48 さん、乙です! これを見ながら、もう一度読み直して見ます。
ありがとうございます<登場人物一覧表
実はこれが初めて読む「ミリタリー物」で、
正直バックグラウンド等階級からしてサパーリわからんのですが、
話が面白いのでつい投下されるたびに読みに来てしまいます。
頑張ってください。
一応断っとくと、四捨五入するとええ年ですわ。
それでも戦争物は映画からしてまともに見たことないんですよ。
451 :
48:04/06/25 22:11 ID:OvIZFhnk
ありがとうございます。そう言っていただけると、大変に嬉しいです。
実のところ、初代スレに投下をはじめたときはエロパロ板ということで勢いを抑えていたのですが、
「1+」に移る頃には気遣いなど完全に忘れてしまい、後編に入ったときには事実上の暴走状態でした。
ですから、難しい用語などは、小道具だと思っていただければそれで良い、と思っています。
私は自衛官ではなく、傭兵や、訓練を受けた軍人でもありません。415氏のように軍事の専門家というわけには行きませ
ん。ですが、個人的な体験から、戦場や戦闘状態にある人間についてはそれなりに知っているつもりです。
ですから、これからも私が書ける限りの質のものを皆さんに提供していきたいと思っています。
さて大規模核戦争の脅威が去って、というか、みんながそう考えるようになって10年以上が過ぎました。
第3次大戦ものの小説など、本屋に行ってまだ売っているのはそれこそ『レッド・ストーム作戦発動』くらいでしょうか。
というわけで、次の短編は第3次大戦ものです。
「終末」まで行くのか? とお思いの方、前作が第3次大戦における局地戦を扱っていたことをお忘れなく。
なお今度の短編では、「戦闘機漫画の古典的名作」、そして「冒険小説の不朽の名作」が原作リストに加わっています。
ハーモニカ・マン(仮題)
序章.スクラップ――そしてY日へ――
ホメイニ師死去か イラン国内に混乱
198X.01.04 - CNN/ロイター
テヘラン(ロイター) イラン政府筋は、11月末にホメイニ師が死去したことを認めた。
死因は心臓発作で事件性は無い模様。記者の質問に対し、イラン内相はこの伝聞を否定した。
また米国務省筋によると、ホメイニ師の死去に伴ってIRP(イスラム共和党)の求心力が低下している模様。
匿名の国務省高官はこの事態への憂慮を表明した。
イラン国内で混乱 複数都市で暴動か
198X.01.06 - CNN
バクダッド(CNN) イラク外務省筋は、現在イラン国内の複数の都市で暴動が発生していることを明らかに
した。これはホメイニ師死去に伴うもので、IRP支持派と反IRP派との間の衝突である模様。
これに対応するためイラン国軍および革命防衛隊は非常呼集を開始し、既にテヘランなど主要都市には戒厳令が
敷かれている。
ソ連外務省 イラン政府の要請受け介入検討
198X.01.10 - CNN/ロイター
モスクワ(ロイター) ソヴィエト外務省の報道官は12日、イラン外相の要請を受けて軍事介入を含めた介入を
検討していることを明らかにした。ホメイニ師が死去したとの風聞のため、イランでは混乱が続いている。
<状況説明――198X.01.14>
米第7艦隊司令部は13日、空母〈インディペンデンス〉以下艦隊主力が前方展開していたディエゴ・ガルシア
島を出港、既に中東に向いつつあると述べた。艦隊はMPS(海上事前集積船)13隻を随伴している。
また、ペンドルトンの第1MEF(海兵機動展開部隊)は隷下の部隊を3個のMEB(海兵機動展開部隊)に再
編成し、随時イラクに派遣することを決定した。
MEBは1個海兵連隊を主力として各種支援部隊,航空部隊などを追加した旅団級の部隊で、MPSに積載され
た装備とドッキングすることで戦闘能力を強化することが可能。
第1MEF,第3MEFは既に緊急即応チームをイラクに空輸している。
ソヴィエト外務省の報道官は本日、イラン情勢について軍事介入を含めた介入を検討していることを明らかに
したが、これを受け、アメリカ国務長官は「ソヴィエトの介入は明白な内政干渉であり、中東地域における力の
均衡を破壊することになり、到底看過できない」と語った。
<状況説明――198X.01.15>
アメリカ国防総省は本日、衛星写真分析の結果としてイラン国境にソヴィエト軍が10個師団以上という強力な
戦車部隊を配置していることを確認した。
また15日早朝、緊急安全保障理事会においてアメリカが提出したソヴィエトへの譴責決議案はソヴィエトの反
対によって却下された。これはイラン情勢について検討するために召集されているもので、この席上アメリカが
提出した決議案は過半数の支持を得たものの、ソヴィエトの反対により決議には至らなかった。
イラン情勢の悪化に伴い14日、合衆国空軍は展開を開始した。先発隊となったのは第366航空団に所属する
戦闘機やAWACSなど41機。これらの軍用機は14日から15日にかけてイラク国内の空軍基地に到着した。なお
保安のため基地の正確な位置は公開されない。
今後、第366航空団の残余勢力および第23航空団,第347航空団、そして中央軍の航空戦力主力となる第9航空軍
が展開予定。
<状況説明――198X.01.16>
16日、イギリス政府は空母〈イラストリアス〉を中核とする海軍部隊をペルシャ湾に向けて派遣したことを明
らかにした。また同日、フランス政府も空母〈フォッシュ〉,〈クレマンソー〉以下の海軍部隊が既にペルシャ
湾に向かいつつあることを表明した。これはイラン情勢の悪化を受けたもので、到着後はアメリカとの共同作戦
を実施する。
既に米国海軍の空母〈インディペンデンス〉がペルシャ湾に向かいつつあるが、米第7艦隊司令部は15日、こ
れに加えて原子力空母〈エンタープライズ〉を主力とする空母機動部隊を派遣していることを発表した。なお
〈エンタープライズ〉機動部隊には第3MEF麾下の1個MEUが乗艦している。
カストー発AFP電によるとイラン情勢に関連して16日、NATO主要8カ国の外相会談が持たれた。この席
で各国はアメリカ支持の姿勢を再確認し、必要に応じ部隊展開を行うことを表明した。
これに関連して西ドイツ政府は16日、既に空軍の実戦部隊がトルコ入りしたことを明らかにした。展開したの
はドイツ国防軍のトーネイドー戦闘爆撃機18機。保安上の理由から所属部隊など詳細は明らかにされていない。
一方ベルギー,ノルウェー両政府は同日、空軍部隊を中東地域に派遣する準備があることを明らかにした。
<状況説明――198X.01.17>
合衆国大統領は15日、中央軍の主力部隊である第18空挺軍団のトルコ派遣を決定した。
アンカラ発AP電によると、第82空挺師団の先発隊としてC-130輸送機20機に搭乗した部隊がトルコのインジル
リク空軍基地に向かった。1番機は命令下令後11時間で離陸した。その後、16日までに第2旅団第3大隊および砲
兵,工兵部隊などの諸隊約700名と各種装備品がC-141輸送機に分乗して到着した。
また国防総省筋によると、フォート・ブラッグのJSOCは既にイラン国内に浸透しているという。この情報の
真偽は不明。
<状況説明――198X.01.17>(承前)
国防総省の広報官は17日、ドイツに駐留するアメリカ軍を中東に派遣するという伝聞を否定した。
これはイラン情勢の悪化を受け、イラクやトルコなど同盟国の防衛強化のため在欧米軍から部隊を抽出し、同盟
国の防衛強化に任ずるという伝聞に答えたもの。ただし、将来的な派遣の含みは残した。
国防総省高官によると、この措置はソヴィエトへの牽制を意識したものとのことである。
東京発共同電によると日本当局者は17日、極東地域におけるソヴィエト軍の活動が活発化していることを
明らかにした。ソヴィエト太平洋艦隊に所属する〈ミンスク〉,〈ノヴォロシースク〉の2隻の空母が出港準備
を開始しているほか、航空部隊,地上部隊も活発に活動している。官房長官はこの事態への憂慮を表明した。
なお現在、合衆国軍に連動して自衛隊は極めて高度な警戒態勢に突入している。
モスクワ発ロイター電によるとソヴィエト外務相は17日、記者会見でアメリカが中東地域に部隊を集結しつつ
あることに触れ、「明らかな戦争準備」として非難した。一方同国のイラン介入については「政府からの要請を
受けている」として内政干渉には当たらないとした。また外相は、「ソヴィエトの権益に対して合衆国が干渉す
ることがあれば、わが国は断固とした反撃に出ざるを得ない」と対決姿勢を表明した。
既に合衆国海軍の空母〈インディペンデンス〉がペルシャ湾に到着、原子力空母〈エンタープライズ〉到着も
間近だが、合衆国海軍はさらに5隻の派遣を決定した。空母〈J・F・ケネディ〉,空母〈サラトガ〉はペルシ
ャ湾に、原子力空母〈アイゼンハワー〉,空母〈ミッドウェー〉,空母〈レンジャー〉およびその随伴艦隊は地
中海に展開する予定。
NASAは先ごろ打ち上げられたスペースシャトル〈コロンビア〉の積荷が偵察衛星に変更されていたことを
明らかにした。
ブリュッセル発AFP電によると、ベルギー軍は空挺コマンド旅団をイラクに投入した。同部隊は3個空挺大
隊を基幹とする3,000名規模の部隊であり、砲兵,工兵など支援部隊も含め展開は既に完了している。
<状況説明――198X.01.18>
パリ発AFP電によるとフランス国防省は18日、FARが中東地域に展開しつつあることを明らかにした。
フランス版RDFであるFAR(Force d'Action Rapide)の先発隊として第11空挺師団が既にサウジに展開
を完了し、第1軽歩兵師団,第2外人落下傘連隊が目下展開中,第9空輸海兵師団,第27山岳師団および第2海
兵落下傘連隊,第13竜騎兵連隊,第1外人装甲騎兵連隊,第2外人歩兵連隊,第3外人歩兵連隊,第5外人歩兵
連隊,第6外人戦闘工兵連隊が展開準備中である。一方、空母〈クレマンソー〉機動部隊は18日地中海に到着し
目下米軍部隊と共同作戦を展開しつつある。
マイアミ発ロイター電によると、15日以降トルコ展開を開始した第82空挺師団は、17日その全部隊をトルコに
展開した。これに続いて18日、第101空中強襲師団も展開を開始した。第18空挺軍団の広報官は同日、23日には
第24機械化歩兵師団の展開を開始できる見込みと発表した。第82空挺師団,第101空中突撃師団,第9軽歩兵師団
とは異なり重武装の機甲部隊である第24機械化歩兵師団の展開により、合衆国中央軍は極めて強力な地上部隊を
現地に持つことになる。
NATOは〈リフォージャー〉計画を発動しており、西ドイツ国境には各国軍が集結中である。民間の船舶お
よび航空機は既に徴集されつつある。
国防総省の報道官は18日、全ての合衆国軍部隊がDEFCON-3の警戒態勢に突入したことを明らかにした。
各部隊は作戦展開に備えて充分な兵員を配置する。これは1973年以来の措置。
国家非常事態を宣言
198X.01.18 - CNN
ワシントン(CNN) 合衆国大統領は18日、国家非常事態を宣言した。
ホワイトハウスの報道官は国民に対し、パニックに陥らず冷静に行動するよう要請した。
すべての州兵部隊および各軍予備役は召集される。
>451
48氏新作乙です。時節柄微妙に洒落になってない気もしますが(笑
がっつり突っ走ったってください。
JSOCがまだあるから、時代は1988年以前だと思う。
とすると、ものすごくスマンがすこーしだけ気になる点がある。
当時の米海兵隊の部隊名のamphibiousがexpeditionaryに変わったのは1988年のことだ。
特殊作戦もそうなのだが、1988年という年は、いわば分水嶺で、これ以前と以後で
米の軍事コンセプトは、ちょいとだけ違うようだ。ご存知とは思うがそのへん、どうか注意してくれ。
それから複数の空母任務部隊が、ペルシャ湾という沿岸海域に入るというものは
当時にあっては少々考えにくい。
80年代を代表するアーネストウィル作戦中ですら、空母のペルシャ湾いりは、ほとんどなかったはずだ。
往事における空母任務部隊の行動特徴は、みつかりにくい大洋で行動すること。
ペルシャ湾のような狭いリットラル水面で、多数の空母部隊が集結するのは
操船余地の問題もあって、ひじょうに難しい。
見つかりやすく、航空作業がやりにくい(離着艦作業中の時空母は全速力で、風上に突っ走る)。
ペルシャ湾に空母がウヨウヨするようになったのは、あくまでソ連海軍消滅後なんだ。
「インド洋到着」で十分だと思うよ。
重箱の隅をつっつくようで、ほんとにスマン。ただどうにも気になってね。
どうしても突っ込んでしまう軍板人間のバカさ加減を笑ってくれ。
459 :
48:04/06/28 17:46 ID:m1dke8MX
>>458 まず年代についてですが、これは意図的にぼやかしています。
私の意図としては80年代後半ですが、第366航空団が混成化されている点からは1992年以降とも考えられます。また、
366航空団の混成化は湾岸戦争の産物である以上、このような世界では決して起こりえないという推測も成立します。
これは、私がこの作品を「レッド・ストーム作戦発動」の世界観の延長線上に作っており、そして原作の設定年代が不明で
あるためです。ただし「MEU」の件については、原作を確認してみたところ「MAU」となっておりましたので、謹んで訂正い
たします。
空母の展開については、確かに仰るとおりでした。原設定ではインディ,エンプラ,ケネディ,サラトガと4隻もペルシャ湾
に展開することにしてしまっていますが、多すぎですね。
アーネストウィル作戦で〈コーラル・シー〉がペルシャ湾に展開したことがあったように記憶しておりますので、1隻ならば
そう無理は無いのではないかと思います。そこで、インディと英の〈イラストリアス〉をペルシャ湾に、エンプラ,ケネディ,
サラトガと仏の〈フォッシュ〉をインド洋に、アイク,〈ミッドウェー〉,〈レンジャー〉と仏の〈クレマンソー〉 (それと多分、新鋭
の伊〈ガリバルジ〉) を地中海に配置する、というのではいかがでしょうか。
私は軍事に特別詳しいわけではないので、458氏のように詳しい方の助言は大歓迎です。これからもどうぞよろしゅう。
ところで、JSOCって今は無いんでしたっけ?
いささか唐突かつ不躾なツッコミに、丁寧なレスをありがとう。
汗顔のいたりだよ。
で、80年代後半というのは面白いと思う。
というか好きだ。もちろん君の火葬戦記も大好きだ。
「第二次大戦型」の大規模消耗戦がありえた、最後の時代だからね。
まあ豪快なドンブリ勘定的作戦が通用した時代、と言えばへんかな?
そのあたりの味が出てくるのではないかと、もう今から期待に胸躍らしている。
ところで「レッド・ストーム・ライジング」。面白い書物だね。
今から読むと、海上目標の識別にかかわる問題が、かなり抜けているようだ。
逆から言えば、だからこそ思う存分米ソ両海軍が戦えたワケで、
なかなか気の利いた演出ではないかと、想像している。
空母のリットラル運用だが、あの時代はほとんどやっていないなあ。
「アーネスト・ウィル」というのは、リットラル作戦の原型でね、
米海軍にしては珍しく、空母が主役にならなかった作戦だ。
かわりに活躍したのが、特殊部隊と水上部隊と強襲揚陸艦。
強襲揚陸艦は、サイドワインダー装備のハリアーとコブラを搭載して
空母の代用品をつとめたそうだ。
ともあれペルシャ湾は、空母機動部隊にはせますぎるんだ。
試しに、空母部隊が有する防衛半径の深さを考えてみてはどうかな?
言うなれば「吉良亭の槍」でね、どーにも使いにくいな。懐に入りこまれると、実に厄介だ。
もちろん日本海のように、かなりのエアカヴァーが期待できるのなら、話は別だよ。
それでもペルシャ湾に空母を入れる!!
となれば、なんらかの重大な理由が必要だろうね。
このへんに、火葬戦記の面白味があるのだと思うよ。楽しみにしている。ガンガレ!!!
忘れていたが、JSOCは、USSOCOM(合衆国特殊作戦軍)に格上げされている。
完全な統合軍。ただし海兵隊が部隊を出すようになったのは、イラク戦後から。
なお空母の展開なんだが、
>>459をみると、いわば「レーマン風味」がよく出ていると思う。
<from the sea>の発想だな。思わずニヤリとしたよ。
なるほど、意図的に90年代の発想で、80年代を描いていると、納得した。
大いに結構。
舞台は、好きなだけいじってほしい。
どうか存分に空母を活躍させて欲しい。
非対象脅威のような現代的なネタはこの際、排除してしまえ。
戦後型空母が第二次大戦時のように
そして、空母が海に空に大暴れするような、つかぬまの夢を見せて欲しい。
(いや、これから進むのは陸戦ものか?)
ただし米国以外のVSTOLキャリアは、基本的に高脅威海面では使いにくい。
あくまでsea controlを重視したフネで、敵地に乗り込んでいくようなフネではない。
小型空母と考えると、ちょっとアレかもしれん。
極端な話、大航空能力のあるフリゲート、大航空能力のある強襲艦
程度に考えておくと、間違いはないと思う。最近だいぶ変わってきてはいるんだがね。
とにかく余計な話ばかりでごめんなさい。当分謹慎するよ。
460は 親衛隊保安諜報部の中で"蜜蜂の悪魔"と呼ばれている凄腕
>>460 むしろ、こういう話をもっと聞きたい。 謹慎なんて切ないこといわないで。
464 :
ガンパレ:04/07/03 15:13 ID:Y0Xfh+mm
うおぅ・・・。
漏れの甘い文なんてかける雰囲気じゃねっす。
とりあえず出直してきます・・・。
>>462 スペルが違うな。
「Demon」ではなく、正確には「Dimon」か?いや、細かい突っ込みスマン。
>>464 何を躊躇う!
ごった煮こそがここの魅力。
あまいの大好きなんだ!
頼む!
書いてくれ!
>466
>ごった煮こそがここの魅力
激しく同意。
何でもありの闇鍋状態がこのスレの本質であり存在意義、とか呟いてみる。
468 :
テンプレ:04/07/03 21:34 ID:ysgSmMvE
なんとなく age
今まで>466の「あまい」をナチュラルに「おまい」だと思っていた。
あ
ま
本格フルコースや懐石料理もいいけれど、時にはジャンクフードを食べたくなることだってあるはず。
とか意味不明なことを言いつつ430-434の続き投下。
ごめんなさい海戦シーン書けませんでしたorz
―――凄く、厭な夢を見ていた気がする。
例えば、航海中に突発的な嵐に遭ったりとか、そのせいで溺れかけたりとか、どうにか助かったはいい
けれど、砂浜で日干しになりかけているとか―――
「―――ッ?!」
意識が急速に明瞭になる。目蓋をこじ開けるのと砂まみれの上半身を起き上がらせるのと目眩で再び
思考能力が明後日の方向へ飛びそうになるのを必死で抑えるのとを同時にこなし、アティは周囲を見渡した。
青い海。白い砂浜。茜に燃える夕空。緑にけぶる森。
美しきかな大自然。山間の寒村で生まれ育ったアティにとっては憧れすら覚える風景である。
全く、うっかり遭難中という状況でなければ今の二十倍は楽しめただろうに。
遭難。
浮かんだ単語が頭痛を引き起こし、アティはこめかみを指で押さえた。
(ええと……何がどうしてこうなったんだっけ……)
順序立てて回想してみる。
一、護送任務に就いているところだった。
二、どこから情報が洩れたのか知らないが、海賊が襲ってきた。
三、戦闘の最中にいきなり嵐が起こった。
四、その際うっかり海に落ちてしまった。
五、
「現在に至る、ですかね」
とりあえず立ち上がりシャツの砂を払う。白衣は海中でもがく内に脱げてしまったのか見当たらなかった。
命があるだけでもまし、なのだろうか。ここが何処かも分からぬし、同僚どころか人っ子ひとり見当たらない
場所ではいまいち有難みがないが。
頭痛はまだ続いている。どころか段々酷くなっていく気がする。
今自分は随分と酷い顔をしているだろう、と思いつつ立ち上がり辺りを見渡した。もうすぐ日が暮れる。
何処か安全に休める場所を見つけねばなるまい。
「……あ」
鬱蒼とした木々の間に、道が見えた。
近寄って調べてみれば、舗装はされていないものの、獣道ではない明らかに人が踏み固めた道。そう古い
ものでもなさそうだ。
これで、少なくとも無人島でサバイバルという事態は避けられる。此処の人間が遭難者に友好的かどうかは
さておいて。
少しばかりの逡巡の後。
アティは森の中へと歩き出した。
晴れ渡る空に星が瞬き始める。びっしりと天空に貼りつき輝く光は、圧迫感さえもたらす。
それとも今の状況がそう思わせるのだろうか。
アズリアはしかめっ面で髪先を引っ張り、隣で分度器を覗く男へと問いかけた。
「どうだミスタ・スティル、位置は分かりそうか」
「……駄目ですね、星の並びが滅茶苦茶だ。せいぜい分かるのは、此処は自分が来たことどころか
星図すら見たことのない場所だってえ程度です」
「……そうか。ご苦労」
苛立ちを悟られぬよう、労いの言葉を口にする。
常に冷静であれ。泰然たれ。
態度で部下に不安を与えるのは避けるべきだ。特に、こんな不安定な状況下では。
過ぎたこととはいえ、今思い出しても腹が立ち―――ぞっとする。
情報洩れがあったとしか考えられない、正確な海賊の襲撃。
そして、理不尽な、嵐。
天地がひっくりかえるような衝撃を、骨の髄まで凍らせる波飛沫を、忘れられようはずもない。
アズリアは副官のギャレオに助けられ無事だったし、他の兵士もほぼ全員奇跡的に生きていたが、
(イスラ……アティ……)
目蓋に生じた熱さを堪えようと奥歯を食いしばる。
何処ともしれぬ島に護衛船ごと流れ着いた時、弟と親友、ふたりの姿はなかった。
大丈夫かもしれない。クイーン・アミスは襲撃に耐え切り沈没せずに済んだのかもしれないし、よしんば
海に投げ出されたとしても後で救出されたのかもしれないし……
握る拳に力がこもる。
そんな都合のいい話。あるわけが、ない。
「隊長?」
呼びかけに慌てて意識を戻す。
「あ、ああ、すまん、もう一度頼む」
「いえ……やはり奇妙です。嵐は多く見積もってもせいぜい四時間。その間に全く位置の掴めない
場所まで流される等、普通なら在り得ません」
そう、在り得ない。普通なら。
だが原因は何かと聞かれれば、首を横に振るしかない。
要するになにひとつ判らないのだ。
溜息を寸前で殺し、思い出したように訊ねる。
「そういえば、ビジュ達はまだ戻っていないのか?」
「偵察に向かったのは三十分前ですよ。戻るにはまだ早いでしょう」
「……まだそれだけしか経っていないのか」
不安が時間感覚を狂わせているのだろうか。
見上げれば満天の星空。
押し潰さんばかりの煌めきに、アズリアは我知らず身を震わせた。
森の中は星明りがあるせいか、意外なほど明るい。
乾いた土を踏む自分の足音がアティの耳に届く。それからまばらな虫の音と、小動物の駆けるがさりという
物音。濃密な木の匂いが、ふと故郷を思い出させた。
帝都では滅多にお目にかかれない、生き物のさわめく闇。
頭痛は大分治まっていた。耳奥のあたりに淡く淀むものがあるが、警戒を乱す程度でもない。強いて言えば
違和感、とでも表せばいいのか、ボタンをひとつ掛け忘れてしまったかのような落ち着かなさがある。
懐のサモナイト石を何度も確かめる。直接的攻撃には自信のないアティにとっては、召喚術だけが頼りになる
武器だ。
違和感。
しかし此処は何処なのだろう。体力の消耗具合からそう長くは海に浸かっていたわけでもなさそうだから、
帝国領海なのは確かだろうが、こんな島があるとは知らなかった。
「海図、見落としちゃったんですかね……」
それとも未だ発見されていなかった島なのか。
違和感。
不安がある。焦燥が胸を灼く。同僚らは無事なのか。他の乗客らはどうなったのか。
海賊は。輸送していた術具は。
自分はこれからどうすれば。
違和感―――
そこまで来て、やっと気づく。
虫の声が何時の間にやら止んでいた。
足を止め周囲に警戒の視線を巡らせる。一度知覚してしまえば、何故それまで気づかなかったのか
信じられない。
こんなにも、強張り重く冷える空気だというのに。
頭痛が少し増した。
脳髄に響く剣戟のせいだろうか。
……剣戟。
戦いの音。
「……っ!」
迷いが動作を留める。情報を得るべく危険を犯してでも近づくか否か。それとも君子危うきに近寄らずを
実践するか否か。
迷っていたはずだった。
なのに足は勝手に音源へと走り出していた。
心臓が喧しい。不快な淀み。
早く、と自分では無い誰かが囁いた。
偵察を命じられてから半時間ばかりが経つ。ビジュに率いられた偵察隊総勢六名は、
ちょっぴり危機的状況だった。
「ちっ……なんだよここは……」
構えた腕が一閃し投具が放たれる。刃はあやまたず、兵士のひとりに襲いかかろうとしていた影へと
吸い込まれた。
「はぐれだらけじゃねェかよっ!」
罵声と共に、もう一撃。
ひこひこ動く五歳児くらいの大きさのお化けキノコ、という、見ようによっては愛らしくなくもない……いや、
限界まで裂けた口のせいで矢張り可愛くないはぐれ召喚獣が、胞子を撒き散らし悶えた。
召喚獣の種族によっては胞子に毒を含むものもあるのだが、これはどうやら大丈夫のようだ。
舌打ちが洩れる。注意はしていたが慣れない場所のこと、知らぬ間に召喚獣のテリトリーに入り込んで
しまったらしく、あとからあとから襲ってくる。
縄張りを荒らしたこちらが悪いといえば悪いのかもしれないが、
「―――はぐれの分際で人間サマに楯突いてんじゃねェ!」
攻撃を受けたなら、徹底的にやり返す。当然の話だ。
「うわわわわわわっ!!」
背後から情けない悲鳴が響く。
振り返れば、
『……』
「見てないで助けて下さいよおっ!」
小さめのお化けキノコが兵士の腕に噛み付いている。軽いパニックに陥ったのかひたすら腕を振り回している
姿は、はっきり言って間抜けだ。嵌めた手甲で召喚獣の歯が止まり怪我することもないのが、じゃれあいに
見せているのだろう。
「……和みますかね?」
「和むかっ!」
怒鳴って懐から抜いたナイフをぶち当てた。
「ビジュさん当たりますって危ないですって!」
「知るかボケ」
落ちて痙攣を起こす赤っぽい傘つきの塊からナイフを引き抜き、止めに蹴りを、
『―――待テ!』
くぐもった制止。背筋に落ちる悪寒に圧され、思いっきり地面を蹴る。
直後、空間を薙ぐ皓い刃。
飛び退き五歩ほど下がったところでやっとビジュは相手を見た。
白く霞む空気を纏い、白い大剣を構える、白い鎧の『何か』。
ニンゲンではない。見れば判る、こんな異質な気を放つものが自分たちと同質であるはずがない。
「化け物の親玉、ってわけかよ」
『……』
「だんまりか……気に入らねェな」
低く呟き鎧に向かって構える。呆然としていた兵士らも慌ててそれぞれの武器を向けた。
鎧が、表記し難い咆哮を上げ。
再び剣が振り下ろされた。
何が起こっているのか。何が起ころうとしているのか。
アティは、走る。息を切らし汗を滴らせ肺を酷使し、尚駆ける。
不安なのだろうか。それこそ非友好的な態度を取られかねないとしても人を求めてしまうほど、心細かった
のだろうか。
―――違う。
この軋みはそれだけではない。
疑問を抱えたまま唯走り、
視線の先に、
見慣れた姿を見つけ
「……っ?!」
頭痛が消える。替わりにかちりと何かが嵌まる音がして、視界がひどくクリアになる。
思考より先に編み上げる術。誓約とサモナイト石を用い異界より力持つ存在を喚び、己が魔力を代償に
使役する。
其れ即ち、召喚術。
二度目の新手は、人間だった。しかも見知った顔があった。
「―――帝国の!」
「海賊?! はぐれとつるむたァ、テメエらに随分お似合いだな」
嘲りは多少引きつっていたかもしれない。
半日前に剣を交えたばかりの海賊らと、見慣れぬ顔がふたつ。赤毛の青年と、理知的な眼鏡美人。
どうせ彼らも一味だろうと見当はつくが、何故ここにいるかは、
(……こいつらも嵐にやられたか?)
まあどうでもいい。重要なのは敵が増えたということだ。
「ファルゼン、貴方は下がって」
『……』
眼鏡の忠告に従い、鎧が戦線から離れる。これで六対六だが、連戦で消耗しているこっちと来たばかりの
彼らではかなりのハンデがある。どこまで戦えるか。いざとなれば逃げる算段もとらねばなるまい。
抜き身の剣を油断なく構え、赤毛の青年が前に出る。
その視線は―――地面に転がる召喚獣の遺骸に注がれていた。
「んだよ。人間の癖に化け物に味方するってえのか?」
「……っ」
青年は視線を上げる。紺青の瞳がビジュを見据えた。
「そうじゃない! ただ、」
責める眼だった。
「こんなの悲しすぎるから……っ!」
悲しい? はぐれが死んだことが? はぐれを殺したことが?
むかついた。
赤い髪と青い目の姿に苛立った。
ひとの都合も知らずに奇麗事を―――!
「偽善者が」
吐き捨てる。敵意に相手が一瞬怯むが、直ぐに強い眼差しを返してくる。
緊張が高まる。誰かが踏み出せば一気に弾ける脆い均衡。破るのは。
「「―――っ?!」」
横合いより魔力が放たれる。同時に夜の森に響く詠唱。
「―――異界より来たれ、シャインセイバー!」
白い輝きが中空に出現する。異界の武器を模るエネルギーの塊がゆらりと揺れて。
落ちる。突き刺さる。形が崩れ弾け衝撃を生み爆風が薙ぐ。
丁度、両陣営の中間、誰もいない場所に。
火花残るその場に滑り込む人影が、ひとつ。
どちらの陣営も、互いに相手への加勢だと思った。
それが誰か分かったのは、
「軍医!」「アティ?!」
ビジュと、赤毛の青年だった。
紅の髪の女は、帝国軍側に背を向け海賊たちに対峙する。ぜいぜいと肩を上下させるその顔はほの白い。
女―――アティはきっと前方を見据え、
「一体何がどうなっているんですか」
青年に問うた。
「せ、先生あいつと知り合いなの?!」
でっかいテンガロンハットを背負った少女の疑問に頷いて、青年はアティに答えた。
「正直、俺にもわからない事だらけだけど……その人達を止めなきゃいけない」
「分からねェなら首突っ込むなガキが!」
「話がこんがらがるので黙っててください! むしろ混乱気味なので下手に動くと何するか不明ですよ?!」
アティのよくわからん台詞にビジュの機嫌が三割り増しで悪くなった。
と。好機と見たか兵士の一人が動き。
「ひとの話は聞きなさあいっ!」
一喝。アティの掌から紅い光が溢れ、
「へ? うわわわっ?!」
兵士の前にぽん、っと召喚獣が現れる。タヌキと茶釜をかけ合わせた姿のそれがおんぼろ唐傘を振るうと
煤が飛び散り兵士の視覚を奪う。
「って何味方に攻撃かましてんだテメエは?!」
「混乱してるって最初に言ったじゃないですか!」
とりあえず直接的なダメージを与える術ではなかったのが、理性の名残とでも言って。いいものか。
「はーい。質問」
急に、細身の男がひらひらと手を挙げる。
「どうぞ」
「ふたつあるんだけど、まずひとつ。この前の怪我、もう治ったの?」
「ええまあ。その節はどうもお世話になりました」
皮肉っぽく答えるアティ。男は全く気にせず、
「じゃあ次ね。貴女がその位置にいるのって、そこの軍人さんの攻撃を身をもって防ごうってつもりなのかしら」
皆の視線が集中する。アティは特に言葉を発せずに、すいっと微笑んでのけた。
「で、どうします? 出来ればそろそろお開きにしたいのですが」
冗談めかした台詞に一同脱力する。
気が抜けた、というか、興を削がれた、というか、忌々しいが現在流れを牛耳るのは彼女だ。
眼鏡美人が今だ警戒を解かぬまま言った。
「……もし、貴方がたに話し合う気があるのなら―――明日の正午、また此処に来なさい」
譲歩、なのだろう。
「上の者に伝えます」
アティが勝手に返事をしたが、咎める者はいない。約一名軽く毒吐く男がいたが、まあ無視していいだろう。
とりあえずこの場はどうにか収まりそうだった。
「―――アティ! 良かった…本当に生きていたんだな」
「幸いにして。軍医アティ、これより隊務に復帰します」
船長室にてアティを迎えたのは、憔悴の色を僅かに浮かべつつも破顔するアズリアだった。
「うん、良かったな……しかしビジュの機嫌が悪かったようだが?」
「不可抗力です」
「……戻って早々、何をしているんだお前らは」
それでもくすくすと笑うアズリアに、
「アズリア」
「何だ」
「非常事態に何ですけど、五分間だけ休みを頂けませんか」
意図が掴めずに眉をしかめ、何故と問い返す。
「疲れたのならもう休んでも」
首が横に振られ。静かに。
「―――今から五分でいいんです。貴女に部下としてではなく、友人として接したい」
アズリアが一瞬呆けて、何事か言い返そうとし、
「あ」
小さく呻き。
崩れる。
「あ…う、ああっ……」
汗と潮のにおいが染みついたシャツを掴み、その下の自分よりほんの少し華奢な身体に縋る。
潮風で痛んだ髪を撫ぜられて―――限界を超えた。
泣きじゃくる。恥も外聞もなく、それでも声を外へと洩らす事だけは避けて。
「ちが…お前も、他の皆も、助か、ったんだから……。それだけで奇跡、みたいなことなんだから…。
でも」
肩に顔を埋めているから、相手の表情は判らない。
「あの子が……イスラが助からなかった…! 私が、ちゃんと守ってあげなくちゃいけなかったのに……っ!」
それでも黙って触れる手は、優しい。
また、この部屋を出れば。先程のことについて報告を受ければ、『隊長』に戻り泣き言は許されなくなる。
だから今くらいは―――甘えても構わないだろう。
あ
漂流キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
軍人さんたちのお仕事の中の人、GJ!
エロでも萌えでもなくてむしろネタ風味なのだけれど、少しお借りします。
長い髪を両脇で三つ編みのおさげにした、やや年かさの方が口を開いた。その手には抜き身
の刀が握られている。
「しかし、徒手空拳でかの支倉令の"妹"たるこの島津由乃を仕留められると思っているのか」
頭の両脇に螺旋のような巻き毛を垂らした小柄な女の唇端がにい、とつり上がる。
「勝てる算段もなしに来るものかよ」
かっ、と頭に血がのぼった。怪鳥のような叫びとともに、由乃は刀を大上段から振り下ろす。
だが、ぎぃん、との鋼同士の弾ける音がするだけであった。
「みたか、"螺旋髪"」
由乃の振り下ろした刀は、瞳子の頭側から伸びた錐のような髪に挟み取られていた。
「白刃取りかっ――」
「支倉令の剣ならば、いかな螺旋髪といえど防げはせんよ、だがおぬしの未熟な技ならこの
とおりたやすいもの」
錐のような髪は甲高い音を立てて回転し、由乃の剣をねじり折ると、さらに軌道を変えて
由乃の喉笛をえぐらんと迫る。
「とったり」
瞳子の哄笑を、ありうべくもない声がさえぎる。由乃だ。瞳子の秘術・螺旋髪の鋭い切っ先は、
由乃の皮一枚傷つけてはいなかった。
「忍法"鉄黄薔薇"――これがわたしの"黄薔薇のつぼみ"たる何よりのゆえんよ」
鉄黄薔薇! 伴天連の秘法によりみずからの体に刃も弓矢も通さぬ堅牢さを与えるもので
ある。しかし、それは秘法を施術するにあたっての地獄の苦痛に耐えたものだけが得ることが
できる。島津由乃は、支倉令の側にありたいとの一心のみでそれに耐え抜いたのであった。
「――ひっ」
「そして、髪をあやつるは紅薔薇のみにあらず」
その刹那、由乃の二本の三つ編みが毒蛇のように鎌首をもたげ、身をひるがえそうとした
瞳子の首にからみつく。ぼきり、との鈍い音が響くと、あり得ない方向に顔を向けた瞳子はゆっくりと膝をついて崩折れ、二度と動くことはなかった。
「おのれの術におぼれたがうぬの命とりよ」
由乃はそうつぶやくと、瞳子のなきがらに軽く手を合わせ瞑目した。
************************************
「これ何ですの、由乃さま」
「今度の文化祭の演目のイメージスケッチみたいなものかな」
「……何をなさるおつもりで」
「今回はあえてオリジナルで、名付けて『リリアン忍法帖』!」
「その山田風太郎と白土三平を足して割ってお湯で薄めたみたいなの、ほんとにやるの?由乃」
「うるさい令ちゃん」
申し訳ありません。冒頭部が切れたのでそこだけ再度投下。
―――――――――――――――――――――――――――――――
西洋焼菓子を思わせる扉を背景に、二人の女は、じっと相対していた。
ともに身にまとうのは漆黒に緑を一しずく落としたかのような深い色の制服。
象牙色のタイも、スカートのプリーツも凍りついたかのように微動だにしない。
「やはりうぬが刺客であったか、松平瞳子」
長い髪を両脇で三つ編みのおさげにした、やや年かさの方が口を開いた。その手には抜き身の
刀が握られている。
「しかし、徒手空拳でかの支倉令の"妹"たるこの島津由乃を仕留められると思っているのか」
頭の両脇に螺旋のような巻き毛を垂らした小柄な女の唇端がにい、とつり上がる。
「勝てる算段もなしに来るものかよ」
かっ、と頭に血がのぼった。怪鳥のような叫びとともに、由乃は刀を大上段から振り下ろす。
だが、ぎぃん、との鋼同士の弾ける音がするだけであった。
「みたか、"螺旋髪"」
由乃の振り下ろした刀は、瞳子の頭側から伸びた錐のような髪に挟み取られていた。
「白刃取りかっ――」
「支倉令の剣ならば、いかな螺旋髪といえど防げはせんよ、だがおぬしの未熟な技ならこの
とおりたやすいもの」
錐のような髪は甲高い音を立てて回転し、由乃の剣をねじり折ると、さらに軌道を変えて
由乃の喉笛をえぐらんと迫る。
GJ!
スレも終盤になって新しい人が。『山風+白土のお湯割り』GJ。
480kbも無事越えたことですし、新スレ立て挑戦してきましょか?
496 :
494:04/07/10 22:41 ID:MaDMr0r2
すいません自分ではスレ立て出来ないみたいです…どなたか、後を頼みます。
スレ建て試行してみます。しばしお待ちを