【第二弾】長官に忠誠を誓うPCIA兵の数→80万+
1 :
マロン名無しさん:
PCIA長官ドラコルル。
パピ曰く「悪魔のように悪知恵が働き情け容赦のない男」
そのキャッチコピーに恥じず地球に逃げたパピを見事拉致し
奪還に来たドラたちのカモフラージュもあっさり看破。
暫く泳がせた後反乱軍ごと一網打尽にし、主人公ズを処刑場まで追い込む。
さらに無敵を誇るスネ夫戦車も弱点発見して海中に撃墜!
子供相手に負ける要素が一切無い長官にF先生も困り果ててか突然
巨大化するという反則ワザを犯す!(でも伏線有り)それでも長官は慌てない!
でもちゃんと部下が上手いことやったら褒めてくれる。しかも長官なのに
中隊長クラスの仕事までこなす徹底した現場主義。そんな長官を信頼してか
兵士も非常事態の時は真っ先に長官に駆け寄る。ギルモア?知るかそんなの
そのあまりのカリスマ性に初代>1が「異論は許さん」の一言で立てたスレも
妄想ネタで大フィーバーしSSが二本も投稿され遂に完走する始末。
これほど魅力的な悪役が他にいようか?いやいない!!
さぁ、ドラコルル長官への熱い思いを一気にぶちまけるがよい!
前スレ:大長編ドラで一番カッコいい悪役はドラコルル長官
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1045056355/
2 :
1:03/07/02 18:11 ID:???
うぁ!書き込んじゃった…
3
4 :
マロン名無しさん:03/07/02 19:39 ID:XEDDd5D1
あ、もうたったのね
俺は前スレの
>>1じゃないけど、一応言っておく。
異論は許さん。
>>5 勿論ですとも。まったくもって異議無しです。
でも前スレも埋めなくちゃな(w
>>1 少々早い気もするがでかした!君の昇進を約束しよう。
>>1 乙華麗。
ということは、あなたは初代1とは違う方なんですね。
長官の信奉者はどんどん増えていってますね!
この新スレが立つ早さも、長官のカリスマのなせる業だなw
11 :
マロン名無しさん:03/07/03 06:08 ID:4G538yoI
ドラコルル=ユスーポフ候
>>11 ドウイ。池田理○子女史のだよね?
そうなるとギルモア=ロシア皇帝か?でもそれは何かチガウな(w
>>12 キャラだけで考えればギルモア=ラスプーチンだけどな、間違いなく
>>11 前スレの774さんのSSのラストシーンで思い出した。
それで余計泣けた。
たしかにドラコルルってロシア系の名前(苗字)っぽいかも
PCIA=大長編で働きたい職場ランキングNO.1
ってことは反撃作戦に向かう政府軍の列車に無人列車を衝突させたりしてたのか…
>>16 確かに…ガルタイト本社は給料良さそうだけど上司に期待できないし
魔界は序列が厳しいし。
長官の為ならユダの汚名もかぶる部下がいる訳だな
レジスタンスと恋仲になっちゃう妹とか
>>18 で、妹の恋人の正体がばれて、
「私の妹から離れろ○○!いや、本名は××・・・ピリカの自由同盟構成員
・・・そうだな?!」
恋人、毒を飲もうとする
「自殺などさせぬぞ!撃て!!」
であぼーん。↑このセリフすごくそれっぽいと思う。言いそう。
「氷の刃」もいかにもだよな
21 :
マロン名無しさん:03/07/03 18:57 ID:2A6res6d
でもケレンスキーごときには負けないだろう。
>>21 「ギルモアもパピもこの国には要らぬ。お前ならどちらから先に消してゆくか・・・?」
そうなるとやっぱパピ=アレクセイ・・・になるのか?
で、ユリウスはし(ry
>>23 「これだけは信じてくれ・・・違うやり方ではあるが私もパピと同じように
この国を愛しているのだと・・・・」
なんかいくらでも出ますな、オル窓ネタ
>>16 地底国も何かつまんなそうだし、ムー連邦もやだしな。
働くならPCIAかな、やっぱり。
・官僚なのに偉ぶらず、部下との間に堅苦しくない人間関係を築く。
・自分で出来る仕事は部下に押し付けず全部自分でやる。
・深夜・徹夜の作業も長官自ら率先して行う。自分一人で事足りるなら部下には残業させない。
こんな上司がいる職場だったらそりゃ働きたいに決まってるさ
あれで軍服姿(帽子付)のユスーポフ候がグラサンかけてたらそのまんま池田○代子版・長官だな
長官がサングラス掛けてたのは正解だと思う。
「ドラえもん」の絵だとどんな目でもイメージに合わないし。
まあF先生の絵は基本的に「記号」だからな
それを元に好きなように脳内変換すればいい訳で
30 :
マロン名無しさん:03/07/04 14:59 ID:RMH9agjm
>>1 スレタイにドラコルルがないと分かりにくい。
>>30 PCIAって書いてあってもわかりずらいかな?
スレでもほとんど呼び方は「長官」だし・・・
>>29 そうそう、私は(ユスーポフ候+シャア)÷2でイメージしてる
33 :
マロン名無しさん:03/07/04 20:36 ID:4M2D9IR+
「うろたえるな!至急機甲師団を呼べ」カコヨスギ。ageようぜ。
>>20 前スレでも出てたけど長官の場合、CIA長官+国防長官+四軍司令官+統合参謀長
みたいなポジションだから、わざわざ別の将軍をカリスマに押し立てたりしなくても
自分で軍隊指揮して電撃作戦でクーデター起こしそうだ。…っていうか起こしたのか!
34 :
1:03/07/04 21:46 ID:4M2D9IR+
みなさんありがとう。先走っちゃったけどなんとかなった…
ってあれ?懐かし漫画板に立て直した方が良いですかひょっとして。
35 :
1:03/07/04 21:49 ID:4M2D9IR+
自らネタを書き込んでから一時間後に気付くというのもアレなんですが
別に自演したかったわけではございません。
あれ〜?懐かし漫画板から「掲示板に戻る」クリックするとこっち来ちゃうのか?
>>33 どうだろ。祭り上げられるのはごめんだとかいう考えの人かもしれないし。
傀儡立てて操る方が性に合ってるとかもありうる。
>>33 元々クーデター前からかなりの権力が集中した立場だったんだろうな、長官って。
ギルモアには「協力してやった」ってのが正しいのかも(w
39 :
マロン名無しさん:03/07/05 09:26 ID:ZejXN4j3
あれ?ひょっとしてギルモア=コロイモフ将軍劣化バージョン?
しかしオル窓知らないと全然流れ解りませんね。誰かネタきぼん。
>>39 ダレだっけその将軍・・・思い出せないw
まあとにかくオル窓ネタを一つ
地球でパピを捕らえて
長官「久しぶりだったな・・・パピ。あの時は弟の命(仮)に免じて見逃した。
これでもう貸し借りは無しだ。容赦はせぬぞ・・・」
長官が何かに免じて見逃すような事はしなそうだけど、「容赦はせぬぞ」がイイ感じ。
オル窓はオススメですね。長官マンセー者ならロシア編だけでも読んでみるべし。
女子に限らず男子もぜひ。一応少女漫画だけど、重厚な人間ドラマなので。
「オルフェウスの窓」池田理代子著です。
42 :
マロン名無しさん:03/07/05 11:35 ID:ZejXN4j3
でもロシア編では登場人物9割死亡…
>>40 コロイモフ将軍…ユスーポフ候がクーデターのために担ぎ上げた
国民的英雄。最後はなかなか格好良かったす。
「人には天の時というものがある。それを運命と呼ぶもよかろう。
しかし歴史が選びとるのはまさに天の時にかなった必然でしかない・・・・・」
「この計画は・・・・・・天の時にかなわなかったのだ・・・・・・」
いきなり話は変わりますが、宇宙小戦争の原作の中によく解らないコマが二つ。
@長官がギルモアのところへ来たとき、壁から「グ・グーッ」という音と共に
出てきたあれは何?
A例の「自分の不人気をよ〜〜くご存じだ」の次のコマで「ドドド」
という音と共に発射されてるものは一体…
や、ていうかコロイモフって誰だよ。コルニロフだろ。仲間のクルイモフ将軍と混ざってるよ
>俺
ドラコルルの綴りを考えてみる
Dracorles
いや、
Dracorrの方が格好いいか
45 :
マロン名無しさん:03/07/05 22:30 ID:ay3bavwB
実はドラコ・ルルだったりして
46 :
マロン名無しさん:03/07/06 10:52 ID:5bsA1eQH
「地球人どもが手むかったら容赦なく射殺せよ!町ごと焼き払ってでも
パピをとらえるのだ!!」
「抵抗が激しければ爆撃してもかまわん!」
最終局面になると豹変したように作戦が荒っぽくなる長官。何故だ。
>>42 @:ギルモアは人間が信用できない香具師ですから。多分監視装置でしょう。
A:無人戦闘艇・・・じゃないかな。漏れも消防の頃は分からなかった。
>>46 PCIAは基本的に“恐るべき集団”なのでw
司令官としても、冷静に駆け引きすべき時と、機が熟したら一気にたたみかけるべき
時があるんじゃない?
>>45 なんかハ○ポタに出てきそうな・・・
つか、実際いるな。ドラコ・○フォイ(w
50 :
マロン名無しさん:03/07/06 22:10 ID:SvTD+/RV
>>48 単純に力で叩きつぶさずに用意周到に追い込み、完全に追い詰めてからは
確実に目標達成させるために「パワーでぶっ飛ばせ」な考えも否定しないん
ですね。カッコつけてなくていいぜ。
徹底した合理主義とそれが生み出す矛盾を踏み潰していく強烈なヒューマニズム
ちなみに↑は某三国志漫画の作者の言葉。なんかこれも長官ぽくない?オル窓もいいけど
今読んだらギルモアはラスプーチンよりケレンスキーじゃないかな、と。
せいぜい利用させてもらおうとか言われてんの。
長官って要するに官僚トップと軍のトップの両方をやってるようなもんなのか・・・
そりゃ大変だ
>>51 じゃあ蒼天ネタをひとつ
「目に見えぬ小事に構う配慮がなければ、行き着く所国の大事は語れぬぞ!」
末端にいる人間との信頼関係を大事にする長官にピッタリな言葉ですな
ギルモア=(ロシア皇帝+ラスプーチン+ケレンスキー)÷3てとこだろ
コルニロフ将軍はもったいなさすぎ
57 :
マロン名無しさん:03/07/07 21:32 ID:KEn/sW8R
宇宙小戦争のラスト、巨大化の他にちょっと苦しい点が。
ドラたちが持った戦車が何であんなにタイミングよく発砲してくれるんだ。
ああでもしないと巨大化したって戦艦の主砲に撃たれて死んじゃうからか。
流石ドラコルル(ちょっと違うか)
>>57 それは俺もチョト変だと思ってた。
ドラ達が外側から持って発射スイッチみたいなものを押してるのか?
にしてもフツーに持ってるようにしか見えんし。
>>56 3で割っててもなんかヘタレ度は3乗になってる気がする(w
>>47 A:魚雷発射管か。原潜についてるような。空中に向けて発射する訳だな。
やっぱり凄い科学だPCIA。
>>47 @はついでに不審者を発見したらレーザーで攻撃する機能もあるんじゃないか?
>>61 自宅をそんな装置使って厳重に警備する香具師はやられ役と決まってるよな
前スレの長官の一日、そろそろ終わりそうだがSS風味も入ってかなり面白い
展開になってる。
64 :
マロン名無しさん:03/07/09 10:50 ID:JjlyDa6b
宇宙小戦争、小学生の時は前半のスネ夫たちが映画作ってるところが
たまらなく好きだったな。あの戦車とかワルモンダー要塞とか。
>>57 中で操縦してるPCIA兵を脅してるんじゃないの?「従わないと潰す!」とか言って(w
レンタルビデオ屋で映画のパッケージ見たけど、何か妙に色彩が安っぽいような。
リメイクしるシンエイ動画&テレ朝。DVDになったら買ってやるから。
じゃあ、リメイクするならどの監督のが見てみたいか挙げてくか。
俺はシンエイ動画つながりで、クレしんのオトナ帝国&戦国大合戦の監督。
宮崎駿。見れるもんなら見たい
ムスカ大佐みたいな長官と将軍みたいな将軍
>>69 長官「君の馬鹿面にはつくづくうんざりさせられる」
とか?思ってても口には出さないのが長官。
>>70 確かにラピュタ見ててその構図思い出した。
でも実はラピュタ公開より小戦争連載開始の方が一年くらい先なんだよな。
つまり、ラピュタが小戦争に似てるって事だな。
72 :
71:03/07/09 17:11 ID:???
69へのレスだった。
富野由悠季を挙げない訳にはいかんだろうな。
監督に限らず、キャラデザ、音楽、脚本、声優とかも挙げていいですか?
じゃあ音楽=横山せいじで。
監督:高橋良輔
うーん、アニメ見ないからよく分かんない・・・・
声優は誰がいいんだろう?劇場版は父ヒロシだと聞いて脱力。
>>71 調べてみたら、「のび太の宇宙小戦争」は1985年3月16日公開。
それに対して「天空の城ラピュタ」の製作期間は1985年6月15日〜1986年7月23日。
ひょっとして宮崎氏の頭の片隅に長官のイメージがあったのかも。
劇場版の、妙に小物臭い長官も好きな自分は、ここでは少数派だろうか。
池田さんに脚本書かせたらパピは射殺長官は自決ギルモアは暗殺
登場人物の90%が死亡し話のテーマと登場人物が以上に多い超大長編。
>>78 メインキャラだから無事ってことは絶対ないもんな。むしろメインキャラの方が
死亡率高い。池田さんに脚本書かせたらドラ達だって生き残れるかどうかw
>>76 ドラ映画黄金期だしね。全く知らないなんてありえないと思う。
そう考えると今度ラピュタ見る時違った意味で面白いかも。
>>77 リメイクキボンヌ派が圧倒的だろうな、ここでは。
でも昔の劇場版がいい出来だったとしてもそれはそれでリメイクも見たい。
>>75 屋良氏自身はいい声優さんなんだけど、やっぱ長官には合わないよね。
今だったら・・・うーん・・・・速○奨とか?もっと若手でもいいな。
クールで理知的な声なら。
この際書いちまうか。庵○秀明とw
ど、どんなのになるんだろ…?
>>84 最後に全員が拍手しながら「おめでとう」の意味不明なラストとか(w
パピ「みんな僕に優しくしてよ」
監督が宮崎駿だったらやっぱり
音楽:久石譲
コレもセットだろ
監督:ときたひろこ
話のまとめ方やキャラ立てが上手いと思った。
・・・あれ、?脚本だったっけこの人。まあいいや
宮崎駿は宇宙戦争モノなんて作らないだろうな。
高橋良輔だったら「モロ戦争!」って感じになるのだろうか。
ここでの長官は原作ベースということで
あまり話題にならない映画版。
映画版といえば歴代屈指の名曲と名高い「少年期」だけど、
ここのSS設定の「国家の子」を前提に
パピや長官を照らし合わせてみると…深い。
♪ああ、僕はどうして大人になるんだろう。
なるほど、あれはドラ達側の歌とは限らないもんな。ちょっと盲点。
古橋一浩・・・はちょっと自分の世界に走り杉な傾向アリか。
ハマればいいけど外せば相当寒い事になるからな。
前スレがまだ埋まってないのに次スレが既に100いきそうだってのも結構凄い話だ
>>91 「夢の中では青い空を自由に歩いていたのだけれど 夢から覚めたら飛べなくなって」
深い!これは確かにドラえもん達というよりはパピや長官側の方がぴったりくる歌詞かも。
しかしサイズを同じに直してリメイクした場合、どうやって
ドラコルルを倒せばいいんだろう。
オル窓にならうなら、パピとゲンブがしっかり指導した上で
とにかく大量の武器を調達して市民達に武装させなければならん訳だ。
>>96 もしくは和解させるか、だな。
最後の最後でギルモアと決裂させて。
オル窓に習ったら、国は国民の手に戻るけど、パピは銃殺され、長官は自決するという
結末に・・・。ギルモアは原作どおり暴徒に虐殺されるw
>>91 原作コミックにも「少年期」の歌詞は載ってるし。
第二弾スレも既に100ですね、長官!
>>98 「ドラえもん、ほんとにこれでよかったのかな・・・僕たち、結局誰も助けられ
なかったし・・・」
長官!前スレ埋め立て完了しました!
>>103 このスレも我らの力できっと素晴らしいスレに致します、長官!
105 :
マロン名無しさん:03/07/12 15:37 ID:OhT6slNX
そういえば長官ってパピのことは名前で呼ぶけど、一度だけ「大統領」って
言ってたね。「大統領、今度こそ逃がしはせぬぞ」とかって。
いや、だからどうしたって訳じゃないけどちょっと意外だったんで。
↑それは顔が見えてなかったし、長官が言ったんじゃないかも
音楽をNHK大河ドラマで音楽担当した人とかに・・・なんてな
自宅のパソから書き込めん・・・なぜ?
plalaが規制されてるらしいな
>>106 口調が長官だし、長官のセリフだと思われ
音楽:岩沢琢なんてどう?
ウチもぷららだ。
今ネットカフェだけど、帰ったらカキコできないってことか?!
第3弾SS降臨まだかなー
やっぱ長官とパピは個人的にも知り合いなんだな。
でなきゃ会話で「お前」だの「君」だの言わないだろう。
その辺は前スレでも何パターンか推測されてたが。
てすと
あ、書き込めるようになった?
>>117 そのようだな。さあ、plala使用のPCIA兵も存分に書き込むがいい!
昨日読みながら長官の登場コマ数を数えてみた。
…47コマ!!
あの膨大なドラえもんの歴史の中で
たった47コマしか描かれていないのに、
我々をこうまでも魅了してしまう長官。
その溢れんばかりのカリスマに改めて敬礼ッ!!
元大統領のパピの逃亡が引き起こした一連の事件はその幕を下ろそうとしていた。
PCIA本部の庭は異様な緊張感に満ちていた。
二日前までにはなかった柱に縛り付けられたパピ、ロコロコ、ドラえもん、のび太、ジャイアン、スネオ、そしてしずかは誰一人として口をきかなかった。
PCIAの兵が肩に銃を下げた姿勢でパピ達の前に立っている。
「やるんならさっさとやりやがれ!」
ジャイアンがせめてもの抵抗とばかりに大声で叫んだ。
それに反応して兵士の一人が銃をジャイアンに向けた。
のび太たちの悲鳴が庭中に響き渡る。
引き金に指がかかる。
誰もが覚悟を決めたとき鋭い声が場を支配した。
「勝手なまねをするな」
それは決して大きくはなかったが瞬時に場の統制を取り戻させる力を持った声だった。
「ドラコルル……」
パピが現れた人物を見て思わず声を洩らした。
パピの呟きでのび太達はその人物がドラコルルだということを知った。
「私が来るまではなにもするなと言ってあったはずだ」
「ちょ、長官。はっ!申し訳ありません」
ドラコルルは思わず固まった兵士をチラリと見ると縛り付けられているパピ達の前にやってきた。
「パピ、まさか私達の最後がこんな別れとはな」
「黙れ!ギルモアと共にこのピリカをめちゃくちゃにした悪魔め!」
初めて見るパピの激しい怒りにのび太達は状況を忘れて話をしている二人を固唾を飲んで見守った。
「そう言いたければ言うがいい。だがなそれはお前も同罪だ」
「なに?」
「お前が大統領に就任して以来の、人の善性を信じた政治は人々に幸福をもたらした。
しかし、お前も気付いていただろう? その数ヶ月で犯罪発生率が急激に増加したことを」
「そ、それは……」
「そう、お前が我々PCIAの予算を削り、社会福祉にまわしたからだ。その結果我々は今までどおりの活動が不可能になり、
今まで我々が未然に防いでいた様々な犯罪計画を妨げるものはいなくなった。私は何度もお前に予算を戻し、我々の活動を支援する様に申請したはずだ。
しかしお前は逆にさらにPCIAの予算を削ろうとし、そればかりかPCIAを解体しようとした」
「そんな秘密警察のような組織を認めるわけには……。それに、そんなことをしては孤児や老人達が生きていけなく……」
「だが、それ以上の事態がおこることは目に見えていたはずだ」
ドラコルルの言葉に反論することができなくなったパピはうなだれ、黙ってしまった。
そんなパピにドラコルルはさらに言葉をぶつける。
「お前と大学で出会ったとき、私は期待さえしていた。そして最年少の大統領になったときこれでピリカは変わる、そう思いさえした。
しかし、しばらくしてその少年ゆえの潔癖さか政治の影の部分を認めようとしないお前を知ってその希望は絶望に変わった。その結果が今のピリカだ。
ギルモアのクーデターの原因はパピ、お前だ。もしPCIAを解体するなどと言わなければ我々もギルモアなどに協力はしなかっただろう。
私はピリカに住む人々の為にギルモアに協力したのだ」
いままで静かに語りかけていたドラコルルの声が突如大きくなった。
「わかるか?お前は少数の為に大多数を犠牲にしようとしたのだ!」
「あなたのその考え方は間違っている!!」
パピが目を見開いて叫び返す。
「少数を切り捨てて良いわけがないがない!それは政治じゃない!それにギルモアの支配する今のピリカを人々が望んでいるとは思えない!!」
「私は現在のピリカのナンバー2だ。もしナンバー1がいなくなればだれがピリカの頂点につくことになると思う?」
「ドラコルルあなたは……」
「そう、私は今回のクーデターでこのピリカを毒している人間を一まとめにすることができた。この国の手術はもうすぐ終わる。
パピ……人はお前の思っているほど素晴らしい生き物ではない。何かを切り捨てなければ生きていくことができない生き物なのだ」
哀しそうにドラコルルが呟いた。
「お前がせめて私と同年代であれば理想だけでは国は動かせないということを学んでいただろうに。
恨むならお前に闇を見せなかったピリカの善良な大人どもを恨むんだな」
そこまで言うとドラコルルはのび太達の方に向き直った。
「さて、今の話は聞いていただろう。それをお前達が安っぽい正義感で現れて事態を引っ掻き回してくれたおかげでパピを殺さなければならなくなった。
こんなことにならなければほとぼりが冷めた頃にパピに政治の世界に戻ってもらうことを考えていたというのに。
その時にはピリカを食い物にする害虫は一掃されていただろうに。残念だ」
自分たちのせいでパピが死ぬことになったというドラコルルの言葉はのび太達にこれ以上ない絶望感を与えた。
「この星の問題はこの星の住人で解決する。部外者は手を出すべきではなかったな」
言うとドラコルルは再びパピに近づいた。
そして、パピの頬に手をやると言った。
「お前と過ごした学生時代は本当に楽しかった。お前は私の親友だった。二人の立場は違えどピリカを思う気持ちは同じだった。お前と共にピリカを支えていきたかったが……残念だ」
ドラコルルはすっ、と身を引くと片手を挙げた。
「やれ」
ドラコルルはくるりとパピに背を向け庭の出口を目指した。
ドラコルルの背に七度、銃声が響いた。
しかしドラコルルは振り返ることもなく、立ち止まることもなかった。
おおお神キタ―――――!
前スレの753さんですか?(違ったらごめん)
125 :
124:03/07/13 00:25 ID:???
すいません、753さん→774さんでした。
このリアルで説得力のある文章は絶対そうだと思うんですが・・・
>>119 行間ならぬコマ間からも溢れてるカリスマ性でしょうね。
あと、色々と想像をかき立てる描写。これも大きいな。
つまらないキャラは想像を働かせる気にもならないもんだし。
>>120-123 実際そうだったんじゃないかとさえ思える話だな。パピが理想主義が行き過ぎてて
現実を見ようとしないって辺り。掲載誌がコロコロじゃなかったらこういう部分も
描かれてたかもしれないなあ。
で、出来れば最終的に長官がギルモアをあぼーんするあたりも見たいんですけど。
是非あなたの文章で!
>>128 激しくドウイ
ギルモアとどんなやりとりすんのか凄く興味ある
個人的に、3つのSSの中で今回の長官が一番好きw
長官の言う事にいちいち納得。
漏れも大人になったということか
>>119 でも大長編の敵役としては出番多いんじゃない?
番号忘れた(w
>>120-123さんは俺じゃないっす。俺の脳内設定では
軍の予算減らして福祉予算増やしたのにはドラコルルも喜んだけど
「ここで情報機関作って治安問題もガッチリ固めましょう」という
進言を却下され、そこへ汚職問題で解任されそうなギルモアが
「情報機関作ってあげるから協力して」とやって来たことになってます。
でも予算減らされたのがPCIAの方ってのもいーすね。そりゃクーデター
起こしたくもなりそう。
原作の最後、巨大化するという反則を犯さなければまさに
>>120-123 になってたんでしょうね〜。
第一弾とは違う方だったんですか!それは双方に失礼しました。
どっちも読みごたえありますね!
ということは774さん753さんに続く3人目の神降臨か!
さらなる神の降臨が楽しみ。
>>120-123 長官カコイイ。政治の現実と向かい合ってきた人の言葉は一つ一つに重みがあるよな。
でも第一弾とは違った意味での切なさもあるなあ。長官もパピを殺さなきゃいけなく
なったのは残念だったんだろう・・・。
>>133 あなたの野望達成編もぜひ読みたいな、と言ってみる
今朝の新聞(地方紙だが)の見出し
CIA長官「私の責任」
というのがあって、思わず反応してしまった俺(w
>>137 胴衣。読みたい。
俺は133の人のSSをリアルタイムで読んで夜中に泣いたヤシです。
さらに753の人のも。でも753は女の子らしいから、野望達成編を書けってのは酷か?
今回のSSが一番原作の長官に近いのかな?
でも前の2つは「パピと親子」設定を踏まえて書いてるからな。
それはそれで凄く面白かった。
ドラコルルがPCIA本部を出ると門の前にはPCIAの上層部の人間が勢ぞろいしていた。
そのうちの一人が進み出て敬礼した。
「長官。全て予定通りに進んでおります。すでにゲンブをはじめとするレジスタンスはすべて捕らえました」
「良くやった、君の昇進を約束しよう」
「ありがとうございます。長官はいかがされますか?」
「将軍の元へ向かう」
「と、言うことはとうとう決行するのですね」
「そうだ、パピは死んだ。次は奴の番だ」
ドラコルルは言うと待たせていた車に乗りこんだ。
ギルモアのそれとは違い、運転手は人間である。
運転席の秘書が高部座席のドラコルルの様子を伺った。
「長官。心痛お察しします」
「ありがとう。将軍のところへ向かってくれ」
「はっ!」
秘書が返事をすると前と後ろの座席の間に黒い強化ガラスのしきりが降りてきた。
ドラコルルの心情を考えた部下が気をつかったのだろう。
本来は様々な密談をおこなう際の防音、遮蔽効果を狙ったものでドラコルルはあまり好きではなかった。しかし今回ばかりはそれがありがたかった。
「すまん」
聞こえてはいないだろうが思わず感謝の言葉がでる。
秘書の気遣いに感謝しながらドラコルルは目を閉じ呟いた。
「……ようやく……」
ドラコルルは窓から外を見た。
窓はマジックミラーになっており外から中の様子は一切うかがうことはできない。
あなたの心のようなものですね。かつて言われた言葉をドラコルルは思い出した。
車はちょうどハイウェイに乗ったところだった。
眼下にはかつての繁華街が広がっている。
かつては大勢の人でにぎわっていたがドラコルルの圧政のせいで人影はまばらになってしまっている。
その光景を見ているととりとめのないことが頭に浮かんでは消えてゆく。
ちょうどその時スピーカーから秘書の声が響いた。
「もうすぐ軍本部に到着します。準備をお願いいたします」
しばらくして車が止まりドアが開けられる。
ドラコルルは外の光に目を細めながらゆっくりと車から降りた。
軍本部前には大勢のPCIAの兵士が警備の為に集まっていた。
警備隊長が車のほうへやってくる。
「これは長官!」
「将軍と最後の話をしに来た」
その言葉を聞いて一瞬、警備隊長の顔に困惑が浮かびついで驚きが浮かんだ。
「……最後の……かしこまりました。それではこちらに」
警備隊長はやっとのことで返事を搾り出すと軍本部の門に向かっていった。
ドラコルルはわずかな共を連れてギルモア将軍の部屋に向かった。
誰一人として口を開かずただコツコツという靴の音だけが廊下に響いていった。
やがて軍本部の最上階にある将軍執務室の前についた。
「ここからは私一人で行く。誰もついてくるな、そして誰も中にいれるな」
ドラコルルは命令すると重厚な扉を開け中に入っていた。
中に入ったとたんギルモアが待ちかねたかのように近づいきた。
「ドラコルル!どうなった?パピはどうなった」
「処刑しました。残りのレジスタンスもすべて捕らえました」
ギルモアはそれを聞いて大きな声をあげて笑い出した。
ガラス張りになっている壁に向かい、眼下の街を見下ろしてさらに笑う。
「わしに逆らうからだ!これでもはやなんの心配も無いすべてわしのものだ」
「……将軍」
「なんだ?」
ギルモアが振りかえるとドラコルルが銃を構えて立っていた。
「なんの冗談だドラコルル。わしの機嫌が良いうちにそのつまらん冗談を止めろ」
「これを冗談とお思いか?あなたは自分の不人気をよくご存知と思っていたが」
「なに……?」
「あなたを生かしておいてはピリカは地獄になってしまう」
ギルモアはようやくドラコルルが本気だということに気付いた。
「な、なぜわしまで殺す?パピを憎んでわしと手を組んだのだろう?」
「パピを憎んだことなど一度もありません。しかし、あなたの無法を見るたびにあなたへの憎しみは増していきましたがね」
「わ、わかった……お前が王でいい。わしは大臣になろう。だから……」
「このピリカのためです。私が殺さずともいずれ国民に殺されるだけです」
ギルモアの懇願もむなしくドラコルルの表情は変わらない。
「よし……わ、わしはもう引退してずっと静かに暮らすそれでいいだろう?」
「残念ですが将軍、私の決意は変わりません」
何を言おうがドラコルルの考えを変えることはできないと悟ったギルモアは大声でわめきだした。
「この最低のクズめ!パピを裏切り次はわしか!!この裏切り者め。なにがピリカのためだ!英雄を気取って貴様のような奴が何をしたところで国民は感謝などせんぞ!それどころか恨まれるに決まっている。貴様は歴史に残る大罪人として長く侮蔑されるぞ!!」
ギルモアの言葉を無視してドラコルルはゆっくりと引き金に力を加えていく。
「ひっ、いやだ!死にたっ……」
言いかけたギルモアの額に赤黒い穴が空いた。
ドラコルルは銃を下ろした。
「終わった……」
多少の達成感はあったがそれよりも、なにもかもが色あせ砂になってしまったようだった。
「私は英雄など目指していない。歴史の大罪人となるだろう。国民に呪いの言葉をかけられるだろう。それでも……この国の為に……」
色の無い世界の中、一度下ろした銃を今度は自分のこめかみに向ける。
足元にはギルモアの体がら流れた血が溜まっていた。
血の匂いに酔ったのかぼんやりとした頭のまま引き金に力をこめる。
が、途中で銃を下ろした。
「こんなことで私のやったことが許されるわけが無い。それにようやく始まったばかりなのだ、新しいピリカは」
ドラコルルはギルモアを一瞥するとドアに向かった。
ドアの外に広がる新しいピリカはどのような国なのか。
それはドラコルルにもわからない。
お褒めの言葉ありがとうございます
誉められたので調子に乗って続き書きました
それと最初間違ってあげてしまいました
ごめんなさい
>「君の昇進を約束しよう」
口癖
>>146 乙です〜!
場面が目に浮かぶ迫力ある描写と、全編を貫く切なさがたまりませんな。
また何か思いついたらゼヒ!
自分で選んだこととはいえ、それを貫く長官のつらさが伝わってくる・・・
でもこういうのもいいよね
「マジックミラーの心」に萌え。
第一弾は大泣きだったけど、今回のはなんか静かな悲しみがわいてくるSSですね。
>長官、心痛お察しします
これは秘書も長官がパピを殺さなきゃいけなかったのは辛い事だって分かってたってことですか?
歴史の大罪人となり、国民に呪いの声を浴びせられようともピリカの為に・・・か
長官・・・(涙)
同じ長官でも解釈は三者三様だな>3つのSS
そこがまた面白いとこだけど。
野望達成編と銘打っていながらこの切なさは意外だった。
ギルモア殺す時も、もっと平然と見下したような感じかと思ってた。
こういう解釈もあるんだなあ。
>>153 しかしギルモアの扱いが酷いのは見事に共通してる罠w
>>155 確かに。各SSにおけるギルモアの扱い↓
第一弾:完全無視
第二弾:冒頭のナレーションであぼーん
第三弾:容赦なくヘタレ
これからも多分変わらないと俺は予測するw
133=前スレの774さん、俺もあなたの野望達成編が読みたい一人だったりします。
待ってますんで気が向いたらぜひ書いて下さい!
>>139 正直、あの優しさにあふれた文を書く753さんがどんな野望達成編を書くのか
興味あるとこだ
感想ありがたいですありがとうございます
>>151 やっぱり長官ぐらい仕事ばっかりだと私生活なんて無いだろうし
秘書とずっと一緒にいるだろうからなんとなく長官の心を察したんじゃないかなと
マジックミラーが長官の心のようだと言ったのは誰なのかチョト気になるかも
・・・パピ?(妄想し過ぎ)
>>160 それ、私も気になる。
もし設定があるなら教えて下さい、159さん。
長官もかつてはパピみたいに理想だけを見てた時があったんじゃないかな。
でも、自分でも言ってるように理想だけじゃ国は動かせないことをたっぷり学んだんだろう。
長官にとってパピは昔の自分の姿だったのかもしれない、と120−123読んで思った。
ちなみにギルモア追い落とした長官はリリパット星へ攻め込んで
アーレ姫を逮捕、王政を廃してピリカの領土にします
>>154 ドウイ。ギルモア殺る時は「見苦しい。せめて最期くらいは支配者らしく毅然と
してはどうですか」とか言いながら冷笑する長官、というイメージが漠然と。
誰かこういうバージョンで書かないかなw
うん。ギルモアの事は平然と殺しそうだよな、長官は。
__∧_∧_
|( ^^ )| <寝るぽ(^^)
|\⌒⌒⌒\
\ |⌒⌒⌒~| 山崎渉
~ ̄ ̄ ̄ ̄
さて、第四弾SSはまだかな?
みんな死んじゃうオル窓パターンは誰も書かないだろうな
>>162 ということは、パピを殺すことは過去の自分との完全な決別を意味して・・・
とかって妄想し杉かな(w
自分も書いてみたくなったんで一気に書いてみました。
ちなみに前回の長官とは別人です。パピと親子でもなければ
理想抱いたりしてません(w 原作っぽく。
171 :
6/1:03/07/15 14:07 ID:???
辺り一帯に銃声が響いた。午前10時のギルモア広場…数ヶ月前までは
「ピリカ広場」と呼ばれていた国立公園の中央で、元大統領パピと
彼の忠犬、その仲間の異星人たちが処刑された。
「ご苦労、これでワシも安心して王座につけるぞ長官
まだ地球戦車と小惑星帯のレジスタンスが残っていたが…
弱点を発見したとのことだったな、長官」
「はい、ご心配なく」
PCIA長官ドラコルル、ギルモア政権のナンバー2が微笑んで答える。
ギルモアは満足そうに笑って長官の肩を叩く。
「戴冠式は18:00からだ。それまで本部に戻っていたまえ。
私も官邸に向かって準備をしなければならないからな!」
そう言うとギルモアは部下を連れて去っていった。
「ま、せいぜい夢を見るんだな」
遠くなったギルモアの背中に長官は呟いた
司令室は静寂に包まれていた。150人以上いる兵士達は黙々と
仕事をこなしてはいるが、これから始まる計画に皆緊張していた。
そこへ長官達が現れた。兵士達は一斉に起立する。
「補佐官、状況説明を」
補佐官が長官に歩み寄る。
「先ほど市街地に向けて飛行中の地球戦車二両を哨戒中の潜水艦
ドルスが発見、攻撃を加えたところ戦車は海中へ墜落したとのことです。
長官の読み通りあの針金はアンテナだったらしくこれを破壊したところ
操縦不能に陥ったそうです」
補佐官は早口に説明を終えた
「そうか…では着水で即死だな」
「はい、高々度でしたからおそらく。ご命令通り将軍に報告致しました!」
もう一度、そうかとつぶやき長官は言った。「では、作戦実行だ」
その言葉に続き司令室長は叫んだ。
「これより長官から最後の状況確認を行う!良く聞くように!」
司令室はいっそうの静寂と緊張に包まれる。長官は前方中央の大画面の前で
ゆっくりと話し始めた。
「先ほどパピ以下反逆者五名の処刑が完了した。これによりレジスタンスの
排除は事実上完了。よってこれよりイシュタル計画を発動する!」
静寂を打ち破って司令室に歓声が響く。誰からともなく、自然発生的な
ものだった。室内が静まるのを待ち、長官は言葉を続ける
「現在我々PCIAは警察力と旧軍の半分以上を手にしている。そのため
かつて将軍直属だった中央軍も我々の行動を黙認する。
我々と敵対すると思われるのは、将軍官邸内の警備局だけだ。
これより作戦を実行、第1空挺部隊、68機械化大隊は将軍官邸を急襲、
市街地に展開している各歩兵師団は市民への警戒に当たる。
空軍主力部隊は小惑星帯に進行。ゲンブ以下レジスタンスの逮捕に当たれ!」
兵士達は微動だにせず長官の説明に聞き入っていた。長官は続ける
「諸君、我々PCIAはこの星にはじめて王制国家をうち立てようとした独裁者に
生み出された。そして我々はこれからその独裁者を倒す。次の世界では
我々が主役だ。そのために我々は用意周到に準備を行い、圧倒的優位に付いた。
だが我々が勝利する保証などどこにもないのだ。全ては以後数時間で
決着する。だからこそ……」ふたたび司令室に静寂が戻る
「失敗は許されない!」
兵士達は再び大歓声を上げた。長官はそれを見て微笑む。
「各部隊に入電『各自計画に従い作戦を開始せよ』」
173 :
3/6:03/07/15 14:09 ID:???
一時間後、ギルモア将軍は官邸執務室で、戴冠式の準備完了を待っていた。
将軍は幸せだった。邪魔者はいない。長年待ち望んでいた時が間もなく訪れる。
あとはその時間を待つだけだ。そう思っていた。
そこへ1人の男が飛び込んできた。「将軍、緊急事態です!」
「警備局長!一体何事だ!」将軍は叫んだ。彼が来たと言うことは
ただごとではない。
「PCIA全軍が一斉に交信を絶ち勝手に行動しています!官邸に向けて
戦車部隊と空挺団が接近中です!」
将軍は膝から崩れ落ちた。将軍、と叫ぶ声は彼の耳に届いていなかった。
「ここまで来て…あいつか…ドラコルルか…?とにかく中央軍に連絡を!」
「先ほどから呼びかけ続けていますが全て無視されています。
おそらく彼らは既に…」そこまで話した時、室内に爆発音が響いた
「おお!」将軍が外に目をやると中庭に戦車部隊が侵入していた。
そして威嚇発砲された砲弾が正面の塀を吹き飛ばしていた。
「投降しましょう将軍!我々は完全に孤立しています!」
「バカな、交戦しろ!何のための警備局だ!」「歩兵程度で何ができます!
無駄死にするのは御免です!」そのまま二人は怒鳴り合っていた
そこへまた1人の男が入ってきた。
「何も二人で争う必要はありませんよ」その声に二人は振り向く
「ドラコルル!きさま…」怒りの形相で歩み寄るギルモア。そこへPCIAの兵士が
大勢入ってくる。「既に警備局の兵士達は投降しましたからね。今頃は
特殊部隊が兵舎を制圧していることでしょう。争うことなく」
嘲るように長官は言った。ギルモアは唸るように言葉をひねり出す。
「きさま…最初からこうするつもりで…」
「ええ、そうですとも。あなたのように人望も軍才も政治力もない人が
どうして元首になれます。まして王になど考えただけで恐ろしい」
「ワシを…殺すのか」
「ご心配なく、裁判を受ける権利はありますよ。貴方もパピに行ったでしょう。
公正な裁判をね。もちろん自ら身を処したいならご自由に」
将軍はそれを聞いて黙り込む。長官は微笑を浮かべたまま局長に話しかける。
「局長、あなたも自分の立場を案じていると思いますがご心配なく。
逮捕されるのはこの男1人ですよ。まあ危ない立場でしょうけど」
「え、は、はあ…」
「では失礼、おい、逮捕しろ」長官がそう言った時、将軍は机から
拳銃を取り出した。しかしそれよりも速く、兵士達とそして局長の銃口が
将軍の頭を捉えた。
「なに…」
執務室に銃声が響いた。血まみれになってギルモアは即死した。
「ご苦労様でした。あなたは賢い人だ」振り返って長官は部屋を後にした。
175 :
5/5:03/07/15 14:11 ID:???
部屋を出ると1人の兵士が歩み寄ってきた。青い顔をしている。
「長官…F区域で暴動が発生しました」
「F区域?第14歩兵師団が警戒中だろう。鎮圧に当たっていないのか?」
兵士の顔は戸惑っていた。なにか言いにくそうだった。
「それが歩兵師団が反乱を起こしまして…いや最初F区域で一気に暴動が
発生したのです。「軍部独裁を許すな」と。師団は当初は警戒して
いたのですが歩兵達は皆師団長も含め元々は一般の市民ですからどうも
彼らに共鳴してしまったようなのです」
その報告を受けても、長官は動揺するそぶりを見せない。
「ほう…」
「そ、それとI区域とJ区域でも暴動が…こちらは本格的に武装していまして」
「ならば武装蜂起と言った方が適当だな。それもパピとは別の…」
途端に兵士の顔が暗くなった。だが長官は笑っていた
「全く戦いは終わらないな!」
そのまま兵士を置いて長官は歩いていった。そして廊下を曲がり、呟いた
「だから楽しいんだがね」
おわり
ラッキー!リアルタイムで見れるとは!
やっぱあなたの文章好きです。今回の長官はやや戦闘狂入ってます?
ラッキー二人目。
軍事関係の描写がリアルだなあ。詳しいんですか?
いい意味で(ってのも変な言い方だけど)血も涙もない長官でしたね。>今回のSS
それでもやっぱりカコイイ。
切ないSSでみんなの涙を搾り取った前回とはうって変わって豪快だ!
色んな文章書けるんだな、この人。漏れ、ファンです
あ、いつの間にか774さんが降臨してる。
相変わらず引き込まれるSSだな。何か思いついたらまた読ませて下さいよ!
今回は「燃え」た。
774さん、あなたの第一弾SSには泣かせてもらいました。
一話前で、なんか希望が持てる結末になりそうだ、と思った矢先のあの最終話。
それからしばらく、思い出すたびに気持ちが沈みました。これもあなたの文に力が
あるからなんですけど。で、何を言いたいかというと、あなたのSS、これからも
楽しみにしてます!と。
次は前スレで感動巨編書いた人の出番か?
>>774氏
2/5のあたりの、長官の見事な指揮官っぷりに背筋がゾクゾクしました。
>>182 優しい女の子とか言われてる753さん?
俺も↑の視点で書かれた野望達成編読んでみたいけどな
>>174 >公正な裁判をね
これって皮肉で言ってるんですよね。
パピの裁判っていかにも最初から判決決まってるっぽかったし。
戦闘そのものが好きっぽい長官てのもありだな。
諸君私は戦争が好きだ
前スレ見れねー・・・もっと早く気付いてればな・・・
前の二つのSSってどんなんだった?誰か教えてw
>>190 スレの流れで長官とパピが親子だったりしたら面白い、という話になって
その設定を踏まえて二人の方がSS書いた。ストーリーは内乱終了後の話。
読んだ人は第一弾は悲しくて泣き、第二弾は感動で泣いていた。
中身は誰か説明して。
まあ簡単に言えばハッピーエンドかそうじゃないかなんだが
どっちも長官の意外な過去が明かされていた。
で、どっちも親子発覚の後パピが「父さん」って言うんだけど、その後の結末が
全然違う。それぞれ好みはあるだろうけど、どっちも読んで損なし。
誰かダイジェストで説明してくれないかな
このスレでのドラコルル=(ハメル准将+アンダーソン中佐)÷2
…とか言ってみる
小惑星帯に空軍主力を差し向ける描写に
思わずニヤリとしますた。
部下を信頼し、そして部下に信頼されてる長官マンセー!
>>195 パピ「間違いない、彼が・・・彼が来たんだ」
前スレでは長官=赤い彗星という意見が結構多かったYO
リクエストありがとうございます。
近いうちに私なりの野望達成編書いてみます。今度は前みたいに長くなり過ぎないようにw
199 :
159:03/07/17 01:41 ID:???
>>160,161
自分としては長官が昔愛した女性から言われたんじゃなかろうかと・・・
そんなに深くは考えてないですが
>>199 そっか、ナルホド。でもその人とは多分別れたんでしょうね。
心が見えないとか言われてるんだし(w
ということで200
長官が昔愛した女性を、前スレでSS書いてた二人とも「年上の女性」って設定に
してたのがなんか面白かった。そんなイメージなんだろうかw
204 :
マロン名無しさん:03/07/17 18:43 ID:dkv6aysq
>>201 っていうか原作に出てくる長官が若そうだから。
仮に20代だとすると10才のパピを
奥さんが産んだ頃にはまだ15、6になるわけで。
やっぱこう相手の娘さんの年齢がそのくらいだとどうも(w
>>205 ああ、それとは別。ガ○ダムで言えばパピ=アムロ、長官=シャアだよな、って
話は結構よく出るってこと。
親子か・・・ほんとにそうだったらすげー面白いのに。
でもその設定があったらとてもコミクス一冊には治まらないな。
>>205 あー・・・それ見た。確かにそれっぽい人がいたような。
でもかなり前の事なんで記憶が・・・
それにしても自由同盟の構成員が600人て少なすぎないか。
クーデターから間がないとは言え旧政府派なんだから
数万人いてもよさそうなのに
それにひきかえ軍はみんなクーデター側についたんだよなあ。
80万もの人間が動くってのも普通じゃない。やっぱパピの側にもクーデター
起こさせるだけの理由はあったんじゃ?
>>209 政府軍全滅に恐れをなしたのかな?
というか、PCIA自体元々政府軍だったのかもしれないけど。
・・・それにしても、確かに600人は不自然に少なすぎだな。
誰か軍事・政治に詳しい香具師説明してくれ。俺だと、実はPCIA側に賛同する
国民も多かった=ゲンブが言ってた“ほとんどの国民が〜”はフカシだった、くらいしか説明できん
でもいざ戦闘になったらアッという間に市民が空港に駆けつけるあたり
一応ギルモアよりパピが支持されてるんだろうけど。
10才で大統領に選ばれるくらいだし。
>>213 空港に駆けつけたのはそんな大人数じゃなかった気が。
支持率がギルモア<パピなのは多分間違いないけど、PCIAとパピを比べたら
どうなのかはちょっと分からないと思わない?
>>209 小規模なレジスタンスがいくつかあったけどなかなか一つにまとまらなかったとか。
にしても、直接パピを擁してて(多分)、前の治安大臣が盟主やってるんだから、
自由同盟がレジスタンスとしては最大規模なんだろうな。そう考えるとやっぱ少ないよな。
最初の数週間で殆ど逮捕or射殺されちゃって残ってたのがあれだけだったとか
>>216 ガクガクブルブル
80万が相手じゃ「勝負にも何にもなりゃしない!」ってやつですね
男は、石段を踏みしめながら丘の上を目指していた。
季節は初夏。どこまでも澄み渡る蒼穹のところどころに、刷毛でさっと一なでしたような雲が
ぽつりぽつりと張り付いている。
生けとし生けるもの全てが、まさにその生きている意味を高らかに歌い上げる季節にふさわしく、
午後の日差しはけして強烈とはいえぬまでも、思わず目を細めさせるほどにまばゆかった。
しかし、その日差しは男にとってはいささか強すぎたものらしい。
石段の途中、踊り場と表現すべき広くなった箇所で一旦立ち止まった男は、額にぽつぽつと浮く
汗をハンカチで拭い、それから呼吸を整えた。
ハンカチをポケットにしまった男は、反対の手に携えられた物―ラッパ状に丸められた紙に包まれた
物を持ち直し、大きく息を吐くと、再び石段を上り始める。
それから30分ほどかけて石段を登りきったとき、男の呼吸は再び乱れ、足は披露のためわずかに
痙攣を起こしていた。笑いつづける膝を苦笑とともに見下ろした男は、自嘲気味に思う。
―私も年老いたものだ。むかしなら、こんな石段なぞ駆け足で登りつめることができたのに。
男はくいと顔を上げて、丘のてっぺん―目的地を見渡した。
なだらかな曲面を、踝まで伸びている芝が、緑の絨毯のように覆い尽くしている。
視界の隅には子供の背丈ほどもある潅木が点在し、男の知らぬ小鳥が潅木に宿ってさえずっていた。
小鳥のさえずりに耳を傾けつつ、男は前に視線をやる。
>>219 そこには、簡素ながらも心を込めてつくられた石碑がいくつか立てられていた。
俯瞰すれば円周形を描く丘、その頂上の、ちょうど中央に大き目の石碑が一つ建てられ、その背後に
残りの石碑が横一列に並べられている。
その石碑は、いうまでもなく墓石。
中央にある墓石は、かつてこの星の王たる位置につけられながら石もて追われ、そして舞い戻って
きた人間のもの。そして、後ろの墓石郡は、王を助けるべく供にやってきた6人の異邦人である。
「あれから、もう30年か・・・」
男は呟きながら、手にした包みの紙を解いた。
中から出てきたのは、目にも鮮やかな色調の花束。
男は、花束を一つ一つ、丁寧な手つきで墓前に供えながら、はるか昔に行われた戦いに思いを馳せていた。
―辛い、辛い戦いだったな・・・
異邦人の携えてきた、不思議な道具の数々に苦しめられはしたものの、最後には勝利をおさめることが
出来た。
しかし、男にとってその勝利は、今ここに眠る王―本当の、心からの友人を、自ら命令を下して殺害することで
しか得られなかったものであった。
あの日、男が銃殺を命令した日から、男の心のもっとも大事な部分は暗色に塗りつぶされてしまった。
その後は、ただこの星のためにのみ頭をつかい、身体を動かし、そして決断を重ねてきた。
結果、いまこの星はひところの苦境―悲惨としか言いようのない境遇を脱し、豊かとはいえないが貧しくも
ないそこそこの状態にまで回復している。
国力を充実させ、人々の関心が食べ物から奢侈に移り変わるまでには、まだまだ時間を必要とするだろう。
しかし、国としての基礎はどうにか形をなした。すべてはこれからなのだ。
男は、それを見届けたと確信した日―つまり、この丘にやってくる前々日、国民の前で辞任を宣言した。
そして、わずか一日で後任への引継ぎと新体制の確立への根回しを済ませた後、公邸を風のような素早さ
で引き払い、ただ一人でここまでやってきたのだ。
すべてを清算した、その事実を報告するために。
>>220 「パピ・・・・やっと、一段落したぞ」
男―前大統領ドラコルル氏は、花束を備え、彫像のようにたたずみ、無限ともいえそうな空白の後に
それだけを呟いた。
「本当なら、ここからお前の出番だったのに、な・・・・」
すっと目を細め、パピの眠る墓石と、彼を助けに来た異邦人の墓石に目をやる。
彼等も、もしかすると―出会う時間と場所さえ間違えなければ、年齢差を越えたいい友人になれたかも
しれない。そう、ちょうど昔のドラコルルとパピのように。
青いロボット、眼鏡をかけた少年、奇怪な髪形の少年、体格のいい少年、そして可憐な少女。
ドラコルルの脳裏に、彼等のイメージが鮮明に浮かび上がる。
同時に感じた心の痛みを、今度ばかりはしっかりと受け止めながら、彼はまた呟いた。
「まったく、運命とは・・・・ろくでもない・・・・」
ドラコルルは、ゆっくりと墓石群に背中を向け、石段を再び降り始めた。
最初の一歩を石段にかけたとき、彼の頬を一陣の微風がなですぎてゆく。
その涼しい風は、あたかもドラコルルの苦悩を慰謝しようとしているかのようであった。
初めまして。
別のスレでSSをアップさせて頂いているものです。
本日このスレを拝読いたしまして、急に私も何かSSをアップさせていただきたくなりまして
このようにさせていただきました。
いきなり挨拶もせずにこのような真似をしまして大変申し訳ございません。
大長編ドラえもんのこの話は、昔読んだことがありまして、そのときに抱いていたイメージを、
今回上のほうであげられております職人さんの「野望達成編」に合わせて改変いたしました。
「野望達成編」をかかれました職人さんに心からの感謝を申し上げると供に、
勝手に展開を流用いたしましたことにつき、同じく心からのお詫びを申し上げます。
>>222 他の2つとはまた全く雰囲気の違う野望達成編ですな。
一貫して静寂を保ってる雰囲気が実に良いと思います。
奇怪な髪型て(w
>>222 また新たな神が一人降臨した!
気が向いたらまた是非来てください。
既にSS三つ目か。このスレ終わるまでにあといくつSS読めるかな。楽しみw
同じ題材でも人によって全然違うのが面白いな。当たり前かもしれないけど。
でも、前スレから通してどれ一つとして同じような話がなくて、読んだ後それぞれ
違う方向に強く感情を動かされるって凄いと思った。
野望達成編SSはパピ処刑が必須条件っぽいな。
これが優しい753さんに書けるのか?
>>228 ギルモアの事はアサーリ殺してた罠>753タソ
彼女の優しさも将軍にまでは及ばなかったか(w とか言われてたような
おっといつのまにか3人目の神が。
前スレから通算すれば4人目だが。それにしてもみんなレベル高いよな。
>>222 あなたがSSをうpしてる別のスレってドコですか?ドラ関係?
バキスレの外伝氏じゃないかな。
コメントの文体がそっくり。
バキとドラえもん・・・守備範囲広いな、おいw
PCIA=国家組織・国軍説を改めて推す。ギルモアはそれに手を加えただけだと思う。
元からかなりの権力が集中してたんだ、きっと。
だからこそ何が何でも敵対すべきじゃなかったのに、あっさり長官とギルモアを
接触させてしまったパピが、やっぱりうかつだったと言わざるをえない。
素朴なギモン。パピが地球で捕まってから、処刑当日まで何日間の話なんだ?
判決から処刑当日まで2日ってのはわかるけど。逮捕→裁判開始→判決まで何日?
逮捕されてから三日でピリカ到着、二日で裁判開始、一週間で結審くらいでは
まあ一週間前後あると考えていいだろうな。
これだけ期間があればオリジナル設定入れたSSも作りやすいな。
という訳で更なる神の降臨を待つ!
そういえばギルモアがどうなったか一言もないすね>涼しい風
それでも話には全然支障がないあたり……
誰か一人くらいギルモアの視点からのSS書かない?
人望も能力もある長官を危険視するようになって、長官を殺そうとするんだけど
逆にあぼーんされる話とか。
「閣下、ドラコルル長官より連絡です。『執行完了。追って報告に伺う』とのことですが」
「わかった、すぐ来るように伝えたまえ」
一礼して退室する秘書官の後姿を見ながら、ギルモアは一種とらえどころのない歓喜に心が
浸されてゆくのを感じていた。引出しを開け、葉巻を取り出す。
シガーケースの脇には、いつものように緊急用の拳銃が一丁、シルバーメタリックを鈍く外光
に反射させながら収まっている。
将軍付き秘書官が、日に一回のメンテナンスを欠かさず行っているから、この拳銃はセフティを
解除しさえすればいつでもその凶悪な本性を剥き出しにできるだろう。
・・・だが、今となってはもう、これも必要ではないかもしれんな。
葉巻に、卓上ライターで火を付けた将軍は、わきおこる喜びを唇の端にのみあらわしながら、深々と
紫煙の香を楽しんだ。
長い時間がかかったが、ようやくのことでピリカを脅かす棘を全部抜き取ることが出来た。
特にあの、パピと異星人どもにはほとほと手を焼かされた。
正直な話、ドラコルルがいなければまだまだ奴等はこのピリカで好き放題に暴れていたであろう。
思えば、ここに至るまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。
大貴族の家に生まれ、幼いころから支配階層の何たるかをあらゆる手段で叩き込まれたが故に、、
自分の一生をピリカの統治と繁栄のために捧げねばならぬと誓い―あるいは誓わされ―、
決して短いとはいえぬ今までの歳月を、全てピリカのために費やしてきた。
少年期は、ピリカの歴史や経済、政治を学ぶことで終わってしまった。
青年期は、ピリカの支配階層の下部で、実際にこの国を動かす力が何かを勉強しつづけた。
壮年期は、あのいまいましい代々の王のわがままを、いかにして形あるものにするか、
対立する政府組織の利害をどう調整するか、そうした苦悩を日々の友とした。
>>242 そして結局理解したことといえば、誰かの下に居たのでは、いかな理想といえどもまともな形に
ならないということだ。
理想をそのまま現実に投射することはできない。
人間が人間として生きている以上、そう、誰もが聖人君子になれぬ以上、どこかで何かを妥協し、
大切なものを切り捨ててもやらねばならないことがある。
だが、それも程度問題だ。
誰かの下で、そいつの意思を実現するために動いていたのでは、いつまでたっても自分の思うところを、
たとえ"現実的な形"であっても実現することなど叶わぬ。
だから、私は行動を起こした。
行動し、王を放逐し、そして私が全てを握った。
これでよかったはずだ。少なくとも、私が持っていた理想は、これまでよりもずっと実現しやすくなった。
だが。
ピリカは、私が政治を司るようになってから、あっという間にその境遇をどん底まで落してしまった。
理由はいろいろある。
たとえば、年続きの不作に、不幸では済まされないほどの頻度で発生した気象激変。
たとえば、王を追放した直後に発生した原因不明の伝染病。
たとえば、王党派が計画し、後少しで成功するところだったカウンター・クーデター。
普通の人間ならば、どれか一つだけで玉座を投げ出してしまいたいほどの異変だった。
だが、私には使命と責任があった。だから、ここに留まりつづけたのだ。
不安の一途を辿る社会情勢に対応するためには、警察権力を増大させるほかなかった。
いつまでたってもその勢力を減らせそうにない王党派を根こそぎ掃除するために、密告制度を
奨励する必要があった。
無用の流言によって社会が混乱することを防ぐために、あらゆるネットワークを政府の元に隷属
させる必要があった。
その結果、ピリカは未曾有の暗黒時代に陥った。反動どもはそう私を罵った。
>>243 だが、ほかになにがあったのだ?
基盤がガタガタになりかけた社会で、統制と秩序を強化し、もって国民を落ち着かせるために、
棍棒を振るう以外どういう手段をとりえたというのだ?
「責任を負わぬものは、好きなことが言えるのだ」
将軍は葉巻をくゆらせながら、吐き捨てるように一人ごちた。
しかし、彼の言う責任は、所詮支配階級の都合を美辞麗句でごまかしただけのものに過ぎなかった。
だからこそ、ピリカのためといいつつ、しかし将軍はピリカの支配階級という基準に乗っ取って行動していた。
言い換えれば、ピリカに関するあらゆる事を支配階級としての目で見、耳で聞き、そして判断していたのだ。
時代が変り、そうした支配階級の価値観が現実との乖離を招いていたことに、将軍は気づいていない。
パピたちのおこした反政府運動は、将軍へのやっかみなどではなかったことが、将軍にはわからない。
それゆえ、将軍は秘書官からの報告を聞いたときに、決定的な過ちを犯していた。
そう『パピと異星人を始末した今、もうなにも将軍を遮るものがないと判断した』という過ちを。
あるいは、将軍がこう考えたことそれ自体は、彼の責任ではないのかもしれない。
なぜなら、将軍にこのような価値観を持たせたのは、彼を教育した人々であったからだ。
しかし、原因がどうあれ、将軍は今過ちを犯した。
時代の変わり目を読めなかったという過ちを。
その代償は、まもなく支払われることになる。
ノックの音。
「閣下、ドラコルル長官がお見えになりました」
秘書官の声に、将軍はふと我に返った。そういえば。
ドラコルルの処遇はどうしようか。将軍はちらりと考えた。
まあ、あいつは有能だ。今しばらくは使ってやってもよい。
だが、時期が来て、奴が邪魔になれば、そのときはかわいそうだが死んでもらおう。
「よし、通せ」
245 :
222:03/07/22 01:20 ID:???
前作に、住人の皆様よりお褒めを頂戴いたしましたので、調子に乗って第2弾をアップさせて
いただきました。
今度は、奇しくも
>>241さんのリクエストどおりの話と相成りましたが、いかがでございますでしょうか。
将軍がかっこよすぎるかなァとも思いましたが、そこはその、まあこういう話もありかな、ということで
お見逃しをいただければ・・・・。
ところで、私が普段SSをアップさせて頂いているスレですが、ドラえもん関連のスレではございません。
バキをテーマとした長編を、この板でアップさせていただいております。
それでは、また機会があれば。
もういくつかネタを用意してございますので、今度の週末にでも。
246 :
241:03/07/22 11:30 ID:???
>>222 こんなに早くSS頂けるなんて!嬉しいです。自分でリクしといてなんですが、
こういう視点もあるんですねえ・・・
>もういくつかネタを用意して
ホントですか。是非!待ってます。
あえて“そのシーン”は書かなくても何が起こるかよくわかって、かえって効果的だな。
まあ、将軍が長官を殺そうとするシーンも、それはそれでどんなもんか見たいけど。
返り討ちもw
おお、何かもっとこう、皇帝になろうとした凡人の悲哀みたいなもんが描かれるかと思いきや。
最後にあぼーんされるとはいえ、こんなにギルモアの扱いがいいSSは初めてだ。
>>248 SSだけじゃなくて、前スレからここまでの全てのレスの中で最高の扱いだと思われ
俺の場合、寝たあとに新しいSSうpされてるパターンが多いんだよなあ
あと30分起きてたら「歴史の転換点」リアルタイムで見れてたのに
早。もうSS4つ目か。
もしかしてここは優良SSが次々降臨するスレになりますたか?
歴史の歯車を逆に回転させようとする者は必ず滅びるという真理を
ギルモアはついに理解できなかったのである!(ベルばら)
ア、アントワネットか…ギルモアが
ドアをノックする音が聞こえた。
「入れ」
煙草の火を消しながらドラコルルは手短に答えると、閉じていた目を開いた。
「失礼します。報告いたします。ギルモア将軍を逮捕、処刑いたしました」
入ってきた部下は緊張しながら報告書を読み上げた。
報告を聞いたドラコルルはくるりと座っていた椅子を回転させると部下に背を向けた。
「よくやった。君の昇進を約束しよう」
言うと立ちあがり天井を見上げた。
その声からはなんの感情も感じられなかった。
部下からはドラコルルの背中しか見えず彼がどんな表情をしているのか窺い知ることはできない。
部下がいつまでも部屋から出て行かないことをドラコルルはいぶかしく思ったが、なにか他に報告があるのかと思い部下を促そうとした。
「どうした、他に報告がないのなら早く出てっ……ぐっ!……なに?!」
が、突然背中に熱い痛みを感じて崩れ落ちた。
その場にへたり込んでしまったが、凄まじい精神力で何が起こったのか把握しようと部屋を見まわす。
そこには赤く染まったナイフを持った部下が立っていた。
がたがたと震える手で持ったナイフは今にも落としそうだった。
「き……貴様は?!なんのつもりだ?い、一体なぜ……ぐっ!」
詰問しようとしたドラコルルに二撃目が加えられた。
それはドラコルルの胸を正面から貫いた。
傷が深かったのだろうドラコルルの口から大量の血液が零れ落ちる。
「こ、怖かったんです。あ……あなたが!」
「な……んだ、と?」
失血のため朦朧とする頭で必死に部下を問い詰めるドラコルル。
「私はあなたが恐ろしい!あなたは確かに天才かもしれない。ピリカの頂点にたどり着いたのだから。
でも!あなたの通ってきた道は血まみれだ!ギルモア将軍と共にクーデターを起こし、パピ元大統領を殺し、今度は上司であったギルモア将軍を……。
あなたはピリカを……ピリカの人間を皆殺しにしようとしている!次は自分の番かもしれない。
そう思ってみんな……気が狂いそうになってるんだ。あなたにはもうついて行けない!!」
言ってしまった後、自分の言葉が怖くなったのか先程よりも震えが大きくなり手にしていたナイフを落としてしまった。
鋭い金属音が室内に響いた。
その音に驚いた様に部下は訳のわからないことをわめきながら部屋から飛び出していった。
一人部屋に残されたドラコルルはなんとか立ちあがろうとするが手足に力が入らず自分のつくった血の海で泳ぐことしかできない。
「く……、こんな、こんなことで……私は死ぬのか?」
なんとか机にたどり着いたドラコルルはすがる様にしてなんとか椅子に座った。
「しょ、所詮……裏切り、者、の末路はっ、こんなものか。裏、ぎ、切り者は……裏切り者に」
テーブルの煙草に手を伸ばし震える手で時間をかけて口にする。
「ハッ、ハ……ハハハハ」
力なく笑うと火のついていない煙草がポロリと零れ落ちた。
ドラコルルが最後の瞬間なにを考えていたのか、それは誰にもわからない。
後世、ギルモア動乱における中心人物の一人としてパピ、ギルモア、青い狸と共に記憶され、動乱を終結させた英雄とも、血みどろの殺人鬼とも語られるドラコルルの最後は以上の様に伝えられている。
皆殺しエンド書く人いなさそうなので書いてみました
あいもかわらず将軍のあつかいはアレでなきに等しいですが・・・
ちょ、長官が殺された…
そして誰もいなくなったパターンですか。
誰も書かないだろうな、とか言われてたが。
そんなぁ……死なすなら死なすでせめてもっと華々しくさあ(あくまで漏れの好みだが)
うーん・・・やっぱ長官を恐れてる部下ってのもいるんだろうか?
俺は部下はみんな長官を慕ってて、どこまでもついてくってイメージがあるから
チョト違和感。
>みんな気が狂いそうになってる
原作ではそんなピリピリした様子は全然なくて、部下は割と気軽に長官と接してる
のが伝わって来るけどな。だから漏れも今回のSSには驚いた。
意外な方向から来たなって感じで。
青い狸ワロタ。一瞬何の事かわからなかったw
その後指導者たるべき人間を全て失ってピリカが迷走していくとかいうラストに
して欲しかった>英雄たちの黄昏
>>253 逃亡したりしてるし。でも死に方はフェルゼンだよね>ギルモア
しかしオル窓ならともかく、ベルばらでいえば長官って誰なんだ?
オスカル+フェルゼンってとこか?
でもオル窓のユスーポフ候みたくピッタリくるキャラはいないな
このスレ第一弾からずっと見てきた俺としては、たとえ長官が死ぬにしても
部下に殺されるってのは一番ありえない死に方だと思ってしまうが・・・
でも「英雄達の黄昏」批判してる訳ではないんで。また何か書いたらうpしてほしい
長官は「失敗した者には容赦ない」タイプだと思うが
まー厳しそうな感じではあるが。
でもその割に「えへへ、お任せ下さい」とか「こりゃあ簡単には見つかりませんよ」とか
結構軽い口調で話してるあたりを見ると、むやみに厳しいわけではなさそう。
>>269 それはギルモアだと思われ。
長官に関しては、失敗した者に容赦ないって描写は実はないんだよね。
>>270 「あっ、長官でしたか」とか「あの少女は放してやるんですか」とかもあるな。
大長編のボスって、部下の事を「頼りにならん」「役立たず」「馬鹿」といった
言葉でけなす香具師が多いけど、長官は部下に対してそういうセリフは一言も
言ってないことに気付いた。やっぱ他とは違うよな。まあ、部下がみんな優秀
なのかも知れないけどw
274 :
256:03/07/23 20:08 ID:???
最初に野望達成編書いたものです
皆殺しエンドは誰も書かないだろうと誰かが言っていたので書いてみようかなと思いまして
で、死ぬとしたら敵には殺されないだろうし・・・
と考えていくと長官の優秀さに引け目を感じたりしている
それなりに有能な人に裏切られてじゃないか
有能なだけに長官のすごさがわかってそのすごさを最初は尊敬していたけれど
しだいに尊敬が畏怖に変わって最後には恐怖になって
もし失敗したら自分も殺されるのでは無いかとおびえて
それに押しつぶされてしまったのではないかなと思いまして
実際ギルモアやらパピやら殺してるんでありえないことでもないと
思いこんでしまったんじゃないでしょうか
そうでもしないと長官が死ぬところが考えられなかったのでこうなりました
今考えれば病死もあるなと思うんですけど後の祭ということで
「諸君、私の努力が足りないばかりに、我々はとうとうここまで追い詰められた。
数に勝り、装備もよく、訓練も充実した敵は、完全にこの基地を包囲してしまった。
私のもっとも信頼すべき矛であり、盾であった忠勇なる兵士諸君。
祖国の運命を悟りつつも、不平一つこぼさずに私についてきてくれた兵士諸君。
戦友が斃れ傷つき、苦境の只中に首までつかり、それでもなお武器を捨てぬ兵士諸君。
私が諸君に約束した回天は、悲しむべきことにとうとう訪れることはなかった。
だが、そのことは諸君の責任ではない。・・・・ひとえに、そう、全て、私に責任がある。
今となっては言っても詮無き事であるが、もう少し早く私が時代の節目を読み取っていれば、
諸君はもっと違った立場でその才幹を祖国の再興に役立てえたかも知れぬものを・・・・。
すまない。本当に、すまない。いくら言葉をつくしても足りぬが、今の私は諸君への慙愧の念で
全身が引きちぎられそうだ!
だが、生き残った兵士諸君。
内心で、最期の戦いを慮り、その準備に邁進している兵士諸君。
どうか安心してほしい。
先ほど、敵軍司令部より降伏勧告の使者がやってきた。
彼等は、私の首と引き換えに諸君の助命を申し出てきたのだ。
敵の司令官は、私も個人的に面識がある。彼の言うことは信頼に値するだろう。
私は熟慮の末、この申し出を承諾することとした。
今から1時間後、私は身一つで敵軍司令部へと向かう。
そして、わたしの素首で、ピリカの将来に欠くべからざる人材である諸君は、誰はばかることなく
大手を振って故郷へ帰還できるのだ。
だから諸君。どうかそれを見届けたならば、安んじて武器を置け。そして、それぞれの故郷に帰り、
あらたな道を踏み出すのだ。
これは、司令官たる私の発令する最期の命令である。兵士諸君は、この命令を遵守する義務が
あることを忘れぬように。
さようなら」
>>275 男は、マイクのスイッチを切り、基地司令部の天井を仰いだ。
決して短くはないこれまでの戦いで全身に蓄積された疲労が、肉体と精神の双方を
苛んでいたどす黒い澱が、すぅっと抜けてゆくのを感じる。
終わった。これで、本当に何もかもが終わったのだ。
男は、コンソールの前にある司令官席に大きな音を立てて座り込んだ。
双眸を閉じた男の表情は、あらゆる束縛から解き放たれた者に特有の、透き通るような
邪意のないものではあったが、内心の奥深くには、今もって切り捨てえないわだかまりが
蹲っている。
どうして、もっと早く決断できなかったのか。
男は、わずかに眉をしかめて思った。
パピがあの理不尽とも当然ともつかぬ死を遂げてから、運命は余りにも急速に変転した。
私は、その変転を目の当たりにし、その意味を知悉していたにもかかわらず、そこから
目をそむけ続けた。まるで、それを見さえしなければどうにかなるとでもいうかのように。
そして、私は悪あがきを続けた。
いつかは、この悪あがきが祖国にとってためになると信じながら。
日々悪化する状況を睨み据えながら、再びピリカにあの日々が戻ると信じて。
その結果が、何百万という人の死と、永遠に変ってしまった祖国。
畜生、無様だ。・・・・・なんとも無様な話じゃないか。
そこまで男がとりとめもない思いにふけっていたとき、不意に誰かが入ってきた。
「司令官」
己を呼ばわる声に、男―司令官は後ろを振り返る。
部屋に入ってきたのは、まだ子供のような年齢の新米少尉だった。顔は見たことがあるが、
名前は思い出せない。
そして、少尉は突撃銃を腰だめに構えて立っていた。
>>276 「たった一時間が待ちきれなくて、私を引っ立てようというのかね」
司令官は、銃を突きつけられているというのに、奇妙に平板な声で言った。
この少尉は、敗北が確定したことを今の放送で思い知らされて、激昂したのだろうか。
そして、責任者たる私にその感情をぶつけようというのだろうか。
一方で、司令間の怜悧というほかない大脳の片隅では、別の感慨がふとよぎっている。
そういえばこの少尉、似ているな・・・・パピに。
ということは、この少尉はパピの生まれ変わりなのかもしれないな。なんとも非合理的な話だが。
そして、全てが決した今になって自分の使命を思い出し、私を殺しに来た。そんなところだろうか。
「全てに決着がつきかかった今になって、銃を向けるのは感心しないな。
後少しで私は殺されるのだから、そう慌てなくてもいいのではないかな?」
決して演技ではない優しい口調で、司令官はパピによく似た少尉に語りかけた。
だが、少尉の言葉は司令官にとっては思いもかけないものであった。
「司令官、どうして一人だけでさっさと死のうとしてらっしゃるのですか?」
「・・・・どういうことかね?」
違う言葉―天誅だの死ねだのといった決め台詞を予想していた司令官は、内心でいささか
困惑しながら尋ね返す。
「我々は一心同体。常にそう訓示なさったのは司令官です。そして、わが部隊―第1機動師団
残存部隊である当基地駐屯部隊に、その訓示の意味を違える者は一人たりとておりません。
我々は、生きるも死ぬも常に司令官と一緒です。一人だけ先に死んでいただくのは、こちらとしても
到底容認できるものではありません」
「馬鹿な。それは違う。今日という日を迎えた、全ての責任は」
「今は亡きギルモア将軍閣下―いえ、あの糞野郎殿であります。司令官」
少尉は、およそ軍隊という組織にあるまじき口調で、上官の言葉を遮った。
「あなたが糞野郎殿の尻拭いにどれほど尽力されたか、そしてそれがとうとう叶わなかったことを
あなたがどれほど苦しんでおられるか、我等はだれよりも承知しております。
ですから、どうか最期までお供させてください、司令官―いえ、ドラコルル長官!」
>>277 ドラコルル長官―いや、今は戦局の悪化から臨時に編成されたPCIA総軍の司令官に任命されたから、
元長官というのが本来は相応しいのだが―は、その言葉にびくりと身体を震わせた。
そう、まさしく、この少尉が言う通りなのだ。
全てに決着をつけるはずであったパピの銃殺。あれにギルモアがいらぬ口出しをしたのが
この悲劇の原因であったのだ。
ギルモアは、ただパピと異星人を撃ち殺すだけでは飽き足りず、あろうことかそれをピリカ全土に
実況中継するように命じたのだ。
私はそれがいかに無益であるかをとき、一旦は止めさせたが、まったくの徒労だった。
私の邪魔が入ることを怖れたギルモアは、こっそりと撮影クルーを刑場に潜入させ、私が指揮する
処刑の模様を逐一中継させ、あまつさえ全てが終わった後に大演説を行うという愚挙までおまけに
つけてくれたのだ。
結果、ピリカの全国民がギルモアと私に対して怒り狂った。
事態の変化を察知し、いち早く小惑星帯からピリカへと帰還し、あらゆるところにもぐりこんだ
レジスタンス・チームは、実に巧みな扇動工作を行い、国民の怒りを打倒政府という形に集結させることに
まんまと成功した。
それから先は、何もかもが悪くなる一方だった。
当初はPCIAの警察力を動員してなんとか反政府運動を押さえ込みかけたが、市民階級で構成される
ピリカ星防軍の大半が打倒ギルモアに旗幟を翻らせたことで、あっさりと大勢は決した。
そして私は、部下の勇戦敢闘空しく、今落日を迎えようとしている。
しかし・・・・。
>>278 「少尉。その意見は君個人のものかね」
ドラコルルは、諭すような声で少尉に尋ねた。
もし、少尉がたった一人で勇敢にも私に意見しにきたのであれば、いくらでもやりようはある。
インターホンで衛兵を呼び、彼を取り押さえてしまえばよいのだ。
そうしたドラコルルの内心に頓着することなく、少尉は気力に満ち溢れた声で答えた。
「いいえ、残存部隊全員の総意であります、長官!一人として、反対者はおりませんでした」
その返事を聞いたドラコルルは、コンソールのマイクを再び手にとり、再び口を開いた。
「兵士諸君・・・・ドラコルルだ。ただいまの命令を一部変更する。
諸君の中で、真に降伏を希望するものがおれば、直ちに武器をすて、基地を出ろ。
抗戦を決意するものは、彼等の邪魔をしてはならない。邪魔した場合、そのものは今後一切
私の部下とは認めない。
また、降伏を希望するにも関わらず、意に反してここに残留するものも、同様に私の部下とは認めない。
30分猶予を与える。直ちに行動せよ」
マイクのスイッチを再び切ったドラコルルは立ち上がり、窓辺に近付いた。
そこからは、基地の全景が見下ろせる。もし誰かが出てゆくならば、その様子は彼にも容易にわかるだろう。
窓の外に視線をやったまま、ドラコルルは一人呟いた。
「少尉、君の言葉が真実かどうか・・・・これで全てが明らかになるだろう」
だが、少尉の表情には、微塵も動揺が見られなかった。
「長官。大変に申し訳ございませんが、意見を具申しても宜しいでしょうか」
「許可する」
「長官、貴方の部下に、貴方を置いて逃げ出すような腰抜けは一人もおりません。
たとえそれが貴方の意思であったとしても」
少尉は、まっすぐにドラコルルの顔を見つめていた。
「30分後、それが明らかになるでしょう」
>>279 30分後。
ドラコルルは、自分の目が信じられなかった。
あれだけ念を押したにもかかわらず、誰一人として武器を捨てて基地を出て行かなかったからではない。
PCIA最後の兵力、その全てである1個大隊相当のうち、今動ける人員の全てが基地のグラウンドに集結し、
ドラコルルのいる司令官室を見上げていたからだ。
しかもその全員が武器を高々と振りかざし、大声で叫んでいる。
「我々は最後まで長官と一緒です!」
「長官、どうか私たちも運命を共にさせてください!」
「PCIA万歳!俺たちがついてきたのはギルモアじゃない、長官だ!」
「なんという大馬鹿者どもだ・・・・・・」
ドラコルル長官は肩を震わせてその様子に見入っていた。
「一人で勝手に死ねると思ってるんですか」
少尉が、その背後からドラコルルに声をかける。
「我々は、運命に刃向かったものです。人間は、おそらく運命には勝てないのでしょう。
ならば、最後くらい、せめて華々しくいきましょう」
ドラコルルは、ゆっくりと振り向いた。
そして、相手を打ち倒さんばかりの大音声をその喉から発する。
「命令!当基地残存部隊は、ただいまからその全戦力をもって敵部隊に対し最後の決戦を行う!」
その声にびくりと身体を震わせた少尉に、ドラコルルはさらに続ける。
「復唱はいらん。準備出来次第直ちに出撃せよ!なお、先頭には私が立つ!」
「り、了解しました!」
大慌てで駆け出してゆく少尉の後姿を見送りながら、ドラコルルは思った。
パピ、私は愚かだがよい部下に恵まれた。
私がこれからゆくところに君はいないだろうが、私の部下の何人かは君のいる場所へゆくかもしれない。
そのときは、どうか、どうか、もてなしてやってくれ。彼等に罪はないから。
281 :
222:03/07/23 22:55 ID:???
皆様こんばんは。
ええと、週末とかほざいておきながら、更新してしまいました。
今回のテーマは「そして誰もいなくなった」です。
256さんとかぶってしまいましたが、まああの、解釈の相違ということで何卒お許しいただければと。
>>260さん、
>>262さん、
>>263さん他のリクエストを踏まえて話をつくってみましたが、
どうにも長くなりすぎですね。申し訳ございません。
ではまた。今度こそ本当に週末に。
282 :
222:03/07/23 23:01 ID:???
度々失礼します。
ええと、上のレスの
「
>>260さん、
>>262さん、
>>263さん他のリクエスト」
なんですが、ここは
「リクエストやご意見」
ですね。言葉足らずで申し訳ございません。
あと、付け加えておくこととして、この話の着想は
>>265さんのSSによりました。
この場を借りまして、
>>265さんに深くお礼を申し上げます。
どうもありがとうございました。
泣いた…すげえいい話だ
涙が止まらないYO・・・
悲しいけど同時に心が温かいもので満たされてくのを感じました。
222さん、あなたは神です。またいつでも降臨してください。
ああもう上手い言葉が浮かばないけど……感動しました。
ギルモア許すまじ!全部藻前のせいだ、畜生!
個人的に「通り過ぎた回天」のギルモアが一番許せねえ・・・
で、この話ではギルモアはどうなったんだ・・・・って、聞くまでもないか
なんか長官の部下たちがすげえうらやましいと思った。
これも間違いなく、悔い無しで幸せな人生のひとつだよな。
自分が信じる人に最期までついていけるなんて今はそうそうないし。
>>281 え?もしかして週末にまた新しいSSをうpして下さるんですか?!うれし杉
290 :
287:03/07/24 15:48 ID:???
おっと、ちゃんと「今は亡き」って書いてたyo
本当に聞くまでもなかった(つーか、よく読め自分)
長官が本当にパピの生まれ変わりとしか思えない少年に出会うとか
パピの魂が誰かに(一時的に)宿って長官に思いを伝えるなんていう話も面白いな、と
ヲトメな事考えました。「通り過ぎた回天」の少尉は結局違うんですよね?
>>291 いいな、それ。長官だって、パピに伝えたい事はあるだろうし。
>>281 いえ、もっと長い話でも全然構いませんよ。
前スレでは長々と全19話も書いた香具師がいますから。私ですけど(w
にしても、たったコミックス一冊分から、こんなに多様な物語が生まれるとは。
原作と職人さん両方に力があるからなんだろうな。
295 :
294:03/07/24 23:31 ID:???
それと、当然ながら長官のキャラに魅力があるからだな。
他の長編敵キャラじゃこうはいかないだろう。
296 :
222:03/07/25 02:06 ID:???
皆様こんばんは。
拙文「通り過ぎた回天」を好意的に評価してくださいまして、まことにありがとうございました。
ただ、私としては(その6)がちょっとあっさりしすぎてるかな、とも思っておりまして、
週末にでもノーカット&コンプリートバージョンをアップさせていただければと考えております。
(ちなみに、コンプリートバージョンとは、(その6)以降の続編です。
タイトルは「RUNABOUT!!」あたりを考えておりますが・・・・・・。
ところで、
>>282の
>>265さんあてとなってるレスですが、ここは
>>256さんでしたね。
今気がつきました。申し訳ございません。
>>296 楽しみにしてます!
でもその6以降の話って事は、また泣いちゃうかもしれないですが
>>297 ドウイ
容赦なく感情を揺さぶるこの人の文で長官の最期を書かれたらパソの前で
ボロ泣きしそうな気がしる。
>>298 ネットカフェでは見ないようにしないとなw
画面見て泣き出す客・・・まあ、他の客の顔見てるヤシなんていないだろうが
まだそういう大泣きラストになると決まった訳じゃないだろ>通り過ぎた回天
まあその確率が高いのは否定しないが。
どんな結末であれ週末の降臨が楽しみだ。
つーことで300
今度もまた良スレになりそうなヨカーン
ていうか既に良スレだが。
(その6)まででも泣いたけど、コンプリートバージョンなんて読んだ日には…
画面を見つめつつ呆然としてる自分の姿が想像できる。前スレ第一弾SS読んだ時みたく。
だってみんな上手いんだもん、文章に引き込むのが。
週末って明日あさってか。早く読みてー
>>302 >だってみんな上手いんだもん、文章に引き込むのが
うん。ホントにそうだな。
すぐにSSの世界観に引き込まれて感情移入してしまうっていうか。
その分、悲しい話の時はよけい“くる”んだよね。
222さん、今日降臨するかな?
>>279 30分後。
ドラコルルの眼下に、一つの奇跡が展開されていた。
あれだけ念を押したにもかかわらず、ドラコルルの命令―というよりは、懇請に従って、武器を捨てて基地を
出て行ったものは一人もいなかった。
PCIA総軍最後の兵力、その全てである歩兵1個大隊相当、戦車2個中隊、砲兵1個中隊、そして基地駐屯部隊
のうち手すきの兵士たちが、その全てが基地の営庭に集結し、この最悪というほかない状況にあっても未だ
潰えぬ統制と秩序を見せ付けるかのように、中隊ごとに定規で測ったかのような間隔で整列し、 ドラコルル
のいる司令官公室を見上げていた。
2000人を越す男達が、しばらくの間無言のまま、その目と顔つきにだけ強固な覚悟を浮かべて、ドラコルルと
相対していた。
針でつつけば破裂しかねないような、緊張と熱量を孕んだ空気が営庭に満ち、その空気はやがて奔流となって
ドラコルルの元へとなだれ込む。
突如、部隊の先頭に立っていた一人の士官が、気ヲ付ケの姿勢を保ちながら、喉も破れよとばかりに大声で
叫んだ。階級章や部隊徽章から判断するに、どうやら彼が残存部隊の指揮官らしい。
「PCIA総軍残存部隊―第1機動師団集成第1大隊、戦車第1及び第2中隊、砲兵第1中隊、ならびにピリカ星防
軍R113基地駐屯部隊、集結を完了いたしました!
我等は、常に最良のコンディションにあり、長官の御意思を、万に一つの遺漏もなく実現できます!
部隊の命運は、常に長官と共にあります・・・・従って、我等に降伏以外のご命令を!
どうか、お願いします・・・・長官の行こうとしているところに、我等も同道させてください!」
>>306 血を吐くようなその叫びを引き金に、営庭にいた全員が口々に大声で叫びだした。
「長官、我々は最後まで一緒です!」
「長官、どうか私たちを置いていかないでください!」
「俺たちがついてきたのはギルモアじゃない、長官だ!」
通常、軍隊という組織は、命令もなしに自分の意見を開陳することを許さない。
しかし、彼等は例え決まりにそむいてでも、今この場で自分の思うところを目いっぱい表しておかねば
ならなかった。
そうしないと、彼等が信じ、命を預けて尽くしてきたドラコルルが、彼等を置いて遠くにいってしまうからである。
その危機感は、普段彼等の心身を強固に律していた軍法を無視してでも、こうした形で自己の意思表明
を行わせるほどのものであった。
最初、己の思うところをぶちまけるだけだった男達の声は、程なくして一つのフレーズに集約される。
「PCIA万歳!!」
地面を踏み鳴らし、手にしていた突撃銃を振りかざしたある兵士が発した叫びは、あっという間に部隊の
全てに伝播した。
「PCIA万歳!! PCIA万歳!! PCIA万歳!! PCIA万歳!! PCIA万歳!!」
誰からも強制されない、地鳴りのような足踏みと、津浪のような鬨の声。
その2つは、今彼等を見下ろしているドラコルルの元に、確実に届いていた。
「なんという大馬鹿者どもだ・・・・・・」
兵士たちの意思をこれ以上はないくらい明確に見せ付けられたドラコルル長官は、肩を震わせてその様子に
見入っていた。
「私が兵士たちに求めていたのは、私の命令に従うことであって、私と共に死ぬことではないというのに・・・・」
>>307 「新政府に言わせれば、私たちは旧体制の残党です。たとえ長官が首を差し出したとしても、無事にはいられない。
いや、長官の命と引き換えに命ながらえても、何の意味もない―これは、部隊全員の意見です」
少尉が、その背後からドラコルルに声をかける。
ドラコルルに向けていた突撃銃は、何時の間にかその銃口を下ろされていた。
「我々は、運命に刃向かったものです。人間は、おそらく運命には勝てないのでしょう。 ならば、最後くらい、
せめて華々しくいきましょう」
ドラコルルは、ゆっくりと振り向いた。
「せめて、華々しく・・・・か。そうだな、そうすべきなのかもしれん」
ほんの10秒ほど、視線を交わすドラコルルと名もなき少尉。
そして、すっと息を飲み込んだドラコルルは、相手を打ち倒さんばかりの大音声をその喉から発した。
「命令!当基地残存部隊は、ただいまからその全戦力をもって敵部隊に対し最後の決戦を行う!」
その声にびくりと身体を震わせた少尉に、ドラコルルはさらに続ける。
「復唱はいらん。直ちに各級部隊指揮官を講堂に集合させよ!作戦の構想を説明する!」
「り、了解しました!」
大慌てで駆け出してゆく少尉の後姿を見送りながら、ドラコルルは思った。
パピ、私は愚かだがよい部下に恵まれた。
私がやろうとしていることは、おそらく軍事的に見ればただの愚行かもしれないが、どうしてもやらねばならない
ことなのだ・・・・なぜなら、あのギルモアが、君の死に様を全ピリカに垂れ流したギルモアが、新政府軍の司令部
にのうのうと居座っているから。驚くべき話だろう?まあ、ギルモアが敵の司令官でないことだけが救いだが。
私は、彼を屠ることで、ピリカのために最後の忠誠を見せようと思う―それを私ひとりではなく、部隊全員でやる
ことになったのが意外といえば意外だが、それもまあ悪くはなかろう。
事が成り、その後で私がゆくところに君はいないだろうが、私の部下の何人かは君のいる場所へゆくかもしれない。
そのときは、どうか、どうか、もてなしてやってくれ。彼等に罪はないから。
309 :
222:03/07/26 15:04 ID:???
皆様こんにちは。
というわけで、お約束させていただいた通り、まずは「通り過ぎた回天」ノーカット・バージョンを
アップさせていただきました。いや、それにしても長くなったものです。
コンプリート・バージョン「RUNABOUT(仮)」は、早ければ夜にでもアップさせていただく予定です。
(10レスくらいでまとめられたらな、と思っておりますが・・・・)
ちなみに、今回のノーカット・バージョンには、この続編のための設定をいくつか盛り込ませていただきました。
まあ、敵キャラが彼というのが賛否両論だと思いますが、名無しさんを相手にするよりはそちらのほうが
書いていて面白そうだなと思いまして。(もちろん、その1〜その5までの設定「今はなきギルモア」うんぬん
との整合性をどうとるかも、今後説明させていただきますので)
222さん再臨!
にしても、ギルモアには驚きました。
でも長官には是非ともギルモアの糞野郎殿をあぼーんして頂きたかったので
嬉しいです。
部下たちの叫びに心打たれた。
そうだよな、自分たちの大事な人を一人で死なせて生き残るなんてなあ。
そんなの死ぬより辛いと思うよ、俺も。
え?ギルモア氏んでないの?RUNABOUTどうなるのか楽しみ
本当は生きててほしいからこういう表現はしたくないけど、
私は長官はきっとパピと同じ場所に行けると思う
・・・そうですよね、222さん(涙)
↑
我ながら恥ずいレスだ
皆様こんばんは。
ええと、本日夜アップさせていただく予定の続編ですが、かなり長くなりそうです。
10レスでおさめようとしたのですが、そうすると何がなんだかさっぱりわからない、と。
で、状況の説明も含め、可能な限りわかりやすくしながら話を進めておりますので、
今しばらくお待ちください。場合によっては明日のアップになるかもしれません。
(私に表や地図のAAを作る技能があれば、もっとシンプルな話にできたんですが)
なお、ラストについてはもう決まっております。
ご満足いただけるかどうかはわかりませんが、全力投球で参りますので・・・・・。
待ってますとも、いつまででも!
思う存分長くして下さい。その分俺らも長く話を堪能できるってもんです。
「全員揃ったな・・・では、作戦について説明する。楽にして宜しい」
5分後、PCIAR113基地大講堂内部。
参集し、整列した各部隊指揮官―大隊から小隊までの全士官を前にしたドラコルルは、演台の上からよく通る
声で切り出した。
傍らには、なし崩し的に司令官付臨時副官に任命されたあの少尉―名前は、トクルという―が、両手を背後に
廻し、わずかに足を開いた直立姿勢のままドラコルルに付き添っている。
集まった指揮官は、しわぶき一つ立てずに、じっとドラコルルに注目していた。
いずれの顔にも、これから彼等を待ち受けているであろう運命に対する怖れや怒りは見えない。
あるのはただ、最後の最後に大きな何かを成し遂げられるであろう可能性への興奮と、それを導く司令官への
期待だけだ。
「まず、我が部隊の置かれた状況について再度確認する。
・・・といっても、窓の外を見ればすぐにわかることではあるがな。まあ、格好をつけるためには仕方ない」
わずかに唇を曲げ、軽く肩をすくめるドラコルルの言葉―珍しく彼が口にした冗談に、指揮官の間から控えめな
笑い声が起こり、張り詰めていた空気がふっと緩む。
たった一言で無用の緊張を解きほぐしたドラコルルは、肩の力を抜いた部下達を満足そうに見ながら、再度口を
開いた。
「我が基地は、諸君も知っての通り、東西方向の781号道路と南北方向の332号道路が交差する位置に設営
された、いわば交通の要所だ。敵部隊―ピリカ新政府軍と名乗る奴輩は、東西南北すべての道路を塞ぎ、兵力
を貼り付けて我々の行動を封じ込めている。その数、およそ4個師団―10万人だ。
時計に見立てて、我が基地をとりまく敵部隊の動向について確認しよう」
そこで言葉を切ったドラコルルは、トクルに向かって頷き、合図を送った。
トクルが手元のスイッチパネルを操作し、ややあって演台の天井からプロジェクターの映像―簡略化した記号を
用いた敵味方の配置図が背後の壁に投影される。
配置図をレーザーポインターで指し示しながら、ドラコルルは説明を再開した。
>>316 「まず、北―12時方向と、東―3時方向に、それぞれ1個旅団が貼り付けられている
南―6時方向と、西―9時方向には、それぞれ1個師団ずつだ。
ピリカ新政府軍は、2個旅団で1個師団を編成しているから、合計3個師団が我が基地の封鎖に当たっている
ということになる。残り1個師団は予備兵力として、敵司令部がある北東方向の平地に後置されている。
兵力の配置に偏りがみられるのは、我が基地からの西部から南部にかけて、森林地帯が広がっているからだ。
つまり敵は、我等が基地を捨てて森林に逃げ込むことを怖れるが故に、そっちに大兵力を貼り付けている。
言うまでもないが、我等はいかに精兵といえ、たったの1個大隊。師団に正面から殴りかかるだけの力はない。
一方で、北部から東部にかけては、なにも遮るものがない平原地帯だ。
普通に考えれば、ここを我々が通ればすぐ敵の目に付き、砲撃や爆撃をしこたま振舞われた後に旅団規模―
敵の編成では、1個旅団は3個大隊だから、北部か東部の道路を使えば少なくとも3個大隊が守る中を突破
せねばならない。これを避けて北東部を抜けようとすれば、最悪の場合北と東から合計4個大隊、そして予備の
1個師団―6個大隊が我々を木っ端微塵にする。少なくとも、敵はそのつもりだ。
ここまではよいかな?」
指揮官達は、沈黙を保つことで、ドラコルルの問いかけに答えた。
少なくとも、普通に考える限りでは篭城戦以外の戦法は取りようがない状況、ということですね。
ですが、貴方はそれをひっくり返そうとしておられる。ならば我々は、その構想を伺って、無条件で従います。
部下達が放つ無言の同意を受けたドラコルルは、次の台詞で状況説明を締めくくった。
「かように、八方塞というほかない現在の状況ではあるが、我々にできることはまだあり、それはなんとしても
達成されなければならない・・・・・すなわち、本作戦の目的だが」
口を閉じたドラコルルは、ぐるりと部下の顔を眺めると、わずかに呼吸を置き、きっぱりとした声で告げた。
「我等の狙いは、ギルモア元ピリカ王の首だ。
彼は、ピリカ新政府軍の司令部に客将として招かれている」
>>317 ギルモア!
ドラコルルの口から発せられた、あまりにも思いがけない作戦目標に、講堂の中が一瞬にして騒がしくなった。
「何だって・・・・ギルモアだと?」
「馬鹿な、なんであいつがここに!」
「嘘だろ・・・・ギルモアが生きてただとォ!」
「あいつは、7年前に死んだはずではなかったのか。確か、テロリストが」
かつん。
数分間、指揮官達が思わず発した私語を聞くともなく聞いていたドラコルルは、頃合を見計らって、演台を軽く
拳で叩いた。静まれ、という合図だ。
遠く近く、高く低く沸き起こっていた指揮官達のどよめきは、その合図一つでぴたりと止んだ。
「諸君がこの話を信じられぬのはもっともだ。何せ、この私にしてからその事実をしったのはつい先ほどだからな。
3時間前、私のところに新政府軍から降伏勧告の軍使が訪れたことについては諸君も承知していると思う。
その軍使は、かつて私と共にピリカの政府組織―PCIAではないがね―で勤務していたことがあり、旧知の仲
だったのだが、彼が私に教えてくれたのだよ。ギルモアは生きており、ここにやってきた、とね」
緊張を孕んだ沈黙が満ち溢れる講堂の中を、淡々としたドラコルルの声が流れてゆく。
「正直な話、どうしてギルモアが7年前の襲撃事件―諸君もよく承知していると思うが―を生き延びたのか、
そしてあろうことかどうして彼の敵であったはずのピリカ新政府に取り入ったのか、そこまではわからない。
おそらく、前者は身代わりをたてたのと、後者は彼の莫大な個人資産に政府中枢機関に関する裏情報を対価と
して、だとは思うが・・・ともあれ!」
ドラコルルは、そこで一段と声を張り上げた。
>>318 「ピリカ新政府とやらがどういう方針の元に政治を運営していくか、それは向こうの勝手だが、ギルモアのような
人間を侍らすというのは断じて看過しえぬことだ。・・・・・なぜなら、それは彼等が我等を非難しているその理屈が
すべて嘘にしか過ぎず、彼等も所詮は我等と同じだということにほかならないからだ。
つまり、このようなことを許しておけば、いずれピリカ新政府も必ずや我等の辿った道を歩むことになる!」
思いのほか激しいドラコルルの口調に、講堂に居合わせたものは誰もが言葉を失って彼等の長官を見つめていた。
そう、彼等は、ほかの誰よりもわかっていたのだ。
この星が、有史以来2度はないだろうと思われるこの星の苦境、それが全てギルモアの愚かしい決断と陰謀に
あったことを。
テロリストに殺害され、少なくとももう2度とピリカに苦痛を齎すことはなくなったと思われていた彼が実は生きていた
と知った時の、長官のうけた衝撃の大きさを。
「百歩譲って、何らかの事情で彼等がギルモアを助命せざるを得なくなったとしよう。・・・・ならばよろしい!
我等がピリカ新政府、いや、母なるピリカ星の全てにとって罪悪であるギルモア氏を道連れに地獄へと行進して
やろうではないか!
彼等がギルモアを処刑できぬのなら、我等が代わって銃殺の引き金を引こう!
パピ元国王の死以来10余年にわたって続いてきたこの星の動乱、その総決算をしよう!
それが、祖国をここまでの苦境に追い込んだ、我等の最後の義務であるからだ!」
次の瞬間、講堂を揺るがすような歓声が爆発した。余りにも明確で、誰はばかることのない目的を知らされたからだ。
誰もが思った。
俺たちは、間違った側についていたのかもしれない。おそらくは歴史の影に消えていくだけの存在なのだろう。
だが、最後の最後に俺たちが俺たちである理由を、俺たちがピリカの平和に貢献できたという事実を、歴史に
刻み付けてやる!
ドラコルルは、しばらくの間指揮官達が感情を露にすることを許してから、厳かに告げた。
「諸君の意思はわかった。ありがとう・・・・・では、作戦の細部について説明する」
320 :
222:03/07/26 21:46 ID:???
皆様こんばんは。
予告しておりました続編ですが、長くなりそうなので、いくつか話のまとまりごとにわけて
アップさせていただきます。(タイトルは変更いたしました)
全部纏めてアップすると、おそらく読まれるほうも大変だろうと思いますので・・・・・。
4レスを1話として、4〜5話くらいの話にさせていただきますので、よろしくお願いします。
そうすると長編ですね!腰をすえて見届けさせていただきます!
「祖国のために」
・・・なんかタイトルだけでもう泣けてくる。
ラストシーン見た後はどうなるのかな
>>319 3時間後、R113基地北東部20キロ、ピリカ新政府軍司令部。
「遅いな・・・・遅すぎる。何があったんだ・・・・」
新政府軍の司令官―ゲンブ中将は、いらいらした様子で司令部ユニットの中を歩き回りながら呟いた。
ドラコルルに対して、軍使を派遣して降伏を勧告してから、もう4時間が経過している。
軍使の話では、3時間前にドラコルルがやってきて、降伏に関する話し合いをしているはずだった。
そして今ごろは、ドラコルルは営倉の中に入り、彼の部下は武装解除に応じているはずだった。
なのに、ドラコルルは基地をでる気配を見せない。
いや、彼からの連絡は入ってきた。
一時間前に無線で、
「現在、降伏の受け入れについて部隊内部を調整中。一部不穏分子の抵抗にあい、難航しているため
今しばらくの猶予をほしい」
という連絡が入ってきたが、その後は綺麗さっぱり音沙汰がない。
部隊の意思を降伏に持っていくために手間取っている?馬鹿な。
ドラコルルに限って、そのようなことがあるはずがない。一体何が。まさか・・・・。
「まあ、ドラコルルは部下を殺人鬼に仕立て上げることについては天才的なのだ。それを、この期に及んで
武器を捨てて降伏しろといっても、部下が聞きはすまいよ、ゲンブ君」
癇に障る高い声が、不意にゲンブの背中にかけられる。
その声の主が誰であるか、もちろん承知していたゲンブは、険しい顔を作って後ろを振り向いた。
「あなたにはそう言いきれる根拠があるのか、ギルモア」
糾弾に近い口調でゲンブに尋ねられた男―ピリカ元暫定国王にして、ピリカ新政府内政顧問たるギルモア氏―
は、落ち着き払って言った。
>>323 「もちろんだとも、ゲンブ君・・・私が、ピリカ国の政治を預かっていたとき、どれほど彼には苦労させられたか、
それをほんの少しでもわかってもらえば、君も私の言うことを疑ったりはすまいよ」
ゲンブは、険しい表情のままだった。
彼には、まるでギルモアの口から、蛇か蜥蜴が吐き出されているかのように感じられている。
そうしたゲンブの内心に気づくことなく、あるいは承知の上でか、ギルモアは誠心誠意という演技のスイッチを
オンにしたかのような態度と声音で話しつづけていた。
「そうだな・・・有体に言えば、恥ずかしい話だが、ピリカの内政―警察や諜報は、全てドラコルルが握っていた。
それをいいことに彼は、私をときに脅して、ときになだめすかして、ピリカの人民を常に弾圧しつづけてきたのだよ。
私がピリカ人民によかれと思った施策は全て握りつぶされ、彼の企図した人民への抑圧は常にフリーパスで
実行された・・・・まったく、彼が立案し、私の名前で実行された愚かな政策のなんと多いことよ!」
ギルモアは、そこで額に手をあて、大げさによろめいてみせる。
「私は、ピリカの治世者として、常に良識に従ってドラコルルの力をそごうと努力していたが、うまくいかなかった。
正直な話、私が我が身を省みず、もっと果敢にドラコルルへの抵抗を試みていれば、パピ元国王は死なずに
すんだかもしれぬ・・・あの処刑は、すべて彼がお膳立てしたものだからな。
もちろん私は、強要されて演説をしなければならなかったのだよ・・・・・」
「あなたの身の上話は、その辺で結構だ」
ゲンブは、苦虫を噛み潰した顔を和らげようともしないで言い放った。
まったく、どうしてピリカ新政府はよりにもよってこのような男を生かしておいたのだ!
ゲンブの内心に、いいようのない感情がいつものように立ち込めてゆく。
こいつのいうことは、何から何まで嘘っぱちだ。その気になれば、物的証拠をかき集めて逐一こいつのいうことを
粉砕してみせる自信だってある。いや、現にできるものなら今すぐにでもそうしたいところだ。
>>324 だが、新政府の首脳陣は、ギルモアを生かしておくことにした。
その理由は・・・呆れるほど馬鹿げたものだ。
彼の余りにも白々しい演技に涙し、彼の言うことを鵜呑みにするような阿呆が大統領の座にいたから。
ただそれだけだ。
そして、本来ならばその阿呆をいさめるべき立場のスタッフは、あっというまにギルモアに篭絡された。
彼の信じがたいほど莫大な財産と、彼がよこした美女あるいは美丈夫に骨抜きにされて。
確かに、ピリカで一番怖れられていた男はドラコルルであり、かつてゲンブに何度も生命の危機を味あわせたのも
彼だ。
しかし、しかし。
ドラコルルは恐るべき男ではあったが、決して卑怯者ではなかった。
打倒すべき敵ではあったが、決して侮辱に晒されるべき人間ではなかった。
敵味方という決定的な立場の違いこそあれ、いや、それゆえにドラコルルという人間をよく知るゲンブにとっては、
ギルモアの台詞は何もかもが腹立たしくてならなかった。
そして、彼を生かした上に顧問という要職にまでうっかりつけてしまう政府の愚かしさも。
今は仕方がない。今は。だが、そのうちに、必ずや。
無理やり自分に言い聞かせたゲンブは、きっぱりとギルモアに言った。
「名演説は他のところでやってくれ。あなたがここで求められている役割はそんなことではない」
「わかっておるよ。あの憎むべきドラコルルの首実検、だろう?」
ゲンブの全身から放たれる嫌悪をそよ風のように無視しながら、ギルモアは平然と言い返した。
言い返しつつ、ギルモアは内心で、また違うことを考えている。
>>325 どうやら、この元レジスタンスは私に同調しようとしないらしい。愚かな男だ。まあ、私が再び権力の座に
帰り着いたときは、真っ先にこやつを粛清することとしよう・・・。
そう考えたギルモアが、唇の端にわずかな笑みを浮かべたときだった。
突如、司令部ユニットのドアを蹴り開けるように開き、司令官付従兵が息せき切って駆け込んでくる。
彼は、ゲンブの前で直立し、報告した。
「司令官、R113基地のPCIA残党が行動を開始しました!
彼等は、基地内に残っていた火砲を動員し、南西方面に砲撃をかけております。
現地報告では、基地南西方向ゲートに多数の車輌が集結中とのことです!」
なんだと。
報告を受けたゲンブは、目の前が暗くなるのを感じた。
彼の背後にいたギルモアは、対照的に肉食獣のような笑みを満面に浮かべる。
「ゲンブ君、好機だ!彼等はどうやらとうとう内部崩壊をおこしたようだぞ!やっぱりドラコルルは、部隊を
降伏させられなかったんだ!」
「あんたは黙ってろ!」
悪鬼のような形相でギルモアを一喝したゲンブは、いいようのない痛みを心に抱えたまま従兵に命じた。
「やむを得ない・・・2号計画だ。第1師団(南部)と第81戦車師団(西部)を動かせ。奴等の脱出を食い止める。
おそらく、基地の中では抗戦派と降伏派が争ってるはずだ。第321旅団(北部)と第47旅団(東部)は、直ちに
R113基地に突入せよ。司令部も移動する」
畜生。
走り去ってゆく従兵を見送りながら、ゲンブは唇をきつくかみ締め、内心でうめいた。
どうして、どうしてこうなってしまうのだ。ドラコルル、あんたは、ピリカにまだ平和がきてほしくないというのか!
ゲンブの口内に、血の味が広がった。
327 :
222:03/07/26 23:43 ID:???
皆様こんばんは。第2弾でございます。
それにしても、すっかり悪役になってしまいましたね、ギルモア。
まあ、これくらい憎憎しいほうが書くほうもやりやすいということで。。
では、続いて第3弾にかかります。いつアップさせていただくかは未定ということで・・・。
ギルモア〜〜〜〜〜!!
なんかあまりの憤りに言葉も出ねえ。
まあその分あぼーんされた時のカタルシスも大きいだろうが。
面識のある司令官ってゲンブ氏だったのか。ナルホド
ギルモアむかつく―――――!!!!
早く殺っちゃって下さい
>>326 それから数時間の間に起こった一連の軍事行動は、後に「ピリカ軍事史上最大の挑戦」と呼ばれることになる。
ドラコルルがそのあまりある才能の全てを費やして、瞬きするほどの短時間に練り上げ、彼の忠勇にして
精強な兵士たちが織り成した最後の戦いは、次のように展開した。
午後3時21分。
R113基地より、多数の火砲による砲撃が基地南西方面に展開中だった新政府軍の陣地に向けて行われる。
同陣地にてR113基地の包囲に当たっていた第81戦車師団の一部部隊は、陣地移動及び補給中であったため
この砲撃により混乱状態に陥る。
同時刻、ゲンブ中将による2号計画発動命令。
第81戦車師団主力及び第1師団主力は、計画に基づき基地南西方面への移動を開始。
また、第321旅団及び第47旅団は、それぞれ全力を街道沿いに進出させ、R113基地へむけて移動。
(なお、北東部方面で予備として後置されていた第13師団は、到着直後であったため戦闘に加入できなかった)
午後4時00分。
R113基地からの砲撃、収束。
同時に、基地南西方面のゲートより、PCIA残党のものと見られる軍用車輌が多数出撃を開始。
偵察班の報告に依れば、その数およそ150台。
内訳は、戦車1個中隊10輌、装甲戦闘車2個中隊30両、その他装甲車輌50台、輸送用車輌60台。
午後4時10分。
第81戦車師団第1戦車大隊所属の2個戦車小隊及び1個装甲偵察小隊が、上記車輌群を捕捉。
交戦を開始するも全滅した。原因は、PCIA残党の戦車が新型であったことによるもの。
なお、戦闘後の調査に依れば、新政府軍はPCIA車輌群のうち、装甲車輌3台、輸送用車輌17台を撃破。
全滅の報告を受けた第81戦車師団司令部は、方針を変更。第1師団と協同して再度包囲を行い、全火力を
遠距離から一挙に敵車輌群に浴びせて動きを止めた後に戦車戦に持ち込む戦術に切り替えた。
>>332 午後4時32分。
第81戦車師団及び第1師団は、敵車輌群の再包囲に成功。
(ただし、このときまでに3回交戦が発生し、新政府軍は合計して戦車21輌、装甲車輌37輌を喪失)
両師団が保有せる自走砲及び自走ロケット砲により全力射撃を行い、敵車輌群が混乱したところへ
第81戦車師団第1及び第2戦車大隊が突撃を開始。
午後4時58分。
R113基地より脱出を企図していたPCIA残党車輌群、同基地南西方面10キロ地点において全滅。
敵車輌群の兵士において、生存者皆無。
この交戦における当方の損害は戦車15輌、装甲戦闘車10輌。
なお、第81戦車師団及び第1師団の主力は、一連の戦闘で配置を大きく移動したこと及び交戦による損害が
予想外の多数に上ったため、この後の戦闘にはいかなる介入も不可能となる。
そして・・・・・。
「遠隔操作だと!」
司令部ユニットの中で報告を受けたゲンブは、飛び上がらんばかりに驚愕した。
彼の背後にいたギルモアも、さすがに驚きを隠せないでいる。
「は、間違いありません。先ほど81戦車と1師の調査隊が協同で残骸を確認しました。その結果、戦車の
残骸からは敵兵の死体が確認されたそうですが、その他の車輌からは、コンピュータによる遠隔操作ユニット
のみが発見され、死体は―兵士どころか猫の子一匹見当たらなかったとのことです!」
なんだと、つまり、それでは・・・・・
驚愕のあまり混乱しかけながらも、ゲンブの思考は全力で回転し始めた。
実際に第81戦者師団と第1師団を振り回していたのは、たった1個中隊の戦車でしかなかったというのか。
わが方の損害は、戦車が50輌に装甲車輌が大小取り混ぜて60輌。合計110輌だ。
たった1個中隊が、いかに新型とはいえ、たった10輌が、11倍もの敵を道連れにしたと・・・・!
>>333 いや、待て。
ふと、ゲンブは我に返った。
10輌、1個中隊の戦車が、どうして遠隔操作ユニット付きにしか過ぎない多数の供を引き連れて基地を脱出したのだ。
いくらなんでも、数が少なすぎる。生きている兵士の、脱出人数としてカウントするならば。
というのも、10輌の戦車であれば、それを操る兵士の数はどう多く見積もっても40人を超えることはあるまい。
彼等が、あの戦車兵達が、ドラコルルの説得に耳を貸さずに脱出したとしても、その数はあまりに少なすぎないか。
徹底抗戦か降伏かで基地の中が真っ二つに別れていたのならば、もっと脱出した連中の数は多くてしかるべきだ。
なぜなら、脱出したのは、こちらの見積もりでは2000人いるはずの敵軍、そのなかのたった20人だ。
ドラコルルであれば、20人程度が造反したくらいならば、容易に鎮圧できるだけの手腕を持っているはず。
それに、脱出時に行われたという火砲の支援。
全滅した車輌群に、戦車兵以外のPCIA残党がいないということは、あの火砲をぶっ放した連中はまだ基地の
なかに留まっているはず。
なぜそいつらは脱出しない。なぜだ。
「基地の様子はどうなっている?」
ゲンブは、一旦思考を中断させて尋ねた。
報告にきた士官は、その問いがあることを予期していたのか、まったくよどみなく答える。
「依然として、静かです。散発的な銃声が聞こえてくるとの報告はありますが」
「おい、どうした、一体どうなってるんだ?」
ギルモアが、よせばいいのに会話に割り込んでくる。
当然というべきか、ゲンブはギルモアを完全に無視して再び思考を巡らせた。
そもそも、戦車以外の車輌を操っていたのは誰だ。戦車に乗っていた脱走兵か。
違う。戦車に、そのような装置―100両を超える車輌を操れるような装置など積み込むスペースはない。
しかも、撃破するまでわが方の兵士が遠隔操作に気づかなかったということは、いかにもそれらしい、まるで
人が実際に乗り込んでいたかのような機動をあの車輌群が示していたということだ。
ということは、あのユニットはR113基地から操作されていたということになる。
つまり、R113基地の内部は、脱出した連中と完全に連携を取っていたということだ。そうでなければ説明がつかない。
その目的は・・・・・
>>334 「囮だ・・・・・」
ドラコルルの目論見に気づいたゲンブは、うめくような声で呟いた。
しまった。R113基地の内部は、初めから徹底抗戦で固められていたのだ。
だからこそ、基地を出て行った連中は、我々の目をひきつけるための囮として用意されたのだ。
数があまりに多いと、そしてその動きがいかにも脱走兵らしいものだと思い込ませて。
そして、南西方面へ脱出することで、我々の目を引いたということは。
「いかん、奴等の目的は我々だ!」
恐るべき事態に陥ったことを把握したゲンブは、思わず机を殴りつけながら絶叫した。
R113基地の内部が2つに割れたと誤解した、いや、ドラコルルによって誤解するように仕向けられた
我々は、今まっしぐらに基地へ向けて進撃を開始している・・・基地内部の混乱に乗じて、そこを制圧するために。
しかし、そうさせることがドラコルルの狙いであったとすれば。
平野である北東部をのこのこ進撃し、あっというまに戦力をすりつぶされることを嫌ったドラコルルが囮を巧みに
用いて、我々を招き寄せたのだとすれば。
この司令部も移動中で、現在位置は基地から10キロ。
何と言うことだ。奴等が、あの戦車をもう1個中隊保有していれば、目と鼻の先に我々が。
「321旅と47旅に命令!ただちに・・・・・」
その場に停止、厳戒態勢を取れ!
ゲンブは、最後までその命令を示達することができなかった。
まさにその瞬間、R113基地が最後まで隠し持っていた牙―これまでの規模を遥かに上回る量の砲撃が、
基地へ向けて進撃中であった2つの旅団、そしてゲンブの陣取る司令部に降り注いだからである。
至近距離に着弾した大口径榴弾が、ゲンブとギルモアのいた移動式司令部ユニットを軽々と横転させる。
そのショックで壁際まで吹き飛ばされたゲンブは、頭を強打して気を失った。
336 :
222:03/07/27 01:53 ID:???
皆様こんばんは。第3弾でございます。
ええと、今回は殆どドラコルルが出てまいりませんが、話の展開上
止むを得ないということで、どうぞお許しください。
あと、私事で恐縮ですが、現在非常に眠いので、第4弾以降の更新はあすにいたします。
どうやら、予定通りのペースで話を終わらせることが出来そうです・・・・。
では、また明日に。
はあ・・・それにしてもこれからピリカはどうなるんだろうな。
長官がいなくなった後ロクな香具師がいないような。ゲンブもなんか頼りないし
息をもつかせぬ迫力の戦闘(戦略)描写に興奮。
さすが我らが長官・・・でもラストはどうなるんだろう。
>>337 ぶっちゃけ、徐々に滅んでいくってのもアリじゃないか?
で、長官を失った事がピリカにとっていかに致命的だったかを滅びゆくピリカの
国民が思い知る、とか
>>335 「砲撃終了しました。観測の結果、目標の80パーセントを撃破・・・・・・第1砲兵中隊、残弾ゼロです」
「進撃中の敵北部旅団及び東部旅団、先頭部隊が地雷原に到達しました」
「通信傍受班より報告!敵軍司令部からの発信電波が途絶しました。砲撃の効果によるものと認められます」
「報告!地雷原が作動しました。敵先頭部隊、混乱中です!」
司令官公室から、装甲移動司令車に移乗したドラコルルとトクルの元に、作戦が順調に進みつつある旨の報告
が次から次へと飛び込んでくる。
無線機の前に座っていたトクルは、その報告を次々に読み上げながら、ドラコルルの判断を仰ぐべき問題か
どうかを素早く判断し、処理してゆく。
事前に定めた計画に従えばよいものは了解の返事だけを送信し、ドラコルルの決断に任せるべき案件は
簡潔に問題を伝える。その手際はきわめて能率的で、彼がまだ20にもならぬ年齢の―戦時速成教育のみを
受講した、新米もいいところの少尉であることを、ともすればドラコルルは忘れそうになっていた。
軍務について数十年を数える超ヴェテラン下士官ですら舌を巻きそうな仕事振りを全力で発揮している若き
少尉の背中を見ながら、ドラコルルは思った。
私の部屋に入ってきたときは、ただの理想主義的な坊ちゃんにしかみえなかったのに・・・こいつは、思わぬ
拾い物だ。おそらく、彼はどの軍隊にいてもそれなりにやっていけたであろう。
惜しむらくは、新政府軍についても発揮しえたであろうその能力が、この片田舎で永遠に埋もれてしまうことか。
何よりも、それは、彼が望んだこと。誰かに強制されたことではない。強制されたことではないが・・・・。
しかし、私は、本当に彼の望みをかなえてやるべきだったのか?
それを止められなかった私は、果たして本当に指揮官として相応しい人物なのだろうか・・・?
ドラコルルの、この期に及んでは余計ともいうべきそうした迷いを断ち切ったのは、一つの報告だった。
「対空監視哨所より報告、レーダーに航空機多数の機影を確認。機種不明なるも、概ね20分後に当基地上空
に飛来すると思われます」
>>340 「・・・・仕事が早いな。連中の航空機がくるのはもう少し先だと思っていたが」
「いかがいたしますか、長官?」
顎に手をあてて、しばし沈黙するドラコルル。
しかし、彼の沈黙は、ほんのわずかな時間だった。
「少し早いが、やむをえない。ここに留まっていても、航空機に滅多打ちだからな・・・・全部隊に命令。
PCIA総軍残存部隊は作戦第3段階に移行せよ。目標は、敵軍司令部」
肘掛を軽く叩いたドラコルルは、あらゆる迷いを押し隠し、断固たる口調で命令を結んだ。
「先に囮を志願し、全員未帰還となった第2戦車中隊の犠牲を無駄にするな。必ず、ギルモアの首級を取れ」
この時、ピリカ新政府軍司令部で一つの動きが起こりつつあった。
「・・・だから言っておるだろう、ゲンブ司令官は先ほどの砲撃で負傷し、人事不省状態にあると。そうだ。
うん。321旅団司令部とは連絡がとれんし、47旅団は地雷原に司令部ごとはまり込んで身動きがままならん。
・・・わからん奴だな。今、この私を置いてほかに誰が軍の統制を回復し、ドラコルルに天誅を下せるというのだ。
そう、そうだ。私に非常時の指揮権を付与するということは、軍法からみても問題ないはず。うむ。大統領閣下も
承認してくださるはずだ。文民統制の原則をしらんとは言わせんぞ。そう。わかったらさっさと命令に従え。いいな」
予備司令部ユニットの、司令官コンソールについたギルモアは、乱暴にインターコムのスイッチを切った。
馬鹿どもが。ドラコルルを倒せるのは私以外におらんのだ。
その能力を考えれば傲慢としか言いようのない結論を抱いたギルモアは、ぞんざいな口調で傍らの軍参謀長に
尋ねる。
「おい、13師団はいつ動ける」
「あと15分で、師団砲兵大隊が射撃開始できますが・・・・しかし、ギルモア顧問。まさか、あなたは」
嫌悪を隠そうともせず、ギルモアの問いに答えた参謀長は、途中でギルモアの意図に気づいて蒼白になった。
「そのまさかだ」
傲慢にも言い放ったギルモアは、スーツのポケットから葉巻を取り出す。
「ドラコルルを止めるには、多少の損害など気にはしておれん」
>>341 ドラコルルの企図した「ピリカ軍事史上最大の挑戦」は、ついにその牙を剥き出しにした。
ドラコルルによる第3段階移行命令―すなわち、敵軍司令部への突撃命令が発令された次の瞬間、
R113基地の北部に面した塀が一斉に爆破され、外界と基地を隔てる構造材が横幅数百メートルにわたって
吹き飛ばされる。
そして、煙と埃、わずかな炎の向こうから、ドラコルルの元にある最後の拳―PCIA総軍最後の大隊戦闘団が、
その凶悪とも優美とも表現しうる姿を表した。
「戦車、前へ!」
第1戦車中隊長の号令一下、先に新政府軍の2個師団をたった10輌で大混乱に陥れた新型戦車―試製S型
戦車で編成される第1戦車中隊が、エンジンの音もけたたましく、履帯を軋ませて前進する。
美麗な楔形を作りつつ、あらゆる障害をなぎ倒さんと突撃を開始した戦車に続き、集成第1大隊、今や砲を失った砲兵第1中隊、そして基地防衛部隊が、各々の車輌に乗り込み、手にした武器を構えつつ、がっちりと陣形を
組み、躍進を開始した。
対する新政府軍第321旅団の対応は、全く後手に廻った。
先陣を切っていた歩兵・戦車連合戦闘団が地雷原にはまり込み、基地への進撃が一時停滞していたところに、
後続の部隊が頭から突っ込んできたため、進撃どころか各部隊の統制を回復することで手一杯となっていたのだ。
本来、訓練を受けた軍事組織であれば決して犯してはならないミス。
事態の急変を無視し、事前の作戦を愚直に実行しようとしたことからくる混乱。
通常、旅団司令部がすばやく手を打たねばならないこうした失策は、しかしリカバリーされることはなかった。
なぜなら、ゲンブ達の軍司令部と同様に砲撃を受けた旅団司令部は、不幸なことに直撃を受け、対処すべき
旅団司令官以下参謀を含めた全員があの世へ向けて進撃中であったためである。
例えるならば、多重衝突事故を起こして身動きがままならなくなった自動車の縦列。
かくのごとき状況におかれた旅団からは、もはや戦闘集団として必要な要素を全て失われていた。
そして、ドラコルルと彼の兵士たちは、そうした好機を見逃すようなヘマをしでかさなかった。
>>342 「周りは全部敵だ。構うことはない、全部まとめて叩き潰せ!」
願ってもない状況―数だけはやたら多いが、まったく統制が取れていない敵の大軍―を目の当たりにし、
興奮しきった第1戦車中隊長が、およそ軍令にあるまじき命令を下すや否や、10輌の試製S型戦車が
その主砲を一斉に煌かせ、指揮官の命令を忠実に履行する。
訓練でもありえないような命中率―全弾命中という神業をまともに受けた新政府軍戦車が、その分厚いはずの
装甲をボール紙のように突き破られ、片端から撃破される。
部隊としての統制を失い、結果として個々の判断で反撃せざるをえなくなった新政府軍機甲部隊は、見る間に
戦友を挽肉にされながら、なお諦めてはいなかった。可能な限りの速度で懸命に移動し、照準し、そして発砲し―
全ての徹甲弾が弾き返された。
「ば・・・馬鹿な!ドラコルルの戦車は、化物かァ!」
脳裏を白い何かが埋め尽くし、今にも発狂しそうな形相で、新政府軍第321旅団第2戦車大隊長が絶叫する。
次の瞬間、彼の座乗する戦車は、S型戦車の徹甲弾に正面装甲を打ち抜かれた。
わずか5分。瞬きするような短時間。
その間に、第321旅団の機甲打撃兵力は、現場指揮官を失って、今度こそ本当の壊乱に陥った。
そしてそれから数分後、第2戦車大隊は字義どおり一輌の生還もなく全滅する。この一方的な戦闘により、
打撃及び防御の中核である同大隊を失った第321旅団には、PCIA大隊を食い止めることができなくなった。
「戦車中隊より報告、"敵北部旅団、撤退―もとへ、敗走中、組織立った行動は見られず"です!」
トクルの報告を受けたドラコルルは、小さく頷いた。
これで、お膳立ては全て整った。後は、逃げ回る敵北部旅団と入り乱れつつ北へ進撃し―やがて来たるであろう
敵の航空機から身を守る。敵軍との混交状態を作り出しておけば、航空機もうかつには我々を襲えまい。
下手をすれば同士討ちになるからだ。
「全部隊に伝達―可能な限り陣形を維持し、敵との混交を維持しつつ前進せよ」
ドラコルルは、淡々とした口調で命じた。
「あと10分で、全てに決着をつける」
344 :
222:03/07/27 12:00 ID:???
皆様こんにちは。第4弾でございます。
もうすぐ20レス目ですね。でもいっかな話が終わらないですな。何やってるんでしょうか私。
実は、ラストシーンはもうある程度纏めておりまして、あと1話か2話アップさせていただければ
そのラストにたどり着くのですが・・・・このままじゃ40レス行くかもしれませんですね。
ですが、ここまできたからには、もうやれるところまで走るつもりでございます。
あと、ラストについては・・・・・実はパターンを2つにわけようかと考えております。
始めに、前もって仕上げておいたラストをアップさせていただきまして、その後で皆様の
ご意見、ご感想により判断すると。いかがでしょうか?
え、マルチエンディングですか?いいですね!
サウンドノベル好きとしては是非両方のパターンを読みたいとこですね。
でもまずは222さんが初めから考えていたラストを楽しみにしてます。
トクル少尉はマジでパピの生まれ変わりって事はないのかな
このスレの住人だったら、例えば一つが悲しい結末だったら確実にそうじゃないのも
読みたいと思うんじゃないかな
>>343 ドラコルルが立案し、彼の兵士たちが遂行しつつあるこの作戦は、わずか1個大隊強の戦力で4個師団に
真っ向から立ち向かったこの戦闘は、彼が宣言した通り、それから10分で急速なクライマックスと、あまりにも
唐突な終幕を迎えた。
伝説の火龍もかくやと思わせるような轟炎を、その長大な砲身から立て続けに吐き出しつつ、前にはだかる
あらゆる障害物を撃破し、押しつぶしてゆくS型戦車。
太古に勇名を馳せた騎士の如く、小ぶりな機関砲を振りかざしながら敵対者を一撃の下にしとめつつ戦車に
追随する装甲戦闘車。
そして、車輌に搭乗し、あるものは突撃銃を、あるものは車載機銃を握り締め、従者あるいは配下のように
忠実な仕事ぶりで着実に戦果を拡大する歩兵。
古今東西、あらゆる戦場で最上の理想とされたいくさの形が、この星でまもなく終わりつつある動乱で、
これ以上望むべくもない完璧な形で実現されようとしていた。
無論、今や壊走の一途を辿りつつある新政府軍も、ただやられていたわけではない。
大半の兵士は本能に任せて―司令部目指して武器を捨て逃げ回るなか、一部の勇猛な指揮官に率いられ、
装備も錬度も高水準―実際、ドラコルルのPCIAと比較しても遜色はなかった―にあった部隊は、かくも絶望的な
状況にありながら、決死の反撃を行っていた。
結果として、PCIA軍の各部隊にも、損害が続発する。
特にその被害は、まともな装甲を与えられていなかった歩兵部隊に顕著であった。
作戦開始直前の通信傍受などにより把握されていた新政府軍移動司令部まで、あと5キロ。
そこにたどりつくまでに、PCIA軍は戦車を1輌―履帯をやられて身動きが取れなくなったもの―と、装甲戦闘車を
13輌、そして、歩兵部隊の簡易装甲トラック等が24台。
PCIA総軍最後の兵力の、実に30パーセントに登る損耗であった。
>>349 しかし。
PCIA軍は、今やその全てが死兵であった。
戦友の死に様にも、負傷した敵兵のうめき声も、一切心を動かされることなく、どこまでも冴え渡った頭と、
限りを知らぬ高揚の双方を同居させつつ、ただ一つの目的―ギルモアがいるはずの移動司令部をめざし、
手にした火力を思う存分叩きつけながら、ひたすらに前を見つめて驀進する。
このときになるまで、自軍の勝利を疑わず、それゆえに勇気を奮うことを半ば忘れかけていた新政府軍。
自軍の敗北は避けられず、かといって他にゆくべきところもないために、全てをこの一戦にかけたPCIA軍。
戦争は精神論で戦うものではないにせよ、この短くも激烈な戦いに現れた兵士個人個人の意識の差が、
ピリカ軍事史上空前にして絶後の状況をもたらそうとしているのは間違いがなかった。
「いけるな・・・・・」
時速60キロ。
戦闘行動を継続しながら集団戦闘隊形を維持しうる限界速度で、金属とオイルと血と硝煙が支配する戦場を
駆け抜けていったドラコルルは、装甲移動司令車の中で思わず拳を握り締め、呟いた。
「トクル、新政府軍司令部の位置に変化は?」
「ありません。どうやら連中、あまりのことに退却することを忘れているのかも」
コンソールのディスプレイを注視していたトクルは、声音の端々に押さえきれない歓喜を滲ませて答えた。
「敵航空機の動向は?」
「約300航里先です。こっちにつくまでに、あと5分は必要とするでしょう」
「東部旅団はどうなっている?」
「進撃方向を転換し、平野を横断する形で我々に矛先を向けております。ですが、まだむこうにとっての
戦闘距離には達しておりません。そうですね、敵の火砲がこちらに届くのは、同じくあと5分ほど必要と
するでしょう」
>>350 「・・・よし」
ドラコルルは、そっと一息ついた。
今のこのペースならば、航空機が到着するか、東部旅団が戦闘に加入するころには全てが終わっている。
後少しだ。この混交をいま少し維持して、そして、眼前でまだ果敢な抵抗を続けている新政府軍歩兵中隊を
蹂躙すれば、敵の司令部―ギルモアの居所まで一足飛び。
こちらは、歩兵部隊にかなりの損害を受けたものの、未だあの頼もしき戦車は殆どが健在。いいぞ、勝てる。
そのとき、司令車のスピーカーから戦車中隊長の興奮しきった声が飛び込んできた。
『こちら第1戦車中隊、長官、敵歩兵中隊を蹂躙しました!もう、司令部まで我等を妨げるものはおりません!』
了解した、陣形に構わず、今すぐ突撃、突撃、突撃!
ドラコルルが、さすがに興奮を押さえかねた口調でそのように命じようとしたときだった。
レーダースクリーンを注視していたトクルが、不意に悲鳴に近い警告をあげる。
「対空レーダーに反応あり!・・・・・これは、砲弾です、砲弾が多数、降ってきます・・・畜生、全力射撃だ!」
ドラコルルは、心臓を鷲づかみにされたような感覚を味わった。
今砲撃できるといえば・・・あの師団、到着直後の13師団しかいないはず。
しかし、無理をさせて準備をして・・・それで、本気で撃ったのか、師団の全火力を?
馬鹿な。お前達の友軍が、まだまだ我々とごちゃごちゃに入り乱れているのだぞ!
いったい、どういうつもりで。・・・・そうか、ギルモアが。あいつが指揮権をゲンブから奪って。それならば説明が。
ドラコルルは考えながらも体は無意識のうちに動いていた。
「命令、部隊総員対砲撃防御!来るぞ!」
>>351 同時刻、新政府軍司令部。
「第13師団第1砲兵大隊、戦闘に加入しました・・・ご命令どおり、全力射撃です」
参謀長は、苦痛と恐怖、そして嫌悪を顔に表しながら重い声で報告した。
まるで、今自分の前にいる人間が生命ある何かではなく、伝説にある人の命をもてあそぶ夢魔であるかの
ように。
その報告を、というよりは、参謀長の苦しみを面白がるように、新政府軍暫定指揮官―ギルモアは軽く頷いた。
「予定どおりだ。・・・ふふ、ドラコルルもさぞや驚いておるだろうて。何せ、到着直後で動けないと思い込んで
おった13師団が大砲を雨霰と奴等にたたきつけてやるのだからのう」
「ギルモア顧問・・・・あなたは、自分が何をご命令されたのか、おわかりなのですか?」
参謀長の声は、魂のどこかを削られているかのように、悲痛極まりないものだった。
「確かに、この全力射撃で、ドラコルルの部隊はあっという間に壊滅するでしょう。それは間違いありません。
師団の火力とはそれほどの威力なのですから・・・。しかし、しかし、顧問。あなたは、たった1個大隊を
しとめるために、ただそれだけのために、ほかにいくらでもやりようはあったのに、それなのに、あなたは、
1個旅団をむざむざ纏めてすりつぶそうとしておいでなのですぞ!」
「君達新政府軍司令部がふがいないからだろうが」
ギルモアは、まったく取り合わなかった。
いかにもうまそうに葉巻の煙をぷかりと吐き出して続ける。
「まったく、私のような素人を借り出さなければ反逆者をしとめられんとは、悲しい話だな。
まあ、これで全てに決着はつくよ。君は黙ってみてなさい」
「着弾、今です」
無理やり無表情を作りこんだ砲術参謀が、懸命に感情を押さえながら淡々と報告する。
しかし、ギルモアの言葉は、そうした努力を危うく水泡に帰せしめるところであった。
「サア諸君、反逆者の最後だ!ドラコルルの末路は消し炭かミンチか、いずれにせよ死体確認には
相当手間取りそうじゃないか、はははははははははははははははははは!」
353 :
222:03/07/27 15:08 ID:???
皆様こんにちは。第5弾でございます。
いやー、なんだかすっかり悪役一直線になっちゃいましたね、ギルモア。
本当は、もうちょっといい人にするつもりだったんですが、勢いとは恐ろしいものです。
では、引き続きまして更新にかかります。あと1話くらいでエンディングですかね?
しかし、万一これで終わりだったら洒落にならんな。
ギルモア・・・八つ裂きにしてもあきたらん香具師
読んでてムカつく香具師を書けるってのも作者の力だけど。
凄く不快だ・・・ギルモア
頼むから酷い死に方してくれギルモア
まあ、なんか自滅しそうだけど
えええーーー!!どうなるんだ一体!!
長官生きてますよね?!
>>352 衝撃、振動、そして轟音。
およそ人間が駆使しううるあらゆる表現をもってしても、とうていその断片ですら掴み得ないであろう砲撃は、
かっきり3分継続された。
第13師団第1砲兵大隊。
ピリカ星防軍陸上部隊において、ドラコルルの育てたPCIA軍に並ぶ歴史と精強さを兼ね備えたこの陸軍部隊は、
ギルモアの歪んだ嗜好に、どこまでも機械的な忠実さでもって答えた。
人間が陸上で運用しうる最大級の火砲を、100門単位で備えたこの大隊は、その持ちうるパワーの全てを、
ドラコルルの抹殺と―自分達の友軍、壊走しながらも、部隊によっては懸命に抵抗を続けていた新政府軍
第321旅団の虐殺に振り向け、ただエリアにはいった全てを屠りつづけていた。
上面装甲に直撃を受けたS型戦車が、巨大なハンマーに叩かれたかのようにひき潰され、次の瞬間搭載弾薬
が誘爆を起こす。
PCIAの突撃を阻止できぬまでも、せめて一太刀浴びせようと絶望的な努力を傾けていた旅団のとある対戦車
装甲車小隊の、ちょうど中央に数発の砲弾が落着したために、兵員、装備の全てがこの世から吹き飛ぶ。
傷つき、倒れた戦友を抱えつつ、ただこのいくさ場から懸命に逃れようとしていた新政府軍の兵士も、最後の
名誉を勝利という形で掴もうとしていたPCIA軍の兵士も、なにもかもが、ひとしなみに爆炎に焼き尽くされ、
弾片や千切りとられた車輌の破片で全身をずたずたに引き裂かれ、爆圧を受けて全身の血を噴き出し、
そして全てが爆風に飲み込まれて蒸発してゆく。
3分間。人によってはあっという間でもあろう短い短い時間。
ギルモアの指定したエリアにいた人間は、敵味方の区別なく、誰もが地獄を見た。
やがて、不意に砲撃が止む。
爆煙と硝煙、そして火災煙が充満するそこには、動くものがいなくなった。
ただそこにあったのは、つい3分ほど前までこの戦場を疾駆していた人や機械の、捩じくれ、焼け爛れ、
引き裂かれた残骸のみ。
ややあって、強風が当たり一体をなぎ払い、立ち込めていたあらゆる霞を吹き飛ばす。
そして露になった戦場―ここをそう呼んでよいのであれば、だが―に、調査のため入り込んだ新政府軍
司令部付歩兵小隊のメンバーは、驚くべきものを見た。
>>359 「生存者・・・・だと?」
4本目の葉巻に火をつけ、盛大に紫煙を噴き散らかしたギルモアは、眉を挙げて参謀長を見つめた。
「はい、顧問。先ほど、ドラコルルの死体確認に入った司令部付歩兵小隊が、エリア332-4Bで、ドラコルル
が座乗してたものと思しき装甲移動指令車を発見しました。その中に、たった一人ですが、生存者がいたとの
ことです」
被害報告を取りまとめた参謀長の顔は、苦悩を通り越して能面のような無表情になっていた。
無機的に報告を続けながら、自分は果たしてこの酸鼻を受け入れて生きてゆけるのだろうかと考えている。
そうした参謀長の内心に気づくことなく、ギルモアはのんびりした口調で尋ねた。
「ドラコルルかね」
「いえ、彼ではありません。年齢が若すぎます。おそらくは、ドラコルルの副官ではないかと思われます」
「あの砲撃を生き延びたのか・・・信じられんな」
「では、ご自分の目でご確認されますか?」
参謀長の言葉には、多分に意図的なものではあったが、棘がたっぷりと含まれていた。
目元にわずかなたじろぎをうかべたギルモアが、おそるおそる探りを入れる。
「その生存者だが・・・・状況はどんなものかね?」
「ご安心下さい。彼は一命を取り留めてはいるものの、すでに虫の息です。応急手当をしなければ
あと数時間も持たないだろう、というのが軍医の見立てですが」
参謀長は、もはや嫌味としか表現しようのない口調で、言葉だけはギルモアの安心を誘おうとするかの
ように言った。
「ふむ・・・そうか、ならば、顔だけは拝んでみるとするか。何、私をここまで追い込んだ敵の副官だ。
せめて死に際ぐらいは看取ってやるのが礼儀というものだろう」
わざとらしく呟いたギルモアは、大儀そうに立ち上がり、予備司令ユニットのドアを開けた。
後に続きながら、参謀長は内心で罵倒する。
何が礼儀だ。この臆病者め。副官が絶対に自分を襲撃できない状況にあるからこそ、出て行く気になったくせに。
それに・・・・死に際だと?つまり貴様は、あの哀れな若者に何の手当てもさせないつもりか。
畜生、狂ってる。
そして、こんな奴の命令を聞かねばならなかったおれたちも、狂ってるぞ。
>>360 予備司令部ユニットの外は、先ほどまでの惨状が嘘のように静かだった。
つい数キロ前に、殺戮と破壊の痕がどこまでもなだらかに、ギルモアの決断への抗議を無言のうちに行っている
かのように広がっていたが、無論ギルモアにはその種の感受性など存在しない。
ただ、彼の命じた砲撃が齎した戦場の臭い―あらゆるものが焼け、溶け崩れてゆくあの強烈な臭いが風に乗って
ギルモアのところにまでやってきたとき、少し顔をしかめただけだった。
「ひどい臭いだな、まったく。嗅覚がおかしくなったらどうするんだ」
なんとも手前勝手なことをぶつぶつと呟きながら、ギルモアは司令部から10メートルほど離れた広場へと歩を
進めた。
そこに、あの移動装甲司令車が安置されている。
直線を多用した、見るからにシンプルだが堅牢なつくりの移動装甲指令車は、今はその外観を大きくゆがめ、
あちこちが爆炎で焼かれ、傷だらけの無残な姿をギルモア達の前に晒していた。
そして、参謀長から報告があった生存者―トクルは、虫の息で指令車の脇に寝かされていた。
「ほう、こいつが生存者か・・・若いな・・・・まだ20にもなっておらんのと違うか?」
あちこちに傷や火傷を負い、衣服を血で赤く染めながら焦点の合わない目で空を見上げていたトクルを、
顔をしかめて見ながら、ギルモアは無遠慮に口を開いた。
「まだ尋問しておりませんので、何もわかりません。・・・それに、今の彼の状態は尋問どころか何も聞きだせる
状況にはないと思いますが」
軍医による応急手当をうけさせろ。
そう無言のうちに込めた参謀長の進言を、しかしギルモアはあっさり却下した。
「ならば、何も聞かなくてよい。どうせ、ドラコルルはくたばっておるんだからな」
トクルの頭を蹴り、気持ち悪いほどすがすがしい声で哄笑するギルモア。運悪くその笑い声を聞いた何人かは、
精神を蝕まれたかのような気持ちになった。
そのとき、予備司令部ユニットの外で周辺警戒に当たっていた兵士の一人が、大声で叫んだ。
「東から味方の車輌が一台、接近中です!」
>>361 「味方だと?所属は!」
何であれ、とりあえずギルモアから注意をそらせられたことに安堵を覚えつつ、参謀長が怒鳴る。
素早く双眼鏡を構えたその兵士は、ややあって報告を返した。
「第47旅団のものです!乗っているのは・・・一名、ケガをしているようですが」
参謀長とギルモアは、兵士が指差す方向を見た。
なるほど、確かに新政府軍の連絡用軽車両が、不整地を猛スピードで飛ばしてこちらにやってくる。
「ふん、今ごろ何しにきおったのだ。全て片付いたというのに」
ギルモアは吐き捨て、軽車両に背中を向けると、予備司令部ユニットへと歩いていった。
確かにそうだ。
先ほどから全身を蝕む憤りに震えながらも、参謀長はギルモアの意見に一部同意せざるを得なかった。
全てに、あのなんとも非人間的きわまるやりかたで決着をつけたことは、すでに旅団司令部にも通知してある。
だから、今ごろ47旅団の人間がこっちへこなければならない理由などないはずだ。
というより、事情を知った今となっては、いちいちギルモアの顔など見たくはないだろう。何かあれば無線で
連絡してもよい。
・・・ギルモアの顔?
まさか、今こっちに来る奴は、もしかして。
ふとその可能性に思い当たった参謀長は、思わず車輌が接近してくるほうを見やった。
気がつけば、びっくりするほどの距離にまで迫ってきているその軽車両は、しかしていっこうに速度を落すそぶりを
見せない。そういえば、報告をした兵士の様子がおかしい。
まるで、何か信じられないものを見たかのような、全身が恐怖とも興奮ともつかぬ震えに浸されているかのような。
「貸せ!」
駆け寄った参謀長は、兵士の手から双眼鏡を引ったくり、慌てて覗き込み・・・・・・・・・
そして、見た。
双眼鏡の視界の中、制帽を目深に被ったドラコルルが、いつのまに調達したのか、新政府軍の野戦服に身を
包んだPCIA軍の総大将が、全身に傷をおい、息も絶え絶えながら、それでもなお目にはあらん限りの力を
込め、軽車両のハンドルを握って、こちらへ驀進しつづけるのを。
>>362 「ド、ドラコルルだァ!」
背後から聞こえてきた参謀長の絶叫に、ギルモアはびくりと身体を震わせた。
予備司令部ユニットのドアにかけていた手を止め、後ろを振り返る。
そして、ギルモアも目の当たりにした。
何時の間にか、司令部エリアの中まで飛び込んできた軽車両。
そのフロントウィンドウの向こうから彼を睨みつける視線―ギルモアにとっての、滅ぼすべき敵であり、そして
それは達成されたはずの、今はこの世にいないはずのドラコルルが、全身から殺意を迸らせ、己が鋼鉄製の
ケンタウロスであるかの如くギルモア目掛けて突撃をかけるのを。
そして、ギルモアを守らなければならないはずの、新政府軍の士官や兵士達が、呆然とケンタウロスの突撃を
見送っているのを。
撃て、撃つんだ!ドラコルルを殺せ!・・・・・・貴様等、私を守らんか!
全身の血管が一挙に収縮し、喉を詰まらせたギルモアは、しかし、その命令を発することができなかった。
「ひっ・・・・・!」
それだけを漏らしたギルモア。わずかに遅れて、加齢により力を失った膀胱が本能の赴くまま失禁し始める。
しかし、幸か不幸か、彼は部下の前で尿を垂れ流すという恥を晒さずにすんだ。
なぜならば、ドラコルルの操る軽車両が、時速100キロのままギルモアに命中し、ギルモアは・・・・・
予備司令部ユニットの頑丈極まりないドアと軽車輌に下半身を挟まれたサンドイッチとなったからである。
364 :
222:03/07/27 17:09 ID:???
皆様こんにちは。第6弾でございます。
あともう一話、3レスくらいかけてから、ようやっとのことでエンディングでございます。
ギルモアの運命については、もう少し続きがありますので、今しばらくお待ちを・・・。
では、ちょっと晩飯の材料を買出しに行ってきます。完結は夜ですかね。
いよいよですか。心して見させて頂きます
まあとにかくギルモアが醜態晒したから溜飲は下がったかな。
こんなんじゃまだ足りんが
総員、括目して完結編を待て!
>>363 軽車両の非力なエンジンが、踏みつけるアクセルの命ずるままにその力を限界まで振り絞り、私の意思を
忠実にスピードへと変換する。
この車を手に入れたその瞬間から、おそらくはスペックを遥かに超える無茶を強いていた。
そのため、どこかが焼きつく寸前なのか、車内でこだまするエンジン音は、いやにオクターブが高く、人を不安に
させるような金切音になっている。
たぶん、あと数キロも走らないうちに、この車はただの鉄くずとなってしまうだろう。
だが、それでいい。
今の私には、この車であと数百メートル走ることができればいいのだ。
痛い。
頭の天辺から爪先まで、どこもかしこも痛い。
神経に直接塩か錐をねじ込まれているような、皮膚を素通りして大脳に直接響くような痛みだ。
しかし、痛みがあるのは生きている証拠。そういったのは誰だっただろうか。
まあ、そんなことはどうでもいい。とにかく、今私は生きている。生きて、ギルモアを、追い詰めている。
生きている―今、私は生きている。
そう、どうして私はあの地獄のような砲撃を生き延びたのだろうか。
指令車の装甲が、試製S型戦車と同じ材質で作られていたから?
悪魔のような正確さを誇っていた敵予備師団砲兵の攻撃が、たまたま私のところに直撃しなかったから?
幸運・・・いや、誰かが守ってくれたのだろうか。今私の隣にいない誰かが。
幸運といえば、この車を入手したのも、全くの幸運だった。
あの砲撃で、直撃弾を浴びなかったとはいえ、至近弾の数は呆れるほどだった。
近くで一発、砲弾が炸裂するたびに、指令車の中はカクテルシェイカーのように滅茶苦茶に振り回された。
今私が負っている傷は、すべてその時に出来たものだ。
コンソールの直撃を受け、端末に叩きつけられ、ディスプレイに四肢のどこかを突っ込み、私は傷だらけになった。
そして、気がつくと砲撃が止んでいた。
>>368 私は、逆さにひっくり返った指揮車から這い出し、そのままふらふらと東を目指した。
なぜか、そうしなければいけないと思ったのだ。
歩く途中で、不意に全身を襲うような痛みを、歯を食いしばりながら耐えてなおもとぼとぼ歩く私は、
ふと思いついて新政府軍の野戦服を一着拝借した―むろん、辛うじて原形を保っている兵士の死体から。
服をどうにか着込んだそのとき、東から一台の軽車両がやってくるのに気がついた。
私は手を振り、車に乗っていた2人の新政府軍兵士に話し掛けた。
「すまない。今から私は、ギルモア閣下に用があって、軍司令部に向かわなければならないんだが
・・・・車を貸してもらえないか」
いかにも新政府軍の兵士らしく聞こえるよう、私は生まれて初めて芝居というものをした。
きっと、その時の私はどうしようにもないくらいの大根役者であったに違いない。
というのも、2人の兵士は、私の言葉に対してではなく、私の眼をみて言葉を発したからだ。
「その用、ってのは、どうしても一人でやらなくちゃいけねえことかい?」
「ああ・・・・・そうだ。すまないが、君たちについてきてもらうような用でもない・・・・」
「そうかい」
どこの何をどう納得したのか、2人はあっさりと車を降り、私のためにドアを開いたままにしておいてくれた。
そして、運転席に座っていた兵士は、私がそこに腰をおろすのを見届けてから顔を近づけ、そっとささやいた。
「しっかりやってくれ、ドラコルルさん。321旅団には俺の親友がいたんだ」
ばれていたのか。
驚いて見上げる私に、兵士は煙草のヤニで黄色くなった歯を剥き出しにしつつ言葉を続けた。
「敵にやられるのは、まだ運が悪かったとあきらめもつくが、味方に、しかもわざとやられたとあっちゃあ、な」
助手席にいた彼の同僚が並び、同じようにニヤリと笑う。
「頼むぜ、ドラコルルさん。敵を討ってやってくんな」
「・・・・・わかった、任せてくれ」
そして私は、車を発進させた。
>>369 そういえば、彼の名前を聞いていなかったな。
呆然と突っ立っている士官と兵士の脇をすり抜け、司令部エリアに飛び込み、さらにアクセルを踏み込み
ながら、私はふと気がついた。
他に、まだ忘れていることはあっただろうか。私は記憶を探る。何か、大事なことを忘れたままになって
いるような気がする。それはなんだろうか。
ギルモアまで、あと50メートル。
振り向いた彼は、死神にでもであったかのような顔つきで、私を見つめていた。
やあ、ギルモア閣下。
君のために死んでいった全ての人間を代表して、今やってきたよ。待ち遠しかったかな?
プレゼントを、受け取ってくれ。遠慮は要らない。
ギルモアまで、あと10メートル。
彼は、恐怖に引きつった顔で、必死に逃げようとあがいている。だが、うまくいかないらしい。
ギルモアの顔が、一挙に私の眼前で大写しとなる。
フロントウィンドウの視界を、ギルモアとその背後にある予備司令部ユニットがいっぱいに塞ぐ。
エンジンが、最後の咆哮を一杯にかき鳴らして・・・・・・。
次の瞬間。
金属製の絶叫と、全身を揺さぶる激しい振動。
フロントが、確実にギルモアの下半身を掬い取ったと同時に、予備司令部ユニットに突撃を敢行した軽車両は、
紙細工のようにそのボディをくしゃくしゃにゆがめ、停止した。
既に痛めつけられた私の身体を、誰にも拒否し得ぬ物理エネルギーが再度滅茶苦茶に攪拌する。
骨が折れ、内臓や手足を容赦なく抉ってゆくのがわかる。
そして、ギルモアの顔が粉みじんになったフロントウィンドウに突っ込んできたとき、
私は思い出した。
>>370 そういえば、彼はどうなったのだろう。
彼、彼、彼だ。
ひとたびは全て自分でけりをつけようとした私のところに単身乗り込んで、突撃銃を突きつけて
翻意を促した彼。
最後の戦いに当たって、短い間ながらも、常に私のよき補佐役であってくれた彼。
この世の終わりのような砲撃を、ともに歯を食いしばって絶えぬいた彼。
ああ畜生、思い出せない。
たしか、彼は私にとって重要な人間によく似ていたというのに。
彼、彼の名前は・・・・・・いや、そんなことより、誰か、彼を・・・・彼はまだ・・・・・・・。
※ ※ ※
「おい、大丈夫か!」
そのとき司令部エリアにいた人間の中で、真っ先に我に帰った参謀長は、軽車両へと駆け寄った。
一拍遅れて、その場にいた新政府軍の軍人が―士官も兵も区別なしに、予備司令部ユニットの側面で
つぶれた果実のようになっている軽車両に群がる。
彼等が駆け寄ったのは、もちろんギルモアのためではない。
最後の最後まで諦めず、己の意思を貫いた、真の男を助けるためだ―例え彼が敵であったとしても。
「いかん、呼吸をしていないぞ」
「すぐに車から出せ・・・そう、そこだ。そこがドラコルルの足に引っかかっている」
「軍医を、軍医をはやく!・・・・あ、いかん、あの若者にも手当てをしてやってくれ!」
誰も彼もが、まるで自分達の罪を償おうとしているかのように、必要以上に熱心に、ドラコルルを軽車両から
引きずり出し、トクルの消えかかる生命を繋ごうと躍起になっていた。
「よーし、いくぞ・・・・1、2の3!」
掛け声を合わせ、ドラコルルの身体を縛り付けていた軽車両のボディを引き剥がし、この敬意を払うほかない
敵軍司令官を外に運び出した兵士たちの耳に、かすかな嗄れ声が聞こえてきた。
「・・・・き、貴様ら・・・・私を・・・・はや・・・・く・・・・」
>>371 その声が、軽車両と予備司令部ユニットの狭間から聞こえてきたことに気づいた兵士たちは、まるで何も聞こえ
なかったかのようにその声を無視し、慎重な手つきでドラコルルを司令部の医療ユニットへと運んでゆく。
「・・・・なに・・・・を・・・・・して・・・・お・・・・る・・・・・・助け・・・・た・・ら・・昇進・・・・を・・・・・」
嗄れ声の主―下半身を叩き潰され、軽車輌のボンネットに血と臓物をぶちまけつつ、今まさに命絶えよう
としているギルモアを、ふと誰かが覗き込んだ。
「ゲン・・・・ブ・・・・・」
不可抗力とはいえ、ギルモアに指揮権を奪われた男―ゲンブ中将は、憤怒と憎悪で顔を朱に染め、吐き捨てる
ように言い放った。
「貴様にはそこが似合いだ。よかったな。俺の見るところでは、あと数時間は生きていられるぞ!」
「いや・・・・だ・・・・たす・・・・け・・・・・・死に」
「貴様に吹き飛ばされた俺の部下も、きっと同じことを思ったはずだ。死は平等にやってくる」
そこで言葉をきったゲンブは、じっとギルモアの濁った目を睨みつけた。
「自分のやったことがどういうことだったか、そこでよく考えていろ、時間はたっぷりある」
心からの絶望。
それに生命の火を鷲づかみにされたギルモアは、支えを失った人形のようにがっくり頭を垂れた。
その様子をしばらく見つめていたゲンブは、ややあって、腰のホルスターから拳銃を抜き、
ギルモアの後頭部に狙いを定めると、引き金を引いた。
銃をしまい、ドラコルルの収容先へ歩み寄るゲンブ。
その背中に、参謀長が呟くように言った。
「弾の無駄ですよ。司令官」
「よいのだ」
ゲンブは、乾いた声で彼の参謀長に答えた。
「いかに憎き輩といえ、もしあそこで野たれ死ぬに任せておいては、我々もギルモアの同類になってしまうからな」
>>372 予備司令部ユニットから20メートルほど離れたところに設置されている、新政府軍司令部・医療ユニット。
その病床に、ドラコルルとトクルがならんで横たわっていた。
滅菌服を身に纏い、ユニットの中に入ったゲンブと参謀長は、2人のそばに付き添っていた軍医に目で
問い掛ける。
「若い方は、もう大丈夫です・・・・・しかし、ドラコルルは」
そこで言葉を切り、軍医は視線を落した。
「そうか・・・・・話をしてもいいかな」
「どうぞ。ただし、聞こえているかどうかはわかりませんが」
頷いたゲンブは、ドラコルルの枕もとにあった椅子に腰をおろした。
「聞こえるか・・・・・ドラコルル。全て、方がついたぞ。おまえが、全部俺たちに代わってやってくれたんだ。
ありがとう・・・・・・そして、すまない。何もできなくて・・・・・・・」
ドラコルルは、病床で、ガラス球のような目を天井に向けたまま無言で横たわっている。
その姿は、いかなる人間の介入も拒絶しているかのようだった。
だめか・・・・やはり、ドラコルルは、もう。
ゲンブが、そう思ったときだった。
ドラコルルの口が、かすかにだが、はっきりと開いた。
「・・・・・を、・・・・・む・・・・・・は・・・・」
「おい、どうした!ドラコルル、何が言いたいんだ!」
「パ・・・・・ピを・・・・・・たの・・・・・む・・・・・・・」
「パピ?おい、何をいっている。パピはもう・・・・・10年前に」
死んだのだぞ。そういいかけたゲンブは、その時に気づいた。
ドラコルルの傍らに横たわる若者。彼の寝顔が、パピにそっくりであることに。
「・・・・わかった、ドラコルル。パピは確かに生きている。安心しろ。俺が責任を持って面倒をみる!」
だが、ドラコルルは、声涙下るゲンブの言葉を、最後まで聞くことはなかった。
374 :
222:03/07/27 20:09 ID:???
皆様こんばんは。第6段でございます。
えーと3レスとか申し上げていたような気がしますが、あれはまあ、なかったことにしてくださいますと
助かります。(どうして3レスが6レスになってしまったのか、自分でも不思議ですが)
さて、いよいよエンディングをアップさせていただきます。
台詞回しは既に出来ておりますが、細部を詰めたいので、今しばらくお時間をいただければ・・・・。
>>373 己を呼ぶ声に、ドラコルルはふと我に返った。
目覚めた場所は、白々とした夜闇の中。
あたりを見回したドラコルルは、そこがR113基地の北東部ではないことに気がついた。
踝まであろうかという柔らかな草に覆われた、なだらかな平地がどこまでも見渡す限り続き、その只中を
一本の細い道が走っていた。
そして、ドラコルルは、今その冴えた夜光を照り返して朧に光る道の真ん中に立っている。
いつからここにいたのか思い出せない。どうしてここにいるのかもわからない。しかし、ここはひどく居心地の
よい場所だった。
草原と道路と、白い夜光しかないここだが、どういうわけか、ずっと昔、まだ何も知らなかった子供のころに
辿った家路を思い出させる穏やかな風景だ。
ここは、どこなのだろう。
当然の疑問が脳裏をよぎるドラコルル、その傍らから、先ほど彼を呼んだのと同じ声がした。
「久しぶりだね、ドラコルル」
声の主は、彼だった。ドラコルルが、死の寸前に思い出した、あの少尉。
彼を慕ってついてきて、そして―彼とともに地獄を見た、あの少尉が、いつのまにかドラコルルの脇に立って、
彼を見上げていた。
「何を言ってるんだ、トクル少尉。君は、ついさっきまで」
「トクル?・・・・ぼくの名前を忘れたの?」
少尉―いや、よく見れば、似ているが、彼よりもだいぶ幼い顔立ちの少年は、驚いたような声を上げた。
そして、その独特のイントネーションが、ドラコルルの記憶を不意によみがえらせる。
「ああ。そうすると、君は・・・・パピ、なのか・・・・・?」
「そうだよ。10年ぶり。長かったね・・・・・・」
パピは、にっこりとドラコルルに笑いかけた。
「長かった。ああ、そうだな。本当に・・・・・長かった。君がいまここに、私の目の前にいるということは」
「うん。君は、ようやくのことで全てのしがらみから自由になったんだ・・・少し歩こうよ、ドラコルル」
2人は夜光の元、どこまでも続くかと思われる細い道を歩き出した。
>>375 何分か、あるいは何時間か、時間の経過すら定かではなかったが、2人は無言で歩きつづけた。
平地をわたって吹いてくる風はひどく心地よく、もう何十キロと歩いているような気がするが、ちっとも
歩き疲れたりはしない。そのことに気づいたドラコルルの脳裏に、何かが閃いた。
そうか、ここは、ひょっとすると・・・・・・。
ドラコルルは、ふとパピを振り返って、気まずそうに切り出した。
「なあ、パピ・・・私は、これでも、一応科学的思考というものを尊重しているつもりなんだが、その・・・・
つまり、君は、もしかすると、私が今わの際にみている、幻覚というものではないかと思うんだが・・・」
「だとしたら、どうするの?」
パピは、かつていつもそうであったように、はぐらかすような口調で切り返す。
「どうもしない。幻覚であれ、君に再びこうして会えた。私はそれで充分だよ」
きっぱりと言い切ったドラコルルであったが、しかし次に切り出したとき、何故か彼の言葉は重く湿っていた。
「・・・・・というのも、君に・・・・・君に、言わなければいけないことが、どうしても説明しなければいけないことが、
この10年間、ずっと、心の中に蹲っていた、いろんなことを、言わなければいけないと・・・・・」
ああ、畜生。私は、何をいっているんだろう。
ドラコルルは、自分の頭を思い切り殴りつけたくなった。
いつもなら、私は自分の考えることを、端的に、いかなる誤解の余地もなく、命令を下すようにいえるはずなのに。
どうして、私はこういうときに、こんな大事なときにうまく言葉をつむげないのだろう。
「無理をする必要はないよ。ドラコルル、昔のぼくと君は、あれこれ言わなくても、お互い何を考えているか
察しがついたじゃないか」
パピの言葉は、そうしたドラコルルの葛藤を一掃するのに充分だった。
そう、確かに、昔の私たちには、余計な言葉などいらなかった。
ならば。
>>376 「そうだな・・・・うん、そうだ。ならば、一言だけ言おう」
「?」
「パピ・・・・すまない、本当に、すまなかった。許してもらうつもりは全くないが、
私は、ただ、それだけが言いたかった・・・・この10年間、私が、君の前で銃殺を命令した
あの日から、ずっと」
ドラコルルは、それだけを言った。
だが、彼にとっては、その一言―パピに対するたった一言の謝罪は、百万言をもってする弁明よりも価値のある
ものだった。
「ドラコルル、ぼくは・・・・君を許すつもりはない。きみがピリカに対してやってきたことや、ぼくを助けようとしてくれた、
あの心優しい友達を殺したことを、ぼくは永遠に許すつもりはない。だけど・・・・・」
「だけど?」
パピは、意図的にドラコルルから視線をそらし、まっすぐ前を見詰めて続けた。
「ゆっくり考えてみて、あのとき君はああするしかなかった、それは理解したつもりだ。
君が、あのギルモアに代表される連中とは全く異なり、心の底から、ピリカのことだけを考えて、ピリカのために
のみ行動しつづけていたということは、今となってはよくわかる」
その言葉は、ドラコルルにとっては、衝撃以上の何かだった。
>>377 まさか、パピが、パピが、この私を、もう一度、わかってくれた・・・・というのか?
不安にかられたドラコルルは、おそるおそるパピに問い掛ける。
「そう、言ってくれるのか・・・・・君を手にかけた、この私の所業を?」
「うん。人は、その時に、そうすべきだと思ったことしかできない。それは事実だからね」
不意に、ドラコルルは立ち止まった。
そのまま、がくりと首をうなだれ、パピから顔をそむける。
「どうしたの?」
パピが尋ねても答えず、しばらくの間立ち止まったままの2人を、たおやかな風だけが通り過ぎていった。
やがて、ふっと顔を上げたドラコルルが、パピをまっすぐに見つめて言う。
その顔は、心なしか苦痛に歪んでいるようだった。
「いや、なんでもない・・・何でもないが・・・・人前で涙を見せそうになったのは何十年ぶりか、そう思ってね」
「ドラコルル・・・・・・」
「だが、今の私は、何故か泣く事ができない。私の心は、決壊したダムのようにいろんな思いが溢れているのに、
それを泣く事で表せない。それが・・・・なんというのかな、うん。すごく、悔しいな・・・はは、はははは」
2人は、再び歩き出した。
白い夜光が、並んで歩く2人の影を、くっきりと道路の上に浮かべている。
>>378 やがて、まっすぐ続いていた道がYの字型に分岐している地点に2人はたどり着いた。
立ち止まったドラコルルは、言わずもがなのことを言う。
「分岐点か」
「うん。ここを右にゆくと、ぼくが今いるところにたどり着く。左に行けば・・・」
パピが指差した方向―左の果ては、何が立ち込めていてよく見えなかった。しかし―
どことはなし、禍禍しいものがそこに蠢いているようにも思われる。そう感じたドラコルルは、思ったまま尋ねた。
「地獄・・・・かね?」
「そうとも、いうよ」
パピの口調は、珍しく歯切れが悪かった。
「そうか・・・」
「もちろん、右だよね、ドラコルル」
「・・・・・いや、私は左を行く」
何かを期待するかのような、あるいは懇願するかのようなパピの問いかけに、ドラコルルは、しかしあっさりと
答えた。瞬時に、パピの表情が驚愕に固まる。
「どうして!・・・・もう、君が思い悩むことなんかないんだよ!君は確かに許せないことをやったけど、だからと
いって自分を追い詰める必要なんか、もうないんだよ!」
正直な話、どうしてそう答えたのか、ドラコルルにもよくわかっていなかった。
ただ、答えた瞬間は、そうしなければいけないと強く思ったから、そういったに過ぎなかったのだ。
しかし、それだけは、パピにはわかってはもらえないだろう。なぜなら、パピはまだ・・・・
ドラコルルはゆっくりとしゃがみこみ、パピに視線を合わせた。
これだけは、ちゃんと言葉を尽くして説明しなければいけない。なぜなら、パピには絶対にわからないこと
だから。
>>379 「なあ、パピ。昔、同じように夜の暗い家路を、こうやって2人で辿ったことがあったな」
「うん・・・・・」
「そのとき、君は確か私にこう尋ねた、と記憶している・・・・『どうして、僕等は大人になるんだろう?』」
パピは、ドラコルルが何を話そうとしているのかわからなかった。
だが、どういうことを話そうとしているのかは察しがついている。パピと、ドラコルルの間に横たわるたった
一つの違い―パピがまだ少年で、ドラコルルが大人である、その違いだ。
「あのころの私はただの若造だったから、何か高尚なことをこね回して君を煙に巻いたが・・・・今ならば、
それに自分の言葉で答えることができると思う。聞いてくれるか」
「・・・・・・聞くよ」
「人は、いかなる例外もなく、いろんなことに関わったり、いろんな人と様々な形で縁を結んだりする。
それは、偶然もあれば必然もあるだろうし、望んでする事もあれば、しぶしぶやらなくちゃいけない事もあるだろう」
「・・・・・・・」
「人が大人になる、というのは、そうした様々なことをもっともっと広く、大きな範囲でやっていくことなんだ。
で、それが他人や、社会全体に齎す影響というのを受け止め、責任をとっていくことでもある、と思うんだ。
だから、自分のしでかしたことについて、私は責任をとらなければいけない。
君とはいつまでもいろんなことを話し合いたいし、正直なところ痛いのは苦手だが、今まで自分がしてきたことで、
私の両手は血まみれだ。だから」
「だから?」
「私は、何らかの形でそれを清算しなければならない。従って、君の今いる所には、私はいってはいけないんだ」
「本気なんだね」
ドラコルルの考えと、鋼のごとき決意を感じ取ったパピは、もう彼の選択に反対しようとはしなかった。
「私はいつだって真面目だ」
「・・・・・そっか・・・・わかった。悲しいけれど、それなら、もうぼくには何もいうことはないよ・・・・・・」
>>380 どちらからともなく、すっと手を差し出し、硬いが優しい握手を交わした。
パピの手は柔らかく、そして暖かかった。ドラコルルの苦悩を、少しでもやわらげようとしているかのように。
「誘いを蹴って、すまない。そして、ありがとう」
「ううん・・・・・それじゃ、ね」
「ああ、達者でな」
遠ざかるパピの背中。
それが消えるまで見送ったドラコルルは、ふと夜空を見上げた。
プラネタリウムのような満天の星空が、今にも零れ落ちそうに儚く、そしてそれゆえに神々しく煌いている。
白い夜光は、星空の光だったのか。
ふと、ドラコルルは笑い出したくなるような気分になった。
ここがピリカ星でなく、現実でもないとすれば、あの星は、今まで死んでいったもの達の魂魄なのだろうか。
私にかかわり、私の決断に従って―あるいは逆らって死んでいった全ての人々は、今あそこでただ静かに
たゆたっているのだろうか。全てから解き放たれて。
どうか、そうであってほしい。
責任をとるのは、私一人で充分なのだから。
視線を戻したドラコルルは、わずかに表情を引き締めると、己の選んだ道―左の分岐点へと、その歩みを進めた。
<終>
382 :
222:03/07/27 21:16 ID:???
皆様こんばんは。
さて、2日に渡りましてお届けいたしました「ドラコルル」外伝3部作、いかがでございましたでしょうか。
「通り過ぎた回天」:8レス(ノーカット・バージョン)
「祖国のために」:31レス
「白い夜空の下で」:7レス
合計46レス。やりすぎでしたね。申し訳ございません。
それはともかく、私が当初考えていた話はこれで全て出し尽くしました。
(もちろん、異なる世界観をベースにした話であれば、まだいくつかネタがございます)
しかし、このエンディングについて、まだ構想段階ですが、もう一つのヴァージョンを
用意しているところですので、ご希望のかたはその旨お申し出いただければと思います。
(アップがいつになるかは、断言できませんが・・・・)
何か上手く言えませんが・・・彼なら多分その道を選ぶんでしょうね。
でも清算って事ならもう充分に果たしたんじゃないかと私は読んでて思ったんですが。
死んでまでそんな・・・と思うのは私がパピと同じ子供だからかな(いい年なんだがw)
別バージョン是非読みたいです!
パピとの対話はすごく見たかったので嬉しい。
ああ・・・でも長官には生きてて欲しかったなあ。
死ぬなら死ぬでパピと同じ所に行って安らぎを手にしてほしかった。
ラストに「少年期」シチュ持ってくるなんて・・・・反則っすよ
な、涙が・・・・・・
とりあえず222さん、乙でした!
素晴らしい物語をいくつも創り出して下さった事に心から感謝します。
また何かうpして下さる気になったら、いつでもご降臨を!みんな待ってます。
それと、別バージョンってどんな話ですか?・・・・・右に行く話?
だとしたら(そうでなくても)すごく読みたいんですけど
夢のように綺麗な映像が目の前に浮かんでくるようでした>白い夜空の下で
今日夢に見るかも……
ギルモアについてはまあ、ふさわしい最期だな、と。
でも長官は・・・・。彼の言う事もわかるけど、これでもまだ責任がとれてないなんて
思ってるのは彼だけな気が。部下だって誰もそんな事望んでないだろうし。
漏れは、ラストにも泣いたが、終盤の新政府軍兵士2人とのやりとりにも泣いた。
つか、この神の文章は泣き所だらけだ…
>>388 禿同。
また一人で責任取ろうとしてるよな。部下がそれ望んでないのは「通り過ぎた回天」
でも明らかなのに・・・(泣)
なんかちょっとでいいから後日談みたいなのも読みたいな
これからピリカがどうなるのか
「通り過ぎた回天」→「祖国のために」→「白い夜空の下で」
これ、全部通してこのまま映画にしてもいいくらいだな。
この神の文章に映像と音楽が加わったら凄い事になりそうだ。
見た後しばらく席を立てないような・・・
393 :
222:03/07/27 23:59 ID:???
皆様、改めまして今晩は。
この2日間で途方もない長文を放り投げまして、正直なところガクガクブルブルものでしたが、
ご好評を頂いたようで、結構本気でほっとしております。
さて、長官のラストシーンについて、いくばくかのリクエストがあるようでございますので、
それに関する覚書を。
現在構想中の「白い夜空の下で」アナザー・バージョンは、こういう構成にいたします。
白い夜空の下で→アナザー・バージョン→涼しい風
正直、涼しい風に結びつくとは、白い〜を書いている時点では思いも依りませんでしたが、
今暖めている思い付きをなんとかいじりまわせば、ものになりそうです。
というわけで、今度の週末か、それよりはもう少し近い日に更新させていただきます。
それでは、おやすみなさいませ。
涼しい風に繋がる?!なんか俺の頭では想像できないですけど、
とにかくアナザー・バージョンうp待ってますYO!
>>392 漏れは今でもパソの前から動けない訳だが
さっきからずっと余韻に浸ってるとこだ
この文で泣きそうになった奴、実際に泣いた奴、手あげてくれ。
漏れは、2ちゃんのスレで初めて泣いた。
泣いてません。
泣くわけないじゃないですか。
ただ単に目の奥が痛くなって鼻水でそうになっただけだってばつд;
そうとも、泣いてなんか・・・泣いてなんか・・・グスッ
ち、違うんだこれは目にゴミが入って
>>396 はい、ここに。
小戦争も原作を何回か、映画を一回見ただけでこのスレに来た者ですが。
あんまり思い入れなかったハズなのに読み終わる頃には・・・
あああ長官〜〜〜〜!!(泣)
申し訳ありません、長官。泣いてしまいました。
私が代わりに左の道に行きますから長官は右の道に行って下さい、お願いです(涙)
400
別バージョンってどんなんかなー
漏れは漠然と、ラストはパピが長官を迎えに来て一緒に天国行くのかと思ってた。
いわゆる「迎えに来たよ、さあ一緒に行こう」パターン
だから分岐にはそう来たかって感じで驚いたが。とにかく楽しみだ
きっとこの場合、分岐を自分で選べる人とそうでないヤシがいるんだよ
ギルモアなんかはそのまま直で地獄に落とされてんだよ、きっと(w
長官は天国に行く資格もあるから分岐が目の前に現れた訳で、自分でそっちに
行こうと思えば行けたけど、そこであえて左に行く事を選ぶのが長官らしいっていうか、
カコイイとこなんだろうな。・・・なんか語ってしまった
>>403 ハゲドウ。
ここまで人の心を動かす文章書けるって凄すぎる。
405 :
マロン名無しさん:03/07/29 00:05 ID:mKSn2U/K
>>402 いちいち胴衣。漏れは、
直で天国に行く人(パピ)、自分で選べる人(長官)、直で地獄に行く香具師(ギルモア)
の3種類があるんだと思う
>>385 ほんと、ヤラレタ!って感じだな
ここで少年期持ってこられたらもう無条件降伏するしかないよな
222=神。
407 :
マロン名無しさん:03/07/29 05:55 ID:VXMrl+sd
この長官スレにお邪魔するのは久しぶり。
上がって来ていたので「あー、懐かしいな」と何気無く覗いて見ました。
そしてSSを拝読し、皆さんと同じく感動させて頂きました。
昨日の夜、他板で嫌な思いをしてしまい、
どうしようもなく落ち込んでいた所でした。
しかし今朝こちらにお邪魔して、少し元気を取り戻しました。
何て言うか、暗い部屋にランプが灯ったような感じ。今は温かな気分です。
いい話をありがとう。
>>407 誰かわかりませんがお久しぶりです。
見ての通り第二弾も、第一弾同様良スレになりそうですので、
気が向いたらまたいつでもお越し下さい。スレ住人一同、引き続きこのスレを
良い物にするため頑張って参りますので。
左の道を選ぶのはいかにも長官らしいけど・・・でも!
あれだけ苦悩して苦痛を味わって、命を落としてそれでまだ駄目なのかなあ。
自分に厳し杉だよ、長官・・・・・(厨房なレスでスマソ)
>>410 そうかもな。こんなに感情移入してしまう話はそうそうない
実は最後の選択は神が長官を試していて、左を選ぶ事が天国への道だったりしないのかな
パピと一緒に右に行ってたら地獄行きだったとか
↑
ありがち・・・w
>>412 それイイ!俺、脳内でそう補完しとこう
まあ、アナザーバージョン見れば補完も必要なくなるだろうが
414 :
マロン名無しさん:03/07/29 21:37 ID:wnyTkrjJ
このスレはパピ関係しかうpしちゃダメなのかな?
他の大長編もあり?
415 :
マロン名無しさん:03/07/29 21:39 ID:wnyTkrjJ
原恵一スタッフに作らせてよ次回の映画は。
先生に限りなく近いプロ集団だと思うし。
416 :
マロン名無しさん:03/07/29 21:40 ID:wnyTkrjJ
>>412,413
いや、長官は地獄に落ちる。
でもって、地獄でもクーデターをおこして冥界をも征服してしまいます。
419 :
マロン名無しさん:03/07/29 22:27 ID:wnyTkrjJ
>>417 ありがと、機会があったら載せてみるね。
でも小宇宙関係からね。
420 :
222:03/07/29 23:54 ID:???
皆様こんばんは。
ただいま「白い空の下で」続編(というよりはアナザー・ストーリー)を執筆中でございます。
いい展開を思いついたので、一気に書き上げようとしてるのですが・・・・・。
これは10レスくらいいってしまいそうです。涼しい風とのつながりを持たせようとすると。
相変わらず長いですな自分。いったいなんでこうなってしまうのか。
愚痴はともかく、うまくいけば近いうちにアップさせていただけるでしょう。
(明日かあさってくらいですかね?)
結末のほうは、もちろん皆様がご期待されている通りでございます。
(これを隠しても意味がございませんから)
それでは。
>>418 志○雄かよ(w
長官がクーデター起こしたのは222さんの話では「祖国の為」だろ。
地獄は祖国でも何でもないし・・・・
>>420 ええ、10レスでも20レスでも。降臨お待ち申し上げております!
はあ、待ち遠しい――――!
「ギルモア将軍、パピを捕らえました」
「見事な手はずだな」
「いえ、私の失態が原因であり手間を取らせて申し訳ございません」
「今後の活躍によってはそのことには目をつぶろう」
「ありがとうございます」
「以降の計画は?」
「はっ、パピを餌にし、地下に潜伏している
不穏分子を捕らえる作戦はすでに実践されています」
「よし、ことが済みしだい。早急にパピを処刑せよ」
「かしこまりました」
「包囲を完了しました。あとは自由同盟との接触を待つだけです」
「よし!こうなればピリカの自由同盟は我が手におちたも同然だな
ただちに小衛星帯の総攻撃にうつれ!!空軍の主力部隊を束にしてぶちこんでやれ」
「そのことですが将軍、敵の戦闘能力も不明であるので、
ここは無人の戦戦闘機隊を出撃させてはどうでしょうか
我が軍には数千機ものの数がございます」
「…………いいだろう…」
・
・
・
「長官!どうして我々を出撃させて下さらないのですか!!」
「ドラコルル長官!なぜです!!」
ドラコルルに異議を唱える空軍軍人たち。
「敵の背景がいまだ見えない
そんな状況でお前たちを宇宙に上げるわけにはいかんのだ」
「我々は未確認の敵だからと言うことで弱腰などにはなりません!!」
「そうです!我々は長官直々の誇り高き空軍であります!!」
「その気概だけで十分だ。お前たちはまだ活躍する時期ではない
全てが終わったあとでお前たちが必要とされる未来が来るだろう
それに私直々の空軍ではない、ギルモア将軍直々だ、間違えるな」
「……長官」
「解散だ」
「将軍お喜びください
自由同盟のアジトを強襲し地球人を含む不穏分子を根こそぎ逮捕しました」
「それはでかしたと言っておこう。だがもう一方はどうなっているのだ
小衛星帯の秘密基地に向かった無人戦闘機隊は?」
「は……それが………」
「全滅!?あれだけの戦闘機が一機残らずやられたと!?
わしに歯むかう者を根絶やしにするのがPCIAの役目だぞ!
失敗はゆるさん!!」
「申し訳ございません」
(それは違うでしょう、ギルモア閣下)
(我が軍が誇る無人戦闘機隊が全滅か…来るべき時が来たか…
用意された駒を少し早めたほうがいいようだ
将軍もそろそろ限界のようだからな)
・
・
・
厳重な牢屋に一人、閉じこめられているパピ。
「ドラえもんさんたちをどうしたのですか!!」
「安心しろ他の部屋で静かにしている、今日限りはな」
「…なぜ……なぜこんな道を選んだのですか!兄さん!!」
「そのように呼ばれるのは実に久しぶりだ
それに道を違えたのお互い主観の相違、以前にそう結論づけたはずだ」
「ピリカの人々は平和を求めているのです」
「その平和が文明を創るのではない、戦争が文明を創るのだ
戦争なくしては文明は栄えないし、純然たる生き方もできない
その意味はお前にもよく分かるはずだ」
「そんなことで傷つけあうのはあまりにも悲しいことです」
「そう、だから人は平和、和平、平穏、泰平など
数多くの言葉を作りそれらを使ってすがろうとする」
私はかの異星人の歴史を知らない
彼らの歴史は平和という文字だけで埋め尽くされているのか?」
「…………」
「そうだ、それでいいのだ。それが生者たる性なのだよ
戦争と戦争の間に平和があればいい、それがギルモア将軍、当初の祈願だ」
「父さんの?」
「我々が誰であるかも忘れた者を呼ぶの名ではないな
…まあいい、将軍は歴代大統領の中でも最長期間を就任した
そして月日が経ち引退する、お前を後任にとして選んだ
それからのお前の執る政策はことごとく大衆に対しぬるすぎた
それが将軍の怒りに触れたのだ。…今ではただの狂人だがね」
「そのために兄さんの人生を無駄にするというのですか!!」
「パピ!お前とはもう家族でない兄と呼ぶな!!」
「ドラコルル…」
「無駄などはない…将軍の理想は私の理想でもあるのだ
父がなしえなかった閉ざされた道を私がきりひらく」
「……………」
「明朝はおまえたちの極刑を執り行う」
「ドラコルル」
「何だ?」
「最後に聞かせて欲しい。なぜ私が逃げられるよう手配してくれた?」
「………何のことか分からないな」
「ギルモア集軍を除くPCIA軍首脳幹部を非常呼集しろ」
「ドラコルル長官命令ですか?」
「不服かね」
「とんでもありません。直ちに呼び出しを行います」
・
・
・
・
・
・
「午前一時よりより陸軍、空軍、海軍の各首脳幹部が到着しました
作戦司令室で待機中です」
「よし、ご苦労だった
おまえたちは持ち場に戻れ」
「はっ」
「お久しぶりです。ドラコルル長官」
「長官、声をかけていただき誠に光栄です」
「ああ、久しぶりだ
こんな時間におまえたちを呼んだのは他でもない」
「先の空軍の件ですか?」
「相変わらず勘が鋭いな」
「これも長官に鍛えられましたからね」
「そうだ、無人偵察部隊は大敗に終わった
当時ここには出席していないギルモア長官は空軍による動員を考えていた」
「何と…」
「敵の詳細な情報も入手出来ずにですか」
「情報を制す者は全てにおいて制すと言うことを閣下はいまだに分からないようですな」
「ついに動くのですな」
「そこでだ…」
「……………」
「……………」
「PCIA軍全ての軍隊を解隊する」
「!?」
「なぜです!!今こそ反旗を翻すときではありませんか!?」
「ドラコルル長官は我々を臆病者と見ておられるのですか!!」
「違う、我らとは異なる星から来た者との争いは我らの仕事ではない」
「………おっしゃるとおりです」
「これまでのように何か策あってのご決断ですな」
「完全ではないが私の策はある」
「ならば我々が言うことは何もありません
そうしてあなたという人間についてきたのですから」
「正直申すとあなたの見ているものを我らも見たかった…」
「すまない」
「いえ、構いません
して軍の運営はどうなさいます
全軍の解隊ではギルモア閣下に気づかれますぞ」
「陸海空の全てを本日から無人部隊で組む」
「……そうですか」
「分かりました、いくばくかの手配は我らもとらせて頂きます」
「助かる」
「……………」
「……………」
「……………」
「正式に本日付けで陸海空、全軍の解隊及び所属人員は解雇する!!
ピリカと世界のために尽力をつくせ!!以上だ!!!」
「「「了解!!!」」」
「独裁者をたおせ!!」
「ピリカをわれわれの手にとりもどせ!!」
ギルモアが乗る車に石をぶつけるピリカ市民。
その大衆の前に車を止められる。
そこから引きずり出され石をぶつけ始める。
大衆が石をぶつける中ギルモアの前に立つう影が現れる。
「ドラコルル長官!なぜギルモア将軍をかばうのですか!?」
「黙れ!将軍は一つの夢に人生を費やしたのだぞ!!
それをお前たちは今頃になってクーデターを起こそうとする
その道理はどう説明するというのだ」
「我々も我慢出来なかったんです…だからこうして…」
「ならば前大統領、パピを退陣に追いやったときになぜ味方しなかった
あの時に蜂起すれば最小限の被害で争いをまぬがれたはずだ」
「……それは…」
「その曖昧さがピリカを狂わせたことにまだ気づかないのか!
今一度おまえたちが言うような平和になったとしても歴史は繰り返されるぞ!!」
「………………」
「それでもギルモア将軍を傷つける者は前に出よ!!」
「「「「……………」」」」
誰一人として前に出ようとはしない。
「そうだ、それでいいのだ
罪は犯すためにあるのではない償うためにあるのだ」
その言葉に空を見上げるギルモア。
壊れた車に乗り込む、ドラコルルとギルモア。
「さあギルモア将軍、着きました空港です」
「……………」
「どうなさいました」
「……引き返せ…ピリカに…」
「はい、わかりました」
二人がピリカに戻る途中、空に流れ星が見えた。
ロケットのような…
完
急いで作ったんで割愛し下さい。
読んでくれて人はありがとうございました。
次、作る機会があったら要望のあった魔界大冒険に挑戦してみたいと思います。
おお、また新たな神降臨ですな
長官とパピが兄弟(ギルモアが父親)ってのは確か初の設定だと思います
ぜひまたどうぞ
罪は犯すためではなく償うために、か。
長官ひたすらカコイイな。
前スレでは長官とパピが親子なSSがあったけど、兄弟ってのもいいよな。
438 :
マロン名無しさん:03/07/30 08:08 ID:mkhWBgXW
あげ
こんなにギルモア(の末路)に救いがあるSSは初めてじゃないか?
今までのは扱いに差があってもみんなあぼーんだったしw
>>420 期待通りってことは、ようやく長官にも安らぎの時が訪れるんですね(涙)
それでもやっぱり読めば泣くんだろうなあ・・・・
嬉しい。嬉し杉>アナザーバージョンのラストはみんなの期待通りに
「白い夜空の下で」読んでて、
「もっと引き止めろパピ!簡単に説得されてんじゃねー!(泣)」とか思ってたし、漏れ。
パピは子供で長官は大人ったって、大人の論理がいつも正しいとは限らないと思うし。
ああほんと待ち遠しいYO!
442 :
マロン名無しさん:03/07/30 15:07 ID:58BvU2cs
>>439 そうだね。
「引き返せ、ピリカに」の台詞がなんだか切なく感じられる…
実はギルモアに同情していたので、
ギルモアに救いがある話は素直に嬉しかったりする
ギルモアに同情してる香具師は結構いるんじゃないか?
長官やパピと比較するとよけいその凡人ぶりが際立って哀れというか
222さん降臨は今日?明日?
どっちにしても目を離せないな!
さあ、また泣くぞ〜!
>>441 漏れも年齢だけは大人だが、もし分岐の前にいたら・・・んでもってパピみたいな
事言ってくれる人がいたら、あっさり右に行くだろうなw
「そうだよな、もう充分苦しんだし」みたいなノリで。
ああいうラストを考え付く222さんはやっぱ凄いな。
長官がパピに言ってた事は222さん自身の気持ちなんだろうし。
俺もいつかそういう大人になりたいもんだ・・・
>>448 禿堂。
漏れだったら天国行きしか考えないかも。
うーむ、長官地獄行きは漢の決断だけどやっぱり悲しすぎて
別のアナザーエンドを考えてしまいました。
222さんのアナザーストーリーを見て、かぶってなければ貼ってみます。
拙い文章ですけど。
451 :
222:03/07/31 03:50 ID:???
皆様こんばんは。
現在執筆中の続編ですが・・・・ええとですね、20レスくらいになってしまいそうです。
昨日と今日で台詞回しと結末は書き上げたのですが、そこに至るまでの経過が、
まだまだ残っておりまして・・・・。
アナザーストーリーどころか、別の章立てになってまいりました。大丈夫かな。
というわけで、大変に申し訳ございませんが、やはりアップは当初の予定通り
週末になりそうです。早まればいいのですが、こればかりはいかんとも。
(今アップすると、会話だらけのよくわからない話になってしまいまして・・・・)
ご期待くださった皆様には、心よりお詫びを申し上げます。
>>450さん
私にお気遣いなく、アップしてくださって構いません。是非拝見いたしたく思います。
450ですが・・・・わざわざありがとうございます。
自分としては今の良い流れを切りたくないかな、とも思うのですが、
読者の皆さん的にはどんなもんなんでしょう?
222さん作のアナザーストーリーとは完全に別物として見て頂けるのなら
こちらとしても邪魔をせずに済むので気が楽です(´Д`;)
そういう前提で考えていただくとして、皆さんにお許しがもらえるのであれば
恐縮ながらも貼らせていただこうか、と思っております。
あ、もしこのままの流れで続けてアナザーが見たければズバッと言って下さい。
後で時機を見てコソコソ貼りますので・・・・。
>>451 20レス!本当ですか。うわ〜嬉しいです!また222さんの素晴らしい作品世界に
浸れると思えば、1〜2日くらい後でも全然平気です。
>>452 222さんもおっしゃってますが、みんな色々な作品が読みたいと思ってるんじゃ
ないでしょうか。私もぜひあなたの作品を読んでみたいです。
452さん、うp激しくキボンヌ
>>452 貼って貼って!誰も邪魔だなんて思わないYO
222さんは222さん、452さんは452さんだよ
スレ住人としてはイパーイ読めてウマーだし!
222さんの降臨は週末か、見逃せないな。
で、450の人も書いてくれるって?いいねえ、早くうpしてよ。待ってるから
何とも穏やかな風景だった。
相変わらず柔らかい草が生い茂り、心地よい風が頬を撫でていく。
白く輝く夜空は無限に広がっていた。
どれくらい歩いたのだろう?だが疲れは感じない。
どこまでも歩いた。だが相変わらず風景は変わらない。
自らが選んだはずの灼熱の煉獄、辿り着く気配は全く無かった。
『フ・・・・この長い道も私に課せられた罰の一つだとでも言うのか?』
自嘲気味に独り呟いてみる。
しかし罰と言うにはあまりにも穏やかで・・・・心が安らいだ。
いつか時を忘れて友と未来を語り合った春の夜のように。
『・・・・・・流れ星・・・・?』
一瞬、頭上で一筋の閃光がほとばしった。
「長官!」
ふと背後から呼び止められた。やや驚きながら振り向く。すると・・・・
『お、お前たち!!何故・・・・・!?』
そこにはたくさんの、本当にたくさんの笑顔があった。
名前はよく覚えてはいないが、一つ一つが見知った顔、
彼に最後まで付き従った、勇敢なる兵士たちだった。
先頭の兵士が少し溜息をつきながら語りかける。
「ほんと、いつだって長官はそうですよね」
『な、何?』
「全部、全部責任を一人で取ろうとして、自分で何とかしようとして」
後に続く兵士達も口々に彼へ言葉を投げかける。
「あの時だってそうでしたね?降伏勧告が来た時も」
「最初の命令を聞いたとき、やっぱりな、と思いましたよ!」
「ま、誰一人帰るつもりはなかったですけどね」
「トクルがまとめなきゃ俺達みんなで部屋に押しかけてましたよ、なぁ?」
「最初は自分だけが責任を負うつもりだった、そうですよね」
『あれは・・・・当然だろう!犠牲は最小限、それが最良の選択肢だ!』
彼は少しムキになって言い返す。しかし
「違いますね」
『何だと?』
すぐに否定され、少々戸惑う事になるのであった。
「長官はそんな理屈で物事を考えて行動したわけじゃない、そうでしょ?」
「自分達の事を思ってくれたからこそ!それが一番の理由ですよね!」
「長官!」
「今だって自分一人で贖罪しようと思ってる!」
「そうはいきませんよ!自分たちもお供します!」
「そうだ!死ぬ時まで一緒だったんです!死んだって俺たちは!」
「我々はピリカの精鋭PCIAなんだ!恐れる物なんて無い!」
「今までだってずっと一緒にピリカを守ってきたじゃないですか!」
兵士たちの声が徐々に悲痛な響きを帯びていくのが彼の耳には痛かった。
『バカもの!無駄な事をするな!引き返せ!これは命令だ!』
「そんな命令は聞けません!」
「長官一人に罪を押し付けるなんてできません!」
「長官!行くなら自分たちも連れて行ってください!」
「何もかも一人で背負おうとしないで下さいよ!」
「長官がいてくれれば我々は何も怖くないんです!」
「お願いです!長官!」
『お前たち・・・・私を買いかぶりすぎだ・・・・私は・・・・・・』
何を言いたかったのだろう・・・・上手く紡ぎだすことができない。
言葉に詰まる彼。一瞬の静寂。そして・・・・
「う、うぐっ・・・・ひっく・・・・」
どこからともなく嗚咽が聞こえ始める。
「長官・・・・うっ・うっ・・・・イヤですよぉ・・・・えぐっ・・・・」
「地獄だなんて・・・・そんな・・ひっ・・・ダメですっ・・・・」
「ちょ、長官は・・・・ひっく・・・・自分たちにとって・・・ぐっ・・・・
父親も同然なんです・・・・俺たちのオヤジなんですよっ・・・・」
「い・・・・行かないで・・・・行かないでください・・・・えぐっ・・・・」
「長官・・・・ううっ・・・・お願い・・ひっく・・ですから・・・・」
「行くなら・・うっ・・自分たちも・・・・長官独りなんて・・・・・・」
大の男たちが憚る事無く涙を流している。声を上げて哭いている者もいる。
何人も、何十人も、何百人も・・・・そう、二千人も・・・・。
その場にいる全ての兵士達が、ただ一人の男のために泣いていた。
『お、お前たち・・・・』
彼は暫し困った表情で立ち尽くしていた。
最後の決戦前のように奮い立たれるのならまだ解る。
しかし、こんな事になるとは・・・・全く彼の予想の範疇を越えていた。
さて、どうしたものか・・・・。
「さあ、どうするんだい?ドラコルル」
不意に懐かしい、そして先ほども聞いた声が彼に質問を投げかける。
『パピ!?』
「どうしたんだい?不思議そうな顔をして?」
いたずらっぽい笑顔を浮かべた少年は、笑いを堪えながら尋ねる。
あたかも意地悪ななぞなぞを出しているように。
『さっき別れて・・・・私は随分と歩いたはず・・・・!?』
困惑する彼の顔を見て、少年はついに我慢しきれなくなって笑い出した。
「あははははっ、君はさっきから全然進んでいなかったよ!」
『な、何ぃっ!?』
よく見れば確かに、二人が別れた分岐天はすぐ足元にあった。
驚いた彼の顔を少年はこの上も無く満足げに見つめる。
「ふふふ、あの世っていうのはね、精神世界なんだよ。
強い思いは現実となって叶ってしまうんだ。
ここにいる二千人全員が君が地獄に行く事を望んでいない、
その思いが君を前に進ませなかったんだよ。」
「じゃあ・・・・」
混乱のあまり状況を確認しきれない彼よりも先に兵士が反応する。
「ちょ、長官は地獄には・・・・!」
パピがちょっぴり肩をすくめながら答える。
「君たちがいるから・・・・行きたくても行けないね」
瞬間沸き起こる歓声。歓喜の号泣。
「うおおおおおお!やったああああっ!!」
「絶対に行かせませんよ!絶対に!」
「ドラコルル長官とPCIAは永遠に不滅だぁぁっ!!」
『この・・・・このバカものどもが・・・・』
押し寄せる兵士たちにもみくちゃにされながら、
いつしか彼の目からも熱いものが溢れ出る。
親友と彼を慕う部下を優しい微笑みと共に見つめるパピ・・・・
(まだ若いのに大きな息子がこんなに沢山できちゃったね。
ここまで多くの人に慕われる君を、僕は本当はもう許しているんだろうね。
これでいいんですよね・・・・皆さん・・・・)
止まない歓喜の頭上、夜空の輝きはどこまでも白かった。
464 :
450:03/07/31 17:28 ID:???
大変拙い文章で失礼しました。
自分が彼の部下だったら、そう考えて構成した結果このようになってしまいました。
兵士の泣きの描写はちょっとクサすぎるかと思い入れるかどうか迷ったのですが、
事実感情移入して自分も泣きそうだったので、素直に入れることにしました。
長官をオヤジ扱いも若干どうかと思いましたが、あそこまで頼れる長官は
自分にとってはアニキと言うよりオヤジがぴったりだったので・・・・。
222さんの人物・世界観をブチ壊してしまったかも知れないと恐縮しきりなのですが
自分なりに彼に歩んで欲しかったハッピーエンドという事でお許しください。
え、えーと、ではこの話は以後無かった事に((((゚Д゚;))))))))ガクガクブルブル
無かった事にだなんてそんな!
感動しましたよ!部下の気持ちがすごく伝わってきて俺も泣きそうです。
好きですよ、こういうの。またなんか書きたくなったら書いて下さい、ぜひ。
思わずムキになったり戸惑ったりする長官にチョト萌えw
いいじゃないですか、ハッピーエンド。私も部下の一人だったらボロ泣きして
長官を引き止めると思う。でなきゃ地獄までお供しますよ!とか
あ、450さんうpしてくれたんですね。
正直、「永遠の絆」ってタイトルだけで既に漏れのツボに入ってたりするんですよ実は。
あの世に行っても途切れない、まさに永遠の絆・・・いいなあ。
うらやましいぜPCIA兵!
468 :
マロン名無しさん:03/07/31 19:41 ID:yallekIi
どうでしょうねえ。誰か知ってる?
450さん乙。俺もこういう話大好きですよ。感動しました
パピの死後10年って設定だから長官も30にはなってる計算だし、いいんじゃないですか、
みんなの親父扱いも。まあ、チョト違和感あるけどw
>>469 うーん、知らない。少なくとも俺じゃないけどな(w
部下がすごく長官を大切に思ってるのがよくわかるSSだな。
ハッピーエンド見れて嬉しい。
さて、週末は222さんのか。待ち遠しいなあ。
その人を大事に思う人たちが望まないなら、地獄に行こうと自分で
決めたって行けない、ってのはなんかすげえ説得力があると思った。
また書いてね、450さん。
よく考えればこの話では長官も部下も命を落としてるわけだから、厳密には
ハッピーエンドとは違うと考える人もいるかもしれない。
でも読後感はやっぱりハッピーエンドなんだよな。
>>469 古いSSを…コピペされたみたいですね。
恥ずかしながら書いたの自分です。
有名なドラえもんの最終回に脚色しました。
ラストは必要ないと思ってあえて挿入しませんでした。
ほとんど同じなので。必要あれば追加したいと思います。
>>474 いやあ、ハッピーエンドでしょ。
読んだ後幸せな気分になれる結末はみんなハッピーエンドだと思う。
週末は222さんのハッピーエンドが見れる訳か。
今から心構えしとこうかなw
絶対泣くだろうし。
こうまで慕ってくれる部下に恵まれた長官も幸せだけど、こうまで慕ってついて
行くことが出来る上司を持てた部下も幸せだな
さて、222さんのSSは明日かな、あさってかな♪
次のSSは夢対決とか見てみたいな。
前スレで出てた他の大長編敵組織との対決とか。
個人的にはvsギラーミン希望。
単身ピリカに潜入しPCIA崩壊を狙う最強エージェント・ギラーミン。
冴え渡る「きたな!そんなことでごまかしたつもりか!」などのドラコルル節。
悪魔の頭脳同士の頂上決戦が実現!
燃え〜
>>482 その対決シチュ、SSじゃないけど前スレで何レスかあったな。
「もちろん装置の事は秘密です。表向きは地殻変動でピリカが消えた事にする」
「地殻変動だと?そんな事でごまかしたつもりか」
↑
こんなやりとりがあったと思う
仮想対決、他にもVS魔界とかVS鬼岩城とか色々前スレで語られてたな。
SSにするとすげえ長くなりそうな気が・・・
それもいいが、今度はクーデターが起こる前の話とかも読んでみたいかも。
いわゆるエピソード1的なやつ。
(^^)
>>484 その場合、どうやって海底人やら魔族やらがかかわってくるかの理由付けが必要になってくるね
ガルタイト企業は小人の星ならちょろいだろうということで地上げにはもってこいだというかんじかな
海底人も可能。あの設定はピリカでもコーヤコーヤでも、全映画共通で使える
魔族や妖怪軍団はもしもボックスが原因で出て来たので・・・
ドラたちがうっかり連れて来てしまうのか?
>>381 左の分岐点を選択したドラコルルは、無言で己の行くべき道を歩みつづけていた。
相変わらず、どれだけ歩いても疲労を覚えはしないが、道行の友と別れただ一人歩く身には、
むしろ疲労を覚えないというまさにその点が、どこか苦痛に感じられる。
どれくらい歩いただろうか。何分か、何時間か。もしかすると何年かもしれない。
顔を上げ、ふと周りを見渡したドラコルルは、あたりの風景が一変していることに気づいた。
パピと歩いた、あの優しく懐かしい草原はいつのまにか姿を消し、入れ替わるように荒涼とした
岩場が道の左右に広がっている。
今にも溢れ出そうな満天の星空は失せ、虚無よりもなお暗い夜空が彼の頭上を覆っている。
いかなる自然の作用か、彼の歩いてきた道はいまだ朧な燐光をほのかに発していたため、視界は
いまだ保たれていたものの、むしろドラコルルにとっては明かりなどないほうがありがたく感じられる
ような、救いの見当たらない景色だった。
ふむ、いよいよもって地獄への入り口というわけか。
ドラコルルは、内心でひとり呟いた。
心の片隅では、あのときパピとともに右の分岐点を選択したほうがよかったかもしれないという
思いが、小さなノイズのようにドラコルルの理性にささやきかけている。
少なくとも、パピとともに行けば苦痛にまみれた運命を甘受せずともすんだであろう。
しかし、ドラコルルは引き返そうとしなかった。
まだだ。まだ早すぎる。もしパピのいる場所に私が行けるとしても、まだ私は責任を果たしていない。
ピリカを破滅の渕に追い込み、無辜の市民を冥界へと送り込み、国土を荒廃させた罪は、いまだ
欠片すらも償われていない。そんな私が、天国?それこそお笑い種だ。
>>488 その思いは、彼の心に巣食うノイズをはるかに上回る強烈な叫びとなって、彼を捉えていた。
だから、彼はノイズに悩まされつつも、一度たりとて振り返ることなく、前を見て歩きつづけていた。
道の左右をはさむ岩場は、次第にその高さを増してゆく。
最初は膝下までしかなかった岩石群の高さが、距離を稼ぐにつれて腰までの高さとなり、ドラコルル
の身長をこえ、ついには何十メートルもある岩壁となって彼の左右に高く聳える。
そして、ついに彼の前へ扉が現れた。
もはやどれほど見上げても果てがつかめぬほどの高さにまでなった岩壁、そのはるか下に細々と
続く道一杯に、一枚の大きなドアが取り付けられ、行く手を塞いでいる。
縦3メートル、横幅1メートルほどの、おそらくは木製と思われるドアには、一切の装飾が施されて
おらず、なんともそっけない印象しかもたらさないものであった。
ほう、これが地獄への門か。
ドアの前で立ち止まったドラコルルは、ひどく拍子抜けした気分でドアノブを握る。
地獄へ通ずる割には、なんとも質素なドアじゃないか。門番も番犬もいないなんて。
まるで、PCIA時代の私のオフィスに通じるドアみたいだ。となれば。きっと、地獄の王とやらは
実用一点張りなのだろう。気が合うかもしれない。
ふと口元に笑みを浮かべたドラコルルは、自然な動作でドアを開き、ドアの向こうへと歩を進め―
―そして、ドラコルルは今度こそ本当に目を覚ました。
>>489 何か柔らかいものに包まれて仰向けに横たわり、天井を見上げていることに気づくドラコルル。
そんな彼のもとに、天井の一部が発光することによって作り出されている人工的な照明が、
明るすぎず暗すぎない、ちょうど心地よく新聞を読める程度の強さで降り注いでいる。
・・・・どこだ、ここは。私は、確かドアを開けて。
周りの状況を状況を把握しようと、ドラコルルはそろそろと上半身を起こす。
「つッ・・・・」
そして、あまりの苦痛に一瞬顔をしかめて声を漏らした。
まるで、体が自分のものではないかのように、まったく力をこめられない。
そして、少し動かすだけで全身の組織がぎしぎし音を立て、あちこちに痛みが走る。
放置されていた機械を無理やり再稼動させたときのように、沈黙と安静に慣れていたドラコルルの
肉体が、一斉に彼の意思に反発する。そんな感じだった。
そういえば若いころ、怪我をして何日も寝たきりだった後、起き上がった時がこんな気分だったな・・。
ドラコルルは、周りを見回し―自分が病院の一室にいたことに気づいた。
小ぢんまりとしているが清潔なその病室には、今の今までドラコルルが横たわっていたベッドが一つと、
見舞い客用の椅子が2脚。
壁際には医療器具や品のいい調度が適度な感覚で並べられており、空いたスペースには涼しげな
風景画が掛けられている。
そして、広く大きく作られた窓からは、明るい光が一杯に降り注いでいた。
病院・・・・・か・・・・・・。
ドラコルルは、ベッドのヘッドボードに背中をもたれさせ、自分の掌に視線を落とした。
彼の、治った傷が一面に走る掌には、あの時握ったドアノブの冷たく堅い感触が未だに残っている。
あれは・・・・夢だったのか?いや、しかし、あの非現実的な風景は、私にとってはこれ以上ないほど
現実的であったのに。・・・・・・ともあれ、ここがどこかを把握せねば。
枕元に目をやると、おそらくはナースコールであろうインターフォンが見つかった。
ともかく、これで誰か呼んでみよう。
そう思ったドラコルルがインターフォンに手を伸ばしたとき、音もなく病室のドアが開いた。
>>490 病室に入ってきたのは、思わず目を惹かれるような美しい女性だった。
肩のあたりまで伸ばした髪に、ほっそりとした体つき。
幾分俯き加減になっているため、顔つきはよくわからないものの、少なくともパーツの配置はひどく
バランスがよい。
身につけている淡い水色のワンピースは、彼女が醸し出す一種独特の雰囲気によく合った、趣味の
いい仕立てだ。
女性―もしかすると、少女と呼ばれてもあながち間違いではないかもしれないその人物は、病室に
入り、後ろ手にドアを閉めた。
そして、ベッドのドラコルルを―上半身を起こし、こちらを凝視するドラコルルに気づき、大きく目を見開く。
ほんの数秒、目の前の情景が信じられぬといいたげに立ちすくんでいた女性は、しかし次の瞬間
大声を出した。
「ドラコルル長官・・・お目覚めでしたか!」
「あ、ああ・・・・・いかにも、私はドラコルルだが・・・・」
一瞬の驚愕を通り過ぎ、大輪の花のような笑顔を浮かべた女性に、ドラコルルは少し戸惑っていた。
「すまない。君のような美しいお嬢さんに対してこのようなことを聞くのは大変失礼だが、以前に
どこかでお会いしただろうか?」
「・・・・・私をお忘れなのですか?」
笑顔が曇り、口ごもってしまった女性を前に、ドラコルルは自分が何かとんでもない罪を犯した
ような気分を味わいかけていた。
「ああ、そうですね・・・・・そういえば長官は、私のこういう姿をご覧になったことがありませんでしたね・・・・」
言うなり、女性は背筋を伸ばして敬礼しつつ、打って変わってきびきびとした声になる。
「小官の姓名は、ミノア=トクル少尉。認識番号、PW5791BY-32。最終所属部隊、PCIA総軍
集成第1大隊。ドラコルル長官、R113基地をお忘れでありますか?」
>>491 ああ!
ドラコルルは、その瞬間に全てを思い出した。
そう、余りにも雰囲気が違いすぎていたためにわからなかったのだ。
この女性にいささかサイズ余りの野戦服を着せて体の線を隠し、ヘルメットを被せて髪の毛を隠し、
募る緊張と栄養状態の悪さと余裕のなさから顔つきを険しくして見ると・・・・・。
「君は・・・・トクル少尉、だったのか・・・・・見違えたな」
確かに、彼女はドラコルルの記憶にあるトクル少尉―パピによく似た、あの勇敢な新米だった。
あのとき、少尉という階級にしては、いやに坊ちゃん然として―幼く見えたのも当然である。
性別が違うのだから。
パピによく似た面影という第一印象から、ドラコルルは、トクルが男であると思い込んでいたのだ。
そしてトクルの、男にしてはいささかトーンが高すぎる声も、そういう声帯の持主―である男だ―と
勘違いしていたのだ。
私は、よくよく人を見る目がないのか・・・・・・
「思い出していただきまして光栄であります、長官!」
悪戯っぽく笑いながら挙手の礼を下ろし、ドラコルルの枕元に近付いたトクルは、ナースコールを
取り上げて二言三言何かを話した。
「長官がお目覚めになったことを報告しました。まもなく担当医がこちらにまいります」
ドラコルルは、滅多にないことではあったが、目を白黒させていた。
「いや、すまない・・・・その、なんだ、君はずっと男だとばかり」
自分の勘違いに恥じ入ったドラコルルが、さらに何か口の中でもごもごと呟いたとき、白衣姿の
医師や看護士が、集団でどやどやと病室に入ってきた。
>>492 診察を受け、簡単な検査に応じ、問診に一つ一つ答える。
たっぷり1時間、ドラコルルの全身を改めた担当医は、カルテのクリップボードをぱしんと叩いて
勢いよく断言した。
「筋肉の衰弱を抜きにすれば、健康そのものですよ。どうやら、すっかりよくなったようですな。
これならば、しばらくリハビリを受けてもらえば退院できるでしょう・・・いや、3ヶ月も昏睡状態に
あったとは思えません。よほど普段鍛えておられたのでしょう」
3ヶ月!
担当医の口から何気なく吐き出された時間の経過に、ドラコルルは思わず目を見開いた。
そんなにも長い間、私は意識を失っていたというのか。
「ええ。まあ、ここに担ぎ込まれたときは仮死状態でしたからね。もう少し手術が遅ければ、
本当に貴方は死ぬところでしたよ、ドラコルルさん」
担当医の快活な口調が、ドラコルルの記憶を―意識を失う直前の、あの栄光と挫折に満ちた瞬間を
否応なしに思い起こさせる。
「そうか・・・・私は、生き延びたのか・・・・」
ドラコルルは、わずかに俯いて呟いた。
心なしか、声が沈んでいる。
また、私は義務を果たし損ねたのか?
そんな彼の心持ちにお構いなく、看護士から何かを囁かれた担当医は気軽く言葉を続けた。
「貴方に面会ですよ。今ロビーとのことです。まもなくこちらに見えるでしょう」
そういえば。
担当医のよく動く口元を見つめていたドラコルルに、ふと疑問が頭をよぎった。
3ヶ月といえば、あの闘いが―PCIAが最後の意地を見せたあの戦いの結果が、ピリカ全土に
広まるには充分過ぎる時間だ。
>>493 つまり、この担当医は私が何者であるか絶対に承知している。私を名前で呼んだくらいだから。
にも関わらず、この若い医者が私に対してこうも自然に快活な態度をとるのはどういうことだ。
彼の患者であるこの私は、ピリカでも1、2を争うほどの重罪人であるはずなのに。
彼の視線、彼の話し方に私への敵意が欠片も感じられないのは何故だ。
しかし、ドラコルルがその点について尋ねようとしたとき、担当医はさっと席を立ち上がって
病室を出た後だった。
後に残された格好のドラコルルとトクルの間に、しばし沈黙が落ちる。
「ああ、トクル君。ところで・・・・・・」
我々の立場はどういうものだろうか。刑の執行を待つばかりの犯罪者なのだろうか。
ドラコルルがそう尋ねようとしたとき、今度はドアがやけに荒々しく開かれた。
「よお、くたばりぞこない。目を覚ましたってな」
大股で無遠慮に入室してきた人物を見て、ドラコルルはこの日3度目の驚きを味わった。
「・・・・・ゲンブ!」
たった一人で入ってきたにもかかわらず、先の医師や看護士の集団以上に騒々しい雰囲気を
引き連れて入ってきたドラコルルの仇敵は、勢いよくトクルの隣に腰を下ろした。
そして、トクルの方に首を捻じ曲げ、片手で拝む仕草をする。
「すまないな、トクル君。俺は今からドラコルルと話がある。少し席をはずしてくれんか?」
「小官に命令する権限を有するのは、ドラコルル司令官ただお一人です。たとえ、PCIAが消滅した今でも」
トクルが、まさしく木で鼻をくくったような返事をそっけなく返したのも無理はない。
ついこの間まで殺し合いを続けていた人間同士、しかも片一方は永い眠りから目覚めたばかりで
コンディションは万全ではない。もしもゲンブが彼女の上官に何かよからぬこと―例えば、逮捕を
たくらんでいた場合、それをどうにかできるのは今となってはトクルだけなのだから。
>>494 「聞き分けのない奴だ、まったく・・・おい、ドラコルル。お前の部下はこんなのばかりなのか」
大げさに顔をしかめ、ゲンブは嘆いて見せた。
軽く目を閉じ、肩をすくめたドラコルルはゲンブの嘆きにそっけなく返しただけだった。
「少尉は特別だ。私の最後の部下だからな」
「とはいえ、たとえ部下の前といえど内密にしたい話はある」
ゲンブの声のトーンが少し落ちたことに気づいたドラコルルは、彼の目を見た。
何か、ひどく重要なことを伝えようとしている人間が誰しも持つ、鉱石のような強い視線。
なるほど。
ドラコルルは、ゲンブがその軽薄なそぶりとは裏腹に、何か重大な話を持ち込んできたと悟った。
「命令―トクル少尉。貴官はただいまから30分間、本病院のカフェテリアで時間調整を行え。爾後、
適当な飲料物を購入し、帰還すること。なお、飲料物の対価はPCIA総軍司令官より後ほど支給
される。復唱はいらない。すぐにかかれ」
「・・・・・・・・」
「どうした、少尉。よき部下は、命令受領後速やかに行動をおこすものだぞ」
「・・・・・・了解しました」
トクルが、未練たっぷりに振り返りつつ病室を出て行った後、ゲンブは声のトーンを元に戻した。
「いい部下を持って幸せだな。彼女、毎日お前さんの病室にやってきて世話をしてくれてたんだぞ」
「あいつは、私にはもったいないよ。もしよければ、君が引取ってやってはくれないか」
「俺が?バカを言え」
ゲンブは苦笑した。同時に、ドラコルルが意識を失ったときに思わず叫んだ言葉をふと思い出す。
お前が死んだと思い込んだから、俺はあの時がらにもない事を口走っちまった。
幸い、そのときお前は意識を失って、俺が何を言ったか聞いてすらいなかったろう。
まあ、それもこれも、この男が生きていたとあってはどうでもいいことだが。
>>495 「それよりも、まずはこれを見てもらわんとな」
苦笑しつつ、ゲンブは懐から紙包みと封筒を取り出した。
「まずは書類からだ。きちんと内容を確認しろよ」
封筒を手にしたドラコルルは、封を破りながら軽い口調で言った。
「地獄への招待状―逮捕状か?また随分と手回しのいいことだな。私が今日目覚めるなどとは
予想もしてなかっただろうに」
「いいから、とっとと読め」
冒頭に大きな飾り字体で「辞令」と記されたその書類は、ドラコルルのフルネームの右下にこう
書かれていた。
「 こ の 者 を ピ リ カ 内 務 長 官 に 任 ず 」
辞令から顔を上げたドラコルルは、呆然とした顔つきでゲンブを見つめた。
「・・・・・・何の冗談だ、これは」
「冗談?今日は愚者祭じゃないし、そもそも俺は冗談が苦手だ・・・・その書類は、本物だよ」
平然と答えるゲンブの顔を、何か信じられないものでも見るかのように、ドラコルルはなおも言い募る。
「しかし、ゲンブ!君もわかっているだろう。私は・・・・私は、ピリカを破滅の渕へ追い込みかけた張本人なんだぞ」
辞令をシーツに放り投げたドラコルルは、吐き捨てるように続けた。
脳裏に、今までの情景―意に添わぬこととはいえ、確実に自分の手でなした様々な悪行の数々が
フラッシュ・バックを起こしていた。
「私は多くのピリカ市民を逮捕し、パピを銃殺し、内乱の指導者としてピリカを苦境の果てまで追い込んだ。・・・・私は、
首まで罪悪につかりきったただの愚か者だ。そんな私に、いったい今更、責任をとる以外の何が求められるというんだ!」
>>496 ドラコルルの悲痛とも言える叫びにも関わらず、ゲンブは半ば面白がるような口調で答えた。
「ああ・・・・確かに、貴様は責任をとらなければならない。ピリカをここまで追い込んだ責任をな。
しかし、だ・・・・」
ゲンブは言葉を切り、小脇に抱えていた新聞をベッドに放り投げた。
「口であれこれ言うよりも先に、これを見ろ」
新聞を取り上げたドラコルルは、小さい声で見出しを読み上げる。
「『ギルモア疑惑 前大統領補佐官きょうにも逮捕』・・・・・・これは?」
「読んでのとおりだ」
禅問答のごときやりとりに、ドラコルルの顔がしかめられる。
「それだけでわかるわけがなかろう」
「皮肉な話だがな、ドラコルル。ギルモアは、お前さんがあの世に叩き込んだギルモアは、
その生涯の最後にお前さんの罪の―いや、ピリカ全土の大掃除をしてってくれたんだ。
感謝すべきかどうかは悩むところだがな」
ゲンブが語った内容は、ある意味でなんとも滑稽な話だった。
ギルモアは、7年前の襲撃事件を辛くも生き延びた―ドラコルルにとっては意外なことに、
あのとき襲撃された彼は替え玉などではなく、本物であったらしい―、数年間の潜伏を経て、
ある日突然ピリカ新政府にもぐりこむことに成功した。
その手段は、ゲンブが歯噛みしながら憤ったようにひどく現実的なもの―金と色であり、
これによって瞬く間に骨抜きとなったピリカ新政府の大統領府スタッフは、全てを極秘としつつ
ギルモアに内政顧問の地位を与えた。
>>497 しかしギルモアは、病的なまでに用心深い―ありていに言えば、極めて臆病な男であった。
彼は、人間の欲望を利用してかつての仇敵の懐にもぐりこむ際に、そのやり取りや証拠となる
物件を多数保管していたのだ。
例えば、ピリカ新政府への"就職活動"で行った贈賄の現場を一部始終記録した映像。
例えば、複数の政府高官と彼の手のものである美女あるいは美丈夫が一糸まとわぬ姿で
睦みあっている画像に音声媒体。
例えば、彼の復帰に大きな影響力をもつ大統領府スタッフの個人的な失点に関する詳細な記録。
エトセトラ、エトセトラ。
そして、ギルモアが顧問という地位から実権を握るようになってからは、ギルモアが関わらなかった
数々の腐敗に関する記録も彼のもとに届くようになった。
ギルモアは、いわば自分の地位を担保するこうした全てを誰にも知られぬ場所に隠匿し、
彼の汚れた手を握った全ての人々に告げた―もし私が死ねば全てが公開され、お前は社会的に
抹殺されるだろう。そうなりたくなければ、私をどうこうしようとは思うな。
かくして、ギルモアはピリカ新政府においても支配者足りうる地位まであと一歩の所まで上り詰めた。
しかし、何も知らぬ大統領―彼は、その精錬潔白さのみをもってその座に祭り上げられた―が、
”反逆者”ドラコルルの討伐作戦、その首実検役として、辺境の地R113基地へギルモアを派遣した
ことが全てを変えた。
死闘の果てにドラコルルがなしとげたギルモアの打倒。それは、必然的にギルモアが扼していた
ピリカ新政府の暗黒面、その数々を一挙に白日の下へとさらけ出すこととなったのである。
>>498 「というわけで、ピリカ新政府は発足10年目にして最大級のスキャンダル事件に次から次へと
見舞われたってわけだ。逮捕者の数を聞いたらきっと貴様は驚くぞ。上は閣僚から下は田舎
役場の課長補佐まで根こそぎ逮捕だ。今やピリカ新政府は何もかもがムチャクチャな有様と
いうことさ」
長広舌を締めくくったゲンブは、じっとドラコルルの顔を見る。
いまだゲンブが何を言おうとしているかはかりかねていたドラコルルは、正直に尋ねた。
「・・・・・それで?」
「意外と物分りが悪いんだな、貴様。まあいい。はっきり言ってやろう。
いいか、今のピリカ政府は、秩序の何たるかに知悉し、頭が廻り、役人のしきたりに精通し、
胆力があって、なおかつ弱音をはかない政府高官ってのが宝石より貴重な有様なんだ。
特にそれは、ピリカ内務省―貴様にわかるように言えば、国内治安や対敵諜報を主管する役所だ―
で顕著だ。ギルモアの野郎、あっちの方面を精力的に開拓してやがったからな」
ドラコルルは、思わず目を見開いた。
「それで、かつてPCIAでその二つを受け持っていた私に、白羽の矢が立てられたと?」
「そういうことだ・・・白羽の矢を立てたのは誰あろうこの俺様だがな」
何と言うことだ。ドラコルルは驚愕した。
この男―かつてはレジスタンスの頭目であり、今やピリカ新政府の要人であるこの男は、かつて
自分と血みどろの戦いを演じたこの私を、自分の属する政府にスカウトしようとしている・・・・・・。
信じられない。なんという無思慮だ。
ゲンブが何を言っているかすら理解しがたく思えたドラコルルは、慎重に口を開いた。
「2点ばかり確認したいことがある」
「なんなりと聞け」
>>499 「ありがとう・・・・まず一つ。私は、ついこの間まで反逆者として全ピリカに指名手配された賞金首だ。
その罪状は、パピ元国王の殺害だったはず。そんな奴がのうのうと舞い戻ってくることを、新政府が
歓迎するとは思えない。ゲンブ、たとえ君が擁護してくれたとしても、だ」
どんな難題を持ち出すのかと勢い込んでいたゲンブは、拍子抜けしたようだった。
「なんだ、そんなことか。答えは簡単だ。今のピリカ新政府スタッフに、お前の復帰を望まない奴は
一人としていない。理由を知りたいか?」
「うむ」
「ギルモアが死んだことで、ありとあらゆるスキャンダルが一挙に表に出たという話はしたな」
「ああ」
「そのスキャンダルの当事者が、自分の汚職だの異常性愛だのをマスコミにばらされたときに
どういう手をうつか。お前なら容易に察しがつくんじゃないか?」
「・・・・スキャンダルがでっちあげであると言い張るか、あるいは、スキャンダルの発信源が信頼
ならないものであることを主張して、相対的にスキャンダルの信頼性も損ね・・・・そうか」
話しながらドラコルルが思い至った可能性に、ゲンブは大きく頷いて賛意を表す。
「正解だ。逮捕されたり、嫌疑をかけられたりした政府高官のうち、ギルモアの過去について何某か
の記録や証拠を持ってる連中が、われ先にとそれを公表しだしたんだ。自分達の罪をちょっとでも
軽くみてもらうためにな。・・・・・でだ、その中に、いったい何をどうやってそんな記録を撮ったのか、
ギルモアがパピの処刑を命じたものも混ざっていた。・・・・・これで充分か?」
「充分だ。そして私は悲劇の英雄に祭り上げられたわけだな?」
「やれやれ、ちょっとは自分の幸運をかみ締めたらどうだ・・・・で、二つ目とは?」
>>500 「ゲンブ、君は確かにピリカ新政府の高官ではあるが、所詮は軍の人間だ。いかに元レジスタンス
の英雄とはいえ、軍人が政治に介入できるほど、ピリカ新政府は甘いところだと思えない。有体に
言えば、大統領が私の抜擢に反対するのでは?・・・・彼は大のPCIA嫌いと聞いていたが」
ドラコルルにしてみれば、それは決定的な質問―というよりは異議であったのだが、
ゲンブはまたも肩透かしをくったような顔をしただけだった。
「それなら全く心配はいらん。大統領は絶対に反対しない」
「どうして、そう断言できる」
余りにもきっぱりと言い切るゲンブに、ドラコルルは不審そうな顔をする。
こいつは、いったい何を根拠にこれほどまで自信たっぷりなんだ・・・・?
「なぜなら、この俺様が今はピリカ新政府の大統領だからだよ。貴様の言う大統領は1ヶ月前に
辞任して、後継ぎが根こそぎひっくくられたから、俺が暫定ということで祭り上げられた。ドラコルル、
貴様辞令をちゃんと読んでなかったな?ちなみに、俺は今予備役だ・・・・というわけで」
ゲンブは胸をそらし、ふざけているのか真面目なのか図りかねる声音で重々しく告げた。
「ピリカ新政府暫定大統領として、ドラコルル。貴官の内務長官就任を正式に命ずる。体調が回復
次第、直ちに任務に精励するように。それと、今後は口の聞き方に気をつけろ。一応俺は貴様の
雇い主だ」
「しかし、私が、そのような。本当は、私は、地獄で永遠に償わねばならぬような罪を・・・・・」
「何を寝ぼけたことを言っとるか。地獄はここだぞ」
「なんだと?」
>>501 「ああそうとも。いいかよく聞け。一旦内務長官として任務についたら、貴様には風呂に入るときと
トイレに入っているとき以外休みなどない。なぜなら、今のピリカは10年以上にわたる内乱の後遺症
と、今回の一大スキャンダルで何もかもがしっちゃかめっちゃかだからだ。犯罪の発生率は日増しに
倍々ゲームで、本来それを取り締まるべき警察は例のスキャンダルで半身不随。
覚悟しておけよ。貴様がPCIAにいたころとは何もかもが大違いだ。給与は財政難で半分あればいいほうだし、
長官公舎もボロアパートに毛が生えたような代物だ。部下は役立たずの見本市で、予算は
雀の涙。ええ?なんとも気がめいる話だろう。
おそらく、ピリカが旧に復するには10年単位の時間が必要になる。それまでの間、お前はずっと
手足を縛られたまま治安の回復と維持に全身全霊を傾けねばならん―ピリカをここまでにした責任
はお前にもあるからな。
もしそれを悔いておるなら、永遠に償いつづけるんだ。本当の地獄のほうが、まだましかもしれんぞ」
一挙に喋り終えたゲンブが、ドラコルルにはふとひどく滑稽に思われた。
我知らず小さな笑いが、自嘲ともいうべき笑いが、ドラコルルの口から漏れる。
「・・・・ふふ、確かに、な・・・・ここは、地獄かも知れない」
意図的にその言葉を字義どおり受け取ったゲンブは、さらに胸をはって断言した。
「そうとも、ここは地獄だ。そして俺は、さしずめ魔王というところだな。いいか、俺の下についたから
には、貴様が義務を完遂するまで―貴様の腕で、ピリカに秩序が戻るまでこき使ってやる。死ぬこと
すら許さんからな!」
ドラコルルは、ゲンブの口元を見ながら、何故かデジャヴに近いものを感じていた。
ふふふ・・・・地獄、か・・・・パピ、確かに君の言う通りだった。ここは、地獄だよ。
しかし、それにしても、これほどまでに居心地のいい地獄は、初めてだがな。
>>502 約束があるとかであわただしくゲンブが去っていった病室に、ひとり取り残されたドラコルルは、
しばし無言で考え込んでいた。
私が、内務長官か・・・・・・。
確かに、ゲンブの言うことには一理も二理もあるし、彼が―というよりはピリカ新政府が私を求めて
いるならば、それには全力で応えたい。
しかし、本当に私でいいのだろうか。
ドラコルルは、この期におよんでも、なおためらいを心から一掃出来なかった。
それは、PCIA長官という肩書きを気にしているからではなく、いうならばドラコルルその人が生まれながらにして持つ人間としての善性―一度決めたことは何があっても曲げないという性格によるものかもしれない。
ともあれ、彼は、新たな世界へと踏み出すことに、いまだ躊躇していた。
・・・・少し、外の空気を吸うか。
ドラコルルは、そろそろとスリッパを履き、ふらつく体を支えながら、病棟の屋上へと向かった。
病院の外は、夏の強い日差しにさらされていた。
3ヶ月というから、もう晩夏に近い季節になっているであろうにも係わらず、太陽はじりじりと
照りつけ、屋上のそこかしこに陽炎を揺らめかせている。
しかし、不快なほどではない。
乾燥した空気は、どこからか吹いてくる風に程よく攪拌され、ドラコルルの皮膚に浮く汗を瞬時に
して気化するからだ。
おぼつかない足取りで屋上の手すりまで歩いたドラコルルは、金属製のそれに手をつき、体重を
預けつつ、自分の義務と責任のありかについてしばし思いをめぐらせる。
見舞い客、あるいは入院患者の家族なのだろうか、屋上の片隅から、子供たちのものと思しき
歓声が風に乗ってドラコルルの耳に届いた。
>>503 ふと、ドラコルルの視線が、紙包みに落される。
先ほどゲンブが押し付け、何気なくそのまま屋上まで携えてきたのだ。
これはなんだろう。随分軽いもののようだが・・・・。
単純な好奇心にかられ、包みを解いたドラコルルは、思わぬ贈り物を手にすることとなった。
紙包みの中には、ドラコルルが愛用していたものと寸分たがわぬサングラスが紙片とともに入って
いたのである。
同封された紙片には、ゲンブのなんとも乱雑な筆致でこうかかれてあった。
「貴様にはこれがないと格好がつかんだろうからくれてやる。
まったく、こんな旧型のサングラスなんぞ愛用しやがって。
生産中止だとかで特注する羽目になってしまったじゃないか」
あの男も、正直ではないな。
小さく笑ったドラコルルは、包み紙をポケットにしまい、サングラスをかけた。
うむ、なかなかいい感じだ。これならば、最後の戦いで失われたサングラスの代わりとして
使えるだろう。
遮光の感覚を掴むために、サングラスをかけたまま空をぐるりと見渡すドラコルル。
そして、視線を地面に―病院の屋上から下ろしたドラコルルの視界に、信じられぬ光景が写った。
>>504 惑星ピリカ首都郊外に建てられた総合病院。
永きにわたる内乱から、ようやくのことで立ち直りかけたために、真っ先に再建されたその病院は、
周囲が再開発地区に指定されたため、何も遮るものがない平地であった。
そして、今、その平地に―地平線の果てまで兵士たちが集まっている。
あの見慣れたPCIA軍の軍装と、戦局が悪化してから採用されたPCIA総軍向けの野戦服。
おおまかにはその2つに区分される、軍服を着込んだ無数の兵士や士官が、定規で測ったかの
ような等間隔を維持して、美しいとしか表現しようのない隊列を組んで、ドラコルルを見上げている。
あれは・・・・!
絶句するドラコルル。
ややあって、一人の士官が隊列から一歩前に踏み出し、大声で叫んだ。
「総員、頭ァ中!」
号令にあわせ、一斉にドラコルルを見上げる兵士たち。
その動きは、まるで神経が走っているかのように斉一的でいささかの乱れもなかった。
号令を取った士官―PCIA総軍の野戦迷彩服を着用したその士官は、ドラコルルの見間違いで
なければ、随分長い間彼と苦楽を供にしてきたアウバ大佐であった。
しかし。ドラコルルは苦く思う。
彼がアウバであるはずはない。なぜなら、アウバは2年前に私を庇って狙撃兵に頭部を撃たれて
死んだはずだから。そんな彼の驚愕―そういえば、彼が驚くのはこれで何度目だろう?―に拘泥
することなく、死んだはずの大佐は、更なる号令をかける。
「ドラコルル元PCIA長官に対し・・・・敬礼!」
>>505 ざんっ。
砂嵐のような音とともに、無数の―何十万人といそうなPCIAの戦士たちは、一斉に踵を合わせ、
右腕をきっちり三角形に保って、ドラコルルに挙手の礼を捧げた。
あらゆる時代、あらゆる世界の指導者が羨望するであろうその統率。軍の軍たる所以をあます
ところなく見せつけるその動作。
しかし、ドラコルルは気づいていた。
その統率を維持している勇者達―彼を見上げている何十万人は、すでにこの世にはいないことに。
彼等の体が、夏の陽炎のように儚く揺らめいている事に。
お前達・・・・
ドラコルルが呆然となるのが遠目にもわかったのか、アウバは人懐っこいあの微笑を浮かべ、
さきほどよりはるかに明度を増した声で最後の号令を下した。
「ドラコルル新内務長官の就任を祝し、総員帽振れ!」
それまで、仮面のように謹厳な無表情を保っていた兵士や士官の全てが、アウバと同じく
一挙に笑み崩れた。
そして、各自が被っていたもの―制帽、略帽からヘルメットにいたるまでの全てを手にし、
力いっぱい振り回し、大声で叫ぶ。
余りにも多くの声が一斉に発せられたお陰で、誰が何を言っているのかドラコルルにはさっぱり
聞き取れなかった。
しかし、その声―もしかすると、ドラコルル以外には聞こえない声だったのかもしれないが―は、
音ではなく、思いの塊となってドラコルルの元へと殺到した。
>>506 「長官、ご無事で何よりです!」
「ピリカをよろしく頼みます!」
「我々は、時間のない国にいます。我々のことはご心配なく!」
「長官・・・我々の分まで、どうか、いつまでも、いつまでもご壮健で!」
「今までお世話になりました!我々一同、その感謝を忘れることはありません!」
「さようなら、全てが終わったあとにまたお会いしましょう、長官!」
何十万人の、今はもうこの世にいない兵士たちの思慕と敬意と忠誠が、煌き溢れる波となって
ドラコルルのもとへ押し寄せる。
その波は、ドラコルルが自ら作り上げた―作り上げざるを得なかった、彼の心を堅く厚く覆う
鎧を揺さ振り、罅を入れ、打ち砕き―そして、彼の剥き出しになった心を一挙に満たした。
お前達・・・・・待っててくれたのか、私が目覚めるまで!
お前達を死に追いやった私を恨むことなく、それどころか、私に新たな義務を果たし―道を歩めと
言ってくれているのか。
なんという・・・・なんという・・・・・お前達は・・・・ああ、お前達は、なんというお人よしぞろいだ。
どうして恨みつらみの一言も言わない?どうして私をそこまで慕うことができるのだ?
畜生・・・・・お前達は世界一の―いや、宇宙一の、最高の大馬鹿者だ!
「へ、兵士諸君・・・・・・私は、私は・・・・・・」
ふと、ドラコルルの視界が歪み、何もかもが急にその形を変えた。
そして、彼は自分の頬に涙が―絶えて久しかった思いの発露が伝わってくるのを感じている。
その涙をもたらしたもの―感情の急激な昂ぶりは、しかし、彼にとっては何故かひどく快かった。
「私は・・・・諸君のような・・・・・部下をもてたことを、一生誇りに思う・・・・・・・」
>>507 震え、霞むドラコルルの視界に、突然変化が訪れた。
見はるかす限りの平地に整列し、手にした制帽や略帽、ヘルメットをちぎれんばかりに
振り回し、口々に歓声を挙げる彼の忠実な兵士たち。
それまでも、陽炎のように定かではなかった彼等の身体から、徐々に色彩が消えてゆく。
足元から膝へ、胸へ、そして頭へ。
水分が布地へ浸透していくように、ゆっくりとだが、確実に兵士たちが白一色へと染まってゆく。
替わって、彼等の体の奥底―もし魂というものがあるのならばまさにそこが置き場所であろうと
思われる部位から、朧な燐光が―夏の強い日差しの下にあるにも係わらず、それだけははっきりと
見て取れる淡い光が点じ、すぐにそれは消えうせた色彩に取って代わって兵士たちの体を満たしていった。
同時に、数十万の体躯、その輪郭が徐々にぼやけ、形を失い、溶け崩れて、一つに―兵団の中央により集まる。
ほどなくして、ドラコルルの眼下に整列した彼の部下達は、一つの巨大な光球に姿を変じ、ゆっくりと地面を
離れて浮き上がった。
幼児の手を離れた風船が舞うように、シャボン玉が風に乗るように、ゆらりと浮かび上がった光球は、そろそろと
高度をとりつつ、病院の屋上で手すりを握り締めるドラコルルの視線の高さまで浮かび上がる。
そして、長官との別れを惜しむかのようにしばし彼と同じ高さで漂っていた光球は、何かを決意したかのように
2度、3度その巨大な外形を震わせて―弦から放たれた矢のように、無音のまま上空へと恐るべき勢いで飛翔した。
>>508 本懐を遂げた兵士たちの魂魄は、重力の桎梏を脱して―蒼穹の高みに、余りにも現実離れした
鮮やかさに不安すら覚えるほど美しく青く澄んだ大空の一点を目指し、輝く帯を残しながら、
まっしぐらに駆け上ってゆく。
・・・帰ってゆくのだな、あそこへ。
ドラコルルは、見る間に遠ざかる光に向かい、ゆっくりと敬礼しながら思った。
すでに、彼の目からは涙が消えている。
私に別れを告げるという目的を達成した彼等の行くべき先はただ一つ・・・・そう、私がパピとともに
垣間見た、あの白く眩い夜空だ。
そこで―この悪しき世界から永遠に解放されたはるかに広い揺りかごで、彼等はこれから安堵の
まどろみをむさぼる。きっと、そうに違いない。
そして、彼等から期待と懇願を受けた私は、指揮官たるこの私は。
―何をなすべきか、答えは今明らかになった。
「兵士諸君―ゆっくり、休め。諸君が義務を果たしたことは、しかと見届けた」
表情を引き締めたドラコルルの声からは、もう微塵の感情も感じられなかった。
兵士諸君。私は、諸君から預かった命を大事にする。
私は私なりに努めを果たすことにするつもりだ。ピリカのために。
「私も、義務を果たし終えた後に、そこへ行くこととしよう―もしもその資格があるのならば」
>>509 光の残照が消え去るまで敬礼をやめなかったドラコルルの耳に、幼い子供達の会話が飛び込んできた。
「今の、見た?」
「うん、見た!すっごくきれいだったね!」
「兵隊さんが空に登って、光になったんだよ!」
振り返るドラコルルの傍らを、数人の子供が、口々に目の当たりにした情景を語りつつ、通り過ぎ
ようとしていた。
そのうちの一人が、ふっとドラコルルを見る。
そして、子供特有の直截さそのままに、あどけない口調で尋ねた。
「おじさん・・・・泣いてたの?」
彼等にも、私の部下が見えていたのか。ドラコルルは、照れたように笑った。
となれば、あれは私の幻覚などではなかったということか・・・・非科学的な話ではあるが。
「ああ・・・・そうだ。今君たちが見た光は、おじさんに会いに人達なんだよ・・・・」
「本当に?・・・・・じゃあ、あの兵隊さんたちはおじさんの友達なんだ!すっごーい!」
口々に、彼等なりの賛辞をまくし立てる子供達。
ドラコルルはゆっくりとしゃがみこみ、子供達に視線を合わせた。
「あの兵隊さんたちは・・・きっと、君たちのためにも一生懸命頑張ったんだと思う。
ピリカを、君たちがこうして一緒に遊んでいられるような星にするために、力いっぱい自分のする
べき事をやった。少なくとも、私はそう思う」
子供達は、しばしきょとんとした表情になった。
「そうなの?」
「そうとも。だから、おじさんから一つお願いがある」
「なあに?」
「・・・みんな、ずっと仲良く、楽しくやるようにな」
「何をいってるの、おじさん。そんなの当たり前じゃないか!」
子供達は、そのやりとりを最後にドラコルルに興味を失ったらしい。
一人が駆け出すと、全員が後に続き、あっという間にドラコルルの前から消え去った。
>>510 おじさん、か。なんと耳に心地のいい響きだろう。
蒼い空に視線を上げたドラコルルは、ふっと微笑を口元に浮かべた。
彼等のような子供達がいる限り、ピリカは必ずよみがえる。そう、間違いなく、よみがえる。
一度は捨てた命だが、ゲンブの命令に従ってこの星の復興に全てを捧げるのも悪くないだろう・・・・。
そのとき、ドラコルルの耳に、背後から声がした―あの時、白く輝く夜空の下で聞いた声が。
「ぼくも待ってるから。君の気がすむまで、ずっと。・・・・だから、がんばってね。ドラコルル」
パピ!
驚いて後ろを振り返るドラコルル。
しかし、彼の視線が捕らえたのは、屋上のドアを開けてこちらにやって来たトクルであった。
柔らかい髪を風のなぶるがままにまかせ、まぶしい日差しに手をかざしつつ、トクルは怪訝な
面持ちでドラコルルに尋ねる。
「ここにいらっしゃったのですか・・・・司令官、私の顔に何か?」
「いや、何でもない・・・・ところで、トクル君」
「なんでしょうか」
「君は、内務長官付秘書官という仕事に興味はないかね?給料は安いが、働き甲斐はあるぞ」
(
>>219「涼しい風」に続く)
リアルタイムで拝見しますた。
・・・泣きそうでした・・・とくにPCIA軍の皆様が天に昇ってゆくあたりなんかはもう・・・
こんな話を書ける222様に敬礼!!(右手が綺麗な三角形を描く)
皆様こんばんは。222でございます。
さて、先週からお約束しておりました「ドラコルル」外伝最終章アナザーストーリーを
一挙にアップさせていただきました。いかがでございますでしょうか。
24レスになっちゃいましたね。ボーナストラックのつもりが、2枚組CDになってしまった
ようなものでしょうか。あと、トクルが女性というのは完全な後付けです。
そのため、地の文で「彼」という表現があるなど矛盾が目立ちますが、最後のはっちゃけ
ということで笑ってお許しくださいますよう、伏してお願いいたします・・・・・・。
ともあれ、お読みいただきました皆様に心からお礼申し上げます。
ありがとうございました。
実は(といってもだいぶ前からバレバレでしたが)、私は上のハンドルで
漫画サロン板にてあれこれ書き込みをさせていただいております。
こちらのスレッドにおいても、今後はこのハンドルを遣わさせていただきますので、
どうぞよろしくお願いします。
とはいえ、私が書きたいことは、ほぼ全てやり終えました。
まだネタはございますが、熟成させるまでに今しばらく、長めのお時間を頂戴することになるでしょう。
バキスレのほうも、だいぶ更新を怠っていたので、これから少しでも更新にかからねばなりませんし。
しかし、何かまたいいネタを思いついたらアップさせていただきます。
それでは、またお会いしましょう!
追伸
>>450さん、すばらしいアナザーストーリーをありがとうございました。
読んだとき「あ、こういう手もあったんだよなァ」と膝をたたきました。
>>221 さらに10年後、一つの訃報が惑星ピリカの全土に配信された。
「番組の途中ですが、ここで臨時ニュースが入りましたのでお知らせいたします。
惑星ピリカ元大統領のドラコルル氏が、本日12:00過ぎ、心不全のため死去しました。享年60歳でした。
氏は、故ゲンブ元大統領時代に、内務長官として惑星ピリカの治安回復に多大な功績を・・・・・」
※ ※ ※
「やあ、パピ。待たせたな」
「頑張りすぎだよ、ドラコルル」
「ハハ。大統領を辞めても、まだまだやることは沢山あったからな。政策のアドバイスだの、慈善事業の
後援だの、後進の指導だの・・・目が廻るようだった」
「アドバイスって、トクルさん―トクル大統領に?」
「ああ。だが、あれも強情な女でな。10のアドバイスのうち9までにあれやこれや反対しおって。
もう若くないというのに、何度も徹夜で議論する羽目になった」
「それだけ頼りにされてたってことなんだね」
「だが、それもあらかた片付いた。もう、ピリカは私を必要としない。だから、私はここに来たのだと思う」
「だろうね・・・・・じゃあ、歩こうか。みんなも待ってるよ」
「うむ・・・・そうだ、パピ」
「?」
「君とは、積もる話が沢山ある。歩きながらでもいろいろ君の意見を聞きたいことがあるんだが、構わないかな?」
「それはこっちもだよ、ドラコルル。しばらく歩かなきゃいけないから、いっぱい話をしよう」
そして2人は、あの白い夢のような夜空の下を再び歩き始めた。
・・・・・・・・・今度は、彼等の前に分岐点は現れなかった。
どこまでも続く一本道を遠ざかる2人の影が、徐々にしかし確実に小さくなってゆく。
彼等の背後で優しい風が吹き、白くぬれたように光る草原がかすかにざわめいた。
<完>
皆様こんにちは。外伝担当(222)でございます。
またお会いしましょうと申し上げておきながら早速復活してしまいました。
ま、早い話が一晩寝て起きてから全体のオチを思いついたということでございます。
書き上げて思いましたが、私の書いたネタ、結構つながりが出来ましたね。
「歴史の転回点」→「通り過ぎた回天」→「祖国のために」→「白い夜空の下で」→「蒼穹への帰還」
ちなみに、上のつながりは、「歴史の〜」でギルモアがドラコルルに殺されなかったという話の
場合ですが。あのときドラコルルがギルモアの部屋にやってきたのは、公開処刑への抗議ということで。
で、2人が言い争っているところに反政府暴動の知らせが飛び込み、それが内乱へと繋がる、ってな
具合ですか。
もし今後ネタをアップさせていただくとすれば「歴史の〜」から「通り過ぎた〜」までの空白を
埋めるストーリーになりますかね。あるいはクーデター前のエピソード1か。
ともあれ、今度こそ本当にネタを出し尽くしました。
それでは、また!
ほんとに、色々言いたい事があるんですが・・・とりあえず。
ありがとうございます!外伝担当さん!
こんな素晴らしいストーリーを生み出して下さった事、それを私たちに見せて下さった
事に、こころから感謝します。
トクルが女性・・・やられた!
で、その、もしかしてその後二人は・・・・・
いや、それはどうにでも想像すればいいんですよね。
左の道が再びこの世に戻る道で、そこでこそ償いができる、か。
考えもしませんでした。脱帽です。俺はてっきりそのまま右の道に行く話かと。
・・・・参りました!それにしても222さん=外伝担当さんって何か文筆活動でも
しておられるんですか?このストーリーテリングの凄さはそうとしか・・・
外伝担当さん、乙でした。読み終わって胸が一杯です。
このスレの住人でよかったとあらためて思ってます。
何かまた外伝さんの中に物語が生まれて、それを見せて頂ける日を心待ちに
しています。どうぞまたいつでもお越し下さい。
外伝担当様、再臨いつまでも待ってます!
個人的にエピソード1が一番読みたいです。
どうしよう。ネットカフェなのに泣きそうだ。
後で思い出して、とんでもない時にいきなり涙出そうだ。
>>521 思い出し泣きというやつか(w
そう言う漏れもさっきから・・・・・
パピの死後約40年か。本当に「長い旅路」だなあ。
何か、人の生き方について色々考えさせられた。
……凄い人だ、外伝担当氏。
そうか!分岐ってのはそのまま天国に行くか、まだ生きて償うかだったんだ。
深い。なんか言葉もないな。俺、この話絶対忘れないと思う。
>>524 つまり、死ぬなら初めから天国行きしか用意されてなかった。でも、まだその気に
なれないなら、もうしばらく生きて気が済むまで償って来なさい、と。
・・・・感動。こんなに感動したの久しぶりだ、マジで
>>517 俺はその後、トクルは“公私共に”長官のパートナーになったんだと思うが
でないと女にする意味あんまりないような。ま、その辺りは作者に聞かないと
ほんと、いい話読ませてもらったYO
前にも出てたけど、劇場版にするならたっぷり3時半はほしいとこだな
528 :
527:03/08/02 18:19 ID:???
時間指定かよ、3時半って(w
3時間半、な、もちろん。
見終わった後誰からともなく拍手が沸き起こるような映画だろうな、きっと
夕飯前に泣かすな!
泣いた…。
素晴らしいな。色んな意味で。
もっと何か言いたいけど言葉が見つからない…。
兵士が揃う場面を読んでいて鮮やかに情景が浮かんで参りました。
陽炎のような、と聞いて切なくなるのは
ああ、今が夏だからかもしれませんね。
良い夢を見る事が出来そうです。
外伝さん、良い話を有り難うございました。
トクル少尉を女としてもう一度「通り過ぎた回天」読むと・・・・
すごくオトコ前な女だな。萌え
533 :
マロン名無しさん:03/08/02 21:37 ID:t/OKdxYp
>>532 でも、よく考えたらパピ似なんだよな、トクルって。
パピ似の女って・・・(w
外伝さん、本当に素晴らしい物語をありがとう。
>>534 目の大きい美少女と考えればいい。
F先生の絵は記号なんだから、好きなように脳内変換しる。
各章のタイトルも絶妙なんだよな。短い言葉に全てが込められてる。
漏れ的には「通り過ぎた回天」が一番グッときた。「蒼穹への帰還」も泣けるが。
その後長官とトクルがどうにかなるんだったら、その辺の話も読みたいな
エピソード1は、クーデター前の話もいいけど、長官とパピが大学で出会う話
とかも見たい。チョト青春グラフィティ入ったやつ(w
>>528 で、当然見てる最中はあちこちからすすり泣きが聞こえてくるような映画だな
541 :
マロン名無しさん:03/08/03 12:42 ID:oHF8AGei
しかし、外伝氏の表現するイメージもすごいよな。
白い夜空とか青空に駈け上っていく光とか。
想像するとその美しさに震えてしまう。
バキスレの柳外伝の作者と同一人物というのがまたびっくりだがw
いくらなんでもそりゃ褒めすぎだろ。
その位の表現なんて小説としてはありふれてるし、それで感動するなんて言ってる奴は
余程読書経験の薄い現代っ子なんだろう。
っていうレスさえ無いほど落ち着いたスレですね。
がんばってくれ外伝さん。
>>540 キそうだな。とくに分岐の前の二人の会話あたりで。
全部通した長編としてもすごくいいが。
俺は一番最初の「通り過ぎた回天」単体でも好きだし、
アナザーバージョン無しの、長官が左を選んで終わる「白い夜空の下で」もイイと思う。
>>222 さん
3巻王なんて揶揄されてることも多い,
作家の作風によく似てますね。
主人公もしくはその主人公に子供の時に世話になった者の
回想から入り,だいたいにおいて絶望的な彼の状況を示し,
またなぜ彼がそんな状況においても戦わなくてはならなく
なったのかを感情と論理で説明し,また彼のの天才的な戦術
または戦略的手腕と彼に全幅の信頼を寄せる兵の働きにより,その
世界における最悪の人物が打倒され,そして,主人公の働きに
より作り出された最高に幸せじゃないけど,それなりに幸せな
現状の象徴として,未来へのさらなる希望を感じさせる明るい
表情の子供を持ち出すあたり,また,その主人公には主人公に
絶対の忠誠を誓うとてつもなく優秀かつ諫言を呈することを
全く厭わない異性の副官がついているあたり,まるで本人が
書いているんじゃないかと思うくらいです。
その作家,最近,どうもサボり気味なのですが,
その人の書く文章が好きな私は,とっても楽しく
読ませて頂きました。
これからも頑張ってくださいませ。
#他人に似ていると言われるとムッとされるかも
#しれませんが,褒めているつもりです。
>>545さん
もしかして、おっしゃっておられるのは佐藤大輔ですか?
それならば、大当たりといいますか、似ているといわれるのはこの上ない喜びです。
若いころはずいぶん何度も読み返したものですが、そうですか・・・・影響が見えましたか。
ちなみに、ドラコルルは、原作の設定に鹿内かグロスマイスターのイメージをプラスしながら
書いてみました。
本当に、うれしいです…ここで同好の士にお会いできるとは!
外伝さんに影響を与えた作家?!
読んでみようかな、今度
もしかしてゲンブも誰かのイメージをプラスしてるのかな?
何かかなり豪快なおやっさんみたいになってるから…
原作はおっとりした初老の人なイメージだけど
>>548 まあでも、「気は若い」とか言われてたけどな
>>538 パピ似の女とくっつく長官って・・・・(w
で、お約束のように子供はパピそっくりだったりするのか
確か酒もだったな。>趣味
おっとりに見えて案外中身は外伝氏のSSみたいなヤシなのかも
>>544 漏れもそういう切ない(けど前向きなのがポインツ)結末は嫌いじゃないな。
…それにしてもいい話を読ませてもらった。
つくづく外伝氏に感服。
えーと、前スレの753です。今日か明日にでも、遅ればせながら「野望達成編」SSを
アップさせて頂こうかと思ってます。ホント、今更って感じですけど一応。
前スレほど長くはならないつもりですが・・・・w
555 :
450:03/08/04 18:34 ID:???
最近忙しくて見に来てなかったのですが、来てみてビックリ!
外伝さんの続編、とっても感動しました!
自分の拙作にも皆様の暖かい評価を頂き嬉しい限りだったのですが、
それも外伝さんの素晴らしいSSの土台があってこそのもの。
地獄の解釈の仕方や、英霊の幻想的表現法に素直に感動を覚えました。
やっぱり外伝さんは格が数段違いますね。脱帽です。
いいもの読ませてもらいました。感謝。
自分はバキスレの方からの漂流者なのですが、あっちの方も楽しみにしてます。
>>554 おひさ。
いつかと思ってましたyo
うp待ってます。
PCIA本部内の一室。
元大統領パピは、寝台に腰かけ、宙を見つめていた。
白い壁に囲まれたその部屋の中には、パピが腰かけるベッドの他に書き物机と椅子があるだけ。
二つのドアは、それぞれ浴室付の洗面所と、外の廊下に繋がるものだ。
簡素な部屋だが清潔感があり、空調も整えられている。それだけを見れば宿泊施設の一室かとも
思える部屋だ。
しかし。
その部屋はゆっくりと心身を休めるにはあまりにも寒々しい色彩で覆われ、廊下に通じるドアは外側から
電子ロックが掛けられ、決して中からは開けられない。ドアが開く時、それは―――
本部内中庭にある刑場に赴く時。
『元大統領パピに対し、ピリカ大法廷は死刑を宣告する。処刑は明後日、
ギルモア広場において執行される』
パピは前日の夕刻、言い渡された判決を脳裏に蘇らせた。
―――死は、明日の朝に迫っている。
静寂の中、しかし、パピの心は静まることなく掻き乱されていた。
ピリカの自由同盟は一網打尽にされ、自分を助ける為に危険を冒してこの星までやってきた
5人の異星人も捕らえられた。今日になってもたらされたこの知らせが、迫り来る自らの死以上に、
パピの心を激しく揺さぶり続けているのだ。
(僕のせいであの人たちまでが・・・・・)
そんな時、まだ開くはずのない扉が開き、パピのもとに思わぬ訪問者が姿を現した。
「・・・・・ドラコルル・・・・・・!」
パピはしばらく、信じられない思いでその人物を凝視した。
「どうして・・・」
「どうして、とはおかしな事を。私と話がしたいと言っていたのはお前だろう?」
確かにそのような事を言った気がする。しかし。
「本当に時間を取ってくれるなんて思わなかったよ。・・・君は忙しいだろうしね。
ここ数日は特に」
皮肉ともとれるパピの言葉を聞きながら、長官はパピの方に向けた椅子に腰掛けた。
「心配しなくとも明日の朝まではもうこれといってすべき事はない。・・・もっとも
緊急の連絡でも入れば話は別だがな」
「・・・・そう」
時間があるとはいえ、わざわざパピの独房を訪れた長官の真意は量りかねるが、どうやら
まともに向かい合って話をする準備があるらしい。となれば、パピには長官に言いたい事は
山ほどあった。
「それなら・・・・・」
話したい事は確かに沢山ある。だが、最も心を責めさいなんでいた事実が、パピに
こう言わせた。いや、懇願させた。
「お願いだ、どうかあの人たちの・・・・僕の為にピリカまでやって来た地球人の
皆さんの命だけは助けてほしい」
「・・・・」
「彼らはまだ子供なんだ。年は僕と同じくらいだけど、ピリカとは違う。地球では、
かれらはまだ本当に“子供”過ぎない。だから・・・・!」
「パピ」
短く、長官がパピの言葉を遮った。
「分かっているのか?お前は明日の朝には処刑されるのだぞ」
「・・・・」
「自らの死を前にしてまで他人の心配か?お前の事だから、地球人達がこの星に
来ていなければ、その時はレジスタンスや国民を気遣う言葉が最初に出るのだろうな」
「・・・馬鹿にしてるの」
「いや。見上げたものだと思っているのさ」
感心とも冷やかしともつかないその口調に、パピは今まで押えていた感情の波が、どっと
押し寄せるのを止められなかった。
「そんなの・・・君も同じじゃないか、長官」
自然、声が震える。
「君だってそうじゃないか!君だって、自分の為じゃなくていつでもこのピリカと
国民の為を思って行動してきたはずだ!そして部下一人一人を大切にしてきた。
だからこそあれだけ多くの人間が君についていったんだろう!!」
「・・・」
「それくらい僕にだって分かるよ。君が指揮したからこそ80万もの人間が動いて、クーデターも
成し遂げられたんだってことは」
・・・そして、だからこそわからない。その彼が、自分と同じようにこの国を思っている彼が、
ギルモア将軍などに協力した理由が。
「ねえ、どうしてなんだ・・・?どうして君はギルモア将軍に手を貸したんだ。君ほど
優れた才能を持った人ならわからないはずがないだろう。ギルモア将軍の下では国民は
安心して生きていく事など出来ない。いつか必ず国民の手で将軍は倒される。あるいは
この国そのものが滅んでしまう。それなのに・・・・!」
「お前の言う通りだな、パピ」
パピにとっては意外な言葉が返ってきた。
「だが安心するがいい。将軍はこの国の皇帝になどならない。国民の手で倒されるのを
待つまでもなく、消えてもらう。我らの手で、な」
「どういう・・・こと、それは」
「惑星間戦争の危機が高まり、経済も混乱しているというのに、あくまで平和主義を掲げ、
高すぎる理想を追い続けるお前をこれ以上この国の大統領としておく訳にはいかなく
なった、それが我らが動いた理由だ。ギルモア将軍も同じような事を主張してPCIAに接近
してきたが、彼がお前に代わってこの国を治めるに値しない人物である事は見極めた。
・・・彼を皇帝になどしたら、ピリカは間違いなく滅んでしまう」
「長官・・・・」
「将軍は私達が倒す。そしてその後、お前とは違うやり方かもしれないが、この国が
直面している危機を乗り越え、ピリカを建て直してみせる。・・・それをお前に
話しておきたくてな」
言い終わると長官は立ち上がり、ドアへと歩いた。
そしてドアの前で立ち止まり、今一度パピを振り返って、最後にこう言った。
「地球人5人は逃がす手はずを整えている。ギルモア将軍の手前、処刑したように見せかける
必要があるが、隙を見て地球に帰してやろう。・・・彼らはこの国の事など何もわかっては
いない。ただお前との友情だけでここまで来たのだろうからな。お前の死を知ってなお
この国に留まって何かを為そうという気は起こるまい。お前の言う通り、彼らは
まだ“子供”なのだからな」
長官が去り、パピは再び一人になった。
また同じようにベッドに腰掛け、宙を見つめる。
しかし、一つだけ先程までとは違う事がある。
この数日、パピの心をぎりぎりと締め付けていた全ての事から解放され、今は
不思議と穏やかな気持ちだった。
地球の友人達の命は助けられる。
ギルモアは倒され、この国は救われる。
長官は、きっとピリカを立ち直らせてくれる。
・・・もう充分だ。何も思い残す事はない。
そして何よりも嬉しかったのは、長官がそれを伝えに来てくれたこと。
このピリカを愛する気持ちが自分と同じなのだと、改めて知る事が出来たということだ。
共に理想を語り合った、昔のように。
パピは目を閉じ、満足げに一つ息を吐いた。そしてベッドから立ち上がり、
机の前へと歩く。机の上に置かれた白い便箋に目をやると、椅子に座り、ペンを手に取った。
翌朝、10時。よく晴れた青い空の下。
パピは落ち着いた様子で死を迎えた。
処刑直前、言い残す事はないかと尋ねる長官に、パピは初め視線を落としながら
こう言った。
『僕は国民を信じている。きっと僕の志を継いでくれるだろう』
そして次に長官を真っ直ぐに見つめ。
パピは何も言わず、ただ穏やかに微笑んだ―――――。
すいません、もう少し続くんですが、ちょっと用事があるので。
帰ってから続きをうpしますんで。
パピの死後、独房の机の上に残されていた手紙が長官のもとに届けられた。
他でもない自分に宛てたその手紙で、長官は知った。パピの、あの最後の微笑みの意味を。
『死を明日に控えているのに、今僕の心は不思議なほど静かです。
それはドラコルル長官、君が今日、僕のもとを訪れ、その思いを話してくれた
からだと思います。
君はあの人たちを助けてくれるといい、この国を救うと言ってくれた。何よりも
嬉しかったのは、この国を思う気持ちが僕と同じだとわかった事です。
昔、僕たちは大学で出会い、共に理想を語り合った。道が別れてしまったまま、君と
分かり合えないままで死んでいかなくてはならないのが、実は僕にとって一番の心残りでした。
けれど今はその心残りも消えました。君がこの国を愛する気持ちが、昔と変わっていないと
わかったからです。
長官、どうかこの国を頼みます。
僕は君を信じている。きっと僕の代わりに祖国ピリカを守ってくれるだろう。
出来る事なら、君とは敵同士ではなく、肩を並べて一緒に歩いていきたかった。
けれどそれもいつか、お互いに生まれ変わって叶えられるような気がする。
その日まで僕は空の上で君を待っているから、きっと同じ場所に来てほしい。
ピリカを救えないで違う場所に行ったりしたら、その時こそ僕は君を許さないからね。
明日、死の前に言い残す事はないかと言われても、とても一言では伝えられない。
だから僕の思いをこの手紙に書き残しておきます。どうか間違いなく君のもとに届くように。』
「空の上で・・・・か」
歴代の大統領が眠る墓地。パピの名が刻まれた白い墓標の上で、長官は呟いた。
(あの微笑みはそういう意味だったのだな)
いつかまた天国で会おう、そしてお互い生まれ変わることが叶うのなら、今度は
敵同士としてではなく、共に生きていこう、と。
その思いは自分も同じだ。同じ一人の人間として、パピの善良さを、汚れのなさを、
純粋さを、自分はこの上なく尊いものだと思っていた。
もしお互い、国に関わる立場の人間でなかったなら、パピのその尊さを、自分は
どんな事をしてでも守ろうとさえしただろう。
しかし、大統領として国を治める者が、汚れない存在のままであろうとし、それを
他者にも求めて政治を行うのでは、人は結局人として生きてはいけないのだ。
ちょうど、空にあるべき太陽が地上にあってはならないように。その輝きは
空にあってこそ尊いもので、地上にあっては全てを灼き尽くしてしまうように。
――――太陽。・・・・空の上。
パピ、もしかしたらお前は、太陽の落とし子だったのかもしれないな。
ならば、虫のいい話かもしれないが、どうか空にある者として見守っていてくれ。
このピリカを・・・そして私を。
私は地をゆく者として、地や泥に塗れてでもこの国の為に力を尽くそう。
そしていつかまた出会えたなら、その時は・・・・・
「長官。準備が整いました。すぐにでも将軍の邸に向かえますが」
「わかった」
墓標に背を向け、振り返らずにドラコルルは歩く。
(次にここに来るのは新しいピリカが動き出すその時だろう。・・・見ていてくれ、パピ)
見上げた空の彼方には、眩く太陽が輝いていた。
(終)
ええと、そういう訳で、私なりの「野望達成編」を今更ながらアップさせて頂きました。
道が別れて敵同士になって、結末はどちらかが死ななくてはならないにしても、
二人が元は理想を語り合う仲だったら、気持ちが通じ合わないまま終わるのは悲しいな、
と思ったので、その辺を未熟ながら精一杯書いてみました。その結果、パピは
ちょっと聖人すぎですがw
少しでも楽しんで頂ければ光栄です。
ああ、ミスハケーン!
(8)の下から8行目、地や泥に→血や泥に です。
カンジンなトコで・・・・!
パピ=天(太陽) 長官=大地
の対比は納得。なんかそんな感じだもんな
長官野望達成編をパピの視点から書いてるのが意表突いてました。
前スレ753さん乙です。
パピ処刑という条件をクリアしつつ、この何とも言えない優しさに満ちたSS、
さすが753さんですな
大統領になるにはパピは尊すぎた、と。ナルホド
太陽と人間じゃ、元々同じ場所にはいられなかった、て解釈も、チョト悲しいけど
説得力アリだと思いました
お互い国に関わる人間同士でさえなければ・・・か(泣)
そういうこともあるよね
パピの手紙に泣きますた。
今度はガラッと変わって二人の大学時代の話とか読んでみたいな。
年齢は、パピが6歳で長官が16歳くらいか?いろんな意味で面白そうだ(w
>>575 本来なら小学生と高校生な年齢の二人が大学で語り合ったりケンカしたり
…いいかも。極めつけは外伝氏SSにもあった「少年期」シチュだな。
>>576 ♪七つの僕には不思議だった
て事で、パピ7歳の時だな>少年期シチュ
満足して死んでったパピに涙。>太陽の微笑
確かにパピって、何か浮世離れしてる感じかもな。
良くも悪くも生身の人間っぽくないっていうか。
>>575 二人が優秀過ぎて話のレベルが合うヤシが他にいなくて、特に仲がいいわけでもないのに
気が付けばいつも一緒だったとか。
妄想スマソ。
レベルの高い議論する二人もいいけど、たまに本来の年齢通りの言い争いしたりな。
で、年の離れた兄弟の喧嘩とか言われて大学の名物になってたりW
読みたいネタが色々出揃ってきたな。
・大学時代の話
・クーデター前の話(エピソード1)
・外伝氏の「歴史の転換点」と「通り過ぎた回天」の間の話
どれも凄く興味ある。
ではまた、色々語りつつ神の降臨を待つとするか
>>577 二人がまだ青かった時の語り合い(in少年期シチュ)か。
そりゃ見たい
>>577 その3年後には敵同士に・・・
でもそれはそれで燃えだな。
588 :
いつか見た風景を:03/08/07 22:05 ID:1bQzGGaB
以前、このスレに書き込みをさせて頂いた者です。
質問をしたのですがここは大長編、魔界大冒険関係のSSを載せてもいいのでしょうか?
オゲ!
591 :
いつか見た風景を:03/08/07 22:57 ID:1bQzGGaB
>>589san
ありがとうございます。
>>590san
正直言って、小戦争とは何の関係もありません…
ただ宇宙の描写が少しでるというだけです。
以前、投稿するときに魔界大冒険関係を希望する方がいまして、最近それらしい題材が閃きました。
それらを活かして作成してみたいのですがやはり駄目でしょうか。
内容は稚拙でそうとう長文になると思いますので迷惑なら諦めます。
592 :
590:03/08/08 00:26 ID:???
>>591 まあ、関連なくても、他にSS投稿するのに丁度いいドラスレが無いようなら
いいんじゃないでしょうか。
>>592san
ありがとうございます。
これからまとめてみようと思います。
前半部分が無駄に長いので省いて、後半の部分を所々載せてみます。
改行を入れて載せるタイプなので無駄にスレを消費してしまいますが…
魔界星
荒野にのび太、ドラえもん、美夜子が立ち並んでいた。
「みんなばらばらになっちゃったね」
「うん」
「あっちに高い山があるわ。そこからみんなを探しましょう」
ここからでは見えない、山への方角を指さす美夜子。
「へぇ、そうなんだ。じゃあそうしよう」
「……………」
その行為をじっと見つめている。
「どうしたドラえもん?おいてくぞ」
「おかしいと思った、なぜ満月博士よりも強い魔法を使えるのか
満月博士の娘だから…みんなそう思っていた、でも違う
全てのルートに対して用意が周到すぎた」
美夜子に最後の銀の矢を構えるドラえもん。
「なぜ魔王はことごとく私たちの先回りができたのか
そしてぼくたち一度も悪魔たちからは傷つけられていない」
「……………」
「ドラえもん!?違うよ!美夜ちゃんは…」
美夜子をかばうように前にでるのび太。そっとのび太の肩に手をかける美夜子。
「いいのよのび太さん、ドラちゃんの言うとおりなんだから。猫になったのもわざとよ
それに星はのび太さんたち、そしてわずかの人たちしか住んでいないのよ」
「美夜ちゃん!?」
「どういうことなの?」
構えを解きドラえもんが問う。
「いままであなたたちが会ってきた、悪魔、植物、生物の
全てが魔法という力によって生み出された幻想よ」
「あの悪魔たちがすべて幻覚だった?」
「そのとおりよ
簡単に言えば魔王が用意した紙芝居の役割を演じていたというところかしら」
「…この風景が」
途方もない話に驚き周りを見渡すのび太とドラえもん。
「なんでそんなことを…」
「あなたたちが憎かったから」
今まで見たことのない寂しそうな目を向ける美夜子。
「…美夜ちゃん」
「そして…欲しかったから」
「何が?」
「私達にも欲しかった…まぶしい光が…太陽の光は万物に与えるんじゃなかったの?」
「……………」
「どうして魔界星なんて呼ばれなきゃいけないの?
あなた達の星と入れ替わってもいいでしょう…そのために長い時を生き抜いたんだから!!」
「何を言ってるの美夜ちゃん…?」
「魔界大接近説という言いかたはちょっと違うわ。本当の目的は魔界大転換よ」
「大転換?」
「そう、あなたたちの星と魔界星が入れ替わってもらう」
「美夜ちゃんがそんなことを望んでいるの?」
哀しそうな顔するのび太の問いにより間があく。
「魔王がそう決めたのよ。ううん、私だって同じ気持ちよ。だってそうでしょう?
このままじゃあなたたちがあまりにも勝手じゃない!」
「そう思うなら何で泣いてるの…」
その小さな瞳から涙が流れていた。
「のび太さん…私もつらいわ…でもここまで来たのもう戻れないのよ
私たちの星はね、かつて科学と呼ばれる時代があったわ
そのことで先人たちはおごり始め、自分たちの星を取り返しのつかないところまで汚してしまった
だから彼らはよりよい星を求めた、そしてその先に希望の星があった」
「…それが地球」
ドラえもんが呟く。のび太は静かに聞き入っている。
「希望の星が見つかっても魔王は自分の星を捨てることだけはしなかった
どんなに汚れても、廃れても、かけがえのないたった一つの故郷だから
その想いを無駄にしないで私たちはここまで魔界星を再生させたわ」
「これで…」
荒れ果てた大地に突き刺さるような風が運んでくる。黒く汚れた泥土、見慣れぬ植物、風景。
「ふふふ、地球人から見るとおかしいわよね。こんなに汚れた星が再生だなんて」
自嘲気味に笑い二人を眺める。
「……………」
「種族が二つに分かれたとき約束したのよ」
「約束?」
「時期が来たら立場を入れ替えようって」
「いつ頃…?」
その冷たい瞳に見入られながら問う。
「……千年前によ。しかし誰も来なかったわ」
気の遠くなるような時間に息をのむ。
「……………」
「あなたたちが呼んでいるこの魔界星の本当の名を知っている?」
「………知らない」
「でしょうね…この星の本当の名前は地球よ」
「……………」
度重なる事実に言葉を失う。それでも続ける美夜子。
「それを何であなたたちは忘れてしまっているの?
それどころか地球を私たちの星の二の舞にしようとしてるじゃない!?
汚れてもまた代わりを探せばいいから?楽しいことばかりしていると約束も忘れるから?」
「……………」
「こんなこと言いたくないのに…もう分かったでしょう!?」
空を飛んで離れていく美夜子。
「「……………」」
遠くから声がする。ジャイアンたちが駆け寄ってきた。
「お〜〜い!のび太〜〜!!」
「しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫、」
「無事だったの!よかった!!」
「…………」
「どうしたの…のび太さん…怪我したの?」
元気のないのび太に心配するしずか。
「それが……」
ドラえもんがさっきのことをみんなに話す。
・
・
・
・
・
・
・
満月邸
ドアの開く聞こえる。
(誰か来たの…番人たちが反応しないということは美夜子か…)
のぞいてみると案の定、美夜子だった。
「…………」
「おお帰ってきたか、美夜子。おかえり」
満月博士の言葉に応えないで黙り続けている。
「…………」
「どうした?」
「すみません…あなたを利用させてもらいました…」
「利用?」
「はい。そのためにありもしない魔界接近説を吹き込んだんです
あなたの記憶すらも刷り込み操作して…」
「……………」
「……………」
互いに目を見つめあう。
短い静寂を満月博士がやぶる。
「おまえが我が家に来てもう1年か…早いものだ…」
窓の景色を眺め思い返すようにきりだす。
「…そんな…記憶が……気づいていたのですか……」
予想外の反応にとまどう。
「そのこと分かろうとすると、お前が離れていってしまうようで…
いや知らなかった…そう知らなかったよ……
おまえとのあたたかい思い出がそのわだかまりをなくしてくれた」
「お父さま!!」
耐えられず満月博士に抱きつく美夜子。
「……………」
「私…私、ずっと辛かったんです!
やさしくされるたびに何かが苦しんでいて!!
そのたびに自分のやることに迷いがあって!!!」
「そんな感情を持っているお前が我々地球人と何が違うというのだ」
「うあああああああああ!!!」
「……おおいに泣きたまえ」
・
・
・
「ありがとうございます。決心がつきました
私の…全ての…千年間、紡ぎ続けてきた魔法をほどきます」
「行っておいで、美夜子」
「はい、行ってきます。お父さま」
・
・
・
・
・
・
・
魔界星
魔界星の中心に立つ美夜子。
この星をかつての約束から解き放つために。
「永い時を糸のように紡いできた
時にはほつれ、時にきつく…その糸をほどきこの荒涼たる地を哀れめ…チンカラホイ…」
それぞれに活動していた魔界星の生物がが陽炎となり消え始める。
「……………」
辺りが静寂に包まれていく。
今まで美夜子の魔法によって差し込んでいた弱き光も消え失せていった。
「……………」
そしてついに照らされていた最後の光が消えた。
「これで……」
完全な闇になった所からまた弱き光が差し込み始める。
「…そんな…どういうこと…」
魔法を解いたはずなのに、驚きを隠せない美夜子。
消えたはずの悪魔族が復活していく。
「私の魔法が一人歩きを始めたの……?」
幻像であったはずの悪魔たちが実体化し始めた。
復活した悪魔たちは意志があるかのように次々に空へ舞う
魔界星から離れ宇宙へ目指そうとしている。その数は凄まじい数になろうとしている。
その大集団になった先頭にかつて見たことのある幻影の悪魔、魔王の姿があった。
「まさか地球へ!?」
急いでその大集団の前に回り込む。
「だめよ!戻りなさい!!あなたたちの住処はこの星なのよ!!」
「ウギギギギギギ」
(…言葉も話せなくなっている)
「ギギギ!!」
魔王が召喚した隕石が美夜子に向かってくる。
「きゃああああああああああ!!!」
そのまま魔界星に押されていく。
記憶がうつろになる中、その移動する集団を見つめていた。
(……どうしたら……)
「美夜ちゃ〜〜〜〜ん」
どこかで聞いたことのある声が聞こえてきた。
(…なんだろう…何度も聞いた…あたたかくて……懐かしい声…)
「ドラえもん!早く!!」
「うん!」
急いでポケットに手を突っ込むドラえもん。
「……………」
「……………」
「美夜ちゃん」
「のび太さん…みんな…」
「よかった、本当によかった…」
「え〜〜!!さっきの悪魔たちは地球に!?」
動揺するジャイアンたち。
「私が何としても止めるからだか……」
必死な美夜子の言葉を遮りのび太が声をあげる。
「早く僕たちが止めに行こう!!」
その言葉に一堂は静かになる。
「…のび太さん」
まっすぐなのび太の瞳を見て言葉を失う。
「おっ!のび太も言うようになったな」
「そうね。行きましょ!」
「怖いけど…行こう!」
「…みんな」
もう涙を止めることはできなかった。美夜子からひとすじの涙がこぼれ落ちる。
「どうしたの…美夜ちゃん…何か悪いこと言った?」
「ううん…うれしいの……ずっと…本当にずっと一人だったから…
こんな気持ちがあるのをずっと忘れてたから…」
「でもどうやってあの数を止める?」
みんなが考えている中、のび太がドラえもんに近づく。
他のみんなには聞こえないようにドラえもんに話しかけるのび太。
「ドラえもんの道具で何となるだろ」
「う〜ん…それがこの世界を創ってからなんかポケットの調子が悪いんだよ」
「まさか、ポケットが消えるだなんて言わないよね!?」
「分からない、魔法の世界にしたからね。その影響かも…」
「そんな…」
のび太たちとドラえもんが話している間、美夜子が声を上げる。
「デモン座アルファ星があるわ」
「でもんざあるふあ星?」
「説明は、あとでするわ。今は一刻も早く急がなきゃ!!」
「こんなこともあろうかと美代ちゃんの絨毯を修復しておいたよ」
「さすがドラえもん!!」
じゅうたんに入り込み、薄くなってる黒い炎を抜け宇宙へ出る。
「魔王を倒すと世界が終わる!?」
美夜子の説明に驚く一堂。
「どうしてそんなことが分かるんだよ」
「魔界歴程の著者、ナルニアデスが記したのよ」
「猿になるです?」
「違うわ。ナルニアデスよ
魔界星の全てを調べ上げた考古学者よ。あなたたちはもう会っているわ」
「そんな名前の人に会ってないよ」
「ナルニアデスは魔界星で使われていた言葉で月が満ちるという意味なのよ」
「まさか!満月博士が!?」
「そのとおりよ。博士は魔法の力を駆使し魔王を追いつめた
そこで一つの可能性が浮かんだのこのまま魔王を倒したらどうなるんだろうって」
「でも悪魔たちは幻覚なんでしょ?」
「じゃあ、どうしてアルファ星は存在するのか」
「そもそも、アルファ星って何なの?」
「魔王の心臓とよばれるものよ。だからある説が浮かんだの」
「心臓だって!!…そのある説って?」
「宇宙消滅説よ。魔王のどちらかか間違って倒したら消えるという」
意外な言葉に沈黙する。
「……………」
「それじゃ、どうすればいいか分からないじゃないか!!」
それまで静かに聞いていたスネ夫が叫ぶ。
「落ち着いてスネ夫さん。博士は虚像である魔王を倒すのをやめたんでしょう。
じゃあアルファ星のほうが倒せる可能性があるということじゃないかしら?」
スネ夫をなだめながら美夜子に話しかけるしずか。
「分からないの…満月博士の魔界歴程記録はそこまでしか記されていないから」
「満月博士がいてくれたら…」
「ごちゃごちゃとめんどうくせえ!
時間がねえんだろ?行くと決めたんだから行けばいいんだよ!!」
「ジャイアン…」
「そうだね行こう、みんなアルファ星に行こう!!」
「そうね…行きましょう」
さらにスピードを上げ宇宙の深淵へすすめる。
「見ろ!悪魔たちがついてくるぞ!!」
「気づかれたんだ!」
「急げ!!」
「でも、かえって好都合よ。それだけ彼らが地球に向かわないということだからね
それに彼らがついてくるってことはアルファ星が本命ということね」
「そうか、じゃあできるだけ引きつけた方がいいんだな」
「ドラえもん、道路光線だよ」
のび太が提案する。しかし道具を出すのにやたら時間がかかった。
(本当に調子悪いんだな…急がなきゃ…)
道路光線により強力な光がじゅうたんから一本の道のように発せられる。
効果はてきめんで次々とのび太たちのじゅうたんに集まってくる。
「ついてくる…ついてくるなぁ」
大集団におびえるスネ夫。
「でも全ての悪魔を引きつけることはできてないわね…」
「それじゃ…地球は…」
「……………」
「急ごう!」
わずかにのび太たちのほうが早いので悪魔たちに追いつかれず順調に進んでいた。
その反面、進むたびに辺りが徐々に闇に包まれていいく。
その闇よりもさらに濃い、燃えるような闇が立ちはだかる。
「何だ?」
「あの時の黒い炎だ!!」
「どうする?あの時よりすごい火力だよ…今度は耐えられそうにないよ」
「ここまで来たのにひきかえせってのかよ!」
「私がやるわ」
黒き炎の中に足を踏み入れようとする美夜子。
「美夜ちゃん!燃えちゃうよ!!」
のび太が美夜子の腕をつかむ。
「ありがとう、のび太さん。でも大丈夫だから」
それでも腕を放さないのび太。
「ダメだよ!!」
踏みいれた美夜子の身体が焦がれることはなかった。
「ね?大丈夫でしょ」
「そんな…美夜子さん…あなた悪魔族だったの?」
その問いに会話をしながら魔法の詠唱を始める美夜子。
「そう、私があなたたちが呼びはじめた本当の魔王よ
でもそういう風に呼ぶのはやめて欲しいな…元々は同じ人間だったんだから」
「…ごめんなさい」
美夜子の手により黒き炎が取り払われていく。それと同時に後方から黒いものが移動してきた。
これまでとは違う速さでのび太たちに追いついてくる。
「急接近してくるものがあるわよ!?」
しずかが後方の異変に気づく。
その黒きものは密集して前進してくる魔王だった。
「幻影の魔王よ!!会いたくなかったけどこれで確信がもるわ
弱点はアルファ星よ!」
「急ぐんだ!!」
近づいてくる魔王が近くにある小惑星を召喚させる。
「ギギギギ!!」
「隕石が来る!」
「念力でそらしてみるわ!」
「ダメ…私より力が強くなってる…防ぎきれない」
「俺たちも手伝うんだ!」
「お〜〜〜!!!」
ドラえもんの道具を借りて次々と墜落してくる隕石を防ぐ。
「ギギギギギギギ」
なりふり構わずドラえもんたちに襲いかかる悪魔族。
中には隕石にとりつきながら攻めてくる。
「あいつらも必死なんだ…」
「元々は私が創った幻影よ!力を弱めないで!!」
美夜子がじゅうたんから飛び降りる。
「美夜ちゃん!?」
「行って!みんな!!ここは私がくいとめるわ!!」
「分かったよ!!」
美夜子を残し猛スピードで突っ込むのび太たち。黒い炎が完全に取り払われた。
シャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
「何?太陽?……違う!!」
辺りが光により包み始める。
「あれが赤く脈打ってる星!?間違いないアルファ星だよ!!」
その強烈な光に動きが止まる悪魔たち。
「悪魔の動きが止まった!今だよ!」
スネ夫が叫ぶ空気砲を打ちながら合図する。
「これが最後の一本だ」
「頼むよ!ジャイアン!!
本物でありますように…」
「まかせろ!!」
大きく振りかぶり銀の矢を投げるジャイアン。矢の軌跡はアルファ星へと切り開かれていく。
ついに突き刺さるが何の変化がなかった。鼓動のような光は依然と輝いている。
「どうして!?偽物か!!」
そこを遅れてドラえもんが道具を出す。
「ビックライト!!」
銀の矢が巨大化されアルファ星にひびがはいる。
「みんな伏せるんだ!!」
巨大化された銀の矢がアルファ星を完全に砕く。襲来していた悪魔たちが消え始める。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!
遠い地から眺めていた美夜子。アルファ星が砕かれたのが分かった。
「…お疲れさま」
静かに呟く。それまで対峙していた悪魔たちが次々と消えていく。魔王も。
・
・
・
・
「悪魔たちが消えていく…」
鮮烈な光で宇宙を包まれていく。
「光がおさまらないぞ。まさか本当に世界が終わるのかよ!!」
「ママーー!!」
「どうなるの!?」
「美夜ちゃん!」
光が途絶え完全な暗闇になった。
「星の光が見えないよ…」
「……………」
のび太たちに追いついた美代子。
「大丈夫よ」
暗闇から聞き慣れた声が響く。振り向くと美夜子の姿があった。
「美夜ちゃん!無事だったの」
「あなたたちのおかげでね」
美夜子の言葉と同時に遠方にある星々のまぶしい光が輝いてきた。
それぞれの想いに応えるように、美しく輝いている。
「やった…」
「「「やったぞーーーーー!!!」」」
・
・
・
・
・
・
・
「……やれやれ少しは年寄りいたわってほしいのう」
凄まじい数の悪魔を地球襲来からたった一人で守り続けていた満月博士。
地球
満月博士の庭でパーティーを開催した。それぞれに楽しんでいるドラえもんたち。
その集団からはずれて近くの森を散歩しているのび太と美夜子。
「そうだったの…別の世界から来ていたのね」
風がそよぎ透きとおった川がせせらいでいる。
その景色を楽しみながらのび太に話しかける美代子。
「うん、あんなことがあると、あらためて地球っていい星だなって思うよ」
「あなたたちの地球を守れたのはみんなのおかげだわ」
「違うよ、美夜ちゃん」
「え?」
「ぼくたちの地球だよ」
「……そうね……ありがとう…のび太さん」
そのまま二人とも無言で日が暮れるまで辺りの景色を眺めていた。
やわらかな夕日が二人を包み込む。
「そろそろ行かなきゃ」
「やはり帰るの?」
「うん」
「…………」
「…………」
「のび太さん。
いままで、つらいことのほうが多かったけどあなた達に出会えて本当に良かった…
このあたたかすぎる想い出はずっと…ずっと忘れないわ」
「ぼくもだよ」
「私、魔界星をこの地球に負けないくらい美しくするね
もう誰にも魔界星だなんて言わせないぐらいに」
「そうなるといいね」
すこやかな時をかみしめながら満月博士の家へ戻る。
・
・
・
・
・
・
・
……ジリリリリリリリリリリリリリリリ……
「これで元に戻っちゃったんだね…」
「すっかりね」
久しぶりに戻った世界は夜になっていた。
二階の窓から夜空を眺めるのび太。
「この昼でも輝き続けている美しい夜空のどこかに美夜ちゃんがいるのかな…」
満天の夜空が光り輝いていた。
「…チンカラホイ…か…」
その言葉と同時に一つの流星がながれた。
完
投稿してみたら相当なスレ消費をしてしまいましたね…
改行を少なくして載せれば今の半分ですんだのですが、
少しでも読みやすくするためにあえてこのような形にしました。
本当なら伏線を張る前半部分も載せたかったのですが、きりがないので要所だけにしました。
駄文を読んでくれた人は本当にありがとうございます。
何か希望の大長編があったら、また機会があるときに挑戦してみたいです。
それでは失礼しました。
乙です。希望の大長編っていっても、ココは一応長官スレだから、小戦争関係
を期待する人が一番多い気がします・・・
全く無関係のSSとなればあんまりレスは付かないかもしれないです。
でも気を悪くしないでまたぜひどうぞ。
そーだね・・・・
このスレに書くなら少しでも長官や小戦争に絡めて書いた方がイイかも。
その方がみんな興味持ってちゃんと読むと思う。
>>620 「ムダに長い」というのが正直な感動ですが、文体や文章力からは力を感じさせます(読んでませんが)
小戦争ネタで頑張ってください
>>623訂正
>>620 「ムダに長い」というのが正直な感想ですが、文体や文章力からは力を感じさせます(読んでませんが)
小戦争ネタで頑張ってください
>>620 小戦争と全然関係ないSS書く限り、まともに読んだ上でのレスは
あまり期待しない方がいいかもしれないですね。
それを認識して他の大長編のSS書くんだったら、俺は構わないと思いますけど
>>626 まあまあ。
でも確かに一行ごとに改行するのはやりすぎかと思うが
他の大長編SSやるなら、前にも出てた仮想対決とかそういう方向に持ってった方が
いいだろうな。書いた人の為にも。無関係じゃこういうレスしかつかないと思うし
仮想対決っていえば、前スレのVS魔界はナルホドと思った。SSじゃないけど
情報組織の本領発揮で魔界歴程解読して、魔王の心臓=デモン座アルファ星と
突き止めて、無人戦闘艇突っ込ませてあぼーん、ってやつ。
>>629 デモン座=心臓と突き止めるのは当然長官なんだよね。燃え〜
誰かSS書かないかな
畜生、早く前スレ読みて〜
SSもあったんだよな・・・・
>>631 後からまとめて全部読めるのも、それはそれでうらやましいYO
超良スレだったしw
どっかで目にした「彼は敵も多いが味方も多い」という言葉で、
長官の事が頭に浮かんだ俺
HTML化されるまで読めないと思ってたのに>前スレ
ようやく基本をおさえられるって感じで嬉しいです。
よし、早速前スレ読むか!
超良スレってのはマジだったんだな・・・前スレ。すげえ
前スレの親子SS読んだ。どっちも泣いた。
多分774氏は男で753さんは女なんだろうな。
その違いも文の雰囲気に現れてて面白かった。
>>637 ログうpスレがあるんですよん。
ここ見つけて自分のために頼んでたんですが、
自分のほかにも需要有りそうだったんで貼らせていただきました。
喜んでもらえて私も嬉しいです。
うp職人さんに感謝感謝。
>>640 おいおい、決め付けるな(w
753さんが女なのは間違いないようだが。
774さんだって文章は骨太だけど、男とは限らない。
どちらも面白いからどうでもいいけど
外伝氏は男なの?
>>644 多分そうだと思うがな・・・
あの軍事描写は女には書けないんじゃ。
根拠はないが・・・
男だろうが女だろうが神には違いない>外伝氏
ところで、次のドラ映画は野良犬イチの話がモチーフだとか。
このままいけばマジで小戦争のリメイクが見れる日が来るかもな。
リメイクされたらされたで不満は必ずあるだろうけどな
それでもやっぱり見たいんだよな、うん
リメイク時には是非このスレ&前スレで期待してる事を叶えてほしいもんだ
声優はほっといても変わるから、まずは小人設定を無くす。これ大前提。
漏れ的にはキャラデザも変更してほしいかな?普通の人間っぽく。
感情移入しやすいし
「少年期」はどっかに使ってほしい。
誰かにカバーさせて。
脚本・演出・監督にいいのをもってこなきゃ。
とりあえず最近のドラ映画やってる香具師らは×
>>646 禿同。
でもあれ書いたのがもし女性だったら更に尊敬するよ、俺は
星の瞬く澄んだ夜空に銃声が二度響いた。
続いて軍靴のけたたましい足音が二人分、古びた石畳に乱反射する。
「どこへ行った!?」「わからん!だがあの深手ではそう遠くへは行けまい」
「クソッ・・・・面倒な事になったな、曹長にまた嫌味を言われるぞ・・・・」
「ギルモアのクソ野郎か・・・・自分じゃ何もしないくせによ、チッ!」
「大体なんであの能無しブタが俺らを使う立場なんだ?ちくしょうめ!」
「ケッ!上にゴマするのだけは天才的だからな、アレで出世するこの国も腐ってやがる!」
「あんなクズに無駄な税金くれてやるくらいなら街灯くらい整備しろってんだ!」
「ああまったく!それにしてもあいつめ、どこに逃げやがったんだ!!」
「絶対近くにいるはずだ!探せ!」
ひとしきり上司を罵った後、軍靴の音は「男」のいる場所から遠ざかっていった。
(助かった・・・・のか?)
道の脇の排水溝の中で男は考える。
無我夢中で走って逃げてきたので今まで痛みはあまり感じてはいなかった。
・・・・今も・・・感じない・・・・。
(おかしいな・・・・体がうごかねぇや・・・・)
致命傷だった。
既に彼の体からは多量の血が失われ、真冬ゆえに体温も極度に下がっていた。
感覚もほとんど麻痺し、体が全ての機能を停止するまでに時間はかからないだろう。
最後の一時、それでも彼は考えていた。
(まいったな・・・・眠くなってきちまった・・・・
今ごろドラクのやつ・・・夜泣きとか・・・・してねぇかなぁ・・・・
待ってろよぉ・・・・とうちゃん・・・・すぐに・・・かえ・・・る・・・・)
冷たい水の中、息子の安らかな寝顔を思い浮かべながら、彼も眠りへと落ちる。
そして二度と彼が目覚める事は無かった。
ある孤児院の前、まだ幼い少年を連れた男と婦人が話していた。
「じゃあ・・・・お願いします」
「ええ・・・・わかりました。できるかぎりのことはします」
「じゃあなドラク、元気でな」
『・・・・・・。』
少年は黙って俯いていた。
そのうち少年を預けに来た男が立ち去ってしまうと、
婦人は少年に声をかけた。
「ねえぼうや、おばちゃんはメイっていうの。ぼうやのお名前は何ていうの?」
『・・・・・・・。』
少年は口を開かなかった。
メイは少し溜息をつく。名前がわからなかったからではない。
この分だとコミュニケーションが取れるまでには時間がかかりそうだ。
まあ、あんな事の後では無理もない事だが・・・・。
少年の名は預けに来た男から聞いて知っていた。
彼はドラクという愛称で呼ばれているとも、正しくはドラコルルである、とも。
母親はこの子を産んですぐに亡くなったという。
父親は反軍事政府レジスタンスのメンバーだったが、先日軍の施設に忍び込もうとしたところを発見され、
制止を振り切って逃走を試みたため射殺された。この事件はメイも知っていた。
ドラクには他に身寄りも無く、また父親の友人であった者達も生活に余裕は無かったため、
止むを得ず孤児院に送られる事になったのだった。
ピリカは周辺諸国を統合して出来たばかりの軍事国家であり、軍人独裁の圧政下にあった。
当然ながら福祉状況はまったくと言って良いほど整っておらず、
孤児院とは言っても形ばかりの心細い補助金で辛うじて飢え死にだけは避けられるといった程度、
重い病気などにかかれば半数以上が満足な治療も受けられずに幼い命を終えていった。
メイには何故ドラクの父親がレジスタンス活動などに命を賭けたのかわからない。
確かに軍部の独裁は酷いものだ。このままでいいとはとても思えない。
だが、もし万が一の事があった場合にドラクがどうなるかまで考えなかったのだろうか?
子供のために未来を拓くのは確かに大切なことかも知れないが、
子供の今を考えてやるのだって、親の大切な役目ではなかったのか・・・・?
当の本人亡き後、いくら彼女が説教じみた考えを浮かべてみてもどうしようもない。
「まったく男なんてものは・・・・」
ドラクの小さな手を取りながら、今度は先ほどよりも大きな溜息をつくのであった。
「で、お前らが撃った弾丸のうち一発がその不届き者に命中し、
それでヤツを仕留めた、とそういうわけだな?」
「ハッ・・・・その通りであります」
「その侵入者は何か重要な物を盗んで行ったのかね?」
「いえ、厳密には侵入する前に発見しましたので特に何も・・・・」
「フン・・・・そういう未遂犯を射殺するとこちらも処理が面倒なのだよ。
まったく、貴様らの不始末を処理するこちらの身にもなって欲しいものだな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「何だ貴様、その目は?」
「い、いえ・・・・何でもありません・・・・以後・・・気をつけます・・・・」
「全く、高校卒業の平民風情が誰のおかげでメシを食えると思ってる?
貴様らは俺の言う事だけをしっかりやってれば間違いは無いんだ。
おい、この報告書、弾丸二発のうち一発が胸部に命中し失血死となってるが、
ここ、弾丸三発のうち二発が腕と脚に命中し排水溝に転落、凍死と直しておけ」
「え!?」
「どうせ上層部は反乱者に詳しい検死など行わん。このクソ忙しい時にな。
そうするのが貴様らのためなんだ。いいからさっさとやっておけ!
これ以上俺に手間を取らせるな。わかったら返事!」
「・・・・ははっ・・・・・・・」
「まったく・・・・使えない部下を持った俺は不幸な人間だ」
ギルモアは呟いていた。
何故こうも頭の悪い部下のために自分の知恵と労力を割かねばならぬのだ。
あのクズどもさえしっかり動いてくれたら俺の忙しさも少しは和らぐのに。
何故貴族出で大学を卒業している自分が下士官から始めねばならぬのだ。
この国の階級制度は間違っている。自分は尉官から始まって当然の人材なのに。
何故優秀な自分が愚鈍なクズどもと同じ時間に起きて同じ時間まで働かねばならぬのだ。
自分の繊細な神経はこき使っても減る事の無い平民などとは違うのに。
何故自分がこの施設のクソ不味いメシを日に三度も食わされねばならぬのだ。
自分の口にはクズと同じような質素な食事など到底合わないのに。
マトモになどやってはおられぬ。
自分はこんな環境にいていい人間ではないのだ、本来は。
銃弾一発分でも浮かせて酒代にでもしないと割に合わない。
あのクズどもの不始末を片付けてやっているのだからそのくらいの見返りは当然だ。
感謝こそされようとも、あんな目で見られる謂れは無い。
「フン、不愉快な男だったな・・・・」
思い出して少し神経が昂ぶった彼は、自分を睨んだ部下の査定を下げる事を決める。
このくらいは当然、当然なのだ。自分は支配するべき人間なのだから。
支配されねばならぬ、愚かなる下民どもよ。
すみません、「3.WickedJustice」でした。訂正。
また新しい方が降臨したみたいですね。続き待ってます!
ギルモア、またとんでもなく・・・ろくな死に方しそうにないすね
ギルモア=親の敵か!新しいな。
そして非常に続きが楽しみ。
で、更新は夜かな?
じゃあ長官はギルモアを親の敵と知らずに協力してていずれ衝撃の事実を知るのか?
それとも初めから知ってて、復讐の機会をうかがいつつ表面上は、ってやつ?
>>665 はやらないで待て(w
それは読んでのお楽しみ、だろ
俺もあせらず待つ。
うわ〜・・・・
このギルモア、個人的に今までで人間性サイアクな気が
今までギルモアの描写自体が少なかったしね
ドラクは物静かな少年だった。
孤児院に来た当初こそ口を開かない日が2,3日続いたものの、
徐々にではあるが言葉を話すようになり、心を開いていった。
今では特に自分の殻に引き篭もったり、皆と打ち解けないという事はない。
しかし、子供にしては極端な感情の発露というものが非常に少なかった。
泣かない。転んでもまったく泣かない。
怒らない。周りの子供とけんかすることもまったくない。
所謂手のかからない子供である。
他の子と一緒に遊ぶ事を拒んだりはしないが、一人でいる時は決まって本を読んでいる。
最初は子供向けの絵本を読んでいたが、一ヶ月もすれば全て読み尽くしていた。
動物、植物、昆虫、乗り物、星、あらゆる種類の図鑑に興味を示し、それを読み尽くした後は
メイが個人的趣味として持っていた大人が読むような推理小説にさえ手を出していた。
メイはそんなドラクを見て、若干不思議な子だ、とは思ったものの、
表面上これと言って問題も無いので、ドラクの好きにさせておいた。
ある時メイはドラクに聞いてみた事があった。
「ねえ、ドラクは今楽しい?寂しくない?」
『うん、たのしいよ。さみしくなんかないよ』
「そっか。みんなと仲良くするんだよ」
『はいっ』
ほんの短い会話だったが、本当に頭の良い子だと思った。
他の子供たちなら寂しいかどうかと聞かれれば寂しいと答える。
世間の子供が両親と一緒に歩いている姿も見ているのだから。
自分にはどうして親がいないのか、と聞かれて返答に困る事だってある。
孤児院をやっていれば当然行き当たる壁でもある。
でも、ドラクはそんな事を聞いてくる様子はまったく無かった。
ドラクには父親は遠いところに仕事で出かけていると言ってある。
しかし、彼はもう父親は二度と帰ってこない事に薄々気付いているのだろう。
もしかすると自分が質問する事でメイが困る事までわかっているのかもしれない。
そうだとすれば・・・・聞く事で彼を傷付けてしまったのかも知れない。
メイは軽率な質問をした自分を恥じた。
そして、ドラクが本当に頭の良い子であり優しい子である事を確認すると同時に、
よくはわからないが彼が何か大切なものを欠いているような気もしたのであった。
えーと、すみません、とりあえず本日分の終了宣言した方が良かったですか?(汗
華やかに「建国記念日」のパレードが行われていた。
建国とは言っても実際は現中央政府軍による侵略・併合に他ならない。
他国住民を形式上納得させるため、惑星名をそのまま国名としたものの、
まだ建国から数年しか経っていない現在、内外に反乱因子は数多く残っている。
一見晴れやかな祭典はそうした現実をごまかす虚飾でしかないのだが、
とにかく、首都は暗い世相を忘れたかのように一時の賑わいを見せていた。
兵卒が秩序立って行進し、士官達が車上で手を振り、誇らしげな笑顔を振り撒いている。
楽団が勇壮な音楽を奏で、パレードに華やかな彩りを添える。
歩道からは多くの国民が歓声と共に軍隊に手を振り返す。
様々な思惑により内心舌打ちながらの者もいるであろうが、
表面上は皆祭を楽しんでいるように見えた。
「まったく、つまらん戯事に借り出されたものだ」
ギルモア少尉は車上では笑顔を作りながらも、本心ではうんざりしていた。
貴族出身の自分にはあのような平民どものバカ騒ぎは性には合わない。
表向きは愛想良くするのが世渡りの鉄則などという事は百も承知の上だが、
正直みすぼらしい貧乏人どもに愛想を振り撒くのは無意味であると思えた。
ようやく終わってくれてせいせいしたというものだ。
先ほど小汚いガキにちっぽけな花束などを渡されたが・・・・
(フン・・・・クソの役にも立たんな)
宿舎のゴミ入れに投げ込み、足早に近場のバーへと繰り出す。
良く冷えたビールで喉を潤す事だけが彼の思考を占領する。
小さな花束の事は、それっきり忘れ去られた。
「へいたいさん、すっごくカッコよかったね!」
「うん!カッコよかったぁ!」
祭からの帰り道、子供達は軍隊のパレードを見てすっかりはしゃいでいる。
普段は大人しいドラクまでもが、湧き上がる興奮を抑えられずにいるようだ。
彼は恰幅の良い士官に手製の花束を渡せた事が余程嬉しかったようだ。
『ぼくも大人になったらへいたいさんになりたいなぁ・・・・!』
「ドラクはもっとつよくならなきゃなれっこないよ!」
「そうだよ、ドラクひょろひょろだもん!」
『そうかなぁ・・・・よし、もっとつよくなるようがんばろっと!』
「・・・・・・・・・。」
『あれ?メイせんせい、どうしたの?はやくかえろうよ!』
「・・・・・・え?あ、あぁ、何でもないよ!カッコ良かったね!」
『・・・・・?ヘンなの・・・・』
ドラクの何気ない一言に一瞬凍りついてしまっていた。
(ドラク・・・・あなたのお父さんは・・・・)
本当の事はとても言えない。
彼の父親が軍と敵対していた事、兵隊に殺された事、言えるはずも無かった。
次の日から今までよりも外で走り回る回数の増えたドラクを見て、
メイは奇妙な運命の歯車が噛み合っていくのを感じずにはいられなかった。
何かが“動き出した”って感じですね。
次の更新が待ち遠しいです。
どうなるんだ〜ワクワク。更新は毎朝8時ですか?
>>675 そうとも限んないんじゃない?夜にも更新してるし
いきなりだけど、パピには猫を操ったり声帯借りて話したりする特殊能力があったな。
長官もそういうのあるんだろうか?
>>677 パピが猫の声帯借りて話してるのを見て「一筋縄ではいかん奴だ」とは言ってたけど
特に能力自体には驚いてなかった。という訳で、ピリカでは誰でもああいう能力があるんだろう
と俺は推測する。
【国家の子政策】
15歳未満であって、両親または片親を亡くした者であり、
長期児童養護施設に入っている児童、
あるいは経済的理由により生活に困窮している家庭の児童につき、
国家が国費を以ってその養育を請け負う事を定める。
児童には充分な食事、清潔な衣服、快適な居住空間が与えられ、
また高い学力を身につけるための教育も充実した環境で行われる。
成績優秀な者については今後国家機関の職員としての門戸も広く開かれ、
本人の努力次第では出自を問わず要職に採用する方針である。
なお、これに伴い現在行われている長期児童養護施設への補助金制度は、
相当の期間の後に廃止する。
各施設従業者については希望があれば国家の児童養育施設での職を斡旋する
「みんな、良かったね!今よりもっとずーっといい暮らしができるのよ!」
「えー!でもせんせいはー!?」「そうだよー!ばいばいしたくないよー!」
「大丈夫、先生も同じ場所で働けると思うから!いつでも会えるのよ!」
「そーなんだ!やったぁー!」
騒ぐ子供たちを見て、ホッと溜息をつくメイ。
しかし、ドラクだけは浮かない顔をしているのを見逃す事はできなかった。
まだ8歳であったが、彼はその辺の大人よりも遥かに賢かった。
5年前、この孤児院に引き取られてきたときから不思議な子だとは思っていたが、
純粋な子供ならではの視点と発想力、そして冷静な大人の論理的思考能力、
ピリカの伝説にある彗眼の悪魔を彷彿とさせるような彼の常人離れした頭脳に
度々全てを見透かされているような気分になったものだ。
そんな彼がこの状況で浮かない顔をしている、それでもう充分だった。
メイは自分では特別才能と呼べるような物は持ち合わせてはいないと思っていたが、
それでも5年も毎日一緒に暮らしてきた自分の息子だ、
今、ドラクが何を考えているかくらいは容易に量り知る事ができた。
それでもあえて気付かないかのように声をかけてみる。
「ねえドラク・・・・どうしたの?嬉しくないの?」
『え!?い、いや、そんな事ありませんよ。とっても嬉しいです』
「・・・・そっか・・・・・・・」
引きつった作り笑いを浮かべて寝室へと引っ込むドラクを見て彼女は思った。
昔からずっとそうだった・・・・ドラクに欠けている物、それは・・・・。
ドラクがいなくなった。
メイは街中を探して走り回っていた。
子供達はもう眠っている。付近住人に助けを求めるのも時間が遅い。
一人で探すしかなかった。
どこ? どこにいるの? どこへ行ったの?
ドラクの行きそうなところ、自分の記憶を総動員する。
彼の生家? 皆でピクニックに行った河原? 良く遊びに行った公園?
ダメだ・・・・彼の行きそうな場所が思い浮かばない・・・・
ドラク ドラク ドラク ドラク ドラク ドラク ドラク・・・・・・・
「・・・・ッッ!!??」
不意にあるビジョンが浮かぶ。
低い目線から・・・・立ち尽くす少年・・・・見覚えのある街並・・・・
もしかしてあそこに・・・・!?
Animal possessor
小動物に意識を通わせ、その動物を意のままに操る能力者。
程度の差はあるものの、ピリカの民の10人に1人くらいがこの能力を持つ。
大型の動物は意識を通わせる範囲が(およそ体積基準)広範にわたり困難であるため、
精通した能力者でないと操る事は難しい。
また、人間のような知的生命体は知能を持たない動物に比べ強い自我を持っているため
能力者の意識は排除されてしまうので、普通はまず不可能である。
操った場合、その動物が使える能力(飛んだり泳いだり)は感覚で問題無く行える他、
ある程度発達した声帯を持つ者であれば、能力者の言葉を代弁させる事も可能である。
通常意識を通わせる時はその動物に手で触れて意識を伝導する事が前提であるが、
熟練した能力者は若干距離が離れていても意識を飛ばして伝導する事が可能である。
また、遠隔地にいる動物の感覚を突発的・受動的に受信するケースもあるという事が、
極めて稀な例ではあるが報告されている。
(少学館『0からはじめるESP』より)
果たしてドラクはその場所にいた。
放心したかのように、電柱の街灯を眺めていた。
677-678に出てきた話題が早速?!・・・偶然かな
>>683 狙って出してみました。こんな設定だと自分でも納得できそうかな、と。
今かなり夜型人間なんですけど(ダメ学生の特権ですね)、
できれば明日の朝までに幼少時代編は終わらせたいなぁとは思ってます。
あと2話分くらいですね。
色々なクサい設定を出したり、人のネタをパチりまくったりしてますが
100%自分で話を作るよりも先行された方々の良設定に乗っかっていった方が
膨らみがあって皆さんにも受け入れられ易いかな、と思いましたので・・・・
大目に見てやって下さい。
ちなみに自分は全くの新参というわけでもなく、以前一度書いてたりします。
セリフ周りなんかを見るとすぐにバレそうでもあり・・・・。
ではまた後ほど。
えっ?誰だろ・・・
あ、もしかして「永遠の絆」書いた人?(違ったらゴメン)
待ってますYO!
「幼少時代編は」って事はもしかしてその後も書いてくれるんですか?
「ドラクっ!!」
皆でパレードを見た通りのはずれに近いところ、ドラクはその場所にいた。
何をするでもなく、ただ街灯を見つめて立ち尽くしていた。
『・・・・先生・・・・・・・』
「良かった・・・・もう・・・・心配したのよ!!」
『・・・ごめんなさい・・・・・・』
「・・・・・・・・」
メイはそれ以上何も言えなかった。
本当は彼が何を考えているのか、痛いくらいわかっていたから。
ただ俯いてしまった彼を見て、何をして良いのかわからなかった。
しばらく二人で黙って佇んでいた。何を話すでもなく。
やがてメイが口を開く。
「先生の昔のお話でもしよっか」
『え・・・・?』
「先生はね、小さい頃からずーっとこの街に住んでたんだ。
今のみんなのおうち、あそこにね、家族みんなで住んでたの。
みんなでよく遊びに行った場所とかあるでしょ?
あれはね、みーんな先生がちっちゃいときに遊びに行った場所だったんだ。
すごーくたくさんの思い出が詰まってる場所なんだよ。
先生、ちっちゃい頃は結構可愛かったんだよ?
あははっ、自分で言うのも何だけど結構モテたんだから。
で、近所にすっごく仲の良い男の子がいてね・・・・
大人になったらさ、その子のお嫁さんになるんだ、って、 ずーっと考えてた。
ホント、何の疑いも無く、そうやって幸せな時間が過ぎていくと信じてた。
でもね・・・・大きくなったその子は戦争に行っちゃって・・・・
それっきり帰って来なかったんだ・・・・。
ひどいんだよ?手紙置いただけで直接には何にも言ってくれなくてさ、
先生に余計な心配かけたくないとかで、だまって行っちゃった・・・・。
実際に戦う兵隊さんじゃないから危なくないって、
食べ物とかを運んだりするだけだから心配無いって、
そう言ってたのに・・・・車に乗ってる途中に攻撃されちゃって、
・・・・・死んじゃった・・・・・。
手紙には書いてあったんだよ。
帰ってきたらきっと・・・・結婚しようって。
手紙を読んだときは嬉しかったよ。
ちっちゃい時からそれが自分の幸せだと思ってたんだから。
なぜか兵隊さんの立派な制服来たその人と自分のウェディングドレス想像して
嬉しくなっちゃったりした事もあったし、ふふふっ。
でも・・・・結局あの人の口から直接には言ってもらえなかったなぁ・・・・。
そういうのにもちょっと憧れてたんだけどね。
その夢は叶わなかったな・・・。
で、それから・・・・悪い病気が流行って先生のお父さんもお母さんも亡くなったんだ。
若い人ほど罹り難い病気だったらしいけど・・・・ほんとにあっと言う間だった。
あっという間すぎてね、先生どうしていいかもわからなくなっちゃってね、
実際しばらく何もできなかったの。
しばらくしてからね、自分と同じように突然ひとりぼっちになっちゃった小さい子が
たくさんいる事を知ってね、何か自分に出来る事は無いかと思って・・・・
それで先生の家をみんなの家にしたの。先生一人じゃ広すぎるしね。
それからはね・・・・みんながいてくれるから寂しくはなかったよ。
辛い事は色々とあったけどね・・・・。
大人になるっていうのはね、自分ではどうしようもない事なんだよ。
自分では何も考えていなくても、突然ならなきゃいけなくなるものなの。
あなたを見てると、自分を表に出さないようにして、感情を押し殺して、
無理してすぐにでも大人になろうとしてるように感じるな。
でもね、それじゃあ人間は生きては行けないんだよ。
感情をむりやり押えつけようとしていたら、いつか破裂しちゃうんだよ。
先生だってたくさんたくさん泣いて、それでやっと何かをしようと思えたんだから。
悲しい時には無理しなくてもいいんだよ・・・・」
そこまで言って、メイは自分の目にも涙が浮かんでいるのに気付く。
ドラクは・・・・声を殺して泣いていた。少年の肩をそっと引き寄せ、抱きしめる。
実際これほどまでに小さいとは思っていなかった少年の体。
今さらながら改めて確認する彼の幼さに、ふと胸を締め付けられる。
二人の啜り泣きは呼応するように徐々に大きくなり、夜空にただ延々と響いている。
8歳という年齢からすればあまりにも当然である感情の爆発だが、
メイがドラクの本当の素顔を目にしたのは初めてであり、そして最後でもあった。
いつもより早く目が覚めた。
小鳥が鳴いている。清々しい、悲しくなるほどに晴れた朝だった。
階段を降りると、まだ早いにも関わらず足音がする。
覗いてみると案の定・・・・
『おはようございます』
「ああ、おはようドラク!よく眠れた?」
『はい、ちょっと早起きしちゃったけど』
メイ先生だった。テキパキと朝食の準備をしている。
今日はいつもより朝食が豪華だ。
と言ってもパンにスープ、サラダといったメニューに卵が付いただけだけど。
でも、先生の用意してくれた食事に不満を持った事なんて無い。
次第に他のみんなも起きだしてくる。寝ぼすけが2人ほど先生に叩き起こされている。
あったかい光景だ。この光景も大好きだった。
今日で終わりと思うと少し寂しいけれど。
『いただきます!』
いつもより元気に声を出してみた。ちょっとみんな驚いてるかな?
でも、僕にはこのくらいしか思いつかないよ。精一杯の感謝を込めて。
食事が終わった後、僕とメイ先生は家を後にした。
これから汽車に乗ってしばらく離れた【国立児童養成学校】へ、第1期生として向かう。
駅までの道、何となく僕と先生は言葉をかわせなかった。
あの日、みんなの前で同じ場所で働けるだろうと言った先生の言葉、
あれはきっと僕らを迷わせないためのとっさの言い訳だったんだろうと思う。
普通に考えて、今の軍事国家がそんな馴れ合いを許すとは思えない。
きっと僕らはみんな沢山ある分校に可能な限り分散して配分される事になるだろう。
それを知ればみんなきっと残ると言い出すだろう。先生と離れたくない、と。
そんな事を考えているうちに駅についた。切符はもう送られてきている。
「じゃあドラク・・・・体に・・・・気をつけてね」
何を言えばいいのかわからない。時間が無い・・・・僕は・・・・
『はい・・・・お元気で・・・・母さん!』
本心から口をついて出た言葉だった。瞬間、先生の顔がくしゃくしゃになる。
この上ないほどきつく抱きしめられる。僕は涙を堪えるのに必死だった。
汽車の中で考える。
あの夜、先生が自分の話をしてくれた事を、僕はきっと忘れない。
そして、これまで自分と共に過ごしてきた人々を、きっと忘れない。
大切な人たちを守れるよう、自分はもっと強くなろう。
自分がもらった幸せを、何倍にもして返せるように。
みんなが幸せに暮らせる平和のために何かをできるように。
少年の視界に真新しい白い建物が入ってくる。
それはあたかも少年の心を映すように、真昼の陽を浴びて輝いていた。
どうも長々と拙文失礼しました。
>>685さんの推測どおり、450です。
内容は大幅にどこかで聞いたような話をパチったりでオリジナリティが乏しかったり
また、タイトルなんかで自分にしかわからないような捻りを加えてみたりと、
20レスも使った壮大なオナニーになってしまったんじゃないかと思ったり・・・・
まあ、今までのところさほど苦言を頂いてもいないのでまだ安心ですが。
(ちなみに最終話タイトルの「TimetoSayGoodbye」ですが、
サラ・ブライトマンの同名の曲が自分のイメージにピッタリだったので、
聞きながら話を書いてたりしました。かなりオススメです。)
ちなみにギルモアについての評価はやっぱり非常に低くなっていますが、
彼については読後の不快感が増せば増すほど狙い通りで自分としては嬉しいです。
自分本日からけっこうな長期に渡って帰省してくる予定でしたので、
その前に何としてもと思い第一部を完結させてしまいました。
結果としてかなりの長きに渡りスレを占領してしまい、申し訳無いです。
今後の展開も構想としてはありますので、もし自分の拙い作品にお付き合い頂けるのなら
暇を見て取り掛かってみようかななどとは思っています。
では、しばしのお別れを・・・・。
あ、うp完了してる。乙でした!
この少年がどういう経緯をたどって今の長官になるのか、非常に楽しみだったりします。
是非、続きも書いて下さいね。待ってますんで
「少年期」そう来たか。
それにしてもこれからパピやギルモアと出会うんだよね。
これからの展開、一日も早く読みたい漏れ。
再臨超期待。
やっぱ神童だな、長官。「欠けているもの」もなるほどと思った。
次の降臨、心待ちにしてます、450さん
感情押さえつけたり自分を出さないようにしたり・・・いかにも長官っぽいというか
パピやギルモアと会ってどう変わっていくのか興味あるなあ。
まあ、一番興味あるのは親の敵の正体を知った時だったりするけどw
パピは8歳で大学を卒業して10歳で大統領になったんだよな。
8歳〜10歳の2年間何してたんだろな。
>>699 普通に考えれば政府関係だけど・・・
ここは意表をついてPCIAってのはどうだ。
全くありえなくはないと思うが
700
>>701 そうすると、個人的な知り合いになったのはPCIA時代という仮説も成り立つのか。
俺としては学生時代の方がツボだが
一方はPCIAの長官となり、もう一方は大統領への道を・・・
初めは二人で手を取り合ってこの国の為に頑張ろうとお互いに考えていたがそのうち
運命の歯車が・・・
妄想が浮かぶなあ
(⌒V⌒)
│ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
⊂| |つ
(_)(_) 山崎パン
>>698 誰にも本当の気持ちを見せず、他人と必要以上に関わろうとしない長官(in大学)
そんな長官に物怖じせず近付くパピ
などという構図が浮かんだ私
いいねえ。うっとおしいと思いつつも話のレベルが合うし、
何だかんだで一緒にいる時間が増えていくとかw
周りからは仲がいいと思われたり
つーかその二人、周りよりずっと年下なんだったら自然に浮きそうだけど、大学で
で、何となく行動が一緒になる(好むと好まざるとに関わらず)ある意味腐れ縁ていうか
700超えたか。前スレより早い気がするな。
いいSSがいっぱい来てるし。
>>706 腐れ縁ワロタw
結局大学卒業してもその状況は続く訳だな
このスレのSSでは割と「元は親友」って設定が多いな。
元親友だからこそ、こじれる時はかえって面倒な事になるんだよな(w
原作読んでも、元親友って見方は出来るあたりが面白いよね
>>711 そう、それそれ。
個人的に知り合いだったらしい描写はあっても、どこでどういう知り合いだったかは
はっきり描かれてない。だからかえって色々想像の幅が広がってイイ!と思う。
SSも好きなように書けるしw
さて、大学生編SSが待たれる訳だが
よく考えたらパピとの出会いを書いたSSはまだないし
そういえば出会いそのものを書いたSSってなかったな。結構意外かも
大学の構内で
パピ「あの、すみません。○○研究室ってどこでしょうか」
長官「ああ・・・今行くところだけど」
最初の出会いは案外こんなモンかも
>>715 パピはまだ6歳くらいの子供だから歩幅が違って、小走りで長官についてく事に。
しばらくして振り向いた長官がそれに気が付いて、
「ああ、気が付かなくてすまない。もっとゆっくり歩くよ」
「あ・・・す、すみません」
とかね。妄想してしまうな
で、一年くらい経って、夜道を二人で歩きつつ「少年期」?
>>718 その場面は是非とも見たいな。
こう思うのも外伝氏の影響だな。
うわ、思い出し泣きしそう。しかもあの時はアナザーエンドうp前だったし。
長官が左を選んで終わりのやつ。…涙が蘇る
俺も思い出した。つーか、今でも記憶は鮮明だけど。
「白い夜空の下で」の長官の言葉には、「大人として責任を果たす事」を、
本当に色々考えさせられた。
外伝氏の再臨待ち遠しいな。またあの世界に浸りたい
>>722 禿しく同意。
外伝氏の書く学生時代がマジで読みたい。
>>721 うん、漏れも考えた。
でも結局、「もう充分だろ、右行けよ(泣)」が漏れの感想だったw
725 :
545:03/08/20 00:19 ID:???
>>546 さん
返事がかなり遅くなってしまいましたが,
言われるとおり佐藤大輔でした。
鹿内のエッセンスを足したのですね,
妙に納得でした(笑)。
状況の積み重ねによる必然としての心理を
丁寧に描写する外伝担当さんの文章は,
すごく好きです。
なんか,わーわー騒ぎたいから騒いでいる人も
何人かいるようですが,めげずに書いてもらえると,
すごく嬉しいです。
これからも頑張ってくださいね。
>状況の積み重ねによる必然としての心理
うん。それが本当に巧みに描かれてるから、読んでる方もどんどんその世界に
引き込まれるんだよね。そして感情移入して大泣き。
みんなは「白い夜空の下で」と「蒼穹への帰還」どっちが泣けた?
俺はやっぱ「蒼穹への帰還」。長官と一緒に俺も泣いた。
「白い〜」は静かに泣けてくる。
「蒼穹〜」は・・・ボロ泣き。
「蒼穹への帰還」のゲンブって、なんでか近代麻雀の「むこうぶち」に出てくる安永三段(?)を連想してしまう。
「白い〜」好きですね。
「私は、ただ、それだけが言いたかった・・・・」のあたりとかね、
なんでここまで長官に感情移入出来るのか、
自分でも不思議なくらいだけど、
読み返す度にどうしようもなく切なくなる。
自分のための物語のように感じるんですね。
あのゴウカイなゲンブには確かに驚いたな、いい意味で。
長官への話し方とか。
どっちも感動するけど、感動の種類が違う・・・かな?
どう違うとは上手く説明できないけど。
>>732 「白い〜」は、ラストがああだから、「何でだよお〜(泣)!」な気持ちがある。
ありながらもやっぱり感動。「蒼穹〜」はただただ感動。
漏れにはこういう↑バカっぽいレスしか出来ん。スマソ
734 :
732:03/08/20 21:32 ID:???
えーと・・・・すごく簡単に言えば
「白い〜」は長官に感動、「蒼穹〜」は部下達(の魂)に感動。
736 :
マロン名無しさん:03/08/21 08:38 ID:QYqjO3do
>>731 まあ長官より遥かに年上だろうし。
ちなみに俺は長官と女少尉のその後が気になる「蒼穹への帰還」派。
>>736 ドウイ。誰かその辺書かないかなSSで。短くてもいいから
>>736 くっついたんじゃない?「あれも強情な女でな」とか言ってたし・・・
でもその辺のエピソードは確かに見たい。
ぷらら規制終わった〜!
やっとカキコ出来ます、長官!
他のぷらら使用PCIA兵も総員カキコ開始せよ!
あ、ホントだ。
只今カキコ致します!
共に死地をくぐり抜けた仲だもんなあ>長官とトクル
「通り抜けた回天」から「蒼穹への帰還」まででかなり絆は強くなってそうだよね
>>741 しかし長官は「蒼穹〜」までトクルが女と気付かなかった罠(w
743 :
741:03/08/22 14:55 ID:???
違う違う、「通り抜けた」→「通り過ぎた」
このタイトル大好きなのに・・・・上の行の“くぐり抜けた”につられたw
>>742 人間的に絆は強くなってるだろうし後はなんかのきっかけで、という意味で
どうでしょうかw
結構年の差ありの設定だったね
蒼穹の時点で長官30歳トクルは17〜18だったかな?
漏れ的にはツボ
皆様お久しぶりです。外伝担当でございます。
私の拙文に過分な誉め言葉をいただき、まことにありがとうございます。
バキスレのほうにも書きましたが、ここしばらくは仕事がお祭り騒ぎになっておりますので、
ご希望のあるあれこれの話をアップさせていただくのは難しいかなと思っております。
代わりと申しましては何ですが、今自分の頭で暖めているネタを申し上げます。
1 長官の学生時代
パピとの出会いと、惑星ピリカ革命編をネタにしたいと思っております。
ここでは、少年期のシーンをきっちり描き込みたいですね。
できうるならば、パピが大統領になり、ドラコルルが長官になって、仲違いするまで。
2 蒼穹への帰還の後日談
これは、そんなに長くならないと思います。
「そういうことで、トクル君」
ドラコルルは、珍しく言葉を選びながら彼女を見つめた。
「私は、ピリカ内務長官の職を辞し、大統領選に出馬するつもりだ。そこで」
「・・・・・」
彼は何か大事なことを言おうとしている。すぐにそう察したトクルは、ただ黙ってその続きを待った。
「可能であれば、君もピリカ内務省事務官としての職を辞し、私を助けてほしい」
「それは、公的にと言う意味ですか?」
「公的にも、私的にもだ。君さえよければ、これからもずっと、共に生きてゆこう」
こんな感じの話ですね。
3 もう一つの宇宙小戦争
読んで字の如くです。これは長くなりそうですねぇ・・・・・。
>>744 いいな。カリスマ上司とそれに絶対の忠誠を誓う部下。俺も萌えポインツだ。
>>745 ・・・お待ちしてます、いつまででも!
2の後日談、そのセリフ読んだだけでもう既に舞い上がってます。
お久しぶりです外伝担当様。
挙げられた3つの話、どれも本当に楽しみです。
もう一つの宇宙小戦争・・・・読んで字の如くという事は、長官視点の原作話?
それとも原作関係無しのオリジナルでしょうか。どっちにしても、超期待。
どんだけ長くなってもいいです。
いくらでも待ちます。
その3つ読むまで死ねないですw
>>745 いかにも長官らしいプロポーズですね!
なんか色んな意味にとれるあたりが(w
原作でもそういうセリフ多いですよね、色々想像できる感じの。
内容はプロポーズでも長官が言うと何か仕事の話のようだ。
でもそこがイイ!少しのセリフでも久々に外伝氏の文章を読めて嬉しい。
>>751 「自分の不人気をよくご存知だ」
このセリフ一つからでもいっぱい話作れるもんな。あと、例のパピとのやりとりとか。
確かに長官のセリフは色んな想像が広がるものが多いな。
外伝さ〜ん!また来てくださったんですね!うれしいです。
ネタが形になったらどうぞいつでも降臨して下さい。
スレ住人一同、心からお待ちしてます。
なんかもう、外伝さんの作品全部まとめて本で読みたいな。
>>755 745の1〜3+今までの全部合わせたら凄い事になるよね。
一大大河小説になるよ。
>>753 長官がパピに「約束を守ったことがあったか?」と言われたのは、実は大学時代の
他愛もない事だった、てな前スレのネタはワロタな。代返忘れとか。
>>757 どっちもだらしない香具師だと突っ込まれてたやつな。確かにワロタw
二人は何回も約束をしあう間柄だったんだな、前提としては。
約束をしなきゃそもそも約束を破れないし。
ということは単なる知り合いじゃなくて友人関係だったのか?やっぱり
長官とパピは学生時代、ちょっとした(or重要な)約束を何度かした
色々行き違いもあって、結果的に長官がそれを全部破る事になってしまった
しかし約束を破ったのは事実だし、あれこれ言い訳するのも大人気ない
そう思った長官は「一度でも約束を守ったことがあったか?」というパピの問いに
ただ「なるほどな、言われてみればその通り」とだけ答えるのだった。カコイイ!
↑なんていうのはどうでしょう
よし、規制終わった!しかしこれで俺の経験では2回目。カンベンしてほしいよな
>>760 その時ちゃんと説明しなかった事が後に対立する萌芽に・・・
きっかけはほんの小さいものだったりするし
>>760 さすが長官、大人!
そう言われてみるとパピのセリフはいかにも子供かもな。
純粋だけど一面しか見てない感じ。
「パピ、すまない・・・本当にすまなかった。許してもらうつもりは全くないが、
私はただ、それだけが言いたかった・・・・」
「いいよもう。たしかに代返忘れられたり講義時間変更を教えてくれなかったのは
困ったけど、僕もだらしなかったんだし」
「・・・・(いや、謝りたいのはそれじゃなくて・・・にしてもまだ根に持ってたのか)」
す、すみません外伝さん&スレのみなさん。あの感動のシーンを・・・w
>>765 自分が銃殺された事より学生時代の約束破りを根に持つパピ(藁
>>766 でもある意味パピにとってはそういう並びなのかも。
銃殺されたのはお互いの理想の違いであって許す許さないじゃないけど、
代返してくれなかったのはどうあがいても約束破りだし(w
天然のパピに振り回される長官ってのもいいな。
お子様(8歳以下)に振り回されてた長官の大学時代か・・・・(w
それはある意味パピが大統領になっても同じだな(10歳だし)
>>767 なるほど・・・パピはそういう人かも
んでもって天然も納得。確かに10歳にしてあの考え方や行動はフツーじゃない。
そういう意味では長官はきわめて常識人と言えるかも。有能さは別にして
時々「自分は10歳の子供相手に何やってんだろう」という疑問がふと頭をもたげる事も
ないではなかったが、それはとりあえず深く考えないでおこうと思う長官であったw
コソーリage
772 :
ありばん死 ◆GzrfxfEudo :03/08/28 21:22 ID:ZQZFNC0x
_∧ ∧
( 死 )
8 レノヽヾ8
ξξξ゚ ヮ゚ノξ あははははは!
⊂)†iつ
⊂<___|
し
773 :
マロン名無しさん:03/08/28 21:25 ID:KvKRdPXI
PCIAは少数精鋭なので、職員(≠“兵”)は80万もおらんはずだ。
精鋭がPCIAに集まるのではない。
長官が真の精鋭を育て上げるのだ!!!
で、そうやって育てられた者は努力を怠らず更に長官の役に立てるよう自らを
高め、その風評がまたいい人材(になる者)を集めるという良い循環を繰り返す、と
>>773 「ギルモアの軍隊は?」
「およそ80万」
↑
これは戦闘員の数だけを言ってると考えていいと思う。
職員(非戦闘員)はどうなんだろうな。
777 :
773:03/08/29 11:59 ID:s4bcVLZH
>>774、
>>775 諜報活動の中で重大な功績を成し遂げた者に対し、すぐに昇進を行なう長官の
実力主義、信賞必罰の姿勢が、鉄のPCIAを作り上げた。
長官はパピに「一度も約束を守ったことがない。」といわれたが、それはパピ
や、敵に対してであって、内部に向けては、規律・実績を重視する良き上官
でありつづけた。
>>776 その通りだ。80万と言うのはほとんど陸海空軍の兵力であって、PCIA
職員の数はその中に含まれているかいないかも分からん。
778 :
マロン名無しさん:03/08/29 12:01 ID:tBdrv1AB
779 :
マロン名無しさん:03/08/29 12:03 ID:s4bcVLZH
ところでドラコルルを実写化するとしたら配役はどうする?
叩かれるのを覚悟で言うと、中井貴一にやってもらいたい。
780 :
マロン名無しさん:03/08/29 13:52 ID:Fo1Du/76
ちょっとイメージと違う>中井
軍服・帽子・グラサン付きを守ってくれるなら一度見たいかも>中井長官
「戦艦大和」とかいう軍事映画で中井貴一が演じてた役はけっこう長官ぽかった
・・・・かな?昔一度テレビで見ただけなんで記憶が曖昧。
30歳前後くらいの中井だったらけっこういいかも
↑こう書いた後ス○ップの中井を思い出してしまったw
>>779 日本の俳優限定ですか?
それは難しいな…
えーと、えーと…上○隆也とか。ト○エツとか。何か雰囲気的に。駄目?
中井貴一は俺的には結構いいと思う。
>>784 じゃあ外国人の俳優まで範囲広げれば簡単かというと・・・・
余計わからん(w
長官は難しいけど、ゲンブやギルモアだったらそれっぽい俳優いそうだな
ギルモアって八名信夫だったんだよな・・・声が
実写版だったらパピは演技派の子役にするかジャニーズJr.にするかってとこ?
洋画だったらハーレイ・ジョエル・オスメント君(A.I.の)なんてどうかな
実写版にしたらとてつもなく金かかるな。
でも作るならハリウッドだな。
リメイク・エピソード1・完結編の三部作でおながいします
第二弾ももうすぐ800か。
元ネタはコミクス一冊しかないのにここまで来るとは。
最近SSこないねぇ・・・・。
>>791 元々SSスレッドじゃないんだからこんなもんでしょ。
気長に待つべし。続き書きたいと言ってる人もいるし、外伝さんもネタがあると
いうことだし。
規制多いなこの頃。ぷらら3回目かよ
終わったか規制。このスレはplalaが多いみたいだな。
>>791 そろそろ来そうなヨカーン
まあ俺がそう思うだけだが
ピリカの人の血液型って、地球人と分類同じかな?
長官とパピは相性最悪か、逆に本来はピッタリなはずの組み合わせだと思うw
パピは間違いなくA型と思われ。
長官はB以外のどれか。パピと同じでも可。
来週あたり、二人の出会い編SSでも書こうかな、なんて思ってます。
短いものでしょうけど。
>>798 待ってます。
他の神もそろそろ降臨してくれないかなあ。
ついに800!
部下一同、お慶びを申し上げます長官!
さあ、今週あたりから神が次々と降臨・・・・するといいな。
ま、800まで来たしSSの事も考えてマターリ行こう
ここって、宇宙小戦争のネタしかダメなの?
他の映画のSSはダメなの?
>>803 前に来たけど酷い目に合ってたよ。
長官が絡んでこない話はまず止めておいた方が無難。
じゃあ辞めるわ
宇宙小戦争見たことねえし
日本誕生あたりで、いいの書きたかったんだけどね
【第二弾】長官に忠誠を誓うPCIA兵の数→80万+スレッドの皆さま
はじめまして。
外伝担当の友人EとYと申します。
今回書き込みさせていただいたのは、
外伝担当が先週急逝されたことを
ご報告に参りました。
何の証明もできませんが、本当のことです。
私たちは、以前、外伝担当本人から
直接このスレッドのことを聞き、
今まで書き込んだりすることはせずに
彼の作品を読み、感想を言ったり、スレッドの反応について
「好評みたいでよかったね」などと話したりしておりました。
そんなとき彼が、ちょっと照れたような
でも誇らしげで満足そうな顔をしていたのを
思い出します。
このような掲示板ですので、亡くなったということを
書き込むことによって「荒らし」「自作自演」
「書けなくなったから逃げたのだろう」
「ネタに違いない」等々の反応も予想しました。
「このまま彼はここでは生きていることに
しておいたほうがいいのではないか」
「余計なことかもしれない」
と話し合い、非常に書き込むことに対して
迷い、ためらいました。
彼が亡くなったことをここで証明することもできず、
いたずらにこのスレッドを混乱させてしまうことは
本人の意思ではないだろうと考えたのです。
しかし、このスレッドについて本人から直接教えてもらったのは
私たち二人だけです。家族も掲示板については知りません。
彼の小説の続編を待つ書き込みを見るたびに非常に胸が痛み、
また時間が経つにつれ、彼に対する非難の書き込みも
増えていくのではないかと思うと、何かせずにはいられず、
皆さまに彼の死をお伝えすることが
私たちに課せられた義務なのではないかと次第に思うようになりました。
私たちは家族や親族ではないので、遺品のフロッピーや
パソコンを調べることはできません。
ですから、予告されていた小説が発表されることは
ありません。
本当に突然のことで、お通夜、告別式に出席した私たちでさえ
いまだに彼が亡くなったということを信じることができません。
また、自分自身の気持ちの整理もつかないまま書いた
文章のみで信じてもらえるとは到底思えません。
ただ、次回作の予告をしながら、それを発表することができなかった
彼の無念を思い、信じてもらえないことを承知で
ご報告させていただきました。
差し出がましいとは思いますが、今まで
外伝担当の作品を読んでくださり、
ありがとうございました。
「バキスレ」というところにも書き込みにいくべきかと
考えましたが、私たちが直接教えてもらったのはここだけなので
このスレッドにのみ書き込みさせていただきます。
長文失礼致しました。
これは・・・・本当なのか・・・・?
信じられない・・・・。
頼むから外伝さん、何か書き込んでくれ。
短文レスで構わないから。
すまんがあげさせてもらって良いか?少しでも情報が欲しい。
>>806 もう飽きたんなら釣り宣言をしてくれ。頼むから。
>>806-807 友人様へ
頂いたレスの内容に驚いております。
本来ならば丁寧なお言葉に感謝する所ですが、正直その内容の衝撃にそれが出来ません。
私は外伝氏とともに、通称「バキスレ」という所で連載をさせて頂いてます。
その時から、外伝氏の技量の高さに大きな尊敬と、ほんの少しの嫉妬を感じておりました。
こちらの作品も、あちらの作品も、私は読者として楽しみにさせて頂いておりました。
ですから、どうしてもあなたのおっしゃる事が信じられないのです。信じたくありません。
出来れば、外伝氏がこちらかあちらかに連載を再開して、私たちはあなたのレスを
「悪い冗談だったね」と笑い飛ばしたいのです。大変失礼な書き方申し訳ありません。
ですが、本当にそれが真実であるのならば、もう一度書き込んで頂けないでしょうか。
勿論、近くにいらしたあなた方の悲しみは、我々とは比較にならないと思いますが、
我々も外伝氏を尊敬し、彼の作品を愛読しております。
心苦しいのですがお願い致します。正直、私は彼の作品しか知らない間柄ですが、
外伝氏は私の目標であり、師であり、ライバルであり、そして同志と思っていました。
勝手ですが、出来ましたら再度レスをお願い致します。
あなた方が思っておられるより、外伝氏のファンは沢山いるのですから。
パオ
とりあえず返答レス待ちだな。
無ければネタ決定。
ま、あっても今週中に本人のレスがなければ死んだも同然だが
>>812 さすがパオ、高度な荒らしを使いますね
一見心配してるように見せて、
実はざまあみろって雰囲気がみえみえですよ
本当は外伝が死んで喜んでるくせに
本気で腹が立つので報告します。
http://homepage2.nifty.com/Daiou2/Rep.htm まだ、少ししか読んでないのでよくわからないのですが、
このような中傷があった場合、刑事事件として裁判を起こすことが可能なようです。
私は上の記事を読んで、死亡が本当のことか判断する根拠を持ちません。
しかし、通常このようなことを冗談に使う方はいないと心得ております。
ですから、本当の事なのでしょう。名前は知らないけれど外伝担当と呼ばれた方のご冥福を祈ります。
それと、もし、上のような書き込みを見て腹立たしく思うようでしたら、警察に相談されてはどうでしょうか。
各章があるわけではありませんが、動いてくれるかもしれません。
訂正。
誤:各章があるわけでは
正:確証があるわけでは
とりあえず、真偽は別として
>>806-807がクズってことに変わりは無い。
偽情報なら言うまでもない。
本物情報なら、アフターケアにもしっかり当たるべき。
つうことでさっさと来いアホ
ああ、本当の情報だったら生IPくらい晒せよ。友人とやら。
メール欄に fusianasan だ。
これが出来たら信用に値するだろうな。
ウソ情報だった場合でも訴えることが出来るし。
串刺すなよ。絶対。
生 I P だ
>本物情報なら、アフターケアもしっかり当たるべき。
義務はないと思う。
>ああ、本当の情報だったら生IPくらいさらせよ。友人とやら。
関係ないと思う。
まじめな話、死亡の話がうそならば、怒っていいのはネタにされた本人だけだと思う。
ほかの人間はただひたすら、本人の投稿を待つしかない。
過敏かも知れんが、
>>817-181のような書き込みも、もし死亡記事が本当だとすれば
中傷に当たるかもしれないないようだ。もちろん、死亡記事は自分が書いたものなので
判断できないが、ともかくこの話をネタに誰かを中傷するのは絶対やめたほうがいいと思う。
道徳的な問題もあるが、最終的には法的な立場から中傷した側の首をしめる可能性がある。
また間違えた。
誤:もちろん、死亡記事は自分が書いたものなので
正:もちろん、死亡記事は自分が書いたものではなので
致命的な間違いだ・・・いや、死亡記事なんて書いてません。
上の間違いです。
>>815 二度とこういう馬鹿が出てこないように語ろうぜスレにも
転載させてもらってイイかな?
>>819 >怒っていいのはネタにされた本人だけだと思う
はい、ネタ決定。
読者でだって傷つくっちゅうに。
誤:ものではなので
正:ものではないので
>ほかの人間はただひたすら、本人の投稿を待つしかない。
その苦痛を和らげる為にも書き込みくらいすりゃあいいだろ。
>>819 まじめな話、アフターケアをする法的義務なんかあるはずないが、感情面から考えれば
やってくれた方がいいに決まってると思う。
本当に待ち焦がれている人がいるというのに「真偽はご想像にお任せ」なんていいはずない。
あなたはきっと外伝の話を読んでもいないからそう言えるのでしょうね。
>>819 偽情報の場合。
法的に訴える権利は外伝にあるんだろうが、怒っていいのいけないのなんてあるわけないだろ?
混乱があることを予想しつつ、それでもあえて公開したんだろ?
だったら何とか返事してもらってもいいじゃん。無駄に混乱を招いてるだけなんだから。
絶対嘘だと信じてます。
外伝さん、もし見てらしたら一言でもいいのでお願いします。
あんな事を書き込んだのは決してこのスレの住人ではないと思いますが、
不快な思いをなさったなら代わってお詫びします。
外伝さんの友人もトリップをつけているということは
2ちゃんにもよく来るんだろう。
もう一度レスがあるのを皆で待とう。
>>828 友人→友人を名乗る者 とでも書いてくれ
友人が本物だとしたら情報も本物という事になってしまう
ネタだと信じたいんだ
匿 名 の 2 ち ゃ ん ね る で ど う や っ て 相 手 を 訴 え る ん で す か ?
>>@対匿名、対固定ハンドルのケースでは、基本的に警察は動きません。
>>固定ハンドルでも、一般的に住所などが公になっていないと匿名と同じ扱いです。
理性的な対応ができない人たちだなあ。
この雰囲気じゃSS書くつもりだった人も書きづらいな。
外伝さん、早く来て笑い飛ばして下さい。
【第二弾】長官に忠誠を誓うPCIA兵の数→80万+スレッドの皆さま
昨日外伝担当の訃報を書き込みさせていただいた
EとYです。
前回の書き込みの反響の大きさに、驚きと
彼にはこんな一面もあったんだ、
彼のことをこう思っていた人もいたんだ、
という新たな発見に多少の喜びを感じました。
一方、彼の本当にプライベートな領域を
こんな形で汚してしまい、申し訳ないという気持ちで
いっぱいです。
私たち自身、未だにこれは現実なのだということを
完全に理解していない状況で書いた拙い文章なので
説得力もなく、一方的な言葉の暴力のように感じ
皆さまが混乱し、憤り、疑いをもつことも
もっともなことだと思います。
日常生活の延長上に死があることなど
私たちは想像すらしておりませんでした。
彼と飲みに行ったり、他愛の無い会話をすることが
これからもずっとずっと続いていくと思っていました。
このスレッドについても私たちにとっては
彼との些細な会話の一部でしか
ありませんでした。
現実に葬儀に参列した私たちが未だに彼の姿を探してしまう
というような状態なのですから、
ネット上でのみ交流があった人々が、ある日突然
訃報をつきつけられ、確証もなく
証拠もないという状態では、疑うことも無理のないことです。
現実として受け止めるにはあまりにも
辛すぎるため、抵抗できうる限り抵抗したいという気持ちは
私たちも同じです。
どれだけ言葉を尽くしたところで、ネットの書き込みで
納得しろという方が無理なことなのでしょう。
個人情報なしで人が亡くなった事を証明する難しさを
考えれば考えるほど、自分の文章力、表現力の無さを
痛感し、途方に暮れるばかりです。
彼の死をネット上で私たちが証明できるものは何もありません。
唯一動かしようのない事実として
彼が二度と書き込むことがないということ、
時間が経てば、それが証明になるのではないかと
思います。
昨日書き込みをした時点では
使命感と義務感にかられ、彼の死を伝え、説明した事に対して
多少の満足感がありました。
しかし多くの反応をみて、彼が好きだったスレッドの人々の
感情を激しく動揺させてしまったこと、
自分たちと同じ苦しみを分け与えてしまったこと、
「あのまま黙って去ったことにしておけば良かったのかもしれない」
と、罪悪感を感じ少し後悔しております。
スレッドを混乱させてしまって本当にごめんなさい。
彼の死を伝えるのは本当に辛く、
「なぜ私たちでなければならなかったのか」
とも考えました。
私たちが見てきた現実の彼を失うことも、
ここでの外伝担当としての彼を失うことも
悲しみは同等なのでしょう。
それならば、現実の彼を失った衝撃の大きさを
現在体感している私たちは、皆さまのためにも
お伝えしないほうがよかったのかもしれません。
ただ、私たちは彼が予告した続編を待ち望む声に対し
彼が書き込まない、書き込めない理由として
嘘や偽りを書くことは友人として、どうしてもできませんでした。
今は彼が遺した他愛も無いメールや写真、過去の書き込みを読んだり
することで、影を追うようなことをしておりますが
辛すぎる経験のため、彼を思い出させるものを
遠ざけるようになるかもしれません。
その前にどうしても皆さまにはお伝えするべきだと思ったのです。
彼のこちらでの知名度や影響力の大きさを改めて知り、驚くばかりですが
いつか、彼が予告した続編を書いてください。
そしてできれば外伝担当としての彼を忘れないでください。
私たちも、もうこちらには二度と書き込みいたしません。
書きたいことだけを書いてしまった感はぬぐえませんが、
ご報告させていただきました。
レスをくださった方々に感謝いたします。
自分勝手な書き込みで皆さまに大きな動揺を
与えてしまったことをお許しください。
多大なご迷惑をおかけしたと思います。
申し訳ありませんでした。
長文失礼致しました。
837 :
マロン名無しさん:03/09/09 20:57 ID:ifr1VTxL
友人さん、こっちの召喚に応じてまた出てきて下さい。これじゃああまりにも一方的すぎます。
質問がある人もいると思いますし、もう少しだけ付き合ってもらえないでしょうか?
とりあえずネタくせえ。もう出てこなくていいよ。
>>837 あんま無理させるなよ。
これ、多分ネタじゃないよ。俺は信じる。
外伝が来ないという事実もあるし、書き込みの中に真摯さが込められてるように見える。
コピペかと思って昨日必死んなって元ネタになってるコピペ探したもん。当然無かった。
荒らしが辛抱強くこんな文章書けるはずもない。
だまされてるならそれでいい。が、今はとりあえず信じてみていいと思う。
>>837 これが真実ならそれはちっと酷な要求じゃないのか。
読んだ限り、これ以上訊くようなことは無い。
ネタだったとしたら、どんな答えでも返って来得る訳だ。
どちらにしろ、これ以上友人氏を煩わせる必要は無い。
>>833-836 外伝氏友人様
友人様、返答レスありがとうございます。
一部、外伝氏や友人様を誹謗したレスがあった事を、深くお詫び致します。
>>住人ALL
友人様の1回目と2回目のレスを、今3回ずつ読んだ。
私は検閲が得意な方だけど、正直、文面から悪意は感じられなかった。
友人を無くした哀しみと、ここの人間への配慮を感じただけだ。
勿論、私の目が節穴であってくれる事を祈ってる。
>>837さんの仰りたい事も分かるけど、外伝氏の死が真実なら、実際の哀しみは、
友人様の方が我々の何千倍も重い筈だ。無理強いは出来ない。
むしろここにレスを上げれば、また外伝氏の事を思い出して辛くなるのに、
それでも我々に2回も連絡してくれた事を、深く感謝するのがスジだと思います。
それでもやっぱり認めたく無いんですよね、皆さんもきっと。それは私も同じです。
私は今週一杯までは、外伝氏を待つつもりです。あっちでも、こっちでも。
とびきり面白くて感動的な新作をまたアップしてくれて、私にまた
「やっぱり外伝さんには適わないなぁ」と思わせてくれるのを信じてます。
でも、今週外伝氏から何もなかったら……。辛いなあ。
>>外伝担当友人氏
外伝氏の作品を読んだことはありませんが、その作品の素晴らしさは聞き及んでいます
そのため突然の急逝という書き込みには驚かされました
しかし、これが悪い冗談であって欲しいと思うのはパオ氏や私だけではないはずです
パオ氏は文面からは悪意を感じないとおっしゃっていますが
はたして、それだけで真実ととらえてよいものか
外伝氏の書き込みがなくなって久しいようですが、事実であるとすれば死因は何なのでしょうか?
死に至るほどの病であればより長期の不在を要するかと思います。だとすれば事故でしょうか?
少なくとも私であれば友人の死を伝えるに際しては死因を伝える必要を感じます
それも推敲したと思われる文章、そこになぜ、死因を伝える一文が欠けているのか
不思議で仕方がありません。
真実であれば失礼かとは思いますが、多くの人間が事の真偽を確かめたいと願っていることを察してください
>>842 死因ってプライベートなことだろそれをこの場で晒す必要があるのか。
知る権利の元になんでも許されるわけじゃないだろ。
詮索するのは失礼だと思うし、死因を書かないと不自然という感覚は
非常識とまでは言わんが、外伝氏側の立場を考えてないんじゃないか。
>>842 友人さんも辛い中、書き込んでるからな。
そこまで求めるのは酷でしょう。
友人さんにありがとうといいたい。
でも、デマであることを信じています。
この雰囲気じゃ、誰も作品なんて書き込めないな。
>>846 少しはわきまえろクズ。
雰囲気を考えろ。
>>847 お前がな、クズ
つーかクズクズ言ってんじゃねーよ
849 :
846:03/09/11 02:19 ID:???
>>847-848 スレの雰囲気を悪くするつもりはなかった。すまない。
確かに軽率だった。
ってか、普通に戻ってくる気がするけどな。
前も3週間位空けてたし、仕事が忙しくなるとか言ってたし。
>>850 本来なら今週顔を出してたんだよ
前本人がそう言ってたんだから。
信じられない奴らは今週日曜日までを区切りにがんばってみれ
今まで書けなくても連絡レスはあったしな。
こっちかバキスレに。
パピが笑った・・・
もう、見せてくれないと思っていた笑顔を、俺に見せてくれた・・・
ありがとう。本当にありがとう
はしがき
ピリカ歴2018年は血に染められた年だった。
ギルモア将軍の恐怖の5月による虐殺数は1万人をこえ、
ピリポリスでの市民蜂起での死者は3千人に至った。
その後のPCIA派弾圧運動は2894名の逮捕者を出し、
内74名が死刑という厳罰が下される。
特に苛烈を極めたのはドラコルル長官への責任追求だった。
ギルモア将軍は市民蜂起の際の私刑で死亡したため、
全ての責任をドラコルル長官が負う形となり、
ピリカ全土に死刑の様子が公開された。
ピリポリス解放50周年を祝う今年、
本レポートはドラコルル長官へと迫ることで、
2018年の血はなぜ流れたのかと考察するものである。
1章 少年時代
1996年冬ドラコルル長官は貧しい農家の二男として生まれる。
彼はそこで10歳になるまで両親と6人の兄妹と暮らす。
10歳で両親を亡くし身寄りのなかった彼は中央の施設へと送られた。
両親の死亡は当時、動く荷車をとめるために、
あやまって崖から転落した事故死として処理された。
しかし2018年の裁判では恐るべき真実が明らかとなる。
妹ドラリルの証言は(彼女はこの証言で免責特権を得た)、
「彼は中央に出て出世するためだけに、私たちの両親を事故に見せかけ殺しました。悪魔のような奴です。」
と非常に衝撃的なものだった。
さらに驚くべきことにドラコルル長官はこの事実を全面的に認めた。
「…はい、私がやりました。孤児となり中央の施設へ入れば教育を受けられる。教育を受ければ偉くなれると思っていました。」
「それだけのために両親を殺したのですか?」(裁判官)
「はい、そうです。」
ざわつく裁判官達、驚きで筆を止めた速記官とは対照的に表情一つ変えないドラコルル長官。
この映像はドラコルル長官の残虐性を物語るエピソードとしてメディアがこぞって取り上げた。
「ドラコルルに死刑を!」
7ヶ月の連日に及ぶ裁判の間、人々がそう叫ばなかった日はない。
しかしドラコルル一家が困窮極まっていたことも事実である。
10歳までに彼は6人の兄妹のうち3人を亡くしている。
彼が7歳の時に姉は医者にかかることなく流行風邪で死亡。
翌年、彼が慕っていた兄は下男として働きに出ていた家でいじめに堪えかねての自殺。
さらに彼が9歳の時に、これは裁判でも大きく取り上げられ…
「彼は生まれたばかりの私達の末の妹をその手で川に沈め殺しました。」
そのままドラコルル長官の妹は泣き崩れ退廷を命じられた。
ドラコルル長官はすぐに事実を認め、
「母の乳は出ず、ミルクもありませんでした。同じ死ぬなら早く楽にしてあげた方がいいと思いました。」
と再び法廷を騒がせる。
今日ではこの一連のエピソードに対して、
妹の免責特権を得るためにドラコルル長官あるいは妹自身が作った話ではないかと、
疑問を投げ掛ける声もある。
また都市部の人間には想像しにくいが、
当時の貧しい農村部では口減らしのために、
子供を川やたらい桶の水に沈めることは少なくなかった。
ともあれドラコルル長官の少年時代が、
悲劇の幕開けを予感させるものであったことに変わりはない。
2006年こうして彼はピリポリス児童福祉施設へ入所することとなる。
(弟妹は別の施設へ送られた。)
続く
もうこのスレ終わってもいいんじゃない?
どうやら本当みたいだし。
おお。久々のSSか。
でもどうせならもっと明るくて爽快な気分になれるSSが読みたかったかな。
こういう雰囲気だし。・・・・いや、ワガママなんだけどさ。
特に、長官が死ぬ話は今はカンベンしてほしかったかも・・・
・・・色々すまん。気を悪くしないでくれ
しかし今回のぷらら規制は長かった。丸三日だ。
外伝さんも書こうとしたら規制にかかったなんてことはないんだろうか。
>>851 少なくともこのスレでは、はっきりといつまでに復帰するとは書いてなかったと思うが。
>>861 まあ気持ちはわかる。漏れも最初のはしがき読んで軽く鬱になった。
状況が状況だもんな。SS書いた人、ほんとに気を悪くしないでほしい。
あなたのSSが悪いわけじゃないんで。
みんなの心の痛みが伝わってくるな…希望は捨てないでいようよ、このまま外伝さんが
戻って来なかったとしても。結局真実を決定的に確かめる方法はないんだから。
今は読んでて楽しいSSをきぼん、な方たちに俺も同意しておく。
外伝さん本当に死んじゃったのか。
ネット上だけだったとしても、何かこう変な気持ちが心にあるよ。
869 :
865:03/09/15 00:00 ID:???
まああれだ、これからもみんなでこのスレ大事にしよう、ってことだな。
866の言う事ももっともだと思う。明るいSS読みたかったら人に頼んでないで
まず自分で書こうとする姿勢が大事だった。
ほんとにそうですよね。外伝さんの事が本当かどうかはわからないけど、私も
ショックで、自分でSS書くなんて考えてなかったです。それで861,864,865の人と
同じような事考えてました。でも自分で書ける人、書いたことある人だったら自分から
進んで読みたいものを書くべきかもしれないですね。
来週あたり書いてみようかな・・・
スレ住人みんなでこのスレをいいものにしようとするその姿勢は、これからもきっと
変わらない。だからこそ俺はこのスレを素晴らしいと思うし、好きだ。
外伝氏に関する話が事実であろうとなかろうと、また、外伝氏がもうこのスレに
来ないのだとしても、俺はこのスレで外伝氏に会えた事を感謝する。
そして、外伝氏とめぐり合わせてくれたこのスレをこれからも盛り上げていきたい。
以上、一住人としての決意を述べさせてもらった。
872がいい事言った!・・・・・感涙&禿同
一住人にそんな力あるかよ。SS書いてから寝言ほざけ
住人じゃなければ誰がスレを良くするんだ?
そもそもここはSSスレじゃないんだし、SSがなきゃ成り立たないなんてこともないんだが。
もしかして874は855からのSS書いた人じゃないか?
861からの流れ(明るいSSキボン)に気を悪くしたとか・・・・
なんか単なる荒らしにしては恨みっぽいものを感じたので。
だとしたらチョト気がひける
864書いたの漏れだし
その話はここだけにして次スレには持ち込まないようにしようよ。 >ALL
でSSは?
一人書いたことあるけどこの一件で書く気力を無くしたとかいう人がいたな・・・・誰だろう?
870の人とは別だよね。書いてみようかなって言ってるし。
このスレでSS書いたことのある人って5人くらいしかいないような・・・
>>880 みんなの降臨をマターリ待ってるとこだと思われ
書こうと言ってる人、以前続きを書くと言ってた人、その他書いてみてもいいかなという
人達がそろそろ動き出すのでは?
つーかこの後に書きにくいんじゃないの?
ここは終わりにして次スレ作ったほうがいいかも。
それはいくらなんでも気が早すぎじゃ?
書くって言ってる人もいるんだしもう少し待とうよ
>>882 5人いりゃ大杉だろ。バキスレやヤムスレだってそんなもんだし。
しかし外伝氏の事は別としてもドラコルル伝はどうしようもなく駄作だな。
外伝氏も天国で泣くぞ。ご冥福をお祈りします。
長官と小戦争への思い入れみたいなものがまるで伝わって来ないよな>ドラコルル伝
好きで書いてるSSなら読んでる方もそれを感じるもんだけど、俺には少しも感じ取れなかった
前にこのスレでSS書いた事ある香具師ではないと思う
長官の少年時代から書いてた人いたな。
続きの話を考えてたのはあの人と外伝氏だけだったような?
やる気無くしたのがあの人だとしたら個人的にはかなりの損害だ・・・・・・・。
昨日「その時歴史が動いた」見ててふと思ったこと。
もしピリカにも同じ番組があったら間違いなく長官とPCIAの事も
取り上げられてただろうな、と。
「今日のその時」はクーデターorその後のギルモア暗殺。
>>888 マジで?
だとしたらそれは俺にとってもかなりの打撃だが・・・・
>>889 「知ってるつもり?!」でもいいな。
「次週の知ってるつもり?!はPCIA長官ドラコルル。悪魔の頭脳と
恐れられた男の真実の姿に迫る!」なんてなw
>>889 激しく視てみたい。
「そのとき歴史が動いた」は、世間的には悪者と思われてる人物を
かっこよく描くのがかなり上手いよな。
長官を主題にするにはぴったりの番組だと思う。
でも「波乱万丈」みたく直接本人が出て語るやつはヤメてほしいかな(w
まあ、長官がそんなのに出る訳ないけど
松平定知さんのナレーションか・・・
で、最後になんか長官のカコイイ言葉でしめて、例のテーマ音楽が。
・・・なんかすげー見たいかも
わずか10歳で大統領に就任したパピ、
しかし国民の多大なる支持の裏にはギルモア将軍からの不満も見え隠れしていました。
さらにはその若さゆえの判断力なさに将軍の不満は爆発します。
突如として始まるクーデター。
そのときに立ち上がったのがあの男、PCIA長官ドラコルルです。
将軍側につきわずか数日で政府軍陥落、
地球に逃れた大統領も四日で拉致に成功します。
しかし突如としてやってくる地球人たち。
ギルモア降伏後彼のとった行動とは!?
次回そのとき歴史は動いた〜ドラコルル・大統領との確執〜
どうぞお楽しみに。
896 :
895:03/09/19 22:25 ID:???
898 :
889:03/09/19 23:34 ID:???
>>896 も、燃え・・・・
そんな感じ。
実際、この手の番組は作りやすいと思う。
パピや将軍との出会いとか部下との鉄壁の信頼関係とか美味しいエピソードてんこ盛りだし。
大学に進学した彼は、お互いの運命を大きく変える事となる一人の少年と出会います。
その少年こそ、後の第○○代ピリカ大統領・パピだったのです。
といったナレーションが。・・・なんか、こんな作りのSSも面白いかもな。
再現VTRにセリフ字幕。途中で入る解説。面白そうだ
900
901 :
895:03/09/20 00:28 ID:???
じゃあ来週の水曜以降書いてみようかと思うがどうだろう?
書くとしたら単発で短くまとめるつもりだが。
わー、ほんとですか?是非とも!
なんか再びいい流れになりそうなヨカーン
「その時歴史は動いた」調SS期待age
長官とパピの出会いから書いてって、区切りごとに
「クーデターまであと○年」
とか。なんか楽しいなこういうの考えるの
906 :
895:03/09/20 17:54 ID:???
あ、ちなみに音楽は脳内補完よろしく
それにしても、「その時歴史は動いた」見てる人結構いるんだね。
何だかんだ言っても国営放送だし。
「知ってるつもり?!」は、もうみんな記憶の彼方かなあ。
そうでもないよ>知ってるつもり?!は記憶の彼方
俺はあの番組で色んな人物に興味持ったりした
で、けっこう短い時間で感情移入してた
しかし、ピリカでも当然のように将軍を差し置いて長官の番組が作られるのか(w
蒸し返してなんだけどそんなにドラコルル伝って悪かったかな?
>妹の免責特権を得るためにドラコルル長官あるいは妹自身が作った話ではないかと、
疑問を投げ掛ける声もある。
ここのくだりで、
ドラコルルの作り話→妹のために自ら悪者になる長官
妹の作り話→法廷での妹の裏切りにも全てをわかってやる長官
とか考えてたらなんともやりきれない気持ちになったんだけど。
外伝 死んじゃったw
>>910 そりゃ、どうせ見るならなw
番組作る側も、どうせ作るなら興味持って見てくれる人が多い方だろ。
長官に興味ある人は多いだろうけどギルモアのドキュメンタリー見たい香具師なんて
ピリカにもいなそうだし。←ひでえ
>>911 その“なんともやりきれない気持ち”も含めて、読んでて鬱になる文なのが
マズかったのでは。・・・・時期も時期だったしさ。
>>911 内容は悪く無かったと思うよ、ドラコルル伝。
今日初めてこのスレを見るものですが、
このスレのネタ元は基本的にアニメではなく、漫画の方ですか?
>>916 ときどきアニメの話題も出ますけど、基本的に漫画が
主軸だと思いますよ。というより僕は映画のほうは見ていなくて
原作しか読んでいないんですが、
原作と映画は結構違いがあったりするんですかね?
まあとにかく、
・大長編で1番カッコいいのはドラコルル長官
・長官に忠誠を誓う
この2点に異論がなければ、あなたもこのスレの立派な住人です。
そしてその時々出るアニメの話題は9割方が「リメイクしる」
このスレの住人にとって映画は黒歴史と考えていいのかな?
黒歴史と言うほど酷くはないけどリメイク版も見たいのだと。
実際こんだけ小戦争の話題で盛り上がれるんだからリメイクしないのはもったいないよ。
絶対受けると思う。少なくとも昨今のドラ映画よりは(w
そういえば長官って何歳なんだ?
俺的には16〜19ぐらいだと思うんだが。
このスレでは20〜25くらいという説が多いな。
でもパピが10歳なんだし卒業すれば大人も子供もない世界だから16〜19ってのも
充分ありえると思われ。
さすがに16は若杉な気もするがw
>>919 でも劇場版にするとそれなりに敷居が高いし見に行くのはお子様&保護者層だからな。
大きいお兄さんお姉さんも巻き込むにはルパンみたくTVスペシャルがいい。
太っ腹に二時間。
>>919 リメイクしてもここの住人が満足しるものはできないと思うが。
ラスト変えないとイクナイでしょ(w
>>920-921 どっちにしても漏れより年下か・・・・w
ピリカみたいに、優秀なら学校でも社会でも年齢関係なしで上に上がって
いけるシステムって、優秀じゃない香具師にはツラそうだな。
頭の出来が一目瞭然。
>>923 とりあえず小人の星の設定をなくす。これ大前提。
それさえ実現すればストーリーもそれにあわせて変わるし、かなり見る価値ありだと思う。
SSのためにそのとき歴史は動いたを見ようとしたら今日はやっていなかった……。
いや、いるよ
亡命したパピをピリカに連れて帰る・・・のはPCIAか
じゃあ追いかけて助けようとする役がいるし
何より、未来道具を使ったドラ達の作戦を物ともしない長官の凄さを見せ付けないとW
>未来道具を使ったドラ達の作戦を物ともしない長官の凄さを見せ付けないとW
長官の評価がここまで高いのは、未来道具にしてやられても動じず対策を講じる
姿があってこそだよね
「調査に手抜きがあってはならん」でパピの協力者を割り出し、スモールライトの
効果にいち早く気付いてそれを奪う事で小人のハンデ解消。
初手からぬかりなしだよね。やっぱ他の敵役とは、なんというか格が違うね。
>>926 今日再放送あるよ
深夜0:15からだけど
効果の切れる時間が後数分遅れていたらドラえもんたちは死んでいた
この上、小人の星の設定がなくなったら効果切れ云々もなくなるわけか。
どうやってハッピーエンドにもっていくんだろう・・・・
てゆーか、思う存分長官のようなキャラを描きたかったゆえの小人設定でしょうな。
↑もちろんお人形とダンスとか牛乳風呂(wなんかも設定理由だろうケド
リメイクより外伝のほうがいいかも。
みなさん、こんばんは。
外伝担当でございます。
長らく留守にしてしまい、申し訳ありませんでした。
その間に様々なことがあったようですね。
いろいろご迷惑をおかけして申し訳ありません。
私は健在であります。
重ね重ね、申し訳ありませんでした。
>>934 なるほど。確かにF先生も楽しんで描いてる感じがする。
>>933 もってかなくていいんですよ
パピ達を銃殺した後長官は苦悩を抱えつつピリカ再建の為に尽力し、
そして死後ピリカの国営放送で「その時歴史が動いた」がw
>>934 確かに、コミックス一冊という限られた範囲で精一杯工夫してキャラ立てしてるのが
伝わってくる。それも色々想像をかき立てる方向で。だから今このスレがあるとも言える。
F先生には、小戦争について語ってほしかったなあ。
そのとき歴史は動いた 〜ドラコルル・大統領との確執〜
ピリカ19××年、新たな大統領が選出されます。
そしてそれは新たなる戦いの始まりのときでもあったのです。
「今晩は、そのとき歴史は動いた、今夜は多大なる才能の元にピリカを動かした男、
ドラコルルについて語っていきたいと思います。
その生まれ持った才能を誇る彼が何故将軍側についたのか?
そして、彼と当時の大統領パピとは一体どのような関係があったのか?
実は、ドラコルルとパピは学生時代に会っていたのです」
19××年、ピリポリス郊外の邸宅に一人の赤ん坊が産声を上げました。
その赤ん坊こそ、将来ピリカを動かす重要人物となるドラコルルです。
彼の家は貧しくもなければ裕福でもない、ごく普通の一般家庭でした。
家族は両親と妹が一人。
彼は小学時代から既に他の者とは一線を画した雰囲気を醸し出していました。
同年代のクラスメイトが休み時間遊びに熱中している間も、教室で何か一人考えていたようです。
かといって他人との人付き合いが悪いわけでもなく、
学級委員とは違った立場で人から信頼を受けていたようです。
ドラコルルは13の時にピリカ大学に入学します。
意外なことに彼はその優秀な成績の割には大学入学が遅いのです。
そのことについて、政治学の江来博士はこう推察しています。
「彼はおそらく意欲がなかったのでしょう。ですが、彼が12になった年にある事件が起こります。
そう、ピリカの大統領選挙です。その当時選ばれた大統領は支持率が低く、
さらには国の景気をも停滞させてしまいました。おそらくそれからでしょう、彼が愛国心に目覚めたのは。
彼はその年から政治学の本などを読み漁っています。そしてわずか半年でピリカ大学に合格。
これはその当時前例のないことでしたね」
ドラコルルは二年間大学で政治を学んでいました。
その彼にも転機が訪れます。
そう、彼の親友ともなり敵対することになるパピの入学です。
当時ドラコルル15歳、パピ六歳。
政府壊滅の、四年前のことでした。
――――政府壊滅まであと四年
944 :
895:03/09/26 21:10 ID:???
続きはまた次の機会に。
待ってました!!
続き期待してます。
松平アナの声が聞こえてきそう。久々のSS(しかも新タイプ)嬉しい。
次スレになってもいいから続き書いてね。
親友同士の二人はなぜ敵対するに至ったのか。
いやあ、次回が楽しみですな。
新スレタイトル考えるか。
【第3弾】ドラコルル長官と共に歩むPCIA兵の数→80.2万+
【英雄か】ドラコルル長官スレッドPart3【悪魔か】
なんか「知ってるつもり?!」っぽいアオリだな>英雄か悪魔か
【第3弾】悪魔の頭脳に魅せられたPCIA兵の数→
【ごまかした】長官スレッドPart3【つもりか?】
このセリフに燃えなもんで。
長官「第三スレ移行の前に言い残すことがあれば聞いてやろう。パピから発言を許す」
パピ「僕は板住人を信じている。きっと僕の志を継いでこのスレを盛り上げてくれるだろう」
ジャイアン「いっぺんおまえのSSをこのスレにぶんなげてやりたかったぜ!」
のび太「もともとネタスレのはずだったのに〜!!」
ドラえもん「望みを捨てるな!板に住人は残ってるぞ!!」
長官「よし、それでは移行を始める」
ロコロコ「待って!僕にも一言だけしゃべらせて!!」
・
・
・
・
・
ロコロコ「『異論は許さん』という言葉からここが始まったんだよ…と、
前々スレ
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1045056355/が 前スレ
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1057136821/l50へ 継いでくれたことをまたこのスレにも継いでくれました。幼い日の思い出です…。
長話はご迷惑と思い要点をかいつまんでごく手短に申し上げているしだいでありますが、
さらに思い出はさかのぼり……。
前々スレの生まれた日、前々スレの1は……」
将軍「きりがないではないか!」
長官「ハッ、移行をはじめます!!」
……このスレは「ドラえもんのび太の宇宙小戦争」におけるドラコルル長官を称えるスレッドです。
彼ほどまでに完成された名敵役が他の漫画や他の大長編にいるだろうか?いやいない!
そのあまりの完璧な所業にドラたちが付け入る隙があるはずもなく、
「土壇場で巨大化」というやってはならない禁忌でしか物語が解決しなかった!
しかし!彼の美点はカリスマだけではない!!
自分で出来る範囲ならば雑務さえしっかりとこなす現場主義。ギルモアなど問題にならない。
さぁ、ドラコルル長官への熱い思いを一気にぶちまけるがよい!
ロコロコってこのスレではいまいち活躍してないな
>>954 あくまで「いきなり巨大化」という禁忌のつなぎ的役割だからね。
このスレでは大体ドラ達がやられるのを前提に話を進めるケースが多いから、
ロコロコの出る幕はあまり無いと思われ。
小人の設定なしでリメイクするならドラえもんの最終回になりますね(w
>>952 あなたはこの第二弾スレのテンプレ作った人(ということは、このスレ立てた人)
と同一人物ですか?相変わらず冴え渡ったテンプレですね。
↑
違ったらすみません。どっちにしてもあなたのテンプレが大好きな一住人です。
>>956 途中で長官の気が変わらない限りはな
あるいは、初めからパピ達を殺す気は無かったことにするとか
>>957 実は「そのとき歴史は動いた」風SS落とした者だ。
ちなみに続きは次スレで?それともこのスレ?
え、続きもう出来てるんですか。
なら、ここで書いてほしいです。まだ余裕あるし。
>>953 確か、最初はマロン以外の板に立ててたのを、そのスレが閉鎖される?ってんで
マロンに移行させてたから、立て逃げって事はなさそうだが>初代スレの1
でもその後放置してて、今来たりしたら驚くだろうな(w
「――――さて、ここまで長官の出生から大学入学までを見てきたわけですが、
ここで後に彼の運命を大きく分けた事件が起こります。それが、パピの入学というわけです。
これから先、パピは長官にどのような影響を与えたのでしょうか?」
ドラコルルが大学生活を送り二年、
その年に一人の天才がピリカ大学に入学します。
それが、後に彼の親友となるパピです。
当時のドラコルルは既に大学でもカリスマ的存在として、皆から一目置かれた存在でした。
そしてパピは六歳という若さでのピリカ大学入学。ドラコルルとは別の方向で、一目置かれていたようです。
その二人が出会うのには、大して時間を要しませんでした。
当時の大学の同期の話では、彼はパピをこう評していたようです。
「若いうちに大学入学するだけが天才なら、私は天才にはなりたくはない。
なぜならば、若さというのは経験が未熟であることの露呈に過ぎないからだ。
パピは若さという点ではなく、能力という点において評価されるべきであろう」
ドラコルルはパピを「若干六歳でピリカ大学に入学した天才」ではなく、
「その博識でピリカ大学に入学した天才」と見ていたようです。
そして、パピのほうもドラコルルを「時代を達観した男」と評価していました。
彼ら二人は惹かれあいます。
三年間、彼らは共に大学で学び、
卒業後ドラコルルは治安部へ、パピは法務省へ就職します。
そこでもドラコルルは己のカリスマぶりを発揮しました。
わずか半年で大臣補佐まで上り詰めます。
パピもその後ピリカ総選挙に出馬し、大統領の席を勝ち得ました。
親友同士でもあった二人は民衆の注目の的となります。
二人の人気は不動のものとなり、治安大臣ゲンブの降板も時間の問題と評されます。
当時ドラコルル19歳、パピ9歳。
政府軍壊滅の、半年前のことでした。
――――――――政府壊滅まで 半年
963 :
895:03/09/30 00:42 ID:???
番組放送終了時間まであと15〜20分てところかな?
テンプレ案気に入っていただけたら嬉しい
き、気に入りましたとも!SSもテンプレも。
しかし、あと半年で政府軍壊滅。一体何が起こったんだ。
楽しみ楽しみ
ところで次スレは誰が立てるんだ?
ロコロコが
SS書いた人、もしかしてぷらら?もう規制終わったよ。ぜひ続きを!
次スレは980くらいになったら立てるか?まあ、もう立ててもいいけど。
>>961 初代1自身は、ほんとに何気なく立てたかもしれないこのスレ。
それがもう3スレ目って・・・・すごいよな
>>962 親友だった二人がたった半年で敵対関係に・・・
な、何があったんですか。それとも大学卒業したあたりから徐々にそういう傾向が?
なんにしても早く続きを読みたいです!
その半年で例の「君が一度でも(ry」か?
ほんの些細な事がきっかけで修復不可能な方向に(w
どうもはじめまして
各SSスレにおじゃましています、真・うんこと申します。
ヤムスレ、バキスレに続きこちらにもおじゃまさせてもらいます。
よろしくお願い致します
974 :
真・うんこ:03/10/03 22:18 ID:JUlqN2p/
第1話 将軍とその出会い
ドラコルル「その者の名は、う・・なんと言ったかな?」
兵「はい、真・うんことかいう者です」
ドラコルル「ほう ではさっそくその者に会おうと思う。通せ」
兵「はっ」
うんこ「始めました将軍。はじめました。」
ドラコルル「うむ。して、私のうんこをどうしてくれるのだ?」
うんこ「はい、こうします。鍋です」
ドラコルル「うむ、これは香ばしい」
兵「いやあ、盛り上がって来ましたな」
うんこ「思えば第2次大戦の時はお世話になりますた」
ドラコルル「うんこーーーーーーーーーーーーーー」
兵「どうされました?」
ドラコルル「いや、うんこがしたくてたまらんのだよ」
うんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこ
うんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこ
うんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこ
うんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこ
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うんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこ
うんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこうんこ
探査球放出!!
>>974 長官「なんとオチもなくてつまらんSS。こいつを徹底的にマークしろ!」
PCIA兵「長官、こちらのモニターをご覧ください!!」
>>975 長官「むぅ…………。自作自演と見て取れる寒い書き込み。重要人物だ、こいつもマークしろ!!」
いや、過剰反応する
>>976-977のほうが寒いんだけど・・・
うんこには、あまりのばかばかしさに思わず笑った。
でももうここに書くな
バキスレもやめろ。頼むから。
978は頭悪すぎ。ウンコも自演975も頭悪すぎ。
俺は976のおかげで嫌な気分を払拭できたけどな。
980みたいなのがSSスレの雰囲気をだめにしてきた
テンプレは952使おう、せっかくだし
で、そのテンプレ案作った人の「その時歴史が動いた」調SSの続きは?
次スレに投下してくれんのかな
985 :
マロン名無しさん:03/10/05 14:17 ID:x5ourYSH
986 :
895:03/10/05 18:50 ID:???
乙。
じゃあ残りのSSは次スレに落とすから。
と言ってももう少し待ってくれ。
>>986 超期待。
ちゃんと続き書いてくれるんですね。嬉しいな
>>985 983みたいなこと言われても怒らずスレ立てしてくれたあなたに感謝。
しかも本来ROM専ですか。乙でした。
では諸君、埋め立てにかかれ。
イエッサー!ハイルドラコルル!
えへへ、お待ち下さい
↑こういう、本来なら失礼と思われる話し方も長官は気にしない。
成果をあげた部下にはちゃんと報いる。
なかなか出来ない事だ
「長官、パピは1000取りに来るんでしょうか」
「必ず来る!あいつはそういう男だ」
ひどいわパピさん。