です。
ではまた、続きは時間のできたときに。
いつもありがとうございます。
・・・その38
学校に復帰してすぐの調理実習で指を切った。
包帯に滲んだ血が痛々しい。
保健室の戸を閉める。
中校舎沿いに教室へ戻ると先生にすれ違った。
生物の授業は遅刻だ。
溜息をついて、薄い怪我を隠す白い布をつついた。
渡り廊下の風通しは良く、制服の襟が吹かれて浮く。
薄汚れた窓から見上げる、晴れた午後の空が妙に、眩しかった。
五時半でも十分暗い季節だと久し振りに気付いた。
文化祭の衣装はほとんど仕上がりかけていたので、
幾つかの小物だけで良かった。
施錠直前まで残る人達より一足早く、病み上がりに怪我人だからとの親切に甘えて教室を出る。
自分の担当する少し細かい刺繍花とリボンをいくつか、ロッカーから取り出して紙袋に移す。
少しくらいは家で作業が進むだろう。
玄関で声を掛けられたので答えようとする間もなく、抱きつかれてよろけた。
「わ」
ふわりと髪のにおいが掠めて夕闇に去る。
柔らかい女の子だ。
ローファーを掴みかけたまま、少し自分より高い位置の顔を、振り仰ぐ。
「志奈子さん」
「やほ。ひーちゃんはもう帰り?」
とんと離れて、彼女は笑った。
二つに結んだ髪が肩に流れる。
「うん」
「一人で帰るの?橋田君は?」
「進路指導室」
進路変更の件で呼ばれたらしい。
学部変更するだけで偏差値も大分下がるから、そういうことでも話しているのだろうか。
おじさんが海外に居るままなので、願書の問題で何かあるのかもしれないけれど。
…待っていてほしそうな目をしていたけれど一緒に帰るのは決まり悪いので、分からなかったことにしている。
「へー。推薦かな」
「そうかも」
思い至らなかったので、頷く。
あの成績なら、それくらいの余裕はありそうだ。
「橋田君はどこ行くの?」
「隣の県の県立医大」
ローファーを玄関に放り捨ててつまさきだけ履いた。
制服のリボンが下がり、涼しい風に弱くひらめく。
「頑張ってね」
素直な笑顔に励まされて、つられて顔が笑った。
薄い照明の下にいる志奈子さんは、くすくすと笑って、手を振った。
「指、傷が開かないようにね」
「うん。また明日」
結構重要な役どころの彼女はまだしばらく、教室に戻って台詞の合わせをするそうだ。
さよならをして外に出ると、部活の歓声が体育館から木霊のように聴こえていた。
足に任せて三十分の道を辿る。
そうして、風の涼しさに瞬きをして髪を押さえ、
ざわめく木々を通り過ぎて、緩い坂道を一人で上った。
蛍光灯が頼りなく点滅する四階で、鍵を回す音が錆びついた。
この建物があと何年もつのか想像がつきそうな金属音だと思う。
「ただいま」
返事はなかった。
お母さんは帰っていないらしい。
左人差し指の包帯をふと靴を揃えながらまた、意識する。
…手を洗うのが難しそうだ。
ひどい怪我ではないけれど不便といえば不便だなと、溜息が出た。
炊飯器は準備済みだったので、お母さんに感謝して部屋に戻る。
古い家は風通しがよくて寒かった。
ドアノブを後ろ手で押して閉め、制服のリボンをするりと外す。
それを片手に荷物を机に置くと、
幼馴染の写真が落ちた。
拾って、裏返す。
返すのをすっかり忘れていた。
積み重なった辞書の上に伏せておく。
縫いかけの飾り花が入った紙袋を床に置き、ベッド脇のハンガーに手をかけようと、毛布を膝に埋めた。
毛布がひやりと肌に、軟らかかった。
リボンを、ふと、手放しておちるままに任せた。
へなりと座り込んで俯く。
スカートの下に右手が潜り込み、薄布越しに奥をなぞった。
頭よりも身体が先にゆっくりと切り替わる。
息が詰まっては深く、肺の底から漏れ出していく。
手が動きやすいように左手をシーツに押し付けて弱く握りこんだ。
傾ぐ上半身を左腕で支え、右手をスカートの奥に入れたまま、緩々と布越しに刺激を送り込む。
伏せた視界が霞んで、喉が震えだす。
息が熱くなる。
毛布を握る左肘に力が入らなかった。
いつしか前の方の硬い何かを手のひらがとらえて、そこを執拗に押し込んでいる。
「ぅ、ん…」
甘たるいものが、おなかの中を降りて満ちる。
しばらく朦朧としながら、そこを円を描くように撫ぜていた。
そろそろ、やめたほうがいいだろうか。
湿る息を漏らして、手を意識的に止めようとして。
なぜか、
何度も重ねられたあの人の手を、不意に、想い出した。
指が骨っぽくて、大きくて声が穏やかで、体温が心地よく、て。
涼しい部屋の中に火照った肌が、あわだった。
熱が首筋をぞくりと抜けて脳髄を撫ぜた。
背骨を走る痺れごと、神経が皮を剥ぎ取って鋭敏になる。
持ち上げた瞼の隙間は緋色をしていた。
「っ…、あ――、ぁ」
この前引き帰した波打ち際を意識せず飛び越えて底まで沈んだ。
汗ばんだ肌が熱くて熱くて、なのに涙が蒸発しない。
指は意識と無関係に止まらないまま、勝手に一箇所を熱心に掻いて弄る。
湿りの多い部分を薄布越しに指で押すと、声帯が震えて水音に混じれて掠れた。
「はっ、……っ、ゃ」
面影が体温の余韻がよぎるたび、声が呼吸を押し退ける。
睫毛が濡れて、喉がしゃくりあげそうになる。
薄布が布の意味をなくすくらいに濡れていて動かし辛かったけれど構わず指を擦り付けた。
腰が動く間隔が短くなり、涙で視界がぼやけて首が仰け反る。
全然分からなかった。
ここになぜイトくんがいないのか、分からない。
なんで自分で触っているのかも。
もう、うわ言のように呼んでいたように、思うけれど―
―それからの記憶はほとんど、熱くて曖昧なまま、ぼやけている。
肘が崩れていた。
目蓋の裏が融解する。
押し流されるままに指を硬い部分に手のひらごと押し付ける。
背が倒れて反って、声が声にならなくなった。
何かが、身体を覆って包んで走り抜けて、火照った頭の芯までをどろどろに蕩かしていく。
意識を失うかと錯覚するほどすべてが溢れて、長いこと、何も分からないまま、震えていた。
硬直がとけてやっと、全身の力が抜けたように崩れて倒れ込む。
枕が、柔らかかった。
「――…ぁっ、は……あ」
…帰ってきたばかりで何を、やっているのだろう。
枕に顔を押し付け、湿るままに滲んだ涙を擦り付ける。
荒い息をついているうちに、今更のように左手から痛みが腕を血のかわりに上ってきた。
それすら心地がよいような錯覚に、頭が白く霞んでいく。
もう一度、深く深く息をついて、仰向けになった。
額に手の甲を、当てて、目を閉じる。
掠れた喉の空気も震えない囁きが霧になった。
瞼の裏がただ想う。
まだ緩慢な痺れも余韻も、背中から流れ落ちることもなく。
悲しくもないのに涙が滲んだのを指の関節でこすり、昂った心音の薄れていくのを数える。
いい画だ。。
んー、早起きは三文の得というが・・・
三文どころじゃないトクした気分です(´∀`)
もう,何かこう,芸術的なほどにエロティックな描写が好きだ。
洗練された風景画でも見ている気分になってくる。
ゴッジョブ!
(゚∀゚) GJ!!
品のあるえろ描写とはたまらん……。
GJ!!!!
保管庫の『Scarlet Stitch』その18だけ見えない_| ̄|○
保管庫管理人様、復旧をお願い致します。
195 :
SS保管人:04/12/02 23:02:31 ID:GaWYpBLo
支援age
197 :
243:04/12/06 03:59:28 ID:kFpHkDmH
半泣きで自慰に溺れる女の子は最高だと思っています(´∀`)
職人様方の新作と続編を待ちつつ。
その39。
・・・・その39
楽な部屋着に着替え、制服を掛けた。
下着を洗濯したのは不審がられないだろうか。
火照った余韻を抱えながら腰のファスナーを締める。
学校の荷物から勉強道具と、二つ折りの大きな薄紙を引っ張り出して居間に出た。
イトくんから聞いてはいたけれど、模試の結果が返ってきていた。
進学校は全国模試が多くて、月に一回以上は受けているような気がする。
夏休み後半に受けた記述模試だ。
帰り際に受取って、そのまま良く見ずに仕舞っていたのを、テーブルに広げる。
一通り眺めて、頬杖をついた。
電灯がまぶしい。
深く息を漏らし、噛み締める。
C判定に本当にギリギリで引っ掛かっているくらいだけれど、充分だった。
これでもまだ合格圏内ではないけれど。
でもやっぱり、ずっとE判定だったから、気持ちがほっと緩んだ。
こんな風に成績がちゃんと上がるなんて思わなかった。
安心して泣きたくなる。
私は本当に、普通だけれど。
でも、きっと世間では「普通の人」が大半で、それでも皆生きている。
だから、ある程度のことは自分の無理でない範囲なら掴めるようにできているのだと思う。
それくらいのことは信じたい。
ソファに背中を倒して目を閉じた。
カーテンを閉めなくてはいけない。
幼馴染はいつごろ帰ってくるのだろう。
「橋田くん今日は来ないって」
電話を置いたお母さんが残念そうに呟いたので、夕食はお母さんと二人で食べた。
なんだか前もこんなことがあった気がする。
案の定ぶつぶつ言うお母さんを適度に受け流して、味噌汁を飲む。
「橋田くん誉めるの上手いから料理食べさせがいがあるのに。つまんないの」
「冷凍しておけば?」
「炊き立てがおいしいんだってば。分かってないわね」
叱られた。
今日の炊き込みご飯は確かに自信作だったのだろう。
お父さんが出張中で享はまだ帰ってこないから、
残念度が二割り増しなのかもしれない。
「しかたないよ。文化祭前だし、勉強もあるし」
酢豚の鉢に箸を伸ばす。
まあ、私の結果は、明日だって教えることができる。
夏休み頃から勉強に本腰を入れはじめたせいで成績上位者の一番上に複数科目で載るようになっている、
そんな人相手にたかが判定のどうこうを自慢したいわけでもない。
ただ、嬉しかったから。
…イトくんがどんな風に言ってくれるかが少し楽しみだっただけで。
先に帰ったりしなければよかったのだろうか。
それで顔を見辛くなるようなことも、したのだし。
名前まで呼ぶなんて馬鹿じゃないんだろうか。
「緋衣子、行儀悪いわよ」
無意識に箸で皿を掻いていた。
溜息をつく。
―身体が最近理性を無視している。
イトくんに頭を揺さぶられてからもう何ヶ月もそうだ。
これからもずっとそうだったりしたらどうしよう。
そんなことをぼんやり考えて、夕食をいつの間にか終えた。
お風呂から上がると十時過ぎだった。
珍しく享が勉強していた。
タオルを抱えて顔のしずくを拭き取りながら、傍に行って覗き見る。
理不尽に八つ当たられた。
どうやら明日突発的にテストということになったらしい。
邪魔するのも悪いので、部屋に戻ろうとして、足を止めた。
気にはしていないと思うけれど。
一人で帰ってしまったのを、一応謝ろうか。
できれば早めに報告したいこともあるし。
どちらかというとそちらが本題だった。
タオルをかけて時計を見て、まだなんとか迷惑でない時間帯だと判断した。
子機を手にとって短縮番号を押し、部屋のドアを閉める。
電話をするのなんて何年ぶりだろう。
これだけ距離が近いと、意外に電話なんて使わない。
鳴っては途切れる電子音を聞きながら、部屋を二三歩、ゆっくりと進む。
呼び出し六回で相手が出た。
『橋田ですけど』
「もしもし」
聞き慣れた声に目を伏せて、ベッドに腰掛ける。
少し沈黙があった。
深くて静かな響きが鼓膜を震わせる。
『ひーこ?』
「うん」
なんだか、自分の声がか細くて、弱る。
些細なことで電話まで掛けている自分が、急におかしい気がしてきた。
もう残っていないはずの蕩ける熱湯が身の内に沸きかけるのを、
忘れようと受話器を握り直し、何を言いたかったのか記憶の細い糸を辿る。
201 :
243:04/12/06 04:03:16 ID:kFpHkDmH
では、続きはまた時間ができましたら。
展開遅くて申し訳ないです。頑張ります。
>半泣きで自慰に溺れる女の子は最高だと思っています
あなたが最高だ。
もう全てが素晴らしすぎます。まさにGOD JOB。
ひーこちゃんがかわいい。本当にかわいい。
なんかもう、萌えすぎてちゃんとした日本語で感想が書けません、ごめんなさい。
あのー初めまして………
LovingVoiceMail 省略 LVMと言う者です。
種種の事情が生じて、幼なじみモノを書かねばならなくなったのであります……
が……、ここの様な幼なじみスレに投稿などをしてよろしいでございましょうか?(汗
色々なスレを見て回っていると、スレ神のような、スレに専属で居るかのごとくの
物凄いSS書き様が居られるようで、こちらのスレでも過去ログを読んでいると
そのような神が居られる気がするようなしないような……(^^;
余所のSSスレの事ですが、あまりにもスレ神の力が凄すぎて
他の書き手がとてもじゃないけれど書き込めない様な雰囲気を醸し出しているトコロもあるようで
ここのスレはどうなのかなー とか、ちょっとビクビクなわけでございます……
スレ進行の迷惑になるのなら、余所トコロを探してまた徘徊いたしますが
いかがなものでありましょうか?
>203
もちろんOK 投下希望 待っている
>203
何処の住人か教えてくれ
貴公の過去作品が読みたい
>>203 神はこのスレにも居るけど、
神が増える分には一向に問題ありません。はい。
>>203 気の回しすぎです。おいでませ。
むしろ貴殿の腰が低すぎて「誘い受け」扱いされてないかが気になる
住人は欲張りですのでSSは溢れるほどあってもまだ欲しがるのです。。
愛は無欲、恋は貪欲。
恋していますっ!作者さん's!
>204 >206 >207 >208 >209
ありがとうございます、みなさま……mOm
ヘタレな書き手でありますが、よろしくお願いいたします。
それでは……3年程前に貰った挿絵と原案と一緒に、
終わるかおわらねーかの見切り発車ですが、勢いだけでの初回投稿をさせて貰います……(^^;;
3年前に挿絵(っていうか原案)をいただいた、Kamui氏に捧ぐ
(いや、死んでませんが(笑))
その学生は道を歩いていた。
疲れ切った表情で今日も帰り道。
友達も居ない。更に恋人とかいう言葉は宇宙の何処かだ。
それでも1人、その学生は疲れた表情で歩道を歩いていた。
彼は今の自分をせせら笑う事が日課だった。
そうやって自虐的になっていれば、なんとか心の平衡が保たれる。
だから、こうやって1人という空間を
自分は不幸だ、自分は不幸だと思いながら歩き続ける。
それが彼の幸せだった。
価値観は多様だろう。根暗な生き方だと思えばそれだけだが…。
それでも鬱屈して、このまま首を縄で吊り上げるよりは
人生を呪いながらでも、歩いているだけマシではないだろうか?
学生は心の中で自己弁護に励む。
(寒いな……)
今の心境を彼はそう率直に思った。
こんなに、日が差しているというのに……寒い……。
どうしてこんな事になったのだろうか?と
色の無い景色を眺めながら、思い詰める。
そうだ……ここには色がない。
色は見えているが、歩く人も町並みも全て灰色に見える。
それはまるで冬の様……。
彼は溜息を付いた。
そうだ……。
と、その学生はある一瞬に思い出す。
自分は昔、今のように捻れ曲がった気持ちでは無かった時間があった。
それを思い出す。
そう、あの時ばかりは……こんな太陽が照りつける中で……
その名前通りの、熱いくらいの躍動の中で暮らしていたんだ。
それを思い出した瞬間だけ……彼は微笑みを浮かべた。
下らない……本当に下らない微笑みを……。
どうして、今更、それも今頃になって思い出したのだろう……。
そうだ……何で忘れていた? 何故?
『そんな事』を忘れてしまうくらい、世界が灰色だったから?
そんな事を忘れてしまうほど、魂の隅まで傷ついていたから?
だから?
彼は自問を続けた。今更、問っても仕方ない事を……。
「あいつ、どうしてるかな………」
そんな言葉が、彼の口から漏れた。
その時……そう……その時だった。
不意に真正面を向くと……
女の子が居た……。
セミロングの髪が風で揺れる中、
くすんだ抹茶色の……あの店の上着を着て……その少女が……
不意に、学生の視線が彼女で止まる。
と同時に、彼女の視線も彼を目視した瞬間に止まり
……つまり……2人は見つめ合っていた。
「………嘘やろ?」
彼女はじっと……その学生を見ながらそう漏らした。
学生の頭はその瞬間、真っ白になった。
目の前の少女は幻か?
彼女の言葉と同じくらい、彼の心も(嘘だろ?)と呟く。
「……哲?」
彼女は両手で自らの口を塞ぎ、肩を振るわせてそう言った。
言った後も、ずっと彼を凝視していた。
「…………………」
その哲と呼ばれた少年は、返事が出来なかった。
あり得ない事が目の前で起きていたから………
居るはずのない少女が、目の前に居たから………
「……ナ、ナツ?」
哲と呼ばれた彼は、思わず彼女の名を口にした。
「……信じられへん……こんなラッキーあってええんか?」
そう言った後、ナツと呼ばれた少女は思わず自分の唇を自らの両手で塞ぐ。
彼女はずーっと、哲と呼ばれた少年を見つめ続けた。
そして、彼もじーっとその少し変わった……といっても
全然変わらない彼女の姿を見つめて硬直し続けるしかなかった。
(どうしてナツがっ!?)(馬鹿なっ!?)
そんな混乱の言葉が頭の中をグルグルと回り続ける。
お互いの思いの中で、立ちつくす2人。
ナツと呼ばれた少女は、思わず瞳を潤ませた。
日本人なのに、瞳だけ蒼いその目に涙を浮かべて彼を見る。
「……哲……なんやな……間違い……無いよな?」
おずおずと前へ歩み、彼女は彼に近づいた。
「………多分……そうだと思う………」
哲と呼ばれた少年は、自分自身のおかしな返答に混乱しながら
彼女の問いに答え返した。
そう……多分、自分は哲郎……矢幡哲郎……。
そう思うのに、それが彼には妙に違和感に感じる。
「……哲っっっ!!」
ナツと呼ばれた少女は、思いを堪えきれずに走り出し
そのまま哲郎の胸の中に飛び込んだ。
「うわっ……」
あまりに豪快なダイビングに転げそうになる哲郎。
それでも彼女は勢いを止めずに叫び声を上げる。
「馬鹿哲っ!! 約束はどうしたんやぁっ!? 手紙はぁっ!?」
哲郎の胸の中に縋って涙をボロボロ流しながら、
ナツと呼ばれた少女は叫んだ。
とまぁ……勢いで、書いてみました……
あまりに勢いだけで書き込んでしまって
申し訳ございませんmOm
三点リードだらけで………読むのがしんどいっす………
このままの展開では冗長になりそうな予感がするので、適度にメリハリをつけるとよろしいかと。
一番まずいのは……筆者の頭の中でだけ描写され読者がわからない事項の出現、かな?
期待して待ってます。
あまりそう低姿勢にならず。
続きも待ってますよ。
新たな神様もたくさん増えて、スレが実に華やかですね。
それでは、枯れ木も山の賑わいと言う事で、
前スレ706からの続きを投下させていただきます。
…嘘つき星人ですいません。
「――ごちそうさま。75点」
「…またビミョーなとこですねー…」
むう、確かにちょっと薄味だったかもしれません。
水菜サラダもほんの少しですが水切りが甘かったのか、水っぽい感じがしましたし。
「いや、そういう問題じゃないですよっ! せっかく作ったのに失礼なっ!」
なんだってこうかわいくない事ばかり言うのでしょう。嫌になってしまいます。
「いいじゃねえかよ。そりゃ、全体的にはそこそこ美味かった。
しかしな、イマイチな所もあったんだから、適当に美味しかったと褒めるだけじゃ、
次に活かせないだろう? 辛口な意見も聞くべきだと思うぞ?」
…そりゃ、その通りだとは思いますけどね。
言い方ってものがあるでしょうに。かわいくないんだから。
「…おいおい。そんなに膨れるなよ」
むに。と、ほっぺをつつかれます。
「…やめてください」
んー。などと、適当な返事で、ますますぷにぷにと人のほっぺを突付いてきます。
「…っもう! やめて、くださいっ!」
わたしが本気で怒っているのに、謝るどころか、ひはは。と軽薄な笑い声を返してきます。
「いやいやいやいや。あんまり突っつきがいのある頬肉してるからさ、オマエさん」
言うに事欠いてなんて事を言いやがりますか瑞穂ちゃん。
…はっきりいって、わたしは自分の、人より少し丸い頬の線が大嫌いです。
「おーい、冗談じゃねェか、そんな怒るなよ、まゆー」
「……怒ります。なんですか、もう。本当に、昔っから瑞穂ちゃんは、ちょっと自分がスタイルいいと思って。
どうせわたしは太ってますよ、無神経なんだからっ」
「悪かったよ、悪かったって。それにオマエの場合、太ってるっていうより、乳と尻がデカイんだよな」
いいことだ。とうんうん肯きながらそんな事を言います。
「ちょ、変なこと言わないでくださいよっ、いやらしいっ」
「変な事とはなんだ。俺はただ、オマエのそのでかい乳と安産型の尻が可愛くて大好きだと、そう言ってるだけだろが」
大真面目な顔でなに言ってやがりますかこの人はもう本当に。
「……ちょっとも嬉しくないです。ていうかセクハラにも程がありますよ、その発言」
「褒めてんじゃねえかよ」
「ハラスメントです」
おたがい、むうーと黙ったまま、後片付けのために立ち上がります。
「…まったくもうっ。なんだってこんな人になっちゃったんでしょうね。昔はそんな事言わなかったのにっ」
「そりゃオマエ、あのころはまだガキで女だったから口に出さなかっただけだ。
俺は昔からオマエさんの乳尻は好きだったぞ、欲しかったし」
また何をとんでもない事口走るかなあ、藤井君っ!?
「ふ、不潔ですっ! いやらしいっ! すけべっ!」
「おーおー、悪かったなあ、いやらしくて。言っとくがな、男が助平じゃなけりゃ、種の保存の危機だぞ」
そういう問題じゃありません。
うわあ、そういえばそうですよ、深く考えないようにしてたけど、わたし、あの頃のみいちゃんとはしょっちゅう一緒にお風呂だの、
一緒の布団で寝たりしてますよ。それも、みいちゃんは乗り気じゃないのに、わたしから枕もって押しかけたりとかしてましたよ。
今更ながら、恥ずかしさのあまり、あたまがぐるぐるしてきます。もう、まともに瑞穂ちゃんの顔が見られません。
「……おーい? 真由子? どうした?」
俯いてしまったわたしを不審に思ったのでしょう。
手を、わたしの頬に伸ばしてきます。
その、大きくてごつごつした、わたしの物とはまるで違う、男の人の手を見た途端、昼間に抱きしめられたときの感覚を思い出して、
一気に頭に血が上りました。
「――や、やだっ!」
ぱしん。と、反射的に手を振り払ってしまいました。
「――あっ」
みいちゃんが、びっくりしたように目を見開いている表情になっているのを見たら、大後悔しましたが、
引っ込みがつかなくなった口から飛び出たのは、まるきり反対の言葉でした。
「―――っ! し、知りません! もう! みいちゃんなんか、大っ嫌い!」
自分の口から飛び出た言葉に、本気で仰天してしまい、部屋に逃げ込んで閉じこもりました。
うわあああああ、なにをやってるんでしょう、わたしーッ!?
布団を頭から被っていると、少しだけ頭が冷えてきて、ついさっきの自分の行動を思い返すと、死にそうになります。
いますぐ、みいちゃんに謝りに行くべきなのですが、それも出来ずに布団の中で固まってしまいます。
だ、駄目だ。はやく、行かないと、いけないのに……っ。
自分の不甲斐なさと浅はかさに、涙がぼろぼろとこぼれます。
なんで、わたしはこんなにもダメダメなのでしょう、情け無い…っ!
「…まゆこー? 聞いてるかー?」
コンコン、というノックの音と共に、みいちゃんが話しかけてきました。
「あ、はっ、はいっ!」
「あのさ、さっきは、俺が悪かった。驚かせて、すまなかった。…台所も、片付けといたから。それじゃ、おやすみ」
それだけ言うと、ドアの前の気配が遠ざかります。
「あっ、あっ、あのっ! わたしも、いきなりぶって、ごめんなさいっ!」
「――気にしてないよ、別に。それじゃ、おやすみ」
それだけ言うと、みいちゃんはおとなりに帰っていきました。
謝る事が出来て、少しは気が楽になりましたが、どうもこの先、みいちゃんの顔を見るたび、気まずい思いをしそうです…。
以上、ぐるぐるまゆこさんでした。
トリップ付けてみました。
最近、自サイトを開きまして、そこに今までエロパロ板に
投下した物も置いています。
もしもどこかネットの片隅でどっかで見たようなのがあるなと
思ったらどうかスルーしてください。
神ラッシュで溺れそうです。ぶくぶく
まさに至福!
>> 1スレ812様
お帰りなさいませ。お待ちしておりました。
>「――や、やだっ!」
まゆたん(;´Д`)ハァハァ
>> 1スレ812氏
キターーーーー(゚∀゚)ーーーーーー!!
続きを心待ちしております。
あとSS保管庫管理人様、812氏の『プロローグ/ターニングポイント』
が見れませんので、お時間がありましたら復旧をお願いします。
短いですが、投下させていただきます。
はひはひはひ。
廊下を、息を切らしながら走って、教室に戻ります。
ああもう、なんだってシャーペンの芯が無いことに気がつくのがよりにもよって
昼休み終了10分前だったりするのでしょう、わたしときたら。
長期休暇の後は、ぼうっとしやすくなるそうですが、GW呆けなんていうのは、聞いたことがありません。
10分と言うのは、わたしにとっては割と中途半端な時間で、余裕を持って購買部まで行けるほどの時間もないし、
諦めて誰かに借りるほどギリギリの時間でもない。
それで結局、予鈴の音におびえながら廊下をひた走る事になるわけです。
あ、でも、これならもう走らなくても充分間に合うかも…。
「いよう、お嬢さーん。そんなに急いでどうしたのー?」
「うわ、ああっ!」
足を止めて歩き出した途端、後ろから誰かに抱きつかれました。
いや、誰かって言うか、犯人はハッキリわかってるんですけどっ!
「みいちゃんっ!」
「よ、珍しいな、オマエさんが廊下走ってるなんてさ。どうしたよ?」
いや、どうしたもこうしたもっ!
こんな廊下の真ん中で、一体何考えてんですかっ。
うう、それに、こないだ以来、こんな風に体に触れられる事を、変に意識してしまって気まずいったらないのです。
「もうっ、放してくださいっ! 授業に遅れちゃうじゃないですかっ!」
「んー? まだ、しばらく時間あるぞ? 15分くらい」
と、自分の腕時計を見ながらいいます。
「え、そんなはずは。ほら、もう5分前ですよ」
こないだ買ったばかりの腕時計を見せます。
「……なあ、まゆこ。オマエさん、前に『ついノンビリしすぎちゃうから』って、
わざと針を10分進めてる。って、言ってなかったか……?」
「……あっ」
はふううう。と、盛大な溜め息が聞こえます。
「あわてもんっつーか、普通にマヌケだよな、あまりにも」
「……ほっといてください」
うわー、もう、情け無い。自分でやっててすっかり忘れてました。
「……それより、みいちゃんは何でこんな所にいるんです。あなたの教室、反対方向でしょう?」
「次が移動教室だから。通り道じゃん、ここ」
「……そうだったんですか。なら、早く行った方がいいんじゃないですか?」
て、いうか、放してください。
「あー、大丈夫大丈夫。あの先生いつも、5分は遅れてくるから」
「……わたしは大丈夫じゃないんですっ! もう、放してくださいよ、廊下の真ん中ですよっ!」
「安心しろ、俺は気にしない」
「わたしはするんですっ!」
この、いいかげんにしないと、怒りますよっ…!
わたしが、そう怒鳴りかけたとき、みいちゃんの後ろ頭がばしんと、勢いよく鳴りました。
「――なに馬鹿やってるの。藤井」
みいちゃんが振り返ると、女の子が、そこに立っていました。
長い黒髪に真っ白な肌の、日本人形みたいな女の子。
凛とした、力強さを感じさせる少し切れ長の眼に、今時珍しいシンプルな黒いフレームのメガネが、よく似合っています。
形のいい眉をひそめ、ほっそりとしたあごを、傲然とそびやかすと、艶のある髪がさらりと揺れて、天使の輪が出来ました。
そんなに身長があるわけではなさそうなのに、すごくすらりとして、格好よく見えます。
…卒業してしまった彩先輩とはまた違ったタイプの、けれどすごく綺麗で颯爽とした雰囲気の人です。
こういう女性を、クールビューティーというのでしょうか。
わたしがぼんやりと見惚れていると、視線に気がついたのでしょう、こちらに向かって軽く会釈をされました。
そうすると、黒髪がさらりと流れて、その仕草だけでもひどく絵になります。
うひゃあ、キレイな子って、何させてもキレイなんだなあー…。
「…マキー、オマエなあ、いきなり叩くこたあねえだろ。非常識なヤツだな」
「…それはこっちの台詞。廊下でイチャつくのは勝手だけれど、
せめて自分の仕事を終わらせてからにしてくれる? 藤井、あなた、日直でしょう?」
みいちゃんはかなり背が高いので、彼女からすれば見上げなければならないのに、その視線はとても堂々としています。
「あー。実験器具の準備か。へいへい、今行くよー」
「早くして頂戴。私一人じゃ間に合わないわ」
そう言うと、もう用は済んだとばかりにくるりと踵を返します。
「…悪いな、まゆ。それじゃ、また後で」
瑞穂ちゃんも、彼女の後を追うように、教室に戻ってしまいました。
「…かえろ。わたしも、急がないと」
とぼとぼと、2年の教室までの道を歩きます。
何故か、胸の奥がざらりとしてきます。
――あんなキレイなひとと、呼び捨てで話すくらい、仲良くなってたんだ。
「…いいこと、ですよね」
ええ、みいちゃんは、割と人見知りする人でしたから。仲の良い友達が出来たのは、いい事です。
委員会の人とも、すぐに親しくなってましたし、2年半の間にそれだけ変わったって事なのでしょう。
「…うん。みいちゃんが誰と仲良くしてても、別に、わたしは」
関係ないもの。
やきもちまゆこさんでした。
それでは、また。
次の機会に。
GJ!!
ちょっとずつ進展気味?続きも待ってます。
まゆとみいちゃんって本番に入ったら相当えろそう。
同じくトリップつけてみました。
まゆこちゃんの続きに新作と賑やかですね。幼馴染ばんざい。
その40.
・・・・その40
キャッチホンだと言われて、掴みかけた糸がどこにいったのか分からなくなった。
肺の中が不意に静まった。
受話器を持つ指が緩む。
そう、と答えて口をつぐんだ。
『掛け直すから。待ってて』
「…うん」
『またね』
ぶつりと耳元の音が失われて、力が抜けた。
幼馴染が悪いわけではない。
変に気持ちが削がれてつまらなかった。
電話じゃなくて、普通に明日言えばよかったような気までした。
子機を膝上に弄んで溜息をつく。
寝間着の裾を弱く握って、お風呂上りで熱いままの頭を俯かせた。
湯冷めしそうな身体に触れて、長いこと子機を見ながらぼんやりしていた。
掛け直すと言われても、
いつまで待てばいいのだろう。
居間から見る空は秋晴れだった。
今週で最後の夏服に袖を通し、髪をとかして、いつもより相当早めに玄関を後にした。
吐息が風に消え、古いコンクリートの階段に掠れる。
一番下に降りると見知った顔がいた。
紺色の上着をワイシャツに羽織って、降りてきた私を待っていた。
目が合うのを、見返して、立ち止まる。
背の高いその人が表情を変えずに、一言だけ言った。
「おはよう」
私は無視した。
自分でも心が狭いと思う。
本当に我侭だと思う。
でも、悲しかったし、悔しかった。
傍を通り過ぎて、黙ってマンションの駐車場を抜ける。
後ろからついてくるのが分かった。
どうせ追いつこうと思えば追いつけるのだと気付いて、すぐに歩調を緩める。
風が僅かに出ていて、坂の脇のすすきが揺れていた。
二人分の足音がやけに不規則に鼓膜を切る。
早めに出てきたせいか、サラリーマンや運動着姿の中学生が時折見えるくらいで、人は少なかった。
坂道を降りて、歩いて曲がって、公園の錆びた柵を抜けた。
鳥が鳴いている。
そこで、追いつかれて、手を取られた。
少しの間、抱きしめられる。
手が驚くほど冷たかったので、思わず足が止まった。
いつからマンションの下にいたのだろう。
放せないで、放してほしくなくて。
怪我をした指が痛くて力も入らない。
――昨日、あれほど求めた体温がじかに伝わるのを否応なしに感じて震えた。
身体も意識も全然いうことを聞いてくれない。
自分のものじゃないみたいだ。
そっと手だけを残して開放され、斜め後ろから小さく呼ばれた。
顔を逸らしたまま振り返れずに俯く。
「ひーこ。怒ってるだろう」
「怒ってる」
声が震えて、言い返しているはずなのに格好が悪い。
「気も立ってる。眠いし」
「―ごめん。悪かった。謝るから」
素直に真剣な声が帰ってきて、手を握る力が強まった。
人差し指の怪我に響いて、僅かに顔が歪む。
足に力が入らない。
何が悔しいのか分からないけれど、悔しかった。
これじゃあ完全に負けている。
腹立ちが収まらなくて、自分の我侭さが嫌になる。
「…別に。大した話じゃなかったから」
「そうなの?」
イトくんが珍しく呆れ気味に呟く。
仕方なさげな溜息のせいか朝風のせいか、髪がふわりと揺れる。
頭のスイッチが音もなく落ちた。
どうやって手をほどいたろう。
憶えていない。
溜息の残響があちこち渡されていた細い糸を熱い鋏で熔かして切る。
紙袋を持っていた手首に力を込めた。
地面に捨てるように落とした。
手の中で千切れて残ったような錯覚を無視し、振り返る。
「ひーこ?」
飾り花や安布で作ったリボンが散るのも見届けないで、初めて人を引っ叩いた。
小気味いい響きが公園に落ちる。
何かを言いかけようとした幼馴染に通学かばんを振り上げ、思い切り殴る。
至近距離で避けられることもなく、鈍い音がして当たった。
ふと、意識が打たれた。
「って…」
幼馴染が低く唸って、庇うのも間に合わなかったのだろう腕で、肩を押さえていた。
目の前で座り込まれるのをぼんやりと眺めた。
なれない行為で息が荒かった。
心臓がどくどくと肌を打っている。
鋭い痛みが熱く左手首を這っていた。
ゆっくりと、力が抜けていく。
頭が白い。
腹立ちすぎて涙が滲んでいたのを、拭って、膝を折る。
朝の鳥が鳴いて、そよかな秋風に、公園の木々が穏やかにざわめく。
では続きは時間ができたときに。
>> 243 ◆NVcIiajIyg
GJ!!
このところ毎日良作を読めて(・∀・)イイ!!
うおぉぉぉぉっ?!
こ、こりゃまた予想外の展開っ!
ど、どうなるんだどきどき。
スレが賑やかで楽しくて嬉しいですー!
ご新規さんもがんばー!
ためらってる人も勇気だしてかいてみよー!
うおおおどうなる!?どうなる!?
よーし触発されてお兄さんもSS書いてみちゃうぞ嘘だよばーか!
おっしゃー!行ってきまーす!
職人様共にGJ!!
うは、久々に見たら色々投下されてル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
246 :
名無しさん@ピンキー:04/12/15 00:44:42 ID:9R1I9itz
保守。
このスレにしてはすごいあがっててビクーリした。
ひーこ…好きだ。243職人サマいつもありがとう。
自慰スレ建ちましたよ243師|∀・)
>>243 レス番243の血筋はあなたにかかってますよ|∀・)
自慰スレも大変興奮して通っていますが
書く方はこちらのに専念したいので頑張ります。
の割になかなか本番に辿りつかず申し訳ないorz
その41です。
・・・・その41
ドアの隙間が暗くなったので居間の電気が消えたと知った。
弟らしき足音が床を軋ませて隣に消える。
寝間着の袖で顔を覆った。
毛布が生温い。
芯まで湯冷めしている指先を子機に伸ばしてなぜた。
名前を呼ぶ声の深さが脳に残っていて耳だけが熱い。
寝返りを打つ。
そろそろ諦めよう。
掛け直すなんてもう、遅すぎる。
花でも縫っていればよかった。
問題集を解けばよかった。
頬にかかる髪が冷えて柔らかく、眠気に頭が朦朧とし――
「ぁ……」
薄目を開けると木目がほの暗く見えた。
学校だ。
思い出してまた、肘の上に頬を転がす。
早すぎて教室に二人しかいなくて、気まずい。
腕に顔を埋める。
席が遠くて助かった。
…喧嘩をしたのは初めてで、よく分からない。
あれだけ長いこと一緒にいて初めてだなんて不思議だ。
早く誰か、登校してくれないだろうか。
眠さに負けてまた、木の香りに意識を手放す。
制服の薄袖には、私のでない体温とにおいがまだ残っているような気がした。
予想を外れた進路で台風が接近しているそうだ。
文化祭の関連で囁かれているそれも、秋晴れなので実感にならない。
開いた窓の風に髪を吹かせて、落ち着いた声が傍でする。
「ふうん。初めてなんだ」
「うん。いつもごめんね」
購買部のカレーパンの、ビニールを潰す志奈子さんに頷いて、珈琲牛乳にストローをさした。
受験なのにこういう相談ばかりして呆れられないかと不安だ。
放送部の音楽がぽつぽつと説明する私の小声に混じる。
志奈子さんが新しいパンを開けた。
長いポニーテールを揺らして思い切り頷きながら机を叩く。
「分かる分かる。私もね、実は先週ねっ」
志奈子さんは彼氏との過去の喧嘩について教えてくれた。
頷いて聞いているうちに、昼休みが終わってしまった。
「ひーちゃんごめん!なんか私が一人で話してただけだぁ」
筆箱を開けながら謝る志奈子さんに苦笑して、首を振った。
まあ、こういうのは友だちをどうこう巻き込むものではない気がするので別にいいかとも思う。
どうなるものでもないのだし。
俯くと髪が耳から零れ落ちて頬を染めた。
数学Cの教科書を折り曲げ、授業を久し振りに聞き流す。
左指の怪我を弄んで、包帯を爪で削る。
ふと見られている気がしたので窓際に顔を向けた。
こちらを見ていた。
思っていたよりずっと優しい視線だった。
喉が詰まる。
堪らなくなって意識を揺らし、熱い腕を抱く。
―もう怒っていないのだろうか。
私はまだ怒っているのに。
嫌いになったとかでは全然ないのだけれど。
袖を後ろから引かれて、ふと顔を上げた。
教卓から声が飛ぶ。
「崎、崎。眠ってないで。五番」
予習を少し慌ててめくり返し、答えて、また着席した。
椅子の音が耳に軋む。
眩しい白に、窓をふと座りかけながら見上げる。
太陽が雲の合間に出て、また隠れた。
靴下の奥で夏に痛めた足首が、疼いていた。
予報通り、今夜は雨になりそうだ。
続きは時間ができましたらまた。
いつもありがとうございます。
申し訳ないけどこのひーこという女が全く好きになれないなあ。年中うじうじしてて。
普段明るい子がふさぎこんでるとかなら話的にもメリハリを感じるが、話にも面白みがないし。
あと、一回分が短いのに場面がぽんぽん飛ぶので、流れが悪いように思います。
それでちょっと気になったんだが、推敲しないでアップしてませんか。
毎回どこかしら表現に苦しいところがあるし、
描写過多という指摘もバランスの悪さを推敲で是正できてないからではないかと。
あくまで個人的意見です。
自分は今の感じで特にどうってのはないなぁ。
ま、こういう意見が出るって言うのは健全だね。
GJばかりでは味がない
受験生時代の心境はホントこんな感じだったんで結構共感して読んでる<ひーこ
いや、俺男だけどさ。
じゃあアンタは今から男ひーこだ。
>>254 俺もポンポン場面が飛んで読みづらいなぁと思った。
>>254 自分はこういう短い場面を小出し&描写過多ってのは好きだけどなぁ・・・。
確かに全話を切れ目無く繋げて読むには流れが悪いように感じるかもしれないけど、
各話をテキストファイルとして保存しておいて、テキストビューアを使って各話ごとに
背景等を変えたりして読んでいくと、毎話ごとに新鮮な感じがするかも?
まあ、あくまでも個人の好き好きですが・・・。
何はともあれ、243氏続きを期待しております(゚∀゚)
個人的にこの手の文章が好きだから……と言うか自分には書けないからいつも楽しみにしてるけど。
243氏もマターリ頑張ってくださいなー。
243氏のが肌に合わないという人はSSを書くべきだ!
10人いれば10組の幼なじみができあがる。243氏の描くひーこの様なおとなしい娘もいれ
ば、もしかしたら他の誰かは気の強い女の子を描くかもしれない。
なんのなんの!功夫の達人という恐るべき幼なじみもあなどってはいけませんぞ!
しかしどんなタイプであっても確かなことが一つある!幼なじみは素晴らしい!
何が素晴らしいって、微妙な心理の変遷がすばらしい!
「昔は一緒にお風呂にも入ってたのに……なんで隣りにいるだけでこんなにドキドキする
んだろう………。
もしかして……や、やだそんなわけない!これは持病の心不全よ!そうよそうよ!」
幼なじみには夕焼けのにおいがよく似合う………私に言えるのはそれだけだ!
よし、
>>261見て一つ思いついたぞ!
「最近お前元気ないな・・・。」
「私ね、死ぬかもしれない。」
「おいおい、また穏やかじゃないな。何事だよ。」
「朝ね、学校に行こうとすると心臓が変にどきどきするの。
貴方を起こしにいくのもつらいくらい。」
「心疾患・・・か?学校となるとストレス性?」
「違うよ。学校は楽しいもん。」
「とすると、もしかしてゾナハ病かっ!?」
「それ、貴方の好きな漫画の話じゃないの。」
「お前だって好きじゃん・・・となると、もしかして
回りの人間が笑うと治る・・・とか?(にっこり)」
「(ぼっ)・・・う、よ、余計ひどくなったかも?」
「ぬう、新種か!?」
おそまつ
>>262 GJ!
本人たちは真剣に悩んでるのかも知れんが
端から見るといちゃついてるただのバカップルだなw
>>262 どんな台詞よりこれが最強ですよ。
「最近元気ないよな。風邪か?」
ぽん、と手を額に当てる
「──っ、な、何すんのっ!」
「何って、熱診てるだけだが。
顔が赤いな。やっぱり風邪じゃないのか?」
「ち、違うってば!」
(*´д`*)
バイト中に(*´д`)ハァハァ
「サボってないで仕事しなさいよね!」と言ってくるおせっかいな幼なじみ。
なんでアイツは毎度毎度俺と同じバイトをするんだよ…
…妄想終了。ガンバッテハタラキマス。
>>267 ころしてでもうばいとろうかと思ったが、おまえのことがちょっぴり好きになった。
いや違う、これはただ持病の(ry
>>268 お前の感じている感情は精神的(略)俺に任せろ。
270 :
267:04/12/19 01:35:33 ID:YKZmVCPR
ようやく最後の客が帰った。アイツの目を盗んで閉店作業から逃げ出す…
…雨降ってるし、、傘持ってきてないっつーのハァ…
「神様はちゃんと見てるのよ、諦めて最後まで仕事していきなさい」
…何が神様だよ、チクショウ。この雨じゃ逃げても風邪引いちまうし。諦めるか。
すべての作業を終えると、外の雨は止んでいた。暗い夜道、二人で歩く。いつもうるさいアイツがすぐ傍にいる。やけに静かだ…なんか怖いぞ。
車のヘッドライトが通り過ぎる。
うつむいたアイツの横顔が、一瞬、闇に浮かびあがってまた溶ける。
「…なに黙ってるんだよ」
「……別に。そっちこそ、らしくないんじゃない?」
また車が通る。
しかも、さっきより近くを。
「きゃっ……!」
悲鳴が挙がったのは、その車が盛大に歩道にまで水飛沫をまき散らして行ったからだ。
ズボンのすねがじわりと冷たい。ちくしょー。
「あーもう、最悪ー! 何よあの車ー!」
アイツはもっとひどい有様だ。
胸から下の服が、水浸しになっていた。
早急に着替える必要があるだろう。Tシャツが水圧でぺたっと、ウエストの肌に貼りついている。
ふと、ずいぶんと細いな、と思った。
普段からゆるいシャツ姿ばかり見ているので、今まで気づかなかった。
そのためか、透けて見える飾り気のないブラが、やけに俺に向かってサイズを自己主張している。
「……ねえ、どうしたの? 聞こえてる?」
……声をかけられて俺は気づいた。
自分がいつの間にか、目に熱意を込めていたことに。
長年の付き合いタイプの幼馴染の場合、どうやって「相手を異性として強く意識する」かが重要ですなとかほざいてみるテスト
もしくは、どちらか一方が昔から想い続けていることが重要。
そして、想い続けているのが女の方ならHappy Endな結末が、男の方なら悲恋な結末が
似合っていると思ったり思わなかったり。
自分はハッピー志向なので当然そちらを希望します。個人的には。
それはそうと、このスレのタイトルで悲恋ってどの程度受け入れられるのでしょうか?
あんまり拒絶されるようなら他スレに落とす&誘導という手もあるけど……
今までも悲恋物はちょこちょこあったよ。
それに、「ハッピーエンドじゃなきゃイヤ!」って盲目的に拒絶するような事はないとおもう。
だってみんな、どんな形の幼馴染みも大好きだし。
ハッピーになるなら馬鹿っプル全開でもなんら問題ないと思います
と言うか、むしろそうなりなさい。
わがままだが俺も寝取られはやだ
属性ある人にはたまらんらしいが…
鬱入るよな、寝取られは
初めから匂わせてあったらスルーすればいいことなんだが、一切の前振り無しにやられたりするともうねorz
282 :
274:04/12/23 15:38:43 ID:JjJfIhkL
>>279-281 言葉足らずで「悲恋=寝取られ」と思わせてしまって申し訳ない (- -)
まあ、自分の言いたかった悲恋というのは、幼馴染のA,B(男),C(女)
があって、A→C→Bという関係。
で、CがBへの気持ちをAに相談して、Aが自分の気持ちをひた隠しにしな
がらCの為に色々する、といったカタルシス系。
大抵、こんなシチュエーションの場合はBかCが主人公だけと、Aを主人公
にすることで、長年の想い実らず&自己犠牲でカタルシス感最高潮。
救いを入れるとしたらCの妹がAを慰めるというのもありかと・・・
と言うか、レスしてて思ったがコレはやっぱり寝取られ属性になるんだろか?
あと長文スマソ。
超読みたい
>>282 Aが主人公である限り寝取られだと自分は思う。
だってBとCのエロをそこから(Aの視点で)書くんでしょ?
BCどちらかが主人公でもそのままだと後味よくないから、書き方に工夫がいるんじゃないかな。
サンタさんサンタさん、来世では巨乳でツンデレで家事上手でついでに床上手な幼馴染を下さい。
ABCで3Pしたらええやん
>寝取られ云々について
ひょっとして皆、某エルフの下○生2でトラウマった人々?
・・・まぁ、俺は未プレイ族だが、メインヒロインが寝取られると聞いただけでやる気失った。
やっぱ幼馴染の初体験の相手はやっぱ幼馴染でねぇとウツになるわ・・・
しかも寝取った相手がナンパ師で、野郎にとことん冷たいヤシだったりすると、もう・・・ね orz
>282(=274)
む・・・報われない臭がプンプン漂ってるなぁ、ソレ・・・
個人的にはそのパターンはゴメン願いたい・・・多分読んでて鬱って萌えられなくなるかもしれん・・・
話は逸れて個人的最萌幼馴染シチュ。
口げんかしてる最中に自分の本音をポロリ。
それを問い詰められ答えに窮してるのを誤魔化すようにキス。
そしてトドメにこの一言
『これが答えよ(だ)!!』
・・・ハァハァハァハァハァハァハァ(ry
>>287 そこで
A→C→B→Aですよ。
・・・ウホッ
それはすさまじく報われないな…全員が
>288
そのシチュエーションだと、個人的にはAが男で、B,Cが女の子っていうのが個人的には好き
Cが同姓を好きになったことで悩んでのたうち回ってくれると、なおベスト
安易に3Pになるのだけは勘弁
>>291 それはちと違うと思うぞ
D→B→(←)A→←C
かな
>>287 んー…
自分、むしろ非処女の方がいいかもしれません。
どんな形であれ、幼馴染が痛がる姿見るのは嫌だというワガママ。
てか、イヴにNTRの話で盛り上がってるとは思いもしませなんだ。
>291-292
ごめん、行きつけのスレの一つだOTL
あと、妹スレ(葱の方含む)も…
自分の守備範囲の広さが嫌んなるよ
→
A→C→↑B↓→A
A、Bが男。Cが女。
AはCがBのことを好きだと思ってる。自分はCのことが好きなんだけど、Bもいいやつ
だからもういいや、Cを応援してやろうという感じ。
A「まだ気がつかないのか。まったく、恐竜なみに鈍感だなぁ」
C「……そうね(自分のこと言ってるのかな?)」
B「僕は芥川 龍之介に似てるのに何故モテないんだろう……。緑茶より焙じ茶のほうが
好きだし」
Bは一見変人だけど実は鋭いヤツで、昔から一緒にいるAとCの気持ちが手にとるように
わかる。
だけど人が悪いから、このまま何も言わずに見て楽しもうと思っている。
矢印がよう分からんかった
Bはナルシストなのか、とか思ったヨ
以前書いた小ネタの続き、投稿いたします
「ただいま」
「おかえり」
俺達は無言で向き合った。
えーっと……これって……
「さつき、何してる?」
「……別に」
ここで状況を説明する。
今日も今日とて、部活でヘトヘトになった身体を引き摺って、帰宅したオレなんだけど。
ドアを開けるなり、制服にエプロンのさつきが出迎えてくれたわけで。
思わずフリーズしてしまったではないか。
「あらお帰り、大介」
母さんがニヤニヤしながらキッチンから出てくる。
「……母さん……これ何?」
「これ言うな」
殴られましたよ。
「ほら、さつきちゃん家は共働きでしょう。今日は両親揃って家に帰れそうにないらしくってね。
で、夕方スーパーで買い物してるさつきちゃんに会ったものだから、せっかくだからと思って」
嬉しいでしょー、何て母さんがカラカラ笑っている。
「……」
ちらっとさつきを見ると
「……」
我関せず、とばかりにみそ汁をすすっている。
「……大介」
「ん?」
「……とって」
「へいへい」
醤油を渡してやる。
「ん」
さつきは黙々と食べ始める。
「いつ見ても息合ってるわねぇ、あんたたち」
「そうかぁ?」
「……」
さつきはというと相変わらずのダンマリである。
ちなみに、さつきは普段からこんなノリである。
夕飯を終えて、まったりとテレビを見ている。
さつきは後片付けを手伝おうとしたのだが、
「休んでなさいって」
という母さんの一言でおとなしく引き下がった。
というわけで、いま二人並んでテレビを見ているわけなんだけど……
「……」
「……」
お互いまったく会話が無い。
気まずいとかそんなんじゃなく、これが普段のオレ達。
さつきは、無口というか『寡黙』という言葉がぴったりなやつで。
オレもお喋りじゃないから、一緒にいるとほとんど会話が無い。
ちっちゃい頃なんか、同じ部屋で一日中、会話も無く本を読み合っていた事がある。
こんなさつきなのだが部活のときは喋る。
それはもう喋るし、大げさな身振り手振りもするし、すごく可愛い笑顔だって見せる。
ちなみに、演劇部だからなのだが。
だが、オレの前では、部活で見せるような表情はしない。
いまみたいに無口で無愛想で……
「……」
オレって、嫌われてんのかね?
クテッと不意にさつきがもたれかかってきた。
「んぉ?」
「……」
静かに寝息をたてている。
「あら? さつきちゃん寝ちゃった?」
母さんが手を拭きながらやってきた。
「客間に布団敷いて、寝かせてあげなさい」
「……いいのかよ?」
「なんなら、あんたの部屋でも良いわよ」
「おいっ!」
親が不純異性交遊を促進させてどうする!!
母さんが深い深ぁい溜息をついた。
「まったく、このヘタレが。
男だったらガッツンガッツン行っちゃいなさい」
「どこにだっ!」
「……ん〜」
さつきが呻く。
「……」
起きる気配は無かった。
「いま、ホッとしただろう〜?」
「う、うっせえ」
母さんがニヤニヤと笑っている。
「ほら、とっとと運びなさいって。
夏姫(さつきのお母さん)にはあたしから電話しとくから」
結局、有無を言わせずに押し切られてしまった。
眠ってしまったさつきを抱き上げて、部屋に運ぶ。
言っておくが、ちゃんと客間であってオレの部屋ではない。
「……」
と、溜息をついた。
自分の臆病さに嫌になってしまう。
今だって、「母さんに言われたから」なんて自分に言い訳している。
本当はすごく嬉しいのに。
さつきと少しでも一緒にいられる時間ができた事、こうやってさつきに触れていられる事に。
「……」
言い訳無用で、ヘタレだよなぁ、やっぱし。
客間に布団を敷き、さつきを寝かす。
「……ん〜」
さつきは軽く身動ぎをしたけど、起きそうに無かった。
やや乱れた前髪を整えてやる。
「……」
暫くさつきの寝顔を見つめる。
いつからこいつに惚れちまったのやら……
きっかけは間違いなく、去年行われた演劇部公演。
そこにはオレの知らない、今まで見たことのないさつきがいた。
どの出演者より、主役よりも、オレにはさつきのほうが綺麗に見えた。
ずっと一緒だったさつきの、まったく気づきもしなかった一面を見せられて、
それから、さつきのこと目で追うようになっていって……
気づいたらもう、引き返せないほどさつきのことを好きになってしまっていた。
何度もさつきに告白しようと思ったさ。
でも、その……さつきのやつ、オレの前だとまったく昔のままなんだよ……。
無愛想というか、素っ気無いというか、淡々としてる、というか……。
オレって、こいつにとってその程度の存在なのかなって思うと恐くて……。
「はぁ……」
さつきは静かに寝息を立てている。
あまりに無防備な、その唇を凝視してしまう。
「……」
そっと、指で触れてみた。
すごく柔らかい。
ゴクリ、と唾を飲む音がやたら大きく聞こえる。
オレは、ゆっくりとさつきの唇に顔を寄せて……
「……」
危ういところで我に返った。
とっさに自分の頬をぶん殴る。
「つぅ〜」
意外と大きな音をしてしまった。
けど、さつきは相変わらず起きなかった
「……」
我ながら、なんてアホだ……。
二三度首を振ると、部屋を出ることにした。
「おやすみ、さつき……」
静かに襖を閉じると、オレは自室に戻るのであった。
………………………………………
静まりかえった客間。
寝ているはずのさつきの口が、微かに動いた。
「…………………………………………………………ヘタレ」
無論、その言葉がオレに届くはずなかった。
幼馴染ものって
何故か女の子がやたら献身的で、対する野郎が腹立たしいくらい鈍感で
というパターンが多いので、この話では野郎の方が惚れてる、というのにしてみました
男の方が幼馴染に気がある、っていう小説なりエロゲーなりってないですかね?
続きがキタ(゚∀゚)!!
いやその・・・すごいグッジョブです。
ゴッドジョブといっても差し支えないほどです。はい。
無愛想な幼馴染もタマンネー・・・
くそう、ラストがいいね!
名将vs迷将
今気付いた。スッゲー誤爆
>>305 エロゲだと幼馴染だけが攻略対称ではないので、主人公が特定の誰かに惚れていると色々と支障が……………
………つまり、
幼馴染しかでないエロゲがあればよいのでしょうか!?
何この12人のインフレ
アホなこと言ってスイマセンでした。
逆に君達、A(男、主人公)、B(女)、C(女)のシチュについて
意見を聞かせて欲しい
安易に3Pとかナシな
1、B←A→C
二兎を追う者一兎も得ず。悲しい結末が、君を狙うぜ!
2、B→A←C
おっとぼうや、そんな都合のいい話は少年誌にでも乞うご期待!
3、B→C→←A
切ないね、Bの気持ちが切ないね!
4、B→←C←A
通じあう女達に、Aは手出しできないぜ!シャンプーしながら鼻歌だってうたうぜ!
個人的には、最初4なんだけど、成長するにつれてCの気持ちが異性であるAに向いて、
3の状態になるというのが一押しです。
なんか暗めなのばっかですね
もっとこう、長い間素直になれなかったお互いが、思わず出くわした最高のロケーションについポロッと告白の言葉が出て、その一瞬は死ぬ程恥ずかしかったけど、その後はもう死ぬ程ハッピーな時間が訪れて…
その直後に「記憶喪失」という単語が過った自分に賞賛。
HuーHuーHuーHuー…
>313のために4でひとつ考えてみようかな
で、キャラ一通り作ってみたが書く時間下さい_| ̄|○
>314
幼馴染で凄く仲良くて、恋人一歩手前だったんだけど、ある日相手が記憶喪失。
自分の事「だけ」忘れられて、「実は嫌われてたんじゃないか」と思い悩む男(女)。
何処かで見たような気がするがなんともないぜ!
思い出した。受信元は幼馴染でもなんでもないFateの二次創作だった。
しかし「耐える」主人公って何か胸にキュンと来ないか?
好きなんだけど言い出せない。実は嫌われてるんじゃないか。アイツは俺のことをどう思ってるんだろうか。
悶々鬱々する主人公ってマジ切なくて胸キュン。
>>318 あまりウジウジしすぎるとヒくけど、適度な煩悶ならいいかもね。
>幼馴染で恋人未満、幸せ絶頂で記憶喪失
「うしとら」思い出した 懐かしい
うしおか。あれは実に幼馴染ってたなあ。
主人公がナチュラルに女落としてるから笑えるw
小ネタ、というかさつき×大介の続き投稿っす
といっても、さつきあんましでません
「お前、迷っている暇あったら告っちまえ」
「……それができたら苦労しない」
親友の横山龍と昼食を取っている。
何が悲しくて昼飯食いながら恋愛相談の真似事しなきゃならんのだ……。
言っとくが、オレが相談を持ちかけたわけじゃない。
悪いがオレは、他所様に恋愛相談できるような人間ではない。
一人で抱え込むタイプだっ!!
……いや、偉そうに言うことじゃないな、うん。
その日、良い天気だったので中庭で弁当を食べることにした。
ちなみに、さつきもオレのいるベンチから離れたところで、友人たちとご飯を食べてるのが見える。
見るとはなしに、友人と談笑してるさつきを眺めてしまう。
さつきが、こっちに視線を向け、一瞬目が合う。
(……大介、一人で空しくない?)
(……巨大なお世話だっ!!)
距離も相当離れてるし、目が合っただけというのに意思の疎通ができるオレ達って……。
さつきはまた友達と話し始め、オレはオレで食事を再開したんだけど。
「よぉ」
「おう」
ビニール袋を提げた横山龍が、何時の間にかオレの前に立っていた。
「お前、一人で中庭でお弁当かよ……さみしくない?」
「別に良いだろ。あんまりにも天気が良いもんだから、さ」
「ま、たしかに」
龍がオレの隣に座ると、菓子パンをもそもそと食べ始めた。
「龍、お前それだけで足りるのか?」
こいつも運動部のはずだが……。
「あ? もう学食で食ったよ、これはデザート」
「なるほど」
こうして、何だか分からないうちにこいつと昼飯を取ることになってしまった。
龍はオレと同じく結構無口な方なので、会話が無い。
気づくと、俺はまたさつきの方に視線を向けてしまう。
「……お前さ」
「ん?」
クシャクシャとパンの包みを丸めながら、龍が話しかけてきた。
「……さっきから内藤(さつきのこと)を見ているな」
さりげない口調だったのだが、思い切りむせてしまった。
慌てて、お茶を飲む。
「な、な、な、なっ!!」
「ふうん……やっぱりなぁ……」
こいつ、ニヤニヤと笑ってやがる。
「……ん、んなわけ……」
「ここで一人で食ってるのもそういうわけか……」
「か、勝手に話を進めるんじゃねえよっ」
「ただ、ストーキングまがいのことは止めた方が……」
「人聞きの悪い事言うなっ!!」
思わず、立って声を荒げてしまった。
中庭で食事を取っている他の生徒達が、こっちを見ている。
「うぁ……」
無論、さつきも見ていた。
慌てて座る。
龍は平然としたものである。
こうして、よく分からないうちに、冒頭の会話に発展していた。
うまく龍に乗せられて、さつきの事を話してしまったのである。
龍とはかなり気が合うし、こいつは他人に言いふらすような男ではない。
それに何より、こいつは……
「お前と内藤って長い付き合いなんだろ。たぶん、大丈夫じゃないか?」
「お前と一緒にすんじゃねえよ」
こいつは……この横山龍という男は、すでに人生の勝ち組にいるのである。
「ん〜」
「美人で、年上で、止めに幼馴染みだっつー先輩とお付き合いしてる横山さんとは違うんですよっ!!」
できる限りイヤミを込めて言ってやるんだけど、こいつは平然としたものだ。
勝者の余裕か、くっ。
こいつは去年の一学期、まあつまり入学早々の一年生の身で、
学園でも五指に入るっつー美人な先輩とお付き合いを始めたのである。
で、聞いてみると、何でもその先輩とは幼馴染みだということ。
一時期すげえ騒ぎだったな。
周囲の男子連中は妬っかむは、ガラの悪い先輩方に校舎裏に呼ばれてたり、とか。
龍はそういった連中全て、実力で退けているが。
まあ本音を言えば、見事幼馴染みをゲットしたこいつを羨ましく思う。
オレもこいつみたいにって思うし、だからさつきの事を話してしまったんだけど……。
でもなぁ……。
「フラれて、今までの関係も何もかも全て、ご破算になるのが恐い」
「……」
ぎくり、とした。
オレの不安を思いっきり言われてしまった。
「……図星かよ」
「……何で?」
「……俺もそうだったし」
龍が、雲一つ無い空を眺めている。
「いや、もっとヤバイ状況だったな。
喧嘩というか、何というか……」
「……」
まじまじと親友の顔を見つめてしまう。
「……俺が一方的に悪くて、もうダメだってずっと思ってた」
「何したんだ?」
龍は苦笑いして、とても言えないと首を振った。
「気まずくなって、疎遠になっちまって。
でそのままお姉(龍は彼女をそう呼ぶ)は進学で遠くに行っちまうわで」
「……」
「まあ、一年近くお互い便りも何もせず……。
これで俺が他の所に進学してたら完全に終わっただろうなぁ……」
「別のとこ、行くつもりだったのか?」
「最初はな……でも結局ここに来ちゃったけど……」
「……何で?」
「まあ、実家の方でもいろいろあったんだけど……やっぱ未練かなぁ……」
「……」
それでちゃんと、よりを戻してしまうとは……。
「で、再会したとき大丈夫だったのかよ」
「それがな……」
龍はその時を思い出しでもしたのか
「お互い、昔のまんまだった」
カラカラと笑っている。
「ま、それからたったの二ヶ月ちょいで、ゴールしてしまったというか」
「……」
呆れてものが言えない。
「なあ……」
「ん?」
「思ったんだが……お前の話、全然参考にならないというか……
……単なる惚気を聞かされただけ、というか……」
「俺もそう思った」
「……殴っていいか?」
「それより、時間がやばいぞ」
「げっ!?」
まだ弁当半分近く残っているのにっ。
大急ぎでお茶と一緒に流し込むようにかきこむ。
「ま、俺が言いたいのはな」
「……」
「当たって砕けてみたら、うまくいった、ということ」
「……一応聞くが、砕け散ったらどうするつもりだったんだ?」
「どうって、お前……」
龍が笑った。
「残りの学園生活、鬱になって過ごすだけだっただろうよ」
「やっぱりお前の話、全然参考にならねえよっ!!」
329 :
書いた人:04/12/29 01:20:47 ID:OuOV9/CK
というわけで、友人からの後押し編
というか、これって励ましてるんだろうか……?
幼馴染には後押ししてくれる親友が必須だと思い知らされた。
グッジョーブ。
人
( 0w0)グジョバ ウェーイ
少し思いついただけなのですが…
小さい頃(小学校低学年?)、それほど仲は良くなかったけどずっと片思いしてた@[ ]に、
思い切ってラブレター出したけど、それにA[ ]も解らぬうちに相手が引っ越した。
高校生の時に相手がこっちの高校に編入。そのとき相手はそのことをB[ ]、自分はC[ ]。
@男の子
女の子
A気付いてもらえたのか
気付かれぬままなのか
B、C覚えていた
覚えていない
どう当てはめれば一番萌えるでしょうか。
ストーリー含めて考えてみてくださいませ。
うわーー前回書いたの20日も前だーー(^^;
その上、レスさえしてない… 申し訳ございませんーーmOm
ちと、プログラム仕事がデスマーチ入ってるんで、
超超遅筆進行まっしぐらな状態でありますが、
ともかく、続きを投稿させて下さいませmOm
文章ヘタレで申し訳ないです…mOm
哲郎は慌てる。慌てるしかない。
何故、彼女がこんな神奈川の隅に突然現れる!?
どうして!? 何故!?
疑問が何度も頭の中を交錯するが、目の前には
胸の中でボロボロと涙を流している女の子。
それも店の服のままでいるから目立って仕方がない。
流石に周囲の人々も、
男と女の人情ざたに興味の目を向け始めた様だった。
その視線を感じて青ざめる哲郎。
ヤバイと心の中で叫んで、
さっとナツと呼ばれた少女の手をとって、
そのまま彼女を引っ張り始める……
「あ……哲……ちょっと……まってな…哲……」
せっかく感動の再会といった所なのに、
相手の男にぐいぐい引っ張られて口を尖らせるナツと呼ばれた少女。
しかし、哲郎はしゃにむに彼女を
自分の家の方に引っ張っていくしかなかった。
とにかく彼女を自分の住むマンションまで引きずって
自分の部屋まで連れ込むしかない哲郎。
じっと考えると、女の子を強引に自分の部屋に上げたわけで
物凄い大胆な行動といえたのだが、
流石に今の哲郎には、それを意識するだけの余裕がなかった。
自分の部屋に転がり込んで、ゼイゼイと息を切らす哲郎。
冷や汗というか、滝汗というか…。
今までの鬱な自分が嘘のようであった。
「もー、哲郎……強引やなぁ………
幼なじみやからって、いきなり自分の家に連れ込む事はないやろ?」
ナツと呼ばれた少女は、強く握られた自分の腕の跡を見て
更に口を尖らせるしかない。
「そう言う問題かっ!? っていうか、
どういう状況なんだっ、俺は今っ!?」
哲郎は床に突っ伏して、この有り得ない状況に叫び声を上げるしかなった。
そんな哲郎を見下ろして、眉をひそめ冷ややかな視線を送るナツ。
「いちおう、感動の再会ってヤツやと、思うんやけど?」
叫び声に表情を曇らせて、ナツは哲郎にそう返す。
その返事に、哲郎はガンガンと床に頭を叩き付けた。
「馬鹿なっ!!」
全く有り得ないナツの言葉に、哲郎は思いきり叫んだ。
長瀬奈津枝……子供の頃からの愛称はナツ。
昔、父親が大阪で働く事になって、小学校1年に大阪に引っ越した先で
哲郎の家の正面、3軒横にあった饅頭屋の娘だった。
生まれた時からずっと幼なじみという、そういう関係では無かった。
というか、そういう関係は相当稀であろう。
しかし、同い年の子が小学校1年から近所にやってくれば
そこから「幼なじみ」になるのは、無い事も無い話だ。
東京から引っ越してきたという珍しさもあったし、
何より、奈津枝は勝ち気で男勝りな女の子だったから、
自分の顎で使えそうな男の子が近所に引っ越して来た事は
彼女のガキ大将的な一面を刺激した。
近所の子供の中で、リーダーシップを握っていた彼女だから
『近所付近の新入り』の面倒を見るというのは、
使命感の様なものだったのだと思われる。
仲は直ぐに良くなった……というか、強引に面倒を見られ始めて
仲を良させられた……というのが正しいか……
母親も、大阪という新天地に目を白黒させていたから
自分の子供を勝手に支えてくれる少女が現れた事は
渡りに舟だったのだ。
何より彼女の家業の饅頭屋『伊三郎』は、
長く続く近所の老舗な店だったので、
そこの一人娘と息子が仲良くなったという事は、
割と新参者の近所付き合いをスムーズにさせてくれた。
ただし、息子を饅頭屋の丁稚に差し出すという犠牲を伴ったが……。
『哲はウチの子分なんやから、ウチの店を手伝うんは当然の事や!』
本当に子供の頃の、ナツの傲慢な台詞を思い出す。
そう、いつの間にか、哲郎は子分になっていた……。
ナツと一緒に、饅頭屋の手伝いをしていた頃が脳裏に浮かんだ。
ただ、少し引っ込み思案な所があった哲郎には、
その時は、それでも良かったのかもしれない。
少なくとも、奈津枝という近所の同年代における太陽の様な存在の
『子分』になれたわけで、おかげで他の男子とも女子ともの和の中に入れた。
その頃のナツは、間違いなく真夏日の太陽の様な存在だった。
それはキャラクターというヤツだから、どうともできないモノだと思う。
それから段々と月日を重ねた。
小さな頃の幼なじみというヤツは、年を取る毎に
男の子と女の子と分けられて、お互いの距離を生じさせるものなのだが
流石に、家の正面3軒隣は、あまりに距離が近すぎた。
その上、ナツに顎で使われ、店の手伝いをしていた日々なのだ。
親父さんやナツのお袋さんにも気に入られて、
付き合いが段々家族じみてきた。
本当の家族の方も、長瀬家のおおらかな人柄に安心し、
結局、息子が近所の饅頭屋の娘に振り回されるという現状を良しとした。
奈津枝は矢幡家に好き放題出入りしたし、
哲郎は奈津枝という中継を介さなくても、饅頭屋で働かされた。
奈津枝の親父さんが、息子が欲しかったというのがあったから
哲郎は体の良い代替えだったのだ…。
いや……、その頃から代替えではなく、
『本物』として仕立てようと言う計画も在ったようだが……
そんなこんなで付き合いも長くなってくると、
いつの間にか、小学校の凸凹コンビとして認知されるようになった。
学校が、悪乗りしたのか、本当に偶然だったのか……
クラスの振り分けでは、かなりの確率で同じクラスになった。
ボケ役とツッコミ役のコントラストがハッキリしていたから、
先生も楽しかったのだろう。
「饅頭屋夫婦」と先生からも周りからも、
よくよくからかわれたものだが、決まって奈津枝が返すのだ。
「ちょっと先生、そこ訂正してやっ!
饅頭屋の綺麗なお嬢さんと、冴えない丁稚やで、ウチと哲の関係は!」
「ちょっと待てっナツっ! 俺、丁稚かいなっ! それも冴えない…」
「そうや、お前はウチの丁稚や…」
「たいがいにせいやっ 俺は丁稚やあらへんっ
それにどの口で、自分を綺麗なお嬢さんと言うんや!?」
「この口や〜」
「自惚れもエエところやっ! ちょっとは表現慎みなさいっ」
「ウチは真実を語っとるだけのつもりやが?」
こういう「からかい」で、幼なじみという間柄は疎遠になるものだが
やはり彼女のキャラクターだったのだろう。
軽く流して、全部ボケ続けた。
そして、何時の間にか哲郎も奈津枝のツッコミ役が板に付いてしまった。
もし、その時間を交際時間とカウントして貰えるのなら……
もうこの時点で2人は公認の間柄だったのだろう……。
恋愛感情なんてヤツが、本当に2人の間に発生していたのか
それさえ今となっては疑問が残るが……
付き合いも6年となってくると、
どこか居るだけで安心感を感じている間柄になってくる。
多分、恋人なんて言葉をすっとばかして、もう家族になっていたのだろう。
クリスマスと正月をどっちの家で迎えるかとか、そんな関係なのだから
是非もない……。
それでも、不思議に呼吸が合う2人だったから、
会話も何もかもが、一緒にいるだけで安心できた……。
それが………
この今の状況では………
「ふーん……、マンションに1人暮らしか? 哲……
なんか……学生の癖に生意気やなぁ………」
奈津枝は哲郎の走馬燈の様な回想を割って、今の現実を指摘した。
部屋をキョロキョロと見回し、色々と周りを見回しては訝しがる。
「なぁ……、出流おじさんと、楓おばさん……どうしたん?
一緒に住んでるんやないの? …ここに?」
奈津枝は、至極あたりまえの様に、その事を聞いてきた。
その言葉に、哲郎の表情が急激に曇る。 反射的に哲郎は答えた。
「2年前に交通事故でどっちも死んだよ……」
哲郎は、ぶっきらぼうに返した。
なんかもう、文章ボロボロなんですけど、
こそこそーっと、ここで、超超遅筆進行、許して下さいまし…mOm
申し訳ございません……よろしくお願いいたします……
最初は何がなんだかわからなかったけど、だんだんオモシロそうな
感じになってきてますな。頑張ってくださし!
あと、・・・が多いのが治ってないのが気になったり。
スターオーシャンのスタッフもビックリだな。
>>332 @男の子
A気付いてもらえたのか
B覚えていた
C覚えていない
ところでストーリーって、ほとんど大筋は完成してないか?
あとは肉付けりゃいいだけだと思うが。
横山龍とお姉の話も書いて欲しいですなあ。
大分間が開いてしまいましたが、
その42です。
今年も僅かですがよいお年を。
来年もよい幼馴染を。
・・・・その42
秋の天気は変わりやすい。
ちょうどそんな風だった。
とても簡単なことを思い出すまで半日かかった。
要するに混乱していて、すっかり失念していたのだ。
だてに十年以上、気まぐれで怒りっぽい兄さんと喧嘩を繰り返していたわけではなく、
多少の苛立ちとか怒りとかそういうものは彼にとってすぐに忘れていいものだったらしい。
それどころか彼に対して私が初めてあんなに本気で怒ったことが嬉しいとか言い出した。
全然分からない。
そんな調子でいつものように笑って放課後一緒に帰ろう、などと言われたらどう対応していいか困る。
…まったく、すっかり、忘れていた。
私はそういう彼にいつも困惑して距離を上手くつかめないまま十三年近くも、幼稚園の頃から傍にいたのだ。
今更その法則に抗えるわけもない。
怒りが困惑に、困惑はすぐに溜息に変わって、それでいつも通りになる。
喧嘩なんてあっさり終了で、勝負にすらならなかった。
そういえばずっと私達は、そうだったのだ。
―なんだかなぁ、と思う。
思うけど、おかしくもあり、こういうものかもしれなかった。
きっとこれから何度も喧嘩をして仲直りをして泣かされて笑わせて、格好悪いことを繰り返すのだろう。
幼馴染以上の意味で一緒にいるのだから、今まで以上に増えるだろう。
それはなんだかこそばゆかった。
初めてのことばかりで戸惑うけれども、そうやって歩いていくのは悪くないかもしれない。
「こら。待ちなさい。何が気に入らないんだ」
「いいから人前でそういうこと言わないで」
渡り校舎を歩きながら、囁くように言い返す。
非常に恥ずかしい。
翌日になると天気は途端に怪しくなり、風はこれでもかというほどひどくなり、
大雨洪水注意報が出た結果四時前には強制下校が申し付けられた。
窓ガラスが横で風にあおられ揺れている。
志奈子さんはこの中でも塾に行くと言う。
…それで荷物をまとめて一人で帰ろうとしていたら、
幼馴染に見つかってなんでいつもそうなのかと機嫌を損ねてしまった。
それから昨日の今日だというのに大人気なくもちょっとした言い合いに発展し、
こういう変なことになってしまった。
昇降口で何度目かの応酬をひと区切り付けて休戦して、靴を取りに分かれる。
上履きを砂の溜まった靴箱に押し込んで揃えた。
朝より激しい雨音が聞こえる。
台風はやっぱり来てしまった。
昇降口にいても、外の風が流れ込んでスカートがはためいて舞う。
傘立てのビニール傘を引き出して、紺色を羽織る背中を探した。
もうそろそろ私の傘は古くなって寿命だ。
隣に並んで傘に回されたボタンを外していると、横の身体が揺れた。
傘の壊れた骨を高い位置で弄くり、彼が笑うのが雨音に霞む。
「機嫌直った?」
「イトくんこそ」
「さあどうだろうね」
雨の下に出てしまったので次の言葉は届かなかった。
軽く溜息をつき、いい意味だと思うことにする。
私も強雨の下に踏み出し、傘を差した。
湿った風に木々がざわりと吹き流される。
傘から流れ落ちる水流越しに背中を見ながら、一歩後ろをいつもみたいに追った。
とりとめもなく思考を漂わせて、かばんを肩に寄せる。
――そんな余裕のある下校は最初の五分で終わった。
「悪、ちょっと、階段上るの待って…」
「いいけど。大丈夫?」
郵便受けを覗いている私の肩に一度、手が触れたので顔を上げた。
幼馴染が頷いてぐったりと傘を置き、傍の壁に力なくもたれた。
隣に立って髪をハンカチで拭い、一緒に休憩する。
久し振りにここまで疲れた。
やっとたどり着いたマンションの玄関に濡れたかばんを一旦置き、暗い空を仰ぐ。
風が途中から凶暴なほどに荒れ狂い、私のぼろ傘は半分壊れてしまった。
おかげでイトくん以上に制服がびしょびしょで、気持ち悪い。
腕や腰に張り付いて湿気も混ざってべたつくし。
服が身体に重い。
緩く息をついてスカートの裾を持ち上げ、両手で絞った。
ぽたぽたと指の隙間から透明な水が溢れる。
そうしながら、何とはなしに、横を見た。
幼馴染がなんとも言えない瞳でこちらを見ていた。
私はスカートを元に戻した。
身体をずらして距離を取る。
イトくんが半端に目を逸らした。
申し訳程度に腕で隠してみる。
勝手にいろいろと思いおこすので弱った。
彼みたいに濃い色の上着でも着ていればよかった。
また二人とも風邪を引いてしまう。
変な沈黙に、長いことぼんやりしていた。
曲がった雨樋のせいか水滴の音がやけに石壁に響いている。
柔らかく、頭に手が置かれた。
目を上げる前に離れた。
「じゃ今日もお邪魔しようかな。お世話になるよ」
長身が屈んで荷物を取りあげて、階段に向かう。
何かを呟きかけて、口をつぐむ。
階段を上っていった背中が、遠かった。
寒いのに身体の中だけ温度が違う。
この前の台所みたいな気分だ。
足が寒くなくてもっと動きやすければ、外ではなくてうちの中で他に誰もいなければ、あの背中に腕を回すのに。
―私から触れたいと思うのは変だろうか。
濡れ手で半分壊れた傘を拾い上げ、紐を回した。
閉じられる傘と逆だ。
気付かないうちにボタンが取れて開いていく。
からだが熱かった。
風邪のせいだと思っていたのに、治らない。
では、続きはまた来年。
読みにくい部分、不自然な部分もあると思いますが
推敲の及ばない部分での実力不足です。
少しずつ精進させていただきます、ご指摘ご感想いつもありがとうございます。
年の瀬にお疲れさま。
今年も楽しみに待っております。
ひーこちゃんのきれいなやらしさがたまりません
お年玉をもらった気分だw
ほしゅ
>>352 今年も楽しみにしてますぜ。
なんか高校生の頃を思い出すってぐらい、現実感がありますね。それでいて空気が澄み
きってる感じ。
あけましておめでとうございます。
お正月といったら羽つきで幼馴染にこてんぱんに負けて顔に墨で何か書かれて、
洗おうと鏡を見に行ったらそこには逆文字で大好きとかそういうのがいいと思います。
その43.
続きは時間ができましたらまた。
・・・・その43
夏服と冬服の混じる衣替えの移行週間に、十月が来た。
グレーのスカートが秋雨前線に空気を含む。
週末には文化祭だ。
公立進学校の文化祭なんて簡素なもので、後夜祭も何もなく、二日目の夕方に撤収してしまう。
他はどうか知らないけれども、この地方ではそうだ。
打ち上げをするグループは皆で駅の方へ繰り出すし、帰る人はそのまま帰るのだろう。
次の日は代休で、それが終わればもう何の行事もない。
あとは受験生するしかないから、さやめきだした学校の雰囲気も少し寂しい。
窓際の背中をちらりと眺めた。
夕暮れの雲の脇で、ホームルーム中なのに前の男子と手紙を回していた。
これからの半年間は、推薦を今年中に受けるあの人も、実力不足の私も、ゆっくり過ごす余裕は減っていくだろう。
だから下校の時間は、イトくんが言うとおり大事なのだ。
湿った風が教室の窓から吹き込んで、教卓のプリントを飛ばす。
また雨が降るかもしれない。
秋の虫が鳴き始めていた。
一緒に帰ろう、と私から初めて誘った。
他愛もない会話をぽつぽつと交わしながら、歩きなれた夜道を二人で辿る。
雨のせいで先週の週末に軽く熱を出した彼は、私と違って月曜から冬服を着ている。
色が落ち着いた冬服は似合う。
と前から思っていたことを言うと、こちらが照れるような言葉を返されて赤くなった。
留学先の習慣を持ち込むのはやめてほしい。
先週電話を忘れて寝てしまった言い訳と謝罪が始まっていたので、思考をそちらに向ける。
とっくに怒っていないし、ふうん、と気もなく頷いて流した。
左手の絆創膏で無意識に髪を押さえて道路を見る。
薄闇に秋風が吹いている。
イトくんの笑い声が低く響いて夜に溶けた。
「懲りずにまた掛けてくれていいよ。とーさんとハルくらいしか自宅には掛けないから、大抵は空いてる」
「気が向いたらね」
背中を眺めて呟きながら、気持ちが柔らかくて和んだ。
一緒にいると安心する。
幼馴染なせいかこの人が好きなせいか分からないけれども。
人通りの少ない路側帯で彼の横に並んだ。
通り過ぎる家々から夕食のにおいとほのかな生活の賑わいが遠く聞こえる。
歩調が緩んで、私に合わせてくれた。
私は隣を見上げた。
イトくんは目を細めて一瞬こちらに視線を移して、また前を見た。
道路を帰宅の車が数台通り、自転車が脇の白線を越えていく。
澄んだベルの音がいつまでも耳に残った。
イトくんがふと口を開いた。
「そういえば、おまえは憶えてもいないだろうけど。春頃にたまたま、一緒に帰ったことがあったろう」
「そうだっけ」
鈴虫が細く雑草の奥から鳴いて草がそよいだ。
そういえばそんなこともあった。
まだフランスから帰ってきたばかりのこの人が同学年ということに慣れなくて、困っていた頃のことだ。
「それが何」
「うん。あれは嬉しかった。嫌われてるかと思ってたのに、そんなわけないじゃない、とかひーこが言うし」
本当に懐かしそうに目元を緩め、彼はふと沈黙した。
曇りがちな空を仰ぐ。
それから、眼を伏せてかすかに息をついた。
肩に触れていた濃灰色の袖が擦れて、歩調が緩まる。
手首が温かいものに包まれて引き寄せられるのに、逆らわなかった。
今年の秋は例年より寒い。
握りしめる手がそれで余計に暖かい。
視線を落とすと互いの袖が色違いだった。
「嫌なら放すよ」
静かな響きにただ指を曲げた。
握り返すことで答えにする。
そうして重なる手の体温に、不意に甘い感覚が蘇り脈が震えた。
心が読まれていないように祈りながら、握る手に弱く力を込める。
もう一度見上げると、幼馴染はどこか遠くを見ていた。
溜息を漏らして、街灯の影を過ぎる地面を眺めながら歩いた。
ゆっくりと公園を抜ける途中に、自然と喉から湧き上がって声になった。
「イトくん」
優しく見つめる視線を感じながら、言葉を探る。
「私が最近いろいろしてるの、変かな」
「ん。いろいろって、風邪引いたときに見舞いの床でキスしてくれるとか、風邪が移ったら寝間着で甘えてくるとか、
夜中に電話してくるとか辞書入りのかばんで殴りつけるとかそういうこと?」
「…その表現わざとでしょう」
「うん」
軽く睨むと、開き直った幼馴染に笑われた。
まあ間違ってるわけでもないし、その通りだ。
緩い坂道の奥に明かりが見える。
そろそろ近所の人に見られそうだし、離れた方がいいんじゃないだろうか。
手を抜こうとしたのに、放してくれなかった。
視線が揺れて、ぼんやりと浮遊した。
握る大きな手が遠慮がちに力を強めていた。
意識がそっと、熱湯に沈む。
「変じゃない。欲しくて困ってる」
降った囁きは低く、小さかった。
それで、耳に届くのが遅れた。
私は俯いて、脇を過ぎる車の音を聞いた。
>お正月といったら羽つきで幼馴染にこてんぱんに負けて顔に墨で何か書かれて、
>洗おうと鏡を見に行ったらそこには逆文字で大好きとかそういうのがいいと思います。
すんません、さわりのココだけでイきそうになりました。
萌えシチュの天才ですな、243殿は。
………………。(ばったり)
正月そうそう萌え死んだ…
ことしも243氏は絶好調のようでまことにめでたい!
シリーズだけでなく枕の小咄でまで!なんてこった!
今年もいそいそとついて参りますのでよろしくお願いいたします。ひらにひらに。
いろいろ戸惑ってるひーこちゃんもかわいかったけど、
やっぱりイトくんと一緒にいるひーこが一番萌えるね。
萌え殺人鬼様キター!!
小ネタに加えてイトくんがひーこちゃんにおまえ呼わばり…萌え死んだOTL
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
お正月から243様のが読めてくらくらしそうなほど幸せです。
冒頭の萌えシチュ、毎回楽しみにさせていただいております。
えーと、正月番組に影響されて書いた小ネタなのですが、
本編に使うには使いにくいので、これだけ置いていきます。
すいません。
まゆとみいちゃん・場外編『日常或いは平穏な日々』
「…あの、さ? …なんか今日、機嫌悪い、ね? 真由ちゃん」
ある日のお昼休み。
むしゃむしゃとお弁当を食べていると、たかちゃんにそんな事を聞かれました。
……ふっ。
「……わかり、ますか」
「……なんていうか、そのー、…また、藤井君絡み?」
ふ、ふふふふふ。
「ええ。…ええ、そうです。そうですとも。…聞いて、もらえます? たかちゃん」
こくこくこくと何度も首を縦に振るたかちゃん。
いやですねえ。そんなに何回も肯かなくともよろしいのに。
――ああ、そうです。瑞穂ちゃんの狼藉の事でした。
――ええ、そうです。昨日の夜の事でした―――。
「なーなー、まゆー。オマエ、コレ出来るんじゃないか?」
夕食の後、TVを見ていたみいちゃんが、そんな事を言い出しました。
「えー? 何です」
「これ」
言われて、覗いたTVに映っていたのは。……安○大サーカス?
「……なんですって?」
「うむ。ちょっと『ク○ちゃんですっ☆』って言ってみろ」
「い――、イヤですよっ! 大体、似てませんっ!」
「まあまあいいから。オマエもどっちかっていうとこーゆーきゃる〜んとした声だし?
絶対やってみたら似てるって、さあさあ」
「イヤです」
「まーゆー」
「……絶対、イヤっ」
まったく、何考えてんですかっ、馬鹿馬鹿しいっ。
憤然として背を向けて部屋に戻ろうとします。まったく、付き合ってられません。
「うわっ!?」
背後から、どっしりと瑞穂ちゃんが圧し掛かってきます。
「……まゆー、やってくれよー、絶対似てるよー、やってよー」
耳元に口を近づけて甘えた声で囁かれます。
ひ、や、ちょ、ちょっと、くすぐったいから耳に息吹きかけるのやめてくださいーっ!
「わ、わかったっ! わかりましたよ、やればいいんでしょうっ!?」
やったー。と無邪気に喜ぶ瑞穂ちゃんを睨みつけます。
「……『ク○ちゃんです』」
「んー、もう一回」
「『○ロちゃんですっ』」
「もっとハイテンションでっ! 可愛くっ!」
「『ク、ク○ちゃんですっ☆』」
「……あー、思ったよりあんま似てないわ。もういいよ、じゃあな」
「ひどいと思いませんかっ!? 何度もひとをはずかしめておいてっ!」
「……あ、あー、そう……」
昨日の事を思い出し、行き場の無い憤りに拳を固く握りしめます。
「――俺のほうこそ、悲しい思いしたぞー」
……背後から、イヤというほど聞きなれた声がしました。
「……瑞穂ちゃん」
「――ホントになあ。絶対似てると思ったのになー。予想を裏切られたよ、似てなかった。がっかりだっ」
「……みいちゃん? 言いたい事は、それだけですか?」
……横目に、たかちゃんがお弁当の乗った机や周りの椅子をわたしから遠ざけて片付けてくれているのが
見えました。
……いい友達です。本当に。わたしには、もったいないくらいに。
……それに、くらべて。
このひとときたら、もう、ホントにーっ!!
「――まちなさいっ! みいちゃんっ! 今日という今日はもうぜったいにゆるしませんっ!」
「そんなに怒る事ないだろーっ。ちょっとした冗談じゃねえかよう」
「アレをちょっとした冗談で済まそうとするのはこの口ですかっ!?」
ほっぺを掴んで左右におもいっきり、むぎーと引っ張ります。
「ごうぇんごうぇんほれがふぁるはっらほんろにごうぇん」
「反省してますっ!?」
「ふぁみりひはっへ」
「アナタの口から神なんて出ても信用できませんっ!」
「ふぉうひはいひょー」
「……信じましたよっ!? ホントにもうしないでくださいねっ!?」
とりあえず、それで手打ちと相成りました。
あんまり正月関係ないネタで恐縮ですが。
それでは、また今度は本編で会えたらいいなと思っております。
では。
まゆこさんは「きゃる〜ん声」・・・と _Φ(.. )
まゆたんかあいいなあ(´∀`)
書き連ねた妄想とか投下しようかどうしようか(´・ω・`)
374 :
名無しさん@ピンキー:05/01/08 18:59:04 ID:sBOg1Wjr
>>373 ぜひ投下を。
職人さんは多いにこしたことはないし。
冒険!CHEERS、見てると幼馴染モノが思い浮かんでしまう程の自分の素敵脳。特に今回の竹馬組。
こっそり>130の続きを今でも待っている
名スレハケーン
一気に読んでしまった。素晴らしいです(・∀・)
萌えー(*´∀`)
今年は頑張ってここに何か投下しよう……
いろいろな幼馴染が読める予感に今年も楽しみです。
>1スレ812様 ありがとうございます。まゆこえろいなあ(*´д`)
その44.
続きは時間ができましたらまた。
・・・・その44
昼休みがいつにも増して騒がしい。
お弁当後にお茶を飲んで教科書を眺めていると、教室の後ろから呼ばれた。
「ひーちゃん、衣装ってこの箱だっけ?」
振り返ってお弁当を仕舞い、最終稽古に向かうキャスト陣のところへ行く。
私は裏方なので後はあまりすることがない。
破れた布の修繕と体育館への搬入のお手伝いくらいだけれど、それはそれで少し楽しかった。
こういう、何かを作り上げるという行為はどこか好きだ。
いつの間にか文化祭は明日で、廊下を歩けば色づいている。
放課後のチャイムが飾られた廊下に響いて木霊する。
生徒会と実行委員以外は夜遅くまで残らないようにとのお達しが出ているので、皆ぞろぞろと校門を過ぎていった。
祭りの前は賑やかだ。
夕暮れに染まる昇降口で幼馴染と合流し、並んで歩いた。
久々に空は晴れ渡り、薄い雲が茜色に広がっている。
「よりさんたち、相変わらず仲いいね」
一緒に帰っていると、ちょうど通りがかったクラスの男子が
自転車を止めて途中の曲がり角まで道連れになった。
よりさんというのは「依斗」だかららしい。
横断歩道で別れて、並んで一緒に道路を渡る。
「相変わらずだって」
ぽつりと横で呟かれて困った。
そんなこと言われても。
顔を上げて隣を見る。
身体が近くて肘が擦れた。
本当は、何もなかったみたいにされても、毎日こうしていれば意識してしまう。
なのにどこかが変に穏やかだった。
時間がきて溢れてしまっただけなのだろうなと、ぼんやり思う。
土手の薄暗がりの、遠い夕焼けの色に記憶が流れる。
今更思い出すのも変だけれど。
高熱で眠る幼馴染の部屋に訪れて、多分それでいろいろなものが、お互いの間のなにかを接がしてしまった。
二人きりで空は夕闇で、柔らかい毛布の上だったというのに唾液だけを交わした。
唇を私が初めて重ねて、逆にゆっくりと貪られて舌を絡めた。
幼馴染はとっくに消耗していて、私もそういうのが初めてで応えるだけで精一杯で、その後抱き合う以上のことなんて出来なかった。
あれからブレーキが切れてしまったような気がする。
秋風はあの日例年以上に涼しく、帰り道で身体は芯まで冷え、
――風邪は当然のように移って、私のからだは緩やかに糸をほどいた。
「―信号、ほら」
低い声が届くと同時に肘が引かれた。
意識が現実に戻ると、目の前を車が数台走り抜けていった。
瞬きをしてから心臓の温度が一度下がる。
隣の幼馴染がこちらを見下ろしているのを、見返して、弱く袖を握り返した。
「危ないよ」
頷いてお礼を言うと深く息が漏れた。
腕を掴む手が離れて、見下ろす視線が優しくなる。
「明日が楽しみでぼんやりしてたかな」
「…兄さんじゃないんだから」
眉を顰めると、兄さんの長年の相棒は笑った。
それを見上げながら脈が僅かに熱くなって薄れた。
信号が青になったので横断歩道を渡り、色の薄れ出した空の下に影は伸びる。
街灯がちりちりと騒いで、点灯した傍を歩いて、触れる指先をどちらともなく絡めた。
放してくれずに囁かれた言葉が底で蘇って指が震える。
彼はあれから何も言ってこないし、私も聞かなかった。
嫌だったわけではなかった。
―ただ、私から答える言葉を探しているだけで。
髪が頬にこぼれ落ちて遠くでパチンコ屋の車のアナウンスが聞こえた。
いつか橋田家の居間で聞いたような宣伝は、遠ざかっていき、虫の音に消えた。
意識せずにそっと溜息を漏らして空を視界に収めていく。
こうして一緒に帰るときも。
今週でもう着なくなる夏服も。
大人になるにつれて薄れて、忘れていくんだろうか。
幼稚園からの思い出をいちいち鮮明に覚えていないのと同じように。
半年前には一緒に帰ることすら困って戸惑っていたように。
「ひーこ、今度の代休暇?」
坂道をコンビニ周りで上り(イトくんが雑誌を買った)、
マンションが見えてくる前に、聞かれたので見上げた。
「うん。暇」
「よし。デートしよう。行きたいところがあったら教えて。なかったら散歩しよう」
「…家じゃだめなの?」
「どっちの」
真顔で聞かれて、顔が熱くなって弱った。
そういう意図じゃなかったのに。
否定も出来なくて俯いて、少し足をはやめた。
隣から余裕そうな苦笑が届いて、重なる影が夕陽の奥に溶けていく。
これっていつから続いてんの?
いつまでもグダグダと長い。
>>384 手っ取り早く抜きたいなら他のスレに行きな
俺はこのゆっくりしたペースを楽しんでるんだよ。
というわけで毎度GJ。
誰かさんの言う事は放って置いて、マイペースで頑張ってください。
同意
しかしあまりにも非エロ部分が長いと384の同類も沸きやすくなる訳で……
頑張ってバランスを見極めて下さい
いや、これでも充分エロいと思うが。
このわびさびの中にふんわり漂うエロを
理解できないとは・・・人生損してますぞ。
エロパロ板は抜くところじゃなくて読むところだと思ってる俺は
文芸板逝ってよしですかそうですか(´・ω・`)
そろそろ本番がきそうな予感( ゚∀゚)
俺は読んでて十分エロいと思うけれど、
ちんこ入れなきゃエロじゃないと思う人間がいるというのもわかる。
>1
>■■ 注意事項 ■■
>*職人編*
>スレタイがああなってはいますが、エロは必須ではありません。
>ラブラブオンリーな話も大歓迎。
>書き込むときはトリップの使用がお勧めです。
しかし、このスレではそもそもエロは必須じゃない。
エロなしOK。煽る方が悪い。
>>388 同じく読むところだと思ってた・・・
エロの有り無し関係なく、良作が読めるなら文句なんて全く無いです。
いや、基本的には抜くとこであって、スレによっては許容されてるってだけの話だろ。
そこは間違えんなよ。
このスレの場合は萌えがあれば無問題。
243氏は今更バランスはとりようがないのでこのままでいいんじゃない?
俺は個人的には萌えもないと思うので評価しないが。
なんでそう思うんだろうと読み返してみたが、キャラの外見がわかんないんだよね。
外見のわからんかつ暗い女には萌えないと。
ていうか王道幼馴染みもの書いてるみなさんの続きぷりーず
>392
いや別にお前が何をもって評価しようがどうでもいいけどさ、煽るような書き方は止めろよ。
何か意見があるなら発言しようが構わないけどさお前のは只の煽りにしか見えないんだよ。
後、スレに歓迎されてない作品なら兎も角、人の作風にケチつけるなよ。
そんなの書き手の勝手だろ?
不足等も多いですし、読んでいただけるだけで実際ありがたいです。
溜息が多い子を可愛いといってもらえるのは自信がなかっただけ
時折そう仰ってくれる方がいてとても嬉しかったです。
あと半濡れ髪と濡れた白い制服に透けて肌色とか電話で名前呼ばれると感じるとか手をにぎるとぴくりと震えるとか
そういうところにえろいのを追求しすぎているのは趣味で悪いくせで。
とりあえず、そろそろなので。
連続になりますが、その45です。
・・・・その45
早い帰宅だったので、お母さんがいなかった。
さっきのやりとりのせいか妙に沈黙してしまい、玄関で視線を微妙に交わす。
とりあえず上がって、着替えないまま二人でお茶を飲んだ。
取り込んだ洗濯物がローテーブルの脇に積み重なっていて、湯呑が熱い。
私は手を洗うついでに左指の絆創膏を張り替えようと、箱ごと持ってきて急須の傍に置いた。
イトくんが腕時計を眺めて、少し考え込んだ。
「おばさん六時上がりだよね」
「…うん」
「じゃあちょっと無理かな」
ぽつりと呟かれて、なんともいえない気分になる。
何をするのが無理なのか分かるのは、今だからで、
夏休み頃の私だったら気付かなかったかもしれない。
遠くで車の音が響き、二人しかいない居間が涼しい。
こういうときに気の利いた答えが言えればいいのに。
どちらともなく軽く息をついて、視線を合わせる。
私は背後の窓を見上げて立ち上がり、カーテンを半分閉めた。
湯呑がことりと音を立てる。
低い声でそっと、幼馴染に名前を呼ばれた。
隙間から流れ込む秋の空気に聞きなれた声がしみていく。
「なに」
「言いたいことがあるから、そのまま聞いて」
肩越しに振り返ろうとすると、止められた。
「振り返らないでくれると助かる」
逆側のカーテンに手をかけて、頷く。
ほとんど夜で星が明るく、私の正面だけガラス越しに外を眺めることができた。
顔を僅かにずらすと、暗い窓におぼろげに彼が映る。
ソファに座って、机の湯呑を見ていた。
私も自分の靴下に視線を落とした。
「それで、なに」
「分かっているだろうけど、前も言ったけど」
カーテンに触れていた指が、震えた。
額を窓に軽く寄せる。
「…うん」
「抱きたいと思ってる。正直今も欲しい」
静かな口調なのに、背中には熱の塊みたいに深く食い込んでいく。
届く声が深かった。
動悸が勝手にはやくなり皮膚を内側から熱い板で殴っている。
イトくんらしくなく落ち着かない口調が僅かに震えて足元に伝染する。
「嫌なら待つよ。そうでないなら、大事にするから、緋衣子としたい」
「うん、」
声が喉から出たかどうか分からなくて、不安で、でももうなんだか、
…さっきからうんとしか答えていない気がするし、それ以上にこの状態が切なかった。
震える肺から溜息を漏らして、一度目を瞑った。
それから、頼まれたのを無視して振り返って、
机の脇を回ってソファの傍で膝を崩れるように折って、
触れられる前に私から顔を伏せて腕を幼馴染の首に絡めた。
何度か名前を呼んだのは掠れていてきっと声にもならなった。
自分でも今の気分がどんな感じなのか分からなくて、でも、涙が出た。
多分私もずっとこのところそういう意味で触りたくて仕方なくて、
やっとこうして意識することができて嬉しかったのかもしれない。
でもそんなのはどうでもよくて。
腕に力を込めてソファに彼を押し付ける。
「ひーこ」
髪を大きな手に梳かれて、呼ばれて、静かに抱き返された。
抱きしめられて髪を撫でられて、名前を呟かれてあたたかさにどうしていいか分からないまま呼び返す。
ぼうっと、震えそうな熱さに包まれて身体を寄せていると、ふと、空気がぶれた。
「ちょっと、顔上げて」
耳の脇でイトくんが呟き、腕を緩めたのでぼんやりと離れる。
顔を押さえられたまま、何度かキスをされて、段々と押し包むように唇を舐められ、中に割り込まれ、唾液が溢れた。
歯の裏をなぞられるように熱いものが口の中で蠢き、肩から腕までが弱く痙攣する。
おずおずと舌を突き出して絡める。
落としたままの睫毛が震えて、薄く開いてまた閉じた。
狭い口の中で別の肉が触れ合ってそれがイトくんのものだというのに、たまらなく心が震えた。
肘の先までが甘いものに浸されて、しがみつくのが難しい。
時間の感覚がなくなるままそうしながら、時折酸素を求めて離れ、そのたび別の人の唾液が舌の奥から喉を伝った。
いつの間にかソファに背中が埋まっていた。
頬から耳へと髪を梳かれて、絡められた舌が離れる。
下唇を弱く挟まれ、感触が喉のほうへ移るのに大きな息が湿った。
「イトく…、」
喉を吸われて声帯の機能が消えた。
制服越しに腕から、肩の上から、鎖骨あたりを撫ぜられて何がなんだか分からなくなる。
「少し、触るけどいい?」
答えも聞かずにリボンの脇あたりを大きな手に探られて喉が浅く喘いだ。
自分で足の奥に触れたときみたいな痺れが背骨を押し込み、肺を熱くする。
幼馴染の顔が首筋から肩に埋まると短い髪が頬から顎をくすぐったくなぜた。
「……ぁ、ちょっ、あの、」
「何?」
手が頬に戻り、触れるだけのキスをされ、覗き込まれて顔が熱くなった。
なんていう顔で見るのだろう。
目を逸らして、頬の骨ばった手に触れる。
そこから指で辿って腕時計を包んで、それから見返す。
一旦腕が離れて、彼が時計に目をやった。
そうして深く息をつくように笑った。
頬と耳に一度だけ軽く触れ、身体を離す。
「やっぱり、時間的に無理か」
朦朧と時計を見、六時を回っているのを確認して、小さく頷く。
「分かった。いきなりしてごめん」
優しい声だったのでなんだか切なくなった。
うん、とこぼして、皺になった濃色の襟に手を寄せる。
まだ息が途切れて声が上手く出なかった。
「ひーこがいいときに、今度、きちんとしよう」
「うん…」
やっぱり、うんとしか答えていない気がした。
馬鹿みたいだ。
私は幼馴染のいつしか大人になった肩に顔を埋めた。
そうして疼いたままの身体を抱かれて、細く溜息を漏らした。
他の職人様の投下も心待ちにしつつ。
続きは時間ができましたらまた。
(*´Д`)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア / \ ア / \ ア
待っててよかった…
しまった、見るんじゃなかった・・・
朝からギンギンになってしまいますた。
ううむ、困った。
うわ〜……なんかいよいよだ、いよいよだ。
でも、住人に急かされてるような気がして、その辺がちと気になった。
偶然?
392で気づいたんだけど、作者の発言で
ひーことイトくんの外見詳細って出ましたっけ?
想像にお任せする???
くっはぁあああああああああ!えろいえろい。
>あと半濡れ髪と濡れた白い制服に透けて肌色とか電話で名前呼ばれると感じるとか手をにぎるとぴくりと震えるとか
(*゚∀゚)ハァハァ
うーむ。いい感じだ。
>あと半濡れ髪と濡れた白い制服に透けて肌色とか電話で名前呼ばれると感じるとか手をにぎるとぴくりと震えるとか
>そういうところにえろいのを追求しすぎているのは趣味で悪いくせで。
素晴らしい癖であります。敬礼!
ちょっと待て、イトの野郎経験済みか!?
イトくんがひーこのこと緋衣子って呼んだ緋衣子って呼んだ(*´Д`)
>>376 ギャースorzスイマセンホントスイマセン
また思い付き次第書き加えますorz
>>243氏
>他の職人様の投下
そうは言うがな、大佐(ry
エロや萌え以前に言葉の紡ぎ方が美しい人。素敵ですよ。
まぁ、「所詮、俺は俺」を心情に落としてみようかなと思ったり思わなかったり。
起きてたら落とします。今度のは多分大丈夫ですorz
(・∀・)ワクワク
かーみーさーまーーーー!
キターーーーーーーーーーーーーーー!
今頃読んで泣きそうですよ!
また、同志らのツッコミも素敵ですよ!
藻前らにいちいちドウーイですよ!
特に
>>407!凄く気になる!
あと
>>408!着眼点GJ!
というわけで。
>>409も、「俺は俺」でがんばってください。
落としたつもりがまだだったというオチかよ俺orz
男:東野一真
女:村山由佳
次より投下します…。
「はいコレ」
…ああ、もうそんな季節か。道理で教室が騒がしい。
「まぁ、なんつーか…、達筆だな」
「でしょ?」
チェック柄の小洒落た小さい箱に挟まれた紙に書いてある「義理」の文字。ご丁寧に筆ペンによる執筆。いやそりゃ、文字は見事なもんだが…
「んなこと、誇ってどーする。てかさ、ガキの頃から渡しときながら義理はねーだろ?」
「だ、だからぁ!アンタ以外にもあげなきゃいけない人はいっぱいいるんだってば!義理だって言ってるでしょ!?」
「ほー。その割りにはよく風の噂で『由佳は一真にしかチョコあげない』って聞くけどねぇ…」
俺のニヤケ面と反比例して由佳の顔はどんどん膨れっ面になる。顔をほんのり赤らめながら。
「う、うっさいなっ!去年そんな噂がたったから今年は人気の無いところで渡したんじゃない!不服だったら返しなさい!」
「不服とは言ってないが…」
包みを広げる。…まぁ、外装は凝ってる方だが、中身は………
相変わらずというか何と言うか。
「…バレンタインって男に煮っ転がし渡す日だっけ?」
「にっ…!失礼ね!トリュフ型でしょ!?アンタの口には勿体ないくらい上品な代物よ!」
「へぇ、味噌でコッテコテに味付けした里芋の煮っ転がしって高級だったのか。お袋、酒のツマミによく作ってるけど…」
そこまで言って気付く。
「ゆ、由佳さーん?」
「……」
ばしっ
肩に置こうとした手が女とは思えない程の力で払い除けられる。
…ちと、言い過ぎたか。
由佳の顔は怒りを通り越した無表情だ。今にも「さて、一真をカカオにすればどんなチョコが作れるかしら?」とでも言い出しそうな顔。
こうなると機嫌取りの難易度がかなり高くなる。かといって、普通に謝ろうものなら三日は奴隷にさせられる。それはそれで自然に由佳の傍にいられるから悪くは無いのだが、一日で諭吉が軽く飛ぶのはキツい。キツすぎる。
どうしたものか…。
………!
あった。話を誤魔化す事ができる上に俺が満足できてしまうという最上の手が。
ただまぁ、由佳が受け入れるかどうか。
…そこは幼馴染としての腕の見せ所か。
よし。
「まぁ、落ち着いて…」
「…何」
「これでも食え」
そういって箱から取り出した煮っ転…トリュフ型のチョコを由佳に渡す。
「え?な、何で…?本当にいらないの…?」
まだ態度は強気だが、言葉の端々から不安さがにじみ出ている。それだけ、俺に食わせる為に一生懸命作ったということか。畜生、こういうところが一々可愛い。
「違うって。お前が食ってから俺に食わせれ。」
「……はぁ?」
由佳の頭の上には?マークが飛び交っている。いや、だからだな、
「お前が俺に食わせて、って頼んでるんだが」
「あぁ、……手で?」
「いんや、口」
「口?」
「そう、口」
余白が数秒。長い。思考の回線が一杯一杯のようだ。
「く……ち…?」
その次の瞬間。
「なななな何言ってんのよアンタはぁーーー!!!」
顔が文字通り火でも吹くかのように真っ赤に。おお、やっと理解しやがった。つーかはたくな痛い痛い痛い。
「だからお前から直接、口移しでだな…」
「うっさい!説明すんな!この変態!」
むぅ、ここまで取り乱すとは。いや予想できたけど。
仕方ない。奥の手だ。
「…イヤか?」
決まった。左斜め下を寂しそうな顔で見つめる「哀愁の表情」。悲しそうな声の中に甘えるような声を混ぜるのがポイント。「罪作りな俺」作戦とでも名付けるか。そんなこたぁどうでもいいんだが。
「うっ…」
よし効いた。由佳の手が止まる。だが、ここであえて俺は何も言わない。沈黙で攻める。
「あー…ぅー…」
かなり困惑しているようだ。何か言おうとしては口籠もる。
「あーもー!しょうがないなぁ!」
勝った。開き直りやがった。しかもやたら声がデカい。それはアレか、照れ隠しか。畜生、こういうところが一々可愛い。二回目。
「よっしゃ。じゃあよろしくー」
由佳に歩み寄る。ビクッと体を震わせるが、深呼吸で息を整えている。
「………。」
…そんな風にされるとこっちにまで緊張が移るんだが。
由佳が実に気恥ずかしそうな顔で俺を見上げる。
「目、閉じて…?」
その言葉だけで心臓が跳ね上がった。
…ヤバい。そんな艶っぽい声出されると死ねる…。
由佳の両手が俺の胸に添えられた。胸板から由佳の手の平の温かみが伝わってくる。今になって緊張が最高潮に達する俺。
「あはっ、一真の心臓も凄いどきどきしてる…」
…ヤメテクレ、羞恥死しそうだ。あああ、自分から言い出しておいてこの始末…。
由佳はもう背伸びすれば俺の顔まで届くところにいた。
由佳の腰に軽く手を回す。
「いくよ…?」
由佳がチョコを口に含んだ。
「んんっ…」
一瞬にして頭が真っ白になった。
唇が触れ合う。少し顔をずらすだけで擦れ合い、また深く求めて。もどかしい程の昂奮。
「ふっ…んぅ……」
少しずつ由佳の舌が滑り込んできた。甘い風味が口に広がる。
確かに、見た目ほど味は悪くないが、こっちは悠長にそれを味わえる程の余裕は無い。
迎えるまでもなく、こちらから舌を擦り付ける。
由佳は一瞬たじろぎ舌を引っ込めたが、物足りなかった俺はこじ開けるように舌を突っ込み、由佳の舌になすり続けた。
「んぁっ…、んふぅ……」
至福だった。震える舌が由佳の柔肉に擦れる度に味わった事の無い幸福感が体を支配する。その意識はなおも舌をザラつかせ、快楽を求める。
薄目を開けて見た。上気した肌、緩く閉じられた目と共に、今まで見せたことの無かった由佳の健気な顔がすぐ近くにあった。
…たまらん。
片方の手を由佳の肩に置き、もう片方の手を頭に伸ばした。由佳の髪を解き、掻き上げる。女独特の良い香りが鼻をくすぐり、冷めない昂奮を更に熱くする。
そして、後頭部に手を当て、撫で付けるように引き寄せる。舌と舌がもっと深いところで交わり合うように。
その快感に耐えられなくなったのか、今まで受け身に構えていた由佳が少しずつ、自分から接触を求めるようになった。
最初は恐る恐るだったが、ゆっくりと優しく舐めてやりながら導くと、自ずとこちら側の奥まで欲するように。
できる限り広い面積で舌を重ね合わせ、傷を舐め慰める動物の要領で、
お互いに快楽を与え続け、お互い快楽に溺れる。
擦り合わせ、こね回し、つついては、絡めて…。
もうチョコレートの味なんて残っていない。それでも俺達は息をするのも忘れて、実に濃厚なファーストキスを味わい続ける。
…息?
ああ、本当に息するの忘れてた。いい加減、鼻呼吸じゃ苦しいか。名残惜しいがそろそろ…。
そう思い、顔を離そうとした。その時、
「ひやぁ…」
舌に吸い付いたまま、呻くように由佳が言った。
嫌?何が?
「もっとぉ……」
火照りきった顔。
消え入りそうな声。
子供のように駄々をこねる瞳。
…。
理性なんぞブッ飛んだ。
俺は左手を由佳の背中に手をやり、強引に抱き締め、体を密着させる。右手は無理矢理由佳の顔を上げさせる。
そして舌を口の中で浸し、唾液をたっぷり絡ませて由佳の口の中へ送り込む。
由佳も俺の脇から背中を鷲掴みして俺に応え、唇をはむ。
そしてまた舌を絡めた。
さっきよりも激しく。舌がとろけそうになるまで、力いっぱい。
柔らかくて、気持ち良くて…。
何も考えたくなかった。とにかく一秒でも長くそうしていたかった。
「っぷは!」
なので、今度は息が切れるまで頑張ってみた。
「はあっ、はあっ…あー…、ってアンタ!いくらなんでも長すぎるわよ!」
「ああ?誰かさんがねだったりするからだろうが!」
「だ、誰がねだったりなんかっ…」
「ねだったりなんか?」
「……しました」
「ん、よろしい」
あ゙ー、マジで長かった…。日が暮れかかってやがる。
「……ねぇ」
「んー?どしたよ」
「そっち行って、…いい?」
「いいよ、おいでホラ」
床に座り込み、腕を広げて迎え入れようとする。照れた表情を浮かべながらも、ぽすっと俺の腕の中に収まる由佳。
「ちょっと…、甘すぎたかな?」
「いや、味は悪くはなかった。まぁ、甘いのは…」
「何?」
「由佳の味ってことで」
「…ばかぁっ!」
ああ、その顔はまだ赤くできるのか。うつむき加減がまた愛らしい…。
追い打ちをかけられる物を探す。いじめたくなるのは可愛さのせいだから自業自得。
お、あった。
「しかしまいったね」
「え?何が?」
「ほら、お前に貰ったチョコ、あと5個もあるんだが」
「え…えええ!?またやれと!?」
「ああ、大丈夫。今度はキスぐらいじゃ済まさないから」
「こっ、このド変態!」
「なーにを今更言っとるんだね君は」
そんなこんなのどっかの幸せな幼馴染達の2/14でした、と。タイトルに特に意味はないです。
イメージとしてはお調子者×ツンデレなんですが。多分続き書きます。いや勿論邪魔にならないようにですが。
後ろに「君の顔が好きだ/斉藤和義」なんかがかかっていると何となくいい感じになるとかならないとか。
ではまた。
リアルタイムで乙!!
続きもぜひ。楽しみにしてます。
萌え(*´д`*)
ところで、萌え(*´д`*)な話を聞いたり読んだりすると涙目になるのは俺だけですか?
・・・村山由佳・・・・・
いや、別に良いんだけど、話面白いし続きも読みたいし、良いんだけど。。
最初に登場人物の名前見たときに「うぇ」とか思ったのは自分だけじゃないはず・・・?
>>423 心配するな同志よ俺もオモタ
作品はGJですた
お調子者×ツンデレ幼馴染み萌え、俺的最強コンボだ
続き期待しております
そうだよなぁ…牧場で小説書いてるおばさんのイメージがorz
ギャー
人物名決める時に「何か違和感あるな」と思って知り合いの名前と被ってないか確かめたんですが…
盲点…
思わず自室で「そっちかよ!」と叫んでましたorz
てか何でだよ俺…
「おいしいコーヒーのいれかた」シリーズなんて一巻買ったものの読まずにすぐ売ったくせに俺…
キャラにはフルネームつけないと書けない癖がこんな風に裏目に出るとは思いも寄りませんでした
スイマセンでした、悪意は無いです
できれば「村田」に脳内変換よろしくお願いします…
キスだけなのにものすごくエロい。ひー……
>426
マイドン。偶然の一致とか、頭の中にあった名前がたまたま出てきたとか。
よくある事サ、気にするない
エロイ。思わず俺も妄想を文にしたくなるくらいエロ萌えた(*´д`*)
GJだ氷爪氏。
>「あはっ、一真の心臓も凄いどきどきしてる…」
転がりました(*´д`*)
>>氷爪氏
神!GJ!!!
ア――続きが気になります
実に王道。そしてえろい。
続きは気になるが、ここで終わっておいても
なんか悶々として良いかもしれんね。読者の想像に任せる、ってw
もっとエロい新作きぼん
>>432 ぜんぜん大丈夫。
つい昨今、もっとひどいファンタジーが話題になったし。
わざわざ現実を持ち出す必要はないね・・・
幼馴染は脳内やモニターの中でしか輝かないのさ。
俺?
幼馴染の女の子が3人ばかりいるが、
揃ってぶさいくなので神を呪った。
いまは、解脱している。
遠い親戚の子でなら小さい頃から可愛い子はいたなあ。幼馴染の定義からはやや外れるっぽいけど
あれだ。
自分の実らなかった経験や苦い思い出をここに晒せば
職人様方がそれをネタにSSとして良い方向で書いてくれるかもしれんぞ。
それが嬉しいか虚しいかは別としてw
437 :
434:05/01/19 18:35:23 ID:KMDE6Nqt
俺の経験・・・というかこの3人を良い方向でSSにできるのか・・・?
美化はナシだぞ?
じゃあ「ややぶす」風味で
>>438 ごめん、正直言うと萌えない……。
4歳の頃ひとつ年上の女の子と興じた「おとなごっこ」なる遊びがあった。
体が弱くて色白だった彼女はけっこう美人になり、今は地元の動物病院で働いてる。
そういえばココ、シチュエーションのリクエストとか少ないような希ガス
>>440 温泉旅行に行くはずの両親が急用でいけなくなったので、
代わりに「あんたたち二人でいってきなさい」とかなるシチュとか
朝おきたらめっちゃ幼なじみに犯されていましたとか
よく判らんけどとりあえず野球拳でもさせてみるとか
季節ネタで節分だのバレンタインだの成人式だの
新年明けましてでお屠蘇飲んで出来上がった幼なじみに押し倒される図だの……
というのが思い浮かぶには思い浮かんだ。
犯すほうも、押し倒すほうも、もちろん女うわなにyhgksljb
>>441 朝起きたらめっちゃ幼馴染に犯されてました、ってシチュなら
「こころナビ」というエロゲーに登場する。
>>440 彼女との幸せなひとときを過ごしていたら、幼馴染が何の予告も無く上がりこんでくる。彼女はぶち切れて帰ってしまう。
幼馴染の勝手な振る舞いに腹を立てた主人公、幼馴染を無理矢理犯す。
事の後、幼馴染がニヤリと笑って、「既成事実ができた」と……
>>443 冗談だったのになにそのみさくらゲーΣ(´д`;)
現実に朝起こしに来たりお弁当作ったりする幼なじみという生き物は存在するのか?
旅行シチュなら、どっちかっつーと、
町内会の旅行で親同士が旅行に行っちゃって
なんとなくなりゆきでどっちかの家で2人きりで
ごはん食べてたりするのが萌え。
厄介な三時間目の数学が終わった後の教室。開放感もあいまって、随分と教室は騒がしい。
「はい、今日の分」
そんな喧騒にはおかまいなしで、必死に次の時間に集める宿題をやっていた俺の目の前にずい、と弁当箱が差し出される。
「お。サンキュー、いつもありがとな、沙穂」
この女は、クラスメイトの古田沙穂。こいつは幼稚園からの幼馴染──いや、もはや腐れ縁だ。
こいつはわざわざ俺のために、毎日毎日弁当を作ってくるのである。
なぜか、と言うと。
「ほら、どーせあんたは今日も早弁したんでしょ? あたし見てたんだから」
俺が大抵、二時間目が終わる頃には自宅から持ってきた弁当を食べつくしてしまうからである。
ずい。
ついでに沙穂の顔まで寄ってくる。ショートカットに少しつり気味の目。冷静に観察すると、ぱっと見だと少し性格がきつそうに見えるかもしれないそんな顔。
「んー、じゃあいつものようにいただくわ。ごちそーさん」
「……あんた、ちょっとは感謝ってのはないの? 普通わざわざただのクラスメイトにお弁当作ってくる甲斐甲斐しい子なんていないよ?」
「沙穂は幼馴染だろ、俺の」
弁当箱を受け取りながら、ひょいと顔を向けて沙穂を見る。む、思ったより近かったか。
距離にして15cm。化粧っ気は無いのに肌はすべすべそうだなー、なんて思った。
「……もう、こんな時だけ幼馴染幼馴染って。ちゃんと残さず食べなさいよ。……ばか」
少し機嫌悪そうに言って、沙穂は自分の席に戻って行ってしまった。
で、昼休み。俺はと言うとクラスの友人数人とで固まって、沙穂謹製の弁当を食べる。
連中も俺と沙穂の腐れ縁幼馴染っぷりはよく知っているので、最近はもはや突っ込みさえまばらである。
ちらりと沙穂を見る。あいつはクラスの女友達と楽しそうに笑っていた。
「……おい、話聞いてたか、おい?」
「ああ、何だったっけ?」
沙穂に見とれていたわけでもないのだが、ついつい友人の話を聞き漏らしてしまった。
「だからよ、もうすぐバレンタインじゃん。何とかその前に念願の彼女をゲットしたいんだよ、俺は」
「はいはい、また始まったか」
他の友人と一緒に適当に応対する俺。基本的にこういう話はあまり積極的にはなれない。
「見てろ、俺は来月までに隣のクラスの佐川さんをゲットしてやるんだからな。
で、お前はどうなのよ。誰かいねーの? 付き合いたい子とかさ」
む。周り数人の視線が一気に俺に集中する。まずい。
「んー。別に」
言いながら、弁当箱に盛り付けられた唐揚げをひとつ食べる。……うん、美味い。質問をはぐらかしながらもう一個食おう。
「……ああ、そっか忘れてた。お前には毎朝愛妻弁当を作ってくれる"奥さん"がいるもんなぁ」
「なっ……!」
思わず食べていた唐揚げを噴出しそうになる。慌てず騒がずよく噛んで飲み込んでから、俺は言った。
「沙穂はただの幼馴染だよ。前からそう言ってるだろ」
「ほほう。では古田さんが他のろくでもない男と付き合おうと、お前はどうでもいいと」
「む……いやに突っかかるな、今日は」
そう言って、ピーマンの肉詰めを食べる。……そう言えば、俺はいつの間に嫌いなピーマンを食べられるようになったんだろう。
他にも苦手だった海草や、食わず嫌いだった物が随分食べられるようになった気がする。
「いや、俺はただ、踏み込みの甘い友人に人生のアドバイスをしてるだけだぞー?」
こいつの言いたい事もなんとなくわかる。
「わかったよ。だからこの話はもう終わり、勘弁してくれ」
「ちぇー、どうなのか聞きたかったのにな。」
──なんだか、言葉が胸の奥に引っかかったような……気がした。
「ほい。ご馳走様でした」
六時間目を終えて、沙穂に弁当箱を返す。これももはや恒例だ。
「どういたしまして。……ね、全部残さず食べた?」
「ああ。ピーマンも野菜もきのこも、全部食べたぞ」
沙穂の弁当には、必ず俺が苦手な物が入っている。しかし、最近ではそれさえもしっかり食べてしまう、俺。
……ひょっとして、うまく餌付けられてるのではなかろうか。
「おおー。えらいえらい。よくできました」
まるでガキ扱いである。……ただ、沙穂がいなかったら、苦手な食べ物はずっと苦手なままだったのも確かか。
「子供じゃないんだから」
「いいのよ。あたしの方が二ヶ月先に生まれてるんだから」
「はいはい」
いつもの幼馴染と、いつもの会話。いつもの雰囲気。
……やっぱり、ほっとする。俺は少なからず、沙穂といる時は安心してる。
周りは喧騒。廊下を歩く生徒の群れ。……なんか、不意にさっきまでどこかに引っかかっていたものが取れたような。
「沙穂」
「なに? 早く弁当箱渡してよ」
「……今日も美味かったわ。ありがと」
ほとんど無意識に、弁当箱を直接沙穂の手のひらに。
指先に、柔らかく触れる。暖かい感触。
「……!」
沙穂も動かない。ただ顔が少し、赤い。
「な、何よ。いっつもは美味しかったなんていわないくせに」
「うるせーな、たまには感謝したっていいだろ。いっつも美味いもの食わしてもらってるんだからよ」
俺も、ちょっと恥ずかしかった。ひょい、と弁当箱から手を離す。
「……あら、あんたの弁当は私用の弁当の余り物ばっかりなのに、あれ」
「嘘つけ。あんなに形整った残り物があるか」
「……」
「いいだろ、たまには俺にもお礼言わせてくれ。それと」
「……なに?」
何となく、暗くなり始めた窓の外を見てしまう。冬の太陽は、落ちるのが早い。
「暇だから、真っ暗になる前に家まで送ってってやるよ。ついでになんか奢ってやる」
沙穂の目を直視できないまま、俺はそんな柄にも無い事まで言ってしまう。沙穂はと言うと、ぽかんとしたままで、
「珍しいー。あんたがそんな気前のいい事言うなんて、明日は雷でも落ちるんじゃないかな」
と、そんな事を言いやがる。
「うっさい。ほら行くぞ」
「はーい。じゃあね、私は駅前のパーラーでデラックスパフェ(\980)を……」
「高いっつの!」
「奢るって言ったんだからいいでしょ! だいたいねえ、あんたはとっとと早弁癖直しなさいよ。私だって早起きして弁当作りは簡単じゃ……」
まだ文句を言う幼馴染を適当にあしらいながら歩きつつ、その言葉について考える。
──俺が早弁癖を直すなんて、きっと無理だろう。
なにせ俺は、今はこの幼馴染の作る弁当が楽しみで、それを美味しく頂く為に、家から持ってきた弁当を早々と食べてしまうんだから──。
と、弁当ネタで勢いのままに書いてしまったり。
実は以前このスレで続き物書こうとして止まったまんまなんですが、
今後短いのをぽつぽつ書いたりするかもしれないのでよろしくお願いします。
王道たるべき弁当がやってきた!GJ!
乙です。どっちもかわぇぇです。
455 :
名無しさん@ピンキー:05/01/22 05:08:20 ID:wGvVrc55
弁当は幼馴染に必須のアイテムだと再確認しました。
じーじぇー。
鳴らない目覚まし時計とかも結構必須かなあ。
新参者ですが、ここって完璧超人幼なじみってありですか?
仕事中にいろいろとネタが思い浮かんでこの思いをぶちまけたくてしょうがないんですが。
ありありです。ぶちまけたってください。
458 :
456:05/01/23 23:02:24 ID:H7kInq4x
>>457 了解。
明日の昼あたりにでも投下します。
明日の昼か……
マッテルヨ(*´∀`)
460 :
456:05/01/24 11:32:44 ID:TmaM7QcJ
投下いきます。
題:完璧で不完全な彼女。
登場人物
主人公:高本裕也
ヒロイン:河崎真由里
↓から本編開始します。
マダー(゚∀゚)?
ジリリリリ・・・・・・・・!!
目覚まし時計特有のやかましいベルが俺の耳に飛び込んでくる。
しばらくは無視しようとしたがそいつは俺にベルを止めろとしつこく言い寄ってくる。
仕方がなく俺は目覚ましのスイッチを切るべく身を起こした。
「悪いが俺にはいつも起こしてくれる幼なじみがいるんだ。
君は俺には必要ないんだよ・・・。」
俺は残酷な現実を突きつけながらスイッチを切ってそのストーカーに息の根を止める。
時刻は6時56分。まだ時間には余裕がある。というか早く起きすぎだ。
というわけで俺は再び夢の世界へと旅立つべく布団をかぶりなおした。
「また寝ちゃうの?」
「うん。9時までまだ時間があるし。」
「そうね。じゃ、おやすみー。」
「おやすみー・・・。」
そう答えて俺はまぶたを閉じる。
・・・あれ?
なんか今声が聞こえたような?
そういえばすぐ傍から気配がするような・・・。
俺は声が聞こえたとおぼしい方向に体ごと顔を向けた。
そこには見慣れた整った顔があった。
「あ、ユウおはよー。」
「・・・何をしている。マユ。」
「何って寝顔見てるんだけど?」
「だからって年頃の女が男の部屋に勝手に上がり込んであげく布団に
勝手に入り込むのはどうかと思うんだが・・・。」
「まあその時は責任とってもらうだけだし。」
「エラい軽いな・・・。オイ。」
その返事に目の前の少女―マユは苦笑する。
彼女、マユ―河崎真由里は俺と同居している幼なじみ―正確にははとこ―である。
といっても二人きりで同棲してるわけではない。
俺達は元は近く(当然別の家だが)に住んでいた。
これで関わりがないはずもなく、俺達は赤ん坊の頃からいつも一緒だった。
何故か小学生、中学生のときもずっとクラスが同じだったが
多分それは担任達が俺達をセットとして扱っていたからだろう。
それのせいでクラスどころか学年全体からからかわれたりもした。
そのたびに真由里は苦笑しつつもどこか申し訳なさそうにしていたのを今でも覚えている。
だが中学校に上がった途端周囲の目が露骨に変わった。
それまでは同じくらいだった俺と真由里の成績が格段に離れていったのだ。
優等生の真由里と劣等生の俺が一緒にいるのが気にくわなかったのだろう。
それでも一時はイジメに遭いそうになりながらも俺達は何とか今までの関係を保っていた。
その後も俺は必死に努力して彼女と同じ高校に合格した。
そんなときだった。
真由里の父親の栄転が決まったのだ。
だが彼女はここを離れるのを拒否した。だからといって異動を取り消すわけにもいかない。
そこで彼女は近くの親戚の家―つまり我が家―に預けられたのだ。
それらの理由で彼女はこの家にいるのだが・・・。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・だああああァ!人の顔ジロジロ見つめんなぁ!
落ち着いて眠れんわ!!」
「えー。ユウの寝顔見るのが朝の楽しみなのにー。」
「ンなモン楽しみにしなくてよろしい。」
俺―高本裕也はなおも不服をいう真由里に背を向けて再びまぶたを閉じる。
「寝ちゃっていいのー?」
真由里のよく通る綺麗な声―俗に言うアニメ声―が耳に届く。
「やかましい。俺はついいつものクセで目覚ましをセットしたせいで寝不足なんだ。」
「全面的にアンタのせいじゃない・・・。それはそうと早く起きないと朝ご飯冷めちゃうよー。」
「先に言えよ!!」
反射的な動きで真由里の方に向き直りツッコミを入れてしまう。
そこにはやはり見慣れた笑顔があった。
「ん。おはよー。」
「・・・おはよう。」
観念して俺は身を起こす。
なんか負けた気分だ。
俺は敗北感をかみしめながら真由里とともに部屋を出た。
今日のところは以上です。
駄文失礼しました。
GJ!!
続きも期待してますよ〜。
「そこまで飾らなくても綺麗だよ…」
続き期待。
いかん、ひーこ分が欠乏してきた。
そういう職人を追い込む発言ヤメレ
いや、俺も欠乏しつつある。
別に追い込むつもりはないが。
俺が気にしてるのは
>>403 気があろうとなかろうと急かして書かせる結果になってそれでいいのかと。
ここまで書いて気付いた。
俺の読みが卑屈過ぎるだけか。スマネ
別に急かしちゃいない罠。
期待するのと急かすのは違う
来ないときは来ない、職人さんにも都合があるんだ
繋ぎで何か投下しようかな…
自サイト用なんだけど、その番外編って形なら
ここにも投下できそうな気がする
ID追跡ヤメレw
いや、たまたま気づいたwwwwwwっうぇ
478 :
473:05/01/27 23:20:25 ID:dmHiq5GX
投下用に書き溜めてる最中
もうちっと待ってケレ
俺がROMってるスレに、誘い受けはするわ、文章落とす訳でも無く無駄に「もうちょっと待って」とか言い出すわな書き手が紛れ込んだんで思ったんだが、
最近、筆より口で語る書き手多すぎないか?自サイトとか持ってるとそうなるのか?
書き手スレと誤爆…
吊ってくる_| ̄|○
>473と>479、二人は実は幼なじみだったのである。
年齢を重ねるにつれ自分から離れていく>473を不満に思い、>479は友人に電話して即座に愚痴をぶつけた。
しかし実は掛けなれていたせいか名簿の一段上、>473に間違い電話をしていたのだ。
思いもかけず本人に、幼い頃からの不満をぶつける形になる>479だったが…。
「そんな風に思ってたんだな…知らなかったよ」
いつもの乱暴な口調だというのに、どこかしゅんとした女らしい泣きそうな声音で>473が呟いた。
>481
ワロス
ちょっと長くなりそうかもだけど、良い?
今30KBぐらいで、完成版は50〜60KBになるかな。
正直、文章にちょっと電波入ってるかも…目汚しになったらごめんね('A`)
知能レベル小学生の天然系幼馴染と、
お姉さん代わりのツッコミ役な幼馴染との、おバカな日常のひとコマ。
щ(゚Д゚щ) カマンベイベー
>482
>479氏みたいな意見もありますからまあそう低姿勢になりなさるな。
ツッコミ姉さん系は個人的に最ツボなので期待して待っているですよ。
長すぎたら何回かに分割して投下という手もありかと。
「にほ〜ん高速こお〜くう〜、ぼくらをのせ〜てびゅんびゅびゅ〜〜ん」
その日の授業が終わり、机に頬杖をついてアンニュイな気分に浸っていると、
前方の席から、脳天気な歌声が聞こえてきた。
のろのろと顔を上げ、妙ちくりんな歌の発生源に視線を伸ばす。
「えんじんふかせ〜、すぴ〜どぜんかいっ、くもを〜つきぬけつきすすめ〜」
……やっぱり、ゆりかよ。
自然と溜息が漏れる。いや、クラスをぐるりと見渡してみたって、あんなおバカな歌声を
それも大声で披露するような人間は、あいつしかいないって分かってたけど。
…それにしても、うざったいことこの上ない。こういうときは、無視を決め込むのが一番だ…。
「へんけい、がったい、ミノルチャンダー、せかいのへいわをまもるんだ〜」
「わけわからんわ!!」
ずべし。瞬時にゆりの真後ろに移動、その後頭部にチョップをかます俺。
実にいい音がしたなぁ。クリーンヒットだ。
「……ふぇぇぇ〜〜ん!!実ちゃんがぶったぁぁぁぁ〜〜〜!!」
顔をぐしゃぐしゃにし、ゆりが大泣きを始める。
「ツッコミ入れただけだろ!そんなに大泣きすんなよ!
だいたい、何で日本高速航空・社歌を歌ってたのに、突然俺の名前が出てくんだよ!!」
無視を決め込むつもりだったが、さすがに俺の名前を出されては黙ってるわけにはいかんだろう。
俺の名前は商標登録されてるんだから、使用料を徴収しなければ。嘘だが。
「え〜、だって、ミノルチャンダー、かっこいいんだもん」
「だから、航空会社とどう関係あんだよ!そもそもミノルチャンダーって何だよ!
俺いつの間に巨大ロボットになったんだよ!!」
「昨晩、ゆりの夢の中で」
「知るかそんなの!!」
ずべ。さらに鮮やかなツッコミチョップ炸裂。うむ、絶好調。
「ふえぇぇ〜〜ん!!実ちゃんが二回もぶったぁぁぁ」
「お前がボケるから、俺がやむなく突っ込んでやってるんだ。
感謝こそされ、けして責められる覚えはないぞ」
「ゆり、実ちゃんみたいな芸人じゃないよぉ…」
「忘れたのか?ゆり…夕日に誓ったじゃないか、
『明日のお笑い界を担う、立派な芸人になります』ってごげぶっ」
そこまで言ったところで、俺の頭部は頭上からの隕石落下により机に沈んだ。
「芸人にだったら、あんた一人でなるのがお似合いよ」
「千夏ちゃん…」
「ゆり、大丈夫だった?…全く、実にも困りものね、
何の理由もないのに、いつもゆりをいぢめてばかりなんだから」
そう言って、いつものようにペロキャンを差し出す千夏。ゆりはそれを受け取ると、
きゃっきゃとはしゃぎながら、ぺろぺろ舐め始める。さっきまでの泣き顔は何処へやらだ。
「……あのなぁ。俺はゆりをいぢめたつもりはないってーの。ただ突っ込みを入れただけだって」
ようやく復活した俺、すかさず異議を申し立てる。が、
「別にゆりはあんたと漫才してるワケじゃないんだから、無理して突っ込み入れる必要はないのよ。
…あんたみたいに、放っておけば四六時中ボケ続ける人間に対してだったら、突っ込まなきゃいけないけどね」
「ほう。俺の才能を買ってくれているのか。う〜ん、さすが千夏、見る目があるな」
「全然面白くないけどね」
一蹴された。ひゅぅぅぅ……
「で、ゆり。お前はどうしてそんなに浮かれてるんだ?」
「え?ゆり、そんなに浮かれてるように見えたかなぁ?」
そりゃあ丸見えだ。つか、どう考えても浮かれてるか、頭が暖かくなったかにしか見えん。
そうでなきゃ、教室で堂々と『日本高速航空・社歌』を大声で歌うことなどありえんからな。
つか、何で俺もゆりも、そんなマイナーソングを知ってるんだ?
「まぁ、そりゃ…ねぇ。ゆり、やけに楽しそうに歌ってたじゃない?」
さすがに千夏も指摘しづらそうだ。
「仕方ないさ、千夏…ゆりはまだ頭がお子様だからな。浮かれて歌の一つや二つ
口から出てきても無理もないんだ」
「ふぅん…でも、少なくともあんたに言われたくはないと、思うわよ?」
俺もお子様認定か…がびん。
「千夏ちゃん…実ちゃん、固まってるよ」
「放っておきなさい」
「さて、いつまでも固まってる暇はないわけだが」
「復活早いわよっ!!」
「ゆりよ…そんなに浮かれてるっつうのは、何か嬉しいことでもあったのか?」
「えへへ〜……」
そして、ゆりは意味深に笑う。
「…正確には、これからあるんだよ」
「そうなの…。良かったら、教えてもらえないかしら?」
「うん!あのねあのね、実はねぇ」
「…と、いうわけなんだよ」
「そうかそうか、遂にゆりにも初潮が来たか。よかったな」
「えぇぇぇぇっ!!?ゆり、そんなこと言ってないよぉぉっ!!」
真っ赤になるゆりを余所に、俺は満足げに頷く。
そうかぁ…ゆりもとうとう大人になったか。
「今夜は赤飯だな。帰りにおごってやげぶらっ」
どがっ!!
「いい加減に、中略した説明部分を捏造するのやめなさい!!」
だだだ…ち、千夏にしちゃ突っ込み遅かったな。
「それに、女の子相手に言うボケじゃないわよ……って、何よだれ垂らしてるのよ、ゆりは」
「え?え?ゆり、よだれなんて垂らしてた?」
慌てて口元を拭くゆり。こいつ、「赤飯おごる」って台詞に反応しやがったな…食い意地張ってる奴め。
…って、このままじゃ話が全然進まないぞ。…俺の所為か。
「…で、ゆりのお袋さんに初潮が来たんだっけ?」
「いい加減に初潮から離れなさいよっ!!そもそも、おばさまに初潮が来てなかったら
ゆりが生まれてないでしょっ!!確かにおばさまは若く見えるけどっ!!」
ゆりのお袋さんはかなり若く見える。つか、正直幼な顔だ。
年の割に子供っぽい外見のゆりよりも、下手したら年下に見えるぐらい。
つか、正直何歳なんだろう…俺達と同い年の子供がいるんだから、それなりの年だろうけど。
「はぁぁ…もう、どこから突っ込んだらいいか分からなくなるわ……」
頭を抱え、崩れ落ちる千夏。
「まぁ、挫けるな、千夏。人生若いうちに苦労しておいた方がいいんだぞ」
「誰の所為でこんなに苦労してると思ってるのよっ!!」
やべっ、凶暴化しやがった。
「赤飯、赤飯〜。実ちゃんがおごってくれる赤飯〜」
ゆりはよだれを垂らしながら、即興で歌を作って歌っている。まだそのネタ引っ張ってたのかよ。
つか、もうおごるの決定してるし…
「……はぁ、はぁ……」
はぁ、はぁ……千夏に追いかけ回されて、ついつい教室を五周もしてしまった。
ま、定期的に運動しないと、健康な体は保てないからな。丁度良かった、ということにしておこう。
「はぁ、はぁ…まったく、あんたって人は……」
「それに、女の子のダイエットにも効果てきめんです」
「私にダイエットなんて必要ないわよっ!!」
うわっ、さらりとすごいことを言いやがる。周りの女子の視線が痛……
「そうよねぇ…千夏、スタイル抜群だしねぇ…」
「どうしたらあの体型を維持出来るのかなぁ…憧れちゃうよねぇ」
……って、羨望の眼差しで見てやがるよ。ちくしょう、得な奴め。
千夏に視線を戻すと……さすがに今のが失言だと気づいたのか、顔を真っ赤にして小さくなっている。
「気にすんなや。つい出ちまった一言だろうに。
それに、周りの人間も認めてるし、自分でも日頃から気を遣ってるんだろ?
だったら、もっと堂々としてもいいんでねぇの?」
「実……」
少し千夏の視線が柔らかくなったような気がする。
「もっともスタイルが良くても、人をすぐ追いかけるような凶暴性はどうにかな」
「あんたが馬鹿やるからだっ!!」
ごげす。黄金の右ストレートが鳩尾を貫いた。力無く崩れ落ちる俺。
「わぁ〜ん…とぅ〜…すり〜…以下略。かんかんかんか〜ん」
そして鳴り響く非常のゴング。1R:1分42秒、俺のKO負け。
「って、あんたが口に出してるだけでしょうが…大体、
こんなお馬鹿な争いで勝ったって、嬉しくとも何ともない…」
「そりゃそうだな。こんな不毛な勝負はやめて、話を元に戻すか」
「復活…早いわね…はぁぁ」
で、二人してゆりの席に戻る。
「ねー、二人で何してたの〜?これから帰るんでしょ?
お赤飯、おごってくれるんだよね?おっ赤飯、お赤飯」
「うるせー、別に祝うことなど何もないから赤飯は無しだ」
つーか、今までずっと赤飯楽しみにしてたのか。
「うぅっ…実ちゃん、さっきはゆりの初潮祝いって言ってたのに…」
「都合のいい部分だけ真に受けるなっ!!
そもそもお前の初潮なんて、5年前に来てただろうがっ!!」
「ど、どうして実ちゃんが、そんなに細かい時期まで知ってるのっ!?」
それは多分、ゆりのお袋さんが、俺のお袋との会話の中で堂々と口にしていたからだと思う…。
人の家に来て、友達に娘のそんなことまで話す母親も母親だが。
「そうよっ、実、事と次第によっては…」
千夏まで混ざってきて、俺の目の前でぼきりぼきりと指を鳴らす。
「あ…えーと、ともかく、いい加減初潮の話からは離れようや。
それよりも、どうしてさっきゆりが浮かれてたのか、その話に戻そうぜ?」
「…何だか腑に落ちないけど…このままじゃ話がちっとも進まないことも確かだしね」
千夏がゆりに話の続きを促す。
やっと本題か。ここまでで諸君は何分浪費したことだろう…それを考えると夜も眠れん。
って、諸君って誰だ。
「えーとねぇ…あのねあのね、実はねぇ」
「実は俺だが」
「『みのるはねぇ』じゃなくて、『じつはねぇ』!!
そんな、口頭じゃ分からないボケをかますんじゃない!!」
いいんだよこれは小説なんだから。偉い人は分かってくれる。
って、さすがに禁じ手を多用するのはやめておくか…。
『○○なんだから』って、逃げの手を使うのはあまり良くないしな。
「実ちゃん、ゆりの話、ちゃんと聞いてる…?」
さすがに涙目だ。これ以上脱線を続けると、高確率で泣き出しそうだ。
そして千夏が俺を殴る→俺悶絶する→千夏がゆりにペロキャン渡す→ゆり、上機嫌になる、というパターンになってしまう。
「いいじゃないか、最終的に上機嫌になるのはゆりだぞ?」
「…はぁ?よ、良くわかんないよぉ…」
ゆり程度の頭では、俺の論理展開は理解しきれないらしい…
「いいからもう、脱線はやめなさいよっ!!」
「分かりました千夏お嬢様、おっしゃる通りに致します」
「え…?は、はぁ……」
いきなり俺がうやうやしく礼をしたもんだから、千夏は思わず固まってしまう。
その隙を狙って…
「ていっ」
つんっ。
「●¢&○△※◎℃÷◆〒!?」
千夏が身体を抱えてうずくまる。俺が何処をつんつんしたのかは皆さんのご想像にお任せします。
…そして、極限まで高められた怒りのパワーは、衝撃となって俺の身体に降り注ぐ。
「……実の、馬鹿ーーっ!!スケベ、変態っ!!!」
「ぎゃぁぁぁぁーーーーっ…………」
意識が遠のいていく…ああ、こうなることは分かってたのに。
でも、やらずにいられない。それが俺という人間なのだ……。
これでも10KB行かねぇ_| ̄|○
まだまだ続きますが、連投気になるのでいったん切ります。
↓もっと萌える幼馴染降臨予定
>>485 JASRACの者ですが、支援に参りました。
・・・いいから、さっさと続きを投下しる。
>493
なんでカスラックの人間が来んのよ(苦笑
著作権には引っかかってないつもりだけどー…
へな歌に関する説明(弁明)は省略(ぉ
「…さて、本題に入ろうか」
「実ちゃん、本当に大丈夫…?」
心配は無用だ、ゆりよ。こう見えても俺は打たれ強いんだ。
千夏のサンドバッグ歴十云年。人生の大半サンドバッグか。可哀想にな……って自分で言ってたら世話無いけど。
「何と言うか、あれだけ痛めつけてもピンピンしてるとは、むしろ驚嘆に値するわね」
「もっと褒めてくれてもよろしくてよ、よろしくてよ」
「褒めてないわよっ!!」
ぜーぜーはーはー。肩で息をする千夏が、もはや見ていて痛々しい。
これ以上精神的負担をかけすぎると、後でどうなるか分からない(主に俺が)なので、いい加減脱線はやめにしよう。
「で、何の話だったっけな、ゆり」
「ゆりが何で浮かれてるか、っていう話だったと思うよ。
だいたい、最初に聞いてきたのは実ちゃんじゃない…忘れちゃ駄目だよぉ」
「うるさい。少なくとも、記憶力ではお前に勝ってる自信がある」
「…五十歩百歩、ね」
「うるせぇよ!!」
横から口出ししてきた千夏に一喝。
「…くすん…そうだよね…やっぱり、ゆりっておばかさんなんだよね…千夏ちゃんもそう思ってるんだよね…」
こっちはこっちでマジ泣きするし…あ、千夏、冗談抜きで慌ててる。
「そ、そんなことないわよ、ゆり…ゆりは素直でいい子だもんね、いい子、いい子」
ペロキャン差し出しつつ、頭をなでなで。…頭脳面に触れないのは、やっぱりフォローのしようがないからか…。
で、単純なゆりはすぐ泣きやむわけで。…なんだか、毎日同じような光景を見てるような気がするなぁ……
「ぺろぺろ…ありがと、千夏ちゃん」
「いいのよ、たくさんあるから。ゆっくり舐めてよね」
「うんっ。…それでね、実ちゃん」
「何だ?」
急に話を振られたので、驚いてしまう。…ゆりのことだから、もっと一心不乱に
ペロキャン舐めに没頭すると思ってたから、つい油断してしまった。
「もぉ…いい加減話聞いてよぉ……」
「すまんすまん。…で、お前は何で浮かれてたんだ?」
「うん、実はねぇ…」
ようやく本題に入れるので、ゆりも嬉しそうだ。
「…今週ね、土日の休みを利用して、旅行に行くの」
「家族でか?」
「うん!お父さんと、お母さんと」
「へぇ〜。それは良かったじゃない」
ゆりの家が、他人が羨むくらい家族同士の仲がいいというのは有名な話だ。
最近は毎朝ゆりを起こしに行くときぐらいしか、彼女の家を訪ねてはいないが、
それでも家全体に漂う暖かい空気は、何となく心地よく感じられる。
俺は今、家族が遠くに住んでいて一人暮らしだから、なおさらそういう感じが強いかもしれない。
「どこまで行くんだ?」
「う〜んとねぇ…長崎の、かすてぃら村リゾート、って言ってたよぉ」
長崎かすてぃら村リゾートって…
確か、数年前に鳴り物入りでオープンしたのはいいけど、全然客が入らなくて
最近経営難に陥ってる、という話を聞いたぞ。
「…ず、ずいぶん通好みな場所をセレクトしたんだな、はは」
俺にはそれしか言えなかった。通好みどころか、微妙なセレクトだと思うのだが、
あえて口に出して、ゆりをがっかりさせることもあるまい。
「どうしたの、実…何か言いたそうじゃない?」
「いえいえ、別に何も」
「まぁ、いいけど。長崎…ずいぶん遠くまで行くのね」
「長崎っつったら、列車じゃ行けないよなぁ」
陸路だと、まず土日じゃ帰っては来られまい。
つーと、順当に考えて、空の旅だろうか。
「そうそう!飛行機!飛行機乗るんだよ、飛行機」
やけに『飛行機』の部分だけ強調して、興奮を抑えられなさそうに言うゆり。
「ずいぶん嬉しそうだな」
「無理もないわよねぇ。だってゆり、飛行機乗るの初めてなんだもの、ね」
うんっ、と、ゆりは千夏の言葉に力強く頷く。その瞳がらんらんと輝いている。
「そ、それは本当なのか?千夏…」
「そうよ。あんた、幼馴染なのにそんなことも知らないの?」
いや、普通そこまで把握しない。…ってことは、千夏の奴、
ゆりのことは相当詳しく把握してる、って事か…。
まぁ、もしかしたらゆりから、事前に聞いてただけかもしれないけど…
「飛行機乗るのがそんなに嬉しいのか……まるで子供だなぁ」
「ああっ、また子供扱いしたぁ」
「だって、移動手段ごときで一喜一憂するなど、子供の思考回路だというのだ」
「ぶー。たかが移動手段って、ばかにしちゃ駄目だよぉ」
「だって、飛行機の窓から外を見たって、空と雲しか見えねぇだろ?」
これが列車の旅だったら、流れる風景を眺めるなどの楽しみがあるかもしれないが。
「それがいいんだよっ」
何故か力説するゆり。
千夏の方を見やると、「分かってないわねぇ、実は」と言いたげに肩をすくめている。
…くそぉ、まるで俺だけが、飛行機に乗る楽しみを分かってないような扱い方じゃねぇか……。
「…あ、わかった。実ちゃん、飛行機乗るの…怖いの?」
ゆりが突拍子もないことをほざきやがるから、唇に両人差し指を差し込んで
思い切り両側に広げてやった。
「ひょ、ひょ、ひょ、ひほふひゃん、ひゃにひゅうひょ!?」
何言ってるんだかわからん。構わず、そのままうにうにと上下左右に動かす。
ゆりの柔らかいほっぺが、自在に変形する様がとても可笑しい。
「あのなぁ…この『怖い物知らず』の俺が、空が怖いとでもいうのか?」
「…まぁ確かに、別の意味で『怖い物知らず』ね、あんたは」
じゃあそれはどういう意味でだ、千夏。またつんつんしてやろうか?
……そしたら100%の確率で俺が再起不能に陥るだけだから、やめておくけど。
さすがの俺も、そっちの意味の『怖い者』は理解してるつもりだ。
「お前らが揃って『わかってない』とほざくなら、俺も援軍を呼んでやる。
おーい、優作……」
ゆりの隣の席にいたはずの優作に視線を向けると……
一話【1】で誤字がありました。
×そのストーカーに息の根を止める。
○そのストーカーの息の根を止めた。
もっと早く気づけよ俺・・・_| ̄|○
それはそうと投下よろしいでしょうか?
「……」
腐臭が漂っていた。いや、それは言い過ぎか。
ともかく、席に寝そべったまま、それは死の気配を漂わせていた。
「優作〜……生きてるか?」
「……やめてくれ…もう、飛行機の話はやめてくれ……」
あ、やべ。頭から煙が出てる。
「ごめんね…優作くんが、そんなに飛行機が苦手だって、知らなかったから…」
しょんぼりモードに入っているゆり。優作が半死人状態になっていた原因が自分にあるとわかって、
さすがに気に病んでいるらしい。
「いや、気にしなくていいんだよ。ゆりちゃんはちっとも悪くないんだからさ」
そんなゆりを優作が慰めている。…自分もそうだとは自覚しているが、
こいつも負けず劣らず復活早いよな…。こいつの場合、女の子が絡む場合に限定されるが。
「うん…でも、ほんとのほんとに、ごめんね」
どうやら、俺達が話しかける前に、ゆりは隣に座っていた優作に
喜びの声をぶちまけていたらしい。
でもって、飛行機の話を聞くだけで卒倒しそうになるというらしい優作は、堪えて話を聞いていたせいか
燃え尽きて半死人状態になってしまったと。そういうことだ。
「……ボーイング707型機、ただ今より離陸いたしま〜す」
「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!やめてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!」
……そうっとう重症みたいだな。こいつは面白いこと判明。いや、気の毒に。
どんだけ酷いトラウマを背負っているのだろう……
「……きゅ〜ん、ごごごごご」
「ぐっはぁぁぁぁぁ!!」
あ、吐血した。
「いい加減やめなさい!!」
どが!!俺も吐血。原因は違うが。
「…全く…人の弱みにつけ込んで、調子に乗ってからかうんじゃないわよ…」
「あ、ありがとう…まさか千夏ちゃんが助けてくれるとは思わなかったよ」
早くも復活した優作、さすがにまだ涙目だ。ちょっとやりすぎたかもしれん。
「馬鹿が毎度面倒かけております」
「ごめんね優作くん。でも、実ちゃんにも悪気はないんだから、許してあげてほしいな…」
「ゆりちゃん…大丈夫、そんなことは分かってるさ」
「実は悪意に満ちあふれた行動だったんだけどな」
ごげっ!!
「実、今なんて言ったの!友達甲斐がないにも程があるわよっ!!」
「い、いや、冗談です…」
こうも即座に手痛い突っ込みが入ってくるようでは、下手に冗談も言えん。
「ま、その辺にしておこうよ、千夏ちゃん…」
優作ごときに助け船を入れられた。むかつく。
「……ボーイング707型機、ただ今より着陸いたしま〜す」
「げぶらぁぁぁっ!!」
「ちったぁ懲りんかっ!!」
またも後頭部に一撃が入り、俺の意識は闇に落ちた。
話しているうちに、外が夕暮れの朱に染まってきたので、そろそろ帰り支度を整えることにする。
4人で昇降口にさしかかった頃、後方から何者かが追いついてきた。
「ひっどいよー、みんなで私を置いてとっとと帰っちゃうなんてっ」
「あ、唯…ごめんね、他の娘達と楽しそうに喋ってたから、邪魔しちゃ悪いなと思って」
「それにしても、ちょっとくらい待っててくれたっていいじゃなーい。三人娘なんだから」
ぷんぷんと鼻息も荒い堀江。さすがに大の親友に置いてかれて、ご機嫌斜めらしい。
「だってよぉ、唯…お前、話しだすと長いんだよ。何分待たされるか分かったもんじゃないって」
「んまぁ!優作ったら、自分の立場も分からず、そんな生意気な口を叩くんだね?
…そうだ?みんな、どうして優作が、飛行機にトラウマ持ってるか、教えてあげようか?」
をを?気になるな。つか、やっぱり堀江が絡んでたのか…。
それはそうと、俺達のさっきの会話を聞いてたんかい。器用な娘だよなぁ。
「そう、それは十数年前、私たちが幼い子供の頃…」
「だーーーーーーっっ!!それ以上は言うなっ!!」
慌てて堀江の口を塞ぎにかかる優作。もう顔面蒼白だ。そんなにヤバイネタを握られてるのか?
「もごもご…そんなに慌てるほど、重要なことかなぁ?あんな些細なことが」
「俺にとっては、人生最悪の出来事だったんだよっ!!思い出すのも忌々しい…。
だから、頼むから、言うな。もう思い出させないでくれ…」
「ふぅん。…じゃあ、それ相応の頼み方っていうのが、有るよねぇ?」
にやりと笑う堀江。その瞳が妖しく輝いた瞬間、俺は
何があっても、この娘だけは敵に回すまい、と心に誓ったのでした。
で、俺達は、ワッキェバーガーへ向かうことになったのである。
当然、代金は優作のおごりで。
「今日は厄日だ……」
そりゃそうだ。ゆり(悪意無し)や俺(悪意大あり)にあれだけ言葉責めを喰らったあげく、
強制的におごらされる羽目になったのだから。不運な奴。
そして、その尻馬に上手く乗ることが出来た俺は幸運な男、ってわけで。
「言っておくが、実の分はおごらんぞ」
…そううまくはいかなかったか。しっかりしてる奴だ。ちっ。
それにしても、人間、弱みを握られたら終わりだよな…このように、一生搾取される事にもなりかねないのだから。
…待てよ、そこの二人は、まさか俺から一生搾取する為の材料なんて持ってないだろうな?
「千夏、ゆり、ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「言っておくけど、あんたの弱みだったらこれでもか、と言うほど握ってるからね」
即答かよ!…じゃあ、
「ゆりは、どうなんだ?」
「ゆり?…ゆりはねぇ…」
しばしの沈黙…そして。
「……ぽっ」
おーい…なんでそこで頬を真っ赤に染めるよ……。
一体俺の何を知ってるっていうんだよ、お前はっ。
ひとまずここで一区切り。
書き溜めてからまた来ます。
>498
駄ネタで荒れたスレに一服の清涼剤カモーン
>>503 スイマセンリロードしてなかった・・・_| ̄|○
じゃあ投下いきます。
両親が共働きな為、朝は俺達二人だけのときが多い。
そんなわけで俺達二人は朝食をとりながら他愛ない会話をしていた。
「そういや何でこんな時間に朝飯つくったんだ?9時に起きると言ったはずだけど・・・。」
「ほら、いつもこの時間帯に起きてるから・・・つい、いつものくせで。」
「習慣って恐いな・・・。」
「ユウは目覚ましセットするのが習慣付いても一人じゃ起きれないけどね。」
「やかましい。っていうかおまえはそろそろ起こし方のバリエーションを増やすべきだぞ。
毎回毎回俺の寝顔をじろじろ見るか容赦なく叩き起こすかの二択しかないし」
「例えば?」
「例えば・・・、目覚めのキスとか・・・。あ、いや、今のなし!!」
「何一人で恥ずかしがってるのよ・・・。」
そんなしょーもない会話をしてるうちに俺達の食器は綺麗に空になっていた。
「ごちそうさん。今日もうまかったです。」
「どういたしまして。」
その後、俺達は出かける為の準備をしていた。
今日は友人達と花見をする予定なのだ。
真由里はその用意の為に早起き―といってもいつも起きてる時間だが―していたのだ。
せっかくなので俺も用意を手伝うことにする。
「ごめんねー。こんな時間に起こしちゃって。」
「いや、今考えたら女の子に肉体労働させておいて自分は爆睡というのはなんか悪い気がするし。」
「一度はそれ了承したけどね。」
「まあとにかくちゃっちゃと終わらせよう。」
「うん。」
俺が手伝ったせいか作業は思ったより早く終わった。
俺達は予定より早いが現地に向かうことにした。
「・・・重い・・・。」
「大丈夫?」
「全然。だいたい何入ってんだよこれ。」
俺は両手がふさがっている為手に持った荷物を視線で示す。
「焼き肉用のお肉とコンロにー・・・。」
「ちょっと待て。お前は焼き肉しながら花見する気か。」
「何か問題ある?」
「いや・・・もういい。」
現地―地元の自然公園―は思ったより静かだった。
「あんまり人いないね。」
「そりゃあ平日だしな。俺らみたいに春休みの学生ぐらいしか来る奴はいないだろ。」
「それもそうね。」
俺達は適当なところにレジャーシートを敷きそこに座った。
「みんなは何時に来るんだっけ?」
「11時。あと2時間半だな。」
言いながら俺はレジャーシートに身を沈めた。
「寝るの?」
「昨日は9時に起きる予定だったんで4時まで起きてたからな。眠くてしょうがないんだ。
それじゃあいつらが来たら起こしてくれ。」
「うん分かった。―ああそうだユウ。」
「?何?」
「膝枕していい?」
「ええええええ!!」
真由里の突然の提案に俺は思わず悲鳴を上げた。
「なななな・・・いきなり何言い出すんだマユ!?」
「何って、膝枕してあげようかって言っただけだけど・・・。」
「いやいきなり膝枕って・・・その・・・。」
「嫌なの?」
突然真由里に表情が不安なものに変わる。
不謹慎にも俺はその顔をかわいいと思ってしまった。
「喜んでさせていただきます。」
気が付けば俺は了承の返事をしていた。
「気持ちいい?」
「・・・まあまあ。」
ホントはすごく気持ちいいけど。俺はそんな本心を隠して真由里の太ももの感触を味わっていた。
俺の意識が闇に沈むまでそんなに時間はかからなかった。
「・・・・ユウ・・・。」
ペシペシ
「・・・ユウ!・・・そろそろ起きて・・・!」
ペシペシ
俺の意識は聞き慣れた幼なじみの声で引き上げられた。
閉じていたまぶたを開けようとしたが、途中でやめた。
このまま寝たふりをするという悪戯を思いついたのだ。
「・・・ユウー?・・・」
ペシペシ
「ユウさーん?」
ペシペシペシ
真由里は必死に俺を起こそうとしているが俺が起きる様子はない。
朝の敗北感を味合わされた借りをこんなところで返せるとは願ってもないチャンス!
このままみんなが来るまで寝たふりし続けて・・・!
ちゅっ
「・・・!?」
俺は唇に突然感じた柔らかい感触に思わず目を見開く。
そこには俺のよくする俺のよく知る幼なじみの顔が―いつもより近くにあった。
「!?」
真由里が俺が目を覚ましたことに気づき、慌てて俺から離れる。
「・・・マユ?」
「・・・ごめん。いきなり・・・。」
「いや・・・。」
しばしの無言。俺は何とか心を落ち着かせて彼女に声をかけた。
「なんでこんなこと・・・?」
俺に問われた真由里は目をそらしつつ答えた。
「だって・・・、朝そうして起こして欲しいって言ってたから・・・。」
「あ・・・。」
俺は今朝真由里と交わした会話を思い出す。
―例えば・・・、目覚めのキスとか・・・―
・・・確かに言った。
「・・・ゴメン。」
心の底から申し訳なさそうに俺に謝る真由里。
「いや、マユは悪くないよ。」
何とか真由里にフォローの声をかける。
・・・しかしよく考えると・・・
「今のファーストキスなんだよな・・・」
「えっ・・・!?」
真由里がより申し訳なさそうな顔になる。
しまった。つい口に出してしまった。
何とかフォローせねば・・・。
「あ、いや、別に怒ってる訳じゃないって。むしろ目覚めのキスがファーストキスというのも何というか、
味わい深いというか、あ、唇の感触はきっちり覚えてるよ何というかすごく柔らかくて・・・。」
駄目だ。まともな言葉が出てこない。
真由里も今度は顔真っ赤になってるし・・・。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
結局、みんなが到着するまでこの沈黙は続いた。
今回はここまでです。
482さん割り込んですみませんでした。
482さんは文章自体のテンポはいいんですが、
話全体のテンポ、進行にかなり問題を感じます。
完璧不完全さんは、話の進行に
多少無理があるようなないような・・・。
などとつまらないケチをつけておりますが、大変面白かったです。
続きを期待してもよろしいでしょうか。
では、とりあえずJASRACに帰ります。
>>511 やっぱりムリあるかな・・・_| ̄|○
当方今回が初SSですので構成とかに問題があるかも・・・
でも一回でも投稿した以上最後まで書くつもりですのでこんなのでよければ最後まで見てやって下さい。
私も、感じた違和感を説明することが出来ないという
無責任な有様なので非常に申し訳ないんですが・・・。
阿呆のたわごととでも思って気にせずのびのびと
書いていただければ、と思います。
ぜひ、最後まで読ませてください。
>>512 コンセプトはいいと思いますよー。自分の主観ですが雰囲気も悪くないです。
ただ台詞の「」の中の文末の"。"はいらないと思います。文法的に。
>514
>ただ台詞の「」の中の文末の"。"はいらないと思います。文法的に。
512氏ではないが。
別に間違いじゃないというのは既出な話題なんだけど、
SSスレでとやかく始めるのもアレなのでここや同人板の
物書き系のスレで一度聞いてみてくなさい。
>>515 ( ゚д゚)???
その文章でよく人にとやかく言えるな…
>516
いや別にとやかくは言ってないだろ。ただ聞いてみてといってるだけじゃね?
も り あ が っ て ま い り ま し た
確かに、とやかくではないわなぁ。
単なる514に対する一部訂正と誘導じゃね?
情報は誤りのない方がいいと思うけど、そんなに引っ張るほどのことでもないでしょ。
何事もなかったかのように幼馴染萌えネタ↓
482氏のだけど、キャラの説明をもうちょっと。
いきなり名前出てきて「?」のまま会話で流してくからちょっと読みづらい。
ツンデレ幼馴染保守
うぃーあーざわーるど(うぃーあーざわーるど)
うぃーあーざおさななじみー(うぃーあーざおさななじみー)
…なんか阿呆みたいな自分を発見できたorz
保守
哀しい……最近の幼馴染スレは哀しい……。
私はザ・ソロー。スレにネタが投下されない哀しみを味わうがいいorz
田舎町の幼なじみ。高校三年生。
少し離れた町の高校に通っているのはこの町からはお互いだけ。
進路に悩むある日、通学バスに乗り遅れた二人は学校をさぼって…。
っていう感じのを読みたいのですが駄目でしょうか?
うあー…、すげーイイ…。
それは凄くツボだ。ジーワジーワ鳴く蝉の音まで聞こえそうなくらいツボだ。
あれだ、BEGINの「島人ぬ宝」が凄い合いそう。
「教科書に書いてある事だけじゃ解らない
大切な物がきっとここにあるはずさ」のくだりとか。
あれ沖縄の歌だけど。
もっと詳しく妄想するなら、山間か港町の郡に属する町。高校まで行くバスは1時間に一本しかない。
二人で並んで歩いてるだけで「若い人たちはいいわねー」と顔見知りのおばちゃんに冷やかされるような田舎。
呑気で無精なのに理数系科目に強い男の子と、男の子の呑気さと進路の悩みにイライラするしっかり者優等生の女の子。
もちろんお互いに意識し合っている。
こんな感じでしょうか。
お暇などなたか書いてくださらないかな…。
我こそはと思う職人様を待つ。
532 :
名無しさん@ピンキー:05/02/04 23:22:31 ID:MkGhXxaZ
>>530 そこまで妄想できるなら自分で書けるんじゃないか?
途切れ途切れの妄想文を繋ぎ合わせて文章にするのが難しい
>>533 その辺りはひたすら考えながら書いて感覚を養うしかないと思う
このスレ伸びてると途端に頬が緩む漏れorz
535 :
526:05/02/05 03:18:14 ID:/zqu0Sp0
さわりだけ書いてみました。
私の住む町は、周囲を山に囲まれたわずかな平地にある。
最近、隣の市との合併に失敗し未だに郡に属している紛れもない田舎町だ。
隣の市の中心部までバスで40分強。ちなみに自宅からバス停までは自転車で約20分。
この厳しい通学環境の中を、藤堂鞘子は入学してからの2年6ヶ月、無遅刻無早退無欠席で過ごしてきた。
なのに。
鞘子は今、小さくなっていくバスの後ろ姿を呆然と見送っている。
次のバスは1時間後。
急いで家に帰って車を出してもらえば間に合うかもしれないが、生憎、昨夜から母親は風邪で寝込んでいる。
隣の市に勤める父親はもうとっくに出勤している。
自転車で行けないこともないが、急な坂道が連続するうえに街灯などはないので帰り道が非常に怖い。
つまりは遅刻確定というわけで。
(うそ…)
優等生で通っている藤堂鞘子ともあろう者が、バスに乗り遅れて遅刻だなんて。
(こいつのせいだ…!)
振り返り、元凶をキッと睨み付ける。
「ふぁ…」
この状況の中、いかにも眠そうに欠伸をかまして見せたのはボサボサ頭の男の子。
中谷剣太。
いつ出会ったかも思い出せないくらいによく知っている、いわゆる幼なじみというやつである。
「ふぁああ…」
二度目の大欠伸。
「…あんたねぇ!わかってんの?!遅刻よ、遅刻!あんたのせいで!」
「……おまえ、朝からテンション高いな…」
「あんたがそうさせてんよっ!」
大体、なぜ毎朝私が剣太を迎えに行かなくてはならないのか。
ねぼすけ、という言葉がぴったりなこいつを急かし、バス停まで自転車をとばすのを日課としなければならないのか。
全てはここが田舎だからだ。
536 :
526:05/02/05 03:19:23 ID:/zqu0Sp0
この町からあの高校に通うのは鞘子と剣太だけ。バスは1時間に1本。
つまり必然的に一緒に通学する羽目になるわけで。
それがいつの間にか寝起きの悪い剣太を叩き起こすところまで発展してしまったのだ。…自分のお人好しさに眩暈がする。
「座れば?」
声をかけられ、鞘子は我に返った。
いつのまにか、掘っ立て小屋よりも更に粗末な停留所のベンチに剣太が腰掛けている。
「……」
ここで意地を張ってもバスはこないので、素直に座ることにした。
ボロボロの座布団の上に腰を落とすと、立っていたときよりも剣太との距離が近くなったようで不覚にも心臓の動きが速くなる。
きっと、そんなことでドキドキしているのは私だけで。
それが悔しいから精一杯何でもない表情を作る。
「…昨夜は何してたのよ」
今朝剣太はいつにもまして寝起きが悪かった。昨夜、夜更かしをしたに違いない。漫画かゲームか。きっとそのどちらかだろう。
「ゲームしてた」
やっぱり。
「あんた、一応受験生なのにそれでいいわけ?」
「だって専用のコントローラー買ってもらったのに使わないなんてもったいないじゃん」
つい先日誕生日を迎えた剣太は、おじさんに専用のコントローラーなる物を買ってもらっていた。
車のハンドルのようなそのコントローラーは剣太が今はまっているゲーム専用の物だそうだ。
私には全く意味も価値もわからないけど、もらった剣太はすごくうれしそうにしていたっけ。
…だから急に自分のプレゼントの稚拙さが恥ずかしくなって、今年は渡すことができなかった。
いつかタイミングが良いときにさりげなく渡せるんじゃないか…と期待して毎日持ち歩いているのは絶対に内緒だ。
「鞘子は昨夜遅くまで勉強してただろ」
「なんで知ってるのよ」
「部屋の電気」
剣太の返事は主語も述語も省かれていたけど、私には十分に通じた。
剣太の家と私の家はお向かいで、私たちの部屋も向かい合っている。窓から漏れる明かりで、私が寝た時間を知ったらしい。
「あんたと違って、私は受験生の自覚を持っているの」
「……なぁ」
それまで前を見て喋っていた剣太が、初めてこっちを向いた。いやに真剣な瞳にまっすぐに見つめられ、一瞬呼吸が止まる。
「東京の大学に行くって、本当なのか?」
単発ネタでよければ、また明日の夜あたりにちょっと書いてみますね。
(・∀・)イイヨイイヨー
お前らなら、どうよ?エロシーンにて。
・男が知識あって、リードしてあげる
「な、何でこんな……事知ってんのよっ、スケベ!変態!」
「でも、気持ちいいんだろ?」
「っそれは……ばかぁ」
・女の子が少ない知識を振り絞ってご奉仕
「えっと……こうすればいいのかな」
「お前、やけに詳しいな」
「いや、これは……お兄ちゃんの部屋で見つけた本に書いてあったんだよっ」
「あのバカ……目立つところにエロ本置いとくなよな」※♀の兄と♂が友人という設定で
・女の子がエロエロで誘ってくる
「ばっ、馬鹿、やめろお前!」
「えー、でも、ここはもう収まりつきそうに無いよ?(ニヤニヤ」
「これはだな、純粋な生理現象で……ウッ」
・両方知識持ってない。初めてだけど精一杯やろうとする
「痛っ……そこは違うよっ」
「ご、ごめん。……こうかな。どんなかんじ?」
「ぅ……うん、何か、変で……んんっ」
全部萌え(*´д`*)
うむ
うむ、全部萌え。万歳(*´∀`)
ああもぅこのスレ大好きだ(*´ω`)
剣太と鞘子・・・・・・剣と鞘・・・・・・エロいネーミングだなあ。
あ、でも幼馴染みで
女の子がエロエロで誘ってくる
ってのはあんまり見ないね
546 :
526:05/02/05 22:56:03 ID:/zqu0Sp0
>>536からの続きです。
「…うん。まだ迷ってけど」
俯いて答えた私の声は、自分でも驚くほどに小さかった。
大方、うちの母親あたりが剣太のおばさんに喋ったのだろう。こういった情報が回るのは驚くほど早い。この分だとたぶん同じ地区のほとんど
家には知られていると思った方が良い。
「なんで?」
そう尋ねる剣太の声は淡々としていて、何を考えているのかは読み取れない。
――――昔は、こうじゃなかった。
少なくとも高校に入るまでは、剣太の考えていることなんてすぐにわかったのに。
「……鞘子?」
下を向いたまま押し黙っている私が心配になったのか、剣太が体勢を低くして私の顔を覗き込んだ。
思いがけずに縮まってしまった距離に、頬が熱くなる。
素直じゃない性格とは逆に、感情のままに赤面してしまうこの体質を直す方法があったら教えて欲しいと切実に思う。
剣太を意識していることを悟られるのはシャクなので、私は思いっきりそっぽを向いたやった。
…こういうところがかわいくないんだって、わかっているのだ。自分でも。
他の人、例えば、クラスの男の子相手だと普通に笑えるのに。
剣太だけはどうしても駄目だ。意地を張ってみたりヒステリーを起こしてみたり、感情の手加減ができないのだ。
(きっと、剣太は私のことを「煩い奴」としか思ってないよね…)
こうやって、私はいつも勝手に自己嫌悪の悪循環に陥ってしまう。
その時、私の頭に何かが触れた。
顔を上げると、ぽんぽんと頭を叩かれる。
剣太からの『気にするな』の合図。
……何年ぶりだろう。剣太がこうしてくれるのは。
不意に目が潤んでしまったのを誤魔化すために、数回瞬きをした。
「なんか、久しぶりじゃないか?鞘子と話すの」
「そうかな…」
せっかく剣太がそらしてくれた話題も、今の私にとっては楽しくないものだった。
547 :
526:05/02/05 22:57:09 ID:/zqu0Sp0
……私は、校内で剣太を避けていた。
高校に入学したばかりの頃、クラスの離れてしまった剣太を教室まで迎えに行ったときに、剣太が私の知らない女の子と喋っているのを見た日から。
他の女の子と喋らないで欲しいとか、そういった独占欲ではなくて。
私たちの通った小学校も中学校も、生徒数は少なくて同じ学年で知らない子なんていなかった。
だから、生まれて初めてだったのだ。
剣太が私の知らない女の子と喋っているのを見るなんて。
それが自分でも驚くくらいショックで、剣太をまともに見るのが苦しくなった。
それから剣太と校内で二人になることなんてなかったから、きっと私と剣太が幼なじみだと知っている人間は少ないだろう。
…当の剣太は、私に避けられてるなんて気付きもしていないだろうけど。
「髪、伸びたな」
ポニーテールに結った私の髪先を弄りながら、突然、剣太が口を開いた。
丁度10年前に『長い方が良い』なんて言ったことを、目の前にいる本人は憶えているのだろうか。
「なんで伸ばしてんだ?」
……きれいさっぱり忘れているらしい。
剣太の言葉は、他の誰の言葉より私に与える影響が大きいというのに。
「……剣太には関係ないでしょ」
「そっか」
我ながら、もう少しかわいげのある返答は出来ないのだろうか。
「鞘子」
「なによ?」
意味もなく攻撃的な私の反応を受け流し、剣太はいつも通りのマイペースな口調で先を続けた。
「移動しないか?ここ、そろそろ、年寄り達の溜まり場になるぞ」
「…は?」
「年寄り達はな、隣町の整骨院まで通うのが日課なんだよ。んで、次のバスを使うんだ」
「でもまだ、次のバスまで30分以上あるじゃない。それよりも移動ってどこに…」
「だから、バスが来る30分前には集まって世間話を始めんだ。じいちゃんばあちゃん達は。…学校は」
突然、勢いよく剣太が立ち上がった。少し乱暴に私の鞄を掴む。
「今日はサボれ」
「はぁ?!何言ってんのよ、あんた!」
「じゃあ、俺、腹痛起こすから看病してくれ」
「わけわかんないわよ!」
548 :
526:05/02/05 22:58:26 ID:/zqu0Sp0
「やばい、鞘子!斉藤んとこのばあちゃんが来た!…行くぞ!」
「ちょっと剣太っ…!」
手首をつかまれ、引きずられるように立ち上がる。
そのまま剣太は停留所の裏にある山道に足を踏み入れた。
――――私の鞄と、手首を持ったままで。
549 :
526:05/02/05 23:01:12 ID:/zqu0Sp0
とりあえずここまでです。
離島とか山奥の分校とか、そういったところを舞台にすればよかったとちょっと反省しています。
いまいち田舎という利点を生かし切れていないですね。
書き始めてしまったので、このままでしばらく続けさせていただきます。
それでは。
神キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
これドツボです
ポニテな幼馴染……期待してますね!
かなりよさげな予感。
…あー。起きたばっかだってのに何故か下半身がやけに疼く。昨日の夜、アイツの写真にお世話になったばかりだってのに。お盛ん過ぎるぞ俺。
「ん、くぅっ……はっあぁ…」
うわ、末期だ。幻聴まで聞こえ…。
にしてはリアルなような。腰もなんか重いし。なんか揺れてるし。
恐る恐る目を開けてみると…。
「あ、やっと…、起きたぁ…」
俺にまたがる見慣れた顔が。ただその…、下が見慣れてないというか未知との遭遇というか。
めっちゃ犯されとりますがな。
「おまえっ、な、何してんだ!?」
「んふぅっ…え、何って…」
そう言うと腰を止め、上半身を前に倒し、こちら身をに委ねてきた。
「アンタ、昨日私の写真見ながら一人でしてたでしょー?」
「な、なんで知ってんだ…」
「だからさ、特別に私がサービスしてあげようかと思って」
「いやだからってお前…」
止めようとしたが既に聞く耳持たずで、俺に抱きついたまま再び腰を振り始めた。…お前がしたいだけちゃうんかと。
「あっ、あぁ!ひぁ……ん、はぁんっ!」
な、なんでコイツこんなに腰使い上手いんだ。
じゅぶっじゅぶっという生々しい水音とコイツがこんなに自分から求めてくるっていうシチュエーションは嫌でも興奮を掻き立てられる。
「あぐっ……やめろってお前…」
「強がっちゃって。中でこんなに、ひゃうっ!……ビクビクしてる、くせにぃ…」
「け、けどさぁ」
「ほらぁ……もっと好きなコト…して、いいからぁ!もっと…もっとしよっ!」
こんな感じでしょうか
>>545 どっちかって言うと「朝起きたらめっちゃ〜」ですが。
>>526 ( ゚д゚)ンマー 一読み手として超期待していマッシヴ。
553 :
545:05/02/06 00:41:13 ID:Xe4OhaZ4
神ダブルでキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
>>552 妄想を具現化して下さってありがとうごさいます
ペコリ
もうちょっと背景を付けて下さったら・・・・・・
ってそんな贅沢言えませんね
526氏 GJ!! 新たな名作の予感が・・・。
そういえば最近243氏や812氏を見かけないなぁ・・・。
>>548からの続きです。
幼い頃遊び場にしていた山は、都会より少し早い紅葉の季節を迎えていた。
シャクシャクと落ち葉を踏む音が妙に懐かしい。
「ねぇ!剣太ってば!本当に学校行かないの?!」
「頭痛いから無理」
「どう見てもピンピンしてるじゃない!」
私を引っ張る剣太の力は思っていたよりも強くて、立ち止まることも出来ない。
「決着を付けようと思っていたところにチャンスが降ってきたんだ。今日一日くらい、付き合ってくれ」
「何の決着よ?」
「…それは後でのお楽しみってことで」
俺、気ぃ小さいから決着付けられるかわかんねぇしな…、なんてわけのわからないことをつぶやきながら、剣太はずんずん進んでいく。
「ちょっと…!早いよ…!」
山道を剣太のペースで登らされて息が上がる。
私の声を受けて、剣太が立ち止まった。
「悪い…」
「…サボリに付き合ってあげるんだから、もうちょっと気遣ってよ」
軽く睨むと、バツが悪そうに剣太は頭をかいた。
「本当に悪かった」
律儀に頭まで下げた剣太は、今度は私の前ではなく横に立った。
私の歩幅に合わせて、ゆっくりと進み出す。
…たったこれっぽっち歩いただけで息が上がってしまった理由は、ペースが速かったからだけじゃない。
つかまれた手首から感じる剣太の手の大きさと温もりが、いやに私を緊張させて動悸を速めていたからだ。
だから、手首を離された方が山を登るのには適しているのだけど。
少し離れてしまった距離が残念だと感じている私は、なんて矛盾しているのだろう。
「お社に行きたいんだ」
前を向いたまま、剣太がポツリと言った。
「お社?!何しに?」
お社とは、この山の頂上にある古い社の事だ。
小さなお地蔵さまが何体か祀られているそこは、辿り着くまでに軽く2時間はかかる。
この辺りの年寄り達は冠婚葬祭のあるごとに詣でたりしているけど、私達が最後にそこに行ったのは小学校の遠足の時のはずだ。
「どうしても行きたいんだ」
普段は呑気で無精で私がどんなに怒っても受け流すだけのくせに、剣太は時々、こうやって強情になる。
(…ずるい)
剣太は知らないのだ。
まっすぐに私を見て強情を張る剣太に、私が絶対に逆らえない、なんて事を。
こうやって、皆勤賞も優等生の評判も簡単に捨ててしまえるくらいに一緒にいたいと思っているなんて事、剣太は知らないのだ。
私の無言の了承を正しく受け取った剣太が、ちょっと笑った。
「…鞄、返して。剣太」
「いい。持つ」
単語のみの簡潔な会話が私達の付き合いの長さを再確認させてくれる。そんな些細なことが嬉しくて、私も少し笑った。
…剣太とこうして並んで歩くのは久しぶりだ。
ゆっくりとしたペースで頂上を目指しながら、そんなことを思う。
毎朝一緒に登校しているけど、停留所までは自転車だし。
バスも2つ先の停留所から剣太の友達が乗り込んでくるから、私達が二人でいる時間は10分くらいしかない。
(背、伸びたな)
こっそりと見上げて思う。
中1の頃は、まだ私の方が高かった。
中学を卒業する頃は2pだけ剣太の方が高くなっていた。
なのに今は15p以上は差があるだろう。
随分と違ってしまった目線の高さとか。
私を引っ張る力とか。
私よりも早い歩調とか。
――――本当に、いつのまに、私と剣太の距離はこんなにひらいていたのだろう。
中学生の頃、クラスでも目立つ方ではなかった剣太を行事に引っ張り出すのは、いつも私の役目だった。
あの頃は勉強も運動も私の方がよく出来ていたけど、今は英語とか国語はともかく、数学・物理は完全に剣太に負けている。
ちなみに私達の成績はお互いの家族に筒抜けである。母親って、どうしてこうも子供のことを話題に出したがるのだろう。
走りっこをしても、たぶん私が負けるのだろう。
それが成長するということなのか男と女の違いなのかはよくわからないけど、剣太が違う人になってしまうみたいで少し寂しいと思う。
「そういやぁさぁ、根本のじいちゃん、狸飼い始めたんだって?」
ポツリと剣太が言った。
「狸なんて山にいくらでもいるのにさぁ、なんでまた?」
「…怪我、してたんだって」
「そっか」
「……」
唐突に始まった会話は唐突に終わり、私達はまた無言で足を進める。
…そういえば、狸の話なんて学校ではしたことなかったな。
市の高校に通う生徒はやっぱり市の中学出身の人が多くて。そういった人たちは新興住宅地か市営の団地に住んでいる。
わざわざ山を越えて時間をかけて通っているのなんて、私と剣太くらいのものだ。
私と剣太が住む地区は町のはずれで、周囲のほとんど家が農業を営んでいる。
私の家はお父さんが市まで勤めに出ているけど、剣太の家は大根とネギを育てている。…おかげで、私の好物はふろふき大根と焼きネギだ。
「そういやぁさぁ」
またポツリと剣太が口を開いた。
「鞘子、ちっこい頃この山で遭難しかけたよな」
「…忘れて」
「無理」
私のお願いは即答で却下された。
あれは確か小学校に上がったばかりの頃。山に咲く綺麗な花を見るのが楽しくて私は一人で山の奥まで入り込んでしまった。
「一人で山に入っては行けません」ときつく注意されていたにも関わらず、だ。
さほど大きくなくても、家のすぐ側でも、山はやっぱり山で。
あっという間に帰り道を見失った私は、何度も転んで大泣きしながら山道を彷徨っていた。
『さやこ!』
そう呼ばれた瞬間のことを、今でもはっきりと憶えている。
泥だらけになった剣太が、私を見つけてくれた。私が迷っていると誰も気づかないうちに、剣太は私のSOSを受信してくれたのだ。
幼かったとはいえ完全に自業自得な私の危機を助けてくれた剣太が、あのときは王子様に見えたものだ。
山で迷子になった、なんて言ったら親に怒られるので、そのことは私と剣太だけの秘密となった。
何故、剣太が私の居場所を知ったのかは、未だに本人が口をつぐんでいるのでわからないのだが。
……幼馴染みというのは、少しやっかいだ。
親すらも知らないような恥ずかしい思い出に関わっていたりする。
「剣太だって、小5の遠足でお社に行った時、お弁当ひっくり返して泣きそうになってたくせに」
「…忘れてくれ」
「無理。だってあの時、みんなに内緒でお弁当わけてあげたの私だもん」
「…感謝しています」
「よろしい」
顔を見合わせて、私達は小さく笑い合った。
前言撤回。
幼馴染みはやっかいなんじゃない。――――少し、くすぐったいのだ。
そう思って、私はふと気が付いた。
剣太と笑い合ったのが、ひどく久しぶりだったということに。
前回投下した分を読み返して、誤字脱字の多さに自己嫌悪です。
もう少し落ち着いて書いていきたいと思います。
続きは近日。それでは。
リアルタイムキタ━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
いいねいいね、冷えた心が温まるね。うひひひひひひ!
早起きしてたらキテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
526氏、長い文には改行したら読みやすいかも
投下してみます。
563 :
幼恋 冒頭:05/02/06 09:56:53 ID:yWX8Z/xV
―――ダメ超人と完璧超人との幼馴染の間には
―――恋が芽生えることはできるのか?
―――ダメ超人と完璧超人との幼馴染の間には
―――愛が芽生えることはできるのか?
―――出来る
―――出来るのだ
幼馴寺
幼馴山の頂上に古くからあるその寺は
幼馴大御神と呼ばれる幼馴染の神様が祭られており
幼馴大御神を一緒に参拝した幼馴染は
将来結婚し幸せな家庭を築くことができるという
言い伝えが残されていた。
そしてまた一人…
早朝。
まだ朝日も昇らぬころ。
幼馴寺に社には、
一人の少女の姿があった。
小柄で、幼い顔つきの少女は
まだほんの小さな子供のようにも見えるが、
その身には幼馴塚高校の制服が着用されている。
社に向かって、少女は三度手を叩いた。
「幼馴染の神様。
七月聖(ななつき ひじり)は今日で16歳になりました。
今まで大きな病気や怪我もなく、幸せに暮らして来れたのは、
幼馴大御神様がいつも私を見守ってきてくれたおかげです。
これからもどうぞよろしくお願いします」
少女は賽銭箱に5円玉を投じ、社の鈴を鳴らした。
再び三度手を叩くと、目を閉じて両手を合わせた。
小さな手には御守りが握られており、
その古ぼけた御守りは、七月家に先祖代々から伝わる
由緒正しき聖なる御守りだった。
「大きな事故が起こりませんように。
毎日健康でいられますように。
災害が起こりませんように。
お小遣いが増えますように。
身長が伸びますように。
ムネが大きくなりますように。
毎日美味しいものが食べられますように。
テストでいい点とれますように。
お父さんが毎日早く帰ってくれますように。
………。
幼馴染の月君とずっと一緒にいられますように」
最後の願いを強く念じた時、頬は赤く染まっていた。
幼馴染の神様への願い事を終えると、
少女が次に向かったのは墓地だった。
少女の母親の墓の前で手を合わせた。
「お母さん、おはよう。
一日遅れでごめんね。
元気だった?
あっ、お母さんには元気とか病気とかは関係ないのかな?
私とお父さんは、いつもの通り元気にやってるから心配しないでね」
軽い挨拶が終わると、
少女は墓石の掃除を始めた。
苔や汚れを洗い落とし、
花立ての水を換え、花と線香を供え、
燭台にろうそくを立てて火を灯し、
菓子や果物などは、半紙を敷いて供えた。
「お父さんはあいからわず仕事ばっかりで
聖のことにはぜっんぜん構ってくれないの。
私の誕生日も結局帰ってきてくれなかったし。
はぁ…お父さんは私より仕事のほうが大事なのかなぁ…。
…でも、しかたないよね。
お父さんのやってる仕事は市民を守るための大切な仕事なんだもんね。
うん。私が我慢して、お母さんの分までお父さんを支えてやらなきゃいけないよね。
………。
でも誕生日を無視されたことはやっぱり悔しいので、
今日はちょっぴりお父さんを困らせてやろうと思います」
少女に母親の記憶は何一つとして残っていない。
母親は少女が産まれたと時を同じくにして死を迎えてたと聞いているが
詳しくは知らされていなかった。
「そうそう。
今日から私もお母さんと同じ幼馴塚高校の生徒なんだよ。
それでね、お母さんに私の晴れ着姿を見てもらいたかったから制服を着てきたの。
どう、似合ってる?
それから幼馴染の月君も、一緒なんだ。
月君とは、お母さんとお父さんのような、素敵な幼馴染の関係になれたらいいな」
墓の清掃が終わると、
少女は最後にもう一度手をあわせた。
「それじゃあお母さん。
幼馴大御神様と一緒に、聖のことをいつまでも見守っててくださいね」
後始末が終え、
少女が幼馴寺を後にするころには
朝霧の向こう側から朝日が射し始めていた。
季節は春。
新緑の季節。
緑の要素が一面に生まれ、
新緑が萌えて延びまくる時期。
時刻6時00分。
―――七月家。
七月聖の朝は早い。
「さてと…そろそろかな」
じりりりり。
「チョヤッ」
鳴り響く目覚まし時計は
少女の指先一つでダウンした。
「今日も私の勝ちだね」
少女の名前は七月聖。
目覚まし時計の要らない少女。
真面目でしっかり者だと近所でも評判であり、
父親からも何の手もかからない自慢の娘と言わしめるほどであった。
そして、まだ幼さと、あどけなさが残っているものの、
前日16歳となったばかりの少女である。
もちろん、この少女に向かってその手の言葉は禁句である。
聖は今日も寝ざまし時計相手に連勝記録を更新し、清清しい気分のまま
階段と廊下を渡って、居間へと向かう。
居間は冷え切っていた。
「春なのにまだまだ寒いなあ…。
さてと、朝ゴハン作らなくちゃ」
制服の上からエプロンをつける。
「お父さんを起こすのが7時だから、
その時間に、できるようにしなくちゃね…」
七月家は聖と彼女の父親だけの二人暮しである。
他にやる人がいないので掃除洗濯家事炊事は全て必然的に聖と役目になったわけだが、
すでに七月家の平和は聖の手で成り立っていると言っても過言ではなかった。
「戦いもせずに〜♪あきらめるよりも〜♪選んだ自由で〜♪傷つくほうがいい〜♪」
鼻歌を歌いながらお米を洗う。
「そろそろお味噌汁を作り始める時間かな」
洗ったお米を炊飯機にいれ、味噌汁を作り始める。
同時進行で魚を焼きながら、ついでに野菜を切ってサラダの準備。
着々と朝食の準備が進められていた。
最後の仕上げを残したまま、聖は父親の部屋へと向かう。
自慢の娘は父親の目覚まし時計としての機能も搭載されていた。
「お父さん。朝だよー」
「……………………………すぐ…………いく……」
布団のからはゾンビのような呻き声が聞こえてくる。
「ちゃんと顔洗ってきてね」
聖は父のスーツにこっそり手をいれると、
再び炊事へ戻った。
最後の仕上げを行うと、いつも通りの時間となり、
食卓の上には、御飯と焼き魚と味噌汁と野菜サラダが並べられた。
それから幾秒も立たぬ内に、父親が居間へとやってきた。
居間には暖房が行き届き、もうずいぶんと暖かくなっていた。
「おはよう。聖」
「うん。おはよー」
「お、今日も美味しそうだな。それじゃあいただきます」
「どうぞどうぞ。お召し上がれ」
父親が夜遅くまで働いている七月家においては、
朝食は数少ない家族団欒の一時である。
「うん。やっぱり、聖の焼き魚はいつも最高だな」
「ありがと、それ、焼き加減とか調節するの、けっこう難しんだよ」
穏やかな親子の朝の会話、
だが、その一言一言は聖の心を幸せにするものだった。
2、3言、言葉を交わすと、父親は少し押し黙り、
そろそろ観念したかのような口調で言った。
「………聖。昨日のことはすまなかったな」
(きた!)
聖がずっと待っていた言葉だった。
「ん?なんのこと?」
しかし、あえて白々しい態度をとる。
「あ…いや…その」
「言葉にしてくれなきゃわかんないよ」
「ぐっ…」
無邪気な笑顔の下に秘められし悪意。
聖は意地悪そうに聞き返したのは、
前日、父がどんな大罪を犯したのかを、
あくまで父の口からはっきりと言わせるためだった。
「…その……なんだ。
誕生日を一緒に祝おうっていってたのお父さんなのに
急に仕事が入って、戻れなくなっちゃって………」
「まったくだよ。私ずっと待ってたのに」
聖の口調はいつもとまったく変わっていない。
それが逆に父の心を圧迫していた。
「ううっ……すまん。
も、もう過ぎてしまったことを言っても仕方ないのだが…。
来年、来年こそは必ず祝うからっ!!」
「でも8歳と9歳と10歳の時と、12歳と13歳と14歳の時も同じこと言ってたよね」
父は優秀な男ではあったが、聖の冷たい返答の前には、返す言葉がなかったという。
「………」
父の態度に煮えくり返ったのだろうか?
聖は無言のまま席を立ち、食卓から離れていく。
それは、いつもの聖からは考えられない行動だった。
「お………おい聖…」
額に脂汗を浮かべる父。
考えてみれば聖も年頃なのだ。
いくら仕事のためだとはいえ、
約束していた娘の誕生日をすっぽかした。
それが、いったいどれほどの罪か。
今、彼の脳裏には家庭崩壊と言葉がよぎっていた。
(なんとかしなければ。なんとかしなければ。なんとかしなければ………。
このままでは娘が不良に。このままでは娘が不良に。このままでは娘が不良に………)
「なーんちゃって、冗談。
はいっ、これお父さんの分のケーキだよ」
「えっ?」
部屋に広がる甘い臭い。
聖の持ってきたお皿の上には綺麗に切られたケーキが乗っていた。
「聖…」
「お父さんのしてることは街を守る大切なお仕事だもんね。
いつも夜遅くまでご苦労様。
家のことは心配しないで、私がちゃんと守るから」
「………」
「ん?どうしたの?」
「あ、いや、父さんも年かな………涙腺が弱くなっちゃって」
「お父さん………」
悪いのは己であるはずなのに
逆に娘に励まされる結果になろうとは、と
父は正直、娘の天使のような純粋無垢な心に感動した。
しかし、
「でも、約束破った埋め合わせはちゃーんとしてもらうよ」
それが娘の悪魔的頭脳によって作られたシナリオの始まりであることは
父はまだ知る由もなかった。
「………?」
「私そろそろ新しい靴がほしいな。これなんだけど」
「は、はい?」
聖がケーキと一緒に持ってきたのは、デパートのチラシ。
9800円の靴が指されている
その値段は、七月家においては憤慨ものだった。
「そ、それは」
だが、負い目のある父に反抗は許されない。
聖はそれを知っている。
「誕生日プレゼントってことで一つよろしくー」
驚愕の事実、
聖の手にはすでに父の財布までもが握られていた。
そして、さらなる驚愕の事実。
「ひー、ふー、みー」
純粋無垢の天使の心を持つはずだった娘は
父親の目の前で、何の躊躇いもなく、
なけなしの資金を一枚二枚と抜き取り始めたのだ。
「………ちょちょちょっ、ちょっとまて聖!今月お父さんちょっと厳しくて。
家計簿つけてるお前ならわかってるだろ。なっ、なっなっ?」
「でも、先に約束やぶったのお父さんですから。残念ッ!」
結局、父に娘の凶行を咎めることはできなかった。
七月聖は天使などではない、もっと禍々しいなにかだ。
ほどなくして、
時刻は7時30分。
聖は朝食を済ませた聖は、カバンを手に取り、
まだ朝食をとっている父親に出発の挨拶をしていた。
「それじゃあ、食べ終わったらお皿はちゃんと水につけといてね」
「ん?まだ行くには早いんじゃないのか?」
「月君、迎えに行かなきゃいけないからね」
「そうか、たしか彼も同じ高校だったな」
「うん」
「登校中、転ばないように気をつけるんだぞ」
「もう、そんな子供じゃないよぉ」
「そうだな。聖ももう16歳だしな。
お父さんの財布から平気でお金を抜き取るお年頃だもんな」
「///(照)」
「お父さんは今日も遅くなるかもしれないけど、
戸締りはちゃんとしとくんだぞ」
「はーい。それじゃあ行ってきます」
聖は元気良く答えると、家を後にした。
(あの事件から16年………。
おまえが残した娘はとてもいい子に育っているよ。
でも、だんだんお前に似すぎて困る)
父の胸中には複雑な思いが交錯していたという…。
最初は彼女側の設定だけを考えてスタートさせました。
完璧超人ぽく書いてみましたが、いかがでしたでしょうか?
でわ。
近頃は祭りだな
神だらけでウレシイ!!
>>558からの続きです。
「休憩するか?」
頂上まで後半分、という地点。
かなりバテ気味の私を気遣ってか、剣太がそう切り出した。
「…うん」
意地を張っている場合じゃないくらいには疲れていたので、正直、その言葉はありがたい。
大きなブナの木の根本に座り込み、幹に背を預ける。
制服が汚れるかも、と思ったけど、下は枯葉ばかりなので多分大丈夫だろう。
同じ幹に寄りかかった剣太が、大きく伸びをして空を見上げる。
「きれいだな」
「うん…」
剣太が言いたいことがわかり、私も空を見上げた。
黄や赤に彩られた葉の隙間から覗く青空は、学校から見るそれよりも透明に近い気がする。
少し汗ばんだ肌に、山の冷えた空気は心地よかった。
熱気を放出するために私はカーディガンを脱いだ。
私達の通う高校の制服は、女の子は濃紺のセーラー服で男の子は黒い学ラン。
何の面白味もないと評判のシロモノだ。
隣に視線をやると、剣太は脱ぎ捨てた学ランの上を丸めて鞄の中に詰め込んでいた。
この時期独特の乾いた山の匂いが私達を包む。
冬を迎えるまでのこのわずかな季節が、私は大好きだった。
遠足や運動会、町の収穫祭などが目白押しのこの季節。
騒々しい周囲からこっそりと抜けだし、私はよく一人で山に来た。
わずかな葉擦れの音と小さな動物の駆ける音と。
市よりも町よりも冷たく澄む空気と。
それらに包まれると、私でも少し素直になれるような気がしたから。
…それは、私の勝手な自己満足で未だに結果は出ていないのだけど。
この山の麓に、私と剣太の家がある。
家から山を左に迂回し、急な坂道を昇った所にいつも私達が使っているバスの停留所があって。
その裏の熊笹に覆われた細い道…今、私達が歩いているこの道がお社への最短ルートなのだ。
「……剣太は、どうするの?進路」
「迷い中。鞘子と同じ」
山の静けさに助けられた私の小さな声は、剣太へと届いたらしい。
私と同じ、と言うことは、剣太も東京へ出ようと思っているのだろうか。
……東京へ行ったら、こんな景色を見る機会はなくなるだろう。
もしかしたら剣太と二人で見るなんて、これが最後かもしれない。
そう思うと、どうしようもなく悲しくなってくる。
私だってこの町を出ようとしているのに。
剣太には、変わらないでここにいて欲しいと思ってしまう。
私はきっと、ものすごく自分勝手な女なのだ。
「そういやぁさぁ」
空を見上げたままの剣太が、口を開いた。
「いつかの収穫祭の時のこと、憶えてるか?」
収穫祭とは、毎年この季節に行われるお祭りのことだ。
地区ごとに出店を出し合ったりして、その時期はどこの家も慌ただしくなる。
子供の頃は、夜通し酒を飲み交わす大人達の部屋を抜け出して剣太と二人で遊んでいた。
…私達はいつも一緒にいたような気がする。
同じ地区に住む同じ年の子は剣太だけだったということもあるだろうけど。
朝起きたら剣太と遊んで、一緒にお昼寝をして、また遊んで…。
そうやって、私達は兄弟のように育ってきたのだ。
小学校へ通うようになってからも、一緒に通学して一緒に帰っていた。
私達にとってはそれが自然な流れだったから。
それに変化が訪れたのは、そんな昔の話じゃない。
「いつの収穫祭よ?」
「5歳か…6歳くらいの。小学校にはまだ行ってなかった」
「もしかして…私が大泣きした時の?」
「そう」
剣太が言っているのは多分6歳の時の収穫祭だろう。
大泣きしている私と、必死に私を宥めている剣太の姿が思い出せる。けど…。
「私、何で泣いてたんだろう?」
「…憶えてないのか?」
「剣太は憶えているわけ?」
「…俺は忘れたことなかったんだけどな…。そっか。鞘子は憶えてないのか…」
明らかに落ち込み始めた剣太の声と話の内容が気になって、私は剣太の方を向いた。
「教えてよ。気になるじゃない」
「…お社に着いたら教えてやる」
そう言って、剣太は立ち上がった。
「休憩お終い。…行こう」
頷いて、私も立ち上がる。
スカートに付いた落ち葉を払い、大きく背伸びをする。
同じ体勢を取っていた剣太と目が合って、私達は小さく笑い合った。
いつの間にか剣太と普通に話せるようになっていたことに、私は気づいていなかった。
今回はここまでです。
続きはまた近日。
リアルタイムで見てしまった・・・
しまった、続きが非常に気になる。
いいなあ……最近スレに活力が出てきたよ。
526氏も頑張ってください。続きを楽しみに待ってます。
そして243氏の復帰を心待ちにしてみる……。
もうエロなくてもいいや
そのくらい嬉しい
なんていうかもう、すごくいい。
素晴らしい・・・
寂しいよ・・・・・・
ごめん、超誤爆
>>582からの続きです。
急な坂道を登り切ると、突然視界が明るくなった。
一瞬、自分が山にいるのか空にいるのかわからなくなる。…頂上が近い。
ここまで来たら、お社までもう一息だ。
「あっ…」
空を見上げていたら、木の根っこに足を取られ、私の体が傾いた。
(こける!)
そう覚悟して思わず目を瞑る。
だけど予想した痛みは来ずに、代わりに左腕に鈍い熱を感じた。
体が重力に逆らい、引っ張られる。
目を開くと、私は剣太に支えられていた。
掴まれている腕から伝わる温もりと、剣太に助けられたという事実に私の頬が染まる。
「……腕、痛い」
「…悪い」
謝るのは、素直に『ありがとう』と言えない私の方だ。
どうして私はいつもこうなんだろう。
「鞘子」
名を呼ばれ視線を上げると、剣太が手を差し出していた。
「…こけて泣く前に」
「…泣かないわよ。……もう、子供じゃないもの」
幼い頃、私はとても泣き虫だった。
転んでは泣き、他の地区の子にいじめられては泣き…。
普通ならそこで幼馴染みの男の子が助けてくれたりするのかもしれないけど、私の幼馴染みは
私に負けず劣らず泣き虫で弱虫だった。
5つ離れた剣一兄ちゃんにこずかれては泣き、おばさんに叱られては泣き、私が泣いているの
を見てまた泣いた。
私達は、泣くのも笑うのも一緒だった。
成長するにつれ気が強くなっていった私は意地でも人前では泣かなくなったけど…そういえば、
剣太はいつから泣かなくなったのだろう。
「鞘子」
剣太がもう一度私の名を呼ぶ。
(どうしよう…)
剣太の手を取るのは気恥ずかしい。
一緒に成長していると思っていた剣太が、私の知らないうちに急に大人になってしまったようで、
どうしていいかわからない。
泣き虫だった幼馴染みは、いつのまに私に手を差し伸べられるくらい大きくなっていたのだろう。
迷い、剣太の顔を見上げる。
手を差し出す剣太は、なぜかそっぽを向いていた。…少し、耳が赤い。
その表情は昔とあまり変わってなくて、私は少し安心してしまった。
「…しかたないなぁ」
かわいくない私の言葉に、剣太は少し笑った。
恐る恐る左腕を伸ばし、私の手が剣太の手に触れる。
ゆっくりと握り合った手は、お互いに少し汗ばんでいた。
無言のまま私達はまた進み出す。
…大きなケヤキが見える。もうすぐだ。
最後の急な段を、剣太に引っ張られて登る。
辿り着いた山頂は、私の記憶にあるそれと全く変わっていなかった。
10月の風が火照った頬を撫で、涼やかに吹き抜ける。
朱色の剥げた小さな鳥居をくぐると、粗末な木の屋根が見えた。
屋根の下には男女の像が彫られた50センチ程の高さの石があり、何日か前のものと思われる蜜柑が
供えられている。
この辺りを守る道祖神なのだと、死んだばあちゃんが教えてくれたっけ。
ケヤキの下のこの小さな建物が、「お社」と呼ばれているものだ。
「…お社に着いたけど」
私と手をつないだままの剣太を見上げる。
「飯食おう。腹へった」
「ここに来たわけを知りたいんだけど」
「飯食ってから。腹が減っては戦は出来ないだろ」
戦なんていつするのよ、という私のつぶやきは聞こえなかったようだ。
…いや、聞こえない振りをされたようだ。…別に良いけど。
剣太がお社の脇に座る。
さりげなく手を離され、滲んでいた汗が乾いていくのがわかった。
仕方なく剣太の隣に座り、鞄を受け取る。
停留所にいるときよりも、剣太の隣にいるのが苦しくない。
そのかわり、もう少し側に行きたいと少し思ってしまった。
…もちろん、実行は出来なかったけど。
お弁当を広げ、私がおにぎりのアルミホイルを解く頃には、剣太はすでにお弁当の半分を片づけていた。
相変わらず、食べるのが早い。ちゃんと噛みなさいって何度も注意しているのに。
「…それ、鞘子がにぎったのか?」
おにぎりを半分ほど食べたところで、剣太が突然尋ねてきた。
「うん、そうだけど。…何?」
「くれ」
「嫌」
「こっち半分やるから」
「ちょっと!」
半ば強引に奪い取られた私のおにぎりは、あっというまに剣太に食べられてしまった。
「なんなのよ、一体…」
「鞘子の上達振りを確認しただけだ」
「わけわかんない」
「おまえ、成績良いけど鈍いよな」
「…はぁっ?!」
一体何を言い出すのだ、こいつは。本当にわけがわからない。
「鞘子のクラスにさ、神尾っているじゃん?」
「あぁ、あのメガネの」
「そう。神尾がさ、『藤堂さんってしっかりしてるし人当たりが良いよな』って言ってたんだけどさ…」
「だけど?」
「鞘子、そんなしっかりしてないよな。結構ドジだし、よくこけるし」
「なっ…!悪かったわね!」
本当になんなんだ、一体。…剣太は私に喧嘩を売りにここまで来たのだろうか。
「そうやってすぐ怒るしさ。結構鈍感だしさ」
「あんたが変なこと言うからでしょ?!」
「だからさ、俺だけなのかと思って。そういう鞘子を知ってるの」
「…何が言いたいのよ、剣太」
「……早く食え」
そう言って剣太は空を見上げた。
(…本当に、わけがわからない…)
今、剣太が何を考えているのか、私には全くわからない。
何か文句を言ってやろうかと思ったけど、なんて言って良いかわからなかった。
剣太はそのまま、私が食べ終わるまで一言も口をきかなかった。
今回はここまでです。
明日は落とせないかもしれません。
投下します。
いろんな意味で痛い話。
「おしいれ」
――深夜、こつり。と、ガラスが鳴った。
庭に面したガラス戸を開ける。
ゆらりと、何も言わず、物音すら立てず、まるで幽霊のように静かにとおこが部屋に入ってくる。
そうして、無言のまま押入れに潜り込み、襖を閉めた。
ガラス戸を開け放ったまま隣家の様子を伺う。
夜の中。どこまでも静かで、変わりなかったが、きっとまた酷い喧嘩があったのだろう。
とおこ――隣の家に住む、叶十子――は、もうずっと、小さい頃から不仲の両親の間で諍いがあるたびに、
ぼくの部屋の押入れに避難してくる。
まるで、殻に閉じこもるように。
世界から、逃げるように。
自分を消してしまいたいとでも言うように。
――とおこは、押入れの中で、ちいさくちいさく縮こまる。
すいませんリロってませんでした出直します。
何この神乱舞。ふざけてるの?
GJ過ぎて妄想吐き出そうとした俺が鬱になるじゃないか(*´∀`)
たくさん神がいて、おじちゃんうれしいよ。
連日連夜大盛況だな
反動が怖いぜ・・・・・・
脳内麻薬祭りキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
いや、ほんと最近は豊作ですね。
書き手の皆さんの感謝感謝。
>>606 種まきも兼ねてると思われ
力強い新芽にも期待
>595続き投下します。
そして、ぼくはといえば、とおこの殻の前で何も出来ずに待つ事しか出来ないのだ。
(ごめんなさい)
殻の中でとおこが泣く。
(ごめんなさい、ごめんなさい)
とおこのせいではない事でとおこは泣く。
(ごめんなさい、おかあさん。ごめんなさい、おとうさん。私が、私が悪いんです。
だから怒らないで。もう怒鳴らないで。喧嘩をしないで。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい―――)
自分の出来が悪いから両親の仲が悪いのだと。だから毎日喧嘩になってしまうのだと。
自分さえいなければ。と、とおこは泣く。
自分の親の前で泣く事すら出来ずに、とおこはよくここに来る。
もう、いつからか、はっきりとは覚えていないほど幼い頃からとおこはこうして誰にも知らせず泣いている。
すすり泣きの声がようやく少し収まった頃、引き戸を開けて中に入る。
――そうして、暗闇の中。
隅で小さくなっているやせっぽちの身体を抱きしめる。
安心させようと、ひやりと滑らかな感触の、まっすぐな髪を何度も撫でた。
泣きすぎて、熱を持った瞼に口付ける。
涙の痕を辿るように、しょっぱいほっぺたと、少しかさつく唇にも口付けを落とした。
ゆっくりと、とおこのシャツを脱がせていく。
前のボタンを全て外し、平らなおなかから、少し浮き出ている肋骨を辿り、ささやかな乳房を撫でる。
「……ぅ」
微かに漏れる声。
小さな乳房を、少し乱暴にぎゅっと掴む。
「――っ!」
悲鳴のような息が喉を振るわせる。
こういうとき、とおこは決して声を出さない。
一度、ぼくの両親が留守の時に、声を出してもいいと言ったけれど、
それでも微かな喘ぎの他は絶対に出そうとしなかった。
ぼくも、自然と言葉を発する事はなく、ただ無言の中、小さな暗闇の中でぼくらは身体を重ねる。
――ぼくらが、こんな関係になったのは、半年ほど前の事だ。
とおこが真夜中にでもぼくの所に――ぼくの押入れに――来るのはそれまでもしょっちゅうあったし、
ぼくが、とおこを慰める為に抱きしめるのはよくある事だった。
――言い訳だが、こうなる事を提案したのはとおこだった。
「……なんでもいいの。私を刻んで罰してくれるモノならなんでも。
……でも、どうせなら律がいいわ」
そうして、ぼくは初めて女の子を抱いた。
初恋の女の子だった。
いちばん大事な女の子だった。
――甘さなど欠片もない、苦痛と涙と血の匂いのする初体験だった。
今日も、殆どろくな前戯も、愛撫すらもなく、とおこのなかにぼくを埋める。
薄い闇の中で、とおこが苦痛に顔を歪めるのが見えた。
ぱくぱくと口を開き、懇願する。
――いたくして。おねがいだから、もっとひどくして。わたしを、きざんで。
とおこは、快楽を得ることを嫌悪する。
――これは、あくまで罰なのだと。気持ちよくなったりしてはいけないのだと、
そうしてとおこは、ぼくに抱かれるのだ。
何度も何度もとおこを貫き、白い肌をぼくの欲望で汚して。
――そうして、ようやくとおこは安堵するのだ。
身支度を整え、押入れから這い出す。
とおこは、ようやく、少しだけ微笑んだ。
「――ありがとう。本当に、ごめんね、律。迷惑ばっかりかけて」
……『ゴメン』は、本当はぼくが言わないといけないんだけど。
「いいや。別に、気にするなよ。それより、あまり遅くなると気づかれるんじゃないか?」
「……大丈夫よ。そんなに、気にされて無いから……。それじゃ、私帰るわね。
でも、本当に、ごめんね? いつもいつも律に頼っちゃって」
「気にするな。って言ってるだろ」
「……でも、気にするわよ……。あのね、律、私、がんばるから。
律に頼らなくていいようになれるよう、がんばるから。今のままじゃ、律にカノジョが出来た時に悪いもの」
「……いいからさ、もう帰りなよ」
そうして、笑ってとおこは帰っていく。
ぼくはというと。
「……セックスしといて、ここまで男扱いされてないっていうのは……、なんなんだろうね……?」
ムチャクチャに落ち込んでいた。
ぼくらは始めから間違えている。
お互い、好きも嫌いもなく、ただ傷口を舐めるようにセックスをしたのが間違いだった。
大人が聞けば、顔をしかめて、責められるだろう。
それでもぼくらは、あのときそうするしかなかったのだ。
この関係がどうしようもなく歪んでいる事など、お互いに承知の上で。
だってぼくらは――、あまりにも子供すぎたから。
早く大人になりたいと思う。
こんな、小さな押入れではなくて、ちゃんととおこを守れるように。
とおこに、『愛している』と――まっすぐに言えるような、そんな大人に。
たいした話でも無いのに、引っ張る形になって申し訳ありませんでした。
526氏も直後投下すいませんでした。
あと、>601GJ。
。・゚・(つД`)・゚・コワイ
>601
って描いた本人投下?
ツンデレスレにも投下してやってくれ。あるかわからんけど
いや、あれはふたばの保管庫の奴だろ。
俺としては同保管庫の「一つお前にいっておく」も推しておきたい。
ちょっと俺の妄想吐き出しちゃうよ。
鴉の濡れ羽のようなそれに、指を入れる。
皮膚を伝わり感じるのは、艶やかな触感。梳く手指の動きも滑らかに。
「……くろーど?」
きょとんとして、彼女――東雲・薙がこちらを見るが、動きは止めない。
ただ撫で梳く。薙がこちらを見る目付きが、怪訝そうなものから次第に
心地良さそうなものへと変わっていく。
「んー……」
薙が目を閉じ、ねだるように身体を摺り寄せて来た。
そこで『くろーど』と呼ばれた彼、鈴木・蔵人は顔に笑みを浮かべて、
「――起きろ」
彼女の頬をつねった。
吉野屋に入り、二人仲良く牛丼を注文する。
品が運ばれてきたところで、薙が口を開いた。
「酷いではないか、蔵人」
むすっとした表情の薙を前に、蔵人は渋面をつくる。
「酷いのはお前だ。寝坊なんぞしおって。今日の朝飯はお前の
当番だったはずだが?」
「う」
言葉に詰まり、薙はしばし視線を彷徨わせて、おもむろに牛丼
に箸をつけた。
「うむ。たまの牛丼も味なものだな」
「何が悲しくて休みの日にまで吉牛……、俺の昼飯は毎日コレだぞ」
「い、いいではないか! 牛丼は不味くないぞっ」
「俺は薙がつくるメシが食いたかったんだけどなあ」
「う……」
しゅん、と肩を落とす薙を見て、蔵人は内心で笑みを浮かべる。
彼女とは長い付き合いだ。子供の頃に家が近かっただけの繋がり
だが、地元の学校に通って地元で就職した場合、「幼馴染」という
縁は中々途切れない。しかも幼稚園から高校まで同じクラスで席が
隣、就職先も一緒となれば、もはや夫婦だ。
今では親公認の半同棲状態であるのだが――
(そーいや告白とかしてなかったな……どっちからも)
どうにも奇特な関係だと、蔵人は思う。
ふとすると崩れ去ってしまいそうな……
「――人、蔵人……くろーど?」
「ん、あ、ああ……なんだ?」
名前を呼ばれた事に気付き、蔵人は薙に視線を戻した。
薙は上目遣いでこちらを見て、おずおずと問う。
東雲支援。
81氏……(つ∀`)
諸事情にて携帯から。
東雲って名字はガイシュツ?だったらスマソ
つか続き投稿できねえ。
まあ、エロ展じゃないんで期待しなくても平気さ!
>618
GJ。最近は新作祭りだな。
>613
>>たいした話でも無いのに
いやいや、むしろ続きがすっげぇ気になる。
自分的にはこういうのツボに入りまくり。
ああ、言われるまで気が付かなかった。まあいいんじゃない?
続きщ(゚Д゚щ)
やっとアクセス規制解除された・・・。
今まで書き込めなくてすみません。
続きの方は近日うp予定です。
まとめサイトの方遅くなってすみませんが修正ありがとうございました。
おひさしぶりです。
もう言い訳のしようも無いほど遅いですが、
>232の続き、ただいまより投下させていただきます。
「本ッ当、ごめんね! 原田さん! このお詫びはまたいずれするからー!」
「あ、いえいえ、そんな。……それより、早く病院に行ってあげてください」
「ごめんなさいね、ありがとうー!」
ばたばたと、司書さんが大慌てで帰って行かれます。
ウチの図書館は、付属の小中学校との共有施設のため、結構大きく、選任の司書さんがいたりします。
と、いっても正式な先生ではなく、あくまでもパートの職員さんなので、
勤務も夕方、16時までだったりします。
で、図書館自体の閉館時刻は17時だったりするので、いつも閉めるのは、当番の図書委員なのです。
普通は、二人か三人で当番に当たるのですが。
「ごめんー! 急にバイトが入ったー!」
「あ、1−Cのモンっすけど、ウチの委員、昼で早退したッスからー。すんませんって、伝言預かってるッスー」
……と、いうわけで。
それでなくとも土曜日の当番で昼からてんてこまい。
司書さんと二人で必死に捌いていたのです。が。
「え!? ウチの子が!? 39度も!?」
保育所からの連絡で、お子さんが高熱を出されたとの報せを受けて、
司書さんも14時で帰ってしまわれました。
それでまあ、激闘3時間の末。
「…お、おわりましたあー……」
もう完全にへろへろになっていました。
座り続けで、痺れるおしりを撫でつつ、扉に閉館の札を下げに行きます。
……さ、これから貸し出し記録を整理して、返却本を棚に返しに行かないと……。
はふう。と、おもわず溜め息が漏れました。
忙しくしている間はいいのですが、こうして、一人ぼっちで黙々と作業をしていると、
色々イヤな事を思い出して、気が沈んでしまいます。
タイミング良く、外は雨が降り出して薄暗く、余計に気鬱になってしまいました。
「…うー……」
なんでこんなにイライラしているのかというと。
「ヤなやつですねー……、わたし……」
数週間前から付きまとう、自己嫌悪のせいなのです。
「……みいちゃんが、誰と仲良くしてても、わたしが口出す筋合いなんかないじゃないですか。
バカですか、わたし」
そう。
数週間前、みいちゃんがわたしの知らない女の子と、仲良く話しているのを見て以来、
なんだかイライラモヤモヤしていて、そう感じる事がまたイヤな気持ちだったりするのです。
「……アレですねー、ちっちゃい女の子同士でよくある『友達取られちゃったー』ってヤツなんでしょうねー。
みいちゃん、昔っから、わたし以外に女の子の友達いなかったから今までそういうのが無かっただけで」
前に、「なんだか仲良しみたいですけど、あのキレイな人、どういう人?」ってそれとなく
聞いてみた事があったのですが、そのときも。
『…あァ、マキの事か。――そうだなァ、ダブリに全く臆さずにあそこまで尊大に
話しかけてくるのも珍しいな。おもしれェ子だよ』
と、ずいぶん愉快そうに片頬を歪めるようにして笑っていましたから。
――みいちゃんがああいう表情をするときは、相手を自分と同等かそれ以上だと認めてるって事です。
中学生の時、よく一緒に遊んでた男子の話をたまにするときも、あんなカオになってましたから。
たぶん、わたしは悔しいんでしょう。
わたしみたいな平凡な女、幼馴染みでもなかったら瑞穂ちゃんに話しかけてもらうことも無かったでしょうから。
だから、あんなふうに瑞穂ちゃんに認めてもらえる人に嫉妬してしまうのだと―――。
「……嫉妬。……やっぱり、嫉妬なんですよね、これって……」
………でも、どうして?
みいちゃんが誰と付き合おうと、女の子と仲良くしてようと、ただの幼馴染みのわたしには関係の無い事です。
そうったらそうなんです。
また思考がぐるぐるしてきます。
気がつくと、貸し出しカードの整理はいつのまにかすっかり終わっていました。習慣ってすごい。
……ちょうどいいです。
返却本を戻してきましょう。身体を動かしてる方が気が紛れますし。
――流石に土曜日という事もあって、返って来た本も多く、終わる頃には18時をとうに回っていました。
「えーと、これと、これで最後ですね……」
あまり貸し出しされない史料コーナーの本が数冊。
どれもこれも重たく、そのうえ、そのコーナーは本棚が天井近くまでと高く、
また間も狭いので圧迫感がすごく、正直近寄りがたいのですが。
しかも外はかなり雨脚が強く、館内は電気をつけているのに、なんとなく薄暗い雰囲気です。
「……う。なんか、ちょっとイヤかも……」
やだなあ。と思いましたが、これだけを戻しに行かないわけにもいきません。
届かない所は脚立を使い、なんとかぜんぶ戻し終えて、やれやれ、と思ったとき。
――突然の閃光、と、ほとんど同時の轟音。
ドンッ!! ガラガッシャーンッ!!
「うひゃああああああああっ!?」
直後、館内の電気全てが消え、真っ暗闇が訪れました。
「あ、あ、あああああ………」
カミナリ。
わ、わ、わたし、カミナリだけは本当に駄目なんです……っ!
完全に腰が抜けて、その場にへたり込んでしまいます。
また、ぴかり。と閃光が走り、どがんっ!とすごい音がして窓ガラスがびりびりと震えました。
「ひっ! や、やだ、やだあー…っ!」
こわい。
ものすごく、こわい。
なんでこんなにわたしがカミナリが恐ろしいのかというと、子供のころ、瑞穂ちゃんに
上のお兄さん――当時は医学部に通っておられたので、おそらく法医学かなにかの教科書だったのでしょう――の、
カミナリが直撃した人の事故写真を見せられたせいです。
――そう。
あれが落ちたら。
ちょうど、こんなふうに、まっくろ、な――。
ドンッ! ガラガラガラガラガラガラッ!!!
「いやあああああああああ―――――っ!!」
やだ。
やだやだやだやだあああっ!
みいちゃん、みいちゃーんっ!
「ちょ、おい、暴れるなっ! 落ち着けよ、真由子っ!」
へ、あ。
「……みいちゃん……?」
「お、ちょいと正気にかえったか」
瑞穂ちゃんに、抱きしめられていました。
と、いうことはさっきの真っ黒な人影って。
「――しっかし、オマエさん、まだカミナリ駄目なんだなあ。こんなもん屋内にいりゃ別に恐ろしかねェ
だろうに。建物にゃ大概避雷針ってモンがついてるんだしよ」
「あ、あ、あなたがソレを言いますか――っ!?
わたしが、こんなにカミナリ怖いの、いったい誰のせいだと――」
また、窓ガラスを震わせるほどの轟音と閃光が走り、声も出せずに目の前の身体にしがみついてしまいます。
力強い腕に、しっかりと抱き返され、安心させるように背中を何度もぽんぽん。と軽く叩かれました。
――そんなふうに優しくされるから、ますます泣きじゃくりながら、目の前の広い胸に顔をうずめ、
しがみついてしまいます。
「――だいじょうぶだいじょうぶ。俺がいるからな? こわくないこわくない」
ぎゅうっと。
抱きしめられると、そのぶんだけ涙が溢れるようでした。
結局、カミナリが鳴り終わるまでの間、ずっと泣きながらみいちゃんの腕の中に居てしまいました――。
「……あの」
「んー?」
「……今日は、その、すいませんでした……。みっともないとこ、見せちゃって……」
あれから一時間ほどでカミナリは完全に鳴り止み。
雨上がりの夜道を二人で一緒に帰っています。
うう。しかし醜態にも程がありますよ、わたし。
完全にパニック起こして子供みたいに泣くわ喚くわ。
……そ、そのうえ、ずっと瑞穂ちゃんに抱きついて――。
「あー。気にすンな気にすンな。……むしろ俺からすりゃかなり役得だったしなァ」
そう言って。
ニヤリと笑います。
「や、役得。って」
「おお。しかし、まゆこ、オマエ、また乳の辺り育ったんじゃねェか?
なんか、こー、こう……、ステキな圧力がっ!」
そういって、ものすごく下品な表情を作って笑います。
――いつものわたしだったら、ここで怒って、怒鳴って、それでみいちゃんが笑いながら謝って。
それで、終わりになるんでしょう。
でも。
でも、今日は。
「……やめてください」
「……まゆ?」
いつもと違う反応に戸惑ったのでしょう。
みいちゃんが、不審気な顔でわたしを見ます。
「……やめてください。そんな風な冗談言うのも、ああいうときに、優しくするのも…。
ただの、幼馴染みだったら、あそこまでしませんよ……?」
「おい、真由子? オマエ――」
「わ、わたし、ばかですから。単純な、女ですから。ああいうことされると、困るんです。
すごく、困るんですっ。あんなふうに、されたら。……されたら―――」
それ以上いえずに、家までの道を走り出します。
「、ま」
「ついて、来ないでっ!!」
手を伸ばしたみいちゃんに、咄嗟に言葉をぶつけます。
言いかけた言葉を飲み込んで、立ち尽くすみいちゃんを横目に、走って走って走って。
部屋に飛び込み、後ろ手にドアを閉めて、ずるずると座り込みます。
――されたら。
あんなふうに、やさしくされたら。
「……駄目ですよ……」
好きに、なってしまうじゃないですか。
以上で今回分終了です。
新規職人様方も増えられて、ますます絶好調ですね。
幼馴染みばんざい。
自覚するまゆこさんハァハァ
やべっ、俺のジャスティスロッドが反応してる!
GJだ! ああGJさ!
続きキタ━━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━━!!!!
とてつもなく萌えますた!まゆこかわええ!
次の投下も期待してます。
ガンガレ!超ガンガレ!
とんでもない破壊力だぁ( ´∀`)
ま…待っててよかった…!
マターリでもいいからこのGJなクオリティをうわもうあqwせrftgふじこp;@:
萌。
むかーしむかし、ある所に僕がいた。
僕は山へ夕暮れの匂いを探しに、僕は川へ頬を撫でるやわらかな風を探しに行った。
僕が川で風をうけていると、上流から大きな桃が流れてきた。
その桃は食べるにはまだ青すぎるような気もするし、見逃すにはあまりに柔らかそうで
甘そうに見えた。
僕はその桃を家に持ち帰った。
そして晩まで悩んだすえに、桃を割ってみた。
すると中から、冬の湖のように美しく、春に色づく野のように可愛らしい女の子が出てきた。
その女の子は、僕が山や川で求めた全てのものを持っている気がした。
その女の子は、彼女を包んでいた桃によく似ていた。
僕は彼女をこう名付けた。「幼なじみ」と……。
もちろん。もちろんだが、もちろんだよな。
精一杯心を込めて作ったチョコを「義理チョコだからな!」って言って渡して、
それが貪り食われる様を生暖かい目で眺める幼馴染って最高だよな。
あまつさえ、お返しにもらった安物のマシュマロをずっと保管してて腐らせてしまう
幼馴染ってのも最高だよな。
な。な。な?そうだよな?
ラジオでその逆バージョンの話を聞いた事がある>マシュマロ
男にもそういうのあるんだ、と激しく感心した次第
「おい、博史。奥さんが迎えに来てるぞ」
クラスメイトからそう言われると、河東博史は苦虫を噛み潰したような顔になった。
帰り支度の最中で、今日は部活も無い。中学二年生の博史にしてみれば、これか
ら楽しい放課後が始まるというのに、彼はどこか浮かぬ顔である。その訳は──
「ヒロちゃん」
そう言って、廊下で博史に向かって手を振る、鈴代エリカのせいであった。
「奥さんが呼んでるぞ。ヒロちゃん」
「ああ」
からかうような口調でクラスメイトが言うと、博史はいかにも不機嫌そうに席を立った。
腹は立つが言い返す言葉が無い。エリカが自分をヒロちゃんと呼ぶのは十年も前か
らなのだし、それをクラスメイトに少々からかわれたからといって、怒っても仕方が無
いではないか・・・と、博史は自分に言い聞かせている。
「いいね、河東クンはその年で、あんなにカワイイ奥さんがいて。大事にしなさいよ」
今度はクラスの女子がそんな事を言う。事実、博史を待つエリカは見目麗しい美少女
であった。その上性格も良く、勉強だって出来る。そのため友人も多く、彼女の肩を
持つ人間はたくさんいた。それもまあ、しょうがない──と、博史は思っている。
「待たせてスマン」
「いいのよ。さっ、帰ろう」
博史が教室を出ると、エリカはすぐさまその手を取った。それと同時に、クラスメイトや
その他の生徒が一斉に冷やかしの声を上げる。
「熱いねえ、ご両人」
「博史のやつ、幸せ者だよな。エリカみたいなカワイイ彼女がいてさ」
その言葉を背中で聞きながら、案外そうでもないんだよ、と博史は心中で呟いた。
「寒くない?あたしのマフラー、半分巻く?」
「い、いや、いいよ」
表へ出てすぐ、エリカがそんな気遣いを見せた。が、博史は丁寧にそれを辞退した。
なにせ、手を繋いだままなので、周囲の目線が気になって寒いどころの話ではない。
学内にはまだ無数の生徒がいて、通りすがりに自分たちを物珍しげな眼差しで見て
いくのだ。正直、恥ずかしくて頭から湯気が出かねないほど、博史は温まっている。
いや、暑いとすら感じていた。
「ホラ、あれよ。学校一の才媛と、学校一のおバカさんの亜種カップルは」
「エリカちゃんはどうして、あんなのと一緒にいるのかしらねえ・・・もったいない」
博史の後方から、聞こえよがしの皮肉が飛んでくる。すると、エリカは小さな声で、
「ゴメンネ・・・」
と、肩を寄せながら博史の耳元で囁く。これも、今に始まった事では無い。
(そうだよなあ・・・やっぱり不釣合いだよなあ・・・)
声には出さないが、博史はいつもそう思っていた。エリカは生徒たちの評判どおりの
優等生で、並外れた美貌を持つ少女。それに対し、博史は運動も勉強もまるでダメな
男であった。自身もそれを自覚しており、なるべく学内では目立たぬように心がけて
いるのだが、エリカの存在が彼を許してくれない。もっともエリカは単に博史の事が好
きで、いつも一緒に居たいだけなのだが、世間というものはそれがいかにも不自然で
あると思っているらしい。そのせいで、博史がいつも肩身の狭い思いをしている事を、
彼女も知っているのだ。
「早く学校から離れよう」
ぐい、とエリカが博史の手を引っ張った。だが、運動オンチを自認する博史は──
「おおっと!」
バランスを崩し、ニ、三歩つんのめるようにして進んだ後、見事にすっ転び、ついでと
ばかりに側溝へダイブしたのであった。
「水が張ってなくって良かったね。怪我はない?」
「ああ、幸いにも・・・」
側溝からエリカに引き上げられた博史は、まず身の無事を確かめた。しかし、怪我は
無いようだが、何やら股間がスースーとうすら寒い。嫌な予感が博史を包む。
「まさか・・・」
尻の方に手をやると、案の定ズボンが破れていた。転んだ時、どこかに引っかけでもし
たのだろう、物の見事に尻の部分が裂けている。
「とほほ・・・どうしたもんやら」
普段から決まらない男ではあるが、何もここまで・・・博史は思わず肩を落とした。だが
約一名、この不運な男を笑う者がいた。勿論、エリカである。
「ぷッ・・・クスクス」
笑うというよりは、笑いをこらえているようなエリカ。顔を真っ赤にして、決して笑わない
ぞと頑張っているのだが、どうにも博史の姿が可笑しくて仕方が無さそう。口元に手を
当て、いかにも笑ってませんよという素振りを見せてはいるが、鼻から息がプスプスと
漏れている。
「笑いたけりゃ、笑えばいいだろ!笑いをこらえてるせいで、鼻がプスプス言ってるぞ!」
「ごめん!アハハハ!」
エリカはついにこらえきれなくなり、腹を抱えて笑い出した。その様を見て博史は思う。
(これが自然なんだよなあ・・・俺たちの場合は)
笑うエリカの事が、博史も好きだった。自分は格好悪くてもいいから、その笑顔を見たい。
こうして二人きりになれば、博史もエリカもただの幼なじみに戻れるのである。
「笑いすぎだぞ、お前」
「ごめん、ごめん。ひ〜、お腹よじれちゃう」
ひとしきり笑った後で、エリカは再び博史の手を取って歩き出した。ズボンが破れた博史
はお尻をカバンで隠し、不自然な歩き方で母親に手を引かれる子供のようについていく。
「笑いすぎて喉が渇いちゃった。ねえ、コンビニ寄っていこうか」
エリカが指差す方向に、見慣れたコンビニエンスストアの看板がある。すると博史
は眉をしかめて、お尻をモジモジ・・・
「俺、ケツが破れてるんだぞ」
「大丈夫、あたしが隠してあげるから」
エリカはそう言うと、博史を背後から抱きすくめた。一見するとバカップルがいちゃつ
いてるように見えるが、何せ二人は中学校の制服を着ている身。その異様さは大人の
カップルの比ではない。いや、どちらかといえば気の弱そうな痴漢が、美少女の手で
捕らえられたような絵柄に等しかった。
「余計に不自然だってば!」
「大丈夫。お店の人だって、仲の良い兄妹くらいにしか思わないかもよ」
むずがる博史の背を押し、エリカはコンビニへ向かった。そして、ドリンクコーナーで
紙パックの五百ミリリットル版森永マミーをレジに持っていくと、
「ストローは二本ください」
と、若い男の店員に頼んだ。すると、まるで二人羽織りの如き姿の中学生二人に、店員
は呆れ顔で問う。
「その格好は何かの余興かい?」
「ううん。ラブラブなんです、あたしたち。だから、こうやってくっついてるの」
「お・・・おい」
「そうかい。羨ましいかぎりだな。おい、ボウズ。カワイイ彼女でさぞかし鼻が高いだろう」
「まあ!カワイイだって。ねえ、博史、聞いた?」
興味津々の店員と、それに乗じるエリカ。ただ一人、博史だけはどこか居場所が無い
ようで、しきりにお尻をモジモジ・・・
「早く出ようぜ」
「そうね。行きましょう」
「ありがとうございました。お嬢ちゃん、そいつに飽きたら俺と付き合ってくれよな」
やはり、ここでもエリカは人目をさらった。見送る店員の言葉だって、嘘とも本気ともつか
ないものである。それだけに博史の劣等感は、ますます募るのであった。
支援sage
「ちょっと待ってね、ヒロちゃん」
コンビニの前でさっそく紙パックを開けるエリカ。そして、ストローを二本飲み口に
挿す。
「どうぞ」
「ああ・・・」
にゅっと差し出されたマミー。そこに二本のストローである。これはまさかと、博史
も戸惑った。
「そっちのストローがヒロちゃんのね。あたしはこっち」
「う、うん」
一緒に飲もう──エリカはそう言っている。それと分かると、博史はマミーを真ん中に
して、ストローを咥えた。無論、エリカもそれに続く。
(恥ずかしいな。どうか知ってる人に、見られませんように)
マミーを中心に、顔を寄せ合う二人の中学生。傍目から見ると、かなりいかがわしい
感じである。博史はそれが恥ずかしくて仕方が無い。自宅でやるのならともかく、人目
のある往来でというのがいけない。もし、こんなところを知人に見られでもしたら・・・
「ねえ、ヒロちゃん」
「ん?どうした?じゃんじゃん飲もうぜ」
飲み応えのある五百ミリリットルのマミーは、まだ半分も減ってない。博史はなんとか
懸命に飲み終えて、この場を離れたいと思っていたのだが・・・
「後ろから、ヒロちゃんのクラスのコたちが来る」
エリカはつぶらな目でそう言うのだ。
「マズイ!」
博史がくるりと振り向くと、そこにはにやけ顔のクラスメイトたちが数人いた。そして、
「あまりのアツアツぶりに、とても見てられねえな」
「おまけに博史のやつ、ズボンが破れててパンツ丸見えだ。訳が分からない野郎だ」
「なんで、あんなのとエリカは一緒にいるんだろうな」
言いたい事を口にしながら、マミーをカップル飲みする二人の脇を、通り過ぎていった
のである。
「恥ずかしい!すごく恥ずかしい!」
帰宅してすぐに、博史は自室でのたうちまわっていた。マミーをカップル飲みする
所を級友たちに見られてしまった!明日、また冷やかしに遭うに決まっている!と、
何度も何度も繰り返し、頭を抱えている。その様を、エリカはにこやかに見ていた。
「いいじゃないの、冷やかされても。あたしは気にならないけど」
「俺は気になるの!というか、気にせざるを得ないの!」
何故、エリカが博史の自室にいるかというと、家が隣り合っているからである。彼女
は帰宅してすぐ私服に着替え、博史の家へ遊びに来ているのだ。その上、先ほど
破れたズボンを縫ってやっている。エリカは裁縫も得意なのだ。
「別にいいと思うけどなあ。公認の付き合いなんだし。あっ、ほころび縫い終わったよ」
「おっ、サンキュー・・だがな、世間はそう思っちゃいないのよ、これが・・・いいか、俺は
クラスじゃなあ、お前に無理矢理エッチなことをして、つき合わせてると思ってるんだ。
扱いとしては強姦魔くらいなんだぞ」
「アハハ。可笑しいね」
「可笑しくない!」
博史が怒ると、エリカはひょこっと肩をすくめた。そして、憂いを含んだ笑顔をかたむけ
ながら、
「エッチなのは、どちらかといえばあたしの方なのにね」
デニムのスカートのポケットから、カラフルな小箱を取り出したのである。
「そ、それは、もしや」
「うん、コンドーム。この前、薬局の前にある自販機で買っといた」
両手で包むようにコンドームの箱を持って、エリカは照れ笑い。それに対し、博史は
どこか困惑げである。
「・・・今日もするのか?」
「うん。三日空いたでしょ?ヒロちゃんも溜まってるだろうし・・・えへへ、なんてね。実
は、あたしの方が我慢できなくなってたりして・・・」
エリカは上目遣いに博史を見る。その表情はなにやら淫靡で、幼いなりにも女を思わ
せるような艶笑を作っていた。
「カーテン閉めよう。ヒロちゃん、服脱いで」
「う、うん。でも・・・」
「女に恥をかかせる気?コンドーム買うのって、ずいぶん勇気がいるんだからね」
「わ、分かったよ」
博史が西日を遮るようにカーテンを引くと、エリカはためらいもなくトレーナーを脱ぎ
始めた。ふんわりと脂の乗った腰周りが、いかにも少女らしくて美しい。
「ホラ、早く脱ぐ」
「分かってる」
エリカにせっつかれて、もたもたと服を脱ぐ博史。上半身裸になると、あばら骨が浮き
上がっていて、何か貧相である。女と違い男は脱ぐものが少ないので、博史はあっと
いう間にパンツも脱ぎ去ってしまったのだが、するとどうだろう、やせぎすな体には不
釣合いな野太い男根が、ぶらりと股間から生えているではないか。何の才能も持たぬ
彼が得た唯一の得物。それがこの男根であった。
「いつ見てもスゴイね」
「あんまり見るなよ」
「ゴメン。ふふ・・・お返しに、あたしのも見ればいいわ」
エリカも続けとばかりに着ている物を脱ぐ。デニムのスカートを床に落とし、ブラジャー
もパンティも一気に身から剥いでしまい、博史と同じく生まれたままの姿となる。
「あっ、勃起してる。えへへぇ・・・あたしの裸見て、興奮したの?」
「当たり前だろ」
「そうかあ・・・正直でよろしい」
エリカは満足そうに頷き、天を衝かんばかりの男根の前に傅いて、
「おしゃぶりしようか?」
そう言って、熱く滾った隆起を手に取った。
「無理しなくていいぞ」
「ううん。どちらかというと、好きだから・・・かな」
悪戯な笑顔を見せ、男根を唇で咥え込むエリカ。そしてすぐに、生々しい粘り気のある
音が、室内に響いていった。
いきなり尺八支援
「ああ・・・エリカ」
薄暗い部屋の中に精気を吸われる少年と、同じく貪る少女のシルエットが浮かび上がる。
二人がこのような関係になったのは、もう一年も前の事。しかも、性に興味を持ち始めたの
は、エリカの方が先であった。
(ねえ、ヒロちゃん。セックスってやつをしてみない?)
エリカはある日、真顔でそんな事を博史に言った。何の酔狂かと博史が訝っていると、
(あたしねえ、初めてはヒロちゃんって決めてたんだ)
そう言って、エリカはいそいそと服を脱ぎだし、あっという間に素肌を晒してしまったのだ。
その後、二人は当たり前のように結ばれたのである。それからはもう、寄れば触ればお互い
を求めるようになっていた。
「おしゃぶりはもういいよ。今度は俺がお前のアソコを舐めてやる」
「やだ。シャワー浴びてないから、恥ずかしいよ」
「だったらすぐ入れるか?」
「うん。そうして・・・あたし、ヒロちゃんのコレが大好き」
とろんと目を蕩かしながら、エリカは言う。そして、自ら博史のベッドへ寝転ぶと──
「思いっきり、やって」
学内一の才媛らしからぬ淫靡さで、両足を開いたのである。しかも、女唇からは早くも恥液
の滴りが──
「ずいぶん濡れてるな」
「だって、三日ぶりだから・・・意地悪しないで、早くして・・・」
博史が自分に覆い被さってくるや否や、エリカはその背に手を回し、腰を少し浮かした。次
の瞬間、野太い男根は少女の花園をいともたやすく侵していく。
「あうッ・・・い、いい・・」
腰骨までずーんと響く感触が、エリカの理性を溶かしている。彼女は男根が一旦、最奥まで
届くと、痺れるような快感に全身を支配されてしまった。思わず口にした歓喜の言葉も、本心
がこもった女の悲鳴である。
「動くぞ」
「優しくしなくていいからね。ヒロちゃん、あたしがエッチな声を出すと、心配してすぐに
動きを止めちゃうから」
「分かったよ」
女の園を串刺しにした男根が、ゆっくりと動き始める。それと同じくして、二人は互いの
唇を求め合った。
(エリカ)
(ヒロちゃん)
交し合う目線で、愛しい者の名を叫びあう二人。心が通い合っている幼なじみだからこ
そ、出来る事だった。そして、本格的な男根の抽送が始まる。
「コンドームは・・・出そうになってから・・・着ければいいから・・・最初は生の感触を味わ
ってね・・・ああ!」
女穴を突かれるたびに、涙をこぼしそうになるほどの喜びがエリカに訪れた。愛されてる
という意識がある。それはもちろん博史も同じ事で、手を伸ばして相手の体に触れれば、
どこもかしこも狂おしいほどに愛しい。
「大好きよ、ヒロちゃん!」
「俺もだ、エリカ!」
それぞれの持てるだけの物をぶつけ合う二人。幼いながらもその情熱は本物だった。いや、
幼いからこそ愛が純粋なのかもしれない。彼らは気づいているのだ。二人にとって、お互い
がすべてである事を──
おしまい
いい(≧∇≦)b
む、久しぶりに肛門の旦那の投下に遭遇。
・・・さすがに幼馴染シチュではいつもの辣腕を振るうのは厳しいですか?
肛門丸氏GJ!!ハァハァしました。
今日はバレンタインデー。てなことでバレンタインデーネタでショートストーリーを一本投下します。エロくなくてすいません。
Happy Valentine
「はい」
俺の目の前に可愛い包装に包まれた箱が差し出される。
「おっ?そーいえば今日バレンタインデーか。ありがと」
箱を突き出した真琴は恥ずかしそうに、
「ふ、ふん。勘違いしないでよね。幼馴染みの義理であげるんだから、駅前の店でいっぱい売ってたやつなんだから、深い意味なんてないんだからね!」
と言って顔をぷいっと背けてしまった。
「まあとにかくサンキュー」
受け取って、包装に手をかける。
「食っていいんだよな」
「す、好きにすれば」
丁寧に包装を剥がし箱を開ける。綺麗なデコレーションが施されたハート型のチョコ。中央にはLOVEの文字と俺の名前が筆記体で書かれている。最近の店はサービスがいいな。
「じゃあ食うぞ」
パキッ!ポリ、ポリ………
「うん!うまい」
俺の感想を聞くと、真琴は幼い頃から全く変わらない無邪気な笑顔を見せた。この笑顔を見せられると俺はいつも弱い。なんつーかもうたまらなくなる。
「本当においしい?」
「ああ……ほら」
チョコをひとかけら噛り、俺は真琴にキスをした。ひさしぶりだなこの柔らかい感触。
「!!」
驚く真琴の唇を舌でこじ開け口移しでチョコを渡した。
「ほらおいしいだろ?」
「なっ!な、なん、なんてことすんのよ!」
顔を耳まで真っ赤にして怒鳴る真琴。
「そんな怒るなよ、初めてじゃあるまいし……チョコうまいだろ」
「チ、チョコはおいしいけど……」
「んっ?そういえば味見しなかったのか?」
「だって固まったのが登校する寸前だったから……あっ!」
自分の失策に気付き再び顔を真っ赤に染める真琴。
「ははっ。やっぱり手づくりだったな。これ本命なんだろ?」
十五年も付き合っていて、真琴の気持ちに気付かないほど俺は鈍感じゃないさ。
「ち、違うわよ!私はただ、その、あの」
「なんだ真琴は俺のことなんとも想ってないのか?」
「いや、違っ、そんなんじゃなくて、それは……」
俯いてもじもじとした様子がものすごく可愛い。
「俺は大好きだけどな」
「えっ!」
「俺は真琴のこと大好きだよ」
「…………」
「俺は真琴のこと大好きだよ」
「……二回も言わなくてもいいわよ」
「真琴が答えてくれるまで何回でも言うよ。俺は真琴の……」
俺の三度目の告白を聞く前に真琴は俺に抱き着いてきた。チョコの匂いより甘い、いい香りがした。
「好きだよ、私も直也こと大好き!」
気持ちを確認しあった俺達は再び唇を重ねる。こうして俺達は甘い、甘い、チョコより甘いキスの味を暫くの間味わった。
バレンタインデー。その日俺達は幼馴染みから恋人になった。
GJ!
タイムリーネタぐッジョブ!
MGJ
「不公平だ・・・。」
「そんなこと言われてもね・・・。」
俺―達也と香澄は同時にため息をつく。
原因の物は目の前の机の上を占領していた。
「なんで女のお前がこんなにもらえて俺には一個もこないんだー!」
「私に言わないでよ・・・。」
心底迷惑そうに香澄がため息をつく。
目の前に山積みにされたチョコ―これらは全て香澄宛のものなのだ。
嫌なら断れば良いのに・・・。
まあ昔から頼まれるとNOとはいえない性格だったけど。
昔はいじめられっ子だったはずの彼女だが今ではスポーツ万能
(勉強は全然駄目だが)で男女ともにモテモテなカッコイイ女になるとは・・・。
「お父さんは嬉しいぞ・・・。」
「誰がお父さんよ。」
鳴き真似を始めた俺に少々不機嫌なツッコミを返す香澄。
・・・相当イラついてるな・・・。
火に油注いだのは俺だが。
「それはそうと達也。これいくつか食べてくれない?」
と、香澄は顎で目の前のチョコの山を指す。
行儀悪い、と思ったが口には出さないでおく。
香澄、怒ると恐いし。
「じゃあ半分もらうな。」
「いや、そんなにもらわなくても良いんだけど・・・。」
「じゃあこれだけでももらってくぞ。」
そう言って俺は綺麗に包装された包みをチョコ山の中から取り出した。
「あ・・・。」
「これ、お前の手作りだろ?」
香澄は悪戯っぽく手にしたチョコを掲げる俺に驚きの表情を向けた。
「なんで分かったの?」
「これだけ店でやってもらったようなぴっちりした包装じゃないし。
それにこんな可愛らしいリボン、お前が毎年チョコに付けてる奴だしな。」
言って俺は包みの―クマさんの顔が結び目についてある―リボンを
指で軽くはじく。
「・・・悪かったわね・・・。」
香澄は顔を真っ赤に染めてそっぽを向いた。
むう。その仕草がなかなか可愛い。
とりあえずは機嫌を直すために彼女の頭を撫でてやる。
「・・・!?」
「そう怒るなって。そういうとこが可愛いって言ってるだけだ。」
言いながら俺は彼女の顔を覗き込む。
そこにはほのかに顔を赤くしつつ幸せそうな香澄の顔があった。
どうやら機嫌は直ったようだ。
彼女が不機嫌になったときは俺が頭を撫でてやるといつでもこの表情になるのだ。
・・・相変わらずいい顔だ。ガキの頃からこの表情は変わらないな・・・。
そんなことを思ってると流石に恥ずかしいのか香澄が自分を撫でる手をゆっくりと退かせた。
せっかく香澄のニヤケ顔を堪能してたのに・・・。
俺のそんな心の内を知ってか知らずか香澄は俺にビシリと指を突きつけていった。
「ちゃんと味わって食べてよ?」
「言われるまでもない。毎年の楽しみだしな。」
苦笑して答える俺。
そんな俺に香澄は少し照れたような笑顔を向けるのだった。
>>664-665は俺です。
バレンタインなんで連載ほったらかして書いてしまった・・・。
レンサイイマダニカケナクテゴメンナサイ・・・_| ̄|○
今週中に連載UPしますので(それでも遅いって)
楽しみにしてる方、もうしばらくお待ち下さい。
頭撫で撫で(;´Д`)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア
待ってるよん
修正です。またやっちまった_| ̄|○
>>665六行目
×それにこんな可愛らしいリボン、
○それにこの可愛らしいリボン、
669 :
452:05/02/15 02:06:41 ID:EYdylvZZ
ちょっと遅れたけどバレンタイン物でひとつ。
前回の弁当箱の幼馴染の話の続きです。
670 :
452:05/02/15 02:08:49 ID:EYdylvZZ
「うわあ、もう0時だ……」
台所に置いてある時計の針は、間もなく2月14日の午前0時を指そうとしている。
明日は月曜だ。例によって例のごとく、私は学校に行かないといけない。
だと言うのに。
……私は、なんで手作りチョコ特集の料理雑誌を開いて台所にいるんだろう……?
私の名前は古田沙穂。どこにでもいる普通の学生だ。
まあ平均よりはちょっと成績がいいくらいだけど、中堅進学校のうちの学校ではさほど目立つ存在ではない、と思う。
ただ、ちょっとよくわからない付き合いをしてる男が約一名いるくらいだけど……。
溶けたチョコを、ゆっくり冷やしながら固める。手が空いたら、デコレーション用のカラフルなチョコパウダーも準備した。
「うーん。こんなものかな」
試作品を口にしたら、思ったより味は良かった。これなら誰に食べさせても、タダでなら文句は出てこないだろう。
後は味にバリエーションをつけて、余裕があったらホワイトチョコとかも……。
「……」
そこで手を止めて、改めて考える。
そもそも私は何で、わざわざ時間も手間もかかる手作りチョコなんかを作っているのやら。
671 :
452:05/02/15 02:11:19 ID:EYdylvZZ
──私には、結城慶太という幼馴染がいる。
子供の頃、幼稚園からのご近所付き合いで、その後も学校はずっと一緒。
今ではいつの間にか、早弁したり部活で帰りが遅くなっているあいつの為に、私は毎日弁当を作ってあげているという次第である。
繰り返すけど、あいつとは付き合ってるわけじゃない。ただの、幼馴染である。
よく行き帰りが一緒だったり、たまに何か奢ってもらうくらいの仲だ。
あいつは確かに話をしてると楽しいし、付き合いが長い分趣味も合ったり考え方も良く知ってる。
馬鹿話もできるし、からかったら楽しいし。
でも、別に好きとかじゃなくて……そう、何か世話のかかる弟みたいな感じ。
そんな感じ、だったんだけど。
「うー」
どうも最近何か自分が良くわからない。
昔っから私のほうが背が高かったのに、今更になって伸びてきたあいつに抜かれたりしたから……ってわけじゃないと思うけど。
何か、あいつが違って見える。
私はこのままでいいのに、あいつは一人でどっかに行ってしまいそうな感じ。
この前の進路希望調査でも、遠くの進学先を候補にしてたし。
何より、他の女友達の話とか。
672 :
452:05/02/15 02:13:29 ID:EYdylvZZ
"結城君って最近結構よくない?"
"うんうん、入学した時はそんなでもなかったのにねー"
"古田さんとは別に付き合ってるわけじゃないらしーし、狙いどころかもよ?"
最後の話は親しい友達から聞いた話だけど。あいつ、そんなにいいだろうか。
他人の感性っていうのはよくわからない。それとも、私が変なのだろうか。
そんな事を考えながら、私はまたチョコ作りに集中しようとする。
「そうよ、この前のお返し。うん、そうそう」
先月の末に、喫茶店でパフェだけでなく食事まで奢ってもらった事があった。それのお返しって言う事にしよう。
明日の昼前に、弁当と一緒にさりげなく渡せばいい。そう、思いっきり『義理』って言ってやれば変な誤解も無いし。
ようやく納得しかけて、形を作りに掛かる。
「ハート……はなんか本命みたいでアレよね。うん、長方形にしてそれでデコレーションすればいいかな」
そんな事を口走った途端、突然"くくっ"なんていう背後から忍び笑いが漏れた。
「お姉ちゃん!?」
いつの間にか私の後ろにいたのは、大学三年になる私の姉。
「ただいま、沙穂。いやー、今夜は飲んだ飲んだ」
姉は飲み会帰りらしく、少しお酒臭い。
ちなみにこの姉、かなりいい加減で家事もそんなにできないのに、男の人には異様にもてる変わった姉だ。
「なんだ沙穂、チョコ作ってんのか。……ふふふっ、ねえ誰? 誰に作ってんのよ?」
すすす、と私の横に移動すると、試作品を一個つまむ姉。
「ふむ、美味しい。こりゃきっと受けがいいわ。……で、誰?」
「私がチョコ渡すのなんて、お父さん以外には例年一人しかいないでしょ」
ちょっとだけ口をとがらせて、姉の方を見る。
673 :
452:05/02/15 02:16:21 ID:EYdylvZZ
「あー、結城さん家の慶ちゃんか。なんだ、今年はいよいよ手作りチョコか。ようやく進展したのか?」
酔っているせいか、いつも以上にずけずけ物を言う。私は別に、とだけ答えて作業を進める。
「何だ、まだ幼馴染から脱却してないのか。この前なんかも仲良く帰ってくるからさ、私はてっきりもうずっこんばっこんな関係になったかと思ったよ」
「っ〜!」
姉のとんでもない発言に思わず顔が赤くなる。たたでさえこの奔放な姉のせいで知らなくてもいい知識が随分溜まってきているっていうのに、そんな事を言われたら本当に想像してしまう。
「あら沙穂、なーに顔赤くしちゃってるのかな〜?」
「お姉ちゃんうるさい。あいつはただの幼馴染なんだから。これだって私の料理の特訓を兼ねた……そう、時間潰しよ」
「ほーう、わざわざこんな時間まで、ただの幼馴染に手作りチョコを作るのが時間潰し、と」
この酔っ払いの姉は、どうやら私に対して徹底的に絡むつもりらしい。
「いいのかい? そんな事言って強がってると、誰かにあっさり寝取られちゃうわよ? 年頃の男なんて、ちょっと誘惑すれば一発なんだから」
「……だから、あいつは私からしたら弟みたいなもんだって。誰かと付き合ったって気にしないよ」
「うんうん。昔はそうだったね。弟が欲しいとか言ってた沙穂にとっちゃ、慶ちゃんはうってつけだったから」
「今だってそうなの」
「本当にいいのかい? 誰かに取られた後で後悔しても、遅いぞ?」
言葉の一つ一つが、今夜に限ってなぜか痛いくらいに胸に届く。でも、私は。
「しつこいよ。酔ってるんなら早く寝なよ。明日講義でしょ?」
「残念、私はもうテストが終わったのでした〜」
「……もう」
「まあ、あんまり苛めるのも……楽しいけどやめとくわ。まあ、沙穂もチャンスと見たらちゃんと動いたほうがいいわよ。強がっててもいい事無いから」
「お姉ちゃん……」
「んじゃ寝るわ。おやすみ、沙穂」
ひらひらと手を振って、二階へと上がっていく姉。
「……おやすみ」
少しだけ、言葉が胸のあちこちに引っかかっている気がする。
「やっぱりハート型にしよっと。あと、明日の私とあいつの分のお弁当を……」
心なしか重くなった作業の手を無理に速めながら、私は次々とやる事を終わらせるのだった。
674 :
452:05/02/15 02:18:51 ID:EYdylvZZ
「はい、今日の分のお弁当」
「お、サンキュー沙穂。今日もありがとな」
翌日。どこか浮ついたような雰囲気が見え隠れする教室で、私は平然とした顔で弁当を渡す。
「お礼を二回も言わなくてもいいよ。今日はあんたの苦手なものばっかり入れたから」
「げ。……何さ」
「海草サラダ。セロリ。ピーマンの肉詰め。それから……」
なおも言葉を続けようとした私の言葉を、あいつはあっさりと止める。
「なんだ、それ全部普通に食えるぞ」
「……え?」
唖然とする。
「沙穂が訓練してくれたおかげで、すっかり苦手な食べ物は減ったから。感謝してるぜ」
「……」
どうしよう。
あいつは弁当箱をさっさと机にしまってしまう。どうしよう。
──苦手なものばっかりじゃなんだから──って言って、困った顔をしてるあいつにチョコを渡そうとしたのに。
動揺してる。だからつい私は。
「そ、それは良かったわ。それじゃ、また」
なんて言って、チョコを隠したままで自分の席に戻ってしまう。
こんな時だけ、素直じゃない私が嫌だった。
あいつには、今の私はどんなふうに見えたんだろう。
675 :
452:05/02/15 02:21:18 ID:EYdylvZZ
放課後。
私はいつものように弁当箱を返してもらおうと、ホームルームの終了後にあいつの姿を探した。
「……あれ?」
いない。教室のどこにもいない。今日はあいつの部活も無いはずだし、掃除とかの当番も無い。
不審に思って、あいつの友達に聞いてみる。
「ああ、結城? さっき何かを見て、急にどっかに出て行ったけどなあ。確か四階の方に」
四階と言うと、下級生の階だ。……何だか、嫌な予感がした。
「ありがと!」
チョコは隠し持ったまま、あいつを探して私は階段を上る。
あいつの鞄は無かった。でも、あいつは弁当箱を返さないで勝手にどっかに行った事は一度も無い。
それは、私の小さな小さな、勝手な自慢でもあったのに。
四階にはあいつはいなかった。となると。
「屋上……」
屋上は昼休みと放課後の僅かな時間だけ開放されてる。なぜか、そこだと直感が告げていた。
心なしか、私は足音を殺して階段を上がっている。
何でもない事なのに、何か嫌な予感がした。少し怖かった。
心臓の音がいやに大きく聞こえる。
そして階段を上り終わった時、私の嫌な予感は現実のものになった。
676 :
452:05/02/15 02:24:25 ID:EYdylvZZ
「結城君、これ……私の気持ちだから」
微かに開いた屋上のドア。そこから、二つの人影が見える。声も聞こえる。
一人は、言うまでも無くあいつだ。そしてもう一人は……。
「潮崎さん、えっと……これって」
あいつはどこか浮ついた声で話している。そして、あいつに……あいつに……慶太にチョコを渡してるのは。
潮崎さん。確か隣の隣のクラスの子だ。美人で通ってて、この前彼氏と別れたばっかりだって聞いてたけど……。
「そう。私、結城君と付き合いたいなって思って」
ばくん、と心臓が高鳴る。……今すぐここから飛び出したい。でも、そんな事出来ない。
「でもなんで……俺、潮崎さんとはあんまり話した事もないし」
「いいじゃない。私、前からあなたの事気になってたのよ? 色々聞いたら、いつものあの子とは付き合ってないって言うし、ね?」
私の脚が、勝手に逃げ出そうとする。ここにいなきゃという気持ちと、逃げてしまいたいという気持ちがぶつかり合う。
「……」
あいつは答えない。そう、答えてなんか欲しくない。なぜかわからないのに、とてもそれが怖い。
「……うーん。やっぱり何か引っかかるのかな。でもいいよ、私ちょっとだけ待つから。明日結城君の答えを聞かせて欲しいな。そのチョコを食べてもらってから」
「……わかった」
「うん、それじゃね。また明日、結城君」
その言葉を聞いて、私の脚はようやく動いてくれた。
教室に戻ると、そこはさっきの事が嘘みたいに平穏な空間だった。
異質なのは私だけ。友達が思わず、"沙穂、顔色が悪いよ"と指摘してくれるほどに。
もうすぐ……あいつが帰ってくる。私に弁当箱を返しに、ここに帰ってくる。
私はどんな顔して、あいつに……ううん、慶太に向き合えばいいんだろう。
昨夜の姉の言葉が、しつこいくらいに心の中を好き勝手に荒らしまわる。
いつしかさっきの潮崎さんの台詞も混じって、さらに私の心をぐちゃぐちゃにしてしまう。
──誰かに取られてから後悔しても、遅いぞ?──
──色々聞いたらいつものあの子とは付き合ってないって言うし、ね?──
慶太が私から遠くに行ってしまうかもしれない。でも、そんなのは……嫌だ。
私は、どうしたらいいんだろう。
677 :
452:05/02/15 02:25:55 ID:EYdylvZZ
というわけで弁当編からの続き風味です。
さらに続く……はず。
>ずっこんばっこんな関係
禿藁
いいねぇ(・∀・)
保守
職人期待age
男の名前と一文字違いだ―――――――!!
食べてたおでん吹き出しちまった
今日のプレミアムステージは「フォレスガンプ〜一期一会〜」
あれも一様幼馴染。 一様・・・
祭りのあとの静けさとはこのことか・・・・・・
ただいま書き終わりました。
遅くなってすみません。
というわけで投下いきます。
マウスの右ボタン壊れてる・・・_| ̄|○
すみません明日の昼投下しますので後一日待って下さい・・・
>687
キーボードに右クリと同じ機能のボタンがあったはず
どちらにしろ待っております
689 :
682:05/02/19 23:57:46 ID:Pxe21Z7v
>>683 オニャノコに言ってもらえれば(*´д`)ハァハァなんだが
>>689 それはあの話の書き手の人にリクという意味で(ry
つCtrl+V
キーボードによってはフォーカスのある部分にコンテクストメニューを出す機能の付いてるのもあるよな。
皆さんお待たせしました。今度こそ投稿いきます。
その後の花見―というよりはバーベキュー―はつつがなく終わった。
ただ一点、真由里が―周りに気づかれないほど微妙な差だが
―俺に距離をとっていたことを除いては。
その日の夜、帰宅した俺は自室のベッドに身を埋めていた。
・・・結局花見終わってから全然しゃべれなかった。
親は両方とも仕事で帰れないからさらに気まずいし・・・。
なんか鬱な気分だ。なんでこんなことになったのやら。
ふと今朝のことを思い返してみる。
―そういやなんで今日はあんなに積極的だったんだろう。
その膝枕された時の光景を思い浮かべる。
頭から直に伝わってきた太ももの柔らかさ。
見上げたときに実感した胸のふくらみ。
こちらを見下ろす少し上気した笑顔。
こちらの鼻先をくすぐる柔らかな黒髪。
そして―唇が触れあったときの柔らかい感触。
・・・・・・・。
うあああああああああ!!
そこまで思い返して俺はあまりの恥ずかしさにベッドで悶絶した。
「・・・・・・・・。」
ひとしきり悶絶したところで気分を落ち着けてみる。
実のところ、もう自分の気持ちには気づいていた。
彼女を好きだということに。
たぶん、彼女も同じ気持ちだろう。
いくら何でも好きでもない男の唇を奪うような女ではないはずだし。
・・・俺の知らない間に彼氏作ってたとか言ったら泣くが。
「でもなあ・・・。」
寝返りをうちつつ誰にともなく愚痴る。
改めて真由里のことを思い浮かべてみる。
容姿端麗。眉目秀麗。成績優秀。家事万能。
彼女を表すのはこれらの四字熟語(一部違う)がぴったり合う。
それでいてそれらの才能を鼻にかけることもなく、努力を怠らない。
細かなところに気配りも利き、気さくな性格の為嫌みさを感じさせない。
その上どこか子供っぽいところもあり、そのためか男女ともに人気が高い。
「それに比べて・・・。」
今度は俺自身のことを考えてみる。
中肉中背で顔も良くも悪くもない(世間一般ではどうか知らんが)。
成績は平均よりは上だが努力をしても真由里のような才能もなく、
唯一体を動かすのは―中学時代のイジメの時の経験の為―得意だが、
特別良いというわけでもなく上の下か中の上止まり。
―勝負にすらなってないし・・・
余計鬱になってしまった。
今の俺では真由里と釣り合わない。
本人達の意志にかかわらず周囲はそう思うだろう。
現にそれが原因で中学時代はエライ目にあったわけだし。
―かといって他の男に渡す気なんぞ毛頭ないが。
「・・・どうすればいいことやら。」
つい独り言を言ってしまう。
・・・やっぱ俺じゃあ真由里に釣り合わないのかな。
俺が誰にも文句を言われないくらいの男だったら・・・。
そんなことを思っていると部屋のドアがノックされた。
「あいてるよー。」
適当に返してから気付く。
両親ならノックせずに俺に呼びかけるはずだ。
―っていうことはつまり―
ドアを開けて―予想通り―真由里がおそるおそる顔を覗かせてきた。
「・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
重苦しい沈黙が部屋を支配する。
ていうかなんで俺自分の部屋でこんなに緊張してるんだろう。
「・・・今朝は、ゴメンね?」
先に口を開いたのは真由里だった。
「い、いやいいよ気にしないで。」
慌てて声を上げる俺。
普段は俺をからかってくるくせに
自分が悪いと思ったときはしおらしくなるんだよな・・・。
「・・・恐かったの。」
真由里が小さな声で話す。
俺はそれを一字一句聞き逃さなかった。
「私といると、ユウが迷惑するから、いつか一緒にいられなくなるんじゃないかって・・・
そう思うと恐かった。」
声はやがて大きくなっていき、ついには嗚咽になる。
「ユウに拒絶されるのが恐かった!「近寄るな」って言われるのが恐かった!
「迷惑だ」って言われるのが恐かった!だから・・・!」
涙を流し出した彼女を見て、俺は心の中で何かが弾けるのを感じた。
彼女を泣かせた周囲の無責任な発言に対して怒りが沸々とわいてくる。
無言で彼女の体を抱きしめる。
「ユウ・・・?」
そして彼女の頬に手を伸ばし―
少し力を入れてつねった。
「いたたたたたたたたたた!」
「誰が迷惑だって?」
真由里の耳元で俺は軽い口調で―しかしハッキリと言う。
「俺はマユのことを迷惑だと思ったことは一度もない。
お前だって俺を迷惑と思ってないだろ?」
真由里が激しく首を上下に振るのを確認して言葉を続ける。
「俺はずっとお前と一緒にいたい。これからも、ずっと。
お前が―好きだから。」
俺の突然の告白に真由里はハトに豆鉄砲喰らったような顔をした。
「・・・ホントにいいの?」
「当たり前だ。周りにグチグチ言われるのも慣れたし。
ていうかあいつらの我が侭にこっちが合わせてやる必要ない。」
キッパリと言いきる俺。もう迷いはなかった。
真由里の顔を覗き込むとまだその表情は曇ったまだだった。
「でも、やっぱりユウにめいわ・・・!?」
そのセリフは俺の唇で遮られた。
唇を離し言う。
「何度も言わせないでくれ。俺は・・・あーもうこれ以上セリフ思い浮かばねー!」
そこまでが限界だった。
俺は真由里の体を離し頭を抱えて絶叫した。
「ユウ・・・?」
「ダメだなー俺・・・。もうちょっと格好良く告白するつもりだったのに・・・。」
一気に脱力感が俺にのしかかる。
「俺の方こそゴメンなー。こんなヘタレで・・・。」
落ち込む俺を真由里が優しく抱きしめる。
「そんなことないよ。ユウに「好き」って言ってもらえてすっごく嬉しかった。
それに格好良かったよ。―途中までは。」
「元気付けるかトドメ刺すかどっちか片方にしてくれ・・・。
それはそうと真由里さん?」
「?」
俺の問いかけに疑問符で答える真由里。
「俺まださっきの告白の答え聞いてないんだけど。」
「・・・!?」
途端に顔を赤く染める真由里。
まあこんな素に近い状態でいきなり答え迫られたら答えづらいわな。
でも困ってる顔もイイかも・・・。
そんなことを思ってるといきなり唇を奪われた。
「・・・・・!?」
今度は舌まで入れてきた。
ヤバイ。気持ちイイ。
口の中に真由里の味が広がっていく。
しばらくお互いの味を確かめ、やがて真由里の方から唇を離した。
頬を染めつつ糸の引いた唾液がついた唇をなめるその仕草が色っぽい。
「これじゃダメ?」
慌てて首を勢いよく左右に振る。
さっきと立場逆転されてしまった。
まあそれはそれで俺達らしいが。
俺はそんな彼女を抱きたいと思った。
意を決すると真由里の下着の中に手を突っ込み、
もっとも恥ずかしいところを撫でる。
「・・・・・・!?」
顔をさっきより赤く染める真由里。
ああいかんいきなりすぎたか。
しばらく硬直した後、真由里が頬を赤く染めたまま上目遣いに聞いてくる。
「・・・責任、取ってくれる?」
俺は黙ってうなずく。
もう覚悟は出来ている。
そして今度は俺の方から長いキスを始めた。
部屋の窓から差し込む朝日を浴びつつ俺は目を覚ました。
時計を見る。午前6時。まだ寝ていられる時間だ。
隣に視線を向けるとそこには幸せそうな表情で真由里が眠っていた。
俺はその寝顔を素直に可愛いと思った。
毎朝俺の寝顔を堪能する真由里の気持ちが少し分かった気がする。
彼女の頬を撫でようとして俺の手が真由里に握られていることに気付く。
どうやら手をつないだまま寝てしまったらしい。
―暖かい。
そういえばお互い服を着ないまま眠りについたことを思い出す。
昨夜一線を越えたとはいえ少し気恥ずかしい。
いや凄く恥ずかしい。
昨夜のことを思い出すだけで体が火照ってくる。
もちろん恥ずかしさでだが。
我ながらこういうことにはウブだなーと思う。
今だってシーツについた赤いシミが気になってしょうがない。
こんなのでよく最後まで出来たな俺。
とりあえずよくやった俺。おめでとう俺。
そして―ありがとう真由里。
隣で眠る彼女に心からの礼を言う。心の中でだが。
きっとこれから今まで以上に俺達への風当たりは強くなるだろう。
でも―
手をつないでない方の手で真由里を撫でながら俺は思う。
彼女を手放したくない。
だから、もう、逃げない。
俺は未だ眠り続けている最愛の人を抱きしめ
そう心の中で誓いつつ再び睡魔に身を委ねた。
――――――――《完》――――――――
以上です。
この連載自体はこれで終わりですけどまたなんかネタが思い浮かんだら
ここに書き込もうと思います。
>>688 >>691 な、なんだってー!?(AAry
そんな機能あるなんて知らなかった・・・_| ̄|○
キタ Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)!!!
萌えました
ナイスです!
てか四字熟語は俺もネタとして考えたことあったよ…
敢えて何か言わせていただくとすれば…
エッチシーンがなかったのは、人によって好みが分かれるんだろうな。
ないほうが萌えるとか、あったほうが興奮したのに、とか。そのあたり、聞いてみるとかあってもよかったのかなあ、って。
とりあえず乙です。また良質な作品を期待してます。
>>699 乙です。エチシーン無しは(´・ω・`)でしたがまあ、それはそれで。
ともあれGJでした。とてもよかったです。
そろそろこの名前もどうかと思うんでトリップ付けようと思うんですが
#の後に適当な文字でしたっけ?
>>700-702 感想ありがとうございます。
でもエロパロ板だけあってHシーンに厳しいですね_| ̄|○
今後精進します。
それはそうとこのスレって幼馴染みと結ばれてからの話はありですか?
ありなら
>>664-665の続きで書こうと思うのですが。
Hシーンに関しては皆様のご意見を聞いてから判断しますので。
当然ありに決まっているじゃないかっ
遠慮なぞせずにエロエロなのを書きたまえ(*´Д`)ハァハァ
えろくなくてもいいけどw
幼馴染は、くっつく前もいいけどくっついてからの甘甘っぷりやら馬鹿っプルやらも実にいいと言ってみるテスト
割に少数派なのかな?
ノ
トリップ付けてみました。
>>705 ノ
じつをいうとここはそういうの少ないのでそれを書こうと思ったり。
とりあえずHシーンは反対意見がなければ書こうと思うのですが。
>>707 反対する理由がどこにあるってんだコンチキショー!!
・・・よろしくお願いします。(*´Д`)ハァハァ
うむ。反対する必要性を微塵も感じないのだが。
とりあえず初体験シーンはノーカットでの採録を希望したいね。
(カイゼル髭をひねりながら葉巻をふかしつつ懇願)
>>709 カイゼル髭をひねりながら葉巻をふかしつつ懇願する
ブリーフ一丁の絶倫ハゲ親父を想像してしまったw
>705
ノ
自分が書く幼馴染は必ずばかっぷるになる。
二次であろうがオリジナルであろうが、お構い無しに。
>707
楽しみなり。わくわくしながら待ってますぞ。
>>618-619の続き
を書こうと思ってたら間違って削除しちゃったんで、設定からやり直そうと思った。
なんぼなんでも妄想丸出しにし過ぎだぁな。
ただいまより、投下させていただきます。
>623からの続き。
――わたしは、昔から回りの顔色をうかがってばかりいる子供でした。
そのくせ、あまり目端が利くほうではなく、一生懸命すればするほど失敗ばかりで。
『アンタはさ、考えすぎなんだよ、まゆ。そんな人目ばっか気にしてて疲れねェの?』
――だから、余計にそんなみいちゃんが眩しかったのです。
『アンタはアンタ。アタシはアタシだろ。まゆにはまゆの良い所が山ほどあるンだから、胸張ってろよ。
――少なくともアタシはアンタの全部が好きだよ?』
――本当に、昔から。
みいちゃんは、わたしの事をずっと守ってくれてました。
『泣きたきゃちゃんと泣け。悲しいなら悲しいって、悔しいなら悔しいってちゃんと言え。無理すんな、馬鹿』
辛い事があったときも。
『――もう二度と手出ししないように、ハナシはつけて来たけどよ、もう、アタシと一緒に居ないほうがいい。
また何の拍子にあの手のバカ女が湧いてでるか、わかんねェしさ? まゆがつまんない事に巻き込まれる必要なんて無いんだから』
女の子だったときから、今も、ずっと。
でも。
でもね、みいちゃん。
――わたしは、わたしの事がキライなんですよ。
わたしはつまらない女です。
顔立ちも十人並み。チビで、小太りで、胸ばっかり変に大きくて。
そのくせ妙にプライドが高くて見当違いのヤキモチ焼いて。
――こんな女が、あなたの事を好きになっていいはずないじゃないですか。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
――明けて、月曜日。
「……うー。……アタマ、いたぁ……」
結局、昨夜は夜遅くまで布団の中でぐずぐずとしていたせいで、目覚めは最悪の気分でした。
溜め息をついて洗面所へ向かい、身支度を始めます。
「……おはよーございますー」
「あらなにー? 今朝はずいぶん早いのねえ、あんた普段はお寝坊なのにー」
台所に顔を出すと、お母さんにびっくりした顔をされました。
「……図書委員の朝当番なんです。ちょっと、都合がつかない子がいて、代わったんですよ」
「あらあらあら。もー、そゆこと先に言いなさいようー。おかあさん、まだお弁当とかしてないわようー?」
言うなり、慌てて炊飯器のふたを開けて、冷蔵庫から梅干とおかかを取り出しておにぎりを握り始めました。
「時間ないから、おにぎりでもいーい? とりあえず、おみそしると玉子焼きだけ出来てるから、急ぐんならそれ食べちゃいなさいよう。
……まったくもー、昨日も一日中、朝から晩まで出てってると思ったらー。
こういうことは、ちゃんと前の日のうちに言っときなさいよう、おかあさんにも都合ってもんがあるのよう?」
「……ごめんなさーい」
ぶちぶちと続くおかあさんの文句に首をすくませ、ご飯をよそって食べ始めます。
――土曜日のあの一件があって。
結局、日曜日はみいちゃんと顔をあわせる気まずさに耐えかね、一日中たかちゃんのおうちに避難していました。
で、今朝も顔を合わせる前に出て行こう。というわけで、早朝から起きておかあさんに怒られているわけです。
学校では、学年も校舎も違うので、極力顔を逢わせない方向で行きたいと思っているのですが。
――まあ、委員会で一緒なわけですし、そもそも、今日の夜にはウチに晩御飯を食べに来るでしょうから、
絶対に顔を合わせる羽目になるわけです。
まさか、昨日の今日でまた、たかちゃん家にお世話になるわけにもいきませんし。
「……が、がんばろう……」
そうです。せめて、今日の夜までにはなんとか取り繕えるようにしておかないと――。
学校には一番乗りに着いたようで、図書館の鍵を職員室から借りてきます。
他の委員さんはまだ誰も来ていませんでした。
わたしの他に、あと一人、一年生が当番のはずなのですが。
「……やれやれ。ま、いいですけどね」
閉館してる間、ポストに入っていた返却本の手続きを済ませ、棚に戻していくのが朝当番の主な仕事です。
もう少しして、登校時間になれば、始業前に借りに来る人の貸し出し手続きも始めるのですが、まだそこまでの時間ではありません。
今朝は、返却されていた本も、そんなに多くはなく、ゆっくりと返却手続きを終え、さて返してこようかしら。と、
席を立とうとすると、入り口のある廊下のほうから、なにやら足音がこっちに向かってきます。
さては、もう一人の当番さんがやっと来たかと思い、入り口に向かいました。
「――遅刻ですよー!」
ちょっとびっくりさせてやろうと、足音が扉の前まで来たタイミングを見計らって扉を開けて、声をかけます。
すると。
そこに、いたのは。
「――っ!! き、ぁ――っ!?」
そのまま、おもいっきりバターンっ! と大音響をたてて扉を閉めてしまいます。
だって。
だって、そこに、いたのは。
「……ちょ、お、おいっ!? なんでいきなり閉めるんだよ、まゆこっ!?」
――いま、いちばん顔をあわせたくない人でした。
なんで。
なんでなんでなんでぇ――っ!?
だって、みいちゃん今日当番じゃないはずでしょう――っ!?
「用事で都合がつかないとかで、代わったんだっ! いいから、開けろっ!」
「あ、あ、ああ。そうなんですか、へー。あ、わ、わたし、ちょっと返却の本戻してきますねー!」
それだけ言い捨てて、大慌ててで本を持って二階へと走ります。
確かこれは、一階の棚に戻す本だったと思いますが、今はとにかくみいちゃんから離れる事しか考えられません。
二階の奥、本棚の間で、思わずへたり込んでしまいました。
「……ああー。なにを逃げてきてますか、わたしー。……うう、下に降りられないー……」
頭を抱えて呻きます。
ほっぺたに手を当てると、ぽかぽかと上気しているのがわかりました。
たぶん、真っ赤になっているのだと思います。それも、走ったのとは違う意味で。
「……なんていうか、もー、今までなんとも思わなかったのに……」
あ、わたし、この人好きなのかも。と意識した途端に、マトモに顔も見れなくなるって言うのは、どうなんでしょうか、我ながら。
「……い、今わたし、すごく、恥ずかしい人だあー……」
と、とにかく、いつまでもここでこうしている訳にもいきません。
ものすごく気まずくてイヤですが、どのみち二人きりなわけですし、一階に行かないと……。
「――なに、床に座り込んで百面相してんだ? まゆ」
「ふわあっ!?」
背後から、いきなり耳元で声が聞こえました。
「み、みみみ、みいちゃんっ!?」
い、今、足音どころか気配すらしませんでしたよっ!?
「おい? 大丈夫か? オマエさん、なんか今日ヘンだぞ?」
熱でもあるんじゃなかろうな。と、わたしの額に手を伸ばしてきます。
「い、いえっ! なんでもありませんっ! ありませんよっ!?」
ずりずりと、おしりを床につけたまま、後ろに逃げます。
「いやどーみたってヘンだ。なに逃げてんだよ、ちょっと待てって」
腕をがしりと引っ掴み、顔をぐぐいと寄せてきます。わ、ちょ、ちょっと、近すぎ……!
もう見返すことも出来ず、眼が泳ぐのを止められません。
アタマにかーっと血が上り、頬が上気して、眼が潤むのが、自分でもはっきりとわかりました。
「……真由子?」
「や、やだああ――っ!」
手近にあった本で、思い切り殴りつけてしまいました。
なんだか、とてもイイ所に入ったらしく、声も立てずに突っ伏して、そのまま瑞穂ちゃんは動かなくなりました。
「うわあああっ!? ご、ごめんなさいっ! ごめんなさい――っ!?」
こ、こういうときってどうしたらいいんでしょう、アタマ打ってると揺すったら駄目なんでしたっけええとどうしたらっ!?
あわあわしていると、うつ伏したままのみいちゃんがひらひらと、手を振りました。
「……あ、だ、大丈夫ですか……?」
だいじょうぶ。というように、手を振られます。
そのまま、指で矢印を作って下を指します…。……下?
一階から、すいませーん。という声が聞こえました。
「あ、借りる人、来ちゃってますっ!
すいません、みいちゃん、わたし、ちょっと行ってきますっ! すぐ戻りますからっ!」
慌てて、カウンターに向かいます。
「すいません、おまたせしましたーっ!」
よく、朝に顔をあわせる常連さんの同級生でした。
「あ、ごめんねー、急がしちゃって。……忙しかったの? 顔真っ赤だよ?」
「え」
彼女の指摘に、ますます頬が紅潮して、汗が吹き出してくるのを誤魔化しながら、貸し出し手続きを済ませます。
見ると、一階には始業前貸し出し組さんがもうすでに集まってきており、カウンターの中からは
しばらく出られそうにありません。
……みいちゃん、だいじょうぶかなあ?
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
―――図書館二階の奥のフロア。
まだ人気の無いその場所で、赤くなった顔を押さえて座り込む男が一人。
「……あの反応って……。
……まさか、そーか? そーなのか?」
困惑したように呟いて、口元を手で覆う。
「……もし、そうなら……。イヤ、まだわからんな……。
……そうだな、よし、ちょっと、つついてみるか……?」
ヤベエちょっと楽しくなってきた。と、声に出さずに呟く。
人気の無い図書館の奥。
くつくつくつと笑う男が一人―――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
以上で今回分終了です。
バレンタインネタ、楽しませていただきました。
ホワイトデーには凶悪なお返しを要求してくる幼馴染みを楽しみにしています。
・・・
(会社で萌え転がるわけにもいかず悶絶している)
>>719 「くつくつくつ」ではくつが一つ多いよ
「くっくっくっ」なら解るけど
くそう真由子が羞恥カワイイぜ。
だがまだGJとは言わん! 勝負はゲタを履くまで分からん!
つまり! 幕引きまで1スレ812に捧げるGJの言葉は取っておくッッッッ!
(*´Д`)ハァハァ
いぇあ!ぐっじょび!
何だか眠れんかったから、こんな時間にたまたま見つけたこのスレを頭からに一気に読み上げちまった…
頭ン中萌え上がって煮えくりかえって死にそうだぞオイィィィィィィイ!!!!!!!
もう!!ね!
このスレに住まう全ての素晴らしき才能に満ち溢れた神々と、愛すべき同胞達みんなに心からのGJを差し上げたい!!!
こうして新たなる幼馴染スキーがまた一人……
>>719 続きを早急に希望したいとか無理ですかそうですかマターリ頑張ってください(*´д`)
設定だけ読んで、以前何かに連載されてた
「学園非合法勇者。」を思い出した
>721
ご指摘ありがとうございます。素で勘違いしておりました。
間違った日本語なのですね。すいませんでした。
それでは、>719の続きを投下したいと思います。規制解除されたかなあ。
こそり。と、物陰からマンションの入り口付近を伺います。
……よし、誰もいませんねー?
ととと。と、小走りに非常階段へ向かいます。
うう、情けないなあ。なんだって、自分の家に帰るのにこんなにこそこそしてるのでしょう、わたしときたら。
……しかも、理由がみいちゃんと顔をあわせづらいから。というのが情けなさに拍車をかけています。
結局あのあと。
今日は一日中瑞穂ちゃんから逃げていました。
放課後の当番も結局たかちゃんに代わってもらっちゃいましたし。
今からこんなんで、夕飯の時に顔を会わせられるのでしょうか。
溜め息をつきつつ、階段の踊り場に来ると。
「おかえりー。早かったなァ」
「うひあーっ!」
いきなり顔を出した瑞穂ちゃんに心底仰天し、最後の段を踏み外し、見事に顔からこけました。
「……うわ。大丈夫か、まゆ」
「あ、あいたあー…」
いたたた。モロに強打した膝が痛いです。
「……普通、手を突いたり身体をひねったりするよな? なんで正面から転ぶよ、オマエさん」
……ほっといてください。どうせわたしは運動神経切れてますよう。
「どっか痛いとこないか? 足は?」
や、その、だいじょうぶですだいじょうぶ。だいじょうぶですからさわらな、……いたっ!
「足首捻ったか? ちょっと待て。…よっと!」
「ひゃあっ!?」
身体がふわりと浮き上がり。
「や、やだ、ちょっと、みいちゃんっ!?」
抱きかかえられて、瑞穂ちゃんの腕の中に持ち上げられてしまいます。
……これは、いわゆるその。
―――お姫様抱っこ。というやつではないでしょうか。
「おおお、降ろしてっ! 降ろしてくださいっ!?」
「うわ、こら、暴れんなっ! 落としちまうだろうがっ!」
「いいです、いいですからっ! こんなトコ、人に見られたら恥ずかしいでしょうっ!?」
「だったら騒ぐな大人しくしてろアホまゆ。騒いだ方が人がくるぞ?」
そういって、すたすた歩き出してしまいます。
「うひゃっ!?」
「危ないからしっかりつかまってろ。……違う。俺の首に抱きつけ。そっちのほうが安定するから」
そんなこといわれても。
そんな大胆な事が出来るはずもなく、みいちゃんの胸の辺りの服をがっちり掴んで、家まで運ばれます。
うわああ、どうしようどうしようっ。
意外に広い胸とか。がっちりした腕とか、すぐ近くにある顔なんかをものすごく意識してしまって、心臓がドクドクと暴れまわります。
うう、こんなにドキドキしてたら、みいちゃんにも聞こえてしまうのではないでしょうか。
いや、それよりわたし重いですよね。すごく重いですよね。
みいちゃん、さっきわたしが人に見られたくない。なんていったせいか、家のある4階まで階段を使うつもりみたいですし。
うう、めんどくさい女だと思われてるだろうなあ……。
「まーゆこー、鍵ー」
「はわ、はいっ!」
言われるがままに鍵を開け、抱きかかえられたまま、リビングのソファーへと運ばれます。
「救急箱。どこだったっけ?」
「あ、電話台の下の開きです。その中に全部」
おー。と返事をして、救急箱を取ってきてもらいます。
「ちょっと見るぞー」
戻ってきたと思ったら、そう言うなりこっちの答えも聞かず靴下を脱がされてしまいます。
「う、や。い、いいですよう、自分で見れますから……」
「いいからいいから。……まゆ。やっぱ足捻ってるよ、オマエさん」
確かに、足首を触られると、痛みが強く走ります。
「そ、そうみたいですね。……あの、シップ、わたし自分で貼りますから……」
「……いや、他は大丈夫か? 痛む所、ないか?」
そう言うと、ふくらはぎのあたりを優しく撫でるように触ってきます。
「……うひゃっ」
や、は、ちょ、ちょっと……!
「――どうだ? 痛むか?」
「あ、あの……、くすぐったい、です」
――それに、みいちゃんに直接脚に触れられている。と思うと、心臓がバクバクとうるさく、顔が真っ赤に火照ってきます。
「オイこら、逃げるな」
そ、そんなこといわれてもー!
たまらず、横にあったクッションを胸の前に抱えます。
「――膝とか、腿のほうは大丈夫だろうな? 筋肉傷めたりしてないか?」
みいちゃんの手が、膝頭をするりと撫で、制服のスカートの裾を少し捲りながら、ふとももの近くまで伸びてきます。
「……やっ」
――心臓が耳元に来たみたいにうるさく、血が流れる音がやけに大きく聞こえます。首筋から汗が吹き出し、
身体全体がお風呂上りの時のように真っ赤に火照るのが自分でもはっきりとわかりました。
「……み、みい、ちゃん。も、もう――」
やめて。
さわらないで。
それいじょう、触られたら。
わたし。わたし、おかしく――。
悲鳴を上げる直前に、腿を触っていた手がすっと引かれました。
ほう。と、知らぬ間に詰めていた息をそっとつきます。
「――足首に、湿布だけ貼っとくぞ。他は大丈夫みたいだしな」
「……あ。は、はい……。どうも……」
「後は、おばさん帰ったら診てもらえよ。明日になってもひどく痛むようなら、俺、送り迎えするから」
「だ、大丈夫ですよ、たぶん。……あの、すいませんでした。さっき」
重かったでしょう? わたし。
そういうと、「……別に?」とだけ言って、わたしの髪をくしゃくしゃと乱暴にかき回してきます。
……たぶん、気にするな。という事なんだろうと思います。
昔から、みいちゃんが照れくさいのを誤魔化すときに、よくする癖なので。
――みいちゃんが帰った後、クッションを抱えたままソファーに突っ伏します。
あの様子だと、明日は確実に登下校の送り迎えをされたあげく、下手したら一日中くっついて回られるだろうと
思います。なんだかんだいって、義理堅いというか、マメというか、私が怪我したのは自分の責任だと思ってそうですし。
「……やだなあ……」
あんなちょっと触られただけでもこうなのに。
一日中くっついてこられたら、持たないんじゃないでしょうか、わたしの心臓……。
以上で今回投下分終了です。
幕引きまでもうしばらくかかるかと思いますが、
どうか生温い眼で気長にお付き合いいただければ幸いです。
萌えた。
(*゚ω゚)=3 ムハー GJ!!
寝る前にいい物を…
GJ!!
うーん、GJ!
いいね、なんかこういうの。
暑い。と言うのはただそれだけで生きていくのに不利だ。と俺は思う。
「ねえ、ゆう君さ。SEXした事ある?」
何よりなんとなくずるい。
北海道のおばあちゃんの家は一年中暖かい。
従兄弟の建の部屋にはあいつが自分の部屋を持った時からエアコンが付いている。
エアコンが無ければ寒くて死んでしまうと言うが、
それを言うなら今、俺だって暑くて死にそうだ。それでも暑いだけではエアコンは付かない。
「ねえよ。」
「ふーん。じゃあ、こっちだ。」
高校生なんだからバイトして買えば良いじゃない。その通りだ。
16にもなればバイトしても良い。
色々と地域によって差はあるだろうが全国区の決まりだ。
全くの正論だ。夢にまで見る。
稼いだお金でバイク買って乗り回したり、CDを買ったり、社会の厳しさを学んだり。
親に自慢げに「俺、今月から小遣いいらないから。」なんて宣言してみたり。
夢一杯ですね。
人口120人のこの村以外の同い年の皆様。
勿論悪い事ばかりじゃない。
外には自然が一杯だし、夜には星が見える。
この前新聞で読んだけど若い人間が多い地域ほど犯罪率が高いらしい。
その点も安心だ。
村全体の平均年齢も60を超えるか超えないかというラインを彷徨っていて親切な人がもうそれはそれは沢山いる。
「じゃあ、キスは?」
「ないね。」
あたりまえだ。
「ふーん。君は奥手タイプだって。退屈そうな仕草はキスのOKサインだから見逃すな。ってかいてある。」
人のベッドに寝そべって夏のデートスポットはここで決まり!と表紙にでかでかと銘打ってある雑誌をパラパラとめくりながら
バリバリとポテトチップスを齧る。
汚れるのもお構い無しなのはきっと俺のベットだからなんだろうと思う。
「退屈だからキスしたいのか、キスしたいから退屈そうにするのかどっちなんだろうね。」
「しらないよ。」
ベッドの方へは振り向かず、そう答えた。
村には今も語り継がれる伝説がある。
15年前に村に奇跡が起こった。と。
都会からやってきた新任の医者(25歳独身)と診療所の看護婦(23歳独身)
JAの職員(24歳独身)と農家の娘(21歳独身)の2組が同時期に恋に落ちた。
きっかけはJAの職員が村の青年会(平均年齢55歳)でポツリと漏らした一言であったが、
その手の噂は吉田の家の次男坊(35歳)と山本の家の親戚の娘(26歳独身)の見合い結婚以降
15年ぶりのことであった為、瞬く間に村中を席巻した。
情報を受けた村の対応は早かった。
10年前、子供の為と言い残して都会に出て行ってしまった吉田の家の次男坊(35歳)と同じ過ちを繰り返してはならない。
と村長は次の日の村議会で5回、繰り返した。
30年間村長をやってきて、もう名前が村長になっている村長の一言は重い。
村議会の翌日、新任の医者はやってきた助役に結婚式に公民館を使うのであれば費用は心配するなと告げられ、
同時刻、JAの職員は上司に呼び出され新居の費用はほぼ0と言って良い金利で貸し付けるからと胸を叩かれた。
村長は張り切ってスピーチの内容に頭を捻り、
助役は神主を呼ぶべきか牧師を呼ぶべきかを暫く考えた後、寺の坊主に電話を掛けた。
村中が固唾を飲んで見守る中、その2組のカップルはなんとなく追い詰められたような気分に首を捻りながら結婚式を上げ、
式の最中に子供の為の公園に予算が組まれた事を聞かされて村に居つく覚悟を決めた。
なんとなく夜は早く帰れと言うプレッシャーを毎日受けつづけ、その2組の若夫婦は一年後、ほぼ同時期に子供を産んだ。
誤算はその2人の子供にその後兄弟が産まれなかった事だったが、
それでも村はその2人の子を最大級に歓迎し、最大限の援助を惜しまなかった。
山を越えた先にある隣町の小学校への登下校はJAが威信を掛けた。
月曜から水曜は山本の長男(68歳現役)。
木曜日と金曜日は山下の次男坊(45歳独身)が運転手に名乗りを上げ、6年間勤め上げた。
一番頑張ったのは村長と助役だった。
「過疎地の教育が切り捨てられている。」と濁声を張り上げ、何だか必死なその姿は全国ネットのテレビ番組まで取り上げられた。
その結果生徒不足に喘ぐ麓の町の中学校と高校は廃校を取りやめる事となり、
3学年で生徒が数えるほどしかいない学校に予算が割り振られた。
そして2人の子供は学校に行く為に都会の親戚の家に預けられる事は無くなった。
村の双肩は君達に掛かっている。村長は毎年言う。
女は16歳で結婚できる。なんだったらゆう君、18歳になってみないか?書類なら何とかする。
俺達と一番年の近い、村で若造と呼ばれている俊哉さんが独身のまま不惑の年を越えた今年
助役は真顔で俺に言った。
やめたまえ助役。と言いながら村長は2年くらい待ちたまえ。とかなりマジな声で続けた。
さっきから俺に話し掛けているのは隣に住んでいる同級生の伊夏。
セットで育てられたのだから幼馴染と言って良いのだろう。
別に嫌いじゃない。
美人と言えるし、何よりも性格が合う。
でも若者だから反骨精神だってあるのだ。
突然転校生がやってきたり、街角でぶつかったり。
バイト先で運命の女性と出会ったりに憧れもする。
あまりに予定調和では何だか腹が立つ。
つまりはバイトをしたい。
エアコンが欲しい。
蝉と自然と星ばっかりはうんざりする。とそういう事情だったりするのだ。
>526
を読んで突発的に書きたく・・。
すんません・・
では。
ノシ
最初のトリップが・・・
正直二人の今後よりも
村の人々の暮らしとかのほうが非常に気になる・・・
いや、すごい面白いですよ。
村全部が幼なじみブリーダーとは、やるな。
突発的と言わず続きキボンヌ
>>744 GJ!すっごい面白かったです。特に村の人々の必死さに笑いました。
今後の二人が気になるので続きを楽しみにしています。
後、ヒロインの名前、「いなつ」って読むんですか?
>>747 幼馴染みブリーダーにワラタ
キター
俺、村人になる!
田舎ネタをよくわかって書いてるなあw
とワロタ、田舎の村役場職員の漏れ。
日本中見ると一人で20年30年村長やってる人が結構いたりするし
(雄巣鷹山で有名な群馬県上野村の黒沢村長は40年以上勤めて91才で今度引退)、
村全体で結束した時には相当な無茶苦茶を辞さないものだ。
(犯罪だろうが選挙違反だろうが軽くもみ消せそうなくらいw)
カップル作りのシチュには抱腹絶倒した。
田舎の人たちってこういう時はほんと必死になるんだよ。とにかく切実なのだ(汁
村人、ちょっと楽しんでないか?w
いや、必死なんだろうけど、楽しそうだ。いいなあ。
なんだか異色作ですね。面白い
うわー、こりゃ勘弁してほしいや。
読み終えたあと、何だか笑いがこみ上げてきた。
これほど爽快な気分になったのは「絶望の世界」以来かな。
……俺はいったいどうしたのだろうか。精神病院逝った方がいいのかな。
俺だったら最初の時点でこの家とすっぱり縁を切って
亡母の実家あたりに身を寄せるか、それが無理なら
住み込みで学校にも行かせてもらえる職場を探して
奨学金を狙って大学を目指すだろうな。
いずれにせよ、完全に「無かったこと」にしにかかると思う。
漫画「おとぎ奉り」5巻に、幼馴染み的バレンタインエピソード有り
生きています。お久し振りです。幼馴染ばんざい。
描写がない部分は想像にお任せしたいのです。
その46です.
>>398の続きです。展開の遅いのはご寛恕を。
・・・・その46
何もないまま二日が過ぎた。
私は勉強で夜も部屋にこもっていたし、幼馴染も邪魔しには来なかった。
そう意志を尊重されると却って寂しくなるのは我侭なのだろう。
雨音に体育館脇で足を止めた。
文化祭の途中で雨が降ってきて、二日目終盤に舞台発表だったクラスの劇はそのせいか現在満席だ。
段差でつまずいて、古い痛みが足に響く。
…湿気と人の多さで疲れてきた。
疲れてくると理性が弱るので幼馴染だけは避けて道具運びに専念する。
明日の代休にデートするとか言っていた気がするけれど、雨が降ったらどうするのだろう。
家で勉強したいなあ、と思ってしまうのはイトくんに失礼なのかもしれない。
文化祭はあっという間に閉会式からホームルームへと波が引けてしまった。
机を元に戻すのは三年生だけで、火曜から受験モードになる一階を今から予測させる。
頑張っただけあってどことなく決着のついた感がある。
「―じゃ、打ち上げに来る人は四時までに校門前集合ということでー、解散でーす」
あまり勢いのない最後の一言は威勢のいい拍手で迎えられ、大勢がわやわやと立ち上がりだした。
ざわつく教室でかばんを開いて筆箱を滑り込ませると、かばんのリボンが鮮やかな緋色の糸を流してこぼれる。
舞台で髪に結んでいた志奈子さんのものを貰った。
自分で作っておいてなんだけれど綺麗で嬉しい。
なんとはなしに教室を眺め回して、帰るクラスメートに手を振ってみたりして、開いた窓に顔を向ける。
小降りになって雨雲の合間から空が出ていた。
待っていればやみそうだ。
―と横から影が落ちて、あたたかい気配が肩に触れた。
這い上るものを抑えて、普通にいつものように彼を見上げる。
イトくんがあれからいつも呼ぶような声で私の名前を呟き、帰るか聞いてきた。
「…イトくん、打ち上げは」
「ひーこ次第かな」
「そうそう。橋田は、崎さん行くなら行くらしいよ」
イトくんの後ろから彼と仲のいい男子がにやにやするので、二人で振り返った。
行かないつもりだったことを伝えてきちんと遠慮しておく。
幼馴染も一緒に雨がやむのを待つと笑って彼を送った。
それから席について、ぐったりと目を閉じてしまった。
…やっぱり疲れているのだろう。
わざわざ指摘することもないので黙ってかばんを抱え、教室から人が減っていくのを
私のではない椅子に座って、幼馴染と一緒に見送り続けた。
浮かれたクラスの人達に手を振りながら、まだ祭り気分の残る学校に会話もなく居残る。
漂う湿り気が涼しい。
膝上でリボンがふわふわと舞ううちに、教室の埃が白くなった。
きつねの嫁入りになっている。
時折身じろいでは半分眠る幼馴染に、窓からふと視線を移す。
だるそうに頬杖で支えた頭が不規則にこくりと何度か揺れた。
心が0.5度くらいの上昇率であたたまって顔が微笑った。
幸せになる。
学年が同じになるといろいろなことが違う。
特に今は私が三年生なのだから、幼馴染が同じ学年になっても傍にいてくれるから
こうしていられるので、それは感謝したいくらいの嬉しさだと思う。
ああそれだから。
私はこの人のことばかり考えてしまうし、でも本当は実力的にそんな余裕もなく、息抜きだってとても下手だから。
勉強を頑張ろう。
明日はともかく、今後はしばらく許してもらうしかない。
あと半年もない間、イトくんのためではなく自分のために精神力を使わなくてはいけないのは、必要なことだ。
僅かな明るさが夕暮れ色に雲を染めていた。
…教室には誰もいなかった。
廊下の足音が遠い。
なんとなく、
幼馴染の名前を
初めて、呼んでみた。
言い慣れない響きに不意打ちで熱くなった。
半分眠っていた目が開いたのに、自然と袖を伸ばして無言でねだった。
身長差がありすぎて自分からはしにくいのがむずがゆい。
何かが耳裏で頭を抱えた。
それから唇を食べあうくらいの遠慮がちなキスをして、離れて、またしかけてやめた。
温かい心がしっとりと余韻に溶ける。
低い笑いも穏やかで心地よかった。
「いきなりどうしたの」
「…なんとなく」
「なんだいそれ」
声を立てて笑う。
雨がやんでいた。
髪を梳くくすぐったさに少しだけ私も笑った。
水溜りをローファーで歩くことなんてなんでもない気がした。
欲情1mm手前。
続きはまた時間ができたときに。
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
243氏、おかえりなさい!
しかしどうしてキス描写だけでこんなに色っぽいんだろう(*´д`)
243氏! お待ち申しておりましたァァァ!!
>745でプチ鬱になってたところへの脳内麻薬!
たまらんです!
すみません。>754でした・・・(;´д`)
興奮しすぎた・・・
243氏おつ!何かほえほえってしました。
>754の詳細求む
おかえりなさい!待ってました!!
初めての「依人」呼びキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
漢字間違えてた…_| ̄|○
「依斗」でした。243氏申し訳ない…。
ああ待っててよかった…。
243氏 キタ━━━ヽ(゚∀゚)人(゚∀゚)人(゚∀゚)ノ━━━!!!
おかえりなさい、御馳走様でございますw
>欲情1mm手前。
身悶え中・・・
生きてた……それだけで幸せになったのは俺だけではないはず。
そして本文を見て天に上る気持ちになったのも(ry
243氏はあいかわらず素晴らしい。
ところでばあさんや、526氏の続きはまだかいのう
俺も526氏の作品の続きが非常に気になります
とても面白いうえに、読みやすい
……いかん、俺も書きたくなってきた
駄目SSしか書けないというのに……
>>593からの続きです。
頂上から見る青空は、雲一つ見当たらなかった。
お弁当を食べ終えた私達は、無言のまま空を眺め続けている。
「…剣太」
先にしびれを切らしたのは私だった。
「いいかげん話してよ」
「……鞘子」
上を向いていた剣太の顔が、こちらに向いた。
――――剣太は最近、時々こういう目で私を見る。
知らない男の人みたいなその眼差しは無条件に私の心臓を跳ね上げ、頬を染める。
…困る。息が上手くできなくなる。
耐えきれなくなって瞳を伏せ、視線を剣太から逃した。
「幼馴染みってさ、いいのか悪いのかわかんねぇよな」
ポツリと剣太が言った。
「ずっと一緒にいるもんだと思ってたんだ。鞘子はずっと変わんないって思ってた。でもさぁ、違うんだよな」
俯いてしまったから剣太の表情はわからない。
剣太は、何が言いたいんだろう。
「高校入ってから、なんか変わったよな、鞘子」
「…どういう風に?」
「…なんか…」
少しの沈黙の後、小さな声で剣太が言った。
「女らしくなった」
予想外の言葉に顔を上げると、視線をあさっての方へ向けている剣太の横顔があった。
……どうしよう。
嬉しいのか、恥ずかしいのか、自分の感情がわからない。
心臓が煩い。――――音が、剣太に聞こえてしまう。
「俺さ…ヘタレなのかな」
「……はぁ?!」
何の脈絡もない剣太の言葉に心臓が無事平穏を取り戻した。
「怖くて言えないんだ」
「…何を?」
「鞘子…俺…」
驚くほど真剣な表情で、剣太が私を見据えた。
なぜか正座までしてかしこまっている。
ああ。また、心臓が煩い。
なんでこんなにドキドキしてしまうんだろう。
目の前にいるのは紛れもなく毎日顔を会わせている幼馴染みで。
頭ボサボサで。顔も普通で。背も普通で。昔から変わらず特に目立つ所なんてないのに。
どうして最近の剣太は私のペースを崩すのが上手いんだろう。
「……」
「……」
思わず止めてしまった呼吸に限界を感じ始めた時、突然、剣太が大きなため息をついた。
「…やっぱ駄目だ!言えねぇ!!」
「だから一体何をよ?!」
「告白なんかできっこねぇ!」
「…告白?」
意味がよくわからない剣太の言葉に顔をしかめる。
見ると、剣太はなぜか「しまった」という顔をしていた。
――――まさか。
「あんた、何か私を怒らせるようなことしたの?」
睨みながら尋ねると、剣太はその場で頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。
「…鈍感」
小さく放たれた剣太の言葉が、私のイライラを刺激する。
本当に、最近の剣太はわけがわからない。
――――いや。
わけがわからないのは私も同じだ。
だって、剣太が男の人に見える。
だからどうしていいのかわからない。
しゃがみ込んだままの剣太に背を向け、私もしゃがむ。
剣太のことを考えるとすごく恥ずかしくなる。
勝手に頬が染まり、心臓が動きを早める。
そのくせ会えないとすごく不安で寂しくて。
でも会ったら会ったで感情がコントロール出来なくて嫌な態度を取ってしまう。
――――本当は、私は知っている。この気持ちをなんと呼ぶのか。
なのに認めたくないのだ。
だって相手はあの剣太だから。
兄弟のように思っていたはずの幼馴染みだから。
剣太は私を姉か妹のように思っているから。
だから、私は。
10月の風が、赤い葉を巻き上げながら私達の間を吹き抜けていった。
今回はここまでです。
待っていてくださった方、ありがとうございます。
後一歩を踏み出せない幼馴染みの微妙な距離を感じていただければ
嬉しいです。
続きは近日。
うほっ
やっと続きが
キ…(-_-)キ(_- )キ!(- )キッ!( )キタ(. ゚)キタ!( ゚∀)キタ!!( ゚∀゚ )キタ━━━
うあー、駄目だ。それ以上続きがくると俺は死んでしまう!
ごろごろ転げまわって萌え死んでしまう。是非殺してくれ!
うはwwwww
剣と鞘wwww最高wwwww
早くwwwwww仕舞ってくれwwっうぇっうぇwww
おおおおおおおおおおまいらもてぃつつけ
ここ最近のGJラッシュに、おいどんは……おいどんは……!
あうあうあー
243氏や526氏に触発されて、停止していた話の続きを書いてみたり。ついでにトリップ付け。
>>448-452 >>669-
>>677の続きです。ちょっともう時節外れですが。
私が教室に戻ってきてからほどなく、あいつ──慶太も戻ってきた。
あの光景を見た後だからかもしれないけど、どこかいつもの慶太と違って見える。
「……」
私は淡々とノートや教科書を鞄に詰める。
慶太は自分の席に一旦戻ってから、友人達と何か喋ってる。当然だけど、さっき貰っていたチョコは手に持ってはいない。
そんな光景を横目で見ながら、私はあてもなく席を立ち、黒板の横の棚に置いてあった……たまたま目についただけの進路関係の本なんかを開いたりする。
今は、とても慶太に自分から「弁当箱返して」なんて言いに行ける雰囲気じゃない。
何だか、胸の奥がちくちくと突付かれるような感じだ。
「沙穂」
そのまま本を眺めていた私に、後ろからかかる声。
振り返ると、慶太が少しだけばつが悪そうにしつつ、弁当箱を差し出していた。
「な、何よ。……遅かったじゃない」
声が動揺してるのがはっきりわかる。慶太の顔を見るだけで、さっきの場面がありありと思い浮かんでしまう。
とりあえず弁当箱を受け取る。例によってお残しはない。
「悪い悪い。……でさ。その、なんだ」
首筋を指で掻きながら、慶太は少し素っ気無く話を続ける。
「今日、この後暇か?」
「うーん、別に……暇だけど」
出来るだけいつものような会話になるように、私は神経質なくらいに気を遣って言葉を紡ぐ。
「そっか。……じゃあさ、一緒に帰らないか?」
「うん……いいよ」
別にいつもならそのまま流れで一緒に帰ったりするのに。
私も慶太も、あからさまに変だった。
いつもの帰り道。いつもの夕暮れ。
でも、私と慶太の間にはいつもと違う空気が流れているような。
慶太は他愛無い話を続けながら、時々何か言い出そうとして、黙ってしまう。
私はそれを待っているような感じ。そう、待つ事しかできていない。
私は気付いてしまったから。慶太はさっき教室に帰ってきた時に、私が慶太の居場所を尋ねた男子と話をしていた。
ひょっとすると、感づいているのかもしれない。私が、慶太と潮崎さんの話を聞いていたって事を。
「で、その映画だけどさ。何かつまらないらしいぞ? 千円出してまで見る価値は無いってさ」
「ほんと? ハリウッド顔負けのアクション映画って聞いてたんだけどなぁ」
話題の映画の話をしながら、歩道の無い駅前に続く近道を歩く。
後ろから車が来た。
道路の真ん中を歩いていた私達は、それぞれ左右に別れて車をよける。
また戻って話を再開させながら、ちらちらと慶太の方を見る。
別にそこまでかっこいい顔じゃないと思う。背は平均より多少高いくらい。部活ではぎりぎりでレギュラーらしいけど、ずば抜けて運動神経が良いわけじゃない。成績は中の下。
つまり、ごくごく普通の男子生徒だ。美人の潮崎さんがわざわざ告るような男子じゃない。
──本当に、そうなんだろうか。
私はこいつを、慶太をただの幼馴染としてしか見てなかったと思ってる。
でも、最近は本当にそうなのかわからない。
「好き」の基準って何なんだろう?
慶太と話してる何でもない時間は私の中で在って当たり前のものになってるし、お弁当を作ってあげてる時は楽しい。
お昼に慶太が私のお弁当を残さず食べてるのを見た時は嬉しいし、何より……慶太の笑顔が私は好き。
そして今日、私は強く思ってしまった。
この幼馴染を、慶太を、他の誰かなんかに取られたくない。……絶対に。
こんな事を思うのは初めてだけど、今日の事がきっかけで眠っていた感情が目覚めたのかもしれない。
そして、大切な幼馴染を取られたくなかったらどうすればいいかは私が一番良くわかってる。
まだ渡せずに、鞄の奥に隠してある手作りのチョコ。
これを、ちゃんとした意味で渡せばいい。そうすれば、少なくても自分の気持ちは隣にいる幼馴染にもきっと伝わるはず。
「おーい、沙穂。何ボーっとしてんだ?」
考え事をしていたからだろうか。慶太の話も上の空だったらしい。
「あ、うん。ごめん、ちょっと考え事してた」
「ったく、気をつけろよ。赤信号無視して歩き出しそうな勢いだったぞ」
慶太は私よりはよっぽど普通だ。さっきみたいに何かを言いかけて口をつぐんでしまう事はあるけど、それ以外はいつもとそう変わらない。
むしろ、いつまでも変なのは私。
「でさ、来週から始まる期末試験の──」
慶太が平然としていられるのは、ひょっとしてもう心に決めた事があるから? それとも……。
一度迷うとそれは枷になって、話を切り出せなくなる。
何でも話せた幼馴染にたった一言だけ言うのが、こんなにも難しいなんて。
慶太も何か言いたそう。私も何か言いたい。
でも、言えない。
私は慶太を取られたくないと思う一方で、多分こうも思ってる。
──欲しがって、踏み込んで、その関係が壊れるくらいなら、踏み込まずに今の居心地がいい関係のままでいい──
──それに、慶太が潮崎さんにOKを出すとは限らないじゃない──
それはきっと、こんな関係にある全国諸所の幼馴染達共通の悩みなのかもしれない。ふと、そんな事まで考えた。
「慶太、あんたまた数学で赤点ぎりぎりの点数取ったりしないよね?」
「……善処する」
「もう、部活だけじゃ大学なんて行けないんだよ? どの科目もバランス良く取らないと」
私の意識と裏腹にほとんど勝手に紡がれる言葉は、ごく自然で、でもどこか空虚。
「あー、わかってるよ。見てろ、今に成績でも追いついてやる」
「ふふん、学年トップ50の壁は厚いわよ」
タイムリミットが近づく。私の家はもう目前だ。
言おう、言わなきゃ。せめて「私の家に寄ってく?」くらいは。
でないと渡せなくなる。言えなくなっちゃう。
「…………ねえ、慶太」
意を決して、隣で白い息を吐きながら歩く幼馴染に話しかける。
「……なに、沙穂?」
「あのさ」
なのに、言葉が続かない。慶太はどこか戸惑ったような表情をしてる。
「……えーと」
「……」
待ってる。きっと待ってくれてる。そう思ったのに。
「……明日のお弁当、何かリクエストある?」
出てきたのはこんな言葉。
ああ、私ってこんなに臆病だったんだ。
そして、こういう事には不器用な私は、ううん、私達は。
結局何も踏み込む事が出来ないまま、いつものように、家の前で別れるしか出来なかった。
「……」
玄関に入ると、無言で自室まで行く。
悔しくて、情けなくて、そのままベッドに突っ伏した。
携帯も、電源を切ってどこかに放り投げる。
床に落ちた時に、ストラップのものだろうか……コン、と音が鳴った。
いつか慶太と……と言うより付き合いの長いお互いの家族同士で行った、一泊二日の旅行の時に買った、携帯のストラップ。
確か安物の宝石のような蒼い石を付けたストラップで、石の持つ意味は和合と愛情だったっけ。
余計悔しくなって、枕に顔を埋めた。
だいたい、神様とやらがいるのならこんなの無茶だ。
あんな無理やりな方法で私の気持ちを気づかせてくれたって、そこから数時間で何が出来るっていうんだろう。
私が自分の気持ちに気づいたからって、今さら何が出来るんだろう。
こういう時だけ、自分の変な真面目さが嫌だった。
そのまま夕御飯もいらないと言って、部屋の電気を少し暗めにして寝転がっていた。
今頃慶太は何してるんだろうか。放り投げた携帯電話は、当然ながら寂しそうに沈黙したままだ。
もう、あのチョコを食べたんだろうか。家がお金持ちな潮崎さんの事だから、あれはきっとかなり高級な物なのかもしれない。
自分の鞄の中に入ったままのチョコは……高級感はないと思う。でも、それなりの気持ちはこもってるはず。
「でも、所詮私は不戦敗か……」
そんな感じでへこんでいる私。と、そこに無遠慮なノックとともに姉が入ってきた。
「おーい、生きてるか沙穂」
「生きてる。……って、お姉ちゃん何それ」
姉の片手には、お盆。その上には多分今夜の夕食だろう、それをチンしたと思われる料理が二皿。
「母さんがさ、体調悪くても少しくらい食べとけって」
「……ありがと、お姉ちゃん」
姉はその言葉を聞くと、部屋から出ずにそのまま床にどっかと座り込む。そして、単刀直入に言った。
「沙穂、何かあったでしょ。あんたが体調崩して夕食抜くなんて今までまず無かったし」
「……」
無言で料理に箸をつける。私が料理するようになって随分経つけど、母の料理はまだまだ私よりも上手だな、なんて思った。
「……そっか、慶ちゃん絡みか」
本棚から音楽雑誌を抜き取ると、姉は唐突に言う。私はほとんど反射で姉の方を見てしまった。
「ほら、やっぱりね。ま、昨日チョコ作ってた時点で今日は色々とあんたに尋問する気満々だったんだけどね、私は」
「……」
私は何も言えずに黙ってしまう。
「その顔からすると、何かよっぽどショックな事があったみたいね。どら、姉ちゃんに話してみな」
「お姉ちゃんには……関係ないでしょ」
私は強がって反発する。
「関係あるさ。大事な妹と、その妹の大切な幼馴染の話だからね」
「私……」
いつもならこんな事言わないのに、口が勝手に動く。
あるいは、救いと助言が欲しかったのかもしれない。気づけば今日の出来事を、かいつまんでとは言えほとんど姉に話してしまっていた。
「……なるほど」
斜め読みしていた音楽雑誌を脇に置いて、姉は私の方を見る。
「しかしあんたも回りくどい性格だね、ほんと」
「お姉ちゃんが真っ直ぐっていうかストレートすぎなだけでしょ」
「まぁね。私にはそんなに微妙な距離の幼馴染がいないから何とも言えんけど」
姉はポケットから煙草を出して、すぐしまった。
「あぁ、この部屋は禁煙だったか。……それでだ」
「なに?」
姉は一度だけ間を置いてから、珍しく真面目な声で私に言う。
「沙穂、あんた慶ちゃんが好きなんだろ?」
「…………」
しばらく沈黙する。そして、私はぽつりと言った。
「……うん。私きっと、慶太のことが好きなんだと思う」
それは、自己確認の意味も含めてのものなのかも。
「なんだい、そのきっとってのは」
すかさず突っ込んでくる姉。
「だって……こういうのを本気で実感したのって始めてだから」
私は誰かを意識して好きになったっていう感覚が無い。そう思っていた。
少なくとも、慶太を仲がいい幼馴染として意識していたつい半日前までは。
「……マジかい」
「そんな事言わないでよ、もう」
と言うより、幼馴染である慶太に対する感情が実は「友達以上恋人未満な幼馴染」より一歩進んだ「好き」という感情だったって事なんだけど。
「ふーむ。ふむふむ」
姉は黙り込んでから、不意に少し口元を緩めて言う。
「今のちょっと弱気な沙穂、割に可愛さ2割増だわ。今すぐ慶ちゃん呼んで、その調子で告っちゃったら?」
なんならついでに……と言って、恥ずかしい事を堂々と口にしようとする姉に、目でストップをかける。
「だって、もうタイミング逃しちゃったし」
「で、諦めんの? 全然慶ちゃんの事を知らないような女に取られてもいいの?」
「それは……」
「取られたくないだろ?」
「……うん」
こんな時だけ、普段ずぼらでいい加減な姉は恐ろしくキレがいい。
「私は冗談じゃなく、そういう繋がりで引き止めるのもアリだって言ってるだけ。あんたらなら昔からの付き合いだし、そっから順風満帆スタートもいけるっしょ」
「うー……」
「ま、それは経験の浅い沙穂にはちょっと無理か。……まあ、あんまし関わるのも何だから、私は退散するわ。精々頑張んなさい。あと、食器は自分で戻しておくように」
姉は立ち上がると、いつものように飄々とした調子で部屋から出て行こうとする。
私は慌てて声をかけた。
「お姉ちゃん、あのさ」
「何? ゴムなら三つくらいあげるよ?」
「っ〜! そんなのいいから!」
「あ、そうか。前あげたのがどうせまだ未使用か」
冗談っぽく言う姉。
「もう……。でも、ありがとう、お姉ちゃん」
「はいはい。私も妹から恋愛相談をされて嬉しいわ。ま、ちゃんとしたお礼はそっちの事情が片付いたらにしてよ。授業料1000円ね」
最後までそんな調子で、姉は私の部屋から出て行った。
さて、後は本当に私次第だ。
時計の針は9時50分を指している。昨日はあんまり寝てないから疲れてるけど、少し言うべき言葉を考えて、それからちゃんと慶太に電話しよう。
携帯を拾って、電源を入れる。ベッドに寝転んだまま、色々と台詞を考え始めた。
「これで、慶太が私の事を本当にただの幼馴染としか思ってなかったら……」
ぽつりと悲観的な言葉が漏れ出す。それを打ち消すように、ぶんぶんと頭を振った。
でも、何を言えばいいんだろう。私にとって慶太は、余りにも近すぎるような気がする。
何か伝えるなら、今日中しかない。明日の朝に潮崎さんが答えを求めてくる可能性だってあるんだから。
どうしよう、何て言えばいいんだろう。
苦手な古文の現代語訳問題を突きつけられるのより難しい。すごく……難しい。
段々と意識がホワイトアウトしていっているのに、私はそれすらも気付かないまま──
──目が覚めた時には、凄く嫌な夢を見たような気がして身体中が汗びっしょりだった。
……むしろ起きた今こそが、ある意味悪夢かもしれない。
時計の針は、午前6時11分。
外からは、屋根を叩く雨の音。カーテンの隙間から薄暗く差し込む、朝の光。
私は、本当に不戦敗になってしまったみたいだった。
私はその日学校を休んだ。
両親には文句を言われたけど、結局折れて休むのを認めてくれた。
弁当作りの約束をしてから、学校のある日は一日も欠かさず作ってきたお弁当も作らなかった。
熱いシャワーを浴びて、パジャマに着替えて。携帯の電源も切る。
「沙穂……大丈夫?」
気遣ってくれる姉にも適当に対応して、ベッドに潜り込む。
雨音はますます激しくなってくる。風も吹き出した。
なんだか、私の心境みたい。
今頃私の幼馴染……私の好きな、やっと好きと気付けた幼馴染の慶太は何をしているんだろう。
時計は11時の針を示している。いつもなら、慶太にお弁当を渡している時間帯だ。
今日は購買のパンでも買っているんだろうか。それとももう、潮崎さんと……。
寝返りを打つ。今はただ、何も考えずに横になりたかった。
どれくらいそうしていただろうか。一時間近く経った頃、私の部屋をノックする音。
家は共働きだから、家に残っているのは姉しかいない。
「何? ……私、あんまり話したくない」
昨日あれだけ色々話したのに、結局自分は何も出来なかった。それが悔しくて、姉とも話したくなかった。
「いや、用があるのは私じゃないよ。こんな嵐みたいな天気の中、わざわざ沙穂に会いに来た来客だからさ。ほら、入るぞ」
「えっ……!?」
がばっと布団から身体を起こす。
見開いた目の向こう、私の視線の先には。
制服をずぶ濡れにしたまんまの格好で、はにかんだ笑顔の慶太がいた。
「……慶太、どうして」
「あんたが休んだのに連絡も無い、携帯も電源が切れっぱなし。心配になって早退して来たんだと」
そう言う姉は、心底楽しそうにニヤニヤ笑っている。
「とりあえず慶ちゃん、そんな格好もなんだから、うちのシャワーでも浴びちゃいなよ。替えの服はある?」
「はい。えーと、洗濯したての指定ジャージなら、鞄に」
「あー、それでいいや。遠慮しないでとっととシャワー浴びて、ゆっくり面会でも看病でもしてきな。なあ、いいだろ沙穂?」
姉は急に私へと話を振ってくる。
「うん……いいよ。でも、どうしてわざわざ早退までして、家に」
制服のブレザーから雨露を滴らせている慶太。……どうして、わざわざ?
「あー、えーとな」
言いかけて慶太は、ちらっと姉の方を見る。姉はすぐに雰囲気を察したのか、こんな事を言った。
「……沙穂、私今ちょっとゼミの教授に呼ばれちゃってな。何か今すぐ大学まで来いだそうだ。夕方までは大学に行ってるから、何かあっても自分達でやってくれ。……んじゃ」
また手をひらひらと振ってから、悠然と姉は出て行く。
その姿を見送ってから、私は慶太に改めて聞きなおす。我ながら、ちょっとずるいような気もするけど。
「それで……何だっけ?」
慶太は慶太で、いきなり外套を羽織ると、雨風の強い外に出て行った姉をしばし呆然と眺めつつ。
そして、もう一度咳払いして、少しだけ微笑んで。
「俺さ、沙穂の弁当食べないとダメだわ。やっぱし。……学校行く楽しみが一つ無くなる」
「慶太……」
どくん、と心臓の音がペースアップしていく。何だか、今の一言はすごく効いた。
慶太も言った後で気付いたのか、しきりに視線をそこらに漂わせている。
「あ、あのさ。とりあえず俺ちょっとシャワー借りるわ。ずぶ濡れだと悪いし」
「う、うん。ゆっくり入ってきていいよ」
私の返事をほとんど待たずに、階段を駆け下りてく慶太。
そこで私は気付く。
両親も、姉も今は家にいない。
私達、学校にも行かずに家で二人っきりだ。
胸の奥がかぁっと熱くなって、また少し心臓の音のペースが速くなった気がした。
と、やや冗長な気もしますがこんな感じで。次回で完結すると思われます。
ホワイトデーまでには、なんとか。
やばいなこのスレ。GJの嵐だ。
うほっ
神々が神話を創っておられます ( ノ゚Д゚)GJ!!
もうね、ここの神はオレ達を萌え殺すつもりだね。
完結編を読み終わったあとなら死んでもいい(目が真剣)
>>802 逝くんじゃねえ!
この後にはホワイトデーというイベントも控えてるんだ。
幾つ命があっても足りねえなw
それでもネコのように生き返るぜ!
乗り遅れましたがバレンタインといえば、
手作りチョコもいいけど市販チョコもいい、なぜならば、
毎年市販チョコの安物ばかりくれる(年上希望)自尊心高めの可愛い幼馴染に、
普段苛められる復讐とばかりにたまには手作りしてみたらとからかってみる、
そうしたら幼馴染が傷ついた顔で泣き出してデパートの包みを投げつけて逃げる、
なぜかといえば昔自分に手作りチョコがまずいと言われたことを気にし続けていて、
それで手作りチョコを作る勇気もなく市販チョコを毎年毎年…
というのとか、かなりよろしいのではないかと思うわけです
すみません。
その47です。
もうそろそろ終わりかと思います。
・・・・その47
雲行きが怪しくなってきた。
昼から出かけるお母さんの代わりにお米をセットしてベランダを覗く。
もうすぐ正午だ。
幼馴染は来ていない。
迎えに来るはずだったのに、電話もない。
―近くだから会いに言ったほうが早い、
ような気も、するのだけれど。
出かける仕度のお母さんに呼び止められて、
行くついでに足元の子機を拾った。
こんなに怒りっぽかったろうか。
とソファに座り込んで子機を無造作に投げ出す。
息が上手く出来なくて雨音が腹立たしい。
昨日あんなにあたたかい気持ちだったのが嘘みたいだ。
視界がぼやけたので涙だと分かった。
一旦出てきたら悲しくなって、拭っても出てきて、擦った手首が濡れた。
怪我の治りかけた左手の包丁傷も八つ当たりしたクッションの
陰に隠れたベルトで打って、微妙に痛みが再燃している。
置きっぱなしなのは享の悪い癖だ。
電話が鳴ったけど留守電にしておいたので無視する。
今日くらいは、いろいろプレッシャーも忘れて、いろいろ話しておきたかったのだ。
それは確かに私は、いつもたいして感動的ではないし、気持ちの揺れ幅も人に比べて小さいほうだ。
でも、私が淡白に予定に組み込んでいただけのことも、
イトくんにとって大切なら私にとってもそれなりに大事で、
推薦試験は一月後なのだから息抜きの手伝いくらい出来たらいいと思っていた。
それを当人がいくら疲れていたからといって寝過ごすことはないし、
しかも私に言った予定をあっさり変えるのは何回目だろう。
謝られたって怒るしかないではないか。
電話がまた鳴った。
『――はい、もしもし。ただいま留守にしております。ご用件のある方は……』
呼び出し三回で留守電が二回目の起動をする。
点滅する留守番電話のランプを眺めながら、また滲んだ涙を擦る。
出て悪口でも言おうかと思ったけれどどうせ気の利いた悪口を思いつける人格でもないし。
泣いていたので溜息が掠れる。
『…ご用件をお話ください』
空白と、短い高い音。
切れるのを待った。
切れなかった。
電話でイトくんの声を聞くのは、二回目だった。
『ひーこ。聴いてるだろう』
うん、と向こうには聞こえないのに答えた。
スイッチの暗いままの子機はテーブルの向こうで音もなく寝転がっていた。
『何も言わないで切ることないだろう。悪いのは分かってる。本当に謝るから』
勝手なことを言って、謝っても反省しなくては意味がない。
声が疲れているのは分かっていた。
ただ眠そうなだけじゃないくらい。
そんなの小さい頃から何百ぺんだって耳にしていたし、イトくんは無理を出来る身体ではない。
だから寝過ごしたのだなんて今更聴いても、今更すぎた。
昨日心配の言葉もたいしてかけずに「いつも通り明日も起きられる人」だなんて思っていたのは私で、
だから憎まれ口なんていざとなったら思いつけないのも分かっている。
イトくんはずるい。
身体のせいという言い訳を一回もしないから、なのに心配すると嬉しそうにありがとうと言うから、
私はいつもいつもいつも、どうしていいのか全然分からなくなる。
もう気持ちを言葉にするのも深すぎて、だから。
だから、電話なんて無理だ。
『…ひーこ』
「切っていいのに」
呟いて、そうされたら多分私は絶対悲しむだろうと分かった。
歩いて五分の家なのだから、傘をさして小雨の下を
会いに行けばいいけれど、そんなことをできるはずもなく。
私は兄さんに似ている。
どれだけ人生を彼と共有していたのかも。
喧嘩になると負かすことばかり考えてしまうところも、実はそっくりだ。
イトくんだってこんなことは知らなかったろう。
―それとも、知っているだろうか。
沈黙が長く続いた。
さあさあと煙る秋雨の音に風で古マンションが軋んだ。
享でもいい、兄さんが突然でもいいから、誰かが帰ってきてくれないだろうか。
時計が正午を打った。
留守電のテープが切れた。
私は、床を歩いて受話器に手を伸ばした。
短縮ダイヤルで橋田依斗くんのうちに電話をかけた。
出てくれなかった。
呼び出しを二十回聞いて、受話器を元に戻して、目元を拭う。
そのままとたとたと玄関へ向かった。
肌寒い服だったけれど短距離だからいい。
傘を取りがてらチェーンを外して鍵を開けて、重い金属扉を勢いよく押して階段に出る。
扉が何かにぶつかった。
湿った風が、やや強く薄めの服に入り込み温くなる。
扉の影で、何かが、うずくまる姿が目に入った。
傘も持っていなくて、引っ掛けただけのジャンパーが濡れていた。
重い扉を押しやって止めた手が傷に冷たい。
「イトくん」
「……相変わらずきついな」
――前と同じパターンだ。
深く苦笑気味な溜息をついて、幼馴染が抱えた頭の下でそう呟いたような気がした。
雨が涼しくて私はでもこの程度じゃ絶対風邪は引かないくらいには丈夫だ。
拭ったはずのものが溢れたので袖を押し当てた。
久し振りにはいた私服のスカートが、湿る風でふくらんで流れた。
続きはできましたら近いうちに。
リアルタイムで神に遭遇してしまった…乙です。
きゃー きゃー きゃー きゃー きゃー
…すみません、ドキドキしてるんです
243氏の詩的な文章が好きだなあ。そしてもう47話目ですか。いよいよ……山場かな?
自分がこの板を覗く楽しみの一つにしてる243氏の文の続きを期待・応援しつつ、自分も明日あたり投下できるようにちょっと頑張ってみます。
243氏相変わらずGJ!!
>>806 その設定は悶死しかねません(゚∀゚)
設定だけで悶えてしまった・・・
>雲行きが怪しくなってきた
だけでちと反応しちまった。。病気だな
>>805 それはネコの性質とは云えまい
>>806 市販のチョコの方にも何か心をくだいてたりするといいな。
自分が一番好きだったとか、共通の思い出があったとかいう理由だけで
何の脈絡もなくいちごポッキーとか手渡しする幼馴染
……ってコレは伝わりにくいか……
>>817 >>共通の思い出があったとかいう理由だけで
それって、『だけ』じゃないでしょ。ツンデレな幼馴染にそれをやられた日にゃ、もう,
.r'⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒X⌒ヽ ⊂゙⌒゙、∩
ヽ.__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__乂__ノ ⊂(。A。)
萌え転がって即死ですぜ。
最後まで書きあがったので今のうちに投下予告してみるテスト。
ちなみに……幼馴染の二人と、強い雨っていうのは合うなぁと思います。
けっこう長いけど文句言わないでくださいな。
820 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:14:42 ID:osowtax1
>>786-797の続きです。
ベッドの上で待つ。私の格好はと言うと、パジャマのまま。
これでも一応学校を休んだ身だし、慶太が来た途端に元気になって私服に着替えると言うのはなんだか現金すぎるような気がする。
でも、今の状況を再確認してまた少しドキッとした。
二人っきりの家。私はベッドに寝てて、慶太はシャワーを浴びてる。
……変な想像をしてしまうのは、姉が吹き込んだ知識の副作用だと思う。絶対そうに決まってる。
それにしても、慶太が戻ってくるまでの時間が随分長く感じてしまう。まだ五分も経っていないのに。
慶太が戻ってきたら、何て言おう。
もう、私の中の消極的な部分は影を潜めていた。
慶太がもう潮崎さんに対して何か言った可能性はあるけれど、そんなのもうどうでもいい。
私の為に雨の中を急いでやってきてくれた幼馴染。その笑顔と態度に、応えなくちゃいけない。
鞄を持ってくる。中には、派手すぎずに、でも綺麗に見えるように工夫した包装の手作りチョコ。
一日遅れだけど、しっかり渡そう。
この先の事を考えると、ちょっと怖いかもしれない。
でも私は、やっと気付けた本当の気持ちからまた逃げるのは嫌。
……シャワーを浴びて出てきたのだろう。いつもより少しだけ遠慮がちな調子で、階段を上がってくる音が耳に届く。
毎日顔を合わせている相手をこんなにも緊張して待つなんて、どこか新鮮で、でも暖かい感じ。
821 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:15:11 ID:osowtax1
「サンキュ、沙穂。せっかくだから髪も乾かしてもらったわ」
そう言いながら私の部屋に入ってくる慶太。学校指定のジャージ姿なのが、どこか場違いにも見える。
私は身体を起こして、パジャマ姿でベッドに腰掛ける。
そこまでして、この歳になってパジャマ姿を幼馴染に見せるのは物凄く恥ずかしいことだと今更気付いた。
薄いピンク色のそれは、洗濯したてだし、変じゃない……とは思う。
「うん、暖まったでしょ。……ところで慶太、傘はどうしたの?」
まず、私の第一の疑問。雨は朝方から降っていた。慶太が傘を持たずに登校したとは思えない。
「あー、それはな」
慶太は私の机の側にある椅子に座ると、どこか恥ずかしそうに言った。
「持ってたには持ってたんだけどさ、学校から走ってここに来る途中で折れちまった。安物はダメだね、やっぱり」
「……折っちゃったの?」
慶太の傘はけっこう丈夫な傘のはずだったけど。少しくらい走った程度で折れるものじゃないはずなのに。
「うん。何か、俺けっこう思いっきり走ってたみたいだ」
「もう……風邪引くよ、そんな事ばっかりしてると」
話しているうちに、朝方から空っぽで冷たかった私の胸の中が暖かくなっていくように感じた。
「沙穂は、平気なのか?」
慶太が不思議そうに言う。当たり前だろう、なにせ私は病欠だと思っただろうし。
「……えっと、それは、あのね。ちょっと、話そうよ」
落ち着け、と自分に言い聞かせる。まず何を言おうか。少し間があったせいか、慶太が怪訝な顔をした。
「慶太。……聞かせて、昨日の事とか、その」
やっぱり私はこういうのが絡むと少しずるいと思う。また、慶太に先に言わせてる。
でもここで退いてたら意味が無い。選択をする為にも、先に聞くことが大事なんだって言い聞かせた。
「沙穂……やっぱり、知ってたんだ」
「うん、ごめんね。私……潮崎さんとかも、見ちゃった」
「そっか。もしかしたらとは思ったんだけど、やっぱりか」
慶太の声は怒っていると言うより、どこか申し訳なさそうだった。
お願いします・・・このままでは眠れない
823 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:16:50 ID:osowtax1
「潮崎さんには確かに告られたよ。でも……俺は今日の朝に、断ってきた」
「うそ、ほんとに?」
声に喜色が混じってしまいそうなのをこらえる。第三者から見たらどう思われるかは知らないけど、私はとてもほっとしてる。
「ああ。潮崎さんは確かに美人だと思うけど……俺さ、好きな人がいるんだ。……って言うか、それがきっかけで良くわかったんだけど」
言って、恥ずかしそうに慶太は俯く。
私の胸がどくんどくんと高鳴る。その先を言って欲しい。私が望んでいる事を、期待してる言葉を言って欲しい。……でも。
「待って、慶太」
「……え?」
ここからは、私が頑張りたい。幼馴染ばかりに頑張らせるのは、私の性に合わない。
「……こっち、来て。私の隣」
慶太を手招きする。そして心の中で、自分自身に声援を送る。
椅子から立った慶太は、ちょっと戸惑った顔で、ベッドに腰掛ける私の横に来てくれた。
体温が、近くに感じる。
「あのね、私本当は昨日慶太に渡したい物があったの」
鞄に手をやる。その感触を探り当てて、丁寧に手で持つ。
「これ」
「うわ、すっげ……これ、全部手作り?」
日頃私の手弁当を食べている慶太でも、これにはちょっとびっくりしたらしい。
なにせ今回のは何から何まで自分の手作り。包装紙やリボンはさすがに買ってきたけど、包装の仕方は全部オリジナルだ。
味は……試食では問題無しだったけど。
「うん。ちょっと頑張っちゃった。……それでね」
ちょっとだけ身体を動かして、慶太との距離を詰める。
雨の音以外はとても静かな室内で、ベッドのシーツと私の身体が擦れる音がした。
824 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:18:00 ID:osowtax1
「私ね、ずるい子だと思うの」
天井を見て、ぽつりと言う。隣の幼馴染は、どんな顔をしてるんだろう。
「ちっちゃい時から、慶太のお姉さんみたいに振舞ってて。お弁当の時だって、仕方ないなって感じでOK出したでしょ?
……あれね、ほんとはとっても嬉しかった。初めて作ったお弁当を全部残さず食べてくれた時は、もっと嬉しかった」
慶太の顔は見れない。見たら、きっと私の紡ぐ言葉が堰き止められてしまいそうだから。
恥ずかしい。でも、私よりも私の事を知ってるような慶太になら、今言える事は言っておきたい。
「ダメだよね、私っていつも言いたい事や言って欲しい事、慶太に言わせちゃって」
少し目を細める。こんな時でも、思い出すのはかけがえのない思い出達。
でも、一歩踏み出さないと。そう思ってまた口を開くと、慶太が小さく言う。その声が、すぐ近くから聞こえてきた。
「そんな事無いさ。……俺だって、他の誰かじゃなくて、沙穂とだから言いたい事を言えるんだよ」
頬が熱っぽい。大事な時にこんな事言われたら、ますます思考が焼き切れてしまう。
もう、口が勝手に動くままでも良かった。
「ありがとう、慶太。私……慶太と幼馴染で良かったよ。それに、やっと気付けたもん」
背筋を伸ばして。また少しだけ近くに寄って。誰もいないのに、周りの様子を窺うように少し周りを見て。
そうして、耳元で囁く。
「私……慶太の事が好き。大好き」
言った。自分の中にずっとあった、認めていなかった、でも長い間そこにあった気持ち。やっと日の目を見た気持ち。
それを伝えた。どうなってもいいと思って伝えた。
──外の雨は、周囲から私達への干渉を遮るように、少しだけ強く。
永遠に引き伸ばされたような一瞬の後、慶太がそっと動いた。
825 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:19:31 ID:osowtax1
「……っ!?」
気付いたら、慶太の胸の中に抱きとめられていた。
「俺も気付けたよ。俺も、沙穂の事が一番大事なんだって。だから……好きだ」
言葉は素っ気無く。中身は暖かく。
いつのまにかすっかり大きくなった……そう、本当に大きくなった幼馴染の胸に抱かれて、何だかぐっときた。
「ありがとう……嬉しい、私」
私の視界が少し曇る。そしてすぐに、揺らぐ。
ああ、どんなに上手くいっても、情けないからこうはならないようにしようって思ったのに。
溢れ出した感情が、次々と頬を伝う。
「沙穂……?」
ようやく気持ちを伝え合った幼馴染は、ちょっと戸惑っている。それもそうだと思う。だって、私は慶太の前で涙は見せないようにして生きてきたから。
「あはっ、ごめん慶太。でもね、ちょっと勿体無くなっちゃって」
「勿体無い?」
戸惑っていた慶太。その手のひらが、そっと私の頭に乗る。もう、なんでそんな私の弱い所ばっかり攻めるんだろう。
「だってさ、こんな事ならもっと前から言えれば良かったなって。怖がってて、それで進めなくて、けっこう損した気分」
「……」
本当に残念な気がする。自分の弱さとか、本当に気付けなかった事とか。
「沙穂」
慶太の、優しいと言うよりは暖かい声。一旦心の琴線に触れたら、私の感情にはブレーキが効かないらしい。
「……泣くなって。ほら、泣きやめるようにしてやるから」
「……えっ?」
私の頭の上にあった手が、私のあごに添えられる。少しだけ、上を向かされる私。
826 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:20:36 ID:osowtax1
──これって、ひょっとして。
「怒んなよ、頼むから」
まだぼやけた視界。でも、私は何となく察した。……だってこれ、二度目だから。
強張る身体から力を抜いて、目を閉じる。
唇が、そっと触れるほどに重なった。
「……」
「……」
すぐにお互いビクッと震えて、重なっていた部分が離れる。
視界が戻ってきて、顔を真っ赤に──多分私と同じくらい真っ赤にしてる、慶太が映った。
「わ、悪い。なんつーか、我慢できなかった」
慶太はしどろもどろになってそんな事を言った。でも、私はと言うと。
「ううん、いいよ。……それに、通算二度目じゃない、私たちのキス」
くすっと、笑みが漏れる。言われたとおり、涙は止まってた。
「う……それを言うか」
身体がとても近くにある。密着していなくても、互いの心臓の音が聞こえそう。
「やっぱり覚えてたんだ。……もう、10年近く前だよね?」
「……そうだよ、三年生の時」
こういう話をする時の慶太は、いつもの活発さが嘘みたいに小声になる。ちょっと、それを見るのは楽しいかも……なんて思ってしまった。
827 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:22:03 ID:osowtax1
「夏休みだったね。二人で近くの山に昆虫採集しに行ったら、いきなり夕立が降って。そしたら、雷まで鳴り出して」
こつん、と慶太の胸に額を触れさせる。恥ずかしさより、別の感情の方が私を動かしていた。
「言うな、あんまし言うな」
「しかも傘持ってなくて、私達近くにあった廃屋みたいな所で雨宿りしたんだよね」
「……ああ」
私達って雨に縁があるのかな、なんて考えながら、思うままを口にする。
「私……雷が怖くて泣いちゃって。そしたら、慶太が『泣きやめるようにするから』なんて言って……」
ちらっと上を見る。慶太は半ば観念したような顔をしていた。
「……丁度夏休み頃にやってたドラマで、そういうシーンがあったんだ。だから子供心で真似しちまったんだよ」
そう、私は小学生の頃、そういう理由で慶太にキスされたことがある。
「……でもな、沙穂が余計泣くなんて思ってなかったぞ、本当にああしたら泣きやむと思って……」
「泣くわよ。女の子にとってファーストキスって結構大事なんだよ? それなのに、あんな唐突にいきなりされたら泣いちゃうって」
懐かしさがこみ上げて、また笑みが漏れる。そして、ちょっと悪戯心が沸いてこう続ける。
「そう言えば、その後『ファーストキスは本当に大切な人とじゃなきゃダメなのに』って言った私に、慶太はなんて言ったっけ?」
「うっ」
そう、動転してたのか幼かったのかは知らないけど、あの時慶太は。
「……ああ、言ったさ。じゃあ俺が『本当に大切な人』になってやるって」
なんだか、ちょっといじけてるような気もするけど。
慶太はその時、そんな事を言ってくれたのだった。そして。
「どうかな、俺は沙穂の……大切な人とやらになってるか?」
そっぽを向きながら、慶太が言う。恥ずかしがる時に顔を背けるのは、慶太のよく見せる癖だ。
密着した耳元から、とくん、とくんと早いリズムの音が聞こえる。
「うん……なってる。100点満点で90点くらい」
「サンキュ。でもなんだよ、その残り10点ってのは」
身体を離して、真っ赤な顔でそっぽを向いてる幼馴染を見る。
「知りたい?」
「……ああ」
「じゃあ、もう一回。今度はちゃんとしよう?」
慶太がこっちを向くのを待って、今度は自分から、頑張って"踏み込んだ"。
828 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:22:50 ID:osowtax1
「んっ……」
今度はしっかりと重なる。少しだけ恥ずかしくて、でも唇から溶けていくような感触に、無意識に引き込まれていきそうな感じ。
閉じた目を片目だけ開けてみる。近く、とても近くにいる慶太。安心して目を閉じて、私からも手をそっと回した。
……あったかい。好きな人とのキスがこんなにいいものだなんて、思ってもいなかった。
「……ぁっ」
そのせいなのかもしれない。唇が離れた時には、どこか名残惜しそうな声を上げてしまった。誤魔化す為に、また身体を慶太にくっつける。
「ちょっ、沙穂、待った!」
慶太が上ずった声を出した。不思議に思うと、その……私の脚に、何だか。
やけに熱いものが、押し付けられて……と言うより、私の脚が押し付けて。
「け、慶太……」
私も声が上ずってる。だって、そんなの予想外だ。これは、つまりアレだ。
あの姉のせいでその手の知識は多少はある私だけど、こんなのに気付いたら困ってしまう。
……実は、そう言うのを考えたことが無いわけじゃないとはいえ、やっぱり、パニックになる。
「……悪い。そんなつもりじゃないんだけど、勝手に」
ベッドに腰掛けながら、少しだけ身体を前傾させる慶太。
「でも、沙穂の胸とか脚とか触っちゃったら、その……さ。やっぱし興奮しちまった。……ほんとすまん」
考えれば無防備なパジャマ姿の私もいけないとは思うんだけど、やっぱりそういうのを見るとちょっと腰が引けてしまう。でも。
昨日の姉の言葉が思考に引っかかって、おかげで迷っていた言葉が素直に出た。
「慶太は、私の事が好き……なんだよね?」
「そうだよ。……興味はそりゃあるけどさ、そういうの目当てじゃない。絶対に」
慶太の目は真っ直ぐだった。
「うん。それはわかるよ、だって幼馴染だもん。……だから、えっと」
勢いのままで言うとどうなるか薄々分かっていても、止められない。何かの反動なのかもしれない。
理性なんてとっくに境界線が曖昧になってる。そして、スイッチを入れるきっかけになりかねない言葉を、囁いた。
「慶太がしたいなら……ちょっとくらいなら、いいよ?」
829 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:23:50 ID:osowtax1
こくっ……と、慶太の喉が鳴った気がした。
「いいのか……?」
言った後で、物凄く恥ずかしい事を言ったんだと理解する。でも、いまさら退けなくて、俯くように……頷く。
「私……慶太なら、いいから」
「わかった。俺も……沙穂じゃなきゃ、嫌だ」
多分、今の私達は熱に浮かされているような感じなんだと思う。でもどんな状態でも、この瞬間は何にも替え難い、大切な幼馴染と気持ちを重ねあう時間。
「して……。ううん……しよう?」
ちょっと怖いけど、欲しい。絆とか、離れないような何かが欲しい。
目を閉じる。衣擦れの音の後、私の身体にそっと手が触れた。
おずおずと伸びてくる手が、パジャマのボタンを一つずつ外していく。
少しずつ私の肌が露わになっていくうちに、こんな事になるならもっと可愛い下着にしておけば良かった、なんて思った。
「あ……」
ボタンが全て外されて、上半身がブラだけになる。自然に、両腕を抱くようにしてしまう。
「大丈夫、俺に任せて」
そう言う慶太の声だって、震えてる。私も幼馴染も、ここからは初めてなんだから。
「うん……。ね、もう一回、キスしよ?」
それだって凄くドキドキするような事なのに、今ではそれで落ち着けるような気がする。
頭のヒューズは、とっくに飛んでいっちゃったらしい。
「わかった……っ」
柔らかく、唇を重ねる。胸の奥にまた、暖かな灯が灯ったような気がした。
830 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:25:07 ID:osowtax1
「もう大丈夫?」
「うん……」
続いてパジャマの下も脱がされる。脱がされかけに脚が無意識に引っかかってしまったけど、すぐに脚の力も緩めることが出来た。
私は下着姿を幼馴染の前に晒して、ベッドに横たわる。
「どうかな……?」
「えっ?」
私が不意に口を開いて、慶太に聞く。
「私の、身体」
小柄なせいか、それとも素質があまりないのか、私はそこまでスタイルが良くない。
……姉は羨ましいくらいに出るところは出てるのに。
「……えっとな、沙穂、おまえ予想以上。綺麗で……だめだ、言葉が思いつかない」
そんな私に、慶太の回答が届く。ちょっと引っかかったけど、やっぱり褒めてもらうと嬉しい。
私の表情を確認しながら、慶太が私の胸に手を伸ばす。そうして、遠慮がちに触ってきた。
「……っ」
私の胸が触られてる。大好きな幼馴染の慶太に、優しく。
これからもっと色々するのに、これだけでまた顔が真っ赤になる。
「柔らかいな……」
言いながら、慶太はブラ越しに何度も揉んでくる。私の慶太も、息が荒かった。
「……ふぅ、ん……」
吐息が漏れる。やがて少し愛撫が弱まった所で、私は慶太にまた聞いてみた。
「ねえ……さっき、予想以上って言ったよね? それってどういう事?」
「……あ、それは」
「慶太が、私の身体を想像した事があったって事……?」
慶太の右手にお腹から脇の方をくすぐるように触られながらも、私はそう言う。
「……するだろ。俺くらいの歳なら、色々さ」
「色々?」
なんだか、慶太は次々と墓穴を掘っているような。
831 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:26:23 ID:osowtax1
「……もういいだろ。な、続き続き」
「待って、なんか気になるよ、それ」
追求しようとする私に、慶太はずいっと顔を近づけて言い返す。
「俺は、こっちの方が気になるけど……」
「あっ……」
慶太の指が、ブラの肩紐にかかる。そしてそのまま、緩んでいって。
「沙穂のは、後ろ、それとも前?」
この部活にしか興味なさげな幼馴染は、どうして下着の知識まで知ってるのやら。
「ここ……」
言って、前にあるホックの位置を教える。すると慶太は、すぐにそこを外して──
「やっ……もうちょっとゆっくり……っ」
私の胸は、慶太に見られてしまった。その上ちょっと乱暴なくらいに、胸を隠していた手をどけられる。
「沙穂、可愛い」
言って、慶太は裸の私の胸……乳房の先端にそっとキスする。
「ぁん……っ」
いきなりされて、思わず声が漏れた。自分のものじゃないくらい、やらしい声が。
「もっと聞きたいな、沙穂のそういう声」
「ばか……っ、んくっ……」
今度は揉まれながら、吸われる。今までの比じゃないくらいに刺激が来る。
慶太は私の胸ばかり執拗に攻めてくるみたいだった。ちょっと気になる。
「もう。なんで男って……ここが好きなのかな。肩凝るし、服とかもここで左右されちゃうのに」
ちょっと声のトーンが不安定だけど、体裁だけは整えて、呆れてるように言う。
「本能……とか?」
「なにそれ、んぅ……っ」
「それに沙穂くらいの大きさだったら、そんなに疲れないんじゃない?」
私の胸を舐めたり摘んだりしながら、慶太はえらく失礼なことを言う。
「うるさい……っ。今はともかく、もっとおっきくなるんだからぁっ」
強がって言う。いつの間にか、両脚を擦り合わせるようにしてる自分が恥ずかしかった。
「じゃあ、俺がこのおっぱいをもっと触って大きくしてやる。沙穂が納得できるくらいに」
「……ばか」
なんで、こういう事をさっと言えるんだろう。悔しいのに、でも心がまた暖まって、熱くなる。
「やっ……そんな、吸わないでよ」
832 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:27:12 ID:osowtax1
「下も……いい?」
ようやく私の胸弄りに満足したのか、慶太はショーツにも手をかける。視界に入った慶太の下半身を見て、またちょっと視線をずらす。
「うん……でもね」
「でも、何?」
「慶太も脱いで。何か、私だけ脱がせてずるいよ」
慶太はまだ鞄に入っていたジャージ姿のままだ。
「わかった。ちょっと待ってて」
待っててと言いながら、慶太はすごい速さでジャージ上下とTシャツを脱ぐ。
久しぶりに見た幼馴染の上半身は、昔より筋肉がついていて男らしくなっていた。
下半身は……トランクス越しにだけど、相変わらず物凄いことになってる。
私も慶太も、やっぱりこういう所ではどんどん成長していくんだな、って改めて感じる。
「じゃ、脱がすよ? ……いいか?」
自分でもよく見た事の無い所を見せるには、少し抵抗があった。でも、慶太なら……。
「うん。……変だとか言わないでね」
「分かってる」
水色のショーツがするすると下ろされる。
大事なそこが外気に晒されて、少しだけひんやりとした。
「……」
きゅっと目を閉じる。私の幼馴染は、私のここをどんな目で見てるんだろう。
「脚、開くよ」
強張っていた脚が、ぐっと開かれる。
「やだ、全部見えちゃう」
「全部見なきゃこの先には行けないだろ」
「あう……」
顔から火が出る、とでも言うのか。目を開くと、慶太は真っ赤な顔で私の大事な部分をじっと見てる。
私はと言うと、頬がこれ以上ないくらいにかぁっとなって、胸も心拍がどんどん上がっていく。
さっきまでの軽い会話も、もうできそうにない。
833 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:28:48 ID:osowtax1
「指で……触るからな。痛かったら言えよ?」
「うん」
「気持ち良かったら、言えよ?」
「……」
そんなの言えっこない。慶太は私の性格を知ってて、こんなお互い恥ずかしい状況でそんな事を言ってる。
そうして、慶太の指が、触れる。
「……ぁっ」
つい昨日まではただ仲のいい幼馴染だった慶太に、ここまで許してる。
ちょっと悔しいような気もするけど、想いが通じてるんだから……いい。
さわさわと私の反応を確かめるような指使い。お腹の奥から、滲み出てくるような感覚。
「沙穂……沙穂のここ、濡れてる」
ストレートに言われる。ますます恥ずかしくて、どんな表情をすればいいかわからなくなる。
「気持ちよかった? ……あ、ここが良いんだっけ、確か」
言いながら、慶太の指が一番敏感なそこに触れる。
「ん、ふぁ……!」
口を押さえようとしても、身体が勝手に声を上げる。
「やっぱり」
「やだ、何で……こんなのっ……ばか、ばかっ」
何でここがこんなに来るのか分からない。好奇心で少しだけ一人でやってみた時は、こんなにならなかったのに。
「いいよ、どうせ誰もいないんだし、気持ち良かったら声出せって」
「やだっ、なんでこんなに詳しいのよ……慶太のヘンタイっ!」
少しだけ汗ばんだ身体。慶太は玩具を見つけた子供みたいな表情をしてる。でも、どことなくちょっと苦しそうな。
「男は別にエロくてもいいと思うんだけどな。その方が好きな人を気持ちよく出来るし」
「このっ……はじめての癖に、そんなの言うのはずるいってば……あっ」
とろっとした液体が零れて、流れる。シーツに染みが出来ちゃったかもしれない。
「慶太……もう、いいよ」
私の声を聞いて、慶太が聞き返す。
「いいのか?……どっちみち、痛いんだろうけど」
痛い、と言われてちょっと怖気づく。でも。
「いいの。だって慶太のそれ、ずっと張り詰めててかわいそうなくらいだもん……」
「わかった。じゃあ……」
ちょっとだけ間を置いてから、慶太もトランクスを脱ぐ。……信じがたいくらいのものが視界に入った。
834 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:30:17 ID:osowtax1
「……待って、私そんなの無理、絶対」
形状もそうだけど、何か怖い。あんなのが入るなんて……。
「大丈夫だって。多分平均サイズくらいだから」
慶太は落ち着いて言おうとしてるけど、声のトーンと下のそれは焦ってそう。
そのまま、有無を言わさず両脚を開かれる。
「あっ……ね、ちょっと待って」
寸前まで行って怖気づいたわけじゃないけど、私は大事な事を思い出す。
「慶太。これ……着けて」
ベッドの脇の小箱に隠してあった、避妊具。姉から貰った物だ。
「お姉ちゃんがくれたやつだけど……やっぱり、着けないのは怖い」
「……だな、俺もうっかりしてたよ」
まさかここまで来るとは思ったなかったし、なんて言って、またわざと私の思考をオーバーヒートさせかけてくる幼馴染。
横を向いてごそごそとやると、ちゃんと着けたのか私の方に向き直る。
「沙穂」
「なに、慶太?」
とくん……と、また心臓の音が大きくなる。
「俺、お前の大切な人になるから。幼馴染だけじゃなくて、もっともっと」
その言葉を聞いて、少しだけ身体の力を抜くことが出来た。
「うん。来て、慶太……」
ゆっくりと覆い被さられる。触れ合う肌と肌が、汗ばんだまま擦れる。
熱い慶太の先端が当てられる。やっぱり、怖かった。
835 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:31:11 ID:osowtax1
慶太の声も震えてる。そうだった、慶太も初めてなんだ。
不安なのは二人とも一緒。なら、私は。
「うん、遠慮しないでよ。慶太がしたいようにしていいから」
出来るだけ力を抜いて、迎え入れる。直後に、一気に進入された。
「つっ……」
「痛ぁっ……ううっ、くっ」
痛い。とても痛い。慶太ので身体の中を裂かれてるみたい。我慢できるけど、でも痛い。
ずっ、ずっと少しずつ入れられて、慶太の動きがそこで止まる。痛いけどそれに気付いた私は、どうしたの、と涙目のままで聞く。
「あ、何か……入れた後は少しこうしてるとほぐれるんだってさ。あと、それと」
「なに……?」
まさか、気持ちよくないとかなのだろうか?
「……沙穂のがすごい良くて、動かしたらすぐ出ちゃいそう」
「もう……」
鈍く、でも確実に残る痛みを感じながら、その一方で私は大きな満足感も感じてる。
「私達、一つになっちゃった……ね」
絶え絶えの息。でも、しっかり告げる。その想いを、その感情を、伝える。
「ああ……何か夢みたいだな」
「ほんとだって。だって、慶太は私の初めてを奪ったんだから」
すぐ上にいて、少しだけ我慢してる幼馴染の頬を指でなぞる。
「だから、責任取ってよね。ちゃんと」
836 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:32:51 ID:osowtax1
「……おう。じゃ、そろそろ動くぞ」
頷いて、慶太は腰を引く。
「っ……!」
やっぱり、まだ痛い。
でも、充足感みたいのはちゃんと感じる。繋がってるってわかる。
「く……あぐっ」
気持ちいいとは別ベクトルの感覚。でも、予想していたほどでもないように思う。
それは、一番大切な幼馴染が、気を遣いながら頑張ってくれてるから?
ぽたり、ぽたりと私の肌に汗の玉が落ちる。
ああ、慶太、頑張ってるんだ。
そう思うと、痛みが幾分和らいだ気がした。
「くっ……沙穂……沙穂っ」
「んっ……ひぅっ、っあ」
痛みが少し和らいで、何とも言えない感覚が入り込んでくる。
もう思考も薄れて、何も考えられなくなる。
ただ、私を抱く幼馴染の、慶太の名を呼んで、その背に手を回す。
爪も立てたかもしれない。でも、もう……。
「沙穂……出るっ」
「うん、いいよ……っ。来てっ、もう……きて」
消え入りそうな声。慶太の声が上ずって、少し動きが激しくなる。
やがて、どくん、どくんと慶太のものが震えたような気がした。
それに合わせて、きっと私も何か声を出してたと思う。
837 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:34:02 ID:osowtax1
「はぁ……はぁっ」
「う……もう、激しすぎなんだから」
行為を終えて、一つになっていた二人が離れる。
血は、出てなかった。
「私……初めての時の血って、絶対出るものだと思ってたけど」
「出ない人もいるらしいけどな」
「……言っとくけど、初めてだよ?」
「言わなくても分かってるって」
そう言いながら、慶太は避妊具を外す。初めてみた真っ白な液体は、随分その中に溜まってるように見えた。
後始末を終えて、どちらともなくまたベッドに横になる。裸は恥ずかしいので布団をかけた。
「えっち……しちゃったね」
「ああ」
「まだ信じられないよ、私」
「俺も。好きだって言うつもりだったけど、ここまで来るとは思わなかった」
隣に横になっている幼馴染に、そっと聞く。
「慶太……気持ち良かった?」
「覚えたてはやみつきになるってのが……良くわかった」
ちょっと捻って返された。
「もう……。素直に良かったって言ってくれればいいのに」
「なんかさ、沙穂が凄い痛がってるから……自分だけ気持ちよくなって悪い気がする」
そう言われると返す術はない。
「私の事、もっと好きになった?」
「……うん。もっと早く気付ければよかったって本気で後悔してる」
「私も。……好きだよ、慶太」
素直にそう言って、頬にキスした。
838 :
〜冬の雨〜:05/03/07 01:36:19 ID:osowtax1
外の雨は、いつの間にか止んでいた。雲間から、微かな光が差している。
時間は午後二時。つまり私達は昼下がりからしていたって事だ。
姉には即ばれそうだし、かなり恥ずかしい。
「そうだ、慶太。一日遅れになっちゃったけど、これ食べて」
そう言って、横に置いてあったチョコの箱を改めて渡す。
「ああ。じゃあこんな格好じゃアレだから、着替えるよ」
そう言って慶太は脱いだ服を着替え始める。
床には二人分の脱いだ服が散乱していて、それがやけに行為の生々しさを感じさせた。
包装を開けて、手作りのチョコを摘む慶太。
「どれどれ……んじゃ、いただきます」
一つ口に運んで、すぐに笑みを漏らす。
「ふむ……美味しい。マジでうまい!」
二つ目、三つ目と次々平らげる慶太を見て、私は嬉しくなる。
これが、私が慶太と触れている時に感じるいつもの気持ち。
でも今日は、ううん……これからは、暖かくて、もっと満たされるような気がする。
笑顔でチョコを平らげる幼馴染を見て、私もいつの間にか笑っていた。
それから、約一ヶ月。
対外的には、私達を取り巻く環境は大きく変わったわけではない。
私達が半ば公認の仲だったのは今更だし、毎日ではないけど登下校が一緒だったりするのも変わらない。
慶太が私より成績が下なのも変わらないし、部活の調子が良くなったわけでもないらしいし。
まあ、私の姉にはやっぱり即日でばれたんだけど。
大きく変わったことといえば、二つくらい。
それは、私が作るお弁当に慶太の好物の占める割合が増えたのが、一つ。
そしてもう一つは。
「沙穂、おまえの家寄ってこうぜ。誰もいないんだろ?」
「うん……。でも勘違いしちゃダメよ。今日はちゃんと勉強するんだから」
「えーっ。遊ぼうぜ?」
「だーめ。あんた先週帰ってきた全統マーク模試散々だったでしょ。ちゃんと復習しないと」
私の家に先に入っていこうとする慶太に一言釘を刺してから、玄関の鍵を開ける。
で、家の中に入って靴を脱いだ途端、後ろから抱きしめられた。
「ばか、いきなり何するのよ!」
「だってさ、模試が終わったらいいよって言っただろ? 俺ずっと我慢してたんだからさー」
「い、言ったけど……何もこんな所で抱きつかなくてもいいじゃない!」
「沙穂だって本当はちょっと期待してたろ? 付き合い長いからそれくらいはわかるぞ」
三分の一くらい図星だったので狼狽する。……と。
「おーおー、若いってのは羨ましいね。よう慶ちゃん、そんなに盛ってるなら3Pでもしよっか?」
「お姉ちゃん!?」
神出鬼没な暇人の姉に遭遇して、慌てて二階へと駆け上がる私達。
……と言うわけで、私達はそれなりに仲良くやっているのである。
「いい? お姉ちゃんもいるし、まず勉強を……」
「ちぇ」
この幼馴染と──慶太となら、楽しく人生をやっていけそうだと思う。
窓から差し込む陽の光を受けながら、私は微笑んだ。
まず、ごめんなさい。文が長すぎですね。
分割投下しようか迷ったのですが、他の書き手諸氏の事を考えてあえて一本で投下しました。
しかしスレの容量を考えていなくてorz
ちょっと未消化の部分もありますが、それはもし季節ネタとかみんなからネタ希望とかがあったらその時にでも、と思います。
くっついた後の幼馴染バカップルは結構好きなので。えろいのも書きやすいですし……。
一月末からぽつぽつ投下していましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
では、また機会があれば近いうちに。
やべぇ、悶死しちまうよ(´∀`)
>>778からの続きです。
幼馴染みというのは、関係の名前であると同時に事実の名前でもあると思う。
友達とか恋人とかとは違って、努力なしに気が付いたらそうなっていた、事実。
剣太への想いに背を向けた私が剣太の側にいるには、そんな事実にすがるしかなくて。
年を追う毎にそれすらも上手く繕えなくなってしまった私は、どうすればいいのだろう。
私は一体――――剣太と、どうなりたいのだろう。
『昔はこうじゃなかったのに』と、そればっかり思ってしまう私自身だって変わっていこう
としているくせに。
いつのまにか根付いていた想いに目を背けていられるのも、そう長い間じゃないだろう。
そんなこと、私だってわかっている。
ただ――――どうしていいのかわからない。
『幼馴染みってさ、いいのか悪いのかわかんねぇよな』
さっきの剣太の言葉が、今更、私の胸に小さく刺さった。
「……なぁ」
短い沈黙を破ったのは、剣太の小さな声だった。
「なに?」
背を向けたままの体勢で返事をする。
だって…剣太を、上手く見れない。
「なんで、今年の俺の誕生日、プレゼントくれなかったんだ?」
「…プレゼントねだるなんて図々しいわよ」
本当は違うのに。
片道2時間半かけて大きな街まで買いに行ったプレゼントは、手元の鞄の中にあるのに。
どこまでも可愛くない私は、きっと、剣太にとって煩い存在でしかないのだろう。
背後で聞こえた剣太の小さなため息に、また自己嫌悪に陥る。
物心付いたときからあげてきたプレゼントは、年を追う毎に選ぶのにも時間がかかって。
今年なんか2ヶ月も前から悩みに悩んで選んだ。
毎年のように普通に渡せれば良かったのに。
それすらも出来なくっていた私は、いつからこんな臆病になっていたのだろう。
「…くれなかったから、焦った」
ポツリと剣太が言った。
予想外の、言葉だった。
何を焦るのだろう。
剣太の言いたいことがわからない。
そんな小さな事が今の私達の距離を確認させて、私を少し落ち込ませる。
「誕生日プレゼントはくれねぇし…東京に行くかも、とか言うし…」
背後から聞こえていた剣太の声が、更に小さくなった。
「…急に綺麗になるし」
私の予想を遙かに超えた剣太の言葉に、思わず勢いよく振り返る。
私達の視線がぶつかった。
今度は、剣太は目をそらしていなかった。まっすぐに私を見ている。
……どうしよう。
息が、上手くできない。
「あの収穫祭の日のこと、本当に忘れたんか?」
「収穫祭…」
剣太の言葉に、私は自分の記憶を探り始めた。
私達が共有している思い出は多すぎて、目的の記憶を引っ張り出すのは大変だ。
6歳の時。
丁度12年前の収穫祭。
……ああ。そうだ。
確か、あの年の収穫祭は地区名の由来となった有名な刀鍛冶の没後150年の年だとかで、
どこの家も大騒ぎだった。
私もばあちゃんに連れられて、お社のお掃除をしたりしたっけ。
賑やかな祭りの後はお決まりの酒飲み会で。
あの年の集まり場は剣太の家だった。
買ってもらった駄菓子も食べ尽くした私達は、縁側で二人で遊んでいた。
小さなきっかけで、堰き止められていた水が溢れるように次々と思い出が甦ってくる。
あの時私は憶えたてのアルプス一万尺が楽しくて、嫌がる剣太を無理矢理付き合わせ何度も何度も
繰り返して遊んでいた。
逃げることもできるのに、剣太は必ず私のわがままに最後まで付き合ってくれる。
それは幼い頃から今も変わらない。
そんな私達が酔った大人達のからかいのタネにならないわけがなくて。
『剣太と鞘ちゃんは本当の姉弟みたいだよなぁ』
そう言ったのは大川のおじちゃんだっただろうか。
『ほんとのキョーダイだよ!』
当時の私は本気でそう思っていた。
きっと、剣太もそう思っていたはずだ。
『違うんだよ。二人はなぁ、本当の姉弟じゃないんだよ。ほら、違う名字だろ?中谷と藤堂で』
ミョウジ、というものが何なのかは理解できなかったけど、おじちゃんの言いたいことはわかった。
何故、私と剣太が別々の家に帰るのか。
何故、お父さんとお母さんが同じじゃないのか。
薄々気が付いていた現実を急に目の前に突きつけられ、私はひどく困惑した。
『うそだよ、そんなの』
今にも泣きそうな私に、酔った大人達は追い打ちをかけるだけで。
気の弱かった私は、その場から泣いて逃げ出した。
行き先は二階の子供部屋――今の剣太の部屋だった。
しばらくして、剣太が部屋に来て。
それから――――。
「…それからどうしたんだっけ?」
力一杯泣いていたせいだろうか。
記憶があやふやでよく思い出せない。
そんな私の様子に、剣太がため息をついた。
胸が、ズキリ、と痛んだ。
剣太に姉弟の様に思われていると思っているくせに、剣太に呆れられるのが怖い。
そんなこと、何を今更、って思うのに。
自分でも気が付かないうちに芽生えていた想いは、私を混乱させるばかりで。
どうしたらいいのかわからなくなって、私は視線を地面に落とした。
「俺が、鞘ちゃんをうちの子にしてやるよ」
はっきりと耳に届いた剣太の言葉に、私は目を見開いた。
(ああ……そうだ……)
あの時の私は、剣太と一緒の名字じゃないことが悲しくて泣いていて。
いつまでも泣きやまない私につられて泣きそうになりながら、幼い剣太はそう言った。
『じゅうはちになったら、さやちゃん、なかたにさやちゃんになれるよ』
『にいちゃんにきいたんだ。じゅうはちになったらけっこんできるんだって』
『さやちゃんがいちばんすきだから』
『だから』
『じゅうはちになったら、けっこんしよう』
薄明かりの電気の下で交わされた幼い約束。
その言葉の本当の意味を知らないまま、私は頷いた。
『じゅうはちになったら』
泣き疲れて眠りに落ちる間際、何度も何度も私達は呟いていた。
『じゅうはちになったら』
手を繋ぎ、同時に眠りに落ちてからも何度も何度もその言葉が頭を駆け回っていたのに。
どうして――――忘れていたのだろう。
今の今まで。
風に煽られたクヌギが、鮮やかな葉を舞わせる。
山の風は、12年前とちっとも変わらない。
私達の視線がぶつかる。
目が、そらせない。
顔から生まれた熱が全身を巡る。
息が――――、詰まる。
「気が付いたとき、バカみてぇって思った。毎日見てんのにって。でも、妙に納得できた」
そう言う剣太は少し自嘲するように苦笑していた。
そんな表情をする剣太は、私の知らない剣太で。
「どうしようか考えて…このままでもいいやって思ってた。でも、そうもいかないみたいだし」
思い切り走ったときよりも、心臓の動きが速い。
でもそんなことを気にしている余裕はなくて。
私は、全身で剣太の言葉を待っていた。
「鞘子がどう思ってるとかよりも、俺がどう思ってるかなんだって、開き直った。だから、18の誕生日に
言おうと思ってた。ちっこい頃の約束にかこつけて」
「…けんた……」
無意識に出た言葉は、幼馴染みの名前だった。
それしか、声が形作れなかった。
「…もうはき出さなきゃ駄目なくらい、苦しいんだ」
立ち上がった剣太の影が伸びて、私にかかる。
見上げても、逆光で剣太の顔がよく見えない。
「鞘子」
あの収穫祭の夜から、私を「鞘子」と呼ぶようになった幼馴染みの影が私を捕らえる。
「好きだ」
今回はここまでです。
アルプス一万尺、知っていますよね…?
>452氏、おつかれさまです。
実はリアルタイムで読ませていただき、触発されて一気に今回分を書いてしましました。
予想外にいくところまでいっていたので驚きましたが、面白かったです。
季節毎のイベントっていうと、卒業式とかですかね?
楽しみにしています。
神々が光臨なさった…
ほんとにGJです。
なにこのGJなスレ…
皆さん素晴らしいです。
今更ですが452さん割り込んでゴメンナサイorz
萌え死にそう…
「けっこんのやくそく」
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
何かもう萌え死にそうなんですけど!
あれ…?なんだこれ。目の前が霞んで…。・゚・(ノД`)・゚・。
GJGJGJ!!!!
萌え死ぬかと思いました…。
( ゚Д゚)ポカーン
キタ━━━━━━\(T▽T)/━━━━━━ !!!!!
452氏も526氏もGJ!
おまいらは神ですか。ああもうくそ、すばらし杉!
>おまいらは神ですか
何を今更。
GJはゴッドジョブの略だぞ
452氏、526氏GJ!!
ここには神がたくさんいますね。
日本が八百万の神の居る国でよかった。
>>『じゅうはちになったら、けっこんしよう』
かぶったー!(今書いてるのと)_| ̄|○
かぶった部分書き直した方が良いでしょうか?
個人的にはこのまま書き続けたいんですが・・・。
>>860 偶然なら直すことはないのでは?むしろお待ちしてますよ。
気になるのなら、投下前にその旨サラッと書いておくとか。
GJすぎるぜ職人の皆様!!
……このまま萌え死んだら誰か責任取ってくれるのでしょうか。
>>863 想いを胸に一人で萌え氏ね。
骨は我々が拾って回向してやるから。ナンマンダブ
とりあえず直さずに書くことにしました。
少なくとも今月中にうpする予定なので気長にお待ち下さい。
ちなみに長編になりますので皆さん末永くお願いします。
幼馴染みの「お約束」とかけて
↓
安アパートのすきま風ととく
その心は?
↓
ある日、寂寥感と共に思い出す。
・゚・(つД`)・゚・ 切ねぇ…
眼欄、眼欄!
窓辺に立つ。眼下には夜景が広がった。
夏には花火、冬は空気のおかげで遠くまで見渡せる。
出る所に出れば、100万ドルの夜景と言う奴だろう。
でもここに立つと不思議と思い出すのは、
18までの殆どを過ごしたあの安アパートの事だ。
冬は隙間風に、夏は虫に苦しめられた。
洗濯機とテレビを一緒につけるとブレーカーが飛んだし、
電子レンジなんて者はアパートごとブレーカーが飛ぶという事で禁止されていた。
近くの工場からはいつも誰かが喧嘩をしている声が聞こえていて、
隣の八百屋からは安っぽい歌謡曲が一日中流れていた。
勿論、昔々の話じゃあない。ほんの10年から15年程前の事だ。
皆はテレビゲームを持っていて、テレビにはビデオデッキが付いてた。
夏休みにもなればクラスメイトの殆どは友達同士でディズニーランドに遊びに行ってた
だから、俺のあだ名は最初「貧乏」だったし、
それが縮まって「ビン」になったのもそれはしょうがなかったと言える。
だって皆がディズニーランドに行っている時に
俺ときたら近所の無料解放のプールしかなかったのだし。
無料解放のプールなんて物は幅10M、長さ25Mのでっかい穴ぼこに水が溜まってるだけで、
小学校の低学年ででもなけりゃ、恥ずかしくって行けたものじゃない。
だから俺は夏休み中、一人でそこに通っていた筈だ。
目欄に気づかなかった恥ずかしさをこうやって解消してみたりする。
orz
幼馴染は?
質問。
幼馴染みのお屋敷(主人×お手伝い)物だと和風と洋風どっちが合うんだろうか。
どっちもいいと思うぜ。
幼馴染とメイドのコンボキターーーーーーーーーーーーーー??
俺が書くと、自分の幼馴染がへちょ(ry)だったせいで100パーセント妄想の産物になってしまう・・・orz
だがそれがいい
洋風だと主人公は執事さんか…、普段は「お嬢様」とか呼んでるわけだ。
和風は…どうだろ、主人公のポジションが思い浮かばねえ。
それまではちょっぴり主人公に世話を焼くお姉さん気分で居た幼馴染みのメイドさんが、
主人公の18の誕生日を機に主人公専属になったりするのはどうだろう。
「…ご、ご主人…様…」とか、顔を真っ赤にしながら言わされたり
えっちなお仕置きをされるんじゃないかとか妄想したり、
夜伽をしなくちゃいけないと勝手に勘違いして、
役目だから仕方ないよね、とか自分に言い訳して夜主人公の部屋へ行ったりするんだよ、きっと
正直、>881、>882 どちらのシチュエーションもアリだ。
書き手次第だがね
>882
昨今は女中を持つようなご家庭は少ない。
立派な庭に池があり、塀で囲まれ廊下は板張り。
雑巾がけは冷たい水で。
障子を開け去ると空が薄く青い。
離れに住む一家は先祖代々、大邸宅の一族に仕えている。
次男は無職のいいご身分。
「梅。暇だ。詩でも読め」
「坊ちゃまそろそろ仕事を探したらどうですか」
「あのなぁちっさい頃からの馴染だからってそこまで意見される筋合いはないんだよ」
梅子は幼い頃から世話をしてきた次男の茶髪をじと目で睨んだ。
椿色の和服にしとやかな身を包んで、薄化粧の彼女は考える。
おかしい。
不可解だ。
「石の上にも三年」というのが座右の銘だったのに放棄したくなってきた。
―毎日毎日説教してきたはずだというのに、全く効き目がない!
そう。
孝二郎坊ちゃまは怠惰の塊である。
五つ年上の宗一若旦那が出来が良すぎるのでひがんでいるのだ。
和服の襟にかかった埃を無意識に払い、梅子が口をひん曲げる。
「あーもう孝二郎君はいつもそうなんだから」
「説教は止めろよ。もういい俺、遊びに行くわ。おまえも行こうぜ」
「残念だけど仕事中なの。坊ちゃま一人で行ってください」
「そんなに宗一の世話が好きなのかよ」
顔を顰めて、孝二郎が顔を寄せる。
梅子は赤くなった。
不思議でたまらない。
幼稚園でも小学校でも制服になっても、何から何まで傍にいて、
一番迷惑をかけられどおしだったのにどうして肝心のことは伝わってくれないのだろう。
思わず即興。
なので変なところあっても見逃してくだされ。
和風で幼馴染といえば夕霧を思い出したり。
>>883 幼馴染というより、メイドものだとよくあるシチュだなぁ。
逆パターンでお嬢さんと使用人で誰か書いてくれまいか
おしとやかな姉とわがままでおてんばな妹の
お嬢様に仕える使用人の少年と言うのはどうか?
立場の違いを気にせずに優しくしてくれる姉と
主人と言う立場をタテにしていろいろ無理難題を押し付けてくる妹。
エロパロはとってもいいところだ!
みんな!早く投下してこーい!
この流れで、ナギお嬢様が真っ先に頭に出てくる俺は
どこかが確実に侵されてるな
>>891 幼馴染じゃないじゃん・・・
お嬢さんと使用人の関係では昔チャンピオンで連載されてた宅配漫画でそんな関係の
奴等がいたなぁ・・・
お嬢様は結局違う奴と結婚したけど・・・
893 :
花山薫:05/03/11 23:54:51 ID:tb13X//Q
幼なじみは片方が恋愛の対象外と考える関係が良いな。
幼馴染の女の子が告白してくるも
「ごめん・・・○○のことそういうふうに考えられない」
ってね。
894 :
花山薫:05/03/11 23:56:36 ID:tb13X//Q
・・・む。
これが「フラレナオン属性」というものか。
>>886 やや欝気味になる思いを振り払い、梅子は言った。
「それがお仕事ですから」
「仕事、か。……そうだよな」
その言葉に、微妙なニュアンスが含まれているように思えて。
「坊っ――孝二郎君……?」
「いい。一人で出かける」
勝手に続けてみるテスト。
幼馴染……メイド……実に面白い。
しかしスレの皆様……今は……ホワイトデー用の新たなネタが次から次に溢れて止まりません──
と、そんなパロセリフを言いつつ。
でも幼馴染メイドというのもいいですね。
厳しい身分階級の差があるにもかかわらず、幼馴染と言う共通の立場があることで、身分的には下であるメイドさんor執事に子供の頃のようにたしなめられたり。
もしくは身分の差をはっきりと意識して遠慮がちなメイドさんor執事を遊びに連れ出してあちこち連れ回したり。
>896
(゚∀゚)!!!
梅子は焦った。なにしろ現代である。
色町はないが男女は二十歳を過ぎても机を並べる時代である。
自分の世界は孝二郎が七割を占めているけれど、
世界の自分は六十億分の一、女性だけなら三十億分の一、人口増加中地球。
「じゃーな。せいぜいはたきと一緒に踊ってろよ」
ひがみっぽい声が、寂しそうな気がして、今は腹立つどころか胸に刺さる。
そうして町に出かける孝二郎は、きっと可愛い今時の雑誌を飾るブランド洋服を着こなした女の子でもナンパして、
そして、そして――
「ちょ、やだ、孝二郎君!」
和服とはいえ正座から腰を上げて馴染みの主人を呼び止める。
必死の梅子の声にぴたりと孝二郎の足が止まった。
ややひるんだ顔で半分振り返り、また縁側に目を落とす。
「…んだよ。仕事あんだろ。梅は」
「そう、だけど」
だけど。
だけど何が言えるというのだろう。
言いたかった言葉を飲み込む。
「……遊びに、行くのは構いませんけど。
ハ○ーワークにも寄ってくるようお願いしますね」
庭の葉が大樹から一枚、池の表面に舞い落ちた。
「てめ…っ、ハローワー○かよ!いい加減にしろ!」
無気力な顔ばかりしている名家の次男が昔ながらの
大きな表情を一瞬むきだしたにも気づかず売り言葉を女中が買う。
「いい年をなさって、お仕事くらい見つけたらどうですか!
いつもいつも若旦那のことばっかり言い訳にしてほんっっと格好悪いんだか――」
失言だと彼女が気づいたのは、一秒遅れてから。
もう少し続けてみるテスト。
>>897 特に期待してないんで誘い受けの御託なんて並べてないでとっとと書きやがってくださいね^^
>809、電話で声聞くのは二回ではなく三回目でした。
細かいところなのですが一応訂正。
まだなんとか容量は間に合いそうなのでその48.
・・・・その48
重い音が、かすかにして、チェーンがじゃらりと触れ合った。
私が手に取りかけていた傘は靴箱に寄りかかり、ゆっくりと倒れた。
ビニールの乾いた音が耳を通り抜けて、鍵を誰かが閉める。
幼馴染以外ここにはいないけれど。
影と肩の脇で身じろぐ気配に顔を上げかけたけれど涙が出た。
まだ溢れるのが悔しくて涙を拭った。
彼がジャンパーからポケットティッシュを出したので使わせてもらう。
玄関脇のゴミ箱に捨てて、もう一度袖で目を押した。
狭い玄関は二人で佇むには居心地が悪くて、そんなくだらないことにも涙腺が緩んだ。
玄関が寒くて落ち着かないし、何か言わなくてはならない。
さっきの音は結構大きかったし痛かったろう。
足先に並ぶ数足の靴に目を落とし、何も言わずに靴箱に背を預ける幼馴染の
ねずみ色の靴を、見つめて、何か言おうと口を開きかける。
声が出なかった。
思っていた言葉も片端から脳の中で溶けて消えていく。
どうすればいいだろう。
それでもせめて顔だけでも上げようと、
――したところで遠慮がちに抱き寄せられた。
嫌ではなかった。
なのでそのまま濡れたジャンパーに頭を寄せた。
背中の腕が僅かに力を強めて、なのに彼らしくない弱い謝罪が
何度も聞こえて、たまらなくなって腕を回した。
背中にそっと触れて布地を緩く握る。
古い壁紙に手の甲が当たり、指の隙間に水が伝って溜まった。
溜息が湿気に混じれて狭い隙間で溶ける。
においと体温がとてもあたたかく、首筋から伝わる脈が
こちらの皮膚をさするような錯覚に沈んでは浮かんだ。
力もあまり入れずにただ二人でそうしていると、ぽたりと頭の上に水が落ちたので肩が弱く跳ねた。
……冷たい。
イトくんが小さく笑って、さっきと違う調子で一言謝る。
背中を掴む指先が無意識に緩む。
この人は本当に簡単にごめんなさいをありがとうを言うから、すごいと思う。
早く熱を測らせて温かいお茶を入れて、乾いた服に着替えてもらおう。
…私だって顔を、洗いたいし。
腕を緩めると背中の感触もゆっくりと離れたので、どちらともなくそのまま腕を放した。
自然に顎が上を向いて、見つめ合う。
彼の前髪からまた水滴が落ちた。
何度この顔をこうして見てきたろうと思う。
見上げて、兄さんを挟んで、弟を後ろにまといつかせて、後を追いかけるでもなくただ時折並んで歩いただけだ。
ただイトくんはいつでも笑って待っていてくれて、気まぐれのように手を引いてくれて、家族のようで家族であったことは一度もなく。
追いつくための一年の人生の差は途方もなく遠く思えた頃もあり、
…でも幼い指が小学生の学習帳を拾い上げた瞬間から始まったとすれば、
過ごした月日の数えは二人とも常に対等でしかなかったので。
その年月のどれだけが、この古くて愛しい小さな団地の隅であっただろう。
不意におかしくなって、いろいろな気持ちがゆっくりとかき混ぜられて、不思議と笑えた。
イトくんが和らいだ声で、名前を優しく呟くので嬉しくてそれが自然みたいに呼び返す。
「イトくん」
「ん?」
私は手を上げて、肩の濡れた布地に指を絡めて背伸びをして、少し無理だったけれどキスをした。
イトくんが背を軽く屈めて肩を掴んで、しやすいようにしてくれたので踵を下ろして長いこと続けた。
時々水がぽたりと落ちたけれど気にはならなかった。
雨音がどこか遠くでさあさあとカーテンを優しく覆おうとしていた。
――においがして、あたたかくて涙のせいか何もかもが溶けて流れてしまって、湿気が気だるいせいだろうか。
もう少し深くしたくなった。
僅かに唇を離して何度かするようにしたけれど、続きが良く分からなくて止まった。
薄くまぶたを上げる。
イトくんが肩に触れていた指先を僅かに震わせて、同じように薄目を開けた。
吐息の混ざる距離で私を見た。
その顔がなにをいうこともなく皮膚の裏から熱くするので、そのまま舌を絡めた。
電気のついていない玄関が薄暗くて肌寒い。
だというのに背中にまわった手のひらの温度は高かった。
段々と引き寄せられて深くまで貪られるのに自分の舌が濡れて、震えて、口の端から唾液が溢れた。
懸命に押し返してしがみついて彼の方を探る。
表面が擦れ合う度に息が湿って足の力が抜けていく。
喉から呼吸ともつかない声が漏れて、苦しいような気もするのにやめたくなくて、吸われて舐められて朦朧とする。
無理な体勢から服の上を探られるたびに水が落ちたときみたいに肩が動いた。
髪を弄られて首裏に指が入り込むと背中に温水を入れられたみたいになって痺れた。
「……っ、ぁ―」
涙が滲んだ。
足から完全に力が抜けた。
あまりもう続けられなかった。
唇がつと離れて、でも服を放す前に抱きとめられて、だけれど向こうも力が抜けたみたいだった。
足がもつれたみたいにお互いに玄関にゆっくりと崩れた。
背中に回されたままの腕が離れなくて熱い。
さっきとは違う意味で涙腺が緩んでいる気がした。
呼吸が荒くて苦しい。
近くにある顔が唇で目元に弱く触れてきて、それから頬に移って、耳に息がかかった。
思わず喉が痙攣して、身体が熱くなる。
…自分で今までしていたことが、この感覚と同じなのに気づかないわけもなくて顔まで火照った。
「………イトくん」
「一応聞くけど、おばさんは」
掠れた声が熱っぽくてでも熱を測ったらどうかなんてことにも中々思考が及ばなかった。
首を弱くかすかに横に振って、夕方までいないことを伝えた。
…私の声の方が泣いた後のせいかもっと掠れていた。
低い声が僅かに途切れて、三日前と同じことを言うので少し黙ってから、今度は首を縦に振った。
朦朧とした思考がはっきりしていくのは寂しくてたまらなかった。
このまま霧みたいな感覚の中で続けたかった。
だけど顔を洗いたかった。
目が充血しているだろう。
―それに一応、お風呂くらいに入れてあげないとこの人は間違いなく熱を出すだろうし。
そっと息を落ち着けて、深く溜息をついた。
玄関の涼しい廊下に触れた腿の裏がそれに応じて動き、滑るスカートはなぜか雨のようだった。
続きは時間ができましたらまた。
職人様方のホワイトデーまつり楽しみにしております。
うっわー…、ビッグエロス!!
キス描写だけでこんなにエロい・・・
真のエロスと言う物を知っているか。
それは激しい描写でも過激なプレイでも丸裸でもない。
むしろ優しい描写に緩やかなプレイとチラリズムだ。
真のエロスを容易く実践する243氏に乾杯。
激しくGJ!!
>>243氏
ひーこちゃん、後でちゃんと留守電消すんだよw
こ、こんなエロいキスが……悶絶してしまうorz
2レス目後半辺りの文章が秀逸で……もうね、えろいしぐっとくるし、と(*´Д`)
お前ら、キスに悶えてる場合じゃありませんよ
次回の展開を予想して見てくださいよ、もうえち寸前じゃありませんか…
…次回投下でスレ住人全員殺されますよ
…、なんでキスだけでこんなにエロく書けるのかなぁ。まあ、何はともあれ
こんなに神な小説を書いてくれている243氏には万言に尽きせぬ感謝を。
>>911 そうなっても後悔はしないというかむしろ嬉々として243氏の矢面に立ちそうな
気がする。
ところでホワイトデーなのだが。
現在既に478KB、そろそろ次スレの検討時期に入っていると思われる。
如何いたすか皆の衆?
つ(・∀・)
ぎ(・∀・)
ス(・∀・)
レ(・∀・)
ホワイトデーで小ネタを書いたのですが、
今落とすのはマズイでしょうか。
職人様がいるなら即死はしまい。
480KB。ホワイトデー祭りで容量がいっぱいになる喜びの危険。
その防止に次スレを立ててくるのは悪いことではあるまい。
というわけで勝手に立てて参るがお許しいただきたい皆の衆。
>915
すみません。
新スレ立ててきます。少々お待ちください
新スレたったので駄文を一言
>897
かくかーーっ!!
と星形の涙を流したくないので血を吐くのはやめてねw