ガンダムSEEDエロ総合スレ Part9

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736名無しさん@ピンキー:04/03/03 15:41 ID:OdABBw+X
|-`).。oO(すごい人気だな269氏)
737名無しさん@ピンキー:04/03/03 18:20 ID:DhnZdW1H






漏れも好きでつ神269
738名無しさん@ピンキー:04/03/03 20:06 ID:YmcfmpwJ
ニコルママ(*´Д`)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア
739名無しさん@ピンキー:04/03/03 23:10 ID:uefujOdU
そう言えば今日は桃の節句ですね。
740ポチ@駄文職人:04/03/04 02:10 ID:Zjc2ZP9w
エロ無しのssを投下できるスレ知りませんか?
741名無しさん@ピンキー:04/03/04 02:12 ID:Zjc2ZP9w
↑すまん、いちいちコテで書くような内容ではなかった(ノ−`)
742名無しさん@ピンキー:04/03/04 02:16 ID:OOersK47
南極の金プリ避難スレとか?
743名無しさん@ピンキー:04/03/04 08:06 ID:KeB842vW
マンセー269氏(*´Д`)ハァハァ
744名無しさん@ピンキー:04/03/04 08:38 ID:6fYsSAI+
>>740
エロ無しなら自分でサイト作ってやればいいんでない?
745名無しさん@ピンキー:04/03/04 08:46 ID:o8fJuqEU
ここに投下して、叩かれまくりつつ荒れ放題にするって選択肢もあるが…。
746名無しさん@ピンキー:04/03/04 08:48 ID:QRZVvEXa
>>740
エロくない作品はこのスレに
ってスレがあるけど、URLコピペ出来ん。
うちの専ブラはURLをコピー出来んですわい('A`)
人大杉でブラウザで開けないし。

>>744
エロなしだからでサイト作れっちゅー思考がわからん。
747名無しさん@ピンキー:04/03/04 08:53 ID:QRZVvEXa
>>745
おまいさんもまたスレの雰囲気荒らしたいのかい?
何ちゅーかキツいってか、だったらスルーしとけって書込みが最近多いよな。
そりゃ必ず親切にしろとは言わんが。
そんな風にキツいと、ちょっとエロありだけど薄いからここに投下すると荒れそうだし、
やめとこうと書き手さんが避けてしまう風潮になっちまったらどーすんだよ。
748名無しさん@ピンキー:04/03/04 10:56 ID:ki5x/XgF
エロくない作品はこのスレに2
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1073364639/l50
746の言っているスレは↑。

個人的には非エロでも、最初に明言されているなら構わないと思う。
気に入らないカプやシチュは、書き手に自粛させるのではなく、読み手がスルーするのが基本なのだし。
749名無しさん@ピンキー:04/03/04 15:34 ID:JHDKi19z
キョロ(゚∀゚≡゚∀゚)キョロ

269氏マダー?
神よ降臨キボンヌ
イザークの覇道、1,5話分投下します。
PHASE-4は微々エロです。スルーしたい人はしてください。
(戦闘が無駄に長くなったせいだよなぁ……)
PHASE-5は
カプは 遺作×シホ
内容 大人の玩具をシホに使用する遺作

追記
前話での誤字
シグーのヘット→シグーのヘッド
自信の幸福→自身の幸福
毎度毎度しょーもねぇっす
「まったく、現金なものだ」
イライジャに群がる子供達を見て、イザークは溜息と共に言った。
シホは、そんなイザークにニコニコと微笑み、ドリンクを差し出している。
「“しょうぶはときのうん”っていうのにね」
唯一イザークの元に残った女の子は、憮然としてその群を見ている。
「運の様な不明瞭なものは、実際の戦場じゃパイロットの足を引っ張るだけです」
女の子とは違った意味で憮然と子供達の群を見ている風花は言う。
用兵見習いを自認する風花にとっては、ただ現実を言っただけだが、十分挑発にも聞こえた。
女の子が何か言いかけた時、イライジャはそれとなく聞いていたのか、
「いや、イザークはジンに慣れていなかったからな。デュエルが間に合わなくなったのは運が悪かったとも言えるさ」
とイザークを庇った。
風花は何とも言い難い表情をしているが。
「ふっ。そういうことにしておこう」
言いながら、イザークは心の中で笑った。
以前なら、プライドが人一倍高い自分が、善意からとは言えあのように言われて怒り出していた筈だ。
戦争か、立場か、あるいはシホの存在が自分を変えたのであろうか?
「隊長、開発部の方からデュエルの調整に来て欲しいそうです」
「やれやれ、本当にタイミングが悪いな」
シホの報告に苦笑しながら、ドアに向かう。
ふと足を止めて、子供達に踵を返し、
「お前達も来るか?」
返答は記すまでも無い。
しかし、後にイザークはこの事を後悔することになるのだが、今の彼が知る由もなかった。

「なんとも不甲斐ない味方であったな。勝てない訳だ、あの戦争」
戦艦の艦橋で艦長席に座る男は士官帽を上げ下げしながら、愚痴ともつかない口調で隣下にいるノーマルスーツを着る女性に語った。
「………クルーゼ隊の生き残りは少しは歯ごたえはあるといいですけどね」
「で、ないと死んだフィアンセが報われないか?」
艦長は一旦視線を前方のモニターに移した後、再び女性パイロットに視線を戻した。
女性パイロットは、長く美しい黒髪、切れ長の睫、壮麗な雰囲気を持っていたが、それはひどく他を寄せ付けないものでもあった。
「………悪かった。言い過ぎたな」
「いえ。ハマダ艦長には悪いですが、イザーク=ジュールは私が討ちます」
「アレには取られたくないか……が、作戦には従って貰うぞ」
女性パイロットはそれには答えず、
「あと十五分です。私もスタンバっておきましょう」
後ろから自動ドアの音を聞きながら、ハマダ艦長はモニターに映る月を見ていた。


「月の連中、イザークの奴に仕掛け始めるみたいだぜ?」
「そう」
「アイツらも、自分達を支援してるのが、自分達の毛嫌いしているコーディネーターと知ったらどんな顔するかねぇ……」
そう言った男は、肩をそびやかして笑った。
「……くん、もう少し言葉遣いを改めたらどうだ?」
男の話し相手の隣に立つ男は、やや眉を吊り上げながら言った。
「固いこと言うなよ、ユウキ隊長」
「そうね。彼は私が招いた客人なのだから、それくらいは構わないわ」
「……カナーバ最高評議会議長がそう言うならば」
不機嫌そうに言うユウキに笑いながら、
「ありがとう、ユウキ」
ウェーブのかかった金色の髪を掻き上げて、アイリーン=カナーバは言った。
――ウゥゥーー!ウゥゥーー!!
「エマージェンシィーッ!?シホッ!!」
乗り慣れたデュエルのコクピットの中で、イザークが叫ぶ。
『所属不明艦隊……ッ?!大西洋連合・月面基地より入電!同基地所属、アトラス大隊……ブルーコスモスですっ!!』
「戦力ッ!!」
『MS搭載艦コーネリアス級、7隻。メネラオス級3隻!』
「……洒落にならん!」
イザークは苦虫を噛み潰した様な顔をする。
「最高でMS28機、MA18機の大部隊だ……」
『首班は同大隊司令ハマダ大佐……ッ?!そんな…どこから……』
「どうした?」
『隊長と同系統機、GAT-X133、コードネーム・ソードカラミティを確認』
「…………了解。シホ、子供達を避難させてくれ。市街戦にはさせないつもりだが……全区域警報レベル7に指定」
――ブー
デュエルの回線に割り込むで来る者がいた。
「?イライジャ?、何の用だ?」
『傭兵連中から先に出せ』
「何故?」
『俺達は戦うのが仕事だが、お前達はそうじゃないってことさ』
「すまん」
言いながら、自分は新しいザフトを率いる人間としてはまだまだだなと実感する。
『気にするな。それに……連中、ジェレミーに結構すられたらしい』
「ふんっ」
自分達を賭け事に使ったらしい事はまだよいとして、どうやら名誉挽回が必要な事にイザークは苦笑いをした。
「主任っ!デュエルはいけるんだな!!」
『せっかく生まれ変わったんだ、壊さんで下さいよ!』
「無茶を言う……。こっちはイライジャに負けた分、名誉挽回しなくてはならないんだ。必死になる」
『名誉返上にならないようにしてください』
リニアカタパルトに運ばれるまでに、そんな会話をする。
戦いに赴く前の、最後の日常。
「カタパルト、オールグリーン。デュエル、レディ……」
「イザーク=ジュール、デュエル……出るっ!!」
――キュィィィィィィ
――バシュッ!
漆黒のキャンパスを一条の軌跡が奔る。
平穏の中にいたイザーク=ジュールは消え、蒼穹の戦士と化したイザーク=ジュールの眼が敵を捉えた。
「来たなイザーク=ジュール……全部隊、散開ッ!ソードカラミティはいけるな?」
『はい!薬を投下しました。1時間は持ちます!』
「十分だ……1時間後には月は我々の物になる」
言いながら、ハマダは薬無しには生きられないソードカラミティのパイロットを不憫に思った。
「……弟は…こんな事の為にMSを作った訳ではあるまい……」
「は?艦長、何か?」
「いや、何でもない。主砲準備だ。……開戦の印に大きいのを喰らわせてやれっ!!」
そう言って、ハマダは大きく腕を振るった。


――閃光
敵の旗艦から発射された素粒子砲が戦いの合図となった。
『勇敢なるザフトの戦士達に告ぐ!あの戦乱を乗り越え、取り戻したささやかな笑顔を奪われるなっ!!』
イザークのデュエルは、プラスセクト・オカザキ、ラックライト・アワタグチの二振りの高出力ビームサーベルを構え、続けた。
『我々の背中には月がある!我々の心にはプラントの街がある!決して踏みにじらせはしない!!そして生きて帰るッ!!』
一呼吸置き、次の言葉を放つ。
『ザフトの為にっ!!』
それが、イザーク達の戦いの合図となった。
「「「「ザフトの為にッ!!!」」」


「なかなかの名演説じゃないか、イザークの奴は」
ジェレミーは、自身の旗艦“ベンサム”(名前が一緒だ!と、ジェレミーが名付けた)に乗って、傭兵部隊の指揮をしていた。
外人部隊である傭兵達の指揮をする人間は、やはりジェレミーしかいないだろう。
もう一人の元評議会委員、ジェセックは、月の本部で後方の指揮をしている。
前線の戦闘指揮官はイザーク、中軍の戦闘指揮はシホである。
適材適所と言える配置によって、機能的にザフト軍は動いている。
「敵は広範囲に渡って部隊を展開している……“カクヨク”って奴だな」
イザークのデュエルは、右方向から突貫している。
強力なデュエルが錐のように敵陣に穴を開け、後続の部隊が穴を広げる。
「……なんかキナ臭いんだよな……。まぁいい、傭兵部隊!左方向より突撃ッ!」
『命令はそれだけか?』
「お前達は下手に軍律に縛るより、そっちの方が戦果を上げるだろ?」
イライジャの問いに、ジェレミーはニッと不敵に笑った。

「ちっ……ッ!!」
デュエルの双剣はロング・ダガーを十字に切り裂いた。
「まるで亡霊を相手にしてるみたいだな」
デュエルを改修するにあたって、アサルトシュラウドは外した。
主要部のみにTP装甲を使用し、その分を機動性と武器の高出力化に努めた。
その結果が、この二振りの双剣にも現れている。ビームの高出力と高回転率によって、従来の放出型から、細身の日本刀の様な形状に固定されている。
「殺劇ッ!」
舞うように、そして荒々しく、迫り来るメビウス二機を切り捨てる。
「このデュエルより先!通れると思うなっ!!」
イザークは獅子のような咆吼をあげた。


ハマダは、黙して佇んでいた。
戦局のただ一点を見据え、ついに動いた!
「よし!アークトゥルスらに打電っ!攻撃開始ッ!!ソードカラミティ!出せっ!!」

「伏兵かっ!やってくれるな!!シホ君に打電ッ!イライジャ、君が一番近い。時間を稼げるか?」
『やってみる』
「よし!ベンサム、主砲用意っ!」
そう言うジェレミーの顔は笑っていた。それは戦場の快感を知っている者の笑みだったかも知れない。


「伏兵っ!?そんな……第四、第六部隊、反転!私に続きなさいっ!!」
シホのゲイツは、敵を撃破したエクステンショナル・アルスターを収納しながらバーニアを噴かした。
「……隊長……」


イザークも、伏兵がいたことに気づいていた。
(前に出過ぎた……ふんっ、なるほど、あの暗礁空間は伏兵を置くのにピッタリだ……)
だが、幸い数は少なそうだ。自分が行けば何とかなるだろう……そう思った時だった。
「めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ殺っ!!」
「ッ!?くっ!!」
巨大な対艦刀・シュベルトゲーベルが、イザークのデュエルを襲う。
「……こいつが、GAT-X133ソードカラミティかっ!」
GAT-X133ソードカラミティ――長距離爆撃に特化しすぎたカラミティを、逆に接近戦に特化させた機体。
製造は三機が確認され、一機は連合のエース・煌めく兇星Jこと、ジャン=キャリーが駆り、もう一機は戦闘用コーディネーター・ソキウスと共に、オーブ・サハク派代表・ロンド=ミナ=サハクにムルタ=アズラエルから贈与された。
そして最後の行方不明となっていた3機目が、イザークの前に現れたというわけだ。
連合のエース、オルガ=サブノックが駆ったカラミティとは対照的な紅蓮のボディ。
(いや、それよりコイツの戦い方……)
「ガぁぁァぁっ!!瞬・殺ゥッ!!」
相転移砲・スキュラを胸から放射するカラミティ。
「くっ!」
後方に飛び、距離を作りつつシールドを構えるデュエル。
――カッ!
オリジナル・カラミティのスキュラよりも70%出力が落ちるとはいえ、直撃を喰らえばビームコーティングされたシールドでも持ちはしない。
「ちっ……」
表面が溶け、歪な形になったシールドを捨て、双剣を構えるイザーク。
(あの時は……)
カラミティのアンカーをかわし、続くシュベルトゲーベルを辛くも受け止める。
(ディアッカがいた……紅いストライクは足手まといだったがな……)
鍔迫り合いを繰り広げるデュエルとカラミティ。一瞬、カラミティが力を抜いてデュエルのバランスを崩す。
「うぐっ!?」
鍔を支点にして、器用にシュベルトゲーベルの柄をまわし、デュエルのビームサーベルを飛ばす。
「くっ……だが、あの時と違い機体性能に分はない筈だっ!!」
残ったビームサーベル・プラスセクトを両腕で構え直し、剣気を放つイザーク。
「こいっ!クロト=ブエルッ!!」


その頃、シホは目の前の光景に戦慄を覚えていた。
「そんな……相手は戦闘機一機なのに……」
――FXet-565コスモグラスパー
それが、シホに戦慄を与えている存在の名前だ。
地上戦で優秀な戦績を納め、エンデミオンの鷹・ムウ=ラ=フラガや、切り裂きエド・エドワード=ハレルソンらの連合のエースが使用した、スカイグラスパー。東アジア連邦FUJIYAMA社製のこの戦闘機の宇宙仕様が、このコスモグラスパーである。
敵の伏兵部隊から先行してきたこの機体は、瞬く間にシホの連れてきた、第四および第六部隊の3分の1を撃破した。
「くそっ!戦闘機なんかにっ!!」
ゲイツのビームライフルがコスモグラスパーを捉える。
「……引き金を引くのが遅すぎるのよ」
次の瞬間、ゲイツのパイロットの視界からコスモグラスパーは消え、背中越しの殺気に身を縮める。
――その瞬間こそが死。
「う、うわぁぁぁぁぁぁっ!!」
宇宙の闇は臆病者に冷たい。ゲイツは星達の瞬きの一つになって消えた。
「くっ……おぉっ!!」
ジンのパイロットは咆吼を上げ、ヒート剣を構える。
中年のその男は、数々の戦いを経験した手練れであり、MSの有効性――人型であることを計算し、接近戦を挑む。
「はぁぁぁぁっ!!」
――カッ!
「……悪いけど、MS相手にドックファイトは初めてじゃないのよ」
コスモグラスパーは決して無傷ではない。しかし、圧倒的な存在感を持ってシホ達を襲う。
それは……そう、熱く滾った鋼鉄の糸が張りつめた様な戦場の――死の威圧感。
「まずい……早くイライジャさんを助けに行かないと……」
今頃、たった一機で伏兵部隊を足止めしているのだ。少なくとも、あの戦闘機に援軍が無い事でそれが判る。
(でも……そうすると、この戦闘機は一機編成の部隊だというの?)
それは有り得ない事である。MSですら数機によって編隊をおこなうのがセオリーなのだ。ましてや戦闘機なら尚更の筈である。
(確かに高機動機ではあるけど、一機しか用意できなかった?)
それならば使わない方がましであろう。
「考えてもしょうがない!みんな!イライジャさんの援護に行ってください!!ここは私が食い止めます!!」
エクステンショナル・アレスターとビームライフルを斉射する。
が、意外にも、コスモグラスパーはビームに紛れて飛んでいったMSに気にも止めなかった。
「?」
「……肩にアカシアの花……そうか、元クルーゼ隊の生き残りはもう一人いたのよね……」
全周波回線で送られてきた声は、シホと同じ、女性の声だった。
“肩にアカシアの花”は間違いなく自分のゲイツの事を指している……アカシアの花を自らのパーソナルマークに決めたシホは息を呑んだ。
「チャンネル88っ!」
シホは、慌てて受信チャンネルを合わせる。
「ヘリオポリス崩壊に関係したクルーゼ隊……その生き残り、アスラン=ザラ、ディアッカ=エルスマン、イザーク=ジュール……」
(……ッ!?ぶつかるっ!!)
モニター内のコスモグラスパーが、どんどん巨大になっていく。
「……アスラン=ザラ、現オーブ国防庁総司令官兼特別首相顧問。現オーブ首相カガリ=ユラ=アスハの伴侶にして最大の知恵袋、オーブ再建に多大な功績を残す……」
シホのゲイツに特攻してきたコスモグラスパーは、ぎりぎりの距離で船体を上昇、シホを嘲笑うかの様に動く。
「……ディアッカ=エルスマン、現在消息不明。最終経歴は、オーブ外務大臣兼警察庁副長官。アスラン=ザラと同時期にオーブに亡命、同じくオーブ再建に功績あり……」
――バシュッ!
外部に取り付けされたミサイルが、シホを狙う。
「このっ!」
ゲイツのビームライフルによって迎撃されたミサイルが、漆黒の闇を一瞬昼にする。
「いい腕ね。なかなか出来る事じゃないわ」
「……ありがとう」
そのまま敵を狙おうとしたが、速すぎて狙いが定められない。
シホの唇が白く脹れる。
「……続きね。イザーク=ジュール、ザフト残党軍の首魁。現プラント最高評議会議長アイリーン=カナーバの対立勢力を取り込み、大西洋連合の保持する月面基地を分譲、拠点とする……そして!」
「……「そして」?」
「……今日、私に殺されるわっ!」
――ガッ!
「うぐっ!?」
羽の一部を失ったコスモグラスパーの機体が激しく揺れる。
「……させない」
「やるわよ」
青い翼が交錯した……そのとき、シホのゲイツは片腕を失っていた。
「“宵のかんざし”がやるといったらねぇ!あなた程度は、無力感に肩を震わせる事ぐらいしか出来ないのよっ!!」
「“宵のかんざし”っ!?」
「聞いたことぐらいはあるでしょうさっ!!」
コスモグラスパーの機銃が震える。
「東アジア空軍のエース、MSを戦闘機で沈める事の出来る女パイロット。常に宵時に奇襲攻撃を仕掛け、戦線を釘付けにしたことから付けられた綽名が“宵のかんざし”!!」
ゲイツはシールドを放棄する。コスモグラスパーに向かっていくシールド。
「そうさね!」
迫り来るシールドに、彼女は更に機体を加速させる。そして最小限の捻りでシールドをかわす。
(っ!!一瞬の隙もないのっ!?)
かわして、一瞬スピードが遅くなる瞬間を狙うつもりだったシホの作戦は外れた。
「このっ!……え?」
自身に多少の損害を覚悟して振り下げたビームサーベルでさえ空を切った。
「さよなら」
再びの背中越しの殺気。
「……はありえないっ!」
エクステンショナル・アルスターを反転させて、射出する。
「うぐっ!」
機体の腹に、直接エクステンショナル・アルスターをぶつけられたコスモグラスパーと距離を取る。
「私は戦場では死なない……隊長と一緒に掴む夢があるもの。あなたに殺させはしないわ!私も!隊長も!!」
「…………ふ〜〜ん……あなたとイザーク=ジュールはそういう関係なんだ」
二人は間合いを取る。宇宙の静寂が二人の吐息を深くする。
「……私から最愛の人を……ルークを奪っておいてっ!!その為に私は故郷も捨てっ!……ふざけるなぁっ!!」
「最愛の人っ?!!」
――ボンッ!
コスモグラスパーが突如、火をあげる。
機体性能の限界……しかし、それは乗る者の怒りの暴走にも見える。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「くっ……」
突進してくるコスモグラスパーに対して、シホも加速する。
待ちかまえるよりも自分から向かった方が相対的にはスピードが殺されて有利だ。
一閃。
何度目かのゲイツとコスモグラスパーの交錯は、シホのゲイツのビームサーベルが黒き世界を裂き、終わりをつげた。
「…ルーク……」
自身を焼き尽くす桃色の光の中で、彼女の涙はひとときも留まらず……消えた。
「あなたは自分から不幸になったのよ……私だってたくさん失ったけど……今があるもの……」
モニターから発する爆発の光の瞬きの中で、シホはポツリと呟いた。

イザークのデュエルは、月にまで押されていた。
月にイザーク達がやってきて約3ヶ月……無人の、人を寄せ付けないような廃墟の荒野はようやく新しい活気を受け入れてきていた。
しかし、未だ未完成の場所も多い街並みが無惨に崩れ去っていく。
デュエルとカラミティの軌跡に沿って。
――ガガガガガガガガガガ……
接近戦用のソードカラミティが、中距離戦闘を行う方法……簡単だ。手持ちの武器を与えればいい。人型――MSゆえの合理性。
街が壊されていく。まるで自分が攻撃されているかのように痛い。
(……はっ!人っ!?)
コーディネーターの…いや、イザークの戦士として鍛えれれた眼が、人影を確認する。
「だぁぁぁっ!!」
「っ?!」
突然の反転と突撃に、カラミティの動作に鈍りが生じる。
それと同時にマシンガンを持った手が弾かれ、宙を舞ったマシンガンはビルを押しつぶして落下した。
しかし、無理な体勢からの攻撃だったことは、デュエルの次の動作に影響を与える。
それはカラミティの報復には充分過ぎる時間だ。
「粉・砕!」
拳打をあびて、吹き飛ばされるデュエル。
「うぐぅぅ……」
「破・壊!」
シュベルトゲーベルの先端がデュエルのコクピットを襲う。
「くっ!」
舗装された道路が粉々に剔られる。
デュエルの肩の装甲が弾け飛ぶ。
「消・滅ッ!」
スキュラの発射口が光る。
「馬鹿なっ!市街地でだとっ!!くそっ!」
デュエルはカラミティを抱き込むようなかたちで、あえてスキュラを受けた。
「うぐっ……うあぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
二機の間に閃光が迸る。
そして、爆煙をあげながら弾け飛ぶ二機。
「はぁ、はぁ……これでスキュラは使えないぞ」
黒く焼けただれたカラミティを確かめながら、イザークは強がりを言った。
(元々接近戦用の機体……こっちは守りながらの戦い……か)
不利だ。しかし弱音を吐けるような人間にはイザークは出来ていなかった。
「がぁぁぁァぁぁっ!打・撃っ!」
両腕のアンカーを連続で射出しながら、間合いを詰めるカラミティ。
「ふんっ!……奥の手、だな」
無形の位で構えるデュエルを、カラミティの暴牙が砕こうとしたその時、
a mind as serene as a polished mirror...
――{3:00}
デュエルのディスプレイにその文字が浮かんだ瞬間、デュエルは赤く発光し、信じられない反応速度でアンカーをかわし、ワイヤーを切った。
――{2:59}
「コード名、Invoke-Moment in Believe a Rralize... I.M.B.R.モード……いくぞぉ!!」
――{2:58}
「がぁぁァぁぁッ!斬・鉄ッ!」
シュベルトゲーベルを大降りに振り上げたカラミティが迫り来る。
――ガシッ!
「な・に!?」
それはありえない光景だった。
触れればあらゆるものを瞬時に溶かすビームの収束体・ビームサーベルを、MSの素手で掴んでるのだ。
「……シャァァァァァァァァイニングゥッ!」
「ッ!?!」
「フィンッガァァァァァァァァァァァァッッ!!!」


ハマダは溜息をついた。
目の前には、宇宙の暗闇よりも深い、銃口の闇がデカデカと広がっている。
『再度通告する。ただちに全軍の行動を止め、投降しろ』
青と赤のちぐはぐなカラーのジンより発するその凛とした声に、再び溜息が出る。
作戦は成功だった。
もっとも強敵であるイザーク=ジュールのデュエルは、あのブースデッドマンとかいう薬物投与された少年パイロットのカラミティが現在も押さえている。
伏兵のタイミングも絶妙だった。
……たった一機のジンに足止めされるまでは。
その足止めをしたというジンは、戦場を駆け抜け満身創痍の姿で彼に銃を突き付けている。
戦況はかなり悪い。彼の言うとおり、投降した方が賢明だ。司令官として、艦長として、人としてそう思う。
しかし、彼が今率いてる兵はブルーコスモスなのだ。
投降の“と”の字でも出そうものなら、自分にですら鉛玉が飛んでくるだろう。
ハマダは自分をブルーコスモスとは思っていない。只の復讐鬼だ。
(そう言う意味じゃ、あの女と同じか。でも、もうどうでもよくなってきている以上、たいした復讐鬼でもないんだろうさ)
生来明るくできている。どうも、後ろ向きなことは気が向かないらしい。
それでも、一度はその後ろ向きなことに身を費やした。
後方任務とはいえ弟は軍人、命をいつ失ってもおかしくないと思っていたし、とりたて仲のいい兄弟というわけでもなかった。
(そんなもんさ……ここにいるブルーコスモスの連中もそんなところから始まってる)
「バジルール中佐はどう思う?」
有名な軍人一族の副官に問う。
「投降すべきです」
ブリッジ内の空気が張りつめる。
が、ハマダは逆に腹を決めることにした。
「君は若いのに言いにくいことを簡単に言うな……いや、若いからこそか。全軍!戦闘を中止!」


なかなか気分のいいものだな、イライジャは敵の旗艦を月に誘導しながらそう思った。
自分は今、戦場の花形にいる。ザフトの落ちこぼれだった頃には考えれれない事だった。
『イライジャ、ご苦労様』
「風花か。こっちこそ、風花のオペレートが無かったらこの活躍はないさ」
戦場では情報が次々と生まれ、流転する。的確で必要な情報のみを風花は選び取り、イライジャに伝えた。それが今回の戦いの勝因になった。
劾ほどではないが、イライジャも風花の事を信頼している。戦場の花形は無論、戦う戦士達だが、戦争の本質は戦う前、あるいは戦闘中の後方支援にあるのだ。
「まるでロレッタと組んでるみたいだったよ」
『へへっ……』
劾ならば、風花は風花であって母親と比べるような褒め方はしないだろう。
しかし、傭兵として尊敬してる母親に比せられて風花としては悪い気はしなかった。
「イザークはどうしたんだ?」
相手のトップが投降してきたのだ。こちらもトップのイザークが対応すべきである。
『それが……』
戦いは終わった。宇宙は静寂という名の平穏を取り戻している。
イライジャでなくともそう思っているだろう。次々と月基地に収納される連合艦を背に、イライジャは風花の答えに驚きを示した。
「……まだ、戦っているっ?」


クロト=ブエルは初めて恐怖を知った。いや、正確には記憶を失ってからか。
自軍の降伏はさっき知った。しかし、戦う事を止めない。いや、止めれない。
「降伏しろ。お前達は負けた」
赤い悪魔から発せられる威圧感のある声。
「お前の事はデータで知っている。……月には良い医者もいる。もう戦わなくていいんだ」
その声が優しいことを言う。懐かしい暖かさにすがりたくなる。
「……戦いがボクの全てなんだよぉっ!!」
「っ!!」
折れたシュベルトゲーベルが、デュエルを襲う。
が、刀身足らずに月の大地を傷つけるに終わる。
「……記憶だって戻るかも知れないんだぞっ?!」
「いるかっ!記憶なんてっ!!」
カラミティの鉄拳も、軽く止めれれる。
「そうか?俺はいやだがな……好いた奴も、嫌いな奴も、楽しかった日も、悲しかった日も、忘れたくないぞ」
「……記憶を失った後の…連合軍“兵器”クロト=ブエルにも、色々と持っていたものがあった」
デュエルの反撃を受け、月面の荒野帯まで戦場が移った。いや、デュエルによって移された。
大気の無い月の輪郭の先に青い地球がデュエルの肩越しに見える。
「オルガは、少しお節介で、そのくせぶっきらぼうな奴で……兄貴面して……」
艦隊が雨の様に月に着艦している。連合、ザフト…違いはあれど、等しく傷つき、羽を休めにくる。
「シャニは、ちょっと根暗みたいに見えるけど、難しいことを平気な顔してやっちゃうんだ……」
――ボンッ!
「ッ!?」
『隊長ッ!』
ビームライフルを構えたボロボロのゲイツがクロトを狙っている。
『そこのMSパイロット!戦闘はもう終了しました。あなたも投降しなさい。でないと次は肩でなく……』
「シホッ!男同士の戦いに割って入るなっ!!」
「っ?!」
『た…隊長?』
「いいから下がれ……事後処理はお前とジェセック議員に任せる」
シホのゲイツは不服そうに、宇宙(ソラ)に留まっている。
「男の涙ってのはな、あんまり多くの奴には見られたくないんだよ」
その言葉に、クロトはレバーを押していた。
壊れた方の腕で、デュエルを殴り続ける。
「う…うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
あのゲイツが立ち去ったように見えたが、視界がひどく悪くて判らなかった。
「おばさんはさぁっ!すっごい厳しい人なんだ!けど、時々お菓子くれたり、不器用なんだ!でも僕達を人間として見てくれたっ!!」
口の中に塩味が広がる。乾いた喉にはよいかも知れない。
「おっさんはさぁっ!馬鹿なんだ!すっげー分かりやすい奴なんだよっ!そのくせ嘘つきでさぁ、俺達を兵器だって思ってる奴が、毎回毎回会う度にゲームとか持ってきてくれるかよぉっ!!」
――ガッ!
間抜けなことに、MSで転んでしまった。
デュエルはこの好機をものにするでもなく、ただクロトを見下ろして立っている。
「全部無くなった……残ったのは薬無しじゃ生きれないこの体と、戦いっていう現実だ……戦う事だけが……ボクの……」
――ザシュッ!
カラミティの前に、デュエルのプラスセクトが突き立てれれる。
「軟弱な奴め」
「え……」
――{0:01}
――キュイィィィィィィィン...
――{0:00}
デュエルの発光が止み、コクピットのハッチが開く。
「ふん…3分経ったか……」
赤いノーマルスーツが駆け下りてくるのを、クロトはモニター越しに見た。
――プシュー
そしてそれは目の前に現れた。
「……帰るぞ」
「は?」
グイッと肩を掴まれ、有無言わず座席から立ち上がらせられる。
(前にも、こんな強引に扱われたことがあったような……)
ぼんやりと滲んで見える地球を眺めながら、クロトは思った。
「シホ、聞こえるか?迎えにこい」
『もうっ!私は隊長のなんなんですかっ!?』
カラミティの無線を使って、イザークは連絡を取っているようだった。
「決まってるさ……至極の女で、俺の添い人だろ?」
聴いてるこっちが恥ずかしくなる事を簡単に言う……そんな風に見ていたら、再びグイッと首に腕を巻き付け、イザークは自分の元にクロトを引きつけて、
「そしてコイツは、新しい弟だ」
そう、お節介に言った。


――ピピピピピピピ...
接近する高機動型ジンに、計器がけたたましく鳴る。
――ピピッ…………………………ピピピピピ...
一瞬、計器が沈黙する。
それは、目の前の高機動型ジンが一機から二機に増えたが故の沈黙だった。
「…駄目だっ!もう一回な」
「「はっ!」」
二機のジンは、軌道を翻して再び一機に重なる。
「そうだ。二機を一機に見せるフォーメーション、きっちり叩き込んでおくんだぜ」
そう言いながら、その男は自身のMSのモニターに映った最新情報に眼を細めた。
「アイマン、マッケンジー、今日はこんぐらいで切り上げるぜ」
「はっ……しかし……」
もう一回と言われたのに、それを挫かれて少々不満そうにアイマンと呼ばれた少女は答えた。
「イザークの奴が勝ちやがったのさ……そろそろユウキ隊長からも連絡が来るんじゃないか?」
「なるほど」
三機のMSがドックに収納されていく。
「嬉しそうですね、隊長」
一番最後にドックに入った、もう一方のマッケンジーと呼ばれた少女が前の男にそう言った。
「そうか?……っと、噂をすればなんとやら。ユウキ隊長、イザークの事だろ?今行く」
二人の部下に待機を命じながら、その男はMSを降りていった。
「……なかなか順調のようだな」
「まぁね。俺の教え方も上手いけど、彼女達が真剣なのが上達の理由ってトコかな?」
赤いザフト……いや、プラント兵のパイロットスーツの首もとを開けて一息つきながら話す。
「そうだろうな。彼女たちも縁故で親衛隊に抜擢されたと思われたくないだろうからな」
ユウキは少し棘のある物言いだった。
昔は仲の良い先輩と後輩だったものだが……と心の中で苦笑する。
「……アイツらには悪いが、実際縁故で選んだからなぁ……」
「………」
その答えに、明らかな不快を見せるユウキに
「しょうがないだろ?俺はまだ18そこそこのケツの青いガキなんでね……死んだ戦友の妹達には死んで欲しくいないのさ」
不敵に笑ってみせる。
「先輩も……アイリーン議長の為に……っと、言い過ぎたかな」
「…………」
「仲良くしようぜ?アイツらだって今じゃ並の兵士には負けないんだし。……だんだんミゲルやラスティに癖が似てきて、コッチとしては辛いけどな……」
「…………」
そんな会話をしている内に、指定の部屋に辿り着く。
自答ドアの開閉音の先は、薄暗かった。
「ふふ……仲がいいのね、二人は」
男の、戦場で培った感覚が闇の中の人数を無意識に探る。
(……二人。二人?)
「そんな風に見えます?アイリーン議長?」
会話に応じながら、厭な考えが頭をよぎった。
「そうね……女の私から見たら、男の友情って少しいがみ合うくらいのものじゃないかしらって思うのよ」
「へぇ……確かに、そんな奴知ってますけどね。まぁ、少し程度じゃないですけど」
カナーバのブロンドの隣に、黒髪が蠢いてるように見える。
厭な考えは当たるものだ。男はことさらカナーバの前で表情を作った。
「女の場合はどうなんです?」
「そうね……私も“少し”じゃ満足出来ないかな。憎い相手には……」
そう言って、カナーバが男に突き出したものがあった。
男は暗がりの中でそれを受け止めて、非道く好色な顔を作って見せた。
「ヨシエさん……」
その黒髪の美しい少女は、見るも無惨な姿をしている。
服装は殆ど裸と言ってよく、口には猿轡を架せられ、両腕は後ろで縛られ、足枷の先には重りが括られていた。
「あげるわ。愉しんでいってくれて?」
「ここでですか?」
「ご自由に」
この一連のやりとりに、ユウキは鉄仮面を通している。
「……いただきましょう」
そう言って椅子に腰掛けて、ヨシエの猿轡を外し跪かせた。
「分かってんだろ?しゃぶりな」
「………」
「……ちっ」
女に手を挙げるのは自分のポリシーに反する事だった。
――パンッ!
「あぐっ……」
床に広がった髪を掴み、顔を向けさせながら、
「お前さ、これからまともな人生送ってけると思ってんの?っーか人として扱ってもらえるとでも?」
「……ぐ」
婚約者に似て強情な女だ。
「イザークが助けに来てくれるとでも思ってる?いいことを教えてやろっか?イザークの…今のザフトのNo.2はさ、イザークの女だぜ?」
ヨシエの目尻に浮かぶ涙は悔しさ故か……だとしたら誰に?
「ジュール隊の副官でシホって言う。元はクルーゼ隊の補充パイロットだったらしいがな」
そのことを言い終わるか終わらないか位の時だった。ヨシエは男の腕に噛みついてきた。
「っ痛!てめっ……」
思わず弾き飛ばしたヨシエは、男を睨みあげている。
「………」
「……へっ、イザークの奴はモテるこって……アイリーン議長、少し五月蠅くなりますがいいですかね?」
わざと手をポキポキと鳴らして恐怖感を演出しながら、カナーバに一応許可を請う。
「どうぞ」
その笑みに、男は薄ら寒いものを感じていた。


「クロトと話せるか?」
イザークは疲れた顔をしながら、クロトにあてがった医者に
「はい。現在は鎮静剤で落ち着いています」
「そうか」
クロトは月に到着した後、γーグリフェプタンの欠乏による発作を起こした。
「非道い話です。彼の体はボロボロでしたよ」
そう話す医者に、イザークについてきたシホの顔が揺れる。
「γーグリフェプタン……だったか?どんな薬なんだ?」
「鎮痛性が高いという意味ではモルヒネにも似ていますね。彼らは脳内や分泌船内にマイクロインプラントを埋め込んでますから、無理な痛みを感じる訳です」
医者は眉をひそめながら、手に持った資料を読み続ける。
「もっともモルヒネは判断力を奪いますが、この薬はアドレナミン等の分泌を促す側面も持ち、依存性が強いです」
あまりに酷い話に、イザークとシホは言葉を失う。
「今回使われていたのはγーグリフェプタンrxという、まぁ効果がより高い薬ですが……」
「依存症は治せるのか?」
専門的な説明より、そのことの方が大切だった。
「現在は安全性の高い鎮痛剤を投与しています。依存症に関しては麻薬等の対処法と基本的には変わりません」
「心理コントロールに関してはどうなんですか?」
シホが更に問う。
「カウンセリングでじっくりやるしか無いでしょう。プラントの方に高名な専門の方が居られるのですが……」
医者は自身の無力さを呪うかのように歯噛みしながら答えた。
「その脳内や分泌船内に埋め込まれたマイクロインプラントとかいうのは取り除けないのか?」
「難しいでしょう。おそらく、成長に合わせて何度か手術を繰り返しながら埋め込んでいったものと思われますから……」
そう言って、医者は手に持った資料を机に置いた。
「私は医者です。人を治すことが仕事です」
「それを言われると耳が痛い。俺は軍人だからな。壊すことしかできん」
「いえ……それは……」
ばつが悪くなったか、医者はコーヒーを一口含んだ後、
「出来る限りの事はします。マイクロインプラントも取り除ける分は全て取り除くつもりです。でも……」
「でも?」
「情けない話ですが、医者に出来るのは身体的な事ばかりで……後は本人の気持ちの問題なのです」
「あぁ…」
「彼とは前の大戦で…」
「銃を向け合った。アイツの大切な人の一人は俺が殺した」
フォトビンのパイロット、シャニ=アンドラスは前大戦、イザークのビームサーベルによって貫かれた。
「“仕方なかった”等と一言で済まされるから戦争は怖い」
「隊長……」
自嘲気味に笑うイザークの肩に、シホの手の温かさを感じる。
「……これは私の恩師の言葉なのですが…“大抵の問題はコーヒー一杯を飲んでいる間に解決するものだ。後は本人の気持ち次第だな”と」
「良い先生なんですね」
シホの相槌にありがとうと医者は答えて、
「私も元々兵士でしたが、野戦病院でその人と出会ってこの道を進んだんでそう言って貰えると嬉しいです」
医者は再びイザークに視線を戻し、続ける。
「彼はあなたに従ってここについてきました。気持ちの整理は着かなくても、心では納得してるし、また誰かと一緒にいたいと思っているはずです。支えになってやってください」
「……ありがとう」


クロトはボーっと病室の天井を眺めていた。
薬が効いてるのか、単純に何も考えたくないのかまでは分からない。
「……入るぞ」
「失礼します」
こちらの返事を待たずに、長身の銀髪の青年と、ブラウンの長い髪の少女が入ってきた。
「こうして素顔で会うのは初めてだな、クロト=ブエル」
「……隊長って、人付き合い下手でしょ?」
「はぁ?シホ、何を言って……」
「初対面の人にそんな風に言ったら、誰だってそう思いますよ」
何故か夫婦漫才を始めた二人に、クロトは虚を摘まられる。
「あ…あの……」
申し訳なさそうに声をかけるクロトに、シホは気づいて顔を赤くさせる。
「あ…ご、ごめんなさいね。私はシホって言うの。初めまして」
ふわっと翻して宙を舞う長い髪から零れる甘い香りに、クロトは顔をほんの少し赤らめる。
握手を求めてきた手を握り返す仕草が少しぎこちなくなってしまった。
(暖かい……)
人の手を握ったのは何年ぶりだったろう……
手に残る感触はどれも冷たいMSの操縦桿の感触のみだった。
「俺はイザークだ。イザーク=ジュール。悪かったな、ゴタゴタしててここにくるのが遅くなった」
「ボ、ボクはクロト……クロト=ブエル」
自分より少し大きい手を握り返しながら、自己紹介なんていう慣れないことに戸惑いながら答えた。
「病室は退屈だろう?お前の部屋はとってあるからな。見晴らしのいい部屋だぞ。欲しいものがあるなら言ってくれ、揃えておく。シホはセンスがいいから安心して頼むといい」
「う、うん……」
「取りあえず、本とMDはいるんだろ?」
「え?」
そう言って、イザークがクロトの手に握らせた物は、真っ黒になった本とMDウォークマン。
「あ……こ、これ……」
親指で煤を擦る。クロトの記憶にある物と同じ……オルガが読んでた本と、シャニが聴いてたMDウォークマン。
「あのジャンク屋は、ホント、何でも揃えていやがる」
そんなイザークのぼやきが遠くに聞こえた。
煤が涙に混ざって、滲んでいく。
「う……ぁ…う、うう……」
「忘れたくないよな?無くしたくないよな?要らないものなんかじゃないだろう?」
「うん……うん……」
シホが、クロトの両肩を支えながら抱きしめてくれる。
少し恥ずかしく、沢山うれしい。
「楽しかったり、辛かったり、ココでもそうしていけるから……」
「うん……うん……」
クロトはただ泣きじゃくった。子供のように、甘え続けた。


「……ちゅぱ……ちゅ…ちゅぱっ……」
「それで?次はどう動くの?」
自身のモノを頬張るヨシエの乱れた髪を手で梳かしながら、男は不敵に笑った。
「オーブが地球圏国際平和会議を提唱しているな」
ユウキがモニターに世界地図を広げる。
「アフリカ共同体、南アフリカ統一機構は昔からプラントよりだわな……」
「……ちゅぱ……あんっ!」
ヨシエは感情に関係なく起立している乳首を男によって抓りあげられて、嬌声をあげる。
「意外と感じやすいんじゃん……で、アフリカの奴らは敗戦国として大西洋連合にいじめられたカリがあるわけだ……オーブと同様に、ね」
「そうね。アフリカはオーブに同情的……私達ともね」
カナーバはその様子を楽しそうに見ながら、答えた。
「ユーラシアと大西洋の不仲は周知の通り、東アジア連合は政情不安定ですね」
「チャイナ圏の奴らが高慢なのさ。ただ、資源を押さえてるから微妙な均衡を保ってるってとこかね」
「その自尊心、上手くくすぐればあるいは……」
カナーバは眼を細める
「スカンジナビア王国は?」
「無視して構わないかと」
「そうかな?伝統と平和の国……ザフトも連合も手を出さなかったんだ。戦争で亡命者も増えて、総人口は侮りがたいんじゃないの?」
「亡命者の大半は戦争が終わったら母国に帰るさ」
ユウキとの確執はちょっとやそっとじゃ直らないらしい。
「大洋州連合……資源、技術、そのどちらも高かったのが逆に災いして、今では見るも無惨な姿……」
カナーバは次に、オーブのデータをモニターに映す。
「オーブの復興は急速に進んでるわ。地球上ではユーラシア、大西洋に続いて力を持ち始めている」
「アスランだろう。組織作りのうまさは父親譲りか」
「会議は成功するだろうさ。場所は……」
言いながら男はヨシエの頭を掴み、強引に突き動かす。
「んもっ……んあぁ……んんっ…ん゛ん〜……」
カナーバはそのBGMに合わせるように、言葉を紡いだ。
「もちろんココ、プラントで行わせるわ」
「そして…くっ……あわよくば、出席したイザークを……」
「んぉ!……ん゛ぁっ……んぐっんぐぅ……」
切れた唇に、涎が沁みる。
「さぁ……どうでしょうね……」
カナーバは時計で時間を確認する。
「んあ゛……んが…んん゛……んも……」
「そろそろ評議会が始まるわ。いきましょう」
その言葉に男は不敵に笑って
「了解」
さらに腕を強く振り、ヨシエを陵辱する。
「くっ……」
「あが……んん゛……あ゛〜……あぁ…んぐぅぅ……あぁぁあ゛ぁ……」
ヨシエの口膣の一番奥で、精を暴発させる。
プックリと脹れた頬を、白濁が伝う。
「あ……あぁ……」
「よっと……」
男はモノを引き出し満足そうに涙を流すヨシエを見た。
「…けほっ……けほっ……」
「……おい」
白濁を吐き出すヨシエに、男は冷たく言葉を突き落とす。
「誰が吐いていいっーたよ?あぁ!?……ちゃんと綺麗にしろっての!」
床に散らばった精液に顔を押しつけながら、男はヨシエの耳元で何事か囁いた。
ヨシエはあきらめたように、床に散らばる精液を舌で舐め取っていった。
「そうそう……ちゃんと言うこと聞くんだぜ。そうすりゃ、痛い目に遭わないし、娼婦程度には扱ってやるからよ」
身だしなみを整え、男はそう吐き捨てて部屋から出ていった。

機動戦士ガンダムSEED 〜イザークの覇道〜  PHASE-4「そしてコイツは、新しい弟だ」  終
PREVIEW NEXT EPISODE
女が欲するのは、世界ではない。
ただ自身を愛してくれる器だけ。
傷つき醒めた心で、それでも暖かさを夢想するは人のエゴか。
C.E.71は今、暮れようとしている。
カナーバ「甘く甘くしてね……苦みを消してしまいたいの」

機動戦士ガンダムSEED 〜イザークの覇道〜 PHASE-5

カナーバ「甘く甘くしてね……苦みを消してしまいたいの」
「……地球圏国際平和会議?」
「あぁ。出席しない訳にはいかない。下手すれば俺達の政権は孤立する」
自信が手足を持って動いてるようなイザークがそわそわするのを変に思いながら、シホはクロトにジュースを渡す。
「場所はプラントらしい」
「イザーク、危ないって!」
プラントの穏健派の反対派をイザークが束ねている。そんなイザークがプラントに乗り込むのは非常に危険だ。
「そうだな。だからクロト、お前にボディーガードを頼もうと思ってな」
にやっとクロトに笑うイザークにシホは不安そうに見る。
「隊長、私も……」
「当たり前だろ?ただし、シホは俺と同じザフト代表でな」
イザークは一口ジュースを飲むと
「ジェセック議員とジェレミーは置いていく。それで…だな」
ふーっと深く息を吐いて、シホをイザークは真っ直ぐ見つめて、
「会議の後は当然、パーティもあるわけで……だ。その……ドレスをだな、お前に……」
しどろみどろのになりながら、綺麗に包装された箱を渡すイザークに、シホとクロトは顔を見合わせて笑ってしまった。


オルガが話してくれた、本の中のお姫様とか妖精っていうのはきっとこんなのを言うんだろうな…クロトは口を半開きにしながら思った。
「どう…ですか?」
青く、清楚なドレスを纏ったシホは、慣れない事なのだろう、少しもじもじしている。
「いや……今日ほど自分が幸せ者だと気づかされた日は無かった。綺麗だ……シホ」
クロトもそう思うだろ?とイザークが同意を求めると
「う、うん!シホ姉さんとっても綺麗だ。お話の世界の人みたいだよ」
「うむ、古の西施やクレオパトラでも今のシホにはかなわないだろう」
イザークは上機嫌に話す。言葉には出さないが、カガリ=ユラ=アスハを伴侶に持つアスランや、ラクス=クラインと行方をくらましたキラ=ヤマトに大いに自慢したい気分だ。
「尤も、クレオパトラは身内に殺され不幸であったり、西施にしても最後は范蠡によって幸せを得たが、一度は夫差に渡された身だった。だが、シホは俺が必ず幸せにし続けるからな」
「隊長……」
こうなってしまうとクロトは退場するしかない。
自分もSPとは言えそういう席に行くのだからジェセックかジェレミーあたりに一張羅を借りなくちゃならないな……などと思いながら幸せそうな兄と姉を後にした。

「アスラン殿、“プラント”からのハロです」
「……ジャン、読み上げてくれ」
「はっ!」
そう言うと、ジャン=キャリーはプラントやオーブでは非常にポピュラーな玩具・ハロを解体する。
煌めく兇星『J』と呼ばれた元大西洋連合のエースパイロット、ジャン=キャリーはジャンク屋・ロウ=ギュールに誘われてオーブに属して以降、アスランの良き片腕だった。
「……我、未ダ四葉ヲ発見デキズ。蛇ノ尾、月ノ鷹、現状ニテ動クベキナリ」
「そうか」
「あと、こうも言ってます」
ハロの中に忍ばせてあった手紙は二通あった。
「現最高評議会議長、銀鼬ニ異常執着ヲ見セル。黄昏ノ魔弾、赤キ友ノ妹達ハ味方ナレド我ガ情念ニ一抹ノ不安アリ」
「……そうか」
「返信は?」
「要らないだろうな。アイツはいつもは飄々として炒飯ばかり作ってるけど、実際は切れる男だ」
父に似てな…と続けようとして、自分はどうなのかと思う。
「カガリが抱きたい……」
ポツリと、淋しさを紛らわそうという言葉が零れた。
「私に言われても困りますな」
「え?……あっ……いや、それは……い、今のは聞かなかったことに……」
顔を真っ赤にしてあたふたとするアスランを見ながら、ジャンは心の底から笑った。
そして感謝した。こんな居心地のいい新しい居場所を教えてくれたジャンク屋のロウ=ギュールに。


「……新年早々どこいくのさ?」
C.E.71 生々しい戦争の年は暮れた。誰もが今年は幸ある年であるようにと願っている。
(僕は少し早く幸せを貰ったけどね)
後部座席から身を乗り出したクロトはシホとイザークを交互に見ながら、こっそり思った。
「クロト君、危ないよ」
走行中のエレカから身を乗り出すクロトをたしなめるシホに、
「男はこれくらいは何ともないさ」
なっ?っと後ろを振り向くイザークの頬をゆっくり押し返しながら
「隊長、よそ見運転は何ともなくありませんよ」
「腰ヌケェ〜よそ見運転も出来ないで何が漢かっ!!」
「……それ、絶対違うと思うよ、イザーク……」
そんなこんなしてる内に教会の様な建物に着いた。
「何ココ?……孤児院?」
門に掲げてあった看板を読み上げる。
「“お年玉”っていう風習を知っているか?」
「お年玉?」
「あぁ。東アジア連合…つまり中華圏の文化で、日系人が移民してたてたオーブでも風習は伝わっていてな……」
やばい…クロトは直感した。
イザークがアノ目をするときは、趣味の民俗学を延々と語るときの目だ……。
「元は洗兒錢といってな、唐の玄宗の時代、宮廷内では女官たちは元旦になると芝居でお金を投げるので、王や公や大臣は女官や内侍にお金を贈っていたんだ。
そして、楊貴妃が子を生み玄宗が見舞った時、洗兒錢を賜い祝いとした。大人が生まれてきた子供に魔除けのお守りを贈るというふうにも考えることができるな。
その後この習慣が宮廷から伝わり、民間で流行するようになった。宋・元の時代になると、壓勝錢と呼ばれるようになった。
毎年大晦日の夜、大人が特製の壓勝錢…これは本物のお金ではない)のだが、これを赤い紙で包み、子や孫が眠っている時にこっそりと枕の下に入れておくんだ。これはもともとの洗兒錢の習俗と、
春日つまり元旦に散錢…要はお金を撒く事だな、このの習俗が混ざり合って、時期も春節に固定されて生まれてきた習慣なんだ」
……確かに為にはなるが、まだ肌寒い一月の寒空の下で延々語らなくても……クロトでなくてもそう思うだろう。
「……で、この風習が各国に伝わった課程だが……」
(まだ続くのかよっ!)
そう魂の悲鳴をあげたクロトに、天の助けが訪れる。
「……ストップ。隊長、クロト君飽き始めてますよ……」
イザークの唇にシホの人差し指が添えられる。
「む……」
「今度、ゆっくり私が聞いてあげますから。それにホラ、子供達も待ってる」
そう言われると、確かにそうだ。
イザークは手に一杯プレゼントを持って、孤児院に入っていった。
「アレを聞くの〜?ボク、尊敬しちゃう」
プレゼントの持ちすぎでよたついてるイザークを見ながら、クロトはシホに言った。
「そう?隊長の話は面白いわよ……な〜んて、実は半分も聞いてないんだけど」
屈託無く笑うシホに、冬の冷たさのせいではなく顔が赤くなるのをクロトは感じた。
「子供みたいなね、隊長の顔が好きなの。隊長の体温も……」
白い息を吐きながら、かみしめるようにして笑うシホは、雪の妖精の様だった。
「クロト君……隊長のこと……好き?」
「え?……う、うん。シホ姉さんの好きとは違うけどさ」
「前の戦争で……」
あぁ、そうか。クロトはシホの言いたかった事が分かった。
「それでも……好きだよ。あの時、いっぱい喧嘩したから……もう昔のことはいいんだ」
「そっか………男の子っていいね」
そう言うと、シホはクロトの手を取って“行こう”とイザークを追いかけた。


「お前達、元気だったかぁー!」
「おぱっかお兄ちゃん!」
「あ、イザークお兄ちゃんだ!あけましておめでとう!」
子供達が一斉にイザークに群がっていくのに、クロトは少し圧倒されていた。
「……お兄ちゃん、誰?」
袖を引く感触に、現実に引き戻される。
「え?あぁ…ボクはクロト」
「イザークのお友達で、君達の新しいお兄ちゃんよ」
肩にかかるシホの重さに、少しテレながら、クロトは首を縦に振った。
「シホ、クロト、お年玉配るの手伝え!」
お年玉?と聞いて群がる子供達に餅ツケェ!と笑いながら怒るイザークは、子供達を整列させている。
「順番だ、順番!ほら、名前を呼んでいくぞ!」
「「「はーーい」」」


幾つか配り終わった時だった。
「――ちゃん?」
シホは不思議に思った。子供達の歓声の中とはいえ、聞こえない筈はない。
あの子は隊長が大好きだから、私じゃなくて隊長に貰いたいのかしら?と、小さなライバルの事を考えてると、
「あぁ!シホ様……」
戸惑っているシホを見つけ、院長が女の子に近づき耳元でプレゼントの事を大声で伝えた。
その仕草にイザークとクロトも何事かとシホの側に寄る。
「?何なの?」
「シホ、あれは……」
その言葉が紡ぎ終わらない内に、院長に連れられて女の子は手を差し出す。
「あ、あぁ…あけましておめでとう」
イザークはプレゼントを渡し、頭を撫でてあげる。
初めきょとんとしていた女の子は、イザークに撫でられて満面の笑顔を見せた。
「院長……もしかしてこの子……」
シホの問いに、院長は俯きながら出来れば聞きたくなかった答えを話した。
「先頃の戦闘で……イザーク様のデュエルと敵の紅いMSが市街戦を行った際に……」
月の本部で指揮を預かっていたジェセックは、伏兵が現れた瞬間、万が一を考え基地内に預かっていた子供達に民間用のシェルターに移ることを勧めた。
その判断は間違っていない。しかしイレギュラーが起きた。デュエルとソードカラミティの市街戦。
二機の戦いが彼女達の至近距離で起こった。幸い怪我は無かったが、間近にMSの轟音を聞いてしまった彼女は耳が悪くなってしまった。
「……ボ、ボクが……」
唇を真っ青にして聞いていたクロトは、肩を震わせながら女の子に顔を向ける。
「……やめろ!謝って、贖罪の意識に囚われることがお前のすることじゃない」
ガッシリと震える肩を掴まれながら、それでもクロトは吐き出すように続けた。
「…それでも……ボクのせいで……やっぱりボクは……」
キョトンとした顔で自分を見つめる女の子が震えて見える。
「……その分、お前は沢山の笑顔を作る手伝いをするんだ。ささやかでいい、ほんの少しでも人の力になれる人間になれ」
クロトを支えるイザークの指は、強く彼の腕にくい込んでいる。
シホはそんな二人をただ黙って見ていた。
「わかったな?」
「……うん」
か細く、消えいえる様な声だったが、それでも力ある声だった。
「お兄ちゃん泣いてるの?」
そう心配してくれる女の子に、クロトは力強く首を振った。


月面基地に戻った時だった。
「イザーク、シホ姉さん、降りないの?」
「デートだ」
ふっと笑って、エレカに再びエンジンをかける。
あるいは、クロトに対する心遣いだったかも知れない。
「事故とか……気をつけてね」
「俺の運転テクニックを侮るなよ」
「隊長、それって事故る人のセリフな気がするんですけど……」
窘めるシホに、イザークは少し品のない笑い方をして、
「シホはオオカミに襲われない様に気をつけた方がいいぞ……くっくっく……」
「オオカミ?」
怪訝そうな顔をするクロト。月に野生の狼などいないが……
「コッチの話さ」
そう言ってアクセルを踏んだのが一時間前。
「はぁ……た、隊長……あ……」
閑静な郊外の車道の脇に止まっているエレカ。
滅多に車は通らず、地球の明かりだけが二人の陰をなぞっている。
シホの艶めくような白い項に、イザークの吐息がねっとりと絡みつく。
「ひぁっ!……やぁ……隊長……」
狭い車の中で、シホはイザークの手を握って離さない。
「シホ……少し…手が痛い」
「だって……怖いです」
イザークはそっとシホのふくらみを撫であげる。
「ひあっ!」
シホは過剰な反応を見せる。
それもその筈、彼女は目隠しをされていた。
「あ……やっ!隊長っ!」
スッと手を引くイザークに、無者無二しがみつくシホ。
「そんなことしなくても、これだけ狭い車内の中で離れる事なんて出来ないだろうが」
「で、でも……厭……です」
「かわいいことを言う……」
――バタンッ!
突然の大きな物音に、ビクッとシホは身を竦める。
ダッシュボードを開いただけ……等と言えるのは目が見えてるからだ。
――ウヴヴゥゥゥゥゥ...
「なっ何なんです、その音!」
「…………」
沈黙こそが、恐怖心を煽る。
……と言いつつも、行き過ぎには気をつけなくてはならないとイザークは常々思っているが。
(別にシホに“ご主人様”とか言わせたい訳じゃないからな……)
「……ひゃんっ!…あっ……あぁ……やっ……んくぅ……」
クリップローターをシホの乳首に挟みながら、震えるシホの肩に顔を沈めて甘い匂いを堪能する。
この甘さが、イザークの何よりも求めるものだ。
この前の戦闘の後のシホとの情事はいつになく激しかった。戦場に出ることが怖くなった。シホと交わってから。
だが、それが正常だ。むしろシホと交わる前の自分に空恐ろしさを覚えた。
「…うぁ……はぁ……んっ……んあぁ……」
「コッチも……欲しいだろ?」
そう言って、空いてるもう片方の桜に、触れるか触れないかの所でローターを擦る。
「あっ…あぁ……やぁ……ん……」
「ほら……言ってみろ。シホのコリコリに立ってる乳首にローターを下さいって」
「……はぁ……んんぁ……あくぅ……ぁ…あぁぁ……はふぅ……」
シホはいやいやと子供のような仕草で抵抗する。
「……俺の知ってるシホはもっと素直だぞ?」
鎖骨に沿って、イザークの舌がシホを蹂躙する。
「はぁぁんっ……た…い…ちょう……わ、私の……あぁ……駄目……」
「駄目な筈はあるまい。俺の前ではいくら淫らになっても構わないぞ?分かってるだろ?シホ」
優しく頬にキスをするイザークに、シホは体中の力が奪われていく様な錯覚を覚えた。
「……はい……隊長……んぁ…わ、私のぉ……はぁっ……こ、コリコリに立っている……んあぁ……ち、乳首に…バ…イブを……んくぅ……くださ…い……」
「よくできました」
「っんぁあぁっ……あ、あぁぁんっ……やっ…やぁ……んんっ……はぁ……」
シホの先端に噛みつくと同時に、ローターの振動を最大に上げる。
身もだえ、半開きの口から涎を垂れる。
「シホのアソコ、びちょびちょだな」
振り乱れた長い髪を梳かしながら、シホの羞恥を煽っていく。
「んんっ……あぁ……はぁ、はぁ……い、言わないでください……」
目隠しのせいで想像される淫らな自分の姿に、シホは焼き尽くされそうになる。
「んん?こんなにしてるって事は、イジって欲しいんじゃないのか?」
――ウヴヴゥゥゥゥゥ...
新しいローターの音が聞こえる。