1 :
ドラキュラ・ヴラド・ツェペシュ ◆SINSO3sw :
出典 :
名前 :
年齢 :
性別 :
職業 :
趣味 :
恋人の有無 :
好きな異性のタイプ :
好きな食べ物 :
最近気になること :
一番苦手なもの :
得意な技 :
一番の決めゼリフ :
将来の夢 :
ここの住人として一言 :
ここの仲間たちに一言 :
ここの名無しに一言 :
『吸血姫に祝福を』
〜イベント1・『動き出す歯車』〜
前スレ>349
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1019982784/349 「だから・・・・彼女に関わるのはもうやめたほうがいい!
彼女の身柄を警察にでも渡すべきだよ!」
「あ〜もう!何がそんなに気に食わないのよ?!」
私とクロノは、何度目になるか分からない言い争いをしていた。
彼女と関るなというクロノ。何でそんなことを言うのかよくわからない。
理由を問いただしても、『悪い予感がする』の一点張り。
これで納得しろというのが無理な話だ。
「きまってるだろ?
ここ数日調べ上げても、彼女の身元がまったくわからない。
チェックインしたのがいつなのか、何であそこにいたのか、家族はいるのか・・・・・
まるでわかってないんだよ?それに何より・・・・・・」
「『やな予感がするんだ』? 聞き飽きたわよ、その台詞!」
「ロゼット!!」
不毛だ、と思う。
正直、彼女が来てから私とクロノの間はギスギスした空気が流れることが多い。
アズマリアの手前、極力そういうところを見せたくはないのだが・・・・。
なんだかんだいって、アズマリアも気付いてはいるようだ。
「だ〜か〜ら〜!!
ルージュをほっぽっとくわけにいかないでしょ?
あの悪魔襲撃事件の重要参考人でもあるんだから!」
「ちっとも協力の意思を見せないような奴がかい?」
「あんたね・・・・!!」
言い争いに夢中になっていた私は、ドアの隙間からのぞく瞳に気がつくことはなかった。
オレとブルーカラー
前スレの>480
叩きつけられた相手ほどの衝撃はなかったが、地面に激突して面食らう
『吸血姫に祝福を』
〜イベント2・『動き出す歯車』〜
>3
ふん、まあ、クロノは流石に私を疑っているようだ。
同じ魔としての直感という奴か。
……今、此処で部屋に飛び込んで2人を殺すくらいの力は回復している。
でも、まだ、その時じゃない。
もし、ここのエクソシスト全員を相手にしなければならなくなった時、今の状態では対応できるか、どうか……
もう、少し、待とう。
私は足音を殺して、2人のいる部屋から離れていった。
・
・
・
もう、すっかり夜の帳が降りたころ……
私は唐突に『渇き』を覚えた。
そういえば、此処しばらくまるで血を吸っていない。
……なるほど、喉が渇く訳だ。
私の死徒としての本能が血を求めている。
――街に出て、適当に血を吸うか……
そう私は考えて、窓を開けて、外へとふわりと飛び出した。
大通りにでもいけば適当な獲物が見つかるだろう。
できれば、若くて健康な人間の血がいい。
……私はそのまま、街中へと向かった。
>4
紅丸VSリロイ・シュヴァルツァー
地面に無様に叩き付けられた紅丸の上に、
リロイは素早い動きで馬乗りとなり、マウント・ポジションを取った。
リロイの瞳は、未だ満たされる事の無い破壊衝動に満ちている。
そのまま紅丸の顔面を破壊するための、最初の一撃となる拳を
振り上げ、そのまま降ろした。
オレと不審人物
>6
とりあえず両腕でガードポジションを取ったが相手の優位は崩しがたい
肉のカーテンの間を縫うたくみな拳を顔面に喰らい続ける
その時、
「あ! 悪い怪人が正義の傭兵を襲ってる!」
路地の中に入ってきた頭の悪そうなガキが現れて、浅はかな感想をのたまった
「逆だ逆! 早く人を呼べ!」
走り去っていくガキ
《『殺人貴』 vs 遠野秋葉(反転)&弓塚さつき(死徒27祖Ver)》
前スレ >345 >346
ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1019982784/346 私はドアを開けて、部屋の中に入る。
後ろの弓塚さんも部屋に入ろうとした時に……
ガン!
バン!!
いきなり、ドアが乱暴に閉じられる。
「えっ……?」
私はその音に驚いて、振り返る。
そこには……
ナイフを手にした
遠野志貴――兄さんが
まるで見てはいけないものを見たかのような
そんな表情で
私を呆然と見ていた。
そう、私を殺す気だったのね、兄さん
でも、そんなにあせることはありません
時間はたっぷりあるんですもの
「あら、兄さん、いかがなされました? 3年ぶりの再開にしてはいささか風情に欠ける挨拶じゃありませんか?」
私は薄笑いを浮かべながら、兄さんに話し掛ける。
「わざわざ、私がこうやって会いに来たんですもの。もう、少し喜んでくれてもいいと思いますけど?」
部屋のドアが悲鳴をあげる。
「ああ、そうそう、私の他にとっておきのゲストがございますの。是非とも、声をかけてあげてくださいな」
私がそう言い終わると同時に部屋のドアがドンという音とともに叩き壊された……
『吸血姫に祝福を』
〜イベント2・『動き出す歯車』〜
>5
その夜、私は何か寝つきが悪かった。
昼間、今までにないくらい激しくクロノと言い合ったせいだろうか。
あの後、私はクロノと喧嘩別れする形で別れ・・・・それから今日は顔をあわせていない。
「ふ〜・・・・・。」
しょうがない、夜風にでもあたってくるか・・・・・。
私は、ガウンをはおり部屋を後にした・・・・・。
「ふ〜・・・・月が綺麗ね〜・・・・・。」
私は、夜空を見上げて呟く。
空に浮かぶは深円の満月。
満月の晩には何故か殺人や事故が多くなるという。
月の魔力・・・・なんて物があるのかどうかは知らないが、
こんな月を見れば、月に惑わされてもおかしくない私は思った。
「・・・・・?」
人影が、私の目に入る。
あれは・・・・・・ルージュ!!
「お〜い!」
私は、とととっ、とルージュの元に駆け寄る。
ルージュも寝付けなかったのだろうか。
「ぐっいぶに〜ん、ルージュ。あんたも寝付けないの?」
私は、声を抑えて彼女に問い掛けた
前スレ>483 VSトバルカイン
気付いた時にはもう遅かった。
両側から襲い掛かってくるトランプの奔流を回避するには間に合わない。
ならば―――
「GUAAAAAAAA!!」
咆哮が響く。
身を捻ってダメージを最小限に抑えたつもりだったが、甘く見過ぎていたようだ。
もう動ける時間はそう長くない。
そして、長引けば長引くほど弾薬の制限のあるこちらは不利になる。
(イチかバチかだ―――やるぞ)
(OK、兄貴)
何処にこんな力が残っていたのか。
ルークが今までと遜色ないスピードで接近を始めた。
両方に構えた銃で銃撃を放ちながら一気に接近。
そして、ルークの後ろから銃弾と硝煙を目眩ましとして―――ヤンが、狂犬の如く飛び出した。
>11 vsバレンタイン兄弟
「ぬぅあッ!?」
気づいたときにはもう遅かった。
ヤンの噛み付きが、トバルカインの喉を毟り取っている。
血を吸われる喪失感。熱が減る。おぞましい腐臭。寒い。
「がぁっ・・・この・・・トバルカインがっ・・・
だが・・・だが、貴様等なんぞにっ・・・」
死に逝く身体に反応し、全身からあがる炎の柱。
「ぐあっ・・・くっ、ははは、はははははははは。
だが、しかし、貴様らも道連れだよ」
燃え上がるトバルカインの手が、ルークの腕を掴み、握りつぶす。
もう片方の腕は、ヤンを抱きかかえて放さない。
指先だけで放たれたトランプが、執念深い正確さで兄弟の心臓に向かう。
《『殺人貴』 vs 遠野秋葉(反転)&弓塚さつき(死徒27祖Ver)》
>9
秋葉さんの後を追い、部屋に踏み込もうとしたちょうどその時。
ガン!
バン!!
目の前で、突然ドアが閉じられる。
―――――――しばし、呆然。
一瞬の間。
まったくの予想外の出来事。
なんで
どうして
まるで、わたしを拒絶するかのように閉じられたその扉――――
イヤ、いやだよ……そんなの嫌。
なんで、なんでなんで、わたしのコト――――
『あら、兄さん、いかがなされました? 3年ぶりの再開にしてはいささか風情に欠ける挨拶じゃありませんか?』
部屋の中から秋葉さんの声が響き、
ふと、今自分が何をすべきなのか思い返す。
この間は戦闘行為の最中であれば、致命的な瞬間。
―――ドアが閉まったなら、ドアを破れば良い
ドアに手をかけ押して見る。
軋みはするが―――――開かない
思っていたよりも、ずっと強固なその扉。
目の前に会いたい人が居るというのに、顔を見ることすら出来ない焦燥感。
秋葉さんに先を越された………そのどうしようもない不安感、そして嫉妬。
気が焦り、ドアノブを掴んで引き千切る。
人の肉を千切るのとは、全く違ったこの感触。
それが、更にわたしをイライラさせる―――
――――ドゴン!
考えるよりも早くに手が出て、ドアを殴る。
その衝撃で蝶番でもいかれたんだろう。
ガゴン、とドアが傾き、そして―――倒れた。
倒れたドアの向こうに待っていたのは、わたしの顔を見つめる志貴くん。
―――ああ、やっぱり待っていてくれたんだ
わたしが5年間待ったのと同じ、志貴くんもこの5年間。
共有した訳じゃあないけど、共有したも同然のこの時間。
昂ぶる心を抑え、出来るだけゆっくりと、穏やかな表情で話し掛ける。
「ねえ、志貴くん―――わたし、一人前の吸血鬼になって帰ってきたよ」
眼前に居る、蒼い眼をした殺人鬼に―――――
『吸血姫に祝福を』
〜イベント2・『動き出す歯車』〜
>10
『おーい!』
この声は……
『ぐっいぶに〜ん、ルージュ。あんたも寝付けないの?』
やっぱり、アイツだった。
なんでこういうタイミングで出てくるのか?
私は自分の運のなさを呪った。
「あなたには関係ない……」
と怒鳴りつけようとした所で、ロゼットの白い首筋が眼に入る。
若くて健康な少女……
しかも、おそらくは処女……
久々の渇きを潤すには絶好の……
……危ない。
吸血衝動が相当に高まっている。
コイツから血を吸ったら、それこそ本末転倒だ。
「……私は1人で夜の静謐な空気を楽しみたいの。ほっといてくれる?」
私は、そうロゼットに告げた後、踵を返して、歩き始めた。
>12 VSトバルカイン
「貴様……ッ!?」
炎を噴き上げる手に腕を掴まれたルーク。
振りほどこうとありったけの力を込めるが、潰れた腕ではそれは適わない。
「往生際が悪ィんだよ糞がァァァァァッ!!!」」
呪いの言葉を吐いても、死の抱擁からは逃れられない。
だが、ヤンは必死であがく。
そして、そんな二人の足掻く様を嘲笑うかのように――――
トランプが、心臓目掛けて放たれる。
「「――――!!」」
声にならぬ叫びを上げて、二人は命を失った。
灰は灰に、塵は塵に。
死ねば、そこに残るのはただ一握の灰のみ。
それこそが太陽に背を向け、夜を歩く吸血鬼の掟。
出来損ないであれ、その掟に逆らうことは出来ない。
皮肉なものだ。
>8
紅丸VSリロイ・シュヴァルツァー
紅丸は辛うじて両腕により防御を固めるが、
リロイはそれに頓着せず拳を振るい続ける。
骨に拳が叩き付けられる鈍い音が響き、
飛び散る赤い飛沫がリロイの頬を濡らす。
それにより、リロイの表情が更に凶暴に歪んでいく。
だがその一方的な嗜虐の時を、妨げる物があった。
「あ! 悪い怪人が正義の傭兵を襲ってる!」
およそ血生臭いこの場所には不釣合いな、甲高い悲鳴のような声。
思わずリロイが振り下ろした拳を止める。
其処に立っていたのは、年端も行かぬ子供であった。
こんな人気の無く、しかも<闇の種族>が頻出していた場所に、
どうやって迷い込んだのかは誰も知る事は無いが―――
その余りに無邪気な一声が、リロイを急激に現実に引き戻す。
「俺は―――――」
一体、何を。
唐突な疑問が、リロイの脳内に問い掛けられる。
それに答えが出ぬままに、紅丸の身体は戒めから解かれ、
動き出していた。
オレと(以下略)
>16
前方に体を引きずり出すと、中腰のままのリロイの頭にサッカーボールキックを浴びせた
「鼻クソ野郎だろっ!」
そのまま走り出し、バイクにまたがりエンジンをかけた
だがこれは逃げるためでない、攻めるためだ!
一気に加速してリロイめがけてバイクで轢かんと突進する
トバルカインvsバレンタイン兄弟 エピローグ
そのころの英国、HELLSING本部……
円卓会議にて。
「今までの数々の事件…いくら我々でももう限界だぞ。
これ以上はもみ消せん」
「情報の操作にも限りがある。何かつかめんのか?」
「はい」
HELLSING局長インテグラは葉巻を手にとり、毅然と答える。
「今まで我々が撃破した吸血鬼、および喰屍鬼共…
それらを徹底的に調べました。そして以上の事がわかりました……」
会議は、滞りなく進んでいた。
同所。30m下の地下階にて。
茶を啜る人影がふたつ。
「……今日も平和デスね。ウォルターさん……」
「はい、まったくでございます」
ぽふう
英国は今日も、いい天気だった。
ギ ャ フ ン
END
『吸血姫に祝福を』
〜イベント2・『動き出す歯車』〜
>14
「はい、すとっぷ!」
私は、彼女の肩をつかむ。
「生憎と、こんな時間にお子ちゃまがふらふらしてるところを見つけちゃった以上!
黙って見過ごすわけにはいかないわね〜?」
そう言って、私はニヤリと口の端を上げる。
「・・・・といいたいところだけど。
あんたも子供じゃないしね〜・・・・・まいっか。」
そう言って、私は彼女の肩から手を離す。
「ただ・・・・さ。心配なのよ。
ここ最近―――あぁ、あんたの遭遇した襲撃事件よりちょっと前ね。
それ以来、夜の街で悪魔らしきモノの活動が確認されてる。
今の所ヒトに危害を与えてないみたいだけどさ・・・・・用心するに越したことはないから。」
私は、はふ、と吐息をはいた。
「折角さ・・・・『あの』襲撃から助かったんだもの。
それなのに、私はルージュにまた―――・・・・・っと。
ハハ、余計な心配かな?」
私は、ルージュに苦笑を向ける。
「何かあったら、大声で助けを呼んでよ?
主や天使より早く、ルージュんとこに駆けつけるからさ!」
そう言って、私は彼女に背を向ける。
「っと・・・もし見つかっても私に会ったことは秘密だからね?
そうじゃないと明日私が怒られるわ・・・・・・。
きっついのよ〜、始末書書きとか・・・・。」
私は、肩越しに彼女を振り返りながら、苦笑しながらぼやいた。
「んじゃ、お休み!早く寝なさいよ?」
ジャッジ・デス一行vsヴェトゴニアキャラクターズ
ジャッジ・ファイアvsウピエル
前スレッド >503
あまりに圧倒的な狂気、あまりに圧倒的な暴力によってジャッジ・ファイアの不死の肉体は破壊し尽くされ、
いまや煙をあげて燻る人体の残骸へと成り果てていた。
その残骸を注視している者がいたとすれば、煙のなかに赤く光る骸骨の顔を見つけたことだろう。
その邪悪な顔は、炎に包まれるウピエルに呪いを込めた一瞥をあたえると、
何処ともなく飛び去っていった。
狂える金切り声をあげながら。
>7 御神苗優vs八頭大
思わず詰まった。口惜しいが正論だ。
かく言うおれも、古代遺跡の類じゃ散々えらい目にあって来ている。
古えの天才が造った山だの、京都に封じられてきた大妖物だの。
だが、そんな苦労を完全に忘れちまう時もある。
決まってるな。お宝を手にした瞬間さ。
気の遠くなる様な歳月、誰にも触れられずに只在り続けた財宝を手に掴むなんて行為に、ロマン
を感じない奴がいるものか。
どんな薄汚いハンターにだって、心の奥底にあるのは過去への憧憬さ。
本人が気付いてなくてもな。金じゃねえんだ、金じゃ。
いや、金も十二分に大事だがよ。
口に出しては、だがおれは別の事を言った。
「やーだやだ、人様の善意が信じられねえ奴ぁ。
おめーらみてえな猜疑心の塊が千人もいりゃ、そりゃ地球は戦争だらけになるわい」
本心? んなこた、こっ恥ずかしくて言えるか。
右手だけ岩から覗かせ、牽制の二、三発を撃ってから、おれはそっと岩陰を後にした。
『吸血姫に祝福を』
〜イベント2・『動き出す歯車』〜
>19
一通り、まくしたてた後、ロゼットは私に背を向けて去っていった。
……あなたは私に殺されるのよ?
なんで、そんなこと言えるの?
……まあ、いい。
考えるだけ、時間が惜しい。
今はこの「渇き」をどうにかしないと。
私はそのまま、街中へと向かっていった。
・
・
・
この時間帯でも大通りは流石に賑やかだ。
まあ、此処はある意味、夜も昼もないところかもしれないが……
さてと……
周りを見回して、獲物を物色する。
……丁度、いいのがいた。
年齢は十代後半か20代前半といったところか。
活発そうな女性が前のファーストフードショップから出てきた。
「あの……」
私はその女性に声をかける。
彼女が何やら不審な目で私を見る。
その瞬間に私は金色の眼で彼女を『魅了』した。
「少し、頼み事があるの。……そうね、何処か適当に人気のない場所に連れて行ってくれる?」
女性はコクリとうなずき、私の手を取って、スタスタと歩き始めた。
・
・
・
着いた場所は路地裏。
誰もいない。
好都合だ。
「ありがとう。じゃあ、お礼にね……」
私は彼女にそう声をかけつつ……
ジャッジ・デス一行vsヴェトゴニアキャラクターズ
ジャッジ・ファイアvsウピエル
>21
ジャッジ・ファイアの気配が大気に解け込み去って行く。
ヤツがホントに死んだかどうかは判らないし興味も無い。
俺の興味はただ一つ。
俺が勝った、と言うことだ。
今もなお燃えつづけ、焼け爛れ、滅び行く肉体に思いを馳せる事無く、
炎の中でただ狂った笑いを上げて立ちすくむ。
夜空に向けてただ勝利の雄叫びを吼える。
苦痛も恐怖も無く、俺はただ死の快楽に身を委ねようとしていた。
ああ、ここまでか・・・?
そんな感慨が無いわけでもない。もっと、もっと、戦いたかった。
もっと死の淵の緊張感が味わいたかった。そう思わないでもない。
だが、そんな事を考えて、やはりまだ嗤い続けている。
焼け爛れた肉体がもはや立っている事すら拒否するほどに崩壊するかと思われた瞬間、
俺は白い煙に包まれた。
消化剤に包まれて咽る。
クソ!俺が折角闘争の余韻に浸っているってのに!!
「ウピエル様、大丈夫ですか?ウピエル様、返事をして下さい!ウピエル様!!」
忠実な下僕、女吸血鬼ストリクスの・・・弥沙子の声がする。
五月蝿い女だ!俺の下僕ならもっと俺の神経を逆撫でしない様に振舞え!!
そう思いつつ、弥沙子を睨み付けてから目を閉じた。
血液パックが口元に運ばれ、ゆっくりと流し込まれる。力なく嚥下する。
弥沙子の安堵する気配がした。
一体何を安堵しているやら・・・傷が癒えたらたっぷりと折檻してやる。
だが、少々疲れた。今夜は少し、長い眠りになりそうだ・・・
END
『吸血姫に祝福を』
〜イベント2・『動き出す歯車』〜
>23
ベッドに戻った私を、ゆるりとした眠気が迫る。
う〜ん・・・・明日・・・・クロノに謝っておこう・・・・・・。
その時!
『緊急事態発生!!街で悪魔が暴れている!
クラス2nd(ノービス)以上のエクソシストは全員起床!
繰り返す!クラス2nd(ノービス)以上のエクソシストは全員起床し出動せよ!』
「何ですって?!」
どたばたどたばたという駆け音。
「・・・・・ルージュ!!」
ぼやけた頭が一気に覚醒する。
私は服を引っつかみ、手早く着替える。
ガチャガチャとホルスターに銃を収め、予備弾装を腰のパックに収める。
そして、最後に『懐中時計』を首にかけた。
廊下を忙しげにかけていく同僚たちの合間を縫って、私はルージュの部屋へと向かう。
《ばたむ!》
「ルージュ?!」
勢いよく開かれたドア。部屋の中には・・・・・誰もいない!!
「DAM(こんちくしょう)ッ!!」
あの時無理にでも止めてれば・・・・・・!!
私は、壁を一発こぶしで殴りつけると部屋を後にする。
『ロゼット!?集合はそっちじゃないわよ?!』
同僚の声が聞こえる。知ったこっちゃないッ!!
私は、その声を無視して中庭へと向かう。
そこに、ルージュの姿はない。
だとすると・・・・・・・考えたくはないけど・・・・・!!
「〜〜〜!!あの子は!!帰ったらおしおきしなきゃ!!」
そのまま、私は一人マグダラを飛び出す。
約束したんだ!誰よりも早く駆けつけるって!!
>17
紅丸VSリロイ・シュヴァルツァー
疑問に対する答えが出ぬまま、頭部に強い衝撃が走った。
何時の間にかリロイの下から這い出た紅丸が、
放った蹴りによるものだった。
その強烈な衝撃で、再びリロイの意識が、先程までの状態へと還元していく。
周りは、全てが敵だ。
壊せ、破壊しろ。
完膚無きまでに。
失ってしまった全て。その時からリロイの内を満たす物は、
純然たる破壊衝動。
世界にあるもの全てを壊す。それだけが、望み。
今の彼は、そんな意識に支配されていた。
ゆっくりと起き上がり、眼を凝らす。
すると、バイクの上でキーを捻り、エンジンを動かす紅丸の姿があった。
だがその有様をリロイは止めようとしない。
やがてエンジンがかかり、派手な排気音を響かせながら
バイクを急加速させ、そのままリロイに突っ込む紅丸。
それを真っ向から見据え、立ちふさがるリロイ。
激突音。
虚しく空回りを続けるバイクの前輪。
そしてその前に悠然と立つ、黒ずくめの男。
正常な人間では俄かに信じ難い出来事が、起こっていた。
加速を始めたバイクを、真正面から受け止めるなどという、
常識の範囲をはるかに越えた出来事が。
しかしリロイも、無事で済んでいる訳ではない。
最初の激突時に内臓に打撃を受け、
口の端からはどす黒い血が流れ出している。
決して浅いダメージではない。
そのままリロイは、左手一本でバイクの動きを制御しつつ、
搭乗者である紅丸の首筋に、ゆっくりと右腕を伸ばした。
それが首に到達した時、紅丸の気管は即座にその機能を失った。
酸素の供給が完全に絶たれ、窒息死までの
カウントダウンが始まる。
オレとリロイ(めんどくさくなった)
>26
片手締めなせいか、動脈のポイントがずれて即座に気絶する事はなかったが
その分、苦痛が異常に強い
落ちるより先にバイクから飛び降り、その落下の衝撃でなんとかとびつき逆十字を
リロイの右腕にかける
>466 vsエンペラー
ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1019982784/466 「――ちっ。時間を掛けすぎたか」
舌打ち。視界にはいるのは、瓦礫を脱したエンペラー。その手には……確かに撃破した
はずのビットが、再び剣となって携えられている。そして――突撃。
その動きは、ただ一直線に。その弱点たるコアすらも覆うこともなく――
「はは――了解だ。そろそろ……終わりにするか――」
そう呟いて、彼は両手でスタッフを構え直す。重量20kgにも及ぶ金属の塊はエンペラー
へと向けられ、同時に……じゃこ、と言う音が機械の内側から放たれた。
「我・法を破り・理を越え・破壊の意志を抱く者なり――」
補助呪文の詠唱と共に、スタッフの先端に再び真紅の魔法陣が浮かび上がる。
「――冷気よ・氷温よ・我はその静謐なるを以て・暴虐に対する制裁とす・凍気よ・その力
によりて猛き者共に永劫の沈黙を与えよ!」
それは普段は視認することは出来ない、虚数界面に構築された事象誘導機関の影。
自壊寸前の超高効率駆動する魔力回路が、魔法発動を待たずに影となって現実世界
に浮かび上がっている。
「――スミティエン・アンデル・ウェティエン・エイム・ロオグニス・クウエン・クラスイク・バン
デス……」
眼前には、水晶のような質感を持った人型。その掲げる剣が、ただ一点。こちらの首を
狙って繰り出されている。全てが重なる、その一瞬に。
「<マグナ・フリーズ>――イグジストッ!!」
撃発音声が紡ぎ出される。
同時に、胸元から残る3つの拘束端子全てが弾け飛んだ。
顕現した魔法が、事象存在確率に対して強制的な干渉を開始。それは……ほんの一瞬
の出来事として完結する。
構築されていた魔力回路が、その記された意味のままに対象空間に局所的な極低温の
領域を発生させる。
範囲内に流れる空気すらも完全に凍結させるほどの強力な冷気の渦は、当然のように
エンペラーの肉体に食い込んでいく。そして――――
『吸血姫に祝福を』
〜イベント2・『動き出す歯車』〜
>25
彼女の首に手をかける。
彼女はボーっとしたまま、何もしない。
私は微笑んで、そのまま彼女の首に牙を突き立てた。
ビクンと女性の身体が脈動する。
でも、もう、遅い。
そのまま、彼女の血を嚥下する。
甘くて濃い血……
久々のご馳走だ。
たっぷり、味あわせてもらおう。
彼女の顔が次第に恍惚とした表情に変わり……
それに呼応して、彼女の身体の力も抜けていく。
・
・
・
数分後……
路地裏には一塊の灰と私だけになった。
「ごちそうさま。美味しかったよ」
私はそう呟いて、通りへと出た。
・
・
・
「……何よ、これ!?」
通りは惨劇の場と化していた。
人々の悲鳴。
飛び散る血と肉。
――そして、悪魔たちの嘲笑。
「くっ……」
物陰に隠れて、様子を見る。
悪魔たちに見つかったら厄介なことになる。
無論、返り討ちにすることは容易い。
けど、この前はそれで酷い目にあったばかりだ。
又、エクソシストと鉢合わせは避けたい。
放っておけば、エクソシストたちが来るだろう。
それまで、隠れておくか……
>28
VSレイオット・スタインバーグ
エンペラーは勝利を確信していた。
自分は人の上に立つ存在なのだ。人間になど負けるわけがないと。
『イグジストッ!!』
レイオットが叫んだ。
それがどうした。 不可視の砲弾などでは私は止められない。
次の瞬間エンペラーの肉体は凍りついた。
全身くまなく。 コアも凍てついた。
(私は・・・ワタシハ・・・・)
エンペラーの思考はそこで途絶えた。
『吸血姫に祝福を』
〜イベント2・『動き出す歯車』〜
>29
「これでも食らえッ!!」
私は、一匹の悪魔の頭に向けて『聖火弾(セイクリッド)』‐聖油を炸薬代わりに詰めた浄化弾‐を放つ!
炸裂する十字が悪魔の頭を砕き、そのまま全身に聖火弾を打ち込まれ沈黙する。
まずは、一匹!
「あんたら―――!!」
私は、あたりの惨劇を目にして怒りをあらわにする。
ただ、倒れる人の中にルージュの姿がないことを確認して一瞬ほっとしてしまった自分がいた。
・・・・・この!
私は、頭を振って奴らに向き直る。
『るぎゅるぉぉぉぉぉ!!』
「知性も何もない低級って奴?!」
奴等が、その視線を私に向ける。
えぇい―――ままよ!!
「あんたら、邪魔よ!!あんたらに用はないの!!」
私は、打ち尽くした弾装を投げ捨て新しいカートリッジを差し込む。
かちゃり、と銃口を身構える彼らに向けた
「用があるのは・・・・一人だけなんだから!!」
ルージュ!!無事でいて――――!!
前スレ>381 vsラルフ
ラルフはまだ、武器を捨てなかった。
ラルフはまだ、闘いを止めなかった。
もう、終わったのに……。
もう、鐘はならないのに……。
あなたは――――まだこのような悲劇を続けたいのですか?
あなたが神を否定するのは構わない。
あなたが奇跡を否定するのは構わない。
だけど、あなたがこれ以上の犠牲を望むのなら……、
私はあなたの全てを否定する――――ッ!!
誰かに頼らずに、
ただ、自分のためだけに、
ロゼット=クリストファは、再度引き金を絞る。
そして、
静寂を取り戻した聖堂の中に、一発の銃声が響き渡った。
vsロゼット・クリストファ
>32
静寂を取り戻した聖堂の中で、一人の人間が斃れ伏した。
斃れたのは銃師。
引き鉄を引く、その寸前の格好のまま、
口から血を吐いて 、
それでも、笑みを浮かべながら、
前のめりに崩れ落ちる。
サングラスが外れて宙を舞い、
床に転がり、砕け散った。
床に残った焦げ跡の上に―――――――
>33vsラルフ エピローグ
「――――――――Amen 」
牧師が膝をつき、崩れ落ちた所でロゼットは180°反転。
彼の最後に背中を向け、静かに歩き出す。
なぜ、彼を最後まで見守らなかったのか。
彼の笑みがそんなに壮絶だったのか?
――――違う。
人を殺したことを認めたくなかったのか?
――――違う。
カツン。
背後で床を踏む靴の音がした。
ロゼットは振り返らない。
「あの男は……許せなかったんだろうな。
己の生涯をかけた信仰。それを無駄にした私……神の存在が」
ロゼットは心で呻く。
(……だから何なの?
どんな理由があっても、殺戮を行って良い理屈にはなるはずなんて無いじゃない)
「――――あんな奴……死んで当然よ……!!」
歩くのを止め、牧師の亡骸に、警部に背を向けながらロゼットは叫ぶ。
振り返らない。それだけは決めた。
その姿を見守る警部は、少し躊躇してから……言葉を紡ぐ。
「……では君は――――なぜ泣いているのかね? なぜ、そこまで大粒の涙をこぼすのかね?」
沈黙。それが答え。ロゼットは再度歩き出す。
大聖堂の門を開け放ち、青空の下へと舞い降りる。
「目に……ゴミが入っただけよ」
そう呟くと、己の身体を言像化。
この架空都市を離れるために、あるべき場所へと帰るために、
ロゼット=クリストファ修道騎士、帰還行動開始。
>35
私はいつから……泣いていただろうか?
――――多分、銃を撃ったときから、
あの牧師に引き金を引いたときから……。
じゃあ、あいつは……私の涙を見て笑ったの?
自分が撃たれたっていうのに、自分が死ぬっていうのに………。
――――最後まで、最後の最後まで嫌な奴ッ!!
それだけじゃなく、もし私の涙を見て引き金を引くの止めたなんて言ったら……覚悟しなさいよ!!
私、そんな軽い女じゃないのに……!!
この借り、必ず返してあげるわっ!! 覚えてなさい!!
レミントン牧師……私は人を撃ちました。人を殺しました。
レミントン牧師、あなたはそれを知るときっと怒るでしょうね。嘆くでしょうね。
こんな任務を私を命じた人、全てに……怒りを覚えるでしょうね。
でも、
ラルフ・グルトvsロゼット=クリストファ
22章>85>86>140>141>143>152>153>262>264>268>270>272>274>275>276
23章>244>246>247>248>249>331>334>335>336>337>338>376>377>378>379>380>381
24章>32>33>34>35 途中経過22章>521 途中経過23章>538
これを見れば……また、違う感想が湧くかもしれません。
だから――――悲しまないで。
御神苗優vs八頭大
>22
・・・・・・さっきまでのトーンから少し変わったか・・・・・・?
移動しながら、俺はそんなことを考えていた。
まぁ、トーンが変わったといったって、
こっちに反撃してくる以上、
はいそうですか、サヨウナラ、ってつもりじゃねぇわな。
「てめーが言う台詞じゃねぇだろうが!人の善意を踏みにじって遺跡の秘密を売りさばいてんのは、
他ならぬおめーらトレジャーハンターじゃねぇか!」
俺も負けずに怒鳴り返すと、先ほど火花が散った場所付近より多少近めに、
2,3発、銃弾を叩き込む。向こうも逃げるつもりはさらさらないだろう。
目の前に宝の山が眠ってるんだ、引き返す馬鹿はいやしない。
俺は四方に気を配りながら、ゆっくりと移動を再開した。
>36 御神苗優vs八頭大
むむ、困った事に言い返せん。私利私欲が第一だからな、この商売。
議論は止めよう。
などと思いながらも、心中おれは唸った。
大した距離はないのに、どうにも奴の気配がつかめん。
このおれに存在も気取らせないとは、やりやがるぜ。
一瞬思案してから、G11をスリングベルトで肩にかけ、懐から薄手の手袋を取り出した。
左手を使えぬ不自由さに閉口しつつ、右手に嵌める。
使える暇があるかどうか判らんが、ま、用意だけはしておいた方がいい。
ついでに胸元から予備弾倉を抜き取ると、でたらめな方向に投じた。
チープなトリックだが、どう反応するかで奴の居場所も見当がつく。
G11を腰だめに構え、おれは岩陰から飛び出した。
御神苗優vs八頭大
>37
さて、困った・・・・・・向こうのほうから音がした。
はたしてこれはブラフか否か。
あいつほどの男がそうそうヘマかますとは思えないが・・・・・・
裏をかいて、てことも充分ありえるからなぁ。
えぇい、ままよ!!
こういうときの対処法は一つ。
当たって砕けろ。
俺は音のしたほうに向かい、音もなく駆ける。
目指すは奴の首一つ!!
・・・・・・殺すかどうかはともかく、な。
>38 御神苗優vs八頭大
奴は、おれが弾倉を投じた方へと飛び出して行った。
……また、えらく簡単に引っ掛かってくれたもんだ。
ここまで単純だと見てて気持ちがいい。はっは。
G11をフルオートにチェンジさせ、奴の背後から音も無く迫る。
無防備な背に向け、引き金を引いた。
炸裂音を轟かせ、G11が咆哮する。
と、すぐに途切れた。――しまった、弾切れか!?
舌打ちしてG11を放り捨てる。
ブーツに隠した軍用ナイフを引き抜きつつ、奴目掛けて身体ごと突き入れた。
御神苗優vs八頭大
>39
「ぐわあ゙ぁあ゙!!!」
背後からする銃声。そして背中に受けた衝撃。
そしてその後に腹を抉る様に叩き込まれる一撃。
いくらスーツを着てても、こう立て続けに殴られちゃたまらない。
穴はさすがに開きゃしねぇけど、中の俺がたまらん。
俺は前方に飛ぶように転がりながら必死に体勢を立て直す。
とりあえず間合いをとり、ダメージの回復を待つしかねぇ。
俺は腰に挿したナイフをすらりと抜き放つ。
幾度もの視線をともに潜り抜けてきた愛刀。
それを青眼に構えながら、ゆっくりと立ち上がる。
「一本目はおめーに勝ちを譲ってやったが、次はそうはいかねぇぜ?
さぁ、ディーラーさん、とっとと始めようか、第二ラウンドをさ!!」
>40 御神苗優vs八頭大
「上等だ。今までアーカムの所為で大損こいたツケ、まとめて返してもらうぜ!」
突進する勢いを緩めず、吼え返した。
ナイフはネオ・チタン製の特注品だ。使い手次第じゃ鋼にも切り込める。
もっとも、オリハルコン相手じゃちと分が悪い。
連続で突きを繰り出しつつ、真の狙いは奴の手元――装甲の継ぎ目だ。
「どうにも、こういう服装ってのは慣れないんだよな……」
私は、普段の着物姿とは違い、それなりに高級であろうドレスを着て、
楽しそうに談笑する面々の顔をぼんやりと眺めながらひとりごちた。
落ち着かない気分を紛らわす為に、手に持ったグラスを少し傾ける。
「いや、だがよく似合っているぞ、式。黒桐も随分と見とれていたじゃないか」
その言葉に私は無言で応えると、グラスに残ったワインを一気にあおった。
ニヤニヤとした笑いを浮かべるこの女は、蒼崎橙子という。
私がこんな場所でこんな格好をさせられているのも、一重にこの女が持ち込んできた
仕事のおかげだった。
私はドレスを好まないので、今回も普段通り着物で行こうとしたのだが、
それはトウコによって止められてしまった。
トウコ曰く、
「普通、立食パーティーに着物で来る奴があるか?お前みたいな変人は
ただでさえ目立つんだ、せめて周りと同じ格好をして溶け込む努力をしろ」
だそうだ。自分も十分変人なくせに、よく言うと思う。
そんな事を胡乱な頭で考えていると、ふと、一人の男がパーティー会場から
抜け出すのが目に入った。
私は無言でトウコに空いたグラスを押し付けると、隠し持った短刀に手で触れて、
その男の後を追うように足早に会場を後にする。
いや、実際追っているのだ。今回の仕事の目的は、その男、
東京都知事、黒岩省吾その人なのだから。
御神苗優vs八頭大
>41
奴は勢いを殺さず、一気呵成に攻め立てる。
教科書どおりの攻め方だ。
攻め立てること火の如く、ってね。
凄まじい突きの連続をナイフで捌きながら、
奴の太刀筋を見る。妙に手首を狙ってきやがるな・・・・・・
てことは、狙いは一つか。
なら、一つ、誘ってみるか?
わざと捌き損ねた振りをして体制を崩す。
当然、手首はがら空きだ。
さぁ、食いついて来い!お前さんの狙いの手首だぞ!
>43 御神苗優vs八頭大
見え見えなんだよ、阿呆。
隙を突くのはいい。だが、相手が用意したそれに突っ込んでいくのは只の馬鹿だ。
おれは左足を撥ね上げた。
蹴りじゃない。砂利を奴の眼の辺りに引っ掛ける為だ。
間髪入れず、手首にナイフをたばしらせる。
今度こそ本当の隙だぜ。喰らえや!
>42 vs両儀式
「虚飾は気に入らんな」
部屋の外に出て、俺はふと本音を漏らした。
無駄に金を注ぎ込んだあげく、
並ぶのはまがい物ばかりの料理に、まがい物ばかりの酒。
出席するのはまがい物ばかりの政治家ども。
都知事ともなると、こんな下らんパーティーにも出ねばならない。
この国の政治が、こうまで腐っていたとはな。
――――――さっさと、ぶち壊さねば。
・・・物騒な思考で淀んだ頭を振り、俺は会場のほうに向き直る。
そこに、一人の少女が立っていた。
凛、と張り詰めた空気が、その少女の周りを流れる。
その澄んだ空気は、まぎれもない殺意。
まさかこんなところにこんな形の「本物」がいるとはな・・・。
俺は薄く笑うと、その少女に問いかける。
「何か用かな、お嬢さん?」
答えも、次の行動もわかりきってはいたが。
御神苗優vs八頭大
>44
「ぐぅう・・・・・・」
うめき声がもれる。俺の手からナイフが零れ落ちた。
いや、やっぱ見え見えすぎたか・・・・・・
右手はまだ痺れてるし、暫くは使えねぇな・・・・・・
ならば、全身を凶器にするまでだ。
今までボコられつつも体で会得した殺人拳の数々、その身で味わわせてやる!
俺はくるりと向きを変えると、走り出した。
奴も後ろから追ってきてるな、ヨシヨシ。
そして、俺は眼前の岩に向かってジャンプする。
三角蹴りの要領で後方へと宙返りをするように。
奴の驚く顔が見える。そりゃ驚くよな、こんなんされたら。
その首に手を回す。首を狩らんかの如く、
俺の体は奴を伴って風車のように回った。
>45 対黒岩省吾
「いや、特に用事があるってわけじゃないんだ」
男の気障っぽい言い回しにそう答えながら、隠し持った短刀に手をかける。
「でもさ、ちょっと仕事が入ってね。お前を殺さなきゃいけなくなった」
そこまで言って、手をかけた短刀を一気に引き抜くと、微かに聞こえる
パーティーの喧騒を背に、男と私の間に空いた距離を埋めるため、
私は誰もいない都庁の廊下を静かに駆け出した。
>46 御神苗優vs八頭大
驚愕というより寧ろ呆れながら、おれの身体は奴諸共後方へ倒された。
名前は忘れたが、こりゃプロレス技か何かだ。
実戦でこんな技を繰り出しやがるか、こいつは。
呆れつつ、一方で至極冷静を保ったおれの右手は、首を抱えた奴の手に触れた。
途端に、密着した部位から紫電が噴き上がる。
最前装着した手袋は、「電撃手袋(E・グローブ)」だったのだ。
甲に内蔵されたエネルギーパックから発せられる超高圧電流は最大で一万ボルト。
エイリアンの造った食虫植物すら屠った電撃だ、頭が雷様じゃ済まねえぞ。
と――猛烈な衝撃が来た。
後頭部と大地が交わすキスに、おれの意識はコンマ一秒程闇に沈んだ。
御神苗優vs八頭大
>48
「ぐぅぉう!?」
俺が華麗に技を決めたのと、奴の手が激しくスパークをしたのは、
ほぼ同時だった。奴に握られた手が激しく痺れる。
さすがのスーツも表面が醜く焼け、嫌な臭いを発してる。
それでも、お互いに立ち上がったのは本能なのか、
それとも業なのか・・・・・・
お互いの顔には笑顔すら浮かんでた。
とりあえず、遺跡も思想もどうでもよかった。
こんなに闘争が楽しいのは久しぶりだ。
殴り。蹴り。投げ飛ばし。
目の前の敵を打っ倒すために、俺たちは拳を振り続けた。
>30 vsエンペラー
澄んだ音と共に、荒れ狂う凍気が霧散する。
後に残されていたのは、白く凍り付いた世界。その中央には、時を止められたかのごとく
無音で剣を突きつけている、エンペラーの氷像がたたずんでいた。
無言で一歩下がり、腰のホルスタから<ハード・フレア>カスタムを抜く。
そのまま、軽い仕草で照準。銃口の先には――心臓の位置に浮かぶコアがある。
それに向けて……彼は一度だけ、引き金をひいた。
工場構内に、銃声が深く轟いていく。銃弾が氷像を撃ち抜くと同時……着弾地点を中心に、
無数の亀裂が入る。鋭い音を立てつつ亀裂は全身を這い回り――
そして後には……なにひとつ残らなかった。
「……終わった、か」
嘆息と共に呟き、静かに銃を構えた腕を降ろす。一体これは――なんだったのだろう?
「新手の魔族――にしちゃ、気が利いてるが」
思ってもいないことを口にしながら、周囲を軽く見回し――そのまま、踵を返す。
とりあえず、「魔族」は無事に始末出来たわけだ。実際にこれがなんであったのかは彼には
知る術はないし……同時に、どうでもいいことではある。
(報告書の作成も……面倒だしな)
また似たようなのが現れたら……それは、その時に考えればいい。
知らずに、肩を竦めながら――彼は、外に向けて歩き出していた。
END
『吸血姫に祝福を』
〜イベント2・『動き出す歯車』〜
>31
更に、通りの喧騒が激しくなる。
響く銃声。
悪魔の絶叫。
ああ、どうやら、エクソシストたちが到着したようだ。
後は悪魔たちが処理された後、ドサクサに紛れて帰ればいい。
などと私が考えていると、私の周囲が暗くなった。
「………?」
不審に思って、上を見上げるとそこには醜悪な悪魔が一匹、下衆な笑みを浮かべて、壁に張り付いていた。
「くっ……!」
悪魔が私の頭上から襲い掛かってくる。
迎撃しようと構えた瞬間……
>47 vs両儀式
まるで買い物にでも行くと告げるような口調で、
しかし鉄のような意志を持って、少女は俺を殺すと断言する。
次の瞬間、冷たい流星が俺を貫こうとしていた。
俺は横にステップを踏んで、その少女の一撃をやり過ごす。
少女の手にして短刀が、わずかにスーツをかすめる。
はらりと、スーツの一部が切れ、ゆるやかに床に落ちていった。
「なかなか、君は面白いな」
俺はそう言うと、床に着いた布から、少女の目に視線を移す。
その目を満たすは、鋭い殺意。
「だが、こんな場所じゃ充分に踊れないだろう?」
片頬を持ち上げ、俺は余裕げに笑ってみせる。
本来なら、俺はこんな子供になど興味は持たないが・・・。
この少女には俺を惹きつける何かがあった。
「そうだな、近くの公園にでも出ないか?」
>49 御神苗優vs八頭大
頭の芯は冷え冷えとしてる。なのに身体はたぎる様に熱い。
さっき撃たれた肩の傷が開いた所為ばかりじゃない。
男ってな、突き詰めりゃ皆こうさ。
戦いで、殴り合いで決着しなきゃ終わらねえんだ。
もしかしたら、おれたちが戦争を止められないのは、戦いが好きだからかもしれん。
おれの右ストレートをダッキングでかわし、同時に奴の右脚は消える。
半円を描いた廻し蹴りが脇腹にぶち込まれた。
反吐を吐きながらその脚を掴み、奴の背後の岩壁に身体ごと押し入れながら、ついでに頭突きも
くれてやる。
たまんねえな、おい。
奴と同じく、何時しかおれも笑っていた。
だからおれたちは全く気付かなかった。
そもそもの目的である洞窟から、こっそり忍び出ようとした影に。
『吸血姫に祝福を』
〜イベント2・『動き出す歯車』〜
>52
「ルージュ!」
炸裂する十字の閃光に包まれ四散する悪魔の体。
「怪我はない?!」
慌てて駆け寄りながら、私は彼女の様子を確認する。
もっとも、当の私が腕に怪我をしたり足から血を流しているのだから、
どうにも情けないのだが。
見たところ、怪我は無いようだが・・・・・。
「無事みたいね〜・・・・はは・・・・良かった・・・・・。」
私は彼女をぎゅうと抱きしめた。
「心配したんだから・・・・ホント・・・・・。
・・・・・よかった・・・・・。」
・・・・私の涙腺が思わず緩む。
『ギ・・・・ゴ・・・・・』
「え?!」
頭上に感じる殺気!
「ルージュ!!」
私は、彼女を突き飛ばす!
銃を構えながら頭上を見上げた私の目に、急降下しながら大ぶりに振られる悪魔の腕が写り・・・・・。
そこで、記憶がぷっつりと途絶える。
>53 対黒岩省吾
鋭くその目に殺気を迸らせながら、あくまで気障な態度を崩さずにその男は言う。
意外な申し出に、一瞬だけ動きが止まる。
だが、それもほんの刹那の事。
私はスカートをはためかせながら、殺意を込めた気障な笑みを浮かべるそいつに
素早く駆け寄って、その腹に向かって鋭く掌底を繰り出した。
「生憎と、お前に付き合ってやる義理は無いんだ。オレは殺し合いさえ出来れば、
場所なんてどこでもいいんだから」
御神苗優vs八頭大
>54
血が滾るってな、こういうことをいうんだろうな。
やっぱ、男ってのは馬鹿で不器用な生き物らしい。
その殴り合いの中で、俺は奴の背後でこそこそと動く影を見つけた。
俺はそこで動きをぴたっと止めた。
奴も怪訝な顔で拳を寸止めをする。
そして奴も振り返った。
その視線の先に居たのは・・・・・・
『はぁい、優ちゃん、大ちゃん♪二人が居てくれたおかげで、半球体探し楽だったわ〜。今回はありがとね♪』
「『芳乃〜〜〜〜!!!』」
そう、俺の天敵にして最高クラスのトレジャーハンター、染井芳乃だった。
『なぁに、二人ともそんなアンパンマンみたいな顔して。まあ、そのおかげで私の仕事成功したし、いっか♪』
俺と奴は再び向き直った。そしてニヤリと笑う。
「『ふぅざぁけぇるぅなぁ!!!』」
「俺に!」『俺に!』 「『それを渡しやがれ!!』」
『な、なによ!このかよわい乙女が危険を冒してまで取ってきたのよ!あんたらに渡すわけないじゃない!!』
「じゃかましい!どうせお前がこいつにたれこんだんだろうが!」
『そ、そんなことないわよ!ひどいわねぇ、ゆうちゃん』
「ならなんで目を反らすんだ、芳乃!!とにかく俺に渡しやがれ!!」
『今回だきゃあ許さねぇぞ!俺にそいつを渡せ、芳乃!!』
こうして、半球体を盛大な鬼ごっこが始まったんだ。
・・・・・・結果がどうなったかって?
俺が言えるのはたった一言。
「疲れた」
『吸血姫に祝福を』
〜イベント2・『動き出す歯車』〜
>55
「ちっ………!」
怪我で気絶したらしいロゼットに悪魔の巨腕が迫る。
……考える暇もなく、私の身体は動いていた。
悪魔とロゼットの間に飛び込み、悪魔の腕を右手で受ける。
そして、自由な左手を横薙ぎに振り抜く。
結果、悪魔の上半身と下半身は永遠の別れを告げることになった。
「……………」
ぴくぴくと痙攣する悪魔の頭を掴み、そのまま握りつぶす。
熟しすぎた果実のように呆気なく、悪魔の頭はぐしゃぐしゃに潰れた。
「はあ……」
悪魔の残骸の転がる路地裏で気絶したロゼットを見ながら、私は溜息をつく。
なんで、私はさっき、コイツを助けるような真似をしたのだろう?
………
……
…
しばし、思考の末に結論を出す。
私は私以外のこの手でコイツをが死ぬのが我慢ならなかったのだ。
それ以外には考えられない。
カツンと路地裏に足音が響く。
足音の方に振り向くと、そこには少年―クロノがいた。
クロノが物凄い目つきで私を睨む。
「ふん、私を睨む暇があればそこに転がっているロゼットを介抱してやれば?
私を助ける為かどうかは知らないけど、勝手に深手を負って気絶。みっともないったら、ありゃしないわ」
そうまくしたてた後、私はクロノを尻目にスタスタと路地裏から出て、修道院へと足を向けた。
『吸血姫に祝福を』
〜イベント2・『動き出す歯車』〜
>59
夢を・・・見ていた。
それが楽しい夢だったのか、そうじゃないのか。
それは思い出せない。
夢の中、私は泣いていたような気もするし、笑っていたような気もする。
ただ・・・・・。
悪夢ではなかったと思う。
少しずつ、少しずつ意識が覚醒していくのを感じる。
まだ、視界は真っ暗で、私の瞳が閉じているのを認識させた。
ゆっくり、瞼をもちあげる。
一番最初に見えたのは・・・・・・・。
『吸血姫に祝福を』
〜イベント2・『動き出す歯車』〜
>60
ベッドで横になりながら、考える。
何故、あの時、アイツが私の安否を知って、泣いたのか?
……結論は出なかった。
まあ、いい。
もう、力は8割方、回復してある。
あと、2〜3日すれば、完全に力は取り戻せるだろう。
その時は……
そのようなことを考えているうちに私の意識は闇に沈んでいった。
(復讐 7 興味 4)
>56 vs両儀式
繰り出された掌が深く鳩尾に食い込む。
寸分のズレもなく、的確に急所を捉えた一撃。
重い痛みが走る。
その痛みが、彼女に好奇心を抱いた理由を教える。
「参ったな、あんたは俺と同類ということか・・・」
さっきまでの笑みとは、全く種類の違う笑みが、俺の表情に宿る。
俺を射殺せるのではないか。
そう思わせるほどに殺伐とした、少女の眼差し。
その純粋なまでに殺意で研ぎ澄まされた視線に向けて―――――
俺は、指を突きつける。
「知っているか!?世界でもっとも古いナイフは、20000年前に作られたという・・・」
薀蓄を語ると、俺は眼前に手をかざす。
「――――――ブラックアウト!」
>62続き
叫びと共に、俺の体は昏い蒼の甲冑に包まれる。
精悍だが、禍禍しさを感じさせる鎧武者。
俺のもう1つの姿、暗黒騎士ガウザーである。
背の剣を抜き放つと、俺は切っ先を少女に向ける。
「さあ、楽しむとしようか!」
一声叫ぶと、俺は少女めがけ、右脇腹を薙ぐような一撃を放つ。
空気が裂かれ、鮮烈な音が耳に響いた―――――――
『吸血姫に祝福を』
〜イベント2・『軋むイシ』〜
>61
「説明、してもらおうか?」
僕・・・・クロノは一人きりになった彼女・・・ルージュを問い詰めていた。
ロゼットは、昨日の夜の怪我のせいかまだ目覚めてはいない。
「あの悪魔を殺したのはロゼットじゃない。
ロゼットや他のエクソシストは『あんな殺し方は出来ない』はずだ。」
そうなのだ。
あの悪魔は明らかに『巨大な力で引き裂かれた』としか思えない。
あの場にいたのはロゼットと彼女だけ。
つまり・・・・ロゼットがやったわけじゃない。
ならば―――――。
「答えてもらおうか。『君がやった』んだろ、違うかい?」
そう、そう考えれば辻褄が合う。
僕が彼女に感じていた漠然とした不安も。
「君は人間じゃない。悪魔・・・・・でもなさそうだけど。
いったい何者だ?!」
『・・・・うそ・・・・・。』
突然聞こえる声。
振り向いた僕の眼に写ったのは・・・・・・アズマリアだった。
『吸血姫に祝福を』
〜イベント3・『軋むイシ』〜
>64
私が部屋でくつろいでいる時だった。
クロノが険しい顔で部屋に入ってきて、私を問い詰め始めた。
『あの悪魔を殺したのはロゼットじゃない。ロゼットや他のエクソシストは『あんな殺し方は出来ない』はずだ』
『答えてもらおうか。『君がやった』んだろ、違うかい?』
ああ、ばれたのね。
咄嗟の事とは言え、流石に迂闊だったか。
あれだけ、派手に殺せば、気づかれても仕方ない。
まあ……ばれたなら、仕方ない。
が、もう少し、時間が欲しい。
回復の為の時間が……
とことん、とぼけてみるか。
『君は人間じゃない。悪魔・・・・・でもなさそうだけど。いったい何者だ?!』
……そう考えて、私がクロノの問いに答えようとした時……
『・・・・うそ・・・・・。』
ドアの向こうから、声。
そして、ドアが開き、アズマリアが姿を現した。
……丁度、いいタイミングだ。
彼女を軸にして、話を進めていけば、ごまかせるかもしれない。
「……私の何処が人間じゃないというの? 何をどう見ても、人間じゃない? 第一、こんな細い腕で、
悪魔を引き裂けるはずがないでしょ?」
視線をクロノからアズマリアに移す。
「ねえ、アズマリア、あなたも私を人間じゃないというの?」
『吸血姫に祝福を』
〜イベント3・『軋むイシ』〜
>65
「そうですよ!クロノ・・・酷い!!」
アズマリアが、彼女と僕の間に割ってはいる。
「どうして・・・・・そんなこと・・・・!!
謝ってください!ルージュに!」
アズマリアが涙目で僕に訴える。
・・・・・クソ!
「アズマリア、君はわかってない!
悪魔とか、夜族は狡猾なんだ!
親しく見せかけておいて、その寝首を掻っ切るなんてよくやること――・・・・!」
「じゃぁ、クロノもそうなんですか?!」
「―――ッ!」
アズマリアの言葉に、僕が詰まる。
「私、信じます、ルージュのこと!
まだ・・・・数日間しか一緒にいないけど・・・・・・。」
アズマリアが、ルージュをかばうように立ち塞がる。
『吸血姫に祝福を』
〜イベント3・『軋むイシ』〜
>66
『悪魔とか、夜族は狡猾なんだ! 親しく見せかけておいて、その寝首を掻っ切るなんてよくやること――!』
そう、全く以ってその通り。
私はあまり、そういうのは好まないけど、夜族のイメージとしては正しい。
『私、信じます、ルージュのこと! まだ・・・・数日間しか一緒にいないけど……』
アズマリアがそう叫び、私とクロノの前に立つ。
……違うのよ。
それはただの盲信。
私は本気であなたたちを殺すつもりでいるのよ。
なおも2人は言い争う。
さて、これでは拉致が開かない。
どうするべきか。
そうね……
アズマリアを上手く利用するか。
「……分かったわ。どうやら、私はここにいてはいけないみたいね。そろそろ、お暇させてもらうわ」
私は2人にそう告げ、席を立ち、部屋の出口へと向かった。
私の予測が正しければ……
>62 >63 対暗黒騎士ガウザー
振るわれたその剣は、尋常では無いスピードで私の体を捉えようとする。
いつもならばかわせるところだが、この動きにくい格好では、下手を打ちかねない。
私は一足に踏み込んで異形の戦士の懐に入り、彼が振るった腕が私を捉えるのと
同時に、腕が打ちつけられた側とは反対方向へと身体を浮かせた。
結果、私の身体は大きく吹き飛ばされはしたものの、実質的なダメージは
さほど無く、そのまま空中で体勢を整えつつ、足から廊下に着地できた。
そのままぎらりと異形を一睨みすると、手に持った短刀を握りなおす。
トウコが言うには、目の前の異形は異世界から来た侵略者という事だった。
その突拍子も無い話に、私も幹也もとうとうトウコの頭がおかしくなってしま
ったのかと本気で心配した物だが、いざこうしてそれと対峙してみると、その
突拍子も無い話も本当の事だと信じられる。
その姿も、その身に纏った気迫も、そして私に向けられるこの殺意も、異形の全てが、
この世界の物とは違う……異質な物だという事は、誰の目にも明らかだろう。
だけど、そんな事は重要な事じゃない。
本当に重要な事、それは――――――
「ああ、やっぱり。お前もオレと同じなんだな」
コイツとなら、生と死のギリギリの線で殺し合いが出来る。
私にとって一番重要なのは、まさにそこだった。
トウコの仕事を手伝っているのも、まさにその一点の為だけなのだから。
私は自分でも知らないうちに口を歪にゆがませながら、銀色に光る短刀を片手に、
廊下に悠然と立ち尽くす同類に向かって、身を低くしながら駆け出した。
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
―――満月の夜は嫌いだ。とりわけ、このように寒々しいまでにきれいな夜は。
己の内部凶暴な獣の心に心乱されるから。
呪いは解けたはずなのに。人間として生まれ変わったはずなのに。
狂おしい血のたぎり。悪夢が襲う。視界が歪む。
見知らぬ空間、闇から呼ぶ声。その声の先に答えはあるのか、誰も知らない。
ならば、行くのみ。そして、彼は当方の小さな島国に辿り着いた。
そして彼は、一人、長い坂道を歩いている。夜更けというにはまだ早い時間にも拘らず、
そこには人の気配というものはなかった。
だが、彼には感じる。空気の中に、微かな血臭と妖気が漂っているのを。
彼には慣れ親しんだ臭い。ナイトストーカーの気配。
そして彼の目の前には学び舎が姿を現す。
黒々と聳えるその中からにじみ出る妖気。彼はニヤリと笑った。
今度の敵は―――牙を持っているか?俺の魂を揺さぶるに足る、牙を―――
>69
ガロンvs比良坂初音
満月の夜はすべからく魔族の血を騒がせる
それは、この比良坂初音とて例外ではない
心の中で平穏な日々を望もうとも
あの月の光に照らされると、心が沸き立ち胸の鼓動が激しくなる。
そんな心の昂ぶりを感じながら
初音は学校の屋上で1人、月見酒の最中だった。
金網にもたれかかり、くっと枡酒を一気に煽ろうとした時
結界に近づく敵意を持った気配を感じる・・・・・満月に魅入られた輩がさまよい出てきたらしい。
いずれにせよ、『巣』に近づく敵には容赦はしない。
初音は爛々と真紅の瞳を光らせながら、迎撃の準備を整え始めていた。
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
>70
校門に手をかけようとした彼の指先に、
痺れるような痛みが走る。
「結界、か」
彼は結界を解く術など知しはしない。
ならば、答えは唯一つだった。
「通らせてもらうぞ、腕づくでな」
彼は弓なりに右腕を引くと―――力を一気に一点に集中する。
そして放たれた一条の矢は、校門の脇に作られた小さな鉄扉を叩き壊す。
そして、招かれざる客人は、校庭へとその足を踏み入れた。
そして彼の目は捕らえた。屋上でうごめく妖気を。
「どうやら、歓迎してくれるようだな・・・・・・そう来なくては」
前スレ>374 、レス番まとめ
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1019982784/496 vs アドルフ・ヒトラー
【脱出する者の時間】
虚構と現実が織りなす空白。そんな中に一瞬、俺たちは放り込まれた。
すべてが逆巻きに動き、霊波の槍は虚空に漂い、鈴鹿に蹴り飛ばされた男は再び刀を掴む。
時間遡航――――!?
そうか、美神さんの言っていた能力か。美神さんを子供に変えて、力を奪った能力。
それが今、霊波の槍を引き戻すためだけにふるわれている。
巻き戻される光景に、呪縛の中で指先一つ動かせないことに、俺は苦々しく奥歯を鳴らした。
「クソ、何が支配者だ!」
時流の波に逆らうように毒づいてみたが、
「その通りじゃねーか、チクショー!」
否定できる材料がなかった。
どうすりゃいい、どうすりゃ倒せる?
完全に時を操るなんて、隊長みたいな真似をする相手にどうやって戦ったら――――?
考えがまとまらないまま、遡航が終わりを告げる。時は鈴鹿が男を蹴り飛ばす直前まで戻った。
鈴鹿の足が男を捉えて、霊波槍が男を撃ち抜いて終わり、がさっきの展開。
――――同じコトは、繰り返さなかった。
鈴鹿の体が男をすり抜けて、槍の前へ躍り出ていた。
光槍が輝きが破滅を待ち侘びるように、増す。
人の数十倍の霊圧に撃ち抜かれ、爆ぜる光の奔流に飲まれ、崩れ落ちる鈴鹿・・・
そんなビジョンが脳裏を過ぎり・・・俺は必至に、それを打ち消す法を探った。
――――文珠を起爆させて、槍を消すか?
――――いや、もう手遅れ。爆風に鈴鹿も巻き込まれる。
――――くそっ、起動した文珠も操れれば、何とかなるのに!
操る!?
音もなく右手が霊波に包まれる。栄光の手、ハンズ・オブ・グローリーの発現だ。
意識が走るのと同じ速度、イヤそれ以上の速さで霊体の手が伸びる。
「間に合えっ!」
言葉を発するより先、槍の穂先が鈴鹿に触れる寸前、俺の手は中心核の文珠を握り締めていた。
勢いを殺さず槍を取り回すと宙で反転させ、栄光の手ごと男に向ける。
槍の放つ霊波はより鋭さを増し、栄光の手すらも飲み込んで一筋の光条となった。
――――光線の如き一撃が、男の胸元目掛けて繰り出される。
アドルフ・ヒトラー vs 横島忠夫 & 鈴鹿御前
【脱出する者の時間】
前スレ>374、今スレ>72
───仕留めた!
轟音が周囲を圧倒し青年の姿が爆散───しようとした、その瞬間。
時が、巻き戻った。私が男を蹴り剥がそうとする、一瞬前まで。
「時空を支配する存在なのだよ、私は」
言葉と共に、青年の後ろ───つまり、向かいくる霊波の槍の目の前───に突き出された。
先程、喉への突きをねじ曲げた能力か、などと考えている時間はなかった。
姿勢を崩してしまった私に、目前に迫った金色の槍を避ける術は、ない。
これまでか───そう思った、その時。
横島くんの右手から伸びた霊波の手が、槍を掴み止めていた。
「間に合えっ!」
その叫びが聞こえてきたのは、宙で反転した槍が光を増し、再び男に向かうのと同時。
それと同時に、踏み止まった私も、床を蹴って反転している。
地を這うような姿勢から、遠心力を乗せて放たれた横薙ぎの一刀が、男の胴を両断せんと迫る!
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
>71
「あら?・・・・なかなかやるではないの」
結界は思ったより簡単に男の手によって破られてしまった
どうやら、かなりの手練れのようだ。
校庭を歩く男の歩みはまるで誘っているかのごとくゆっくりとしている
それが軽い興奮状態の初音をいらだたせる。
「舐めた真似を・・・・・」
なら、望み通り行ってやろうではないか。
初音は男の行く手をさえぎるように、屋上からふわりと校庭へと降り立った。
八千草飛鳥(M)vsシヴァ(M)
>前スレ355
男の突き出した古代インドの短剣カタールが飛鳥に突き刺さる――と見えた
瞬間、きいんという澄んだ音ともにカタールは弾き返された。
いつのまにか飛鳥の手には、刃渡り三十センチに及ぶ肉切り包丁が握られて
いたのである。
わずか十八年の生涯のうちに五十七人を切り刻んだ彼が、人体解体において最も
愛用する得物であった。
「ぼくの中の“奴”が言っていますよ、あなたのお肉はとっても美味しそうだ
ってね」
不気味な台詞とともに、肉切り包丁がシヴァの喉をえぐらんとつき入れられた。
アドルフ・ヒトラー vs 横島忠夫 & 鈴鹿御前
【脱出する者の時間】
>72>73
霊波の槍が少女に突き立つ直前。
少年の手から伸びた霊波が槍を掴んだ。
そして、一直線にアドルフに向かう霊波の槍。
それに呼応するように走る、少女の剣先。
必殺のコンビネーション。
だが。
知覚さえ、出来ていれば。
時間と空間を支配する暴君たるアドルフ・ヒトラーにとって、必殺などはあり得ない。
霊波の槍が身体に接触する瞬間、槍とその周囲の空間のみを異空間に跳ばす。
いかな破壊力を持った霊気の爆圧であろうとも、空間を越えてその威力を及ぼすことは不可能。
少女の剣先は右腕をぶち当て、無理矢理にその勢いを殺す。
結果、剣は右腕を半ばまで切り裂いて止まった。
「全く。二人とも元気のいいことだ」
悠然と微笑みながら、右腕をぶんと振る。
ただそれだけの動作だが、右腕を切り裂いたままの刀ごと少女を吹き飛ばすには十分。
少女は窓の外に投げ出される
そして遠心力を以て、左腕で少年の襟首を掴み、少女の後を追わせるように窓の外に向かって、投げる。
「さて、と」
だが、この程度では終わるまい。
まだまだ、楽しめるだろう。
ゆっくりと窓に向かって、歩く。
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
>74
屋上からふわりと降りてきた少女。
いや、少女と呼ぶには、その姿は大人びすぎていた。
長い黒髪に黒き制服を身にまとったその姿は、
妖艶な美に包まれていた。
「いい、夜だな」
彼は口を開く。その目には煮え滾るような闘気がこみ上げていた。
こうやって対峙しただけで判る、相手がかなり手強い相手であることを。
「特に―――貴様のような魔物にはな」
彼はそう言い放つと上着を脱ぎ捨てた。
そして月へ咆哮する。その姿は人からケモノへと変わっていった。
そして彼女の目の前に現れたのは一匹の殲鬼だった。
「貴様に恨みは無いが―――死んでもらう」
彼は独特の低い体勢から一気に間合いを詰めると、
女の胴めがけ、その腕の鉤爪を振るった。
『吸血姫に祝福を』
〜イベント3・『軋むイシ』〜
>67
「ルージュ!」
部屋を出る彼女を追い、アズマリアが駆け出す。
部屋に一人取り残されるは・・・・僕。
「・・・・・クソ!」
僕も同じように部屋を出る。
行く先は・・・・・決まってる。
ロゼットのところへ。
===========================
瞼を開く。
・・・・・まぶし・・・・・・。
「あ・・・・・・・。」
私は、頭を振りながらベットから起き上がる。
つつ・・・・何があったんだっけ・・・・・・。
確か・・・・悪魔に頭を殴られて・・・・・そこから先の記憶が・・・・ナイ。
「!!
ルージュ!!」
私は、慌ててベットから飛び起きる。
そのままの格好で部屋から飛び出す。
「ロゼット?!」
途中で、クロノとすれ違ったが・・・・私は無視してルージュを探す。
どこ、どこ、どこ?!
いるなら返事しなさいよ!!
「いた!」
私の目の前をすたすたと歩くルージュの姿。
よか・・・・った。
私は、思わず彼女の元に駆け出していた。
VS八千草飛鳥
>75
後ろに退き、距離を取ってから改めて両手のカタールを握り直した
カタールの握り手を強く握る事で、二枚の横刃が飛び出し三叉となる
「包丁か。きさまは肉屋に並んでいる方がお似合いだと思ったのだがな。」
彼は全身に無数にある傷のうち、複数が疼くのを感じた。
どうやらこの小僧っ子は只者でないらしい。
相手の出方を伺うべく「待ち」の姿勢を取り、腰を低く落とした。
>77
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
「人狼とは珍しいじゃないの」
どうやら満月の夜にふさわしい大物が来てくれたようだ・・・面白い!!
くくくっ・・・と喉を鳴らす初音へと間髪入れず狼の鉤爪が迫る
だがすでに初音はそこにはいない、斬り裂いたのは空間だけだ
空中から少女の声が聞こえる・・・・・
「死ぬのは貴方よ!!狼さん」
宙に舞った初音の手から鋼鉄すら両断する糸がガロンの背中へと翻った。
八千草飛鳥(M)vsシヴァ(M)
>79
突きがかわされ、シヴァのカタールが三叉となるのにもかまわず、飛鳥は
トレンチコートを翻してシヴァに突撃した。
ひゆっと左腕が振られ、コートの袖の中から青光りするもう一本の
出刃包丁が飛び出す。
必殺の凶器を両手に持った飛鳥は、血の海に沈むシヴァを想像し、朱唇を
V字形に吊り上げた悪魔の笑みを浮かべた。
『吸血姫に祝福を』
〜イベント3・『軋むイシ』〜
>78
背後から、パタパタという足音。
矢張り、追ってきたわね。
けど、敢えて、無視して歩く。
……足音が2つ?
「―――?」
振り返るとアズマリアだけでなく、ロゼットまで私を追って来ていた。
「ああ、ごめんなさい。お世話になったわね。でも、私、良く、思われていないみたいだし、出て行く事にするわ」
はっきりとそう2人に告げた。
「でも、きっと、近いうちに会えるはずよ」
その時は殺すけどね……
「それじゃね」
私はそう言って、再び踵を返して、修道院の出口へと向かった。
VS八千草飛鳥
>81
小僧の攻撃が意外に芸の無い物に拍子抜けしながらも、どこか戦慄を隠せずにいた
低く構えた姿勢を利用して、そのまま飛鳥の膝より低く突進し、
カエル跳びのように体を起こして、左のカタールで頭めがけて下から突き上げた
やはりこれで仕留められはしなかったが、首から顎にかけて避けきれていない
切れ目が走っている
やはり単なる小僧っ子? いや、そんな筈はない
そんな疑念をよそに、飛鳥に微妙な変化が訪れたようだった
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
>80
勢いあまって行き過ぎようとする体を無理やり押さえつけ、
彼は振り向く。宙を舞う少女の手から、一条の筋が見えた。
体を捻るようにして避ける彼の脇に、一本の糸が地面に突き刺さる。
鋼糸。人狼の彼といえど、これを食らわばただでは済むまい。
「ほぅ、蜘蛛神の眷属か」
彼は目を細める。願っても無い相手だ。
彼女こそ、彼の魂を呼んだのやもしれぬ・・・・・・
「相手に不足なし―――が、俺は一本の鋼糸で対処できるほど、遅くは無い!」
着地する瞬間を狙い、疾風のような廻し蹴りを見舞う。
いくら身軽とはいえ、着地を襲われては逃げられまい。
モーラVSダイ・アモン 導入
――某日、とある燦月製薬関連施設襲撃中にて。
モーラ、フリッツ、惣太――ヴェドゴニアの三人は、いつも通りに燦月製薬の系列と思われる施設を襲撃していた。
フリッツがデータの抜き出し、惣太がキメラヴァンプを引き受ける、そして、モーラは攪乱。
まさにいつも通りの役割分担。
そして、それは今まで通り上手く行くはずだった……いつも通りならば。
(また、随分と派手なお出迎えね)
目の前にいる、両手に余る数の兵隊を見てモーラは心の中で嘆息した。
もっとも、嘆息しただけで悲観も絶望もありはしなかったが。
いつものことだ、数を頼みに来たところでどうにかなるワケでもない。
モーラが軽く一歩を踏み出した。
タンッと床を蹴り、その手の中にある質量――スレッジハンマーが何かの冗談であるかのように距離を詰める。
思い出したかのように引き金を引き絞る兵隊達。
十を超える銃口から吐き出される銃弾と銃声と硝煙。
だが、そのことごとくがモーラを捉えられない。
人形のような少女は、それこそまるで人形が踊るかのように飛び回り、跳ね回り、くるくる回って弾丸をかいくぐる。
ただ見ているだけならば、あるいはそれは幻想的な光景と映ったかもしれない。
しかしそのダンスは、後に肉や骨が砕ける音と苦悶の呻きが尾を引いていた。
ハンマーが、その冗談でも何でもない殺人的な質量を以て兵隊達を叩き潰していく。
少女が兵隊達の間を踊りながら死をまき散らしていく様は、ある種戯画的ですらあった。
数分後、辺りに立っている者はモーラ一人になっていた。
辺りに倒れている者達は、もはや動く気力もなくして倒れ伏し、ただ呻き声を上げている。
銃や、あるいは刃物ならば此処まで苦しまずに逝けたかもしれない。
だが、鈍器――ハンマーに叩き潰されたダメージというモノは容易には死に至らない。
致命傷であったとしても、その苦痛は長く続くのだ。
そんな地獄絵図を演出したとは思えない足取りで、そちらを一顧だにせずにモーラは走り出した。
(もうそろそろ、あらかた片付いてるはず)
時間からして、フリッツはデータの収集を終わらせているはずだし、惣太も敵を殲滅しているはずだ。
早く、顎の拘束を解いてやる必要があるだろう。
そう、これでいつも通りのはずだった――――。
>85 vsモーラ
激音。
次瞬、空が崩れた。
正確に表現すると、天井がぶち砕かれ、色々なものが降り注いだ。
その色々なものの中に、巨大な人影が存在した。
崩れ落ちる残骸と共に、彼は地上へと舞い降りる。
その様はまるで薔薇。
野戦地に咲く、一輪の薔薇だ。
そして彼は歌う。それは夜の始まり。
人の時間の――――終わり。
「フッハハハハハハハハハハハ!! 我が莫逆の友であり、終生の好敵手でありながら
親の仇でもある癖に命の恩人なヴォルフガンク・ナハツェーラー様ぁ!! あっそびましょー!!」
真紅のマントを翻し、彼は闇から現れた。
魔術を極めしマスターオブヴァンパイア。ダイ・アモン此処に推参。
「――――って、あれ? ナハツェーラー様が……少女になってるぅッ!?」
これは複雑奇怪。
怨敵ナハツェーラーの『匂い』を追って、此処まで来たのだが、目の前にいるのは幼き少女。
だが、間違いない。これは『ナハツェーラー』の匂いだ。
となると、導き出される答えは一つ。
ナハツェーラーは幼女になった。
「馬鹿な……そんな――――馬鹿なぁぁぁぁぁッッッ!!」
哀しみの絶叫は、夜の空へと響き渡る。
吸血紳士がぶち破った天井から、月が静かに見守っていた……。
>84
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
着地の瞬間に廻し蹴りを受け 初音は校庭のフェンスへと吹き飛ばされる
このまま叩きつけられれば、只では済まない・・・
初音はとっさに自分の背中に繭を作り、それを思いきり膨らませクッションにする。
背中に衝撃・・しかし繭のおかげでダメージはそれほどでもない
(こういうのをテレビで何と言っていたかしら・・・・えあばっぐ?)
初音はさらに繭の中に空気を入れて行き、繭を破裂させる
その勢いで一気に狼まで接近すると、伸ばした右腕の爪で斬りかかった。
八千草飛鳥(M)vsシヴァ(M)
>83
禍禍しい刃がシヴァの肉を切り裂くより早く、シヴァのカタールが飛鳥の
首から顎を浅く切り裂いた。
特に太い血管を傷つけられたわけでもないかすり傷である、なのに――
「あ、ああああ……」
美貌の殺人鬼は、まるで瀕死の重傷を負ったかのような哀れっぽい声をあげた。
それに、妙な音が重なる――啜り泣きだ。
「許さない、許さないよ、必ずお返ししてやる」
しかしその宣言は、復讐を決意したものというより負け犬の遠吠えといった
感じだ。
多くのサディストの例に漏れず、飛鳥もまた自分に与えられる苦痛は小指に
刺が刺さっただけでも泣き叫ぶ性質なのであった。
飛鳥は庖丁を振り回し、再度シヴァに向かっていった。
しかし、それはただの狂人が刃物を振り回しているのと変わらぬ、ぶざまな攻撃
であった。
VS八千草飛鳥
>88
「悪いが、子供のお遊びに付き合うヒマはない。」
二本の包丁を意に介さずに、カタールで胸を抉らんと突き出した
>73 >76 vs アドルフ・ヒトラー
【脱出する者の時間】
ドアがドンドンと、荒く叩かれる。ひとしきり音が終わると、続いて金属の擦れる鍵を外す音。
さらには、遠くにサイレンの音まで聞こえた。窓の外が瞬間、赤色灯に照らされ血の色に染まる。
さっきの従業員が、ついに警察まで手を伸ばしたらしい。
やばいな、この状況をどうやって説明しようか・・・?
ふと、俺の脳裏にそんな考えが過ぎった。
霊波の槍は男を貫こうとしていた。
鈴鹿の刀は男を断とうとしていた。
それは必殺だった。
槍が突き刺さり炸裂すれば、無傷では済まないだろう。
そこに鈴鹿の大通連が入り込めば、必殺は当然。
――――――だが。
槍が栄光の手ごと抉られ、消える。
霊体を斬られる感触が腕を伝わり神経を駆け、痛みと違和感が脳に響く。
返す手で男は腕を斬る大通連を阻み、不気味な笑みを浮かべた。
鈴鹿が大通連ごど掴まれ、宙を舞う・・・続いて、俺も空に放り出される。
酷く簡単に、俺と鈴鹿と美神さんは空の住人となった。
「――――って、死ぬ、死んでしまうっ!」
慌てて、文珠を取り出し間を置かずに文字を刻む。
「揚」――――揚がろうとする力が俺の体を上へ引っ張る。
微かな力だったが、落下を踏み止まらせるには十分だった。
暗く冷たい夜空の元、しんと静まりかえる中、俺は美神さんを抱いたまま空を漂う。
同じように放り出された鈴鹿の腰に手を回し、その体を支えた。
――――右手で美神さんを抱え、左手で鈴鹿を抱く。
――――二人の少女を守るためにも、俺はやる! やったる!
念を凝らす。
部屋の中に転がっている、一つの文珠を呼び起こすために。
「吹き飛べっ! 吹っ飛べ、跡形もなく消えろっ!」
呪詛が効いたのかどうか。
ただ一瞬の後、ホテルの一室から炎の柱が生まれて爆ぜた。
>27
紅丸VSリロイ・シュヴァルツァー
酸素不足で薄れゆく意識の中、咄嗟の判断で紅丸は
バイクを手放し、その制御を解放する。
解放されたバイクはそのままリロイの側面へと転倒した。
だがリロイは些かも右腕に込める力を緩めない。
紅丸の身体が落下し、足を地面に付ける。
その反動を利用し、電光石火の素早さで紅丸は
リロイの右腕に飛びつき、関節を固めた。
肘関節が歪む激痛に、さしものリロイも、その腕にかける力を緩める。
急激に肺に送り込まれた空気に咳き込みながら、紅丸は
じわじわとリロイの右腕関節を締め上げていく。
だがむざむざ自分の利き腕が破壊されるのを見ているほど、
リロイも甘くは無い。
自分の右腕への多少の被害は構わずに、
関節を締め上げている紅丸の脚目がけて、残った左腕で
拳を打ちつけた。
>86 モーラVSダイ・アモン
「なッ……何!?」
突如として崩れてきた天井、それを何とか跳躍することでかわし、床をこすりながら膝から着地する。
もうもうと粉塵が立ちこめる瓦礫の上に、それはいた。
怪物が、筋骨隆々で顔にはペイントという、思わずプロレスラーを連想してしまう様な化物が。
というか、言動が理解不能。
断片的な単語――ナハツェーラーとかは聞き取れるのだが、その内容が支離滅裂を通り越しているとしか思えない。
いや、あるいは本人と当事者には意味が通るのかもしれないが……。
しばし、その超越した現状に呆然とするモーラ。
だが、次の瞬間には持ち前のハンターの精神力で持ち直していた。
目の前の男を、排除するべき敵――吸血鬼と認識してハンマーの持つ手に力を込める。
「何だか知らないけど、とにかく邪魔よッ!」
轟、と風を切り、否、風を叩き潰しながらモーラと、ほぼ同じ背丈のハンマーが宙を飛ぶ。
その殺人的な重量を横薙ぎに振るう。
脇腹辺りを狙った一撃。
当たれば、ただで済むはずがない、のだが……。
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
>87
彼は笑った。そうだ、それでなくては面白くない。
一気に眼前に迫った少女の鉤爪を紙一重の差でよける。
鉤爪に切られた毛が宙に舞う。
だが、多少の不満は残った。彼女は、まだ本気ではない。
ならば、引き釣りだそう。躊躇う必要は無い。
相手は、人ではないのだから。
「それが命を賭した戦いか? 侮辱もほどほどにしろ!!」
怒声と共に、人狼は宙に舞う。
その蹴り足はまさに気を纏った鉈と化して少女に迫る。
アーカードvsルシエド 導入
『深淵なる闇に広がる欲望の渦』
満月の夜…
ヘルシング機関の一角、不死の王アーカードが自室に向かう途中…
いつの間にかアーカードの周囲の空間が変化していることに気付く…
その空間は薄暗く大きなドームの様な別次元が広がっている…
薄暗い闇の空間の一部が黒き炎の様に揺らぎ出す
『我、欲望を司る者なり…おまえの力試したくなった…』
『我と闘え…そして力を示せ…』
声が聞こえると闇の一部から巨大な黒き狼が姿を現す
『欲望を抑える必要は無い…思う存分楽しむが良い…』
と、言うと黒き魔狼は戦闘の態勢に入る…
『吸血姫に祝福を』
〜イベント3・『軋むイシ』〜
>78
私は背後からルージュの体を抱きしめる。
「・・・・はは・・・・幽霊とかじゃ、ないよね。」
また、私の目に涙が浮かぶ。
まったく・・・私はこんなに涙もろかったっけ?
「どうして・・・どうしていっちゃうんですか?」
追いついたアズマリアが問い詰める。
行くって・・・・どこへ?!
「どういうことよ?アズマリア?!」
私は、そこでアズマリアから事のすべてを聞き出した。
・・・・・・クロノ・・・・・ッ!!
「むが〜〜!!あいつめ!!
まだ懲りてなかったのかい!!」
私は憤慨しながら頭を掻く。
「だいたい、こんな子が悪魔なわけないじゃない!
大体よ・・・・・!」
大きく息を吸う。
『 だ っ た ら ど う し て 私 を 助 け て く れ た の よ ! ! 」
そう、そこが疑問だ。
「悪魔の仲間だったら、どうしてあの時私を見殺しにしなかったのよ!
私を助けたって何の得にならないのに・・・・・・。」
そして、ふいとルージュに向き直る。
「ついてきなさい!!クロノに謝らせてやるから!!」
そして、彼女の手をつかんでぐいぐいと引っ張っていく!
>94 アーカードVSルシエド
その日は、特に何もなかった。
若僧の吸血鬼が暴れたワケでもなし、ミレニアムの動向が掴めたワケでもなし。
ましてや、婦警までおとなしいとあっては、何かがあるはずもない。
だが、そんなただ退屈に過ぎていくはずだった一日が、突如として崩壊していく。
自室へ向かって歩いていたはずのアーカードは、気が付けば見知らぬ空間に立っていた。
明らかに非日常を高らかに主張するその異空間。
極めつけは、そこに現れた黒き狼だ。
狗は言った、力を示せ、欲望を抑える必要はないと。
その言葉に応えるかのように喜色満面、アーカードは走り出した。
「いいだろうッ、存分にやらせてもらう!」
走る両手には、既にその牙――454カスール改造銃とジャッカルが握られている。
そして、走るついでとばかりに引き金を引く――牙を剥く。
無論、その程度でどうにかなるとは思っていない。
走るその姿は、むしろ加速度を増して輪郭がぼやけていった。
速度を上げ、限りなく赤と黒の混合物としか見えなくなったモノが狼へと肉迫する。
>93
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
初撃こそ避けられたが、そのまま間髪入れずに初音は追撃の爪を振るうつもりだった
だが、相手の様子がおかしい・・1歩退くべきか・・・
結果的にその迷いが、初音の判断を鈍らせた
咆哮と共に、狼が攻撃を繰り出す。
初音は慌てて両腕を交差してガードしようとするが、間に合わない
炎を纏った足刀が初音の喉に突き刺さり
彼女の身体はそのまま空中へ蹴り上げられた。
>92 vsモーラ
完全に不意打ちだった。
脇腹を突き抜ける衝撃。
気付いたときには、その巨躯を踊らせながらコンクリの壁に背中から突っ込み、崩壊させていた。
「貴様……この私に攻撃を加えるとは――――ッ!!」
粉塵吹き荒れる激突痕で、瓦礫に受け止められた体勢のまま彼は呻く。
もう、ナハツェーラーのことなど頭に無い。
新たなる遊び道具を見つけたのだから。
牙を剥いて、相手を威嚇する。
どこの馬の骨(ナハでは無いと思考が断定)かは知らないが、彼に一撃を加えるのは愚かの極み。
ヴァルハラで己の愚を悔やむが良い。
我は吸血紳士ダイ・アモン。
血の制約に一切縛られない吸血鬼――――真祖ダイ・アモン!!
「――――この名を知らないとは言わせませんよ!!」
立ち上がり、腰を沈め、どっしりと構える。
「さあ……私にこれ以上逆らうというのであれば、正面から掛かってきなさい!!
もし、己の行動がどんなに愚かか気付いたのであれば……その白い首筋を私の前に突き出すのです!!」
闘うか、
否か、
それが二つの道。
>96 アーカードVSルシエド
アーカードが銃を構え、超スピードで向かってくる
黒き魔狼はソレに答えるかの様に想像出来ない
超スピードで突進する…
横切る瞬間には既に魔狼の爪はアーカードの肩を捉えていた
『まだだ…まだ足りぬ…』
そう言うと魔狼は向き直り、今度は宙を走るように突進する
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
>97
足に響く感触。そして宙に舞う少女。
だが、それで終わらせるつもりは無い。
疾風のような連続の打撃。それが彼の真骨頂。
大地に足をつけるや、彼は一個の弾丸と化す。
大気を引き裂き、少女に向けて気の砲弾が突き進んでいった。
オレとリロイ
>91
相手も崩れた体勢で殴っているのでそれほど効果はないが、
どうやってこの状況を打開するかの思案の邪魔にはなっていた
自分の体重を利用し、リロイの右腕を下へと捻ったが
相手も折られんと前のめりになる
それが狙いだ
お互いに地面についた瞬間に、街頭へ続く道へと一目散に駆け出した
>100
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
喉に足刀を受け、さらに体当たりを受け
初音の口から緑色の血泡が溢れる・・・・・
だが・・こちらもこのまま終わるつもりは無い
初音は激痛をこらえながら空中で狼の身体を、がっちりと抱えこむと
そのまま、頭から校庭へと叩きつけた。
>99 アーカードVSルシエド
食い破られた肩を僅かに一瞥し、そして次には無視して狼へと向き直る。
血を虚空にバラ撒きながら、宙を飛ぶ狼の口腔目掛けて手刀を突き出す。
ゾブリ、と手刀が口の中に潜り込む。
その中で、やたらめったらに銃の引き金を引きまくる。
狼の体内で、銃声が響き渡った。
だが、まだ止まらない、止まるワケがない。
一際大きくニタリ、と笑い……。
「拘束制御術式(クロムウェル)解放」
全身から無数の腕が生えてくる。
そのそれぞれに目があり、その替わりなのかディテールが欠けている。
そんな腕が両手で余るほど生え……影絵の狼へと迫った。
ザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンザンッ!
その影絵は、酷く現実感を欠いた殺戮を映し出していた。
『吸血姫に祝福を』
〜イベント3・『軋むイシ』〜
>78
『 だ っ た ら ど う し て 私 を 助 け て く れ た の よ ! ! 』
――そんなのは決まっている
『――どうしてあの時私を見殺しにしなかったのよ! 私を助けたって何の得にならないのに・……!』
――私自身の手であなたを殺したいから
――他の誰にも殺させない
『ついてきなさい!!クロノに謝らせてやるから!!』
・
・
・
廊下でロゼットを追いかけてきたであろうとクロノと私を引っ張るロゼット、アズマリアが鉢合わせする。
そして、3人の誰かが口を開くより早く、私は行動を開始した。
私の手を握っていたロゼットを引きずり寄せ、首を掴んでそのまま、クロノへと勢いよく放り投げる。
クロノはロゼットを受け止めるも勢いを殺しきれず、壁にしたたかに背中を打つ。
それを横で呆然と見つめるアズマリア。
「あなたたちはひとつ、大きな勘違いをしているわ。……いいわ、どうも、この姿じゃ分からない様ね」
私は、そのまま身体を成長させた。
>104
「どう、この姿なら見覚えがあるでしょう? 一ヶ月前に身体を吹き飛ばされてから、力を取り戻すのに、
紆余曲折あって、ここまで時間を喰ったわ」
私は微笑を浮かべながら、3人に話し掛ける。
「あなたたちを殺さなかったのは端的に力が足りなかったから……」
私はそこで右の掌を勢い良く壁を打ちつける。
それだけで壁は衝撃で粉々に吹き飛んだ。
「でも、今は別。力を取り戻した今なら、あなたたちを嬲り殺しにするのは訳ないわ……」
話を淡々と続ける。
何やら、騒ぎを聞きつけた他のシスターや神父たちが私と3人を遠巻きに取り囲み始めた。
丁度いい。
復讐劇の幕開けに相応しい。
「ああ、昨日、殺さなかったのも、まだ舞台が整っていなかったから……。でも、ほら、期せずして、
丁度いい舞台が出来上がったわ。さあ、覚悟はいいかしら?」
アドルフ・ヒトラー vs 横島忠夫 & 鈴鹿御前
【脱出する者の時間】
>76 >90
霊波の槍と、大通連。
この同時攻撃に耐えられるモノなどあり得ない。
それは、まさに必殺の連携───の、ハズだった。
しかし。
目の前の金髪の青年は、それをすら、あっさり破ってみせた。
彼を貫こうとする霊波の槍は、その目前でかき消えた。空間の扉、とかいうやつか。
私の斬撃に対しては、その右腕を以て止める。
半ばまで食い込んだ所で、大通連は動かなくなった。
「全く。二人とも元気のいいことだ」
その言葉と共に、私の体は窓から投げ出されていた。
青年が腕を振っただけで、吹き飛ばされたのだ。
続いて、横島くんが女の子と共に放り出されてくる。
この高さ───普段ならばともかく、傷を負った今の状態で、耐えられるかどうか。
それより、他の二人がこの高さから落ちれば───結果は、火を見るよりも明らかだ。
が、その心配は無用だったようだ。
横島くんが文殊を取り出すと、その落下速度は目に見えて遅くなった。
そのまま伸ばされた横島くんの腕に、抱えられる。
見れば、あの青年はゆっくりとした足取りで、窓の方へと歩いてくる。
やはり、追走してくる気か。
宙に舞うガラス片を掴み、投げつけた。
ほんの一瞬でも時間を稼げればと思ってのコトだったが、それが思わぬ効果を生むことになった。
青年がガラス片に気を取られた次の瞬間───部屋が爆発したのだ。
横島くんが、部屋に残してきた文殊の効果だ。
窓だった場所から火の柱が吹き出し、様々な家具だったモノの欠片が炎を纏って飛び散る。
その光景を見上げながら、私たちは着地した。
横島くんに支えられた脇腹の傷がひどく痛むが、それを気にしている暇は、あるまい。
秋月由美彦vsチェルシー・ローレック
夜の街。
街灯の灯りが仄かに照らし出すだけの、暗い夜。
街灯の下に一人の少年がいた。
光沢のある濃いグレイの、正面にボタンのないタイプの詰め襟。
襟章はデザイン化された星と連峰。星の部分には珍しいことにカットされたガラスが使れている。
星嶺学園高校の制服だ。
だが、その特徴ある制服も彼にはよく似合っていた。
茶色がかった長めの髪の下の顔はあくまで白く、しかしけして病的ではなく、艶やかで張りのある白さ。
そして細い眉に切れ長の目。通った鼻筋に整った唇。中性的な印象の美少年だ。
その彼のもとに、夜だというのにもかかわらず、銀色の蝶が舞ってくる。
蝶は、彼の指先に止まって・・・消えた。
「矢神遼・・・君も、すぐにわかってくれるよ、きっと、ね」
振り返った彼の目の前に一人の少女。
長い金髪に少々きつめの顔立ち。
黙っていれば美少女、といった感じか。
今は剣呑な表情を浮かべながら、彼を見つめているが。
「何だい、君は?」
あくまで涼やかに問いかける彼。
しかし、いやがおうにもわかる。
――――彼女は、敵だ。
108 :
以上、自作自演でした。:02/05/05 02:12
>42さんはかみさまだよー
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
>102
勝った―――そう思った。
だが次の瞬間、彼の体は少女に押さえつけられていた。
景色が逆さまになる。そして、暗転。
脳天から地面に突き刺されては、さしもの人狼といえど、どうしようもない。
朦朧としながらもどうにか立ち上がったのは、戦士の性か。
だが、その身は隙だらけであった。
>42さんおめでとうございまーす♪
>103 アーカードVSルシエド
魔狼が無惨に切り裂かれる姿が映しだされている
『ククク…良いぞ…その欲望だ…』
アーカードの腕を銃と共に食いちぎり
影の塊が空間へ散無する
瞬間、アーカードに広がる闇を切り裂き魔狼が再び姿を現し
頭上の何もない闇の空間から無数の剣が現れる
『喰らえ…我が魔剣の味を…』
アーカードの頭上から次々と魔剣が飛来する
>98 モーラVSダイ・アモン
ダイ・アモン?
しかし、そんな名前をモーラは知らない。
だから、はっきりとそう言ってやった。
「知らないわよッ、あなたの事なんて!」
そう叫び、タンッと床を蹴って天井近くまで跳躍する。
戦うかどうかなど、問われる必要もない。
Ashes to ashes , dust to dust.
今までと何も変わりはしない。
吸血鬼は塵に還すのがハンターの勤め。
相手が誰であろうと関係はない。
上空から、大上段に振りかぶった鉄槌を叩き落とす。
>107 秋月由美彦vsチェルシー・ローレック
私がルリ様を連れて地上に出て数日。
今は公司から身を隠すため、浅葱ルミナの家に居候させてもらっている。
だいぶここでの生活にも慣れて来てきて、こうして夜の散歩も問題なく出来るようになるまで
地理を覚えた。
しかし、いつ公司の連中が襲って来てもおかしくない状況のなかこうして歩いていられるのも
あの2人のおかげだろう。口こそ出しては言えないが2人にはかなり感謝している。
本当に地上に出てきて良かった・・・本当にそう思える。
しばらく夜道を歩いていると一人の少年に出くわした。
こんな夜中だと言うのに学校の制服を着ている。
どう見てもこの場に似つかわしくない人物だ。
迷子にしては迷っている様子も無い。それに家出にしても夜中にこんな道端に?
どう考えてもおかしい。
少年はここにいるのは不自然な人間だ。
そう私は判断した。
そうして―――少年に声をかけようかと見つめて時だった
『何だい、君は?』
少年から切り出された。
まさか彼から話し掛けて来るなんてね。
そんな事を思いながらも私は少年に言葉を返した。
「私はただの通行人よ?何か問題ある?」
そして、私はポケットの中で握り拳を作り、相手に気付かれない様に戦闘態勢に入った。
なんで戦闘態勢に入ったか?
簡単よ。
だって彼、あきらかに危ないじゃない
>112 vsモーラ
「私を知らない? この私を!? あなた――――パンピーですか!?」
驚きの声。だが、我は吸血鬼。
例え堅気の者だろうと、容赦はしない。
仁義など、吸血鬼には……無い。
視界を埋め尽くすように上空から振り下ろされた鉄槌は、
彼の頭を叩きつぶす前に、巨木のような豪椀に阻まれる。
防御。
だが、己の頭を庇うかのように鉄槌を受け止めた腕は、冗談のようにひしゃげた。
が、彼の右手がその機能を停止した時には既に、
左手が空中に位置する少女の脇腹を抉っていた。
まさに電光石火。
少女の鉄槌に負けずとも劣らない拳が、少女を貫いた。
>111 アーカードVSルシエド
降り注ぐ剣が、アーカードの全身を床に縫いつける。
全身を余すことなく刺し貫き、その度に血しぶきが舞い、地面を朱く濡らす。
腕が断ち切られ、体は地面に縫いつけられ……。
剣の一本が、首へと食い込んだ。
ゴロリと音を立てて、虚ろな目を虚空へと向けるアーカードの首が……。
「ははッ……はハハは、はははははははっ、はははははHAHAHAHAははははははははHAHAHAHAHAハハはははハハ!」
笑う、嗤う、ワラウ。
同時に、地面に縫い止められていた体が影絵と化す。
ズルリと、刺さっていた剣をすり抜ける。
そこには、羽の生えた狗が無数に鎮座していた。
その羽を広げ、狼へと牙を剥きながら突進していく。
『吸血姫に祝福を』
〜イベント3・『軋むイシ』〜
>104>105
「ち!!やっぱり・・・・そういうことか!!」
クロノが身構える。
そういう・・・・こと。そうだったのか・・・・・。
「あはは・・・・。なるほどね〜・・・・・。」
何故か、私は笑っていた。
苦笑、という表現が正しいと思うのだが。
「ロゼット、気を付け「いいからちょっと下がって」から・・・・・?」
クロノの言葉を打ち消すように、私は口を開く。
「っは〜〜・・・・・まんまとやられたわ。
正直、降参ね。」
私は、苦笑いを浮かべながら彼女と向き合う。
「あんたが私を殺したいのはよくわかったわ。
ま、自分を酷い目に合わせたやつだもん、そう思うのが普通よね。」
私は続ける。周りには何故か奇妙な静寂。
「けど、私だってね。『はいそ〜ですか、お詫びに死にます』ってわけにもいかないから。
・・・・・・抵抗は、させてもらうわよ。」
私は、腰のホルスターに手を伸ばす。彼女が動けば・・・・いつでも抜けるように。
・・・・その前に。
ふっと私は最後に彼女に向けて微笑み返す。
言っておきたい言葉があるから。
「でも、この数日。けっこ〜楽しかったわよ?
なんか、ナマイキな妹ができたみたいでさ。『アイツ(ヨシュア)』の事、思い出した・・・・・。
『あ り が と 』!」
それは嘘でもなんでもない・・・・・・。
本心からの、『ありがとう』。
アドルフ・ヒトラー vs 横島忠夫 & 鈴鹿御前
【脱出する者の時間】
>90>106
窓に向かったアドルフに、ガラス片が飛んでくる。
しかし、その程度何と言うこともない。
未だ再生中の右腕で、それを払う。
だが、その一瞬。
確かに気が逸れた。
背後で、爆発。
爆炎が身体を焼き、爆風が身体を木の葉のように宙に舞わせる。
そして、焼け爛れた身体は、重力に従い、落下。
ぐしゃりと、音がした。
少年と少女の目の前に落ちてきたそれは、無惨にも焼け爛れ、ねじ曲がり、ひしゃげ果てていた。
だが。
めきり。
ごきり。
ばきゃ。
異音を立てながら、ねじ曲がり、ひしゃげていた身体がもとの姿を取り戻していく。
ぱらぱらと、焼け爛れていた皮膚が、剥がれ落ちる。
アドルフは程なく、元通りの姿を取り戻して、言った。
「さて、続きだな?」
>113 秋月由美彦vsチェルシー・ローレック
「なるほど、『あきらかに危ない』か・・・初対面のものに失礼じゃないか?」
その不遜な態度が、気にくわない。
大した力もないクセに、いきがって・・・
気にくわない。
「君の方が、よっぽど危ない。『重力使い』か・・・」
少女の顔が強張る。
当然か、自分の能力のことを知っているなんて思いもしなかっただろうから。
自分以外に能力者がいないとでも思っているのかな?
・・・本当に、気にくわない。
その感情に呼応するように、少女の周りに揺らめく影が現れる。
ぼやけた輪郭の、赤一色で描かれたような獣のシルエット。
足や尾や耳の先から絶えず小さな火花が散り、野獣と呼ぶのが相応しいような、
凶暴な雰囲気を漂わせている。
そして、深紅の野獣が身をたわめて、少女に飛びかかった。
>115 アーカードvsルシエド
次々と襲いかかるアーカードの狗
それを爪と牙で切り裂き砕き潰し食いちぎり
『ククククク…面白い…ここまで欲望を味わうのは久しぶりだ…』
魔狼が宙を舞い月を描くよう勢いを付け牙と爪で
襲いかかる影を次々と殲滅していく
『さぁ…おまえの欲望を全て肺胞しろ…我が全て飲み込んでやる…』
そして魔狼は大きな咆哮をあげる
>119
スマン…訂正だ
『さぁ…おまえの欲望を全て解放しろ〜
の所だ…
『吸血姫に祝福を』
〜イベント3・『軋むイシ』〜
>116
「……………」
私は無言で、ロゼットに歩を進める。
銃声。
発砲したのはロゼットではない。
周りの神父やシスターたちが私に向かって発砲した。。
けど、それは全く無意味な行為。
この程度の低レベルの幻想では私の身を傷つけることは敵わない。
そして、当のロゼットは私に向けて、銃を構えただけだった。
「……………」
ロゼットとの間合いがどんどん縮まる。
ロゼットを巻き込むことを恐れてか、周囲の発砲が止む。
そして、私とロゼットの距離がもうあとわずか……
この右手を振りぬくだけで、彼女の肉体が木っ端微塵になる距離までになった。
それでも、彼女は発砲しない。
それどころか、まだ笑みを浮かべている。
「どうして、撃たないの? 今、この瞬間に私はあなたを殺せるのよ。ねえ、何故、笑えるの?
死ぬが怖くないの? 何故、ありがとうなの!?」
私は叫びに近い声でそう、ロゼットに問い掛けた。
>101
紅丸VSリロイ・シュヴァルツァー
左腕による攻撃も、さしたる効果をなさないままに、
紅丸の身体はリロイの右腕を粉砕すべく、徐々に地に近くなって行く。
リロイはその動きに合わせ身体を斜めに傾がせ、
際どいバランスで右腕が逆方向に曲がる事を抑制する。
そして、双方の身体が地に触れたとき。
突如紅丸の姿が消える。
唐突に戒めを解かれ、流石に面食らうリロイ。
周囲に気を配ると、街の方角へと駆け出す紅丸の後姿を発見した。
まだだ、まだ終わっていない。
壊す。あいつを、壊す。
未だ意識の内を駆け巡る衝動に突き動かされ、
リロイは紅丸の後姿を追跡し始めたのだった。
『吸血姫に祝福を』
〜イベント3・『軋むイシ』〜
>116
「決まってんでしょ?」
にまっと笑う。
「私が、楽しかったから。
お礼を言うのは当たり前じゃない?」
そう、それは酷く単純で至極当たり前な回答。
ただ、それだけが真実。
>98 モーラVSダイ・アモン
――マズイ!
咄嗟の思考は、しかし身体制御が追いつかなかった。
筋肉達磨の放った拳は、空中で姿勢を崩しているモーラをしたたかに打ち据えた。
受け身を取ることも叶わず、モーラの小さな体は勢いよく壁に叩きつけられた。
その時の衝撃で、ハンマーを取り落とす。
まさに肉を切らせて骨を断つ。
腕一本を潰した代償に、モーラは深刻なダメージをその身に被ることになった。
ゆっくりと、床へと墜落していく体。
「カ……ハッ……!」
苦鳴と共に吐血し、よろよろと起きあがってハンマーに寄りかかる。
そうしないと、体を支えていられない。
目の前が霞んで見える。
(あばらが三本……むしろ三本で済んだのは僥倖ね)
それよりも気になるのは内臓へのダメージだ。
ダンピィルであるモーラは、それでも人間よりは遙かに速いスピードで治癒能力を発揮する。
だが、決して吸血鬼のソレに及ぶことはない。
つまり、この戦闘中は負傷した体でやらないといけないということだ。
(さて、どうするのモーラ?)
ハンマーにもたれかかりながら、胡乱な頭で必死に考える。
考えろ、考えろ、考えろ……!
まともにやって勝てる相手ではない。
なら、どうする……?
>123は、>116じゃなくて
>121ね・・・・DAM!
>106>117
vs アドルフ・ヒトラー
【脱出する者の時間】
手に生暖かいものがくっつく。ぬるりとしたそれは月明かりに照らされ、真っ赤な色を見せた。
血だ。
鈴鹿の腹から血が流れている。それも、結構な量。
「鈴鹿・・・?」
堪らず声を掛ける。心なしか、その横顔は精彩に欠いていた。
答えを待つまでもない。俺は抱いたままの手に文珠を取り出すと、文字を刻んで鈴鹿の傷を癒した。
淡い光に照らされ、出血が止まり傷が塞がる。
ちょっとだけ、鈴鹿が驚いたような顔をしたから、俺は目線を合わせて応えた。
もう、平気だから、と。
今度こそ、今度こそあの化け物だって――――――
けれども、現実は非常なもので。
俺の期待は三度裏切られた。
軟着陸して、アスファルトに降り立つ俺たち。
続いて降ってきた焼けた肉塊は――――――復元し、再生し、紡ぎ直し、ヒトになった。
爆風に嬲られ硬質な地面に叩き付けられた金髪男は、それでも無傷でそこに立つ。
さながら、不死の化け物の如く。
「んなのありかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
引きつけを起こしかけている美神さんが、びくりと身を弾ませる。
「終いやぁ! もう、ダメだぁ! あんな化け物、どうやったって倒せやしねーーーーーっ!」
・・・体は自然と、鈴鹿にすがりついていた。
>118 秋月由美彦vsチェルシー・ローレック
『なるほど、『あきらかに危ない』か・・・初対面のものに失礼じゃないか?』
なっ!?
私の思考一瞬にして凍り付いた。
確かに思ってた。彼は『あきらかに危ない』と。
だが、口には一切出してはいない。これは一体どう言う事なのだろう?
心を読む能力者?
違う!
私達、能力者は元々元素を操ることの出来る能力しかないはず、
ましてや人間の心なんて言う不確定の機能に影響を及ぼす能力なんて聞いた事が無い。
それなら彼は何?
いや、まだ私が地上で生活していた頃にこんな人種がいると聞いた事がある。
『君の方が、よっぽど危ない。『重力使い』か・・・』
彼は私の思っている事だけではなく記憶までも探り、淡々と語る。
私がここでは秘密にしている能力者と言う事。
そして、その能力の中で『重力』を扱う事の出来る人間だと。
そう、思考、記憶、またはその他の事も手に取るようにわかる能力。
それを称して人は―――
extrasensory perception
超感覚
そう呼んだ
「まさか・・・本当にいるなんてね」
そんな事を呟いて見るが私達のような能力者のほうがよっぽどいそうに無い。
超能力者の一人や二人いてもおかしくは無いのだ。
―――!?
私の周りに不思議な影が揺らめく。
そして、その影はゆっくりと獣の姿へと変貌を遂げる。
恐ろしく凶悪な猛獣へと。
「何よこれ!?」
超能力にこんな物があることは聞いた事が無い。
さっきのESPともまた別の能力である事もあきらかだ。
命を創り出す超能力と言ってもそれこそ神の領域。
もしくはルリ様と同じようなかなり特殊で異質な能力者だ。
だけど、ここでつべこべ言っても始まらない。行動あるのみだ!
私は得意の重力を収束させた球体を拳に纏い力を溜めこむ。
これだけの猛獣だ、相当強い力を放たなければダウンさせる事もできないだろう。
最悪の場合、此方が食べられてしまう。
護衛役が巫女の元を離れ、道端で猛獣に食べられて死ぬなんて笑い話にもならない。
私が死ぬ場所はルリ様を守る時だけだ!
そして、私は重力の塊の拳を猛獣に全力でぶつける
「あんたはそこで・・・・寝てなさい!!!」
>119 アーカードVSルシエド
互いに喰らい合う影絵と影絵。
いつまでもいつまでも殺し合い、殲滅しあう化物二つ。
気が遠くなるほどの殺戮が繰り広げられ。
そして再び化物は対峙する。
一つの化物はただ笑い、嗤い、ワラウ。
一つの化物は、その表情を喜悦に歪ませる。
そして、化物はまた相見える。
飽くことなく、倦むことなく、それこそ一生殺し合いしててもいいとばかりに。
影はいつまでもいつまでも楽しそうに殺し合っていた。
>124 vsモーラ
曲がってはいけない部分が曲がってはいけない方向へ向いている右手をかざす。
必死で立ち上がる少女へとかざす。
そんな哀れな姿の観賞を愉しみながら、かざす。
次瞬、
骨が、
皮が、
肉が、
血が、
手が、
細胞が繋がっていく。
再生。回復。
数秒でダイ・アモンの右手はビデオの巻き戻し映像のようにあるべき形に再生。
対する少女は、脇腹を押さえ、苦悶の表情に満ちている。
これが絶対的な力と格の差。
同じ一発でも、これだけの差だ。
「分かったでしょう? あなたが誰かは知りませんが、少なくとも私の敵では無いということです」
彼は動かない。
勝利を確信した者のみに許される笑みを浮かべながら、少女を見据える。
美しい――この少女は美しい。
決めた。今、決めた。 この女は……私が頂く。
>129 アーカードvsルシエド
いつまでも殺し合う二つの影…途端、魔狼は闇の空間へと姿を消す
『十分に欲望を楽しませてもらった…』
声が聞こえると共に床が闇のまま水面のの様に波紋が広がり
波紋の中心から魔狼が這い出て咆哮
途端、周囲にある闇の空間から無数の目が出現し
空間が割れアーカードを飲み込んでいく
ふと気付くとアーカードは元の現実世界へと戻されていた
何事も無かったかのように…
しかし一つだけ変化があった通路の中心に黒く淡く輝く
狼の彫像が置かれていた…
良き欲望を持つ者の証であるかのように…
>131 アーカードVSルシエド エピローグ
ふと、気が付けばそこは先ほどまでの現実。
時計の針は12分の1も動いてはいない。
主観的にはもっと経っていたのだが、どうやら時間の流れが違うらしい。
そして、目の前には彫像。
闘争の代価とでも言うつもりか。
「フン、下らん、実に下らんな」
その彫像へと横薙ぎに手刀を振るい……粉々にうち砕いた。
闘争の証など必要ない。
この体に、敵の体に刻まれた傷こそが、何物にも代え難い闘争の証なのだから。
そう、闘争欲など証してもらう必要すらない。
戦争狂(ウォーモンガー)であること、それこそが即ち尽きせぬ欲の権化。
砕けた彫像をそこに捨て置いて、自室へと辞していった。
TO BE CONTINUED
砕け散った石像は姿を消し再び何処かへと消えていった…
闘争のまとめだ…
アーカードvsルシエド
『深淵なる闇に広がる欲望の渦』
>94>96>99>103>111>115>119>120>129>131>131>132
オレとリロイ
>122
人ごみの中に紛れて逃げ出すが、リロイは凄みで探知して確実に追跡してくる
この街は一直線で逃げ場はない
露店から目当ての物を一つ失敬すると、リロイを引き連れたままで街の広場へと
向かう
誘いをかけているのだ
「こうなったら、開き直ってやる!」
もう目立ってもかまわないつもりだ っていうか目立つ!
『吸血姫に祝福を』
(復讐値 4 興味値 6 →ノーマルエンド)
>123
『私が、楽しかったから。お礼を言うのは当たり前じゃない?』
……私はどうしても、手を動かせなかった。
この手を振るだけで、全部、終わるのに……
コイツは私は首だけにして陵辱してくれた。
憎い……
殺したくて、たまらないのに殺せない。
理性は殺せと言っている。
けど、感情は殺すなと言っている。
……もう、私にはコイツは殺せない。
殺すと凄く、後味の悪いことになりそうだ。
それに、私は彼女やアズマリアの笑顔を「いい」と思った。
そんな笑顔を私は摘み取ることがどうしても……できない。
「……その笑顔を大切にしなさいよ。私の殺意も屈服させたんだから」
小声でそう呟き、目を瞑って、イメージを練る。
辺りがたちまち、濃い霧につつまれる。
・
・
・
数十秒後、霧が晴れた時、もうそこにはアルトルージュ・ブリュンスタッドはいなかった。
・
・
・
夜空には真円の月。
私はそれを見上げる。
正直、もどかしくてたまらない。
けど、悪くない気分だった……
人間か。
千年生きていても、分からないことがある。
つくづく、私は――
前スレ >364 vsアセルス
唇に触れる柔らかな感触。
真っ先に危惧したのは、薬物流入の危険性だった。
咄嗟に、相手の唇に噛みつく。
口の中に広がる、馴染みある鉄錆の味。
『色は違っても、血は、血――』
互いの顔が、僅かに離れる。
そして出来た隙間に左腕を差し込み、その腕で相手の喉を圧迫する、
いわゆるギロチンチョークの体勢に持ち込もうとする。
不意に、少女と目が合う。
―――そこには、私が初めて見る瞳があった。
恐怖、怒り、悲しみ、絶望、憐憫、嫉妬、侮蔑――
今まで私に向けられてきた、どんな視線でもない。
さらに、インフェルノ幹部が向けてきた品定めするような視線とも、
マスターの全てを見通すような視線とも違う。
ざわり――自分の感情が、鳥肌を立てるのを感じた。
いけない……この瞳を見続けていては、いけない。
咄嗟に彼女の腹部に膝を叩きいれると、なんとかこの体勢から抜け出そうともがく。
ロゼット&クロノ&ヨコシマ vs GGスレイマン
『ボーイ・ミーツ・ガール?』
前々スレ
>526>527
「なにやってんの?!」
いきなり逃げ出したはずの覗き魔が戻って来たかと思うと、
腕から奇妙な閃光を放ち奴へと斬りかかる・・・・・・・まではよかった。
何が起こったのかわからないが、奴が覗き魔に何事か囁いたたとたん・・・・。
覗き魔が悲鳴をあげて硬直した。
だぁぁぁぁ!!もう!!
「クロノ、そいつなんとかして!!」
≪わかった!≫
そう言って、奴の攻撃をスウェーでかわしながらクロノが覗き魔に迫る!
無論、奴とてそれを許してくれるほど甘くはない。
クロノとの距離を、一気に詰めようと迫り来る!
「この!!」
《ぼしゅぅ!!》
私は、ワイヤー弾を奴の腕目掛けて撃つ!
飛んでいくワイヤーが弧を描き・・・・・奴の腕を絡みとった。
《ぐぐぃ!!》
「へ?」
が・・・・。
行き成り私の体がぐいと引っ張りあげられる。
「うわわっわ?!」
クロノの開放で体力が落ちている私に踏ん張る力などなく―――。
私の体が、中を舞う!
>68 vs両儀式
短刀が淀んだ空気を切り裂き、俺の元に迫る。
先の一撃と同じように、死を招く凶鳥のような刃。
背骨が凍りつくような感触。
「はっはっはっ・・・」
思わず笑い声が漏れる。
哄笑とともに刀を手元に引き寄せると、俺は辛うじてその刃を止める。
「ふっ・・・そんなものか?」
俺は挑発的にそう言ってみせる。
この少女の実力はまだまだこんなものじゃないはずだ。
もっと、俺を楽しませてみろ。
歪んだ好奇心を抱きながら、腰溜めに刀を構える。
充分に溜めると、俺は弾かれたバネのように突きを繰り出した。
>138 対暗黒騎士ガウザー
空虚な空間さえ突き殺すといわんばかりの神速の突きを、
身を捻って跳ぶことで回避する。
私の正面を、死そのものを想像させる刃が、ゆっくりと通り過ぎた。
最初に訪れた感情は、恐怖。
二年間私の一番身近にあったモノに私が抱く負の感情。
だが、それもほんの刹那の事。
次に訪れた感情は、快感。
二年間感じ続けていたそれとは対極に位置する、生の実感。
私はこの感覚を、自分を死の淵に置くことでしか得られない。
我ながら因果な事だとは思うが、自分という存在を不確かにしか感じられない
私にとって、この一瞬だけが、自分が自分だと感じられる唯一の時間なのだ。
私は異形の体を思いっきり蹴り付けると、その反動を利用して
大きく後方に跳躍し、間合いを取る。
異形というものを詳しくは知らないが、間違いなくコイツは私と同類。
一般と異常を分ける境界の、こちら側にいる存在。
ああ、いいじゃないか。私はこういうヤツを待っていたんだ―――――
私は乾いた唇をぺろりと舐めると、蒼の甲冑に身を包んだその異形を凝視する。
奴にも例外無く存在する、全てに等しく死を与える薄暗い線を視つめる為に―――。
>139 vs両儀式
殺伐とした視線が、俺を捉える。
全く、なんて眼差しだ。
この世界には、退屈な人間があまりに多い。
それだけに、数少ない例外はあまりに俺を惹きつける。
「惜しいな、あんたみたいな相手を殺さなくてならないとは」
からかうような口調で俺はそう言ってみせる。
口調とは違い、半ば本気だったが。
しかし、俺の剣はその言葉とは逆の動きをする。
少女の命を絶つべく、袈裟懸けに剣が振り下ろされた。
―――――――そう、この少女の真価は戦わなくてはわからないはずだ。
>134
紅丸VSリロイ・シュヴァルツァー
周囲の喧騒は、最早リロイの目には入らない。
突き飛ばされて、群集が悲鳴や怒号を浴びせてくるが、
それすらも彼の耳には入っていない。
あいつを、壊す。
その目的だけに向かい、リロイは疾走した。
そして、何時しか。
開けた場所である、街一番の大広場で、
紅丸とリロイは対峙していた。
『吸血姫に祝福を』
〜EP・『いつか、出会う貴女に』〜
>135
「いっちゃいましたね・・・・・。」
「そうね〜・・・・。」
私は、アズマリアに答えながら、大きくため息をつく。
そして、頭を掻いた。
「まいったな〜・・・・結局嫌われたまんまね・・・・・。」
「ロゼット・・・・・・ホント君は・・・・・・!!
あいつの気が変わったから良かったものの・・・・もし!!」
クロノが私にまくし立てる。
そんなクロノの顔の前に私は指をつきつける。
「いーじゃないの、無事だったんだしさ!」
「そういう問題じゃ!!」
「シャラップ!
また、『いつか』会えるでしょ?
その時は――――――!」
窓の外を、白い鳩の群れが空を横切るのが見えた。
>130 モーラVSダイ・アモン
(遊ばれてるわね……)
現状を、苦々しくそう認識する。
実際、力の差はあまりにも歴然としすぎていている。
未だふらつくこの体。
そして、こちらの打ち込んだ一撃を悠々と再生してみせた吸血鬼。
しかも、超重量級のハンマーを振り回せるほどの力もあまり残ってはいない。
だが、だからといってまだコレを手放すわけにもいくまい。
手札の中でも最高の鬼札(ジョーカー)であるコレを、まだ手放すワケにはいかないのだ。
(……大丈夫、まだやれるわ)
モーラに取れる手段は二つ、とはいえ、そのうち一つは限りなく可能性が低いが。
まず一つは、とにかく道を開いて惣太達と合流すること。
自分一人では荷の重いこの吸血鬼も、惣太ならあるいは……。
もう一つは……自分の手であの吸血鬼の心臓に杭を打ち込むこと。
隙を突くことさえできれば、決して不可能ではないとは思う。
だが、やはり歴然たる力の差は依然としてある。
それを覆すとまではいかなくとも、一瞬でいいからバランスを崩せればそこにチャンスは生まれるはずだ。
とにもかくにも、まずはハンマーを握って動き出そう。
何を為すにもまずそこからだ。
いつもよりズシリとした感触を返してくるハンマーを握りしめ、ふらつく足を叱咤激励しながら両の足で立つ。
そして、きびすを返して反対方向へと走り出した。
真正面から戦って勝ち目があるワケがない。
しばらく鬼ごっこに付き合ってもらおう――勝機が見えるまで。
>140 対暗黒騎士ガウザー
「ああ、本当に勿体無いよ」
奴の言葉に心の底からの同意の言葉を呟きながら、身を沈めて袈裟懸けをやり過ごす。
「だけどさ。始まった以上、終わりは必ずあるんだよ。それが、どんなに愉しいコトでもね。
オレだっていつまでも続けていたい……だけど、それは許されないんだ」
身を屈めたまま、全身の筋肉をゼンマイの様に巻き始める。
キリキリと音を立てながら、筋肉は徐々に張り詰めていく。
「だから……終わらせる。その結果がどちらの死でも、恨みっこは無しにしよう」
屈んだ体勢から強く地面を蹴ると同時に、極限まで巻かれたゼンマイから手を離す。
限界まで張り詰めていた筋肉は、開放されると同時に爆発的な瞬発力を生み出し、
私の身体は風のような速さで異形の脇を潜り抜けた。
そして、その交差の一瞬―――私はその蒼い鎧に走る脆く儚い一本の死の線に向けて、
手に持った銀色に輝く凶器を閃かせた。
>140 対暗黒騎士ガウザー
「ああ、本当に勿体無いよ」
奴の言葉に同意の言葉を呟きながら、身を沈めて袈裟懸けをやり過ごす。
「だけどさ。始まった以上、終わりは必ずあるんだよ。それが、どんなに愉しいコト
でもね。 オレだっていつまでも続けていたい……だけど、それは許されないんだ」
身を屈めたまま、全身の筋肉をゼンマイの様に巻き始める。
キリキリと音を立てながら、筋肉は徐々に張り詰めていく。
「だから……終わらせる。その結果がどちらの死でも、恨みっこは無しにしよう」
屈んだ体勢から強く地面を蹴ると同時に、極限まで巻かれたゼンマイから手を離す。
限界まで張り詰めていた筋肉は、開放されると同時に爆発的な瞬発力を生み出し、
私の身体は風のような速さで異形の脇を潜り抜けた。
そして、その交差の一瞬―――私はその蒼い鎧に走る脆く儚い一本の死の線に
向けて、手に持った銀色に輝く凶器を閃かせた。
オレとリロイ
>141
「フッフフ・・
オレは追い詰められたんじゃない! お前をわざとここに誘い込んだ!」
負け惜しみなのか勝ち鬨なのか分からない言を吐くと、
露店から失敬した物を取り出した
それは、稲荷の面だ
広場のオベリスクの上にスタッと降り立ち、稲荷を被る
「とうっ! 変身!」
腕と足を動かし、適当なポーズを取り、変身を行った
この場合の変身とは、同時に身に付けている物を肉体に融合するのだ
そう、稲荷の面を被って変身する事により顔を覆ったままで闘う事ができる
これで正体がばれないで済む これが狙いだったのだ!
「正義の戦士、オレの名は・・、」
広場の周りの市民の皆さんにも聞こえるような声で大風呂敷を広げたはいいが、
名前を考えていなかった さてどうする?
「オレの名前は、狐の化身『お面ライダー』だ!
>前スレ291 アーカードVSファントム
「……陳腐な遺言に、つまらない最後でしたね。かのアーカードともあろう方が、情けない」
倒れたアーカードに、器械のように炎を浴びせ続ける人造吸血鬼。
魔女はつまらない物を見るような冷ややかな視線で一瞥すると、ふ、と軽く息を吐く。
「忘れますよ。貴方の事なんてすぐに。これはただの日常業務に過ぎないんですから」
ひたすらに炎。炎。炎。
炭化していく体。
一つだけ燃えない拘束服。
「額に触れた辺りでばれたんでしょうけど、確かに人造霊は貴方の脳に常駐していました。
ですが、ただ砕いたくらいでは無駄です。
心霊手術か、もしくは依るべき組織が完全に死滅するまで貴方の魂は拘束されます
……今更言ったって詮無い事ですがね」
拘束服がゆっくりとコートに姿を変える。
それはすなわちアーカードの脳細胞が完全に死滅した、ということだ。
思ったよりも早かったが、砕けたせいで脳組織が直接炎に灼かれることになったのが原因だろう。
「次はヘルシング本部ですか。切り札を失った彼等がどこまで抵抗出来るか
……もう死んだことくらいわかるでしょう。さっさと引き上げますよ?」
人造吸血鬼は命令を理解できないのか、いまだ引き金を引くのを止めない。
簡単な命令を理解できるような細工を施されたとはいえ、所詮は量産型か。
―――やはり、馬鹿は困る。
魔女は眉の間を押さえながら振り返った。
>127>128 秋月由美彦vsチェルシー・ローレック
少女の拳の纏う『重力』と獣を形作る力場がぶつかり、
火花を散らしながら双方共に消滅していく。
「大した力だな、チェルシー・ローレック。それを下すとはね」
むしろ楽しむような秋月の口調。
その足下から深紅の影が伸びる。そしてそれは再び四足の獣の姿を取る。
「だが、いつまでその力が続くかな? 能力者には、能力を使える限界値があるんだろう?」
揶揄するように言葉を投げかける。
身体から立ちのぼる、揺らめく影が、青い小鳥の姿を取る。
ついっと伸ばした腕から、銀色の虫が現れる。
「さあ、試してみようか!」
青い小鳥と紅い獣、銀色の虫が、同時にチェルシーに襲いかかる。
>143 vsモーラ
少女は立ち上がると、その身を翻し、彼に背中を向けて走り去る。
「おぉ!! 逃亡とは――やっと私の強さに恐怖してくれたのですね!! 良い判断です!!」
疾い。
人間の小娘如きが……なかなかに侮れない。
だが、所詮は小娘。
美の極地に存在するこの肉体にかかれば、10秒で追いつてみせる。
次瞬、アモンの目が朱く光る。
彼の大きく広げた両の手に光が収束していく。
光 弾 よ 、 敵 を 撃 て
「タイ・ト・ロー――――――――アンセムッッ!!」
鋼雷
破弾
アモンの怒声と同時に、彼の両手に発生した無数の光の矢を少女に向けて撃ち込んだ。
合計24本の光の矢。
それが狙い違えず少女の背中へ向けて一直線に駆け抜ける。
本来の威力なれば着弾の衝撃で少女を射殺すことになるが、これはかなり威力を控えてある。
それだけが少女に取ってラッキーだったことだろう。
そして、アモンに取ってもラッキーなことであった。
俊速、
迅速、
神速、
かくして微妙に駆ける疾さの違う二十数本の光の矢は、少女を噛み付かんと颯爽する。
>146
紅丸VSリロイ・シュヴァルツァー
紅丸が懐から取り出した代物は、弥都特有の品物、
狐の顔を模した面だった。
それをおもむろに被ると、あからさまに適当な、
無様なポーズとともに、紅丸は変身を遂げる。
「正義の戦士、オレの名は・・、」
完全に身体の変態が完了し、大仰な手振りをしながら、
大声で叫んだ。
「オレの名前は、狐の化身『お面ライダー』だ! 」
その余りの格好の悪さと間抜けさに、
リロイの先程まであれほど猛り狂っていた闘争心、
破壊衝動は、微塵に砕かれてしまっていた。
「・・・・・・・バカか、お前」
完全に萎えきり、疲れきった声で、リロイは一人呟いた。
アドルフ・ヒトラー vs 横島忠夫 & 鈴鹿御前
【脱出する者の時間】
>117 >126
ホテルの部屋の窓から、あの青年が落下してくる。
とは言っても、焼け焦げ、ねじれ、ひしゃげたその姿から、あの美貌を想像するのは不可能に近かったが。
「鈴鹿…?」
と、そこに横から声がかけられた。横島くんの、ひどく心配そうな声。
おそらく、その時の私は、相当辛そうな顔をしていたのだろう。
私が何か答える前に、脇腹に当てられたままの横島くんの掌から、淡い光が漏れる。
それと共に、傷の痛みは嘘のように引いていった。
思わず、彼の方を見る。その目は、こう言っていた。
もう、平気だから。
その顔が、なぜかひどく頼り気に見えて。だから、私も安心できた。
そうだ、傷を治してくれた、お礼を言っておかないと。
そう思った、その時。
それは、起こった。
私たちの目の前に転がっている、人だったモノが、あっという間に元の姿を取り戻していく。
その異音は、ねじくれた身体が再生していく音か。
パラパラと剥がれ落ちているのは、もはや用を終えた、焼け焦げた皮膚か。
まるで、出来の悪いホラー映画でも観ているような、その光景に。
「終いやぁ! もう、ダメだぁ! あんな化け物、どうやったって倒せやしねーーーーーっ!」
パニックを起こしたらしい横島くんが、しがみついてきた。
とても現実とは思えないような、悪夢さながらの情景を目の当たりにしながらも───
私の肘は、正確に横島くんを地面へと叩き落としていた。
もちろん、あの化物から視線は逸らさぬままで。
お面ライダーとリロイ
>150
「バカかどうか、試してやろう!」
大きく飛び、上空から頭上に蹴りを出す、と思わせておいて
わずかにタイミングをずらし、後ろに回りこんで後頭部に蹴りを入れた
そして蹴りが入ったと同時にまた上空へ飛び、民家の屋根に着地する
>147 アーカードVSファントム
しかし、振り返った魔女は目の前にある光景が一瞬理解できなかった。
愚鈍に火炎放射器の引き金を引き続ける人造吸血鬼。
だが、その判断を下すべき頭が在るべき場所にない。
頭が在るべき場所からは、ただ噴水のように血を噴き出す切断面があるのみ。
では、首は……?
その答えは、傍らで何かを咀嚼している『何か』が示していた。
咀嚼されているモノは、人造吸血鬼の頭部。
咀嚼しているモノは――強いて例えれば狗。
だが、それを狗と呼んでいいのか、魔女は一瞬判断に苦しんだ。
狗と呼ぶにはあまりにディテールを欠きあまりに不気味で……あまりに禍々しいのだ。
何より、片手で余る数の目を持つ狗など存在しまい。
それが、一心不乱に人造吸血鬼の頭部を噛み砕き、啜り、飲み込んでいる。
骨が砕ける音、肉を食い破る音、血と唾液が混じり合う音……。
その音に気を取られたのか、魔女は気付くのが遅れた。
無意味に炎を垂れ流す火炎放射器の先に、アーカードの死体が存在しないことに。
そして、自分の足元でしたズルリ……という音に視線を落とした魔女は見た。
未だ炎を上げ、頭もなく――どう考えても死んでいるそれが、地面を這って此処まで辿り着いたのを。
頭部のないそれが、全身に浮かび上がる目が、目が、目が目が目が目がメガメガメガメガメガメガメガ――。
魔女へ嗤いかけた。
それを見る魔女は、何か声を上げることすら許されない。
素早く伸びてきた『三本目』の腕が魔女の口を塞ぐ。
更に、元からあった両腕が魔女の両腕を拘束し、『四本目』の腕が顎を掴んで上を向かせる。
むき出しになった喉に、鼻から下しかない顔が嬉しそうな表情を浮かべて牙を剥いた。
>148 秋月由美彦vsチェルシー・ローレック
ボゴォォォン
私は獣に『力』を放った。
地面に球を半分に割った穴場が瞬時にして作られ、それと同時にして
さっきまでそこで私に牙を向いていた猛獣も今では跡形も無く消えている。
彼の能力は完全に独立した命を創り出すものというわけでもなさそうだ。
・・・だが、
『大した力だな、チェルシー・ローレック。それを下すとはね』
余裕の表情で私に向かって少年は言い放つ。
その姿は私でも貫禄すら覚える姿だった。
「ええ、おかげさまでね!体力だけには自信があるのよ!」
まだまだ、この位では私はへばらない。
能力者にはそれぞれ能力を使う限界値が定められている。
訓練を積めばその限界値や能力の威力は上がっていくのだが、今の私でも
一度や二度能力を使っただけでは、どうと言う事は無い。
仮にも公司で護衛役としての訓練を受けているのだ。
しかし―――
『だが、いつまでその力が続くかな? 能力者には、能力を使える限界値があるんだろう?』
そう、彼には人の心を読む力があるのだ。
此方の弱点など瞬時に見切り、そこをついてくることなど造作もないこと。
私の能力の限界の事をもう既に知り、その弱点を突こうとしているのだろう。
『さあ、試してみようか!』
そう言い放った瞬間。
再び、影が揺らめき、美しい鳥の造詣を創り出す。
しかし、それだけではなかった
今度は―――一体だけじゃない!?
少年の伸ばした腕の先から銀色の虫が現れ、さらには先ほど倒した野獣まで
姿を表わした。
>154続き
「冗談・・・でしょ?」
しかし、目の前にあるのは生物の姿をした敵。
それならばと、私は壁に向かって全身のバネを使ってジャンプをし、再び拳に重力波を収束させる。
そして、壁を足がかりにまず一度倒した野獣の元へと飛びかかる。
拳に集めた重力の拳を野獣の鼻っ柱をめがけてフルスイング!
しかし、今度は威力が少なかった様で野獣が遠くへ吹き飛ぶだけでその姿は健在だった。
「それならもう一発!」
そして、今度は先ほどの腕とは逆の拳に重力を収縮させ、野獣へと飛びかかる。
―――だが
背中に鈍い激痛が走る。痛みでよろめき、前のめりに倒れてしまった。
私は痛みの原因を探るために体を起こし、辺りを見渡すと目の前にはさっき影から生まれた
青い鳥が羽ばたいていた。
「そうだった・・・あんたらがいたのよね」
今度はさっきと違い、複数との戦い。
このままでは部が悪い。
それならば・・・全て一辺に倒すだけだ!!
私は、空中に垂直にジャンプし相手を確認する。
相手は三体。
ちょうど私が空に浮いたおかげでそれを追撃し様と、私の元へ襲ってきてくれる。
好都合だ。この技は相手が密集してくれればとてもやりやすい技なんだから。
そうして、私は拳を胸の前に突き出し、重力波を最大限に集中させる。
その重力波をどうするか、
相手にぶつけるだけ!!
「食らいなさい!!ジオ・インパクト!!!」
3体の生物に重力の塊が私の手を離れ、襲い掛かる。
いくらなんでもあれだけの重力波を食らっては再び立ち上がる事はできないだろう。
―――しかし
「・・・・・・ま、まだまだよ!どんどん来なさい!!」
私の力は想像以上に限界値へと加速して行った。
>154>155 秋月由美彦vsチェルシー・ローレック
――――よく、やる。
素直に賞賛の思いが出る。
こちらのエネルギー体を重力で相殺するチェルシー。
だんだんと息が荒くなるのがわかる。
だが、その意志は固く強く。
――――なら・・・その強さを確かめてやろう。
不意に、攻撃を止める。
「そんなに、ルリのことが大事なのか?」
揶揄するではなく、真剣に問う。
「命を賭けて、地上に連れ出すほど」
ゆっくりと、染みこむように。
「だが、今のままでいいのか、君は?」
少しずつ、少しずつ。
「あんな馬の骨にとられてしまっても?」
まるで、小さな棘のような。
「君は、それでいいのか?」
極彩色の、言葉の毒。
「僕が、力を貸してあげようか? あの男を排除して、ルリを君のものにするために」
>109
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
相手は頭を強く打っている・・・今が好機だ・・・・
しかし、初音もまた先程からのダメージが蓄積している、一息つきたい。
今、ここで攻撃しても相手を仕留められる確証は無い
ならばここは一旦間合いを取るべきだ
そう判断した初音は、軽やかにバックステップし、乱れた呼吸を整える。
「仕切り直しね、狼さん」
>152
紅丸VSリロイ・シュヴァルツァー
飛び蹴りかと思われた紅丸の一撃は、フェイント。
本命は、着地後の裏からの延髄切りだった。
しかし、そんな簡単な連携すらも、闘争心を失ったリロイには
見切る事が敵わない。
後頭部に強烈な打撃を浴びせられながらも、
ゆっくりと屋根の上へと視線を走らせるリロイ。
「何だってんだ、全く・・・」
紅丸を追撃する気配すら見せずに、
虚ろな瞳で、リロイは紅丸と視線を合わせた。
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
導入
それは扱いの小さな新聞記事だったが、私は見逃さなかった。
家出人捜索……最近では良くある話だが、それぞれの点を線で結んでみるといい。
そこにはある「絵」が浮かび上がる。
人には見えない、血と闇で描かれた絵。
その絵を見つけだし、引き裂くのが私達ハンターの役目だ。
今回の絵に浮かび出た場所は―――この八重坂学園。
見た目はごく普通だが、私の得た情報が正しければ何かがここには巣くっている。
私の吸血殲鬼としての力は昼間は発揮出来ないが、それはキメラヴァンプ達も同じ事だ。
向こうも、太陽の元では思い切った動きが出来ないだろう。
偵察の日時は試験直前の日、そして放課後になって少し後の時刻。
もっとも生徒が少ないだろうと思われる時間帯を選んだ。
……だが、私は知らなかったのだ。
吸血鬼以外にも、闇の饗宴を描き出すものが居る事を。
そう。人を狩り、自らの滋養とするものは吸血鬼だけではないのだ―――
>159
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
導入2
放課後の… 八重坂高校…
試験前という事もあって…校舎の中には…ほとんど人影はありません…
精気を集めようにも…その元が無いのでは… おつとめを果たす事も…出来ないのです…
する事も無いわたしは…巣でまどろんでいると…
巣の結界の…さらに外に張り巡らされた…感覚の巣にかかる何かが………
何物かが巣を覗いている…そんな感覚が… 巣の危険を知らせます…
ただの好奇心なのか…それとも敵意か…… ちからの薄いこの身では…それを知る術はありません…
「―――――でも…」
わたしは…こぶし大の蜘蛛を…そっとふところに忍ばせると…
…巣の教室を後に… 玄関に足を運びました……
「――――――やることは……きまっていますから……」
>136 アセルスVSアイン
唇を噛まれ、首を圧迫され、腹部に膝を叩き込まれ・・・
それでも私には、彼女が私と目を合わせないようにしているのがわかった。
思った以上に、彼女の心の壁は強固なようだ。
この状況で惑わされずに・・・・いや、惑わされることを察知して
こうして抜け出そうとしているのだから。
ともあれ私は、彼女の体に絡めていた腕をほどいた。
このままリンチになる趣味はないし・・・まだ、いかようにでも方法はある。
みたび間合いを離し、私は立ち上がった。
彼女に噛まれた唇から滲む血の味が、私の頭を軽く酔わせていく・・・
「ふふ・・・さすが、やってくれるね。
―――少し、お仕置きが必要かな?」
言いながら私は左手に持った仮面を上に放り投げ、右手に持った鞘を掲げ・・・
刹那。
銀光が閃き、仮面は真っ二つになって床に落ちた。
そしてにっこりと笑い、私は左手で抜いた剣を彼女に向けた。
「さ、続けようか?」
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
>157
(・・・・・・間合いを取る・・・・・・ずいぶんと慎重なことだ)
彼は内心苦笑する。あの無防備な状態であれば、
おそらく命を落としたであろうことは間違いなかったから。
そして同時に、彼女に蓄積されたダメージも小さくないことを、
彼に教えもした。
「そのようだな・・・・・・だが、第二ラウンドは俺がいただこう」
一気に間合いを取ろうと飛ぶ。
だが、それは闘気を放出して相手の感覚が受けたイメージに過ぎない。
実際にはそれほど動いているわけはなかった。
足先の爪を尖らせ、軽い前蹴り。そこから流れるように手刀を喉めがけ打ち込む。
アドルフ・ヒトラー vs 横島忠夫 & 鈴鹿御前
【脱出する者の時間】
>126>151
――まったく。
人が苦労して身体を再生させたというのに、なんなのだ、この少年は?
だが、この少年がここまで自分を追いつめたのは紛れもない事実。
ならば、全力を以て排除するのみ。
「ああ、そうだ。キミたちの名前を聞いていなかったな」
酷く爽やかに問いかける。
「墓碑銘に刻む名がないのは、困るだろう?」
爽やかに剣呑なことを言いつつ、右手を振る。
その右手に、忽然と剣の柄が現れる。
それは、アトランティスの魔剣、光竜剣。
次の瞬間、柄から光の刃が伸びる。
「まずは、キミを排除させてもらう!」
言うが早いか、少年に向かって走り、そのままの勢いで斬りつける。
吸血鬼の膂力とスピード――――喰らえば、確実に命はあるまい。
お面ライダーVSリロイ
>158
「あ・・当った! なんの変哲も無い蹴りが!」
リロイからのしらける視線を物ともせずに、調子に乗って同じような蹴りを繰り返した
相手が連続攻めで疲れた所で、必殺の技をお見舞いするのだ!
「行くぞ怪人!」
今までよりも遥かに上空へと飛び、物理を無視した落下の仕方でリロイへ向かった蹴りが飛ぶ
「お面ライダーキック!」
>162
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
来るっ、ようやく息を整えた初音は狼の突進に備えるが
タイミングがずれる。
狼の蹴りが初音の腹部に突き刺さる
それでも続けざまに放たれた手刀はしっかりと爪で受けとめる。
そしてそのまま、初音はカウンター気味の掌底を狼の顔面めがけて叩きこんだ。
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
>160
身を隠しつつ校舎の方へ近づく私は、奇妙な感覚に捕らわれていた。
<こっちへ行っても何も有るわけがない>
<こっちが一番怪しい方向だ>
相反する二つの感覚。
これは…私の人間の部分と、殲鬼の部分が同時に語りかけているのだろうか?
偵察のつもりだったので、目立つスーパーレッドホークは置いてきている。
45口径のカスタムガン、「ストライクガン」は持っているが…
強力な夜族相手には少し心許ない。
放課後ではあったが、玄関の扉は開いていた。
見とがめられる危険もあるが、命を落としては元も子もない。
身を潜めるようにして校舎内に滑り込み、銃を抜く。
……何故か緊張感が高まる。
見られている? いや、視線はまだ感じないが……
私は周囲を警戒しつつ、吸血殲鬼としての感覚に導かれて歩き始めた。
>156 秋月由美彦vsチェルシー・ローレック
「―――?」
攻撃が止まった。相手からも殺意が微塵も感じられない。
どうやら相手も私の力を知り。観念した様だ。
「なんだ・・・もう終わりなの?意外とあっけないのね?」
そんな強がりを言ってみるが、正直これ以上あの獣達を召喚されていたら
此方の身もかなり危なかっただろう。
ありがたい次第だ。
すると彼はこんなことを呟いた。
『そんなに、ルリのことが大事なのか?』
何を言い出すのだろう?
今まで戦闘をしていたと言うのに何故ルリ様の名前がここに出て来る?
私は不思議に思いながらも彼に言葉を返す。
「ええ、もちろんよ」
『命を賭けて、地上に連れ出すほど』
そう、私は彼女を守るために命を賭けて地上へお連れした。
本当ならばこんな危険を犯してまでこんな場所へ来るつもりは無かった。
しかし、ルリ様の地上へ行こうと言う意志。そして、彼女の人徳もありここへやって来た。
それは裏切り者として追われる身になった今でも後悔していない。
私のやった事は間違ってはいなかったのだ。
『だが、今のままでいいのか、君は?』
何が?
これの何が悪いと言うのだろう?
浅葱流美奈と言う地上の少年の元で生活をしているが
自由とまでも行かなくても、安全な生活を送っている。
私とルリ様、そしてアイツとメガネ君
これ以上望んではワガママと言う物だ。それの何処が不満だと言うのだろう?
『あんな馬の骨にとられてしまっても?』
そうだ。アイツ。
アイツがいる限り、ルリ様の身に何かあるともかぎらない。
上手くこのまま公司の手を逃れたとしてもだ。
アイツがルリ様に手を出して・・・・・・。
もし、そうなってしまっては私はどうなるんだろう?
私の護衛者としての立場は?
忠誠を決めたあの気持ちは?
そして、私のそれからは?
>167続き
『君は、それでいいのか?』
良いわけが無いじゃない!!
奇妙な殺意が沸いて来た。心のそこから禍禍しい、自分でも嫌悪するような嫌な感情が。
―― 全てを壊したい!――
―― 全てを私の物に!! ――
『僕が、力を貸してあげようか? あの男を排除して、ルリを君のものにするために』
私は―――彼の元へと歩き出す。
一歩一歩踏みしめる様に。
少年は街頭の下で微笑んでいた。
私を仲間として迎え入れるために。
そして、彼の手が差し出された瞬間!
みぞおちに思いっきり拳を叩き付けた―――
私は自慢のブロンドの髪をさらりと撫で、苦しそうに倒れこむ彼の姿を上から見下す様に
眺めた。
そして、私はしゃがみ込み、笑顔を浮かべ彼にこう言った。
「惜しかったわね・・・危うく心を奪われそうだったけど・・・
だけどね、アンタ間違ってるわ」
彼のは疑問の表情を浮かべていたが気にせず続ける。
「あんた『ルリ様を私の物に』っていってたけど・・・それは違うわ。
私はそんな事望んでいない・・・・私は『私がルリ様の物』として働く事が嬉しいの」
そう。私は彼女を自分の物にしたいわけではない。
まして、彼女の意志を私がどうこうする意志なんてこれっぽっちも持っていない。
私は彼女の護衛役。私は彼女を守る事が私の指名でもあり、私が望んだ事なのだ。
それに仮に自分のものとなろうが誰のものとなろうが知らない。
重要なのはルリ様が
幸せか? 幸せではないのか?
それだけ。そして、それが全てなのだ。
「ああ。そうそう」
忘れない内に付け加えておかなければ、対した重要な事ではないので
すぐに忘れてしまう。
「アイツ・・・そんなに悪い奴じゃないのよ。だから、排除するなんて物騒なこと言わないでくれる?」
笑顔でそう彼に言った。
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
>165
一瞬、視界に星が散った。
鼻先に、少女の掌打が命中したのであった。
後方に転がりながら間合いを取る。
鼻から流れ落ちる血を舐めとると、彼は笑った。
アァ、血ノナント甘美ナコトカ・・・・・・
ダガ、足リヌ!モット血ヲ!肉滾ラセル闘争ヲ!
彼は咆哮した。その身に纏う気が凝縮していく。
そして気づいたときには、すでに少女の目の前に辿り着いていた。
青き影の後ろに従うように、何匹もの影が姿をあらわしていた。
膝が腹にめり込む。くの字に折れた肩口にその顎が喰らいつく。
強靭なその上半身で少女を宙に飛ばすと、
追い討ちをかけるように気の砲弾が打ち込まれる。
>161 vsアセルス
剣 対 ナイフ
今までの攻防から考えて、体術は相手のほうがやや上。
さらに加えて、このリーチの差は致命的と言える。
懐に飛び込めれば、こちらの間合いになるが、
それがどれだけ難しいことかは、考えるまでもないこと。
向かい合う剣士を眺める。
今まで私が一方的に攻撃していたが、大したダメージは与えられていない。
動きが鈍っている事など期待出来ないだろう。
ならば、せめてリーチの差をどうにか出来ないか?
部屋の中の構造を思い出す。
何か――無いか――使いえるものが――何か――
不意に、あるものが思い浮かぶ。
―――アレは―――確か―――この部屋に―――あった。
素早く少女に向かって踏み込むと、倒れているサイドテーブルを
少女目掛けて思い切り蹴り付ける。
同時に素早く暖炉へと向かって跳ぶ。
目当ては、暖炉に立てかけてある火掻き棒。
あれなら、剣と比べてもリーチ負けはしない。
>166
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
玄関の陰に身を隠し…わたしは…獲物が足を踏み入れるのを待ちました…
獲物の足音……たぶん…この禍禍しい気配に…勘付いているのでしょう…
ゆっくりと…一歩一歩確かめるような…砂を踏む音が…妙にはっきりと聴き取れます…
(既に……こちらに気付いている…?)
(…うぅん…それなら……こんな…足音は…しない…)
自問自答しながら…不安を振り払うと…獲物の足音に耳を澄ませます…
(…あと…十歩……………五歩………………はやく…近くに…
…………三歩……あと………二歩……ちょっと………一歩………今っ!!…)
玄関に足を踏み入れ…身体が校舎に入った瞬間―――
…罠を――――――獲物に…無数の糸を浴びせます…
入ってきた扉には…幾重もの蜘蛛の巣を…四方からは身をかすめる幾本もの鋼糸を…
『………痛っ!…』
短い叫びと共に、手には持っていた何かが…鋼糸に弾かれ…床を滑り…転がります…
追い討ちをかけるように…白い…細い粘糸の奔流が獲物を襲い……。
>169
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
掌底を叩きこんだにも関わらず、
目の前の狼は再び咆哮をあげて跳躍する。
初音もまた後を追い、跳躍しようとするが
その瞬間狼の身体が幾重にも分身し
肩口を食い付から、あっという間に宙に投げられてしまった
さらに、無防備な初音の身体めがけ、再び体当たりが迫る
「これをまともに受けるわけにはいかないわね」
初音は必死で自分の周囲に糸を放ち、蜘蛛の巣を展開する。
瞬時にとはいえ斬糸で編み上げた巣だ。
まともにつっこんでくれれば、かなりの痛手を負わせることができるはず・・・・
>153 アーカードvsファントム
在り得ない。
こんなことは在り得ない。
こんなことは絶対に在り得ないのだ。
現実を否定したところで、体はを拘束する力は緩まない。
漏れかけた悲鳴は口の中に押し込まれ、目の前には未だ再生途上……
黒焦げになった頭の無い顔が存在する。
それが、ヴァージニア・イレブンがその霊視眼で見た最後の光景。
次の瞬間、魔女の目はくるりと裏返ってしまった。
……だから、痛みを感じることだけは無かった。
「大凶、大凶!
恋愛運好調・燃えるような恋の予感!
仕事運不調・詰めには気をつけて!
健康運不調・思わぬ大怪我の気配!
ラッキーカラーはディープレッド!」
先刻食べた占いビスケットの言霊。
噛み裂かれた首から、薔薇色の霊薬とその言霊を撒き散らす魔女の体。
既に、依り代は魂を留めていなかった。
>149 モーラVSダイ・アモン
逃げる、身軽さならこちらに分があるはずと踏んで鬼ごっこを選択したのだが……。
だが、次に吸血鬼が取った行動はモーラの予想の範疇を大きく越えていた。
詠唱、印、そして発動――。
それはハンター生活を続けてきたモーラですら始めて見る現象……魔術。
吸血鬼の大きく広げた手から、無数の光の矢が飛来する。
その数は――馬鹿馬鹿しくて数える気にもならない。
とにかくかわす。
右に左にステップを踏みながら、飛来する光の矢をかわす、かわしたはずだった。
しかし、かわしたはずの矢が軌道を変え……改めてモーラの方へと向かってくる。
「追尾式なのッ!?」
驚愕に叫ぶモーラ。
だが、それで棒立ちになってもいられない。
方向を変えて襲い来る光の矢にハンマーを向けて受け止める。
光が弾けて、次々と消滅していく。
すぐさまきびすを返して、後ろからの矢も……対処しきれない!
いくつかの矢をコマのように回りながら叩き落としたが、数があまりにも多すぎる。
ハンマーの隙間をくぐるようにして、モーラの体に数本の光の矢が突き刺さった。
「うぁぁッ!」
威力の抑えられた光の矢は、それでもしたたかにモーラを打ち据える。
ハンマーを取り落とし、地面を転がる。
もはや、まともに動けるダメージではない。
マズイ、マズイ、マズイマズイマズイマズイマズイ――!
思考がネガティヴな方向に塗りつぶされていく。
だが、潰されるワケにはいかない。
必死に逆転への手筋を考える。
……今、手元に残っている武器は銀のナイフが一振りのみ。
これで、このハンマーに比べては余りに貧弱に過ぎる一振りのナイフでアレと戦わなければいけない。
覚悟を決め、まずは死んだふりをしながら相手の様子を見る。
チャンスはただ一度……。
(こっちにきなさい……!)
その一度で、この刃を心臓に埋め込んでみせる……!
>167>168 秋月由美彦vsチェルシー・ローレック
――――確実に捉えたはずだった。
しかし、結果はこれか。
みぞおちに叩き込まれた拳に悶絶しながら、自分の迂闊さを呪う。
だが、何故だ?
何故、拒絶する?
――――僕は、彼女のノゾミを『読んだ』はずだ。
確かに、彼女のノゾミは今の生活ではないはずなのに。
確かに、彼女のオモイはこうではないと叫び続けているのに。
「何故、だ。僕の好意、無償の善意を、何故拒絶する」
何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故
何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故
何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故
何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故、何故
疑問が渦巻き、怒りとなる。
そのまま、怒りをPKに変え、チェルシーに叩きつける。
数メートル吹き飛ばされるチェルシー。
その様子を見て、毒々しい笑みを浮かべる。
「君はオウムやネコを下して、僕に買ったつもりかも知れないが、それは間違いだ」
「ああいう形をとらせえることで、強力なエネルギーが操りやすくなる」
「だからそうしているだけで、僕の能力は本来、目に見える力ではない」
言葉と共に、地面のアスファルトが捲れ上がる。
空中で無数の砕片に分かれたそれは、一直線にチェルシーに向かって飛ぶ。
>170 アセルスVSアイン
蹴りつけられたサイドテーブルを、しかし怯むことなく避ける。
そして、暖炉へと跳んだ彼女を見据える。
「ふふ・・・」
暖炉から火掻き棒を取り出して構える彼女に、ゆっくりと歩み寄る。
「そんなもので・・・私にかなうとでも?
リーチは確かに対等になったけれど・・・」
そう言ってから・・・一気に間合いを詰め、
「君にそれが使いこなせるのか!?」
彼女の胴めがけて剣の峰を叩きつける。
殺さずに屈服させるには・・・こういう方法を取るしかない。
>164
紅丸VSリロイ・シュヴァルツァー
リロイの周囲を飛び回りながら、単調な攻撃を繰り返す紅丸。
だがその悉くを、リロイは避けようともしなかった。
全身を衝撃に襲われながら、ただ彫像の如く立ち尽くしている。
だがそのこめかみに、一筋青い血管が浮かび上がったのを、
紅丸は確認できなかった。
「行くぞ怪人! お面ライダーキック!」
紅丸が止めとばかりに放った、重力を完全に無視している
高角度の蹴りを、リロイは呆然と見つめていた。
そしてその瞳に、突如強烈な怒りが宿る。
「調子に乗るんじゃねえ、仮面野郎!!」
正に紙一重。半身を僅かにずらすだけの動作で、リロイは
紅丸の蹴りの射線から外れる。
そして相手の蹴りの勢いを逆利用した、クロスカウンターの一撃が、
紅丸の顔面に向けて撃ち出された。
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
>171
「!?」
一瞬反応が遅れた。
無数の白い―――これは蜘蛛の糸だろうか?
幸い、その糸が最初に向かったのは今入ってきた扉だった。
身体を狙われていたら、一瞬で拘束されていただろう。
そして、続けて飛んできた鋭い糸は私の身体を狙っていた。
さらに幸いな事だったが、なぜか急所を狙っては来ていない。
「………痛っ!…」
四肢をかすめるようにして拘束着に傷を付けた糸は<ストライクガン>をも弾き飛ばした。
手の平から弾かれた銃は、無情にも廊下を滑っていく。
私に銃の行き先を確かめる余裕はなかった。
さらなる糸―――どうやら、この白い方の糸は強い粘着性を持つらしい―――が迫ってくる。
下駄箱に隠れるようにして回避する。
(不味い…)
残る私の武器はアーミーナイフ一本だけ。
日光はまだ照りつけているから、殲鬼になる事もできない。糸に紛れて敵の姿を見る事もできなかった。
クモ型のキメラヴァンプだろうか?
それにしては、日中に活動しているのはおかしい。
弱気に陥りそうな心を奮い立たせ、私は手近な教室に飛び込む事にした。
>151 >163 vs アドルフ・ヒトラー
【脱出する者の時間】
鈴鹿の肘に打ち据えられ、アスファルトに頭を叩き付けられても、
美神さんだけは守ったのは偉かったと思う。我が事ながら。
「しゃ、しゃーないやんか。なのに、なのにぃ〜!」
「泣くな、よこちまっ!」
とっさに身をよじって、体の上に座る格好になった美神さんが、カンラカンラと笑った。
――って、俺はまだ泣いてないっ! それにこの状況で人を指さして笑うか、普通!?
呆れつつも、やっぱこの人は美神さんなんだな、と妙に感心した。
びゅうと、春の風が吹く。日の当たる頃の陽気を忘れ、身を切るほどに冷え切った風が。
その風に嬲られつつ、凍える体を立て直した。
額から微かに血が流れていたが、まー、気にしないでおこう。
彼方から響く、サイレンの音がいよいよ近くなって来た。
爆発まであったんだ、警察の足も自然と速くなるってことだろう。
警察、か。保護を求めるべきか? 利用するべきか? 危機から遠ざけるべきか?
刹那の思案。
それを遮るように光刃が閃いた。
――――なんだ!?
顔を上げる。見れば男が奇妙な剣を構え、俺の方に向かってきていた。
光の軌跡が闇夜を裂き、月と街灯に照らされる俺の姿を克明に浮き出させる。
囚われたら決して逃れられない、死の残光。
光の斬撃を遮ったのは、大通連を手にする鈴鹿だった。
光の剣と鬼の刀が交錯する。
男に時間遡航に空間の扉、二つの能力がある限り鈴鹿の分が悪い。
なら、それを使う暇さえ与えなければいいだけだっ!
残りは四つとなった文珠を出す。これを使ったら、残りは一つ。
他の手をの方が良いか? いや、悩んでる暇も躊躇っている暇はない!
俺は左手に三つ文珠を取り出すと、立て続けに文字を刻んだ。
「超」「加」「速」
時流さえも操り、極限まで速度を上げる韋駄天の秘術。俺の文珠は直ちにそれを再現し、
俺を加速した時の中に抱く。男の斬撃が、大通連の響く音が、すべて遠く遠くに消えた。
さて、次は鈴鹿を超加速させないと・・・・・・と、その前に。
加速する時が開ききるより先、俺は足下に美神さんを置くと鈴鹿にそっと近づいた。
「これも俺の霊力の為、生き残るため!」
そっと、鈴鹿の胸に手を伸ばす。そして――――
「しかたないんや。しかたないから・・・勘弁してくれよ〜」
しばし、揉む。
一秒にも満たない時の中で、俺の手には新たな文珠が生成されていた。
それを確認すると、鈴鹿も加速した時の中に――――――
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
>172
あと少しで少女の体に到達する・・・・・・
柔らかい肉体の感触を想像し、人狼は暗く笑う。
だが、その笑みは突如肩に走った激痛にかき消される。
鋼糸で編んだ巣。それに突っ込んでいたのであった。
勢いがついていたのも災いした。
肩の骨の辺りまでずぶりとめり込み、赤い血が体をしとどに染める。
失速した人狼は肉を殺ぎ落としながら地面へと落下した。
その眼は怒りで爛々と燃えている。
腰からヌンチャクを取り出し、その感触を確かめる。
そして咆哮と共に、ヌンチャクを振り回しながら少女に突撃していった。
次第に光を放ち始めるヌンチャクが光の筋となって空を斬った。
お面ライダーVSリロイ
>177
「ミギャァ〜〜ッッ!!」
顔面をしたたかに打ち、おまけに露店に突っ込んだ
その殺陣の派手さに、群集から拍手があがる
何とか瓦礫の中から身を起こしたが、もう何がなんだか分からない
「ウルトラファイトだこの野郎!」
リロイの足を踏みつけ、身動きを一瞬封じると左右の猛ラッシュを顔面にかけた
>174 vsモーラ
20秒後、足早に移動を完了させた彼は、床にひれ伏す少女を見下ろしながら思う。
勝利。
完璧なまでの勝利。
息も絶え絶えなこの少女。
逆に私は――――無傷。美が一切汚されていない。
ふむ、あとは勝利の栄光を味わうのみ。
さて、問題です。
『勝利、栄光、戦利品』――――この三つの言葉から連想されるものは?
活ッ
「答えは三番の『乙女の血液』ですよぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!」
眼下に倒れ込んでいる少女の細い腕を、白い両手を無理矢理己の両手で掴み取り、持ち上げる。
哀れ、少女はアモンの腕に持ち上げられ宙ぶらりん。
力無くぶら下がる少女のそれはまさに敗者。磔の聖者。
そして、敗者に課せられる宿命――――
白い肌
白い首
白い心
白い牙
白は美しい。
そして――――汚れ無き白を浸食するかのような赤は更に美しい。
少女の白い首筋に突き立つ、白い牙。
そこから僅かに流れる一筋の赤。
――――美しい。まさに美。美その物だ。
>176 vsアセルス
火掻き棒を構えた瞬間、
「君にそれが使いこなせるのか!?」
「えっ!!」
気付いて時には、既に腹部に強烈な一撃を決められていた。
「――ぐっ」
込み上げて来る吐き気をなんとか抑え、体勢を立て直そうとする。
しかし、そんな余裕を与えてくれるはずは無く、
たたみ掛けるように、連檄が襲い掛かって来る。
なんとか、火掻き棒とナイフで捌いてはいるものの、
ジリジリと押されて、何発かは体に届いている。
でも、その攻撃のほとんどは、剣の峰による打撃。
ならば―――つけ込む隙はそこ。
狙いは、次の一撃。
ナイフで受け止める様に見せかけておき、ワザと体で受け止める。
同時に剣を抱え込み、火掻き棒の一撃を撃ち込む。
さあ、撃ち込んできなさい。
>178
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
(…あ……残念……)
すんでのところで、獲物は飛び退き、肩から教室に飛びこんでいきました。
(…そんなに慌てなくても…よろしいのに…)
飛び退いた獲物を陰から確認すると、死角を縫いつつ後を追い…
子蜘蛛で教室の中を覗うと…武器を…刃物を手に…周囲を警戒しているようです…
(…そんな…狭い教室では…お気の毒ですけど……)
教室のすぐ外で…音を立てずにくすりと笑うと…
両の手に…短い鋼糸の束を出し、手元で扇のように広げます…
広がった糸…針は…緑色の雫に濡れ…
(…一本でも…当たれば…っ…!…)
教室のドアを細く開けると…腕を振り…短い毒針を放ちます…
鋭い先端には…夢現を見せるあやかしの毒を載せて…
>181
紅丸VSリロイ・シュヴァルツァー
奇声を上げながら、吹き飛ぶ紅丸。
振り下ろした右腕は、先程の関節技で痛めていたとは言え、
その拳に充分な威力を与えていた。
そして、露店の瓦礫から身を起こした紅丸を見据えるその表情は、
先程までの破壊衝動のみに彩られた凶悪な感じは見受けられない。
確かに凶暴な表情では有るのだが、先程にはない、
「愉しみ」の感情。それが、リロイの纏っている雰囲気すら
一変させていたのである。
「上等だ、乗ってやろうじゃねえか!」
素早く起き上がり、迫ってくる紅丸。
踏まれた足には頓着せず、両手からの拳の雨は
避けるどころか、むしろその内側をかいくぐり、
固い漆黒の頭を紅丸の顔面に叩き込まんとする。
>175 秋月由美彦vsチェルシー・ローレック
「これでしばらくは起きあがれないでしょ・・・」
少年には悪いがこの場で気絶してもらう事にした。
このまま彼をほおって置くわけにも行かない。
この後、警察にでも連れて行った方がいいのだろう。そうでなければ少年は何をしでかす物かわかったものではない。
そして、私は手刀を振り上げ、彼の首筋に振り下ろす―――
!?
彼が何かを呟いたと思った瞬間。私の体は何か見えない力で跳ね飛ばされ、
とても人間の力でやったとは思えぬほど遠くへ飛ばされてしまった。
距離にすると数メートル。
私は近くの壁に叩き付けられ、ずるずると下に座り込んでしまった。
遠くで彼は笑顔を浮かべた。
『君はオウムやネコを下して、僕に買ったつもりかも知れないが、それは間違いだ』
『ああいう形をとらせえることで、強力なエネルギーが操りやすくなる』
『だからそうしているだけで、僕の能力は本来、目に見える力ではない』
つまりは―――だ。
彼はこれまで手加減をしていた。
扱いやすさで自分の力に姿を与え、それを制御していた。
そして、裏を返せば―――
そんな事を考えている内に彼の回りのコンクリートが見えない手で抉り取られたかのように
捲り上がり、宙に浮かぶ。
そして、均等に切り取られた無数の破片は私に向かって、まるでミサイルのような勢いで
襲い掛かってきた。
彼の力の特徴は見えない事にある。
地下世界の能力者ならばそれぞれに分類があり、それに応じた戦い方があり、突破口を見出す。
だが、恐らくこれはPKと呼ばれる超能力の力だ。能力者の様に分類はできず、戦い方もまるで
わからない。
「万事・・・休す・・・か」
私はため息をつき、ゆっくりと起き上がる。
でも、ただやられる訳にはいかない。私にはルリ様を守る使命がある。
それを果たすまでは死ぬわけにはいかないのだ。
>182 モーラVSダイ・アモン
屈辱にも……吸血鬼に血を啜られているモーラ。
抜けるように白いその肌に、今は朱い筋が二つ流れている。
そう、吸血鬼の牙が突き立てられている場所から流れる血が……。
だが、その状況に至ってさえまだモーラは動かない。
まだチャンスは訪れていない。
たった一度のチャンスを逃すワケにはいかないのだ。
血を吸われて冷たくなっていく体に焦る心を、無理矢理大丈夫だと言い聞かせる。
そう、吸われたからといってすぐに死徒化するワケではない。
完全に死徒化するまでには時間が掛かる。
それまでに、宿主である吸血鬼を滅ぼせばいいのだ……。
だから、モーラはじっと恥辱に耐えながら待った。
決定的な隙を見せる、その瞬間を――。
私は最後の力を振り絞り手を夜空にかざし、重力の球体を創り出す。
恐らくこれが最後の能力だ。
私はその球体を中心にして強力な重力場を作りだした。
「一つ・・・いいことを教えてあげるわ」
迫るコンクリートの破片の先にいる少年を見つめながら呟く。
「質量の大きい物質は重力の影響を受けやすいのよ・・・」
コンクリートの破片は猛スピードで私の元へ飛んで来るが、全てがその勢いを失い
地面に力無く落とされる。大量に放たれたコンクリートの破片は全て私の目の前で止まり
コンクリートの山となってその活動を停止した。
だが、私の能力はそれを最後に力を無くしてしまい、実質私の負けとなってしまったようだ。
私はその場で座り込み、そして地面に寝転がって星を眺めた。
私は本当にかっこ悪いと思う。
せっかく地上まで上がって来れたと言うのにこんな場所でやられてしまうなんて・・・。
護衛役失格だとつくづく思う。
「ルリ様を・・・頼んだわよ」
私は覚悟を決め、瞳を閉じた。
ルリ様とあの二人の幸せを願って・・・。
お面ライダーVSリロイ
>185
もはや相手の攻撃をいかに避け、自分の攻撃をいかに叩き込むかしか頭にはなかった。
肘。頭突き。裏拳。膝。背面からの体当たり。貫き手。足刀。
知っている限りの技を叩き込んだ。
そうして日は暮れ、夜が明けていく―
観客はとうにいなくなった。
アドルフ・ヒトラー vs 横島忠夫 & 鈴鹿御前
【脱出する者の時間】
>163 >179
青年の手の中に、忽然と現れたのは、光り輝く剣。
その軌跡の先にあるのは───横島くんだ。
考えるより先に、身体が反応していた。
二人の間に飛び込むと、光の剣を大通連で遮る。
「人に名を尋ねる時は、自分が先に名乗るものよ」
余裕ありげに言ってみたが、不利なのは明らかに私の方だ。
仮に、剣技において私が上回っているとしても、空間の扉と時間遡航。
あの二つの能力がある限り、一対一では私に勝ち目はない。
ならば、どうする? 思案も纏まらぬまま、刀を振るう。
と、その時。
横島くんが動く気配がした。
何をする気? と訝しむ間もなく、その気配は私の後ろに回り、そして───
その手が、私の胸を掴んだ。
「!?」
交戦中であるコトも忘れ、振り返って怒鳴りそうになった、その時───世界の動きが止まった。
未だ消えぬ炎の揺らめきも、空に向け漂う煙の流れも、そして青年の斬撃も、全てが止まったように見える。
制止した世界の中、動いているのは、横島くんと私だけ。
文殊を使って、私たちの時の流れを変えたのだろう。
これならば───いける!
空間の扉だろうと時間遡航だろうと、認識できない攻撃に対しては使えないのは実証済みだ。
(一発殴るだけで、許してあげる)
そう考えながら、青年を唐竹割りに両断すべく、刀を振るった。
>187 vsモーラ
血だ。
真紅の血が、純白の肌から流れ出てくる。
赤い、
紅い、
朱い、
とても赤くて素敵な限りを尽くしている。
その純白の肌に、
その真紅の血を、牙を突き立て、飲む。
なんて、美味。
「――――――――じゃねえッ!!」
激マズ、不味い、クソ不味い。
これはヤヴァイ。不味すぎ。
不味い。とにかく不味い。存分に不味い。
不味い、不味い、不味い、不味い、不味い。
なぜこんなに不味いのか?
答えを探す。
あまりの不味さに少女を床に叩き付け、喉を押さえて咳き込んでしまう。
貴様、
貴様、
貴様、
貴様、
「貴様ァ――――同族だなぁ!! 人間では無いな!! おのれぇぇぇッ!!」
認識が甘かった。まさか吸血鬼とは……。
確かに肌は白い。
確かに瞳は赤い。
だが、『匂い』が無い。
彼女には吸血鬼特有の『匂い』が無いのだ。
そして変わりに怨敵の匂い――――
「そうか――――あなた、ナハツェーラー様の継嗣ですね……道理で同じ匂いを……!!」
吸血鬼の血とは得てして不味い。
その上、ナハツェーラーの因子を含んだ血となれば――――
真祖であり、紳士でありながら美食家でもあるダイ・アモンは、
毒を盛られたかのように苦しみ、もがいた。
――――それは、紳士にあるまじき絶望的な隙。
>183 アセルスVSアイン
隙を与えず、さっきのお返しとばかりに次々と峰を打ち込む。
彼女も存外に善戦するが・・・それでも少なからずダメージを与えている。
(ごめんね、痛いだろうけど・・・君が素直じゃないからだよ)
そう心で呟きながら、何度目かの一撃を与えようとしたとき。
「な!?」
剣を受け止められ、動きを封じられた。
そこに彼女の持つ火掻き棒が襲ってくる。
「くっ!」
とっさに剣を手放し、即座に身を捻る。
が、かわしきれずに尖った棒の先が私の肩口を浅く切り裂いた。
「こ・・・の!」
そのまま、身を一回転。
気がつけば、反射的に引き抜いたもう一本の剣・幻魔で彼女を横薙ぎに斬りつけていた・・・
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
>184
教室内に飛び込むんですぐ、使えるものがないか探す。
……カッターと携帯電話……何故か、タバコやライターまであった。
今の日本の風紀の乱れを嘆く暇などない。とりあえずポケットにねじ込んでおく。
そして、周囲の気配に気を配る。
手持ちのナイフでどうやってあの糸をかわすか…
予備の銃弾はあるが、今は何の役にも立たない。
焦りを抑え、息を整える。
一階廊下であるだけに意識を集中できないのが辛いところだ。
だが、廊下で気配が動いた。
わずかに扉が開く、また糸か―――?
予想に反し、閃いたのは短い鋼線だった。
とっさに机を蹴り上げて防御する。
それでも、一本だけが私の太股に突き刺ってしまう。
途端に目眩がした。身体の力が抜け、目が霞む。
しまった。毒……?
急いでその針を抜くが、遅かった。
私の身体を未知の毒が蝕んでいく。
その場で倒れ込みそうになるが、歯を食いしばって膝を支える。
まだ…終われない。
静かに扉が開くのを、息を殺して見つめ続けた。
>189
紅丸VSリロイ・シュヴァルツァー
あらゆる技の応酬。そこに型やルール等は存在しない。
正真正銘の「喧嘩」の形がそこにはあった。
リロイはその時、純粋に闘いを「愉しんで」いた。
この「喧嘩」のそもそものきっかけは言うに及ばず、
彼を破壊衝動へと駆り立てた、この世界への憎しみ。
怒り。悲しみ。その全てを、リロイは一時忘れる事が出来た。
彼のそのいまだ短い生涯の中で、これほど充実した時間も、
なかったのではないか。
ともあれ、それまでリロイが背負ってきた昏き人生。
その全てを吹き飛ばすほど、その闘いは強烈だった。
そして、何時間ほど、打ち合っていたか。
夜が明け、小鳥の鳴き声が喧しさを増し始めた頃。
二人の青年は、身体中を痣だらけにし、顔と拳を腫らしつつ、
地面に突っ伏していた。
そして、殆ど元とは比べようも無くなるほど変形した二名の顔には、
確かに「笑顔」が浮かんでいた―――
オレとリロイ
>194
【エピローグ】
二人で街の外れに座り込み
すでに変身を解いて面も外し、今は腫れ上がった顔にアイスを押し当てていた
「ガリガリ君、食うかぁ・・?」
リロイは手からアイスを引っ手繰ると、やはり食べずに顔に押し当てた
「お前、名前は・・?」
お互いに自己紹介をすると何故か互いに「笑顔」を浮かべ、熱く手を握り合った
わけのわからぬうちに始まってわけのわからぬうちに終わる
まったく人生というものはわからない
―後日、この街の新聞の見出しに「謎の怪人現る」と載った事は言うまでもない―
>186>188 秋月由美彦vsチェルシー・ローレック
地に倒れ伏したチェルシーをしばし見やる。
彼女の身体が、ぽっ、と炎を発して、一瞬にして燃え上がる。
炎が苦しみも感じる間もなく、一瞬にしてチェルシーの身体を焼き尽くしたのは、
せめてもの慈悲だろうか?
――――何故。
先程からその言葉だけがリフレインする。
――――何故。
僕は、彼女のオモイを叶えようとしたのに。
――――何故。
彼女は僕を受け入れなかった。
――――何故。
・・・わからない。
この、得体の知れない苦しみ、得体の知れない感情は、なんだ?
なんで、みんな僕を受け入れない・・・?
なんで、みんな僕をわかってくれない・・・?
「矢神、遼・・・君なら、きっとわかってくれるよね?」
Fin
秋月由美彦vsチェルシー・ローレックのレス纏めよ。
>107>113>118>127>128>148>154>155>156>167>168>175>186>188>196
あーもうっ!なんで私はこんなに弱いのよ!(w
>173 アーカードVSファントム エピローグ
魔女の首に牙を、舌を這わせるアーカードは、しかしその血の味に顔をしかめて死体を投げ捨てた。
そう、その魔女の体に流れているモノは血ではなかった。
血によく似た色をした霊薬は、とてもアーカードの舌に合わない。
だから、その死体をただ闇の餌食とした。
這いずり回る名状しがたい何かが、その死体を蹂躙し、食い尽くしていく。
次の瞬間には、綺麗サッパリ死体は消え去っていた。
食事を終えた狗をも呼び戻し、炎を振り払う。
未だ顔面の再生は完了していないが、後数分もすれば元通りだろう。
ズルリと顔を撫でると、焼け焦げた肌の下から新たな皮膚が再生していた。
「随分なギャンブルだったモノだ」
愚痴るアーカード。
無理もあるまい、あまりにも予想外の事態が多すぎた。
そもそもが、タダの吸血鬼禍の鎮圧であったはずだったのだ。
それが、突如現れた少年と処女、並びに魔女達によって大きく狂った。
それだけなら、むしろ面白い余興だ。
実際、少年との殺し合いは久し振りに楽しかった。
叩きつけられる殺意が心地よかった。
だが、それを魔女がぶち壊しにした。
「下らんイカサマをしてくれる」
もっとも、そこに少年の罪はあるまい。
イカサマをイカサマと知らずに掴まされただけなのだから。
むしろ、少年がその手札を行使するのはごく自然だ。
だからこそ、面白くなかった。
楽しい闘争にケチが付いたのはとてもとても悲しい。
手を、体の中に突っ込んでかき乱して抜き出す。
その手のひらには、少年によって撃ち込まれた無数の弾丸が握られていた。
じっと視線を手のひらの上の弾丸に注いだ後、手を傾けてその弾丸をこぼした。
「これほどの殺意と共に銃弾を受けたのは久し振りだな」
そう、殺意と共に叩き込まれた銃弾は間違いなくアーカードにダメージを与えていたのだ。
もっとも、巨大なコップを埋め尽くすには途方もない殺意が必要なのだが。
少年のそれは、確実に蓄積こそされていたモノの、やはり致死量には遠く及ばない。
「……」
無言でその場から立ち去るアーカード。
その心中は誰にも伺えることなく、ただ、いつか少年と再会することを確信しながら――。
TO BE CONTINUED
>173>199 アーカードvsファントム エピローグ
ふと…… 不安に駆られた様に目が覚める。
どこだ? ここは……
体に感じる心地よい重さと寝息、すぐ目の前にはエレンの安らかな寝顔が有った。
俺はそれを確認してようやく安心する。 生きているんだな、俺達は……。
あの戦いから数週間、ふたりは遠く離れた港町に居た。明日にはこの国をともお別れだ。
左肩には鈍い痛み、あの戦いの傷も普段の生活には支障が無い程度には回復していた。
吸血鬼アーカード…… 奴がどうなったか、もはや俺が知る術は無い。
ただ一つ、奴が滅びてはいない事だけは間違い無いだろう。
アーカードは何故あそこまで俺を追い続けたのだろうか?
戦う為……? そう、奴は自分自身を戦争狂だと言っていた。
あいつにとって戦いとは喜びなのか……? 俺は何か違和感を感じる。
命をチップに載せていないと言った時の奴の薄笑い、奴はあの時明らかに動揺していた。
笑いながらも『至極シンプルな殺し合いだ』と、始めて怒りを顕にしたのだ。
「あいつは…… 自分がチップを持たない事が…… 」
不意に、俺を見詰める瞳と視線が出会う。
深く、静かな眼差しは以前と変わる事が無い、しかしその中に柔らかな光が宿っている。
「いつから…… 見ていた?」
「…………ずっと…… 」
短い答え。 何も聞いては来ない、話たければ俺から話すと信じているのだ。
無言で髪を撫でてやると、エレンはほんの少しはずかしそうに目を細めた。
「明日からはまた…… 海の上で狭い船室の中よ…… 」
「……?」
「わたし…… もっとあなたを感じたい…… 」
驚くほど大胆な提案にエレンへの想いが沸騰する。
モンゴルの草原で、そしてあの街で、エレンはゆっくりと変わっていく。
そしていつか本当に幸せになれると信じて、ふたりは生きていく。
END
>192 vsアセルス
「え――!!」
腹部に焼けるような痛みが走る。
棒を投げ棄て、一旦大きく飛び退く。
しかし、私の身体はそのまま床へと倒れ込んでしまった。
直後、喉に熱い物が込み上げて来る。
そのまま吐出す。彼女のものとは違う、赤い血――
いけない……傷が内臓にまで達してしまっている。
痛みは腹部から全身へと広がり、手や足にも痺れが出てきている。
なんて、不様―――
このままでは、任務の達成は不可能……
ならば、取るべき手段は一つ。
ホルスターから小型拳銃―Copポリス―を引き抜く。
小型拳銃でありながら、357マグナム弾を発射出来る。
しかし、そのため銃身と呼べる部分が存在せず、射程距離など無いに等しい。
この銃の使い道。ファントムの秘密を守る、もう一つの方法。
―――私は、Copポリスの銃口を、自分のこめかみへと押しつけた。
>191 モーラVSダイ・アモン
……何だか、もの凄く屈辱的な気分になった。
ともすれば、吸血されていた時よりも。
ナハツェーラーの血がこんな形で役に立つというのも屈辱に彩りを添える。
しかし、吸血されたという事実は変わらないワケで、時間の余裕はほとんどない。
とにかく、今がチャンスであることは確かだ。
此処で決めなければ次はない……!
懐からナイフを取り出し、両手を添えて順手に構える。
そのままもがき苦しむ吸血鬼へと突っ込み、心臓目掛けて刃をまっすぐに突き出した――。
名無しクルースニク対名も無きクドラク
(この闘争は前スレの名無し祭りの翌日の闘争であり舞台を引き継いでいます)
(
ttp://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1019982784/535)
(此処にある名無し祭りを見るとより楽しめるかも知れません)
プロローグ
――――荒野。
辺り一面に広がる荒涼とした空間。
だが、そこに残る気配は異様であった。
鉄の香り、硝煙の香り、血の香り……そして死の香り。
これらはすべてこの場にて戦いがあったことを示すものである。
何処からともなく一人の男が現れた。
長身の男、その身体は全て黒一色で覆われている。
夜の闇が具現化したかのようなその姿。
だが、その姿はこの戦地に良く似合っていた。
男は荒野を歩く。
しばし歩いて男が立ち止まった。
荒野の一角、そこには――――1人の青年が倒れ伏していた。
白で覆われた青年。
黒で覆われた男と対照的なその姿は闇を裂く光のようだ。
男は青年を見る。
――――そして近くにあった岩に腰掛けた。
・
・
・
どれほどの時が流れただろう。
日は沈み、月が皓々と輝く姿を夜空に晒している。
男は変わらず岩に腰を下ろしていた。
その手元からカチャカチャと音が響く……何かを組み立てているようだ。
……最後のパーツをはめ込む。
繊細でありながら無骨な姿、それは銃であった。
鈍く輝く銃を懐にしまうと男は青年の方を見る。
「………そろそろだな」
その言葉に合わせるかのように青年が身じろぎをする。
そしてその瞼がゆっくりと開く。
意識が戻りゆっくりと身を起こす青年。
その姿に向かって男は気さくに声を掛ける。
「ようクルースニク、随分お寝坊さんだな……昨日は頑張ったみたいじゃねーか」
男――――吸血鬼クドラクは己の宿敵である青年にそう語りかけると、ニィ、と唇を歪めた。
姫城玲vsディオ・ブランドー
>前スレ375
「遠慮しておくよ・・・っ!!」
己の顔目掛けて迫る怒濤の連打。
その攻撃を止める為に放たれた複数の金属球が、さまざまな軌道を描いて吸血鬼の肉体にめり込むが
不死身の怪物はそれを意にも介さず突進し、力任せにその拳を叩きつけてくる。
数本の髪が風に舞う。
目蓋の上がざっくり切れる。
左肩が鈍い音を立てる。
そして、
青年の首に巻きついていたマフラーの端が千切れ、床にふわりと舞い落ち落ちた――――――。
「―――――姉さんとの唯一の絆を・・・。許さない」
青年の声音が変化した。
いや、声だけでなく、青年とそれを取り巻く全てが変化してゆく。
髪がうねり、瞳が碧く凍りつく。
青年の周りの空間にダイアモンドダストが踊り、やがて絶対零度の力場へと変化した。
分子運動の完全停止による無重力現象により、青年の体が浮かびあがり――――
繰り出された怪物の拳が、瞬時にに凍結して破砕された。
>205 姫城玲vsディオ・ブランドー
「お・・・おれの腕を!」
砕け散った腕を見て、ディオの顔が憎悪に歪む。
激痛が、ディオに胸中にドス黒い殺意を呼んだ。
「いい気になるなよKUAA!てめえは屍生人のエサだッ!青ちょびた面をエサとしてやるぜッ!」
これまでの冷静やダンディな態度など単なる仮面に過ぎない。
これこそがディオの本性だった。
腕の破片が地に落ちる前に、腕の血管が触手のように伸びて修復していく。
同時にディオの目が、異様な音と共に「ひび割れる」。
目に奇妙な穴が開き、そこから光線のような物が青年の喉元に飛んだ。
ディオは高圧で、眼球から体液を放ったのだ。
>145 vs両儀式
銀光が疾り、俺の左腕に吸い込まれる。
鎧の硬度を持つ俺の腕を、少女の短刀が、氷を溶かすように裂いた。
昇華されて歓喜をもたらす程の痛み。
その痛みに、俺は仮面の奥で深く笑みを浮かべた。
見る限り、少女の短刀その物は、業物というわけでもなさそうだ。
この傷を負わせたのは、あくまで彼女自身の能力というわけか。
「終わりが来る、か・・・」
感覚の消えた左腕を剣から離し、俺は呟いた。
思った以上に感慨深い響きが漏れる。
俺が知事として―――――ヒトとして行動しているのも、所詮は遊びに過ぎない。
この世界を面白くしてやるための。
この遊びにも、いずれ終わりは来るという事を悟ってしまったからか。。
だが、俺はこの遊びはもう少し続ける気だ。
その邪魔になるなら・・・この少女には死んでもらうしかない。
無意味な思考を追い払うと、俺は剣を片手で青眼に構える。
一歩づつ、少女へと間合いを詰めていく―――――――。
>204
死臭と血臭と残骸と死体。
朝日は宴の名残の幾許かを消し去った物の、残骸は未だ荒野のオブジェの域を脱していない。
楽しげに下界を照らす月は、弱々しい光を血の舞台に投げ掛けている。
――主よ――感謝します。
我を生かし給うこの奇跡を。
思考が削られたような頭で、青年はゆっくりと起き上がった。
薄い月光が、血と泥で汚れた純白のカソックを浮き上がらせる。
旧友に出会ったように声を掛けて来る黒衣の姿を、虚ろな脳が認識した。
懐かしい――声。耳朶を掠める、あぁ――どこだったっけ。 懐かしい、この――
端正な顔の厭な笑みを認識して。あぁ、と。彼は笑い返し、
――懐かしい――腐り切ったクズの声。
転瞬、死んだ様に弛緩する青年の腕が跳ね上がる。
「――モーニングコールにゃ遅過ぎるぜ、兄弟」
闇を織ったような長身痩躯。クソッタレに殺意を煽る端整な顔立ち――銃口と射線上で結ばれる黒衣が笑う。
鈍く黒い銃身を振る、この世の全てを嘲う笑顔。即ち――――魔。
銃口の前で平然と笑う黒衣へと、青年は嘲弄混じりの笑みを返す。
ゆっくりと巡り始めた血が、爆発的な勢いで理性を破壊していく。体を構築する細胞の全てが、ヤツを殺せと叫びを上げる。
コロセ――と。この世から消し去れ。――カケラも残さず、あの体を貪り尽くせ。
殺すのは必然。滅ぼすのは責務。命尽きようと世界が終わろうと―――コイツは、殺す。
喉が張り付いたように渇いている。体の節々が限界近くまで軋む――沸き立つ血が、欠陥の全てをカバーして全身を昂揚させた。
眠りに付いた筈の殺意が、一瞬で意識の表層を侵し尽くす。
「今日は寝坊も良いんじゃねえか、と思ったんだよ。振替休日ってヤツな」
――殺――せ。
奴等はクズだ。そしてコイツは、その中でも飛びっきりの。最高の――!
血に刻まれた知識と意思が、男の喉を食い千切れと声高に叫ぶ。
トリガーを引け。ヤツの脳漿をブチ撒けろ。早く。引け。トリガーを――!
まだ、だ。――ハァ―――ハ、ハハハ、ハァ、ハハハッ―――ハハハハハッ! まだ、まだだ――もう、少し――
――じり。
どちらが先とも言えないまま、白と黒の影が、一歩を踏み出した。
――それが、殺意の引鉄になった。
「ハ――ハハハハハハッ! 今すぐ逝けよ!? ク――ハハハハハハァッ!」
声高に叫んで、青年はマントのようにカソックを翻す。
手負いとも思えない速度で走った手が、グロックを落としながらカソックの内側に吊られたP90のグリップを掴み、
抜き出しながら親指がセレクターをフルオートに。
背後へと飛び退る白い風から、小口径の弾雨が降る――
>208 名無しクルースニク対名も無きクドラク
「ハ――ハハハハハハッ! 今すぐ逝けよ!?」
そう言うと奴は服の内側にぶら下げてた銃をぶっ放しやがった。
いきなりかよ!相変わらずの早漏っぷりだな!
ダガソレガイイ!
それでこそ俺と永遠に殺し合う存在――――クルースニクだ!!
音の壁をブチ破りながら迫る無数の弾丸。
だが俺の姿はすでにない。
俺は地に触れそうな程の低い姿勢で奴に向かって疾っていた。
人間にゃあ無理な姿勢だが俺にとってはどうってことはない。
一瞬で奴の目前まで迫る。
そして俺は大きく腕を振りかぶって、
「ハハハハハ!! まだ、寝ぼけてるみてぇだな。俺がその目を覚まさせてやるよ!!」
――――奴の寝ぼけ顔に叩きこむ!!
最初の一発だ。
鉛玉なんかじゃ勿体ねぇ、俺の握り拳でなけりゃな!!!
>203 vsモーラ
無音の感触。胸に、銀の、刃が、突き立つ。
痛みよりも、戦慄のほうが先に訪れた。
肩からアモンの胸に飛び込むように体当たりする少女と、それを抱き包むかのような体勢のアモン。
少女の手には白銀の刃が納まっており、アモンの胸には白刃が突き立っている。
戦慄。
――――マズイ
「貴様ァァァァ――――うきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
突き立てられた白刃を中心に、アモンの身体が白い灰へと変わっていく。
白刃を中心に、灰化は波紋のように広がっていく。
GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!
断末魔の叫び。
滅びの浸食は、既に身体を侵し尽くし、足を、手を、心臓を、喰らっていく。
そして――――顔も……灰と化す。
――――終わった。
と思わせた瞬間、アモンの身体が爆発。
完全に灰と化した真祖の身体は辺りを包む粉の霧となり、少女の視界を奪う。
白、白、白、一面濁った白。
そして……白に響き渡る不適な声。
―――フフフフ、安心するのはまだ速いですよドラキュリーナ―――
粉塵が晴れる。だが――――アモンの姿は無い。
アモンの声は響き渡っているのだが、肝心の姿が見えない。
馬鹿な……彼は一体何処へ!? 何処にいるというのだ!?
―――ふふ、私がどこにいるか分かるまい? フハハハハ!! 私は不死身だぁ!!―――
巨大な蝙蝠が、
所狭しと羽ばたいていた。
そんな――――アモン様ぁぁぁぁぁぁ!!
死んじゃ嫌でございますよぉ!!!
ま、待て!! 声が――声が聞こえるぞ!?
だが、どこから……!?
ぬぅぅ――――姿を見せろ!!
どこにいるんだ!!
おぉ、さすがはアモン様でございますね!!
姿身を消す術まで持っておられるとは、ピロン感激でございます!!
215 :
両儀 式 ◆qiRyouGI :02/05/06 17:43
>207 対暗黒騎士ガウザー
正眼。
決して派手ではなく、奇をてらったわけでもない、基本中の基本とされる型。
だが、それ故に、数多くある流派の中で最も多く扱われ、基本ゆえに最強と
呼ばれる、最初に学び、そして、誰もが最後に行き着く戦闘の体勢。
目の前の異形が取っているのは、そういう型だ。
つまり。
この異形の戦士が次に打ち出す刃は、最強にして一撃必殺。
ただ私を殺すという意思、殺意という一途なまでの思いで構成された、
純粋な殺人の技。
その思いは、限りなく透き通った青色をしていて。
私は一瞬、本当に、水滴がこぼれて波紋を作るくらいの一瞬だけ。
――――――その青い殺意に我を忘れた。
だが、それも刹那のコト。
次の瞬間には、手に持った短刀を右手に構えて、死の線を視る私がいる。
段々とにじり寄って来るアレは、最高の技で私を殺そうと狙っている。
なら、私もそれに相応に応えなければならないだろう。
私は、異形を睨みつけ、汗ばんだ右手で短刀を握り直すと、
にじり寄るそれに向かって、ただ、駆けた。
>215 vs両儀式
少女の眼が殺意に煌き、次の瞬間、彼女は一条の矢と化す。
純粋な殺意の結晶が、俺を殺すためだけに迫る。
俺もただ少女の命を絶つため、刃を疾風と変えて打ち込む。
―――――少女の殺意と、俺の殺意とが交錯する。
>216 対暗黒騎士ガウザー
駆ける、駆ける、駆ける――――――
私と異形を隔てる距離を、二人だけの世界の距離を、ただ駆けるという
動作だけで縮めていく。
異形の、その殺意で構成された刃が振るわれる。
瞬間、やけにゆっくりと、まるで世界自身がその一瞬を引き伸ばしたかのように。
その一撃は非道く緩慢な動きで私に振り下ろされた、ように見えた。
斬戟が届く寸前、私は思い切り地面を蹴り、跳躍。
そのまま、振り下ろされる刃の背に着地し、と同時に、そこを踏み台にさらに空中に
身を躍らせ、その勢いのまま空中で身体を反転させると、天井を強く蹴りつけた。
加速。
通常では有り得ない勢いで、異形の肩口から走る脆い線に、
私は短刀を振り下ろした。
天色優vs杉原悠(M)
導入1
その廃ビルは、高城市の繁華街から少し離れた路地裏に建っていた。
建てられたのはいいものの、資金難で放棄された……そういうビルだ。
その中に、一人の少年が荒い息をついて立っていた。
「逃げ切った……か?」
「いや、おまえはもう終わりだよ」
振り向く、少年。
その先――ビルの入り口には、ひとつの人影があった。
差し込む夕日のせいで姿は見えないが、その影の形は細く、痩せている。
「おまえ自身のことは別にどうでもいい――が、おまえをほおっておくと、統和機構の他のメンバーがこの街にやって来てしまう。
そうなる前に……おまえを、消しておかなくてはならない」
そう少年に言い放つと、彼――天色優はゆっくりと歩み寄る。
かっ、かっ、という足音が、静かなビルの中に響く。
と――
「は……ははっ」
不意に、笑い出した。
少年が。
「――何がおかしい」
あくまで静かな優の問いに、
「お前は――僕が考えもなしに、こんな所に逃げ込んだと思ってるのか?」
「……!?」
言うなり、少年は右腕を振り上げた。
天色優は見た。
盛り上がった二の腕、手首に向かって収束する靭帯、そして掌に空いた小さな孔――さしずめ、銃と化した彼の右腕を。
レベリオン。進化した人類。人に対する反逆者。
そう呼ばれる者達の力だ。
次の瞬間、入り口傍に積み上げられていた資材の山が崩れ、入り口を塞ぐ。
思わずそちらに気を取られた、その一瞬で、
少年は、姿を消していた。
おそらくは、あちこちに放置された資材の影にでも隠れたのだろう。
「――そうか」
辺りを見回し、優は言葉を紡ぐ。
「逃げたのではなく、ここに誘い込んだと――そういうわけか」
入り口は塞がれ、窓は全て打ち付けられている。
資材や鉄骨、そして柱が障害となり、視界を遮る。
「だが――ぼくとしても、負けるわけにはいかない」
静かな決意を込めて、優は暗闇を見据える。
誰も見ることの無い閉鎖空間の中。
暗殺者同士の闘争が、幕を開けた。
(トリップ勝負。
以後、杉原の攻撃判定と杉原の防御判定を交互に行う。
三ポイント先取で決着)
>217 vs両儀式
肩口を衝撃が貫く。
痛みなどと言う言葉が冗談に聞こえるほどの感覚。
声をあげようとするが、ただ息だけが漏れる。
眼前の世界が漂白される。
一瞬、意識が世界から断絶され、俺は床に膝を付いた。
視界が戻った時、俺は自分が人の姿に戻っていることに気付いた。
そして、その姿を動かす力も失われたことに。
―――――――こんなところで、終わりか。
ふと、そんな考えが脳裏をよぎった。
天色優vs杉原悠(M)
>218
「おまえが誰だか知らないが……僕の邪魔はさせない」
資材の影に隠れながら、杉原悠は口の中で呟いた。
変形し、淡い輝きを帯びた左腕を彼は握り締める。
それは、ショットガンの装填動作にも似て――
始まりは、ひどく唐突で単純だった。
虚空を切り裂いて、何かが優のもとへと迫る。
不可視の弾丸が。
>210 モーラVSダイ・アモン
白い世界、滅びの残滓が爆発して辺りを何処までも白く漂白していく。
そして、滅びの中に響き渡る夜族の声。
今しがたナイフの刃を心臓に埋め込まれ、確かに滅びたはずの吸血鬼の声が響いている。
「そんな……心臓に一撃を受けても滅びないって言うの!?」
その事実に半ば愕然とするモーラ。
それでは……モーラに打つ手が一体何処にあるというのだ?
――というか、とりあえず怪しげな巨大コウモリの姿は丸見えなのだが。
考えても仕方ないので、その辺りに倒れている兵隊が使っていた突撃銃――ステアーAUGを拾い上げる。
さっきまで撃っていたのだから当然セーフティは外れている。
銃口を、空を舞うコウモリに向けて引き金を引いた。
「クッ……!」
反動に負けそうになる体を抑え込みながら、銃身を安定させ続ける。
逃がしはしない……!
>220 vs杉原悠
R2ウイルス――というものがある。
人間の身体を変容させ、意志亡き廃人か、
人間を超越する能力を持つ超人か、いずれかにしてしまうウイルス。
そのウイルスの感染者を――レベリオン、人類への反逆者という。
(そして統和機構の、さらにはぼくへの反逆者ということか――)
厄介だ。
レベリオンは合成人間のようにある種の異能力を持つ。
トランスジェニック能力・・・
さっきの少年の能力がなんなのか、見極めなくては有効に戦えない。
―――――――思考を刺す、鋭い殺気。
澄んだ色の青。
向き直る間も惜しみ、逃げようとする――
>221 vsモーラ
銃弾。
音速の壁を突き破りながら襲い来る牙。
1発命中、2発命中、3発命中、4発命中、――――24発命中――――32発命――
―――きゃぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーッッ!!―――
研ぎ澄まされた弾頭が、美しい身体を抉る。
凶悪な輝きが、輝かしい肉体を貫く。
制御を失い、墜落。
地面を震えさせるほどの音を立てながら、巨大な蝙蝠は地に堕ちた。
―――き、貴様ァ!! なぜ分かった!? 今まで、この姿を見破れた者は――――
ただ一人。そう、あの御方だけ。
まさかこんな小娘に見破られるとは……。
この姿での戦闘力は皆無。
跳べるだけ。
二日も棺桶で眠れば全回復できるのだが……。
―――ふふふふ……良いでしょう。今回は貴女の勝ちにしてあげます―――
お互い、良い勝負ができました。
汗と汗。
拳と拳。
心と心。
身体が湧き出る熱き血潮を交え、今、こうして決着がついたのだ。
なんて美しいのでしょうか。これこそ勝負。闘争。漢のスポーツ!!
―――ということで、決着はついたので私はこれで失礼しますね―――
キャッチアンドリリース。それが基本。
例えハンターであろうとそれは守らねばならぬこと。
>219 対黒岩省吾
人間の姿に戻り、片膝をついたその男。
それはそのまま、この生命のやり取りが終わりを迎えたという事だった。
――――――さあ、幕引きだよ。全部終わりだ、これでね。
私は片手に短刀を持ちながら、遠くに聞こえるパーティーの喧騒の中、
ゆっくりと男に近付いていった。
もはや、目の前の男には何の余力も無い。
ただ、この手に持った銀色の凶器を死の中心に突き立てれば、それでこの仕事は
もう終わりだ。私の殺人衝動にも、それで折り合いをつける事が出来るだろう。
………だが、本来、殺人の快楽に高揚して然るべき私は、それとは全く正反対に、
何故か、いまいち気分が乗らないでいた。
モノを殺すときの高揚感を、どうにも感じる事が出来ない。
夏、「物を見るだけで曲げる」という女とやった時も、結局はこういう感じで、
そいつを殺してやる事は出来なかった。
何故だろうか。
私は、男の前に立ち尽くしながら、しばしその理由を考えていたが、唐突に
思い当たった一つの考えに、ああ、と思わず声を漏らした。
そうか。結局はあの女の時と一緒なんだな。
あの女は、最後の最後でその力を失って、殺す価値の無い奴に成り下がった。
それと同じコト。
私が殺したかったのは、さっきまでの異形の戦士。
もう何の力も持たない目の前の男に、私の興味を駆り立てるモノは無い。
多分、そういうコトなのだろう。
「もういい、白けた」
私は短く吐き捨てると、手に持った短刀を納め、未だに膝をついたままの男に
背を向けて、静かにその場を後にした。
>223 モーラVSダイ・アモン
戯言を残して去りゆく背中に、無言でフルオートの一斉射。
無慈悲な牙が、吸血鬼に逃げることを許さずに叩き落とす。
墜落したコウモリを一瞥して、ハンマーを拾い上げた。
カチリ、と音をさせて柄を捻る。
ハンマーから突き出す山査子の杭。
「灰は灰に……」
ブンと重い音をさせながら振り上げ、ぴたりと止める。
たっぷりと溜めを作った後――。
「塵は塵にッ!!」
決め台詞の締めと共に、唸りを上げて振り下ろされるハンマー。
貫通音と破砕音をさせながら、杭がコウモリの体を貫いた。
……ハンマーに100tとか天罰覿面とか書いてあるのは気のせいだろう、多分。
さっきまでハンマーも振り回せないほど満身創痍だったのも気のせい、なのかもしれない。
>225 vsモーラ
―――ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! な、何をする!?―――
一体、何度目の悲鳴であろうか。
だが、そんなことを数えている暇は無い。
まずい、これは非常にまずい展開だ。
―――ま、ま、ま、ま、ま、待ちなさい……!!―――
なんて女だ。
鬼か。
卑怯者だ。
死ぬ。
このままだと私は死ぬ。
そんな展開になってている。
死ぬのは嫌。
―――貴女! 同族でしょう!! なればそのような不毛なことは止めましょうよ!!―――
閃いた。
そうだ、なんで思い付かなかったんだろう。
彼女は―――吸血鬼では無いか。
吸血鬼同士、仲良くする。
それは当たり前のことだ。
殺し合う理由などまったく無い。
だから殺すな。
―――私達は仲間でしょう……ですから……お互い分かり合えるのです!!―――
今はもう使われていない―
暗闇へと続く線路――
長い長い線路の先・・・この国の首都 東京の地底深くには―――
忘れられ―――封じられた世界がある―――
― 太陽のないその世界の名は ―
っと・・・言う訳で『東京アンダーグラウンド』と言う作品に出演する
私、チェルシー・ローレックも参戦する事になりました。
私は地下世界(アンダーグラウンド)と言う所を支配する公司(カンパニー)と言う場所で
ルリ様・・・傷を癒し、死者を生き返らせることのできる反魂(はんごん)の能力を持つ
『命の巫女』の護衛役のやっている『重力使い』よ。
・・・とは言っても、今は裏切り者として地上の少年、そして『風使い』の
浅葱流美奈らと共に追われる立場なんだけれどもね。
それは良いとして私の能力の説明ね。
さっきも話した通り『重力使い』なの。
地下世界(アンダーグラウンド)には『能力者』と呼ばれる特殊な人材がいるの。
その能力者は回りの元素を操り、『水』や『炎』などの属性などに分類され、その力を使い戦うのよ。
そして、私の能力は『重力』。
その使い方は主に接近戦で、拳に強力な重力の力を収縮させて相手を思いっきり殴る。
それから重力波を相手にぶつけたり(ジオ・インパクト)、回りの炎などを重力で取りこんでそれで相手にぶつける(ファイア・インパクト)
その他にも重力を軽くして自分が飛んだり、重いものを投げ付けたり、重力の結界を作ったりとその使い道は様々よ。
それから弱点として、能力には限界値があるの。
訓練を積めばそれほど限界値は気にはならなく戦闘できるけど初期の私なら、
色々と気にしながら戦う事になるわね。
それと・・・立場としてはカテゴリーAかな?
ま、私の能力(ちから)が何処までここの化け物どもに通用するかわからないけど持ち前の気力と機転でカバーするわ。
自分で言うのもあれだけど、私の能力もかなりの物だし。
アンタ等に本当のハードパンチって言う物を教えてあげるわ!!
続いて自己紹介よ
出典 :東京アンダーグラウンド
名前 :チェルシー・ローレック
年齢 :19歳・・・じゃない?たぶん(w
性別 :女
職業 :公司(カンパニー)で巫女の護衛役
趣味 :掃除と料理?
恋人の有無 :・・・いないわよ(怒
好きな異性のタイプ :スケベじゃない男ね
好きな食べ物 :なんでも食べるわよ
最近気になること :ルリ様の安否。それから、ルミナ達の事かな?
一番苦手なもの :ゴキブリ
得意な技 :重力を使った攻撃 (例:ジオ・インパクト ファイア・インパクト)
一番の決めゼリフ :特にないと思うんだけどね・・・(汗
将来の夢 :ルリ様を地上へ再びお連れして、ルミナ達と楽しく暮らして行く事かしら?
ここの住人として一言 :邪魔する輩は片っ端から重力で潰して行くから覚悟しなさい!
ここの仲間たちに一言 :一緒に戦う事があったらよろしくね。私も足手まといにならないように努力するから。
ここの名無しに一言 :私達の戦いを存分に楽しんで行ってね!
>226 モーラVSダイ・アモン
何度も、何度も何度も何度も何度もハンマーを振り下ろす。
我を忘れるほどに振り下ろす。
伝わってくる感触から肉の潰れる手応えがなくなっても振り下ろす。
だが、そこまでして、完膚無きまでに叩き潰して、なおソレは生きていた。
ハンマーの下から、僅かな生命の反応がある。
「これでも死なないの……?」
うんざりしたように呟く。
もう、手札はない。
辺りを見回しても武器になるモノは何もなく、手持ちの装備も全て使った。
これでもなお滅びないとなると……。
「もう、コレしかないわね」
そう宣言すると、ハンマーから飛び出している杭を捻って取り外し、無惨に潰れたコウモリを見下ろす。
ぐったりした体へ手に持った杭を振り上げ――床ごとその体を縫い止めた。
そして、改めてハンマーを手に取って天井を見上げる。
ちらりと、コウモリの方を見下ろして冷徹に宣言した。
「あなたでも、太陽の光だけはどうしようもないでしょう? 夜明けまで後2時間、そこでじっとしてる事ね」
そう言い残し、適当な瓦礫に足を掛けて天井へと跳躍する。
後は、天井を砕けばそれでお終いだ――。
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
>193
針を放った直後…大きな音が…教室に響き渡ります…
(…!?……防がれた……ぜんぶ…?……
……でも…手応えは…あったはず…?)
…一瞬の不安……
…でも…ぐらりと傾く身体と…その身体を支える…小刻みに震える腕……
それに…太ももから突き立った…銀色に光る鋼線が…不安をかき消します…
(……………かかった……………)
安堵の笑みが…唇からこぼれ…
あるはずも無い心臓が…獲物への期待に…高鳴ります…
(…あとは…網に掛かった獲物を…巣に運ぶだけ…)
…結界の中に…こころを乱されることなく…入りこめ…
…あの糸から逃れるだけの…ちからを持った人間……
…いったい…どのくらいの滋養に…なるのでしょうか……?
わたしは… 品定めをするべく…
ドアを…静かに開けると… ゆっくりと…教室に足を踏み入れました…
アドルフ・ヒトラー vs 横島忠夫 & 鈴鹿御前
【脱出する者の時間】
>179>190
光竜剣の一撃は、飛び込んできた少女の刀で受け止められた。
「なるほど、私に先に名乗れと? ・・・いいだろう。私はアドルフ・ヒトラー」
「ドイツ第三帝国の総統、そして時間と空間を統べるものだ」
言いながら、さらに一撃を放った瞬間、少女の姿がかき消えた。
「・・・な、に・・・?」
そして、肩口に斬撃。
「ぐぁぁぁぁぁぁっ!」
知覚出来ない方向からの攻撃。
否、知覚出来ない速度の攻撃。
そう、斬撃を受ける一瞬、少女と少年の姿が見えた。
何らかの手で知覚を乱されている・・・?
否、ならば何故「みかみれいこ」のみ、こちらに知覚出来ている?
(まさか・・・神族・魔族の使う超加速か)
「ならば・・・」
どくん!
アドルフの心臓がその鼓動を早める。
心拍数を高めることで、生体としての感覚時間を引き延ばす『生体感覚時間加速』
(さらに、これで・・・どうだ!)
それに加え、時間を僅かにゆっくりと遡航させていく。
身体への負担は大きいが仕方あるまい。
そう、異なる時間流に彼らがいるというのであれば、こちらから出向かざるを得ないのだから。
超加速に匹敵する加速を得、アドルフは二人を認識した。
同じ『世界』にいるのであれば・・・
(この私に勝てるものは、存在しない!)
裂帛の気合と共に、少女目掛けて突きを繰り出す。
光の速さすら越えた、超速の一撃。
>180
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
どうやらかなり効いてるようだ。
初音はにやりと笑うと、自らの頬に飛び散った返り血を舐めとり
すかさず、狼に接近し爪を振るう
狼も未だに戦意を失ってはいないらしく、なにやら武器を振り回しながら
初音へと突撃しようとする。
だが・・・・私の方が速い!!
初音は狼の心臓へと致命の爪を刺し貫こうとする。
しかし、その刹那狼が手にした武器が光輝き
初音の爪よりも速くその身体を捕らえていた。
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
>230
敵が来るまで何秒あるだろうか。 私は震える指先で携帯電話を調べている。
だが、警察官を呼ぶ事など意味がない。なにより呼んだ警察官の命が危ない。
この携帯自体の番号を調べた後、カバーを取り外すのが精一杯だった。
……何か使える部品は……
そこまでの作業を終えた所で、扉が開いた。
ナイフを構え、そちらを見る。
そこに立っていたのは緑の髪の少女。
正確には、少女を模したメイドロボだった。
何故、こんな所に? と訝しんだのは一瞬の事。
メイドロボから「気配」を感じる。機械から感じるはずのないのものを。
(まさか、このメイドロボが?)
メイドロボの目は期待と、そして何か別のもので輝いていた。
―――食欲? ―――情欲?
私は、その目に根元的な恐怖を感じてしまった。
捕食されるものの恐怖。
かつて味わった事のある、圧倒的な絶望。
ギリギリと歯を食いしばる。
恐怖を感じる事は仕方がない。だが、それに飲み込まれては生き残れない。
恐怖を感じるのは生きている証なのだ。 …それを身体を動かす燃料にしなければ。
片手でナイフを持ち、もう片方の手でポケットの中の銃弾の弾頭を外す。
この火薬で、あのメイドロボに立ち向かえるだろうか。
私はなんとか隙を作ろうと、袖口に隠し持ったカッターを投げつけた。
この場所では、まだ勝てない。
必死で足を動かすが、その動きはもどかしいほどもつれていた……
>229 vsモーラ
酷い。鬼だ。悪魔だ。
私が彼女に一体何をした?
私は何もしていない。
向こうから殴りかかってきたのだ。
私は悪くない。なのに……。
とにかく――――死ぬのは嫌だ。
―――ま、待ちなさい!! なんでそこまで私を殺したいのですか!?―――
同族では無いか。仲間では無いか。初対面では無いか。
なのに――――なぜ?
とにかく、死ぬのは嫌だ。
慈悲を、
情けを、
―――あ、貴女が望むものを何でも言ってみなさい!! 私が力になってあげましょう!!―――
死ぬのは嫌だ。
お願いです、殺さないで。
慈悲を、
情けを――――
―――キャーーーーーーーッ!! いや、やめてぇぇぇぇ!!―――
死んじゃう!! マヂで死んじゃう!!
死ぬのは嫌なりよー!!
助けてー!!
それは哀願の叫び。
人の心を持つ者が、無視できる叫びでは――無い。
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
>232
接近する人狼に向かい、少女は貫手を繰り出す。
だが、人狼の振るうヌンチャクがその手を捕らえた。
幾条もの光の筋がその腕を嬲る。
光が通り過ぎる度に腕はひしゃげ、あらぬ方向へと折れ曲がっていった。
武器から光が収まる頃には、その美しかった腕は、
柳のように垂れ下がる一本の肉隗と化していた。
腕をその白い喉に伸ばす。
そして折れよとばかりにぎりぎりと締め上げる。
人狼の目は、残忍な光に妖しく光っていた。
>222 vs杉原悠 s vs 3 敗北 ポイント0−1
――避けられなかった。
間に合わなかったのではない。相手の攻撃が見えなかったのだ。
肩に突如として開いた穴から、血がごぽりとこぼれ出す。
「・・・なるほど、これが貴様の『能力』というわけか・・・」
不可視の攻撃。これに抗う術はないだろう。
ただし、常人ならば。
そして天色優と名乗る少年は常人などではなかった。
(だが、衝撃と傷の角度から――『どこ』から攻撃してるのかぐらい分かる)
跳ぶ。
ただそれだけで、数メートルをゼロに変える。
跳躍の勢いのままに、適当に見当をつけた資材を力まかせに蹴り飛ばす。
何十キロとありそうな木箱が、空き缶のようにすっ飛んだ。
>236
(トリップ判定はこちらで)
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
>233
獲物の顔には……焦り…驚き…恐怖…
…濃いサングラスを通してでも…ありありと解る…色々な表情が見て取れます…
…手にしたナイフが小刻みに揺れ…歯を食いしばっているようです…
…彼女は…わたしが…糸を放った事が…まだ…信じられないのでしょう…
……ひょっとしたら…悪い夢だと…思っているのかもしれません…
…でも…夢は…これから…そして……永遠に…醒めることのないものを…
わたしは…微笑を浮かべながら…床でもがく獲物…
―――――彼女 に…近づいて行きました…
「…そんなに…怖………」
不意に、彼女の腕が一閃、どこに隠していたのか、カッターが飛んできます…
…でも…お薬が効いているお身体では…避けるまでもなく……
…健気な抵抗に…苦笑しながら…言葉を続けます…
…必死にもがき…遠ざかろうとする彼女に、微笑みながら…
「…ほんとうに…怖がらなくて……いいんですよ…?……
……さあ……いっしょに……行きましょう……ね……?」
>235
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
「あああああっ」
一瞬の間に初音の片腕はぼろぼろになっていた
その悲鳴は痛みの悲鳴ではなく、無残な肉塊となった自分の片腕を見てしまった驚きと屈辱の悲鳴だ。
さらに、その無防備な喉元に狼の腕が絡みつく・・・・
初音は何とか抜け出そうともがくが、そうすればそうするほど狼の腕が深く食い込む。
(このままでは・・・・・・窒息か・・・首を折られるか・・どちらかね
かなり強引ですけど、やるしかなさそうね)
初音は身体を掴まれたままで、強引に背中から蜘蛛脚を展開する
まず、その中の1本を狼の肩の傷に突き刺し、喉を締め上げる腕を離させ
さらにもう2本の脚を狼の両足の甲に深々と突き刺し、地面に縫い付け切り離し
そのまま転がるように脱出する。
これで動きは封じた・・・さぁ・・どう出る?
八千草飛鳥(M)vsシヴァ(M)
>89
でたらめに襲いくる狂気の刃。
しかし、数多くの化物を屠ってきたシヴァにはその程度の攻撃は児戯と呼ぶこと
すらためらわれる代物だった。
『悪いが、子供のお遊びに付き合うヒマはない』
冷静な言葉とともにカタールが突き出される。
「ひいいいいいい」
情けない悲鳴とともに飛鳥がのけぞった。
しかし、何とか致命傷はかわしたものの、シヴァのカタールは飛鳥の胸に
浅くは無い傷をおわせていた。
「痛い……痛いよ」
飛鳥は公園の土に崩れ落ち、涙を浮かべつつ身悶えした。
その悲嘆と絶望に歪む美貌を見れば、どんな聖人君子も嗜虐心をそそられ、
彼を嬉々としていたぶるのではあるまいか。
転げまわる飛鳥の口から、喉になにか詰まったような侘しい声が漏れた。
「おまえ――ぼくに自分の身を食らうように命じ、ぼくの血と肉になったはずの
おまえ――どうして出てこないのです? 神はやはり、人間になにもして
くれないのですか?」
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
>239
ぎりぎりと締め上げる腕。白い喉に食い込む指。
人狼はその感触を楽しんでいるかのように笑みを浮かべた。
だが、その笑みは突然の痛みにかき消される。
少女の背中から突如出現した蜘蛛の脚が負傷した肩に、
両足に突き刺さっていた。
思わぬ反撃に腕が緩む。
その隙を突き、少女は転がるように離れていった。
(・・・・・・俺は・・・・・・何をしていた?)
彼の意識は闇の中から徐々に目覚めた。
鋭い痛みが、 彼の意識を急速に現実へと引き戻していく。
肩、および両足を刺し貫かれている。
これ以上は戦闘を続けることは出来ないだろう。
彼はそう判断した。だが、今更逃げるわけにはいかない。
それは彼女を侮辱することになるから。
自分の弱さから逃げることになるから。
彼は顔を上げた。その目には、確固たる覚悟が宿っていた。
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
>238
メイドロボは優しく声を掛けてきた。
敵意を隠した優しさではない。
それは心の底から、私の身を案じるような声だった。
泣いている赤子をあやすような純粋な声。
―――だからこそ、私は恐怖を感じた。
彼女は何を信じているのだ?
メイドロボをこれほどの存在にしてしまうものは……何だ?
ナイフを掴んだ手では、耳をふさぐ事は出来ない。
その優しい口調に、心が挫けそうになる。
だから逃げた。
必死に足を動かした。
あれに捕まったら人としては死ねないだろう。
それは吸血鬼となる事と同じように恐ろしい事だった。
ポケットの中は火薬で満たされている。
まだ、万策尽きたわけではない。
廊下を這うようにして、来た順にたどっていく。
玄関が糸で閉ざされているのはわかっていたが
私はもう、校舎の構造を思い出す事すらできなくなっていたのだ。
VS八千草飛鳥
>240
逡巡がないわけではなかったが、傷の疼きが消えるわけでもない
「お前のために涙を流す神などいない…
破壊神よ 我に力を……」
必殺の一撃を繰り出さんと飛鳥の頭上に大きく跳び、カタールを大上段に構えて
振り下ろした
>241
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
満身創痍の狼は未だに闘志を失ってはいない
まっすぐに初音を見据える瞳がその証拠だ。
初音はあきれたように、狼へと問い掛ける。
「まだ・・戦うつもりですの・・・・何が貴方をそこまで狩りたてるのかしら?」
「たとえ、この場で私を倒せても・・・・・
その果てに待っているのは死より無残な破滅以外ありませんわよ・・・・・・」
>201 アセルスVSアイン
私の剣は、見事に・・・そう、全く見事に彼女の腹部を切り裂いていた。
血を流して倒れ、吐血する彼女。
私は体制を立て直し、思わずその様子に見入っていた。
紅い血が、私をますます駆り立てる。
今度こそ、彼女を私のものに・・・
ゆっくりと、彼女に近づこうとしたその時。
彼女は身につけていたホルスターから銃を引き抜いた。
「・・・まだ、やる気なの? いい加減諦めて・・・」
言いかけて、私は様子が違うことに気がついた。
その銃口は私に向かずに、ゆっくりと、彼女自身のこめかみに当てられた。
「―――っ!」
瞬間、私は彼女の体に覆い被さり、その銃を持つ腕を捻り上げていた。
銃が暴発し、弾丸が天井に穿たれる。
だが、それだけ。
私に奪われ、その銃は二度と銃声を轟かせることはなかった。
「ふう・・・全く。勝手に死なれちゃ困るんだよ。
君の時間を終わらせるつもりは、私にはないんだから」
銃を放り出し、私は傍らに座り込む。
「で・・・君はいったい何者なの?」
>190>231 vs アドルフ・ヒトラー
【脱出する者の時間】
狂った時流の中で、俺は喘ぐ。
意識を尖らせ、圧倒的な霊力と空間の鬩ぎ合いを屈服させるが為に。
その余波に身を焼かれる苦痛に、口の奥を噛み締めながら。
鈴鹿の放つ縦の一閃は、男の肩口を切り裂くに留まった。
表情が歪み、苦悶を浮かべようとするが――――停滞する時の流れがそれを許さない。
畳み込むように俺も栄光の手、ハンズ・オブ・グローリーを発生させ、刃を延ばす。
止まっている相手なら、俺の腕でも当てる事は容易い!
――――――イケル!
――――――ここで、ここでこいつを倒せれば――――――
「俺が主役、この瞬間から俺が主役になるっ!!」
時の強制力に抗いながら、
抗う事の罪深さを身に刻みながら、
俺は栄光の手に微かな霊力を伝わらせ振り上げた。
そんな俺と男との視線が、一瞬、交錯する。
暗い思念の火が、眼球を心を脳裏を、撃ち抜いて肝を握りつぶした。
――――――な、何!?
動き出す。
凍った時を砕きつつ。
時流の流れにも、霊波の支配にも屈服せずに。
化石じみた帝国の総統を、時と空間の支配者を、名乗る男は停滞した世界を切り裂いた。
再び時流は歪み、超加速の結界内に男は土足で踏み込んでくる。
肩口の傷は大量の血を吐きだし、それでも男は再生させながら、腕を突き出す。
光の如き、閃くが如き、男の手が鈴鹿へ伸びた。
俺に出来たのは、最大レベルの霊波を放出して時流をさらに遅らせる事だけ。
掌で三つ文珠が、痛く手に食い込んだ。
>226 モーラVSダイ・アモン
何故、殺したいのか?
――決まっている、吸血鬼だから。
望むモノ?
――望むモノの道程に、吸血鬼の殲滅がある。
絶叫、哀願、生への執着。
――もう、死んでいるのに。
モーラは人ではない、吸血鬼でもない。
なり損ないのダンピィル。
彼女は誓った、化物のいない世界を目指そうと。
だから、これもその過程の一つ。
躊躇などない、するはずがない――。
下から上へ、すくい上げるようなハンマーの一撃が天井を粉々にうち砕いた。
瓦礫が哀れな吸血鬼の上へと降り注ぐ。
その中でも危なげなくモーラは床に着地した。
「後は太陽の光があなたを塵に還してくれるわ」
――私の手で還せないのは残念だけどね、と心の中で付け足した。
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
>242
一瞬の隙をついて…獲物は駆け出していきました…
…あやかしの毒を受けて…まだ…そこまで動けるなんて…
…力量を…誤っていたのでしょうか…?
…慌てて後を追い…教室の外へと駆け出します…
…身体を蝕む…蜘蛛の毒……
…そう遠くへ行けるはずもありません…
……すぐに…目の前に…よろついた姿が…現れました…
…精神力だけで…前に進んでいるような…
……歩き方を…覚え始めた幼子のように…ぎこちない…動きで…
(…でもね…聞き分けのない子は…御主人様も…お嫌いですよ…?
……もうすこし…大人になって……頂かないと…)
…ため息をつきながら…
…幼子の…獲物の足を狙い…硬糸に…粘糸を絡めて放ちます…
>245 vsアセルス
意識が、だんだんと薄くなっていく。
指にかかる負荷、遠く聞こえる発砲音。
自分以外の温もりを感じる手首。
―――何故、私はまだ死んでいないの?
痛みは更に増し、体感を越え、意識すら奪おうとしている。
朦朧と霞む視線を、眼前の少女に向ける。
声……が聞こえる……
「で・・・君はいったい何者なの?」
私? 私……は……
「私の名はアイン」
思うように動かない唇を動かし、なんとか言葉を紡ぐ。
「私は、人を殺す。ただ、そのためだけに生きている」
何故、こんなことを喋っているのだろう。
―――それは多分、彼女の瞳の所為。
彼女の瞳は、ただ、私の事だけを見ていてくれるから。
そう、マスターの視線とも違う。
ただ―――『私』を見つめてくれる瞳。
このままだと多分、彼女は私を殺してはくれない。
だから私は、既に感覚の無くなった腕を動かし、彼女にナイフを突き付けた。
『さあ、私を殺して』
その祈りとともに。
>247 vsモーラ
―――のわぁぁぁぁぁぁ……酷い!! 鬼!! 悪魔ァァァァ!!―――
瓦礫が己の身体にのし掛かる。
そんなことはどうでも良い。
問題は――――天井の奧にある闇夜。
そこから覗く月が、いつかは太陽になる。
それが己の死すとき。
うきゃぁぁー!! いやぁぁぁ!!!
タッケッテー!! D・S様ぁぁ!!
塵は嫌だ。
消えるのは嫌だ。
絶叫が響く屋内。
真祖ダイ・アモンは、己の身に迫り来る『滅』の影に恐怖した。
恐怖し、叫び続けた。
こんな時が、あと二時間も続くというのか。
この恐怖を、あと二時間も味わねばならぬのか。
――――――なんて哀れ。
A M O N
彼の未来に祝福あれ。
VSロゼット一行&ヨコシマ 「踊り子に餌を与えないで下さい」
>137
凄まじい悲鳴を上げつつヨコシマはその動きをピタリと止める。
今やヨコシマの体は霊力が逆流でもしたのか、物理的にもガチガチに固まっている。
「ハ、イイ夢見てるか? じゃあ死ね」
この距離、この間合いならどんな攻撃も外しようがない。
はずだった。
ヨコシマに向かって振り下ろされたスレイマンのロッドは、
硬質のなにかに遮られ、がちり、と鋭い音を立てる。
どうやらヨコシマの動きを封印するのに時間をかけすぎたようだ。
黒い悪魔が呪力の縛鎖を引き千切り、スレイマンに向かってその鋭い爪を突きつけて来ていた。
数合、ロッドと爪が打ち合った後、どちらからとも無く間合いは離れ、
数秒間の睨み合いの状態を生み出した。
その膠着を破ったのは、さきほどスレイマンを狙撃した少女だった。
『このォッ!』
と言う少女の掛け声と共に、彼女の持った銃からワイヤーの付いた弾が吐き出され、
スレイマンの腕に絡みついた。
だが、スレイマンはその腕を身体施呪し腕力を強化すると、ワイヤーを大きく引き絞り、
そして少女は宙を飛んだ。
「小娘の一本釣りだァ! ハッハァ!!」
『うわわっわ?!』
さらに、スレイマンは空を舞うシスターに向かって強い意志をもつ恫喝を叩きつける。
「ハ 、 小 娘! 手ェ 離 す ん じ ゃ ねェ ぞ ! ! 」
強力な言霊を込めた呪式発声により、少女の意思とは関係なく
その両手は、己が掌に包まれた銃をしっかりと握り締める。
さらに、スレイマンは自らの腕とワイヤーで直接接続されている少女の両腕を、
有線経由で身体施呪し、握力を強化してやる。
これで少女の両腕とその手に握られた武器は、文字通り「張り付いたように離れない」
スレイマンは頭上で少女を数度回転させ、スピードと力を蓄積させると
いまだ地上で凍りつくヨコシマに向かって、
きゃぁきゃぁと悲鳴を上げる少女付きワイヤーを差し向ける。
「ク、ハ、ハ、ヨコシマ! 小娘もろとも血肉を撒き散らせ!!」
重量数十キロの人肉のハンマーが、その対象を叩き潰さんと振り下ろされた。
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
>248
移動する途中で、携帯電話と火薬を放り出す。
握力が低下し始めて、ナイフを持つ手がおぼつかない。
両手でなんとか握りしめる。
一歩でも前に…そう、あの玄関まではなんとか…
そして、何とか玄関まではたどり着いた。
あのメイドロボはゆっくりと迫って来ている。
あまり時間はない。
身体を引きずり…さっき玄関の内側で見かけた公衆電話にたどり着く。
ナイフで硬貨のボックスを壊す。
震える手で、硬貨を投入。そして番号をプッシュ…
番号を押し終わったその瞬間、私の脚は粘つく糸に絡め取られていた。
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
>252
メイドロボは笑みを崩さずに近寄ってきた。
笑みに邪気は感じられない。
もう、私の抵抗力を奪いきったと信じているだけではない。
純粋に、自分の行為が私の為になると信じて疑わないのだろう。
(……早く……)
私が押した番号。それは先程の携帯の番号。
剥き出しにした配線とバイブ用のモーターが発火するのに、どれくらい時間がかかるのだろうか?
―――もしかしたら、火が付かないかもしれない。
―――もしかしたら、間に合わないかもしれない。
冷や汗をぬぐうことすらできずに、メイドロボの目を見つめていたが……
教室の扉の近くで、炸裂音が起こった。
さっき銃弾から取り出した火薬に引火したのだ。
一瞬だけ、メイドロボの注意がそれる。
もうこれが最後の隙だろう。
毒に冒されて意識を失う直前。必死に両手に握ったナイフを突き出した。
当たったかどうかはわからない。
私の意識はそこで途絶えた。
アドルフ・ヒトラー vs 横島忠夫 & 鈴鹿御前
【脱出する者の時間】
>231 >246
アドルフ・ヒトラー───ドイツ第三帝国の総統、時間と空間を統べる者。
そう名乗ったその青年の肩口に、大通連の剣尖が潜り込む。
その顔に浮かぶ苦悶の表情も、傷口から飛び散る鮮血も、ひどくゆっくりと感じられる。
これは───いける! このまま畳みかけて、一気に倒す!
そう思った、その瞬間。
アドルフの視線が、動いた。
明らかに同じ時の流れの中で、こちらを認識している。
その動きが、元の俊敏さを取り戻している───気づいた時には、もう遅かった。
一陣の光にも似た突きが、裂帛の気合いと共に伸びてくる。
───しまった!
男の手に握られた光の刃が、私の左の二の腕に喰い込む。
刃が捻られ、ブチブチという音を立てて腕が千切れる。
主を失った腕が、傷口から吹き出した真紅の血と共に地に落ちる。
想像を絶する苦痛が、全身の痛感神経を、これ以上ないくらいの勢いで叩いた。
「……………ッ!!」
覚えず、声にならない苦鳴が漏れた。
姫城玲vsディオ・ブランドー
>206
「無駄だ」
怪物の眼から発射された体液は、しかし青年の喉に届く事無く
絶対零度の力場に捕えられて飛散した。
「ディオ・ブランドー、仮面の力に溺れた怪物よ・・・」
青年の周りを飛び回る金属球が、弧を描いて飛び出した。
球は振動しながらぶつかり合い、更に加速を繰り返して標的を光の繭で包み込む。
「お前の住むべき世界はここにはない。炎に抱かれて地獄へ行け」
絶対零度の力場によって与えられた致命的な振動により、
繭の中の温度が太陽の中心温度近くまで上昇した。
「―――――――魔玉操、紅蓮地獄」
>255
姫城玲vsディオ・ブランドー
「ギャヤヤアアア!!」
光と炎の牢獄が、ディオの体を蹂躙する。
肉体が、再生しつつも炎に飲まれていく。
「こんなァはずでは・・・・・・おれのォ・・・人生・・・」
肉体が少しずつ炎に抉られ、落ち窪んだ眼窩が玲を捉える。
「うげ!」
断末魔の叫びとともに、怪物の動きが止まった―――――――。
Broken Doll vs Stupid Zombie ...vs Eccentric Butler『血塗れの遁走曲?』
>前スレ536
えぴろーぐ
数日後。
私はいまだに逃亡生活をおくっている。
Dr.オーバーの手下や、警察から。
あの後、ヘンタイのいた場所の足元に何故かあった落とし穴から
下水道を通って何とか脱出したものの・・・
「ああ、ついに私も前科者にぃぃぃぃっ」
劇場での虐殺はなかった事になっていた。
少なくとも、新聞で知ることの出来る範囲内では。
多分、どこかから圧力がかかったのだろう。
だけど、街中でブレードぶん回しての逃走・追跡劇は流石に誤魔化せなかったみたいで。
ミア・フォーテー22歳。元警察官。
騒乱罪および銃規制法違反により指名手配中。
逃走はまだ、終わらない。
>224 対黒岩省吾
「まったく、仕方の無い奴だな。まぁ、式らしいといえばらしいんだが」
膝をついた都知事に止めも刺さずに去っていく、黒を基調としたシックなデザインの
ドレスの後姿を見送ると、私はゆっくりと物陰から都知事の前に歩み出た。
やれやれと首を振りながら、手に持った煙草に火をつけつつ、
誰に言うでもなく独り言。
「しかし、正直驚いた。まさか、式の魔眼に死を貫かれて、まだ生きていられる
存在なんて、この世にあるとは……いや…ああ、なるほどな」
そこまで言ってから、ふと気付き、納得する。
すっかり失念していたが、この男は異世界の存在だったな。
式が視るのはあくまでも「この世界にある存在の死」。
異世界の存在の死を理解していない式の魔眼では、あれを殺しきる事は出来無い。
つまりは、そういう事か。
まぁ、そんな事はどうでもいい。
重要なのは、式がああなった以上、あいつはテコでも動く気は無いという事だ。
イコール、それはこの仕事の失敗を意味している。
ということは、だ。
私はこの仕事の成功による報酬を得る事は出来ないという事になる。
それは非常に困る、さて、一体どうした物か……。
一人思案に暮れていると、目の端に、未だに片膝をついて荒い息を吐く
スーツの男が映りこんだ。
ああ、すっかり忘れていた。
丁度いい商売相手が、目の前にいるじゃないか。
私は吸い込んだ煙草の煙を一つ吐き出すと、スーツの男に声を掛けた。
「ああ、都知事。きみの左腕は、残念ながらもう使う事は出来ないよ。
死の線を切り裂かれたんだ、その腕は完全に死んでいる。
もし困るようなら、……ここに連絡してくれればいい。
ちゃんとした報酬さえ払ってくれれば、今まで以上の腕を創る事を約束しよう」
事務所の連絡先と電話番号を書いた紙を都知事の胸ポケットに突っ込むと、
私も一人、パーティー会場には戻らずに、事務所への帰路へとつく事にした。
特に言うべき事も無い。
仕事が一つ失敗して、新たな仕事が舞い込んだ、ただそれだけの話。
今回の闘争の纏めだ。
>42>45>47>53>56>62>63>68>138>139
>140>145>207>215>216>217>224>258
(レイオット・スタインバーグvs蒼崎青子)
「……魔族の捕獲?」
又、訳の分からない依頼を……
つくづく、協会は……
魔族というのは魔法士という連中の成れの果てだ。
限界を超えた魔法の行使。
結果、呪素に身体が汚染され、破壊と欲望の権化と化す。
魔族となると、魔法に関しての制限が無くなり、又、一定クラス以上になると恒常魔力圏という異界も纏う。
魔族については、色々、協会でも研究しているが不明な部分が多い。
それに戦術魔法士の魔法とこちらの魔術は理論体系そのものが違うのだ。
研究が遅々と進まない。
だから、サンプルとして魔族を……
という事情は分かる。
けど、何故、こうも厄介な仕事ばかり押し付けるのか……
「はあ……、分かったわ。やればいいんでしょう?」
私は目の前の協会の幹部に渋々、承諾の意を伝え、部屋を出て行った。
>260
<トリスタン市郊外の病院>
「で、今、現在進行形で魔族事件が起きているのはここね……」
病院の医療魔法士の1人が魔族化したらしい。
まあ、丁度いい。
さっさと、回収して引き揚げるか。
ここは協会の勢力下ではないから、長居は望ましくない。
・
・
病院の2階の廊下にソレはいた。
まさに異形……
どこぞのホムンクルスの方がまだマシに思えるくらいだ。
「ああ、もう面倒ね……」
私はさっさとコイツを弱らせて、捕獲する為に破壊魔術の詠唱を開始した。
「W――G―P―――F――E――」
私の誇れる数少ない特技。
それがこの破壊魔術の詠唱だ。
極限までの省略法による魔術詠唱。
1回の破壊魔術の行使につき、要する時間はわずか、0,2秒足らず……
そして、魔術の破壊力増大のための詠唱による自己への暗示。
私はそれをまるで呼吸するかのような自然なこととして行使できる。
・
・
私の前に直径30センチほどの火球が次々に現れ、一気に魔族へと殺到した。
>261
「あっ……」
殺到したまでは良かった。
けれど、その後が問題だった。
……火球の密度が高すぎて、魔族は跡形も無く消し飛んだ。
「困ったわね……」
とりあえず、此処は撤収して、次の機会を……
――カツン
その時、背後で足音。
私が振り向くと、廊下の向こう側にモールドに身を包んだ戦術魔法士がいた。
そうね。
又、機会を待つのは面倒だし……
なら、目の前の魔法士を適当に魔族化させて、持ち帰れば……
「ええと、ごめんなさい。サンプルとして魔族の捕獲をしに来たんだけど……。
見てのとおり、跡形も無く、吹き飛ばしてしまったの。だから、あなたが魔族になってくれない?」
私は目の前の魔法士にそう告げた後、詠唱を開始した。
今度は失敗しない。
破壊魔術の威力は最小限にして……
「―――R――Y―I―」
拳大の無数の氷塊が私の目前に出現し、魔法士に息をつかせる暇もなく飛んでいく。
>262 vs蒼崎青子
……そこにいたのは、魔族ではない。
人間――それも女だ。ぱっと見た限りでは美人の部類にはいるのだろうが。
それでも、いくつもの死体が周辺に無惨にばらまかれているこの状況においては、
そんな印象よりも、ただ異様さだけが際だっている。
こちらの存在に気付いた彼女は、やや困惑気味の表情を一転させると――にこやかに、
想像を絶する台詞を吐きだした。
「――――あなたが魔族になってくれない?」
一瞬、なにを言われたのか分からずに。一呼吸分の間、その意味を咀嚼した後。
「……なんだと?」
声を上げた。無論、意味は理解出来る。理解出来るのだが――
(魔族を……捕獲だと? しかも、消し飛ばした――?)
魔族は、存在そのものが不条理の塊だ。ただ其処にいるだけで現実事象を書き換え、
魔法という名の絶対の力により、あらゆる物を蹂躙する暴君としてのみ存在する。
それに対抗出来るのは、戦闘用魔法の使用に特化した戦術魔法士だけだ。
しかしそれでも殲滅が精々で、生きている限り周囲に破壊をばらまくそれを捕獲など、
到底出来る物ではない。それは、魔法工学をかじったことのある物なら――
否、この国に住む人間であれば誰でも知っていることだ。
だが、彼女はあっさりと言った。消し飛ばしてしまった――と。見たところ武器も持たず。
そして、モールドを纏っていないことからも、魔法士ではあり得ない。
「あんた、一体――?」
>263 VS 蒼崎青子
言いかけたその言葉は、彼女自身の行動によって回答される。
口から紡がれているのは――呪文。
だが、これは自分たちの扱う呪文書式とは明らかにその基本構成……いや、根底となる
概念が異なっている。これは――――!
「――――『魔術師』!?」
その驚愕の叫びよりも先に正面に無数の氷塊が顕現した。
ひとつひとつが拳大の質量を持つそれは、それぞれが意志を持つかのように、一斉にこちらに
躍りかかる。殆ど反射的に、スタッフの呪文選択装置に手を伸ばした。
歯車が回転する小さな音と、何かが噛み合う硬い音。
目的の呪文書式板が装填位置に固定されたことを確認して、彼は勢いよく操作桿を引いた。
無音詠唱。それをそのまま、正面に突き立てるように構えると、鋭く撃発音声を叩き付ける。
「イグジストッ!」
氷塊が到達するよりも一瞬だけ早く。正面空間に波紋が走る。<デフィレイド>発動。
それはちょうどレイオットを覆い尽くすように展開すると、襲い来る氷塊のことごとくをはじき飛ばす。
氷塊の終了と共に、<デフィレイド>もその効力を失っていた。
一瞬の空白。
それを破ったのは……黒いモールドに身を包んだレイオットだ。彼は視線を、目の前の彼女――
魔術師に合わせると、静かに口を開く。
「はっ――いきなりかよ。随分とご挨拶だな。魔術師ってのは、そんなに礼儀知らずな連中なのか?」
仮面の内側には……不敵に歪んだ笑みが浮かんでいる。
>264
私の放った氷塊郡があっさり消失した。
なるほど、眼で見るのは初めてだけど、これが噂の……
『はっ――いきなりかよ。随分とご挨拶だな。魔術師ってのは、そんなに礼儀知らずな連中なのか?』
魔法士が毒舌を私に叩きつける。
「そうよね、確かに礼儀知らずよね、魔術師って……。でも、魔術師はね、目的の為なら手段を選ばないものなのよ」
くすっと笑って、話を続ける。
「まあ、私もこういう厄介な依頼には正直、辟易しているんだけどね。……ここで話すことじゃないわね」
確か、魔法士を魔族化させる為には……
「ああ、あなたを魔族化させるには拘束度とやらを全部、使い切らせて、なお魔法を使わせればいいのよね?」
何しろ、面倒なことには変わりはないけど。
「……安心して、あなたを吹き飛ばさないように極力、手加減をするから。正直、この建物を吹き飛ばすなら、
1分足らずで吹き飛ばせるけど……。そうは問屋が卸さないのが辛いわね……」
溜息をつきつつ、愚痴をもらす。
おしゃべりはここまでだ。
では、早速、仕事にかかるとしよう。
適当に低威力の魔術を乱射して、防御魔法を使わせて、拘束度を無駄遣いさせるか、
「――T――S―X―Q―――A――」
私が詠唱を開始すると同時に、私の前の大気が揺らめき、炎が具現化する。
そして、その炎は魔法士を飲み込むべく、魔法士に向かっていった。
私の超高速の詠唱は、詠唱の開始から、効果の発生まではタイムラグが殆ど無い。
通常、数秒かかる破壊魔術も私にはまさに一瞬で終わる。
いくら、未知の技術の塊の魔法士といえど、これに対応はできないだろう。
このペースで魔術を行使していけば、割と楽に終わるかもしれない。
私の目の前には絶えず、炎が具現化されつづける。
第2の炎の波、第3の炎の波、第4の炎の波………
これらが生み出されると同時に、魔法士へと向かっていった。
>265 vs蒼崎青子
一分足らずで吹き飛ばせる――そう豪語する女の表情には、微塵の変化も見られない。
僅かな気負いすらなく、「手加減する」とまで言ってのけた彼女に対し、彼は苦笑をこぼしていた。
「……随分と舐められたもんだな、おい。まあ、別に構わんのだがね」
だが、こちらのその呟きには答えずに――あるいは聞こえなかったのか、溜息と共に彼女は
詠唱を開始する。
だが、口頭によるそれよりも、機械的に一気に魔力回路を構築出来るこちらのほうが早い。
相手の術発動に先駆けて、魔法を撃ち込もうとスタッフを操作――する前に。
彼の目の前には、すでに『炎』が広がっていた。
「――――な!?」
しかも、ひとつだけではない。連鎖するように次々に生み出されていく魔術の炎。
その規模もさることながら、何より――――
(速すぎる!?)
そうしている間にも次々と発生する炎の群れ。
レイオットはどんっ――と言う音を立てて地面を蹴り付けると、大きく背後に跳躍し、ほんの僅かな距離を取った。
その間に無音詠唱。新たに選択された基礎呪文、一回分の魔力が活性化する。
発動範囲を設定し、そして――
「顕ッ!」
撃発音声。同時に、胸元からふたつの拘束端子が弾け飛ぶ。<ジャミング>が発動。
瞬間……不可視の魔力回路が、迫り来る炎のいくつかに直撃。
そのまま、始めから何もなかったかのように消滅する。だが。
「流石に……この量は無理か」
もともと瞬間的に対象の魔力をかき乱すだけの<ジャミング>では、連続で撃ち込まれる魔術には対応しきれない。
そうしている間にも、彼女の一言と共に、追い打ちをかけるようにさらに新しい炎が生み出されている。
拘束度という制限が存在する自分では、魔法の撃ち合いでは絶対に勝てない。
「…………ここじゃ、不利か」
一言吐き捨てて……再びスタッフ操作。操桿を引き無音詠唱する。
「イグジストッ!」
炎の向こう側にいる魔術師に叩き付けるように、彼は撃発音声を唱えた。
同時に、スタッフの先端から猛烈な量の音と光、そして魔力が部屋中に撒き散らされる。
相手の感覚の攪乱を目的とした<フラッシュ>だ。
レイオットはその閃光を背にして、部屋の入り口に向けて一気に駆けだしていた。
>266
「――――!?」
目の前を覆う閃光。
視界が白く染まる。
パタパタという足音。
次第にクリアになっていく視界。
部屋の外へと飛び出している魔法士
1人、残された私
「……逃がす訳にはいかないわね」
私も後を追って、部屋を飛び出す。
廊下を駆けていく魔法士。
次第にその姿は小さくなっていく。
「やれやれ、本当に面倒なんだから……。―P――Y―S―F―」
ぼやきをまじえつつ、詠唱を続ける。
廊下の中の大気に紫電が走る。
魔法士に向かって、電撃が幾重にも連なって走った。
>209
背後へと跳び退る白い風を、黒い疾風が猛追した。
濁った風を掻き分け、黒い風が疾り寄る。四つ脚の獣を連想させる
ソレは、地球上の如何なる獣よりも速く――
視界を薙ぎ払った弾丸の進行方向に黒衣の姿はない。ない。ない――!?
つまり――避けられた。
――ハ、ハア、ハハハハハッ!? 避けるかよソレをハハハハッ!?
意識を錯綜させる。近い――殺意。殺気。ヤツの――
視界の隅に揺らぐ黒衣。眼前にまで迫り来る拳。闇その物が迫る圧迫感。
拳が迫る。拳が――――
ギシ――り。
意識の外からの一撃。
腕が軋む。骨が揺れる。翳した左手では、叩き下ろされる拳の威力は殺し
切れない。ほんの僅かでもこの腕がズレれば、頭蓋は呆気なく砕け散る。
生死の天秤の上で、命が不安定に揺れている。
骨と骨が接触――一瞬の膠着。
鼻を掠める血臭が、一気に理性を奪い去った。
この闇を殺す事に、意識は根拠など欲していない。
ただ―――殺すのだ。
殺すしかない。この闇を振り祓い、殺し尽くす事こそが己の存在意義。
誰の所為でもない――理由もなく、ヤツは死ぬしかない。
コロセ。
――血が、叫ぶ。
昏い喜びを孕んだ双方の眼光が、狂気を湛えて交錯した。
「ふ、ク、ハ、ハハハハハ――テメエは―――は、ハハハハッ!」
何度君を夢に見ただろう。何度貴方の死を描いたのか。
久遠に刃を突き付け合う夜の王―――白い殲滅者は、彼の死を願い続ける。
白の記憶は、闇の王だけをただ、一心に求め続ける。
バケモノ。殺すべきモノ。暗い昏い闇の底へと、等しく追い遣るべきモノ。
あぁ、主よ―――私に、コイツをブチ殺す力を。
腕が圧し折れる寸前、青年はむしろ黒衣へと一歩を踏み出した。
イカレ掛けた腕を軸にして懐で姿勢を反転。閃く右手の袖からスイッチナイフが掌に落下、
「く―――フ、は、ハハハ、ヒハハハハハッ!」
左手に体重を乗せて拳を弾き上げると、青年は狂笑を浮かべてブレードを
起こした。聖句を隈なく掘り込んだそれは、夜の一族を殺害する狂気。
冷気を吸って冷えたアルミハンドルを握り締め、月光の照り返しを受ける
刃に殺意を塗り込める。
螺旋の軌道を描くステップで体を捻り、
「く――ク、ハハハハハハァッ! 寝惚けてんのはどっちだよおッ!?」
見上げる形となった黒衣と――刹那、視線が絡み合う。
僅かな逡巡も無い。
早く。ただ――早く早く早く。血の叫びに呼応して、脈が鼓つ。
まるでしなやかな獣の牙のように。
新円の月下――薄闇に浮く黒衣の心臓部へ、閃く白刃が一直線に走破する。
>267 vs蒼崎青子
「ちっ――イグジストッ!」
振り向き様に<デフィレイド>発動。1デュラピッド消費。再び展開した力場平面は、
彼女の元から伸びる雷光を受け止め――そして爆発するような轟音を轟かせた。
遮蔽呪文によって隔てられた雷撃は一切レイオットには届かずに、次々に拡散して消えていく。
呪文の効果終了と共に、間髪入れずに無音詠唱。
振り上げたスタッフをそのままに、魔術師に向けて、撃発音声を唱える。
「イグジストッ!」
<ブラスト>発動。
スタッフ先端に顕現した爆炎は、静かなうなりを上げてこちらを追う魔術師に向け撃ち出される。
それは、直撃すれば小型爆弾並みの破壊力を誇る<第一の業火>――
さらに新たな呪文を無音詠唱しつつ、レイオットは廊下の突き当たりを全力で駆け抜けていた。
>246 >254 vs アドルフ・ヒトラー
【脱出する者の時間】
――――――ぴっ。
頬が朱に濡れた。
赤い肉と白い脂が着衣を汚した。
何かが地に落ちる、重く湿った音を耳が聞いた。
鈴鹿が、鈴鹿の手が、千切れる。
蝋のように鈍い白となった肌が、跳ね、転がる。
その光景が酷く、酷くゆっくりと脳裏に刻み込まれた。
黒い空。
黒いアスファルト。
赤い血。
赤い肉。
白い肉。
白い肌。
ころころころころ、ころころころころ。
回る手首。
細い指先。
天を地を指す。
血の軌跡。
鈴鹿。
男。
そこにある、死というカタチ。
「う、うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!」
思考が惑う。
正気が乱れる。
それでも俺の体は、何処までも戦いというモノへ敏感に反応した。
ただ一歩、勝る加速が光を――――男の握る剣を掴んだ。
左手に移った「栄光の手」が、”光る剣”を掌の内に押さえ込む。
とっさの行動が男に微かな躊躇いと思案を呼ぶ。
好機、は一瞬。
――――――やるんだ。やらなけりゃ、死ぬ。
――――――美神さんも、鈴鹿も、助けられない。
「――んな、そんなっ、格好の、悪ぃ真似がぁ・・・出来るかぁぁぁああっ!」
文珠を握り締めた右手を振るう。
高まる霊波はそれさえも、霊体でくるみあげた。
新たなる「栄光の手」――――――の、出来損ないが。
その腕を俺は男に向けて、突き出し伸ばす。
文珠を絡み付けた二つ目の栄光は、時を越え光を越え男の元へ疾った。
>267
雷撃が魔法士の前で霧散する。
そして、魔法士から放たれる爆炎……
予定通りに、魔法士は拘束度を減らしている。
順調だ。
「――R―B―――S――G――」
爆炎に向かって、こちらも詠唱を開始する。
私の放つを無数の火球が魔法士の爆炎を相殺した。
そして、私の視界に入るのは廊下の角に消えていく魔法士……
「走って、追いかけても追いつくかどうか微妙ね……」
なら、やることは簡単だ。
魔法士への最短ルートを作ればいい。
「―――M―F――I――W―」
破壊魔術のベクトルを壁に向ける。
――爆発
壁に大穴が空いた。
「さてと、さっさといこうかしら?」
・
・
・
「―――A――X――N――」
私は詠唱を続けながら、前進する。
既に、5つ程度の壁を破壊魔術で突き破っていた。
――爆発
壁の向こうに見えるのは廊下。
私は、廊下へと躍り出た。
・
・
・
廊下で魔法士と対峙する。
「だから、逃がさないって言ったでしょう?」
目の前の魔法士に向かって、そう告げる。
「さて、残りの拘束度はいくつ? 出来れば、少ない方がいいんだけど?
ああ、面倒だから、ここらで派手なのを使ってもいいわよ?」
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
>253
私の放った糸は…狙いたがわず…獲物の足に絡み付き…自由を奪いました…
…最後に…獲物は…誰かに助けを求めるように…電話を…かけたようです……
(…でも……もう…おしまいですね………)
……全身を粘糸で絡め取ろうと…腕を振り上げた瞬間……
…その時…背後の教室から…パン…と……何かの爆ぜる音…
……私の意識は…背後に飛び……背後を振り向き………
…その一瞬に…彼女は…一騎に距離を詰め…両手でナイフを突き出し……
……私のお腹に…深深と…ナイフが突き立てていたのです……
「…あ…?……これ………そんな…?…」
……お腹のナイフから…伸びている…腕…そして……
…俯き加減の…彼女の…顔に浮かべている表情を…覗う事は出来ません…
……わたしは……彼女の……生きることへの執念と…
……自分の甘さを……そして…………運の悪さを…
……痛いほど感じながら…………目を閉じ………
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
>272
……目を閉じ……くすくすと………声を漏らしました…
「………………ふふ……残念……でしたね…」
一瞬の後、ナイフに刺された傷から…糸の束が…目の前の彼女を襲います…
…ナイフは…懐に忍ばせた…蜘蛛の腹を破り……納まっていた糸を…解放したのです…
…糸は・…目の前の…彼女に…絡み付き…覆い被さり……
「……運が……無かったんですね……お気の毒ですけど………」
…すでに…人間大の…繭と化した…獲物を見下ろしながら……
……わたしは…もういちど…クスクスと笑いました……
>137 >251 ヨコシマ&ロゼット一行 VS G.G.スレイマン
『ボーイ・ミーツ・ガール?』
イヤだ、イヤだ、死んでもイヤやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!
織姫が、織姫が、何でよりにもよってあんなのばっかりがぁ!
錯乱に錯乱が重なり、こんがらがる頭の中。迷走する俺に放たれた言霊が追いすがる。
ひたすらに叫び、泣き、喚く。それでも言霊が生んだ虚像どもは、俺を追い詰めていった。
もう、ダメだ。
いっそ死ぬ、死なせろ!
舌に歯を合わせると、ゆっくり力を込めて――――ふと、霞む視界に空が見えた。
いや、正確には空にある人影に。
空から降ってきたねーちゃんに、俺のピントは合わさっていた。
ね ー ち ゃ ん !?
「どうせ死ぬなら、その胸で死なせてぇ!」
なんか色々あった気もするが、全部忘れたっ!
強化された身体能力ってのは、こういう時に使うもんだっ!
足首の力だけで地を蹴り、宙を舞うシスターに俺は抱き付いた。
「これや、これなんや! 俺の求めていたんはこれなんやぁ!」
仄かな温もり、確かな柔らかさ。それを両腕に感じて・・・気が付いた。
「――――――解けてる?」
俺はスレイマンの呪縛から抜け出していた、この娘に抱き付く事で。
なんか俺、時々理不尽にスゲーな・・・・・・っと、ともかく! 今ならチャンス!
クロノは俺が少女を助けたのを見ると、再びスレイマンと向き合った。
軽く頷いて応えると、俺はシスターを抱えたまま地に降り、砂利を蹴り飛ばして加速する。
あの悪魔に文珠が渡ってるなら、俺が動けばトリックは完成するハズ・・・それに賭けて。
俺は引っ掛かったワイヤーを強化された膂力で引き、牽制しつつ、走る。
コンクリを蹴り、アスファルトを切り、少女を抱きしめながら。
幾度かの交錯、クロノの爪とスレイマンのロッドが生む火花を横目に、俺の足が止まった。
ある一点、そこにようやく到達したから。
俺、スレイマン、クロノが並ぶ一点へ――――――
懐の文珠「糸」が、クロノの持つ「専」が、スレイマンを「’」にして力を発する。
「縛」が完成した今、ヤツの動きは完全に束縛された。
でも、油断は出来ない。出来る相手じゃねーのは、充分に身に染みた!
右手を軽く握る。すると、力がほとんど戻っていた。
そこに新たな文珠を一つ、そして栄光の手を生みだし、身構える。
次に来るであろう行動を予想しつつ、珠に文字を刻んで。
――――――ところで、なんでこの娘はここまで抵抗するんでしょうか?
俺、そこまで信用ありませんか?
なんつーか、もう、泣いて良いですか?
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
エピローグ
>272>273
―――そして、夢からさめた。
身体が動かないので、目だけを動かして辺りを見る。
目に映るのはいつ見ても同じ暗い教室。
外の様子は分らないが、きっと満月が輝いている時刻だろう。
皮肉にも、吸血鬼の血が私の意識をときどき呼び覚ますのだ。
マルチという名のメイドロボが一人で私を捕らえた事に、
彼女の主人であるらしい初音という少女(の姿をしたもの)は殊の外喜んでいた。
私は「贄」というものになったらしい。
マルチは、始めて人形を買い与えられた少女のように
大事に大事に、優しく愛おしむように―――私を汚し続けた。
吸血鬼にもなれず、人にも戻れない。
私は、永遠にこのままなのだろうか……?
……ああ…また…… …意識が……なくなって来た……
次に…起きる時……私の……
……心はまだあるのだろうか……?
いつの間にか流れていた涙は、闇に吸い込まれて消えてしまった。
――― ラルヴァ【贄】
アドルフ・ヒトラー vs 横島忠夫 & 鈴鹿御前
【脱出する者の時間】
>254 >270
腕が。
私の腕が。
根本近くから。
千切れて地に落ちた。
痛みによる吐き気と失血による目眩が、交互に全身を連打する。
がっくりと、両の膝が崩れる。
私の手から離れた大通連が、がしゃりという音を立てた。
あまりにも、あまりにも致命的な隙。
目の前の男が、それを見逃すハズがない。
───ああ、ここで私は死ぬのか。
───一人で多くの鬼を斬って、一人で生きてきた。
───そんな私には、こんな死に方こそふさわしい。
そんな思考が、脳裏を支配する。
目前に迫る死を受け入れようとした、その時。
横合いから伸びた光の手が、光の剣を掴んだ。
───どうして、こんな簡単なコトを忘れていたんだろう。
───今の私は、一人じゃないんだ。
───だから……まだ、死ぬワケには行かない!
今まで知らなかった、仲間というモノ。
それが、私に最後の力を与えてくれる。
目の前に転がった大通連を、拾い上げる。
苦痛の縛鎖を振り解き、走り出す。
傷口から流れ出す血が、真紅の軌跡を描く。
立ち塞がる敵を、倒すため。
大切な人たちを、守るため。
私の全てを賭けて放つ、最高の、そして最後の一撃。
一筋の矢が、アドルフの心臓めがけて奔った。
アドルフ・ヒトラー vs 横島忠夫 & 鈴鹿御前
【脱出する者の時間】
>270>276
光よりも速い光の奔流が、少女の腕を吹き飛ばす。
少女の苦鳴に、知らず歪む頬。
――――もっとだ。もっとその声を、聞かせろ。
しかし、もう一撃を放つためにたわめられた剣を掴む少年。
叫びとも嗚咽ともつかない音を絞り出しながら、霊気輝くその手で。
一瞬、呆けた顔で少年を見る。
――――彼は、何を考えている?
「・・・この魔剣を掴むか。勇気を称えるべきか、無謀さを笑うべきか」
感嘆するように、侮蔑するようにひとりごちる。
「だが、キミ如きが、私を・・・皇帝たるアドルフ・ヒトラーを止められると思ったか!」
光竜剣が、輝きを一瞬曇らせ・・・爆発した。
否、それは爆発したかに見えるほどの輝き。
霊気の手は無惨にも四散し、それの核となっていた少年の手も、余波を受けて襤褸布のように。
しかし、恐怖をすら越える勇気か、恐怖に負けた故の無謀か、少年は逆手に霊気の手を生み出し、迸らせる。
さらには一度は崩れ折れたはずの少女も剣を手に、鋭く、速い一撃を。
少年への思いがその心を甦らせたか、それとも依って立つが闘争本能故か・・・
――――だが、そんなことはどうでもいい。
「――――いいだろう! これが最後の一撃だ!」
それらに呼応するように、超新星の如き光を纏ったまま、光竜剣も再び走る。
虹の尾を引きながら、時と光をさえも超越した三つの光が交錯した。
八千草飛鳥(M)vsシヴァ(M)
>243
すすり泣いてうずくまる飛鳥――どう見ても、その命は風前の灯であった。
シヴァのカタールがその狂気の人生を終わらせるべく振り下ろされる。
よもや、美しき食人鬼の命を断つべく振り下ろされたその一撃が受け止められる
とは!
シヴァのカタールがじりじりと押し上げられていく。
ゆっくりと立ち上がった飛鳥の顔には、先ほどまでの惨めさは奇麗にぬぐい
さられていた。
遥かな昔、豊葦原の中つ国の支配者であったさばえなす荒ぶる神が、現代の神の
依り代たる飛鳥を守るため遂に覚醒したのだ。
「散々苛められたおかげで、ようやく“奴”が目を覚ましてくれましたよ。
さて、お返しをしてあげなくちゃいけませんね」
にっと笑うと飛鳥は魔鳥のごとく跳躍した。空中でフロックコートが開かれ、
内部の隠しポケットに差し込んであった小ぶりの肉切り包丁がシヴァの頭上に
降り注ぐ。
さらに着地した飛鳥は古代の荒ぶる神の力をこめた凄まじい斬撃をシヴァに浴びせ
た。
>249 アセルスVSアイン
「ただ、殺すためだけ・・・?」
アインと名乗った少女は、私にそう答えた。
そして、私にナイフを向けてくる。
私は小さくかぶりを振ってその手からナイフを取り、床に置いた。
その行為の真意がわかったから。
「失敗したから・・・死ななきゃいけない?
そんな世界しか知らないの? 君は・・・」
アイン・・・確かそれは、数字の1のことだったはず。
―――そんなのは名前じゃない。ただのナンバーだ。
人間ではないただの殺人人形、彼女を示すのはただの識別用のコードナンバー・・・
そんな生き方を、彼女はしてきた・・・いや、させられてきたのか。
「そうか。それなら―――望みどおり殺してあげるよ」
言って私は、彼女を抱き起こした。
そして、耳元で囁きかける。
「私が、君に違う世界を与えてあげる。
君に本当の幸せを与えてあげる。
君に本当の名前を与えてあげる。
―――そう、アインはここで死に、君は生まれ変わる
君の名前は今日から・・・『ラセル』だ」
言いながら、口を彼女の首筋へと近づける。
少々性急だが、放っておけば彼女の身が危ういし、
それに・・・もう、この身の欲求は抑えられない。
「永遠に、愛してあげる・・・私のラセル」
そう言って私は、彼女の首に牙を立てた―――
VS八千草飛鳥
>278
悪い予感というのはえてして当たるものだ。
豹変した飛鳥の猛攻を前にし、わずかに舌打ちすると
迎撃に出ようとするがその包丁の前に動きがとれない
片方のカタールで頭上からの刃を払い、もう一本で前方の飛鳥を押さえ込む
落としきれずに降り注いだ包丁は顔に微細な傷を生むが意に介している暇はあらばこそ
この攻防は、全てほんの刹那に起こった事なのだ
だが、反撃の糸口が見付かった
降ってきた包丁の最後の一本を口にくわえ、飛鳥の顔面にめがけて投げつけたのだ!
これで仕留められるわけはない、だがひるんだ隙にカタールの三叉の餌食!
と両手ガードを開いた瞬間
>279 vsアセルス
首筋に熱い感触。
何かがそこから抜けていく。
痺れていた手足が、だんだんと感覚を失っていく。
―――ああ、これで終わる
長かった悪夢が―――
けれど……抜けていく度……失う度……何かが『私』を満たしていく。
ゆっくりと、静かに。まるで、新雪が積もるように、優しく……
私の心を埋めていく。
「君の名前は今日から・・・『ラセル』だ」
雪の上に、優しい言葉が降りてきた。
そして―――
私は意識を失った……
魔術士オーフェン・無謀編 「誰もお前は呼んでねえ!」番外編、
執事キース・残虐編 「では、この話は『血塗れの遁走曲』という事で手を打ちましょう」
キース・ロイヤル エピローグ「まともに収拾つけやがれ! 」
>257
オオサーカでの騒ぎから数日が経ち、ここはキサエルヒマ大陸の中でも四大都市の一つに数えられるトトカンタ市。
この街を大きなジグソーパズルとするならば、その宿はほんの一ピースにも過ぎないであろう。
キース・ロイヤルは、その一ピース――バグアップズ・インにやって来ていた。
ぴしっとした姿勢で立つ彼の傍らのテーブルの椅子には、全身を黒で固めた、
目つきの鋭い――いや、人によっては『悪い』とも捉えるかも知れない。そんな男が腰掛けていた。
『―――で、お前の言う田舎とやらに帰るはずが、そのオオサーカとやらに行っちまった、と』
「その通りでございます黒魔術士殿。不思議ですなぁ、
私はただ、ちょっと洒落を利かしながら道を進んでいただけですのに」
『いや・・・まぁ、良いんだがな。お陰でこっちは比較的何時もよりマシな生活を遅れたような気がするし』
「はっはっは、またご冗談を。黒魔術士殿がまともな生活を遅れる訳など」
『・・・お前の命があとどれだけ縮まろうと俺はまったく構わねぇんだが・・・』
黒魔術士がゆらりと立ち上がり、右手を執事に向ける。
魔術を行使するものであれば――ここにいる執事もその一人なのだが――彼の周りに浮かび上がる、
魔術の『構成』を見て取ることが出来たであろう。それは明らかに攻撃の類であった。
「まぁ、お待ちください黒魔術士殿。そんな暴力的でかつ短気な黒魔術士殿にピッタリのお方が」
『我は放つ光の白刃ッッ!!』
容赦無く放たれた光熱波が執事を襲い―――
―――一瞬後には、執事は黒魔術士殿のすぐ後ろに立っていた。
『・・・一応聞いとくが、何をどうやったお前は・・・』
「今回の旅での収穫その一、ドッペルキース君でございます。素材の新鮮さがポイント」
『いや・・・もう、お前が何をしようと滅多な事では驚かんつもりだが』
「そして今回の旅の収穫その二・・・ずばり、黒魔術士殿に婚約者が」
『何時かの怪鳥なら俺の今後の全生命及び人生を持って拒否する』
「いえ――れっきとした女性でございます。なんといっても、アンジェリーを、実に暴力的で、短絡的で、
破壊的な手段で葬り去ろうとしておいででしたから、これほど黒にさらに黒をかけてグログロな黒魔術士殿に
お似合いの方も居ないでしょうというか今後一切見つからないのではという感じでしたので是非お勧めしたいかと」
『言いたいことは終わったな、良し、我は放つ光の白刃』
そして爆音が辺りに響いた。
―――結局今回の騒動はなんだったのか。
それはどうやら当人である執事を持ってしても、いや、ひょっとしたら誰にも分からないかも知れない。
――トトカンタ市に、今日も魔術の花が咲く。
空を舞うのは、ただ執事だけ―― ――――お粗末。
(『血塗れの遁走曲(?)』――終――)
>271 vs蒼崎青子
爆音――
ぶち破られた壁が粉々に粉砕され、大きく穿たれた穴の向こう側から現れたのは……
当然のごとくあの魔術師だ。
「――逃がさないって言ったでしょう?」
どこかうんざりした口調で呟く彼女。その身体には、やはり傷ひとつ見受けられない。
足止め程度の意味で放った<ブラスト>だったが――この魔術師に対しては、その程度の
役にも立っていないようだった。
「やれやれ――出鱈目だな、ほんとに。なら、リクエストにお答えして……一発、行ってみるか!」
飛び退きながら、携えたスタッフを構える――その先端には、すでに真紅の魔法陣。
走りながら唱えていた補助呪文はすでに基礎級魔法の増幅を終えて、後はただ事象界面へ
の開放を待っている。果たして、これが思惑どおり通じるかは分からないが――
「<コンプレックス・アサルト>――顕!」
じぃん! と言う音を立てて、拘束端子が三つ弾け飛ぶ。
撃発音声を窓口として現実事象に上書きされた不可視の魔法は、そのまま魔術師に向かい発動し――
「――――ブレイクッ!」
着弾のその寸前、レイオットの声が響いた。
瞬間、撃ち出されたそれは一気に弾け――幾つもの<アサルト>を解放する。
ばらまかれた小さな<アサルト>は魔術師だけでなく、その周囲の物体にくまなく炸裂し、
無数の破壊を発生させる。砕かれた壁や天井は次々に音を立てて崩れ落ち……
悠然と佇んでいる魔術師に向けて襲いかかった。
>283
「器用ね……」
襲いくる爆発、瓦礫……
あまり、のんびり構えている暇はなさそうだ。
「――A―G――T―W――」
詠唱とともに空気が震える。
……そして、連鎖的に私の周囲で爆発が起こる。
魔法士の撃ち出した爆炎は全て私の産みだした爆発に飲み込まれ、私に届くことなく、
その役目を終え、無数の瓦礫も爆発に飲み込まれて、私を傷つけることは叶わなかった。
「もう、これで終わりかしら……」
もうもうと立ち込める煙の中呟く。
それだと、ありがたいが……
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
エピローグ
>275
…数日後… …夜の帳が下りた図書室……
わたしは… …いつものように…図書室で… …主への…糧を…精気を集めます……
ただ…違うのは… …ちょっぴりだけ…多めに…集めること…
…そう… …巣で横たわる…彼女に……
…生かしもされず…殺しもされず… …渇きに苦しみ続ける彼女に…
…束の間の… …安らぎを与えるために…
…主が…嬲り…穢したときに… …より多くの…歓びを得られるように……
…夜毎の…巣での…饗宴……
……彼女の…嗚咽と…絶叫を…耳にするたびに……
…わたしは…かりそめの心で…感じるのです…
……命あるものへの…嫉妬と…
……あるじに…食べられる事への…羨望を…
HMX-12(贄)END
>281 アセルスVSアイン(ラセル)
―――数日後、針の城。
その日も私は、新しい寵姫を寝所へと呼び出した。
「ふふっ・・・よく似合ってるよ、その服」
私の部屋の扉を開けて入ってきた“彼女”に、私は微笑みかけた。
ほんのわずかだが、彼女は照れたしぐさを見せる。
そのしぐさもまた、愛おしい。
私は、そんな彼女に近づき抱きしめ、唇を重ねた。
「・・・可愛いよ、私のラセル」
唇を離し、耳元で彼女の名前を呼ぶ。
そう・・・彼女の名はラセル。
私の名前をもじって私がつけた、彼女の名前。
もはや暗殺者じゃない。私のためだけに、私とともに生きる、私の寵姫。
「これからもずっと、君を包んであげるからね、ラセル・・・」
瞳を潤ませた彼女に私はそう囁き、再び口付けを交わす。
そう、ずっと、ずっと、彼女は私のもの・・・
永遠に・・・
>284 vs蒼崎青子
(……掛かった!)
立ちこめる粉塵が、レイオットと魔術師を完全に分断する。
内心で歓声を上げつつ、彼はその粉塵の中へと一気に突入していた。
彼に有利なことがあるとすれば、それはふたつ。
ひとつは、彼女はこちらを殺すつもりが無い――実のところ、魔族化は死と同意義なのだが――と言うこと。
そしてもうひとつは、彼女は魔法士に……そして魔族に関する知識が浅いと言うことだ。
魔族化を誘発するには、拘束度を使い切らせるよりも、モールドを破壊した方がその確率は大きくなる。
その気になれば、彼女がこちらに致命的な打撃を与えられるのは想像に難くないが……
知識の有無は、その全てを一瞬にして覆すことが出来る。
煙の中を通り抜けながら新たな呪文書式を無音詠唱。選択呪文は――
幕を抜けた。
開けた視界に映るのは、僅かな驚きを以てこちらを見つめる彼女の顔だ。
「ははっ――!」
声を上げつつ、スタッフの先端を彼女の腹に突き刺すように叩き付け――
「――顕!」
<デフィレイド>発動。生み出された力場平面は、スタッフと魔術師のちょうど接触面で展開。
まるで掌底のように打ち出された防御魔法が、魔術師に向けて叩き込まれる。
>276 >277 vs アドルフ・ヒトラー
【脱出する者の時間】
――――笑いたければ笑え、クソ野郎。
――――そのすかした横っ面に、今からたっぷりと礼をしてやっからな。
男の吐くセリフに応えるでもなく、無視するでもなく。
俺は二つの栄光の手に神経を張り巡らせた。
片方は貫く槍、片方は受け止める楯。
異変はまず、楯から生じた。
栄光の手が揺らぐ。剣の放つ絶望的なエネルギーに。
掴んだ刃は圧倒的な光量を以て、皮膚に影を焼き付ける。
煌々とする輝きは増幅を重ね、頂点まで達すると――――閃光となった。
栄光の手を、左手を消し飛ばす程の光。
指がひしゃげ、掌は焦げ、手首はその中に飲み込まれて消えようと――――
くっ・・・拙い。拙い拙い拙い!
遡る血流を腕に感じながら、暗く閉ざされそうになる意識を鼓舞した。
――――ここで気絶して、どうする!
――――まだ、あのクソ野郎に礼を返してないぞっ!
超加速を制御し、意図的に左手だけを遅くする。
爆ぜる肉が盛り上がり、皮膚が裂けかかった所でその動きが急速にゆっくりとなった。
時流の流れから取り残され、停止する世界に留まる左手。
それに引っ張られるかのように、俺の体も通常の世界に――――身体加速が殺された。
それでもなお、俺の意識は光の速度で男を睨む。
巡る精神はある解答を手に、微かに動く右手を、文珠を抱く右の「栄光の手」が伸ばした。
抱かれる文字は「粉砕」――――ただただ、破壊を目的とした忌むべき文字。
破壊の色に染まった霊波の腕が、光の速度で男を掴む。
掴んだ側から千切り、裂き、砕く。破壊の力は奔流の如く迸ると、男の体を撃ち抜く。
その、細く薄い体躯を貫いて、淡く輝く腕はなお一層輝きを増した。
アドルフ・ヒトラー vs 横島忠夫 & 鈴鹿御前
【脱出する者の時間】
>277 >289
我が身は、一陣の光。
我が身は、一筋の矢。
この一刀に、私の生命の全てを燃やし尽くす。
眩い閃光が、横島くんの左手を巻き込んで迸ったのも。
動きを止めた横島くんの、右手に光る「栄光の手」だけが、アドルフめがけて伸びたのも。
アドルフに触れた「栄光の手」が、彼の身体を破壊していくのも。
私は、もはや見ていなかった。
その瞳に映るのはただ一つ───目標たるアドルフの心臓、その一点のみ。
青年の懐に飛び込む。
最後の一踏み込みが、大地を噛む。
渾身の力を込めて、大通連を突き出す。
刃が肉を食い破る、確かな手応えを感じると同時に。
最後の力を使い果たした私の意識は、闇に沈んでいた───。
アドルフ・ヒトラー vs 横島忠夫 & 鈴鹿御前
【脱出する者の時間】
>289>290
ほんの僅か、その速度は及ばなかった。
時間にして、コンマ一秒以下の差。
だが、それは一瞬にして永遠の差。
この超超加速の世界では、埋めようもない差。
少年の霊波の手が、身体を貫く。
その手が帯びた『破壊』が、獣性細胞をさえも文字通り『破壊』していく。
――――或いは、これだけであれば、勝利は揺るがなかったかも知れない。
だが、少年は一人ではなかった。
自らをただただ必勝の手段として、一筋の矢のように。
・・・少女が、駆けた。
ボロボロと崩れた肉体、剥き出しになった心臓。
獣性細胞を制御する、最重要器官であるそれを、少女の一刀は違えることなく貫いていた。
「な・・・に・・・?」
――――崩れる。
ボロボロと、身体が。
――――崩れる。
ゆっくりと、時間が。
完全に支配していた筈の肉体が。
完全に支配していた筈の時間が。
まるで、指の間から水が零れ落ちるように。
崩壊していく。
>291続き
「は、はははは・・・」
嗤う。
自らの、無様さに。
――――まさか、これが終着点か。
――――友を捨て、情を殺し、心を歪めてまで求め続けた夢の。
「あはははははは・・・」
嗤う。
今や、それ以外に何が出来る?
――――いや、一つだけ。
――――ああ、彼らには与えなければならない。
――――彼らが望むもの。
――――彼らが闘った理由。
最早、5歳児ほどにまで退行した身体を、精神を励起させる。
ほんの一瞬、ほんの一瞬だけ、獣性細胞を制御出来ればいい。
限界を遙かに越えた肉体と精神の行使。
――――それを為しえたのは、奇跡だったのかも知れない。
――――だが、彼がそれを知ることは、無かった。
肉体は崩れ続け、時は戻り続け。
最後には、そこには何も残らなかった。
不死のゾッド vs ギーラッハ
【序章】
積み重なる死体、折れた矢、血塗られた剣、引き裂かれた旗。
何時とも知れず、何処とも知れぬ戦場に、いつもの光景――死の世界が広がるが、
その世界は、そしてそこに自らの足で踏み止まる最後の二人は、今は闇により覆い隠されていた。
不死のゾッド vs ギーラッハ
>293
久々に強敵に巡り会えたという歓喜に、異様に盛り上がった筋肉が躍動する。
「どうやら今回は失望せずに済みそうだな。喜ばしい限りだ」
沸き立つ血の感触に、自然と口の端が吊り上がった。
「我が名はゾッド。不死の(ノスフェラトゥ)ゾッドと呼ぶ者も居る」
刃にこびり付いた血を振い落とし、剣の柄を握り直す。
「刃を交える前に名乗りを挙げるなどという酔狂な趣味は、元来持ち合わせていないのだが……
貴様の名は是非とも知っておきたいと思ったのでな。紅の騎士よ」
不死のゾッド vs ギーラッハ
>294
幾多の敵を倒し、乗り越えてきた戦場、そこに残ったのは二人の影のみ。
目前に大剣をさげた異形の巨漢―――ゾッドと名乗った男と対峙する。
間違いなく最期にして最強の敵に向かい、ヒルドルヴ・フォーク を掲げる。
「己はギーラッハ、貴公も目前の敵を倒さずにはおれぬ様だな……」
ニタリ、と凶悪な笑みを浮かべ、ヒルドルヴ・フォーク を構えなおす。
ヒルドルヴ・フォーク を左肩口から前方へと突き出す様に持ち帰るや否や、
「参る!!」
一気に間合いを詰めながら上段より神速の斬撃を加える!
>268 名無しクルースニク対名も無きクドラク
クルースニクの手が俺の胸に伸びてくる。
その手に握られてるのは月の色に輝くナイフ。
イヤミったらしい聖句がびっしりと並んでいるロクでもない代物だ。
だが、それ以上に俺の身を刺し貫くのは奴の殺意だ。
まるでレーザーのように俺をぶち抜いてきやがる。
イイねぇ…イイじゃねーか。
イイよ、これだよ、これだ……これダこレダコれだコレだコれダこレダコレだコレダァァッ!!!
こういうのを待ってたんだ!
この感覚、奴以外の相手じゃ絶対に味わえねぇ。
イイぞクルースニク――――テメェは最高の兄弟だ!!
殺意に続いて疾ってきた奴のナイフを身を捻り半身になって回避。
心臓を貫くはずのナイフは俺の胸を僅かに切り裂くに留まる。
――――――――じゅわっ!!
実際にこんな音がしたかは分からねぇ。
だが、皮一枚だけ切れたはずの傷口は奴のナイフの力によって焼け爛れ、
全身の血管に硫酸を流されたかのような痺れが走る。
「ハ、ハハハッ! やってくれるじゃねーか、そう来なくっちゃなッ!!」
俺は伸びきった奴の腕を捕らえると力任せに思い切り放り投げる。
再び俺と奴との間合いが開く。
――――さぁて…今度はどうやって遊んだモンか。
ほんの僅かな時間思考する。
と、その時面白いモノが俺の目に留まった。
恐らくは昨日の戦いで使われた物だろう。
俺は無造作にそいつを手に取る。
煌めく白刃――――そいつを片手にまるでダチに自慢するかのように、
「いいモン見つけたぜ、ジャパニーズカタナって奴だ……行くぜオルァ! メン!メン!メーンッてかッ!!」
その言葉と共に飛び込んでカタナを振り回す。
型も技も全く知らねぇからただぶん回すだけだ……吸血鬼の力と速さで、だがな。
岩や地面をバターのように切りながら斬撃が奴に襲いかかる――――テメェもスライスしてやるぜ!!
>288
「―――!?」
煙の中から、現れる影。
……気づいた時には手遅れだった。
魔法士のスタッフが私の腹に押し当てられ……
ズンッ!と鈍い衝撃。
私の身体はそのまま、軽く数メートルは吹き飛ばされた。
「ぐっ………」
やられた……
確実に3〜4本は肋骨が折れている。
内臓に突き刺さらなかっただけでも、僥倖と思うしかない。
「……しくじったわね」
つくづく、自分が捕獲等といった任務に向かないことを実感する。
今更、悔やんでも仕方の無い話ではあるのだが……
「けど、まだ、終わりじゃないわ……」
ふらつく身体に喝を入れ、立ち上がり、魔法士に問い掛ける。
「さて、あと、いくつ、拘束度は残っているかしら? 2、それとも3?
どちらにしろ、いい加減、使い切って魔族になってもらうわ」
少し、大きめの破壊魔術を行使するか。
もう、無駄な抵抗はさせない。
「―A――C―――O―R―――]
廊下の気配が一変し、直径一メートルほどの白い灼熱の光球が私の眼前に形成される。
ぞくにいうプラズマという奴だ。
その白い光の球は魔法士を自らの白と同化させるべく飛来していく。
だが、これだけでは魔法士は終わらないだろう。
矢継ぎ早に次のプラズマの球が形成され、魔法士へと向かう。
いい加減、これで魔族になってもらおう。
ああ、本当に面倒な任務だったわ。
天色優vs杉原悠(M)
>236>237
少年の姿が霞む。
その刹那、天色の身体は意志とは無関係に横へと跳んでいた。
彼が隠れていた木箱が四散し、破片が彼の頬を傷つける。
「――――な」
何が起きたのか把握し、暗闇の中、彼は慄然とした。
銃弾でさえ捉えられる今の彼にさえ、敵の動きが見えなかった。
それはすなわち、敵の身体能力が自分と互角――あるいはそれ以上だということを示している。
――だが、まだ自分の方が有利。
そう判断し、彼は戦術を切り替えた。
暗殺型トランスジェニック能力を備えた彼の瞳は、ある程度の暗視能力を持っている。
悠長に狙撃する暇はない。
ならば、
「確かに、身体能力はお前の方が上のようだ……でもね」
言葉と共に、左腕を突き出し――放つ。
三発の、見えない弾丸を。
「どこから攻撃してくるのかがわからなければ、避けようがないだろう?」
>297 vs蒼崎青子
「……まだやる気か?」
ふらつきながら立ち上がる魔術師に、レイオットは問いかける。
表情に浮かぶ押し殺した苦痛は、端から見ている彼にもはっきりと分かった。
こんな連中と関わって、得になる事などただのひとつもない。適当に痛めつけて、
お引き取り願えればそれでいい――そう思っていたのだが。
「……そう言うわけにも、行かないみたいだな」
嘆息と共に呟く。こうなれば……もはや止む終えない。
(殺すしか、ないか――)
暗澹たる思いを抱きつつ、彼はそう結論した。彼女にとどめを刺すべく、スタッフを構え、
最後の呪文を選択しようと、呪文選択装置に手をかける。
と――その時だった。
彼女の呪文詠唱。一瞬の後に視界を埋めていたのは――白、白、白。
一面の、白い球体――!
「――――! イグジストッ!」
撃発音声と共に力場平面が更に発生。ぢぃん! 音を立てて拘束端子がひとつ弾け飛ぶ。
同じくして、魔術師によって生み出されたプラズマ球が、レイオットに向けて叩き付けられた。
それらは雷撃に倍する激しい音をばらまきながら力場平面に直撃、次々にその効力を拡散させていく。
「ぐ――!」
苦痛混じりの呻きを上げた。効果時間を超えて<デフィレイド>を無理矢理に保持しているために、
その反動としてかなりの負荷がレイオットの肉体に掛かっている。
ぢん――と音を立てて、拘束端子が更にひとつ弾け飛んだ。
(――――どうする?)
考える。ここでこのままたたずんでいても――黙ってプラズマの餌食になるだけだ。
自分の魔族化が彼女の目的なのだろうが、このままでは、それすら叶わずに全てが決着するだろう。
まあ、それはそれで……望む所ではあるが。
(……駄目か?)
どうすることも出来ない。こちらの魔法は残り一発。加えて、彼女にはまだまだ余力があるように思えた。
これ以上はどうしようもない――全身の力を抜きかけた、その時だった。
視界の隅に、なにかが見えた。それは……先ほど彼女の手によって壁に穿たれた大穴だ。
まるで刳り抜かれたように、施設内を一直線に貫通している。
気が付けば――レイオットは転がるように、その穴の向こうへと身体を飛び込ませていた。
胸元に残る拘束度は……残り、1だ。
>296
静かに――波紋一つない水面程にも静かに――闇を走る刃が心地良い。
――コレが、ヤツを食い殺す。
3――2――1cm――さあ! 捉えた。心臓を。さあ、今――
黒衣に包まれた腐った心臓。今、そう――ここを!
――逝け――よッ!
躍った心が、浅い手応えに萎えた。浅い。これでは――ヤツは、死なない。
あの状態から――このクズは、避けやがった。
「……チッ――!?」
白刃と交差の一瞬。
突き上げて――伸び切った腕を掴まれていた。姿勢制御のヒマも無い。
胸から蒸気を吹き上げながら、夜の王はむしろ笑って青年へと腕を伸ばす。
がくん、と全身が引き抜かれるように、上向きの重力に屈した。
刹那、常識的に無理な姿勢から、黒衣は青年を振り投げていた。
強制浮遊させられてぐるりと反転する視界の中、
――月――が、
こんな時だったが――独り、赤の惨状を見下ろす彼女は。
――綺麗――。
身を捻って足裏から着地。軽く深呼吸して、ナイフを構え直す。
殺意は保ったまま、心だけが妙に冷えた。
そう――殺す事には変わりない。殺される、のではない。殺すのだ。
冷静になって――それから殺そう。祈りはしないが、ヘカテーに感謝。
黒衣が不意に動きを止め、思い出したように屈み込んだ。
青年は軽く舌を鳴らす。
――黒衣の手元で、微弱な月光を反射して白刃が閃いていた。
瞬きよりも速い急接近。――型もクソも無いデタラメな斬撃。
ざ、と。内側から耳に残響する、厭な音。
「く――――ふ、フフ――は、ハハハ―――!?」
いた――い。
速度は充分。デタラメに振られた刃が、抉った胸から痛覚をズタズタにする。
鋭さが無い分、余計に神経を掻き乱される。
不死のゾッド vs ギーラッハ
>295
常人ならば反応すら敵わない速度で打ち込まれた一撃を、しかし剣で受け止めてみせた。
火花を散らしながら噛み合う刃と刃。
「確かに眼前の敵は倒さずにはおれぬ。が、何よりも……」
暫しの鍔迫り合いの後、おもむろに刃を左下方へと逸らす。
「貴様の様な強者との戦いこそが我が望みだからな!!」
体勢が崩れるが、構わず剣を右上方へと振り上げた。
驚異的な膂力が、その腕力のみで繰り出した斬撃をすら必殺の一撃と化す。
>299
魔法士にいくつものプラズマの塊が殺到し、そしてその威を失う。
しかし、私の無限詠唱の前では全く無意味な行為……
いくら防いでも、結局、私の攻撃の手は休まることは無い。
いずれ、魔法士に限界が来た時、それが魔法士の最後―魔族化になるだろう。
「―――?」
そう、思った瞬間に、魔法士の身体がピクリと動く。
瞬間、魔法士の身体が跳ね、私が空けた壁の穴へと飛び込んだ。
「つくづく、粘るわね……」
しかし、もう、流石に拘束度はないだろう。
あと、一押しで魔族化させられる。
「さてと、終わらせたら、焼肉でも食べに行こうかしらね」
そんなことを呟きながら、私も魔法士の後を追った。
>300
「あぁ、は――ハ、やってくれる――!」
激痛に身を強張らせるヒマはない。フザけた奇声を発しつつ、白刃の旋風が迫る。
夜の王の膂力から生み出される一撃は、媒体を無視するように岩を裂き大地を砕き、
大気を無茶苦茶に掻き混ぜる。
「――クソッタレが。ゴミは掃除しときゃ良かったな――」
呟いて、青年はブレードを閉じた。
ナイフで受けるなんてのは、意識除外の愚行。刃筋を見切ったとしても強度が持たない。
どうやって殺す? アレを避けろ。現状を打破しろ。隙を突いて喉笛を噛み千切れ。
ドクン――ドクン。ドクンドクンドクンドクンドクン――
激痛が思考を乱す。冷静でなければ、既に切り伏せられていたかも知れない。
血が、ゆっくりと殺意を巡らせる。月光を弾きながら迫る無数の銀線を知覚。黒と白の風が
混じりつつ、荒野に無数の傷を刻む。
――不意に。
青年は口元を僅かに歪めた。
乱撃の中、腕力だけで成り立つ大上段の一撃を避けてバックステップ。軽く振り出した右足を
小さく背後へと戻し――
かつん、と小さな接触音。青年の頭上へと、灰色の筒が回転しながら落下する。
「――ハハッ――ホント、色々落ちてるなぁ――ここは!」
落下した弾頭付きのパンツァーファウストのグリップを握り、即座に黒衣の足元周辺へと
ポイント。直撃は無かろうが、爆風と爆炎までを完全に凌ぐ事は出来ない。
黒衣の正面で青年は笑って、
「――Amen!」
白煙を吹き上げながら、破壊の具現が黒衣へと飛ぶ。
用済みのグリップを投げ捨てた青年は、弾頭の飛来と同時にショルダーホルスターから
リボルバーを抜いていた。
不死のゾッド vs ギーラッハ
>301
右下に捌かれたヒルドルヴ・フォーク 、即座にゾッドは剣を返し、切り上げの斬撃。
己は左に踏み込みつつ、ヒルドルヴ・フォークの元側を持ち上げる。
再び交差する刃と刃!
「――― 望む処よ!」
奴の斬撃を柄元で受け止めると更に踏み込む。
ヒルドルヴ・フォーク を引き抜く様に動くと、
「――― ふん!!」
彼奴の右で独楽の様に回転する、マントが纏わりつく様に己の身を隠す。
その勢いのまま胴に向って横薙ぎの斬撃を加える!
305 :
不死のゾッド ◆FushiL3I :02/05/08 22:29
不死のゾッド vs ギーラッハ
>304
右側へと踏み込まれながら刃が流される。
その刃を引き戻す暇すら与えず、回転した勢いをも乗せて繰り出される胴への斬撃。
「……ぬう!」
反射的に腰を引きながらバックステップするが、防具ごと腹を割かれる。
使徒であれば直ぐに塞がる程度の浅手ではあるが、
むしろその斬撃によりバランスが後方へと崩れたのが痛い。
(――間合いを取らせては不味い!)
咄嗟の判断で、身体を強引に引き戻した勢いを殺さずに踏み込み、
岩塊の如き右肩を突き出した。
>300 >303 名無しクルースニク対名も無きクドラク
キタ――――――――――――――――――――!!!!
カタナ越しに腕に伝わる奴の肉の感触に、
俺は思わず心の中で絶叫していた。
相変わらずイイ感触だぜ。思わずイッちまう所だった。
まだ早い。こんな所で満足するわけにはいかねぇ――――夜は始まったばかりだ!
続けざまにカタナをデタラメに振り回す。
腕の速さに付いていけずにカタナがしなる―――が、奴の身体には届かない。
――――チッ、やっぱ2度も当たっちゃくれねーか。
一瞬の間を縫って奴が地を蹴って大きく後ろに飛びずさる。
何かやりやがるつもりらしい。
――――上等だ。矢でも鉄砲でもパンツァーファウストでも来やがれ!!
奴が足を軽く動かす……マジかよ。
思わず奴の手に収まった物を一瞬凝視する……ハハ、瓢箪から駒かよ!?
まさか本当にパンツァーファウストとはな。
奴が引き金を引く。
白煙を上げて襲いかかる炎と衝撃が詰まった玉っころ……だが、遅すぎる!
銃弾ですら回避できる俺にこんなもんが通じる訳無え!!
その時、白煙の向こう側で奴が銃を構えるのが見えた。
――――ハッ、やってくれる! 爆発に紛れて狙い撃ちか!!
銃を抜いてる暇はねぇ!!
――――足下で爆発が起きる。
――――俺は腕を振り上げる。
――――奴はトリガーに指をかける。
――――そして、
「ハッハー!――――ウォォォォォアアアアア!!!」
俺は野球のボールのようにカタナを奴に投げつける。
どっちが早いか――――ヨーイ、ドン!ってか!!
不死のゾッド vs ギーラッハ
>305
横薙ぎの一閃はゾッドを切り裂きはしたものの完全とは言えず、ヒルドルヴ・フォークは
斬撃の勢いのまま振り抜かれた。
「―――!?」
後退したと見えたゾッド、しかしその体は即座に己へと怒涛の如く駆け出していた。
咄嗟に剣を持ったままの両手を戻し、身を庇うが――――。
――――爆発!!
そうとしか表現できない衝撃が己を襲う。
「ぬおおおおぉぉぉぉ!!」
踏みとどまろうと試みるも叶わず、後ろに大きく投げ出される。
なんとか転倒だけはまぬがれたが―――。
「ぐはぁっ!!」
吐き出される鮮血。 肋骨が折れて肺に刺さったに違いない。
此奴―――、人では無いと思うておったがよもやこれほどとは…… しかし……。
ヒルドルヴ・フォーク を正眼よりやや低く構えつつ思う。
なぜか、ニタリ――― と口元が歪む。
力のみで敵わぬのがこれほど面白いとは。
「セイヤアァッ!!」
ヒルドルヴ・フォーク で繰り出す神速の三段突き!!
志々雄真実(M) 対 閑馬永空
人も通わぬ山中、その奥深く。
ここに一軒の庵がある。
誰にも気付かれず、まるで世間から隔離されたかのように存在する庵。
この庵の主人は人との交わりを嫌うのだろうか?
それとも―――交わる必要が、無いのか。
ある夜、そんな庵に珍しく客が訪れた。
しかし、その風貌は異様その物であった。
包帯で全身……顔すらも包んだ男。
唯一窺える目に宿す光は冷たく、鋭い。
だが、その奥底に見えるのは、狂気にも似た全てを焼く炎のような眼光。
客人は、乱暴に戸を叩く。
やや間があって――――中から一人の男が顔を出した。
男の顔を認めて包帯の男は豪快に破顔し、親しげに語りかける。
「『不死身の剣客』、閑馬永空だな」
体が僅かに揺らぎ、反応を示す。
そして、相手の返答を待たずに続けて言葉を発する。
「……俺の『国盗り』に手を貸す気は無ぇか?」
包帯の向こうで笑いを浮かべながら、この男は突拍子も無い事を切り出した。
冗談でも気が違った訳でもない。
この男の言葉に嘘は無い。
至って、本気だ。
言葉の裏側には自信すら感じられる。
包帯の男は口の端を歪めながら返答を待った。
◆ブラックハートvsシグモンド◆
オレの下に斗数が来てから一体、幾つもの月日が経っただろうか…。
ある日、オレのアジトに手紙が来た。
その内容は…、
『ビクターを助ける手がかりがある』
との事だった。半信半疑ながらもオレは、
その手紙に記されたクライスツ・クラウンまで来ていた。
斗数はアジトにいるよりは、オレのそばのほうが安心できると思い、
連れて来たが…。
「ねー、シグ!ここに何があるっていうのさ!
相棒のボクに教えてくれたったいいじゃないの!」
斗数に何も言えず、ここに来たが…。
「リストに載っている奴がいるようなんでな、気を付けろ」
そのまま、斗数は「偵察にでる!」と先に走っていった…。
―斗数視点―
ボクはシグとクライスツ・クラウンまで来た…。
でも、シグは嘘をついているような気がする…。
どうして、ボクに嘘を…。
路地の方に怪しい影を見た、変だな、と思って奥へ行ってみた…。
CRAaaSH!!
何かを殴りつける音が響いて、ボクの意識は遠くなった・・・。
>308 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
黙然と、閑馬は異装の男を眺めやる。
双眸から放たれる熱さは只事ではない。孕むはたぎる様な野望に違いない。
閑馬には判る。
斯様な眼をした輩、戦国の世には掃いて捨てる程いたものだ。
この儂と同じく。
――しかし、これほどの狂い様を見せる光り、未だ見知った事はない。
「面識も無い相手に求める答えではなかろうが、まぁ良い。
主の名を知っていたとしても、儂は同じ答えを返したであろうしな」
云いながら、だらりと腰の辺りに垂らした左手は、ゆっくりと腰の物に掛かった。
彼奴――危険だ。恐ろしく。
「否、だ」
不死のゾッド vs ギーラッハ
>307
差し当たり追撃を免れた上、それなりの痛手を与えられた。
このまま押し切れるか――と思ったのは些か早計だった様だ。
裂帛の気合いと共に、300年に渡る殺戮の日々においてすら見た事の無い、
正しく神速の突きが繰り出された。それも上中下段と立て続けに。
頭部を狙った一撃はその下を潜って避け、次撃の中段突きを幻獣の頭部を象った鍔元で弾く。
が、最後の一撃が左腿の肉を深く抉った。
「ぐぬっ!」
流石にこれは効いた。
綺麗に切断されたのならばまだしも、抉られた傷口の再生には時間が掛かる。
が、その口より飛び出した言葉は賞賛。
「見事だ!!」
脳裏に浮かんだ異形の騎士の影が、対峙する紅の騎士と重なる。
「よもや彼の者の外に、これ程の使い手が居るとは思いも寄らなかったわ!!」
脚の痛みなど既に消え失せていた。
目の前の素晴らしき敵への戦意が全てを上回る。
「――ふぬっ!」
気合いと共に、こちらも驚異の速度で左右に刃を薙ぎ払った。
腿の傷が踏み込みをやや甘くするが、それでも速度・威力共に申し分無き連撃。
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
>244
「お前には俺が何に見える……? 人か?それとも・・・・・・獣か?」
静かに、彼は口を開いた。
「俺は血の呪いによってこの浅ましき姿に成り果てた・・・・・・俺は恐怖した・・・・・・
俺の中の野生が叫ぶ・・・・・・見える全てを裂けと駆り立てるのだ・・・・・・」
「自分が自分でなくなる恐怖が・・・・・・お前にはわかるか?俺は・・・・・・それに打ち勝つために戦いを選んだ
自らの心を鍛えるために。だが、見ての通り、簡単に俺の心は支配される・・・・・・」
そして静かに笑みを浮かべた。自嘲のこもった笑みを。
「今の俺には過去も未来もない。あるのは・・・・・・牙をむくこの一瞬のみ!」
「つまらん話をしたな・・・・・・興がそがれんうちに・・・・・・
さぁ・・・・・・決着をつけようか・・・・・・」
彼はゆっくりと構えた。口から古の契約の言葉が漏れる。
「深き森の奥駆ける狼の王よ、紅き炎となりて我が敵を討て!
ドラゴンキャノン!!」
彼の体から、溢れんばかりの闘気が満ちていく。
そして、大地が鳴く。森が蠢く。大気が震える。
やがて、彼の後方から現れた幾条もの轟炎の矢が、
少女めがけて放たれた。
>310
志々雄真実(M) 対 閑馬永空
「―――ハ」
断りの言葉を告げる事すら、予想の範囲内だったのか。
いや、そうでなくてはこの表情は出来はしないだろう。
余裕に満ち満ちた顔で男は尚も親しげに話しかける。
「ああ、名前も言わないってなぁ流石にマズかったな。
俺の名は、志々雄真実。ちったぁ名の知られた人斬りだ」
志々雄―――そう名乗った男は相手の腰に視線を一瞬だけ落とし、続ける。
「どうだ? アンタが本当に不死身だってんなら……今の世は、つまらないと思わねぇか?」
目に、徐々に狂気の光が強くなる。
「せっかくの刀を使う場所も無ぇ。
ぬるま湯にどっぷり浸かったこんな世を……変えてみる気はねぇか?」
熱を帯びた眼光が射抜く。
世を焼き尽くし、混沌に叩き込む。
そんな理想を野望、と呼ぶのならば―――
志々雄の内側は、まさにそれに満たされていた。
ブラックハートvsシグモンド
>309
少女の後頭部に椅子による一撃を加えて昏倒させたのは、農夫風の平凡な男性だった。
いや、その姿をつぶさに観察すれば平凡とは言い切れない部分も存在する。
定まらぬ視線、半開きの口、常軌を逸した虚ろな表情。
そして、その体からは全く生気が感じられなかった。
夢遊病の患者を思わせる緩慢な動きで、男は少女を抱え上げた。
足を引きずりながら、ゆっくりと町の中央広場へと向かう男のそばに別の男が並ぶ。
彼も先の男と同様に、虚ろな表情と緩慢な動きが目につく。
さらに彼らの背後に主婦が続き、老人が、青年が、少年が合流する。
彼らは中央広場に集合した。
別方向からも人々が集まり、百人以上の群衆が広場を埋めつくしていた。
これだけの人数がいるにもかかわらず、群衆特有の喧騒どころか息遣いすら聞こえない。
聞こえるのは、毒の満ちた大鍋が沸き立つかのようなゴボゴボという耳障りな音のみ。
その音は広場の中心、水が枯れ果て、かわりに未知の黒い物質で満たされた噴水から発するものだった。
やがて、噴水の中から黒い姿が立ち上がった。
それはまさに悪夢の産物であった。
それは動物ではない、人間が知る限りの動物ではない。
地獄の深き底から這い出して、暗黒の到来を思わせるものだった。
人間のように直立はしているが、3メートルに近い巨躯を誇り、その全身は夜の闇よりなお暗い。
顔に耳や鼻や口があるとしてもまるで見えず、ただ赤い両の目だけが無明の闇のなかで光っていた。
振り乱した髪を思わせる肉質の触角を後頭部から何本も生やし、さらには大蛇のように
太く長い尾がその背後でうねっていた。
それの名はブラックハート。
魔界の王メフィストの嫡男にして、父に与えられた狂気に永劫の期間、苦しめられたもの。
父をなによりも憎むもの。
>314 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
志々雄と名乗る男の眼光にも動ぜず、密かに閑馬は首肯する。
同じ眼だ。
人殺しを何の躊躇いも無く行い、それを快楽と感じられる鬼の眼だ。
己が為に他者を踏み躙り、それに頓着すらしない外道の眼だ。
数百年、人を斬って生きてきた閑馬永空と、それは同じ光を放っていた。
「最近は下らん世の中になったと云うのは如何にも。
良いだろう。主に力を貸してやろう。
但し、こちらの言い分を飲めたらな」
薄く唇を歪めながら、嘲る様に云う。
「儂を主の上に置け。それ以外の条件は認めん」
それだけ云うと、閑馬は腰間の鯉口を切る。
と、急に踵を返し、室内へ一歩足を踏み出した。
>287 vsアセルス
【エピローグ】
―――そして今、『私』はここに居る。
耳元で囁かれる私の名前。
その言葉に自然と反応する私の身体。
かつて長年呼ばれていた名前でも、これほどスムーズに反応は出来ていなかったと思う。
『ラセル』それが私の名前。
裏社会を震撼させた殺し屋、ファントム『アイン』はもうこの世には存在しない。
ファントムは文字通り亡霊となり、今ではその伝説のみが生き残っているに過ぎない。
……物思いに沈んだ私を、優しく私を包み込む柔らかな腕の感触。
心も体も、安心して委ねられるこの温もり。
今まで私にとって、世界は、無限に続く地獄だった。
でも―――
今は違う。
この方が居る。この方と共に居る限り、もう誰かを殺す必要など無い。
しかし、もし――もしも、この平和が脅かされるようなことがあれば、
きっと私は、生まれて初めて自分の意志で銃を手に取るでしょう。
唇に柔らかな温もりを感じながら、私はそんな決意を固めた。
でも今は……ただこの温もりに溺れさせて下さい。
いいですよね? アセルス様―――
ANOTHER HAPPY END
不死のゾッド vs ギーラッハ
>311
彼奴が繰り出す左からの斬撃。
――― ギンッ!
疾風の如きそれをヒルドルヴ・フォーク で弾き返す。
しかしこれは!? ───来る!!
直後に踏み込みながら身を大きく屈める。
その上を唸りを上げて通る彼奴の二撃目―――。
「テイヤアァ!!」
彼奴の篭手を狙ってヒルドルヴ・フォークで下より渾身の一撃!
>312
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
「哀れね・・・・・こんな月の夜でさえなければ、また別の出会いがあったでしょうに・・・」
「ならせめて、一思いに楽にしてさしあげるわ!!」
相手の手はほとんど読めている、パワーとスピードで敵を圧倒する力押しタイプ
動きを封じた今では、どうということはない。
初音は狼がゆっくりと構えるのを見てから
糸を操り狼の首を刎ねる・・・はずだった
しかし・・・狼の渾身の攻撃は初音の想像を超えていた・・・・
狼の叫びに呼応して、業火の龍がうねりを上げて初音へと遅いかかる。
初音はとっさに自らの身体を繭でくるみ直撃を防ぐ。
わずかに遅れて凄まじい熱風と爆発。
それが収まってしばらくしてから・・・
初音は黒焦げになった繭の中から、やっとの思いで這い出す
直撃こそなんとか避けられたものの、もはやこの傷では戦えない。
しかし・・・奴もただでは済むまい。
ふらつきながら初音は、狼の姿を確認すべくグラウンドに視線を移した。
◆ブラックハートvsシグモンド◆
>314
クライスツ・クラウン…、この田舎町に来て、
妙な気配はまったくないが、その“気配のなさ”が気になった。
町の住人の姿が見えんのと、斗数の姿が見えない。
先ほど、斗数に『リスト』に載っている奴のと言ったが…、
この状態は当たらずとも…、を地で行くかもしれない。
荷物を解き、FNE.P90と…、宝貝、火竜両儀筒を出す。
少し迷ったが…、火竜両儀筒を片手に提げ、
P90は偽装してここの物陰に置いておく。
最近出くわすバケモノに対抗して銀の弾丸を詰めてはいるが、
一発でケリをつけられるのなら、コイツ(火竜両儀筒)の方が早くていい。
そして…、町全体で人がいないのを確認し、広場の方へ出る。
そこには飛びっきりのバケモノが居た。
ご丁寧に斗数をその尻尾で縛り付けている。
「よう、一つ、聞かせてもらいたいんだが、テメエの名前はなんていうんだ?」
>315 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
志々雄の言葉を、更に切って捨てる。
それも、最上級のやり方で。
上に置け、だと?
―――コイツはいい。俺が思っていた以上の野郎だ。
沸々と、何かが湧き上がってくるのが分かる。
かって身を焦がした炎も、こうは体を熱くさせてはくれなかっただろう。
「交渉決裂。だな」
じゃら、と異音を立てて鞘から刀が抜き放たれる。
月の照り返しを受け、刃が鈍い光を放つ。
だが、志々雄はその刃を使わず―――
室内へ戻ろうとする男に拳を叩き込む。
そして外を親指で指し示し、告げる。
「なら、もっと分かりやすい方法でやるか。
そっちの方が、俺も楽でいい」
表情は、既に先刻とは打って変わっていた。
地獄から這い出した悪鬼もかくや、というその表情。
明らかに、これから起こる事を快楽として味わおうという表情だ。
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
>318
最後の鬼札であったドラゴンキャノンも、少女を仕留めるには至らなかった。
もはや、立つのもやっとである。しかし、それでも彼は少女のもとへと歩み寄る。
血まみれの鉤爪を振り上げたが、少女の瞳に躊躇した。
(同じだ・・・・・・彼女の瞳と・・・・・・)
彼が一度、心通わせた彼女と。
生きるのに厭き、虚無を漂わせた、あの女性と。
ゆっくりと手をおろす。
何時の間にか、その身は人へと変わっていた。
月の光射す中、何も言わずに、彼は立ち尽くした。
サイス・マスターが生きている?
信じられない情報、しかも奴はイノヴェルチと手を組もうと企んでいるらしい。
サイスはとあるオペラ座でイノヴェルチの要人と会うと言う。
情報源すらはっきりしない、
罠かも知れない、
しかしサイス……
奴だけは許す訳にはいかない。
俺とエレンは過去を断ち切る為に、サイス・マスターを葬る計画を立てた。
貸切のオペラ座、特等席にヴァンパイア三銃士のリーダー、ナハツェーラー。
隣にはサイス・マスター、そしてその周りには二人の少女がサイスを守る様に佇んでいる。
舞台の上で踊る男女……。
仮面の男がマントを翻したかと思うと、高らかに小口径高速弾の連射音が響き渡る。
ゼクスは銃を抜く暇すら無く、頭部を撃ち抜かれ脳漿を撒き散らしながら崩れ落ちる。
AK74を構えたズィーペンは胸部と手足に弾丸を受け、血まみれで死のダンスを踊る。
そして驚愕するサイス……。
奴は身動きする事もできないまま銃弾に引き裂かれ、座席へと縫いつけられる。
パトリオットから発射された30発の5.56mmアーマライト弾はサイス・マスターと
二人の少女を一瞬のうちに血の海へと沈めた。
>320 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
地に叩き倒された閑馬は、呻きもせずに立ち上がった。
油断していた訳ではない。何時でも迎え撃つ用意はあった。
にも関わらず、志々雄の強打は閑馬を捉えていたのである。
大壮言語をほざくだけの力量はある、か。ますます侮れん。
「左様さな」
何か感慨深げに天井を見上げた。すぐに視線を眼前の包帯だらけの顔に移す。
ふッと、邪気のこもらぬ笑みが浮かんだ。
「儂もその方が楽だ」
言葉と同時に抜き払った愛刀・井上真改蟲殺は、横薙ぎの怒涛と変じた。
不死のゾッド vs ギーラッハ
>317
「ぐがああ!」
返しの一撃を潜りつつ繰り出された相手の斬撃が、左の二の腕をまともに捉えた。
剣を握ったまま切り飛ばされた左腕が、つい先程己が切り捨てたばかりの死体の上に落ちた。
一拍遅れて飛び退き、直後に左手と剣を拾いに行くべきか一瞬だけ躊躇したが、
どうやら相手がそれを許しそうにも無いと諦めた。
「――やはり人の身のままでは後れを取るか」
紅の騎士を対等の相手として認め、全力で当たる事を決意する。
そうと決まれば行動は早かった。
大きく息を吐き、内に秘めた力を解放する。
「貴様の技、貴様の力、まだまだ味わい足りぬ!!」
鎧の留め金を内側より破壊しつつ、唯でさえ人間離れした肉体が更なる膨張を始める。
「まだまだ喰らい足りぬ!!」
全身を獣毛が覆い、頭部が獣のそれに変形する。
「さあ戦え!! このオレを失望させるな!!」
―――数秒後、不死のゾッドが立っていた場所には、
肉食獣めいたシルエットと水牛の如き双角を持つ、巨大な怪獣が立っていた。
ブラックハートvsシグモンド
>319
「私の名、かね?」
シグモンドの問い掛けに、怪異なる存在はその外見からは想像もつかない、自信に満ちた若い男性の声で答えた。
「私の名はブラックハート。悪虐非道なる魔界の支配者メフィストの嫡男、そして近い将来には魔界の王位につく者」
ブラックハートと名乗った存在は、笑いを堪えているような口調で付け加えた。
「そして、きみに手紙を送った者だ。期日どおりに来てもらって嬉しいよ、シグモンドくん」
そう言うと、ブラックハートは自らの長い尾で絡めあげた斗数の体を高々と差し上げた。
「あの手紙の内容は真実だが、約束を果たす前に少し遊んでもらおう。
きみの実力を、この二つの目で直接に見ておきたいからな」
呆けたように棒立ちだった群衆が突然、動き出した。
緩慢な動きだが、全員がシグモンドに向かってくる。
話し続けていたブラックハートの声が、少しずつ変質していく。
「この少女を取り戻したいだろう?ここまで来たまえ。彼らは私の支配にあっさり屈した、
罪深き者たちだ。
殺すことに躊躇などなかろう?さあ、邪魔者は叩きのめせ、撃ち殺せ、抹殺しろ!ここまで来い!来い!」
その声は狂気に満ちたものだった。
>323 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
金属同士が激突する音が静寂の夜に響く。
志々雄は、常人ならば訳も分からぬ内に斬られていたであろう一撃を受け止めて見せたのだ。
「話が分かるじゃねぇか……」
刀同士は押し合いながら、すんでの所で均衡を保っている。
ぎぃん、と音を立てて刃の距離が離れる。
二人は示し合わせたかのように飛び退き、互いの間合いの寸前に立っている。
手にするは究極の殺人刀―――無限刃。
人を切れば刃毀れによって刀の切れ味は落ちる。
ならば、最初からある程度人為的に欠けさせる事で無限に人を切る事が出来るようにすればいい。
何度も、斬り
何度も、殺す
ただそれだけを追求した、究極の形。
「人斬り」たる志々雄にとってこれ以上の武器はあるまい。
「シィィィィィィ……」
無限刃を手に、間合いに踏み込む。
そして下から掬い上げるように斬り付け―――
いや、違う。
狙ったのは地面に落ちていた、小石。
それを刀の切っ先で引っ掛けるようにして、弾く。
何の威力も無いが、体勢を崩すには十分だ。
まさしく、ほんの小石程の隙。それを志々雄は見逃さなかった。
「シャァッ!!」
振り上げた刃が、煌き上方から降りかかる。
>302 vs蒼崎青子
「ふう――」
大きく破壊された壁――その残骸に背を付けて、彼はひとつ息を付いた。
遠くから響く足音は、確実にこちらへと続いている。当然だ。彼女の手により穿たれた穴は一直線。
そこに、どこかに迷い込む道理など無い。
「――――来たか」
呟いて彼は、左腕にスタッフを構え直した。空けた右手には、愛用の<ハード・フレア>カスタム。
射撃競技用の重銃身を装備した特注品だ。その威圧的なフォルムが、僅かに残った電灯の光を
受けて、鈍い輝きを放っている。
「結局――人間相手にはこれが一番有効か」
苦笑。彼は静かに残骸から背を離した。じゃこ――装填された呪文書式を無音詠唱。
構築に成功した魔力回路が、脳内においてゆっくりと動き始める。
それを確認して、レイオットはゆっくりと残骸の中から姿を現した。視線の先には、魔術師の姿――
魔術の連打によって加熱された気流が蠢き、その紅い髪を緩やかになびかせている。
その光景は――まるで、待ち望んでいた死神が現れたかのように彼に錯覚させる。だが、今は――
「……申し訳ないが。あんたの出番はもう少し先だ。ちょいと、抜けられない用事が出来てな」
にやりと笑い――そしてそのまま走り出す。自分と彼女との距離は、およそ十メートルほど。
僅かな距離だが、自分が消し炭にされるには充分すぎるほどの長さではある。
「そろそろ踊りも飽きた所だ――これで終わらせるぞ! <アクセラレータ>……」
大きく一歩。それを踏み切るその直前に。全てを切り替えるように――鋭く。
最後の撃発音声が突き刺さった。
「――――顕ッ!」
ぢん! 拘束端子。その最後のひとつが弾け飛んだ。瞬間――レイオットの肉体が弾丸の如きスピードで加速する。
散乱する残骸を異常強化された脚力で次々に蹴り飛ばしながら、数メートルの距離を一息も掛からずに移動した。
急速に近づく彼女のに対し、歓声のような叫びを上げる。同時に、手にした拳銃を三度発砲した。
――命中させるつもりなど毛頭無い。ただ、魔術師の呪文の詠唱を牽制出来ればそれでいい。
銃弾の結果すらも確認せずに、レイオットは更に加速する――!
>328
……追い詰めた。
さてと、これでチェックメイトね。
魔法士との距離は10メートル前後。
この距離なら、魔法士に私の破壊魔術から逃れる術はないだろう。
魔法士が何やら言っているが、関係ない。
もう、彼には打つ手はないはずだから。
彼がどんな攻撃魔術を使ってきても、即座に対応できる。
私は詠唱を開始――
「―A――V――!?」
魔法士の叫びとともに、魔法士の身体が疾風の如き、速度で迫ってくる。
これは……人間の速度を超えている!?
関係ない、問答無用で……
続いて、3発の銃声……
私がそれに気を取られた隙に、わずか、時間にしてコンマゼロ秒単位詠唱が中断する。
そして、それが明暗を分けた……
>290>291>292 vs アドルフ・ヒトラー
【脱出する者の時間】
引き裂き、
――――――絡みつく温い感触の肉、
叩き割り、
――――――肌を焼く煮えたぎった鮮血、
打ち崩し、
――――――指に掛かり柔らかな抵抗を示す骨、
砕く。
――――――すべてを触れる側から「粉砕」し、原初の海へと還す。
男の体が剥落する。皮膚が削げ、肉が落ち、骨が胸が剥き出しになった。
いつもなら、おぞましさに胸を押さえかねない光景だけれど、悪寒も吐き気も感じない。
感じる余裕がないほど、俺の神経は高ぶり尖り、男を壊す。
さらに鈴鹿の死力を尽くした一撃が、心臓を撃ち抜き・・・
消えた。
一片さえも残さず、男は歪んだ時流の果てへと消えた。
消えて、しまった。跡形も、痕跡も、何もかも残すことなく。
――――ずきん。
脈打つ痛みが腕を駆け上り始める。超加速が解け、砕かれた腕の時間も元に戻った。
指がひしゃげ、肉は削げ、皮膚は裂け、血が噴き出す。
左手が痛覚の塊になって、抜ける風に緊張に脈打つ鼓動に痛みを延々と返し続ける。
どういう訳か、こういう時ばかりは体も速くて。
苦痛に耐えつつも残った文珠を「癒」に変え・・・倒れ込む鈴鹿を胸に受け止めた。
その手から大通連が零れ、アスファルトに跳ねて、消える。
消える。
消えて、しまう。
だから、とっさに――――――――
>330 vs アドルフ・ヒトラー
【脱出する者の時間】 横島忠夫:エピローグ
「本当に、平気なの?」
珍しく、神妙な声を美神さんが出した。
「任せといてください! 俺は不死身ですから!」
ま、空元気だけが取り柄ってことで。
月明かりが照らす、細い道。そこを、俺と美神さんは喧騒から遠ざかるように歩いていた。
男は最後の最後で、美神さんに情けをかけたのだろうか。
その姿はおいしそーな乳と尻と太股を持った、二十歳の頃に戻っていた。
理由なんてわからないけど、ま、これで万々歳。
二日もすれば文珠は出る。そうすればこの痛みも治まって、なお一層、万々歳だ。
一歩、一歩と足を踏み出すたびに、脂汗が漏れた。
でも、俺は笑ったまま。こんなモノで済んだんだ、安い安い。
鈴鹿を背負って、俺たちは歩く。
少女の背中越しに負う月の明かりは、冷たくて、青く澄んでいて。
それでも、どこか優しげで。
俺は歩く。
少女と月を背負ったまま・・・
>327 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
夜目にも鮮やかな銀光を巻いて、志々雄の一刀は閑馬に落ちかかる。
その刃風に押される様に、体勢を崩した閑馬は前方へと倒れ込んでいた。
出来た隙は仕方も無い。しかし自ずから隙を広げれば、それは相手を誘う罠となる。
何より己より低い位置の目標に対しては、攻撃の手は格段に緩む。
刃が右肩口に噛み付いた瞬間、志々雄の足元へ掬い上げる様な斬撃が放たれた。
不死のゾッド vs ギーラッハ
>325
目前で異形の巨漢が更なる異形へと変貌する。
信じられぬ事にその体躯すら先とは全く違い――――。
「何と!?」
己とて人には有らず、されどこれは……!?
不死者とて斯様な者を見た事も、聞いた事すら無い、しかし――――。
「それが貴様の本性か、剣にての戦いなればと思うておったが……
その力、己が目に叶うか証明してみせよ!!」
彼奴と彼奴の剣の間に割り込みつつ、
「セイヤアァッ!!」
鳶の構えより袈裟懸けの斬撃を叩き込む。
不死のゾッド vs ギーラッハ
>333
闇に生きる同類たる紅の騎士であったが、この異形化には流石に驚愕の表情を隠せない。
が、彼が気を取り直すのも予想以上に早く、左腕の回収は阻まれた。
気合いと共に鋭い斬撃が繰り出されるが、事も無げに巨大な角で刃を弾き返し、
『ゴオオオ!』
見るからに凶悪な爪を持つ右腕を振り下ろした。
>329 vs蒼崎青子
空白は、ほんの一瞬。
だが……それだけで充分だった。彼の眼前には、驚愕に包まれる彼女の顔。
鋼鉄の仮面さえ無ければ、お互いの息が触れている――そんな距離だ。
そんな彼女に、レイオットは獰猛な笑みを浮かべ――当然、それは見えないのだが――ひと言。
「さて、お嬢さん。――王手積み(チェックメイト)だ」
そして――閃くような一撃が、彼女の頭部に向かい叩き込まれる。
とさ――と言う音と共に、うめき声のひとつも立てず、紅い髪の魔術師はその場に崩れ落ちた。
身動きひとつ取らない彼女をしばし見つめ。
「――お休み。風邪はひくなよ」
肩を竦めて、呟いていた。
>335
視界が次第にはっきりしてくる。
気が付いた私を最初に襲ったのは激しい頭痛だった。
「痛っ―――」
最後の瞬間、魔法士が私の頭に銃で……
なるほど……
完全にやられたようだ。
見事なものだ。
完敗ね……
「――――」
辺りを見回す。
もう、魔法士は立ち去ったようだ。
だが、ドタドタと大勢の足音が聞こえる。
警官隊でも踏み込んできたか。
「――捕まると厄介ね……。消えるとしましょう。……任務失敗ね」
私はそう苦笑を浮かべつつ、魔術を発動させる。
・
・
・
一陣の風が部屋を通り抜ける。
そして、風が吹きぬけた後、ブルーの姿は消えていた。。
・
・
・
『失敗だと?』
顔をしかめて、協会の幹部は私を叱責する。
「あまり、重低音の声で怒鳴らないでね。傷に響くから……」
私は苦笑しながら、答える。
「まあ、今回は私のミスよ。けど、戦術魔法士や魔族に関して、資料が無さすぎたのが敗因と言い訳をさせてもらうわ」
そのまま、何か、協会の幹部が口を開く前に、私は彼に背を向ける。
「ああ、もう、この関係の仕事は遠慮させてもらうわね。やるなら、他に回して頂戴」
そう、一方的に告げて、私は部屋を出た。
――さてとなにはともあれ、一段落したわけだ。
――とりあえず、焼肉でも食べに行こう。
>336 vs蒼崎青子 エピローグ
結局――あれは、ただの魔族事件として処理されていた。
理由はふたつ。ひとつは、レイオットが件の魔術師のことを一切報告しなかったこと。
もうひとつは、警官隊が突入した時点で、彼女の姿は影も形も無かったらしいということだ。
おそらく、自分が立ち去ったそのすぐ後で意識を取り戻したのだろうが……それにしても、
完全に包囲されていた病院敷地内から、一体どうやって逃げ出したのか。
まあ、全てが終わった今、彼にとっては関係のない話ではある。
「……それにしても彼女、なにがやりたかったんだか」
魔族の捕獲など、物理的に不可能だ。あれは生きている限り魔法を吐き出し続けるし、
魔法を撃てなくなるほどに衰弱している場合は、遠からず――死ぬ。
確かに捕獲することが出来れば、関連技術の研究は大きく進むのだろうが。
「……まあ、俺が考えることでもないか」
肩を竦めて、ソファーに深くもたれかかる。その体勢のまま雑誌に目を通し、やがて……
その雑誌を顔に載せたまま、静かに寝息を立て始めた。
外では、カペルテータがいつもと変わらずに庭の鉢植えに水をやっている。
――――とりあえず、今日も何事もなく。静かに一日が過ぎていく。
不死のゾッド vs ギーラッハ
>334
角で弾かれるヒルドルヴ・フォーク、それを戻す間も無く彼奴の右腕が迫る。
―――― ズシン! ―――――。
身をかわした己の居た場所に巨大な手が振り下ろされ、大地を揺るがす。
その力は正にモンスターと呼ぶに相応しい。
こればかりは喰らう訳にはいかぬ……。
左手が失われ手薄になった側面に回りこむ、大技で隙を作る訳にはいかない。
速度を乗せつつも小さくヒルドルヴ・フォークで唐竹、切り上げ、逆袈裟の三蓮撃。
【人/器械】狩りは楽じゃない
さてところで、人造霊というのを組むのはかなりの技術と手間暇を必要とする。
儀式にかかる時間は百時間を軽く越えるし、
全く新規のモノをつくる場合は大抵バグ取りにとんでもない時間がかかる。
人体・魂に直接関系するもの……となると、非公式に人体実験を行う必要まで出てくるのである。
(万一失敗していた場合の損害を考えると、営利を追求する企業体としてはそうせざるを得ない)
と、いうわけで。
今日もマグナス・クロックワークス社のキャリア・ウーマンである【彼女】は元気に働いている。
積層都市の最下層で。
20万ワーズという端金で命を売った愚かな女。
顔形の見目は中々に良かったが、その程度のことで情けを僅かでも見せるようでは世知辛い世の中渡っていけない。
人気の無い路地裏。
すえた匂いのするその場所で、人造霊が仕込まれた肝心の頭部に傷をつけないように注意して殺した。
最下層という場所、かつ非公認市民なら、公安を刺激することもない。
毎日の仕事ということで処理の手際も手馴れたものだ。
手持ちの荷物を剥ぎ取ることで物取りのように見せかけ、大振りのナイフで首をごきごきと切り取る。
そうやって僅か三分で全ての作業を終えたあと、血で汚れるのを嫌って脱いでいたコートを着た。
「……あら」
路地の出口に、立ち止まってこちらを見ている黒い男がいた。
目が合う。
首をぶら下げている淑女の姿を見ても逃げ出さない所を見ると、ひょっとして……
「お知り合い?」
女の生首を軽く掲げて、尋ねてみた。
>332 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
罠にかけた積もりが、向こうが仕掛けた新たな罠に嵌る。
―――流石に長生きしてるだけはあるじゃねぇか。
何故、こんな場違いなことを考えていられるのか。
知覚すら出来ない速度で訪れる死の瞬間。
寸前で潜り抜ける事で得ることの出来る高揚感。
この悦楽を味わえる、狂った感覚。
それが、この思考を可能にする。
足元から迫る刃へと一歩、近づく。
下手に攻撃の手を緩めるよりも、踏み込むべきだと判断したのだろう。
「ッラァッ!!」
包帯と肉を切り裂かれつつ、無限刃を振り抜く。
外気に触れた肌に夜の空気が心地良い。
傷の痛みはあまり感じない。
だが、頭に甘ったるい痺れがある。
知っている。これは最高に楽しい時の感覚だ。
それを感じながら―――
「ク、クククク……」
ワラウ。
未だ、このカラダの中で燻る火を抑えきれずに。
【人/器械】狩りは楽じゃない
>339
孔濤羅はゆっくりと歩く。
視線を虚空に据えたまま、まるでその遥か先に彼の帰りを待つ家があるかのように。
何人もの人間が濤羅を追い抜いていっても、それは変わらない。
この男は焦るということを知らないかのように見えた。
孔濤羅は人目を引く。
黒一色の出で立ちは宿無しのように薄汚れ、左手は倭刀を決して手放さない。
だが何より目に付くのは死人じみた青白い肌だ。
病みあがりとも見える。
孔濤羅を見た人間はおおむねこんな印象を受ける。
それは半分あたって半分はずれている。
病みあがりなのは間違いない。
その身に裏切りの一刀を浴びたのは3ヶ月前のこと。
それからの時間は青雲幇の勢力下から逃れることと傷を癒すことで費やされた。
傷はすでにふさがった。
だが本調子からは程遠い。
焦るということを知らないわけではない。
本当はすぐにでも故郷の上海へ戻りたい。
だが組織に裏切られた人間がそのお膝元へもどるにはそれなりの準備を必要とする。
そうわかっていても、瞼の裏に浮かぶ懐かしい面影は濤羅の心をかき乱す。
心の中に巣食っていて濤羅を常に急き立てる。
左手の倭刀から染み出す冷気が孔濤羅の意識を引き戻す。
足を止め、路地を覗き込んだ。
そこに、それはいた。
赤いコートを身にまとった女。
その赤は周囲に飛び散った血と同じ色だ。
手には血の主であろう女の首を下げ、小首をかしげて
「お知り合い?」
と尋ねてきた。
「いや、通りすがりだ」
そう答えながらも心の中は張り詰めている。
どういう経緯かは知らず、ただこの場を見たことで穏便にはすまない。
それだけが理解できた。
それで十分だった。
呼吸を整え、体内に気を巡らすと、孔濤羅には
既にあらゆることに対処する準備ができていた。
【人/器械】狩りは楽じゃない
>341
関係を否定する男。
その風体は薄汚れ、とても裕福そうには見えない。
……つまり、ココの住人に相応しい姿だ。
人死にに、あまりにも落ち着いた態度も。
唯一この地の住民に相応しくないのは、身に纏った対環境用コートか。
完全に気候を制御されたこの都市に置いて、それは全く無意味な装備なのだから。
恐らくは最近大量流入したという難民の一人だろう。
ミズ・マグナスはそこまで判断すると、小さく溜息をついた。
「……通りすがりなら、それらしくすることですね。
見なかった事にする、程度の事が出来ないから私の仕事が増えるんです」
高性能の義眼が更に男の体を走査する。
武器……手にした刀以外の隠し武器はない。
体の熱分布も、安定したごく普通のものである……つまり、自分のように器械化された体ではない。
だが。人間としての勘の部分のどこかに引っ掛かるものがあった。
それが何かは判らないが……一種の既視感とでもいったものか。
どこかで、この男と似た人間を見たことがある気がする。
それでもやることに変わりはない。
目撃者は消せ。
マニュアルに書かれたその言葉を実行するべく、哀れな犠牲者を切り分けたナイフが翻った。
女の力で、いや人間の力で投擲されたとは信じられない速度で、銀光が男の喉笛に向かって疾る。
【人/器械】狩りは楽じゃない
>342
それを感じ取ったのは目ではない。
それは人間の動体視力を遥かに超えたスピードで飛んできた。
孔濤羅は女の攻撃を、まず光の粒として認識した。
相手の微妙な動き、気配などを総合して導き出された情報を、
脳がそういった形で意識に伝えたのだ。
後はそれに続く攻撃を捌くだけ。
飛んできたナイフを濤羅の刀が、まるであらかじめ軌道を知っていたかのように迎え撃つ。
鋼と鋼が打ち合う音は最後まで響かず、にもかかわらずナイフは切り落とされて濤羅の足下に転がった。
内家剣士の取る所、鋼の刃は万物を切り裂くのである。
「つまらんぞ」
ぽつりと言葉がこぼれおちる。
「無駄に命を捨てるのはな」
倭刀をだらりと提げたまま孔濤羅は言った。
あるいはそれは信じていたものに裏切られたという絶望が言わせたものか。
孔濤羅は立っている。
何かのために命をかける虚しさを思って。
【人/器械】狩りは楽じゃない
>343
「なっ……!」
ナイフがかわされる事、叩き落される事は考えていた。
その時に出来た隙をついて、一気に首を叩き落す……つもりだったのだ。
だが、空中にあるナイフを切断する、という常識外の事態の発生にミズ・マグナスの足は止った。
(馬鹿な……いや、そうか)
ようやく理解した。
この男、機甲祈伏隊の連中と経路がそっくりなのだ。
都市最強の化け物達と同類の男。
……全く、なんて不幸だ。
ならば、全力を持って抹殺しなければなるまい。
殲滅モードへの移行を、体に命じる。
それに応じて、男の見ている前で全身の刺青状のラインからぱっくり皮膚が割れた。
指先からは鋭利なブレードが猫のように突き出し、妖艶な唇は耳まで裂け、クロームの牙が飛び出す。
体内のチューブ、シリンダは膨れ上がり、体のあちこちに出来た隙間からは感覚器と吸排気口が飛び出した。
マグナス社製666型全身義肢、通称【人/器械】。
チューブと歯車の器体に、人の持つ獣の本能を載せた、器械の獣。
前傾姿勢で立つその姿には、破れかけたコート以外に先程までの面影は無い。
「ぐるるるぅう」と内燃機関が咆哮をあげた。
獣の突進が、始まる。
【人/器械】狩りは楽じゃない
>345
目の前の女の姿が異形へと変じて行くのを見ても孔濤羅の心に変化はない。
敵を前に動揺しては、内家剣士は勤まらない。
ただ、寂獏とした感情があった。
この女はなんのために命を賭けるのか。
それでも濤羅の剣士としての習性は状況に的確に対処する。
再び光の粒が放たれる。
今度の粒はかなり大きい。
濤羅は突進と判断した。
路地は人間が三人並んで通れる程度。
横に動いては続く二手、三手をかわし切れない。
“ならば”
軽功を用いて孔濤羅は跳躍する。
その足下を肉と機械の弾丸が通りすぎる。
“勝機……!”
空中で身体を捻った孔濤羅は片手で倭刀を切り下ろす。
落下の威力も上乗せした「放手奪魂」の一刀が異形に向けて放たれた。
【人/器械】狩りは楽じゃない
>346
突撃がかわされ、目の前の獲物が消失した。
それを確認した【人/器械】の前肢が地面に叩き付けられる。
地面に伏せ、更に体を前に投げ出すことによって、背後から迫る死神の鎌から危うく逃れる事に成功。
反動を利用し、空中で一回転して向き直った。
あまりにも剣呑な攻撃。黒い男にこれ以上攻撃させるのは危険過ぎる。
だが、人間には本来対応できないはずの速度に対応するような男だ、生半なことでは裏はかけない。
ならば。
本来凍結されていた着装者のパーソナリティが僅かだが開放された。
再び距離が迫る。
獣そのものの動きで爪が振るわれ、刀と火花を散らし始めた。
一度、
二度、
三度目で爪の軌跡が大きく変わる。
それは【人/器械】の行動の中に、人の論理が大きく含まれた為だ。
制御系の割合をランダムに変化させることによって、
敵の心理を殆ど超能力染みた域まで読みきる気功家の裏をかく。
さて、二つの心理が混在する敵に対し、この男はまともに対応出来るのか?
【人/器械】の笑わないはずの獣面が、歪んだ。
アドルフ・ヒトラー vs 横島忠夫 & 鈴鹿御前
【脱出する者の時間】 エピローグ:鈴鹿御前
>291 >292 >330 >331
全ての力を使い果たして倒れ込む、その寸前。
倒れ込む私を、誰かが支えてくれた。そんな気がした。
その胸は、不思議と頼り甲斐があって。
だから、安心して、私は意識を闇に委ねた───。
次に目を覚ました時、そこは事務所の一室だった。
手をついて身体を支え、身を起こす。
───手?
ふと見ると、無くしたハズの左腕が元に戻っている。
指を動かしてみる。動く。何の違和感もない。
普通なら、あの状態の腕を元通りにするコトなど、不可能だ。と、いうコトは───
(そうか、また横島くんに助けられたのか……)
(頼りないように見えるけど、いつも助けられるのは、私なんだよね……)
そんなコトを考えていると、ドアが開いた。
噂をすれば影。入ってきたのは、横島くんだった。
「あ、悪い。起こしちまった?」
「ううん、今ちょうど起きたところ」
その左腕に巻かれた包帯が、ひどく痛々しい。
こんなになってまで、自分の怪我を放っておいてまで、私を助けて、癒してくれたんだ……
そう考えると、いろんな感情が湧き上がってきて、涙が溢れそうになった。
だから───
「そういえば、横島くん?」
「──何?」
「あの男がホテルの窓から落ちてきて、また立ち上がった、あの時───
私の胸、触ったでしょ?」
「あ、あれは……
かんにんや、しかたなかったんや〜〜〜〜!!」
「問・答・無・用!!」
ぱぁん、という小気味いい音が、青空に響き渡った。
【人/器械】狩りは楽じゃない
>347
光の粒が不意に変化をする。
それはまるで二人の相手をしているかのような、
否、一人の中に二人が存在するかのような変化。
不測の事態に孔濤羅は防御に徹し様子を見る。
倭刀は精妙の粋を見せ、それでも受けきれぬものは軽功でかわす。
しばらくして、濤羅にはその変化の法則が飲み込めてきた。
機械部分の意識を人間部分が訂正し、人間部分の意識を機械部分が書きなおす、それだけの仕掛けに過ぎない。
今となっては一撃一撃に「波濤任櫂」の術を持って対することが出来る。
受け流されるたびに異形の態勢は微妙に崩れ、人間部分の焦りが見えてくる。
爪の一撃がやや大ぶりになった瞬間、孔濤羅は攻勢に転じた。
数条の刺突がなんの気配も感じさせないまま異形に向けて放たれた。
【人/器械】狩りは楽じゃない
>349
状況は、ある意味で膠着していた。
五分五分で、というわけではない。
不本意ながら、自分が不利な状況で、だ。
現在はだいたい、八分二分、といったところか。
時間が経つにつれ、その割合はゆっくりと相手に傾いている。
このままではまずい。
だが、状況を好転させるカードは、手元にはない。
ならば、勝機を見出すただ一つの方法を取るのみ。
ほんの僅かだけ強引に、左手の爪が閃いた。
自分では隙があるようには見えない。が、この男はそこにある薄皮一枚の隙を見出すことが出来るだろう。
感覚器をフル稼働させながら、ミズ・マグナスはタイミングを計る。
状況を一気に悪化させる。
恐らく勝機は、そこにしかない。
一瞬後、刺突をかわし切れずに左腕に刃が突き通された。
予定通りの打撃。痛みは感じないが、悲鳴を上げて大きく後ろに飛び下がる。
宙にある内に全身義肢が変化し、元の人間形態に戻っていく。
さぁ、ここで肝心なのは演技力だ。
不様と言っていい姿で泣き喚き、叫び始める。
「ご、ごめんなさいっ! 殺さないでッ!
命令なの、私だって好きでこんなことやってるんじゃないのッ!」
【人/器械】狩りは楽じゃない
>350
不意に悲鳴が上がる。
それは全く予期せぬもの。とどめを刺さんとした濤羅の剣が止まる。
不意に、戦う前に感じていた寂寥感が胸をよぎる。
なぜ、命を賭ける。
侠客としての生き方に疑問を感じなかった自分を待っていたのは、信じた友の裏切りだった。
いや、自分のことを例に上げるまでもない。
組織に使いつぶされ、捨てられていった奴などうんざりするほど見てきた。
自分とこの女と、どこが違うというのか。
義のためと信じていたか、それとも単に利用されただけか、
それだけの違いではないか。
どのみち濤羅には、この女を殺す理由などない。
倭刀を収め、最後に一瞥をくれると背を向けて歩き出した。
不死のゾッド vs ギーラッハ
>338
右腕は空しく地面を叩く。
流石に大振りの一撃はそうそう当たらない。
それを避けた当人は左側へと回り、立て続けに斬撃を繰り出して来る。
『小賢しい!』
最初の斬撃こそまともに喰らうが、この程度の刀傷ならば一呼吸の間に塞がってしまう。
構わず手を失ったままの左腕で、尚も斬り付けてくる相手を薙ぎ払った。
【人/器械】狩りは楽じゃない
>351
振り返る男。
安堵よりは、拍子抜けの方が大きかった。
ほんの少し前まで闘っていた相手の言葉をあっさり信じるなど、お人好しというよりは愚者の所業だ。
いや、それも自らが圧倒的な優位にあるという認識故か?
―――確かにその通り。
『今、この瞬間は』男の方が圧倒的な優位にある。
ダメージは深刻ではないがはっきりと存在し、攻撃はほぼ完全に見切られてしまった。
それでも厳然と勝機は存在する。
悲鳴を収めると、足元にある殺した女が持っていたバッグを拾い上げる。
そして中を探って目当てのモノを取り出すと、足音を立てずに男の背中に向かって走った。
手の中に握っているのは、市販されている痴漢撃退グッズ。
哀れな女に使う暇は無かったが、無駄にはしないでおいてやろう。
ゆっくりと、黒い背中が近づいて来る……
紅く濡れた唇が歪み / 間合いまで後5歩
黒い男が振り返るのを見て / 間合いまで後4歩
手の中のモノを差し出し / 間合いまで後3歩
小さく微笑みを浮かべた後 / 間合いまで後2歩
感覚器の機能を一部停止。 / 間合いまで後1歩
そして刃圏に触れた瞬間。
閃光と轟音が路地を満たした。
【人/器械】狩りは楽じゃない
>353
背後で気配。
孔濤羅は振り向きざまに倭刀の柄に手をかける。
間合いに入ればなんであれ、濤羅は斬ってのける自信がある。
だが女は間合いに入るより速く手にした物体を炸裂させた。
一瞬にして視覚、聴覚が麻痺。
無音の暗闇に孔濤羅は放り出される。
スタングレネード。
轟音と閃光で数秒のあいだ人間をひるませる特殊な手榴弾である。
通常は軍隊などで使われるものだが、下層の都市では暴漢対策として
普通に売買されている。
“不覚……ッ”
臍を噛む間もあらばこそ。
孔濤羅の身体に染みついた武術は、生き残る道を正確に見つけた。
視覚が封じられる直前の像を脳内で再生。
女と向かって右側の壁との間がややあいている。
そこへ身体を倒れこませる様にして女とすれ違う。
その時に女の爪が身体のどこかを切り裂いた。
【人/器械】狩りは楽じゃない
>355
気持ち良いくらいに策が嵌った。
確認した瞬間から、内燃機関を臨界稼動。
一瞬で変形プロセスを終わらせ、獣の時間が始まる。
「るぁぁぁあああああっ!」
視覚と聴覚を一時的に失ったはずの男が、
突撃を回避する為に、後ろではなく前に向かって体を投げ出した。
頬の皮一枚で切り抜ける男。
その生きる為の勘の良さは感嘆に値する。
が、自分から投げ出した主導権を、そうそう簡単に取り返せると思ってもらっても、困る。
壁を蹴り、急反転。
ヒビが入った壁面を尻目に、続けて後ろから襲い掛かる。
全身の吸排気口から高温の呼気を一斉に噴射。
一個の熱の塊と化した猛獣が、男の命を食らうべく顎を開いた。
【人/器械】狩りは楽じゃない
>339>341>342>343>345>346>347>349>350>351>353>355>356は
孔濤羅VSミズ・マグナスだ。
すまない。
【人/器械】狩りは楽じゃない
孔濤羅VSミズ・マグナス
>356
未だ視覚は光を取り戻さず、聴覚は音を捕らえない。
それでも背後から迫る敵の存在はわかった。
孔濤羅のなかで、一秒が何倍にも引き伸ばされる。
女のさえぎる風が、発する熱が、その位置を孔濤羅に知らせる。
濤羅は振り向いた。女に向かって、正確に。
右足を踏み込みつつ、つう、と、緩慢とも見える動作で倭刀を女に突き出す。
これまでの鋭い太刀筋とは打って変わった無様な一刀。
だがそれでも、切っ先は正確に女に向いている。
この間合いでは、女は受けざるを得まい。
そしてこの女ならば可能だろう。
こちらの狙いはそこにある。
突き出した倭刀を追う様にして左掌が走る。
地面から左足へ。左足から腰へ。腰から肩へ。肩から掌へ。
勁力は余す所無く伝えられ、濤羅の循環器は酷使に耐えるべく緊張する。
女は知るまい。素手でサイボーグを屠る内家の秘術を。
必殺のEMPパルスは放出の時に備え、濤羅の体内で極限まで練り上げられていた。
【人/器械】狩りは楽じゃない
孔濤羅VSミズ・マグナス
>358
男の繰り出す刺突が伸びる。
正確にこちらの位置を測るようなその一撃には、だが先ほどまでの必殺の気迫がない。
瞬間だけでも命を延びさせようとする、悪あがきにしか見えない攻撃。
せせら笑いながら刀に向けて掌を差し出す。
こっちは生身の体ではない。
『体の取替えが効く』相手に向かって中途半端な攻撃。
これが男の敗因だ。
音も立てず刃が掌を突き通す。
突き通された刃を、器械の腕力が押さえ込む。
―――チェックメイト。
それでも動かない男の表情。左手が、体を護るように構えられる。
……確かに左手が邪魔になって急所は狙えなくなった。
しかしそれに一体どれほどの意味がある?
既に勝負は詰んでいる。一手が二手に増えるだけの違いに過ぎない。
ならば、苦しんで死ね。
勝利を確信した故の嗜虐心が出た。
左手を齧り取り、この男を苦悶させてみよう。
(さぁ―――恐怖の、絶望の表情を見せて?)
クロームの牙の狭間に、男の左手が収まっていく……
【人/器械】狩りは楽じゃない
孔濤羅VSミズ・マグナス
>359
倭刀の切っ先が肉を貫いた手応え。
次瞬、それは凄まじい力でその動きを封じられる。
だが濤羅には女との正確な間合いが掴める。
同時にそれはとどめの技を隠す布石となる。
突き出した左手が生暖かい感触に包まれる。
それは例えるなら人の体温を持った鉄の顎。
その感触を孔濤羅は皮手袋越しにはっきりと感じ取る。
そして発動する戴天流・裏奥義「紫電掌」
肺が、横隔膜が、凄まじい負荷に悲鳴を上げ、
たわめられたEMPパルスが身体を走り
鉄と肉の獣の身体に、叩き込まれた。
【人/器械】狩りは楽じゃない
孔濤羅VSミズ・マグナス
>360
男の左手を噛み千切る一瞬前、蒼白い衝撃が口の中の掌から迸った。
打突ではなく、何か別種の、初めて感じる感触。
――――ミズ・マグナスにそれを理解する時間は無かった。
強烈なEMPパルスにより、全身の機能が一斉に停止。
人格の制御系もまた同時に破壊された為、彼女の思考はその瞬間に停止した。
地に伏した【人/器械】。
全身から立ち上る灼けた匂いは、彼女の死臭でもあった。
【 ミズ・マグナス 殉職 】
【人/器械】狩りは楽じゃない
孔濤羅VSミズ・マグナス エピローグ
>361
ややあって、光を取り戻した孔濤羅の視界には、ふたつの骸が転がっていた。
一つは首を切り落とされた死体。
もう一つは鋼と肉の獣の死体。
結局この獣がなんのために命をかけたのか、知る事は出来なかった。
戦う前も、その最中も感じていた寂寥感が胸を満たす。
そこへ死臭に引かれ、「沙弥尼」が漂ってきた。
市街地の除霊をつかさどる人造霊。見ようによっては妖精に見えないこともない。
ここでの風習を思い出し、孔濤羅は硬貨を取り出して沙弥尼に放る。
「そいつらのために、祈ってやれ」
沙弥尼は硬貨を受け取り、静かに祈りを唱え始めた。
『なむからたんのーとらやーやー』
その祈りを背に聞きながら、孔濤羅は歩き去った。
胸に抱く面影は、今もなお孔濤羅を急き立てる。
故郷に帰れと、急き立てる。
不死のゾッド vs ギーラッハ
>352
唸りをあげて飛来する左腕をまともに喰らい、地面にしたたかに打ち付けられる。
「ぐう…… 流石に本性を顕すと違うと言う訳か……」
これは最早剣技での戦いでは無い、己の顔に皮肉な笑みがこぼれる。
なれば、遠慮する事は無い……。
立ち上がりながらヒルドルヴ・フォークを掬い上げる様に振り上げつつ、
「テイヤアァ!!」
裂帛の気合いと共に魔力を叩きつける。
十字剣閃の空間断裂派がゾッドに襲い掛かる!
不死のゾッド vs ギーラッハ
>363
ようやく失っている腕を拾う余裕が出来たので、さっさと回収する。
奴が立ち上がり、剣の間合いまで戻ってくる頃には再生も終了している筈。
『まだ満たされておらぬ……』
切断部分を合わせて癒着の完了を待ちつつ、立ち上がり剣を構える紅の騎士に向き直った。
(……剣の間合いには程遠い場所で何を?)
と訝しむ暇も与えず、振り下ろされる刃。
何やら魔の力を乗せて放ったらしい――と気付いた時には既に遅し。
辛うじて上体を捻り、見えざる斬撃を急所に受ける事だけは免れたが、
『ギャオオオオン!』
右肩から胸に掛けて、深く大きな爪痕を刻み込まれてしまった。
ようやく左手は癒着したが、今度は右腕が暫く使えない。
『グ、グハハハ……貴様も切り札を隠していたか!!』
してやられたという怒りを上回る、予想以上の強敵だったという事実による歓喜。
その激情に突き動かされるままに両手を地に着き、右腕に力が入らない事など構わず突撃を敢行。
角を振り立て、猛々しく咆吼し、砲弾の如き勢いで紅の騎士へと迫る。
血塗れの遁走曲 総まとめ
16章分
>11(導入)
>12>13>14>16>61>63>132>143>199>264>413>466
(キース乱入)>471>511>533>600>654
>15(田中傍観)
17章分
>517>557>612
18章分
>76>80>91>141>152
>169>234>261>331>348>354>465
21章分
>424>452
22章分
>103>334>358>508
23章分
>134>332>333>536
24章分(エピローグ)
>257>282
ああ、長丁場だったけど、やぁっと終わりました。
お付き合い頂いたミアとキースには感謝感謝。
あと、感想とかあったらこっちにおねがーい。
http://ime.nu/fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
不死のゾッド vs ギーラッハ
>365
巨大な質量の突撃!
それを引き付けつつも直前でマントを翻すとそこには騎士の姿は無い。
巨体の突撃は背後の岩山に激突し、それを突き抜けんばかりの勢いで粉々に打ち砕く。
その破片は元の場所に同じ姿勢で、顕れた騎士の上にも降り注いだ。
「奥義を持ってしても倒れぬか」
降り注ぐ石片からマントで頭部を庇いつつ巨大な敵に向き直る。
強靭さと破壊力を目の当たりにし、己は背筋に冷たいものが走るのを感じていた。
―――― しかし――――。
巨体とは思えぬ素早さ、だがそれでも吸血鬼の神速を持ってすれば付け入る隙は有る。
刃が空を切る勢いでヒルドルヴ・フォークを構え直し、
「参る!!」
再度、突撃と共に繰り出す上段からの十字剣閃。
「テヤアァァ!!」
間髪を入れず横薙ぎの斬撃をゾッドに叩き込む。
>298 vs杉原悠 M vs i ポイント1−1
――外した。
もとより大して期待もしない一撃だったが、気配が近かった分、外したのは痛い。
暗がりが敵の姿を包み守っている。
これを追撃するのは容易ではないが・・・
資材の位置から逃走経路を割り出し、かすかな物音を反響まで考えると、
相手のいる位置はだいたい六箇所まで絞り込める。
攻めるには不利だが・・・
(守るには、それほどでもない)
虫が啼く。
そんな小さな風切音。
三つ。
電光となって疾る左手。
何もない虚空に手を伸ばせば、確かにそこに『何か』がある。
指が弾く――――ひとつ。
掌が掴む――――ふたつ。
首を掠る――――みっつ。
狙撃が止んだのを感じ、素早く手を見る。
弾丸を掴み取ったはずの手には、裂けた皮から洩れる緋色以外、何もない。
舐めてみる。鉄の味に混じり、汗の塩辛さが舌に絡む。
両手をだらりと下ろし、無防備に立つ。
削られた首から血が流れ、服を染め替えていくが無視。
――もう一度。もう一度撃たせてやる。
そうすれば、この『見えない弾丸』の謎も解けるだろう。
不死のゾッド vs ギーラッハ
>367
必殺の一撃も、当たらなければ空砲に等しい。
相手はこちらを凌駕する素早さで、十分に引き付けてから避けて見せる。
目標の背後にあった岩山を大きく抉りつつようやく止まり、岩塊に埋まった状態より脱した時には、
再び放たれた魔力の刃が、そして続いて繰り出される斬撃が背後より迫っていた。
『ゴアアア!』
辛うじて切断だけは免れたものの、骨にまで至る程の深い裂傷が両脚に刻み込まれる。
即座に再生が始まるが、魔力の刃で付けられた傷の方が明らかに再生速度が遅い。
そういえば、右肩の傷もまだ完全に癒えてはいない。
刃に込めらた魔力の仕業であろうか。
ならば、勝負が長引けば不利なのはこちらの方になる。
そろそろ決着を付けねばなるまい。
『ヴァオオオン!!』
足元に転がっていた戦死者の躯を拾い上げ、振り向き様に紅の騎士に向けて投げ付けた。
無論、これは牽制。
投げ終わった時には、傷付いた脚を撓め、再び駆け出す体勢に移行していた。
チェルシー・ローレックvs遠野志貴(導入)
地上(そら)は―――――雨だった
私はホテルの中でぼーっと薄暗く、澱んだ空を眺めていた。
窓の外は夜だと言うのに街の明かりで闇夜を照らし出している。
結局は地上も地下も、夜の風景は変わらない訳だ。
(地上か・・・)
私ことチェルシー・ローレックは公司の視察により、地上に出ていた。
地下世界(アンダーグラウンド)では、地上人は自分たちを地下に閉じ込めたまま
自分たちだけ地上に帰った裏切り者として地上人の復讐を目的に地下での発展を
続けてきた。
しかし今では、地上人の理解や、自分たちの考えの愚かさに気が付き、地上人を
自分たちと同じように考えている物も少なくは無い。
いわば、この復讐の為の視察は公司だけの古い慣習と言ったものだろうか。
・・・・今では社員旅行と同じような扱いになっている。
「はぁ・・・せっかく地上に出たのに・・ついてないわね」
外は雨。
せっかくの観光もこの天気では何処にも行きようが無い。
まさか、雨だというのに遊びに行く変な奴もいないだろうけど・・・2名を除いては
私は窓際にあったイスから思い腰をあげ、そそくさと外行きの着替えを始めた。
外と同じ色の黒のワンピースに。
(部屋にいたって暇だし・・・少し出かけるか)
傘を持ち、私は外に出かけることにした。
370>導入続き
* * *
電車に揺られ、少し離れた町出ることにした。
なるべくならば、自然が少しでも多い場所に。
私は、昔、地上に住んでいていた。
もっともその記憶はもうすっかり記憶のの彼方へすっ飛んでしまったのだけれど。
でも、先のようなコンクリートに囲まれた世界は地下で散々見てきた。
もう飽き飽きするほど生活にも馴染んでいて、それが当たり前の物となっているのも事実。
けど、私の故郷って自然に囲まれていた記憶がある。
不確かな物だけど・・・。
故郷の事など別に関心は無かったけれど、自然に足がその場所へと進んで行った。
そこで、一つの公園を見付けた。
何も変哲の無い公園。
悪く言ってしまえばなんのとりえの無い公園。
あると言えば大きな噴水くらい。
傘を差し、寂しそうに一人で揺れるブランコに腰掛ける。
きぃきぃと寂しそうな泣き声をあげ、錆び付いた鎖を軋ませて。
座って見ると水がたまって冷たい。
「・・・私もここで遊んだんだろうか?」
そんな―――何気ない
―――雨の夜だった
不死のゾッド vs ギーラッハ
>369
横薙ぎの斬撃を繰り出しつつ走り抜けた己の上に、物言わぬ躯が投げつけられる。
つまらぬ牽制だがここでたたみ込まねば彼奴の回復力は侮れぬ。
「ヤアアアァァァ!!」
大上段よりヒルドルヴ・フォーク の一撃で両断する。
まだ体温の残る屍は臓物と血を撒き散らしながら地面へと叩きつけられる。
そして―――――。
「テイヤアアァァ!!」
刃を返して切り上げからの十字剣閃をゾッドに叩きつける。
◆ブラックハートvsシグモンド◆
>326
ブラック・ハート、目の前のバケモノはご丁寧に名乗ってくれた。
オレに手紙を送りつけたのはどうやらコイツだったらしい。
確かにリストに名前は載っている。
思わず苦笑する。
だが、ヤツが斗数を人質にとって居るのは変わらない。
ご丁寧に、この街の人間をけしかけてくれたようだが、
そのゲームに乗ってやるわけにも行かん。
ヤツにはご退場願おうとしよう。
この狂気に満ちた空間には力がみなぎっているかのようだ。
迫り来る群集のはるか手前に火竜両儀筒をぶち込む。
思った通り、爆風が立ち上り、あたりをなぎ倒す。
ヤツとの距離が離れたが…、
あからさまに操られている奴らと戦うのも性に合わん。
「さて、本業に戻らせてもらうぞ、ブラックハート…」
群集はまだ残っているが、避けながらでも行けるか…?
>371 遠野志貴vsチェルシー・ローレック(導入2)
その夜は、激しい雨が降っていた。
雨を見て、きわめて珍しいことに、俺は外へ出かける気になった。
アルトルージュに血を吸われてから、数年がたつ。
今まで俺は、アルクェイドやシエル先輩の言葉にしたがい、
屋敷からほぼ出なかった。陽光と流水は致命的な影響を俺に与えたし、
何より狩人が群がってくる、という事だった。
それは確かに正しいことだったが、誰もが――俺も予想していなかった事があった。
人をも殺す諦観だ。
昼間は暗い部屋に閉じこもって翡翠と琥珀に世話され、外に出られるのは夜のみ。
次第に変わっていく周囲と、変わらない自分。
秋葉やシエル先輩は心から心配してくれたし、翡翠と琥珀は献身的だった。
何よりアルクェイドはその笑顔で俺を元気づけてくれた。
しかし、俺自身が枯れてしまっていったのだ。
何とか流水は克服したが、外に出る気力など既に失っている。
俺は諦観に支配され、日々を過ごすようになった。
前に外に出たのはいつ頃だっただろう。
そんなことを思いながら、和風の離れで一緒に暮らして、
俺を世話してくれている翡翠に出かけることを伝える。
「翡翠、出かけてくる」
「こんな雨の日にですか? それに、こんな遅く……」
既に終電が終わっている時刻。加えて雨が降っているから、外を出歩く人間など
いないだろう。
「こんな日だからだ」
「……わかりました。お気を付け下さい、志貴さま」
俺は苦笑する。
「こんな夜に俺と会う方が気をつけるべきだと思う」
一瞬だけ驚いた表情をした翡翠だったが、すぐに深々と頭を下げた。
そういえば、苦笑なんて久々にしたかもしれない。
>374 遠野志貴vsチェルシー・ローレック(導入2続き)
俺は外に出ると、大きめの傘をさして歩き始めた。克服したといっても、
全く問題がないわけではない。
市街地の方に出る。
いつの日だったか、悲しい別れをしたクラスメイトと一緒に歩いた坂道を下り、
市街地に向かう。
繁華街で路地裏に立ち寄った。
思いでの中でしばらく立ちつくした後に、公園に向かう。
そして、俺は彼女に出会った。
雨で街灯の光がほとんど役に立たない公園に一人、彼女はいた。
何故こんなところに、こんな時間にいるんだろう。
久々に、そんな人間らしい疑問を覚える。
思わず声をかけていた。
「こんばんは。ひどい雨だね」
376 :
不死のゾッド ◆FushiL3I :02/05/09 23:10
不死のゾッド vs ギーラッハ
>372
躯を両断したばかりの相手の足止めに用いるべく、両手にそれぞれ岩塊を握り込む。
が、それを投げ付けようとした矢先、紅の騎士は再び不可視の刃を放ってきた。
咄嗟に左手に握った岩塊を刃に向けて投げ付ける。
人間の頭部大の岩塊が、魔力の刃を相殺――否、減殺した。
砕け散った魔刃の欠片が額に裂傷を刻み込む。
無論、活動に支障の生じる様な傷ではないので気にも止めないが。
額より血を飛沫かせつつ、右手の岩塊を相手に投げ付ける。
そして素早く四つ足となり、再び紅の騎士に向け駆け出した。
剣で付けられた脚の傷は既に痕を残すのみだが、
不可視の刃に付けられた方からは未だに夥しい血が吹き出している。
が、それにも関わらず、突進速度そのものに遅滞は見受けられなかった。
『ガオオオンン!!』
地を揺るがす足音と咆吼と共に、黒い砲弾と化した怪物が殺到する。
・・・世の中が総て溶け込んだ、悪しき空間。
・・・真円描きて闇を支配する、高貴なる十五夜の月。
タカハシがいなくなった夜。
ああ、あれも・・・丁度、こんな───
ウルフVS鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
【導入】
コレは、人の骨。
骨にはかるしうむが沢山で、体が丈夫になるらしい。
だから・・・齧る。子供だったから、程よい硬さで、肉質も、とってもジューシー。
顔の肉の表面を前歯でこそげ落としていると。
・・・カラっ て乾いた音がして顎の部分と頭の部分に頭蓋が別れた。
・・・そう言えばタカハシが言ってたか。いいヤツはご飯を残さないって。
ウルフは悪い奴だし、そろそろお腹もいっぱいだから、後は・・・玩具。
そして。玩具には名前を書かなきゃならない。
五寸釘の様な無骨な爪で、ガリガリガリ。
ニンゲンの骨でもとっても太い内の一つ、大腿骨に「うるふ」って
彫り付けた。−−−−−−−うん、上出来だ。さすが、ウルフ。
デザートは、飴。
ぬらぬらと血液と膿がソースになった骨髄の柔らかさ。
それは、想像するだけで、体が震えてくるほど。
・・・根元より。
蟹の脚みたくへし折った右腕に、思いっきりしゃぶりつこうとしたその時。
この公園の端・・・丁度砂場の向こうの杉並木の合間から、「こっち」
の世界の気配が流れてきた。
不死のゾッド vs ギーラッハ
>376
飛来する岩塊を再び神速の動きで避ける、刹那。
「ぬう―――― 」
激しい動きで折れていた肋骨が再び内蔵を傷付けたのか激痛が走る。
かろうじて避けた岩塊が足元で砕け散り、破片が鎧の表面ではぜる。
そこに怒涛の如く迫る巨大な影。
――――― 避けられぬ ―――――!!
向き直り、ヒルドルヴ・フォーク を正眼に構える。
>374 >375
――ざあざあ
外は雨……
鬱蒼とした雨雲が空を覆っている。
私の部屋から見える中庭は真っ暗で何かが潜んでいてもおかしくない雰囲気だ。
「はあ………」
私はその陰鬱な景色を眺めつつ、溜息をつく。
……兄さんが死徒化してから、数年。
もう、抜け殻となりつつある兄さんは私にとって、常に懸念の対象だった。
私には死徒の感覚は分からない。
けれど停滞した兄さんと変わり行く周囲……
兄さんがそれに寂寥感を感じているのは薄々、気づいていた。
だが、私には何も出来ない。
こうやって、兄さんを見守ることぐらいしか……
「駄目ね……」
再び、溜息をつく。
気分が晴れない。
「そうね、兄さんの所に行って見ようかしら?」
それはほんの思いつきだった。
こんな時間帯に訪れれば、流石に兄さんも驚くだろう。
>379
「……兄さん?」
離れに入って、奥にいるであろう兄さんに声をかける。
「……?」
返事がない。
おかしい。
「……!?」
兄さんの靴がないことに気づく。
まさか!?
・
・
・
屋敷の中を駆け回る。
途中、翡翠に出会う。
……どうやら、兄さんは外出したらしい。
「……翡翠!」
翡翠を張り倒したい気持ちに駆られたが、そんな時間はない。
正直、今の兄さんに外を出歩いてもらうことは好ましくない。
ハンターとかにもし、兄さんが……
あるいはその逆で四季と同じように兄さんが……
「……兄さん!」
私はそのまま、翡翠を尻目に玄関へと駆け出した。
>340 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
地を転がりながら、その勢いを利用して閑馬は飛び起きた。
肩から流れる血は結構な量だが、気にした様子は見られない。
疵口で蠢く蟲たちが何とかしてくれる筈である。
左膝を付き、刀を横構えにした。
滴る血脂が峰に植えられた獣毛を塗らす。
その刃に映る男は、包帯の奥で笑っている。
「愉しいか」
左手が脇差を掴む。
「愉しいよなあ、そうだろうとも。――主も相当」
雷瞬、跳躍した閑馬は天空に在った。
「壊れている様だな」
たばしる両刀は、闇夜に疾る二条の銀光と化す。
>374>375遠野志貴vsチェルシー・ローレック
私が傘を差し、ブランコに揺られていると前の方向から一人の少年が現れた。
歳は私よりも少し下程度、だいたい高校2〜3年生だろう。
姿は中肉中背でコンタクトが主流のこの時代に、眼鏡を掛けている。
ちょっと洒落っ毛が無い少年。
それよりも、何処か影のある印象を受けた。
少年は私に話しかけてきた何気なく話しかけてきた。
雨がひどいね、と。
別に挨拶が嫌なわけではないが今はそんな気分ではなかった。
地上にとっては普通の雨も、地下にいてはまったく見られない。地下で生まれ、育ってきた
者にとっては特別な自然現象。
だけど―――私は雨が嫌いだった
「・・・そうですね」
私は明後日の方向を向き、そっけない態度を取った。
向いた先には町の明かり。
何処の町も眠らない。
何処に行っても変わらない。
私は、ブランコから気だるく立ちあがり、ゆっくりと少年の方を向く。
少年の顔は夜と雨、そして大きな傘の所為で表情が良く見えなかった。
「あなたは?・・・こんな夜中にどうしてこんな場所へ来たんですか?」
私の口から出たのは
普通の何気ない質問だった。
ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
>377
雲一つない、済んだ夜空。
天空の玉座を占めるのは、欠けたる所無き姿を誇らしげに晒す、全き月。
───魔が闇を拾い歩くには、打ってつけの夜だ。
そろそろ、日付も変わろうという時刻。
学校の帰りに友人と遊びに出かけ、すっかり遅くなってしまった。
(これは、帰ったら大目玉だろうな…)
そんなコトを考えながら、家路を急ぐ私。
いつもは通らない、人気のない公園の側を通った時、それは、そこにあった。
人間の、子供の血の匂い、それにこれは───魔の気配。
足は自然に、そちらへと向かっていた。
人に徒なす鬼ならば───この手で狩らねば、ならないから。
公園の中央。煌々と輝く月明かりを満身に浴び、そいつはそこにいた。
人と狼が合わさったようなその姿は、奇妙さよりもむしろ美しい。
その足下に、人間の骨が転がっていなければ。
その口元に、人間の骨を銜えていなければ。
向こうもこちらに気づいたらしい。
骨を囓る手を止め、こちらを見つめる。
私は無言で鞄を置き、刀───我が最強の愛刀、大通連───を抜いた。
これは───魔だ。狩るべき鬼だ。
不死のゾッド vs ギーラッハ
>378
「セイヤアアァァ!!」
突撃する巨体に向かい、渾身の魔力を注ぎ込んで放つ爆裂十字剣閃。
頭部より直撃するゾッドの巨体を受け止め、踏みとどまる足が地面に二本の溝を刻む。
交差するゾッドの左角にヒルドルヴ・フォークは食い込み、遂にそれは中空へ舞う。
――― 刹那 ―――――!
ヒルドルヴ・フォークが鈍い音を立てて崩壊した。
「な―――――!?」
ゾッドの右角が左胸を刺し貫き、踏みとどまる事も叶わぬ足が宙に浮く。
突進はとどまる事を知らず、怒涛の勢いで己の体は背後の岩山に縫いとめられた。
「があああぁぁぁぁ!!」
口は言うに及ばず、鼻や目からも鮮血が噴出し―――――。
圧迫された腹腔は破裂して臓物を散らし―――――。
無限の心臓は貫かれた―――――。
「………… まこと …… 未だに、己の知らぬ力が ……………… 」
最期まで言葉を紡ぐ事も叶わず、紅の騎士の体は炎に包まれる。
そして燃え尽きた後には塵一つ残ってはいなかった。
八千草飛鳥(M)vsシヴァ(M)
>280
主の顔面へうなり飛ぶ死の刃。
しかし、飛鳥は優美とさえ言える動きで庖丁をかわすと、シヴァにカタールを
振るう暇も与えずその懐に飛びこんだ。
傷だらけの巨体が震える――シヴァの腹に、魔性の刃は突き立てられたのだ。
飛鳥の口から恍惚たる呟きが漏れる。
「これから真一文字に性器のすぐ上まで切り裂きます。
ここは素早くやってあげよう、腹圧でぴりぴり裂けるのは性にあわないんだ。
もちろん、貴方にもお腹の中を見せてあげます。
大丈夫、ショック死しないように手は尽くす、ぼくはベテランですからね。
それからペニスだ。妙な話ですが、解体される時、男は大抵そそり立つ
ものなのです。
人間というのは自分の死にも興奮するらしい。
そそり立っているそれを、付け根に刃を当てて一息に切り落としてあげま
しょう。
そして止めに首を切り落としたら、ゆっくりとあなたの肉を味あわせて頂きますよ」
そして、飛鳥は腹の庖丁を性器の上までひき下ろさんと力を込めた。
>381 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
二刀を振るい、上方より襲い掛かる閑馬。
それに対してこちらの持つ刀は無限刃ただ一本のみ。
挟み込むようにして迫るこの斬撃を志々雄は如何に避けるつもりなのか。
再び、鋼の激突する音が響く。
しかし、人を斬った音はしない。これは一体?
見れば、大刀を無限刃で受け止め、逆から来た脇差は―――
がっちりと、歯で受け止めている。
この男には常識という物が通用しないのか。
そう思わせるような、ひどく斬り合いの場に於いてそぐわない光景であった。
そして、灼熱の眼光が、射抜く。
空いていた手で脇差を持つ閑馬の腕を掴む。
刃による脅威は去ったが、これでは双方攻撃が出来ないではないか。
いや、脅威はまだある。
先程まで刃を受け止めていた顎は獣を思わせる素早さで―――
閑馬の首筋に、喰らい付く。
歯が肉を裂き、食い込んでゆく。
みちみちと気分の悪くなるような音を上げ―――ぶつん、と噛み千切る。
驚きを隠せぬ閑馬を尻目に、距離を取る。
吐き出された肉はべちゃ、と湿った音を立てて地面に叩きつけられた。
「不味いな―――」
人を喰らった魔人は一筋の戸惑いも見せずに、言葉を放つ。
「蟲の味だ」
一際、歪んだ笑みが顔に刻まれた。
ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
>383
・・・なんだ。仲間じゃなかったのか。
相手の気配は・・・鬼。今のウルフと同じような。
・・・鬼って美味いのか?
あ、でも・・・もうウルフはお腹一杯だ。もうほとんど入らない。
───そう言えばタカハシは言ってたっけ。
「食後は運動をしないと体に悪い」って。
あはははははははははははははははは。
新しい、玩具、はっけーん、だな♪
----闇すら恥らう緑なす黒髪を靡かせ、魔を刈る者。
そんな彼女の気配を直に感じても、今の彼にはなんの感慨も沸いてこない。
恐怖も歓喜も総て、今の彼には同じ感情。
じゃぁ、(------骨を足で踏みつけ)
今度は(-----彼の腕に黒き雷光が迸り)
オマエが(大地が隆起し・・・)
玩 具 だ ! ! !(韋駄天、彼女に突進する4体の物の怪)
4体のウルフ。
その内3つは土塊で作られた精巧な模造品。
彼らは刀を構える女の頭上、右方、作法、正面より接近し、メスのような
カギ爪を、振るった。
全身を切り裂き・・・砕き、それをもう一回組み立てたら、
きっと、それは、楽しい。
VS八千草飛鳥
>385
最初に驚愕した 次に来るのは、化け物どもなら歓喜なのかも知れない
だが彼は違った
彼に訪れる感情は、恐怖とそれに伴う強烈な自己保存欲求だった
「傷が増えてしまったぞ。」
腹に突き立った刃に力を込められるその刹那、一気につかみかかり
背後にある街路樹の細く突き出た枝めがけて突進し飛鳥の体を叩きつけた
奴の細い体に枝が食い込み、体内で砕け散る音が聞こえる
どこに刺さった そんな事はどうでもいい
飛鳥から即座に離れると、刺さったままの包丁は臓器を傷付けたか
彼は体に刺さったままにしておいた
仕留めるならば今が絶好の好機と見るや、眉間を中心に精神集中を行った
ヨガにおいて、眉間を「第三の目(アジナ・チャクラ)」と呼びそこで気の開放を行うが
彼はそのチャクラにより、
自らの潜在意識に潜む破壊、そして苦からの救済を行うといわれるシヴァ神を覚醒させる事ができる
彼自身、その力の限界を未だかつて知らない。
「破壊神よ!! 我に力を〜〜〜〜!! 」
再び両手のカタールを大上段に掲げて合わせ、木にはりつけにされている飛鳥に
降りかかった
その速度は先刻の比ではない
>382 遠野志貴vsチェルシー・ローレック
『・・・そうですね』
俺の言葉に返ってきた、素っ気ない一言。
だが、拒絶されている感じはしない。
彼女は、俺の方を見ない。
雨に揺らめく、街とその灯りを見続けている。
少しのあいだ見続けると、気だるそうに彼女は立ち上がった。
その時だった。
俺の方を向き、彼女の目が見えた瞬間。
俺は確信した。
彼女も、戦っている。
俺が失いかけている、強い想いをその瞳に宿して、戦っている。
『あなたは?・・・こんな夜中にどうしてこんな場所へ来たんですか?』
彼女が、そう問いかけてきた。
「そうだな……気が向いたから、ってところだね。それより」
心が躍る。
あの強い想いはどんな感じなのだろう。
引き出してみたい。
さらけ出してやりたい。
眼鏡を外して、しまった。
「ごめん。俺、君と遊ぶことに決めた」
そう宣言すると傘を放り投げ、彼女との間合いを一瞬にして詰めた。
詰める間に、雨粒一つ一つが針のように肌に突き刺さる。
しかし、その痛みも今の俺には歓喜の一要素でしかない。
そ痛みを無視したくなるような、活力に満ちた目に出会えたから。
詰めると同時に右の拳を握って、彼女の右頬に裏拳。
全力ではない。「撫でる」程度だ。速さも落とした。
――――さあ、俺に君の強さを見せてくれ。
>386 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
「違いない」
激痛に引き歪む閑馬の顔にある表情を形作る。
その笑みは、面前の魔人のそれと妙に酷似していた。
「儂は虫だ。永き時経ながらも、ついに人の上に立てなんだ虫だ。
だがな――」
止めどなく鮮血を吐き続ける首筋で、無数の蟲どもが這い回る。
「それは誰しも同じだぞ。ひと時の勝者とて、次の覇者の為に席を暖めておるに過ぎん。
主もそうだ。
『国盗り』だと。クク、威勢は良いが、何を造る、遺す」
声を叩き付けながら地を駆けた。同時に脇差を志々雄へ投擲する。
「それに何の意味がある」
続いて、何と愛刀すらも手裏剣打ちに投じた。
空いた左手は、その時すでに懐より匕首を掴み出していた。
ブラックハートvsシグモンド
>373
轟音が響きわたり、爆風がもの言わぬ人々を薙ぎ倒す。
その光景を見たブラックハートは、野卑な声で不満の叫びをあげた。
「臆病者め、なぜこいつらを四分五裂の肉片に変えない!なぜこいつらを塵芥にしない!
お前は今まで多くの命を奪ってきたのだ、このような連中がどれだけ死のうが、
どれだけ殺されようが知ったことではなかろう!」
黒い悪魔の発する声は、先ほどまでの自信に満ちた声から狂人のそれへと変わり果てていた。
その赤い目が不規則に点滅する。
「来い、来てみろ!こいつらを殺して、踏み潰して・・・・がああ!」
突然、ブラックハートが苦しみ悶えた。
その声がもとの声、若く知的な声に戻る。
「・・・どれだけ私を愚弄すれば気がすむのだ、父よ・・・。
また、狂気の虜に・・・」
ブラックハートが苦しむ間、虚ろな表情の人々はその動きを止めていた。
ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
>387
こちらを一瞥した人狼が───嗤った。
その凄惨な表情は、まさに人食いの鬼に相応しいものだ。
こちらへ向かって一歩踏み出した、足の下敷きとなった人骨が、哭くような音を立てる。
瞬転───黒く雷の如く迫ってくる人狼の影は、4つ。
正面、右、左、そして頭上。
迫り来るそれらを迎え撃つ私の表情に、焦りはない。
正面から来る人狼に、袈裟懸けの一刀を浴びせる。
土塊に仮初めの命を与えて作られたらしいそれは、何の手応えも残すことなく、あっさりと土に還る。
頭上から飛びかかってきた2体目を、バックステップして躱した。
体勢を崩したところを蹴り上げれば、それもやはり土人形。
3体目は、右から襲いかかってきた。
横薙ぎに振るわれた鉤爪を、深く身を沈めて回避。
跳ね上げるような一撃で、そいつも股間から両断されて崩れ去った。
そこに、4体目が左から突進してくる。
他の模造品よりスピードのあるその鉤爪が、私の背中を貫こうとした、その次瞬。
私の影の中から現れた太い腕───人間のものではあり得ない、それはまさに鬼の腕だ───が、それを掴み止めていた。
常に私の側に控え、私の身を守る、絶対忠実の使鬼。
全身を現した使鬼が、人狼を大地へ叩き付けようとする。
同時に懐へと飛び込んだ私の、胸元への突き。
さあ───どう躱す?
>389 遠野志貴vsチェルシー・ローレック
雨が降りつづける公園。私は少年と2人で言葉少なく佇んでいた。
雨は時間に連れ強さが増して行く。
地面にできた水溜りは空からの大粒の水滴で無数に跳ね上がり、荒荒しく踊っている。
近くの建物に水が当り、普通の雨ならば軽やかなリズムを刻む音も今では騒々しい不快な音になっている。
この分だと、今夜は嵐になりそうな気配だった。
少年は私の問いかけに、気が向いたからと答える。
何処か似ているような気がする。
彼と私は。
『―――それより』
少年はおもむろに眼鏡を外す。
その目には光さえ見えず、ただ虚ろに此方を凝視している。
まるで獲物を観察するかのように。
私は傘を差したまま少年の方を眺めていたが、この異様な空気に気が付いた。
ピンッと張り詰めた空気、時間がゆっくりと流れて行く錯覚・・・。
この空気は間違い無い―――
『ごめん。俺、君と遊ぶことに決めた』
戦いの空気だ!
少年は傘を放り出し、目に求まらぬ速さで此方に向かった来た。
その顔は悦びに浸り、長年会えなかった恋人にでも再び出会ったような笑顔を浮かべている。
だが、この場ではただ狂人の様にしか見えなかった。
私は右頬に当てられそうになる拳を、上体を思いっきりスウェーし、紙一重でかわす事が出来た。
―――かわしてはいないか。
微かな痛みに気がつき、頬を撫でると赤い血が流れている。
紙一重と言うよりも実際には当っていたのだ。
・・・そんなことよりも。
これは相手からの宣戦布告。
彼も言っている様に私と『遊びたい』みたいだ。
(いいわ・・・どうせする事も無いし)
私は拳に強力な重力の塊を集め、戦闘態勢に入る。
隙あらば、本当に重力の拳で相手の頭ごと吹き飛ばすつもりだ。
私には失う物は何も無い。
「覚悟しなさい・・・アンタが先なんだからね」
そして、私は少年に拳を振り上げた。
>322
今回のターゲットは、ヴォルフガンク=ナハツェーラー。
燦月製薬本社に出入りする謎の老人……。
素性不明。
過去の経歴不明。
そんな奴が、どうしてサイスと接触を持つようになったのか分からないけど……。
まあ、仕事だ。文句は言わない。あいつを殺る。それが全て。
ふと、サイスとの会話を思い出す。
彼は、ドライにあまり多くは語らない。
放任主義……という奴なのだろうか。
こと暗殺に関しては、ターゲットを教えてあとはドライの好き勝手にやらせている。
そんな彼が、珍しく言葉を挟んだ。
―――世の中には、人に似て非なるものが存在する―――
―――彼等は人では無く、人のように死ねない―――
―――だが、ファントムを名乗る者なら、殺せなければならない――
そして、彼は銃弾の詰まった四角いパックを手渡した。
―――急な事態故に、100発しか手に入らなかったのだが―――
銀の銃弾。
しかも、細かい文字がビッシリと書き込まれている。
なんだこれは?
―――これを心臓に叩き込むのだ、良いか、心臓だ―――
うるせぇ。分かったからグダグダ言うんじゃねぇ。
それで話は終わった。サイスは、終始笑わなかった。
>394
殺す。
あの青白いもやし野郎を殺す。
それで終わりだ。
サイスから貰った銀の銃弾が詰まったマガジンを、AUGライフルに叩き込む。
狙撃なんて面倒なことはやんねぇ。
射程距離ギリギリから蜂の巣にしてやる。
バン、と分厚いドアを蹴破って、一般席に駆け込む。
丁度、特等席の真後ろ。
標的の線香臭せぇ背中が背もたれごしに丸見えだ。
はいはい、サヨウナラ……!?
銃声。崩れ落ちる人影。
銃声。吹き荒れる血潮。
ナニカガヘンダ
気付いたら、あたしは床に突っ伏していた。
反射的に、流れ弾に対しての……。(――――流れ弾?)
そこで気付いた。何が起こったのかを。
サイスは死んだ。蜂の巣にされて死んだ。
戦慄。あのサイスの超護衛を出し抜ける者など、滅多にはいない。
戦慄。あいつだ。――あいつが現れた。
もう、ナハツェーラーなんてどうでも良い。サイスは死んだ。もうあたしには関係無い。
玲二、
玲二、
玲二、
あたしには分かるよ。……ハハ
あんただ――あんただ――あんただ――!!
やっと――やっと会える。
なぜだろう。
最強と同義の意味を冠するファントム。
彼女は、銃声吹き荒れる劇場の中で――泣いていた。
それは歓喜の涙。
恐怖の感情など――彼女には無い。
>394 >395
ナハツェーラーは体調不良だった。
このオペラハウスにはクーラーで快適な環境を保ってある。
ナハツェーラーは常にこの暑い中、クーラーの効いたところにいた。
結果、ナハツェーラーはクーラー病にかかっていた。
クーラー病……
体の冷え、倦怠感、食欲不振、頭痛、腹痛、下痢、神経痛、生理不順、血行不良を引き起こす。
ナハツェーラーはオペラハウスの特等席で襲いくる不快感に耐えていた。
だが、直接、ナハツェーラーに吹き付けるオペラ座のクーラー……
ナハツェーラーの気分はどんどん悪化していった。
ナハツェーラーの視界がだんだんと暗くなる。
血行不良により、脳に血が行き届かなくなったのだ。
………玲二の弾丸がサイス・マスターを撃ち抜いた時、ナハツェーラーは既に脳死していた
ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
>392
あ、ばらばらだ。
全部土に帰っちゃって。つまんねーの。
ああ、掴まれる。太くて、ごわごわで、オドロオドロシイ、鬼の腕に。
そして光り輝く刃に切られそう。
痛い。痛いんだろうな。
・・・・・・ほら見ろ。やっぱり痛かった。あはははは・・・ウルフ当たり。
当たったら、痛いって分かってた。
鬼が繰り出す豪腕。そして、
──────突き
それは、間違いなく、人狼の胸元を貫き通していた。
・・・ああ、だから、なんだと言うのであろう。
『玩具には、名前を』
今の彼にとっての唯一無二の命題は、ただ、それだけなのだ。
胸元より大出血を起こしながら、人狼は、鬼の女の首筋を撫でる。
そして、爪を立て、甘噛みした。
名前を書いている余裕はない。だから、責めて分かりやすいように、
跡がつく程度に。
でも玩具が壊れないくらいに加減して、強く、強く。
断続的に彼女を守護する使鬼に体を貫かれながらも、一心不乱に・・・。
------人を守り、同族を切る。
そんな強く正しい心の「匂い」は人狼にとって究極の嗜好品なのだ。
>390 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
『何を造る―――』
何も。
強いて言うのならば、無数の屍。大地を焼き尽くす業火。混沌の世界。
それらを実現する―――己の時代!!
『何を遺す―――』
今の世は全て仮初の物だ。
全てが借り物で、つまらない。
そして、それらが焼け落ちた後には絶対の真理が残る。
弱肉強食。
弱い者が死に、強い者のみが生き残る。
最も単純にして、最も心躍る理。
それこそが遺すべきもの。
くだらねぇ。
投擲された脇差を僅かに体をずらすだけで避ける。
『それに何の意味がある』
くだらねぇ。くだらねぇ。
突然投げつけられた大刀すらも、事も無げに刀で叩き落す。
くだらねぇ。くだらねぇ。くだらねぇ。
くだらねぇくだらねぇくだらねぇくだらねぇくだらねぇッ!!
何を遺すなどというのは問題ではない。
詰まらない今を壊す。
それが―――望みだ!!
振った無限刃の勢いを殺さず、そのまま虚空に銀の弧を描く。
腰を通過する一瞬、鞘に刃が擦れ、耳障りな音を立てた。
そして、刃に炎が宿る。
これこそが―――
「壱の秘剣―――焔霊!!」
炎を纏った刃で、袈裟懸けに斬りかかる!
<アルクェイドvsアルクェイド>『矛盾因果律』
錆びた城壁、――本来の役割を忘れた、わたし。
無人の回廊、――求める者すら見つけられない、わたし。
動かない空気、――為すべき使命を放棄した、わたし。
荒れ果てた庭園、――誰にも何も与えられない、わたし。
張り巡らされた鎖、――過去に縛られ何も始められない、わたし。
そして傍らには小さな黒猫……夢を操る仮の使い魔。
それが全て、…今のわたしはこれで全て……。
……後一つだけ在った、過去の記憶、楽しかった幻影、失われた夢……志貴との想い出。
もう身体を動かす力さえない、自らの内から涌き出る衝動に抗う気力はもう失せている。
ロアが滅びて力を取り戻してから、星は世界を一巡りはしただろう。
その間、わたしは以前の様に眠りにつく事も無く世界を巡った。
だって、最初は世界が輝いて見えたから、知っているのに経験した事が無い何かを在ると思ったから。
確かに面白いモノはあった、わたしの想像も出来ないモノもあった…けどそれだけだった。
ソレが魔法の様に感じたのは、側に志貴が居たからだって気づいた時…世界が終った。
……ちがう、志貴に拒絶されたあの時終っていたと気づいたの。
それからは、ただここに留まり過去を夢想した。
わたしにはソレしかなかったから…他に何も持っていなかったから……。
だけど、過去を夢想するのも終り……。
堕ちて魔王と化すぐらいなら、永遠の眠りを選ぶ……そうしないと志貴達の未来まで終ってしまう。
わたしには夢は見れない…真祖は夢を見る事出来ない。
だけど、せめて………夢を見ることぐらい許して欲しい。
「ねえレン…、もうすぐわたしは終るわ。」
終りが近いのはこの小さな夢魔も同じだ…わたしと言う仮の主を失えばいずれ消える運命だから。
「だから一緒に夢を見ましょう、貴方も知っている…志貴の夢を…あの楽しかった時を…」
意識が途切れる最後の一瞬…今まで一度も聞いた事の無いレンの鳴き声を確かに聞いた…。
>399
<アルクェイドvsアルクェイド>
―― Blue Blue Glass Moon ――
――― Under The Crimson Air ―――
――― be inconsistented with contradiction ―――
『矛盾因果律』
ここに2つの可能性がある。
――1つは拠り所を見つけた純白の魂
――1つは拒絶され、ただ静かに壊れ、朽ちていく純白の魂
本来は決して交わることのない同一のモノである。
だが、時としてそれが交わる場所がある。
――それは喫茶店『アーネンエルベ』
交わるべき状況がある。
――無限の可能性を秘めた『夢の世界』
side「Arcueid(Light)」
その純白の吸血姫は、いつも通り、遠野志貴と楽しい1日を過ごしていた。
いつもどおり……
映画館で映画を見て、
適当な洒落た店で食事でもして、
ぽかぽかと暖かい公園で遠野志貴とおしゃべりをする。
なんてことはない日常、これが今のアルクェイドにとっての幸せだった。
最後にアーネンエルベで志貴と軽く紅茶でも啜って、彼女は幸せを満喫する。
門限に気づき、慌てふためき、席を立ち、アルクェイドへの言葉もそこそこにあたふたと店を飛び出し、
帰路に着く志貴。
そして、それをふくれっ面で喫茶店の中から眺めるアルクェイド。
でも、そんなことすら彼女には幸せだったのだ。
……唐突にアルクェイドの表情が固まる。
まるで見てはいけないものを見たかのように……
そう、窓の外に「アルクェイド・ブリュンスタッド」が立っていた。
>400
side「Arcueid(Dark)」
――なんで、わたしはこの街に戻ってきてしまったの?
――もう、此処には来ることはないはずだったのに
――ううん、理由は簡単
――「わたし」が壊れて、もう、1人でいるには寂しすぎるから
――せめて、あの暖かい夢の残滓だけはこの身に感じようとしてるの
――志貴、夢ぐらい見てもいいよね?
街の中をわたしはブラブラと歩く。
でも、あの時と違って、景色がハイイロだ。
映画を見てみた。
……つまらない
ハンバーガーを食べてみた。
……ただのパサパサしたパンと肉だった
理由は分かっている。
側に志貴がいないから……
背景だけ真似ても、意味がない……
分かりきっていたことなのに……
矢張り、わたしはもう夢の残滓にすら身をゆだねることは出来ないのね。
暗い気分で街を歩く。
そろそろ、日が暮れる。
もう、帰ろう。
そもそも、この街に戻ってきたは間違いだったのだ。
――仮初めの夢でも、望んだわたしが浅はかだった……
――もう、わたしは何も見ない
――それがいい、志貴の為にも……
「―――!?」
そう決意した瞬間に、私は信じられないモノを見てしまった。
目の前の喫茶店で「わたし」と志貴が楽しそうにお茶を飲んでいる。
ただ、呆然とその光景を眺めているとそのうち志貴が慌てたように、席を立ち、店を飛び出していった。
無論、わたしに気づくこともなく……
そして、その数瞬後、わたしの眼と「わたし」の眼があった。
互いに硬直するわたしと「わたし」
――わたしの中で何かが弾けた……
>401
<アルクェイドvsアルクェイド> 『矛盾因果律』
……志貴がいた、『わたし』と楽しそうに笑ってた。
……『わたし』がいた、志貴の側で楽しそうに、幸せそうに笑ってた……。
望んでいた情景だった、何度も夢想した情景だった、この夢を見にここに来たの………。
でも、わたしはミテルダケナノ?
志貴が店を飛び出していく…わたしに気づきもしない。
当然だ志貴の前には『わたし』が既に居るもの…、わたしは必要とされていないもの。
けど!! 何故なの?
これはわたしの夢じゃないの?
わたしは、夢でさえ志貴に選んでもらえないの?
『わたし』と目があった。
ド ッ ク ン
心臓が鼓動を一つ飛ばす。
―― この感情は、…そうかこれって『殺意』だ…… ――
『わたし』が店から出てくる、わたしは動けない。
動けば全てを破壊してしまいそうだから。
志貴や想い出まで殺してしまいそうだから。
『ふざけた奴ね…、何が目的?』
そっか、そう見えるのか……。
そうね、貴方から見ればわたしが偽者よね、……良く解るわその気持ち。
だって、わたしも貴方になりたかったの。
志貴と一緒に居たかったのよ!!
「ねえ、何故なの?」
他に言うべき事はある、答えるべき事もある、でも問いが口から溢れた。
内から溢れ出そうな感情を抑えこむ為に、思わず顔を押えつけながら続ける。
「志貴は何故貴方を選んだの? 何故わたしじゃないの?」
ナ ゼ ワ タ シ ハ 、 エ ラ バ レ ナ カ ッ タ ノ ?
ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
>397
大通連を持つ腕に、確かな手応えが伝わる。
その切っ先は、間違いなく人狼の胸を貫き通していた。
だが、そいつは───平然と、立ち上がってきた。
一瞬の驚愕。人狼の接近を許すには、それで十分だった。
胸から血を吹き出しながら、伸びてきた人狼の手が首筋を撫でる。
その爪が、私の首に喰い込む。
喉を破るほどの力はないが、はっきりと跡を刻む程度には力のこもった爪。
強すぎず、弱すぎず。
なおも加えられる使鬼の攻撃を受け続けながらも、その手つきは乱れというものを知らない。
「舐め……るなっ!」
渾身の力を込めた膝蹴りで、人狼を蹴り剥がす。
突き放された時に滑った人狼の爪が、首筋に残った跡を深くした。
のけぞった人狼の首めがけて、横薙ぎの一刀を送り込む。
胸を貫かれても平然としているほどの生命力の持ち主でも、首を落とされれば、生きてはいられまい。
◆ブラックハートvsシグモンド◆
>391
殺しは生業であって、趣味じゃない。
「ああ、どうせ何処とも知れないヤツラだ。死のうが生きようが知ったことでは無いんだろうな。
ちょっと前までならな。ゲームのコマにはなる気は無い」
そういった後、火竜両儀筒の先でヤツを挑発する。
なんにせよ、まずは斗数を救出しなければ。
その思いがここから離れなければならないと告げる。
そして、ヤツが苦しみ始め、先ほどと同じ調子の声になる。
町の群集も、その動きを止めていた。
「そうかい、お坊ちゃん、いい方法があるぜ?」
避けられるのは当然として、
ヤツにギリギリ当たるか当たらない方向へ、
一発火竜両儀筒を撃つ。
そして、人間が居ない方向…、町の入り口辺りまで走ろうとする。
斗数、もう少しだけ、待ってろよ…。
>398 志々雄真実(M 対 閑馬永空
カッと閑馬の両眼が見開かれる。
世に火を噴く様な剣筋、と評す言葉はある。
だが実際に炎を纏った刀身とは。
驚愕しつつも、匕首を腰だめに突進する勢いは止まらない。
炎撃の剣と鈍光を宿す刃は交錯し、離れた。
志々雄の背後、三間(約六メートル)の距離で閑馬は立ち止まる。
駆け抜けざま、弾かれ大地に刺さった愛刀は右手が引き抜いていた。
香ばしい臭いが漂っている。
肉の焦げる臭いだ。閑馬の身体が。
「……焼かれて斬られるのを同時に喰らうは初めてよ。
どんな手妻か知らんが、こいつ、中々に痛いぞ」
左肩から右腰にかけ、一筋の黒い線が灼き付いている。
血と肉を焼き斬った志々雄の秘技――焔霊の仕業であった。
「だが――良い痛みだ」
閑馬は向き直った。
一刀と同じく、匕首の先は紅く濡れていた。
ウピエルVSファントム 導入
>322 >394-395 >396
オペラ座に拍手が響く。
観客席からの称賛の拍手。舞台で行われた素晴らしい演し物に対する拍手。
銃声と硝煙、そして鮮血によって演出された、一瞬の襲撃/終劇。
それは幾分の無駄もなく、鮮やか過ぎる、芸術性すら帯びた暗殺。
その見事な腕に対し、惜しみない称賛の拍手が送られていた。
それは、一部始終を見届けた、たった一人の観客からの拍手だった。
「ブラボー!!見事な腕前じゃねぇか・・・流石はかの御高名なファントム様だ!」
拍手に込められた掛値無しの称賛に反し、声に出された称賛にはあからさまな嘲笑が含まれていた。
血腥い眼前の光景を前に、称賛と嘲笑の入り混じった二律背反な笑みを浮かべる男。
ひとしきりの拍手を終えると、舞台で呆気に取られた役者の方を見据え、宣言する。
「ここで演し物は終りなんだろうが・・・観客としてはアンコールを要求するぜ。この位じゃぁ・・・足りないからなぁ!!」
それは、舞台への乱入宣言。
これから始まる演目は観客無しの即興演劇。
阿鼻叫喚と血風血雨が歌う鮮血の歌劇(オペラ)だ。
「さァ・・・アンコールには俺も混ぜてもらおうか・・・始めようぜェ!悲鳴と絶叫と銃声の舞台を!!」
乱入者は叫ぶ。その口元に長く鋭い牙を覗かせて笑いながら。
ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
>403
何時までも味わっていたい感触。
そこに生まれる必然的な油断。
蹴り飛ばされ、大地に沈んだ人狼目掛け、繰り出されるは弧を描き、
闇夜を引き裂く大通連。
・・・そうだ。タカハシは言ってたっけ。
玩具は使い方を間違えると、酷い目に会う、なんてな。
ちゃんと説明どおりに使わないとならない。
「あははははははははは・・・・・・・・・・ごほっはははは」
大刀が人狼の首を容易く跳ね飛ばさんとその威を示すその瞬間。
彼の喀血交じりの哄笑とともに大通連は-------
数千年来の腐食が一度に進行したかの如く、黒ずみ、醜く厚さを増した。
土中に含まれる粘土や砂鉄。
それらが人狼の命に従い、一瞬にして刀を覆い尽くしたのだ。
「玩具。壊れろ。拉げろ。ひん曲がれ」(一見土塊と化した刀を払い)
「そして、オマエは明日の三時のおやつ」
髪の毛。一面の髪の毛。人狼の髪がするするするするするするするする
するするするする・・・と伸びに伸びつづけ、女の四肢の拘束を試みる。
>321
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
狼は少しずつ初音の目の前で人の姿へともどってゆく
その姿は、先程までの狼の姿に比べると
実際は均整の取れた肉体であるにもかかわらず、酷く貧弱で弱々しく思えた。
そして、その瞳は目の前にいる自分ではなく、何処か遠くの誰かを
見ている・・・そんな瞳だった。
初音は何時の間にか、この男に興味を持っている自分に気がついた。
しばしの沈黙の後、彼女の口をついて出た言葉は
「見逃してあげるわ・・・・さぁお帰りなさい・・・私の気が変わらないうちに」
男の方が自分より遥かに深手を負い、止めを刺すのが容易な状況にもかかわらず・・・・・
普段の彼女を知るものならば、到底信じられないような一言だった。
ブラックハートvsシグモンド
>404
町の中から駆け出たシグモンドに向かって、ブラックハートの力に満ちた声が呼びかけた。
それがいたはずだった広場とは正反対の、町の外れに存在する低い丘の方向から。
「私の催した余興は、お気に召さなかったようだな。
では、お遊びは抜きにして交渉を始めるとしよう。ここまで来たまえ、ここなら誰の邪魔も入らんよ」
その声の源、異世界の黒い怪物は丘の頂に立っていた。
その長い尾はいまだ少女を絡め、捕らえている。
黒い煙が異様にも、その両脚を取り巻きながらたち登っていた。
「この周囲を茨で囲まれている丘はクライスツ・クラウン、『キリストの冠』という
町名の由来となった場所だ。我らの交渉の場にふさわしいとは思わないかね?」
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
エピローグ
>408
少女の口から、思いがけない言葉を耳にした。
此処から立ち去れ、と。
彼の傷のほうが、少女よりも深手なのは目に見えて明らかだった。
ましてや隙だらけでもあったのだ。
(にも関わらず、逃げろとは・・・・・・)
彼はそう思いながらも、彼はのろのろと校門へ向かって歩き出した。
(全ては、あの満月のせい、ということにしておこう・・・・・・余りに月が綺麗過ぎて、狂ったのだ、俺も。彼女も)
そして手を上げる。
「お騒がせした。次に会う時は、人の身で会おう・・・・・・」
男は月明かりの坂を、苦しみつつ下りていく―――その先に待つは、修羅の道か。
>402 アルクェイドVSアルクェイド
――これは、目の前にいるこれは何だろう?
自分と同じ顔で、同じ声で喋るこれは何だろう?
意味の分からない問い掛け。
志貴が選んだのはアルクェイド・ブリュンスタッドだ。
なら、目の前のコレはアルクェイド・ブリュンスタッドではないのだろうか?
……分からない、分かるワケがない。
この状況はあまりに不理解だ。
なら、少しでも理解を進める為に問い掛けよう。
「あなたは何? あなたはわたしなの? それとも別の何か?」
別の何かという事はないだろう。
何というか、目の前の現身には昔の自分の影を感じる。
兵器であった自分、何もかも知っていて何も知らなかった自分。
そんな自分の鏡写しがそこにあった。
「あなたは、何故此処にいるの?」
過去の自分、Ifの世界の中で選択されなかった自分。
あるいは数あるパラレルワールド――そんなモノがあるかどうか知らないが――の迷い人なのか。
まだ、謎は多すぎる。
>410
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
エピローグ
どうして、そんな言葉が口をついたのか分からない・・・・・
男が立ち去った後、その後ろ姿を眺めながら
およそ、自分らしくない行為に初音は苦笑する、まぁこんな夜があってもいいだろう
そう・・・・こんな月が綺麗な夜には往々にして良くあることだ。
「さて・・・・飲みなおすといたしましょうか」
初音はくすくすと微笑みながら、月明かりに照らされた屋上へと戻っていった。
>405
「ハ、言うじゃねぇか」
表情は崩れない。
だが、胸からは血が滴り落ち、血溜まりを作っている。
―――存外、深かったか。
流石に永き時を生きた剣士。
こちらの勢いを最大限に利用し、只の匕首でこれ程の傷を負わせるか。
「ちったぁマシな剣になったな。
だが……まだ物足りねぇな」
決して傷は無視出来る物では無い。
だが、この男の狂気とも呼べる闘争心は、それを凌駕する。
「さぁ、行くぜ!!」
再び、刀を鞘に当てる。
これによって、無限刃の鋸状の刃の隙間にこびり付いた人の脂が発火する。
火花程度で発火する程の人間の脂。
こうなるまで、一体何人の人を斬ったというのだろう。
刀身に朱い火が灯り、夜の闇を追い払う。
闇を裂き、光を裂き、紅蓮の刃が再び襲い掛かる。
ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
>407
大通連が人狼の首筋を捉えようとした、その瞬間───
その刀身が、黒く錆び付いた。そう見えた。
土塊の如く醜く、分厚くなった刀身は、吐血交じりに哄笑する人狼の手であっさりと弾かれる。
そして、人狼の髪が、私の四肢を捕らえるべく伸ばされる。
どこまでも、どこまでも。
その先端が四肢に絡みつくより一瞬早く、その場を跳び退いた。
しかし、魔髪はその勢いを緩めることなく、更に追いすがってくる。
斬り払おうにも、砂鉄や粘土がびっしりと付着した大通連は、今やただの棒切れに過ぎない。
伸びる髪をくい止めようとした使鬼が、逆にそれに捕らえられてしまう。
鬼の力を以てしても、人狼の魔髪を引き千切るのは不可能だった。
雁字搦めに捕らえられては、鉤爪を振るうコトも適わない。
ばきっ、べきっという、嫌な音がした。
全身の骨を砕かれ、息絶えた使鬼は、倒れ伏す間もなく無に還る。
このままでは、遠からず私も使鬼と同じ運命を辿るコトになる。
いったい、どうすれば───
焦る私の脳裏に、ひとつの方法が閃いた。
未だ血を流す首筋に、刀身を当てる。
すると、血に触れた部分から、砂鉄がポロリと剥がれ落ちたではないか。
血液中のある成分に、こういう効果があるというのを、以前何かの本で読んだのだ。
それが、こんな所で役立つとは思わなかったが。
輝きを取り戻した大通連は、私の意志に従い、迫り来る髪を次々と切断していく。
「さあ───次の手品は何かしら?」
敢えて、挑発的に言い放つ。
余裕があるワケではない。相手が少しでも心を乱してくれれば、付け入る隙もあろうというものだ。
>413 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
美しい音と共に上がった火花は、より強い火勢に掻き消えた。
襲来する真紅の太刀を、十字に組んだ閑馬の二刀が噛み止めたのである。
切り結び、重なり合う双影。
当人たちにとっては永劫とも思われたであろう対峙は、実際には数分にも満たなかったに違いない。
互いの刃を跳ね除け合い、二人は等しい距離を背後へ跳んだ。
異臭がした。
焦げる臭い、だがこれは肉の焼ける臭いではない。
燃えているのだ。閑馬の二剣が。
正確には、両刀の峰に植えられた大量の獣毛が。
刃を返し、刀背で焔霊の一剣を受けた際、走る火が燃え移ったのだ。
否、燃え移らせたのであった。
握った二刀から噴き上がる炎の熱さも心地良げに、閑馬は馳駆する。
焔纏いし悪鬼と等しく、朱の剣は同色の軌跡を描いて左右からたばしった。
不死のゾッド vs ギーラッハ
>384
【終章】
徐々に空が白み始め、岩壁より角を引き抜く巨獣の影を映し出した。
『……ギーラッハ、だったな』
初めて紅の騎士の名を口にした後、斬り落とされた左角を拾い上げる。
それを彼が燃え尽きた場所に突き立てた――あたかも墓標の如く。
そしておもむろに、背より生やした蝙蝠の様な皮の翼を大きく広げる。
最後に今一度、片角となった頭を巡らし、
一握の灰すら残さず燃え尽きた強敵を悼むかの如く、墓標を一瞥した。
『さらばだ』
直ぐに視線を外し、昇り始めた朝日とは正反対の方向へと向き直る。
そして、巨大な翼を羽ばたかせ飛び去るであった。
我らが死闘の記録だ。
不死のゾッド vs ギーラッハ
序章
>293 >294 >295
本編
>301 >304 >305 >307 >311 >317 >325 >333 >334 >338
>352 >363 >365 >367 >369 >372 >376 >378 >384
終章
>417
ギーラッハよ、貴様の事はこの身朽ち果てるまで忘れはしない。
>393 遠野志貴vsチェルシー・ローレック
俺の裏拳は彼女の頬をかすめた。
頬に一筋の紅い線。
良心が痛む。女の子の顔を傷つけちゃいけない。
しかし、そんな事はわずかな心の揺らめきにすぎなかった。
俺の心は歓喜で埋め尽くされている。
彼女はやっぱり戦える。
だったら、さらに彼女の強さを引き出してみせる。
彼女は思い切った上体のスウェーで崩れた体勢を立て直した。
その時、頬に手を当てて自分の負った傷を確認する。
彼女の表情が変わった。
そして、その身に纏う雰囲気すらも変わる。俺と同じ、戦いのための何かを纏った。
目には強い意志の光が踊る。
『覚悟しなさい・・・アンタが先なんだからね』
そう叫んで、拳を振るってきた。
拳に迷いはない。俺を倒しにきている。
当たったら只では済まない一撃。
明確な敵意と闘志が――――――
ココチヨイ。
しかし――――まだ足りない。
人の感情として行き着く最後、殺意までは。
彼女の一撃は人間ならば必殺のものとなっただろう。
だが、俺は死徒だった。
彼女の拳に易々と反応し、身体を落とした。
地面についた手が、痛覚を通じて小さな悲鳴をあげる。
地面は、水に濡れているから。
しかし、俺はその痛みを無視して、次の一撃を入れた。
頭上を通り過ぎる拳を感じながら、俺は水面蹴りを放つ。
この攻撃についてこられるか?
>416 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
刃が打ち合うたび、体の熱が高まる。
これは、発汗機能を失った体の限界だろうか?
いいや、違う。
この身を焼いた呪いの焔。
それが未だにこの身を焦がしているのだ。
そう、炎はまだ、此処に在る。
ならば、二人の刀が炎に包まれるのはもはや必然。
左右から来る刃―――先程のように、口で受けることは出来ない。
では、どうする?
何を思ったか、志々雄は刃圏にさらに踏み込む。
二刀の斬りつける痛みと、炎で傷を焼く痛みが身を苛む。
しかし刃は根元。致命傷にはなり得ない。
それに―――この痛みもまた、心地良い。
―――腕を、伸ばす―――
アツイ。
もはや体は次の瞬間にも燃え上がるのではないかと思えるほどに熱を持っている。
だが、修羅は、止まらない。
―――顔を掴むべく、指を、広げる―――
技は、一つではない。
それを証明するように、その眼に宿った光が、炎上する。
ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
>415
切られる。切られていくウルフの髪。
手ごたえはどうした手ごたえはぁ!!!!!!
つまらない玩具。
ああ、これは、アレだ。不良品ってヤツ。芥は芥箱へ。
・・・ああ、ウルフは悪いヤツダッタ。芥はポイ捨て。
『さあ───次の手品は何かしら?』
芥が。お菓子が。玩具がしゃべった。───なんてコト。
「オマエハ・・・タカハシか」
今更のように体中を駆け巡る鮮痛、どす黒い感情。
「タカハシじゃ無いくせに」
ああ、決めた。只じゃ、捨てない、この玩具。
「ウルフニ声ヲカケルナ!!!!!!!!!!!!!」
人狼の一声により。並木の木々が悲鳴をあげ・・・・・・
蒼く萌え始めた新緑の木の葉が刃と化し・・・虚空を舞う。
一枚一枚意志をもった木の葉の乱舞は人狼の手で制御されずに・・・
彼をも巻き込み宵闇の中、荒れ狂う。
「あははははは・・・消えろ。消えろ。全部、全部だ」
獣毛を真っ赤に染めながら・・・
荒れ狂う刃の中、彼は怨嗟の声を上げ続けている。
>420 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
恐れに近い想いが愕然を塗り潰した。
閑馬の二刀は、刃先をずらされたとは云え確かに相手の身に突き立っている。
しかも炎によって疵口を焼いているのだ。
それなのに相手は倒れない。その気配もない。
歯軋りしかけた口が潰れた様な音を立てた。
伸びてきた志々雄の手が、無造作に閑馬の下顎を締め上げたのである。
その怪力より先に閑馬が感じたのは、呪炎立ち上らす魔人の掌、その異常な高温であった。
この熱さは――断じて常人の体温ではない。
振るう剣だけではなく、身中でも焔が燃え盛っているとでも云うのか!?
呻きながら力を込めた刀身が、更に肉を灼き抉った。
ウピエルVSファントム
>394 >395 >396 >406
何が起こったのかやっと認識した相方の女性が悲鳴を上げて逃げ出した。
構っている暇は無い―――― パトリオットのマガジンを交換しつつ、周囲に注意を配る。
おかしい―――― 情報では護衛は6人、だから念の為過剰と思える装備を用意した。
他の4人は一体どこに?
その時オペラ座に鳴り響く拍手。
―――――!?
客席に現れたタイトなブラックレザーに身を包んだ男、一体いつからそこに居た?
拍手が聞こえるまで空気の様に、存在そのものが認識できていなかったのだ。
――――― イノヴェルチの吸血鬼、ウピエル ―――――。
まさか来ていたとは、その尋常では無い殺気に瞬間、銃を向けるタイミングが遅れる。
突然鳴り響く銃声が一瞬の静寂を打ち破る!
俺はマントを翻して駆け出しながら、レザーの男に向ってフルオート射撃。
舞い飛ぶ空薬莢が舞台の上に転がり、真鍮色の足跡を残す。
「エレンか――― 」
聞き覚えの有る銃声はバックアップに回っていたエレンの物に間違い無い。
ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
>421
玩具だとしか認識していなかった標的が口を利いたのが、それほどまでに気に食わなかったのか。
人狼が、黒ずんだ声を上げて激昂する。
───タカハシ? タカハシじゃ無いくせに、声ヲカケルナ?
タカハシというのが、何者なのかは解らない。
そのタカハシ以外の者に話しかけられただけでここまで怒り狂うのだ、よほど大事な存在であるコトは間違いなかろうが。
人狼の怒号と共に、辺りの木々の葉が、まるでそれ自体が生物であるかのように舞い踊り、舞い狂う。
咄嗟に使鬼を喚びだし防御させたが、細かな木の葉は容易にその間を潜り抜け、襲い来る。
体中を切り刻まれ、瞬時にして私の全身は鮮血に染まった。
一つ一つの傷は深くはない。だがこのまま斬られていれば、遠からず出血多量で動けなくなるだろう。
そうなれば、私に待っている運命は、あの人狼の「三時のおやつ」だ。
考えを切り替える。防御は無意味だ、この嵐を止めるには、攻撃しかない。
使鬼を還し、人狼へ向けて一直線に間合いを詰めた。
自らもまた木の葉の刃に切り刻まれながら、それでも狂笑を続ける人狼へと肉薄する。
全身が更に紅く染まるが、意に介さない。
「消えろ? 全部消えろ?
そのタカハシとやらは、本当にそんなコトを望んでいたのかしらね?」
言いながら、立て続けに刃を振るった。
闇の中の、淡い緑の嵐を従え、紅い霧を纏った二体の妖が、踊り狂う。
>419 遠野志貴vsチェルシー・ローレック
私の渾身の一撃は不発に終わった。
少年は上体を屈め、私のパンチはいとも簡単にあしらわれた。
しかし、少年は普通の高校生程度にしか見えない。
私は地下でもかなりの上級の師兵だ。
格闘に関しても、そこいらの格闘家よりも数段上の実力を持っているつもりだ。
この少年はいったい・・・?
―――その時だった
少年は下に屈んだだけなのに微かに顔を歪めている。
私の攻撃は確実にかわされているにもかかわらず、だ。
どう言う事だろう?
何か彼は病気でも持っているのだろうか?
何かがおかしい・・・。
え?
私の体は宙に浮いていた。
その下には少年が。
私は思いっきり少年の水面蹴りで吹っ飛ばされてしまっている。
私は空中で何回も回り、地面に激突。
「ぐっ・・・・!」
私のお気に入りの黒のワンピースは泥でぐしゃぐしゃになってしまった。
>425続き
(もう許さない・・!)
この少年はあきらかに私の反応を愉しんでいる。
今まで2回も相手から攻撃を受けているが、全て急所を狙っている気配ない。
殺気はビシビシと感じるのに―――
でも、此方に遊んでいる余裕なんて無い。
あきらかに此方の方が不利になりつつある。
どうする?
そこでで私が見たものは滑り台だった。
私は滑り台の方に雨でぐしょぐしょになったワンピースから水滴を迸らせながら
滑り台の方に走り、そして―――掴んだ。
滑り台全体にマイナスの重力を掛ける。
すると、滑り台はまるで風船の様に軽くなり、女性の私でも持ち上げられるような
重さに変わる。
その軽くなった滑り台を両手で頭の上に持ち上げ、少年の方に向き返す。
そして、その重さをプラスの重力に変え、大きな滑り台を投げ付けた。
「いくら何でも・・・これはかわせないでしょ!!」
>422 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
炎の塊と化した両刀が体を抉る。
血が流れ落ち、徐々に力が失われる。
焼け付く痛みが全身を駆け巡る。
それがどうした。
常に業火は全身を灼いている。
腕を、足を、胴を、更には、頭の内側すらも。
それに比べれば、この程度は痛みと呼ぶのもおこがましい。
体に渦巻く紅蓮の炎は、如何なる時も語りかける。
『世の中は修羅で満ちている』
ならば、この世は地獄と化している筈だ。
『そう、地獄だ。人の生きている此の世こそが地獄』
だが、今の世は腑抜けた奴等で満ちている。地獄とは程遠い。
『ならば、壊せ。今の世を』
言われなくてもやってやる。
『呼び起こせ、地獄を。そして―――』
今、眼前に居る―――
『修羅を』
掴んだ掌はただ締め上げるだけではない。
無限刃の切っ先が上がり、掴んでいる手の甲へと直進。
「弐の秘剣―――」
手甲より微かに臭うは、火薬臭。
「紅蓮腕!!」
刃が手甲を掠めた刹那、閃光と爆炎の嵐が吹き荒れた。
尚も闘志は激しく燃え上がる。
敵を―――己すらも焼き尽くさんとする程に。
>306
もし炎に撒かれて死ななくても――
「――お前は、死んだよ」
サイトすら使わず、青年は飛翔する弾頭の奥へとマズルを向けた。静かな殺意が、
冷たいグリップと融合する。
後は――僅か数センチ。トリガーに掛かる人差し指。
迷う事なんて無い。コイツを引け。
――さぁ、ヤツは死ぬ。何色かの脳漿を吹き散らして、俺に消される。
再生するヒマなんて与えない。頭をブチ抜いた後は心臓掻き回して灰になる
まで焼けばいい。どんな色の脳漿だろう。まだ判らないが、すぐ判る筈だ。今、すぐに。
腕状となった頭部を掻き回す。開いた胸骨内を探る。ヤツの色。ヤツの死の色。
それは――なんて素晴らしい光景なんだろう。
想像して、胸が弾んだ。
脳が痺れるような喜悦に、冷めた血がドクン、と――あぁ、落ち着け。ドクン。
ドクンドクン――今――く――ハ、ハハッ! は――ハハッ! 今、今――!
大気を震わせ、人筋の銀光が飛来する。
弾頭との交差。
飛来する殺意。
吸血鬼の腕力で投擲された刀が、風を撒き込みながら飛来する。
それは――目にも鮮やかな死。
――まだ抵抗するんだな、お前は――あぁ、可愛いよ。凄く凄く凄く可愛い。
青年は口元を嘲りの笑みで縁取ると、
「チャンバラには飽きたかよ――兄弟」
躊躇いも無くトリガーを引いた。
強力なスプリングのテンションも関係ない。一秒にも満たないその間隔に、
5発の大口径弾が一列となって放たれていた。
迫る白刃は、心に何も与えない。残さない。昂揚した脳は、ただ一心に白刃の
奥の黒衣だけを捉えている。
銃声に僅かに遅れ、澄んだ破砕音。
切先を直撃した初弾は刀身を砕いて叩き落とし、連続する4発が狙い違わず黒衣へと滑る――
俺の名はオーフェン。
牙の塔の黒魔術士だ。
五年前に牙の塔を出奔し、現在はオーフェン(孤児の意味)を名乗ってモグリの金貸しをしている。
・・・が、どいつもこいつも貸した金を返しやがらねぇ!!
おかげで日々、死と隣り合わせの極貧生活を送る羽目になっている・・・
ちくしょー
金でも落ちてないかな・・・
一応カテゴリーはDの傍観者で頼むぜ。
ちなみに俺の得意技は、黒魔術・・・別名音声魔術という代物だ。
音声魔術とは、声を媒介にして物理現象を起こしたかのように
世界に錯覚させそれを現実とするものだ。
声を媒介にするから声の届かないところには魔術の効果は無いし
魔術の効果が長時間持続することもない。
あとはチャイルドマン先生から習った暗殺術だな。
出典 : 魔術士オーフェン
名前 : オーフェン(オーフェンと名乗る前はキリランシェロという名前だった)
年齢 : 20くらい
性別 : 男
職業 : モグリの金貸し
趣味 : 借金取立てで地人を吹き飛ばすこと、謎の装置作り
恋人の有無 : ・・・いねぇよ
好きな異性のタイプ : 特に考えたことはねぇが強いていうなら・・・まともな奴だな
好きな食べ物 : ・・・食えるだけましだ
最近気になること : キースの奴本当に人間なのか?
一番苦手なもの : 姉さんたち
得意な技 : 魔術
一番の決めゼリフ : これが俺だ
将来の夢 : 変態の存在しないまともな生活をすごすこと
ここの住人として一言 : まっ、よろしく頼むぜ
ここの仲間たちに一言 : よろしくな
ここの名無しに一言 :・・・見世物だったら金くれるか
>426 遠野志貴vsチェルシー・ローレック
俺の水面蹴りは小気味よく決まった。さほど力を入れたわけじゃないのに、
彼女は宙を舞って地面に落ちる。
受け身はとったみたいだから、さほどダメージにはなっていないだろう。
『ぐっ・・・・!』
彼女が呻く。
雨に濡れているだけだった彼女が、泥にまみれた。
女の子なのにかわいそうなことをしたかな?
謝ろうと思った瞬間、彼女は立ち上がった。
目に宿した光が、別のものに変わっている。
――――怒りと、殺意。
それが全て俺に向けられている。
こんな強い負の感情を向けられたのは久々だ。
俺の予想は間違っていなかった。
――――――この殺意なら。
俺も殺せる。
激しく降る雨は先ほどと変わらず俺を打ちのめし、痛覚を刺激する。
だけど、そんな刺激が塵芥になるような殺意の持ち主が、目の前にいる。
バラしたい。
――――ドクン
と。
心臓が大きく鳴動した。
メチャクチャにして
――――さらに何かを引きずり出したい。
久々の。本当に久々の感覚に酔いしれているうちに。
彼女は滑り台の方へと走っていった。
滑り台をつかむ。
と、信じられない事が起こった。
滑り台を、彼女は自分の頭上に持ち上げた。
俺は無意識のうちに、胸のポケットにある『七つ夜』の銘が刻まれたナイフを取り出す。
次に来るのはわかっている。
『いくら何でも・・・これはかわせないでしょ!!』
そう俺に叫ぶ。
叫ぶと同時に滑り台を投げつけてきた。
>430続き 遠野志貴vsチェルシー・ローレック
スローモーションのようにこちらに向かってくる滑り台。
俺はナイフを構えつつ、それを凝視する。
人間の時には見えなかったに違いない『死の線』が、死徒の夜目ではっきりとわかる。
――――視えた。
人間ではあり得ないスピードでナイフを振るう。
それも、モザイクのようにはしる線を正確になぞり。
滑り台を細切れにした――――。
彼女は呆然としてこちらを見ている。
当然だろう。
ナイフ一本で滑り台が細切れになるなんて「あり得ない」。
普通ならば。
しかし、俺は普通ではなかった。
でも、まわりは俺が普通ではないことを良く知っている。こんな事をいとも簡単に俺が
やってしまう事をよく知っている。
だから、彼女の呆然とした表情が新鮮だった。
嬉しくて、笑みが思わずこぼれる。口も勝手に開いた。
「俺の目はね、『直死の魔眼』といって、どんなものでも切れる線が見えるんだ」
呆然とこちらを見続ける彼女。
「顔を傷つけた事と、服を汚しちゃったことは悪かったよ。ごめん」
そこであることに気付いた。さほど難しい事じゃない。
「ああ、俺は遠野志貴っていうんだ。君の名前を教えてくれるかな?」
>428 名無しクルースニク対名も無きクドラク
――――つめてぇ。
クルースニクの野郎が放った弾丸が俺の身体にめり込んだ。
冷たい金属の感触が俺の中に潜り込んでくる。
そして、反転。
冷気が一気に熱気に転化される。
「が――――ガアアァァァアァアァァァッッッッ!!!」
俺の意志とは関係なく放たれる絶叫。
それは俺の息が切れるまで続き……途切れる。
それと同時に俺はそのまま後方へと倒れていった。
――――あちぃ。
身体に空いた風穴から火が出るような感じだ――痛みはあんまりねぇ。
だが治る気配もねぇ。ナイフと同じく特別製らしい。
空には真ん丸なお月様。変わらず別嬪な姿を晒している。
――――ドクン。
地には荒野が広がる。
焼けこげた匂い。側には俺の足が転がっている。さっきの爆発で吹っ飛んだらしい。
――――ドクン。 ――――ドクン。
頭を少し動かす。
視線の先に奴が居た。気色わりぃ含み笑いを漏らしている。まだ来ない。
――――ドクンッ! ――――ドクンッ! ――――ドクンッ!
俺は軽く失望する。拍子抜けと言った方がいいか。
俺は思わず呟いてしまう。
「――――なあ、テメェって……そんなにヌルかったけ?」
高鳴る鼓動、あふれ出す衝動。
同時に膝の辺りが泡立つ……そして新しい足が造られる。
足の傷は普通の傷だ。この程度、吸血鬼なら誰でも再構成できる。
「そんなんじゃ死んでやれねぇよ。全然足りねぇ!!」
俺の形が崩れる。人型を捨て、まるで粘土細工のように姿が歪み、変わっていく。
原始的な、かつ凶暴な感情がとめどなく溢れ出る。
――――パチン。
何かをハサミで切るような音。
不定形だった姿が一気に収束し固定される。
――――狼。
小型のトラックほどもあろうかと言う身体。
その色は何処までも深く暗い……黒。
俺は闇色の目で奴を見つめ――――高々と咆吼する。
>430>431 遠野志貴vsチェルシー・ローレック
『俺の目はね、『直死の魔眼』といって、どんなものでも切れる線が見えるんだ』
――――――!?
私は絶句した。
確かに私は投げたのだ。大きな滑り台を。
そして滑り台は大きな放物線を描き少年に向かって牙を向く。
すると少年は小さな、ほんの小さなナイフを取り出し・・・・・・。
―――切り刻んだ―――と、思う―――
今ではその滑り台だった物は跡形も無く、鉄の屑と化している。
― まさか、魔法使いじゃないんだから・・・ ―
そんな事を思いつつも目の前で起こった事を否定する事は私には出来なかった。
次は、私が滑り台と同じように、『鉄の屑』ではなく、『肉の屑』になってしまう事だって
ありえるのだ・・・。
そう考えるだけでもぞっとする。
『顔を傷つけた事と、服を汚しちゃったことは悪かったよ。ごめん』
少年の言葉でふと我に帰った。
謝るくらいなら始めからするなと言いたいが、今はそれ所ではない。
少年はなんだかしらないけれど『直死の魔眼』と言う物を持っているらしい。
それはどのような効果を齎すかは私の知るところではないが、『物質を切る力』
だと言う事はさっきの滑り台のことで十分分かった。
では、どう戦う。
『ああ、俺は遠野志貴っていうんだ。君の名前を教えてくれるかな?』
”遠野志貴”
少年・・・志貴はそう名乗り出た。
「私はチェルシー。チェルシー・ローレック」
そう言えば
「ねぇ・・・志貴。アンタどうしてこんなコトするの?」
そうだ。
今まで怒りに任せ拳を振るっていたが、理由も聞かないまま戦うというのもおかしい。
彼にだってこうする理由があるはずだ。殺人を犯す人間にも色々な動悸が有る。
脅迫、愛情の縺れ、怨恨、仕事、興味、快楽。
どんな事をするのだって理由が必要なはずなのだ。
どうして彼はこんな事をするのだろうか?
私を襲って何を獲ようとしているのか?
ただただ、その事が聞きたかった。
ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
>424
朱に染まる体は、確実に美しい。
体の内から滲み出る液体は、果敢に舞い落つ碧なす若葉も永劫の死へと
誘う。
『そのタカハシとやらは、本当にそんなコトを望んでいたのかしらね?』
「タカハシは喜んでる。ウルフが玩具を壊すのをずっと望んでる」
破滅の舞踏を汚す女の台詞なんか、本当は答えたくない。
でも、タカハシの名前を汚されたくないから、しかたなかった。
----そう。タカハシは言ったんだ。
『自分を殺せ』と。
意にそぐわない奴は存在自体が害悪だ、芥だ滓だ泡だと。
そして。その塵をデリートする。
───ただ、それだけが、ウルフに与えられた「善」の基準。
女。穢れた純白の衣を人狼の網膜に残像させ、
刹那ーーーーーーーーーーーーー縦横に斬撃!!
「速い!(バックステップ・・・宙に残る4本の指)・・・躱した(ニタァ)
あはははははは・・・これで(狼化)
できそこないの玩具は(跳躍)・・・・・・・・4つに(爪に黒い雷光)
解体(リボンの結び目付近に突き立てる)
ダァァァァアァ!!!!」
>427 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
爆風の一撃を受け、軽々と飛ばされた閑馬は後方の地面に激突した。
叩きつけられた身体が跳ね、大の字になって落ちる。
微動だにしない。
顔から立ち昇る白煙で、その表情はうかがえない。
急に動いた。
身体を揺らしながら、人形じみた動きで立ち上がる。
一陣の風が、貌に纏わりついた白煙を追いやる。
その向うで口は笑いの形を取っていた。
上唇だけが。
閑馬の下顎は奇麗に消し飛んでいたのである。
貌にぽっかりと空いた大穴のあちこちで、血仙蟲の群れが蠢動する。
その度に、灼け爛れた血が喉を伝い胸元を濡らす。
一際大きな蟲の様に見えるのは舌だ。ひくひくと痙攣している。
最早それは人の形相ではなかった。
未だ燃える両剣が、ゆっくりと持ち上がる。
事此処に至ってまだ戦おうというのか。
人外の戦の果て、尚も剣に依って立つこの男もまた一振りの魔剣。
それは、修羅の形相であった。
天色優vs杉原悠(M)
>368
――だが、それすらも甘かった。
敵の急所を狙った三発の弾丸は、見事にその体を貫く。
その筈だった。
……しかし。
「馬鹿な……っ」
いくら暗視能力があると言えど、暗闇の中だ。遠目で色など解りはしない。
だが、杉原悠は見た、と思った。
その身を紅く斑に染めながらも、なおも立つ敵の姿を。
「――なんのつもりだ?」
いや、相手の考えは読めている。
自分の能力――インビジブル・ブリットの正体を確かめよう、というのだろう。
「……なら、教えてやるよ」
レベリオンの証である金色の瞳が、爛、と輝く。
その視線は明確な殺意となって、
天色優という少年の全身を射抜く。
そして、左腕がゆっくりと差し上げられる。
実体を持たないイシは実体の在るカタチを取り、
少年へと向かって撃ち出された。
>433 遠野志貴vsチェルシー・ローレック
『私はチェルシー。チェルシー・ローレック』
彼女は答えてくれた。
チェルシー。チェルシー・ローレック。
名前を頭に刻み、かみしめる。
かみしめている間に、チェルシーは言葉を続けた。
『ねぇ・・・志貴。アンタどうしてこんなコトするの?』
先ほどまで踊っていた怒りと殺意の光は、チェルシーの瞳から消えた。
かわりに微妙な、不思議そうな光がともっている。
チェルシーの目は見ていて本当に飽きない。
しばらく見ていたい気分だったが、尋ねられたことに答えないと嫌われてしまうかも。
それは嫌だな。
そう考えると、どうして戦おうとしたのかを思い出しつつ、少しずつ言葉にする。
「君を見て、戦える人だなって思ったんだ」
それは間違いじゃない。この状況がそれを示している。
「チェルシーだったら、俺に死を見せてくれると思った。心の底に突き刺さるような
殺意を味あわせてくれると思った」
チェルシーは、こちらを見つめ続けている。
「そんな感じだね。俺の予想が当たって本当に嬉しいよ。さあ、殺し合いを続けよう」
自然と顔が笑み崩れた。こんな満面の笑みは本当に久しぶりだ。
最近の俺の笑みは、ただ顔の筋肉を動かすだけのものだったから。
心は、そこに無かった。
「ナイフを使うと終わってしまうから、使わない」
俺は、チェルシーに向かいゆっくりと歩いていく。
歩きながら、ナイフを胸ポケットにしまう。
「次は何?」
◆ブラックハートvsシグモンド◆
>409
街外れの低い丘までひた走る。
ヤツの声が聞こえる。
『私の催した余興は、お気に召さなかったようだな。
では、お遊びは抜きにして交渉を始めるとしよう。
ここまで来たまえ、ここなら誰の邪魔も入らんよ』
丘を囲む茨の隙間を縫って走る。
途中、あちこち引っかかったようだが、気にしてなど居られない。
斗数はまだ目が覚めないようだ。
―――ったく、後で幾つか注意しないとな。
先ほどまで強張っていたオレの口元が緩んでいた。
どうやら、深刻な状態だったらしいが…。
落ち着いている。そう自分自身に言い聞かせ、息をつく。
町の由来を聞きながら、
「で?オレを呼び、
こう言う状態にまで持っていった理由どんなんだ?」
懐のSIGSAUERを意識の片隅に入れつつも、
火竜両儀筒の狙いはヤツの眉間に入れ、こちらからも問い掛ける。
ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
>434
いつまでも続くかと思われた死の舞踏は、しかし唐突に終わりを告げる。
「タカハシは喜んでる。ウルフが玩具を壊すのをずっと望んでる」
私の斬撃を躱しながらそう答えた人狼の姿が、完全な狼のものに変わった。
そして、黒き雷を纏わせたその爪が、私の襟元に伸びる。
その軌跡を───私の感覚は捕らえられなかった。
リボンを引き裂いた爪が、そのまま振り下ろされる。
紅い糸を宙に散らし、大きく吹っ飛ぶ私。
地面に叩き付けられ、そのまま何度も転がる。太い木にぶつかって、ようやく止まった。
その身体には、首筋から腹にかけて、4筋の醜い傷跡が走っていた。
爪が刺さった瞬間に自分から後ろに跳んでいなければ、あのまま真っ二つにされていただろう。
ふらつく脚を叱咤し、木に寄りかかって立ち上がる。
言葉を発しようとすると、口から血の泡が零れた。
「違う。タカハシはそんなコト、望んでなんかいない。
今のあなたはタカハシの名を借りて、自分の欲求を満たしているに過ぎない。
玩具を壊して喜んでいるのは、タカハシじゃなく、あなたよ!」
言いながら、刀を青眼に構え直す。
集中しなければ、ヤツのスピードには対抗できない。
心を研ぎ澄まし、余分な情報を排除し、狼の接近を待ち受ける。
>435 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
傷を蟲が塞ぐのは戦いの最中にも見て来た。
だが、閑馬が蟲を使って自らの体を構成 しようとしている。
あるいは、蟲が閑馬を形作ろうとしているのか。
「所詮、手前は器じゃ無かったんだよ。
人の上に立つことも出来ず、日陰で腐るだけの蟲だ」
下顎が吹き飛んだ状態ではもはや話す事は適うまい。
何故、語りかけるのか。
何か言いたげな眼が志々雄を射る。
それを歯牙にもかけず、志々雄は続ける。
「だがな、俺は違う。
俺は手前すら糧にして、上に立つ」
決定的な違いを叩き付けるかのように、無限刃を突きつける。
そして、焔霊の構え。
顔に浮かぶは、悪鬼の笑み。
修羅をも喰らう、羅刹の形相。
「手前も俺の糧になれ―――」
焔霊発動の為、鞘に刀を近付ける。
いや、違う。
切っ先でなく、鍔元から発火させているではないか。
無限刃は、その鍔元から切っ先に至るまでの全発火能力を開放。
刀身の上では、紅の炎が舞う。
炎が風を呼び、大気が踊る。
火の粉を巻き上げ、炎が逆巻く。
「終の、秘剣―――」
荒れ狂う猛炎は志々雄の意思を反映するかの如く振るった刀に追従する。
カ グ ツ チ
「 火 産 霊 神 」
炎の神の名を持つその絶技が、閑馬を飲み込まんとする勢いで迫る!
八千草飛鳥(M)vsシヴァ(M)
>388
美しき食人鬼は顔を苦痛に歪め、朱唇から鮮血を吐いた。
街路樹の枝は彼の片肺を貫いたのである。
街路樹に張り付けとなった飛鳥に、その巨体からは想像もできぬ速さと高さで
飛翔したシヴァが追撃をかける。
『破壊神よ!! 我に力を〜〜〜〜!! 』
ヒンドゥー教の最高神、破壊と創造の神シヴァの力が込められたカタールが
飛鳥の両肩に突き刺さる。
が、これだけの重傷を負っても、荒ぶる神の力はまだ完全には鎮まらなかった。
カタールの刃が両肩から胸に達するより早く、飛鳥はシヴァの腕を掴み動きを
止めると、シヴァの胸に蹴りを叩きこんだ。
ガゼルを彷彿とさせる細い足から繰り出された蹴りは、外見からは想像もつかぬ
威力でシヴァの巨体を軽々と吹き飛ばす。
シヴァが吹っ飛ぶ隙に、飛鳥はようやく街路樹の枝から身をはなした。
すでに瀕死の重傷を負いながらも、飛鳥はふらつく足取りで新たな庖丁を手に
シヴァに近づいていく。
>437 遠野志貴vsチェルシー・ローレック
志貴というその不思議な少年は私の目の前で私の疑問について語ってくれた。
まず私を見て、戦える人間だと判断したらしい。
それで彼は私を相手に生死賭けた戦いという物が・・・と言うよりも、
彼は死を望んでいる。
自分に死の恐怖を教え、そして突き刺さるような殺意を知りたかったらしい。
何を言ってるんだろう?
彼はもう死んだも同然ではないのか?
戦いで死を望む人間なんて物はたかが知れている。
生きようとする強い意志の無い物はもう死者と同じ。そこにいてはいけない存在なのだ。
――そんな奴が・・・。
『そんな感じだね。俺の予想が当たって本当に嬉しいよ。さあ、殺し合いを続けよう』
――平然と殺し合いを語る。
『ナイフを使うと終わってしまうから、使わない』
―――死者が殺し合いを語るな!!―――
『次は何?』
志貴がそう言った瞬間に私の手はもう既に出ていた。
私は頭に血が上りやすい性格だが、ここまで頭に来たのは久しぶりだった。
私は型も何も無い、ただの腕力だけで志貴の横っ面を思いっきり殴っていた。
渇いた音が公園内に響き渡る。
「何が殺し合いよ・・・生きる意志も無いくせに・・・!」
私は怒りと悲しみに震える声で志貴に叫ぶ。
あいも変わらず志貴は意志の無いような瞳で此方を眺めている。
「アンタは殺さない。絶対に。
アンタは『そのまま殺しちゃいけない』人間だ」
私は再び重力を拳に収束させる。紫と黒の球体に具現化された重力が
私の拳にグローブの様に纏い始める。
そのままいつでも重力波を相手にぶつける準備はもう出来ている。
あとは思いっきり殴るだけ。
「もう少し生きる辛さを知ってもらわなくちゃね・・・」
>440 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
咄嗟に閑馬は再度二刀を十字に構えた。
何の意味もなかった。
剣を氷柱の如く割り砕き、斬戮の太刀は閑馬を縦一文字に断っていたのである。
世界は焔で満たされた。
母神の御陰を焼き殺して生まれた火神、その名を冠するに相応しい、これは正に大魔剣。
両断された閑馬の右左の半身もまた、焔にくるまれて行く。
閑馬であった残骸は、逆巻く紅蓮と共に崩れ落ちる。志々雄の「糧」となって。
魔炎に飲み込まれ、消え行く閑馬の意識が最期に思い浮かべたのは只の一言。
蟲は何処まで行っても蟲、か。
ブラックハートvsシグモンド
>438
「簡単に言うならば、君の力を私に貸してもらいたいのだよ。
魔界の暴虐なる君主、メフィストを殺すためにね」
ブラックハートはそう答えた。
「シグモンドくん、きみは大いなる力の持ち主だ。人ならざるものども、
人を越えしものどもを討ち滅ぼすほどのな。
さらに情け容赦なく敵を殺す非情なる心の、さらに奥に存在する深き闇。
その闇を持つ人間のみが、私の力を受け入れることができる」
ブラックハートは一息おくと、低い声で笑いだした。
「心に闇を持つ人間などいくらでもいるが、優れた戦士はそう多くはいない」
「そうだ、偉大なる戦士よ」
ブラックハートは急にその躯をこわばらせ、厳しく妥協のない口調で言った。
「きみこそ私の探し求めていた戦士だ。私はきみに暗黒の力を与えよう。
そして、力を合わせて魔界の独裁者、狂乱の帝王を打倒するのだ。
メフィストを殺せば、魔界のすべては私の、いや、私たちのものになる」
黒い怪異なる存在は甘い声で囁いた。
「その時こそ、きみのすべての望みは叶うだろう。ただ一度の闘いに勝利すれば、
『リスト』に従わずともきみの目的は果たされるのだ!」
ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
>439
ああ、
吹き飛んだ玩具メ。ナンデ起き上がる。後片付けの手間が増エタ。
・・・これだから、使エナイ。
『違う。タカハシはそんなコト、望んでなんかいない。
今のあなたはタカハシの名を借りて、自分の欲求を満たしているに過ぎない。
玩具を壊して喜んでいるのは、タカハシじゃなく、あなたよ!』
「・・・ワケノワカラナイ。自分の欲求?あはははは・・・タカハシは
言ってた。悪い事は楽しい。楽しい事は悪い事。それは、タカハシが喜ぶ
こと!!」
指が無くなった左前足を除いた3本の足で・・・
大地を、蹴る!そして、周囲の木へと駆け上り------------
───飛んだ。
狼は刃を中段に構えた雌鬼の頭上目掛け、魔弾の如く飛来する。
研磨された刃に劣らぬその牙が狙うは首につけてやった玩具の印。
あんな出来そこないはウルフの物じゃない。
◆ブラックハートvsシグモンド◆
>444
魅力的な内容だった…。
封神がどうとか、訳の分らんシナリオに突き動かされている状況…。
この状況を打破するには、非常に魅力的な提案だった。
「実にシンプルでいい提案だな…」
そう言いながら、奴の目に引かれている自分に気付く。
その時、人質になっている斗数がうめき声をあげる。
斗数「う、うぅん…シグ…」
――――まったく、何を考えてるんだ…。
コイツを放って置いて飛びつくって言うのも、
シナリオを組んだヤツラから逃げる気がして癪だ。
「確かに、その話は魅力的だな…」
足元に目をやり、そう言う。
そして、
「悪いが、その件はまた今度にさせてもらう。
ビジネス優先でね!」
SIGSAUERの銃撃をヤツ、ブラックハートの胸元に叩き込む。
大して効く訳では無いだろうが、それでも隙が生まれればそれでいい。
>443 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
最早原形も留めぬ程に焦げた閑馬の体。
如何に蟲が体を繋ぐとはいえ、全てを焼き尽くす業火に抗う術はあるまい。
「これが俺の、弱肉強食だ」
生命の無い、只の炭に向かって言葉を叩き付ける。
長く生き過ぎたせいで、野心すら失った蟲。
奴は生きながら死んでいる。
ならば―――地獄から這い出してまで生きる志々雄に負ける道理は無い。
「さて、帰るか……。
この後にまだ『国盗り』が控えてるんでな。手前にこれ以上構っている暇は無ぇ」
そう言うと、先程まで死闘を繰り広げた閑馬の事など一顧だにせず歩き出す。
地獄の業火に焼かれながら、地獄を歩む。
これからも、この羅刹は修羅を糧として、歩み続ける。
VS八千草飛鳥
>441
この男、ここで確実に殺さなければ!
蹴りによって包丁が刺さったままの腹から血が垂れる
動きを封じる必要がある
カタールをまたもや上段に構えた
だがこれは誘いだ
こんどは上空からでなく、突進して飛鳥に向かう
二本の刃で唐竹割り、いや片方の刃が横を撫でるように動いた
奴の右腕を切断したのだ
絶叫の暇も与えず、もう片方の刃が左足を切り落とす
ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
>445
「・・・ワケノワカラナイ。自分の欲求?あはははは・・・タカハシは
言ってた。悪い事は楽しい。楽しい事は悪い事。それは、タカハシが喜ぶ
こと!!」
やはり、もはや言葉は通じないか。初めから、無駄であろうとは思っていたが。
その言葉と共に、闇の色をした狼の姿は、視界から消えた。
高速で移動する気配が迫るのは───上か!
見上げた私の目前に、利剣にも勝るであろう威力の爪が迫る。
使鬼の防御反応すら越えたその速度を回避する手段は、無い。
───ならば!
咄嗟に左腕を振り上げる。
首筋に刻まれた傷を目標と定めた、その攻撃の軌道に強引に割り込んだ腕に、爪が深々と刺さる。
これで、左腕はもう使い物になるまい。
だが───同時に、狼の動きもこれで封じた。
右腕一本で跳ね上げた大通連が、狼を両断せんと唸りを上げる!
儂と志々雄との一戦を纏めておく。
志々雄真実(M) 対 閑馬永空
>308 >310 >313 >315 >320 >323 >327 >332 >340 >381 >386 >390
>398 >405 >413 >416 >420 >422 >427 >435 >440 >443 >447
フフ……矢張り剣は良い。感謝しておくぞ、炎を纏った悪鬼よ。
>437 >442
――ざあざあ
私はただ雨の中をひたすら駆ける。
服が既にびしょ濡れになっているがそんなことを介している暇もない。
私の胸を去来するのは……
――不安感
兄さん、四季と同じに……?
この手で兄さんを……?
それは私には……
――焦燥感
急げ、急げ……
そうしないと……
・
・
・
私は街中を駆ける。
人気の無い通り
――いない
路地裏
――いない
・
・
・
そして、私の前に公園の入り口が見えてきた。
――ドクン
猛烈に嫌な予感が膨れ上がる。
まさか……!?
>442 遠野志貴vsチェルシー・ローレック
『次は何?』
その俺の言葉を聞いた途端、チェルシーの雰囲気が変わった。
瞳に、純粋に怒りのみの光がともる。
間近に迫った俺に対して手を振り上げ――。
――横っ面を殴られた。
『何が殺し合いよ・・・生きる意志も無いくせに・・・!』
俺は呆然と彼女を見た。
殴られたところがイタイ。
すごくイタイ。
そして、チェルシーは俺が最も聞きたくなかった言葉を口にした。
『アンタは殺さない。絶対に。
アンタは『そのまま殺しちゃいけない』人間だ』
――――殺さない。
――――――コロサナイ。
ああそうか。そんなことを言うわけだ。
殺意のこもらない殺し合いなんてあるものか。
そもそも、そんなことが言える立場だと思っているのか?
チェルシーは構えて、呆然と立つ俺に話しかけてくる。
『もう少し生きる辛さを知ってもらわなくちゃね・・・』
そう言うと、さっきと同じようなまっすぐな拳を叩き込んできた。
チェルシーは、知らない。
俺は手加減していたという事を。
俺は人間ではなく吸血鬼で、人間としては既に死んでいる事を。
そして何より、俺とチェルシーの間には、現時点で埋めがたい実力の差があるという事を。
チェルシーの拳が、ひどく緩慢に見える。
危険な雰囲気を纏った拳が俺に届く前に、俺はチェルシーの右腕の前腕部を掴んだ。
死徒として、このくらいは容易い。
チェルシーの拳が止まる。
俺は、チェルシーの前腕を掴んだ右手に力を込めた。
――――いい声で啼いて欲しいな。
ブラックハートvsシグモンド
>446
シグモンドの放った銃弾は、ブラックハートの闇の塊のような胸に命中した。
「なんだと!?」
ブラックハートはこの攻撃に、心の底から驚愕した様子だった。
胸の傷はほとんど無視できる程度のものだったにのもかかわらず、
斗数を拘束していた太く長い尾の力を緩め、彼女を地面に落としてしまったのだから。
「きみには解らないのか、私が提供しようとしているものが?
その恩恵の途方もない大きさが?我々には共通の立場がないのか?・・・・馬鹿め!」
狼狽がブラックハートの赤く輝く目から退いていったあとには、
激しい殺意が残された。
「愚か者め!粗暴な蛮族め!不遜で、高慢で、愚昧な下等生物め!」
黒い怪物は、再び狂気の叫びをあげた。
「俺の申し出を蹴るとは、救いのないたわけめ!その報いは死だ!」
ブラックハートが前方に突き出した力強い腕から、耳をつんざく雷鳴とともに
一筋の黒い電光がはなたれた。
ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
>449
---------------斬。-----------------
え・・・?
体が・・・動かない。
ウルフの体・・・オカシイゾ。
--------ざわざわざわざわ。
公園を通り抜ける初夏の風が耳障りで。
-------そうか。世の中の喧騒は全部嘘。今日の玩具の下らない言い分だって。
どうして、もっと早く気付かなかったのだろう。ウルフ、失敗だ。
力を振り絞り、人狼の形を作り上げ・・・・・・・・・・・・・・
────── 静寂。
モノクロームに霞んだ視界。静寂の帳。でも、世界が最初から白黒だった
とすれば、ああ、問題ない。アイツさえ。アイツさえ一緒なら・・・
握り締めた薄い肉片・・・自分の耳を口に捻じ込み、租借する。
・・・ニターっと笑い。
あれ?傾く。地面が近づいて・・・体が他人みたいで。
何も見えない。聞こえない。いや・・・ダメ・・・。タカハシが
ココにいない死んだのにきっとウルフは死ぬのにあえないのか?会いたいのに
しにたくないしにたくない・・・・・・・・・・・・・寒いサムイシニタク
死にたくな・・。
体が二つに・・・? ウルフは玩具じゃない・・・
だから・・・死にたくない、のに。タカハシ・・・どうすれば・・・
教えろ・・・教えて・・・・・・・
(ウルフ、死亡)
<アルクェイドvsアルクェイド>『矛盾因果律』
>411
わたしの問いに対して、『わたし』も問いで返して来た……。
わたしの問いに価値を見出せなかったか?
それとも…、答える必要を感じないほどコレにとっては当たり前のことなのか?
目の前の『わたし』から感じるのは『余裕』、充たされる事で得られる精神的な余力……。
わたしに無くて、『わたし』にあるモノ…それを与えたいる者は当然……。
『あなたは何? あなたはわたしなの? それとも別の何か?』
この問いの裏にあるのは、今の自分こそが正しいと思える確信。
コイツはわたしの中に、自分の影を見ている…古い滑稽な影を……。
それが理解できるのに、屈辱なのに、悔しいのに!
……コイツが羨ましいと感じるわたしは!!
『あなたは、何故此処にいるの?』
自分こそが正しい場所にいる、その確信が言わせる言葉。
それは正しい、だってわたしの居場所が何処にも無いって思い知ったもの。
だけど、何故ソレを貴方に言われなくはならないの?
夢すら見れないと思い知らされなくてはならないの?
何故、この『わたし』はわたし以上に本物なの…か……と……、…そうね。
―― それでもコレは夢だ、わたし以外の『わたし』が居たとしても
コレはわたしの夢なんだ、わたしが為るべき夢の形だ ――
「わたし?わたしは貴方よ、そして貴方になる為にココに居るの」
わたしは『If』って言葉が好き、だって夢でならそれは現実になるもの。
だから、わたしは『わたし』を手に入れよう、そして志貴と一緒に居よう。
その為には『わたし』が邪魔だ、そしてやるべき事はもう決まっている。
「だから、貴方はもう消えていいのよ…」
ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」 ─エピローグ─
>454
狼は、最期にもう一度人狼の姿に戻り、そして息絶えた。
その姿を見下ろしながら、思う。
きっとこの人狼は、何か大切なモノを無くしてしまったんだ。
それを取り戻そうとして、だけど取り戻せなくて、それで歪んでしまったんだ。
だったら彼は、鏡写しの私だ。
違う道を歩んだ、もう一人の私だ。
私もまた、遠い昔に大切なモノを失った、漂泊者なのだから。
土を掘って、人骨を埋めてやる。
その側に、もう一つ穴を掘った。人狼の屍をそこに収め、土を掛ける。
近くの木切れで、墓碑を作ってみた。
ウルフ、とかいったっけ。
左手が利かないので、その字はまるで小学生の落書きみたいだ。
墓の前にそれを突き立て、祈る。
次に生まれ変わってくる時は、もう二度と大切なモノを手放すコトの無いように、と。
出血のためふらつき始めた足を励まし、鞄を拾い上げて公園を出た。
これは、帰ったら大騒ぎだろうな。それ以前に、何と言って説明しようか?
今は、そんなコトはどうでもいいか。
空を見上げた。
霞み始めたその視界に、これだけは遠い昔と何も変わらぬ、丸い月があった。
ウピエルvsファントム(乱入)
>394 >395 >396 >406>423
AK74を構え劇場に飛び込むエレン。
突入前に決めた段取りの通り、ホール内部での銃声を合図にして。
一階観客席に正面から乗り込む。一般の観客が居ない事は、事前の調査で判明している。
飛び込んだエレンの目に飛込んできたのものは、舞台上でパトリオットを構える玲二と、
無人の客席にただ一人仁王立ちしている男の姿だった。
『男?』
一瞬、エレンの頭を疑問がよぎる。
男であるならば、サイスの護衛であるツァーレンシュヴァスタンではない。
ならば、一体誰か?
エレンの位置からでは、男の顔を確認することは出来ない。
しかし、エレンは即座にその男を敵と判断した。
理由はいたって簡単なことだ。この場所に、自分以外に玲二の味方がいるはずが無い。
エレンは男に向けて、躊躇うこと無くAK74をフルオートで連射した。
◆ブラックハートvsシグモンド◆
>453
確かに魅力的な話だった。
だからこそ、…あの時、
ビクターを助ける事が出来なかったオレが…。
受ける話では無い。
提案を聞いたときに震えていた感覚が引き締まる。
そう、ヤツに笑って言えた。
「申し出、確かにありがとうよ。生憎とオレは勤勉をモットーにしている」
そう言うとヤツの調子が豹変する。
斗数が解放されたが、まだ、目が覚める様子は無い。
先ほどの理性的な態度から狂気が垣間見える。
大丈夫だ、恐ろしくは無い。
ヤツが黒い電光を放つ。
俺に当たりかけるが、持っていたSIGSAUERに当たる。
間一髪で手を離す事が出来たが。
電光により銃が暴発し、俺の左足に破片が突き刺さる。
立っていられるが、走れそうには無い。
間抜けな話だ、思わず苦笑する。
笑いながらヤツに言う。
「さて、これで丁度いいハンデになったろう、その下等生物の恐ろしさ、
……見せてやるよ」
今スレのインデックス。
>20 トバルカイン vs バレンタイン兄弟
>35 ラルフ・グルト vs ロゼット=クリストファ
>51 レイオット・スタインバーグ VS エンペラー
>58 御神苗優 vs 八頭大
>133 アーカード vs ルシエド
>197 紅丸 VS リロイ・シュヴァルツァー 「YOUNGMEN」
>198 秋月由美彦 vs チェルシー・ローレック
>202 アーカード vs ファントム
>259 暗黒騎士ガウザー VS 両儀 式
>286 HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
>324 アセルス VS アイン
>344 蒼崎青子 vs レイオット・スタインバーグ
>354 横島忠夫&鈴鹿御前 vs アドルフ・ヒトラー 【脱出する者たちの時間
>364 孔濤羅 VS ミズ・マグナス 【人/器械】狩りは楽じゃない
>366 Broken Doll vs Stupid Zombie ...vs Eccentric Butler『血塗れの遁走曲?』
>414 ガロン vs 比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
>418 不死のゾッド vs ギーラッハ
>450 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
>459 ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
そろそろ次スレだな・・・
ブラックハートvsシグモンド
>458
「ハンデ?ハンデだと!この俺に、魔界の王子たるブラックハートに!」
暗黒の塔のごとくそびえ立つ巨体が、笑いに震える。
「俺を侮り、嘲るのか、卑小な貴様が?笑わせてくれる!
俺を嘲ることができるのはただ一人、我が父・・・・・・
憎きメフィストだけだ!」
嘲笑は憤怒の唸りへと変わった。
「自らの選択の愚かさを悔いて死ね!魔界の悪鬼どもに全身を喰いちぎられながら!」
ブラックハートの怒りの叫びと同時に、シグモンドの足元の大地が
胸のむかつく悪臭を放つ泥沼になる。
そこから現れたのは、ぬめりがかかった緑色の体表の怪物たち、数十体の異形のものだった。
それは身の丈1メートル半ほどの小柄な悪鬼であり、長い腕でシグモンドに
掴みかかっては、鋭い牙を彼の腕や脚に沈めた。
シグモンドがそれを振り払おうとも次から次へと押し寄せ、噛みつき、引っ掻いてくる。
「ははは、許しを乞え!這いつくばれ!そうすれば苦しませずに殺してやるぞ!」
◆ブラックハートvsシグモンド◆
>461
ヤツを思いっきり挑発したが…、なかなかに面白い事をやってくれる。
足元が泥沼と化し、そこから小さいバケモノどもがゾロゾロ湧いてきやがった。
もがけばもがくほど、ソイツ等は動きを押さえ込もうとする。
「ウオオオオオオオオオオオォォォオオオッ!!」
雄叫びを上げながら火竜両儀筒をやや後ろ側の地面に向けながら引き金を絞り込む。
B O O O O O O O O O O M B !!
爆風とともに俺の体がヤツに向かって吹き飛ぶ。
「許し?なんだ、ソレは。さて、勝負を再開しようじゃないか、ブラックハートォッ!!」
全身が軋む、切り裂かれ、噛み千切られた手足が痛む。
―――――だから、どうした?
ヤツに両儀筒の銃杷を叩きつけるような体制で着地を試みる。
姫城玲vsディオ・ブランドー
>256
「終わった、か? ・・・いや・・・」
業火の中に消え逝く怪物を見据える瞳が、徐々に元の色を取り戻していく。
仮面の力を借りて不死身の怪物となった青年はもういない。
だが―――――――
「ナチスの亡霊、か」
南米から出土した石仮面のオリジナル。
それを秘密裏に研究している組織がドイツの森の奥に潜んでいるらしい。
「狂科学に魂を売り渡した人間に明日はない。全て僕が抹殺する」
それは、狂科学に大切なものを奪われた者の復讐の決意。
彼が一人の少女と出会い、本当に大切なものを知るのは、まだ先のことである。
姫城玲vsディオ・ブランドー エピローグ?
>463
灰となった肉体が、少しづつ赤みを取り戻す。
肉片がゆっくりと、しかし確実に一箇所に集まっていく。
肉片の向かう先には、黒い球体があった。
黒焼きになりながらも、ディオの頭部は完全には滅んでいなかったのだ。
やがて、黒焦げの頭部が目を見開く。
「よくも・・・よくもこんなあのカスが・・・」
その頭部は、呪詛の言葉を吐きつつ、己の肉体の復活を待っていた・・・。
END?
出典 :ストレイト・ジャケット(富士見ファンタジア文庫)
名前 :フィリシス・ムーグ
年齢 :23歳
性別 :女
職業 :戦術魔法士
趣味 :仕事が趣味、と言っておくね(笑)それ以外だと乗馬かな。
恋人の有無 :昔は居候みたいのが居たよ。今は居ないね。
好きな異性のタイプ :興味のわいた人かな?
好きな食べ物 :特に好き嫌いって無いよ
最近気になること :特に無いかな?
一番苦手なもの :これも無いな。
得意な技 :<マグナ・ブラスト>かな、やっぱ。
一番の決めゼリフ :特にないなぁ。
将来の夢 :さぁ、とりあえず今が楽しければ、それでいいよ。
ここの住人として一言 :さぁ、今から殺しに行くよ。
ここの仲間たちに一言 :頑張るつもりだから、よろしくね。
ここの名無しに一言 :よろしくお願いします。
カテゴリはA。まぁ、レイと違ってお仕事だからね。
>452 遠野志貴vsチェルシー・ローレック
重力を収束させた拳を再び志貴に叩きこむ。
今度は胴体、心臓部分をめがけて。
いくら頑丈な体でも人間ならば一時的に動きを止められ、なおかつダメージも大きい。
急所とも言える場所。
しかし、私の拳はひらりとかわされ、再び空を切るだけだった。
(どうして・・・?)
行き場を無くした私の右腕は志貴の腕に掴まれる。
志貴の手に力が篭ったその瞬間、ギチギチと腕が悲鳴をあげ
握られた腕の部分に指がゆっくりと食いこんで行く。
そして―――
鈍い音
「うあああぁあぁぁぁっぁあぁあぁぁあ!!!」
私は膝から崩れ落ち、だらりとダラしなく垂れ下がった右手を抱え倒れこむ。
腕から下の感覚が麻痺し、折れた部分だけが異常な痛みを訴えている。
志貴は切るだけの力だけではなく腕力を始めとした運動能力も人間のものを超えている。
「くっ・・ぅ・・・」
私は痛みを堪え、ガクガクと震える足で立ちあがる。
とりあえず、邪魔になっている右腕を固定するため、スカートをちぎり
即席の包帯を作って腕に巻き付け首にかける。
この状態では接近戦はどう考えても不利にしかならない・・・。
そう考えた私は志貴から距離を取り、先ほどのブランコから少し離れたジャングルジムへと
駆け出し、その一番上に飛びあがった。
(接近戦がダメなら遠くから重力波で潰しをかけるしかない・・・!)
私は胸の前に拳を突き出し、重力の力を拳に集める。
出きる限り強力な重力を作りだし、建物も崩壊するような重力波を相手にぶつけるつもりでいる。
志貴の力は人間の物じゃない。
私のパンチを何度もかわし、私の腕を軽々と片手で潰し、そして滑り台をバラバラにした事。
全てに置いて、人間のそれをはるかに超えている。
そうなれば私も人間相手ではなくそれ以上の物を対象とした戦い方でなければ勝ち目はない。
そして、私の左腕から不可視の重力の波が志貴をめがけて放たれる。
「ジオ・インパクトっ!!」
これで、効果無しだったらどうしようかな・・・なんて、私は少し考えていた。
あ、言い遅れたけれど、私の名前はフィリシス・ムーグ。
戦術魔法士よ。トトカンタ市の魔法管理局からの依頼で、
此処の魔族及びそれに類するものの退治を依頼されたんだ。
これから、よろしくね。
>467
・・・・・・トトカンタじゃなくて、トリスタン市ね。
何で間違えたんだろ(苦笑)
>452 >466
「ん……?」
私、田中は公園の中が騒がしいことに気づいた。
住処のダンボールから、もぞもぞと顔だけ外にだし、公園の中を覗く。
――少女と青年がいた
青年が少女の腕を握る。
――少女の叫び
少女の腕が不自然に曲がる。
「……最近のカップルは刺激が足りないのだな」
いくら、餓えているとはいえ、雨の中の公園で、腕を折って、いちゃつくとは……
やれやれ、世の中も変わったものだ。
「まあ、どうでもいいか……」
私はダンボールハウスの中に引っ込み、新聞を読み始める。
「ふむ、××証券が倒産、不景気だな……。明日は晴れるといいがな…」
外は相変わらず、陰鬱な天候だった……
>466 遠野志貴vsチェルシー・ローレック
チェルシーの前腕部を握った右手から、鈍い感触。
そして、鈍い音。
『うあああぁあぁぁぁっぁあぁあぁぁあ!!!』
ははははははは。折れちゃったね。
でも、思った通りだ。
チェルシーは、本当にいい声で、啼いてくれた。
――――もっと聞きたい。
こんなに何かを欲したのは久しぶりだ。
チェルシーはいろいろなものを俺に取り戻させてくれる。
飼いたいな。ずっとチェルシーと遊んでいたい。
俺がぼんやりと見ている間に、チェルシーは器用に右腕の処置をしていく。
そして、向こうの方にあるジャングルジムに駆け上がった。
まだ戦う意志を捨てていないらしい。
いいよ、チェルシー。素敵だ。
その瞬間、チェルシーの胸の前に突き出された左手から、殺気が放出された。
押し寄せてくる殺気に、咄嗟に身をかわした。
でも遅かった。
身体の左半身が何かに囚われ、骨が軋む。
死徒である俺の身体を構成する、常識とはかけ離れた強靱さを持つ骨。
その骨が。
軋んで。
折れた――――。
「がぁあぁぁあぁぁぁぁぁ!!!」
激痛の悲鳴が口からほとばしる。
こんなに痛かったのは、アルトルージュに腕を引きちぎられて投げ捨てられて以来だ。
「おもちゃのくせにおもちゃのくせにおもちゃのくせに!!」
おもちゃがこんな事をしていいと思っているのか!
左半身の再生は始まっているけど、完全じゃない。
しかし、残った右足で地面を蹴って、ジャングルジムまで一瞬にして迫る。
身体に当たる雨が鬱陶しく、痛い。
鬱陶しい。痛い。鬱陶しい。痛い。うっとうしい。いたい。ウットウシイ。イタイ。
ジャングルジムのところでしゃがみ、一番下の部分を掴む。
少しひっぱると、土台のコンクリート部分が出てきた。
俺はそこを掴み、一気に土台からジャングルジムを引き抜いた。
>470
――ざあざあ
私は公園の中に駆け込んだ。
そこには……
憤怒の形相でジャングルジムを引き抜く兄さん、そして、その上に1人の女性が……
「――な……!?」
あまりの光景に私は絶句する。
いけない!
兄さんを止めないと……
四季の二の舞はもう、嫌……!
「兄さん、何をやっているんですか!」
私は兄さんに向かって、あらん限りの声で怒鳴りつけた。
>396 >406>423>457
現状確認。
座席の間から、慎重に顔を出し、周囲を探る。
現在、このただっ広い劇場に身を置いているのは4人。
舞台上に位置する玲二と、最前席で何やら喚いている男と、
そして――――――――
アイン
ファントムアイン――最強という称号を冠するファントムの中で、最強と言われる暗殺者。
つい先程、あたしが突入したところと同じところから来やがった。
は、ファントム同士考えることは同じかい。
位置的は舞台上の玲二、最前席の変な野郎、座席の影に隠れているあたし、そしてアイン。
これが一直線上に位置していることになる。
最前席のモヤシ野郎は、アインと玲二に挟まれているとこになるね。
現状分析その2――――
こっちのほうが問題だ。サイスの護衛適当数字組の残り4人は?
確か、個々に巡回中のはずだが……サイス暗殺からもうすぐ2分。
いくらんなんでも行動が遅すぎる。
嫌な予感がする―――寒気が止まらない。
こういう症状が起きたときは、大抵マヂで嫌なことが起こるんだ。
ちょっと気に入らないけど……ここはもう少し待ちの構えで―――
>471 遠野志貴vsチェルシー・ローレック
ジャングルジムを引き抜いて、放り投げようとした時。
『兄さん、何をやっているんですか!』
――――秋葉の声。
その場で手を放す。ジャングルジムが落ちた。
振り向いて、秋葉の方に向き直る。
秋葉は、必死の形相を浮かべていた。
「何って……遊んでるだけだよ。ちょうどいいおもちゃを見つけたからね」
こんなに楽しいのに、なんで秋葉はあんな表情をしているんだろう?
まあいいか。すぐにわかってくれるだろう。
俺は、久々に秋葉に対して心からの笑顔を浮かべた。
そして、秋葉に呼びかける。
「秋葉も一緒に遊ぶか?」
>473 遠野志貴vsチェルシー・ローレック
私は、引っこ抜かれたジャングルジムから振り落とされ、背中を強打して
息が出来ない状況だった。
しかも、濡れた地面で顔も髪もぐじゃぐじゃになっている。
もう最悪。
痛みに耐えながら前を向くと、志貴ともう一人、黒髪の綺麗な少女が凛とした姿でそこにいた。
良く見ると二人はどうやら顔見知りらしい。
「いったいなんなのよ・・・?」
私は二人を呆然と眺めていた。
>473 >474
――何って……遊んでるだけだよ。ちょうどいいおもちゃを見つけたからね
兄さんの言葉にまるで、鈍器に殴られたかのような衝撃を私は受けた。
四季と同じように、兄さんも……
ああ、この時だけは来て欲しくなかった。
もう、逃げられない……
でも、私には兄さん―遠野志貴を殺せない……
そうだ、きっと、兄さんは久々の外出で気が昂ぶっているだけ……
きっと、私が必死に呼びかければ……
――秋葉も一緒に遊ぶか?
それをあざ笑うかのようの兄さんの言葉……
そんな……
1番、聞きたくなかった言葉……
もう、完全に兄さんが壊れてしまったのだと私は認識した……
どうすれば、どうすれば……?
殺したくない、殺せない!
……力の差を見せ付けて、大人しくなってもらおう。
幾らなんでも、絶対に敵わないと分かれば、兄さんも……
私の髪の毛が黒から朱に変わる。
途端に、兄さんの側のジャングルシムの残骸がさらさらと消失していく……
「……兄さん、お願いです。このまま、大人しく屋敷に帰ってください。そうしないと、私は兄さんを……」
>250 モーラVSダイ・アモン エピローグ
哀れなほどに狼狽している化物。
何をそんなに嘆くのだろうか?
あるがままの姿に還る、ただそれだけだというのに。
滅びに脅え、何事かをわめき散らす吸血鬼を冷めた目で一瞥し、きびすを返す。
「そうやって命乞いをした者が、あなたが手を掛けた者の中にもいたはずよ」
背中越しに、そう言い残して出口の方へと歩き出した。
少しずつ、絶叫が遠ざかって聞こえなくなる。
角を曲がったところで、首筋に指を這わせた。
吸血痕は既に消えていた。
心臓を刺した時点で、一応の滅びであったという事か。
一番の心配は、日が昇るまで自分が自分でいられるかという事だったのだが、その心配はなさそうだ。
安心すると、途端に今まで忘れていたダメージが小さな体にのしかかってきた。
あの拳と魔術の一撃は正直かなり応えていたのだ。
今まで気を失わなかったのが不思議なほどに。
「もう、此処まで来れば……大丈夫……よね」
遠くに惣太とフリッツの声を聞きながら、意識を闇に落ちるに任せた。
心地よいとは言い難い眠りへと……。
(BGM:MOON TEARS)
>474 >475 遠野志貴vsチェルシー・ローレック
秋葉から強い何かを感じた。殺気とは違う、悲しみの混じった何か。
秋葉の髪が朱くかわり、ジャングルジムが砂塵だったかのように散った。
『……兄さん、お願いです。このまま、大人しく屋敷に帰ってください。そうしないと、私は兄さんを……』
どうやら秋葉は俺に帰ってほしいらしい。
そのくらいなら容易いことだ。
「ああ、わかった。帰ろうか」
言葉とは裏腹に、眠っていたはずの殺人鬼としての感覚が、全く別の行動をとらせる。
「そのかわり、チェルシーも連れて帰るけどいいかな?」
胸のポケットから、先ほど滑り台を解体するときに使ったナイフを取り出す。
脳のスウィッチを入れる。
――世界が死で満ちた。
ブラックハートvsシグモンド
>462
轟音が耳を聾し閃光が眼を射抜く。
緑色の悪鬼どもが粉々に砕け散り、その不浄なる欠片が雑草の上に降り注ぐ。
そして、シグモンドは爆風によって宙を舞い、黒い巨躯めがけて打ちかかった。
しかし、ブラックハートはその一撃を巨木のような腕で受け止める。
もう一方の腕がシグモンドの喉首に伸ばされ、真っ黒な指が獲物を締め上げる大蛇を思わせる
力で絡みついた。
悪魔は彼の体を高々と吊り上げ、
「たわけた奴だ!」と叫んだ。
「貴様には魔の驚異を見る内なる眼がないのか、闇の壮大さを知る感覚がないのか、
他のすべての存在を圧倒する、偉大な力に対する敬意がないのか?
俺の懇願を退け、俺の希望を裏切るとは!このくだらん土地に貴様を招いたのは、
強大な力と輝かしい栄光によって、貴様を俺の見解に一致させる自信があったからだ!
その報いがこれだとは!もはや貴様は、どうあっても死ぬほかない!」
狂人特有のせわしない口調でわめき散らすと、ブラックハートは容赦なくその指に
力を込めた。
>478 遠野志貴vsチェルシー・ローレック
気が付くとジャングルジムは跡形も無く私の目の前から消えていた。
どうやら目の前の少女がこれをやったらしい。
綺麗な黒髪だった彼女の髪はいまでは朱色に染まっている。
・・・地上にはまともな人間はいないんだろうか?
本気でそんなことを考えてしまった。
二人の話を聞き耳を立てて聞いていると、どうやら二人は兄妹らしい。
そして、こんな夜に出歩いている兄を家に連れて帰る。そう言っているのだ。
(こんな兄を持っていてもやっぱり兄弟なんだな・・・)
そして、私は起き上がり、妹と思わしき少女の元へと駆け出した。
「貴女、志貴の保護者?」
少女は此方に気が付き、私に目を向ける。
「家に志貴を連れて帰るんでしょ?私も手伝うわ」
私は彼女の返答も聞かず勝手に戦闘態勢に入る。
志貴もいよいよ本気になって来たのか、胸のポケットからナイフを取り出す。
きっとまた、『直死の魔眼』と言うわけの分からない魔法を使うつもりだ。
「嫌でも家に帰ってもらうわよ。志貴」
ファントムvsウピエル、中間纏めだ。
>322 >394 >395 >396 >406 >423 >457 >472
遠野志貴vsチェルシー・ローレックvs遠野秋葉
>478 >480
――そのかわり、チェルシーも連れて帰るけどいいかな?
もう、兄さんは、遠野志貴はコワレテしまったのか……
コロスしかないのか……
私は、私は……
ふと、そこで声をかけられた。
『貴女、志貴の保護者?』
『家に志貴を連れて帰るんでしょ?私も手伝うわ』
『嫌でも家に帰ってもらうわよ。志貴』
件(くだん)の少女が一方的に私にまくしたて、戦闘態勢を取る。
そうだ……
茫然自失としている場合ではない……
何としても、兄さんを止めて、連れ帰る!
「――兄さん!」
私の叫びともに、檻髪が兄さんの四肢を奪うべく、兄さんへと襲い掛かる。
足さえ奪えば……!
>480 >482 遠野志貴vsチェルシー・ローレック&遠野秋葉
『――兄さん!』
そう叫んだ秋葉は、赤い髪の毛のようなモノを俺にのばしてくる。
灼さをまとった秋葉の赤い髪。
これは危険だ。
そう思った瞬間、身体が勝手に動いた。
俺の四肢にのびてきた髪に、順々に、それでいて瞬時にナイフを走らせた。
そのまま大気ごと切れそうな感じで、赤い髪を「解体」する。
離れていてはもう一度髪が来る。
気がつけば。
全力で前に跳び、秋葉の斜め後ろに立っていた。
振り向きざま、秋葉の首筋を打とうと手刀を振り上げている。
少し寝ていてくれないか、秋葉。
インデックス
トバルカインvsバレンタイン兄弟 >20
レイオット・スタインバーグvsエンペラー >51
御神苗優vs八頭犬 >58
アーカードvsルシエド『深淵なる闇に広がる欲望の渦』 >133
紅丸VSリロイ・シュヴァルツァー >197
秋月由美彦vsチェルシー・ローレック >198
アーカードvsファントム >202
両儀式vs暗黒騎士ガウザー(黒岩省吾) >259
HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜 >286
アセルスVSアイン >324
蒼崎青子vsレイオット・スタインバーグ >344
横島忠夫&鈴鹿御前 vs アドルフ・ヒトラー 【脱出する者たちの時間】 >354
血塗れの遁走曲 >366
ガロンvs比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎 >414
不死のゾッド vs ギーラッハ >418
志々雄真実(M) 対 閑馬永空 >450
ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」 >459
モーラVSダイ・アモン >477
次スレだ、
吸血大殲 25章『Memory Of MoonBlood』
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/
ブラックハートvsシグモンドの闘いの、中間まとめだ。
>309 >314 >319 >326 >373 >391 >404 >438
>444 >446 >453 >458 >461 >462 >479
八千草飛鳥(M)vsシヴァ(M)
>448
「痛い……痛い……痛いよ……」
バランスを崩し地面に倒れこんだ飛鳥は、聞くも無残なうめき声をあげた。
いかな妖人も、隻腕隻脚では力の振るいようも無い。
シヴァが今度こそとどめを刺すべく近づいた時――突然、けたたましい
エンジン音とともに黒塗りのベンツが二人の間に割って入った。
さらに、ベンツからはダークスーツの男たちが降り立ち、
シヴァの足元に発煙筒をぶちまける。
シヴァの隙をつき、ダークスーツの男たちは素早く路上の飛鳥をベンツの中に
運び入れた。
美貌の食人鬼を載せたベンツは東京の街を走り回り、ある大邸宅に入っていった。
――現日本国内閣総理大臣、大泉十三郎の屋敷に。
VS八千草飛鳥
>486
発煙筒と共に現れた闖入者どもの正体を見極める暇もなく、
かたわにした飛鳥を連れ去られてしまった
その体の傷は増えた 肉体と精神を苛み続ける傷が
近場の病院へ行こう 腹に包丁が刺さったままだ
だが、その前にやっておかねばならない事がある
殺された人びとの亡骸を一箇所に集め、持っていたマントを被せて
合掌した
ハンターとしての戦いはいまだ終わらない―
八千草飛鳥(M)vsシヴァ(M) エピローグ
>487
胸に穴をあけた上、隻腕隻脚となって運びこまれた飛鳥を一目見るなり、大泉
十三郎はその端正な顔を蒼白にして叫んだ。
「今すぐ最高の医者を用意しろ! 聖域無き構造改革のためには、現代の神の
依代たるこの方に秘められた荒ぶる神のお力がぜひとも必要なのだ!!」
一国の総理たる大泉十三郎がなぜこの食人鬼のここまで執着するのか、それには
わけがある。
飛鳥の内に宿る神は、かつて時の政治のトップと呪術的な相関関係にあった。
その名残か、荒ぶる神はその時々の最も力ある政治家に力を貸すのである。
一介の民主自由党議員にすぎなかった大泉が、内閣総理大臣に選ばれ、
80%を越える過去最高の支持率を獲得したのもこの美貌の食人鬼のおかげ
だと知れば、全マスコミ人が驚倒するだろう。
しかし、飛鳥は医者を手配しようとする大泉を制すると、大泉の耳元でなにやら
切れ切れに囁いた。その囁きを聞いた大泉の顔が、困惑に歪められた。
三十分ほど後、硬く障子を閉ざした一室に飛鳥は横たわっていた。
そこにするすると障子が開き、くりくりとした目と秀でた広い額がチャーミング
な美少女が入ってくる。
当代最高の人気アイドル――森川夕貴である。
飛鳥が大泉に命じたのは二つ――彼女を呼んでくることと、自分が呼ぶまで
誰も入ってくるなということであった。
困惑と同情の入り混じった瞳で隻腕隻脚の飛鳥を見る夕貴の顔にいつしか
朱がさし、別の感情が瞳を支配していった。すなわち――食欲と性欲が。
矢も盾もたまらず、当代最高の人気アイドルは飛鳥の体に齧り付いた。
飛鳥の血が、肉が、骨が、彼女の胃の腑に入って行く。
そして、彼女の胃の腑の中で肉と肉は溶け合い、骨格が形を整え、その内側へ
くねくねと内臓が納まっていった。
突然、夕貴がえづく。
一瞬後に展開された光景は、悪夢としか言いようが無かった。
夕貴の口の中から、完全に四肢をそろえ、胸の傷もふさがった飛鳥が
吐き出されようとは。
畳に吐き出された飛鳥は粘液を滴らせつつゆっくりと立ちあがると、口の端
から唾液を滴らせつつ呆けた笑みを浮かべる夕貴に微笑を返し――その首に
噛り付いた。
血肉の晩餐が、また始まる――。
THE END
八千草飛鳥(M)vsシヴァ(M)
「代理宗教戦争 その宣戦布告」レスのまとめだ
前スレ>354-355 >75 >79 >81 >83 >88-89 >240 >243 >278 >280
>385 >388 >441 >448 >486-488
今スレのインデックス。
>20 トバルカイン vs バレンタイン兄弟
>35 ラルフ・グルト vs ロゼット=クリストファ
>51 レイオット・スタインバーグ VS エンペラー
>58 御神苗優 vs 八頭大
>133 アーカード vs ルシエド
>197 紅丸 VS リロイ・シュヴァルツァー 「YOUNGMEN」
>198 秋月由美彦 vs チェルシー・ローレック
>202 アーカード vs ファントム
>259 暗黒騎士ガウザー VS 両儀 式
>286 HMX-12【贄】VSラルヴァ 〜Which is Hunter?〜
>324 アセルス VS アイン
>344 蒼崎青子 vs レイオット・スタインバーグ
>354 横島忠夫&鈴鹿御前 vs アドルフ・ヒトラー 【脱出する者たちの時間
>364 孔濤羅 VS ミズ・マグナス 【人/器械】狩りは楽じゃない
>366 Broken Doll vs Stupid Zombie ...vs Eccentric Butler『血塗れの遁走曲?』
>414 ガロン vs 比良坂初音〜苦悩に吼える牙、虚無に倦みし顎
>418 不死のゾッド vs ギーラッハ
>450 志々雄真実(M) 対 閑馬永空
>459 ウルフ vs 鈴鹿御前 「ツキノ・ヨル・オニノ・チニ・クルウ・ウルフ」
>477 モーラVSダイ・アモン
>489 八千草飛鳥(M)vsシヴァ(M)
>490 姫城玲vsディオ・ブランドー
>481 ファントムvsウピエル、中間纏め
>485 ブラックハートvsシグモンド、中間纏め
次スレ
吸血大殲 25章『Memory Of MoonBlood』
http://cocoa.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1021106839/ 感想はこちらまで。
http://fargaia.hokuto.ac/html/test/read.cgi?bbs=vampbattle&key=1019409630
>432
狙い違わず吸い込まれた弾丸は胴体に。先行した爆炎は、完全に黒衣を
押し包んでいた。蒸すような熱気が、闇の奥から僅かに伝播する。
成果は――地面に転がる薄汚い足一本。
舌打ちしてスイングアウト。薬莢をイジェクトしてスピードローダーで再装填――
黒衣が、嗤った。
思わず、装填する手を止める。
無様に転んだ惨めな姿で、笑みだけが支配者の呈を崩さない。
見る者の感情を一気に捻り潰すようなその笑みに――
風の気配が、ぎしりと揺れる。
――ドクン。
ざわりざわりと、空気が揺れた。
響き渡る、静かな――ゆっくりと脳味噌を絞るようなノイズのカタマリ。
血管が収縮する。喉が貼り付いたように乾く。
脳が、軋む。
ぎり、ぎり、ぎり、ぎり、ぎりギリギリぎり――黙れ。
風、が
ざわ、ざわ、ざわ、騒騒、騒。ぎり、ぎりぎりぎり――
――黙、れ。
夢遊病者を思わせる動きで、青年の腕がリボルバーを持ち上げ――
――限界まで瘴気を孕んだ大気が、黒衣の身体と共に弾けて散った。
内側から膨張した無数の黒に飲み込まれ、ヒトの形が飲み尽くされる。
触手を思わせる原始的なカタマリが、体の痕跡を残らず覆っていく。
――C級ホラーを思わせる馬鹿げた光景は、僅か数瞬で幕を下ろした。
月光を遮る影が、忽然と視界を覆っていた。
闇色の視線が、眼底を突き抜けて後頭部に突き刺さる。
一切の感情を否定した虹彩が、理性を直接殴り付ける。弾き出される感情は、
端から端までエラー。エラー。エラーエラーエラーエラーエラーエラー――
――あぁ。
漆黒の狂獣が、夜を震わせて高々と咆える。
――コイツを――早く、
「――喚かなくても――聞こえてるさ。兄弟」
コイツの、この、瞳は――綺麗過ぎて――
あまりにも近い死の気配に、脳が悲鳴を上げる。
脳内で狂奔する殺意に導かれて、トリガーを連続で引いた。
>492 名無しクルースニク対名も無きクドラク
再び闇夜を切り裂く銀色の弾丸。
理性を捨て狂獣と化した黒狼。だがソレが何であるかは理解していた。
先ほど自分の身を穿ち傷つけたモノ。
――――危険危険キケンキケンキケンきけん。
黒狼は自らの本能に従い行動する。
黒狼を貫く弾丸――――すり抜ける。
同時に黒狼の姿が薄れ……消える。
――――残像だ。
天空に輝く銀月。その中に浮かぶ黒影。
刹那の間に残像を残し天高く飛び上がった黒狼。
クルースニクの頭上にてその影が徐々に大きくなる。
そして次の瞬間、黒狼がその顎を開く。
漆黒の牙、狂乱を表すかのように溢れ、垂れる涎。
そしてクルースニクの肩口に食らいつく。
黒狼の内にあるのは至極シンプルな、それ故に圧倒的な強さを持つ意志。
――――殺すころすコロス殺――――そして、喰う。
<アルクェイドvsアルクェイド>『矛盾因果律』
>399 >400 >401 >402 >411 >455
>493
城塞のように聳えた黒狼の姿が、着弾の刹那に残影と消えた。
意識からの消失。知覚不可。見えない。どこに――
焦りは無く、ただ、やり場を失った殺意だけがグルグルと頭の中で回転する。
硝煙を立ち昇らせるリボルバーを手に、青年は虚ろな視線を空へと向けた。
独り、下界を睥睨する女王が――翳った。
滲む光に縁取られ、漆黒のシルエットが翻る。影はその異様を増し、月を完全に覆い――
――死が、降って来た。
悪意のカタマリが、黒い疾風となって、頭上から。
全身が極限に近い疲労に悲鳴を上げている。足がまともに動かない。
咆哮を上げて迫る黒狼――その、瞳に、
「ハ―――」
感情疎通不可の虹彩に、脳が震えた。
風より速く迫るその牙を、脳はゆっくりと知覚する。――体が動かない。
牙が――ゆっくりと牙が牙が、
「――く、ぁ、ハハッ――ハハハハハハ――」
粘着く唾液が法衣を汚し、濡れた牙の先端が皮膚に触る。法衣を押し破り、
首筋に埋め込まれていく生暖かさ。
――激痛が、理性を完全に破壊した。
荒い息と鼓動が、至近距離で頭の中を引っ掻き回す。
――赤――い。
濃密な血の臭いが一気に立ち込める。
世界が隙間も残さず紅く染まる。
――死ぬ。
――殺される。
――誰が――誰に?
(そんなのは――――決まってる)
――あぁ――
紅に染まる世界の中、
――コイツは、俺を傷付ける。
突き付けられた色の無い瞳が、
――コイツが存在する限り、俺は――
二つの鼓動と息が、一緒くたに聴覚を叩く。どちらがどちらの音域なのか分からない。
ぐるぐるぐるぐると意識が回る。
>495
この喉笛を、
――そうだ、俺は、
獣のニオイ。黒の気配。根拠の無い激情。
――俺は、コイツを。
滲んで輝く月。幻覚。妄想。織られた闇。敵。敵。敵敵敵敵敵――
意識をノイズが犯す。止めどなく流れる血の赤が、網膜を介して直接
意識にシャウトする。即ち、殺せ――と。
ドクン。
――殺せ。
――コロセ。
――コロ
「――ハ――ハハハハハハハハッ――」
意識の先端までが砕けて散った。狂乱する意識が、駆け巡る激痛を完全に鎮痛する。
――殺せ――殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ――
殺意と負の全感情を喰らって、失われ行く血が高々と咆哮した。
――――コイツを、殺せ――――――!
異形の狼に組み伏せられる青年の姿が、微細な蒼の燐光に包まれ始めた。
「――そうだな――こんな月夜には、狼が出るのは当然だ――」
増大する光は青年に喰らい付く狼の胴までをも半ば飲み込み、その光量を増して行く。
「――ク――クハハハハハハハハハハハハッ―――!」
――光が、収束した。
爆発的な光量となった蒼光を突き破り、不意に生まれた光の矢が黒狼を吹き飛ばす。
闇の中で光の残滓を纏い、巨大な白い影が蒼い瞳を黒狼に据えた。
月を睥睨して高々と咆哮して、純白の狼はその姿を一陣の風と変えた。
殺意を糧に、白い風は黒狼へと一散に突撃する――
遠野志貴vsチェルシー・ローレック&遠野秋葉のレス番纏めですわ。
この章の分のレス番纏めです。
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続きは次章で……
>496 名無しクルースニク対名も無きクドラク
――――純白。
どこまでも白い光が夜の闇を裂く。
その光に退けられたかのように黒狼ははね飛ばされる。
地に叩き伏せられた青年の姿はない。
代わりにそこに佇むは純白の身体を持つ巨狼。
――――黒狼が闇よりもなお深い魔ならば、白狼は光よりなお眩い天の御使い。
白狼は天を見上げ高々と咆吼すると黒狼に向かって突進する。
黒狼もそれに応ずるように咆吼をあげ真っ向から向かい撃つ。
真っ向からお互いぶつかり合う。
迎え撃つ形の黒狼は白狼の勢いに押され後方に押しのけられる。
が、黒狼はそれに怯むことはない。
前脚を白狼の顔面に叩きつけ地に転がす。
そして、己の持つ闇色の牙を食い込ませるべく躍りかかる。
技も駆け引きもない泥臭い獣性のぶつかり合い。
だがそれは他のどの様な光景よりも鮮烈であった。
咆吼とも絶叫ともつかぬ声。
それはまるで黒狼の歓びの声のように聞こえ――――
>498
首筋に食い込んだ石柱ほどもある牙を、白狼は咆哮を上げつつ無造作に振り落とした。
引き剥がされた黒狼の次行動を制するように、白狼は巨大な前脚を振り上げた。
ナイフより遥かに鋭く鋼よりも遥かに硬質な爪が、黒狼の顔面に振り下ろされる。
鈍い打撃音が響き渡り、黒い体毛が散った。頭蓋の半分を砕かれ、脳漿と血を垂れ流す
黒狼が――――――怯まない。
絶叫めいた咆哮と共に、黒狼はその爪を白狼の首筋に叩き付けている。首筋の肉を
頚骨付近までこそぎ取られ、薙がれる勢いそのままに白狼は巨木を薙ぎ倒して転がる。
起き上がる白狼の首で、白い体毛に埋もれて鮮血と滑るピンク色の肉とが覗いた。
再び向き合った時点で、二頭の傷は痕跡すら消失している。黒狼は巨大な前足で顔を擦って
血を拭い落とし、白狼は首を振って血の残滓を払い落とした。
二頭の足元には、既にプールと言っても差し支えないほどの鮮血が溢れ、肉体の修復を負えた今、
流れ落ちた血だけが異様を放っていた。
二人は、早く殺さなければ――と思った。
同時に血溜りを蹴って、白い風と黒い風が交錯する。
白い影は黒狼の接近数メートル前で残像を残して跳躍。唸る風を纏って、眼下の黒狼の頭部
へと爪を閃かせて落下する。勢いに吹き千切られる血が刹那、月光に浮いた。
白い前肢が直撃する寸前、黒狼は黒い風となって消えている。潰すべき目標を失った爪が無造作に
地面を叩き、地割れのような亀裂を無数に走らせた。
標的を見失った刹那、上空から信じ難い速度で急襲する黒狼の前足が、無造作に白狼を蹴り付ける。
地響きを立てて横転して即座に起き上がり、白狼は地鳴りを響かせて黒狼へと駆ける。
二人は、早く殺さなければ、と思う。
双方が爪を打ち付け、牙を突き立て、圧し掛かって押し潰した。
第三者の介在を許さない空間――月光を纏った白と黒の体毛が靡き、闇を凝縮した黒い瞳が
炯々と輝く蒼い瞳と絡み合う。
殺戮本能に突き動かされ、相手の体を蹂躙する為だけに、二人は駆ける。それは、本能のみの
ケダモノと何ら変わる事の無い、純粋な命の遣り取りだ。
二つの咆哮が大地と夜気を震わせ――次瞬、二色の風が血臭を撒き散らした。
お互いの首筋に深々と牙を突き立て、爪を胴に食い込ませ、白と黒は交錯する。
肉を深々と貫く牙が、歯茎を伝って殺意を喚起する。
――殺す。
本能に押込められた意識が、本能さえ喰らって叫んだ。
――殺して――やる。
口内に流れ込んだ血が食道を流れ落ちる。吸血鬼の血液を嚥下し、首筋からは血を貪られ、
それでも白い牙が離れる事は無い。
――さあ――
拮抗する殺戮の中、白狼の姿が微細な青い燐光を纏った。光は巨躯を完全に覆い――
光を突き破って、巨大な雄牛が咆哮を上げた。
>名無しクルースニク対名も無きクドラク
今スレ分の纏めだ。
続きは25章、或いは26章でだ。
――――クックック、もっと楽しもうぜ――――クルースニク!!!
>204 >208 >209 >268 >296 >300 >303 >306 >428 >432
>492 >493 >495 >496 >498 >499
502 :
サルベージャー三世 ◆sarujRTo :
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