エロゲー全般のSS投稿スレです。あなたの作品をお待ちしています。
エロエロ、ギャグ、シリアス、マターリ萌え話から鬼畜陵辱まで、ジャンルは問いません。
そこの「SS書いたけど内容がエロエロだからなぁ」とお悩みのSS書きの人!
名無しさんなら安心して発表できますよ!!
【投稿ガイドライン】
1.テキストエディタ等でSSを書く。
2.書いたSSを30行程度で何分割かしてひとつずつsageで書き込む。
名前の欄にタイトルを入れておくとスマート。
なお、一回の投稿の最大行数は32行、最大バイト数2048バイトです
3.SSの書き込みが終わったら、名前の欄に作者名を書きタイトルを記入して、
自分がアップしたところをリダイレクトする。
>>1-3みたいな感じ。
4.基本的にsage進行でお願いします。また、長文uzeeeeeeと言われる
恐れがあるため、ageる場合はなるべく長文を回した後お願いします。
5.スレッド容量が470KBを超えた時点で、
ただちに書き込みを中止し、次スレに移行して下さい。
保管サイトはこちら
http://yellow.ribbon.to/~savess/ 過去スレ
>>2-4辺り
4なら木村あやかとセックスできる
5 :
名無しさん@初回限定:2007/02/04(日) 23:03:24 ID:uQ1zSQ9c0
マー
6 :
温泉の人:2007/02/05(月) 19:19:22 ID:PxpDHZUO0
7 :
支援:2007/02/05(月) 22:08:34 ID:NgFIX3ah0
保守支援。
エピローグ後想定です。えちは例によってないです。ごめんなさい。
「通販さんと春の午後」
春の温室。冬と違っていくつかの窓は開かれたままだ。
心地よい風がたまに侵入してくる、そんな午後。
ちっく、ちっく、ちっく。
ストップウォッチが刻む時間。
「……ここか」
かちりと止め、同時にポットを取り上げる。
ティカップに注がれる琥珀色の流れ。
「――む」
まずまず。しかし。
「一味、足りない」
首をひねったところで、背後から呼ぶ声。
温室の扉が勢い良く開かれる。
「つ……いやいや花さん花さんっ!お茶していいよね入るよ入ったよっ!」
「やーちゃん声おっきすぎだよ……あー、いい香り!」
「うるさい」
そう言いつつも、声に拒否の響きはない。
大銀杏弥生と野原のばらだった。
「座れ。今淹れる」
もうすこし長めに。いや茶葉を多めに、か?それとも湯温か。
いずれにせよ微妙だ。
邑那は上達が早いと褒めてくれたが、まだ彼女には遠く及ばない。
ちょっとだけ凹む。
この二人はなんでも美味しいといってくれるので気は楽だが、
テイスティングの人間としては全く役立たない。
今のところは自分の舌と記憶が頼りだ。
大銀杏は激しく単位不足らしい。このままでは何年いることになるやら。
野原は本当なら去年卒業できたのだが、わざと単位を落としたらしい。
本人いわく「もー少しダラダラしたかったからねっ」らしいが
大銀杏のためなのかどうかは分からない。
いずれにせよ、それは彼女たちの物語だった。
「美味しいー!ねぇねぇほらこれクッキー食べよ食べよ!
かなっぺが送ってくれたんだよもう我慢できなくてさぁ途中で結構食べちゃったけどさほら」
「さすが新婚さんだよねー。ほら花さんも食べないとやーちゃんが全部食べちゃうよ」
「……頂こう」
クッキーは美味しかった。一番食べたのが誰かはいうまでもない。
いいだけ騒いだ二人が去った後、空に目をやる。
――自分には、無縁の空。
邑那も、彼女らも、最初から翼を持っている。
彼女らは飛べないと思っているだけだ。
きっかけさえあれば、何時でも空へ羽ばたける。
だがこの自分には、まがい物の翼しかない。
アテナの使いであった金属の梟のように。
……あの探検の終わりの日。最後のピクニックの日。
ちょっとだけ嬉しくて、そして楽しかった。
少しだけ、自分を縛る鎖が緩んだような気がした。
でも多分、今も何も変わってはいない。
ここにはアテナは居ない。ヘルメスの魔法も無い。
自分は、けして飛べない。
花もお茶も只の時間つぶしに過ぎない。
これまでも無数の商品や趣味に手を出し、その全てに飽きた。
これもその内きっと飽きるだろう。
あの迷宮の、軍需施設の真の意味。半島に無数に散らばる施設が示すもの。
支配者たる風祭すら忘れてしまったその意味は。
あの地図を良く見直せば、それが一つの図形を示していたことに気づいたろう。
だが、気づく可能性のあった連中は今回全て卒業した。
それは彼女らにとってむしろ幸せなことだろう。
構築された図形。それはあるものを繋ぎとめる封印。
何に対する?決まっている。
――それは課せられたものか、あるいは自ら課したものか。
千年の倦怠と憂鬱。祝福と同時に呪いでもある停滞した時間。
誰が知ろう。戦後の凰華女学院が、そもそも「自分」を閉じ込めるためにこそ作られたのだと。
それは存在してはならない逸脱者。なれど滅ぼすこともかなわぬ禁忌。
故にこの地に封じられた王にして囚、神にして贄。
此処は自分の最後の領土。揺りかごにして墓場。
此処で生まれ、なれど死ぬことを許されず。生きていながら、生きていないままで。
永く遠く。忘れて、忘れられて。
だから自分は――そっと呟く。
「誰か私を……殺してくれ」
「んー、なんか物騒だな。自殺志願はよくないぞ?」
「――っ!」
いつの間にか来客が一人。あまり、いや極めて歓迎したくない男。
「……お前か」
「教師をお前呼ばわりはないだろう。ちなみに自殺幇助は断るぞ」
「誰も何もお前に頼んでいない。迷子教師」
名前は以前聞いたような気もするが覚えていない。
去年もこんな男がいた。鬱陶しいくせに優しくて、だらしないくせに真摯で。
大したことも出来ないのに、その愚直さと存在だけで友人を救った男。
何処が似ているというわけではない。
強いて言えば鬱陶しい所が似ているとしか。
「迷子は一回だけじゃないか。そりゃ君に案内してもらったのは悪かったけどな」
「うるさい黙れ」
何故自分はこんな男を寮まで案内してしまったのだろう。
そのまま森に埋めるか海に沈めるべきではなかったか。
あの時はよっぽど暇だったに違いない。きっとそうだ気の迷いだ。
「悩みがあるのか?なんだったら僕に相談してみないか」
無造作にこんなことが言える男。一般論の王国の住人。
百人中九十九人は生温く溶けた脳の持ち主だろう。そうでなければ只の馬鹿だ。
「断る。茶を飲みに来たのでなければ帰れ」
追い返すのは簡単だが仮にも教師、そこまで冷たく当たるのも躊躇われる。
昔に比べたらこの一年で自分も丸くなったかもしれない。
独り言を聞かれたのも正直落ち着かないが動揺を悟られたくは無かった。
「――お茶、もらえるかい?」
「……練習台で良ければ」
「それで結構」
非常に荒っぽい淹れ方になったにもかかわらず不思議と出来は良かった。
なんとなく悔しい。
「ありがとうお花ちゃん。美味しいよ」
茶噴きそうになった。誰だその手鞠をついてそうな子供は?
「――何だと?」
「花さんって呼ばれてるって聞いたから。だからお花ちゃん」
「却下する」
「じゃあ花子さんで」
「死ね」
トイレやロッカーに居住する趣味はない。
「非道い子だなあお花ちゃん」
「鋏で×××を切られるかジェット一輪車に括られるか即刻選べ」
「すいません生まれてすいませんごめんなさい」
軽口を叩きつつ茶をずずー、と行儀悪くすする迷子教師。
飲んだらとっとと帰って欲しかったのだが一向に懲りていないらしい。
知らぬふりで話を戻してきた。
「――で、何を悩んでいたんだ?」
触れるな鬱陶しい。本当に鬱陶しいのだが。
結局ちゃんと答えてしまうのは何故だろう。解らない。
「……飛べない鳥について」
「鳥ねえ……飛べない鳥というと鶏とか駝鳥とか」
「駝鳥は走れるから除外していい」
ふうん?と教師はこっちを不思議そうに見る。
「速く走れるなら、逃げることはできる」
逃げるという言葉に、教師は一瞬こちらの目を見た後、頷いて答えた。
「逃げる、ね……鶏が飛べないのは育種の末体が重くなったからだろう。
余分な肉がなければ、鶏だって飛べるさ。逃げることだって多分」
彼女たちは飛べる。でも。
「では、鳥を模した人形だったら?」
偽者は、所詮飛べない。
生きていないものは――飛べない。
だが、教師は呟く。
「――どんな人形か僕は知らないが、飛行機だって人工の翼だろ?」
だけど飛んでいる。ならば。
「まがい物の鳥だって、飛べないことはないだろうさ」
――真っ直ぐな、真っ直ぐすぎて。当たり前すぎて。
その言葉は、痛い。
「――何が、わかる」
平静を装う自分の声はわずかに低く震えている。
そんな自分自身が痛い。
話すべきでないような事を、喋ってしまっている。
「……お前は、何も知らないだけだ」
何も、誰も。自分のことは知らない。知るべきではないから。
「確かに。僕に解っているのは一つだけだ」
「……」
「僕は、まだお花ちゃんのことを何も知らないってことだ」
「……正しい理解だ」
ああ。続く言葉が解ってしまう。この男は。
「だから、もっと君の事を知りたいと思う」
この教師は――馬鹿だ。何故、踏み込もうとする?
「好奇心猫を殺す。教師なら意味ぐらい知っているだろう」
「それでも、だ」
「……何故だ?無意味なのに」
「無意味じゃないさ。何故かと聞かれれば」
そうだな、と教師は照れくさそうに笑った。
「お花ちゃんが、聞かれる事を望んでいるように見えたから、かな」
――この男は。百人中の九十九人ではない。
無論、千人中の九百九十九人でもない。
千人に一人の、大馬鹿のほうらしい。
「――馬鹿だお前は」
ここで自分が馬鹿め思い込みにも程がある、と切り捨てれば。
恐らくそれで終わった話。
「んー。良くそう言われるかな」
だけど。
自分は会話に付き合ってしまう。
馬鹿が感染してしまったかのように……いや、違う。
この男だから、話してしまう。
「何も知らない癖に――」
だのに何でも知っているような物言いをする、この男は。
「何でもは知らない。知っていることだけさ、お花ちゃん」
「――お前は食わせ者だ」
付け加えれば多分ロクでなしで教師失格でエロ教師だ。
あとお花ちゃんって言うな。
「かもな」
男の顔をもう一度見る。一応真剣に見えなくも無い。
十人並の普通人。ただの新人教師。鬱陶しい男。
だけど。この男を見ていると。話していると。
――誰かが言っていた。
いつか貴方が、本当に誰かを好きになったら。
全てを捨てられるほど、好きになったら。
きっと貴方も、自由になれるわ――
……自由。ほどけていく、心。
そんなことが、他人はどうあれ、自分に有ると思った事は無かった。
そんな可能性は知らなかった。
いや――今までは、知ろうとすらしていなかったのかもしれない。
支援
「――迷子教師」
「なんだ?お花ちゃん」
「お前の名前は?」
「×××だけど何かなお花ちゃん」
殴る。
割と本気で。
「痛え!教師をグーで殴るか!」
「……二度とお花ちゃんと呼ぶな。
今度呼んだらチェーンソーで三枚に下ろす」
奴はこっちをじっと見て、にこりと笑った。
「じゃ、僕は君を何て呼べばいいんだ?」
嫌な奴だ大馬鹿だ。本当に気に入らない。
こんなものは、魔法なんかじゃない。
だけど。
すう、と息を吸い込む。
いつもの、これまでの繰り返し、かもしれない。
新たに知ることなど、やはり無いのかもしれない。
それでも、胸の奥のこの感情を信じてみるのも。
悪くは――ない。
「私の名前は――――」
ストップウォッチは止まったままだけど、彼女はもう止まってはいない。
ゆっくりと柔らかな風にのって時間は流れ出す。
それはうららかな春の日の午後。
新しい物語の、第一話。
>>8-10>>12−17
by紅茶奴隷でした。読んでくれた人ありがとうございます。
みさきちルートなのに友人を救ったって、
この友人は美綺のほうなん?
あの√はどちらかというと司の方が救われたような気がするんだが
エピ後なのでいろいろ混ざってるとご推察下さい。
邑那√で探検があってもいいじゃまいかぐらいの。
>>19 いつも乙です。
>>10,
>>12あたりがなかなか意味深ですねw
こうなると、元の正門のLasciate ogne speranza, voi ch'intrateや
ガーゴイルも……を封印したものということでしょうか。
どうでもいいけど、やーちゃんは絶対邑那END後も
学院に留年してると思ってた漏れがいますw
では、SS御礼がてら明日は通販さんに投票しておきますね♪
しんすれ そうそう けいきが いい!
紅茶奴隷さんGJです。かにしののサブキャラの美味しさは異常ですね。
そして貴方のせいで、ますますファンディスクの夢が広がりまくりな件についてwww
リーダさん支援……かな?かな?メイドさんズSSです。やや黒め。
エピ後ですが某先生はやっぱりタイーホされたことになってます。
「工藤さんの憂鬱」
風祭メイド部隊の朝は早い。
まだ学生たちが夢の彼方にいる時間から彼女らは活発に動き出しているが
さりとて彼女らも人間。朝からすっきりしゃっきりというわけにもいかない。
未明に電話を受けたとあるメイドさんもそんな一人であったわけだが。
内容を聞き終わって受話器を置いたあと、大きく溜息をついて一度だけ伸びをする。
「……困ったものですね」
その声は、もういつもの明晰さを取り戻していた。
授業開始の鐘が響く頃。
無事理事長たちを送り出した後、一息ついたリーダは窓から学園を見る。
少しずつだけど、変わりつつある光景。
良いほうに変わっていると日々思えるのは幸せなこと、とリーダは思う。
ノックの音。この几帳面な響きは聞きなれたものだ。
「メイド長。工藤ですが」
「あいております。どうぞ」
工藤係長。実務としてはほぼ理事長専属のリーダに代わって、
メイド部隊の指揮を執る中間管理職。
とはいえまだ二十代半ば。
見た目こそ地味だがかなりの美人であることをリーダは知っている。
普段あまり感情を見せることのない彼女だが、ここしばらくはやや憂鬱そうに見えた。
それが今日はいつにも増して微妙な表情をしている。
「……お耳に入れるべきか迷ったのですが」
「何か、ありましたか?」
「警察から連絡がありまして……坂水が逃亡したとのことです」
「……そうですか。懲りない方ですね」
「まったくです」
「……校内のことだけ考えましょう。警戒態勢をイエローに上げて下さい」
「抵抗した場合はいかが致しましょう」
「……現場にお任せ致します。但し、学生にだけはけして目撃されぬように」
教師や用務員はともかく、学生に無用のショックを与えたくはない。
「承知しております」
見えないところであれば相応の対処でも認めます、という意味でもある。
「海……」
ぼそりとリーダが言う。
どことなく、うっとりしているようにも見える。
……えーと。
「……ドラム缶を用意したほうがよろしいでしょうか?」
「え?あら?わたし、何か口に出ました?」
真っ赤になってうろたえるリーダ。
「……いえ、私の空耳でしょう」
「はあ、良かった……ではお願い致しますね、工藤さん」
「……ふう」
工藤係長はリーダをとても尊敬しているが。
「正直、たまに怖くなるときもあります」
と独り言をつぶやく。
「しかし……困りましたね」
ナイフや縄ごときならともかく、もし武装して乗り込んできたら一般メイドでは不安がある。
「荒事は――あの二人にお願いしますか。
暁が学園に残っていれば、もう少し安心できるのですが……」
とある二人を探しに向かう。この時間は温室か寮にいるはずだ。
ひとりの学生の卒業とともに、暁光一郎は学園を去った。
昔一緒に仕事したことがある身としては少々寂しくもあるが、
時とともに、人も変わる。それは受け入れなければならない。
だけど、この憂鬱は――そう簡単には消えてくれないのだろう。
何処から来る憂鬱なのかは、あまり考えたくなかったけれど。
そんなことを漠然と思いつつ歩いていると、分校寮から出てきた二人に出くわした。
「東さん、別所さん。少々よろしいですか?」
「「係長?」」
分校生にメイドA、Bと呼ばれている二人。
ゲストの世話と監視役も兼ねる彼女等は今回の対処に相応しい人材である。
東さんはフェンシングの、
別所さんは柔道のそれぞれ達人であった。
付け加えると東さんは陶芸などものづくりや裁縫が得意で
別所さんは掃除洗濯や料理が得意分野である。
「坂水氏が脱走したようです。学院に舞い戻ってくる可能性があります」
へえ、と二人。あまり驚いてはいない。
「石もて追われなお未練があるってか」
「あの方はSとMどちらでもいけるようですね」
ちなみに二人ともプライベートではけっこうきつい性格である。
学生相手の時とは口調からして違う。
「狙っていた生徒にまだ執着している可能性もありますが、彼女等はすでに学外。
保護者に警戒を促すのは警察の役目でしょう」
いかに坂水でも、八乙女エンタープライズの私設警備隊(軍隊並の練度と聞く)
相手に仕掛けるほど馬鹿ではあるまい。
土地勘もあり、隠れる場所も多い学園周辺に戻ってくることは充分考えられた。
「そういうことですので、もし校内で発見したら速やかに再拘束するように」
「しっかしわざわざ戻ってくるかねえ。それとも再犯や復讐が目的とか?」
「復讐なら我々に、でしょうか?最終的に拘束したのは私たちですし」
「あくまで最悪を想定しての対策です。メイド部隊全員に警戒の徹底を周知しますが、
いずれにせよ見つけ次第、貴方たちには現場に急行してもらいます。
必要な得物は常に携行しておくようになさい」
「了解でっす」
「殺っちゃってもいいんですね?」
「駄目です。別所さんそのキラキラした目はおやめなさい。東さんも、刺すのは手足にとどめておくように」
「へいへい」
「残念です。石畳に頭から落せると思ったのに……」
二人と別れた後、工藤さんは一人ごちる。
「さて。私も得物を手入れしておきましょうか。暴発は洒落になりませんしね」
SIG SG552を磨く空き時間も、憂鬱をまぎらすには悪くない。
「プラスチック弾かゴム弾か……念のため、エクスプローダーとダムダム弾も用意しておきましょうか」
捨て場所に困るような事態は避けたいが、まあ、狙いが狂うのも無いことではないし。
念のため、ドラム缶とセメントも用意しておこう、と彼女は思った。
>>24-27 なむなむ。
by紅茶奴隷でしたっ。
追記。
支援はひとまずこれで終わりにしますです。ネタ切れw
でも最終日までにリーダさんが1000票到達したら
えっちいSSを晒してみようと思います(初挑戦)……
SSスレ「結城ちとせの部屋」「受け継がれるもの」「通販さんと春の午後」「工藤さんの憂鬱」
工作スレ「ちよりん日記」「かなっぺ日記」「李燕玲の休日」
以上全部読んで頂いた方には感謝感激飴あられ。by紅茶奴隷でしたっ。
>>28 紅茶奴隷さん、乙です。
工作スレの方の日記も貴方だったんですねw
気づいてませんでしたよ^^;
というわけで、全部読みましたが、
>>27は
この続きが欲しいところですねw
犯人は、犯行現場に戻ってくるというし(ぇ
それでは、SS御礼がてら、明日の一票は
リーダさんに投票することにします。
もう一票は、いつものように紅茶の人ですがw
>>29いつも感想ありがとうございます。励みになります。
続きは正直ネタが浮かばないですが、まあ坂水先生カワイソスということで。
以下多少元ネタなど。
メイドABのモデルはラノベ「おりがみ」のクラリカとマリエットだったりします。
本家はモーゼルとか火炎放射器とか持ち出すのでもっと危険です。
工藤さんのモデルは誰かな……西尾維新の萩原子荻が大人になったような感じでしょうか。
通販さんは同じく西尾の円朽葉と玖渚友を混ぜたような感じでキャラを肉付けしてみました。
打ち捨てられた超越者、というイメージです。まあそのまんまゆのはの裏ですね。
あと、結城は健速氏のテキストから膨らませた感じなので特定のモデルはいませんが、
テーマとしてはみやびリーダ、邑那イェンの裏側といった感じで考えました。
二対一でそのまま進んでいくのではなく、
二対一が最終的に一対一になることで成長する、といったイメージです。
テーマに沿うと最終的にルドルフ氏は去っていくわけですが、
そこまで書くのもSSとしては野暮かな、ということであそこで〆ました。
長文スマソ。
なんか私ばかり使ってるみたいで申し訳ないですが投下。
リーダさん1000票突破記念SS[Moon Flower]です。
みやびルートアフターを想定しています。
以下、本編を読まれる前にご確認下さい。
※※注意※※
このSSは97%のエロスと3%の萌えで出来ています。
読んだ後でイメージと違う!と思った方ごめんなさい。
どうか石を投げないで投げないで。
※※FAQ※※
Q1.本校司なのにエロいんですけど?
A1.仕様です。主に作劇上の都合です。
Q2.リーダさんもエロいんですけど……
A2.仕様です。主に作者の趣味です。
Q3.みやびーとの3Pが無いんですけど……
A3.PULLTOPさんのFDにご期待下さい。
そんなわけでどうぞ。
[Moon Flower]
4月に入って最初の日曜深夜。
大方の学生や社会人が新たな春を迎えるこの時期は、
この凰華女学院といえど例外なく忙しい。
僕もその例に漏れず、この時間まで事務仕事だ。
ここはみやびの部屋ではなく昔の僕の部屋。
静かに仕事をしたいときはこちらを使うようにしている。
もっとも、今日に関してはここに居る理由がもう一つ。
零時を回り、日付が月曜に変わった頃。
僕の部屋を彼女がノックする。
「マイロード。よろしいですか?」
「はいはい。どうぞ?」
リーダさんが、そっと僕の部屋に入ってくる。
「――お嬢様は、おやすみになりました」
「もう寝付いた?ご苦労様、リーダさん」
「式典の準備で、だいぶ疲れていたようですわ」
「そうか。今日は僕もここで休むから、そっとしておいてやってくれ」
「わかりました。では――わたしもそろそろ下がらせて」
「ちょっと待って」
ここに居る理由。まあそれは要するに。
「はい?」
きょとんとするリーダさん。
「……いつか言ってくれた言葉のことなんだけど」
「……とは?」
「一生、僕に仕えてくれるって。あれは言葉通りの意味?」
彼女と一回、ちゃんと話しておく必要があったから。
「もちろんですわ」
「でも、そうしたらリーダさんは、仮に僕がみやびと結婚したとしたら、どうするんだ?
君は君で幸福にならなきゃいけない。誰かと結婚したいと、思う事はないのかい?」
リーダさんは微笑みながらも、むしろ心外そうに答える。
「いまさらそんなことをお聞きになりますの?わたしは今すでに幸せですのに。
今も未来も、貴方以外の主人を持つ気はありません」
口調はちょっとむくれているようにさえ聞こえる。
「それはとっても嬉しいんだけど……その……なんだ」
一回言葉を切る。えーと。
「ぶっちゃけリーダさん、男性とお付き合いしたことないでしょう?」
ぐらり。リーダさんがよろめくのは初めて見た。
直球すぎる表現にショックを受けつつも頬を赤らめるリーダさん。
「……それは、そうですが」
「つまりその。男性経験とか……無いでしょ」
どんどん赤くなっていくリーダさん。頬に手を当てる姿が可愛い。
「……それも……ご想像のとおり……ですけど」
「だから……もし誰かと結婚しなかったらさ。その……一生」
なるほど得心しました、と真っ赤なまま頷いた後、
はあ、と溜息をついてリーダさんは答える。
眼をつぶっているのは照れ隠しだろうか。
「マイロード。わたしを慮っていただくのはありがたいのですが……わたしはその」
一旦迷ったあと、今度は臆せず僕をきっ、と見て、はっきりと答えた。
「マイロード以外の方に、生涯肌を許す気はございません……っ」
言ってから、さらに真っ赤になったけど。
やばい。可愛すぎる。
でも。でももしそうなら。僕に出来ることは。
「……じゃあ、僕がリーダさんを望んだら?」
ピクリ、と体が震える。
「……でも、それは」
「みやびはリーダさんなら許す、とは言ったけど」
「……」
「その言葉をそのままに受け取る気はないよ。……でも」
「僕は、君の気持ちをきちんと受け止めたいし」
何より。みやびのときと同じように。
「僕は――リーダさんを愛したい」
出来る事は、自分の気持ちから逃げないこと――なのではないだろうか。
「その……」
もじもじ、と両手の指を絡ませながら、リーダさんは真っ赤になって俯く。
ぽつり、ぽつりと彼女はうつむいたまま、言葉をつむぐ。
「マイロードが、そうお望みなら……わたしは……いつでも……」
「みやびが嫌がっても?」
「その……夜のご奉仕も、メイドの任務に無いではないと……思いますし……」
「ご奉仕と言う形であれば……あの子も……納得……でき……」
一応自分の中でもみやびに対する言い訳が欲しい、ということらしい。
まあ、その分みやびも愛してあげればいいことだ。
……都合良過ぎる考えだろうか?
でも、二人とも受け止めるには、そうしなきゃいけないのなら。
だから。僕はリーダさんの言い訳に乗ろう。
彼女を愛するために。
「いいよ。じゃあ、僕の愛するメイドさんに、ご主人さまに奉仕する任務を与える。
それで、いいかな?」
「……はい。喜んで、ご奉仕させていただきます……」
恥ずかしそうに、リーダさんは頷いた。
さて。
「とりあえずマイロードはやめよう。今この部屋には僕とリーダさんだけだから」
「はあ」
リーダさんは不満そうだけども、マイロードだとやっぱり萌えないし。
「ただつかさと呼んでくれ」
「それはいけません」
断固として拒否された。そこはメイドとして譲れないらしい。
「マイロードを呼び捨てにはできません」
「うーん、そうか……じゃあ、つかさ様、でどうかな?」
とりあえず妥協点。まあ呼ばれ慣れてるし。リーダさんも頷く。
「マイロード……いえ、つかさ様がお望みなら、それで」
さて。ここからは今日の本題。というかむしろ罠だよリーダさん。
「ご奉仕の具体的な話をする前に確認したいことがあるんだけど」
「は、はいっ?なんでしょうか?」
「あの日から何回も僕とみやびは同衾しているけど。その都度気になることがあってさ。
たまに扉の外に気配を感じるんだ。誰だと思う?」
「…………」
「リーダさん。露骨に視線をそらさないで下さい……」
「……いいええその……だっ誰でしょうね……帝国軍人の生霊では?」
正直に言いなさい。バレバレなんだから。
「僕と、みやびがしているところを、覗いていたんだろう?
覗きながら興奮して、いやらしい処を濡らしていたんだろう?」
すでにノリノリになってきている僕。
「!……ひどい。そんな言い方……ひどいですわ」
耳を赤くして僕をなじるリーダさん。
うん、確かにひどい男かも。
だって、扉をちょっとだけ開けておいたのは僕だし。(爆)
「でも、本当だろ?ご主人様に嘘は良くないな」
……まっかっかになって、リーダさんは答える。
「はい……わたしは……つかさ様と……あの子の……しているところを……見ていました」
ふむふむ。続けて続けて。
「見ているうちに……その……変な気分になってしまって……部屋に戻って」
「それからどうしたのか説明してごらん?部屋に戻って、それから?」
「が……我慢できなくなってしまって……それで……ゆびを……」
「指を、どこに?続きを言って」
「その……わたしの……いやらしいところに……」
続きを。さあその続きを。
「で……できません……」
「命令だよ」
「でも……」
「言いなさい。ほら『リーダは司とみやびのセックスを見て、オナニーしてしまいました』ってね」
「わ……わたしは」
「言うんだ」
「は、はいぃ……わ……わたしはっ……リーダはっ!」
涙を浮かべて叫ぶ。うん、可愛い。
「オナニーしましたっ!司様とみやびのセックスを見て、オナニーしていましたっ!」
言い終わって気が抜けたのか、へたへたと座り込んでしまった。
……みやび、起きないよな?ちょっとどきどきする僕。
今日はきちんと閉めてあるけどさ。
「……つかさ様……ひどいです」
ぐすっ、と涙ぐむリーダさんには罪悪感。でも、もうちょっと追い討ちしてみる。
「そうか。リーダさんは、いやらしいメイドさんだったんだね」
「ごめんなさい……いやらしくて……ごめんなさい」
「謝ることはないよ。よく言えたね。リーダさんは……ほんとに可愛いよ」
「可愛くて……もっと虐めたくなっちゃうくらいだけど」
その言葉に、彼女は涙で濡れた目で僕を見上げる。
ぞくっとするほど、綺麗だった。
抑えた熱が滲む声で、僕に囁く。
「……虐めてください。いやらしいわたしに、罰を与えて下さい……つかさ様」
そう来たら、僕だってもう止まれない。
「そうだね……いやらしいメイドさんには、罰が必要だね」
「はい……つかさ様のいやらしいメイドに……罰をお与え下さい」
さて、どうしようかな。まず……そうだな。
「上、はだけて」
「……はい」
エプロンを解いてから背中の紐と留め金をはずして、
ワンピースの肩から腰までをはだけさせる。
真っ白で簡素なブラとその内側の同じくらい白い谷間が露になった。
コルセットで押さえられているのでスカートがずり落ちることはないけど、
上半身だけ下着姿というのは正直、非常にエロい。
素晴らしい。うんうん。
……僕、人として間違ってる?正しいよな?
まあそれはともかく。
「じゃ……その姿で、まずはご奉仕してもらおうかな。
……口で、ジッパー下げて」
跪いてもらった前に立つと、腰を顔の前に突きつける。
「……はい」
ゆっくりと歯でつまんで、ジ……ジジジ、と
ズボンのジッパーを引きおろしていく。
「はあ……つかさ様……つかさ様の臭い……」
昼シャワーを浴びたきりだから……少々体臭はきついかもしれないけど
興奮したリーダさんには気にならないみたいだ。
「手を使わずに、口と舌だけで引き出して……咥えて」
「はい……」
トランクスの穴を、リーダさんの舌が割る。
蒸れた内側のそれを、ピンク色の舌が捉える。
「ああ……つかさ様の……」
霞のかかった目で呟くと顔を押し付け、
さらに唇を僕の股間に近づけていく。
ちゅぷ、とまず先端に触れた。それからにゅるん、と滑るように、
唇が柔らかい幹をなめっていく。
ふぅ、ふぅという呼吸が苦しそうに僕の肌を撫でる。
それだけでも気持ち良いのに。
くいっ。舌がねっとりと裏側にからめられ、僕の叢からそれが持ち上げられる。
続いて唇でちゅく、と横向きに挟まれると、そのまま引っ張られる。
うっ……やばい。すでにすっごく気持ちいい。
リーダさんの唇に導かれて、僕の分身はちゅるん、と外気に飛び出す。
「うんっ……ふぁ」
ぷるぷると揺れるそれはすでにだいぶ硬くなっていた。
月光の下、リーダさんの唾でてらてらと光っている。
「ああ……これが……つかさ様の……」
リーダさんはさらに潤んだ眼でうっとりと呟く。
「……舐めて」
「はい……」
裏側を袋から亀頭まで、なぞり上げるように舐める。
ぺろ……ぺろっ。
先端を舌の先でねぶり、ほじくる。
ぺろぺろっ。てろっ、ちゅる、ぴちゃぴちゃ、てろっ。
どんどん僕は膨張していく。思わず声が出そうになる。
「うん……ああ……どんどん……大きくなっていきます……」
「「はあ……はあ……」」
お互いの息が、どんどん荒くなっていく。
「今度は――しゃぶってね」
「はい……」
にゅぷ。唇を割って肉棒が侵入していく。
ぬるり。ぬるじゅるじゅぱっ。
ゆっくりと腰を前後に動かすと、彼女もそれに合わせて
口腔をすぼめ、舌を絡めてくれる。
「んっ……!」
声が出てしまう。とっても気持ちいい。
正直溶けそうだった。
「リーダさん……興奮してる?」
「ふあい」
僕を口にしたまま頷く。
かいがいしく奉仕してくれるその姿を見ているだけで、背中に電流が走る。
紛らすために、さわさわと優しく彼女の頭を撫でる。
髪の毛はさらさらしていて柔らかかった。
「もっと……激しくして」
「……ふあい……ちゅぷ」
ちゅじゅっ。きゅるん。ちゅちゅちゅるっ。ちゅぽん。ぬるっ、きゅぽん。
雁の部分をやわやわと唇で刺激しつつ、喉の奥から先端まで往復させる。
その都度、幹にねっとりと舌を巻きつけつつ締め上げる。
「ああっ!リーダさん、リーダっ!」
ぎゅいん、と急速に、さらに肉棒が硬度を増していく。
腰が僕の意志を超えて動いてしまう。
柔らかな唇に押し付け、湿った喉の奥に先端を叩き込んでいく。
じゅぶっ!じゅぶじゅぶじゅぶっ!
「うふッ、うぐっ!」
むせそうになるリーダさんの頭を押さえつけ、僕は腰をぶつける。
唇と陰嚢がぶつかるぐらい、奥の奥まで。
喉の奥に先端をこすりつけるように動かす。
「うんっ、うふっ、んんっ!じゅっ!」
唇や顎の端から唾を垂らしながらも、彼女はけなげに奉仕を続ける。
「出すから……もう……すぐ……出るから、吐き出したら、駄目だよ」
「うううんっ!うふっ!」
僕の腰に合わせて、彼女の唇と舌も回転が上がる。
ぐにぐにっ。じゅぱ、じゅぱじゅぱっ!じゅぶっ!
「ああっ!出る、出るよっ!飲んで!飲んでっ!精液飲んでっ!」
(んはぁっ!くださひっ!出してっ!)
僕を口にしたままリーダさんが懇願した、その時が限界だった。
どぴゅ、どぴゅどぷどぷぐぷっ!
おびただしい量の白濁が口腔内に打ち出される。溢れそうなそれを、
リーダさんはむせそうになりながらも全部受け止めた。
「んぐ、えむ、うぐっ……ぷはぁ」
ごきゅ。ゆっくりと喉が動き、僕の精を飲み干していく。
ややあって、ごきゅん、と全てを嚥下すると、リーダさんはうっとりと僕を見上げた。
「……飲んでしまいました。……はぁ」
ちゅぷん、と口から肉棒がこぼれた。
「……殿方の精液というのは……苦いのですね」
僕はどろどろになった亀頭を再びリーダさんの唇に押し付ける。
「綺麗にして……」
「んっ、はい……」
潤んだ目のまま彼女は再び口づけると。
今度は舌をめぐらし白濁した汚れの全てを舐め取っていく。
「先っちょ……吸って」
「はい……うんっ……」
亀頭をやんわりと含み、輸精管に残った少量の精液をじゅるじゅると吸い取る。
ちゅる……と全て吸いつくした後、口を離すと
つー……と唇と亀頭の間に唾と白濁が糸を引いた。
「リーダさん、おしゃぶり上手だね。練習してたの?」
また真っ赤になっていやいやをするが、口にして否定はしない。
「正直に言ってね」
「……その……図書室に……夫婦の営みについて……ありましたし」
そんな本があるんだ……でもSMポルノもあるらしいし、不思議でもないのか?
「あの子に……性教育をしたのは……わたしですし……ですから知識、だけは」
「知識だけ?実践は?」
「あの……その」
「練習したんだ?」
「……その……3月以降は……それなりに」
ちょ……やる気満々じゃないですか。
「何を使って練習したの?」
「……言えません、そんなこと」
頬を染めて、ぷいッと横を向いてしまう。
ああ。なんて可愛いんだろう。
「さて……それじゃ次は後ろを向いて」
「え……?」
当惑するリーダさんをベッドに手をつかせる。
「これ……いやです……こんな格好」
後ろから改めてみる裸の肩と背中は想像以上に華奢で。
窓からの月光に照らされて……とても、美しい。
落としたら簡単に壊れてしまいそうな白磁のように。
つー、と真っ白な背中に指を這わせ、
「ひゃうっ!」
驚く隙にブラを外してしまった。
「くすぐったいです……つかさ様……」
あえて無視しつつ、ぷるんと現れた乳房をやわやわともみしだく。
ミルクのように滑らかな肌触り。こんなに体は細いのに、
ふたつの果実は大きさも形も手触りもすべて申し分ない。
「自分で何されてるか見えないと、余計ぞくぞくするだろう?」
乳首をこりこりといじると、それだけでゆらゆらと体をくねらせて悶える。
「ぅあっ……こんな姿勢……犬みたい……嫌です。あんっ……」
「興奮する?」
スカートもばさりと捲り上げてしまうと、かたちのいいお尻が現れる。
右手で胸をもみながら、左手の指でお尻を撫でる。
下着をずらして、そのまま中心の綻びにそっと触れた。
「ひゃんっ!」
びくり、と飛び上がりそうになるリーダさん。
「敏感だね……これから、リーダさんは僕にこの敏感なとこを犯されちゃうんだよ」
ちゅく、ちゅく、ちゅく。指でそっと割り開いていく。指と下着と割れ目がこすれあう。
「ひどい……つかさ様、優しくしてください……こんなのいやぁ……」
指を少しずつ出し入れして、入り口をほぐす。すでにびしょびしょだ。
秘所は綺麗なピンク色だった。濡れかたこそ凄いけど、綻びはほとんどない。
まばらに生えた色の薄い柔毛が濡れて白い肌にぴっちり貼り付いている。
「リーダさんのいやらしいところがよく見えるよ」
「ああっ、見られてる……恥ずかしい……わたしの……変ではないですか?」
「綺麗だよ。リーダさんの体は全部綺麗だ」
僕は――それから下着を脱がせると、
既に濡れそぼる秘部に亀頭の先端を擦り付ける。
いつのまにかシーツにしたたり落ちるほどの洪水になっていた。
「凄いな……実はしゃぶってるときから、濡らしてたんだろ?」
「ああんっ……嫌……いやです……つかさ様っ……」
「いやらしいメイドさんには、お仕置きが必要だね」
「ああ……お仕置きしてください……つかさ様ぁ」
「どうして欲しいの?」
肉棒を上下にこすりつける。秘裂をこねくり回し、真珠に亀頭の先端が触れる。
太腿やお尻に亀頭がこすられてよじられる感じも悪くないけど。
「いやっ……じらさないで下さい……いやぁ……」
お尻をもぞもぞさせて、涙声のリーダさんがおねだりする。
「おかしいな。本来はリーダさんが、僕にご奉仕してくれるはずだろう?」
目の前の光景が可愛すぎて、ぞくぞく。……僕、変になってるかな?
でも、なんかリーダさんもそれで興奮してるし。
「ああ……わたし……ご奉仕します……させてください」
「……僕は、いやらしい犬みたいな格好をしたリーダさんの処女を奪ってあげたい」
「は……はい……」
「リーダさんはどうやって、僕に奉仕してくれるのかな?」
可愛いお尻がまたぷりん、と揺れた。
きっと横顔を振り向けて、でもさらにお尻では無意識のおねだりをするリーダさん。
無言の眼には本当に涙が浮かんでいる。
引き結ばれた口があなたは本当に酷い人ですね、と言っていました。
ごめんなさい。僕は酷い男です。でもやめません。
「言って見て」
だって。リーダさんも、それを望んでいるから。
「酷いひとです……ぃっ……いやらしい犬みたいなわたしの……処女を……奪って下さぃ」
本当に――可愛い。
だからまた、ちょっといじめたくなる。
「いくよ。力……抜いて」
腰を当てて亀頭をゆっくりと秘所にねじこんでいく。。
ちゅい……と裂け目を割って亀頭が侵入する。
濡れていてもまだまだきつい中を進めるうち、何かに阻まれた。
「ああ……」
一呼吸して、リーダさんの緊張が一瞬緩んだのを見計らって。
いきなりずどんと奥に突き込む。
「ひぎっ!」
ぶちり、と何かが切れる音がした。
亀頭はあっさり膜を突き破り、深奥に到達する。
「いっ……いあはああっ!」
リーダさんの背が大きく反り返り、白蛇のようにびくびくとうねる。
この瞬間にリーダさんは、もう処女ではなくなった。
僕が、奪った。
「……痛い?」
「はあ……だ、だい……じょ……ぁぅ……」
そう。だから僕も、もうさん付けはやめよう。
リーダは――僕のものになったのだから。
ずるり、と肉棒をゆっくりと戻す。
「ひっ……」
幹はわずかに赤く染まっているが……出血はさほどではないようだ。
「ゆっくり……するよ」
「……だい……じょうぶ……ですから。もっとお仕置き……してください」
けなげな言葉に、ちょっと罪悪感。
今度はいたわるように、ゆっくりと出し入れする。
でも直ぐに、注送はスムーズになった。
ちゅぷ、ちゅぷと潤滑液がどんどん湧いてくる。
秘裂も膣もびしょ濡れだ。まだきついけど、やわやわと解れて締め付けてくる。
初めてでも、体が華奢でも反応はもうすっかり大人の女性。
突く。突く。突くたびにぴちゃぴちゃと接合部が泡立つ。
ぱんっ、ぱんっ、とお尻と僕の腰がぶつかり合う。
「あうっ!ああっ、ひぃっ!あふぁっ!」
真っ白な背がうねる。飛び散るのは汗か互いの体液か。
たっぷりした太腿のガーターが僕の下半身とこすれあう。
腰を捻って突きこむたびに、かわいらしい悲鳴をあげる。
「いやっ!こんなっ、いやああああはっ!ああっ!」
そこで僕はいきなり動きを止めた。
リーダが手をついたまま振り返って僕を見る。
その状態でも、膣は微妙に蠢いて僕を刺激する。
「あ……」
「いやっていったよね?」
愛しい彼女に、またちょっと意地悪。
「あう……あの……」
「やめて欲しい?」
真っ赤になって、リーダはふるふる、と首を振る。
「なら、言ってご覧。『やめないで、もっと犯してください、つかさ様』って」
躊躇った末に、リーダは復唱する。……このパターン、癖になりそうで怖いな。
「やめないで……下さい。つかさ様……もっと……もっとリーダを犯してください……」
「……じゃあ、体勢を変えようか」
「あぅ……?」
ベッドの上に背中をそっと押す。
とさ、と彼女の細い体が横たえられる。
「仰向けになって……自分で脚を広げるんだ」
「ああ……恥ずかしい……」
両の太腿を広げさせ、自分の手で秘所に触れさせる。
「ぐちょぐちょだ……いやらしいね、リーダ」
「やあ……ひどい……ひどいです……」
「自分で広げてみてよ」
「いやぁ……恥ずかしいです」
「ご主人様の命令が聞けないのかい?」
「ああ……ふぁ……」
先に穿たれたままの綻びは既に奥が覗けるくらい開かれているが
それをさらに白い指で唇を広げさせる。
くぱぁ、と開かれる、濡れそぼつ花園。ぽつりと覗く突起が可愛い。
そうしている間にも中からは真珠が一滴、また一滴。
世界で一番綺麗な花が、蜜を溢れさせている。
顔を近づけ、ちろりと突起を舐めてやると
「ひっ!ひぁっ……駄目、駄目ですぅっ!」
身悶えるのが可愛くてもっと舐る。ちろっ、ちろちろっ。
秘裂の襞を唇で挟んでみたり、舌を奥までねじ込んでみたり。
「やぁっ――あぅっ、いやっ……ひぃっ!」
くじり、しゃぶり上げる都度、中から蜜が染み出してくる。僕は夢中で甘い蜜を啜る。
「はぁ……はぁあぅっ!もう……じらさないでぇ……」
びくんびくんとおなかが波打つ。もうリーダは顔中涙と唾でべとべとだった。
でも――だからこそ、とっても綺麗だと思う。
いつも理性的な彼女が我を忘れて乱れる姿は、本当に綺麗で可愛い。
だからこそ、また虐めたくなっちゃうんだけど。
「お慈悲を下さい、って言ってみて」
「ああ……意地悪です……お……お慈悲を……下さいませ……つかさ様……」
「じゃあ今度は『つかさ様のおちん○ん突っ込んでください』って言ってみて」
「や……そんな……」
露骨な猥褻語に、さらに情けなさそうな顔になる。
「言ってくれなきゃ、あげない」
「いやあ……ああ……つ、つかさ様の……お、おちん○んを……つ……」
「つ?」
もうやけくそ気味に、リーダは泣きながら叫ぶ。
「突っ込んでくださいっ!リーダのお○んこにっ!
つかさ様のおちん○ん、突っ込んでくださいぃっ!!」
よく出来ました。ごめんね。
そっちのほうまで言うとは思わなかったけど。
「突っ込んであげるよ、リーダ」
再び突き込む。もう一切遠慮なく、奥の奥まで。
「は……あひぃっ!」
ゆっくりと戻して、今度はゆっくりと、また奥まで。
「はぁあ……また……入ってく……ひぅっ!ひぃっ!」
今度は浅いところで、短く、小刻みに早く。
突く。引く。挿す。ねじるように、こそぐように腰を動かす。
引き戻すごとに、肉壁が吸い付くように纏わり付いてくる。
突くごとに、赤ん坊の手で握られているように締め付けられる。
「あひぁっ!はぁっ!ふぁっ!ひゃふっ!!」
ぱんっ。ぱんぱんぱんっ。溺れていく。
僕の腰の動きも、どんどん切迫していく。彼女の腰が、それを迎え入れて蠢く。
「リーダ……リーダっ!」
悶える彼女の唇を奪う。舌を伸ばして、彼女は答えてくれる。
絡みあう舌は甘く優しく、僕を包む膣は温かく緊密だ。
上と下の口、両方で僕らはつながっている。
自分の尾を喰らう一匹の蛇のように、僕らはさらに一つに溶け合っていく。
限界が近づいていた。僕は最後のスパートをかける。
「リーダっ!リーダっ!出すよ、出すよっ!僕の精液を、全部っ、全部!
可愛くていやらしいリーダの子宮にぶちこんであげるよっ!」
ぐちゅっ!ぱんぱんぱんっ!ぱんぱんぱんっ!
「あああっ!あなたっ!あなたぁっ!つかささまあああっ!
リーダは、リーダはぁあっ!あなたのっ!あなただけのっ!リーダですぅっ!!
リーダはもはや何を言っているか不明なほど悶え狂っている。
かたちの良いの良い乳房をもみしだき、ピンク色の小ぶりな乳首を舌で転がす。
その都度にリーダの身体全体がくねりさらに乱れていく。
僕の下半身から僕の全てが湧き上がっていく。
血が逆流し、感覚がその一点に集まっていく。
出す。リーダの全てを僕の精液で塗りつぶす。
彼女の全身に、その主人を刻み付けるために。
「あはあっ!わたひにぃっ!くださいっ!いっぱひくださいいいいっ!」
「ああっ!出る!出る!精液出るよっ!出るああああああっ!!」
一番奥まで、突き破らんばかりの勢いで叩き込んだ、その瞬間。
ぎゅうううっと、僕の下半身にからみつく彼女の足が僕をひきつけた。
「あぅあああああああああっ!!あなたぁっ!せいえきぃっ!くださひっいいいっ!!」
僕をあなたと呼んだ彼女の。その言葉とともに意識は真っ白になって。
僕はリーダの、一番深いところに。
長い長い射精をした。
どぷっ!どくどくどくどくどくどくどぴゅぅっ!!
連続して打ち出される白濁が子宮を叩く。
リーダの膣は別の生き物のように蠢きながら、僕から精液を搾り取っていく。
「あああああっ!!あっ……あっ……あぁ……はぁ……」
びくん、びくんとリーダの白いお腹が上下している。
自ら精を体に染み込ませようとするかのように、僕を包みこんだままぎゅっと抱きしめる。
最後の一滴まで出しつくしそのまま上に倒れこむと、僕もそっと彼女を抱きしめ返した。
ややあって、開ききった彼女の秘裂から、
力を失った僕の肉棒がこぼれると同時に、ごぼりと僕の精も一緒に溢れた。
「出てきてしまいましたね……」
「拭いてあげる」
「……ありがとうございます」
僕が彼女の身体を拭いてあげたあと。
二人して、また横になって見つめあう。
リーダは――愛おしそうに自分のお腹を撫でながら、僕を見つめる。
「まだ、何か入っているみたいです……」
「激しくしてごめんね。痛かった?」
「大丈夫です。……ありがとうございました、つかさ様」
月光のさすベッドの上。
横たわって僕たちは向かい合っている。
「何がありがとうなのかな?」
「わたしを――愛してくださって」
「――いつだって、僕はリーダを愛してる。世界でただ一人の、僕だけのメイドさんをね」
「嬉しいです……つかさ様」
互いの息を感じるほど、身を寄せ合っている僕ら。
普通の関係ではなくて、だけどとても普遍的な関係である僕ら。
家族であり、愛する人。単純であり、複雑な答え。
主人、仕える人。だけど結局、言葉は何でもかまわない。
「――わたしは、なにも証は求めません。あなたの妻の座はあの子のためのものです」
「それでも――わたしは、ずっとあなたの傍にいたい」
とリーダは僕を見る。あのときと同じ、真っ直ぐな目で。
「貴方の傍で、わたしは貴方に生涯を捧げ仕えます。
貴方の影の中に立ち、貴方とともに生きるために。
たとえ死が二人を分かっても、あなたは――わたしの生涯ただ一人の主人です」
真摯な性格そのままに、嘘偽りない彼女の言葉が僕を押してくれる。
だから。僕も、真っ直ぐに答えよう。神や世間がなんと言おうとも。
僕は、彼女たちを生涯、ともに愛し続けると。
「――僕も誓おう。あの子も君も、等しく愛し、等しく幸せにすると。君に対して僕が出来る全てで」
「はい――誰がなんと言おうと、神様はわたしたちを祝福してくださいます。
ただ愛のみが……結婚を神聖なものとするのですから」
誰の言葉だったろう。トルストイだったろうか。
本人の意図とは逆かもしれないけれど、今の僕らには相応しい言葉かもしれない。
愛があれば、それだけで神聖。証など無くとも、僕らはすでに祝福されているのだから。
彼女が主人である僕に仕えるように、僕は愛する家族である彼女に仕えよう。
僕らの生の最後のときまで、愛しい彼女は慈しむような笑みで僕に言うだろう。
「わたしは幸せです、マイロード――いえ、あなた」
だから僕も、その都度答えよう、いつでも、どこでも、何度でも。
「僕もだよ――リーダ」
そうして互いを抱きしめあって。
月の下で、僕たちは――
もう一度、長い口づけを交した。
P.S.
翌日。
「んー」
何やら朝から思案している理事長。
「どうした、みやび?」
じろり、と寝不足っぽい眼で僕を見て言った。
「月水金はあたしだ」
「へ?」
「火木土はリーダと寝るがいい、つかさ様」
「ななななにょ?」
とっても凶悪な眼でにやり、と笑うみやび。
ぽん、とほうってくる何やら小さな機械は。
…………
「とっ盗聴器っ!!」
「ふはははは!あたしの耳から逃れられると思うなよっ!
おかげで昨日はちっとも寝れやせん!責任とれっ!」
意地悪な口調を装いつつ、とっても楽しそうに笑う。
「今度から日曜は3人で寝よう。拒否は認めん。
理解したらみやびちゃんぷりちーと復唱しろ」
「ちょwww」
そんな一週間を送っていたら数年で搾り滓になること間違いなしだ。
いや、僕が我慢すればいいのかもしれないけど、
二人の誘惑を退けるのは僕にはとっても難しいわけで。
つか、どう考えても絶対無理。
「死ぬから無理。そんなこと言うみやびはぷりちーなんて呼べない」
「うるさい。口でクソたれる前と後にぷりちーといえこのエロ秘書め!
おはようからおやすみまで常にみやびちゃんぷりちーとゆえーっ!」
リーダはそんな僕とみやびを見ながら、
頬に手を当ててにっこり微笑む。
彼女はとても幸せそうに笑う。
それがきっと僕らの日常。
どこにでもある、終わらない物語。
[Moon Flower] end.
……ちゃんちゃん♪
えっちいSSは初挑戦でしたが如何でしたでしょうか?
自分で読み返してみると赤面……つか、やりすぎ?
知人にはとても見せられません……
ともあれ読んでいただいた方全てに感謝致します。
紅茶奴隷でした(`・ω・´)
……正直、貼るだけで疲れましたorz
俺ならおはようからおやすみまでみやびちゃんぷりちーと言えるwwwwwwwwww
GJ
初めてとは思えないぐらいエロいです…GJ!
この勢いでみさきちのエロいSSも是非
GJ〜
分校司よりエロ化しててワロタw
>>
毎度、乙です。
何ですか、この本校司の皮をかぶった分校司は!?w
エロ初めてなんて、ウソでは?
実は、前世が分校司とか?
>>だって、扉をちょっとだけ開けておいたのは僕だし。(爆)
ひでぇ。
>>「ふはははは!あたしの耳から逃れられると思うなよっ!
もっと、ひでぇw
このエロエロぶりなら、次はすみすみエロSSを希望。
ちよりん日記の時の勢いで、是非w
>>54>>55>>56>>57皆様感想乙です。
エロSSは本当に初めてですよ。エロゲやるのはもちろん初めてじゃないけどw
正直推敲には普段の数倍難儀しましたです。盛り上げるのって難しいですね(`・ω・´)
とりあえず分校組のえちと最近はまった夏めろのえちを参考に書いてみました。
すみすみやみさきちは正直丸谷さんを超えるのは無理だと思うのですよ。
まあ、これからも頑張りますです。またいずれお会いしましょう。
それより前スレ埋めようぜ
>>51 GJ
でもふと思った
それってなんて「いじプリ」のハーレムEND??
実は盗聴機仕掛けたのリーダさんだったりして
>>53 うお、GJ!だ。リーダさん攻略の鍵となる、「みやびと共にある幸せの形」を盛り込みつつもエロい!
愛される事に貪欲になっていくリーダさんって、ぐっときた!メイドっていいなぁ
願わくば、(爆)やらwwwやらを挟まなければ、もっと良かったよ
>32
オレは射精した
フェラBGMで楽に抜いた
64 :
紅茶奴隷:2007/02/17(土) 15:49:58 ID:OExK1Beu0
旧スレ埋めのため小ネタを投下しました。
>>576-578辺り。
すみすみファンに奉げます。
皆様も埋めにご協力頂ければ幸いです。
今さら「ひめりり」をやってみさらに惚れたので、
SSを書いたのですが時期はずれですかね。
どんどんやっちゃってくださいな
ありがとうございます。では、失礼しまして。
68 :
猫を拾った:2007/02/19(月) 19:21:12 ID:vlICgB/P0
みさらと二人、仲良く下校中のことだ。
不意に足元に、何か柔らかい感触がまとわりつくのを、俺は感じた。
「お?」
「にゃ……」
見ると、それは一匹の猫であった。
まだほんの子供で、身動きするたび、産毛のように繊細な毛が
フルフルと震えている。
弱々しい鳴き声を上げながら俺の足に頬ずりするその姿には、
庇護欲をかきたてずにはおかない健気さがあふれていた。
「何だ、おまえは。どこから来たのだ」
思わず抱き上げ、綺麗な鳶色の瞳をのぞき込むと、
仔猫は何となく嬉しそうに「にゃあ」と答えた。
うむ、とても可愛い。こいつ、俺を一瞬で籠絡するとは、
なかなかの策士ではないか。腹を空かせているようだし、
城に連れ帰ってもよいかもな。
バーレッジには、「また居候を増やすおつもりですか」
などと嫌味を言われそうだが。
みさらはどう思うかな?
「おいみさら、こいつ、連れて帰ろうと思うのだ……が?」
隣を見て、ギョッとした。あのみさらが、瞳をウルウルさせて、
猫を凝視している。頬を薄紅色に染めて、恋する乙女の表情そのもの。
「ね、ねこ……」
そのあまりの感動ぶりに、俺はちょっと驚く。
仔猫が幾ら可愛らしいとはいえ、まさか、ここまで反応を示すとは。
そういえば、今までみさらが動物と戯れるようなイメージは皆無で
あったが、そうか、やはりこいつも女の子、可愛いものには心動かされる
のか。
俺でさえそうなのだから、当然と言えば当然だが、
意外な面を見せてくれる。
69 :
猫を拾った2:2007/02/19(月) 19:23:31 ID:vlICgB/P0
「抱いてみるか?」
「え、え?」
「ほら」
「わ……わぁっ」
ひょいと渡すと、みさらは反射的に手を出して猫を受け取った。
が、その動作はどこかぎこちなく、どうも触ることを怖れている
ようにすら見える。毅然としたいつもの態度からは想像も出来ない。
みさらの緊張は、勘の鋭い小動物にはすぐに気取られた。
みさらの手に抱かれた(というよりは、「掴まれた」という表現が
しっくりくるくらいなのだが)仔猫は、俺の時とうって変わってとても
嫌そうな顔をすると、身をよじってするりと逃れ、地面に着地するなり
俺の足元へと戻ってきてしまった。
「にゃー」
みさらに対し、警戒心丸出しである。まあ、それも仕方あるまいよ。
何しろみさらときたら、猫を慈しむどころか、ガチガチに緊張した顔で、
まるで睨むようにして猫を見つめていたのだから。
あまりに扱いが下手すぎる。
「みさら、おまえがそんなに警戒してどうする。猫が怖がるではないか」
「だ、だって……」
「ほら、すっかりこいつに嫌われてしまったようだぞ。俺の後ろに隠れて怯えている。可哀相に」
「うう……わたしは、そんなつもりは」
「害のない小動物だ。もっとやさしくしてやれ」
「や、やさしく、と言われても」
70 :
猫を拾った3:2007/02/19(月) 19:25:55 ID:vlICgB/P0
うむ? どうしたというのか、この動揺ぶりは。猫恐怖症とか、か?
いや、まさかな、そんな病気聞いたこともないし、鵺とかならともかく、
みさらが猫程度に恐れをなすとは思えない。
それを言うと、みさらは怒って俺の頭を小突いた。
「馬鹿者、怖いものか、猫など! それに鵺だと、
一体わたしをどう見ているのだおまえはっ」
「にゃっ!」
この剣幕が、さらに猫を怖がらせる結果となった。
これは……取り返しが付かぬ。もはや並大抵のことで、
この猫がみさらへの警戒心を解くことはあるまい。
「あう……」
今さら失敗に気づいたみさらは、相当のショックを受けたらしく、
泣きべそかいて俯いてしまった。むう、さすがに可哀相になってきたぞ。
「おまえは、動物の扱いに慣れておらんのか」
「幼時より、勉強修行の毎日だったからな……。
そんな暇など、ありはせぬ」
「そうなのか」
さすがは真面目なお姫さま。こう見えて、超のつく箱入り娘だからなあ。
きっと、親や兄の言うことをきっちり守って、ひとりで外へ出ること
などなかったに違いない。俺とは大違いだな。
俺は、昔から、勉強とか修行とかが大嫌いだったから、城をよく
抜け出しては方々へ冒険に行き、様々なものを見知ってきた。
森の近くへ行けば、いろんな動物と出会えることを知っていたし、
その危険も、楽しさも知悉している。
バーレッジに匿ってもらった動物も、片手では数え切れまい
(その後アティリーンにばれて、泣きながら放しに行かされたものだが)。
71 :
猫を拾った4:2007/02/19(月) 19:33:45 ID:vlICgB/P0
そういった経験の薄いみさらは、おそらく、初めて触る猫を
どのように扱って良いか分からなかったのだろう。
可愛いと思っているにもかかわらず、可愛がり方を知らぬのだから、
歯がゆいことであろう。
「みさら、そう落ち込むな。そんなに難しいことではないのだ。
どこから来たのかは知らんが、俺への慣れようから見て、こいつは
どうも元飼い猫だと思う。愛玩動物は、思いやりを持って接してやれば、
きっと応えてくれるものだ」
「そうなのか? だが、わたしはもうすっかり……嫌われてしまった」
シュン、とするみさら。むう、抱きしめたくなってきた。
どうやら、ほんとうに猫と遊びたいらしいな。可愛いぞ、みさら。
俺は、とりあえずこの猫を連れ帰ることにした。
飼うかどうかは別として、しばらく城に置いておき、みさらに
慣れさせてやりたいと思う。シャンレナあたりが喜んで面倒を見そう
だしな。
悄然とするみさらをなんとか励まし、俺達は城へと戻った。
72 :
猫を拾った5:2007/02/19(月) 19:35:51 ID:vlICgB/P0
帰宅した俺たちを迎えたのは、むろん、バーレッジの渋面であった。
「テュロウさま、また居候を……」
予想と違わぬ台詞を、俺は片手で制した。
「文句はあるだろう、わかっておる。だがな……」
俺は、バーレッジの耳元へ囁く。
「みさらが、意外にもな、猫が好きらしいのだ。だが、
扱いが分からず落ち込んでおる。その姿があまりに不憫なので、
俺としては、なんとかしてやりたい」
頼み込むと、バーレッジは、ふう、とため息を吐き、
「テュロウさまがそう仰るのなら」と猫の面倒を快諾(?)してくれた。
シャンレナが、レニーナの遊び相手が増えたと、とても喜んでいるから、
バーレッジにだけ世話をかけることでもあるまい。問題なしだ。
「とりあえずはこれでよし……と」
だが、大変なのはこれからだ。動物は、一度警戒心を持った相手に対し、
そう簡単に心を許すものではない。こちらがいくら相思相愛を願っても、
あちらに「敵」と判断されたなら、それはもう絶望的な試みとなる。
それにだ。それ以前にまずやらねばならぬことがある。それは、
みさらの動物に対する恐怖心を解いてやること。
それができぬようであれば話にならない。
俺は、未だに猫に未練を見せるみさらに、ちょいと釘を打った。
「みさら。慌てても、すぐに仲良くなることは出来ぬ。今は、おまえの
方が問題だ」
「う……その、とおりだ」
「だんだん慣れていこうではないか。なに、おまえは根が優しい人間だ、
いつか猫もわかってくれよう」
「テュロウ……」
73 :
猫を拾った6:2007/02/19(月) 19:37:26 ID:vlICgB/P0
俺を見つめるみさらが涙ぐんでいる。猫への愛しさ、自分に対する
不甲斐なさ、俺に対する感謝、そういう感情が入り交じって、
感極まってしまったのだろう。いやはや、みさらは可愛すぎる。
こうまで可愛いと、つい、いじめたくなってしまうのだ。
ここで俺は、ひとつ名案を思い浮かんだ。
「みさら、あとで俺の部屋へ来い。動物について、いろいろ教えてやる」
「えっ、良いのか」
「当たり前だ。おまえの幸せを、俺は常に考えているのだぞ」
「あ、ありがとうテュロウー……」
今にも抱きついてきそうな勢いだ。素直なものよな、これから、
俺がなにを企んでいるかも知らずに……。ふふ。
アスバにみさらの宿泊を伝えさせ、俺たちは食事と入浴を終えた。
深夜と呼ぶ時間帯へと入っていた。こんな時間に、みさらが俺の部屋へ
来ることも、すでに公認の仲となっている今、誰も文句を言う奴はいない。
事は非常にスムーズに運んだ。
おずおずと部屋を訪れたみさらを招き入れ、俺は準備を進める。
「あの、テュロウ?」
「なんだ、みさら?」
「これは……いったい何なのだ?」
「言ったろう。動物について、教えてやると」
「これが、動物の勉強、なのか? ほんとうに?」
「そうだとも」
「えー……」
74 :
猫を拾った7:2007/02/19(月) 19:40:17 ID:vlICgB/P0
ぶーたれながらベッドに座るみさらは、それは見事な、猫の格好を
していた。いや、猫の格好と言っても、頭に猫耳カチューシャを付け、
毛皮のブラとショートパンツを穿かせただけの、いわゆる「コスプレ
(以前、千名希がそう教えてくれた)」という奴なのだがな。
だが! これが、素晴らしくいい!
実を言うと、こいつをバーレッジに用意させた時点で、たったこれだけの
単純な衣装が、琴線に触れるかどうか、俺自身半信半疑であったのだが。
とんでもないとんでもない。俺は、コスプレを甘く見ていたッ。
この破壊力は……実際に見たものにしか分かるまい!
うおぉおぉぉおみさらッ、飛んでもなく可愛いぞッ。
「え、え、あの……ありがとう」
この恥じらいがまたいい。俺は瞬時に沸騰し、みさらを押し倒しそうに
なる。
だが、待て、まだ理性を飛ばす時ではない。
「えー、オホン、この格好が意味するところはだな、みさら」
「……意味するところは?」
上目遣い。いちいち、俺のエロ心をくすぐってくれる。最近、みさらは
俺の本質をわかってくれている(無意識なのだろうが)と感じる。
ほんとうに、幸せなことだ。
「これは、この変身は、猫の気持ちになりきることにより、おまえの意識を
改革する行為なのだッ」
「猫に……なりきる……」
「そうだ、今この瞬間から、おまえは一匹の猫だ! 俺が許可するまで、
一切人語を話してはならんし、返事はすべて『にゃあ』『にぃ』等の猫語
と限定する! それが! おまえがあの猫と親しくなるための重要な
第一歩となるのだッ」
75 :
猫を拾った8:2007/02/19(月) 19:43:07 ID:vlICgB/P0
あまりにも無茶苦茶かとも思ったが、この状況がすでに異常なだけに、
このくらい大げさでも構わんと思った。みさらがこんな格好をしてくれた
時点で、実のところ、目的の九十パーセントを達成したようなものだった
のだ。
ところが、こんな俺の妄言に対しても、素直なみさらは真剣に考えて
くれている。そして、やがて意を決したように俺を振り仰ぐと、
「では……あ、いや、に、にゃあ……」と、恥ずかしそうに囁いてくれた
のだった。
俺は、……一瞬、意識を失いかけた。
その後は、俺のやりたい放題となった。猫と化したみさらはとても従順で、
何でも俺の言うことを聞いてくれたし、最初は戸惑いがちだった猫語も、
性感の高まりに比例して、だんだん堂に入ってきている。
俺の攻めに反応してにゃあにゃあ鳴いてくれるみさらは、あまりにも
可愛い。
「どう……だ、気持ちよいかみさらっ」
「に……にゃ……にゃあっ、はあ、はぁ、にぁッ!?」
「随分猫の気持ちが分かってきたようだな、みさらっ?」
「にゃあんっ」
「大丈夫、すぐに……仲良くなれる、おまえは……美しい」
俺は、自分がなにを呟いているのか理解していない。目の前でよがる
みさらがたまらなく愛しく、それを伝えたい一心だ。
それがどんな言葉になっていたとしても、みさらは、分かってくれると
信じている。
その証拠に、みさらは俺の腕の中で、どんどん艶っぽさを増していくのだ。
76 :
猫を拾った9:2007/02/19(月) 19:45:29 ID:vlICgB/P0
「はあっ、はぁん、にゃああぁあぁんっ」
「そろそろ、いくぞ……!」
「あっ、はにゃ、あぁん……」
「みさら、みさら、みさら、みさら……っ」
「にゃ、テュ、テュロ……テュロウッ、あはあぁぁん!」
「ぐっ、いく……ッ」
「は、にゃあぁぁああぁあぁッ!?」
そうだ、……大丈夫だみさら……おまえは世界中から、愛される。
むろん、猫だって、おまえを愛する……。そうに決まっている……。
それから、一ヶ月くらいはかかったろうか。俺たちの努力が実り、
猫はようやくみさらに慣れた。近頃では、みさらの手から餌を食うところ
まで来た。それが嬉しくたまらないらしく、みさらは、それこそ猫のように
はしゃいでいる。
アスバ式に「たま」という名前も付けた。
そんなみさらを見ているのはこの上なく微笑ましく、幸せな気分
なのだが……。
愛玩動物とは、常に別れがつきものだ。
77 :
猫を拾った10:2007/02/19(月) 19:48:21 ID:vlICgB/P0
飼い主が現れたのだった。
俺の勘は正しく、拾った仔猫は、シンノエンのある商家から逃げ出して
しまった猫だと言うことだった。飼い主の必死の捜索もむなしく、諦め
かけていたところ、城から発布されていた報せを聞いて駆けつけたのだと
いう。
こうなることは、あらかじめ分かっていたこと。だが、敢えて考えない
ようにしていただけに、現実となると、みさらにかける言葉が見つからない。
「みさら。……その、何だ、元気を出せ」
「……わかっている」
「永遠には一緒にいられぬのだ、……別れは、必ず来る」
「それもわかっている」
では、何故泣いている? とは、言えなかった。みさらの涙が、
あまりにも辛かったから。そうだ、幼い時、辛い別れを経験するたび、
俺はいつもこう思った。
「こんな辛い思いをするくらいなら、はじめから、出会わなければ……」と。
だが、そうではないのだと、俺はみさらから教わったのだった。
たとえいつか別れが来るものだとしても、出会いのよろこびは、幸福は、
何ものにも代えがたいのだと。みさらと出会えたことが俺の一番の幸福だと
感じられる今なら、いつかやって来るかもしれないみさらとの別れも、
俺は、受け入れたいと思う。なぜなら、そのつらさは、それだけみさらへの
愛の証拠となるであろうから。
78 :
猫を拾った11:2007/02/19(月) 19:49:48 ID:vlICgB/P0
そんな気持ちが通じたのだろうか、みさらが、涙を拭いた赤い眼を俺に
向ける。
「……テュロウ」
「なんだ?」
「わたしは……一ヶ月の間、あの猫から幸福を分けてもらえた」
「そうだな」
「わたしの隣に、永き幸福を分け合える相手がいると言うことが、今は
とても嬉しい」
「みさら」
「たまとの別れは悲しいが……。おかげで今わたしは、テュロウのことを、
心から大切に感じている」
「……うれしいぞみさら、俺も、同意見だ。たまのことは……よい
経験であったな」
そうだ。たまとは死別するわけでもない。飼い主はとても良さそうな
人たちであったから、みさらが望めば、いつでも会わせてくれるだろう。
何より、俺たち二人に、この温かい心を再確認させてくれたあの猫に
……俺は感謝したいと思う。
達者でな、たま。また、飯食いに来い。
79 :
東和:2007/02/19(月) 20:07:22 ID:vlICgB/P0
以上、「猫を拾った」終了です。
>>68-78 テュロウとみさらのラブラブ話を書きたかったのです。
ありがとうございました。
80 :
名無しさん@初回限定:2007/02/19(月) 20:18:35 ID:YSDekgY40
支援あげ
あてぃりーんとのフェラチオでえろえろなSSを希望
みさらん可愛いよみさらん
旧スレ大体埋まったと思うんだけどあとはほっといても落ちるのでしょうか?
480k越えたから放置しとけば落ちるはず
あれ、それって落ちたっけ?
490いかないと駄目じゃなかった?
>>87 そりゃあどんなスレであろうと放置すれば落ちる
ただ、まだ書き込める状態で放置して落ちるのは単なるdat落ちと全く同じ
500Kまで行ってエラー出て書き込めなくなったり、1000まで行くのをスレ終了と言うが
うーん。専ブラで今490KB(500000B)と表示されるのだが、今まだ書き込めた。
つーことはあと10KBは埋めないと駄目なのかにゃ?
埋まった。皆様ありがとう。
91 :
タハ乱暴:2007/02/27(火) 12:31:34 ID:sUQll1J20
こちらのスレでお話をアップするのは初めてかな?
どうも、初めましての方が大多数かと思いますが、
世界のどこかで細々と小説を書いているタハ乱暴という者です。
このたび、「はぴねす!」の二次創作を書きました。
エロなし、全年齢OKの健全なお話です。
もしお時間がよろしければ、読んでやってください。
92 :
タハ乱暴「幸せの音色」:2007/02/27(火) 12:34:06 ID:sUQll1J20
Q.人を愛するのに、年の差なんて関係ない――と、あなたは思いますか?
A.証言者H「当たり前だろ! 俺は人妻だろうが女教師だろうが綺麗な女の人なら誰でも……」
Q.人を愛するのに、血の繋がりなんて関係ない――と、あなたは思いますか?
A.証言者S「う〜ん。どうでしょう? 法律で決められている以上、悪いことなんでしょうけど……でも、わたしは兄さんのこと、好きですよ」
Q.人を愛するのに、性別の差なんて関係ない――と、あなたは思いますか?
A.証言者J「モチロンよー。わたしは今も昔もずっと彼のことが好きなんだから。…だから、ねぇ? 雄真ー!!」
Q.人を愛するのに、××の差なんて関係ない――と、あなたは思いますか?
A.証言者U「俺は……そうだな……」
93 :
タハ乱暴「幸せの音色 2」:2007/02/27(火) 12:35:18 ID:sUQll1J20
放課後の屋上は、夕暮れの空が放つ茜色の光線に照らされて、一種幻想的な風景を生み出していた。
神坂春姫達の通う瑞穂坂学園の屋上は町全体を一望出来、その眺めは下手な展望台にも負けぬほどの絶景であったが、真っ赤に染まった町並みを見下ろすのはまた格別なものだった。
放課後になってもう30分、春姫はこの屋上で人を待っていた。
待ち人の名前は小日向雄真。彼女の初恋の人であり、現在の思い人である男の子。
クラスメイトの誰よりも早く登校してきた彼女の開閉式のロッカーに、彼からの手紙が入っていたのは今朝のことだ。
授業中、高鳴る胸の鼓動を抑えながら読んだ手紙には、
『放課後、魔法科の屋上に来てくれ』
と、簡潔に一文だけが書かれていた。
『式守の秘宝』を巡って起きた一連の騒動が終結してはや2ヶ月……魔法科への編入が決まった雄真は、未だ誰とも恋人同士にはなっていなかった。
事件の渦中の人…式守伊吹の想いも、春姫の想いも、誰からの好意も受け取らなかったのである。
しかしそれで春姫の雄真への想いが揺らぐことはなかった。
正確には彼は誰からの想いも受け取らなかったのではなく、誰からの想いにも気が付かなかったのだ。
騒動の終局、伊吹からの告白を聞いたときも、彼は苦笑いを浮かべているだけだった。彼は伊吹の言う『好き』という気持ちを、女が男に向けるものとして捉えず、友達が友達に向けるものとして捉えたのである。
春姫にしたところで、正式に告白した上で交際を断られたわけではない。
自分にもチャンスはある……春姫が彼のことを諦める理由はなかった。
そして今朝、当の雄真からの手紙を受け取ったことで、春姫のいやがおうにも期待は高まった。
手紙とはいかにも古風で彼らしいなと思いつつ、たった一文だけとはいえ、彼から手紙をもらったという事実が嬉しかった。
ましてそれが愛の告白を連想させるような内容であれば……自分から呼び出しておきながら、30分も待ちぼうけさせられているのも、苦にならない。
(これが杏璃ちゃんだったら、きっと文句を言ってるんだろうな)
94 :
タハ乱暴「幸せの音色 3」:2007/02/27(火) 12:49:33 ID:sUQll1J20
手紙に書いてあったのは『放課後』という単語のみで、勿論具体的な時間などは決められていない。
にも拘わらず、『遅刻よ!』なんて言って、待ち人に対して文句を言う親友の姿がありありと想像できて、春姫は思わず苦笑する。
柊杏璃という少女はちょっとだけ我が侭で、時折周りが見えなくなってしまうことがあるけれど、基本的に根の真面目な、何事にも真摯な態度で臨む魅力的な女の子だ。そんな彼女だから、自分を何十分も待たせた相手のことをきっと許しはしないだろう。
一方の雄真は雄真で、そんな杏璃の性格を好ましく思っているだろうから、けれど、素直に謝るなんて恥ずかしくて出来ないだろうから、最初は冗談なんかで誤魔化そうとして、そして結局素直に謝罪するに違いない。
想像上のやり取りでは、雄真が杏璃に何度も頭を下げ、それを彼女が笑って許し、彼自身も笑顔を浮かべてもう一度謝る……という形で終結した。
杏璃に許されてほっとした顔で笑う想像上の雄真の笑顔を、微笑ましいと思う反面、思い浮かべると少しだけ胸が痛んだ。なぜならその笑顔は、想像上とはいえ自分に向けられたものではなく、他の人……それも自分以外の女の子に向けられたものだったから。
自分と杏璃は、親友であると同時にライバルでもある。
もっと具体的にいうなら、ライバルという語の前に『魔法の』と、『恋の』という、冠頭句がつく。
杏璃本人の前で言おうものなら間違いなく一蹴されてしまうであろうが、つまるところ、杏璃もまた雄真のことが好きなのだ。
本人にその自覚はまだ薄いようだが、彼女を見ていれば誰でも分かる。もっとも、当の小日向雄真や、彼の友人で、自分とも共通の友人である上条信哉辺りに理解を求めるのは難しいだろうが。
今のところ魔法のライバルとしては春姫の方が一歩先じている。
しかし、恋のライバルとしては……正直、自分の方が一歩遅れていると、認めざるをえない。
95 :
タハ乱暴「幸せの音色 4」:2007/02/27(火) 12:54:26 ID:sUQll1J20
(この間だって、杏璃ちゃん雄真くんと一緒に何処か出かけてたらしいし…)
それは『オアシス』の新作デザートの試食会に、杏璃が出品するケーキを作るための材料集めだったのだが、花も恥らう恋する乙女の春姫には、『杏璃と雄真が一緒に出かけた』という事実のみが重要だった。
後日、その日の模様を半ばうんざりしながら、しかし半ば楽しそうに語った雄真の傍らで、春姫は親友に対して少しだけ嫉妬を覚えたものだ。
(わたしって意外と独占欲の強い女の子だったのかな?)
自分でも気が付かなかった意外な一面に、いいや…と、春姫は首を横に振る。
好きな人のいる女の子なら当たり前のことだ……と、自分に言い聞かせ、深呼吸をひとつ。
それに、そんなことでいちいち嫉妬していたら、それこそ身がもたないと考え直す。
小日向雄真という少年に惚れてしまった春姫は、とにかく恋のライバルの存在にだけは困らない。
彼に想いを寄せている女の子は、自分以外にも大勢いる。
彼が別の女の子と一緒に出かけていることでいちいち腹を立てていたら、自分の胃は二日ともつまい。
(…って、やだ。『彼』だなんて……わたしったら、もう雄真くんと付き合ってる気になってる)
誰もいない屋上で、ひとり恥ずかしそうに身悶えする春姫。
その両頬が僅かに赤らんで見えるのは、夕日のせいだけではないだろう。
96 :
タハ乱暴「幸せの音色 4」:2007/02/27(火) 12:56:02 ID:sUQll1J20
そのとき、屋上へと続く階段の扉が、勢いよく開いた。
驚いてそちらの方を振り向くと、そこには彼女の待ち人が……彼女が恋焦がれる少年が、息を切らしながら立っていた。
「ご、ゴメン! 春姫。すぐにこっちに向かおうとしたんだけど、準達に捕まっちまって…」
雄真は肩で息をしながら歩み寄ってきた。
屋上で待つ自分のことを思って走ってきたのだろう。顔は紅潮し、額では夕日に照らされて汗が輝いている。
「結構待ってただろ? 暑くなかったか?」
夏真っ盛り……とはいえないものの、暦の上ではもう6月。照りつける日差しの強さはそれほどでもないが、じめじめとした蒸し暑さが不快な季節だ。
少しだけ汗で張り付いた下着の感触に表情を変えることなく、春日は首を横に振った。
「ううん。校舎の中と比べると、外の方は過ごしやすいから。それより……」
「ああ、わかってる」
遅れてきたことをなおも詫びながら雄真が言う。
「話があって呼び出したんだ。春姫に、とても大事な話が…」
春姫の心臓が高鳴った。
三十分ほどの間に期待や妄想を膨らませていた彼女の心は、雄真の『大事な話』の一言で、ひどく揺れ動いた。
夕焼けの綺麗な屋上で2人きり……この状況で大事な話といえば、彼女にはひとつしか思い当たらない。
97 :
タハ乱暴「幸せの音色 4」:2007/02/27(火) 12:56:57 ID:sUQll1J20
(これってやっぱり…そうだよね……?)
期待に膨らむ気持ちをぐっと押し殺し、春姫は「何の話なの?」と、雄真の言葉を待った。
少年はどこか思い詰めたような表情で、視線を泳がせながらおずおずと口を開く。
「じ、実は…その……」
一旦開いた口を、再び閉じてしまう雄真。
普段は平気で男らしい台詞を言うくせに、こういうときだけ躊躇する。だが、それを優柔不断とは思わない。
自分は男の子ではないが彼の気持ちは分かるような気がする。
きっと彼は今、気恥ずかしさと、その先に待つ結果に対する恐怖と闘っているのだろう。もしかすると顔の紅潮は、単に激しい運動をしてきたからだけではなく、緊張だとか他の要因も関係しているのかもしれない。
屋上に風が吹いた。
前髪を揺らすとともにお節介焼きの風が雄真の体臭を運んでくる。
鼻にツンとくる汗の匂い。
不快ではない。
春姫の中の女の本能を揺さぶる、好きな男の匂いだ。
そして風は、彼の体臭を運んでくると同時に、突風に掻き消されそうになった彼の言葉をも、春姫の耳に届けた。
「その俺と、…………が、付き合う……………ほしいんだ!」
小さくかすれた声が、春姫の耳の中で繰り返し響く。
けれど肝心なところが聞き取れなかった。
春姫は彼の言葉がもう一度聞きたくて聞き返す。
98 :
タハ乱暴「幸せの音色 7」:2007/02/27(火) 13:04:16 ID:sUQll1J20
「え?」
「いやだから…俺と……」
また風が吹いた。海から陸へと、先刻とは違って唸りを上げる無粋な突風が、屋上へと吹き込む。
雄真は大きく息を吸い込むと、顔を真っ赤にしながら自棄になったように大きく叫んだ。
「俺と、ソプラノが付き合うのを許してほしいんだ!!!」
「すいません雄真君、もう一度言ってください!!!」
……またこんなネタかと、思ってはけない。
99 :
タハ乱暴「幸せの音色 7」:2007/02/27(火) 13:06:32 ID:sUQll1J20
屋上で発せられたその雄叫びは反響して学園中を駆け巡った。
まだ魔法科の校舎に残っていた教師や生徒は言うに及ばず、その世界の中心で愛を叫んだかの如き直談判は、遠く離れた普通科の校舎にも届いた。
ざわざわと遠くから聞こえてくるどよめきを耳から耳へと聞き流し、瑞穂坂学園始まって以来の才媛・神坂春姫『Class“B”』の魔法使いは、目の前の少年の言葉に目を点にしていた。どうやら遭遇した目の前の現実を脳が理解することを拒み、自己防衛本能が機能したらしい。
一方、彼女をそんな状態にしてしまった当の本人は、慌てて春姫の両肩をつかむと揺さぶった。
「お、おい春姫! どうしたんだ? しっかりしてくれ」
「……はっ!?」
雄真の言葉にはっと点になった目を元に戻す春姫。
彼女は驚いた様子で辺りを見回すと、
「う、う〜ん。気のせいかな? 今雄真君からとても重大なことを言われたような……」
と、記憶をなくしていた。
「ああ。言ったぞ。俺とソプラノが付き合うのを許してほしいって」
「…………はぅッ!!」
再び記憶をなくし、屋上に倒れる春姫。なんというか器用な娘である。
しかしこのままでは物語も進まないし、雄真の話も一向に終わらない。
少年は先刻と同じように彼女の肩をつかむと上下に揺さぶった。
90のFカップという豊満な二つの山がたゆみはずむが、それには目もくれない。これで春姫が起きていたら、女のプライドはズタズタであろう。
100 :
タハ乱暴「幸せの音色 9」:2007/02/27(火) 13:07:30 ID:sUQll1J20
「う、う〜ん…」
だがどうやらその心配はなさそうである。
今度は肩を揺さぶる程度ではなかなか起きそうにない。
「これじゃ拉致があかないな」
コラコラ雄真君、字が間違っているよ。たしかに北との拉致問題は一向に解決の糸口が見えないではいるが……
「……よし!」
などとタハ乱暴が突っ込みを入れているうちに、どうやら何か思いついたようである。
雄真はおもむろに右手を春姫の肩から離すと、「はぁー」と、息を吹きかけた。
「起きんしゃい、春姫!」
“シュパパパパパパパパパパッ!”
秒間十発という高速で放たれたビンタが、春姫の両方を激しく殴打する。
いわゆる往復ビンタだ。手首のスナップを利かせたその鮮やかな返しは、プロのレスラーでもそうそう出来る人間はいないだろう。
101 :
タハ乱暴「幸せの音色 10」:2007/02/27(火) 13:13:14 ID:sUQll1J20
再び春姫が目を覚ましたとき、彼女は自分の両頬がひどく痛むのに気が付いた。
「……なんでこんなに腫れてるんだろ?」
「風邪でも引いたんじゃないか?」
酷い男だ小日向雄真。
それはともかくとして、雄真は春姫にみたびその衝撃の台詞をぶつけた。
今度も春姫は気を失いかけたが、さすがに二度の経験から寸でのところで食い止めた。
ただそれでも、彼女の動揺までもを食い止めることは出来なかった。
「そ、それってどういうことなの!?」
「い、いや…どういうことも何も、言葉通りの意味だけど…」
春姫の物凄い剣幕に身構えながらも、素直に答える雄真。
春姫はこの男では埒があかない(惚れた男に酷い言い草だ)と、魔法の勉強を始めて以来の相棒に話しかけた。
「ソプラノ! これはいったいどういうことなの!?」
『どういうことも何も、雄真様の言葉通りですが?』
――チィッ。こいつもか。
ならばとばかりに春姫はその場にたまたま居合わせた第三者……午後の授業をサボって屋上で昼寝をし、そのまま放課後まで眠り続けて現在にいたる校内一の不良・斉藤君(仮名)に詰め寄る。
「斉藤君! これはいったいどういうことなの!?」
102 :
タハ乱暴「幸せの音色 11」:2007/02/27(火) 13:19:17 ID:sUQll1J20
『は、春姫、斉藤様が答えられるはずないではありませんか…』
落ち着き払ったソプラノの正論も、今の春姫には届かない。
そして斉藤君もまた……
「どういうことも何も、小日向のやつが言ったとおりだぜ」
「――って、何でお前が事情を知っているんだよ!」
いったい何者だ!? 斉藤君(仮名)!
しかしそんな雄真やソプラノ、読者に加えて、作者すら思う疑問を無視し、斉藤君は言葉を続ける。
「小日向と神坂のマジックワンドが互いに好き合っているのは誰が見ても明らかだ。そんな正式に恋人同士になりたいって思うのは、当然の成り行きだろうが。そのとき、マジックワンドの持ち主の神坂に、許可をもらいにいかないでどうするよ? …つまり、そういうことだ」
本当に何者だ!? 斉藤君(仮名)!!?
「雄真君、斉藤君が言ったことは本当なの!?」
「あ、ああ……。春姫には黙ってて悪いとは思っていたけど、ソプラノと俺は前々からその……つ、付き合っていたんだ」
頭をハンマーで殴られたようなショックが、春姫を襲った。
その衝撃力、物理的運動エネルギーに変換して一平方メートル辺り10t!
ふらふらとよろめきながら、しかしなおも正気を保って、春姫は雄真に激しく問う。
「で、でも分かってるの? ソプラノは女の子だけど、マジックワンドなんだよ? 人間じゃないんだよ!?」
「分かってるさ! そりゃ、最初はそのことで悩んだりもしたけど……でも、やっぱり俺はソプラノのことが好きなんだ! ソプラノじゃなきゃ駄目なんだ!!」
『雄真様……』
支援、足りてる?
104 :
タハ乱暴「幸せの音色 12」:2007/02/27(火) 13:21:48 ID:sUQll1J20
一平方メートル辺り20tに増加!!
さしもの瑞穂坂学園始まって以来の才媛・『Class“B”』魔法使い神坂春姫も、この精神的打撃には膝を屈せざるを得ない。
そして対照的に、雄真の男気あふれる発言にソプラノは感極まった様子だ。
『雄真様、私はあなたに一生着いていきます』
「ソプラノ……」
「見直したぜ小日向。俺はお前を優柔不断な野郎だと思っていたが、お前、やるときにはやる男だったんだな!」
見詰め合う男と女(マジックワンド)。そして謎の男・斉藤君(仮名)。
一方、頭に20tの錘りを乗せ、煙を上げる春姫の心はズタボロである。
(あ、杏璃ちゃんやすももちゃん達に取られるのは仕方がないと思ってた。みんな良い娘だし、わたしも大好きだから、雄真君が誰を選んでも祝福してあげるつもりだった。
準さんは……男の人だけど、雄真君を想う気持ちは本物だったから、諦める気にもなれた。けど…けど……!)
105 :
タハ乱暴「幸せの音色 13」:2007/02/27(火) 13:23:43 ID:sUQll1J20
がらがらと崩れ落ちていく大切な何か。
そして彼女は、静かに言葉を紡ぐ。誰にも聞き取られないよう小さな声で、しかし確実に、一語一語を丁寧に、ありったけの想いを篭めて。
「エル・アムダルト・リ・エルス……」
「え? なんだって春姫? ソプラノと俺とのこと認めてくれるのか?」
「……ディ・ルテ・エル・アダファルス!!!」
「え――――――?」
収束する魔力!
熱量を増す大気!
『Class“B”』魔法使いである以前に、ひとりの女である春姫の放った初級魔法が、膨大な威力を伴って空気を焦がす!!!
打ち放たれた火砕流は雄真の鼻先数センチのところを掠めていき、背後にあったコンクリートブロックに炸裂した。
マジックワンドを介さず直接放たれた炎は小さく、糸のように細い。しかし、それだけに篭められた魔力の密度は濃く、ピンポイントに狙われた雄真はたまったものではない。
“ドロリ…”と、粘性を有した液体がモダンな造りの魔法科校舎の屋上を汚す。
春姫の放った火炎魔法によって融解し、固体から液体に戻ったコールタールだ。
106 :
タハ乱暴「幸せの音色 14」:2007/02/27(火) 13:27:36 ID:sUQll1J20
「……は・る・ひ?」
“ギギギ……”と、油の切れた機械のように鈍い動作で首を回す。
少年の視線の先には――――――口から“何か”吐き出している鬼がいた。
「フー…フー……フー……!」
「春姫が壊れたー!!」
壊したのはお前だ、小日向雄真。
「――って、人を鬼畜系18禁ゲームの主人公みたいに!」
壊したのはお前だ、小日向雄真。
それはともかくとして、雄真にさんざん心を弄ばれ、好き放題にされた挙句の果てに壊れてしまった春姫
の暴走は、時間が経過するとともにより悪化していった。
「ユウマクンハワタシノモノユウマクンハワタシノモノユウマクンハワタシノモノ……」
なにやら物騒な台詞を口にしつつ、魔力によって精製された破壊の光を撒き散らしながら雄真に迫る春姫
。
「ま、待つんだ春姫。落ち着いてくれ。お前はもうよくやった。だから山に帰れ……」
そして気が動転してなにやらわけのわからない喚きを吐き出す雄真。
恋する乙女と少年の心の距離は、どうやら今は天と地ほどの隔たりがあるようである。
107 :
タハ乱暴「幸せの音色 15」:2007/02/27(火) 13:31:44 ID:sUQll1J20
「ソプラノニハワタサナイソプラノニハワタサナイソプラノニハワタサナイ……」
『春姫、雄真様を物扱いするのはおよしなさい。雄真様はあなたの所有物ではないのですよ!』
「ソプラノ…サンキュ。ソプラノが俺のことをそんなに想ってくれてるなんて……嬉しいぜ」
自分では移動の出来ないソプラノは、雄真に抱きかかえられる形で逃走中だ。
これが普通なら男と女が見つめ合い、抱き合っている構図になるのだろうが、傍目にはとても音楽のセン
スがあるように思えない少年が、奇妙な形をした管楽器を抱きながら走っているようにしか見えない。
だが、心を通い合わせる当の本人達に、そんな周りの目は関係ないようである。
追う春姫と追われる二人。
しかし追われる二人の視界には、追う鬼の姿はあっても、意識の中にはなかった。
雄真にはソプラノしか目に入らず、ソプラノには雄真しか目に入らない。
その様子を一言で形容するならバカップル。
禁断の愛に手を染めながら、許されぬ恋に身を焦がしながら、雄真はソプラノを、ソプラノは雄真を想い
、互いの熱を求める。
大切な人を守るために、雄真は必死で足を動かす。
大切な人を守るために、ソプラノは必死で主の説得を試みる。
しかし鬼は、そんな二人の愛にむしろ憎悪を抱き、嫉妬の炎を燃やした。
春姫は次々と攻撃魔法を繰り出しながら、屋上を駆け抜けた。
マジックワンドを介さずして放たれる魔法の威力・精度は、魔力の消耗とは裏腹にむしろ向上している。
ここにきてその恐るべき執念、恐るべき愛憎。
今の春姫ならばゲーム本編でさんざん苦戦した伊吹との戦闘も、難なく勝利出来るだろう。
108 :
タハ乱暴「幸せの音色 16」:2007/02/27(火) 22:24:16 ID:sUQll1J20
「エル・アムダルト・リ・エルス……」
壊れかけの彼女がトドメとばかりに撃ち放つは春姫が最も得意とし、最も最初期に習得した初級魔法。彼女が魔法を目指すきっかけを作った、思い出の魔法。
「……ディ・ルテ・エル・アダファルス!!!」
掌から溢れ出る炎の舌が、煉獄の火砕流が、今再び愛する少年を管楽器の魔手から救わんと、大気を引き裂く。
そのとき、背を向けて逃げる二人の背後を守るかのように、ひとつの影が飛び出した!
「させるかぁッ!」
斉藤君(仮名)だ!!!
襲いくる灼熱の業火に立ち向かい、斉藤君は勇敢にも正拳を突き出す。
「うおおおおおお――――――ッ!!!」
次の瞬間、打ち出された鉄拳と火炎がぶつかり合い、爆発した。
「うあああああああああああッ!!!」
斉藤くーん(仮名)!!?
爆発の衝撃で斉藤君の身体が吹き飛び、きりもみになり、魔法科の校舎の屋上から、校庭へと真っ逆さまに落ちていく。
109 :
タハ乱暴「幸せの音色 17」:2007/02/27(火) 22:27:08 ID:sUQll1J20
「斉藤ぉ!」
『斉藤様!』
雄真とソプラノの絶望の悲鳴が同時に上がった。
二人は春姫から逃げなければならない状況にあることも忘れ、慌ててフェンスへと駆け寄った。
薄い金網の壁一枚を隔てたその先で、斉藤君は……
「まだ…まだだぁぁぁぁぁぁあああッ!!!」
……飛んだ!
落下の最中重力に逆らい、くるりと一回転。地面に着地するかと思いきや、斉藤君はそのままグランドを蹴る。そして……
「おおおおおお――――――ッ!!!」
凄いよ斉藤君。君、出る作品を間違えているよ。
天高く舞い踊った昇竜は、沈みゆく夕日を背に空で躍る。
玉のような汗が夕焼けに染まった空へと飛沫を散らし、男は愛を誓い合う二人を守るために、暴走する鬼に立ち向かう!
「しゃいいいッ!!」
110 :
タハ乱暴「幸せの音色 18」:2007/02/27(火) 22:30:04 ID:sUQll1J20
……夕日に照らされ校庭に下りる2つのシルエット。
男の影は女の顎を打ち、女の影は男の胸を突く。
男は……
そして女は…………
111 :
タハ乱暴「幸せの音色 19」:2007/02/27(火) 22:33:32 ID:sUQll1J20
翌日。
いつものように朝、準やハチといったお馴染みの面々と待ち合わせをしていると、唐突にすももが言った。
「そういえば兄さん、朝から訊きたかったんですけど…兄さんが背中に背負ってるのって、姫ちゃんのマジックワンドですよね?」
「ん? ああ、そうだ。……実は、昨日春姫から頼まれてな。今日は一日忙しくて、毎日の掃除も出来そうにないからって、ウチに泊まっていってもらったんだ」
「そうだったんですか。…あれ? でもそれだったら預かっていた……って、言った方が適切じゃないですか?」
「おいおい、ソプラノを物扱いするなよ。マジックワンドって言っても、俺たちと同じでソプラノにはちゃんと人格があるんだ。そんな他の物と一緒の扱いをするな」
「あ! たしかにそうですよね……すみません。ソプラノさん」
『いえいえ、いいんですよ。すもも様』
しゅんと肩を落として謝罪するすももに、ソプラノは優しく語り掛ける。
『雄真様はああ言ってくださいますが、私は所詮“物”に過ぎませんから』
「そんなことないですよ!」
ソプラノの自虐を含んだ発言に、雄真が反論するよりも早く、すももがきっぱりと言い切った。
「ただの“物”がそんな風に自分について考えますか? ただの“物”がさっきわたしにしてくれたみたいに人を慰めてくれますか?
ソプラノさんはただの“物”なんかじゃありません! わたし達と同じように考えて、喋れる、人間です。ソプラノさんはわたしの大切な友達です!」
『すもも様……』
112 :
タハ乱暴「幸せの音色 20」:2007/02/27(火) 22:34:03 ID:sUQll1J20
ソプラノは思わず言葉を失った。
マジックワンドを人間だと言い、友達だと言う彼女……なんと青臭い意見だろう。所詮マジックワンドは魔法使いより効率良く魔法を行使するために生み出した“道具”に過ぎない。自分達が持つ心は、人に作られた偽りのものだ。
けれど、それをあくまで真っ直ぐな瞳で、真摯な態度で言う彼女の姿、その言葉は、そんなソプラノの作られた心に大きく響いた。
『……やっぱり兄妹ですね』
ソプラノの口……トランペットを模した彼女の冷たい唇から、優しげな呟きが漏れた。
自分のことを愛してくれた少年と、自分のことを人間と呼んでくれた少女は、兄妹ではあるが血は繋がっていない。
しかし、二人はまるで本当の兄妹のように似通った部分がある。
おそらく、血の繋がり以上に確かな心の繋がりが、二人を似せたものにしているのだろう。
ふと二人の方を向けば、自分の呟きの意味が分からずに、キョトンとした顔をしている。
『いえ…以前、雄真様も同じようなことを言ってくれたものですから』
「兄さんが?」
『はい…』
目を丸くして聞き返してくるすももと、何か思い当たる節があったのか、突如顔を真っ赤にする雄真。対照的な二人の反応に自身偽りと認識している心の中で苦笑する。
あれは、そう……彼が自分のことを好きだと言ってくれた日のことだ。
あのときの事を思い返すと、与えられた名の通りの自分の声色は、さらに高く、優しい歌へと変わる。
あのときの事を思い返すと、ないはずの胸が幸せな気持ちでいっぱいになり、気分まで優しいものになる。
113 :
タハ乱暴「幸せの音色 21」:2007/02/27(火) 22:37:21 ID:sUQll1J20
『……私は幸せ者ですね。春姫だけでなく、雄真様やすもも様のような優しい人達に囲まれて』
黄金色のマジックワンドは優しく微笑んで、歌うように美しい声で言った。
本当に自分は果報者のマジックワンドだ。
こんなにも優しい人達に囲まれて、こんなにも優しい気持ちになれて。
こんなにも、愛しい人が傍に居てくれて……。
すぐ傍に雄真の背中の広さを、心臓の鼓動を、彼の吐息を感じながら、ソプラノはひとときの安息を覚える。
春姫と一緒に過ごすときとはまた違った、嬉しさの混じる安らぎだ。
遠くの方から、聞き慣れた声が聞こえてきた。
どうやら、愛しい彼の友人達がやってきたらしい。
ソプラノはすももに挨拶をする、いやらしさを感じさせる男の声を聞きながら雄真の鼓動を聞き逃すまいと、耳を傾けた。
114 :
タハ乱暴「幸せの音色 22」:2007/02/27(火) 22:41:43 ID:sUQll1J20
「……何の騒ぎだ?」
瑞穂坂学園を象徴する二つの校舎の外壁が見え始めた頃、それまでにもざわざわ聞こえてきたいつもより大きめの周囲の喧騒は、校門の前まで来るとひとつの群集が発しているものであることが分かった。
人々の群れの中からは悲鳴と怒号、どよめきがひとつの音楽隊をなし、指揮者不在の楽曲は統制のない不協和音を奏でている。
そん中、回転する赤色灯と白いボディを見つけた準は、「何か事故でもあったのかしら?」と、ひとり呟いた。
やがて群集の列に変化が生じた。
どよめきがより大きなものとなり、黒い群れの中から「どいてください!」と、切羽詰った男達の声が飛んでくる。
校門の辺りに密集する野次馬達が道を開け、救急隊員が担架を持ってやってきた。
軽金属の合金パイプと厚い繊維で出来た神輿には、ひとりの少年が、見るも無残な重体が運ばれていた。
「あれは……!」
「いやぁ!」
黒い制服に身を包んだ二人が息を飲み、特徴的なデザインの制服に身を包んだ二人が悲鳴を上げた。
担架に付き添うように走る少女の声が、周りの喧騒をものともせず、むなしく響く。
「斉藤君(仮名)! ねぇ、しっかりしてよ斉藤君……!」
担架の上には、満身創痍の様子で意識不明の状態にある斉藤君の姿があった。
115 :
タハ乱暴「幸せの音色 23」:2007/02/27(火) 22:56:32 ID:sUQll1J20
丈夫な生地で作られているはずの学生服はぼろぼろで、とくに胸の部分は完全に焼け焦げて、彼の厚い胸板に二度の火傷を負わせている。おそらく、よほど強力な火災に巻き込まれたのだろう。
「くそッ! いったい誰がこんなことを!!」
不良の斉藤君の唯一の友人が、はけ口のない怒りを校舎にぶつける。
殴った拳は赤く腫れ、しかしそれ以上にその顔は真っ赤だった。
「クショウ…チクショウ……!」
少年の呻きと悲しみは校舎を揺らし、少女の悲鳴は六月のじめじめとした大気をより陰惨な雰囲気へと狂わせる。
それを傍観しながら雄真は、
(クソッ! いったい誰がこんなことを!!)
……昨日の出来事を、さっぱり忘れていた。
どうやら一晩寝て、自己防衛本能がはたらいたらしい(コイツもか)。
“バタン”と、救急車のドアが閉じ、赤色回転灯が唸りを上げる。患者を乗せた自動車は、公道を急げる限りのスピードで校門前から去っていった。
残された者達の心には動揺と悲しみ、そして……
「クショウ…チクショウ……!」
やり場のない怒りだけが残留していた。
116 :
タハ乱暴「幸せの音色 24」:2007/02/27(火) 23:02:18 ID:sUQll1J20
斉藤君が救急車で搬送されたというただ一点を除けば、本日も瑞穂坂学園の一日はいつも通りの日常の下始まった。
ただし、悲しいかな当の斉藤君が籍を置く普通科二年A組だげは、本日の欠席者三名という悲しい始まりを迎えてしまった。
欠席したのは今朝、魔法科の屋上で重体で発見された斉藤君と、彼の幼馴染で、不良の彼といちばんに仲の良い少女。そして連絡不届けの欠席をした神坂春姫。
(……斉藤達はともかくとして、何で春姫まで)
昨日の記憶を一晩で綺麗さっぱり忘れ去った雄真は、優等生・神坂春姫の無断欠席の報に首を傾げていた。
補足すると雄真はまだ普通科の教室で授業を受けている。九月から魔法科に転科する予定の彼だが、六月の今はまだ慣れ親しんだ学び舎の中にいた。また、魔法科の校舎での授業は同じく九月からなので、柊杏璃や上条兄妹といった魔法科の面々も、未だ同じクラスメイトである。
雄真はエロゲー主人公のたしなみ……教室最後尾、窓際の座席にて、古文の授業を聞き流しながら、ぼうっと窓の外を眺めていた。
側の壁には、春姫が欠席ということでそのまま持っていることになったソプラノが、陽気に照らされ立てかけられている。
117 :
タハ乱暴「幸せの音色 25」:2007/02/27(火) 23:04:24 ID:sUQll1J20
考えることは色々あった。
欠席した春姫のこと。斉藤君をあんな目に遭わせた犯人のこと。それから……魔法のこと。
魔法科への転科まですでに三ヶ月を切っている。目下必死に勉強中ではあるが、数年ものブランクを抱えた身では、正直周りに着いていけるかどうか不安である。
それに……
(……やっぱり、もっと高度な魔法を使えるようになったら、マジックワンドを作らなくちゃならないのか?)
マジックワンドは魔力の増幅器。
より高度な魔法を行使しようとするのなら、一流の魔法使いにとっては必需品である。
(けど、なあ……)
傍らのソプラノにチラリと視線をやる。
正直、あまり考えたい内容の話ではない。
今朝、すももが言ったようにマジックワンドはただの道具ではない。人格を持ち、思考力を持ち、持ち主と常に時間をともにする、いわばパートナーなのだ。
(パートナーって、ソプラノ以外に考えられないんだよなぁ…)
一緒に同じ時間を過ごしたい。一緒に同じものを見て、同じことを考えて、同じ道を歩んでゆきたい。
たとえそれが、茨の道であったとしても。
(パートナー…か……)
記憶の糸車を回し、雄真は過去へと意識をかたむける。
自身言うとおり、所詮道具でしかないマジックワンドに、何故自分がこんなにも惚れ込んでしまったのか。
その、道程の記憶を……
118 :
タハ乱暴「幸せの音色 26」:2007/02/27(火) 23:10:41 ID:sUQll1J20
……道具でしかないはずの彼女。
そこに魅力的な女の顔を見つけたのは、そう、まだ四月の始め頃で、普通化の生徒にとって魔法科の生徒が珍しかった頃のことだ。
会話の流れで春姫達のマジックワンドの話になったとき、ハチがふざけてソプラノに触ろうとして、彼女が身を震わせたとき。
あのとき、自分初めてマジックワンドを生きた存在と意識した。
ハチに怯えるあのときのソプラノの様子は、まるでクラスメイトの他の女の子達同然で、マジックワンドはただの喋る道具ではない…と、改めて認識させられた瞬間だった。
小動物のように震える彼女を可愛いと思い、春姫の前ではそれこそ本当のお姉さんのように振る舞う普段とのギャップから、思わずドキリとしてしまった。
そしてやってきた、『式守の秘宝』とそれにまつわる過去の因縁、あの事件。意識的に魔法を遠ざけていた自分に、初めて真剣に魔法と向き合う機会をくれた、一件。
今となっては人生万事塞翁がなんとやらで……良い経験をしたものだと思える。
だが、渦中の当時は緊張に次ぐ緊張、息吐く暇もなく流動する状況に翻弄されて、他の事を考えるあまり余裕はなかった。
また、春姫も、杏璃も……事件に関わっていた人間は、誰しもが少なからず悩みを抱えていて、雄真同様余裕がなかった。
そんなときに雄真を陰ながら支えてくれたが、ソプラノを始めとするマジックワンドの皆だった。
“物”でしかないはずの彼らは苦悩する主人達を、あるときは言葉で慰め、悩みを聞いてやり、心を癒し、支えとなるよう努力した。
特にソプラノの存在は雄真にとってもまたお姉さんのような存在であり、一緒に居るとなぜか心が安心出来る……そんな不思議な気持ちにかられるほどだった。
だがそのときはまだ、ソプラノのことは好きではあったが、それは男が女に向けるようなそれではなく、家族が同じ家族に向ける……もっと言えば、弟が尊敬できる姉に向ける、憧れと恋慕の混じった、初恋にも似た“好き”だった。
(…ははっ。これじゃ準の言葉を否定出来ないじゃないか)
親友の言うとおり、やはり自分はシスコンの気があるのかもしれない。いや勿論、ちっちゃい方へではなく、大きい方へはたらく気持ちだが。
119 :
タハ乱暴「幸せの音色 27」:2007/02/27(火) 23:12:05 ID:sUQll1J20
意識がはっきりと変わり始めたのはいつぐらいからだったか。
多分あの事件の終わり頃には、もう彼女を……彼女達マジックワンドを、“物”として見られなくなっていたように思う。
けれど、それでも、愛しているほどの、強い感情はなかった。
初恋の少女にも抱かなかったほどの強い想い…それを抱いたのは、いつだったか。
(……あのとき、か)
魔法科への転科。その決意を固めたとき、雄真には不安があった。
はたして、魔法から逃げ出して数年が経つ自分が、高度な魔法科の授業に着いていけるかどうか……かえって周りの人間に迷惑をかけ、足を引っ張ってしまうのではないか。
その不安は、魔法科への転科までの間、春姫達が勉強を見てくれることになって多少は軽減していたが、依然として彼の心に重く圧し掛かっていた。
そして、それを取り除いてくれたのが、他ならぬマジックワンドだった。
『雄真様は魔法を始めたばかりの頃の春姫に似ています』
勉強の合間、先生の用事で春姫が席を離れたときに言われた言葉が鮮明に蘇る。
『春姫は今でこそ瑞穂坂始まって以来の才媛なんて呼ばれていますけど、本当は魔法の才能なんてほとんどなかったんです』
その言葉に、どれほど心を元気付けられたことか。
『それがあの歳で『Class“B”』の称号を与えられたのは、すべてあの娘が努力した結果です』
その言葉に、どれほど心を癒されたことか。
『…だから雄真様も、努力すればきっと大丈夫ですよ』
優しく微笑む彼女の歌声を、どれほど美しいと感じたことか。
『不安を抱えていない人なんていませんよ、雄真様。不安と一緒に、頑張っていきましょう』
120 :
タハ乱暴「幸せの音色 28」:2007/02/27(火) 23:13:42 ID:sUQll1J20
あのときほど、自分は彼女に感謝の念を抱いたことはなかった。
自分の悩みを聞き、不安を知ってくれた。
暗い自分の心を励まし、目の前の不安を取り除いてくれた。
雄真はそのとき、彼女に感謝してもし足りぬほど、大切なものをたくさんもらったのだ。
そしてそのとき、同時に雄真は思った。
ソプラノの歌声に癒され、元気付けられながら、彼は自分の得たこの安らぎを、いつか彼女にも分け与えてやりと。
いつか、自分も彼女を優しさで包み込める男になりたいと。
“物”でしかない彼女。
“物”でしかないはずの彼女。
けれど、確かに心を持った、生きた存在である彼女。
自分に安らぎをくれ、自分に優しい時間をくれ、自分を幸せな気持ちにしれくれた。
そんな彼女に、自分も何かしてやりたいと。
そんな彼女が頼れるような男に、なりたいと。
そう、強く思い、そんな理想の自分を、強く願った。
121 :
タハ乱暴「幸せの音色 29」:2007/02/27(火) 23:16:02 ID:sUQll1J20
……おそらく、自分はあのときから、マジックワンドの彼女に恋をしていると気付いたのだろう。
そしておそらく、自分はそれ以前からソプラノに、恋をしていたのだろう。
そう思うと、雄真の口元は自然とにやけてしまう。心の中に幸せな気持ちと一緒に、誇らしさすら湧き上ってくる。
自分の惚れた女は、確かに人ではない。
けれど、世界でいちばんの女だと、確信できる。
俺は世界有数の幸せ者だ。
ソプラノのことを好きになって、ソプラノに恋をして、ソプラノを愛して……ソプラノと結ばれた。
世界でいちばんの女のことを好きになって、恋をして、愛して、結ばれたのだ。
こんな幸せなことが、他にあるだろうか。
誰もが求め、誰もが欲しながら、実際はその一部しか手に入れられない望み……愛しい人との時間を、自分は得ることが出来たのだから。
どこまでも青い、透き通った天空を見上げながら、雄真は思う。
神様は俺に茨の道を歩むことを……辛い試練を強いた。けど、その試練を乗り越えた果てに、とても素敵なプレゼントをくれた。
ソプラノとの出会い……その魔法を、自分にかけてくれた。
「……俺は幸せだよ、かーさん」
ここまでの道程は決して平坦なものではなかったけれど、辛いことばかりの人生だったけれど、それでも、確信を以って言える。
雄真の小さな呟きは、蒼穹へと飲み込まれていった。
122 :
タハ乱暴「幸せの音色 30」:2007/02/27(火) 23:19:07 ID:sUQll1J20
退屈な古文の授業にも、終わりの瞬間が近づこうとしていた。
壮年の教師は黒板に日本語とは到底思えないような文章をつらつらと書き並べた後、時計を見て、授業終了のチャイムが鳴るまで3分を切っていたことに気が付いた。
「……ちょうど切りの良いところだしな。今日の授業はここまでにしておこう」
眼鏡をかけた男の言葉に、教室中がどっと湧く。
その喧騒に導かれ、思考の闇へと意識を飛ばしていた雄真は、空から教室の中へと視線を戻した。
「……ん!?」
一旦は戻した視線を、再び校舎の外へと向ける。
栗色の瞳が見つめるその先には、普通科の校舎と向かい合う形で建つ魔法科の校舎……その屋上がある。
そして屋上には、ユラリ…と、不気味な、怪しい影が――――――
「いやああああああ――――――ッ!!!」
そのとき、雄真の頭脳がスパークした。
忘却の闇へと追いやったはずの記憶が鮮明に蘇り、恐怖が、絶望が、彼の心を支配し、生物の本能を揺さぶり、悲鳴を上げさせる。
魔法科の屋上に立つ影……それは紛れもなく、神坂春姫その人であった。
突然悲鳴を上げた雄真に、教室中が騒然とする。
「い、如何いたしたのだ雄真殿!」
最初に席を立ったのは武人・上条信哉。
彼は雄真の尋常でない様子から愛用の木刀にしてマジックワンド……『風神雷神』を手に取り、窓枠へと片足をかける。
そして、見た。
見てしまった。
ソレを。
見てはいけないものを。
123 :
タハ乱暴「幸せの音色 31」:2007/02/27(火) 23:20:54 ID:sUQll1J20
「ぬ、ぬぅうッ!」
信哉の表情が、一瞬にして険しいものへと変わった。
自身魔法使いであると同時に優れた剣士でもある彼は、屋上に立つ人影放つ膨大な量の殺気を感じ取り、思わず木刀を八相に構える。
「あれは神坂殿か!?」
「え! 春姫ですって!?」
信じられないといった様子で杏璃が窓際に駆け寄る。
ツインテールの少女が視線をやったその先には……見慣れた、自分が親友と認め、ライバルと認める少女の姿はなかった。
「柊殿! 窓から離れろ!」
「え……?」
信哉の警告は素早かった。
しかし、それを聞く杏璃の反応は遅すぎた。
杏璃の視界が、突然何か黒いモノに遮られる。
頬に触れたその感触は柔らかく……それが女の手だと気付かされる。
「……エルートラス・レオラ!」
「って、その呪文はあたしの――――――」
杏璃の抗議は、最後まで続かなかった。
次の瞬間、彼女の小柄な体は宙を華麗に舞い躍った。
“グシャァア!”
“萌え”と“えっち”を大切にしているメーカーのゲームの二次創作とは思えぬ擬音が、教室を席巻した。
いつもはやかましいぐらいに騒がしい二年A組の教室を、沈黙が支配した。
そして窓を乗り越え、降り立つ幽鬼。
それは可憐な美少女の皮を被った、修羅だった。
124 :
タハ乱暴「幸せの音色 32」:2007/02/27(火) 23:22:20 ID:sUQll1J20
「ふーふーふー。さあ、雄真君、お勉強の時間だよー」
春姫の声で、春姫の笑顔で、不気味に笑い、不気味に迫るソレ。
傍らのソプラノが、カタカタと震えている。
『は、春姫。いけません! 今のあなたを支配しているその力は、人間の手に余るものです!』
「ソプラノ? ……ああ、そう。あなたもわたしと雄真君の愛を邪魔するつもりなのね」
黒きオーラを身に纏いながら、ゆっくりと壁に立てかけられたソプラノににじり寄る春姫。
雄真は素早くソプラノを抱きかかえると、春姫から距離を取った。
「……雄真君?」
「は、春姫。落ち着くんだ。今はまだ一時間目が終わったばかりだし、魔法の勉強はいつも放課後に――――――」
「雄真君、何も言わずにソプラノを渡してくれないかな?」
雄真の言葉を途中で遮り、春姫はにっこりと笑った。
それは世界一の気難しがり家でも、思わず微笑み返してしまいたくなるような、満面の笑みだった。
「勉強をするんだから、その邪魔になるようなものは取り除かないとね♪」
「ええいッ、乱心なされたか神坂殿!」
雄真と春姫の間に、果敢にも木刀を構えた信哉が割って入る。
「事情は分からぬが神坂殿、雄真殿は今怯えている。そしてその原因が神坂殿にあるのは誰の目にも明らか。それ以上雄真殿に近づこうものなら、この『風神雷神』で斬り捨てる!」
「信哉……」
友を守るため、身を張って雄真を庇う武人・上条信哉。
その勇敢な姿と高潔なる魂に、雄真は感涙のあまり言葉もない。
「上条君……そっか、上条君もわたし達の邪魔をするんだね」
だが、そんな信哉の友を庇う姿も、昨日から暴走を続ける今の春姫の心を揺さぶるには至らなかった。
125 :
タハ乱暴「幸せの音色 33」:2007/02/27(火) 23:24:58 ID:sUQll1J20
彼女は呪文詠唱を始め、掌に魔力を集中させていく。
それを見て、信哉はニヤリと笑った。
「フッ! いくら瑞穂坂始まって以来の才媛・神坂春姫殿といえど、マジックワンドもなしに放つ魔法が、この風神雷神に通用すると思ったかッ」
信哉のマジックワンドには強力な魔法に対する抵抗能力と、防御専門の結界をも無力化する攻撃力が宿っている。いかに『Class“B”』の魔法使いといえど、マジックワンドもなし放つ魔法では、その攻防を突破することは不可能だ。
だが、信哉のその確信は、もろくも崩れ去る。
「マジックワンドを持っていない? 本当にそう思っているのかしら……ねぇ、『パエリア』」
「な、なにぃ!?」
信哉の顔が、驚きに漂白した。
いつの間に手中に収めたのか、なんと春姫の手には、杏璃のマジックワンド……パエリアが握られていた。
『あああおおおううういいいあああ――――――』
「くっ! パエリアのやつ、春姫の魔力を送り込まれて人格を破壊されてやがる!」
純白の羽をどす黒く染め、バチバチと紫電を纏わせるパエリアを軽々と振るい、春姫は呪文を紡ぐ。
杏璃や信哉、ひょっとすると小雪すらも軽々とねじ伏せるだけの威力を持った、高位魔法の呪文を…。
「ア・グナ・ギザ・ラ・デライド……」
「馬鹿な!? 伊吹様の呪文だと――――――」
「信哉ぁ、油断するな!」
「ぬッ!」
自分の知りうる限り、この魔法を使いこなせた人間はたったふたり。そしてそのうちのひとりはすでに墓の下。
信哉は、何人もの魔法使いが自分のものにしようとしながら、己の主以外何人たりとも行使出来なかったその魔法の発動が近いことを知って、風神雷神に限界まで魔力を注ぎ、防御を最大にする。
結界という、密度の濃い魔力の障壁を斬割出来る雷神の攻撃力は、同時に防御力にも転換することが出来る。
「ラ・ディーエ!」
虚空に生まれる魔法陣。紫電の雷光を纏いし光の矢が、無数に、凄まじいスピードで、豪雨のように信哉に降り注ぐ。
126 :
タハ乱暴「幸せの音色 34」:2007/02/27(火) 23:26:08 ID:sUQll1J20
「うおおおおおおッ! 父上、母上ぇ、俺に力を――――――!!!」
風の王が雨を吹き飛ばし、雷の王が矢を打ち落とす。
信哉は、
木刀を握る侍は、雲霞の如き爆撃を、真っ向から受け止める。
光の矢の数は確かに無数ではあるが、信哉の身体能力を以ってすれば躱せぬ数ではない。
しかし、彼はそれをあえて真正面から受け、防ぎ、捌いた。
そんな信哉の背後には、雄真がいた。
やがて一条の光線が、信哉の太刀捌きの間隙を縫って進み、彼の体を貫いた。
「ぐぅ…ガッ……!」
光の矢が命中したのは信哉の右肩。
利き腕の支柱を失い、彼の太刀捌きがわずかに鈍る。
そして剣風の嘶きが徐々に小さくなるにつれ、光の矢が次々と彼の体に炸裂した。
「うぐぉ…か……はぁ……ッ!」
「兄様!」
「信哉!」
ついに膝を着く信哉。
だがそれでも、彼は真っ直ぐ春姫を見据え、自分の身が傷ついていくのにも構わず、背後の友を守るために剣を振るう。
「うおおおおおおおお――――――ッ!!!」
ここで友を守れずして何の剣士か。何の剣術か。
十年前の“あの日”、自分には力がなかった。
そればかりか自分達の過失で、途方もない悲劇を招いてしまった。
母に会いたいという……親の愛を知る子であれば誰しもが思うその気持ちが、ひとりの命と、多くの人間の運命を変えてしまった。
さらにそんな過去を苦に思い、自分は間違った道を歩んでしまった。
その結果自分達は、さらなる悲劇を呼び起こしてしまった。
そしてその間違った道から、自分を真っ当な正しい方向へと連れ戻しくれた男が……今、自分の背後にいる。
127 :
タハ乱暴「幸せの音色 35」:2007/02/27(火) 23:28:45 ID:sUQll1J20
(もう…もう、俺の目の前で悲劇を繰り返させはしないッ!)
あのとき、自分はあまりにも無力だった。
それが悔しくて力を得た後も、自分はその使い方を間違えてしまった。
そしてその誤った考えを諭し、正しい方向に導いてくれた友……
「ゆ…う……ま……殿はぁ――――――」
今一度両膝に力を篭め、もはや筋肉の千切れかけた両腕を叱咤し、信哉は立ち上がる。
そして彼は、今一度友を守るために、剣を振るう。
「俺が、守るッ!」
風神が、雷神が、竜巻を、稲妻を発する。
学校の教室という狭い空間に嵐が巻き起こり、信哉の魔力のすべてが、ひとつの方向性へと集束していく。
真剣にあって、模造の木刀にないもの……何か“切断する”という、その機能。
信哉の魔力が雷よりも素早く走る刃となり、風よりも軽い木刀の刀身部を包む。
「来るがいい! 神坂殿! これが、俺の――――――」
「……ラ・ディーエ!」
両眼を見開き、血を吐きながら咆哮する信哉。
相変わらずの壊れた笑顔を浮かべながら魔法を放つ春姫。
無数の光の矢がひとつにまとまり、圧倒的な光線の奔流となって大気を焼き尽くす!
それに立ち向かう男の刃が、閃光を放ち重力すらも切り裂く!!
ふたつの力が、ぶつかり合う!!!
そして世界は、白い闇に包まれた――――――
128 :
タハ乱暴「幸せの音色 36」:2007/02/27(火) 23:31:23 ID:sUQll1J20
光が、消えた。
視界を取り戻した雄真、そしてクラスの面々は、まず目に入ってきた光景に絶句する。
教室は、見るも無残に荒れ果てていた。
机や椅子といった備品は原形を留めず焼け爛れ、床、天井、壁は、あまりの閃光に一瞬にして日焼けしてしまっている。
……そしてなにより、生徒達の目を釘付けにしたものがあった。
「うふふふふ。わたしの邪魔をするからこうなるのよ」
「ゆ、雄真…殿ぉ……に、逃げろぉ……」
光の爆心地では、魔法服を着た春姫が信哉の首を絞め、片手で持ち上げていた。
いったいあの細腕のどこにそれほどの力があるのか、彼女はまるでゴミを放るように一八〇センチの信哉の体を投げ捨てる。
「ひっ……!」
信哉の体は、奇しくも雄真の足元に放られた。
自分を守るために犠牲となったクラスメイトの無残な姿を前に、雄真は悲鳴をあげる。
「……これでもまだ、わたしの邪魔をする気の人、いるかな?」
教師を含めた教室にいる面々が、二人を除いて首を横に振る。
首を横に振らなかったひとり……上条沙耶は、兄の変わり果てた姿へと駆け寄った。
「兄様! しっかりしてください兄様!」
しかし妹の必死の声も、今の信哉には届かない。
そして今や守ってくれる者など誰一人おらず、また相手との実力差明らかな雄真は、絶体絶命のピンチにあった。
129 :
タハ乱暴「幸せの音色 37」:2007/02/27(火) 23:33:22 ID:sUQll1J20
「さあ、雄真君。ソプラノを渡して」
いたって優しい声音で、春姫は雄真に語り掛ける。
だが手にしたパエリアは黒い光を放ったままだ。
「春姫……」
もはや打つ手はない。
今の暴走状態の春姫では、御薙先生と小雪先輩、伊吹が三人がかりで仕掛けても、傷ひとつ負わせることすら出来ないだろう。そして自分の実力は普段の彼女にも及ばない。完全な詰めだ。
このまま、おとなしく彼女の言葉に従ってソプラノを引き渡すしかないのか……
(……小日向雄真。馬鹿か、お前は)
一瞬とはいえ浮かんできた考えに、自分で自分に怒りが湧く。
小日向雄真、お前は忘れたわけではないだろう。
“物”でしかない彼女。
“物”でしかないはずの彼女。
けれど、確かに心を持った、生きた存在である彼女。
自分に安らぎをくれ、自分に優しい時間をくれ、自分を幸せな気持ちにしれくれた。
そんな彼女に、自分も何かしてやりたいと。
そんな彼女が頼れるような男に、なりたいと。
そう、強く思い、そんな理想の自分を、強く願ったのではなかったか?
彼女を守れる男になりたいと、思ったのではなかったか……?
(信哉……)
チラリと、足元に倒れる友の横顔へと視線を這わす。
自分を守るために犠牲になった武士の手には、未だ木刀がしっかりと握られていた。
気を失ってなお、彼は自分を……大切なものを守ろうとしてくれているのだ。
130 :
タハ乱暴「幸せの音色 38」:2007/02/27(火) 23:37:27 ID:sUQll1J20
ならば、今度は自分の番だ。
(男を見せろよ、小日向雄真!)
上条信哉は自分の大切な友のために戦った。
ならば自分も、自分のために倒れた彼の意思を、想いを守るために…そして、手の中にある大切な人を守るために、戦おう。
たとえそれが、勝ち目のない戦いだったとしても。
「ソプラノ……」
『雄真様……』
雄真はソプラノを強く握り締めた。
たったそれだけの行為で、雄真の思いはソプラノに伝わった。
二人の間に、もはや言葉は不要だった。
(私もお手伝いします)
(頼む……)
人の身を持たないマジックワンド。
柔らかく温かい身体を持たないマジックワンド。
けれどそれだけに、心の深いところで繋がることが出来る。
雄真は、いつも春姫がそうしているようにソプラノを掲げた。その動きに不自然さはなく、華麗に舞うような姿は、一種の演舞のようですらあった。やり方は、ソプラノが教えてくれた。
(私の言う通りに、集中を)
(分かった)
今の自分に出来る、唯一の魔法。
魔法を少しでもかじった者になら、いとも容易く出来てしまうような初歩の魔法。
雄真はそれに自分の想いのすべてを乗せて、ソプラノとともに調べを奏でる。
131 :
タハ乱暴「幸せの音色 39」:2007/02/27(火) 23:38:57 ID:sUQll1J20
「エル・アムダルト・リ・エルス・ディ・ルテ……」
「……ふ〜ん。あくまでもソプラノを守る気なんだ」
春姫の顔に、狂気の笑みが広がる。
「じゃあ、雄真君も一緒にソプラノと消し飛ばしてあげる。好きな娘と一緒に死ねる……雄真君も嬉しいでしょ? 喜んでくれるよね? わたしは雄真君のことが好きだから、雄真君の望む通りの死をプレゼントしてあげる」
六月に現れたサンタクロースは、手にしたマジックワンドをゆっくりと掲げる。
そして彼女もまた、魔法使いとしての自分の原点……その呪文を、詠唱する。
「エル・アムダルト・リ・エルス・ディ・ルテ……」
すべての原点。
すべての起源。
春姫は、黒く染まったパエリアに力を注ぎ、
雄真は、ソプラノとともに旋律を奏でる。
そして呪文は、同時に帰結する。
『……エル・アダファルス!!!』
ソプラノから、終末の火が噴き出した。
パエリアから、地獄の硫黄が噴出した。
清浄なる炎と、邪悪に染まった炎が、今、激突する。
ぶつかり合う炎が押しつ押されつで拮抗し、教室の気温を一気に何十度も跳ね上げる。
132 :
タハ乱暴「幸せの音色 40」:2007/02/27(火) 23:40:59 ID:sUQll1J20
「くぅ……ッ!」
熱い。
身体がとてつもなく熱い。
けれど、集中を解くわけにはいかない。
技術で劣る自分が春姫と拮抗していられるのは、自分の中にある膨大な魔力のおかげだ。
その制御のための集中を、今解くわけにはいかない。
熱と焦燥にかられる雄真の心に、不意に温かいものが触れた。
『大丈夫です。雄真様…』
「そ、ソプラノ……」
『あなたはひとりで戦っているのではありません。私を…私を信じてください』
ソプラノの優しい光に心を包まれながら、雄真はこくりと頷く。
自分は大丈夫だ。
なぜなら自分の傍には、世界でいちばんの女が……自分の大切な、唯一無二のパートナーがいるのだから。
そして雄真は、自分の中に眠る魔力の、最後の一滴まで搾り出す――――――!
「エル・アムダルト・リ・エルス・ディ・ルテ・カル・ア・ラト・リアラ……」
自分は一人じゃない……その安心感が、そのことの幸せが、雄真の中で荒れ狂う魔力を、ひとつの形へと集束させる。
さらなる魔力を注がれた清浄なる炎が光を放ち、膨張し、最後の一言を待ち侘びて、世界を真っ白に染め上げていく。
「……カルティエ!!!」
最後のキーワードが、紡がれた。
133 :
タハ乱暴「幸せの音色 41」:2007/02/27(火) 23:41:45 ID:sUQll1J20
「ッ!? この魔法は――――――!!?」
知らない魔法だった。
“あの日”出会った彼のようになりたいと、必死に独学で魔法の勉強をしてきた彼女をして、まったく知らない、未知の魔法。
だがそれは当然だった。
なぜなら今、雄真が放とうとしている魔法は、かつて多くの魔法使いがやろうとし、ことごとく失敗してきた、『Class』などというカテゴリーでまとめることなどおこがましい、神の領域の魔法だったのだから――――――
それはすべての母にして父なる炎。
この世界のありとあらゆる万物を生み落とした、宇宙開闢の大爆発。
小さな小さな爆発が、
大きな大きなエネルギーを持った爆発が、
今、春姫の心の闇を切り拓き、新たなる世界をこの惑星の上に生み出す!
炎が、世界を飲み込んだ。
134 :
タハ乱暴「幸せの音色 42」:2007/02/27(火) 23:44:25 ID:sUQll1J20
ここのところ晴れの日が続いていたものだから、てっきり梅雨は明けたのだと思った矢先、六月の最終日に雨が降ってきた。
眼下の校庭が徐々にぬかるんでいくのを眺めながら、一人…いや、二人きりの教室で、雄真は傍らの恋人に問う。
「雨か……そういやソプラノは雨、嫌いなのか?」
『いいえ、特に嫌いというわけではありませんが……何故ですか?』
突然の雄真の質問に、ソプラノが不思議そうに問い返す。
雄真は、窓の外の雨を見ながらふと思い至った事を話した。
「いやさ、雨の日って湿気が溜まって、ソプラノ達には辛いんじゃないかって。特に、ソプラノの場合は」
トランペットを元に生み出されたソプラノは、いわば生きた楽器だ。楽器にとって高い湿度というのは天敵ではないだろうか……雄真は、そう思ったのである。
得心したソプラノは『ああ、そういうことですか』と、応じてから、
『確かに辛いは辛いですね。人間の感覚で言うと、服が汗でべっとり纏わりつく感じで』
「ああ、やっぱり」
雄真は窓の外から視線をソプラノに戻すと、
「じゃあ、今日の手入れは特に入念にしてやらないとな」
『……雄真様、言い方がいやらしいです』
135 :
タハ乱暴「幸せの音色 43」:2007/02/27(火) 23:45:08 ID:sUQll1J20
わきわきと指を動かしながら言う雄真に、ソプラノが苦笑する。
最近ではソプラノの毎日の日課……彼女の手入れはもっぱら雄真がやっている。最初は慣れない作業で、入念にすると一時間もかかることもあったが、最近は手馴れたもので、恋人の身体は毎日綺麗に保たれていた。
「そりゃ、な。ソプラノのあんなところやこんなところを手入れしてやるわけだし」
『ゆ、雄真様! こ、こんな場所でなんてことを言うんですか!』
人間であれば顔を真っ赤にしていたであろう慌てようで、ソプラノが言う。
マジックワンドの手入れをするということは、人間で例えれば風呂場で背中を流してやるようなものだ。当然相手は裸であり、女のソプラノからすれば今の雄真の発言は顔から火が出るほどに恥ずかしい。
一日の授業工程が全て終了し、教室に居るのは雄真とソプラノの二人だけとはいえ、時間的に校舎にはまだ人がいる。いつ、誰かが教室の前を通ってくるか分からない。ソプラノは気が気でなかった。
「あはは! 今のソプラノの慌てよう、可愛かったぜ」
『も、もう! 雄真様ったら…』
さすがにいじめすぎたのか、ソプラノはそれっきり黙って何も言わなくなる。どうやら拗ねてしまったらしい。普段はお姉さんのようなソプラノだが、こんなときはまるで自分よりも年下を相手にしているように感じてしまう。
「悪い悪い。つい、ソプラノが可愛すぎたもんだからさ。からかいたくなった」
『…………』
返事はない。
どうやら本格的に機嫌を損ねてしまったらしい。
慌てた雄真は何とか彼女の口を開かせようと、話題を最初に戻す。
「そ、それでさっきの話だけどさ……」
『……』
「ソプラノは雨は嫌いじゃないって言ったけど、じゃあ、雨、好きなのか?」
『……好きですよ』
しばしの沈黙の後、ソプラノは答えてくれた。
136 :
タハ乱暴「幸せの音色 了」:2007/02/27(火) 23:46:55 ID:sUQll1J20
雄真は内心ほっと安堵の息をつきながら、「え? 何でなんだ?」と、訊ねた。
ソプラノは雄真の問いに即答した。
『だって雨の日は、雄真様と一緒にいられる時間が多くできますから』
「ソプラノ……」
楽しそうに言うソプラノの歌声。
あまりにも素直に告げられたその言葉に、雄真はまたも慌ててしまう。今度は別の、まったく違った意味で。
顔を真っ赤にしながら雄真は、自分の心臓が徐々に高鳴っていくのを感じた。嬉しさのあまり、自然に口元がにやけそうになってしまう。
「ソプラノ……!」
雄真はほぼ衝動的にソプラノを抱きしめた。
マジックワンドの恋人は、愛する男の両腕にすっぽりと包まれる。
その触り心地は冷たい金属の感触だったけれど……
人間のように温かくも柔らかくもなかったけれど……
雄真は、ソプラノの“心”の温もりを確かに感じた。
『雄真様は……雄真は今、幸せですか?』
「……幸せだよ。とても」
愛しい人が、傍にいるのだから……
校舎の壁一枚を隔てて、外では雨が相変わらずの猛威を振るっている。
雄真は、雨の音が自分の心臓の鼓動を掻き消してくれればいいのに……なんて、都合の良いことを考えながら、雄真はソプラノの“心”を感じ続けた。
137 :
タハ乱暴:2007/02/27(火) 23:50:44 ID:sUQll1J20
……以上、「幸せの音色」でした。
「はぴねす!」を題材にして今やりたいことを全部詰め込んだ結果が、このトンデモ・ストーリーです。
しかし、書いている自分が言うのもなんだけど、何だろう? これ。
とりあえず
何にも言わず半日近くあけるのはどうかと思うよ?
内容は途中話が飛びすぎ
作者の脳内突っ走り系は見ててイタタタタタ
140 :
温泉の人:2007/02/28(水) 21:59:18 ID:wLwyqrFy0
しかしラッパ萌えか。さすがの俺もそこまで考えなかったぜw
>>137乙!
色々詰め込んでいますって感じがひしひしと伝わってくるけど、
ネタを繋げただけでストーリー全体の流れを考えてないように感じる。
文体は軽快で気持ちよく読めるんだが。
でも投稿乙。
これを書き上げた根性に敬意を表してGJ
大人になってから読み直せば黒歴史化する予感w
なんにせよお疲れさん。
お…乙
春姫が「それなんてコトノハサマ?」状態になってるしw
卒業シーズンということで書いてみました。
例によってえちはないです。ごめんなさい。
梓乃√アフター、約一年後を想定しています。
主人公は鷹月殿子。彼女なりの決着と卒業がテーマです。
文中で引用されている曲を聴いてるうちに浮かんできました。
ご存知の方はBGMにしつつ読んで頂ければ幸いです。
「Fly Me」
そしていつか僕は君を
想い想い続けているよ
愛してます 大好きです
きっときっと 夢じゃないよね
――つじあやの「月が泣いてる」
気づいたときは、いつだって遅すぎる。
自分は、昔からそうだった。
……鷹月の名に何の意味も無くなってしまえば、私は鷹月殿子でいられる。
そう気づいたとき、すでにそれを話し合うべき父母は会話出来る状態ではなかった。
いや、父母がそうなったからこそ、自分はそれに気づいたといって良い。
あくまで偶然の産物。だがそれゆえにこそ、残酷なまでに自身を再認識させられた。
自分に与えられた罪と罰。
正確に言えば、それは罪ではない。そもそも誰のせいでもない。
だが限りなく罪に近く苦いものと、殿子は認識している。
思えば皮肉なものだった。
二人が元気で話していたときは、親と思えたことなど無かったのに。
こうなって初めて、父母を愛しいと思えるなんて。
不本意と駄々をこねる暇もなく委ねられた力。
殿子はそれを、自分と父母を守るためだけに使った。
今までのモラトリアムが何だったのか、と周辺に思わせた電光石火の早業だった。
グループ全体の舵取りは重役の取締役会にゆだね、同族経営から半ば強引に脱却させた。
当然、親戚一同からはブーイングの嵐だったが、父母が所有していた実権をあらかた手放すことで、
いまだ寝たきりの二人の一生を保つ資産と、殿子自身の自由は保持することが出来た。
今も最高の治療を受けているとはいえ、今後、父母が快癒することは二度と無いかもしれない。
しかし、少なくともそれを背負うのは自分の役目だと殿子は思っていた。
治療とリハビリ、双方の設備が整ったアメリカの病院。
父母を連れて行こうと思ったのは、親戚一同の干渉を避けるためでもある。
競争を降りた存在として忘れ去られること。殿子はそれしか望まない。
約一年学院に残った結果として、殿子自身はMITに迎えてもらえることになったので、生きていくのに支障はない。
司に勧められて取り組んでみた数学の世界で、好きなように泳げる自分を発見できたから。
だから、学院を冬のうちに去るのには。
何も問題はない、筈だった。
「……決めたのか」
「うん。週末の便で向こうに行く」
「卒業式まで、待っても良かったろうに」
「みやびが知ったら、騒がしくなりそうだから、今のうち」
「盛大に送り出してやりたいけどなあ、僕は。理事長や梓乃もそうだと思うけど」
今日は一月の外出日。梓乃は祖父母のところに行っていた。
彼女に反対されるのを見越して、居ないときに来たのだろうか、と司は思った。
「嬉しいけど、もう父母が向こうの病院に居るし」
「……そうか。それなら金曜にでも、内輪だけで」
「うん。ありがとう」
「いつでも、僕は殿子の家族だからな」
その言葉に、殿子の表情が変わった。
「……私は、いつから司をお父さん、って呼ばなくなったんだろう」
声のトーンが一段低くなったのに、司も気づく。
「殿子?」
ひび割れていく、その声は。
「いつから、私は気づいてたんだろう」
「……気づくって……何を?」
「いつから……あのころの梓乃の気持ちが、解るようになったんだろう」
「……殿子」
「私には確かに父母がいて。そんなことに今更気づいて。
そんな娘だから……自分の嘘に気づくにも、丸一年かかって」
「お前は……僕は」
「いいの、司。返事はいらない。私はとっくに、理解していたのだから。
だけど、それでも。私があの時求めた家族は、貴方だけだったから」
そう。理解している。だのに何故、自分はこんな血を吐くような声で。
「だから、今だけ。もう一度だけ、いい?」
こんなに声を振り絞って、感情を高ぶらせて。
「……おとうさん」
そう彼を呼んで、顔を伏せたまま胸の中に飛び込んできた殿子を。
何も言えずに、司はただ抱きしめた。
――そう。気づいたときは、いつだって遅すぎるのだ。
一年遅れで、気づいてしまったこの感情は。
もう、どこにも連れて行けないのだから。
さようなら手を振って
また歩き出せる
悲しみは穏やかに
冬の空に澄み渡ってゆく
顔を司の胸に埋めたまま、殿子は低い声でゆっくりと、彼女が言うべき事を伝えた。
「今、私が貴方の近くにいると、梓乃の心を乱すと思う。余計な負担を彼女に与えたくない」
「そんなことがあるもんか」
「理性で解っていても、感情が思うままにならないのは、貴方たちはさんざん味わってきたと思う」
「だが――だからって」
「納得してくれると嬉しい。司と梓乃の親友でいるために、私が選んだことだから」
「……殿子が、選んだ、か」
今まで、選ぶ事を拒否してきた彼女が。前に進むために。
「そう。私の意思で」
――ふう、と司は長く息をついた。
「……なら、とうさんとしては、可愛い娘の意思を尊重するべきだろうな」
「……ありがとう、おとうさん」
まだ震える声で礼を言ったあと。
殿子は顔を上げてもう一度、今度ははっきりと、笑顔で告げた。
「……ありがとう、司」
彼女の眼に、涙は無かった。
愛しい人 切ない人
心まで奪っておくれ
夜を過ぎて 朝になっても
月が泣いてる
「殿子が来てたよ。週末、向こうに行くそうだ」
「……知っておりました。昨日、電話がありましたから」
「え?じゃあ今日はわざと外出してたのか?」
「ええ。たとえ何があってもわたくしは、今日だけは何も知らないふりをしようと思っておりました」
「何があっても、って……」
「でも、殿ちゃんは最後まで殿ちゃんだったようですね」
「ああ。無論、何もやましいことなど無かったぞ」
「本当に?殿ちゃんの思いをいいことに、貴方から何か破廉恥な行為をしませんでした?」
「お前、それはあまりにも婚約者を信じてないんじゃないか……?」
「ええ。殿ちゃんほどには、まだ」
「……まあ、今日はともかく、前に頬にキスしたことはあったけど……ってちょっと待て!その縄はなんだ!」
「裏切り者不埒者変質者!貴方なんか大っ嫌いです!」
「待て絞めるなあれはあくまで親子のっスキンシップの一環っ……きゅう」
呼吸が怪しくなってきた司の首から縄をさっと解くと、梓乃は大きな溜息をついた。
「……はあ、判ってますよ、あなた。そんなことより」
司がそちらに向き直ると、彼女の眼にはもう涙が浮かんでいた。
「殿ちゃんは、やっぱり行ってしまうのですね。わたくし……わたくしは……」
「……みんな、自分の道を選ぶときがくる。しのが去年の春だったなら、殿子は今だった。そういうことだろ」
「殿ちゃんの判断はいつだって正しいですわ。……ですけど、ですけどっ!」
「……梓乃」
「解っていたってっ!この感情を抑えられるわけが……ないじゃないですかっ……!」
司の胸で、彼女もまた泣きじゃくった。
「うわああああああんっ……」
「……僕らは笑って、殿子を送り出してやろう。また会ったときに、いつも通り笑い合えるように」
梓乃をぎゅっ、と抱きしめながら、司もまた、泣けてきそうだった。
――殿子、お前はいつだって、強くあろうとしすぎるよ。
あんなときですら、お前は泣かないんだから。
お前も、泣きたい時には、泣いていいんだぞ――
優しい人 可愛い人
心から笑っておくれ
雨が降って 風が吹いても
恋に落ちてく
見送りは予想通りの愁嘆場だったけれど。
際限なく泣いている梓乃をなだめているうちに、殿子はかえって冷静になってしまった。
みやびや鏡花たちと握手を交し、最後にもう一度梓乃を抱きしめてから別れを告げる。
それでも、結局司を真正面から見るのは避けてしまった。
彼の眼も、確かに潤んでいたのに気づいてしまったから。
ここで眼を合わせてしまったら、冷静でいられる自信は無かった。
だから、痛くなるほど手を振って、二人がもう見えない場所まで来たとき。
通路に立ち止まって、一度だけ下を向いて長い息をついた。
どこかに、ほっとしている自分がいた。
わずかな間、そうしていた後。
殿子は顔を上げて、後を振り向かず搭乗口に向かう。
自分は、大丈夫。このまま、歩き出せる。
その瞬間は、確かに思っていた――否、思おうとしていた。
夜の機内は静まり返っていた。
窓の外では、月明かりが流れる雲海を照らしている。
周りの乗客はほとんどが眠っていたが、殿子は目が冴えてしまっていた。
気分転換に音楽のチャンネルを変える。
「あ……」
――ヘッドホンから聴こえてきたのは、耳慣れた曲だった。
柔らかに耳へと流れ込んでくる、その歌は。
「Fly me to the moon」。
Poets often use many words to say a simple thing.
(簡単なことを伝えるために、詩人はたくさんの言葉を使う)
It takes thought and time and rhyme to make a poem sing.
(そして詩を囁くために熟考して、時間をかけ音を紡ぐ)
With music and words I've been playing.
(音楽と言葉で私は詩を奏でよう)
For you I have written a song
(貴方のために私は一曲の歌を書いた)
To be sure that you'll know what I'm saying,
(私が言いたいことを解ってくれると信じている)
I'll translate as I go along.
(歌いながら想いを伝えて行こう)
殿子は流れる曲に合わせ、そっと歌を紡ぎ囁く。
Fly me to the moon
(ねぇ 私を月へ連れてって)
And let me play among the stars
(星々の間で歌わせて)
Let me see what spring is like on Jupiter and Mars
(木星や火星の春がどんな様子か私に見せて)
In other words, hold my hand
(私の手をつないで欲しいから)
In other words, darling kiss me
(私にキスして欲しいから)
歌ううちに、彼女は自分の声が震えていることに気づいて。
Fill my heart with song
(私の心を歌でいっぱいにして)
And let me sing for ever more
(ずっと ずっと歌わせて)
You are all I long for
(貴方は私が想い焦がれていた全て)
All I worship and adore
(尊敬と賞賛の全てを捧げられるのは貴方だけ)
そして、彼女は。
In other words, please be true
(私にとっての真実でいて欲しいから)
最後のセンテンスだけは、日本語で呟いた。
In other words, I love you
(私は貴方を――愛しているから)
「貴方を――愛していました」
いつの間にか、涙が溢れていた。
流れる涙を拭うこともせず、殿子は声を殺して泣いた。
そしていつも、私は貴方を。
想い続けていました。
愛していました。
大好きでした。
それはきっと。
夢じゃなかったよね。
あくまで静かに、一人だけで耐えて。
彼女は、嗚咽し続けた。
やがて。泣き疲れた彼女は思う。
……眠ろう。
彼女を月に連れて行くのは
彼女自身なのだから。
だから、今は。今だけは。
彼の記憶を抱いて眠ろう。
そして、次に眼を覚ましたとき。
この涙は、夢の中に置いて行こう。
現実の自分が前を向いて、歩き出せるように。
次に二人に会ったとき、心から笑えるように。
眠る。
――少女は、雲海を翔ける翼に抱かれて眠る。
月の光は、あくまでも優しく、彼女を照らす――
「Fly Me」end.
>>145-156でよろ。
私なりに、殿子が自分の力で前に進んでいく姿を想像してみたらこんな感じになりました。
イメージと違うと思った方にはごめんなさい。紅茶奴隷でした。
過去作置き場もお暇な時に見て頂ければ幸いです。ではでは。
捧げられたから来たけど、まいったな。
こんなの読んじゃったら殿子以外選べなくなりそうだよ・・・
160 :
158:2007/03/07(水) 04:35:13 ID:q/oZZeqM0
thx、覗いてきまーす。
単に中の人が忙しくて更新してないだけではないの?#11消化したのは最近だし。
いや、正直SSスレ程度の更新なら忙しいとか関係ないんだけどな
スレが出来た頃ならまだしも、1週間に1作品なんて状況なら特に
>>165 悪いが俺は他板でSSまとめ作ってる上に、他にもまとめサイト運営してるから無理だ
まあ逆に同じようなまとめ作ってる身だから忙しい程度で更新できないはずはないというのがわかるんだが
まあ大抵は面倒臭くなって放置、が定番なんだよね。
本当に忙しいだけなら、サイトかスレにでも一言書くだけで済むんだし。
理由はどうであれ、滞ってるだけなら滞ってる、辞めるなら辞めると
ハッキリ書くのが運営者の最低限の責任だと思うが。
さて、そのまとめサイトの管理人なわけですが
諸事情があってまともにネット環境が無い所に住まなくっちゃならない
って状況になってるんで頻繁に更新できない状況にあります。
今もPDAで打ってる状況だし。
って、前かその前のスレで言ってたけど、覚えてる人はいないか
まあ、めんどくさくなって放置してないかって言われりゃそういう
部分もあるわけで、引き継いでくれるひとがいるならいつでも譲ります。
まあ、誠意が無いとかなんとか言いたい気持ちもわからんでもないけど、気長に
待つか、さもなきゃ自分が動いてください。
しかしまー、SS以外でこーゆー話題が出たのは、覚えてる限り初めてだな
それなりにスレの人口が増えたって事なんかねぇ
PDAで書き込める状況ならなんで叩かれるまで出てこないんだろうね、こういう人は
>>168 名乗りを上げたいところだが、
二個ほどまとめサイトやってるし、これ以上は無理だな…
>>168様、ご苦労様です。
私は気長に待つことにします。
自分も複数のサイトを抱えているのでお手伝いはできませんが
新規の方や単発の方のためにもまとめサイトは有用だと思いますし。
んじゃ、本家の補完サイトでも立ち上げておこうか?
175 :
温泉の人:2007/03/17(土) 11:24:38 ID:JbrRxlEp0
>>173乙〜
今温泉の話の軽いifシナリオ書いてます(4レス程度の短いヤツ)
気が向いたときうpしますんでよろしく〜ノシ
176 :
名無しさん@初回限定:2007/03/21(水) 21:42:37 ID:ac6JiXm9O
保管サイト見れなくないですか?
補完サイトの方だったら仕様です。
……いや、酷い時は1分単位でコロコロとIPアドレスが変わるもんで
DDNSの情報更新しても、それが広まる頃には既に別のIPに変わっているという罠。
そしてプロバイダは固定IPサービスを提供していないという罠。
保管の方だったら、普通に見られましたが。
178 :
名無しさん@初回限定:2007/03/24(土) 06:16:20 ID:7CFpvMJM0
保守age
(元ネタはこちら→
ttp://yellow.ribbon.to/~savess/20060630/hap4.html)
「『春姫……ここじゃ少し騒がしいだろ? 俺と2人で、どこか静かな所に行かないかい?』」
「『うん、雄真くん……ここじゃいろいろと不便だから……ね』」
湯船の中こちらに背を向けながら、ここぞとばかりに寸劇を繰り広げる柊と準。
……しかしまぁ、自覚してんだかしてないんだか……
俺の目の前には、ぷりぷりとうまそうに育った柊のお尻が……
「……」
正直、俺も男だ。
柊のヤツも性格はどうあれ、容姿だけ見れば春姫にも負けず劣らずいいものを持ってやがる。
そのかわいい柊のお尻が、ああも無防備にふりふり目の前に突き出されてるんだ。
さすがの俺も、ムラッと来るなってのが無理な話っつーか……
そうやってぼーっと眺めてるうちに、俺の中に邪な思いがじわじわと広がってゆくのがわかる。
(……もしも……よ)
もしも今、自分のケツが俺に見られたい放題見られてるって気づいたら、
こいつ一体どんな顔するんだろうな……
そう思うと、抑えていた俺のいたずら心がふつふつと沸き上がってくるのがわかった。
「……なぁ、柊」
はやる心を抑えつつ、俺はあくまで平静を装い柊に問いかける。
「何? 雄真」
まさに無自覚そのものといった顔で、首だけこちらを向け答える柊。
まったく……なーんも気づいてないって顔しやがって。
高まる高揚感に顔を紅潮させつつ、俺はぼそっと柊につぶやきかけた。
「あまり貧相なケツこっちに向けるな。心が貧しくなる」
「え……」
その言葉で、ようやく気づいたらしい。
自分の背中と俺の視線の先を、変わりばんこに見つめて……
「〜〜〜っっ!!!!」
まさに理想の反応だった。
無自覚そのものだった柊の顔が、みるみるうちに真っ赤に染め上がり……
「エルートラス・レオラーーーーーっっっ!!!!!」
ずがしゃあああああああああああん!!!!!
「べぽらっ!?」
刹那、俺は鳥になった。
濡れ雑巾の如くぼろぼろになりながら、無残に岩肌に打ち付けられる俺の哀しき肉体。
「うぅううううっ!!! 殺してやる!!!! 殺してやるぅううぅっ!!!!!」
「どうどう、杏璃ちゃん。抑えて抑えて」
「いやぁっ!!!! こいつだけは絶対許せないぃっ!!!!!」
大きな瞳から涙をぼろぼろこぼしつつ、どこからか呼び寄せたパエリアを握りしめる柊。
そんな柊を、準がまるで暴れ馬を押さえるが如くなだめにかかっている。
「こ……これが……Class Bの真の実力……ぐふっ」
対する俺は、全身強烈な打撃を喰らい言葉も出ない。
つかまじ……強すぎ。
こうなることはある程度予測してたとはいえ、この威力だけはさすがに予想外だ。
「一体何? 今の騒ぎ……あっ」
おりしも向こうの湯船につかっていた春姫が、ソプラノを片手に駆けつけてきた。
そこで岩肌にもたれぐったりしてる俺を見つけ、にわかに色めきたつ春姫。
「……大丈夫? 雄真くん……」
「いや、俺は大丈夫だが……その……」
気まずさのあまり口ごもる俺を前に、春姫は目を細めにわかに熟考しだす。
「……この魔力の流れ……まさか杏璃ちゃん?」
さすがは瑞穂坂一の才媛と謳われた春姫。
魔力の残り香から一瞬にして術者を割り出すと、ソプラノを構え問い詰めに入り……
「これは一体どういうこと? 杏璃ちゃ……え?」
「ふえぇえええぇえええん!! 春姫ぃいぃっ!!!」
……問い詰めは、そこで終了した。
柊が泣きながら、春姫の胸の中へと飛び込んできたからだ。
「あ……杏璃ちゃん? どうしたの、いいから落ち着いて……」
「ぅぐぅぅっ……っふっ……ゅぅまが……ゆぅまがぁ……っ」
「ちょ、柊……」
い、いくら何でもこの場でその泣きつき方はあらぬ誤解を呼びやしませんか?
俺のこめかみに、つーっと嫌な汗がたどるのがわかる。
「杏璃ちゃん……まさか、雄真くんに……?」
「んふぅっ……んぐ……ひぐっ……ひどい……ひどいよぉ……ゆぅまぁ……っ」
「……どういうこと? 雄真くん……」
俺を見据える春姫の視線が、徐々に鋭さを増してくるのがわかる。
違う!! 違うんだぁっ!!!
言葉を紡ごうとしても、彼女のその凍てつかさんばかりの視線に一言も言葉が出せず……
「雄真……いくら若気の至りだからって、彼女の親友泣かしちゃうのはさすがにどうよ?」
「かわいそうな柊さん……ずっと信じていた男の人に、急に手のひらを返されて……」
横からからかい半分に、俺のことをはやしたて始める準と小雪さん。
「い……今……その手の冗談はキツイって……」
. . . ..
「小日向くん」
「ひぃぃっ!!!!」
刹那、時は止まった。
この世の何事をも許容しない、春姫の冷たい怒りの表情。
心をえぐる氷柱の如き春姫の視線に、俺の心の大動脈がきゅっと締めあがるのがわかる。
「……これは後でゆっくり話を聞かせてもらう必要がありそうね……
あとで私の部屋へ来て、小日向くん。ふたりでじっくり話し合いましょう」
「はは……春姫……」
こいつは多分、俺が泣くまで許してもらえないだろうな……
俺は乾いた笑みを浮かべつつ、二度と柊のことをからかうのはやめにしようと心に誓うのだった。
(おしまい)
183 :
温泉の人:2007/03/25(日) 00:36:44 ID:VCrOQjBS0
・・・またお尻かなんてツッコまんといて下さいorz
ほら、好きこそものの上手なれって言うじゃん! ね?
今んトコまだまだはぴねす関連で書きたいもの山ほどあるんだけどね・・・
今現在アイデアとして浮かんでるだけでも↓
・ぱちねす準ルートED前夜、UMAと結ばれた後の準の気持ちをモノローグ形式で綴る「はじめてのチュウ」
・無印杏璃ルートTrueEDの翌朝のいちゃつきぶりを綴る短編SS「スイミン不足」
・りら春姫ルートの途中、春姫が杏璃に受けたおっぱいチェックの全貌を明かす
「杏璃の抜き打ちおっぱいチェック」(乳愛撫程度の軽いレズ描写あり)
・杏璃ルートで魔法実習後のシャワールームを舞台に、自分の胸のおっきさに悩む杏璃の乳を
春姫が揉んでおっきくさせちゃうお話(ひとつ上の話の攻守交替版)
・無印春姫ルート、UMAと春姫の交際宣言を受けハチの複雑な胸の内を綴るお話
・↑そんなハチにも救いの手を!
ツンとデレ、2種類のオリジナルヒロインとハチとの恋愛模様を描くお話
こんだけある・・・orz
特に下2つは需要なさそうだけど、個人的にはすごく書きたくてしょうがない状況・・・
次回何を書くかは未定だけど、まぁまったり待ってて下さいませノシ
>179-183
GJ!
はじめてのチュウwktk
はぴれずwktk
取りあえずキャベツはどうした?と言っておく。
そういえばキャベツはなんかのゲームで作画の崩れの代表例として出てたな
違った。なんかの雑誌だった
190 :
温泉の人:2007/03/25(日) 22:00:30 ID:VCrOQjBS0
>>187 すももルートTrueED後のふたりの恋の成長ぶりをUMAの料理の腕になぞらえて書く
「お料理行進曲」ってのもいいかも知れんw
つか何かの歌に合わせてお話書くってのがやりたいなぁって思ってて。
「はじめての・・・」ならみんな知ってるし、俺も好きな曲だしちょうどいいかな?って思ってます。
曲名で行くならYAWARA!とか良いかも知れぬ。
「笑顔を探して」で準の話とか読みたいかも。
温泉の人様、投稿乙です。
……この後、浮気する気も起きなくなる位搾り取られる(何を?)のだろうか?
自分も久し振りに投下します。
祝! 殿子一位!
「――今週の予定は以上です」
「わかった、御苦労。 ……しかし舞踏会か、面倒くさいなあ〜〜」
そう言うと、みやびは露骨に顔を顰める。
一方、司は『やっぱり上流階級って舞踏会やるんだ』と妙に感心していた。
「社交パーティーの招待状は今まで何件も来ましたけど、舞踏会なんて初めてですね?」
「まったく、今時舞踏会なんてものを催す神経が理解できん。時代錯誤もいいところだ……」
どうせなら舞踏会じゃなくて武闘会でもやればいいのに、とぼやくみやび。
「時代錯誤? そうなんですか?」
司は首を捻る。
結構イメージ的にはやってそうなのだが……
「そんな訳ないだろう? お前は漫画やテレビの見過ぎだ」
そりゃあ社交パーティーでだって踊る場合もままあるが、だいたいは大人の話――コネ作りや商談等――で忙しく、踊っている暇などない。
一応、礼儀作法の一環として身につけるが、滅多に披露する機会の無いもの。それが舞踏なのだ。
(あくまでも舞踏であって武闘ではない。念のため)
「あ〜あ、面倒臭いな〜 さぼっちゃおうかな〜 そうだそうしよう〜〜
――という訳で司〜 適当にさぼる言い訳考えといて〜〜」
「駄目ですよ、理事長。経営者たる者、顔繋ぎは必須です」
「お嬢様、司様の仰る通りですよ。これも仕事の内です」
「けど、嫌なものは嫌」
司とリーダが二人がかりで説得するが、みやびはソファに寝っ転がるとぷいっと横を向いてしまう。
「うっわー、相変わらず直球ですねー」
「お前相手に、言葉を飾っても仕方なかろう」
「さいですか。 ……しかし、なんでそんなに嫌がるんです?」
みやびとて経営者の端くれだ。分校内でこそ傍若無人だが、対外的には巨大な猫を被って振る舞っている。
故に、口では嫌々言いながらも、司の知る限り今までこういった招待を断ったことなど一度もない。なのに何故……
「あたしはもてるからな。きっと踊りの相手を断るので大変だ」
「(´,_ゝ`)プッ」
「お、お前……今、鼻で笑ったな!? それにその笑い、なんか凄く腹が立つぞっ!!」
「いやいやいや、良いのですよ理事長。無理はなさらなくても」
司はニヤニヤと笑いながら、みやびの頭をポンポンと叩く。
「さてはお前信じてないな! 本当だぞ! 本当にあたしは社交界の華だったんだっ!!」
「ははは、冗談は身長だけにして下さい、理事長」
「身長は関係ないだろうがっ!? 身長はっ!!」
「ありますよ、大いに。 ……だって踊る時に余りに身長差があったら、ねえ?
ああ、社交界デビューしたばかりの『お子様』と踊るのですね。なら納得です」
「ちがうぞっ!? あたしはダンディなおじ様方から美青年まで選り取りみどりだったんだからな! 本当だぞっ!!」
「ええ、ええ、そうでしょうともそうでしょうとも。信じていますよ」
司は生暖かい目でみやびを見ると、そっとハンカチで目元を拭く。
そうだ、現実はこんなに辛いのだ。だから夢を見るの位はいいじゃあないか。
「可哀想な人を見るような目で、あたしを見るな〜〜〜っ!!」
…………
…………
…………
「はあ、はあ。 ……いいだろう。その舞踏会とやらに出席してやろうじゃないか。あたしがどんなにモテるか、お前に見せてやる」
「はいはい。ええっと、風祭みやびは出席します……と」
司はリーダに軽くサムズアップをしつつ出席の返事を書き、リーダも苦笑しつつもそれに応じる。
「じゃ、がんばって下さいね」
「……何を他人事みたいに言ってるんだ? お前も一緒に来るんだぞ?」
司の生返事に対し、何のために行くと思ってるんだ、とみやび。
「……僕は招待されてませんよ?」
「安心しろ。招待状では同伴者を一人伴えることになっている。お前を選んでやるから光栄に思え。そして、あたしがモテる光景をその目に焼き付けろっ!!」
「わー、とっても楽しそうですねー」
司は棒読みで応じる。
「けど残念っ! 僕は仕事があるんで無理ですっ!!」
「そんなもの、他のヤツにやらせろ。あたしが許す」
「え゛…… でもほら、授業とかもあるし……」
「その日くらい、自習でいいだろう?」
「う〜〜ん」
「多分、豪勢な料理も出るぞ?」
「でもなあ〜、ゴンザレスとも遊んでやらなければいけないし、他にも……」
何やら色々と理由を並べていく司。
そんな司にみやびは不審の目を向ける。
「……お前、もしかして無理に理由作ってサボろうとしてないか?」
「ギクッ!」
その如何にもな司の反応で、疑念は確信に変わった。
「はは〜ん。司、お前さては踊れないな?」
「ギクッ、ギクッ!」
「可哀想な司……きっとお前は壁の花だな…… ま、仮に踊れたとしても、お前を誘う様な物好きがいるとは思えんが」
「な、何を仰います理事長! こう見えても僕は『絢爛舞踏』『モテモテ司ちゃん』と御近所の奥様方にも評判なのですよ!?」
「は、は、は、寝言は寝て言え〜〜♪」
「むっき―― いいでしょう、理事長勝負です! どちらが舞踏会で注目を集めるかっ!!」
勝負と聞き、みやびは目を輝かせる。
「いいだろう受けて立つ! 後でほえ面かくなよ〜〜♪」
「くくく、負けたら耳でピーナッツを食べてもらいますからね」
「どこからそーいう発想が出てくるんだ…… まあいい、その代わりお前が負けたら一生只働きだぞ」
「ぐっ……」
「あ、あと『注目』って言っても、『笑いで注目を集める』とかは無しだからな?」
「ぐぐぐ……」
「……どうした? やっぱり止めるか? 今なら『みやびちゃんぷりちー』と相沢と仁礼の前で千回言ったら許してやる」
「僕に死ねとっ!?」
「さあ、どうする?」
「いっいいでしょう! その条件、飲みます! 飲んでやろうじゃあないですか!!」
「司さま……」
「ははは! リーダさんにも僕の勇姿を見せてあげましょうっ!!」
心配そうなリーダに、司は自身たっぷりに返す。何だが凄い自信である。
「おおっ! それもいいな! リーダも司の無様な姿を見て笑ってやれ!」
「成る程! リーダさんに理事長の泣きっ面を見せる訳ですね!」
ハハハ……
お互いの足を踏みつけながら馬鹿笑いする二人を、リーダは困ったような顔で見ることしかできなかった。
まあこうして、止せばいいのに互いの名誉を賭けた(らしい)戦いが舞踏会で繰り広げられることになった訳である。
……しかし、舞踏会に出ることになったはいいが、これでは本来の目的が果たせない様な気がするのは気のせいだろうか?
バタンッ!
理事長室を出て勢いよく扉を閉めると、司の顔は途端に引き攣る。
ザ――
顔面から血の気が引き顔面蒼白、汗もダクダクだ。
病気ではない……いや、まあこれも一種の病気のせいなのかもしれないが、体は至って健康である。
――不味い不味い不味い、不味過ぎる……
司は頭を抱え、その場にしゃがみ込む。
要は売り言葉に買い言葉、出来もしないことをその場の勢いで約束したことを後悔しているのだ。
――ええ、ええ、僕は踊れませんよ! ……なのになんであんな約束したんだよ今畜生っ!
激しく過去……というか10分程前の自分を呪うが、今更如何しようも無い。
全ては後の祭り、後悔先に立たず、覆水盆に反らずなのである。
……しかしいい加減、少しは学習して欲しいものだ。
司の脳内では、天使と悪魔――何故か天使が栖香で悪魔が美綺だ――が各々好き勝手に喋り捲っている。
『まったく! 司さんはどうしてそう毎回毎回、後先考えずに行動するのですかっ!?
今直ぐ戻って、勝負を取り消してきてくださいっ!』
と、天使(栖香ver.)がキツイ表情でキツイお言葉を下されば、
『センセはその場のノリで行動するからね〜〜 ま、約束したのなら仕方が無いんじゃないかな?』
と、悪魔(美綺ver.)が投げやり気味に、やはり何気にキツイお言葉を投げかける。
『負けたら一生、理事長の飼い犬ですよっ!?』
ガオーッと天使栖香は悪魔美綺に喰ってかかる。
が、悪魔美綺はあっけらかんとしたものだ。
『なら、勝てばいーんだよっ!』
『司さんは踊れないのですよ!? 勝つ所か、土俵にすら上がれないじゃあないですか!』
『練習すれば、大丈夫さっ!』
『はあっ!? そんな付け焼刃で踊れる様になる訳がないでしょう!』
『ああ、そんなの形だけ形だけ』
『? ……まあ一億光年程譲って踊れる様になったとしましょう。しかし、踊りにはパートナーも必要ですよ? やはり土俵にすら上がれません』
甲斐性無しの司さんが、パーティーでパートナーを捕まえられる筈も無し……と溜息を吐く天使栖香。
『なら、パートナーとしてあたしがセンセと一緒に行けば一件落着、大勝利っ!!』
『……その根拠の無い自信、一体どこから湧いて出てくるのですか?』
ニシシとイヤな笑みを浮かべる悪魔美綺を、天使栖香がジト目で突っ込む。
すると、悪魔美綺は自信満々に言い放った。
『だ、い、じょ〜ぶっ! その場でセンセがあたしの婿だと発表すれば、注目の的間違いなしっ!』
『なっ!?』
『あたしはセンセと結婚できるし、センセはみやびーが耳でピーナッツを食べる所を見られるしで一石二鳥! ついでにAIZAWAの将来も安泰!』
『司さんが経営者では、将来安泰かどうか甚だ疑問ですが…… そんなことより姉さま! 謀りましたねっ!?』
『ふふふ…… 君は君はいい妹であったが、君の父上がいけないのだよ』
『姉さま…… それ、流石に洒落になりませんし、私の父は姉さまの実父でもあるのですが……』
『あれ?』
チャンチャン。
天使と悪魔は言うだけ言った挙句、勝手にオチを作って消え去ってしまった。
……まああくまで司の脳内での話ではあるのだが。やけにリアル過ぎて怖いものがある。
「とにかく、どうにかして踊れる様にならないと……」
司は冷や汗を拭うと、善後策を考える。
が、それには誰かに踊りを教えて貰わなければならない。
……とはいえ、ダンスはかなり体を密着させる。余程親しくないと頼めない。
司の頭の中に、親しい生徒が次々とリストアップされては消えていく。
栖香は? ……駄目だ。きっと散々説教された挙句、『勝負を取り下げて来て下さい』と放り出されるのがオチだろう。
美綺は? ……駄目だ。後でどんな要求をされるか判ったものではない。仮に勝てたとしても、きっと負けた場合とさして変わらない運命だろう。
みやびは? ……勝負相手じゃあないか、全然ダメだ。
なら……後、誰がいる?
そこで閃いた。
――そうだ! 殿子ならっ!
殿子なら、『しょうがないなあ』と言いつつも、最終的には下心無しに助けてくれるハズだ。そうに決まってる。
そう思いつくと、司は殿子がいるであろう裏山目掛けて駆け出した。
「ド、ドラ○も〜〜んっ!!」
投下終了。
わっふるわっふる
原作の再現度高いなあ……。
早くづづきを!
>>203 乙! 続きを楽しみにしてますー
>『ふふふ…… 君は君はいい妹であったが、君の父上がいけないのだよ』
>『姉さま…… それ、流石に洒落になりませんし、私の父は姉さまの実父でもあるのですが……』
ワロス(w みさきちがすみすみの父親に対して言うと本当に皮肉になってしまうな(ww
にしても、殿子は確かにダンススキルはありそうだけど、鏡花でも良さそう。
205様、206様、有難うございます。
>早くづづきを!
有難うございます。続きは近い内に……
>鏡花でも良さそう。
自分もそう思います。でもまあ、これ殿子一位記念(遅っ!)ですので。
このシリーズの司は甘くないのUMAと比べて非常に活動的なので話が作りやすいですね。
ネタとしてはこの『Shall we dance?』の他にも『風雲みやび城』『取締役 滝沢司』なんてのがあったりなかったり……
> 風雲みやび城
最後は青色の水鉄砲合戦とな?
法月編エンド
ここまで、か――。
法月自身もそう思っていたし、アリィに至ってはそれは確信だった。
警備隊の銃口が至近距離から狙いを定める。
その先にあるのは勿論――。
「な、んだと…っ」
アリィの表情が歪む。
「…どうしてここに?」
静かに法月が問う。
「いや、そりゃこっちの台詞ですって先生。
弱小レジスタンスの記念すべき決起行動の日に
連絡なんてくれるもんだからバレてんのかと思って
ビビっちゃいましたよ。いやあ、参った参った。」
全ての銃口は法月将臣を通り越してアリィ・ルルリアント・法月に向けられていた
何が起きている?
何処で間違った?
目深に被った帽子の鍔を指先で持ち上げて陽気そうに男が口を開く。
「まさか先生の口から「最愛の人」なんて単語が聞けるとはねえ。」
リーダー格らしいその男が法月の肩をバンバン叩きながら
朗らかにまくし立てる。
明らかに場にそぐわない。
こんな事があってはならない
アリィが呻くように呟いた。
「森田…賢一…っ!」
「あっ、お姉ちゃん?そっちはOK?」
奇襲は成功したといっていいだろう。
収容所の解放、囚人の救出、用意したトラックに分乗し、これより先はお互いの連絡を絶つ。
囚人のリストは樋口璃々子がデータバンクを破壊したとのことだ。
これによりもう正確なリストを作ることは困難だろう。
――計画は最終段階に近かった。
小刻みに揺れる車内の中、
もたれかかってくる女性の
肩を抱き沈黙を守っていた。
顔にかかった一筋の髪を指で掬った。
「…」
お互い、変わり果てたと思っていた。
それでもあの群集の中、一目でお互いを見つけた。
一瞬、逡巡したのは私だったか、彼女だったのか
だが次の瞬間には駆け出していた。
欠けた二つが一つに戻ろうとするのは当たり前のことなのだ。
抱きしめて抱きとめた。
済まない。と謝罪の言葉を繰り返した。
彼女はいいえ、いいえ。と私の謝罪の度にそれを打ち消す。
握った手はただただ温かかった。
抱いた肩が細い。繋いだ手は荒れていた。
それがなんだというのだろう。
髪に艶は薄く、血色も決していいとは言えなかった。
それがなんだというのだろう。
こんなに美しい女は後にも先も会うことはあるまいと
もう二度と失うまいと、
握る手に力を込めた。
宝物のようだ、と思った。
疲労と安堵から深い眠りに落ちた彼女を抱いている私の横に
森田がやってきた。
「その人が雑賀みぃなさん…」
「…そうだ。」
「綺麗なひとですね」
「…」
「俺のお母さん、ですよね。」
「…知っていたのか。」
「親父の残したメモリにネタ集のファイルがあったんですけど
それにしてはバイト数が異常だったんで開けてみたんですよ。」
「親父の手記でした。」
「…そうか。」
それは闘争と挫折の歴史。
何度も衝突し、時には殴り合い、笑いあい
共に道を歩み、袂を分かち
自らの手で死に追いやった男の年代記――。
全く、柄にもなく
ひとしきり三郎の思い出話に興じた後、切り出した
「これからの手筈は?」
「先生には一旦、国外に脱出していただきます。」
「最外郭からこの組織の指揮をお願いしたい。」
「お前は?」
「名前を変えて、ね。俺は表の世界に出ます。」
「誰かがやらなきゃいけない、この国に正面からぶつかって
どれだけ時間がかかってもいい、この国の――。」
あの日の誓いが静かに蘇る
――…変えてください
いいだろう、やってみせろ
この情けない父に代わって――、お前が
「ルールを、変えるんだ。」
「俺は地道に政治活動をしながら政財界に食い込みます。」
「……」
「それまで先生には反社会組織として俺が動きやすいように
現状に揺さぶりをかけ続けてもらいたいんです。」
「本当なら次期哲人候補の先生にやってもらう筈だったんですがね。」
「お前だけは…いや、お前くらいは安らかな日々を送らせてもいいかとも
思ったのだがな」
――我ながら、らしくもない事を、と思う。
「ああ、それは俺も思いました、ははは。」
「あんなに辛い思いしたじゃん、何度も泣いて、逃げ回って、死にかけて
でも死ねなくて、やっと手に入れたささやかな幸せにすがって
余生を静かに送ったってバチなんか絶対当たらないって」
213 :
支援:2007/04/08(日) 19:23:12 ID:eBUvV57y0
支援?
はははと乾いた笑いが車内に満ちて、消えていった。
「…けどね、無理だったんですよ」
「理想を貫いた男と、」
「親友を救う為にその意志を折った男と、」
「どんなに自分が傷ついても子守唄を歌い続けくれるような女に拾われて、名前をつけられて、
育てられた子供がそんな風に生きられるワケがないじゃないスか。」
「あっ、それとね。なっちゃんたちも手伝ってくれるって」
「一緒に世界を変えようって」
「だから俺は大丈夫なんですよ。」
「…そうか」
御伽噺。だと思う。法月自身が散々翻弄された現実という化け物が
これから彼に襲い掛かるのだ。
――だが、それでも
その可能性を信じずにはいられない
あの向日葵の少女達。
それに支えられたこの男の力を、その名を
森田賢一、樋口健を――。
夜明け前には港につけた。
ここまでは計画通りだが
追っ手はもうかかっているだろう
この慌しい波止場で密航船を見極めるのは困難だろうが
同時に時間がないのも変らない事実だ。
アリィ・ルルリアント・法月を相手に油断は禁物――、だ。
船員と打ち合わせをすませた森田が駆け寄ってきた
「ここでお別れです。」
「あ、健、ちゃん…」
みぃなさんがふらりと前に出て声をかけようとしたが
それを森田は制する。
行け。と
振り返らず今度こそ
まっすぐ掴んでくださいと
幸せになってください。と
これが子が親に出来るたった一度きりの孝行なのだと
その瞳が語る。
緩く頭を振った彼の口から
願いのような呟きが聞こえた。
「大丈夫。」
「生きていれば、いつかまた会えますよ。」
「…そうだな。」
顔をあげて私と視線を交わす
恐らく、もう会うことはないだろう。
これが最後、
だからこれは宣誓。
必ずやり遂げてみせるから
どこかで見ていてくださいと
それまで死ぬんじゃねえぞと
お互いに向けての誓いを今、交わそう。
「…先生、俺はね
胸を張ってあの向日葵畑を歩くんです。
堂々と太陽に向かうあの象徴に負けないように、
向き合えるように、だから――、」
「絶対に負けない」
その決意と裏腹なまでに晴れやかな笑顔に気圧された。
――ケンちゃんがだぁいすきなんですっ
暗く冷たい牢獄の中――、
特別高等人、法月将臣を前に一歩も退かなかった少女の面影が重なる
それは畏怖にも近く、
自分を超えるものを前にかける言葉など多分、もうないのだろう。
「…ああ、お前なら――。」
217 :
支援:2007/04/08(日) 19:40:26 ID:uy4A+xhA0
支援?!
水平線から朝陽が昇る。車輪の国の一日がまた始まる、
彼は去る、
太陽の光を背中一杯に浴びて堂々と。
そう、それはあの村の向日葵達のように。
やがて雑踏に紛れて消えたその背中を
眩しい、と思っていた。
それは法月将臣がたった一度だけ見せた父親の顔だったのかも知れない。
「ようやく一流、だな 健。」
end
以上です。またエロ入んなかったよほほーい。
支援ありがとうございました。
――矛盾、があった。
俺の垣間見たいくつかの物語は時系列がバラバラでとりとめがなく、
けれど。
それは確かに起きた事実で、
そして「今」という結果を補完するかのように
起こり得ない事象を全て俺の目の前に並べたてる。
それは満漢全席のようでもあり、
――いや。
どちらかといえばそれは日常という料理を補完するために
和洋中全ての食材と技法とが混然と半ば強引に
殆ど無理矢理にひとつの料理に集約した形と言おうか
そう、あのカレーのように――、
「…よりによって、例えで思い浮かぶのがアレとはな…。」
あの日、生と死の境界線を潜り抜けた感覚が胃を襲って
俺は脇腹が軋むような幻覚に身をくねらせた。
「難しい顔をしているな、お主人ちゃん。
考え事か?」
「ふたみ――。」
ひょいと。
横から大きな瞳が覗き込む。
唯井…いや雲戌亥ふたみ。俺の嫁。
この空明市を統べる豪族、雲戌亥総家嫡流。
…女の子つかまえて摘流っておかしいな。
とにかくまあ炊事、掃除、洗濯と家事と名のつくものなら
なんでもござれのエキスパートだ。
俺の中でのあだ名が「家事中毒者(ジャンキー)」であるのは
勿論、内緒だが。
「策は聡明であるが故、筋道の通っていない現状を受け入れかねているのでしょうな。」
「此芽、って――。」
呼応するようにかけられた反対からの声に顔を向けると――、
近い近い、危うく唇が触れそうになって俺は少し後ずさる、
「むー、そんなに露骨に避けなくてもよいでしょう?」
整った顔立ちの少女が頬を膨らますといきなり年齢が下がって見えた。
いや、年相応という意味ではこっちが本来の顔なのかも知れない。
桜守姫此芽。俺の婚約者。
空明市を二分する勢力のもうひとつ、桜守姫家の現頭首。
長年に渡る両家の確執に対して雲戌亥ふたみと共に
真っ向から「今後一切の争いを禁ず」の方針を打ち出した。
桜守姫の人間の性格上それは難航したに想像は難くない。
だが、彼女達はやってのけたのだ。
それはもう見事に有無を言わせぬ完璧さで。
…その裏で何が起きたかは俺の想像の範囲を超えて余りある。
て、いうかあんまり考えたくないんだよな、うん。
なるべくなら人の暗黒面には立ち入らずに生きて行きたいと思っているわけで。
「いや、避けたわけじゃないけどさ」
苦笑を交えつつ、俺は――。
「コノは馴れ馴れしいからな、人と接する時は適度な距離を保つのは礼儀だぞ。」
「ちょっ!」
やんわりその辺を説こうとしてる時に大先生が相変らず鉈で振り下ろすような
言葉という名の暴力を振り下ろした。
OK、ふたみ。お前の性格はわかっちゃいるがそのへんにしとこ――、
「そ、そんな妾はそんなつもりでは――。」
「まず、それがいけない。」
「…え?」
びしり。と人差し指を此芽にむけるふたみに
此芽がきょとんと、大きな瞳をさらに見開く。
せんせー。人を指差すのはマナー違反じゃないんですかぁー。
「そもそもだな。「妾」というのは古語で「結わざる髪」を表すもので
まとまりのない髪が顕すものは即ち蛇。
その起源は大きな、または定かでない危機、災厄を表す。
つまりだな――。」
「なっ、わ、妾が災厄そのものであるというのかえ!?」
「いやいやいや、ふたみ。その辺にしとこうぜ、な?」
「む、お主人ちゃんがそう言うのなら
私としてもこれ以上追求するつもりはないのだが。」
そう、ふたみは別に此芽をどうこうする気はない。
ないのだが――遅かった。
返す返すも遅すぎた。
おそるおそる振り向くとそこには
「わ…妾が…さ、災厄そのもの…そんな…」
瞳から意志の輝きをなくした少女がうわごとを繰り返しながら
茫然とした姿で宙を仰いでいた
「わああああああっ!? こ、此芽!? 気を確かにもつんだ!」
肩を掴んでガクガク揺するが反応がない。どうやら死体の――いやいやいや。
これはしばらくそっとしておこう
此芽なら、きっと此芽なら自己修復してくれる。
――そう信じて。
「ん?」
シャツの裾をちょいちょいと引っ張る感触に気づいて振り向くと
今度はふたみの顔が想定外の距離にあった。
心なしか頬が紅潮している。
「お、お主人ちゃんが優しいのは美徳だと思うがな、
誰彼構わずそういう態度を示すのは
私としてはその、なんだ…なあ? 察しろ?」
その指が俺を甘くつねる
「何ヲダヨ」
普段、あまり見せない拗ねたふたみが顔を覗かせて
胸が高鳴る。
いかん、動揺してるな、俺。
「さっくんモテモテだねえ」
今日、今この瞬間にだけはいて欲しくない人が現れた。
事態を引っかき回す機会だけを耽々と数百年狙い続けた
明日宿家頭首の登場だ。
それに呼応するかのように
「「お、お姉さま!?」」
事態の収拾に努めようとする俺の背後から更なる拡散を促す
彼女達の嬌声が響き渡る。
言わずと知れた凶悪妹コンビ、桜守姫みどのと透舞のん
「孤立無援のお姉さまに3人がかりとは…卑怯ですわっ」
「私は中立だよー。どっちかっていうと第三勢力かな」
暢気に笑う傘姉の和やかな雰囲気が口調とは裏腹に
場の空気を一層混沌へ投げ入れようとしていた。
「ほらほら策ぅ。お姉さまが着痩せするタイプだって知ってるでしょう〜?」
後ろから鷲掴み気味にこねられたふたみの乳房がその形を淫猥に歪める
「め、妾っ、そんな激しくしたら…ふっ…く…やぁ…んっ」
ふたみの吐息交じりのあえぎ声に図らずも息を呑む。
不意に後ろから膨大な殺気を感じて
慌てて振り返ると
そこには此芽が――。
「だっ、大丈夫だ此芽!俺は小さいのもなんというかこう、
味わいがあっていいと思っているっ」
「…それは」
ゆらり、と
此芽の影が揺れるのが見えた。
黒化は近い、それはもう限りなく。
「…それは言下に妾の胸は小さい、と言っているようなものです。」
――しまった。
「いや違うんだ。そういう意味じゃないんだ。えーとえーと…
そ、そうそう、小さくたってほら感度とか!」
ただのセクハラ発言に陥りつつも、俺はなんとかフォローしようと
此芽の肩に手をかけようとして――、
「ほらほら、策ぅ?おねーさまったらもう、こんなだよぉ?」
「メメ!お前もいい加減にしろ…って、わああああああっ!?」
振り返ると更に目の前にふたみの乳が、ていうか乳がっ!
左右、互い違いに俺の目の前で不規則に上下していて
俺はその頂点の推移を目で追ったりなんかしちゃって――、
ブツンっ
背後でナイロンザイルを断ち切ったような鈍い切断音に恐る恐る振り返る
「こ、此芽…?」
――影が、
――影の中に現れる文字
それは桜守姫なら誰もが持つ名、
骸を貪り喰う者
誰もがひとつきりの
ひとつきりの筈のそれが
浮かんで、浮かんで、浮かんで――。
あれはヘルフィヨトル?
ゲイルスケグル?
文字すら判別できない程に重なって――。
あの御前すら容易く葬った今代のアルヴィス、その力の指し示す先は――。
えっ 俺!?
「ええ、ええ。そうでしょうとも。
所詮、妾ではクイには到底及びますまい。なれど…っ」
踏み抜いた地雷の安全装置はとっくにバカになっていた事に気づかないまま
足を離してしまった気分だ。
――いや、気づいてはいたんだけどさ
袖に隠した唇をきゅっと噛む此芽
いや、えっと…な、泣くほど?
「こ、此芽…?」
「…の…」
「の?」
「策の…」
「策のばかぁ――――っ!!!!!」
一気に膨れ上がった影から骸を貪り食う者共が襲い掛かる。
主に俺に向かって
死ぬ。これは死ねる。今度こそ確実にマジで余裕で、
「――っ」
覚悟を決めて目を瞑ったが一向に死が訪れる気配はなかった
恐る恐る目を開けると
泣きじゃくる少女の姿が見えた
「此芽…」
マンガのような、というか水芸のように目から涙が文字通り溢れていた。
あんな事できるんだ…
さすがは魔道師というべきか
…違うか。
「こーのーめーちゃーん」
自分のキャラを崩してまで
あからさまな猫撫で声で近づくと視線で威嚇された。
字にすると「キッ」とかその辺。
「何よ何よっ、策だって本当は胸の大きいほうが好きなんでしょっ!?」
「だからそんなことないって、機嫌直そうよ、な?」
「ああ、なんだかもう、ちきしょーっ」
「その辺にしとこうよ、怒られそうだから、な?」
後ろで傘姉が微妙な表情をしていた。
途方に暮れた俺の前で此芽を支えるように
みどのと透舞さんがその後ろについた。
正に三位一体の姉妹拳
「その構えは…!」
きっと今の俺の背後には雷光の効果が走っているはず、
「お兄様!こちらにきたら美人3姉妹のご奉仕付きですわよ!?」
「はい…?」
さあ、ついに透舞さんが訳のわからないことを言い出し始めたぞ。
何を言っているんだろうか、この娘は。
しかしそれを皮切りに
「策!こっちに来ればその…今度は…飲んであげてもいい…わよ。
その尿以外の…ほら…」
「微妙に人の黒歴史に触れるなよ…てかなんの話になってんだ?」
「ねえ、さっくん? 私も幸せになりたいなあ」
「…この展開でそれを言うアンタは最低だ。傘姉」
最初に手を出したのはメメだったか、透舞さんだったのか、
はたまたふたみか此芽か。
ああ、気がついたら、みどのと傘姉まで参加してやがる。
傘姉にいたっては完全にはしゃいでいる。
腕やら頭やら首筋やら所構わず誰かの柔らかい感触と
微妙にそれぞれ違う女の子特有の甘いにおいに頭がクラクラしてくる。
「って誰だ、ズボンのベルト外そうとしてんのはっ!」
「ジーンズは脱がせにくいからやめろっていったでしょーっ」
「やはりお前か!」
「こ、こら。その不思議なモノは私のだぞ?」
「俺のだよ!」
「で、では妾は、だ、第二ボタンを…」
「いやそれシチュエーション違うから!」
「動いたらひき肉だよっ!?」
「誰のどこをだよっ!」
「み、巫女プレイがお望みなら甚だ遺憾ですけれども私、やぶさかでは…」
「言ってねぇー、とても魅力的な提案だが言ってねぇー。」
「うふふ、さっく〜ん」
「あああ、あんたっ、絶対面白がってるだけだろっ」
女の子特有の突起を四方から押し付けられて
五肢をそれぞれあらぬ方向に引っ張られて
甘い吐息とにおいに包まれて
薄れていく意識の向こう、
空を仰ぐとそこには満天の星。
見慣れた槍を担いだヒゲ面のおっさんが親指をグッと立てて
「坊主、うまいことやれよ!」と
日本の婚姻制度についてなんか欠片も知らないであろうそいつが
ニカっと開いた口の端から覗くこぼれた歯がきらめく星座に重なるのが見えた。
…ような気がしたけど見なかったことにしよう、うん。
「…ちったぁ空気読めよ、神様よぉ。」
それだけ呟いて、俺の意識は現実から逃避するかのように
闇へと落ちていくのだった――。
ああ、
願わくば
空には満天の星と月。
それがただのひとつも欠けない空を
いつまでもこうして見ていることができますように――。
いつか、届く、あの空に――。
…ホントに届くのかなぁ?
end
神が連続で光臨なされました。
……よし、ちょっといつ空買ってくる。
ごめん、ID変ってるけどいつ空と車輪同じ人です。
いつ空、全然規制かからなくてビクビクでした。
書いた時期はいつ空のが結構前だったのですがちょっと詰まってた部分があってそれきり
忘れてててん。
祝、FD発売なんだけど茜ルートないっぽいんでセルフ補完('A`)
小恋ルート終盤あたりからの派生です。
――始めは恋じゃないと思っていた。
校庭を駆けていく彼が見える。
誤解も解けたことだし、
あとは小恋ちゃん一直線!てかぁ?
屋上のフェンス越しに彼を目で追って
これでゲームセットかなって、
胸の奥がちくん。ってした。
彼の恋を応援してたのは私だけじゃなかったけど、
それがあらぬ誤解を生んでちょっと泥沼してたから
やっぱり私はお節介してしまった。
「みんな優しいよねぇ…」
「アンタもね。」
不意にかけられた声に思わず振り向いてしまう。
物陰から声の主が姿を現した。
「杏ちゃん…」
ほう。と一息ついて銀髪の少女が校庭を見下ろしながら呟く。
「あの流れなら、ついでに言っちゃってもよかったんじゃない?」
「え〜、なんのことかなぁ。」
精一杯の強がりで余裕を見せながら私はとぼけてみせた。
「義之、好きなんでしょ。」
ぴしゃりと。いつものようなゆるゆるとした言い逃れは許さないかのように言い放たれた。
「やぁだよ。私重いのヤだもぉん。」
それでもいつものように軽く軽くかわすように
232 :
茜ss:2007/04/11(水) 23:02:25 ID:bTJDDy4t0
それが私。それが花咲茜。本当は臆病で、勇気がなくて、
それでもみんなが幸せになれますようにと願って、
そしてそれとと同じくらい
彼が私に振り向いてくれたらなって思う
でもそれは叶わない。
小恋ちゃんが好きだから。
杏ちゃんにも嫌われたくないから。
だから、私は――、
「…泣いてもいいのよ?」
唐突に杏ちゃんが言い出す。
「なっ、何いってんのよぉ」
「誰もいないわ」
「やっだなぁ、できるわけないじゃない、もぉー。」
どうやってかわそうかと作り上げた笑顔のまま、
振り返ると杏ちゃんが目の前にいて、
私の頬に触れて、
私はもうそれで動けなくなってしまって、
「流してしまいなさい。」――と。
らしくもなく杏ちゃんが優しく言うもんだから、
それはあまりにも不意打ちで
「ぅ……っ」
心が――、
「…だって、どうしようもないじゃない…」
止まらない。
「小恋ちゃんが好きな男の子として知り合って、」
もう止められない。
「どうしようって相談もちかけられて…っ」
震える声を大きくする事で調子を整えようとして
「小恋ちゃんなんか私、信じきっててさぁ…っ」
心が――零れた。
いいかな?
いいのかな?
…いいよね?
「…私っ…って」
言っちゃっても、いいよね?
「私だってぇ…っ」
今だけだから、
明日からはまた、元通りになるから。
私より小さな肩にしがみついて、
小さく、
けれどもしかしたら届け。と、ちょっとだけ願って
けれど小さく、
234 :
茜ss:2007/04/11(水) 23:21:44 ID:bTJDDy4t0
「私だって、義之君好きだった…よぉ……っ」
口に出してからやっぱり、しまった。と思った。
言葉にしたせいで確定してしまった。
――認めてしまった。
視界はとっくに歪んでて、
それでも視線を落とすと
床のコンクリートにありえない程、黒いシミがあって。
頭の隅で、
私、いつから泣いてたんだろうって、
ああ、もう化粧もぼろぼろだろうな。
どうやって帰ろうかな。
商店街は通れないよなぁ。
そんなどうでもいい事を考えてて、
「大好き…だった…よぉ…っ」
小さな手が私の頭を撫でた。
――さよなら。
始まる前に終わってしまった私の恋だけど
「義之くん…義之くぅ…ん…っ」
行き場のないまま終わってしまった恋だけど
「ふ…くっ…よしゆき…くぅ…ん」
それでも、
235 :
茜ss:2007/04/11(水) 23:22:37 ID:bTJDDy4t0
「義之くん…が…好きだよぉ…っ」
こんなにも私は彼が好きだったのだ。
もっとちゃんと告白すればよかった。
一緒に帰ろうって待ち合わせして手を繋ぎたかった。
デートしたかった。
お弁当を作ってあげたかった。
彼に包まれて眠れたらどんなに幸せだったろう。
それは交わされることもなくて、
当たり前のように果たされなかった約束が胸を詰まらせる。
――さよなら、義之君。
それでも、
ああ、それでも
「義之君が…大好きだったよぉ…っ」
杏ちゃんはいつまでも私を抱きしめてくれていた。
私の胸のせいで背中まで手が回リきらないのにはちょっと笑ってしまった。
小さな小箱に気持ちをいっぱい詰め込んで鍵をかける。
かちり。と、それを深い海に沈めるように。
――さよなら、大好きだった男の子。
さあ、
顔をあげて歩き出そう。
236 :
茜ss:2007/04/11(水) 23:23:11 ID:bTJDDy4t0
また明日からはいつもの私。
明日はどうやって彼をからかおうか。
彼のちょっと照れたような、どうしていいかわからないような顔が目に浮かぶ。
それだけで胸が躍る。
まだちくん。と痛むけれど
「小恋ちゃん達、うまくいくといいね。」と
ちょっとしゃくりあげたけど
ちゃんと言えたと思う。
本当に心から。
「あの人が幸せでありますように」――と。
「いい女ね。アンタ」
と杏ちゃんが言うもんだから
「やーね、今頃気づいたのぉ?」
と返してやった。
end
GJ!
……やっぱエロゲは、ハーレムでみんな幸せになってナンボだと思ったエロゲ脳。
遅レスだけど、いつ空の人GJ。面白かったです。
いつ空かなり好きだけどSS書いてる人が殆ど居なくて悲しいのです。
普通に書きにくいからじゃないでしょうか、特に後半以後となると主人公周り以外もういないですし。
車輪、いつ空、DC2と置いてみたけど車輪は作品別スレでも結構、評価いただけたんですが
残り2つは華麗にスルーされまくってました。こんなもんなのかな(ノ∀`)
いつ空の人GJ!
そういや最近かにしのSSの投下がなくなったなぁ
いつ空の人GJ!
そういや最近かにしのSSの投下がなくなったなぁ
誰か茜と結ばれるSSを
どこの「茜」かまず教えてくれ
ダッシュ勝平
見たいもの見たい
たった今「月光のカルネヴァーレ」が終わったんだが
過去に月光のSSとかってあったかい?
月光はなかったかな
そうか
残念だが見逃さすに済んだという妙な安心感を覚えたのもたしかだぜ
>>246 ちょっとスレチだが、面白かった?
なんとなくイヤな予感がしたので回避したのよね。サントラは買ったけど。
海辺を2人で歩いていた。
繋いでいた手を離して彼女がくるり。と背を向けた。
「ねえ先輩?」
「ん?」
「あの時のクイズ、です。」
「あの時?」
「お祖父様とお祖母様
2人の時だけはお互いを特別な呼び名で呼び合っていたそうなんですよ。」
「へえ」
またくるり。と振り返って、
「へえ。ってなんですかっ もう、ムードないんですから。」
一瞬、調子を崩した宮がなんとか平静を取り戻して
こほん。と一息、
「さて、ここで問題です。
お祖父様は「先生」とお祖母様から呼ばれていました
ではお祖母様はお祖父様からなんと呼ばれていたでしょう?」
「みやこ、さんだっけ?うーん…」
などと口では考える振りをしてはみるものの
なんでこう、こいつは回りくどい手を使いたがるかなと
2人だけの特別な呼び名
先生とみやこ
先生と生徒
先輩と後輩
先輩と…
多分、それが正解。
「…とても」
波打ち際で銀色の髪が踊る。
光のしぶきが跳ねて舞う。
「うん?」
「とても愛おしそうに呼ばれてたそうですよ。」
「その名前、を…」
「宮…」
「…正解、です。」
はにかむように、
俺の目の前まで迫る宮の瞳が揺れる。
…なんというか
こいつは一つ忘れている。
みやこさんを「みや」と呼んだのは多分、たった一人だという事を――。
「先輩、私…」
「お前の場合、寮のみんなもそう呼んでるじゃん。その数6名。」
「ああっ!?」
end
まったりしててええがね。
>249
淡々としてるが破綻なく面白いよ。
ただ熱狂的にスゲー!という作品じゃないので評判をあまり聞かないんだろう。
良くも悪くもいじり甲斐がない。
エロパロ板のニトロスレに投下してたヤツは居たな
初めて投稿します。
「いつか、届く、あの空に。」のSS「トラウマの作り方」です。
ふたみとのんに萌え転がりたいのでこんなん書きました。
生暖かい目で見てやってください。
※ふたみ大先生がぶっ壊れてます。トリマキがぶっ壊れます。ご了承下さい。
これは、策が空明市にやってくる少しだけ前の話。
否定の意味を持つ少女、透舞のんが少し火傷をした話。
---
「唯井さん、ちょっと宜しいかしら?」
弐壱学園の一日も終わり、陽が西へ傾く頃。
透舞のんは教室から出て行こうとする傍若無人を呼び止めていた。
「なんだ?とおりま………トリマキ」
「なんで言い直したんですのっ!?」
彼女、唯井ふたみは、誰でも彼でも彼女の独断でにあだ名を付け、それを使う事を心がけ
ているようだ。何故か。そして、そのあだ名は度々において相手の不本意な所に落ち着く
事がある。
「何故って、トリマキはトリマキだ。トリマキは透舞よりはトリマキらしいじゃないか」
そして、こんな理解に苦しむ理屈を、真っ直ぐに伝えてくるのだ。
「……マトモに説得しようとした私が愚かでしたわ」
顔に手を当て、俯く。
しかし、今ののんには自分がトリマキと呼ばれる事よりも優先すべき懸案があった。
「それより、貴女今朝、此芽お姉さまに口答えをしていらっしゃったんですって?」
――それは、今朝の話である。
のんが”お姉さま”と慕う桜守姫家のお嬢様、桜守姫此芽と目の前の少女ふたみが、教室
の前で何やら言い合いをしていたらしいのだ。
らしい、というのは、此芽の妹である桜守姫みどのにその話を聞いたからだ。
気が弱いみどのはその様を目撃していたがかける言葉も見当たらず、オロオロしているう
ちに此芽は呆れたようなため息をついた後、教室に入っていったそうなのだ。
お姉さまは偉大である。
のんが自分はこうありたい、と願い、憧れ、目標にしてきた人物である。
そんなお姉さまに楯突く者は、自分にとって放っておいていい者であるはずがない――
のんは、キッ、とふたみを睨んだ。
気が強いのんの視線は、攻撃的であった。
気の弱い相手ならば、怖気付いたであろう。
気の強い相手ならば、睨み返したであろう。
「なんのことだ?全く以って身に覚えが無い」
しかし、ふたみはどちらでも無く、偽りの無い瞳でのんの眼を射抜き返していた。
(……これだから)
のんは、ふたみが苦手だった。
そんな瞳で見られると、直視できなくなってしまう。恥ずかしくなる、というか。
汚れを知らない童のような純粋さに、当てられてしまうのだ。
257 :
支援:2007/04/24(火) 11:18:08 ID:qPXRHXSj0
よく分かりませんが支援しておきますね
「と、とぼけたって無駄ですわよ!」
ぷい、となるべく自然に視線を逸らす。
「とぼけるも何も、解らない物は解らない。確かに今朝コノと言い合いにはなったが、口
答えをした覚えはない」
「………」
そんな事だろうとは思った。
彼女がどこまで本気かは解らないが、みどのの言っていた事はやはり本当であるようだ。
「……言い合いになっている時点で口答えしている事に、お気付きになられません?」
「それは違うぞトリマキ。言い合いというのは意見の交換だ。口答えとは全く違う」
「貴女ねぇ…!」
危うく、声を荒げそうになる。が、
「そもそも、何でオマエが怒ってるんだ?ワケが解らないぞトリマキ」
「な」
固まった。
この”ワケが解らない”ふたみに”ワケが解らない”と言われては絶句する他は無い。
「うん、そうか。なるほど。トリマキは機嫌が悪いのだな」
「…え、えぇ?」
「ここは一つ、私が心温まる話の一つでもして元気付けてやろうじゃないか。うん、それ
がいい」
「あの?」
のんが自分を見失っている間に、ころころと独自の理論を広げていくふたみ。
後になって解った事だが、この時、のんは全力でふたみを止めるか脱兎の如く逃げ出すか
をすべきだったのだ。
「ではいくぞ。4丁目の佐藤さんの庭に花が咲いた話だ」
得意げにふたみは語りだす。
「佐藤さんは大の園芸好きで、庭の植物にかける愛情は誰にも負けないくらいだった。だ
が、過保護に水や肥料をやりすぎるせいで、佐藤さんの庭に花が咲く事は無かった」
不意に、がし、と。
「え?」
ふたみの両手が、のんの肩に架かっていた。
「ぃ、唯井さん?」
そのまま、ずい、とふたみが迫ってくる。
「佐藤さんは、そう、自分の愛が余りあるゆえに花が咲かない事が解らなかったんだな」
「ちょ、ちょっと!」
急にふたみの顔が自分の眼前に寄り、のんは後退せざるを得なくなる。
トン、と背中に教室の壁が当たる。
壁際まで追い詰められた形だ。
「佐藤さんは悲しんだ。何故、こんなにも愛を注いでいるのに、花を咲かせてくれないの
か。愛は盲目というが、正にこのことだな」
そんな事を言いながら、ふたみは更に顔を近づけてくる。
「いいいい唯井さん!?ふたみさん?!」
のんは必死でふたみの手を払おうとするが、この細い腕のどこにそんな力があるのか、肩
を掴んだふたみの手はピクリともしない。
それに、ふたみの顔を直視できない。
なんの間違いか、のんは今、「愛」なんて言われながらふたみに迫られている。
自分にその気はないと信じたかったし、疑いたくも無かったが、のんの心臓は確実に鼓動
を早めていた。
「そしてついに、佐藤さんは愛する事をやめてしまったんだ。いくら自分が愛しても、相
手は気付いてくれない、返してくれない。それに耐えられなくなった」
そんな事を言いながら、ふたみは右手をのんの頬に沿え、顔を自分のほうに向けた。
ふたみの顔は何故か紅潮しており、とろんとした瞳でのんを見つめていた。
はぁ、とふたみの息がのんの顔にかかる。
「〜〜〜〜!!!」
のんは既に言葉も口に出来ず、これでもかというくらいに赤面していた。
佐藤さんの庭の話ですよ?これ。
---
「そんなこんなで、佐藤さんは花にかける愛情を取り戻したんだ」
「えぁ……ぅ…」
教室には既に2人だけしか姿は無く、ふたみが心温まる話をはじめる前に他の生徒はさっ
さと帰路についたようだった。
それが幸いだったのか不幸だったのか、のんには考える余裕は残ってはいない。
ふたみの顔はのんと鼻が触れ合いそうになる程まで近づいていたが、ふたみはそれでも”
心温まる話”を続けるだけだ。お陰で、のんのパニック状態は解除される事なく、真っ赤
な顔でこの膠着状態に耐える他に出来る事はなかった。
と、そんな場面に、
ガラララ!
と扉の音を立てて教室に入ってくる人物が居た。
「クイ、まだ居られるかえ?職員室に用があった故、遅ぅなってs」
――時が、停止した。
顔を紅潮させてのんに迫るふたみ。
顔をこれでもか、というくらい赤らめているのん。
それを視界に収めて石化している此芽。
それは、混沌以外の何物でもなかった。
――時が、停止していた。
ふたみ以外の。
「愛は猫をも殺す、とも言うからな。佐藤さんは自分の愛が盲目であったと気付いたんだ」
ふたみは、教室に入ってきた此芽に気付かず、”心温まる”を続けている。
彼女だけが、この世界で生きていた。
---
「あああ違あああぁああぁああ違う違ああぁああ」
ガンガンガンガンガンガン。
「……?」
通りすがりの明日宿傘は、この日から一週間、鳥居にひたすら頭を打ち付ける奇妙な巫女
を幾度と無く目撃する事になる。
終われ。
何も考えずに投下したら規制もらいましたぎぎぎぎぎ
というわけでID違うけど同一人物です。
支援ありがとうございます。
規制中なだけに奇声を発してるのかな、とか言ってみたり。
>264
ダジャレの解説ほど残酷なものって無いよな。
それはそれとして、>254-262 gj!
……しかし、FDでいいから、全員幸せになるようなシナリオが読みたい。
3人のどのエンドに行っても鬱になれるorz
VFBが本日やっと届いた紅茶奴隷ですorz
殿子寝間着かわいいよ殿子(`・ω・´)ゞ
それはともかく、かにしのVFB祝発売!ということで久々に投下。
朝の弱い某サブキャラがすみすみと仲良くなるまでのお話です。
みさきち√第九話〜第十話のころを想定しています。
とりあえず今回は前編ということで。
それではどうぞ。
「Cherry Girls 前編」
……この時間は、彼女だけのもの。
読書灯だけがベッドを照らす中で、もぞもぞと動くパジャマ姿の影。
密やかな声が漏れる。
「……んっ……あ」
指が中心を求めて動く。
誰かを想いながら、彼女の手と指は的確に自ら快楽を貪る。
「あっ……ん…………ッ!」
ひときわ高い声が部屋に響いた後。
全身の力が抜けてベッドにだらり、と横たわった彼女はじっと手を見る。
指先を光に照らすと、半透明の液体がわずかに糸を引いた。
恐る恐る――だが結局はいつものように、おずおずと伸ばした舌がそれを舐めとる。
少しだけ、塩辛かった。
同時に襲ってくる、自己嫌悪と虚脱感。
「また……やってしまいました、なのです……」
だけど、決して彼女は毎夜のこの儀式をやめようとはしない。
「……シャワー浴びて、寝ましょう」
身だしなみはきちんとして眠ること。
その必要性を誰よりも、自分が一番よく知っている。
そもそも、もともと寝相が良いほうではなし。
加えて、朝の自分がどんな状態にあるかを思えば必要かつ重要な予防措置だった。
たまに、毎日これをしているせいで朝が弱いのでは、と思うこともある。
けれど――今の彼女は、してから、でないと眠れないのだ。
どんなに罪悪感を覚えても、やめられなかった。
特に最近。皆が遊ぶ砂浜に、遅れて一人の少女がやってきた、あの日以降は。
机の上の写真立てに一瞬眼をやった後、はぁ、と溜息をついて彼女は浴室に向かった。
写真の中には、水着姿の少女が良く似た髪の色を持つ姉と話している光景があった。
楽しそうに。とても――楽しそうに。
彼女は思う。
なぜ、私は――楽しくなれないんだろう。
「香奈ちーん!朝だよっ!メイドさん来ちゃうよー!」
大銀杏弥生の声が遠くから聞こえる。
分厚い扉を超えて届くということは、よっぽどバカでかい声で叫んでいるに違いない。
………………
もぞり、と眼の開かぬまま三橋香奈は起き上がった。
条件反射のようなものだ。とりあえず体は直立しても、脳は90パーセント眠っている。
部屋の物体もほとんど「見て」はいない。
カンブリア紀の生物のように、光の濃淡だけで部屋の中の障害物を認識し回避する。
だがこんな状態でも、歯ブラシや洗面用具はいつのまにか必ず手にしている。
毎日必ず同じ場所に配置してから寝るという下準備のおかげだ。
もし誰かが歯ブラシと剃刀をすり替えていたら大変なことになるだろうけども。
絶望的に朝に弱い彼女の最低血圧は20以下。中学の修学旅行では変温動物と呼ばれた。
小学生のころ、朝起こしにきた母が驚愕のあまり救急車を呼んだこともあったほどだ。
朦朧としたまま、香奈がそのままドアを開けると。
「ふがっ」
今日も誰かにぶつかったらしい。
「うぐぐぐ……またか三橋……いつも言っているが出てくる前に服を着替えろ!また胸元がっ下着がっ」
例によって滝沢先生のようだ。何故いつも扉側を歩くのですか、と普段の香奈なら思うだろうが、今の彼女にそこまでの思考力はない。
先生と認識したのも声がデジャヴと結びついたからに過ぎず、会話しようという意思も当然生じない。
溜息をつく滝沢の背後から響いた声もまた耳には入っているが聞いてはいない。
「はいはいそーこーまーでー!センセ、朝食まだでしょ?一緒にいこっ!」
「……おはよう、相沢」
「おっはよー!もう我が妹は食堂いっちゃったよっ!」
(………いもうと?)
そのフレーズにリヴィングデッド状態の香奈はぴくり、と反応した。
相沢美綺と連れだった教師の足音が遠ざかるにつれ、彼女の脳内から霧が晴れていく。
「……いも」
「およ?眼ぇ醒めた?香奈ちん」
「……芋?ぽてちでも食いたいのかな?」
弥生とのばら他、残されたいつものメンバーが首をかしげて見守る中。
ややあって、認識が戻ってくる。世界が開ける。
…………
「きゃああああああ!あさあああああ!着替えっ着替えええええ!ごはんっ!」
「おー、今日は素に返るの早いじゃん香奈ちん。あったしが呼んだおかげかなっ」
自分に常に都合よく解釈する弥生に、のばらは冷静に返す。
「やーちゃん、賭けに勝ちたいからってあんなでかい声で叫ばなくたってさー。まあ、時間見た限りではあまり意味無しだったみたいだけどー?」
ちーん。エレベーターの音。配膳の時間だ。
「でも、メイドさんもう来ちゃったよっ、とぉ……着替え間に合うと思う?」
「今日も駄目だと思うねー。つーことで賭けはあたしの勝ち……ああっ逃げるな弥生っ!」
「いつも通り♪いつも通り♪」
双子がさえずるように宣言すると同時に、メイドさんズが朝食の配膳ワゴンを押して現れる。
やんややんややんややんや。
……そしていつものやり取りの末、今日もワゴンは香奈の部屋をスルーしていった。
扉の向こうから引き止めを懇願しつつ、ようやく着替え終えた香奈が出てきたとき、既に美味しい筈の朝食は遥か彼方。
「ああ……朝ごはんが……」
未練がましく手をそちらに向ける彼女の背後からぽんぽん、と誰かが肩を叩く。
力なく振り向くと、そこにはちよりんが音も無く立っていた。
「……スルー記録継続中」
一言ぼそりと呟いて、足音もたてずそのまま通り過ぎていく。
とどめを刺され、気力の尽きた香奈はそのままへたり込む。
ぐきゅるるるぅ、と同時におなかが鳴った。
「……ごっ……五ヶ月超えなのですっ……」
新学期から一度たりと、香奈は朝食にありついていなかった。要するに、長めの休暇のとき以外は土日ですら常に逃しているのだ。
それならワゴンを止めて食堂で摂ればよさそうなものだが、こんな彼女にも意地があり人並み以上に他人への見栄がある。
かてて加えて自分から何かを変えよう、とはなかなか言い出せないタイプでもあった。
といって朝、無理やり起きるだけの意志力も使命感も血圧もなく。
かくして記録は更新を続ける。
とは言え、年頃の娘がずっと昼まで何も食べずにいられるはずはないわけで。
食事が当たらない可能性を見越して、普段の香奈は休憩時間につまむ菓子などをあらかじめ調達していた。
(……我ながら常に弱気だとは思いますけど……しかしっ)
しかし今日授業が始まってから、彼女は重大な危機に直面していることに気づいた。
ポーチに入っていた筈の菓子類はすべて切らしている上に、たまたま小銭の持ち合わせも無かった。
休憩時間に寮まで戻っている余裕はない。売店も使えない。
しかし、周囲に菓子や小銭をねだるのは彼女のなけなしのプライドが許さない。
つまりそれは、昼食までこの状態で耐えねばならないという事を意味していた。
ぐ……ぐきゅるるるるうっ。
一時限目から盛大にお腹の虫が鳴り響く。
昨日の夕食は早めに終えてしまったので、胃の中には一切何も残っていない。
胃液が空きっ腹に沁みるのを彼女は感じていた。踏んだり蹴ったりである。
(ううっ……恥ずかしい……)
音に関しては、本人が思っているほど周囲に響くわけではない。
加えて周りはいつものことなので気にもしていないのだが、本人の羞恥心には重大なダメージだった。
しかも今日は、隣に彼女がいる。
元は鋼鉄の委員長、しかして今は相沢美綺の妹。すなわち仁礼栖香が。
何度目かのぐきゅるる、の後、ちらりとその仁礼が香奈を見た。
(聴かれた?ううっ……恥ずかしいですっ……)
彼女には。彼女にだけは、こんな姿を見せたくはないのに。
もっとも、香奈の内心を知ったら同級生は口を揃えて「今更遅い」と言っただろうが。
(ただでさえ軽く見られているのにっ……一層軽蔑されてしまいますっ……うう)
そのとき。
(……三橋さん?)
彼女がそっと囁いた。
(……え?)
(良かったら、食べて下さい)
机の影から、そっと彼女の手がこちらに差し出される。
(……ちろりちょこが三つ)
華奢で繊細で色白の、彼女の手にちょこんと乗った、やや場違いなお菓子。
彼女が休憩時間でつまむためのものだろうか?とは言え香奈には過去、仁礼がそのような行動を取っていた記憶はない。
(ちろりちょこ……も彼女らしくない……ですがっ)
(……御嫌いですか?)
(あっ……ありがとうございます……)
恥じ入って、でも遠慮している場合でもなく、彼女はそっと受け取った。
先生の眼を盗みつつ、口の中に放り込んだその味は。
いつも食べるチョコより、さらに甘く感じた。
昼休みになりなんとか栄養を補充。ようやく人心地がついた香奈が食堂から廊下に出ると、トイレから出てきた仁礼に会った。
慌ててもう一度先ほどの礼を言う。
「に仁礼さんっ!さささっきはどうもありがとうございましたっ」
いえ、と彼女はにっこり笑って、
「お気になさらないで下さい。何しろ音が聞き苦……いえ、失礼致しました」
こほん、と咳払いをして頬を赤らめる仁礼栖香。
今何て言ったコラ、と思いつつもむしろ落ち込む香奈。
(聞き苦しいって言われた……仁礼さんに……ううっ……)
だがその栖香は眉間にしわを寄せてなにやら真剣に考えている。
その表情に怯えながらも香奈は尋ねてみる。
「……ま、まだなにか?」
「いえ、済みません。中々適切な言葉が見つからなくて。その……三橋さんも、余り人に聴かれたい音では無いのでは、と思ったものですから」
どうやら気を使ってくれていたらしい。言葉の選択はともかくとして。
「いいいえええええ!あああ有難うございます本当に!そのっ、でも、仁礼さんがチョコを持ち歩くなんて意外で」
「ええ……実は朝食の後にお姉様から頂いたのですけど、食べきれなくて……後で頂こうとは思っていたのですが」
そんな大事(と仁礼さんが思っているであろう物を)呉れたのか。青くなった香奈は即座に返答する。
「ごめんなさいごめんなさいっ。買って返しますっ」
「宜しいですよ。また貰えますし……それに、その」
何故か口ごもる栖香。
「……何か?」
「私は余りその……三橋さんのように休憩時間に食べる習慣が無いものですから」
どずんと再び落ち込む。
(ううっ――そんな比較をされると私の育ちの悪さがにじみ出ている様じゃないですかっ)
「……習慣ではないんですっ!これは止むを得ない事情があってですねっ」
「そうだったのですか?」
反論する香奈に首をちょっと傾げた後、はた、と手を打つ栖香。
「ああ、そうでした。朝食をいつも御摂り出来ていないので御腹が空くのですね」
…………
今度こそとどめを刺された。
必死で平静を装いながら沈没し続ける香奈の前、なにやら考えていた栖香は突然提案してきた。
「あの……もし宣しければですが、私達と、食堂で朝食を御一緒致しませんか」
え?と香奈は自分の耳を疑う。
何ですか、その振って沸いたような良い話は?
「最近良く、お姉様と上原さんと滝沢先生で食べているのですけど、三橋さんも一緒ならもっと楽しくなるのではないかと――」
何故。そんな、飛びつきたくなるような話を。
今。こんな時に。
「ああああのあのあのっ」
気がつくと香奈は。
「ううう嬉しいんですけどっ、私は朝ちゃんと起きれるようになりっなりたいのでっ」
心にも無い言葉をひとりでに紡いでいた。
起きれるわけが無いのに。
「ワゴンの朝食を、食べられるようにならないと人としてっ」
努力してるといいつつ、本気で頑張ったことなど無いのに。
「ままっままたの機会にっ!」
ばたばたばたっ、と後ずさりしてしまう。
そうしたく無い筈なのに、何かを恐れて、下を向いてしまう。
「……そうですか。では、またの機会に」
栖香の声は怒っているようには聞こえなかった。
香奈は恐る恐る、眼だけで彼女をちらりと見上げる。
――美綺と和解する前の仁礼栖香が、そこに居た。
家族と団欒する美綺を影から見ていたときの、あの眼。
寂しそうなその眼が視界に入ったとたん、さらに香奈はいたたまれなくなって。
「ごっごっ――ごめんなさいですっ!」
その場からダッシュで、離れてしまった。
「ふ……ふえええええんッ!」
ダッシュしながら彼女はぐずぐず泣く。
いつもの――そう、いつものように。
(なぜ、いつも私は、私はっ……正直になれないのでしょうかっ!)
三橋香奈。
気が弱くてすぐパニクる。
努力こそするが、客観的に見るとあまり成果を挙げていない。
困るとしばしば思ってもいないことを言って、その場を取り繕おうとする。
ちょっと頑張るとその度に言葉尻を捉えられ、足元をすくわれる。
舞い上がって高いところに立つと、自分から足を踏み外して落ちる。
せめて屋根の上ぐらいならと昇れば、誰かに梯子を外される。
――そんな彼女。
そんな香奈に、転機が訪れたのは。
夏も終わり、長雨がやって来る少し前のことだった。
「Cherry Girls 前編」 了
続きはしばらく時間を下さいです……
ドラマCDにさっそく和みまくりの紅茶奴隷でした。
>266-276でよろ。
>>266 拝読しました。
本編では脇役となっていたキャラへスポットを当てたSS、いいですねー。
キャラ選択も、渋いですねー。楽しませていただきました。
>続きはしばらく時間を下さいです……
これは俺に対する拷問ですか… ⊂⌒~⊃xДx)⊃
>>277 紅茶奴隷さん、久しぶりのかにしのSSをありがとうございます。
というか、ここで終わるのは何かのお預けプレーですか?w
個人的には、相変わらずちよりんがいいタイミングで
いい味を出してると思います。 GJ!
ではでは、続きを首を長くして楽しみに待っています。
#もちろん、VFBは買っていますよ。
#すみすみかわいいよ、すみすみ。
天使のいない12月のSS誰か頼む。
雪緒か明日菜さんで。
葉鍵板の過去ログにあるんじゃないか?
すみすみの長編エロSS頼む
紅茶奴隷でした。
お待たせしました……あまり待ってない?そうですよね。
とりあえず回線の都合上、今日と明日に分割して投下させてくださいです><
当初思ってたより筆が走りすぎました……orz
そんなわけでどぞ。
「Cherry Girls 後編」
今日も今日とて。
深夜二時の寝室。
「……あっ……はぁっ……いっ」
熱と湿度を纏わりつかせた吐息と嬌声。
「んっ……くぅ……っ!」
やがてそれは絶頂をむかえ。
いつものように、脱力した香奈はのへー、とだらしなく体を伸ばす。
はあ……
「またまた……やってしまいました……なのです」
ややあってぽとり、と彼女の大事な部分から毀れ落ちたのは、三種四個のちいさな立方体。
委細は問うまい。D100とD8とD6だ。
濡れたそれを掌の上で転がしながら、香奈はまた罪悪感に浸る。
「……だいぶ磨り減ってきてしまったのです」
それはかなり年季の入ったダイスだった。角はもう、だいぶ丸くなってきている。
そのうちセッションで使うにも問題が出てきそうだ。
今までは誰にも気づかれなかったけれど、弥生やちよりんは変な所で鋭いから。
香奈としては余計な詮索をされるのは困るのだった。
いや、それ以前の問題として、神聖なダイスを目的外使用するなと。
ゲームマスターの神様なるものが居るなら、速やかに雷を落とされていそうな彼女ではある。
(未だ入り口ですけど、ちと弄びすぎたのです……か?)
奥に入れるとなにか後戻りできないような気がして怖いのでそこまではしていない。
しかし、何日かに一遍はこれで慰めないと香奈は落ち着けないのだった。
道具を使うにしろ使わないにしろ、「ひとり遊び」についてはすでに香奈はエキスパートだ。
小学校のころから、ネットなどで目一杯知識だけは詰め込んできた。
TRPGを覚えたのもそのころであり、ダイスも「くとぅるふのよびごえ」と同時に手に入れたものだ。
しかし、当時は回りに一緒にセッションしてくれる人がいなかった。
ゆえに彼女は、頭の中で話を組み立てるだけで満足しなければならなかったわけで。
「……おかげで、妄想力だけは人一倍になってしまったのです」
今はTRPGに付き合ってくれる友人もできた。
研究会の活動ができるのは嬉しいし、楽しい。
だけれど、彼女は大抵ゲームマスターだった。
一番ルールに詳しいのが自分だから仕方ないのだが、でも、と香奈は思う。
「たまには、私だって背景ではなく、主人公になってみたいのですっ……」
ゲームの中ではなく、自分が今居るここで。
とは言うものの。
現実の壁を前に、妄想は立ち止まる、そんな日々の繰り返し。
ずっと自分はこのままなのだろうか、と思っていた。
「いやっ……いけません、こんなことではっ!まだ見ぬ明日に向かって頑張るのですっ……!」
ダイスをぎゅっ、と握り締める香奈。
(私は、もっと積極的にならなければいけないのです)
……とりあえず、今度は私から仁礼さんを誘ってみよう、と彼女は思った。
こないだの仁礼の表情を思う。哀しげな瞳を思う。
彼女の中には硬い氷がある。それを真剣に溶かしたいのなら、こっちから待っていてはいけない。
「でも……私にできるでしょうか?もし、こないだのことで彼女が怒ってたらどうすれば……」
もくもくといつもの不安と弱気が顔を出すが、今日の香奈は一味違う。
「――運試しなのです」
(ただし、成功確率は70パーセントに設定するのです)
この辺がまだ弱気だったけど。
70以下が出れば、仁礼さんは怒っていない怒っていない怒っていない……
「……えいっ」
おずおずと十面ダイスを二個、床に転がしてみる。
D100ロール。
ぴたり、と止まった目を確認する。
……0のゾロ目だった。
すなわちファンブル――自動的に失敗。
香奈はそのままの姿勢で、ベッドからずるずると崩れ落ちる。
(ふぁ……ファンブルですかっ……!)
とりあえず、この日、ゲームマスターの神様は香奈には優しくないらしかった。
「神様……ノーカンになりませんか……?」
ダイスを弄んだ罰、かもしれない。
それでも。捨てる神あれば拾う神在り、とはよく言ったもので。
「三橋さん?」
「……は、はいっ!なんでしょう?」
あれから少しずつ、二人の距離は近づきつつあった。
おずおずと声をかけ非礼をわびた香奈に、栖香は快く対応して許してくれた。
むしろ、その後もなにかにつけ腰の引ける香奈に対して、一直線に、飽きもせず何度も誘いをかけてくる。
そうなれば意志の弱い香奈のこと、誘いを断れるはずもなく。
無論、それは嬉しいことでもあって。
現状、何日かに一度、相沢の姿が見えないときなどは二人で昼食を一緒にとるようになっていた。
生憎今日は雨だったので、食堂の一角に二人は場所をとり向かい合っている。
(この状況こそは、私が望んでいたものっ……)
すなわち、全体として香奈が望む方向に進展しているはず……なのだが。
香奈自身は嬉しいと思いつつも、この期に及んでいろいろと違和感を感じつつあった。
多幸感と不安が交互に襲ってくる状況というか。
(とにかく……腹芸が通用しない人ですっ。凄いというか……ある意味馬鹿正直、というか)
自分を棚に上げて、香奈はそんな事を思う。
会話における迂遠さと発言の無責任さというものに拠りかかっている香奈に対し、栖香は徹底して発言の明確さに拘り、そして他者の発言には基本的に真実性が担保されていると信じていた。
結果としていえば、栖香には冗談というものが通用しなかった。全く、といってもいい。
また、好悪、善悪のスイッチの切り替えがはっきりしており、その中間というのは存在しないようだった。
そして香奈の発言はとりあえずすべて善意の方向で受け取ってもらえているらしい。
すなわち香奈が慮って曖昧な褒め方をしたものでも、それは明確な賛辞なのだ。
たとえばそれは栖香が最近熱を入れている料理に関する感想であったり、
美術作品に関する意見であったりするのだったが。
(私たち、これでいいんでしょうか……?)
――彼女といること。それ自体は嬉しい、とても嬉しくて、楽しい。
だがそれでも、香奈は虚構の上に築かれた舞台に立っているような危うさを感じていた。
――しかしそれは、いったいどちらの問題なのだろう?
ちなみに、それはそれとして、香奈は相変わらず朝食は食べられていなかった。
空腹に関してはお菓子の隠し場所を増やすことでクリアした。
(……根本的な解決から眼をそらしているのではないかと自分で思わなくもないですが)
背に腹は変えられないとはよく言ったもので。
まあ、とりあえず今の所、状況は香奈にとって大進歩だったが、他にも気になることはあった。
それはひょっとして相沢美綺が気を使ってくれているのでは?と言う疑念。
香奈の気持ちを察して、二人の時間を作ってくれているのではないか、と。
例によってそれは香奈の考えすぎだった(とはいえ、全く見当外れでもなかった)のだが、それに思い至った時、彼女は真剣に悩んだ。
(……私は、姉妹の親しくなる時間を奪っているのではないでしょうか)
「だとすれば逆に私はお邪魔虫なのではっ……」
「どうしました?食欲が優れないのですか?」
気がつくと、栖香が不思議そうに香奈をのぞきこんでいる。箸が動いていないのを見咎めたようだ。
「はっ……?いえいえいえッ?なんでもありませんよっ」
「そうですか。ところで、上原さんに唐揚げの作り方を教わったもので、試しに揚げてみたのですが」
「……唐揚げ、ですか?」
じっと栖香の箸がつまんでいる先の物体を見る。それがどうやら唐揚げであるらしい。
(……黒い。地獄のように黒いですっ!イカスミ入り……のわけはないよね……)
「不恰好ですけど……良かったら味見して戴ければ」
申し訳なさそうに箸を差し出す栖香。
問題は外見ではなさそうだったが、香奈にはとてもそんなことは言えず。
「いえええっそんなことはありませんっ、慎んでいただきますっ」
ぱくり、とそのまま口に頂くと、ややあって。
(……苦っ!辛!そして甘っ!)
相容れないはずの三つの味が完全に独立して口の中で爆発した。
「如何ですか?」
しかし、それでも。
恐る恐るそう聞いて来る栖香に対して、香奈に出来る返事は。
「美味しいですよ、仁礼さん」
ひとつしかないのだった。
(……なぜでしょう、この緊張感と不安は?一緒にいて、嬉しくて楽しいはずなのに……何故?)
だから、香奈は気づかない。悩みながらも、気づけない。
栖香もまた、同じように悩んでいたことに。
それを見ていたのは、例によって弥生とのばらと高松姉妹。
やんややんやといつもかびすましい彼女らの眼に宿っているのは微妙な好奇心。
「……餌付け?でもあの料理じゃちと香奈ちん可哀想じゃん?」
弥生は香奈の気持ちを深いところまでは知らない。
いつも怒られていただけに、やや仁礼に対しては斜に構えた見方をしてしまう傾向があった。
「こーら弥生、言い方意地悪すぎ。仁礼さんも打ち解けようと頑張ってるんだよきっと」
あくまでもやんわりとたしなめるのばら。弥生に最初にブレーキをかけるのは彼女の役目だ。
「そーなのかな?でもまー、すみすみが最初に香奈ちんにいったにのはなんか納得するけどさー」
「なんで?」
「だってさーあの二人けっこー似てるじゃん。猫かぶるとことか建前で生きてるところとかさー。」
確かに弥生に建前は不要のものだろうけど、とのばらは思ったが口には出さず。
「そうかも。まっ、香奈ちんは仁礼さんほど首尾一貫してないと思うけどね」
この二人には、香奈よりむしろ仁礼が積極的にアプローチしているように見えていた。
見方を変えれば、それはそれで正しかったのだけども。
「よくも悪くも意志が弱いのだなー、ふんふん」
「「意志薄弱軽佻浮薄♪自縄自縛自慰自爆♪」」
「……けーちょーふはくってどういう意味?」
「知らない……ハーフに、そのうえよりによってこの双子に国語で遅れをとるとは不覚だよっ!」
「お前ら……」
さらにそれを見ていた教師・滝沢司はとてもがっかりした。主に弥生たちの一般常識に対して。
しかし、それを指摘するのも可哀想なので、話題の部分だけやんわりとたしなめることにしたわけだが。
「余り人の交友関係をネタにするのは良くないと思うぞ?」
「ありゃ、滝沢ちんに怒られちったよ。まーだけどさ、二人とも不器用だよねー。滝沢ちんもそう思わない?」
正直、弥生に不器用と言われたらみんなショックを受けそうではあるがそれはともかく。
「ちゃんと先生と呼べ大銀杏……ともあれ、彼女らの何が不器用だって?」
「決まってんじゃん。自分の気持ちに、さー?だからあんなぎくしゃくしてんじゃない?」
「「尻の青い子○○臭い♪自慰が過多の子他意には過敏♪」」
「やめい!年頃の娘さんがそんな言葉を口にするなっ!」
高松姉妹はきゃははは、とユニゾンで笑いながら去っていった。
相変わらず意味不明な子らだと司は思いながらも、
「……そうかもしれないな。たまには大銀杏もいい事を言う」
と遅ればせながら弥生に同意する。
「でしょでしょ。……でもたまに、は余計だっしょ、滝沢ちん」
「滝沢先生と呼べ」
ホントーにたまに、だが。
「……と言う話があったんだ。まあ、みさきちのことだから既に気づいてるかもだが」
司から見ても、仁礼と三橋が同席している時はお互いロボットのように硬くなっているように見える。
正直なところ、周辺の人間にも微妙な緊張感が漂うほどだった。
「まーね……うにゃー、ま、その内打ち解けるよっ。香奈ちん気ぃ弱いけど根はいい子だし」
とその彼女は当面、傍観するつもりのようだ。
妹がせっかく積極的に自分から動いているところ、自分が口を出すのは躊躇われるのだろう。
自分とセンセの途中までと似てる、とも言った。言われてみると司もなるほど、と思う。
さっすが姉妹、と美綺は苦笑いしていたが、ならばそれはつまり。
自分たちのように、互いの本当の気持ちに気づかないと結局、それ以上先には進めないということなのだろうか?
「上手くいくといいなーと思ってるけどねっ」
「……そうか」
「それよりもねっ。考えなきゃいけないのは、むしろ」
一緒に過ごす時間が増えたという事は、仁礼の行動はそれだけ常に三橋の注目を受けている、ということでもある。
「……調査のことか?」
放課後の調査。今は雨で休止してはいるが。仁礼との打ち合わせはずっと行っているわけで。
「そのうち香奈ちんには気づかれちゃうかもね。まーそんときはそんときさっ!」
「仲間に引き込むか?」
「そうなったらいいけど……でも、それはアタシじゃなくてすみすみの役目かなっ」
「……なるほどね」
確かに、そうに違いない。
とりあえず今日はここまででご勘弁を……
>283-289でよろしゅうに。
結末は明日貼れると思いますです……多分orz
感想有難う御座います。
遅い時間になりましたが、続きです。
相変わらず、外は雨。
垂れ込める灰色の雲の如く、香奈のテンションは地面すれすれ。
「……憂鬱なのです」
低気圧のせいだけではない。有体に言って、香奈は途方にくれていたのだ。
部屋に居ても落ち着かないので、図書室で参考書などを広げてみたものの。
当初危惧したとおり、本の内容など一文字たりとも頭に入ってこない。
ちょっと前から気になっていた件について思考が飛ぶと、そこで脳の回路がループしてしまう。
放課後の異変。滝沢先生と相沢に上原、そして仁礼。
最近では本校組の八乙女さんや鷹月さんまでが一緒になって何かをしている。
香奈は栖香に、雨の日まで集まって何をしているのか聞きたかった。
しかし、彼女は香奈に一切話してくれない。匂わせる素振りすら見せない。
こちらが放課後の予定を聞いても、姉と約束があるので、と曖昧な返事をするだけだ。
嘘ではないにしろ、何か隠しているのは間違いなかった。
「……しかし、問い詰めてもいいものなのでしょうか」
隠すにはそれなりの理由があるはず。
姉から釘を刺されている、という事もありえるだろう。
誤魔化されたときや嘘をつかれたときのダメージを考えてみる。
(ううっ……立ち直れませんっ……結局、まだ信頼されていないということなのでしょうか?)
いっそのこと、首魁と思しき相沢に直接聞くべきだろうか。
(いや、それもまた他人行儀なのですっ……)
「……何してるの」
「ひゃあああっ!?……何だ、小曾川さんですか」
いきなり後ろから声をかけられて心臓が飛び出しそうになる。
しかも。
「……仁礼?」
いきなり核心を突かれた。
「……えええええ?なな何を根拠にっ?ていうか何のことですかっ!」
小曾川智代美は、ハムスターのように小さい口の端をわずかに吊り上げて呟く。
「……悩み。バレバレ」
一応、それで微笑みを表現しているらしい。
「バレバレなのですかあっ!?」
自分はそんなにわかりやすい人間なのだろうか、と香奈は数秒間悩んだが。
…………
反論のしようも無かったので、仕方なくぽつりぽつりと状況を説明する。
「これからどうしたらいいのか、解らないんです……」
滝沢と相沢の名前が出たときだけ智代美の眉はぴくり、と動いた。
何やら腑に落ちたらしいが、その後は無言で聞き終える。
それからしばらく香奈をじっと見つめ、小さく頷くとぼそり、と宣告した。
「呼び出して聞け」
「そそそんなっ……恐れ多い……」
「友達に恐れも遠慮も無いよ」
「……でも」
貧相な仔犬を哀れむような眼で智代美は香奈を見ると、
「少しだけ助言」
顔をぬっ、と近づける。
「……なんですか?」
そのまま香奈の耳元に口を寄せると、やや強い口調で囁いた。
「好きなら迷わず行くところまで行け」
「…………っ!」
「その道の先達からの、一言」
それだけ言って、智代美は再び影のように去っていった。
ややあって香奈は、言葉の意味に気づく。
「その道、って……違う違う違うんですっ!私は――」
どう違うのか。
…………
自分が夜な夜な何を考えて一人慰めているか、を思うと。
あんまり違わなかった。
「どうしましょう……私はどうしたらっ……でも」
いつかは、隠している理由は知ることになるだろう。
その時、栖香本人から聞かされるならまだいい。
でも、もし、他人から真実を聞くまで、自分が何も聞かされなかったとしたらどうだろう?
――そんな状況には耐えられない、と思った。
だから、智代美の後押しがあったとはいえ。
結局のところ、香奈は決断した。
それは仁礼栖香との関係において、彼女から見せた二番目の前向きな行動だった。
予報では、夜半に雨は一旦止むらしい。
それを確認してから香奈は栖香を探して、約束を取り付けた。
頷いた栖香の顔は、笑っていなかった。
夜10時半。
消灯後こっそりと抜け出し約束の場所へ行くと、既に仁礼は真っ直ぐに立っていた。
「三橋さん、消灯後の外出は違反ですよ。私を呼び出してどうなさろうと言うのですか」
香奈を見つめる栖香の眼は鋭い。
怒りではない、と思った。何かを警戒している眼だ。
「……なら、なぜ何も言わず了承したのです」
「それは……三橋さんの頼みとあれば」
……嬉しい、と言いたかったけど。
今はそこでくじけている場合ではない。
「その――相沢さんたちと放課後なにをしているのですかっ?」
「……その件ですか。怪しまれているのは承知しておりました。
残念ですが……今の段階ではお応えできません」
「どうしてですかっ」
「姉との秘密です」
予想通りの答えだった。だから、香奈は反応してしまった。
「……お姉さんが、相沢さんが大事なのはわかっています。でも」
(……私は、馬鹿だ)
彼女が怒ると判っているのに。
理性より先に、感情が言葉になってしまう。
「……私との関係は、大事じゃないんですか!」
「――そんなことは言っておりません!」
激昂。売り言葉に、買い言葉。
一瞬、赤い炎が吹き上がったように香奈は錯覚する。
ああ、怒らせてしまった。
でも、何故だろう。止まらない。
嘘で関係を塗り固めていたわたしが。
気持ちに任せたままの、生の。それが正しいかどうかは別だけど。
感情そのままの言葉を、口にしている。
「大体仁礼さんはいつも私に肝心なことを何一つ話しては――」
「何ですって!それを言うなら、三橋さんだっていつも誤魔化してばかり――」
「やるですか!」
「やると仰るのならば!」
……………………
はあはあはあはあ。
数刻の後。
二人とも膝と両手をついて息を切らしていた。
燃料切れだった。
罵倒合戦→睨み合い→掴み合いを経て、倒れこみそうになったところで一旦離れて。
息を入れてしまった二人に、もはやもう一度喧嘩を始める気力は無かった。
まだ息を切らしながら、栖香は香奈に、香奈は栖香に問いかける。
お互い、先ほどまでの炎は既にない。
「……なぜ、三橋さんは嘘をつくのです」
「……なぜ、仁礼さんは何も言わないのです」
同時に問い、同時に互いを見る。
そして同時に、溜息をついた。
今度は香奈から喋り出す。
「……私、本当は嘘なんかつきたく無いです……だけど、仁礼さんに嫌われたくもないんです」
「わ、私だって……本当は三橋さんに全部話してしまいたいですっ。でも、お姉さま達の」
「だからってどうしたらいいんですかっ!お料理だって褒めたいけど、でもっ」
「そのぐらい!本当の事を言って下されば……そりゃ、その場では傷ついたかもしれませんけども」
「だって私は」
「そんなこと言っても私だって」
…………
再び、同時に互いを見て。どちらからともなく。
「「ぷっ……」」
思わず、吹き出した。
「仁礼さん、酷い顔になってます」
「三橋さんこそ」
「ハンカチ、使います?」
「……そうですね。お借りします」
そのまま二人は向かい合って、その場に座り込んだ。
……そして香奈は栖香に、ぽつりぽつりと語り出す。
自分の気持ちを。
「……私は、ずっと仁礼さんを見てて、綺麗でかっこいいなあ、と思ってて」
ああ。こんな状態になって、ようやく私は。
「ずっと好きだったんです。友達に、なりたかったんです」
――言えた。
かあああああ、と栖香の顔が一気に真っ赤になる。
「わっ、私だってずっとそう思っておりましたっ!
委員長などと皆さんに仇名され、時に落ち込む事もありましたけど」
声を詰まらせながらも、一気に続ける。
「み、三橋さんがふぉろーを入れてくれた時などがしばしばあって、その都度」
――客観的に見ると、恐らく他の級友はあれはフォローになってない、と言ったであろうけど。
でも少なくとも気持ちだけは、栖香には通じていた、と。
「だから、その気持ちなら三橋さんに負けません!むしろ私が先です!」
「いいえ!私が先です!私なんて一年の最初の中間考査のときから」
「そんなことを言い出したら私など入学式のときに」
ぎゃあぎゃあぎゅいぎゅい。やんややんや。
もはや単なる意地の張り合いだった。
そして気がつけば、いつの間にか。
二人とも笑っていた。
互いの手を、握っていた。
そして、彼女たちはこの大いなる回り道を経て。
ようやっと、ルールを決めることが出来た。
「「もう、遠慮も隠し事も、無しにしましょう――」」
さて、やや離れた茂みの奥では、いくつかの人影が彼女らに視線を送っていた。
「……何やってんだ二人とも」
(しーっ!今いいとこなんだからっ!うう……おねえちゃんは嬉しいよ妹よっ!)
(みさきちいい加減やめようよここからはもはや出歯亀だよっ!
なんかこのまま聞いてたら非常にいたたまれないんだよほら滝沢先生も止めてくださいよっ)
(ちっちっち。かなっぺ、アタシはまさにそのいたたまれない瞬間を写真に捉えたいのだよっ!
そして卒業式の日にA3サイズですみすみにばーん、と見せてあげるのだっ!)
(動機はただの悪戯ですか馬鹿ですかっ!)
(某無乳っ子みたいなこと言ってる場合じゃないよかなっぺっ。ほら録音録音!)
(かなっぺ言うなっ……って、集音マイクとデジタルレコーダー?
いつのまにこんなものまでこんなものまでぇっ!)
(……それはそうと、こんな暗いのにフラッシュなしで写真ちゃんと撮れるのか)
(だーいじゃうぶ!通販さんに借りた米軍仕様の暗視カメラでばっちりさっ!
ぱそこんの画像加工ツールを使えばまっくらやみでも天然色完全再生可能の優れものだよっ)
そこにカメラをぺたぺたと触る二組のましろい手とステレオの囁き。
((貸して♪貸して♪撮って切り貼り♪トリミングしてコラージュ♪))
(ひゃああああああ!)
(しっ……高松姉妹?)
そこにかぶさるのはまた違う娘たちの声。
まずはいつものコンビ弥生とのばら、それに加えて今日は智代美と貴美子の百合コンビもいる。
何故か貴美子は頬を染めてそわそわしながら三橋たちを見ていた。
「だけじゃないよ相沢っ!やーははは!面白いねーのばら」
(しっ!弥生でかい声ださない!気づかれちゃうよ)
(多分、もう遅いと思う)
(いえ、あの二人、お互いに夢中で全く気づいてませんわ。はあ……仁礼さんが羨ま……)
貴藤陀貴美子はどちらかというと香奈のほうが好みらしい。
(……悪戯したくなった?)
(……ふふ、冗談ですよ。私はいつだって智代美さんひとすじですわ)
(……そう)
彼女らの後ろからぬうっと現れたのは岡本瑠璃阿。
何故か神を背中にしょっている彼女は何処となく切ない眼で呟く。
(いいなー、あの二人……)
そして背負われた千晶は。
(すかー……すぴー……)
いつものように寝ていた。
勢揃いに呆然とする奏。
(はあああっみんないますみんないますよっ)
(だーってさー。あの二人中途中から庭中に響くような声で喋るんだもん。そりゃみんな気づくっての)
(坂水でも来たら誘導しようと思って出てきたんだけどさ。滝沢先生ならまーいいかな)
((すでに骨抜き♪人畜無害甲斐性無し♪))
(同意)
(僭越ながら同意致しますわ)
(……そこはかとなく馬鹿にされているような気がする)
(むしろあからさまにと言うべきではっ)
(センセ、気にしたら負け負けっ)
この大盛り上がりからすると、なんだかんだでみんなあの二人が心配だったらしい。
(ああっ見てみてっ!決定的瞬間かもっ……)
(むむ……やれ!そこだっ!いけっ!我が妹赤い彗星っ!)
(もっと近づけ香奈ちんっ!強く激しく抱きしめあうのだっ!)
単に面白いからかもしれないが。
(……あのあの皆さんやっぱり良くないよ良くないよみさきちを止めてくださいよ滝沢先生……先生?)
(むむ……これは……いやそうじゃないぞ仁礼!その手はもっとこう……)
教師はみさきちと一緒になって熱中していた。
はああ……と脱力した彼女に、背後から静かな声がかかる。
「上原さん、お茶でもいかがですか?」
(はは榛葉さんっ?)
いつの間に、夜闇から現れ出でたのか。
常と変わらぬ笑顔で手に持っているのは、中くらいの大きさの魔法瓶。
榛葉邑那は魔法のようにどこかから紙コップを取り出して、
「はい、どうぞ」
と奏に持たせると紙コップ目掛けてたぽたぽ、と紅茶を注いだ。
やや熱めだがコップが持てないほどではない絶妙の温度だ。
(あ、ありがとうございます……)
こくこくこく。
熱さもほとんど気にならぬ美味しさに、奏はほぼ一気に飲み干してしまう。
(はあ、結構なお手前で……じゃなくてっ!
良識ある榛葉さんまで何故このような真似をっ?)
実際、生き返るかと思うほどに美味しかったのだがそれはともかく。
「私は温室での作業が長引きまして、今引き上げてきたところですが?
なにやらこちらのほうが騒がしかったので……ちょっとした好奇心でしょうか」
至って普段どおりの口調で邑那は答える。
その落ち着いた声は、特に声をひそめずとも何故か周りに響くことはなかった。
(ではなぜわざわざ魔法瓶にお茶をっ)
「部屋でアイスティーにでもしようかと」
(……嘘です論破できないけど多分絶対嘘ですっ)
それならばこの紙コップは何故携行していたのかと問い詰めたかったけども。
それもまあ良しとして。
「……では、あの二人の決定的瞬間も?」
「ええ、楽しく拝見させていただきました。
ところで、そのお二人はもう行ってしまわれたようですが」
「え?」
振り返ると、仁礼と三橋の姿はすでに何処かに消えていた。
さらに気がつけば。
さっきまでの出歯亀たちも三々五々、思い思いの方向に散ってゆくようだ。
寮の方向に行く者や林に消える者。
様々だったが、それはもう詮索しても致し方あるまい。
(……そういえば、岡本さんはなぜ神さんを背負っていたのでしょう)
などといろいろ疑問はあるが、とりあえずこのイベントも終わったようだ。
みさきちは滝沢先生となにやら楽しげに話しながら寮の方向へ歩いていくし。
「……ううっ……なんとなくわたしだけ損した気分ですですっ」
「……もう一杯、いかがですか?」
「……頂きます」
再びこくこく、と飲み干した後、帰りましょうか、と力なく奏は邑那に言った。
「それがよろしいかと」
邑那は、ずっといつもの穏かな微笑みを浮かべていた。
ふと、奏は思う。今日まだ見ていない人がいたようないなかったような。
「……あれ?そういえば」
「どうなさいました?」
「通販さん……以外は、大体みんな来てましたよね?」
「みなさん来ていたのではないでしょうか?
通販さんは相沢さんと画像加工するときにでも見る、と言っていましたね」
「……やっぱり榛葉さんは最初からみさきちの企みを知ってたんだそうなんだ」
「私は、温室でお二人が打ち合わせをしているのを小耳にはさんだだけですよ」
……まあ、それは建前として認めるとして。
「それじゃやっっぱりほぼ全員だったんですね」
「ええ。主だった方はほぼ居ましたね」
「……みんな、暇なんですね」
「そうかもしれませんね」
こんな学院だから、とはあえて二人とも口にしない。
この学院に居るからこそ、会えた友人がいる。それを二人とも良く知っていたから。
しかし、榛葉とゆっくりその場を立ち去った後も、奏はずっと。
「……全員だよねだったよね?」
誰かが足りないような気がしていたが、結局その日は最後まで思い出せなかった。
ちなみに。
溝呂木輝陽は全員居なくなった後、そっと草葉の陰から出てきて。
みんなが立っていた場所を何回も見回し。
溜息をつくと、肩を落としてとぼとぼと寮へ戻っていった。
……難儀な娘さんである。
彼女にも願わくば、それなりに明るい未来が与えられんことを。
――それは出歯亀たちが聞き逃した、二人の会話。
「三橋さん」
「はっ、はい?」
「その。今度の文化祭のフォークダンス、なのですけど」
「……はい」
「私と……踊っていただけないでしょうか?」
頬をほんのり染めて、仁礼栖香は三橋香奈をまっすぐ見て、そう言った。
香奈もまた、彼女をまっすぐ見つめて、そして思う。
――多分二人とも、「良く出来た子」からは本当は程遠くて。
弱さが自分で許せなくて。でもそれを真っ直ぐ見てこなかった。
自分の弱い部分を直そうとするのではなく、蓋をして隠してしまおうとした。
仁礼さんはもうそこから抜け出しつつあるけれど、私のそれは、あまりにも沢山ありすぎて。
今すぐ全てを克服するのは、とても難しい事だろう。
私はこれからもあたふたして誤魔化して、そしてその度に落ち込むんだろう。
でも、それでもいつか、貴方のようになれればいいと思うから。
未来の私が、貴方のそばに立って居られるように。
私は、変わりたいと思う。
だから、今度こそ臆せず、素直に。
笑顔で答えよう。
「はいっ!喜んで!」
そんな彼女たちには。
たとえどこかで神様が、何回ダイスを振ったとしても。
きっと、賑やかで優しい未来が待っている――
「Cherry Girls」 end.
ありがとうございましたー。
ナンバリングを一部ミスってます。すいませんorz
前編
>>266-276 後編
>>283-289>>292-302 でよろ。
あと、小ネタを二つほど投下して今日は寝るです。
紅茶奴隷でした。
おまけ
その一。
鍵の壊れた教室にて。
香奈「きっきっキスですね!そう!舌を入れるのは、淑女のキスなのですっ!」※大嘘
栖香「そうなのですか……立派なレディになるためには欠かせないのですね」※真剣
香「はははいっ!そうなんです!セレブでレディには必須なんです!」※もはや引っ込みがつかない
栖「では三橋さん、早速実践してみましょう!」
香「えっ……いやいやはっはいっ!仁礼さん、頑張りましょう!」
奏(だまされてる仁礼さんだまされてるよっ)
暁(これが若さか……)※咄嗟に隠れた二人
その二。
図書室にて。
何やら本を読みながら。
栖香「三橋さん?」
香奈「はっはい?」
栖「その……自慰、とはどういう行為をさすのですか?」
香「なななななぜそんな単語をっ?」
栖「え……?その、実は図書室の奥にこんな本が(以下略)」
香「……ひょっとして、全く知識をお持ちではない?」
栖「恥ずかしながら……初めて聞きました」
香「ででではた、試しにやっ……やってみましょうか?今晩でもっ」
栖「そ……そうですね……?」※まだよく解っていない
香「でっではその後ほど……私の部屋で……っ!」
その後、ロビーにて。
通販さん「盗聴器?」
美綺「あるかな?」
通「……ある」
美「買ったっ」
通「かっぱーえびえびのしそ梅わさびカレー味」
美「おっけー。商談成立っと」
通「何に使う気だ」
美「ふふん、日本の正しいお姉ちゃんには妹の成長を把握する義務があるのさっ」
通「……売る気なら顧客には心当たりが」
美「……ぎくっ」
……おそまつでした。
>>304 乙です。
すみすみと香奈はどんどんアレな方向に進んでいますなw
307 :
温泉の人:2007/05/06(日) 21:44:32 ID:F8lfqIYa0
すみません・・・以前
>>183みたいなこと言っておいて恐縮なんですが・・・
ナーサリィ☆ライムでひとつ投稿しちゃっていいですか?('A`)
よい、許す 嘘。気にせず投下して下さいな
309 :
温泉の人:2007/05/07(月) 21:36:16 ID:LFzFn/qe0
>>308 ありがとう。恩に着るぜ・・・なんちてw
てなわけでお言葉に甘えて投稿。
共通ルート序盤、由里亜かーさんに頼まれて真紀奈を起こしに行くシーン。
あそこでもしティータの邪魔が入らなかったら・・・って少し妄想してみました。
きしめん書くのはなにぶん初めてですので、どうかお手柔らかにどうぞ;
ではでは。
「ナーサリィ☆ライム」より「巴家、朝の喧騒。」
「こうなるともう……アレしか……ないよね?」
巴家の朝。
ご近所迷惑確定モノの大音声をもってしても、まったく起きる気配のない真紀奈ちゃん。
とうとう根負けして座り込んでしまった僕の頭に、由里亜さんの言葉がふと浮かぶ。
『くすぐるのよ』
「ぅぐ……」
僕は思わずごくりと唾を飲み込んでしまう。
くすぐるってことは……体に直接触れないとできないわけで。
由里亜さんの許可は得てるとは言え……本当にいいのだろうか?
(……)
僕はふと、壁にかかってる時計に目をやった。
女の子の支度の時間を考えると、もはや一刻の猶予もない時間。
このままほっとけば、真紀奈ちゃんも僕もまず遅刻は免れない……
(……ええい、ままよっ!!!)
僕は目をつむり、息を大きく吸い込んだ。
……そうだ。これは全部真紀奈ちゃんのためなんだ。
今は心を鬼にして、真紀奈ちゃんを起こしにかからなきゃ……
「……」
真紀奈ちゃんの姿を薄目で確認しつつ、どぎまぎと両手を前に差し出す僕。
……こんな姿、関係者以外に見られたら犯罪者確定だ。
でも……背に腹は変えられない。
僕は突き出した手を、1センチ、また1センチと、真紀奈ちゃんの脇腹目がけ突き出し……
「……やっぱ無理だって、こんなのぉぉ!!!!」
ドドドドドド……
僕は結局、自分の部屋へと逃げ込む他なかった。
……まだ、心臓がばくばく言ってる。
あの時確かに感じた真紀奈ちゃんの艶めかしい寝息が、僕の耳をくすぐって離さない。
……きっと、気のせいだよな……
あの時、僕の指先が……わずかに、真紀奈ちゃんのあたたかな産毛に触れたような……
(……)
もう、忘れられそうになかった。
真紀奈ちゃんの赤ちゃんみたいにすべすべな素肌が、朝日に照らされやわらかく揺れるさま。
その表皮に触れることを考えるだけで……僕の心は、弾け出さんばかりにばくばく轟いて……
(……そんな大胆なこと、できるわけないじゃないですか……由里亜さん……)
顔中真っ赤になりうつむいてしまう僕の前に、ふとある道具が見つかる。
僕がいつも机上の清掃用に用いている、やわらかな羽箒がひとつ……
「……」
これなら……直接真紀奈ちゃんに触れるわけじゃないから……なんとかなるかな……?
「……やってみよう」
僕はその羽箒を手に取り、決心を固めるべくゆっくりと部屋を後にした。
「……今度こそ……」
羽箒を手に、本日2回目の侵入を試みる僕。
「……くー……すかぁー……」
真紀奈ちゃんは相変わらず、幸せそうな寝息を立てているままだ。
まったく……何の苦労も知らないって顔してくれちゃって……
自分が誰のせいでこんな苦労を強いられてるのかと思うと、少しだけ腹立たしく思う。
「ごめんね……真紀奈ちゃん」
僕は羽箒を手に構え、その先端部をそっと真紀奈ちゃんの脇腹に触れさせた。
「……んぅ……」
その感触だけで、真紀奈ちゃんが微かに眉間を歪ませるのがわかる。
確かに……由里亜さんの言ったとおりだ。
真紀奈ちゃん、ここ、すごく弱いみたい……
「起きて……真紀奈ちゃん……」
僕はその先端を、触れるか触れないか微妙なタッチでつつーっとスライドさせてみる。
「んく……んぁ……ふぁぁ……」
さっきの大音声攻撃の時と違い、真紀奈ちゃんの表情に明らかに不快なニュアンスがこもって来た。
……何だか、すごく楽しい。
僕の動作ひとつでいろんな表情を返してくれる真紀奈ちゃんが、途方もなく愛おしく思える。
「起きなきゃ……もっとすごいところ……くすぐっちゃうよ……?」
奇妙な高揚感に脳を茹でられつつ、僕は夢中になって羽箒を操り始めた。
羽箒の動きに合わせ、ぴくぴくと敏感に反応する真紀奈ちゃんの肢体。
「んは、ひゃはっ……やだ、ユキ……やは、ひゃうぅっ」
真紀奈ちゃんは羽箒を退けるかの如く、体を横へと寝返らせた。
……どうやら僕の攻撃を、有希奈ちゃんのものと勘違いしているようだ。
だがその程度で、僕が攻撃の手を緩めるかと思えば大間違いだ。
僕は真紀奈ちゃんの回避の動きに合わせ、更に執拗に弱点を攻めにかかった。
「やはっ、あは、ひゃはははっ、起きる、起きるからやめてぇぇぇ!!!!」
どうやら向こうも観念したようだ。
真紀奈ちゃんがゆっくり体を起こすのに合わせ、僕も攻撃の手をそっと引っ込める。
「おはよ、ユキ……」
「うん。おはよ、真紀奈ちゃん」
「え……?」
寝ぼけ眼で身を起こした真紀奈ちゃんは、僕の挨拶で初めてその違和感に気づいていた。
ぼうっと霞む目をごしごし擦り、僕の姿を足元から撫でるように見渡して……
「……静真……?」
「う、うん……ごめんね、有希奈ちゃんじゃなくて」
「え、えと……」
……明らかに泡を食っている。
顔を赤らめ、手を口に追いやって。
そりゃそうだよな……
起こしたのが有希奈ちゃんじゃなくて、こんなやぼったい男の人じゃ。
「静真……だったの? 今まで……ずっと……」
「う、うん……まぁ……」
「そ……そう、なんだ……」
そのまんまうつむいて、黙りこくってしまう真紀奈ちゃん。
……やっぱ、意識しちゃってるよな……
僕みたいな男の人に起こされるの、真紀奈ちゃんだってさすがに初めてのことだろうし……
(ゔ……)
さすがに気恥ずかしさがこみ上げてきた。
自分が何だか、すごくとんでもないことをしでかしてしまった気がしてきて……
「そ、それよりもうこんな時間だから、早く着替えてきてね!!」
ダッ……
僕はもうそれ以上その場にいれなくなり、その場を飛び出していた。
どくん、どくん……
動悸が、まだ治まらない。
まだ醒めやらぬ興奮故か、それとも、彼女の恥部を暴いてしまったことへの罪悪感故か……
もやもやともぐるぐるともつかない異物感が、僕のお腹の中を絶えず蠢いている。
(やっぱ……やめときゃよかったかな……)
一度しでかしたことは、もう取り返しつかないけど。
僕はさしあたって、今日の登校時真紀奈ちゃんにどう言い訳するか必死で思考を巡らせていた。
「……」
真紀奈ちゃんとクルルちゃん、3人で登校の途につく僕たち。
しかし……すごく気まずい。
いつもは騒がしいくらい喋りまくってる真紀奈ちゃんが、さっきから一言も喋っていない。
「……マキナ、変なの」
「え゙!? へ、変って」
「マキナ、朝からずっと、ボクに挨拶してくれてないの」
案の定、クルルちゃんにしっかり気づかれていた。
アズと共に僕のことを見つめるクルルちゃんの視線が、少しだけ痛い。
「あぁ……エロエロシズマが遂にやってしまったにゃ……
マキナのしどけない寝姿に、迸る青臭い欲求を抑えきれずに……びにゃ」
「アズ、うるさい」
クルルちゃん渾身の空手チョップを食らい、あえなく沈黙するアズ。
……アズの言葉をあながち否定しきれないのが、すごく悲しいけど。
「……」
僕たちのこんな会話にも関心を示さず、ただとぼとぼと道を歩くだけの真紀奈ちゃん。
その後姿には、何やら重苦しいオーラすら漂っているようにすら思える。
(うぅ……)
これは、やっぱ……僕が謝るしかないよな……
もともと僕の出来心が招いた事態なんだし……
僕は観念して、真紀奈ちゃんに謝ろうと口を開き、
「……りがと」
「??」
腕を引っ張られる感覚に、僕は思わず振り向いていた。
真紀奈ちゃんがうつむきながら僕の袖を引っ張り、何事かつぶやいている。
「起こしてくれて……ありがと……ね」
「あ……」
真紀奈ちゃんの口から発せられたのが純粋な感謝の意であったことに、少し戸惑う僕。
「あれは……その……ただ……由里亜さんに頼まれたから……」
「でも……あたし……寝起き、サイアクだったでしょ……?
静真にも……みっともないとこ、いっぱい……見せちゃったし……」
「いや、その……」
……少し、意外だった。
あの真紀奈ちゃんにも、こんなしおらしい一面があったなんて。
「あまり気にしないでよ、真紀奈ちゃん。
真紀奈ちゃんが寝坊して先生に叱られちゃったら、僕だってやっぱり悲しいし」
「静真……」
真紀奈ちゃんがきょとんとした目で、こっちを見つめている。
「じゃ……今日みたいにユキがいない時は……また、起こしてくれる?」
「もちろん。僕なんかでよければ、いつでも」
「……!!」
真紀奈ちゃんがようやく、満面の笑みをほころばせてくれた。
「よしよし!! これでユキがいない朝でも安心だっ☆ 静真話わっかる〜♪」
「……なるだけ自助努力の方もしていただきたい次第ですが」
もう聞いちゃいなかった。
元気に鼻歌など歌いながら、てくてくと嬉しそうに前を駆けてゆく真紀奈ちゃん。
「これでまた、家での仕事がひとつ増えちゃった……かな」
不思議と、そのことに不快感はなかった。
信頼されてる……って言うのかな、これ。
無邪気に僕のことを頼ってくれる真紀奈ちゃんを見ると、
微笑ましいと言うかくすぐったいと言うか、そんな不思議な気分にさせられてしまう。
……と同時に。
(すごく……きれいな体してたよな……真紀奈ちゃん)
一瞬にして目に焼きついてしまった、真紀奈ちゃんの無防備な寝姿。
思い出すだけで、顔中かーっと燃え上がってしまうくらい鮮烈なビジョン。
僕は今後、一体何度あの刺激的な光景を目の当たりにすることになるんだろう……
少しの期待と一抹の不安を胸に残しつつ、僕もまた学校へと向かうのだった。
「これにて一件落着……なの♪」
「クルルは甘いにゃ。あの節操なしのイカレチ○ポ、放っとけばどこまでもつけ上がって……
ってに゙ゃ!? やめてクルル、綿が、綿が出るぅぅうぅぅ……」
(おーしまい)
318 :
温泉の人:2007/05/07(月) 21:53:23 ID:LFzFn/qe0
・・・これのどこがマキナなんだってツッコミはなしの方向でorz
はぴねすなんかはもうキャラの台詞を声優さんの声で自在に脳内再生できるくらいやり込んでるけど、
きしめんの方はまだまだこれからってところ・・・
ちなみに後半クルルもいっしょに登校させたのは、あずあずの毒舌書きたかったからw
久々にいじりがいのあるキャラに出会った気がするぜ・・・アズ。
ともあれ、どうもお騒がせしましたノシ
319 :
名無しさん@初回限定:2007/05/12(土) 09:01:01 ID:LEOAPy0B0
保守あげ
しかし、GW過ぎてから急に過疎ったな・・・
保
321 :
名無しさん@初回限定:2007/05/22(火) 15:30:03 ID:gV4CsCgPO
守
322 :
名無しさん@初回限定:2007/05/29(火) 00:11:23 ID:GijbwIweO
どなたかSNOWの旭SSをおねがいしたいです
323 :
温泉の人:2007/05/29(火) 21:14:02 ID:k/fnpbBT0
保守ついでに予告。
前回のきしめんが殆ど反応なかったみたいなので、次回またしてもはぴねす。
>>183のアイデアのうち上から3番目、杏璃のおっぱいチェック行きたいと思います。
ではではノシ
わぁい杏璃大好き
楽しみにするぞ
>>323 ごめん、きしめん遊んだ事がないので、レス出来なかったんですよ。
見当違いな事を書いてもアレだし。
杏璃のSS、楽しみにさせていただきます。
曲だけはニコニコで散々聞いたが、ゲーム自体は未プレイな罠。
ちょっと買ってくるノシ
327 :
温泉の人:2007/05/30(水) 22:30:45 ID:vXpBG/5g0
>>324-325 (´-`).oO(むしろおっぱい攻められて感じまくるのはハルヒの方だなんて言えない・・・言えないよ・・・)
もう少し細かいトコ直したら週末にでも投稿するんでよろしくノシ
328 :
温泉の人:2007/06/02(土) 22:58:32 ID:pmH3nYdb0
とりあえず予告どおり投稿開始!
今回ははぴりら春姫ルートで春姫が受けたおっぱいチェックの全貌を、かなりアブノーマルに妄想してみました。
以前申し上げたとおり乳愛撫程度の軽いレズ描写が入ってきますので、苦手な方は注意。
あと女の子とはいえヒロインが主人公以外の人に攻められるのはやだって方も、閲覧はご遠慮ください。
それでは。
「はぴねす!りらっくす」より「杏璃の抜き打ちおっぱいチェック」
「いつも言ってるじゃない。いきなり胸を触ってくるのやめてって……!」
日曜の午後。
いつものように部屋にやってきた杏璃ちゃんと、じりじりと対峙を続ける私。
「だって春姫のおっぱいってさ、やわらかくって気持ちいいんだもん♪」
「だからって、女同士なのに〜!!」
「女同士だから何にも問題ないじゃないの」
そ、そんな問題じゃないと思うんだけど……ι
そう反駁しようとした瞬間、杏璃ちゃんがいきなりとんでもないことを口にし始めた。
「それとも春姫は〜、名前に『ゆ』と『う』と『ま』の付く男の人に触ってほしいのかな〜?」
「あ……///」
……見透かされてる。
雄真くんのあのおっきな掌に包んでもらえることを、思わず期待してしまっている私の心を。
「ほれほれ、どうなのよ〜♪」
「そ、そんな……」
杏璃ちゃんに思わず図星を指され、真っ赤になってうつむいてしまう私。
……だって、仕方ないじゃない……
何だかんだ言って、雄真くん……すっごく上手なんだもん……///
「とにかく、雄真に独り占めなんてさせないわよ!
さあさあ、おとなしくそのおっきなものを差し出すのじゃ〜♪」
「ひゃうんっ……」
杏璃ちゃんがまたいやらしく、私の胸に手を忍ばせようと襲い掛かってくる。
それを振りほどこうとした瞬間、私は勢い余ってクローゼットのふもとに手をついてしまった。
「あ……」
今……クローゼットの中に隠れてる雄真くんと、目が合ったような……
そんな私の心情も意に介さず、杏璃ちゃんが後ろから無遠慮に手を差し入れてくる。
「ん……んくぅっ」
感じちゃ、いけない……
よりによって雄真くんの目の前で、他の人に触られて、気持ちよくなっちゃうなんて……
「あれ、どうしたの? 急に変な声出して」
「な、何でもないよ……それより杏璃ちゃん……もう、やめてケーキでも……」
「や〜めない♪」
「あ〜〜ん、もう〜〜っ!!」
よりによってこんな日に、わざわざ触りに来なくったってぇ……ι
「しっかし……こうやって服越しに触ってるだけってのも、芸がないわよね」
「え……あ、杏璃ちゃん……?」
ま……まさか、これから……もっとすごいことを……?
「んふふ……ふっふっふ〜♪」
「ど……どうしたの? 杏璃ちゃん……ι」
「春姫、ちょっとベッドの上に来なさい」
「え? あ、ひゃあああっ!!?」
私は急に、杏璃ちゃんに押し倒されていた。
両の手を杏璃ちゃんに押さえつけられてしまい、私は胸を護ることすら敵わない。
「あ、杏璃ちゃん……何する気なの……?」
「当然!! このけしからんおっぱいには、もっともっと精密検査加えなきゃ♪」
「せ、せいみつ……けんさ……?」
あまりの事態に、頭がくらくらしてきた。
私としては、雄真くんの目の前でこんな恥ずかしい思いさせられてる地点で、もういっぱいいっぱいなのに……
「ふ〜ん……こうやって仰向けになっても、まだこんなに形保ってるなんて……」
「あ、杏璃ちゃぁん……ι」
「やばいわこれ……雄真が夢中になるのも、わかる気がするわ」
私の左の乳房を掌でゆったり揉みほぐしながら、
杏璃ちゃんが感心するかのような悔しがるかのような微妙な表情を浮かべてみせる。
すごく……恥ずかしい。
まるで杏璃ちゃんに、裸の胸を直接まさぐられてるみたいで……
「ね、ねぇ杏璃ちゃん……私いつまで、こうしてたらいいのかな……?」
私は耐え切れずに、杏璃ちゃんに許しを請うてみたけど。
「もちろん、あたしがばっちり満足するまで!」
「え……えええええええっ!?」
こ、これだけ触ってもまだ満足してくれないのぉ!?
「それじゃま、さっそく♪」
「え? あ、ひゃぁっ!?」
私の戸惑いも意に介さず、杏璃ちゃんがいきなり私の服に手をかけてきた。
「あ、杏璃ちゃん……そんな、そこまでしなくても……」
「何言ってるのよ。おっぱいチェックの検定項目と言えば、
触感・感度・見た目のよさって相場は決まってるでしょ?」
「そ、そんなぁぁぁっ」
そんなこと、私初耳だよぉ……///
「それじゃ早速、ごかいちょーっと♪」
「ひゃ、やああぁぁっ!!!」
私の服は、胸元までばっちりめくり上げられてしまっていた。
杏璃ちゃんの目の前に、今日買ったばかりの青い紐ブラが露になる。
「ふむふむ……今日の下着は、青の紐つき……と」
「あ、杏璃ちゃん……あんまり、まじまじ見ないでよぉ……///」
「ふふっ……どうせこの紐も、雄真の趣味なんでしょ?
あのスケベの考えることなんて、ホントわかりやすいんだからっ☆」
私のブラ紐を指先でくりくり弄びながら、からかうように微笑む杏璃ちゃん。
「ぅ……うぅ……///」
私は……ただ単にデザインがかわいかったから……買っただけだもん。
決して……雄真くんに褒めてもらいたくて、買ったわけじゃ……
「さぁてと……この中には、どんなお宝が隠されてるのかしら?」
「お……お願い杏璃ちゃん……もう、これ以上は……」
あまりの衝動と恥ずかしさに、許しを請う私の声ももはや涙声になっていた。
だけどそのくらいでやめてくれるくらいなら、とっくの昔にやめてくれている。
杏璃ちゃんはにたにたと嫌らしい笑みを浮かべながら、私のフロントホックに手をかけ始めた。
「よいしょっ……と。ふふ、何だかドキドキするわね」
「ぁ、杏璃ちゃあん……///」
「んふふ……えーいっ!!」
ぷちっ☆
「ひゃああっ!?」
かけ声と共に、私の胸を覆う全てのしきりが取り払われてしまっていた。
急に外気に晒されてしまったそこの感触に、思わず身震いしてしまう私。
「そんな……ゃぁ……杏璃ちゃん……」
恥ずかしさも頂点に達し、私は思わず両手を顔にやってしまった。
そんな状況でも、杏璃ちゃんはなおも飽きずに私の胸に見入っている。
「ふむふむ……相変わらずの美乳よね……春姫……」
「うぅ……あ、杏璃ちゃん……///」
「綺麗な釣鐘型で……肌の色も、すっごく滑らかな白……」
乳房のラインを指先でつつーっとたどりながら、うっとりと吐息する杏璃ちゃん。
その感触は、いつもの雄真くんの攻めよりもずっとねちっこく、いやらしくて……
「そして何より……この敏感なちくび♪」
「!! んっ……」
更にその先端を指先でくりんと弄ばれ、思わず声を漏らしてしまう私。
「小粒なくせにこんなにぴーんとつっ立ってて……ふふっ、かーわいい♥」
「ぅぅっ……あんり……ちゃぁん……」
私の乳首の反応がよほどお気に召したのか、嬉しそうににこにこ微笑む杏璃ちゃん。
「それじゃ、まずは見た目のよさは合格……と。じゃ、次は触感テスト」
「ひゃ!? んああっ!!!」
杏璃ちゃんが急に、私の胸を鷲掴みにしてきた。
雄真くんのごつごつした広い掌とは違った、杏璃ちゃんの白くて繊細な指先。
「うぁ……生で触ると全然違うわ……」
「んく……っ、んふぅ……ぁ……あんり……ちゃぁあん……」
いつもの雄真くんより、ずっとソフトでデリケートなタッチで。
杏璃ちゃんの女の子らしいやわらかな掌が、私の乳房をゆったり揉みしだいてゆく。
「んん……巨乳に加えてこの肌のキメ細やかさ……何かムカツクわ」
「ん……んくぅ……っ、はぁ……ぁぁ……」
杏璃ちゃんはまるで八つ当たりするかのように、私の乳房を無遠慮にぐにぐに揉みだした。
「悔しいけど……触感部門も合格と言わざるを得ないわね」
「んふぅん……ぁ、杏璃ちゃぁん……」
杏璃ちゃんに好き放題胸をいじられて、私はだんだんと息が上がってくるのを感じていた。
……何だか、私が私じゃないみたい……
雄真くん以外の、しかも女の子に……こんなに触られて……感じちゃってるなんて……
「それじゃ、いよいよ最終テスト……と」
「え……ま、まさか……」
さっきの杏璃ちゃんの台詞をそのまま解釈すると……つ……次に来るのは……
「そのまさか、よ。おっぱいチェック最大の山場、感度チェック♪」
「や、やっぱりぃぃぃ!!?」
あまりのことに驚愕の意を隠せない私と、更ににやにやを止められないでいる杏璃ちゃんの表情。
「瑞穂坂一のアイドルのおっぱいが、果たしてどのくらい高感度なのか……
瑞穂坂の男子たるもの、誰しも一度は気になるところよね〜♪」
「や、やめて……杏璃ちゃ……」
「んふふ……や〜だよっ☆ 春姫がイクまでやーめないっ!!」
「あ……」
まるで小悪魔みたいに舌を出す杏璃ちゃんの表情に、私はふと思い返していた。
……そう言えば、昔から杏璃ちゃんってそうだったっけ……
修学旅行とかでいっしょにおふろ入る度に、杏璃ちゃん……私の胸に異常に興味を示してきて……
「それじゃま、さっそく味見と行きますか……かぷっ」
「んふっ……ぁ、あんり……ちゃ……」
私の先端にむしゃぶりつく杏璃ちゃんの唇を、止める手段はもう見つからなくて……
「んちゅ……ん……ぇろ……っ、んふ……ちゅぷ……っ」
「んんっ、んく……ぅん……、ぁ、んはぁっ……」
大好物の飴玉を舐めるかの如く、春姫のそこを味わい尽くすあたし。
春姫の乳輪の境目や乳首の根元、先端の少しくぼんだ部分……
自分が愛でられて気持ちいいであろうことを想像しながら、舌で執拗に攻めてゆく。
「んんんっ……ぁっ、ぅくぅ……っ……ん……んぅんん……っ」
そのあたしの愛撫に、顔を歪ませ、紅顔しながら必死に耐え忍ぶ春姫。
まったく……気持ちいいんだったら素直に感じちゃえばいいのに。
どうせ雄真に見られてるわけでもなし、そこまで雄真に義理立てする必要もないんじゃない?
「んむぅっ、んぐ……むちゅるるるるっ」
「んあぁっ、あ……あんりちゃ……あぁっ!!」
あたしはちょっとだけ悔しくなり、春姫の乳を乱暴に掴むと、突き出た春姫の乳首を強引に吸い上げた。
「ぃゃ、あぁっ、強すぎ……それ……ぁっ、はぁあぁぁっ」
これだけ強烈な刺激を与えてやってるってのに、なおも素直に快楽に応じてくれない春姫。
……大体、納得いってないんだよね、あたし。
雄真なんかよりあたしの方が、ずっとずーっと春姫といっしょにいるってのにさ……
春姫ったらここんところ、口を開けばいっつも雄真、雄真って……
そりゃ生まれて初めての彼氏なんだから、浮かれる気持ちもわからなくはないけどさ……
だったら、その雄真より付き合いの長いあたしの立場はどうなるのって感じ。
「んちゅるるっ、んぷ、ちゅ、んちゅぅぅぅぅっ」
「ひゃあ……ぁあ……っ、ゃだ、よ……あんりちゃ……ひゃ、ぅっ、あぁああぁっ」
なおもいやいやをするかの如く、あたしの愛撫を必死に拒絶する春姫。
……大体、雄真も雄真よ。
こーんなおっきなおっぱいに騙されて、あたしの春姫のこといいようにかわいがってくれちゃってさ?
こーんな……こんな、おっきな……おっぱいに……
………………
(……春姫のおっぱい……やっぱ、すごくかわいい///)
まぁよく考えたら、女のくせにそのおっきなおっぱいにハマってるあたしは何って話よね。
仕方ないから今日はもう割り切って、心ゆくまでこのおっぱいを楽しんでいくことにするわ。
「んむぅ……んちゅ、くちゅ……んぷぅ……どう……気持ち、いい……? 春姫……」
「んうぅぅっ……んふ……気持ち……よくなんて……ないもん……」
「まったく強情な娘よね……乳首、こーんなに尖らせちゃってるくせに」
固くなった先端を親指の腹でころころ転がしながら、春姫の羞恥を煽るべくつぶやいてみるあたし。
「んんっ……そ、それは……///」
「そこまで意地張るんだったら……どうなっても知ーらないっと」
「えぇっ……あ、ひゃあああっ!?」
あたしは更に春姫の乳房を乳輪のあたりから強烈に絞り上げ、突き上げられた乳首を舌で弄りだした。
「ぃやっ、あぁあっ、それ、ぃや、だめぇ……!!!」
舌で根元からぴんと弾いてやるたび、びくびく切なそうに反応する春姫の乳首。
あまりに気持ちよさそうなその様に、あたしはふと思いを巡らせていた。
春姫のここ……今、どのくらい感じてくれてるんだろ……
これだけすごい攻め方してるんだもん……あたしだったらきっと……もう……
「んあぁぁ……ぁんっ、はぁん……もぉ……やめてよぉ……あんり……ちゃあん……」
唇で挟み込み、揉みながらくりくりねじり上げ、更に先端にくっつけた舌先をくりくり回し……
自身の思いつく限りの攻めを春姫に加えながら、あたしは思わずおのが乳房に手を回していた。
「んくぅっ……!!」
先端を襲う甘痒い電流に、思わず驚きの意を隠せないあたし。
嘘でしょ……ちょっと指先が擦れただけで、こんなに感じるなんて……
だったら春姫のここ……今どれだけ気持ちよくなってるって言うのよ……?
「んんっ、んくぅぅ……っ、やだ、よ……ゅぅまく……雄真……くぅ……ん!!!」
まるで救いを求めるかの如く、自らの愛して止まない男の子の名を叫ぶ春姫。
その先端に募った想いを想像するだけで……あたしはもう、自分を抑えきれそうになかった。
「んぷぅっ、んく、ふむぅぅっ……んちゅ、ちゅぷ、んちゅぅうぅぅっ」
春姫の先端にむしゃぶりつきながら、必死になっておのが先端をいじめぬくあたし。
こうしてるとまるで、春姫とふたりで快楽の泥沼に融けあっていくみたいで……
気の狂いそうな衝動の中、この悦びを毎晩享受してるのであろう雄真に少しだけ嫉妬を覚えていた。
「んぁあっ、あぁ、ぁあ、はぁぁあっ……あたし、もう……だめぇ……っ!!!」
やがてわずかな蠕動ののち、春姫が全身をびくんと後ろに仰け反らせ……
「ぃやあっ、あっ、ひゃぁ……ぁああ……っ!!!!!」
叫び声と共に、春姫の柔肌がびくびくと激しく痙攣するのがわかった。
どうやら……イッてくれたみたいだ。
こんな状況でもなお声を上げまいと必死になってるっぽいのが、少しだけ歯痒いけど。
「んふ……ん……はぁ……ぁはぁ……っ」
やがて絶頂も過ぎ快楽の余韻に咽ぶ春姫を前に、あたしも涙で紅潮した顔をそっと上げた。
気持ち……よかったね……春姫……
そりゃあ何たって、あたしは春姫の一番の親友なんだもん。
楽しいことも気持ちいいことも、みーんないっしょなんだから……
……しかし。
「んふぅぅっ、んぐ、ぇぐ、ひぐ……っ」
「は、春姫……?」
……予想もしてないことが起こってしまった。
春姫が顔を両手で押さえ、泣き出してしまったのだ。
(……あらら……ι)
ひょっとして、あたし……ちょっと、やりすぎちゃった?
「あ、あたしが悪かったわよ……春姫」
「んぅぅぅっ……でも……こんなの……こんなのってぇ……んぐ、ふぇぇぇ……っ」
「……春姫……」
……冷静に考えたら、そりゃそうよね……
春姫だってできれば、雄真以外の人の手でイキたくなんてなかっただろうし……
「んふぅっ、ぇぐ、ひぐ……っ……」
「……とりあえず、そのおっぱい隠しなさいよ。こっちが恥ずかしくなるじゃない」
「ん、んぇぇっ、ゆぅま……くぅぅん……っ……」
「……ι」
……だめだこりゃ。
一度こうなっちゃったら、春姫……なかなか機嫌直してくれないもんね。
あたしは溜め息をつきつつ、春姫のブラをつけ直し、たくし上げてた服を元に戻してあげた。
「……それじゃ、あたしもう行くわね。
今日のこと……雄真には、何も言わないでいてあげるから」
そのまま逃げ去るかのように、春姫の部屋を後にするあたし。
……ちょっとした罪悪感が、あたしの胸を支配していた。
あれは本来、あたしが踏み入れちゃいけない領域だったのだ……
そう……あたしなんかが土足でずかずかと踏み入っちゃいけない、春姫だけの聖域。
その聖域を、あたしは……いとも簡単に汚してしまった。
それこそ……大好きな玩具を、無邪気に弄って壊してしまうかのように……
(春姫……あたしのこと……きっと嫌いになっちゃったよね)
こんなえっちで……身勝手で……無神経なあたしのこと……
「……」
ふと、思い返してみる。
あたしに胸をいじられてる最中、ずっと声を出すまいと必死に堪えていた春姫の表情。
あれはまるで……声を聞かれてはならない相手が、本当にそこにいるかのようだった……
(……まさか……ね)
まさかあの狭い部屋のどこかに、雄真が隠れて一部始終を聞いてたなんて。
……いずれにしろ……
春姫と雄真との今夜の逢瀬が、いつも以上に盛り上がるであろうことは……想像に難くなかった。
「……なあ、春姫。柊と一体、何をしてたんだ?」
「ふえっ!? な、何もしてないよ?」
「声が裏返ってるぞ」
「あ……///」
(おしまい)
340 :
温泉の人:2007/06/02(土) 23:20:23 ID:pmH3nYdb0
以上です。
いや〜百合ものって、本当にいいものですね〜!(額の脂汗拭いつつ)
今回の杏璃の性格は、ある程度私独自の解釈を入れたものとなってます。
ぶっちゃけ杏璃って、春姫に対しある種ツンデレ的な感情を抱いてるのではないかと。
ほら杏璃って口では春姫のことライバル発言しながらも、春姫にウェイトレス服姿褒められた時には
「お、おだてても試験じゃ手加減してあげないんだからね///」と照れてみたり、
漫画版じゃ春姫の「一番の親友」発言受けて顔真っ赤に染めてみたりするじゃん。
・・・まぁさすがに、今回のSSほど春姫に歪んだ愛情を抱いてるとは思いませんがw
ではではノシ
杏璃×春姫gj!
ぜひそのまま最後まで(ry
片恋いの月やって「こりゃ二次創作のし甲斐がありそうだわい」と思ってたら、
考えてたネタをあらかた本編でやられてしまった(´・ω・`)
仕方ないんで、えろ一本に絞って何か書くかなぁ
>>342 おお、期待
真ルートEND後だと好き放題キャラ動かせそうだなー
344 :
名無しさん@初回限定:2007/06/05(火) 23:13:54 ID:zP2GVn2D0
>>344 専ブラ使え
あるいはそのPINKTOWERってページの下の方探ると幸せになれるよ
346 :
342:2007/06/11(月) 02:32:37 ID:/iCnRMKe0
あらすじ固まったんで書き始めてみた〜
っても香津美と杏子でネチョネチョしてるだけなんだが
347 :
温泉の人:2007/06/16(土) 01:03:36 ID:ul9hECiY0
いつも乙ですー。はぴねすやったことないので感想書けないのが残念ですが楽しそうで惹かれます。今完璧に趣味に走ったゆのはなSS書いてます。出来たらまた投下しますんでよろー。>紅茶奴隷
349 :
補完の人:2007/06/16(土) 20:41:03 ID:zlIf9fqW0
350 :
温泉の人:2007/06/16(土) 20:53:10 ID:ul9hECiY0
>>349 >>347のことを指しているとすれば申し訳ないw
あと「杏璃の抜き打ち・・・」のリンク先がデッドリンクとなっておりますので報告。
ともあれ、毎度お疲れ様ですノシ
351 :
補完の人:2007/06/16(土) 21:21:44 ID:zlIf9fqW0
ファイル上げて安心してたら、リンク先書き間違えてたなんてorz
しかも10日以上もそのままだったなんてo...rz
>350
報告ありがとうございます。五体倒置で感謝。
えー、サンクリ行った方もそうでない方もお疲れ様です。紅茶奴隷でした。
>>351さん乙ですー。うちのブログも後で直しときます。
さて、正直需要があるか不明なのですが、趣味丸出しでゆのはなSS書いてしまいましたー。
香奈のSSを書いてたらほなにー分が補給したくなったのと、トゥルー以外でもゆのはが再登場するような展開は無いかなあ、と妄想した結果です。
まあ神様は最近も某学院に遠征したりしてるので、作品世界での「後日」も意外とこんなもんじゃないかなあ、という希望的観測もあり。
穂波√アフターを想定していますが、多少の矛盾は生温い眼で許していただければ幸いかと。
そんなわけでどうぞ。
「しあわせなじかん」
かちかちかちかち。
キーを叩く音とともに、画面に打ち出されていく文章。
その前に座る一人の少女。
……私の名前はほなみといいます。
ちょっとお調子者の大学生、たくやくんに恋する女の子です。
今日は、最近私の身の回りに起こった出来事について、お話ししようと思います。
私はこの春、地元の近くにある高校に入学しました。
でも、連休が明けてからかれこれ一週間と言うもの、完全に引きこもっていました。
何故か、とご質問ですか?
わたしの住んでいる町はゆ○は○町という、地方の鄙びた町です。
私の町からその高校に入った人は私一人、と言うぐらい、若年人口の少ない町でもあります。
ですから、私には高校に入ったとき、誰も知っている人がいませんでした。
入った当初は、馴染めるだろう、と思っていたのですけど。
でも――なかなかそうはいきませんでした。
お友達を作るというのは、難しいです。
たくやくんは、私の町に旅行者として現れた大学生でした。
いろいろな事情があって、今私とお付き合いして頂いています。
でも、彼は都会の大学に通っているので、今はあまり頻繁に会えません。
先日会いに行ったときは、迷ったりして大変だったりもしました。
それから――
かたん。
「……こんな物を書いていては駄目なのです」
はあ、と溜息とともに消去。
こんな愚痴めいた告白をネットに晒してどうしようというのか。
何の解決にもならない。
優しい言葉をかけてくれる人はいるだろう。
厳しい忠告をくれる人もいるだろう。
あるいは心無い罵倒もあるだろう。
でも、穂波は知っている。
自分は、本当はどれも必要としていない。
必要なのはただ一人の言葉と――その笑顔だけなのだと。
「……拓也くん」
――会いたい。
でも、今は会えない。こんなだらしない自分を、弱い姿を見せたくない。
拓也くんも、私に会いたいのは同じ……だと思う。
そんな彼に、余計な負担を与えてしまうから。
でも、寂しい。彼の体温を、匂いを――そして呼吸を感じたい。
叶わぬ希望による鬱屈した衝動を、穂波は何とか解消しようとしてみたのだけど。
一人遊びだけでは到底無理で。でも夜は寂しくて、泣きたいほどに眠れない。
で――結局どうなったかというと。
「くのくのくのくのっ」
連休とあわせて十日足らずでマスタークラスへと進化した彼女の分身が画面上を駆ける。
自宅の回線速度はやや微妙ではあったが、穂波はそれをものともしない的確な判断力と効果的な技の選択で敵を殺戮していく。
――ネトゲー三昧、立派な引きこもり初心者の出来上がりだった。
「……ふう」
ひと段落したところで接続を切ると、穂波はそのままベッドに寝転がる。
強引に自分を疲れさせて、泥のように眠る。
夢は見たくない。だって、見るのは彼のことばかりだから。
「――拓也くんの、馬鹿」
――あいたい。あいたくてたまらない。でも、あえない。
(……情けないあーほんとに情けない小娘なのです!わらわの有難い力に少しは頼ってみようとか思わないのですか!いいですかいちごぱふぇを祠の前に)
たまーに、夢の中で誰かにぶつぶつ言われているような気もするけれど。
(こらーっ!神のありがたい言葉を聞きなさーいっっ……)
今はまだ――聞きたくなかった。
結局、一度もその週は学校に行かぬまま土曜日の夜。
惰性でネトゲーにいそしむ彼女の前に、とあるPCが現れた。
名前は「クワゥテモック」。
見たとたん、どきんとした。
……まさかね、と思いつつ、声をかけてみる。
かちかちかちかち。
「はじめまして。今日はどちらへ?」
ぽーん。
「恋人を探しています」
かちかち、かたん。かちかちかち。
「……こいびと、ですか。どんなひとですか」
ちょっと考えて、ぽーん、と返事。
「俺の肩ぐらいの背丈で、お菓子を作るのが上手いショートカットの女の子」
――かちかちかち。
「……ずいぶん具体的なのですね」
ぽーん。
「うん。大好きだから、彼女のことは何でも憶えてる」
かちかちかちかちかち。
「……では、彼女が今何を考えてるのかも、判るのですか」
また、ちょっと考えて。……ぽーん。
「判ることも、判らないこともあると思う。だから、聞きにいく」
かちっ……かたん。
「……聞きに、来る?」
来る、と言ってしまった。
「うん。あーほら、まずあいつ倒しちゃおう」
……かたん。ようやく返事を返す。
「……はい。ご一緒します」
経験値を首尾よく稼ぎ、さてこれからこの怪しいPCにどう話しかけるべきか、と考えていると。
向こうの動きが変わった。ちょこちょこちょこ、と穂波のPCから無造作に離れていく。
「……あれ?ちょ……何処に行くのです?」
返事はない。
「え?……え?人……ちがい?」
そうなのか。
「……そうだよ、ね。よく考えれば、拓也くんがネットゲームなんてするはず――」
「うおーいっ!ただいま穂波!」
突然寝室の扉が開いた。
「ふひゃあああああっ!」
お約束ですが心臓が飛び出ました。
「た……拓也くんっ?どどどどどうしてっ?」
「ふふふ、わかばちゃんのところで回線を借りてたっ!いやーわかばちゃんも結構はまってるらしいんだよな、このゲーム」
「――何故私のPCの名前を?」
「榛名さんに調べてもらった。で、今なら起きてるなーと思ってこっちに突撃した」
……お母さんが。
「……いつから、知っていたのですか」
「一週間前に榛名さんから電話がかかってきてさ。週末こっちに来てくれないかー、って」
――お母さんお母さん。私のお母さんは、なんでもお見通し。
「で、やって来ました、草津拓也です。よろしく――あ」
もう、我慢できなくて。
彼の胸に顔を埋めていた。
「――おかえりなさい、拓也くん」
「……うん、ただいま――穂波」
「拓也くんは非道いのです。いつだって突然すぎるのです」
「ごめん。でも、いろいろ考えたら今回はこの方がいいかな、って」
「お母さんが、いろいろ喋ったのですね」
「……穂波を心配してるから、だろ?」
顔を埋めたまま、穂波は呟く。今、自分は笑っているのだろうか、泣いているのだろうか。
「そんなことは判ってるのです。……拓也くんはいつまでこっちに居るのですか?」
「……穂波が学校に行きたくなるまで、かな」
もはや我羞と判っていても、穂波は言葉を抑えられない。
「……ずっと居てくれるなら、毎日ちゃんと行ってちゃんと帰ってくるのです」
「さすがにそうはいかないけど――これなんてどうかな」
拓也の手の上には二つの携帯電話機。
「……なんですか?」
「……テレビ電話できるケータイだってさ。最近のはよくできてるよな。これなら顔見ながら話せるだろ?」
「あの……ゆのはな町はまださーびす圏外なのですが」
「なんですと!」
がびーん、と驚く拓也。その顔を見ていると、思わずくすりと笑みがこぼれてしまう。
「ふふ……それに穂波は、本物の拓也くんでないと駄目なのです」
映像なら携帯じゃなくって、PCでだって会う方法はある。音声だって文章だって、伝える方法はいくらでもある。
でも。やっぱりわたしはこの人のぬくもりと一緒に居たいのだ。
「穂波――」
「……でも、我慢するのです。今日、会いに来てくれたから」
ぎゅ、と抱きしめると、拓也も穂波を抱きしめ返してくれる。
「高校、嫌い?」
「嫌いじゃないです。でも――いろいろ難しいのです」
「友達を作るのに急ぐことないんじゃない?自分を出していけば、穂波なら自然と回りに人が集まってくると思うし」
「でも――私は暗くて引っ込み思案でそんなに可愛くもないですし」
「こーら、穂波が可愛くないなんて思ってるのは本人だけだって」
「……そんなことないのです」
「いーえ事実。だから心配はいらない。それに――ほら」
拓也が指差した部屋の隅。
賽銭箱の形をした貯金箱の隣で、うさぎの鈴がころん、と鳴った。
「……あ」
「多分、あいつはいつも見てくれてるからさ」
「――そうですね」
「俺も、いつも穂波のこと考えてるし……だから、一緒に頑張ろうぜ」
「……はい。拓也くん……ありがとう」
――結局、私はまだ弱い子のままなんだろう、と穂波は思った。
でも、彼がいれば。離れていても、確かに其処にいると感じられるなら。
きっと、今よりもっと強くなれるはず――そう思った。
「……今日はこっちに泊まるのですよね?」
「うん、わかばちゃんには言ってきたし。榛名さんは高尾酒店に行ってくるって出てっちゃった」
「もう……お母さんは気を利かせすぎなのです」
「じゃあ呼んで来る?」
ぶんぶんぶん、と高速で首を横に振ると、穂波は拓也の耳に口を寄せて囁いた。
「せっかくですから――拓也君といっしょのベッドで眠りたいです」
「そりゃ俺だって……じゃあ、もう寝るか?」
「……でも、しばらくは寝かせてあげないのです」
「えー」
「だって――」
言葉を切ると。
「――その前に拓也くんはすることがあると思うのですよ?」
ちゅ。
どちらからともなく。あまく、長い――キス。
「……実は俺も、そう思ってた」
「では――速やかに実行してほしいのです」
「……うん」
――その後の二人については、あえて語る迄もないかと。
で、翌朝。
「せっかくですから、二人で祠になにかお供えしに行こうと思います。喫茶店の材料を買いに行くついでに……あれ?」
「……どうした?」
「……いや、貯金箱に二千円札が五枚ほどあったはずなのですが……一枚しかないのです」
ちっ、と穂波が舌打ちした後、拓也の視線に気づきあわてて表情を戻す。
「……すみません。最近夢以外では気配を感じないと思って油断していたのです」
「――えっと、どゆこと?」
「『彼女』は、私に憑くことで『向こう側』と『こちら側』を行き来することが可能になったわけですが……最近、どうもパワーアップしたようなのです」
「……あいつがパワーアップすると、どうなるんだ?また実体化できるのか?」
「それは判りませんが――どうやらわたしの所有物に触れることはできるらしく」
「……で?」
「貯金箱のお金がしばしば減っていくのです。多分どうにかして買い食いしてるのです。いやがらせなのです」
「……なら、お参りに行ったらなんか引き換えにご利益をくれるかな」
「あの守銭奴がそんな殊勝な真似をするわけがないのです。知ってますか?祠の近くにアイスの自販機が出来たのを」
「あんな所に?」
「ええ。太陽光発電機付のふゅーちゃりてぃすてぃっくな代物です。どうやったか知りませんが、絶対あのちび神さまの仕業なのです」
「……いずれにせよ行ってみようぜ。姿が見れたら嬉しいし」
「まあ――そうですね。拓也くんが来れば、喜んで姿を表すかもしれないですし。捕まえてとっちめてやるのです」
「まあまあ、それはそれで」
(ナレーション:わかば)
――さて、祠の向こうのどこか、神様の棲まうところ。
見た目は普通な和室の中で、一人のちっちゃい神様が拗ねておりました。
それはもう、じたばたごろごろと。
(独白:神様)
「ぶつぶつ……たくやの変態ほなにーの馬鹿!あの二人はもっとわらわを敬い崇め奉るべきです!……う゛ぅううう」
布団の上でごろごろごろごろ、合間に足をばたばた。
「大体お札でおなかはふくれないし!にせんえんさつはこの自販機では使えないのです!」
これはただの八つ当たり。
祠を訪れたじゃーなりすととか名乗る小娘には、祠のそばに最新式のアイス自販機をぷれぜんとしてもらったし。
先日空から落ちてきためがね娘には、中々忠実な召使として働く奇妙なちゅーりっぷなどをもらったりして。
最近、神様の身辺は結構充実しつつある。
でも、結局穂波がいないと拓也の前には現れる事が出来ないし。
でもあのえろえろすとろべりーな所はこっちが恥ずかしいので見たくないし。
だから鈴だけ鳴らして帰ってきてしまったけど――でも拓也に会いたくないことはなかったり。
「うう……わらわはおなかがすいたのです!拓也は速やかに供物を奉納しなさい!いちごぱふぇを所望します!」
一人で聞こえるわけもないシュプレヒコールをあげる。
「――でも、最近のわらわは一味違うのです」
ぴた、と冷静に返ると今度はふふふふ、と含み笑い。
「ぱわーあっぷした今のわらわなら、穂波がいる場所なら実体化して拓也をどつくことも可能なはず」
だから、とちっちゃい神様は、枕を抱きかかえてごろごろしつつ思う。
「……二人で、会いに来てくれないかな」
それなら少しは、神様らしい言葉をかけてやっても良いのに。
(ナレーション)
――そんなこんなでふくれていた神様ですが。
やがて、祠の外から足音と話し声が聞こえるのに気づきました。
それを聴いた神様の顔は、だんだんと、だんだんと。
晴れ晴れとした笑みに、変わってゆきました。
すた、と立ち上がると、神様はにこにこしながら走ってゆきます。
祠の外に。
――愛すべき人々の下に。
「――これ、汝らっ!わらわにとっとと奉納しなさーいっ!」
――今日のところは、これでおしまい。
でも、たぶんこのお話は、ずっとずっと、続いてゆきます――
※※注意※※
ここから先の文章は著しくキャラクターのイメージを損なう可能性があります。
ご了解の上お読み下さい。
「で、なんでゆのはは今頃になってパワーアップしたんだ?」
「先日助けてやっためがね娘が、友人から貰ったけど使わないからといってこんな物をお供えしてくれたのです」
何々、と拓也がそのDVDらしきものを見てみると。
「びりーずぶーときゃんぷ:たまでるりんがさばいばる篇」
……と書かれてあった。
つか、DVD見れるのか神様。
「毎日見ながらやってたらほらもうこんなに逞しく!わらわはもう貧弱な小娘ではないのです!土地神としての位もびゅーんとらんくあっぷで祠のそばなら外見だって自由自在!」
言葉とともに、神様は嬉々として二人の目の前でまっしぶに変化。
「えー、えーと……」
呆然とする拓也の横で、穂波がぼそりと呟いた。
「…………酷いオチなのです」
ちゃんちゃんっ。
……ありがとうございました。
冒頭のかにしのSS云々→ゆのはなSS「しあわせなじかん。」1でした。
専ブラで書き込み失敗すると前に設定した名前がそのまま表示されちゃうのを失念していましたorz
つーことで
>>352-363でよろ。
乙です。
ゆのはなはストーリーを教えて貰うスレで知っている程度だけど、これ読んだら
プレイしてみたくなったよ。
365 :
紅茶奴隷:2007/06/19(火) 00:38:57 ID:aA9PUmCFO
感想有難うございます。とてもあたたかい作品なのでぜひ! ちなみに、おまけのオチは風見神宮様の通販さんから思い付きました。この場を借りて風見さんにも感謝。
ほしゅ
保全
ほしゅ
ほしゅ
保守
371 :
温泉の人:2007/08/04(土) 17:48:32 ID:pWdHXTwr0
ここまで1ヶ月半も投稿なしとは・・・書き手も減ってきちゃったのかな。
とりあえず予告。
俺の趣味全開な杏璃のラブエロSS、今度投稿しますんでよろしくノシ
>>371おつ。
夏コミでネタを使い果たした人もいるかも試練。
夏コミ前日あたりをめがけて、うちもなんか貼るかもしんないです。
373 :
名無しさん@初回限定:2007/08/04(土) 21:53:46 ID:bloMT0rr0
期待age
>>371 待ってました!
さぁ、こい。どんとこい。超期待。
375 :
名無しさん@初回限定:2007/08/07(火) 11:42:50 ID:NNNwg6pSO
保守
司が一人悶えていた丁度その頃、殿子は梓乃と中庭にいた。
「ダンテ、お食べ」
「ワン!」
梓乃が皿に盛ったご飯を差し出すと、ダンテは一声上げて餌に飛びつく。
カッ、カッ、カッ、
「……凄い食べっぷりだね」
その食べっぷりに殿子は目を丸くする。
――ダンテってこんなに大食漢だったかな? 以前はもっと小食だったような?
それに気のせいか、その食べっぷりは誰かを連想させる。
『誰だっけ?』と殿子は首を捻った……が、答えは直ぐに出た。
――ああ、司に似てるんだ。
納得、と殿子は頷いた。
考えてみれば、ダンテは司に一番懐いている。『ベットは飼い主に似る』というから、司に似ても不思議では無いだろう。
――司、よく食べるから。 ……梓乃なんか目を丸くしてたっけ。
その豪快な食べっぷりを思い出し、殿子は思わず忍び笑いを漏らす。
殿子は、司の食べっぷりを見るのが大好きだった。
自分の作った料理を心底美味しそうに、嬉しそうにして食べるのを見ると、とても嬉しくなるのだ。
作った相手を喜ばせる食べ方――これこそが、真の作法というものではないだろうか?
……考えてみれば、自分が知る作法とは“恥をかかない”“不快感を与えない”という、自分のための作法でしかなかった。
――本当に、司は凄い。
そう心から思う。自分は司に教えられてばかりだ。
殿子はあらためて、自分の“兄”を誇らしく思った。
カッ、カッ、カッ、
「いっぱい食べて、早く大きくなるのよ」
そう言うと、梓乃はダンテの頭を優しく撫でてやる。
「きゅう〜!」
「ふふふ、いい子いい子」
梓乃は幸せそうに微笑んだ。
――ああ、これこそがわたくしの望む“幸せな時間”です!
思わず『やった!』とばかりに軽く片手を挙げ、拳を握り締めちゃう程、梓乃は浮かれていた。
可愛いダンテを愛でる自分、そしてそれを優しく見守る殿子、
周囲には誰もおらず、殿子と二人っきりの静かな世界、
穏やかに流れる時間――これこそが正に梓乃の望む世界なのだ。
が、考えて見ればここの所ずっと、その様な世界とは無縁だった。
……司がこの分校にやって来てからである。
今でこそ梓乃は、曲がりなりにも司を受け入れているが、それまでには様々な紆余曲折があった。
そもそも、滝沢司という人物は、梓乃の最も嫌いなタイプだった。
常にじっとしておらず、何か突拍子も無い事を思いついて実行、挙句の果てに周囲の者をそれに巻き込む。
……そして(巻き込まれた者が)気付いた時には、既にどっぷりと首まで浸かって抜け出せなくなっているのだ。
まるで蟻地獄の様な恐るべき存在である。
その司が、よりにもよって自分達を目に付けた。 ……実に迷惑な話だった。
おかげで梓乃の生活はかき乱され、変化を迫られた。挙句に殿子までをも奪い去れそうになった。
――だから、“嫌い”が“憎い”に変わるまで、さしたる時間を必要としなかった。
あの頃の自分は、司を追い出す為に様々な罠を仕掛けたものだ。
始めこそ子供染みたものだったが、効果が無いことを悟ると徐々に危険な罠に手を出していく。
が、10回やっても1回成功するかどうか。加えてその度に梓乃も一緒に引っかかり、逆に司に助けられる始末……かえって殿子の司に対する評価は上昇する一方だった。
思いつめた梓乃は、最後には犯罪をでっち上げ、それを司になすりつけようとまでした。
……だが嘘が真となり、自分が襲われそうになって初めて気付いたのだ。
この恐怖と絶望を、無実の人になすりつようとしていたことに。
なんて幼稚だったのだろう、なんて残酷だったのだろう。
あの時のことは、今でも鮮明に思い出せる。
『せ、先生、助けて! 先生!!』
自分が他でもない司に助けを求めたことに、梓乃は驚愕した。
愚かにも、自分が陥れようとしていた相手に助けを求めたのである。
……これは“天罰”なのだ。助けなどくる筈が無い。ましてや、司が――
『八乙女、大丈夫か!?』
……信じられなかった。
池で溺れそうになった時、泳げないにも関わらず真っ先に飛び込んで助けてくれた司。
一緒に階段から落ちた時、身を挺して庇ってくれた司等々、挙げればキリが無い。
そして今回もまた、司は自分を助けてくれたのだ。
『先生! ごめんなさい! ごめんなさい!』
気付くと、自分は司に抱きついていた。
『もう大丈夫だ、大丈夫だから』
『ごめんなさい…… ごめんなさい……』
梓乃は泣きじゃくりながら、自分の罪を告白した。
……実はこのシーン、“多少の”記憶の改竄が行われている。
では真実を見てみよう。
『もう大丈夫だ、大丈夫だから』
泣きじゃくる梓乃を、司は優しくあやす。
が、司が優しくすればする程、ますます梓乃はますます泣きじゃくる。
『ごめんなさい…… ごめんなさい……』
『???』
『ごめんなさい…… 許して下さい……』
『お、おい八乙女? よく判らんが放してくれ、犯人が逃げる』
遂には自分に許しまで乞い始めた梓乃に、司は混乱してしまう。
と、その時、聞きなれた声が耳に入った。
『お〜い、どうし…… ! 梓乃!その姿は!?」
『あ、りじ……ブフォッ!?』
梓乃はみやびに任せ、自分は犯人を追おうと振り向くが、その瞬間みやびの右ストレートが顔面に炸裂した。
何やらえらいお怒りの様だ。
『き、貴様というヤツは! 梓乃に何てことを!!』
『……へ? ! ご、誤解ですよ! これは――』
自分が犯人と誤解されていることに気付き、司は慌てて弁解を試みる。
……が、そこに梓乃の一撃。
『許して下さい…… 許して……』
『梓乃のその姿とセリフ! 全てがお前をクロと言っているっっっ!!』
『お願い、話聞いてっ!』
ビシッと指さすみやびに、司は頭を抱えた。 ……ああ、一体どうやって誤解を解いたものやら。
『どうしたの!?』『どうしました!?』
『ああっ! 話が余計ややこしく!?』
更に美綺と栖香が登場。最悪の面子である。
……どうやら司は天に嫌われているらしかった。
やはり日頃の行いのせいだろうか? お賽銭が少なかったからだろうか?
『この女の敵め!』
『冤罪だっ!?』
案の定、司は皆から糾弾された。
絶対絶命のこの危機に、司は最後の綱である梓乃に救いを求めた。
『や、八乙女! お願いだから弁護してくれるかその手を放すかしてっ!! ぷりーず!』
……が、梓乃は泣きじゃくりながら謝るばかり。
逃げようにも、梓乃の両手が先程からがっちりと司を捕まえている。
『許して…… 許して……』
『最悪だ!?』
黙っててくれた方がまだマシのその台詞に、司は絶望の声を上げた。
『梓乃…… 辛かったろう、怖かったろう…… きっと敵はとってやる』
『もう好きにして……』
司は観念し、両目を閉じた。
司が最後に見たものは、振り上げられる金属バットだった。
終。
ちなみに改竄された三行目以降のシーン(『???』以降)は、既に梓乃の記憶領域から抹消されている。
……だって、美しくないし。
まあとにかく、それ以来、梓乃は司を受け入れる様になった。
無論、対人恐怖症が治った訳ではなく、受け入れた司にすら体が拒否反応を示すのが現状だ。
が、それでも殿子と自分との二人だけの空間に、司が参加することを認めることが出来る様になったのである。
これは小さな一歩に過ぎなかったが、 しかし梓乃にとっては非常に大きな一歩であった。
が、それはそれ、これはこれ。
司には大分慣れたものの、やはり他人が苦手であることに変わりはない。
気持ち的にも殿子>>司である。今でも殿子と二人っきりの時間は至福の一時なのだ。
――どうか、今日は司先生が来ません様に。
だから、思わずこんなことまで願っちゃうくらいだ。
……が、願ってからはたと気付く。
――い、いえ、わたくしは別に司先生を嫌ってる訳じゃあ!?
むしろ大変申し訳ないことをした……いえ、贖罪意識だけではなく、何度も助けられた……いえいえ恩だけでもありません!
普段はいい加減ですが、いざという時には頼りになる男らしい方ですし、大変好ましい殿方……ち、違います! そういう意味では!?
慌てて心の中の誰かに弁明を始める梓乃。
そして弁明はいつしか変な方向へと向かっていく。
――い、いえ、司先生に不満なんかありません! ほ、本当です! ……ただ、殿ちゃんに悪影響を与えることだけは、止めて欲しいですけど。
……梓乃は、自分も司の影響を受けつつある、という事実に気付いていなかった。
自分だけは、と思っていたのだ。
ケド、“思わず『やった!』とばかりに軽く片手を挙げ、拳を握り締める”なんてマネ、以前の梓乃なら絶対しなかっただろう。
梓乃も、着実に司の影響を受けつつあったのである。
「……きゅう?」
嬉しそうな顔をしたかと思うと、急に顔を強張らせたり泣きそうになったり……そしてその次の瞬間には、顔を真っ赤になりながら首を振る――
表情を次々と変えていく梓乃を、ダンテは不思議そうに眺める。
心配したのか、やがて傍へ歩み寄ろうとする彼女を、殿子が優しく制した。
「駄目だよダンテ、邪魔しちゃ。梓乃は今、自分の世界に耽っている最中なのだから」
「きゅう〜〜〜???」
「梓乃、楽しそうだね。一体何を考えているのだろう?」
殿子はダンテを抱き上げると、一人百面相を続ける梓乃を、優しく見守った。
『自分の世界に耽っている間は幸せの一時、だから邪魔しちゃ駄目だ』
――殿子は、司の教えを忠実に守っていたのである。
“自分の世界に耽る”ということが、“妄想”と同義語であることに、殿子は気付いていなかった。
まあ気付いても、殿子は別に気にしないだろうが。
SS投下終了です。
本当にお久し振りでした。
GJ!
久し振りにかにしの分を補給したぜ!
一月半ぶりに新作キター
とにかく乙
期待どおり
久々のかにしの、しかも殿子と梓乃成分とはなんたる幸せ。
しかし、司の信用なされな具合は異常だなw 状況見るとしょうがないけど。
梓乃ルートに入らないためか、梓乃が頑張ってかばうシーンもないし、いと憐れなり。
386、387、388、389様、有難うございます。
>司の信用なされな具合は異常だなw
きっとお賽銭が少なかったから天罰を受けたのでしょう(笑)
……何せ、5円ですからね。
おはつにお目にかかります
聖なるかなの超サブキャラクターズ クリスト組に妄想煮えたぎらせてやって参りますた
アセリア総合スレでは管轄外らしいので
こっちに落とさせていただきます
なお
原作中で出ている情報が少なすぎるため
口調・設定その他諸々は9割型妄想の産物であることをあらかじめお断りしておきます
「さつき、これはどこに持って行けば良いでしょうか?」
「えーとね、それは部室棟の3階の倉庫にお願い」
生徒会室では、いつものように生徒会長たる斑鳩沙月が、学園内で起こった種種雑多な雑事の後始末に追われていた。
現在物部学園は、ものべーの背に乗り次元間の航行中。窓の外には不可思議な光景が広がっているが、見慣れてしまえば日常の風景だ。
延々似たような景色が続くのでは最初の物珍しさもすぐに消えて無くなり、生徒たちが暇をもてあまさないようにあれこれと配慮する必要も出てくる。
ゆえに、さまざまにイベントを企画したり、残っている教師に通常授業を行ってもらったりとしているわけだが、
当然その前後には、さまざまに手配りと事務処理と残事整理が山と待っている。
そういったもろもろを日々処理していくのが沙月の目下の最優先事項である。とはいえ当然1人では片付くはずもなく、忠実な神獣ケイロンにも手伝わせ、
それでも始末しきれない分は、その日その日で手隙の誰かに手伝ってもらうことになる。
もちろん沙月の個人的希望としては、毎日でも望に一緒にいてもらいたいというのがあるわけだが、当然望にも望の都合があるわけで、そうそう連日生徒会室に入りびたりというわけにはいかない。
そんなこんなで、栄えある本日のお手伝い要員にとやってきているのは、輝く結晶体に乗った少女たち――クリストのミゥとルゥの2人である。
高さ30cm余、幅20pばかりの楕円形をした白い結晶体――ミゥが、後ろに天体望遠鏡を従わせてふわりふわりと飛んでいく。
ケイロンが扉を開いてやり、沙月は会長席にかじりつきで書類の整理。青い結晶体――ルゥはその傍らで、書類の中身に間違いや不備はないかと逐一チェックを繰り返している。
「ん。これも大丈夫。次も……うん。ん。今日の分はこれで最後?」
「そうよー。ありがとうルゥ。ほんとに助かっちゃったわ」
最後の書類に印をつき、大きく背伸びをする沙月。ケイロンが申し合わせたように紅茶と茶菓子を差し出して、そこにミゥが戻ってくる。
「ただいま戻りました。あれ、もう今日のお仕事は終わりですか? さつき」
「うん。ありがとうね2人とも。1人だととても追いつかなかったわ」
「いえいえ。これくらいなんでもないです。ね、ルゥ」
「ん。きっと、カティマに付き合わされてるゼゥとワゥのほうが。大変だと思う」
苦笑する沙月。なるほど確かに、カティマのスーパー可愛がりモードにつき合わされるのは書類整理より大変かもしれない。
いじり倒されてへろへろになっている2人の姿が目に浮かぶ。
「えっと、それじゃあなたたちの部屋に行きましょうか。一緒にゆっくりティータイムといきましょ」
ん。とルゥ。はい、とミゥ。ケイロンがティーポットを持ち出して、沙月はちょっと悩んだ後、ルゥは果物が好きだしね、と、切り分けしやすい梨とりんごを1個ずつに、小皿を何枚か持って部屋を出る。
結晶体が2つ、仲良さげに浮遊しながら、その後に続いていった。
物部学園の現生徒数は100人と少し――本来の10分の1程度でしかない。
当然、生徒たちの生活空間を充分に取った上で、なお未使用の教室や空き部屋はたっぷりと余っている。
そのうちの一室が、今のクリストたちの居住空間である。元々からの未使用教室から、机と椅子が運び出され、床に柔らかなカーペットを敷きつめて、ついでに毛布代わりのハンカチが人数分用意されている。
部屋の隅には風呂桶代わりと鍋がひとつ。着替えの類やその他の消耗品などは、木工得意の某住人が手慰みにと作り上げた、クリストサイズの小さなたんすの中にまとめて仕舞われている。
部屋の中央にはこれは通常サイズのちゃぶ台が置かれていて、そこに沙月は、ティーセット一式を並べて置いた。
「外気チェック……完了。ミゥ、開封を」
後に続いて入ってきたクリスト2人。扉をしっかりと閉めて、カーペットの上に着地する。結晶体の中のミゥ――白い方――が、青のほうに手をかざして、小さく何事かをつぶやいた。
ぱこ、と音を立てて、青い結晶体の上面に穴が出来た。そこからルゥが浮き出てくる。
背丈ほどもある青く長い髪。くりっとした瞳も同じく青。体にぴったりフィットしたボディースーツのような服は、服の意味を成しているのか微妙なほどに露出度が高く、ぬけるような白い肌と、細っこくすらりと伸びた手足を際立たせている。
ひらぺったい胸の中心には、青い輝石がペンダントのように取り付けられている。
「開けるよ?」
「うん、お願い」
外に出てきたルゥが、今度はミゥの結晶体に手をかざす。口の中で2・3言つぶやくと、先ほどと同様に、白い結晶体の上部に穴が開き、
「ふぅっ。やっぱり、ずっと中にいると疲れるわ」
などと言いつつミゥが浮いてくる。金色の腰まである髪。同色の瞳。白いワンピース様の服はゆったりとして体を覆っている。けれど丈は微妙に短めで、ルゥに負けず劣らず白いふとももが、惜しげもなく素肌をさらしている。
風に舞って裾がめくれ、一瞬パンツと思える布地がひょいと覗く。胸の中心にはやはり宝石が1つ、金色の光を放って輝いている。
「ん。中も居心地悪いわけじゃないけど。やっぱり外のほうがいいね」
「うん。この点でもさつきたちには感謝しないといけませんね。母船の外でこんな風に手足を伸ばして過ごせる機会が来るなんて思いませんでした」
クリストは、あらゆる意味で人とは別種の生物である。大きさ以外は人間に限りなく近い姿ではあるが、全く異なった進化の果てに生まれた種族だ。
彼女たちは『煌玉の世界』と呼ばれた世界で生まれ育った。進化の果てに生物界の頂点に立ち、文明を起こし、繁栄を極めた。
しかし数年前、ある事件によって世界が崩壊・消滅。今では僅かな生き残りが、沙月たち『旅団』に保護されて生き延びているのみである。
彼女たちはその生き残りの一部であり、現在は『旅団』の長であるサレスの命によって、物部学園の沙月の元へ派遣されてきた戦闘要員でもある。
人数は全部で5人。ミゥとルゥはその中でも特に年長な2人である。
クリストを含め、『煌玉の世界』で生まれたあらゆる生物は、かの世界を覆っていた特殊な波長のマナを含む大気中でしか生命を維持することが出来ない。
人間に例えるなら、酸素が存在しない空気では生存できないのと同じだ。
にもかかわらず世界崩壊の際に一握りが生還できたのは、彼女たちが有していた優れた科学力によるものである。
失われた故郷の大気に限りなく近いそれを人工的に作り上げて封入し、乗員の意に応じて動く結晶体は、まさにその代表格といえる。
本来は大気圏外での活動用に研究開発が進められていたものだが、今では全クリストの生存に欠かせないものとなっている。
母船、と呼ばれるのが今のクリストたちが住まいにしている惑星間航行船である。
故郷の大気が保存・生成されているのは、現在存在が確認されている時間樹内の全世界を見渡してもその中だけだ。
生き残った全てのクリストは『旅団』に協力しつつ、まだ見ぬ故郷に近い世界を探して、時間樹のあちこちを飛び回る日々を送っている。
「まー、ものべーは別格だからね。私自身、こんなになんでもありで良いのかな? って思うこともあるし」
だが――物部学園を背に乗せて、次元を越えて飛行を続ける神獣ものべー。
電気・ガス・水道に加えて太陽までも作り上げ、物部学園全生徒の命を支えている存在にとっては、そんな希少な大気ですら、生成し、放出し、部屋1つを満たし続けることなどいとも容易いことだったらしい。
おかげでクリストたちは、この部屋の中だけではあるが、結晶体から外に出て、思う存分手足を伸ばして寝転ぶことができるのだった。
まったく、ご都合万能生物にもほどがある。
「それで、沙月。梨はまだ?」
ルゥがちゃぶ台の上にひょこっと腰掛けて言った。行儀が悪いと言う無かれ。何せサイズが違いすぎるのだ。
「ちょっと待ってね〜」
沙月が手際よく梨の皮を剥いていく。ミゥは結晶体を壁際に運び、たんすの中からクリストサイズのティーカップを2つ取り出して、ルゥの隣へふわりと飛んでくる。
座り込むとスカートの裾からいろいろ見えそうになって実に危険だが、本人まったく気にするそぶりはない。沙月、誰も見るわけでないし良いか、と思いつつも、ちょっとだけ苦笑。
梨を小さく切り分けて小皿に取り分ける。ティーポットのふたを取り、スポイトで中身を吸いだして、小さな小さなティーカップにそっと注ぐ。まるで理科の実験さながらである。
ルゥとミゥ、にこりと笑って礼を言い、ミゥはそっとカップを取って、ルゥは早速梨に手を伸ばす。
と。
「あれぇ? ミゥねぇさまにルゥ、それに沙月さんも。お仕事してたんじゃなかったですか?」
扉がからりと開いて、緑色の結晶体と人が4人立て続けに入ってきた。結晶体の周りにはまるで衛星のように、文庫本が6冊ほど、開かれた状態で浮いている。
「こっちはもう終わったから。沙月と一緒にお茶してた」
「あら、望くんにのぞみんじゃない。どうしたの2人揃って」
「ポゥが図書室で苦戦していたんで。手伝ってきたんです」
「ぎゅうぎゅうに詰まった本棚から無理矢理本を抜き出したせいで、一段まとめて落っこちちゃったんです」
結晶体の中からあぅあぅ、と恥ずかしそうな声が聞こえてくる。
「俺たちはさらにその手伝いというわけっす! 先輩」
「この子の読みたがってたシリーズ物をまとめて運んできたんですよ」
4人とも沙月の後輩たちだ。望に希美、森信助と阿川美里。男2人は両手に文庫本をどっさり抱えている。
結晶体が着地し、周囲を回っていた本がその脇に積み重ねられる。さらにどさどさと20冊以上の本の山が、結晶体のそばに積み上げられた。
ルゥが飛び寄って手をかざすと、例によって上部に穴が開き、乗員のクリスト――ポゥが、顔を赤くしながら浮かび上がってきた。
量が多く、いかにも柔らかそうな緑色の長い髪。ルゥと同じようなデザインの、水着とも見える服装は、ルゥより胸サイズが少し大きいこともあってよりえろっちく見える。
おへその穴の形までしっかり分かるほどに体にフィット。小麦色のきれいな肌が、二の腕太ももわき腹とあちらこちらに覗いている。
やはり胸の中心には、緑に輝く宝石が1つ乗っている。
「望さん、希美さん、信助さん、美里さん、皆さんありがとうございました。助かっちゃいました」
4人の顔の高さまで浮き上がってきたポゥが空中で一礼してみせる。
いやその体勢はいろいろ危ないから。とくに鎖骨の辺りとか、胸の形もしっかり分かるから。と口に出せないのが男の性か。
望は顔をすこしそむけつつ、信助はちらりちらりと目をやりつつ、なんでそんなに羞恥心ないんだよこの娘はっ! と2人そろって内心悲鳴。
「良いよ、気にしないで」「そっそ。力仕事は俺らに任せてよ」
「望くん、みんなも、これから暇? 暇なら一緒にお茶していかない?」
ここで沙月が割って入る。どこから取り出したのやらティーカップがもう4つ、机の上にとんとんと並べられる。
ミゥはポゥの分のカップを取りに、たんすへ向かっての飛行を開始。ルゥは既に元位置に戻り、梨に手を出しかじりついている。
「あー。えっと」
「いいじゃないですか望さん。わたしもお礼したいですしー」
「えっと、特にこれから用事もないし、良いんじゃないかな? 望ちゃん」
信助美里の2人は速やかにちゃぶ台を囲んで座り込み、同じく着ちゃぶ台したポゥと、本の話題で盛り上がり始めている。
望は何か悪い予感を覚えつつ、沙月の対面に座ろうとして、ぐいと手を引っ張られて右隣に着席させられ、むっとした表情で希美、望の左隣にすっと腰を下ろす。
やっぱりいやな予感がするなぁ、と。内心小さくため息をついた。
「ところで望くん、レーメはどうしたの?」
「あはは、実はカティマに連れて行かれまして」
「レーメちゃんもですか〜? うちのゼゥちゃんとワゥちゃんも朝から連れて行かれっぱなしなんですよ」
「朝からずっとなの?」
「そういえば。うん。朝一に押しかけてきたから。押し付けちゃった」
「ま、まぁそんなに酷いことにはなってないと思いますよ……多分」
などと会話に花が咲く。持ち込んだ梨とりんご各1個は既にきっちり消費され、ティーポットの中身も無くなりつつある。
ちなみに忠実にして懸命なる神獣ケイロンは、主人の歓談を妨げぬよう、透明化して学内の巡回に出て行っている。
ミゥがみじろぎするたびに、裾がいろいろ危なくゆれる。残り2人は素で危ない。
サイズ10分の1とはいえ文句なしの美少女揃い、両隣の沙月と希美のアプローチも加わって、望は実に居心地がよくなく、足を組んだり崩したりとせわしない。
美里は例によってデジカメで写真を何枚か取り、カメラ目線に照れ笑いのポゥ、しれっとした表情ままにりんごを啄ばむルゥなどの様子に、思わずにやける信助である。
「ん……もう果物は出てこないのかな」
ぺろり、と指先についたかけらまで舐め取ったルゥ、空になった皿を見て物足りなさそうに言う。体のサイズを考えればかなりの分量を食べているはずなのだが。
「ルゥちゃん、そんなに食べたら太りませんか?」
「ん。平気。ちゃんとその分動いてるし」
「う、なんかうらやま悔しいせりふっ!」
「うーん、残念だけど、生徒会用の割り当て分はこれで終わりなのよ。特に果物系は人気があるからね」
「そう。残念」
「ルゥ、足るを知ると言います。あまり欲張っても良いことはないですよ」
さすが長姉、良いことを言うね、とみんなが思う。が、
「……さすが。一度精液で溺れ死にかけたミゥが言うと重みが違う」
続くルゥの言葉に、その場にいた全員が氷結した。
「な、な、なにをいきなり言い出すんですかっ! ルゥっ!」
顔を真っ赤にしてルゥに詰め寄るミゥ。スカートがふわり舞い上がってパンモロ、けど誰もそれを気にする余裕などなく。
「だって、ほら。ミゥは一度欲張りすぎて死に掛けたわけだし。足るを知るって大事だなって」
「って、ていうかっ、何であのこと知ってるんですかっ!」
「だってわたしその場にいたもん。ほら、っと」
少し目を閉じて思い出を手繰りよせるルゥ。1秒経つか経たないかのうちに目を開けて続ける。
「誰でも良いですから私の×××(自主規制)に固いの突っ込んでくださいっ! ってミゥが叫んだとき。最初に挿れたのわたしだよ。覚えてない?」
耳まで真っ赤なミゥ。口をぽかんと開けているポゥ。事情が良く分からず無言のままパニクる寸前の人間×5。地獄のような沈黙の中ルゥが淡々と、まったく淡々と続ける。
「ミゥはあの人しか目に入ってなかったかもしれないけど。わたしはミゥ狙いだったし。4回くらいは出したんじゃないかな。
あのときミゥが溺れかけた液溜まり、わたしのも少しだけど混じってたよ。だから、あのときミゥが流産した子、ひょっとしたらわたしの子だったんじゃないかなって。
今でもときどき思い返すことがあるよ。あの日、ミゥの中に一番最初に射精したのわたしだったから」
「うそっ!? え、だって、あの日って、あの日の。え? ほんとに!?」
「ん……本当に覚えてなかったんだ」
「ちょーっと待ってくれ待ってくれ? 事情が良く分からないんだが」
と、ここで信助が押し殺したような声を上げる。
「出した、って、その、ナニを?」
「ん。きみたち流にはなんていうのか知らないけど。生殖行為で。ミゥと繋がってこう、えい、っと」
「そんな体の動きまで再現しないのっ!」
「せ、せいしょく、こうい。
えっと、ルゥちゃん、実は、男の子だったり?」
「ん? 違うよ。ほら」
と、股間の部分の布をぺらりとめくってみせるルゥ。きれいなスジがちらりと見える。次の瞬間に殴り倒される信助と、両目を塞がれる望。実にすばやい女性陣の連携である。
「……あれ。見せたらまずかったかな。きみたちの習俗はやっぱり良く分からない」
「ていうか! あんな体にぴったりフィットな服着てて、その、なんだ、は、生えてるなら一目で分かるでしょ!」
これは美里。ミゥに負けず劣らず顔真っ赤である。
「えっと……つまりどういうことなのかな?」
望の左目を塞ぎながら希美が問いかける。うんうん、と沙月も頷く。
「あれ、沙月知らなかったっけ?」
「しらなかったって、何を!?」
「わたしたち、単性生物」
「えっと。それは知ってるけど。私たちで言うところの女性型しかいない……って、あ」
ここで沙月は答えに至り、いやでもまさかそんな、と思わず否定。でも私たちの世界でも一部の魚とかそうだし……カタツムリもか。
「えーと、ですね。私たちクリストは、生殖可能な年齢になると、一定の間隔で、あるホルモンが放出されて、ですね」
ポゥが話し始める。
「体内で精巣と精管が発達して、股間から――――(ものべー翻訳不可能)が伸びてきて、勃起して、生殖できるようになるんです」
「ん。だいたい……きみたちの時間単位だと半年に1回くらいかな。みんな揃って同じ時期に、そういう状態になる」
「私たちが母世界に住んでいた頃は、その時期は世界全部が休日でした。で、一日中好みのペアで、注いだり注がれたり」
「もっと大勢で。1人で4人に注いだり。4人がかりで注がれたり」
「大勢でくんずほぐれつの果てに、誰の子を孕んだのか分からなくなったり……」
「中にはミゥみたいに、ん、はっちゃけすぎて。大変な目にあうのもいる」
「あ。そっか。そんな大変な経験してたから、私の初めてのときも容赦なかったんですね。あのときはホント大変でした」
「ん。きっとそう。ミゥは昔から、あの時期だけはいろいろ飛んでたし。わたしのときも、散々いじめられて。結局1回も入れさせてもらえなかった。
うん。オーラフォトンをあんな使い方するなんて、想像もつかなかった」
まだ状況をつかめない人間たち。希美が感情こもらない声で、ぼそりと言う。
「えーーーーっと、だから、つまり、どゆこと?」
「ん。だから、足るを知るって大事だよね。って話だよ。違う?」
そうか。とここで全員が理解した。
――クリストは人間とは全く違う種族である。
だから、つまるところ、羞恥の概念とか、さまざまな習俗とか、根本的に違う部分があるわけで。
だからあんな露出高い服でも平然と着ているし、ぱんつ見えても気にしないのだと。
性的な話への忌避感も大したことが無いのだと
――そうか。うん。
きっと、一生かけても、異種族の感覚の本当のところは理解できないんだろうな。と。
翌日、生徒会室。
「……」「……」
沙月とミゥ。ルゥ。ポゥ。今日はクリスト年長側3人が手伝いに来ているのだが。
昨日の流れがそのまま残っているのか、仕事上必要な事柄だけが言葉に上る、実に気まずい沈黙が続いている。
「え、えっと……さつき」
1時間くらいのあと。ミゥが意を決して沙月に話しかけた。
「な、ナニ?」
「あの、ですね。私がその、溺れ死にかけたっていうのはですね、言うなら若気の至りというものですから」
「うん。うん」
「かけられるのとか、かけるのとか、好きですけど。でも、それで死にたいとまでは思ってませんから!」
――何かズレている。
「そっちなの!?」
「え? え?」
「えっと……その。私たちの間では、さ。複数人プレイって、その、あんまり、一般的じゃないから。その性癖のほうで、その」
「え、あ、そうだったんですかっ!?」
「あ、なるほど。何か話が噛み合わないと思った」
「うーん。性がふたつあるのって難しいですねぇ。もっともっと小説読み込まないといけません」
沙月は絶望的に深いため息をついて思う。
今後一切、そういう系の話は、クリストたちの前ではしないことにしよう、と。
「あ、そういえばルゥ。私の子供ってどうなったんでしたっけ?」
「ん。世界崩壊のときに。残念だった」
「出産経験までアリなのっ!!??」
403 :
終わり:2007/08/14(火) 00:59:10 ID:h30uYvB20
こぃつぁやべぇーー! 断片的情報だけでいろいろ妄想してたらえらいことになっちまったぜぇぇぇ!
つーかごめんなさい。まっとうにクリスト萌えしてる人。及びまっとうになるかなやりこんでる人。
エロ心満載で考えてたら大変なことになりやがりました。
ちびッ娘しか出てこない→それで成体&単性種? →じゃぁどうやって生殖するのかな→そうか生えてくるのか
なんて思考連鎖しちゃった自分の頭がもう駄目だ
ついでにソゥユート必殺のオーラフォトン触手が頭の中をぐるぐる回る俺の頭はもうダメだ
そしてそれを文章にしちゃったリビドー満載の脳みそがもうだめだ
ごめんなさい。冷水に頭つけてきます。溺れるくらいまで。
>>403 クリストキタ――(゜∀゜)――!! エロさよりも笑いが先に来てしまいましたが、
個人的には生えてきてる時期があっても大丈夫だからGJ。
さらには近親その他の妄想力に脱帽します。
ゼゥとワゥは ま だ き て な い (適齢期が)という事でいーんでしょうか。
一つだけ。
>>397で、ポゥの髪の毛って緑色じゃなかったような。
【教授】 「夜空に星が輝くように」
【孝之】 「よ、夜空に星が輝くように」
【教授】 「落ちた単位は戻らない」
【孝之】 「…落ちた単位は戻らない」
(・・・えぇー!)
【教授】「たとえ一年留年しても」
【孝之】「たとえ一年留年しても…(まじかよ!」
【教授】「やる気があるならまたおいで」
【孝之】「…先生、たのむから単位くださいよぉ」
/ i | . ┛┗ ',
i i | / ハ! / ┓┏ i
|! i | | ! /j/ }j/イ / / |
N、 !≧x{! /k=≦二 j/イrく /
ヽ -=・=∨ -=・=- レ⌒}'
`i ! fj /
、 く __ /rク
\ Y二) / !′
もう一回やり直せ、か。
教授にそんなこと言われるとは思ってもみなかったな。
わざわざ電話で呼びだすぐらいだから、単位不足のことは何となく覚悟はしていたけど。
こうなるとは思わなかった。
ったく、この一年足らずの時間はなんだったんだ。
オレはなんのために、毎日学校にいったりきたりを繰り返していたんだよ。
なんのためにイヤな思いをたくさんしたり、煩わしいだけの悩み事を、
いっぱい抱えこんでいたんだ。
それは全部、こうなるためだったのかよ?
……なんなんだよ。ほんとに。
?誤爆?
408 :
温泉の人:2007/08/15(水) 20:34:30 ID:E8/V0OQx0
夏コミ'07のどみる特典袋の中身に脳みそ杏璃色化が止まらない温泉の人です。こんばんは。
さて予告から随分経っちゃったけど投稿開始!
うちの趣味丸出しの、杏璃のかわいいおしり愛で回すお話(・・・全世界にごめんなさい)
ではでは。
「はぴねす!」より「おしおきの時間。」
「……楽しい? 雄真……」
「ぁ?」
寝ぼけ眼をこちらに向けながら問いかけるのは、金髪碧眼を湛えるひとりの少女。
俺の元相棒で現恋人、柊杏璃だ。
……最もこういう状況でもない限り、それを意識することはまずないってくらいフランクな付き合いだが。
「これのことか? 杏璃」
俺はわざときょとんとした顔をし、杏璃の「それ」をそっと撫でる。
「ん……それ……ホントに楽しいの……? 雄真ぁ……」
「あぁ安心しろ。心配しなくてもすっげぇ楽しいぜ♪」
「そ、そう……? なら別にいいんだけど……ι」
俺の満面の笑みに、杏璃もいまいち釈然としない表情を浮かべてみせる。
……ことの始まりは、今日の夜。
いつもみたくふたりで食べようと持ってきたプリンを
杏璃がひとりで全部食っちまったのが、そもそもの始まりだった。
『……一応それ、ふたりで食おうと思ってたヤツだったんだがな』
『ふえぇぇっ!? ご、ごめぇん雄真!! あたし全然気づかなくて……』
『まぁ済んじまったことは仕方ないさ。今度また買ってきてやるから、一緒に食おうぜ』
『うぅ……ごめんね……雄真……』
いつもの勝ち気な態度からは想像できないくらい、しおらしい杏璃の態度。
最も杏璃のことを世界で一番知ってる自信のある俺からすりゃ、ごく自然な反応だったりするわけだが。
どうせこいつのことだ。またいつもみたく、うじうじ自分のこと責めてんだろ。
まったく……俺は別に気にしちゃいないっていつも言ってんのにな……
……ていうか、杏璃。
そんなおびえた小動物みたいなカッコで、俺の目の前で震えてるんじゃない。
でないと、俺……すっげぇいぢめたくなってしまうじゃないか。
『……んじゃ、ひとつおしおきタイムといくか』
『え……ゆ、ゆぅま……?』
『安心しろよ、痛いことはしねーからさ……俺の機嫌を損ねなけりゃな』
『え……えと……』
『んじゃ、早速ベッドに行こうぜ、杏璃』
『う……うん……』
さすがに俺に負い目を感じてるだけあって、妙に従順な杏璃。
んでやっぱり、おしおきの定番と言えばこれでしょ。
おしりをめくって平手でぺちぺち、俗称「おしりぺんぺん」。
パジャマ姿の杏璃をうつ伏せに寝かせ、お尻のところを膝の上に乗せてパンツをめくり、
そしてむき出しになったお尻におしおきの平手を何度も食らわすという夢のような刑罰だ。
『ゆ……ゆぅまぁ……』
俺にじわじわとパンツを下ろされている間、不安げな顔でこっちを眺める杏璃の表情……
もうそれだけでご飯3杯はいける気がします、俺。
そして現れた丸くてすべすべなお尻に敬意の合掌をかまし、さっそく刑罰開始。
ぺちっ
『んぅっ!?』
乾いた音と共に杏璃の尻肉がふるっと揺れ、その慣れない刺激に杏璃が思わず呻き声を上げる。
うーむ、なかなか理想的な反応じゃないか、杏璃。
杏璃のその悩ましい反応を何度でも見たくなり、俺は更に杏璃の尻を連打し始めた。
『んぁ、ひゃぅっ、あふっ、あぁ……ゆぅ……まぁ……』
お尻を容赦なく襲う刺激に、顔を赤らめ、涙を湛えながら必死に耐える杏璃。
……脳内麻薬って言葉は、きっとこういう時に使うんだろうな。
苦痛と羞恥に耐え忍ぶ杏璃の表情に妙な興奮を覚えつつ、俺は夢中になって刑罰を続けるのだった。
……そうやっておしりぺんぺんに興じてたのがさっきまでの話。
やっぱこれだけかわいらしく育ってくれたお尻だ。
ただ叩くだけってのも芸がないし、第一お尻がかわいそうじゃないか。
途中から俺は叩くのをやめ、長らく苦痛に晒してきたお尻を慰めるが如く愛撫を始めた。
地肌の滑らかさと尻肉の適度な弾力とを掌に感じつつ、大きく円を描くように撫でてゆく俺。
『んっ……んん……雄真……』
『ごめんな……調子に乗りすぎて……痛かったろ? 杏璃』
『う、うぅん……そんな、こと、ない……』
そうしてしばらく杏璃のお尻を慈しんでいたところへ、冒頭の杏璃の台詞へとつながるというわけだ。
「……」
杏璃はなおも釈然としない顔で、俺の顔をぼーっと眺めている。
やっぱ、理解できないかな……
そりゃそうだよな。杏璃だって俺のケツなんか撫でて、楽しいなんて感想はまず持ちそうにないし。
「……嫌だったら、別にここでやめても……」
「別に嫌だなんて言ってないでしょ?
ただ……あたしのお尻なんか触って……ホントに楽しいのかなぁって……」
「杏璃……」
確かに言われてみれば、やってることは杏璃の尻をただ掌で撫でるだけだ。
俺がその気になれば、いくらでもそのお尻で楽しむ方法はあるわけで。
だけど俺はその行為に、何やら満足感のようなものを得ていることに気づいていた。
……何なんだろうな、この感覚。
杏璃の体温と共にふわふわと昇ってくる、単純な性欲とはまた違った不思議な幸福感。
「雄真……どう? あたしのお尻……」
さすがに少し不安になってきたのか、杏璃がもどかし気に問いかけてくる。
俺のこの気持ちを杏璃にうまく伝えるのは、きっと神様でも難しいだろう。
……だけど、俺の心を満たすこの温かな幸せを、少しでも杏璃に伝えたくて。
「何だか……いいよな。お前の体って」
俺はそう、杏璃につぶやきかけていた。
「え……?」
俺のその言葉に、杏璃がふときょとんとした表情を浮かべる。
「何かさ……見た目こんなに細っころいのに、
抱きしめると何だかふわふわしてて、すごく気持ちよくて……」
「……」
杏璃はしばらくこちらの顔をぼーっと眺めていたが、やがて何やらもぞもぞと手を動かし始めた。
「杏璃……?」
「んしょ……と」
うつ伏せの体勢のまま、その手をじわじわと俺のデンジャラスゾーンへ忍ばせる杏璃。
「お、おい……何する気だ、杏璃」
「いいから黙って見てるの! ん……」
やがて俺の弱点を手で探り当てると、その形を確かめるかのように指先が動き……
「あ……///」
杏璃がにわかに顔を赤らめ、そしてその顔がほんにゃりと崩れるのがわかった。
「雄真……もう、こんなにおっきく……」
「ゔ……///」
「ホントだ……雄真……あたしのお尻で……興奮してる……」
自分の体で俺が欲情してるのが、よほど嬉しかったのだろう。
怒張の感触をじっくり味わうかのように掌を押しつけては、にやにやと嬉しそうな笑みを浮かべる杏璃。
「あ、あんま……触んなよ……恥ずかしいだろ///」
「何よぉ……雄真だって、あたしの恥ずかしいとこいっぱい触ってるくせに」
……おっしゃることは何よりですが、そうやって勃起してるとこ知られるのも男としては恥ずかしいわけで。
「ほ〜れ、うりうり〜♪」
「う、う……うぁ……」
杏璃はなおも俺の反応を楽しむかの如く、俺のそこをぐりぐり揉みしだいてくる。
つか、そんなに愛でられたら……俺……もう……
「あ、杏璃……いいから、もうやめろって……」
「やーだよっ☆ あたしのお尻、さんざんいじめてくれたお返し!」
「ぐ……ぐぅ……」
このままやられっ放しじゃ、俺の股か……いや沽券に関わる!!
「……んなことするなら、罰の追加だな」
「んぁ? あ、ひゃうっ!?」
俺は杏璃の尻と太ももの付け根から、そっと指を忍び込ませた。
既にじっとりと粘った液で潤う、杏璃の秘密の割れ目。
その粘液の感触に止め処ない興奮を覚えつつ、俺は更に指を動かした。
「あ、んあぁっ、ぁっ、はあぅっ……あっ、あぅぅっ」
中で指をぐちゅぐちゅとかき鳴らしてやる度、杏璃が尻を揺らしながら歓喜の悲鳴を上げる。
「まったくイケナイ奴だな……ケツ叩かれて、もうこんなに濡らしてやがったか」
「んぅぅっ、ぅぅ……ゆぅまが……ぃけないん……でしょお……?」
秘裂を伝う快楽に息を切らしながら、なおも俺のそこを掴んで離さない杏璃。
いや……俺の攻撃が入った分、むしろ余計にムキになって掴みにかかってる様子だ。
「雄真が、ここ……こんなにするから……あたし……」
「言ったな、杏璃……んじゃ、どっちが先に屈するか……勝負だ」
「んぅっ、い……言われ……なく……てもぉ……!!」
杏璃は無我夢中で俺のズボンの裾を探り当て、おのが手をずるっと中に差し入れた。
今日初めて味わう杏璃の素手の感触に悶えつつ、俺はなおも杏璃への攻撃の手を緩めない。
「んふぅぅ……ぅうっ、はぁっ……っく、ぅっ、はぅぅっ……」
俺のものを必死で扱きながらも、迫り来る快楽に必死で耐え忍ぶ杏璃。
おそらく無意識でか……杏璃の尻は、俺の愛撫を求めて天高くへと突き出されてゆく。
「っく……こんだけ欲しがってるくせして……人のこと、とやかく言えるのかよ……」
「……何よぉ……雄真だって……もう、こんなにしてるくせにぃ……」
そう言うと杏璃は雁首のところを指で挟み込み、段差のところを擦るように激しく上下させ始めた。
「っぐぅ……っ!!!」
俺の先端をびりびりと襲う、激しい稲妻。
脳幹を直接えぐられるような衝撃に、思わず腰が浮いてしまうのがわかる。
「さっさと認めちゃいなさいよ……
自分は杏璃ちゃんのお尻でどうしようもなく欲情してる、惨めで淫らな変態ですって……!!」
「そのケツで身も世もなく求めてる奴が……偉そうに言えた……義理かよ……っ!!」
俺は溜まった欲情を抑えつけるかの如く、愛液絡んだ指先を杏璃の尻の割れ目に沿わせた。
「ひゃあ……あうっ!?」
その指が窄まった菊門に触れた瞬間、目から火花を散らしながら呻く杏璃。
俺は愛撫の指先を膣口に残したまま、余った人指し指でその入り口を愛でてやった。
「ば……ばかぁ! 何てとこ触んのよ、雄真ぁ!!」
「どうせこっちにも欲しがってたんだろ? 杏璃のここ、ひくひく物欲しそうに蠢いてるぜ」
「バカ! スケベ!! えっち!! 変態っ!!! や、あぅああっ……!!!」
杏璃が泣きながら必死で俺のことを罵倒するが、俺が聞く耳など持つはずもない。
秘裂の中をかき回し、肛門を形づくるしわのひとつひとつを指でじっくり押し広げつつ。
ふりふり揺れる杏璃の尻肉を視覚で楽しみながら、俺は夢中で愛撫を続ける。
「うぅうっ、こんな、ぉしりで……イッちゃうぅ……ぅぁ、はぁぁっ……」
「よかったら……先に……イッてもいいんだぞ……? 杏璃……」
「うぅっ、っふ……んぐ、くふぅぅっ……っっ!!!」
杏璃はなおもその快楽に耐え忍ばんと、俺のそこに乱暴なストロークを加える。
その感触は、正直全然的外れで……朦朧としてゆく杏璃の意識を、何よりも雄弁に物語っていた。
「どうした杏璃……全然、気持ちよく……ないぞ……?」
「んぅんんっ、んぅ……ゅぅ……まの……ばかぁ……っ」
ぎりぎりと、枕の噛みしめられる音がする。
杏璃の顔が羞恥と悔しさのあまり、ぐしゃぐしゃに歪んでいくのがわかる。
……そろそろ、いい頃合いかな。
ずぶっ
「ひい゙ぃいっ!? あ、あうぅっ!?」
俺は杏璃を一気に絶頂へ掻き立てんと、尻穴をいじってた指を一気に中へと押し込んだ。
腸内を唐突に襲う刺激に、思わず全身をえび反りにする杏璃。
そのまま俺は突き入れた指を、膣内と腸壁……同時にかき回してゆく。
「あひっ、ぅっ、んふっ、んぅっ、あ、やっ、はぅううっ!?」
もはやこちらの弱点を攻める余裕すらなくなった杏璃が、快楽を求め必死に体を揺らす。
両の穴をぐちゅぐちゅ攻め立てるに合わせ、
杏璃の頭が、乳房が、尻肉が……びくびくと妖艶な舞を踊ってみせる。
「だめぇぇ、あたし、イグ……イッちゃう……あっ、はぁぁぁっ」
やがて杏璃が息を詰まらせ、全身を激しく痙攣させ始めた。
俺はその機を逃すことなく、菊門に差し入れた指をずぶりと奥深くまで突き刺し……
「あ、ひゃあっ、あぁぁあぁあああああああああっっっ!!!!」
杏璃がにわかに、絶頂を迎えるのがわかった。
膣壁の痙攣に合わせ、突き刺した指の麓からぶちゅぶちゅと熱い粘液が湧き出してくるのがわかる。
「あぁっ、ぁぁ、っっ、はぁあぁっ……」
全身小刻みに震わせながら、快楽の余韻に浸る杏璃。
杏璃の体は全身汗でじっとり湿り、蒸れた股の付け根から漏らしたかのように愛液が滲み出てくる。
「……すげぇ、綺麗だ……杏璃……」
どうしてこうイッたばかりの女の体って、こんなにも男を惹きつけるものがあるんだろう。
この世のどんな芸術品にも形容しがたい魅力を放つ杏璃の肢体に、俺はただ見惚れる他なかった。
……やがて快楽の波がひととおり過ぎた後、杏璃がむっくりと体を起こし……
「……? 何する気だ、杏璃……」
「んはぁ……ぁぁ……ゆぅまぁ……ぁむっ」
「!?」
眼前の光景に、俺は思わず言葉を失った。
目もとろけ気味になった杏璃が、俺の先端を貪るようにしゃぶり始めたからだ。
「お、おい……何やってんだ、杏璃」
「んむぅっ……ゆうまのここ、まだ……イッてないもん」
口内で俺のをもごもご言わせながら、浮かされたかの如く呟く杏璃。
「このまま雄真にひとり勝ちなんて……させないんだから……んむっ」
「うぁぁっ、あ……杏璃……」
「んぐぅぅっ、んむ、むちゅ、んぐぅ……ゅぅま、ゆうまぁ……」
ご奉仕というより、まるで甘いお菓子を召し上がるかのような杏璃のフェラ。
呆けた頭で先端をちゅぱちゅぱ貪る杏璃の表情は、妬ましいくらいにうまそうに見えて……
「あ……杏璃ぃ……っ!!!」
「んぁ? あ、ひゃあっ」
俺はその頭を強引に退けると、思わず杏璃をベッドの上に押し倒していた。
そのまま俺は杏璃の意志も聞かず、強引に前合わせをはだけさせてゆく。
「あ……ゆ、雄真ぁ……///」
俺の目の前に、ぷるんと形のいい杏璃の乳房があらわになった。
俺を惑わすために生まれたかのような、見事なまでの乳房の造形。
脳みそが浮き上がるかのような興奮の中、俺は無遠慮にその乳房を掴みにかかった。
「んあぁ! ぁっ、はぁぁ……っ」
「悪ぃ……あんなことされたら……俺、もう我慢できねぇ……」
俺の手の中で自由に形を変えていく、杏璃のかわいらしいおっぱい。
そのぷにゅぷにゅとした感触を心行くまで堪能しつつ、俺はもう片方の手をそっと杏璃の秘裂に忍ばせた。
「んっ……!!」
先ほどまでの愛撫の名残か、火照ったそこは今もなおこんこんと愛液を湛えている。
杏璃の体温でほどよく温められた、杏璃の秘密の空間。
俺はその感触を、今すぐにでも味わいたくて仕方のない気持ちになり……
「……そろそろ……いいか……杏璃……」
「う、うん……雄真の、早く……ちょうだい……」
杏璃が潤んだ瞳で懇願するのに合わせ、俺はおのが先端をゆっくりとねじ込み始めた。
「んぁぁ……ゃぁ……ぁそこ、広がっちゃう……ぁぁ……」
怒張を1ミリ、また1ミリと沈みこませてゆく度、杏璃の体がひくひくと切ない蠕動を返してくれる。
すごく健気で感じやすい、杏璃の肉体……
それをこの手に抱ける悦びを胸に、俺は杏璃の奥底目がけ更に腰を進めていった。
「ぁうぅ……」
やがて俺のそこが、杏璃の奥底まで沈み込むのがわかった。
膣底を襲う熱に、杏璃が下腹部をひくりと痙攣させる。
「奥まで……入ったぞ、杏璃」
「う、うん……あたしのおなか、雄真のでいっぱい……」
「ここから、どうしてほしいんだ? 杏璃」
「ぅぅ……そ、それは……」
俺の問いかけに、はにかむように視線を反らしてくる杏璃。
「杏璃のしてほしいこと……言わなきゃ、俺もわかんないぞ」
「うぅ……わ、わかってる……くせにぃ……っ」
顔をこの上なく紅潮させながら、恥じらうそぶりを見せる杏璃。
もう数えきれないくらい体を重ね合わせてきたというのに、今なお妙に初々しい杏璃の表情。
……もしかしたら俺は、杏璃のこんな表情が見たくて、いつも杏璃とえっちをするのかも知れない。
「わかってるって……例えば、どんな風に?」
「うぅ……だから、それは……そのぉ……」
杏璃は耐え切れないかのように顔をくしゃくしゃに歪ませ、やがてまくし立てるかのように懇願した。
「つ……突いて……ほしいの……
あたしのおなか……雄真ので……ごりごりって……して、ほしぃのぉ……っ!!!」
「よく言えたな、杏璃。それじゃ……」
俺は羞恥の涙に暮れる杏璃の前髪をそっと撫で、そのまま両手を杏璃の腰に添えた。
「壊れちまっても……知らないぞ……杏璃……!!」
「ひゃ、んぁあっ!!?」
俺は杏璃の腰を両手でがっちり押さえ込み、乱暴な抽送を始めた。
「あうっ、あぅあああ、あぁっ……ぁあ、すご、すごぃぃ……っっ!!!」
快楽の悲鳴に暮れる杏璃の声も、どこか遠くに聞こえて。
「ひゃうっ、あ、ふあぁ……や、だ、壊れ……ちゃう……
そんなに、んぁ、されたら……ぁたし、ぁ、あぁっ……壊れ……ちゃう……よぉぉ……!!!」
「壊れちまえよ……杏璃……俺がちゃんと、元に戻してやるから」
「ぁぅ、んぁ、はぅ、やぅぅうっ……ゆぅま……ぁぅ、ゆぅまぁぁ……っっっ!!!!」
朦朧とした視点で、俺を必死に求めてくれる杏璃。
俺はそんな杏璃をもっとめちゃくちゃにしたくなり、更に肉棒を奥まで突っ込ませた。
「あうぅうっ、ぃや、そこ、だめぇぇ……!!」
杏璃の一番弱い、おなかの一番奥底の部分。
そこを先端でぐりぐり押し付けてやる度、杏璃が絶叫にも近い悲鳴を上げる。
「ああぁっ、はぁ……また、イク……イッちゃうぅ……雄真ぁ……!!!」
「あぁ……杏璃……俺も……もう、すぐ……!!」
「やぁ……雄真……いっしょに……きて……いっしょに……イッてぇ……!!!」
俺は杏璃の願いを叶えてやるべく、先端に伝わる杏璃の熱に集中し始めた。
雁首を灼熱の肉壁に擦りつけながら、俺の射精感と杏璃の感度の両方をじわじわと高めてゆく。
「だめ……あたし、ゃぁっ、もう……あ、はああぁっ」
「杏璃……はぁっ、ぁぁ……杏璃ぃ……っっ!!!」
「ひゃ、やぅ、あ、はっ、ああああああああああああああっっっっ!!!!」
やがて限界に達した杏璃が、歓喜の絶叫を上げるのに合わせ……
420 :
支援:2007/08/15(水) 20:53:50 ID:7NXFdBK90
支援
びく、びゅくっ……!!
「やあっ、あっ、あぁああああああああっ」
杏璃の膣内で、俺の欲望が爆発するのがわかった。
どくっ、びく、びゅく、びゅくっ……
きゅうきゅうに締まった杏璃の肉壷をも押し広げるような勢いで、遡ってゆく俺の精液。
杏璃の中に入りきらなかった分が溢れ、杏璃のそこを卑猥な白で染め上げてゆく……
「やぁぁ……おなか……熱い……熱いよぉ……ゆうまぁ……」
おなかの中を満たすあまりの精液の量に、涙を湛えながら苦しそうに喘ぐ杏璃。
……やがて全てを出し終えた俺は、杏璃の中に挿れたまま、杏璃の上に力なく倒れこんだ。
「あ……ゆ……ゆぅま……」
「杏璃……このまま……少し、抱き合ってようか」
「うん……雄真……」
先端になおも残る杏璃の温かさを味わいながら。
俺は杏璃を抱きしめ、ふにふにと心地のよい杏璃の体を味わうのだった。
「……やっぱ杏璃って、抱きしめるとすげぇ気持ちいい……」
「クス……雄真、あたしとおんなじだ……
雄真にこうやってぎゅってされるの……あたし……大好き♪」
「そっか……さしずめ似た者夫婦ってとこかな……俺達」
「やだ雄真……夫婦って気が早すぎ……んふふっ」
どこまでも幸福そうな、杏璃の表情。
いつまでもこうして、杏璃と抱きあっておれたらいいのにな……
杏璃のくれる無限の愛にくるまれながら、俺はふわふわと夢の世界へ旅立つのだった。
〜数日後〜
「ゆ・う・ま〜? 今日はちょっと、あたしに言うことがあるんじゃない?」
「な、何のことだ……杏璃」
お……怒ってる、杏璃。
その理由を思い出そうと必死で頭を巡らせてみるも、どうにもその理由に思い当たらない。
「これよこれ!! 一体これ、どういうことなのよ!?」
怒り心頭、杏璃がテーブルに叩きつけた1枚の写真。
「ぶふぅ!!!」
その絵に、俺は思わず噴き出していた。
取り出された写真は、よりにもよって桜並木の麓で春姫と仲睦まじく肩を寄せ合う俺の姿が!!!
まさか準のヤツ……面白がって杏璃にこの写真渡しやがったな?
「よりにもよって、春姫とこんなことしなくったって……ひどすぎるじゃない!!!」
「い、いや杏璃……これはその」
ってよく考えたら、これは杏璃とこういう関係に至る前の出来事じゃなかったか?
だったら今更そんな昔のことほじくり出されて、杏璃にとやかく言われる筋はないはずだ。
俺は咄嗟に反駁しようと口を開くが。
「……何?」
「何デモナイデス。杏璃様」
杏璃の鬼をも黙らせる怒りの視線に、為す術もなく沈黙する俺。
「さぁてと……そんな浮気者の雄真には、少しオシオキが必要みたいね」
「お、おしおきって……まさか」
「安心して雄真。痛いことはしないから……あたしの機嫌さえ損ねなきゃ」
「う、うぐ……ι」
「んじゃさっそく、折檻部屋へれっつごー!!」
くそぉ……杏璃のヤツ、こないだのオシオキのことまだ根に持ってやがるな?
あの時つい調子に乗りすぎちゃったことを反省しつつ、俺はとぼとぼと杏璃について行く他なかった。
その後、杏璃の折檻部屋(という名の寝室)でどんな仕置きが執り行われたか……もう思い出したくもない。
(終了)
423 :
温泉の人:2007/08/15(水) 20:59:55 ID:E8/V0OQx0
・・・その後寝室では、尿道に歯間ブラシ突っ込まれ擦られながら喘ぐUMAの姿が・・・
なんてマニアックなこと考えてたらそれ書きたくなってきたじゃん!!責任取れ!!(誰に)
ともあれ久々のはぴねすSS、楽しんでいただけたら幸いですノシ
424 :
名無しさん@初回限定:2007/08/15(水) 21:42:56 ID:YUeu3A+g0
支援あげ
>>423 GJですよ!エロエロなお話、楽しませてもらいました。
※※注意※※
ネタバレ全開ですので未プレイの方はご了解の上お読み下さい。
夏ですね。
八月十四日:盆踊り→八月二十二日:爆撃メールと蘭様は今頃家で悶々としている時期ですね。
一方、八月十六日:いかせっこ→八月十九日:朝のサービスと妹は順調にイベントを消化中な時期であります。
えー、というわけで夏めろSSです。
いろんな意味で暴走しておりますけども、夏コミ出撃予定(出撃ちう?)の皆様、また諸事情で行けない皆様にとって一服の清涼剤となれば幸いです(^^;
作者としては、皆様が読んだ後に
( ゚д゚)ポカーン→((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
となって頂ければまあ目的達成かなと考えております。
長くなったので二回に分けて投下予定です。今日はとりあえず前編をどうぞ。
夏めろ納涼SS「よわよわお姫様:前編」
――それは夏の終わり。
まだ残暑も厳しい日曜日の午後。
とある高級住宅地の一角。
晴れた空から照りつける光を拒否するかのように、カーテンの堅く閉じられた家がある。
静かな空間には、どこかひんやりとした空気が流れている。
中の住人は、夏の暑さも気にしない。綺麗な空も気にしない。
――そこは、夏の終わるところ。
率直に言って、俺は混乱していた。
いまだに自分に何が起こっているのか、上手く把握できない。
……OK。状況を整理してみよう。
俺は広々としたベッドの上に寝かされていた。
……このベッドの感触には記憶がある。蘭のベッドだ。
身体にかけられているタオルケットも蘭のものだ。
天井の模様にも見覚えがある。
つまり、この家は蘭の家だということだ。OK。
では、俺は何故、片方ずつ足を縛られてベッドにくくりつけられているんだ?
何故、俺の両手は手首で縛られて、俺の身体の上で空しく宙を掴もうとしているんだ。
しかも、おかしいのは俺の状態だけではなく。
広々とした部屋の片隅に、小さな人影が横たわっていた。
見慣れたショートの頭と、華奢なその身体は。
「んーっ!う"ーっ!」
……何故、つぐみがこんなところにいるのか?
口はスポーツ用のテーピングで塞がれているようだ。
着ているのはいつものショーツとちんまいパンツだけ。
両手両足をテープで縛られて転がされたまま、つぐみはときたま苦しそうに身をよじる。
後手に縛られているせいで体勢が苦しいのかと思ったが、違った。
パンツの中で、ピンクローターと思しき物体が小さな膨らみを作っている。
びくり、びくりと擦りあわされる内股の中で、ういいん……ういいん……と規則的な音を立てて震動している。
……既に、蠢きの中心には小さな染みが見えた。
「んーっ!んんんんっ!うー!」
股間を見られているのに気づいたつぐみはぶんぶん首をふっていやいやをする。
見ないで、と言いたいようだが、俺は憑かれたかのように目をそらすことが出来ない。
眩暈が襲ってきそうな状況の中、俺はやっと思い出した。
――両親が旅行で居ないという事で、蘭の家にお呼ばれしていた。
で、いつもの流れでそのまま泊まることになって。当然やることはやって。
いつもより蘭が大人しくて、あまりなじられたりしなかったのであれ?とは思ったのだけど。
それでも当然の如く蘭に二回ほど中出しした後、急に眠くなって。
蘭とする前にえらく甘いジュースをもらって飲んだのだけど、そこからの記憶はやや曖昧だった。
ひょっとして、あのジュースには――と思ったその時、部屋の扉が開く。
「……おはよう、深町くん。起きたのね」
――蘭が、開いたドアの前で俺をじっと見ていた。
「おはよう……って蘭……俺に、何か飲ませた?それにこの状態――」
「そうよ。深町くんはお寝坊さんなんだから、本当に」
男物だろうか、大きめのTシャツをワンピースのように着た蘭はあっさりと俺の言葉を肯定した。
その顔を見て……唐突に寒気を覚えた。
「ふふ――よく眠れた?半日以上寝てたんだよ。あんまり退屈だったから――つぐみちゃんで遊んじゃった」
淡々、淡々と蘭は呟く。まるでテレビゲームで遊んでいた、とでも言うように無造作に。
彼女の目は、俺を見ているようで見ていない――黒く、深く、光を吸収する瞳。
「深町くんが早く起きないからだよ?悪いお兄ちゃんだよね――」
手に持っていた無線コントローラーのスイッチを「最大」にすると、つぐみの股間から響くモーター音が一気に大きく、激しくなった。
ぎゅいぎゅいいん!ぎゅいぎゅいいん!
「ぐーーーーっ!う"んんんっ!!」
ローターが暴れるたびに、たまらずつぐみは身をよじって呻く。
「おい!――やめてくれよ、蘭っ」
「……ふふ、どうしようかな……ローターには中が痒くなるローション塗ってあげてるの」
「その前、別のローターで四時間放置してたんだけどね」
「深町くんが起きるの待てなくて、おもらししちゃったの。汚かったんだから。本当だよ?」
だからおしおきで、もっと大きくて凸凹の奴に変えてあげたの、と蘭はやはり淡々と説明する。
「――でも、お兄ちゃんのち○こはめられて毎日ぐちゅぐちゅになってるんだし、これぐらい大丈夫よね?」
「っ!蘭、それは……」
「つぐみちゃん、お兄ちゃんが気分悪くなったから迎えに来て、って言ったら飛んできたのよ」
「いい子だよね?あたしも、つぐみちゃんみたいな妹が欲しかった」
「蘭……おまえ……」
「可愛いよね――お兄ちゃんが、手を出したくなるのもわかるわ――ふふっ」
蘭が笑う。その笑顔が――怖い。
「……っ!」
「深町くん、どう?つぐみちゃん見て興奮する?――ああ、それともまだ局所麻酔が残ってるのかしら?」
何かおかしい。
俺がこんな状況にもかかわらずつぐみの痴態に興奮しているのは確かだ。
だけど――なにか、下半身が鈍く麻痺しているような感覚と。
――どこか突っ張っているような感覚――麻酔?
局所麻酔なんて、どこに?
「……あたしが生理の間、セックスできなかったから我慢できなくって、つぐみちゃんを強姦しちゃったのよね?」
「――ああ、違うか。つぐみちゃんに誘われたんだっけ」
「んうーっ!んんっ!」
つぐみは聞きたくないというようにいやいやをするが、それを嘲るかように蘭はさらに俺とつぐみをなじった。
「ケダモノよね、兄妹でサカっちゃうなんて。でも、これってあたしが悪いのかしら?」
「生理のときにさせてあげれば良かったの?どうなの?深町くん」
「……そんな、こと、言われても」
自由にならない体をなんとか起こそうとした俺を蘭が制する。
「ああ、動いちゃ駄目よ。今動くと針が刺さっちゃうから」
「……?」
「深町くんのここ、今どうなってると思う?」
ばさり、と蘭はタオルケットを取去る。
「ふふ……どうかしら?良く出来てると思わない?」
――自分の目を疑った。
俺の下半身は、トランクスも何も穿いていなかった。
――麻酔か。
鈍っていた感覚のせいで、今まで気づかなかったらしい。しかも、その光景は。
……仮性包茎の俺は、勃起していないときは当然皮がちょっと余っているわけだが。
「……な、なんだよ……これ」
その皮が、魚釣りに使うような細いテグスで格子状に編まれていた。
亀頭を取り囲むように、皮には十個以上の穴が開けられ、糸が通されている。
今のところ、糸はきちきちに張られてはいない。
だけど、あくまで今は先っちょだけがかろうじて露出しているくらいだからまだ問題ないけれど。
これでは、もし――
「知りたい?」
蘭がするっ、と留め針を抜いた。一瞬、ちくりと痛みが走る。
「つっ……」
「……痛かった?ふふ――うまいこと感覚が戻ってきたみたいね」
……うまいこと、って?
「このまま、気持ちよくしてあげるから……ね?」
唐突に俺は蘭の意図を悟って、ぞっとした。
――ちょっと待ってくれ。この状態で。
蘭の白くしなやかな指がゆっくりと、俺の先端に触れる。
テグスごしに、下の敏感な部分をつつくと、ゆっくりとまだ柔らかい幹を撫で回す。
――そんな事を、されたら。
蘭の手は既に汗ばんでいて、それが潤滑剤となる。手が滑って、俺の陰茎を、袋を、亀頭を弄ぶ。
それに反応してしまう俺の先端からは、少しずつ体液が滲んでくる。
勃起して、亀頭がぱんぱんに張ってくると同時に、先端に糸がきりきりと食い込んでいく。
ゆっくりと――少しずつ、少しずつ。じくじくと、ちくりと、痛みが生まれる。
皮は引っ張られるけど、にもかかわらず怒張は突っ張っていってしまう。
「くっ……っ!あうっ……い」
「あはは……つぐみちゃん、見るといいよ……変態お兄ちゃんのおち○ちんがどうなってるか」
蘭は熱に浮かされたようにつぶやく。
「あら、大きくなっちゃうよ?興奮してる?やっぱり興奮しちゃうの?」
「めちゃくちゃに犯して精液便所にした妹さんが深町くんのせいで苦しんでるのに、あたしにいじられて興奮しちゃうんだ?」
どんどん彼女は畳み掛ける。言葉と手で、同時に俺とつぐみを嬲っていく。
「……あたしという恋人がいながら、妹にも手を出して弄んだ最低な牡の癖に……なのに妹に手を出されたら怒るの?」
「なのに、あたしの手で感じちゃうの?」
蘭の言葉がどんどん熱を帯びるにつれ、その手の動きも激しく、大きくなって俺をぐちゃぐちゃこねくりまわす。
そのたびに俺も、脳をこねくりまわされているような快感と混乱を覚える。
「それって、ずるいよ深町くん?……やっぱり深町くんって変態だよね」
だから、と蘭はうっとりしたように囁く。
「……これからは、あたしもつぐみちゃんと遊んでいいよね?」
その黒い黒い瞳は真っ直ぐに俺を見て、俺を飲み込もうとする。
「だって、あたしは深町くんのお姫様なんだよね?コイビトなんだよね?コイビトに隠し事は良くないよね?」
畳み掛けられる。そして俺は……反論も賛同も出来ない。
「いいって言ってくれたら――ここ解放してあげるよ……どうなの?」
でも、俺はだから、何も言えなくて。
蘭は何だつまらない、というような顔に変わる。
「駄目なの?ふーん……そっか。あたしよりつぐみちゃんが大事なんだ」
それは違う――と言おうとしたけれど。
いきなり睾丸をぎゅっ、と握られた。
「…………っ!!!」
俺は悶絶しそうになって声が出ない。
蘭がふん、と鼻を鳴らしてTシャツを脱ぎ捨てた。
下着は――何もつけていなかった。
「ふふ……なら、このままで――してあげるね」
「……!」
細く見えるわりに豊満な肉体を見せ付けるかのように、俺の腰の上に座り込む。
そして腰をいきなりぶつける。いきり立った俺の陰茎を、今度は自分の恥骨でこねくり回す。
「うぐっ――いっ――いいんちょっ……!」
ずりっ!じゅぶっ!ぎちぎちじゅぶじゅるっ!ぎちっ!
「ふふふ……あははっ!どう……あたしの恥骨でっ……お○んこでち○ぽの裏側こすられて勃起するの?」
ぱんっ。蘭が俺の頬を平手打ちする。叩きながら叫ぶ。
「皮がぱんぱんの中身に引っ張られてるよね?痛いよね?――痛いって言いなさいよっ!」
下半身は痛い。頬は痛くない。でも俺の心が――そして多分蘭の心も――痛い。
「痛い?痛いのよね?ふふ――あはは……っ……あううっ……」
笑っているのに、何処か泣きそうな顔で蘭は腰を前後させる。
秘裂が俺の陰茎の裏側を挟み、舐め上げてこすりあげる。
蘭も既に愛液を溢れさせていた。
自分の言葉で、俺の言葉で彼女はどんどん陶酔していく。
「――ふふっ……痛いくせに、こんなに硬くしてびくびくさせて……深町くんって、ほんとうに変態よね……」
一旦動きを止めて身体を起こした蘭は、血の滲み出した俺の陰茎をいとおしそうに眺めて。
……ゆっくりと、自分で濡れそぼつ秘裂に挿入していった。
「うぐううっ!」
……じゅば。ぎちぎちぎちぎちぎちっ!
びしょ濡れの膣に入れてるのに、俺の陰茎はもう張り裂けそうに突っ張っていて抜き差しならぬ状態だ。
送り込まれる血が全て痛みと快感を同時に増幅する。
「うふふ――痛い?苦しい?気持ちいい?」
再び蘭が畳み掛ける。
「どうなの?私の中、気持ちいいの?ぐじゅぐじゅって強制包茎ち○ぽ膣でこすられて気持ちいいの?」
ぐじゅぐじゅぐじゅっ。じゅぱっ。蘭の陰毛が愛液と血と汗で泡立ち、絡み合う。
「ああ――血が出てるよぉ――赤い……綺麗……」
俺と自分の股間から溢れる血の泡にうっとりしながら蘭は腰を動かす。
俺に恥丘をごりごりこすり付けて、少しでも俺を深く奥まで収めようとする。
「ふふふっ……深町君の処女膜が敗れたみたい。おあいこよね……あたしだってすっごく痛かったんだから……」
ぴちゃっ。ぴちゃ、ぐじゅっ、ぐじゅっ。ぐちゅっ!
どんどん腰の動きが速く大きくなる。
俺の下半身は再び麻痺していく。痛みなのか快感なのかもうわからない。
けれど何かだけが高まっていく。送り出されるのは血なのか精液なのか。
俺の中で出口を求めて荒れ狂っている。
「どうなの?ねえ――どうなのっ深町くんっ……」
「ふうっ!……硬いぃ……どんどん大きくなるよぅ……深町くんの皮、もつ……?ふふっ……あはっ!」
「いくのが先?それとも、皮がちぎれるのが先かしら?……ふあぁんっ!」
じっとしているのに耐えられなくなった俺は不自由な下半身を出来るだけ動かして下から突き上げる。
それに応じて、蘭もどんどん快感に溺れていくのが見ていてわかる。
「だめぇ……自分で動いちゃ駄目ぇ……悪い子っ……悪い子ぉ……」
でも蘭はそれを認めたくないのか、俺の乳首にぎちりと爪を立てた。
つねられる。痛みが突き刺さる。血が滲む。
だけど、いつかそれさえも快感に変わる。
俺は――蘭から逃げられない。
「そうっ!そうよっ……わたしを……もっと……突き挙げて……おしおきしてっ……」
いつの間にか蘭は俺におねだりしている。脅迫しながら哀願する。
「いう事聞かない深町くんなんてぐちゃぐちゃにしちゃうんだからっ!深町くんが悪い子ならっ!私も悪い子になってやるんだからぁっ!」
泣きながら俺を犯す。俺も合わせて腰を突き上げ、縛られた両手で胸を出来る範囲で揉みたてる。
「だから……私もっ……ぐちゃぐちゃにしてえっ!ああっ!ナイロンがっ……糸が中に刺さるよぅ……ちくちくっ!ちくちくするのぉっ!!」
ごりごりごりごりっ!
蘭の腰が俺を錆びたカンナのように蹂躙して。
ぎちぎちぎちぶちッ!
俺の陰茎は剛直と化して蘭を凌辱する。
「あはああああっ、いやあああっ!深町くんっ!深町くぅんっ!」
一際強く、蘭が腰を打ち付けた瞬間。
ぶちぶちぶちぶちっ!!
俺の何処かが千切れる音がした。
「あがああああああっ!」
奔ったのは激痛か快感か。俺の意識は真っ白になる。
「精液っ!出るっ!蘭に全部出すよっ!委員ちょぅうあああああああああっ!!」
血と精液と痛みと快感と、何が勝るとも言えない混沌の中。
俺は絶叫とともに、蘭の中に放った。
どくどくどくどくっ!びじゅっ!びじゅっ!!
「いやああああっ!ふかまちくうあああああっ!!」
蘭も同時に絶叫する。
それはバンシーの叫びのように自分から魂も何もかも奪い去る、けれどけして抗えない、そんな声だった。
根こそぎにされた感覚とともに、ほとんど固形物と化した白濁が蘭の膣に、一番奥に、子宮口に叩きつけられる。
全てを搾り取ろうとするかのように、蘭の下腹が波打ってびくびくと痙攣し、最後まで俺の陰茎を締め上げていく。
「あはっ……ああ……出てる……深町くんの精液……血……あたしの中に……いっぱい……」
身体をびくびくと震わせながら、蘭は糸の切れた人形のように俺の上に倒れこんだ。
どのくらいそうしていたろうか。
ゆっくり体を起こした蘭は、今度は俺の顔をまたぐようにしてひざ立ちしてにじり寄る。
「あ……?」
「舐めて」
いきなり、そこを俺の唇に押し付けてきた。
血と精液と愛液があふれ出す蘭の秘裂。
いろんな色と匂いとかたちが混ざり合って、俺は一瞬何を見ているのかわからなくなる。
けれど、もう反抗する気など霧消していた。
むしろ喜んで舐める。ぴちゃぴちゃぴちゃ、といたわるように、ほじくるように、穿つように舐め、しゃぶる。
「うんっ……そう……いいよぉ……っやだ、また勃っちゃうんだ?」
なんかもう皮がほとんど千切れてる気もするが、にもかかわらず俺のそこはもう元気になっていた。
確かに鈍い痛みはあるけれど、すでに半ばどうでもよくなっている俺がいる。
「くすっ……深町くんってほんとに変態ね」
それから蘭は嘲るように部屋の隅に放置されていたつぐみを見やって。
「どう?つぐみちゃん……お兄ちゃんがサカってる所、ちゃんと見た……っ?」
蘭は絶句した。そして、つぐみを見た俺もまた……声を失った。
つぐみは、じっと俺と蘭を見ていた。
嫉妬?悲哀?愛情?憐憫?
解らない。けれど、つぐみは泣いていた。
ただぐすぐすと泣いていた。
塞がれた口で、叫ぶことも出来ずに。
おそらくは最初から最後まで。
ずっと涙を流していた。
一瞬、蘭の顔がくしゃくしゃになる。
そのまま蘭も泣き出すんじゃないか、と俺は思ったのだけれど。
そうはならなかった。蘭の眼は細められた後で、また妖しく煌いて。
それから赤ん坊をあやすような優しい声で、蘭はつぐみに囁きかける。
(ごめんなさい……)
一瞬そんな言葉も聞こえたような気がしたけれど。
「つぐみちゃん……?」
次の蘭の質問は、あっさりそれを吹き飛ばしてしまった。
「……お兄ちゃんのお○んちん、欲しい?」
…………
>後編につづきます。
今日のところはこれでノシ
( ゚д゚)
(;゚д゚)
(((((;゚Д゚))))ザクグフゲルググ
|┃三 ∩___∩ . __________
|┃ | ノ ヽ /
|┃ ≡ / ● ● | < こんばんわ深町徹生です
____.|ミ\___| ( _●_) ミ \__________
|┃=___ |∪| \
|┃ ≡ ) ヽノ 人 \ ガラッ
ここからつぐみ様の巻き返しを期待
何とか日曜日には間に合ったぜ……
もうひたすらアレでナニですがどぞー。
夏めろ納涼SS「よわよわお姫様:後編」
「……お兄ちゃんのお○んちん、欲しい?」
蘭はゆっくりとつぐみに歩み寄って、その顔を覗き込む。
「……どうなのかな?」
つぐみは泣き濡れた瞳で蘭を見上げて、一瞬迷うように俺を見たあと――こくり、と頷いた。
「……おいっ……つぐみっ……!」
「深町くんは黙ってて」
蘭がぴしゃりと俺を制する。
「あたしはつぐみちゃんに聞いてるんだからね。でも……ふーん、やっぱりそうなんだ」
蘭はもう平静な顔に戻っていた。でも、かえってそれが俺には怖い。
さっきまでの優しい口調はそのままに、また底冷えするような空気を感じさせる。
「つぐみちゃんは、お兄ちゃんが大好きなのね――いいよ。望みを叶えてあげる」
両手両足と口のテープをはがした後で、蘭はこっちに来なさい、とつぐみを立たせる。
「ふふ――どう?お兄ちゃん、あたしの中でこんなになっちゃったのよ」
後ろから急かすようにベッドのそばに連れてきた蘭は、つぐみに俺のどろどろになったペニスを示す。
既に皮はたるんでいたが、あちこちのフチが切れて血の滲んだそれは、外見上は回復不可能なまでにぼろぼろに見えた。
皮だけでなくまだ小さな泡がこびりついた亀頭も精液と血と蘭の愛液にまみれている。
「先っちょ、切れちゃってる……すごい……いたそう」
つぐみは恐る恐る俺に近づくと、はあ、と息をつく。
蘭が背中や肩を押すたびに怖いのかびくびくしていたが、それでも俺のペニスから眼を離そうとはしない。
「つぐみちゃんは、お兄ちゃんのココが痛そうな時、どうしてあげたいの?」
「……え?えっと……かわいそうだから……優しくしてあげたいかも」
「……そう。じゃあ、そうしてあげたら?」
そう静かに告げた蘭の声は、またトーンが違っているような気がした。
つぐみも何か思うところがあったのか、こわごわながら振り返って蘭に確認する。
「……いいの?」
つぐみのその顔には、恐怖よりむしろ憐憫があったように俺には思えたけれど。
蘭はそれには答えず、無言でつぐみの頭を俺のそこに押しやった。
それで腹をくくったのか、つぐみは何処かほっとしたように囁く。
「お兄ちゃん……優しく、ご奉仕してあげるからね」
俺は、今度はつぐみに戦慄を感じる。
あれだけ泣いた後のくせに、つぐみの目には間違いなく欲情が宿っていた。
幼いくせに煽情的な笑みを浮かべてから、つぐみは俺に背中をむけてまたがってしまう。
「……何、言ってんだよ……っ!」
殆ど千切れかけて、血が滲んでいるそれを、両手でそっと挟み込んだ。
「……ふん、妬けちゃうわね。ホント、深町くんも妹もムカつくんだから……」
蘭の呟きももはや無視して、つぐみは目を半ば閉じたまま俺の陰茎に舌を近づけていく。
後頭部が肩の向こうに消え、俺からは背中しか見えなくなる。
ぴちゃっ。
暖かい舌の先端がテグスと包皮の接合部に触れた。
「っ……うんっ」
傷に唾液が染みる。ゆっくりゆっくりと柔らかい肉が蠢きながら俺をつつき、亀頭の形を傷を確認していく。
その感触はあくまでも優しい。舌が皮膚を撫でるごとにつぐみは唾液をまぶし、音を立てて血や精液を舐め取っていく。
「ちゅぷ、ぴちゅ、ちゅぷんっ……」
「……ううっ、くっ……!つぐみぃっ……!」
ひととおり舌先で亀頭全体を撫で回したあと、今度は俺のペニスを幹までじっくりと舐めしゃぶる。
「んくっ……ぴちゃっ……ちゅる……」
それはもはやフェラチオと言うより、むしろ赤ん坊が母親の乳に吸い付くときのようで。
自分の所有権を主張するかのように、口腔にペニスをぴったりと密着させたまま、ひと時も離そうとしない。
傷を労わるように舌を押し付け、血と精液と愛液を最後まで舐め取り、こそぎ、こすり上げていく。
その一瞬ごとに、俺の陰茎は血を送り込まれびくり、びくりと脈動する。
また再び、内部の膨脹とともに俺の包皮は張り詰めつつあった。
しかし既に切れている部分も多いため、先ほどより締め付けられる感覚は少ない。
むしろ傷口が広がる感覚のほうが問題だったが、つぐみが滲む血を飽きずに舐めとる度に痛みは少しずつ麻痺していく。
鈍い快感が段々、それに取って代わっていく。
吸血鬼になったつぐみに血を吸われているような、そんな錯覚すら覚えた。
そんなふうに目の前のペニスに夢中になっているつぐみのお尻は、俺の目の前でぴこぴこ揺れている。
パンツから透けて見える秘裂から、いつのまにかまた雫が滴っているのに俺は気づいた。
まだなかにはローターが入っていたはずではないか――と思ったとき、その端っこがぢゅる、と縦筋を割って現れるのが見えた。
お尻が揺れるせいで、中から出てきてしまったらしい。
でも、このままだと俺の胸か顔に落ちてこないかな?
今のところパンツが歯止めにはなっているけど、なんか危なっかしい。
両手が縛られているのであまり動きは自由にならないけど、なんとかして手で取ってやったほうがいいかな、と思ったとき。
「ふふ――」
俺の表情に気づいた蘭がつぐみに近づくと、その下半身をいきなり下からわし掴んだ。
指先がパンツの中心にぐり、と食い込む。
「うむぅっ!むぐううううっ!」
俺のペニスに吸い付いたまま、つぐみはいやいやをした。
「ふふ――ローター、電池切れちゃったね――でも、まだ外からでも形がわかる……凄い」
パンツの上から蘭の指先がつぐみの秘裂と下腹部をぐりぐりこねくり回す。
パンツは愛液なのか汗なのかあるいは漏らした尿なのか、もはや何ともつかぬほど濡れてびしょびしょになっていた。
俺の目の前で、ひくひくする中身が透ける。蘭は隙間から指を差し込んでかたちを確認すると、感嘆の声をあげた。
「ほんとにちっちゃいんだあ――こんな中に、お兄ちゃんずぼずぼペニス出し入れしちゃったのね――」
「んんっ……ふぅっ……んんっ」
つぐみは聞きたくないというふうにひたすらいやいやをする。
それでもペニスだけは離そうとしないあたりが不思議だ。
吸い付いたままのつぐみの目はどこかうっとりしたように朧に霞んでいる。
そんなつぐみの仕草と蘭の少しずつ熱を帯びていく嬲りの台詞に、俺はまた興奮してきてしまう。
自分と妹がなじられているのに、それすら快感に変わっていく。
「……ふうん、また、元気になっちゃうんだ……やっぱりね。なんかムカつくー」
どんどん大きくなる俺のペニスを見て、つまらなそうに蘭は呟くと――にこり、と笑って、再び爆弾を投下する。
「もういいわ……つぐみちゃん。あなたのちっちゃいマ○コに、深町くんの変態ち○ぽ入れてあげなさい」
――それは、ほとんど無邪気とすらいっていい笑顔で。
「私は、つぐみちゃんの後ろをもらうから」
「……え?」
当惑する俺たちを尻目に、部屋の隅から何か持ち出してきた蘭は、腰にそれを巻きつける。
ようやく口を離したつぐみは、それが何かを認識すると、ひっ、と声を呑んだ。
それは巨大なペニスバンドだった。しかも、それは人を模ったものではない。
歪にネジくれて、節くれだったその形は。
「ふふ……ベヒモスのを模りして作ったのよ。勃たせてやったら興奮しちゃって大変だったけど」
やっぱり牡は去勢したほうががいいのかも、と蘭は俺を悪戯っぽい目つきで見ながら笑う。
「深町くんも、あんまりおいたするようなら去勢しちゃえばいいのかしら?」
その笑顔が俺をまた凍らせる。一旦元気になった俺のものがまた縮み上がりそうになった。
ペニスバンドの大きさを測っていたらしいつぐみの顔が、どんどん青くなっていく。
「そ――そんなのを、お尻に?」
「そうよ。これをつぐみちゃんのお尻に、ずぼずぼ突き刺してあげるの」
「い――いやぁああっ!だめぇ、そんなの入らないよぉっ!」
「いいからいいから、ね?」
そう言って、蘭はつぐみのパンツを一気に引き下ろす。
「いやあああっ!駄目ぇっ!」
「……うるさいわね」
ふたたびテープを持ち出すと、蘭はつぐみの目の前でちらつかせる。
「どうせ外には聞こえないけど、あんまり騒ぐとまた口に貼るわよ。息が苦しくて嫌でしょ?」
「……ふっ、うぐぅ……ううっ……」
べそをかきそうになりながら、つぐみは頷くしかない。
「何よ……どうせこっちのバージンもお兄ちゃんがもう奪っちゃったんでしょ?今更いいじゃない、こんな便所穴」
しかしつぐみは声を出さずにぶんぶんぶん、と首を振った。
「……え?まだしてないの?」
黙ったまま頷くつぐみの前で一瞬止まった後、じろり、と蘭が俺を見た。
「……本当に?」
慌てて俺も頷く。……確かに本当だ。
そっちはまだ触れてもいなかった。大体、蘭とだってまだアナルは試していないのだ。
「……そう」
一瞬、蘭が素に帰ったように見えた。
「んー、もう……仕方ないわね。初めてがベヒモスじゃ流石にかわいそうだし、そっちは深町くんにあげるわ」
そう呟く蘭は、その時だけはいつもの穏かな委員長に見えた。
「んー、でも、今の深町くんのペニス、つぐみちゃんのお尻にちゃんと入るかしら?入れる前にへたれちゃわない?」
そう言われても答えようがないけど。
そもそも誰のせいだよ誰の、と思ったけど当然口にはできず。
「んー、でも、どうしよっかなー……」
蘭は指を顎に当ててちょっと思案していたが。ややあってぽん、と手を叩いた。
「決めた。まずつぐみちゃんが、お兄ちゃんのを自分でお尻に入れてあげなさい。その後で私が前に入れたげるから」
そういって、蘭はつぐみを俺の上にどん、と押し倒した。
「あうっ……」
怯えた目で蘭を見るつぐみ。俺も、ただ一緒に見上げるしかない。
「……やってよ」
そんな俺たちに、静かに蘭が言葉を叩きつける。
「……やらないと、許さないんだから。二人の人生、めちゃくちゃにしちゃうんだからっ……!」
先ほどまでのような大きな叫びではない、あくまで搾り出すような、その言葉。
だけどその言葉は痛くて重くて、そして何よりも哀しくて。
「私を……仲間外れにしないでよぉ……」
下を向いて、顔をくしゃくしゃにして俺にぶつける声は、壁に飲み込まれそうなほど小さかった。
「深町くん……私をちゃんと見てくれなきゃ、やだよぉ……」
いつしかベッドの横に座り込んで泣く彼女は――とても小さく、幼く見えた。
「……お兄ちゃん……いいよ」
つぐみが俺を振り返って囁く。
「お前……」
「だって……蘭さん……かわいそうだもん」
あたしは、お兄ちゃんのものだから――と、つぐみは呟く。
「ただの、お便所でいいから」
俺を見て微笑む。
「お尻も、使っていいよ……お兄ちゃんと、蘭さんのお便所にして……」
そして、自分で後ろに手をやると、小さなお尻を、俺に向けて広げてみせた。
ひくりひくりと、中心ですぼまりが蠢いている。
ごくり、と俺は唾を飲んで、頷くと同時に顔を尻に埋める。
「あんっ……やっ……くすぐったいよぅ」
せめて濡らして、多少なりともほぐしておいた方がいいだろう、と俺は舌をすぼまりに這わせていく。
ぴちゃぴちゃと舐める俺の音に合わせて、再びつぐみは俺の陰茎を飲み込み、顔を上下させてしごく。
「ぷはっ……」
ややあってほとんど同時に口を離すと、つぐみの正面に立った蘭がその先を無言で促した。
「…………」
つぐみも無言で頷くと、ゆっくり、ゆっくりペニスの上に腰を落としていく。
「……持っててあげる」
蘭が俺のペニスをつかみ、つぐみのすぼまりの中心に亀頭を合わせた。
ぬるりとした感触があった、一瞬後。
つぐみが一気に腰を落としてきた。
「んんくぅっ!」
ごりっ!ごりごりごりっ!
ガチガチに硬くなった俺のペニスがつぐみの菊門を蹂躙していく。
「ひぎぃっ!いたいっ!――痛いよぅ……っ」
つぐみの背中から汗がわっ、と噴出す。ぎちぎちに身体が緊張しているようだ。
さすがにまずいな、と思った俺はつぐみに声をかける。
「力……抜けよ。かえって痛いぞ」
と言ってから気づいた。蘭がいつの間にか、つぐみの頭を優しく撫でている。
「……大丈夫よ……大丈夫。つぐみちゃん、力を抜いてお兄ちゃんに任せるの」
「ふああ……蘭、さん……?ああっ……お兄ちゃんがっ……つぐみのしっぽになってるのぉっ……」
蘭が撫でてやる後とに、つぐみは落ち着いていった。
それにしたがって、俺のペニスも段々奥に飲み込まれていく。
文字通り抜き差しならぬ感触ながら、終わりの無いどこまでも続く穴。
ローターの感触までは流石に解らないが、ペニスの裏側が皮一枚で膣とつながっている、という事実そのものが俺を興奮させる。
「……はあっ……はあっ……大きい……大きいよう……」
「……何とか、入ったみたいね。ふふ……じゃあ、次はあたしの番」
頃合と見たか、蘭はすっ、と体を起こすと、ひざ立ちでつぐみににじり寄る。
俺の足をまたいで、俺の上に座り込んだつぐみの秘裂にディルドーを腰ごと近づけていく。
しかしつぐみは少々戸惑っているようだ。……そういえば。
「え?……でも、ローターがまだ」
「――いいのよ」
そのまま蘭は、ローターが入ったままの膣内に、ディルドーをずぶりと突き刺した。
「あふああああああっ!」
ぎりぎりぎりっ。ごりっ。ずりっ。
凸凹のローターをさらに膣奥、子宮の入り口まで押し込む勢いでディルドーが侵入していく。
「……ふふ、どう?お兄ちゃん以外のものが、二つも中に入ってるのよ……?」
牡犬のそれをかたどった歪で節くれだった異物がつぐみを犯す。
泣き叫ぶつぐみは、蘭の言葉など殆ど耳に入っていないようだ。
「あふぁっ!ぎうっ!ひぃっ!いい、痛いっ!いたいいいっ!裂けちゃうっ!」
「んっ……我慢……しなさいよ」
蘭はそう言いつつも、そこからはある程度慎重に、ゆっくりと腰を押し出していった。
ずぶ……と、やがてそれは三分の二程度進入したところでかろうじて止まる。
それ以上は入らないようだ。
しかし、つぐみは恐怖と痛みで依然として悶え泣いていた。
「いやああっ……つぐみ……つぐみ、壊れちゃうよぉ……」
パンパンに膨れ上がった下腹部。
肛門も膣口もギリギリと拡張され、今にも縁が切れてしまいそうだが、まだ幼い分柔軟なのが幸いしたのか、
なんとか今のところは流血もなく受け入れているようだ。
とは言え、いつもより異物を二つも多く受け入れているのだ。しかも、膣を埋めるディルドーは俺のよりさらに歪で大きい。
苦しくないわけはなかった。
「ああ……あふっ……ふうっ」
肩で息をしながら、つぐみは必死でこの状態に慣れようとしているようだ。
そんなつぐみの頬に蘭はちゅ、とそっとキスをしてから、今度は俺を急かす。
「つぐみちゃん、頑張ったね……ふふ、深町くんもぼさっとしてないで動いてあげないと」
「……でもっ……こんな状態、さすがに……」
反論する俺。今はともかく、この状態で動いたらホントにつぐみは滅茶苦茶になってしまうのではないか。
しかし、つぐみはけなげにも蘭の言葉に頷く。
「つぐみは……だいじょうぶだからっ……蘭さんもお兄ちゃんも……もっと気持ちよくなってっ……」
ぐすぐす泣きながら、蘭と俺を交互に見て叫ぶ。
「つぐみを……二人の……お便所にしてえ……いっぱい出してっ!」
つぐみの涙を、蘭は舐めとる。
「……可愛いよ、つぐみちゃん……」
濡れた瞳でそう告げるとともに、腰をつぐみの幼い膣に打ち付けだした。
ぱあんっ。ぱあんっ。一突きごとにつぐみが哭く。
「ぎぃっ!あぐっ!あふっ!いぃっ!」
「つぐみちゃんっ……御免ね……御免ね……ああっ……びくんびくん響くよぅ……」
そういいながらも、陶酔した蘭は腰を打ち付けるのをやめようとしない。
蘭もまた、泣きながら鶫を犯していた。
「ああっ……つぐみちゃん……犬のち○こ、気持ちいい……?気持ちいいよね……私も……すごい……すっごいの……」
そして俺もまた、ペニスの裏側で皮一枚を挟んで膣を蹂躙するディルドーの感触を感じて、より一層興奮する。
アナルの奥深くまでペニスを打ち込んでいく。
俺の包皮が、亀頭の傷がどうなっているのかなど、もはや頭の隅にもない。
とっくのむかしに糸が千切れたのか、それとも皮が千切れたのか。
すでに抵抗はなく、ただ焼け付くような熱さだけがある。
ぎちぎちと肉棒を引き戻し、また打ち込むたびに奔る電気のような刺激があるだけだ。
すべりが良くなったのがつぐみの腸が分泌する液のせいなのか、あるいは俺の先走りや血のせいなのか、それすらもわからない。
「ふぅぐぅっ――ああああっ――!」
凹凸のあるローターを中で玉突きするように、蘭のディルドーはつぐみの中で暴れまわる。
もはやつぐみの瞳からは焦点が失われ、ただ痛みとも快感とも知れない衝動に身を委ねるのみ。
俺も蘭もただ、その先の快楽を求めて腰を叩きつける。つぐみを犯しながら相手に犯されている。
俺はつぐみを通して蘭を、蘭はつぐみを通して俺を蹂躙する。
「ああっ!つぐみ、つぐみ、つぐみぃっ!」
「お兄ちゃん……蘭さんっ……つぐみもうっ……もうっ……あふぁっ……しんじゃう……しんじゃうぅ……」
「つぐみちゃん……深町くん……いいよ……いいよ……みんなで……みんなでぇっ!」
俺は喘ぐ蘭の顔に、何処か解放されたような、あるいは慈母のような……そんな笑みを見たような気がした。
そして、そう感じた瞬間に俺の意識ははじけ飛んで。
つぐみの狭く深い穴の中に、文字通り搾り取られるように精を放った。
どくどくどくどくどくんっ!ぶしゅぅっ!
叩き込まれる白濁につぐみもまた、一際大きな声をあげて絶頂する。
「あふあああああああああっ!あああああっ……おしり……おしりぃっ!いっぱいぃっ……」
「あはああっ!……びくびく言ってる……つぐみちゃんが私にも伝わってくるよお……」
つぐみの脈動に併せてびくん、びくん、びくんっ、と蘭の身体もまた痙攣する。
蘭がひときわ大きく仰け反った瞬間、ペニスバンドと恥骨の間から何かが溢れた。
ぴしゃ。ぴしゃ……びしゃあああああああっ。
「あっ……ああああっ……でちゃうっ!……あはあ……おもらししちゃうぅ……」
口の端から涎をたらして、絶頂した蘭がそのまま失禁する姿を、俺とつぐみは脱力したまま見ていた。
そして、つぐみの身体と俺の下半身を濡らすだけ濡らして放尿を終えた後。
蘭はそのまま、糸の切れた人形のように、俺たちの上に倒れこんできた。
俺は、それを見届けてからやっとのことで――意識を手放した。
気を失っていたのは数分程度だったらしい。
俺が目を開けると、つぐみはもう横にいて。
俺の身体の上では、蘭がぐすぐすと泣きじゃくっていた。
「……深町くん……つぐみちゃん……ごめんね……ごめんね……うえええええ……」
俺は、何を言うこともできなくて。
つぐみと目を合わせると、どちらからとも無く、頷く。
そっと、縛られた腕のままで、蘭の頭を包んでやった。
「……深町、くん……?」
そのまま抱きしめると、つぐみも一緒に後ろから蘭に腕を回す。
「……いいの?こんな……私で……いいの?」
俺もつぐみも何も言わず。
ただ、蘭をぎゅぅっと抱きしめた。
誰が悪いんだろう?
俺を独占しようとする蘭か。
俺から離れられないつぐみか。
どちらも好きでたまらない俺か。
多分、俺が全部悪いんだろう。
でも、どうすれば良かったんだろう?
そして何より、これからどうすれば良いんだろう。
悲観はいくらでもできるけど。
俺はできるだけ、二人とも大切にしたかった。
――だから敢えて俺は、先のことは少しだけ楽観的に考えてみようと思う。
例えばいつかまた、夏の海にでも行って。
綺麗な空を、この三人で仲良く眺める姿を想い浮かべてみる。
そんな都合のいい話なんてあるもんかと、馬鹿な俺ですら思うけど。
だけど、今ぐらいは夢を見てもいいんじゃないか?
そう思いながら、俺は目を閉じた。
蘭を真ん中にして、俺とつぐみで、彼女を両側から抱いて。
そのまま、眠りに落ちた。
――それは夏の終わりの出来事。
次の夏を待ちわびる、最初の一日。
「よわよわお姫様」end.
後編
>>441-452 前後編
>>426-436>>441-452でよろ。
……貼るだけで疲れた(´・ω・`)
蘭様は実を言うと、今まで五人中あまり好きな方ではなかったのですが。
書き終えたらかなーり好きになっておりました。不思議なものですね。
いずれにせよ、楽しんだりアレな気分になったりして頂ければ幸いです。
紅茶奴隷でした。
温泉の人様、投稿乙です。
エロエロですな……ついでに最後のコメントで股間が痛い(笑)
しかし、雄真の相手は杏璃が一番適任そうに思えるのは自分だけだろうか?
紅茶奴隷様、投稿乙です。う゛…… こっちも痛い……
まず最初にごめんなさい。HPでヒント頂いたのに、投稿されるまで何ネタか判りませんでした。
夏めろって知りませんでしたが、シンフォニックレインの人ですか。面白そうですねえ。けど蘭さまコワイ。
乙です〜。
しかし、委員長はともすると犯罪者になりそうな気が……。怖いよぅw
>>438-440>>453-454ご感想有難うございます。
温泉の人様>いつも投稿乙です。
はぴねすネタはいつも楽しそうでいいなあ……と思う私w
やってないのでなかなかコメントしづらいですがいつも読んでますよ。
KURO様>夏めろはしろ氏の絵とみけ氏のテキストのアンバランスなところが好きです。
歪なエロ可愛さ、とでも言いましょうか。その代わりストーリーはシンプルそのものですがw
456 :
温泉の人:2007/08/20(月) 01:08:13 ID:ZQgQlOxF0
久々にレス。
>>453(「甘くない」の方)
毎度ご感想ありがとうございますノシ
>ついでに最後のコメントで股間が痛い(笑)
しかもその仕置きを実行するのが杏璃というのが一番の不安材料w
はるひめさんあたりは逆に仕置きも丁寧にやって気持ちよくさせてくれそうですが。
>しかし、雄真の相手は杏璃が一番適任そうに思えるのは自分だけだろうか?
ここで永遠のUMA×春姫派の俺が通りますよノシ
杏璃は・・・どちらかっつーと俺が恋人に欲s(滅殺)
>>455(紅茶奴隷様)
はぴねす未プレイにも関わらず読んでいただいてるとは・・・光栄です。
ということでお返しに自分も読ませていただきましたが・・・
・・・ごめんなさい。
>>434の段階でギブですorz
何かこう、痛いのとか血とかは苦手なの。下手すれば破瓜の血とかも。
でも迫力と言いますか凄みと言いますか、そういうのはすごく感じさせていただきました。
今後とも是非応援させてくださいノシ
457 :
温泉の人:2007/08/24(金) 22:44:03 ID:cqdy8iPR0
んで温泉の人、立て続けに登場ですよノシ
今回は「ぱちねす!」世界に住まうUMAの気持ちを、全4回にわたってお送りしたいと思います。
※ネタバレ注意! できればはぴりら準ルート攻略後に読まれることを推奨します。
本編UMAが激しく羨ましがってた、異世界UMAの麗しきハーレム生活。
だがそれは、本編UMAが思うほど気軽で羨ましい世界ではなく・・・?
ではでは。
「はぴねす!りらっくす」より「小日向雄真の憂鬱(0日目)」
「……また、やっちまった……」
朝日差す自室のベッドで、激しく後悔する俺。
毛布の中には、俺のでない生温かみがひとつ。
本来ここにあってはならない、心地よくも不快な温もりがひとつ……
「……あ、雄真くん。おはよう」
「……」
後ろから、誰かの明るい挨拶の声。
振り返れば、一糸まとわぬ春姫のしどけない姿がそこにある。
……間違いない。
俺は昨日、春姫と、あんな乱れたことを……
「こんなに朝早くから、元気なんだね。雄真くん」
俺との行為に何の疑問も抱かぬ春姫が、服もまとわず俺に笑顔で話しかける。
「……お前こそ……」
俺は歯軋りしながら、腹の底から言葉を捻り出す。
「……すげぇ元気じゃねーか……
まるで俺と何度もこんなことしてるのが……当たり前みたいに……」
「フフ。変な雄真くん」
(変なのはむしろ、お前の方だろ……)
仮にもお前……恋人でも何でもない俺と……一晩共に過ごしたんだぞ……!
なのに、何で……そんな屈託のない笑顔が出せる……!!
「私とはもういーっぱい、いろんなことしてきたくせに……忘れちゃったの? 雄真くん」
「……」
知らない。そんなこと……
お前が一体何を言ってるのか……全然……わかんねぇ……!!!
「……ちょっと着替えてくる」
「え? 待ってよ雄真くん……今日は一日、私といっしょにいてくれるはずじゃ」
「悪ぃ……俺、今……頭どうかしてるみたいだ」
春姫からの粘った糖蜜の如き誘惑に、思わず胸焼けしそうになるのを懸命に堪え。
俺は乱暴に自分の制服を奪い、階下へと降りて行くのだった。
……この奇妙な現象が始まったのは、だいたい1週間くらい前のことだろうか。
きっかけは、夕空に浮かぶ誰かの姿……
俺もよく知った、大切な親友の姿……
その表情は、俺の知ってるそれよりもずっと深く、寂しげで……
そこから、世界は変わった。
見た目は、いつもと変わらぬ平穏な世界……
ずっと続くと思ってた、普通科で過ごす何気ない日常……
ただひとつ、違ったのは……
知り合いの女の子たちがみんな、異常なまでに俺に積極的なこと。
今朝のように誰かと寝床で挨拶を交わすのも、1度や2度じゃない。
俺はそんな不自然なまでの女の子たちのアプローチに、妙な嫌悪感を抱きつつ……
それでもなおその甘い誘惑を断りきれないでいる自分自身に、苛立ちを覚えるのだった。
そして、今日もまた……
「ぁあっ、ぁぁ……はぁ……兄さん……」
教室の窓にへばりつきながら、肩で息をするすもも。
剥き出しになった彼女の肩や背中、お尻にまで広がる、俺の薄汚れた欲望の塊……
「嬉しい……兄さん……わたし……兄さんと……」
俺とようやく結ばれた喜びに、肩を打ち振るわせるすもも。
そんなすももを見ながら、俺の中にどうしようもない後悔の嵐が吹き荒れるのがわかる。
(俺、ついに……すももとまで……)
今まで長い間妹として慈しんできた存在が、いとも簡単にひとりの女性へと変貌してゆくその様。
俺達の関係って……こんなに……脆(もろ)いものだったのか……?
俺は求められれば……すももとでも……こんなに簡単にやれてしまうのか……?
果てのない絶望にも似た衝動に、俺の胸元がむずむずと嫌な痛みを発しだす。
「……兄さん……」
すももはそんな俺の気持ちに気づいてか気づかないでか、力なく俺の胸に飛び込んでくる。
「……すもも……」
「しばらく……兄さんと、こうしててもいいですか……?」
「……あ、あぁ……」
「うん……兄さん……大好き……」
そのまま俺の胸の中で、すやすやと安らかな寝息を立て始めるすもも。
(すもも……)
頭ではこんなことしてちゃいけないって、わかってるはずなのに……
俺は何故だか、すもものその行為を拒絶することができなかった。
「……はぁ……」
帰宅するその足取りが、すごく重い。
すももとのこれからのことを考えると、本当に頭がどうかなっちまいそうだ。
俺、一体……どうしちまったんだ……
仮にもあいつは……俺の……妹なんだぞ……?
「……雄真さん?」
「……」
後ろから問いかけられるその声にも、反応する余裕がない。
大体こんなことになっちまって、かーさんにどんな顔して会えばいいって言うんだ?
実の息子と娘が、自分の目の行き届かないところで、あんなこと……
「あ、あの……雄真……さん……?」
「……って、ヤなコト思い出しちまった」
考えてみればそのかーさんとも、もう数日前に関係を持ってしまったばっかりで……
もともと向こうから誘われたこととはいえ、自分のあまりの節操のなさに嫌気がさす。
「……」
俺はもう一度、深くて長い溜め息をつき……
「……タマちゃん、ごー」
「はいなっ!!!!」
ドォォォォォォォン!!!!
「のわぁぁぁっ!!??」
背中がえぐれるような衝撃だった。
俺の体は無残に吹っ飛ばされ、潰れたカエルの如く地面に突っ伏す。
「フフ。雄真さん……人の忠告は素直に聞くべきですよ」
「そーやで? 兄さん……この世知辛い世の中、何が起きてもおかしくないでー」
(い……今のはどう見ても小雪さんが……)
そう思いながらも、全身を襲う激しい衝撃に言葉を発することすらままならない。
「あら……これは大変な大怪我です……
さっそく家に帰って、手厚い看護をして差し上げませんと……」
「……ぁぅ……」
俺はもはや無抵抗のまま、小雪さんに無理矢理強制連行される他なかった。
「ふむ……ん……どうですか? 雄真さん……」
「ん……んぅっ……こ……こゆき……さん……」
湯気満ち溢れる、風情溢れる檜張りの風呂場。
その洗い場に腰掛け、俺はただ小雪さんの為すがままになっている。
「ぇろ……ん……ふむちゅ、じゅる、むちゅ……ぁむ、むじゅるぅ……っ」
……脳が、芯から融けていってしまいそうだ。
あの小雪さんに、こんなに強烈に奉仕されてるなんて……
「気持ちいいん、ですね……雄真さん……むふ、はむぅっ……」
「や……やめて、下さい……小雪さん……ぁ、ふぅっ……」
口では懸命に、その行為を押し止めようとするも。
本能では小雪さんの口淫を、もっともっととねだっている俺がいる。
「こんなおっきくした状態で言われても……説得力ないです。雄真さん」
「そ……それは、その……」
「心配しなくても、ちゃんと最後までして差し上げますから……むちゅ、ふむむっ」
「くぅっ!! こ……こゆき……さん……っ」
舌で縫合部を舐めずり、先走りを口で吸い出しつつ。
何かに取り憑かれたかのように、小雪さんはなおも熱い愛撫を続ける。
「はむぅぅっ、むっ、んぢゅるるる……っ、ん、ぐぷ、んぢゅ、ちゅぅぅぅっ」
「あぁっ……小雪さん……俺……もう……」
「んぐ、ぐぷ、んむぐむぅ……っ、んぢゅ、ちゅるっ、んんんん……っ」
俺の子種を誘うが如く、俺のそこを強烈に吸い上げる小雪さん。
俺は、そんな彼女の熱烈な愛に耐え切れず……
どくっ!! どぷっ!!!
俺は小雪さんの口内目がけ、おのが欲望を存分に吐き出していた。
「んぐぅ……ん……んん……っ」
静かに目を閉じ、口内に注ぎ込まれる粘り気に耐える小雪さん。
射精の度、心の中の快感が黒い後悔にどんどん変換されてゆくような感覚。
心地よいのか不快なのか理解できないまま、俺はなおも射精を続ける。
どくっ、びくっ、どくどくっ……
俺はそのまま本能に任せ、最後まで小雪さんの口内に注ぎ込むのだった。
……やがて全てを出し終えると、小雪さんが興奮に満ちた顔を上げた。
「……いかがでしたか? 雄真さん……」
「あ、あぁ……よかったよ……すごく……」
「フフ。雄真さんに喜んでいただけて、何よりです」
艶っぽく微笑みながら、口からつっと零れた俺の欲望を指で口内に押し戻す小雪さん。
「これが、雄真さんのお味……なんですね……
少し苦くて……何だか、獣さんみたいなにおいがします」
口腔をいっぱいに満たす淫猥な香りに、小雪さんがその色っぽい肢体をくねらせる。
小雪さんの胸の高まりをそのまま表したかのように揺れる、小雪さんの豊満な肉体。
……ダメだ……
小雪さんのそんなエロイ姿見せられたら……俺……
「……小雪さん……っ!!!」
むぎゅ!!
気がつけば俺は、小雪さんの胸を固く揉みしだいていた。
「あん……雄真さん……もっと……優しくして下さい……」
「……るせ……小雪さんは……少し、黙ってろ……」
「あんっ、ぁ、はぁ……雄真……さん……」
そして俺は本能の促すまま、小雪さんの見事な肢体を味わい尽くすのだった。
「……はぁ」
戻ってきた自室のベッドの中で、激しく溜め息をつく俺。
結局あの後、小雪さんとおふろの中で2回もやっちゃって……
あれだけ口先で後悔を語りながら、自分の性欲の強さがつくづく嫌になる。
「……」
ふと目を向ける、ベッドの麓のティッシュケース。
こんなことになる前は、毎晩独り身の寂しさをこいつで紛らわしてやるのが日課だった。
だが今は……いや、正確にはあの事件があってから……
俺は、こいつで1回でも自分を慰めてやった記憶がない。
いや……慰めてる暇と精力がない、と言った方が正確か。
何しろ普段抜いてる量の倍近くは、毎日平気で女の子たちに抜かれてるもんな……
「……ι」
どんだけ恵まれてるんだ……今の俺。
これじゃまるで、男たちの永遠の夢・酒池肉林の生活丸写しじゃないか……
(やっぱこんな生活……よくないよな。絶対)
人ってのは不思議なもんで、こんな恵まれた環境に入ると逆に不安になるものらしい。
そして……始めはいくら馴染めないと思ってた環境でも、
時が経てば平気で慣れてしまうものらしく……
(明日こそは……ちゃんとまともな生活送らなきゃな)
もう何度やったかわからない決意を胸に秘めつつ、俺は眠りにつくのだった。
465 :
温泉の人:2007/08/24(金) 22:53:31 ID:cqdy8iPR0
とまぁこんな感じで、ぱち世界のUMAは日々を過ごしていたと。
人それぞれいろんな解釈があるかも知れませんが、少なくとも自分の中ではこんなイメージです。
次回以降、物語はぱちねす本編の話と微妙にリンクしながら進んで行きます。
激しくネタバレ注意な内容となっていきますんで、
ぱちねす準ルートやってないと本気でついてけないかも;
では次回、1日目でまた会いませうノシ
GJ
エロい……主人公がうらやましすぐる
GJ!!
もてる男は大変だなぁ(棒読み)。
俺もそんな悩み、背負い込んでみたい。orz
温泉の人様、GJであります。
UMA、なんかやさぐれてますなあ。
自分、「(チンピラ風の口調で)けっ、いいご身分だぜ」
――ってな気持ちでいっぱいであります。
羨ましい……
>>469(甘くないの方)
せっかくだから2ch外で使われてる表向きのHN使ってみるとか(無謀)
しかし自分がなぜ「温泉の人」なのかご存知な方、今どれくらい残ってるんだろ?
つか思った以上にUMAウラヤマシスって意見が多くてびっくり。
自分は先の展開知ってるせいもあってか、あんまウラヤマシスって感じなかったけど。
さて、物語はいよいよ本編1日目の裏へと進んでいきます。
異世界UMAのめくるめくハーレム生活も、現実UMAの介入により徐々に変化が・・・?
では参ります。
「小日向雄真の憂鬱(1日目)」
――雄真、ごめんね――
「!!?」
その声で、俺は目を覚ます。
目覚めた先は、いつもと変わらない普通科の教室だった。
「??」
どういう……ことだ?
俺はさっきまで……自分の部屋のベッドで……
辺りを見渡す。
春姫が、杏璃が、教室の皆が……俺のことを奇異な眼差しで見つめている。
いや……正確には俺のことを、だけじゃない。
俺と……いつの間にやらつかみかかっていた準の2人を、固唾を呑んで見守っているようだ。
「……雄真……」
耳元で、準の声がする。
「何だ? 準……」
「雄真の方からそんなに積極的に迫ってくれるのは嬉しいけど……みんな、見てるわよ」
「!!! どわああっ」
俺は大げさに驚き、慌てて準の襟首を掴んでいた手を離す。
「わ、悪ぃ……準……」
「もう雄真ったら。そんなに必死になんなくったって、あたしはどっかに行ったりしないわよ」
「そ、そうだよな……俺、どうかしてるわ」
……思い出してきた。
俺は今日、いつものとおり皆と学校に登校してきたんだ。
そして春姫や杏璃、信哉のヤツと、今日の実習の話に花を咲かせながら……
(……実習?)
実習……って、何だ……?
春姫たち魔法科の皆の実習のこと指してるなら、普通科の俺がそこに入り込む余地はないはずだろ?
そうだ……おかしいぞ、俺。
これじゃ、まるで俺が「魔法科」の一員にでもなったみたいじゃないか……
「ほら雄真、急がないとHR始まっちゃうよ?」
「あ、あぁ、そうだな。えぇっと……」
「席は春姫ちゃんの隣、でしょ。忘れちゃったの? 雄真」
「そ、そうだったな……悪ぃ、準」
……そうだ。俺は何も気にすることはない。
俺はふとしたきっかけで魔法科の女の子たちと仲良くなれた、ちょっと幸せな普通科生徒。
それ以上でも、それ以下でもないはずだ。
そう……何も気にしなくていい。何も……
俺は先生の出席を取る声を聞きながら、その違和感を必死に取り除いていくのだった。
「んああっ、あっ、はぁうっ……雄真……ゆぅまぁぁ……」
誰もいない、放課後のOasis。
ぐちゅっ、ぶちゅ、くちゅっ……
股間を伝う水音と杏璃の妖艶な喘ぎ声のみが、夕暮れ空にこだまする。
「杏璃……俺……もう……っぁ、はぁぁっ……!!!」
「ひゃ、あうんっ、ゆう、まぁ……ぁっ、はっ、ひゃあああああああ……っっ!!!」
杏璃が絶頂に至る刹那、俺は逸物を一気に抜き放ち……
どくっ、びゅくっ……!!
「ひゃああっ、あぅっ、あぁ……ゆう……まぁ……」
脈打つ俺の怒張が、杏璃の美しい髪を、体を、ウェイトレス服を……猥らな白で染め上げてゆく。
俺色に染められながら優美に喘ぐ杏璃の姿は、まるで壊れたアンティーク・ドールのように美しくて……
「はぁぁっ、ぁっ、ぁぁ……よかった……よぉ……雄真ぁ……」
「あぁ……俺も、すげぇ……よかった」
そのまま射精した時の勢いで、俺はとさっと杏璃の胸元に崩れ落ちる。
「あ……///」
「杏璃……しばらく、こうしてていいか……?」
「う、うん……雄真の、したいように、して……いいよ///」
俺はそのまま、心音高鳴る杏璃の谷間に顔をうずめ……
心行くまで、杏璃に抱かれるその幸福感に酔いしれるのだった。
……こうしてると何だか、何もかもどうでもいい気持ちになる。
今朝の寝覚めの悪さとか、今の俺の狂った状況とか……何もかもどうでもよくなってきて……
「杏璃のおっぱい……やっぱ、すげぇ気持ちいい」
「んふふ……雄真、何だか赤ちゃんみたい……ふふっ」
俺はもう一度、その温かな心音を確かめようと首を傾け……
(!??)
嫌な予感が、胸をよぎった。
女の子たちといけない行為に走った後の後悔とは、また違う……
ただ、無性に心が急(せ)いた。
俺はまた、確かめなきゃならない。
この世界の……そして「アイツ」の……「真実」を……!!
「ゆう……ま……?」
「ごめん、杏璃……すももとかーさん、待たせてるからさ。
この続きは、また今度で……いいか?」
「うん……したくなったら……いつでも……いいよ。あたし……待ってるから」
「あぁ……んじゃな。杏璃」
俺はそのまま何かに急きたてられるかの如く、自分の教室へと駆け出して行くのだった。
夕暮れの教室。
全開きになった、教室の窓。
窓の外から風が吹きつけ、カーテンの布をせわしなくかき鳴らしてゆく。
「……準……」
……見覚えがあった。
この俺が、一度も見たことのないはずの……ひとつの光景。
その視界には……確かに、「準」がいた。
奇妙な服とマジックワンドを携えながら、俺に微笑む「準」の声。
その表情は、今まで見たことのないくらい切なく、胸を裂くほどの苦しみに満ちて……
「っぐぅ……っ!!!」
頭が、痛い……
「現実」の「俺」と、今の俺とが激しく交錯して……絶えず、せめぎ合っている……
(準……俺、俺は……一体……)
……問われるのは、俺の存在。
「俺」を幸せにするために生み出された……俺の存在……
じゃあ……俺は一体何なんだ?
俺は……そしてこの世界は……一体、何のために生み出されたって言うんだ……?
(教えてくれよ……準……俺は……俺は……)
夕風にたなびくカーテンの音も、俺には答えを教えてくれなくて。
このまま闘い続けたら……俺の精神が持たない……!!
(……準……!!)
気づいたとき。
俺は何故か、またOasisにいた。
「すももちゃん、雄真くん……また、みんなで一緒にしましょうね」
「はい……お母さん」
全身「誰か」の精液まみれになりながら、俺の上で満足そうに吐息するふたり。
……何が……どうなってるんだ……?
俺はさっきまで……確かに、教室に……
今朝のあの感覚と、同じだった。
まるで……俺じゃない「誰か」が……知らないうちに、俺を導いてるかのように……
(っぐ……)
胸が、痛む。
俺じゃない「誰か」が……確かに、目の前のふたりの女を楽しんだという事実に。
この俺が味わうはずだったふたつのおいしそうな果実を、今まさに目の前で奪われた悔しさに。
そして……その「誰か」に、俺自身が今確かに侵されてゆく実感に。
「あらあら、雄真くん? すももちゃんの中、そんなによかったのかしら?」
からかうように微笑むかーさんの声すらも、どこか遠くに聞こえて。
「……悪ぃ、かーさん、すもも……俺……」
がんがんと脈打つ頭を懸命に上げ、俺は着衣の乱れを整える。
「……兄さん……」
「先、帰ってるな。すもも」
不安げに俺のことを見つめるすももの頭を軽く撫で、俺は荷物を持ち駆け出して行った。
……訳がわからない。
急に不安定になり始めた自分自身の存在感に、ひどく胸が痛む。
俺……一体、どうしちまったんだ?
ここは確かに、俺の……俺だけに許された世界なんだろ……?
「……」
……我ながら、ひどく身勝手な考え方だ。
まるで俺が、この世界の覇者にでもなったかのような傲慢な考え……
俺はそんな怖ろしい考えを少しでも胸に抱いた自分に、ひどく嫌悪感を覚え……
それでもなお襲ってくる自分の存在への恐怖に……混乱を隠し得なかった。
「あ、雄真くん。おかえり」
俺の家の軒先で当然のように待っていた春姫の存在に、その言葉でようやく気づくくらいに。
「あ、あぁ……あれ? 何で春姫が……」
「忘れたの? 今日の夕ご飯は、私が作ってあげるって……
ほら……こないだすももちゃんやみんなと約束したじゃない。
雄真くんの夕ご飯、みんなで交代で作ってあげようって」
「あ……」
そういえばはるか昔、すももや皆とそんな約束したことがあったっけ。
何でも、すももが夕ご飯完成させたタイミングで春姫や沙耶ちゃん、準のヤツまで押しかけてきて……
結局俺のハラと精神が持たないってことで、曜日ごとに食事当番を持ちまわりにしたんだった。
ということは、今日は春姫の……
ぐきゅう
そう思うと、急に俺の腹の虫が元気になり始めた。
「あら? 雄真くん……もうおなかすいちゃったのかな?」
「ゔ……///」
春姫にその音をモロに聞かれ、思わず赤面する俺。
「……ゴメン。今日、いろいろと体力使いすぎちゃって」
主にあんなことやこんなことで……だけどなι
「はいはい。今日は腕によりをかけて、雄真くんの大好きなものいーっぱい作ってあげる♥」
「あ、あぁ……そうしてくれると助かる」
何だかんだ言って、やっぱ今の俺、恵まれてるよな……
ほんの1週間前までは考えられなかったくらいの幸運を天に感謝しながら、俺はそそくさと家に上がっていった。
「ふぅー……もうおなかぱんぱんだぜ」
「フフ……雄真くん。食べた後すぐ寝るとお行儀悪いよ」
食後の心地よいまどろみに、春姫がクスッと穏やかに微笑む。
……すももとかーさんは、まだ家には帰ってきてない様子だ。
まさか今日春姫が家に来ることを知ってて、気を利かせてくれてるとか……はないよな。さすがに。
やがて春姫は後片付けを終え、俺の横に座り込んできた。
「お疲れ、春姫。悪いな……いつもお世話になっちまって」
「ううん。ホントは毎日でも、雄真くんにごちそうできたらいいんだけど」
相変わらず春姫のヤツは、こっちが思わず嬉しくなっちまうようなことを平気で言ってくれる。
でも……春姫のこの言葉も、どこまで本気で言ってくれてるのかわかんないよな……
もともと春姫やみんなとあんな素敵なことになってること自体、おかしなことなのだ。
今の春姫の言葉だってきっと、俺の都合のいい夢の産物で……
「……よくわかんないな、そういう気持ちって」
俺はそんな疑念を少しでも晴らさんと、春姫にふと問いかけていた。
「ん……そうかな? 私としてはごく当たり前の気持ちなんだけど」
「うーん……だけど……俺達ってまだ夫婦とか恋人とか、そんなんじゃないだろ?
なのに俺ひとりのためにここまでしてくれるなんて……俺、やっぱわかんね」
「……そうだね。雄真くんからしたら、少し都合のいい女に映ってるのかも知れない」
春姫は目を閉じ呟いた後一呼吸置き、再び静かに語り始めた。
「でも……私は、雄真くんに少しでも幸せであってほしいから……
雄真くんが少しでも喜んでくれるなら、私……何だってできると思う」
「春姫……」
「……わがままなのかもね、私。
私じゃなくても、他に雄真くんに幸せをくれる人はいっぱいいるはずなのに」
「……」
偽りの幸せだらけのこの世界だけど。
春姫が俺にくれたこの言葉だけは、何故か信じてもいいような気がしていた。
「……雄真くん……」
やがて春姫が、潤んだ瞳でこちらを見つめてくる。
春姫がこんな目で見つめてくるときは、決まってそういう展開になってきた。
今日も、きっと春姫は……
そう思うと、嫌悪感を感じながらも……俺の心は、図らずも深く高鳴ってゆく。
「いっぱいご飯食べたから……雄真くん……食後の運動、しよっか?」
「……春姫……」
俺はその艶めかしい誘惑に耐え切れず、そっと春姫の頬に手を回し……
ガチャッ
「ただいまー!! ごめんね雄真くん、お買い物遅くなっちゃったー!」
「もうお母さんったら、大感謝セールだからっていろいろ買いすぎですよ」
「!!!!」
何というバッドタイミング。
俺達の行動を見計らったかのように、かーさん達が家に帰ってきた。
「ま、まずい……春姫、ここはどっか隠れる場所を」
「大丈夫だよ、雄真くん……ここは私に任せて」
「え……?」
春姫の意図がわからないまま戸惑う俺をよそに、堂々と玄関口へ向かってゆく春姫。
「あらぁ春姫ちゃん……不肖の息子がお世話になったみたいね」
「はい……雄真くん、今日もお料理いっぱい喜んでくれました」
「むむ……やっぱり強敵ですね、姫ちゃん。
今度こそは腕によりをかけて、兄さんにいっぱい喜んでもらいませんと」
「フフ。すももちゃんならきっと大丈夫だよ」
陰から恐る恐る覗き見していた俺は、あまりにあっさりとした会話内容に拍子抜けしていた。
俺の予想じゃ、てっきりすもものヤツがムキになって春姫に食ってかかるのかと思ってたけど……
案外その辺、みんな割り切ってるのか?
「それじゃ、今夜も息子を頼むわね。春姫ちゃん」
「いいですか姫ちゃん……兄さんのことを泣かしたりしたら、承知しませんよ」
「うん。ありがとう、音羽さん、すももちゃん」
……やけにあっさりしすぎだ。
仮にもついさっき関係を結んだばっかりの俺を、あっさり他の女の人に渡しちまうなんて……
「それじゃ、行こっか。雄真くん」
「あ、あぁ……」
俺はなおも釈然としないまま、春姫とふたり部屋に入るのだった。
「んふっ、んっ、ん……気持ち……いい? 雄真くん……」
豊満な胸をたぐり寄せ、俺のそこを包み込みながら、無心に俺のものを扱き上げる春姫。
春姫の乳房のむにゅむにゅしたやわらかさが、俺のそこに無限の心地よさを与えてくれる。
「ぅくっ……ぅぅ……春姫……」
だが俺は……心地よさと困惑との狭間で、なおも混乱していた。
やっぱおかしいよ……みんな。
俺を幸せにしたいからって……そんな一心で、ここまで我を捨てることができるのか……?
……大体、春姫も春姫だ。
春姫といつかはこんなことしたいって……そんな俺の邪な期待を見透かしたかのように、自分の胸で……
「ふふ……雄真くんのここ、おっきくなってきた。
いいなぁ……雄真くん……すごく気持ちよさそう……」
そのまま俺のそこを羨ましがるかのように、ぺろぺろと舌先で愛撫する春姫。
じりじりする快感と、尿道の根っこを押しつけるかのような衝撃が、俺の局部を襲う。
「いいよ……雄真くん……私の胸と、お口で……おっきくして……」
「んぐぅっ!?」
そして俺の先端が温かな口腔に収まった瞬間、恐ろしいまでの情動が俺の胸を掻き毟るのがわかった。
もしも今、この瞬間……この魔法が切れたら……
もしこの瞬間……「あいつ」が……俺の精神を乗っ取りに来たら……
「むぐぅっ、んぐ、くちゅっ……んはぁ……ぁむ、んむぅ……っ」
「うぁぁ……ぁっ、ぁぁ……はる……ひ……」
この快楽も、温もりも、幸せも……全部、「あいつ」のものに……
……嫌だ!!!
この世界も、春姫も、そして「俺」も……全部、俺のものだ!!!!
バサッ!!!
俺はその口淫を無理矢理引き剥がし、春姫の体をベッドに押し倒した。
「んはぁっ……ゆ、雄真くん……?」
突如として変貌した俺の態度に、春姫が戸惑いの表情を見せる。
だが……俺の行為を押しとどめるような、そんな気配は見せない。
「どうしたの? 雄真くん……今日は何だか、すごく積極的なんだね」
それどころか、俺のこの身勝手な行為を……喜ぶようなそぶりまで見せて……
「何で……何でそんな顔ができる」
「え? ゆ……雄真くん?」
「答えろよ春姫……お前今、どんな気持ちで俺に抱かれようとした?
俺のことが好きだから? 俺を幸せにしたいから? それとも……」
「雄真……くん……」
……わかっていた。
春姫がどんな気持ちで、俺にこんな猥らな行為をはたらいてくれてるのか……
それだけに……歯痒かった。
自分の存在の薄っぺらさが……そして、それに苛立ちを覚えている俺自身の心が……
「やっぱり……同情なのか?
吹けばすぐ消えちまいそうな俺への……せめてもの慰めのつもりなのか……?」
「雄真くん……違うの……私……」
俺を見据える春姫の視線が、徐々に潤んでくるのがわかる。
だけど……止められなかった。
俺の心を切ないまでに掻き毟るこの虚しさを、押しとどめることはできなかった。
……どうせ、明日消えちまう命だったら。
それなら、それでもいい。
俺はただ欲望に身を任せ、目の前の女体をただ犯せばいい……
ぷちっ……しゅるっ……
俺が乱暴にその服を引き剥がしてゆく間も、春姫は……何も言わなかった。
ただ……俺を心の底から哀れむかのような、そんな悲しい視線で。
(……やめろ……)
お前にそんな顔をさせるために、俺はお前を抱くんじゃない……
春姫……俺は……俺は……!!!
そのまま無抵抗に、春姫が俺に犯されてゆく様を……俺は、頭のどこかでぼんやりと見つめていた。
局部を確かに伝う快楽も、春姫の熱も、涙も……どこか他人事のように思えて……
ひとを抱くのがこんなに虚しいなんて、初めてだった。
484 :
温泉の人:2007/08/26(日) 22:59:21 ID:ZixZ8gkh0
・・・こんなに暗いエロシーン書いたの初めてです・・・w
自分の存在の薄っぺらさに葛藤するUMAの心情、うまく伝えられていればいいのですが。
(ちなみにこの後、事後なふたりの意識に現実世界のふたりの意識がリンクして、
原作2日目朝のあのウマーな展開につながるって設定)
自分の存在意義、そして消滅への不安にさいなまれるUMA。そして次回、更に運命は加速して・・・?
次回もまたお楽しみにノシ
>484
乙
ぱちねすの雄真の意識が現実世界にある間の話・・・すごく続きが気になる!
>>484 GJですよ。
そりゃ、自分も明るい方がいいですけど、そっちはもう本編やアフターストーリーで
描ききってしまった感もあるくらいなんで、新鮮さを求めるならこんな展開もアリかな。
いいね!
大作になりそうな感じ
488 :
温泉の人:2007/09/02(日) 23:45:23 ID:nQ7nDlB60
ちょっと遅くなりましたが、2日目投稿行きたいと思います。
(こっから現実UMAがほぼ1日中出張ってくるんで、どう処理しようか本気で悩んだ;)
そして翌日彼が目覚めたとき、既に彼の周りはがらりと変化していて・・・?
「小日向雄真の憂鬱(2日目)」
(……!?)
目を覚ます。
一面闇に覆われた檻の中で、俺はひとり憔悴する。
(どうなってるんだ……これ)
「俺」は確かに、そこにいた。
「俺」は確かにそこにいて……立って、歩いて、考えていた。
だけど……それは俺じゃなかった。
俺じゃない「誰か」が……俺に成り代わって、この世界を味わっている……!?
(おい……「誰」なんだ……お前)
必死で中から呼びかける声にも、答えるものはなく。
(俺の体で……一体、何をしようって言うんだ……!?)
……心のどこかで、確かに感じていた予感。
それが今になって、急に現実感を帯びてきたように感じた。
やっぱり俺は……「何か」によって創り出された偽りの俺……
そして今、本物の「俺」が現れ……俺のいるこの世界をも、蝕もうとしている……?
(嫌だ……嫌だ……嫌だ!!!)
このまま俺が、「奴」に寄生されちまうなんて……考えたくない!!!
もっといっぱい……この温かな世界に浸っていたい……!!!
そんな俺の思いをよそに……時は無情にも、「そいつ」の意のままに動いてゆく……
――放課後、夜の公園にて。
俺の視界に、ふたりの女の子が現れるのがわかった。
春姫と、そして……小雪さんだ。
(……春姫……)
昨日あんな気まずい状況で、抱いてしまったばかりだ。
もし俺本体が表立って出てたら……きっと俺は気まずさの余り、春姫と何も話せなかっただろう。
そういう意味では、ある意味俺自身が直接目の前に出てなくて助かったのかも知れない。
『……雪さんはこれからどうするんですか?』
『行ってみようと思います、…へ』
「俺」と小雪さんが、何やら会話をしている。
そして会話が終わった後、「俺」と春姫、小雪さんの3人が……校舎裏の森への侵入を始めた。
(一体この先で……何が……)
俺は固唾を呑みながら、その顛末を見守る。
……やがて俺達の前に、もくもくと湯気を立てる温泉が顔を覗かせた。
そこで立ち止まって、「俺」達が何やら会話を繰り広げている。
『ささ……それでは雄真さんも神坂さんも、一緒に入り………う♪』
『え、あの……』
会話は断片的にしか拾えなかったが、雰囲気は十分に伝わってきた。
どうやらこの温泉に、3人一緒に入ろうという話らしい。
ということは……もしかして……
『ではさっそくお二人とも…になっ………』
『え!? ちょっと待っ……まさか一緒…!?』
(!! つっ……)
思考が、流れ込んでくる。
この後の展開を予測してしまった「俺」の、ある意味男としては当然の期待。
ま、まさか……
「俺」のヤツ、俺を出し置いて、そんな素敵なことを……!?
(だ……出せ!!! 俺も……俺もいっしょに……っ)
……何だか、すごく滑稽な光景だ。
自分に成り代わって女の子とおいしい目に遭おうとする男を、陰で必死に押し止めようとする図。
何て……何て醜いんだろう。
そんなだからいつも、本物の自分にいいところをかっさらわれて……
(???)
ふと俺は、違和感を感じた。
流れ込んでくる思考に、必死で何かを抑えようとする衝動が混じってきたからだ。
そして……
『すいません、やっぱり止めて………す』
『ふぅ……仕方ありませんね』
その会話の欠片が、俺の耳に届いた後……
ばっ!!!
「俺」は一目散に、その場を駆け出して行っていた。
(……一体、どうして……)
流れ込む思考パターンから、彼が必死で自分を抑えつけていたのはわかった。
しかし、何で……
ふたりと温泉に入って、少しでも幸せな気持ちになれるなら……別にそれで……
やがて俺は……そいつと会っていた。
俺の世界の全てを形作っていた、そいつの存在に。
(準……)
こんな形でアイツと会うのは、初めてだった。
何か……変な感じだ。
準のヤツとガラス越しに向き合ってるかのような、そんな微妙な距離感。
『はあ〜、星空が綺麗だね〜』
『そうだな〜』
どうやらふたりは学園の屋上で、流れる星空を見つめているようだった。
この時、この場所で……ふたりにだけ流れる不思議な時間。
準のヤツとふたりきりなんて、いつもならもっと派手に渋ってるところなのに……
何故か今日は、準の望むこの時間を尊重してやりたい……そう思っていた。
……きっと本物の「俺」も、同じことを考えてたのだろう。
さっきまで交わりもしなかった「俺」の感情と自分の感情とが、穏やかにシンクロしてゆくのがわかる。
(でも……これから、どうするんだろう)
準の世界を壊し、世界を元通りに戻せさえすれば、それで済む話なのかも知れない。
だが……「俺」は、そんなことを望んではいなかった。
いくら世界を元に戻しても、準が元に戻らなければ……結局は同じ。
だからこそ……「俺」は悩み、困惑し……
結局何の手出しもできないまま、ただこの世界の為すがままになっているのだ。
(……)
少しだけ、嫌な感じがした。
現実世界の「俺」は、こんなにも元通りの世界を望んでいるというのに……
俺はなおこの世界の意志の赴くまま、見せかけの幸せに浸っていたいと願っている……
(結局……俺って、何なんだろう)
準が俺のことを幸せにしたい、その欲求を叶える為だけに生み出された偽りの存在?
本当に、そうなんだろうか?
本当に準は、そんな薄っぺらい自己満足のためだけにこの世界を生み出したというのか?
『……ごめんって言わなきゃいけないのは、あたしの方なのにね』
そう思考に暮れているうち、準がそっと「俺」に話しかけてきた。
『あのね、ある人に……謝りたい気持ちでいっぱいなんだ……』
『え……?』
『あたしの気まぐれで、きっとあたしはその人に、いっぱい迷惑をかけちゃってると思うから……』
『えっと……あの、その相手って……』
「俺」がそっと、自分のことを指差す。
だが準は、首をそっと横に振った。
『けど、こうして雄真のこと見てると、どうしても重なっちゃうから……』
伝えたくても伝えられない、準の感情。
いいじゃないか……別に……
お前が……準が……想いを伝えたい相手は……今まさに、お前の目の前にいるのに……
(……くそっ!!!)
悔しかった。歯痒かった。
自分の世界を守ることに必死で、肝心の準の気持ちを想ってやれない自分に……
途方もなく、嫌気が差した。
今俺が……表に出て、準のその細い肩を抱きしめてやれたら……
準の目の前で、その溢れんばかりの気持ちを全て受け止めてやれたら……
『……今日は、もう帰るね。付き合ってくれて、ありがと』
そんな俺のやるせない気持ちも虚しく。
準はいつもどおりの軽い微笑みを見せ、そのまま屋上を後にしていた。
「準……」
「俺」が……そして、中に住まう俺が……その様を、何も出来ず見守っていた。
……きっと、準は後悔している。
現実世界の「俺」と……今のこの俺の両方を……自分の都合で、巻き込んでしまったことに。
フアァァァァァァ……
刹那、まばゆいばかりの光が差し込み……
気づいた時には……俺はまた、俺自身の意志でそこに立っていた。
俺の中でずっと俺のことを操ってきた「俺」の存在は、もうどこにも感じられない。
「……準……」
……ようやく、わかったような気がした。
準が、この俺に一体何を求めていたのか。
そして、その準の求めるものを見つけるためには……
俺は、俺のままでこの世界に居座っていてはならない……そう、どこかで感じていた。
495 :
温泉の人:2007/09/02(日) 23:55:02 ID:nQ7nDlB60
・・・何か自分でも展開的にちょっと混乱してきてます;スミマセン。
一応現実世界からやってきたUMAの意識を指すときは、「俺」と鉤つきで書いてますけど・・・
かえってわかりにくくなったりしてないかなぁ? 不安。
次回怒涛の最終回です。どうぞお楽しみにノシ
>495
雄真の区別はついてるので大丈夫
次も期待してます
準にゃんが人気のあるわけが良くわかったような気がするぽ
クライマックスにも期待
498 :
温泉の人:2007/09/09(日) 22:57:12 ID:BMSQMyWy0
>>497 さぁ、今すぐはぴりらで準を崩す作業に戻るんだw
ちなみに2日目にある『』つきの台詞は、全て原作のものをそのまま持ってきてます。
・・・だから言ったでしょ?「激しくネタバレ注意」って;
さていよいよ最終日です。
本編では4日目が最終日ですが、4日目はもう殆どが現実世界のUMAと準の物語となるため、
今回の主人公であるぱち世界UMAの物語は3日目で終わらせるという形をとっております。
あらかじめご了承下さい。
ではどうぞ。
「小日向雄真の憂鬱(3日目)」
……翌朝。
目が醒めると、既に現実世界の「俺」は俺の意識の中に飛び込んできていた。
昨日ほどの憔悴の感は、もうない。
ただひたすら、準の世界を救いたい。そう、心から願っていた。
今日も一日、似たような一日だった。
いつも通り、女の子たちが尋常じゃないレベルで俺に迫ってくる日常。
特にすももや沙耶ちゃん、そして伊吹のヤツまでもが俺に懸命にアタックを仕掛けてきたものの、
準のことを救いたい一心で行動してる「俺」にとっては、さしたる問題ではなかった。
だが、少しだけ気づいたことがある。
俺が俺のままで活動してた時は気づかなかったけど……
準のヤツはことある毎に、女の子たちのアプローチをせっつき回ってるような感じがする。
小雪さんが俺にカレーを振る舞えば、その行為を喜ぶかのように派手に羨ましがった挙句、
そのカレーを俺に「あ〜ん」してみろと小雪さんを炊きつけてみる。
おまけに沙耶ちゃんが俺に手紙を渡して来た時など、
「生まれたままの私を見てだって!」などあることないこと付け加えて煽ってくる始末。
『いいからさっさと幸せになってきなさい♪』
しまいにはこう一言付け加えながら、どっかへ去って行ってしまった。
(……う〜んι)
準のヤツが何のために、ここまでしてくるのかはわからない。
だが、少なくとも……
準がいつでも、俺の幸せを一番に考えてくれてる……そのことだけは、理解できた。
そして迫り来る全ての誘惑を跳ね除け、放課後……
『よし……じゃ、始めるぞ……』
夕暮れの教室で準にワンドを構えさせ、気を集中させる「俺」。
……既に現実世界の「俺」が俺の行動に干渉していたことは、準にはバレバレだった。
昔から思ってたけど、準のヤツはいつも妙に勘がいい。
こっちの考えてることや悩んでることなど、準の前では全部筒抜けになってしまう。
……ある意味、すごく付き合いやすい間柄なのだ。
隠し事も秘め事も、準の前では全部意味をなさない。
だからこそ……俺は包み隠さず、あるがままの自分で準と付き合えるんだと思う。
『エル・アムダルト・リ・エルス……』
「俺」はゆっくりと、その言葉を紡ぎ始め……
ガシャン……ッ!!!
(え……)
訳が、わからなかった。
世界が、その魔法を拒絶したのだ。
『あれ……何で……』
想定外の出来事に、目を白黒させながら戸惑う「俺」。
だが俺は……その瞬間に、全てを理解していた。
準はまだ……この世界を必要としている。
準はまだ、この世界に多大なる心残りを残している……
皮肉にも俺は、この世界の根幹を為す立場にいたため……その理由を、全て理解できたのだった。
「俺」の意識が、俺の中から遠ざかってゆく。
俺はまた自分の意志で、世界を動き回れるようになる。
だが俺は……どうしたらいいかわからなかった。
俺の前でうつむき、悲しそうな目でたたずむ準を前に……何もしてやることができなかった。
「雄真……」
理解、してるはずなのに……
準がまだ、この俺のことを必要としてくれてるって……痛いくらいわかってるのに……
それでもなお、どうすればよいかわからない自分が……たまらなく歯痒かった。
「元に……戻ったんだ……」
準は俺の存在を確かめるかのように、俺の掌を、体を……自分の手でじっくり触ってゆく。
「準……」
準の、男にしては妙に繊細な掌の感触を味わいながら……
俺はもう一度、自分の存在意義を考えてみた。
俺は……準の幸せのために、この世界と共に生み出された存在……
だったら……準の幸せって、一体何なんだ?
こんな世界まで作って……一体準に、何の得があるっていうんだ?
「……すっかり……遅くなっちゃったね」
そんな俺を前に、準が取り繕うかのように言葉をかける。
「準……」
「さ、雄真。遅くならないうちに、さっさと引き上げちゃいましょ」
準がその全てを俺に悟られまいと、懸命に自らを押し殺していることはわかった。
だが……
そんな準の行為を黙って受け流してやれるほど、今の俺には余裕がなかった。
「……わかってるよ、準」
「え……」
突如として投げかけられた言葉に、準がきょとんと目を見開く。
「全部、知ってる。俺のこと」
「雄真……まさか……」
「ニセモノなんだろ? 俺。準の魔法の力で生み出された、偽りの俺」
「あ……あぁ……」
途端に準は青ざめ、ふらふらとその場に倒れこみそうになる。
がしっ……!!
間一髪のところで、俺はその体を受け止めることに成功した。
「雄真……そんな、どうして……」
「バレバレなんだっての、お前のやることは。
もう何年こうやって、腐れ縁続けてるって思ってるんだ?」
「雄真……っく、ぅぅ……ゆぅま……」
……それは、ここに来て初めて見せた涙だった。
俺を幸せにするためには決して悟られてはならないと、ずっと心の中で堪えてきた準の涙。
「ごめんね……ごめんね……雄真……」
「準……もういいんだ、準……」
「あたし……あたしのせいで……雄真まで、傷つけちゃって……」
果てのない後悔に、俺の胸の中で泣き咽ぶ準。
こんなにも重く、大きなものを覆い隠してまで……
それでもなお、準は俺の幸せを一生懸命探してくれてたというのか……?
「……謝らなきゃいけないのは、俺の方だ」
「……雄真……?」
思わず感極まり、準の小さな体にそっと腕を回す俺。
「準は……ずっとひとりで……苦しかったんだろ……?
バカだな……こんな……こんなになるまで……ずっと独りで苦しんで……」
「雄真……」
「そしてそんな、準の気持ちに気づけなかった俺は……もっと最低の大バカ者だ」
……後悔しても、始まらなかった。
今はただ、準の本当の気持ちに少しでも近づけたことが……ただ純粋に嬉しかった。
「本当に……ありがとな。準。
俺……この世界に生まれてからまだ1週間ちょっとしか経ってないけど……
すごく……すごく楽しかった。
あんまり楽しすぎて……現実に戻るのが、すごく辛くなるくらい……」
この世界全てを覆う、切ないくらいに甘い空気に。
そして、準への溢れんばかりの感謝の思いに。
俺は準のその華奢な体を、折れんばかりにぎゅっと抱きしめていた。
「雄真……」
「でも、それじゃ……いけないんだよな。
準にとっても……そして、俺にとっても」
「雄真……でも、だけど……」
「だから……こんな世界とは、もう今日でお別れ」
胸に抱いた準の体を、そっと遠ざける俺。
それは、今までこの世界に甘えて生きてきた自分への、訣別の証だった。
「明日また……ホンモノの俺が、お前を迎えに来るから。
そん時まで……覚悟、決めといてくれよな。
ハチの奴、それにみんなが待ってる俺たちの世界に、きっと戻ってきてくれるって」
「でも……それじゃ……雄真は……どうなっちゃうの?」
「……今の準に必要なのは、俺じゃない。
お前が本当に欲しいものなんて、ここにいちゃ絶対に手に入らない。だから……」
「……やだよ……雄真……そんな、悲しいこと言っちゃ……」
「だから……またな。準」
「雄真……ぅぅっ……ゆぅまぁ……っ!!!」
胸の奥からぐっとこみ上げるものを堪え、俺は精一杯、笑顔で準と別れた。
……きっと、これでいい。
明日になれば、きっと本物の「俺」が来て……
ここでは決して埋まることのない準の空白を、全て埋めてくれるはずだから。
夕闇照らす、放課後の通学路。
この世界に来てから、何度も何度もみんなと通った道。
「……これで……よかったんだよな……準」
……思えば、本当に短い間だった。
短い間だったけど、本当に……いろんなことがあった。
いろんな女の子達が、俺を求め……そして数え切れないくらい、女の子達といっぱい関係を抱いた。
だけど……その生活も……今日で終わる。
明日できっと、この世界は消えてなくなり……そして、俺は……
「っぐっ……っく、ふぅぅぅ……っ」
やり切れない空虚と寂しさに、俺は泣いた。
俺は……そしてこの世界は……少しでも誰かに、何かを残してあげられたのだろうか?
俺が俺としてこの世界に産み落とされた意義は、少しでもあったのだろうか?
その答えは、決して俺が知ることはないだろう。
だけど今この時だけでも、準が、みんなが……俺のことを必要としてくれたことに、深く感謝していた。
「……ありがとな、準……」
潤んだ視界で見上げる夕空は、どこまでも澄み渡って、美しかった。
視界が、白んでゆく。
世界を構築するひとつひとつが、白い光の粒子となって分解されてゆく。
その様に……そして、それらひとつひとつが語りかけてくる言葉に……
俺はいよいよ、俺の世界の終わりの時が来たんだと実感する。
「……」
後悔はなかった。
ただ準が、この俺と本当の意味での訣別を決意してくれたことが……純粋に嬉しかった。
(さよなら……)
どこかで、声がする。
俺を、そしてこの世界を生み出してくれた人の、優しい言葉。
そして、それを機に……
俺の意識もまた、世界の意志と共に砕かれてゆくのを感じる。
「……」
本当に、優しい世界だった。
とても優しくて……そしてどことなく、悲しい諦めに満ちていて……
だから……さよなら。
この世界を形作る全てに……さよなら。
(ありがとう……楽しかったよ、とても……)
こちらこそ、ありがとな。準……
世界の全てに響き渡る準の声に抱かれ、俺は最後にひとつ、涙をこぼした――
(「ぱちねす!」準エンディングへ続く)
507 :
温泉の人:2007/09/09(日) 23:15:47 ID:BMSQMyWy0
というわけで、これにて完結です。
思えばもう1年も前なんだよな・・・このED見たの。
当時から凄く感動してて・・・いつかこれ話題に1本書けたらいいなって、ずっと思ってました。
それを今回実現できて、まずはめでたしめでたし! といったところです。
今回の話のためにテキスト編集と並行してぱち準ルートやってたけど、やっぱ何度見てもいいなぁ・・・
もうはぴりらアンスコしちゃったよ!って方も、またまだぱちねす未経験だよ!って方も、
今回の話をきっかけにもっかいぱちねすという作品に触れていただけたら幸いです。
(って、何か社員みたいだ、俺)
ではではノシ
>507
やばい、マジでウルッと来た・・・
ほしゅ
「ねえ、綾佳」
夢美の声に、綾佳は伝説の蟲の触手をちょうちょ結びする手を止め、顔
を上げた。
綾佳の関心がそれた隙に蟲が逃げようとしたが、両手に抱きかかえて阻
止する。ひんやりとした感触が手に伝わった。
「なんだ、おやつの時間か? 今日は久しぶりにカステラが食べたいぞ」
「違うわよ。あのね、あなたもそろそろここでの生活にも慣れてきたでしょ?」
この問いは、単に新しい住処に慣れたかというだけでなく、これまでの蟲
使いとしての生活とは全く違う環境に慣れたかを訊ねたものだった。
本当のところ、蟲が周りにほとんどいないという環境に、綾佳はまだ戸惑
いもある。物心ついたときから蟲と共に在った彼女にとって、己の一部が欠
けているような気がするのだ。
それをまぎらわせるため、実は誰にも内緒で郊外にある森で、何匹かの
蟲を育てている。
しかしそんなことを言えば夢美が心配するのは分かりきっているので、綾
佳はことさら尊大に答えを返した。
「まあな。あたしにかかれば、怠惰にただ日々を過ごすだけの夢美のような
一般人の行動を会得するなぞ、赤子の手をひねるより容易いことよ」
腰に手を当て、ふんぞり返りながら言う。少女から開放された蟲が、床を
這って必死に離れていく。
義理の娘の言葉に、夢美の眉がぴくんとはねる。
子供の言葉に怒るのは大人気ないと思ったのか、目に見える反応はそれ
だけだったが、出てきた言葉は彼女の感情を反映して、少しだけ低い声に
なっていた。
「――そう。だったら、一人でお買い物してこれるわよね? 急な用事がで
きちゃって、ひょっとしたら帰りが遅くなっちゃうかもしれないから」
「ぬ。……それはもしや、『はじめてのおつかい』というやつか!?」
綾佳は保護者の様子になど頓着せずに、衝撃的な発言の方に興奮して
聞き返した。
「ええ。ていうか、あなたやっぱりそういう経験ないの?」
「うむ。蟲使いの里においては『店』や『金』など、現実ではなく概念上の存
在に過ぎんからな。将来仕事をするときのために、いちおう仕組みを教えら
れはするが、実際に利用するのは蟲使いの試練に受かってからだ」
「はぁ。やっぱり蟲使いって非常識ねぇ。あなたを初めて買い物に連れて行
ったときに、やたらきょろきょろしてたのはそういうこともあったからなのね」
一人納得している夢美だが、綾佳のほうはもうこれ以上待っていられな
かった。
握りこぶしを作りながら立ち上がり、勢いよくまくしたてる。
「ええいっ、夢美! 焦らしプレイをするなっ。あたしは一刻も早く『おつかい
』をしたいんだ。さっさと金を寄こせ!」
「……はいはい。すぐ持ってくるから、ちょっと待ってよ」
あきれたように言い、夢美がお金を取りにその場から離れる。
彼女の後ろ姿が別の部屋に消えると、綾佳はこらえきれずに笑みを浮か
べた。
「にひひ。いよいよあたしも商店街デビューか。あたしの凶悪なかわいさと優
雅で賢い振る舞いを見れば、注目されずにはいられまいて。まずはご近所の
アイドルとなって、大衆どもが自らお菓子をの寄進を申し出るように仕向ける
か」
綾佳が様々なお菓子を食べる妄想に浸っている間に、夢美が千円札を
二枚持って、戻ってきた。
「はい、これ。失くさないでよ」
差し出されたお金を受け取りながら、綾佳は笑顔で返答した。
「心配するな! それより料理を失敗して、あたしが買ってきた材料を無駄
にしたりするなよ」
元気に外へ駆け出していく少女を見遣りながら、夢美はため息をついた。
「はぁ、元気なのはいいけど、だんだん生意気になってる気がする……。そ
れに、ほんとに一人で大丈夫かしら。でも隠れてついて行きたいのは山々
だけど、急いで来てくれって言われてるし……」
――ピト
「ん?」
夢美は足に何か触れてくるものを感じ、足元を見下ろした。
そこには、いくつかの結び目を作られた触手をゆらしながら、蟲がこちらを
見上げていた。
こころなしか困った表情をしているように感じた。
「ったく、あの子ったら……。分かってるってば。そんなに体押しつけないでも、
今ほどいてあげるわ」
綾佳の行為に呆れた夢美は、我が子を助けてから出掛けることにした。
マンションを出た綾佳は、しばらく浮かれながら道を歩いていたが、ふと大事
なことを思い出した。
「おお、そうだ。そういえば、まだ何を買うのか見てなかったぞ」
・にんじん
・ぴーまん
・きゃべつ
・せろり
・れたす
・きゅうり
・ブロッコリー
・ハム
「……」
野菜ばかり書き連ねられたメモ用紙を最後まで読むと、綾佳はそれまでの
ご機嫌顔から一転、無表情になった。
無言で紙を丸めて、道路に停まっていたトラックの荷台に向かい、力いっぱ
い投げる。
「おっとしまった。手が滑ってしまった。これでは何を買ってくればいいのか
分からんではないか」
限りなく平坦な声で言うと、高い位置から太陽が照らす昼空を見上げて続
ける。
「しかし、夢美はどこかに出かけると言っていたからな。困ったな、これでは
何を買ってくればいいのかわからないではないか。う〜む、こうなったらしか
たない。どうやらあたしが自分で食材を選ぶしかないようだ」
まったく困ってなさそうな嬉々とした表情で言い、止めてしまっていた歩み
を再開した。
ほどなく、よく利用するスーパーの前までたどりついた。夢美と二人で、あ
るいは夢美の恋人である優斗も含めて三人で来たことは何度もあったが、
一人で入るのは初めてだ。少しだけ緊張する。
「よし、行くぞ!」
一瞬の躊躇の後、気合を入れて一歩を踏み出した。自動ドアが開く。
「おおっ」
見慣れた光景のはずなのに、どこか新鮮な感じがした。それを自覚しな
がら、綾佳は気合を入れる。
「よし、あたしが至高の食材を買ってきてやるぞ。腕を磨いて待っておれよ、
夢美」
「もう。『緊急事態よ。すぐ会いたいから急いできて!』なんて、切羽詰った
声で言うから、何事かと思ったら……。お金を貸して欲しかっただけなんて。
アゲハにも困ったものね」
用事を済ませての帰り道。
夢美はさっきまで一緒にいた友達に対して、ぶつぶつ文句を言いながら
歩いていた。
そのとき、前方から聞きなれた声で名前を呼ばれ、顔を上げる。
「夢美ちゃん」
「あ、杏子さん」
夢美が働いている喫茶店の店長、杏子が目の前に立っていた。どうも
周囲への注意が散漫になっていて、気づくのが遅れたようだ。
「偶然ね、こんなところで会うなんて」
「ほんとですね。杏子さんはどうしたんですか」
「私は友達のところへ行った帰りよ。……ところで、夢美ちゃん。あなた、
今日トラックに紙を投げ捨てたでしょう?」
「え?」
突然全く身に覚えのないことを言われて、夢美は目を丸くした。杏子は彼女
の気持ちに構わずに話を続けた。
「今日お店に野菜を配達に来たトラックの荷台にね、丸めた紙があったのよ。
困ったことする人もいるんだなと思って、何となく広げてみたら見覚えのある
筆跡の字が書いてあるじゃない。だめよ、ごみを投げ捨てたりしたら」
「……」
「なんか野菜の名前が書いてあったけど、あれって買い物用のメモかしら」
「その紙って、丸められてたんですか?」
「ええ。力いっぱい握り締めたみたいに、ぎゅうぎゅうにされていたわよ。だか
ら絶対わざと投げ入れたんだって、思ったんだから」
「……そうですね。今度からはそういうことがないようにさせます」
「させます? あ、もしかして、綾佳ちゃんの仕業だったの?」
「ええ、まあ」
「あら、そうだったの。ごめんなさい、夢美ちゃんを疑っちゃって」
「いえ、私が預かったからには、彼女をちゃんと躾けられていなかった私の
責任です。今日帰ったら、さっそく叱りつけますよ」
「や、やりすぎないようにね。じゃ、夢美ちゃん、私はそろそろ帰るわね」
夢美の表情を見た杏子は、顔を引きつらせながら言うと、そそくさと立ち
去った。
無事に自分で選んだ食材を買ってきた綾佳は、勢いよく自宅のドアを開
けた。
「夢美〜♪ 今夜はハンバーグだぞっ」
ドアを開けると同時に、綾佳は大声で夕食のメニューを料理人へ伝えた。
しかし返ってきたのは、少女の期待していた了承の言葉ではなかった。
「――ねぇ、綾佳。私は、あなたに、お肉を買ってきてくれなんて言ったかし
ら?」
「いや、メモをうっかり落としてしまってな。」
このくらいの展開は予想していたので、綾佳は何食わぬ顔で答えること
ができた。
しかし夢美の追求はなおもしつこく続き、綾佳はだんだんと追い込まれて
いく。
「へぇ? ついうっかり落としただけで、トラックの荷台に乗るんだ?」
「あ、ああ。おそらく、風に飛ばされたんじゃないか?」
「それじゃ、紙が丸められていたのはなんでかしらね」
「それはだな、…………ちょっとまて、夢美。どうして袖をまくっておるのだ?
蟲も触手を揺らしながら近づいてくるのをやめんか。こ、こらっ! 話せば
わk――ぎにゃあぁぁーーーーーーーー!」
その日の櫻井家は、夜通し子供の叫び声が響いたという……。
タイトル:はじめてのおつかい
元ネタ:EXTRAVAGANZA 〜蟲愛でる少女〜
>>510-515 保守を兼ねて投下。
珍しいネタだ。GJ 二人のやり取りにちょこっと挟まる触手が良いね。
あれやってみたい気はするんだけどあそこのメーカーのはきっつい絵が多いからなあ。
GJ。
あそこはあえぎ声か「ああん」じゃなくて「ぐげごぼぉ」だからなあ
ほしゅ
保全管理
明日香ルートのグランドフィナーレっぷりを見るにつけ
このくらいはやってもいいんじゃないかと思えてきますた。
「なにか、別のあだ名が欲しいんですよね」
街中で偶然、目が合った少女、夕霧瑠璃子がそう言った。
彼女も俺と同じように自分につけられた「瑠璃」という
あだ名に違和感を覚えているのだと言う、
「いや、おもしろいね。あだ名か…」
「なにか思いつきますか?」
少女はふわふわの髪を揺らして、笑顔を見せて――、
突然、一つの名前が浮かぶ。
「そうだなあ、例えば――」
「……リコ?」
「……っ!」
どきんと、
自分で口に出したその名前にとても
大事な意味があったような気がして――、
「…って、だ、大丈夫?君」
「……え?」
見ると少女の瞳から大粒の涙がこぼれていて
俺は慌ててしまって
「あ、あれ…どうしちゃったんだろう、わたし…」
「ご、ごめんなさい。変な所をお見せして…やだ…」
「いや…」
「あ、あのっ」
「は、はい?」
拭っても拭っても止まらないので諦めてしまったのか
その少女は、もう涙を拭くこともせず
真っ直ぐ、俺に向きなおって
「もう一度、呼んでくれませんか…?」
「あ、ああ…」
何か、確信めいたものを感じて
俺は一度目を瞑り、もう一度ゆっくり開いて
その少女を見つめながら
その名を口にする。
「…リコ」
「はい…」
俺たちはいつの間にか互いに手を伸ばしていて
気がついたら指を絡めていて、そして――、
「リコ」
「…ュウ…ぱぃ…」
その瞬間、大きな光に包まれたように周りの景色が白く霞んでいって
そうだこれは――、
「る、瑠璃子です!」
「わ、わたしのこと思い出してくれただけで――充分です」
「おかえりなさい――」
出会って、別れて7年経って、
「好きです」
「――今でもあなたが好きなんです」
また巡り逢って、気持ちを伝えて、
「私が夢見ていた未来は、今ここにあります」
「わたしは7年前からずっと――あなたのリコでした」
抱きしめて、愛しあって
逢えなかった時間をを取り戻そうとするように
貪るように求め合った。
「キスしてください」
短かったけど、
――ああ、本当にとても短かったけれど
何より大切だったあの宝物のような日々が
「もう一度、会いましょう。そして…」
「わたしの名前を…呼んでください」
あの日、未来と引き換えに捧げたものが
大事な、とても大事な俺たちの時間が
固く閉じられた箱から鍵を開けて
溢れ出して――。
抱きしめて、愛しあって
逢えなかった時間をを取り戻そうとするように
貪るように求め合った。
それは神の去ったこの世界に残されたほんの僅かな奇跡の残滓だったのか
それともあの小さな神様の粋な計らいだったのか
そんな事より
「シュウ先輩っ、シュウ先輩っ!!」
「どうして忘れていたんだろう、わたしっどうして…っ」
「忘れていられたんだろう…っ」
「こんなに大切なこと…どうしてっ…」
夕暮れの街中で、
「大丈夫、もう大丈夫だよ」
「もう離さないから」
「…はいっ」
泣きじゃくりながら俺にしがみつくこのふわふわの髪の女の子を
どうやってなだめようかと
そんな事を考えながら抱きしめる腕に力を込めた。
きつく結んで、そう
二度と離されてしまわないように――。
end
あ、BGMは「ただ、この手にあることを」推奨でよろしく
すいません
>>526の上3行、コピペミスです(;´Д`)
528 :
名無しさん@初回限定:2007/12/09(日) 17:06:21 ID:ascL6V4M0
久しぶりにキター!のであげ支援。
ぐっじょぶです。リコのアフターは欲しいよね。
もっと長いのも読んでみたいですね。
Dies Iraeのルサルカのエロいやつギボン
ああ…本当なら盛り上がってそのくらい上げてたんだろうなあ…
初めて投下いたします。
娘姉妹の亜純初H後アナザーです。
以下7レスほど
(ぴんぽーん)
なぜだか理由はわからないがここ最近クリなんたらという単語を良く目にする。
(ぴんぽーん)
ネットや匿名掲示板でも、やれクリなんたらだからどーとか、クリなんたらなのにどーたらと妙に騒がしい。
(ぴんぽーん、ぴーんぽーん)
ふむぅ……これはひょっとしてひょっとすると今日の日付は……(ぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴん)……ん?
「っと、なんだよ、せっかく何かを思い出しそうになってるというのにまったくうるさいな」
俺はチャイムに思考を邪魔をされ、ぶつくさと不満を漏らしながらも玄関へと赴いた。
「はいはい、新聞も牛乳も宗教もまにあってるよ。 ついでに言っとくが菓子は無いぞ」
それはハロウィンだろう、と気付いて心の中で自分にツッコミを入れるとガチャリとドアが開いた。
「なにそれ、わけわかんない。 それにお菓子ってなに? というかお父さん出るの遅いー!」
亜純がいた。 それもなにやら赤白い。
「まったく、お父さんたら……あ、それはそうとメリークリスマス! お父さん!」
「……あー」
思い出した。 どうやら今日はクリスマスらしい。
「というわけで遊びに来たよ、お父さん。 どうせ一人さびしくしてるんでしょ?」
「亜純……」
そうかそうか、今日という日は世間一般ではクリスマスイベント真っ盛りなわけだ。
そういうものにまったく興味がない俺には気が付く筈もなかったということか。
「で、せっかくのクリスマスなんだから……その……えっと……」
もじもじと両手を絡めて恥ずかしそうに話す亜純。 あぁ……恥じらう亜純は最高だ。
「一緒に過ごしたくて、いてもたってもいられなくなって、お父さんの所に来ちゃったんだな……ところで亜純」
「ち、違う……くもないけど……別にいいじゃない! 娘がお父さんに会いに来たって……ってなに?」
俺は今まで視界に入っていたその亜純の服を凝視しながら
「その格好は?」
「え? あ、コレ? コレは……その……あの……えっと……」
亜純は赤と白のコントラストに彩られた前ボタン式の丈の短いジャケット、おなじような彩りのトップス、そしてスカート。
更には頂点に白いボンボンを備えた帽子で着飾って玄関で立ち尽くしている。 ちなみに髪留めはリボンにベルのアクセサリー。
どう見てもサンタです。 本当にありがとうございました。
「コスプレ? ……しかしかなりのミニスカートだな……」
「あ、あはは……バイト先の先輩が貸してくれるって言うから、その……せっかくなんで……」
俺は亜純の言葉を聞きながらも内心は、その丈は短すぎやしないか? つかその格好のまま家に来たのか?
ならば家に来る間にどこぞのわけのわからん男達に凝視され、そのかわいいぷにっとしたふとももとかが男達に満遍なく視姦され
夜のおかずに脳内変換を施され、その男達は妄想で俺の亜純に陵辱の限りを尽くして……くそう! 憎い! 憎いぞ!!
そのどこぞのわけのわからん男達が憎いぃいい!! 俺の……俺の亜純を勝手に視姦しやがってぇえええ!! はぁはぁ……
「その格好のまま家に来たのか!?」
「え? やだ、そんなわけないじゃない! 恥ずかしいから家まで来て庭の茂みで着替えたんだよ……」
どうやら俺の杞憂だったようだ。 そうだな、恥ずかしがり屋の亜純がこんな格好のまま、のほほんと家に来るわけがない。
「お父さん……」
「ん?」
「かわいく……なかったかな?」
なんという失態……亜純がこんな素晴らしい格好で会いに来てくれたのに、俺は妄想でその感想をないがしろにしてしまっていた。
「あ、亜純っ!」
俺は気の利いた言葉もかけずに、ただ欲望のままに亜純に抱きついた。
「ひゃぁ! ちょ、ちょっと、お父さんっ……く、苦しいよ……」
「亜純かわいいよ亜純、くんくん」
思わず亜純の匂いを嗅いでしまう俺。
「やぁっ! なんで嗅ぐのぉ……お父さん……んんっ、んぁっ」
なんでって、そりゃかわいい愛娘がかわいい格好で目の前にいたら嗅がざるを得ないだろう。 ……父親的に考えて。
「はぁはぁ……亜純は本当にかわいいなぁ……」
超ミニと言っても過言ではないスカートの上から、おもむろにそのぷりっとしたお尻を鷲掴む。
「んっ……ま、待ってお父さん……だめ……そ、そんな急に触られると……」
「だって、亜純はお父さんに会いたくて来たんだろ? だったら……」
もうすでにチ○ポはギンギンになっている。 恐るべしサンタコス+娘スメル。
「お、お父さんの分もあるの」
「ほへ?」
意味がわからない。 俺の何があるって?
「何のことだ?」
「だから、先輩が貸してくれた衣装にお父さんの分もあるの!」
そういうことか。 というか最近の若い子は言葉を略して話を進めるからいまいち理解に苦しむ。
「……お父さんの……分?」
「そうよ、なんでもセットになってるからって言って貸してくれたの」
そう言いいながら手にしていた紙袋から亜純が取り出した服の色は見るからに思いっきり茶色。 そしてツノ。
あぁトナカイですかそうですか。
「ね、かわいくない?」
「…………」
最近の若い子は何でもかんでもカワイイとか言うからいまいち(以下省略
コレをかわいくない、と言ってしまえば元も子もないが、瞬間俺はあるアイデアをひらめいた。
「あぁ、すっごくかわいいよ」
「でしょでしょ! だからお父さんもコレを着て一緒にクリスマスパーティーを……」
「こんなかわいいモノを亜純が着ないわけがないな」
「え?」
うむ、われながらいいアイデアだと思う。
『俺がキモイと思うモノを亜純に着せてみる』
こんなシチュエーションはなかなかお目にかかれるものではないだろう。
一般的に考えればサンタコスでセックスするのが普通だ。 だが俺はあえて反逆する! 言い換えれば衝撃のセックスだ。
そう考え付いた俺は亜純の耳元で語りかける。
「亜純のそのサンタの衣装もすごく似合っているしかわいいと思う、いや実際素晴らしい。
だがお父さんは亜純がかわいいと言うそのトナカイを着た亜純の姿を見てみたいんだ」
「ふぁ、み、耳に息かけないで……え、えぇええ! せっかく頑張って着たのに……で、でもそんなに見たいの?」
やはり渋るか……だがそれほどイヤという様子もない。 ここはストレートに攻めて……
「トナカイの格好をした亜純としたいんだ」
「ちょ、お父さん、ストレートすぎるよ!」
「イヤかい?」
「……べつに……ヤじゃない……けど、お父さん変態」
Exactly!!(そのとうりでございます) いやいやそうと決まればさっそく……
「じゃあぬぎぬぎしようか、ぬぎぬぎ」
「も、もうするの? ……ほ、ほら、パーティの準備とかしないの? きゃっ!」
俺は両手をわきわきさせながら亜純ににじり寄り、勢いよくサンタ衣装を脱がしにかかった。
「だ、だったら―――」
だが亜純がある条件を出してきたのだ。
こうして俺はリビングに来たわけだが……
目の前には茶色の衣装を身に纏った亜純。 そして―――
「ミニスカサンタの俺、惨状」
……なんで? というかそれが条件なのでした、まる
「あはは、お父さんかっわいー!」
きゃっきゃっきゃっきゃっとはしゃぐ亜純を尻目に、俺は妙にスースーして落ち着かない腰周りを眺める。
さすがに女性物のサイズだけにピチピチだが着れないこともなかった。
「でも気をつけてね、破れたら弁償しなきゃだし……ぷぷぷ……あはははは」
亜純はそう言いながらも変なテンションをかもし出している。
「まぁコレはコレでなんだかこう……気分が変に高揚してくる感じでいいかも知れないな」
「やっぱお父さんてばへんたーい、ふふ、でも似合ってるよ、お父さん」
トナカイが言う。 そんな亜純の衣装は少し大きめのサイズなのか、ゆったりとしたたわみを持っている。
そう、子供が着るようなカエルやらアンパン男とかのパジャマにも似た印象だ。
普段大人びている亜純がそういった格好をしているというのもまたギャップがあってよい。
そんなどうでもいいことを考えていると亜純がほほを赤くしながら聞いてきた。
「ねぇお父さん……ホントにコレで……するの?」
「もちろんだとも、亜純はイヤかい?」
反対に俺も亜純に聞いてみる。
「だ、だから……イヤじゃないけど……でも」
「ならいいじゃないか」
俺は亜純の言葉をさえぎっておもむろに抱きしめキスをした。
「んむっ……ぷぁっ……お、お父さん……おとうさんっ……もう、いきなりなんて……」
「唐突なキスはキライじゃないだろ?」
台詞は甘いがミニスカサンタの俺とトナカイの亜純が抱き合ってキスをしているというアレな光景が繰り広げられていた。
「んぷっ……ちゅっ……ちゅぷ……っぷはぁ……はぁはぁ……お父さん……あたし……なんか切ないよ……」
続けてキスを繰り返しつつ、俺は亜純のそのやわらかい胸のふくらみに手を伸ばした。
ふにっとした感触が手のひらを包む。 亜純は小ぶりなサイズを気にしているようだがそんなものは些細なことだ。
やわらかくてすべすべしていれば大きさなんて関係ない。 亜純はそれでいて感度もいいしなおさらだ。
「ふぁっ! あっ! お、お父さんっ、ちょっと強いっ……ぁんっ!」
俺は夢中になって亜純の胸に没頭する。 ぐにぐにと撫でつけ、もにゅもにゅとまさぐっていく。
「はぁはぁ……亜純の胸は気持ちいいよ……触ってるだけでお父さんは幸せになれる気がする」
「はぁっ、はぁっ、そ、そうなの? ……お父さん、あたしの胸……そんなに気持ちいい? ひゃぁっ!」
胸と同時に茶色いズボンの上からでもわかるぷっくりとしたお尻に触れると亜純は一際大きな声で応えた。
「あぁ……胸も気持ちいいけど、このかわいいお尻も最高だよ、亜純」
「あんっ……お、お尻も? っん、はぁ……あ、あたしのお尻も……ぅんっ……気持ち……いいの?」
「胸やお尻だけじゃないよ、亜純はココだって最高だ」
俺はにっこりと亜純に微笑み、その胸の内を表情で示すと、今度はズボンの隙間からそっと手を中にしのばせていく。
「ひゃぁ! お父さんの指が……あたしの……あぁっ!」
亜純のおま○こに触れてみる。 そこはもうパンツ越しでもわかるほどにくちゅりとした湿り気を帯びていた。
「もう……こんなになってるんだね、亜純。 亜純は本当にえっちな娘だなぁ」
「んっ……だって……お父さんに……あんっ! 触られてると思うと……勝手に……濡れてきちゃうんだも……んんっ!」
ちゅくちゅくと中指でパンツの上から亜純のおま○こを弄ると、たちまちに愛液が溢れ出してくる。
「やぁっ……んんっ、はぁっ、はぁっ……」
「もう準備はできてるかな?」
トナカイの被り物を後ろにずらしつつ、耳たぶを軽く噛みながら亜純に囁く。
「あ、あんっ! ふぅぁっ! んっ……いいよ、お父さん……あ、でもちょっと待って」
「ん?」
俺の愛撫を一心に受けていた亜純は思い立ったようにするりと身を屈めておもむろに自分のリボンを片方だけ外す。
一体なにをするのかとじっとおとなしく亜純の行動を見ていると、俺のスカートの裾を捲り上げ、パンツをずるりと引き下げた。
ぎちぎちにそそり立ったチ○ポが外気に晒されてひんやりと心地よい。
すると亜純は唐突にチ○ポの根元にくるくるとリボンを巻きつけてから嬉しそうに言った。
「えへへ……クリスマスプレゼントだよ、お父さん……あむっ」
リボンでデコレーションされたチ○ポをぱくっと咥えてきた亜純に俺は正直なところ拍子抜けのような気持ちになりかけていた。
「ちゅちゅっ……んっ、それとっ……ぷはっ、もちろんあたしも……だよ……でもコレだけじゃダメだよね……ごめんねお父さん……」
亜純の父親で本当に良かったと思う。 そしてこれからも俺は亜純の父親だ。 それは変わることのない事実なんだ。
こんなに素晴らしいクリスマスプレゼントを貰える父親なんて地球上を探してもいる筈がないだろう。
「亜純はいい子だな……」
「ちゅっ、んちゅっ……ちゅぽっ! っふぇ? なに? なんか言ったお父さん?」
俺は『なんでもない』と口の中で呟きながら、よりいっそう愛情を込めて亜純への愛撫を強めていく。
「ひゃぁっ! ソコっ……そんなにさわっちゃだめぇ! あたしぃおかしくなっちゃううぅぅ!」
パンツを潜り直接亜純のおま○こを指で弄ると、すぐさま亜純の身体は反応してぐちゅぐちゅといやらしい音を立ててくる。
「ああっ……んぁあっ! あああ……お父さん……あたし……プレゼント欲しいよ……お父さん」
「ん、何が欲しいんだい? 言ってごらん亜純、ちゃんとお父さんに言ってごらん」
もじもじとしながらも、亜純は我慢できないといった様子でゆっくりと呟いた。
「お、お父さんの……お、ちん○ん……」
「そうか、亜純はお父さんのチ○ポが欲しくて欲しくて堪らないんだな」
顔を真っ赤に染めたトナカイ亜純はうつむいたままこくりと頷いた。
「それじゃ今から亜純のおま○こにお父さんのチ○ポを入れるからソコのソファに足をかけて床に手をついてごらん亜純……」
「えっ? ……う、うん……こ、これでいいの? お父さん……」
せっかくのコスプレなのでソファをソリに見立ててみようという斬新な試みなのだった。
そんな俺の目論見を半信半疑ながらも素直に言うことを聞いてくれる亜純がいとおしい。
ソファに乗っかった亜純の両足を抱え、手綱に見立てて手前に引き寄せていく。
トットットッとそのままの姿勢で手を床につけた亜純が近づいてくる。 そして俺は一息にチ○ポを亜純の中に埋め込んだ。
「はぁあっ! お父さんがあたしの中に…… っくふぅっ、あああっ!」
俺のすべてを亜純の中に入れきった時にチンポの根元でリボンについていたベルのアクセサリーがチリンと鳴った。
「ああっ! 亜純の中に入ったよ! 全部入った! ほら根元のリボンぎりぎりまでしっかりと入ってるよ!」
「んはぁっ! お父さんのがあたしに、ああっ、あたしの中にぜんぶ……大きいのがぜんぶ入ってるぅうう!」
「亜純、亜純のおま○こでお父さんのチ○ポがとろけそうだよ……」
パンッ、パンッ、と最初から最後までクライマックスかのようにフルスロットルで腰を亜純のおま○こを目指して打ち付ける。
「亜純っ! 亜純のおま○こは本当に天にも昇る気持ちよさだ……亜純、お父さんは嬉しくて泣いちゃいそうだよ……」
「お、お父さんのおち○ちんが……お父さんのおち○ちんであたしが泣きそうだよぉ!」
亜純に腰を打ち付けるたびにチリンチリンとリビングにベルが鳴り響いていて亜純の喘ぎと混ざり合う。
最初は少し気になっていたが亜純の膣の締め付けに次第とどうでも良くなってくる。 ああ……クリスマス万歳。
「ほ、ほら、亜純のつけてくれたベルがチリンチリンしてるよ、亜純、ジングルベルだよ亜純」
「あっ、あんっ……ベ、ベル? あたしのベルがお父さんのおち○ちんでジングルしてる? あんんっ!」
俺のチ○ポでぐちゅぐちゅになった亜純のおま○この気持ちよさをかけらも洩らさず貪ろうと必死になって亜純に食らい付く。
より深い快楽を求め亜純のお尻を掴み左右に広げる。 お尻の穴が露になって俺の興奮を更にそそった。
そして奥深く抉るようにチ○ポを亜純のおま○こに突き立てていった。
「んぐぅっ! ふ、深いっ、深すぎるよぉ! ああん! あ、ああっ!」
「亜純っ、亜純っ気持ちいいよ、亜純っ!」
ガツンガツンと掘削機のように亜純のおま○こを掘り進めていく。チリンチリンの音色が心地いい。
「あ、あたしもっ……気持ちいいよっ! いひぃっ! お父さん気持ちいいのぉっ! おとうさんイイっ!
す、すごっ! しゅごくて……たまらないのおぉぉ!! イきそうだよっ! おぉっ……お父さんっ!」
亜純の奥限界まで打ち付けていたチ○ポももうそろそろ我慢できなくなってきているようだ。
「ああ……お父さんもイきそうだ……亜純の中でイきそうだよ」
「はああっ! 中!? あっ、あんっ、ま、またあたしの中に出すの? ……お、お父さん、中に出したいの?」
「亜純……もうお父さんは亜純の中以外はだめなんだよっ! 亜純の中っ! 娘の中にっ……なかにぃっ!!」
「うふぁっ! ふふっ……あんっ、ダメなお父さん……あっ、あたしの中じゃなきゃ……イやだなん……ってっ!!」
もう出るっ! 亜純の中に出るっ! 出すよ! 中に出すよ! 亜純の……娘の中に出すんだっ! 亜純っ!!!!
「ああああああ! お父さん、あたしイくっ! イっちゃうぅ! お父さんのおち○ちんでっ! あたしの中にっ!
おち○ちんっ! お父さんのおち○ちんがあついよぉぅ! おとうさん、おとうさん……あたしの中で、中で……
おとうさんのおち○ちんっ……あたしの中でイってぇぇええ!! 中で……中で出してぇぇええええ!!!!」
ああっ!! あ、あああーっ!!!!
俺は亜純のおま○こにこれでもかというほどチ○ポを押し付け、たっぷりと射精し続ける。
リビングにはチリーンというベルの残響だけが寄り添う二人の身体を包んでいた。
風呂に入って身支度を整えた亜純がリビングへ戻ってくる。 俺は簡単に食事の用意をしていた。
すると亜純が窓の外を指差して俺を促す。 見ればちらほらと雪が舞い降りてきていた。
亜純は嬉しそうに俺に駆け寄って、ぎゅっと手をつないでくる。
二人で暖かい部屋の中、しんと静まり返った外を眺めながら俺は呟いた。
「サイレントナイトだな、亜純」
「ホーリーナイトだよ、お父さん」
(了)
すみません、7レス超えてしまいましたが以上です。
娘姉妹 〜亜純 X'mas Edition〜
>>532-541 お目汚し失礼いたしました。
原作のアホっぷりが実によく再現されてますね(゚∀゚)
夏めろの徹ちゃんに並ぶ変態っぷりにかなり笑いました。
544 :
名無しさん@初回限定:2008/01/03(木) 22:17:01 ID:ea471Sy50
未購入なんですが、まさか本編もこんな感じのノリなんですか?
545 :
名無しさん@初回限定:2008/02/17(日) 08:07:33 ID:ugkhDaWk0
保守 あげ。
ひまわりのチャペルできみと のSSが無いッ! ので書きました。ネタバレあり。
「これからよろしくー」
鎌倉タケルのやけくそに明るい挨拶の後、俺に向けられたのは
二対のジト目の視線だった。
「「黒ちゃん……?」」
なにか凄い誤解が生まれているような気がする。
そんな様子をタケルが興味深そうに見ている。
「ほー。黒ちゃんはまずかったかな? じゃ間を取ってカバやんて呼ぶね」
「何との間だっ!?」
この女全然変わってねぇ!
「やっぱり……」
「あやしいナノです……ナノです……ナノです」
やけくそに小さい背の少女と、やたらとでかい胸の少女が俺を
ジト目で睨んでいる。エコーかけながら。
「こら、おまえら。揃って上目で睨むな、初対面だっつーの」
「あれ? 忘れちゃったのー?」
タケルはタケルで、無邪気に俺の側ににじり寄ってくるし。
新手のあたしあたし詐欺かもしれん。ここはひとつ、ガツンと言ってやる必要があるな。
萌波風で行くか。
「この海上貴宏、貴公のごとき女子は存じ申さぬ」
「貴公だといいけど、きとうだとちょっといやらしいわよね」
「いやらしいわよねネタはやめい!」
作りあげたはずの厳粛な空気が一瞬で破壊された。
「……やっぱり知り合いなんじゃん」
と、こゆ吉が相変わらず不信感に満ちた声で言った。
心当たりは本気でないぞ。……ない、はずだよな?
でも念のため思い出してみようか。←ちょっと弱気
1.思い出す
>>548 2.思い出さない
>>549 3.思いを出す
>>550
1.思い出す
「……待てよ。そういえば、昔」
「おっ」
こゆ吉が身を乗り出し目を輝かせた。
「自転車の英訳はチャップリンだと、こゆ吉は本気で信じていた」
「な!?」
「……奇怪極まる誤解だ」
萌波が顎に手を当て考え込む。誤解の理由を考えているのだろう。
俺も当時は理由が(むしろ意味が)わからなかったが、今考えるとおそらく、
チャリンコと語感が似ているせいだと思う。
などと思い出を振り返っていると、こゆ吉が真っ赤な顔で抗議してきた。
「なんでそんなことを今思い出すんだよ!?」
「いや、こゆ吉の顔が目の前にあったから」
「ユキちゃん……」
「お主……」
「わあ、馬鹿にするような目で見るな見るな見るなー!」
必死で手を振るこゆ吉。
しらばっくれられないあたりが、こゆ吉のこゆ吉たる由縁だ。
「そうは言うが、幼少の砌では仕方ないものではないか?」
「そうだよ! 子供の微笑ましい勘違いじゃんかよ!」
「いや、中学生だった。しかもbicycleを習った後だ」
「なんでそんなことだけ鮮明に覚えてるんだよっ!?」
「あ!」
と、いきなりタケルが叫んだ。
「今度はなんだ?」
「今気付いたんだけど――バイ シクルって分けたら、ちょっといやらしいわよね?」
「知るかー!」
もう何がなんだか。
>>551
2.思い出さない
「いや、過去は振り返らない主義なんだ」
「ということは、過去に何かあったのじゃな」
あれ?
と、失敗に気付く間もなく、タケルの目がきゅぴーんと光った。
「過去を振り返るならいいけど、若さゆえの過ちを振り返るだと
ちょっといやらしいわよね」
「そのネタはやめいちゅーねん」
「この場合定番の『夜の』より『若さの』の方が青臭さが増してより
いやらしいわよね。奥が深いわ」
「知らんがな」
というか『夜の』も『若さ』も脈絡がまったく無い。
>>551
3.思いを出す
「いいかげんこの季節、姫の服は暑苦しすぎだと思うんだ」
とりあえず、思いのたけを外に出してみた。
「何を突然! というか余計なお世話じゃっ!」
「ミニだし涼しいんじゃないの?」
「席からは上半身しか目に入らん」
「上半身だけならいいけど、下半身しか目に入らないとちょっといやらしいわよね」
タケルの思考の方が明らかにいやらしいと思う。
「な、なんじゃと! お主、わらわのことをそういう目で……」
「俺じゃねえ! あいつだ!」
騒ぐ俺達の前で、ナノ子が耳に手をあて聞こえないフリをしていた。
>>551
結局タケルのことは全然覚えてなかった。ままならんなあ。
休み時間。のチャイムが鳴った瞬間、どどどどと轟音がした。
「おおっ!?」
クラスメイトどもがタケルの席に押し寄せる音だ。
非常に認めたくないが、外見だけをスライスすればタケルはそれなりの美少女だ。
人気もあろうというもの。萌波に比べれば美人度は一歩譲っても、異様なまでの
親しみやすさがそれを補っている。
「彼氏は?」
「スリーサイズは?」
「どこ住んでるの?」
押し寄せた男子からは定番の質問群が飛んでいる。
「んー」
タケルは十人近い男どもをぐるりと見渡した。そして、背後の俺に振り向くと退屈そうに言った。
「ねーカビパン」
「誰だよ!?」
俺だとすれば『カ』と『ン』以外間違えている。ちがう、そもそも根本から間違えている。
しかもそこはかとない悪意が見え隠れしている。
「黒ちゃんのことに決まってんじゃん。面倒だから、代わりに答えてくれない?」
タケルはなげやりに言った。相変わらずの超絶傍若無人っぷりだ。
「なんで俺が」
つーかタケルのスリーサイズなど知らん。
「カリスマのスリーサイズでいいよ」
「……。……父さんのスリーサイズをか?」
「誰? だから黒ちゃんのでいいって」
どうやらカリスマとは俺のことらしい。
もはや『カ』しか合ってない、もとい何もかも合っていない。
タケルのコミュニケーションの姿勢は、何かが根本的に間違っている気がする。
「……まぎれもなく、ナノです」
「あの呼吸の合い方は、ねえ」
「こいつ、一体何人に手を出しとるんじゃ」
気付くと俺へのジト目の数が数倍に増えとる。俺が何をしたというのだ。
「えーい、とにかく転校初日ぐらいまともに振舞え」
とりあえず諭してみる。
初日『くらい』ってことは、俺は前からこいつを知っているということに
なる気がしたが、というか顔見知り以外の何者でもない雰囲気がまんぜんと
漂っているが、気付かなかったことにしたので問題ない。
……そうか?
「しゃーわなー」
タケルは謎の言葉を口走った(おそらく『しゃーないわなー』の意味だ)。
言い終わると同時に、椅子からがたんと立ち上がる。
そして異様に威厳のこもった声で、号令をかけた。
「全員、一列に整列ッ!」
びしぃっ!
それまでカオスだった人の群れが、一瞬で一本の列になった。
俺以外のクラスの全員がそこに加わっている。
なんて強制力だ。将軍の称号は伊達ではなさそうだ。
それはともかく。
『うわぁー! 掴むな! 足、足ー!』
『蹴るな! 落ちるだろうが!』
最後尾の奴らが窓から落ちかけてるのだが。
「尊い犠牲ね。二階級特進よ」
「学生が特進してどーすんだ?」
「学年上がるんじゃない?」
なら奴らは全員卒業か?
「もうとっとと終わらせよう。一番前の奴から順に」
「自己紹介すること」
俺の言葉をタケルが引き継いで改悪した。
そういう余計なことにかけてはタケルはプロだ。なんて嫌なプロだ。
「なんでだっ。逆だろ!?」
「飽きたんだって。アタシが何十回自己紹介したと思ってんのよ!?」
しかも唐突にキレるし。ホントに駄目だこいつ。
その後三十人以上のクラスメイトがえんえんとタケルの前で自己紹介を
繰り返すだけで、ホームルームは終わった。
つーか本当に自己紹介させやがった。ルーン先生とネコ玉も列に混じって
しまったため、誰も止める奴がいなかったからだが。
あとこゆ吉たちの誤解も結局解けていない。何やってんだ俺ら。
(了)
以上です。もうちょっとだけ続いて欲しかったよ(本編が)。
ラスト辺りのリライトです。
気を失った紅瀬さんをそっと床に寝かせて
伽耶の前に立つ
彼女は呆然と俺を見ていた
「!?」
吸血鬼?
不老不死?
だからなんだ?
それがどうした?
ぱん。と
音と同時に伽耶の顔が横を向いた。
手加減したつもりだったけど意外と大きな音がしたんで
俺のほうがびっくりした。
「支倉君…!」
瑛里華が思わず声をあげる。
俺が伽耶の頬を叩いたのだ。
「な…」
何が起こったのかわからないという表情で、
彼女はしばらく俺を見上げていた。
「きさ…」
「いい加減にしろよ、お前」
伽耶の腰をもって抱え上げる
「な…っ」
「こ、こらっ離せっ」
「離さんと…っ」
「おいたをした子には昔からこれって相場が決まってるんだ」
伽耶を小脇に抱えた俺は
背後から聞こえる声に耳を貸すこともなく腕を振り上げた。
パ――ンっ!
「きゃあああああああっ!?」
漆黒の夜空に盛大な破裂音と鳴き声がこだまする。
古来より伝わるしつけの儀式
いわゆる「お尻ぺんぺん」というやつだ。
「へ…?」
瑛里華の目が点になってる。
まあ無理もないか
ひとつわかったことがある。
こいつはただの駄々っ子だ。
伽耶が、こいつが欲しいのは
対等な友人ですらない
この子は実年齢が幾つだろうが子供のまま、だ。
だとしたら、
だとしたら欲しいのは友人だけではない。
親だ。
叱ってくれる存在
守ってくれる人
頭を撫でて甘えさせてくれるもの
ああ、そうか。と思い至る
メチャクチャやってれば父樣がきて諫めてくれるのではと
どこかで期待していたのかもしれないな、こいつ。
しょうがない。
この場にいる誰も代わりにはなれない。
だったら俺がなってやるしかない。
そろそろ腹をくくろうか。
ぱんっ
「あぅっ」
ぱんっ
「いたっ」
ぱあんっ
「は、離せっ貴様っ」
「あ、あたしにこんな事をしてタダですむと…!」
「まだそんなでかい口が叩けるのか」
「なんだと!?」
ぱああんっ
「いひっ」
さしもの吸血鬼パワーもこの体勢じゃ発揮できないらしく、
手足がじたばたと虚しく空を切っている。
そんな伽耶を地面に下ろしてやった。
「貴様…っ」
涙を浮かべながらもお尻をかばって
飛び退ろうとした伽耶の腕を取って引っ張る。
そして
力いっぱい抱きしめた。
「あ…」
「この感じ…」
「父…樣…?」
俺の中に紅珠を感じ取ったのか、
伽耶が腕の中で大人しくなった。
「…全く、さあ」
「俺の頭カチ割って、俺の見た記憶をあんたに見せてやりてーよ」
稀仁さんの気配を探すのに必死なのか、
伽耶は動かない。
「稀仁さんは…あんたの父さんはなあ、
自分が死ぬその瞬間まであんたのことばっかりだったよ!」
「え…?」
『伽耶が幸せで居ますように』
『伽耶が寂しい思いをしませんように』
『伽耶に家族ができますように』
「伽耶、伽耶、伽耶、伽耶って
あの人の日記はそればっかりでさあ…っ」
妻に先立たれ、まだ幼い娘を置いて逝くのは
どんなにか心残りだったことだろう。
でも、
死を前に恐くなかった筈がない。
友人たちに憎まれて悲しくなかった筈がない。
物言わぬかつて友人たちを見捨てることにどれほど後悔したのだろう。
それでも
それでも尚、
「あの人はあんたの心配だけしかしてなかったよ…!」
伽耶が小さく呻いた。
「う…そ…」
「…それをなんだよ、父親の願いを真逆に受け取って」
「こんな捻くれちゃってさあ…っ」
――ぱたぱた。と、
伽耶の顔に水滴が落ちる。
俺は泣いているのか、
「どんだけ寂しかったんだよ、お前…っ」
「ばっかやろう…っ」
俺の気持ちがうつればいい。
稀仁のこの想いが聞こえますようにと、
俺の胸に伽耶の顔を押し付けた。
「…ふ…ぇ」
伽耶の顔がくしゃりと歪んで
大粒の涙がこぼれ落ちた。
俺のシャツをぎゅっと握りしめて、
迷子の子供がやっと親を見つけたように
俺にしがみついて
大声で泣き始めた。
「うぅ……うあああぁぁぁ……!」
大音響だった。
ずっとこらえてきた250余年、
その悲しみが流れればいい。
そう思って
俺もまた抱く手に力を込めた。
瑛里華もびっくりしてる。
まあ、そうか
やっとのことで瑛里華が口を開いた。
「…人の親泣かさないでよね」
「悪い」
気の利いた台詞も思いつかず、
俺の胸で泣いてるこの小さな女の子の頭を撫でる事に専念した。
これは後になって聞いた話だが
俺達は瑛里華の二人の兄についての顛末を知ることになった。
一人は発狂し、一人は自らの死を選んだ。
人形もそうだ。
人によって受けられる血の限界量が違うらしいのだ。
ひどいものでは一滴でも人形になってしまう事があったのだそうだ。
無事、眷属になれても悠久に耐えられない者も少なくなかった。
特に東儀家には人の暮らしがある。
家族が老いて自分が残されることに耐られなかった者、
それ故、発狂して文字通り獣と成り下がった者、
それらを処分してきたのが他ならぬ伽耶だった。
その責任ゆえに、
それでも伽耶はそれを全部一人で背負った。
恐怖の存在として、
憎まれる対象としてあろうとしたのだ。
憎しみ以外で繋がる方法を見出せなかったとはいえ、
その立ち位置は稀仁さんのそれによく似ているな、と
俺は思わずにはいられなかった。
もう取り繕う必要がなくなったのか、
それとも娘の前での俺の羞恥プレイに
プライドを粉々にされたからなのか、
伽耶はぽつぽつと語りだした。
話の途中で何度か俺の機嫌を伺うように
ちらちら俺を見ていたのが妙に気になったけど。
白ちゃんにも謝らせた。(俺が)
「お前の親には済まないことをした、あれらは敏感すぎたのだ」
だがこうも言っていた。
「あれらは血を飲む前に自分に何かをしたのではないだろうか、
ほんの僅かの量でああなってしまった」と。
東儀先輩も言っていたことだが
「確かに、父上は吸血鬼に関して研究をされてきたが
今回の件を見てもわかるように
根本的な所で何かを間違った可能性も少なくはない」と。
今となっては真相はわからないが。
全てを聞き終えた後、
白ちゃんは「もう、そのことはいいのです」と
いつものあの笑顔で伽耶を優しく抱きしめた。
長い夜が明けようとしている
そんな予感がした――。
ぴぴぴっぴぴぴっ
遠くで時計のアラームが鳴っている。
朝だ。
「ん…」
なんだろう
頭が…重い?
いや、胸があったかい?
いやこれはなんか乗っている。俺の上に、
「父樣…」
「…えーと」
なんだろう、この小動物は、
猫?
いや、それにしてはデカい
瑛里華?
いや、それにしては小さい
「…伽耶?」
「んぅ…父樣…」
上体を起こした俺の上で
むずがるようにその身を縮こまらせたのは、
紛れもなく千堂家御当主樣だった。
「う?え?あ?」
現状を把握し切れていない俺の耳にノックの音が響いた
そして無情にも扉が開く。
「孝平君、早く起きないと遅刻しちゃう…
……ょ?」
陽奈が固まっている。
そりゃそうだろう。
俺だって同じ場面に出くわしたら固まること請け合いだ。
ていうか、やばい。
どう言い訳したらいいのか、全く思いつかない。
いや、言い訳といってる時点で負け戦確定なのか。
やっとの思いで搾り出した声は笑えるくらい裏返っていた。
「違うんだ」
反射的に口をついたのは浮気を見つかった夫のような言い訳だけだった、
俺、必死すぎる。
「こちらにおわしますのは
修智館学院創始者に…のご子孫にあらせられます
千堂伽耶さんといいまして…」
「母樣っ!?」
扉の向こうに待機していたらしい瑛里華が飛び込んできた。
目の前が真っ暗になった。
陽菜と瑛里華のダブルブッキングとは
これはまたついてない。
「なんじゃ、騒々しい」
小さな手で瞼をこすりながら元凶が目を覚ました。
それはもういい感じに着物がはだけてらっしゃる。
「はーせーくーらぁあああっ!」
これ以上、事態が悪化することはもうないだろうなと思って、
走ってくる瑛里華の気配を感じながら
俺は瞳を閉じた。
紅珠の回復力程度ではどうにもならないような、
マンガのようなアザが俺の顔にくっきり刻まれた。
かくして
当たり前のように俺の部屋に住み着いた伽耶だったが
娘と寮長と会長と理事と園長とシスターと東儀先輩と
後、ええと誰だったか、
諸々の説得を受けて渋々と、それでも最大の譲歩として
俺の隣部屋に移る事になり
男子寮に一部屋だけ女子部屋が誕生することとあいなった。
ムチャクチャすぎる、この人。
あの会長にストライクゾーン広すぎと言われたときは
本当に死にたくなった。
「なあなあ、眷属はよいぞ?
試験も学校も病気もないぞ?」
「…おばけじゃないんだから」
「ほれほれ血を飲んでみたくはならんか?」
「ならないから」
学食内、屋台風やきそばを咀嚼する頬を指でぐりぐりされながら、
会話の内容は危険極まりない。
ところでなんで俺はこの人にこんなに懐かれてんだ
みんな遠巻きにしてるので
会話自体は聞こえてないのが救いだが
このビジュアルはまずい。
俺の平穏な学園生活を破壊しかねない。
ちなみ隣の席でキムチ5倍チャーハンを食べている紅瀬さんには
眷属になったら仲良くしましょうね。と
不吉な事を言われている。
仲良くしてくれるかどうかはともかくとして、
どうやらこの件に関与するつもりはないらしい。
しかし、そうなると唯一の助け舟を期待できるのは…
「いい加減にしてちょうだい、母樣っ」
向かいの席で限界値を突破した瑛里華が食ってかかる。
「お前はこの男はいらんのじゃろ?なら、わしにくれ」
「まだ使うからだめよ!」
「まだって、使うって…」
ばん。とテーブルを平手で叩いて立ち上がり、
「ああああっ、もうっ」
「なんで母親と男、取り合わなきゃならないのよーっ!」
瑛里華の絶叫が食堂にこだまする
「頼むからこれ以上誤解を招く発言は…」
いや、もう手遅れか…
遠巻きにしている人達の冷ややかで突き刺さる視線が
俺に集中しているのがわかる。
おかしいな、
世の平均的同世代の男子と比べても俺は清い人生を送ってきたはずなのに、
「人でなし」とか「外道」とか陰口を叩かれる身になるとは思ってもみなかった。
「あーっ、もう」
部屋に戻って鞄を放り出し、
ベッドに突っ伏したまま枕に向かって叫ぶ。
「親子丼はともかく、姉妹丼は濡れ衣だっ」
大体、姉妹丼ってのは誰と誰のことなんだ!?
脳裏をよぎる仲のいい姉妹のことについてはあえて考えまい。
「…へえ、親子丼は「ともかく」なんだ?」
「…」
部屋の温度が一気に氷点下に下がった気がする。
やばい
会長、貴方の妹さんが恐くて枕から顔があげられません。
「…いつからそこに?」
「支倉君が来る前から」
闇の中から響くその声の無感情さったらない。
いやな汗がとまりません。
「そんなバカな」
「後ろから抱き付いて驚かそうと思ってたから」
「そうですか…」
さすが吸血鬼。
いやいやいや
ポキポキとい小気味いい音と共に足音が近づいてくるのを感じる。
あれは指を鳴らす音かしら?
「それすると指、太くなるっていうぞ」
「あら、ご心配ありがとう」
胸倉を捕まれて引き上げられる。
なんでかアンコウの吊るし切りを連想したのは偶然ではあるまい。
瑛里華は笑っていた。とても眩しい笑顔だった。
こめかみに青筋が立っている一点を除けば、だが。
――おわった。
その日、俺が最後に目にしたものは、
吹っ切れたような彼女の笑顔と
固く握られて振り上げられた鉄拳だった。
――中略、
それはある日の事、
俺の顎を人差し指で支えて伽耶が言う。
「冗談だ。無理やり飲ませようとか、そんな事はせんよ」
ころころと表情を変えるその瞳は猫のそれを思わせる。
「これは賭けだ。支倉孝平。
お前が大過なく、天寿を全うするのなら
あたしも大人しくそれを見送ろう。
だがな、忘れるな」
その瞳に妖しい影がゆらめかせながら
「もしお前が大病を患ったり、大怪我をしたならば
あたしは迷わず血を飲ませるぞ」
伽耶はそう言い切った。その瞳に迷いや躊躇いは――ない。
「…わかった」
現状では妥当な落しどころだろう
俺の意志が介在してないのが気がかりではあるが
いたしかたない。
というかこいつらに関わりを持つと決めた時から
俺の意志などあって無きが如しだったのだから
今更、だ。
にやりと笑って、
伽耶が付け足した。
「なに、短いとはいえ人間の寿命もそこそこ。何もなく過ごせるとはおもえんが、の」
そしてこうも付け加えた。
「精々、夜道に気をつけることじゃな」
「狙われてるっ!?」
「あのねえ…」
瑛里華が頭を抱えて机に突っ伏した。
監督生室は相変らず騒々しい。
東儀先輩に言わせると
俺が来るまではそれはそれは静かなものだったそうだが、
毎日、虎視眈々と俺を付け狙う伽耶の視線に脅えながら、
生徒会の業務をこなしつつも
隙をみては瑛里華とデートを重ね、
伽耶ともその…なんというか少々親しくなりつつ、
白ちゃんは瑛里華に自分を眷属にするように
説得しているし、瑛里華は瑛里華で逃げ回っている。
最近では瑛里華が押されつつあるのが面白いというかなんというか。
会長も戻ってきて俺のおまけでついてくる伽耶に
相変らずの憎まれ口を叩いてはケンカを楽しんでいるように見える。
少なくとも以前のようなあからさまな敵意は感じない。
多分、いいことなのだろう。
伽耶と会長の口ゲンカを見てため息を漏らす東儀先輩。
紅瀬さんは相変らずだが、
パソコンに孤軍奮闘してるのを知っている俺は
何気なく教えてあげたりもしている。
なんでか、瑛里華と伽耶の冷ややかな視線を背中に受けながらではあるが。
紅瀬さんの頬がやけに赤いのは、
きっと目茶目茶年下の俺なんかに
物を教わってるのが気恥ずかしいからに違いない。
違いないんだってばっ
白ちゃんに淹れてもらったお茶をすすりつつ、
一仕事終えた俺は息をついて、
部屋を見回す。
――みんな、笑っていた
綺麗な笑顔だと思った。
とても尊いものに見えた。
そんな
今となっては日常になってしまった
監督生室の風景に、
ふと、笑みがもれる。
この泣きたくなるような気持ちはなんだろう。
稀仁さんの記憶が俺にそう思わせるのだろうか
「どうしたの?」
横にいた瑛里華が俺の顔を覗き込んできた。
「思ったんだけど。俺達、家族みたいだよなって」
気がつくとみんなの視線が一気に集まっていた。
「あれ、俺なんか変なこと言いました?」
「いや」と、
東儀先輩が苦笑して
支倉には敵わないな。とまたモニターに視線を落とす。
いびつかもしれない。
正常じゃないかもしれない。
でも俺達はこうして、
寄り添って、
手を取り合って、
生きていく。
それはきっと、
間違いなくひとつの幸せのかたちなんじゃないかって
そう、思う。
「孝平…」
瑛里華の手が重なる。
ゆらゆらと揺れる瞳と視線が絡んで
互いの顔がゆっくり近づいていく。
僅かに開いた唇から濡れた舌が覗く。
こんな所で?と思わないでもなかったが
不思議と止めようとは思わなかった。
多分、彼女も――、
と、思ったら反対側に首だけ捻じ曲げられた。
「ふぐっ!?」
伽耶の唇が急速に接近しようとしていた。
「どうれ、手付けじゃ」
あわや触れようとした瞬間、
がっきと頭自体を後ろからホールドされた。
「え、瑛里華っ!?」
椀げるっ椀げちゃうっ
「は せ く ら くぅ〜ん?」
ああ、このこめかみに血管の浮いた笑顔は見覚えがある。
「ばっ、お前ら、マジでっ死ぬからっ、やめてっ」
「何、案ずるな。お前を死なせはせんよ。決して、な」
伽耶の牙が鈍く光って見えた。
「ホラーオチかよっ」
いつか、俺もこの輪に混ざる日が来るのかも知れない。
今はそれも悪くはないと思えている自分がいる。
何より、自分の身がどうなるかは
あまり気にならないというか。
あれ、バイト数超えた…?
いつまでも彼女達が幸せであるように、
この笑顔が絶えることがないように、
この笑い声がいつまでもやまぬように、
俺も思い出を重ねていこう。
その先に何があるのか
それはまだわからないけれど、
大丈夫。
だって、俺達はもう一人じゃない。
破滅の音を奏でつつある頚椎の痛みを無視して、
そんないい感じのモノローグを描く。
今日もまた一日が終わり
明日もまた忙しい一日になるのだろう。
そうやって一歩一歩、明るい方に歩いていこう。
今日から明日へ、明後日へ、未来へ。
手を繋いで、寄り添って、
愛しい人と親しい人と大好きな人達、
友人と恋人と、
――家族と。
或いはこれも一つのハーレムEND かな、と。
>>572 主人公が自分の正義を無理矢理押しつけて場をまとめてしまった感がある。
せっかく真ルートで伽耶を"説得"するのではだめだと気づいて東儀先輩に認めてもらったのに結局本音ではなにもわかっていなかったという結末と言うべきか。
孝平が伽耶に白の両親のことを謝らせたりとか正にそれ。
それは伽耶と東儀兄妹の問題であって孝平がしゃしゃり出ることではない。こーへい何様だよって感じがする。
モノローグ中の孝平の性格にもそれが表れていて自分が満足して良かったねという感じにも見える。
あと、私の好みの問題だけど、FAはワイワイやっているのが楽しいイメージがあるから淡々と一人称で書き連ねる文章は合わない気がする。
マイナス面ばかり上げてすまないが、伽耶様が布団の上で丸まっていたりとか最後の親娘丼状況とかはメッチャ好きだから。
とりあえず乙。
これ次スレとかどうするんやろ?
容量超えたかね
どれ、チャレンジしてみるか。
次スレ落ちた・・・
あれ……保守しそこねたか……
ごめんねごめんね
立てなおしてみるも。
582 :
出直し:2008/04/19(土) 23:17:47 ID:VLKoyJrT0
ぎゃーw間入っちまったです……
ごめんなさいごめんなさい
まだ書き込めるのか?
あと20kぐらいは