ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part9

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1名無しさん@ピンキー
ここは池野恋先生の少女漫画「ときめきトゥナイト」が好きな人が
ストーリーの背景を大切にしながらキャラのエロネタを楽しむスレッドです。
エロ無しの作品・新しい作家さんの登場も歓迎しています。

関連リンク、お約束詳細、作品掲載についての注意などは
>>2-3のあたりにありますので、こちらも是非ご覧ください。

前スレはこちら
ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part8
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1056817388/l50
2名無しさん@ピンキー:03/09/22 04:42 ID:GMmudf6t
ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ避難所
http://garuru07.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/tokimeki/bbs/

まとめサイト T.T.S.S.
http://garuru07.hp.infoseek.co.jp/

君も逝こう!煩悩の世界へ!(・∀・)イイ! ■過去ログ at 少女漫画板
ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part1(倉庫逝き)
http://salad.2ch.net/gcomic/kako/985/985500292.html

ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part2 (倉庫逝き)
http://salad.2ch.net/gcomic/kako/993/993954576.html

ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part3 (倉庫逝き)
http://comic.2ch.net/gcomic/kako/998/998101635.html

ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part4(HTML化待ち)
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/gcomic/1006581619/

■過去ログ at エロパロ板
ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part5
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1017/10175/1017577906.html (倉庫逝き)

ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part6
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1032/10320/1032076079.html (倉庫逝き)

ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part7
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1047/10471/1047123533.html(倉庫逝き)
3名無しさん@ピンキー:03/09/22 04:43 ID:GMmudf6t
■お約束詳細
・sage推奨→メール欄に半角文字で「sage」を入れる。
・常識的マナーの範囲で、萌え話・作品発表・雑談などご自由に。
・無用な議論を避けるため、萌えないカップリング話であっても
 それを批判するなどの妄想意欲に水を差す発言は控えましょう。
・荒らしは徹底無視をお願いします。
・議論が長期化しそうな場合は、避難所(>>1参照)へ誘導して下さい。
・SS職人さんだけでなく、原点に戻ってみんなで妄想を書き込みましょう。

■作品掲載について
・カップリングは基本的に原作通りをキボン。
・苦手な方もいるので、激しい性的内容を含むものはその旨タイトルに明記を。
・連載の場合は巻頭に通しナンバーを書き、「>○○」という形で前作への
リンクを貼ってもらえると助かります。
・また、「今日はここまでです」等との発言があると、書き込みのタイミングを迷う人の助けになります。


4名無しさん@ピンキー:03/09/22 04:47 ID:GMmudf6t
459kbだったので次スレ立てさせていただきました。
ちょっと早かった気もしますが、誘導貼れなくなるよりいいと思って……。

ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part9
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1064173291/l50

即死防止にご協力宜しくです!
5名無しさん@ピンキー:03/09/22 04:51 ID:GMmudf6t
>4は、私、1の間違いレスです。申し訳有りません。
6名無しさん@ピンキー:03/09/22 09:32 ID:TsmtSxkk
>1スレ立て乙です!!
7名無しさん@ピンキー:03/09/22 12:11 ID:jvWgW5ST
おつ
8名無しさん@ピンキー:03/09/22 13:01 ID:/16QOTZN
>1
オトゥカレ
9名無しさん@ピンキー:03/09/22 13:03 ID:/16QOTZN
うわー!ageてしまいました(´Д⊂ヽ
ごめんなさい!回線切って(ry
10名無しさん@ピンキー:03/09/22 13:21 ID:uL04z4Ow
乙カレーです。
もうpart9かぁ・・・早いなぁ。
11名無しさん@ピンキー:03/09/22 21:26 ID:dbEibo4T
1さん
乙彼ー!どこまでもついていきますぞ!
12名無しさん@ピンキー:03/09/22 22:17 ID:hNpyXznu
1サソ、ヲツ華麗。

◎⌒ヾ(`・ω・´ )このスレでも萌えに出会えますように…。
13名無しさん@ピンキー:03/09/22 23:10 ID:arKC9EZD
祝・新スレ

 I⌒ヾ(`・ω・´ ) 更なる良スレになりますように。
14名無しさん@ピンキー:03/09/23 02:21 ID:WpUA9UVG
お賽銭投げてるのか!
初めて見たから数時間考えちゃったよ
15名無しさん@ピンキー:03/09/23 03:45 ID:SXqETp4z
新スレおめです。おめでたさに便乗して叫んでみる。

350ターーーーーーン!
貴女のときめきへの愛溢れたエロエロで笑えてかつシリアスな
SSが恋しいよーーーーーーーーーーーー!!!
戻ってきてくれぇぇぇ……(涙

>12-13
お賽銭ワロタよ(w
16名無しさん@ピンキー:03/09/23 21:28 ID:Os1IXXpm
神作家さんが降臨するスレだもの、お賽銭はアタリマエでつ。
…少な杉だけど。(w

このスレでも禿萌え、マターリお待ちしており松。






………マダ?(゚Д゚≡゚Д゚)カナー?
17350:03/09/23 22:50 ID:8biW85Sn
>1タソ新スレ立て乙彼サマでつ。
毎度の事ながらこうやってスレの優良化に努めて下さる皆様には感謝感謝なのれす。
>15タソ 最近あんまり来れてないけどぽつぽつ投下はしてるのでつよ(名無しでつが)
また時間できたら駄文書きに来るので泣かないでくだちい(((;゜д゜)))オロオロ
>12-13 お賽銭おいらもワロタ・・・こぉゆぅの大スキダ(w
18名無しさん@ピンキー:03/09/24 03:13 ID:qnxQPMhq
>17
 やっぱり書いてたんですね。よかった。
 ちょうど、350タンがスレデビューした頃から
 漏れもここに入り浸っているので、なんとなく
 これ、そうかなーっていうのは思ってたんでつ。
 こんな事言うと生意気かも知れませんが、
 文章がすごく上手になったと思います。
 自分のペースでいいので、また書いて下さいね。
19名無しさん@ピンキー:03/09/24 04:02 ID:PREkGKL8
新スレおめ&1タン乙カレー

良スレ祈願にパパ奮発しちゃうぞー (*´∀`)ノ⌒[1000]
20モーリ&シーラ作者:03/09/24 18:10 ID:a3vwMFBc
新スレ立ち上げお疲れさまです
新作ではないけど、「運命の出会い おまけ編」を書いてきたので
興味ある方は是非読んでください。
エロなしで、まったりモードなのでつまんないかも・・・
では。
21運命の出会い おまけ1:03/09/24 18:12 ID:a3vwMFBc
二人を乗せた馬車が広大な敷地をもつ魔界城をようやく抜けて、シーラの故郷である
狼人間村の脇を行き、魔界公立図書館を通り過ぎる。この先にある思いケ池を目指して―
「シーラ、君日本語は話せるよね?」片方の手で手綱を握りながら、もう片方の手で傍らにぴったりと
寄り添ったシーラの肩を抱いてモーリが聞く。
「ええ、大丈夫よ。日本に行くのね」モーリのハンサムな顔を見上げながら、うっとりとした心地で答えるシーラ。
「そうだ。さっきも話したけど、うちの別荘が海辺にあるからそこでしばらく暮らそうと思ってる」
「すてき…。これからずっと、あなたと二人きりで過ごせるのね」
モーリは馬車をいったん止めて、静かに言った。
「いろいろ苦労をかけると思うけど、いつまでも私の側にいてくれ。シーラ、愛してるよ」
「私も愛しているわ、モーリ…。私はあなたの妻―」
二人は見つめ合い、唇を重ねる。熱い口付けに夢中になったところに、二人を冷やかすような
口笛が頭上から聞こえてきた。
「ヒュー。おじさんたち、やるねえ」
びっくりして唇を離して声のした方を見ると、まだ10歳くらいの子供の死神が雲に乗って
二人を見下ろしていた。黒装束に裸足という格好をしたその子は、淡い色をしたウェーブのかかった髪を
風にたなびかせながら、いたずらっぽい瞳を輝かせていた。
乗っている雲を下降させて、モーリたちの目の前に近づく。
「ねえ、やめないで続けてよ」
「こら。大人をからかうんじゃないよ」
「おじさん、だあれ?」
モーリは(このー!私をおじさんだと?)内心思ったが、それでもニコニコして答える。
「おにーさんはね、吸血鬼。それで奥さんは狼女だよ」
「えー?吸血鬼と狼女の夫婦?そんなの聞いたことないや」
「そうだろう?私たちが最初かもな」
「それで、おじさんたちどこに行くの?」
「(この子は…。おにーさんと呼びなさい、おにーさんと)おにーさんたちはね、
これから人間界に行くんだよ」
「何でさ?」

22運命の出会い おまけ2:03/09/24 18:14 ID:a3vwMFBc
「駆け落ちするんだよ」
「カケオチって?」
「あのね…ボクも大人になったら分かるだろうけど、周りに反対されても、どうしても好きな人と
一緒になりたいって時はだね―」
「カケオチするの?」
「そうよ」シーラが入る。「ボクも将来、すてきな恋愛をするのよ―私たちみたいにね」
「ボクじゃないよ、ちゃんとジョルジュって名前があるんだから」ちょっとムッとした顔になる。
「ところで二人はもう結婚の届けを出したの?」いやに現実的なことを聞いてくる子供であった。
「は?」モーリもシーラもきょとんとした顔。
「だって、そういうの必要なんでしょ?お役所に行って…」
「そうだっ、シーラ。人間界に行く前に魔界の役所に行かないと!」
「私もすっかり忘れてたわ―。まだ開いているかしら?」
「ボク、あっいや、ジョルジュ。確か役所はこの辺にあったよな?」
「教えてあげるよ、ついて来て」
ジョルジュの乗った雲を追いかけて、馬車を走らせる。魔界公立図書館の近くに、魔界中央市役所という
建物が見えてきた。
「ほら、ここだよ。全く、大人の癖に世話が焼けるね、おじさんたち」
「ありがとうなー!」ピューと空の彼方に飛んで行った雲を見送りながら叫ぶモーリ。
シーラが馬車から降りるのに手を貸しながら言う。
「もしかしたら、今日は王様の祝典の日だから開いてないかもしれない」
「もしそうだったら困るわね…」
案の上、ドアは閉まっていた。それでも誰かいないかと、重そうなドアをトントンと叩くモーリ。
「すみません、誰かいませんかー!?」
応答が無いので諦めかけたところへ、中から物音がしてドアがギーッと開き小柄な老人が顔を見せた。
「ああ、よかった。急ですみませんが、今から結婚の届けを出したいんですが―」
「今からとな?あいにくだが、今日はもうおしまいじゃ。ご存知だろうが、王の祝典の日でいつもより早く閉めてしまったのでな」
「そこを何とか!急ぐんです、お願いします!!」

23運命の出会い おまけ3:03/09/24 18:16 ID:a3vwMFBc
その老人はモーリとシーラの懇願する必死な顔や、その身にまとっている豪華な礼服、王家の紋章の入った馬車を見て言った。
「…では仕方ありますまい。さ、お入りなされ」
ドアの向こうに足を踏み入れてみると、簡素な建物の中はひっそりと静まり返っていて、誰もいなかった。
「えーと、結婚の届け―とおっしゃってたな。見たところ、あなたは吸血鬼ですな。ではこちらに署名を」
モーリは渡された紙を眺めて言った。
「…あの、すみません―私は吸血鬼ですが彼女は狼人間なんです。この用紙は吸血鬼同士のもののようですが…」
「ええっ、何じゃと!吸血鬼と狼女で結婚ですか!?」
老人は天地がひっくり返ったようなびっくりした顔をして言った。
「そんな時代が来たとは…。いやはや、驚きました。何せわしは昔かたぎな人間ですからね―いや、失礼。
―ところで吸血鬼と狼女用の結婚の届け用紙は置いてありませぬが…」
「そうですか…。ないのなら仕方ありませんね。ではこの紙でもいいのかな?」
「ええ。それで構いません」
モーリは自分の名を書類に書いた後、シーラに羽ペンを渡す。シーラは「種族」の所にある「吸血鬼」という文字に
横線を引いて、「狼女」と訂正した後、自分の名をサインした。
「それで結構です―。エトゥールさん、これであなたたちは晴れて公式な夫婦です」
老人の優しい言葉にシーラは涙ぐんで、モーリに抱きついた。
「シーラ…ごめん。ウェディングドレスを着てちゃんとした式を挙げたかっただろうね―」
「モーリ…いいのよ、そんなこと。あなたがいるだけでもう十分…」
固く抱擁したまま離れない二人に当惑して、ゴホッと咳払いする老人。
赤い顔をしてとっさに離れる二人。老人と握手しながら感謝する。
「ありがとうございました。ご無理を言って、すみませんでした」
「おかがで助かりましたわ、ありがとうございました」
「いや、なんの。お役に立ててわしも嬉しい限りじゃて。いつまでもお幸せにな…」
24運命の出会い おまけ4:03/09/24 18:17 ID:a3vwMFBc
こうして思いケ池に辿り着いた二人。シーラをしっかりと抱きしめがら、池にその身を投げる―
次に気がついた時には、周りを大きな木々に囲まれたすてきな館の前にいた。海の香りがする。
「モーリ…ここは…人間界なのね?」
「そうだ。そしてここがわたしたちの家だよ、シーラ。さ、中に入ろう」
暗い玄関に入って、電気をつけると家の中がぱっーと明るくなった。
そこは、家具も揃っていて暖かく明るい雰囲気に包まれていた。シーラと出会う少し前にモーリが
滞在していたばかりだったので、掃除もきちんとされている。
「大きくはないけど、わたしたち二人で住むには十分だろう?」
「ええ、モーリ。とってもすてきなお家ね…」
「ここが居間。そしてこっちがキッチンだ」
モーリが案内したその部屋は小さいながらも、ガスオーブン、電子レンジ、冷蔵庫など全て備わっていた。
戸棚の中には食器がきちんと整然されて入っている。そして小さなテーブルに椅子が二つ…。
シーラは目を丸くしながら、部屋の様子を眺めていた。人間界の言語なら何種類も話せるシーラだったが、
モーリと違って実際に人間界を訪れることはなかったのだ。進んだ現代のキッチン…何もかも初めて目にするものばかり…。
(これらは一体、何に使うものなのかしら…?)シーラはそんなことを思っていた。
モーリは戸惑うシーラに気付いて微笑みながら言った。
「そうか…君は人間界には来たことがなかったから、驚くのも無理はない。現代の人間界ではね、とても
文明が進んでいて、こうした機械で料理をするんだよ。とても便利だから、魔界の我が家の台所にも一式
持ち帰ったりしてるんだ―」
モーリは冷蔵庫のドアを開けて言葉を続けた。
「これが冷蔵庫―食べ物や飲み物をこうして中で冷やして貯蔵しているんだよ。前に来た時に買ったものが
まだ残ってるな…。ハムにチーズにワインに―ああ、何だかお腹が空いてきた…そういえば今日は
ほとんど何も口にしていなかった。シーラ、悪いけど、簡単なものでいいから何か作ってくれないかな?」
モーリのその言葉にシーラは「えっ?」と一言発したきり、固まってしまった。
その固まった顔で、モーリの顔をじっと見つめる。
25運命の出会い おまけ5:03/09/24 18:18 ID:a3vwMFBc
「シーラ…?ああ、そうか。こうした機械を初めて使うから、戸惑っているんだね。大丈夫、私が使い方を教えるから―」
「いいえ、モーリ。そうじゃなくて…、あの、私そもそも…」
何となくいやーな予感がしたモーリは、恐る恐る妻に聞いてみる。
「シーラ…君、料理したことは―?」
「お料理?―いいえ、いつも家ではメイドが用意してくれていたから…」
(ああ、やっぱり―。そうだよな…箱入りだもんな…)
心なしかガクッと肩を落としたモーリの姿に、シーラがぐすっと涙ぐむ。
「―ごめんなさい、モーリ…私に失望した…?」
その白くて柔らかい頬を優しく触りながら、囁くモーリ。
「いや、失望なんてしてないさ。これから覚えればいいんだよ。じゃあ、今日は私が作るから横で見てなさい」

モーリの作った夕食を食べ終わった二人はしばし居間のソファでまどろんでいた。
「モーリ…寝室はどこ?」シーラが甘い声を出す。
「こっちだ」シーラを抱きかかえて、寝室に向かう。
ドアを開め、暗い部屋の中に甘い口付けを交わす二人のシルエットが浮かぶ。
「ん…待って、モーリ。どんなお部屋か見たいわ」
モーリはシーラを降ろすと、部屋の電気をつける。
きれいで居心地のよさそうな部屋の中を見渡しながら、シーラの目に飛びこんで来たものは、モーリの棺おけと、
それと仲良く並んでいるシングルベッド…。
「この棺おけはあなたのよね…じゃあこのベッドは私の?」
「もちろん」
「あなたは夜、この棺おけで寝るの?」
「―いや、私が寝るのは昼間だよ。夜型人間だから…忘れた?」
シーラは悲しそうな顔になって呟いた。
「そうよね…あなたは吸血鬼。夜は起きてて、昼間は寝てるのよね。私とは全く逆の生活…」
シーラの表情に気付いてモーリが優しく言う。
「シーラ、そんなに悲しそうな顔をしないで。少しでも君と多くの時間を過ごせるよう私も努力するから」
「モーリ…。ええ、分かったわ。ごめんなさい―」
26運命の出会い おまけ6:03/09/24 18:21 ID:a3vwMFBc
モーリはシーラを抱き寄せてキスをした。その広い胸の中で落ち着きを取り戻したシーラは、
自分が魔界の自宅で使っていた身の回りの物がこの部屋の中に置いてあるのに気付いた。
ドレッサーも、その上の化粧品やブラシも自分のものだ。
そして衣装箪笥の中を開けて見ると、自分の着てた洋服が何故か詰まっている…。
「モーリ、これらは全部私のよ。あなたが用意してくれたの?」
モーリも驚いていた。
「いや、知らないよ。ドレッサーなんて前にはなかったから、私も驚いてる―」
シーラはドレッサーの前のスツールの上に置かれた小包に気づいた。上にはメモが貼られている。
「ララおばあ様からだわ!」シーラは夢中でそのメモを読んだ。

私の可愛いシーラや。事の顛末はおまえのお父様から聞かせてもらったよ。
不慣れな人間界で色々と苦労するだろうけど、モーリと一緒に幸せにおなり。応援しているよ。
―苦労と言えば、お前は裁縫は得意だけど、料理の腕は全くダメだろう?
男をしっかり捕まえておくには、まずその胃袋を押さえろ、と昔から言うからね。
いくつか本を送るから、よく読んでおくんだよ。きっと役に立つはずだから。
それと、何の力にもなれなかったお詫びの気持ちも込めて、お前の服や色んな品々を
新居に運ばせてもらったよ。(人間界で着れるような服も用意しておいたからね)
                              孫に甘いララより
             モーリへ、シーラをよろしくね。ひ孫の誕生を待っているよ。

シーラは包みを開けて、「新妻の心得」という本と、料理の本を取り出して、祖母の顔を思い浮かべながら、
見つめた。
「おばあ様ったら…ほんとに孫に甘いんだから―」
「優しいおばあ様だね」感激で涙ぐんでいるシーラを抱きながら、モーリが言う。
(それにしても、ここがよく分かったな…。それにどうやって入ったんだろう)と内心不思議に思いながら―。
「ええ、とっても嬉しいわ。私が今着てるこのドレスもステキだけど、普段着には向かないものね…」
シーラは微笑してから、少し頬を赤らめて言った。
「モーリ…脱がしてくれる?」
「―いいよ。ずっと待っていた」
27運命の出会い おまけ7:03/09/24 18:22 ID:a3vwMFBc
モーリは目にも鮮やかなブルーの光沢のあるドレスを脱がせにかかった。
背中のボタンをひとつひとつ外し、腰のリボンをするりと解き、妻の白い肌をあらわにしていった。
そして全裸になったシーラをベッドに横たわせると、自分も服を脱ぎ捨てていく。
中途半端に終わったお城の小部屋での愛撫の続きを今―と思うと、モーリの手に力がこもる。
シーラはうっとりした表情を浮かべながら、夫となった男がそのたくましい肉体をあらわにしていく様子を眺めていた。
すると彼の胸の辺りに血がついているのに気付いて声をあげた。
「モーリ!あなた怪我しているわ!血が…!」
「え?いや、こんなの大したことない。多分、今日の決闘の時に刃先が触れたんだろう」
「でも…」
「いいんだよ、つばでもつけときゃ治るよ」
「じゃあ私が舐めてあげる。狼女だから、傷口を舐めるのは得意なのよ」
「えっ!いいよ、シーラ」
ベッドから身を乗り出して傷口に顔を近づけるシーラをさえぎる。
「どうして?」
「私の血を君が口にしたら、君の体にどんな変化が起こるか分からないだろ」
「いいのよ、私、吸血鬼になっても―」
「だめだ」モーリはきっぱりと言った。「君は狼人間として生まれたんだから、そのままでいるべきだよ。
それに、大事な娘を奪って行った挙句に、もし吸血鬼にしてしまったら、私は君の父上から一生許してもらえないだろう」
「…分かったわ。あなたの言う通りね」
「―舐めてもらうのは、違う所にしてもらいたいな」と言って微笑しながら、モーリは自分が着てた上着のポケットから、何かを取り出す。
そしてシーラの上に覆い被さりながら、その白い左手を取って、薬指に輝く結婚指輪をはめた―。
「シーラ・エトゥール…君は私の妻だ…」
「シーラ・エトゥール…とってもすてきな響き」
潤んだ青い瞳で夫となった人を見つめるシーラ。モーリもその黒い瞳を潤ませて、愛しい妻を見つめ返す。
「いつまでも一緒よ、わたしたち…」
「ああ、いつまでも―」
そして二人は誓いのキスを深々と交わし、朝日が昇るまで愛し合った―

おわり
28モーリ&シーラ作者:03/09/24 18:35 ID:a3vwMFBc
最初からスレ食っちゃってすみません。
おまけのはずが、ダラダラしたものになってしまいました・・・
今回は幼いジョルジュをちらっと登場させたりなんかして。
シーラさんはこうして努力の末に料理の達人へと成長していったのです・・・
サイドストーリー妄想するのって楽しかったです。
二人の駆け落ち話は一応、これで完結です。
読んでくれた皆さん、どーも有難う!
リクエストお待ちしています!
29名無しさん@ピンキー:03/09/24 22:51 ID:sUE2Zv5p
「新妻の心得」・・・
アロンが読んでたやつですな?
芸が細かくてナイス!
乙でした。
30名無しさん@ピンキー:03/09/25 01:14 ID:sA/CUg9q
乙です。
俊蘭以外のカプはとても少ない中で、
書いてもらえて嬉しかったです。
次はどんなのが読めるのか楽しみにしています。
31名無しさん@ピンキー:03/09/25 18:29 ID:5WnFs6i0
>>18
ありまと〜(*´ー`*)〜です。
とつても元気でたよん。
話のアホさとかでわかるもんなんかな〜(汗
書きかけいくつかあるので、できたらまた投下しにきまつね。

神々の降臨祈願もしとこ〜(*´∀`)ノ⌒[1000]
32名無しさん@ピンキー:03/09/25 21:29 ID:QltaQV9l
モーリシーラ作者さま

三人目誕生はどですか?
33新郎の独り言・・・1:03/09/26 21:57 ID:a68S8PGO
目が覚めた。
一番最初に眼に入ったのは真っ白な天井と、揺らめく朝日。
窓が開いているらしく、涼しい風がカーテンと日の光をくすぐっていた。
起き上がって見慣れぬ部屋を見渡す。
ベッドに手をついたら、何かが敷いてあった。
「んん・・・・・」
傍らに寝ていた江藤の髪だった。
うねうねと川のように流れている。
心臓が凍りついた。
隣で江藤が寝ている?

そうだ。
昨日から新居に越してきたんだっけ。
真新しい家具と家、そして自分の新しい家族・・・。
全てが変わった第一日目だった。
新婚旅行から無理やり帰って来たその日は、江藤家に泊めてもらった。
その次の日は新居の整理に追われた。
そして初めて新居で夜を迎えた。
翌朝になってもまだ江藤と一緒に暮らし始めた実感が湧かない。

しばらくの間寝顔を見つめていた。
長くきれいに映え揃ったまつげはピクリともせず
髪の毛を踏ん付けて引っ張られたというのに起きる様子がない。
あどけない寝顔に相応しい寝息は、小さく規則正しかった。
・・・余程疲れているのか・・・
ブランケットから覗く白い肩は剥き出しで
痛々しい程鮮やかな深紅の跡が散っているのが見える。

34新郎の独り言・・・2:03/09/26 21:58 ID:a68S8PGO
・・・こんなにつけちまったのか・・・
昨夜の激しさを思い出して、オレはちょっと赤面してしまった。
新婚初夜から数えてまだ何日目かだったが、今までの我慢が爆発したとしか言えない程
江藤を求めるオレの勢いは止め様がなく
オレより早く起きた事がない程、江藤は毎回クタクタだった。
わりーと思いつつ、いざ事に及んじまうと止められない。
マジでわりーとは思ってるんだが・・・。
でも止められない。
頭と身体は別モンだな。

でもこうやって寝顔が見れるってのもいいもんだぜ。

そんな自分の中での言い訳をしながら、ブランケットをよける。
江藤はシーツにすがるような姿勢で寝ていた。
白い腕に潰されたもっと白い胸が覗く。
・・・もったいない。
ついその腕をどかしてしまう。
痛そうにつぶれた胸を解放する為に・・・
オレのもんだからな。
「大事にしろよ」
つい声にまで出てしまう。
アホかオレは。
幸いな事に江藤はまだグースカ寝ている。

35新郎の独り言・・・3:03/09/26 21:59 ID:a68S8PGO
仰向けで露わになった胸には、肩よりも沢山の跡がついていた。
白い肌と対照的な赤い印を見てまた赤面してしまう。
ついつい残してしまう所有の印。
オレの独占欲丸出し。
今のところコイツは恥ずかしがるだけで嫌がるそぶりはなさそうだが・・・
やっぱよくね〜かな・・・
改めてみると小っ恥ずかしいしな。
やりすぎもよくねーな。
1日1回ぐらいにしておこう。
オレはぼーっと考えをめぐらし、その先に進みたい手を止める事にした。
シャワーでも浴びてこよう。


ついでに風呂に浸かった。
オレは一般的な長風呂派に属する。
熱いのにじっくり浸かってるのがスキだ。
ジジくせぇだと?
ほっとけ!

風呂から出たらいいにおいがオレを呼んだ。
・・・あれ?江藤もう起きたのか・・・?
ヒクヒクと匂いをたどってキッチンへ。

36新郎の独り言・・・4:03/09/26 22:00 ID:a68S8PGO
「和風だな?」
ネグリジェにエプロンをした江藤が驚いて振り返った。
「びっくりした〜・・・おはよう。真壁くん・・・」
赤い顔でにへら〜と笑ってすぐ背中を向ける。
あなたって言い直そうとして1人で幸せに埋もれてやがる。
ハートマークが飛んできそうなほど幸せオーラ爆発だ。
オレはオレで、このエプロンの下に何も着てなかったらどんなだろう・・・
なんてことを考えていたりする。
裸にエプロン・・・・
血が騒ぐぜ。
まぁ・・・もうちょっと取っておこう。
オレは好きなものを最後に食うタイプだ。

自分でそんな事を思いながら、脳とは全然連結してない手は
エプロンのウエストとうなじを飾る蝶々結びのしっぽをつまんでいる。
蝶々結びってのは「解いて下さい」と言ってるようにしか見えん。
シュルッ
パサッ

「や〜〜ん!何するの〜」
あっ!
やっちまった。
そんなつもりじゃなかったんだが・・・(半分ウソ)
味噌を溶きながら抗議の声をあげる江藤は
足元に落ちたエプロンを気にしながら足踏みする。
オレに元どおり付け直せとねだっているのだった。
37新郎の独り言・・・5:03/09/26 22:02 ID:a68S8PGO
「悪かったよ。ホラ」
エプロンを巻きつけて結ぼうとすると
「固結びはやーよー」
と味噌溶き係が口を尖らせて言う。
・・・なんだと〜?
「じゃぁこうだ」
オレは真後ろにピッタリと立って、両手でエプロンを押さえる。
もちろん胸の上から。
ノーブラだ。
「きゃ〜〜〜やだぁ〜〜〜」
身をよじって嫌がるが、両手は味噌溶き中で離せない。

モミモミ・・・
う〜ん・・・・やわらけぇ・・・
オレも世にはびこるおっぱい星人の仲間入りかな。
こればっかりは自分についてないせいか
どーしてもどーしてもどーしても触りたくなる。
決して大振りでないが、どうしてなかなか満足なサイズだ。
不思議な事に上へ揉んでも横へ揉んでもちゃんと戻ってくる。
おもしれーな。

オレが遊び半分に堪能している間、江藤の手はおたまと菜箸を握ったまま動けない。
「おい。手が止まってるぞ」
わざと耳元に息を吹きかけながら囁く。
どうだどうだ?
耳も弱いんだよな。
いじり甲斐のあるヤツだ。
38新郎の独り言・・・6:03/09/26 22:03 ID:a68S8PGO
ピクッと反応した江藤の表情は、横顔だけでも味噌汁はもう眼中にないことがわかる。
そんな表情すんのか・・・。
反則だぜ。
まだ暗がりでしか肌を合わせたことがないから、こんな顔するなんて知らなかった。
勝手にその表情に誘われて、首筋にゆっくりと口付ける。
片手を伸ばして鍋の火を止め、江藤の手からおたまとハシを取り上げる。
もう江藤はなすがままだ。
開きかけた唇は挑発しているようにしか見えない。

やべー・・・・

いただきます。



=====3時間後=====


マジで腹が減ったオレは、冷めてしかも溶きかけの薄い味噌汁をすすりながら
盛ってあった漬物と炊飯器の米だけ食って飢えを満たした。
味噌溶き係はソファで寝ている。
まだまともな手料理にありついてないオレ。
全部自分のせいだがな。
寝ている江藤を見やる。
白い足をソファからたらして寝ている姿も、しどけなくて妙にそそるな。
1日1回は明日からにするか。
39名無しさん@ピンキー:03/09/26 22:05 ID:a68S8PGO
終りです。
王子はこんなにしゃべるヤツじゃないな〜・・・・
イメージ崩れちゃったらスマソ
40名無しさん@ピンキー:03/09/27 02:28 ID:9RXFm9eO
真壁くんむっつりそうだから…
意外とこんな風に壊れちゃうかもね〜(藁
41名無しさん@ピンキー:03/09/27 09:48 ID:t6Tk6lXB
ぐっじょぶ。
かなりスキスキな作品です(>_<)
ぜひぜひシリーズ化してください。
42名無しさん@ピンキー:03/09/27 11:29 ID:kZ17/ioo
>・・・もったいない。
とか
>どーしてもどーしてもどーしても触りたくなる。
とか激ワロタ(゚∀゚)
同じくシリーズ化希望です!
43名無しさん@ピンキー:03/09/27 12:51 ID:r50biJMj
笑って楽しめる良作でし〜〜!!
作者はひょっとして…
>1日1回は明日からにするか。
↑も無理でしょう。きっと毎日がこの繰り返し!?
まともな飯はいつになるんでしょうな?
44名無しさん@ピンキー:03/09/28 15:28 ID:ZqjPEsKK
三人目誕生ストーリーはかなり想像力を働かせないと、
難しそう・・・
ランゼ、リンゼときて、次は何て名付けるんでしょう・・・ルンゼ?

小品ですが、書いてきました。三人目とは関係のない話だけど。
45モーリ&シーラ作者:03/09/28 15:29 ID:ZqjPEsKK
あー、すみません!
さげるの忘れてしまいました・・・
46温泉旅行1:03/09/28 15:31 ID:ZqjPEsKK
江藤一家は今、温泉旅行に来ている。一家と言っても、居候王子・アロンと無理矢理
くっつけようという椎羅の策略によって、蘭世だけはトホホのお留守番。
こんなやり方はいくらんなんでも強引過ぎたんじゃ…と娘を不憫に思う望里の一言が
妻の逆鱗に触れてしまった。満月の影響も手伝って、すっかり狼の姿へに変身した椎羅。
せっかく露天風呂を満喫中だったというのに、ここに強烈な夫婦喧嘩が炸裂した。
大事な所をタオルで隠しながら、哀れにも逃げ惑う望里と、それを追いかける椎羅。
羅々おばあちゃまも鈴世もぺックも、完全に他人のフリ、他人のフリ、他人のフリ…。

そんな大乱闘の挙句、ようやく喧嘩も一段落して部屋に戻った望里は、こんな時の為にと
自宅から持参した救急箱の中からバンドエイドやら包帯やらを取り出して、ムスーッとした表情で
自ら傷の手当てをしている。
浴衣姿の椎羅は、髪を乾かしながら、そんな夫の様子を見てすまなそうな顔になった。
「あなた、ごめんなさい。手当てなら私がやるわ、貸して」
そう言って夫の手からバンドエイドを取り上げると、傷口に勢い良くぺシッと貼った。
「いてっ!もっと優しくやってくれよ」
「はいはい」
「ハックション!あー、湯冷めしちまったよ…全く、満月の夜の度に
お前の餌食にされるんじゃこっちは身がもたん」
「だから、ごめんなさいって謝ってるでしょ。…でも仕方ないのよ、満月の晩ともなると
体中に狼の血が燃えたぎっちゃって、暴れずにはいられないの」
「でも同じ狼女でも、おばあ様は何ともないじゃないか」
襖を一枚隔てたすぐ隣の部屋では、羅々と鈴世とぺックは既に寝ている。
「あらだって、おばあ様はもうお年でしょ?でも私は女盛りなの―」
(200歳近くで女盛りか…?)と望里は内心思ったが、そんな事を言ったら最後、
結果は痛いほど予想できるので敢えて口にはしない。
47温泉旅行2:03/09/28 15:37 ID:ZqjPEsKK
「…それでどうなんだ、今回はもう気が済んだんだろうな?」
「―そうね、まあ…」意味ありげに椎羅が微笑んだ。
「まあ、とは何だ…?まだ暴れ足りないのか」慄く望里。
椎羅は質問には答えずに、すっと夫の背後に回って優しい声で囁いた。
「…あなた、肩を揉んであげますわ」
「え?あっ、すまんな―」
妻がさっきとは打って変わってしおらしく優しいので、望里は当惑を隠しきれない。
(何かある…。何なんだろう、こりゃ空恐ろしいぞ、おい…)
肩を揉んでもらいながら、心の中で自分と対話する。
椎羅は思った、(暴れ足りないんじゃなくて、ホントは抱いてほしいのよね…。でも、
ちょっとワガママかしら?…この人がその気になるまで、もう少し待ってみましょ―)
「あなた…気持ちいい?」耳の後ろで椎羅が甘く囁く。
「え?あ、うん…」
洗い立ての髪の甘い匂いが望里を誘う。肩に妻の手のぬくもりを感じながら、さっきまでの
猜疑心は次第に薄れていき、浴衣姿の妻も悪くないな…と望里は思っていた。
お風呂上がりで、頬がうっすらと紅潮した椎羅は美しかった。薄い浴衣の中に隠されたその肉体が、
まるで愛し合った後のようにピンクに色づいているのを想像して、望里は股間にうずきを感じ始めていた。
そんな時、椎羅の舌が彼の耳たぶに触れ、優しく噛んだかと思うと、その手が伸びてきて浴衣の前を開いて、
彼の分身をじかに掴んだ。
「―ねえ、あなたの、舐めていいかしら?もっと気持ち良くさせてあげるわ…」
突然のことに望里は赤面しながら、小声で言った。
「し、椎羅!すぐ隣に鈴世たちがいるんだぞ」
「大丈夫よ、あなた―」素早い反応を見せている夫の男根をしっかりと握って離さない。
「みんなぐっすり眠っているわ、ね?」
そう言いながら、椎羅が自分の足の間にすばやく入りこんで、顔を埋めてきたのを望里は抵抗できなかった。
望里のものの先端を舐めた途端に、それはさっきより固さを増し、一段と大きくなっていった。
頭の中ではこんな所でだめだ、と思いつつも、ペニスはすっかり勃起していた。
「すごいわ…」いったん口を離し、嬉しそうに呟いた後、椎羅は反りかえって硬直しきった砲身の
裏側をゆっくりと舐め上げて行った。
48温泉旅行3:03/09/28 15:45 ID:ZqjPEsKK
「う…」望里の口から抑えた喘ぎ声が漏れる。
椎羅は熱い夫のものを口一杯に頬張って、淫らな音を立てながら、何度もその口を
上下に移動させる。
髪を振り乱し、我を忘れて…。こわばりの根本の膨張した袋も口の中へ運ぶ。
興奮が増し、妻の体を愛撫したくなった望里は、なおも自分のものをくわえ込んだままの
妻のお尻に手を伸ばして、撫で回した。浴衣の裾をめくり上げ、直接その肌に触れる―
温泉の効果もあるのか、まるで手に吸いつくようにしっとりとして弾力のある肌だった。
その感触を楽しみながら、片手を前の方へと移動させると、椎羅の腰がのけぞった。
その瞬間、音を立ててその口から望里のこわばりが外れた。望里は妻を布団の上に仰向けに寝かせた。
そしてその手で妻の谷間に触れ、ずぼっと中に入れる。
「あっ…はあっ…私、もう濡れてしまっているでしょ?」
椎羅の言う通り、彼女の秘境はもうしとどに濡れていて、蜜が溢れだし、望里の指にまとわりついた。
「ね…?もう、こんなに…ああっ…んっ…」
椎羅の秘所を望里の指が遠慮なく掻き回すと、ゾクゾクするような快感が椎羅の体内を駆け巡った。
「あんっ、ああっ…」体をくねらせながら、悦びの声を上げる。
「しっ…!声を小さくしろ…聞こえるよ」
咄嗟に手のひらで椎羅の口を押さえる。
「…っはあ…でも…そんなこと、言ったって…うっ…」
夫の手を外して、喘ぐように訴える。
望里は妻の浴衣の黒い紐をするりと解くと、それで彼女の口をふさいだ形で頭の後ろでしっかり結んだ。
「椎羅…こうするけど、我慢してもらうよ」
49温泉旅行4:03/09/28 15:47 ID:ZqjPEsKK
自分も浴衣を脱ぎ捨て、何もまとっていない妻の体の上に覆い被さる。
その豊かな乳房を揉み、舌で尖った先端を舐めまわしながら、空いた方の手は花弁の中をいたぶり続けている。
薄い襖の向こうに家族がいて、しかも猿ぐつわ状態であることからくる興奮もあって、
椎羅の全身はより一層赤く色づき、中心部からは熱い蜜が止めどもなく溢れ続けた。
口にあてがわれた布越しに、その睦声がかすかに漏れる。
のけぞって、反った首元には赤い血管が浮き出て、吸血鬼望里をこの上なく刺激する。
(いかん、このままでは妻の首に牙を立ててしまいそうだ)と感じた望里は、
蜜が糸を引いている指を抜いて、今度は椎羅をうつ伏せにさせた。
そして後ろから羽交い締めにして、乳首をつまみながら、うなじや肩に舌を這わせる。
「椎羅…後ろからいくよ、いいかい」
夫の方を半ば振り返り、その瞳を潤ませて何度も頷く椎羅。
太くて長さもある一物を妻の裂け目に突き立て、一気に膣内に押しこんだ。
椎羅の全身が悶えを見せる。奥深くで結合させた後、ゆっくりと体を動かし始める。
舌で椎羅のうなじや耳たぶを愛撫しながら、次第に激しく腰を打ちつける望里。
淫らな音が静かな部屋に響く。
望里の腰の動きは速さと勢いを増して行き、二人は絶頂へと駆け上って行った―
50温泉旅行5:03/09/28 15:53 ID:ZqjPEsKK
そして翌朝―家族は部屋で朝食を取っていた、昨夜夫婦が激しく睦み合ったその部屋で。
「はい、あなた。あーんして」
上機嫌この上ない椎羅が、夫の口にご飯を運んでやっている。
「美味しい?」
「ああ、でもお前の作る料理の方がもっと美味しいよ」
これまたご機嫌でニコニコしている望里が、今度は妻に食べさせている。
これを見守る羅々も鈴世もぺックもただただ唖然―
「お父さんたち、仲直りしたの?」鈴世が不思議そうに聞く。
「え?あらやだわ、鈴世ったら。私たち喧嘩なんかしましたっけ、あなた?」
「喧嘩?さてな、したっけ?」
仲良く微笑み合っている二人を前に羅々は赤面した。
(まったくもう…。この二人、喧嘩ばっかりやってるようで、そのくせ
やることはしっかりやっているんだから。昨夜のことはこの羅々にはお見通しだよ。
…ま・結構なことだけどね―)
その時、鈴世が無邪気な調子でふと言い出した。
「あのね、ボク昨日、お父さんとお母さんがぎったんばっこんしてる夢見たんだ」
「ええっ!?」望里も椎羅もそして羅々までも、ギクーッとした凍りついたような表情を浮かべている。
「り、鈴世!?…ぎ、ぎったんばっこんって、何のことかな!?」
望里がコウモリ印のついたハンカチで汗を拭いながら言う。椎羅が夫の袖口を思わず掴む。
(まっ、まさか、気付かれてんのかな、おい)鈴世の言葉を待っていると―

「シーソーだよ、お父さんとお母さんがシーソーに乗ってたの。ホラ、公園にあるでしょ」
「!!!」大人3人が派手にずっこける。
「ははは、なーんだ…シーソーね。…あせったよ…」
「オホホ…」望里も椎羅も羅々も苦笑い。
「何であせるの?ねえ!」追求の手を止めない鈴世。
(うーん、シーソーか。当たらずとも遠からじって所だな。―我が子ながら勘のいい子だな…)
思わず感心してしまう望里と椎羅であった。

……しかし、感心してる場合かね?と、羅々は老婆心ながら心配になるのであった―

おわり
51モーリ&シーラ作者:03/09/28 16:02 ID:ZqjPEsKK
シーソーのことって、ギッタンバッコンって言いますよね・・・?
おバカな話でした。
ランゼを家に残して、シーラママはいい気なもんですね・・・
5274243:03/09/28 16:16 ID:mb6Tz1Um
援交は禁止・・・2003/9/28更新済み
http://sagisou.sakura.ne.jp/~deai2/cgi/out.cgi?diclub
53ある夏の出来事1:03/09/28 22:26 ID:GaPnZa7V
高校2年の夏。
真壁俊ひきいるボクシング部は、夏の合宿に来ていた。
とある山奥のお寺。3年生は日野、2年生は部長の俊、今年に入って入部してきた
1年生が4名とかなり大所帯になってきた。
マネージャーは神谷曜子と江藤蘭世。曜子は飛び級するために勉強に忙しく、
最終日しか参加しない。蘭世は大忙しだった。
1年生のマネージャーを入れないのには訳があった。志願者はみんな俊目当て。
俊がかたっぱしからけちらしてしまったのだ。
蘭世が一人でパタパタしていると、1年生の藤井君が手伝ってくれる。とても自然に。
「藤井君、いいのよ。気にしないで。トレーニングしなきゃ」
ニッコリ笑顔の蘭世が気遣う。
「いえっ。いいっすよ。トレーニングもちゃんとやるし。」
藤井がちょっと頬を赤らめていう。
藤井が蘭世を好きなことは部員みんなが気が付いていた。蘭世を例外として。
俊も気づいていたが、人を好きになる気持ちは止められないことを誰よりもしっている。
藤井も俊と蘭世の関係をわかっていた。ボクシング部ならみんな知っている。
普段無表情の俊が蘭世にだけやさしい笑顔を見せること。
蘭世がその笑顔にとろける笑顔を返すこと。二人がやさしい視線をからめること。
ここにも曜子という例外がいたが。
54ある夏の出来事2:03/09/28 22:27 ID:GaPnZa7V
{真壁先輩は江藤先輩になんだかんだいったってやさしいし、
あの二人は好きあってる。あきらめなきゃ}
いつもおもうのに、視線がどうしても蘭世を追ってしまう。

昼食を終え、昼のトレーニングが一段落したころ、
蘭世がパタパタとどこかへ出かけようとしていた。
気が付いたのは、合宿所にタオルを取りにきた藤井。
「江藤先輩どこいくんっすか?」
「あっ。またドジっちゃって。思ってたよりみんな食べるから
食材足らなくなっちゃったの。ちょっと買ってくるね」
「ちょっとってかなり遠くまでいかないと店ないじゃないですか?
1時間はかかりますよ、1人じゃ無理です」
そう、女の子1人で大量の食材を持って山を登ってくるなんて不可能だ。
「一緒にいきます」藤井は強い口調でいった。
「・・・ごめんね。じゃあお言葉に甘えさせてもらいます」
蘭世はすまなそうな顔をしてにっこりほほえんだ。
二人は一緒に歩き出した。片道1時間ならなんとか夕飯に間に合う。すこし早歩きだ。
行きは問題なく山を下りることができた。お店でにんじんやらじゃがいもやら大量に買い込む。
大きな袋2つ分の買い物を済ませた。
「藤井君についてきてもらってよかった。こんなに買ったら、時間までにもどれそうにないもん」
二人仲良く荷物をもって山を登っていくと、雲行きが怪しくなってきた。
「天気やばそうですね。いそぎましょう」
言ってるそばからどしゃぶりになってしまった。
二人は近くに見えた洞窟で雨宿りをすることにした。
洞窟に飛び込んだときには、二人ともびちょびちょで・・・。
「江藤先輩、大丈夫ですか?」
55ある夏の出来事3:03/09/28 22:29 ID:GaPnZa7V
藤井はみてしまった。蘭世のTシャツが雨に濡れて、すけすけになってる様を。
髪が身体に張り付いて、妙に色っぽいうなじを。

夕方トレーニングを終えて合宿所に戻ってみると、蘭世がいない。
おかしいなと思い、冷蔵庫をみてみると食材が少ないので、
買い出しにでもいったんだろうなと予測できた。
荷物持ちにおいかけようと、いったん部員全員の部屋へ戻る。
するとそこで部員が1人足りないことに気が付いた。
「おい、日野、藤井しらないか?」
「そういえば、あいつ、タオルとりにいくってここに戻ってからみてないな」
「あいつがサボるなんてめづらしいな」口々に部員がはやし立てる。
俊はイヤな予感がした。

6時になっても、蘭世と藤井は戻らなかった。本格的に降りだした雨は止む気配はない。
はじめは「藤井が江藤をかっさらって逃げた」
など冗談めかして言っていた部員ももうなにもいわなくなった。
「ちょっと出てくる」
そう言ったかと思うと、あっという間に部長はいなくなってしまった。

ざわざわしだした1年の中で、
「江藤のことになると、真壁もただの男だね」と日野がぼそっとつぶやいた。

56ある夏の出来事4:03/09/28 22:29 ID:GaPnZa7V
「江藤先輩は真壁先輩とつき合ってるんすか?」
藤井は、今すぐにでも襲いかかりたい気持ちを
話をすることでまぎらわかそうとしていた。
真っ赤になった蘭世は少しの間の後、
「えぇっ?うっ・・・・ぅん。だと思う・・・・」
自分が答えてよいものか、おずおずと答えた。
藤井はちょっとムッとした。
「なんで自分のことなのに、『思う』なんすか?」
「だって、そういうこと口にだしていったことも言われたこともないから」
(彼女っていっていいのかな?いいよね?真壁君・・・)
蘭世の思考はもう完全に俊にイッちゃっている。
しかし、藤井はそんな蘭世に気が付く余裕なんかない。
『彼女』だとはっきりいってやらない男のために
自分はあきらめようとしているのか・・・
フツフツと怒りがこみ上げてきた。

豪雨は止む気配はなく、俊はかなり焦っていた。
男の理性はガラスのように脆いことは痛いほどわかる。
自分ですら蘭世を想う気持ちから、
何度も何度も何度もヤバイ時をやっっっとの思いで
乗り切り、常に「もうダメだ」と思うのに。
(あの無防備な江藤が男のサガを分かるわけがない)
しかも相手はあの藤井なんだ・・・・
(江藤、俺をよべ!!)
祈るような気持ちで、蘭世の思考をたどる俊。
57ある夏の出来事4:03/09/28 22:32 ID:GaPnZa7V
「江藤先輩は真壁先輩とつき合ってるんすか?」
藤井は、今すぐにでも襲いかかりたい気持ちを
話をすることでまぎらわかそうとしていた。
真っ赤になった蘭世は少しの間の後、
「えぇっ?うっ・・・・ぅん。だと思う・・・・」
自分が答えてよいものか、おずおずと答えた。
藤井はちょっとムッとした。
「なんで自分のことなのに、『思う』なんすか?」
「だって、そういうこと口にだしていったことも言われたこともないから」
(彼女っていっていいのかな?いいよね?真壁君・・・)
蘭世の思考はもう完全に俊にイッちゃっている。
しかし、藤井はそんな蘭世に気が付く余裕なんかない。
『彼女』だとはっきりいってやらない男のために
自分はあきらめようとしているのか・・・
フツフツと怒りがこみ上げてきた。

豪雨は止む気配はなく、俊はかなり焦っていた。
男の理性はガラスのように脆いことは痛いほどわかる。
自分ですら蘭世を想う気持ちから、
何度も何度も何度もヤバイ時をやっっっとの思いで
乗り切り、常に「もうダメだ」と思うのに。
(あの無防備な江藤が男のサガを分かるわけがない)
しかも相手はあの藤井なんだ・・・・
(江藤、俺をよべ!!)
祈るような気持ちで、蘭世の思考をたどる俊。
58名無しさん@ピンキー:03/09/28 22:41 ID:GaPnZa7V
すみません。
まちがって2回いれちゃった。ごめんなさい。
しかも、この後、ちょっと時間ください。明日にはいれます。
59名無しさん@ピンキー:03/09/28 23:13 ID:gqsBi5e1
>58タソ 
明日が待ち遠しいのですぐ寝るッス。
(*´Д`)ハァハァ
60名無しさん@ピンキー:03/09/28 23:22 ID:1c7EhViz
蘭世しっかりしてくれ〜 (*´Д`)ハァハァ
61名無しさん@ピンキー:03/09/29 22:00 ID:iTdmbmrO
まだかな〜(*´Д`)ハァハァ
62名無しさん@ピンキー:03/09/29 23:15 ID:tLSmZrJx
おそくなってごめんなさい。
ダンナにパソ君とられてた。
63ある夏の出来事5:03/09/29 23:16 ID:tLSmZrJx
洞窟での会話もとぎれがちになっていた。
蘭世は俊に思いを馳せている。心配をさせていることが
すごく気がかりだった。
隣に男がいることをそれほど意識していない。
俊が自分の心配をしてくれていると
思える程の自信はもてるようになった蘭世。
その蘭世とは対照的に隣にいる女のことしか考えられない
男が一人。

藤井の心はきまった。
(襲ってしまおう。)
こんなチャンスは二度とない。
真壁先輩に殺されようとも、これは神が与えた最後の
チャンスなのだ。

狼がとなりにいるのに気が付かない赤ずきんちゃんの思考は
完全にまわりの物音が聞こえないほど自分の世界にひたっていた。
64ある夏の出来事6:03/09/29 23:18 ID:tLSmZrJx
ジリジリと間合いを縮める狼。

その時、ピカッっと稲妻が走ったかとおもうと、
ものすごい音で「ゴロゴロゴロっ」と音がした。

藤井が飛びかかるより一瞬早く、蘭世は頭を抱え悲鳴をあげていた。

めがけていた標的が突然いなくなっても、意をけっして
飛びかかった勢いは衰えず、洞窟の壁にぶちあたる藤井。
当たり所が良かったのか、悪かったのか気を失ってしまった。

蘭世の悲鳴を超音波のごとく感じとった俊が一瞬でテレポートしてきた。
蘭世はなにがなんだかわからず混乱していた。
自分が悲鳴をあげたら、隣の下級生は気絶していた。
そして突然、俊が現れた。
(私、新しい能力でも生まれたのかしら。藤井君大丈夫かな?)
たった今自分が襲われそうになったなんて露知らない鈍感娘は狼を
気遣っていた。

65ある夏の出来事7:03/09/29 23:19 ID:tLSmZrJx
俊は完全に誤解していた。
蘭世が悲鳴をあげた。
その後、蘭世のことを好きな藤井は気絶している。
これはどう考えてもなにかあったに違いない。
(藤井になにかされそうになって、魔力で自分を守ったんだな。)
まあ、あながち間違いとはいえないが。
冷静に考えれば、蘭世に大の男をノックアウトできる
能力がないことぐらい察しのよい俊ならわかりそうなものだけど。
たったいままで危険にさらされていた自分の彼女が
どんなに心細かっただろうか。本来なら自分が守らなければ
ならないのに、本人に身を守らせてしまった。
そう思うと、とめどなく愛情が溢れてくる。
俊は今までにないほどに、強く強く蘭世を抱きしめた。
「お前は俺のもんだ。誰にもわたさねぇ」
普段なら絶対に聞かない言葉が蘭世の耳に入る。
突然すぎて、言葉の意味がそのままの意味として
頭にはいってこない蘭世。

それからかなりの時間抱き合ったままの二人。

蘭世は完全に幸せに酔っていた。
なぜ俊がこんなに愛の言葉をささやいて
くれるのか理由はわからないが、
そんなことにまで頭がまわらない蘭世
そんなことはどうでもいいのだった。

66ある夏の出来事8:03/09/29 23:20 ID:tLSmZrJx
「うぅ・・・」
うめきながら、頭を上げる男が一人。
俊はさっきまで蘭世を包み込んでいた
やさしい心は吹っ飛び、鬼のような形相になっていた。
藤井は恐ろしくて身動きができない。
リング上なんて目じゃないぐらいの殺気を
ビシビシ感じていた。
殺される覚悟はあったけど、
実際気が付いたらのびていて、なにもできなかったのに・・・
死んでも死にきれない・・・・
絶望感に打ちひしがれていると、
その場に似つかわしくない声が。
「藤井君、大丈夫?頭うったの?」

びっくりしたのは俊だった。
今にも蘭世の目の前で乱闘を起こす気マンマン
だったのだから。
(いくらお前でも自分を襲った相手になに考えてんだ?!)
嫉妬にも似た思いにとりつかれる。

67ある夏の出来事9:03/09/29 23:21 ID:tLSmZrJx
蘭世はアッという間に
藤井の側に座り込み、頭をさわって
どこも傷がないかさわっている。

さすがにここまでくると、怒り狂った俊で
あっても、なにかがおかしいと思い出す。

瞳孔が開いた状態で視線を合わせようとしない
藤井と、蘭世両方の波長に合わせて過去を読んでみた。

俊は頭が痛くなった。
藤井に関しては、俊の心配は的中したが、
それよりなにより
(この鈍感オンナが〜〜)
とほんのちょっとだけ藤井が不憫になってきた。

かなり不機嫌になった俊と、完全におびえて小さくなっている
藤井と、さっきまでの抱擁を思い出し幸せニコニコ顔の蘭世と
いった対照的な3人で合宿所に戻っていった。

その後、俊がなんども蘭世に手を出したいと欲望にとらわれても
藤井のことを思い出すと、自分も蘭世の貞操の守護神に
ノックアウトされてしまうんじゃないかと
結局結婚まで手を出せなかったのは俊しかしらない。

おわり。
68ある夏の出来事作者:03/09/29 23:27 ID:tLSmZrJx
こうやって延ばし延ばしにして、こんなんでごめんなさい(^_^;)
蘭世って絶対運がいいというか、なにかよくわかんないものに守られてそうで
しかも、本人気づいてなさそう・・・と思って書きました。
まわりの男達かなりかわいそう。。。
69名無しさん@ピンキー:03/09/30 08:51 ID:CdFVwzAE
藤井も気の毒だが、まきゃべくんはもっと気の毒(笑

>>ある夏の出来事作者さん
ごちそうさまでしたw
70名無しさん@ピンキー:03/09/30 20:17 ID:x8X1ex99
温泉旅行、笑えたっす。
200歳近くで女盛りか?・・・
モーリさん、これシーラさんに言わなくて良かったね
71困ってる新郎の独り言・・・1:03/10/03 23:10 ID:oMz4LlxP
ピンポーン
「はぁ〜い♪」
ガチャ♪
「・・・・・・」
「あっ!まかっ・・・あなた!おかえりなさい♪」
「・・・・・おまえ・・・」
「???」
オレは次になんと言ったらいいのか言葉に詰まった。

一緒に暮らし始めて1週間ほど経ち、休んでたジムにも一昨日から行き出した。
あんまり長い事トレーニングを離れるわけにはいかない。
もちろん帰る家にはかわいい妻が晩飯と待っている。
自然と帰宅が早くなる。
待つ人がいる家へは帰りたくなるもんだと驚いた。
家の鍵は1つずつ持った。
まぁ・・
オレの性格上、鍵を探すのが面倒なのでいつも開けてもらっている。
それで気付いた事なんだが・・・
コイツは一切誰何せずに、いきなり「ガチャ♪」と開ける。
このノーテンキ!
無用心にも程があるだろーが!
だいたい今日は鍵もかかっていなかったみたいだ。
昨日「いきなり開けるな」って叱ったはずなんだが、全然覚えてないらしい。

「昨日いきなり開けるなって言っただろう・・・それに鍵ちゃんと閉めとけ」
半分溜息混じりに言いながら家へ入る。
「あっっ!そうでした!」
手をぱっと開いて指先を唇につける。
悪気の微塵も感じさせないようなリアクション。
怒る気にもなれない。
ハァ〜・・・
72困ってる新郎の独り言・・・2:03/10/03 23:11 ID:oMz4LlxP

オレは自分で心配性とは思っていない。
最低限の防犯の心得と思っている。
そうだよな?
だがこいつにはそれが通じない。
平和な家庭に育ったからだろうか・・・・。
これからコイツだけで留守を守る事が増えるんだ。
少しは危機感を感じやがれ!
こんな状態で1人残して明日から合宿なんざ行けやしねぇ。

オレのそんな心中を露どころか塵ほども知らずに
1人楽しそうに鼻歌を歌いながら茶碗に米を盛る江藤。
くねくねとリズムを取っている。
そのくねくねが妙に気になる。
・・・江藤じゃなかったな・・・
なんて呼べばいいんだ・・・?
・・・・  ・・・・  ・・・・まぁ・・・それはあとで考えよう。
オレの頭は忙しい。


夕食後
「おい、紙とペン用意してくれ」
「?・・ハイ」
「そこへ座れ」
「??」
片付いたテーブルに向かい合って腰掛け、江藤に紙を広げさせる。
「今からオレが言った言葉を紙にそのまま書け」
「???」
「いいから書くんだよ」
「????ハイ」
73困ってる新郎の独り言・・・3:03/10/03 23:12 ID:oMz4LlxP
オレはゴホンと咳払い。
「"カギを閉める"」
「あっ!」
わかったようだ。
「か・ぎ・を・し・め・る」
言いながら書き始める江藤の顔は大真面目になった。
なんだか小学生にもの教えてるみたいだな・・・
それに気付いてちょっと脱力。
「次は"誰か来たらドアを開ける前に「どちら様ですか?」"だ」
書きながら江藤は気付く。
オレの心配の露ぐらいは。
ニブイんだよ。
嬉しそうな顔で書きやがって。
「書き終わったら玄関のドアに貼っとけ」
そう一言残して風呂へ逃げた。

風呂から上がって就寝時間になってからは
ちょっと回り道しながらもいつものコースをたどった。
求めるオレを「明日から合宿なのに」と拒む江藤。
それを構わずにオレが押し倒す。
最近気に入りのパターン。
後はだいたい想像がつくだろう。
合宿前だから自分なりにある程度はセーブはしたけどな。
74困ってる新郎合宿初日・・・1:03/10/03 23:14 ID:oMz4LlxP
そして後ろ髪をひかれるような気持ちを消化しきれないまま合宿へ。
新婚早々合宿を組まれたのは、半分オレに対する嫌がらせだ。
トレーナーは貸切バスの道中で
「真壁とかみさん、少しは離しとかねーと最初っから飛ばしそうだからなー」
と心底楽しそうに笑う。
このオッサンは本気でそう思ってこの合宿をいきなり企画したんだから参る。

「でも真壁さんの奥さんマジでキレーっすよね」
後輩の1人にあたる奴がうっとりした顔でつぶやく。
ぐぉるァ。人のモンを勝手に思い浮かべんな!
「バッケロー!だからいけねんだっつーの。骨抜きになりてーか?」
トレーナーのセリフはいちいち耳が痛い。
オレに対して言ってるも同然だからだ。
「なってみて〜〜・・・」
うっとりが加速する顔は、宙に浮いた自分の妄想にはまり込もうとしている。
ヤメロ!
何てこと想像してんだ!このバカ!
オレはそれ以上を許せなくて、デレデレと溶けてきそうな頬をつねり上げた。
「あいでででで。勘弁して下さい」
するか!
つい力がこもる。
「いでーーーー!」
悲鳴に近い叫び声。
まだ許す気になれない。
「オラ!それぐらいにしとけ!」
トレーナーの一言はゴングと同じで、そこで全てが終了となる。
こんないつもの調子で合宿は始まっていった。
75困ってる新郎合宿初日・・・2:03/10/03 23:16 ID:oMz4LlxP
もちろんトレーニングはみっっっちりとしごかれ、オレを始めとする選手一同
無駄口きく気力もないほどヘトヘトに疲れきって初日を終えようとしていたその夕食後。
各々が風呂に入ったりストレッチしたり好きな事をやってるのを尻目に
オレは疲れた身体を起こしてそろりと宿舎を抜け出した。
時計は夜8:00を指している。
初めて新居を1人で過ごす江藤が気になって仕方がない。
一瞬だけ・・・。
そう自分に言い訳しながら回りを確認してテレポートする。

いきなり視界に映るのは新居のリビング。
だが真っ暗だ。
アレ?
風呂かな?
それにしては人気がない。
チクタクと時計の針だけが聞こえる。
足を忍ばせて風呂へ。
やはりいない。
・・・まさか・・・・?
忍び足の急ぎ足もどかしく寝室へ向かう。
浮くとかそんな事はこんな時思いつかない。
音を立てないように中をのぞくと、キングサイズのベッドの端に横たわる影が見えた。
足を踏み入れて近づくと本当に江藤が寝ていた。
マジかよ・・・・
早ぇーよ・・・
あどけない寝顔を見て安堵と脱力。
しばらくそれをみつめて、肩まで毛布をかけてやる。
・・・ここ連日疲れてたんだな・・・
少々の罪悪感は感じる。
悪かったな・・・ゆっくり休め。
オヤスミ代わりに唇をそっと重ね、そしてそのまま合宿所へ戻った。
こうして合宿初日は終わる。
76名無しさん@ピンキー:03/10/03 23:18 ID:oMz4LlxP
静かだたので投下してみまつた。
今日はこれで終りでつん。
合宿続きはまだなんも書いてないのでつが・・そのうち・・・
77名無しさん@ピンキー:03/10/03 23:19 ID:x8/csSXL
うおー!
続きを待っていたのに…うぅ。
楽しみにして待つyo!!
78名無しさん@ピンキー:03/10/04 02:16 ID:p7DCAjmL
前スレ、スレストで終了してるし。
それはともかく、良スレsage。
79名無しさん@ピンキー:03/10/04 11:23 ID:2kyuZZ7H
独り言作者様、大ファンでございます(>_<)
そのうち、蘭世の独り言もお願いします!
でも蘭世の独り言って、全部俊がきいてるので、
独り言ではないですね(笑)
ゴチ。
80名無しさん@ピンキー:03/10/06 02:26 ID:m53ZkQKh
…早く続きを…。
81名無しさん@ピンキー:03/10/07 23:23 ID:MXEPtR4n
>>77
>>79
>>80
( ̄□ ̄;
ごっっ
ごめんよ。
独り言シリーズ
頑張るけど週末まではとても無理なので
やっぱり期待しないで待ってて下さい。
82名無しさん@ピンキー:03/10/10 03:43 ID:fnlbVK36
書き込みないのでほしゅー

神よ降りてこい…!
私にも降りてこい…
83名無しさん@ピンキー:03/10/10 22:09 ID:6/sOW5kx
保守
84名無しさん@ピンキー:03/10/11 03:13 ID:kbaQueZV
神さま…。待ってますのよ…。
85困ってる新郎合宿2日目・・・1:03/10/11 22:16 ID:gmrEthDn
合宿2日目。
「真壁さん。メシっすよ」
ぐいぐいとゆすられて目が覚める。
「もう朝か・・・」
体がだるかった。
あまりよく眠れなかったらしい。
男臭ぇ部屋でよく寝れるわけねーか・・・。
重い身体を引きずって朝食の席につく。
揃った所でトレーナーに今日の練習メニューを聞かされて
皆でげっそりしながら味気ない食事を口へ放り込んだ。

後片付け当番の若い奴ら(オレだって若いけど)が残って
後は部屋へ一度引き上げる。
トレーナーを含めてみんなで雑魚寝だから、個室なんてモンはねぇ。

溜息をついて着替え始めている所へ
オレの隣で荷物をごそごそしていた2人がクスクス笑いながら
「真壁さん」
とオレに寄ってくる。
その2人はまだ学生だ。

「コレコレ」
写真と思しきカットと肌色がやたら多い本を広げたかと思ったらエロ本だった。
それを広げて見せてくる。
男所帯ってのはこれだからなー・・・
「奥さんに似てませんか?」
「オレ似てねーと思うんすけどね」
「いや絶対似てる」
2人で言い合いながら写真を見ている。
指の先の写真をのぞいて見た。
それは白い裸体を縛り上げられている黒いロングヘアの女の写真だった。
86困ってる新郎合宿2日目・・・2:03/10/11 22:17 ID:gmrEthDn
顔は半分以上髪の毛に隠れている。
だが・・・
後は想像力が補えるだろう。
江藤に見えるといわれれば、髪型から察するにそうともいえなくもない・・・だが・・・

「似てるか!バカ!顔見えねーだろーが」
思わず本を取り上げる。
こいつら人の女で何考えてんだ。
「あっっ」
「まだ全部見てないのにー」
口を尖らせる2人。
悪気のかけらもない。
「お前ら合宿にこんなモン持って来たって使う体力ないだろ。まだあんのか?」
「あう・・・」
「あるんだな?」
「・・・・・・」
「全部よこせ。帰るときに返してやる」
怒るに怒れないオレは、うなだれる2人を急かしてカバンを開けさせ合計3冊没収した。
はっきり言うとオレはこの手の本に今まであまり縁がなかっただけに
預かるといっても置き場に困った。
トレーナーに預けたら返って来ないだろうし
本人達に持たせておいたら練習に身が入らないだろう。
何よりあの写真をオカズにされるのは勘弁だ。
結局自分の口が開きっぱなしのカバンに放り込んでおく。

はぁー・・・
朝っぱらから何やってんだー・・・オレは・・・
87困ってる新郎合宿2日目・・・3:03/10/11 22:19 ID:gmrEthDn
午前中は念入りにストレッチした後、地獄のロードワークに出た。
緑まぶしい山の中をひたすら走り回る。
道路を走っても車1つ通らない。
もちろん看板はタヌキやシカに注意。
空気がきれいだ・・・・。
今度アイツと旅行にでも行くか・・・。
自然の中を2人で歩くのもよさそうだ。
そういや〜・・・ちゃんと戸締りしてるんだろうか。
そんな事を考えながら走り続けていたらあっという間に終わってしまった。
比較的体力があるオレにはロードワークはさほど苦ではない。
他の奴らは違うようだが・・・・。
「だー!!きっつーー!」
「もう死にそ・・・・」
ぜいぜいしながらバタバタと倒れこんでいる。
おめーら体力ねーと大変だぞ。
色々と。




昼食後の休憩を利用して、オレはまた家に帰る。
もちろんテレポート先は家の玄関前で
やる事といえば抜き打ちテストに決まっている。
88困ってる新郎合宿2日目・・・4:03/10/11 22:20 ID:gmrEthDn
ピンポーン
「はぁ〜い♪」
ガチャ♪
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・オイ」
握ったオレのこぶしはブルブルだ。
「あれっ?まかっ・・・あなた!どうしたの?忘れ物?」
「お前・・・」
開いたドアの内側にはしっかり紙が貼ってあるのが見える。
これが眼に入らんのか?
オレの視線の先に気付いて江藤が顔色を変えた。
「あっっ」
小さく叫んで手をぱっと開き、指先を唇につける。
気が付いたときには遅いんだ!このバカ!
「オレじゃなかったらなぁ・・・・」
精一杯押し殺した声で吐き出すように言い、後ろ手でドアを閉めてカギをロックする。
多分オレの顔が怖かったのだろう。
江藤の表情には脅えが走る。
その顔はまずい。
もっと追いつめたくなる様な気にさせる。
「こうなるんだ!わかるだろ!」
「きゃあっ!」
その場で引きずり倒して組み敷いた。
お叱りだけのつもりが、行動は痴漢の代わりになってしまった。
これぐらいいいか・・・・。
少しは怖い思いをしろ。
コイツのノーテンキは相当気合入れないと治らなさそうだ。
さすがに効いたのか江藤は涙目でオレを見上げる。
「真壁くん・・・・」
だからその顔はまずいんだってんだ!
オレは止まれなくなる。

*********************
89困ってる新郎合宿2日目・・・5:03/10/11 22:21 ID:gmrEthDn
1時間後、オレは危うく練習に戻り遅れるところだった。
少々息を切らせながらトレーニングルームへ入ると
丁度最初の奴がスパーリングを始めている所だった。
「おう真壁。どこ行ってたんだ?」
トレーナーの目が光る。
息の切れたオレが言える精一杯の言い訳。
「少し・・・走ってた・・・」
ホントかぁ〜?
とトレーナーの目が言ってたが、何も言わずにテーピングを投げてよこす。
「次あがれ」
うう・・・しごかれそうな予感。

手早く巻いて準備をしながら、先刻の言動をちょっとだけ反省した。
イヤ・・・ヤル気じゃなかったんだが・・・・
自分の中で言い訳しながら、さっきの江藤の顔を思い出した。
あの顔はきっと思考の片寄った奴には美味しそうにしか見えないだろう。
かく言うオレも美味しそうに見えてしまったわけだが・・・。
でも涙目だった江藤も本気で拒否はしてこなかったし・・・
う〜ん・・・
ある意味お互い相性は合ってるってこったな。
下らない分析をしながら複雑な気分になる。

そして突然後ろからドつかれた。
「なに惚けていやがる」
いってーな。
振り返ったオレを見下ろすトレーナーは仁王立ちして腕組み。
「またカミさんのこと考えてたんだろーが。オレはお見通しだからな」
ギク・・・
「上がれ!」
いつのまにかスパーリングが終わっていた。
オレがボーっとしていた時間は結構長かったらしい。
トレーナー自らリングに上がり、オレの長い長いスパーリングが始まる。
90困ってる新郎合宿2日目・・・6:03/10/11 22:21 ID:gmrEthDn
「フッフッフ。カミさんのことなんか考えてる暇がねーぐらいしごいてやるぜ」
バスバスと両手を打ちながらにやりとトレーナーが言う。
うるせー!ほっとけ!
何から何までカミさんカミさんって、全部合ってるからなんも言い返せねー!
なんだかヤケクソのような気分で打ち合う。
それは、その激しさに周りが手を止めて見てしまうぐらいの勢いだった。
バシバシビシビシボスボスドスドスボカボカバスバス・・・

***************************

夕食は疲れすぎて半分ぐらいしか食えなかった。
トレーナーも同じだったらしく、一緒に風呂に入って同時にバッタリ寝てしまった。
眠りに落ちる瞬間周りが話していた言葉が、半分夢の中の声のように聞こえる。
「今日のトレーナーすごかったな」
「いつも以上に真壁さんしごかれてたもんなー」
「いい加減いい年なのにタフだよなー」
「真壁さんも復帰早々ついてこれるのがスゲーよ」
「バッカ。だからチャンピオンなんだろ」
「チャンピオン・・・なりてー」
「なってキレイな嫁さん欲しーよな」
「やっぱ真壁さんの奥さんみたいな清楚な感じがいいな」
「オレもオレもー」
「スタイルも良さげだしなー」
「なー」

・・てめーら・・・また人の女で勝手な想像・・・ムニャ・・・

==合宿2日目終了==
91名無しさん@ピンキー:03/10/11 22:26 ID:gmrEthDn
うーん・・・
あせって書いてしまったので誤字脱字がありそーな予感。
そしてそしてまただんだんと長くなってきてしまった・・・。スマソ
一応3日目も書こうかなーとはと思ってるんだけど、そろそろネタ切れだったりして・・・
浮かんだらまた書きにきまつ。

なんだか全然神の降臨がないんだけどー!
みんな連休はお出かけかなー・・・
92名無しさん@ピンキー:03/10/11 22:57 ID:NEaiRTZX
そんあー。3日目楽しみにしてます。
ネタ切れなんて言わず、ひねりだしてくださいw

93名無しさん@ピンキー:03/10/12 00:50 ID:1rn+u0GF
         。   。
          \ /
神キテタ━━━━━( Д ;)━━━━━━!!!!
乙鰈〜。
シュバッ( ゚∀゚)ノ   旦
お茶でも飲んでいただいて、次なる萌えネタを心よりお待ちしているでありまつ!
チャソピオソにはごめんでつが、この際3日、いや1週間くらい合宿して欲しいでつ。


> トレーナーも同じだったらしく、一緒に風呂に入って同時にバッタリ寝てしまった。

萌え違いなところで萌えてしまったのは、漏れが801板の住人だからだろうか…。(鬱
チャソピオソの使用済みシャワーのホースに首括って逝ってきまつ。
9493:03/10/12 00:52 ID:1rn+u0GF
…ズレてた。
今度はメモ書きの張ってある真壁家のドアに体当たりして逝ってきまつ。
95わるいおんな1:03/10/12 01:34 ID:Lnhxb5FO
――昔見た夢を、思い出した。
――夢…、だったのだろう。

江藤がおれのアパートの台所で、夕食を作っている。
小花柄のブラウスにフレアスカート。それにエプロンを着けている。
その清楚な後ろ姿を見ながら、なぜかふと思い出した。
あれは、まだ中学に入ってすぐの頃のことだったか。江藤が転校してくる少し前だ。
――見知らぬ女に、弄ばれる夢を見た。
あの年頃の男によくある、性夢というやつだろう。悪女の夢だった。
「…こいつとは大違いだったな…」
「ん?真壁くん、何か言った?」
無邪気に振り向く江藤に、何でもない、と首を振る。
…もう、機嫌はすっかり直っているようだ。

今日の昼は、午前のトレーニングの後、一緒に外食することになっていた。
江藤が、以前から行きたがっていた店だ。
しかし、つい、いつものようにスパーリングに熱中してしまい…、
結果、すっぽかした。
おれが約束を忘れていることを察した江藤が、ジムへ姿を見せ、そこでやっと思い出した。
しかし時すでに遅く、江藤は頬をふくらませ、
「今日はもういいよ」
と言い残して帰ってしまったのだ。
夕方、電話で昼のことを謝り、これからうちへ来ないかと誘った。
うん、と気だるそうな声が答え、やはり怒っているかと内心焦る。
しかし、この部屋を訪れた江藤はいつもの笑顔で、ついでになぜかおれを見て、
少し顔を赤らめた。
96わるいおんな2:03/10/12 01:36 ID:Lnhxb5FO
一つにまとめた髪を揺らし、ブラウスを腕まくりして野菜を切っている。
機嫌を損ねても、そうぐずぐずとおれを困らせたりしない。
貞淑な妻、というのになるんだろうな。
そんなことを考えながら江藤を眺めつつ、おれはまた、かの悪女の夢の記憶へ沈んでいった。

あれは、おふくろが夜勤で家にいない夜の、明け方にはまだ間がある頃。
最も眠りが深いはずの時間に、その夢は訪れた。
最初は、眠りにとろりと溶けていた意識にゆっくりと流れ込んでくる快感を、
ただぼんやりと感じた。
次に、それが誰かに体中を撫で回されているためだと、気がついた。
匂いで、女だと分かった。暗がりで顔はよく見えないが、多分知らない女だ。
寝間着も下着も、いつの間にか肌から離されていて、女の長い髪が、指が、唇が、
――その、愛撫が――、剥き出しの体にひんやりと落ちてくる。
「…う…」
不慣れな刺激に、知らず、息が漏れる。
その頃のおれは、己の性の欲望のあしらいをもう知ってはいたが、
実際に女とどうこう、など行動できるほど大人ではなかった。
ましてや、こんな風に責められて、どうしたらいいか、など考えもつかない。
為す術も無く、されるがままになった。
口中に含まれると、自分の手とは格段に違うよさに、一度目は呆気無く達した。
女はすべて飲み干し、さらにまたそこを吸おうとした。
強すぎる刺激に、思わず細い肩を押し戻す。
「あんた…誰だ?」
女は答えない。
「何でこんなことするんだよ…」
すると今度は、ふふ、と小さく笑って、何か呟いた。
『仕返しよ』と言ったように聞こえた。
97わるいおんな3:03/10/12 01:37 ID:Lnhxb5FO
その後は何度交わっただろう。
こんな気持ちいいことが、一体何の『仕返し』なのか。
着衣のままおれに跨っていた女は、互いに達するたびに服を脱いでいった。
下着を。
スカートを。
セーターを。
何度目かに昇りつめた瞬間、ボタンを外したブラウスが、肩だけを滑り落ちた。
しかし次の波が起きても、女はその袖を抜かず、腕に纏わりつかせたままでいた。
目の前で律動する、裸身を遮る黄色い小さな花柄が目ざわりで、おれは女のブラウスを
剥ぎ取った。
上体を起こし、跨る女とついに、一糸纏わぬ姿で抱き合う。
「ああっ…あっ…あん…」
自ら攻めているくせに、女はとても儚く、切なげで、消え入りそうな悲鳴を上げた。
「はっ…いい、あ、あぁっ―――――」
その細い悲鳴を耳に残しながら、おれの意識はまた混濁していった。

夢の記憶から戻ると、目の前には穏やかな光景があった。
食欲をそそるにおいと、あたたかい湯気と、その向こうの細い背中。
菜箸をリズムよく動かす江藤の後ろ姿を見て、おれはふと、そのブラウスの類似に気がついた。
だからあんな夢を思い出したのか。
夜目にちらつく黄色の小花柄。
そういえば長い髪も同じだ。
細い悲鳴も。
腰の動きも。
感触も。
――なぜ今まで思い出さなかったのか、不思議なくらい。
――なぜ、思い出さなかったのか。
おれは呼吸を止めた。
98わるいおんな4:03/10/12 01:38 ID:Lnhxb5FO
なぜ思い出さなかったのか。なぜ突然思い出したのか。
『思い出した』のか?おれはこの記憶を、以前から持っていたか?
この記憶は――いつ、生まれた――?
昼のふくれた顔、電話の気だるそうな声、顔を赤らめた仕草、江藤家の地下室、白い肌、
黄色い小花柄、耳に残る細い悲鳴、悪い女、貞淑な女、『仕返しよ』、目が回る快感。
この女は今日の午後、何をしていた?
おれは立ち上がった。

足を一歩前に出す。
貞淑な女の後ろ姿へ近づく。
あのブラウスを剥ぎ取ってやろう。
あれは、悪い女か?

――そして、夢と同じ細い悲鳴が、あがった。



99名無しさん@ピンキー:03/10/12 02:43 ID:6rhKV+cE
きゃ〜!蘭世ったら…(藁

100名無しさん@ピンキー:03/10/12 08:15 ID:OyXbg9m0
う、うわー。
何やら照れるー(笑
101名無しさん@ピンキー:03/10/12 19:04 ID:8RTqbM2T
ウン
読んでてなぜか照れた・・・
大胆な仕返しw
ワルタソナイス!
102ずっと 1:03/10/14 00:59 ID:FquE7U9A
「―――江藤っ。」
 俊は祝勝会のあと、蘭世を自分のマンションに連れ込むや否や、蘭世の名前を呟き、その唇に自分のそれを激しく押し付けた。

 彼の初のタイトルマッチを見事勝利で納めた俊は、彼の祝勝会が終了した後、半ば強引に蘭世を自分のアパートに呼んだ。
 ずっと決めていた事だった。
 今まで、俊が蘭世に手を出さずにいたのはひとえに、『中途半端なままでは江藤を抱けない』と思っていたからだ。
 だが、今回俊は日本タイトルマッチで勝利を収め、自他共に認める『チャンピオン』になったのだ。
 この世界で食べていけるという自信も付いたのだ。
 いまや、彼を押しとどめる術は見つからない・・・。
 
 (真壁くん・・・・)
いつもと違う俊の口付けを受けながら、蘭世はすこし戸惑いを感じていた。
だが、蘭世は戸惑いを感じながらも、彼の舌を唇に感じ、そっと自分のそれを開いた。
それを合図に、俊の舌が蘭世の口腔に入り込み蘭世の中を自由に動き回る。
蘭世は足に力が入らずに、俊のトレーナーにしがみついた。
103ずっと 2:03/10/14 01:01 ID:FquE7U9A
「―――いいか?」
ようやく唇を離した俊が蘭世の瞳を覗き込みながらそう、尋ねた。
蘭世は、俊の問いかけにそっと頷いた。
昨夜、久しぶりに俊から電話をもらい、
『もし日本タイトルマッチに勝ったら、明日一日を俺のために空けてくれないか?』
という俊の言葉を聞いて、当然のごとく覚悟をしてきた蘭世である。
 否やはなかった。


 二人は半ばもつれ込むように、俊の学生時代に住んでいたアパートより少し広いマンションの寝室にある俊のベットに倒れ込んだ。
 「ま、かべ・・く・・・・ん・。シャワー・・を・・・・。」
 今すぐ服を脱がせようとする俊の右手を握り、蘭世はそう呟いた。
 だが、俊は蘭世のそんな言葉は聞こえないかのように、蘭世の着ていた薄い水色のカーディガンの釦をそっとはずした。
 「後にしろ。」
 そう言うと蘭世のカーディガンを脱がしその下に着ていたワンピースのファスナーを下げた。
 徐々に蘭世の白い肌が俊の視界に現れる。
 俊は蘭世の露になった肩にきつく唇を押し当てた。
 「―――っ。」
 蘭世の白い肌に少しずつ、俊の印が増えていく。
 それと共に蘭世の身体を覆うものが取り除かれていった。
104ずっと 3:03/10/14 01:03 ID:FquE7U9A
「―――蘭世・・・。」
 俊は蘭世の名前を囁きながら、露になった胸を自分の手で包み込んだ。
 丁度、標準より少し大きい俊の手にすっぽり収まる大きさだった。
 俊にその先端を撫でられると、蘭世の身体は大きくのけぞった。
 「・・か、べくん。」
 蘭世はそう呟くのが精一杯だった。
 その蘭世の反応を見てから俊はその先端を口に含み、ちいさく歯を立てた。
 「・・・あぁっ。」
 蘭世の唇から嬌声が漏れる。
 「ら・・んぜ・・。」
 俊は彼女の耳元でそうなだめるように呟くと、首筋から胸、そしておへそへと唇の位置をどんどん下げていった。
 それと共に、彼女の一番感じるところへ指を進めていく。

 「や・・・。」
 そうか細い声で呟く蘭世に優しくキスをする。そして、蘭世の身体が俊を受け入れるための準備が十分出来ていることを確認すると、俊は蘭世の開いた腿の間に座り、自分自身で蘭世の身体を貫いた。
 「あぁぁ・・・・・っっ。」
 蘭世の初めての声が、俊の寝室に響いた。
 その声が収まるのを待って、俊は再び口を開く。
 「・・・大丈夫、か?」
 蘭世はその言葉に一泊おいて小さく微笑んだ。
 その微笑をうけ、俊は少しずつリズミカルに身体を動かしていく。
 「―――もう、だ・・め・・・。」
 そう呟く蘭世に口付けながらも、俊はいっそう身体を激しく動かした。蘭世はさらに嬌声をあげた。
 蘭世の後を追うように相次いで達した二人は、折り重なるようにベットの中に倒れ込んだ。
 

 「ずっと一緒にいてくれ・・・。」
 俊は、達すると共に意識を手放した蘭世の唇に自分のそれをそっと重ねながらそう呟いた。


105ずっと :03/10/14 01:08 ID:FquE7U9A
以上です。
はじめまして、いきなり投稿してしまった上に、ぜんぜん、萌え〜じゃないですが・・・。
ずっとこのスレを覗かせていただいていたのですが、今回、「投稿させてもらいたい!!」と思い、思い切って投稿してしまった次第です。すみません。エロくないうえにお眼汚しではございますが・・・。
106名無しさん@ピンキー:03/10/14 04:03 ID:SUHDRCRs
新人作家さんですか?
ようこそいらっしゃいましたっ
エロの濃さよりキャラへの愛ですから
そんなに卑下しなくてもいいですよ。
エチに入る前フリとか、実は関係なさそうなエピソードを入れても
萌え度はあがります。そのキャラのキャラっぽさが出るので。

ゆったりと読めたお話でした。
また投下しに来て下さいね。

でも、いつも思うのよね、
真壁くんはどこでそういう情報を仕入れてくるのか、と。
家庭の医学じゃわからねえだろうに
107名無しさん@ピンキー:03/10/14 11:19 ID:Y6FTtvTf
こんな昼間からのぞきに来てしまいました…。

独り言作者タン、お疲れさまです!
俊の一人称の話好きです!
あの仏頂面の裏で、蘭世を想ってハァハァなのかと思うと禿げしく萌え〜でつ。
合宿3日目も待ってます〜。

ワルタンお帰り〜!待ちわびておりました〜!
妖艶な雰囲気が感じられるお話ですね。
俊を弄ぶ蘭世…イヤラシくてイイ!

新人作家タン、いらっしゃいませ。ようこそお越しくださいました。
お初のお話好きなので、うれしいでつ!
>「後にしろ」
に萌え〜!

106たん
>真壁くんはどこでそういう情報を仕入れてくるのか、と。
過去スレで、俊が未来の自分に教えを乞いに行く話があったよね。
あの話好きだったな〜。
108名無しさん@ピンキー:03/10/15 22:45 ID:uqAl8u1v
age
109名無しさん@ピンキー:03/10/15 22:56 ID:7+Cj9/uC
>108
ageてないよ。

作家さんの降臨を祈りつつ、代わりにage待つ!
110名無しさん@ピンキー:03/10/15 23:27 ID:bgfpQJuW
ageんなっちゅーの
111名無しさん@ピンキー:03/10/16 01:10 ID:yUDeQBBB
>>110
そうしょっちゅう上げられても困りものだが、
下がるところまで下がってたからたまに浮上するのもいいかと。
マターリ汁!
112名無しさん@ピンキー:03/10/18 09:19 ID:r4v75m+R
ときめきネタは初めてですが(他は何度か)
・非蘭世
・直接描写なし
・ダーク
の三重苦でもOKですか?
一応注意書き読みましたが、スレの流れ的にどうかと…
113名無しさん@ピンキー:03/10/18 22:36 ID:PM5JlJ7k
以前に作品への愛が感じられない(と自分は思った)SSが投下されて、
避難所などでも批判されてましたね。
特にルールとして明文化されてはいませんが、とりあえず悲しいばかりだったり
残酷なだけだったりするお話は、賛同されないと思います…。が。
>112様
>・非蘭世
>・直接描写なし
>・ダーク
でも愛が感じられるお話なら、私はぜひ読みたいでつよ。
SSの初めに「ダーク有り!」みたいな注意書き入れてくだされば、
苦手な方はスルーできるかと思います。

長文で仕切りっぽく見えたらスマソ…。
一意見っつーことで…。
114112:03/10/18 22:57 ID:r4v75m+R
>>113
>愛が感じられるお話
その点は大丈夫だと思います。ときめきでは私が一番好きな
確定カプですし、余計な描写を取り除いて客観的に見たら
別に悲劇でも何でもない話ですから。

厨な質問をしてしまいまい恐縮ですが、実は某所でスレに合わない
スカトロ物を投下して大顰蹙を買った輩がおりましたので
その轍を踏まない為の配慮の上です。ご了承頂きたい。
115名無しさん@ピンキー:03/10/19 00:16 ID:RHppbs8z
>・ダーク

ダーク カルロネタ?とボケてみる。
116112:03/10/19 13:45 ID:AjBeNcKE
すいません、予告していた三重苦です。
過去作品も見せて頂いたのですが、それらと比較してこの作品は
どうひいき目に見ても人を選ぶ系になってしまいました。

注意 黒描写あり! 苦手な方はスルーして下さい。

・蘭世×真壁くんではありません。
・ネタバレの恐れあり。
・キャラのイメージが変わる恐れがありますのでご注意下さい。
117願いの代償:03/10/19 13:46 ID:AjBeNcKE
私は、馬鹿だ。
私は――

高校に入学してから、私と彼との仲は疎遠になっていた。と言っても別に遠距離
恋愛ではない。中学時代と変わらず一緒に映画を見たり好きな音楽を聴いたり、
そういう世間一般で言うところの「付き合ってる」状態は続いていた。江藤と市
橋がデキている、などと言う根も葉もない噂が学校の話題に上る事もあったが、
慌てふためく私とは違い彼は冷静に受け流した。
幸太君や、忙しいはずの双葉ちゃんも私たちを心から支えてくれた。
だがいつからか彼の動作にどこかよそよそしさが見え、それが少しずつ露骨に
なって行く事が寂しくて、私の奥底にある苛立ちは日々募っていった。

ある週末。映画を見た帰り道で、私は彼に次週家に泊まるように頼み込んだ。
その日は家族のほとんどが家を留守にするのである。父は勤め先の修学旅行に
付き添い、母は学生時代の同窓会、祖母も何か用事があるとかで、家には
私と妹のマナしか残らない。
「お願い、最近はこの辺も物騒になってきたから。」
「大げさだなあ、下着ドロとか露出狂とかその程度だろう?子供じゃあるまいし。」
呆れ顔で彼は私を見た。私はさらに懇願する。
「もうホントに一生のお願いだから、ねっ。」
普段は嘘つきの私だけど、この時は本気だった。何か私の態度に鬼気迫るものを
覚えたのだろう、彼は溜め息を一つついた。
「しょうがないな、分かったよ。じゃあ勉強道具を持って行くから覚悟してよ。」
「ええーっ?鈴世くんお父さんより厳しいからヤだー。」
私は何とか彼の了解を取り付けた。
118願いの代償:03/10/19 13:48 ID:AjBeNcKE
その朝私はマナに彼女の予定を聞いた。それによると彼女は友達の誕生会に
呼ばれているのだが、わが家の都合を考えて早引けする事を考えていたらしい。
「パジャマパーティなのにな…」
少し不満そうに呟くマナに、私は今日だけの優しい姉を演じた。
「大丈夫。この私が信じられない?心配しないで行ってらっしゃい。」
「ふーん、いざとなったら騎士(ナイト)様が来てくれるとか?」
「マナっ!」
「お姉ちゃん、『彼』によろしく言っといてね!」
おそらくは全てを察しているのであろう妹は、笑いながら学校へ向かう。
私は学校に向かう前に新聞の気象欄を改めて確認し、一人でほくそ笑んだ。

夕暮れ時彼は予告通り勉強道具を持って家にやって来た。律儀な人である。
「いらっしゃい。洗濯物取り込んで今ちょうどご飯作ろうかと思ってた所なの。」
「…そのセリフすごく所帯染みてるよ。ぼくも何か手伝おうか?」
最初の母が夭逝したため、私は家事に触れる事が多かった。普段は今の母に
大半をまかせているが、非常時には今日のようにいつでも私と交代できる。
「悪かったわね、所帯染みてて。どうせ私はオバサンよ。」
拗ねた態度で私は断り、彼には気ままに過ごすように言った。
「何だよ、呼んだのは君の方なのに。」
勉強は夜一緒にやると言って彼は二階にある私の部屋へ向かい、本を何冊か
持って降りて来ると、リビングのテレビを点けた。
119願いの代償:03/10/19 13:48 ID:AjBeNcKE
夜。
彼はさっきの言葉通り私と勉強していた。彼は昔からこんな人だった。
並の頭しか持たない私と違って、彼は自分の勉強だけでなく私の分まで
教えてくれる。ただし半端じゃなくその指導は厳しい。
「だから〜、平面図形の回転体なんだから微分じゃなくて積分だろ?」
そう言って綺麗な文字で手早く私の解答を添削する。
「あーもう、難し過ぎるよ。もう少し簡単な問題にして欲しかった…」
「ぼくの個人授業でそんな甘い事言っていいのかな?」
お茶でも入れようかと思い、席を立ったその時だった。
彼が苦しみだしたのは。
駆け寄る私に向かい、彼は苦しげな声で大丈夫だと言ってきた。
しばらくすると彼の発作は収まり、疲れたのかその場に寝転ぶと私に
しばらく退室するように頼んだ。
私は発作の原因を知っていた。今宵は

満月だったから。

私は入浴を済ませ、寝巻きに着替えて部屋に戻った。彼は眠っているらしい。
来客用の布団を敷いたからと、まどろんでいる彼に呼びかける。
ようやく目覚めた彼はこれまでになく激しい感情を湛えた瞳で私を見つめて…

私を貪り、そして果てた。
120願いの代償:03/10/19 13:49 ID:AjBeNcKE
うめき声が、仰向けになった私の上で響いている。
彼はあられもない姿になった私を組み敷いたまま涙を流していた。
すまない、ごめん、君を傷つけてしまった、色々な言葉で私に謝って来る。
私は彼を優しく抱き締め、自らを罵っている獣を宥める呪文を唱えた。
――私、今すごく幸せだよ
と。

傷ついたのは貴方の方、全ては私が仕組んだことなのだから。
心の獣を解き放たぬよう、もがき苦しんでいたのは貴方。
貴方は人間以上の精神力でそれに堪え続けてきた。ただ私を傷つけない為に。
子供の頃から一緒にいた私は、貴方が月夜に人知を超えたものになる事を知っていた。
知っていてそれを利用した。そして衝動に苦しむ貴方の努力を台無しにした。
悪いのは私。心の汚れた愚かな私。だから自分を責めないで――

そんな出来事があってから彼は変わった。
以前にも増して勉強にもスポーツにも精を出し、交友範囲もさらに広がった。
私には、彼が一層現実味を帯びた幼い頃の約束に向けて成長しようと考えている
事が痛いほど理解できた。
彼はこんなにも一途で心のキレイな人だった。

けど、一度肉を喰らった獣がその味を忘れる事は決してできない。
以来私と彼との月夜の晩餐は恒例行事となった。
前菜は趣向を凝らし、副菜の品数は増え、主菜は豪勢になり、デザートは甘く切なく。
私自身も晩餐の美味を知り、それに酔い痴れ、想いはもっと深まって行った。
121願いの代償:03/10/19 13:50 ID:AjBeNcKE
蘭世お姉さんに待望の女の子が生まれた。名前はもう決まっていて
愛良ちゃんと言う。
彼女はさらに美しくなっていた。恐らく内面の輝きが増したのだろう、
子供たちを見つめる目が優しさを湛えている。
この人も心のキレイな女性だ。汚れた私と同性であるとは信じ難い。
それともこんな私にも、彼女のような優しい表情になる時が訪れるのだろうか。

「…も入りなよ。」
「えっ、いいの?」
家族写真。この世ならぬ者たちが現世で強い絆を持つその写真に、私も誘われる。
彼は私を家族と思ってくれているのだろうか。だが私には気の重い話だった。
彼の両親である望里さんも椎羅さんも、昔からほとんど歳を取っていない。
刻が過ぎればこの家族写真に、私は恐らく居ない。そして彼の記憶からも
私は消えてしまうのだろう。

何故あんな事を口走ったのか今となっても分からない。
彼にも誰にも聞かれないように呟いた言葉は、悪魔が聞いたら喜びそうな代物だった。
「せめて鈴世くんだけでも、私とずっと同じ刻を生き続けますように…」
永遠の生命を持つ彼にとっては呪詛にも等しい言葉。
世界一好きな彼を苦しめてしまう愚かな私。
良心の呵責からか胸が痛んだが、何事も無いように愛良ちゃんを抱いて写真に姿を刻んだ。


<終>
122願いの代償:03/10/19 13:51 ID:AjBeNcKE
このSSを書くきっかけとなったのは23巻の家族写真です。
嫁入り前の娘を人様の家族写真に誘うってのはやっぱり普通じゃないと思います。
実際このシーンを見た時、「あ、こいつらもうデキてる」という感想を持ちました。

ああしかし往年の名作をこんなにダークに捉えるなんて…
やっぱり私にはダメフィルターがある。

お目汚し失礼しました。あるべき世界へ帰ります。
123モーリ&シーラ作者:03/10/19 17:16 ID:QLzl9RPk
久々ですが、新作書いてきたので、興味のある方は読んでください。
相変わらず、私の萌えカップルのモーリとシーラですが。
124前夜1:03/10/19 17:20 ID:QLzl9RPk
冥王ゾーンとの戦いを明日に控えた夜―子供達はもう寝静まり、望里と椎羅は
夫婦の部屋で過ごしていた。
「出発は明日…?」ベッドに腰掛けて椎羅が聞く。
「ああ」シャワーを浴びた後の望里はバスローブ姿で、髪をタオルで乾かしている。
「―急ね…。あと2、3日延ばせないの?」
「椎羅、私達は急がなければいけないんだよ」
「―ええ…。頭では分かってるのよ、あなた…。でも―とても不安なの…」
椎羅は深いため息をついた。望里はそんな妻の隣に座る。
「大丈夫さ。蘭世もみんな、無事に帰ってくるよ」
「あなたもね…」潤んだ瞳で夫を見つめる。
「ああ。私も、お前の元へ必ず生きて帰ってくる―」
「約束よ…」
妻を抱き寄せ、彼女の不安を取り除くかのようにブロンドの柔らかい髪を撫でてやる。
夫の胸に顔を埋めながら、椎羅が呟いた。
「…思えば、魔界に追われてた時の方が心強かったわ…。だってあなたと一緒にいられたんですもの。
家でただじっと待ってるだけなんて、つらいわ…」
「椎羅…、お前の気持ちは分かるし、私だって離れるのは寂しいが、それも少しの辛抱だよ」
「―そうね…。毎日みんなの無事を祈ってるわ」
「うん、そうしてくれ」
妻の頬を両手で包むようにして、長いキスを交わす。
唇が離れた後、椎羅が囁いた。
「あなた、私も冥界の入り口まで見送るわ、いいでしょ?」
「…いや。それはだめだ」
「どうしてだめなの?お妃様やフィラさんは行くんでしょ?私だって…。
一緒に行けないのだから、せめてそれだけでも―」
「別れる時に、取り乱すといけないからね。…お前はすぐ泣くから―」
望里は既に涙を溢れさせている妻の瞳を見つめて言った。
125前夜2:03/10/19 17:24 ID:QLzl9RPk
「大丈夫よ、私取り乱したりしないわ。約束するから、お願いあなた」
椎羅の頬を伝わる涙を指で拭いながら、望里は軽くため息をついた。どうしようか迷っている表情の夫に、
椎羅は口付けた。
「―分かったよ…」
「よかった…。―それから、もうひとつ…今夜は棺おけでなく、私のベッドで一緒に寝てね…」
「―そのつもりだよ…棺おけの中ではお前を抱けないからね…」
「あなた…」
ベッドにそのまま倒れ込み、激しい抱擁と熱い口付けが続いた。着ているものを脱ぎ捨て、お互いを求め合った。
望里の唇が、妻の白い肌に愛の刻印を点々と残して行く。
果てしなく続くような夫の長い愛撫に酔いしれ、ため息を洩らす椎羅。
(ずっと…ずっと……こうしていたい…)
心の中でそんな願いをかけながら、涙が一筋すーっと頬を流れ落ちて行く。
その夜、二人は激しく燃えた。

二人が絶頂を迎えた後、望里が妻の体から出ようとすると、椎羅はそれを押し止めた。
「あなた…まだこうしていたいの―」
望里は微笑んで、椎羅に優しくキスをした。
「懐かしいな」
「…何が…?」
「最初にお前を抱いた時も、そう言っていたな、と思ってね。―もう忘れたか?」
「―いいえ、忘れたりしていないわ…」
椎羅はその時のことを思い出しながら、「最初にお前を抱いたとき…」という望里の言葉が
何故か気にかかり、頭の中で繰り返した。
(最初に…最初に…。―いや、これが最後だなんて…!)
強い不安が心の中を支配する。椎羅は無意識のうちに、夫の背中に両腕を強く絡ませていた。
そして彼の唇を激しく求め、舌を絡ませ合う。
やがれ望里のものが、愛しい妻の体の中に入ったまま、また固さを増し、大きく熱くなっていった。
「…あなた…ああっ…もう一度、抱いて…」
「椎羅…愛してるよ…」
「私も…愛してるわ、あなた…」
二人はもう一度、官能の渦にその身を任せていった―
126前夜3:03/10/19 17:30 ID:QLzl9RPk
そして翌日―望里、椎羅、蘭世、俊、カルロ、ジョルジュたちが江藤家の地下室を降りて行く。
目指すは、魔界のはずれにある滝。そこに冥界への入り口がある。
椎羅は望里に寄り添って、そのぬくもりを忘れまいとするかのように、その大きな手を掴んだ。
望里も愛情を込めてその手を握り返す。彼女の顔をそっと見つめながら、その赤い目を見て思った。
(寝ながら、泣いていたのだろうか…)
階段を降り終わったところで、望里は突然口を開いた。
「あっ、椎羅!忘れてた!」
「えっ、何?」
「ほら、皆がお腹が空いた時にってチョコレートとかお菓子を用意してたじゃないか。
あれを持ってくるのを忘れてたよ。すまないが、取って来てくれないか。腹が減っては戦は出来ないからね―」
「分かったわ、すぐ取ってくるわね」
椎羅は急いで階段を駆け登っていった。そんな妻の後ろ姿を見つめた後、望里は蘭世たちを振り返って言った。
「―さあ、行こう」
「えっ?お父さん、いいの?…お母さんを待たなくて―」
「ああ、チョコレートならちゃんとここに持ってる」
「…お父さん…」
「これでいいんだよ」
望里はそれだけ言うと、マントを翻して先を急いだ。皆も何も言わずに続いた。
(…きっと…つらくなるだけだ。笑った顔だけ、憶えていたい…)
その頃、椎羅は家のキッチンでお菓子の包みを探していたが、見つからなかったので別の食べ物を持っていくことにした。
急いで地下を降りて行く。
「あなた、ごめんなさい。遅れちゃって…」
さっき別れた場所まで来てみて愕然とする。望里たちの姿は既になかった。
「あなた…?」
椎羅には夫の気遣いが痛いほど分かった。きっと、わざとだったんだわ…。
「……もうっ…泣いたりなんかしないわよっ…!」
大粒の涙をポロポロとこぼしながら、怒りにも似たやるせない気持ちで椎羅はそう叫ぶ。
地面にずるずると座り込みながら、椎羅の嗚咽が哀しく地下に響き渡った―
127モーリ&シーラ作者:03/10/19 17:36 ID:QLzl9RPk
短い話ですが、これで終わりです・・・
冥界行く前にモーリ&シーラが真壁君やジョルジュの前だというのに
ラブラブだったひとコマに触発されて書きました。

チョコレートってちょっとマヌケだったかも。
でも他に思いつかなくって・・・
128名無しさん@ピンキー:03/10/19 22:38 ID:o3FK70QI
>>116
私はスキです。こういう現実味のある作風!これからも、是非書いてください!
129名無しさん@ピンキー:03/10/21 17:17 ID:Q8YppyLi
最近ココ見つけた新米です。
夜伽話の続きはもう見れないんでつか?論争読んだけど、結末わからないと
夜も眠れないでつ。楽しみにしてた香具師もイパーイいたと思うんでつが。
もう無理でつか?
130名無しさん@ピンキー :03/10/21 19:19 ID:H4VsBkKM
>>129
夜伽話は書いたその人のサイトで続き掲載されてまつよ…
131名無しさん@ピンキー:03/10/21 20:06 ID:aR6/IGD5
>116様
乙です!鈴世&なるみ大好きなので、この二人の話は素直にうれしい(´- `*)
ダーク風味だけど愛が感じられたので、私は好きです。
てゆうかなるみたん…切ないなー…。(´Д⊂ヽ
でもきっと、こんな思いは抱えてたんだろうな、なんて思いますた。
なんかどうしようもない感想になってしまいましたが。
>116様のお話またお待ちしております。
132129:03/10/22 16:54 ID:XOrUvP2H
>130
ありがとうございました。やっと見つけました。
133名無しさん@ピンキー:03/10/22 17:31 ID:namIfqaY
親世代のエチー話は萎え〜
134名無しさん@ピンキー:03/10/22 19:25 ID:5Ifftja2
暗いと不平を言うよりも、進んで灯りを点けましょう。
135名無しさん@ピンキー:03/10/22 22:40 ID:6Chx7lRu
私は好きですよ、シーラとモーリの話。
これからもいろんなシチュで読みたいです。
136名無しさん@ピンキー:03/10/22 23:29 ID:6WtlMZnJ
俊蘭だって子どもいるから
親世代だもん(w

卓にも出来てたな、そういえば…
ママンショックだったよ
137名無しさん@ピンキー:03/10/23 14:31 ID:sAVEp1wY
漏れもモーリシーラ好き!
大人の雰囲気があって(・∀・)イイ!!
つか作者さんの作る雰囲気が好きさ。
138困ってる新郎合宿3日目・・・1:03/10/24 00:01 ID:fUFPn+GD
合宿三日目
隣で寝ていたトレーナーが起きる気配で目が覚めた。
「起こしちまったか・・・すまんな」
よっこらせと立ち上がるトレーナーは身体中の固くなった筋肉をほぐすように
手足をグリグリと振りながら部屋から出ていった。
見渡す部屋は男臭ぇイビキと、それに不似合いな程神々しい朝日が差し込んで眩しい。
あ゛〜!
男臭ぇ!
無償に腹が立って部屋を出た。
いつもは甘い江藤の香りや、サラサラとくすぐる髪の毛で目が覚めるのに!
新居が恋しくなった。
まだ少ししか味わっていない新居。

起床時間が過ぎ、朝食前の軽いランニングが終り、まずいメシを食らう。
クソッ
・・・江藤の作ったメシが食いてぇ・・・

"真壁くん、スープあっついから気をつけてね〜"
江藤の笑顔と声が頭に蘇る。
オレ・・・・意外と重症だな・・・
大きな溜息が出てしまった。

午前中は昨日と同じ鬼のロードワークだった。
昨日の疲れが多少残っているせいかオレもなかなかバテたが、たいした事はない。
だからというわけではないが、また昼食後に抜き打ちテストを試みる。
別にヤル気満々で行くんじゃないんだからな!
と自分に言い訳をしながらテレポート。
139困ってる新郎合宿3日目・・・2:03/10/24 00:02 ID:fUFPn+GD
ピンポーン
「はぁ〜い♪」
・・・っ!!!!この声は!
ガチャ♪
「あら?誰もいないわ・・・」
「どうしたの?神谷さん」
江藤の声が奥から聞こえる。
「せっかく出たのに誰もいないのよ。いたずらかしら」
「や〜ね〜」
パタン。


・・・チキショー・・・これじゃぁ・・・
オレは帰らざるをえなかった。
なぜか不完全燃焼の気持ちを拭いきれない。
無償に腹が立った。
なぜだ。
やはり心の奥底では何かを期待していたからか・・・。
そう思うとまた腹が立った。
何でこんな事で感情が左右されるのか。
それも気に入らなかった。
何やってんだオレはぁ!


午後のスパーリングは昨日より更にハードにやり合う事になる。
それはオレにとっては怒りをぶつけたに等しい。
トレーナーだけでは足らず、元気の残ってる奴全員相手にした。
140困ってる新郎合宿3日目・・・3:03/10/24 00:03 ID:fUFPn+GD
「今日の真壁さんおっかねぇな」
「うん。機嫌悪いのかな」
「気合入ってんじゃねぇの?」
ヒソヒソと後輩たちがささやくのを尻目に、最後のスパーリングに全力をぶつける。

夕食・シャワーと済ませてから、悶々と抱えていたものに後押しされて
やはり新居へ足を向けてしまう。


ピンポーン
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・


反応なし。
もう寝たか?
まだ8:00前だぞ。

ピンポーン
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・

更にしばしの静寂の後、明かりもつけずに
「・・・・どちら様ですか?」
と、小さな声が聞こえた。
のぞき穴からは外の暗がりの様子がわからないのだろう。
オレは黙っていた。
どうするかな。
141困ってる新郎合宿3日目・・・4:03/10/24 00:03 ID:fUFPn+GD
「あの・・・どちら様ですか?」
もう一度か細い声が誰何する。
名乗ろうかとも思ったが、それを堪えて様子を見ていると
カチャ・・・・
そろりとドアが開き、江藤の白い指がドア越しに見える。
・・・・・開けるなよ・・・・同じじゃねぇか・・・
予感が当たって嬉しいようなガッカリしたような腹が立ったような・・・
江藤の顔が出てくる前に、オレが勢いよく開いて踏み込んでやった。
「きゃあっ」
江藤の小さな悲鳴。
玄関に足を踏み入れたオレは驚き、慌てて後ろ手にドアを閉めた。
リビングの明かりが差し込んでくるだけの暗い玄関に立つ江藤は
シルエットでも一発でわかるバスタオル一枚の格好だったのだ。
バスタオルからスラリと伸びる足のシルエットが妙に目につく。
「バカ!お前なんて格好で出てくるんだ」
思わず怒鳴ってしまう。
美味しいシチュエーションという気持ちもないではないが、この場では怒らざるをえない。

オレの剣幕にうろたえる江藤は
「だって・・・・お風呂上りだったんだもの・・・」と後ずさる。
「服を着てから出ればいいだろーが!」
「・・・・ごめんなさい・・・」
江藤はバスタオルの合わせ目をぎゅっとつかんで俯く。
白い肩が寒そうに縮こまっているのを見て、オレは急にもの悲しい気持ちになった。
・・・どうしたらわかってくれるんだろう・・・
・・・もともと無理なんだろうか・・・
・・・このノーテンキは治るものではないのか・・・
・・・このままではいつか・・・
オレは手を伸ばし、愛しい妻を抱き寄せた。
冷えた肩を包み込むように、細い体が壊れてしまわないようにそっと・・・
142困ってる新郎合宿3日目・・・5:03/10/24 00:04 ID:fUFPn+GD
オレにとってこんなに大切なものがこの世にあるだろうか。
何ものにも代え難い、守る為ならオレの命すら惜しくはない。
だが、オレの目が届かないことだってあるんだ。
オレは万能じゃない。
自分を守るとまではいかないにせよ、危険の回避ぐらいはしてくれ・・・。
これ以上無防備なマネをされたら、1人で残しておけなくなる・・・
・・・どうしたらわかってくれるんだ・・・


「あなた・・・」
江藤がオレを見上げてきた。
黒い瞳は潤んでオレを映し出す。
みるみるうちに表面張力を保ちきれず流れ出す雫。

・・・ありがとう・・・
・・・ごめんなさい・・・
・・・気をつけます・・・

オレの混沌とした脳へ震えるように響いてくる声・・・


オレははっとして腕の中の黒い瞳を見つめた。
江藤の心の中は既に暖かいもので満ち溢れている。
オレの考えが伝わってしまったのか・・・・?

143困ってる新郎合宿3日目・・・6:03/10/24 00:05 ID:fUFPn+GD
オレを見つめ返す瞳は頷くように瞬いた。
しばらくの間オレをじっと見つめ、そしてゆっくりと睫毛に隠れていく。
オレは腕の中で精一杯背伸びをする身体をきつく抱きしめ
やわらかく求めてくる唇に応えて、自分も目を閉じる。

もう言葉は必要なかった。
オレの思考が強すぎて伝わってしまった事がどうした。
大切なのは本当だ。
自分の心を隠そうとしている自分が急にバカバカしくなった。
なんで隠す?
本当の事だ。
いいじゃないか。
なぁ。


オレはゆっくりと唇を離すと、細い体を抱き上げて歩き出した。
江藤も黙ってオレに身を預ける。
そう・・・
言葉はもう必要なかった。
冷えた身体を気が済むまで温めるだけだ。


==合宿3日目強制終了==
144名無しさん@ピンキー:03/10/24 00:31 ID:XM/3sX/U
> ==合宿3日目強制終了==

強制終了に思わずワロタけど萌え萌えですた。(*´ii`)
4日目お待ちしておりまつ。
145名無しさん@ピンキー:03/10/24 01:22 ID:3kfRIn2y
>合宿3日目強制終了

真壁君の、いつでも手元に蘭世を置いておきたい気持ちがよーく伝わりますた。
あちきが蘭世だったら…真壁君が実在したら…慢性睡眠不測でも(・∀・)イイ!!
146名無しさん@ピンキー:03/10/25 00:35 ID:lXG21Yya
>129 130
私も夜伽ファンだったのですが、どうしてもそのサイトが見つかりません・・・。
申し訳ないのですが、教えていただけませんか?
お願いします。
147名無しさん@ピンキー:03/10/25 09:35 ID:EwUcCxqQ
"ときめきトゥナイト" "新婚作者"様 でぐぐれば出てくる
いくつかのときめき系サイトさんからもリンクされているしね

それからsage進行でヨロ
148名無しさん@ピンキー:03/10/25 10:44 ID:y7syfIQe
ageてる教えてちゃん…
わざとか?
149名無しさん@ピンキー:03/10/25 18:17 ID:WbIq04I/
ハイパーの使い方も間違えてるし初心者タンでは?
まぁマターリマターリと・・・
150名無しさん@ピンキー:03/10/26 01:04 ID:bf4PRZrj
あ〜いら〜びゅ〜 な〜んだがわ〜たし〜
そ〜わそわし〜てるぅ〜 ときめきトゥナイ♪ ゥホゥホゥホゥホゥホゥホゥホゥホ
151名無しさん@ピンキー:03/10/26 09:25 ID:2T5XsiBD
なつかしゴンタくんの声……>ゥホゥホゥホゥホゥホゥホゥホゥホ
152名無しさん@ピンキー:03/10/26 10:15 ID:MWsArYa8
ゴンタ君の声は楽器なんだぞ
153モーリ&シーラ作者:03/10/26 13:07 ID:ChNxPUvf
今回はちょっとオールスター(?)出演の新作です。
読みたいと思ってくれる人がいて、ウレシイです。
興味ない方はスルーしてくださいね・・・
154吸血美女カーミラ現る―1:03/10/26 13:12 ID:ChNxPUvf
真壁君のカルロ様替え玉騒動も終わり、魔界人に戻す方法は見つからなかったものの、
ひとまず平穏な日常生活を取り戻した江藤家。魔界からアロンやフィラもやってきて、
蘭世たちと同じ高校に通うことになり、一段と賑やかな日々ではあったのだが…。
そんなある日の昼下がり―
「あなた!起きて下さいなー!」
まだ棺おけの中で寝てる望里を椎羅がたたき起こしているいつもおなじみの光景だ。
棺おけをドンドンとノックするが、中からはぐうぐうと寝息ばかり。
ガバッと蓋を開けて思いっきり怒鳴る。
「あなたったら!!いつまで寝てるんですかっー!!!」
「うーん…」愛用の水玉模様のパジャマの襟首を掴まれて激しく揺さぶられた挙句、
ようやく望里は目を開けた。
「おはよう、椎羅ぁ…」目覚めた途端に、妻の肩に腕を回しておはようのキスをする愛妻家・望里。
「…全く、おはようじゃありませんよ。もうお昼過ぎてるのよ」
「いいじゃないか。昨日は徹夜して小説書いてたんだ。それもこれも、愛する我が家族の生活の為にだな…」
独り言のようにブツブツ言う望里に、椎羅はあきれたように言葉を返す。
「一家の主なんだから、当然じゃありませんか」
それに多少ムカッときたのか、妻の肩に回していた腕に力を入れて、自分と一緒に
すばやく棺おけの中に引きずり込んだ。
「きゃっ…」蓋がバターンと閉められ、真っ暗で狭い棺おけの中で、
望里の上に椎羅がのしかかる形となった。
「やだ、あなた…こんな狭い所…」
「狭いのは当然だ。これはシングルの棺おけだからな」
「あら、ダブルの棺おけなんてあるの?」
「もちろん。吸血鬼同士の夫婦はダブルの棺おけで一緒に寝るものさ、新婚時代はね―」
「うそ、そんな冗談言って…」
形のいいカーブを描く椎羅のお尻を撫でながら、望里の唇が妻のそれをふさぐ。
「んっ…」
「―なあ、椎羅…今この状態でやれると思うか?」
「あん…やるって…何を…?」
キスを続けながら、望里の手は椎羅のスカートの中に入って
パンティを引きずり下ろそうとしていた。
155吸血美女カーミラ現る―2:03/10/26 13:15 ID:ChNxPUvf
「あっ…ちょっと…」
「―分かってるだろ?」
突き上げてくる固いものを下腹部に感じながら、椎羅は抵抗をしてみせる。
「あ、あなた…だめよ…」
「どうして?きっと興奮すると思うんだ」
「―だって…スープを火にかけたままなの…ね、ここから出してちょうだい」
「やだ」
「もう…子供みたいに駄々をこねないで…」
「だめだよ。私が呪文を解くまでは外には出られないんだから」
「ふ…ん…いじわる…」
と、その時棺おけの蓋がギイーと開いた。
(―あれ?)と望里と椎羅がお互い不思議に思っていると、聞きなれない女性の声がした。
「まあ、私、お邪魔してしまったかしら…?」
二人がガバッと身を起こして、声のする方を見るとそこには―。
長く艶やかな黒髪を額の中央で分け、体の線を強調するような黒いロングドレス姿の妖艶な美女が、
笑みを浮かべて二人を見下ろしていた。真珠のように真っ白い肌に、血のように紅い唇が映え、見事なコントラスト。
そしてその美しい黒い瞳は濡れたようにきらめいていた。
「ああっ…きっ、君は…カーミラ!!」
これ以上ないくらい驚いた表情の望里が、やっとのことで口を開く。
「そうよ。お久しぶりね、望里…」
望里は慌てて椎羅のヒップからその手を離して、きりっとした表情を即席で作った。
「カーミラ…。君は美しさに磨きがかかったようだ」
「あなたは…人間界に来て、少し老けたようね―」その言葉にガクッと落ち込んだ望里を見て、
カーミラは可笑しそうに笑った。
「ふふ…でも相変わらずハンサムだわ。渋みが出てセクシーよ」
カーミラから頬にキスを受けて、デレーッとなった夫を突っついて、椎羅が当惑したように小声で囁く。
「あなた、一体誰ですの?」
156吸血美女カーミラ現る―3:03/10/26 13:18 ID:ChNxPUvf
カーミラは椎羅に視線を移し、値踏みするようにその顔や全身を観察した後、口を開いた。
「―では、この方があなたの奥さん?」
「あ、ああ。名前は椎羅。椎羅、私の親戚のカーミラだよ」
「初めまして、椎羅さん」にっこりと微笑むカーミラ。
「…カーミラ…さん?―初めまして…。あの、親戚って正確には…?」
「冬馬おじい様の娘で、私の父の腹違いの妹だよ」
「…ということは、あなたにとってはおば様に当たる訳よね?」
「まあ嫌だわ、おば様だなんて。私は望里より年下なのよ。ねえ?」
そう言って望里の胸に、紅く塗られた長い爪の光る手を置いた。
「…ふうん。そうですの…」椎羅は面白くなさそうに親しげな二人を見つめる。
「それにしても、望里。私驚いたわ、ついこの間、100年の眠りから覚めたのだけれど、
その間にあなたが人間界に駆け落ちしたって聞いて…。しかもお相手は何と狼女…あら、失礼、オホホ…」
「オホホ…」椎羅は青筋を立てながら、必死に作り笑い。
「そう、君が眠っている間にいろいろあってね…。―ところで、カーミラ。君は一体どうして急に人間界に?」
「だって私、久し振りに目覚めたのよ。もういろいろ行動したくって。それにあなたのご家族にも会ってみたかったし。
ちょっとあなたのお家にお邪魔して、こっちで生活するのも面白そうだなって思って―」
「え、ちょっとー!」椎羅が口を挟む。
「そうか、好きなだけ滞在していいよ、カーミラ。空いている客間もあるし」
「あなた!」難色を浮かべて望里の腕を掴む。
「あ、そうだ椎羅。カーミラに何かお前の服を貸してあげたらどうだ?」
(何で私が…)と椎羅が思っているとカーミラが言った。
「あら、結構よ椎羅さん。あなたのお洋服、きっと私には胸周りがきつそうだし…」
「くうーっ!!!」今まで我慢していた椎羅だったが、とうとう狼の耳をピンっと出して怒り心頭。
だが同時に、深い切れ込みの入ったカーミラのドレスの胸元からこれ見よがしに覗く見事な谷間に敗北感を味わって、
思わずうつむいた。(ま、負けてる…)
「うふ、冗談よ冗談」軽やかに笑うカーミラ。
157吸血美女カーミラ現る―4:03/10/26 13:21 ID:ChNxPUvf
「洋服と言えば、望里。何なの、あなたのこの可笑しな寝巻きは?せっかくのいい男が台無しよ。
早く起きて、吸血鬼らしい格好に着替えたら?」
「はあーい。そうしまーす」望里はいそいそと動き出す。
「私、失礼してキッチンの方へ行って来ますわ!」
椎羅はプンプンしながら、ものすごい音を立ててドアを閉めると部屋を出て行った。
(面白くないっ!何なのっ、あのカーミラって女!あんな高飛車な女見たことない!
可笑しな寝巻きですってえっー?悪かったわね!私の手作りなのよ!…もうっ、あの人もあの人よ。
実のおばさんにすっかり鼻の下伸ばしちゃって…!!)

そして夕方―
居間で、学校から帰ってきた蘭世と鈴世にカーミラを紹介する。
「カーミラ、娘の蘭世と息子の鈴世だ。この人はねカーミラと言って、私の―」
「おばさん」椎羅が口を挟む。「だからあなた達にとっては大おば様よ」
カーミラは椎羅の言葉に一瞬キッと牙を見せたものの、すぐににこやかな表情を取り戻して二人に挨拶する。
「初めまして、蘭世に鈴世。しばらくごやっかいになるから、よろしくね」
「は、初めまして…カーミラおば様」
初めて会う妙に色っぽい親戚のおばさんに二人ともタジタジ。
(へえー。こ、こんな親戚がいたんだ…)
「あのね、おば様なんて呼ばなくていいの。カーミラさんで結構よ」
カーミラは蘭世をじっと見つめた。
「ねえ望里。蘭世は私の若い頃によく似てると思わない?」
「そ、そうかな…?」
「ええ。ほらこの長い黒髪といい、可愛らしい顔立ちといい、そっくりだわ。まるであなたと私の娘みたい」
「ぶっ、何を…!」望里も椎羅も驚いて吹き出す。
「やっぱり女は黒髪が一番よねえ…。あ、それから鈴世。利発そうでハンサムな子ね。将来が楽しみよ」
カーミラは屈んで鈴世の頬にそっとキスした。途端に真っ赤になる鈴世。
「ふふ…まあ可愛いいこと。赤くなっちゃって…。もっとしてあげましょうか?」
鈴世危うし!というところへ、居間のドアが開く。
158吸血美女カーミラ現る―5:03/10/26 13:27 ID:ChNxPUvf
「おじゃまするよー!」学校帰りのアロンの陽気な声だった。フィラも仲良く連れ立っていた。
「ん?あれ、お客?」こっちを振り返った見慣れない美女にアロンは早くもポーッと顔を赤らめている。
フィラはすかさず、その腕をしっかり掴んだ。
「あ、アロン様。カーミラ、こちらは魔界の王子のアロン様だよ。最近、人間界の高校に通い出してね」
「え、えーと…どうも。あの…」
「カーミラさんはお父さんのおば様に当たる人よ」
「あ、そーなの。へえ…。僕、アロンで…す…」大人な美女を前に、シドロモドロ。
「まあ、魔界の王子様…。どうりで気品がおありね」カーミラはしっかりとアロンを見つめて、その手を取って口付けて言った。
「カーミラと申します。よろしくどうぞ」
その妖艶なフェロモンをモロに浴びたアロンはクラーときてる。
その隣では、フィラが強烈な妖気を漂わせ、今にも怒りを爆発させそうだった。
「あ、この子は僕の…婚約者のフィラ…。メ、メデューサなんだ―ハハハ」
「フィラ様、よろしくね。未来の魔界のお妃様ですのね。とても幸運なお方…」
ヒュルヒュルヒュルという不吉な音が聞こえたかと思うと、フィラのブロンドの髪は
いつの間にか無数の蛇に変わっていた。(あっ、やばい!)と一同思った時にはもう遅かった。
バチバチバチ!!!愛のムチさながらに、フィラの目から放たれた光線によって、アロンは久々に石へと変えられてしまった。
「アロン様のばかあっ!ほとぼりが冷めるまで、しばらくそのままのお姿でいることね!」
フィラは2階の自室へと駆け上がってしまった。
「まあ…見た目と違ってたくましいお嬢さん…」さすがのカーミラも苦笑い。
「…あ、アロン様には双子の兄弟がいてね。真壁君といって、蘭世のボーイフレンドなんだ。
アロン様と一緒に隣に住んでいる」
石になったアロンをとりあえず適当な所に置いた後、その場を取り繕うように、望里が口を開いた。
「―真壁君…?そう、蘭世のねえ…」興味深げなカーミラの様子に蘭世はぎくっ。
(う…このままでは真壁君も危ないかも…)とカーミラパワーに不安を覚えた蘭世は、
とにかくカーミラに真壁君を引き合わせてはいけないと思い始めていた。
「ちょ、ちょっと外に買い物に行って来まーす」まだ学校で部活活動中の真壁君に会いに行こうと家を出た。
159吸血美女カーミラ現る―6:03/10/26 13:44 ID:ChNxPUvf
「あっ、いたいた真壁君!」ちょうど下校中の俊に通りで会えた。
「なんだ。必死な顔して」
「あっ、あのね…その―。今、うちの家族風邪引いちゃってるの。だから、家には来ない方がいいわ。
真壁君にも移っちゃうと大事なボクシングの試合にも響くし」
「風邪?」
「そ、そうなのっ」
「そうか?今朝、鈴世のやつはピンピンしてたけど」
「それが家に帰ってみると、もう強力な風邪のウィルスが蔓延しちゃってて、早速鈴世もやられちゃったの」
(うん…ま・こんな感じだわね…。全くの嘘でもないし―)
「ふーん。そうか…。じゃ、そんなに言うんならしばらくお前の家には行かねえけど―」
(ホッ。やったー)蘭世の顔から安堵の笑顔がこぼれる。
「お前…おかしいぞ。何か俺に隠してんのか?」
「ヤッ、ヤダッ。真壁君たら。何にもないって…!」
「家に帰ったらお前だって風邪引いちまうんだろ?」
「え?あっ、それが変な風邪でね、女の人は大丈夫みたい」
「あ・そ。何なら俺の部屋に特別に泊めてやろうかと思ったんだが―」
「えええっー!?」
両頬に手をあてて、真っ赤の蘭世を見てからかうように笑う俊。
「でも大丈夫だって言うんだから、その必要ねえか―」
「あ、なんだか私もやっぱりちょっと風邪引きはじめみたい…真壁君の言う通りに大事をとって、
と、泊めてもらっちゃおうかな…なーんて…キャーッ。」
「アホ。もう遅えよ。提案は却下」
「そんなあー、真壁君のいじわるー!」
曜子が見たら蹴り飛ばされそうだったが、二人はそんな風に仲睦まじく帰っていった。
とりあえず予防策をはって安心している蘭世だったが、やはりまだまだ甘い。
吸血美女カーミラの威力を見くびってはいけないのである。

160吸血美女カーミラ現る―7:03/10/26 13:48 ID:ChNxPUvf
夕食の席―
カーミラも江藤一家やフィラと一緒に席についてはいるものの、食べ物にほとんど手をつけていなかった。
今夜の江藤家の食卓は、ひとえにカーミラの存在のせいで、いつも違う異様なテンション…。
「あれ?カーミラ。食べないのかい」
「ええ、私はいいの。今夜味わうせっかくのごちそうが台無しになってしまうもの」
きょとんとしている皆を尻目にカーミラは意味ありげに微笑んだ。
望里だけはハッとしたような表情を浮かべていた。

その夜、皆が寝静まった頃、書斎で小説家稼業に精を出している望里の元をカーミラが訪れる。
「望里、さあ夜になったわ。行きましょうか」
「カーミラ、一体どこへ…?」
「分かってるでしょ。私達のごちそうが待っているわ」
「―もしかして人間の血を吸いに…?」
「もちろん」
「だが―笑われるかも知れないけど、私は人間界に来てからというものの、もうずっと血を吸っていないのだよ」
「大丈夫。すぐ勘を取り戻すわ…。さあマントを着て―」
そして数分後には、ジャルパックの扉を目指して、地下を降りて行く二人の足音が響いていた―

そして翌日…
「うーん…我ながらいい男だ…」洗面所で、望里は鏡に写る自分を見ながら上機嫌でつぶやいた。
「あなたったら、なに自己陶酔してるんですか」
不機嫌な妻の声にギクーッとして振り返ると、椎羅が仁王立ちしていた。そしてまじまじと望里の顔を凝視している。
何故なら、夫は顔の皺も白髪も減って、肌にもツヤがあり、明らかに若返っていたからだ。
「あなた!私に内緒で鏡の間であれをやったんでしょ?」
「え?いや、鏡の間には行ってないよ」
「うそ。絶対やってるわ!あそこへ行くんなら一緒にって約束してるのに!」
「椎羅。本当に行ってないんだってば」
「じゃあどうして若返ってるのよ?」
妻の迫力に押されて望里が返事につまっていると、
「―それはね、美味しい血を吸ってきたからよ、椎羅さん」カーミラの声だった。
161吸血美女カーミラ現る―8:03/10/26 13:50 ID:ChNxPUvf
「血を吸った…?」
「ええ、そうよ。昨夜、私達は人間の生き血を求めてイギリスに飛んでたの。
望里が若返っているのは、久し振りに処女の生き血を味わったせいよ」
「あなたっ、本当?」
「あ、ああ…。そうだ」
「久し振りに味わった美しい乙女の血は、また格別に美味しかったでしょ、望里?
今夜はフランスあたりに行きましょうか」
そう言うカーミラも更に若々しく、美しさを増したようだった。
「ふん!二人でそんな風に吸血鬼ごっこして、一体何が楽しいの?」
「ごっこって…椎羅、私達は本物の吸血鬼だって…」
「―そうよ、あなた達は吸血鬼だわ…。あなた達はね…!」
椎羅は悔しくてバタバタとその場から駆け出した。
後に残ったカーミラが不思議そうに聞く。
「あら?一体どうしちゃったの、あなたの奥さん」
「…結婚したときに椎羅とは、もうこれからは血を吸わないと約束したんだ」
「まあっ。そんな約束ってある?あなたは吸血鬼なのに…。何でそんなこと言うの?」
「多分、私が他の女性に近づくっていうのが嫌だったんだろうと思うが…」
「理解がないのね。でもあなた、よく血を吸わないでこれまで生きてこれたわね」
「ああ…魔界から取り寄せてる特別なトマトジュースを飲んで、喉の渇きを癒してきたから、
もうすっかり慣れてしまったんだ―だが…」
「…やはり本物の生き血にはかなわない、でしょ?」
カーミラの言う通りだった。人間界で20年近く暮らしてきてすっかり人間じみてしまっていたが、
やはり自分の中に流れる吸血鬼の濃い血は否定できない。
昨夜、実に約20年ぶりに処女の生き血を味わって、今まで抑えていた欲望がすっかり目覚めてしまったようだ。
新たな獲物を求めて、今夜が待ち切れないように望里は自分の牙を噛み締めた―
162吸血美女カーミラ現る―9:03/10/26 14:35 ID:ChNxPUvf
一方のカーミラは自室に戻って、少し考え事をしていた。
もう一人の王子のことである。片一方のアロン王子の方は、私の魅力に引き寄せられるように、
日に何度もこの家にやって来ては…恐いフィアンセに石にされてるけれど…。
「真壁君」という名前はこの家のしょっちゅう会話に出てくるが、その本人は隣に
住んでいるというのにいっこうに姿を見せていない…。おかしいわね…。―蘭世のボーイフレンドとか
言ってたけど、幸い、あの子は私に似ているし…。ちょっと遊んでみようかしら…。
カーミラはこんな風に考えて、微笑した。

そして―
夕方になり、カーミラは自室の窓から外を眺めていた。真壁君とやらはもうそろそろ帰宅するに違いない。
そして隣の家の門をくぐる人影を確認した。アロンは今日も帰宅早々私の所にやって来て、
性懲りもなく石になって居間でカチンコチンだから、あれこそ噂の真壁君だわね。
カーミラはすばやくコウモリにその身を変えて、開け放たれた窓から飛び立った。
そして隣の家の窓を魔力で開けて侵入する。と、その家はあろうことかカーミラを拒んで
外に放り出し、窓がピシャン!と閉められた。
「ちょっと!このカーミラさんをなめるんじゃないよ!降参おし!」
激昂したカーミラの黒い瞳が真っ赤に光り、光線が発せられたかと思うと
窓が恐る恐る開く。カーミラは穏やかな笑みを取り戻し、
「よしよし。分かったようね」と言うと家に張り込んだ。そして家の中を確認して、バスルームを目指した―

数分後、俊はシャワーを浴びようとバスルームに入った。衣服を脱ぎ捨てて浴室に入った途端、
誰もいない筈だったのに、シャワーの音が響いた。びっくりしていると、湯気越しに長い黒髪が目に飛び込んできた。
「え…江藤か…?」
長い黒髪は、後ろ姿を向けたまま何も言わずにシャワーを浴びている。
「お…おまえ…どうやってこの家に入れたんだ…っつーか、ど…どうしたんだ…」
俊は真っ赤になって、返事を待ったが、やはり何も言わず後ろを向いたままだ。
(そ…そろそろ…いい…かもな…俺たち…)
突然の蘭世からの大胆なアプローチに戸惑いながらも、ゆっくり近付き、その真っ白な両肩に
手を触れた瞬間、向こうが振り返った―
163吸血美女カーミラ現る―10:03/10/26 15:03 ID:ChNxPUvf
「ぎゃあーっ!!!」広い家中に俊の悲鳴が轟いた。
「え、江藤じゃない!あ、あんた、一体誰だっ!?」
カーミラは水で濡れた全裸のまま、妖艶な笑みを浮かべて俊を見つめていた。
「…あなたが、もう一人の王子様ね…。やっとお会いできたわ…」その顔を近づける。
「ちょっと…おい…あーっ!…」
その時、ようやく石から元の姿に戻されたアロンが家に帰ってきた。珍しい俊の悲鳴を聞きつけ、浴室に駆けつける。
「俊!?どうしたんだ、大丈夫かっ!?」ガバッと扉を開けると今にもカーミラが俊にキスをしようとしていた。もちろんお互い全裸だった。
「あ、アロン!」「ま、アロン様!」
「えっー!?ちょ、ちょっと、これどういうことだよっ!俊、抜け駆けしたな!」
「バカいうなっ!俺は何も知らねーよ!!」そそくさと自分の部屋に逃げていった。
後に残ったアロンは、赤い顔のまま、カーミラをじーっと見ていた。
「ま、アロン様ったらいけませんわ。後ろを向いてて下さい」「は、はあーい…」

「申し遅れましたけど、私はカーミラ・エトゥールと申します。江藤望里の親戚ですの。昨日からあの家に
滞在してて・・・あの…ちょっとあの家のバスルームが使用中だったので、こちらのをお借りしようと思って―。
ごめんなさいね。驚かせてしまって…」
数分後、服を着たカーミラが二人の王子の前で、恐縮したように言い訳した。
「な、なーんだ。ならそこへちょうど俊が入って来てしまったって訳だね。
僕、びっくりしたよ。知らない間に、二人がそういうことになってたのかと思って・・・」
「そんな訳ねえだろ、ったく」強がってはいたものの、内心まだドキドキしている俊だった。
江藤だと思ったのに・・・期待がはずれて残念だったような、でも間近で美女の裸を見られて得したような、
何とも言えない複雑な心境だった。そして・・・何となく、このカーミラには頭が上がらないような、そんな感じもしていた。
(う・・・硬派の俺のはずなのに・・・)
カーミラが帰った後、双子は男同士の約束をした。
「おい、アロン。今日のことは江藤には言うなよ」
「ああ、言わないよ。フィラにも言わないでよね。僕だってあの人の裸見ちゃったんだから」
お互いの自室に戻ってベッドに入った後も、やはりカーミラの顔と裸体が頭に浮かんで
心が休まらない二人だった。
164吸血美女カーミラ現る―11:03/10/26 15:27 ID:ChNxPUvf
それから数日して・・・
「おい、蘭世。この頃真壁君はうちに姿を見せないな。今夜あたりアロン様と一緒に夕食に招待したらどうだ?」
望里の提案だった。
「え、お父さん・・・真壁君はボクシングの部活が忙しいのよ。きっと無理だと思うわ」
「でも、たまには息抜きもいいじゃないか。まだカーミラにも紹介していないし」
(お父さんったら!私はそれがいやなのよー!)と蘭世は内心思ったが、
(無理に断るのも不審がられるかな・・・それに真壁君は女の人につれないから、きっと大丈夫だわ)と
好きな人を信用することにした。
「じゃ、真壁君に言ってみる・・・」力なく言う蘭世であった。

そしてその日の夕食の席―
やはり男共はカーミラにべったり。皆がカーミラのご機嫌をとっている。
真壁君でさえ、あのシャワーの一件のことをカーミラが蘭世に口をすべらせては困るからか、
カーミラの言うなりになっている。
女たちはそんな骨抜きさながらの男たちの様子を面白くなさそうに見ていた。

カーミラがやって来て数日後の日曜日―
敵がまだ深い眠りの中にいる午前中、椎羅の呼びかけで蘭世とフィラは居間に集まって
緊急の作戦会議を開いていた。
「絶対あれは男狂いよ。男と見ると目つきが変わるんだから!信じられる?
ぺックにまで媚売ってるのよ!ああ、それにしてもうちの人ったら、カーミラに甘過ぎるわ!
きっと冬馬おじい様が可愛がり過ぎたのよ。だからあんなにワガママなんだわ」と
椎羅があきれ果てたように愚痴をこぼせば、蘭世も同意して言葉を続けた。
「それにきっとおじい様の遊び人の血を受け継いでいるのね…お父さんやアロンはともかく、
あの真壁君までタジタジなのよ!信じられない!」
165吸血美女カーミラ現る―12:03/10/26 15:32 ID:ChNxPUvf
「アロン様ったら、あの人の前だといつもデレデレして、情けないったら!」
悔し涙を流してるフィラ。
「フィ、フィラさん…抑えて抑えて!」
「今夜も人の旦那を連れ出して一緒に血を吸いに行くっていうのよ!もうっ、私達の夜の生活を返してよーっ!!」
欲求不満らしく、椎羅もキーッと悔し涙。
「お、お母さん。そんな、声が大きい。抑えて抑えて!」
「蘭世。お前だってカーミラが真壁君に愛の手ほどきを…なんて嫌でしょ?時間の問題かもよ」
「キャーッ!!そ、そんなの絶対イヤーッ!!!」
蘭世はたまらず泣き叫んだ。
「落ち着きなさい、蘭世。例えだってば。―とにかく、このままここに居座られたんじゃ危険だわ。
私達で何とか手を打たないと取られちゃうわよ、うちの人も真壁君もアロン様も鈴世も―。
あら、なるみちゃんも呼ぶべきだったかしら…?」
「でもお母さん、手を打つってどうするの?」
「その冬馬様に相談してみます?何と言ってもあの人のお父様なのでしょ?
何かいい案を出して下さるかも…」フィラがアイディアを出す。
「そりゃいつもいい提案はして下さるけど、ねえ?蘭世」
「うーん…ちょっとその後が問題なのよね。結局、更に事態を混乱させるだけってことも…」
「それに、あなたの困った娘さんをどうにかして下さい、とも言いづらいし―」
「うーん…」一同、腕組をしてため息をつく。しばしの沈黙の後、椎羅が叫んだ。
「あっ!」
いい案でも浮かんだのかと、蘭世もフィラも言葉を待つ。
「そう言えば…彼女、最近100年の眠りから覚めたって言ってたわ!」
「―100年の眠り…?」
「まあ、そんなに眠ってらしたの?一体どうして…」
「さあ分からないけど。ちょっとこれを調べてみたら、何か出てくるかも知れないわね…。
ええ、そうだわ!サンドに聞いてみましょう!情報屋だから何か知ってるかも」

次回へ続く―
166モーリ&シーラ作者:03/10/26 15:36 ID:ChNxPUvf
今日はここまでです。
今回のお話では、本編では3巻あたりの「エトゥール家の家系図」
にしか出てこないミステリアス美女・カーミラさんを登場させてみました。
この後いったいどうなるんでしょうか・・・
167名無しさん@ピンキー:03/10/26 22:09 ID:NJf+IsyT
えらい渋いところから持ってきたな。
168名無しさん@ピンキー:03/10/27 17:34 ID:BqRab20J
>モーリ&シーラ作者様
オールメンバー総出演という感じでおもしろいです!
続きも楽しみにしてます〜。
169名無しさん@ピンキー:03/10/27 23:56 ID:5DHiSmXZ
初めてみたけど、ここいいですねー。
ここみたらまたときめき読みたくなってきました。
土日で、1〜9までスレ読んじゃった・・・
週末の予定まるつぶれ・・・
170困ってる新郎合宿最終日・・・1:03/10/28 21:32 ID:C9u1Njxd
合宿最終日
「真壁さん、真壁さん。そろそろメシっすよ」
ぐいぐいぐいぐいぐい。
・・・んぁ・・・誰だ・・・オレを揺さぶる奴は・・・
「真壁さん」
・・・うるせーなぁ・・・・
「起きて下さい」
・・・もう少し寝てたいんだ・・・・ほっといてくれ・・・・・・・z・・・

「起きねーなぁ・・・真壁さん・・・」
「さすがに疲れてんだろ。昨日ハードだったもんな」
「みんなもう食堂?」
「うん。集まってる」
「ヤベー・・・真壁さんだけ起きねー(汗)」
「まだ平気だろ。いい事思いついたぞー。見てろ」
「ぷっ。お前・・・何してんの?」

ゴソゴソ・・・モゾモゾ・・・・
枕に頭を預けて横たわるオレの腕の中に人肌の感触・・・・
・・・レ?・・・江藤?
「アナタ・・・起キテ・・・♥」
・・・いいじゃねーか・・・お前ももーちょっと寝てろよ
肩をぐいっと引き寄せる。
意外に重い。
抵抗すんなよ。
逃がさねー。
頭ごと引っ張り込もうとうなじから後頭部へ手を滑らせる。
シャリッ



目を開いたオレの視界には、目一杯坊主頭の後輩の顔。
171困ってる新郎合宿最終日・・・2:03/10/28 21:34 ID:C9u1Njxd



数分後
食堂に全員が着席して、最後の朝メシを取り始める。
オレのオデコと後輩のオデコに1つずつコブができ
もう1人の後輩のオデコには、真っ赤な跡がついている。
三人並んでオデコが赤いのに気付いたトレーナーが寄ってきて
「お前ら額の赤いのはナンダ?」
と、声をかけてきた。
後輩達は互いに顔を見合わせて、チラリとオレを見やる。
オレは知らん振りして黙々とメシを食う。

「真壁さんからヘッドバット食らいました」
「オレはデコピンもらいました」
「はぁ?」
情けなさそうな後輩達の声とトレーナーの間の抜けたような声。
「俺ら、真壁さんを起そうとしたんすけどね」
「やり方に問題があったっす」
「なんだよー。俺のせいにすんのか?」
「たりめーだろーが!ボケ!デコピン超ー痛ぇんだぞ。見てただけなのによ」
「うるせぇ!お前がちゃんと起こせないからだろ」
「だからって、あんなやり方したら真壁さんが怒るのわかるだろーが」
「じゃあ止めろよ。笑ってみてただけじゃねーか!」
「あ゛――!わかったわかった!お前らヤメロ!」
2人の口論に割って入ったトレーナーが一喝して終了


172困ってる新郎合宿最終日・・・3:03/10/28 21:36 ID:C9u1Njxd
昨日の夜(正確に言うと今朝未明)オレはこっそり帰って床についたはいいが
さすがに体が疲れてきてたらしく、なかなか起きられなかった。
それを見た後輩がイタズラ心をおこし、江藤のつもりになって腕の中に入り込んできた。
今思えば裏声でオレに囁いてくるなんて虫唾が走るだけなんだが
寝ぼけてたオレはまんまと江藤と勘違いして抱き寄せてしまい
坊主頭の感触に驚いて目を覚ましたのだった。
目が覚めたときはビックリしたなんてもんじゃなかった。
思わず腕の中の後輩には、頭突きを食らわせてしまい(それで目が覚めた)
横で見てげらげら笑っていたもう一人の後輩には
首根っこ捕まえて、とっておきの右のデコピンを見舞ってやった。
頭突きより痛かっただろう。
こいつらホントにたちが悪ぃぜ。
いたずら小僧からまだ卒業できていない。
オレを慕っているだけに叱りづれーし。
でもオレは容赦しねぇ。

事のあらましを聞いたトレーナーはゲラゲラ笑って、それで終わってしまった。
こんな始まり方をした合宿最終日。
午前中は最後のロードワークをして、午後は夕方まで簡単なスパーリングだけ。
仕上げは念入りなストレッチと計量。
合宿っつったって、別にいつもと変わらない光景。
後はバスに荷物を積んでみんなで乗り込み、家路をたどる。

メンバーの半数以上がぐっすりと寝ている中で
オレのヘッドバットとデコピンを見舞った後輩2名は、前の席で花札をしている。
それを見ながら反対側のイスに座るトレーナーと次の試合について話した。
今、オレは筋力がついたせいでベストウェイトが2キロ近く増え
階級を上げようかどうかのところにいた。
トレーナーは無理な減量を嫌うので、1階級上のスーパーフェザー級に上げろという。
オレはまだまだいけそうな気がしないでもない。
173困ってる新郎合宿最終日・・・4:03/10/28 21:37 ID:C9u1Njxd
オレはまだまだいけそうな気がしないでもない。
「減量がもっと厳しいぞ」
「わかってます」
「指名試合は半年後ぐらいにすっから、今から少〜しずつ落としてみろ」
「はい」
「大丈〜夫っすよ。真壁さんにはちゃんと食事管理してくれる奥さんがいるからー!」
花札をしていた後輩の1人が話に割って入ってきた。
ったく・・・・こいつらホントに・・・

「まぁ・・・そうだな・・・今度・・・カミさん一度連れて来い」
「おっ?」
前の2人が色めき立つ。
「カミさんとは一度減量のメニューについて話しておきたいからな」
「わかりました」
「おー!!奥さんに会うの久し振りー!」
「蘭世さんだっけ?」
バカヤロ。てめーら喜んでんじゃねぇ!
「おめーらもだ!今度試合に出すから減量だ。かあちゃん呼んで来い」
トレーナーの一喝。
「え゛っっ」
喜んだ顔のまま振り返る2人に、トレーナーはニヤリと笑う。
「しばらくうまいもんは食えねーと思っとけよ」
そこから家までの距離、バスの中はやっと静かになった。

バスはオレの新居の前で一度止まって下ろしてくれる。
「お迎えないのかな」
「奥さんでてこないっすね」
こいつらホントに・・・もう・・・オレ脱力・・・
「てめーら人の女のことばっか言ってねーで、さっさと彼女でも作りやがれ」
走り出すバスから顔をのぞかせる坊主頭2人に怒鳴った。
疲れる合宿終り。
やれやれだ。
174困ってる新郎合宿最終日・・・5:03/10/28 21:38 ID:C9u1Njxd
最後のテストには無事に合格した江藤は、扉を開けておかえりキスをくれる。
甘い香りとうまそうな夕食の香り。
これだよな。
オレは肺にたっぷりとその空気を吸い込んだ。
体の隅々まで満ち溢れていくのを感じる。
「ただいま」
張り紙そのままのドアを閉めて家へ入った。


メシを食って風呂からあがったオレは、タオルでゴシゴシと頭をこすりながら
座り込んで洗濯物に囲まれて動かない江藤の後姿を眼にする。
・・・・何してんだ?
ソロリと上からのぞき込んで心臓が跳ね上がった。
江藤の膝の上には返し忘れた後輩達のエロ本。
江藤は声も出ずに見入り、ページをめくる。
・・・あっ!・・・そのページは・・・
長くて黒い髪の女が縛られている写真だった。
ご丁寧にページの角に折り目までつけてある。

オレの気配に気付いたのか、江藤が振り返ってオレを見上げた。
「・・・・・・・・・」←江藤
「・・・・・・・・・」←オレ
気まずい沈黙・・・・・。
江藤の言いたい事はわかってるんだが・・・なんと説明しようか・・・。
「・・・・・・・・・」
江藤はオレの弁解を待っている。
「あー・・・・」
オレはみっともなくうろたえているらしい。
言葉に詰まる。
「後輩のを取り上げたんだが、返すの忘れて持って帰ってきちまった」
ホントの事だが、このシチュエーションではとってつけた言い訳のようにしか聞こえない。
もっと気の利いた事言えたらいいんだが、オレにそんな芸当できるか!(開き直り)
175困ってる新郎合宿最終日・・・6:03/10/28 21:41 ID:C9u1Njxd
しかしながら、半ばは予想はしていた事だが、江藤は驚くほどすんなりと信じる。
ココがコイツのすごい所だ。
オレは敬服するしかない。

「アナタが取り上げたの?」
無邪気に笑う。
形のいい唇が横にすらっと伸びて美しい。
「ああ・・・トレーナーに見つかったら返してもらえないからな。オレが預かった」
「みんなこーゆーの見るのねぇ・・・フフッ」
「興味持ったか?」
「ちっ・・・違います!」
ここは赤くなって反論してきた。
「まぁ、よく見ろよ。この写真がお前に似てるって評判だったぜ」
江藤の肩越しに写真を指差して見せる。
チラッと見た江藤は
「髪型が同じなだけでしょ!」
と言って乱暴に本を閉じる。
顔が真っ赤だ。
オレのペースだな。
にやっと笑いが出てしまう。
「どうかな?比べてみようか?」
そう言って江藤にのしかかり、衣類をとっぱらい始める。
結局合宿中は一度もこの営みを欠かす事がなかった。
こんなオレにも困ったもんだ。
176名無しさん@ピンキー:03/10/28 21:45 ID:C9u1Njxd
長い事引きずって書いてしまいまつた。
ネタ切れなので合宿終了でつ。
結局王子は毎日帰っているのでつた。
いつもとやってることは大して変わらんなー
お邪魔しまつた
177名無しさん@ピンキー:03/10/28 23:29 ID:NcIL+crp
真壁くんに会えるなら、
誰かの「かあちゃん」になってもいい(w
178幼さの…。:03/10/29 18:10 ID:VJY5kZDI
ものすごく久しぶりに書いたので、
エロがありません。スマソ
12歳の俊くんと蘭世(16だったかな?)


「死ぬかもしれないから?」
俊は、蘭世の涙を出来るだけそっと、だけど、気持ちとは裏腹に不器用に拭った。
「ううん、違うわ。真壁くんと一緒ならなにも恐くない」
頬を引きつらせて微笑もうとする蘭世。
「ただ、真壁くんの命を、大王様が──お父さんが真壁くんを殺そうとしているのが悲しいの」
12歳の俊にもそれは悲しく、子ども心を困惑させる事実だった。
自分が存在するせいで魔界が滅ぶ。
今までその存在すら知らなかった世界が、自分が生きているだけで、消えてしまう。
理由もわからずに。
そして、それを防ぐために、血の繋がった自分の父親に剣を向けられた。
「俺、生きてていいのか?」
俊の小さな弱音。自分さえ死ねば助かる世界と命。
「当たり前じゃないっ」
彼がいなくなれば自分も消滅する。心も、身体も。蘭世にとってそれは至極当然の事だった。
話し合いで解決するとは蘭世は思ってはいない。逃げるのか、それとも。
「真壁くんを、守るから」
蘭世の決意の強い瞳が俊を見つめる。

179幼さの…。:03/10/29 18:17 ID:VJY5kZDI
「俺が、誰も死なせない」
「真壁くん…」
蘭世は、俊の背に両手をゆっくりとまわした。
俊は蘭世の肩向こうの背に手のひらをおしあて、自分に引き寄せた。
その手のひらに伝わる蘭世の動きで、彼女がまた泣いている事を知る。
「あんた、よく泣くな」
しゃくりあげる蘭世の髪をなでてやる俊。
「俺の力で泣き虫、なおしてやろうか?」
俊は、ゆっくりと蘭世を自分から引き離して顔を覗き込んだ。
蘭世は、泣きながらも俊を見つめる。
彼はまだ蘭世と出会う前の12歳。だけど、数年後の蘭世が知る姿が垣間見える。
蘭世の泣き虫を封じ込める能力。俊は片手を蘭世の瞼に当て、目隠しをした。
その手のひらから瞳へ力を送るのか。

暗闇の中で蘭世は、唇に触れた感触を敏感に感じ取った。
押し付けられたそれは少し震えていて、蘭世は涙を止めた。

目を開けないように言い放って、俊は部屋をでていき、蘭世はまた涙をながした。
「私を泣かしてるのは真壁くんじゃないの…」




おしまい。
180名無しさん@ピンキー:03/10/30 17:40 ID:voXwQ2PL
はい、おしまい。
181名無しさん@ピンキー:03/11/02 12:20 ID:O6atwy52
>178-179
(・∀・)イイ!!エロは無くてもこういう話好きなんだよー。
切ない系。やっぱまきゃべくんはカッコイイなぁ…。
182名無しさん@ピンキー:03/11/02 12:20 ID:nvHVPAHo
12歳王子と蘭世のやりとりって、初々しくてかわいいよねぇ・・・

それにしても寂れてきたスレ・・・
作家さんたちが減ったのか・・・
183モーリ&シーラ作者:03/11/02 19:13 ID:6yVMhJw2
間が空いてしまいましたが、続き書いてきたのでどうぞ
思ってたより長くなってしまいました・・・
184吸血美女カーミラ現る―13:03/11/02 19:17 ID:6yVMhJw2
それから数分後…
「麗しの皆様方…わたくしをお呼びで―?」
早速呼び出されたサンドが、居間のソファで女3人に囲まれて、一体何事だろうとビクビクと縮こまっている。
「ええ、サンド。ちょっとあなたの知恵をお借りしたいんだけど…」と椎羅。
「はあ…何でございましょう…?」女たちの愛想笑いに何となーく嫌な予感のするサンド。
「実はね、私たち皆、困っているのよ」
「は?左様で…?」
「それというのも、うちの人のおばさんがこの1週間ほどこの家に滞在していてね―。
ご存知?名はカーミラというのだけれど…」
「ええっ?何ですとっ!?あのカーミラ・エトゥール様がっ…!?お目覚めになったのですか!?」
サンドの驚きようは尋常ではなかった。元々逆立っている髪が更に逆立ったように見えた。
カーミラが近くにいはしないかと辺りをキョロキョロ見回している。
「でっ、カーミラ様は…今は?」
「まだ自分の棺おけの中で眠っているわ。サンドさん、何か知ってるんなら教えてちょうだい!一大事なの!」
蘭世は両手を組んで訴えた。
「わたくし達を助けると思って!将来、お給料はずみますわよ!」とフィラが拳を握る。
「何で彼女は100年も眠っていたの?一体、何があったの、サンド!」
皆、必死な表情でサンドを問い詰める。
「―これは…魔界では口外禁止とされている事柄なのですが…致し方ありませぬな。
ここだけの話でございますぞ。よろしいですね?」
女たちは無言で何度も頷いて、先を急かした。
ゴホン、ともったいぶった咳払いをしてから、サンドは厳粛な面持ちで話し始めた。
「―そのカーミラ様は…過去に魔界の王家を揺るがす事件を起された方なのです。
無論、この事は一般の魔界人には知られておりません。王家の歴史からも、タブーとして抹消されてしまったのですから―
あれから…もう100年の時が経ったのですか…いやはや、早いものですな―」サンドは感慨深そうに遠い目をした。
185吸血美女カーミラ現る―14:03/11/02 19:20 ID:6yVMhJw2
「ちょっと!もったいぶらないで早く教えてよ!向こうが起き出してきちゃうわ」椎羅がしびれを切らす。
「はいはい…ホント、人遣い荒いんだから…いつぞやも望里様が嘆いていらっしゃいましたぞ」
「何ですって!?あの人が私の何を嘆いてたって言うのっ!?」
神経過敏になっている椎羅はぴくっと反応して額に青筋を立てた。
「お、お母さん、まあまあ。その話は今はいいじゃない。サンドさん、早く続きを―」
「あ…ゴホン。カ、カーミラ・エトゥール様は…それはそれは美しくて評判のお方でした。
いつしかその噂は吸血鬼村はもとより、魔界城にも伝わり、そして今のレドルフ大王様の兄君様の―」
「ええっ、大王様にお兄様がいたのっ!?は、初耳だわ!」一同驚きの声を上げる。
「左様。名はランドルフ様とおっしゃて、将来は魔界の大王となられるはずのお方でした…。
もの静かで、真面目なお方で。そのランドルフ王子が珍しくカーミラ様にたいそう興味をお示しになって、
お城へお招きになったのです。王子は噂に違わずお美しいカーミラ様に一目で恋に落ち、そしてカーミラ様の方も
ハンサムで優しい王子に惹かれたようでした。まもなく二人は恋人同士となり、結婚を誓い合う仲となったのでございます…。
はいおしまい、チャンチャン!」
「ちょ、ちょっとっ!それで終わりってことはないでしょーがっ!」
「し、しかしここから先はわたくしの口からはとても―。何しろ王家にお仕えする身でありますゆえ、
信頼を裏切るようなことは…」
「サンド。わたくしが許可しますわ。王家に何があったのかわたくしは知っておかなくては…!」
将来の魔界の妃の正論に押し切られて、サンドは仕方なく重い口を開いた。
186吸血美女カーミラ現る―15:03/11/02 19:22 ID:6yVMhJw2
「―そうして…自分の妃にはカーミラ様を娶りたい、とランドルフ王子は時の大王であるお父上に言われました。
しかし、既に王子の婚約者を決めていらした大王はカーミラ様に難色を示され…。ランドルフ王子は、
カーミラ様と結婚できないくらいなら自分は王位を捨てるとまで父王に宣言されたのですが…大王は一時の気の迷いと本気にされず…。
悩んだ挙句、王子はカーミラ様に自分の血を吸ってくれるよう頼んだのです。自分が吸血鬼になってしまえば、父王も諦めて、
弟君のルドルフ様を後継ぎにするだろうと思ったからでしょう。カーミラ様は王子の大胆な計画に最初はためらわれましたが、
自分への愛の深さを知って、頼み通りに王子の血を吸ったのです。ところが―」
サンドはここで声を詰まらせた。
「サンド、ところがどうしたのっ!?」椎羅はもう話に夢中になっていた。
「血を吸われた王子は、吸血鬼とはならなかったのです。恐らく、王家の複雑な血がそれを阻んだのでしょうな。
悲しい事に王子は…精神を病んでしまわれました。王家はその事実は公表せず、ランドルフ王子は急死した、
ということにしたのです。実際には、王子は城の地下牢に長い間幽閉された後、最近とうとう
お亡くなりになったと聞いております。そしてランドルフ王子をたぶらかせた罰として、カーミラ様には処刑が命じられ…」
「ええっ、処刑…!ひどいっ!」女たちはいつしかカーミラに同情していた。
「そこにカーミラ様のお父上、つまりトーマス様がご登場されました。愛しい我が娘への処罰があまりにも厳しすぎると、
大王様に訴えられたのです。このまま娘が処刑されたらば、吸血鬼村全体を指揮して王家への反乱を起すというトーマス様の
迫力に押され、大王様はしぶしぶ、極刑を取り止める次第となったのでございます」
「それで…処刑の変わりに…100年もの間、眠らされていた、という訳なのね…」
蘭世がうるうる涙を流しながら言う。
187吸血美女カーミラ現る―16:03/11/02 19:24 ID:6yVMhJw2
「おっしゃる通りです。100年間の眠りの後には、数日の自由な時間を与えられますが、
その後でまた100年間眠らされ…と永遠に罰を受けなくてはならないのです」
「まあ、それではあまりにも可哀相じゃありませんか…」とフィラも涙声を詰まらせた。
「ほんとね…私ったら、何も知らずにつらく当たってしまったかも…」
椎羅はエプロンの端で涙を拭きながら、後悔に胸を詰まらせた。
「―皆様方、わたくしがこの話を明かしたことはどうぞご他言無きよう…。わたくしの首が飛んでしまいます。
あ、それから蘭世様。常々思っていたのですが…俊王子は、ランドルフ王子に少し似ていらっしゃる。
カーミラ様が気付かぬはずがない。お気をつけた方が…」
「ええっ、そんなっ!サンドさんっ!ちょっと待って…!」
蘭世の懇願にも関わらずサンドが霧となって姿を消したところへ、当のカーミラがあくびをしながら居間に現れた。
「ああ良く寝たわ。皆様、おはよう」
皆一様にぎくーとなった。慌てて涙を拭い取る。
「お、おはようございます。あの…何か召し上がります?」椎羅が愛想良く聞く。
「ええ、そうね…では何か…お茶とクッキーでも頂こうかしら」
女たちはキッチンに入って行き、カーミラを囲んで皆でお茶を飲む。
蘭世はさっきのサンドの発言がよほど気にかかったのか、カーミラに何か言いたげにじーっと見ている。
「蘭世、どうしたの?何か私に言いたいことでもあるの?」
「う、ううんっ、何でもないわ」
「そう?…ところで、あの真壁君って王子、私の昔の恋人にちょっと似ているのよね…」
(来た―っ!!)と特に蘭世が凍りついた。「へ、へえ…昔の恋人…」
「ふふ…もう100年も前の話よ…彼もやはり魔界の王子だったわ…でも今はもう決して会う事も出来ないけれど。
目覚めてからは、彼のことを思い出してばかり…」
カーミラは思い出に浸りながら、紅茶を一口飲んでため息をついた。
(こ、この人…真壁君を絶対狙ってる…)と恐怖に怯える蘭世の両肩を、椎羅とフィラが
無言のまま励ますようにポンッと手を乗せる。
(ううっ、もうっ。二人とも、人ごとだと思ってえー!)
188吸血美女カーミラ現る―17:03/11/02 19:31 ID:6yVMhJw2
それ以来、いつだか母親の言っていた「カーミラが真壁君に愛の手ほどきを…」という言葉が
ますます頭を離れない蘭世。(真壁君に限ってそんなことは…)と彼を信じる一方、
(もしかして…私の知らない所で…?)という疑念も生じたりする。
いつぞやの夕食の席では、真壁君はもちろんカーミラにデレデレという訳でもなかったのだが、
かといって突っぱねる訳でもなく、といった感じで蘭世としては腑に落ちない。
(とりあえず、二人を会わせなければいいのよね)と蘭世は思う。
(学校に行っている間中はいいとして…問題は…帰宅後よねー。あの女人禁制の家には私、入れないし…
あっ、と言うことはカーミラさんも同じな訳で…ううん、でもそんなことに屈するような人じゃない気がする…。
うーん、どうすりゃいいのよー!)と悩んでいると,最近何だか若く見える父親が居間に現れた。
「ねえお父さん、今夜もカーミラさんと一緒に血を吸いに出かけるの?」
「ん?ああ、多分な」という望里の答えに蘭世は(やったー!この線を利用しよう!)と思う。
「あ、あのさ…どうせなら、カーミラさんが魔界に帰らなきゃいけなくなる日まで、ずっーと
一緒に出かけてたら?題して「吸血旅行」!これ、どうっ!?お父さんもカーミラさんも、
血を吸うのなんてすっごく久し振りなんでしょ?ねっ、この家の中にいるより、
外の世界で吸血鬼としての本能をとことん満喫した方がいいと思う!」と
蘭世がテーブルに片足を乗せて、いささか興奮気味で喋っていると、いつのまにか母親が怖い顔して立っていた。
「蘭世!お父さんに余計なこと言わないでちょうだい!」
その迫力に押されて、(あ…この線はダメみたい…)としずしず引き下がる。

189吸血美女カーミラ現る―18:03/11/02 19:33 ID:6yVMhJw2
部屋に戻った蘭世の頭の中に突然浮かんできたのは何故かT.Eの奇妙な顔だった。
(はっ、そうだわ。T.E…!神出鬼没のT.Eに変身すれば…隣の家にも潜り込めるかも知れない!
それでもって、真壁君の部屋で見張って、カーミラさんが真壁君を誘惑するのを阻止するのだわ!これっきゃない!)
アロンにT.Eを呼んでもらい、食べ物ですっかり手なづけると、気味の悪い気持ちはしたが、この際そんなことにこだわってもいられない、と
ガブリと変身!目指すは真壁君の部屋、と念じた途端に蘭世はそこにいた。
(わっ、やったわ。T.Eってば便利。ある意味、思いケ池よりすごいかも…。)
そう感心しながら、乙女チックな部屋の中を見渡した。真壁君はまだ学校から帰っていない。
今は夕方だから、もうそろそろ帰ってくるかな、とりあえずベッドの下で待機しよ、っと。
そうして時間が経ち…
部屋のドアが開き、真壁君が入ってきたようだ。
(ああ…蘭世ってば、いけない子…こんな所に隠れたりして…)と少し自己嫌悪な気分になったところに…
「お・う・じ・さ・ま!」
(あっ、この妙に甘ったるいのはカーミラさんの声!やっぱり現れたわね!)
「ちょっと、またあんたかよ!もう俺にまとわり付くのは止めてくれ!」
真壁君の不機嫌そうな声が聞こえる。
「あら、無理に抵抗しなくてもいいのに。この私の魅力に抗える人なんていると思って?」
「他は知らねえが、俺は違う!」
(真壁君!そうよね、そうよねっ!蘭世、あなたを信じてます!)とT.Eの姿のままの蘭世はベッドの下で手を合わせて祈っている。
「そう…残念ね…人間界最後の夜はあなたと過ごそうと思ってたのだけど」
「―最後?」
「ええ。私は、訳あって明日は魔界に戻らねばならぬ身なの。…あら?それ聞いてちょっと気が変わったのかしら?」
「ばっ、そんな訳ねえだろっ」
190吸血美女カーミラ現る―19:03/11/02 19:34 ID:6yVMhJw2
「ふふ、強がり言って。ほんとに美味しそう。やり方が分からないのなら私が手取り足取り
教えてあげて差し上げてよ、王子様」
(きゃーっっ!!何てことっ!!!愛のレッスンが始まっちゃうーっ!!!)と蘭世はジタバタ。
ベッドの下から出て、二人に気づかれないように壁からぬっと顔を出してハラハラと様子を窺う。
「やめてくれ!」俊はカーミラの腕を取り払おうと抵抗しているが、カーミラはひるまずアタックし続けている。
(いやーっ!やめてよーっ!!真壁君に触らないでーっ!!!)
「ねえこの間は邪魔が入っちゃったけど…。あの時、私を蘭世だと勘違いしてたの?」
(ええっ、いきなり私の名前がっ!)蘭世は思わず赤くなって聞き耳を立てた。
無言の俊にカーミラは笑った。
「図星ね」
「あ、あんただってわざとそれを狙ってたんだろーが」
「まあね…。でも…あなたよっぽどあの子に惚れてるのね…」
俊は赤くなりながら「…惚れてて悪いか」とぼそっと呟いた。
(!!!キャ、キャイーン!!真壁君、い、今何てっ!?)
顔を真っ赤にしながら、T.E姿の蘭世が壁の中を360度回転し続けてる。
カーミラはとうとう諦めたのか、ふーっとため息をついた。
「……もう、いいわ。私、自分に興味を示してくれない男はダメなの。真面目な男はつまらないわね…
憂さ晴らしに望里と一緒に血、吸いに行こっと。やっぱり吸血鬼は血よ、血!!」
カーミラは拳を振り上げてそう叫ぶとすっと消えて行った。
191吸血美女カーミラ現る―20:03/11/02 19:35 ID:6yVMhJw2
真壁君はほっと安堵のため息をついて、ベッドにどさっと座り込んだ。
「ま、真壁くーん!」蘭世は壁から飛び出て、真壁君に飛びついた。
「げっ、なっ、何者だお前っ!」
T.Eの姿に度肝を抜かれているようだ。無理もない。
「あっ…そうだ、まだ元に戻ってなかった」と言って、蘭世はくしゃみ。
「エヘヘ」
「あーっ、江藤!お前、いつからここにいたんだよ!」
「あ…う…その、さっき…」
「じゃ今の会話聞いてたのか?」
「うん、ごめんね。カーミラさんに誘惑されちゃうんじゃないかと…どうしても…気になって―」
「ったく。信用してねえな。俺が誘惑に負ける訳ねえだろ」
「うん…突っぱねてくれて嬉しかった。…それに―さっきの言葉…」
頬の赤い蘭世に俊も顔を赤くした。(こいつ、さっき俺が言ったことも聞いてた訳だな)
「ねえ真壁君…この間邪魔が入ったとか、カーミラさんを私と勘違いしたとかって言ってたけど…何のこと?」
「えっ、さっ、さあな…何のことだか…」
シャワーを浴びていたカーミラの裸体が目に浮かんだのを必死で葬り去ると、
俊は蘭世を抱き寄せて唇にキスをした。
「…真壁君…」
「惚れ直したか?」
「うん…」
二人はまたキスを交わした。
192吸血美女カーミラ現る―21:03/11/02 19:37 ID:6yVMhJw2
「皆様。お世話になったわね…」
これから魔界に戻ると言うカーミラを見送りに皆が地下室のあかずの扉の前に集まっている。
カーミラは望里、アロン、鈴世と次々にその唇にお別れのキスをしていった。
(自分になびかなかった俊にだけは、やはり腹立たしさがあるのか、頬にすっとキス)
これを見守る女たちは悲鳴を上げそうになるのを必死にこらえた。
(しょうがないわ…カーミラさんって可哀相な人なのだし。これからまた100年の眠りに
つかなきゃいけないのだわ…これくらい大目に見よう…)と椎羅も蘭世もフィラも心の中で思う。
「では、皆様ごきげんよう…。おかげでとても楽しかったわ。また100年後にお会いしましょうね…」
そう言うとカーミラは微笑みを残して、扉の向こうへと消えた―。
カーミラが去ってほっと安心しているのは女たちだけではなかった。
男たちもやはりそんな表情をして立ち尽くしていた―

あかずの扉の向こうには、サンドが立っていた。
「あら、サンド。お出迎えありがとう」
「…人間界はいかかでございました?カーミラ様」
「おかげでなかなか楽しかったわよ」
「それはようございました」
「ねえサンド…私最近思うのだけど…クリストファーの父親はやっぱりあなたのような気がするわ…」
「えっ、それ本当っ!?カーミラちゃんっ!」
サンドはいつもの丁重な姿勢を崩して、思わずカーミラにがばっと抱きつく。
「ええ、だから…養育費頂けない?未婚の母って大変なのよ」
「はっ、わたくしは騙されませんぞ!そんなこと言って、結局ご自分のお遊びの軍資金にされるおつもりでは…」
「そんな固い事言わないでよ。あなた、お給料いいんでしょ、貯金なんかたくさんあるんでしょ?いいじゃない、少しくらい…ね」
「う、うーん…」カーミラの甘い言葉に、サンドの顔は困りながらも満更でもなさそう…。
193吸血美女カーミラ現る―22:03/11/02 19:38 ID:6yVMhJw2
カーミラが去ったその夜…
今夜は久々に夫婦水入らず。椎羅のベッドに望里が入ってきた。
「あなた…、ちょっと聞きたいことがあるの。正直に答えてくれる?」
「何だ?」
「―処女の生き血を吸うのと、私を抱くのと、どっちが気持ちいいの?」
「え…」
「どっちが快感?さあ答えて―」
(そんなの較べられるか)と答えようと思った望里だったが、椎羅はそれで納得するはずがない。
(うーん、困ったな…。正直言って20年ぶりに味わった処女の生き血は格別だった…。体中に力が満ちてくるようで―)
余韻に浸っている望里のほころんだ頬に、椎羅の平手が容赦なく飛んだ。
「何、ニヤニヤしているのっ!もういいわ。あなたの答えは分かったから!」
「おい、椎羅…」望里は困った顔で、そっぽを向いた妻の腕を取る。
「いや、触らないで!それにあなたったら何よ。私の目の前で、カーミラさんのキスを受けたりして!」
カーミラに同情はするものの、やはりキスは許し難かったのか、椎羅はプンプン怒ってる。
「あれはキスじゃなくて単なる別れの挨拶だって…」
「ふん、あなた口開けてなかった?」
「バカ、そんな訳ないだろ。…それに、キスっていうのはこういうのを言うんだよ」
望里は椎羅を抱き寄せると、その唇にゆっくりと自分の唇を重ねていった。
始めはそっと優しく…そして椎羅の上唇を軽く噛んで、やがて口を開いて舌を差し込んでいく。
お互いを味わうように舌を絡ませ合い、熱い吐息を通わせる。
テクニックが巧みというそのことよりも、椎羅には夫の暖かい心が感じられて、身も心も溶けていきそうになった。
やがて二人の唇が離れると、椎羅はうっとりとため息をついた。
「ん……いいわ、もう一度して…そうしたら許してあげる…」
望里は妻に熱いキスをしながら、思っていた。
(確かに処女の生き血もたまにはいいが…やはり…椎羅の普段の威勢の良さと、
こういう時の可愛いところのギャップが、たまらないんだよな…)
「椎羅…さっきの答えだけど…私にとって気持ちいいのは、もちろんお前を抱く事の方だよ」
と囁く望里に、椎羅は嬉しそうに抱きついた。
194吸血美女カーミラ現る―23:03/11/02 19:42 ID:6yVMhJw2
そうして交わった後で、椎羅は夫の胸に顔を埋めながらしみじみとした調子で語った。
「…あなた…私、カーミラさんのこと聞いたわ。あんな不幸な事があったなんて…
可哀相な方だったのね…」
「へ?不幸って何のことだ?」
「え?知らないの?ランドルフ王子との一件…」
「ランドルフ王子って誰だ?そんな王子いたっけ?」
「大王様のお兄様でしょ?カーミラさんの恋人だったっていう…。
あなたもしかして聞かされてないの?」
「一体何の話をしているんだ、椎羅」
「だから、カーミラさんが恋人であるその王子の血を吸ってしまった為に、その罰として
100年の眠りを命じられたって事件よ、魔界の王家のタブーとかって…」
望里は笑い出した。
「椎羅、誰がそんな話を教えたのかは知らないが、カーミラが100年も眠っていたのは
睡眠療法のせいなんだよ」
「えっ、じゃあ、サンドが言ってたのは…」
「はは、サンドか。きっとカーミラに嘘話を言うよう仕込まれてたんだな。
あいつカーミラにぞっこんだから逆らえなかったんだろう―」
「何てことっ!サンドったら私達を騙したのね!やけに演技ぶっちゃって!
―でも、睡眠療法って一体何の…?」
「内輪のことだから、あまり大きな声では言えないのだがね…実は、カーミラには…
その…男狂いの傾向があって…」
椎羅は目を丸くした、「んまっ、男狂い…!」
195吸血美女カーミラ現る―24:03/11/02 19:45 ID:6yVMhJw2
「本人もちょっと気にしてたんだ。100年も睡眠療法を続けたら治るんじゃないかと呪術師に頼んで
試したようだったが…どうやら治らなかったようだな」
「じゃあ私の勘は正しかったのだわ!すぐ分かったわよ!…じゃあ100年後にまた
来るって言ってたのは?また睡眠療法を続けるのかしら?」
「いや、そんな治療はバカバカしいと言ってたよ、100年無駄にしたってね。
人間界の男の血を久々に吸い出したら、もう止まらなくなってしまったようだったから、
かえって悪化したのかもしれんな。100年後と言わず、今後もちょくちょく現れるんじゃないか」
「ちょくちょくねえ…私たち女も、彼女にすっかり遊ばれたようね…。
ほんと、向こうは一枚上手だったわ、はあっ…」
ため息をつき、力の抜けたような妻を見て望里は微笑んだ。
「カーミラに嫉妬してるお前を見てるのは私もちょっと楽しかったな…」
「お気楽だこと…。私、寂しかったのよ―」
「すまなかったね…。その分、埋め合わせするから許してくれるかい」
「―ええ、どうぞおやりになって…あなた…」

翌朝…椎羅が上機嫌で朝食の準備をしていると、フィラがやってきて朝の挨拶をした。
「おはよう、フィラさん。いつも早起きね、蘭世も見習えばいいのに…」
椎羅は少し呆れたような顔をして言う。
フィラは椎羅の白い首筋に、赤い痣が点々と残されているのを見る。
それらが昨夜、望里から受けた愛撫の激しさを物語っていることに気付く。
「椎羅さん、良かったですわね。元通りになって…」
「え、何がです?」
「うふふ…キスマークがたくさん…」
「まあやだわ、なかなか消えてくれなくて…でもフィラさんたらよくご存知だこと。
蘭世だったら全然気付かないのに…」
「蘭世さんはまだ知らないのですわ」
196吸血美女カーミラ現る―25:03/11/02 19:47 ID:6yVMhJw2
「ええ、そうなのよ。親としてもちょっと心配の種なのだけど。一体いつになったら…って。
私としては何度もチャンスを作ってあげてるつもりなんだけど、本人たちはいっこうに…。
でも、無理に急がせることもないものね。あの子の場合はゆっくり気長に…がいいのかも―。
…それよりフィラさん、何かいいことでもあったの?とても幸せそうですわ」
「アロン様ったら、やっぱり私といるのが一番落ち着くって…うふふ。
今日は部活を休んでデートに連れて行ってくれるんですの」
「あらあら」
「ある意味、カーミラさんのお陰かもしれませんわね…本当にご不幸な方…。
カーミラさんを自由な身にしてくれるよう、大王様にお願いしてみようかしら」
それを聞いて椎羅が、昨夜夫から聞いた真相をフィラにも教えてあげようかと、
「実はあのカーミラは悲劇のヒロインなんかじゃなくて…」と言いかけたところへ蘭世がやってきた。
「おっはよー!」
いつもより、数倍元気。魔性の女・カーミラが去って、よほど安心したのね、と椎羅もフィラも思う。
蘭世は満面笑みでトーストを食べながら、昨日キスをしてくれた愛しい真壁君のことを思っていた。
(真壁君、だーい好き!!!)
ちょうど皆が朝食を済ませたところへ、さっと霧が立ち込める。
「さ、フィラ様。お迎えに上がりましたぞ。ご登校のご用意はよろしいですかな?」
最近はマカイ国のお抱え運転手としても多忙を極めるサンドが姿を見せた。
椎羅だけは、腕組をしてじとーっとサンドを睨み付けてる。
その迫力に、(ありゃっ!?あの話が嘘だってことがばれてしまったのかしらん…
ひえーっ。つくづく損な役回り…)とビビリまくっているサンドであった…   

おわり
197モーリ&シーラ作者:03/11/02 19:54 ID:6yVMhJw2
これでおしまいです。
何でこんなに話が膨らんでしまったのか、自分でもよく分からない・・・
T.Eまで出てきちゃったし。長くなってすいません。
ドラキュラ俳優クリストファー=リーの生年月日については
カーミラが眠ってた時期を考えると話の辻褄が合わなくなるので
深く考えないでください・・・
198モーリ&シーラ作者:03/11/02 20:25 ID:6yVMhJw2
連投スミマセン。
何だか妄想が止まらなかったもので、やはり大好きキャラの
モーリ・シーラで、3人目の妊娠話を書いてしまった・・・
199椎羅の家族計画1:03/11/02 20:26 ID:6yVMhJw2
「ねえ、あなたっ。聞いて!」
書斎にいる望里の元へ、椎羅が上機嫌な顔をして駆け寄ってくる。
「ん?あれ、卓はもう帰ったのか?」望里は本棚の前で、積み重なった無数の本の中に埋もれていた。
「ええ、さっき蘭世が迎えに来ましたよ」
「そ、そんなぁ…。椎羅、何で教えてくれないんだ!」
「だってあなたはお忙しそうだったから。邪魔しちゃいけないと思って…」
「何言うんだ。お前と卓が散歩を終えて帰ってきたら、この絵本を読んであげようと思ってたのに―。
昔、子供達に読んであげてたのをせっかく探し出したんだぞ」
可愛い初孫が帰ってしまって残念でたまらない、といった表情の望里の肩を椎羅は励ますようにポンッと軽く叩いた。
「いいじゃないの、また今度で。―ねえ、それより聞いて。さっきね、卓と一緒に公園に散歩に行った時にね、そこにいた別のお母さんに…」
「あーあ…今度はいつ来るのかなぁ…」望里はため息をつきながら、本の山からその身を出して、居間へと入る。
「あなたったら!私の話を聞いてるのっ!?」後を追う椎羅。
「ん?何だって?」
「だからね、私、卓のお母さんに間違われちゃったのよ!!おばあちゃんじゃなくて、ママよ、ママ!」
椎羅は喜びのあまり、ラララーと鼻歌混じりにひとり小躍りしている。
「何?よっぽど目が悪かったんだろ、その人」ソファに座って新聞を読み始める望里。
「何言ってるの。向こうは眼鏡かけてました!」
「じゃ近視が進んで、もう度が合ってないんだよ。―いずれにしても、髪の毛の色に惑わされたんだな、きっと」
「あなた!若さを証明したご自分の妻にそんなことしか言えないの?」
「ああ椎羅、お前はいつまでも若くて美しいよ」
「心がこもっていないわよ」
200椎羅の家族計画2:03/11/02 20:40 ID:6yVMhJw2
「―で、お前のことだから、そのまま否定もせずに卓の母親ってことにしたんだろう?」
「あら、だってせっかく向こうがそう言ってくれてるのに、無理に否定するのもどうかと思って…」
「無理に嘘を通すのもどうかと思うよ、私は―」
椎羅は夫の読んでいる新聞を取り上げると、叫んだ。
「もう!これから大事な話をするんだから、あなた、まじめになって下さいな!」
「…大事な話って何だ?」
望里のまっすぐな視線に椎羅は少し躊躇した後、夫の隣に座り、恥じらうように頬を赤らめて言った。
「……ちょっと…耳貸して…」
望里は「?」といった表情で妻の言葉を待った。椎羅は夫の耳元に口を寄せて、甘く囁いた。
「…あのね…私…、……また赤ちゃんが欲しくなっちゃったの…」
望里は驚きのあまり、しばらく声が出ない。頭の中を無数の「!」マークが駆け抜けるのを堪えて、
やっとのことで口を開く。
「…え?…今、お前何て言った…?私の聞き間違いだよ…な…?」
「だから、私達もう一人子供を作りましょう!あなた!」
「ええーっ!?お、おい…冗談だろっ、椎羅っ…!」
「冗談なんかじゃないわよ。卓を見てるうちに、欲しくなっちゃたの。
孫も可愛いけど、やっぱり蘭世たち親のものでしょ。
顔を見せたと思ったら、すぐ家に帰っちゃうし。自分たちの子供だったら、
ずーっと一緒にいられるのよ。絵本だって好きな時に読んであげられるし―」
「そりゃそうだけど…だがな―。第一お前、まだ産めるのか!?」
望里が失言を後悔する間も与えず、椎羅の平手が容赦なく飛んだ。
「失礼ねっ!まだまだ産めますっ!…それにあなただって、子供がもう一人欲しいって
言ってたじゃないの」
201椎羅の家族計画3:03/11/02 20:43 ID:6yVMhJw2
「ば、ばかっ。あれはもう何年も前の話だぞ!孫までいるのに、今子供なんて生まれてみろ。
女性週刊誌の小ネタに使われるのがオチだ…ああ、見出しが目に浮かぶよ…
流行作家の江藤望里氏、なぜかハッスルして孫より年下の実子誕生!…とかな…」
「何なのよ、ハッスルって…。それに、流行作家なんて肩書き、一体いつの話やら…」
「う…、人が気にしてることを言わんでくれ!」
「とにかくね、痛い思いして生むのは私の方なのよ。そんなに嫌がらなくたっていいじゃないの…
それとも、何?もう私との間に子供は欲しくないって言うのっ!?子供が生まれても愛せないって言うのっ!?」
狼の耳をピンッと立てて、夫の襟首を掴んで揺さぶる。
「な、何で話がそうなるんだっ!そうじゃなくて、私が言いたいのはだね、今更…」
「孫のいる身で…だなんて、あなたの感覚も随分人間じみてしまったわねえ。魔界じゃそんなに珍しいことでもないわよ」
「だ、だがいかに魔界人とは言え、我々は人間界で暮らしているのだからして…」
「あら、そんなこと言って、本当は自信がないのではなくて?」
「何だって?」
「だから―もうあなたの子種が切れてしまったとか…」
椎羅のその言葉に男のプライドを傷付けられた望里は怒った。
「何を言うんだ、椎羅!我々は年を取らないのだから、鏡の間で微調整して外見こそ老けさせているものの、
ベッドでの勢いは青年の時のままだ!」
勢い良く妻の腕を掴んで、自分の腕の中に抱きしめる。
202椎羅の家族計画4:03/11/02 20:45 ID:6yVMhJw2
夫のその言葉を待っていた椎羅は思わずニヤリと笑った。
(ああ、これで引っかかったわ…。簡単ね。この人乗せられやすいし、
それに意地っ張りだから、これでもう子作り計画からは絶対引き下がれないわね―)
椎羅のほくそ笑みにも気付かずに、熱くなった望里は言葉を続けた。
「お前はそれを一番よく知っているはずだ、椎羅…」
夫からの激しく深い口付けにうっとりとした心地で応じながら、椎羅は両手を彼の首に絡めた。
しばらくして唇が離れた後、甘い声で囁く。
「ええ…あなた…。今夜も…あなたのをたっぷりと…私にちょうだい…」
「よし…。私達の3人目の愛の結晶を今夜、作ろうじゃないか、椎羅」
「ええ、今夜…。絶対よ、あなた…」
折りしも、今夜は満月…満月の輝く晩でない限り、子供を身ごもることはできないと
かつて言っていた狼女の椎羅にとって、まさしく願ってもない絶好の夜であった…。

椎羅が夕飯の仕度をしている間、望里は居間のソファでひとり思い出していた。
もう何年も前…今や娘婿となった真壁君が、魔界の王子として生まれ変わり、父親である
大王様に追われていた頃のこと…。
わたしたち一家は、大王様への反逆罪が死を意味することを十分承知の上で、
真壁君とお妃様側について行動していた。
そしていよいよ魔界に乗り込む前、慣れ親しんだ人間界ともこれが最後と、
海辺を散歩しながら束の間の幸せなひとときを椎羅と過ごしていた私は、
彼女に「生きて帰れたら、もう一人子供が欲しい」と言ったのだった。
あれにはもちろん妻もびっくりした様子だったが、実はこの私自身も自分のそんな発言に驚いていた…。
203椎羅の家族計画5:03/11/02 20:48 ID:6yVMhJw2
…あれは、一体何だったのだろう…?と望里は今になってふと、考えてみる。
別に、前々から子供をもう一人欲しいと思っていた訳ではなかった。
死を覚悟しながらも、いや、だからこそ、その一方で生への強い憧れや執着心が生まれた為に、
私にそう言わせたのだろうか…。
―ともかく、魔界の紛争も一段落し、無事に帰って来られた私はやはり子供が欲しかったのだ。
そして(少なくとも私としては)子作りに励む毎日だったが、椎羅はいっこうに妊娠しない。
私の精力の衰えか、それともやはり異種族同士は子供が出来にくいのだろうか、と悩む私に、
私の約束のことなんかすっかり忘れていたらしい妻がけろりと言ってのけた、
「狼女は、満月の晩でないと妊娠できないの」と―。そんなこと、私は結婚して初めて聞かされたのだ。
満月の晩だって?その言葉に私は失望し、やり場のない憤りを覚えた。
毎回、狼に姿を変えて狂暴化する妻をそんな時に抱く気になれるだろうか?
それ以来、私は3人目を作るのは諦めたのだった…。

―もちろん、過去に例外はあった。その結果が言うまでもなく、蘭世と鈴世ということになる。
初めての子の蘭世のときは、まだ結婚したてだったし、満月の晩の椎羅の豹変ぶりについて、
恥ずかしながら私はまだよく学習していなかった。
あの夜―いつものように彼女を愛した後、満ち足りた思いでうとうとしていた私は、
自分の腕の中の彼女が妙に毛深いのに気付いた。
不審に思って目を開けると、椎羅は…窓から入る満月の光を体に受けたせいか、
いつのまにやら狼に姿を変え、気持ち良さそうにすやすやと眠っていた。
―その時の私の驚きようは…、腰が抜けたなんてもんじゃない。心臓が飛び出すかと
思うぐらいの驚きだった。
204椎羅の家族計画6:03/11/02 20:51 ID:6yVMhJw2
―いや、しかしその時はいわばまだ序の口とも言えたのだろう…。
大変だったのは、椎羅が二人目の子・鈴世を身ごもった夜のことだ。
…満月の晩だというのに、その夜の妻は何故か妙にいつもよりしおらしく、優しかった。
最初に出会った頃のように、可憐でさえあった。昔を思い出して、妻への愛しさが募った私は
すっかりその気になり、彼女を激しく抱いた。そして絶頂を迎えようとしていたとき、
椎羅の爪が私の背中に強く食い込んだ。彼女は身をくねらせて、いつもよりも鋭い叫び声を上げながら、
更に強く私の背中に爪を食い込ませた。その鋭い痛みに驚いて思わず体を離そうとした私を、
椎羅がすかさず押し止めたかと思うと、ザクッというような切り裂く音と共に私の背中を激しい痛みが襲った。
薄暗い部屋の中だったが、その時私は気付いたのだ。ベッドで私の下になっている妻は…
そう、もう完全に狼へと姿を変えていた。ついさっきまではすべすべとして吸いつくように柔らかだった彼女の体は、
今や全身狼の毛に覆われていた。激しく体の奥深くを突き上げながら、何度も口付けた可愛らしい唇は、
鋭い牙の光る大きな口へと―。それに気付くと同時に、私は自分のものを豹変した妻の体の中に放出していた…。
(今にして思えば、鈴世に狼人間の血の方が強いのはそのタイミングのせいだったのかも知れない)
背中につけられた傷は、かすり傷なんて生易しいものでなく、私の魔界人としての治癒力を持ってしても、
長い間なかなか消えなかった…。行為の後の火照りが冷めて、元の姿に戻った椎羅は、
私の背中を走る大きな傷を見て気を失ってしまった程だ。
…そんなこともあったものだから、以来、私は何があっても決して満月の夜には妻を抱かないことにしている。
―ただ、その時でないと妊娠しないというのを、後年彼女に教えてもらうまで気付かなかった私は
鈍感と言うべきか…。
ああ、それにしても、皮と肉を引き裂かれたあの鋭い痛みが今でも鮮やかに蘇るようだ。
205椎羅の家族計画7:03/11/02 20:53 ID:6yVMhJw2
…と望里が痛ーい思い出に浸っていたその時、鈴世がなるみちゃんとの
デートから帰宅して居間に姿を見せた。
「あ、お父さん。ただいま」と息子が明るい顔をして言う。
小さい時から優しく素直で思いやりのある、自慢の息子だ。
(…お前を作った時は、お父さんは大変だったんだぞ、鈴世。
―まあ、産むときに大変だったのはお母さんの方だけど…)と鈴世を見ながら内心思う。
そしてかつて味わった恐怖をこうしてまじまじと思い出した後、今夜の子作り計画に身がすくんだ。
さっきはつい椎羅に巧みに乗せられてしまった自分だったが…
果たして今回は大丈夫なんだろうか…?明日の朝、私は息してるんだろうか?
そんな不安に襲われ、ちょっと落ち込んだ望里であったが、やがて意を決したようにキリッと顔を上げた。
(うむ。前回までの経験を生かして、今回はうまく立ち回ろう!―なるようにしかならんものさ、ケ・セラ・サラ。
あ、おじい様の口癖がつい…)
その時、椎羅の陽気な声がキッチンから鳴り響いた。
「ごはんよーっ!」

家族3人での夕食を終えるとまず椎羅がそわそわし出した。
いつもより更に高いテンション。それに、何だか知らないがモジモジしている、と鈴世は思った。
「お母さん、どうかした?」
「えっ?ううん、どうもしないわよ。ただ…ちょっと疲れたからもう寝るわね!」
「…?うん、お休み」(疲れてるようには見えないけどな…それにこの異様なテンションの高さは…?)と
不思議に思う鈴世。
椎羅はコーヒーを飲んでいる夫を急かすように、その腕を肘で小突く。
「わ、私は書斎で小説の続きでも書くとするかな…じゃな、鈴世、お休み!」
慌てて望里も席を立つ。
「…?お休み…」
そそくさと二人揃ってダイニング・ルームを出ていく両親。
明らかに挙動不審である。
第一、こんな満月の夜に、例の夫婦喧嘩が勃発していないのもかなり変だな…と
鈴世は内心思っていた。
206椎羅の家族計画8:03/11/02 20:56 ID:6yVMhJw2
そして夫婦の部屋で―
部屋に入った途端にエプロンを脱ぎ始める椎羅を見て、
慌てて自分もネクタイを外しながら、望里はボソッと呟いた。
「―何だか緊張するな」
「そうね…。子供を作るんだって身構えちゃうからかしら」
「うん、多分な」
「いいのよ、いつもと同じにしてれば…」
「それもそうだな…」
長い髪を束ねていたリボンを解いて髪を下ろした椎羅は、
ベッドサイドのテーブルの中から、真新しい何かのボトルを取り出した。
「何だ、それは?」望里がそのボトルを手に取ってラベルを読む。
「…スーパー…ラブローション…?…すごい名前だが、一体何に使うんだ?」
「人間界では愛し合うときに使ってるそうよ。潤滑剤のようなものらしいわ。
今日散歩の帰りに、薬局で買ってきたの」
「だが…我々には必要ないだろ?」
(散歩の帰りって…すぐその気になってたんだな…)と妻の積極性を今更ながら思い知る望里。
「ええ…でも一応。準備は万端でないとね」
どこかで聞いたことのあるような怪しげな名のローションをサイドテーブルの上に
そっと置いた後、椎羅はベッドに横たわり、夫にブラウスのボタンを
ひとつひとつ外してもらうのをうっとりと眺めている。
続いて望里は慣れた手付きで妻のブラジャーを外し、あらわになった豊かな乳房を
両手で包むようにして撫で回した後、その乳首を口に含んだ。
夫の舌の動きに全身を甘い痺れが貫き、急激に体が熱くなりだすのを椎羅は感じていた。
207椎羅の家族計画9:03/11/02 20:57 ID:6yVMhJw2
「椎羅、頼みがあるんだ」ふと、唇を離して望里が囁いた。
「…あっ…な…に…?」
「今夜…あまり乱れ過ぎないようにな」
「え?…あなたったら、変なこと言うのね…んっ…」
望里は椎羅のスカートやストッキングをどんどん脱がせていく。
妻の太ももを撫でさすり、胸や首すじにキスの雨を降らせながら、合間に耳元で囁く。
「鈴世の時みたいな、痛い思いはしたくないからね」
「ああ…あの時ね…あの傷はちょっと…痛かったわね、あなた…」
椎羅は当時を思い出して苦笑しながら、夫の顔を両手で優しく包み込んで、
いたわるようにそっとキスをする。
「だから今度は、私に爪は立てないでくれよ」
「ええ、気をつけます…」
望里は少しほっとして、椎羅のうっすらと上気した耳たぶを優しく噛んだ。
「…でも、保証できないわ」
その言葉に、望里は愛撫を止めて、固まる。
「え?」
「あ、そうだわ。ね…、紐か何かで私の両腕を縛り上げてちょうだい」
「縛る?そんなことしたら、お前は余計に感じてしまうだろ…もうこんなになってるのに…」
片方の手を椎羅の下腹部へとおろし、その脚の間をまさぐり始めた望里は
そこのぬめり具合に驚いた。
自分の中でせわしなく動く望里の指に、椎羅は身をくねらせ、たまらず悦びの声を上げる。
「あああっ!んっ…でも、そうすれば…あなたを傷付けることは…ない…わよ、あっ」
「…そうか…?かえって興奮が抑え切れなくなって、すぐ狼に変身しちゃうんじゃないか?
それにどうせ、狼になってしまったら、お前は紐なんか簡単に食いちぎるぞ」
「うふ…ん…そうかもね…ああっ」
「とにかく、変身しそうになったら言ってくれ。私の方でも何とかするから―」
「分かったわ、あなた…」
望里も椎羅も大まじめな顔で見つめ合った。
強く抱き合って長いキスを交わす。
208椎羅の家族計画10:03/11/02 20:59 ID:6yVMhJw2
望里も服を脱ぎ捨て、早速硬くなっている立派な自分自身を、
潤いを湛えた彼女の中に突き立てようとする。
「あっ、あなた…言ってくれないの?」
「何をだい…?」筒先で椎羅の花芯をくすぐるように愛撫する。
「分かってるでしょ…。んんっ…。いつもみたいに…」
「―もう、聞き飽きたかと思ってね」
「そんなことないわ。女はね…いつだって言って欲しいのよ」椎羅の瞳がキラリと光る。
「―愛してるよ、椎羅…」望里は心を込めて囁いた。
「私も…愛してるわ、あなた」
奥深くまで挿入して、深い一体感を味わった後、望里はゆっくりと体を動かし始めた。
―こうして、二人の長く熱い夜が始まった…。

夫婦の寝室に、激しく抜き差しする音が鳴り響く。
「あっ…あなた…私、もうっ…うっ…なりそうっ…」
夫の背中に回していた手を離して、シーツを掴むとビリビリッと裂ける音がした。
「うっ…椎羅…もう少し…っ、待て」
「あんっ…もう、だめっ…あああっ…!!」
叫び声と同時に椎羅の膣口が連続的に痙攣して、望里を締め付ける。
そして望里もたまらず、溢れる愛液をたっぷりと妻の中に注ぎ込んだ…。
妻の中に入ったまま、荒い呼吸を和らげながら望里はしばし深い達成感に酔いしれていた。
(やったぞ……椎羅はまだ人間の姿のままだ、良かった…)と思ってふと見ると、
その手だけは狼化して長ーい鋭い爪がキラリと光っている。
ベッドのマットやシーツもビリビリと破かれているではないか。
(あ…私も危ない所だったな…)
今度は冷や汗をかいてる望里の耳元に、満足そうに椎羅が囁いた。
「あなた…とっても良かったわ……さ、まだまだ出来るでしょ。夜はこれからよ―」
(ひえーっ)とおののく望里であったが、結局、二人の絡み合いはまだまだ続いた。
一戦が終わると、椎羅はどこからともなくトマトジュースを夫に差し出して、
夫の回復を待つ、という具合に。
翌朝は、さすがに椎羅も腰が抜けて起き出せないほどだった。
心地よい疲労感に浸りながら、、椎羅は二人の子供が確かに宿ったと女の勘で感じ取っていた…。
209椎羅の家族計画11:03/11/02 21:01 ID:6yVMhJw2
それから2ヶ月ほどが経った―
「椎羅。お前まだ、あれが来ていないんじゃないのか?」
「ええ、そうなのよあなた。遅れてるの。それに吐き気もするし…」
あらゆる種類の血に人一倍敏感な望里。椎羅の生理にも、本人よりも先に気付いてしまう。
そろそろ来そうだぞ、といつも妻に教えているのだが…。
でも最近は……血の気配がずっと感じられない。
「おいっ。もしかすると…!!!」
「もしかするかも!!!」
二人は喜色満面で手を取り合う。
「わしらの希望が…」
「夜空の星となって輝いているわ、あなた」
窓辺に立って夜空を眺めながら、寄り添って期待に胸を踊らせる。
「こうはしてられないわ。メヴィウスの所に行って、確かめてきます」
「私も一緒に行くよ。気になって仕方がない」
魔界のはずれ、パンドラの森の奥深くにあるメヴィウスさんちまではかなり遠い。
狼に変身して走っていく訳にもいかないし、かと言って馬車だと揺れて危険だし、
ということで望里の棺おけの中に椎羅を入れて飛ばして行くことになった。

「まったくもう、誰じゃ。こんな夜中に…」
睡眠を邪魔されてメヴィウスは不機嫌そうにドアを開けた。
「おや、あんた方か…。何の用かえ?また鈴世殿に何か変化でも?」
「いえ、違いますわ。あの…実は診て頂きたくって…」
「その…妻が妊娠しているんじゃないかと…」
「へ?」メヴィウスは開いた口がふさがらないほど驚いた。
「最近耳が遠くなったのかいな。すまぬがいま一度、用件を…」
「ですから、子供が出来てるかどうか診てもらいたいんですの」
「誰にじゃ?」
「妻の椎羅にです」夫婦は真剣な表情でメヴィウスに詰め寄る。
210椎羅の家族計画12:03/11/02 21:04 ID:6yVMhJw2
「ほ…本気で言ってるのかね、お二方…」
「もっちろん!!」声を合わせる望里と椎羅。
その勢いに思わずずっこけたメヴィウスだったが、椎羅のお腹の中で
存在を強く示している内なる光りに気付いて、椎羅のお腹に手を触れる。
「むむっ…!?まっ…、ましゃか…これは…っ!」
メヴィウスの顔をシリアス線が走る。
「えっ、ど、どうなんですっ!?」
夫婦は固唾を飲んで言葉を待つ。
「―お、お子が…宿っておる……い、いい年しおってからに…」
驚愕したような表情でメヴィウスは言った。
「きっ、聞いたか、椎羅っ!!!」
「ええっ、バッチリ聞いたわ。あなたっ!!!」
二人は「やったあーっ!!!」と、しっかりと手を取り合って、
「祝 3人目!」のくす玉を背景に喜びの踊りを始めている。
「でっ、やっぱり今2ヶ月目くらいかしらっ?」
「そ、そうさな。そんな所じゃろう…」
「やっぱり、あの夜のが効いたんだなっ。いやー、頑張って良かったな、椎羅!」
「ええ、あなた!嬉しいわっ」
ひとしきり感激のダンスを披露した後、
「じゃ、また来まーす!」と元気に仲睦まじく帰っていく二人。
「全く…何て人騒がせな一族なんじゃ…それにここはいつから産婦人科に…」
江藤夫婦が去った後、くす玉の残骸の後片付けをしながら
メヴィウスはひとりポツリと呟いた…。

つづく?
211モーリ&シーラ作者:03/11/02 21:24 ID:6yVMhJw2
この後どうなるんでしょうか。考え中です。
やっぱり大好きなカップルなので、ついつい筆が進んで
話が長くなってしまうのです・・・お笑い要素は不可欠、というか。
しかし二人が魔界人だからこそ書ける話だ。
212名無しさん@ピンキー:03/11/03 00:21 ID:IR1By14w
>>182
自分でHP立ち上げた人も多いからね。
新しい作家さんが現れないと廃れていく悪寒・・・
213名無しさん@ピンキー:03/11/03 11:42 ID:9umWKSoj
>>211
モーリ&シーラ作者サマ
いつも精力的に書いてくださってありがとうございます。
あなたが書くお話は魔界がたくさん出てきて読み応えがありますね〜
そしてそして隅々まで魔界ネタが・・・
記憶が掘り返されますw

>>212そうなんだよね〜
全盛期(いつなんだか)を支えた作家さんたちの投下はなかなか望めない・・・。
214名無しさん@ピンキー:03/11/03 12:59 ID:IkTrwI9s
>211 モーリ&シーラ作者サマ

新作投下乙です。
狼化する椎羅に対応するためにバックでするのかな〜・・・
なんて思ってしまいました。ゴメンナサイ。イッテキマス。

続き楽しみにしています。
215新婚作者:03/11/03 21:13 ID:7SdQ4l6e
ごめんなさい・・・・・。
ROMっているんですけど。

投下するほど余裕ないです・・・。

新しい作家さんを切に望んでおります・・・・。

216授業中のわるいこと1:03/11/04 00:13 ID:hsaCw0BJ
女の身支度には時間がかかる。
セントポーリア学園に通うお嬢様たちなら、尚更だ。
とはいえ、授業の間の短い休み時間では、そんなことも言っていられず、次に体育の
授業を控えた女子生徒たちは、慌ただしく着替えを済ませ、駆け出そうとしていた。
蘭世もその一人だった。
着替えを終え、最後に、邪魔にならないように、と鏡の前で長い髪をまとめる。
そしてあらわになった自分の首筋を見た。
もう大半の生徒が着替えを終えて更衣室を出ていたので、幸い次の瞬間の、鏡に映った
蘭世の赤面は、誰にも気づかれなかった。
校庭へ駆け出していった友達たちと逆方向へ、蘭世は駆け出した。
「江藤さん、どうしたの?」
「ちょ、ちょっと擦り剥いちゃったみたい…で、ほ、保健室寄ってから行くねっ」

(ほんとの理由なんて、言えないよぅ)
級友に苦しい言い訳を残して、首を手で押さえながら保健室に駆け込んだ。
「先生、絆創膏くださーい」
戸を開けながら声をかける。
が、そこに養護教員の姿はなかった。他にも、誰もいないようだ。
まあ、絆創膏をもらえればいいか、と蘭世はそれが仕舞われている戸棚へ近づく。
「どうした?」
「きゃぁ!ま、真壁くん!?」
突然、ベッドから声をかけられた。俊も当然体育の授業のはずだが…
「サボり?」
軽くにらむと、悪びれもせずに言う。
「お坊ちゃん方の体育のお遊びなんて、付き合ってられねぇよ」
217授業中のわるいこと2:03/11/04 00:14 ID:hsaCw0BJ
「怪我でもしたのか?」
それならば『力』で治してやろうと近づく俊に、蘭世は顔を背け、首筋の赤い跡見せた。
俊が、夕べ行為の最中に、蘭世の白い肌を吸った跡である。
「これ、絆創膏で隠すの!」
「ふぅん…」
俊の片目が心なし細くなり、唇が意地悪く笑みを刻む。
二人きりの保健室。こんなシチュエーションで、夕べのアレを思い出させるなんて。
(こいつ、挑発してるってわかってねぇんだろうな…)
再び絆創膏を取り出そうと背を向けた蘭世を、後ろから抱きしめた。
「来いよ…」
「真壁くん!?」
耳元に吹き込まれた声が、憶えのある熱を帯びていることに蘭世は気づいた。
慌てて身を離そうとしたが、すでに遅く、俊にそのままベッドへ誘われ、その間も巧妙に
大きな手が素肌にもぐりこんできていた。
保健室の簡易なベッドは、二人が倒れこむと、ぎし、と悲鳴を上げる。
「やだぁ…っ。授業行くの…」
「サボれよ」
「サボって、こ、こんなワルイコト…っ」
「おまえ、おれが優等生だとでも思ってたのか?」
…言い返せない。その隙にどんどん肌を撫で回されてゆく。
もう抵抗できなかった。止められないほどに、体温が上がっている。
片方の胸を揉みしだかれ、もう片方を吸われる頃には、蘭世も俊の頭を引き寄せて、
夢中で脚を絡みつかせていた。
「あん…っ、あぁ…んっ、…もっと…」
「ああ、わかってる、もっと…」
俊が組み敷いた蘭世に、授業の心配をしていた表情はもうない。
いつもの、俊を夢中にさせる女だけがいた。
強引に、ぐいと押し込む。
「…っ…っ…っあ、あ、あっ」
あまりの快感に、蘭世の声がかすれた。だが、それがちょうどよかった。
このとき大声をあげていたら、取り返しのつかないことになるところだった
218授業中のわるいこと3:03/11/04 00:15 ID:hsaCw0BJ
突然、がらりと保健室の戸が開いた。
「おおい、誰かいる?」
養護教員の声だ。
仕切りの影で、俊と蘭世は、繋がったまま顔を見合わせる。当然二人とも硬直していた。
「あり?いないか」
「先生、おれ。真壁」
幸い、教員は部屋に入ってくる様子はない。俊は平静を装った声だけ出して答えた。
しかし、声を出した振動が、蘭世のそこに伝わった。
蘭世は歯を食いしばってそれに耐える。全身に力が入る。
「まーたサボりか。いいけど…ちょっと会議だから、ここ鍵閉めるよ」
「…はい」
俊は声が震えそうになるのを、必死に抑えて答える。
「次の授業は出なさいよ。鍵閉めていってね」
「はーい」
そのまま戸の閉まる音。遠ざかる足音。理解のある教員でよかった…。
とはいえ、さすがにコレまでは大目に見てはもらえないだろう。
とりあえず、ばれずに済んだ。
蘭世は止めていた息を吐き出した。
「よ、よかったぁ…」
「おまえ、ひとが必死に演技してるときに、締め付けてくるなよ」
「ごっ…ごめんなさいっ」
「おしおき」
219授業中のわるいこと4:03/11/04 00:16 ID:hsaCw0BJ
俊は蘭世の脚を抱えなおして、再び腰を送り始めた。
もう十分に反り返った先端が蘭世の中を掻き、ベッドのきしむ音と、粘膜の湿った音が
耳を叩く。
「あ、あ…、ああっ、いい…きもちいいっ…」
蘭世はすぐにのけぞって、感じ始めた。尖った乳房が揺れる。俊がそれにしゃぶりつく。
(さっきのスリルで、すごく興奮しているなんて、言えない…)
俊の先端は固く硬く、蘭世の体内のある一点を的確に突いた。
「そこ、ああ…、そこ、まかべくん…」
「…く…」
締め付けがきつくなる。あの痙攣までもうすぐだ。
もっとこの感触を楽しんでいたいと思ったが、俊も限界が近づいていた。
リズムを繰り返しながら、俊は指を伸ばして、繋がっている付近の、蘭世の芽を押さえた。
「やっ…ああっ!!まかべくんっっ…!!!」
蘭世の全身がびいんと強張った。
俊を包んでいた襞が激しく震え、その痙攣に引き込まれるように俊も自分を許した。
「あ…く…ぅ…」
蘭世は自分の体内に、熱い液体が叩きつけられるのを感じた。
二人は、荒い息を封じあうように、抑えあうように、唇を重ね続けた…。

遠くで終業のチャイムが鳴っている。
すでにそれは体育終業チャイムではなく、その日のすべての授業の終業チャイムだった。
まだ保健室の鍵が開く気配はない。
結局、二人はこの日、半日近くサボってしまったわけである。
一度、体育の授業前に保健室へ行ったまま、戻って来ない蘭世を心配した級友が
保健室を覗きに来たが、鍵が閉まっているその部屋を見て、彼女の行方に首をかしげて
去って行った。

もちろん、その部屋の中で愛し合う恋人たちには、気づかずに。

おわり
220名無しさん@ピンキー:03/11/04 12:17 ID:8xR6bjuM
>>216

ラストがピタリと決まって格好いい!
大好物です。
何度も読みかえしましたよ〜

HPに移行したから廃れているのか・・
でも時々こんなスゴイのをサラリと書いちゃう人がいるから
2ちゃんって面白いんだよな〜


221名無しさん@ピンキー:03/11/09 14:01 ID:LAqQyIus
さびれてるねぇ
222名無しさん@ピンキー:03/11/10 02:29 ID:zweX/lJQ
そんな時期もあるさ
223名無しさん@ピンキー:03/11/10 20:55 ID:rxo5Xixq
>>216-219
最高(・∀・)イイ!やはりランゼ&俊は最高!
シチュエーションも、かなり萌え〜です!
224名無しさん@ピンキー:03/11/10 21:18 ID:v52BLVWw
≫216-219
…てゆーか
≫ワルタン
でつね!?
うわーい久しぶりで嬉しい〜!
感じやすい蘭世に(*´д`)ハアハア

壊れてたPC治って、一週間ぶりにここ読めた!
…けど、さびれてるのか…知らんかった…。
SSは書けないけど、感想とかだけでも盛り上げたい。
そうすればまた作家さんたち降臨してくれるかな…。
225名無しさん@ピンキー:03/11/13 12:52 ID:0fnr2bY2
うぅぅ…なんか寂しい雰囲気(´Д⊂ヽ
モーリ&シーラ様、いつもエロくて笑いを忘れない作品ありがとうございます。
大好きです。
ワルたん、久しぶりでございます。やーっぱワルたんはエロ!(;´Д`)ハァハァ

そしてコソーリと鈴世&なるみキボンヌしてみる(・∀・)
226名無しさん@ピンキー:03/11/14 19:07 ID:zkF/LKe7
>225
キボンヌ!
227名無しさん@ピンキー:03/11/15 23:46 ID:pwkYu99c
久々に卓か愛良でエロが読みたいなぁ。
1部ネタばかりでちょっと飽きちゃったかも。
どなたかよろしくお願いします。
228ワルさくしゃ:03/11/16 01:36 ID:WOxZn2I8
遅ればせながら…
>220、233、234、235タン
ありがとうございますー!

鈴世×なるみ書いてみますた。
…また学校ネタですが…(;´д`)ワンパ?


イケナイ誘イとわるイテープ

『なるみちゃん、なるみちゃん、面白いテープがあるよ!』

視聴覚室の掃除当番だったなるみは、その時ビデオデッキの声を聞いた。
この部屋の当番は1人で掃除をすることになっていて、お喋り好きな生徒からは敬遠されていた。
しかし、雑然と置かれた様々な機械の声を聞く事ができるなるみは、この当番を楽しんでいた。
そこへ今日は裏の準備室にあるビデオデッキが、悪戯めいた口調で囁いてきたのだった。
「なぁに?見せて?」
関心を示すと、途端にその部屋のものたちが騒ぎ始める。
『やめておきなよ、なるみちゃん!』
『いーじゃん、見せてあげちゃえ!』
『きゃーっ!見せちゃうの!?』
「気になるなぁ。鈴世くんと帰るから、映画とか長いのはダメだけど、ちょっとなら見たいな」
視聴覚室の大きな画面を使うのは気が引けるが、準備室の小さなテレビならいいだろう。
なるみはサボりを気付かれないよう、準備室のドアを閉めた。
暗幕が引かれた狭い部屋は真っ暗になり、椅子に座るが、まだ機械たちが騒ぐ声が聞こえる。
なるみはテレビのスイッチと、それに繋いであるビデオデッキの再生ボタンを押した。
229イケナイ誘イとわるイテープ2:03/11/16 01:37 ID:WOxZn2I8
再生が始まった途端、機械たちのざわめきがぴたりと止んだ。
かわりに流れるのは女の喘ぎ声と湿った音…つまり、アダルトビデオの映像だった。
(きゃ―――――っっっ!!)
なるみの頭に、一気に血が駆け上った。
(誰か男子が持ち込んで見てたのかしら?こっそり見てたとか!?にしても忘れる!?
こっ、コーフンしすぎて忘れていっちゃったとか!?こんなの先生にも届けられないよっ!!)
照れ隠しのように、めまぐるしく考えを巡らせる。
そうしないと、その映像に夢中になってしまいそうだった。
彼のことを、それから、つい先日一線を越えてしまったことを、その映像に重ね合わせて
しまいそうだった。
座った膝に置いた手が、ぎゅっとスカートを掴む。
そうして何かにつかまっていないと、自分の手があられもないコトをし始めそうで。
しかしビデオの再生を止めることはできなかった。

やがて、なるみの呼吸が、犯され続けている女の喘ぎと同調してしまった。
知らず、あごが上がり、空想の中で頬にかかる鈴世の前髪の感触を感じていた。
ぴったりと閉じた膝の奥が、じくじくと熱をもっている。
映像の中で女が嬌声をあげる。
『あんっ、気持ちいいっ、あんっ、あんっ』
(気持ちいい、鈴世くん、鈴世くんの、イタイけど気持ちいいよ…)
もうずっと機械たちの声は聞こえない。だから忘れた。回想に夢中になっていった。
スカートを掴んでいた手が、そのままゆっくりと上がり、白い太腿をあらわにする。
そのとき。
230イケナイ誘イとわるイテープ3:03/11/16 01:38 ID:WOxZn2I8
『なるみちゃん!!』
どの機械からか、鋭い警告の声がなるみの耳に飛び込んできた。
次の瞬間、背後の扉が開いた。
なるみの全身を駆け巡っていた熱い血が、ざっと冷える。
映像は流れ続けていたが、なるみは動けなかった。
扉を開けた人物の気配を背中いっぱいに感じ、廊下からの明かりで目の前にできる影で、
それが誰であるかを悟り、絶望的な気分に目を閉じた。
「なるみちゃん」
(ああ、やっぱり…)
「遅いから、迎えに来たよ」
目を閉じてしまったので、鈴世の声は、普段通りなるみの耳に優しく響いた。けれど。
「先に、帰って、鈴世くん。ごめんなさい…」
何に向けての『ごめんなさい』なのか。
目を固く閉じて彼に背を向けたまま、肩が震えるのを、必死に抑える。
やがて静かに、背後で扉が閉まった。

再び廊下の明かりが閉ざされ、体の強張りが、哀しい安堵に解けた。
彼の軽蔑を想像して、目の前が真っ暗になる気がする。
しかし次の瞬間、流れ続けていた映像が消えて、本当に真っ暗になった。
ビデオデッキの停止ボタンが押されたのだ。
部屋に、再び彼の気配を感じた。
(出て行ったんじゃなかったの…)
「なるみちゃん」
暗がりの中で、鈴世がなるみの頬にそっと触れると、その指が濡れた。
そしてなるみの前にひざまづき、囁く。
「あのね、興奮した」
231イケナイ誘イとわるイテープ4:03/11/16 01:38 ID:WOxZn2I8
なるみが濡れた瞳を見開く。
「そうやって、恥ずかしそうに泣いてるのも、すごく興奮してしまう」
いつもの優しい声で、けれどストレートにそう言いながら、鈴世はなるみを引き寄せ、
唇を吸い上げて、その胸を制服の上から揉みしだいた
服を掻き分けて胸に直に触ると、その先端がふっくりと起き上がるがわかる。
「んっ…鈴世くん…?」
なるみの涙で濡れた鈴世の指が、いつの間にか滑り込んだスカートの中で、再び濡れる。
下着の脇から、ずぶりと指を潜らせた。
「やぁ…っ!!」
なるみが身を捩った瞬間に、白い布を引き摺り下ろし、そのままその手で自分のベルトを外す。
もう一方の手は、二本の指でなるみの中を、ぐちゅぐちゅと音を立てて掻き回し続けていた。
「やだ…!あっ、あっ、あっ」
すでに濡れそぼった彼女のそれは、ひくひくと蠢き、悦びを表した。
「なるみちゃん、ぼくがすごくいやらしい男だって、知ってる?」
「し、知らない…」
「じゃあ、教えてあげる。いっぱいね」

椅子と、機材が置かれた棚と、冷たい床のタイルの、ハザマ。
なるみはスカートを捲り上げられ、胸のボタンを開けられ、制服をぐしゃぐしゃに乱されながら、
彼に愛された。
乱暴に折られたスカートのプリーツの奥で、まだ若い互いの性器が、執拗に交じり合う。
「なるみ、もっと、擦っていい?」
「うん。鈴世くん…」
もっと、もっと、と貪り合った。体中、もう感じないところなどなかった。
暗幕に日を遮られたうす暗がりの中で、鈴世の汗に濡れた白いシャツの背中がせわしなく動き、
その両脇でなるみの細く白い脚が力なく揺れる。
鈴世の目の下では、外気に剥き出しに晒されたなるみの乳首が、唾液に濡れてぴんと立って震えていた。
「気持ちいいっ…!鈴世くんの、気持ちいいの…」
まだ幼さを残した顔はその歳に見合わない快楽に歪められ、アンバランスないやらしさを醸し出す。
年若くして交わりを覚えた二人だが、「まだ早い」という後悔は全く無かった。
互いにとってこれは必然で、当然の成り行きだった。ただ己の欲求に一途に従っただけだったのだ。
232イケナイ誘イとわるイテープ5:03/11/16 01:39 ID:WOxZn2I8
「なるみ、また、出そう」
「うん、欲しい、鈴世くん…わたし…も…、…ぁっ…」
「ああ、だめだよ、そんなに…っ」
なるみの口から迸りそうになる悲鳴を、鈴世の手が押さえた。
吐き出されなかった愉悦の叫びは、そのまま体の中をめぐり、さらに快感を深める。
声は出さず、がくがくと激しく全身を痙攣させ、二人は昇りつめた。
真っ白になる頭。皮膚には鳥肌が立って。
どこか深い深いところへ引き摺り込まれそうな感触を、互いにしがみつきながら味わった。

鈴世となるみが、呼吸と身支度を整え終えた頃には、外はもう暗くなっていた。
薄明かりさえ差し込まなくなった部屋に電気をつけても、機械たちは相変わらず沈黙したままで、
なるみにその声は聞こえなかった。
(ここの掃除当番、結構楽しんでいたんだけどな…)
照れくささと気まずさを感じながら、なるみは鈴世と手をつなぎ、その部屋を後にした。
明かりを落とされ、再び暗くなる部屋。
やがて無人になったその暗がりでは、機械たちがひそひそと、好色な噂話を始めたのだった。

おわり
233名無しさん@ピンキー:03/11/16 08:36 ID:F3QCA3ID
ワルたんありがと〜!よかったYO!
鈴なる、かわいくっていいね〜。
234名無しさん@ピンキー:03/11/16 11:21 ID:hXwH2UoL
か、かわえー…。

後日、機械たちにからかわれるわけでつね。
235名無しさん@ピンキー:03/11/16 12:13 ID:l5bYmpWx
しばらく視聴覚室にはいけませんなw
236名無しさん@ピンキー:03/11/16 13:29 ID:DHgen1BP
えがったYO!
鈴世となるみ好きだからうれしいね。
237モーリ&シーラ作者:03/11/16 20:09 ID:xC9BmZIk
だいぶ間があいてしまったのですが、椎羅の家族計画の
続きのようなものを書いてきたので、興味ある方はどうそ・・・
238モーリ&シーラ作者:03/11/16 20:51 ID:xC9BmZIk
妊娠判明から一夜明けて…
望里と椎羅は居間で紅茶を飲んでくつろぎながら、ほくほく顔で語り合っていた。
「なあ、椎羅。気が早いようだけど、今度は男と女のどっちかな?」
「そうねえ…それにどっちの血を受け継ぐのかしらね」
「蘭世と鈴世の時は、未来から来たあの子達に、あらかじめ性別や名前まで教えられてた
訳だけど…今回ばかりは何も知らないから、生まれてくるのが余計楽しみだな」
「そうね、本当に待ち遠しいわ。…ところで、蘭世達にはこのこといつ言います?」
「うーん…、まだ言わなくてもいいんじゃないか?お前のお腹が大きくなってきたらで―」
「あら、それじゃ私が単に太ったんだと思われちゃうわ」
いかにも椎羅らしい反論に望里は笑った。
「…それも言えるな。まさか今になって、兄弟が増えるなんて思ってないだろうし…」
「もしかして蘭世も今二人目を妊娠中で、親子同時に出産!なんてね…、ふふふ」
「アハハ。それも面白いかもな」
「―もう少しして、落ち着いたら言いましょうか?」
「うん。きっと腰抜かすぞ」
そうして穏やかな時を過ごしていると、突然開かれた窓から突風と共に1羽の
コウモリが侵入して、黒い紙片を一枚落とすとまた飛び出て行った。
「きゃっ…!」
「んっ!?何なんだ一体…」
驚いた望里が紙を拾い上げる。見覚えのある漆黒の紙封筒…コウモリのマーク
が金色で浮き彫りになっている。
「こっ、これは…魔界からの手紙のようだ!」
「まあ、中身は何なんです?」
239椎羅の家族計画14:03/11/16 20:53 ID:xC9BmZIk
「どれどれ…」恐る恐る封を開けて読む。
「…江藤望里・椎羅夫妻へ告ぐ。両名の者、ただちに魔界・吸血鬼村へ出頭せよ、だと…。
村長の署名付だ。吸血鬼村の村長が一体、私たちに何の用が…?」
どうにも解せない、といった顔で望里は呟いた。
「何言ってるの。吸血鬼村の村長って、あなたのお父様じゃありませんか」
「あっ、そう言えばそうだった、忘れてたよ。アハハ…」
「それにしても、一体何の用なんでしょう?」
「うむ…さっぱり見当がつかんな。―もしかして、今度の妊娠を聞いてのことか…?」
「え?まだ誰も知らないはずよ。私たちとメヴィウス以外は…」
「そうだよな…。―とにかく吸血鬼村まで行くとするか」
二人は黒い燕尾服とマント、白いロングドレスという正装に着替えて、望里の故郷へと向かった…。

そして吸血鬼村―
名門エトゥール家の広い屋敷の中。
望里と椎羅は、久し振りに会う望里の父・アーサーと向かい合って座り、何事だろうかと
緊張の面持ちでいた。
「望里に椎羅殿。人間界で元気にやっているかね」
「ええ、まあ…」望里は戸惑いを隠せない。
「お前にも孫が生まれたそうで、何よりだ」
「ええ、名前は卓と言って、これがまた可愛くって…ってことは置いといて、お父さん、
あの物々しい手紙は一体…?」
「そう、その事なんだが…実は―お前に吸血鬼村の次期村長をやってもらおうと思ってな」
「ええっ、次期村長にっ!!!」
天から降ってわいたような意外な話にびっくりしている望里と椎羅を構わずに、アーサーは
ニコニコ顔で話を続けた。
240椎羅の家族計画15:03/11/16 20:54 ID:xC9BmZIk
「さよう。私はもう長い間、村長をしておるが、そろそろお前に跡目を譲ろうと思っているのだ―」
「し、しかしお父さん。村長職は別に世襲制というわけでは…」
「まあそうなんだが、この間の村の有力者会議で私がこの話を提案したら、反対する者は誰も
いなかったものでな、別に構わんだろ」
「そうは言っても…。何しろ私は椎羅と一緒になる為にかつて故郷を捨てた身―。今でこそ
こうして魔界への出入も許されていますが、人間界で暮らし続けている私を、村の人間が村長として
歓迎してくれるとは思えません―」
「ああ、そのことなら心配の必要はないぞ、望里。魔界を捨てて異種族の椎羅殿と人間界へ駆け落ちしたとはいえ、
お前のそのドラマチックな生き方が、かえって村で人気を呼んでいるのだ。一家で魔界の危機を何度も救ったことも
知られておるし。お前たちは言わば魔界の人気ファミリーなのだよ」
望里は唖然とした表情で椎羅と顔を見合わせた。
「―ところで椎羅殿はこの話をどうお思いかね?」
義父の言葉に椎羅はハッと我に帰った。「村長の妻」という肩書きがさっきから頭の中を
駆け巡っていたのだ。元がミーハーな性質なので、こういう華やかな話は大好きな訳である。
「……掟破りの村長も面白いかも知れませんわね…」
「お、おい、椎羅!」望里はぎょっと驚いて、隣の妻を見る。
「―お義父様、確認したいのですけど、吸血鬼村の村長の妻が狼人間でも構いませんのね?
離縁だなんて言われたら、私…」
椎羅はうつむいて悲しげな顔をしてみせる。
「もちろんそんな心配も無用だ。椎羅殿のことも喜んで迎え入れる」
「まあ、良かったわ。皆様、寛大で―」パッと顔を輝かせる。
「し、椎羅。お前乗り気だろ…?」
「いいじゃありませんか、あなた。折角のお話ですのよ、お断りする理由があって?」
「もう、ミーハーなんだから…」苦笑顔で妻を見た後、父に向き直って聞く。
「―ところでお父さん、村長って一体、何をすればいいんですか?」
241椎羅の家族計画16:03/11/16 20:56 ID:xC9BmZIk
「望里、お前は…。自分の父親の仕事を何も分かっとらんのか…。まあ、いい。
―村長というのはだな、言うまでもなく、村の代表者であり、村の政治を司る身。すなわち村の財政状況を把握し、
村民の安全を守り、紛争を解決し、より良い生活を送れるように気を配らねばならない。更に細かく言うならば、
我ら吸血鬼の重要なエネルギー源である血液タンクの貯蔵量には細心の注意を払い、決して枯渇することの無いように
するということだ。その為には、人間界の各地で実施されている献血運動のスケジュールを密かに把握し、
選抜されたエージェントたちをそこに派遣させ、幾らかの血を頂戴して貯蔵に回す―といった具合にだ。
それだけではない。これは極秘な話だがな…、吸血鬼映画を作ろうとするプロデューサーと、肖像権料や興行収入のうちの
我々の取り分の交渉もしたりする。そして月に一度はお城で開かれる村長会議に出席し、各種族の村の現状について
報告し合う―その際、ココ様へのおみやげも忘れてはならない…。とまあ、村長の任務はたくさんあるのだ―」
長々と続くアーサーの説明を、望里はゲンナリした表情で聞いている。それがやっと終わったところで、
深いため息をついて父に言った。
「お、お父さん…私にそれが全て出来るとお思いで―?」
「今からそんな弱気でどうするのだ。大丈夫だ、お前になら出来る、望里」
「そうよ、あなた。私も陰ながら支えるわ」
「そうは言うけど…。しかし、私には最近始まった連載小説の仕事もあるし―」
「スランプに悩んで失踪した事にすれば?」椎羅が能天気に言う。
「あのねー…」苦笑を通り越して、呆れ顔の望里。
「まま、案ずるな。私も残務処理が色々あってな。そうすぐに、という話でもない。
今日は一応、話だけでも聞いてもらおうと思って呼んだのだ。―じゃ、忙しいので私はこれで
失礼させてもらうよ。ゆっくり滞在するといい。お前の部屋はそのままだから」
こう言ってアーサーが二人を残して居間を出て行くと、望里は深いため息をついた。
ただちに出頭せよ、なんて大げさに言っといて…。
242椎羅の家族計画17:03/11/16 20:57 ID:xC9BmZIk
「ああ、懐かしいな。昔のままだ」
かつての自分の部屋に入って、中を見まわしながら望里は呟く。
一方の椎羅は「キャッ。村長の妻、村長の妻!」とはしゃいでいる。
「…椎羅、お前村長の妻なんて自由のない身分はお断りだって、昔言ってなかったか?」
「あら、それは私が親の決めた相手と結婚させられそうになった時のこと。あなたが村長と言うのなら話は別よ」
「……」
椎羅はソファに座り込んだ。
「あなた、この話お引き受けしましょうよ。ね、生まれてくる子供の為にも…」
「子供の為…?」
「ええ。お父さんが村長様だなんてすごいじゃないの」
望里は少し考え込んだ後、口を開いた。
「…椎羅、聞いてくれ。…村長の仕事で忙しかった父は、一日中ほとんど執務室にこもりっきりで、
家族と顔を合わせることも滅多になかった。ましてや幼い私と遊んでくれることもね…」
望里は妻の隣に座り、そのお腹を撫でながら言った。
「―だから、私は…私のように寂しい思いを自分の子供には味わって欲しくないんだよ」
「…あなた…」夫の手に自分の手を重ねる。
「それに、村長になったりしたらお前と夫婦喧嘩してる時間もないだろうな。
―もちろん二人だけの夜を楽しむ余裕だって…」
「―そんな…それはいやだわ、私」
「どっちが?喧嘩の方、それとももうひとつの方?」
「…いやね。追求しないでちょうだい」
夫の手の平をつねった後で、優しくキスを交わした。
「…分かったわ、あなたがそう言うのならお断りしましょう」
「うん…きっと落胆するだろうな。―つくづく、私は親不孝な息子だね」
椎羅は哀しそうな表情の夫をその胸に抱き寄せた。
「そんな風に考えないで。きっと、お義父様はあなたの気持ちも分かって下さるわよ」
望里は無言で妻のぬくもりに身を委ねた。
243椎羅の家族計画18:03/11/16 21:00 ID:xC9BmZIk
「なにっ!断るというのかっ!?」
「―ええ、折角のお話なんですが、…すみません、お父さん」
村長の執務室のデスクの前に、夫婦で並んで立っている。
「何故だ、理由を言ってくれ。望里」
望里は椎羅と顔を見合わせた後、妻の肩に手を回して言った。
「…実は、今度私たちの3人目の子供が生まれるんです」
「何、子供がっ!?おお、それはめでたい。ならば尚更、お前は村長として頑張らねば…」
「いいえ、お父さん。だからこそ私は…子供の為にも、いつも側にいてその成長を見守っていきたいんです。
身勝手なようですが、分かって下さい」
「望里!…椎羅殿からも何とか引き受けるように説得してくれんか!」
「お義父様、主人の選択したことですわ。私もそれでいいんだと納得してます」
「しかし…」
「そりゃ主人は人間界では、単なる売れない小説家に過ぎません。吸血鬼村の村長様なんて
権威あるお立場には到底かないませんけれど…でも子供達にとって、こんなに素晴らしい父親はいません。
そしてもちろん私にとっても素晴らしい夫です。だから…これからもそうであって欲しいんです。
私たちはこのままで十分、満足してますわ」
「椎羅…」望里は妻の毅然とした横顔を見つめながら、感激に声を詰まらせた。
椎羅の言葉が痛いほど胸に突き刺さったアーサーはがっくりとうな垂れ、しばらく無言のままだった。
「…お父さん、大丈夫ですか?」
「―なに、大丈夫だ。年寄り扱いするな」と言うと、ゆっくりと椅子から立ち上がり、背を向けて窓辺に立った。
「……孫の顔を見せに来てくれよ、望里」望里は父に近付き、その肩に手を置いた。
「―それから、もう一本くらいベストセラーでも書いてみせろ」
「―ええ、頑張ります…」
「…お前は…良い嫁をもらったな」
「ええ」
「椎羅殿。望里に愛想が尽きたら、いつでも離婚してもいいのだぞ」
「そんなご心配は無用ですわ、お義父様。お互いに惚れ込んでいますから」
きっぱりとした椎羅の返事に、アーサーも望里も顔を見合わせて微笑した。
アーサーは息子にそっと小声で言う。
「…何とも強い女だな。お前が尻にしかれているのが目に浮かぶようだ」
望里は無言で苦笑した。
244モーリ&シーラ作者:03/11/16 21:07 ID:xC9BmZIk
今日はとりあえずここまで!なんですが、結局3人目はどうしたら
いいのか、どうにもアイディアがまとまらないまま・・・
蛇足な話になってしまった感あり、ですね。(汗)
もしもモーリが村長になったら?という案が突如ひらめいたので書いてしまった。

今度は視点を変えた、モー&シーの駆け落ちストーリーをまた
書きたくなってきました。
「運命の出会い」というのはわりとシリアス調だったので、
今度のは喧嘩夫婦の原点を垣間見るような、そんな明るいのにしたいと
思ってマスデス いかが?
245223:03/11/16 21:54 ID:VndJ3P98
>>228-232
またもや最高!あなたは私の神でつか?(w
246名無しさん@ピンキー:03/11/17 18:05 ID:ycSjga66
あの〜、すっごい中途半端なとこまで書いたんですが、
その続きがうかばず、「だれか続きかいてくれ〜」っていうの載せてもいいですか?
247名無しさん@ピンキー:03/11/17 19:00 ID:CfrYHlim
>>246
いいと思いますよ!
みんなでリレー小説しましょう。
別板の某漫画の妄想スレなどはリレーでかなりの名作が生まれていますし。
248名無しさん@ピンキー:03/11/17 19:10 ID:ycSjga66
OKがでたので、カキコします。

蘭世は多いに不安だった。
ゾーンの事件も一件落着し、楽しい高校生活が待っているはずだったのに。
俊と気持ちも確かめ合えたはずなのに・・・。
俊は以前のようにやさしく接してくれる。
人間と魔界人だったときより、心に壁を作らなくなったこともうれしい。
でもでも・・・・。アロンの結婚式にキスしてくれた時以来、キスをしてくれない。
帰り際にちょっと手をつないでくれるときがたまにあるぐらい。
[私たち、恋人同士ではないんだろうな]

学校から帰って、ベットに身体を投げ出す。
「蘭世、なに気弱になってるの。片思いできるだけでも幸せなんだぞ」
自分に言い聞かせてみる。涙があふれ出しそうになるのをあわてて隠した。

そう、片思いだと思っていればいい。そうしたら、もしまた別れを告げられても
立ち直ることができる。変に期待しちゃダメ。心に何度も言い聞かせる。
気を失うほどのショックをうけた失恋。トラウマにならないわけがなかった。

249題名なし2:03/11/17 19:11 ID:ycSjga66
一方、こちらは俊のアパート。
今日は、雨のためバイトは休み。
畳に寝転がり、低い天井を見上げた。
今日の昼休みの会話を思い出す。

「江藤ってすげーよな。お前あんなにラブラブ光線出してんのに、
未だに片思いだと思ってんだぜ」
なんの前触れもない突然の日野の発言に牛乳を吹いた。
「なんだよっ!!突然!」
俊の反論に微動だにせず、日野の発言は続く。
「ゆりえがさ〜、つき合いだしてから安心したらしくって、
俺の気持ち一つでオロオロしなくなってさ。まあそれも寂しいときもあるけどさ」
ちょっと照れながらいう。
「あほくさ。おのろけかよっ」
鼻で笑う俊。
今にもイヒヒッと笑い出しそうな顔で日野は反撃する。
「お前、ほんっとわかってないね。もうそろそろ安心させてやらないと、
さすがの江藤も、疲れてくるぜ〜♪オンナの心変わりは突然だから
まあせいぜい、捨てられんよう気をつけるこった♪」

じゃあなと、食べ終わったゴミをビニール袋に乱暴につめて
日野はさっさと自分の教室に帰っていった。

わかってないわけじゃない。
蘭世は不安は。心をなるべく読まないように気を付けていても
強く自分のことを思われると聞こえてくる。
ここまで不安にさせた過去の自分の行動。
あやまってもどうなることでもない。
250題名なし3:03/11/17 19:12 ID:ycSjga66
日野の言葉に不安になったのか、蘭世のことが気になり始めた。
意を決して、江藤家に電話をしてみることにする。
「もしかして、俺って江藤に電話すんの初めてじゃないか?」
{こんなだから、江藤に恋人じゃないって思われるんだよな}
ちょっと苦笑いしつつ。
ベルがなる度に、心臓がバクバクする。
5・6回鳴っただろうか。「はい。江藤です」
「どちら様ですか?」江藤の声に、一瞬、声が出なくなる。
「・・・・オレ」
「えっっ?!・・・も、もしかして真壁君・・・?」
俊は心底、電話って顔が見えない機械でよかったと思った。
しばらくの沈黙のあと、江藤が聞いてくる。
「どうしたの?なにかあったの?」
俊が電話してくるぐらいだからなにかあったと心配になる蘭世。
「お前、今ひまか?」
声が聞きたかったからという理由を飲み込む俊。
「うん?」
「バイト休みになったから・・・・会いにきてもいいか?」

蘭世は、今度は違う涙がでそうになった。
{でもでも今はダメっ!!今の気持ち読まれちゃう。
この気持ちだけは読まれちゃダメ}

蘭世の気持ちはバレバレなのに、気づきもしていない蘭世。

251題名なし作者:03/11/17 19:15 ID:ycSjga66
すんません。ここまでです。

設定は気にいってるんですが、結末が考えられない。
だれか助けて。
252わる:03/11/18 23:56 ID:ozbNC+jb
静かなようなので、ちょっとだけ続けてみますー。


「会いに行く」
という電話の向こうの俊に、蘭世はどう答えていいか分からなかった。
受話器を握り締めたまま、何となく視線を彷徨わせてしまう。
窓の外はまだ雨が降っている。
しとしと。会いたい、会えない、会いたくない。
「…あのね、雨が降っているから、風邪引いちゃうといけないし、今日はやめよ…?」
蘭世は結局、逃げてしまった。気を使うふりの拒絶という、ずるい返事。
その声色に気づかない俊ではなかった。
「わかった。じゃな」
冷静な声で受話器を置いた。

俊は、電話をかける直前の軽い興奮を、虚しい気持ちで思い出していた。
『風邪引いてもいいから会いたいんだよ』とか、『会うのがいやなのか?』なんてセリフで
引き止められるような俊ではなかった。そんな言葉が言える性格ではない。
それに、性格のせいだけでなく…、
…引き止めるのが、怖かったのかもしれない。
さらに強く拒絶されたらどうしよう、と。
昼間の、日野のからかいが頭をよぎる。
『もうそろそろ安心させてやらないと…』
「不安で、オロオロしてんのは、どっちだよ…」
沈黙した電話に向かって呟いた。
電話越しでは、彼女の本心は読めない。
外はただ冷たい雨が降り続いている。
雨が、互いを思う気持ちを遮っているような気がした。
同じように受話器を置いた彼女は、今何を考えているのだろうか。


あんまり進んでないですね…。すまそん。
253ようよう:03/11/19 09:57 ID:NIkmUyYS
電話を切った後、蘭世はベッドに横たわり静かに目を伏せた。
いつのまにか冷たく濡れるベッドカバー。

(会いたかった…)
本心はいつだって俊を求めている。
だが、会ってどうなるというのか?
自分の不安を悟られ、俊を困らせるに決まっている。
やっと平穏な生活に戻った俊を、自分が煩わせてしまうことにおびえた。

それならただの片思いだけでいい。
そう自分を納得させても、心は頷かない。

「本当は…」
蘭世は潤む瞳を開き、窓から降り止まない雨を見上げた。
(気持ちが知りたい。抱きしめてほしい。キスしてほしい。)
「…真壁くん、切ないくらい、好きだよ…」

雨の音を聞きながら蘭世は再び目を伏せた。


誰か、進めて…。
254名無しさん@ピンキー:03/11/20 17:07 ID:Hk2/6+9x
俊は電話を目の前に、なおも考え続けていた。

もう一度かけるか?
それとも今日はもう諦めるか?

しかしいつまでもこう、と決断が出来ない自分に苛立ちを感じ始めていた。
肝心なところで何一つ蘭世の求める言葉をかけてやっていない。出来ない
のだ、どうしても。
腹立ち紛れに傍にあったゴミ箱を蹴飛ばそうと立ち上がろうとして、ふと足
が止まる。

(気持ちが知りたい。抱きしめてほしい。キスしてほしい。)

確かに蘭世の声。傍にいるわけではないのに、何故聞こえてくるのだろう。
それは自分が蘭世を強く思っているからか?
それとも蘭世が自分を……

弾かれたように部屋を飛び出す俊。外はまだ雨が降り続いていたが、濡れ
てしまうことなど気にする余裕はなかった。
ただ響いてきた蘭世の想いが、自分に都合のいい妄想なのか、それとも蘭
世の本心なのか、確かめたい一心だった。

255名無しさん@ピンキー:03/11/20 17:12 ID:Hk2/6+9x
……もう、電話してきてくれないのかな…

気を紛らわそうとゴロゴロ寝返りを繰り返す蘭世だったが、頭からさっきの電話
が消えようとしてくれない。
俊に対する複雑な想い。困らせたくない。もっと確かな絆が欲しい。相反する二
つの気持ちを抱え、揺れるどころか苦しくて動けなくなる。
(あんな言い方しちゃったら、真壁くんのことだ、もうかけてくれないよね)
相変わらず窓の外は雨が降り続いている。変わらない風景。まるで自分と俊の平
行線を辿る関係のように。

「バカな蘭世……真壁くんはこんなつまらないことで悩まないよね……」

言い聞かせるように一人呟いてみても、返事をする者はいない。虚しくなり、枕
に顔を埋めた。少しの息苦しさに、今顔を埋めているのが俊の胸だったらどんな
にいいかと蘭世は思う。
次第に後悔だけが胸を占めだしていった。

もし、素直に会いたいと言えていたら?
何か変わったのだろうか?それとも何も変わらないまま?

雨音は続いている。俊からの電話はかかってこない。
変わらない、二人の距離……
256名無しさん@ピンキー:03/11/20 17:15 ID:Hk2/6+9x

(……いや…)

むくり、と蘭世は起きあがり、瞳に貯まった涙をごしごしと擦った。
(いつまでもこうして待っているだけじゃダメよ。
 会いに行こう。動かなきゃ、何も始まらないんだから)
蘭世にとっては大きな決心。それが良い方へ転がるか、悪い方へ転がるかは敢え
て考えるのをやめた。動き出した先には、きっと何かがある。雨もやむかもしれ
ない。それを信じようと。
傘を手に取り、厚い雲に覆われ薄暗い外へ出る。
(真壁くん、大好きだよ……)
願いを込め、蘭世は一歩を踏み出した。



お久しぶりのさなぎでした。
早くエロへ持っていきたくてちょっと動かしてみました(w
ではどなたか、あとは頼みます。
257名無しさん@ピンキー:03/11/20 22:38 ID:IELYe8+X
雨が少しだけ強さを増していく。
傘が奏でるバラバラというリズムを聴きながら
蘭世はいつも使う道ではなく、人気の少ない近道を走った。
いつもは使わないが、今日に限ってはこちらを選ぶ。
早く早く・・・
決心がついてからは、何かに急き立てられるように動き出す体。
ドキドキと弾み出す心臓が送る温かな血は、全身へと廻りだし
戸惑う自分の気持ちがついてこなくても、足はどんどん進んでいく。
自分がどれだけ会いたかったか、体はよくわかっているようだった。
頭だってわかっている。
片思いだからとか、不安とか、もちろん考え出したらきりがない。

・・・だけど・・・

「好きなんだもん。しょうがないじゃない」
今一度声に出していってみる。
雨の奏でるドラムにかき消されてしまったが
その言葉に新たな何かが沸々とわきあがってきた。
傘に隠れて顔をほころばせる。
そうなの。
真壁くんが大好きなの。
真壁くんに会いたいの。
しょうがないじゃない。

だから・・・
早く早く・・・

時折水溜りを飛び越えながら、気持ちに後押しされて走った。
258名無しさん@ピンキー:03/11/20 22:43 ID:IELYe8+X
そろそろ髪から雨の雫が滴り落ち始めてきた俊は、突然足を止めた。
白い息が顔を取り巻く。
江藤家までもう少しだった。
だが・・・

俊は方向を変えて走り出した。
頭が追いつく前に体が先に動いてしまう。
・・・どうしてわかる?
江藤は家にいないと。
どうしてこの道を・・・?
本当にココを通ったのかだってわからない。
頭の中を消化できない思考がぐるぐる廻る。
蘭世には通るなと禁じていた暗い道を走った。
歯を食いしばった。
この道がどこへ向かっているのか知っている。
早く・・・
早く見つけなければ・・・
追いつかなければ・・・
バカだ、アイツ・・・
わかってる。
オレのせいだ。
いつだってそうだ。
どんどん足は速さを増す。
早く追いつけ。
もどかしさに歯噛みした。
何もないことを祈りながらひたすら走る、自分の家へと続く道。
そしてはるか先の曲がり角に消えようとする影を見つけて思わず叫ぶ。
「江藤!!!」


  勝手に進めちったよ。さなぎタソが早くエロへってゆーからさw
  どなた様か続きおながいしまつ〜。  350
259名無しさん@ピンキー:03/11/20 23:25 ID:nuwgw2vo
その声は、はるか遠い彼女には届かなかった。
走っても走っても、先に先にと進む彼女には追いつけない。

俊は、息を切らせながら、一度立ち止まった。

ただ、俊には妙な確信があった。

・・あいつの行く先は・・・・・

自分自身に自信があるわけではない。
でも・・・。

・・俺のアパート・・・・

俊は辺りに人影が無いのを見て、アパートのそばの公園へテレポートする。


空気が揺らぎ、俊が人影の無い雨の公園の東屋についたとき、ちょうど俊の部屋の前に蘭世がついたところだった。

雨を滴らせた傘を閉じ、俊の部屋の前に立つ。

・・・そして、ノックしようと手を上げて、止まる。
躊躇い、戸惑い、そして、不安。
それらが入り混じった感情が蘭世の動きを止めていた。
260名無しさん@ピンキー:03/11/20 23:25 ID:nuwgw2vo
・・・俺は・・・こんなに・・・

彼女に対して、冷たかったのか・・・?
彼女に対して、思いやりを示していなかったのか・・?

あらためて俊は自身の配慮の無さに歯がゆい思いをした。

だが・・・・

だが、まだ間に合う。

今なら。
今、このときなら。

俊は蘭世の待つ自分のアパートへ向けて足を進めた。


・・・どうしよう・・・もし・・・迷惑だったら・・・?
蘭世はノックをためらった。

・・・・・だって・・さっきは私が・・・断わったのに・・・
きっと真壁くんは一人、いろんなことボクシングのことを考えたり、それに・・・・
邪魔になる・・・・

何度かあげかけた手を納め、蘭世は傘を握りなおしてきびすを返す。
・・・私が・・悪いんだもん・・・
261名無しさん@ピンキー:03/11/20 23:26 ID:nuwgw2vo
トントンと小さな足音。それでいて小気味のいい足音。

蘭世の顔がみるみる変わる。
覚えているそのリズム。
知っているその感覚。
そう、それは・・・・。

蘭世は動くことも出来ずただ、佇んでいた。

階段の向こうに愛しい男の顔が見えた。

その視線はまっすぐに自分を射抜いていた。

二人、ようやく、出会えた、雨の午後・・・・。


エロクならなかったすみません・・・・。
Presented by 新婚作者

誰か続きお願いします。
262名無しさん@ピンキー:03/11/21 00:47 ID:s03OWpaf
「ま、真壁くん。」
「・・・オス」
家にいるはずじゃ…どこに行ってきたっていうの?
「びしょ濡れじゃないの、どうしたの?風邪ひいちゃ…」

突然抱きすくめられ蘭世の声はここで閉ざされた。
俊の前髪から滴り落ちる雨のしずくが蘭世の頬を濡らす。

「真壁くん、冷たいよ?風邪引くよ?」
どんな時でも自分の事より先に俺の心配をしてくれる。
こいつの優しさに俺は甘え切っていたのか?
何も言わなくとも俺のことを理解してくれると思っていたのは
ただの俺の傲慢だったのか?

『もうそろそろ安心させてやらないと、さすがの江藤も疲れてくるぜ』

日野の言葉が頭の奥で再度響く。
どうやって安心させればいい?
言葉か?態度か?
どちらとも俺の苦手な事だ。

だが、江藤。
お前が俺に与えてくれるように、俺もお前に与えたい。

「悪い、ちょっと出てたんだ。待たせたのか?」
蘭世はおおきくかぶりを振って否定する。
「ううん。あの、…さっきはごめんなさい。わたし…」
「上がってくか?」

おれは自然に江藤を部屋へと誘っていた。

263名無しさん@ピンキー:03/11/21 00:53 ID:s03OWpaf
「ごめん、着替えるから。」
「は、はい。」
慌てて真壁くんに背を向けて視線を窓の外へと向ける。

玄関先までなら何度か来た俊のアパート。
こうやって部屋の奥まで上がるのは初めてだった。
(ここが真壁くんの部屋…)
男の1人暮らしとはいえあまりにも殺風景な空間。
投げ出された衣類、片隅に乱雑にたたまれた布団。
必要最低限の家具や家電製品。
必要以上に余分なものの無い部屋。
蘭世はなんだか急に寂しくなった。
(真壁くんの生活にわたしは必要ないのかしら)
なんだか自分がこの部屋には必要の無いものに感じてしまった。
(どうした蘭世!思考が暗いぞ。せっかく勇気を出して来たのに)

「何か飲むか?」
着替え終わった俊がいつの間にかキッチンに立っている。
「あ、わたしがやるわ。」
急いで変わろうとキッチンへ駆け寄った蘭世は
敷居に足をつまずかせ転びそうになる。
その先には火にかけたやかんがあった。
「キャッ!」
「危ねぇ!」
とっさに腕を伸ばし蘭世を抱え込む。
寸でのところでやかんに突っ込むのは避けられたが
思いもかけず抱き合う形となってしまった。
湿気を含んだ蘭世の髪から、ほのかにシャンプーの香りが馨る。
蘭世を抱く腕に力がこもってしまったのを俊自身さえ意識していなかった。

やっぱりエロまでいきません。ヘタレでごめんなさい。
どなたか続きを・・・  綾
264名無しさん@ピンキー:03/11/21 10:15 ID:vup2noZO
お湯の沸いてきた音が小さな部屋に響く。
「火を止めなきゃ…」
俊の腕の力は緩まるどころか、増す一方だ。
蘭世はやかんと俊を交互に見て心配する。するとガスはふっと消えた。
俊が能力を使ったのだ。
ガスは消えるが、一度自分の心についてしまった火は消せない。
俊は無言の裏で葛藤していた。
(ダメだ…!腕を緩めろ!手を離せ!江藤から離れろ!)
(そうしないと、…俺は、俺は…)

「真壁くん…?」
着替えたての俊のトレーナーに包まれて蘭世は安心している訳ではなかった。
(困らせているのかもしれない)
だが、感じる。たくましい胸のぬくもり。厚い布地の下から伝わる俊の鼓動。
(この温かさが愛されてる証拠ならいいのに…)
抱かれる力に身を任せ抱かれた。
265名無しさん@ピンキー:03/11/21 10:16 ID:vup2noZO
蘭世の気持ちが俊に流れ込む。
(そうだよ。俺を信じろ。…もし他の女がこの胸に触れても氷のように冷たいはずだ)
自分の口下手を、蘭世の思考を読んでしまう能力を、はがゆく思う。
伝えたい。
同じように相手を求める恋心を。
自分は蘭世以上に求めているのだから。

「怖いんだ」
俊は蘭世に顔を見られないように一層強く抱きしめて言った。
「真壁くん?」
「…何するか、わからねえ」
「え…」
腕が緩んだ。
その隙に蘭世は俊の表情を確かめた。
途端、俊は蘭世を壁に押し付けた。
蘭世は俊の名前を呼ぶ。だがその声は俊のくちびるに吸い込まれていった。

では、どなたか、バトンを。
266名無しさん@ピンキー:03/11/22 19:46 ID:fpJcGMIU

職人さま方?

息をひそめて素敵なリレーの続きを待っておりますよ。

どきどきどき・・・
267名無しさん@ピンキー:03/11/22 21:46 ID:8kEAgVDk
さっきまで冷え切っていたはずの俊の唇は燃えるように熱く
それは唇越しに蘭世へも柔らかく伝わっていく。
欲しかった柔らかい唇の感触・・・
蘭世の閉じた目から、熱い涙が止まらなかった。
会いたかった・・・
抱きしめて欲しかったの・・・
キスして欲しかったの・・・
真壁くん・・・・
やっぱり真壁くんが好き・・・

蘭世の暖かい気持ちは溢れるように俊へと伝わる。
俊のトレーナーの裾をつかんで離そうとしない手。
力いっぱい握り締めている。
二度と離れたくないと言っているかのように。

そんなに不安にさせていたのか?
俊は過去の自分を呪った。
オレはなんてやつだ。
最低だ。
カルロに必ず幸せにすると誓ったのになんてザマだ。
惚れた女1人幸せに出来ないのかよ。

唇を離して蘭世を見つめ、流れる涙にキスをした。
二度とこんな涙は流させまいと心に誓いながら。
268名無しさん@ピンキー:03/11/22 21:49 ID:8kEAgVDk
裾を握り締める細い手を掴んで、壁に押し付けた。
掴んだ手首を這い上がって指を絡ませ、再び目を閉じる。
愛しい唇から溢れそうな嗚咽を飲み込む為に。
初めて蘭世の柔らかい唇を割って、舌を求める。

・・・暖かい。
きっと止まれなくなるからと踏み出せなかった領域。
とうとう踏み込んでしまった。
もう止まれないかもしれない。
でも・・・

蘭世の柔らかい舌がおそるおそる俊に応じてくるのを
やんわりと受け止めて絡ませる。
初めて感じる温もり。
体温は相乗効果を発揮してどんどん上がっていった。
勝手に蘭世を求め絡まっていく舌。
応じさせようとどんどん奥へ分け入る。
その心地よい感触に我を忘れて貪ってしまう。
どうして体が勝手に動くのだろう。
蘭世の柔らかい手を握ると、強く握り返してくる。

真壁くん・・・真壁くん・・・
自分を呼ぶ声が視床下部へ痺れるように響いてきて
それだけで、1人突っ走ってしまいそうになった。
硬く目を瞑って、何とかそれを堪える。

          ココはエロスレ。皆ガンバレ!さぁ・・・王子どうする?書き逃げ350
269つづき わる:03/11/23 00:03 ID:YVOJRgIL
俊の激しすぎる口付けを受けて、蘭世は戸惑った。
されるがままに彼の腕の中で力を抜く。
いつもはそっと触れるように唇だけを合わせていたのに、
今日はからだ全体を押し付けられているようなキスだった。
これではまるで、キスだけではなくて。
ああこのまま思考が溶けるに任せて。
どうなってもいいとさえ。

まさかこんなにやわらかいとは思わなかった。
俊は蘭世の全身を服の上からまさぐりながら、感動に近い気持ちで彼女の感触を知った。
もっと触りたい。もっとこのやわらかさを。
「真壁くん、いたい…」
おずおずと掛けられた声に、はっと手を止めた。
「わりぃ…、だいじょうぶか?」
強く掴んだ力を緩め、しかし手はそのやわらかい胸の辺りに置いたまま、彼女を気遣うと、
「えへ、大丈夫」
と照れくさそうに笑った。
何をしても許してくれる彼女。
こうして体までも許すのか。
おれが望んだために。
それだけのために?
「安心するって、どんなだ…?こんなのは、違うんじゃないか…?」
270つづき わる:03/11/23 00:04 ID:YVOJRgIL
話しかけているのか、独り言なのかわからない呟きがこぼれた。
搾り出すようなその声に、蘭世の胸が痛くなる。
「真壁くん…?」
思わず彼の名前を呼ぶが、俯き、さらに部屋の電気の逆光になったその瞳は暗く、
覗きこむことはできない。
しかし、彼の望みがわかった。
抱き締められたとき、押し付けられた俊の体が、その欲求を雄弁に訴えていたのだ。
「真壁くん。わたしだって、望んでる」
蘭世の大きな瞳はまっすぐに俊を見つめ、煌いていた。
「よくわからないけど、わたし、それで安心できる」
「傷つけてもか」
合わせた瞳をそらさずに、蘭世は思いきって言った。
「そういう傷なら、いっぱいつけて…?」

その言葉で、俊の抑えつけられ続けた欲望が、理性の堰を越えた。
細い体を、床に強くぶつけないように、蘭世を抱え込んで押し倒す。
どんな風にすればいいか、なんて、初めて同士の二人には当然分からなかった。
ただ、その心のままに、手を、指を、唇を動かした。
俊はそうして、蘭世のブラウスのボタンを外すのももどかしく、まだ前を開けただけで
やわかいやわらかいそこを求めて、顔をうずめた。
「あっ」
蘭世が短く声を上げた。
短いが、明らかに感じた声だった。
性急な舌がざらりざらりと敏感な先端を撫で上げるたびに、未知の痺れが湧き上がる。
「あっ、あっ…、いやぁ…」
「いや、か?」
背を浮き上がらせて、胸を押し付けるように求めているようにさえ見えるのに?

271つづき わる:03/11/23 00:05 ID:YVOJRgIL
蘭世の浮いた腰の下に腕を差し入れると、より密着感が増した。
これで蘭世は、もう逃げられない。
そのままさらに尖った乳房を吸い上げ、愛撫し続けた。
耳を打つ彼女の甘い声が、下半身に響いてくるようだった。
段々その喘ぎが抑えがたく、長く尾を引いたものになってきた。
「あぁ、あ、あ、あぁ…っ」


とりあえずムネまで(・∀・;)。脱いでもいませぬ。他の方のエロも、ゼヒ…!
272モーリ&シーラ作者:03/11/24 17:16 ID:qUH0jQUV
以前に予告した新たな駆け落ち話を書いてきたのですが・・・
長くなりそうなので、リレー小説のお邪魔してしまいそうです。
と、言いつつ最初だけ書き込んでもいいですか?
273人間界での出会い1:03/11/24 17:18 ID:qUH0jQUV
ここは魔界の狼人間村。狼人間村の名門・クレリー家の屋敷。
「シーラ。お願いだから、うんと言ってくれ。私はお前の幸せを思って言っているんだぞ」
この家の長、ロナルド・クレリーが必死な表情で一人娘のシーラを説得している。
狼人間村の村長の息子であるハワード・ケンドールとの結婚話を、今日こそどうしても承諾してもらいたいのだ。
シーラの美貌が見初められ、最近になって先方から結婚の話が持ちあがったのだが、シーラは拒否し続けていた。
名門の御曹司、というだけで愚鈍で何の魅力もないハワードとの結婚なんて真っ平、と言うのが彼女の言い分だった。
そろそろ向こうに色よい返事をしなくてはと、やきもきしているロナルドに背を向けて、当のシーラは
今日もうんざりした表情で窓辺に立って庭を眺め続けている。毎日何時間にも及ぶ父からの説得には、さすがに辟易していた。
父親の言う通り、もうそろそろ結婚して、父や祖母を安心させるべきなのだろうか…?まったく愛を感じない相手ではあるが…。
「―分かりました、お父様。私、ハワードと結婚しますわ」
シーラが、その長いブロンドの髪を翻しながら振り向き、渋々といった感じで言った。
「おお、シーラ。やっとその気になってくれたか。父は嬉しいぞ」
ロナルドは娘の言葉を聞いて一転、これ以上ないくらいに喜んだ。
「…ただ、ひとつ条件がありますの」
「ん?何だ、その条件とは―」父親の顔はほころびっぱなしだ。
「私…一度でいいから人間界という所へ行ってみたかったんです。―だから…結婚する前に、私を人間界へ行かして下さい」
シーラの美しい青い瞳は意志的なきらめきを見せていた。
「なにっ、人間界となっ!?シーラ、本気で言っておるのか!?」
「たった1週間だけでいいんです。お父様、お願い…!」
「しかし…あそこは恐ろしい所だ。わしが何故そう言うのか、お前も知っているだろう?」
父親は悲しそうに首を振った。シーラの母親は、人間界での旅行中に狼へ変身していたところを、
狩をしていた貴族に撃たれて亡くなった。シーラがまだ子供のときだ。
ロナルド・クレリーとその母親のララは、母親を亡くした可哀相なシーラを、箱入り同然で大事に育てた。
274人間界での出会い2:03/11/24 17:21 ID:qUH0jQUV
しかし箱入り娘とは言っても、そこは代々続く狼人間一族の血を色濃く受け継いだシーラ。
幼くして母を亡くしたという不幸の影は少なくとも表面には微塵も見せず、その笑顔は天真爛漫な輝きを放っていた。
そしてその気性の激しさは折り紙付で、例え彼女の美貌を聞きつけた男たちが言い寄ろうとも、
剣もほろろに蹴散らすと評判だった。
そんなことで、父親が娘の嫁入りを諦めかけていたところへ、村長のケンドール家から思わぬ申し入れがあった。
その家の息子ハワードが、屋敷の庭で垣間見たシーラに一目惚れしたというのだ。
狼人間村でも1、2を争う名門の家柄同士。ロナルドにとってはまさに願ってもない話だ。
「嫁入り前の可愛い娘をそんな所にやる訳には…」
「―結婚したら、村長家の奥方としてがんじがらめの生活を送ることになるのは目に見えてるわ。
だからせめて…今だけでも羽を伸ばして楽しんでおきたいの。それくらい、いいでしょう?」
「うーむ…お前の気持ちも分かるが…しかし、断じてお前ひとりで行かせる訳にはいかんぞ」
「それなら、侍女のイルサを一緒に連れて行くわ。私も彼女がいれば心強いし…」
「…そうか。しっかり者のイルサになら、お前を任せても大丈夫だろう。
お前がそこまで言うのならば仕方ない。許可しよう」
「お父様、本当ね!」
「だが、お前の言ったように1週間だけだぞ。1週間後には、必ず魔界に戻ってくるのだ。
結婚式が待っているからな、シーラ」
無言でこくりと頷くシーラに父は言葉を続けた。
「それから、人間たちにお前の正体を気づかれぬように注意するのだぞ。特に満月の晩にはな―」
「ええ、気をつけますわ。お父様、ありがとう!」
275人間界での出会い3:03/11/24 17:23 ID:qUH0jQUV
シーラは飛ぶようにして自分の部屋に戻ると、早速旅の仕度を始めた。侍女のイルサも一緒である。
このイルサというのは、シーラより少し年上の、よく気の付くしっかりした侍女だった。
幼い頃から一緒にいたので、一人っ子のシーラにとっては姉のように頼れる存在である。
栗色の髪、薄茶色の瞳をしたイルサには、シーラのような華やかな美しさとはまた違った、
知的で落ち着いた感じの美しさがあった。
「で、シーラお嬢様。人間界のどちらに行きたいんですか」
「イギリスという国がいいわ。人間界のガイドブックで読んでから、是非一度行ってみたと思ってたの」
「イギリスですね…でも、いきなり現代のイギリスでは、戸惑われることが多いと思いますよ。
手持ちのお洋服がそのまま使える時代がいいのではないでしょうか?」
「それもそうね。では、過去の時代のイギリスにしましょう!」
そうして旅の仕度を終えた二人は、大きな旅行用鞄を幾つも抱えて、シーラの父親や祖母に見送られて
狼人間村を出発すると、想いケ池を目指した。途中、イルサはシーラに気になっていたことを聞いた。
「シーラお嬢様…ハワード様との結婚話、承諾なさったんですね」
「ええ…」
「でも…あんなに嫌がっていたじゃありませんか」
「これも家のためよ。仕方ないの…」
愛する父や祖母の顔が浮かぶ。肩を落として哀しげな顔になったシーラだったが、
イルサまでも沈んだ表情を浮かべているのを見ると急に元気良く言った。
「さっ。夢の人間界に行くわよ、イルサ!私、向こうで思いっきり羽目を外すんだから!」
「まあ、お嬢様ったら。羽目を外すだなんて」
「本当にそのつもりなのよ。……一度でいいから…私…」
「―素敵な殿方と燃えるような恋がしてみたい、のですね」
「イルサ!」シーラは顔を赤らめた。「どうして分かるの!?」
「お小さい頃から一緒だったんですもの。お嬢様の考えていることくらい私には分かりますよ」とイルサは微笑んだ。
276人間界での出会い4:03/11/24 17:26 ID:qUH0jQUV
「……ねえ、イルサ。たった七日間よ…そんな短い間で、出会えると思う?」
「誰にでも運命の相手というのがいるんです。ある日突然、訪れるものなんですよ、シーラお嬢様。
…大丈夫、きっと出会えますわ」とシーラを励ますイルサだったが、出会ったとしても1週間後には
魔界へ戻って結婚せねばならぬ身なのに、一体どうされるつもりなんだろう…という心配は胸の奥にしまっておいた。
そうこうする内に目的の想いケ池に辿り着いた。
「さ、お嬢様。池に飛び込みますわよ。私にしっかり掴まって下さいね」
ドボーン!!
池に勢い良く飛び込んだ二人。次に気のついた時には、イギリスはロンドンのど真ん中にいた。
ヴィクトリア調の雰囲気に包まれた、19世紀後半のロンドンの街。ホームズやジキル博士とハイド氏の時代…。
往来の激しい大通り。道を挟んでの両端には大きな店や銀行が立ち並び、人々は忙しげに通りを急いで歩いている。
何台もの馬車がごった返し、馬の蹄が響き、わななく声が聞こえる。そしてどんよりと鉛色をした空からは、今にも雨が降り出しそうだ。
「に、人間界ってこんなに活発な所なの…?想像以上だわ!」
ゆったりとした魔界の村のペースに慣れ親しんでいたシーラは、大都会のロンドンの喧騒の中に突然やって来て、
完全に度肝を抜かれて立ち尽くした。ほとんど屋敷の中で人生の大半を過ごしてきたシーラにとっては無理もない。
「え、ええ、シーラお嬢様。この時代のロンドンは様々な産業も栄えて、一番華やかな頃ですもの」
人ごみに押されて、いつしかシーラはイルサを見失っていた。
「イルサ…?ちょっと、どこへ行ってしまったの?」
急に姿の見えなくなったイルサを探して、シーラは不安げにウロウロと動き回る。いつしか車道の中へ
足を踏み入れてしまったシーラを、一台の馬車が危うく轢きそうになった。
それに気付いた人々の悲鳴の中で、一人の若い男の声が響いた。
「危ないっ!!!」
寸でのところでその男に助けられ、シーラは歩道に連れ戻された。
「あ……私…」男の腕に掴まりながら、シーラはガクガク震えている。
ショックで何があったのか分からないほどだ。
「…お嬢さん、大丈夫ですか?」
277人間界での出会い5:03/11/24 17:28 ID:qUH0jQUV
「あ…すみません。…あなたが助けてくれたのね」と言って顔を上げたシーラの胸は突然激しく高鳴った。
心配そうに自分を見つめる美しい漆黒の瞳がまず目に飛びこんで来た。シルクハットの縁から、さらさらした黒い髪が覗く。
凛々しい眉、すっと通った細くて高い鼻、形のいい唇…。その幾分青白いような滑らかな肌は、不思議な輝きを放っていた。
すらっとした長身を黒い上等なフロックコートに包み、その首元からは真珠のピンを留めた黒いシルクのタイが見えた。
「急に通りに飛び込んで行くから、死ぬつもりなのかと思いましたよ」
シーラは頬がぽーっと紅潮するのを感じながら、やっとのことで口を開いた。
「い、いいえ、…そんなつもりでは…」
とそこへ、血相を変えたイルサが飛び込んで来た。
「シーラお嬢さま!大丈夫ですかっ!?」
「イルサ…ええ、大丈夫よ。この方が助けてくれたの」
イルサはシーラを抱きかかえている男を見て、そのハンサムぶりに思わず顔を赤くした。
「まあ…それはどうもありがとうございました」
「いいえ、お怪我がなくて良かった。―ところでこれからどちらへ?」
「えっ、あの…」戸惑っているシーラを見て、イルサが代わりに答える。
「サヴォイホテルに向かうところでございます」
「…そうですか。今、馬車を呼びますから、それに乗っていくといい」
男はすばやく馬車を止めると、シーラとイルサを乗せ、御者にお金を渡して行き先を告げた。
「出来れば私もお送りしたいのですが、先を急いでいるものですから…」
シーラは馬車の窓から顔を出して、礼を言う。
「あの…色々とありがとうございました」
男はにっこり笑って言った。「もう無茶なまねはしないで下さいよ」
シーラは照れた笑みを返して、頷いた。
278人間界での出会い6:03/11/24 17:29 ID:qUH0jQUV
「あの…あなたのお名前は…」と言いかけたところで馬車が走り出してしまった。
微笑してその場に立って見送っている男を振り返りながら、シーラはまだ胸の高鳴りが収まらない。イルサに向かって囁いた。
「イルサ…私…どうしましょう…もう出会ってしまったわ」
「お嬢様ったら…」
「あんなに素敵な人、あなた見たことある?」
「いいえ…魔界にはいませんわね。少なくとも狼人間村には―」
「―名前を聞こうと思ったのに…!」また後ろを振り返る。
「まあまあ。きっとまた会えますわよ」
「ホントにそう思う?」
「ええ。服装からして、きっと上流階級のお方ですね。ですから、舞踏会に現れるんじゃないかと思うんです」
「でも、舞踏会と言っても…私は…」
「大丈夫。シーラお嬢様にも舞踏会の招待状が送られるように、このイルサが細工をしますわ」
「本当!?やっぱりあなたを連れてきて良かったわ、イルサ!」
シーラは嬉しそうにイルサに抱きついた。

格式高い高級ホテルのスイートに「ヨークシャー地方のクレリー伯爵家の令嬢」として収まった後、
イルサの巧みな計らいで、シーラの美貌と由緒溢れる家柄の噂は瞬く間にロンドン社交界へ喧伝され、
舞踏会への招待状がひっきりなしに次々と届けられた。今夜は早速、名家マスグレイブ家のパーティーに招待されている。
シーラはお気に入りの深紅のドレスを着て、剥き出しになっている真っ白なデコルテを光り輝く何連ものダイヤのネックレスで飾った。
絹糸のようにしっとりした、ブロンドに波打つ髪をイルサにブラシで梳いてもらっている間、
今日会ったハンサムで親切な男性のことを話し続けていた。
「…それに、とっても素敵な声だったと思わない?イルサ」
「ええ、本当に。落ち着いた、優しい声をしてらっしゃいましたね」
「今夜の舞踏会に、本当にあの方も現れてくれるかしら?」
「お祈りすれば、願いは通じますわ、お嬢様」
イルサはそう励ますと、シーラの髪を高く結い上げた。
279人間界での出会い7:03/11/24 17:35 ID:qUH0jQUV
マスグレイブ家の舞踏会―
あでやかなシーラの登場に、一同がざわめいた。
「お招きありがとうございます、マスグレイブ様。私はクレリー家のシーラと申します」
「まあ、あなたがシーラ・クレリー伯爵令嬢様でいっらしゃいますのね。ため息が出るくらい本当にお綺麗な方…。
ようこそ御出で下さいました」
挨拶を済ませたシーラを紳士が次々と取り囲み、自己紹介をしている。
「私は、ジョーンズ家のトレヴァーと言います。シーラ様、是非次のダンスを私と踊って下さい」
「いいえ、この私と…」
シーラは礼を欠かない程度に適当に相槌を打ちながら、必死になって広間を見渡して今日出会った男性を探したが、
見当たらないのでため息をついた。
「…では、トレヴァー様とおっしゃいました?あなたと踊りますわ」
狂喜している平凡な容姿の男と仕方なくワルツを踊り始めたシーラの視界にふと、探していた男の姿が入ってきた。
遠目ではあったけど…あの横顔は確かにあの人だった…!!
「あっ…すみません、失礼しますわ!」
シーラは突然ダンスを止めて相手の男の腕を振りきると、はやる胸の鼓動を感じながらひとり駆け出していく。
黒い燕尾服を着た男はこの場に山ほどいるが、目指すあの人は間違いなく今テラスの方へ行ったはず!
挨拶をしようとする人達を通り越し、シーラはやっとのことでテラスに辿り着く。
すると、植えられた木々の合間に、忘れもしないあのステキな顔が見えた!
早速の再会の喜びに胸が震え、声をかけようと近付こうとしたシーラの目の前は、途端にショックで真っ暗になった…
「!!!」
何故ならその人は一人ではなかった―ライラック色のドレスを着た美しいどこかの令嬢を腕の中に抱いて、
軽いキスを何度も交わしていた。クスクスという微かな二人の笑い声が聞こえてくる。
シーラは呆然とそこに立ち尽くし、二人のキスが次第に濃く激しいものになっていくのを、ナイフで胸を刺されるような
思いで見ている他なかった。男の唇がやがて女の首すじを愛撫し始めると、シーラはたまらず小さな悲鳴を上げていた。
「いやっ…」
280人間界での出会い8:03/11/24 17:37 ID:qUH0jQUV
その声に気付いた二人はがばっと身を離して、シーラの方を見る。
藤色のドレスの令嬢は扇で顔を隠しながらその場を駆け出して行った。
「あっ…エヴァ!」
男はエヴァという名前を呼んだが、わざわざ追いかけはしなかった。
去って行った娘の後ろ姿を見送った後、前髪を掻きあげてふーっとため息をつく。
ゆっくりとシーラの方に向き直り、その困ったような視線を移すと、シーラも顔を赤らめて俯いた。
男の目が驚きで見開く。
「―君は…!今日会った危なっかしいお嬢さんじゃないか」
「………」
「…まさか、自殺癖の他に盗み見の癖でもあるのかい」
その言葉にカッとなったシーラは声を荒げて怒鳴った。
「バカなこと言わないで!ただ、あなたをお見かけしたから、もう一度お礼を言いたいと
思ってただけなのに!…あなたこそ、こんな所でよく大っぴらにあんなことが出来たものね!」
男はシーラをジロリと睨んだ。
「何とでも言ってくれ。―せっかくいいところだったのに、邪魔をしてくれて……」
「まあっ!何て破廉恥な方なの!こんな人に助けられたなんて、私まで情けないわ!」
くるりと背を向けてテラスを去ろうとするシーラの腕を男が掴んだ。
「ちょっと待って。…君、確かシーラと言ったね」
「ちょっと!その手を離してちょうだい!」
「…全く、とんだじゃじゃ馬だったんだな。あの時はいかにも頼りなげな、可憐な娘に見えたのに―」
「あなたこそ!とっても優しい紳士だと思ってたのに!」
シーラのその言葉に男は心の底からおかしそうに笑った。
「ははは。シーラ・クレリー嬢か…。今日、皆が噂している伯爵令嬢とは君のこと
だったんだね。驚いたよ」
怒りが収まらないシーラを構わずに男は言葉を続けた。
「―私の名前はモーリ・エトゥールだ。…私の名前を知りたかったんだろう?」
「誰が…!もうあなたとなんて、顔も合わせたくないわっ!」
「本当に?」
モーリという名の男はシーラをそのまま強く抱き寄せ、顔を近付ける―。
281人間界での出会い9:03/11/24 17:40 ID:qUH0jQUV
「ちょっと、何をするの!?」
「…君のせいでやり損なったこと」
「…やめて…人を呼ぶわよ!」
「―どうぞ」
モーリがシーラの顎を持ち上げて、その唇を奪おうとした瞬間、シーラの手がモーリの頬を音を立ててぶった。
「痛っ!」
「さっきの彼女の代わりなんて真っ平よ!」
憤然として、フロアの方へどんどん歩き出して行くシーラ。
モーリはしばらくその場に唖然として立っていたが、やがて笑いながらゆっくりとダンスフロアの方へ向かった。
艶やかな深紅のドレスがひときわ目立つシーラに、名家の令息たちが群がってくる。
最初は戸惑っていたシーラだったが、さっきのテラスの入り口にモーリの姿を認めるや、媚を売るようにその美しい笑顔を振りまく。
モーリは遠目から、そんな彼女の様子を面白そうに眺めていた。やがてワルツが始まり、シーラはさっきとは別の男性を相手に
軽やかなステップを踏み、一方のモーリもさっきとは別の令嬢と優雅に踊り始めた。
くるくると円を描きながら、お互いの距離が近付くと、モーリは相手の女性の肩越しにシーラをじっと見つめた後で
ウィンクをして見せた。途端にシーラはツンとそっぽを向いた。

282人間界での出会い10:03/11/24 17:43 ID:qUH0jQUV
夜が更けて、舞踏会が終った。シーラがイルサの姿を探していると、イルサは若い紳士に言い寄られて、困っているようだった。
「イルサ!帰るわよ」
シーラはその紳士からイルサを強引に引き離し、彼女と共に馬車に乗って、滞在しているホテルへと帰っていく。
「もう、どうしたというの、イルサ。あんな男に引っかかって。あなたらしくもないわよ」
決まり悪そうにイルサが言う。
「……ご自分の手袋をなくしたとおっしゃるので…」
「そう言ってあなたを口説こうとしたのよ。乗ってはダメよ」
何故だか必要以上にプンプン怒っているシーラをなだめようと、イルサが明るい声で話しかけた。
「それよりシーラお嬢様、今日助けて下さったあのステキなお方、やはり今夜の舞踏会にいらっしゃいましたわね!
お気づきになりました?」
「イルサ!私、前言は撤回するわ!あの人、本当はとんでもない失礼な男だったわ!」
「お嬢様…?一体、何があったんですか」
「とにかく、ホントに腹立たしい男だったの。とんだプレイボーイだったし…それに私を…」
抱きしめてキスしようとしてきた、とまでは言えず、シーラはますます顔を赤らめた。
「あらまあ…じゃあお話されたんですね?何てお名前だったんですか」
「…モーリ、とか言ってたわ。―イルサ、もうあの人の話はしないでちょうだい。どうにも落ち着かないのよ」
馬車から降りたってホテルのロビーに入ると、驚いたことにそのモーリが受付で部屋の鍵を受取っているところだった。
「…あっ、あなた!」
「ああ、君か。よく会うね。さっきはどうもありがとう」
そう言ってテラスでシーラにぶたれた頬を押さえて見せたので、シーラは気まずさに赤くなった。
「―ところで今夜の舞踏会デビューはお楽しみ頂けたかな?」
「そんなことより、ここで何をしてらっしゃるの?」
「見て分からないか?私もこのホテルに滞在しているのさ」
「私がここに泊まる予定なの知ってたからでしょ?」
「はは。何を言うんだ。君が来るもっと前から私はここに泊まっているんだから。―じゃ、失礼」
283人間界での出会い11:03/11/24 17:44 ID:qUH0jQUV
シーラは信じられないといった表情でモーリの後ろ姿を見送ると、鍵を受取り、エレベーターに乗り込んだ。
するとモーリにまた会ってしまった。
「…君こそ、私の後をつけてるんじゃないだろうね、シーラ」
クッと笑いを堪えるようにモーリが言った。
「何を言ってるの。それはこっちのセリフだわ」
後ろでハラハラしながら二人の会話を聞いているイルサを振り返ってモーリは尋ねた。
「本当に、伯爵家のお嬢様なのかい?」
「え、ええ…相違ございませんわ」多少、ギクッとしながらもイルサは真顔で答える。
「何というか…もっとこう、匂うがごとき気品が欲しいところだね」
「ふん。あなたみたいにふしだらな人にそんな注文を付けられる筋合いはなくってよ、プレイボーイさん」
「モーリ」
「え?」
「モーリ、と呼んでくれ給え」
「…分かりました。モーリ、お休みなさい」
エレベーターが開きシーラとイルサが出ると、モーリも出た。3人が同じ方向を歩いている。
シーラがしびれを切らしてモーリに言った。
「ちょっと!本当にどこまで付いて来るつもりなのよ?冗談はいいかげんに…」
「あいにくだが、私の部屋はここなのでね。君の部屋は?」
「!」モーリの指し示した部屋はシーラのちょうど向かいだった。
「……わ、私の部屋はここよ…」
「ほう。これはまた偶然だ。何だか運命を感じるね」
顔を赤らめているシーラに微笑むモーリは、その黒い瞳をいたずらっぽく輝かして囁いた。
「その素敵なドレスを脱ぐのを手伝ってあげようか?脱がせるのは得意なんだ」
「ちょっ…!何てこと言うのっ!!」
「ははは。おやすみ、シーラ」と言うとモーリは笑いながら自分の部屋に入って行った。
284人間界での出会い12:03/11/24 17:45 ID:qUH0jQUV
ポカンとその後ろ姿を見ているシーラ。
「シーラお嬢様、さあ中に入りましょう」
イルサに言われてはっと我に帰った。
部屋に入ってドレスを脱ぐのをイルサに手伝ってもらう。シーラは腹立ちが収まらない。
「もう…完全にからかわれたわ!」
イルサを見ると、笑いを必死にこらえている。
「イルサ?何をくすくす笑っているの」
「…だって…お嬢様にあんな口を聞く殿方、初めて見ましたわ」
「ね?私が言った通りでしょ、紳士にあるまじき振舞いだって…」
「―でも魅力的ですわ」
「……そう思う…?」
「ええ。お嬢様もそう思ってらっしゃるでしょ?」
シーラはそれには答えずに、倒れ込むようにふかふかのベッドに突っ伏した。
目を瞑らなくても、あの人…モーリの顔が浮かんでくる。私を助けてくれた最初の出会い、
その後に舞踏会で見かけて…そして…。
他の女の人にあんな風にキスをして…!!そのことがどうにも許せず、頭に血が昇った。
もちろん私が怒る必要なんてないのだけれど…
でも―あの光景が脳裏に浮かんで消えない。…もし…あれが私だったら…?と
想像している自分に気付いて驚いた。
彼の振舞いは私を怒らせてばっかりなのに、私ったらどうしてこんなことを思ってしまったのかしら?
…それでも…モーリが私を抱きしめた時、言いようのないときめきに胸が震えた…
あのまま、彼のキスを受けていたら…?何故、私はそうしなかったの…?
頭の中をいくつもの疑問が駆け巡る。そうしている内に、いつしかシーラは眠りに落ちていた。

285モーリ&シーラ作者:03/11/24 17:49 ID:qUH0jQUV
お話はまだまだ続くのですが、切りがないので
今日はここらへんで終了させときます。
リレーの流れを邪魔してしまってごめんなさい。
また来ます・・・
286名無しさん@ピンキー:03/11/25 13:43 ID:/QaCAySk
いや、もういいから。
287名無しさん@ピンキー:03/11/25 14:16 ID:vn9m6Kq9
きゃー!!なにこれー!?
しばらくのぞいていない間に、素敵なイベントが始まってる〜!!
しかも、オールスター夢の競演ではないでつか!!!

わたしの脳内では、たくさんの神様がほくそ笑みながらトスを上げ続けているイメージが。
最後にビシーッとスパイクを決めるのは一体どなたになるのか…。
もう昼真っから、ハァハァしまくりでつ〜。
288名無しさん@ピンキー:03/11/25 20:06 ID:EAhoPoIj
>わたしの脳内では、たくさんの神様がほくそ笑みながらトスを上げ続けているイメージが。
ワロたよ。
早くスパイクを決めてほしいと思いつつ、
もっと華麗なチームプレイもみていたいとも思う…
289名無しさん@ピンキー:03/11/25 21:06 ID:qBJnDDYY
っつーか空気読めよって思ったのは私だけ?
290名無しさん@ピンキー:03/11/25 23:22 ID:gLYzM6gb
チョト疑問に思ったことがある。
マンガに登場しないキャラを出すのってOKなの?
個人サイトでSS書いている分には構わないし、
ここでも今まではスルーしてたけど、
こう頻繁に出されると萎えるのは自分だけですか?
291名無しさん@ピンキー:03/11/25 23:33 ID:hwFCzkf6
>>290
マジレスする。
あくまでも漏れ個人の意見だが
オリキャラ、出張る程度による。
メインキャラにスパイスを与える程度なら桶
オリキャラがいないと話が動かないようなことになるとダメ。
自分は書き手もやってるけど、オリキャラだした事ない。
パラレルは時々書く事もあるけど、そのときはキャラ立てだけはしっかりする。
設定も、キャラもつくっちゃうとパロディではないと思うから。
(キャラ立ての認識が読み手とずれていたら?というのは今は許して下さい)
292名無さん@ピンキー:03/11/26 00:02 ID:CmmXvdED
更にマジレス。
漏れもオリキャラはなぁ…。
>291さんの意見に賛同する。
自分も書き手で、よくオリキャラ出したりするけど、
あんまり目立たせることはしたくない。
勿論、オリキャラの方がメインキャラ食っちゃう読ませ方をする
素晴らしい作家さんもいるが、それはそれ。
自分が楽しいのか、他人が読んで喜んでもらえるかだと思う。

数少ないモー×シー作家さんだから作者さんのことは応援したいが、
空気を読むことも知って欲しいと思う。
折角の作品なのに、違う空気の時に発表しても、
ヘンに浮いちゃったりしたら、読み手側も悲しくなるかも知れないよ。
書いたから発表する!じゃなくて、
空気を読みながら発表するのも、勉強だと思うよ。
その間に熟成して、もっといいできになるかも知れないし…。


勘に触った人がいたらスマソ。
とりあえず、偉そうに言える立場ではないから
吊ってくる。
∧‖∧

293名無さん@ピンキー:03/11/26 00:32 ID:CmmXvdED
>271の続き


 蘭世の声が耳を打つたび、自分の理性が一つ一つ霧散していく。
 己の想いだけが走るようで、僅かに残った理性で俊は恐怖した。
 自分を求めてくれる蘭世。
 彼女を求めたい自分。
 しかし、本当にそれでいいのか?
 彼女に愛情に見合うだけの自分なのか?
 このまま彼女を抱いて、傷つけて、それでいいのか?
 答えが出るはずもない。
 だが、自分は彼女に与えたいと思った。
 彼女も、自分に与えてくれると知っている。
 それだけで、十分なのかも知れない。
 迷わない、彼女の想いを、自分の想いを。
 俊は、蘭世の服の隙間から手を差し伸べた。
294名無さん@ピンキー:03/11/26 00:36 ID:CmmXvdED
指で愛撫される胸の突起が、熱くて燃えそうになる。
 「あ、いや……」
 無意識に再び吐いた言葉に、俊の手が止まった。
 「…本当にイヤ、か…?」
 蘭世はハッとし、俊の瞳を覗くと、照れたように笑った。
 「…ごめんなさい……。イヤじゃないの…。真壁くんに見せるのが恥ずかしくて…」
 スタイルがいい訳でもなければ、胸が大きい訳でもない。
 俊の趣味がどのようなものなのか解らないが、男の人は胸が大きい方が好きみたい、と
言ってたのはクラスメートの誰だったか。
 もしかしたら、彼は自分の胸を見て失望してしまうかも知れない。
 お母さんはあんなに大きいのに。
 「…構わねぇって、ンなの。お前の全てが見たい…」
 俊の黒い瞳が、蘭世の黒い瞳に注がれる。
 頬を赤くしながら、蘭世は呟いた。
 「…失望…しないでね…?」
 蘭世は自ら、自分の下着とシャツをゆっくりと脱ぎ捨てた。
 「真壁くん……」
 消え入りそうな声を、俊は黙って聞いていた。


 なんだか、マジレスばかりでは申し訳ないので、
 続き書いてみました。
 一番空気嫁は私だったってことで…。
 スルーでも可でお願いします。∧‖∧
295名無しさん@ピンキー:03/11/26 01:42 ID:PSlK/NXx
マターリキボン
296名無しさん@ピンキー:03/11/26 11:50 ID:GnWpuFp+
んにゃ、一番の空気嫁は私だ・・・
ごめんね。
297名無しさん@ピンキー:03/11/26 11:51 ID:GnWpuFp+
ちなみに289です↑
298名無しさん@ピンキー:03/11/26 23:30 ID:NkF12ktp
>>289=297

   ∧,,∧ 
  ミ,,゚Д゚彡 お茶&羊羹ドゾー!
  ミ ⊃ミ⊃
〜ミ    ミ   旦~~  ■ 
  '''''''''''       ̄ ̄  
299題名なし作者:03/11/27 19:53 ID:XjmzghfK
皆さん、言い出しっぺのつたない話をここまで大きく壮大に描いてくださって
ありがとうございます(感激)

ちょっとだけつづけます。

上半身だけ素肌をさらし、自分で脱いだとはいえ、恥ずかしそうに、手で胸を隠して
いる様は、なんともエロチックで・・・。
俊は、自分の暴走を止めることができなくなった。

気づいたときには、胸を覆っていた手首をつかみ、その柔らかい胸の谷間に
顔をうずめていた。
いままで時折かいでいた蘭世の香りが、俊の顔を包み込むようだ。
蘭世を抱いているのに、抱きしめられている気がして、
思わず蘭世の顔をみる。
そこには、いままで見たことのない、女の顔をした蘭世がいた。
薄く開いた唇は、舌を絡めてほしいと言っているようだ。
濡れた瞳は「もっと」と訴えかけているように俊には思えた。

300名無しさん@ピンキー:03/11/28 20:52 ID:+BTmZZko
カッコー
301名無しさん@ピンキー:03/11/30 12:58 ID:ktYYPq4x
体勢を変え、蘭世の顔がよく見える位置へと顔を上げる。
そして、じっと見つめた。
「・・・だめ・・・・・みないで・・・」
恥ずかしげなその言葉。
闇にもわかるほど紅潮した頬。
緩やかにその瞼に唇を落とした。
「あ・・・」
やさしく、やさしく、包み込むような、いとおしむような口付け。
紅潮した頬へ。
ついばむように鼻のてっぺんへ。
そして、深く、熱く唇へ。
開いた唇の隙間から舌を差込み、絡め、唾液を交換する。

蘭世のそれはとても甘く、俊の脳天を熔かしていくのがわかる。

俊は、口付けたまま、蘭世の可憐な乳房に手を添えた。
302名無しさん@ピンキー:03/11/30 15:12 ID:jtRDyQ/t
ゴキュ・・・・

いい感じでリレー続いてますね・・
息を潜めて見守ってますので、皆さん頑張ってください!
303名無しさん@ピンキー:03/11/30 15:30 ID:13cERLps
では3レス、続きいきます!


服を脱いだ蘭世の全身に、俊が覆いかぶさるとその服の感触がくすぐったい。
俊が手を添えた蘭世の乳房に、再び彼の唇が降りてくる。
そしてその舌と、添えたままの暖かい手に愛撫された。
しかし今度は、先ほどよりも優しく、穏やかだ。
彼の大きな手がゆっくりと、少し冷えた蘭世の胸を揉み、彼女の強張りを溶かす。
その優しさを感じ、蘭世は目を閉じた。
少しあごが上がり、体の力が抜ける頃になると、俊はようやく顔を上げた。
そして思い出したようにトレーナーを脱いだ。
上半身の、素肌と素肌が触れ合う。
外気はまだ少し冷たかったが、もう互いに体温は上がっており、寒さは感じなかった。
蘭世の髪を撫で、頬に口付けると、長い睫毛がゆっくりと上がり、彼女の潤んだ瞳が現れる。
「こわく、ないか?」
恥ずかしそうに微笑んで、うなずく。
304名無しさん@ピンキー:03/11/30 15:32 ID:13cERLps
「こんなこと、されても?」
長い指を、下肢の奥に延ばした。誰も触れたことがない、甘い蕾。
ひくり、と蘭世の体が跳ねた。
それでも俊は指を暖かなそこに触れさせたまま、じっと待った。
「こわく、ないよ」
恥ずかしさなのか、別の感覚なのか、それとも本当は怖いのか。
蘭世は目を開けているのが辛そうだった。
「嘘つかなくていいんだぜ?正直に、言って欲しい」
そう言いながら、ゆっくり、ゆっくりと指を前後させて、湿った割れ目をなぞる。
「あぁぁ…っ」
ついに蘭世はまた瞳を閉じてしまった。そして顔を背け、身をよじる。
さらに俊は指を早く動かす。くちゅくちゅと音がし始めた。
「こわくないもんっ、こわくないもん…っ。こ…っ、わくなん…っか…、あぁ…っ」
激しくなる蘭世の呼吸につられて、俊の指もエスカレートする。
まだ指は彼女の体の入り口をくぐってはいなかった。
もっとゆっくりと慣らしてあげるつもりだった
しかしつい指先を、その第一関節あたりまで潜り込ませてしまった。
「や…!!」
拒絶の声が聞こえたが、止まらない。そのまま指をずぶずぶと埋め込んだ。
「あああーっ!!」
305名無しさん@ピンキー:03/11/30 15:32 ID:13cERLps
彼女の高い声に、俊は動きを止めた。
ねっとりとした暖かな感触に、彼の指は包まれていた。
青い薄闇の中で、蘭世の白い胸が上下している。
指を中に埋め込んだまま、俊は反対の手で蘭世の手をとり、己の下半身へ導いた。
すでに猛っているものを触らせる。
蘭世は一瞬びくりと手を引いたものの、すぐにおずおずとそこを確かめるようになぞった。
細い指がそっと触れてくる振動が、電流のように俊の背を駆け上がる。
失いそうになる理性を懸命に抑えながら、中に入れていた指を抜き差しする。
今蘭世が触れているものの動きを、教えるように。
「わか…るか…?」
硬く猛ったそこが、ここでこうするのだ、と。
俊の声は、かすれていた。


さてどこまでまきゃべきゅんの理性がもちますやら…?
お初はあくまで優しく、優しくですかね?それともぶっちぎれさせちゃいますか?(w
どなたか続きをおながいします!
306題名なし作者:03/11/30 17:35 ID:vbcY+L6e
いいっす!!!ごっついエロエロで☆

文才のある皆様、続きを期待しております。
307名無しさん@ピンキー:03/12/01 07:42 ID:tdeZwIoo
>305
さてどこまでまきゃべきゅんの理性がもちますやら…?
お初はあくまで優しく、優しくですかね?それともぶっちぎれさせちゃいますか?(w

個人的にはぶちぎれ爆走王子キボンでつが、

>287
わたしの脳内では、たくさんの神様がほくそ笑みながらトスを上げ続けているイメージが。

この状況もおいすぃー…。

さぁどーする?王子!!
もとい、どうなさるの?神様(複数形)!!!
308名無しさん@ピンキー:03/12/01 20:03 ID:J7xnn4vQ
神々の競作!!すてき!
>>303さんは特にツボだ〜。読点の使い方とか、良すぎて
昨日の夜読んだとき「く〜、いい」と思ってついまた読みにきちゃった。
やっぱこのスレ好きだ。

モーリ&シーラ作者さんの、「家族計画」わらえました。
また投下しに来てください
309名無しさん@ピンキー:03/12/02 14:35 ID:7J5zt4LX
俊だって童貞(予想)なのだし、これでは「先に出してしまう」ことになりはせんのだろうか。
310名無しさん@ピンキー:03/12/02 23:52 ID:xU75B+bF
>>309
先に出しちゃう(色んな意味で)まだ未熟な俊(・∀・)ヨミタイ!
311名無しさん@ピンキー:03/12/06 10:15 ID:rcPxrw3N
「・・・・・・・」
蘭世は真っ赤になりながら、小さく頷く。
触れていた指先を俊のそれから離した。

その熱さに。
その高ぶりに。
そして、それはすべて自分を求めてくれているという事実に。

何かわからない、が
蘭世の中に生まれてくる。

あとからあとからあふれてくるその想いはなんと言ったらいいのだろうか・・?
蘭世は俊の指先に翻弄されながら思考を紡ぐ。

「ぁ・・・ぁぁ・・・んん・・・・」
蘭世の唇から小さく喘ぎがまた洩れてくる。
俊は蘭世の狭い胎内を感じ、少しでも痛みを感じさせないようにともう1本指を差し入れ広げようとする。
「っ・・・」
眉根を寄せ、痛みを堪えるような仕草をするー蘭世―。
312名無しさん@ピンキー:03/12/06 10:22 ID:rcPxrw3N
「・・・辛いなら・・・やめるか・・・・」
俊は思わずそう言ってしまって,後悔をした。
もはや自分は止めてやれないのに。
何度でも何度でも
蘭世が自分を求めてくれることを確認したいのかも知れない。

「・・・・・・愛しています・・・」
小さな声で。
吐息のような声で。
甘い響きで。
蘭世のピンクに染まった唇からでた呟き。

そう・・・
私は真壁くんを愛しています・・・
一つになり、真壁くんを感じたい・・・
そして・・
真壁くんに私を感じてほしい・・・・
私のすべては真壁くんだけのものです・・・
私は真壁くんのためだけに・・・・
ここにいます・・・・・

そんな想いが蘭世の心から俊の心へ伝わってくる。
暖かい、熱い、誰にも与えてもらえない。
愛・・・・
そんな簡単な言葉では伝えきれない想い。
互いが互いを求め一つになりたいと願う。
俊は指を抜き取ると蘭世の足を左右に開いた。
「ぁ・・・・」
恥ずかしさに、全身を赤く染める。
そのすべてを心のフィルムに焼き付けたくて俊はじっと見つめた。
蘭世がその眼を開くまで・・・・。
313名無しさん@ピンキー:03/12/06 10:23 ID:rcPxrw3N
新婚作者でした。
314名無しさん@ピンキー:03/12/10 10:24 ID:CV36cvbu
うへぇ、新婚たん!
久しぶりに覗いたら新婚たんが参加してる!
愛を感じる…(・∀・)イイ!!心のフィルム、(・∀・)ツボ!!
315名無しさん@ピンキー:03/12/13 22:20 ID:h10EVVyv
かっこー
316名無しさん@ピンキー:03/12/14 13:37 ID:r4msNQ8F
ほっす
317名無しさん@ピンキー:03/12/16 23:25 ID:YezJzpQr
以前、双葉と筒井のエロネタを見たけど過去ログ探しても見つからない。
どこにあるか分かる人は教えて下さい。
新作でもOKです。
318名無しさん@ピンキー:03/12/17 00:06 ID:ZVZTUAQ2
>317
ageちゃう人には教えてあげないよん
319名無しさん@ピンキー:03/12/17 13:43 ID:1/wtwi8t
>>317
初心者は(・∀・)カエレ!
320名無しさん@ピンキー:03/12/18 20:56 ID:FbnlX/5P
まぁまぁ、落ち着いて。
321名無しさん@ピンキー:03/12/20 03:14 ID:FFgUEluJ
マターリ
322名無しさん@ピンキー:03/12/22 22:34 ID:aogmGHLD
保守っ!!

か、神はまだかしら…ハァハァ
323名無しさん@ピンキー:03/12/23 23:43 ID:o4dKLAQ7
SS投下したかった新入りなんですが、
素敵な話を遮るのもなんなので、また来ます。
324名無しさん@ピンキー:03/12/23 23:45 ID:xyHH4r22
323さん。
新作望みます。
325名無しさん@ピンキー :03/12/24 07:43 ID:9c8rb1Bm
>>323
同じく望みます。

リレーも気になるのでつが止まってしまってるし
新作もそろそろ読みたいでつ。
326名無しさん@ピンキー:03/12/25 20:49 ID:bP3qlzIu
モーリ&シーラさんの続きも読みたいな。
気になる。
327名無しさん@ピンキー:03/12/27 20:11 ID:D91O5SgS
323さん まだですか〜〜〜〜?
328名無しさん@ピンキー:03/12/27 22:22 ID:yqj3O1xH
>>323です。
神様方がご多忙そうですので、
ヘボンで申し訳ないんですがコソーリうpさせていただきます。
カップリングは、鈴×なるです。
329名無しさん@ピンキー:03/12/27 22:24 ID:yqj3O1xH
メリクリ&ハピバー


12月23日午後11時50分
なるみは鈴世の家の前にいた。

(あと10分、0時までに鈴世君が顔を出してくれたら、………って勝手に決めて、
おまけに約束もしないまま家を抜け出してきたけど…、
鈴世君の部屋電気消えちゃってるし、もう寝ちゃってるよね。
でもあと10分だけ待ってみよう…)

なるみは門越しに江藤家の2階にある鈴世の部屋を見上げた。
鈴世の部屋の灯りがパッと灯り人影が動く。
風呂上りの鈴世がパジャマ姿で自室へと戻ってきたところだった。

鈴世は何気なく窓際へ寄り、カーテンを少し開けた。
上を向くと冬の澄んだ空気で光を増している星々、そして夜空に存在感を示す月。
下を見れば庭のたくさんの木々、そしてその隙間から見える家の門。
それはいつもと何ら変わりない風景のはずだった。
しかし鈴世は門の外にいる人に釘付けになった。
「…なるみ?」
こんな時間になるみが家の前にいるわけがないと、
鈴世は一歩窓に歩み寄って見る。

(見間違えなんかじゃない、なるみじゃないか!)

330名無しさん@ピンキー:03/12/27 22:25 ID:yqj3O1xH
少しだけ開けたカーテンもそのままに、
ハンガーにかけてあったコートを手に取り慌てて部屋を出る鈴世。
門の外に出てなるみに駆け寄る。

「なるみ!」
「…鈴世君」
「こんな時間にどうしたの?何かあったの?」
「ううん。違っ、うの。…あれ?口が上手く動かない」
すっとなるみの手を取る鈴世。
「こんなに冷たい手して。風邪引いちゃうよ」
「あはっ、大丈夫。」
なるみは自分の頬を擦りながら続ける。
「ごめんね、こんな時間に。でもね、一言だけ言いたかったの」
「何を?」
ちらっと自分の腕時計を覗くなるみ。
「う…ん、まだ言えない」
「…?」
不思議そうな顔の鈴世。
「とにかく中に入って」
「えっ…、う、うん」

鈴世に促されて家に入ると同時にリビングから椎羅の声。
玄関に来る様子はない。
「鈴世ー?外に出てたのー?」
「あ、うん。窓から本落としちゃって拾ってきたとこー」
鈴世は唇に人差し指を当てるとなるみに向かって、
まるで「内緒」と言わんばかりにウィンクする。
「あら、気をつけなさいよー」
「うん。もう寝るからー、おやすみー」
「おやすみなさい」
そう言うとなるみを促し足音を立てないように2階へと階段を上る。
331名無しさん@ピンキー:03/12/27 22:27 ID:yqj3O1xH
階段を上りきった正面が鈴世の部屋。
鈴世は自室のドアを開け、なるみを部屋へ入れる。
「テキトーに座って。今お茶でも…って、寝るって言った手前持って来られないか」
と困ったように笑う。
二人は部屋に入るとコートを脱ぎ、なるみはベッドの上にちょこんと、
鈴世は椅子を跨ぎ背もたれに腕を置き凭れるようにラフに座る。

「で…?どうしたの?」
なるみは腕時計を見ながら
「ちょっと待って、あと5秒、4、3、2、1!」
すうっと深呼吸をして
「鈴世君、お誕生日おめでとう。それから、メリークリスマス!」
と微笑む。
「…えっ?」
「たった今12月24日になったでしょ」
「なるみ、君、もしかしてそれを言う為に来たの?」
「うっ…、うん。………でもそれだけじゃないんだけど」
「あはははは…!」
鈴世は思わず笑ってしまい、
口篭もっているなるみの「…でもそれだけじゃないんだけど」は鈴世の耳に届かなかった。
「えっ?えっ?えっ?そんなに可笑しい?」
「いや、ありがとう。それからメリークリスマス!」
「一度0時ぴったりに言ってみたかったの」
と照れたように笑い、
「それからこれ…」
ときれいにラッピングされた小さな箱をバッグから取り出す。
332名無しさん@ピンキー:03/12/27 22:28 ID:yqj3O1xH
「本当は明日、あっ、もう今日だね。会う時に渡そうと思ってたんだけど…」
「開けてもいい?」
「もちろん!」
箱を開けるとシンプルな革のベルトのアナログ腕時計が入っていた。
なるみはこれからの時間も一緒に過ごせるようにという想いを込めて腕時計を選んだ。
「ありがとう」
「気に入ってもらえると嬉しいんだけど…」
「大事にするよ」
「本当?実はね、これお揃いなの、ホラ…」
とカーディガンの袖をめくる。
「どれ?」
と鈴世は椅子から立ち上がり、なるみの座っている隣に腰掛ける。
「本当だ。じゃ時計もだけど、お揃いの時計を贈ってくれた人も大事にしないとね」
そう言うと鈴世はなるみの頬に手を添える。
二人の視線が絡み合い、躊躇いながらもなるみは目を閉じる。
いつものように優しい鈴世からのキス。
なるみも鈴世も自分の唇にお互いのそれの感触を味わう。
二人の唇が離れると鈴世はぎゅっとなるみを抱きしめた。
「り、鈴世君?」
「…少しだけこのまま抱きしめさせて」
「う、うん」

(なるみの事が大事なんだから、キス以上の関係になるのは早い。
ダメだ、我慢我慢…)

そんなことが頭の中でぐるぐると渦巻いていると、
なるみを抱きしめていた腕に無意識に力が入ってしまう。
「りっ、鈴世君。そんなにきつくしたら痛いよ」
「あっ、ごめん」
慌てて力を抜く鈴世。
333名無しさん@ピンキー:03/12/27 22:29 ID:yqj3O1xH
なるみは何かを決意したように、髪を結んでいるリボンを指差し、
「ねえ、鈴世君。このリボンほどいてくれる?」
「いいけど、何?」
と言いながらリボンを解く鈴世。
「今日はクリスマスイブだけじゃなくて、鈴世君の誕生日でしょ。だから今度は誕生日プレゼント」
「えっ?それって…!」
「………あたし」
と頬を赤らめながらなるみはおずおずと鈴世を見上げる。
真っ直ぐな瞳で見つめ返す鈴世。
「鈴世君になら…。ううん、鈴世君にだから…!」
解いたリボンが鈴世の手を離れ宙に舞う。
「0時までに鈴世君が顔を出したら、誕生日プレゼントにあたしをあげるって決めて来たの…」
「…本当に、いいの?」
「うん」
二人の間にそれ以上の言葉は要らなかった。
334名無しさん@ピンキー:03/12/27 22:30 ID:yqj3O1xH
部屋の電気を消しに立ち上がる鈴世。
スイッチを切ると、さっき開けたままのカーテンの隙間から僅かな月明かり零れている。
なるみの手を取ると
「まだ冷えてるね。暖房強くしようか?」
「ううん、平気」
「じゃ、僕が熱くしてあげる」
そう言うと鈴世はなるみをゆっくりとベッドに押し倒し首筋にキスをしながら、
手はなるみのカーディガンとブラウスのボタンを外す。
鈴世の唇はなるみの首筋から徐々に下に降りていく。
フロントホックのブラを外すと、形の良いなるみの胸があらわになる。
「胸の傷はあんまり見ないで…」
と言うなるみに
「傷なんかじゃない。これは僕らの大事な絆だよ」
そう言うと鈴世は傷跡に口づける。
「鈴世君…!」
なるみの乳首を鈴世の唇は慈しむように口に含み強く吸う。
「あんっ………!」
思わず声をあげるなるみ。
「愛してるよ、なるみ」
「あたしも…、鈴世くん……」

なるみのスカートとショーツを脱がすと鈴世は自分も着ていたパジャマを脱ぎ、
なるみを抱きしめたまま、鈴世は自分が仰向けになるように体を反転させた。
二人の肌が重なり合い、お互いの高鳴る鼓動を感じていた。
335名無しさん@ピンキー:03/12/27 22:32 ID:yqj3O1xH
ほのかな月明かりに照らされたなるみの透き通る肌。
指を絡めて繋いだ手に鈴世はそっとキスをする。
「きれいだよ、なるみ」
「…そんなに見ないで、恥ずかしいから」
「そんなこと言わないで、僕にだけ見せて。熱くなっていくなるみを、なるみの全てを…」
と鈴世はなるみの耳元で囁く。
なるみの身体の芯に火がついた瞬間だった。

鈴世は身体を翻しなるみを仰向けにすると、
なるみの胸を舐めながら下の茂みへと手を動かしていった。
鈴世の指は茂みを抜け入り口を擦ると、なるみのそこは既に濡れていた。
「…んんっ………」
鈴世の指が動く度になるみは吐息を漏らす。
「……あんっ…、はぁっ…んっ……」
鈴世は少し意地悪に
「あんまり大きな声出すと、下に聞こえちゃうよ」
そう言いながらも鈴世は指を動かすのをやめようとしない。
「…そんなこと…言ったって……、はぁんっ…」
なるみは声を出さないようにシーツをぎゅっと握って堪えている。
「…大きな声…出さない…ように…してるのにっ、…鈴世君の意地悪っ……!」
「そんなこと言われたら、もっと意地悪したくなっちゃうなぁ」
と鈴世はなるみの中に自分の指を一本沈めた。
「あぁんっ……!」
痛がる様子はないが、なるみはびっくりして思わず声をあげてしまう。
「そんな声出したら聞こえちゃうよ。…だったらこうしようか」
と鈴世は自分の唇でなるみのそれを塞ぐ。
口を塞がれたままでもなるみは我慢できず声を漏らす。
「んんっ…んっ、んんーっ……!」
シーツを掴むなるみの手に、より一層力が入る。
336名無しさん@ピンキー:03/12/27 22:33 ID:yqj3O1xH
「声出すなら、お仕置きしちゃうよ」
と鈴世は指を二本なるみの中に入れる。
瞬間的になるみは身体をよじる。
くちゃくちゃと水音が部屋に響き渡る。
「あんっ…。り、んぜくっ、んっ…。もうだめっ、変になりそう…」
「…僕も我慢できなくなってきた」
「あぁっ…、鈴世君っ……、はぁんっ…!」
「入ってもいいかな?」
「…そんなっ…こと…、聞か…ないで……」
「言ってくれないと分からないよ」
「………お願い、入れ…て……。鈴世…君が…欲しいのっ………」
なるみがそう言い終わる前に、鈴世はサイドテーブルにしまってあるコンドームを装着するとなるみの中に入っていく。
「なる…み、力…抜いて」
「えっ…、そんなこと…言われてもっ…どうしていいか…分かんなっ…い。あんっ…」
なるみは鈴世を自分の中に感じながら、初めての痛みに耐えている。
「…痛っ……」
「痛い?」
「…大丈…夫。鈴世君を…感じたい」
「ゆっくり、いくよ」
鈴世は早くなるみの中に入りたいとはやる気持ちを抑えつつ、なるみが痛くないようにゆっくり挿入していく。
337名無しさん@ピンキー:03/12/27 22:33 ID:yqj3O1xH
「…今、なるみとひとつになったよ」
「…はぁっん…、ホント…?」
「なるみの中ってすごく熱いくて気持ちいい」
「あたしも…気持ち…いい」
「…なるみ、動いても大丈夫?」
「…うん」
鈴世はゆっくり、そして激しく腰をグラインドさせる。
「はぁっ、なるみっ…!」
部屋には鈴世の動きと共に軋むベッドの音だけが響く。
「あんっ、あっ、あっ………!」
鈴世が動く度になるみは鈴世を締め付けていく。

暫く部屋には二重奏を奏でるように、二人の息遣いだけが響く。

(もう限界だっ!)

「なるみっ…!」
「…あぁんっ、鈴世君っ…!」
二人は同時に絶頂に達した。
338名無しさん@ピンキー:03/12/27 22:38 ID:yqj3O1xH
カーテンの隙間から冬の柔らかい朝日が二人を包むように差し込んでくる。
「もう日が昇ったみたいだね」
「うん…、でもあと少しだけ鈴世君に腕の中にいたい」
鈴世はそう言われて、いとおしむようになるみを抱きしめる。

思い出したように、
「そうだ、僕もプレゼントあるんだ」
と鈴世はベッドから手を伸ばし、棚から小さな箱を取り出す。
「はい。メリークリスマス!」
「あたしに?」
「もちろん。開けてみて」

包みを開けると中から出てきたのは香水瓶。
「つけてみてもいい?」
頷く鈴世。
シュッとワンプッシュすると清清しい香りが鼻をくすぐる。
「うわぁ、いい香り」
「今度はこれを纏ったなるみを愛したいな」
「もうっ、鈴世君たらっ…!」

(今夜のデートにはこの香水をつけていこうかな。
でもその前にお父さんとお義母さんに朝帰りばれないようにしなきゃ、ネ)
339名無しさん@ピンキー:03/12/27 22:41 ID:yqj3O1xH
以上です。
お目汚し失礼しました。

本当はネタに合わせてもう少し前にうpしたかったんですが、
時期外れ、おまけにベタでスンマソン。
ベタベタになって逝ってきます。

…逝く前に真の神様方の降臨を祈願しておきます。
◎⌒ヾ(`・ω・´ )
340名無しさん@ピンキー:03/12/27 23:31 ID:FEKl3Pv2
(゚∀゚)イイ!! ⌒I
341名無しさん@ピンキー:03/12/27 23:35 ID:pLPYJ8bl
待ってました!
この時期にはやぱりナルリンでしょ!
342名無しさん@ピンキー:03/12/28 04:09 ID:kfYrGFl2
鈴なるキター!!
個人的に一番好きなカプ。ネ申に感謝。
343名無しさん@ピンキー:03/12/28 16:40 ID:kJ6MvFGm
うへぇ、鈴なるキテタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━!!!
かわいい!やっぱこの2人(・∀・)イイ!!
>323さま、ありがとう!!
344モーリ&シーラ作者:03/12/29 22:26 ID:o7n6XVta
久しぶりの書き込みです。
リレー小説の流れをぶったぎってしまい、皆さんのご不興を買ってしまったのですが…(すみません)
やはり書いてしまった以上は発表したいなーと思い、新作も出ているようなので、
モーリ・シーラの続きを書き込んでもいいのかな…と思ってるのですが。
345名無しさん@ピンキー:03/12/30 00:14 ID:xMoRK8IP
>344
大歓迎です。
346名無しさん@ピンキー:03/12/30 12:20 ID:V8xO5VsD
>312リレーの続き


しばしの沈黙。

蘭世は空気が止まった事を肌で感じ、そっと震える睫毛を上げた。
そして目の前で自分を見つめる黒い瞳にぶつかる。

真っ直ぐ自分を射抜いてくる強い瞳。
戸惑いと憂いが燃え上がる何かと混ざっている。

その眼差しの強さから伝わるものに、蘭世は知らず知らずコクンと頷いた。


・・・真壁くん・・・・


どうしても震えてしまう。
それは、これから踏み込む未知の世界への小さな恐れと
愛する人に自分を捧げられる
捧げる自分を愛してもらえる事への大きな喜び。

腕を伸ばして俊の首へ巻きつけた。


・・・どうか・・・・・・・愛してください・・・・・真壁くんの・・・・好きなように・・・・


口には出さずに、願うように、心の中でつぶやいた。


347名無しさん@ピンキー:03/12/30 12:22 ID:V8xO5VsD
・・・・江藤・・・・・

切なくなるぐらい、か細くて、温かくて、優しく響いてくる言葉。
短い言葉に込めきれない想いが、次々と涙のように降って来る。

・・・だけど・・・・・好きなようになんてできるかよ・・・

内心の苦笑いができる余裕が、自分にあることに気付いた。
暴走しないように、一度大きく深呼吸をする。

そして、蘭世から溢れてくる想いに誘導されるようにして
ゆっくりと、ゆっくりと体を重ね始めた。

大きな手で蘭世の頬を包みながら、恥ずかしがって閉じようとする蘭世の足へ割り込んでいく。
猛り狂った先端が潤んだ入り口を探し当てるまでの間、蘭世に柔らかく唇を乗せた。
細い手が自分の首の後ろで震えている。
全身の神経がこんなにも研ぎ澄まされた事はなかった。
蘭世の冷たくて細い足、震える腕、伏せた睫毛も震えている。
体中が蘭世を感じているようだった。
そして求めている所へ向けて、集中しようとしている。



「・・・・・・!・・・・・・」

閉じていた蘭世の目が、一瞬見開いた。
俊はそれを見て、ほんの少しだけ体を前進させる。

見開いた目は、今度は堅くぎゅっと閉じてしまう。
美しく生え揃った眉毛が、苦痛を訴えるようにカーブを描いた。
348名無しさん@ピンキー:03/12/30 12:25 ID:V8xO5VsD
  ゴムなしでヨカタ?オロオロ(でもこんなシチュであったほうがマヌケか
  年内最後のカキコに寄らせてもらいまつた。神々は帰省中かな。良いお年を〜。
  モー×シー作者タソ、ぶった切って下すって結構でつ。続き待ってまつ♪  350より
349名無しさん@ピンキー:03/12/30 23:48 ID:src4WKKv
うわぁ〜い350タソキタ━━━━ヽ(゚∀゚ )ノ━━━━!!!!
もう年内には ネ申 の降臨はないかとあきらめてたので超うれすぃヨーウ・゚・(ノД`)
350?1/4?3?μ?3?n???s???L?[ :03/12/31 10:14 ID:8y9usCJl
350タソ ネ申 !!!!(・∀・)
351名無しさん@ピンキー:03/12/31 14:06 ID:ffwyTP9j
>350
ネ申
352名無しさん@ピンキー:04/01/02 10:53 ID:Qqp8+9TK
いい!でつ!!
353モーリ&シーラ作者:04/01/03 17:15 ID:8ZF5RnaO
あけましておめでとうございます。
それでは間があいてしまいましたが、お言葉に甘えて、続きを書き込みます。
興味ない方はスルーして下さいね。
354人間界での出会い13:04/01/03 17:20 ID:8ZF5RnaO
翌日のパーティー。
今夜も主役はシーラだった。その美貌の噂を聞きつけて、親しくなろうと人々が群がる。
そんな人々の中心にいて、表面的には明るく陽気に振舞うシーラだったが、実際は心ここにあらずだった。
それと言うのもモーリの姿が見えないからだ。(今夜は…あの人は来ないのかしら?)
仕方なく、ダンスを誘ってくる男たちの求めに応じるが、やはりどうにも楽しめない。
そっと人目を逃れて、誰もいない廊下へと抜ける。
大きなソファに座り込んで、しばらく一人で休んでいると、モーリの声が低く響いた。
「シーラ…?」
驚いて振り向くと彼がドアの間に立っていた。
「モーリ!」
暖かさが心を満たして行くのを感じながらも、慌てて顔を背けた。
「…もう、驚かせないで」
「どうしたんだ、こんな所にいて。…今夜は私がいないと思って寂しかったのかな?」
そっとシーラの隣に座る。
「いいえ、まさか。踊り疲れただけ。存分に楽しくやっています」
「それは結構なことだけど…さっきみたいにあんまり男たちを独占してると、女たちの目が怖いぞ。
表面はお淑やかだが、その実、牙を向いて君に食い付かんばかりになっているからね。ここはそういう所なんだ」
「―あなた今来たんじゃないの?」
「いや、ずっと君を観察してた」
「うそ、どこにもいなかったわ」
「…どこにも?私を探し回ってくれたってこと?」
「―そんな訳ないでしょ。……さっきのご忠告、ありがとう。でもあなたに心配される必要はないわ」
(…私ったら、何でこんな風にしか彼に接することが出来ないのかしら…)と自己嫌悪になりつつ、シーラが立ちあがろうとすると、
「…シーラ…」ふと真面目な顔になってモーリは囁いた。「…後で私と踊ってくれるか」
「え…?」
「いいね?他の男と踊ったりなんかするなよ」
モーリはそう言うと、すっと立ちあがった。そしてくるりと背を向けて、照れを隠すかのようにどんどん歩き出す。


355人間界での出会い14:04/01/03 17:25 ID:8ZF5RnaO
「あ、あなたこそ…!」
シーラはモーリの背中に向かってそう叫んでいた。彼に追いつき、並んで舞踏場の方へまた姿を現す。
昨晩の舞踏会でモーリとキスを交わしていた令嬢は、二人のその様子を見て、嫉妬で顔を曇らせた。
「さあ、あなたは向こうに行ってて」とシーラ。
「分かったよ。君は君の道を行くがいいさ」
モーリはシーラから離れると、「やあ、バークレーじゃないか」と言って近くにいた知り合いらしい紳士に話しかけた。
昨夜、イルサを口説こうとしてた男だ。
(ふん…!類は友を呼ぶ、ってところね!)
シーラがそう思っていると、一人になった隙を待ち構えていたかのように、若い令嬢たちやその母親たちが彼女を取り囲んだ。
シーラのすぐ隣には、忘れもしない、昨夜垣間見たモーリのキスの相手が陣取った。
確かエヴァとかいう名だったと思い出したが、自分に投げかけられた挑戦するような笑みにシーラは少し戸惑いつつ、
それでも負けずに視線を返す。エヴァは鼻で嘲笑うように冷然と言った。
「田舎に引っ込んでいらっしゃる方は、やはりどこか雰囲気が垢抜けないですわね、皆様」
その棘のある言い方にシーラは強い怒りを覚えたが、狼の耳が出そうになったのをやっとのことで我慢して押さえた。
(喧嘩なら負けないけれど…私が挑発に乗ってしまったら、どうなるか分からないわ)
シーラに密かに嫉妬していた女たちは、ようやく攻撃する機会を得たというばかりに、敢えて黙っているシーラに
次々に意地悪な質問を浴びせかけた。その顔にはあくまでもお上品な笑みを浮かべながら―。
「ロンドンへは、ご結婚のお相手を探しにいらっしゃったと言うのは本当ですの?」
「今のところ、どなたに狙いを定めていらっしゃるの?」
「ホテルにお住まいとか。どなたかお屋敷に住まわせて下さるお友達はいらっしゃらないのかしら?伯爵家のご令嬢ともあろう方が…」
このまま追求されると、伯爵令嬢だというのが偽の身分だとばれてしまうかも知れない。シーラが窮地に立たされていると、
「私もホテルに住んでいますが、最高に快適な生活ですよ」
突然、モーリの声が聞こえた。皆が一斉に彼の方を振り返る。
356人間界での出会い15:04/01/03 17:28 ID:8ZF5RnaO
モーリは微笑を浮かべながら、そっとシーラの傍らに近寄って、穏やかな調子で話し始めた。
「誰かにつまらない気を使う必要もありません。それに、人の私生活を面白半分に詮索するような
無粋な真似をされなくて済みますからね」
女たちは言葉を失い、気まずそうに俯いた。
「さあ、シーラ。ダンスが始まる。約束通り、私と踊ってくれるね?」優しく腕を取る。
「モーリ…」
「モーリ様、私との約束…!」エヴァは怒りをあらわにして叫んだ。
「―失礼」
モーリはシーラの背中に手を回して、フロアに進んでワルツを踊り始めた―
(…この人…私を助けてくれた…)
彼の大きな手から伝わるぬくもりを感じながら、その漆黒に輝く優しげな瞳を見つめた。
「…ありがとう、モーリ…」シーラは呟いた。「あなたに助けられたのは、これでもう2度目ね」
「そう…だな。本当に君は危なっかしくて、目を離してはいられない気がする」
「え…?」
「いや、何でもない」モーリは少し顔を赤くした。
(…ええ、きっとあなたの言う通り、私は危なっかしいのでしょうね…)とシーラが反省して俯いていると、モーリは軽く笑った。
「馬車に轢かれそうになるより、今度の方が怖かっただろう?」
「怖くなんかなかったわ」
「ははは。君のことだから、彼女たちと取っ組み合いの喧嘩でも始めてしまうんじゃないかと心配したよ」
「―本当はやりたかったけど、我慢したの」
「…君でも我慢できるんだな」
「できます!」
「今こうしてあなたと踊ってるのも我慢しているの、なんて言わないでくれよ」
シーラは声を上げて笑った。
「いいえ、我慢なんかしてないわ。―ワルツがお上手ね、モーリ」
「シーラ、君もね。どうやら私たちは…ダンスの息だけは合うようだね」
「本当…。不思議としっくりくるわ」
今度はモーリが笑った。「初めて意見が一致した」
357人間界での出会い16:04/01/03 17:31 ID:8ZF5RnaO
「……でも私には、やっぱりあなたの思っていることが分からないわ」
「例えば?」
「…例えば、あなたが昨日、その…一緒にいたお相手、全然魅力がない人のようだけど?」
「…ああ、彼女とは何でもないよ」
「本当?何でもないのに、あんな風に…キスするの?」
「君だって、何でもない男に媚を売るような笑顔を見せて踊るだろ」
「話をそらさないで。それに、ダンスとキスは違うわ」
「そうかな?」
「……多分ね」
「多分?…もしかしてキスしたことないのかい」
「何てことを聞くの!?失礼な人…!」図星だったので、赤くなった。
モーリはそんなシーラを愛しそうに見つめると、微笑みながら耳元に口を寄せて言った。
「試してみる?シーラ」
「えっ」
モーリはシーラをリードし、人々に気付かれないように気をつけながらフロアの中心からどんどん端の方へと移動して行く。
「ちょっと?モーリ、どこへ行くの?」
気付いた時には、二人はフロアを抜けて誰もいないテラスにいた。
モーリはその広い胸の中にシーラをすっぽりと包んで優しく抱きしめた。
「…!」
突然のことに何も言えず、シーラは体に火照りを感じながら、ただ彼のぬくもりの中で黙ってその心地よさを味わった。
そして昨日の夜もこんな感じだったと思い出す。
(…ああ、でも少し違うわ。昨日のモーリはどこか強引で、思わず私は彼に反抗して…でもそのことを後悔したんだわ。
ええ、私は確かに後悔してた。だから今はこのまま…こうして……)
彼の腕から逃れようという気持ちは全然起こらなかった。シーラに分かっているのは、
何故だか知らないけれど、この人にはもう抵抗できないということだけだった。
シーラは彼の大きな背中に両手をそっと回して、うっとりと目を閉じた。
358人間界での出会い17:04/01/03 17:34 ID:8ZF5RnaO
一方のモーリは、昨夜と違って、自分の腕の中に素直に収まっている彼女に多少驚きながらも、優しく囁いた。
「シーラ。ご覧、とてもステキな満月だ」
「…そうなの…?」
一瞬の間の後で、シーラは閉じていた瞼をぱっと開く。モーリの言葉を聞いて、突如として
ロマンチックな気分から覚めてしまった。心臓が凍りついた。
「ええっ、満月!?うそっ!!」驚いてモーリの肩越しに暗い夜空を見上げる。
「どうかした?そんなに慌てて…」
彼の言った通り、夜空には満月が光り輝いている。どうしよう、もう耳が出てるかしらっ!?と
咄嗟に頭に手をやる。良かった、まだ出ていない。自分にしたら珍しくロマンチックなムードに浸っていたので、
体のバイオリズムに多少の変調をきたしていたせいか、満月の影響は遅れているようだった。
そうは言っても、体中の血が次第に泡立ち、騒ぎ出しているのが分かる。このままだと、きっと今にも
狼に変身してしまう!頭を押さえたまま、青い顔でがばっと彼から離れる。
「シーラ?…変だぞ。頭痛でもするのか?」
「モーリ!私、喉が渇いたわ。何か、飲み物を持ってきて!」
「…ああ、分かったよ。すぐ取って来るから待ってて」
モーリがすぐその場を去ったのでひとまず安堵のため息をつくと、既に狼になったイルサが飛び込んで来た。
「お嬢様!今夜が満月なのをうっかり忘れてましたわ。さあっ、早く!!」
辺りに誰もいないのを確認すると、シーラもすばやく狼に姿を変え、イルサと共に屋敷の柵を超えて
一目散に駆け出して行った。数分の後に、モーリが飲み物を持って戻って来た時には、
二人の姿が既になかったのは言うまでもない。
359人間界での出会い18:04/01/03 17:38 ID:8ZF5RnaO
滞在中のホテルのスイートで…
シーラは人間の姿に戻り、落ち着かずにウロウロしている。まさかあんなことになるなんて…
モーリの抱擁に身を任せたことや、狼に変身してしまったこと。
数分の間に色んなことが起こり過ぎて、すっかり混乱していた。
でも彼に変身を見られなくて本当に良かった…ああ、それでも仕方がないとは言え、
彼に何も言わずに帰って来て、悪いことをしてしまったとまたもや後悔していると、ドアをノックする音―
シーラがもしやと思ってドアを開くと、モーリが心配そうな顔をして立っていた。
「モーリ…」
「シーラ、大丈夫かい?」
「―ええ、…ごめんなさい、急に帰ったりして…」
「どうしたんだ?」
「あの…何でもないの。急に気分が悪くなっただけ」
(私を心配して見に来てくれた…)シーラにはそれが素直に嬉しかった。
「そうか…それが私のせいじゃないと思いたいけど―」
「えっ、いいえ、まさかっ…。あなたのせいなんかじゃないわ」
「そう言ってくれて安心したよ。…じゃあ、今夜はゆっくり休むんだよ」
「ええ、そうするわ…。あの、舞踏会はまだ終わってないでしょ?いいの…?」
「私も抜け出して来た。君が気になって…、それに何だか…君のいない場所にいても、つまらなくてね―」
「…あっ、そう!そうよね、喧嘩相手がいないと寂しいものよ。…わ、わざわざありがとう。と言ってもお向かいだから、
わざわざってことも無いわね!とにかく、お、おやすみなさい!」
モーリの言葉にドギマギしたシーラは、あせって自分でも訳の分からないことを早口で囃したてて
ドアを閉めようとしたが、彼は少し困ったような顔をしてその場に立ったままだった。
「…何そんな所に突っ立ってらっしゃるの?」
「―さっき…私たちが何かをやろうとしてたのを覚えてる?シーラ」
「さっき…?」さっきってあのテラスでのこと?あの抱擁の後…。
「いいえ、覚えてないわ!」
彼が言っているのはキスのことだとシーラは思い出したが、覚えていると言えるはずが無い。
胸の鼓動が高まった。
「そう…。それは残念だ。―おやすみ」
(どうもいつもの調子が出ないな…)と思いつつモーリは背を向けた。
360人間界での出会い19:04/01/03 17:45 ID:8ZF5RnaO
シーラがそんな彼の後ろ姿を安堵と失望の入り混じったような気持ちで眺めていると、
彼がくるりと振り返って囁いた。
「―君におやすみのキスをしたいんだけど、いいかな?」
「!ど、どうぞ。でも頬によ」
シーラは顔を赤らめながら、その頬をモーリの方へ差し出した。
モーリは黙って顔を近付け、シーラの形のいい顎に手を当てる。
そしてくるっと顔の向きを変えさせ、シーラの唇にすばやく自分のそれを重ねた。
「!!!」
驚いたシーラは抵抗しようとするが、モーリにしっかりと抱かれて身動きが取れない。
熱く長いキスの後で、やっとモーリが唇を離すとシーラは沸騰しそうなほど真っ赤な顔をしていた。
いきなりのキス!罵声を浴びせたいのに、どうにも言葉が出てこない。立っているのがやっとだ。
目的を達成したモーリがにっこり笑って「おやすみ、シーラ」と言うと、シーラは彼の目の前で
思いっきり力強くドアを閉めた。
辛うじてドアの勢いから身をよけたモーリは、首を傾げて呟いた。
「あれ…?引っ叩かれるのは覚悟してたんだが―」
とその時、ドアがもう一度ぱっと開くと、シーラの片手がモーリの頬を音を立ててぶち、
そして再びバターン!と閉められた。
ジンジン痛む頬を手で押さえ、モーリは「やっぱりな…」と苦笑する。
そして自室に戻りながら、呟いた。
「…あんなに赤くなって…可愛い所もあるじゃないか…それにしてもすごい力だったな…いてて…」
一方、ドアの向こうでは憤然としているシーラがいた。
(強引に人の唇を奪って…!しかも私にとって最初のキスだったのに!油断してたわ!)
そんな風に息巻く彼女だったが、何故か怒りは次第に消えて行った。
後に残ったのは甘い余韻と切ないような胸のときめき…。
ドアに背をもたれさせると、思わず大きなため息がもれた。
今、モーリの熱い唇が触れたばかりの自分の唇に手を当てる。
361人間界での出会い20:04/01/03 17:50 ID:8ZF5RnaO
(あれが…単なるおやすみのキス…?あの人にとってはお遊びのキスなの?―分からないわ…
ああ、だけど……すてきだった、とっても…)
そこへ部屋の奥からイルサが現れた。
「シーラお嬢様?……何をニヤニヤしてらっしゃるんですの?」
「えっ、私ニヤニヤしてる…?」
「―ええ…とても。今の、モーリ様だったんですか?」
本当は今起こったことを打ち明けたかったが、無礼だのふしだらだの、散々モーリのことを
イルサに罵ってしまった手前、何となく気が引けてしまう。
しかもそんな彼に強引に唇を奪われてしまったことが…嬉しくて仕方ないときているのだから…
いいえ、絶対言えないわ。「おやすみ、イルサ…」
シーラはそれだけ言うと、フラフラと寝室に入って行きドアを閉めた。

翌朝、ベッドで寝ているシーラにイルサが朝食を乗せたトレイを持ってやって来た。
「おはようございます、シーラお嬢様。お手紙ですわ」
「手紙?誰からかしら…」
うっすらと香水の漂う、淡いブルーが美しい手紙を受取って見ると、モーリとだけ書いてある。
シーラは昨夜のキスを思い出して途端に赤面し、自分でも良く分からない衝動に駆られて叫んでいた。
「イルサ、捨ててしまって!」
「あら。宜しいんですか、折角のお手紙なのに…。もったいない」
イルサが仕方なく手紙を受け取って部屋を出ようとするのをシーラは慌てて呼び止めた。
「あっ、待って!やっぱりそれちょうだい」
イルサは微笑みながら手紙を渡すと、部屋を下がった。ひとりになったシーラはそっと手紙を開け、
高鳴る鼓動を必死に抑えつつ読み始めた。

可愛いシーラ
昨夜は、レディの君にはしたない真似をしてしまってすまなかった。
君があまりにも可愛かったので、キスせずにはいられなかったんだ。
お詫びの気持ちも込めて、今夜君をディナーに招待したい。
今夜の予定はすべてキャンセルして、七時に私の部屋に来てくれるね?
                                 モーリ

362人間界での出会い21:04/01/03 17:52 ID:8ZF5RnaO
手紙を読んだシーラの顔が思わずほころんだ。
喜びで胸が一杯になり、唇に手を当てながら何度も何度も読み直した。
(キスせずにはいられなかったんだ)という一文を特に…。
しばらくするとイルサが朝食のトレイを下げにやって来た。
「あら?まだ何も召し上がっていないじゃありませんか」
「…え?ああ、そうだったわね」
手紙を慌ててサイドテーブルの上に置き、冷えたトーストを食べ始めるシーラに
ミルクティーを注ぎながら、イルサは言った。
「今夜はルイス家での晩餐会にお呼ばれになってますわ」
「イルサ、今夜の予定はすべてキャンセルよ!」
ミルクティーを飲みながら意気揚揚と宣言する。
「―お嬢様?」
「あのね…実は、お向かいの人に誘われたの」
「お向かいの人って…モーリ様に…?」
「ええ、お詫びしたいことがあるんですって。ふふ、ようやくこれまでの失礼を
詫びる気になったみたい。どこか最高に高級なお店で、思いっきり奢らせちゃおうかしら」
「まあ、お嬢様ったらそんなことおっしゃって…」
シーラの薔薇色に輝く頬がモーリへの恋心を物語っているのを、イルサはもちろん知っている。
「そう言う訳だから、あなたも今夜は私に付き合わなくていいのよ、イルサ。ロンドンの街を楽しんでいらっしゃいな」
「―ええ、それではお言葉に甘えて…。さっきのお手紙…捨ててしまわなくて良かったですわね、シーラお嬢様」
「…そう…だわね。―それよりねえっ、今晩何を着たらいいかしら?」
二人は嬉々として、今夜のドレスについて喋り合った。
363人間界での出会い22:04/01/03 18:11 ID:8ZF5RnaO
そして約束の七時…
いつもより長い時間をかけて仕度を済ませたシーラが、
モーリの部屋の前で呼吸を整えている。
今日の午後いっぱい、家から持って来た数々のドレスをベッドの上に所狭しと広げて、
あれでもない、これでもないとさんざん悩んだ挙句、シーラが決めたのは白いドレスだった。
高鳴る心を物語るかのように、うっすらと淡いピンク色をしたデコルテを、繊細なダイヤのネックレスで飾った。
デコルテのラインは白いレースで縁取られ、豊かな胸のふくらみが見て取れる。
ウエストの細さを強調しているぴったりとしたボディスとは対照的に、軽やかなチュールがふんだんに
重ねられてふんわりと広がるスカートには、まるで星がきらめくように幾つもの細かいダイヤが縫い込まれ、輝きを放っていた。
パフスリーブから剥き出しになった腕には長い白い手袋をはめ、金のチェーンの付いた白い小さなバッグを手にしている。
自慢の長いブロンドは今夜は結い上げずに、後ろを髪飾りで留めただけで、そのまま自然に垂らした。
バッグから出した手鏡でさっと最終チェックをした後、ドアをノックする。
少しの間を置いてドアが開き、黒いタキシードを着たモーリが顔を見せた。
彼は目の前の彼女の、ひときわ艶やかな姿に感嘆したように呟いた。
「シーラ…来てくれて嬉しいよ」
モーリはシーラの手を取って部屋の中に入れてドアを閉めると、改めて彼女を下から上へとゆっくりと眺めた。
「そのドレスを着た今夜の君は…格別に美しいよ」
「ありがとう…、モーリ。あ、あなたも…すてきだわ」
実際、今夜のモーリはいつにも増してハンサムぶりが際立っていた。昨夜初めてのキスを交わした後だから、
余計にそう感じてしまうのかも知れない。それにしても、これほど黒の似合う人をシーラは知らなかった。
黒いタキシードと彼の黒い瞳や髪が見事に調和して、セクシーな男性的魅力を溢れさせていた。
そんなことを感じてしまった自分に戸惑い、部屋の中を歩き回りながら、シーラは聞いた。
「―で、どこに連れて行ってくれるの?」
「―どこにも」
「えっ、では…あなたのお部屋でディナーを?」驚いて振り返る。
「そうだよ、何か?」モーリは当然、といった表情だ。
364人間界での出会い23:04/01/03 18:18 ID:8ZF5RnaO
「…だって…ここで二人きりなんて―」
困ったような顔をしているシーラにモーリは微笑した。
「大丈夫、何も心配しないでいい。君の張り手の痛さはよく分かってるから」
シーラはまた昨夜のキスを思い出してしまった。その度に顔の火照りが止まらない。
しかもキスの相手の前でそうなってしまうは、何とも恥ずかしかった。モーリは言葉を続けた。
「どうも…待っているのは私のスタイルではないもので―。強引だったのは謝るよ、シーラ」
「………」
モーリの顔をそっと見上げると、彼の顔までも少し赤くなっていた。
(…ちょっと意外だわ…。昨夜のことでこの人も照れているなんて…かわいい所もあるのね)
「―でも、満更でもなかっただろう?」彼はにっこりと笑う。
「!!!」
シーラがまたモーリに強烈な平手をお見舞いしようとしたちょうどその時、ホテルの給仕たちが
ディナーを運びに部屋に入って来た。
「良かった。いいタイミングで来てくれたものだ。やはりここのホテルは超一流だな」
そう言って笑うモーリを横目で見ながら、シーラは黙って席についた。
「さあ、折角のデートなのに、そうやってずっと不機嫌な顔をしているつもりかい?」
「だって、あなたが…癪にさわるようなことを言うんだもの」
「一言多かったのは謝る。ああ、何だか謝ってばかりだな…」モーリは苦笑した。
「さあ、シーラ、機嫌を直して。君は怒ってる顔も綺麗だけど、笑った顔の方がもっと魅力的だよ」
俯いていたシーラの顔がほんのりと赤く染まった。
「さあ、乾杯しよう」
「何に?」
「…私たち二人が出会えたことに―」
見つめ合ってシャンペンのグラスを掲げた。

とても楽しいディナーの時間が過ぎて行った…
人間界に来てから3度目の夜だが、お上品な晩餐会に呼ばれるより、モーリとこうやって
二人きりで過ごしている方が、本当に何倍も楽しいと心の底から感じた。
ある家での晩餐会で起こった可笑しな出来事の話や、或いはまた、今ロンドンの劇場で
かかっているというお芝居の話にも胸が踊った。
今度一緒に観に行こうというモーリの誘いにシーラは素直に応じていた。
365人間界での出会い24:04/01/03 18:23 ID:8ZF5RnaO
そして会話は次第に、イルサやシーラの家族のことへと移っていった。
「―いいえ、母親は早くに亡くしたから、あまり覚えていないの」
「…そうだったのか、ごめん…」
「いいのよ、気にしないで」
「…きっと、素敵な女性だったろうね…」
「ええ、きっとね……それでね、私を育ててくれたララお婆様という人は、とても物知りで―」
「ララお婆様?」
「ええ。例えば、腹痛を治したいとするでしょ。ララお婆様によるとね、そういう時は……」
ここまで言ってシーラははっと口をつぐんだ。ここから先は魔界の話になってしまう。
「ムカデとナメクジとトカゲの煮汁に想いケ池の花の蜜を数滴垂らしたものを飲んで、
”ヨイナクヨハギスベタ”と呪文を唱えると効果抜群なの」、こう言おうとしていたのだが、言える訳がない。
魔界の狼人間村のことをうっかり彼に喋ってしまわないように注意しているつもりだったが、
にっこりとした顔で聞いてくれるモーリの前だと、そんな警戒心も薄れて行ってしまうのだった。
「―そういう時は?」モーリは穏やかな顔で先を促す。
シーラは(ええい、ままよ)とまずいと思われる所を思いっきり省略して言うしかなかった。
「あの…お、お花の蜜を飲むと良いのよ。…今度、やってみてね」
「…へえ、それは聞いたことないな。―どんな花でもいいのかい?」
「ええ、まあ…。本当は特別なお花がいいんだけど…普通のものでもある程度の効き目はあると思うわ」
「じゃあ君のお婆様を信じて、今度試してみるよ」
シーラは事無きをえてほっと安心した。

食事の間中、燭台の蝋燭の灯り越しに見るモーリのハンサムな顔に何度も見惚れてしまっている自分に気付いた。
特にあの黒い瞳…きっと何時間でも飽きずに見続けていられるわ…、とシーラは思う。
彼の瞳は少年のようないたずらっぽい輝きを見せる時もあるし、その情熱的な激しさに
飲み込まれそうになる時もある。自分を見つめる瞳があまりにも優しいので、時としてシーラは
はっとして胸が一杯になってしまう。そして耳に心地よい彼の落ち着いた優しい声をずっと聞いていたいと思う。
また昨日のように私を抱きしめてキスをして欲しいと思う。
やっぱり…私は彼に恋をしてしまったのだ―
366人間界での出会い25:04/01/03 18:27 ID:8ZF5RnaO
美味しいディナーの後で、窓辺の大きなソファに二人は座った。
モーリが食後の紅茶を入れようとすると、シーラが微笑んで言った。
「紅茶なら私が入れるわ」
シーラが優雅にお茶を用意する姿をモーリは黙って眺めていた。
窓から差し込む月光がシーラの白い顔やブロンドの髪を照らし、美しさを際立てせていた。
「―こうして黙っていると、君は本当に優雅で上品なレディに見えるんだけどな…」
「あら、喋っている時はそうじゃないって言いたいの?」
「いや、威勢が良過ぎて、なかなかお目にかかれないタイプだって言いたいんだ」
「あなたみたいな人もいないわよ。真面目なんだか、不真面目なんだか…」
「君は誤解してるようだけど、私はいたって真面目な人間だよ、シーラ」
「ふふ、自分でそんなこと言って…。そこがおかしいのよ。―さあ、どうぞ」
シーラの手渡した紅茶を一口飲んでモーリは叫んだ。
「ん、うまい!」
「これくらいのこと、私にも出来ます。全部イルサに任せっきりだと思ってたんでしょ?」
「うん、そう思ってた」
「こう見えても、一通りのことはちゃんと出来る様に躾られてるのよ」
「へえ…さすがだ。それにしても、こんなに美味しい紅茶は初めてだ」
「いやね、大袈裟なんだから…」
「本当だよ。―きっといい奥さんになれるよ」
その言葉にシーラが照れを見せたかと思った瞬間、その顔が悲しみに曇ったのを
モーリは見たような気がした。
「…?シーラ、どうかしたのかい?」
「―いいえ、別に…」
父との約束…魔界に戻って村長の息子と結婚しなければいけないことを思い出してしまった。
必死に、胸の奥の奥へと追いやっていたことなのに…。約束の日まであと4日…。心が深く沈んだ。
「…また、私が何か言い過ぎたかな?」
「そうじゃないわ、何でもない…。―それより、あなたのことを教えて、モーリ。私、何も知らないのよ」
367人間界での出会い26:04/01/03 18:29 ID:8ZF5RnaO
「…私の何を知りたいんだ?」美味しそうに紅茶をすする。
「例えば、あなた何歳?」
「ぶっ…」モーリは思わず紅茶を吹き出した。
「何をそんなに慌ててるの?」不思議そうに聞くシーラ。
「い、いや、別に…そう言う君は何歳なんだね?」ハンカチで顔についた紅茶を拭く。
「失礼ね、女性に歳を訊ねるなんて!あなたが先に言ってよ」
「……私?私は…さ、30歳。―で、君は?」
「……に、22歳……」
「そうか、22歳か…」
(ああ、一体何歳サバをよんだのか分からないくらいだわ…)と内心恥ずかしいシーラであったが、
向こうは怪しむようでもなく、それくらい若く見える自信はあったのでもう考えないことにした。
「き、聞きたいことはまだまだあるの…あと、あなたは一体何をしている人なの?」
「何だと思う?」
「さあね…遊び回っているお気楽な人にしか見えないわ」
「ははは。君も言ってくれるね。まあ実際そんなものなんだけど、でも一応、「留学」って言葉を使って欲しいところだ」
「留学…じゃあイギリスの人ではなかったのね…。どこの国のご出身?」
「―そうだな、ヨーロッパの小国、とでも言っておこうかな」
「…またはぐらかして…まあいいわ。でも、どうしてイギリスを選んだの?」
「それはまあ、何よりここの天候が気に入ってね。だって曇りが多いだろ?」
「おかしな人。曇り空が好きなの?」
「と言うより、私は強い日差しが苦手なんだ。アレルギーがあって、体質的に受け付けない」
「ふうん、日光アレルギーねえ…。それで、何の為に留学しているの?」
「色々と見聞を広めるためさ」
「もう、そんなありきたりな返事で誤魔化さないで」
「じゃあ本当のことを言うとね…花嫁を探しに来ているんだよ」
「―えっ、花嫁を!!」思わぬ返事に驚きを隠せない。紅茶のカップをガチャンと置いた。
「ああ。そろそろお前も妻を娶れと言うので、私の父が勝手に決めてしまった相手というのが
故郷にいるんだが…どうもその気になれなくてね。それなら自分で探して来るという訳で、
この国にやってきたのが1ヶ月前…」

368人間界での出会い27:04/01/03 18:31 ID:8ZF5RnaO
シーラはショックを受け、複雑な表情で彼の説明を聞いていた。
「―あっ、そ、そうなの…。で、随分色んな方のお相手をしているようだけど、どなたか見つかって?」
「…うん、そうだね…」
モーリは紅茶のカップをテーブルに置くと、シーラと真っ直ぐに向き合った。
その黒い瞳が自分をじっと見つめているのを感じて、シーラは頬を赤らめながら顔をそらした。
「そんな風に見つめないで。わ、私はダメよ、婚約者がいるんだから―」
「へえ…婚約者。本当かい」
「嘘言う訳ないじゃない。私の故郷にちゃんといるの」
「じゃあ君は婚約者を置いてきぼりにして、大都会のロンドンで遊び回っている訳なんだ」
「何よ、人のことが言える立場かしら?それにあなたが私を誘ったんじゃない」
「確かに今夜はね―。でも君は毎日、ティーパーティーやら舞踏会に顔を出して、その場をかっさらっているけれど、
一体何を求めているんだい?」
「だってそれは、あなたが…」(いるからで…)と危うく本音を言ってしまうところだった。
モーリに会えるから、その姿を見たいから…人間界に来てからまだ3日間だが、毎日がただその一心なことに、
シーラは改めて気付く。会えば憎まれ口ばかり叩いているけれど…私はこの人のことが本当に好きなんだわ、と
今更ながら自分のそんな気持ちを認めた。
「私が?」
「…いいえ、何でもないわ」
それでもシーラは思っていることを見透かされたくなくて、プイと顔を背ける。
(この人、昨日はあんなに激しいキスをしてきたくせに、今夜は何もしてこない…
どういうつもりなのかしら?)と苛立ちにも似た困惑を感じてしまう。
369人間界での出会い28:04/01/03 18:34 ID:8ZF5RnaO
「ところで…どんな奴なんだい。見てみたいな」
「見るって…?」
「写真だよ。大事な婚約者なんだから、彼の写真くらい持ってるだろ。
ほら、ロケットの中とか、そのバッグの中とか…」
「―写真なんて持ってません」
「………」
「何で黙ってるの」
「…いや。君の場合も、もしかして親の決めた婚約者なのかなと思って」
「―だったらどうだと言うの」
少しの間を置いて、モーリが低く囁いた。「……君をその男から奪い取ってしまいたい」
思いがけない彼の言葉にシーラははっとして、赤面しながら言った。
「…モーリ、冗談はよして」
「―冗談なんかじゃないよ」
彼の顔は真剣だった。シーラの白い手を取ってそっと口付けると優しく囁いた。
「例え、君がその男を好きだったとしても、私の気持ちは変わらないよ……シーラ、君をさらって行っていいかい」
「モーリ…」
モーリの突然の告白にシーラの頭の中は真っ白になった。彼はゆっくりと顔を近付け、シーラの背中に腕を回し、震える彼女の唇にそっとキスをした。
優しいキスは次第に、激しい想いを訴えるような情熱的なキスへと変わっていく。
シーラも無意識の内に、彼の狂おしいまでの口付けに応えていた。しばらくの後、唇を離してモーリが囁く。
「君のことが好きなんだ。君も私のことを…想ってくれているかい」
シーラはあまりに激しいキスにめまいを覚えながらも、やっとのことで言った。
「モーリ……ええ、そうよ…最初に会った時からずっと…あなたのことが―好きだったの」
「ああ、シーラ…やっと言ってくれたね」
シーラも彼の首に両腕を回し、強く抱き合って二人はまた何度もキスを交わした。
「…あなたの言う通りよ。婚約者と言っても、本当は親に言われて…仕方なく…」
「…そうか」シーラの髪を撫でながら呟く。
「結婚式を挙げる前に、ここに旅行させて欲しいって父に頼んだの。だって…このまま好きでもない人と
結婚するなんてどうしても耐えられなくて…誰かと出会いたくて」
「シーラ…」
「でも、あと数日しかここにはいられないわ。故郷に戻らなくては…」
シーラは俯きながら涙声でそう言った。
370人間界での出会い29:04/01/03 18:37 ID:8ZF5RnaO
「馬鹿な!私と出会ったのに、やはり君は好きでもない相手と結婚するって言うのか?」
モーリはきつくシーラを抱きしめた。
彼の力強い腕の中で、シーラはポロポロ涙を流し、言うに言えない叫びを心の中で繰り返した。
(あなたを愛してる!でも、私は魔界人で、あなたは人間なのよ…私たちが結ばれるはずないわ!)
「モーリ…私は…」
「―もう何も言うな…シーラ」
モーリの唇が再びシーラのそれを塞ぐ。シーラの頬を伝わる涙が彼の顔を濡らした。
二人が熱い口付けに我を忘れていると、壁の時計が12時を告げる音が重く低く響いた。
唇を離してモーリが言う。「もうこんな時間になっていたんだな…」
シーラは彼の背中に両手を強く絡めて、自分から彼の唇を求めた。
「…お嬢さんは帰る時間だなんて言わないで」
シーラは自分の大胆さに我ながら驚いた。モーリは彼女の涙に濡れた青い瞳を見つめて、上気した頬を撫でながら囁く。
「…君が望むなら、帰しはしないよ。このまま、ベッドに連れて行きたい。―いいかい?」
シーラが一瞬の驚きの後に無言で頷くのを見ると、彼は突然彼女を抱き上げた。
「あっ…」
彼女のブロンドの髪にそっと口付ける。寝室に入り、シーラをベッドの上に優しく置く。その上に重なって手を握りながら、モーリは微かに震える彼女を見つめてもう一度聞いた。
「…後悔しないか?」
首を横に振って、モーリに口付けるとその瞳をまっすぐ見つめて言った。
「後悔なんてしないわ…」
モーリは微笑み、優しく口付けた。
「シーラ…愛している」
「私もあなたを…愛してるわ、モーリ」
二人のキスはだんだん深くなり、モーリはシーラの首筋や耳たぶにキスの雨を降らせながら、
そのドレスや下着をどんどん取り払っていく。何もかも初めてのことに羞恥や戸惑いを感じながらも、
シーラは密かに待ち望んでいた愛しい人からの愛撫に胸が踊った。気が付くとベッドの上に全裸の自分がいて、
たくましい体をあらわにしたモーリと重なり合っていた。モーリはシーラの髪に指を入れて梳きながら、囁いた。
「シーラ…とてもきれいだよ…」
371人間界での出会い30:04/01/03 18:41 ID:8ZF5RnaO
これまで交わしたのよりも更に深く激しいキスに体の芯が熱くなっていく。
モーリの舌が口の奥深くに侵入し、自分の舌と絡み合う。息もつけない程に濃厚なその感触に、
頭がおかしくなりそうだった。モーリはキスをしながら、シーラの豊かな乳房を揉んだ。
その固く張り詰めたような淡いバラ色の乳首を指でつまんだりしていたぶった後で、口に含む。
彼の舌先から痺れるような甘い快感が広がり、これまで経験したことのない初めての感覚にシーラは
思わず声を上げて反応する。
「ああっ…モーリ…はあっ…」
「シーラ…そうだよ…声を聞かせて」
「あああっ…んあっ…はあっ…」
無意識の内に、シーラはモーリのさらさらした黒い頭髪に両手をあてがっていた。
彼の唇はシーラの両方の乳房を十分なくらいに愛撫すると、だんだんおへそや下腹部に移っていく。
彼の手が愛する人の太ももを優しく開かせ、その舌が膝の裏側からだんだんと脚の付け根の方へ
這っていくと、彼女の体がぴくっと痙攣し、甘い喘ぎ声は更に大きくなった。
「モ…リ…!あんっ!い、…いや…やめ…て」
モーリはそんなシーラの哀願を無視して、顔を彼女の脚の間に埋めた。
「…すごくきれいだ…ここも見事なブロンドなんだね」
ため息をつきながら、その舌で彼女の花芯を舐め、蜜の溢れる花弁の中へと差し込んでいった。
「だめ…あああっ!…はあっ…あっ…んんっ」
激しい快感がシーラの全身を貫き、思わずのけぞった。
愛しい人の舌が自分の秘めた場所の中で敏感に動いているのを感じて、
どうにかなってしまいそうだった。
霞のかかったような頭の中で、何か暖かいものが自分の中心から
湧き出しているのを感じていた。
(こんな姿で…とっても恥ずかしいのに…でも…)
自分でも抑えが効かないほど、モーリの愛撫に酔いしれて、恥ずかしい声が漏れてしまう。
372人間界での出会い31:04/01/03 18:43 ID:8ZF5RnaO
「とても感じやすいんだね…どんどん溢れてきてる」
「ああっ…あん…モーリ…」
全身を赤く色づかせ、身を左右にくねらせながら、自分の愛撫に反応しているシーラから
おもむろに唇を離して、感動したようにモーリが囁いた。
「…こんな風に乱れている君を見られるなんて…嬉しいよ、シーラ」
シーラの片手を取って、猛々しくそり返っている自分自身をそっと握らせる。
「あっ…モーリ…」シーラは戸惑った。とても太くて掴みきれない。
「…熱いわ…それに、こんなに硬いの…?」
「そう。君のここに入れたいんだ。…いいね?」
「…ええ…」
モーリの長い指がシーラのぬめりの中に入ってきた。さっきの彼の舌よりも、
もっと奥深くに侵入してきている。そのせわしない指の動きに新たな快感を覚え、
激しく悶える合間で、シーラは熱に浮かされたように呟いた。
「ああっ…でも…そんなに…大きいのが…入る…かしら?」
「少し、痛いだろうけど…我慢して」
モーリはシーラの内部がたっぷり濡れているのを確認するとその指を抜き、大きなこわばりを
彼女の中にゆっくりと入れて行った。
「…っ…モーリ…!ああっ」
「シーラ…大丈夫だから…」
驚いて身を固くするシーラをしっかりと抱きしめ、ゆっくりと突き進む。
「あっ…い、痛いわ!」
うっすらと汗ばんでいた全身から、更に汗がどっと一気に吹き出した。
「…シーラ…力を抜いて…」
「あああああっ!!!」
モーリが長い時間をかけてついに奥まで到達した瞬間、シーラはあまりの痛さに
彼の背中に腕を回して強く抱きついた。シーラをいたわるように、動かずに静止したまま
しばらく抱き合う。今まで経験のなかった彼女の膣内は、侵入してきた彼自身をきつく締め上げた。
その反応を楽しみながら、モーリは片手で彼女の胸を揉み、キスをしながらゆっくりと腰を動かし始める。
敏感に反応し、切ないような表情のシーラを見つめながら、だんだんその腰の動きは激しさを増し、
音を立てて彼女の奥深くを突き上げた。
373人間界での出会い32:04/01/03 18:47 ID:8ZF5RnaO
「んんんっ…はあっ…モーリ…ああっ…!」
「シーラ…!ああ…愛してるよ」
最初はただ痛いだけだったのに、次第に痺れるような快楽の渦にシーラは巻き込まれていった。
自分の中いっぱいに広がっているモーリのぬくもり。
彼のものがなじんで来て、言いようのない鋭い快感がやってきた。
モーリの勢いを増す動きにつられて、シーラの体はますます燃え、激しく悶えた。
「モーリ…ああっ!…ああんっ!…」
「もっと…感じて…シーラ…!」
深いところで結合感を味わい、二人はお互いの名を何度も呼びながら、絶頂に向かって走っていった。
「私…もう…だめっ…あっ……ああああああっ…!!!」
シーラは首を大きく反らして、ついに絶頂の喘ぎ声を発した。
体が弓なりにのけぞり、膣口が連続的に痙攣し、モーリのこわばりをいっそうきつく締め上げる。
合わせてモーリも自分のほとばしりを愛しい彼女の中に勢い良く注ぎ込んだ。

しばらくして、自分自身をシーラの中から抜くと、モーリは彼女の手を握って寄り添った。
息を切らして、放心したようになっているシーラを愛しげに見つめ、その額に優しくキスをする。
「シーラ…どう…だった?」
シーラはそれには答えずに、モーリの方へ顔を向け、じっと見つめた。
「…こういうの、嫌いかい?」
黙って恥ずかしそうに首を横に振るシーラに、ほっと安心したようにモーリは微笑む。
広くたくましい胸に彼女を抱き寄せ、優しく口付けしながら囁いた。
「良かった…。―そうじゃないかと思ったんだ」
「モーリ…?それ、どういう意味?」
「いや、きっと好きだろうって思ってた」
「やっぱりいやな人…!」シーラはくるりと背を向けた。
「ははは。またすぐそう言うんだな、君は。嫌がるフリをしてもだめだよ、シーラ。
君が私に惚れてしまったのはもう知ってるんだから…」
374人間界での出会い33:04/01/03 18:52 ID:8ZF5RnaO
「―私とこうなるのを想像してたんでしょ?」
「もちろん。君の方は?」後ろから彼女の白いうなじにキスの雨を降らせる。
「………」
シーラは顔を赤らめた。彼との行為は想像してた以上に…素敵だった。
そんなことを思って大きなため息をつくと、モーリは微笑んで耳元にキスをしてきた。
「君は想像してた通りに、いやそれ以上に素晴らしかった…これから楽しみだな」
「これから…?」
「そうだよ、シーラ。ずっと君と一緒にいたい」
うなじや肩に口付けながら、乳房を優しく揉み、乳首をつまむとシーラはかすかな喘ぎ声を洩らす。
「あんっ…でも、私には……。忘れたの?」
「ああ、忘れたよ。婚約者が何だって言うんだ。私には君しかいないし、君にも私しかいない。そうだろ?」
「ええ…その通りだわ…。あなたが…大好きなの」
「…もう一度、いいかい?シーラ…」
「…ええ、モーリ…お願い…」二人はもう一度重なり合って、ほとばしる情熱のままに愛し合った。

そして…もうそろそろ夜も明けようとしている。
激しい愛の行為の後で、疲れてまどろんでいるシーラを腕の中に抱きながら、
モーリはその波打つブロンドの髪を撫でている。耳元でそっと囁いた。
「シーラ…もう朝になるよ」
「…え?そうなの?早いわ…」
「うん。そろそろ起きて、部屋に戻らないと」
「…いや。ずっとこうしていたいの」
「それは私も同じだけど…きっとイルサが心配してるよ」
「大丈夫よ、私があなたと一緒なのは知ってるわ」
「―イルサのことは別としても、世間の目というのもあるからね。君は話題の伯爵令嬢なんだから、
私のベッドでこうしているのをホテルの人に見られたらまずいだろ?」
「…伯爵令嬢なんて嘘の話なのよ」シーラはついに言ってしまった。「―驚いた?」
「…いや。そんなこと、実は知っていたよ」
起き上がって、彼の顔を見る。モーリは落ち着いた表情をしていた。
「どうして…?いつから…?」
「簡単さ。ヨークシャー地方にクレリーという名の伯爵家はいない。何故か皆は、気付かなかったようだけど」
375人間界での出会い34:04/01/03 18:59 ID:8ZF5RnaO
「……それでも…変わらずに、私のこと好きでいてくれる?」
「もちろん。誰であろうと関係ない。かえってほっとしてるくらいだ」
「…大好きよ、モーリ」
「私も大好きだ。―だから私の言うことを聞いてくれないかな」
「―分かったわ、自分のベッドに戻ります。…でもまたこのドレス着るの面倒だわ、
廊下を少し横切るだけなのに」
「じゃあこれを着てけばいい」
モーリは自分の黒いシルクの部屋着用ローブを裸のシーラに着せると、
軽々と抱き上げて寝室を出てドアに向かう。
「あ、ちょっと…本当にこんな格好で廊下に出る気なの?」
「別にいいだろ?」
「―私はいいけど…でもあなたまだ裸よ」
「げっ…!!」
慌てふためいていったん寝室に戻り、すばやく白いブラウスを羽織り、黒いズボンを履く。
愛しいモーリのそんな姿を見つめて、シーラは可笑しそうに微笑んだ。
「シーラ、何が可笑しいんだい?」
「だって…あなたっておっちょこちょいなんだもの」
「さっき君を愛した時は、辛抱強かったつもりだけど?」
「…ええ…ありがとう、モーリ…嬉しかったわ」
着替え終わったモーリはシーラをまた抱き上げるとにっこり笑って言った。
「さあ、今度は大丈夫だ」
376人間界での出会い35:04/01/03 19:00 ID:8ZF5RnaO
そのまま向かいにある彼女の部屋へと運ぶ。ベッドに優しく置いて、甘いキスを交わす。
「シーラ…すばらしい夜だった…」
「モーリ…ええ、本当に…」
彼女に着せたローブの胸元を開いて、花の蕾のような両の乳首に交互に優しくキスをする。
「ああ…ん……また…?」
「いや、続きはまた明日」
「…きっとよ…」
モーリは微笑んで彼女の髪を撫で、キスをした。
「うん。おやすみ…」
「…おやすみなさい…」
モーリが去った後で、シーラはかつてない幸福感に浸りながら眠りに落ちた―

そして一方のモーリは自分の部屋に入ると一目散で寝室に駆け込んだ。
しっかりとカーテンの閉められた窓にさっと視線を移すと、今にも朝日が昇りそうな気配を感じた。
慌てながらベッドの下に隠してあった漆黒の棺おけを取り出す。
「ああ、灰になってしまうところだった…危ない、危ない」
蓋を開けて赤いビロードの敷き詰められた中にその身を長々と横たえて、
彼はシーラを想いながら充足感のうちに眠りについた。
377モーリ&シーラ作者:04/01/03 19:05 ID:8ZF5RnaO
今日はここまでです。
やっぱりかなり長くなってしまいました。
ごめんなさい。
378名無しさん@ピンキー:04/01/04 00:22 ID:sbL2WE/d
>377
とても丁寧で・・・・(・∀・)イイ!! 好きです。好きですよー
379名無しさん@ピンキー:04/01/05 01:37 ID:l+pVxoQc
>>377
あああ、シーラの心情に泣いてしまいました。
続きをお待ちしております。
380名無しさん@ピンキー:04/01/09 01:49 ID:OiUpYgjg
何巻だか忘れたけど、1/4スペースの4コマでのなるみのセリフ「三ヶ月…なの…」に萌えまくったのは私だけでつか?
381俊の苦悩1:04/01/10 21:31 ID:Jq9CNgmX
ここはジムの合宿所。
就寝前の余暇の時間。俊は自分の部屋のベッドにウトウトしてた。
プロの試合に出るようになって、合宿では一人部屋をもらってるというわけだ。
コンコン
ドアをたたく音が・・後から後輩の声がする。

「真壁先輩。すみません。あけてもいいですか?」
「・・・どうぞ?」
後輩2.3人が連れなって部屋に入ってきた。
「どうした?」
「僕たちの部屋のビデオデッキ壊れてたのでここでみさせてもらっていいですか?
大広間はトレーナーの目もあるし・・・・
真壁先輩なら優しいし、口が堅いだろうって思ったので・・・」
半分うつむきながら俊の答えを待った。
「・・・どうぞ。何を見るつもりだ?」
「やった。さすが真壁さん。新作のアダルトビデオです!!!女の子がかわいくって!」
(ってオイオイ・・・
 許可した後だし・・今後のお勉強として・・見るのも悪かねえか。)


***********************************************
382俊の苦悩1:04/01/10 21:32 ID:Jq9CNgmX

(失敗だ。あんなの見なきゃ。。よかった。マズイ。今のままでは、あいつに会えねぇ。)
合宿の帰り道、家路につきながらボヤいた。
確かにお勉強になっただろうけど今まで我慢していた分、理性を保てない気がした。



一方蘭世は合宿から俊が帰ってくるので朝からウキウキしていた。
(真壁君。合宿から帰ってくる日だよね?さっそくご飯作りに行こうかな?
今回の合宿は久しぶりに長かったもんね。)
俊のアパートの近くで食材を買って足早に俊の部屋に向かった。


**********************************************

俊のアパートの前、電気のついている部屋を見つめる俊がいた。
(うう・・江藤。マズイ。
 うまそうなご飯のにおい。そして江藤・・・帰れねぇ。)
どこかで時間つぶして帰ろうかと思ったが、きっと蘭世が悲しい顔をすると思い直して覚悟を決める。
(負けるな理性!!)自分に喝を入れる。
383俊の苦悩3:04/01/10 21:34 ID:Jq9CNgmX
カンカンカンとリズムよく階段を昇る音がする。
「あっ。真壁君かな?」
蘭世はドアを開け確認する。
自分の思い人を目の前に微笑んだ。
「おかえりなさい。」
久しぶりの蘭世に、その笑顔に先ほどの気合が無意味になりそうな気がした。
(マズイ・・・・)
ぶっきらぼうに「だたいま」だけ言う。

(真壁君・・・機嫌が悪い?疲れてるのカナ?)
「お疲れ様。真壁君♪ 今日は真壁君の好きなお料理ばかりです。」
笑顔がはちきれんばかりの蘭世を俊は眩しすぎて直視できない。
それでもご飯をおいしくいただき、点いてるだけのテレビに目をやって気持ちをごまかす。
洗い物を済ませ、ちょこんと俊のそばに座る蘭世にドッキ!!とする。
それでも目を合わせないようにしていると
蘭世の様子がおかしいのに気がつく。
静かに頬をぬらしていた。
「真壁君・・・疲れてるだけだよね? 蘭世のこと嫌になっちゃったの?
・・・そばにいるの迷惑?」
涙を流しながらでも自分に問う。
「違うんだ・・・」
もうこれ以上ごまかせない・・嫌われても仕方ない・・・正直に言うしかないか・・・
俊は蘭世の両肩にそれぞれ手をかけ、真剣な目をして話かける
「江藤・・・。違うんだ。おまえを嫌ったりしない。その逆だ。
 今までのように理性を保てる余裕が今の俺にないんだ。
 危険だから今のうちに送っていく・・・・」

きょとんとしている蘭世をよそに帰り支度を手伝う俊だったが・・
振り向くとさらに泣いている蘭世に。。少し後悔した。
(言わなきゃよかったのか・・・・。)
384俊の苦悩4:04/01/10 21:34 ID:Jq9CNgmX
「江藤・・・」
蘭世の肩を抱こうとしたら蘭世が抱きついてきた。
驚いて抱きつかれるままにいると蘭世の思考が流れてくる。
(いいの。真壁君だったらいいの。真壁君のすぐ近くに行きたい・・・
 私だけの真壁君みせてほしい。少し怖いけど真壁君を感じたい・・・・)
「江藤?・・・・いいのか?」
抱き合った状態で下から視線だけを合わせてくる。
真剣そのものの顔。
「お前の思ってる以上のことかもしれねえぞ?・・・幻滅するかもしれねぇぞ?」
「いいの・・」
涙が頬をつたう。
蘭世の唇に自分のも合わせる・・・二人の時間が始まったばかり・・



予習どおりうまくいったかは・・・ヒミツw
385とーか:04/01/10 21:38 ID:Jq9CNgmX
投稿失敗しました。見苦しいのをお見せします。
2度目ながら・・ドキドキしました。いつも大変楽しみにしております。
最近さみしいな・・って思ったので恥ずかしながら短い?話を・・と思いました。
リレーの続きも楽しみにしております。
モーリ&シーラ作者様お話間に入って申し訳ありませんでした。
では・・・ロムします♪
386名無しさん@ピンキー:04/01/10 22:12 ID:BDTAeU2D
しばらく静かだと思ったら新しいのが投下されてるじゃないですか!
むっつりしながら色々考えこんでる真壁くんの顔が目に浮かんできます〜
とても素敵なSS、ありがとうございました♪
387モーリ&シーラ作者:04/01/11 20:02 ID:B7tkAzlJ
それでは話の続きを投稿します。
388モーリ&シーラ作者:04/01/11 20:05 ID:B7tkAzlJ
次の日の昼過ぎ…
シーラのスイートのドアをノックするモーリ。ドアが開いてイルサが顔を見せた。
「やあ、イルサ。シーラはいるかな?」
「モーリ様…ええ、でもまだベッドで休んでますの」
「まだ寝てるって?もう昼過ぎだよ。―よほど疲れさせちゃったかな…」
「え…?」
「あ、いや、何でもない…ところで入っていいかい?」
「まあ気づきませんで、どうぞお入り下さい」
モーリは昨夜シーラの着てた白いドレスを腕に抱えていた。
「あら?そのドレスは…」
「シーラお嬢様の忘れ物だよ」とウィンクして、彼女にそのドレスを渡す。
受取ったイルサはその意味に気付いて赤面した。昨夜、自分が外出から帰った来た時にシーラの姿はなく、
明け方近くになってようやく帰って来たようだった。そしてまだ起き出してこないので、二人の間に何が
起こったのか予測はしていたイルサだったが、モーリの態度がこうも開けっぴろげなので戸惑ってしまう。
「あ、あの…今、起して参りますわ」
「いいよ、私が行く。―ちょっと驚かせてみたいから」
そう言って彼がシーラのベッドルームに入って行くのをイルサは黙って見送った。
「イルサ…?」ベッドの中からシーラの声がする。
「ねえ、モーリはまだ来ないの?」
モーリは何も言わずに微笑みながらそっと近付いた。ベッドに腰掛けると、背を向けて寝ているシーラを
後ろから抱きすくめる。シーラはまだ彼の黒いガウンを着たままだった。
「きゃ…」
「来たよ」
驚いたシーラは振り向いた。
「モーリ!やだ、全然気付かなかったわ。いつからそこにいたの?」
「今さっき。私の恋人はどうしてるかなと思って―」
「…あなたが会いに来てくれるのを待ってたの」
二人は抱き合って甘いキスを交わす。
389人間界での出会い37:04/01/11 20:07 ID:B7tkAzlJ
「シーラ、よく眠れた?…痛くないかい?」
「…ええ、大丈夫よ。モーリ…」
「起き上がれる?」
「ええ、多分…」
モーリはシーラの答えに内心驚いて思った。
(あれ…?今までに知っている人間界の処女は皆、私を迎えた後はもっと痛がっていたが。
シーラは本当に大丈夫なのかな…それとも彼女のことだから強がっているだけだろうか?)
「―今日はいい天気だから、これから一緒に散歩にでも出ないか」
「いい天気?」
シーラは窓の外に視線を向けたが、どんより曇っているので笑ってしまった。
「…そうよね、あなた好みのお天気だわ。―ちょっと待ってて、今仕度するから」
ベッドから起き上がったシーラは軽く叫び声をあげた。
「あっ…」
「どうした?」
「…やっぱり…変だわ…何だか自分の体じゃないみたい」と言ってベッドに腰掛けた。
「初めてだった場合はそういうものだよ」
「―随分、女の人の体に詳しいのね」モーリを咎めるようにちらっと横目で見る。
「えっ…いや別に―」
「もう、あなたって人は…!―そうだわ、聞こうと思ってたのよ。
この間のエヴァとかいう名の方とは、何にもないと言ってたわね?」
「その通りだよ。あの晩に戯れのキスをしてる所を君が見てしまっただけさ」
「戯れのキスね…!おっしゃいますこと!」
「本当だよ。彼女とはそれ以上は何も…」
「…じゃあ彼女のことは別として、あなた一体今まで何人の…、いえ、もういいわ。やっぱり聞きたくない!」
プンと不機嫌な顔のシーラの手を取ってそれに口付けると、モーリは低い声で囁いた。
「シーラ、これからは君だけだ」
「……本当に?」手を伸ばして彼の頬にそっと触れる。
「ああ、本当だ。誓うよ、君が私の生涯の恋人だと―」
「―いいわ…。それなら許してあげる。キスして」
「何度でも―」抱きしめて愛しそうに口付ける。
390人間界での出会い38:04/01/11 20:08 ID:B7tkAzlJ
深く長いキスが続いた後で、シーラは少し戸惑った表情でモーリを見つめた。
「モーリ…、私…何て言ったらいいのか分からないけど…本当はこれほどのことが起こるとは思ってなかったの」
「どういうこと?」
「…昨夜のこと…」
「まさか後悔しているんじゃ…」
「いいえ、後悔なんかじゃないわ。あなたに抱かれることを心から望んでいたけど、
でも心のどこかで、そんなこと私には無理のような気がしてた…。
だから今、私とっても嬉しいの。あまりに幸せで、何だか全てが信じられないくらい…」
涙で潤んだシーラの瞳をまっすぐ見つめて、モーリが囁く。
「シーラ…。私もとても嬉しいよ。こんな気持ちになったのは初めてだ。君が…愛しくて仕方ないんだ」
恋人たちは何も言わずにそのまま寄り添って、お互いのぬくもりをかみしめた。
やがてモーリが口を開いた。
「…シーラ。頼みがあるんだけど」
「なあに…?」
「君の白いドレスは持ってきたから、私のガウンを返してもらえるかな?」
モーリはシーラの着ている黒いローブの紐をするりと解いて、その全裸をベッドに優しく押し倒した。
「あっ…でもこれから散歩に行くんでしょ?」
「行くよ…これが終わったらね。昨日約束した続きを…」
彼女の豊かな乳房を舌で愛撫する。
「…あ…ん…私、歩けなくなっちゃいそう…」
モーリは微笑んで言った。
「可愛いよ、君は―。心配しないで、歩けなくなったら私がおぶってあげるから…」
391人間界での出会い39:04/01/11 20:09 ID:B7tkAzlJ
シーラは残された人間界での4日間を、こうしてこの世で一番愛しい人となった男と出来る限り一緒に過ごした。
どんよりとした曇り日に昼下がりの公園での散歩、お弁当を持ってのピクニックを楽しんだ。
シーラが魔力を使ったのは一度。
ある昼下がりにいつものように公園を散歩していると、急に日が照ってきてモーリは本当に苦しそうになった。
「日光アレルギー」という彼の言葉を思い出したシーラは思わず、どしゃ降りの雨を降らせてしまった…。
(冗談じゃなくって、本当に日光が苦手だったのね…)とシーラは思ったものだ。
そして夜は劇場で芝居やオペラを見て、ディナーを楽しみ、そしてどちらかの部屋で明け方まで激しく愛し合う…。
シーラの体はすっかりモーリによる愛撫に親しみ、性の悦びを教わった。そんな世界があろうとは今まで知りもしない。
生まれて初めて本当の意味で自分を解放し、そんな自分を包み込み、しっかり受け止めてくれる男性を見つけたのだ。
傍らに愛してやまない人がいて、そして最高に幸せなことに、彼も私のことを愛してくれる…。
しかし有頂天になるほどの愛の日々は瞬く間に過ぎて行き、魔界へ戻らねばならない日が刻一刻と迫ってきた。
いよいよ明日は約束の1週間後…。一体、私はどうしたらいいの…?
モーリと離れて別々に生きていくなんて、絶対出来るはずがない。このまま人間界で彼と一緒にいたい…!
でも―そうしたら、イルサに責任を負わせてしまうだろうし、お父様はきっと連れ戻しに来るだろう。
そうなったら、モーリに私の正体がばれてしまうかも知れない…。
実は狼女だという事実を知ったら、彼は気味悪がって私から去って行ってしまうのだろうか?
392人間界での出会い40:04/01/11 20:38 ID:B7tkAzlJ
シーラは隣にいるモーリの寝顔をじっと見守った。
明日の夜、魔界へと戻ってしまえば、もう二度とこの人と会うこともできない…。
この人の笑顔も、困ったような顔も、少し怒ったような顔も、照れたような顔も見ることもないのだ。
この人のキスを受けることも、力強い腕に抱かれることも二度とない…。
その代わりに、私は…顔さえも思い出せない、ろくに会ったこともない婚約者と結婚して、
妻として抱かれて…その人の子供を産むの?
―いいえ、そのすべてが耐えられない。モーリ以外の人なんて…。
どうしようもないほど、この人を愛しているのに…。シーラの瞳から涙がこぼれた。
泣き声を出さないように必死にこらえながら、隣のモーリを眺め続ける。彼はすやすやと眠っている。
まるで彫刻のように整った顔立ちだとシーラは思った。そして無意識的に愛しい男の顔に手を伸ばす。
人差し指で彼の高い額の中心を上から下へとゆっくりとなぞって、続けて細くて高い鼻筋を通り、その下の形のいい唇を…
数え切れないくらいキスを交わした愛しい唇を通って、男性的な線を描く顎まで行きつく…。
これを飽きることなく何度も繰り返していると、モーリが目を覚ましてシーラの手を取った。
「…ん…シーラ?」
「あ、ごめんなさい。起しちゃった?」そっと頬の涙を拭いて明るく言う。
「……人の顔で何を遊んでいるんだい?」
「あなたの顔を記憶させてたの」
「君の指に?」
「そう…」モーリの唇にそっとキスする。
「―じゃあ今度は私の番だ。横になって目を瞑って…」
393人間界での出会い41:04/01/11 20:40 ID:B7tkAzlJ
モーリに言われた通りに、横たわる。彼の長い人差し指がシーラの額にそっと触れた。
丸みを帯びた額の線をなぞって、少しツンと上を向いた可愛らしい鼻の先でその指を止めるとモーリは言った。
「シーラ…鼻が赤いよ」
「そう…?」
「もしかして、泣いてたのか?」
「そんな、泣いたりなんかしてないわ」
シーラは涙のせいで赤くなっているであろう瞳を見せまいと、目を瞑ったまま答える。
モーリは敢えて何も言わずに、続いて花の蕾のような可憐な唇をゆっくりと通って、
ほっそりとした顎を通り過ぎ、白い喉で指を止める。
「…本当に、とてもきれいな肌をしている。真っ白な首筋…」
モーリはそのまま彼女の首筋に牙を立ててしまいたい衝動に駆られた。
ゆっくりと顔を近付け、唇をシーラの首に押し付ける…。
するとシーラは軽い喘ぎ声を発して、頭をのけぞらせた。彼女の肌がうっすらと赤く染まる。
「モーリ…」シーラが自分の名をうわ言のように呼ぶのを聞いて、モーリはハッと我に帰って思いとどまる。
(何も知らない彼女に、いきなり牙を立てるなんて…そんなこと、出来るわけがない…)
彼はその唇を離すと、指でシーラの首から下をなぞって行った。
「あっ…ちょっと…私は顔までしかやってないのに…」
「…私はもっと進みたいな」
彼の指がシーラの胸の谷間を経て、ゆっくりとおへそを通り越し、ブロンドの繁みに触れた。
途端に彼女の体がぴくっと痙攣する。
「あっ…んっ…やめ…て…」
「いや、やめたくない」
モーリの指がシーラの花芯を探り当てた。親指と人差し指を使って優しくつまむ。
「ああ…ん…あっ…、もうそれ以上は…だめ…」
シーラの甘い喘ぎ声を聞きながら、固く膨らんだ花芯をしばらく愛撫する。
彼の指は更に下に降りて行き、しっとりと濡れている花弁の中へと入り込んで行った。
「んんっ…ずるいわ…あなた…ああっ…」
「もっと…脚を広げて…シーラ」
394人間界での出会い42:04/01/11 20:42 ID:B7tkAzlJ
少し躊躇した後、モーリに言われるままにシーラはゆっくりと両脚を広げた。
頬が恥ずかしげに赤く染まる。
くちゅくちゅと水音を立てながら、モーリは彼女の内部を優しく掻き回し続けた。
「―君のお婆様の言う通りにやってみようかな」モーリが意地悪そうに囁く。
「…え?何のこと…?あっ…」
快感の波に飲み込まれたシーラは目をうっとりと閉じたまま、力なく言う。
「前に、腹痛を治したい時は花の蜜を飲むと良いって教えたくれただろう。今夜はちょっと
食べ過ぎたみたいでお腹が痛いんだ…ちょうどいい具合に、ここに花の蜜がある。
しかも特別に美しい花のね…」
「…や…だ…モーリ…」
「君が教えてくれたんだよ、シーラ…」
「お腹が痛いなんてウソのくせに…」
「…でも君だってここにキスされるのは好きだろう?」
モーリはシーラの体を押さえつけながら、赤く膨らんだ花芯を優しく舐めた。
「んっ…はあ…」
シーラの二枚の花びらを舌で広げて、そのひとつひとつを丁寧に口に含んだ後、中心部に舌を差し込む。
中に溢れる蜜をすすり始めると彼女はいっそう甘い喘ぎ声を上げた。
シーツを掴みながら、激しく身悶えしている。
「私はすっかり君の味に夢中だよ、シーラ…」
立ち上ってくるシーラの甘い匂いを吸い込みつつ、モーリの舌はえぐるような動きをしながら、
執拗なまでに彼女の内部や周辺を責めたてる。
「ああ…ん…モーリ…」
あまりに刺激的な彼の舌の動きにめまいを感じる。そのまま昇りつめてしまいそうなのを必死に堪えて、
やっと聞こえるようなか細い声でシーラはモーリに言った。
395人間界での出会い43:04/01/11 20:44 ID:B7tkAzlJ
「…あ…おね…がい…。…入れ…て…」
モーリはそれを聞いて、彼女の秘部からゆっくりと唇を離す。
「シーラ…。後ろを向いて手をついて」
「え…こう…?」
「そう。もっとお尻を上げて…」
「あ…や…恥ずかしい…」
「恥ずかしがらないで。とてもきれいだ」
後ろから彼女を抱きしめ、その弾力のある乳房を揉みながら、うなじに舌を這わせる。
そして硬直しきった自分自身を、蜜の滴り落ちるシーラの入り口に後ろから沈めた。
「ああっん…!はあっ…ああ!」
シーラが息を乱し、甘いうめき声を洩らすのを聞きながら、モーリはゆっくりと腰を動かし始める。
彼女の腰を両手でしっかりと掴み、更に奥深くに入り込む。モーリの腰の動きは次第に激しさを増して行く。
彼の太いこわばりに、まるで自分の中を貫き通されているような感覚をシーラは覚えた。
(ああ、モーリ!思いっきり私を抱きしめて、何もかも忘れさせて…!今だけ…今だけは何も考えたくない…)
我を忘れ、自らも腰を小刻みに動かして彼の愛撫に応えながら、シーラの意識が遠のいていく。
断続的な鋭い叫び声をあげながら、絶頂に達したシーラは力を失ってその場に突っ伏した―

そして夜明けが近付き、身支度をしているモーリに気付いて、シーラはふと目を覚ました。
「帰るの…?」
「…ああ。よく眠ってたから、起さないつもりだったんだけど」
シーラの寂しそうな顔を見て、モーリはいたずらっぽい調子で言った。
「寝言を言ってたよ」
「え、何て?」
「”モーリ、もっと”って…」
「ヤダ、そんなこと言ってないわよ」シーラは赤面して、慌てて否定した。
「ハハハ。もちろんそれは嘘だけど…。―本当はね…」
「…?」
「ただ私の名前を呼んでいた」
「…だからって、自惚れないで」
「これはまた、手厳しいね」
396人間界での出会い44:04/01/11 20:44 ID:B7tkAzlJ
「あなただって、昨日は私の名前を呼んでたんだから…」
モーリはただ黙って微笑を返すだけだったので、シーラは肩透かしを食らった気分だった。
「―否定しないの?」
「何で?…多分言ってたんだろうな。いつも君を想って、胸が張り裂けそうだから…」
「それは私のセリフよ!」
思わずそう口走ったシーラが真っ赤になったのを見て、モーリはベッドに腰掛けて彼女を
抱き締めて熱いキスをした。
「君のそういうところが可愛い」
「…本当に帰るの?」
「ああ。自惚れ屋はもう退散するよ」
「…ねえモーリ。どうしていつも朝まで一緒にいてくれないの?」
「え…」
「いつも自分のお部屋に帰ってしまうじゃないの。私、とっても寂しいわ。何故なの?」
「シーラ…それは…」
「本当は私のこと、そんなに好きじゃないんでしょう…?」
「いや、まさか。君のことは本当に愛してるけど…私は朝が苦手でね。低血圧だから」
「低血圧…?」
「そう。寝起きが最悪に悪いんだ。だから、君と一緒に朝を迎えると君が不愉快な思いをしそうで…」
「そんなこと、私は気にしないわよ」
「いや、君は知らないからそう言えるんだよ、シーラ。本当にひどいんだ」
「でも…」
「そんなに追求しないでくれよ。私を困らせたいのかい?」
「…さあね、自分でも分からないわ…でも、そうね…あなたを困らせたい」
モーリは微笑んでシーラの額にそっとキスをして囁いた。
「さあ、君も疲れたろう?ちゃんと寝巻きを着て、もう寝なさい」
「…まるで保護者ね」シーラは少し面白くなさそうな顔をして言った。
「保護者なら、あんなことはしないよ」
モーリは軽く笑いながらシーラの唇にキスをすると、彼女の寝室を出て行った。
彼が去った後、シーラは力の抜けたようにベッドに突っ伏した。
モーリを想って、止めど無い涙が彼女の頬を流れ落ちて行く…。
こんなにも苦しいだなんて…考えてもみなかった…。静かな部屋に、シーラの嗚咽が響き渡った。
397人間界での出会い45:04/01/11 20:46 ID:B7tkAzlJ
その頃、自分の部屋に戻ったモーリは深いため息をついて寝室に向かう。
あのまま、シーラの血を吸ってしまったら今頃どうなっていただろうか…?
シーラへの愛がますます深まるに連れて、抱えていた悩みがモーリの心に大きくのしかかっていった。
彼の心は既に固く決まっていた。婚約者がいようと、誰が何と言おうとシーラと結婚して、
いつまでも一緒に暮らして行くのだ…。そしてその為に自分がすべきことは…。
モーリは苦悩したが、それ以外に道はないと自分に言い聞かせる。
そう、シーラに自分の正体を明かさなければいけない。実は私は魔界から来た吸血鬼なのだと…。
彼女の美しい首筋に牙を立てて、血を吸い…そして自分と同じく吸血鬼にしてしまう―。
そうすれば、シーラは老いることもなく永遠に私と一緒にいられるのだ。
だが彼女は…私の正体を知ってショックを受けるに違いない。信じてくれるだろうか?
もしかしたら、私を拒絶するかも知れない。それでも―このまま愛しい彼女を偽り続けることは出来ない。
モーリは悩みを締め出すように頭を振ると、意を決して顔を上げた。
明日、シーラに会う時にすべてを告白しよう―
彼は休む為に、いつものようにベッドの下に隠してある棺おけを取り出した。
すると、棺おけの蓋に便箋に入った手紙が置いてあるのに気付く。
それは吸血鬼村で村長をしている父・アーサーからの手紙だった。

モーリ、約束の1ヶ月はもうすぐだ。そろそろ魔界に戻って来い。
人間界でお前の花嫁となる相手が見つかったのなら一緒に連れて来るがいい。
ただし、無条件でエトゥール家の嫁として迎えるという訳ではない。
お前も分かっていると思うが、その人間の女性を吸血鬼にしてから、というのが最低の条件だ。
嫁としてふさわしくないと私が判断した場合は、私の決めた婚約者と結婚するのだ。いいな?

                                        アーサー
手紙を読み終えると、モーリは険しい顔でそれを握り締めた。
398モーリ&シーラ作者:04/01/11 20:52 ID:B7tkAzlJ
今日はここまでです。
実はまだ全部書ききってないので次回は少し後になりそうです…。
ちなみに388は、第36話でした。失礼しました。
399名無しさん@ピンキー:04/01/12 10:20 ID:YLgjbR7I
>398
乙。
続きも楽しみにしてます。
がんばってください
400名無しさん@ピンキー:04/01/13 02:14 ID:603zA6ut
やったね!!!!
400GEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEET!!!!
401名無しさん@ピンキー :04/01/13 02:26 ID:ozKIMOWS
age保守。
大作ですね、頑張ってください。
402名無しさん@ピンキー:04/01/13 12:10 ID:+BNt0/PF
>380
私も禿しく萌えました(*´∀`*)
403名無しさん@ピンキー:04/01/15 10:51 ID:dQdIJy8y
>380
>402 禿げ同でつよ〜

ところでリレーの続きなんて皆もう忘れてる・・・?
気になってたりするのはおいらだけ?
404名無しさん@ピンキー:04/01/15 22:33 ID:WLszPcLz
どなたかココ×卓を書いていただけませんか?
このふたり好きなんです。
405名無しさん@ピンキー:04/01/19 09:59 ID:VDh/dXB8
WAOこんなスレが
一昨日から何気に読み返してみると
面白い>
とまらなくなりました。
今8巻を見終わったとこですが、
当時はとても思わなかったけど
間壁総受けと思いました。
大王×間壁
アロン×間壁
に萌えます
406名無しさん@ピンキー:04/01/20 07:24 ID:6A/UIKdD
>405
それって、ここの趣旨とは違うんじゃ・・・
407名無しさん@ピンキー:04/01/20 09:22 ID:WaITt6bY
そ・・・その前に漢字違う・・・
408名無しさん@ピンキー:04/01/20 12:32 ID:BYTF+vUc
明らかに釣り。さわやかにスルー推奨ヽ(´ー`)ノ
409名無しさん@ピンキー:04/01/20 17:27 ID:KQCtU1nb
吊じゃないです。
ホモネタを語るスレはないんですか
ここって男×女だったんですね失礼致しました。
字の間違いはわざとです。
410 名無しさん@ピンキー :04/01/20 19:24 ID:2AjbDNMH
スルー
411モーリ&シーラ作者:04/01/20 19:39 ID:ki+tm8BD
続きを書いてきました。それでは…
412人間界での出会い46:04/01/20 19:42 ID:ki+tm8BD
翌日の昼近く…ドレッサーの前でシーラはいつものようにイルサに髪を梳かしてもらっている。
最近はいつもモーリと一緒なので、朝遅くにシーラが起き出してからのわずかな時間しか
イルサと過ごす時間はない。イルサは気まずそうにシーラに切り出した。
「シーラお嬢様…、お気づきとは思いますけど、今日が人間界での最後の一日ですわ」
「イルサ…、ええ分かってるわ…」
二人の間を重い沈黙が通り過ぎる。
「―親の決めた婚約者と結婚する前に、誰かと出会ってみたいって、私言ったでしょ?」
「ええ…」
「…魔界を出てここへ向かう時は、せいぜい結婚前に羽目を外してみるんだって単純に考えてたわ。
一度でいいから、誰か素敵な人と…恋愛を楽しんで…そうして魔界に戻るつもりでいたの」
「お嬢様…」
「自分がこんなにバカだったって気付かなかったわ。そんな計画通りにうまく行く訳ないのに…。
―でも…もし出会ったのがモーリじゃなくて誰か他の人だったら…そうしたらこんなに苦しまずに
あっさりお別れできたのかしら…?」
シーラはしばらく何も言わずに目を瞑った。モーリの顔しか浮かんでこない。
誰か他の人…と仮定してみたところで、自分がその誰かに体も許してしまうほどに心を奪われたとは思えなかった。
「こんなこと考えても仕方ないわね…。モーリに出会ってみて、分かったわ。彼を忘れるなんて絶対出来ないって…」
「あの…モーリ様には、今日がお約束の日だというのを言ってあるんですか?」
「―いいえ、今日とは言っていないわ。…そのことは、あえて話さないようにしてきたの…」
413人間界での出会い47:04/01/20 19:42 ID:ki+tm8BD
シーラは目の前のドレッサーの鏡を凝視した。もちろん自分の姿は映っていない。
私は魔界人、彼は人間…。避けられようのない事実がそこにはあった。
「…お嬢様、どうなさるおつもりなんですか…?」
「……分からない。どうしたらいいのか…」
シーラは重く沈んだ心の中で思い返していた、初めて彼に抱かれた夜に言われた言葉…。
「シーラ、君をさらって行っていいかい?」というモーリの言葉を―。
一滴の涙がシーラの白い頬を伝わって落ちた。堰を切ったかのように涙が溢れ出し、止まらない。
「イルサ…私やっぱり…」
「―ここに残りたいとおっしゃるんですね?」
シーラは黙って頷く。「ごめんなさい、イルサ。私のわがままで、あなたに迷惑が…」
「いいえ、私のことなんか気になさることありません。…そんなことより…」
涙のせいで真っ赤に濡れたシーラの瞳から目をそらして言う。
「…クレリー様はきっとお嬢様を連れ戻しにいらっしゃいますわ。そうなったら、もしかすると…
いいえきっとお父様はモーリ様を…」
「…彼の命を奪ってしまうと言うの!?」
イルサは黙ってシーラを見つめた。シーラは血の気の失せた顔でソファに座り込んだ…。
414人間界での出会い48:04/01/20 19:43 ID:ki+tm8BD
その夜のモーリの部屋でのディナー。今夜は二人とも口数が少ない。
「シーラ…どうかした?」
「いいえ、あなたこそ…」
ナイフやフォークの音だけが響く。赤ワインを一口飲むと、モーリが静かに口を開いた。
「あのさ…話があるんだが―」
「…何なの?」
「考えてみると、私たちはお互いのことを本当はよく知らないよね。その、つまり出身地とか…」
「―ええ、そうね…」
シーラは彼の言葉やいつにない深刻そうな表情に、漠然とした不安を感じた。
「私の方もあまり追求されると困るから、君のことも聞かないようにしてきた。
―もちろん、君が誰であろうと私の君への愛に変わりはない。これだけは分かっていて欲しいんだ、シーラ…」
「モーリ…。ええ、私だってあなたが誰であろうと、あなたを変わらず愛してるわ」
モーリが人間だろうと、彼を愛す気持ちに変わりがないことはシーラの本心だった。
モーリはテーブルの上に置かれたシーラの手を取って、優しく握った。
「―何でいきなりこんなことを言い出すのか、不思議に思っているだろうね、シーラ…」
モーリは心なしか怯えた表情のシーラをじっと見つめて、かすかに微笑んだ後で切り出した。
「…私は…君に話さなくてはいけないことがあるんだ」
「話さなくてはいけないこと…?」
「そうだ、君にまだ本当のことを明かしてなかった。…これから言うことを…どうか落ち着いて聞いて欲しいんだ」
「モーリ…?」
彼の思いつめたような表情にシーラは改めてハッとした。こんなに重い雰囲気のモーリは初めて見る。
「―実は昨日、父から手紙が来た。帰って来るようにって言う催促の手紙だった」
二人の間に沈黙が流れた。長く重い沈黙…。
「…それで―あなたはどうするの?」
「うん。私も、このままではいけないとは思っていたんだ。君とこんな風な生活を続けたままでは…」
(…!)
シーラは耐えられずにがたっと席を立った。
415人間界での出会い49:04/01/20 19:44 ID:ki+tm8BD
「シーラ?」彼女を追う。
「あなたのお話は分かったわ。私が迷惑だって言いたいのね!」
「バカな。違うよ!最後まで話を聞かないで、すぐ早とちりするのは君の悪い癖だぞ、シーラ」
「何なのよ、お説教でもするつもりなの?…あなたなんか…あなたなんか、私の気持ちなんて全然分かっていないくせに!」
シーラは大粒の涙をポロポロ流しながら、モーリの胸を拳固で何度も叩いた。
モーリは泣き暴れる彼女を何とかなだめようと、抱き締める。
「シーラ…。ごめん、泣くなよ。落ち着いて…」
「人を夢中にさせといて、後は知らんぷりなんだわ!私一人で悩んだりして、バカみたい!」
「何を…。まさか本気で言っている訳じゃないだろう?」
「いいえ、本気よ。あなたはお忘れかも知れないけど、私は故郷に戻らなければいけないのよ!ええ、今夜よ!」
「!」
ショックを受けたモーリはシーラを更に強くぎゅっとその腕に抱き締めた。
「そんなことを言うな。私は、君をこの腕から離したくない。永遠に―」
シーラは泣きじゃくりながら、彼にしがみ付いた。
モーリはそんな彼女をあやすように、ブロンドの長い髪を撫でながら低く囁いた。
「シーラ。今、君に話そうとしてたのは、もちろん別れ話なんかじゃない。
私は君を愛している、どうしようもないくらいに…」
「………」
「少し前に私が言った言葉を覚えてる?―君をさらって行っていいかと聞いた…」
「…ええ、覚えてるわ。……そうして欲しいと思ってる」
「―本当に?」シーラの頬を両手で包み込みようにして、その青い瞳を見つめて聞く。
シーラも彼の漆黒の瞳をじっと見つめ返して、黙って深く頷いた。
「―覚悟は出来てるか?私は…君を君の家族から引き離そうとしているんだ。―もしかしたら、
二度と会えなくなるかも知れない…」
「よく分かってるわ。…でも、構わない。私は…モーリあなたと一緒にいたいの!」
二人は力の限りお互いを抱き締め、激しいキスを交わす。
416人間界での出会い50:04/01/20 19:46 ID:ki+tm8BD
「お願い、モーリ!私をどこかへ連れて行って!誰も知らない所へ…!今すぐ!」
「シーラ…。部屋に戻って、荷物をまとめるんだ。私も用意をしておく」
「ええ、分かったわ。待っててね、すぐ仕度するから!」
モーリに抱きついてキスをすると、シーラは急いで自分の部屋に戻って行った。
一人部屋に残ったモーリはふーっとため息をついた。
本当は…シーラに自分の正体を明かしてから、彼女に結婚を申し込むつもりだったのだが…。
しかし、もうそんなことも言ってられない。
父からの手紙を読んだ時に、駆け落ちは覚悟していたモーリだった。
シーラに全ての事情を説明した後で、彼女を吸血鬼村へ連れて行ったとしても、父親が彼女との結婚を
許してくれないだろうということは目に見えていた。
モーリは寝室に入って、すばやく自分の荷物を旅行用トランクの中に詰め込み始める。
するとベッドの下に隠してある棺おけの存在を思い出した。
そうだ、棺おけ…!これを持っていかない訳にはいかない!
これをシーラに何と言う?きっと、度肝を抜かすに違いない。
まだ何も説明してないのだから、いつも棺おけと一緒に旅行している奇行の持ち主が
自分の駆け落ち相手だと知って、きっとかなり引いてしまうだろうな…。
まあ、奇行の持ち主と思わせておくことも出来ない訳ではないが…と考えてみると、
モーリは自分のことながら多少の可笑しさを禁じ得なかった。
―自分が吸血鬼だと彼女に告白するのも、もう時間の問題か…と棺おけを眺めつつモーリは思った。

417人間界での出会い51:04/01/20 19:47 ID:ki+tm8BD
その頃、シーラの部屋では…
勢い良く部屋に戻って来たシーラはトランクを取り出して、ドレスやら身の回りの小物やらを急いで中に詰める。
モーリからもらった淡いブルーの手紙を大事そうに手に取っていると、イルサが続き部屋から姿を現した。
「シーラお嬢様…?お帰りのお仕度をしているんですか?」
「イルサ…。いいえ、違うわ」
シーラはイルサを見つめて言った、「私、モーリと一緒にここを出て行くの」
「お嬢様!」イルサはシーラに駆け寄った。
「ごめんなさい、イルサ。あなたには、本当に迷惑をかけてしまうわ…」
「…いいえ。お嬢様が本当にやりたいと思うことでしたら、私は反対しませんわ。このまま魔界に戻って、
お父様のお言いつけ通りにあの婚約者の方と結婚することの方が、よっぽどお嬢様らしくありませんもの」
「―私が狼人間だってこと、いずれはモーリにばれてしまうわ。…でも、今はそんなこと、どうだっていいの。
ばれたら、その時はその時よ。今はただ…彼と一緒に…お父様が追って来ない所に逃げるだけよ」
「分かりました…。お祈りしますわ、いつまでもモーリ様とお幸せに暮らして行けるように―」
「ありがとう、イルサ…」二人は目に涙を浮かべて、抱き合った。
ふとイルサが思案顔になって口を開く。
「…お嬢様、パンドラの森に住む魔女のメヴィウスをご存知ですか?」
「魔女の…メヴィウス…?いいえ。何故?」
「聞いた話によると、彼女なら、魔界人を人間にする方法を知っているらしいですわ」
「ええっ!?そんなことが出来るの?」
「ええ…。ずっと、言おうか言うまいか迷ってたんですけれど…。お嬢様のことだから、
あまり深く考えずに早まったことをなさりそうで―。でも、モーリ様へのお気持ちの強さに打たれましたわ。
お嬢様がもし彼と同じ人間になりたいと決めた時は…メヴィウスに頼めばきっと―」
シーラはじっと考えた後で微笑んで言った。
「…ありがとう。覚えておくわ」
その時、ドアをノックする音―
「あっ。きっと彼が迎えに来たんだわ。私が出るわね」
シーラはドアの方まで歩き、「モーリ?ごめんなさい、もう少し…」と言いながらドアを開ける。
その瞬間、シーラの顔は蒼白になった。
ドアの前に立っていたのはモーリではなく、彼女の父親のロナルド・クレリーだった…。
418人間界での出会い52:04/01/20 19:48 ID:ki+tm8BD
「お、お父様!?」シーラはやっとのことで、喘ぐようにそう言う。
「シーラ、久し振りだな。…どうした?顔色が悪いぞ。それに少し痩せたようだな」
クレリーは部屋の中に入って行き、イルサを見た。
普段、落ち着いている彼女まで怯えたような顔をしているのに気付き、不思議そうに聞く。
「どうしたんだ、二人とも。そんな幽霊を見たような顔をして―」
「い、いいえ…そんなことは…ただ、驚いただけですわ」
「ええ…。お迎えにいらっしゃるとは聞いていませんでしたから…」
シーラもイルサも、声の震えを止めることが出来なかった。
「うむ。もしかして、お前が結婚を嫌がって、人間界に残りたいなどとワガママを言い出すんじゃないかと思って
わしも心配だったのじゃ。魔界では結婚式の準備は着々と進んでおるしな」
「結婚式…」シーラは絶望感に打ちひしがれる。
「そうだ。まさか自分の婚約者のことを忘れた訳ではあるまい?ケンドール家の息子のことを―」
「………」何も言わずに俯くシーラ。後ろでイルサが心配そうな顔をして二人の様子を見守る。
「そう言えばシーラ、お前さっきドアを開けた時に何と言っていた?確かモーリとかいう名を口にしてたが…」
シーラはハッとして、手にしたままだった彼からの手紙をドレスの後ろに隠す。
「それは誰なんだ?まさか男ではあるまいな?…ん?その手に握っているのは何だ、見せなさい」
クレリーはシーラの手を振りほどき、握っていたブルーの手紙を取り上げて読み始めた。
次第にその手がわなわなと怒りに震え出す。
「シーラ!この手紙は何だ!まさかお前は、このモーリとかいう男と…?」
シーラは父の激昂した顔を、強い意思の宿った青い瞳で黙って見返す。
「お前…嫁入り前の身で、そんな人間の男なんかと間違いを犯したのか?おい、何とか言ったらどうなんだ!?」
「…間違いだなんて思ってないわ、お父様。私は彼を愛しているの!」
419人間界での出会い53:04/01/20 19:53 ID:ki+tm8BD
「シーラ!お前は狼人間なんだぞ!人間の男を愛して、どうなるというんだ!」
父は怒りに任せて、手紙をビリビリに破る。
「いや、やめて!」
シーラは涙声でそう叫び、必死に父から手紙を取り戻そうとするが、手紙は細かに破かれてむなしく床に散った。
力を失ったようにペタンと床に座り込み、手紙の残骸を青い顔で眺めるシーラ。イルサがそっと近寄って肩に手を置いた。
「そのモーリとかいう男はどこにいるんだ?結婚前のうちの娘をたぶらかしておいて、ただでは済まさんぞ!」
お父様はモーリ様の命を…というイルサの言葉を思い出し、シーラの心が恐怖で凍りついた。
今ここにモーリが来たら…本当に殺されてしまう!
ちょうどその時、ドアをコンコンとノックする音が響いた。シーラもイルサもはっとして、ドアの方を見る。
その怯えたような視線に気付いて、クレリーは言った。
「わしが出る。モーリという男だったら…」
「お父様、やめて!もし彼を傷つけるようなことをしたら、私は絶対許さない!」
「な、何だと…!」
「本気よ!彼が死んだら、私も一緒に死ぬわ!」
「何をバカなことを言ってるんだ、シーラ!いい加減目を覚ますんだ!お前には婚約者がいるんだぞ」
クレリーはシーラの肩を揺さぶって怒鳴った。
しばらく沈黙が部屋を重く包み込む。ノックの音はなおも響き続ける。
ドアの向こうで「シーラ」と自分を呼ぶモーリの声がかすかに聞こえてくる―。
憤然としてドアに向かうクレリー。その後ろ姿は怒りに満ちていた。
きっとこのままでは、お父様はモーリを…!
シーラは目の前が真っ暗になり、危うく気絶しそうになるのを何とか堪えて父を止めた。
420人間界での出会い53:04/01/20 20:55 ID:ki+tm8BD
「お父様!待って―」
「何だ?」
「…最後に…彼と話をさせて。そうしたら、お約束通り、私は魔界に戻ってお父様の決めた婚約者と結婚します」
「お嬢様…!」イルサは青い顔で両手で口を押さえて叫んだ。
「シーラ。そんなことを言って、そのまま逃げ出そうと言うんじゃ…」
「そんなことはしません。お願いです。これは交換条件よ。村長の息子と結婚するから、絶対に彼を傷つけたりしないで!」
父と娘はじっとお互いを見つめ合った。やがてクレリーが渋々、諦めたように重い口を開いた。
「―分かった。いいだろう…」
シーラは乱れた心を何とか落ち着けようと、深呼吸をした後でガチャとドアを開ける。
それでも、どんな顔をしてモーリに会えばいいのか分からない。一体何て言えばいいのかも分からない。
これが彼との別れになるなんて、まるで悪夢を見ているような心地だった。
夢なら覚めて欲しいとシーラは強く願った。
廊下に出て背中でドアをすばやく閉め、顔を上げるとモーリが少し心配そうな顔をして立っている―
「シーラ、仕度は出来たか?」
「…ごめんなさい…それがまだ、出来てないの」
「まだ?きっと君のことだから、ドレスをたくさん持って来過ぎたんだろう?」
モーリは少し呆れたような微笑みを浮かべながら、シーラの頬に片手で優しく触れた。
シーラは大きな彼の手に自分の両手をゆっくりと重ねて、彼のぬくもりをかみ締める。
「…ええ。だからもう少し時間をちょうだい」
「私も手伝うよ」
モーリが部屋に入ろうとするのをシーラは慌てて遮った。
「モーリ!いいえ、手伝ってもらわなくても大丈夫よ。本当にあと少しだから…」
「分かったよ。じゃあ私は部屋に戻って待ってる」
「ええ、そうして…」
421人間界での出会い55:04/01/20 20:57 ID:ki+tm8BD
モーリは彼女の唇に軽くキスをして、冗談めかして言う。
「…シーラ、どこへも行くなよ」
シーラは微笑みながら、首を横に振った。それを見て、背を向けるモーリ。
「あっ、モーリ…!」
「なんだい?」振り返る。
「…ううん、ただあなたの顔を見たかったの…」
モーリは無言で微笑んだ。その優しい黒い瞳を見て、思わず涙がこぼれそうになるのをシーラは必死で堪えて言った。
「キスして…」
モーリはシーラに近付き、しっかり抱き締めて愛しそうにゆっくりとキスをする。
「思えば初めて君にキスをしたのはこの場所だったね…。でもキスした後で、ぶたれたっけ」
「…もうぶったりしないわ…」
シーラは彼の首に両腕を強く巻きつけて、愛しい人に最後のキスをする。
ずっとこのままでいたいという願いの虚しさに胸が痛くなり、泣きそうになったので唇を離して囁いた。
「…愛してるわ、ずっと…」
「私もずっと愛してるよ、シーラ…。私たちが別れるのはこれが最後だ。これからはずっと一緒だよ」
「ええ、これが最後…」
「―じゃあ、また後で」
シーラは黙って頷き、モーリが彼の部屋に入って行くのを見送った。バタンとドアが閉じると一気に大粒の涙が流れ出した。
次から次へと新しい涙が頬を伝わりこぼれ落ちる。胸をえぐられるような痛みを感じながら、シーラは心の中で叫んでいた。
(モーリ…!!ああっ…!)
ドアを開けてイルサがそっと現れ、シーラの肩に優しく手を置いて言う。
「シーラお嬢様……もう…行かなくては…」
「イルサ!」
「―お父様がお待ちですわ」
シーラはイルサに抱えられるようにして、部屋の中へ入っていった―
422人間界での出会い56:04/01/20 21:01 ID:ki+tm8BD
部屋に戻ってからのモーリは30分程、立ったまま腕組をしながら、棺おけを眺め続けていた。
どうやってシーラに切り出そうかと、頭の中で色々考えていたのだ。
もう小細工やごまかしなどせずに、単刀直入にはっきり告白するか、それとも…?
考え過ぎて疲労を感じてソファに座り込むと、パキッと何かが割れるような音がした。
どうやらシーラが持っていた白い小さなバッグの上に座ってしまったらしい。
(これはシーラの…。何か壊してしまったかな)と思って中を開けて見る。
思った通り、バッグの中には縦に亀裂の走った小さな手鏡が…。
(後で怒られそうだな…)と思いながらそれを取り出し、かざして見たモーリに衝撃が走った。
(…自分が映っている…!何故だ…!?)
魔界人は魔界製の鏡にしか映らない。するとこの鏡は―魔界の…?
(シーラ…!もしかして君も…!?)
モーリはたまらずシーラの部屋へと戻り、ドアを何度も強くノックするが返事がない。
「シーラ!開けてくれ!…いないのか!?」
ドアには鍵がかかっていた。少し躊躇した後、魔力を使ってドアを開ける。だが中はもぬけの殻だった。
モーリは足元にブルーの紙片が散らばっているのに気付く。
拾い上げて見ると、自分がシーラに送った手紙を破ったものだと分かった。
(これは…どういうつもりなんだ!)
急いでフロントに下り、聞いてみるとシーラとイルサは30分ほど前に既に出払ったという。何の言付けもない。
モーリはそのまま夜の迫った暗い外へ飛び出してあたりを見回すが、二人の姿は見当たらなかった。
「シーラ…!どこへ…!?」
今夜、故郷に戻らなければいけない、と泣き叫んでいたシーラ。
故郷とはやはり魔界のことか…!?そうだ、あの満月の晩!
満月ということに不思議なくらい動揺していた…。そして姿を消してしまった。
―シーラ、すると君は狼人間だったのか!?
423人間界での出会い57:04/01/20 21:02 ID:ki+tm8BD
ああ、それしか考えられない。
そして私を置いて、魔界に戻って好きでもない奴と結婚すると言うのか、あの君が…!?
ふつふつと湧き上がる怒りと格闘しつつ、必死に頭の中を整理しながらまたホテルの中に戻ると、
さっきの支配人が困ったような顔で一人の紳士に説明していた。
「ですから、シーラ様方は今から半刻前にもうお立ちになったのでございます。ええ、残念ながら行き先も存じ上げません」
「そんなもういないだなんて…私とのデートの約束は―」
(何だって!?)
「おいっ、君…」
モーリがその男の肩をつかんで「どういうことだ」と言いかけて驚いた。
モーリとは親しくしているヘンリー・バークレーだった。
「や、やあ、エトゥールじゃないか。驚かせないでくれ」モーリの剣幕にたじろぎながらヘンリーは言った。
「おい、バークレー。お前、シーラと…」
「いや、勘違いするな。私がデートに誘ったのは彼女の付き添いのイルサの方だ」
モーリは「なんだ…そうか」と安堵したのも束の間、何としてもシーラを追いかけねばと思い出す。
マントを取りに急いで自分の部屋に駆け戻るモーリの後をバークレーが付いてくる。
「シーラ殿と一緒にこのホテルを立ってしまったんだよ。エトゥール、君、行き先を知っているか?」
「これから追いかけるところだ」
「じゃあ私も一緒に行くよ」
「―それは本気か?」
「ああ、もちろん。イルサを愛してるんだ」
モーリは自分の部屋の前まで来ると、じっとバークレーを見て聞いた。
「……彼女の本当の姿を知っても、その気持ちは変わらないんだな?」
「変わらない」彼はモーリを真っ直ぐに見て言った。その気持ちに嘘がないことはモーリにも見通せた。
「―じゃあ君も一緒に連れて行くが…。驚いて当然だろうが、他言はするなよ。いいな?」
「エトゥール?一体何を言っているんだ」
モーリがドアを開けると、黒いマント姿の初老の紳士が腕組をしてモーリを待っていた。
424人間界での出会い58:04/01/20 21:03 ID:ki+tm8BD
モーリと同じくらい長身で、灰色をした長い髪を首の後ろで結んでいる。
その顔には皺が刻まれているとは言え、端正で甘さがあった。
「あっ、おじい様!」
「おお、モーリ。久し振りだな」マントの男はモーリの祖父トーマスだった。
「おじい様、どうしてここに…?」
「アーサーに頼まれたのだ。わしが人間界から帰るついでに、お前も一緒に魔界へ連れてくるようにとな」
「お父様が―」
「吸血鬼村で首を長くしてお前を待っているようだぞ」
わざと作っているような厳粛な表情の下で、モーリに寄せる愛情が垣間見れる。
「人間界…!?魔界…!?吸血鬼村…!?」
モーリの後ろで影になっていたバークレーが驚いて姿を見せると、トーマスも目を丸くした。
「おお、しまった!わしとしたことが…!」両手で頭を抱えて、幾らか芝居がかったオーバーリアクション。
「ああ、気にしないで下さい。彼も連れて行って欲しいそうだから―」
「な、何だってっ!この男は人間ではないか。連れて行ける筈が…」反論するトーマスをモーリは遮った。
「彼の名はヘンリー・バークレー。バークレー、私のおじい様だ」
「―は、初めまして…。エトゥールのおじい様にしたら随分、お若いですね」
「ふふふ。いやなに、若く見えるたちでね…」若いと言われて、トーマスは満更でもなさそうにウインクした。
初老の男性にウインクされて、バークレーはいささかたじろぐ。
「安心しろ、君に迫っている訳じゃないよ。もちろん女性にしか興味ないんだから」と
バークレーに小声で説明した後で、祖父に向き合う。
425人間界での出会い59:04/01/20 21:04 ID:ki+tm8BD
「ところでおじい様、狼人間村にクレリーという一族はいますか?」
「…?うむ、確かにいるが。…モーリ、話をすり替えるんじゃない!」
「ああ、やはり思った通りだ!」モーリは喜びの表情を浮かべた後、きっと唇を結んだ。
「さあ、魔界へ急ぎましょう!」
(―おや?アーサーからは首に縄を張ってでもお前を連れてきて欲しいなどと言われておったのだが…。
何やら、やけに素直じゃないか…。元より帰り仕度は出来ているようだし。一体、どうしたんだ?)と
トーマスは不思議でならなかった。
祖父の疑問をよそに、モーリは素早く自分の黒いマントを羽織り、シーラの白いバッグを掴んだ。
バークレーは棺おけをまじまじと見ながら独り言を呟いている。
「こんな所に棺おけが…。じょ、冗談だよな…?」
「モーリ、外に迎えの馬車が来てる」
祖父の言葉を聞いて、モーリは窓に駆け寄って馬車を確認した。「あれですね?」
頷くトーマスを見た後で、視線をバークレーに移す。
「…腰を抜かすなよ」
モーリがそう言ったかと思うと、棺おけがいきなり宙を舞い、自動的に開いた窓を抜けて行った。
驚嘆の表情のバークレーが思わず窓に近寄り、身を乗り出さんばかりに棺おけの行方を目で追うと、
それが馬車の上に乗っかったのを確認した。
「エ、エトゥール!これは…どういうことだっ!?」
「暗闇で良かった。…君には馬車の中で説明するよ。付いて来るがいい」
3人は部屋を出て行った。フロントで支払をしたモーリはその額に少しばかり驚いた。
「…全く、人間界での生活は高くつくな」
3人は棺おけの待っている外の馬車に乗り込む。
手綱を取るモーリの隣にトーマスが座り、後ろの席にはバークレーと棺おけ。
426人間界での出会い60:04/01/20 21:17 ID:ki+tm8BD
「おい、一体どこに行くんだ?」とバークレー。
「ビッグベンだ。12時ちょうどに通り過ぎると魔界に行ける」
馬車は夜のロンドンの街を猛スピードで駆け出した。
「ちょっと待ってくれよ!ビッグベンを通り過ぎるってそんな無茶な…!それにさっきから言っている魔界って何なんだ!?」
「私の故郷だ。出身地は吸血鬼村―」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。君が…きゅ、吸血鬼だって言いたいのか?信じられん!」
「棺おけが飛んだのをさっき君も見ただろ?実際に魔界に行けば、信じる他はないと分かる」
「わ、私はそういうファンタジーは好きな方だよ。ブラム・ストーカーの小説だって、実は私の愛読書だったりするが…」
「なら結構。魔界には君好みの人種がうようよいるよ」
目指す時計塔まで辿り着くと、モーリはいったん馬車を止めて呟いた。
「あと3分で12時だ…」
「おい、エトゥール!無茶はよせ!死ぬつもりかっ!?」
「バカだな、死にはしないよ。タイミングを外したら、少し怪我するかも知れないが―」
「気が変になったのか!?」
「……ああ、そうだよ。おかしくなるくらい彼女に会いたい。君だってそうだろう?」
「―ああ、会いたいさ。だからこそこんな馬鹿げたことに付き合っているんじゃないか」
「じゃあ我慢して、目でも瞑ってろ」
「モーリ!時間だぞ」
「分かりました!行きましょう!」
馬がいななき、一気に馬車が走り出した。バークレーの悲鳴が轟く中を、時計塔を目指して突進する。
ちょうど時計塔の中心に突っ込んだところで、目を開けていられないほどの凄まじい光が生まれて、辺りの暗闇を包む。
「うわっ…!!!」
数秒後にバークレーが恐る恐る目を開けると、3人と棺おけを乗せた馬車は何事もなかったのかのように、
霧の深い細道を走っていた。辺りはしん…と静まり返っていて、馬の蹄の音だけが響く。
「ええっ、こ、ここは…一体どこなんだっ!?」
「―魔界さ」
427人間界での出会い61:04/01/20 21:19 ID:ki+tm8BD
霧の道を抜けて、魔界の森を抜けていく。周りの景色をあっけに取られた表情で見渡している
バークレーを観察した後、トーマスがこっそりとモーリに囁く。
「モーリ…まさかとは思うが、人間界でいろいろ結婚相手を物色した挙句、女性に飽きて
結局決めた相手というのが…あの青年ではあるまいな?」
「ぶっ、何をっ…!おじい様、お願いだから変な想像は止めて下さい!
彼は好きな女を追っているんですよ」
「―魔界人のか?」
「そう、私もです。誤解が無いように言っておきますけど、別々の女性をです」
「何だって!女性を追っているって、モーリ!お前結婚する為に吸血鬼村に帰るんじゃないのか!?」
モーリは黙って手綱を早める。
「…アーサーの決めたお前の婚約者だが、なかなかの美女じゃないか。このわしが代わりに頂きたいくらいだ」
「でも、あいにくと私のタイプじゃないんですよ」
「全く、好みがうるさいんだな、お前は。…誰の血を受け継いだんだろうね…」
トーマスは独り言のようにぼそっと呟いた後で、思い出したように孫に訊ねる。
「―お前の追っている女というのは、さっき聞いていた狼人間村のクレリー家と何か関係があるんだな?」
「さすがに鋭いですね…あの家の女性は美人揃いでしょう?」
「ふむ…そう言えば昔、ララ・クレリーという美女がいたっけな…」
トーマスは懐かしそうに遠い目をした。
「そのララさんは見事なブロンドでした?」
「おお、それはもう…ん?何故それを?」
「勘ですよ。―その孫娘の名前を知っていますか?」
「そう言えば…確かシーラ、とか…」
「とんでもないはねっ返りだけど、彼女もとびきり魅力的な美女なのを知ってますか?」
「モーリ…?お前まさかっ…!」
「…しゃべり過ぎたかな」
馬車が吸血鬼村の入り口を通り過ぎて、そのすぐ側のエトゥール家の広大な屋敷の前に着くとトーマスが言った。
「何だ、お前。やっぱり家に帰るんじゃないか」
「ええ、一応。まずは作戦を練らないと…。おじい様にも、もしかしたら知恵を借りるかも知れませんけど―」
「おう、知恵者トーマスを忘れんでくれ給え」
428モーリ&シーラ作者:04/01/20 21:23 ID:ki+tm8BD
という訳で今日はここまでです。長々とすみません。
次回で一応、完結するよう目指してるんですが。
人間界→魔界への行き方にはどうかあまり突っ込まないで下さい。
苦心の末に、ビッグベン…。(汗)
どうもトーマス君が登場すると、タッチがコメディー調になっちゃう…
429名無しさん@ピンキー:04/01/21 01:29 ID:7XUrI3Sq
>モー&シー作者タソ
毎度乙彼〜&GJ!!
それにしても、ものすごい超大作になってきたな…
このスレの歴史始まって最長になってるかも…
(新婚タソシリーズ除いて、だけどね)
430名無しさん@ピンキー:04/01/24 16:44 ID:2L2I9AsH
会話だけで進めるのって…
431名無しさん@ピンキー:04/01/24 17:37 ID:Mv9j1sdI
台本の台詞部分だけみたいだね
ト書きが無い・・・
432名無しさん@ピンキー:04/01/24 19:14 ID:cXDtYBd8
なんか台本読んでるみたいで萎え<会話のみ
433名無しさん@ピンキー:04/01/24 19:52 ID:NzXFE3RM
改行で間を取らないとか文末が独特の言い回しだなとかも
思ったけどこれがモーシー作者さんの特徴だから
わざわざ貶める事書かなくてもいいんじゃない。

自分の好みに合わなかったらスルー最強
434名無しさん@ピンキー:04/01/25 11:21 ID:D5f1h9nf
133 名前:名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! 投稿日:04/01/24 21:36 ID:JTT+074x
おまいらこれでも試してみてもちつけ。


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("「","<br>   ∩___∩<br>   | ノ      ヽ<br>  /  ●   ● |   ","。?」","クマー<br>   |    ( _●_)  ミ<br> 彡、   |∪|  、`\
<br>/ __  ヽノ /´>  )<br>(___)   / (_/<br> |       /<br> |  /\ \<br>  | /    )  )<br> ∪    (  \<br>       \_)<br>")
;i=0;while(i<AA.length){r=RegExp(AA[i],"g");A=A.replace(r,AA[i+1]);i+=2;}d.innerHTML=A;focus(0);

3.リターンキーを押すと・・・
435名無しさん@ピンキー:04/01/25 18:53 ID:IuBBQXus
age
436名無しさん@ピンキー:04/01/26 00:19 ID:YudX4h8F
>>434
ワロタ。
このスレがエライことになるなぁ。
437名無しさん@ピンキー:04/01/29 02:43 ID:g61W8goT
モー&シー好きだけどなぁ。
漏れは会話だけでも気にならない。
と、いうわけで続きキボン!!
新作もキボン!
438名無しさん@ピンキー:04/01/29 11:13 ID:3piDuMCx
>>437
禿げどう!
最近スレが淋しいよね
439モーリ&シーラ作者:04/02/01 15:21 ID:+g+dqCdr
そう言われてみれば、私の書いてるのって会話中心ですね。
あんまり考えてなかった・・・。
でもこんな私の作品でも、興味持ってくれる方がいて、嬉しいです。
という訳で、続きをどうぞ。今回は少しだけですが。
440人間界での出会い62:04/02/01 15:22 ID:+g+dqCdr
魔界の実家のシーラの部屋で…
純白のウェディングドレスの仮縫いをちょうど終え、シーラは深いため息をついた。
意に添わぬ相手との結婚がいよいよ現実味を帯びてきた。
父の命令で、結婚式を早めることになったのだ。
早速明日は、狼人間村だけでなく、魔界中の各種族の代表者たちをも招いて、
婚約発表のための祝宴をこの家で開く予定になっている。
そして1週間後にはいよいよ結婚式―。

3日前のあの日…人間界から魔界の屋敷に戻ってみると、婚約者のハワード・ケンドールがシーラを待ち構えていた。
どんな顔をしていたのかさえ思い出せなかったシーラにとっては、彼は見知らぬ他人以外の何者でもなかった。
これからの長い人生を、私はこの人と共に過ごして行くの…?何の魅力も感じない人と…?
モーリの命を守る為に父と約束したこととは言え、これからの生活を思うとシーラはどうしても耐えられなかった。
モーリ…。
彼のキスや抱擁、そして胸を焦がすような愛の行為が恋しくて仕方なかった。
特に夜…ひんやりとしたベッドに一人で横たわって眠れぬ夜を過ごしながら、ひたすら彼のことを想った。
自分の隣にいるはずの人。
シーラは改めて気付いた。モーリの腕に優しく抱き締められて眠るのに、いかに自分が慣れてしまっていたかを…。
本当に…彼にはもう二度と会えない―。それは分かりきっていることだった。
彼と最後のキスを交わした時に、それは覚悟していたことだった。それでも―。
441人間界での出会い63:04/02/01 15:23 ID:+g+dqCdr
シーラはドレッサーの前に力無く座りこむと、その引出しの中から、父に破かれたモーリからの手紙の破片を取り出した。
彼との想い出の品と言えば、これしかなかった。
ホテルの部屋を発つ時に、父に気付かれぬようにそっと拾い上げた手紙の一片…。
大切そうに手に取ってじっと眺めた後で、傍らでヴェールに刺繍をしているイルサに静かに言った。
「イルサ…。人間界って…面白いところだったわね…」
「…ええ、お嬢様…」
「私…モーリに出会えたこと、本当に良かったと思ってるわ」
「―こうして、別れることになってもですか?」
「ええ…一生忘れない。あの人を愛して、愛された…それだけが宝物…」
寂しげな微笑みがシーラの顔に浮かんで消えた。
そのあまりにつらそうな様子に、イルサは何も言えなかった。
「でも…モーリはきっと、裏切った私のことを許してはくれないわね。何て女だろうって思ったに違いないわ。
私は何も説明せずに、駆け落ちの約束を破って彼から逃げたのだから―」
「お嬢様…でもあの場合、ああするより他に仕方ありませんでしたわ。
お父様は、本当にモーリ様の命をあの場で奪ってしまわれる勢いでしたもの…」
あの時の恐怖を思い出してシーラは思わず目を瞑った。
自分たちが入り込んだのは、19世紀後半、1880年代くらいのイギリスだった。
モーリはあの時30歳と言っていたから……今はもう……。
シーラは、少しの間を置いた後かみしめるように静かに言った。
「もう…あの人は…この世にはいないのよね…」
「そうですわね…」
「…モーリ・エトゥール…あの人は、あの後どんな人生を送ったのかしら…。
誰か素敵な女性と結婚して、可愛い子供達に囲まれて幸せに暮らしたのかしら…?」
442人間界での出会い64:04/02/01 15:24 ID:+g+dqCdr
シーラが溢れる涙をハンカチで拭いながら、独り言のように呟くと、イルサははっとした表情を浮かべた。
「え、エトゥール様とおっしゃるのですか?」
「―そうよ、モーリ・エトゥールというのが彼の名前…イルサ、どうかした?」
珍しく動揺しているイルサを心配して、シーラは訊ねた。
「いえ…ただあの、エトゥールという名を魔界で聞いたことがあるものですから」
「えっ、魔界で…!?…で、でも同じ名前なら人間界にでも―」
「ええ、そうなんですけれど…」
「イルサ、教えて!それはどんな種族の村のことなの?」
「―吸血鬼村ですわ」
「吸血鬼…!」
「ええ。…昔、私の従姉妹がエトゥールという名のプレイボーイの吸血鬼に言い寄られたことがあって…
もう100年も前の話になりますわ…」
シーラは慌ててイルサを遮った。
「ちょっと待って!まさかそれがモーリのことだと言うのっ!?」
「いいえ、確かトーマスという名でした。ハンサムな方だったので、覚えていたんですけれど…。
モーリ様はその方にどこか似ていらっしゃるんです。初めにモーリ様のお顔を見たときから、
ずっと誰かに似ていらっしゃると思っていたのですが、今エトゥールという名を聞いてやっと思い出しましたわ」
「……つまりモーリも魔界人だと言うの!?吸血鬼で、そのトーマス・エトゥールさんの家族か何かだって!?」
「…ええ。何だか私にはそう思えますわ。何か吸血鬼らしい点にお気づきになりましたか!?」
シーラは少し考え込んだ後で、呆然とした表情で呟いた。
「―そう言えば…彼、日光アレルギーだって言ってたわ…」
「えっ、本当ですか!?日光に弱いって、それはあまりにも吸血鬼的…」
443人間界での出会い65:04/02/01 15:24 ID:+g+dqCdr
「実際にそうだったのよ!一緒に散歩しに行った時、急に日の照ってきたことがあって、本当に苦しそうにしてたわ…。
…それに思い出したくないことだけど、舞踏会で見つけた時、彼は女性の首筋にキスをしているところだった…。
あれは―もしかして血を吸うところだったのかしら?」
「…そうかも知れませんね」
「あと…私たちがその…一緒に夜を過ごした時、いつも明け方近くになると自分の部屋に戻ってしまったのよ―」
「まあ…それはきっと棺おけに戻る為に…。人間界の朝日を浴びたら、灰になってしまいますもの」
「―私ったら、何で気付かなかったの!?」
「お嬢様…」
「イルサ!確かめなくては…!私、今から吸血鬼村に行ってくるわ!」
そう言ってイルサの手を掴んだシーラの顔に生気が蘇る。
その時、部屋をノックする音。イルサがドアを開けると、若い小間使いが包みを手にして立っていた。
「あの…シーラお嬢様にお届け物です」
すばやく小間使いに駆け寄って、その品を受取り、中を開けるとシーラの胸に衝撃が走った。
それは金のチェーンのついた白い小さなバッグ。自分が人間界に持って行って、使っていたものだ。
今思い起こしてみると、人間界での最後の夜にモーリの部屋に置き忘れたままのはずだった―。
するとモーリがこれを…!?
「私のバッグ…!―あなた、これを届けに来た人を見た!?」
「あ、はい…。私が直接その方から受取りました」
「ど、どんな人だった!?」シーラの心は(もしかして…)という期待ではちきれんばかりに膨らむ。
「あの…背が高くてハンサムな…身なりのいい…」
「きっとモーリよ!」そこまで聞いてシーラは歓喜のあまり叫んだ。
小間使いは言葉を続けた。「…初老の紳士、って感じの方でした」
444人間界での出会い66:04/02/01 15:28 ID:+g+dqCdr
「えっ、初老…?」シーラもイルサも顔を見合わせる。
「はい。灰色の長い髪を、後ろでリボンで束ねた…」
「違うわ、モーリじゃない…!どういうこと…?」
シーラはもう訳が分からなかった。絶対、モーリだと思ったのに…。彼でなければ一体誰が…!?
「それで、その方はどこへ?」イルサは落ち着きを取り戻して聞く。
「それが、バッグを渡すとすぐにコウモリになって飛んで行ってしまいました。吸血鬼だったようです―」
「吸血鬼!」シーラは両手で口を押さえた。
「お嬢様!その方が今私が言ってたトーマス・エトゥール様ですわ!
―その方、あなたにバッグを渡しただけでなくて、何かしたでしょう?」
「えっ、あの…そんな、どうして…」小間使いは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「別に怒らないから正直におっしゃい。ちょっかいを出されたのね?」
「あ、はい…。バラの蕾のような唇をしているねと言われて、気がついたら、唇を奪われて―」
「きっとそれはトーマス様ですわ!私の従姉妹の時と同じ手口ですもの!」
「ちょ、ちょっと待って、イルサ。つまりこういうこと?このバッグを届けに来たのはトーマス・エトゥールさん
と言う吸血鬼で、その人はモーリの家族で…そしてモーリは今、この魔界のどこかに来てる…?」
「ええ、お嬢様を追って―!」
二人の真剣な様子に驚きつつ、部屋を下がろうとした小間使いは急に思い出して言った。
「あ、言い忘れてました。そのバッグの中にお嬢様へのお手紙が入っているとかおっしゃってました」
「えっ!」
シーラは慌ててバッグを開ける。言われた通り、中には手紙が入っていた。
あの破かれた手紙と同じく淡いブルーの紙で、同じ香水の匂いが微かにした―
清々しくて、魅惑的な香り…それは愛しいモーリの香りだった。
震える手で手紙を読み始める。
445モーリ&シーラ作者:04/02/01 15:32 ID:+g+dqCdr
・・・ということで、今回はシーラがモーリの正体に
気づき初めたところで、次回へ続かせて頂きます。
まだ完結してません(汗)
446いたずら?:04/02/02 02:16 ID:NgiYvEA7
  初投稿です。お目汚しすみません。 
 いろいろ指摘していただけると嬉しいです。では
 
 さらさらの長い黒髪に指をからめ、そっと耳元で囁いてみた。
 「江藤、おい、江藤起きろ・・・」
 彼女の反応はなくすやすやと寝息をたてている。
 細い黒髪は指の間をすべり落ちるばかり

 そっと、肩をゆすりもう一度囁く、
 「むにゃ・・ むにゃ・・まかべ・・く・ん  もっと・・・・・・」 
 目を閉じたまま 彼女は呟く
 (おきたか?)一瞬そう思ったがまだ眠っているみたいだ。

 「もっと、なに?」髪を触りながらそう尋ねてみた。
 「・・・・・し・・て・・・・ す・・き」
 笑みを浮かべそのまままた寝息を立て始めたんだ。
 髪のすきまからのぞくその細い首筋に
 赤いしるし・・俊の所有の証が見えた。


 
447 いたずら? つづき:04/02/02 02:27 ID:NgiYvEA7
 (つっっっ・・・蘭世ちゃん。「もっと、して」って )僕は顔が真っ赤になった。
 (俊いつもナニやってんだ それにしても無防備すぎるー )
 ちょっと俊が気の毒になった。
 これじゃ おちおち目が離せないよな

 殺風景な俊の部屋。こたつの上にはみかんと蘭世チャンの寝顔
 ちょっとしたいたずらのつもりだったんだ
 蘭世ちゃんの反応がみたくて・・・
 僕と俊の声は似てるし、俊の声真似は得意なんだ
 だけど、こんなこと俊には秘密だよ
 僕 殺されちゃう                                                                
 蘭世ちゃんと二人今日は留守番だった。
 本当はフィラもいるはずだったんだけど喧嘩しちゃって・・・
 俊はすごいや 好きな娘にあんな顔させろことができて
 僕はフィラにあんな顔させることができていたかな
 もう一度 フィラにあやまってみよう                     おしまい

  
エロがなくてすみません 力不足で恥ずかしいです。
長いこと原作を読んでいないので 
アロンのフィアンセの名前ちがってたらごめんなさい
最後の8行が蛇足だったかなあと思いながら・・・
俊が アロンと二人にはしないかなと思ってみたりしました。

 今までROM専で神々の力作に萌えさせていただきました。ありがとうございました。
 


 
448446−447です:04/02/02 02:29 ID:NgiYvEA7
 sage忘れてしまいました
 ごめんなさい
449名無しさん@ピンキー:04/02/02 15:02 ID:CAq6BERl
>446-447
乙!
エロなしもいいですよ。
アロン萌え〜。
450名無しさん@ピンキー :04/02/03 22:10 ID:0kbtymC/

私もアロン萌え〜(゚∀゚)
451sage:04/02/04 17:09 ID:3jyXHyM4
『Doll』


意識があるのに声が出せない
目を開けているのに視線が動かせない

あなたに包まれ
お互いの肌のぬくもり




いつの頃から真壁くんが私に対してそういう気持ちを
静かに・・・そして深く想っていることに気が付いた
それから私も意識するようになってしまった
彼の表情 汗をふき取るしぐさ まっすぐな視線


昨夜のキスの余韻
彼のアパートに朝迎えにいくときも心臓が高鳴る
ばかばか蘭世・・・真壁くんに変に思われちゃう
心を落ち着かせて軽くドアをノックする
ドアを開けた彼の姿は制服のズボンにワイシャツ
すべてボタンが外れてたくましい彼の裸の胸が覗く
部活中だってもう何度か目にしているじゃない・・・
顔を赤くしてもじもじしてると彼が異変に気が付く
いつもならかるくジョーダンでかわされるのに・・・
すごく真剣な眼差し
動けない
452名無しさん@ピンキー:04/02/04 17:12 ID:3jyXHyM4
sageゴメン・・・
間違えた・・。

手首をつかまれ中に引き寄せられる
靴もバラバラに脱げ 遠くのほうでドアが閉まる音がした
まだ彼の体温が残っているお布団
ちょっと荒々しくそのまま寝かされた

何も言えない 目も閉じられない

そっと手のひらが瞼にかぶさる
「目・・・閉じろよ・・・」
言われてやっと体の呪縛が解ける
と同時にすごい勢いで湧き上がってきた羞恥で頭が混乱する
支離滅裂なことを考えていると彼の唇が降りてきた
昨夜のキス  もっと深いキス

「ふっ」
と声に出さず穏やかでやさしい笑顔があった
恥ずかしくて恥ずかしくて目を背けたいのに彼の瞳に捕らわれる
しばらく見つめあってちゃんと彼の想いを受け止められたから
今度は私から目を閉じた

オワリ
453名無しさん@ピンキー:04/02/05 05:07 ID:AH+pPeLt
>>451-452
乙〜!
何かきれいな文章ですね。
詩っぽい雰囲気もある。
454名無しさん@ピンキー:04/02/05 10:17 ID:GN65hCQD
sageゴメン・・・
間違えた・・。

を、違和感なく本文の一部として読んでしまったw
455名無しさん@ピンキー:04/02/05 10:36 ID:Ssl166Rj

おもしろい

で、>>451乙!
濡れも続きたいー!
456名無しさん@ピンキー:04/02/05 15:16 ID:ZfRI7DeG
>>455
続くべし! まってるよん
457名無しさん@ピンキー:04/02/07 17:39 ID:GFhY/h0J
初投稿でつ。よろしくお願いしまつ。

蘭世タンの新婚時代のとある一夜のできごと。
(あらかじめ説明しないとわからないとわねえ)
しかももひとつ設定前置きさせてください。
※ わたし=蘭世  あなた=真壁くん
(「あなた」か「真壁くん」か迷いました〜。とりあえずこれで)
458夢のつづき1:04/02/07 17:44 ID:GFhY/h0J
(……んっ……)
深く眠ってたわたしをゆり起こしたのは、……快感だった。
一本の糸みたいにかすかな――だけど、痺れるほど甘い。
からだが芯からきゅんと鳴いた。
(ああっ)
あなた…なのね?
やわらかい舌で、やさしく、わたしの入り口を開こうとしてる。
抱きしめたい、応えたいのに。
わたしは、指先を動かすこともできなかった。
湖の底にひっそりとたたずむ、小さな水草になった気分。
あなたという水に愛撫されながら、ただ身をまかせることしか
できないの……
まぶたすら重たくてあけられない。
でも天上はるかかなたから差しこむ金色の輝きが、淡く、
わたしたちを照らしてるのは感じる。まるで水底のちっぽけな
水草を愛しんでくれてるみたいに。
(……あ…はぁっ)
わたしの、あなたを受け入れるための扉が蕩けていく。
あなたはいつもそう、時間をかけて、わたしを開いてくれる。
そして十分に湿ったわたしに、熱く濡れたあなたが、そっと
分け入ってくる。
(――あ!)
自由にならないからだで、わたしはかすかにのけぞった。
どうしよう、こんなの、初めて。
いきなりすごく感じてしまってる。
あなたが、胸の奥まで入りこんでくるみたい……っ
(あ、あっ……あんっ)
苦しい。からだじゅう、爪先までせつないよ。
涙がとめどなく頬を伝った。
459夢のつづき2:04/02/07 17:47 ID:GFhY/h0J
『ランゼ』
(……はい……)
『ありがとう』
(――え?)
『きみとひとつになることができた』
って、ちょっと待って。この声、あなたのじゃない!?
「――だれっ」
自分の声で、わたしは目が覚めた。
夢だったんだ……
でも、だったらなんで、あなたじゃないひとが出てきたんだろ…
「蘭世」
「! はいっ」
今度はまちがいなくあなたの声。
暗がりに目を凝らす。あなたは半身を起こして、わたしの顔を
のぞきこんでた。厳しい表情で――
(まっ、まっ、まさか!)
わたしのいまの夢、読まれてた?!
髪の毛が逆立ち、心臓が爆発しそうになる。
恥ずかしいっ。
頭から布団をかぶって、あなたの視線から顔をそむけた。
なんてやつだってあきれられたね。ううん、こんないやらしい女
もうごめんだよって思われちゃったよ。そんでもって、わたし、
離婚されちゃうんだ――!
「――おい」
あなたの大きな手に肩を包まれた。
「おまえのその棒高跳び的に飛躍する思考には、いい加減慣れた
 けどな」
苦笑とともに肩をなでられる。
全身のこわばりがほどけていった。
460夢のつづき3:04/02/07 17:51 ID:GFhY/h0J
その手はわたしの顔にもふれた。
温かい手のひらが、涙で冷たくなった頬に止まった。
(わたし、ほんとに泣いてたんだ……)
「……カルロが」
「?」
「カルロの魂が降りてきて、おまえのなかに収まったようだ」
「ええ!」
びっくりして、寝返りを打つみたいにふりかえった。
「そっ、それって、わたしが、カルロ様の生まれ変わりを
 授かるってこと?」
あなたと目が合って、またズキンと鼓動が跳ね上がる。
「そんな神聖なことなのに……っ」
(よりによって、あんな夢、見ちゃうなんて)
ぎゅっと固く目を閉じた。穴があったら入りたいどころじゃない
よ。いまこの瞬間に、あなたのまえから消えてしまいたい。
ああ、わたしに、テレポートできる力があればいいのに!
「そうじゃねえって」
「…あっ」
わたしは、引き締まったあなたの腕に抱きしめられてた。
「おまえのせいじゃねえよ。
 あいつが――おれがおまえのなかに入ったと、眠ってたおまえ
 に勘違いさせたのが悪いんだ」
ネグリジェをたくしあげられ、下着のなかに指を差しこまれた。
あなたにまさぐられたそこは、乾いてた。
ほっとする。
そう、たしかに、わたしはほかの感覚は知らない。
あなたという、わたしではないべつの存在を――魂を、この身の
奥深くに受け止めるときの、感覚。
そのつらさも喜びもなにもかも、あなたに教えてもらったもの……
あなただけに……
461夢のつづき4:04/02/07 17:54 ID:GFhY/h0J
「あ……ん」
力強い長い指にいじられてるうちに、そこは熱を帯びて湿って
きた。あなたのつぶやきが唇にふりかかる。
「くそ、カルロのやつ、煽りやがって」
唇を唇でふさがれた。舌がすべりこんでくる。
もう片方の手に、ネグリジェごと胸をもみしだかれる。
こんなに激しく求められるのは初めてで、どうしていいのか
わからない。
荒々しい波に呑みこまれた、小さなちいさな水草のわたし――
熱いささやきを耳朶にふきこまれた。
「きつかったら、勘弁な。
 今夜だけだ。
 ――あいつより感じさせなきゃ、収まらねえから」

                          おわり
462名無しさん@ピンキー:04/02/07 23:31 ID:vbov3T/Z
まっきゃべくんがやきもち焼いてる!
柔らかい文章よかったです。

棒高跳びにワロタ
463名無しさん@ピンキー:04/02/08 10:31 ID:ZsY0d5Ei
うん
棒高跳び的>ワロタ
夢の作者サマ、よかったです!
464名無しさん@ピンキー:04/02/11 00:54 ID:EKKe65VJ
>>462,>>463
レスありがとうございます。
短いとはいえ王道すぎるシチュエーションで、
投下したあとわれに返りびびってました…(遅

というわけでいまは隙間ネタ?ココ卓書いてます。
卓の誕生日に投下できればよいなと思います。   「夢の」書いたもの
465名無しさん@ピンキー:04/02/11 02:21 ID:oivaiZmL
ココ卓(・∀・)イイ!!
楽しみにしてます。
466名無しさん@ピンキー:04/02/11 07:13 ID:4tengWPZ
>464
乙!!王道すぎOKOK(・∀・)b
ここのスレではおんなじシチュでどこまで違う萌えを追求できるかどうか、
というのも非常に大事な楽しみ方だとオイラは思ってるので、これからも
ガンガって書いちくれ☆
今後、おぬしのコテハンが「夢作者」になることをちょっとばかり妄想
してしまつた(w
過去の神々のコテみてても、タイトルからついた人多いからね。
(新婚タソとか、わるタソとか、蝶タソとか…)
ヽ(´Д`;)ノはぁぁぁぁぁぁ〜みんな最近どうしてるのやら…

467名無しさん@ピンキー:04/02/11 11:30 ID:C+GpDE5N
そだね〜
わるタソとか蝶タソとか・・・ご無沙汰しちゃってるなぁ・・・
つか、リレーはやはり立ち消え・・・?

>夢作者タソ(早くも
卓ココ待ってますよ〜
468名無しさん@ピンキー:04/02/12 20:12 ID:m99wwv9q
モーリとシーラの駆け落ち話の続きも、待ってます〜
469名無しさん@ピンキー:04/02/12 23:33 ID:gDR3+4X1
どなたかバレンタインネタを〜。
470名無しさん@ピンキー:04/02/13 12:59 ID:Akw9G6WA
>>469タソのリクエストにお応えして…
11レスお借りします!

わたしも王道過ぎるよ(断言)
ダメな方はスルーを
471more sweet 1:04/02/13 13:02 ID:Akw9G6WA
受け取ってくれるかな…
ボクサーにチョコだなんて、あんまりだけど。せっかくのこの日。
真壁くんでも、喜んでくれるかな?

中身は小さなチョコが、3つだけ。
たとえ、食べてもらえなくてもいいの。

と少しばかり不安に感じていても、心は浮かれている。
ぶっきらぼうに受け取る彼の姿が目に浮かぶ。

「はやくなーれ。放課後!!」
にんまり微笑んで口に出したのがまずかった。
今はまだ、世界史の授業中!

「江藤さん!チョコ没収!!」

神谷さんが、今までの最高の笑顔で微笑んでいる。

最悪。
わたしのチョコは、お局先生の引き出しに捕まってしまったのだ!
472more sweet 2:04/02/13 13:02 ID:Akw9G6WA
『チョコ救出大作戦』

心だけは迷彩服を着て、作戦決行!
ちょっとは緊張しているけど大丈夫。わたしは魔界人だもん!
えっへっへ。禁断の手を使っちゃいます。

どうせ変身するなら、一番の美人の先生よね♪

保健室。擁護教員の先生は、男子の憧れの的。
優しくて、美人で。お化粧が濃いのは、女生徒受けはしないけど、男の子にはたまらない魅力みたい。

思ったより簡単に、わたしは、グラマラスな先生の体を、手に入れた。
本物の先生は、ベッドにお休みお願いした。
まず保健室の大きい鏡に、自分の(先生の)全身を写し、しばらくうっとりした。

おっといかん。
任務を遂行せねば。
昼休みが終わった、わたしは人影のまばらな職員室へ向かおうと、保健室を出ようとした。
その時、乱暴に扉が開いた。

真壁くんだった。
473more sweet 3:04/02/13 13:03 ID:Akw9G6WA
数人の生徒が、真壁くんを連れてきた。
「こんな傷たいしたことねーって」
「いいから、手当てしてもらえって」

「どこ怪我したの!真壁くん!…あっ」
わたしはすっかり素に戻って、真壁くんを心配してしまった。
真壁くんも他の男たちも、ビックリしている。

真壁くんは思考読むこともしていない。変身していると考えが通じにくいのかな。

男たちはひいきの先生(わたし)に、うれしそうに真壁くんをいすに座らせた。
擦り傷は肘。真壁くんには、こんな傷、何ともないよね。
一応の手当てをする。ただ消毒してバンソウコウを貼るだけどね。
違う人の体を通して真壁くんに、触れること…とても違和感があった。
真壁くんの肌の温度。
真壁くんも感じているのだろうか、先生と思っている人の肌を。

「……」

いやだよ…。
他の人を感じないで。
474more sweet 4:04/02/13 13:04 ID:Akw9G6WA
不器用なわたしの手つきを疑うことなく、男の子たちは、わたしに聞いてきた。
「せんせー、チョコ上げる人決まってるの?」
「やっぱし、恋人いるんでしょー、どんな人なんですか?」

ちらっと真壁くんを盗み見た。
興味がないようで、聞き耳を立てているようで。どっちなの?

「…真壁くんなんて、タイプだなー」
先生を気取って言ってみた。真壁くんを試してるかも。

男たちは「げー」「うそーぉ」とか、大げさにひがむ。
真壁くんは、少し顔を赤らめていた。
「ばっ…、からかうな!」
あきらかに照れて、でも嫌そうではなかった。

「先生からチョコもらえるかもー真壁ー!!」「ちっきしょー」

…真壁くんは、うれしそうに見えた。
475more sweet 5:04/02/13 13:05 ID:Akw9G6WA
真壁くんだって、大人の女に憧れているのかしら。
魅力的な先生に、軽くからかわれただけで、焦ったような態度を取る。

わたしは、あまりにも子供で、鏡の中の姿とギャップがありすぎる。

気付くと、わたしはとぼとぼと、ろうかを歩いていた。
いつの間にか取り返したチョコが、わたしの手の中にある。

このまま先生の姿で、チョコを渡したほうが真壁くんは喜ぶのかもしれない。
偶然は意地悪くその思考に沿うように、起きる。

曲がった廊下から、真壁くんが出てきた。
一見素っ気無く「さっきはどーも」と言ってすれ違う。

「待って!真壁くん」
振り返ってわたしは、真壁くんを呼び止める。
476more sweet 6:04/02/13 13:05 ID:Akw9G6WA
「なんですか?」
真壁くんが気付いた、わたしの手の中に包みを前に差し出す。
「これ、あげる」

冗談ぽく一回息を吐いて、真壁くんは首を振る。
「からかうなよ。先公のくせに」
わたしはむきになってしまう。
先生じゃなかったらいいの?受け取るの?す、好きになるの?
「ほ、本命チョコよ!うれしくないの!?」

傲慢な言い方になってしまったけど、本気でそう思う。
こんな魅力的な先生から、告白されて、真壁くんの気持ちが動かないわけないもの。
477more sweet 7:04/02/13 13:06 ID:Akw9G6WA
「うれしくねえな」
真壁くんはボソリつぶやいた。

「嘘!強がりばかり。真壁くんも、チョコ何個もらったとか、自慢するでしょ」
真壁くんは、ますますむきなるわたしに冷めた目を流し、先に歩こうとする。
わたしは、真壁くんの行く手を遮って、立ちはだかった。
文句ありありのわたし似、真壁くんは重そうに口を開く。

「ただでさえ摂生してるのに、もらうチョコはひとつで十分だ!」
「なにそれ?先着順ってこと?…じゃあ、誰かにもうもらったのね?」

ため息は真壁くんの不機嫌を物語る。それでも先を話してくれた。
「…好きな奴のしかいらねえっつーの!!」
478more sweet 8:04/02/13 13:09 ID:Akw9G6WA
放課後の教室。
見事な夕焼けが、教室を赤く染めている。
わたしは、ぼんやり空模様を眺めていた。
チョコの包みが、わたしの机の上に行き場を無くしているように置かれている。

真壁くんはわたしのチョコを受け取ってくれる?
たったひとつしか、受け取らないって。…私だと思っていいの?

廊下に足音が聞こえる。
わたしはいまさら、こんな時間に気付き慌て立ち上がった。

足音の主は、わたしが今会いに行こうとしてる人。
479more sweet 9:04/02/13 13:10 ID:Akw9G6WA
「何やってんだ?部も終わったぜ」
素っ気無い低音が、妙にわたしの涙腺を刺激する。
「あ、ごめんなさい!…なんでもないの!もう帰るところなの」
急いで、かばんを手に真壁くんの横に並ぶ。

「…忘れ物」
真壁くんは先に廊下に出た、わたしに指摘する。
机の上に置かれているわたしの想いの化身。
忘れる私もどうかしているけど。

取りに戻ろうとしたわたしの腕を、真壁くんはきつく掴む。
「アレ俺のか?」
「あたりまえだよぉ!…もしかして、真壁くん他の誰かからもらった?」
「…待ってたからな!」
480more sweet 11:04/02/13 13:12 ID:Akw9G6WA
わたしの想いを伝えるチョコレートは、その役を果たさない。
赤く照らされた教室で、それはわたしたちを見守る。
愛を伝えるくちびるから、言葉はでない。
ただ、触れ合っている温かさで伝えよう。
真壁くんのくちびるで、わたしは溶かされる。伝わるよね?わたしの想い。

大好きよ…。真壁くん。
481more sweet 10:04/02/13 13:13 ID:Akw9G6WA
「わたしのを…?」
真壁くんは照れくさそうに軽く俯いた。
「おまえ、おせーよ」
真壁くんらしくない焦りとか、弱さを見たようでわたしは泣きそうだ。
わざとそんな面を言葉に出して伝えてくれた真壁くんが、うれしい。
「甘いもの入る腹のすきは、小せーからな。おまえので十分だ」
わたしたちは微笑み合った。

「待ってて取ってくる」
真壁くんはわたしの腕を解いてくれない。不思議に真壁くんを見上げると、彼の顔が近づいてくる。
「…チョコは後からでいいよ」
482名無しさん@ピンキー:04/02/13 13:15 ID:Akw9G6WA
↑間違えた。
許してくんろ
483more sweet 12:04/02/13 13:18 ID:Akw9G6WA

数分後、渡されたチョコを見て、真壁くんはつぶやいた。
「…見覚えるぜ〜〜?」
わたし?思い切り逃げたよ。



まず、謝っておく。
今年のバレンタインは土曜日だった!ので、去年の話にしてくださいw
リクにお応えして急いで書いたので、お粗末です。
エロなしということもあり、駄作もいいところです。お許しを〜!!
おまけに連投はじかれて1つ飛ばして投下した。首吊りに逝って来る。
みなさまよいバレンタインを♪       ようようですた
484名無しさん@ピンキー:04/02/14 01:08 ID:vLvwf6WL
おおー! ようようタンの作品、かわいいです!
こそーり投下にまいったら、得しました。

さて、れいのココ卓ものなんですが…
やってしまいますた。「星のゆくえ」を自己あぼーんしていますた。
なので設定が「星ゆく」とちがっちゃってます。

卓は大学入学からひとり暮らしを始め、ココは魔界からときどき卓のとこに
遊びにいってる、という前提でおながいします。

ところで、卓の誕生日がバレンタインて、どなたかご存じでしたか?
485名無しさん@ピンキー:04/02/14 01:09 ID:vLvwf6WL
……ついててほしかった明かりがない。室内は無人だった。
夕闇にまぎれて、おれは、魔力で玄関の鍵をあけた。
ダンボール箱をかかえ、両手がふさがってたからじゃない。
憂鬱のせいだ。
頭じゃわかってる。手もふれずにドアをあけたりして、万が一だれかに見られたら――いや、それよりやばいのは、魔力を封じてるたががわずかでもゆるんじまうことだって。
親父みたいに、完璧に制御できなくてはいけない。ばれなきゃいい、ってもんじゃないんだ。
それなのに、落ちこんだぐらいでこのざまだ。
おれはダンボール箱を部屋の奥に放りこんで、くつを脱いだ。
魔力を使ってズルするつもりは死んでもないが、たとえば試合の最中に、熱くなりすぎてコントロールがきかなくなる、なんてことが、ひょっとしたらあるかもしれない。そうなったら自分を許せないだろう。
サッカーマガジンや講義ノートや教科書を踏み越え、ベッドに腰を下ろした。
……親父は、ボクシングやってて悩んだことってなかったのかな。
毎試合がインカレの決勝みたいなもんだったろう。プレッシャーも緊張も極限まで高まったはずだ。観衆の声援や怒号のど真ん中で、どうやって“人間”として闘いつづけられたのか。
(こんど実家に帰ったときにでも、聞いてみるか……)
そう心のなかでつぶやいたとき、呼び鈴が鳴った。
「!」
おれは玄関に駆け戻り、急いでドアをあけた。
そこに立ってたのは――
「ココ!」
486St.Valentine'sDay2:04/02/14 01:11 ID:vLvwf6WL
たちまち投げやりな気分が吹き飛んだ。われながら現金なもんだ。
そう、おれは待ちわびてた。
ココが訪ねてくるのを。
くそぅ、恥ずかしいじゃないか。
「……卓……」
ココはおれをじっと見上げてる。
とても大きな瞳を、さも怒ってるってふうに瞠って。
なにが気に食わないのか。って思うが、おれの口からはことばは出てこない。ココの瞳に、全部吸い取られちまったみたいだった。
「わたし、ぜったいに帰らないから!」
いきなりココはそう宣言すると、おれを押しのけて部屋へ上がりこんだ。すでに夕刻をすぎたいま――本来のおれなら、ココを玄関のまえでユーターンさせて、即行実家へ預けにいくんだが……
ココは、部屋の明かりをつけた。
「あいかわらずちらかってるわねぇ」
おれは取って返し、カーテンをすべてぴったり閉めた。
「このほうが落ち着くんだって、いつもいってるだろ?」
「そういうとこ、ちっとも変わらないんだから。
もっと、びしっとした大人のいい男になってもらいたいわ」
ココはやっと笑った。おれは、蛍光灯が急激にまばゆくなった気がして、瞬きした。
床に散らばってるものを片づけ始めたココは、白いコートを着たままだ。
おれはエアコンのスイッチを入れた。背後でココが大きな声をあげた。
「わぁ! 今年はすごい数ね!」
ふりむくと、ココはダンボール箱のなかをのぞきこんでる。
487St.Valentine'sDay3:04/02/14 01:12 ID:vLvwf6WL
おれはあわててそのふたをとじた。
「なによ。わたしには見せられないようなプレゼントが入ってるわけ?」
とたんにココはむっとした表情になった。おれは一瞬ひるんだ。
いや、眉をひそめられたぐらいでおろおろしてたまるか。
それにしても。
ココのやつ、どんどん……綺麗になってくな。
王宮で暮らしてるからだろうか。あの壮麗で豪奢な宮殿では、姫のほんのちょっとした眼差しの変化にも、かしづくものたちが一喜一憂する。ココが意識してるかどうかはわからないが、会うたびに、王女にふさわしい華やかなオーラのきらめきが強くなってく。
かたやおれは、いまだ一介の学生で――
「ふーん、そう、そんなに大事なものなのっ」
「ばっ、ちげーよ。こんなもんどうでもいいだろ!」
「どうでもいいんだったら、見せなさいよ」
たのむから、ほかの子のチョコなんか無視してくれって!
そりゃ、放りだしといたおれもうかつだったが……
もう今日はこないのかもしれないと、なかばあきらめてたし……
電話もメールも使えないからな。魔界のプリンセスが恋人だというのは、とくに今日のような日には、なかなかにせつないものがある。
「おまえからのプレゼントしか、興味ないんだよ」
ココは、ぱっと頬を赤らめた。
「そんなこといってごまかすのね」
「楽しみにしてたんだ」
「うそ――」
長い睫毛を伏せたココに、顔を寄せる。
488St.Valentine'sDay4:04/02/14 01:13 ID:vLvwf6WL
(会いたかった)
こころの声を唇に乗せて、ココの唇へ、じかに伝える。
摘みたての花びらより、もっと。この世で一番やわらかい。噛みつきたくなるのをきつくこらえないといけなかった。
「………」
軽い口づけを交わしたあと、ココはコートを脱ぎ、うれしそうにプレゼントを取りだした。箱にかかってるリボンはココのセーターとよく似た空色だった。おれはそのリボンをほどいて、箱を開いた。
『Happy Birthday! Taku』とチョコで書かれたケーキ。ココの手作りだ。
「ありがとう」
桃色の頬にチュッとキスした。
ココはおれを見つめて微笑んだ。
「いまからお夕飯作るわね。これは、食後のデザート」
「――泊まってくつもりか?」
ココの瞳に、挑戦的な強い光が灯った。
「いったでしょ。帰らないって」

              ************

冷蔵庫にはいつも、ペットボトルと発泡酒の缶ぐらいしか入ってない。
おれたちは買い物に出かけた。高級スーパーまで遠出したのは、奮発していい食材をそろえてやりたかったからだが、もうひとつわけがある。
帰り道、ドラッグストアに寄った。
「なにかほしいもの見てこいよ」
店内に入るとそういってココと別れ、おれはコンドームの陳列棚にむかった。
489St.Valentine'sDay5:04/02/14 01:14 ID:vLvwf6WL
さっさと買ってしまえ――って、なんだ、この種類の多さは?
みょうにカラフルな箱の列に、視線がさまよう。
枚数か? 枚数がちがうのか? か、かたちもちがうのか……
初めてなんだから、ノーマルなのがいい。枚数は、多いほうがいいのか?
でも恥ずかしいだろ、こんなでかい箱をレジに持ってくのは。
よ、よし、これが一番無難だ。これにしよう。
トリコロールカラーの小ぶりの箱を選び、カゴに放りこんだ。
「ねえ、わたし、こっちのほうがいいわ」
「!!」
不意にすぐ脇からココの声がして、おれはびっくりした。
ココは、ピンク色のイチゴの絵のちらばった大箱を手にしてる。
突起つきコンドームのを!
「なっ、なにいってんだっ」
「だって、こっちのほうがおいしそうじゃない」
「おいし……!」
「ね?」
がーっ! ココの顔がまともに見れないぃ!
おれはその箱をココの手からひったくって、レジに直行した。コンドーム2箱っきりのカゴを受け取った女子店員が、笑いを噛み殺してるようなのは、気のせいか?
おれは耳まで熱くしながら代金を払った。
近所の店を避けたのは、ほんとに正解だった……

             ************

490St.Valentine'sDay6:04/02/14 01:21 ID:vLvwf6WL
「はい、お待ちどうさま」
目のまえに湯気の立つ皿を置かれたとたんに、大きく腹が鳴った。
ココがくすっと笑う。
しょうがないだろ。シチューの匂いをかいでるうちに、どんどん腹が減ってったんだ。ハンバーグを焼く音もずっと食欲を刺激してたし。
「――いただきますっ」
まずシチューから手をつける。すくい上げたスプーンに、ぺらぺらのたまねぎが浮かんでる。すすると、じんと熱く、じわっとうまかった。
「……お袋より腕上げたんじゃないか?」
「ほんとに?」
いってから、食材の差というものに気づいたが、ココが頬を染めて恥じらってるので訂正はしなかった。
「で、今日はなんで、あんなにくるのが遅かったんだ?」
「べつに理由なんかないわ」
「わざとじゃないのか? 帰りたくないからって」
ココはスプーンを持つ手を止めて、唇を引きしめた。おれは話をつづけた。
「べつに、食べ終わったら送り返そうなんて、思ってないよ」
「だったらいいじゃない」
ココはぷいっと目をそらした。
どうやら図星だな。昼間、部活してたグラウンドにココが現われてたら、こっちじゃなく
実家のほうに帰ってたはずだ。少なくともおれのほうは、すっかりその気でいた。午前のうちにくるだろうとひそかに思ってたぐらいだ。
誕生日プラス、バレンタインなんだから、期待してしまうだろ。
それで、夕方になるころにはすっかりがっかりしてたんだよな。
……やられたって感じだ。
いままで、デートをしても、キスしかしてこなかった。
それ以上進んだら、自分を抑える自信がない。
ココと離れていられなくなりそうで、――怖いんだ。
情けないほど惚れちまってる。
だからこそ、距離を保ったつき合いをしてきたんだが……
不意をつかれて懐に飛びこまれちまうと、弱いもんなんだな。
自分でもあきれるぐらいだ。
もう認めるしかない。
おれは、ココを、つねにそばに置いときたい。
好きだって想いだけじゃ、もの足りない。
愛したいんだ。
491St.Valentine'sDay7:04/02/14 01:25 ID:vLvwf6WL


             ************

ココは髪を乾かしてる。ベッドに、おれのトレーナーを着て座って。
ココが風呂に入ってるうちに、チョコのつまったダンボール箱はどうにか押入れにつっこんだし、
コンドームもベッドサイドにスタンバイさせた。
おれ自身、いつでもオッケーだ。
おれはおもむろにベッドへ移動した。ココはドライヤーのスイッチを切った。
「なに? まだ少しかかるけど」
長い髪を、おれは指で梳いてみた。心持ち湿ってる。だが、洗いたてって感じで、逆にこれがいい。
その髪に顔をうずめ、首筋に唇を押し当てた。
「きゃっ!」
その瞬間、熱風にゴオォッとあおられた。
「あっちいな」
「急にだったから、びっくりしたんだもん」
ココのやつ、ぴくんと反応した拍子に、ドライヤーのスイッチを入れちまったらしい。
おれはドライヤーを取り上げた。
「……熱かった? ごめんね?」
ココはおれの頬をなでた。ちょいとあぶられたのは、鼻の頭なんだが。
「もうなんともないよ……」
おれもココの頬を両手で包みこんだ。小さな顔を引き寄せ、桜色の下唇を、唇でやわらかくはさんだ。それからそっと舌を差しこむ。ココの舌はおずおずとおれに応えた。押しつけ合い、かるくくねらせるだけでじんと快感が走った。
舌先は唇とおなじくらい敏感だと思う。そこをくちゅくちゅとなぞった。
「……ん……」
ココのかすかなあえぎが、唇をくすぐる。
おれは、いつのまにかココをきつく抱きしめてた。
唇はいったん離して、ココを膝に乗せてみる。

492St.Valentine'sDay8:04/02/14 01:37 ID:vLvwf6WL
雰囲気はばっちりだ。これからさきへはどうもってったらいいか……
「…………」
おれにもたれかかってたココが、顔を上げた。ベッドサイドを指さす。
「あれ、あけてもいい?」
「! お、おうっ」
うー、照れる。顔が熱いっ。
ココはふつうにコンドームの箱をふたつとも持ってきた。
にこにこして、突起つきの入ってるピンク色の大箱のほうを開き始める。
いいのか、ココ、いきなりそんなので?!
ふたをあけたココは、首をかしげた。箱を裏返してしげしげと見てる。
「これ、いちごチョコじゃないの?」
「――って、おまえまさか、菓子だと思ってたのか?」
「ちがうの?」
「……食いもんじゃないよ」
おれはココの手から箱を取り戻した。
一瞬、はめてくれるのかとまで思っちまったが……
とりあえず、すごいほうはしまった。
「じゃあなに?」
「……つけるとこ、見るか?」
おれはノーマルなコンドームの入ってる袋の封を切り、自分の股間を示した。
勃ちかかってて、ジャージーが膨らんでる。
「えっ、遠慮しとくわっ」
ココは視線をそらせた。耳まで赤くなってる。おれはココの肩に手を回した。
抱き寄せると、目じりもほんのり染まってて、激しく色っぽい。

493St.Valentine'sDay9:04/02/14 01:39 ID:vLvwf6WL
「ココ――っ」
おれはココを押し倒してた。トレーナーの下に手を差しこむ。
ココは性急なおれの腕を押しとどめた。
「あの、明るいままは……っ」
「おれはべつにかまわないけど」
「わたしは恥ずかしいのっ」
頬を真っ赤にしてるココを見てたかったが、電気は消した。
ふたたびココに覆い被さり、トレーナーをめくり上げて脱がせた。
そのまま二の腕から脇、胸へと左手をすべらせる。
こんなにもなめらかでしっとりとした感触、おれはほかに知らない。
ぷつんと尖った乳首にふれると、ココの息遣いが乱れた。
暗いせいか、無言のあえぎをくっきりと感じる。
おれはさらに手を下ろしていった。脇腹のとこで、ココはくすぐったそうに小さく身をよじったが、
下着に忍びこませた指は、茂りの奥が湿ってるのを探り当てた。
そこをひとさし指の腹でこする。ほっそりした腰がびくんとはねた。
もっと感じさせたい――
「……あんっ」
ココはとうとうかすかに鳴き、おれはひとさし指に熱い液体を感じた。
おれもかなりきてる。いったん指を抜いて、ココに囁いた。
「ちょっと待っててくれ…」
ココのうなずいた気配がした。おれは裸になり、コンドームを慎重にはめた。
それからココの下着を脱がせた。

494St.Valentine'sDay10:04/02/14 01:40 ID:vLvwf6WL
全裸で抱き合う。
どこもかしこも肌と肌がじかにふれてるのって、やっぱりちがうもんだな。
温かくてやわらかくて、なんだかたまらない気分だ。
「ああ……」
「卓……」
しがみついてきたココは、わずかに震えてるみたいだった。
不安なのか?
だったらそれはおれもおんなじだ。
おまえに、まだなんの約束もしてやれない――
せつなかった。
こころがきゅっとなるほどに、からだは、ココを求めて熱くなる。
繋がりたいと叫んでるんだ。
おれはゆっくり、ココのなかに身を沈めていった。
入っていく……
ココ……
おれのココ……
いまだけは、全部おれのものだ……!
そしてひとつになれたと感じた瞬間――
おれは達してた。
下肢をつっぱって、最後の滴まで出しきってから、
あっけなくイッてしまったのに気づいた。
「……ごめん」
ココはおれの下でふるふると頭をふった。ふれ合った頬が濡れてる。
泣いてるのか?
「卓……大好き……」
あらためて、いとおしさがこみ上げてきた。
ふだんなら恥ずかしくてとてもいえない本音を、ココの耳元でつぶやいてた。
「ココ――愛してるよ」

                              おわり
495名無しさん@ピンキー:04/02/14 01:43 ID:vLvwf6WL
一番目の題入れ忘れますた。
…逝ってきます。
496名無しさん@ピンキー:04/02/18 09:19 ID:3laRC/Sk
ageとく
497名無しさん@ピンキー:04/02/18 15:01 ID:JA0s3rZY
乙〜!
ココ卓久しぶりだったので萌えました〜。

ここらで幸太×二葉きぼん。
498名無しさん@ピンキー:04/02/18 17:58 ID:ED2J9m8B
もうそろそろスレ立てしなきゃいけないんじゃないかな?
どうやるの?
499名無しさん@ピンキー:04/02/18 19:22 ID://ljxAPn
>>498
??
1000まで書き込めるよ。
500名無しさん@ピンキー:04/02/18 19:32 ID:JjNcjKvh
500KBまでですよ。1000までは無理でしょうね。
450〜480KBのあたりでいいと思うけど。
501名無しさん@ピンキー:04/02/19 00:08 ID:BTRShLrU
まだ400KBだよ
502名無しさん@ピンキー:04/02/23 18:27 ID:ztjUtoas
すいません。誤解してました。

逝ってきます:-)
503名無しさん@ピンキー:04/02/24 19:23 ID:yAKmBrvQ
人大杉で最近ここ入れなくなってるから
作家産もこないのかな(T_T)
504名無しさん@ピンキー:04/02/24 19:49 ID:yAKmBrvQ
人大杉ってでてるから作家さんがこないのかな?
505名無しさん@ピンキー:04/02/24 19:52 ID:yAKmBrvQ
なんかここ入りにくくなってますね。
作家産こないよ。
506名無しさん@ピンキー:04/02/29 19:58 ID:F1Bc8uMU
ネットから書き込むにはどうしたらいいのか?
507名無しさん@ピンキー:04/02/29 21:00 ID:8byjnmhF
>506
専用ブラウザをダウンロードすべし。
508名無しさん@ピンキー:04/03/05 20:22 ID:mukrPZuP
ほしゆ
509モーリ&シーラ作者:04/03/06 14:55 ID:lqDwSAh6
続きです。ようやく。
510人間界での出会い67:04/03/06 14:59 ID:lqDwSAh6
私のシーラ

君は今、この手紙を受け取っていろいろ疑問に思っているに違いない。
私の方も、君に聞きたいことや話したいことは山ほどあるが、手紙ではとても言い尽くせない。
今夜12時過ぎに、イルサと一緒に想いヶ池まで来て欲しい。
そこで待っているから。

君を変わらず愛している。

                                   モーリ 


手紙を読んで、さっきまでの重い絶望感が嘘のように、シーラの心が晴れ渡った。
今夜、モーリにまた会える!そして、彼も同じ魔界人だったのだ!
それはまるで夢のような話だった。
彼をあんな風に置き去りにした私なのに、まだ愛していてくれるなんて…。
最後の言葉を、この上ない喜びや感動で紅潮した顔で何度も読み返す。
彼のあたたかさが心に染みて、シーラの瞳に涙がこみ上げた。
傍らのイルサが心配そうに声をかける。
「お嬢様…。大丈夫ですか?」
「…大丈夫よ、あまりに嬉しくて…。モーリからだったわ」
「まあ!ではやはり、モーリ様は思った通り…?」
「ええ、多分…。吸血鬼だとは書いていないけれど、きっと今夜話すつもりなのよ」
「今夜?」
「想いヶ池まで来て欲しいって。イルサ、あなたもよ」
「えっ、わたくしも!?でも何故…」
「それは私にも分からないけど…。一緒に来てくれるでしょう?」
「はい…。でも、お父様には絶対に気付かれないようにしないと…」
「分かってるわ、充分気をつけるつもりよ。何としても彼に会いたいもの…!」
ちょうどその時、祖母のララがノックと共に現れた。

511人間界での出会い68:04/03/06 15:01 ID:lqDwSAh6
「シーラや。ちょっと二人きりで話がしたいんだけど、いいかね?」
「おばあ様…ええ、どうぞ」
イルサが部屋を下がった後、ララはため息をつきながらソファにゆっくりと腰掛けて言った。
「お前のお父様がこぼしてたよ、お前を人間界にやったのは間違いだったって…」
大好きな祖母の心配そうな顔にシーラは胸が痛んだが、思いきってモーリのことを打ち明けようと思った。
「あのね、おばあ様…。私もお話したいことがあるんです」
シーラは祖母の隣に座って切り出した。
「私…人間界で、ある人に出会ったの…」
「―お前のお父様が私に、ちらっとそんなことを言ってたね。お前をたぶらかした男がいたようだって…」
「そんな違うわ!私たちは本気で愛し合ったわ!今だって…」
「シーラ、落ち着きなさい。もちろん私は、お前が悪い男に誘惑されただなんて思っちゃいないさ。
家に帰って来てからのお前の様子だと、その人と泣く泣く別れて来たんだろう?」
人間界で何が起こったのか、ララはやはり気付いていたようだ。
「…おばあ様、私は…彼と駆け落ちの約束をしたのに、結局それを破ってしまったの」
「…シーラ。彼とのことは、良い想い出だと思って…」
「無理よ!どうやったら、彼を想い出の中に閉じ込められると言うの?彼は…ここに来ているのよ!」
「何だって?ここに来ているって…」思いがけないシーラの言葉にララは目を丸くした。
「私を探しに魔界に来てくれたの…!」
それを聞いて、ララの顔から血の気が引いたのがシーラにも分かった。
「シーラ、人間が魔界に足を踏み入れたなんてことが大王様に知れたら…」
「おばあ様、いいえ違うのよ」
一息ついて、シーラは打ち明けた。「―彼、人間ではなかったんです…」
「ええっ、シーラ?人間ではないって…」
「私も驚いてるの。…本当についさっきまで気が付かなかったわ。彼が私に書いた手紙が今届いて…。
あの人は…モーリは、魔界の吸血鬼だったのよ」
「きゅ、吸血鬼…!」
ララはそう言ったきり、二の句が続かなかった。
512人間界での出会い69:04/03/06 15:03 ID:lqDwSAh6
「でも私、彼を愛してるの!」
たった一人の愛しい孫娘の必死な表情―。
ララはシーラのブロンドの髪を優しく撫でながら、また深いため息をついた。
少しの間を置いて、首を横に振りながらシーラを諭した。
「シーラや…。異種族との恋愛だって魔界ではご法度だよ。ましてや結婚なんて叶うはずが…」
「…おばあ様もそんなことを言うの…?」
祖母なら私の気持ちを理解してくれると思った自分が甘かったのだろうか?
シーラの顔に失望の色が浮かんだ。ララはそれに気付かぬ振りをして、ためらいがちに言う。
「私はお前が心配なんだよ。それにお前はもうすぐ他の人と結婚する身なんだし…」
「お父様もそう言って、私とモーリを引き離そうとしたわ。でも、引き裂かれるのはもう懲り懲りです。
あんなつらい思いは二度と…」
「……シーラ。お前は…本当に彼を愛しているんだね」
「ええ、愛しています。私は彼と一緒に生きていきたい。私には彼だけなの…!」
眩しいまでにきらきらと輝くシーラの青い瞳を見ているうちに、ララは今となっては遠い昔の―
恋する娘時代の自分の面影を、孫娘に重ね合わせていた。
私や私の倅が一体何を言えるのか?
相手が異種族だからと言って、シーラの恋をむげに反対する権利がどこにあるというのだろう…。
こんなに真剣な…生涯に一度の恋を―。
人がお互いを求め合い、愛し合う気持ち。
年老いて、自分がそんな大事な気持ちをいつしか忘れかけていたことにララは気付いて、呆然とした。
―私としたことが何と…。
513人間界での出会い70:04/03/06 15:04 ID:lqDwSAh6
しばらくの後、ララは限りなく優しい瞳で孫を見つめて言った。
「―何か、このララに出来ることがあるかい?」
「おばあ様…。応援してくれるの?」
「お前は私のたった一人の大事な孫だからね、何よりも幸せになって欲しいのさ。私はお前の判断を信じるよ」
「ありがとう…」
「涙を拭いて。せっかくの美人が台無しだよ。さあ、この婆々も出来る限り協力するから、頼みがあるなら言ってごらん」
シーラは考えた。人間界から戻って以来、自分が万が一家から抜け出さないようにと、父親は目を光らせていた。
昼も夜も行動を監視されているのは明らかだった。
「今夜、彼…モーリと想いヶ池で会うことになったの。それがお父様に知られたら、彼と一緒になるチャンスを
今度こそ本当に逃してしまうわ。だから…私が夜中に家を抜け出しても、お父様にばれないようにしてくれますか?」
「分かったよ…。お前のお父様には、今夜はお酒と呪文でよく眠っておいてもらうから」
「おばあ様…。本当にありがとう…」
シーラは祖母に抱きついて、その存在の有り難さを、自分への愛情の深さを今更ながら感じるのだった―

その夜―
エトゥール家の屋敷。
モーリと、モーリの友人の吸血鬼として滞在しているバークレーはそれぞれシーラとイルサに再会する為に、
これから想いヶ池に向かう所だった。
二人が屋敷の玄関を出ようとしていると、運悪く書斎から出てきたモーリの父のアーサーに呼び止められてしまった。
「モーリ。どこに行くんだ?」
モーリもバークレーも固まった。
「何だ、夜遊びか?」
夜遊びと聞きつけて、トーマスが興味深げに居間から顔を出したのだが…。
514人間界での出会い71:04/03/06 15:06 ID:lqDwSAh6
「お前は…ようやく家に帰って来たと思えばすぐこれだ。お父様の影響ですよ!」
「わ、わし何も悪くないもんね…」
息子にお説教を食らいそうだと直感したトーマスは、そう呟くとそそくさと居間に戻って行った。
「とにかくモーリ、お前はこっちに来るんだ。ちょっと話がある」
「…はい」
この場はひとまず父の言う通りにした方が利口だとモーリは直感した。
父に返事をした後で、モーリは小声でバークレーに言う。
「バークレー。シーラに、遅れるが必ず行くと伝えてくれ」
「ああ、伝えるよ」
「家の外に、私の棺おけが用意してある。君はただそれに乗れば、想いヶ池という所に連れて行ってくれるから」
「え、棺おけに乗るだって?」
「いいから、言われた通りにするんだ。でないとイルサに会えないぞ」
「分かった。そうするよ」
バークレーがそう言うのを聞くと、モーリは父の待つ書斎に入って行った。

一方、ララの呪文のおかげで、シーラとイルサは難なく家を抜け出すことが出来た。
時間通りに二人が想いヶ池に着いてみると、立派な棺おけの傍らに、黒いマントを着た一人の男の後ろ姿が目に入った。
「モーリ!」
そう叫んで、シーラは駆け寄ろうとしたが、振り返った男が別人だったので驚いた。
「えっ…。ど、どなた…?」
戸惑いと失望を隠せない彼女の耳に、イルサの驚いた声が響いた。
「まあっ…!バークレー様!」
「ああ、イルサ!良かった。また君に会えた…!」
バークレーは戸惑うイルサをその腕に抱き寄せた。
「ど、どうして…あなたがここに…?」
「それは―」
バークレーはいったんイルサから体を離すと、シーラと向き合った。
「私はエトゥールの友人のヘンリー・バークレーと言います。覚えていらっしゃいますか?」
「え、ええ。そう言えば舞踏会でお見かけしたような…」
そうだわ、確かイルサを口説こうとしてた人だとシーラは思い出した。
515人間界での出会い72:04/03/06 15:07 ID:lqDwSAh6
「そうです。ロンドンの舞踏会でイルサに出会って…私は彼女に恋を…」
顔を赤らめて俯いたイルサにシーラは詰め寄った。
「イルサ!どうして、私に何も話してくれなかったの?」
「お嬢様…すみません…」
「…いいえ、謝るのは私の方ね。私ったら、自分のことばっかりであなたが恋しているなんて
気付きもしなかったわ…。本当にごめんなさい」
「そんな、お嬢様が謝ることなんてありませんわ」
「でも良かったわね、また会えて…」
幸せそうに寄り添う二人に笑顔を見せた後、シーラははっとしたようにバークレーに視線を移す。
「まさかあなたも魔界人だったの?モーリと同じ吸血鬼?」
それを聞いてバークレーは苦笑した。
「いいえ…。彼は吸血鬼だそうだけど、私は単なる人間です。残念ながら―」
「ええっ、じゃあ、あなたはどうやってここに…?だってここは…」
「あの夜…あなたとイルサがロンドンのホテルを去って行ってしまった夜のことです。
私はイルサとデートの約束をしていたので、彼女を迎えに行ったらあなた達は既にいなかった。
フロントで行き先を聞いていると、そこへエトゥールがやって来て…。
彼もあなたが突然姿を消したので、かなりショックを受けていました。
聞くと、今からあなたを追いかけるところだと言うので、私はイルサに会いたいが為に、
私も連れて行って欲しいと頼みました。そんな訳で、私はエトゥールと、彼のおじい様と言う人と
一緒にここにやって来たんです」
「モーリのおじい様…。私の家にバッグを届けてくれた方ね?」
「そうです。エトゥールは、あなたに書いた手紙をバッグに入れて、それをおじい様に託していました」
「やはり、そうでしたの…」イルサは呟いた。
516人間界での出会い73:04/03/06 15:08 ID:lqDwSAh6
「それでモーリは今どこに…!?」シーラが待ち切れないように聞く。
「あのそれが…家を出る時に彼のお父上に止められて―」
「そんなっ…!」
「でも、遅れるけど必ず行くと言ってました」
「―本当に?彼はここに来てくれるの?」
「ええ。もう少し待ってあげて下さい」
「もちろん待つわ!ところであの…モーリは元気にしてる?」
「そう…ですね…。あまり口には出さないけど、いつもあなたのことを思っているようですよ」
事の顛末を話し終えると、バークレーは再びイルサに向き直り、彼女をその腕に抱いた。
シーラは再会の喜びに沸く二人を目の前に居づらさを感じたので、二人から遠く離れると、
ひとりポツンと池の前に座り込んだ。
(モーリ…。早くあなたに会いたい…!早く来て…!)
シーラは心の中でそう繰り返した。

ちょうどその頃、エトゥール家では…
モーリは厳粛な表情の父親の前で、延々と続く説教に辟易していた。
バークレーが出かけてから、1時間はゆうに過ぎていた。
(早く、抜け出さなければ…。シーラはきっと待ちくたびれてるに違いない)
これ以上耐えきれず、モーリが立ち上がろうとすると、ドアが開いて執事が手紙を載せたトレーを手に現れた。
「ん、これは何だ…?招待状か?」
アーサーはそれを手に取った。それは狼人間村のクレリー家からの招待状だった。
そこには、娘のシーラと村長ケンドール家の息子ハワードとの婚約発表の宴を明日開くので、是非出席頂きたいとあった。
読み終えると、アーサーはブツブツ文句を言い出す。
「ふん、明日だと?全く急な話だ。それに何と図々しい…。
たかが狼人間村の娘の婚約祝いの為に、何故吸血鬼村村長のこのわしがわざわざ…」
「えっ、ちょっとそれを見せて下さい!」
「おい、モーリ」
モーリはすばやく父の手から紙を取ると、文面に目を走らせた。
(明日、シーラが婚約発表だって!?)
517人間界での出会い74:04/03/06 15:10 ID:lqDwSAh6
モーリはもう居ても立ってもいられなく、ドアに向かった。
「モーリ、どこへ行くんだ!婚約発表で思い出したが、お前の婚約者を今夜ここに呼んであるのだ」
「えっ、婚約者!?」
「ああ。もうすぐ来るはずだ」
「もうすぐって、何だってこんな夜中に…!」
「馬鹿者。こんな真夜中こそ、我々吸血鬼の世界ではないか」
「お父様。第一、私がいつその話を承諾したと言うんですか!」モーリは声を荒げた。
「今更何を言うんだ。お前は花嫁候補を連れずにこの家に戻って来たのだ。
つまり、私の決めた相手と結婚すると承諾したも同じだろう?」
モーリは父の言葉に絶句した。

その頃、想いヶ池のほとりでは…
いくら待てども現れないモーリを想って、シーラは言いようのない不安や焦りを感じ始めていた。
どうして来てくれないの…?私はあなたを待っているのに―。
人間界では、自分もモーリに同じような思いを味あわせてしまったのは痛いほど分かっていた。
それでも、もう耐えられない。
シーラはこのまま池に飛び込んで、彼に会いに行きたくて仕方なかった。
だがその反面、幾らかの迷いもあった。
いきなり自分がモーリの前に現れたら、彼に迷惑を掛けてしまうかも知れない。
何かの事情があって家を抜け出せないのなら、尚更のことだ。
やはり…彼がここに来てくれるのを、ひたすらじっと待っているべきなのだろうか?
シーラはどうすべきか悩んだが、こんな便利な池を目の前にして、彼に一時でも早く会いたいという
強い思いを退けることは到底出来なかった。シーラは決めた。
次の瞬間には、ドボン!という勢い良い水音と共に、彼女は池に飛び込んでいた。
518人間界での出会い75:04/03/06 15:11 ID:lqDwSAh6
離れた所で二人きりの時を過ごしていたイルサとバークレーはその音を聞き、
慌てて池のほとりに駆け付けた。
「ああっ、何てことだ!池に身を投げてしまったのか…!?」とショックを隠せずに叫ぶバークレーを
落ちつかせようと、イルサは必死に説明する。
「いいえ、違いますわ。これは想いヶ池と言って、会いたいと思った人の所に行ける池なんです」
「えっ、ここに飛び込むだけで?」
「ええ。シーラお嬢様は今、自分からモーリ様の所に…」
「な、何だ。私はてっきり、エトゥールがなかなか現れないばかりに失望して…」
「お嬢様、大丈夫かしら?心配だわ―」

想いヶ池に飛び込んだシーラは、気がつくと見知らぬ屋敷の庭にいた。
暗闇の中、とっさに辺りを見回したが、モーリの姿はなかった。
どういうことなの…?モーリに会えるはずじゃ…。
戸惑いながら、灯りのともる窓の方へ近付いて行く。
窓の向こうには、豪華な調度品の整う部屋があった。
優雅な書き物机や、暖かそうな暖炉、座り心地よさそうなソファ、壁には風景画、
美しい花の活けられた素敵な花瓶…。
窓越しにその部屋の中を見回しながら、
(ここは…モーリの部屋なのかしら…?)と思っているとドアが開いた―

ドアが開いたその瞬間、シーラの鼓動が耐えがたいまでに高鳴った。
そこには、会いたくて仕方なかった愛しい人の姿があった。
人間界で別れたあの日から、もう3日が過ぎていた。
モーリの顔を見た途端に、シーラの瞳から自然と涙が溢れ出た。
苦悩の跡が残ってはいるが、変わらず凛々しいその顔を見て、
シーラは自分がここにいることを彼に知らせようと窓ガラスを叩こうとする―
519人間界での出会い76:04/03/06 15:14 ID:lqDwSAh6
シーラの手が止まった。モーリの手に導かれ、若い女性が続けて部屋に入ってきたのだ。
黒髪の女性…。長い黒髪を優雅に結い上げて、白いドレスを着ていた。
お淑やかで従順そうな感じの、きれいな娘だった。
二人はソファに隣り合って腰掛けた。お互いをじっと見つめながら、何か会話を交わしているようだった。

モーリ、その人は誰なの…?
私と会う約束をしていたはずなのに、どうして…?

なす術もなく、窓の外から二人の様子を眺めているうちに、シーラは居たたまれなくなってきた。
モーリと見知らぬ女性が部屋に二人きりで、親しげに寄り添っているのを、
何で私はこんな風に外から眺めているの?私は一体ここで何をしているの?

シーラは思わず、部屋の中の二人から目を背け、視線を下に落とした。
だが、やはり気になってもう一度顔を上げて見ると、その黒髪の娘の瞳から涙が流れているようだった。
そしてモーリは優しく自分のハンカチでその涙を拭ってやっている―。
それを見て、怒りがふつふつと沸きあがってくるのをシーラは抑えられなかった。
モーリへの怒りなのか、自分への怒りなのか彼女自身にも分からなかった。
彼が自分以外の女性にあんなに優しい瞳を見せているのが、たまらなく嫌だった。
そしてそんな感情に捕らわれている自分自身にも嫌気がさす。
その女性がモーリに抱きついたのを見た時、シーラの怒りは頂点に達した。
…想いヶ池で待ってるなんて手紙をよこしてきたくせに!
それを私がどれほど喜び、期待してたと思ってるの!
こんな人を待っていたなんて・・・。バカだわ、私ったら!
彼にまた会えたという感激をシーラは無理に押し殺した。
狼に変身したシーラは、怒りに任せて全速力で自分の家へと駆け戻って行った―
520人間界での出会い77:04/03/06 15:28 ID:lqDwSAh6
「…だから、君には本当に申し訳ないのだが…」
一方、モーリは娘の腕を振り解いて体を離し、困った顔で、泣いてばかりの娘に説明していた。
すると…
「おいモーリ」ノックもなしにドアが開いて、トーマスが無遠慮に顔を出して言った。
「今、狼が一匹この家の庭から出て行ったようだぞ」
「えっ、狼…!?」
「ああ。何やら近くに異種族の血の気配を感じてな、窓から外を見たら確かに狼が…」
(まさか…!?)
モーリは窓に駆けより、さっきまでシーラがいたのかも知れない庭に視線を走らせた。


クレリー家の屋敷に戻ったシーラは、誰かに気付かれぬようにそっと二階の自分の部屋に入って行った。
ベッドに突っ伏し、涙が溢れるままモーリのことを想った。彼のことで、もう何度涙を流したか分からない。
「…嫌い…」とポツリとシーラは呟いたが、本当の気持ちはその反対なのは彼女自身もよく分かっていた。
モーリ、どうして…?
しばらくベッドに横たわり、心の中で彼に問いをぶつけていると、窓をコンコンと叩く音が聞こえた。
シーラはがばっと身を起こし、窓へ向かう。窓の外には、1羽の黒いコウモリがいた。

…もしかして…モーリなの!?

シーラが戸惑っていると、もやもやした煙が一瞬にして立ち込め、そのコウモリを覆う。
そして煙の中から、黒いマントを羽織ったモーリが現れた―
彼の必死の表情は、窓を開けてくれるよう頼んでいる。
さっきの怒りはまだ収まらないシーラだったが、そんな彼を目の前にして意地を張ってもいられなかった。
震える手で鍵を解いて窓を開けると、モーリが部屋に入ってきて、有無を言わせずシーラを強く抱きしめる。
「シーラ…!」
521人間界での出会い78:04/03/06 15:29 ID:lqDwSAh6
彼は一度彼女の名を囁いた後、情熱的に口付けると、再びぎゅっと抱きしめた。
「…やっと君に会えた。こんなに嬉しいことはないよ」
愛しい彼のぬくもり、その香り、その声…。
シーラはそれらすべてに包まれていたかったが、やっとのことで彼の腕を解いて、彼から体を離して言った。
「よく言うわ!私、想いヶ池であなたをずっと待っていたのよ…!」
「すまなかった。大事な用があって、どうしても家を抜け出せなかったんだ」
「あの女の人、そんなに大事な人なの?」
「…じゃあ、君はやはりさっき私の家に来てたのかい?」
「そうよ!いつまで待ってもあなたが来ないから、私は想いヶ池に飛び込んで…。そうしたらあなたとあの女の人が…」
「彼女は父の決めた婚約者なんだ。前に話したろう?」
「あなたの婚約者…!」
「ああ。今夜、父が家に呼んでしまったんだ。私としても、いつまでも逃げてる訳にはいかないからと思って―」
「ええ、そうね。とっても仲良くしていたようだったわ。何よ、ハンカチで涙をぬぐってあげたりして!
私だって泣きたかったんだから…!」
さっきのことを思い出して、シーラの瞳からまた新たな涙がこぼれた。
モーリは何も言わずに、その涙をキスでぬぐってやる。
「モーリ…」
「さっきは…彼女に私との婚約の話を忘れてくれるよう話していたんだ」
「本当に…?そうだったの?」
「ああ、本当だ。私には、他に心に決めた人がいるからと―。君を長い時間待たせてしまったのは本当に悪かった。
謝るよ。許してくれ、シーラ…」
「モーリ…。私こそごめんなさい、何も知らずに怒ったりして…。せっかくまた会えたのに…」
二人はひしと抱き合い、どちらからともなく顔を近付けて熱いキスを交わし、ようやく再会の喜びに浸る。
522人間界での出会い79:04/03/06 15:30 ID:lqDwSAh6
しばらくキスを繰り返した後、モーリがシーラに優しく訊ねた。
「シーラ…君は、狼人間だったんだね?」
「あなた…どうやってそれに気付いたの?一体いつから…?」
モーリは彼女から少し体を離すと、ポケットの中から何かを取り出して見せた。
「これは、私の手鏡…?」
「そう。ごめん、割ってしまったんだが…。―君が仕度を終えるのを私が部屋で待っている間、
君の置いて行ったバッグの中にあったこれを誤って割ってしまったんだ。
この魔界製の鏡を見て、君も魔界人なんじゃないかって気付いたんだよ。
それと、いつだかの満月の晩…君が慌てて姿を消してしまったあの夜を思い出してね、
狼人間村にクレリーという名の一族がいるのをおじい様に確かめて、それで―」
「ああ、そうだったの…?」
「だけど私がすべてに気付いた時には、君はもう…魔界に戻った後だったんだな」
「モーリ…、私のこと、怒った?」
「…正直、腹は立ったよ。君は結局、私より婚約者の男を選んだのかとね」
残された彼からすればそう考えて当然だった。
いかに本意ではないとはいえ、彼を傷つけてしまったことに変わりはないと思うとシーラの心が痛んだ。
「そんなこと…!私だって帰りたくなかったわ!父が私を迎えに来てて、本当に仕方なかったのよ。分かって…」
シーラにはそう言うのが精一杯だった。
怒った父親が、モーリを殺してしまう勢いだったとまではとても言えない。
「まいったよ。私は…自分がこんなにも嫉妬深い男だとは知らなかった…」
彼女の頬を伝わる涙を長い指で拭いながら、モーリは言葉を続けた。
「シーラ…。泣かなくていいんだよ。私は君を責めてる訳じゃないんだから…。
君は向こう見ずで、意地っ張りだし、とことん突っ走るタイプだ。でも君は嘘つきじゃない。
あの時…ホテルを去って行く前に、私をずっと愛してると言った君の言葉は本物だった…。
きっと何か訳があったに違いないと、私は君を信じてこうして追いかけて来たんだ」
「モーリ…」
523人間界での出会い80:04/03/06 15:30 ID:lqDwSAh6
「―私を忘れられると思ってた?」
モーリは優しい笑みを浮かべ、彼特有のいたずらっぽい瞳でシーラを見つめて囁いた。
「いいえ、あなたを忘れられる訳ない…。あなたに会いたいって、そればっかり考えてたわ…」
「私もだ。ずっと、君のことを想っていたよ。こうして君を抱きたくて仕方なかった…」
二人の唇がまた重なり、離れていた3日間の空白を埋めるかのように、激しいキスに没頭した。
「恋は盲目と言うけれど…本当だね。君が同じ魔界人だってことに私は気付きもしなかった」
「…私もよ。あなたが吸血鬼だと気付いてれば、これほど悩むこともなかったのに…」
ふと、モーリは思い出したように聞く。
「君こそどうやって私が吸血鬼だということに気付いたんだい?」
シーラはイルサがモーリの名字を知って、エトゥールという名の遊び人の吸血鬼が魔界にいたことに気付き、
更にはモーリがそのトーマスに似ていたことなどから、彼の正体に気付いたという経緯を話した。
シーラの説明が終わると、モーリの顔に微笑みが浮かんだ。
「そうだったのか…。私のおじい様のプレイボーイぶりも役に立つことがあるんだね。
感謝しないといけないな。それにもちろん、賢いイルサにも…」
「私…イルサがあなたのお友達と恋に落ちていたなんて気が付かなかったわ」
「それは私もだよ。―あまりにも君に夢中だったから…」
息もつけないほどの、狂おしいまでのキス。
シーラの敏感な耳たぶを軽く噛んで舌で愛撫した後、モーリは次第に唇を彼女の首筋に移し、その舌でなぞった。
「あ、モー…リ…」
「シーラ…」
彼女の名を囁きながら、シーラのドレスの胸元を下ろし、弾け出た白い乳房に口付けを繰り返す。
ピンク色の乳首が固くなった。
524人間界での出会い81:04/03/06 15:32 ID:lqDwSAh6
「だ…だめよ…」
自分の胸に顔を埋めたモーリをいったん押し止めようと、シーラは彼の頭に両手を当てがう。
だが、そのさらさらした黒い頭髪に指をからませた瞬間、彼に抱いて欲しいと心の底から強く
思っていることに彼女は気付いた。
「いやなのかい?」
モーリはシーラを見上げた。彼の美しい漆黒の瞳がキラリと輝き、彼女を見つめた。
(…いやなはずがないわ…)
彼の瞳を見ながら、シーラはそう思わずにはいられなかった。
「愛してる…今すぐ君を抱きたいんだ…」
「もちろん私も愛してるわ…。ああ、でも怖いの。こんなところを父に見つかったら、あなたがどうなるか…」
「―構わない」
左手でシーラの乳房を揉み、乳首を口に含みながら、右手は彼女のドレスの中に入り込ませる。
彼の手はシーラの腿を割り、ためらいも見せずに腿の付け根まで突き進んで行った。
内腿は奥へ行くほど柔らかく、体温を増していた。指先に彼女の身に付けている下着の布地が触れ、
そこから、いかにもか弱な肉の感触が伝わってきた。モーリはそんな弱い部分を何度も指でこね回す。
「あんっ…そんな…ああっ…」
その部分を包んでいた布地は割れた肉の奥に食い込み、そこから滲み出た熱い蜜に濡れ始めていた。
我慢出来なくなったモーリは、シーラの下着をすばやく脚から抜き取った。
直接、花弁の中に指を入れてまさぐると、シーラは身をよじって更に喘ぎ、甘い声をあげる。
そんな彼女を見つめ、キスを重ねながらモーリは言った。
「胸に杭を打たれて死んだって構わない。もう一度君を抱けるなら…」
「モーリ…ああ…」シーラはたまらず、愛しい男の頬を両手で包んで口付けた。
525人間界での出会い82:04/03/06 15:33 ID:lqDwSAh6
「…本当のことを言うと、君の婚約者がもしかして君をもう抱いたのかと考えたりもしたよ」
シーラの中に忍ばせた指を更に細かく動かしながら、モーリは彼女の耳元に吐息まじりに囁いた。
「まさか…!そんなはずないじゃない!」
快楽の波に翻弄されながらも、シーラは怒ったような声で否定する。
婚約者といえど、唇でさえハワードには許してなかった。
それを聞くと、モーリは彼女のドレスの裾を一気にたくし上げて、顔を下ろした。
「君のここにキスをしたのも、私だけだね?」
目の前にあらわになったシーラの花園の中に、彼は舌を深く差し入れた。
溢れ出る蜜を吸い、赤く膨らんだ突起を口に含み、舌で転がす。
「あっ…!そ、そんなこと…あなただけ…あなただけよ…!はあっ…」
「ああシーラ…。愛してる…」
最も敏感なところに執拗なまでに続く愛撫に、シーラは指を噛んで必死に睦声を堪える。
その顔や耳たぶは華やかなピンク色に染まっていた。
「…声を出して。聞かせてくれ」
「…あ、だめ…気付かれるわ…んんっ」
シーラの口から彼女の指を抜いて、モーリは激しくキスを重ねる。彼はそのまま彼女をベッドの上に押し倒すと、
自分のズボンを下ろして、激しく脈打つ猛々しい自分自身を彼女の中に深く沈めた。
「ああんっ…!あっ…はあっ…」
腰を上下左右にこね回し、シーラの奥深くまで突き上げる。激しい快感がシーラの体内を駆け巡った。
愛しい人の熱いこわばりが自分の中を掻き乱す。もう二度と味わうことはないと諦めていた甘美な感覚―
シーラは彼の背中に回した両腕を更に強く絡め、この突き抜けるような快感に身を任せた。
526人間界での出会い83:04/03/06 15:34 ID:lqDwSAh6
(もう…どうなったっていい…)
そんな思いが脳裏を一瞬かすめた後は、もう何も考えられなくなった。
モーリへの愛しさだけが全てだった。
シーラは甘い声をあげて、首を反らして途切れ途切れに呟く。
「…んっ…どうしよう…もうっ…私…はあっ…」
「…まだ、だめだよ」
彼女の腰をしっかりと掴んで離さない。
反り返ったシーラの喉元を舐め上げながら、モーリの腰の動きは更に激しさを増していく。
やがてシーラの膣口がこれ以上耐え切れずに痙攣を起こし、彼を強く締め付ける。
そのしなやかな肉体を弓なりにさせながら、シーラは鋭い絶頂の叫び声を上げた。
頂点に達した後も小刻みに痙攣し続ける膣口に搾り取られるように、
モーリも合わせて熱い自分のものを彼女の中に放出した―

荒い息を和らげながら、モーリは力の抜けたようなシーラを抱き寄せた。
シーラは火照りの残る上気した顔を彼の胸に埋めてため息をついた。
「ごめん…。君が欲しくて、我慢できなかった…」
「…いいの、謝らないで。…嬉しかった…」
ブロンドの髪を撫でながら、囁く。
「―このまま人間界に行って暮らさないか」
「…ええ、あなたと一緒ならどこでもいいわ。あなたと離れて生きるなんて出来ない…」
モーリはシーラの顔を両手で包んで持ち上げると、その瞳を見つめて訊いた。
「私の妻になってくれるね?シーラ…」
「モーリ…。もちろんよ、喜んであなたの妻に―」
二人は誓いのキスを交わす。
「シーラ。そろそろここを出て、想いヶ池に行こう」
「ええ…」
起き上がった二人は乱れていた服を着直すと、手に手を取って窓へと向かう。
そろそろ夜明けが近付いている。
窓を開けて外に出ようとしたその時―
527モーリ&シーラ作者:04/03/06 15:36 ID:lqDwSAh6
今日はここまでです。次回こそ、完結の予定です。
何でこんなに長くなってしまったんだろう・・・と自分でもギモンですが・・・。
528名無しさん@ピンキー:04/03/06 21:15 ID:C71K9z/7
モーシー作者さん、乙です!
相変わらずの大作ですね。楽しみに待っておりました。
次回ついに完結ですか。
終わっちゃうのは残念ですが、期待しています。
529名無しさん@ピンキー:04/03/08 22:55 ID:1hyufTfm
>527
乙。
いつも楽しみにしてます。
頑張って完結させてください。
530モーリ&シーラ作者:04/03/09 18:36 ID:Se3tzcmo
ありがとうございます。それでは続きを書き込みます。
楽しんでもらえたら、うれしいです。
531人間界での出会い84:04/03/09 18:41 ID:Se3tzcmo
シーラの部屋のちょうど真下に、見張りをしている家来の者が二人ほど待機しているのが目に入った。
彼女はとっさに窓を閉めて、モーリのマントをぎゅっと掴んで言った。
「見張りの者がもう起き出したみたい!」
「平気だよ、二人くらいなら何とか…」
「二人だけじゃないのよ、家の周りにはもっと大勢いるの」
「随分と警備が厳しいんだね、君の家は。想像以上だよ」
「…それは父が、私が人間界に逃げないようにって…。
今夜はおばあ様に頼んで、父を呪文で眠らせてもらってたのだけど…」
「…そうだったのか…」
娘を失うまいとするシーラの父の頑ななまでの意志を、モーリは改めて痛感する。
「父もそろそろ起きてくるかも知れないわ。モーリ、あなたは逃げて!早く…」
「シーラ、何を言うんだ。君も一緒に…」
モーリがその広い胸の中に彼女を抱き寄せる。
シーラは愛しい彼のぬくもりの中で溺れそうになりながらも、首を横に振って言った。
「今は無理よ。見張りに捕まったら、あなたの身が危険だわ。もう夜明けだもの、あなたが何をされるか…」
彼女の必死の訴えを聞き、モーリは苦渋の表情を浮かべて、窓越しに空を見やった。
人間界ほどではないと言え、魔界の朝も吸血鬼にとっては充分危険だ。
彼女を更に強く抱き締めて、耳元で囁く。
「シーラ。後で君を迎えに行く」
「今日の午後は…婚約発表の宴が家で開かれるわ」
「知ってるよ。私もそこへ潜り込んで、君を奪って行くつもりだ」
「本当に?大丈夫なの?」二人はじっと見つめ合う。
「宴が始まってしまえば、自然と警備も緩くなるはずだ。
まさかそんな場で君がさらわれるとは、君の父上も思ってはいないだろうから―」
「モーリ…」と不安そうに彼を見つめるシーラに、彼は力強い微笑みを返した。
「私を信じて、シーラ」
「ええ…。あなたを信じて待ってるわ」
もう一度キスを交わすと、彼はすばやくコウモリに変身し、開け放たれた窓から外に飛び出した。
ばさばさという微かな羽音と共に、空の彼方へと飛んで行く。
やがて黒いコウモリの姿はだんだんと小さくなって見えなくなった。
532人間界での出会い85:04/03/09 18:43 ID:Se3tzcmo
まだ辺りは薄暗く、それも一瞬の出来事だったので、下の見張りには気付かれずに済んだようだった。
彼の無事を確認して、シーラはほっと安堵のため息をつく。
そして窓枠のカーテンをぎゅっと握りながら、彼の飛んで行った空をずっと眺め続けた。
しばらくの後ベッドに身を横たえたが、そうしているとモーリと愛し合った後の火照りがまた彼女の体を包み込んだ。
ついさっきまで、確かに彼はこのベッドにいた。
二人の愛液が、白いシーツに染みを作っているのに気付き、シーラの顔が熱くなる。
そして自分の肩や胸元を見下ろすと、そこにはモーリのキスの跡がいくつも残っていた。
彼にその指や舌で愛撫され、逞しい彼自身によって貫かれた脚の間の秘密の場所はまだ熱く、濡れているようだった。
迎えに来ると言っていたモーリの言葉を思い出すと、嬉しさがこみ上げると同時に不安も生まれた。

…ああ…うまく行くのかしら?

シーラは祈らずにはいられなかった。
さっきモーリと一緒にいられた時に感じた幸せが、これからも永遠に続くように―。

そうしているうちに朝を迎えた。
モーリが出て行った窓から外を眺めていると、昨夜想いヶ池で別れたきり
姿を見ていなかったイルサが、用心の目を周囲に向けながら、ちょうど屋敷に戻るところのようだった。
シーラはイルサが二階にある自分の部屋を通る頃を見計らって、彼女をそっと中に招き入れる。
「お嬢様!モーリ様にはお会いできたのですか?」
心配そうな顔でそう聞くイルサに、シーラは彼と再会できたことを語った。
今日の駆け落ちの計画を聞いて、その大胆さに驚きを隠せないイルサに今度はシーラが訊ねた。
「それよりイルサ、今までずっと彼と一緒だったの?」
「…お嬢様、私―。…バークレー様と想いヶ池で別れた後、一人で魔女のメヴィウスの所へ行って来たんです」
「メヴィウス?」
533人間界での出会い86:04/03/09 18:44 ID:Se3tzcmo
魔女のメヴィウスなら、魔界人を人間にする方法を知っている―
前にイルサが自分に教えてくれたことを思い出し、シーラははっとして彼女を見つめた。
「まさかあなた、人間に…?」
「ええ…」イルサは柔和な微笑みをシーラに返した。「―後悔はしてませんわ」
彼女の顔には穏やかな表情が浮かんでいたが、その声は芯の強さを秘めていた。
「イルサ!」
二人はひしと抱き合った。
「驚いたわ、本当に…。―でも、私と違って慎重なあなたのことだから、きっとよく考えてのことなんでしょうね…」
「…いいえそれが、そんなに考えませんでした」
「えっ…!」
シーラは驚きの目でイルサを見つめた。
「もう、あれこれ考えるのはやめにしましたの。私、人生で一度くらい、
向こう見ずなことをしてみたかったんです。自分の本能の赴くままに…」
「―本能の赴くまま?」
「はい。私は彼と同じ人間になって、彼と一緒に…限り有る命を思う存分楽しむつもりです」
「イルサ…。ではあなたも魔界を捨てて、人間界に行くのね?」
イルサは黙って頷いた。
「限り有る命」という彼女の言葉に、シーラはしんみりした気持ちを覚えずにはいられなかった。
そんな彼女の様子に気付いてか、イルサは気丈な調子で言った。
「さあ私のことはいいですわ。それよりお嬢様、最近よく眠っていらっしゃらないでしょう?
眼の下にクマがくっきりと出来てますわよ」
「え、やだ本当?」
「モーリ様がお迎えにいらっしゃるっていうのに、お嬢様がそんなご様子では気落ちなさいますわ。
良い香りのする薬草入りのお風呂にでもゆっくりつかって、リラックスなさいませ。
その後でいつもより念入りにお仕度をいたしましょう。あの方が惚れ直すくらいに…」
534人間界での出会い87:04/03/09 18:45 ID:Se3tzcmo
そうして今日の為の特別なドレスを着替え終わったシーラの元をララが訪れた。
そっとシーラに近寄って小声で訊く。
「シーラ。昨夜は彼に会えたんだね?」
「ええ、会えましたわ。おばあ様、ありがとう…」
「…でもお前、彼とケンカでもしたのかい?」
「え、どうして?」
「だって私は、お前があのままその人とどこかへ駆け落ちするものと思っていたからさ。
でもこうしてまだ家にいるから、もしかしたらって…」
「おばあ様。…実は少し事情があって、昨日はそれが出来なかったの」
「昨日は…?」
「昨日…というか、今日の明け方ね。もう見張りの人達が起き出してて…」
「あ、しまった!そうか、見張りのことをうっかり忘れてたよ。彼らも眠らせておくべきだったね。
あー…、ララとしたことが!私も老いぼれたもんだね…」
そんな風に口惜しそうに自分の頭をポコンと叩く祖母を、シーラは慌てて慰めた。
「おばあ様、そんなことありませんったら。本当に感謝しています」
「シーラ…お前は優しい子だねぇ…。―で、決行はいつなんだい?」
「―今日、彼が迎えに来てくれるんです。これから始まる宴の場に…」
「何とまあ…大胆なことを考えるもんだね」
それを聞いて、シーラは緊張の面持ちで祖母を見つめた。
モーリは本当に父や大勢の招待客の前で、私をさらって行くつもりなのだろうか?
彼は私を向こう見ずと言ったけど、彼だって私に劣らず、いえ私以上に向こう見ずだわ…と、
そんなことを考えていると、祖母がシーラを安心させるようにその肩に手を置いて言った。
「シーラ。うまくやるんだよ、祈ってるから…」
「ええ…」
「それと、もうひとつ―」
「?」
「お前が心底惚れたっていう男を見てみたいから、出来たら私にも紹介してくれると嬉しいね」
「おばあ様ったら…」シーラは少し緊張から解かれて笑顔を見せた。
「さあ、深呼吸して心を落ちつけてね」
二人は部屋を出て、宴の開かれている大広間へと向かう。
535人間界での出会い88:04/03/09 18:47 ID:Se3tzcmo
そこには、シーラが今まで会ったことのない各種族の代表者たちがうようよいた。
父親はそんな来賓へのもてなしで手一杯といった感じだ。
モーリはもう来ているのかしら?
シーラは辺りを注意して見回したが、彼の姿は目に入らなかった。
すると突然、耳元に男の声が響く。
「シーラ。ようやく姿を見せたね。今日の君もとても綺麗だよ」
誰だろうと振り返ると、婚約者のハワードだった。彼は戸惑うシーラの腕を取ると、来客に挨拶して回り始めた。


その大広間の端に、いくらか不承顔で礼装に身を包んだアーサー・エトゥールがいた。
「お父様―」
同じく黒い礼服を着たモーリが父の前に現れる。
「モーリ!何だお前も来てたのか」
「ええ、たった今。驚かれましたか?」
「全く…。お前は招待されていないんだぞ、分かってるのか?」
「ええ、私は招待状なしでここに現れた無作法者ですよ。…まあ、それも私だけじゃないようですが―」
アーサーが息子の視線を追うと、自分の父親の姿が目に入った。
「あっ、お父様まで…!」
トーマスは少し離れた所で、例の如くどこかの美女を口説いている様子だ。
それを見て呆れ顔のアーサーは呟いた。
「どうしてああなのだ、私の父は…。おおかた、どこぞの美女と知り合えるからってここに来たのだろうな。
…モーリ、まさかお前もそうじゃあるまいな?」
「私は…ある人と約束があって来たんです」
「ある人?」
モーリが周囲を見渡すと、難なくシーラの姿を見つけることができた。
彼女は光沢のある淡いパープルのドレスに身を包み、その耳にはダイヤのイヤリングが揺れてきらめいていた。
雪のように白い肌、豊かに波打つ長いブロンドの髪が輝きを放つ。
その卵型を描くほっそりした顔の輪郭や、湖のように澄んだ大きな青い瞳、バラの花びらのような可憐な唇、
それらすべてが目を見張る美しさだった。
536人間界での出会い89:04/03/09 18:48 ID:Se3tzcmo
何故、あんなにも美しいのだろうか…。
モーリは驚嘆の思いで、この愛してやまない女性を少し遠くから眺めた。
そしてこうして眺めていると、昨夜自分の腕の中でシーラがあの白い肌を赤く色づかせ、愛撫を受けて
激しく身悶えしていたのが、まるで夢の出来事のように思えてくるのだった。
彼女は父親らしい年配の男性と婚約者らしい若い男性に挟まれ、来客の挨拶を受けていた。
その笑顔が硬く、無理に作っているようなのにはすぐ気付いた。
シーラ…。私のシーラ…。
これからの無謀な計画の為に緊張しているのかと思うと、モーリは今すぐにでも駆け寄って、抱き締めたい心境だった。
「あれがクレリー家の娘か…。ふむ…。綺麗な娘だが、全然嬉しそうじゃないな」
沈着な父の声に我に帰って、モーリは口を開いた。
「…お父様。実は、私が人間界で見つけた女性は彼女なんです―」
「な、何だって?彼女って、お前あれは…」
アーサーは驚いて息子を凝視した。モーリは父をまっすぐに見て、静かだがはっきりとした声で言った。
「シーラ・クレリー。私の妻になるのは彼女しかいません」
「何をバカなことを言っているんだ!あれは狼人間じゃないか!」
「ええ、そうだったみたいですね…」
モーリはシーラの姿を愛のこもった目で追いながら、言葉を続けた―
「…まさかお互いが魔界人だとは知らずに、私たちは人間界で出会って、恋に落ちてしまった―」
「モーリ!そんな話があるか!異種族で、しかも婚約者のいる女など…」
「彼女の様子を見て、お父様もお気づきだったでしょう?あれは親の決めた婚約者ですよ。
シーラが愛しているのは私です。そして私が愛しているのもシーラしかいません」
「…どうしても彼女と結婚すると言うのか!?」
「ええ。その通りです」
537人間界での出会い90:04/03/09 18:50 ID:Se3tzcmo
「だめだ!そんなのは許さん!」
息を荒げるアーサーをモーリは黙って見つめた。
「お前は…異種族と結婚するというのがどういうことなのか、よく分かっていないのだ!
しかも狼人間などと…。うまくいく訳がない。一緒になったところで、きっと3日と持つまい!」
アーサーは驚き慌てて息子を説得したが、それを聞き終わったモーリは可笑しそうに軽く笑った。
「3日と持たないか…。不思議ですね。お父様はそう仰るけれど、私は3日と彼女と離れていられないことに気付きましたよ」
「お前、では私が薦めてた結婚の話は…」
「あの話は昨日、本人に直接お断りしました。彼女だって、他の女性を愛している男と結婚なんかしたくないでしょう」
モーリは父の所を離れ、シーラのいる所を目指してゆっくりと進んで行った。
「待つんだ!何をする気だ!?」
「―どうせやるなら、思いきり派手にやりたい性分なんです」
アーサーは息子が何をしだすのか心配で、後ろから付いて行った。


そして慌ててモーリを追い越し、シーラとその父親、婚約者のいる場所に近付くとクレリーが気付いて出迎えた。
「これはエトゥール殿。吸血鬼村の村長殿に、ご多忙のところをわざわざお出で頂き、こんなに嬉しいことはありません」
「クレリー殿。今日はお招き、ありがとうございます」
エトゥールと聞いてシーラはぎくっとなって、その長身の紳士に目を向けた。
(では、この人はきっとモーリのお父様ね…)
父親だから、当然その容貌はモーリに似ているのだが、その瞳は彼と違って冷ややかで閉鎖的な感じを与える。
誇り高い、孤高の吸血鬼そのもののようにシーラには思えた。
親子でこうもタイプが違うものかしら…と思いながら、シーラは密かに父親たちの様子を盗み見た。
538人間界での出会い91:04/03/09 18:51 ID:Se3tzcmo
笑みを浮かべ、丁重な態度の二人だったが、それはあくまで表面上なものだった。
エトゥール家とクレリー家は、共に魔界では名門の家柄同士。
アーサー・エトゥールには、吸血鬼こそ王家に次ぐ最高の種族だという確固たる自負があった。
吸血鬼村の長にしてみれば、狼人間なんぞ元はと言えば自分たち吸血鬼の手下だったのだぐらいに思っているし、
ロナルド・クレリーの横柄で粗野な性格は肌に合わないと前から思っていた。
一方、狼人間村では村長に次ぐ有力人物であるシーラの父親にも、狼人間族としての強い自負がある。
アーサー・エトゥールとは長年の知り合いではあるが、その見下したような尊厳な態度はどうも虫が好かなかった。
そうは思っていても、この祝いの場でそれを露呈するほど、二人は愚かではなかった。
すらっとした長身のアーサーと、同じく長身だががっしりした体格の自分の父親が、
まるで協定でも結んだ敵同士のように握手を交わしているのをシーラが見ていると、
アーサーが彼女にすっと視線を移した。

(私の跡を継ぐべき息子がクレリー家の娘と結婚するだと?)
さっきのモーリの爆弾発言を思い出しながら、アーサーはシーラを観察するようにじっと眺めた。
そんな鋭い視線に気付き、もしかしたら彼の父親は自分と彼のことを知っているのだろうか…?とシーラは感じ始めた。
そして恐らくは快く思っていないのだろうと察知し、心に不安が広がっていった。
そんなところへ、モーリがゆっくりと近付いてくる。
彼の姿にすぐ気付き、シーラの心臓は飛びあがった。
「おや、こちらは…?」ロナルド・クレリーがアーサーに聞く。
「私の息子です。すみません、招かれもせずに勝手に…」
「いえいえ、構いませんよ。ご子息にもお出で頂くとは、光栄です」
モーリがシーラの父に一礼すると、婚約者のハワードが手を差し出してきた。
「初めまして。村長の息子のハワード・ケンドールです。よろしく」
(…これがシーラの婚約者か…)と思いながら、「よろしく」と言って握手を交わす。
そこでようやく、モーリはその漆黒の瞳をシーラに向けた。
539人間界での出会い92:04/03/09 18:53 ID:Se3tzcmo
覚悟を決めたような熱のこもった彼の眼差しにシーラは軽い眩暈を感じ、まっすぐに見つめ返すことが出来なかった。
「初めまして。モーリ・エトゥールと言います」
モーリはまるで初めて出会うかのように自分の名を彼女に告げ、そして微笑みを浮かべながら付け加えた。
「…吸血鬼です。もうお気づきでしょうが…」
どうしていいか分からず戸惑うシーラの手をすっと取って、彼はそこにキスをする。
彼の唇の感触に、シーラの手は途端にびくっとたじろいだ。
モーリはそれに気付いたが、彼女の手をしっかりと掴み、周りに気付かれないように、
彼女の手に押しつけた唇からそっと舌の先端を出してくすぐった。
「…!」
甘い痺れがシーラの手から全身に広がっていく。
つい昨夜のこと、自分の唇はもちろん、体中のあらゆるところを激しく愛撫したモーリの舌を今また感じて、
シーラはどうにかなってしまいそうだった。
「……は、初めまして…。…シーラ・クレリーです…」
頬を紅潮させながら、やっとのことでシーラは口を開いた。
そんなシーラの様子に、双方の父親が気付いた。シーラの父親は、いぶかしげな顔でモーリを見る。
さっき聞かされたばかりとは言え、二人の関係を知っているアーサーは、彼にしたら珍しく幾らか動揺を
見せつつ、息子とその恋人を見守った。
一方で、思わぬ光景にあっけにとられていたハワードがふと我に帰った。
モーリの接吻を受けたままのシーラの手を引っ張って、代わりに自分の手で彼女の手を握り締めた。
あからさまに怪訝な表情を浮かべてモーリに言う。
「無論ご承知でしょうが、1週間後にはシーラ・ケンドールを名乗ることになります」
女慣れした吸血鬼が、自分の婚約者を誘惑しているのだと思ったのか、明らかに警戒している様だ。
シーラはハワードに肩を抱かれながら、困った顔でモーリを見つめた。
妙な雰囲気が立ち込めようとしているところへ…
540人間界での出会い92:04/03/09 18:57 ID:Se3tzcmo
「おや…?数の上では吸血鬼が狼人間に負けているようですな」
と言って颯爽と現れたのはトーマスだった。
怪訝な表情の息子に構わずに、彼は早速シーラに向き直って言う。
「これは何とお美しい。今日の主役にやっとお目にかかることが出来ました」
この人がイルサの言っていたモーリの祖父なのだと直感でピンときたシーラに、トーマスは自己紹介をする。
「初めまして、トーマス・エトゥールです。お近づきのしるしに、一曲私と踊って頂けますかな?」
気付くと楽隊がワルツを演奏し、フロアでは大勢のカップルが所狭しと踊っている。
シーラは戸惑って思わずモーリをちらっと見たが、彼は何故だかそうしろと言わんばかりに微かに頷いた。
トーマスはハワードに向かって、
「失礼。婚約者殿をしばしお借りしますぞ」と言ってシーラの手を取って、優雅にフロアへと向かう。
音楽に合わせて、二人は踊り始めた―まだ戸惑いながらも、シーラは小声でトーマスに言った。
「あの…私のバッグを届けて下さって、ありがとうございました」
「いや、なんの。お易いご用でしたよ」
「でも、どうしてあなたが?」
「それはね、マドモワゼル・シーラ。モーリがあまりこの家の辺りをうろついては、
あなたの父上に怪しまれるだろうと思ってね。だから代わりに私が届けたって訳さ」
「そうでしたの…」
「私なら、あいつと違って機転が利くからどんな事態も切り抜けられるのだよ」
「はあ…」自信たっぷりなトーマスに少したじろぐ。
「しかしモーリは幸運な男だ。あなたのような美しい女性を見つけたとは…」
トーマスの灰色の瞳が誘惑するような輝きを見せたので、シーラはどぎまぎして目を伏せた。
すると彼の囁きが静かに響く。
「あなたの唇はバラの蕾のようですね…」
541人間界での出会い94:04/03/09 18:59 ID:Se3tzcmo
(あら?どこかで聞いたような言葉…ああ、そうだわ。こうやってうちの小間遣いやイルサの従姉妹が
口説かれたのだっけ)と思い出し、シーラはきりっと顔を上げて言った。
「お噂には聞いていますわ、それがあなたの常套句だって」
「ははは。これは手厳しい娘さんだ。うちの孫はどうやってあなたを口説いたのかな?」
「それは…そう簡単にはいかなかったはずですわ。彼に一目惚れしたのに、私はなかなか素直になれなかったから…」
「ふむ。ララ・クレリーもそんな娘でしたな。よく似てる」
「え?」
シーラは驚いてトーマスを見た。
「いや、昔の話ですよ」

二人の様子を見ながら、モーリはシーラの父に言った。
「クレリー様。実に盛大な宴ですね―」
「ええ、まあ。大事な一人娘の幸せの為ですからな」
「…本当に、彼女の幸せを考えていらっしゃるのですか?」
「モーリ!」アーサーが驚いて息子をたしなめる。
ロナルドもまた驚いて目の前のモーリを見た。
「これはまた…。ご質問の意味が分かりかねますが…」
「あなたには分かってらっしゃるはずです。娘さんを自分の思い通りにさせようとすることは間違いだと―」
「さっきから、無作法な男だな!」ハワードはかっとなって、モーリに詰め寄った。
シーラの父はそんなハワードの勢いを制するように彼の腕を掴み、モーリを黙って見る。
さっきまで離れた所にいて彼らの様子を見守っていたララが、その張り詰めたような雰囲気に気付いてやって来た。
「ハワードさん。お父様があなたを探しておいででしたよ」
「えっ、父が?」
「ええ。向こうで…」
ハワードは苦々しい顔で「失礼」と言うと、ララの指し示す方向に歩いて行った。
542人間界での出会い95:04/03/09 19:01 ID:Se3tzcmo
事無きを得て安心して一息ついているララにモーリは優しく囁いた。
「…私と踊って下さいますか?」
「えっ…で、でも、あんた。こんなおばあさんを…」
思わぬ誘いに驚き、赤面しているララの手を取ってモーリがフロアに進んで行くのを、
アーサーとロナルドは互いに驚いた表情を浮かべたまま見送った。
「―うちの息子が失礼しました」アーサーが言い出しそうに口を開いた。
「…ご子息の名はモーリ…とおっしゃるのですか?」
「ええ―」
ロナルドは考え込んで、独り言のように呟いた。
「…いや、まさか…そんな訳が…」
モーリ…?
人間界でうちの娘をたぶらかした男と同じ名前ではないか。
そうだ、シーラを迎えに行った時、自分が破いた手紙には確かにモーリと書かれていた。
…いや、だがあれは人間の男だったはず。
まさか人間界で出会った男が、魔界の吸血鬼だったなんてことがある訳がない。
同じ名前なのは単なる偶然に違いないと、ロナルドは必死に考えを打ち消した。
「…どうかなされましたか?」アーサーは表面的には冷静さを崩さずに静かに聞く。
「いえ、何でも。多分私の思い違いでしょう…。どうぞごゆっくりと―」
シーラの父はそう言うと、後ろ髪を引かれるような思いでケンドール村長のいる所へと向かって行く。
後に残ったアーサーは、複雑な思いで息子を眺めた。
543人間界での出会い96:04/03/09 19:03 ID:Se3tzcmo
「ちょっと待っておくれよ。もう何年も踊っていないんだよ、私は…」
フロアに進んだものの、ララは当惑して立ち尽くす。
「大丈夫、私がちゃんとリードしますから。それに、すぐに勘を取り戻しますよ」
モーリはにっこりと笑うと、ララを相手にワルツを踊り始めた。
「ほら…。やっぱりお上手じゃないですか」
「え、あ…。ホントだ。まだ私も踊れたんだね」
それを発見して少女のように嬉しがっているララを優しく見つめ、モーリは言った。
「やっとシーラのおばあ様にお会いすることが出来ました」
「…ではやっぱりあんたが…シーラの相手なんだね?」
「はい。モーリ・エトゥールと言います。初めまして、ララさんですね?」
「え、ええ…。私はシーラのお婆さんだよ」ララはモーリのハンサムな顔を見ながら、顔を赤らめて言った。
「シーラから、お噂は聞いています」
「私もあんたのことは聞いてるよ。…でも、そうか。エトゥールね。トーマス・エトゥールの孫だとは知らなかったよ」
「それが何か問題でも?」とモーリが微笑んで聞くと、ララは困ったような顔をして言った。
「うーん、彼と同じプレイボーイだと困るなと思ってね…」
「ご安心を。私は祖父と違って、そういう男ではありませんから―」
それを聞いてもまだ思案顔のララに、モーリは真面目な顔で言った。
「シーラを愛しているんです。私は彼女さえいれば…」
「…それは言わなくても分かってるよ。それに、昨夜の騒々しさを聞けば―」
「え…?」
ララの顔に(しまった!余計なことを言ってしまった!)といった表情が浮かんだ。
そして顔を赤らめながら言葉を続けた。
「あ、いえね…その…私の部屋はシーラの部屋の隣なんだよ。昨日の夜は…随分…。こっちはひやひやさせられたよ」
544人間界での出会い97:04/03/09 19:04 ID:Se3tzcmo
「それは…失礼致しました」
赤くなって咳払いをするモーリに今度はララが聞いた。
「ところでモーリ、と言ったね。さっきうちの倅に何を言ったんだい?あれが何だか珍しく青くなってたけど…」
「…ご自分の思い通りにシーラとあの婚約者を結婚させることが、本当に彼女の幸せだと
思っていらっしゃるのかと聞いたのです」
「それで…あれはそれに対して何と言ったんだい?」
「―いいえ、特に。ただ私を見て、黙っていらっしゃいました」
「ふむ…そうかい…」
「私としても、シーラとの結婚を周りに祝福されたいと思ってますが…
どうやら、それは無理なようだと分かりました」
「…うちの倅は頑固だからね…。でも、希望を捨てるんじゃないよ、もう少し時間を置いたら―」
「ええ、そうですね。いつかきっと、私の言ったことを分かってくれると思ってます。
でも、シーラとあの婚約者を結婚させてからそれに気付いても遅い。
…ですから、私は彼女をさらって行きます。それしか方法が…」
「分かってるよ。息子も少し頭を冷やした方がいいだろう。後のことは心配いらないからね、モーリ」
「…感謝します、おばあ様」
モーリはララの手にそっとキスをして言った。
「―ところで久し振りに、トーマス・エトゥールと踊ってみたくはありませんか?」
「え?ちょっと…」
「向こうも懐かしがっていましたよ。おっしゃる通りのプレイボーイなのは相変わらずだけど、
あなたは特別の女性のようだったから―」
545モーリ&シーラ作者:04/03/09 19:11 ID:Se3tzcmo
・・・ということで、今回が完結と断っておきながら、また次回へと続きます。
次回こそ最終回です。まだ全部書き終わっていないので、こんなに長引かせてしまいました。
スミマセン。それでは数日後に・・・。
546名無しさん@ピンキー:04/03/09 21:44 ID:I87VCCav
大作乙〜!
最終回も楽しみに待ってます。
547名無しさん@ピンキー:04/03/10 21:23 ID:8i4IcM+D
もういい・・・
548名無しさん@ピンキー:04/03/11 00:41 ID:Y2MBovBx
ああ、すてきです。。。
モーシー完結編、お待ちしております。
549名無しさん@ピンキー:04/03/12 22:12 ID:+/XoQBxv
乙でーす
よかったです
550モーリ&シーラ作者:04/03/14 13:37 ID:xItWwDBd
それではいよいよ完結編です。
551人間界での出会い98:04/03/14 13:41 ID:xItWwDBd
(モーリがおばあ様と踊っている…。一体何を話しているのかしら?)
シーラはトーマスと踊りながら、少し遠くの方で二人が踊っているのを見て驚いた。
気になってきょろきょろしているシーラの耳に、トーマスの声が届く。
「お嬢さん。この私と踊ってると言うのに、あなたのようによそ見ばかりしている女性はいませんよ」
「え…あ、すみません…」
トーマスはシーラの視線の先を認めると、微かな笑いを含んだ声で言った。
「―大丈夫、あれはきっと…ただの行きずりの関係ですよ」
「まあ!」とシーラは思わず笑ってから、トーマスのユーモアに応戦するかのように言葉を続ける。
「…そうだといいんですけど。でも心配ですわ」
「それなら、あの二人を引き離さないといけませんな。どれ、私が手をお貸ししますよ」
ワルツを続けながら、トーマスはシーラに気付かれないようにさりげなくモーリたちの方へと進んで行く。
モーリも同様に、戸惑うララと会話を続けながら、シーラを目指す。
離れていた二組の距離がだんだんと近付き始めた。
そしてシーラの背後まで踊り進んで来たモーリと密かに目で合図をした後で、トーマスは少し名残惜しそうにシーラに言った。
「シーラ殿。あなたが私に全然なびかないので、がっかりしましたぞ」
「…すみません…」
恐縮して俯くシーラにトーマスは優しく笑った。
「そんな風に謝られても困るがね…。ダンスをありがとう。モーリと幸せにな…」
トーマスがそう囁いてシーラの手を離した途端に、誰かがその手を再び掴んだ。
シーラにはすぐ分かった、それがモーリの手だということが。
さっきまであんなに遠くにいた彼が今いきなり目の前にいて、私の手を取ってワルツを踊っている!
まるで魔法にかかったかのように呆然とするシーラだったが、すぐ我に帰って思わず大きな声で叫んでいた。
「モーリ…!やだ、いつのまに!」
「驚いた?」
「驚くわよ!」
見るとトーマスと踊っているのはララだった。
同様に驚いているララの声とトーマスの笑い声を残して、二組の距離がまた遠のいて行った。
552人間界での出会い99:04/03/14 13:48 ID:xItWwDBd
驚いているシーラとは対照的に、モーリの声は安心したような調子だった。
「うまくいって良かった。おじい様が君に執着し出すんじゃないかと思ったよ」
「…プレイボーイって本当ね」シーラは少し呆れたように呟く。
「筋金入りのね。―知ってる?あの二人は知り合いらしいよ。
知り合いというか、若い頃何かあったみたいだけど…」
「えっ、あなたのおじい様と私のおばあ様が?本当に?」
「うん。孫の私たちがこうなるのも運命の悪戯かな」
モーリと踊り続けながら、驚きの表情でトーマスとララを眺めていたシーラが、
今度は怒ったような顔で彼に向き直って言った。
「…それよりあなたったら、さっき私にあんなことをして…!」
「あんなこと?」
「私の手にキスしたじゃない!」
それを聞いてモーリはきょとんとした顔で聞く。
「…何だい、今更。私たちはそれよりもっと大人の関係じゃなかったっけ?つい昨夜だって…」
「そ、そうだけど、でもあんな場で…。あ、あなたの舌が…」
「ん?私の舌が…何?」
わざと意地悪そうにそう聞くモーリの耳元に口を寄せ、シーラは苛立たしげに小声で言った。
「皆がじっと見てたのよ!私が赤くなったの分かったでしょう?」
「うん。かわいかったよ」
「モーリったら!心臓が止まるかと思ったわ!」
モーリはいたずらっぽい瞳でシーラをまじまじと見つめた後、彼女の耳元に低い声で甘く囁く。
「…そんなに感じた?シーラ…」
「!もうっ、破廉恥な人ね!」
真っ赤になったシーラを見て、モーリは軽く笑う。
「ははは。出会った頃に逆戻りだね。こんな男と駆け落ちするのはやっぱりやめるかい?」
「…やめる…」俯いて呟くシーラ。
553人間界での出会い100:04/03/14 13:50 ID:xItWwDBd
「え、シーラ。まさか…」
「…わけないでしょ!」と、ぱっと顔を上げて、勢い良く彼女はモーリに言った。
「その調子だよ。君はそうでないとね」
にっこりと笑った後で、ふいに真面目な顔になってシーラを見つめて言う。
「…すごく綺麗だ。永遠に忘れないよ、今日の君の美しさを…」
「!」
モーリのロマンティックな言葉に打ちのめされて、シーラの胸が震えた。
大きな青い瞳を潤ませ、何も言えずに彼の漆黒の瞳をじっと覗き込む。
「そんなに見るなよ。―キザ過ぎたかな?」
赤くなって照れている彼に愛の眼差しを注ぎ、シーラは呟いた。
「モーリ…。…あなたにキスしたい…」
彼は少し驚いて見せた後、微笑んだ。
「後でね…。この場でキスは、さすがに目立ち過ぎるから―」
「…分かってるわ。でも待てないの…」
「じゃあ、そろそろ行動に移すとするかい?」
「え…」
「私たちの駆け落ちですよ、お嬢さん」
「ど、どうするの…?」
「屋敷の外に、馬を止めてある。それに乗って、想いヶ池まで飛ばすつもりだ」
「父が…きっと追ってくるわ」
「追いつかれないように、全速力で行くしかないな」
「モーリ…」シーラの顔に不安げな色が浮かび、モーリの手をぎゅっと握る。
「ちっぽけな不安なんて抱かないこと。いいね?シーラ」
「…ええ、分かったわ…」
モーリは微笑むと、少し深呼吸してから言った。
「あそこにテラスがあるだろう…ほら、前が花で埋め尽くされているあの場所だ。
あれを抜けて行くのが一番早い。玄関はきっと塞がれてるだろうから」
彼の言うテラスは自分たちが今いるフロアの端の場所とは正反対の位置にあった。
確かにあの花の後ろに身を隠しながら大きなフランス風窓を開け、テラスにそっと出てしまえば、
人に気付かれぬことなくそのまま外へと出られそうだ。
554人間界での出会い101:04/03/14 13:52 ID:xItWwDBd
「でも、遠いわね…」
「近くまでこうやって踊って行くんだ。何気なくね」
モーリに言われた通りに、シーラは何とか平静を装って彼のリードに導かれるまま
目的のテラスまで踊り進んで行く。
フロアは踊る人々で溢れているから、気付かれずにいけそうな気がしてきたシーラが
ふと周囲に目を向けると、父親が少し遠くから自分をじっと見ているのに気付き、心臓が凍りついた。
「モーリ…父が私たちを見てる!」
「大丈夫。気付かない振りをして、目をそらすんだ」
「…でも…こっちに近付いてくるみたい!」
それを聞き、モーリはシーラの背中に回した手に力を込め、足を速めた。
「急ごう!」と言って、踊るのを止めて彼女の手をきつく握り、フロアで踊る人々の間を駆け抜けて行く。
シーラの心臓の鼓動がどんどん速くなっていった。
「待て!シーラ、待つんだ!おい、二人を掴まえてくれ!」
逃げて行く二人の背中にロナルドの怒声が響き渡る。その声がどんどんと近付いてきた。
楽隊は何事かと演奏を中止し、招待客は思わぬ事態にあっけに取られ、走り出したロナルドに道を開けた。
二人は何とかテラスの前まで辿り着いたが、シーラの父の指図によってすばやく駆けつけた家来たちに囲まれてしまった。
震えるシーラの肩をモーリは強く抱く。
ロナルドが険しい表情を浮かべて、二人に近付いてきて言った。
「さあ、バカな真似はよすんだ。戻りなさい、シーラ」
「来ないで…!」シーラは父にそう叫んだ後、ドレスの裾を左手でぱっとめくり上げた。
白い絹のストッキングに包まれた太ももと、白いレースのガーターベルトがちらっと見えた。
「シーラ!?な…」
隣にいるモーリもこれ以上ないくらい驚いて言った。
目の前の家族や招待客も口をあんぐりと開けて彼女を見つめる。
555人間界での出会い102:04/03/14 13:54 ID:xItWwDBd
シーラが左の太ももにさっと手を伸ばし、ストッキングの中に隠してあった小さなピストルを
すばやく取り出すと、つんざくような悲鳴とどよめきが場内に一斉にあがった。
「きゃーっ!」「銀の弾だ!」「う、撃たれる!」
シーラは騒然とした雰囲気に構わずピストルを自分のこめかみに当てて、もう一度叫んだ。
「来ないで!」
「シーラ!冗談はよすんだ」ロナルドの顔はショックで今や真っ青だった。
「お父様、私は本気よ!それ以上来たら…私は死ぬ覚悟よ!」
「シーラ…そんな、止めてくれ」
彼女の父がその場に立ち尽くした瞬間、モーリはすばやくシーラからピストルを取り上げる。
彼女を自分のマントに包むようにして抱え、けたたましい音を立ててテラスの窓を突き破って外に出た。
二人が派手に抜け出した後の宴の場は今や大混乱。人々のざわめきで益々騒然としていた。
その場にいた誰もが、その顔に興奮を浮かべ、たった今起こったこの事件について囁き合った。

「狼人間村の娘が吸血鬼にさらわれた!」
「いや、愛の逃避行だ!」
「それにしても大胆不敵だ!」

そんな熱っぽい人々の囁きを、喧騒の中でしばし呆然と聞いていたクレリーはようやくに我に戻った。
とっさにハワードに目を向けると、あろうことか彼は気を失ってその場に倒れているではないか!
「このっ、腰抜けめが…!」
シーラの父は思わず、狼人間村の村長が目の前にいることも忘れて、その不甲斐ない息子を罵倒していた。


一方、屋敷を抜け出したモーリはシーラの手を引っ張って、外に止めてあった馬の所まで走って行く。
シーラをまず馬の背に乗せた後、自分も素早く飛び乗り、彼女の体を後ろからしっかりと支える。
手綱を取ったモーリが馬の脇腹を蹴ると、馬のいななきを残して、二人を乗せた馬は全速力で森を駆け抜けて行った―
556人間界での出会い103:04/03/14 13:56 ID:xItWwDBd
しばらく馬を走らせ、誰も追い付いてはこれないのを確認すると、少し呆れたようなモーリの声がシーラの耳元で響く。
「…無茶をするね、君も」
「ごめんなさい…。でもあなただって窓を突き破ったりして…大丈夫なの?」
シーラは心配そうに彼を半ば振り返って、聞いた。
「この通り平気だよ。君こそどこもケガしてないかい?」
「ええ、私は大丈夫よ」
「よかった…」モーリは安堵のため息をついた。「ほら、危ないからちゃんと前を向いて―」
そして彼らが想いヶ池に着き、馬から降り立つとそこには一足早くイルサとバークレーがいた。
「お嬢様…!抜け出して来れたのですね!」イルサが安心したような笑顔で出迎えた。
「ええ、何とかね…!とってもスリリングだったわ!」
モーリは人知れずポツリと呟く、「それは私のセリフだよ」
興奮の冷めやらないシーラは、息を切らしながらイルサの手を取って言った。
「…イルサ、これでお別れなのね」
「―はい」
イルサの肩を抱いたバークレーが言った。「私たちは元来た所に…19世紀のロンドンに…」
「そう…。今までありがとう。二人とも…元気でね…」
「ええ。お世話になりました。お嬢様たちもお元気で…」
シーラとイルサは別れを惜しんで涙を流しながら、抱き合った。
「エトゥール。世話になったな」
「いや、なに。魔界に足を踏み入れた人間は多分君が最初だろうな」
「それは幸運なことだ。もう二度と来ることはないだろうが…、一生忘れないよ。素晴らしい経験だった」
二人の男が握手を交わした。
「じゃあ、そろそろ…。イルサ、行こう―」
「はい…」
557人間界での出会い104:04/03/14 13:59 ID:xItWwDBd
「イルサ、色々ありがとう。感謝してるよ」
モーリの言葉にイルサは微笑んで言った、
「いいえ、こちらこそ。お嬢様をよろしくお願いしますね。
暴走して手の負えない時がありますけど、モーリ様なら大丈夫ですわ」
「ああ、心得てるよ。任せてくれ」
イルサとバークレーは抱き合うと、モーリとシーラに見守られて池に飛び込んだ。
これでお別れ―
波立った水面をじっと眺めているシーラの肩を抱いて、モーリは言った。
「きっと、幸せに暮らして行くさ」
「ええ、そうね…」
「―じゃあ、私たちも続くとするか…」
シーラはモーリに向かい合うと、彼に聞いた。
「モーリ、ところで私たちはどこへ行くの?」
「いい所だよ。君もきっと好きになる」


大混乱の宴の場を抜け出し、それぞれ狼とコウモリに変身したシーラの父とモーリの父は
想いヶ池の見える場所までようやく辿り着く。
父親たちがすばやく元の姿に戻ると、トーマスの呼んだ棺おけに乗ったトーマスとララも現れた。
彼らの目に、黒いマントを羽織ったモーリがシーラの手を取って、池を前にして佇んでいるのが見えた。
空を舞う小鳥のさえずりが微かに聞こえ、きらきらした池の水面が二人を照らす。
辺りは誰も立ち入ることが許されないような神秘的な雰囲気に包まれていた。
モーリは上着のポケットから指輪を取り出して、シーラの指にはめた。
そして彼が目を閉じて、その指輪のはまった手にゆっくり口付けるのを、シーラは微笑みを浮かべながら見つめる。
やがて二人の唇が近付き、誓いのキスが交わされた―
そのあまりにも美しい情景に、皆が言葉を失った。
ララは目に涙を浮かべて、二人を見守る。
しばらくして、二人は固く抱き合ったまま池にその身を投げた―
558人間界での出会い105:04/03/14 14:02 ID:xItWwDBd
水しぶきがたち、さっきまでの静寂が破かれると、我に帰ったシーラの父は池を目指して駆け寄った。
ララやアーサー、トーマスも急いでそれに続く。
ロナルドが飛び込もうとしたのを遮るかのように、どこからともなく飛んできたモーリの棺おけが
二人の後に続いて大きな水しぶきを立てて池に飛び込んで行った。
あっけにとられているロナルドに、ララが追い付いて言う。
「ロナルド。お前はそこに飛び込むつもりかい?」
「お、お母さん…」
ララの厳しい声を聞いて、シーラの父は振り返った。
「その池に飛び込めば、お前は望み通りにシーラを連れ戻すことが出来るだろう…。
だけど―、さっきの光景をお前も見たはずだよ。本当にあの二人を引き離すことが出来ると思うのかい?
死ぬことさえ厭わないほど、あの子は彼を愛しているんだよ。
それに…モーリにも聞かれただろう、シーラにとっての幸せを考えたことがあるのかって」
黙ってうなだれる息子の肩に手を置いて、ララは優しく言った。
「お前だって自分の間違いに気付き始めてるだろう?…好きなようにさせてあげなさい。あの子の人生なんだ…」
ララのその言葉を、アーサーもトーマスも黙ってじっと聞いていた。
池のふちにがっくりと膝をついていたロナルドが立つのにアーサーは手を貸す。
二人の父親は黙ってお互いを見た。
「クレリー殿。…私の息子が本当に…申し訳ないことを致しました。お許し下さい…」
いつも尊大なアーサーが、恐縮した面持ちで深々と頭を下げている。
私が娘を失ったのと同様、彼もまた息子を失ったのだ―
それに気付いて、ロナルドは言った。
「…エトゥール殿。どうか、頭をお上げ下さい…」
アーサーがゆっくり顔を上げると、それはまぎれもない苦悩する父親の顔だった。
子供のことを心配する親の気持ちが、痛いほどロナルドに伝わってきた。
誇り高く、決して心の内を人に見せない吸血鬼村村長の別の一面を、ロナルドは初めて垣間見たような気がした。
559人間界での出会い106:04/03/14 14:04 ID:xItWwDBd
(全く…わしもどうかしていた。そもそもハワードのような腰抜けに、シーラの夫が務まる訳がないではないか…)
そう思った後で、シーラをマントに包んで窓ガラスを破って出て行ったモーリの姿を思い起こした。
娘を奪って行った憎い男だったが、なかなか勇気があった。
二人が並んだ姿を見ていると、強く愛し合っているのは父の目にも明らかだった。
それでも大事に育て上げた娘が去って行ってしまったことが、彼はたまらなく寂しかった。
一方のアーサーも、粗野な男だとばかり思っていたロナルドの繊細さを、彼の顔の中に感じ取っていたに違いない。
彼は穏やかな声でシーラの父に言った。
「ここからは吸血鬼村の方が近い…。宜しければ、私の屋敷で少し休んで行かれませんか?」
「え、ええ…では―」
4人で歩き出すと、湿っぽい雰囲気に耐えられなくなったトーマスが明るい調子で口を開く。
「まあ、クレリーさん。そう気落ちなさらずに。よく言うじゃありませんか、
息子は嫁をもらえば他人だが、娘はいつまでも娘だって…」
他の3人がじっとトーマスを見た。
「なあに、1年もすりゃきっとお嬢さんは戻ってきますよ。モーリに愛想尽かして…」
そうのん気に言ってのけるトーマスにロナルドはいぶかしげに聞く。
「そ、そういうものですかな…?」
「ええ、ええ。そういうもんです。何なら賭けてもよろしいが」
「トーマスさん!余計なことをお言いでないよ!」
何故だか唯一頭の上がらない人・ララにそうピシャリと叱られて、トーマスは「へい…」と首を引っ込めた後で
アーサーだけに聞こえるように言う。
「…息子だっていつまでも息子だと私は思うよ」
「お父さん…」
「どうだ、お前もそう思わないかね?」
「―ええ、そう思いますよ。別にモーリを失った訳ではないのだと…」
「そうとも」
父親は息子を励ますように、その肩に手を置いた。
560人間界での出会い107:04/03/14 14:05 ID:xItWwDBd
想いヶ池に飛び込んだモーリとシーラは、人間界のとある場所に降り立った。
そこには、エトゥール家の人間界での住家があった。
そうして着いた早々に海辺の家に新居を構えた二人は、
居間のソファに寄り添うように座って、駆け落ちの疲れを癒していた。
モーリの呼んだ棺おけは居間の隅に置かれていた。
「とうとう…私たちは人間界に来たんだな」
「ええ…」
「魔界とも、しばらくはお別れだ。君の父上やお祖母さんとも…。つらい思いをさせてしまうが―」
「モーリ、それはあなたも同じだわ。だからそんなことは言わないで…」
「シーラ…」
お互いの家族のことを思って、二人はしんみりした。
するとそんな空気を吹き飛ばそうと、シーラが突然身を乗り出して、彼の口を両手で無理矢理開けようとする。
「あ、こら何するんだ。危ないじゃないか」
「確かめたかったの、吸血鬼の牙があるかどうか」
「牙?もちろんあるさ。人間界にいる間は引っ込めてたんだ」
「ふふ、そうだったの?私も、苦労して耳やしっぽを引っ込めたわ」
そう陽気に言ってにっこりした顔を見せるシーラ。
彼女の明るさに救われたような思いで、微笑みながら彼女の耳を優しくつまんでモーリは言った。
「…でも見てみたいな、君の変身した姿を」
「え、本気で言っているの?」シーラは驚いて聞く。
「うん。何で?」
「おかしな人。そんなのこれからもう嫌っていう程、見ることになると思うけど…」
「じゃあ楽しみにしておくよ」
「ええ、是非楽しみにしておいて下さい」
シーラはニコニコ顔をしているモーリを、(この人ったら何も知らないで…)と内心呆れつつも愛しい思いで眺める。
561人間界での出会い108:04/03/14 14:06 ID:xItWwDBd
「…ところで私が何度、君の首筋に牙を立ててしまいたいという欲求を我慢したか、分からないだろうね」
「そうだったの?」
「そうだよ、特に君の中に入っているとき…そのあまりにも美しい首筋を見てるとつい…。
もちろん君が人間だと思っていた時の話だけど。このまま君を吸血鬼の仲間にしてしまいたいと何度も思ったよ」
「…どうしてそうしなかったの?」
「君に私の正体を明かすまでは出来なかった。いずれはそうするつもりだったんだ。
私が吸血鬼だってことを知っても、それでも変わらず君が私を愛してくれて、そして君もそれを望んでくれたなら…」
「…私がもし人間だったら、あなたと同じ吸血鬼にして欲しいって迷わず頼んだわ」
シーラは愛のこもった瞳でまっすぐモーリを見つめる。モーリはそんな彼女の頬を愛しそうに撫でながら言った。
「ありがとう、シーラ…。―しかし、思い止まって良かったよ。吸血鬼が狼人間に噛み付いたら、
君も私もどうなってたか…。それを考えるとちょっと恐ろしいからね」
「そうね…。でも、お互いに噛み付く以外なら何をしても大丈夫なんでしょう?」シーラの声は少し不安げだった。
「何って何のこと?」モーリはわざと意地悪そうにシーラの耳に囁く。
「もう…分かってるくせに」
「大丈夫だよ」笑ってシーラにキスをする。「こんな風にキスをしても、それより強烈なことをしても…」
シーラはほっとして、彼の胸にほんのりと赤くなった顔を埋めた。
「そうよね、今まで何ともなかったんだし…」
「―ただ…」
「ただ…?」モーリの深刻そうな顔を見上げて、シーラはまた不安になった。
「……気持ちいいだけ」彼の口の端に笑みが広がる。
「!…バカ!」
シーラにつねられた頬に痛みを感じつつも、モーリはにっこりした顔で言う、
「あとは…子供が出来るってところかな?」
「子供…?私、あなたによく似た子供が欲しい」
「君によく似た子供もね。―何だか私は甘い父親になりそうだな」
「…でも、子供が生まれても私のことも見てくれなきゃいやよ」
「分かってるよ。当然じゃないか」
562人間界での出会い109:04/03/14 14:07 ID:xItWwDBd
甘いキスを交わした後で、モーリは言った。
「シーラ、ところで一つ確認したいことがあるんだけど…」
「なあに?」
「―君、本当に22歳なのか?」
そう聞かれて、彼に年齢を偽っていたことをシーラは急に思い出した。
「そ、そう言うあなたこそ、本当に…30歳?」
(本当に私よりずっと年下なのかしら…?)と思うと彼女は落ち込んだ。
どきどきしながらモーリの答えを待っていると…
「……いや。本当はね、驚くなよ、もう284歳になる」
「まあ、意外と歳取ってたのね!随分サバ読んじゃって!」
思ったままを口にするシーラだったが、彼が自分より年上だったのにホッとして思わず笑顔がこぼれた。
「む!君こそ、本当は幾つなんだ?」
「…いいじゃないの、歳なんてどうでも。ねっ」
「私は言ったんだから、君も教えてくれたっていいだろう?」
「…分かったわ、じゃあ言うけど……今年で……168歳…」やっと聞き取れるような声でシーラは言った。
「168歳…!22歳が、聞いて呆れるよ」とぼそっと小声で呟くモーリ。
「何ですってぇっ!?聞こえたわよっ!」
シーラは早速、狼の耳をピンッと頭上に出して、モーリの頬にピンタを食らわす。
「ま、待て!とてもそんな歳には見えないほど、君は若々しくてきれいだって言いたかったんだ!」
「もう…!!第一、そんな歳って何よ!」
「あっ、いやっ。だ、だからそんな意味じゃなくて…」
必死にシーラの勢いを押さえながら、モーリは内心思う。
(そうか、狼女を奥さんにするっていうのはこういうことか…。それにしても…。
167歳の今までキスさえしたことなかったのか、シーラは…。気が強いくせにすごい奥手だったんだな…)
そう思うと更に彼女が愛しく思われた。
プンプン怒っているシーラをぎゅっと抱き締め、「君の言う通り、歳なんてどうでもいいよ」と囁いて
キスをすると、さっきまでのシーラの怒りは和らいだようだった。
「……今のが私たちの最初の夫婦喧嘩かしら?」
「多分―。…でも喧嘩のいいところは、その後で仲直りが出来るってことだね」
二人は微笑み合って、またキスを重ねた。
563人間界での出会い110:04/03/14 14:09 ID:xItWwDBd
「ねえモーリ…」
「ん?」
「私たちが最初に会った時って、馬車に轢かれそうになった私をあなたが助けてくれたでしょ?」
「うん、そうだった。君はとても危なっかしかった」
「あなたを見た瞬間にね、私ピンと来たの。”この人だ!”って」
「へえ、それは光栄だね」
「ふふ…。野生のカンよ」と微笑んで甘えてくるシーラの髪を撫でながら、
(…それじゃ何だか、私はまるで捕らえられた獲物の気分だな…)とモーリは少し思うのだった。
「それにしても…」と言いながら彼は気を取り直してシーラのドレスの中に片手を忍ばせ、
その太ももの内側を撫でさすった。
「…君はこんな所にあんな物騒なモノを隠し持っていたなんて―」
彼に触れられて、シーラの体が熱くなっていき、甘い声が自然と漏れた。
「あぁ…ん…あれはね、最後の…手段だったのよ」
「私には教えてくれてもよかっただろう?全く、度肝を抜かれたよ」
「…んっ…そう?」
「そうって…。平然としてるけど、もし暴発したらどうしたんだ?」
「大丈夫よ、弾は抜いてあったから」
「え…?」モーリの愛撫の手が止まる。
「ふふふ。そう、空砲だったのよ」
テーブルの上に置かれてあったピストルを取って中を開け、それが空であることをモーリに示して
彼女は茶目っ気たっぷりに言った、「ね?」
「な、なんだ…、そうだったのか…。―はっ、でもあんな公衆の面前でドレスをまくったりして、君は!」
モーリは顔を赤くしてプンプン怒っているようだ。
「…モーリ、怒ってるの?」
「ああ、当然だろ。君は私の大事な妻なんだぞ、それが…」
「ちらっと脚が見えたくらいで怒らないで。もちろんここは皆には見えないように注意したわ」と言って
シーラは太ももで止まっていたモーリの手を、大胆にも自分の秘部へと導いた。
下着越しとは言え、柔らかく盛り上がっている彼女の繁みの感触にモーリの気が昂ぶる。
「だって…そんな所、あなたにしか見せないわ。当たり前でしょう…?」
「ああ、分かってるよ、シーラ…。―ところで、そろそろベッドに行かないかい?」
「ええ、連れて行って…」
564人間界での出会い111:04/03/14 14:12 ID:xItWwDBd
モーリは新妻を軽々と抱き上げて寝室へと向かう。ドアの前で立ち止まり、いたずらっぽく囁いた。
「私のものは空砲じゃないからね。今夜は暴発しまくるつもりだから、覚悟してくれ…」
「…もう…やだ、吸血鬼ってエッチね…」
「狼女の君だってそうだ。すごく大胆になってきたよ」
「…吸血鬼と狼女…。私たちって禁断の恋だったのね…」
「そうだ。そして永遠に続く恋―」
「ええ、永遠に変わらない…」
晴れて夫婦となった二人は愛の口付けを交わした。
そしてシーラを抱えたモーリが寝室に消えていくと、パタンとドアが閉じられた―


その後の二人が、数え切れないほどの些細な夫婦喧嘩と、これまた数え切れないほどの仲直りの行為に彩られた
非常に活気のある人生を送ったことは言うまでもない。
駆け落ちからおよそ半年後、魔界の大王から異種族間での結婚の許しを得た二人は、
その条件として魔界と人間界とをつなぐ扉の番人の役目を仰せつかることになる。
二人に与えられた大きな洋館に越して来てから、シーラはモーリの漆黒の瞳と髪を受け継いだ女の子を産み、
「蘭世」と名付ける。幸せ一杯の中、数年後にはシーラの金髪碧眼を受け継いだ男の子も誕生し、「鈴世」と名付けられた。
二人とも、名前も顔も性格も可愛い子供たちだった。
こうして人間界は日本、ほのぼの町の「江藤一家」は末永く仲良く幸せに暮らして行った…。

そして…草木も眠るうしみつ時―
「こ、これよしなさい」
「問答無用!」
子供たちや空の満月も呆れた顔で見守る中、今夜も江藤家の屋敷周辺に派手な夫婦喧嘩の音が響き渡った―

…おわり
565モーリ&シーラ作者:04/03/14 14:18 ID:xItWwDBd
これでようやく完結です。楽しみにしていると書いてくれた皆さん、ありがとうございました。
もし二人が人間界で出会ったとしたらどうなるかな…という思いつきで書き始めた時は
まさかこんなに長い物語になるとは思ってなかったので、我ながら驚いています。
しかし終わってほっとしたような、寂しいような妙な心境です。
二人の駆け落ち話は、過去に他の方もとても素晴らしいのを書かれているし、
自分でもいくつか書いているので、内容が重ならないように注意しましたが、それでも
馬で脱出して想いヶ池に行って飛び込んで・・・といった所なんかはやはり似てしまいました。
今度は二人を棺おけに乗せようかとも思ったけど、やはり馬の方が駆け落ちの雰囲気が出るだろうと思った結果、
あまり変わり映えしませんでしたが、ご了承下さい!(汗)
では、長い間お目汚ししました・・・。
パート9の容量は今どれくらいなのか分からないのですが、すごく独占してしまって、本当に申し訳ないです。
566名無しさん@ピンキー:04/03/14 16:49 ID:McWhh4iJ
大作乙でした!
これで燃え尽きずまたかいて下さい。
ここってまとめサイトとかあるんでしたっけ?
最初からゆっくり読み返したい感じです。

ちなみに現在の容量は475KB・・・。
567名無しさん@ピンキー:04/03/15 00:50 ID:jrs/p1/9
乙です!>モーシー作者さま

結末が分かっているにも関わらず、どきどきはらはらしながら
読んでいました。
うん、最初からゆっくり読み返したいですねえ。
568名無しさん@ピンキー:04/03/17 10:21 ID:nSfRCCBn
短編プリーズ!
569名無しさん@ピンキー:04/03/20 01:00 ID:gO+60RBH
久しぶりにこのスレを見てます。 前迄はパソコンから見れてたのに、最近は人大杉の状態でまったく見る事が出来ません。なので、今携帯から見てます。 これからも携帯から見に来ます。
570名無しさん@ピンキー:04/03/21 00:20 ID:E++gCXSO
専用ブラウザ入れればみれるんだよー
571名無しさん@ピンキー:04/03/23 23:26 ID:c0ube1Hi
せっかくだから、モーシー作者さま専用スレがほすぃかも
とか言ってみるテスト
572名無しさん@ピンキー:04/03/24 07:22 ID:cQ1glOBG
んなもんサイト作れや
573名無しさん@ピンキー:04/03/24 13:18 ID:iyndL27S
専用スレ! もしくはサイト(・∀・)イイ!
574名無しさん@ピンキー:04/03/25 00:07 ID:QDHFUhNS
これ以上過疎村にしてどうするんだよ
575名無しさん@ピンキー:04/03/27 06:59 ID:n4lE8in2
age
576モーリ&シーラ作者:04/03/28 18:19 ID:r020N2ux
新作を執筆中です。
今度は全部書き終えたら投下します。
577名無しさん@ピンキー:04/03/30 11:11 ID:JuM4PnVV
>>576
短めにね!
578名無しさん@ピンキー:04/03/30 22:18 ID:8D0ibBD7
らんぜネタが読みたいです。
579名無しさん@ピンキー:04/03/30 22:30 ID:z/MI1nge
同感
580名無しさん@ピンキー:04/04/02 00:54 ID:eLE0Co3f
私も同感。
ときめき〜のスレだから別に反してはいないけど
やっぱり真壁くん&蘭世ネタも読みたいわ、、、
モーシー作者様は頑張っておられるとは思うんですけどね、ごめんね。
581名無しさん@ピンキー:04/04/07 06:55 ID:bvPSCQ+Q
ageとく。
しかし最近全然ですなぁ…ココ。
まだ人大杉なんだろーか…
582名無しさん@ピンキー:04/04/08 14:14 ID:g8jPkBKS
未だに人大杉なのでしょんぼりです。
リレー小説が立ち消えになってしまうのもしょんぼりなので、
熱く見守ってたんですが、続きを書いてみました。
少しですみません。
>347の続きです。

「江藤・・?大丈夫か??」
「ん・・っ・・だ・・だいじょう・・ぶ・・」
蘭世の体には痛みが走っているのであろう、瞳にはうっすらと涙を浮かべている。
にもかかわらず、大丈夫だから、と無理に笑顔を作る彼女が愛しくて。
ついばむような口付けを瞼に、頬に、唇にそっと落とす。
「もう少し・・我慢できる・・か・・?」
こくりと小さく頷く蘭世。
せめて彼女の痛みが長く続かないように。
ねっとりとした口付けを交わすと、一気に彼自身を奥まで差し入れた。

「い・・っあああああああ!!」
先端しか入ってなかった今までとは比べ物にならない痛みが蘭世を襲う。
無意識に逃げようとする体を俊が抱きしめる。

一応貫通させてみました(笑)頑張れ王子!!
583名無しさん@ピンキー:04/04/08 23:43 ID:YRO0p/ss
いままでこのスレの っていうかこの板の存在を知りませんですた
スレ1〜3をだーーーっと読んでみましたが
ランゼ編をリアルで読んでたもんで、かなり濃厚だ〜
ランゼの話が終わってからをしらないし
単行本持ってないから、文庫でも買います

きっと当時とは違う気持ちで読んでしまうのでそうね
タノシミダーー
584名無しさん@ピンキー:04/04/09 16:29 ID:7he4N0vn
うわわわわわ〜〜リレー小説のつづきが〜〜〜〜〜
もう読めないと思ってたのに嬉しいです(T-T)
さらに続きをもっともっと見たいので、ぜひ専用ブラウザお入れください〜〜>作家さま
585名無しさん@ピンキー:04/04/09 21:46 ID:DQek0/cR
おおっ続きがっっ!
私ももう読めないと思ってたので嬉しいでつ(´Д⊂ヽ
586582@エセ作家:04/04/10 01:25 ID:3Zs9QBL4
喜んで下さったようなので、調子にのって続きを投下しまつ。このスレ&まとめサイト読んでたら煩悩がたましいのように溢れてきますた。w

>582の続き。
初めて感じる蘭世の温もり。吸いつくようにしっとりと絡まってくる。
それだけで俊は爆発してしまいそうだった。
「ま・・かべくん」
少し落ち着いたのか潤んだ瞳で蘭世は俊に微笑みかけた。
一つに繋がった今、俊の心からあふれ出た思いが蘭世の中に流れ込んでくる。
蘭世を不安にさせている以上に俊も不安な事。素直になれない、不器用なまでの俊の愛情。
さっきまでの不安や怖さなどはもう跡形もなく消え去っていた。
「わたし・・う・・れしい・・!」
「江藤・・!」
オレもだ、の返事の代わりに一つ口付けをする。
「・・動くぞ・・辛かったら言えよ・・?」
「ん・・へいき・・」
彼女が辛くないように、少しづつ腰を動かしはじめる。
だが彼女の作り出す潤いと、初めての甘やかな快感が俊の体をかけぬける。
・・もう・・おれ・・止まんねぇよ・・
蘭世の吐息にわずかだけれど、苦痛だけでなく甘いものも混じりはじめた。
「・・かべく・・ん」
「どうした?江藤?辛いのか?」
「・・んで・・?」
「?」
「・・まえ・・よ・・・ん・で・・っ」
「!」
せつない吐息の中蘭世の願い。
「・・蘭世・・っ!」
その瞬間、俊の中の最後の箍が外れた。

587名無しさん@ピンキー:04/04/11 00:55 ID:xRugx+Sp
イイ!ムッハー!!続ききぼんぬ!(゚Д゚)=3
588名無しさん@ピンキー:04/04/11 18:00 ID:ULShKNar
(・∀・)イイ!
589582@エセ作家:04/04/12 00:27 ID:EOq/UhTV
>586の続き。
出来るだけ優しくしようと思っていた。
しかし彼女の名前を言の葉にのせたとたん、もう余裕などなくなった。
愛しい名前。
言葉にするたびに想いとは裏腹に蘭世を壊したくなる。
自分とは違う細い肩、細い腰、滑らかな肌。
甘やかな痛みを耐えながらも、体中で”幸せだよ”という想いをぶつけてくる心。
そして自分と繋がっている部分の温かさ。
彼女の中に溶けてしまいそうだった。
「ま・・かべ・・くんっ・・!」
「蘭世・・ッ・・」
爆発しそうな部分を抑えて胸に真紅の花びらを一枚、また一枚と散していった。

スレの容量が482なのでスレ立てを試みているのですが上手く立ちません(TдT)
細切れな続きでごめんなさい。
またコソーリ投下します。
590名無しさん@ピンキー:04/04/12 18:14 ID:/XXx5mkm
ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ避難所
http://garuru07.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/tokimeki/bbs/

まとめサイト T.T.S.S.
http://garuru07.hp.infoseek.co.jp/

君も逝こう!煩悩の世界へ!(・∀・)イイ! ■過去ログ at 少女漫画板
ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part1(倉庫逝き)
http://salad.2ch.net/gcomic/kako/985/985500292.html

ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part2 (倉庫逝き)
http://salad.2ch.net/gcomic/kako/993/993954576.html

ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part3 (倉庫逝き)
http://comic.2ch.net/gcomic/kako/998/998101635.html

ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part4(HTML化待ち)
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/gcomic/1006581619/

■過去ログ at エロパロ板
ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part5
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1017/10175/1017577906.html (倉庫逝き)

ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part6
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1032/10320/1032076079.html (倉庫逝き)

ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part7
http://www2.bbspink.com/eroparo/kako/1047/10471/1047123533.html(倉庫逝き)

ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part8
591名無しさん@ピンキー:04/04/12 18:20 ID:/XXx5mkm
新スレにコピペしようと思って間違えてこちらにカキコミして
しまいました・・・あぼーんしてきます

作家さま各位
>新スレの方に投稿よろしくお願いします!
592名無しさん@ピンキー:04/04/12 19:30 ID:oF8K4EII
誘導くらい貼ればいいのに
593592:04/04/12 19:31 ID:oF8K4EII
ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part10
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1081761173/l50

何はともあれ、スレ立て乙鰈
594名無しさん@ピンキー:04/04/13 02:14 ID:PhpkR0Qr
鯖移転したみたいなんで こちら↓

ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part10
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1081761173/
595名無しさん@ピンキー:04/04/13 14:50 ID:e2n/HMY1
ついに10本目に突入ですね>スレ
乙鰈です〜

そういえば今日は我らが王子、真壁俊(とアロン)の誕生日!
おめでと〜PAN!( ^-^)∠※.。・:*:・゜`☆、。・:*:・゜`★
さあ、また過去スレ読み直してこようっと・・・(笑)
596名無しさん@ピンキー:04/04/14 21:30 ID:CONVovtk
↑新スレもう落ちてる なんで?
597名無しさん@ピンキー:04/04/14 22:02 ID:/wNKR/HD
ほんとだ…
598名無しさん@ピンキー:04/04/15 00:04 ID:BYa7xhDq
なんでだろう・・・
599名無しさん@ピンキー:04/04/15 14:00 ID:bTMr1c3A
レスがないから即死したんでそ
600名無しさん@ピンキー:04/04/18 11:41 ID:3Tn/0LeH
保守っとく
601名無しさん@ピンキー:04/04/18 19:11 ID:K3FWmB8k
_| ̄|○ 凹み・・・
602名無しさん@ピンキー:04/04/22 22:50 ID:VkfKph56
ほし
603名無しさん@ピンキー:04/04/23 20:04 ID:L4JE125S
モーシーさん、新作頼みます
604名無しさん@ピンキー:04/04/24 04:29 ID:Bf23Mmbi
鬼畜カルロさまよろしこ
605名無しさん@ピンキー:04/04/26 13:54 ID:Jq4DkQDf
保守
606名無しさん@ピンキー:04/04/28 18:32 ID:bma10AXn
どなたか次の作品が出来たときにスレをたてましょうよ。
また即死しかねないので。

もしくはスレたてるときを事前に決めて、
その時間に集って雑談するか。

でないとまた即死しちゃうんで。
607名無しさん@ピンキー:04/04/30 17:34 ID:acAfGrAc
保守っ。
608名無しさん@ピンキー:04/05/01 14:18 ID:uifJe7yA
記念真紀子
609名無しさん@ピンキー:04/05/02 23:34 ID:q+Hy+Atw
続・記念真紀子

妄想はできるけど文章にはできない。
あぁ才能が欲しい。
610名無しさん@ピンキー:04/05/02 23:42 ID:er0kXhnX
べつにSS専用スレなわけではないから
妄想で雑談してくれるとうれしいけど。
611名無しさん@ピンキー:04/05/03 03:46 ID:Z4k46S3f
エロパロに移転してから疎遠になってたけど
久しぶりに覗いてみたら読みごたえあってすごく良かったです!
作家さん達いつも楽しませて頂いて感謝です。

新作楽しみにしてます!!
612名無しさん@ピンキー:04/05/06 07:01 ID:M5451wlr
保守保守
613名無しさん@ピンキー:04/05/06 21:47 ID:7cWQzWg5
真壁君、魔界人になってから、江藤家で一緒に暮らしてたころって
毎晩ランゼを思って抜いてたんだろうなー
カルロが出てきてから嫉妬も手伝って相当悶々としてたんだろなぁ と思うとかなり笑える


614 名無しさん@ピンキー :04/05/06 22:54 ID:1vqOY56I
四六時中、透視してたりして。
615名無しさん@ピンキー:04/05/07 01:57 ID:ML7HTLqC
>613
最近1部を読返して似たような事考えたよw

私はアロンとフィラが高校生活送ってる時、魔界製の家だと邪魔されるから
江藤家で毎晩Hしてたんじゃないかと思ったよ。
人前で堂々とキスするくらいだから、ありうるよね。
616名無しさん@ピンキー:04/05/07 20:56 ID:nNxAG4AM
>>615
あの家ではセクースはもちろん、自慰もできなさそうだよね。
ランゼに手を出せない真壁君はどう処理してたんだろう?

あと、星のペンダントを渡した後、
夢に入ってきたランゼとキスして目を覚ますけど
あれは夢精したと見てもよろしいでしょうか
617名無しさん@ピンキー:04/05/09 06:35 ID:Tq5AHUJT
まきゃべ君の自慰・・・・想像できん。
どっちかっつったらランゼの方が出来る。
618名無しさん@ピンキー:04/05/09 09:13 ID:Bx6j1O2V
私はランゼの方が想像できん。
なんかキスや抱き締められるだけで満足してそう…w

つーか13巻で「俺は飢えたオオカミだから〜(うんぬん)」
ランゼに言ってたけどもしかしてそーとー溜まってる?
とオモタw
619名無しさん@ピンキー:04/05/09 14:30 ID:GGkcg9gP
>>618
ありゃかなり溜まってるね
その次の回でランゼにキスをせがまれデコにするまでの間の長いこと。
ものすごい葛藤があったとみえる。
きっと口にしちゃったら止まらなくなってそう。
作者は、試合が終わったら別れを告げる覚悟の為、デコにしたんだと思うけど。
620名無しさん@ピンキー:04/05/11 03:42 ID:XdgVN1E9

 真壁氏が背中を丸めて暗がりで「ウッ」とか言ってるなんて絶対いや・・・



















   イ  ヤ  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  
621名無しさん@ピンキー:04/05/15 11:19 ID:cquUF900
hoshu

神はもうここにはいないでつか…
某所では王子がいじめられ盛り(笑)なんでつが。

>620
いや、そんなとこもあの人の魅力(??)
おかずが蘭世ならOK(w
622名無しさん@ピンキー:04/05/15 22:36 ID:hjRYDV4G
>>621タマ
某所とはどこでしょうか?2CH内ですか?
気になって眠れそうにもありません
ヒントだけでもプリ〜ズ
623621:04/05/15 23:09 ID:TLnIhImc
>622
オイラが常駐してるサイトはいくつかあるけど、結構どこも盛り上がってるよ。
ほとんどが昔、ここで作品を投下してた神々のサイトで、いろいろ検索かけたら
いっぱい出てくると思う。ガンガレ〜
624名無しさん@ピンキー:04/05/15 23:18 ID:hjRYDV4G
>>623
ありがとう
探してみます!
625名無しさん@ピンキー:04/05/16 01:15 ID:OMoBQmUr
ここで書いてくれる気のある書き手の人はいないのかな…
なんて思ってしまいます。
今すぐ!
なんて言いませんから遠くない未来には書く気あるって言う書き手の人、
いますか?
いるなら頑張って保守も出来るし。
今の状況だと、新スレまた即死するだろうし
626名無しさん@ピンキー:04/05/20 19:35 ID:8ZfFttHM
「っくふぅ」
唇を離すと、蘭世からかすかな吐息が漏れた。
頬を染めて半ば放心状態の顔。初めて見た蘭世のその色っぽい表情に、
俊は興奮を抑えられない。

二人の唾液できらきら光っている蘭世の唇。少しだけ開いているそこに
再びくちづけ、舌を差し込む。

「んんっ」
ぴくっと震えて、俊の舌を受け入れる蘭世。歯列を、舌を探りながら、
俊はそのつややかな黒髪に指を差し入れた。さらさらとこぼれる髪が音を立てる。
蘭世が少しだけ伸ばした舌を自らの舌で絡めとる。

俊はうれしかった。いままで俊にされるままだった蘭世が、自分から
舌を伸ばしたことが。

唾液の絡まる音が二人の間に響く。
蘭世の口の中は、かすかに甘い。いや、髪も、体も、すべてが甘いにおいがする。
それらすべてが俊をひきつける。

じゅん、と音を立てて、蘭世の体の中を何かが走っていく。それは、熱いような、
寒いような、今まで感じたことがないもの。
でも、ずっと知っている感じがするもの。
思わず足をすり合わせる。体の中心から震える。心臓がバクバクする。
『な・・にか・・へん』
キスに蕩ける思考の中で、どこか一点だけが熱を持ったように、それだけを
感じていた。
627名無しさん@ピンキー:04/05/20 21:44 ID:8ZfFttHM
俊はもちろんそんな蘭世に気づいていた。かっと体が熱くなる。
思わず蘭世を抱く腕に力がこもる。息が荒くなる。

二人の吐息で車のウィンドウはすべて真っ白に曇っていた。

久しぶりに休みが取れた俊は、蘭世をドライブに誘い、夕日がきれいなこの岬に
来ていた。平日のせいか、駐車場には彼らの車だけ。灯台が光るのを見たいと
蘭世が言い、食事を済ませた後、すっかり日が落ちたこの場所に戻ってきていた。

岬のはずれに立つ白い灯台が投げかける光を見ながら、助手席の蘭世が頭を
俊の肩にもたれかけた。最初のキスはいつものとおり、触れるだけのもの。
恥ずかしがってうつむいてしまった蘭世のあごを持ち上げて、2度目のキスを落とす。

何度目かのキスのとき、俊は思い切って蘭世の口に舌を差し込んだ。
『いつまでもネンネのこいつは、ディープキスなんて言葉知っているだろうか?』
自分がやることを拒否する蘭世ではないことは知っているが、やはりはじめてのことは
怖い。自分が緊張していることを極力悟らせないようにしながら、俊は蘭世の口の
中をまさぐった。
「っん」
声にならない声を上げて、蘭世は身を硬くした。
いつもと違うキス、自分の口をこじ開けて入ってくる生暖かい俊の舌。
苦しくなる呼吸。
628名無しさん@ピンキー:04/05/21 00:53 ID:UfD7uflC
新作期待(・∀・)!
629名無しさん@ピンキー:04/05/21 08:28 ID:n0EoO0Bt
蘭世は思わず俊の胸においていた手に力をこめた。
その手を俊が握る。唇が離れた。
彼の黒い瞳に吸い込まれそうに、蘭世は彼を見た。
「いやか?」
ふるふると首を振る。
『イヤじゃないなんていえない・・はずかしい』
心の声が俊に届く。

俊は今度は遠慮なく蘭世の唇をこじ開けた。
630名無しさん@ピンキー:04/05/21 10:12 ID:5knQK+7n
イイヨイイヨー(・∀・)
631名無しさん@ピンキー:04/05/21 13:18 ID:38h/ogs6
今さらながらランゼは俊に嘘つけないんだから
イッたふりはできないってことだな 俊ががんばらないといけないなw
続きキボンヌヽ(・∀・)ノ
632名無しさん@ピンキー:04/05/21 15:00 ID:2PKdxddl
キタ━━━( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)゚∀゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)−_)゚∋゚)´Д`)゚ー゚)━━━!!!!

ハヤクハヤク!!

633名無しさん@ピンキー:04/05/21 21:45 ID:n0EoO0Bt
蘭世の変化に気づいた俊は、彼女の細い腰に手を伸ばした。
抱き寄せ、硬くなった自分自身を押し付ける。

『な・・に?あつい・・』

夢中の俊は反対の手で、首筋から鎖骨をたどり、胸へと伸ばした。
蘭世の体がはねて、唇が離れる。
弱々しい力で押し返してくる蘭世。パニックになっている思考はうまく読み取れない。

『行き過ぎたか?』
蘭世の目に涙がたまっているのを見て、俊は思いっきり後悔したが、暴走する体は
止められない。
そのまま思い切り抱きしめる。
634名無しさん@ピンキー:04/05/22 00:33 ID:Uqv8e/yp
イイヨイイヨー
635名無しさん@ピンキー:04/05/22 08:08 ID:ID2xgkXq
>633
久々の新作GJ!
ところで、ageんでくれないか?
636名無しさん@ピンキー:04/05/25 18:25 ID:uByr5cc8
続きが気になるーっ
637名無しさん@ピンキー:04/05/30 23:54 ID:SCrkvZZq
容量がギリギリになっていますので、誘導しそこねた時などは
避難所へ書き込みして下さい。
638名無しさん@ピンキー:04/05/31 16:49 ID:ASYaRz/f
新スレ立てる準備してるんですけど、part10でいいんでしょうか?即死しても10は10だからなぁ…
10-2とでもしておこうか?
639名無しさん@ピンキー
容量危ないので新スレ立てちゃいました。
Part10が即死しちゃったので、一応続きなのでPart11です…

ときめきトゥナイトのエロネタを語るスレ Part11
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1085993193/

即死防止よろしくです!!