経済教室 2010.10.14 ゼロ金利復活 その効果は >>上
海外資産の購入 検討を
円の国際化進めよ 為替変動の影響抑制も
櫻川昌哉 慶應義塾大学教授
ポイント
・99年以来ほぼゼロ金利が続くも効果見えず
・ゼロ金利時の貨幣需要の予測は非常に困難
・海外に円を供給すれば円高圧力に歯止めも
急激な円高と世界景気の減速を受けて、日銀は政策金利を年0〜0.1%へ引き下げる、いわゆる「ゼロ金利」政策
導入を決めた。その狙いは名目短期金利の低下によって全般的な金利の引き下げを誘発し、投資を刺激して
景気の失速への歯止めとデフレ解消を達成することである。名目金利を極限まで下げたのだから、
その効果は本来は絶大のはずである。だが、結論を先取りすれば、効果はほとんど期待できないであろう。
(略)
しかし、貸し出しの伸び率は98年以降、多くの時期においてマイナスの値をとっている。銀行の貸出残高は
98年の482兆円をピークに減り続け、現在約420兆円にすぎない。つまり、過去10年間、超金融緩和政策の中で
貸し出しは減ったのである。
(略)
金融政策はまったくの手詰まりである。では、日銀にやるべき仕事はないのかというと、実はそんなことはない。
そもそも、日銀が追加金融緩和に踏み切ったことの発端は、急激な円高である。今回の日銀の施策のひとつに
資産買い取りを掲げているが、なぜ国内資産に限定するのであろうか。円高のさなか、割安な海外資産の
積極的な購入を視野に入れてもいいと思う。
思い切って、100兆円規模で海外資産を購入してはどうか。ただし、為替介入と批判されないよう、円建てで
買うのが望ましい。約100兆円にのぼる日本の外貨準備高を国債担保と考えれば、100兆円規模の海外への
円の供給は問題ないであろう。
メリットは計り知れない。第一に、世界経済が不況の折、海外から歓迎される。それでいて優良資産を割安に
買うことができる。第二に、世界にばらまかれた100兆円の円が、潜在的な円売り圧力を生み出し、政府・日銀
が直接介入しなくても円高への歯止めをかけることができる。第三に、円建てで決済することによって、
円が国際通貨としての実績を積むことになる。
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とりわけ大事なのは3つ目のポイントである。昨今の国際通貨体制の動揺は、米国の世界経済における
相対的地位が下落し、十分に国際通貨を供給できなくなったことに起因している。円高はその結果である。
米国は素直に認めようとしないであろうが、今、国際通貨体制を安定させるために必要なのは、国際通貨
の新たな供給先を見つけることである。ユーロが失速した折、実は円が、円高を追い風に国際通貨としての
地位を高めるチャンスである。政府や日銀が先頭に立って、自国通貨建てのビジネスを拡大すべきである。
具体的な業務は投資銀行に任せればいい。米国のドル外交は、20世紀初頭にJPモルガンが英国に
米国債をドル建てで売ったことを嚆矢(こうし)としている。
円は流動性が低いから国際通貨になれないという通説があるが、必ずしもそうではない。例えば、財政危機に
瀕(ひん)しているスペインやイタリアに「国債を円建てなら買ってもいい」と日銀が申し出たとしよう。彼らは
円建て債を発行して得た円資産を外貨準備にするであろう。いざというとき、その円資産を担保に自国の国債を
発行できるからである。通貨価値が安定していれば、流動性は低くても国際通貨として流通する。
実績を積み重ねていけば、市場での流動性はいずれ高まる。
円が国際通貨として地位を高めれば、国際的な円高取引が増えて、円高はそもそも問題ではなくなる。
円高で景気の腰を折られることはなくなるのである。円で買える海外資産も増えるので、国内の低金利商品に
塩漬けされている貯蓄は海外へ投資され、国内金利は上昇する。そうれば、日銀は名目金利を引き上げる
ことができ、金利操作による金融政策運営が再び可能になる。外国政府が円資産を積極的に外貨準備として
持つようになれば、政府の国債管理もまた選択肢が増える。
(略)
マネー敗戦 (文春新書) [新書] 吉川 元忠 (著) 出版社: 文藝春秋 (1998/10)
ttp://www.amazon.co.jp/dp/4166600028 マネー敗戦の政治経済学 [単行本] 吉川 元忠 (著) 出版社: 新書館 (2003/02)
ttp://www.amazon.co.jp/dp/4403230954 吉川元忠『マネー敗戦』 - 資本輸入国が基軸通貨国となる矛盾
ttp://critic5.exblog.jp/9691226/ 「マネー敗戦」で捉えられている構造とは次のようなものだ。80年代前半、米国のマネー経済は
レーガノミックスの下で急速な変貌を遂げ、経常収支が赤字となり、資本を輸入して赤字を埋めるようになる。
世界一の債権国だった米国は一転して世界最大の債務国になり、その債務を穴埋めしたのは日本からの
海外投資だった。本来、資本輸出国と資本輸入国との関係では、資本を輸出する側がその国の通貨建て
で起債し、資本輸入国が発券した債券を輸出国の貯蓄超過分が吸収する。ドイツはそのようにして、
ユーロ・マルクによる起債で資本輸入国の債券を発行させ、その債券をフランクフルト市場に上場させる
ことを発券側に求めた。日本は、なぜか円建ての起債をせず、ドル建て債券である米国債の購入のみで
資本輸出を続け、対外純資産をドルで貯めこみ、相次ぐ為替切り下げによって膨大な資産減価を余儀
なくされた。日本が蓄積した経常黒字と対外純資産は為替変動で常に減価させられ、日本経済の
デフレ圧力となり、デフレ圧力は輸出条件の円安ドル高を求め、円資金はドル債券に流れて米国経済に
成長と繁栄を齎せた。米国は基軸通貨の魔術によって、日本から米国へ富の移転を自由自在に実現し、
その構造を維持して成長と均衡を達成できた。
資本輸出国が為替リスクを負うという本末転倒した不合理な構造。ドルを支えるために資産減価の
自己犠牲を身を滅ぼすまで続ける円。これこそ「マネー敗戦」が告発する日米経済関係である。
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金持ち名無しさん、貧乏名無しさん:2010/10/18(月) 16:08:58
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金持ち名無しさん、貧乏名無しさん:2010/10/18(月) 20:56:28