吸血大殲28章『仄き鮮血の舞踏』

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1ドラキュラ・ヴラド・ツェペシュ
このスレは、吸血鬼や狩人、あるいはそれに類する者が闘争を繰り広げる場である。
無論、闘争だけではなく、名無しの諸君の質問も随時受け付けておる。
気軽に質問をして欲しい。
なお、新規の参加者は下記の『吸血大殲闘争者への手引き』でルールに眼を通した上で、
テンプレを用いて自己紹介をせよ。
テンプレは>2を参照するがよい。
 
■『吸血大殲闘争者への手引き』
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Orion/4504/vampirkrieg.html
 
■専用JBBS(闘争の打ち合わせなどはこちら)←旧板
http://jbbs.shitaraba.com/game/163/vampirkrieg.html
 
■専用ふぁるがいあBBS(雑談・闘争の打ち合わせなどはこちら)←真板
http://fargaia.hokuto.ac/html/vampbattle/index2.html
 
以下は、関連リンクである。
 
■参加者データサイト『吸血大殲 Blood Lust』(左手作成・過去ログも全てこちらにあり)
http://members.tripod.co.jp/humituki5272/taisen/index.html
 
■『闘争記録保管所』(緑川淳司作成・各闘争ごとに整理された記録)
http://members.tripod.co.jp/tajuunin/taisen.html
 
■吸血大殲本家サイト
『From dusk till dawn』
http://www.uranus.dti.ne.jp/~beaker/
 
『戦場には熱い風が吹く』
http://ha7.seikyou.ne.jp/home/hagane/index.html
 
■前スレ
吸血大殲27夜 ――Lunatic Dance――
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313
 
■太陽板の質問スレ
吸血大殲/陰 其の15 混沌屋敷『眩桃館』地下 〜大殲資料の間〜
http://www.alfheim.jp/~narikiri/narikiri/test/read.cgi?bbs=TheSun&key=1021881487
 
■吸血大殲専用チャットルーム入り口
http://3nopage.com/~vamp/
 
■感想スレッド(闘争の感想などはここに)
真・吸血大殲感想スレッド
http://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630

出典 :
名前 :
年齢 :
性別 :
職業 :
趣味 :
恋人の有無 :
好きな異性のタイプ :
好きな食べ物 :
最近気になること :
一番苦手なもの :
得意な技 :
一番の決めゼリフ :
将来の夢 :
ここの住人として一言 :
ここの仲間たちに一言 :
ここの名無しに一言 :
ウピエル(&ツァーレンシュヴェスタン)VSファントム
 
>http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/429
 
生物学的に言えば、ノインは既に死んでいる。亡骸と呼ぶには相応しい。
吸血鬼になった時点で、人の心も死んだ。
そして……先程、魂も死んでしまった。
 
それでも、いまだに活動は止まらない。
完全に動きを止めていた身体が、再びのろのろと立ち上がる。
 
目はどこも見ていない。
散発的に放たれていた銃弾も、全て見当違いの方へ飛んでいく。
 
だが、全ての弾を撃ち尽した後も引き金は引かれ続ける。
虚しい金属音がホールに響くが…
彼女に、他に出来る事は何もないのだ。
 
おぼつかない足元は、何故かゆっくりと交代している。
その先に、アインが乗り捨てたBMWがあるのは偶然ではないのかもしれない。
 
―――バイクに縛り付けられた杭には
フュンフが着ていた白いボロボロのチャイナ服が引っ掛かっていた。
 
そこにノインが向かって行くのは……決して偶然ではないだろう。

>3

 赤く濡れたオルゴールが床を叩く。左手の感覚が無いんだ。燃えるように熱いが、それだけ。
 痛みも何も無い。ただ、目には滝のように流れ出る血液が映し出されている。

(これは……マジで死んじまうかもしれねぇぞ……)

 失血死。既に血液は大分失ってしまった。その上この傷である。
 生きたいのであればすぐに止血をして、病院に転がり込むべきだ。
 そう、生きたいのであれば。

 AKを床に放り捨て、ふところからベレッタ92Fを取り出すと、スライドを自慢の白い歯で噛み付き、
無理矢理撃鉄を起こした。
 そして、狙いを――――

「ノイン……」

 初めて、吸血鬼を名前で呼んだ。元から全員知っている。
 一度も会ったことは無いが、サイスから聞いていた。

 ノイン……可哀相な女――――
 でも、

 「ノイン、あんたの親の名前……教えてくれないか?」
 
 軽い銃声。続いて爆発音。視界に広がっていく火炎の雲。
 それに飲み込まれていく……吸血鬼。
 
 爆音で聞こえないが、あたしの血に包まれてオルゴールが鳴り響いているはずだ。
 哀れな女達ツァーレンシュヴェスタンがこの瞬間、全滅したことを告げる鐘の役目を背負って。
ウピエル(&ツァーレンシュヴェスタン)VSファントム
 
>4
 
ノインには目の前の女が何か言っているが聞き取れなかった。
憎しみはあふれんばかりに湧き上がってくるが、
何故か足は前でなく後ろに進む。
 
―――ああ、私は何をしているんだろう?
 
―――誰かが側にさっきまでいたような気がするのに。
 
突然、彼女は転倒した。
BMWのタンクから流れ出るガソリンに足を取られたのだ。
 
したたかに腰を打ち付けたが、痛いとも何とも思わない。。
ただ、杭に引っ掛かった白い布地が彼女を手招きしているように思えた。
 
(ああ、そうだ… フュンフ…)
 
お互いに本名も知らないが、そんな事は些細な事に過ぎない。
身も心も結ばれた相手と引き裂かれて永遠に生きるのは、
永劫に続く拷問と同じ事だろう。
 
(違う相手に殺されても…… あなたと同じ所に行けるのかしら?)
 
ドライの放った弾丸が火花を散らす。
火炎が…床を、ノインの身体を、フュンフの着ていた服を舐める。
 
 
一瞬後れて、引火したガソリンタンクが轟音を轟かせた。
 
もっとも―――吸血鬼に魂があるとするならだが―――ノインの魂は既に
先に逝ったフュンフと同じ所へ堕ちていた。
 
 
               (ノイン死亡、ツァーレンシュヴェスタン全滅)

6オーフェン:02/06/07 22:22
オーフェン&鏡花VSシグマ

「我が街に来たれ機械人形」

オーフェン側〜導入〜

それはよくある一日のはずだった。

いつものように、散歩をし。
いつものように、地人をぶっ飛ばし。
いつものように、宿へと帰る――――――はずだった。

「ったく、あの福ダヌキども。
最近知恵をつけて、いつもの場所から離れやがって。
おかげで帰るのが夜になっちまったじゃねえか」

歩きなれない道を歩いていく・・・
その隣を先ほどから一人の少女が歩いている・・・

オーフェンは知らない。
これから起きることを・・・
そして、隣を歩く少女もそれに巻き込まれることを・・・

(・・・少し歩くのを早めるか)

少し歩く速度を速める。
だが、歩くのを早めた瞬間、隣の少女も同じくらい歩く速度を速めた。

(・・・・・・・・・)

更に歩く速度を早める。
隣の少女も同じように歩く速度をあげる。

(・・・・・・・・・・・・・・)

ついに走り出す・・・が。
隣にいる少女も同時に走り出していた。

そして、そのままお互い譲らず走り始める。

〜30分後〜

隣を走っていた少女はついに立ち止まり。
そして・・・

『・・・さっきからなに人のことつけまわしてんのよ、この黒ずくめ変態男!!』
「違うわ!!」

たまらず俺は絶叫した。

『要するにストーカーね、あんた』
「だれがストーカーだ。この女むっつり詐欺師!!」

そして少女との口論が始まる。
7オーフェン:02/06/07 22:23
>6

オーフェン&鏡花VSシグマ

「我が街に来たれ機械人形」

オーフェン側〜導入その2〜


〜三時間後〜

『はぁ、はぁ……』
「ぜー、ぜーっ……」

お互いに精神の続く限り悪態をつき続け。
さすがに疲れが見え始める。

そのとき前方に、何かの気配を感じ。
振り返る二人。

するとそこには・・・

スキンヘッドで変な傷をつけ、ボロボロの旅人用マントを身につけた。
いかにも、変人だと宣伝しているような男がいた・・・

「・・・お前の知り合いか、あの変態?」

とりあえず、となりにいる少女に聞いてみる。
8七荻鏡花 ◆x9SAToRI :02/06/07 22:24
オーフェン&鏡花VSシグマ 「我が魂屠れ来訪者」
導入〜鏡花サイド 
>6

 まったく、今日はさんざん。
 観光でやってきたトトカンタだけど、大して見るべきものもなく、ただ見たのは『名物』の爆発事件。
 
 その上……
 
「ストーカー? マジ最悪」
 
 最初は方向が同じだけかと思ったが、こちらが歩を早めればそれに付いてくる。
 これは……ホンモノだ。
 第一見た目からが黒ずくめで目つき悪いし。
 何というか……まさにそっくりそのまま犯罪者って風。
 
 でも、そんな女の敵、人類の敵をこのアタシが見逃すわけない。
 毅然とした態度で、挑みかかる。
 このアタシにストーキングした事、後悔させたげるわ!
 
――三時間経過
 
 まだ、口論は続いていた。
 
「ぜー、ぜーっ……」
「はぁ、はぁ……」
 
 二人は既に精神的疲弊も激しく、今にもばったり行きそうだ。
 ……誰よ、戦いの末に友情が、なんてほざいた馬鹿は。
 
 そこに、何かの気配。
 
 目を向けると、そこにはスキンヘッドの大男がいた。ボロボロの旅人用マントを身につつんだその姿は……
 
「また変態か……あ? 知り合いなワケ無いでしょ!」
 
 目をやったのも、無駄な労力ね。
 さくっと記憶から消去して、再び目の前の陰険変態ストーカーに向き直る。
 
「いいかげん謝罪でもしたらどうなの! この乞食寸前の社会生活不適合者!」
9シグマ:02/06/07 22:34
オーフェン&鏡花VSシグマ
 
「我が魂屠れ来訪者」
 導入〜シグマサイド 
 
ここはトトカンタ。活気あふれる町である。
そこを歩く旅行用マントの男。

(人間が多いな……)

「トトカンタで謎の爆発が多発している」
との報告を部下から受け、ソレは町の中を歩いていた。
 
(確かに人口は多そうだが、軍事的な配備が有る訳でもない)
(ましてテロリズムが横行しているわけでもない)
(ここで何が起きているというのだ?) 
 
そのときソレのセンサーが反応を起こす。
現在は能力反応にモードを設定している……という事は――。
 
(こうも簡単に原因が見つかるとはな…2つ?)
(まあ、いいだろう。2つくらいなら何とでもなる)
 
人込みを流れるようにそちらへと進んでいく。

2つの反応は30分ほど移動していたが、いきなり止まった。
 
(何があったのだ?まあ、いい)
 
それから3時間後、ソレはその地点に到達した。
そこでは目つきの悪い黒ずくめの青年と気の強そうなやはり黒ずくめの少女が居た。
 
(……こいつらがこの騒ぎを起こしている能力者か?)
(それともこの爆発騒ぎとは無関係の能力者か?)
(まあ、どちらにしても消えてもらう)
(今は関係なくとも将来、私に敵対する可能性もあるからな)
 
ソレは2人の横に立ち語りかけた。

「ククク…私はシグマ。突然ではあるが君たちには死んでもらう。
安心しろ、痛みは一瞬だ。痛いと思った時にはもう死んでいる…」
 
全てのモノを恐怖させるべきソレの言葉。しかし… 
 
「・・・お前の知り合いか、あの変態?」
 
青年に変態呼ばわりされソレの表情が強張る。しかも…
 
「また変態か……あ? 知り合いなワケ無いでしょ!」
 
…少女には変態呼ばわりされた上に無視された。
もはや我慢は出来ない!
 
「人の話を聞けぇ!」
 
ソレは額から彼らを横切るように光弾を放つ!
10オーフェン:02/06/07 22:36
悪い、こっちが本当の副題名だ。

>9
オーフェン&鏡花VSシグマ
 
「我が魂屠れ来訪者」


「なに!?」

変態が額から放った光弾が、俺と少女の間を横切るように通り過ぎる。

(・・・声がしなかったってことは音声魔術じゃねえ。
まさか、こいつは天人の遺産か!?
やばいな・・・)

隣の少女に向き直り、じっと見つめる。
今の光弾にショックを受けたのか、さっきまでの威勢が嘘のように静まり返っている。
少女の外見は考えるまでもなく、荒事には向いていないように見える。
このままここにいれば、確実に巻き込まれることになるだろう・・・

(・・・ったく、しょうがねえな)

俺は天人の遺産――――おそらくキリングドールのような存在だろう――――に向き直り。
そして、隣にいる少女に話し掛けた。
この少女を巻き込ませないよう、ここから逃がすために。

「君、俺があいつの相手をする・・・
だから、その間にできるだけ遠くに逃げてくれ」

そして、俺は構成を編みつつ、天人の遺産に向かい走り。
ある程度まで近づいた瞬間に、それを放つ。

「我は放つ光の白刃!」

光熱波が天人の遺産めがけて突き進み。
そして命中し、爆炎を巻き上げる。

「・・・多少は効いたか?」

だが、爆炎が消えたときそこには・・・

「・・・この姿を見たからには・・・生かして返さん!」

まったくの無傷の・・・
いや、ボロボロのマントが焼け落ち、その真の姿をあらわした天人の遺産がそこにいた。

「ちっ、やっぱこの程度じゃ意味ねえか」

構えを取り、天人の遺産の次の動きに備える。

「さてと、あいつが逃げるまでは、ちゃんと足止めしねえとな」
11七荻鏡花 ◆x9SAToRI :02/06/07 22:38
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
>10
 変態マントが、額からビームを放つ……ビーム!?
 ちょっと、冗談じゃないわよ。
 光狩の親戚かなんかなの?
 よりにもよって、休暇中に……
 
 怒りで、ぶるぶる拳が震える。
 それをどう勘違いしたのか、ストーカー男は身を挺して変態マントに立ち向かう。
 
 アタシを守るため?
 さらに怒りのボルテージが高まる。
 アタシは、守られてるだけのお人形さんじゃないのよ?
 アタシは火者。火の心を持て戦う戦士。
 
「チロ、行くわよ!」
『しゃー!』
 
 ストーカー男の放った熱衝撃波が、変態マントを焼く。
 へぇ、魔術士だったんだ。まあ、いいわ。
 
 だけど、それを受けて微動だにしない変態マント。
 焼け落ちたマントの下から現れたのは、メタリックなボディに身を包んだ怪物。
 
 だから、何?
 アタシは、アタシに刃を向けたものを容赦はしない。
 
「二翼よ、弓となれ!」
 
 叫びと共に、チロが弓に変化する。
 そして、そこから放たれるのは必殺の光の矢!
12シグマ:02/06/07 22:39
オーフェン&鏡花VSシグマ
>11
「我が魂屠れ来訪者」
 
ソレの放った光弾は2人の間を通り抜けていく。
さすがに2人とも反応をせざるを得なかったらしく、
ソレに向かって2人とも静かに向き直る。
 
(恐れをなしたか?当然だろうな)
 
だが、彼らは違った。 
 
青年が何事か少女に話し掛ける。
そして青年はソレに向かって叫ぶ。
 
「我は放つ光の白刃!」
 
その叫びと共に光熱波が放たれる!
そして油断していたソレに直撃した。
 
(……油断が過ぎたか)
 
焼け落ちる人工皮膚、燃え尽きるマント。
そしてその下から現れるソレの真の姿。
両目に傷のような文様、金属の皮膚、機械の中身…。
 
「この姿を見たからには……生かして帰さん!」
  
(能力者だとは分かっていたが、魔術士だったか……)

ソレは腹を立てた。
自分に抵抗した青年、そして油断をした自分に!
だがソレの怒りに関係なく次の攻撃がくる。
 
光の矢が少女と共にいた翼のある蛇が変形した弓から放たれたのだ。
…だが、2度目は注意される。 
 
(……こいつもか。やはり2人とも潰さなければな)
 
いとも簡単にその光の矢を避ける。 
 
ソレにとってすればこの程度はまだ何とかなるものである。
  
(確かに攻撃は出来るようだが…体は所詮人間だ!)
 
ソレは無言で拳闘の構えを取った。
冷たい金属で出来た拳で……。
13オーフェン:02/06/07 22:45
>12
オーフェン&鏡花VSシグマ
「我が魂屠れ来訪者」

轟音を上げて天人の遺産―――でかぶつの拳が俺をめがけ突き進む。

(・・・っ迅い)

想像以上の速さに回避しきれず、拳が体をかする。

ただ、それだけ・・・
ただ、それだけで俺の体は宙を舞い。
少女のところまで吹き飛ぶ。

少女は、なにやら翼の生えた蛇をかまえ。
でかぶつと対峙している。

(さっき横から飛んできた光の矢は彼女が使ったのか・・・
ひょっとして、あのでかぶつと戦うつもりなのか?)

「君、逃げろといったはずだろ」
『逃げろ?はっ、ストーカー男に背中見せんのなんか、ヤよ』

・・・どうやら、戦うつもりらしい。

「・・・上等だ。だったら奴をぶっ倒すのに手を貸してもらうぜ」
『いいわよ。ストーキングの件に関してはあとからゆっくり話を聞かせてもらうわよ』
「誰がストーカーだ!」

そこで少女との会話を止めて、俺はでかぶつへと向き直った。

(・・・とりあえず、このままやつと正面から戦うのは危険だな)

さっきまで自分がいた場所を見ると。
そこには深く拳の跡の残るクレーターができていた。

(ちっ、冗談じゃねえぞ。あんなもんまともに食らったら一発でお陀仏だ。
一度どっかに逃げ込むか・・・)

「我は放つ光の白刃!」

構成を編み、再びでかぶつ目掛けて光熱波を放つ。
ただし、今度の狙いはでかぶつではなく、その足元の地面。
光熱波は地面に炸裂しアスファルトを巻き上げ、大量の粉塵を発生させる。
そして、粉塵にでかぶつが包まれる。

「我は放つ光の白刃!」

三度、放つ光熱波。
その光熱波は、隣のビルの三階の窓に炸裂し。
人が通るのには十分なほどの穴をあける。

「とりあえず、ここからいったん離れる。
あの廃ビルに逃げ込むぞ」
『わかったわ・・・で、どうやって?」
14オーフェン:02/06/07 22:46
>13
オーフェン&鏡花VSシグマ
「我が魂屠れ来訪者」


俺は少女を抱きかかえると(お姫様抱っこって言うやつだ)
重力制御の魔術の構成を編んだ。

『て、きゃああ、い、いきなり何すんのよっ!』
「我は駆ける天の銀嶺!」

・・・少女がなんか抗議してきたがかまわず、重力制御の魔術を使用し。
自分と腕の中にいる少女を拘束していた重力を一瞬弱め、その間にアスファルトを蹴り。
先ほどあけた穴を通り、ふわりと三階に跳び乗る。

「っと、ついたぜ」

穴から廃ビルの中に入ると少女を降ろす。

(・・・とりあえず、奴がくるまでに自己紹介とか済ませとくか・・・)

「俺の名はオーフェン。牙の塔出身の黒魔術士だ」

そして、いくつか自分についての説明を簡単に済ませる。

「で、君の名前は?」
15七荻鏡花 ◆x9SAToRI :02/06/07 22:47
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
>13>14
「ん、七荻鏡花、よ」
 
 とりあえず、黒ずくめ変態ストーカー(通常の三倍速度)改めオーフェンは共闘を申し出てきた。
 はっきり言ってストーカーはイヤだけど、
 ビームをいきなり撃ってくるような、アゴ割れ隈取り暴走ロボに比べればまだマシ……
 
 そう思ったアタシはオーフェンに自己紹介する。
 サトリの事も含めてね。ま、黙っていても仕方ないし。
 ……一瞬、オーフェンの心に見たくない影が見えたけど……無視する。いつものことだ。
 
「ともかく、あんなとんでもないものどうやって相手する?」
「アタシとしては、アンタに足止めしてもらって後ろから、って考えてるけど」
 
 ……正直、リスクが大きいな。
 断られるだろうと内心思いながら、提案する。
 
 ところが、いとも容易く頷くオーフェン。
 あっちゃあ……こういうタイプの人間、か。
 自分の出来る事を明確に見極めてるクセに、他人の事を優先させちゃうタイプ。
 人がいい、というかなんというか。ぶっちゃけていえば……バカ?
 
「……いいわ、じゃあ足止めお願いね」
 
 半ば呆れながら、こちらはチロを構える。
 さあ、来るなら来なさい!
16シグマ:02/06/07 22:49
オーフェン&鏡花VSシグマ
>15
「我が魂屠れ来訪者」

そしてソレは青年に向かって拳を繰り出す。
当たれば人間など一撃で息絶えてしまうだろう。
青年はそれを避けようとしたが、かすってしまう。
それだけでも青年は吹き飛ばされた。
 
(人間にしては格闘も少しは出来るようだな)
(だが、肉体は人間。一回直撃させればそれで終わる)
 
そして再び拳を繰り出すために青年と少女に向き直る。
しかし……。
 
「我は放つ光の白刃!」
 
青年が再び魔術を放つ。
 
(またか……今度は防がせてもらうぞ)
 
ソレは腕を交差させ防御の構えを取る。
だが光熱波は当たらなかった。
今度はソレの足元が狙いであったのだ。
それによって巻き上げられた粉塵は視界を遮り、隙を作った。
 
(何……ッ!)
 
暫くして粉塵が止む。
だがその時には2人の姿が消えていた。
 
「逃げたか。まあいい。どこに逃げたかは解っている」
 
彼は廃ビルに開いた穴を見つめ呟く。
ソレにとってはむしろ好都合。獲物は逃げ場を失ったのだ。
 
軽快に廃ビルの壁に飛び移り、そして軽快に三角跳びを繰り返し2人が逃げ込んだ廃ビルの穴に入る。
 
(……私を倒す相談でもしていたのか?無駄な足掻きを)
 
「抵抗しなければ楽に死ねたものを……覚悟は良いかね?」
17オーフェン:02/06/07 22:52
>16
オーフェン&鏡花VSシグマ
 
「我が魂屠れ来訪者」

・・・鏡花の話を聞き正直、少し驚いた。
それを敏感に感じたのか、鏡花の顔が一瞬曇る。

(・・・ったく、まいったな)

おそらく、彼女は今までその力に悩み苦しんだんだな・・・
それも当然か、表層だけとはいえ人の心が読めるなんて能力を持っていたら。

(・・・いや、別にその能力があったからといって、それがどうしたということでもないか)

俺は鏡花の―――強い意思を込めた瞳を思い出す。

(そんな能力を持っていても、まあこれくらいしか性格がひん曲がってないとは。
・・・よほど根本の人格がしっかりしているんだな)

一息つき。
自分たちが通ってきた穴から入ってきた、でかぶつと向き合う。

(まあ、この戦いが終わったら。愚痴くらいは聞いてやるか・・・)

そして天人の遺産に向けて走り出す。

(援護は任せたぜ、鏡花!)
18七荻鏡花 ◆x9SAToRI :02/06/07 22:53
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
>17
(いちいち気を遣ってくれるわね……ったく)
 
 だが、見た目よりこのバカは優しいらしい。
 ホントに、もう。
 
 そうしているアタシたちの目の前に、先程の怪ロボットが現れる。
 そして、まっしぐらに走り出す黒ずくめ――――オーフェン。
 
(援護? 何を勝手な事いってんのよ!)
 
 そうは思っても、身体は勝手に動く。
 チロを構え、素早く意思を伝える。その意思に答え、チロが変形する。
 ――――八枚の翼持つ姿!
 
「八翼よ、礫となれ!」
 
 チロの八枚の翼から、怪ロボットに目掛けて無数の羽が飛ぶ。
 無論、オーフェンを避けるように、だ。
 
 
 ……いいわよ、力を貸すわ「相棒」
19シグマ:02/06/07 22:55
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
>18

ソレに向かって青年が向かってくる。
ソレは心の中でその行動を嘲った。
 
(フン、所詮は人間。スペックの差が解らん様だな!)
 
ソレは拳を構える。青年に死をもって人と機械の能力差を教えるために。
だが、期待は再び裏切られた。
考慮に入れていなかった少女の側から無数の羽手裏剣が飛んできたのだ。
それは青年を避けてこちらに向かってくる。
  
(くうっ!小賢しい真似を!)
 
咄嗟に防御したのでダメージは軽微であったが、プライドは大いに傷付いた。
 
(愚かな人間どもにここまでやられるとは)
(もはや手加減などしない!)
 
ソレは腰のラックから光剣を取り出し、起動させる。
発動する緑色の刃はソレに冷静さを与えた。
 
(どちらからかたを付けるか?)
(男は機動性に優れているようだ)
(避けられた上に女の攻撃を受ける可能性もある)
(まずは――女のほうから殺す!)
 
ソレは少女に向かって光剣を構え切りかかる。
 
(……胴体を真っ二つに切断させてもらおうか!)
20オーフェン:02/06/07 22:56
>19
オーフェン&鏡花VSシグマ
 
「我が魂屠れ来訪者」

俺は大魔術―――――自壊連鎖の構成を編み。
鏡花の攻撃を食らい、わずかによろめいたでかぶつに向け、それを放とうとする。

(一撃で仕留める!)

そしてこちらに向けて走りだした。
でかぶつに向けて右腕を突き出し、自壊連鎖を放つため叫び声を上げる。

「我は歌う―――――」

だが、俺に向かい走ってきたでかぶつは、そのまま俺の横を通り抜けて行った。

(―――やばい!)

そのまま、でかぶつは腰から取り出した、力場で刀身を形成している剣を構え。
後ろにいる鏡花に向かって行く。
でかぶつの、剣の刀身を形成している力場が地面に触れている部分は。
まるでバターに熱したナイフを当てるかのごとく、滑らかに切り裂かれていく。
あれで切られたら、人間がどうなるのかは想像に固くない。

(っさせるかよ!!)

俺は無理やり自壊連鎖を中断すると、瞬時に擬似空間転移の構成を編み。
それを開放した。

「我は踊る天の楼閣!」

視界がブラックアウト。
そして次に視界が開けた瞬間。
目の前には膝をつき―――斬られると思ったためなのか―――目を閉じている鏡花の姿があった。
俺は瞬時に魔術の構成を編みつつ、でかぶつと向かい合うべく、後ろに振り返る。
瞬時に目の前に現れた俺に驚いたのか、一瞬、でかぶつの動きは止まっていた。
そして、その一瞬で俺は編み終えた魔術の構成を開放する。

「我掲げるは降魔の剣!」

何もない右腕に、ふっ・・・・・と剣を握っているかのような重みが加わり。
力場でできた不可視の剣が出現する。
その時にはすでに、でかぶつは再び動き出し、俺もろとも鏡花を斬るために剣をなぎ払ってきた。
俺は右手の、魔術で作った力場の剣で、でかぶつが振り下ろしてきた剣を受け止めた。

「大丈夫か、鏡花?」

その後、俺は真後ろにいる鏡花に声をかけると、でかぶつと剣を交わす。

『庇うなど考えず逃げれば良いものを・・・』

・・・剣を交え、お互いの動きが止まると、でかぶつが何か戯言をぬかしてきた。

「馬鹿かてめえ?
あいつは俺の相棒だ!殺させてたまるかよ!」
21七荻鏡花 ◆x9SAToRI :02/06/07 22:56
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
>20
「な……!」
 
 オーフェンを囮にして放った八翼の礫は、ロボットの頑健なボディに弾かれ、さほどのダメージを与えられなかった。
 だが、それで、ロボットはアタシを攻撃目標に定めたらしい。
 
 その巨体からは想像も出来ないスピードで、アタシに迫る。
 その腕には光り輝く剣――ビームサーベルってヤツだろうか――が緑色の鈍い光を放っている。
 あんなものを受けたら、アタシは間違いなく死ぬ。
 とはいえ、物質ではない以上、チロで防御することも不可能。
 
 なんとか回避をと思い『サトリ』を発動させる。
 だけど、ロボットの思考を読むのなんて、出来るわけもない。
 ラジオのチャンネルがずれている時のような、しかしそれの数倍のノイズが頭の中を走る。
 
「……あうぁぁぁぁっ!!」
 
 思わず膝をつく。逃げることも出来やしない。
 ――――は、はは。もう、駄目かな。
 
 だが、いつまで経っても身体を灼く斬撃は訪れない。
 頭痛をこらえ、目を開ける。
 目の前には、アタシを庇うように怪ロボットと刃を交えるオーフェンがいた。
 
「な、なにやってんのよ莫迦っ!」
 
 驚いた。ホンのさっき会ったばかりなのに、人のことを相棒なんて言って、そのうえ……
 
『馬鹿かてめえ?
 あいつは俺の相棒だ!殺させてたまるかよ!』
 
 ……あーもう。
 ちょっと、じん、と来た。いちいちツボを突いてくれるなぁ。
 いいわ、相棒。とことん、力借りるわよ。
 
「オーフェン、もうちょっと押さえてなさいよ!」
 
 言いながら、先程のノイズの余波で重い身体を無理矢理動かす。
 チロを構え、そして……
 
「二翼よ、弓となれ!」
 
 光の矢を放つ。
 でもさっきのただ撃ったモノとは違う。
 オーフェンが刃を交えて、押さえてくれているから出来た精密射撃。
 狙いは……怪ロボットの目ン玉よっ!
22シグマ:02/06/07 22:58
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
>21
 
少女を殺すはずの光剣。
しかしそれは力場の剣で防がれていた。
 
(瞬間転移だと?このような事も出来るのか)
 
ソレと青年は少しの間鍔迫り合いを行っていたが、
少女の攻撃がその均衡を崩す。
ソレの目に向かって飛ぶ光の矢。

(……あれが当れば、視覚デバイスが失われてしまう!)

ソレは光剣でそれを弾き返し、そのまま間合いを取った。
そして次の行動を考える。

(チームワークが取れているな)
(片方に攻撃をかけてももう片方の攻撃を受ける)
(だがそれなら2人一緒に吹き飛ばしてしまえば良いだけの事だ)
 
ソレは光剣に力を込め斬撃を放つ。。 
それと同時に……緑色の衝撃波が放たれる!
23オーフェン:02/06/07 23:00
>22
オーフェン&鏡花VSシグマ
 
「我が魂屠れ来訪者」

でかぶつが俺から離れ、奇妙なポーズをとる。

猛烈にいやな予感がし、俺は防御のための魔術の構成を編んだ。

そして奴が剣を振った瞬間にそれを発動する。

「我は紡ぐ光輪の鎧!」

直後、無数の光の輪が俺の前方に現れた・・・が。
同時にでかぶつから放たれた衝撃波は想像以上の威力だったらしく。
一瞬だけ、光の輪は衝撃波に耐えたと思うと次の瞬間には砕け散り。
そして、衝撃波は俺に直撃した。

光の輪によって多少は威力が減少していたのか、致命傷にはならなかっが。
それでも、多大なダメージを食らい、俺は吹き飛んだ。

そして、後ろにいる鏡花にぶつかり。
鏡花を巻き込んで吹き飛んでいく。
24七荻鏡花 ◆x9SAToRI :02/06/07 23:01
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
>23
 ロボットは間合いを取って……剣を振るった。
 普通なら届かないであろう間合い。でも、あの動きは……
 
 考える間もなく、衝撃波が来る!
 オーフェンが魔術で防御するが、完全に威力を殺せるはずもなく、吹き飛ばされる。
 無論、後ろにいたアタシごと、だ。
 
「きゃあぁぁぁ!!」
 
 派手に吹っ飛んだけど、チロが翼を広げ、クッションになってくれたおかげで、ダメージはかなり軽減された。
 
 とはいえ、衝撃まで完全に殺せたワケじゃない。
 身体中が痛い。骨は折れてないだろうけど……ヤバいわね。
25シグマ:02/06/07 23:02
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
>24

ソレの光剣から放たれた衝撃波は青年の魔術による防御を砕き、
2人を吹き飛ばした。

(所詮は人間、この程度か)
 
勝利を確信したソレは勝ち誇って吹き飛んだ2人に近づいていく。
 
「最初から解りきっていたことだが、私の勝ちだな」
 
そして2人に向かって光剣を向けた。
 
「さあ、これで終わりだ……!」
26オーフェン:02/06/07 23:05
>25
オーフェン&鏡花VSシグマ
 
「我が魂屠れ来訪者」

でかぶつが、俺と鏡花に向けて剣を向ける。
すでに右手からは力場の剣は消えている。

(・・・あれを素手で防ぐのは不可能だな)

俺はどこか冷めたような目で、でかぶつが剣を構えるのが見える・・・

(・・・あの剣で斬られたら確実に死ぬな)

すでに右腕に力場の剣はなく、衝撃波により負った打撲により、機敏な動きでかわすことはできそうにない。
よしんば、一撃目をかわしたとしても。
でかぶつの異様なまでの運動性能からして、すぐに斬り殺されることは目に見えている。
素手で受け止めようとするのは論外。
受け止めようとした腕ごと確実に切り裂かれる。

(抵抗は・・・意味がない・・か)

妙にゆっくりと、剣が振りかざされていく・・・

(あの剣が振り下ろされたときが俺の最後だな・・・)
『バカッ!』

そして、諦めに身をゆだねようとした瞬間、罵声が響いた。
その声に驚き、俺はその声の主―――――鏡花に視線を向ける。

『こんなところで、死ぬのはゴメンよっ・・・・・・』

・・・鏡花は、まだ諦めてはいなかった。
こんな状況でも。
この一見か弱そうな少女は、まだ、生きることを諦めてはいない。

(・・・そうだな。まだ・・・こんなとこで――――――死ぬわけにはいかねえ!)

俺は心の中で鏡花に礼をいい。
一気に跳ね起きると、でかぶつに肉薄した。
27オーフェン:02/06/07 23:06
>26
オーフェン&鏡花VSシグマ
 
「我が魂屠れ来訪者」

いきなり跳ね起きた俺に意表を突かれたのか、でかぶつの動きが止まる。
そして、でかぶつは俺の接近を許した。

(この距離なら剣は振るえねえだろ!)

ほぼ接触する寸前まで距離が詰まる。
ここまで接近すれば剣を使用することはできない。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」

俺は叫び、でかぶつに向けて拳を突き出した。
拳が衝突した瞬間、凄まじい衝撃が拳を突き抜け、全身に響く。
だが、力を緩めずにそのまま拳を振りぬく。
拳・・・いや、腕そのものの骨が砕ける異音と激痛が右腕から流れてくるのを感じる。

そして、ほんの数メートルではあるが、でかぶつが吹き飛ぶ。

俺はそのまま魔術の構成を編み、でかぶつに向けて放った。

「我は見る混沌の姫!」

直後、超重力の帯が出現し、帯はでかぶつに纏わりつき、動きを封じた。

(チャンスは作った。思いっきりぶちかましてやれ、鏡花!)
28七荻鏡花 ◆x9SAToRI :02/06/07 23:07
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
>26>27
 オーフェンが雄叫びを上げながら、ロボットに向かって拳を放つ。
 その腕が、折れたのが見えた。
 
 一瞬、悲鳴を上げそうになるが、自制する。
 そんな暇は、無い。
 
 拳の一撃で吹き飛んだロボット。
 そして、オーフェンの魔術が発動する。
 
 ロボットの動きが、止まった。
 
「言われなくても、ぶちかましてやるわよ!」
 
 今、アタシが使える最大の攻撃。
 チロが、アタシの意思を読み、姿を変える。
 最終形態……六対、十二枚の翼持つ姿。
 
 きっ、とロボットを睨み付ける。
 オーフェンの腕を犠牲にしてまで得たこのチャンス、無駄にはしない!
 
「十二翼よ、光となれ!」
 
 チロの翼が凄まじい光を放つ。
 十二の光は螺旋を描き、混じり合い、全てを圧するような光条と化す。
 白よりも白い、全き白の光条がロボットに向かって突き進む!
29シグマ:02/06/07 23:08
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
>26

ソレの勝利への確信は裏切られた。
人間の拳は確かにソレの金属の装甲ににダメージなど与えなかったが、隙を作った。
そしてそこに重力による足止め。
 
(くぅ……人間が――人間如きがぁ!)
 
そしてそれに続く少女の攻撃。
それの使い魔から放たれる十二の光の集合体。
それを避ける術はソレには無かった。
 
直撃。 
 
金属の肉体のソレと言えどもその光を受けて無傷ではいられなかった。
左腕は吹き飛び、右目は潰れ、もはや執念だけで立っているような有様である。
 
(許さん、許さん、許さん……)
 
「許さんぞぉぉぉ!」
 
もはやそれは怒りにより我を失っている。

(我が光剣で一思いに殺してやろうと思ったが……)
(ここまでされたからには、もっと苦しい死に方を用意してやる!)
 
「小賢しい……瓦礫に埋もれ、息絶えろ!」
 
その叫びと共に、光弾が天井に向かって放たれた。
その一撃によってコンクリートが剥き出しの天井は破壊される。
そして、瓦礫が2人に降りかかる……!
30オーフェン:02/06/07 23:09
>29
オーフェン&鏡花VSシグマ
 
「我が魂屠れ来訪者」

(なんだと!?)

鏡花の攻撃で倒されたかに見えたでかぶつが額から光弾を放った。
その光弾は天井を貫き、俺と鏡花の上に瓦礫を降らせる。

(っ拙い!)

俺は右腕の激痛を無視し、魔術の構成を編み。
左手を上に掲げ、それを解き放つ。

「我は放つ光の白刃!」

左手の先から放たれた光熱波は、天井から落ちてくる瓦礫を吹き飛ばしていく。

その後、俺はすばやく左手で鏡花を掴むと。
腕の中に抱え込むようにして、吹き飛ばしそこねた瓦礫から鏡花を守る。

だが、次の瞬間。
床に一瞬にして蜘蛛の巣のようなヒビが入り。
そして次の瞬間、足元の床が抜け落ち、俺は鏡花を腕に抱え込んだまま宙へ投げ出される。
回る視界の中、壁が崩れていく様子が見えた。
31七荻鏡花 ◆x9SAToRI :02/06/07 23:11
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
>30
 ロボットの断末魔の一撃が、天井を崩す。
 降ってくる瓦礫を、魔術で破壊するオーフェン。
 
(乱暴ではあるけど……的確かしら?)
「って、きゃっ!」
 
 いきなりオーフェンに抱きかかえられる。
 
「ちょ、ちょっと……」
 
 抗議しようとするが、その行為がアタシを守るためのものだとすぐに判る。
 いちいちカッコつけ過ぎよ、アンタ……
 
「チロ、お願い!」
 
 アタシの声と共に、チロがその翼をばさりと広げ、オーフェンとアタシをガードする。
 と、それも束の間。
 
 床が、崩れ落ちた。
 
「きゃああああああああああああ!!」
 
 それと共に、ビル全体が倒壊する。
 ちょっとちょっと、シャレにならないわよ……
 今度こそ掛け値なしに大ピンチ。
 でも、何とかならないワケじゃない。
 
 再びチロに呼びかける。そう、チロには翼があるのだ。
 
「チロ!」
「しゃーっ!」
 
 チロが翼を広げ、落下速度を緩めてくれる。
 とさ、とアタシたちは地面に降り立つ。
 そしてそのまま翼が盾となり、瓦礫からアタシたちを守ってくれる。
 
 そのアタシたちから少し離れたところに、ずん、と音を立てて、ヤツが落ちてきた。
 全身ボロボロの無惨な姿で。
32シグマ:02/06/07 23:12
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
>31
 
降り注ぐ瓦礫の大半は青年によって破壊されてしまい、
押しつぶすのには失敗したが廃ビルは倒壊し、2人とソレは落下した。
だが、ソレはまだその機能を停止していなかった。
 
(――負けん)
  
ソレは緩慢な動作で起き上がり再び光剣を起動させて、2人に向き合う。
 
「これで、終わりだ……」
 
そして、右腕で光剣を構えジリジリと2人に近づく。
地面に激突した際に崩壊寸前であった右足のダッシュ機構が大破しているが、
そのような事はソレには関係ない。
他にも失われた左腕の切断面だけではなく、
右肩のあちこちからもスパークが起こっている。
誰の目にもソレがスクラップ寸前になっているのは明らかである。
だが――

(――負けん)

「負けん……負ける筈が無い。より優れた存在である私が……おまえ達人間ごときに……」
 
もはや動くことも出来ぬはずなのにソレは動く。
機械の肉体本来の限界を憎悪で超えているのだ。
ソレはまさに鬼神のごとき表情で2人に近づいていく。
33オーフェン:02/06/07 23:18
>32
オーフェン&鏡花VSシグマ
「我が魂屠れ来訪者」

俺は体に乗っかっていた瓦礫を払いのけて立ち上がる。
そしてその後、鏡花を近くに降ろし、でかぶつを見据えた。

でかぶつは、すでに全身がずたぼろとなり、動いているのが不思議なありさまになっていた。

だが、それは俺も同じだ。
右腕はすでにピクリとも動かず。
そして全身には打撲を負っている。

鏡花は、外傷こそ大したことはなさそうだが。
体力の消耗が激しいのか、ほとんど動くこともできそうにない。

(先生なら・・・いや、昔の俺―――――)

「キリランシェロなら、こんながらくたくらい。とっくに破壊していたかもな・・・」

呟きとともに、自嘲するかのような笑みが浮かぶ。

(だが、キリランシェロはもういない――――)

背筋が寒くなるほどの殺気が、でかぶつから発せられていく。

『負けん……負ける筈が無い。より優れた存在である私が……おまえ達人間ごときに……』
ゆっくり、だが確実に、でかぶつはこちらに近づいていく。

(今、ここにいるのはただの金貸し――――オーフェンでしかない)

がらくたのようになったでかぶつは、更に呪詛を吐きつつ近づいてくる。

(そんなものに―――――過去の強さなどに今さら何の意味がある?)
34オーフェン:02/06/07 23:19
>33
オーフェン&鏡花VSシグマ
「我が魂屠れ来訪者」

ふと、隣の鏡花に視線を向ける。
先ほどの攻撃での体力の消耗が激しかったのか。
とてもではないが、動けるようには見えない。
だが、その目はまっすぐに敵を見据えている。

なぜか、笑みが浮かんでくる。
自嘲ではない、不敵な笑みが。

再び、視線をでかぶつに戻す。

(やるべきことは―――――もうすでに決まっている!)

「これが、俺の力だ」

がらくた同然となったでかぶつは、もはや執念だけで動いているかのごとく。
恐ろしいほどに怨念のこもった声をあげ近づいてくる。
『人間ごときにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!』


一拍置き、そして息を吐くと同時に俺は叫んだ。

「俺の守りたいものは―――――俺の力でしか守れない!」

叫ぶと同時に、俺はでかぶつに向けて走り出す。

なぜか見えないはずの後ろで。
鏡花が羽のついた蛇を構える姿が見えたような気がした。
35七荻鏡花 ◆x9SAToRI :02/06/07 23:20
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
>33>34
 地上に降り立ったオーフェンは、アタシをそっと下ろしてくれる。
 だが、終わったかと思ったのも束の間、ロボットがギシギシと音を立てながら立ち上がる。
 
 ……冗談じゃないわよ、ホント。
 外傷こそ無いものの、全身の霊力はほぼ枯渇しきってしまっている。
 あと一撃、余力があるかどうか……
 
 だが、悩む暇など無い。
 アタシを庇うようにロボットに相対するオーフェン。
 彼に全て任せきるなんて、そんな無責任な事、出来るわけない。
 
 オーフェンがちらりとこちらを見て、そして笑みを浮かべる。
 あきらめの笑みではない、不敵な、ふてぶてしいまでの笑み。
 
(いい顔……するじゃない)
 
 知らず、こちらも笑みを浮かべる。
 それは、けしてあきらめない意思表示。
 
 全身の霊力をかき集める。
 全てを、この一撃にかけて……
 アタシの想いに応え、チロが姿を変える。
 
 六枚の翼、それらがチロを覆い、螺旋を描く。
 どこまでも、細く、鋭く。
 そう、まるで全てを貫く槍のように。
 
「六翼よ……槍と、なれ……っ!!」
 
 白銀の槍と化したチロは、アタシの指し示すある一点を目掛けて、空を裂き、奔る。
 狙いは……額の宝石状のパーツ!
36シグマ:02/06/07 23:21
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
>35
 
青年が近づいてくる。
今なら、まだ今なら最後の力で、彼を殺すことが出来る。
 
(近づいて来い……ちかづいてこい……マモリタイモノゴト、オマエヲウチクダイテヤル!)
 
ソレにはもはやその事しか考えることは出来なかった。
 
――だが青年には仲間がいた。
 
「六翼よ……槍と、なれ……っ!!」
 
少女の蛇蛟が槍と化しソレのセンサーに向かって飛んできたのである。
最後の一撃に賭けていたソレにこの一撃を避けることは出来ない。
 
「グォォォォォ!」
 
その槍はセンサーを破壊し、そのまま後頭部へと貫通していった。
センサー機能の変更は一瞬にしてなされ、一切の感覚に影響は無かったが
頭脳チップの一部を抉られ、ソレは叫ぶ。
 
(痛い、イタイ、ITAI……!)
 
だが、それもわずかの間のこと。
再び光剣を握り締め最後の一撃を繰り出そうとするが――。
 
そのわずかの間が、ソレにとって致命的なスキを作っていた。
37オーフェン:02/06/07 23:24
>36
オーフェン&鏡花VSシグマ
 
「我が魂屠れ来訪者」


俺はでかぶつに向かい走る。

動くもの全てがゆっくりとして見え、でかぶつが剣を構えるのすらゆっくりと見える。

俺は重力制御の構成を編んだ。
そして、叫び声を媒介に効果を発動させる。

「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!」

でかぶつが剣を振るおうとした瞬間、頭を槍のようになった羽蛇が貫くのが見える。
そして、一瞬の空白が生まれた。
その一瞬の間に重力制御の効果は発動し。
自分を地面に拘束していた重力がほんの一瞬だけ解ける。
その瞬間に地面を蹴り、俺は跳んだ。
すぐ足元をでかぶつの剣が通り過ぎたのを感じた。

そのまま、空中で下にいるでかぶつに向けて左手を向ける。

でかぶつの口が――――オ・・・オマエハイッタイ!?――――と動くのが見える。

俺はそれには答えず、そのまま全力で魔術を放つ。
跡形もなく吹き飛ばすために最大の威力で。

「我は放つ光の白刃!」

意識のたがが飛ぶほどの―――自らが力をつむぎだす意思の奔流による―――衝撃が身体を貫く。

そして視界を完全に覆うほどの、光と熱の奔流が解き放たれた。
38シグマ:02/06/07 23:25
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
>37
 
ソレが最後の力を使った斬撃。
 
(コロシタ……!)
 
もはや意識も無く、ただ執念だけで動いていたソレは、
青年が最後の一撃を異様な跳躍力で避けた事を知覚する事が遅れた。
その間に青年は彼の真上に移動している。
 
(ナニッ!)
 
青年が彼に向かって魔術を放とうとする。
無傷のソレならそれをかわす事も可能だっただろう。
センサーさえ無事なら、彼を撃ち落す事も出来ただろう。
だが、今のソレは肉体、精神ともにボロボロであった。
 
(――カワセンッ!ワ、ワタシヲココマデオイツメタ……)
 
「オ・・・オマエハイッタイ!?――――」
 
それがソレが放った最後の言葉であった。
 
(ク、ククク。……ニンゲンノナカニモココマデツヨイモノガイタカ)
(ダガ、ワタシハサラニツヨクナル)
(コノワタシヨリモ、コノニンゲンドモ、ヨ……リ、モ……!)
 
そして、ソレは閃光の中に消えていく。
――光が消えた時にそこにあったのは、クレーターだけであった。
ソレは何も残さず蒸発してしまったのだ。
39オーフェン:02/06/07 23:27
>38
オーフェン&鏡花VSシグマ
 
「我が魂屠れ来訪者」
 
「――――ああああああああああっ――――!」

光が消え、地面に落下した時。
俺は自分が悲鳴を上げていたことに気づいた。
左手を包んでいた革のグローグはとっくに沸騰して、消し飛び。
身につけていた革のジャケットはぶすぶすと異臭を発して焦げている。

「くっ――――!」

ジャケットを脱ぎ捨て、足元にたたきつける。

前方には巨大なクレーター―――先ほどの魔術によりできた―――が広がっていた。
魔術による破壊跡は炎の渦をまだ残している。
でかぶつの姿は完全に消し飛んだのか、欠片すら見当たらない。

全身に火傷を負ったのかすさまじい痛みが全身を貫く。
その場に膝をつき、奥歯をかみ締めて痛みに耐える。

そして、そのままクレーターに向けて――――
いや、すでに消し飛んだ天人の遺産に向けて一言、言い放つ。

「俺が一体なんだと聞いたよな・・・教えてやるよ―――」

不敵な笑みが浮かぶ。

「これが俺だ」
40七荻鏡花 ◆x9SAToRI :02/06/07 23:28
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
―エピローグ1:鏡花―
>39
 光が視界いっぱいに広がり、熱風が身体を撫でる。
 これだけ距離を取っているにもかかわらず『熱い』と感じる……無茶苦茶な威力ね。
 
 光が収まった時、怪ロボットの姿はなく、そこにはクレーターがあるだけ。
 そして、その前には膝をついたオーフェン。
 ボロボロの身体でなお、笑みさえ浮かべながら。
 
 そして、ゆっくりと崩れ落ちた。
 
「オーフェン!」
 
 慌てて駆け寄る。
 といってもこっちもボロボロだ。半ば転びそうになりながらだけど。
 
 倒れたオーフェンの側に着き、心音を確かめる。
 ……よかった、心臓は動いてる。
 
 ホッとして、尻餅をつきそうになる。
 が、そうそう悠長にもいられない。
 すぐに官憲が来るだろう、そうなったら色々とややこしくなりそうだ。
 
 オーフェンの身体を抱え上げ、肩を貸すようにして歩き出す。
 かなり辛いが、そうそう弱音も吐いていられない。
 
 
 
 ――少し離れた、別の廃ビルに潜り込む。
 ここなら、そうそう見つかる事もないだろう。
 オーフェンの傷に、とりあえずの応急処置を施す。
 こうしておけば、あとから魔術で癒す事も出来るだろう。
 
 そうしておいて、オーフェンに背を向ける。
 もともとアタシはただの旅行者。いつまでもここにいる気はない。
 相棒、って言ってくれた彼には悪いが、別れるならいまのうちだろう。
 その方が、お互いのため、だ。
 
 ――ふと、振り返る。
 
「お礼、してなかったね」
 
 そういって、彼の頬に軽いキス。
 
「ありがと。感謝してるわ、オーフェン」
 
 そして、アタシは夜の闇へと姿を消す。
 
 ――ばいばい、相棒。
41オーフェン:02/06/07 23:30
>40

「我が魂屠れ来訪者」―エピローグ2:オーフェン―


あれから数日後、俺は地人を追ってトトカンタから離れていた。

「――――ったく、あの福ダヌキども。いらん知恵つけやがって!」

街道を悪態をつきながら歩く。
地人がどこに向かっていったのかは、適当な人間に尋ねればすぐわかった。
なにしろ、行く先々で騒ぎを起こしているのだから。

「まあ、あせることはねえか」

数日に前に負った傷はすでにほとんどを魔術で癒しているため、動くのに支障はない。

「元々、あの街には長くいすぎたんだ。また旅に出るにはいい機会だったのかもな」

ゆっくりと街道を歩いていく、地人が行ったと思われる街に向かって。

「そういえば、あいつには礼を言いそびれちまったな」

数日前、俺が目を覚ましたときにはすでに鏡花の姿はなく。
応急手当をされてビルの中に横たえられている俺がいただけだった。

「まあ、旅を続けてればそのうち会うかもしれんないし。礼を言うのはそのときでいいか」

そして、俺は次の街に向かい歩いていく。
その街ではたして何が俺を待ち受けているのか・・・

――――なんか、ろくでもないことが待ち受けているような気がするが。

・・・俺の旅はまだ終わらない。
42シグマ:02/06/07 23:31
「我が魂屠れ来訪者」
>41
―エピローグ3:シグマ―
 
少女が別の廃ビルに青年を運んでいってから少ししてから……
クレーターの中央にピンポン玉サイズの紫色の光球が出現する。
その光球は少しずつ大きくなると同時に姿を変えていき、そして……。
 
(フフフ、死なんぞ、この程度では)
 
消滅したはずのソレの頭の幻影となった。
 
(だが、これ程の能力を持つ人間がいるとは……)
 
取るに足りない愚かで貧弱な種族。ソレにとっての人間はそれだけの存在であった。
だが、ソレは今まで出会ったことの無い人間達と出会った。
故に……。
 
(力だ、より強大な力が必要だ!)
 
ソレは倒すための力を渇望した。
そしてソレには――永遠の時間がある。
 
かつて宿敵に語った言葉を、今度は先刻戦った2人に対して呟く。
 
(おまえ達の勝利など、ほんの一時のものでしかないのだ……!)
 
その幻影は閃光を放つ。
そしてソレは消えた。新たな肉体を創る為。
そして新たな力を手に入れるために。
43七荻鏡花 ◆x9SAToRI :02/06/07 23:34
オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
レス番まとめよ。
 
導入
>6>7>8>9
 
闘争
>10>11>12>13>14>15>16>17>18>19>20>21>22>23>24
>25>26>27>28>29>30>31>32>33>34>35>36>37>38>39
 
エピローグ
>40>41>42
 
あと、感想なんかここに貰えると嬉しいわね♪
ttp://fargaia.opt.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
>5

燃え上がる炎に照らされながら、あたしは考える。
少女は、あたしの問いには答えてくれなかった。彼女達の親の名前。

あの少女達には、二人の親がいる。
彼女達を暗殺者として育て上げた、サイス・マスター。
彼女達を吸血鬼として育て上げた、吸血鬼。

どちらが立派な親かは分からない。多分、どちらも最低な親だろう。
だけど、サイスは死んだ。ツァーレンシュヴェスタンも全員死んだ。
なら、あのモヤシ野郎も死ぬべきだ。あいつだけ生きてるのは、なんか変だよ。

それに、オルゴールはまだ止まっていない。
ということは、まだこの鎮魂歌を聞かせたい相手がいるってことだ。
ツァーレンシュヴェスタンが全滅した今、残る相手は――――

「チッ、あのモヤシ野郎……玲二相手にしてまだ生きてるのか」

となると、あの吸血鬼の相手を引き受けた玲二は、どうなったんだろうか。
死んだかな? それとも逃げたのかな? ま、どうでも良いさ。
玲二が死んで、悲しむのはアインの仕事だ。あたしは、あいつに流す涙はもう持っていない。
あたしが出来ることと言ったら、殺すだけ。

さあ、速く来てくれ。あたしはあんたと違って不死身じゃないんだ。
このままだと、あんたが来る前に出血多量で死んじまう。そんなのはつまらねェ。だから、来い。
場所が分からない? 馬鹿言うな。このオルゴールの音色が道標だ。
この音源を求めて、歩け―――― 

バックに眩しいほどの炎を背負いながら、あたしは待ち続ける。
レイオット・スタインバーグvsエンハウンス(導入)
 
 日も沈み、暗闇にゆっくりと包まれ始めたトリスタン市。
 その南部の繁華街――通称リゴレット通りを、カペルテータ・フェルナンデスは歩いていた。
 まるでその場に存在しないかのような透明な気配を纏った彼女は、顔を隠すかのように、
 頭からすっぽりと。コートのフードを被っている。

 これは、CSA――先天性魔法中毒患者として生を受けた彼女の非常に特徴的な容姿――
 血のように紅い髪と、同じく紅い瞳を人目から遮る為のものだ。悪魔とほぼ同義として存在
 する魔族との間に生まれた、彼女たちCSAに対する世間の目は、お世辞にも優しいとは言えない。

 ――が。とりあえず、そんな事実は彼女にとっては関係がないようだった。
 偶にこちらに降りかかる無遠慮な視線にもさして気を払わずに、躊躇いのない自然な足取りで、
 行き交う人々の喧噪をすり抜けるように歩み続ける。
 胸に抱えた紙袋――大きく商店の名が印刷されている――が、歩調に合わせて静かに揺れていた。

 と―――

「…………」

 不意に零れる小さな声。唐突に、その足取りが止まる。フードに覆われた顔が静かに動き、
 ある一点に視線を注ぎ込む。ぽつんと忘れ去られたように存在する細い路地。
 常であれば、それこそ誰一人それを認識することはないような……そんな空間だ。

 周囲を申し訳程度に照らし出している街灯の明かりが、一層の寒々しさを演出している。
 カペルテータは、ほんの一瞬――悩んでいるかのようにその場に佇んでいたが。
 すぐさま先程までとまるで変わらぬ様子で、黒に埋めつくされた路地へと歩き始めた。
レイオット・スタインバーグvsエンハウンス(導入)
>45

 高く空にあり、下界を等しく照らし出している月光は、無言のまま脆弱とも言える世界を見下ろしている。

 青白い光が浮かび上がらせたそれは。
 一言でいえば――惨劇だった。

 閉ざされた路地の奥。
 僅かにひらけたその空間には、奇妙な物体が散乱している。
 ――死体だ。それも……ひとつふたつではあるまい。少なくとも、五体以上の人間の亡骸が、
 猛烈な血臭を伴ってそこにある。死体は幾つにも分断され、どれひとつとして正常な形を保ってなどいない。
 それ故に、常軌を逸したその凄惨な殺戮の現場は、まるで虚構のように。
 非現実的な空気を伴ってカペルテータの前に横たわっていた。
 
 だから、というわけでもないのだろうが。それを眺める彼女には、微塵の変化もない。
 如何なる感情も見えない透明な表情で周囲を見回し――瞬間。
 何かに気がついたように、無言のままカペルテータは左にその視線を向けた。
 
 そこには――
 僅かな光を受けて、爛々と輝くふたつのアカ。
 それが、眼なのだと気付いた瞬間。全身に激しい衝撃が走る。抱えていた袋が、地面にぶちまけられた、
 赤黒い液体の中に落ちていくのを視認して、彼女の意識は眠るように。
 周囲のそれよりも更に深い闇の中に沈み込んで…………
 


 目を覚ましたとき――まず感じたのは、猛烈な寒気だった。
 次いで、全身を蝕む耐え難いほどの激痛。
 意味不明の激しい乾きに襲われて――カペルテータは、無言のまま顔をしかめた。
 視線の先には、先程と変わらぬ半分に欠けた月。
 倒れていることを自覚して、直ぐさま立ち上がろうとするが――痛みと、込めた力が端から抜けていくような
 感覚に襲われて、結局は上体をなんとか引き起こすに留まる。
 
 何があったのか――と思う間もなく。
 彼女の視界にあったのは、上半身の半分を失い、灰のようになって崩れ落ちていく、何者かの姿だった。
 カペルテータは身動きひとつ取ることなく。無言で、その光景をただただ見つめている。
 何故か――どれがどういう現象であるのか、理解出来る自分を疑問に思いながら。
 
 と――じゃり、と言う物音が、すぐ近くから聞こえた。なんとか動くようになった首を、そちらのほうに向けて……
彼女は見る。闇の中に、猛烈な鬼気を放ちながらそこに佇む一人の男の姿を。
 
 手に時代錯誤とも言える剣を携えたその男は、無表情にカペルテータを見下ろしている。
 その、無言の中にあっても明確な意志を発する隻眼を、同じように無表情に見上げながら。
 カペルテータは、自分がこれから殺されるのだと……なんとなく、悟っていた。
>46 エンハウンスVSレイオット・スタインバーグ
 
 エンハウンスは一人の死徒を追っていた。
 それ自身はどうと言うこともない、ありふれた日常だ。
 標的である死徒も、別段取り立てるほどの代物ではない。
 エンハウンスにとっては何でもない、ただの些事、のはずだった。
 
 それが何をどう間違ったのか、あるいは死徒の底力を侮っていたのか。
 とにかく、死徒は銃身と魔剣の双牙を逃れて行方をくらました。
 もちろん、くらませたままで放っておくエンハウンスではない。
 すぐに追跡を開始、ほどなく標的がトリスタン市に逃げ込んだことだけは突き止めた。
 
 だが、そこからがまた困難を極めた。
 死徒の痕跡を辿っていっても、そこに残っているのは無惨に飲み散らかされた死体があるのみ。
 どうやら、戦いで負った傷を癒す為に血を求めているようだが、こいつはマズイ。
 死体を残しておけば、確実に吸血鬼禍を疑われる。
 そうなれば、死徒はもちろん、エンハウンスまでもが動きづらくなる。
 仕方なく、残りカスの死体を秘密裏に処理しながら足取りを追っていた。
 まさか、足止めの効果を狙ったとは考えにくいが。
>47続き
 
 そんなある半月の夜、エンハウンスは遂に死徒を発見した、発見したが……。
 
 そいつは今まさに食事の真っ最中だった。
 小柄な少女の首筋に牙を突き立て、血を啜っている。
 よほどご執心なのか、後ろに立つエンハウンスには気付いていない。
 
(まぁいい、好都合だ)
 
 酷薄な笑みを浮かべ、朱い隻眼で死徒を見下ろす。
 振り上げた魔剣が、黒い尾を引いて死徒へと吸い込まれる。
 今までてこずってきたのが何かの間違いであるかのように、魔剣あっさりと死徒を両断した。
 灰へと還っていく死徒。
 
 その向こう側から、こちらをじっと見つめる静謐な瞳――。
 
 瞬間、エンハウンスの背筋に戦慄が奔った。
 
(死徒として既に成っているだと?)
 
 その姿を見て、まず少女がCSA、半魔族であることは察しがつく。
 だが、たった今血を吸われていた者が、もう死徒となっているなど初耳だ。
 自分でさえ、死徒としての自我を安定させるのに数日は掛かった。
 何より、普通は多くの段階を経てなるはずなのだ、死徒というモノは。
 魔族、ひいてはCSAが死徒との親和性があるのかもしれないとエンハウンスは考えた――前例はないが。
 
 数秒、我を失っていたらしい。
 焦点を目の前の少女に戻し、その紅玉のある額の真ん中に魔剣の切っ先を突き付けた。
 
「魔族でも、人間でもない貴様はたった今死徒になった。
 なり損ないの貴様は何かになれたワケだ。一体、どんな気分だ?」
 
 多少、自分の姿を重ね合わせながら少女に尋ねる。
 
「もっとも、その貴様はたった今ここで死ぬが」
 
 そう、死徒は滅するのがエンハウンスなのだから。
レイオット・スタインバーグvsエンハウンス
>48

 ――死徒。
 囁かれたその単語を引き金として、カペルテータの脳裏に次々と――今まで知り得るはずもない情報が、
 次々と雪崩れ込んでくる。
 
 今感じている激痛と倦怠感の理由。末端から次々に崩壊していく変異した肉体。
 それを止める為には、同じ生物種の遺伝情報が必要であること。遺伝情報の補完には、血液の摂取が最も有効であること。

 そして――自分が、すでに死んでいると言うこと。

 死んでいる……と言う事実に対して、取り立てて彼女が思うことない。人はいつか死ぬものだ。そこに意味など無い。
 生まれれば、いつかは死ぬ。それは……この世界が生まれた瞬間から営々と紡がれてきた、ただの事実だ。
 ただ、不思議だった。死は、全ての終焉であるからこその死だ。何者もあらがうことの出来ない、決定的な結末。
 それ故に、人は死を恐れ――足掻き、藻掻き、生き続ける。
 では――――
 
「――もっとも、その貴様はたった今ここで死ぬが」
 
 その言葉に。いつ死か、自分の両手を見つめていたカペルテータは、静かにその顔を上げた。
 こちらに向けられた切っ先を無視するように、彼女は彼の顔に視線を合わせると。
 
「――ですが。私は、もうすでに死んでいます」

 やはり、一切の感情を感じさせない静謐な声音で、彼に……と言うよりは、ただ疑問を口にしているだけと言ったふうに、
 虚空に向けて呟いていた。

「貴方は、私が死徒になったと言います――人でも魔族でもなく、それ以外の何かになったと。ですが……私は死んでいます。
生者でもなく。また、死者として終わっているわけでもなく。死んでいるにもかかわらず、まだここにいる私は……一体、何になっ
たのでしょうか」

 死してなお存在し続けるのが死徒だというのなら。果たして、死とはなんの為にあるのだろう?
 問いかける彼女の眼差しには、なんの感情も浮かんでいない。
 全てが凍結したような、ほんの一瞬。

「ああ……なにやら盛り上がってるところ悪いが」

 ――その全てを切り崩すように。
 
「その子は、俺の連れでね――何があったのかはしらんが、その辺にしておいて貰えるか?」

 彼女にとって聞き慣れた声が、唐突にその場に流れ込んだ。

 レイオット・スタインバーグ。
 普段と変わらぬ、飄々とした、どこか芝居がかった仕草の彼は、何気なく……と言ったふうに腰の辺りで銃を構えながら、
 剣を構えた男に向かい語りかけていた。

>49 エンハウンスVSレイオット・スタインバーグ
 
「……そうだな、死徒は既に死んでいる」
 
 静かすぎる声。
 感情に僅かの揺らぎも歪みも見受けられない瞳。
 現状を何とも受け入れていないのか。
 あるいは、受け入れてなおこの静謐なのか。
 何よりも、これほどの静謐がこの世にあり得るモノなのか。
 
「だが、死が終わりだと誰が決めた? 俺は知っている。
 死んでいるモノでさえ『殺す』力を持った男を」
 
 真祖の姫を守護する男、『直死の魔眼』は今や殺人貴自身の代名詞にすらなっている。
 そう、死は単純に終わりではない。
 死すら終わらせる死が確かに存在するのだ。
 
「動いていれば、それは死んでいても『生きている』。
 形あるモノの終わり、それこそが本当の死ではないか?」
 
 問答している自分を滑稽に感じながら、言葉を続ける。
 
「ならば、俺が貴様の形を終わらせる」
『ああ……なにやら盛り上がってるところ悪いが』
 
 ――静謐に投じられた一石。
 それはあまり穏やかとは言えない波紋を広げる。
 
『その子は、俺の連れでね――何があったのかはしらんが、その辺にしておいて貰えるか?』
 
 横目で声の主を確認する。
 人間の、若い男。
 腰の辺りで銃をこちらに向けている。
 
「――フン、やはりこういう方がいくらかやりやすい」
 
 誰に向けるでもない独り言、所詮問答など復讐騎の本分ではない。
 命のやりとり、それこそが日常。
 無慈悲な死をもたらす銃口を前に、エンハウンスは動じない。
 少女に剣を突き付けたまま、一挙動で左手にブラックバレルを構えて引き金を引く。
 牙を剥いて獰猛な笑みを顔に刻んだ、血の匂いに焦がれて。
 
 もっとも、その笑みは目の前の少女にしか見えなかったろうが。
レイオット・スタインバーグVSエンハウンス
>50

 結局はいつものことだと――レイオットは、そう考えていた。
 それでなくとも、ここ最近は色々と物騒な自体が多発している。
 武装、組織化した子供らによる犯罪やら抗争やらも後を絶たないし、
 事実、カペルテータもそう言った連中に襲われかけたことも、一度ならずあった。
 だから今回も、その程度のことだと。彼は、そう思っていた。だが――

「これは……一体、どういう状況なんだ?」

 構図としては、簡単そうに見える。
 血溜まりの中に座り込むカペルテータと、その彼女に向かい剣などと言うものを突きつけている男。
 そして、周囲には――数人分の死体。
 ばらばらにされているそれを視界に入れつつ、これを拾い集める警察も大変だなどと、多分に場違いなことを考える。
 状況だけを見れば、殺したのはこの男と言うことになりそうだが。

「ああ……すまんが、そのまま動かんでくれ。こいつに込められてるのは、45マグナム弾――命中すれば、
たとえ急所でなくともショック死する可能性がある。そのまま、大人しくしててくれると……俺は助かるんだがね」

 そう言ってレイオットは、手にした銃を軽く振ってみせる。
 威圧的な重銃身の先にぽつんと穿たれた銃口が、真っ直ぐに男を狙っていた。
 
「カペル。立てるか?」

 視線もそのまま男からは動かさずに、レイオットは問うた。彼女がうなずいたのを、気配だけで確認する。
 こちらに来い――と口にしようとした、まさにその時だった。ふっ……と。まるで呼吸をするかのような自然な動作で。
 男の左腕が動いていた。その先にあるのは、漆黒の銃身だ。
 それを視認した瞬間。脳が明確な指令を発するよりも早く、レイオットは動いていた。
 ぎりぎり。距離にして、頭ひとつ分。その場から、横にずれる。間髪入れずに、横面に叩かれたような鋭い痛みを憶えた。
 銃弾が通り抜ける際の衝撃波。

「……まったく。人が穏便に済ませようとしてるってのに」

 うんざりと呻きつつ、今度は腕を真っ直ぐに伸ばして、彼は引き金を絞った。
 同時にシリンダーが回転。ダブルアクション。
 引き金と完全に連動した撃鉄が、込められた銃弾に一撃を加え――同時に、半ば閉鎖された空間に爆音が轟く。
 ガス圧によってたたき出された銃弾は、真っ直ぐに剣を携えたその男に向けて飛翔した。
 レイオットは前に進みながら、同じ動作を更に2回。同様に轟いた銃声を無視するように、レイオットはカペルテータに向かい叫んだ。

「カペル――来い!」

 時間としては、一秒にも満たない。
 半ばふらつくように彼の元にたどり着いたカペルテータは、こんな状況にもかかわらず、憎たらしいほどに無表情だ。
 そんな彼女に向かい、レイオットは苦笑をひとつ。血に汚れるのも構わずに、素早く彼女を抱え込むと。

 更に二発を発砲しつつ。全力で、その場からの離脱を謀っていた。
 通りに出てしまえば……さすがに、あの男も無茶なことは出来まい。
>51
……誤爆。上は俺だ。
やれやれ(嘆息)
>51 エンハウンスVSレイオット・スタインバーグ
 
 銃弾が、敵意が、殺意がエンハウンスを抉った。
 肩口と、頭部右上と、腹へと銃弾が牙を突き立てる。
 血が、肉が弾けて辺りに新たなる彩りを添える。
 
 だが、そんな姿になっても死徒は死なない。
 ましてや、エンハウンスは退きはしない。
 全く遅延のない動作で、後から迫る二発の銃弾を、魔剣を盾にして弾いた。
 魔剣を渦巻く漆黒の奥から男を凝視する朱い視線――。
 
 その視線の先で、男は少女を呼び寄せて逃走を開始。
 無論、逃がすエンハウンスではない。
 傷だらけの体で、まるで何ともないように二人の後を追って走り出した
 その速度は、人では到底あり得ない。
 すぐにでも追いつけるはずだ。
 
 表通りに出ると、すぐに逃げていく二人の姿は見つかった。
 いきなりブラックバレルを向けることも考えたが、少ないとはいえ人通りはまだある。
 あまり目立つ真似は拙いだろう。
 
 遠ざかる二人に追いつかんと走る速度を上げる。
 街路を掛ける赤黒い影。
 それはまるで二人を断罪する死神の影のよう。
 
(鬼ごっこで人間が死徒に敵うとでも思ったか?)
 
 もっとも、男が自分を何であるか把握しているとは到底思えなかったが、そんなことはどうでもいい。
 走る速度は上がり続け、もはや色彩すら視認できない。
 半ば疾風と化した復讐騎が街路を駆けた。
54ガロン ◆GALON/hc :02/06/08 12:33
涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)
前スレ(http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/
>473
 
数メートルはあった間合いを、彼女は不思慮に詰めてくる。
小石を蹴り、首を狙ったりなどの小技を使ってくる。
それを避けながら、彼女の出方をみる。
 
変哲のない右の殴打か・・・・・・それを避けようとした俺の視界が、
白に染まり、激しい痛みで開けることもままならなくなった。
目潰しか!?く・・・・・・ぬかった・・・・・・ 
 
こうなっては、もはや自分の勘のみが頼り。
彼女を追い越すように跳躍すると、ゆっくりと振り返る。
自らの気を体内で練り、耳で、肌で、空気の動きを読む。
今ならば、悟れるかもしれん。後の先をつく戦いが。
俺はゆっくりと構えをとると、彼女の動きを待った。
55アーカード ◆ARCARDr. :02/06/08 15:24
アーカードVS遠野志貴@死徒 導入
 
「とんでもない話だな」
 
 ヘルシング機関内、インテグラの執務室。
 紫煙をくゆらせながら報告書を読むインテグラの表情はあまり晴れやかとは言い難かった。
 その視線は、一枚の報告書へと注がれている。
 
 即ち、白の姫君の従者、直死の魔眼を持つ少年が死徒化したという事実を伝える報告書。
 
「あぁ、とんでもない話だ」
 
 主の言葉を、そのまま返すアーカード。
 だが、言葉とは裏腹にその表情には薄く笑みが張り付いていた。
 あまりとんでもないと思っているようには見えない。
 その視線は何処を見るでもなく、室内をさまよっている。
 
 先日、白の姫君の従者である少年、遠野志貴と黒の姫君、アルトルージュ・ブリュンスタッドが交戦。
 直死の魔眼を持つと噂される少年と、死徒27祖が一人のぶつかり合いは、少年の死徒化で幕の閉じた。
 
 ある意味、最悪の幕引きだ。
 
 少年は人間だった――例え直死の魔眼という、人間から大きく外れた魔力回路を持っていたとしても、だ。
 肉体的に人間だったからこそ、その化物じみた魔眼は一定以上の脅威には成り得なかった。
 だが、今や魔眼の持ち主はまさに化物(フリークス)へと堕ちた、堕ちてしまった。
 
 そう、それは悪夢だ。
 死徒の運動能力と再生能力に、直死を併せ持つ化物。
 未だかつてない脅威に、各国の退魔機関はにわかに色めき立っていた。
 ある意味では真祖の姫君、アルクェイド・ブリュンスタッドすら上回る脅威なのだ。
 そして、それはヘルシングも例外ではないという事だ。
 
「さて、どうなると思う?」
「SASが北アイルランドにて目標を捕捉、捕獲に入るという報が一時間前でしたな」
 
 手元の資料をめくりながら、事実を確認するように反芻するウォルター。
 その声音は、事実の重さに変わることはない。
 それが執事だから。
 
「そう、ベイドリック。アンデルセンと遭遇することになったあの町で、だ」
「……命令(オーダー)を寄越せ。一刻も早く出撃するべきだ」
 
 主に、あるいは不遜ともとれる笑みを投げかけてきびすを返す。
 
「命令は唯一つ、言うまでもなかろう?」
「認識した」
 
 振り返りもせずに、影の中へと消えていくアーカード。
 それを眼鏡越しの視線で見送るインテグラ。
 ウォルターの顔が、微かに笑みを刻んだように見えた。
 
 数分後、電話の向こう側に指揮権が委譲された事を告げるウォルターの姿があった。
 
「もう、そちらに向かわせています。ええ、はい、そうです。後はこちらが……」
>55 遠野志貴(死徒) vs アーカード

「――――ハア」

 大きく一つため息をつく。
 同時にドサリという人が路地裏の石畳に倒れる音。
 倒れたのは、俺が後から首筋に一撃を入れて気絶させた、イギリスの――おそらく
特殊部隊の兵士だ。それも最後の一人。

 俺が今いるのはイギリス領北アイルランドの都市、ベイドリックだった。
 何でこんな所にいるのかというと、それなりに複雑な事情がある。


 ロンドンのヒースロー空港に降り立った俺は、複雑な地下鉄を使ってどうやって
ロンドン市街に向かうのか考えていた。
 死徒になってから数年、ようやく流水を克服した俺は、最初の目的
「アルトルージュに文句を言ってやる」
 を決行すべく、どうやら世界中を飛び回っているらしいアルトルージュを追って
旅をしていた。
 秋葉に「半年は遠野邸にいる」とかいう条件を付けられた上に、GSM携帯電話を
持たされた。「連絡は欠かさないで下さいね!」と怒られつつ。

 その携帯電話に着信があったのは、空港でぼんやりと考えているときだった。
「もしもし?」
「志貴、今すぐにイギリスから出て!」
 思わず携帯電話を耳から話す。アルクェイドだった。
「このばかおんな! 声が大きすぎるぞ! ……で、一体何なんだ?」

 ……アルクェイドの話を要約すると、イギリスには「ヘルシング」という
退魔組織があって、そこの「アーカード」という吸血鬼はまずい相手らしい。
 しかし、ヘルシングはイギリスを守るだけだから、イギリスから出れば何とかなる
――そういう事らしかった。

「でもアルクェイド、ビザの都合で俺、出国できないんだけど」
「……だったら、北アイルランドに行って。そこは緩衝地帯だから、そう派手には
動けないと思うの。北アイルランドのベイドリックという街で会いましょう?」
「会いましょうって……」
「久しぶりに志貴と会いたいんだけど……ダメかな?」
「……」


 そんなわけでベイドリックに着いた俺だったけど、最初の夜――よりによって
満月の日にイギリス特殊部隊の襲撃を受けた。
 昼も行動を起こさなかったのは――やっぱり町中を特殊部隊が昼間動くわけには
いかなったからだろうか?
 とりあえず、この街は危ない。この街から出ることを考えなくては――。

 そう考え路地裏から通りに出た瞬間、そいつは現れた。

 化け物というよりは――闘争の意志が具現化した存在。
 狂気じみたその意志には、当然死が伴う。

 そいつは、街灯に照らされながら俺に向かってゆっくりと歩いてきていた。

 俺は、長年使って手の一部のようになった『七つ夜』のナイフをポケットから
取り出し――――

 ――――眼鏡を外した。
レイオット・スタインバーグVSエンハウンス
>53

 思ったよりも、時間が経ちすぎていたらしい。
 表通りは、先程の喧噪が幻だったとでも言うように、酷く閑散としていた。
 まあ、それはそれで好都合だ――とレイオットは独りごちる。
 血に汚れた少女を抱えながら走る男の姿など、ただでさえ目立って仕方がないのだから。

「それにしても――まだ追って……!?」

 そこまで呟いて、背後を振り返ったレイオットは――思わず絶句していた。
 人間とは到底思えない、馬鹿げた速度でこちらを追跡する黒い影。
 街灯の光を切り裂くようなその疾風は、かろうじて彼の視界へと入り込む。このままでは。

(間違いなく――追いつかれる!)

 反射的に、周囲に視線を走らせる――周りには、少なくなったとはいえ、いまだそこに存在する人々の影。
 勢いに負けたように倒れ込む人々が、何事が起こったのかと怪訝に首を傾げていた。
 だが……殆どの人間は、それにすら気付くこともなく、平穏とも言える自らの生活に入り込んでいる。
 そこに――唐突に、一発の銃声が轟いた。

 一斉に、人々の視線がそちらに集中する。
 そこにあるのは、少女を抱え、夜空に向けて、硝煙たなびく銃を構えるレイオットだ。
 注目がこちらに集まったのを確認して、レイオットは再び背を向けて貼りし出す。
 モールドキャリアまでは、後少し。
 にわかに殺到した人々の意識が、男を少しでも足止めしてくれるといいのだが。
オーフェン VS ぺトレスク神父
 
吸血鬼。
この不可思議な夜の住人はあくまで幻想のものである。
少なくともここ――――トトカンタ市では。
 
月が雲によって隠され、闇はより一層その濃さを増す。
外を出歩く住人も絶えたこの時間。
屋根の上には、一人の男が立っている。
黒い服に身を包んだ痩身の男は、目を凝らして下界を見下ろす。
 
――――そして、黒尽くめの男をその視界に捉える。
 
刹那、男の背中から翼が現れた。
そして姿がメキメキと音を立てて変わってゆく。
コウモリにも似た、巨大にして醜怪な姿へと。
 
夜を切り裂く突風となって怪物は空を翔る。
一言、その口中で呟いて。
 
「ホロベ」
59オーフェン:02/06/08 15:54
>58
オーフェン VS ぺトレスク神父

俺は夜道を散歩していた。
特に理由はない。
ただなんとなく、夜道を歩きたくなり外に出て散歩をしていた。

突如、殺気が空から向けられた。
とっさにその場を俺は飛びのく。

一瞬遅れて、さっきまで俺がいた場所に何かが激突した。

それは粉塵を巻き上げ、なにごもなかったかのごとく立つ。

それの外見はまさに化け物というのにふさわしい、異形。

(こいつは!?まさか天人の作った生物兵器か!?)

目の前の化け物がこちらを向いた瞬間、背筋に悪寒が走った。

俺は瞬時に、構成を編み。
化け物に向けて魔術を放つ。

「我は放つ光の白刃!」

光熱波が化け物に向けて突き進む。
60アーカード ◆ARCARDr. :02/06/08 15:59
>56 アーカードVS遠野志貴@死徒
 
 アーカードは、少年がSASを全滅させる一部始終を影の中から見物していた。
 なるほど、死徒としての卓越した肉体能力。
 そして血に潜む殺人者としての技能、恐るべき手際だ。
 何より、今は見せることのなかった『直死の魔眼』……。
 
 身震いするほどの死の予感に、影から覗く鼻より上の顔で嗤う。
 最後の一人を沈黙させ、そこを去ろうとするのを確認して影より這い上がった。
 街灯の下、光が織りなす影の中で、サングラス越しの朱い双眸だけを殺意と欲望にぎらつかせながら。
 
 ゆっくりと、光の下から歩き出すアーカード。
 ナイフを取り出して眼鏡を外す少年、それは何よりも明確な殺意の権限に他ならない。
 そう、直死はたった今解放されたのだ。
 
 ならば、こちらも迎え撃とう。
 この上なく明確な殺意を以て直死と向き合おう。
 その為の手段を、アーカードは持っているのだから。
 
 両手に握られている454カスール改造銃とジャッカル。
 引き金を引くことが何よりも雄弁に始まりを、殺し合いの始まりを告げてくれる。
 左手の銃口が持ち上がる、まっすぐに少年を睨み付ける。
 銃口が、双眸が冷たく光り――次瞬、咆哮が響き渡った。
 爆裂撤甲弾が、殺意を載せてまっすぐに飛ぶ。
>59
オーフェン VS ぺトレスク神父
 
白い光が煌いた瞬間、巨大な影は巨体に似合わぬ素早さで旋回。
そのまま回避して地上へと降り立った。
 
「クイアラタメヨ……ツミブカキモノヨ」
 
機械的な声が死の宣告を告げる。
いや、機械的というのは間違いだろう。
何故ならばこの怪物は機械を人の皮に隠したサイボーグ。
そう、改造人間なのだから。
 
背中の黒い翼が閃いた。
夜の闇を滑る翼は刃となって、黒尽くめの男を両断すべく迫る。
62オーフェン:02/06/08 16:11
>61
オーフェン VS ぺトレスク神父

「くっ!」

両断しようと迫る刃のような羽を、地面と接するかのごとく。
低く身をかがめて走ることによりかわす。

化け物が自分の上を通り過ぎようとする。
俺は化け物に下に入る前に、懐から短剣を取り出し。
魔術の構成を編みつつ。
化け物の翼を深く切り裂くため刃をひらめかせる。

「このっ、蝙蝠野郎!」
>57 エンハウンスVSレイオット・スタインバーグ
 
 天空に向けた一発の銃声。
 街中の銃声というモノは、日常にあらざる非日常だ。
 ソレは容易に人の目を引き、そしてパニックに陥らせる。
 案の定、人の目がこちらに集中している。
 一部ではちょっとしたパニックすら起こっていた。
 
(鬱陶しいマネを)
 
 舌打ちしながら立ち止まり、辺りの様子に気を配る。
 その間にも、二人は逃走を続けている。
 迷いは一瞬、だが距離はかなり稼がれた。
 今動き出せば明らかに人の目に付いてしまう。
 
 仕方なくエンハウンスは、影に紛れて動くことを選択した。
 都会において、人は闇を駆逐したと思っているかもしれないが、それは間違いだ。
 闇は静かに息を殺しながら、何処にでも存在している。
 それは人にとっては取るに足らない事かもしれないが、夜族(ミディアン)にとっては好都合だ。
 どんなに光溢れる場所であっても、自分たちが隠れる場所には事欠かないのだから。
 そう、今もまた影はエンハウンスに人の目を避ける術を与えてくれている。
 
 だが、やはり先ほどに比べればスピードダウンは否めない。
 二人の姿を見失いこそしないが、距離が詰まることもない。
 もどかしいほどゆっくりと、しかし決して焦らずに、ハンターは獲物を捕捉し続ける。
 焦る必要はない、姿さえ見えていれば逃がしはしないのだから。
 
 影から影へ、息を潜めて狩りをする肉食獣の如く。
 復讐騎は夜を駆ける。
>62
オーフェン VS ぺトレスク神父
 
「ギィッ!?」
 
胴体ごと男の体を真っ二つにする筈だった翼は空しく空を切る。
そして金属の冷たい感触とともに、翼は切り裂かれた。
だが然程深い傷では無い。
それに……翼は、二つある。
 
切り裂かれたのは右の翼。
無傷の左の翼は更に低い、地面スレスレを滑空して迫る。
そして僅かに遅れて翻る右翼。
挟み込むようにして、二つの翼が男を中心に交錯する。
>60 遠野志貴(死徒) vs アーカード

 人間では持つことさえも苦労しそうな銃を、しかも二丁持っている。
 弾丸も人間ではなく、俺のような「化け物」にも致命傷を与えうるもの使っているはず。

 銃を持った左手が、何の無理もない動作で上がり、銃口がこちらを向いた。

 その瞬間、俺は反応した。
 次にとるべき行動を思い描く。

 きわめて正確に俺を捉えていた銃口から、必殺の弾丸が咆哮と共に放たれる。

 同時に俺は跳んだ。
 死徒達の頂点に立つ27祖が第9位、アルトルージュ=ブリュンスタッドの
死徒としての全力で、斜め右、地上すれすれに跳ぶ。
 続けて、煉瓦造りの民家の蹴って壁を破壊しながら、跳ぶ。
 今度は射点を上下に揺さぶるために、斜め上に向けて跳んだ。目標はアーカードの
斜め上後方の民家二階の壁。
 即座に煉瓦造りの民家の壁が迫る。
 俺は左手と両足の裏を使って、まるでヤモリのように壁に張り付いた。
 そして、重力に捉えられて落下が始まる前に左腕に全力を込め、壁から弾かれるように
身を離す。

 身体をひねりながら着地。
 着地した場所は――アーカードの背後。

 着地した蛙のような体勢から、跳ね上がるようにしてナイフを走らせる。
 アーカードの身体に浮かぶ、わずかな『線』へと。
66オーフェン:02/06/08 16:35
>64
オーフェン VS ぺトレスク神父

異常なまでの翼の強度のため、さほど深く切り裂くことはできなかった。

そして、挟み込むようにして無傷の翼と、先ほど切り裂いた翼が翻る。

「っぉぉおお!」

俺はとっさに跳びあがり、羽をかわし。
そして無防備な姿をさらす化け物に向けて魔術を放つ。

「我導くは死呼ぶ椋鳥!」

破壊振動波が化け物めがけて解き放たれた。
>66
オーフェン VS ぺトレスク神父
 
不可視の衝撃が体を強く叩く。
機械と生身の内臓が同居した腹部から血がせり上がり、吐き出される。
 
「ガハァァッ!!」
 
普通の人間ならば訳も分からぬまま死んでいた筈だ。
コイツもまさか――――“出来損ない”なのか。
そんな疑念は今はどうでもいい。
これだけの事をしてくれた黒尽くめに対しての敵対心が燃え上がる。
 
「シャァァァァァッ!!」
 
翼を目眩ましとして目の前を掠めるように振るう。
その向こう側から迫るのは鋭利な鉤爪での貫手。
男を引き裂き、血を啜るべく爪は風を巻いて突き進む。
68オーフェン:02/06/08 16:56
>67
オーフェン VS ぺトレスク神父

化け物の爪が俺に向かい突き進む。
避けるのは不可能だと感じた俺は、とっさに身をよじり。
辛うじて急所だけは外す。

化け物の爪が体に食い込み、血が吹きでる。

「くっ、この!」

俺は自壊連鎖の構成を編むと、自分に突き立っている。
化け物の腕をつかみ、それを解き放つ。

「我は歌う破壊の聖音!」

対象の自壊を誘発させる魔術が化け物の腕に向かい流れていく。
>68
オーフェン VS ぺトレスク神父
 
肉を抉る感触に気分を少し良くしたのも束の間。
突き立った腕が勢いよく崩れ落ちてゆく。
 
「ッギャァァァァァ!!」
 
痛みに身を捩り、崩壊しつつある腕を引き千切って自由を取り戻す。
化物めッ!!
黒尽くめの男に向き直ると怪物はその顎を広げる。
響くのは――――耳障りな共鳴音――――
 
「シネ! デキソコナイガァッ!!」
 
超音波。
触れたものを切り裂く不可視の刃が怪物の口から放たれた。
70オーフェン:02/06/08 17:19
>69
オーフェン VS ぺトレスク神父
 

化け物は自分の腕を瞬時に引きちぎり、自壊がそれ以上進行するのを止め。
そして、その顎を大きく開き。

『シネ! デキソコナイガァッ!!』

罵声とともに何かを放った。

俺はとっさに直感である魔術の構成を編み。
化け物に向けて放つ。

「我は呼ぶ破裂の姉妹!」

衝撃波が化け物に向けて放たれる。

(これで防げるか?)
レイオット・スタインバーグVSエンハウンス
>63

「撒いた――か?」

 軽く肩で息を付きながら、レイオットは呟いた。
 場所は、リゴレット通りの外れ――この辺りまで来てしまえば、もはや人の気配も完全になくなっている。
 停車してあったモールドキャリアの貨物室を開き、抱えていたカペルテータを降ろす。
 生乾きしていた血が変色し、狭い室内に異様な臭気を撒き散らす。
 嘆息しつつ、それを脱がせようとして――レイオットは、手の動きを止めた。
 呆然と。呆然と、呻きを上げる――

「カペル――――?」

 ぽた……と。彼の手に水滴が落ちて――弾けた。
 泣いている。真紅の眼差しをこちらに向けたまま――カペルテータが泣いていた。

「カペル、一体――?」
「……痛い。痛いんです、レイオット――」

 ぽろぽろと。もはや記憶の彼方にしかない彼女の涙。それを今ここで見せられて、レイオットは凍り付いていた。
 その瞬間。初めて気付く。首筋から、幾筋か流れる真紅の線。四つほど穿たれた小さな穴から流れているこれは……血?
 分からない。一体……何が起こっている?

「カペルテータ……」

 だが、それを問いただすまもなく。背後に小さな、だが明らかな存在感を伴った音が生まれる。
 振り返らなくても、それがなんなのか分かった。これは分かる。これは……あの男だ。

「しつこいね、まったく……デートの申し込みにしちゃ度が過ぎてるぞ」

 皮肉げに口元をゆがめて、レイオットは言った。
 どのみち……もはや、穏便には事は済みそうもない。今さらのことではあるが。
 男の視線を感じつつ、彼は貨物大の中へと身を躍らせる。
 視線の先には……まるで拷問器具の如く、うちに飲み込むべき人間を待ち受ける金属の塊がある。
 泣きながらこちらを見つめるカペルテータを視界の隅に収めながら、レイオットは手早く衣服を脱ぎ始めた。
 発条の軋む鈍い音が、狭い空間にゆっくりと染み込んで行く。
>70
オーフェン VS ぺトレスク神父
 
「ナニィィ!?」
 
必殺の衝撃波は奴の放った衝撃波で相殺された。
動揺と焦燥が頭でグルグルと回る。
そして怪物は、こう結論を出した。
 
――――まだるっこしい事はもうやめだ、と。
 
怪物は未だに衝撃波同士の激突で振動する空間を突破。
一気に黒尽くめの眼前へと迫った。
そして口を大きく広げ、
 
「カァァァァァァァッ!!!」
 
本能の赴くままに、喰らいつかんとする。
73オーフェン:02/06/08 17:35
>70
オーフェン VS ぺトレスク神父
 
化け物が俺に向けて一直線に向かってくる。
まっすぐに奴を見つめ、意識を、左手に集中し魔術の構成を編む。
やつを一撃で倒せる威力の魔術の構成を。

そして、放つ。
化け物に向けて、自らの最秘奥の一つを。
全身全霊の力をこめた大魔術を。

(悪いが、てめえなんぞに殺される気はねえんでな!)

「我が左手に冥府の像!」

左手から小さな黒い物体――――破壊のための因子が化け物に向けて放たれる。
>71 エンハウンスVSレイオット・スタインバーグ
 
 街外れまで二人を追いかけ、ようやく人の目は消え去った。
 そして二人が逃げ込んだトラック――モールドキャリアを見て、その正体に気付いた。
 
「戦術魔法士(タクティカル・ソーサリスト)か」
 
 人の鋳型を身に纏い、魔族の殲滅を生業にしている者達。
 戦術魔法をエンハウンスはまだ拝んだことがないが、その破壊力は相当なモノだと聞き及んでいる。
 さしずめ、あのCSAは男の保護下にあったというところか。
 
 そうと解れば、男にモールドを着用する時間を与える必要はない。
 戦術魔法士は、モールドがなければ多少訓練された人間程度でしかない。
 吸血種であるエンハウンスがその状態で負けるワケがないのだから。
 
 モールドキャリアへ乗り込もうと入り口へと近づいたエンハウンスは……そこで少女の姿を見た。
 自らの、死徒の血にまみれ、そして静謐に涙を流す姿を。
 何かが、エンハウンスの心臓を鷲掴みにした。
 俯き、何かを噛み殺すかのように歯ぎしりの音が口腔から漏れる。
 その後を追うように、血が一筋口の端から零れ出た。
 
 何分間そうやっていたのか、エンハウンスは覚えていない。
 ただ、既に男がモールドの着用を終えたという事だけは察しがついた。
 視線を上げ、モールドキャリアの奥を睨み付ける。
 
「まずは、あの男だ。貴様に引導を渡すのはその後だ」
 
 それは迷った、迷ってしまった自分自身への罰。
 痛いほどに両手の武器を握りしめ、男が現れるのを待った。
>73
オーフェン VS ぺトレスク神父
 
それは、破滅の引き金。
何も気にせず、
獲物の首筋だけを狙っていた怪物はそれに触れたことすら気付かなかった。
 
次の瞬間、炸裂した暴風と火炎が怪物の体を消し飛ばす。
 
「キ、ギィ、ギャァァァァァァァ!!」
 
轟音と悲鳴が空気を掻き乱す。
そして、怪物の体に埋め込まれた機械に破壊が及び――――
 
再び、爆発が起こる。
ただしこれは怪物そのものが炸裂した爆発。
風が煙を追い払った時、そこには『何も無かった』。
 
(ぺトレスク神父:死亡)
76オーフェン:02/06/08 18:00
>75
オーフェン VS ぺトレスク神父
 
エピローグ

化け物に魔術が炸裂したことにより起きた爆発に飲み込まれ、もみくちゃにされる。
爆発が収まり、さっきまでいた場所を見ると。
そこには巨大なクレーター以外は何も残っていない。

「・・・へっ、何とか・・・倒せたようだな・・・」

爆発に巻きこれたことにより身体はボロボロになっていた。

だが、俺は足を引きずりながら宿へと帰る道を歩く。

「ったく、他に巻き込まれたやつがいなかっただけ不幸中の幸いだな・・・
―――――俺はボロボロになったけど」

先ほど倒した化け物―――おそらく天人の作った生物兵器、には一瞥もせずに。
宿へ帰る道を歩いていった。

あとには、ただ化け物がいた証拠でもあるかのように。
爆発により作られたクレーターのみが残っていた。
オーフェン VS ぺトレスク神父 の纏めです。
 
>58>59>61>62>64>66>67>68>69>70>72>73>75>76
 
神よ――――愛されぬ民は、滅びを受け入れませんでした。
レイオット・スタインバーグVSエンハウンス
>74

 ごとん――と音を立てて、黒い鎧が降り立った。
 タクティカル・モールド――<スフォルテンド>。
 それに身を包んだレイオットは、意外な思いで目の前にじっと佇む男を見つめている。
 何かに耐えるように両に構えた武器を握りしめたその男は、こちらの姿を認めると。
 す……と、全身に込められていた力を抜く。それは、戦いの放棄ではなく。
 戦闘に不要な緊張を解いただけに過ぎないことは、はっきりと分かる。


  しかし――何故、この男は。


 殆どの手順を省いたとはいえ、モールドの着装には数分ほどに時間がかかっている。
 先程見せた身体能力を持ってすれば、その間にカペルテータを殺すことなど、簡単だったはずだ。


 何故、この男は。じっと、こちらを待っていたのだろうか――


 だから、と言うわけでもないのだが。
 やや躊躇い気味に、レイオットは口を開く。

「引いてくれる気は――無さそうだな、やっぱり」

 それは、問いかけと言うよりは。ただの確認でしかない。すでに戦闘は避けられないのは、充分に分かっている。
 で、あるのならば――彼が行うのは、唯一つだ。

「生憎と、こちらとしても引くわけにも行かないんでな。すまんが――こっちから行かせて貰うぞ!」

 叫びと同時に、右腕に保持していたスタッフを構える。
 脳内には、すでに構成されていた魔力回路が、今や遅しと解放の時を待ちわびている。
 機関銃ともチェーンソーとも見える、その長大な機械の先には、全身から黒い気配を吐き出している男の姿。
 瞬時に発動地点を魔力回路へと設定したレイオットは、自らの意志をしめすかの如く、鋭く――撃発音声を唱える。

「顕!」

 声に導かれるが如く、現実世界の裏側に構築されていた魔法の源たる事象誘導機関が現実世界へと接続。
 瞬間的に世界へと流れ込んだ魔力は、即座に術者の意志を現実事象へと転化する。

 <ブラスト>――<第一の業火>とも呼ばれる戦術魔法が、爆音を伴って男を飲み込まんと発動した。
 始まってしまった――とレイオットは嘆息する。魔法によって生み出された爆発は、独特の音を伴って響く。
 いくら人気がないとはいえ、誰かが気付いたはずだ。
 警察に介入される前に。なんとしてもこの場を収めなければならない。

 ぺろり――と唇をひとなめしながら、レイオットは次の行動を開始すべく身構える。
 カペルテータの視線を、背中に感じながら。
>78 エンハウンスVSレイオット・スタインバーグ
 
 撃発音声、それが戦術魔法士が行使する力には付き物だとエンハウンスは知っていた。
 だから、その声が聞こえた瞬間にすぐさま地面を蹴って後ろへと跳んだ。
 一瞬後、今までいた場所を業火が弾けた。
 避けきれるはずもなく、爆風がエンハウンスを吹き飛ばす。
 体の前面を、熱気が舐め尽くす。
 その破壊力に、エンハウンスは舌を巻いた。
 
(これは――まともに喰らえばアウトだな)
 
 だが、エンハウンスとてまともに喰らうつもりはない。
 例え、撃発音声から実際の発動へのタイムラグが限りなくゼロに近くても、吸血種はその間に行動を起こせる。
 どんなに破壊力に優れた攻撃でも、直撃さえ喰らわなければ致命傷にはなるまい。
 
 そんな事を考えながら、足が地面を噛んでブレーキを掛ける。
 地面を削る音をさせながら、体を減速する。
 反動を利用して地を、ただし男から軸線をずらす方向へと蹴る。
 右へ、左へ、まっすぐ、その動きは予測できない軌道を描きながら男へと近づく。
 じっとしていては、奴にパターンを読まれては拙い。
 とにかく、戦術魔法を使わせないことが肝要だ。
 
 右腕の魔剣を腰溜めに構えながら、距離を詰めていく。
 時折牽制を込めてブラックバレルの引き金を引きながら。
80アーカード ◆ARCARDr. :02/06/08 18:43
>65 アーカードVS遠野志貴@死徒
 
 瞬く間に後ろへと回った少年に、思わず賞賛の口笛が漏れた。
 僅かに傾いだ首で、視線だけを後ろに向けながら。
 だが、事はそれほど楽観視できない。
 アーカードの朱い瞳が、少年の朱い瞳とぶつかり合い――それが蒼く、冷たく変わっていく。
 
 ナイフが、街灯を照り返して銀閃を描く。
 刃が、アーカードの腕へと吸い込まれていく。
 腕へと刃が潜り込み、複雑な軌道を描き――そして腕を完璧に断ち切った。
 鮮血を撒き散らしながら、宙へ舞う腕。
 切断面から血を地面にぶちまけながら、走って一時的に距離を取る。
 断ち切られた切断面は、まったく再生の気配を見せようとしない。
 
「なるほど……。これが『直死』か」
 
 失った腕があった場所を見つめながらひとりごちる。
 不死の王(ノーライフキング)すらも直死せしめる力……。
 なるほど、コレは誰もが色めき立つのも仕方あるまい。
 かくいうアーカード自身すら、楽しくて仕方ないのだから。
 
「面白い、面白いがしかし……片腕でおまえと渡り合うのは少々辛いな」
 
 その言葉と共に、アーカードの体から闇がにじみ出してきた。
 それは捻れ、絡み合い、蠢きながら腕の切断面目指して体を這いずり回る。
 少しずつ、少しずつ闇が集まり、形を成していく。
 
 ……それは、腕のように見えた。
 だが、誰も見たことがあるまい、ディテールを失った漆黒の中に無数の目が浮かぶ腕などは。
 そして、質量がないかのようにふわふわと蠢き、伸縮自在な腕などは。
 二、三度手のひらを開いたり閉じたりして感触を確かめた後、我が意を得たりといった表情で笑った。
 
「これでおまえの相手をしよう」
 
 銃を持つ漆黒の腕が、複雑な、否、デタラメな軌道を描いて闇夜を切り裂く。
 まっすぐに進んだかと思えば右に、次の瞬間には左、目が追いついたと思えば真上に向けて。
 少年の左斜め上から見下ろす形で、銃口が火を噴いた。
 
「拘束制御術式(クロムウェル)、三号二号一号解放」
レイオット・スタインバーグVSエンハウンス
>79

 発動のタイミングは、ほぼ完璧だった。
 だが――

「避けられた――?」

 魔法を避けることは、確かに可能だ。設定した座標軸から、発動前に待避すればいい。
 たったそれだけのこと。
 事実、対魔族戦闘に於いても、必殺を期してはなった一撃が避けられてしまうとこも、さほど珍しくはない。
 しかし……顕現の際に発声する僅かなタイムラグ。
 それを見切っての回避など……まさしく、人間業ではない。

「ち――やっぱり、そう簡単にはいかないかっ!」

 次々とその位置を変える男を視線だけで追跡しながら、レイオットは歓声とも聞こえる声を上げる。
 表情には、先程まで抱いていた悲壮など微塵もない。ただ、目の前の敵を倒す――それだけに思考が支配されていく。

 発砲音。同時に飛来した銃弾のいくつかは、避けるまでもなくモールドキャリアの装甲に突き刺さる。
 もとより、牽制の意味合いしかないのは……こちらへと接近する男の表情からも伺えた。
 ふと……偶然か、それともさすがに狙われたのか。射線が真っ直ぐ、こちらへと向けられている。
 反射的に回避しようとするが――

「――――!」

 気配。少女の気配。キャリアには――カペルテータが乗っている。
 動き出そうとしていた肉体を止め、代わりにスタッフを操作。
 
 呪文書式選択、無音詠唱。

「イグジスト!」

 瞬間――キャリア全体を覆うように、波紋のような力場平面が展開した。
 遮蔽呪文<デフィレイド>発動。
 胸元に固定された拘束端子――自らを人の姿に縛り付けておく為の刻印が、ふたつ。音を立てて弾け飛ぶ。
 防御力場面に直撃した銃弾は、その力のベクトルをゆがめられ、明後日の方向へとその矛先を変えた。

 瞬間――背後から、カペルテータが声をかけてきた。その口調には、やはりどこか、震えのようなものが混ざっている。
 それが……レイオットに、意味不明の焦燥を与えていた。

「レイオット。あの人は――」
「いいから。今は黙ってろ!」

 カペルテータを一喝して黙らせる。瞬間、力場平面が力を失い消滅した。
 一瞬気を取られただけだったのだが……男の姿が、視界から消えている。
 奴は、今どこに……!?
>80 遠野志貴(死徒) vs アーカード

 その視線に、圧倒されかける。
 首だけを動かしてこちらを見たアーカードの目は、異界への扉だった。

 そのまま身体に浮かぶ『線』を切り裂いて一撃で片を付けようとしだけど――。

 かわされる。
 そう判断した俺は、ナイフをの軌道をわずかに修正し、アーカードの腕に切りつける。
 大量の血をまき散らしながら、腕が宙を舞った。

 アーカードが何か呟いたようだが、俺に耳には入らない。
 先ほど見た目が、心に何かを焼き付けている。

 わずかの間動きを止めていると、アーカードの身体に異変が起こる。
 まさしく異変。アーカードの身体からにじみ出てきた闇が、何かを形作った。
 銃を持ち、無数の目が浮かび、宙を舞う腕。

 だがその事が、その中のある一点の事象が俺に冷徹なまでの精神を呼び戻した。
 アーカードにも、宙を舞う腕にも。


 ――――『死の線』と『死の点』が視える。

 『視える』なら『殺せる』。


 複雑な軌道をえがいて左斜め上まで「腕」が来た。
 銃が火を噴くと同時に俺は一歩前に踏み込み、宙に舞い上がる。
 そしてナイフで突きを入れた。

 腕の『死の点』へと。
>71 エンハウンスVSレイオット・スタインバーグ
 
 銃弾を、更なる魔法を行使して弾く男。
 なるほど、戦術魔法とは攻撃の用途だけではないのかと妙なところで感心する。
 だが、その動きだけは決して止まらない。
 
 と、男の意識が少女の方へと逸れた。
 何事か二人で言葉を交わしている。
 吸血種の聴覚はそれを聞き取ることもできたが、敢えてそうしなかった。
 それが何故なのかは自分でもよく解らないが。
 
 とにもかくにも、これは好機と判断して行動を起こした。
 着地した地面で、今までより一層深く膝を、腰をたわめる。
 溜め込まれたパワーが弾け、エンハウンスの体を弾丸と化して空へと打ち上げる。
 その体が向かう先は――モールドキャリアの車上。
 静かに、音もさせず蜘蛛のような姿勢で屋根へと着地し、二人の様子を窺う。
 案の定、男はエンハウンスの姿を見失っているらしく、次の行動がない。
 
 静かに魔剣を構え直し、屋根を蹴って下にいる男へと跳躍する。
 漆黒の刀身を、まっすぐに男の姿目掛けて突き下ろす――。
84アーカード ◆ARCARDr. :02/06/08 20:19
>82 アーカードVS遠野志貴@死徒
 
 漆黒に吸い込まれていく銀光。
 ナイフが突き入れられた闇の腕は、その動きを停止し、握っている銃を取り落とした。
 銃が地面とぶつかり、ガシャッと音をさせる。
 次瞬、形を保てずに霧散していく闇の腕、まさに直死。
 クロムウェルすら殺すその力に、しかしアーカードは笑っていた。
 
「これはこれは……本当に何でも殺すな。人も夜族も、神すらも殺せるのではないか?」
 
 ギチリ、と音をさせてアーカードの体が形を失っていく。
 体の何処かが犬と化し、また別の何処かが無数のムカデと化す。
 空は、数えるのも馬鹿馬鹿しい数のコウモリが覆い尽くし、鳴き声が静寂を打ち破っていた。
 辺り一帯が、闇の生物に支配されていた。
 
「だが、何でも殺せたとして、何十、何百という命を全て直死せしめることは?」
 
 闇の何処かから、そんな問い掛けが発せられた。
 銃声を皮切りに、闇が少年へと襲いかかる。
 闇に塗りつぶされていて、銃声が何処からしているのか視認できない。
 その一発が、少年の足元で弾けた。
 
 引き続いて襲い来る銃声、そして闇。
 少年の目に、その世界はどれほど死にまみれて見えるのだろうか。
レイオット・スタインバーグVSエンハウンス
>83

「――――!」

 キャリアの屋根。そこから轟くように響いた音――それが踏み込みの音だと気付いた時には、既に遅い。
 空を振り仰いだレイオットの視界にはいるのは、こちらへと迫る男の姿。
 重力すらも味方に付けた男の一撃は、構えられた剣へと集中し、真っ直ぐにこちらに突き立てられようとしている。

(この――――!)

 ――生き残る為。
 ――相手を倒す為。
 本能という名の攻撃衝動が、全力で肉体を駆動させる。
 だが……新たな魔法を発動させるには、圧倒的に時間がない。剣の切っ先は――もはや鼻先にまで迫っている。
 避けるわけにはいかない。この状況で距離を取れば……危険なのは、むしろカペルテータのほうだ。
 ならば――どうする?
 
 思考は一瞬。そして、回答もまた一瞬だった。
 愚問。始めから終わりまで、取りうる行動はひとつだけ――

「お――――」

 ぎちり。と、全身の筋肉が膨張する。
 スタッフを抜いたとしても32kgに及ぶモールドを身につけて、常人と同様か、それ以上の身体能力を発する戦術魔法士の筋肉が。

「おおおおおおおおおおっ!」

 叫びと共に、左腕が一閃する。
 同時に闇夜に突き刺さるのは、重く、そして甲高い金属音。
 いつしか手にしているのは、対魔法士戦用に使用されるメイス――
 近接戦闘に於いて相手のモールドをたたき壊すことを念頭に設計された凶悪な金属製の頭部が、
 突き下ろされた剣とぶつかり、にわかに火花を弾けさせていた。
>85 エンハウンスVSレイオット・スタインバーグ
 
 激しい金属音、それは魔剣とメイスがぶつかり合う音だった。
 闇の中で火花を散らし、またも吹っ飛ぶ。
 辛うじて地面に両足から着地し、体勢を立て直した。
 
(近接戦闘もこなせるのか、厄介な……)
 
 遠近両方に隙がない、これほど厄介な相手もあるまい。
 だが、だからといって魔法士相手に距離を取って戦うなど愚の骨頂だ。
 それに、近距離戦闘ならやはりこちらに分がある。
 人間と吸血種の運動能力は比較対象にすらならないのだから。
 
 腹を決め、地を蹴って低く走りながら男へと向かう。
 魔法は直撃でなければ致命傷ではない。
 そして、人間は魔剣の一振りが容易に致命傷になりえる。
 ならば、肉を切らせて骨を断つのが一番妥当な作戦という事だ。
 
「仕掛けるなら仕掛けてこい。真正面から潰してやる」
 
 疾風と化しながら、復讐騎は呟いた。
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父 導入

 ―――満月――――。

 そのほの蒼い光に照らされ、舞い降りてくる影2つ。
 落下するかのような勢いで着地し、まろびながら路地の奥に転がり込む最初の影。
 それを追ってきた2つ目の影は、優雅に降り立つと人の姿を取った。

 赤い、エナメル質のスーツを着た、妖艶な美貌が月光の中に浮かび上がる。
 女――ジェニー・バートリーは、逃走者が露地の奥の教会に逃げ込むのを見届けると、誰にともなく囁いた。
「こちら『男爵夫人』 ターゲットはA4地区の教会に逃げ込んだわ」

 わずかなノイズに続き、無線機から男の声。
(・・・了解。吸血鬼騒ぎの大元が教会とはな。そのまま監視を続けてくれ、すぐ応援を送る)

「そうもいかないかしら。もうばれちゃってるみたいだし。逃がすわけにはいかないでしょう?」
(しかし、)

「心配要らないわよ、月が味方してくれるから」
(まて、・・・)

 無線を一方的に切り、あらためて教会へと顔を向ける。
 無表情な中に、あるかなきかの微笑み。
 コツリ、コツリとヒールの音を高く響かせながら、女はゆっくりと教会へと歩む。
>87
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父 導入

ステンドグラスが砕け散り、光を撒きながら一つの黒い影が転がり込む。
そのまま床に叩きつけられた人影はその実、人では無い。
禿げ上がった頭部にコウモリの翼。
機械を埋め込まれ人を捨てた怪物――――改造人間だ。
 
それを冷たい視線で見下ろす男が居る。
神父服に身を包み、古木のようなしわだらけの顔。
彼の目から送られる視線はどこまでも冷たく、暗い。
 
「それで、おめおめと逃げてきたのですか?」
 
優しい口調とは裏腹に、言葉には突き放すような響きが込められている。
ギギ……と怪物は呻いて抗議をする。
だが、神父はそんな怪物を見下したまま口を開く。
 
「もうよろしい。
貴方はそのままそこで“出来損ない(ミスクリエーション)”の干物になりなさい」
 
それだけ言い放つと神父は入り口へと視線を注ぐ。
苦しむ怪物など、まるで意に介さないかのように。
わざとらしく、そこに見える人影へと優しげに語りかける。
 
「おや、お客様ですか?」
 
天井では、無数の目が輝き影が蠢いていた。
飢えと渇きが同居した、貪欲な光が乱入者を射抜く。
>84 遠野志貴(死徒) vs アーカード

 恐怖を通り越して、呆れるしかない光景だった。
 犬、ムカデにコウモリ。
 笑うような声と共にアーカードの身体が闇に溶け、かわりに無数のケモノやムシが
闇から這い出てくる。

『だが、何でも殺せたとして、何十、何百という命を全て直死せしめることは?』

 闇の中からそんな問いかけが聞こえてきた。
 同時に銃声。弾丸が石畳にはねる音。

 誰もか動揺するような状況であっても、俺は冷静だった。
 あの目の持ち主なら、このくらいはやる。最初に視線を合わせたときに感じた直感は
正しかった、それだけの事だ。

 引き続いての銃声に、俺は後に跳ねた。

 そして――闇を凝視する。


 無数に浮かぶ『死の点』。それは全てケモノやムシのものだ。
 だが、アーカードという存在はただ一つ。
 いつか戦った『混沌』と同じく、『死の極点』が存在するはず。

 脳のスウィッチを切り替えた。
 鈍い頭痛から、視神経と脳髄が限界まで熱せられた鋼の線と棒に差し替えられたような
激痛が走る。
 距離が遠いのか、『極点』は見えない。

 噛み付いてきた犬の『点』を一突きにした後、俺は叫んだ。

「全てを殺せなくても、お前という存在を殺せばいいんだよ!」

 そして、俺は再び跳んだ。
 まずはこの状況では全く無意味な光を発し続ける街灯へ、浅い角度で。
 続いて街灯から反対の家の壁へと跳ぶ。
 慣性が残っているうちに、俺は重力に逆らってクモのように壁を駆けた。

 駆けながら、俺の魔眼は、アーカードという存在そのものの『点』を探し続けている。
>88
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父

「ふふ・・・神父様、ご相談があるのですけど」
 天井に張り付いた影を意図的に無視し、ジェニーは神父に答える。

「連夜のご乱行、少し控えてくださらない? 最近、少しばかり目に余りましてよ?」
 慇懃に挑発をしながら、探る。

 数は多いが、彼らは明らかに飛び慣れていない。
 それは、先の一戦で分かっている。
 その体に慣れていないと言っても良いが、空中戦となれば彼女には絶対の自信があった。

 見た目には緊張のかけらも無く、天窓から漏れる月光の下を一歩。
「私と一緒に来てくださらないかしら、神父様」

 いったん切って、艶然と微笑む。
 この神父さえ確保できれば、あとはなんとでもなる。
 だが、それには天井の蝙蝠どもが邪魔だった。
 ゆえに、挑発を続ける。

「目障りなのよ、あなたのような出来損ないにがんばられては、ね」
レイオット・スタインバーグVSエンハウンス
>86

 男をはじき飛ばしながら、レイオットは内心で安堵していた。
 通常、対魔族戦闘のみを流儀とするレイオットは、魔法士と戦う機会などまず無い。
 それでも、近接専用の装備を積み込んでいたのは、保険というただそれだけのことだった。
 相手が剣を使うことを知っていたが為に、念のためにと持ち出しておいたが……

(とりあえず、正解……と)

 僅かに肩を竦めてみる。しかし、状況は正しく膠着状態ではあるのだが。
 否――拘束度、そして重量と二重の制限を負っているこちらのほうが、明らかに分が悪い。
 戦術魔法士の全力戦闘可能時間は、多く見積もっても三〇分程度だ――
 事実、全身には疲労が、重く静かにのし掛かってきている。
 そして……決定的な一言は、身近なところからもたらされていた。

「レイオット。あの人は――あの人は、人間ではありません」
「…………そうか」

 半ば分かり切っていたことではあったが、それでも明確に宣言されると――
 それを口にしたのが彼女だというのも大きい――もはや苦笑しか浮かんでこない。
 そして視界には……再び疾風と化した男の姿。
 もはや人間の動体視力では追いつくこともせいぜいと言ったその姿に、レイオットは軽く嘆息する。

「――正面から? はっ! 上等だ。それでは……ひとつ、行ってみましょうか!?」

 自らを鼓舞するように。
 あるいは、その状況を心底楽しんでいるように。
 レイオットの声は嬉々として闇の中に響く。流れるように、右手に構えたスタッフを操作。
 零番と刻印された呪文書式板を選択し――そのまま、勢いよく無音詠唱する。
 脳裏に描かれるのは新たな仮想魔力回路。
 意識下で動き始めたそれを叩き付けるように、彼は高らかに、撃発音声を唱えていた。

「ィィィィィイグジストォッ!」

 瞬間、全身が燃え立つような感覚。先程のそれを大きく上回る筋肉のうねり。
 視覚には……先程までまるで視認出来なかった、男の姿が明確に認識されている。
 <アクセラレータ>――肉体強化呪文。
 使用者を一時的にとはいえ超人へと変貌させるその呪文は、レイオットの肉体を超過駆動状態へと押し上げる。

 ――男を追いかけるように。
 レイオットもまた疾風となって、無人の空間を駆けめぐる。
 後には……ふたつの拘束端子が、忘れ去られたように転がっていた。
92レッド・アリーマー:02/06/08 21:42
レッドアリーマー対ロゼット一行  DEMON,S CRUSADE

導入

満ちた月の空の下、人の造りし塔の頂に『それ』は佇んでいた。
それは鮮血よりも赤き色、蝙蝠のそれを極大化させた翼を備えし異形、
人の知で例えるならば『悪魔』。

地上は喧騒に包まれていた。
人間達の放つ幾多の火線。愚かなる同胞が、身を焼かれ滅び去る。
地上を見下ろし、昏き双眸で見据えるは人間達、一組の少女と少年。
そして、少年から微かに感じるは魔の気配。
「罪人か……」
悪魔は呟く。重く響く金属質の声で、誰にも聞かせることなく。


―――――長き眠りから目覚めた魔物に映りしは、惨憺たる『現在』であった。
滅び行く故郷。
『勇者』と崇める同族達。
そして、偽りの秩序に縋りし『現在』(イマ)の魔界。

秩序?
魔界とは、魔族とは混沌とした存在(モノ)ではなかったか?
罪人?
戦士として戦い、屠ることが何故罪となる?

「下らぬ……」
同胞たちの話に耳を傾ける度、その心は失望に苛まれる。
己の生きていた魔界が『秩序』の名の下に落ちぶれ果てたこと。
そして、それを恥とせぬ同胞供に。

だが、その中で興味を引いた『罪人』という存在。
解放を求め、魔界に弓引く者。
そして幾多の同胞を屠りし『百人殺し』の強者。
それは只強き敵を、戦いを求める己にとって、唯一価値ある存在に思えた。


「その力、見せて貰うぞ…」
既に息絶えた同胞目掛け、赤き悪魔は業火を浴びせかける。
愚かな尖兵の躯は容易く爆ぜ、爆炎と轟音が辺りを覆う。
それは狼煙。
新たな戦いの序章、真なる闘争の証。
炎が照り返し、己の身を更なる赤に染める中、赤き魔物は地表へと降り立つ。
vsレッドアリーマー
『紅の闘士』
 
私とクロノは、その日ちょっとした用事で外に出ていた。
 
「は〜・・・・思ったより早く終わったわね〜」
「ま、ただの使いだったしね。この程度だったらすぐ終わるさ。」
 
私は、車のハンドルを握りながら呟く。
窓の外には、こんもりとした森。
そして今にも泣き出しそうな空。
 
「まいったな〜・・・・雨、降りそう。
 車汚れちゃうよ・・・・・・。」
 
私は、ぶつぶつ不満を言いながらアクセルを踏みしめた。
雨が降り出す前に修道会につかないと・・・・・・。
 
「・・・・・・・?」
 
その時、クロノが窓の外を見ていぶかしげな表情を浮かべる。
次の瞬間――――
 
「ロゼット!!車止めてッ!!」
「はいぃッ?!」
 
いきなり声をあげるクロノに驚き、私は急ブレーキをかけた!!
と同時に・・・・
 
≪どぉん!!≫
 
車の目の前に、炎が着弾し爆裂する!
あのまま走り続けていたら―――
私の背筋をぞくりと冷たいものが走りぬける。
 
「ロゼット!!」
「わかってる!!」
 
私達は、慌てて車から飛び降り戦闘体制にはいる。
そんな、私達の目の前に。
 
ふ わ り 、 と
 
『紅い悪魔』が舞い降りた――――。
>90
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父
 
『出来損ない』
 
その一言に反応し、神父の眉が僅かに動く。
動揺を隠し、聖者の仮面を被ったまま神父は答える。
 
「ふむ……乱行、と言うのは少々語弊がありますね」
 
落ち着き払った声。
それに重なるように天井からはおぞましい呻きが降り注ぐ。
 
「これは贖罪ですよ。
神に愛されぬ民を、生け贄に捧げ罪を償う……」
 
陶酔した表情で神父は語る。
いかに、その行いが正しいかを。
 
「神に愛されない民は全て滅ぶ……その為に、我々は動いているのです」
 
そこで一旦話を切って、神父は手を高々と掲げる。
 
「邪魔をしてもらいたくはありませんね」
 
ふぉん、と腕を振り下ろしたのを合図にして天井の影が動き出す。
天井に蠢いていたのは先程床に転がっていた怪人と同じコウモリの改造人間。
無数の羽音と寄声とともに、コウモリの怪人達は乱入者へと襲い掛かった。
95アーカード ◆ARCARDr. :02/06/08 22:00
>89 アーカードVS遠野志貴@死徒
 
「なるほど、つまりこの生命全てを統括する『私』自身を殺すと?」
 
 声に喜色を交えながら、少年と問答するアーカード。
 
「だが、それがどれほどの所業かおまえは理解しているのか?
 人間はもちろん、死徒、真祖、ひいては神ですら『私』の死など理解できんかもしれんというのに?」
 
 壁を走る少年目掛けて、コウモリが殺到する。
 それら全てが、まとめて線を切り裂かれて消滅した。
 屋根の上から降り注いだムカデもまた同じ運命を辿る。
 
「よしんばソレが見えたとして……おまえの脳髄はその瞬間に融解するかもしれんな」
 
 アーカードは、少年の脳髄が何処まで常識を越えたところで耐えられるかを知らない。
 だが、今のアーカードにとって『死』という概念がとてつもなく馬鹿げたモノであることは自分で理解している。
 何故なら、自分はそう生まれ、そう造り替えられたから。
 死は常に自らに付きまとう概念であると同時に、『死』は自分にとってもっとも縁遠い事柄だった。
 
 少年は闇を蒼い瞳で凝視し続ける。
 点を、死点ですら生温い『存在』を消去する点――極点を。
 アーカードは、闇の集団を少年へと差し向ける。
 銃弾が、牙がひっきりなしに少年へと襲いかかる。
 だが、その全てを少年は退け続けた。
 果たして、少年が力尽きるのが先か、アーカードの極点にナイフを突き入れるのが先か……?
96レッド・アリーマー:02/06/08 22:11
少女の放った火線が魔物を貫かんとする時、赤き魔物は消えさった。
否、
火線が放たれし刹那、大地を蹴り、空へと逃れたのだ。
それは眼で捉えることすら出来ぬ瞬速の技。
放たれし火線は掠めることもなく、地平で十字の閃光を刻むのみ。

「その程度か……」

そして背に備えし翼がはためき、空を駆け、地を這うように鋭き凶爪が閃く。
それは鋭さと速さ、重さを兼ね備えた一撃。
猛禽の如き一撃が、少女に迫る。
>94
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父

「あら、刺激しすぎたかしら?」

 言い終わる前にブーツを履いた足が跳ね上がり、正面から舞い降りてきた影を撃墜した。
 そのまま二体目の蝙蝠モドキを飛び越える。
 行きがけの駄賃にその首に両手を巻きつけ、流れるような動きの中でゴキリ、と頚骨の折れる音。

 そのまま蝙蝠モドキどもを引き連れ、教会を走り抜ける。
 襲い来る蝙蝠たちをまるで全身に目があるような動きでかわし、すり抜け、目指すは神父一人。
 裏口はめぼしをつけてある。神父を攫って逃走すれば、それでかたはつく。
>95 遠野志貴(死徒) vs アーカード

 そう簡単に『極点』を捉えることは出来なかった。
 コウモリ、ムカデ、そして銃弾。
 これらの全てが俺にとっては危険な要素で、片付けねばならなかったから。

 まとめて片付けなければ、らちが開かない。
 ならば――。

 慣性が消えて、疾駆から落下にかわる直前、俺は壁を蹴った。
 蹴り際にナイフを振るってコウモリを数匹、まとめて切り落とす。

 先ほどから見えていた『点』は、何もアーカードのケモノやムシだけじゃない。
 まわりの、建物や道、地面の『点』だって視えていた。
 反対側の、家の壁の『点』も。

 俺が張り付いたのは、その壁の『点』の近く。
 間髪入れずに『点』にナイフを差し込んだ。
 『点』と『点』を繋ぎ、縦横に走っていた『線』がうねった。
 俺は崩壊が始まる前に、壁を蹴る。


 ――――壁が、崩れた。


 俺に向かって来ようとしていた犬やムカデを下敷きにして、壁が崩壊していく。
 俺は身体をひねって眼下を凝視し、再び『死の極点』を探す。
>91 エンハウンスVSレイオット・スタインバーグ
 
「ッ……!」
 
 突如として、自分と同じ領域に踏み込んできた男に声もなく驚愕する。
 戦術魔法の幅の広さを改めて思い知った気分だ。
 男の運動能力は、今やエンハウンスと同等、下手するとそれ以上にまで押し上げられていた。
 これでは、力押しで行けるかどうかも怪しい。
 
 と、男の姿が突然視界に覆い被さるかのように現れた。
 一瞬できた思考の隙間に、あっさりと距離を詰められてしまったらしい。
 目の前の現実を許容しきっていない自分を叱咤しながら、男が振りかぶるメイスを見上げた。
 まっすぐに、エンハウンスの頭上目掛けて振り下ろされる。
 それを、何とか体を捻ってかわし、捻りをバネに利用して魔剣を逆手に振るう。
 男も素早く反応し、メイスを引き上げて剣を受ける。
 ぶつかって弾け合い、再び距離が開いた。
 
 両者共、同時に突進を再開、互いの銃器を牽制に使いながら慎重に、しかし迅速に距離を詰める。
 もはや冗談としか思えない速度で動く二人は、銃弾すら容易にかわしてみせた。
 そして、再び肉迫する――。
vsレッドアリーマー
『紅の闘士』
>96
 
私の放った一撃を、紅い悪魔は黙視するのが困難なほどの速度で回避する!
 
「なッ!!」
 
『聖火弾(セイクリッド)』−聖油を炸薬代わりに詰めた浄化弾−が、
空しく地面で炸裂し十字の閃光を放つ。
 
「速ァッ!?」
 
奴は、空中で翼をはためかせると私めがけて爪を振りかぶる――――!!
かわせない―――?!
 
「ロゼットぉ!!」
 
クロノが、私を突き飛ばす!
 
「ぶぶ!!」
≪ずべぃ!!≫
 
私とクロノの頭の上を、爪が通り抜ける!
 
「あ・・・大丈夫?」
「大丈夫なわけあるかァ!!」
 
私は、鼻頭を撫でながらクロノの頭を殴りつける。
 
「・・・・・・・つつつ・・・・・。殴んなくても・・・」
「うっさい!!次、来るわよ!!」
 
私は、機関銃を構えると奴めがけて放つ!!
>97
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父
 
やはり只の人間では無いらしい。
雑兵とはいえ改造人間。
人間を遥かに超えた力を持った怪物だ。
それを、ああも簡単に葬るとは……。
神父の口の端が持ち上がり、邪悪な笑みが顔に浮かぶ。
 
「そうですか――――アナタもまた、愛されし民――――」
 
ぺキ。
 
枯枝を折るような音。
 
ぺキぺキ。
 
音が、重なる。
 
ペキペキペキ。
 
筋肉と骨が膨張し、神父の姿を変えてゆく。
その姿は無数のコウモリ達よりも巨大で、醜悪な姿。
姿を怪物へと変えた神父は僅かに体を揺らして、翼を翻す。
桁違いの筋力により振るわれる翼は剣となって無数の怪人たちを両断。
翼が血に塗れるのも構わず、教会そのものを切り裂く勢いで横薙ぎに刃は乱入者へと迫る。
102レッド・アリーマー:02/06/08 23:00
レッドアリーマー対ロゼット一行 DEMON,S CRUSADE

>100
少女を狙いし一撃は、少年の機転により空を切った。

「人間を庇うか…罪人よ」

九死に一生を得た少女は一回り大きな武器を構え、更なる火砲を悪魔に放つ。
先程のを凌ぐ火線が悪魔に降り注ぎ、掠めゆく。
だが赤き魔物は怯まない。
これは愉悦、自らの生をかみ締める一時なのだから。
尚も降り注ぐ銃撃を潜り、悪魔は人界の塔、無機なる壁へと爪を突き立てる。

好機を狙わんとばかりに降り注ぐ聖なる火線。だが一点への集中が仇となった。
銃弾が体を打ち砕かんとする一瞬、再び跳躍。
魔物を屠らんとした幾多の弾丸は、虚しく壁を穿つのみ。
そして生じるは一分の隙。

歴戦の悪魔はその隙を逃さない。
少女を見据え顎を開き、爆炎の魔弾を掃射、連射、掃射。
岩すら砕く火炎弾が降り注ぐ。
そして、それを追い自らも急降下。
瞬速の一矢となりて、少女を狙う。


103アーカード ◆ARCARDr. :02/06/08 23:06
>98 アーカードVS遠野志貴@死徒
 
 崩落する壁、それに飲まれて潰されていく犬、コウモリ、ムカデ達。
 液体が潰れるような、一種形容しがたい音をさせて瓦礫へと埋もれていく。
 もうもうと立ちこめる粉塵を背景に、少年が着地して再び闇の群れへと視線を戻した。
 
「ほう、考えたな」
 
 声は少年の背後からした、ゆっくりと振り返る少年。
 蒼いままの瞳が、僅かに驚愕を映し出す。
 瓦礫をかき分ける手、下から出てきたそれは――間違いなくアーカード。
 拘束具姿になってはいたが、確かに最強の殲鬼。
 潰された闇を媒介に形を成し、ジャッカルを構えて立ち尽くしていた。
 
 至近距離で火を噴く銃口。
 立ちすくむ少年の足を、無数の闇の腕が這いずり回って掴む。
 まっすぐに、銃弾は少年の頭部へと向かっている――。 
>101
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父

「・・・醜悪、ね」
 その巨体を目にし、不快気に目を細め――

 次の瞬間、刃と化した蝙蝠の羽が赤い影を引き裂いていた。
 両断され、地に落ちるは、しかし赤いスーツのみ。

 ばさり、と羽鳴りがする。
 己の翼で舞い上がったジェニーは神父の頭上をとっていた。

 彼女もまた、蝙蝠人間。裸体を蝙蝠同様の獣毛で覆い、大きく発達した耳と、そして両腕には、枝分かれした骨の間に膜――こうもりの翼を持つ。
 その姿は異形でありながらある種の凄愴な美を連想させ、
 この場の醜悪な蝙蝠モドキとの対比は、実に見事なコントラストといえた。

「おいたが過ぎたようね、坊や」

 頭上。蝙蝠にとっても翼をうち振るうには困難な死角。
 翼を操り、絶妙の軌道でそこに滑り込んだジェニーは、
「おしおきが必要ね」
 言葉と共に鉄槌のような一撃を振り下ろした。
 滑空の勢いを借りて放たれた蹴りは、体重差をものともせずに神父の巨体を跳ね飛ばした。
レイオット・スタインバーグVSエンハウンス
>99

 もはや何度目になるかも分からぬ金属音が、鉄の破片を撒き散らしながら辺りへと突き刺さる。
 一見、その動きは互角――だが、やはり押されているのはレイオットだ。
 打ち合いを始めて、すでに一分程度。お互いに決定打の出ないままに、時間だけが過ぎ去っていく。

 <アクセラレータ>の接続限界は、およそ三分。これを過ぎれば、レイオットはあらゆる自由を剥ぎ取られ、
 まるで死体の如く地に伏せるしかない。そうなれば……全て終わりだ。
 ちらり――とメイスに視線をやりながら、その結果に舌打ちする。
 鈍器としての威圧感を放っていたはずの金属製の頭部は、見る影もなくぼろぼろになっている。
 あと数度の打ち合いが限界だと、レイオットは判断していた。
 そして――更に一撃。

 ぎいんっ! 耳に突き刺さるような音と共に、再びお互いの距離が開く。
 月光を反射する男の剣には、微塵の傷も見られない――少なくとも、この距離では、だが。
 しかし、消耗しているのがこちらだけだという予測は、精神的に嬉しいものではない。
 牽制の為に銃撃を再開しようとするが……かちり、と言う音がその一切を裏切った。

(弾切れっ!?)

 込め直している時間など無い。考えるまでもなく、レイオットは男に向けて、無用の長物となった拳銃を投げつけていた。
 それ自体が巨大な銃弾のような勢いで、こちらへと迫る男に向かい真っ直ぐに突き進んでいく。
 当然のように男はそれをたたき落とし――そしてまた、距離が開いた。

(このままじゃ――拙いな)

 移動しつつ、彼は静かに思考する。
 闘争に染まりきっているはずの思考の中で、いまだ残る冷静な部分は、自らの敗北を宣告していた。それは、つまり――
 視線の片隅に、モールドキャリアを捉えた。その貨物室の扉から、こちらを見つめる四つの紅。
 強化された視覚は、彼女の顔を――カペルテータの顔を、はっきりと彼の意識に刻み込む。

 自分が死ぬのは一向に構わないが。少なくとも……今は、それを許容するわけには行かない。
 背中のマウントから、スタッフを取り外す。
 呪文書式選択。無音詠唱。
 そして……行動は、それだけには留まらない。
 
「我法を破り理を越え破壊の意志を此処に示す者なり――!」

 補助呪文詠唱開始。だがそれは……男にとっては、喉の奥からノイズのような音が走っているように聞こえただろう。
 加速された言語中枢と強化された顔面の筋肉が、レイオットに呪文の高速詠唱を可能とさせている。
 声帯を破壊しかかねないほどの猛烈な速度で、レイオットは更に更に更に。更に呪文を詠唱する。
vsレッドアリーマー
『紅の闘士』
>102
 
「しまッ・・・・・!!」
 
私の射撃の間に生まれた隙をぬって、口から火炎弾を放つ!
降り注ぐ炎の雨!
 
「うややややや?!」
「なんとォッ!!」
 
私とクロノは、慌てて火炎弾を回避する。
火炎弾が地面をえぐりクレーターを作り上げる!
こ、こんなの当たったら・・・・・!!
一瞬、私の意識が奴からそれた。
 
「上!!気を付けてッ!!」
「えぇ?!」
 
クロノの声に、我に帰る。
回避することに専念しすぎたために、私とクロノとの間には
かなりの距離が開いている。
そこをめがけ、奴が再び私めがけて爪を振りかぶった!!
 
「まず・・・・・!!」
「かわすんだ!!ロゼットォ!!」
 
私が銃口を向けるより早く―――奴の爪が―――-
 
≪ぞしゅぅっ!!≫
 
「あ゛ああぁぁぁぁぁッ!!」
 
奴の爪が、私の肩口から右腕を切り裂いた!!
飛び散る鮮血、走る激痛!
そのまま、私の体は地面を数回バウンドしながら吹き飛ぶ。
 
「う・・・ぐ・・・・・ぅ・・・・・」
「貴様ァァァァァァァァッッッ!!!!!」
 
痛みに耐える私の耳に、クロノの咆哮が届いた。
>104
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父
 
轟音。
吹っ飛んだ巨体が裏口のドアごと壁を破壊して外へ躍り出る。
まさか、相手が変身したあげくこれ程の力を発揮するとは―――
予想外の出来事にもうろたえず、神父はゆっくりとその体を起こす。
 
「ナント、ツミ、ブカイ……」
 
その声にもう人間の温かみは感じられない。
何故なら、体の内に詰まっているのは機械なのだから。
暖かい人間の体など、とうに捨てている。
 
「アガナエ、ソノツミヲ!!」
 
奴は神に愛されながら神に反旗を翻す。
こんな罪深い事があるだろうか?
憤怒を顔に表したまま、翼で教会を滅多切りにする。
まるで、内側に居るジェニーごと切断するかのように。
108アルカード(M):02/06/08 23:51
鈴鹿御前 vs アルカード(M) 
導入 
 
 ドッドッドッドッドッ。  
 キンッキンッキンッキンッキンッ。 
 コッコッコッコッコッ。 
 
 白木をケズったクイが、不死者共に叩き込まれる。 
 
 クハッ、クハハハハハハハハハハ―――――― 
 
 狂気と歓喜に充ちた笑いが東洋の街並みに反芻するかの如く、轟いた。 
 
 
 ヘルシングのハンターがこの地を踏んだのにワケなど無い。 
 ただそこに吸血鬼がいて、刈るべき者が必要だったから。 
 それ以上の意味を求める事なんてバカらしい、そう思うほど簡単な理屈。 
 
 アスファルトに薬筴が吐き出され、音を立てる。 
 クイを打ち込まれた不死者が血溜まりの中に消える。 
 光の差さない闇夜に男の嘲りと愉悦と焦熱を帯びた笑いが、木霊する。 
 笑い、銃声、薬筴のは転がる音。 
 それさえ除けば、珍しいぐらい静かな夜だった。 
 
 そこへ、足音。 
 一人の少女が血と肉に包まれた路地に訪れたのは、何かの巡り合わせだろうか。 
 
「よう、お嬢さん。良い夜だね」 
 
 漆黒に浮かび上がる、朱い口。 
 大きく開かれたそこから鋭く発達した犬歯がのぞき、血に濡れて闇に飲まれる。 
 かしゃん。 
 マガジンを抜いて、再装填。 
 手にした長物に、カシの十字架をケズリだしたクイの弾丸が詰まる。 
 
 ――――その銃口が少女を捉えた。 
 
「今日もお仕事ご苦労さん、ってな」 
 
 くたびれた口調で、赤いコートの男は言う。不死者を、化物を、フリークを殺すのが男の仕事。 
 なら、それを躊躇う理由など何処にもありはしなかった。 
109鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/06/08 23:54
鈴鹿御前 vs アルカード(M)

>108

 その夜も、私は闇と静寂に包まれた街を、狩るべき相手を求めて彷徨っていた。


 ここ数週間頻発する、吸血鬼と呼ばれる妖によって引き起こされる事件。なぜそんなモノが、日
本のこんな街に現れたのかは分からない。が、そいつが人に仇なす存在である以上、放っておく訳
にはいかなかった。

 数日を徒労のうちに過ごした。この街に入り込んだ吸血鬼は狡猾な奴らしく、なかなか居場所を
掴ませない。
 その間にも犠牲者が増え続けている事を思い、心中に苛立ちと焦りが去来する。
 だから、昼間さえ人通りも少ない裏路地に、件の吸血鬼のモノと思しき確かな鬼気を感じた時、
私の足は自然とその歩みを早めていた。

 だが。
 そこにあったのは、私が狩るはずだった吸血鬼の物言わぬ屍。
 そして、血肉の泥濘の中に、昂然と立っていたのは、まるで鮮血で染め上げたような、闇にも鮮
やかなコートを纏った男。その口の端からはみ出した、発達した犬歯が、そいつもまた吸血鬼であ
ることを、如実に示していた。

 手にしたライフル銃を再装填しつつ、赤コートの男が話しかけてくる。その口調はひどくくたび
れていて、まるで世間話でもしているかのようだ。
 だが、同時に取っている行動は、そのような呑気さとは程遠いものだった。ライフルを持ち上げ、
その銃口でまっすぐ私を指さしたのだ。

──私が人間でないと、知っているのか?
──どうでもいい。こいつも吸血鬼ならば、人に仇なす者には変わりあるまい。
──ならば、狩るのみ。

 無言で身を屈め、男の銃発に備える。
 この距離からの銃撃とて、回避しきる自信はある。ならば、先に撃たせてそこに生じた隙をつく。
110アルカード(M):02/06/08 23:58
鈴鹿御前 vs アルカード(M) 
>109  
  
 長物――――ライフルの銃口を心臓に合わせて、トリガー。 
 微かな手応えを残して、木の銃弾は目の前の少女に向かう。 
 
「どうした、お嬢さん」 
 
 キンッ、高い金鳴りの音を上げて薬筴が零れる。 
 その音が消えぬ間に、一射。 
 
「来ないのかい。吸血鬼を焦らしちゃいけないよ」 
 
 さらに、一射。 
 合計三つのクイが闇夜に馳せた。
>103 遠野志貴(死徒) vs アーカード

 ――こいつは不死身だ。

 そう確信した。瓦礫の中からゆっくりと、奴が、アーカードが「出てきた」のだから。
 立ち上がった、ではない。再構成したようなものか。

 ほんの一瞬、だが致命的な一瞬の時を呆然としてしまう。
 忍び寄ってきた闇に足を掴まれた。

「――ッ!」

 叫ぶ間もなく、アーカードが引き金を引いた。
 着地のままの体勢で、低い位置にある俺の頭めがけて銃弾が放たれる。
 咄嗟に、右側に傾ぐようにかわした。

 無意識のうちにナイフを振るった。

 銃弾が上腕部に炸裂した。

 ナイフの一撃で、足を掴んでいた闇が切り離された。

 炸裂した銃弾で、俺の左腕が吹き飛んだ。


「アアアアアアッッ!!」

 激痛と決意の咆哮をあげる俺。
 俺は、普通の人間ならば転げ回るであろう炸裂の衝撃に耐えた死徒の身体を、
アーカードに向かって疾らせる。
 そう、俺は既に捉えていた。

 ――――アーカードの、『死の極点』を。

 俺は瞬時にして間を詰め、アーカードの心臓に位置する『極点』に『七つ夜』の
銘が刻まれたナイフを突き入れる――!
>105 エンハウンスVSレイオット・スタインバーグ
 
『――――――――――――――――――――――――――!』
 
 男の極限まで強化された肉体が、凄まじい早口で何かの言葉を紡いでいる。
 エンハウンスにはただの雑音としか聞こえない速度で、だ。
 そして、詠唱するという事は仕掛けて来るということ、それくらいはエンハウンスにも理解できた。
 
 だが、それを成させるワケにはいかない。
 中級以上の魔術が行使されること、それは即ちエンハウンスにとっての敗北と同義だろう。
 あの破壊力を叩きつけられて保つほど生命力は強くない。
 
 急ぎ男へと走り、剣を構える。
 その間も銃弾を送り出し、少しでも男の詠唱を乱そうと試みる。
 あの詠唱が終わるよりも早く、早く、この一撃を――!
 
 漆黒を引き連れた刀身が疾る――!
>107
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父

 神父を追って裏口へと向かおうとしたジェニーは、しかし大きく羽ばたき、急上昇。
 裏口から垣間見えた神父――否、かつてだったモノ――が、翼の一撃を振るうのが見えたのだ。

 非常識にも、それは文字通り教会の建物を切り裂いた。
 ジェニーを追うように連続して振るわれるそれを間一髪でかわしながら、天窓へと向かう。
 衝撃で落下する建材を、蝙蝠特有の超音波感覚でかわし、天窓を蹴りの一撃で破砕し――

 ふと、下を見るとそこでは哀れな蝙蝠モドキどもが、あるものは翼に切り裂かれ、あるものは建材に押しつぶされて息絶えていた。
 だがその光景も一瞬のこと、崩れ落ちる教会から抜け出すジェニー。

 外は教会の中とは裏腹の、月光の世界だった。月を背に醜悪な怪物と向き合う。
 距離は遠い。
 上空の彼女に対し、相手は未だ地上。

「生み出して、殺して、身勝手もいいところね」
 神父に聞かせようとした言葉ではない。
 微かな呟きには、しかし押し隠したような怒りの色。

 翼を一打ち。
 降下を開始する。狙うはやはり、神父の頭上。
114レッド・アリーマー:02/06/09 00:12
レッドアリーマー対ロゼット一行 DEMON,S CRUSADE

>106

空より繰り出す一撃は、容易く少女を切り裂いた。
鮮血を撒き散らし、無様に大地を跳ねながら。
だが致命傷には至らない、至らせる気も無い。

怒号というべき叫びが、少年より放たれる。
だがその怒りすらも、悪魔には届かない。
全ては、『罪人』の真価を引き出すため。
そのための手段に過ぎないのだから。

「調子に乗るな、人間よ。」
悪魔は少女の首を掴み、血に濡れた体躯を引き上げる。
一片の情けも用いず、侮蔑の言葉を吐きかけて。

そして少女を捉える手はそのままに、少年へと向き直る。
「『罪人』よ、主の命は私が握っている。助けたくば…」
赤き片腕に力がこもる。僅かな力だが、少女の顔は苦悶に歪む。

「貴様の力、我が前に示せ」


115鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/06/09 00:18
鈴鹿御前 vs アルカード(M)

>110

 立て続けに飛来した3発の銃弾が、私の心臓を食い破ろうと迫る。

──狙い通り。ならば…

 最小限の動きでもって、飛び来る銃弾を躱す。男の目からは、一瞬私の姿がぶれたように見えた
筈だ。
 交差する際に見たところ、銃弾はどうやら白木の杭を弾丸にした、特殊なモノのようだ。
 古典に則った、吸血鬼を滅ぼすのに最適の銃弾というわけか──吸血鬼でない私に対して、どの
程度の効果があるかは疑問だが。

 そのまま、瞬足に間合いを詰める。
 先程まで無手だった私が、いつの間にか刀を握っていることに、男が驚いたかどうか。
 抜き撃ちの一閃が、横殴りに胴を両断せんと迫る。
レイオット・スタインバーグVSエンハウンス
>112

「落ちよ雷霆! 打て稲妻! その激しさによりて闇を貫き敵を打ち据えよ!
その猛きを以て彼の者を死に至らしめんがため!
スーテム・ルゲール・マルクワ・オン・マルクト・トウ――」
 
 スタッフの先端に生まれた赤い光が、闇の中にあって<スフォルテンド>の表面を照らし出していた。
 相互反転の状態で回転する真紅の同心円は、超過駆動する魔力回路の証――魔法陣(エイリアス)。
 こちらの動きを悟ったのか。男が――剣を構えた男が、今までのそれを上回るほどの速力でこちらへと肉薄する。
 予測されるタイミングは、ほぼ同時――だが、それでは駄目だ。

 一瞬が。
 ――あと一瞬が必要だ――!
 
 気がつけば。レイオットの左腕が、鋭くうなりを上げて前方へと投げ出されていた。
 そこに握られていたはずのメイスは、すでにない。強度限界を迎えていた鈍器は、虚空を走り。
 真っ直ぐにこちらへと来る男に向かい炸裂する。それをたたき落とす一動作。
 望んでいた一瞬が――ここに誕生する。

 構えるスタッフにつられるように、正面へと移動する魔法陣。
 赤く明滅するそれの向こうに男を見据えて――レイオットは叫ぶ。
 ライトニング系中位呪文。<マグナ・ライトニング>――

「イィィ――――グジストォォォォッ!!」

 撃発音声。魔法顕現。瞬時に魔法陣の先に青白い球体が発生。
 高速で回転するそれは――周囲に対し激しく熱と光を撒き散らすと、十数本にも及ぶ雷光を吐き出した。
 まさしく雷そのものと言ったその光の触手は、虚空において一本の光条へと収束し――

 うねりを伴って、名も知らぬ男に向かい襲いかかった。
>113
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父
 
断続的に悲鳴が聞こえる。
神に愛されなかった屑に神に近い体を与え、兵隊として使う。
ただそれだけの事。
何の感慨も感じない。
 
上空に佇む華麗さすら感じさせる異形。
地で這いずる怪物、としか形容出来ない異形。
二匹の異形が視線を交錯させる。
 
そして、翼が風を打つ。
 
先に上空から来るのを見て取ると、怪物も翼をはためかせて上昇。
滑空して襲い掛かる形となったジェニーと交錯するように飛行する。
ナイフのような鉤爪が揃った腕を掲げる。
振り下ろされた爪がジェニーを引き裂かんと迫る!
118アーカード ◆ARCARDr. :02/06/09 00:33
>111 アーカードVS遠野志貴@死徒
 
 片腕を失いながら、それでもまっすぐに狙いを定めて走ってくる少年。
 裂帛の気合いを込めた絶叫を上げながら。
 手の中の銀光が、明確な殺意をアーカードに向けてくる。
 
「見えたか、極点が」
 
 僅かに緊張とも取れるモノを孕んだ声音。
 表情には笑みもなく、ただまっすぐに少年を、その蒼い瞳を見つめている。
 その瞳に、アーカードは確信した。
 この少年は、間違いなく自分を殺そうとしていると。
 
 心臓目掛けてナイフを突き入れてくる。
 まさしくそこが極点か。
 銀閃が、心臓付近へ突き刺さるかと思われた瞬間――。
 
 アーカードの腕が、ガシッと音をさせてナイフを持つ腕を掴んだ。
 そのまま、腕を抑えつける。
 少年とて、グイグイと力を込めて押し込もうとしているが、アーカードのソレには遠く及ばない。
 突き刺さるか刺さらないかのギリギリで震えるだけのナイフ。
 
 それを尻目に残った片腕を振り上げ、拳をこめかみに叩きつけた。
 もの凄い音をさせ、少年の上半身が傾ぐ。
 鮮血が空間に舞った。
 
「さぁ、どうする少年? もう王手詰み(チェックメイト)までいくばくもないぞ?」
 
 顔には、また笑みが刻まれていた。
 勝利者の愉悦を含んだ笑みが。
119アルカード(M):02/06/09 00:42
鈴鹿御前 vs アルカード(M) 
>115  
 
 とっさに、ライフルを縦にする。 
 闇を裂く鋼の軌跡と留まる鋼とが身を打ち合わせ、赤の火花を散らした。 
 
 ハッ。 
 
 鋭く息を吐く。嘲笑にも似た息を。 
 弧を描くように長物を跳ね上げ、刃と共に上を向かせる。 
 互いに体を崩し、しばし凍てついた間を生んだ。 
 
 少女と吸血鬼、二つの目がほんの一瞬だけ、交わる。 
 血に濡れた紅い眼差しは鬼を射抜き、そして、嗤った。 
 
 ハハハッ。 
 
 ザッ、微かに靴が鳴る。 
 その音に合わせ立ち直った半身をふるい、吸血鬼は紅い紅い腕をかざす。 
 歪に開いた左腕、その抜き手。 
 無造作にふるわれる死の鎌は、その心臓目掛けて振り下ろされた。
>117
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父

 相手は、翼のほかに腕を持ち合わせていた。
 哺乳動物に6本足のものはいない。不自然な、文字通りの作られた体。

 神父が上昇を開始する。巨体を持ち上げる凄まじい揚力。
 いかに彼女が獣人として人ならぬ力を持っていようと、単純な力比べで勝ち目は無い。
 だが、夜の空は彼女の庭だ。
 そこで遅れをとることなど、ありようはずも無かった。

 片翼を畳み、他方を一打ち。90度横に回転し、相手に腹を見せる形で一撃を回避。
 同時に繰り出した蹴りの一撃、足に備わった鉤爪が神父のそれと交錯。耳障りな音を立てる。

 その衝撃で一瞬、体がスピン。だがそれすらも計算のうち。
 一回転して元の姿勢に戻ったジェニーは、地表すれすれで引き起こしをかけた。
 地面降下を利用して上昇し、反転。神父を追う。

 高度はほぼ同等。未だ背中を見せている神父に追いすがる。
>118 遠野志貴(死徒) vs アーカード

 ナイフを手にした腕を掴まれたまま、こめかみに拳の一撃。
 吸血鬼の力振るわれたその拳は、俺の意識を断ちかける。
 だが、掴まれた腕が倒れることを許さない。
 アーカードの顔をふと見ると、笑っていた。
 この上もない喜悦を含んだ笑い。

 ……まだ、終わるわけにはいかない。

 アーカードの腕は、俺がナイフを突こうとしているのを止めている。
 つまり、俺の方に押しているわけだ。

『さぁ、どうする少年? もう王手詰み(チェックメイト)までいくばくもないぞ?』

 その台詞を聞いた瞬間、俺はナイフを持った右腕の力を緩めた。
 わずかに、ほんのわずかに崩れるアーカードのバランス。
 しかし、それで十分だった。

 掴まれたままの腕を引き寄せ、俺自身は一歩踏み込む。
 そして、アーカードの足を払った。
 いつかテレビで見た、柔道の技。
 そのまま転がってくれ――。
122フィオ ◆Fio.RSac :02/06/09 00:58
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
 
>前スレ464
 
部屋の隅に居たあからさまに場違いな神父姿の男――ヤハベがフィオに話しかけてきた。
 
『あー、なんだ。オレはたまたま居合わせた、聖書のセールスマンです・・・・つっても、
信用してくれねぇよなー』
 
「はい、信じません。会話の流れからして用心棒さんかなんかですね? 
できれば持ってる武器を捨てて大人しくしてくれると助かるんですけど・・・」
 フィオはヘビーマシンガンの銃口を向け降伏を促した。
>116 エンハウンスVSレイオット・スタインバーグ
 
 凄まじい膂力で投擲されたメイス――それを条件反射で叩き落としたのが全ての失敗だった。
 真正面からぶつかりながら突進していれば、あるいは間に合ったかもしれない。
 だが、あの速度で投擲されて迫る物体に対して、理性が追いつくはずがなかった。
 結果――男の魔術は成った。
 雷球が生み出され、うねりながら雷撃を吐き出し、絡み合いながらエンハウンスを包み込む。
 
 瞬間、スパーク音と夜気を割く絶叫が辺りを支配した。
 
 雷撃に抱擁された全身が、煙を上げながら痙攣する。
 辺りの空気を振るわせながら放電している。
 全身余すことなく雷撃は舐め尽くし、灼き尽くす。
 絶叫が、スパーク音が果てることがないのではないかと思わせるほどに響き渡る。
 
 雷球が消滅した後には、無惨に全身から煙を上げるエンハウンスが立っていた。
 その体に力はなく……次瞬には膝を突き、上半身が地面へと投げ出される。
 それでも両手の武器を手放しはしなかったが。
 
 雷撃の影響で全身は常にビクビクと痙攣しているが、動く気配はない。
 あまりに苛烈な雷撃は、死徒の生命力を以てしても耐えられないのか。
 とにかく、復讐騎はただ倒れていた。
124鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/06/09 01:08
鈴鹿御前 vs アルカード(M)

>119

 横薙ぎの一刀は、赤コートが翳したライフルに遮られた。ギィン、という音と共に飛び散る火花
が、一瞬辺りを照らし出す。
 男が呼気と共に長銃を跳ね上げる。共に私の刀も天を指し、瞬間姿勢が崩れた。

 刹那、交差する両者の視線。
 赤き吸血鬼の紅き瞳に浮かぶそれは──嘲弄、だった。

 体勢を立て直した男の、その左手が手刀を形作ると、まっすぐに私の心臓めがけて突き下ろされ
てくる。

──あれをまともに喰らったら、只では済むまい。

 身体を捻り、辛うじてその軌跡から身を逸らす。滑るように男の背後へ回りながら、体勢を整え
直した。
 だが当然、互いの距離はまた開いてしまっている。
 ならば──撃たれる前に、斬る!
 瞬時に決断すると、横溜めに構えた刀と共に、地面を蹴って突進する。
>120
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父
 
「チ……」
 
如何に力で勝っているとはいえこれは不利だ―――。
そう悟った神父は大きく体を傾け、翼を一打ち。
ぶぉん、という重量感のある音とともに振るわれた巨体が上昇しつつ旋回。
螺旋の軌道を描いて背後についてくるジェニーを振り切ろうとする。
 
……が、スピードという点で圧倒的に神父は不利だった。
巨大な体は大きい空気抵抗を受け、強く羽ばたいても中々速度が上がらない。
何を思ったか、怪物は突如羽ばたきを止めて落下。
 
上方にジェニーを捉える。
攻撃するには距離が離れているが、そんな事は関係無い。
怪物の口腔内で共鳴音のようなものが奏でられ―――超音波が放たれる。
 
気付いていない――――殺れる!
 
確信と共に、不可視の刃は夜空に浮かぶジェニーを狙って突き進む。
126アーカード ◆ARCARDr. :02/06/09 01:25
>121 アーカードVS遠野志貴@死徒
 
 腕を引かれ、僅かにバランスを崩した。
 そこへ畳み込むように足払いを仕掛けられる。
 急に回転した視界に、一瞬対処が遅れた。
 まともに背中から地面に倒れる。
 
 この状況で極点にナイフを振るわれたら防御不可能――。
 見上げるアーカードの視界に、冷たく見下ろす少年の瞳が映った。
 じっと、先ほど確認された極点を見つめている。
 手のナイフが、ピクリと動いた。
 
 それと同時に、銃を持った腕を持ち上げ、銃口をピタリと少年の眉間をポイントした。
 
「銃とナイフのクイックドロウ……どちらが早いかな?」
 
 極限の状況すら楽しむように、アーカードは笑っていた。
127アルカード(M):02/06/09 01:27
鈴鹿御前 vs アルカード(M) 
>124 
 
 すんででかわされた腕を引き戻しつつ、長物を構えなおした。 
 抜き手の左腕に銃身を乗せ、正面に少女を捉える。 
 突き進むその正面目掛け、鉄爪を―――― 
  
 引く、ドッ。 
 引く、ドッ。 
 引く、ドッ。 
 
 更に吐き出される薬筴。それが転がる高い音を感じながら、それを蹴る。 
 一つ、二つ、三つ。 
 足下に身を横たえる金の筒、その列にまた新たな鉄が音を鳴らした。 
128ヤハベ:02/06/09 01:35
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>122

「ハハ、女のコの頼みは素直に聞き入れるのが、紳士ってもんだよなあ」
 後ろ手に二挺の短機関銃を持ったまま、オレは女に向かって笑顔を作った。
「だがマズいことに、オレは去年の冬に紳士免許を失効しちまってね!」
 そう叫ぶと、左に跳躍しつつ銃を持った両手を前に突き出す。
 二挺のPPsh41から、派手な発砲炎があがった。
 銃弾がどこに命中したかは見極めずに、絨毯の敷かれた床を転がる。
 そのまま階段の陰へと飛びこんで、再び銃を構えた。
 さあ、お嬢ちゃんはどんな花火をあげてくれるんだ?
>125
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父

 翼をたたんで落下する敵。
 無為な行動と思えた。一時的に引き離せようと、崩れた体勢を立て直す瞬間は格好のチャンスとなる。

 追いすがろうと、彼女が降下の姿勢に移ろうとした瞬間、怪物の大口がこちらに開いた。
 同時に、彼女の巨大な耳が、"それ"の前兆を捉える。

 レーダーとして用いるにはピンポイントな、その超音波は――
 回避。
 だが、判断はわずかに遅い。極度に集中された超音波が脇腹を抉っていき、血がしぶく。
 何より不味いことに、その一撃は翼にダメージを与えた。皮膜に切れ込みが入る。

 今宵は満月、再生には1分とかからない。だが数十秒は空では致命的だ。
 ジェニーは無事なほうの翼を操り、降下を開始する。
レイオット・スタインバーグVSエンハウンス
>123

 ――――止まる。
 男が崩れ落ちたと同時、その場に蠢いていた全てが止まる。
 今までの激しさを否定するかのような沈黙が、戦場と化していた闇に速やかに滑り込んでいた。
 <マグナ・ライトニング>――対動物、対人間用としては充分以上の殺傷力を持つ攻撃魔法だ。
 事実、目の前に横たわるこの男は、全身から煙を上げつつ、身じろぎひとつ……無い。

 その状態にあっても武器を手放していないのは、雷撃によって筋肉が焼け付いただけなのか。
 それとも……この男自身の意志によるものなのか。
 後者であるのならば――この男をそこまで駆り立てるものはなんなのだろうと、レイオットは漠然と思う。
 どちらにせよ、答えが聞けるとは露ほどにも思っていないのだが。

 ざり……踏みしめるように一歩。キャリアの方に向けて足を進めた。
 本来であれば、とどめを刺すべきだ――だが、強化率最大の<アクセラレータ>の影響下にある現在、
 いつ活動停止に落ちてしまうか分からない。迅速にこの場を離脱する必要があった。
 それでなくとも、レイオットにとっては、相手を殺す理由など、ただの一欠片もないのだから。

 一瞬だけ、男を振り返る。
 だが、そこに伏したままの男は、やはり……動き出す様子はなかった。
 深々と嘆息をひとつ。レイオットは、モールドキャリアに向けて小走りに移動していた。
131鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/06/09 01:48
鈴鹿御前 vs アルカード(M)

>127

 再び飛来する、3発の銃弾。

 1発目は、刀を持ち上げて弾いた。
 2発目は、首を逸らして躱した。
 3発目は──避けきれなかった。

 銃弾が左の肩口に噛みつき、弾けた。破れるほどに唇を噛みしめ、苦鳴を押し殺す。
 あの銃弾は、私にも有効打となり得るモノだったようだ。
 
 だが、ここで怯んだら、負けだ。
 止まりかけた足を無理矢理動かし、更に地面を強く蹴る。
 傷口から赤い血の糸を引きながら、我が身を疾風と化して突き進む。
 限界まで腕を、身体を伸ばし、吸血鬼めがけて渾身の突きを放った。
>129
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父
 
「ニガスカァッ!!」
 
逃げるジェニーを、風を纏って追いかける。
だがスピードの差は歴然としており――――すぐに姿を見失ってしまった。
だが、怪物はまだその瞳をギラつかせる。
何処かに潜む奴をこの手で引き裂き、断罪する為に。
 
「ドコダ、ドコニイル……」
 
視覚、嗅覚、聴覚、更には超音波。
これらを総動員して位置を探り当てるべく意識を集中する。
暗闇は何の障害にもならない。
蝙蝠にとってはむしろ、歓迎すべきモノなのだから。
 
怪物はシーツが覆いかぶさるような音と共に、崩れた教会の十字架へと舞い降りた。
羽を畳み、鋭敏な感覚を夜の街へ行き渡らせて集中。
位置はすぐに割れる……待っていろ。
133ウピエル ◆Upielb0Y :02/06/09 02:02
ウピエルVSファントム
>44

「何処向いて待っていやがる」
 
ドライの背後から呼びかける。炎の中から悠々と登場。
片腕は無く、肉体は所々が裂け、端正な顔の半分を裂傷と火傷が覆っている。
だが、その顔に浮かぶのは嗤い。凶暴極まる狂気の笑み。
その笑顔で、振り向いたドライに呼びかける。
 
「よぅ、待たせちまったみたいだなァ・・・ホントは一曲やりたい所だが、生憎と片腕なんでね。
 演奏は無理だが、まァ勘弁してくれ」
 
おどけた様に、嘲笑を込めて語りかける。
スクリーミング・バンシー――ギターと一体化したAUG突撃銃――は既に弾切れ、役には立たない。
 
「さて・・・ツヴァイはまだ死んではいないが・・・まぁ、時間の問題だ。死ぬか吸血鬼になるか、のどっちかだがなァ」
 
右腕一本で構えた、ギター銃剣の先端をドライへと向ける。
 
「で、もう一人は何処だ?まさか、もうくたばったか?
 残り時間も僅かだし、まとめて相手にしようと思ったんだが・・・」
 
アインの方は隠れている気配も無い。
仕方が無い。最早、残された時間は本当に僅かなのだ。待っている暇も何も無い。
 
「貴様だけでも、相手にしてやる」
 
解き放たれた矢のような速度で、ドライへと銃剣を突き込む!
>126 遠野志貴(死徒) vs アーカード

 ナイフと銃、どっちが速いかって?
 この状況なら決まっている。銃だ。

 ……何か、何か手はないか。

 にらみ合ったままの、奇妙な時の中で一つ思いついた。

 即座に実行に移す。
 俺の微細な筋肉の動きに反応し、アーカードが引き金を引いた。

 頬をかすめる弾丸。

 俺は――身体を沈み込ませて、左側に転がった。
135アーカード ◆ARCARDr. :02/06/09 02:31
>134 アーカードVS遠野志貴@死徒
 
 僅かなリアクション、それすら見逃さずに引き金を引く。
 吐き出された銃弾はしかし、少年の頬を掠めるのみ。
 恐らくは、この流れをあらかじめ予測していたのだろう。
 少年の体が左へと流れて視界から消えた。
 
 それを追うように立ち上がるアーカード。
 
 それは、致命的な一瞬。
136アルカード(M):02/06/09 02:39
鈴鹿御前 vs アルカード(M) 
>131 
 
 鋼鉄の冷たい感触が、胸を貫く。 
 刃はゆっくりゆっくりと肉を裂き、出血を強い、骨を断った。  
 
 だが。 
 
「吸血鬼を殺すには、足りねぇな」 
 
 紅い紅い手が刀の柄を掴む。 
 微かに表情を強ばらせる少女の手ごと引き抜く。 
 鮮血が噴き出し鬼を地を朱に染めるが、吸血鬼は嗤う。 
 
 浅い笑いを繰り返しながら、再び抜き手を放った。 
 禍々しく歪んだ白き手が、死にまみれて踊る。 
 左から、右から。 
 長物を投げ捨て、身軽になった両腕が鬼を襲った。 
>135 遠野志貴(死徒) vs アーカード

 俺が与えたわずかな時間。
 その時間でアーカードは立ち上がった。
 寝て敵を待つ愚か者はいない。

 だが。
 それは俺が狙っていた瞬間だった。


 身体を跳ねさせてアーカードに迫り。


 その身体に幾条もの『線』にナイフを走らせ。


 いつかしたように、アーカードを17個に解体した――――。


 ……即座に後に跳びすさった。
 こちらの体勢が悪かったから『極点』は突けなかったけど、アレなら。
 アーカードはアルクェイドじゃない、「殺せた」はず。自分にそういい聞かせる。
 安堵した瞬間に、猛烈な頭痛に襲われた。
 背後の民家の壁にもたれかかって、息を吐く。

「はぁ――――」

 左腕はいっこうに再生しない。やはり特殊な弾丸だったようだ。
 いつまでもここにいちゃまずい。

 そう判断して、俺は走り出した。
>130 エンハウンスVSレイオット・スタインバーグ
 
 肉体は、雷撃の蹂躙で焼け焦げてほとんど動かない。
 指一本とて、自らの自由には動かない。
 それでも吸血種としての生命力、再生力で一命は取り留めている。
 放っておいても、夜が明ける頃には動けるようになっているだろう。
 
 だが、それでは遅い、遅すぎる。
 これだけのダメージを自分に与えた男と、あの少女は動けるようになった時にこの場にはいまい。
 それでは、ダメなのだ。
 
 耳が、遠ざかっていく男の足音を察知する。
 逃がさない、逃がしてはダメなのだ……!
 
 動かない体で唯一自由であり、そして自分を定義する意識を魔剣へと向ける。
 魔剣にたった一つの命令を下し、黙して待つ。
 つまり、『殺意を解き放て』と。
 
 ザワリと、魔剣から漆黒の瘴気が立ち上る。
 それはまるで、エンハウンスの憎悪を示すかのように音もなく闇夜に広がり……そして男へと殺到した。
139ガンスリンガー:02/06/09 03:03
サカキ VS ガンスリンガー 
〜導入〜
 
 黒衣は諸手に古式拳銃を構え、男をどこまでも追い詰める。
 光狩憑き(Lunacy)の男にはわからない。何故この手に入れた力をもってしても
あのような女一人撒くことが出来ないのか。
 光狩にはわからない。何故あの槍のような視線が、常人には見えないはずの
自分にぴたりと照準されて動かないのか。
 こうなったら破れかぶれだ。男は踵を返し、黒衣に飛び掛った。拳を闇雲に
突き出す横で、その肉体を盾に、光狩が影から攻撃肢を突き入れようと息をまく。
 黒衣はまるでたじろがない。
 
「私の銃弾は――」
 
 銃声は一度しか聞こえなかった。だが、弾丸は六発全弾発射された。
 マズルフラッシュの眼も眩む明滅の中、まるで昼日中のように輝く通り。
人無き通りだが、果たして人がいたところで、何が起きたか理解しえようか。
六発の弾丸は、すべて男を外れ、しかしそこかしこで跳ね返った跳弾は
正確に六回光狩を穿っていた。
 冗談としか思えない光景だった。
 断末魔の絶叫が高く高くビルの谷間に響き渡り、それが消えるともはや光狩の
姿は無い。男は夢から覚めたように、呆けた顔で、すぐさま倒れて再びの眠りにつく。
しかし今度は悪夢は見まい。
 
「――悪意に向かって飛んでいく。ありうべからざる者は裏界に還れ」
 


 ふん、とガンスリンガーは鼻を鳴らす。
 まだ這い寄る混沌すら始末がついていないというのに――真月。
「尽きず飽きせず、よくも何度も現れる……。だが、私も多忙だ。
 奴が現れる日も近い。火者にでも相手をしてもらうんだな」
 煌々と照る蒼い真月。並ぶ満月が朱に色づいて、街はオーロラの麓のような
幻惑の光に包まれる。
 真っ青な影を地に侍らせて、ガンスリンガーは拳銃をスイングアウト。
排莢を行うと、ガンベルトから弾丸を抜き取って一発ずつ詰めていく。
六発が弾倉に装填されると今度はスイングイン。準備の整った拳銃を、


 振り向きざまその男に突きつけた。


「撃つ気があるのか? 無いなら下ろせ。銃が泣いている」
 両者の距離は十メートルといったところ。
 レーザーサイトのような緋の視線が何の感慨もなく男を見据えている。

 そう、まだ真月は蒼い。
 凍夜は終わっていない。
140サカキ(M):02/06/09 03:06
>139
サカキ VS ガンスリンガー
『銃士、双月の下』
 
降り注ぐ冷たい光の中――――二つの銃口が、睨み合う。
 
赤い光が突き刺すのは、短く刈られた髪と眼鏡の似合う青年。
その生真面目そうな風貌に、携えた銃は酷く似合わない。
突きつけた銃口を微動だにさせず、睨み合いは続く。
 
手の内にある銃の名は『SIG/SAUER P230JP』。
それは警官として、人を守る為に在った牙。
だが、今その牙は―――――人を殺す為の牙となっている。
 
だからと言って銃は泣きも笑いもしない。
銃は黙して語らず。
主の敵意、或いは殺意を吐き出すのみの存在である。
 
「あなたが邪魔をする、というのであれば撃つ事になります」
 
低い、押し殺した声が告げる。
そうなる事を望んでいないかのような意思を乗せた声だ。
彼は狙いを外さず――――ただ、返答を待つ。
141ガンスリンガー:02/06/09 03:07
>140 vsサカキ 『銃士、双月の下』
 
「貴様らには……実はまるで用がない」
 その声は、赤錆びた鉄の表面のように深い年月と、それに伴う隔たり、そして
――冷たさ。すべて内包し、まだ黒々と銃口のように奥が見えない。
 銃を下ろす。それに警戒しながらも、サカキの手が静かに下りる。
 ガンスリンガーが薄く笑う。
 
 
「だが――収穫者は自分の畑の麦穂ひとつ刈り残しはしない」
 
 
 火薬に火がついた。そうとしか思えない劇的な変化。言葉が熱を持つ。
 ガンスリンガーは“撃鉄”を引いたのだ。
 稲妻のように走る右手。銃口がピンポイント、サカキの眉間に食らいついて離れない。
それを見て慌てて銃を構えなおすサカキ。間に合わない。くそ!
 
 銃声は一度。
 
 横っ飛びにサカキの銃弾を回避したガンスリンガーは壁面に立ち、走る。
人間にはありえない速度と角度。追随するように哄笑が通りに響く。
「は……はははっ! はははははははははははははははッッッ!!」
 
 もう駄目だ。銃火は確かに夜の安寧を砕いた。もう止まらない。
 一度放たれた銃弾は、相手の命の火を消すまでは止まることがないのだから。
142サカキ(M):02/06/09 03:08
>6 サカキvsガンスリンガー 『銃士、双月の下』
 
「ッ!!」
 
殺意の発露を感じ取った瞬間、ほぼ自動的にトリガーを引く。
しかし相手の動きは、本能よりも速い。
放たれた弾丸は獲物に喰らい付く事無く空しく壁面を撃ち抜くだけ。
 
――――この動き、人間では無い。
 
即座にそう結論出来たのは何故か。
それは彼はもはや、ヒトでは無い者だからだ。
永遠の夜を望む者――――『光狩』。
 
静寂を引き裂いて疾走する弾丸。
サカキはヒトを超えた感覚でそれを捉え、横転しつつ狙いを定める。
邪魔をするのなら、殺すしかない。
例えそれが、本意では無くても……
 
「ハッ!!」
 
気合の叫びとともに、数発の弾丸が拳銃から送り出された。
本来この銃に人を一撃で殺すような威力は無い。
だが、サカキの込める『光狩』の魔力――――これが致死の一撃へと変貌させる。
正確に狙いを付けられた弾丸が、ガンスリンガーに殺到する!
143サカキ(M):02/06/09 03:09
>142は>141へのレスですね・・・申し訳ありません。
144ガンスリンガー:02/06/09 03:10
>142>143 vsサカキ 『銃士、双月の下』


「はっ、銃では私は殺せ、」

 ――と叫んだ瞬間銃爪を引く。リボルヴァの精密動作が吼えるように弾丸射出。
サカキの銃口を見て弾道予測、一度に狙いをつけて、十分割した一秒で『狙撃』。
どんなFCSも追いつかないほどの精密さで、迫り来る銃弾をことごとく叩き落し――

「ない、はずなんだが……ふ、そう一筋縄でもないか」

 ――きれなかった。9mmが腹を抉って貫通する。復元が鈍い。手で押さえると
とろりとした赤い油がまとわりつく。指先ですくって唇に紅代わりに引いた。
 戦場の味がする。


「ああ痛い。痛いよ銃士。収穫の歓びだ。
 私は麦穂の命を知る。私は小鹿の命を知る。
 刈り取るものであるが故に、刈り取られるものの叫びを知る。
 死を拒むか。ただの葉を懸命に尖らせて指を切るか。小さき角を精一杯伸ばして心の臓を狙うか。
 私の血が、肉が、わずかにでも汝等の痛みの和らぎとなるのであらば、喜んで差し出そう」

 文字通り転がって逃げるサカキを左の銃が執拗に追跡。路上に火花を散らす。
スピードロード。さらに弾丸を叩き込みつつ、

「だが、貴様等は獲物で、」

 右が待ちかねたとばかりに咆哮。貫通力の弱い弾丸がコンクリートに弾けて軌道変更。
逃げ場のない場所に追い込まれたサカキに集中豪雨のごとく降り注ぐ跳弾。足が止まる。
そこに追いついた左の銃が、狙いすました一撃を放つ。

「私は、“収穫の主”だ」
145アーカード ◆ARCARDr. :02/06/09 03:11
>137 アーカードVS遠野志貴@死徒
 
 瞬間、まさに瞬間の出来事だった。
 
 立ち上がろうとしたアーカード。
 その視界が最後に認めたモノは、音もなく迫ってくる少年。
 そして、閃くナイフ。
 
 デタラメに全身をナイフがなぞり、切り裂き、断ち、突き通し、切り刻む。
 一振り毎に鮮血が舞い、その箇所が死に至る。
 再生する事も叶わずに崩れ落ちていく体。
 そして、これだけの解体作業を一瞬と掛からずに終了させる少年。
 
 全身がバラバラになったと知覚したのは次の瞬間だった――。
 
 崩れ落ちていく視界の中で、走り去る少年の姿を見つめている。
 アーカードの意識は、そこで一時途絶えた。
 もちろん、それが『死』でないことをアーカードは自覚していた。
 自分は、『死の河』なのだから。
146サカキ(M):02/06/09 03:12
>144 サカキvsガンスリンガー 『銃士、双月の下』

絶え間なく、リボルバーとは思えないほどの速射がサカキを襲う。
だが、何時までも逃げてばかり居るわけにも行かない。
反撃の機会を待ちながら横転して殺意を潜り抜ける。
 
(焦るな、機会は必ず訪れる……)
 
絶え間なく降り注ぐ銃弾に募る焦り。
何時か訪れる機会。
それを待つ為、何度も自分に言い聞かせる。
 
跳弾が巧みに逃げ場を無くし、サカキを追い詰めた。
次に訪れるのは恐らく、必殺の一撃。
ならば――――機会は今!!
 
立ち上がる間すら、今は惜しい。
右手を地面に叩き付けて跳ね上がり、地面に向けて発砲。
衝撃を逃がさず体を流れに任せて、背面で宙に浮かぶ形になる。
 
「私が貴方の獲物だと言うのであれば」
 
空中に浮かび、体勢が崩れた不安定な状態。
ここからでも桁違いの平衡感覚と射撃能力でもって、サカキは正確に狙いを定める。
 
「私の標的は、貴方です!」
 
銃声とマズルフラッシュが重なるほどの速度でトリガー。
三発の弾丸が、まるで一つの弾丸であるかのように纏まって突き進む。
なんと、この三つの弾丸は全く同じ所にポイントされていたのだ。
狙撃ライフル並みの精度で放たれた銃弾が、標的に喰らい付かんと迫る。
147ガンスリンガー:02/06/09 03:14
>146 vsサカキ 『銃士、双月の下』


「ほう、そうか。私を刈るか。ク、ククク」
 耐え難きを耐え、忍び難きを忍んだサカキを見るにつけ、愛おしいという念すら湧く。
空を美しく舞う男に敬意を払い、ガンスリンガーは銃を向けた。

 サカキの銃が三度の咆哮を一と為し、
 同時、ガンスリンガーの銃も三度火を噴く。

 計六の銃弾は完全な直線上で激突し――すべての推力を失くして
きん、きりききき……と綺麗な音を奏でて落ちた。

「刈り取るものもいつかは倒れ、死肉は落穂の滋養となろう。
 そうとも。流転は世の常さだめ。私とてそれは同じだ。
 ただ、混沌は命の無価値を説き、私は命の等価値を信ずる。
 故に奴は生の享楽を追求し、私は死の無い奴の死を望む」

 スピードロード。排莢が路面に落ちる音。
 どこまでも澄み切った音色が、硝煙を揺らしていく。

「光狩に身をやつした銃士よ。汝、永遠に何を求める」

 銃口も、眼も、どこまでも暗く。寂しくなるほど暗く。
148サカキ(M):02/06/09 03:15
>147 サカキvsガンスリンガー 『銃士、双月の下』
 
「永遠に、求めるもの―――」
 
銃弾を撃ち尽くし、ホールド・オープンした銃のマガジンを交換。
言葉に戸惑い、視線を泳がせつつもその手つきは澱み無い。
やや間があって、サカキは口を開いた。
 
「私は、愛するものを失いました」
 
決意を込めるように、一言ずつハッキリと発音する。
脳裏を掠めたのは夜にのみ存在を許されるあの少女―――
 
「愛するものを奪った者に、十分な罰は下らなかった。
罪に罰が下されない。こんな人間の世の方が間違いでしょう?
だからこそ私は……ヒトを捨てた」
 
自分は、嘘をついている。
自覚はしていても、彼は言葉で粉飾する事でそれを誤魔化す。
この世に、永遠の夜を齎す……それは本当に正しいのか?
彼はまだ、迷っている。
 
「さて、再開しましょうか。夜はそう長くありません」
 
そうだ、夜は決して長くは無い。
自分の見る愚かな夢も何時かは覚めてしまう。
しかし―――彼女にはせめて、幸せな夢を。
 
「……行きますよ」
 
何処となく虚ろな声と、スライドを引く音だけが闇を震わす。
迷っている暇は無い。迷う必要も無い。
自分に、その資格は無いのだから。
149ガンスリンガー:02/06/09 03:17
>148 vsサカキ 『銃士、双月の下』


 夜に瞬くものは星ばかりではない。
 そのことを明らかにせんと、闇夜を切り裂くラピッドファイア。

「永遠の夜を願いながら、その不実を知るか」

 黒衣は目深にテンガロンハットを被り直し、

「――愚か」

 急に矛先を変えた銃弾が、瞬く間に街灯を撃ち貫く。帳を降ろす夜の闇。
月の輝きすら欺かんと、駆け出した黒衣は闇に溶け込んでいく。
 
「永遠に輝きを持ち込んだとて、夜に火を持ち込んだとて、
 闇に染まりては灰になるばかり。
 夢は泡沫の慰みだ。それにすがって手に入れた力など」

 跳弾の軌跡は複雑を極めた。魔術を為そうとするかのように複雑な紋様を
虚空に張り巡らせ、筆先は致死の切っ先と化してサカキの頭を四方から襲う。

「所詮、朝日の前に消えうせる夢幻」
150サカキ(M):02/06/09 03:20
>149 サカキvsガンスリンガー 『銃士、双月の下』
 
「…………」
 
やけに遠くに聞こえる銃声を聞きながら、彼は銃把を強く握り締める。
迷うな。
自分の事などどうでもいい。
 
彼女の笑顔の為に戦う。
それだけでも、いい。
 
跳ね回る弾丸は意思を持つもののように、狙いを逸らさずにサカキを狙う。
どちらに避ける?

             右?        左? 
                  後ろ?
 
いいや――――前だ。
決意と共に一歩を強く、強く踏み込む。
脚を撃ち抜く弾丸の冷たい感触と痛み。
そして後からやってくる焼けるような熱さ。
 
だが、こんな物で止まる訳にはいかない。
稲妻の如く疾り、持ち上がった右手が凄まじい速さで銃爪を引く。
乱れ撃ちとも思える狙いが不確かな射撃。
弾丸は一つもガンスリンガーを掠める事もなく――――
 
「跳弾、仰角20!!」
 
だが、その不確かさを打ち払うかのように雄雄しい叫びが響く。
銃弾に込められた魔力を障害物に激突した際にコントロール。
こうする事でサカキは本来銃士の意思とは無関係に跳ね回る銃弾を操るのだ。
ガンスリンガーの背後、側面で、銃弾は跳ねる。
 
未だ、虚空には先程の銃弾の軌跡の残滓が残っている。
それに絡み合うように理不尽な軌道を描き――――
 
銃弾は、毒蛇を思わせる狡猾さでガンスリンガーを狙う。
151鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/06/09 03:21
鈴鹿御前 vs アルカード(M)

>136

 刀が肉を、骨を断ち、背まで抜ける、確かな感触。
 はっきりと伝わってくる、明確な致命傷の手応え。
 しかし、目の前の吸血鬼の生命力は、私の想像を遙かに超えていた。

 柄を私の手ごと掴み、その身を貫く刀身を一気に引き抜く男。傷口から噴き出す鮮血が、私の身
体を、足元の大地を、朱に染めた。
 ニヤリ、と嗤う吸血鬼。

──そんな、馬鹿な。今の一撃をまともに受けて平気な妖など、いる筈がない!

 一瞬の驚愕、だが吸血鬼にはその一瞬で充分だった。
 ライフルを投げ捨てた両手が手刀の形を取り、確かな死となって迫り来る。
 左の手刀は、咄嗟に逸らした頬をかすめるだけで後ろに抜けた。
 だが次の瞬間、私の身体は僅かに宙に浮いた。躱しきれなかった右の貫手が腹部を捉え、突き刺
さっている。
 激痛。押さえ切れぬ苦鳴。溢れ出す喀血が、吸血鬼の纏う紅いコートに、更なる彩りを添える。
 確かな手応えに、快哉の表情を浮かべる男。
 だが──私もまた、人間ではない。それを、今から思い知らせてやる!

 傷口の周りの筋肉を、襲い来る激痛に耐えて締める。これで、手刀はもう抜けない。
 
──この状態なら、この一撃は躱せまい…!

 最後の力を振り絞り、刀を横に振るう。狙うは──その首!
152ガンスリンガー:02/06/09 03:22
>150 vsサカキ 『銃士、双月の下』
 
 
「銃士、おまえは強い」
 
 右と知りては銃で弾き、左と思いては身を逸らす。
 背後とみては小さく屈み、前と感じては跳ねて飛んだ。
 黒い女は、銃弾と戯れているかのようだった。

「銃士、おまえは優しい」
 
 彼方から狙い澄まされた射線上に腕がある。ガンスリンガーの右手が
根元から千切れて飛んだ。
 黒衣の鉄面皮はかわらなかった。
 続く銃撃の雨嵐を、思いっきり身を屈めて飛んで突っ切る。ほとんど銃把で
殴りかかる勢いで、
 
「復讐が悪いだなんていわないさ。
 ただ、マイナスにマイナスをかけても、プラスにはなりはしない。
 貴様は頼るべからざるものに手を出した」
 
 ――零距離射撃。
 
「悪意の芽、刈り取らせてもらう」
153サカキ(M):02/06/09 03:24
>152 サカキvsガンスリンガー 『銃士、双月の下』
 
狙い違わず心臓に押し付けられる銃口。
その暗く、虚ろな闇に吸い込まれそうになる心音。
地獄への道は確かにその銃口の奥に続いていた。
 
ほとんど、本能だった。
 
咄嗟に身を捻り、なんとか避けようとするが―――若干、遅かった。
心臓を狙った筈の弾丸は僅かに狙いを逸らし、サカキの肺に穴を穿つのみに終わる。
だが致命的……とまではいかなくとも動きを阻害するには十分過ぎる傷だ。
 
「グ……フッ!!」
 
気道を這い上がる血が口から零れる。
朦朧とした意識の中で見えるのは黒衣。
負傷を負いつつも、敵を倒そうとする殺意だけは衰えない。
その姿は――――銃の化身と呼ぶに相応しい。
 
痛み、恐怖。
それらを押さえ込んでサカキは腕を必死に動かす。
そして、ガンスリンガーの側頭部へ銃口を押し当てた。
 
僅かな躊躇の後、指は銃爪を強く引く。
この躊躇故にサカキは銃たりえない。
あくまで彼は、銃を撃つヒトなのだ。
154サカキ(M):02/06/09 03:24
>153 vsサカキ 『銃士、双月の下』
 
 
「ぬるい……な」
 
 頭部を吹っ飛ばす銃撃を、ガンスリンガーは小首を傾げただけでかわした。
片や肺に穴を穿ち、片やこめかみにかすかな裂傷を残すばかり。
 銃を撃つ銃と、銃を撃つ人の差だった。
 今度こそサカキを銃把で叩き伏せると、その胸を踏みつけ、額にポイント。
 
「人の甘えだ。人の弱さだ。
 畜生にももとるモノに身をやつし、なお後生大事に未だ捨てぬか。
 ……いや、弱きが故に虜まれたか」
 
 黒衣の鉄面皮は、こんなときまで張り付いたように変わらず、
どこまでも冷淡で、どこまでも憤り、どこまでも哀しげだった。
 
「さようなら、敬すべき銃士。
 汝の次に、実り多き生のあらんことを」
 
 銃爪が引かれる。
155ガンスリンガー:02/06/09 03:26
>154は私だ……済まんな。
156サカキ(M):02/06/09 03:28
>154>155 サカキvsガンスリンガー 『銃士、双月の下』
 
アスファルトに触れる背中がひんやりと冷たい。
ここで死ねば、痛みも葛藤も全て忘れて楽になれる……。
甘い誘惑に沈み込むのもいいかも知れない。
そう思い、目を閉じようとした時―――
 
ふと、空が視界に入った。
 
 
天空に在るのは二つの月。
  
 
痺れるような衝撃の後、全身に力が漲った。
再び呼び起こされた決意が諦めを殺し、力を与えたのだ。
バネに弾かれたようにサカキはその身を翻して足を跳ね除けて横転。
力強く持ち上げた銃口がガンスリンガーを捉える。
 
(あの月が消えるまで、私は――――!!)
 
今までで最も鋭く、素早くトリガーが引かれる。
弾丸は銃士の意思を反映するが如く、虚空を切り裂いて進む。
真っ直ぐに。
ただただ、真っ直ぐに。
157ガンスリンガー:02/06/09 03:30
>156 サカキvsガンスリンガー 『銃士、双月の下』
 
 
 ガンスリンガーの頭が銃弾を受けてはじけた。びとり、びとりと黒い塊がはねて
路面に赤黒い染みを落とし――溶けるように消えていく。
 動けなかったのか……動かなかったのか。
 飛んだハットが、夜風に舞ってぽとりと落ちた。
 
「……やはり、惜しいよ。銃士」
 
 半分が欠けた頭。
 残る口だけがぱくぱくと開閉し、言葉を紡いでいく。
 
「欠けぬ意思。欠けぬ意志。
 それが人の弱さであり、人の強さでもある。
 それがあれば、何でも為せるであろうに。
 ――いや、あるいはそれならば……」
 
 黒衣は隻腕を掲げ、銃を構える。
 
「……最後の機をくれてやろう。凌いでみせろ」
 
 
 漆黒の光だった。
 その奔流。認識すら出来ない。瞬間移動したとしか思えない圧倒的な速度。
気づけば黒衣はサカキの横に立ち、銃口をこめかみに突きつけている。
同時、確かに吹っ飛ばされた腕が跳ね上がり、サカキの額をポイント。
絶対不可避の十字弾道がサカキの頭を強襲する――
>133 vsウピエル

 吸血鬼の口から出てくる言葉は、どれも大したことじゃなかった。
 肝心なことを言ってくれない。だから、変わりにあたしが言う。
 
「ツァーレンシュヴェスタン、あんたの子供達は全滅だぜ。まったく、程度まで親にそっくりなんだ――――」

 そこであたしは振り向いた。
 吸血鬼の言葉を最後の最期まで背中で聞いていたが、想像を絶するほどに大きい踏み込みの音が耳に届いた。
 瞬間、右足をうしろに突き刺し、それを中心に180°反転。

(馬鹿かこいつは? この距離であたしが反応できないはずねぇだろ!)

 目には頼らず、頭の中で思い描いていた吸血鬼の位置に狙いをつけ、引き金を引く。
 翡翠色の目が吸血鬼の姿を確認するのと、2度目の発砲は同時だった。思ったより、吸血鬼の顔はずっと近い。
 瞬時に、頭の中に存在する吸血鬼の情報を更新。更新が終わる頃には、3回目の銃声がなっていた。
 それに続くかのように4個目の空薬莢が飛び出る。

 放たれた銃弾は計4発。此処に来て、ファントム・ドライの力が炸裂した。
 「脳内計算」
 音速を超える速度で処理されるそれは、ウピエルの体捌きよりも数段速い。
 視認してから筋肉を動かしていては、彼には勝てない。なら彼の動きを計算し、「読む」しか無いだろう。
 そして、それはファントム・ドライお得意の技でもあった。
 
 多対一ではあまり効力を発揮しない技だが、一対一という状況下でのこれは無敵。
 牽制として4発の銃弾を敷き、それに対する吸血鬼の反応を「読む」。
 あたしは銃口を動かし、吸血鬼がいるであろう位置へ向けて再度引き金を2度絞った。
 銃弾が銃口から飛び出した時、彼はその斜線上にはいない。だけど、時は進む。
 この弾丸が10m前進する頃には、20m前進する頃には――――
159サカキ(M):02/06/09 03:33
>157 サカキvsガンスリンガー 『銃士、双月の下』
 
瞬きすれば、終わってしまう一瞬だった。
 
時が止まったかのように静かな瞬間。
それは、決着の瞬間。
 
「――――出来れば、殺したくはありませんでした」
 
呟いた、消え入るような声はガンスリンガーに聞こえただろうか?
サカキは剣で斬りかかるように銃を振るい、半壊した頭部に突き入れる。
 
今度は躊躇は無い。
銃弾に決意と、ほんの少しの哀しみを込めて送り出す。
 
空気を震わせる銃声が、轟いた。
160ガンスリンガー:02/06/09 03:34
>159 サカキvsガンスリンガー 『銃士、双月の下』
 
 
「運も貴様に味方する……か」
 がちり、ガンスリンガーの引いた銃は、両方があまりにかるい音を立てただけ。
弾切れの証。有り得ぬほどの僥倖。
 されるがままに、半欠けの頭が今度こそ吹き飛ばされる。
 
「……ならば、その信念、貫いて見せよ」
 
 その言葉だけが、虚空に静かに震え渡る。
 黒衣がくずおれ、もはや弾亡き拳銃が地に落ちて高いハープのような音色を残した
後には、
 
 
 死骸すらなく、その姿は闇に溶けるように消えていた。
 
 
 いつのまにか、夜が明けようとしていた。
 白みゆく空。藍と橙色に染まる雲。
 街にはまだ、胸の痛くなる硝煙の匂いが、うっすらと残っていた。
161サカキ(M):02/06/09 03:36
>160 サカキvsガンスリンガー 『銃士、双月の下』
 
――――夜が、明ける。
 
それは夢の終わり。
二つの月が消え、偽りの世界の消える時。
 
「ミズキ……」
 
ぽつり、と呟く。
消え行こうとする、儚いこの夜にしか生きられぬ少女の名を。
何故名を呼んだのか。
複雑な表情のまま、サカキは足を引きずり歩き出す。
 
光が闇を駆逐して行く。
もうこの世界にサカキは居られない。
冷たい現実を受け入れ、サカキは進む。
己の胸の内に秘めた、信念と想いを貫いて。
162アルカード(M):02/06/09 03:37
鈴鹿御前 vs アルカード(M) 
>151 
  
 胸から溢れる血が止まらない。 
 不死を持ってしても抗い切れぬ傷から、止めどなく鮮血が零れた。 
 どういう絡繰りがあるか知れない。 
 知れない、故に焦燥が吸血鬼に募った。 
 
 ――――それが災いしたわけでもあるまいが。 
 
 繰り出された抜き手が腹を捉え、捉えられた腹は腕を喰らい、紅い手が朱の中に沈んだ。 
 動きが、止まる。 
 そこへ、再び鋼の一閃が迫った。 
 
 それは、 
 とても、 
 簡単に、 
 首を、 
 斬り、 
 飛ばした。 
 
 闇夜に転がる、一つの頭。 
 それは落ちてもなお、凄絶な笑みを湛えたままだった。
>145 遠野志貴(死徒) vs アーカード エピローグ1

 追われるようにして、その場から走り去る。
 まずは、この街からでなければならない。
 そして宿を確保して、陽光をやり過ごし……。

 そこまで考えて気付いた。
 左腕が再生しなければ、人に会ったら疑われてしまう。
 荷物は全部宿に置いてきてある。
 持っているものといえば、財布と携帯電話のみ――。

 そこでいきなり携帯電話の呼び出し音がなった。
 慌てて携帯をポケットから出して、呼び出しに応じる。

「もしもし」
「兄さんですか?」

 ……秋葉からだった。

「どうですか? 無事ですか?」
「まあ、無事といえば無事」

 自分でもかなりごまかしていると思う。

「本当ですか?」

 電話の向こうで、疑わしげな目をする秋葉の姿が浮かんだ。思わず苦笑。

「ああ、なんとかな。今回は、少し早めに帰る。ゆっくりしたくなったからな」
「本当ですか?」

 言葉は同じだったけど、今度は嬉しそうな秋葉の声。
 それから二言三言かわした後、眠たいと言って電話を切った。

 ……秋葉と会話したおかげで少しは落ち着いたけど、これからの状況に変わりはない。
 さて、何から片付けようか、そう考えた瞬間、俺の名を呼ぶ聞き慣れた声がした。
164サカキ(M):02/06/09 03:55
サカキ VS ガンスリンガー 『銃士、双月の下』 の纏めです。
 
>139>140>141>142>144>146>147>148>149>150>152>153
>154>156>157>159>160>161

感想などは、こちらへどうぞ。
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165鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/06/09 04:02
鈴鹿御前 vs アルカード(M)

>162

 私の刃が、男の首筋に食い込む。
 肉の、骨の抵抗を押し切り、反対の側へと抜ける。
 支えを失った頭が、嗤いを浮かべたまま、落ちてゆく。

 それらの全てが、ひどくゆっくりと感じられた。

 吸血鬼の首が地に落ちて跳ね、転がって止まる。
 全身の力が緩んだ途端、私の腹に刺さっていた紅い腕は抜け、主を失った胴体諸共崩れ落ちた。
 同時に、忘れていた痛みが、大槌のように私を打ちのめした。
 足がふらつく。目が霞む。
 鮮血に染まる腹と肩の傷口を押さえ、そのまま倒れてしまいそうになるのを必死にこらえた。

──まだ、死ねない。死ぬわけには、いかない。

 そう、こんなところで倒れるわけには、いかない。
 人を守るという誓いを果たし切れぬうちは、絶対に、死ねない。例えそれが誰にも知られぬ、報
われぬものであったとしても。
 だから、私は生きて帰る。

 まだ、日が昇るまでには時間があった。
 未だ晴れぬ深い闇の中、私は一人家路につく。更なる闘いに、身を投じるために。
レイオット・スタインバーグVSエンハウンス
>138

 ――その痛みを堪えるように。
 膝を抱えながら、カペルテータは蹲っていた。
 そうしなければ……自分が消えてしまうような。
 そんな、そんな不確かな感覚。そんなものを胸に抱いて。
 結局、自分はなんなのだろうと、そんな疑問を発してみる。
 無論――答えは出ない。

 出るわけがない。
 だから、自分は決めたのだ――三年前のあの日から。彼の――レイオットを見続けるのだと。
 降りしきる雪の中で、初めて決めた唯一のこと。いつか、答えが見つかるのかも知れないと――

 しかし。今の自分は、更に不安定なものへと成り果てている。
 魔族と人の狭間などと言う自分ではなく、残っているのは、生きている死者としての自分だけ。
 死すらも、物事の終焉ではないと、あの人は言った。
では自分は――どうすれば、終わることが出来るのだろう……?
 
 そこまで考えた瞬間、カペルテータは周囲に満ちていた音が、いつの間にか消えていることにようやく気がついていた。
 キャリアの扉から、こちらに駆け寄ってくるレイオットを無表情に見つめ――
 瞬間、意識下に怒濤の勢いで流れ込んでくる感覚に。
 くらり――と目眩を起こした。反射的に、叫ぶ。
 
 そう――叫んだ。

「――レイオット!」

 彼の背後から来る黒い意志は――もう、すぐそこまで迫っていた。
レイオット・スタインバーグVSエンハウンス
>166

「――レイオット!」

 ふらりと。崩れ落ちる瞬間に、こちらに届いた彼女の叫び。
 ――そう、叫びだ。
 長らく聞くことの無かった――否、聞きたくなかった彼女の叫び。
 それが誘発する記憶は、彼に刻み込まれた罪。償い続けなければならない――罪のひとつだ。
 だが、今はそれどころではない。弾けるように振り返り――そこに迫る黒に、愕然と立ち尽くす。
 
「なんだ、これは――――!?」

 だが、誰も疑問には答えない。答えられるはずもない。
 それを知っているであろう男は……崩れ落ちたまま、身動きひとつ取らない。

 ――あれこれと考えている暇は、またもや無さそうだった。
 なんとも――忙しい。脳裏のどこかでそんな一言を呟きつつ、レイオットは無音詠唱。
 スタッフをそのまま正面に構え、そして。貨物室の中に飛び込みながら、撃発音声を叫んだ。

「――――顕ッ!」

 ちょうど入り口を覆うように、波紋状の力場系面が、再びその姿を現していた。
 「黒」は力場面に隔てられ、為す統べなく周辺へと拡散していく。


 ――ほんの十数秒後には、「黒」はもはや無く。
 月明かりが注ぐ闇だけがそこにある。

 呆然としていられたのは、ほんの一瞬だけだ。
 レイオットはモールドすら脱がずに貨物室から姿を消すと、運転席へと急ぎ。
 そのまま――その場から走り去っていく。残っているのは、深々と刻まれた戦闘の傷痕と。

 ――背を天へと向けている、復讐騎とも呼ばれている男だけだ。
>163 アーカードVS遠野志貴@死徒 エピローグ2
 
 志貴に電話を掛けてから、すぐに英国へと出発した。
 瞬間移動で飛ぶことも考えたが、いくら何でも距離が長すぎる。
 一刻も早く着くことを、そして志貴に何事もないことを祈りながら、アルクェイドは機上の人になった。
 
 ――半日弱を飛行機で過ごし、ヒースロー空港へ到着。
 すぐさまベイドリックへ飛んで、志貴の消息を辿り始めた。
 
 しかし、その足跡はあまりにも辿り易すぎた……最悪にほぼ近い形で。
 志貴が交戦し、叩きのめしたSAS達。
 そして、バラバラにされているアーカード――。
 それを見た瞬間、さしものアルクェイドも青くなった。
 
(まさか、アーカードをここまで殺してみせるなんて――)
 
 改めて魔眼の恐ろしさを再認すると同時に、すぐにここから離れないといけないと思った。
 何故ならこのアーカードという化物は自分並み、否、ヘタをすると自分以上の再生復元能力を持っている。
 復元呪詛でも、地脈吸収ですらない、謎じみた再生能力。
 ソレを以てすれば、この状態からでもそう遠くないうちに再生を果たし、行動を再開するだろう。
 それまでに、アーカードの活動圏から志貴を連れて離脱する必要がある。
 細切れの殲鬼を尻目に、アルクェイドは再び走り出した。
 
 ――かくして、遂に発見した志貴は左腕を失していた。
 思わず、叫び声になる。
 
「志貴っ! だからあれほど気を付けろって……!」
 
 いや、気を付けたからといってどうにもならなかったのだろう。
 何せ、あのヘルシング、あのアーカードなのだから。
 むしろ、左腕一本で済んだのが僥倖という他ない。
 何と言っても、あのアーカードを一時的にとはいえ、退けてみせたのだから。
 
「ううん、それより……左腕、大丈夫? 相当酷いようだけど」

 志貴に駆け寄り、抱きつきたくなる衝動を抑えながら傷口を検分する。
 
 酷い、有様だ。
 銀十字から鋳造された爆裂徹甲弾で受けた傷は、容易には再生しない。
 無惨な傷痕を見せる切断面は、未だ再生の気配すらなかった。
 これには、さすがに困り果てる。
 今の志貴を連れて、泊めてくれる宿など心当たりがない。
 でも、志貴を一刻も早く休ませてあげたい。
 何より、早くここから離れないと拙い。
 
 そこまで考えて、アルクェイドは考えるのを止めた。
 志貴をじっと見つめ、そして行動に移す。
 
「ゴメン、ちょっとだけ我慢して!」
 
 志貴の体を抱きかかえ、そして走り出す。
 まずは、ここから離れないといけない。
 そして、宿には泊まれないが、志貴は休ませないといけない。
 
 アルクェイドが出した結論は、とにかく日の当たらない場所を見つけ、そこで志貴を休ませる。
 ベッドはないが、自分の抱擁はきっと何物にも代え難いユリカゴになる……はずだ。
 少なくとも、最強のボディガードだという自負はある。
 そう信じて、アルクェイドは走った。
 腕の中に、戸惑いがちな志貴の存在を感じながら――。
169アーカード ◆ARCARDr. :02/06/09 05:36
>163>168 アーカードVS遠野志貴@死徒 エピローグ3
 
 朝日が昇る頃、地面には無惨に解体された殲鬼の肉塊。
 それが、ジワリと闇を滲ませながら蠢きだした。
 肉が這いずり回り、にじり寄り、互いを求めて触手を伸ばす。
 闇が闇を、肉を取り込んで少しずつサイズを増し……形を成していく。
 
 そんな奇妙な共食いが終わった後、そこには交戦する前と寸分違わぬアーカードの姿があった。
 日の光を嫌うようにサングラスを指で押し上げ、帽子を目深に被りなおす。
 だが、その表情は限りなく、不気味とすら思えるほどに無表情だ。
 数瞬辺りを見回した後、適当なSAS隊員を捕まえて叩き起こす。
 何が起こったのか理解してない隊員に構わず、所持していた電話を強引に奪い、もう一度気絶させた。
 電話を、インテグラの直通回線へと繋ぐ。
 ほどなくして、起き抜けと思われるインテグラが電話口に出た。
 
『アーカードか?』
「そうだ」
『首尾はどうだった?』
「任務は失敗したよ」
『……何だと?』
 
 電話の向こうからは、明らかに狼狽した声が聞こえてくる。
 真逆アーカードがなりたての死徒――例え直死の魔眼を持っているとしても――に遅れをとるとは普通思うまい。
 インテグラも、失敗の報告を受けるとは思っていなかったはずだ。
 
「この私ですら、全身をバラバラに切り刻まれた。とんでもない化物だな、『直死の魔眼』は」
『おまえがか? アンデルセンに首をもがれたどころの騒ぎではないな』
「まったくだ、私がこうも遅れを取るとは……」
 
 そこで、インテグラはアーカードの声音に、およそ感情というモノが含まれていないことに気付いた。
 おそるおそるといった感じで問い掛ける。
 
『……それで、おまえはどうするつもりなのだ、アーカード?』
「どうもこうもしない、標的は既にヘルシングの管轄する地域から離脱している。
 なら私の出る幕などあるモノか」
 
 いらだたしげに吐き捨てる。
 
「とにかく、任務失敗、これより帰投して報告を詳細にする」
 
 それだけを言い捨てて、乱暴に電話を切った。
 記録を隊員に見られては面倒なので、電話は粉々に握り潰す。
 そのまま振り向かず、一言も発さずに歩き出した。
 表情は怒りを隠そうともしていない。
 少年への雪辱の機会を真剣に考えながら、帰路についた。
 
TO BE CONTINUED
>166>167 エンハウンスVSレイオット・スタインバーグ エピローグ
 
 ……最後の一撃もかわされた、あの少女の叫びによって。
 もはや、打つ手などありはしない。
 だが、トドメも刺されてはいない。
 
 それはつまり、雪辱の機会は残されたという事だ。
 生きていれば、動けさえすれば復讐騎は復讐の為に剣を振り、銃を撃つ。
 そう、あの男に復讐し、あの少女に裁きを下す。
 探すは骨が折れるだろうが、死徒を見つけだすのは慣れたモノだ。
 ピクリとも動かせない体の中、これだけは明確な意識で今後のことを考える。
 
 だが、あの静謐な目をした元CSAの少女――。
 アレが意識に昇ってくると、途端にその意思が萎えていきそうになるのを感じる。
 そこに過去の自分の姿を重ねている事を自覚しながら、バカバカしいと一蹴することはできない。
 自分は誓ったはずだ、血を吸う鬼はすべからく駆逐しなければならないと。
 ならば、そこに余計な感傷など入る余地はない、ないはずなのだが……。
 
 空には真っ二つに欠けた半円の月。
 出来損ない(ディフェクティブ)な自分と少女には似合いの月だなと、意識の片隅で考えた。
 未だ動かない――指先くらいは動くようになった――体をもどかしく思いながら。
 
 起きたら、次は何処の死徒を狩りに行くかを考えはじめる。
 少女のことは、つとめて意識の底へと沈める事にした。
 いずれは死徒を全て殺す、なら少女を今殺しても後で殺しても一緒だと無理矢理自分を納得させた。
 
 了
緑川淳司&花村雅香 VS 弓塚さつき(27祖)
前スレ>467(http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/467

【立場】

「犯人が目の前にいたのに何で逃げるのよ?」
路地から出た後も更にスピードを上げて走る淳司に雅香がこれまた走りながら問い詰める。
ちなみに今、オリンピックに出れば世界最高記録は確実だろう。
人気がないのが幸いで彼らはほぼ全力で走っている。

「……お前、このあいだ渡したファイルは読んだか?」
「読んだわよ。弓塚さつきって子が【死徒27祖】に名を連ねたって奴でしょ。」
「じゃあ、そのファイルの中にあった写真とさっきの子の顔を比較してみろ。」
「……言いたい事は分かったわ。で、最初に戻るけど何で逃げてるの?」

予想はしていたが、実際に聞くとやはり唖然とする。

「……あのな、前に言っただろ?
 上のほうでの政治的駆け引きや交渉で俺たちは27祖達を狩る事はできないんだよ。
 彼らがどんなに俺たちの周りや人間社会を脅かしたとしても、だ。
 まあ、配下の者たちに関しては俺たちでも処理することができるがな。
 少々矛盾しているがそういうことになっている。」
「それに、どうしても彼女がやったとは思えないんだ。
 彼女が犯人ならこんな短期間に事件として発覚するとは思えない。
 もっと、うまくやるさ。」

そう言うとチラッと後ろを見る淳司。
彼の視線の先には彼らを追いかける少女――弓塚さつき――の姿がかすかに見える。
「…で、今からどうするの?」
「俺は何とか彼女をこっちに誘導させてこの先の公園で交渉してみるから、
 お前はここで別れて、伯父さんに今の状況を連絡してくれ。」
「・・・・・・わかったわ、死なないでね!」

十字路で雅香を別れると淳司は後ろのさつきにこちらに来い、とばかりに手招きすると
公園に向かって、また走り出した。さつきが雅香のほうに走らないことを祈りつつ。
レイオット・スタインバーグVSエンハウンス エピローグ
>170

 陽の光を受けて、じょうろから零れる水が、きらきらと光を返す。
 四つばかりの鉢植えに降りかかる水は、その過程において、うっすらと虹すらも発生させていた。
 だが、それに何か感じ入ることもない。
 水滴を身に纏い、瑞々しさを主張する植木には、レイオットは微塵の興味も抱いていない。
 ただ、かつてこれの世話をしていた人間の代わりを努めているだけだ。
 水やりを適当に終えて、レイオットは空を見上げる。そこには、普段と同じように。
 
 高く――高く昇る太陽の姿。

 サングラス越しに、しばしそれを眺めて。僅かに口元をゆがめた。

 家の中は――日中だというのに、あらゆる部分にカーテンが引かれている。
 どこか寒々しい電灯の明かりが室内を埋めつくし、隔離された空間といった印象を更に強めていた。
 そして、そのうちの一室。電灯の明かりすら消されているその部屋に、カペルテータは静かに横たわっていた。
 傍らの箱には、無数の医療用血液パックが、空となって転がっている。

 吸血鬼――と呼ばれるモノ。それになってしまったのだと、彼女は言った。
 それ故に、あの男は彼女を殺そうとしたのだと。
 当然、信じることなど出来なかったが。震える手でパックを手に取り。
 血を啜る彼女を見て、愕然としていたのを……昨日のことのように憶えている。

 だが――とりあえず、変化と言えばそれだけだった。太陽の下を歩くことも出来ず、流れ水に触れることも出来ない。
 そして何より、彼女は……すでに死んでいる。だが、変わったことと言えばそれだけなのだ。
 彼女は相変わらず彼女としてそこにあるし――さして人付き合いのないスタインバーグ邸の生活を考えれば、
 出歩けないことなど、気にすべき事柄でもない。
 
 結果として、ふたりは昼夜を逆転させたに近い生活を送っている。
 だた――と、彼は思う。血を吸うモノとそうでないモノ。このふたつが、いつまで共にいられるのだろうか。
 吸血鬼。血を吸う鬼。人にとっては、無条件に敵対する存在。
 物語の中でしか語られていなかったはずの存在が、自分の傍らに存在している。
 
 この物語の結末は、一体どうなるのだろうと――彼は思う。
 殺すのか。
 殺されるのか。
 それとも……また、あの男のような何者かが現れるのか。
 あるいは、結局このままなのかも知れない。それは分からない。誰にも、まだ分からない。

 そう――分からないのだ。ならば、気にしていたところでどうしようもない。
 苦笑を浮かべつつ、彼は部屋のドアをゆっくりと閉じた。僅かな軋みが耳に残り、そして直ぐさま消滅する。
 軽く息をつく。そう言えば、今日はまだ何も食べていない。
 カペルテータも、また何かを食べられるようになるのだろうか――
 そんなことをぼんやりと考えながら、彼はキッチンに向けて歩き出していた。
レイオット・スタインバーグvs『復讐騎』エンハウンス
レス番纏め

>45 >46 >47 >48 >49 >50 >51(>52) >53 >57
>63 >71 >74 >78 >79 >81 >83 >85 >86 >91
>99 >105 >112 >116 >123 >130 >138 >116 >167
>170 >172

感想、文句、その他は以下のアドレスへ。
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vsレッドアリーマー
『紅の闘士』
>114
 
きりきりと、私の首がねじ上げられる。
ぐ――――!!
 
「く・・・・・・・。」
「貴様ッ!!」
 
クロノが、今にも飛び掛らんばかりの勢いで奴に憎悪の視線を向ける。
 
『貴様の力、我が前に示せ』
 
奴は、そう言い放った。
・・・・・ちょっと待ってよ?
こいつ、何で自分が有利なのにクロノの本性を?
何にせよ、こいつはクロノを追ってきた悪魔には違いない。
私の首を締め上げる力が少しだけ強くなる。
 
「・・・・・ロゼットを離せ!さもないと―――!!」
「ク、ロノ―――挑発、にのる必、要、無いわよ―――!」
 
私は、にっと口の端を上げた。
そして無事な左手を伸ばし、腰のホルスターから――銃を抜く!!
 
「生憎、私は両利きなのよッ!!」
 
そして、そのまま銃弾を奴の腹に向けて放つッ!!
175アルカード(M):02/06/09 21:17
鈴鹿御前 vs アルカード(M) 
>165  
 
 凶相が血溜まりに消える。 
 朽ちた亡骸も朱の塊になって、アスファルトの中に消えた。 
 残るは鮮血色のコートが一着――――それが大気に舞ってふわふわと浮いた。 
 
 風が、薙ぐ。
 
 街辻を抜ける風が水を含み湿った。 
 まとわりつくような淀みは、水の粒を産みながら路地に漂う。 
 粒は雫に雫は霧に霧は闇に沈んで、ただ、あり続けた。 
 
 ふと、霧が姿を変える。集まり、固まり、腕のカタチへと。 
 霧の手が伸びて朱のコートを掴む。それを合図に、霧たちは生き物のように流動した。  
 コートを中心に霧が群れると、 
 白い手袋を突きだし、 
 赤の帽子を握り、 
 無骨な長物を拾い上げる。 
 
 それは、赤い吸血鬼だった。 
 
「ハン――――」 
 
 軽く息を吐く。落ちた首と同じ笑みを浮かべて。 
 
「存外、楽しいじゃないか」 
 
 軽く首を鳴らすと、吸血鬼は夜の街を歩き始めた。 
 仕事は終わっていない、終わらせない。 
 
「こちらアルカード。ヘルシング本部、聞け・・・」 
 
 無線に大雑把な報告を送りつつ、長躯を繰り夜を歩く。 
 吸血鬼どもの時間はまだ、始まったばかりなのだから。 


                                    【End・・・?】
176鈴鹿御前 ◆Y4SUZUKA :02/06/09 21:47
鈴鹿御前 vs アルカード(M) レス番の纏め、ね。

>108 >109 >110 >115 >119 >124 >127 >131
>136 >151 >162 >165 >175

感想・意見等は、こちらにいただけるとありがたいわ。
http://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
>132
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父

 ジェニーは結局、無事な翼一枚で滑空し、スラムの混雑した屋並みの中に姿を隠していた。
 神父を捕らえるのはともかく、自分を囮に時間を稼ぐのは成功したといってよい。
 当初、教会に突入する予定だったチームは到着していた。
 だが皮肉なことに、空を飛ぶあの怪物を制することができるのは、彼女だけだった。

「適当な場所に狙撃手を一人配置しておいてくれる?
 強行突入のつもりだったなら、狙撃の準備もしてるでしょ?」
(分かった、俺がやる。A7北西の廃ビルの3階でいいか?)

「ええ、そこで構わないわ」
(手伝ってもらうだけのつもりが、全部任せきりになっちまったな)

「あらガドウ、あたしだけ除け者?」
(そんなつもりじゃないが)

「それに、ね・・・蝙蝠の不始末は蝙蝠がつけなきゃ、ね・・・」
 
 ジェニーは羽ばたき、上昇を開始。
 神父の、アクティブソナーの残滓を感じる。
 大体の方角は、あの教会。高度を稼ぎ、ジェニーはゆっくりとそちらに向かう。
178フィオ ◆Fio.RSac :02/06/09 22:50
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>128
 
『ハハ、女のコの頼みは素直に聞き入れるのが、紳士ってもんだよなあ』
 そう言ってヤハベはフィオに笑顔を向けた。
 フィオも笑顔を向け、銃口を下げた。
『だがマズいことに、オレは去年の冬に紳士免許を失効しちまってね!』
 叫びざまに両手を突きだし派手に発砲!
「わひゃっ!」
 フィオは咄嗟にしゃがんで銃火から逃れた。 かわりに彼女の帽子が穴だらけと化したが。
「ああっ!」
 目の前にひらひらと舞い落ちる白い布きれ。
「私の帽子・・・三代目が・・・」
 ジャギゴとヘビーマシンガンの銃口をヤハベが逃げた方に向け、
「帽子の仇ーッ!!」
 フルオートで掃射した。空薬莢の山を作り、弾倉を落として装填。
 
「頭目はできれば生かして捕らえろと言われましたけど。用心棒はかまいませんよね」
 静かに怒りを発しながらフィオはヤハベに向かって歩を進めた。
>177
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父
 
網目のように張り巡らされた感覚。
しかし、そこに掛かったのは他の人間の雑多な騒音。
どうやら武装しているらしいが、この情報は必要ない。
だからといって放置して、邪魔をされるのも厄介だ。
 
神父は脳に埋め込まれた通信装置を使って生き残りの怪人たちに命令。
「近づいて来る奴等を全滅させろ」と指示を飛ばした。
そして再び感覚を張り巡らせる。
 
―――居た、奴だ。
 
超音波で捉えた異形の影。
奴だ、間違い無い。
邪魔が入らないようにする粋な計らいになった、と満足してニヤリと微笑む。
 
「ヒキサイテクレル、コノテデ!」
 
怪物は大きく羽ばたき、空気を掻き乱して体を空へと持ち上げる。
鉤爪、牙が月の光を受けて鈍い光を放つ。
獲物の血を催促するように、禍々しく。
 
「ミツケタゾ! ザイニンヨ!!」
 
低空から徐々に加速しつつ、視界の中央に敵の姿を捕捉。
怪物は、愚直なまでに真っ直ぐに敵へと突き進む。
>179
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父

 相手を視認。怪物もこちらを認めたようだ。
 はばたき、加速。
 最初の接触。直前で高度をあげ、回避、即座に反転。
 あえて高度を下げつつ、背後を取り合うと見せて、さらに反転。A7地区へ誘導。

 トップスピードは出さない。
 追いすがる怪物の巨体を、身軽さを利してひらりとかわし、馬鹿にするように軽い一撃。
 蹴りでかすり傷を負わせておいて、加速。一時的に距離を稼ぐ。

 二つの黒い影は、ジェニーの思惑通り、A7地区北西に向かっていた。
>180
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父
 
こちらの突進をひらり、ひらりと避けるコウモリ。
小馬鹿にしているかのようなその動きに怪物は激昂。
怒りが攻撃の正確さを奪い、視界を狭める。
 
「マ、テェェェェッ!!」
 
旋回、更に翼で虚空を一打ちして加速。
逃げるスマートな異形を血走った眼で追う。
誘うように妖艶な笑みを浮かべたその異形を。
 
いや、誘っている。
明らかに何らかの狙いがあっての行動だ。
だが怪物はそんな事を気には留めず、ただ追いすがるのみ。
自分が優勢なのだと信じて疑わず。
(紫煙をくゆらせながら、ギリッと歯ぎしり)
……なるほど、これは大した化物だな。
アーカードがこのザマとは。

……ウォルター! 至急円卓会議の招集を要請しろ。
同時に各国の退魔機関にも通達。
できれば、女王にも打診をしておけ。
気に食わんが、ヴァチカンの力も借りないと話にならん。

(バサッと、資料が机から落ち、そこには以下のように記されていた)

>55 >56 >60 >65 >80 >82 >84 >89 >95 >98
>103 >111 >118 >121 >126 >134 >135 >137 >145 >163
>168 >169
>181
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父

 羽ばたきながら、ジェニーはピアスのように耳に固定された無線にささやく。
「そろそろいくわよ、ガドウ」
(了解)

 4階建ての変哲の無いビル。そこへの衝突コース。
 かなりの速度が出ていたが、もちろん激突するつもりは無い。
 いや・・・ぶつけるのは、名案と言えた。

 ジェニーは加速、ビルの直前で急上昇。
 追う神父。重量の分反応が遅れ、その眼前に一瞬広がるビル、暗い窓。

 そこに何があるか、激昂した神父に知る術は無かったろう。
 強烈なサーチライトの光条が怪物を照らし出す。次いで、発砲音。
 ライフル弾が怪物の体を射ち抜く。致命傷にはならず、しかし体勢を崩す神父。

 ジェニーは急上昇からそのまま反転宙返りをかけた。
 速度を保ったまま輪を描いて怪物の背中に追いつき、その首を両足の爪で捕らえる。
 そのまま、さらに加速。
 スピードを乗せたまま、神父の体をビル壁に叩きつける。
>183
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父
 
行く手に立ち塞がる建物。もはや逃げる事は出来ない。
追い詰めたと確信する怪物は、そのまま鉤爪を突き刺すべく更に加速。
だが、それは大きな誤算だった。
 
「!?」
 
感情は冷静な判断を鈍らせる。
機械の体の唯一の欠点とも言える感情。
それが今、神父へと牙を剥く。
 
闇を照らす光が怪物の巨体を捉え視界を奪う。
 
――――こ、の……小賢しいッ!!
 
眩む眼が捉えたのは亜音速で迫る銃弾。
眼前まで迫ったライフル弾を避ける術は、無い。
 
一発の弾丸が与えた傷はそう大きくは無い。
だが、生まれた影響は致命的なものだった。
 
訳も分からぬまま鋭い痛みと共に壁面へ叩きつけられる神父。
だが、激情は燃え尽きる事無く燃え上がる。
 
獣の咆哮を上げると、怪物は相手の位置も確かめず腕を闇雲に振るう。
憎い敵を、その爪で八つ裂きにする為に。
>184
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父

 闇雲な攻撃につかまるほど、とろくは無い。
 爪の一撃を足で蹴り付け、逸らし、するりとすれ違い様に鉤爪で脇腹を薙ぐ。
 背後に回ったところで翼を広げ、くるりと回転。
 その勢いのまま強烈な回し蹴りの一撃を正確に延髄へ叩き込んだ。

 だが、怪物は衰えることを知らない。
 足をつかまれそうになり、一瞬早くジェニーは翼を打ち振って後退。

 単純な一撃では止めになりえない。恐るべき耐久力といえた。
 滞空したまま、ジェニーは神父と向き合う。
186レイオット・スタインバーグ ◆TMOLD.cc :02/06/10 04:14
>173にミスを発見……修正する。
レイオット・スタインバーグvs『復讐騎』エンハウンス
レス番纏め

>45 >46 >47 >48 >49 >50 >51(>52) >53 >57
>63 >71 >74 >78 >79 >81 >83 >85 >86 >91
>99 >105 >112 >116 >123 >130 >138 >116 >123 >130
>138 >166 >167 >170 >172

感想、文句、その他は以下のアドレスへ。
ttp://fargaia.opt.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
187ヤハベ:02/06/10 10:48
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>178

 眼鏡の娘が放った数十発の銃弾は、大理石でできた階段を削岩機顔負けの勢いで削り、砕いていった。
 もはや用をなさない姿に変わり果てた階段の陰で、石片と埃、それに火花が空気を埋めつくす中、
オレは笑みを浮かべていた。
 あんたもオレに劣らず、派手なことが好きらしいな。
 そう、生け捕りにしようなんて無粋な考えは捨ててしまえ。
 殺しあい、壊しあうんだ。
 道徳も尊厳も肉体も全部、だ。

 PPsh41の一挺を床に置いて片手を空け、懐からM34白燐手榴弾、通称『ウィリー・ピート』を
取り出した。
「へへっ、こいつぁ骨まで染み込むぜ!」
 ピンを抜き、レバーの外れたウィリー・ピートを眼鏡娘のいる方向に投げ込む。
 数秒後には、燐の炎と白煙が舞い上がった。
 絨毯と壁紙が焼け焦げる臭いが、鼻をつく。
 その直後に、両手のPPsh41で弾幕を張りながら駆け抜ける。
 ウィリー・ピートを殺傷のためではなく、煙幕がわりに使ったのだ。
 太い柱の陰に駆け込んで、相手の様子を窺った。
 まさか、まぐれ当たりで死んだりしていないだろうな?
188ユージン:02/06/10 17:14


 疲れた。


 この戦場に送られて、もう何年になるんだったか。
 統和機構の命令は「この戦争を長引かせろ」だった。それだけは覚えている。
それから三桁の戦場で、何十の銃を取りつ置きつ、数えるのが馬鹿らしいほどの銃弾で
反吐が出るほど人を殺した。敵も味方も関係なかった。自軍が劣勢なら
いかさまと罵られるほど勝ったし、逆に優勢ならわざとクレイモアを誤起動して
それを証言する奴も残らないほど完膚無く自部隊を全滅させた。今のように。

 濛々たる土煙が晴れてくると、残りを吹き散らすように風が吹いた。
 強風に髪を洗われながら思う。血の霧なんて嘘だ。血の海なんて嘘だ。
現実にはこの血だまりはもっと慎ましやかで、吐き気がするほどリアル。
生温い文学表現など糞喰らえの惨状だ。
 コンバットブーツの爪先で、足元の肉片を蹴る。派手な指輪。少尉の手だ。
そっちに転がっている足の銃創には見覚えがある。よく穴を掘られた伍長のものだ。
寝言でよく母親を呼んだ泣き虫テヘロの耳がピアスごと落ちていた。
――判別できたのはそれくらいで、残りは700の鋼球がどうあがいても復元できぬよう
ばらばらに解体してしまった。
 胸ポケットに四つ折にして大事にしまっておいた写真を取り出す。
部隊の全員で撮ったもの。ゴルド分隊の端っこに、少年は場違いのように浮いている。
リキッドで焼いてしまった。思い出したくない。思い出せなくていい。

 ――その前は。
 戦場に来る前は、どうだったか。

 朦朧と記憶が霞んでいる。その理由すら思い出せない。
 何か……そう、とても大切な何かを忘れている気がしてならない。失った気がしてならない。
思い出さなければならない。思い出してはならない。
 何もかも失くして、もう元には戻らない。
 なのに、自分ばかり生きている。


 もう、どうしようもなく、生き疲れてしまったのだ。
189ユージン:02/06/10 17:15
>188


 野営地にそれとなく戻り、内密に保持する通信機を確認する。
 一件の連絡。絶えて久しい統和機構の指示が届いていた。
 中身に目を走らせる。

(………………)

 あまりにとんでもない内容に、少しだけ眉根を寄せたが、それすら夢のようだった。
もうずっと続く、長すぎる悪夢。ひどくぼんやりと見える。
 浅く息を吐いて、立ち上がる。一日で足りるだろうか。最後にそう呟いて、
足を探しにバラックを出た。



 ――ちなみに、指令の内容を要約するとこうなる。
「この戦争を『なかったこと』にして、帰還せよ」――



 同日未明、A国の首相が行方不明になり、
 同日深夜、B国の大統領がそれに続いた。
 A国の首相は朝係りの者が起こしに向かったときにはもう消えており、
 B国の大統領は寝室に入ったのを最後に消息を絶ったという。
 双方とも厳重な警戒態勢のもとでの話であり、猫の出入りも許さぬ状況でのことだった。
 両国は互いに戦争の真っ最中であり、あまりの怪事に首脳陣は慌てふためいたが、
もともと宗教戦争にかこつけたトップ二人の諍いであり、国は衰え民は疲れていた。
事情を知るものに一抹の疑問を残したものの、とにかくこれ以上戦争を続ける意味は無く、
誰もがもやもやとした気持ちのまま戦線の後退を支持し、うやむやのまま戦争は終わった。


190ユージン:02/06/10 17:16
>189


 ――戦争は、終わった。


 敵地でがめたLAVをのろのろと走らせる。
 場所はちょうど両国の国境、戦線が展開されているあたり。すぐ近くには自軍の
地雷原があったり、そうでなくても敵に見つかったりと、深夜のドライブには物騒な場所だ。
合成人間の暗視能力はマーキングを見逃さないが、別に目を瞑って走ってもいいと思う。
どうだっていい。どうなったっていい。戦争は終わってしまった。
 こんなときに限って、戦場には自分の心臓以上に音をたてるものがない。苛立ちが募る。

 今頃は、突如もたらされた『訃報』が電撃作戦で二つの国を駆け巡っているはずだ。
ひょっとすると、もう最前線まで伝わったから、この静けさなのかもしれない。
いまや世界の抱かれたくない男ランキングワースト1、2を争った二人はいなくなった。
「行方不明」に首を傾げる者はいるだろうが、まず諸手をあげて喝采しない奴はいるまい。
国民が涙を流して喜ぶ顔が目に浮かぶ。戦争は終わったのだ。

 歯軋りの音は、誰か自分以外のものとしか思えなかった。
 アクセルを乱暴に踏み込んで加速。

 今更になってこんなにも悔やんでいる自分を殺したくなった。
 なら、何故戦争を終わらせた。
 あげく――帰還。帰還ときた。へらへらと笑いがこぼれて風防越しに漏れていく。
 いったいどこに帰るつもりなんだ。畜生。


 それでも、戦争は終わったのだ。
 LAVはもとの鈍足に戻っている。まるで一分一秒でも、戦争を続けようとするかのように。



 遠くからじっと見つめる視線に、少年は最後まで気づかなかった。


ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>190


見つめていた。
OD色の迷彩服の上にアサルトベストを纏い、小銃を手にし、
携帯用対戦車ロケットを背負った影が、呼吸すら消してLAV軽装甲を見つめていた。
 
 
バイロンが今回受けた任務は敵の基地に侵入し破壊工作を行うことだった。
壊滅的な打撃を与える必要は無い。
音も無く侵入し、ある程度の被害を与え、素早く撤退する。

作戦の目的は敵に恐怖を与えること。
自らの基地内でさえも安全ではないという恐怖を敵の心に刻み込む。
それだけで戦況は圧倒的に有利になる。

だが、彼が敵陣のあるべき場所にたどり着いた時、そこには既に何も無かった。
彼がたどり着くよりも早く『訃報』が伝わり、前線に近いそこは既に放棄されていた。

彼は戦争が終ったことを知らなかった。
極秘任務のため、もともと彼がこの任務についていることを知っているものは小数だったし、
その少数の人間も唐突な状況の変化に翻弄されて、彼のことまで気を回している余裕はなかった。

だから、戦争が終ったことを知らなかった。
そう、彼の中では戦争はまだ続いているのだ。
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>191を修正。

見つめていた。
OD色の迷彩服の上にアサルトベストを纏い、小銃を手にし、
携帯用対戦車ロケットを背負った影が、呼吸すら消してLAV軽装甲を見つめていた。
 
 
バイロンが今回受けた任務は敵の基地に侵入し破壊工作を行うことだった。
壊滅的な打撃を与える必要は無い。
音も無く侵入し、ある程度の被害を与え、素早く撤退する。

作戦の目的は敵に恐怖を与えること。
自らの基地内でさえも安全ではないという恐怖を敵の心に刻み込む。
それだけで戦況は圧倒的に有利になる。

だが、彼が敵陣のあるべき場所にたどり着いた時、そこには既に何も無かった。
彼がたどり着くよりも早く『訃報』が伝わり、前線に近いそこは既に放棄されていた。

彼は戦争が終ったことを知らなかった。
極秘任務のため、もともと彼がこの任務についていることを知っているものは小数だったし、
その少数の人間も唐突な状況の変化に翻弄されて、彼のことまで気を回している余裕はなかった。

だから、戦争が終ったことを知らなかった。
そう、彼の中では戦争はまだ続いている。
>192

彼は破壊目標が無かったことを、情報が古かった、もしくは誤っていたと判断。
早急に帰還する決断を下した。
そして、その帰還途中で、のろのろと進むLAV軽装甲車を発見した。

作戦が失敗したため武器弾薬は余っている。
ならば行き掛けの駄賃に、せめて軽装甲車でも破壊しておこう。
彼はそう判断した。

小銃を地面に置き、
背負っていた携帯用対戦車ロケット(RPG7)を降ろす。
素早く弾頭を組み立て発射筒に装填。
弾頭先端についている安全キャップを外し、撃鉄を起こす。

発射筒を右肩に乗せ、両腕でRPG7を構える。

むろん弾頭はHEAT(対戦車用高性能爆薬)。

そして彼は狙いをつけ、
ゆっくりと銃爪を引いた。
194ユージン:02/06/10 17:25
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>193


 ――素っ飛んできた弾頭を見つけられたのは、むしろ奇跡だった。


 ペダルを踏み切るつもりでタイヤに出鱈目な回転をかけ、さらに
ハンドルが折れるほど回して回して回す。本来そんな軌道が出来ないLAVは
当然のように横転し、対地雷処理の施された車体下部を弾頭の盾に。
足りないと見て取ると、手持ちの銃器を抱えてシートを蹴り飛ばした。

 轟音。

 0.5秒も意識が飛んでいたのは初めてだった。最高記録の十倍だ。
 その間に身体は木っ端のように荒野を跳ね、LAVの破片が瞼を切っていた。
敵より先に、地雷が気になった。次着地した地点次第では死ぬ。

 そして、次の瞬間には、地雷より敵が気になった。

 持ち出した二挺のうちのひとつ、ニコノフライフルを空中で構え。
肩にストックをあててマウント。片目がつぶれているのはむしろ好都合だ。
弾道から敵の位置は知れている。レティクルの十字が敵を捕らえた瞬間、
分間1800発の毒牙が猛然と吐き出される。


 異常にも、少年の頬は、この状況下においてひくついていた。
 笑いを必死で噛み殺そうとするかのように。


 ――ああ、戦争はまだ、終わっていない。
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>194


猛スピードで迫る鉛弾の雨。

とっさにRPG7を体の前方にかざし盾にする。
無論全ての弾丸を防ぎきるにはその発射筒は小さすぎた。

砲身のわきをすり抜けた弾丸が身を抉り、喰い込み、千切れとばす。
肉が焼け千切れ、血が盛大に飛び散る。
だが、それでも、なんとか頭部と心臓を守りきることはできた。

敵が弾倉を交換する一瞬の隙をつき、発射筒を投げ捨て、
小銃を掴み、手近な藪の中に転がり込む。
>195
音も無く移動しながら、バイロンは素早く思考をめぐらす。

かなり小柄な影だった。
しかし、

LAVから脱出する時の動作の端々から、
バランスの取り方が絶妙に上手いことがわかる。
フルオートでの正確な射撃から、並ならぬ技量が読み取れる。

作戦は失敗した。そのことは悔やまれる。
だが。

そこでバイロンは愉しげに口元をゆがめる。
皆には悪いが、これほどの相手と出会えたのならば、
作戦が失敗した事を考慮に入れても、余りある幸運と言える。
>196
藪の中を移動しながら、ガリルAR(小銃)を構え、安全装置を外す。

これで弾丸を発射することは出来る。
だがこれではまだ敵は殺せない。

殺意を、銃把を握り殺意を込める。

これでいい。

見知らぬ兵士よ。
さあ、始めよう。

そして彼は敵に銃口を向け連続で銃爪を引いた。


198ユージン:02/06/10 17:33
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>197


 ――幸いにも、地雷は着地点にはなかった。

 よかった。
 これでまだ戦争ができる。
 ほとんど杖代わりのニコノフにすがるように立つ。吹っ飛んでいた感覚が
砂に水が染みるように戻ってきた。まだエンドルフィンが効いてる。痛みは無視できる。
ニコノフを撃つために投げ捨てたSPAS15を拾い上げると、燃えるLAVを背に屈む。
信じ難いことだが、今の銃撃では手応えがなかった。やれていない。次がくる。
眼前180度を胸に冷たい塊を抱えたまま凝視。このどこかから死神が来る。


 180度よりわずか1度、意識の外から。
 銃弾は容赦なく襲い掛かった。


 絶妙の位置だった。断じるがあんなところからは狙えない。そんなことができるのは
まさしく死神だ。銃弾のいくつかが身体を幾度となく刺し、その衝撃をもらって
横転。残りから身をかわしながら、大雑把にSPASを二度発砲。弾幕を張って
自分も藪に逃げ込む。
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>198


思わず舌打ちが漏れそうになる。

LAVが巻き起こした爆風の影響を受け、弾丸が流され、敵の急所を大きく外れた。
予想以上に気流の乱れが激しい。

先ほどよりも慎重に風を読み、追撃を与えようと銃爪にかけた指に力を込め

その刹那、SPAS15の銃口がこちらを向く。

咄嗟に伏せた。
一瞬の後、二発の銃声が鳴り響き、散弾が頭上を薙ぎ払う。

銃声はそれで鳴り止んだ。
どうやら、始めから牽制のつもりだったらしく、
狙いは微妙に外れていたし、追撃も無い。

だがその隙に、敵は藪に入り込こんでいた。
これで優位は失われた。

敵は散弾銃を持っている。
近距離での射撃戦は分が悪い。
懐に飛び込むか、遠距離から狙撃するか……。

一秒の思考の後、決断。
脳裏にこの辺りの地形図を思い浮かべる。

そして彼は狙撃地点を獲るべく、闇の中へ向けて音も無く足を踏み出した。
200ユージン:02/06/10 17:36
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>199
 
 
 身を隠しても、やるべきことは山ほどある。
 指からリキッドを出して傷口を焼却。救急パックをぶちまけて包帯を取り出し
縛って止血。相手の腕前は自分と互角か、それ以上。長期戦は免れない。
体温はどうしても確保しておきたかった。
 敵の姿はもう元の場所にない。散弾がいくらかダメージを与えていればと思ったが
無駄だったようだ。素早く辺りを見廻して位置確認。地形を脳裏の地図と照合。
少しでも有利な位置がほしい。風上などもっての外だ。
 
 距離ができるとショットガンは不利。ニコノフを油断なく構えると移動を開始。
折にワイヤーを枝に巻きつけてブービートラップを仕掛けることも忘れない。
相手の武装は不明だが、それでもショットガン相手に接近戦はないだろう。
やはり狙撃か。
 
 
 どうしようもなく笑えてきた。
 さっきまでの鬱がみんな消えて、代わりに刹那的な感覚で脳の回線が埋め尽くされる。
あの藪の向こうから、あの塹壕の中から、いつ銃口がこちらを向いてもおかしくない。
世界全部が死を突きつけて敵対する。常に神経を尖らせていなければ生き残れない。
 
 この、瞬間だけは。
 何もかも忘れていられる。
 それが、幸せで、仕方ない。
 
 
 さっき奴がいたポイントからほど近い場所にある狙撃地点に目をつける。
おそらくあそこから、こちらが痺れを切らすのを待って狙い撃ちするつもりだろうが
――そうはいくか。
 小石を拾い、近くの藪に投げ込んで音をたてると、身を隠したまま自分でそこに発砲。
これで自分の居場所は知れるが……
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>200


小高く盛り上がった丘の中腹部。
そこが狙撃地点だった。

その場に片膝をついて狙撃の姿勢をとる。
本来ならば伏せ撃ちをしたい所だが、
ここからすべてを見下ろすには、いささか角度が悪すぎた。

銃床をそっと肩にあてると、抱え込むようにして銃を構える。
ハンドガードを目の前にある岩の上に載せて固定。
そして、レシーバーをフルオートへとかえる。
 
そう、フルオートへと。

こんな藪が生い茂る見晴らしの悪い場所では、点での狙撃は難しい。
だから、『点』ではなく『面』で狙撃する。

照準器ごしに辺りを見やる。


深夜。
闇の支配する世界。
かりそめの死の訪れる時間。

世界は奇妙に安らかで、
全ては闇に抱かれている。

だが今日はひどく明るすぎた。
空に鎮座する無慈悲な女王は、一際冷たい輝きを放っている。
死ぬには、殺すには、これ以上ないほど素晴らしい晩。

もちろん……狙撃をするのにも。
>201
しばしの停滞の後、
彼の視界の隅で、藪が不自然な揺れ方をした。
続いて銃声が鳴り響く。


恐怖に押しつぶされたか?
否。
あれほどの技量の持ち主が、
あれほど見事にLAVから脱出し、なおかつ反撃までして見せた者が、
そんな醜態を晒すとは思えない。
何を考えている?

……まあ、いい。そちらの思惑に乗ってやろう。

距離350m
5.56mmの小口径で狙うには少々遠い。
ましてやフルオートでは不可能といえる。

普通の人間ならば、だが。

肌に感じる空気の流れ、木々の揺れ、いまだLAVから立ち上る黒煙、
それらを観察し、一瞬で風の流れを読む。

照準を右に0.3ずらす。

銃爪にかけた指にゆっくりと力を込める。
まるで深海に沈むように、銃爪がゆっくりと下がってゆく。
そして、銃爪のあそびが無くなった。

呼吸を止め、鼓動さえ止め、彼はそっと銃爪を引き絞った。
203ユージン:02/06/10 17:54
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
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>202
 
 
 銃声は嵐のように、上から響いてくる。
 
 小銃を撃つや否や、すぐ足元にあった壕に避難。静寂が厚い膜のように降りる
――勘付かれたか? 肩が震える。相手が近寄ってくる。SPASをぎゅっと握る。
 
 だが、その杞憂を打ち砕くように、弾丸の雨は降った。
 
(――かかった!)
 防御に優れる反面、まるでこちらからの攻撃にも適さない隠し壕だが、相手の位置が
知れればその評価は反転する。鏡で敵の位置を視認。ニコノフを穴から突き出すと、
風向距離藪の抵抗を半秒で演算。
 
 ――逆狙撃。
 
 殺人のセオリー、弾は二発撃てを忠実に再現する二点バーストショット。
反動で銃身が跳ね上がるより速く次弾を撃つ、ハヤブサのようなニコノフライフルが
まず奴の銃に、そして目に亜音速の槍を放つ。
 銃をはじいた確信はある。だが、仕留めたとは思えない。
 
 まだるっこしい!
 壕の内壁を蹴り、推進剤に点火したかのように走り出す。
 セレクタをフルオートにセット。がちんと大きい音が響く。これがゴングだ。
弾を撃ち尽くすつもりで弾幕を張りながら、奴の下へと思いと等速で馳せる。
 
 
 あいつは、この手で確実に殺してやる。
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>203

弾き飛ばされた。
ライフルは、放物線を描いて宙に舞う。

抉られた。
こぼれ落ちそうになる眼球を手で抑える。

一発目の銃弾がライフルを弾き、
二発目の銃弾がこめかみを深々と抉った。

岩陰に入る。

飛び出した眼球を眼窩にはめ込む。。
ベストのポケットから取り出したバンダナを折り、眼帯がわりにして固定。

神経は10秒もたたずに繋がるだろうが、それを悠長に待っている暇はない。
今は一秒たりとも無駄には出来ない。

地面に落ちたライフルに目をやる。
機関部が破壊されていた。
これでは到底使うことなど出来ない。

地面に降ろしておいたパックからM5A1プラスティック爆薬を取り出す。
素早く信管を設置。

そして、太腿のホルスターからスチェッキン自動拳銃を抜いた。
>204

彼は思う。

あんな狙撃には到底不向きな所から。
あの手負いの身体で。
あれほど見事な逆狙撃をこなすとは。

これだから戦争は止められん。


岩陰から飛び出す。
遮蔽物に身を隠しながら、丘を一気に駆け下りる。

そして、
彼が敵を視認し、
敵が彼をを視認した。

狙撃地点からは、もう十分に離れている。
狙撃地点に仕掛けた爆薬からは。

スチェッキンのレシーバーをフルオートへとかえ、
木の陰に転がり込みながら銃爪を引き、
地面に伏せ、リモコンを取り出し起爆のスイッチを押す。

轟音。

世界が揺れ、爆風が辺りを蹂躙する。
草木が飛び散り、砂埃が舞う。

振動を身体に感じながら、
伏せたままベストのポケットから非致死性のスタングレネードを3つ取り出し投擲、
空中をゆったりと舞うそれに向けスチェッキンで銃撃を加える。

1つは閃光手榴弾。
あとの二つは煙幕手榴弾。

閃光と煙が辺りに満ちる。

その中で彼は素早く弾倉を交換。
そして、敵めがけて全力で走り出した。
206ユージン:02/06/10 17:57
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>205
 
 
 ――奴を見つけたときの悪寒。
 それだけで、死ぬかと思った。
 
 
 成型爆薬の起こした暴威は飛ぶ小石を死神の鎌と等しくする。知らず跳んだのは
衝撃を受け流すためだった。頬を銃弾が全身を破片が打って切って抉って行く。
どこまでも吹っ飛んで行くかと思ったときに地面に叩きつけられた。盾にした
ニコノフがいかれた悲鳴をあげて折れた。脳味噌が耳からこぼれそうだった。
合成人間の強靭な身体が空中分解寸前の切ない喘ぎをもらした。腕の骨が折れたと
悟ったときには榴弾が空を舞っていた。綺麗な放物線だった。爆音と閃光。
網膜を焼かれた右目を捨て、血をぬぐって左目を開眼。耳がやられたようで、
随分と静かだった。静かな戦場。もうもうと上がる煙幕を見て、左腕の放棄を決意。
肩口からばっさりと切り落とすと、すぐ左腕を投げる。リキッドが肉を侵食して
爆発した。幾重の爆風が交じり合って出鱈目な気流の忌み子を生み出し、
 
 
 ――奴は、そこにいた。
 
 
 咆哮していた。
 実際には喉の奥がくるくると鳴るばかりだったが、それは地を震わす叫び。
 口を裂けるほど開いた、歓喜の雄叫びだった。
 
 右手の閃きは銃より速くナイフを投擲していた。あざとく隠れたクレイモアに
突き刺さり起動をうながす。700の鋼球の奔流に飲み込まれた敵の後を追って、
ショットシェルを湯水のようにぶちまけながら駆け抜けた。
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>206

爆音。
爆風。
衝撃。

そして、豪雨のごとく叩きつける無数の鉄球。


数えきれないほどの鉄球が、人体を、肉と血の詰まったズタ袋を蹂躙し、
肉体をボロクズの様に変えていく。

肉を引きちぎり、骨を粉砕し、肺を潰し、内臓をかき混ぜ脳を揺さぶる。
内臓が傷つき、大量の血を口から吐き、
それ以上に多くの血を、腹に開いた穴から、全身の傷口からぶちまける。


だが、それでも。
その顔には、骨の剥き出しになった顔面には、
ひどく愉しげな表情が浮かぶ。


肉と血と内蔵をごっそりと持っていかれて軽くなった身体。
無数の鉄球が全身に抉りこみ重くなった身体。

だがそんな状態になっても、その身体は動きをやめない。
それどころか主(バイロン)の歓喜に共鳴するよう、ひどく力がみなぎってくる。

原型の無くなったスチェッキンを投げ捨てる。
代わりに腰から刃渡り6インチほどのナイフを抜く。

舞い上がる土煙の隙間に、敵の影が僅かにみえた。

地に這うような低い姿勢で疾走。

腹に開いた穴から腸をはみ出させながら、巻き起こる大量の土煙に紛れ、
一気に間合いを詰める。

目が合った。
敵は愉しそうに笑っていた。

敵の目に映る彼も、
愉しそうに笑っていた。

零距離。

彼は敵の心臓めがけ、右手のナイフを突き上げた。
208ユージン:02/06/10 18:00
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>207
 
 
 疑いは、もう確信の痛みを伴っていた。
 こいつは、死なないんじゃないか――
 
 
 それは、とても甘美なユメだ。
 そうなら、ずっとこうして殺しあえるじゃないか――
 
 
 弾を撃ち尽くしたSPASを投げつける。ほんの少しでも姿勢を崩せ。間合いに入り込めば
リキッドの炎は抵抗すら赦さず敵を灼く。跡形だって残りやしない。そうすれば勝ちだ。
 勝ちだ――
 勝ちってなんだ――
 
 あまりの急加速に血は頭の後部に偏り、とっくに視界は黒く染まっていた。
まだ右目の奥で渦を巻く閃光が歯痒い。亡くした左手の幻肢(マボロシ)。全身の穴という穴が
風を響かせてうたううた。なつかしい。
 あの夕暮れ、町中に響いた、五時を告げるうた。
 
 交錯する。
 残る武器、右手を強く強く尖らせ、ただ一閃を狙う。
 迫り来る、猛獣の牙みたいに白い、無機に光る鋭刃。
 
 骨でナイフを受け止めた。もはや切り傷など傷の範疇にすらない。死しか互いを
止め得ない。ずれた切っ先が肺を撫でて抜ける。左なら殺せる。そう考えるのがもどかしい。
もう左腕はない。機をつくる。再度右で切りかかる素振りで幻惑すると、その影で
奴の脛を蹴り砕きにかかる。
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>208


気付いた時には手遅れだった。

やつの蹴りはあっけなくこちらの脛を砕き、
左足の膝から下を千切れとばす。

同時に、ぞっとするほどに致命的な右腕がバイロンに迫る。

一瞬で速度を最高までもっていく。
それは自らの肉体を構成する器官の全てを、
どのよう動かせば人間生物として最速か、
それを完璧に理解しつくした動き。

人間として『絶対的な』最速。

ユージンの一撃を紙一重で避ける。
残った右足でで大地を蹴り、ユージンから離れる。

這いつくばるようにして急制動。

左手が大地を抉り、
靴底が地面をけずり、砂埃が巻き起こる。
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>209

全身にかかるGを強引にねじ伏せながら、左腕を軽く捻る。
左手の中に魔法のように出現するスローイングナイフ。
トランプを開くように扇型に広がる5本のナイフ。

それを振り向きざまにユージンに向けて投擲する。

ナイフを追う様に再度接近。

至近距離。
まともにやってはもう勝ち目は無い。

自分の首筋にナイフを当て、一気に横に引く。

切断された頚動脈から血しぶきが吹き上がり。
ユージンの顔めがけて吹き付ける。

そのひるんだ一瞬をつき、
全身の力を込めて、体当たり気味にナイフを突き出した。
211ユージン:02/06/10 18:04
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>210
 
 
 ナイフを避ける気もしなかった。
 ただ、刺さる金属の冷たさが肌に優しくて、いとおしくて、
 抱きとめるように腕を広げた。
 
 こいつはやっぱり出鱈目で凄いと思う。
 頚動脈を切って血を目潰しにするなんて、ぼくには思いつきもしなかった。
 ナイフを両手で構え、片足だけで跳躍し、全身で繰り出す一撃。深々と腹に刺さる。
刃先が臓腑の奥をかき回し、傷口を広げて流血を誘う。忌々しいほど不死身だ。
こいつも、ぼくも。いったい何度死んだんだろう。きっと数えるのも馬鹿馬鹿しい。
 
 肩口に刺さったナイフを抜いて、奴の背中に突き刺してやる。
 膝を射抜いたナイフを抜いて、奴の首筋に突き刺してやる。
 頬を貫いたナイフを抜いて、奴の頭蓋に突き刺してやる。
 胸に生えてるナイフを抜いて、奴の臀部に突き刺してやる。
 腕が受け止めたナイフを抜いて、奴の肺臓に突き刺してやる。
 
 大丈夫。まだ死なないだろ。おまえも、ぼくも。
 まだ――戦争は終わってない。
 なら、戦わないと。生きていけない。
 前に進む。ナイフがますます深く刺さっていく。そのたびに漏れる血。寒い。
まだ突き刺したときの喜悦が相手から消えない。愉しいのはこっちも同じだ。
喉に手をかける。ぱっくり開いた首の血管に指を突き入れ、渾身の力でリキッドを送り込む。
死ね、死ねよ、死ぬなよ。戦争しようぜ、なあ、
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>211


自分の中に何かが広がっていく。
ひどく不快な何か。

何かはわからない。
だが、これは間違いなく死ぬ。

彼はそう判断した。

だが、この愉悦の前では、そんなモノなど微塵も気にならない。
一瞬で血が沸騰するような、余計なもの全てが蒸発し気化するような、
このひどく心地よい戦争のまえには。

右手を首の後に回し、まるで抱き寄せるようにして、
ユージンを自分の方へと引き寄せる。

どうせなら最後の一瞬まで戦いを楽しもう。

さらに左手も背中へと回す。
そして、その左手の中に握りこんだ手榴弾のピンを、


片手で器用に引き抜いた。


最後の瞬間、彼は愉しそうに笑っていた。
それは、ひどく場違いな、とても満たされた笑顔だった。
213ユージン:02/06/10 18:06
ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>212
 
 
 起きた。
 生きてる。
 よかった。まだ戦える。
 
 
 どうやって逃げたかは思い出せない。でたらめな身体活動と不可能な機動の連続が
身体をずたずたにしているのは分かる。それだけだ。痛みもない。音も聞こえない。
そこかしこが壊れすぎて、これはもう自分の身体じゃない。何も思い出せない。
 隻腕を杖に立とうとする。無駄だった。繰り返す。何度も何度も。膝を曲げて台に。
折れる関節に無理に芯を入れ、道理を無視して立ち上がる。すぐさま倒れそうになる。
血が足りていない。傷が多すぎて力が片端から漏れていく。ふらつく。重い。でも。
 一歩踏み出す。ひとつだけ思い出した。ここは戦場だ。
 
 
 奴は、燃えていた。
 
 
 動かない足をなだめすかし、ナメクジのようにのろのろと進む。痛い。暗い。
でもそうせずにはいられない。足元に散らばる指の残滓。向こうで燃えている髑髏。
ひしゃげて赤く熱されたナイフ。バラバラの服。昇りゆく灰。
 
 ――ああ、死んだんだな、と思った。
 
 膝が折れた。
 燃えカスに手を伸ばしてかき集めた。指が焼けたが、気にはならなかった。
集めても集めても、ぼろぼろと崩れて灰になり、灰は空へと昇っていき、それでも
手を目一杯伸ばして集めつづけた。
 
「死ぬなよ」
 答えはない。
「なあ、戦争しようぜ」
 答えはない。
「でないと、生きていけないだろ。なあ、おい、」
 ――答えは、ない。
 
 なんて手酷い裏切りだろう。殺しあう一瞬だけが、ぼくたちを支え続けていたのに、
こいつは自分だけその最中、一人でいってしまった。こいつの不死身が恐ろしかった。
こいつの不死身が嬉しかった。なのに。
 笑えてきた。けたけたと、どこか調子の狂った笑い声が寒々しく空に消えていく。
寒い。片腕で身を抱く。悪しくも指先が傷にかかり、爪が剥き出しの神経に触れて
飛び上がるほど痛んだが、それよりずっと、この空疎な胸が痛い。
 けたけたけた。
 けたけたけたけたけた。
 壊れたように笑いながら、少年はぼろぼろ涙を流した。
 
 
 
 休戦より七時間と十九分。夜が明け空が白み、穏やかな一日が始まるころ。
 両国首都のちょうど中間、最前線。誰も見るもの無き荒野の片隅。
 そこでようやく、この戦争は終わりを告げた。
214ユージン:02/06/10 18:16
これが、ある国家間で行われた
戦争の記録映像です。

>188 >189 >190 >191 >192 >193 >194 >195 >195 >196 >197 >198 >199 >200
>201 >202 >203 >204 >205 >206 >207 >208 >209 >210 >211 >212 >213


戦争の悲惨さを訴える嘆願は、

ttp://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630

のほうにお願いします。
215ユージン:02/06/10 18:21
一部、余計なノイズが混じったことをお詫びします。
こちらが改訂版です。

>188 >189 >190 >192 >193 >194 >195 >195 >196 >197 >198 >199 >200
>201 >202 >203 >204 >205 >206 >207 >208 >209 >210 >211 >212 >213
216ユージン:02/06/10 18:27
再度訂正。
重ね重ね申し訳ありません。

>188 >189 >190 >192 >193 >194 >195 >196 >197 >198 >199 >200
>201 >202 >203 >204 >205 >206 >207 >208 >209 >210 >211 >212 >213

>185
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父
 
それは、空中に浮かぶ羽毛を掴むのに等しい行為。
 
躍起になって掴もうとすればするほど、宙を舞う羽は逃げてゆく。
その内に冷静さを失い、好機を逃す。
先刻の応酬は、正にそれだった。
 
既に頭に血が上った怪物に僅かな隙を発見する能力は無い。
ただ、血を求めデタラメに攻撃を繰り返すのみ。
 
羽ばたきながら、神父は忌々しげに距離を取ったジェニーを睨みつける。
尤も、それは形だけのものだ。
コウモリは先の見えない闇夜では超音波を反射させてその反響を『聴く』。
そして、それらを総合して世界を『見て』いるのだ。
コウモリの改造人間である神父もまた、その能力でジェニーを『見て』いる。
 
「ッシャァァァァァァァァァァッ!!!」
 
街全体を振るわせんばかりの咆哮。
更に、耳障りなハウリングのような共鳴音が重なる。
 
超音波のソナーにより察知したジェニーの位置。
狙い違わず、その座標へ発射された必殺の刃がジェニーを切断する為に突き進む。
遠野志貴 vs 邑輝一貴(M) 「銀と蒼」
 
【前スレのまとめ】
ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/476
 
(前レスttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/390の続き
 
 
 ボウヤが地面に落ちる。
 雷撃が炸裂する。
 躱せるタイミングではない。
 果たしてボウヤは焼かれ、弾かれて後方に転がる。
 だがまだ動けるようだ。
 跳ね起きてこちらに向かってくる。
 
 追撃を放つ。
 しかし今度は当たらない。
 雷撃は蒼影を穿ち、放ち手は銀光に消える。
 二体の召鬼を滅ぼし、地を掃くようにボウヤは疾走する。
 
 最早隙を見せる気はないらしい。
 這うような低い姿勢で、放たれる雷撃を躱しながら間合いを詰めてくる。
 
「存外頑丈ですね?」
 
 軽口を叩きながら次の手を考える。
 
 正直このボウヤは得体が知れない。
 先程切られた、それは単なる斬撃だった。
 ならば目の前で召鬼を消して見せたその力は一体なんなのか。
 
―――自分の身体で試してみるのもゾッとしませんね。
 
 とはいえ召鬼であの動きは捉えきれそうにない。
 手数を増やせば当たるだろうが、召喚を待ってくれるはずもない。
 ならば――
 
「……縛」
 
 静かに唱える。
 呪力がボウヤに向かって放たれる。
 不動縛。
 真っ向からではそれほどの効果は期待できないだろうが、
一瞬でも動き止められればそれで十分。
 召鬼で足を砕き、弄り者にしてやろう。
219祁答院マコト(M):02/06/10 22:16
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
【導入1】
 
ザッザッザッザッ……
木々の合間を疾駆する、影。
薄闇の中にありても、その足取りは乱れること無く。
既に半刻をもなろうというにも、その呼気は乱れること無く。
 
視界が開けた。
森の中の、如何程かの隙間。
そこに出ると同時に、陰っていた月が姿を現す。
 
月光の下にあるは、二つの人影。
一つは、小柄なれどがっちりとした体躯の男。
一つは、普通のものよりは幾分か大柄な女。
 
双方に通じるは、しなやかにして頑健な肉体。
あたかも鍛え上げられた鋼の如き身体だ。
 
びょう、と風が吹いた。
220クロウ ◆KURou.eM :02/06/10 22:17
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
【導入2】

追われている。
やや大柄の、女だ。

常人にはついて来ることなど到底かなわない速さで、
木立を縫うように走る。が、気配との距離は変わらない。

 ――面倒だ。斬るか。

やや開けた場所に出て、足を止める。

「九郎判官殿。観念したか?」
女が奇妙な名を、口にする。
「俺の名は、クロウだ。それに、観念する事など、ない」
そう、答える。
 
「そうか。ならば、立ち止まったは何のためだ」
問うまでも無い問いに、
「決まっている」
とだけ言い、腰の刀の鯉口を切る。

刃の鞘走る音が、始まりを告げた。
221祁答院マコト(M):02/06/10 22:19
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>220
男――クロウの腰間より、銀光が迸る。
鋭く、速く、重い斬撃。
型など何も無い、ただ「斬る」ためだけの剣。
 
だが、女――祁答院マコトは銀光の一閃よりも、僅か速く跳び退き、それを躱す。
 
ぴっ、と。
 
マコトの胸元に一筋の線が走る。
神速の斬撃は皮一枚とはいえ、跳び退くマコトを捉えていたのだ。
げに恐ろしきは、吸血鬼のスピード、否、クロウの剣技か。
 
しかし、それを見てなお、さほどの感慨も無く、マコトは拳を構える。
その拳には黒い手甲――雷穿甲が鈍く光り、その顔には薄く笑いさえ浮かべる。
 
「……速い、な。だが、それだけだ」
 
不敵な言葉を吐くと同時に、地を這うように駆ける。
クロウの目には、一瞬マコトが消えたかのように見えたろう。
無論、消えたのではない。静から動への一瞬の変化、死角を突くような動き。
それらが、吸血鬼の超感覚さえも欺瞞し得たゆえの結果だ。
 
そして、その姿勢から繰り出される、突き上げるかのような一撃。
 
轟!
 
打ち出されると同時に、爆音が響き、拳がさらに加速する。
雷穿甲に仕込まれた爆薬により、威力を増した轟撃――地雷穿がクロウを襲う。
>217
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父

 憎悪の視線を受ける。
 いや、視線を受けてはいても、憎悪を受け止めてはいない。
 ただ、冷ややかに怪物を見ている。
 醜悪で、滑稽で、姿ばかりを人間と蝙蝠――すなわち彼女に似せた存在。
 在ること自体がすでにして彼女に対する侮辱。

――吐き気がする。

 あの化け物に人格を認める気も、それどころか生あるものと認める気も無い。
 たとえ憎悪であっても、感情の交流を持つつもりは無かった。遊ぶつもりにもなれない。
 ただ、モノとして破壊する――


 神父を中心に、大きく旋回を開始。

 ジェニーにとり、超音波を使って"見る"という行為は長年慣れ親しんだものだ。
 色は無くとも、視覚とは比べ物にならないほどの広角を認識するのは、一言では言い表せない。
 眼前の蝙蝠モドキも同じ感覚を備え、かつそれを武器として用いている。
 ジェニーにはそういった真似は出来ない。彼女が勝っているのは――

 ソナー波が来る。
 判で押したような単調な波。癖といえるほどのものも無く、それを真似るのは彼女にとり容易い。
 神父のソナー波にあわせ、偽装波を返す、ただそれだけで、相手のソナーは正確さを失う。

 化け物の咆哮。
 キィン、と人の可聴域に耳鳴りを這わせ、たっぷり一人分外れたところをえぐる超音波メス。

 羽ばたき、加速。さらに加速。
 ほとんど正面から突っ込んでくるようなジェニー。掠めるばかりで直撃しない超音波メス。
 ジェニーはトップスピードで神父の至近を滑空。同時に急上昇、反転。
 翼を畳み急降下、すれ違い様の一撃。
 狙いは、化け物の右翼。
223クロウ ◆KURou.eM :02/06/10 22:21

クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>221

 ――消え、た!?

次の瞬間には、拳の間合いに入られていた。
地を這うような体勢から掬い上げるような攻撃。

 これは躱せる。反撃を、

その思考を

轟!

突然の爆発音が掻き乱す。

 ・・・爆薬か!

風向きの所為か今の今まで匂いに気付かなかった。
反撃を捨て回避に専念。
直撃は免れたが、爆発力を得て速さと威力の増した拳撃は頬を掠めた。
手甲に浅く肉を持って行かれ、血が繁吹(シブ)く。

「ちっ」

牽制の前蹴りを放ち、反動で後方へ跳ぶ。

「あんた誰だ?なぜ俺を狙う?」

頬の血を拭いながらそう言う。
血は既に止まり、傷もほぼ塞がっていた。
224祁答院マコト(M):02/06/10 22:21
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>223
「私は火者……怪物(けもの)を狩るものだ」
 
 間合いを取ったクロウに、まるで言い聞かせるかのように答える。
 そう――平安の昔よりこの世界を護ってきた者たち――それが、火者だ。
 
「そして、貴方のように迷い出たモノを確実に仕留める――それが私の役割だ」
 
 す、と再び拳を構える。
 地雷穿を放った反動で、拳に僅かに痛みが走る。
 
 だが、それが如何ほどの事か。
 幼き頃より、ただ殺すためだけの業を仕込まれたマコトにとって、それは問題ですらない。
 
 ――我が身、既に必滅の手段。
 どこか狂った、その意志がマコトを支える全て。
 
 月が見下ろす中、二人は動かない。
 否。
 
 じり、じりと。
 傍目には判らぬほどの微かなな動き。
 ゆっくりと、ひたすらにゆっくりと間合いを詰めるように動く。
 
 クロウとマコト――二人の間に、びりびりとした緊張が漂う。
 そして、先に動いたのは――
 
 ジャッ!
 
 鋭く呼気を吐き、疾駆する。
 先程のように、虚実織り交ぜた動きではない、直線的な、その分鋭い動き。
 あたかも、限界まで引き絞られた矢の如き動きだ。
 
 だが、速度において、人間を遙かに凌駕する吸血鬼相手に、それは無謀としか思えない動き。
 
 その、筈だった。
 
 クロウは気付いただろうか?
 マコトが疾駆の一瞬前に、足下にあった石を蹴り出した事に。
225クロウ ◆KURou.eM :02/06/10 22:23
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>224

 怪物、か。

歳をとらない。
再生といっても良いほどの自然治癒力。
人を遥かに凌ぐ身体能力。
そして、血が滋養となるこの体。

怪物と言うに十分だろう。
目の前の女はそのようなものを狩る者――火者。

ならば、俺を追ってくるだろう。
ならば、俺を殺すだろう。

もはや、問うべき事も無い。

 ――始まった以上、殺す。

それだけだ。

月下に向い合う二つの影。
それは微かに、だが確実に互いへと近づいて。

空気が、弾けた。

先程のような間を外す動きでは無い。
真っ直ぐに突っ込んでくるそれの迎撃は容易い。

 何を狙っている。
 策も無しにこんな真似は――

その時、風を切る音が聞こえた。
視認する間も無く、左肩に衝撃。
僅かにそちらに意識が持って行かれる。

それを堪え、女が刃圏に入った瞬間に片腕で横薙ぎの一閃を放った。
226祁答院マコト(M):02/06/10 22:24
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>225
 クロウの意識を逸らせるために放った石は、充分にその役割を果たした。
 剣閃が走る。
 しかし、それは先程の神速よりも僅かばかり遅い。
 そう、マコトがそれを認識出来る程には。
 
 剣閃を認識すると同時に、さらに加速する。
 
 刃というものは、ある程度の長さがなければ『斬る』事は出来ない。
 すなわち、剣の柄に近いところであればあるほど、その斬撃の威力は減衰する。
 しかし、それを知っていたとしても、実行に移せるものはほとんどいない。
 死の恐怖に打ち勝つ、とは其程難しい事なのだ。
 だが、マコトにとっては造作もない事。
 何故なら、そう作られた存在なのだから――恐怖に打ち勝つのではなく、恐怖を覚えない、そういう風に。
 
 斬撃に合わせ、左拳を引く。
 手首までを覆う『雷穿甲』が斬撃に当たるように、だ。
 無論、金属部分のさほど多くない『雷穿甲』では、完全な防御効果は望めない。
 しかし、斬撃を逸らし、その威力をさらに減衰させる事は可能。
 
 ぞぶり、と。
 
 逸れた刃が、マコトの左脇腹に食い込む。
 人間の膂力では、此程までに深手となり得ないであろう。
 まさに、人を越えた吸血鬼の怪力あってこその一撃。
 
 さすがに、一瞬苦痛に顔を歪める。
 だが、そのまま歯を食いしばり、耐える。
 
 ギリッ……
 
 そして、次の瞬間、その苦痛をも糧とするように。
 
「雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄ッ! 雷穿ッ!!」
 
 右の拳を真っ直ぐに突き出す。
 
 轟!
 
 再び、爆発音。
 『雷穿甲』に仕込まれた爆薬が、炸裂したのだ。
 爆圧が、拳の内外に走りながら、その威力と速度を倍加させる。
 自らの血をもしぶかせながら、正拳はクロウの顔面目掛けて放たれた。
227クロウ ◆KURou.eM :02/06/10 22:25
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>226

刃が肉を断つ感触。
しかし、点をずらされたうえ手甲に阻まれたその一撃は致命的というには浅い。

傷を受けて尚、女の眼に宿った狂的なまでの覚悟は揺るがない。

「雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄ッ! 雷穿ッ!!」

叫びと共に繰り出される右拳。
再度響く爆音。

躱せないのなら受けるしかない。
十字に組んだ腕に拳がめり込む。
まともに受けたそれは想像以上に重く、肉が潰れ、骨が軋む。

「・・・はぁっ!」

打ち込まれた拳を弾き、空いた手で襟首を掴む。
引き寄せて膝蹴りを放つ。
狙いは無論、左脇腹の傷口。
228祁答院マコト(M):02/06/10 22:26
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>227
 クロウは雷穿を真っ向から受け止めた。
 十字受け……数ある防御の中でも、最高に近い防御力を誇るその受けは、雷穿の威力すらも止めきった。
 無論、クロウの吸血鬼の肉体あっての事だが。
 
 そして、止まった拳が払われ、襟首を取られる。
 
(しまったっ……!)
 
 ただでさえ人外の怪力を誇る吸血鬼に、あまつさえ襟を取られた状態では、抗しようもない。
 そのまま、引き寄せられ、膝を叩き込まれた。
 
 左の脇腹に灼熱の痛み。
 
 一瞬にして、世界が、意識が朱に染まる。
 其程の痛み。
 
「があああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」
 
 獣のような叫び。
 痛みを、そして怒りを表現するかのような叫びだ。
 
 そのまま。
 襟首を掴まれたままで、クロウの顔面に頭突きを叩き込む。
 それと同時に、襟を掴んだ腕の肘関節を逆から突き上げた。
229クロウ ◆KURou.eM :02/06/10 22:28
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>228

膝が、入った。
重い、肉を打つ音。
そして、咆哮。

此方の引き込む力に逆らわず、更に踏み込んで頭突き。
同時に、襟を掴んだままの左腕の肘に逆から突き上げてきた。

「ぐっ・・・があっっ!!」

鼻柱に熱い痛み。
みちっ、と左肘が悲鳴を上げた。

体が後ろに流れ、未だ痺れの残る左手が襟から離れる。
肉が潰れ、殆ど言う事を聞かない右手が刀を取り落とす。

 ちぃっ・・・

刀は良い。未だにそれが有効な間合いではない。
肘は駄目だ。折れてはいないものの、少なくともこれが終わるまでまともには動くまい。

今使えるのは右腕、腰のハンティングナイフ。
狙うのは、肘を突いてきた腕。

右腕に走る痛みを堪え、腰のハンティングナイフを逆手に抜く。
そのまま、手首を狙って振った。
230祁答院マコト(M):02/06/10 22:28
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>229
 鼻柱を砕いた。
 右腕を壊した。
 左腕を潰した。
 
 だが、それだけでは吸血鬼は止まらない。
 
 クロウは後ろに跳びずさりながらも、落とした刀の代わりに、ナイフを抜く。
 そして、残像すら残すような速度で、こちらの右手首を狙ってくる。
 
「……くっ!」
 
 反応出来たのは、厳しい修練の結果か、それとも生を求める執念故か。
 どちらにせよ、マコトの身体は動いた。
 
 手首を、返す。
 ただ、それだけの僅かな行動。
 それで充分。
 
 きぃん!
 
 不似合いなほど澄んだ音を立て『雷穿甲』の金属部分が、ナイフの刃を弾き返す。
 
 そして、間髪入れずに左の拳を捻り込むようにして叩き込む。
 無論、その一撃だけではない。
 捻り込んだ一撃が吹き抜けたあと、さらに踏み込み、肘を放つ。
 
 どちらも狙いは顔面。それも目元だ。
231クロウ ◆KURou.eM :02/06/10 22:29
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>230

両腕にかなりの痛手。
鼻を潰され呼吸が阻害される。
女は脇腹の傷のみ。
振るったナイフは手甲で受けられた。

純粋な腕力や速さでは勝っている。が――

 ――技では負けているか。

ならば、それすらも凌駕する力で、速さで。
自身の肉体の全てを駆使して、目の前の女を、殺せ。

女は得意の間合いを放棄する事無く、
間を空けず踏み込んで拳、更に踏み込んで肘を放ってくる。

それに合わせる様にこちらも踏み込んで拳を額で、肘は首筋で受け止める。
伸び切っていない拳など、近すぎる間合いでの肘など、効きはしない。

そのまま、踏み込みの勢いを殺さずに体当たり。
ぐらり、と揺らいだ体を押し倒しにゆく。
押し倒し、馬乗りになってしまえば技など関係無い。
232祁答院マコト(M):02/06/10 22:30
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>231
 こちらの拳に合わせ、クロウが踏み込む。
 そして、こちらの拳を額で受ける。
 頭部で最も固い部位である額、しかも吸血鬼のそれだ。
 その上、伸びきっていない拳では、威力はほとんど殺されている。
 続けて放った肘も同様だ。
 
 ――さすがに、やる!
 
 驚嘆する。
 さすがは吸血鬼、いや九郎判官義経、というべきか。
 
 さらに、そのまま身体ごとぶつかってくる。
 
 ――グラウンドに持ち込もうというのか。
 
「くくっ……!」
 
 知らずに笑みが漏れる。
 グラウンドに持ち込めば勝てるとでも?
 火者の体術に、それに対する技がないとでも?
 
 身体の力を抜く。
 倒れ込みながら、右の拳を押し当てる。
 
 そして……完全に倒れる直前に、全身の力を右拳から叩き込む。
 無論、爆圧と共に。
 
「雷穿・楔……」
 
 血が、しぶいた。
233クロウ ◆KURou.eM :02/06/10 22:32
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>232

薄く、獰猛な笑みを浮かべながらいやにあっさり倒される。
右の拳を腹に当てながら。

 何をする――

その瞬間。
腹部を貫く衝撃。
何も出来ず、そのまま倒れこむ。

放った一撃の所為か、それとも押し倒された所為か、
女の脇腹から血が繁吹(シブ)く。

 「がはあっ!!」

腹の底から込上げてくる熱いものを苦鳴と共に吐き出す。
びちゃり、と音を立てて紅い色の液体が地面に散る。

 強い。

だか、勝つのは俺だ。

狙いもつけず、辛うじて右手に収まっていたナイフを振り下ろした。
234祁答院マコト(M):02/06/10 22:32
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>233
 クロウのナイフが迫る。
 狙いもつけない、粗雑な一撃。
 だが、人外の膂力を以てすれば、無造作なその一撃も致命のものとなるは必定だ。
 
 ――は……甘い。
 
 だが、ただ組み伏せられたわけではない。
 倒れる際に、クロウの腰に足を絡めた。
 ガードポジションと呼ばれる体勢だ。
 膝を締める事で、クロウの身体を浮かせ、間合いを取る。
 僅かだが、充分な間合いだ。
 
 ナイフが左肩を抉る。
 だが、それだけ。
 
「……1000年間、我々は夜族を狩るためだけに業を磨いてきた」

 伸ばしきった右腕を左手で取る。
 そして、腰に絡めていた左足で、クロウの右腕を絡める。
 
 そして、取った右腕を、引く。
 
 
 みちり。
 
 
 クロウの右肩の靱帯が、嫌な音を立てた。
 
「寝技などはその際たるもの……1000年の業、思い知るがいい」
235クロウ ◆KURou.eM :02/06/10 22:33
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>234

微かに左肩を抉り、地に突き立つナイフ。

 ちぃ・・・!

これを凌がれるか。
体をうまく押さえられている。
一撃で仕留められないなら寝技に持ち込んだのは拙いだろう。

ナイフを握ったままの右手を取られ、足がさながら蛇の如く腕を絡め取る。
そのまま引き込まれて、肩が極められた。
右肩が音を立てて、軋む。

 くれてやる。

そんな腕、幾らでも。
その代わり――

 おまえの血を、命を貰う。

右肩が壊れるのも構わずに強引に体を捻り。
喉笛に歯を立てる。
滲み出した血の味が口に広がった。
236祁答院マコト(M):02/06/10 22:34
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>235
 ……ごぼっ!
 熱い血が喉に溢れ、視界すら真っ赤に染まる
 
 ――腕と引き替えに喉か。
「く、くくく……」
 
 笑いが漏れる。
 いかにも吸血鬼らしいじゃないか、え?
 
 だが、愚か。
 
 吸血のために喉笛に噛みついては、動きが止まってしまうじゃないか。
 
 空いた右手を動かす。
 喉笛に食らいつくクロウの眼窩に手をかける。
 そしてそのまま力一杯引き剥がす。
 
 ぶち……ぶちぶち。
 
 喉の肉と共に、クロウの頭を引き剥がす。
 無論、眼窩に埋めた指はそのまま。
 
 ぐりっ。
 
 身体を返し、こちらがのし掛かるような体勢になると同時に、指を一回転させた。
237クロウ ◆KURou.eM :02/06/10 22:35
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>236

肉に歯が食い込む。
傷口から血が溢れてくる。
飲み干した。

ドクン

体が熱くなる。
細胞が、活性化する。

 ――もっとだ。血を――

女の手が顔に添えられて、左眼に違和感。
眼窩を掻き回されるような痛み。
視界が紅く染まって――そのまま強く引かれた。
肉が千切れ、首筋から引き剥がされる。

「ぐうっ」

天地が逆転し、先程までとは逆の体勢になる。
眼窩に埋まったままの指を更に深く抉られ、湿った音を立てて眼球がこぼれ出した。

「・・・ぐがああぁぁぁ!!」

吼えた。
思考が白熱して何も考えられない。
女の下から抜け出そうと、ただひたすらにもがいた。
238祁答院マコト(M):02/06/10 22:37
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>237
 クロウがもがく。
 
 ――く、くくく……無駄な、抵抗を……
 
 凶暴な衝動に支配される自分を感じながら、それを押し留めもしない
 クロウの上に押し被さったまま、凄惨な笑みを浮かべながら殴る。
 
 ご。
 がご。
 がこ。
 
 殴る。
 殴る。
 殴る。
 
 首から、脇腹から、熱いものが溢れる。
 殴り続ける拳からも、零れる――血。
 もはやクロウの顔面はどちらのものかわからない血にまみれている。
 
 ふと、目に鈍く光るナイフが映る。
 先程マコトの肩を裂いたナイフ。
 それを手に取る。
 
「……トドメだ、吸血鬼。首を、刎ねてやる」
 
 言葉にひゅう、ひゅう、と呼気をまじえながら、宣告する。
 
 振り上げたナイフが、月の光を映して、鈍く光った。
239クロウ ◆KURou.eM :02/06/10 22:37
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>238

暴れる。
しかし、抜け出せない。

両腕が壊され、左眼を抉られ。
更に、降ってくる拳。
顔面が変形していく。
血に塗れ、視界が更に紅く染まる。

「……トドメだ、吸血鬼。首を、刎ねてやる」

何か、言っている。
聞こえない。

ぞぶり。

首に冷たい鋼が潜り込んで。

ごつん。

それが、頚骨を断った。
首を切断され、頭が転がる。
その瞬間、記憶が脳裏に爆発した。

 ――全て、思い出した。

「一つ、聞い・・てもいい・・です・・か?」

辛うじて出た掠れた声でそう言った。
240祁答院マコト(M):02/06/10 22:39
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>239
 ナイフが、白銀色の斬光を残して振るわれた。
 クロウの首と胴とが分かたれる。
 
 ――仕留めた?
 
 そう思った時、クロウの首が言葉を発した。
 先程までの鬼気すら溢れる感は薄れ、穏やかとも言える様子で。
 
 その言葉に、思わず頷いてしまった。
 不死の吸血鬼が、何を知りたいのか――ふと、気になったからかもしれない。
241クロウ ◆KURou.eM :02/06/10 22:42
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
【エピローグ:クロウ】

>240

「わたしと・・同じ体を、持つ、女・・・黒蜜がどう・・・なったか
 知って・・・います・・か?」

 知っているのだろうか?
 知らないのなら――

「彼女・・も送ってやって・・・ほしい」

 それから、

「わたし、は・・・先に逝く、と伝えて・・・」

 これで、いい。

瞼が自然と落ちて。

わたしは、存在する事を止めた。
242祁答院マコト(M):02/06/10 22:43
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
【エピローグ:マコト】
>241
 ……クロウ、いや九郎判官義経の末期の言葉。
 彼は、死を恐れることなく……受け入れた。
 ただ、黒蜜という女の事のみを気がかりに。
 
 彼と同じ、吸血鬼の女、黒蜜。
 
 ――いいだろう。
 
 立ち上がって、笑みを浮かべる。凄惨な、そして無邪気な笑み。
 ゆっくりとクロウの首に近づき……
 
 踏み潰した。
 
「お前の望み、叶えてやる」
 
 笑う。笑う。
 
「その女も、滅ぼしてやる……いや、夜族は全て……」
 
 血が喉元から噴き出すことも気にせずに。
 
「滅ぼす」
 
 白い月光の照らす下、いつまでも、いつまでも……笑っていた。
243祁答院マコト(M):02/06/10 22:47
クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
レス番纏めだ。
 
導入
>219>220
 
闘争
>221>223>224>225>226>227>228>229>230>231
>232>233>234>235>236>237>238>239>240

エピローグ
>241>242
 
 
・・・感想・意見等は、こちらにいただけると助かる・・・
http://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
>222
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父
 
殺った。
相手が動いた気配は無い。
さぁ、悲鳴を聞かせろ。
哀れな子羊が断罪される叫びの声を――――
 
だが、悲鳴は聞こえなかった。
避けられたか?と疑問に思うものの、相手が動いた様子は無い。
……動いて、いない?
やや間があって怪物は気付く。
 
騙されていた、という事に。
 
徐々に鮮明になる視界に映ったのは、空から舞い降りる一つの影。
 
「ザ、イ、ニン、メガ――――!」
 
右翼を深く切り裂かれ、落下が始まる。
今まで巨体を空中に保たせていた要因を失った怪物は、ただ地に堕ちるのみ。
だが、その目に宿る光はまだ敗北を認めてはいない。
 
縋るように伸ばした手が、ジェニーの右足を掴む。
ただでは死なない。その意思がさせた行動だった。
揉み合い、絡み合い。
二匹の異形は錐揉み回転しつつ、地上へと落下していった。
245遠野志貴 ◆sikiXlKk :02/06/10 23:31
>218 遠野志貴 vs 邑輝一貴(M) 「銀と蒼」

 『……縛』

 そう邑輝が言った途端、邑輝から何か大量の糸のようなものが俺に向かってきた。
 実際の糸じゃない。何かの術だ。

 しかし、『視える』限り、俺は『切る』事が出来る。

 走りながら少し右へステップ、右側の『糸』を『切る』。
 そうして『糸』をかわし、大きく踏み込む。
 俺は、邑輝の左腕の『線』にナイフを振るった。

 あくまで、殺すわけにはいかないから。
>244
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父

 掴まれた!
 パワーの差は身に染みている。その上、この状況は・・・
 捕らえられた野生動物そのままに瞬発力を発揮、神父の顔面に連続して突き蹴り。
 しかし喉を抉り、鼻柱を叩き折っても握力は衰えず、大地は回転しながら刻々と迫る。
 羽ばたくことは最初から考えていない。この重量を支えきれても、それはすなわち己の死。
 しかし神父はそんなことはまるで考えていないのか、ジェニーの翼をもぎ折らんとその巨大な左腕を伸ばす。

 だがそこに、翼は無い。
 その瞬間、ジェニーは人の姿に戻っていた。
 怪物の束の間の逡巡、嵩の減った右足を引き抜き、白い裸身がするりと把握を抜け出す。

「出来損ないは出来損ないらしく、地べたに戻るのね・・・」
 すれ違い様に囁き、その後頭部を蹴り付けて距離を離し――
 再び獣化したジェニーは、羽ばたきながら"それ"の墜落を見守った。
>246
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父
 
ごつ。
後頭部に鈍い痛みが走った。
獲物は既に手の内に居ない。
あとは一人で、落ちていくのみ。
 
落ちる。
堕ちる。
オチル。
 
どうしようも無い落下感と、無力感が身を苛む。
奴のような、神に逆らう罪人たち。
断罪される事無く我が物顔で地を歩く人間たち。
それを思い描くと、怪物の脳には憎悪が走った。
 
「ワレラガ、カミヨ――――!!」
 
神父に相応しく、祈りの声を叫び怪物は地上へと落下してゆく。
だがそれはキリストに捧げた祈りではない。
彼等のみの『神』に捧げた――――滅びの祈り。
 
地表へ叩き付けられた巨体は、機械部分を破壊され大爆発を起こす。
そして怪物はこの世を去った。
その後に、肉片の一つすら残さずに。
 
(ぺトレスク神父:死亡)
248名無しクルースニク:02/06/11 02:43
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
 
 
 ――止みそうで止まない小雨は、地上の悲劇を悼む天の雨――馬鹿な事を考えたなと、思い、
そうなのかもしれない、と思い直す。
 ランドローバーを降りたジャック・クロウは、瞼に触れた小雨に目を細めた。
 傘の下を吹き抜ける湿った風が、襟元のカラーを鬱陶しい程に濡らす。
 
「主よ。この世から貴方の元に御召しになったこの者を心に留めて下さい。
 洗礼によってキリストの死に結ばれた者が、その復活にも結ばれる事が出来ますように――」
 
 緩やかな向背の丘に作られた墓地を、老神父の祈りが静かに満たしている。
 参列者は警官、遺族、神父。何の変哲も無い葬式の光景であり、何の変哲も無いこの街の日常。
異質でありながら、それを当然として認識している悲劇――狂った螺旋を止める楔は、ここには無い。
 
 先日、街の郊外にて少女の刺殺体が発見された。
 公式発表では殺人。胸部の刃物による裂傷から、「前回と同じ」通り魔殺人だと思われる――
尚、「公式でない」情報が大多数であり、真実を知るにはゼロから情報を洗う必要性があった。
 ゼロから洗い直した。
 結果――首筋には例によって例の如く、妙な傷が残されていた、という事実の隠蔽。
 
 犯人は既に目星が付いている。ヴァルダレク伯爵――数百の時を生き、現代において尚も権勢を保つ
長生者。ヴァンパイア、ヴラド=ツェペシュの血統に連なる薄汚い吸血鬼。
 ヴラドが滅びた後も着々とその勢力を広げ、今やその影響力はこの国の中枢システムを侵すまでに
至っている。文字通り不死の存在である奴は、表向きには既に「死人」である事を逆に利用して、思う
ままにその権力による快楽を甘受している――どこまでも、救えない。
 吸血鬼。ゴミ。存在する価値の無い、ウジ虫共。
 苛付いた。
 誰もが知りながら、誰もが顔を背ける、この街の現状。スポンジケーキより穴だらけの統制と情報。
 つい先日――米国でフロスト一派がダンピール「ブレイド」に滅ぼされたと言うのに、今度はこちら、だ。
 
 彼は思う。
 どうして誰も歯向かわない? 命が惜しいから? 怖いから? いいや――戦う力が無いからだ。
ただ跪いて命乞いして、怯えて暮らすしか無いからだ――クソッタレ。
 イカレたこの街では、生きる価値の無い寄生虫共が安穏と暮らしている。ダニの街。ゴミの支配。
救い様の無い現状。腰抜けのお偉い様。無能に過ぎる警官。
 ああ、全く全く全くウンザリだ。
 
 肩を竦めると、6フィート2インチの偉丈夫は参列者を見回して目標を確認した。
 参列者の最後列、黒髪の青年が、静かに瞼を閉じて祈りを捧げている。参列者が去り、神父が去り、
小雨だけが墓石と大地を濡らし――しかし青年は微動だにせずに立ち尽くしている。
 クロウはゆっくりと歩み出し、傘を差す事も無く、滴が打つがままに身を置いているその青年へ、
249名無しクルースニク:02/06/11 03:03
>248
「君の魂が――」
「――迷う事無く主の御許に辿り着きますように」
「……ジャックか」
 
 青年が視線だけで振り返る。
 クロウは軽くその肩を叩いて抱擁すると、人気の無くなった墓地をぐるりと見渡す。
 この街では一際目立つ黒い瞳が、どこか虚ろにクロウを補足した。
 どこか遠く――別の場所を見ているような視線で、青年が言う。
 
「……彼女の死因を訊いたか?」
「……胸部裂傷による出血死。通り魔殺人の可能性が高く、警察は目下犯人を捜索中――
 だが、首筋には奇妙な傷が、胸には銀のナイフが突き立っていたにも関わらず、公式発表
 には一切触れられていない。理由は混乱を防ぐ為――こんな所か?」
 おどけたように肩を竦めるジャックに、青年の瞳が鋭く細められる。
「真実だと思うか?」
「まさか。連中お得意の事実隠匿さ」
「……俺は、ついこの間――初めて、この街に来た」
 
 青年の口調には、どこか虚ろに響く熾火のような憤怒が内包されている。
 自分より僅かに背の低いこの同業者の事を、クロウは少なからず知っていた。
 白い殲滅者――吸血鬼を狩り、バケモノを殺し、殺して殺して殺し続ける宿命の狩人。
苛烈なまでにバケモノを憎み、その生存を否定して回る存在。
 
 ヴァチカンから出向して来たクロウに一週間遅れての先日、彼はこの街へと姿を表した。
クロウと違って、今回の彼は純粋にこちら側の教会との交流を目的としていた筈だ。
 
 墓石を撫でて、青年は空を青いだ。
 額を覆う小雨が表情を覆い隠す。
 
「全く――どこまで救えない。俺も、連中も――どうして彼女を救えなかった、俺は」
「知り合いだったのか? あのシスターと」
 いいや、と青年は首を振る。
「昨日――最後の夜、ワインとパンを届けて貰った。……強い子だったよ。
 最後まで主への祈りを忘れなかった。最後まで自分から闇に落ちる事を拒んで、だから」
 青年は苦笑する。墓石を慈しむように撫でながら、
「俺は、間に合わなかった。……あの場に居てやる事が出来なかった。
 気付いた時には牙を覗かせたあの子が居て――出来る事なんて、一つしかなかった。
 理解出来るか? 俺が、苦しんでる彼女をラクにしてやる方法に何を選んだのか?」
 ああ、と思う。どうしてコイツがこんな場所に居たのか。
「――まだ人として死ねたなら、そっちの方が余程幸せだ。迷うのは――お前らしくもない」
「――かもな。俺らしくない」
 言って、青年はクロウに背を向ける。
 
「何処に――行く気だ?」
「……さあな」
 言わなくても、解っている。解っていた。俺だって、そうするだろうから。
 だから、告げる。
「ヴァルダレクの事なら、俺の方で調べが付けてある。――無闇に歩き回るな」
 ぴたりと足を止めて振り返る青年に、クロウは「やっぱりな」と肩を竦めた。
 何の目的も無くこの男を探していた訳じゃない。放っておいても同じ行動を取るのなら、
しっかりと動いて貰った方が良いに決まっている。
 オーケー、ウジ虫共。手前等はもうお終い。ゲヘナの底で泣いて叫んで命乞いしろ。
 ロックンロール。殺しの時間だ。
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>249
 
 蹄鉄の音が夜の静けさを破ってから随分と経つ。
 地響きと共に、黒塗りの馬車の一団が大通りを駆けて行くのである。
 四頭立て、或いは六頭立ての豪奢な代物は、今が昔日の中世だと云わんばかりに
我が物顔で突き進む。
 十台やそこらでは効かない。まるで王侯貴族の行列である。
 行く先は皆同じだ。
 馬車は全て、街外れの古城の門を潜った。
 
 街の住民は乗っているのが何であるかを知っている。
 「誰か」ではない。「何か」だ。
 
 だから住人たちの取る行動は皆変わらない。
 耳を塞ぎ眼を閉じる。戸締りをして寝室に篭る。
 ああ、忘れてはいけない。
 窓辺には大蒜を、山査子を飾らなければ。
 
 そんな物は奴らに効かない。伝承は何時も正しい事を遺すとは限らない。
 それでも。
 それでも奴らには、それくらいしか抗する術はない。
 古い古い城に集う、奴らには。
251名無しクルースニク:02/06/11 03:27
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>250
 
 
 赤い瞳。首筋の噛み後。死を懇願する少女。
 ――殺して欲しい。
 化物になったまま生きていたくはない。このままじゃ、私は、誰かを――
 ぼろぼろと涙を零しながら、幼いその顔を涙で歪めて、シスターは縋るように歩んで来た。
 
 歩み寄る少女を軽く抱き止めて――理性はその体を抱き締めてやろうとしながらも、本能は
懐から厚手のシースナイフを取り出していた。
 脳は、躊躇なく結論を弾き出す。
 
 ――解った。今から君を殺す。……ゴメン、救ってやれなくて。憎んでくれて構わないから――
 
 憎らしい程素直に疾った腕は、悲しい程静かに立ち尽くしていた少女の薄い胸板を貫いた。
静謐な空気を犯す、生の理からは歪み掛けた死臭。
 崩れ落ちる華奢な体を抱き止めて、泣きそうになって堪えた。
 既に生命活動を停止していたその口が、小さく紡いだ言葉は。
 
 ――ヴァルダレク。
 
 殺意のキーワード。その名を思い浮かべれば、一瞬で殺意が励起する。
 
 高速回転する大型のタイヤが、荒々しく小石を跳ね上げ、小枝を踏み降り、山道を疾駆する。
免許を持っているのかと問い正しくなるような運転で、クロウはハンドルを捌き続ける。
 文句でも言ってやりたかったが、そんな気分とは程遠かった。
 
「お前が犯人を――ヴァルダレクだって認識する確証は? まさか、自分で調べたのか?」
「……シスターが今際に言った」
 苦々しげに、クロウは唇の端を噛んだ。
「情報としては最上だな。それ以上無い証拠だ」
 
 荒い息を吐きながら、血の支配に抵抗していたシスターの顔が思い返された。
年端も行かない身で、強く主の栄光と正義と愛を信じ続けた彼女――
 人としての終焉を告げる為に振るった刃。
 元凶の名を告げて、彼女は。
 
 ――最後の最後で、彼女は、笑った。
 
252名無しクルースニク:02/06/11 03:29
>251
 
 クロウが思い切りアクセルを踏み込み、ランドローバーが無茶な勢いで加速する。
 文句を言おうとして、止めた。今は急ぎたい。
 助手席のサイドガラスから映り見える古城は、黒雲の中に在ってその異様を尚も強調しているように見える。
 人気の無い山道を下り、道とも思えない道をひたすらに走る。
 
「――結局、お前は俺に何の用が有って来たんだ」
「届け物だ」
 クロウは危なかしく片手でハンドルを切りながら、カソックの袷部分から封筒を取り出して放った。
受け取って、青年は首を傾げる。
「届け物?」
「教皇庁から、お前へのプレゼント。……「証拠は集まった。もう動いても構わない。――ヴァルダレクを消せ。
 集まって来た奴の関係者諸共、この地上から肉片一つ残さず殺し尽くせ」だとよ。
 事の詳細と、正式なお前の行動許可証だ。派手に殺せ」
「動いても――良いのか?」
「明日の夜、ヴァルダレクが自分の「子」の連中を集めてパーティーを開く。会場に人間は居ない。クズの祭りだ。
 ……装備はこちらで用意した。後処理は俺達が引き受ける。
 ――連中に血の裁きを」
 数回の瞬きの後、青年は微笑んで、
「愛してるぜ、相棒」
「……あのな。帰るぞ全く……父と子と聖霊の御名の元に――」
「――Amen」
 
 一度だけ遠雷が轟き、俄かに――遥か視線の先の忌城を浮かび上がらせた。
 ……あぁ、そうだ。シスター。君に捧げるよ。連中の屍と血を。
 君の痛みを、苦しみを、失った未来の重さを連中に叩き付けてやる。詫びさせてやる。思い知らせてやるから。
 ――皆殺しだ。
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>252

 一瞬の稲光が、瘴気を纏った様な古城の巨容を照らし出す。
 闇に息づく魔神の如きその体内では、一つの催しが饗されている。
 
 舞踏場は人の群れで溢れかえっていた。
 数百人に余るその人数を収容し、それでも狭いと云う印象を与えぬ巨大なホールである。
 壁一面の窓ガラスに映るのは豪壮な庭園だ。
 落とされた照明の中を、夜会服を身につけた紳士や淑女が影の様に行き交う。
 ある者は踊り、ある者は談笑する、ありふれたパーティの図。
 
 しかし違う。何か致命的な点で、この集まりは世にあるそれと隔絶している。
 そう思って彼らの足元を見た者は戦慄と共に気付く筈だ。
 床に落ちる影が無い事に。
 そしてもう一つ無いものがある。
 生命すらも。
 彼ら尽くは夜歩くモノたち――吸血鬼なのだから。
 
 更に一つ共通点を挙げるならば、全員少なくとも闇の生を歩んで一世紀以上を閲している事。
 死んだばかりの新生者(ニューボーン)と明確に区別される、所謂長生者(エルダー)である。
 
 青白い顔の美女、リジャ・ロットシュテインを前にして自信ありげに魔術理論を説く美少年は、
齢数百を数えるコンラッド・ヴァルカンだし、
 アーサ・ヴァイダ公爵夫人の姪、アニバスと前菜の生きた鼠の血を啜っているのは、
禿頭の奇怪な老人、サン・シモン勲爵士だ。
 
「ご入来の皆様。ご注目、ご注目」

 気取った調子で声を張り上げたのは元ルリタニアの騎士、ヘンツォー伯ルパートである。
 浅薄な二枚目調のこの男は、城主の執事役を仰せつかっていた。
 喧騒がやや静まってから、ヘンツォーは自信に満ちた口調で語り出した。
 
「さて、いと貴き血統に属される皆様。宴もたけなわとなって参りました。
 改めて乾杯をし直すと致しましょう。
 そして称えましょう。夜族の繁栄と、月に照らされた我らが栄光を祝して」 

 賛同の声の中、ヘンツォーは傍らに控える従者に顎をしゃくった。
 頷き何処かへ消えた従者たちは直ぐ戻ってきた。手に手に半裸の美少女や美少年を連れている。
 造作の整った顔立ちは、既にして妖魔どもの邪気に中てられたかのように項垂れている。
 舌舐めずりの音がした。
 誰かが、あるいは全員が立てたのだった。
254名無し:02/06/11 07:13
過去ログ全部みたいんですがお願いできませんか。
>254
>1 の参加者データサイトにあるよ。
256フィオ ◆Fio.RSac :02/06/11 12:48
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>187
 
歩を進めるフィオの前に手榴弾が落ちた。
「!?」
慌てて蹴り飛ばし、後ろに跳ぶ。と、同時に手榴弾が炸裂。
伏せたフィオの頭の上を爆風が通り過ぎた。 さらに頭を上げようとしたところに銃火。
そして駆け抜ける神父。柱の影に隠れた。
 
「フフフ・・・覚悟はいいですかぁ・・・?」
フィオはヘビーマシンガンを三点バーストに切り替えると断続的に撃ちながら距離を詰め始めた。
 
左手には手斧を持って。
 
『伯林の紅い雨』〜ベルガー&ヘイゼルvs天草四郎時貞
 
猫一匹通らぬ町の通りを、その男は歩いていた。
その姿は、明らかに東洋人の姿。
石造りの街に似合わぬその男は、
肉食獣のような目で、今宵の獲物を探していた。
 
反独隊による数々の作戦への妨害に業を煮やした上層部は、
幾つかの施策を施した。その一つに、東洋でかって行われた、
邪法の研究があったのである。
その結果再び生み出された人物の一人に、
彼らは目をつけた。その者の名は、天草四郎。
そして三度、天草は黄泉の国より舞い戻ったのである。
 
その次の日より、街は恐怖に支配された。
かって、『ジャック・ザ・リッパー』により支配された倫敦の様に・・・・・・
夜毎に生み出される惨殺死体に、
伯林の夜は死の町と化していった・・・・・・ 
 
そして天草は、街角に動く二つの影を見つけた。
最近、人が出てこずに退屈していたところだ。
少々、遊ばせて貰おう。
童のような無邪気な笑みを浮かべて、
彼はそれへと歩み寄っていった。
 
258ベルガー&ヘイゼル:02/06/11 13:23
『伯林の紅い雨』〜ベルガー&ヘイゼルvs天草四郎時貞

ベルガー&ヘイゼル・導入部

「しかし・・・なんで俺達は、こんな真夜中にここにいるんだ?」

それまで無言で歩いていた2人組の片方、”野犬”ダウゲ・ベルガーは、
横にいる女性、ヘイゼル・ミリルドルフにダルそうに聞いた。

「それは・・・ローン返す為に先生から依頼を受けて、内容を聞いて・・・ですわ。」

あっさり答えるヘイゼル。
その答えを聞き、呆れつつも会話を続けるベルガー。

「・・・順序が逆じゃないのか?バカヘイゼル。普通は内容聞いた後に依頼を受けるだろう!!
どこでどう習ったら、この世界で1番トンチキな答えだせるか聞いてみたいものだ。」

一呼吸置いてベルガーは続ける。

「だいたい数年前に倫敦で起きた連続異族殺人・・・あれは言詞塔砲(バベル・カノン)を撃つためだったが、
今回は目的も見えてこない、本気で世界で2番目に馬鹿な殺人鬼が快感得るために殺しやってるんだ。」

少し沈黙が続き・・・

「わかってますわ、でもそんなの悲しすぎます。被害者も、加害者側もです。
・・・私はこんな事件、早く終わらすべきだと思います!!」

語尾を強めつつも答えるヘイゼル。

「・・・はぁなんで俺はこんなガキに向かって『必ず名前を呼びに行く』なんて言ったんだろーと思うよ・・・。」

ため息をつきつつベルガーがその言葉を言った直後だった。
それは、トニーがいつものようにボビーの穴蔵でストロベリー・サンデーで
口の周りをべたべたにしていたときだった。
突如、酒場の扉を開け、一人の男が闖入してきた。
 
風変わりないでたちの男だった。
腰には見慣れない形の刀を佩いている。
 
男はまっすぐにトニーの下に歩いてくると、一言いった。
 
「トニー・レッドグレイブとは御主のことか」
「……そうだが」
「勝負願いたい」
 
言うなり男は腰の刀を一閃。
風を切る一撃を、しかしトニーは寸前で見切る。
 
「押し付けがましい奴は好みじゃないぜ」
 
言い放つと、背中に負った長剣を引き抜き、常人ならざる膂力で水平に斬りかかる。
260雷泥・ザ・ブレード:02/06/11 13:44
>259 vsトニー

 その常人では到底反応できるはずも無いであろう斬檄を、しかし、風変わりな男は大き
く身を屈めてやり過ごした。そのまま強く後方にステップを踏み、トニーと一定の距離を
とる。

「身勝手なのは百も承知……」

 男は低く唸るようにそう言った。

「御初にお目にかかる。某の名は雷泥。雷泥・ザ・ブレードと申す。闘う事だけを目的と
し、ただ、強さのみを求める、そういう馬鹿よ」

 男……雷泥はそう言うと、静かに手に持った刀を鞘に納めた。

「某は長い間、ただ強くなる事だけを考え、多くの人を斬ってきた……其れ故、人をうま
く斬る事には最早何の感慨も無い――――」

 静かに、ただ疲れたように。
 男の顔には、どこか疲れたような影があった。
 だが、次の瞬間。
 その疲れは何処かへと消え、それは強さを求めるサムライの表情へと変化した。

「だからこそ……だからこそ」

 先ほどと同じように、静かに、ただ呟くように。
 だがそれは、先ほどとは違い、ただ一つの事を、熱く渇望していた。

「某は人以外のものを斬ってみたい――――」

 男は刀の柄に手をかけると、低く腰を落とした。
 抜刀と呼ばれるスタイル。

「雷泥・ザ・ブレード。――――――参る」

 ただそれだけ言うと、雷泥は大きく一歩を踏み出し、人には到底出せないような速さで
トニーとの間を詰め、いつの間に抜刀したものか、右手に持った刀でトニーの胴へと斬
りつけた。
>260 vs雷泥

――速い!
驚嘆に胸を高鳴らせながら、それでも見切れないトニーではない。
数々の荒事を抜けてきた便利屋としての技量は伊達ではないのだ。
 
ひゅう、と口笛。紫電が轟くごとき剣閃を紙一重、長剣で受け止める。
重みがある分、雷泥の剣よりもトニーのほうが力は強い。
ぎりぎりと鳴る迫り合いに打ち勝ち、無理にはじいて太刀筋を変える。
 
「悪いね、俺は人間。化け物とやりあいたいなら」
 
間隙を逃さず、疾風怒濤の三連撃。
刃ではなく腹を使っているが、それでも当たれば死なないとは限らない、それほどの速度。
 
「ハリウッドにでも行ってくれ」
262雷泥・ザ・ブレード:02/06/11 13:48
>261 vsトニー

 風をも切り裂こうという三連撃を、体の位置をを巧みにずらしつつ、また、迫る刃を自
らの刀で弾き、その軌道を微妙にずらしていなす。
 ただ人斬りだけに生きてきた人生、この程度の剣で殺されるようならば、もう10年は
昔に雷泥は荒野の塵となっていただろう。

 だが、それでもギリギリではあった。
 手に持った刀に打ち付けられるその刃の速度は言うに及ばず、かかる力は常識を遥
かに逸したものであったから。

 雷泥は咥えた楊枝を落とさ無いよう器用に口の端を歪めた。

「ふっ……ならばそれでも良かろう。お主が強者という事に間違いは無い。ならば、某は
その理由だけで十分よ。強者を打ち倒し、我が剣をさらに高める事が某の悦びなれば」

 人を斬る事には何の感慨もわかないとは言ったものの。強者と闘い、それを斬る事は、
やはり、この男とは斬っても切り離せない性なのであった。

 そのまま、やはり人並外れた移動力を発揮して大きくトニーの右側面に回り込むと、そ
の余裕の表情を浮かべる顔に向かって、左斜め下から剣戟を浴びせかける。
>262 vs雷泥

その凄まじさ、まさに鬼気迫る剣戟。
トニーの反射速度をもってしても間に合わない。
一刀が豪と鳴って下腹を行き過ぎる。
 
「ちぃっ、また俺のニューコート……どうしてくれんだよ!」
 
しかし、その一撃をして、腹の皮一枚でとどめたトニーの技量も目を見張る。
代償として、お気に入りの赤いコートは横に真っ二つと化しているが。
 
目を怒らせたトニーは、それでも皮肉げに笑んでいる。
彼もまた、強者との対峙に悦びを見出していた。
 
袈裟懸け一閃。当然、そんな隙が大きい一撃が当たるはずもなく、一刀に受け流される。
だが、その合間にトニーはさらに間合いを詰め、インファイトに持ち込んだ。
右フックでフェイントをかけ、さらに続けざまにローからハイへ、踊るような蹴りの乱れ撃ち。
264雷泥・ザ・ブレード:02/06/11 13:51
>263 vsトニー

「ちッ!」

 雷泥は短く吐き捨てると、フェイントに振るわれた腕を左の拳で弾き、蹴りにきた足を
刀の柄の部分で次々と打ち据える。
 しかし、それでも流れるように繰り出される蹴りの連打には対応しきれず、その身は
蹴りの猛攻に晒されていた。

 そもそも、この距離は、雷泥の唯一無二にして頼る刀の間合いではなく、その刀身を
十分に振るってやる事は難しい。

――――――ならば、離すまでよ

 雷泥は口に咥えた楊枝を、トニーの目に向けて吹いた。
 それがトニーの目を串刺す事は無かったものの、目を庇う為に出来たその一瞬の隙に、
雷泥はトニーの腹を蹴りつけ、間合いを引き離すと、再び刀を鞘に収めた。

「………ふふふ……ふはは………はっはっはっはっはっはっはっは!」

 一頻り気が触れたように、だが心底愉快そうに哄笑を上げる。

「素晴らしいな、トニー・レッドグレイブ! 久方に心が震えるわ! 貴様ほどの強者、
久しくあわなんだ。なれば、某も最高の技を以って相手をするのが道理」

 またも柄に手をかけ、低く腰を落とす。
 これが雷泥の得意のスタイルである。
 ここから始まりここで終わる。

「次元一刀流、雷泥・ザ・ブレード……最終奥義を持って御相手いたす」

 一瞬の静寂。

 次の瞬間、その静寂を破り、雷泥は大きくトニーの右横に滑っていた。
 足に履いたローラーブレード。これが、雷泥の尋常ならざる機動力の秘密だったのだ。
 雷泥は、滑りながらトニーの背後に回りこむと、ローラーが軋むくらい強く踏み
込み、そのまま身体を回転させ、神速の勢いで刀を抜き放つ。

「次元一刀流奥義……二重星雲!」
>264 vs雷泥

「ちっ……」
 
格闘戦に慣れていないようだった相手を、そのまま畳み込んでやろうとしたが、
とっさの不意打ちで思わず距離を許してしまった。
せっかくの優位を手放してしまったのは痛い。
 
(さて、どうする……?)
 
ぺろりと舌をなめて考える。
剣での勝負で引けをとるとは思わないが、やはりあの驚異的な速度はあなどれない。
正直、分は悪いと言わざるをえないだろう。
なんとか機を見てもういちど懐に――
と思ったそのとき。
 
トニーの目ですら、追いきれなかった。
 
(なん……だと)
 
気づいたときには本能的に身体が動いていた。それでもなお遅い。
それほどの焔走る切っ先が、上体を真っ二つにかかっている。
避けきれない。
 
胸が斜めに、ばっさりと切断され、血を噴霧器のごとく噴き出す。
口から漏れる鮮血。呼吸のたびに床に漏れる。
流血沙汰は日常茶飯事のボビーの穴蔵も、これほどの血を見たことはあるまい。
しかも、その血はナンバーワンの腕利きトニーのものだ。
 
「はっ……ははっ、くそ。やるな、アンタ」
 
トニーの目がぎらつく。
膝は――折れない。
代わりに剣を再度強く握り締め、左手がホルスターの密造モーゼルにかかっている。
この期に及んで、トニーはまだ、とことんまでやる気だった。
266雷泥・ザ・ブレード:02/06/11 13:53
>265 vsトニー

「ほう……我が奥義を受けて未だ倒れぬのは、お主が初めてよ」

 雷泥は感心したように声を上げた。
 しかも、このような深手を負ってなお、この男は闘争心というモノを捨て去ってはいな
かった。

「ふっ……まだやる気か。そのような深手を負ってなお挫けぬその心、賞賛に値する。
ならば、某も今一度、最高の技をもって相手をしよう」

 雷泥は歓喜の色をその目に浮かべると、なお目をギラつかせるトニーに向けて、再び
腰溜めに刀を構えた。
>266 vs雷泥

モーゼルの銃口は今にも跳ね上がり、雷泥の額を貫く角度に至ろうとしている。
片や雷泥の剣も、再びの奥義を放つべく構えに入っている。
ほんのわずかなことが、二人の均衡を解き放ち、最後の決戦に向かわせんとするまさにそのとき――

「はいはい、やめとくれ」
 
酒場に、二人以外の声が響いた。
穴蔵の主、ボビーそのひとである。
 
「殴りあいもチャンバラもいいけどさ。ドンパチは勘弁しとくれよ、トニー。
二人とも出入り禁止にしちまうよ」
 
ボビーの言い分はもっともだが、鬼哭啾々たる対峙の場には似合わない。
だが、雷泥は戸惑った。あたりにいた他の便利屋たちが、徐々に苦笑いを浮かべていく。
そしてそれは、トニーにも言えることだった。
 
「どうせ勝負するなら、こいつはどうだい」

ボビーは白く濁った酒が入った樽を取り出し、どんと置く。
いつのまにか、その隣には通常の四倍サイズのジョッキ。
トニーは少し呆れ顔で、苦笑しながらジョッキを握る。
いまだ混乱の極みにある雷泥に、ひとことトニーが忠告した。
 
「死ぬ気で飲め。でないと、本気で死んじまうぜ」
268雷泥・ザ・ブレード:02/06/11 13:56
>267 vsトニー

 不意に突き出されたジョッキを無理矢理掴まされた雷泥は、手に持ったジョッキを見て
周りを見て、トニーを見て、そしてまたジョッキを見て、徐々に何がどうなったのかを理解
し始めた。
 そして、雷泥の頭がそれを完全に理解した時、彼は心底愉快そうに、大声を上げて笑
っていた。

「はっはっはっは! こんな愉快な事は初めてよ。そうさな、剣で雌雄を決したくもあるが
さような雰囲気にもあらず。ならば、かような勝負の決し方も、また粋よ」

 そして、再度グラスを握り直すと、ニヤリとトニーに笑いかける。

「それに……某も、嫌いでは無い故な」

 周囲からは歓声や野次が乱れ飛び、酒場は先程までの雰囲気はどこへやら、いまや
完全に酒場特有の喧騒に包まれていた。

「それでは……いざ、参る!」

 雷泥がそう言うと同時に、二人はその巨大なジョッキを傾けていた。
『伯林の紅い雨』〜ベルガー&ヘイゼルvs天草四郎時貞
>258 
 
ほう・・・・・・雰囲気こそ間が抜けてはおるが、
腕はなかなか立ちそうじゃな・・・・・・ 
 
天草は心の中でほくそえんだ。
今まで斬りに斬りまくってはきたものの、
ほとんどは闘う間も無く切り裂かれたものがほとんどであった。
だが、あの二人なら―――少しは楽しませてくれる。
そう確信めいた感じがあった。
 
髪の毛を数本引き抜き、径三寸ほどの環を作ると、
二人目掛けて投げつける。
こぶしを春の日の水車のようにゆっくりをまわしながら、
天草は声をかけた。
 
「よき夜だなあ。でうす様に血を捧げるには、あまりにもよき夜じゃ」 
 
無邪気な笑みを浮かべながら、ゆっくりと二人に近づく。
 
「どうじゃ、うぬらのその首、でうす様に捧げさせてくれんか?」  
 
目に見えぬほど黒い細い環は烈風に吹かれるような恐るべき速度で、
二人目掛けて舞ってくる―――
触るれば鉄さえも切る魔性の技、忍法髪切丸が二人に迫る。
俺たちの闘争記録ってやつだ。ほら。


>259 >260 >261 >262 >263 >264 >265 >266 >267 >268


まったく……このコート、気に入ってたんだぜ。
また借金が増えるな……
271ヤハベ:02/06/11 14:07
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>256

「おじさんはいつでもオッケーだよー!」
 隠れた柱の陰から言い返してやった。
 柱に次々と銃弾が命中するなか、オレは次の一手を考えていた。
 眼鏡娘の精確な射撃のせいで、柱の陰から出るに出られない。
 相手は少々抜けたところもあるが、優秀な兵士だ。
 なら、戦場では起こりえないこと、常識で判断できないことをやってのければ、隙が生まれるかもしれない。
 
 広い部屋を見回すと、絨毯の上に四つん這いになってその場から離れようとする男が目に入った。
 情けない男だが、少しはオレの役に立ってくれそうだ。
「ボス、どちらへお出かけで?」
 男の両脚に数発の7.62ミリ弾を撃ちこむと、やつは悲鳴をあげてのたうち回った。  
 意表を突いたオレの行動に、眼鏡娘はわずかな隙を作る。
 オレは柱の陰から飛び出し、出鱈目に弾をばら撒きながら女のもとへと走った。
272フィオ ◆Fio.RSac :02/06/11 14:58
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>271
 
(しまった!)
頭目に気を取られた隙にヤハベが柱の影から出てフィオ目がけて走ってきた。銃弾をばらまきながら。
「くっ!」
体勢を低くして銃弾をかわす。そしてヤハベの接近に合わせ、
「たあぁっ!」
フィオは手斧を振りかざした。
273ヤハベ:02/06/11 15:20
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>272

 眼鏡の女が振り下ろした手斧を、右手のPPsh41で受け止めた。
 火花が散り、重い刃はバレルジャケットに食い込んで止まった。
「へへっ、細腕でそんなモン振り回すか!気に入ったぜ嬢ちゃん!」
 そう言いつつ、左手に持ったPPsh41の銃身を女の持った銃に叩きつけ、オレの腹に向けられた銃口を
跳ねのける。
 返す刀、いや、返す銃身で相手の右肩を殴りつけようとした。
 
274ベルガー&ヘイゼル:02/06/11 15:34
『伯林の紅い雨』〜ベルガー&ヘイゼルvs天草四郎時貞
>269

ヘイゼルは風が斬れるのが見た。
いや見えるのは風の遺伝詞を斬りつつ迫る黒く、細い、何か。
そして、その奥に見える、奇妙な服を着た男。

「ベルガーさん!!」

叫ぶヘイゼル。しかしベルガーはその言葉を聞く前に腰に下げていた剣、
強臓式武剣”運命”を抜き目の前の空間を一閃。

<<運命はたやすく斬れない>>

パラパラと落ちる、黒い何か・・・髪の毛だ。

「髪の毛?今まで発見された死体もバラバラに切断されて・・・、まさか。」

問うヘイゼルを無視しつつベルガーは目の前に立つ奇妙な格好をした男に聞いた。

「よぉ・・・アンタが世界で2番目に馬鹿な殺人鬼か?」

275フィオ ◆Fio.RSac :02/06/11 15:37
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>273
 
がつん、という衝撃がフィオの右肩を叩いた。
「あうっ!」
右半身が沈む。右手からヘビーマシンガンが落ちた。
「痛いじゃないですかッ!!」
左手の手斧を離して腰のトンファーを引き抜き、ヤハベの右脇を狙って叩きつける!
『伯林の紅い雨』〜ベルガー&ヘイゼルvs天草四郎時貞
>274 
 
「ほう・・・・・・」 
 
天草は目を細める。斬人斬馬、触るれば鋼も斬る忍法髪切丸を、
ただ剣の一振りで斬り伏せるとは―――面白い。
今までとは比べ物にならぬほどの歓喜を与えてくれるであろう存在に、
天草の心は弾んだ。
 
街灯の明かりの下に、美少年が姿を現した。
水中花のごとく美しく、しかもまがまがしい妖気と殺気を
青白い炎のようにふちどらせて。
 
「馬鹿とな?それを言うなら馬鹿はうぬのほうじゃ。
 人の命の火が消える瞬間の輝きほど、美しいものはないぞ?
 それを知らぬとは・・・・・・愚かなことよのう」 
 
すでに男は剣を抜いている。にもかかわらず、腰の刀にも手をかけず、
ただフンワリと優雅な立ち姿のままであった。
 
「ならば教えてやろう―――甘美なる人の死の味をな」 
277ヤハベ:02/06/11 16:21
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>275

 右脇腹のあたりに、鈍い痛みが走った。
 眼鏡娘がそこを狙って、トンファーによる痛烈な一撃を見舞ったのだ。
 オレの口から苦悶の呻きが洩れそうになったが、それを強引に飲み込むと、脇腹にめり込んだトンファーを
右肘で押さえ込む。
 女は斧と銃を手放し、トンファーも封じられて無手になった。
 こっちは、まだ両手に機関銃を握っている。
 右手に持ったPPsh41は斧が食い込んで使い物にならないが、左手に持っているほうはまったく無傷
のうえ、弾も三十発以上は残っている。
 
 どちらが優勢かは、三歳の子供にだって判断できるだろう。
 
 オレは痛みで引きつった笑みを浮かべつつ、眼鏡娘の胸に銃口を突きつけた。
278ベルガー&ヘイゼル:02/06/11 17:06
『伯林の紅い雨』〜ベルガー&ヘイゼルvs天草四郎時貞
>276 

「・・・深淵帰りですね、あなた、そこまでして・・・なぜ人を?」

最初に口を開いたのはヘイゼルだった。
彼女は風水師・・・さまざまな遺伝詞を視る事ができる。植物や無機物、そして人も。

「深淵帰りで人を再生する場合は、魂に1つ、現世でやり残した悔恨を思い出させなくてはいけません。
その殺意と力・・・あなたはなんのために甦らされたのです?」

ベルガーはヘイゼルが前に出ようとするのを止め一言

「こういうバカにそんな事聞いても無駄だ、ヘイゼル。答えは出ない。
それに・・・向こうは早く始めたいようだしな。」

ベルガーは”運命”に精燃槽を入れつつ相手に寄って行く。

「さぁ・・・始めよう。」

<<運命は死者など甦らさない>>
279レッド・アリーマー:02/06/11 19:40
レッドアリーマー対ロゼット一行  DEMON,S CRUSEIDE
>174

捉えし少女の表情に気付かぬは、意識を少年だけに留めたが故か。

眼の端に映るは、一筋の閃光。
次の瞬間に感じるは激痛。肉を焦がす熱さと共に、衝撃が身体を抉る。
油断の代償というべき銃創から、真紅の血潮が飛沫を散らす。
全ては一瞬の出来事。だが・・・・・


「…あくまで足掻くか、『悪魔遣い』」
『それ』は一向に怯みはしない。
それどころか、禍々しい微笑を浮かべ向き直るのみ。

「…生憎だが、私を倒したくば…」
昏い双眸が、少女を睨む。
顔に邪笑を備えながら、重く冷たい言葉が響く。
「出し惜しみはせんことだ。」


そう吐き棄てると同時に、掴んだ少女を放り出す。
力を込め、地に叩きつけんほどの勢いで。
憎悪の視線を投げかける、少年の目の前めがけ。
280ロゼット&クロノ ◆AMENUx66 :02/06/11 20:09
vsレッドアリーマー
『紅の闘士』
>279
 
嘘ッ?!効いてない?!
私のゼロ距離での銃撃を受けても、奴は苦悶の表情を少し浮かべただけだった。
 
「・・・・・・くぅ!!」
 
奴の冷たいに射抜かれ、私の背筋が凍る。
と同時に―――
 
≪ぶおん!≫
「んな?!」
 
私の体が、投げ捨てられる!
 
「ぐぅッ!!」
 
地面にたたきつけられた衝撃が、傷口に響き激痛を走らせる。
 
「ロゼ・・・・!貴様ッ!!」
 
私に駆け寄りながら、クロノが奴をにらみながら歯をかみ鳴らした。
 
「出し惜しみ……ね!!」
 
私は、傷口を押さえながら奴を睨み付ける。
そして、左手で胸元の懐中時計を握りしめた。
奴に効きそうな武器は・・・・・『アレ』だけ。
だが、闇雲に撃ってあたるものではない。
なら―――――
 
「クロノ、『封印』解くわよ。」
「・・・・・・!!」
「いい!?
 二分!その間に決着つけなさい!!」
「・・・・・・・無茶言うよ、君も!!」
 
やれやれといった様子でクロノがかぶりを振る。
 
「出来ない?」
「・・・・・・やるさ!」
 
クロノの顔に浮かぶ、決意に満ちた表情。
私を安心させてくれる、その横顔。
 
「行くわよ!!」
「ああ!!」
 
がちり、と私は懐中時計のトリガーをまわす!!
281レッド・アリーマー:02/06/11 20:36
レッドアリーマー対ロゼット一行  DEMON,S CRUSEIDE

>280
「ようやく真の姿を見せるか、『罪人』よ。」
強き『魔』の気配を感じ、口の端が醜く歪む。その仕草は毒笑と例えるべきか。
「…ならば、我も見せねばなるまい。」
その呟きを皮切りに、真紅の体が激しく歪む。


「―我は旧く赤き悪魔―」
甲冑の如き光沢と質感を得、盛りあがる体躯。

「―爵位無き上位種―」
禍々しく鋭い棘が、爪が、姿を現す。

「―束縛なき戦鬼―」
並び揃うは、悪魔の証たる二対の尖角。

「我が名は、レッドアリーマー」
赤き魔物は躍り掛かる。その様、一迅の疾風が如く。
282フィオ ◆Fio.RSac :02/06/11 20:48
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>277
 
突きつけられた銃口にフィオの身体は凍りつ・・・かなかった。
右肩の痛みを涙ぐみながらこらえて瞬間的にクラシックマーダーを抜き、同じようにヤハベの胸に突きつけた。
「さて、ど、うします、用心棒さ、ん?」
痛みでとぎれとぎれになりながらもフィオは一歩も引かずに言った。
vsレッドアリーマー
『紅の闘士』
>281
 
クロノの姿が、少年のソレから青年の姿へと変わっていく。
同時に、私の体から何かが流れ出していくような感覚・・・・・・。
く・・・・ふ・・・・・・・。
悪魔でありながら尖角(ホーン)をもたないクロノは、普段は本来の姿をとれない。
変わりに、『契約者』たる私から『あるもの』を提供されることで初めて
本来の姿へと、本来の力を使うことができるようになる。
そして、その『あるもの』とは、私の『魂の時間』・・・・・・。
 
《レッド・アリーマー・・・・・・名前は知ってるよ》
 
クロノが、腕を高質化させながら呟く。
 
《ただ、闘う事だけを求め、強者を望み続ける『戦いの捕囚者』》
 
ギンという音すら聞こえそうなほど、鋭い視線をクロノは奴に向けた。
見慣れている私ですら、一瞬脅威を抱くほどの圧倒感。
 
《お前が、魔界(パンディモニウム)の刺客として来るというのは正直驚きだよ。
 けどね・・・・・・僕は、まだ貴様らに首をくれてやるわけにはいかないんだ!!》
 
そう叫ぶと、クロノは背中の黒い羽を大きく羽ばたかせる!
そして腕から数条の魔法弾を奴めがけてはなった!!
284名無しクルースニク:02/06/11 21:03
>253
 夜半まで降り続けた小雨は上がり、打って変ったような快晴が空を覆っている。
 道を行き交う人波。交わされる挨拶。長閑な風景。
 表向きに長閑なだけに、その反面を考えるだけで吐き気がする。
 遠く古城を望んだ街のカフェのオープンテラスで、クロウは焼くような陽射しに目を細め
ながらコーヒーを口に運んだ。
 
「場所は……見たな? あの古城だ。今夜が絶好のタイミング。
 ヴァルダレクが旧知の連中と新生者連中を集めて開くパーティーだ。
 ――その時なら、戦力次第で一網打尽にするのは容易い」
 
 解ってるよ、と呟いて、青年は懐から取り出した携帯の短縮をプッシュする。
数秒の間を置いて、
 
「――俺だ。…………あぁ、そうだ。今夜になる――ギターを忘れるなよ」
 不意に、その口が歪んだ。
「……誰だ?」
「最強の二人だ。街を十分で灰にする」
 首を軽く傾げて――クロウはそれ以上訊かなかった。
 カップをテーブルに載せると、
「――なあ」
「何だ」
「……死ぬなよ」
 
 
 淀む空には、黒雲の中で尚も映える、蒼い新円。
 軽く済んだ空気が、肺から全身を洗い流して行くような錯覚。
 夜の闇を跳ね除けるような純白のカソックに身を包み、背の半分程もあるゴルフバッグ
を背負って、青年は空を仰ぐ。
 時計に目を落とした。23:30。時間はピッタリ。
 この時間に足を運べば、ゲストとしては最高のタイミングだ。
 
 ランドローバーを降りた背に、ジャックの無遠慮な声が飛んで来た。
 
「片付いたら連絡を寄越せ。――良いな?
 必ずだぞ。面倒な死体処理なんぞ俺は真っ平だからな」
「解ってるよ。――そうだな、俺が帰ったらジグを踊れ」
 背からの声が、「馬鹿野郎」、の次に「生きて帰れ」を付け足し、青年は笑って歩調を速めた。
 心配してくれているのは有り難い。嬉しい。
 ――ああ、だから俺は連中をブチ殺せる。コイツ等を守る為になら――幾らでも。
 
「While the wicked stand confounded――」
 
 青年は歌う様に呟いて歩き出す。
 一歩。視界に迫る巨城には、しかし恐怖も威圧感も感じない。
 正門正面、二人の衛兵を遠目に確認して、口の端で笑った。
 
「――call me with thy Saints surrounded」
 
 ――シスターの魂に祝福を。俺の行く先には、ただ、連中の屍を。
 この魂が列聖される事は望まない。ただ、全ての子羊達に安寧を――
285名無しクルースニク:02/06/11 21:09
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>284
 
「ええと、ごめんなさいごめんなさい――俺、英語は苦手で」
「だから、何をしに来たのかと訊いて――」
「あぁ、ごめんなさいごめんなさい。ええと、だから俺――」
 
 大袈裟なジェスチャーを交えて話し続ける青年に、衛兵が良い加減うんざりと言う表情を向けていた。
 全身を白装束で包んだ黒髪黒瞳の男は、先程から取り留めのない会話で場内の様子を訊こうとして
いるらしい。
 成立しない無価値な会話を断ち切ったのは、しかし青年本人だ。
 
「ええと――あぁ、ここにヴァルダレク伯爵が?」
 
 淀み無い言葉で、青年が発声した。
 意味を捉えかね、漸く内容を咀嚼し、二人の衛兵の顔が一瞬で凍り付く。
 
「ああ、やっぱり」
 
 青年が微笑むのと、その手が白衣の内側から2丁のグロック20Cを抜くのは、一コンマの差も無い
閃電の速度だった。
 衛兵達の行動は、消失した頭部と共に永遠に途切れた。
 硝煙を引く二つの薬莢が、石畳に接触して軽く鳴く。
 
 黒雲漂う空の下、赤茶けた城の異様が精神的に悪い方向で映える。
 城の構造は極めて豪壮にして巨大。遠目には古くしか見えない城は、手入れと堅牢さだけで言えば、
正に城塞の役割を発揮する筈だ。
 
 大股で庭園を突っ切る青年の瞳が、視界の隅に二人の少年を捉えた。
 息を飲む、と言った表現がピッタリとくる程整った外見の二人が噴水と戯れている光景は、まるで写真
か絵画から切り抜いて来たかのようだ。
 しかし――と、意識はそこで反論して、現世から剥離した様なこの空間の矛盾を告げる。
 ここには吸血鬼しか居ない訳であり、つまり、この少年達は、
 
「サヨナラ、蛆虫」
 
 マズルフラッシュが、噴水を眺める少年を後頭部から飛散させた。
 重なる銃声が、友か兄弟か――同類の死の光景を目の当たりにして、無様に尻餅を付いたもう一人の
頭部を砕き、更に追随した数発の弾丸が二人を硝煙漂う肉片に変えた。
 
 ――これで良い。
 
 憐れにも堕ちた魂を救えた事に満足の笑みを浮かべて、青年は両開きの豪壮な扉の正面に立った。
 グロックを両手に携え、思い切り右足を扉に叩き付ける。
 砕け散る木製の取っ手。雷鳴のような轟音を立てて、扉が全開する。
 一瞬で会場の全ての視線を蒐集して、白の青年は口の端を吊り上げた。
 
「――Party is over!」
 
 緩やかに構えられたグロックが、静かに始まりを告げた。
286レッド・アリーマー:02/06/11 21:27
レッドアリーマー対ロゼット一行  DEMON,S CRUSEIDE
>283

『罪人』の視線、冷徹な視線が赤き魔物を貫く。
まるでその視線、その気迫だけで射殺すかのように。
だが赤き魔物は怯まない。否、その気迫すら糧にして、内なる闘争の炎を燃やす。
顔より滲み出る狂笑は、その最たるものか。

『罪人』の翼がはためき、その身を天空へと羽ばたかせる。
そして放たれるは光条。
『罪人』の手から撃ち出されし光弾が迫り来る。
これは囮、牽制の一手。
光弾が当たる寸前を見切り、上昇。
翼からひときわ大きな音が発せられ、赤き体躯が風を切る。
そのまま眼下の『罪人』を見据え、手に携えし鉤爪を振るう。
vsレッドアリーマー
『紅の闘士』
>286
 
《なんのォ!!》
 
クロノが奴の鉤爪を右手で受けとめた!
 
《その程度で!!
 自慢じゃないが、『100人殺し』と呼ばれたこともあるんだッ!!》
 
そう言うと、クロノは翼をはためかせて中へと舞う!
 
《こっちだ!!ついてこいよ!!》
 
そう叫ぶと、クロノは急速に上昇して空高く昇って行った・・・・!!
 
============================
 
「く・・・・任せるわよ・・・・・・!」
 
私は、クロノと奴とのやり取りを見ながら右肩の傷を止血する。
く・・・・・
縛り付けた包帯に、赤く血がにじむ。
 
「今の・・・・うちに・・・・・!!」
 
私は、車に戻るとクロノのパックから『ある物』を取り出す。
 
「は―――ァ――――」
 
ただ、それだけの行為が酷く体力を奪う。
早いとこ・・・・決めないとね・・・・・!!
私は、重い体を引きずりながら空のクロノの姿を見上げた。
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>285

 怒涛の火箭が生ける死人たちに襲い掛かった。
 コニー・コートニーの鼻から上が四散した。
 ジェリー・ダンドリッジの左胸に大穴が開いた。
 ジル・ド・レイは、抱き上げていた美少年ごと蜂の巣になった。
 銃弾を受け倒れ伏す連中の衣服はボロ布と為り、躯は吹き散る灰と化す。
 
 吸血鬼の真の死は、その経て来た年輪に応じた形を取る。
 つまり長生者の末路は例外なく灰燼である。
 全員合わせれば数千年分の死煙と交じり合い、濃密な硝煙はむせ返る程だ。
 
 ヘンツォーは噛み付いた美少女の胸元から口を離し、床に放り出した。
 悲鳴を上げる少女に構わず叫ぶ。
 
「何だ貴様は! 偉大なる神祖の血統に連なりし我らに弓引く不埒者、名を名乗れ!」
289レッド・アリーマー:02/06/11 22:30
レッドアリーマー対ロゼット一行  DEMON,S CRUSEIDE
>287

満月が地上を照らす中、二つの歪な影が姿を現す。
互いに身の丈ほどの翼を有し、
一方は氷の如く怜悧な眼差しで、
一方は炎を思わせる体躯に邪笑を浮かべながら。

一撃、 『罪人』の振るう斬撃が胴を薙ぎ、血の花が咲く。
一撃、 赤き悪魔の鉤爪が肩を裂き、肉を抉る。
一撃、 互いの拳が錯綜し、互いの皮膚を、肉を、骨を砕く。

繰り出される拳が、辛くも掴まれ握り潰される。
突き出される貫手が、牙に阻まれ噛み砕かれる。
月明かりの中で空高く、互いの爪を、牙を、体を用いて潰しあう。
それは、死の輪舞。
悪魔は鮮血の花を咲かせ、月下のもとに殺し合う。

vsレッドアリーマー
『紅の闘士』
>289
 
「く―――!!」
 
クロノの様子を見ながら、私は焦る。
単純に実力ではお互い互角。
だが―――『互角では不利』なのだ。
クロノが本来の姿を取り戻していられる時間は――そう長くない。
 
「もうすぐ時間が―――!」
 
私は、地面に膝をつきながら歯をかみ鳴らした。
く・・・・・・・そ!
たった数分なのに、酷く消耗している。
これが、クロノを『解放』する代価・・・・『魂の消費』。
 
「クロノ・・・・!!」
 
こんな時に見てるだけなんて!!
私は、幾度目かの二人のぶつかり合いを見ながら、手の中の『ソレ』を握り締めた。
291名無しクルースニク:02/06/11 23:20
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>288
 
「偉大? ヴラドの汚れた血に溺れたウジムシが?
 ハハッ――神祖? 時代錯誤も大概にしとけよ、骨董品」
 
 データで見た覚えのある吸血鬼が、無様に大声を張り上げている。
 青年は崩れ落ちた少女に視線を落として、皮肉な笑みを顔面に貼り付けた。
 チェンバーに一発を残したまま、悠然とマガジンをリリース。左手にグロックを
纏めて握ると、懐から取り出したマガジンを両の銃杷に叩き込んだ。
 
 会場に入った瞬間、マエストロにでもなった気分だった。
 白熱する脳髄。一気に沸点を越える血液。
 隅から隅まで――視界を埋め尽くすクズの群。
 
 火薬臭が鼻を付く。
 上向く銃口とキンキンと床で跳ね回る薬莢が、緩く硝煙を舞い上げる。
 弾雨の向こうで灰と散った数匹のクズを睥睨して、軽く鼻を鳴らした。
 主の恩寵を失った末路は、余りに憐れで愚かで救えない。
 左右の銃口が触れ合う程に重ねたグロックが、ゆっくりと交差してアイアンサイト
の奥に吸血鬼を補足する。
 嘲弄するような笑みを浮かべて、青年は静かに口を開く。
 
「主の御名と白の宿命の元に、俺がテメエ等クズを断罪する。
 ――名前? ……ク、ハハハッ!
 あぁ……怖い怖い狼が来たぜ、薄汚い子猫ちゃん達ッ!」
 
 吸血鬼への返答は大量の弾幕。
 交差する両の手先で輝くマズルフラッシュが、視界正面180度を薙ぎ払った。
>247
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父

 眼下に爆発を見ながら、離れた路地裏に降り立つ。
 後始末は誰かがやるだろう・・・

 背後から人影が近づいてくるのに構わず、ジェニーは人の姿に戻った。

「派手にやったものだな」
 闇の中から現れた偉丈夫――ガドウ。
 裸身を隠しもせずに視線を送るジェニー。
 その催促するかのような態度にガドウはわずかに苦笑、ジャケットを脱いで着せ掛ける。

「私のせいじゃないわ。そちらは?」
「残党は大方制圧した。なに、たいしたことは無いさ」

「そう―――― どう? これから少し付き合わない?
 月も綺麗だし、帰ってお休みなさい、という気分じゃないのよね」
「あいにくだが、事後処理が忙しくてな。副官に任せきりにするわけにもいかない」
「あら、レディの誘いを断るわけ?」
「そういうわけじゃないが――」

 困ったように頬をかくガドウにぴんと来る。今夜の副官とやらは、どうやら彼の娘らしい。
 さすがに、娘の前では憚られるようだ。

「そう、残念ね。――これはお借りするわ。娘さんに、よろしく」
 ジャケット(と、中に入ったサイフ)を羽織ったまま、ジェニーは歩き出す。

(とりあえずドレスを買って・・・そうね、誰か見つかると良いのだけれど)
 月の光と、熱の入らなかった殺し合いで、どうにも体が半端に熱い。
 夜の行方に想いをはせながら、ジェニーは街の灯の中に姿を消した。

(了)
ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父 レスまとめ

>87>88>90>94>97>101>104>107>113>117>120>125>129>132
>177>179>180>181>183>184>185>217>222>244>246>247>292

夜の空も、いいものよ。
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>291
 
 断罪の猛射を受け、新たな絶叫と古き死が量産される。
 またもや生じた粉塵の向うから軍服姿の長生者が二人、躍り上がった。
 倣岸そうなエツェリン・フォン・クラトカと、まだ若々しい容貌のマーティン・クーダである。
 双眸を朱色にたぎらせながら、フォン・クラトカとクーダは白い狩人へと馳せ寄る。
 吸血鬼の身体能力を生かした跳躍で一気に距離を詰め、そして閃くのは銀の光。
 腰から引き抜いたサーベルの刃が、左右から狩人を襲う。
295遠野秋葉 ◆La2AKIHA :02/06/12 00:05
<遠野秋葉vsアセルス>
 ――――さて、それじゃあいただきます。
     
 ――――さよなら、兄さん
 
 兄さんの身体が瞬く間に私の檻髪によって、焼失していく。
 
 ――ドクン
 
 と兄さんの最後の鼓動を確かに聞いたような気がした。
 
「くすくす、ふふふふふふ……」
 
 ああ、愉快だ。
 自然と口から笑い声が漏れてくる。
 
 思えば、最初からこうすべきだったのだ。
 もう、これで兄さんは永遠に私のもの……
 
 ――兄さん、最後の瞬間、後悔しましたか?
 ――それも、兄さんが秋葉を選ばないから、悪いんですよ?
 
 
 こんなに自由で愉快なのは生まれて初めて……
 兄さんも手に入れた今、何も躊躇することはない。
 
 明日から、どうしようか?
 遠野の権力を使って、毎日、生贄を持ってこさせてもいい。
 遠野グループの前身の斎木グループの総帥がやったように……
 まだ見ぬ犠牲者の悲鳴や喘ぎを想像しただけで胸が高まる。
 
 とりあえず、遠野邸に帰ろう。
 暇つぶしに翡翠を略奪して、楽しむのもいいかもしれない。
 あの人形のような翡翠を壁に磔にして、指の一本一本から略奪していき、
 耳元で兄さんと琥珀の死を告げる。
 
 きっと、翡翠はとても『いい表情』をしてくれるだろう……
 
「翡翠、楽しみにしてなさいね。たっぷり、可愛がってあげるから……」
 
 
 カタンという音……
 
「……?」
 
 私は物音のした方に振り向いた。
 そこには……
 
 ――蒼い髪の凛とした雰囲気を纏った少女が立っていた
296ヤハベ:02/06/12 00:23
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>282

 オレが眼鏡娘の胸にPPsh41の銃口を突きつけたのとまったく同時に、オレの胸に拳銃の銃口が向けられた。
 西部劇のクイックドロウ顔負けの速さで、女が古風なリボルバー式の拳銃を抜き放ったのだ。
 オレの優勢かと思われた状況は、一瞬のうちに均衡状態へと変わっていた。
「ハハハ、そんな物騒なモン向けられちゃかなわんな」
 女の眼を見ながら、オレは柔らかな声で言った。
「オレは臆病者なんだよ。相打ち覚悟で引き金を引く度胸なんてありゃしねえ」
 ゆっくりと、女の胸に向けられていた銃口を下へ逸らしていく。
 そのまま、両手に持った二挺のPPsh41を同時に床に落とした。「あんたの勝ちだ」

 女は、オレがあっさりと降参したことに呆気にとられたような表情をしているが、まだ油断なく拳銃を構えていた。
「撃つなよ、手を上げるから。いや、嬢ちゃんには負けたぜ」
 垂らしていた両手を、ゆっくりと上げる。
 
 手が、頭の高さまで上がった。
「ほんと・・・」
 指先が、帽子の鍔に触れた。
「脱帽だぜ!」
 次の瞬間、帽子はオレの頭を離れ、女の握った拳銃のシリンダーに、鍔を食い込ませていた。 
297名無しクルースニク:02/06/12 00:31
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>294
 
 まるでオモチャのような両手のグリップ。
 吐き出される銀弾は、確実に悪を死滅させて行く。
 新たに一人の貴族を灰に帰した所で、殺意の反応に青年の体が翻る。
 
 左右から降り注ぐ悪意の旋風。
 早く、鋭く、力強く――しかし、余りに愚か。人間と侮ったか、剣先には鈍りがある。
本能に刻まれた己の力への確信か、はたまた技量の不足か――ソレは致命的な隙。
 交差した両手が、雷光の速度で両側へと開く。
 指先が、その姿を霞む程の勢いでトリガーした。
 左右の吸血鬼の額と胸部と首へ、合計32発。
 一列に踊る10mmAutoの空薬莢がテーブルのスープの中にダイブする。
 
 政府中枢で軍の利益を貪るフォン・クラトカの欲望は、弾けた脳漿と共に永遠に
沈黙する。ヴラドに付き従っていた仮初めの少年は、その姿のままに銀毒と弾丸エ
ネルギーに朽ち果てた。
 
 グロックを投げ捨てると、青年はゴルフバッグのジッパーに指を掛ける。
 冷気の殺意を帯びた瞳が、標的を固定した。
 クラトカの背後、少女を抱えて背を向けたヴァンパイアの女。
 
「あぁ、は、ははぁ――ハハハハッ! 逃げないでくれよ――奥様ぁッ!」
 
 瞬間、青年の体が、限界まで引き絞られた弓と化す。
 ゴルフバッグから引き抜いた長さ一m余のセイヨウサンザシの杭を、
青年は槍投げの体勢で思い切り投擲した。
 肉を裂く音が響き渡る。
 大型の杭打ち機で射出されたが如き勢いで、杭の先端は女の腎臓を潰し、腸を裂き、
臍までを貫通してその直線状の少女の頭蓋を骨片と肉片に変えていた。
太い杭はストッパーとなって、二つの肉隗を固定する。
 二人の体を勢いで引き摺り、杭は40度の角度で床に突き刺さった。
 清浄の力が肉体を蝕み、二つの肉隗は、足掻きながら灰へと帰って行く。
 
「は、ハハッ! ク――く、ハハハハハハハハハハハッ!」
 
 額を抑え、青年は高々と哄笑を上げた。
298アセルス ◆AseLLUSs :02/06/12 00:35
>295 遠野秋葉VSアセルス
 
―――それは、ただの偶然か。
   それとも何かが引き寄せたのか。
 
その日私は、街に出てきていた。
なんでもない、いつもどおりの事をするために。
だが、ある場所の前を通った時・・・ある種の感覚が、私の中に走った。
 
―――魔の力。それもおびただしいほどの。
およそ、こんな人間の街中で感じられる力ではない。
 
思わず私は、その力が感じられたほうを見た。
 
・・・それは、ただの学校“だった”。
無数の赤い糸が張り巡らされ、まるで結界の様相を呈した学校。
 
ただ事ではない。いったい誰が・・・何が、この力の主なのか。
・・・気がつけば私は、その学校に侵入していた。
 
そして―――見た。
 
 
赤い髪をした少女が、一人の少年を失くしたところを。
299遠野秋葉 ◆La2AKIHA :02/06/12 00:38
<遠野秋葉vsアセルス>
>298
「……あら、こんばんは」
 
 少女に向かって、微笑を浮かべて、そう挨拶をした。
 
「いい夜ですわね。ところで、あなた、何か御用かしら?」
 
 ――?
 
 この少女、どうして此処にいるのだろう。
 
 通りすがりにしては不自然……
 そもそも、この学校には立ち入れるようには……
 
 
 ――ドクン
 
 
 ああ、なるほど。
 きっと、彼女は新しく生まれ変わった私の為に来てくれたのだ。
 その血と肉とイノチ……
 
 それを私に捧げる為に……
 
 なんだ、それなら、何も不自然なこと、ないじゃない……
 
「なるほど……。歓迎しますわ……」
 
 私の呟きと同時に少女の側の机が消失した。
 
「さて、わざわざ来てくれたんですもの。歓迎しますわ。ああ、精一杯、逃げ惑ってくださいね……」 
 
 笑みをたたえて、少女に告げる。
 
 ――そう、まだ夜は長い
300アセルス ◆AseLLUSs :02/06/12 00:58
>299 遠野秋葉VSアセルス
 
―――何なんだ? この少女は・・・
先ほどと同じように、今度は私のそばにあった机を消失させた。
その赤い髪を、一瞬で机にまとわりつかせて。
 
こんな力を持った奴がいるなど、聞いたことがない。
一瞬で物を消失させるなど・・・
 
歓迎すると、その少女は言った。
その言葉の意味・・・言うまでもない。
あの少年と同じように私を消すというのだろう。
 
ならば・・・その前に、殺さなくては。
 
「逃げ惑え、だと・・・?
 悪いな・・・そういうわけには、いかない」
 
私は幻魔を引き抜きながら、不敵に微笑んで見せた。
そう、私は敵に背中を見せるわけには行かない。
たとえそれが、どのような敵であろうとも。
301遠野秋葉 ◆La2AKIHA :02/06/12 01:22
<遠野秋葉vsアセルス>
>300
 
『逃げ惑え、だと・・・? 悪いな・・・そういうわけには、いかない』
 
 生意気な…!
 狩られる哀れな獲物の癖に身の程を知らないにも程がある……!!
 
「あなた、少々、口の聞き方がなっていませんわね……!」
 
 キッと少女を睨みつける。
 私の怒りに呼応するかのように私の朱い髪がゆらめく。
 
「少し、ご自分の立場というものを教えてさしあげないとね……!」
 
 朱い髪―檻髪が奔流となって、少女を襲う。
 無論、これで殺すつもりは毛頭ない。
 そう、少し、教育してやるだけだ。
 
 檻髪が少女の左手に絡みつく。
 途端、少女の左手はその機能を失った。
 
「これでも、逃げ惑わないの? 私、これでも手加減してるのよ? 本気になればすぐに終わってしまうから……」
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>297

 新生者の少女ごと灰になるペルレ・フォン・マウレンの姿に、残りの長生者たちは色めきたった。
 牙を剥き、爪を尖らせ、一斉に殺到しようと身構える。
 と、ヘンツォーは片手を上げた。
 それだけで吸血鬼たちは動きを止めた。場は静けさを取り戻す。
 奇妙な静寂の中、ヘンツォーは馬鹿にした様に鼻を鳴らした。
 
「その白装束。貴様があれか、下賎なる白い狩人とやらか。
 大層好い気になっているとは耳にしたぞ。小物の端々を狩っただけでなあ」

 浮かべた冷笑を消し、ヘンツォーは吐き捨てる。

「ハッ! ただ一人の仇敵も永劫に斃せん無能者。
 貴様程度に敗れた小物と真なる古き存在は違う。それを存分に教えてやろう!」
 
 ヘンツォーの目配せを受け、夜族の群れから一歩進み出た美少年、コンラッド・ヴァルカンは
右手を翳した。
 
「イェー・ホー・ワゥ!」
 
 唱えた<風>の神名により、ヴァルカンは空間そのものを振動させる。
 身に纏うタキシードの裾がはためく。――風だ。
 次の瞬間、不可視の気が爆発した。
 
 地に降りかかっていた粉塵が攪拌され、宙を舞う。床が腐食して行く。
 ヴァルカンが喚びよせた魔風、それは見えぬ渦を巻いて白い狩人へ吹き荒ぶ。
303アセルス ◆AseLLUSs :02/06/12 01:58
>301 遠野秋葉VSアセルス
 
怒りの言葉とともに、赤い髪の少女が私を見据える。
同時に、その髪が奔流となって襲い掛かってきた。
 
(速い―――!)
私はとっさにその髪を幻魔で斬ろうとするが・・・その速さは私の予想を上回っていた。
結果・・・その髪を切り落とすより一瞬早く、私の左手は“死んだ”。
まるで張りぼてか何かにでもなったように、まるで感覚が無い。
 
確かに、これは恐ろしい力だ。
だが・・・私は、どうあっても逃げることは出来ない。
すべきことはただ・・・目の前の障害を、排除する。
ただその一点のみ。
 
「ふ・・・手加減だと? だったら・・・本気でかかってこい!」
 
そう叫び・・・次の瞬間、私は彼女の背後に転移し即座に斬りかかった。
転移に集中する時間は充分。失敗などありえない。
―――余裕を見せていたことを呪うがいい!
304フィオ ◆Fio.RSac :02/06/12 02:18
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>296
 
フィオが気付いた時にはクラシックマーダーは既に銃としての役目を果たせなくなっていた。
「あ・・・う・・・」
右腕が痺れている。無理がたたったのか・・・。
即座にフィオは床に転がっているヘビーマシンガンに手を伸ばした。
305遠野秋葉 ◆La2AKIHA :02/06/12 02:26
<遠野秋葉vsアセルス>
>303
 
『ふ・・・手加減だと? だったら・・・本気でかかってこい!』
 
 少女がそう叫ぶと同時に私の目の前から消えた。
 
 一瞬後、背後に気配。
 普通なら、致命の瞬間。
 けれど、私は身を護る必要も、避ける必要も無かった。
 
 そのまま、背後の気配は硬直する。
 
「あら、どうかなされたのかしら?」
 
 振り返って、少女に問い掛ける。
 
 少女の……
 
   右手が……
                     左手が……
      右足が……
                  左足が……
 
 檻髪に絡め取られて、動けなくなっていた。
 そう、私は身を護る必要すらない。
 私に害意をなす者は全て、檻髪が絡め取る。
 
「瞬間移動ですか……。中々、立派な手品ですわね? けれど……」
 
 檻髪で拘束した少女をそのまま持ち上げて、空中に磔にする。
 
「私の方も中々、立派な手品でしょう? 何もないのにこうやって、あなたを空中に磔にできるんですもの」
 
 少女をそのまま、壁へと叩きつける。
 
「何をして無駄だと理解したかしら? では、今から、じっくりと嬲り殺して……」
306遠野秋葉 ◆La2AKIHA :02/06/12 02:27
>305
 ドクン……
 
 
 あれ?
 私は何をしているんだろう?
 
 目の前に苦悶の表情を浮かべた少女が倒れている。
 
 それはそれで大した事だが、それ以前に何故、私は此処にいるのだろう……?
 
     脳裏に唐突に浮かぶのは兄さんの顔
 
 ――アア、ソウダッタワネ
 
 私、兄さんと待ち合わせをしていたんだった。
 
 目の前の少女のことも気になるけれど、兄さんを待たせるわけにいかない。
 いつもいつも、時間に関して、口うるさく言っているのに、肝心な時に私が遅れてしまってはどうしようもない。
 
 兄さんは私が遅れても、きっと苦笑しながら、何事もなかったようにしてくれるだろう。
 うん、それもいいかもしれない……
 
 けど、やっぱり、特に遅れる理由はないし……
 だったら、さっさと兄さんのところに行こう。
 
「……兄さん、今から、行きますからね」
 
 そのまま、私は少女を尻目に教室を出た。
307アセルス ◆AseLLUSs :02/06/12 02:54
>305>306 遠野秋葉VSアセルス
 
「な・・・っ!?」
空間転移による背後からの強襲・・・
にもかかわらず、私はその斬撃が届く前に四肢を彼女の髪に絡め取られていた。
そのまま貼り付けにされ、ぎりぎりと締め上げられる。
 
まさか・・・まさか、こんな所で、この私が―――
そんな屈辱の思いが心中を満たしたとき。
 
 
・・・不意に、その拘束は解かれた。
そのまま、床の上に倒れこむ。
 
顔を上げると・・・少女は、先ほどまでとは別人のようになって教室から出て行こうとしていた。
たった今まで殺そうとしていた私など、眼中に無いかのように。
 
「くっ・・・この」
 
私は四肢が痛むのなど構わずに立ち上がり、再び空間転移を行った。
教室を出て行こうとするその少女の前へと。
そして、幻魔を彼女へと突きつける。
 
「待て・・・どこへ行く気だ?
 この私にここまでしておいて・・・舐めるのも、大概にしてもらおうか!」
 
言い放ちながら一歩踏み込み、その左腕目掛けて突きを繰り出した。
・・・この左手の代償、支払ってもらう。
308遠野秋葉 ◆La2AKIHA :02/06/12 03:15
<遠野秋葉vsアセルス>
>307
 廊下には月の光が差し込んでいる。
 響くのは私の足音のみ……
 ただ、ひたすらに静かだ……
 
 そこに突如、現れる一つの影……
 先ほどの少女だった。
 私に剣を突きつけ、
 
『待て・・・どこへ行く気だ? この私にここまでしておいて・・・舐めるのも、大概にしてもらおうか!」』
 
 直後、左腕に鋭い痛み……
 少女の鋭い突きで私の左腕は大きく抉られていた。
 飛び散る鮮血……
 
 何故、こんな目に私があっているのだろう……?
 私は兄さんに会いに行こうとしているだけなのに……
 
 血で私の上半身が濡れている……
 
 ああ、いけない。
 こんなに穢れていては、兄さんを心配させてしまう……
 
 
 ――ドクン
 
 
 数日前の居間でのお茶会。
 兄さん、琥珀、翡翠との取りとめのない会話。
 
 あ、そうだ。
 お茶の時間だ。
 行かないと……
 
 琥珀、今度はどんな紅茶を仕入れているかしら。
 
「すいません、そこをどいてくれますか……?」
 
 目の前に立ちふさがる少女を檻髪で拘束し、そのまま教室の方の窓ガラスへと放り投げる。
 派手にガラスが割れる音がしたが、そんなことはどうでもいい。
 
 あの平穏な時間こそが、遠野秋葉への幸せなのだから……

「又、兄さん、寝坊かしら? いい加減にしてほしいわね……」
 
 そう小言を呟く私の顔に知らず知らずに微笑が浮かんでいた。
309アセルス ◆AseLLUSs :02/06/12 03:30
>308 遠野秋葉VSアセルス
 
・・・今度はあの髪にやられることなく、私の剣は彼女の左腕を抉っていた。
こいつ・・・本当にやる気を失くしたのか?
思わずそう思ったとき。
 
慎ましやかな台詞とともに、私は体ごと教室の窓へと投げつけられていた。
盛大な音とともに、机の立ち並ぶ教室を転がる。
 
「く・・・本当に、何なんだいったい・・・」
全身の鈍い痛みを堪えつつ―――もっともすぐに再生して痛みは引いたが―――立ち上がり、
再び教室を出る。
 
「だから、待てと言って・・・」
 
言いかけたところで、ふとあることに気づいた。
彼女は確か、兄がどうこうといっていなかったか?
だが先ほど消失した少年・・・彼女は、確かあれを兄と呼んでいたはず。
兄を自ら殺すことについては、私はなんとも思わなかったが・・・
 
「お前・・・どこへ行く気なんだ?
 お前の言う兄は・・・さっき、お前自身が殺したんじゃなかったのか?」
 
私は思わず、そんなことを口走ってしまっていた。
初めまして。
俺の名はミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク。
「トライガン(マキシマム)」に出てくる異能殺人者だ。
俺も参戦を表明しよう。

俺の主な攻撃は、愛用のサックスから出る衝撃超音波だ。
物体の固有振動と共鳴を利用して、内部から破壊することができる。
あらゆる音を聞き分けたり、一定の範囲を完全な無音状態にすることもできる。
「音界の支配者」の異名は伊達じゃない…ってところだな。
参戦しといてなんだが、俺の目的は「生き残ること」だ。
そのためなら、吸血鬼や悪魔とでも手を組んでやる。

あまり来ることができないかもしれないが、よろしく頼む。
俺のテンプレだ。

名前:ミッドバレイ・ザ・ホーンフリーク
年齢:20代後半〜30代だ
性別:男性だ
職業:暗殺者をやっている
趣味:サックスの演奏だ。サックスに限らず、音楽ならなんでも好きだな。
恋人の有無:いないな
好きな異性のタイプ:音楽に理解のある人・・・か
好きな食べ物:特に無いな
最近気になること:チャペルが妙な動きを見せている・・・
一番苦手なもの:常識を超越した化け物だ。・・・ここにいる奴の言う言葉ではないな。
得意な技:“音”を利用した攻撃だ
一番の決めゼリフ:ここからのギグはメンバーシップオンリーだ
将来の夢:ごく普通の生活・・・だな
ここの住人として一言:初心者だが、よろしく頼む
ここの仲間たちに一言:俺を殺そうとするなら、相応の覚悟をしてもらうぞ
ここの名無しに一言:俺の演奏に酔ってもらえたら幸いだ


312レッド・アリーマー:02/06/12 21:36
レッドアリーマー対ロゼット一行  DEMON,S CRUSEIDE
>290

互いの命を削りし中、その感情は湧いて出た。
それは、『罪人』の眼に浮かぶ、焦燥の念。
それはほんの僅かな迷い。
だが迷いは隙を呼び、その隙が敗北と死を招く。

焦りに駆られた『罪人』は右腕を、我が身を進め相手を狙う。
だが、焦燥の名の下に放った一撃が仇となる。
『罪人』の放った貫手が迫る中、赤き魔物はその身をずらす。
只の半歩、只の一寸もかからない僅かな間。

刹那

肉を抉る鈍い音が辺りに響く。


「…無様だな。」
肩に突き刺さった貫手もそのままに、赤き魔物の一撃が『罪人』の体を貫いていた。
(焦りに駆られ、)
赤き顎から放たれた、灼熱の魔弾が相手の体を焦がし、爆ぜる。
「勝てるとでも思ったか?」
爆音の余韻が残る中、『罪人』は地上を目掛け、只、堕ちる。

「…終わらせるぞ。『罪人』よ。」
地上へ堕ちる哀れな敗者を見下して、赤き魔物は空より降り立つ。
『罪人』を屠るため、闘争の輪舞に幕を下ろすために。
vsレッドアリーマー
『紅の闘士』
>312

「クロノッ!!」
 
クロノが爆圧に吹き飛ばされる形で地面めがけて落ちる。
無論、クロノとてそれでやられる事はない。
肩口から噴出す血を抑えながら、何とか激突直前で体勢を立て直した。
 
≪くッ!!もう・・・時間が・・・ッ!?≫
 
だが。
シュウシュウと音を立てながら、クロノの体が縮んでいく。
そして。
 
「こんな時にィッ!!」
 
クロノは、普段の『子供』の姿へ戻っていた。
それを狙い、奴が急降下しながらクロノに迫る!!
容赦ない、『確実に』止めを刺しうる殺意が!!
――――させるかァッッッッ!!
 
「おぉぉぉぉ!!」
 
私は、叫びながら手の中の『ソレ』を地面へと突き立てる!!
 
《こォォオォォォォォッ!!》
 
同時に展開される十文字の光の結界・・・・・
十字結界。『反響体(エコーズ)』を利用した対死霊・悪魔用捕縛結界が、
奴を捕らえる!!
 
「何もしないで指くわえて見てるほど、頼りないわけじゃないのよ?!」
314名無しクルースニク:02/06/12 22:30
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>302
 
 殆ど、脊椎反射で顔面を庇っていた。
 体さえ巻き上げるような愚風が、周囲の遮蔽物を巻き込んで渦を巻き、破壊の意思を
貼らんで孕んで荒れ狂う。
 悠然と片手を上げる少年を中心として、時ならぬ風が空間から漏れ出していた。
 
「魔術師? ハッ、何処までも下らないゴミが……
 人のプライベートに口突っ込んでくれてんじゃねえよ、クソ野郎!
 クドラクは――あぁ、ヤツは、少なくともお前よりは強いよ――!」
 
 懐へと手を伸ばして駆け出して――本能が凄まじい勢いでエラーを弾き出した。
 息を飲んだ。
 急制動を掛けた両足の寸前、床が死んで行く――時による崩壊を一気に加速して、
見る見る内にその美しさを消失して行く。床だけでなく、風が舐めた全てのモノが、悉く
同じ末路を辿って滅び去って行く。金属も木材も崩れ掛けた死体さえも――
 
 ――ただの風じゃ、ない!?
 
 魔術。
 大半の吸血鬼の外見は、全くと言って良いほど実年齢と関係無い。 故に、外見が少
年とは言え、並以上の知識を蓄えているのは半ば当然と言って良い。
 だから――予想範囲では有った筈だ。
 効果が、予想を遥かに上回っていたと言う事さえ除けば。
 
 ――このままじゃ、死ぬ。
 
 考えるよりも遥かに早く、青年の右手人差し指と中指が刀印を結ぶ。
 
「……全能なる我が神よ。万物が賛美する汝、万民の救い主、
 我は汝に請い願う――在りし害意、在りし悪意、全てをこの地より
 追放せしめ給え。汝の事跡は真なる理――」
 
 虚空を走り回る刀印の先に、蒼い燐光が纏わり付いた。
 マジックサインを虚空に描く右手が、ブレードを開放したスイッチナイフの切先に触れる。
 
「我は汝の意思を成す者なり――汝が遣わせし御子の御名に於いて――!」
 
 青年はナイフを両手で逆手に握り直し、屈み込む勢いで床に突き立てた。
 刹那、目を焼くほどの光量が空間を席巻する。
 次の瞬間、吹き付ける不可視の力が、青年の寸前でその脇へと吹き散らされた。
 祈りに紡がれた聖光が、滅びの風を悉く粉砕する防壁を為した。
315レッド・アリーマー:02/06/12 22:42
レッドアリーマー対ロゼット一行  DEMON,S CRUSEIDE
>313
最初に感じたのは、軽い違和感だった。
自らの気配と相反する聖なる気、忌々しい感覚。
だが、それも一瞬、

覆い隠さんばかりの閃光が、赤き魔物の姿を包む。
そして激しく、かつ絶え間なく襲い掛かる
苦痛
激痛
激痛。

「グォオオアアアアアァァァ!」
十字架を模した光芒が、赤き魔物の体を蝕む。
傷口が焼け、骨が軋み、金属質な叫びが響き渡る。
316ヤハベ:02/06/12 22:50
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>304

 シリンダーに帽子の鍔が食い込み、役に立たなくなった拳銃を落とした眼鏡娘は、床に転がっている
銃を拾おうと身を屈めた。
 最小限の隙しか生まれない、素早く無駄のない動きだが、オレにはその最小限の隙だけで充分だった。
 おあつらえ向きなことに、ちょうど足が届く位置にある女の顔面に、渾身の蹴りを叩き込んだ。
 女は2メートルほど吹き飛んで、ソファーにもたれかかるような姿勢で倒れこむ。
 鼻と口から血を流した女が、苦痛の呻きをあげた。 
 眼鏡は、レンズが割れフレームが歪んだ状態で床に落ちていた。
 
 気丈なことに、女は上体を起こしてオレを睨みつけた。
 その眼にはまだ、絶望も恐怖も写し出されてはいない。
 敵に追い詰められた、丸腰の女にはふさわしからぬ眼つき、顔つきだった。
 いい表情だ。
 写真に収めて、部屋に飾りたくなるほどいい表情だ。
 カメラを持ってくるべきだったと頭の片隅で考えながら、再び足を振るう。
  
 英国製の靴の爪先が、女の引き締まった腹筋に突き刺さった。
 あと二回、腹を蹴ってから仕上げに顔面を踏みつけた。
「ハハハハ、サヨナラ逆転ホームランでオレの勝ちい!勝者には賞品が、哀れな敗者を好きなようにしていい
権利が与えられます!ハハハハ!」
 笑い声をあげながら、オレは女の胸を踏みつけた。
  靴底越しに、柔らかい感触が伝わってくる。
 撃ち合いのときには気づかなかったが、なかなか大きく、形もいい。
 これは、ただ痛めつけ、壊すだけではもったいない。

「こういうの好きだろ、ああ?」
 オレはそう話しかけながら、爪先を女の下腹部に這わせ、次に乱暴にシャツを引き裂き、
露わになった乳房を鷲掴みにする。   
 形も感触も申し分なしだが、味はどうだろうか。
 これからゆっくりと、品評するとしよう。
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>314
 
 生けるもの全てを穢し、枯らし、そして滅ぼす妖風。
 だが轟たる風は聖なる壁にぶち当たり、千切れてホール全体を吹き抜ける。
 とは云え、風そのものが消えた訳ではない。
 ヴァルカンの突きつける右手に導かれる様に、魔怪の暴風は狩人の周囲を取り囲んでいる。
 
「ほらほらどうした狼さぁん。子猫ちゃんに引っ掛かれたのがそんなに痛いか」
 
 嘲弄を魔風に乗せてヴァルカンが叫ぶ。
 満足げにそれを見てから、ヘンツォーは仲間の方に声を張り上げた。
 
「――皆様! とんだ道化の乱入、見苦しい点をお許しあれ。
 しかし新たなメインディッシュであります。
 魂を地獄に叩き堕とす前に、汚れた狩人の血と肉、盛大に賞味してやろうではありませんか」
 
 哄笑する同族たちを横目に、ヘンツォーは側に立つ陰気な顔の長生者に顔を向ける。
 
「それにしても失態ですな、ミスタ・クロフト。
 情報統制が甘いですぞ、あのような莫迦者の跳梁を許すとは」
「申し訳ない。紋章一つで温血者(ウォーム)共を追っ払えた昔とは、些か勝手が違いまして」
 
 この国の諜報機関を牛耳っているケイレブ・クロフトは憮然とした様子で答えた。
 その間にもヴァンパイアたちは行動を開始していた。
 吹き荒れる風も夜魔の眷属である彼らには清々しい涼風に等しい。ゆっくりと、歩み出す。
 
 イゾルドの薄い唇から舌がこぼれる。
 白髪の老人、ヴィルヘルム・フォン・ボルヒェルトが興奮を抑えかねる様に鼻息を荒くする。
 ダモン・ジュリアンは見かけだけは冷然とオールバックの髪を撫で付ける。
 長生者は急いたりはしない。長き死せる生と同じく、緩やかに事を運ぶ。
 
 赤光をぎらつかせる瞳と共に数十本、いや数百本の手が伸びる。
 殺意と情欲に煮えたぎりながら、白い殲滅者へ向かって。
vsレッドアリーマー
『紅の闘士』
>315
 
「大丈夫?!」
 
私はクロノの元へと駆け寄った。
見たところ、肩の傷以外は問題はなさそうだ。
 
「何とか・・・・ロゼットのほうは?!」
「痛いわよ!!めちゃくちゃ!!」
 
そう、ぶっきらぼうにお互いの無事を確認する。
そして私は銃のカートリッジを交換し、奴へとその銃口を向けた!
 
「あんたの敗因はただ一つ!!
 クロノの事ばっかり追っかけて、私の事がNO眼中だったせいよ!!」
 
何とかして結界を振りほどこうとする奴ににやり、と笑ってみせる。
 
「これでも食らって・・・・反省しなさいッ!!」
 
銃口が、奴を捕らえる。
 
「悪魔に―――死の鉄槌をッ!!」
 
引き金を、引く!
 
「 『 福 音 弾 ( ゴ ス ペ ル ) 』 ッ ! ! 」
 
銃口から天使の羽を思わせる閃光を纏い、銃弾が飛ぶ!
『福音弾(ゴスペル)』。希少銀に極少魔法を転写した魔法弾!
私達マグダラ修道会のエクソシスツが切り札!!
 
≪ごぉぉぉぉぉぉぉぉんッッッ!!≫
 
奴の体に着弾した銃弾が、奴の体を閃光で包む!!
319レッド・アリーマー:02/06/12 23:26
レッドアリーマー対ロゼット一行  DEMON,S CRUSEIDE

>318
(何故、私は眠っていた?)

(敗れたからだ。誰に?)

 ソウ、『人間』ニダ


聖なる閃光と爆音の後に残るは、無様な赤き異形の姿だった。

ハ ハハハ ハハ ハ

だが、顔の邪笑が消えることはない。

ミゴト ダ ニンゲン
 
端々が炭と化し、半身を抉られて、無惨な姿を晒しながらも。そして

ツギハ

地を、駆ける。翼が千切れ、背から血飛沫を撒き散らし、

ワ タ シ ノ

足が、砕ける。肩が裂け口が裂け体が裂け、だが勢いは止まらない。

バ    

その爪を眼前の『戦士』へと振るうその寸前に、
赤き魔物は、塵へと消えた。
(レッドアリーマー:死滅)
320遠野秋葉 ◆La2AKIHA :02/06/12 23:32
<遠野秋葉vsアセルス>
>309
 
『お前・・・どこへ行く気なんだ? お前の言う兄は・・・さっき、お前自身が殺したんじゃなかったのか?』
 
 え……?
 私が、兄さんを、殺した?
 
 ……何を言っているのだろう、この少女は?
 私が兄さんを殺す訳ないじゃない……
 
 ドクン………ドクン……ドクン…ドクン
 胸の動悸が高まる。
 
 ほら、こんなにも間近に兄さんの鼓動が感じられる。
 これこそ、私の側に兄さんが居ると言う証。
 
 ……?
 おかしい。
 なんだろう、この違和感は……
 
 ――――さて、それじゃあいただきます。
 
 ――――さよなら、兄さん
 
 ……頭の中で再生される光景。
 呆気に取られた兄さんを私が奪い尽くす光景……
 そう、血も肉も一片残らず……
 
 これは何?
 私が兄さんを殺した……?
 
 
 ドクン――
 
 
 視界が朱く染まった。
 
 なんだ、そういうことか、そういうことなのね、琥珀?
 これもあなたの小賢しい陰謀ね?
 私を騙そうとはつくづくふざけた真似を……
 
 目の前の少女を睨む。
 
「あなた、琥珀の手の者でしょ? 私を騙そうなんて、随分と大胆不敵な真似をしてくれるわね?」
 
 そうだ、とりあえず、この少女を嬲り殺して、琥珀に見せ付けてやろう。
 
 略奪?
 そんな真似はしない。
 少女の五体を切り刻んで、その亡骸を琥珀の面前に晒してやろう。
 誰に逆らったかを思い知らせてやるのだ。
 
「……ふん、せいぜい、惨たらしく死ぬといいわ」
 
 私の呟きとともに、私の檻髪が舞い上がる。
 朱い髪が鋭い刃となって、少女を刻むべく、襲い掛かった。
>245 遠野志貴 vs 邑輝一貴(M) 「銀と蒼」
 
「な――――っ!」
 
 私はそれを見た。
 動きを止めるはずのボウヤが私の呪力をナイフで断ち切るのを。
 なんて馬鹿げた話。
 魔力を使うでもなく。
 魔力を帯びているわけでもないナイフで。
 私の呪力を『斬り殺した』。
 
――殺した?
 
 呆然と。
 私の左腕に向けて走るナイフと。
 それを持つボウヤの蒼く輝く瞳を見つめる。
 
           蒼い――
 瞳。
         ――殺す
      死
             ―――魔眼
 
「まさか……」
 
 思い当たったのは突拍子もないこと。
 それはおとぎばなしの伝説。
 
「まさか直死の!?」
 
――直死の魔眼。
 因果の絆さえ断ち切り、万物に死を与える壊れた概念。
>321 続き
 
 ナイフに左腕を叩きつけて無理やり払う。
 激痛。
 だがあのまま切り裂かれるよりマシだろう。
 伝承が正しければ、それによって受けた傷は治癒さえもしない。
 腕を活かそうとしたのは、医者としての本能か。
 
 そのままナイフを持つ腕を固めにいく。
 失敗する。
 切り裂かれた腕でそこまでは、さすがに望みすぎだろう。
 相手の警戒を利用して距離を取る。
 ナイフの距離よりも一足遠い間合い。
 だがそれは私の有利を意味しない。
 新たな召喚をこのボウヤは許さないだろう。
 
 残った召鬼のうちの一体を挑ませる。
 あっさりと切り裂かれる。
 こちらから注意をそらすことさえ出来ない。
 
「――まいりましたね」
 
 口から出たそれは珍しく本音。
 完全に手詰まりの状態。
 正攻法での打開は不可能だろう。
 
「直死の魔眼――
 お伽噺の化物ですか……
 まともにやってはさすがに手に余りますね」
 
 だから私は、
 いちかばちかの賭けに出ることにした。
 
「人質を使わせてもらいましょうか」
 
 宣言して、
 最後の召鬼を、はじめに投げ捨てた女に向かって疾らせる。
 ボウヤが構わず、私を殺しにかかるなら、私は死ぬだろう。
 だが。
 
 ボウヤが彼女を庇うなら。
 見ず知らずの人間を庇うなら。
 もしもそういう人間ならば――
 
 保険を使わせてもらうことにしよう。
323遠野志貴 ◆sikiXlKk :02/06/13 00:27
>322 遠野志貴 vs 邑輝一貴(M) 「銀と蒼」

『人質でも使わせてもらいましょうか』

 そう宣言した邑輝が、化け物をさっき倒れた女性に走らせた。
 まさか、まだ生きているのか!?
 俺は咄嗟に、考えるよりも早く跳んだ。
 倒れている女性と化け物の間に入り、化け物の『線』をナイフで一閃。
化け物が消える。

「お前は、見境無しか! 何でも利用するのか!」

 思わずそう叫んでいた。

「狙うなら俺だけにしろ! 無関係な人を巻き込むな!」

 言葉が止まらない。

「もう止めろ! 止めないんだったら――俺が止める!」

 そういって、俺は邑輝を睨み続ける。
324アセルス ◆AseLLUSs :02/06/13 00:37
>320 遠野秋葉VSアセルス
 
またしてもわけのわからない事を言う少女。
だが、確かに彼女はあの少年のことを兄と呼んでいたはずだ。
・・・だとすれば、まさか。
 
ようやく結論に達しかけたその時・・・不意に、殺気と赤い髪が襲い掛かってきた。
 
「ふん・・・」
 
その場にとどまり、幻魔を振るって応戦する。
この髪のスピードが相当なものだということは、既に文字通り痛いほどわかっている。
だが、いかんせん直線的。おまけに狙いが甘い。
わずかに腕や胴のあちこちが切り裂かれるも、致命的な一撃を受けることは無い。
 
「ふ・・・くく、琥珀だと・・・?」
 
髪を捌き続けながら私は、彼女に向かって挑発的に笑みを浮かべて見せる。
より怒りをあらわにする少女の顔を確認して、私は言葉を続けた。
 
「ようやく合点がいったよ・・・
 お前・・・自ら兄を殺した事実を拒絶しているな!?」
 
鋭く伸びてきた髪を切り払いながら、私は言い放った。
とたんに途絶える、髪の猛攻。
私はここぞとばかりに、言葉を続ける。
 
「全くとんだ茶番だ・・・自ら望んで兄の命を奪ったくせに、それを受け止められないとは!
 それで居もしない兄を探して、永劫にさまようつもりか?
 くく・・・あはははははは!」
325名無しクルースニク:02/06/13 01:14
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>317
 
 場の誰にとっても――完全に意識の外からの急襲だった。
 雷鳴めいた轟音が、扉ごと死臭に飾られた宴の場を崩壊させた。エンジン音も高らかに、
突如としてハマーが闇の奥から走り込む。
 悲鳴が残響する。
 
 助手席のフロントガラスが、轟音と閃光を撒き散らした。
 無数の火箭が、風を貫いてその奥のヴァルカンへと殺到した。
 尋常ならざる風の奥――術者である偽りの少年が、着弾の衝撃で奇怪なブギを踊る。
 地と骨片と肉片を飛び散らせながら、くるくると自動人形のように回転させ吹き飛び、体の
あちこちを有り得ない方向に曲げ、小指と中指を飛ばした挙句に手首から先も飛ばし、最後に
喉から上を虚に変え、崩れ落ちた時には、出来損ないの挽肉ソーセージになっていた。
 召喚者を失った魔風は、弱々しく潰えて消えた。
 
 修羅の巷の間隙を切り裂いたハマーは、会場の中程までも突っ込み、逃げようとした吸血鬼
二匹と竦み上がった吸血鬼三匹を轢殺、無数の机と皿とグラスに悲鳴を上げさせて――黒々と
したタイヤの残痕を絨毯に刻み込んで、白衣の青年の真横で停車した。
 
 ゆっくりと開け放たれる両側のドアから、二つの影が滑り出る。
 殺意と奇異の視線を一身に集めたのは、漆黒の二つの長身。胸に提げた大振りのクロスに、
聖職者用のカソック――
 異彩を放つのは、二人がその手に握った巨大なギターケースだ。
 一人は片手に、一人は両手に――自然に提げたその姿は、ストリートミュージシャンのそれにも
良く似ていた。
 しかしそれなら、先程の銃火はどう説明するのか――突然の侵入者へと溢れる殺気、殺到する怒号。
 常人なら射竦められて身動きが取れなくなるようなその状況の中、二人の男は同時に肩を竦めると、
洒落っ気たっぷりに顔を見合わせて笑った。
 轢死した一匹の顔面を踏み砕き、一人が白衣の青年にウインクする。
 ゆっくりと立ち上がった青年は、軽く首を振ると二人を交互に見回して、
 
「――久し振りに3人揃ったな」
 
 頷く二人に、青年は楽しげな微笑を返す。
 カソックを跳ね上げると、背中合わせにヒップホルスターで眠っていた二丁のグロック31を抜いた。
 黒衣の二人は蜂の巣を突付いたような喧騒に包まれた会場をいっそ冷淡に見渡し、抱えていたギタ
ーケースの取っ手を掴む。
 三人はゆっくりと歩み出し――
 
「――Let's play!」
 
 青年の声が、高らかに宴の再開を告げる。
326遠野秋葉 ◆La2AKIHA :02/06/13 01:25
<遠野秋葉vsアセルス>
>324
 
『お前・・・自ら兄を殺した事実を拒絶しているな!?』
 
 違う、違う!
 私は兄さんを殺してなんかいない!!
 
 殺してなんか……
 
 私の檻髪は何時の間にかその威を失っていた……
 私の揺れる心に呼応するかのように……
 
『全くとんだ茶番だ・・・自ら望んで兄の命を奪ったくせに、それを受け止められないとは!
 それで居もしない兄を探して、永劫にさまようつもりか?』
 
 兄さんは此処にいる……
 ほら、こうやって、私の中に……
 
 ……私の中?
 何故、私の中に兄さんがいるの?
 
 確かに、私と兄さんは命を共融していた。
 けれど、今の感覚はまるで違う。
 兄さんそのものを私の中に取り込んだような……
 
 取り込んだ……?
 何時、何処で……?
 
 再度、脳裏に兄さんの唖然とする顔が浮かぶ。
 窓からそれを笑みを浮かべて見つめる私……
 消滅していく兄さん……
 
 嘘、嘘、嘘だ……!
 認めない…!!
 私が兄さんを殺すなんて……
327遠野秋葉 ◆La2AKIHA :02/06/13 01:25
>326
 
 ドクン――
 
 
 ――みーん、みーん
 
 ――7年前の夏
 
 反転した四季……
                    ……私の前に立ちふさがる兄さん
        真っ赤に染まる視界……
        
                   私の絶叫……
                   
 この時、私は思った。
 私はどうなってもいい。
 だから、兄さん、遠野志貴だけは生きていて欲しいと……
 
 
「兄さん、死んだなんて、嘘ですよね。折角、私が命を分け与えたんですもの」
 
 兄さんに語りかける。
 ……返事はない。
 
 
 ドクン――
 
 
「ほら、しき、たちなさいよ。あきはがいのちをわけてあげたんだから……」
 
 めのまえにしきはいない。
 でも、きっと、もうだいじょうぶなはず……
 だって、わたしがいのちをわけあたえたんだもの……
 
 とうとつにばしょがにわから、なにかよるのがっこうみたいなところにかわっている。
 ……そんなことはどうでもいいか。
 しんだしきがいきかえったんだもの。
 これくらいへんなことがおこってもふしぎじゃない。
 
「しきをさがさないと……。わたし、いかなきゃ……」
 
 めのまえにはシキのかわりにけんをもったおんなのひとがいる。
 けれど、かまってはいられない。
 しきのぶじをこのめでたしかめるまでは……
 
 わたしはおんなのひとにせをむけ、ろうかをかけだした。
 しきをみつけるために……
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>325
 
 舞踏場が一大屠殺場に変わる少し前の事である。
 パーティの喧騒届かぬ城の最上階を、青白い顔の男が歩いていた。
 従僕の一人と思しきその新生者は小脇に一人の少年を抱えている。
 年の頃はまだ十二、三歳だろうか。意識を失ったその顔は幼く、愛くるしい。
 首に嵌られた犬用の首輪が痛々しい程に。
 
 新生者は一番奥まった部屋の前で立ち止まった。
 緊張した面持ちで巨大な扉に手をかける。
 軋みながら開いた扉の先には、だだっ広い空間が広がっていた。
 空洞の様な部屋だ。
 向こう側を見渡す事が出来ない。装飾も調度品も一切が廃されている。
 あるのは凝った闇だけだ。
 
 例外は一つ。ぽつんと置かれた黒い棺。
 紋章も何も無い巨大な棺桶。
 
 新生者はその数メートル前に少年を置いた。
 深々と棺桶に一礼し、足早に立ち去る。
 扉が閉められ、後には少年だけが残された。
 
 幽かに呻いたが、少年は目を覚まさない。
 そして棺の中のモノも。
 
 
 この棺こそ、城主の寝所なのであった。
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>325>328

「ええ、次から次に! 衛兵は何をしているのか!」
 
 温血者の様に頬を紅潮させヘンツォーは怒鳴る。
 その罵声も虚しく、新たな火線が炸裂した。
 
 躯中で真紅の小爆発を起こし、オポルチェンスカ伯爵夫人とイゾルドが真の死を迎えた。
 唸りを上げて襲来する小型の円筒――ロケット弾が床を抉りぬいて火柱を噴き上げる。
 爆風にはコルネリウス・ド・ヴィンダウらの肉片が入り混じっていた。
 
 火薬と血煙の向こうから、ゆらり、と滲み出る様に二つの黒衣が現れた。
 長身のヘンツィック卿と、蚯蚓めいた皺が顔中を走るローヴィル準男爵である。
 二人が羽織っていた黒のケープを翻した後。
 そこに人間の姿はない。
 いるのは――。
 ヘンツィック卿の立っていた場所には差し渡し四メートルの翼を広げる大蝙蝠と、
 ローヴィル準男爵の代わりに、蝙蝠よりはやや小さいが人間の手足を持つ大鴉。
 
 ドラキュラの血統が持つ特質の一つ、変身能力であった。
 
 二妖物の口から人外の雄叫びが響き渡る。
 唸りを立てて黒き翼は舞い上がった。宙を駆け、牙と嘴を光らせてハンターたちへ飛び掛る。
330アセルス ◆AseLLUSs :02/06/13 02:20
>326>327 遠野秋葉VSアセルス
 
私の言葉に対し少女は、ただひたすらに拒絶を繰り返し・・・
またしても不意に、その様子が変わった。
まるで幼女のように舌足らずに呟き、私に背を向けて駆け出す。
 
いや、まるで・・・ではなく、おそらく本当に幼児退行してしまったのだろう。
殺すなら今・・・か。
だがあの状態の彼女を後ろから斬りつけたところで、この屈辱は晴らせない。
 
・・・なら、もう少し壊してやるか。
そうすれば、まだ気は紛れるかもしれない。
 
 
少女が向かった廊下の先。
私はそこへ転移し剣を収め、彼女を後ろから抱きしめた。
 
「君・・・そんなにお兄ちゃんに会いたいの?
 ・・・ふ、健気なことだね。
 でもね・・・」
 
そこまで言ってから・・・私は、感覚のない左手を彼女の目の前にかざした。
 
「勝手に忘れないでもらおうか・・・
 その赤い髪で私の左手を殺したことを。
 私の四肢を締め上げたことを。
 私のこの体を傷つけたことを。
 ―――全て事実なんだよ。お前自身が兄を殺したこともな!」
 
言い放ち、彼女を離し・・・刹那。
抜き放たれた幻魔は、彼女の背中から鳩尾を刺し貫いていた。
 
「全て認めろ・・・そして後悔と絶望に苛まれながら、死ね」
331遠野秋葉 ◆La2AKIHA :02/06/13 03:07
<遠野秋葉vsアセルス>
>330
 
 ドス……
 
 鈍い音がした……
 鳩尾から、刃が生えている。
 後ろからは先ほどの少女の呪詛……
 
『全て認めろ・・・そして後悔と絶望に苛まれながら、死ね』
 
 体が熱い。
 もう、これ以上無いほどに……
 
 ああ、そうだ。
 私は結局、兄さんや琥珀を手にかけたんだ。
 今、ようやく、理性がそれを理解した。
 誰にも兄さんを取られたくなかった。
 
 ――結果、私は兄さんを取り込んでしまった。
 
 ぴちゃぴちゃと私の鳩尾から、血がしたたる……
 
 もう、何も見たくない……
 辛いから……
 兄さんはもう私に微笑んでくれないから……
 
 ならば、どうすればいい?
 
 …
 
 ……
 
 ………
 
 簡単だ。
 目に映るもの、全てを消せばいい。
 何かも無くなれば、楽になれる。
 きっと……
 
 後ろに組み付いている少女を力任せに振りほどく。
 同時に剣を引っこ抜いて、床へと放り投げた。
 
「……ええ、あなたのおっしゃる通りですわね。私は兄さんを殺しました」
 
 私の檻髪が再度舞い上がる。
 廊下に縦横無尽に檻髪が張り巡らされ、瞬く間に廊下は朱い異界と化した。
 
「でも、いいんです。私の中に兄さんはいますから……」
 
 ふっと少女に微笑む。
 
「けれど、兄さんはもう微笑んでくれません。私、遠野秋葉にとって、もう世界は灰色です。
ならば、こんな世界に価値はありませんわ。……そう、何もかも消えてしまえばいい!」
 
 そう、まずは……
 
「おしゃべりは此処までです。手始めにあなたから消えてくださいませんか?」
 
 私の言葉と同時に檻髪が少女の血を、肉を、一片残らず奪い尽くすべく、少女へと……
332アセルス ◆AseLLUSs :02/06/13 04:00
>331 遠野秋葉VSアセルス
 
赤い髪が、私に迫る。
私はそれを二本目の剣・月下美人で切り払おうとするが・・・体勢を立て直すまでに時間がかかり
髪は私にまとわりつき・・・私は、消えた。
 
 
    ・ ・ ・
そう、消えた。
消失したのではなく、初めから実体を持たないものとして。
 
―――妖術ミラーシェイドによる虚像。あの“私”はただの囮。
彼女に剣を突き刺した直後に作り出した幻影だった。
 
おそらく、彼女自身もすぐにそれに気づくだろう。
だがそれまでの一瞬―――その一瞬こそが、生死を分ける鍵だ!
 
「どこを―――見ている!!」
叫びとともに、私は彼女の背後で剣を振るった。
烈風剣・・・超速の剣圧が衝撃波と化し、彼女を襲う。
そしてそれを追いかけるように、私は駆け出し・・・振り上げた剣を袈裟懸けに切り落とした。
狙いは心臓・・・はずすことなど、ない。
とてとて)
あの〜、私も参戦してよろしいでしょうか?
此処なら、私の同じような運命の方も多いでしょうから。私、これでも吸血眷属の端くれなんですよ?
目覚めはじめた、この狂える血と私の運命を探して行くのが私の目的です。
ですんで、カテゴリーは今のところC/Dと言うことになります。ただ、私が道を選んだ時は………
カテゴリーも必然的にその方向へ変わりますけれど………ふふふっ。
ちなみに今の瞳の色は“赤”、魔力で血を押さえていますが………
覚醒、つまりは闇の眷属の血である“ブルーブラッド”が目覚めた時は、目の色が“蒼”に変わります。
と、言っても記憶が消えているとか〜、多重人格の類じゃないんですけどね。
ただ、闇の本能がはっきりと現れるんです。でも、実は記憶が残っているんで………(おろおろ
と、言うわけで、色々ご迷惑をかけるかも知れませんがよろしくお願いしますね(ぺこり

出典 :アクエリアンエイジ『磨羯宮の女神』より
名前 :山城 友香(やましろ ゆか)です。 
年齢 :公式設定はいくつぐらいなのでしょう?17歳ぐらいのつもりです。 
性別 :女ですよ。 
職業 :高校生です。後は闇の眷属の血が少し……… 
趣味 :ショッピングとティータイムと〜、後はスクーターで街巡りです。 
恋人の有無 :いませんよぉ〜、本当に(あたふた、あたふた 
好きな異性のタイプ :あんまり、男性に興味が無い、じゃ駄目ですか? 
好きな食べ物 :紅茶のシフォンケーキとか、甘いもの全般。かな? 
最近気になること :私の中の“ブルーブラッド”………(おろおろ
一番苦手なもの :一番ってわけじゃないけど太陽はちょっと……… 
得意な技 :覚醒後なら色々な呪文や剣術を使えるんですけどね………ふふふっ
一番の決めゼリフ :今はないけど、そのうちに出来るかも、決めゼリフ 
将来の夢 :ん〜、とりあえずは無いかな。今はこの血がどうなるのかが………(おろおろ 
ここの住人として一言 :とりあえずこの血と私の道探し、しばらくおつきあいくださいね。 
ここの仲間たちに一言 :色々ご迷惑かけるかも知れませんけど、よろしくお願いします。。
ここの名無しに一言 :マイナーかもしれませんが、重ねてよろしくお願いしますね(ぺこり
334遠野秋葉 ◆La2AKIHA :02/06/13 09:27
<遠野秋葉vsアセルス>
>330
 
「……消えた!?」
 
 そう、少女は煙の様に消えてしまった。
 
『どこを―――見ている!!』
 
 背後で少女の叫び。
 
「あっ、ぐっ!?」
 
 全身に走る衝撃。
 そして……
 
「がっ……!?」
 
 私の左胸が剣で貫かれていた。
 紛れも無い致命傷……
 
 なんて、呆気ない。
 全部、壊すと決めた矢先にこれだもの……
 
 ああ、でも、同じことか……
 世界が消えようが、私が消えようが……
 結果的には……
 
「ふふ、本当に馬鹿みたい……」
 
 視界がぼやけていく。
 まあ、いい……
 これで本当に楽になれる。
 向こうで兄さんになんて謝ろう……
 
 兄さんは私を許してくれるだろうか……?
 もう一度、微笑んでくれるだろうか……?
 
 そう、考えながら、私の意識は闇へと沈んでいった……
『伯林の紅い雨』〜ベルガー&ヘイゼルvs天草四郎時貞
>278 
 
「わしにとっては、反独隊駆逐などという事が成ろうが成るまいが、いずれでもよいことじゃ」 
 
天草はその美しき顔に似合わぬ陰鬱な眼で二人を見やった。
 
「うぬらも死ね。独逸軍の愚か者どもも死ね。ただこの世に生きるもの全てにたたれば・・・・・・
 それを以って満足せねばならぬ。いや、それを無上の喜びとし、
 そのためにこそわしは生きておるのだからなあ」 
 
近づいてくる男に目をやった後、背後に佇む女にも目をやった。
 
「見目麗しき女子じゃな。うぬには、この世の天国を身体の隅まで味わわせた後で、
 暗き冥府の底へと送ってやろうほどに、待っておれ・・・・・・だが、その前に・・・・・・」 
 
そこで一息つくと、男に再び目をやると、妖しい笑みを浮かべる。
 
「天帝への血祭りに、貴様の首をば捧げよう!!」 
 
天草は己が髷を首目掛けて振るう。
鋼をも裁つその魔髪が夜闇に閃いた。
336ベルガー&ヘイゼル:02/06/13 14:52
『伯林の紅い雨』〜ベルガー&ヘイゼルvs天草四郎時貞
>335

「もう、そう言うのは時代遅れだと思うんだがなっ!!」

その一振りをバックステップで避け、もう一言。

「それに・・・あのバカにいろいろやっていいのは俺だけだ。」

明らかに相手に攻撃の当たる範囲にはいないのに構えるベルガー。
そして・・・

<<運命とは有限ではない>>

その言実詞と同時に伸びる黒い刀身。
それは天草に向かい進む、そして一言。

「ヘイゼルっ、ぼさーっと突っ立ってないで何かしろ!!」
『伯林の紅い雨』〜ベルガー&ヘイゼルvs天草四郎時貞
>336 
 
夜闇に閃く髪の旋風は、男の脇に立っていた街灯を、
すっぱりと断ち切る。やがてそれは音を立てて倒れた。
そこへ天草の身を貫かんと伸びる刀身が迫る。
 
その刀身を跳んで避けると、七、八尺ほど後方でふわりと着地した。
天草の顔には驚きと興味が混在している。
 
「ほほう、なかなか面白い技を使うのう・・・・・・
 それにそこな女子はうぬの女か・・・・・・うぬの眼前で痴態を見せたら、
 さぞやいい顔を見せてくれるのであろうな」 
 
陰惨な笑みを浮かべながら、男に目を向ける。
 
「まずは、うぬを達磨にするが先じゃな―――
 確か、こうやるのであったか?≪運命とは有限ではない≫」 
 
なんと面妖な。先ほど男を襲ったその髷が、
先ほどの再現とばかりに凄まじい勢いで伸びていく。
その切っ先は男の腕を斬らんと、稲妻の如く空を切り裂いた。
338ベルガー&ヘイゼル:02/06/13 16:45
『伯林の紅い雨』〜ベルガー&ヘイゼルvs天草四郎時貞
>337

「勝手に、人の詞を使わないでくれるか!!」

本来言実詞はその本人しか使えない。
今相手が使ったのはそれを真似た、ただの術。
それでも少し対応が遅れ、腕に伸びてきた髷が当たりそうになる。
その時、”純皇”を両手で上段に振り上げ、ヘイゼルが叫んだ。

「街に流れる百二十万詞階の遺伝詞達!聞こえますか?私の遺伝詞の声が!!」

叫ぶ掛詞は、もはや形ではない。
相手の攻撃を断つ力。
ア、と叫び、”純皇”を上段から振り下ろした。
剣風によりできる風の刃。
風はベルガーの横を過ぎ、髷を斬り、消えた。




vsレッドアリーマー
『紅の闘士』
>レス番
 
私の目の前で、ぼろぼろと奴の体が崩れ去っていく。
やがて、そこには一塊の灰の山が残り―――やがて、それも風に流され消えてゆく
私は、ほぅと吐息をつくと・・・がっくりと膝をついた。
 
「い・・・・つつつつ・・・・・!!」
 
ここに来て、肩の傷の痛みがぶり返してきた。
そんな私をクロノが慌てて覗き込む。
 
「だ、だいじょうぶ?!」
「大丈夫なわけないってさっき言ったでしょ・・・・・・」
 
さっきの一撃の衝撃で、傷が再び開いたのかもしれない。
肩がじんじん熱をもったように熱い。
私はぎっと奥歯を噛み締めて、痛みに耐える
 
「ホラ・・・・あんたの傷、直さなきゃまずいでしょ?
 ちょっとだけ・・・・封印解くから・・・・・」
 
ホント・・・・タイトよね・・・・・・。
私達と違って、クロノは自分で傷を治すことすらできない。
 
「ふぅ・・・・・は」
 
体に、だるさがぶり返してくる。
 
「ゴメン・・・・・車、運転できそうにないわ・・・・・誰か・・・・・呼んどいてくれる?」
 
私の言葉にクロノが顔を曇らせる。
 
「・・・・・・・ゴメン・・・・・ロゼット・・・・・・。」
「謝んないでよ・・・・・最初っから、こういうこと覚悟してあんたと『契約』したんだから。」
「・・・・・君の・・・・・・時間が・・・・・・・ただでさえ・・・・・!!
「気にし・・・・ない・・・・・・・気にされたほうが・・・こっちも・・・・やりづらい・・・・じゃ・・・・・ない」
 
ふっと、私の意識が遠くなる。
あ・・・・・・・・・
そのまま、意識が闇へと落ちていく。
消え行く意識の中、私の体をクロノが優しく抱きしめてくれたような気がした―――。
 
 
【END】
ロゼット&クロノ VS レッドアリーマー
『紅の闘志』『DEMON,S CRUSEIDE』
 
導入
>92>93
 
>96>100>102>106>114>174>279>280>281>283
>286>287>289>290>312>313>315>318>319
 
エピローグ
>339
 
クロノ
「はは・・・・何とか勝てた、かな?」
341フィオ ◆Fio.RSac :02/06/13 21:36
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>316
 
ヘビーマシンガンに手が触れた瞬間、フィオは顔面を蹴り飛ばされた。
メガネが割れて吹っ飛び、口と鼻から血が出た。
「あ・・ぐ・・・」
(いた・・い・・・。 でも・・・まだ・・・)
左手で顔を押さえ上体を起こす。そして、指の格子ごしにヤハベを睨み付けた。
 
「がふっ!」
フィオの腹部にヤハベの蹴り足が入った。
「ごふっ! あうっ!」
さらに二発。そして顔を踏みつけられた。
「っあぁぁ・・・・・!」
 
『ハハハハ、サヨナラ逆転ホームランでオレの勝ちい!勝者には賞品が、哀れな敗者を好きなようにしていい
権利が与えられます!ハハハハ!』
 
胸を踏みつけられ、下腹を踏みつけられ、そしてシャツを引き裂かれた。
「やっ・・・!」
『こういうの好きだろ、ああ?』
フィオの乳房を鷲掴みにし、ヤハベは言った。
(くやしい・・・こんな・・・こんな・・・!)
 
「フィオ!!」
 
そのとき、室内にエリが飛び込んできた。
342カンパ:02/06/13 23:07
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>329
 
 ヴラドの血統の力――細胞の再構築、再編成。人の形状を捨て、高々と舞い上がった二つ
の黒い影が、霞む程の勢いで飛来した。
 10メートルの距離を瞬く間に詰めた漆黒の翼は――しかし青年を打つ事叶わない。
 
 青年の正面に踊り出た男が両手のギターケースを垂直に持ち上げて束ね、刃物さながらの
嘴の一撃を遮っていた。
 男の、にい、と歪められた口が、一際大きく吊り上がる。
 
 気配を感じたか、体制を立て直す為か――鴉が嘴を離したのは、けれど遅過ぎる。
 男は右のギターケースをフルスイングで鴉の横っ面に叩き込み、抵抗の意思を一瞬、奪う。
 鴉が体制を立て直すよりも遥かに早く、男はギターを再び正面に束ねていた。
 ギターと鴉の間で、無数の火花が散った。
 否――ギターケースの先端が、火花を吹き散らしていた。
 
 轟く銃声。血飛沫を浴びて散乱する、大漁の空薬莢。
 
 空中に貼り付けられた鴉は血肉を吹き散らしながら、ボロ布と挽肉の塊となって落下した。
 硝煙を吹き上げる両のギターケースを翼のように広げ、男は吸血鬼達へと向き直る。
 狂ったように哄笑を上げる男のギターケースが、狂ったように火を吹いた。
343キーノ:02/06/13 23:47
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>342
 
「キーノ、カンパ。選り好みするなよ――クズはまだまだ居るからなぁ。
 ――バイキング形式だ。片っ端から食い荒らせ!」
 
 キーノと背中合わせに立った青年が、足元に転がる首を踏み砕いた。
 ゼリーのような脳漿が、ピンク色の飛沫を上げて絨毯を汚す。
 仲間を殺されて逃げ去ろうとした一匹の頭部を無造作な射撃で飛散させ、
「――逃げる奴は吸血鬼だ」
「逃げない奴は?」
 ゆっくりと、二人の背が離れる。
「……逃げる奴はクズだ――逃げない奴は、訓練されたクズだ!」
 弾かれたように、二人は別方向へと駆け出していた。
 
 青年から飛び離れたキーノは、滑るように逃げ惑う吸血鬼へと向き直り、ギターケースを
肩に担いだ。
 口元には固定されたような笑みを張り付かせ、その姿勢のまま右足を滑るように落とす。
 屈伸体操限界ギリギリの位置まで身を屈め、そのまま姿勢を固定。
 全身を胴の位置ほどにまで屈めたキーノのギターケースが――突如として白煙を吹き上げた。
 
 ギターケースの先端から、白煙を吹き上げるロケット弾頭が射出される。
 発射煙を引き連れる弾頭が、成す術も無い一団へと無慈悲に飛来した。
 
 着弾。吹き上がる、オレンジ色の爆炎!
 弾頭は一瞬で二人の吸血鬼を臍から千切り、炸裂する爆炎が周囲の数人を撒き込んで死滅させる。
 
 小火災を起こした一角を、四散した手足が埋め尽くしている。
 結果に満足して、キーノは軽く微笑んだ。
 立ち上がって姿勢を正し、ランチャーを仕込んだギターケースを反転させてリロード。
 再び、その姿勢が屈伸体操の動きに移る。
 逃げ惑う吸血鬼の群へと、キーノは笑いながらトリガーを引いた。
344ヤハベ:02/06/13 23:48
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>316

 オレが戦利品を味わおうとしたそのとき、部屋に一人の女が飛び込んできた。
 金髪をバンダナで包んだ、どこか少年を思わせる顔つきの、活発そうな女だ。
 別荘内のボディガードどもと戦ったのだろう、手には銃を握り、服のあちらこちらが硝煙で汚れ、
軽く血が滲んでいた。
  金髪娘が、オレの戦利品についているらしき名前を叫んだ。
 フィオというのか、後で名札をつけておこう。

「お、もうひとりお嬢ちゃんが居たのか。まいったなー、オレはふたりを同時に相手できるほど、元気じゃないぞー?」
 呻き声を洩らす元眼鏡女、フィオの後襟を掴んで引きずり起こした。
 「つーわけで、このコとのお楽しみが終わるまで、そっちの嬢ちゃんは部屋の外で順番待ちしててくれねえか?
・・・・・駄目か」
 オレの言葉に激昂した金髪娘は、怒りもあらわに銃の狙いを定めた。

「おいおい、クールにいこうや。このコも一緒に、穴だらけにするつもりかー?」
 左手で抱えたフィオを盾にとり、右手で首から提げた十字架を握った。
 この十字架は、二十発の9ミリ弾が装填された拳銃だ。
 フィオのほうがオレの好み、このまま持って帰りたい素敵な賞品だ。
 悪いが、金髪娘のほうには退場を願おう。
「武器を捨ててもらおうか、嬢ちゃん」
345導入:02/06/14 00:13
◆ロゼット・クリストファ&クロノ&アズマリアvsモリペス・オクティペス◆

ギャングや、警官が溺死する事件が相次いでいた。
一家丸ごと死亡と言う内容で。
それだけならよくある事件であった。  
禁酒法により、抗争が相次いでいたからだ。
そう、それだけなら、よくある話だった。
ビルの中で、水気もない所で、死んでいなければの話だ。
悪魔によると思われる事件。
 
そして、事件の解決はマグダラ修道会に委ねられた。

―“それ”は、使命を果たすべく動いていた―

昼下がりの街角、路上で、不意に引きずり込まれた者がいた。
あまりに唐突で、また、信じられない光景の為、動ける者はいなかった。
 
修道服を着た少女達と、少年を除けば。
346キーノ:02/06/14 00:16
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>343
 
 二人の黒衣を背に、白い青年は駆け出していた。
 風を孕んだ白いカソックが大きく翻る。
 両手のグロックから火箭を迸らせ、青年は騒然となった吸血鬼の波を掻き分けて疾走する。
 
 疾り抜ける一陣の風の両脇、居並ぶ吸血鬼の一団が次々と頭部及び胸部を消失する。
 マガジン内の弾丸はホローポイントの.357SIG、シルヴァジャケットの対吸血鬼弾頭だ。
 会場の一角を数秒で殺し尽くした青年は、そのまま正面、暖炉の前の生き残りの少年に走った。
 
 恐慌して火掻き棒を振り回した少年へと一足飛びで間合いを詰め、鉄棒を奪取して体ごと反転。
 高速で振り回した鉄隗が華奢な体を打ち据えて、瞬時にその四肢を千切り飛ばす。肉片を滴ら
せながら、びくびくと痙攣を続ける細い手足が脇へと転がった。
 青年は喚きもがく少年の胸倉を引っ掴み、達磨状態のソレをそのまま暖炉へと投げ捨てる。
 
「そこがモロクの真鍮像だよ。――喚いて叫んで供物に変わりな――ふ、ハハハハハハハハッ!」
 
 断末魔の悲鳴を背中で聴きながら――青年は、偽りの生存者達へと駆け出していた。
ロゼット・クリストファ&クロノ&アズマリアvsモリペス・オクティペス
『仄暗い海の底から』
>345
 
正直、何が起こったのかわからなかった。
巡回中の私の目の前で・・・・・いきなり人が地面に吸い込まれた。
 
「?!!」
「き、消えちゃいましたよ?!」
 
困惑するアズマリアが、悲鳴にも似た声をあげる。
 
「クロノ、出して! アズ、十字結界の用意!」
「了解!」
「は、はい!」
 
一瞬呆気にとられていた私は、頭をふって二人に指令を出す。
 
「皆さん!!ここは危険です!!
 一刻も早くここから避難してください!!」
 
私の声で呪縛が解けた様に、硬直していた周りの人が悲鳴をあげて散っていく。
よし!
私は銃口をあたりにさ迷わせる。
く・・・・一体全体どういう奴なのよ?!
私達は、結界の中でお互いに背を向け合ってあたりを見回した。
どこから・・・・来るの?!
348名無しクルースニク:02/06/14 00:33
>346
 俺の――誤爆だ。
 済まない。
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>346
 
 雷神の咆哮が轟き狂った。
 掛けられた絵画ごと壁が弾け飛び、跳弾は大理石の床で躍る。
 聖なる銃弾の嵐、それは徹底的な破壊の意思に他ならない。
 
 旗色の悪さを覚ったか、多数のヴァンパイアが一一斉に動き出した。
 戦う為ではなく、逃げる為に。
 ドラキュラとは血統を異にする洒落者のルスヴン卿、穏健派とされるガボール・ケルナッシ伯爵、
儚げなタチアナ・ラティアヌらは、とうに粉微塵となった窓ガラスを越え、中庭へと
走り出そうとする。
 長生者は例外なく用心深い。その細心さが、彼らをここまで生き延びさせて来たのだから。
 
 どっと流れ出す動きに反し、踏み止まる者も少数ながらいる。
 端正な顔のジュリアンと、対照的に青白い禿頭のカート・バーロウは等しく乱杭歯を光らせた。
 軽く躯を沈めたかと思うと、十メートルの距離を二飛びで越したヴァンパイア二人は、
空を切り裂く爪の一撃をハンターたちに放つ。
 
 空中では蝙蝠と化したヘンツィック卿が猛スピードで旋回した。
 銃火をかわしつつ、急降下して白い狩人へ肉薄せんとする。
◆ロゼット・クリストファ&クロノ&アズマリアvsモリペス・オクティペス◆
『仄暗い海の底から』
>347
 
―“それ”は役目を果たし、次の目標へ急ぐ―
 
晴れた日の路上に唐突にできた水溜り。
“それ”が人を飲み込む。
町の人々は逃げ惑い、そして叫ぶ。
混乱の中で少女達は冷静に対処しようとしていた。
 
少女達はリュックを担いだ少年から小道具を取り出し、
周囲に設置しようとしていた。
 
一番年の低い少女の前に、水溜りが唐突に出来上がった。
 
「え…?きゃぁっ!?」
少女の脚に細長い『何か』が絡みつき、ズリズリと引きずり込もうとしていた。
ロゼット・クリストファ&クロノ&
 アズマリアvsモリペス・オクティペス
『仄暗い海の底から』
>345
 
「アズ!!」
 
私は、慌ててアズマリアの腕をつかむ!
彼女の脚に巻きついているのは・・・・・・まるで蛸か烏賊のような・・・・・
てらてらとした触手だった。
 
「ぐ、グロぉ!!」
 
私の背筋を寒気が走る。
アズの足に巻き付いた触手の出所を探すと・・・・・
そこには『不自然な』水溜りから伸びている!
 
「まさか・・・・ここからみんな?!」
 
私は、アズの腕を引っ張りながら、左手で銃を構える。
そして――――
 
《たぁん、たぁん、たぁん!!》
 
水溜りめがけて銃弾を撃ち込んだ!
352アセルス ◆AseLLUSs :02/06/14 00:56
>334 遠野秋葉VSアセルス
 
私の剣を受け、赤い髪の少女が倒れ伏せる。
その顔は・・・穏やかなものになっていた。
あの世で、死んだ兄に逢えるとでも思ったのだろうか・・・
 
 
―――気に入らない。
今も私の左手は奪われたままだ。
それをそのままにしておいて・・・自分は安らかに死んでいくというのか?
 
私はとりあえず、くずおれた彼女の傷口から流れ出た血を舐め啜った。
あるいはこれなら左手は回復するかとそう思ってのことだったのだが・・・
その美しい外見に違わない甘美な彼女の血は、しかし私の細かな傷を癒すだけで
肝心の左手は一向に元には戻らなかった。
 
気に入らない―――気に入らない、気に入らない!
私にここまでしておいて、自分は自ら殺した兄に逢うという!
このままでは私の気は収まらない!
 
―――そうか。
だったら―――彼女を兄に逢わせなければいいわけか。
クク・・・そうだ、そうしよう。
 
無論、彼女は既に死んでいる。
だが、それを生き返らせる方法なら・・・私は、よく知っている。
あの時、私が死んだときと同じように・・・こうすればいいだけ。
 
 
剣で、私の手首に傷をつけ、少女の上にかざす。
傷口から流れ出た蒼い血が彼女の体にかかり―――
刹那、彼女の体は大きく震えた。
同時に、彼女の口が空気を求め始め―――傷が癒され始めていく。
 
そうだ・・・これでいい。
これでもう、お前は死ねない。
永劫に、兄のいない世界で生き続けろ・・・!
 
私は、堪えきれない昏い喜びに声を上げて笑いながら、その場を転移した―――
◆ロゼット・クリストファ&クロノ&アズマリアvsモリペス・オクティペス◆
『仄暗い海の底から』
>351
―“それ”にとって幸運だったのか、次の目標はすぐ側にいた―

―水面を通して“それ”に銃弾が撃ち込まれる―

水面から『くけぇぇえ』と言う鳴き声がした。
超越生命体は神である“闇の力”に付き従うもの達である。
聖なる力に覆われ、そして動く。
聖火弾の持つ同質の力による反発が起こり、水柱が湧き立つ。
 
生物としては“それ”は限りなくタコに近かった。
その姿を少女たちの前に晒し、そして少女を、そしてもう一人の少女を、
諸共におのれの触手で包み、水の奥へと引き込もうとする。
354遠野秋葉 ◆La2AKIHA :02/06/14 01:22
<遠野秋葉vsアセルス>
>352
 ――暗い
 
 漆黒の闇の中を彷徨う私……
 
 
 ――ドクン
 
 
 鼓動。
 ……私の?
 
 次第に意識が覚醒していく。
 もう、楽になれたはずなのに……
 どうして……?
 
 
 目が覚めるとそこは誰もいない夜の学校の廊下……
 私が死ぬ前に目にした光景と寸分違わない。
 違うのは、少女がいないことだ……
 
「――!?」
 
 身体の奥底から、つきあげてくる衝動。
 今までのソレとは比べ物にならない。
 
「―――」
 
 苦しい……
 もう、それこそ自我を、遠野秋葉を保っていられないほどに……
 
「――――でも」
 
 もう、私には何もない。
 だったら、思考を閉ざして、この衝動のままに生きよう。
 そもそも、最初からそうするべきだったし、そうするつもりだったのだ。



「………」
 
 1人の鬼が校舎が出てくる。
 彼女はこれから、目に映るもの、全てを文字通りに奪い尽くすだろう。
 
 朱い月の光が彼女の行く末を暗示するかのように、煌々と輝いていた……
355遠野秋葉 ◆La2AKIHA :02/06/14 01:23
遠野秋葉vsアセルスのレス番纏めですわ。
>295>298>299>300>303>305>306>307>308>309
>320>324>326>327>330>331>332>334>352>354
 
救いがありませんか?
……それが私の運命ですから。
 
アセルスさん、お疲れさまでした。
ロゼット・クリストファ&クロノ&
 アズマリアvsモリペス・オクティペス
『仄暗い海の底から』
>353
 
「うやぁぁぁぁ!!気持ち悪ッ!!」
「た、タコさん!?」
「・・・・・・見たことない形状(タイプ)・・・・!?」
 
私達は、口々に悲鳴やら何やらを上げた。
何というか、巨大なタコとでも称すればいいのだろうか。
とにかく、ヤツはグロテスクな触手をうねらせながら奇声を上げている。
 
「ロゼット、気をつけて!」
「気をつけるとかそういう前にめちゃくちゃ気持ち悪いッス!」
 
私は半分泣きが入りながら叫んだ。
 
「・・・・・・きゅぅ・・・・」
「うわぁぁぁぁ!?アズマリア?!」
 
アズマリアにいたってはこてんっと目を回して倒れようとしている。
慌てふためく私達にお構いなく。
奴の触手が私達に迫る!
 
「あの触手が奴の攻撃手段だと思う!! つかまらないように注意・・・・・・ってェ?!」
「だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 
触手の持つ破壊力云々の前に、私はタコが嫌いだ。
生理的悪寒に狂乱状態に陥りかけながら、クロノの手から機関銃を奪う!
 
「来るな来るな来るなァ!!」
 
私は狙いもほとんど定めずに、奴にめがけて機関銃を放った!
◆ロゼット・クリストファ&クロノ&アズマリアvsモリペス・オクティペス◆
『仄暗い海の底から』
>356
―“それ”は同質の力で再び、押された―

機関銃から聖火弾の雨がタコ…モリペス・オクティペス煮降り注いだ。
弾頭そのものは不可視の力場によって防がれ、十字の閃光が異形を覆う。

反発に押されるかのように再び水溜りに消える。
 
不意に、機関銃を持った少女の足元に水溜りが湧き、そして少女の足から虎視までを触手で覆い、包む。
そして、信じられないほどの強力で水面へと引き寄せ始めた。
ロゼット・クリストファ&クロノ&
 アズマリアvsモリペス・オクティペス
『仄暗い海の底から』
>357
 
「?!」
 
私の放った銃弾に弾かれるよな形で、奴が吹っ飛び・・・・再び水面に消える。
何処?!
慌ててあたりを見回す私たち。
次の瞬間―――!
 
《ぶわっ》
「?!!」
 
私の腰から下を触手が掴む!
 
「うわぁ?!」
 
そして、物凄い勢いで水面へと引きずり込まれる!?
 
「たす―――!!」
「オォォオォォォォ!!」
 
私が助けを求める前に!
クロノが叫びながらその腕を振るう!
 
《ぶちぶちぶちぶち!》
 
繊維の詰まった肉が引き裂かれるやな音を立てて、触手が切り裂かれる。
 
「さ、サンクス・・・・・クロノ」
「お礼を言ってる場合じゃ、なさそうだけどね!」
 
クロノは、そう叫びながらあたりに再び鋭い視線を向けた。
359カンパ:02/06/14 02:05
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>349
 
 狂ったように跳ね上がるのは、イカレた脈と弾幕の奏でる死のリズム。
 顔全体を満面の笑顔で飾って、カンパは生きた砲塔と化した。
 逃がすつもりは無く――逃げられる筈が無いと悟っている。
 無造作に掴まれた漆黒のギターケースが、途切れる事なくマズルフラッシュと鉛弾を吐き出す。
 一見デタラメに掃射される豪雨の如き弾雨は、芸術的なまでの繊細さでコントロールされ、残酷な
までの照準で次々と吸血鬼の脳と心臓を破壊して行く。
 ギターケースを反転させて、内部のマガジンをリロード。
 途切れる事無い弾幕を、両手の微妙なコントロールで張り巡らせる。
 最小の動きで最高の演奏を演出するギターが、手当たり次第に吸血鬼を死の眠りへと魅了した。
 
 弾幕を縫って迫る、二つの影――カンパの体が、巨大な駒となって回転した。
 上向くギターの先端が、放射線状に弾幕を撒き散らし――禿頭の吸血鬼を股から頭上まで
弾痕の縫い目を縫い付け、臓物を噴出させながら全身を叩き割り、二つの肉隗に変えた。
 回転を止め、強く大理石の床を踏み込むと、カンパは両のギターを一気に方向転換。
 数発を被弾しながら、数メートル先でキーノへ迫る吸血鬼へと、射出音の切れ目すらない弾幕を
叩き込んでいた。
 腹腔を破り、腸管を汚物と共に吹き千切られる吸血鬼――浮いたまま、ピンクの肉と脳漿を降らせる
それを、原型が無くなるまで掃射した。
 後にはただ――醜く汚いだけの肉隗が二つ。
 新たな獲物を求めて、ギターケースが錯綜する。
360キーノ:02/06/14 02:10
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>359
 
 今までに放った5発の弾頭が、既に重数匹の吸血鬼を爆殺していた。
 尚も笑い、走り、身を屈めてはランチャーをトリガーする。
 弾道の計算は完璧、着弾の感触も完全に掴んでいる。異形の武器を獲物と決めてから、彼の腕は
正にそのギターケースを振り回す事を生業としていた。
 中庭へと駆け出す吸血鬼の一団を捕捉、すぐさま腰を落とそうと――青年へと飛来する巨大な蝙蝠
を視覚が捉えた瞬間、キーノはその姿勢のままにターンする。
 
 姿勢を崩しつつも背後へと飛び退り、屈伸体操の姿勢でギターケースの取っ手をトリガーした。
 蝙蝠の背と一直線に結ばれたギターケースの先端から、弾頭は白煙の直線を描いて飛来する。
 耳障りな甲高い悲鳴を上げて、元の姿すら取り戻す事無く、蝙蝠は無数の肉片となって空中分解。
 テーブルと石柱が、肉片と臓物片にペイントされて赤く染まる。
 
 青年の走る先の無数の吸血鬼達と、中庭へ逃走した連中――脳は、即座に最善の判断を下した。
 ギターケースを抱え、キーノは中庭へと進行を開始した。
◆ロゼット・クリストファ&クロノ&アズマリアvsモリペス・オクティペス◆
『仄暗い海の底から』
―忌むべき者がいる。“それ”は狂喜した。己の幸運に―
 
ビチビチと引きちぎられた触手は何本も地面に落ち、その後も、蠢いていた。
水面の奥で異形は再び、周囲に水溜りを作り、
また戻るという作業を繰り返していた。
 
恐る恐る、覗き込もうとする人の姿すらなく、町は静まり返っていた。

一陣の風が吹き、『ひょっとしたら、もう逃げた後なのでは?』
と思い始めたとき、マグダラ修道会におけるクラス3rdの服を身につけた少女が叫ぶ。
 
「ろ、ロゼット!前に!」
正面の水溜りから、触手が這い出ようとしていた。
 
そして…、叫んだ少女の背後の水溜りから、小さく泡がでた。
362祁答院マコト:02/06/14 02:18
闘争中失礼する。
火者の里からの任でな、私もここに来る事になった。
祁答院マコト、だ。
既に来ている七荻、三輪坂と同様、宜しく頼む。


出典 :夜が来る!(アリスソフト) 
名前 :祁答院マコト(けどういん・−)
年齢 :17歳
性別 :女性
職業 :女子高生(桜水台学園2年生)
趣味 :特にない。
恋人の有無 :いない。
好きな異性のタイプ :興味はない。
好きな食べ物 :好き嫌いを言うなど、贅沢だな。
最近気になること :・・・キララの事
一番苦手なもの :特にないが。
得意な技 :火者の里で学んだ体術
一番の決めゼリフ :火者とは覚悟ある者の名だ
将来の夢 :さあな・・・
ここの住人として一言 :慣れない身だが、精一杯やらせてもらう。
ここの仲間たちに一言 :宜しく・・・頼む。
ここの名無しに一言 :火者の覚悟、知って貰えれば幸いだ。
>361は>358へのレスです…。
失礼しました。
>323 遠野志貴 vs 邑輝一貴(M) 「銀と蒼」
 
「出来ますか、君に?」
 
 女を庇ったボウヤと正対する。
 ボウヤがこちらに跳びかかろうとする。
 それを見遣り私は唱える。
 
『恋人よ帰れ、我が胸に』
 
 夜気を震わせた、それが合図の言葉。
 弾かれたように、ボウヤの後ろに倒れていた女が起きあがり、ボウヤの身体にしがみつく。
 
「な!?」
 
 流石に反応できなかったらしい。
 あっさりと組みつかれるボウヤ。
 わけがわからない、という顔の彼に種明しをしてやる。
 
「催眠術というやつですよ。単純なものですが……おっと動かないで下さい」
 
 女を引きはがそうとするボウヤに向かって、懐から抜いた銃をポイントする。 
 
「あなたなら避けられるでしょうが……避けるとその女が死にますよ?」
 
 私の言葉に、ボウヤの動きが止まる。
 予想通りの反応に、見知った顔を思い出して嘆息。
 
「……あなたも“あの人”と同じですか。
 自分がなにかを守れると信じている」
 
 馬鹿らしい。
 私は肩をすくめる。
 
「なんで分からないんでしょうね?
 『死』そのものであるあなた方に、
 守れるものなんて存在しないって」
 
 弄る言葉にボウヤの瞳の色がさらに強くなる。
 だが動かない。
 
 どこからどこまで“彼”と同じというわけか。
 
 我知らず口の端が吊りあがる。
 
 好きですよ……そういうの。
 偽善的で……
 
――虫唾が走る。
 
「さようなら。あなたの瞳はくりぬいて私が使ってあげましょう。
 ああ、心配しないで下さい。あなたの妹もすぐに送ってさしあげますから」
 
 愛情じみた憎悪に笑みを浮かべながら。
 彼の心残りの全てを踏みにじって、私は――
 
 引金を引いた。
緑川淳司&花村雅香 VS 弓塚さつき(27祖)
>171
 
【激昂、そして】
 
 速い。
 吸血鬼のわたしとほとんど等速。
 だけど―――
 
「絶対に、逃がさないんだから」
 
 前方に、小さく見える二人の姿。
 もうすぐ十字路、別れられると拙い―――だったら、そこまでに仕留めよう。
 先ほどよりも力を入れて足を踏み込むと、辺りの景色の流れが変わる。
 
 それでもまだ少し、距離があるか。
 悪いコトに、予想通りで。
 二人は別方向へと散っていった。
 ただ一つ、予想と違っていたのは―――
 
 男のほう。
 ひらりと動く、その手のひら。
 まるで、わたしを招いているかのように。
 
―――なに、その態度
  食べられる側のクセに、そんなのってないよね?
 
 決まり。
 女のほうを殺してやろうと思ってたけど、貴方からにしてあげる。
 
 だから、わたしは―――
 再び背を向ける男を目指し、更に足を動かし始めた。
366美夕 ◆MIYU.g96 :02/06/14 02:42
vs仮面ライダーゾルダ 〜エイエンハドコニアルノ

序章

弁護士・北岡秀一は行きつけのレストランで遅い昼食を摂っていた。
今日の裁判が思ったよりも長引いたからだ。
と、窓側の席を見る。ここのところ、ずっとあの席には一人の少女が座っている。
長い栗色の髪を片側にまとめて赤いリボンで結んだ、特徴的なスタイルが目を引く。

少女は、全てに関心がない、といった超然とした様子で詩集のページをめくっている。
制服はこの近くのお嬢様学校のものだ。コーヒー一杯でも相応の値段を取られるこの店で
毎日のようにこうして暇を潰しているあたり、学校嫌いのどこかのご令嬢といった所か。

しかし、それにしては帯びている『空気』が違う。
奇妙に冷たく、透き通った雰囲気だ。世間のあらゆる汚れを知りながらそれに汚されて
いない、そんな感じだろうか。

食後の暇潰しの人間観察、のつもりだったが、つい熱心に見入ってしまった。まだ幼いが
極めつけの美少女だ。――美人は大好きだからな、そう独りごちる。

突然、目が合った。少女は、こちらを見ているのだ。
軽く一礼して視線を外そうとするが、そうさせてくれない。まるで魅入られたように。
少女は、詩集をテーブルに伏せると、こちらに向かって来た。

北岡の顔を覗き込んだ少女は、かすかな微笑みを浮かべた。

「"永遠"・・・欲しくない?」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

耳障りな、かすれるような高音。
その音に振り向いた男は、ガラスに映った自分の顔を見る。そして、その後ろに映る
奇妙な怪物の姿も。動物を模して金属を削り出したようなその化け物は手を伸ばす。
ガラスが水面のように波立つと、そこから伸びた手が男を引き込んだ。

男は、鏡の中に消える。かすかに咀嚼音のようなものが聞こえた気がした――

「やれやれ、最近『鏡の中』でわけわかんないことが起きてるってのに美夕は何してるん
だろうねぇ」

そう呟くのは、ころころとしたピンク色の兎だ。毛羽立った尾と片目を覆う耳が、ただの
兎ではないことを物語る。その喋る兎は、ひょこひょことガラスの中へと消えていった。
367北岡秀一(M):02/06/14 02:43
>366
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ 

「はは、お嬢さん何を突然言うのかと思えば」
北岡は少女の言葉を軽く受け流す、しかしその実、彼は背中に寒いものを感じていた
永遠の生命・・それこそ北岡秀一が何よりも求めるもの・・・まして不治の病に侵されている彼にとって
それは切実なものになっていた
それゆえ、彼は神崎士郎の誘いを受け戦いへと身を投じたのだ。

静寂の中、北岡はもう1度確認するように自分の目の前の少女の瞳を見ようとする
が、それは携帯のベルの音で中断された。
「悪いね、この後も仕事があるんだ、今のはきっと催促のメールさ」

北岡は安堵するような表情を浮かべ席を立つ 
法廷で色々な人間と遣り合ってきたが、この少女はそのいずれにも属さない
興味はあるのだがどこか危険な感じがする・・・・関わるのは避けておいたほうがいいだろう。
「じゃ、またいずれ・・・・お嬢さん」
そんな心の不安をおくびにもださず、北岡はあくまでも軽い仕草で少女に手を振り店を出る
だがそのとき少女がひどく冷たい笑みを浮かべたことに彼は気づいただろうか?


「んで吾郎ちゃん何?え、学園の行方不明事件?悪い噂が立つ前に処理して欲しい?
分かった、明日向かうって伝えといて」
368美夕 ◆MIYU.g96 :02/06/14 02:48
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ

>367

依頼のあった学校には、見覚えのある制服の少女たちが行き交っていた。
―昨日の子の学校か――

「すみません、理事長室はどちらですかね」

適当に声をかけたつもりだった。

「あっちよ」

そう答えたのは、昨日会ったあの少女だった。

「ああ、どうも、また会いましたねお嬢さん――」

適当な社交辞令でさっさとその場を離れようとする北岡だったが、少女はその意を無視する
かのように、並んで歩きはじめた。

「あなたが、わたしを呼んだの・・・助けて、って声が、聞こえたの」

――何を言ってるんだこの子は――

「望むなら、永遠をあげるよ?・・・ずっと、幸せな夢」

少女の甘美なささやきは、北岡の体を凍りつかせた。何者なんだ、彼女は――
聞こえる学生たちの喧騒が、遥か遠くにあるもののように聞こえる。
かつん、かつんという自分の靴音だけが、耳障りに響く。ひどく現実感を欠くこの感覚は―

「ここが理事長室」

「ああ、ありがとう」

いつの間にか着いていたらしい。少女は、最後に北岡の目を見て微笑んだ。

「わたしは、美夕。きっとまた会えるよ」

北岡は、美夕と名乗った少女が去りゆくことに安堵しながらドアをノックした。
手のひらに、なぜかびっしょりと汗をかいているのが不快だった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――
用件を終えて校門を出ようとした北岡は、見覚えある男がいるのに気がついた。

「何やってんの」

OREジャーナル編集部の城戸真司、とある件での知り合いだ。

「北岡さぁん、あ、そうだ北岡さんも聞いてません?『学園伝説の吸血鬼』の話」

「全く、お宅らみたいのがいるから迷惑してるんだよね・・・事実無根。そんなのはただの
根拠のないうわさ話なの。名誉毀損で訴えられたいの?」

「でも・・・」

すがりつく城戸を無視して愛車に乗り込む北岡。しかし脳裏には「学園伝説の吸血鬼」という
言葉が引っかかったままだった。
369北岡秀一(M):02/06/14 02:53
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ 
   
「あれ?じゃぁ北岡さんは別口ですか?」
ここは例のレストラン、結局城戸の言葉が気になった北岡は話を聞くことにしたのだった。
  
「ああ・・・・行方不明になった学園の教師が横領に絡んでいたらしくてな、内々に処理して欲しいんだそうだ
あ、おいこれはまだ記事に書くなよな・・・・・」
  
「分かってますって、ああじゃあ俺の話ですね、実はですねさっきの学校の女生徒の何人かが
精神異常で入院してるんですよ、そしてですね入院した女生徒全員の首筋にも傷があったんです
それでほらもうすぐ夏だし、怪奇特集で行こうかなって」
  
なんだ、聞いてみればつまらん話だ、が・・・何故か引っ掛かるものがある
北岡は先程理事長に聞いた話を城戸に話してみることにした。
  
「じゃあ、これは知っているか・・・・・横領に絡んでいた教師は理事長を含め4人
そのうち2人が行方不明になっている、いずれも鏡のある部屋でな」
  
これを聞いて、城戸も顔色を変える
「じゃぁ、まさか・・・・・・モンスターかライダーがあの学校に・・・・」
「てっきりお前はそっちの線で動いていると思っていたがな」
 
自らを強くするため意図的に他の人間をモンスターの餌にしていたライダーが
いたことは話に聞いている。
もしかするとあの少女が・・・・・・
神崎士郎のことだ、何を仕掛けてくるか分かったもんじゃない
事実、浅倉の件もある。
 
結局、事務所に帰りついたのは夕方になった
事務所のドアを開くと同時に声がする、この声は・・・・・
「へぇ、遅いお帰りなのね・・・仕事熱心なんだぁ」
例の少女、美夕とかいったか、が事務所の奥にある北岡のデスクに腰掛け微笑を浮かべていた。
370美夕 ◆MIYU.g96 :02/06/14 02:55
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ

>368 >369

【それよりおおよそ2時間前―】
 
「・・・というわけなんだわさ」
  
美夕の肩に乗っているのはピンク色のころころした兎。片目を耳で隠している。
『監視者』のよき協力者である鏡神魔の死無(しーな)だ。
彼女は、ここ最近多発している鏡の世界の異変を美夕に語っていたのだ。
  
「新手の鏡神魔のしわざかもしれないよ?ほっといていーのかねぇ美夕」
 
「そう言えば・・・この学校でも先生が行方不明になってるのよね。確か。
 ・・・でも、神魔のにおいは感じない。もっと、違う感じの悪意―――」
 
「で、今度の獲物はあの弁護士かい?面食いだねぇ美夕は」
 
「ううん、何っていうのかな・・・彼の夢は、すごくおいしそうなの」

――――――――――――――――――――――――――――――

「何、吾郎ちゃん、どうしてこの子がここにいるわけ?説明してよ」
 
夕陽の光に照らされた少女の姿は、寒気すら感じる美しさだ。しかし、危険な香りはいっそう
濃密に感じられる。北岡はつい声を荒げた。
 
「あの、先生のお客さんだって言うものですから。それに・・・」
 
確かに今どきの子としても小柄で華奢な、それに落ち着いた雰囲気の少女だ。吾郎ちゃんが安心
して事務所に上げたのも分からなくはない。だがしかし、この美夕という少女は――
 
「ほら、これで見たの」
 
美夕の手にあるのは携帯電話だ。ディスプレイには『OREジャーナル』。
 
「お金のためなら真っ黒も真っ白に塗り替えるスーパー弁護士・・・荒稼ぎしては景気よく使う
贅沢ざんまいの生活。ふふ・・・」
 
美夕は、じっと北岡を見据える。その瞳が金色に見えたのは光の錯覚か。
 
「くすくす・・・寂しいんでしょ・・・怖いんでしょ?」
371北岡秀一(M):02/06/14 02:56
>370
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ 
 
「君には関係のない話だ!!」
北岡は憮然とした表情で吐き捨てると、傍らのボディーガードに命令する
「ゴロちゃん!この娘を追い出してよ!不愉快だ!!」
   
吾郎は北岡の余りの剣幕に面くらいながらも、美夕の肩に手を触れようとする
が、その瞬間どこからともなく黒いマントを羽織った何者かが現れ吾郎を投げ飛ばす
壁にたたきつけられた吾郎は起きあがる気配がない・・・・・今の一撃で気絶したようだ
   
「き・・・・君は一体?」
「言ったでしょう・・・・・あなたに永遠を与えにきたの」
北岡は必死で逃げようとするが身体の自由が利かない・・まるであの金色の瞳に捕らえられたようだ
(こいつはライダーやモンスターなんかじゃない、もっと禍禍しい何か・・・・そうまるで・・・吸血鬼)
「君か・・・・他の女生徒を襲っていたのは」
  
美夕はムッと表情で言い返す
「襲ったなんて人聞きが悪いわね、私は彼女達に幸せを与えただけ・・・あなたもきっと私に感謝するわ」
彼女の囁きと吐息が耳元にかかる・・・しかし北岡にはその感触を味わう余裕も無い
 
「ばいばい」
  
美夕の唇が北岡の首筋へと迫る・・・がそのとき強烈な耳鳴りが彼の頭に響いた
その瞬間、呪縛が解ける
北岡は渾身の力で美夕を振りほどくとそのまま浴室へと駆け込む
まだ運が残っていたらしい、まさかモンスターに助けられる形になるとは
まさか鏡の世界にまで追ってはこれまい、それにあそこなら戦い様がある
鏡に向い、カードデッキをかざす。
  
「変身ッ!!」
  
北岡は鋼の戦士、仮面ライダーゾルダに変身し、鏡の世界へと身を投じていった。
372美夕 ◆MIYU.g96 :02/06/14 03:01
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ

>371

「ちぇ・・・逃げられちゃった。 ・・・・・・?!」
 
美夕の感覚にも、不思議な気配が引っ掛かる。と、窓の中からピンクの兎が転がるように飛び
出してきた。
 
「美夕!『あいつら』だよ、最近鏡の中から人を襲ってたのは」
 
宵闇のガラス窓に映るのは、ねじくれた角を持つ金属のような獣のような異形。
神魔の持つ気配とは確かに違う。もっと、そう――作り物めいた殺意。
 
「行くよしーな」
 
身を翻した美夕の姿は、白い着物と赤い帯の『監視者』の装束に変わっていた。背後には黒衣の
従者が影のように従う。
 
「あいあいさー」
 
死無の耳が持ち上がり、そこだけ異様に大きくぎらぎらした目が現れる。その目が妖しい閃光を
放つと、ガラス窓と部屋に据え付けてある姿見の間に光の道が現れた。
美夕と黒衣の従者、ラヴァは光の道に飛び込むと、吸い込まれるように消えていった。
 
――――――――――――――――――――――――――――――
 
「鏡の中、か。これで二度目だけど、ざらざらしていやな感じ」
 
鏡の向こうは、すべてが反転した世界。『所務事士護弁岡北』と書かれた玄関を出ると、ほどなく
視界に異様な怪物の姿が入る。
 
「ラヴァ!」
 
右手に炎をまとわせて跳ぶ美夕。呼吸を合わせると爪をひらめかせて地を駆けるラヴァ。
白と黒の主従が異世界の獣を屠らんと襲いかかる――
373北岡秀一(M):02/06/14 03:03
>372
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ 

美夕とラヴァがモンスターと戦ってる最中
ゾルダはその様子を背後から伺っていた
(追いかけてきたか・・・まあいい、ここなら戦える)

ベルトのホルダーからカードを取り出し、自動小銃型の召喚機マグナバイザーにセットする
『シュートベント』
ゾルダの手元に長大なキャノン砲、ギガランチャーが姿を現す。
 
照準は・・・モンスターではなくあの少女だ、モンスターごときいつでも狩れる
ゾルダは慎重に狙いをつけ発射したのだが、その瞬間モンスターが突出し
結果、狙いがわずかに外れ、砲弾はモンスターを直撃した。
   
ゾルダは小さく舌打ちするとすかさず第2射の準備にとりかかった。
『伯林の紅い雨』〜ベルガー&ヘイゼルvs天草四郎時貞
>338 
 
髪の刃がまさに腕を斬り落とさんと触れる瞬間、
それ四散した。
しゅうっと風が天草に吹き付けてきたのは、風が回ってきたのか。
天草は視線の片隅に、女が剣を振っていたのを見た。
天草はニンマリとして言った。
 
「なるほど、一人では敵わぬからとて、横槍を入れたか。
 ただ、このままでは目障りゆえな、少し黙ってもらおう」 
 
そして髪を数本引き抜き、再び環を作り出すと、
宙へと浮かばせる。
それは夜闇の中をふっと飛んでいき、女の傍らの街灯にはまっていく。
 
「忍法髪切丸!」 
 
その掛け声とともに、街灯は数箇所にバラバラに刻まれ、
女の頭上へと崩れ落ちていく。
それが崩れ落ちるのと、天草が男にむかい、
極彩色の魔鳥のごとくおどりかかっていくのが同時であった。
 
上から襲い掛かる黒き死神の鎌、下から閃く白刃が、
男に向かいその顎を向けた。
375ベルガー&ヘイゼル:02/06/14 14:22
『伯林の紅い雨』〜ベルガー&ヘイゼルvs天草四郎時貞
>374

ヘイゼルの頭上に輪切りになった街灯が落ちてくる。
数年前の彼女ならまったく動けなくて直撃を受けていたか、
恐怖で獣詞変して猫になっていただろう。
しかし、今は違う彼女は決戦を越えている。
これ位の攻撃なら・・・

「風を詠んで避けれます!!」

すべてを回避、そして

<<救世者は運命に助力する>>

”救世者”の仮発動は同じ強臓式装備である”運命”に力を与える。
その行動がわかっていたかのようにベルガーは、体制を立て直しつつ、
敵の方へ、下段の白刃を払い

<<運命とは駆け抜けるもの>>

”救世者”の力で刃が分厚くなった”運命”が上段の大鎌とぶつかり合う
『伯林の紅い雨』〜ベルガー&ヘイゼルvs天草四郎時貞
>375 
 
戞っ
と、火花が散ったのは、男の剣が黒き鎌の刃に応じたのである。
上段から、黒い雷光のごとき撃ちおろしである。
しかも、触るれば鋼をも裁つ髪切丸の刃を受け止めるとは。
 
「まったく、面白い術を使ってくれるなあ。いや、まったく。―――」
 
天草四郎は含み声をたてて笑った。なんという美しい、冷たい笑い声だろう。
 
「だが、何度もやられるは厄介ゆえな、黙ってもらおう。
 何、安心せい。男は殺すが、うぬは殺さぬ。生きながら地獄を味わわせてやろう―――」 
 
言い終わるが速いか、ふわりと後方へと飛んだ。
その身を風に乗せたかのごとく舞い上がると、街灯の上に優雅に立っている。
両のこぶしをゆっくりと回しながら、二人を見下ろす。
 
「今日は暑いゆえ、行水でもするがよい」 
 
その声と共に、大音声と共に二人を挟む様に立つ石造りの建物の上から、
巨大な水瓶が落ちてきたのであった。
それは落つる間にも幾片にも分断され、
滝のような水とともに落ちてくる。
 
そして光りを背に水瓶と同じが如くに分断せんと、
疾風の速度で男に迫る。
前門の虎、後門の狼。二つの脅威が二人を襲う。
377ベルガー&ヘイゼル:02/06/14 16:36
『伯林の紅い雨』〜ベルガー&ヘイゼルvs天草四郎時貞
>376

「今日は暑いゆえ、行水でもするがよい」 

その言葉が聞こえた瞬間、水が来た。
いや水だけならいい、その中に混じる瓶の破片。
滝の向こうにいるであろうベルガーを信じて、
ヘイゼルは”純皇”を水の中に突き刺し叫ぶ!!

「水に流れる三百四十万詞階の遺伝詞達!聞こえますか?私の遺伝詞の声が!!」

ラの声と共に一瞬で水は霧に変化。
そして・・・

「ベルガーさん!!」

叫ぶ先にはほんの少しだが瓶の欠片でキズを受けているベルガー
水の重みの中”運命”振り続けていたようだ。

「わかっているよ、うるさいぞ、バカヘイゼル。」

”運命”を街灯の上にいる男に向け振る

<<運命は簡単に流されず>>

まだ霧の中残っていた破片と”運命”がぶつかり・・・
破片は男のほうへと飛んだ。  
378フィオ ◆Fio.RSac :02/06/14 17:25
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>344
 
部屋に飛び込んだエリが見た物はヤハベにフィオが組み伏されている姿だった。
「エリ・・ちゃ・・ん」
『お、もうひとりお嬢ちゃんが居たのか。まいったなー、オレはふたりを同時に相手できるほど、元気じゃないぞー?』
『つーわけで、このコとのお楽しみが終わるまで、そっちの嬢ちゃんは部屋の外で順番待ちしててくれねえか?
・・・・・駄目か』
「っざけんなテメェ! ブチ殺す!」 
怒りも露わにエリはヘビーマシンガンの銃口を向けるが・・・
『おいおい、クールにいこうや。このコも一緒に、穴だらけにするつもりかー?』
 
ヤハベはフィオを引きずり起こし、盾にした。
 
『武器を捨ててもらおうか、嬢ちゃん』
 
「・・・オーケイ」
 
エリはヤハベに向けていたヘビーマシンガンの銃口をゆっくりと立てて、手を離しざまに左手でヘビーマーダーを抜いた・・・!
 
 
379ヤハベ:02/06/14 18:51
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>378

 金髪娘はオレの言葉に素直に従い、手にした銃の狙いを上に逸らした。
 口惜しそうな表情がオレの嗜虐心をくすぐったが、今はフィオの相手で忙しい。
 この娘とゆっくり遊んでやるのも疲れそうなので、少しもったいないが、この場で始末してしまおう。
 そう決めると、右手に握った十字架型拳銃の撃鉄を起こし、金髪娘に狙いをつけた。
  しかし、オレが引き金に指をかけたその瞬間には、金髪娘の手にフィオのものと同形の
古風な拳銃が握られていた。
 こいつも早抜き名人か、と心の中で毒づきつつ引き金を引いた。
 
 二つの銃声が、ほぼ同時に室内に響き渡る。
 金髪女は、雷に打たれたように身を震わせるとうつ伏せに倒れこみ、オレは右肩の骨を
打ち砕かれた苦痛に、拳銃とフィオの両方を取り落とした。
 金髪女は死んだが、オレは生きている。
 右肩を犠牲にしたものの、勝者はやはりオレだ。
 
 オレは笑った。
 この楽しい撃ちあいを、戦いの賞品となったフィオを、目の前で死んだ女の愚かさを、
そのほか色々なことを考えては笑った。
 足元に転がるフィオには一瞥も与えずに、笑った。
380フィオ ◆Fio.RSac :02/06/14 20:21
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>379
 
銃弾を受け、エリは崩れ落ちた。
銃弾を受け、ヤハベは銃と、フィオの両方を離した。
 
そして、床に転がったフィオは・・・
 
「うわあぁぁぁっっっ!!!!」
 
立ち上がりざまにヤハベの顔面にまだ痛みの残る右の拳を叩き込んだ。
次いで左の掌ていを放ち、ヤハベの鼻骨を砕く。
吹っ飛んで倒れ、痛みにうめくヤハベの鳩尾に全体重をかけて膝を落とし、さらに両の掌ていで顔面を殴打。
そして、両手で首を絞めながら床にヤハベの頭を何度も何度も叩きつけた。
381ヤハベ:02/06/14 20:54
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>380

 オレの笑いは、唐突に途切れることになった。
 
 下の方から突き上げられたなにかが視界いっぱいに広がり、その何分の一秒かあと、左眼のあたりに
衝撃が伝わった。
 思わぬ出来事に狼狽していると、今度は鼻筋に硬いものが叩きつけられ、意識に黒い幕がかかる。
 眼を覚ましたのは、ほんの数秒後だったようだ。
 オレは陸に揚げられた魚のような無力さで、床に倒れているらしい。
 両脚は、床を踏むことをとっくにやめていた。
 上体を起こそうとぼんやりと考えたときには、天井がそっくり腹に落ちてきたような感覚に
襲われた。
 のけぞった頭に、新たな衝撃が伝わる。
 何度も、何度も。
 
 薄れる視界のむこうには、顔を血に染めたフィオがいた。
 両手をこちらに伸ばして、オレの頭を揺らしている。
 あの表情は、怒りだろうか、悲しみだろうか?
「怒ってるのか?泣いてるのか?」
 そのことが気になったのでオレは問いかけたが、驚いたことに、それは掠れた囁きにさえならなかった。
 
 もう一度フィオに話しかけ直そうとしたとき、ふたたび暗闇が訪れた。
アルカード(M)vsモリガン・アーンスランド(M) 『月下、狂艶』

導入


撃鉄の落ちる音。
異形のライフルから迸る白い殺意。
どっ、と重い音を立てて突き刺さる杭。
月下にヒトの物とは思えない断末魔が、狂った哄笑が響く。


――それを、見つめていた。

眼下の赤いコートの男――アルカード、と言ったか。
ヘルシングのハンターであり、吸血鬼を狩る吸血鬼。
いや、狩るのは吸血鬼だけでは無い。
ヒトに在らざる者全て。

 なら、わたしもね・・・

狩られるつもりは無いが、遊び相手が欲しかった所だ。
この相手なら、嬉々として付き合ってくれるだろう。

「今晩は。お仕事に精が出るわね、ヘルシングのハンターさん?」

翼を打って地へと舞い降りる。
その姿は美しく、妖しく。
それは、ヒトに在らざる者・・・『夜の女王』。

「・・・判るわよね?
 さあ、わたしを感じさせて・・・楽しませて頂戴」

誘うように手をひらひらと振り、ただ、その時を待った。
383アルカード(M):02/06/14 21:35
アルカード(M) vs モリガン・アーンスランド(M) 
『月下、狂艶』 
>382 
 
 吸血鬼もどきの小僧が灰に還って、ハイお終い。 
 今日もお仕事お疲れさん、ってな。 
 あとは輸血パック吸って棺桶で眠って明日までお休みなさい、だ。 
 
 長物を肩に担ぎ上げながら、赤の吸血鬼は首を鳴らした。 
 味気ない。最近の吸血鬼は何だ、クイを打たれるのを待ってるんじゃねぇか? 
 昔はもう少し、粘りっつーかしぶとさっつーか、楽しみがあった。 
 
「ま、楽なお仕事で結構なことだ」 
 
 言葉とは裏腹に表情に冴えがない。サングラスに覆われた瞳までは知れなかったが。 
 
 ――――そこへ翼を持つ女が降り立ったのは、いかな巡り合わせか。 
 
 気安く声をかけるそいつは、夜族の強く濃い気配を漂わせていた。 
 たった今潰したもどきとは比べ物にならない、圧倒的で歓喜を呼び起こす気配を。 
 
「・・・判るわよね?」 
 
 ああ、とても良く判る。 
 吸血鬼の熱を持たない体が滾った。 
 
「さあ、わたしを感じさせて・・・」 
 
 いいとも。体中にクイをぶち込んで、最高に感じさせてやるさ。 
 発達した犬歯がその姿を見せ、吊り上がる凶相に白の彩りを加えた。  
 
「楽しませて頂戴」  
 
 ニィ。 
 嗤う。 
 虐殺ではない闘争の気配に震える心を隠すことなく、吸血鬼――アルカードは嗤った。  

「美女の誘いだ、断るわけにはいかないねぇ」 
 
 クイを収めたライフルを構え直す。 
 吸血鬼を屠ったばかりの熱い銃身が、その眉間を見つめた。 
 
「いいね、やろうか」
アルカード(M)vsモリガン・アーンスランド(M) 『月下、狂艶』

>383
目の前の男が、笑う。
この上ない悦びに震えながら。
その顔に深い狂気を刻んで。

 いいわ、その顔。

ライフルを持った腕が上がり、その銃口が眉間に殺意の線を引く。

 そう、後はトリガーを引くだけ。

それで始まる。

 でも駄目よ、そんな物使っては。

「ええ、始めましょう・・・
 でも、どうせなら、あなた自身が欲しいわ」

待ち切れない、と言わんばかりの彼の言葉にそう相槌を打ち、拳を掲げる。
魔力を帯びた光が収縮し、

「・・・ソウルフィスト!!」

光弾と成って銃身に疾る。
385アルカード(M):02/06/14 21:58
アルカード(M) vs モリガン・アーンスランド(M) 
『月下、狂艶』 
>384 
 
 光弾が鋼を喰らう。 
 とっさに跳ね上げるが、長物はくるくると回って月夜に踊った。 
 
 カラン、と高い音。 
 
 背後に聞こえたそれに振り返ることなく、赤いコートは白い手を伸ばした。 
 地を蹴る足、刃となる左手、半ば開いて荒い息を吐く口。 
 
「ああぁああぁあぁぁ――――ッ」  
  
 それらが一辻の流れとなって、朱色の死が街角を馳せた。 
アルカード(M)vsモリガン・アーンスランド(M) 『月下、狂艶』

>385
宙を舞い、月光に鈍く光るライフル。
それに拘るような愚かな真似はせずに、
弾けるように間合いを詰めて左手を振ってくる。

糸を引くように流れる赤と白の色彩。

 速い・・・でも!!

咄嗟に左翼を変化させ、それを受ける。

「気を付けなさい。あまり急ぐと・・・転ぶわよ?」

言いざま、身を屈めて足を払いに行く。
387アルカード(M):02/06/14 22:28
アルカード(M) vs モリガン・アーンスランド(M) 
『月下、狂艶』 
>386 
 
 膨れあがる女の翼、それが吸血鬼のもたらす死を弾いた。 
 刹那、意識に空白が生まれる。 
 
 気を付けなさい。 
 
 女の言葉、競り来る足。 
 アルカードの気が回った時、その体は宙に転がり出ていた。 
 赤いコートがアスファルトを打って、微かな埃を立てる。 
 
 だが、地に伏してなお――――男は口を開き、犬歯を震わせた。 
 暗い双眸を女へ射抜くように向けた、まま。
388美夕 ◆MIYU.g96 :02/06/14 22:37
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ

>373

突然の砲火が鏡の世界の怪物を爆砕した。
美夕は瞬時に攻撃の方向に向き直る。そこにいたのは、自分の身長ほどもある大砲を構えた
緑色の鎧の戦士。
 
「あなた何者?・・・この件の黒幕?」
 
鎧の戦士は無言のまま砲口を向ける。問答無用ということか。
 
「でも・・・そんなものでわたしを捉えられると思うの?」
 
そう言うなり美夕は宙を駆ける。物理法則を無視した、まるで空を蹴るような軌道。
もう一人の黒衣の男も、まさに迅雷のような鋭い踏み込みで突進してくる。
 
照準を付けあぐむうちに、二人は鎧の戦士の懐に飛び込んできた。
炎と爪の波状攻撃が、明確な殺意を持って浴びせられる――
アルカード(M)vsモリガン・アーンスランド(M) 『月下、狂艶』

>387
動きが一瞬止まり、まともに足払いを受ける赤い影。

「ほら、ね」

こちらを見つめる暗く、血に濡れたような紅い瞳をを冷たく見下ろす。

「あなたが攻めてこないとあたしも燃えないわ・・・」

右翼が音を立てて変形し、数条の刃のようになる。
コートごと四肢を貫かんとして、伸びた。

「これで終わりじゃあ・・・無いでしょう?」

 早く起きて、もっと感じさせて。
390アルカード(M):02/06/14 23:37
アルカード(M) vs モリガン・アーンスランド(M) 
『月下、狂艶』 
>389 
 
「ああ、その通りだ。こんなもんでは終われないね」 
 
 真っ赤なコートに真っ赤な血が溢れ、より赤くより朱く染まる。 
 四肢に一本ずつ撃ち込まれた刃が、男を冷たいアスファルトに縫いつけた。 
 
「俺を燃えさせてくれるのだろう?」 
 
 吸血鬼は嗤う。 
 
「俺を滾らせてくれるのだろう?」
 
 それでも、吸血鬼は嗤った。 
 
 ぶちりぶちりと腕を千切り、倒れる上体を引き起こす。 
 肩から盛大に血が溢れたが意にも介さず、腕を地に刺さる刃へと伸ばした。 
 腕を。千切れた、腕を。 

 血溜まりとなった腕を突き刺し、翼は佇む。 
 その刃を掴み身体を跳ね上げ、羽根を伝い身を躍らせ、不死者は口を開く。 
 ぬらぬらと月明かりを灯す犬歯は、柔らかく艶やかな肌を求め首筋へと伸びた。 
>388
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ

(間に合わないな)
ゾルダは第2射をあきらめると、またマグナバイザーにカードをセットする

『ガードベント』

今度はゾルダの前方に巨大な盾が出現する

ゾルダは盾を構えると、まず炎を防ぎ
さらに時間差を置いて突っ込んできた黒衣の男にカウンター気味の
盾の一撃を浴びせ、ひるんだ隙にマグナバイザーを乱射しながら
すばやく距離を取った。
392美夕 ◆MIYU.g96 :02/06/14 23:56
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ

>391

「へぇ・・・今度は盾ね」
 
堅く守って距離を取っての射撃、がこの鎧戦士の得意の手らしい。
正直、こういう相手はやりにくいが、動きはあまり速くないようだ。なら、手はある。
 
素直に距離を空けた美夕は遠目から動きつつ炎を放つ。意思の力で追尾する炎は、狙いを外さず
緑の戦士に降り注ぐ。そして、完璧にタイミングを合わせてラヴァが踏み込んで爪を振るう。
常に『炎か爪か』の二択を強いる連係は、以心伝心の二人だからこそのものだ。
 
『さあ、いつ動きに破綻が出るかしら――』
 
銃火に身を晒す自分も、一歩間違えば命はない。綱渡りの攻防が続く。
ロゼット・クリストファ&クロノ&
 アズマリアvsモリペス・オクティペス
『仄暗い海の底から』
>361
 
「芸のないッ!!」
 
私は、モーゼルとガバメントを構える!
 
「聖火弾(セイクリッド)が効果ないなら・・・・・・通常弾ならどう?!」
 
今にも私達に伸びようとする触手の蠢く水溜りめがけ・・・・・
ありったけの銃弾を打ち込んだ!
誰もいない通りに響き渡る銃声と、たなびく硝煙。
これだけ撃ち込めば・・・・少しはダメージになるはず!!
394名無しクルースニク:02/06/15 00:05
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>360
 
 跳ね上がる両手が、標的を一瞬で補足して死に誘う。
 熱を限界まで蓄積する銃身が、返り血を蒸発させて異臭に変える。
 1秒につき約5人が物言わぬ肉隗となって転がり、灰と散った。
 何処までも冷静に冷徹に滅びをバラ撒く、一部の無駄もない殺戮のダンス。
 ブラックメタルのスピードナンバー辺りをBGMに付ければ、映画のワンシーンにでも
使える程に繊細で――凄惨であるが故に、美しい。
 理念も無く、感慨も無く、ただ、信念だけがガソリンとなって体を突き動かしていた。
 シンプルにして最上の命令を下した頭に従って両の手は最小限の動きで、しかし縦横
無尽に移動し、精密的確に吸血鬼達の頭部と心臓を悉く破壊して行く。
 あぁ――何て愚かなんだろう、この連中は。考えて、更に殺した。
 
「Our father which art inheven――」
 
 貴婦人の前に踊り出た大柄の衛兵は、胸部に無数の虚を穿たれ、口内に突き込まれた
グロックのゼロ距離射撃の射撃の的になった。頭蓋の破片と共に、ピンクと灰色の脳漿
盛大に背後へと飛び出す。大柄な死体を身を屈めて脇へと投げ落とし、背を向けた当の
貴婦人を背中から蜂の巣に。崩れ落ちた体に聖水をブチ撒けて焼き――
 
 丁度、右手のグロックがホールドオープンした。グロックを投げ捨て、右手で腰後ろに吊った
イングラムを引っ張り出す。視線の先では、逃げ去ろうとする一団。
 さて、どうしよう――脚は、そんな考えを嘲うように行動を開始していた。
 椅子の一つを足場に、白い痩身が飛翔する。
 
「――Hallowed be thy name――」
 
 掛ける一団の走る先、ワインが載ったままの長机の端を思い切り踏み込む。
 跳ね上がる机。勢いで背中に当たるソレが、突如として吸血鬼との間に巨大な影を落とす。
 イングラムのボルトを口に咥えて、絞るようにコッキング。
 一団の視界を覆った机の影から飛び出した白い影は、驚き戸惑う吸血鬼の群をイングラムの
一掃射で壊滅させた。ポーチを指で弾き空けてイングラムのマガジンをリロード。
 
「Thy kingdom come.
 Thy will be done in earth, as it is in heaven――!」
 
 詠い、笑い、血肉の塊を踏み越えて――青年は走り続ける。
>392
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ

(くっ!)
炎を防げば爪が、爪を防げば炎が
まったくもって完璧すぎるほどの連携だ、これでは銃撃に入る余裕すらない
 
(多少バクチになるが・・・やるか)

ゾルダはあえて黒衣の男に背中を向け盾を構えたまま
美夕の正面へ突進する。
当然炎は激しさを増すが、ゾルダの狙いは正面ではなく背後だ

(来たっ)

自分の背後に気配を感じた瞬間
ゾルダは地面に盾を固定し炎をやり過ごす
そしてそのまま反転し、そのまま黒衣の男の仮面めがけ
カウンターパンチを繰り出した。 
◆ロゼット・クリストファ&クロノ&アズマリアvsモリペス・オクティペス◆
『仄暗い海の底から』
>393
―“それ”には同質の力を押さえ込むことは出来ても、
 同時に防ぐ事は、出来なかった―

年下の少女の背後の泡は大きくなり、そして爆ぜた。
「え…!?これは!」
最初に引きずり込まれた者の死体。
それが浮かび上がる際の泡、それが正体であった。
 
無念の表情、そして黝く変色した体。
数々の死を見てしまっていた少女にも、一瞬、声を飲むほどであった。
「ひっ!」

年下の少女、アズマリアのその声に反応した時、
異形は年上の少女、ロゼットに飛び掛り、触手を全身で絡ませた。
そして強力で全身を締め上げる。
397美夕 ◆MIYU.g96 :02/06/15 00:31
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ

>395

『!!』
 
ラヴァはカウンターの一撃を受けて大きく吹き飛び、態勢を崩す。
鎧の戦士はその隙に再び自分の有利な間合いを作り銃撃の雨を降らせる。
鏡の中の空間では、いつものように自在な空間転移は不可能だ。なんとかやり過ごすが、この
ままでは削り合いが続くだけだ。そうなれば耐久力に劣るこちらが不利――
 
「こっちも大きいの、いくよっ・・・!」
 
一気に両手に力を集めると、噴き上がる大きな火の玉を作り出した。
それと同時にラヴァが指先から鋼の糸を放つ。
 
『何っ!!』
 
鋼糸が盾を捉えた瞬間、燃え上がる火柱が緑の戦士を巻き込む。
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>394

 悲鳴と絶叫が木霊する地獄絵図。
 だが狩られるのは、逃げるのは温血者ではない。
 夜の闇を以って人間の上に君臨して来た獄卒たちである。
 
 怒声で肥満体を震わせ、軍部最高首脳の一人、ヨルガ将軍が腰から剣を抜く。
 野卑なマジャール語で罵声を浴びせながら白い狩人へ突撃した。
 ヴァケル・パシャやミッターハウス伯爵といった配下が、同じく剣を光らせて後に続く。
 ヘンツォーも従者の手からレイピアをもぎ取り、鞘を抜き捨てると叫んだ。

「増長も大概にしておけよ、汚らわしい餌が!」
 
 嘗て剣士としても名を馳せたヴァンパイアは、風を巻いて疾り出した。
ロゼット・クリストファ&クロノ&
 アズマリアvsモリペス・オクティペス
『仄暗い海の底から』
>396
 
「ひっ!」
 
アズマリアの悲鳴に、私とクロノの意識がそれる。
振り返った私の目に・・・・変わり果てた姿の被害者が映る!
 
「ッ!!」
 
思わず息を呑む私。
だが――それが失敗だった。
 
「んあ?!」
 
―――奴を失念していたッ!!
背後から、奴の触手が伸び、私の体に巻きつく!
 
「うァぁ?!」
 
私に、それをかわす術はない。
 
「くあァァァァ?!」
 
奴の締め付けに、全身の骨が悲鳴をあげる!
ぐ――は――――!!
 
「ロゼットォ!」
 
クロノが、私を縛り上げる触手を切り裂こうと手を伸ばす。
だが―――数が多すぎる!
先ほどのようには上手くいかないようだ。
 
「うっく・・・・・!」
 
私は・・・・・ほとんど動かない右腕を無理やり動かし、触手の主に銃口を向けた!
>397
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ

すさまじい爆炎がゾルダの身体を包み込もうとしていた
こいつは盾くらいでは防げそうにもない
成すすべも無く炎に飲みこまれたゾルダ、勝負はついたかに思われた。

しかし、その刹那爆音と共に炎は掻き消え、平然とゾルダはその姿を現す

「お前ら、今のはかなり驚いたぞ・・・・・」
その背後には彼を守るように鋼の巨人が屹立していた。
◆ロゼット・クリストファ&クロノ&アズマリアvsモリペス・オクティペス◆
『仄暗い海の底から』
>399
―“使命”の邪魔をするものの排除―
―それもまた、“使命”―

満遍なく行き渡った触手がロゼットの体を締め付ける。

ミキリ、メ・・・と、骨が軋み、折れる寸前で留まっていられるのは、
少年が、必死に爪で、牙で、悪魔の力で防ごうとしているからだ。
ゴッと言う嫌な音がしながらも、ロゼットは右腕を動かし、異形の頭部に銃口を突きつけた。

周囲は静かに、その時を待つ。
 
引きちぎられた触手が、いまだ蠢いていた。
ロゼット・クリストファ&クロノ&
 アズマリアvsモリペス・オクティペス
『仄暗い海の底から』
>401
 
「こンの・・・・・・気持ち悪いのよッ!!」
 
私は、奴の頭部に銃口を突きつける。
そして―――
引き金を引く!
 
《どぉぉぉぉぉぉん!!》
 
銃口からあふれる閃光と、奴の体を包み込む爆光!!
 
「うわぁぁぁぁぁ?!」
「アズ!!」
「きゃ?!」
 
私達も、その爆風に巻き込まれて吹っ飛ぶ!
ずしゃぁと、私の体が地面に投げ捨てられる。
 
「うっく・・・・・。」
 
私は、動かなくなった触手を何とか自力で振りほどく。
全身に纏わり付く粘液が、ヤナ臭いを漂わせていた。
 
「ロゼット!怪我は?!」
「何とか平気よ・・・・・うぇ・・・・・。」
「うっ・・・・酷い臭い・・・・・・・・」
 
駆け寄ったアズマリアが、顔をしかめる。
 
「うー・・・・・一刻も早くシャワー浴びたい・・・・・・」
 
私は、げんなりとした顔をしながら呟いた。
これだから・・・・・タコは嫌いよ・・・・・・。
ちょうどその時、マグダラの増援の車が私達のもとにたどり着いた。
403美夕 ◆MIYU.g96 :02/06/15 01:31
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ

>400

現れた猛牛を思わせる鋼の巨人。
その突然の出現よりも、美夕を驚愕させたのは鎧の男の声だった。
 
「そっか・・・あなた」
 
男の仮面の奥の照準が赤く光り美夕を捉える。
 
「寂しいから、怖いから・・・だから鎧で自分を守るのね」
 
美夕の唇が嘲るような笑みを浮かべる。そして、次の瞬間幾筋もの火炎が鎧を纏った北岡を
襲う。同時にラヴァが鋼の巨人に挑み掛かる。
 
鋼の豪腕と鋭い爪がぶつかり、鈍い金属音が響いた。第2ラウンドのゴングのように。
◆ロゼット・クリストファ&クロノ&アズマリアvsモリペス・オクティペス◆
『仄暗い海の底から』

>402
―“それ”にとって、死はまだ先のことであった―
―だが、今はまだ動くべき時ではない。しばしの休息を取る必要があった―

マグダラ修道会の面々が、事件の証拠品を持ち帰り、
事件が起こったことを『無かった事』にした。
今までの悪魔とは違う、異形の肉片と共に去っていった。 

戦いも終わり、一日が終わろうとしていた。

―シャワー室の側、“それ”は活動を再開した―
 
「シャワーってホントにいいわよねー?ロゼット」
修道女が、同僚に問う。「あれ…?」
ふと、疑問の声を上げ、その修道女の声がしばらく聞こえなくなった。

不審に思い、敷居から見下ろしてみると、、そこには誰も居なかった…。

その日は、夜から、記録的な大雨の日だった。
翌日、マグダラ修道会の支部において、多数の死者が続出した。
原因は今もって不明である。
 
―闘争終了―
◆ロゼット・クリストファ&クロノ&アズマリアvsモリペス・オクティペス◆
『仄暗い海の底から』
導入:>349

 >347>350>351>353>356>357>358>361>393>396>399>401>402

エピローグ:>404

…人間の、言う『ホラー映画』のような終わりになりましたね…。
…この闘争でのご感想は、こちらのアドレスにてお願いいたします…。
http://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
406名無しクルースニク:02/06/15 02:11
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>398
 
 あぁ、救えねえな――心の中で呟いて、青年は口を噤んだ。
 
 ガキを殺した。でも吸血鬼。心は痛まない。
 女を殺した。だけど吸血鬼。次の女も殺した。
 転がる小さな小指を踏み躙り、弾けた耳を蹴り潰し、下らない仮初めの命を踏み荒らし――青年は
告死天使となって手当たり次第に滅びを告げる。
 右上がりに跳ね上がるイングラムを、見掛けよりも遥かに強い腕力で押さえ込んで掃射。
 血煙。跳ね上がる脳漿。落下する空薬莢が奏でる、果て行く生命のシンフォニー。
 ああ――また、死んだ。
 主の愛を自ら放棄した連中には、もはや結末へのルートに選択権は無い。
 
「Give us this day our daily bread――」
 
 蜘蛛の巣のように張り巡らせた神経の網に、膨大な殺気が隠れもせずに引っ掛かる。
 風のように駆け抜ける青年を追走する、銀光閃かせた黒衣の集団――
 軽く振り返って、青年は口元を歪める。ステップを踏み変え、机の一つへと飛び乗る。クロスを
脚で巻き込んでそのまま加速――編み上げのコンバットブーツがスープの皿を踏み砕いて、
その痩身が高く跳躍した。
 果たして――それは場の全員の予想を上回る動きだった。
 テーブルの一つから4メートルの高度へと跳躍した痩身は、その勢いのままに壁を蹴り付ける。
 
「――And forgive us our debts as we forgive our debtors
 And lead us not into temptation, but deliver us from evil――」
 
 次の瞬間――彼は、人には有り得ない速度とバランスを持って90度の壁面を床として駆け抜けた。
 グロックとイングラムを無造作に下向け、嘲笑と共にトリガーする。
 連射される弾丸は、非常なまでに正確にして常軌を逸して早い。
 酩酊も一瞬で醒める、銀弾の冷水が眼下を洗礼する――
407遠野志貴 ◆sikiXlKk :02/06/15 02:52
>364 遠野志貴 vs 邑輝一貴(M) 「銀と蒼」

 まさしく絶体絶命な状況だった。
 俺には銃口が向けられ、俺自身は動かないとばかり思っていた女性にしがみつかれ、
身動きがとれない。
 銃弾をよければしがみついている女性に当たる。
 邑輝は何か御託を並べているようだが、気にしない。

 先生の言葉を思い出す。
 
 考えろ、考えるんだ。

 ……まだ、終わっていない!
 引き金を引くために邑輝の手に力が入った瞬間、俺は左腕で女性を抱え込み倒れ込んだ。

 同時に、右腕を振るってナイフを投げた。拳銃を持った腕に当たり、邑輝が
拳銃を取り落とす。

 俺は女性を強引にふりほどき、邑輝に向けて低く跳んだ。
アルカード(M)vsモリガン・アーンスランド(M) 『月下、狂艶』

>390
生きた切っ先が肉を貫き、アスファルトに食い込む。
疵口から零れる血が、赤いコートを尚紅く染める。

満ちた月の下、響く哄笑は止まらない。
刃を気にも留めず身を起こそうとして、零れる血が更に太く糸を引く。
その様を見て、自然と笑みが浮かんでいた。

 ――いいわ、とても。思った通り。

「ええ、勿論よ」

ばね仕掛けの様に跳ね上がってきた身体を迎え入れる様に受け止める。

「一緒に・・・っはぁ、昇りつめましょ・・・」

首筋に吸血鬼の証――牙のような犬歯が刺った。
血を吸われる快感に震えながら、羽ばたいて宙に舞い上がる。

 このまま、頭から落としてあげる。

天地が逆転し、二つの身体は地に向って加速した。
409名無しクルースニク:02/06/15 11:33
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>406
 
 視覚すら裏切る速度で走る白い風が急制動。
 壁面を踏み砕いてクレーターを穿ち、掛けられた博物館寄贈級の絵画を三つ程踏み躙り、
勢いを上方へと向けて更に加速。音も無く天井までを瞬き一つの内に駆け抜け、天井スレスレで
一瞬、その姿を撓ませる。
 
 その体は、まだ落下しない。
 両足のバネを一気に限界まで絞り――青年は脚力を会場内側へと一気に開放した。
 猛禽類の飛翔を思わせる、鋭角的な跳躍だった。
 
 眼下には、逃げ惑う無数のゴミ虫。豪奢な家具と絵画が飾ろうとも、クズはクズ。
 逃げられやしない。逃がすつもりは無い。自ら捨てた物の価値を、奪い去った命の重みを、
兆倍にして叩き返してやる。
 心中で渦を巻く嚇怒が、全ての内臓を沸騰させた。頭の中が白くなる。
 脳髄が白熱する。
 ゆっくりと巡り始めた血が、殺せ消せと高く哭く。殺せ潰せ早く今直ぐに――さっさとこの連中を
消し尽くせ。お前はその為に生きている。
 ――ああ、如何にもその通り。
 俺は、このクズ共を殺し尽す為に存在する。
 
 長大な会場を飛翔する白い風が、天井ギリギリの角度で会場中心のシャンデリアへと迫る。
 まだ、高度は落ちない。
 凄惨に笑って、青年は両の手を交差させて振り出す。
 
「――For thine is the kingdom――」
 
 擦れ違い様に火箭を放つグロックとイングラムが、シャンデリアと天井を結ぶチェーンを一瞬で破壊。
命綱を失った巨大な塊は、有無を言わさず地面――無数の吸血鬼達を直撃した。
 盛大な落下音と破砕音に混じって、悲鳴と肉が潰れる音が高く高く木霊する。
 会場の端から端までを跳躍した青年は、鳳の着陸を思わせる優雅さで大地を踏み締めた。
 屍鬼達の最期を告げた揺り籠を侮蔑の視線で見下す。
 
「and the power and the glory――
  ――な、死んだろ? 主の恩寵を忘れた結末が――ソレだよ」
 
 限り無く冷たく、限界まで澄み切って――夜よりも深い黒瞳が、残る吸血鬼に滅びを宣告した。
410アルカード(M):02/06/15 11:34
アルカード(M) vs モリガン・アーンスランド(M) 
『月下、狂艶』 
>408 
 
 法悦に浸りながら柔らかで滑らかな肌に、二本の牙を深々と埋めた。 
 伝わる熱い血、吸血鬼にはない温もり。 
 それを求め、奪い、啜り上げる。 
 
 昇りつめましょ・・・  
 
 喉に絡む感覚を楽しむ間もなく、その赤い身体は宙に舞い上がっていた。 
 冷たい夜が二匹の魔を包み込み、腹に抱いて解き放つ。 
 禍々しき朱の雨粒は、地にそのまま降り注ぎ―――― 
 
 跳ねた。 
 
 骨が砕ける音、肉がひしゃげる音、筋が切れる音。 
 アルカードの潰れた鼓膜に破滅が響き、吸血鬼の肢体は屑のようになった。 
 
 屑のような命の屑のような死に様。 
 それでも犬歯は血に濡れ、口は血に濡れ、笑顔は血に濡れたままだった。 
 
「いいねぇ、実に、いい」
アルカード(M)vsモリガン・アーンスランド(M) 『月下、狂艶』

>410
迫る黒いアスファルトに腕の中の身体を押し出す。

ぼきん、ぐちゃ、ぶつん。

ヒトの形をしたモノが、そんな音を立てて奇怪なオブジェへと変形する。
だが――それでもまだ、終わっていない。

「・・・あなたも良いわ。ひょっとしたら今までで、一番」

寸前で翻した身体が地に降りる。
首筋の牙の跡にそっと触れ、指に付いた血を舐る様に舐め取る。

「血を吸われたのなんて始めて。
 ふふっ・・・あなたがわたしの始めてのヒトね」

 最後に、熱いのをあげる。

アルカードと言う名のオブジェに向けた両の拳に、
先程とは比較にならない大きさの光弾が発生し。

「これで、逝かせてあげるわ!!」

弧を、描いた。
412アルカード(M):02/06/15 12:39
アルカード(M) vs モリガン・アーンスランド(M) 
『月下、狂艶』 
>411 
  
 亡骸が、爆ぜた。 
 肉が血が大気の塊となって湿り気を帯びた風に、霧になる。 
 街路を覆い尽くす深い霧を光が裂き、散らす。 
 だが、元より形を持たない無数の粒は群れ、集い、形になった。 
 
 赤いコートに身を包む、吸血鬼に。 
 
 紅と黒の吸血鬼の、アルカードの手が地を掴む。 
 そこへ転がる長物を拾い上げ、氷の如く凍える銃口を再び女へと向けた。 
 
 そして、 
 
 トリガー、ドッ。 
 トリガー、ドッ。 
 トリガー、ドッ。 
 
 三つのクイが女へ疾ける。 
 
 銃を握る手も地に着く足も荒い呼気を生む胸も、全てを傷と鮮血で覆い、男。 
 サングラス越しの暗い瞳は、死者に訪れる死を静かに見据えていた。
◆吸血殲鬼ヴェドゴニアvs仮面ライダーアギト◆
『誰が為に牙は振るわれる』〜導入〜

かつて、『神』と戦った青年がいた。
彼の名は沢木哲也。
彼は、津上翔一の名で司法関係者に知られていた。
一連の事件の後、近年起きている殺人事件の調査と解決の要請を受けた。
 
――それは、吸血鬼によるものと思われる残忍さと異常さ。
 
G-3ユニットは既に解散し、かつてのメンバーは各方面に散っていた。
また、アギト能力者の存在は上層部にとって魅力的なものであると同時に、脅威であった。
即ち、戦いの最中で死んでも良し、事態を解決してもまた問題ない状態だった。

――燦月製薬の工場に事件の根源を見出したが、沢木哲也は単身、赴むかざるを得なかった。
 
「一体…、なんでこんな事を……。
 これが人間のする事だって言うのか!!
 おれは…、おれは…」
沢木哲也の見たもの、それは、
“ヒトであることを辞めようとする者達”の宴だった。
傷ついてゆく心。
目的を見失いそうになったその瞬間、一人の少女が毒牙にかかろうとしていた。
「やめろぉおおおおおおッ!!」
踊り出て、少女を救おうとするも、異形の群れ、キメラヴァンプに阻まれる。
 
そして、少女は救えなかった。
 
――憤怒が、沢木を包んだ。
 
異形の最後の一匹を屠ってもまだ、沢木…アギトは戦いを止める気配はない。
次の敵を探し出そうとする。
異形の群の屍が塵と化した頃、一台の車が扉を突き破り、
一人の少年が前に、狂乱しているアギトの前に踊り出た。
>413 ヴェドゴニアVS仮面ライダーアギト
 
 その日は、またいつもの様に燦月製薬の工場を襲う、いつも通りの計画を実行に移した。
 少々強引だが、ハマーで真っ正面から突っ込んで突破、しかる後に各人で行動。
 最初が派手なのを除けば、まったくいつも通りの強襲作戦だ。
 今の俺がキメラヴァンプ如きに負けるとは俺もモーラ達も欠片も思っちゃいねェ。
 だから、今日も必要な情報なり何なりを手に入れてお終いだ、そう思っていた。
 
 手筈通り、フリッツのハマーに三人とも乗り込んで真っ正面から突っ込む。
 派手な音を立ててシャッターを突き破って内部に突入。
 すぐさまモーラとフリッツは車を降りて散っていった。
 さて俺も……と思った瞬間に違和感に気付いた。
 
 これだけ派手に突入したってのに、あまりにも静かすぎる。
 まるで人っ子一人いないような、そんな静寂。
 そして、そんな中、死が充満してる空間の中、たった一人で立ち尽くす異形――。
 
 ザワリと、背筋を悪寒が走り抜けた。
 直感が俺に警告する――こいつはマズイ、と。
 話が通じる相手じゃねェ、こんな鬼気を漂わせてる奴が人の言葉を聞けるか?
 
 半ば弾かれるようにしてサド侯爵の愉悦――ナイフを抜いて青眼に構える。
 じっと、相手の出方を見ることにした。
 キメラヴァンプでも、吸血鬼でもない……こいつは一体何だ?
《涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)》
>54
 
 微動だにしない狼男。
 
―――バカにしてぇ!
  どうして何をしてもそうやって、落ちついていられるの?
  わたしは愉しみたいって、それだけなのに!
 
 頭に来た。
 絶対に、絶対に絶対に絶対に。
 ココロから涌き出てくる、久しぶりのその感情。
 
 
 
    ―――――――コワシタイ
 
 
 
 絶対に、コワシタイ。
 きっとそうすればあの人に近づける。
 これはあの人の持つ衝動とは違うものだけど。
 
 コワスだけなら、どんな技術よりもなによりも。
 ただ力で捻じ伏せる。
 今までそうやって来たし、これからもそうして行くんだろう。
 
 だから、ただ単純に。
 わたしは狼男に近寄って、その心臓に貫手を放った。
◆吸血殲鬼ヴェドゴニアvs仮面ライダーアギト◆
『誰が為に牙は振るわれる』
>414
アギトは、右肩が赤く、左肩が青い姿をしていた。
腕力と速さ、そして防御力の三位一体の姿、トリニティフォームだ。
少年は、奇怪な形状のナイフを青眼に構え、アギトの様子をうかがった。
その気―――ヒト、ならざるものの気配を感じ、アギトは地を蹴る。
神速の動き。
右手に持った刀を少年に無造作に振るう。
>416 ヴェドゴニアVS仮面ライダーアギト
 
「――!!」
 
 突如として動き出し、剣を振るう異形。
 
(速い……!)
 
 その神速の刃を、辛うじてナイフのグリップ部分で弾いた。
 硬質の甲高い金属音が響き渡り、反動で距離を取る。
 遠慮なしかよ、こいつ……!
 
 色彩豊かなそいつが再び動き出す前に、レイジングブル・マキシカスタムを抜き放つ。
 流れるような動作で異形に銃口を向け、引き金を引く。
 454カスールの暴力が、異形を叩きのめさんと轟音を引き連れて俺の手から放たれた。
◆吸血殲鬼ヴェドゴニアvs仮面ライダーアギト◆
『誰が為に牙は振るわれる』
>417
454カスール弾の猛撃を、左手に持った薙刀のような武器、
ストームハルバードを一回転させ、難なくいなすと再び距離を詰める。
右手の刀、フレイムセイバーと、左手の薙刀を少年に交互に突き入れる。
その一瞬、刀から炎が巻き起こり、アギトの顔を悪魔が微笑むかのように照らし出す。
419ガロン ◆GALON/hc :02/06/15 14:31
涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)
>415 
 
色のない世界。ただ、風の匂い、音のみが俺を包む。
驚くほど、心は澄み渡り始めた。
見えすぎることが、かえって眼を曇らせていたわけか・・・・・・
俺は内心苦笑する。
 
その刹那。風が動いた。
心の臓めがけて繰り出される貫手か。
思うよりも先に半身を捻り、回避せんと体が動いた。
しかし、まだ慣れぬ感覚にまだ戸惑いがあるのか、
完全には避け切れなかった。
その手が胸肉をえぐり、激痛が全身を走る。
 
貫手を放った腕を左腕で押さえつける。
右腕は肘を極める。
ゴキッという、何度聞いても慣れぬあの嫌な音と共に、彼女の肘は潰れた。
そのまま八卦掌独特の半歩の動きで彼女の胸目掛け、
掌底を叩き込む。確かな手応えと共に彼女が宙を飛ぶのを感じた。
 
「ドラキュリーナ・・・・・・もはや貴様の攻撃のパターンは見切った・・・・・・
 既に通用せんことは分かったはずだ・・・・・・瞳に捉えられるものだけが、この世の全てでない」
 
そこで、うっすらと目を開ける。ぼやけた視界の隅に彼女の姿を見つける。
ゆっくりと口を開くと、彼女に声をかけた。
 
「貴様の思い人に言伝はあるか?想いを遂げぬままでは未練が残ろう・・・・・・
 死出の旅路のその前に、聞いておこう」 
>418 ヴェドゴニアVS仮面ライダーアギト
 
「炎だと!? デタラメな野郎だな!」
 
 炎が照らし出す異形の表情が、まっすぐに俺に殺意を向けている。
 僅かに炎に巻かれて火傷を負い、毒づくように叫びながら距離を取る。
 向こう側を睨み付けるようにしながら、旋風の暴帝の三つ刃を展開。
 炎をも切り裂かんとばかりに、渾身の力を込めて投擲した。
◆吸血殲鬼ヴェドゴニアvs仮面ライダーアギト◆
『誰が為に牙は振るわれる』
>420
「フゥウウウウ…」
少年の声に応えるかのように呼吸し、炎の刀を振りかぶる。
三つの刃を展開した車輪を刀で弾こうとするも、
手元に車輪が当たり、刀を落とす。
それすらも意に介さず、薙刀を両手で持ち、回転させながら突撃する。
 
アギトの頭部の鍬形、クロスホーンが展開する。
至近距離に来た時、右の拳を少年――ヴェドゴニアに突き出す。
>421 ヴェドゴニアVS仮面ライダーアギト
 
「弾いただとッ!?」
 
 その事実に驚く間もなく、異形が目前に迫っている。
 一瞬の遅滞もなく繰り出される右の拳……かわせねェ! ならば!
 
 その右の拳をくぐり抜けるようにこちらも右の拳――サド侯爵の愉悦を握り込んだままだ――を突き出す。
 異形の拳が俺の顔面を捉えると同時に、こちらの拳も奴の顔面を捉えた。
 いわゆるクロスカウンターって奴だが……こいつは効いた……。
 ぐらりと視界が揺れ、意識があっちこっちに飛ぼうとしやがる。
 頭を振って意識を保ち、異形の方へと向き直って構え直した。
 次はどう出る……?
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>409

 シャンデリアの下から怨嗟と苦鳴が長く長く尾を曳く。
 クロフトやサン・シモンら邪悪な数百年を過ごした長生者らが、また灰に還った。
 
 鈍重そうな外見からは想像もつかぬ剽悍さで、再びヨルガ将軍が狩人へ走る。
 声にならぬ奇声を上げ、陸続と詰め掛けるのは配下の将校らも同じだ。
 ヴァケル・パシャとミッターハウスが跳躍した。
 将校らの頭上を一気に五メートル以上も飛び、空中から構えも何も無い力任せの、
だが吸血鬼の力を込めた一刀を振り下ろす。
 
 飛び越された後続の十数名は、円陣を描いて狩人を取り囲まんとする。
 剣林が波打った。
◆吸血殲鬼ヴェドゴニアvs仮面ライダーアギト◆
『誰が為に牙は振るわれる』
>422
拳と拳がお互いの顔面にぶち当たる。
闘争本能が加速され、より、強い力を求める。

――アギトは進化する力。

「ハァアアアアアアアアアア・・・」

腰のベルト、オルタリングのボタンを押す。
全身の筋肉が膨れ上がり、アギトの装甲が赤く、より攻撃的な姿へと変わる。
灼熱の力、バーニングフォームである。
>424 ヴェドゴニアVS仮面ライダーアギト
 
「……姿が、変わっただと?」
 
 呆然と、その様を見つめる。
 ワケが分からねェ、ホントに一体何なんだコイツは!?
 鮮血に染まったかのようなその姿を呆然と見つめ、次の瞬間には我に返った。
 
 コイツは、ヤバイ……!
 
 衝動に従って、サド侯爵の愉悦を大上段から脳天目掛けて振り下ろす。
 放っておくと何をしだすか分かったモンじゃねェ。
 何かをさせる前にやってやる!
◆吸血殲鬼ヴェドゴニアvs仮面ライダーアギト◆
『誰が為に牙は振るわれる』
>423
大上段から振り下ろされたナイフを左腕についた刃、
アームズカッターで受け止める。
右腕をベルトのバックルに当て、巴紋のような武器、
シャイニングカリバーを引き出す。

そして、両端に刃のついた槍の状態にした後、無造作にヴェドゴニアへと突き込む!

―――遠くで、誰かが呼んでいる気配がした―――
>426 ヴェドゴニアVS仮面ライダーアギト
 
 ――マズった!
 そう思った瞬間にはもう遅い、槍の刃が俺の腹を深々と抉っていた。
 引き抜かれた傷口から血が、内臓がはみ出す。
 吸血鬼の俺にとっては致命傷じゃねェ、致命傷じゃねェが……。
 
 血が、血が失われて、俺が流れ出して――――
 
 右腕が、その手の中にレイジングブルを抜いて発砲する発砲する発砲する。
 化鳥の様に跳躍し、上空から下に見える化物に鉤爪を振り下ろす。
 地面に蜘蛛のようにへばりついて着地し、そのまま聖者の絶叫――槍をまっすぐに顔面目掛けて突きだした。
 
 血だ、血が足りない……血を寄越せ寄越せ寄越せ――寄越せェェェェェェッ!!
◆吸血殲鬼ヴェドゴニアvs仮面ライダーアギト◆
『誰が為に牙は振るわれる』
>427
ヴェドゴニアの腹を抉り、真紅の装甲が返り血でさらに赤く染まる。
レイジングブルによる銃撃がアギトの装甲を突き破り、鮮血を吹き出す。
だが、まだアギトの戦意は尽きず、むしろ燃え上がる。

「ハァアアアアアアッ!!」

振り下ろされた鉤爪を受け、左の首筋の装甲が砕け、生身をさらけ出す。
地を蹴って突き込まれた槍を同じく槍で払い、地に落とす。
 
超接近状態でヴェドゴニアの首筋に自らの牙、クラッシャーを埋めようとする!
>428 ヴェドゴニアVS仮面ライダーアギト
 
 首に食い込んでくる牙、それが俺の狂気を加速させる。
 テメェだけ俺の血を吸う気か?
 ただ奪っただけじゃ飽きたらず、それを味わい尽くそうってのか!?
 冗談じゃねェ……俺にも寄越せェッ!
 
「ガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
 
 拘束具越しにも聞こえる絶叫を張り上げた瞬間、辺りに不可視の力が渦を巻き始める。
 その力が向かう先はただ一点……俺の牙を戒める拘束具だ。
 見えない腕が拘束具に掛かり、凄まじい力で左右に引っ張る。
 
 ギシ……メキ……。
 あまり耳に心地いいとは言えない音をさせながら拘束具が軋み、歪み――壊れていく。
 ベキッと、一際大きい音の後拘束具が開ききり、ガランと床に落ちた。
 今や、その牙は血を求めて口からはみ出さんとするほどに伸びている。
 俺の目の前には、装甲が破れて素肌が覗いている首筋しか見えていない。
 
 ――あそこに、あそこに牙を突き立てて血を血を啜って味わい尽くして殺し尽くして喰らい尽くせ!!
 
 衝動に従い、口を開いて首筋へと牙を振るい突き立てる。
 互いの牙が、互いの首筋へと。
 すぐさま頸動脈を食い破って血が溢れだし、俺の口腔を、鼻を、食道を、胃を血が駆けめぐる。
 血だ、血だ、血だ血だ血だ血だ……!
 
 俺はただただ衝動の権化と化してソレを啜り続けていた。
 衝動が、流れ込む血に反比例して薄れていく。
 同時に、ヴェドゴニアである俺自身も……。
◆吸血殲鬼ヴェドゴニアvs仮面ライダーアギト◆
『誰が為に牙は振るわれる』
>429
超音波で破砕する牙、クラッシャーをヴェドゴニアの首筋に埋めたと同時に、
ヴェドゴニアの牙もまた、アギトの首筋を襲う。
お互いに傷つけあい、喰らい合う。
あれだけ激しく燃え上がっていた激情が、血の流れと共に失われてゆく。
 
―遠くで誰かが呼んでいる―
 
互いに抱き合い、求め合う。闘争により、深く深く、結びつく。
―ああ、呼んでいたのは・・・、君だったんだね・・・―
 
ヴェドゴニアの意識が薄れようとしていく時、アギトは沢木哲也に戻ろうとしていた。
アギトに備わる無限の力の源――賢者の石と、
その力を制御するワイズマンモノリスが、アギトの生命を維持しようと懸命になっていた。
 
――遠ざかる意識の中、変身が解ける。
 
沢木は、こちらに走り寄って来る少女を見たような気がした。
《涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)》
>419
 
 途端走る激痛。
 今更こんな痛みなんて、どうってことないけど。
 状態を起こし、わたしは狼男の申し出を一蹴する。
 
「だから、いったでしょう?
 わたしはここで終わるわけには行かないんだから」
 
 ぐにゃりと一瞬、世界が歪む。
 
「もっとあの人に近づいて、迎えに行くの」
 
 ココロを世界に解き放つ。
 圧迫されたソレを広げるのは、世界にとっても、わたしにとっても苦痛。
 
「そうしないと………」
あの人が、さらに遠くへ行ってしまうから―――
 
 今になって、ずきんと痛む腕。
 こんなんじゃ、集中が、乱れちゃうよ。
 もっと、より強く対象を意識するために、狼男の姿を凝視する。
 
 
―――――じゃあね、ばいばい
 
(トリップ判定)
>430 ヴェドゴニアVS仮面ライダーアギト
 
 血が、奴の血が、俺の中の衝動と化物を洗い流していく。
 少しずつ、少しずつ理性が浮上してくる。
 今の状況を認識した俺は、腕の中にいる異形の姿をみようとした。
 だが、取り戻した理性と入れ替わるように、ダメージによって意識が薄れていく。
 目の前が昏くなっていく、肉体が人間のそれへと戻っていく――。
 
「いったい、何だったんだ……」
 
 薄れゆく意識の中で、異形が人間の姿へと戻っていくのを見たような気がした。
 俺の姿も人間に戻っているんだろうなというのが、最後の思考だった。
 それを奴が見ていたのかは確かめる術もなく――。
 
 意識が、闇に落ちた。
アルカード(M)vsモリガン・アーンスランド(M) 『月下、狂艶』

>412

 ・・・霧に!?

己が身を霧へと変える力。それは、力持つ吸血鬼なら持っていて当たり前の力。
間近に見えた勝利に酔って、油断したのか。
再び姿を現したのは、ライフルの元。

「くっ・・・!!」

遠い間合いでは決め切れない。
両の翼を前面に展開し、走る。自らの手で心臓を抉りだし、首を落とす為に。

撃発音が、三度。
一発目。右翼で辛うじて弾く。
二発目。左翼で受け・・切れない。翼を貫いた杭の先が覗く。
三発目。先の二発で空いた隙間を縫って左肩を抉る。
左右の翼を後方に打ち払って、視界確保と同時に杭を振り払う。
――もう、目の前だ。

 往生際が悪いのは好きじゃないの。

右の貫手が、正面から胸に。
ギロチンの様な翼が、左右から首に。
風を巻いて、殺到した。
434沢木哲也 ◆AGITOv0E :02/06/15 17:32
◆吸血殲鬼ヴェドゴニアvs仮面ライダーアギト◆
『誰が為に牙は振るわれる』〜エピローグ〜
>432
沢木が気付いた時、ハマーには幼い少女と、顔に火傷を負った男、
そして、意識はないが、拘束衣に身を包んだ少年がいた。
 
「おれは・・・、一体?」
問おうとする沢木を遮り、火傷の男がクロスボウを突きつけ言う。
「質問するのはこっちだ、お前は一体、何なんだ?
 変身して、キメラヴァンプどもを、ヴェドゴニアと戦えるような奴なんて、
 そうはいないぞ?」

「おれは・・・、沢木哲也、アギトをやっています・・・」
そして、かつての戦いを、今ここに至るまでの事をぽつりぽつりと話し出す。
「・・・・・・まったく、頭の痛い話ね・・・」
今まで事態を静観していた少女が口を開く。
「あなた、この事件を調査しているんでしょ?
 私達に、力を貸しなさい。
 それがあなたの務め、なによりも、
 その助けられなかった女の子への贖罪になるわ」
そう、少女が言うと同時に火傷顔の男が反論する。

「おい、モーラ、俺は反対・・・」
「フリッツ、黙ってて」
だが、少女――モーラに遮られ、火傷の男――フリッツは頷く他なかった。
じっと少女の言を聞いていた沢木は答えを出す。
「おれは・・・」

A      Ω
 
 
Ω      A
435ガロン ◆DtyVOSjA :02/06/15 17:33
涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)
>431 
 
視界が歪む。風が歪む。歪んだ世界の中で、モノが次々と死んでいく。
渇いた世界。歪んだ世界。そして―――ドラキュリーナがすむ世界。
 
歪んだ想いは断ち切らねばならぬ。
死者は黄泉に帰らねばならぬ。
ならば、俺に出来るのはただ一つ。
 
「深き森の奥駆ける狼の王よ・・・・・・赤き炎となりて・・・・・・我が敵を討て!!ドラゴンキャノン!!」 
 
大気を鳴動させ、大地を揺るがし、太古の昔、地上を支配した炎の狼が、
幾条もの業炎となって世界を切り裂き、どらきゅりーなをへとその顎を剥く。
 
「塵は塵に、灰は灰へ戻れ!」 
 
(トリップ判定)
436伊藤惣太 ◆VJEDOGOs :02/06/15 17:45
……俺が次に目を覚ました時、隣には見知らぬ男がいた。
 
ヴェドゴニアVS仮面ライダーアギト、レス番まとめ
>413 >414 >416 >417 >418 >420 >421 >422 >424 >425
>426 >427 >428 >429 >430 >432 >434
 
事情は後でモーラにでも説明してもらうか……。
 
ん? 感想があるんならこっちでやってくれ。
http://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
>403
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ

「そうさ人間なら誰だって寂しいし、怖いのさ・・・だからこそ戦うんだよ!!」

ゾルダは盾を構えさらに肩に二門の大砲ギガキャノンを装着すると
火炎を防ぎながら美夕に攻撃を開始する
だが相手も宙を舞うようにゾルダの攻撃をかわしてゆく、お互い膠着状態で炎と砲弾の撃ち合いが続く。

一方背後ではマグナギガと黒衣の男との戦いが繰り広げられている
しかしパワーはあるが機敏とはいえないマグナギガの動きでは男をとらえる事はできない
だが一方で男の攻撃もマグナギガの装甲には大してダメージを与えているとはいえなかった。
 
(5分と5分か・・・・・いや)
そろそろタイムリミットが気になり始めていた
ライダー同士なら時間切れで今回は手打ちといったところだが
目の前の相手は許してくれそうもない
それに、鏡から脱出したところで、生身では戦う術がない。
 
(まだ余裕はあるが・・・・なんとかしないとな)
>407 遠野志貴 vs 邑輝一貴(M) 「銀と蒼」
 
 発射された弾丸は虚空を穿った。
 撃ち抜かれるはずだったボウヤは、女と一緒に地面に転がっている。
 
「が……っ!」
 
 痛みに銃を取り落とす。
 見れば右腕にボウヤの投げたナイフが突き刺さっている。
 
 眼の端にボウヤが女を振りほどくのが映る。
 反射的に印を結ぼうとして――失敗。
 両腕の負傷の状態はよくない。
 最早これ以上の戦闘は不可能。
 
――侮りすぎましたか……
 
 体勢を整え、跳び下がろうとする。
 だがそれも遅かったようだ。
 
 目の前にボウヤがいた。
439オーフェン:02/06/15 19:42
オーフェンvsレイオット
オーフェン側〜導入〜

「・・・・・・あばよ、フォノゴロス」

俺はそれだけを言い。
フォノゴロス―――自らを異形の化け物であるクリーチャーに改造した狂人に背を向け。
地下室から外へと出て行った。

地下室から外に出た瞬間、陽の光が目を突き刺す。
そして、俺は見た。
瓦礫の上にいる、鎧を・・・
その鎧はまるで中世の騎士を連想させる姿をし。
そしてなにより・・・・・・

(俺が地下室に行ったときにはこんなものはなかった・・・となるとこいつは!?)

つい先ほどまでこんな鎧はここには存在していなかった。
そして、その姿は前に倒したクリーチャーの中の一体―――鎧のクリーチャーを連想させる。
更に、それからはまるで生きている存在であるかのような感じを受ける。
ならば、考えられる一番確立の高い可能性は一つ。

(こいつは、クリーチャーの生き残りか!?)

それは十分にありえるように思えた。
クリーチャーの確実な数を知っているものは誰もいない。
もしかしたら、生き残りが一匹残っていたのかもしれない。
ひょっとしたら、どこかの物好きが曰くつきの鎧を、わざわざ持ってきて置いていったのかもしれないが。
だが、それでもこんな“この鎧がまるで生きている”かのような感じを覚えることはないだろう。
この鎧がクリーチャーであるなら自分のとるべき行動はひとつ。

(・・・・・・ここで倒すしかねえな)

俺は瞬時に構成を編み。
クリーチャー―――――と思われる存在に向けて放つ。

「我は放つ光の白刃!」

クリーチャーらしき鎧に向けて光熱波が突き進んでいく。
オーフェンvsレイオット
>439

「……なんだ、これは?」

 疑問。その視線の先にあるものは、その肉体の半分を吹き飛ばされ、
 苦悶とも怨嗟とも取れる呻きを発しながら蠢く――生き物らしき何かだった。
 まずまともな生き物ではあり得ないその異形。
 真っ先に彼の脳裏に浮かんだものは、魔法を使いすぎた人間のなれの果て。

 ――すなわち、魔族。だが……その異形は、びくびくと何度か痙攣を繰り返したあと。
 力尽きたように、あっさりとその活動を停止した。
 そう――魔法を使うこともなく、あっさりと。

「――魔族じゃ、ない?」

 無論、こちらの放った攻撃魔法が一撃で相手の脳組織の5割を破壊した可能性もあるのだが。
 だが、これは――やはり、違う。
 明確に表現することは出来ないが、いままで幾度と無く魔族と相対してきた彼には、なんとなくわかった。
 これは――魔族ではない。しかし非常に魔族らしい、何か。

「……つまり、こいつか。俺が呼ばれた原因は。他にも何体か見掛けるって話だが――はて?」

 まあ、なんにせよ。敵が魔族でないのならば、仕事のほうはえらく簡単になってくる。
 この奇妙な生き物が、魔族以上の化け物である可能性も無論あるのだが、少なくとも<アサルト>の
 一撃で沈黙している以上、倒せない相手ではない。

「さてと。ここで突っ立ってても仕方ないしな。ちゃっちゃと片付けるか――」

 呟いた――その、瞬間だった。目の前に、突如として男がひとり。
 よく見れば、その足下には穴がひとつ。どうやら、地下室から現れたようだが――
 彼が全身から放っている気配は、お世辞にも友好的とは言えない。
 彼はすぐさまこちらの姿を認めると、その表情に敵意を乗せて。鋭くこちらを見据えている。

 ――おい、ちょっと待て――
 いやな予感。それを感じて、レイオットは男に対し口を開いた。
 しかし、言葉が音となる前に、鋭く囁かれた言葉と共に――

「――我は放つ光の白刃!」
 彼の掌の先から、白く輝く熱衝撃波が迸る。

「――――!?」

 それは、殆どカンに近い。声が聞こえたと判断した瞬間、全力で右に跳躍。
 轟音。後に残っているのは、もはやそれがなんだったのかすら判別できない、何かの残骸だけだ。

「勘弁してくれよ――」

 うんざりと呻きつつ、レイオットは手にした長大な機械――スタッフを、男に向けて構えていた。
441オーフェン:02/06/15 19:47
>440
オーフェンvsレイオット


クリーチャーらしきものに向けて放った光熱波は。
右に跳躍したクリーチャーらしきものによって避けられ。
一瞬前までクリーチャーらしきものがいた場所を通り抜けた。

「ちっ、重そうなもん着けているわりにゃ動きが早いな」

毒づき、次の相手の行動に備え、構えを取りクリーチャーらしきものと対峙する。

―――その時。
クリーチャーらしきものが信じられない言葉をはいた。

『勘弁してくれよ――』

・・・それは今までの倒したどのクリーチャーの放った言葉よりも人間らしく聞こえた。

―――もっとも、明確に人の言葉を話したのは大本であるフェノゴロスを除いては、一体だけだったが。

(なんつーか、何かに疲れた男が言った言葉ような感じがしたな)

なにはともあれ、この事実からはこのクリーチャーらしきものが人間に近い精神構造をもっているのか。
それとも、こいつはクリーチャーではないのかという可能性が考えられる。

改めて相手を観察すると、相手は手にもった。
巨大なチェーンソーらしきものをこちらに向けていた。

(んな!?)

猛烈に嫌な予感がし。
次の瞬間には、オーフェンはその場から飛びのいていた。
オーフェンvsレイオット
>441
 
「――顕!」
 
 撃発音声。文字通りそれを引き金として、虚数界面下で稼働中の魔力回路が現実世界に上書きされる。
 <アサルト>――「猛撃」と名付けられた戦術魔法がスタッフの先端に顕現。
 それは瞬時に、目の前に構える男に向けて打ち出された。

 ――もっとも、不可視の砲弾とも称されるそれが、直接男に視認できるはずもないが。
 もとより、殺すつもりなど無い。収束率は通常の半分程度に止めてある。
 そのためか、胸元から弾け飛んだ拘束端子はひとつだけだ。残り拘束度数――10。
 
 だが、着弾のその瞬間。

 男が盛大に飛び退いた。ターゲットを見失った<アサルト>はそのまま直進。
 その先の残骸に命中に、内に封じ込められた衝撃波をそのまま残骸へと叩き付ける。

「――――ちっ」

 やはりというか……そう簡単にはいきそうもない。
 楽な仕事かも知れないと言う予想を打ち砕いてくれたその男に対し苦笑しつつ、
 続けざまにスタッフ操作……無音詠唱。

「顕!」

 <フリーズ>発動。
 事象界面に発生した冷気の塊は、その動きを阻むかのように、黒ずくめの男を包み込む――

443オーフェン:02/06/15 19:57
>442
オーフェンvsレイオット

『顕!』
と鎧―――便宜上これからは鎧と呼ぶことにする―――が叫んだ瞬間。

先ほどまで俺がいた場所に不可視の何かが叩きつけられた。

(魔術!?いや、違う構成は見えなかった。一体こいつは?)

瞬間的に頭の中で今までの情報を整理する。

クリーチャーとはおもえないくらい人間くさく動く鎧。
そして、鎧のかけ声と同時に放たれた衝撃波。
その他、色々な情報を頭で整理し、考える。

そして、それにより導き出た答えは。

(あれは魔法・・・技術としての魔法か!)

以前、話に聞いた技術としての魔法とそれを扱う魔法士に思い当った。
鎧(に見えるもの)を着ていること、クリーチャーの発生地と思われるところをわざわざ訪れたこと。
その他さまざまなことに対する謎が、その説明に当てはまり解けていく。

(・・・てことは、あの一見鎧に見える物はモールドという魔族化を防ぐためのものだな。
だとするとあいつは・・・)

明らかに戦闘用だと思えるモールドを着て、戦いに適した魔法を使う。
そのことから推測できる鎧の正体は・・・

(TS・・・・・戦術魔法士か!!)
444オーフェン:02/06/15 19:57
>443
オーフェンvsレイオット

戦術魔法士・・・
それは対魔族を生業とする、戦いのエキスパート。

(クリーチャーを魔族と勘違いして要請したってわけか)

あのクリーチャーたちの外見からして。
それは十分にありえることだろう。

(さてと、問題はどうやってここを収めるか・・・)

ふと、相手を見ると。
既にこちらに、チェーンソーらしきもの―――たしかスタッフというらしい―――を向けていた。

(って、ちょっと待て!?)

身の危険を感じ瞬時に擬似空間転移の構成を編み上げる。

『顕!』
と鎧が叫んだ瞬間。
俺も魔術の構成を解き放ち、擬似空間転移を発動させた。

「我は踊る天の楼閣!」

擬似空間転移が発動し一瞬、視界がブラックアウトする。
そして先ほどまでいた場所から、数メートル離れた場所に出現した。

一瞬前まで自分がいた場所が何かに包まれていた。

(・・・だが、どうにもこれじゃ穏便に収められそうにねえな)

自分が勘違いして攻撃をしてしまったことが原因であるのだが・・・
まあ、それは置いておき鎧に向き直る。

(・・・しょうがねえ、手っ取り早く相手の戦闘能力を奪うか!)

瞬時に魔術の構成を編み。
解き放つ。

「我は呼ぶ破裂の姉妹!」

モールドを破壊しないよう威力を落とした衝撃波が、鎧の頭部を目掛けて弾き出された。
445アルカード(M):02/06/15 20:14
アルカード(M) vs モリガン・アーンスランド(M) 
『月下、狂艶』 
>433 
 
 三つ、クイは撃ち込まれた。 
 だが、魔は撃ち滅ぼせなかった。 
 
 三本の白木を払い、女は手をかざす。 
 翼を刃に変え、長銃を落とした首筋に躍りかかる。 
 
 右手は吸血鬼の凍える心臓を貫いた。 
 翼は歪む表情を首ごと切り落とした。 
 不死者の脈動は断たれ、全身より溢れた血は更に激しく撒き散らされる。 
  
「いやいや、まったく」 
 
 刎ね飛ばされ、宙を舞う首は息無き声でそう呟いた。 
 
「無様だねぇ」 
 
 転がる。 
 冷たいアスファルトに黒い髪を広げて。 
 サングラス越しに見える月は高く、血に濡れる犬歯は微笑んで、零れる血は広がり・・・ 
 紅い紅い吸血鬼は、紅い紅い血となって消えた。 
 
 残るただ、クイを仕込んだ長物と血に染まったようなコートが一着。 
 ノイズ混じりの叫びを上げる、ヘルシングからの無線ばかりだった。 
オーフェンvsレイオット
>443-444

「――――!」

 消えた。
 文字通り――言葉を放つと同時、男の姿がその場から消失する。
 発動していた<フリーズ>は誰も居ない空間を飲み込んで、空気や、そこに残る水分を次々に凍結。
 きらきらと輝く個体が、澄んだ音を立てて地面へと落ちた。

 男は……居た。距離にして、ほんの数メートル程度。
 一瞬、照準を誤ったかと錯覚させるほどに、その姿には微塵の違いも見られない。

(瞬間――移動……?)

 半ば呆然とした脳裏に、そんな単語が浮かび上がる。
 魔族でも……そんな馬鹿げた芸当は出来ない。では……これは一体なんだ?
 いましがた視認した事実を咀嚼できないまま――だがレイオットの肉体は半ば自動的に動き続けている。
 相手の正体がわからないという事実が、わずかな苛立ちとなってレイオットを覆っている。

 そして――

「我は呼ぶ破裂の姉妹!」
 男の叫び――全身に走る猛烈な悪寒。声と共に生み出された先程の熱衝撃波の姿が意識を走り、
 レイオットの手を迅速に稼働させる。呪文書式選択、無音詠唱。

「イグジストッ!」

 <デフィレイド>発動。展開と同時、虚空に生み出された波紋状の力場平面を不可視の何かが叩き付けた。
 これは……まるで、魔法――――
 そこまで考えて。

(そうか――)

 ようやくレイオットは、目の前の男の正体に行き当たる。

(――『魔術士』か!)

 胸中にて理解の叫びを上げる。なるほど、これが――噂には聞いていたが、実際に会うのは初めてだ。
 だが、それでも。その魔術士と戦わなければならない理由が、今ひとつわからない。

(くそったれ……どうする? 手数じゃ、明らかにこちらが不利だ)

 吐き捨てつつ、周囲に視線を配る。軽い混乱――自覚はしていなかったが、それに陥っていたらしい。
 敵を前にして、レイオットは一瞬、その動きを止めていた。
アルカード(M)vsモリガン・アーンスランド(M) 『月下、狂艶』

エピローグ
>445
貫手が心臓を貫き、背中に抜ける。
ギロチンが左右から首に食い込み、落とす。
壊れたスプリンクラーの様に血を撒き散らしながら崩れ落ちる身体。
宙を舞う首が何事か囁いた様に見えた。

「くっ・・・ぁ」

左肩の杭を抜き、血溜まりに残る朱いコートに微笑む。

「90点・・・てとこかしらね 。それなりに楽しかったわ」

 これで滅んだのか。

「まあ、縁が有ればまた会えるでしょう・・・じゃあ、ね」

金切り声を張り上げる無線機を踏み砕いて、背を向ける。
振り返らない。
終ってしまった事を想っても虚しさが深まるだけだ。

次の遊び相手を探し、月の輝く夜空へと飛び立っていった。
448オーフェン:02/06/15 20:59
>446

『イグジストッ!』

と鎧が叫ぶと空間が波打ち、壁のようになって衝撃波を防いだ。

(ちっ、防がれたか)

だが、話に聞く戦術魔法の威力が本当だとしたら、それは当然だろう。
もしも、話に聞いたとおりの威力なら、それは自分の魔術の威力を軽く上回っている。
もっとも技術としての魔法には、唯一にして、最大の弱点である回数の制限が存在しているが。

(俺が勝つには奴の意表をついて魔術を当て戦闘不能にするか、それとも奴の魔法を使い切らせるか・・・)

もっとも、後者は相手が魔族化する恐れもあるため問答無用で胸中で却下しておく。
魔術を当てる場合でも、モールドをなるべく破壊しないように気をつけなくてはいけない。

(・・・厳しいな。だが、やるしかないか・・・)

しっかりと相手を見据える。

(さてと・・・それじゃ行くぜ!)

相手に隙を作るため。
地面に手をつき、魔術の構成を編み、解き放つ。

「我は歌う破壊の聖音!」

連鎖する自壊が地面に流れ。
そして、手をついたところから鎧に向かい地面が崩れていく。

(まずは足を止める)
アルカード(M)vsモリガン・アーンスランド(M) 『月下、狂艶』
のレス番纏めね。

>382 >383 >384 >385 >386 >387 >389 >390 >408 >410
>411 >412 >433 >445 >447

わたし達に言いたい事が有るのならここへ、ね。
http://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
450名無しクルースニク:02/06/15 22:03
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>423
 
 視界を蹂躙する、冗談のような数とスピードのクズの群――死の気配を刃に乗せて、悪夢のよう
な速度で貴族達は迫り来る。一人、二人、三人――数えるのは止めた。全方向から強襲する暴威は、
無傷で避け切る事など出来はしない。
 ――どうする? 弾数は足りない。突っ立っていれば斬り殺されるのがオチだ。
 だが、と心のどこかが呟いた。
 ――主の僕は、悪魔に背を向けはしない。
 イングラムとグロックの残弾を正面の数人に掃射。ホールドオープンしたグロックとイングラムを
投げ捨て、包囲網の欠損へと身を躍らせる。
 
 走る剣閃。細身の刃が頭蓋に食い込むか否やの刹那、体は風の様に半歩引いている。
 前髪を、凶悪な膂力から生み出される一刀が掠めて過ぎた。
 返り血が薄く口紅を塗った口元が、凄惨な笑みに彩られる。
 
「大人しく逃げてれば――死なずに済んだかも知れないのにな」
 
 左手に下ろしたゴルフバッグのジッパーの隙間から、日本刀の柄頭が顔を覗かせる――流れる
動作で親指が鯉口を切り、右手が添えるように柄巻に触れた。
 
 刹那、右手の閃きが銀の軌跡を描く。
 
 鞘走る刃すら視認出来ない、神速の抜打ちだった。
 叫ぶ間もなく、地へとサーベルを叩き下ろした貴族の首が宙を踊る。
 脳からの信号を失った両手がサーベルを手放し、刀身が床を削りながら跳ねて転がった。
 
「……いや――やっぱ、どのみち死んだわ、テメエ等。
 刻むは祓いの九字、これぞ和泉守藤原兼定の業物――ってな」
 
 果たして己の絶命は感じたのか――切断面で絨毯を赤く化粧する首をブーツで磨り潰すように砕き、
血刀を緩やかに納刀した。
 鞘に納めた兼定を静かに携え、青年は無数の白刃と向かい合う。
 
「主の御名に於いて――我は、全ての邪悪の種子を打ち払わん」
451フィオ ◆Fio.RSac :02/06/15 22:40
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
>381
 
がつん、がつん、という音がエリの意識を覚醒させた。
「う、く・・・」
胸が痛い。
身体を起こす過程でチィンという音がしてヤハベに撃ち込まれた弾丸が床に落ちた。
(運がいいなあたしは・・・・)
弾丸はベストの内に収めていた手斧に着弾したらしい。着弾時のショックがエリの意識を飛ばしたのだ。
(ところでこれ、なんの音だ?)
エリが音のする方を見ると、フィオがヤハベの頭を叩きつけているのが見えた。
「フィオ!?」
 
ただひたすらに、ヤハベの頭を床に打ち付けていたフィオの手が止まった。
「・・・エリ・・・ちゃん・・・・」
フィオが手を離すと、ごとり、とヤハベの頭が落ちた。
「って! エリちゃん! 生きてたんですか!?」
立ち上がりエリに駆け寄るフィオ。
「勝手に殺すな。・・・まぁ自分でも生きてるのは僥倖な気がするけどね」
エリは頭のバンダナを外し、フィオの鼻に当てた。
「んっ! エリひゃん・・・」
「あぁ、あぁ。 あんたこそ大丈夫?」
フィオが痛くない程度に血を拭きながらエリ。
「大丈夫、です。骨は折れてないみたいです」
「ったく女の顔やりやがって・・・」
「それだけじゃないですよぉ。 クラシック壊されたし、シャツ破られたし、帽子も、メガネも・・・。 ・・・あと胸掴まれましたぁ」
「ゲス野郎が・・・。 !? まだ生きてやがる。 ゴキブリかこいつは・・・」
「どうします?」
「あんたその表情でいうか? ブチ殺すって顔に書いてあったくせに。 ベストの前閉じてマルコ達のとこに行きな。あとはあたしがやるから」
自分のベストもフィオに預け、エリは手のヘビーマーダーを握り直した。
「それじゃ、あとは頼みますね」
「あいよ」
 
 
エリは撃鉄を起こし、残弾全てをヤハベの頭部にぶち込んだ。
死体に一瞥をくれ、部屋の隅でガタガタ震えている頭目をひっ掴んだ。
「抵抗すんじゃねえよ? あんな風になりたくなかったらな」
頭目をずるずると引きずりながらエリは別荘をあとにした。
 
 
     MISSION COMPLETE!
 
 
452片倉優樹 ◆Y.K.lIyA :02/06/15 22:41
−月のない夜は、静かにそのまま闇を抱こう。  
 そして、そのまま、そのまま・・・消えていければ、きっと幸せなのにね− 
  
片倉優樹/遠野四季 「人の世・生きる事・倫理」 片倉サイド 導入  
  
街頭の灯りに照らし出された光。  
その光の領域は日向の午後よりも生命の存在感を際立たせる。 
「光と闇」「善と悪」「生と死」。遍く二元論の根源がここにあるから。 
  
でも、眼前に繰り広げられる光景には、それすら当て嵌まらない。 
捕食・・・ですらない、殺戮・・・ですらない。言わば、ゲームで、狩猟で、暇つぶし。 
それは、5日前を狂狂繰り返したような・・・。  
  
そう。夜中の散策は今日で5日目だった。  
それは無為に等しい私の生活に、偶然加わった珍奇な習慣。 
いて欲しくない相手、合って欲しくない事件を探す空ろな散策。  
------------------------------------------------------------------ 
5日前。  
血。 血。 血。 路地裏は、この世の黄昏。  
私は只、24時間営業の店でワンカップの日本酒を買い、横着に近道をしようと思っただけ。 
それだけで、私の自称、平穏な暮らしはその光景に朱に染められた。  
視界に入る固形物は犯人と辛うじて赤い靴からのみ、性別を判定できる女子の部品、残骸のみ。 
  
私は只徒、動けなかった。 
きっと。自分に重ねて憐れに思ってしまったから。 
「社会」という人間が作り出した擬似空間から弾き出されたニンゲンの悲哀とそれでも 
人の社会に居直りつづけなければならない犯人の心身の「正気」の残滓について。 
そして、勝手に期待、いや、夢想した。二度と、こんな事は起こらないよね、って。 
------------------------------------------------------------------------  
犯人(私と同じく白髪で着物姿の男)の正面に回りこみ。デッドエンドの壁を背に 
私は告げた。我侭で尊い命を犠牲にした自分の愚かさを嘲いながら。  
  
「警視庁刑事部捜査第六課 片倉優樹。殺人の現行犯で・・・貴方を、逮捕するよ」
ヤハベvsフィオ
『LA SALIDA DEL SOL』
 
本スレのレス番まとめです。
 
>122>128>178>187>256>271>272>273>275>277
>282>296>304>316>341>344>378>379>380>381>451
 
 
感想、意見などはこちらへどうぞ。
http://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
 
私を怒らせると痛いですよぉ・・・・。
 
オーフェンvsレイオット
>449

 ずぶり――と。
 足下が、崩れた。今この瞬間まで確かなカタチを保っていたはずの大地が、
 レイオットと、そしてモールドの重量に破れたかの如くあっさりと崩壊していく。

「な…………!」

 沈んでいく足を引き抜こうとするが……それが出来ない。
 崩れていく大地には、踏みしめるべき足場は存在していなかった。
 力を込めるたびに、沈むスピードが増していき、レイオットの身体はすでに膝までが地面に埋まっている。

「――くそったれ!」

 何が起こったのかはわからない――が、これが相手の魔術の効果であることは明白だった。
 視界には、地に手を付けたままの男――魔術士が居る。
 崩しかけたバランスを無理矢理に維持。スタッフ操作、無音詠唱――
 
「顕ッ!!」

 撃発音声、魔法顕現。
 だが、その発動対象は魔術士ではない。
 真下――足下の更に下を中心点として<インパクト>が炸裂した。
 生み出された衝撃波は地面と、そしてレイオットとを等しく吹き飛ばす。

「ぐ――――!」
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>450

 踏み潰されるミッターハウスの首が白煙を上げて塵と為る。
 先に乱射を受けたヨルガ将軍らも、同様の運命を辿っていた。
 中枢部を一挙に失い、この国の軍部は煮え油をぶち撒けた様な騒ぎに包まれるのだが――。
 それは後日の話である。
 
 白い狩人と相対するヘンツォーの顔からは、先程までの怒りの色が消えていた。
 持ち前の人を馬鹿にした様な冷笑を貼り付け直している。
 滅び逝く同族の惨状に却って冷静さを取り戻したのだろうか。
 
「主の御名において、か。そう云えばさっき、主の恩寵だとか吐かしてたな、ええ」

 左手は腰の後ろへ、右手の剣尖は狩人へ付け、ヘンツォーは嘯いた。

「だが貴様らの神はこうも云ってたんじゃあなかったかね。
 罪びとを愛せ、とな! 真に神に求められているのは我らと云う訳だ!」
 
 そのまま突きかかるかと見せかけて、ヘンツォーは剣先を振って合図を送った。
 それを受け、何時の間にか間合いを詰めていたヴァケル・パシャとエル・シュパドールが、
それぞれ白い狩人の左右から斬り掛かる。
 ヴァケルは上段からの振り下ろし、シュパドールは下段からの跳ね上げである。
 天地の間を鋏み込むが如く、二刀が唸った。
456美夕 ◆MIYU.g96 :02/06/15 23:06
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ

>437

「くっ・・・!」
 
ちりちりと外気が肌を刺す。ここは本来あり得べからざる鏡の中の世界。
いかに鏡神魔の魔力でこの空間で活動する力を得ていても、ここでの自分たちは異分子だ。
世界が、それを排除しようとしている。いつまで無事でいられるやら――
 
砲撃で削り合う美夕と鎧の男、そしてお互いに有効打を与えられないラヴァと鋼の巨人。
 
 『だったら、こうしてみようか』
 
ラヴァと美夕は、じりじりと追い詰められるようにお互い背中合わせの構図を作る。そして。
 
「はいっ」
 
軽やかにハイタッチを交わすと、二人は入れ替わる。
美夕の炎が雨あられと鋼の巨牛に降り掛かり、電光石火の速さでラヴァは鎧の戦士の光弾を
かいくぐって爪を振るう。
巨牛の振るう鋏のような爪は、幻舞のような美夕の動きに触れることもできず空を切る。
光弾が掠めることを厭わず踏み込むラヴァの爪は、盾で凌ぐには追いつかない。
 
『ここは我慢くらべよ・・・先に音を上げた方が負け』
 
美夕は侵食してくる鈍い痛みを、つとめて顔に出すことなく熱波の旋律を奏で続ける。
457オーフェン:02/06/15 23:20
>454
オーフェンvsレイオット

『顕ッ!!』
という、かけ声とともに突如、地面が爆発でもあったかのように弾け飛んだ。
そして、その中心地にいた鎧が地面と同様に吹き飛び、宙を舞う。

(自分もろとも地面を吹き飛ばして脱出したのか!?)

相手のとっさの判断に驚嘆し、一瞬動きが止まる。
だが、次の瞬間には相手を迎撃すべく魔術の構成を編む。

そして、空中を舞う相手に向けて魔術を放つ。

「我導くは死呼ぶ椋鳥!」

破壊振動波が、鎧の頭部目掛けて突き進む。

(頭にんなものかぶっていて、これを食らったらさすがに気絶するだろ)
《涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)》
>435
(トリップ判定:D>E、わたしの負け)
 
 噴きつける熱風、目前に迫った猛炎。
 そこにある、視えない何かを、枯渇させ―――――
 
―――なんて、圧倒的。
 
 こんなに近くで見るまでわからないなんて。
 見ることなんてしなくてもわかっていたのに。
 なんで、今まで気がつかなかったんだろう。
 
 
 わたしのセカイが、為す術も無く破壊され、
 わたしのカラダが、瞬く間に焼き尽くされていく。
 
 ああ、カラダが灼けるっていうコトは、
 アツイんじゃなくって、イタイんだ―――
 何故か、口元が勝手に微笑みを浮かべてしまう。
 これでまた一つ、貴方に近づけたね。
 
 
 
       志貴、くん―――――
459吾妻玲二 ◆phantom2 :02/06/15 23:35
吸血大殲28章『仄き鮮血の舞踏』
 
 闘争のインデックスだ。
 
>43 オーフェン&鏡花VSシグマ「我が魂屠れ来訪者」
>77 オーフェン VS ぺトレスク神父 の纏めです。
>164 サカキ VS ガンスリンガー 『銃士、双月の下』
>176 鈴鹿御前 vs アルカード(M)
>182 アーカードVS遠野志貴@死徒
>186 レイオット・スタインバーグvs『復讐騎』エンハウンス
>216 ユージン VS バイロン(ブルーソルジャー)
   murderer is in the world without redemption 〜cage〜
>243 クロウvs祁答院マコト(M)「朧月夜」
>270 トニー・レッドグレイブvs雷泥・ザ・ブレード
>293 ジェニー・バートリー VS ペトレスク神父
>340 ロゼット&クロノ VS レッドアリーマー
   『紅の闘志』『DEMON,S CRUSEIDE』
>355 遠野秋葉vsアセルス
>405 ◆ロゼット・クリストファ&クロノ&アズマリアvsモリペス・オクティペス◆
   『仄暗い海の底から』
>436 ヴェドゴニアVS仮面ライダーアギト
>449 アルカード(M)vsモリガン・アーンスランド(M) 『月下、狂艶』
>453 ヤハベvsフィオ『LA SALIDA DEL SOL』
 
次スレ
 
吸血大殲29章「流血の驟雨」
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1024151370/
460遠野四季 ◆17thMv4s :02/06/15 23:51
>452 片倉優樹/遠野四季 殺人鬼側導入  

 血の海の中央に佇むは一人の青年。
 街灯の明かりに照らされる青年の表情は、光によって生まれた影のせいで、見ることは適わない。
 ただ、影の奧でギラギラと光る真紅の瞳だけは、青年を呼び止めた少女へと向けられている。

 青年はまず簡潔な自己紹介を始めた。
 少女――片倉優樹は名前を名乗ったのに、自分が名乗らないのは失礼だと思ったからである。
 
 「オレの名は――――」
 
 青年は“殺人鬼”と名乗った。本当はちゃんとした自分の名前があるのだが、
それはある男に奪われてしまったらしい。
 そいつを殺し、自分を取り戻すことが当面の生き甲斐だと、殺人鬼は言った。
 
 そして、最後に一言。
 
 「――おまえ……髪の毛、綺麗だな」
 
 と、優しく言った。
 少女の髪の色は殺人鬼と同じ白だが、彼の灰色に近い白と比べ、少女の白は銀色に近い。
 月明かりに照らされたその髪は、まるで宝石のようだ。
 
 殺人鬼は知らない。少女が放った言葉の意味を。少女の瞳に写る憐れみの意味を。
 ただ、殺人鬼にも一つだけ決意がある。美しい者を見たときは、いつも必ず憶える想い。
 
 この女は、殺そう――――
461遠野四季 ◆17thMv4s :02/06/15 23:53
遠野四季vs片倉優樹途中経過

>452>460
オーフェンvsレイオット
>457

 小規模とはいえ、人ひとりを浮かび上がられるだけの衝撃波だ。
 それを至近距離で喰らった為に、ほんの一瞬――宙を舞ったまま、レイオットの意識が空白になる。
 それは、瞬き一回にも満たないほどの一瞬。だが――

「――我導くは死呼ぶ椋鳥!」

 男の声。呪文だ。だが、体勢は今だ崩れたまま。
 身体が中にあるために、回避行動を取ることすら出来ない。
 このままでは――

「―――――!」

 直撃だ……と判断した瞬間、レイオットは咄嗟に無音詠唱していた。
 重量十数kgにも及ぶスタッフを片手で男に向かい振り上げ、

「イグジスト!」

 そのまま<デフィレイド>を発動させる。
 タイミングをほぼ同じくして男の放った破壊振動波が展開された力場面に直撃。
 そのまま拡散、無力化させる。その間にレイオットは空中で身を捻り――そのまま体勢を立て直していた。
 鎧を着込んでいるとは思えない滑らかな動作で着地。
 そのまま――仮面の内側で笑みを浮かべつつ、レイオットは男に向けて向き直る。
オーフェンvsレイオット(>462 修正)
>457

 小規模とはいえ、人ひとりを浮かび上がられるだけの衝撃波だ。
 それを至近距離で喰らった為に、ほんの一瞬――宙を舞ったまま、レイオットの意識が空白になる。
 それは、瞬き一回にも満たないほどの一瞬。だが――

「――我導くは死呼ぶ椋鳥!」

 男の声。呪文だ。だが、体勢は今だ崩れたまま。
 身体が中にあるために、回避行動を取ることすら出来ない。
 このままでは――

「―――――!」

 直撃だ……と判断した瞬間、レイオットは咄嗟に無音詠唱していた。
 重量十数kgにも及ぶスタッフを片手で男に向かい振り上げ、

「イグジスト!」

 そのまま<デフィレイド>を発動させる。
 タイミングをほぼ同じくして男の放った破壊振動波が展開された力場面に直撃。
 そのまま拡散、無力化させる。その間にレイオットは空中で身を捻り――そのまま体勢を立て直していた。
 鎧を着込んでいるとは思えない滑らかな動作で着地。
 そのまま――仮面の内側に笑みを浮かべつつ、男に向けて一気に走り出した。

 
464遠野志貴 ◆sikiXlKk :02/06/16 00:29
>438 遠野志貴 vs 邑輝一貴(M) 「銀と蒼」

 低く跳んだ勢いそのままを利用し、低い体勢で邑輝に足払いをかける。
 仰向けに倒れる邑輝。

 俺はナイフに飛びつき、引き抜いた。同時に邑輝の身体の『線』を視る。
 前腕部に、一筋の『線』。

 倒れた時に背中を強く打ったのか、邑輝の反応がない。


 ――――俺は躊躇無く。
       その『線』にナイフを走らせ。

 左腕の前腕部を『切り』、未来永劫にわたって邑輝から左手を奪った。


 後に跳びすさり、俺は邑輝の様子をうかがった。

「――はあ」

 息が漏れ、緊張に身体がこわばっていることがわかる。


 俺自身が、やってしまったことに。
465オーフェン:02/06/16 00:36
>463

『イグジスト!』

鎧の叫びとともに、波打つ空間が展開され、それに破壊振動波が直撃し、霧散する。
そして、その波打つ空間は、そのままこちらに向かい突き進む。

(なんだと!?)

とっさに身をひねりかわしたが、無理な動きでバランスが大きく崩れる。

(―――っやばい!)

それは、再び体勢を整えるまでの、本当にわずかな時間のことだった。
だが、体勢を整え。
着地した相手のほうを構えを取りつつ向くまでのわずかな時間、空白が生まれた。
そして相手は、それを見過ごすほど愚かではなかった。

鎧が着地したと思われる場所に目を向ける。
すでに、そこには鎧の姿は無く。

―――魔術を使う暇など無いくらいの距離に、鎧は迫ってきていた。
466遠野志貴 ◆sikiXlKk :02/06/16 00:37
遠野志貴 vs 邑輝一貴(M) 「銀と蒼」 途中経過

>218>245>321>322>323>364>407>438>464

……もう少し、もう少しなんだ!
絶対に、こいつを止める。
オーフェンvsレイオット
途中経過

>439 >440 >441 >442 >443 >444 >446 >448
>454 >457 >462 >465
ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1024151370/
下賎な温血者(ウォーム)ども、我らの闘争を一時纏めて置いてやったぞ。
では、次スレにて会おう。
 
 
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
 
>248 >249 >250 >251 >252 >253 >284 >285 >288 >291 >294 >297
>302 >314 >317 >325 >328 >329 >342 >343 >346 >348 >349 >359
>360 >394 >398 >406 >409 >423 >450 >455
469美夕 ◆MIYU.g96 :02/06/16 01:35
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ 〜エイエンハドコニアルノ

<今スレ分まとめ>
>366 >367 >368 >369 >370 >371 >372 >373 >388 >391 >392
>395 >397 >400 >403 >437 >456

戦わなければ、生き残れない・・・か。ふふ。
>456
吸血姫美夕vs仮面ライダーゾルダ

「ぐわぁ!」
2人のコンビネーションに対処しきれず、ゾルダは男の爪をまともに受けてしまう
慌てて、マグナバイザーを乱射するが男の動きは美夕よりも速い
何とか距離をあけ、体勢を整えたいのだがなかなか許してくれない。

銃弾では止められないと判断したのか、ゾルダはまた新たな武器を召喚する
『ストライクベント』
ゾルダの右腕に猛牛の角状の武器が装着される
「パワーなら俺の方が上だ!」
ゾルダは男の爪を受けとめると、そのまま弾き返しさらに一撃を与えようとするが
スピードは相手が上のため、かすりもしない。

(このままでは・・・埒があかないな)

ふらつく足取りでゾルダは考える。
もはや打つ手はアレしかない・・・しかしこの状態では使えない
アレは文字通り最期の切り札だからだ。 

(せめて、わずかでもこいつらの注意がそれてくれれば・・・)
 
ゾルダが祈るような心境になったそのとき
不気味な咆哮と共にモンスターのもう一匹が出現ずるのが彼の視界に入った
そいつは手にした槍を振りかざすとまっすぐに美夕の方へと突進していこうとしている。 
  
(俺は余程ツイているらしいな・・・・)
471ガロン ◆GALON/hc :02/06/16 10:42
涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)
エピローグ
>458 
 
歪んだ世界を貫いて、轟炎が彼女を包む。
浄化の炎の中で、彼女は微笑を浮かべながら、
その体は灰へと戻っていく。
 
その時、俺の耳は彼女の今際の際の言葉を捕らえた。
そう、ただ一言。だが、それだけに重い言葉。

シキ―――
 
そうか、それがお前が想ってやまなかった、ヒトの名か・・・・・・ 
俺とは大違いだな―――自嘲をこめて笑う。
俺は全てを捨てた。そう、あの時も―――
想いを寄せた彼女をも、俺は捨てたのだ。
その時点で―――俺はヒトでも魔物でもなくなったのかもしれん。
 
闘い続けるのが俺の運命というのなら、せめて勝利で染めてやろう。
それが―――俺に出来る、せめてもの強がりだから――― 
 
       Fin
《涙、果つることなく〜ガロン vs 弓塚さつき(死徒27祖)》
前章まとめ
吸血大殲27夜 ――Lunatic Dance――
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/474

今章
闘争
>54>415>419>431>435>458
エピローグ
>471

 あは、わたし――死んじゃったね。
 もう、志貴くんに会うことは……出来ないのかな。
 すごく残念だよ、また一つ志貴くんに近づけて、
 これからもっと、もっと近づいていこうって思ったのに……。
 けど、どうしようもないことなんだよね。
 
 じゃあ―――またね。ばいばい。
 
 あ、それと……もし良かったら感想とか貰えると嬉しいかな。
http://fargaia.opt.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
『伯林の紅い雨』〜ベルガー&ヘイゼルvs天草四郎時貞

今章でのレス番纏めじゃ
 
導入
>257 >258
 
闘争
>269 >274 >276 >278 >335 >336 >337
>337 >374 >375 >376 >377 
 
続きは次章にて・・・・・・
私としたことが…、レス番指定を間違えていたようですね…。
◆ロゼット・クリストファ&クロノ&アズマリアvsモリペス・オクティペス◆
『仄暗い海の底から』
導入:>345

 >347>350>351>353>356>357>358>361>393>396>399>401>402

エピローグ:>404

…人間の、言う『ホラー映画』のような終わりになりましたね…。
475名無しクルースニク:02/06/16 23:53
Nameless Kresnik vs Count Vardalek
“The Party Of The Children Of Night”
>450
 
「……減らず口はイイ加減にしとけよ、このクソ馬鹿が――
 テメエ等を主が愛する? バカ力と頑丈さだけが取り得のテメエ等を!?」
 
 その場からでも必殺の突きを送り出せるだろう伯爵は、しかし動かない。刹那の意識の空白
は、二筋の閃光の侵入を許した。
 弓手から逆風。馬手から袈裟。世で最速の獣をして尚速い、黒い閃光が二つ。
 出鱈目を通り越した、姿さえ霞む兜割と逆袈裟――型も構えも素人に毛が生えた程度だが、
吸血鬼の膂力はその一撃を必殺と変える。
 ――フェイント。
 その思考は、0.05秒ばかり遅い。
 二つの悪意は、既に体を舐めんばかりに接近している。
 
 膂力で打ち合うは愚考。
 青年は柄に右手を添え、全身を風と変えて弓手の吸血鬼へと踏み出した。
 跳ね上がるレイピアの内側へと潜り込み、鞘ごと柄を突き出して正面の吸血鬼の鼻を潰す。無様に
怯んだ所に背を向けて、その場で反転して抜刀。肉を立つ音も無く、冗談の様な鋭利さで吸血鬼の胴が
両断される。
 さらに反転。青年の袈裟懸けの一撃が、鼻を抑える吸血鬼の耳上から侵入。口から首、胸から脇腹へ
と刃は抜け、湯気を上げる臓物が一気に漏れ出した。
 
「……の糞馬鹿共がぁ……汚ねえ血ィ付けやがって――」
 
 純白の法衣を斑に主で染め、青年は笑いながら瞳に嚇怒を宿した。
 鞘に帰る事も無く翻る白刃が、消え行く炎の煌きを映し込んで踊る。
 驚愕に沸く吸血鬼達へと嘲笑を送り、青年は再び白い風となる。
 鮮血の颶風が吹き荒れた。驚愕と恐慌の中、統制を失った吸血鬼達の群は、ヘンツォーを除く悉くが
血肉の塊となって散って行く。
 
 茎に退魔の九字を彫り抜いた古刀は、退魔の意思を持って打ち上げられた破邪の剣。
 瞬き数度の内に同輩を悉く失ったヘンツォーへと向き直り、青年は何処までも冷たい瞳で睥睨した。
 
「――全く――哀れだな。お前達は結局、何も解っちゃいなかったんだ。
 主の愛を理解出来なかったお前達は最初から生きている意味なんて無かった。
 ……狂夢の終焉だぜ、ゴミ共。主の御名に於いて、テメエ等は一人残さず裁き尽くしてやる」
緑川淳司&花村雅香 VS 弓塚さつき(27祖)
27章分のまとめ
ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1022485313/467
 
このスレでの経過
>171 >365

雅香「進行遅い…。」
淳司「ぐっ……とりあえず次の舞台に行くぞ。」
雅香「は〜い…」