一番下の新着レスの表示の上に、〜KBって赤い表示があるさね。
それが500を越すと書き込めなくなるのさ。
この おとボクワールドが
一子ちゃんの 夢物語で
一子ちゃんと幸穂様のお話を
断片的に 浮かんできてる
一つの話になったとして
どこにもっていっていいもんだろう?
現文の授業が終わり
美智子「まさかいきなり漢字の小テストをやらされるなんて思いませんでした」
瑞穂「普段パソコンなんかをいじっていると漢字が読めても書けなくなっていますね」
紫苑「私あわてて『はがんいっしょう』を『破顔一生』と書いてしまいました」
瑞穂「『破顔一笑』にっこり笑うことですね」
圭「破顔一笑…破顔は中国戦国時代の武将よ」
瑞穂「え?そうなんですか?」
圭「呉の武将で城を陥とされたとき単騎で敵陣に突入したの」
美智子「無謀な人ですね」
圭「その死に際の笑みは見事なものだったそうで死に際の微笑を破顔一笑と言うようになったの」
紫苑「時が流れて現代の日本ではにっこり笑うという四字熟語になったのですね」
圭「ウソだけどね」
アフィ入れんなクズ
すまん
由佳里「それにしても私たちもうすぐ2年生ですか」
奏「来年は修学旅行があるのですよ〜」
由佳里「楽しみです」
美智子「私たちはオーストリアに行ったんですよ」
まりや「いやーあんときゃ大変だったわ」
紫苑「何しろ泊まった宿というのが…」
圭「『住み潜む恐怖』の住処だったものね」
まりや「雷鳴と共に襲い掛かってきたからねー」
紫苑「一応は悪魔祓いの実習を受けていたので何とかなりましたが」
圭「おどろいてアレを召還してしまったし」
美智子「幸い死者が出なくてよかったですよ」
由佳里「私…私…修学旅行行かなくていいです」
奏「奏も遠慮しますのですよ〜」
圭「素直すぎてからかいがいがないわね…」
瑞穂「あのね、由佳里ちゃん、奏ちゃん、カトリックはエクソシスト否定してるのよ」
559 :
東の扉:2006/11/22(水) 03:59:44 ID:m1iPHu0i0
まりやが由佳里ちゃんの恥ずかしい秘密を知り、辱めたことをきっかけに、2人の間には決定的な溝ができてしまった。
色々あったけど、あとはまりやと由佳里ちゃんの仲を元に戻すだけだし、まりやも自分の過ちに気づくことができた。
でも、油断は禁物だ。そう。本当の勝負はこれからなんだ。
〜ほころび始めた縁 後編 修復の光〜
コンコン……。
僕は由佳里ちゃんの部屋をノックした。
「はい。どなたですか?」
「瑞穂です。入っていいかな?」
「ええ。どうぞ」
由佳里ちゃんはそう言うと鍵を開けて僕を部屋に招き入れてくれた。
560 :
東の扉:2006/11/22(水) 04:03:22 ID:m1iPHu0i0
「調子はどう?」
「お姉さまや奏ちゃんたちのおかげで、最近はだいぶいいです」
「そう。それはよかったわ」
僕は、それを聞いて少し安堵した。
「……それでお姉さま、何か御用ですか?」
「うん。まりやのことだけど、そろそろ許してあげたらどうかって思うんだけど……」
「イヤです」
そんなに即答しなくても……。
「……由佳里ちゃん、まりやにされたことが辛いのはわかるけど、辛いのは由佳里ちゃんだけじゃないのよ?」
僕は、なるべく優しく諭すように自分の意見を言うことにした。
「まりやだって、あれからかなり堪えてたし、やつれていたわ。食事ものどを通らなくなったくらいだからね」
「………! そんな、お姉さままで、あの女の肩を持つんですか!?」
「落ち着いて由佳里ちゃん。私はそんなつもりじゃないわ。ただ、由佳里ちゃんにも現実だけはしっかりと見てほしくて……」
「現実って何ですか!? お姉さまもあの女みたいに、私が悪いっておっしゃりたいんですか!?」
まりやのやつれた姿を思い出した僕はさすがに少しカチンと来て、ちょっと声を荒げてしまった。
「由佳里ちゃん、いい加減にしなさい。辛いときに甘えるのはいいけど、甘えすぎていると、すっかり浸ってしまって、
それが当たり前だと思うようになって堕落していってしまうわよ? 少しは今の自分の姿を見つめてみなさい」
それがいけなかったんだろう。それを聞いた由佳里ちゃんは、突如目に涙を浮かべながら怒鳴り始めた。
「なんですかそれは! お姉さままでまるで全部私が悪いみたいに!」
「ちょ、ちょっと由佳里ちゃん、そこまでは言ってないわ」
「お姉さまに、私の何がわかるっていうんですか!?」
「………」
「あの女に恥ずかしいセリフを無理やり言わされて、恥ずかしいことを限界を超えて何度もされて、挙句にはしたないおねだりをしてしまった
私の気持ちが、お姉さまにわかるっていうんですか!?」
「………!!」
561 :
東の扉:2006/11/22(水) 04:05:58 ID:m1iPHu0i0
僕は反論できなかった。まりやのことを考えるあまり、由佳里ちゃんの気持ちをおろそかにしてしまっていた。
というか、今の由佳里ちゃんの状態を、完全にはき違えていた。
僕は由佳里ちゃんの心の傷は癒えたんだと思い込んでいたけど、そうじゃなかった。
僕や奏ちゃん、一子ちゃんといる時は、傷の痛みを忘れていられただけだったんだ。
由佳里ちゃんの言葉が、それを物語っている。そもそも、心の傷が癒えたのなら、まりやのことも許せているはずだ。
由佳里ちゃんには、おそらく心の中に誰かがいるんだろう。それが誰かは知らないけど。
だから、それ以外の人に感じちゃったことが、気持ちよくなったことが、そうしてほしいとおねだりしたという事実が、
由佳里ちゃんを苦しめているんだ。
おそらく、由佳里ちゃんが本当に許せないのはまりやではなく、自分自身なんだ。
「もういいです。私のことはほっといてください!」
僕は、由佳里ちゃんにそう言われて、仕方なく今日は引き下がることにした。
「ごめんね、由佳里ちゃん……」
最後にそう言って、僕は部屋の扉を閉めた。
562 :
東の扉:2006/11/22(水) 04:36:38 ID:m1iPHu0i0
「なんで? なんでお姉さまにまで、あんなこと言われなきゃいけないの!?」
私は、お姉さまが帰った後、部屋でそう愚痴を言いました。
そうは言っても、お姉さまの気持ちも理解はしていました。お姉さまは、ただ私たちを仲直りさせたいだけなんだって……
私のためを思って言ってくれてることも、わかってはいました。
でも、私はまだ立ち直ってはいません。ですからもう少し、お姉さまの優しさに触れていたかった。
だから、そんな私の気持ちを裏切ったことが許せなかったんでしょう。
同性でありながら、お姉さまのことを好きになってしまった自分。私は、それを自覚していました。
だから、それ以外の人からは性的な意味で感じたくなんかないし、気持ちよくなりたくもありません。
なのに、感じてしまった。気持ちよくなってしまった。何度もイってしまった。それどころか、自分からそれをお願いしてしまった。
私は、そんな自分がつくづくイヤになりました。だけど、お姉さまは、そんな私に優しくしてくださった。
だから、もう少しだけ、お姉さまの優しさに浸っていたかった。私の心が癒えるまでの間……。
なのに、他ならぬお姉さまに、私のことを否定された。それが悲しくてたまりませんでした。
「今の自分の姿……か……」
そういえば、街でナンパされて以来、あの女の顔を見る機会もありませんでした。今どんな状態なのかは、声以外では判断できません。
お姉さまは、感情を爆発させてしまったさっきの私を見て、愛想が尽きてしまったのでしょうか?
「やだ……そんなの……絶対にやだよ……」
私は、いつしか泣いていました。
「見つめなおさなきゃ。今の自分を、そして現実を……」
そうしなきゃ、お姉さまに完全に嫌われてしまう……。
563 :
東の扉:2006/11/22(水) 04:38:54 ID:m1iPHu0i0
コンコン……。
そして翌日、お姉さまが部屋にやってきました。
お姉さまにちゃんと謝ろう。そして、ちゃんと仲直りしてもらおう。そう思っていると……。
「由佳里ちゃん、昨日はごめんなさいね」
なんと、お姉さまの方から私に謝ってくださいました。
「私、2人を仲直りさせることにあせって、由佳里ちゃんの気持ち、ぜんぜん考えてなかった。こんなんじゃ、私もまりやと同じね」
「お姉さま……そんな……」
不思議です。お姉さまにどうやって謝ろうか悩んでいたのに、お姉さまの言葉を聞いて、それは自然に出てきました。
「わ、私こそごめんなさい。お姉さまが私のために一生懸命になってくださっているのに、私だけ自分のことしか考えてなくて……」
「それは、まあ、落ち込んでるときはしょうがないと思うし……じゃあ、おあいこってことで、謝罪はこれで終わりましょうか」
「はい」
私は、不思議なくらいお姉さまに対して自然に、素直にそう返事をしました。
「それで、お詫びといっては何だけど、由佳里ちゃんの望みを、なんでも1つだけ叶えてあげたいの」
「えっ!?」
私は、お姉さまの言葉が信じられませんでした。なんでも……お姉さまは確かにそう言ってくださった。
「ホントになんでも……ですか?」
できれば、お姉さまに優しく抱いてほしい……でも、そんなこと、こんな時に言うのは反則だよね。
そう思い、別のことをお願いするつもりでした。
「ええ。なんでもよ。エッチなことも含めて、ね」
すると、なんとお姉さまの方からそうおっしゃってくださいました。私の心は、自然と軽くなっていきます。
どうせ、あそこまで大恥かいたんだから、今さら遠慮なんてしなくてもいいでしょう。
というより、お姉さまが遠慮しなくていいわよ、とおっしゃってくださっているんでしょう。なら……。
564 :
東の扉:2006/11/22(水) 04:43:21 ID:m1iPHu0i0
「じゃあお姉さま……私を……私を……抱いてください!」
言っちゃった。同時に私の目から、雫がどんどん流れてきました。
「私、不安で不安で仕方ないんです。またあの女に犯されるかもしれないって思うと……私の身体も心も、
このままどんどん汚れていってしまうのかって思うと……だから、だから……」
頬を伝う涙を拭おうともせず、私は続けます。
「お願いです! もうお姉さましかいないんです! 何されてもいいですから、あの出来事を、忘れさせてください!」
「由佳里ちゃん……」
お姉さまは、私を抱きしめてくださいました。
「由佳里ちゃんには、心に決めた人がいるのよね」
そして、腕の中にいる私に話しかけてくださいます。
「だから、あの出来事をなかったことにしたいのね。由佳里ちゃんが本当に許せないのは、自分を犯したまりやじゃなくて、
好きな人以外の人から感じて、気持ちよくなってしまった、好きな人以外の人にはしたないおねだりをしてしまった『自分自身』だったのよね」
わかってくれた……お姉さまが、私の本当の気持ちを……そのことで、私の心は、嬉しさでいっぱいでした。
私は、1人じゃないんだ……私のことを、ちゃんとわかってくれる人がいるんだ……。
「お姉さま……」
「辛かったでしょう。苦しかったでしょう。でも、もう大丈夫よ。その苦しみを、私も一緒に背負わせて」
「うっ……うう……」
私は、嗚咽しながら、お姉さまにすべてゆだねてしまいたいと思いました。でも……確認しておきたいことが……。
「あの……お姉さまは、よろしいんですか? 私みたいな変態女が相手で……」
「そう自分を責めないで。私も昔、1度まりやにやられたことがあるから、よくわかるもの。人の身体って、無理やりでも反応してしまうし、
気持ち悪いのと気持ちいいのとか、取り違えてしまうこととか、はしたないことをしちゃうのも、息苦しさから解放されたいからだって、
なんとなくわかるから」
そっか、お姉さまもそんな経験があるのか。意外な一面を発見した気分です。
「それに、由佳里ちゃんがそれを許せないって思っているなら、それは素敵なことよ。大切なのは結果じゃないの。
由佳里ちゃんが、そのことをどう思っているかよ。そういうふうな考えができる女の子って、私は素敵だと思うわ」
565 :
東の扉:2006/11/22(水) 05:11:40 ID:m1iPHu0i0
「お……お姉さま……」
「さ、いらっしゃい。由佳里ちゃんの望みを、叶えてあげますから」
「お、お願いします、お姉さま……」
そう言って私は、着ている制服を脱ぎ、下着一枚になりました。
「あ……はああん……」
お姉さまは、私の身体を愛撫してくださっています。
技術自体で言えば、あの女に比べれば、笑ってしまうくらい稚拙な愛撫。だけど、お姉さまが本来持っておられる天性の優しさ、
そして私を慈しむ心、私に元気になってほしいと願うお姉さまの気持ち……。
それらがダイレクトに伝わってきて、とっても気持ちがいいです。
1人でする時や、あの女にされた時とは、まったく違う気持ちよさ。私は、それに身も心もとろけてしまいたい……そう思いました。
あの女と絶交して以降、1回もしていなかったので、久しぶりのエッチがとても満たされる……というのもあったのでしょう。
「気持ち……いい……とっても気持ちいいよ……」
私は、涙を流していました。嬉しかったわけでも、悲しかったわけでもなく。でも、ただただ、涙が流れてきました。
「そう? ムリしなくていいのよ、由佳里ちゃん。少しでもイヤだったら言ってね」
お姉さまの言葉は、優しい。私に安らぎだけを与え、それを安心して受け入れさせてくださいます。
「だ、大丈夫です。続けてください」
「そう? じゃ、続けるわね」
「はあ……はあ……はあ……も、もっとください……あのことを、忘れさせてください……」
「大丈夫よ……私が、一緒にいてあげますから……」
「お姉さま……」
「なあに? 由佳里ちゃん」
「キス……してください……」
「わかったわ……」
そう言ってお姉さまは、私にキスをしてくださいました。
566 :
東の扉:2006/11/22(水) 05:13:48 ID:m1iPHu0i0
「んっ……んん……」
しばらくして唇が離れると、私はお願いしました。
「お姉さま……お姉さまの唾液……飲ませてください……」
「……由佳里ちゃん?」
「お願いです……あの女にされたことを……全部、忘れたいんです……」
「わかったわ。じゃあ、苦しかったら言ってね」
お姉さまは、再び私に優しくキス。そしてお姉さまの体液を、少しずつ送り込んでくださいます……。
「んはあ……」
「どう? 苦しくない?」
「く……苦しいですよ……」
私は、お姉さまの唾液を貪りながら、言いました。
「ごめんなさい、やりすぎたかしら?」
するとお姉さまは、そう謝罪の言葉を投げかけました。でも、私は……。
「ち、違うんですお姉さま……苦しいけど……苦しいくらいお姉さまを味わいたかったから……だから……」
「そう……じゃあよかったのね。私、由佳里ちゃんの心の傷、ちゃんと癒せてるかしら?」
「はい……」
その後も、お姉さまは優しく私を愛撫してくださいました。
私の心の中の黒い感情がどんどん心の外に流されていく……ううん、雪のように優しく包んで溶かされていくのを感じました。
久しぶりに優しい気持ちになりたい……そう思いました。
お姉さまって、やっぱり不思議……エッチの技術だけでいえば拙いのに、心は今までのどんなエッチよりも優しく、気持ちいい……。
私が今までほしかったもの……それを、お姉さまは全て与えてくださいました。
「由佳里ちゃんは、きっと悪い夢を見ていたのよ。お忘れなさい、イヤなことは全部……」
お姉さまにされると、本当に忘れられそうです。一時的なものではなく、本当の意味で……。
そして、私はお姉さまの手で心が満たされるまでイかせてもらいました。
567 :
東の扉:2006/11/22(水) 05:30:46 ID:m1iPHu0i0
「はあはあはあ……」
「どう? 由佳里ちゃん、満足できたかしら?」
「はい……」
エッチも終わって、余韻に浸っている私に、お姉さまはそう聞いてこられました。
「そう。よかった」
「お姉さま……ありがとうございました……」
「いいのよ。私も由佳里ちゃんのお役に立てて、嬉しいわ。ふふっ……それにしても、本当にまりやの言ったとおりだとはね」
……え? それっていったい……。
「どういうこと……ですか? あの女が何か……?」
「実はね、私、まりやに頼まれてたのよ。由佳里ちゃんを抱いてあげてって。
私に抱かれれば由佳里ちゃんも嬉しいだろうからって……でも、まりやの思い込みかもしれないから、由佳里ちゃんに確認したんだけどね」
今までの私なら、私たちを仲直りさせるためのデタラメだと思っていたでしょう。でも、お姉さまが抱いてくださったおかげで、
今までのすさんだ心がかなり楽になったせいか、お姉さまの言葉を受け入れていました。
「そんなことが……」
「まあ、だから許してあげて、とは言わないわ。最終的にまりやをどうするかは、由佳里ちゃんが決めればいいですから……
それじゃあね、由佳里ちゃん」
お姉さまはそう言って、部屋を後にしました。
「お姉さま……」
コンコン……。
「由佳里、あたしだけど、いる?」
部屋をノックすると、あの女の声が聞こえてきました。
少しイヤな気分になりましたが、私は部屋の外に出ました。
「由佳里……」
確かに、あの女は目に覇気があまりありませんでしたし、身体も以前よりやつれていました。
お姉さまが言ってた、この女が私に嫌われてへこんだ、食事ものどを通らなくなった……というのも、まんざらウソではなさそうです。
「……食堂には誰かいますか?」
「ううん、みんな自分の部屋」
「じゃあ行きましょう。私に話したいことがあるんでしょう?」
「うん……」
568 :
東の扉:2006/11/22(水) 06:03:27 ID:m1iPHu0i0
あたしは、由佳里に食堂に連れてこられた。
今まで部屋から出てこなかったことを考えると、大きな進歩、なんだろう……。
「由佳里……」
食堂に着いたあたしは、そこで由佳里の前で土下座した。
「……ごめんっ!」
あたしは、自分の言葉で謝罪することにした。由佳里が言った言葉をそのまま言うんじゃなく、自分の言葉で……。
「瑞穂ちゃんに言われてやっと気づいた。口では由佳里のためだとかなんだとかもっともらしいことを言いながら、
結局ホントは自分が楽しみたかっただけだって……。
あたし、トイレで由佳里が何してたのか知ってから、エロいってだけで由佳里のこと勝手に判断して、自分にだけ都合のいいように解釈して、
由佳里がほかにどんな面を持ってるかなんて、考えもしなかった。
由佳里に完全に嫌われて、瑞穂ちゃんたちにこっぴどく叱られて、由佳里がどれだけ傷ついたのか、やっと考えることができた……。
謝ってすむことじゃないけど……本当にごめん!!」
由佳里はしばらく黙っていた後、口を開いた。
「……ずいぶん甘々ですね」
「……え?」
「お姉さまと奏ちゃんの前で……って言いましたよね? セリフも私の言ったのと違いますし……」
「そ、それは……」
「……昨日、お姉さまが来られましたよ」
「………」
「お姉さまは理解してくださいました。私の本当の気持ちを。そして、こんな私のことを、素敵だっておっしゃってくださいました」
瑞穂ちゃん、無意識の逆ナンパ師だからね……。
「お姉さまは、ホントあなたの親戚とは思えないくらい、優しさと配慮に満ちあふれた素敵な方ですよね」
「く……」
こんな状況じゃなきゃ、あたしは由佳里のことメタメタに痛めつけてただろうな……。
569 :
東の扉:2006/11/22(水) 06:04:53 ID:m1iPHu0i0
「あの時、どれだけ気持ちよかったのか、今は全然思い出せませんけど、私の心はその何百倍も痛かったんですよ」
「………」
「それに、私にだって女として好きな人以外からは感じたくない、気持ちよくなりたくないって気持ちも、ちゃんとあるんですから」
「うん……」
「しっかり覚えといてくださいね、“まりやお姉さま”」
「………!!」
絶交されてる時、あたしのような姉なんか知らないって言われた。つまり、じゃあ、今の由佳里のセリフは……。
許してもらえたんだ、やっと……。
「うっ……うう……」
長かった。もう何十年も経ったみたいだった。あたしは、いろいろな理由でそのまま泣き続けた。
この続きは、「ほころび始めた縁 エピローグ それから」で話すから、もうちょっとだけつきあってね。
570 :
東の扉:2006/11/22(水) 06:14:17 ID:m1iPHu0i0
東の扉です。
「ほころび始めた縁」も、次回でいよいよ最後です。まとまるかな……と心配ですが。
以前のシナリオでは、ここで瑞穂くんがエッチの時に由佳里ちゃんが自分に純潔をささげる演出をする……というネタもあったのですが、
シナリオを変更したので、没になりました(涙)
しかし、Qooさんの「ゆかりんのひとりでできるもん!」「まりやさまはしってた」で、由佳里ちゃんがちょっとかわいそうかな……
と思ったので、まりやにも痛い目にあってもらおうかな、と思って書いていたら、いつの間にかこんな感じに……。
エピローグの「それから」は後日談ということになりますが、もし続きがあるとしたら、こんな感じになっていたでしょうか?
それでは、失礼いたします。
571 :
Qoo:2006/11/22(水) 21:25:25 ID:fKcBSkEN0
「バースデイ・カプリッツィオ」続き行きまぁす。
…もう誕生日だいぶ過ぎちゃいましたけれどね(汗)。
572 :
Qoo:2006/11/22(水) 21:28:21 ID:fKcBSkEN0
◆ 6回表 11月16日:昼休み
2時間目の休み時間、可奈子が葉子の教室へとやってきた。
何の用か聞いてみると、今日の朝、昨日買ったプレゼントを学院寮に置きに行った際、
周防院奏さんが昼休みに皆で作戦会議をしませんかと言ってきたらしい。 断る理由もない。
会議場はお姉さまの教室。 食堂やテラスだと会長が訪れる可能性もあるので、妥当なところか。
というわけで、昼休みになったので今は生徒会室へと向かっている。
昼休みは大体生徒会室で食事するはずの君枝さんを拾って、お姉さまの教室に向かおうというわけだ。
生徒会室前に到着し可奈子が生徒会室の扉を開けた。
「ひゃぁっ!?」
すると扉の向こうから何か驚いたような、素っ頓狂な声が上がった。
すわこそと、葉子がぐいっと勢いよく扉を開けると、君枝さんがこちらを見つめたまま目を丸くして固まっていた。
「…どうしたの?」
「いっ、いえ!何でもありません!」
どもりながらふるふると首を横に振る君枝さん。
その手には、何かの袋を握りしめている。
さっきの声やこの態度からしてどう考えても只事ではない。
「…手に持ってるのって、プレゼント?」
とりあえず話題の矛先を変えてみる。
「えっ?ぇ、ええ…」
「君枝さんが買ったんですかぁ?」
「いえっ、そういうわけでは…」
何だか君枝さんにしては歯切れが悪いというか…正直、ちょっと挙動不審だ。
573 :
Qoo:2006/11/22(水) 21:29:56 ID:fKcBSkEN0
「じゃあ、誰かに渡されたとか?」
君枝さんが用意したプレゼントでなければ、必然的に他の誰かによるプレゼントということになる。
「えっと、か、会長の机に置かれてて…誰のプレゼントかなぁ…って…」
「会長の机?」
会長の机に視線を移す。
机の上にはいくつかのプレゼントと思しき袋や箱が置いてあった。
自他共に対し厳しい会長だが、そのストイックさに憧れる生徒は少なからず存在する。
一度朝誰かが生徒会室の扉を開ければ、放課後生徒会活動が終了するまで開けっ放しとなる。
休み時間中に生徒がプレゼントを置いていったのだろう。
さっきの動揺はこれを見ていたのが原因だろうか。
多少不自然な気もするが…まぁ、無理に突くこともないかな。
574 :
Qoo:2006/11/22(水) 21:31:42 ID:fKcBSkEN0
「誰のプレゼントかは分からないの?」
もし誰かが置いていったプレゼントであれば、バースデイカードか何かが一緒に置かれていてもおかしくない。
「いえ、特にそういうのはなかったみたいで…」
「そう」
「誰のプレゼントなんでしょうねぇ…」
むー、と唸る可奈子。
「…そうね。悪くないかも」
突然頭の中に去来した閃きに、葉子が呟きを漏らす。
「何がですか〜?」
「ん…とりあえず後にするわ。君枝さん、今日の食事はお姉さまの教室で摂らない?」
「お姉さまっ!?」
驚きの声を上げる君枝さん。
「…どうしたの?」
「ぃ、いえ、どうしてお姉さまの教室で…」
「今日の夜パーティするでしょ。その作戦会議を開くの」
「作戦会議ですか…」
「何か都合が悪いことでもある?」
「いえ、ありません。行きましょう!」
どこかほっとした様子だった君枝さんはいきなり威勢よく立ち上がると、先陣を切って生徒会室を出て行った。
持っていた会長へのプレゼントとやらを持ったまま。
「どうしたんでしょうねぇ…」
「さぁ…」
残った二人で首をかしげながら、飛び出して行った君枝さんを追うべく生徒会室を後にした。
575 :
Qoo:2006/11/22(水) 21:32:55 ID:fKcBSkEN0
「は〜い注もぉ〜く!只今より、聖應スケバン連合緊急集会を行う!
えぇ〜、今日あんたたちを呼び出したのは他でもない」
何だ何だ、これは。
お姉さまの教室に、今教室にいない生徒の机を借りて会議場が設けられたわけだが…。
皆が席に座りとりあえず食事をしようということで、神に感謝し、各々が自分の昼食に手を伸ばし始めると、
まりやお姉さまがおもむろに立ち上がり、箸を振り回しながら口上を述べ始めたのだ。
「まりやはしたないよ…っていうかそれ何?」
皆が呆気に取られている中、お姉さまが呟く。
「えっ、瑞穂ちゃん知らないの?」
「えぇ…」
「うそ、皆も?」
周囲を見回すまりやお姉さまだったが…。
「スケバン…」
「スケバン?」
「……」
「スケバンって何なのですか?」
「知らなくていいのよ奏ちゃん」
肯定の言葉もなく、ひそひそと各々が呟く中、唯一今のまりやお姉さまの…芸?を知っていたらしい可奈子が言った。
576 :
Qoo:2006/11/22(水) 21:35:37 ID:fKcBSkEN0
「今のってぇ、テレビでやってたやつですよねぇ」
「なぁんだ知ってる子いるじゃ〜ん」
まりやお姉さまの顔がみるみる笑顔に変わっていく。 しかし。
「それでぇ、スケバンって何ですかぁ?」
「がっかりだよ!」
すごい顔で凄むと、膨れ顔で椅子に座り込むまりやお姉さま。
「ふぇぇ…」
少し泣きそうになる可奈子。
「まりや、威嚇しないの。可奈子ちゃん、ごめんね。怖かったね」
「もういいから…食べましょう」
上岡由佳里さんが情けなさそうな顔で「頂きます」と弁当に箸を伸ばした。
「そうですね…」
「ああ、お祈り…はしたんでしたっけ」
それを合図に皆食事に手を伸ばしていく。
少し疲れた雰囲気での食事が始まった。
577 :
Qoo:2006/11/22(水) 21:36:56 ID:fKcBSkEN0
食事も終盤に差し掛かり、早い人はデザートの段階に入っている。
まだ食事中の子もいるが、もうじき食べ終わるだろう。
「それじゃあ、そろそろ」
「ええ、そうね」
お姉さまがうなずく。 実質上の会議の開始の合図だ。
「と言っても何を考えるんですか?」
「まずは、どうやって会長を寮まで呼ぶか…です」
「確かにそれは問題ね…。できれば寮に来るまでは知らないでいて欲しいのよね」
そう。 会長にはパーティのことを知らずに寮まで誘う必要があった。
「絶対ではありませんけれど、それが理想です。でもお姉さま絡みで寮に呼ぶと、悟られてしまう可能性がある」
「確かにね」
「ちょっと難しいのでは…」
「いえ、一つ案を思いつきました」
「というと?」
注目を集めた葉子は唇の端を本の少し上げた。
これは、さっきの差出人不明のプレゼントを見ていて、ふと閃いたアイデアだった。
「ここは一つ…お姉さまに、悪役になっていただこうかと」
「悪役…?」
「なのですか…」
「ええ。脇役は可奈子が適任でしょう」
この役は性格や立場的には君枝さんがいいのだが、いかんせん君枝さんは真面目すぎるきらいがある。
会長にバレないようにと力を入れすぎて自爆する可能性があった。
ということで、ここは多少面白がって力を抜いてくれそうな可奈子の方が適任だと判断した。
578 :
Qoo:2006/11/22(水) 21:39:27 ID:fKcBSkEN0
「可奈子…脇役ですかぁ?」
不満げな顔をする可奈子。
「別に舞台やるわけじゃないんだから、脇役だからってそんな顔しないの。まず、可奈子と会長に一緒に帰っていただきます」
「それで?」
「そこで、帰り道にダミーのプレゼントを渡してもらいます。私と君枝さん、可奈子の三人からのプレゼントとして。
ここは私たちの立場と説得力が必要ですから」
「なるほど…」
「途中、可奈子が質問します。「会長、お姉さまからプレゼント貰いましたか?」
貰っているはずのないプレゼントですから当然、いいえと答える会長に可奈子がこう言うわけです」
葉子がぴっ、と一指し指を立てる。
「「お姉さまには会長の誕生日のことを教えたはずなのに、会長にプレゼントを渡してないなんて酷い…文句を言いにいこう」…と」
くくくくく、とまりやお姉さまが笑い始める。
「目に浮かぶわ」
「面白そうですねぇ」
「そういうことね…」
「なるほどなのですよ〜」
皆の口から「おぉ〜」や「はぁ〜」と言った溜息が漏れる。
「こんな感じでいかがですか?」
「悪くないと思うわ」
くすくすとお姉さまが苦笑する。
「貴子をたぶらかすわけね」
「人聞きが悪い」
「どう言おうと同じじゃない」
「…まぁ」
…確かに考えてみれば、言い換えようにも同じような言葉は「ひっかける」「かつぐ」「だます」「あざむく」 ぐらいだ。
ほとんど意味は同じだが、全ていい意味では取られない言葉だった。
無理に言い換えて、「愛のある罠」…、何か如何わしい感じだ。
579 :
Qoo:2006/11/22(水) 21:42:28 ID:fKcBSkEN0
「でも、よくこんな手思いついたわね」
「君枝さんの持ってた会長へのプレゼントを見ていて、ふと思いついたんです」
お姉さまに聞かれて答えると、話の矛先が自分に向いて、「えっ?」とたじろぐ君枝さん。
しかし君枝さんが何か言葉を返す前に、
「へぇ、あの堅物の貴子なんかにプレゼント贈る物好きなんているんだ」
とまりやお姉さまが笑いながら揶揄するように言った。
「かっ、会長は素晴らしいお人ですっ!」
当然それにカッ、と噛み付く君枝さん。
「ほんっと、このデコメガネは会長にご執心よね…。マインドコントロールでもしてんじゃないの?」
「そっ、それ以上会長を愚弄すると、いかにまりやお姉さまとはいえっ…!」
自分のことも言われているのだがそんなことは気にも留めず、会長への中傷を払拭すべく熱くなって立ち上がる君枝さん。
「愚弄って、あんたいつの時代の人よ」
「まりや、やめなさい」
お姉さまが売り言葉に買い言葉を続ける二人の仲裁に入る。
「はいはい」
「ごめんなさい君枝さん。まりやのはただの憎まれ口だから、本当に貴子さんのことを悪く言ってるわけじゃないの。
大丈夫。貴子さんが素晴らしい人だっていうことは、ここの皆が知っていることだから」
「…は、はぁ」
君枝さんは納得がいかない様子だが、お姉さまに申し訳なさそうな表情でそう諭されてはそれ以上何も言えず、
矛を引っ込めると椅子に腰を下ろした。
「ちょっと瑞穂ちゃん?」
まりやお姉さまも矛を向ける先は違うものの何か言いたげだったが、お姉さまに少し厳しい顔で「まりや」と静かに一喝されると、
「はぁ〜い」と仏頂面ながら引っ込んだ。
580 :
Qoo:2006/11/22(水) 21:43:42 ID:fKcBSkEN0
「本当は仲がいいのに、すぐに憎まれ口を叩くんだから、まりやは…」
「トムとジェリーみたいですね」
お姉さまが溜息混じりに言った言葉に、苦笑しながら相槌を打つ上岡さん。
「由佳里〜?」
「まりや」
「うぐっ」
上岡さんを睨みかけるまりやお姉さまだったが、再びお姉さまに低い声で一喝されると、
つり上がった目がまるで叱られた子犬のように(実際叱られているのだが)情けなく勢いを失う。
…この二人の力関係は、やはりお姉さまに軍配が挙がるようだ。
さすがと言うか何と言うか…。
実際まりやお姉さまや会長クラスの相手を諌められるのは、お姉さまか紫苑さまくらいのものだろう。
「じゃあ、貴子さんを寮へと呼ぶ手筈は、これでいいわね」
皆の肯定を確認すると、お姉さまが議題を進めていく。
その他の議題はパーティでの食事や段取り、プレゼントといったところで、
これらもさほど滞りもなく組み立てられていき、全ての議題を消化すると、まもなくちょっとした雑談会が始まっていた。
計画は整った。 後は、放課後を待つだけだ。
計画通りにいかなくても結局のところ会長を祝うことには変わりないのだが、
やはりうまく引っかかってくれたほうが面白…もとい、会長の喜びも大きいものとなるだろう。
しかし、細工は流々に施してもイレギュラーは必ずあるもの。
さて…どうなることやら。
581 :
Qoo:2006/11/22(水) 21:46:58 ID:fKcBSkEN0
◆ 7回表 11月16日:放課後
「それじゃあ、帰りましょうか」
「はぁ〜い」
帰り支度を済ませた会長と可奈子は、二人揃って生徒会室を出た。
蛍光灯の明かりに煌々と照らされている校舎内に対し、窓の外はもうすでに暗く、深い闇に覆われている。
物音一つなく静かな廊下にがちゃっ、と鈍い音が響く。
扉がきちんと施錠されていることを確認すると、二人はカギを保管場所へ戻すべく歩き始めた。
ちなみに葉子さんと君枝さんはある程度生徒会活動をこなすと、
早々に帰宅…したと見せかけて、お姉さまたちの寮でパーティの準備を進めている。
「寒くなってきたわね…」
そう口にした会長の手には大きな袋がぶら下がっている。 中身はもちろん会長へのプレゼント。
ただしそのプレゼントは可奈子たちからではなく、会長の机の上に置かれていたプレゼントを袋に入れたものである。
「そうですねぇ…もう冬でしょうか…」
はぁ、と器にした手に息を吹きかけると、吐息が真っ白に染まる。
寒いなぁ…。
「廊下も暖房がついていればいいのになぁ…」
可奈子が漏らした呟きに、会長がくすくすと微笑する。
「それはさすがに贅沢というものよ?」
「そうでしょうかぁ…」
寒いのは苦手なのになぁ。
実のところ、寒いところも暑いところも苦手な可奈子だった。
582 :
Qoo:2006/11/22(水) 21:51:05 ID:fKcBSkEN0
カギを元の場所に納め、二人で話しながら昇降口に到着した。
「靴履き替えてきま〜す」と言い残して会長と別れ、自分の靴箱へと向かう。
ここまでは、予定通りだった。
葉子さん曰く、「用事があるとかで問答無用で帰られてしまうのが一番痛いケース」らしい。
確かにそれはそうだ。
なので、今会長と一緒に帰っているだけですでに一つ目のノルマは達成していることになる。
さて次に待ち構える二つ目のノルマは、お姉さまたちの待つ寮へと繋がる道の前で、プレゼントを渡すことだった。
会長と合流し、他愛のない会話を交わしながら電灯に照らされた並木道を校門に向かって歩いていく。
段々と目的の場所に近づいてくると、少しだけ心臓がドキドキした。
大丈夫。 大丈夫。
心の中でそう二回唱え、足を止めて立ち止まる。 横には、寮へと繋がる道。
「…どうしたの?」
可奈子の足音がしなくなったことに気付いた会長が後ろを振り向いた。
「ちょっと待ってくださぁい」
自分のバッグの中をごそごそと漁り、会長へのプレゼントを取り出す。
それは昨日買ったプレゼント…ではなかった。
昨日買ったプレゼントは今日の朝のうちに寮の中へ運んだため、今回の作戦には使えなくなってしまったので、
昼休みに君枝さんが持っていたプレゼントを渡すことになったのである。
寮に取りに帰ってもよかったが、作戦では一時的に渡しておくダミーのプレゼントなので、これで問題ないらしい。
583 :
Qoo:2006/11/22(水) 21:52:34 ID:fKcBSkEN0
「はぁい、会長」
とプレゼントを差し出すと、会長は驚いたような表情を見せ、少し遠慮がちな声で可奈子に問いかけた。
「これって、もしかして…」
「ハッピーバースデ〜イ、会長。バイ、生徒会一同より」
にこっ、と可奈子が笑うと、会長の顔に嬉しそうな笑顔が浮かんだ。
「ありがとう、可奈子さん」
プレゼントが会長の手に渡る。
「会長〜?実のところぉ、プレゼント貰えないのかな〜って思っちゃってたりしましたぁ?」
「実は貰えるんじゃないかって、少し期待していたわ」
可奈子がからかうように言うと、会長がはにかみながらふふっ、と笑った。
すごく可愛い笑顔だなぁ…じゃなくって。
会長の笑顔に少し見とれていた可奈子だったが、これで終わったわけではない。
むしろ、ここからがミッションスタートだ。
584 :
Qoo:2006/11/22(水) 21:54:23 ID:fKcBSkEN0
「ねぇ可奈子さん、ここで開けていいかしら」
「あ、ちょっと待ってください会長」
「ん?何かしら」
「そういえばぁ、会長、お姉さまからプレゼントは貰いましたかぁ?」
「お姉さま?…いえ、貰っていないけれど…。お姉さまは私の誕生日をご存じないでしょうから、仕方がないわ」
そう言いながらも、少し残念そうな顔をする会長。
「えぇ〜、そんなはずないですよぉ〜。だってこの前お姉さまに会長の誕生日のことは伝えたはずなのにぃ〜」
「えっ?」
「お姉さまってばひどぉい!会ちょぉ!抗議しに行きましょう!」
そう言い置くと、鳩が豆鉄砲を食らったような表情の会長を置いて駆け出す。
「絶対に「いいの、いいのよ可奈子さん」とか言いながらついてくるから」とは葉子さんの談。
「えっ、えっ?」
可奈子のノリにちょっとついていけてない会長だったが、それでもすぐに可奈子を追って駆け出した。
「か、可奈子さん、いいのよ!」
葉子さんの罠に落ちた会長。
可奈子は葉子さんの予想通りの声を上げる会長に少しこみ上げた笑いを抑えながら、用意された台詞を口にする。
「ダメですよぉ会長、こういうことはしっかりしないとぉ」
「いいのよ可奈子さん、お姉さまにもきっと事情があったんだわ」
追いついた会長が可奈子の腕を掴む。
しかし可奈子は困った顔で説得を続ける会長を引きずりながら走り続け…そしてついに、寮の前に辿り着いた。
585 :
Qoo:2006/11/22(水) 21:55:42 ID:fKcBSkEN0
少し上がった息を整えながら、葉子さんの言葉を思い出す。
「会長からは扉を開けられないから」
葉子さんの予想通り、可奈子については来た会長であったものの、寮の中に入ろうという素振りはない。
当然といえば当然。
だって会長は可奈子に連れてこられただけだし、それに会長は、お姉さまに嫌われるようなことをしたくはないだろうから。
でも、そうはいかない。
「可奈子さん、ありがとう。でも、もういいのよ」
会長は扉の取っ手を掴んだ可奈子の肩に触れて引きとめようとするが…。
「ダメですよぉ。だって…」
そう、ダメに決まっている。 だって…。
可奈子は両手に掴んだ扉を思いっきり観音開くと、横に飛び去って耳を塞いだ。
「貴子さん、誕生日おめでとう!」
パーン、パンパンパンパン!
お姉さまのお祝いの言葉と共に、塞いだ手越しにも少々けたたましいクラッカーの音が辺りに響く。
「え……?」
扉の向こうにいた皆の方を見つめながら、寝耳に水なこの状況にぽかん、と口を開けて惚けている会長。
「会長?」
「…え?」
葉子さんが呼びかけるが、どうも今の自分の状況がうまくつかめないようだ。
586 :
Qoo:2006/11/22(水) 21:56:49 ID:fKcBSkEN0
そんな会長を見ていたまりやお姉さまが「貴子!」と大声で名前を呼ぶと、「は、はい!?」と会長が我に返った。
「上がりなよ」
まりやお姉さまがぶっきらぼうな言葉なのに不思議に優しい声でそう言うと、
手で"来い来い"のポーズを取って踵を返し、食堂の方に消えていく。
「貴子さん、まりやもああ言ってることですし、どうぞ上がっていってください」
お姉さまが会長の手を握って中へと誘導する。
「えっ?あ、あの…」
「ほらほらぁ、行きましょぉ〜」
可奈子はまだ少し逡巡している会長の背中を押して寮の扉をくぐった。
戦果は上々といったところ。
可奈子はさっきの万遍なく驚いた会長の顔を思い出し、
以前見たテレビのドッキリ番組で、仕掛け人が持っていた「ドッキリ大成功」のパネルを掲げたい気分だった。
君枝さんが、後ろで寮の扉を閉める。
今日は11月16日。 会長の誕生日。
パーティが、幕を開ける。
587 :
Qoo:2006/11/22(水) 22:02:47 ID:fKcBSkEN0
え〜、今回はここで終わりです。ホント遅筆で申し訳ありません。 ヽ(´Д`;;)ノ
そろそろ終盤に差し掛かります。どうも今スレで書き終えるのは無理みたいですね。
っていうかやっと終盤か…(泣)。どうして私は書き出すと無駄に長くなるんだ…。
えぇ〜、痛い間違いも色々見つかってますが…。
>>533氏に言われた通り可奈子の一人称は「可奈子」だとか、もう気にしたりしないゼ!(やけくそ)
でもコソっと後半じゃ修正したり…(隠)。 で、でも頑張るゼ!(泣きながら) Qooでした!ヽ(`Д´ )ノ
588 :
東の扉:2006/11/22(水) 22:45:13 ID:m1iPHu0i0
Qooさん、GJです。
なんだか面白い展開になってきましたね。
パーティーがどんなになるのか、真相を知った貴子さんが皆さんにどう言うのでしょう?
にしても、普段あまり表に出ない脇役キャラを書くのは難しそうですね。
Qooさんの苦労がわかるような気がします。
私は貴子さんの誕生日には間に合いませんでしたが、一子ちゃんのは書き上げましたので、
落としてみようと思っています。
「ほころび始めた縁」のエピローグを落とすのも、11話になると思いますが、
お互いに頑張りましょう。
>>587 GJ!!こういうの見てると自分でも書きたくなるね
そろそろ次スレ?と思って特に聞くことなく立てようとしたんだが、
立てられなかったので誰かお願い
東の扉さん、Qooさん、GJです!
>>590 それでは、第11話スレ、立ててきます。
593 :
Qoo:2006/11/23(木) 00:06:50 ID:L8DK2YIu0
>>592 次スレ立て、ご苦労様です。
>>588 私の気力が尽きるのが先かもしれませんが、とりあえず頑張りましょう。
次落とすのはいつになることやら(笑←刺)
594 :
Qoo:2006/11/23(木) 01:13:18 ID:L8DK2YIu0
>>589-591 ありがとうございます。ほんと嬉しいです。
ということで、お礼とスレ埋めがてらショートギャグでもやります。
笑ってやってください。
595 :
Qoo:2006/11/23(木) 01:13:55 ID:L8DK2YIu0
ショートトークドラマ:やるきねこがみてる
「おじゃまします」
「邪魔はしないでね」
「慣用語ですっ!小学生ですか貴方は!」
「冗談じゃない」
「はぁ…まりやさんの相手をするのもアホらしいですわ…」
「そんなこと言うと見せてあげないよ」
「き、汚いですわよ」
「ふん。どうとでもいえば」
「それにしても、どうしてまりやさんが瑞穂さんのアルバムを?」
「あたしが瑞穂ちゃんのアルバムのコピーを持ってないと思ってんの?」
「なるほど…。言われてみればそうですわね」
596 :
Qoo:2006/11/23(木) 01:16:36 ID:L8DK2YIu0
「えっとこれっと…これと…」
「こっ…これが瑞穂さんの…」
「あっとは…これだね」
「……す、素晴らしいですわ…」
「貴子、鼻血」
「えっ?あっ…」
「あんた、興奮しすぎ」
「み、瑞穂さんが可愛すぎるのがいけないんです」
「どんな言い訳よ…。ま、気持ちは分からなくもないけど。ん〜む…確かに超可愛いわ…瑞穂ちゃん」
「………」
「貴子、あんた集中しすぎ…って、お、パンチラ写真見っけ」
「パンチラっ!?」
「うわっ、反応早っ!」
「み、瑞穂さんのですか…?」
「欲しい?あげよっか」
「……く、ください…」
「はい、あ〜げた」
「ぶ…ぶっ飛ばしますわよ?」
「はいはい、分かった分かった。ほい」
「………?これのどこが…?」
「ほら、写ってるでしょ。瑞穂ちゃんの後ろにあるパンダのぬいぐるみの足がチラっと」
「……ぶ…、ぶ、ぶ、ぶ、ぶっ殺して差し上げますわ!そこになおりなさい!」
「へぇ、貴子のくせにいい度胸じゃん。っていうか何を想像してたのよこのエロ貴子〜」
「きぃ〜〜〜〜!!!」
ドターンバターンガターン
今日も平和だ…。
相変わらず懲りない二人のドタバタを見ながら、
ふにゃあ〜、とあくびをするやるきねこだった。
>パンダのぬいぐるみの足がチラっと
うわっ懐かしい
598 :
東の扉:2006/11/23(木) 03:46:58 ID:kWpdgjpU0
目標500KB、ということで、私もネタをひとつ。
もし、おとボクメンバーがダイの大冒険を演じるとしたら?
ダイは奏ちゃん、ポップは由佳里ちゃん、アバンは紫苑さん、ヒュンケルは圭さん、
マアムはまりや、レオナは瑞穂くん、ハドラーは貴子さん……で、どうでしょうか? ハドラーも後半はかっこいいですし。
ほかのキャスティングもそれぞれ意味があるんですが、いががでしょうか?
599 :
東の扉:2006/11/23(木) 09:28:13 ID:kWpdgjpU0
「はややっ、奏が勇者なのですか?」
「奏ちゃんは純粋ですからね。ちょうどいいと思って」
「それで、奏ちゃんの親友だから、私がダイの親友のポップ役なんですね」
「確かにそれもあるけど、本当の理由じゃないわ」
「え? 本当の理由って?」
「エロいからでしょ?」
「!! お姉さままで私をバカになさるんですか!?」
「違うわよ。ほら、アバンの使徒の中でポップだけ普通の育ち方をしてるとことか、
そのことで劣等感を抱いたり、勇気や自信が持てなかったりして悩んだり、それを乗り越えていくとことか、
由佳里ちゃんにぴったりじゃない」
「な、なるほど」
「アバンは紫苑さまなのですか?」
「気さくな中にも威厳があるとことか、紫苑さんならうまく出来ると思って」
「ヒュンケルは圭なのね」
「無口で孤高なとことか、が理由かしら」
「マアムがまりやお姉さまなんですか?」
「うん。普段気が強いけど本当は優しくて仲間思いなとことかがね……」
「レオナはお姉さま、なのですか?」
「奏ちゃんのパートナー、ですから」
「魔王が貴子ね、ぴったりじゃない」
「でもまりやお姉さま、ハドラーは後半かっこいいのですよ」
「そう。このキャスティングは、後半のハドラーから、ね」
「部長さんに、脚本を書いたいただけるよう、お願いしてきますのですよ」
「楽しみね、あの原作がどう変わるのか」
「そうね……」
こうして、ダイの大冒険をみんなで演じる計画は第1歩を踏み出したのでした。
600 :
東の扉:2006/11/23(木) 09:30:12 ID:kWpdgjpU0
どなたか、作品化しようという方がいればお願いします。
東の扉でした。
601 :
東の扉:
〜2つのおみやげ〜
今日も由佳里は、部屋でくつろいでいた。1冊のアルバムを広げながら……。
「由佳里ちゃん、失礼いたしますのですよ」
「わわっ、奏ちゃん、いきなり入ってこないでよ!」
「えっ? 奏、ノックしましたのですよ」
「ウソ!? 気づかなかった」
「由佳里ちゃん、それは何なのですか?」
「わわっ、これは……」
奏は、由佳里のアルバムを後ろから見ます。
「これは、お姉さまのアルバムなのですよ」
「うん。PS2の方でもらったの」
「由佳里ちゃん、ずるいのですよ。奏もほしいのですよ」
「まりやお姉さまに頼んだら? すぐくれると思うけど」
「わかりましたのです。奏、頼んでくるのですよ」
奏は、期待いっぱいの表情で部屋を出て行きました。
「ふーっ……こっちのおみやげには気づかれなくてよかった……ていうか、使う前でよかった……」
由佳里は、ショーツとスカートのポケットに入っている、今まさに瑞穂のアルバムを見ながら使おうとしていた
PCでもらった方のおみやげを見ながらため息をついた。
それからしばらくして……。
「まーりーやー?」
「な、なあに、瑞穂ちゃん」
「どういうことなの? これは? ほとんどの生徒が僕の女装のアルバムを持ってるなんて」
「いやー、最初は由佳里に渡しただけなんだけど奏ちゃんからみんなに広まっちゃったみたいで……さいならーっ!」
「あ! こら! 逃げるな!」
写真の焼き増しに必死になっているところへやってきた瑞穂から、まりやは一目散に逃げ出した。
「ううっ、もうお婿にいけないよ……」
瑞穂は、幼い頃からのまりやに女装させられた記録が全生徒に広まっていることを知り、トホホ状態になっちゃったのでした。
Fin