この三語で書け! 即興文ものスレ 第十六期

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1名無し物書き@推敲中?
即興の魅力!
創造力と妄想を駆使して書きまくれ。

お約束
1:前の投稿者が決めた3つの語(句)を全て使って文章を書く。
2:小説・評論・雑文・通告・??系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。
3:文章は5行以上15行以下を目安に。
4:最後の行に次の投稿者のために3つの語(句)を示す。ただし、固有名詞は避けること。
5:お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
6:感想のいらない人は、本文もしくはメール欄にその旨を記入のこと。

前スレ:この三語で書け! 即興文ものスレ 第十五連
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1068961618/

前々スレ:この三語で書け! 即興文ものスレ 第十四段
ttp://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1064168742/


関連スレ
◆「この3語で書け! 即興文ものスレ」感想文集第7巻◆
ttp://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1066477280/
この三語で書け! 即興文スレ 良作選
ttp://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1033382540/
裏3語スレ より良き即興の為に 
ttp://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1035627627/
十人十色!3語で即興競作スレ
ttp://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1036437812/
日曜の夕方、自室で寛いでいると、インターフォンの音がなった後、母の悲鳴が聞こえた。
その尋常ではない声を聞き、奥の部屋から慌てて駆けつけた僕が見たものは、
振り払うように小包を落とし、床に座り込み泣く母の姿だった。
僕は、床に落ちた箱を拾い、中身を見た。
中には、綿の隙間から見える小鳥の死骸と、……1枚の小さなメモ。
泣いている母を、そのままに慎重にメモを取り上げて、読んでみる。
『花ちゃんが二月の二十日に亡くなりました。こっちでは埋めてあげられる良い場所が無いから
おうちの桜の木の下に埋めてあげてください。           夏海』
……姉さんだ。こんな馬鹿な送り方をしないで事前に、電話でも寄越せばいいのに。
九日前の死体にしては、痛みが少ないのは、クール便で送ってきたからだろうか。
僕は、母さんに入っていたメモを渡し、箱を持って庭へと向った。

「桜」「浮」「青い」
3「桜」「浮」「青い」:04/02/29 13:06
 桜が咲く少し前、その通報があった。
 毎年の事だが、四月馬鹿(エイプリル・フール)には警察にも少しは冗談も通じるだろうと
思いこんだ、それこそ四月の馬鹿がひっきりなしに下らない通報を入れてくる。俺の知る限り
一番酷いのは、「郷ヒロミが駅前でゲリラライブをやった挙句、公衆の面前でヘアーを晒して
いる」というものだった。こんな調子だから、四月一日の通報はやや猜疑心を持って受け止め
ることにしていたのだが、今回はそれが裏目に出た。
 桜の花びらが散るのも進んで、あでやかさよりも黄ばんだ惨めったらしさが目立ち始める頃、
半腐乱した死体が隅田川に浮かんだ。所持していた免許証から、千代田区の会社員、松田勇次、
二十六歳と判明した。そしてその後の調べで、彼は四月一日、自宅のアパートから通報を入れ
ていたのが明らかになった。
――――半魚人に命を狙われている。
 誰も真面目に受け取らなかったのは言うまでもない。通報を受けたオペレーターの備考が通
報記録に添えられているが、彼曰く「迫真の演技だった」。
 馬鹿げた話だ。被害者はそんな通報をしても、誰も真面目に受け取りはしないと思い至らな
かったのだろうか? 青い服を着た変質者に狙われている、と言えば、我々だっておざなりに
しはしなかった筈だ。
 それとも、容疑者は被害者にとって、あくまで「青い服を着た変質者」ではなく「半魚人」
だったのだろうか。
 俺はゼリー状の物体を体じゅうにまとわりつかせた腐乱死体を見下ろし、苛立たしく思った。

「蝉」「風」「間抜け」
4名無し物書き@推敲中?:04/02/29 13:32
新スレ乙です。

 あちこちに転がっている、人間だったモノ。
風が運ぶは多量の腐臭。腐ってゆく、過程――。
季節は夏。強い日差しが地を熱す。生き物はそれを享受して、さらに強く生きる。
しかし、死体は腐る。さらに早く腐る。それは正に地獄絵図。
道行く旅人はそれに一瞥をくれ、「間抜けな野郎どもだ」と呟く。
人には生きる資格がある。しかし、ときに生殺与奪を握られ、ひたすらに嬲られることも、ある。
それもまた、「生きる」ということなのだ――。

 蝉が鳴いていた。ただただ、鳴いて――――。

「裁判」「真理」「おまけ」
5名無し物書き@推敲中?:04/02/29 13:33
「裁判」「真理」「おまけ」
裁判だよ。裁判だよ。弁護士と検事が言い争ってるよ。
真理ってなに?どういう意味だよ。
あっ!なんだよー。さっきコンビにで買ったグリコのおまけ、だぶってるよ。

「性器」「アイロン」「ミノフスキー粒子」
性器にアイロン押しあてたらミノフスキー粒子が発生したよ。

次は「裁判」「真理」「おまけ」
医療裁判中に僕は心臓発作で死んだらしい。
そこでは被告の真理だか、なんだかよくわからないがいろいろやってたらしい。
僕は被告の友達だったわけだが。
判決はどうなったんだろう。死んだのに、気になる。自分の死よりも気になるね。
おまけ 僕は20歳でまだ死ぬような年じゃなかったんだよね。
なんでだろうね。理不尽だよね。


「パケット」「インク」「電柱」
9名無し物書き@推敲中?:04/02/29 16:31
嗚呼、私もこの歳になりますと恋の一つもするものです。
ですからここは一つ、現代の風潮に逆らい恋文でもしたためてみようかと思うのです。
この古風な精神が私の想う人へと伝わることを切に願ってやみません。
されども、いささか間の抜けた私のことですから、いざ机の前に座ると何をどう書いたらよいか、
微塵も思いつきません。しまいには、今日電柱にぶつかる犬を見ました。というわけのわからない
書き出しから文を始めだす始末。ようやくそれらしき言葉を探り当て、いざ薄く色の入った便箋に
恋慕の情を込めようと力を込めた途端、
嗚呼、なんと間の抜けたペンでありましょうか。
それまで滞りなく出し続けてきたインクを突如として出さなくなったではありませんか。
なんともやりきれない思いがこみ上げて来ましたが、書けなくなっては仕様が無い。
不満な気持ちを胸に抱えたまま自室を出、階段を降り、ペンを探しに居間へとたどり着きますと、
嗚呼、この子にしてこの親ありとでもいいましょうか、昼のワイドショーを見て
そこに映る若者の姿を我が子に重ね合わせたのでありましょうか、唐突に母上が、
あんたはパケット料金とかすごい金額になってないだろうね、などと私に問うてくるのです。
嗚呼、嗚呼、母上、その問いを向ける以前に、まず私に携帯を買い与えては下さらないでしょうか。

「不良品」「唐突」「心」
10岸和田:04/02/29 19:08
「不良品」「唐突」「心」
 僕は彼女のことが好きだ。もうどうしようもないほどに。
彼女を研究所でひと目見たときから気になってしょうがない。
いま僕は彼女にいろいろと管をつながれ、いくつか質問をされている。いわゆる「検査」である。
僕は彼女の質問をさえぎって、思い切って告白した。あなたが好きです、と。
彼女はなにも言わず、僕の後ろにまわった。そして―――――。
ぶつっ。
「全く、この糞ロボットは不良品ね。唐突に私に告白してきたわ。心をもったロボットなんか、気味悪いわ。」
 
 「フランツ・カフカ」「ペシミスティック」「リップ・クリーム」
テンプレを読め。
漏れはペシミスティックなリップ・クリームのフランツ・カフカ。

「不良品」「唐突」「心」
>7.12
1のお約束に
文章は5行以上15行以下を目安に。とあります。
どうぞ、テンプレをきちんと読んでからカキコしてください。
固有名詞の意味が解らない奴が紛れ込んでるな。
おいおい、そのお約束に

>4:最後の行に次の投稿者のために3つの語(句)を示す。ただし、固有名詞は避けること。

頼むよ兄貴。「目安に」と「避けること」の違いが分からん訳じゃないだろ。
前者は推奨、後者は禁止。わかるかい?
不良品は唐突に、心を動かした。

「VS」「電波」「麻雀」
VSさんがいると知り、書いてみました。
レベルが高いと聞いていたのですが、そうでもなさそうですね。

VSさんに期待!
18あぼーん:あぼーん
あぼーん
こんなスレで油売ってないで、さっさとスレに帰ってきてよ!
職人さんが書かなくなると、荒らしがどんどん調子づくんだから!
頼むよVS!
ここは「与えられたお題で適当に遊ぶスレ」ではありません。
また、いるのか分からない個人を呼び込むのもやめてください。
創作文芸板でも比較的真面目に文章を書いているスレなので、
上記の行為は文章を書いている方に失礼であると愚考します。
「フランツ・カフカがペシミスティックな文体なのは有名だけどよ」
「わかんねーよ。もっと分かりやすくしてくれ」
「んー、まあ、簡単に言うと『ガソリンで動くロボット』と、『ジンベイザメ』くらいな感じだな」
「なるほど」
「んで、アレの一節にあった『私は無性にリップ・クリームをしゃぶりたい衝動に駆られた』だけど」
「俺はそんな気持ちになったことねえな。乳首はしゃぶりたいけど」
「世の中には凄えヤツがいるってこった。嘘かも知れんけどな」
「嘘か」
「わかんね」
マグロ漁船に強制的に乗せられ、精神がおかしくなった若者二人の会話。

「愛」「傘」「歌」
源静香を愛する余り、野比のび太は驚くべき計略を思いついた。
まず、静香の傘を盗む。
そして、傘がなくて途方に暮れてる静に一言。
「しずちゃん、傘がないのなら入れてあげようか?」
優しさをアピールすることで、静香のハートを掴もうという作戦だ。
いよいよ決行の日。どしゃぶりの雨。
のび太は静香の傘を盗もうとするが、スネ夫に見つかり失敗。
しかも、盗んだ傘はジャイアンのだった。
「てめぇ・・・ギタギタにしてやる!」
「ゴメン、許してよ」
「ダメだ! ・・・と言いたいところだが、俺は優しいんだ」
「え?」
「俺様の新曲作成に付き合え。そしたら許してやる」
「そんなぁ〜」
結局、のび太はジャイアンの歌を五時間も聞かされるハメとなった。

「宿題」「当番」「試験」
 最近小学生の間で、全国的に教師をおちょくるのが流行っている。
うちの学校もご多分に漏れず、荒れていた。
 パパパ……パパパパパパパ……。また爆竹か。放課後のコーヒー
タイムを邪魔しやがって。このあいだ学級会であれほど持ってくん
なっつったのにあの糞餓鬼どもが。一言いってやるか。

 廊下のど真ん中に1万円が落ちていた。手を伸ばしかけて、俺は
すぐにピンときた。職員室を出た途端、俺にカンチョーを仕掛けに
突進してくる餓鬼共の気配が無い。怪しい。静かすぎる。
 餓鬼共め、どこかで見守ってやがるな。俺を試そうなぞ十年早い
わ。試験は教師の特権なのだ。俺は涼しい顔で1万円札をそのまま
捨て置いた。
 少し廊下を進むと、廊下に絵の具がぶちまけられていた。餓鬼共
が! 掃除当番をサボるなとあれほど言ったのに! 俺は怒りに鼻
の穴を膨らませた。だいたい誰だ、絵の具をぶちまけた奴は! お
っと、いかんいかん。怒っては奴らの思う壺だ。これは罠に違いな
い。まったく、今時の教師ってなあ、因果な商売だぜ。
 絵の具は教室へと続いていた。さて、何が待ち受けている?
 俺は、頭上から黒板消しやバケツが降ってこないか警戒しながら
扉を開け、努めて冷静に注意した。
「こら君達。爆竹を鳴らすのはやめなさい。さもないと明日の宿題
は倍の量……」
 みなまで言う前に爆竹の音がした。俺は身体に衝撃と熱を感じた。
胸と腹から、赤い絵の具が噴き出した。
 俺は、驚愕に目を大きく見開いた。俺が見た光景は、教室中に横
たわる餓鬼共の血まみれの死体と、バッグに溢れるほど一万円札を
詰め込み、よだれを垂らしながら爆竹――マシンガンを乱射する男
の姿だった。
 どうやら、宿題はあの世で出すことになりそうだ、と思ったとこ
ろでまた爆竹の音がして、ぷつん、と意識が途切れた。
2423:04/03/01 09:48
「宿題」「当番」「試験」でした。

次は「海」「鳴き声」「墓標」でよろしくおねがいします。
春の暖かな日差しを浴びベランダにある物干しにぶら下がるイカ達が風に揺れて
そよそよと泳いでいる。
「靴下もこうやって横一列に並べると壮観だな」
洗濯層の底にある排水口に吸い込まれていく鳴門の渦を眺めていたら、不意に声を
掛けられた。
「ここだよ、ここ」
私の足元にちょこんと仔猫が座っていた。「まさかね」私はしゃがみ込み
喉元を撫でてやった。ゴロゴロと喉の奥から鳴き声だす。
「いま、ミルク持ってきてあげる」
「酒のほうがいいな、酒にしてくれゴロゴロ」 えっ、ふさふさの毛から指を離し
私は仔猫に問いかけた。
「おまえ、話せるの?」
「さっきから話してるぜ」
「おれは二ヶ月前は漁師だったのさ、毎日、毎日、海でイカを捕ってたんさ」
仔猫は続ける。「おれさぁ、一週間前に生まれ変ったんだよ猫に、猫だぜ」
「やんなっちゃうよなゴロゴロ、だけどさぁ自由なんだなぁ猫の生活って」
「心配はいらないぜ」 声は遠く小さくなっていく……
私はそこで目が覚めた。ベランダに置いてある椅子に腰掛け、白いテーブルに
うつ伏せになり涙を手の甲で拭った。心の中で亡き夫の墓標向かいに手を合わせた。

次は「天麩羅」「春」「夕闇」でお願い
 天麩羅を口いっぱいに頬張った。電気は付けずに食べる。それが日常だ。
特に何て言う事は無いが、生の日の光が好きなのだ。
時間が経ち、夕闇が町を覆っても電気は付けない。何者にも邪魔されない闇の悠久もまた大好きだ。
それでも、朝が来てまた光に溢れる、その不変なる世界もこれまた堪らない。
季節もまた、逆らうことを許されず流れ行く。春・夏・秋・冬……美しいサイクル。
花粉症に悩まされる春。
早く冬が来ないかと毎年思う夏。
個人的には一番過ごしやすい秋。
そして、早く夏が来ないかと毎年考える冬――。
永久に繰り返される朝・昼・夜、そして、春夏秋冬――俺は、この曲線を何よりも愛す。
そして何より日本が大好きだ。時の流れを甘美に伝えてくれるこの日本が大好きだ。

「修羅」「完遂」「突破」
27いい逃げ勘弁簡素人:04/03/02 21:26
本家スレ立て、新規即興おつかれさまです。
勝手な私的感想であり、批評とかではないのをご了承ください〜。

>2
この手の系統はちょっとシュールな気がするけれど、
長い話の一部分、見たいな感じで、違和感なく読めました。
「痛み」がそっちのほうのだったとは。

>9
『私』はいくつの人で、いつ頃の時代なんだろうかなあとか思って読み進めると、思い切り現代でしたか。
意外な感じが好みです。
嗚呼 というのをわざと多く使っているのかもしれませんが、ちょっとうるさい風に感じられました。


>23
ひのさんのではこれが一番好き。
餓鬼 はちょっときつい感じを受けました。でもひのさん的に「ガキ」「がき」じゃ、柔らかすぎだったのかな。
28いい逃げ勘弁簡素人:04/03/02 21:26
ぎゃー! ごめんなさい。
誤爆です。
ごめんなさいごめんなさい。
29「修羅」「完遂」「突破」:04/03/02 23:53
僕が生まれるちょっと前に、日本で再び徴兵制度が施行された。
当時の首相Kが「今、日本に一番必要なものは戦争です!!」と声高らかに宣言
し、周囲の雑音を完璧無視した結果だった。
僕が10歳になると、例外に漏れることなく赤紙がポストに投函された。
母は泣き崩れ、父も泣き崩れた。
僕はというと、大して泣きたくもなかったけど二人に感化されて泣いていた。
どうせすぐに戻ってこれる、とどこか楽観していた。

「敵陣突破!」
部隊長の現状報告で周りの士気が上がる。「上」からの任務を完遂した僕達は
次なる任務に赴く。皆、修羅のようだ。
今回の戦争のスローガンは「アメリカから自由を奪還せよ!」だ。前の朝鮮との
戦争では「幸せは戦争で勝ち取れ!」だった。
僕は思う。少なくとも僕の装備の自動小銃では、自由をもたらすことはできないと。
そもそも自由ってなんだ。米兵を撃ち殺すことが自由? 違う!!
「自由ってなんなんだよ!!! 僕達のやってることはなんなんだよ!!!
 憎しみの連鎖じゃないかよ!!! これが自由か? どこが自由だ!!」
思わず叫んでしまったら、部隊長に両手両足を撃たれた。
部隊の規律と士気を下げる、と判断されてだろう。僕はもう用なしか。
皆が僕を置いて先に進んでいく。一人取り残されて僕はちょっぴり自由だと思った。

次は
「責任」「大人」「サラリー」
でお願いします。
「まったく、あなたには大人の責任感ってものが備わってないの!」
「そなわってましぇ〜んマシェ〜リ〜♪」
女に叱り付けられた男は不貞腐れ、ふざけ半分で答えた。
「マシェ〜リ〜♪じゃないわよ!バカのフリするのはやめなさい!」
女は男の口振りをわざと真似て答えた。
「バーカのふり!ヘイ!バーカのふり!」
女の釣り上がった目が男を睨み付けたが男は構わず続けた。
「バーカの壁!ヘイ!バーカの壁!」
男は手拍子も交え、一人で盛り上がり始める。
「バカ部長!ヘイ!処女部長!」
その瞬間、女のハイヒールのつま先がが男の急所を捕らえ、
男が低いような高いようなうめき声を上げ床にうずくまった。
女は間髪居れずに、うずくまった男の髪の毛を掴み、
こめかみに白く美しい膝小僧を撃ち込んだ。
男はドタンと床に倒れ、白目を向いて失神した。
「サラリーマンをなめんじゃねえ!」
女が叫んだその言葉は、もう男の耳には届いてなかった。
女はそれに気付いたが、特に驚く様子も無く、男を横目に部屋を後にした。
女が去ったその部屋には、淡い香水の匂いが立ち込めていた。


「赤飯」「老人ホーム」「小人」
31岸和田:04/03/03 17:43
「赤飯」「老人ホーム」「小人」
 僕が電車に揺られて目をつぶっていると、ふと前の座席の会話が聞こえてきた。
「ねえ、何か怖い体験とかってした事あります?」と、若い男の声。
「怖い、体験、ですか?」と、中年の男の声。
一体どのような関係なのだろう、と思いつつ、僕は話し始めるのを待った。
「・・・ひとつだけあります。5年前のことでした。」 中年の男が間をあけて、静かに話し始めた。
「その日はとても暇で、私は町を散歩していました。そして1時間ほど歩くと、腹が減ってきたんです」
「私はスーパーで赤飯と牛乳を買うと、どこかゆっくり食べられるところを探したんです。」
「ふうむ」 と若い男が唸った。中年の男は話を続けた。
「どこかの公園のベンチでもと思い、ぶらぶら歩きながら探していると、老人ホームがあったんです。町のはずれにあったので、周りに家とかはありませんでした。私は少し迷ったんですが、そこに入っていきました」
「どうして老人ホームなんかに?」 と若い男が聞いた。
「いや、ちょっとした庭みたいなところにベンチが見えたものですから、人もいませんでしたし」
「そして私はベンチに腰掛けました。すると、尻に何か変な感触がしたんです。なんだろう、と思って立ち上がってみてみると、5センチくらいの小人がいたんです。」
「何だか奇妙なものでした。40歳くらいの男をそのまま10センチに縮めたような感じです。そいつはなにやらモゴモゴと喋りました」
「すると、わらわらわらと地中から小人が出てきたんです。そして・・・」
・・・気がつくと僕は眠っていた。目をこすり、前の座席を見ると誰も座っていなかった。僕は結末がひどく気になった。

 「バッド・エンド」「かまきり」「スピーカー」
目の前を、外にまでスピーカーの音がもれる車が猛スピードで横切った。
僕はその場で立ち止まり、視線を落とす。その落とした視線の先にはかまきりがいた。
ぺちゃんこになっていた。さっきの車に轢かれたのだろう、当然、ピクリとも動かなかった。
「バッド・エンドってやつだな」僕は呟いた。『そうだな』呟きに応えが返ってきた。
男性の太く渋い声だ。「かまきりライフは楽しめたかい?」僕は問う。
『まぁ、ぼちぼちってとこだな』渋い声はさらに続けた。『もうすこし駄目か?』
「却下。君には上にいてもらわないと困るからね」僕はそういうと懐から小さな瓶を出し、
かまきりの死骸を入れた。瓶の中で、かまきりはその体を青白い光に変えていった。
「だいたい、神様がかまきりの姿で逃げるなんて前代未聞だよ。しかし、なんでまたかまきり?」
声はこたえる。『ただの気まぐれだ。深い意味はないよ』と。
「気まぐれでかまきりになって、部下に迷惑かけるなよ」と言いたいところだが、無駄そうなのでやめた。
『さっきの車には罰を与えないとな』というと同時に、車が走っていった方向で大きな爆発音がした。
『仕事が増えたな』そう言うと面白そうに笑う。僕は、音のした方向を一瞥すると大きなため息を一つつき歩き出した。
太陽は半分ほど地平の彼方へと沈んだようで、あたりには少しずつ夜の雰囲気が漂い始めていた。

「響き」「無限」「有限」
失礼ながら、VSが来るまでは居つかせてもらいますよ
どこにいやがるVS!
いやなに、VSがプロと同等なんていう、面白い妄想を聞いたもんでね
どんくらいのもんかと見にきたのよ
そしたら、いやしねーwwwwwwwwww
36あぼーん:あぼーん
あぼーん
37あぼーん:あぼーん
あぼーん
水曜の昼休み後、全社員を集めた会議が開かれた。
全社員で会議、とはいうものの社長を含めた社員数が5人しかいな
いものだから、見ようによっては昼飯後の茶飲み話にも見える。
しかし、内容は重大だった。始めに社史に関わる議題が告げられた。
「社名を変更しようと思うんだよね」
田中社長の言葉に熊野部長が黙ってうなずく。あらかじめ聴いていたようだ。
「なんか有限会社田中商事って、印象薄いんだよね」
今度は社員全員がうなずく。しめし合せたものではない。
「え〜、じゃあ社長さんあたしのお婿にきちゃう〜?佐倉田商事になろうよ」
唯一の女性社員、佐倉田が茶化した。彼女は年齢不詳で 恐れ られている。
[いやもう僕の名前にはこだわんないんだよね。なんか意見ないかなぁ」
その後三個ほど意見は出たものの決まらず、皆だんまりになってしまった。
「そうだじゃこういうのどうだろう、無限会社田中商事 ね、いいよね」
「社長、そこは変えられませんから」
一言も発していなかった経理の細野さんが社長をなだめる。
(こだわってんじゃん)そう心の中でツッコミを入れる新入社員の大見。
(でも無限会社ってのはいいな。なんかロマンがあるな。でも田中がじゃまだな)
新入社員の眼光が鋭く光った時、終業の鐘ベルが響き渡った。
その後田中商事はその名前を消すことになるが、どうなったのかは語らずにおく。

「工員」「アキレス」「石鹸」
「はい! 俊くんに質問であります!」
 行楽客でごった返す繁華街の往来で、社長が右手を上げて素っ頓狂な声を
張り上げた。社長の目の前には俊郎がいる。女性同伴である。
俊郎の目元に、かすかに狼狽の色が走った。『会いたくない奴に会っちまった』
とでも言いたげな表情だ。
「俊くんの隣のワンワンは、どこで拾ったワンワンでありますか!」
「いやあの社長、俊くんはやめて下さいってば。ていうかワンワンって何ですか。
どっからどう見ても人間でしょ、この人。僕の彼女ですよ」
「かかかカノジョ!? 質問その2であります! 俊くんは、限りある会社の資源を
一体なんだと思っているんでありますか!」
「いや、会社の資源が有限だろうが無限だろうが、彼女とは全然関係ないと
思うんですけど」
「関係あーる! ワシの社員の彼女は全員ワシの会社のもんだ! 返せこの!」
 俊郎に目潰しの砂を食らわせて、社長が女性を横抱きにして脱兎のごとく
駆け出した。一瞬視界を奪われた俊郎だが、すぐさま回復して社長の後を追った。
「待てコラ! 俺の美喜をどうするつもりだクソジジイ!」
「社長をクソジジイ呼ばわりとはいい度胸だ! 給料も彼女も半分カットだ!」
「彼女を半分カットって何だおい! 全部返せ全部!」
 俊郎との心温まるやり取りに夢中のあまり、社長は赤信号に気づかなかった。
居眠り運転の暴走トラックが、横断歩道の真ん中の社長と美喜目がけて突っ込んだ!
野次馬の悲鳴でようやく気がつくも、時すでに遅し!
「ガッデム!」
 思わずしゃがみ込んだ社長だが、いつまで立っても衝撃は来ない。背後から肩を
叩かれておそるおそる振り返ると、ようやく追いついた俊郎だった。俊郎は呆然と
宙を見上げている。俊郎に促されるように、社長も頭を上げた。その視線の先には…。
 トラックが宙に浮いている。トラックのさらに上に、一人の女性が浮かんでいる。
純白のローブに大きな羽根。穏やかな笑みをたたえたその女性は、美喜だった。
「俊郎さん、社長、びっくりしましたか? 実はわた」
「うっさいボケ! テメーはおとなしくワシにさらわれろ!」
「きゃー!」
「美喜ー! 待ってくれ美喜ー!」
 再び鬼ごっこが始まった。美喜の絶叫の甘美な響きが、街を天使色に染め上げた。
う、1分差。お題はおまかせします。
41うはう ◆8eErA24CiY :04/03/04 02:02
「響き」「無限」「有限」「工員」「アキレス」「石鹸」

 彼女は、製糸工場の貧しい工員だった。一週間前、肺炎でクビになるまでは。
 雪道に倒れこみ、高熱に薄れゆく耳に、ベンツの男の声が響いた。
 「君は誰だ。大丈夫か。とりあえず屋敷に来たまえ」
 
 命を救われた彼女は、屋敷に仕える身となった。
 暖かいベッドと石鹸の匂いがするエプロン。優しい御主人様…自分には夢の様だ。
 「あの方が喜んでくれれば」と、初めて作ったケーキ。小さな体が幸せで一杯だった。

 3年経った。ブランドに身を固め、エステ帰りの彼女は奥座敷に呼び出される。
 屋敷の金をくすねた恩知らずの女に、御主人様の言葉はなぜか優しい。

 「誰でも幸福の持続を追求する。けど、短期間で生活が飛躍的に向上した君が
  その向上速度を持続するには無限の財が必要だ。それが幸福のアキレス腱だ」

 部屋の奥には、巨大でグロテスクなマシンがあった。「記憶消去装置」だ。
 「有限の財のささやかな工夫さ。雪道で出会ってからの、君の記憶を消去するよ。」

 一週間後。雪道で瀕死の彼女の前に、またもやベンツが停まる。
 「君は誰だ」初めて会う事を装ったセリフで、男はドアを開ける。
 ちょっと照れる。けど、5回目ともなるとさすがに…

※無理にお題追加。1/3に削るとさすがに…(^^;
 次のお題は:「銀」「ホタル」「カレー」でお願いしまふ。
 僕は探した。噂を頼りに、探した。
「あのドーナツ森のどこかに、魂の集まる場所がある」――こんな話、馬鹿らしいかもしれない。だけど、だけど――。

 「はあ、はあ、はあ……」
僕は馬鹿だ。「森のどこか」この程度の情報じゃ探しようが無いじゃないか!
いつの間にか、体中から汗が吹き出ていた。長袖を捲り、顔を上げ額を拭う。
そのとき、木々の奥から薄ぼんやりとした銀色の光が見えた。

 そこは、森の中央にぽっかりと空いていた――空から見るとドーナツみたいに見える――原っぱだった。
ホタルの光とそっくりな、しかしそれより一回りも二回りも大きい物体が、幾つも漂っていた。
「お母さん……僕だよ、分かるだろ? いるんだろ、母さん!」
僕は必死に叫んだ。これが魂なのだとしたら、この中にいるはずだ。いるはずなんだ。最近死んだ母さんが……。
「母さん、僕に言ってくれたよね……『どんな時でも傍にいる』って。本当だったんだよね。それは、ホントにホントだったんだよね?
 母さんの編んだセーターが着たい、母さんの作ったあの辛いカレーが食べたい、母さんの肩を揉んであげたい……!
 ねえ、お願い出てきてよ! 母さん!!」

 暗い。目を開いた、明るい。夜は明けていた。周りにもう魂は無い。ただの、原っぱだ。
目尻から下になぞっていくと、かさりとした感覚があった。涙の乾いた痕だ。記憶に無いが、僕は泣いていたのだ。
首には、木の葉で出来たマフラーが捲かれてあった。また、目が潤んできた。

一行オーバー。
「工事」「海」「公用語」
43ddt ◆OK6jfumzas :04/03/04 02:50
「銀」「ホタル」「カレー」

ホタルだ。
宙に舞っている。とても美しい。安直だがそれ以外に言葉が浮かばない。
くるくると弧を描きながら、光は空に吸い込まれていく。
なんだか大事なものが居なくなった気がして、じっと跡を目でなぞる。
ここは何処だろう。思い出せない。思い出さなくてもいい、と誰かが囁く。
頭がゆっくりと痺れてくる。
不意にどこからかカレーの匂いが漂って来た。懐かしい匂いに顔がほころぶ。
私の大好物だ。特に妻が作ったものは絶品だった。
あのスパイスの効いたカレーは、きっとこの冷えた身体に熱を取り戻してくれるだろう。
冷えた?冷えたってなんだ?ここは一体何処だ?私は一体――

気がつけば、あたり一面、銀に満たされた世界だった。何も見えない。聞こえない。
雪に埋もれた身体は、最早揺り動かすことすら出来ない。
ああ、そうか。私は気付いた。
あのホタルは私の魂だったか。
44ddt ◆OK6jfumzas :04/03/04 02:51
かぶってしまった……ごめんなさい。
お題は>>42でお願いします。
45「銀」「ホタル」「カレー」:04/03/04 03:09
「誰がアホやねん!!」
室内に安田の声が響いた。
・・・おまえ以外に誰がおんねん・・。これやからアホは嫌いだ。
うんざりとした僕を尻目に、安田はご自慢の豚っ鼻をならしながらぐだぐだとわめいている。
やれやれ・・・。
「いや、お前やない、安藤やからあいつ金返しよらんのよ」
「ほんとか〜?なら、ええわ、お〜いよしお飯行こうや」
やっぱりアホや。
ごつい体を揺らしながら教室を出て行く、一年のときから代えてないのだろうかズボンがテカテカホタルみたいだ。
ドカッ!!!
ドアで肩うちやがった、ザマアミロ
安田を見送ると、安藤が声をかけてきた。
「ってかさ俺使うなや〜。まあいいや、俺らも飯いこうや」
そうだまだだった。「バカは時間を忘れさせてくれる。う〜ん名言かもしれん」
「なに、いってんねん、はよいこや」
昼飯はカレーだ、うまくもないがここの食堂では一番マシ
「ってかさ、アホすぎるなアイツ」安藤が言う
「ああ、人間やないで」
俺がそういったとたん安藤の動きが止まった。
なんだ・・・??まぁいいや食おう、
溢れ出る涎をおさえながらスプーンを手に取った
銀のスプーンには安田の顔がうつっていた。

「サングラス」「傘」「親指」
4645:04/03/04 03:13
かぶりまくり、ってか初めて書いた
俺のだけ馬鹿みたい
お題は>>42


 大工事だった。汚染された海を浄化して、環境問題と食料問題を
一気に解決してしまおうという計画である。
 地球規模の大事業なので、プラントを設置する作業員の国籍は多
岐に渡る。長期間のあいだ専門用語が飛び交ううちに工事関係者だ
けに通じる公用語のようになっていった。
 工事はなかなか進まない。規模が大きすぎて進捗を把握するだけ
で一苦労なのだ。資材は誤って地球の裏側へ届くわ、新規参入の業
者と言葉がなかなか通じないやら、環境保護事業なのに環境保護団
体のテロ予告があるわで工事はしょっちゅう中断する。

 工事間多し、いや、好事魔多しとはよくいったものである。




次は「さかしま」「フラメンコ」「ほっかむり」でお願いします。
 尖った日の光を遮るためにサングラスをかけるというのは分かる。
 同じ理由で傘を差すのもままあることだ。
 けれども流石にコウモリ傘はないんじゃないかと思う。
「だってコンビニにはビニール傘しか置いていないじゃない」
「それは流石に嘘だろう」「嘘じゃない。なんなら一緒に確認してみてよ」
 僕は響子と一緒に近場のローソンに向かった。
「ほら、やっぱりビニール傘しかない」
 響子は鬼の首を取ったといわんばかりに、店の前の傘立てを指差した。
「あれは商品じゃなくて、客のだろう?」「え? 無料サービスじゃなかったの?」
「そんなわけない。中に入ればまともなのがある。買えよ」
「嫌だ。お金がもったいないもの」
 僕は溜息をついて千円札を響子に手渡した。
「もう面倒だ。これで買ってこいよ」
 たぶん響子のことだから、こうなることは分かっていたのだろう。
 親指をグッと突き立て、店の中に駆け込んでいった。

お題は47の「さかしま」「フラメンコ」「ほっかむり」で。
VSさん出てきてよ!
アンタのせいで、俺のオヤジ蒸発しちゃったよ!
50あぼーん:あぼーん
あぼーん
51あぼーん:あぼーん
あぼーん
>>47
センスなさすぎ
お前の両親が存在するだけで迷惑なのに、交尾してテメーみたいなクズを生んじまうとは・・・
まったく、お前の一族は何考えてんだ!

VSさん、カモン!
VSさん出てきてよ〜
オイラ許せないんだよ
外伝さんと最強への道作者を踏みにじった、ここのクソッタレをよう!
VSいないの? 居留守だろ?
真・うんこ=VSだろ? 分かってんだ!
55あぼーん:あぼーん
あぼーん
56あぼーん:あぼーん
あぼーん
57岸和田:04/03/04 19:24
「さかしま」「フラメンコ」「ほっかむり」
 「あの・・・失礼ですがさかしまさんでいらっしゃいますか?」
僕は振り向いた。そこにはほっかむりをしたスーツ姿の中年男が立っていた。
「いや・・・違いますけど・・」 僕は慎重に言葉を選び、そう言った。
「いや、違いますね。嘘はやめてくださいよ。さかしまさんじゃーないですか。」
男は微笑を顔に浮かべながら言った。間違いない、分かっていますよ、というような口調だった。
「人違いじゃないでしょうか?僕はあなたなんか知りませんし、さかしまなんて名前じゃありません。」
僕はきっぱりと言った。この人はちょっとおかしい。そもそもスーツにほっかむりをしているまともな人間なんかいるものか。
「いやいやいや、ふざけないでくださいよ。さかしまさん。あなた車の免許持ってたでしょう?その名前みたらどうです?」
そう言うと男はにこにこして僕を見た。やれやれ、しょうがない。免許を適当に確認して追い払うか。
僕はあきらめて免許証を取り出すと、さっと目をとおした。
・・・え?
さかしまフラメンコ。 名前のところにはそう記されていた。
写真のところにはひと目見るだけで嫌になるような中年男の写真があった。
毛虫みたいな太い眉毛、厚い唇、飛び出した鼻毛、だらんと垂れた目、ブツブツの肌。
僕はあわてて手鏡を取り出した。そんなはずはない。
しかし鏡にはさっきのあの男が蒼白な顔で映っていた。ふと腹に目をやると、僕の割れた腹筋はどこかへ行っていた。
でっぷりとズボンから肉がはみだしていた。
うわああああああああああああああああああああああ。
58岸和田:04/03/04 20:59
お題忘れてました
「雪」「だるま」「チャット」で。
ねえ、少し話をしていいかい?いや、多分信じないと思うんだけどね。
 僕が、その島に渡ったのは三ヶ月ほども前のことだったと思う。
その「逆島」(さかしま)という島は、数百年も前から存在が認められているが、
誰も辿り付いた者は無く、深い霧の日にだけその姿を水平線に現す謎の島だ。
多くの研究者達が、その島へ渡ろうと苦心したが、誰一人辿り付けはしなかった。
僕がその島に何故辿りつけたかは解らない。ひょっとしたら、朝食に食べたスクランブルエッグのせいかもしれないし、
僕が戻るつもりもないままに、防波堤に停泊されていた誰かのボートに乗ってきたせいかもしれない。
 その島は不思議な島だった。砂浜に打ち上げられた僕が最初に見たのは、巨大な洞窟だった。
僕は、ボートから降りてその洞窟に入り込むと、僕の頭上には、洞窟の天井いっぱいに片足でぶらさがる、
真っ赤な鳥の群れがあった。フラメンコだ。鳥達はその小さな目で僕を一斉に見据えると、
なんだ、つまらない、といった風情でまた洞窟のどこぞへ視線を返した。
僕は、鳥たちを無視して、洞窟の奥へ入り込んだ。すると、奥のほうから灯りが見えた。
小さなテントが、洞窟の中に立てられていた。僕は、テントの前まで歩くと、すいません、と言った。
テントの入り口が開くと、そこから出てきたのはほっかむりをした、身長130センチ程の男だった。
ボロボロの作業着を着て、小さな顔に、立派な髭をたくわえていた。男は一頻り無言で僕を上から下まで眺めると、
「ああ、また入って来たのか。面倒くさいな。とりあえず眠りなさい」
と言った。いや、言ったと思う。僕の次の記憶は、病院の上だった。海面を漂流しているところを、
地元の漁師に助けられたらしい。・・・という話さ。面白いだろう。うん、君の言う通り夢だったと思うよ。
でも、目を覚ました時、僕の服には、一本の赤い羽根がくっついてたんだ。それだけ。
ああ、すいません。お題無いと思って、前のお題で書いてしまいました。
>>58のお題で続けてください。申し訳ありませんでした。
このスレ荒らしてる奴、ガイドライン板のSSスレから来た奴だろ
つーか、VS出せや。
大学受験で3浪して、ずっと引きこもりだったにーちゃんが、最近明るくなった。
ちょっと前に見つけたチャットルームで、見ず知らずのいろんな人に励まされたらしい。
今までろくに会話もしなかったのに、昨日は私にパソコンまで預けてくれた。
「チャット仲間とも約束したんだ。次にくるのは大学生になってからだって。」
少し恥ずかしそうにそういったにーちゃんは、とても誇らしそうだった。
今日はそんなにーちゃんの受験の日だ。
朝からの大雪に、少し慌てながら受験会場に向かうにーちゃんの後姿を見て、
今日この日のことを、お礼も込めてにーちゃんのチャット仲間に報告しようと思った。

『そーいえばさー、あの3浪どうなっただろうね』
『今日辺りじゃなかったっけ、最終受験日。・・・東京大雪だしなぁ・・・スベルんじゃないか(w』
『ひどいこというなぁ(笑。俺、目入れる用に達磨まで用意してやったんだが。』
『達磨だけに、手も足も出ない。なんてなー(核爆ww』

チャットルームに繋いだとたん、目に入った会話に、私はそっと退出してログを抹消した。
その前に言いたいこともあったけど、きっとにーちゃんの第一声が、こいつらにとって一番のダメージになるだろうさ。

次は「雛人形」「花」「吹雪」でお願いします。
64あぼーん:あぼーん
あぼーん
65あぼーん:あぼーん
あぼーん
VSさん、出てきてよ!
VSさん、居留守は止めてよ!
分かってんだから
68あぼーん:あぼーん
あぼーん
69あぼーん:あぼーん
あぼーん
VSさん、こんな僻地に逃げてないで、出てきて下さいよ。
ここならばVSさんがナンバー1になれるから、居座る気持ちも分かりますけどね…。
麻雀の続きが読みたいんですよ。

↓復活されるならば、とりあえずここに一報下さい。
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1078380592/l50
あと、ここの姉妹スレで陰口を叩いてる方々。
貴方達にも責任はあるんですよ?

創作活動に励むのも大いに結構ですが、時には他の人間の事情も察してください。

どうも失礼しました…。
 北陸にあるこの地方は春というにはまだ寒く、昨日は軽く吹雪いてもいた。
 その為に私は風邪を引いたが、旦那の看病もせず三歳にもならぬ娘の為に豪華な
八段棚を飾っている妻の様子は、咳よりもため息を目立たせた。
「なぁ、氷換えてくれないか」
「ちょっと待ってー、まだ桃の花を飾ってるところなの」
 同じ台詞は五分前にも聞いた。私の伴侶は何を決めるにも優柔不断で、何をするにも
牛歩の歩みというのんびりした性格をしている。
「なぁ、氷……」
「今お内裏様ぁー。これが終わったら換えるからー」
 先の花から考えると、どうも並べる順番はバラバラのようだ。妻は要領も悪い。氷を
換えるにも、一回にたっぷり三十分は掛ける。その間に砕かれた氷が半分溶ける。
「なぁ、まだかー」
「今甘酒の用意してるのー」
 どうやら台所に寄って思い出したらしい……。私はもうしばらくこの生ぬるい水の
感触を味わっていなければならないのかと、今日何度目かのため息をついた。

次「ホット」「項」「リード」
7372:04/03/06 04:34
うわ、推敲してる内に「雛人形」が消えた……。
も、申し訳ない。飛ばしてください……。


 俺はギョっとした。犬と散歩中に斎木さん夫婦と出くわしたので
ある。
 三十路の、女盛りの美人の奥さんが全裸で、色っぽい項《うなじ》
に首輪をかけて四つんばいの格好である。旦那さんがリードを引い
ていた。
 回れ右しようとしてゴミ箱にぶつかって、斎木さんの旦那さんに
見つかってしまった。こうなると挨拶せねばならなくなる。
「こんにちは」
「どうも、こ、こんにちは」
 斎木さんは真っ直ぐ俺の目を見て、爽やかに挨拶した。俺は背の
高い斎木さんをぐぐっと見上げて、なんとか挨拶を返した。俺はき
まりが悪くて、頭《こうべ》をたれた。奥さんと目があった。俺は
目を逸らした。挙動不審なのが自分でもわかった。
「愛のかたちは、様々ですね」
「え、ええ、そうですね。ほんとに……」
 斎木さんはにこにこと笑いながら言った。俺は相槌をうつのが精
一杯だった。
「では、これで」
「あ、は、はい。どうも」
 斎木さん夫婦は同時に礼儀正しくぺこりと会釈すると、行ってし
まった。俺は大きく息を吐いた。気が小さい自分が恥ずかしかった。
 俺は立ち上がって、自販機でホットコーヒーを買って一息ついた。
それからまた四つんばいになって、犬にリードを引かれて家へ帰っ
た。


次は「痩せっぽち」「回転運動」「バーベキュー」でお願いします。
75名無し物書き@推敲中?:04/03/06 14:26
地球から火星までは、あっという間だった。
僅か2時間の短い旅。
その間は、シェーカー提督の「第三次マゼラン大戦回顧録」を読んで過ごした。
やがて私を乗せた普通銀河列車チハ13系は、回転運動をしながら
火星上空に浮かぶコロニー群の間をすり抜け、火星の大気圏を突き抜け、
夜空を滑るようにして、巨大なマリネリス峡谷を丸々埋め尽くすように
造られた「マーズステーション」に停車した。
ホームに降り立ち、ちらと左腕に目をやる。時刻はちょうど午前0時を指していた。
一息つこうと煙草を咥えた時、ふと気づくと私の横に鉛筆みたいに痩せっぽちの
老人が立っていた。老人は私を見あげ、唐突に、
「あんた、これから暇はあるかな」と好々爺な口調で訊ねてきた。
列車から降りたばかりの人間をいきなり捉まえて「あんたこれから暇か」
も何もない。しかし、この老人を邪険に扱うのも悪い気がする。
「じいさん、僕はこれから友人達と待ち合わせてオリンポス山国立公園で
バーベキューをするところなんです。悪いけど暇じゃないんだ」
言ったあとで、今のは我ながら下手な嘘だな、と少し後悔した。
私の後悔を見透かしたように老人の目が光った。
7675:04/03/06 14:29
すいません、お題書き忘れました。
次は「カード」「仏像」「六本木ヒルズ」でお願いします。

痩せっぽちのピッピがバーベキューをしようとうるさいんだ。
僕はそんなお金なんてないと断ったんだけれど、
次の朝からピッピが枕元でラジオ体操を始めたものだから叶わない。
屈伸や上半身の回転運動ならまだしも、
跳躍をされると床がズシズシと響いて寝ていられたものじゃない。
「どうしてこんなことをするんだよ?」僕がたまらず抗議をすると、
ピッピはしごくまっとうな顔で答えた。
「朝の運動はラジオ体操。夜の運動はセックス。これって常識じゃん?」
常識とまではいかずとも、ある意味当たっているから反論できない。
まったく、同棲というものはこうも女性から恥じらいなるものを奪ってしまうものなのだろうか。
7877:04/03/06 14:47
被ってしまいました。申し訳ない。
お題は76の「カード」「仏像」「六本木ヒルズ」で。
俺はまるで鉄人28号を操るように、巨大な仏像を操り、東京を蹂躙していた。
霞ヶ関を壊滅させ、臨海副都心を踏み壊し、六本木ヒルズを完全粉砕。
会社の同僚だった奴らが戦車や戦闘機で応戦してきたが、俺の敵じゃない。
薄汚れた金色の腕で、みんな打ち落としてやった。いい気味だぜ。
仏像の足元で、別れた女が命請いをしていたが、完全無視。ミンチにしてやった。
何が愛してる。殺さないで、だ。今さらしらじらしいんだよ。
ラーメン屋消費者金融公園カード会社ホテルキャバクラデパート区役所ヤクザの事務所etcetc!!
俺の関わった人間や建物を、俺はみんなぶっ潰した。
荒野と化した東京で、一人佇んで大笑いしていると、


目が覚めた。


ほっとする、けれど、どこかうしろめたい感じのする、実家の部屋の布団の中で
俺は、東京で体験した辛い出来事の数々を思い出し
泣いた。


次のお題は
「来訪」「冒険」「鉄球」で
80岸和田:04/03/06 19:06
「来訪」「冒険」「鉄球」
 僕がこの迷路に入って何日になるのだろう。全くわからない。迷路というものは時間の感覚をも狂わせるのだ。
そもそも僕がこの迷路を見つけたのは、ただの偶然だった。登山をしていたら、道に迷い、さまよい歩いていると(そんなことをするべきではなかったのだ)
立て札とこの迷路の入り口を見つけたのだ。立て札にはこう記されていた。
「来訪者に告げる、この迷路はいつ何時であろうと自由に入って構わない。 冒険の迷路」
と記されていた。僕は迷わずに入った(これもまた大きな失敗であった)。ここを抜ければどこかにつながっていると思ったからだ。
僕はいちおう壁に手をついて移動することにした。こうすれば、大抵の迷路は出口にたどり着けるー。そう思って。
・・・甘かった。迷路はあまりに広大だった。壁は厚く、そして堅かった。高さは軽く7メートルはあった。
そして、僕の予想ははずれたようだった。常に壁に手をついていても、出口にたどりつくことの出来ない迷路というものがあるのだ。
 そして何日か経ち、僕はまだ歩きつづけている。壁はいつまでも変わることなく、そこにあった。
くらくらした。がくり、と膝を折り、座り込んだ。もう嫌だ。僕は地面に体を投げ出した。
・・・何か轟音がしたような気がした。鉄球を都心に落せば、こんな音がするのだろうか。
僕は体を起こし、辺りを見た。目を疑った。出口がすぐそこにあったのだ。
僕は立ち上がり、出口へ走っていった。ああ、これで家にーーー・・・
 足を止めた。そこにはなにもない真っ白な世界があった。僕は辺りを見回した。
あたり一面、真っ白な空間が広がっていた。迷路もなぜかなくなっていた。それは完全な無の世界だった。

 「ギター・ケース」「改造銃」「ダーツ」
 
81 「ギター・ケース」「改造銃」「ダーツ」:04/03/06 21:28
「あなたさっき路上弾きのギターケースに10円投げましたよね? 次にあそこに
 金入れた人をこのゲームに招待しようって、僕が勝手に決めたんです」
理不尽なゲームに招待され憤慨し、詰問したらこんな返事が返ってきた。今右手に
ハンドガンを持った少年に先刻「おいしい話があるんだけど」と言われノコノコ付いてった
のがまずかった。寂れたバーに招じ入れられダーツをするように脅迫される。
逆らえば躊躇うことなく発砲すると、仰々しく言われ仕方なしに。ルールは簡単だとさっき説明された。
的に矢がさされば俺の勝ち。景品は俺の命。
はずしてしまえば少年の勝ち。俺は撃ち殺される。
俺は右耳の横に矢を構えた格好で、硬直していた。少年は自分のハンドガンを眺めて
悦に入ってる。
「はやくなげてくださいよ。それじゃ僕の自慢の改造銃が使えないじゃないですか」
生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされている俺を嘲弄してきやがった。畜生・・・・・・。
とのみち投げないことには始まらない。的との距離は5メートル程ある。俺は矢を的に目掛け
て手放した。次の瞬間、俺が手放したのは矢だけじゃなかったことを床に転がる矢が語っていた。
「はずしちゃったね〜。残念賞の鉛球をあげるよ」

次のお題は
「腕時計」「モップ」「合コン」
でお願いします。 
 東京駅のトイレで、液体につけられた左腕が見つかった。
用具入れの中、モップの柄にビニール袋でつつまれ縛られていたのを掃除婦が見つけた。
その腕は俺の友人のものだ。細い腕に大きなカルティエの時計をはめていたのが印象的だった。
「その時計、パシャ?」
 彼女は満面の笑みで、そう、と言って腕をつきだした。誕生日に両親にねだって
買ってもらったと言った。
 話し下手で、酒の飲めない俺にとって、合コンはあまり楽しいものではなかった。
それでも佐藤に熱心に誘われて参加した。俺は時計店でバイトをしていたので、
自然に話かけることができた。彼女とは恋人と言うほどでなかったが、それでも、
一緒に映画を観たり、食事をする女友達だった。俺は彼女の誕生日に思い切って指輪を
プレゼントした。彼女の好きなカルティエのオープンハートだ。
 トイレで見つかった左腕の薬指には、俺のプレゼントした指輪がはめてあった。
やがて指紋が照合され、彼女、中村由紀子のものであることが警察によって確認された。
 俺はこれから会う男と犯人を追いつめることになる。西新宿のタバコ屋の男だ。
新宿最大のギャング、フレアーズのリーダーだった男で、彼女の兄だ。


次のお題は
「マウス」「ネイティブアメリカン」「砂鉄」
でお願いします。
VSさん、出てきてよ!
84あぼーん:あぼーん
あぼーん
VSさんがいないバキスレなんて・・・耐えられないよ!
86あぼーん:あぼーん
あぼーん
87あぼーん:あぼーん
あぼーん
88あぼーん:あぼーん
あぼーん
89あぼーん:あぼーん
あぼーん
ゼロから物を作り出す事の出来ないヘタレの巣窟だな、ここは。
 交番の前に人だかりができている。俊郎はタクシーを止めようと上げかけた
腕を下ろし、交番前の野次馬群に加わった。
 一人の警官が必死に群集を追い払っている。警官の足元には黒いギター・ケースが
落ちていた。
 中に爆弾が詰まっているとか改造銃にでもなってるとか、俊郎の妄想をよそに
警官がケースを交番の中へと蹴り飛ばした。あの扱いからして、どうやらごく普通の
ギター・ケースのようだ。
 警官も交番の中へ入り、ドアを閉めた。野次馬が三々五々と散っていき、俊郎一人が
残った。溢れる好奇心を抑えることができず、おそるおそる交番の扉をノックした。
ガチャリとロックの外れる音がして、先ほどの警官が顔をのぞかせた。
「なんじゃい!」
「いやあの、さっきのギター・ケースなんですけど、一体あれは…」
「貴様かー!」
 警官の表情がみるみる凶相へと変わり、腰のホルスターに手が伸びた!俊郎に
突きつけられた右手には、しかし拳銃ではなくダーツが握られていた。
 とっさに身構えた俊郎だが、一介のサラリーマンが護身用の武器など持っている
筈もない。今さら弁解など聞いてくれそうもないし、何とか言い逃れるしかないと
俊郎は話をでっちあげることにした。
「そ、そうじゃなくて、そのギター・ケースの中にもしかしたらウチの社長が
閉じ込められてるかもしれないな、なーんて…」
「貴様、こいつの部下かー!」
警官が掃除用のモップでケースを力一杯小突いた拍子に、ケースのロックが壊れて
蓋が開いた。中には本当に社長が蹲っていた。後生大事に拳銃を抱えている。
「このクソジジイ、本官の道案内が気に食わないとかほざきおって、本官の拳銃を
奪ってギター・ケースに篭城しやがった!逮捕だ逮捕!部下の貴様も同罪だ!」
「だって俊くん、この警官ひどいんだよ!俊くんと一緒に行くはずだった合コンの
場所が分からないと言ったら、ワシも連れてって警棒でグリグリさせろって…」
「そ、そんなことは言っておらん!貴様のような奴はこうだ!たー!」
「猪口才な!こちとら社長で便所のモップさばきはお手のもんじゃ!あちょー!」
 俊郎は腕時計に目をやった。そろそろ合コン開始の時間だ。ダーツとモップでバトルを
開始した二人のバカは放っといて、俊郎はさっさと会場へ向かった。バイバーイ。
>>91
前半15行で前々回の3題、後半16行で前回の3題。こういう形なら
30行オーバーでも許されますかね?とにかく行数制限いっぱいに書かないと
気がすまない性分なんであります。ゴメンナサイ。

次は「ダンプカー」「オアシス」「チンパンジー」で。
申し訳ない、一つ気づいたこと。
ギター・ケースのロック、外部から開けるもんですよね。警官は
どうして普通にロックを外さなかったんでしょう。社長が内側から
一生懸命蓋を押さえていた、ということにして下さい。

それでは、失礼いたしました。
94岸和田:04/03/07 17:22
「ダンプカー」「オアシス」「チンパンジー」
 広大な砂漠を、一台のダンプカーが走っていた。オアシスを求めて。
「ちっ、なんも見えやしねえ、冷たい水とヤシの実でもないもんかね。ん・・うおっ・・あ?あれ?」
大きくブルンとダンプカーが揺れると、ぷすん、ぷすん、と妙な音がしてダンプカーは動かなくなった。
「ちいいっ!何で止まりやがるんだ、チクショー!」 
仕方なくダンプカーを降り、ダンプカーの後ろに回ってみた。しかし次の瞬間、彼の意識はなくなっていた。
後ろから2人の男が走ってきた。男はため息をついて言った。
「くうっ、このクソチンパンジーめ、世話かけやがる。めちゃめちゃ賢いっつうのはホントだな。しゃベリやがるしな。それどころかクルマ運転して研究所から逃げやがった!おい、麻酔が切れるまえにロープで縛っとけよ・・・」
95岸和田:04/03/07 17:25
すいません、またお題忘れてました・・
「雨」「ベンチ」「ロケット・ランチャー」でお願いします
96ddt ◆OK6jfumzas :04/03/07 22:14
「雨」「ベンチ」「ロケット・ランチャー」

雨が、やまない。
馬鹿みたいに降って、表に出したままのベンチも、急ごしらえの砂レンガの家も皆泣いていた。
背後では女子供たちが寄り合って、必死に空を眺めている。
それでも雨はやまなかった。

三日前、偶然にとんでもないカードを引き入れた。襲撃した敵の輸送部隊が偶然運んでいた自走ミサイル。
馬鹿みたいな火力を持ったそれは、まさにそのまま一発逆転の切り札だった。
少なくとも、首都を前にして膨れ上がった敵部隊を、強烈に足止めする位には役立つ。
唯一、GPSがオンボロくて、天候によっては使い物にならない点を除いては。
だから昨日整備し終えたときには、これで少なくとも体勢の建て直しが出来ると喜んだ。
天気だって確認した。虫も殺さなかったし、神への祈りだって欠かさなかった、それなのに――

無線係が建物から飛び出してきて耳元で囁いた。総司令部が落ちたらしい。
俺は何も言わず空と、その上に居座る何かを睨みつける。
同時に、手にしていたロケット・ランチャーを肩に構えた。トリガーを引く。
弾は赤い火線を引いて、天に渦巻く濁流に呑み込まれていった。
雨雲は少しも晴れなかった。



次は「模型」「春」「自動販売機」でお願いします。
四つ足模型で光線を放ち、時として繊維組織を着火させ、
深刻な火災をしばしば発生させていると報告されている。
その危険性が熟知されているにもかかわらず
安らぎを得たいが為だけに金に物を言わせて
自らの物とし、利用しようとする者が後を絶たない。

その進化の歴史をひもといてみると
春においては地球環境に影響を与える存在であったのである。
人間の酸素摂取を妨げる物質を発生させ
死に至らせるという能力を持った種が大多数であったという。
過去に存在したこのタイプがいまや絶滅寸前なのは
絶えまざる研究のたまものである。

そんな危険性を持っているにもかかわらず
業者から金に物を言わせて入手した挙げ句
あまつさえ一緒に睡眠をとって安らぎを
感じてしまった私も人のことは言えない…
これが自動販売機の恐ろしさなのか…


「実験」「麻雀」「抄」
自殺するための睡眠薬を買いにいくため、近所の通りを歩いていると、
20メートルくらい先、模型屋の横に見慣れない自動販売機を見つけた。
まっピンクのボディに白抜きで大きく「春をあなたに」と書いてある。

ほほぉ、万年冬の人生を送り、ミスター永久凍土と呼ばれたこの俺に
「春をあなたに」とは、面白い。
その挑戦受けてたとうじゃないか。ま、俺の氷を溶かすなんて無理だろうけどね。

なぁんてことを思いながら、俺は足早に自動販売機に近づき、千円札を投入、
すかさずボタンを押した。すると、3秒もたたないうちにドスンとモノが落ちてくる。
かがみこんで手にとってみると……


「生撮り!おうちで絶叫オナニー」


……あぁ、なるほど。「春」を「売って」るンですかそうですか。

はじめっから期待はしてなかったはずなのに、俺はなんだかひどく落胆した。

その夜、俺は買ってきた睡眠薬をオレンジジュースで割って、一箱全部飲み干した。
そのとき、「あの自動販売機が本当に春を売ってくれていたら俺は死なずに済んだのかな?」
と自問自答したが、答えが出る前に、俺の意識は遠ざかっていき、二度と帰ってこなかった。


次のお題は
「リング」「らせん」「ループ」
荒らしている方へ

何を勘違いされているか分かりませんが、
ここは見て分かるように「特定の人が文章を書いている」のではなく、
「不特定多数の人が文章を書き落としていく」スレです。
厳密には「住人」と呼べるほどの馴れ合いもありませんし、
VSなる人物も「たまたまこのスレを利用したひとり」でしかありません。

貴方がしていることは、コンビニに行って個人の自宅の場所を聞いているのにも等しい行為です。
店員が客の住所氏名・電話番号を知っているわけはなく、完全にお門違いなわけです。

尚、これ以上スレッドの進行を妨害する場合は削除・規制依頼等をさせて頂きます。
ギャワー、被った。
お題は>>97
>>99
例えが酷すぎる
コンビニってw

ここにいるのは確かなんだよ
そろそろ本人が登場するらしいから、俺のお払い箱だがな
VSさんが降臨したら、粗相のないようにしろよ
あと聞きますが、迷子のアナウンスは荒らしですか?
あれがないと困る人、たっくさんいると思うんですがねぇ
自分に有利な例えで人を論破しようとしてもムダだっつのw
104あぼーん:あぼーん
あぼーん
105名無し物書き@推敲中?:04/03/08 03:17
高田延彦はリングに咲いたまばゆい華であった。彼だけが、他のプロレスラーと違っていた。

忘れもしない、高田対北尾光司戦である。
そのころ私はまだ成人しておらず、テレビの中のプロレスだけが私のプロレスであった。
北尾は元横綱という抜群の知名度もあって、メジャー団体、
新日本プロレスに何度か参戦し、並み居るレスラーを得意の
裏投げで豪快に投げ飛ばし、勝敗はともかく、そのインパクトは凄まじかった。
北尾最強。観戦歴の浅い私はそう思った。
その北尾が敗れたことを知ったのは専門誌でだった。
しかもKOによる完敗。対戦相手は……高田延彦。
信じられなかった。私にとって高田はテレビに映らない、マイナーな団体の
トップレスラーという認識でしかなかったのだ。
しかし、成人して、自分の趣味に使えるお金を稼げるように
なってから購入した一本のビデオは、私を納得させるに十分の説得力を持っていた。
高田のパワーをらせんのように収斂したハイキックが側頭部に命中し、
崩れ落ちていく北尾。彼の裏投げの、何倍ものインパクト。
勝利に熱狂する高田、そして場内。私は遅く生まれてきたこと、
田舎に生まれたことを恨めしく思った。なぜこの場に居合わすことができなかったのか。

時代はループする。今、格闘技界、プロレス界で最も人気のある選手は、
桜庭和志、高山善廣の両名であろう。二人とも高田の弟子筋である。
本人が引退してなお、高田延彦という華が落としていった種に、リング上は支配されているのである。

次は「超」「っていうか」「百人一首」の三語で。
「人が忙しいの分かってるのに麻雀に誘うなっ!」コータは携帯電話にそう言葉を叩きつけると、
有無を言わさず通話を終了させた。彼は焦っていた。月曜日までに提出しなければならない
大切なレポートが完成していないのだ。もう二日間、ほとんど睡眠もとらずに必死にレポートを
作成している。携帯の電源を落とし、彼は再びパソコンと向かい合う。そして、もう少しで完成という
時に、問題が発生した。大事な実験結果のデータを書きとめておいた紙がどこを探しても見つからない
のである。コータが困り果てていると「困ってるようだな」と、突然、背後から声がした。彼が驚いて
振りかえって見ると、そこには白ずくめの男が堂々と立っていた。コータが何も言えないのを見た男は、
顔に優しい笑みを浮かべ「俺は怪しい奴ではない。お前を助けてやろう」と言った。普段ならば間違いなく
警戒するはずだが、限界に近いコータにはその怪しい男の言葉が天使の囁きに聞こえた。
早速、コータは男に簡単に事情を話した。すると、男は部屋の隅に山積みなっていた本の中から
迷うことなく一冊選んだ。「その化学抄報の中だ」コータがすばやく確認すると、探していた紙があった。
一瞬、驚いたコータだが時間もないのですぐさまデータの確認に入る。そんな時、男が言った。
「報酬に、お前が今一番大切なものをいただくが?」その男の問いに作業に集中していたコータは、ただ短く「あぁ」と答える。
男はニヤリと笑うと徐々に空気に溶けていったが、完成間近のレポートを必死に仕上げるコータは気づかなかった。
数十分後、レポートを完成させたコータが携帯の電源を入れると日付は何故か火曜日になっていた。

次は「恐竜」「遺伝子」「シルクハット」でお願いします。
深夜だからとおもってリロードしなかったら(つД`)
次のお題は105氏のものってことで。
108105:04/03/08 06:56
いや、俺が悪いよ。98氏がカブってるからお題継続って
言ってるのに俺が見てなかったのが悪い。
106氏のお題で。

いや、次書く人が書きやすい方でええのんと違うかなあ?
俺は、気づけば不利な状況だった。っていうか、絶体絶命ってやつだ。
目の前にいるのは我らが宿敵、轟剛(トドロキ・ゴウ)。
こいつのおかげで世界征服という野望は困難を極めている。
何しろ、こいつの能力は超反則的だ。
古代の恐竜の遺伝子から発見された不思議な力によって
常人の100倍のパワーの超人に変身するとか、ピンチに
なったらシルクハット被ったへんなおっさんを召喚するとか……。
まじめに戦ってる自分が馬鹿らしくなってくるね。
せっかく、正々堂々対決してるのにさ。百人一首で。

お題は「夢」「小人」「大人」で。
110「夢」「小人」「大人」:04/03/08 22:08
「子供みたいな人だ」と、よく言われる。
自分でもそう思う。喜怒哀楽が顕著だったり、40歳なのに一人称が「僕」だったり
道端に転がる石ころを家に持ち帰ったり、などなど、思い当たる節は多々ある。まるで
子供の心を持ったまま大人になってしまったみたいだ。
ただ、僕は分別や良識をちゃんと持っているので「よくできた子供」だと自己分析している。
身長が低い所為もあって、職場の同僚からよく「小人部長」と揶揄される。
「大人になっても虹を見ているのね」
一度、妻が微笑みかけながら言った。いつまでたっても夢を追いかけるあなたは素敵よと、その
あと付け加えられた。
僕は小説家になりたいのだ。なれないかもしれないけどなってみせるんだ。
妻の応援をもらって、今夜も執筆に励んでいる。

次のお題は
「共鳴」「流れ星」「嘘」
でお願いします。
 私は居間に集まって故人を偲ぶ親戚たちに遠慮して、縁側に出て煙草を吹かしていた。ぼそぼそと話す声が障子を通して聞こえてくるが、それより悲しみに共鳴したような、竹薮が揺れる音の方がずっと大きい。静かな夜だ。
 見上げれば、墨を流したような空を横切るように、奔流のような星が瞬く。五年ぶりに、お袋の田舎にやってきたのが祖父の通夜だからって、星の輝きには関係ないらしい。
 小学校低学年の頃だったろうか。祖父は達筆で、私は学校の先生の誰もが指摘せずにはいられないほど字が下手だった。そこでお袋は、「おじいちゃんに習ったら」と、祖父に電話してくれた。少しして、私は電話口に出た。
「広くん、ちゃんと続けるかい?」
 私はうん、と言った。その三日後、黒々として丁寧なひらがなが並んだ和紙が届いた。そこから覚えがない。一度もそれを書いて祖父に提出しなかったことだけは確かだ。私は祖父に嘘をついた。
 祖父は優しい人だった。これも餓鬼の時分、クワガタを採るのを楽しみに、家族に連れられてここにやってきた私は、翌朝どしゃ降りの雨に見舞われて断念せざるを得なくなった。憮然と雨で煙る竹林を眺めていた私をよそに、祖父はふらりと傘を差し、何も言わずに出ていった。
 一時間ほどして戻ってきた祖父の手には、瓶がひとつあった。中には一匹のミヤマクワガタがいた。私は驚喜したものだった。親父が祖父に、何度も礼を言ってたのを思い出す。
 思春期を迎えてからは、祖父の実家には行かなくなった。人がいずれ死ぬものだと知っていれば、行っただろう。
 流れ星がひとつ、頬を伝った。


「くるぶし」「愛」「ムービースター」
112111:04/03/09 00:16
しもうた。

×祖父の実家には行かなくなった。
○祖父の家には行かなくなった。
今日からは下手に出ましょう
ワタシはこのスレ内では初心者ですからね

VSさん、いませんか?
114名無し物書き@推敲中?:04/03/09 01:19
隣の家に住んでいたユキちゃんという女の子が、映画に主演することになった。
先日、どこだかの大きなプロダクション主催のオーディションに合格したらしい。
身近なムービースターの誕生に、ご近所一体は沸いていた。
皆ミーハー心からだけでなく彼女への愛によって、ユキちゃんのことを応援していた。

彼女は取り立てて顔が可愛いかったり、スタイルがよかったりするわけではなかったけれど
なぜか人の注意をひきつける存在であった。
彼女とかかわった人は皆、喋り方や笑い方からくるぶしや爪の先まで
彼女の全てをもうどうにもこうにも可愛らしく感じる。
まるで義務であるかのように、皆だ。

この感情は何なのだろう、と考えてみる。
恋。
それが一番近いのではないだろうか。
彼女にかかわった人々は全て、彼女に恋をしていたのかもしれなかった。


次は「雪」「うろ覚え」「時計」でお願いします。
「雪」「うろ覚え」「時計」


「嘘つきやがって、こんちくしょう」
 松岡はダークスーツの袖をめくり、それから短くなった咥え煙草が猛烈に眼に染みたらしく、それをつまんで新雪に叩きつけた。
「何が午前中一杯は晴れ、だ。税金泥棒どもが」
 彼はしんしんと降る雪を親のかたきとばかりに睨みつけ、腕時計を手袋で覆うと、急き立てるようにワゴンに乗ったまま出ようとしない部下たちを引きずり出した。
「おら、お前ら! 俺たちはまんまと気象庁の税金泥棒どもに騙された訳だが、と同時に、俺達も税金泥棒になっちまう危機に晒されたって訳だ。いいか、昼までに二時間ある。それまでに凶器を探し出すんだ!」
 ぞろぞろと出てきた捜査員たちはそれぞれ鬼上司の前という制約の中で目一杯の悪態をつき、それから高架橋の下へと続く階段を下った。一人が脚を滑らせ、隣の捜査員に持たれかかったのを見て、松岡の苛立ちはますます強くなった。雪は待ってはくれないからだ。
「松岡警部、捜査本部から無線です」
 松岡は振り向き、運転手から無線をひったくって口元へ寄せ、耳の遠い老人を相手にしているかのように声を張り上げた。
「いったい高崎のゲロはどこまで本気なんですかね、警視? 信濃川のどこかに捨てた、後は忘れただって、そんな供述は捜査の霍乱に決まってます、見え透いているでしょう?」
「まあまあ、松岡君。落ち着き給え」無線の返事は、まるで他人事のようだった。
「ついでに一つ言わせてもらいますよ」松岡の憤りは止まらない。彼はひとつ深呼吸すると、溜めこんだ息を一気に吐き出した。「凶器は『鮭のあら塩』、新巻でなくて粗塩? なんすかそれ。検死担当者に変わってもらえますかね?」
「その必要はない。うろ覚えだな君も」予告なしに無線は怒号に変わった。「凶器は『シャープ製のラジオ』だよ!」


「たくあん」「潅木」「セリ市」
 山道の真ん中に、潅木が一本生えていた。丈は大人の肩くらい。色は枯れ色、葉花は皆無。
細い幹から、か細い枝が、寒々しくも広がっている。
 さて、花も葉もないその潅木だが、実のようなものが成っていた。
色は黄土でしわくちゃで、形は蛇の尾っぽのよう。丈は潅木の半分以上。
言ってしまえばたくあんだ。実にみょうちくりんな実であった。
 潅木の目の前には看板が立っており、「死ぬ故、この実、食わすべからず」と書いてある。

 ある日、男が一人潅木の前を通りかかった。男はその木に目を留め足を止め、そこにある
看板とたくあんみたいな実をしげしげ眺めると、その実をぶちっともいで帰途についた。
 男は自分の知り合いに、旅の土産のたくあんだと、包みを一つ手渡した。
遠くの町のセリ市で、声を張り上げ買ってきたのだと恩着せがましく付け足した。
 さて翌朝、その知り合い宅に医者と警察が詰め掛けた。彼は朝食に例の実を食ったらしい。
 すぐに男の家へ警察がやってきた。神妙な顔つきで対応する男に、警察は事態を説明した。
「最近ここらでは毒殺が多いのだ。だが毒殺は複雑で犯人がわからんのだ。そこで、
 山道の真ん中に警察へ通報するようメッセージを埋め込んだたくあん一本、毒と偽る
 看板つきで仕掛けておいた。食った奴は無事だがお前は死刑だ。毒殺抑止の一環なのだ」


次は「大好き」「純粋」「胸が」でお願いします。
 部屋にタバコの煙が詰まっていた。窓は閉めたまま。コタツに足だけ突っ込んで、
タバコを吸う以外、動く素振りもない。灰皿に吸殻の山。動かす手さえ、眠そうに、眠そうに。
 なんだ、来たの? も、コンニチハもない。「1日中そうしてるのか?」
 まあね、という風にタバコを持った手をわずかばかり挙げる。失恋3日目から、5日ほど放っておいた。
手に負えませんよ、と。最初の2日間もだいたいこんな感じだったから、少なくとも5日間のうちには、
まともなことはなにもなかったということだろうと思う。
 タバコ、どうしてるの? と訊いてみた。まあ、タバコを買いに出ているのなら、ちょっとくらい救いがある。
なんにもしゃべらず、タバコのことを思うと、胸が苦しくて、苦しくて、と言わんばかりに、首を傾げて、
また新たな1本。
 純粋だねえ、と馬鹿にしたような声。思ったより、自分の声がこいつのことを馬鹿にしている。
こいつは、好き好き、とか、大好き、とか、超愛してる、とかひょっとして、言ったりしたんだろうか? 
ちょっと、笑える。笑えるけど、さすがに訊けない。
 叫んでみれば、とか言ってみた。とりあえず、なんにも応えない。間が持たないので、もう1回、
ホントに純粋だねえ、と継ぎ足して言ってみた。ひとりになりたいとも言わない。
なんか言おうとして、やめて、とりあえず窓を開けた。


「星」「尾っぽ」「沈黙」
 私たちが道を歩いておりますと、向こうからどんがらちんちんと騒々しい音が始まりま
した。
 何事かと驚いたのでしょう。私の手に包まれた小さな握りこぶしにぎゅっと力が込めら
れるのを感じました。ゆっくりとした人の流れに沿って近づいているのですが、やはり賑
やかな太鼓の音にひきつけられるのでしょうか。早くその正体を確かめたいと、私の手を
振り切ってでも駆け出しそうな勢いです。
 離してはなるまいと引き寄せるのですが、振り返って見上げてくる小さな瞳は、私を責
めるでもなく、ただ純粋な好奇心に駆られてきらきらと輝いています。
 いよいよその音の正体にまで到着しました。艶やかな色の着物におしろい塗りの顔、結
い上げた髪で平太鼓を叩く娘さん。唐傘のついた木枠に収まったいくつもの太鼓を叩いて
おちゃらけるちょんまげ姿のお侍さん。あっちでちんちん、こっちでどんがらと囃してい
ます。
 隣のおちびさんは異装の集団をすっかり気に入ってしまったようで、足元を見ると調子
を合わせているではありませんか。ああ、私の幼き頃も同じように胸が躍る心地であった
なぁ、などと感慨深くなります。
 帰り道、先程の囃子を真似てちんちんがらがらと歌っている孫がおかしくて「そんなに
ちんどんやさんが気に入ったのかい」と尋ねてみました。すると孫は誇ったような顔で
「うん、大好き。おっきくなったらちんどんやさんになる」と答えるのです。

私が小さかった頃も、祖父に連れられて見にいった帰りに同じ事を言ったなぁと長く伸び
た私たちの影に思った一日でありました。


時間かかりすぎな罠。
119名無し物書き@推敲中?:04/03/09 18:26
【バキ】漫画SSスレへいらっしゃいpart12【スレ】
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1075538328/l50

VSさんの故郷です。よかったら皆さんもこのスレでSS書いてみませんか?
120名無し物書き@推敲中?:04/03/09 19:23
星がひとつ流れた。一筋の残光が目に残った。
夜空は沈黙している。足下で待ちくたびれた犬が吠えた。わん。
尾っぽを振って散歩の続きをせがんでいるのだろう。
飼い主であるぼくに潤んだ目をきらきらとさせる。ぼくは犬の脇腹を
つま先で蹴り上げた。犬は弧を描いて3メートル向こうへ飛んでいき、
すぐに体制を立て直そうとするが肋骨が折れたのかなかなか立ち上がることができない。
ぼくは腰に挟んでおいたグロック17を緩慢と抜き、その銃口を犬に向けた。
「ミスター、リハビリがんば!」と叫び、人差し指を2回しぼった。
ずきゅーんずきゅーん。きゃいん。

「臀部」「ビートルズ」「ドデカホン」
121名無し物書き@推敲中?:04/03/09 21:03
>>119
これ以上スレが低レベル化するのは見てられない。
余計な奴ら引き込むなよ。
何が流行の最先端だ。あんなものが音楽と言えるか!
最近の音楽業界は何だ、ひっぷほっぷだの、らっぱーだの、訳の分からないものが増えて困る。
あんな物は音楽じゃない、只の音の垂れ流しじゃろうが。
やかましくて、いらいらする。犬が吼えとるのと変わらんじゃないか。
しかもそれを、ドデカホンとか言う馬鹿でかい音のする機械で流しよる。
わしがショック死したらどうするんじゃ。
名前も悪い。HIPHOPとは何たる破廉恥な。日本語にすると跳ねる臀部じゃぞ?
嫁入り前の娘さんが、尻を突き上げるような音楽に夢中になるとは何事か!
だいたい、びーとるずが悪い。低俗な音楽を本流にしてしまいよった。
あいつらのせいでわしの大好きな、高尚で清冽なメロディーが消えてしまいよった。

なによりわしの大事なばあさんを、夢中にさせたのが気に食わん。
ああ、ばあさんや、そのまま行くと転んでしまう、落ち着いてくれ・・・。

次は「カーテン」「ゴム」「電柱」でお願いします。
衣替えの季節。
押し入れの中の収納ケースを漁っていると、変なデザインのホットパンツが出てきた。
臀部の位置に2つスピーカーが付いているのだ。

こんなの買ったっけな?
とりあえず履いてみる。良かった、まだ入る。
背後で姉が「ぶっ、ドデカホンみたい」と笑った。
うるさい、行かず後家。自分だってケツでかい癖に。

パンツの裏には大きめのタグが縫い付けられている。
『バッグポケット部分にお好きなCDを入れてください』
私は適当なCDを後ろのポケットに入れた。
一歩あるく。『Lo〜ve』 もう一歩あるく。『Love me do〜』
歩く度にCDが再生されてスピーカーからビートルズの曲が流れた。

私は楽しくなって、しばらく家中を練り歩いた。
ソファでひと休みしようと腰掛けた瞬間、尻の下で軽い音を立ててCDが割れた。
そうだった。このパンツを買った時も同じ失敗をしたのだ。
二度と履くまいと収納ケースの奥にしまわれ、そして忘却の彼方へ……。

こうしてスピーカー付きパンツは再び封印された。


お題は>>122氏ので。
感想文スレ、新スレです。
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1078844906/
 夜の女神が私を問いただす。
 最大限に姿を現した女神の放つ光は、曖昧な気持ちのまま眠る私を許さなかった。カー
テンを閉め忘れた窓から、私を容赦なく照らしだし、心の奥底に沈めた疑問を再び浮かび
上がらせる。
 ほんの数時間前、真っ暗な室内で交わされた愛の囁き。突然の電話一本で、私に遅めの
夕食の準備をさせた男。先週から電灯のきれたままの電柱に寄せて、慣れた動作で車を止
めた男。あわただしく食事を平らげた後、そのままベッドに押し倒してきた男。事が終わ
るとすぐにスーツを着直して、謝りながら帰っていった男。ずっと一緒に居たいといいな
がら、一度も泊まっていったことのない男。

 貴方は本当に私のことを愛しているの? 
 もしも引き返せないようなことが起こったら、貴方は私を選んでくれる?
 満月が人の心を狂わせるって本当かもしれないわね。
 ねぇ、気付いていて? さっき貴方が使ったゴム、針の穴が開いていてよ。


「へびいちご」「展示」「人影」
>>121みたいなのを見ると、本当に殺したくなる
クズが
>>121は俺の画面にはもう映っていない。あなたも映らないようになさい。
私は今、山の中にいる。
友人達と登山に来たのだが、その途中ではぐれてしまったのだ。
体力は尽き、気力も尽き、食料も底をついた。
常人ならば絶対食べないような、ハチの幼虫、へびいちご、樹液などで飢えを凌いだ。

やがて、私は一般人に見つかり、保護された。
「現代に生き延びていた野人」として、博物館で展示されるのだそうだ。
不本意だが、仕方ない。
毎日のように私を見物しに客が詰め掛けた。悪くない気分だった。

しかし、蜜月の日々は長くは続かなかった。
見物人は徐々に減っていき、人影は疎らとなっていったのだ。
お払い箱となった私は、とうとう解剖されるらしい。
麻酔が打たれた。
薄れゆく意識の中、私は「これが流行の仕組みなんだな」とふと思った。

「傀儡」「コーヒー豆」「雲散霧消」
 それは浅い夢だった。想念だけでも夢を見るとは知らなかった。破片を一つ一つ拾い集
め、とうとう、俺はひとつになった。想念のか・ら・だ、現実には身体は無かった。
 コーヒー豆に熱湯を注ぎ入れる時の香ばしい匂いが漂ってくる。その懐かしい香りを無

い身体が求めて、ふらふらとテーブル上のカップを掴もうとする。そう、俺は掴もうとし
ていたのかもしれない何もかもを……
 俺がこの地に身体を持って生まれた時には国は内戦につぐ内戦で安定した政府はなかっ
たそんな時代を俺は少年期、青年期と過ごしある友は戦いに疲れ国を捨て、ある友は戦い
に血を捧げた。戦闘訓練の合間、腰にぶら下げた、ぼこぼこにへこんだマグカップに熱い
コーヒを注いでくれた友がいた。その友も死んだ。
 それから、数年が経ち俺は指導者として戦闘を指揮していた。その頃の俺は権力という
ものの本質を理解していなかった。アメリカはそこを突いてきた。アメリカの肝いりでこ
の国に俺は傀儡政権を打ち立てた。それからの俺は権力というものに振り回された。この
手に何もかも掴めると錯覚していた…… しかし、今はコーヒーカップすらこの手に掴め

ない。乾いた銃声が響き、一発の鉛が俺の身体に入った瞬間から俺の意識の霧がさあっと
引くように雲散霧消したかと思うと破片となり散らばった。それは浅はかな夢だった。

次は「メロディー」「雨音」「一日の終わり」でお願いします
130岸和田:04/03/10 19:13
「メロディー」「雨音」「一日の終わり」
 「ええい、ふざけるなあああ!!!!」
中年の男がものすごい剣幕で怒鳴った。右手には、拳銃。
「あら、何で浮気しちゃいけないのかしら。あなたは仕事ばっかりで私に構ってくれないじゃない。」
今度は若い女の声。右手には、煙草。
「うるさい!お前というやつは!俺が仕事で疲れて家に帰ってくると、お前の喘ぎ声がする、驚いて家に入ってみれば、こんな男と」
そして中年の男は、パンツ一丁で正座させられている若い男を指した。
「いいじゃない、喘ぎ声なんて素敵なメロディーよ。一日の終わりに、妻の喘ぎ声。映画のタイトルみたいよ。」
「ふざけるなあ!お前というやつは、お前というやつは!!死んでしまえ!!」
中年の男は拳銃を女に向けた。その顔は、怒りに満ちていた。
「その引きがねを引いたら、二度と口を聞いてあげないから。」
女は煙草をふかしながらそう言った。
「ふん、まあひとつ聞いてやろうじゃないか。まあわかりきったことだがな。お前は・ここで・なにをしていた?」
「息よ。呼吸してたの。」
「あーー!!もうウルセー!!テメーらの低レベルな口ゲンカなんか聞きたくねーんだよ!!」
若い男が大声で言った。そして中年の男に飛びかかり、拳銃をもぎ取ると中年男と女を撃った。そしてパンツ一丁で外に飛び出していった。
静かになった家に雨音だけが響き続けていた。

 「猫」「鏡」「ポエム」
131「メロディー」「雨音」「一日の終わり」:04/03/10 19:37
いきつけの喫茶店が潰れた。仕事帰りの焼肉定食と食後の一杯が、私の唯一の
楽しみだったのに。
窓際のボックス席に一人で座り、窓を叩く雨の音と店内に流れるメランコリアなメロディー
を聞くと心が休まった。食後のコーヒーを飲みながらの煙草で、長い一日の終わりを感じた
ものだった。
寂れた外装、無愛想なマスター、陰気なBGM、どれも大好きだった。
いつ潰れてしまうかと、来る度に思っていた。

私にはもう心休まる場所がない。
木製の扉に掛けられた「閉店」と書かれた小さな看板。
その小さな看板に拒絶されているような気がした。
扉の取っ手を握り、軽く引くと、やっぱり施錠されている。
扉の向こうで、チリン、とベルがなった。

次は
「不条理」「横柄」「しんねこ」
でお願いします。
132名無し物書き@推敲中?:04/03/10 19:40

申し訳ない。かぶってしまった。
お題は、前の方の
「猫」「鏡」「ポエム」でお願いします。
 激しく降り注いだ雨がようやく気象庁の予報に従いはじめたのは、冷えた身体を温めよ
うとお湯を沸かし始めた後だった。ベッド横の窓から聞こえる雨音はみるみる弱まり、透明
に輝き始めた空に優しいメロディを響かせていた。
 血統ペルシャを父とする雑種猫のポポロンが、鏡の向こうであくびをしている。私は熱す
ぎたコーヒーをすすりながら、先程の診察で言われた言葉を大切に噛み締める。
 
 あの人に伝えたら、どんな表情をするかしら?
 驚く? よね。でもそのあとにもしかして、喜んでくれるかな。
 大丈夫。きっと優しく微笑んでくれるわ。

 ああ、私ったら、まだ2ヶ月といわれただけなのに、いまからこんなに浮かれてしまってどう
しよう。ああ、そうだった。コーヒーは飲んでも大丈夫だったのかしら。聞いておくのを忘れ
たわ。もう少し雨が上がったら、本屋さんに行って――そうね、その前に本を読んで上げ
ましょう。このポエム、きっと貴方も気に入ると思うわ。貴方のお父さんと出会うきっかけと
なった詩集。とても素敵な詩が描かれていてよ。



じゃあ頂いて、次は「不条理」「横柄」「しんねこ」で。
134名無し物書き@推敲中?:04/03/10 20:59
>>131
重ねて申し訳ない。
お題の「雨音」を使ってない。「雨の音」って・・・・・・。
「の」を抜いてください。
お目汚し大変失礼しました。
 とろりとした陽射しが一間半ほどの店の表を染める午後。奥にある作業所では、茂吉が春の菓子をこしらえていた。
 本町三丁目の菓子屋三好屋。表長屋の店ながら江戸に知られた名物が二つある。
 ひとつは横柄者茂吉。役者ならば千両稼げるだろう色男。切れ長の目、涼しげな顔立ちだが、娘たちが置いてゆく、
思いのたけを綴った付け文を見もせずに捨てているとの、もっぱらの噂。
 今をときめく廻船問屋伊勢屋。そこの一人娘で、母によく似た日本橋弁天、お絹お嬢様の、せいいっぱいの笑顔を
たたえた挨拶にさえ、返事はおろか顔をあげさえしなかったことから、なんという横柄者よと言われるようになった。
 ぎゅっ、ぎゅっと、茂吉の白い手が緑の団子生地をこねる。
 もうひとつの名物は、新芽のよもぎを使った餡かけ団子。
「ごめんなさいよ」小僧を二人ひきつれて、伊勢屋の旦那がのれんをくぐる。
 伊勢屋の旦那はお嬢さんのことがあってからも、足しげく三好屋に通ってきた。
「よもぎ団子は、ああ、あるね。いい春の香りだねぇ。それに、このしんねりした団子の肌は色づいた女の肌のよう
だよ。色事にはてんで興味がない茂吉がこんな春そのものの団子を作るってんだから、世の中ってのは不条理だねぇ」
 いつものように四半時、伊勢屋の旦那は一方的にしゃべっていくと、おかみさんの好物だというよもぎ団子を重箱
いっぱい買い求めていった。
 茂吉は黙って団子生地をこねながら、しんねこになった伊勢屋のおかみさんの柔肌を思い浮かべていた。

 次のお題は「春告鳥」「アップルパイ」「卒業式」でお願いします。
 青々とした大地は生命の息吹に満ち満ちている。
俺はウグイス。気取った名で言うなら春告鳥。俺がやって来た。即ち春がやってきたのだ。
去年もここに来たが、何も変わっちゃいねえ。
【〜高校 卒業式】とか書かれたアーチの下を人間どもが通り過ぎてゆく。
人間達は、同じことを繰り返して楽しいんだろうか? 同じ奴らが同じ格好をして……やたら見たっての。

 またしばらく優雅に舞っていると、「おいし〜いアップルパイ屋さん」という店があった。
ちょい拝借……ん? これ、ちょっと違うが、リンゴじゃねえか? 
「アップルパイ」って食いモンじゃねえのかよ。なんでリンゴが入ってるんだ?
リンゴならリンゴとして食やあいいものを、人間ってのはホント分からん。
あー、腹立ってきた。叫んだる。
「あー、ママ見て見てことりさん〜」
「ちいちゃん、あれはウグイスって言うのよ。綺麗な鳴き声でしょ?」
んだよ、綺麗じゃねえっつの。

「茶」「夢」「博愛」
私の住んでいる町は田舎だ。
市は、海を埋め立て、そこをアミューズメントスペースにして人寄せをしようとしている。
最近そのアミューズメントパークのひとつである「博愛館」が建った。
娯楽のない田舎である。あっと言う間に「博愛館」は人で溢れ返った。

私も妹と一緒に「博愛館」の安っぽいゲートをくぐった。
『愛と夢あふれる博愛館』キャッチコピーまで安っぽい。
会場の入り口に立つマスコットの着ぐるみ「アイちゃん」が、何の動物かわからなくて混乱する。
館内は広くもなく狭くもなく、中途半端な感じだが、天井が高いので開放感だけはあった。

矢印の立て札に沿って歩いていく。
各スペースに小さいスクリーンが備え付けられており、
「愛と夢」をテーマにした映像が上映されている。
妹と意味がわからないね、と話していると、
背後からアイちゃんがやってきて、手でハートマークを作った。
投げやりな愛想笑いを返すと、舌打ちが聞こえた。
びっくりして振り返る。アイちゃんは明後日を向いて知らんぷりしている。

最後のスクリーンを見終えると、係りの人がお茶と書かれた紙コップを差し出した。
「中身入ってないんですけど」 喉が乾いていた私が文句を言うと、
「いいえ、中には夢のお茶が詰まっております」 と係りの人はにっこりと答えた。
その横でアイちゃんが口に手を当てて笑っていた。


お題は「飴」「庭」「柔道着」
「飴」「庭」「柔道着」

 窓から外を覗いてみた。朝は真っ白だった市体育館の庭や駐輪場も、大会関係者が続々と集まってくるにつれて出来そこないのキャラメルみたいに汚れてしまったようだ。
 視線を転じ、対戦相手を見る。藤山中の三年、海藤はさしずめ、柔道着を着た禿鷹だ。つるっぱげに、猛禽類のような眼差しで俺を睨んでやがる。年季の入った、スレた黒帯が、奴に精悍な雰囲気を加えていた。
 俺はサムライハートを持っている。フェアプレイで畳に沈めてくれる――と思ったとき、奴が口のなかで何かを転がしていることに気づいた。
 飴だ。あの野郎、飴を舐めながら試合して俺に勝てる気でいやがる。正直キレた。

 試合が終わったとき、奴は左膝を抱えてのた打ち回り、惨めに泣いていた。奴が払い腰の態勢に入ったとき、後ろから軸足を目一杯蹴りこんだので奴は膝を折ってしまった。試合どころではなくなった奴を見下ろしていた俺に、審判は反則負けを告げた。
 奴は次の大会には出て来なかった。引退したらしい。


「酒」「マンハッタン」「冗談」
VSさん!!!━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ キター!!!
技が決まるたびに上がる、耳を聾する観客の歓声。だがそれは俺のためのものではない。
奴に投げ飛ばされた俺は、口の端から垂れた血をぬぐい、咆哮を上げて突進した。
奴は余裕の表情を崩すことなく容赦のない蹴りを繰り出してきた。
よろめいた俺の両腿を、奴ががっしりと掴む。
マンハッタンドロップ―――。
遅かった。直撃を食らい、意識が一瞬飛んだ。
そこからは一方的な試合だった。観客が望むとおりの。

負け試合の後は、浴びるほど酒を飲むことにしている。そうしないと眠れない。
いつものように俺に付き合って飲んでいた先輩が、ぽつりとこぼれるように呟いた。
「なあ、俺……もう、プロレスやめようかと思う」
「そんな、先輩、冗談っしょ?」
「本気だよ。……娘に泣かれたんだ。もう俺がケガして帰ってくんの嫌だってな」
俺は黙って酒をあおった。切れた唇にひどくしみた。


 お題「胃薬」「リモコン」「油性ペン」
 適当にリモコンを嬲っていたら、チャンネルが切り替わってCMが流れた。
 薬品のCMだったのだが、「○○は医薬品です」というところが誤字で「胃薬品です」
となっていた。
 大笑いした俺は傍らの油性ペンを手に取り、葉書いっぱいに「間違えてやんの
バーカバーカ」と大書して製薬会社に送りつけた。

 暫くして、なにげなくテレビをつけた俺は憤然となった。
 件の製薬会社が、胃薬のCMで「胃薬品です」をネタとして扱っていたのだ。

 アイデア料寄越せ、この野郎。

 次のお題は「ランプ」「ヘアピン」「カステラ」で。
142「胃薬」「リモコン」「油性ペン」:04/03/12 01:54
我が家にシャープの60インチ液晶テレビがやってきた。
おやじが「きたか」と声を弾ませてダンボールを丁寧にあける。
おふくろは「あらやだ」と台所からサランラップを持ってきて、
出されたばかりのリモコンをそれで巻いた。あとから電池を入れ忘れたことに気づいて「あらやだ」とまた言った。
兄貴は説明書を読んでいる。電源を入れて見たいチャンネルのボタンを押すだけのテレビに、どうしてこれだけ分厚い説明書が必要なのだろう。
おれは兄貴に油性ペンを渡して保証書のブランクに記入するよういった。
おじいちゃんはさっきからイカの乾きもののようなものをにちゃにちゃとやっている。さいきんは何を訊いても、あうあうあうとしか答えない。答えなのか答えではないのか。あうあうあう。おれも困惑する。
「おじいちゃんお薬の時間よ」おふくろがコップに水を入れて薬と一緒にわたした。
「あうあうあう」
「ただの胃薬よ」とおふくろがいうと、またあうあうあうとおじいちゃん。となりではやばやとテレビのセッティングを終えたおやじ。
「どーれ」とおやじがラップに巻かれたリモコンで電源を入れた瞬間、台所から爆発音が聞こえた。ような気がした。そのときには意識はとんでいたから。

「せんたくばさみ」「豊臣秀吉」「三年前の日記」
143142:04/03/12 01:55
あ、お題は>>141さんのでお願いします。
144「ランプ」「ヘアピン」「カステラ」:04/03/12 02:29
狭く、灯りは小さなランプだけという薄暗い部屋で作業を続けている。
劣悪な環境だが、まるでカステラのような感触のソファーだけは別だ。
こんな場所には不釣合いな代物だが、柔らかい物に腰掛けられるのはありがたい。
おまけにこれに腰掛けていると眠くもならないし、喉も渇かない。
仕組みは分からないが腹だって減らない。
そのせいか、作業を始めてからどれ程の時間が経ったのか、まるで分からない。
作業自体も曲がった針金―よく見えないが、ヘアピンの様な形をしている―を引き伸ばし、
別の形にするという単調なものなので、辛くは無い。
作業が進み、手付かずの針金が減ってくると、小窓から新しく追加される。
その際に加工した針金も引き取られる。
正直少し飽きてきたので席を立ちたいのだが、
その瞬間にソファが抑えていた欲求が爆発しそうで、中々席を立てない。
恐らくいつまでも、いつまでも、針金を曲げ続けなければならないのだろう。

「映画」「雑誌」「レシート」でお願いします
 立て看板を見なくても、その映画館から出てきた客たちを見れば、どんな映画が上映されたか一目瞭然だ。
外柔内剛とは良く言うが、外柔内柔の典型、つまり外でも家の中でもやられっぱなしの中年男、永塚は、映
画に感化されたのか、短い背を目一杯に反らせ、貧相な眉の間に縦皺を作ってのし歩いている。垢じみたワ
イシャツの襟と、皺だらけのスーツが何ともその仕草と不釣合いだった。
 馴れないことはするものではない。彼はすっかり菅原文太になりきっていたところ、突然、丸めた雑誌で
後頭部を痛打された。「なにしやがる」と虚勢を張ってしまったもんだからさあ大変。彼の上司・古田係長
は振りかえった貧相な中年男に怒声を浴びせた。「サボってないで仕事しろ!」
 事の次第と自らの不覚を悟った永塚は、それでも係長に映画のレシートを差し出した。「これ、経費で落
ちます?」
「もう会社に来なくていいよ。ご苦労さん」係長はむしろ落ち着いて言った。

 永塚ふとし五十一歳、第二の人生の幕開けであった。


お次は「鈴」「南風」「哲学者」で。
その大声がすると、店内は水を打ったように静かになった。
そのコンビニにちょうど居合わせた客達はレジの方を向き、両手をゆっくりと顔の高さまで上げる。
レシートを持ったまま硬直している店員に突きつけられたナイフが、強い白色の光を放つ蛍光灯
によってきらきらと輝く。強盗はもう一度先程と同じ台詞を同じ口調で吐き出した。
「金を出せ! 両手を挙げろ!」
その時パラパラと雑誌をめくる音が、流れっぱなしの場違いな映画の宣伝文句に交じって店内に
聞こえてきた。女だ。一人の女が神妙な面持ちで雑誌をパラパラとめくり続けている。
「てめえ、何してやがる! 両手を挙げろ!」
女はその怒号を聞くと雑誌を棚に戻し、まっすぐに強盗を見据えて怒鳴り返した。
「うるさい! 私もお金が無くて困ってるの! 早く新しい仕事探さないといけないのよ!」
その剣幕に強盗を含め、店内にいた全員が呆気に取られた。瞬間、隙をついた店員と何人かの
客が強盗を取り押さえる。その間中も何かに取り付かれたかのように、女は求人情報誌を手当
たり次第めくっては食い入るように見ていた。
どうして警備員にならないんだろう? その時、店の奥のジュースクーラーの中で両手を挙げてい
た僕が思ったのはそういうことなのです。

間に合わず。お題は145さんのでお願いします。
 東京で就職が決まったので、私は冬休みに長崎の実家へ帰ってまず、引越しの荷造りに
取りかかった。といっても、当面、生活に必要なものは殆ど東京の下宿先においてあるの
で、荷造りというよりは少年時代の遺物の整理をする、という方が相応しい作業となった。
 埃とカビの匂いに辟易しながら押入れをまさぐっていると、三年前の日記が出てきた。
マンガと一緒に結わえて処分するつもりで無用心に重ねておいたのが、良くなかったのか
もしれない。手伝うと称してやってきた幼馴染の弘子が、私が煙草の買出しに行っている
間に、目を通したらしかった。
「隆ってさ、豊臣秀吉を尊敬してるんだ」彼女が、戻ってきた私を見るなりそう言ったの
で、それでピンときた。
「黙ってひとの日記、読むもんじゃないぜ」
「ごめんね。でも隆らしい」彼女は自分を棚にあげてのしたり顔だ。「二日分しか書いて
なかったよ。三日坊主にもなってないじゃない」

 久しぶりの再開ということもあり、それに、彼女も結婚を控えてマリッジブルーだった
のだろう。私たちは仕事が一段落すると、若い情熱に誘われるまま、ホテルへと向かった。
彼女はこの二年間に何があったのか、変わった性癖を身につけたらしかった。私の服を脱
がせるなり、ハンドバックからせんたくばさみを取り出し、にっこりと笑った。
「こういうのが好きなんでしょう?」そしてすうっと手を伸ばし、私の鼻と、両方の乳首
を挟んだ。三年前、日記をつけようと堅く心に誓った私は、初日に意気込んで羽柴秀吉の
ような男になる決心を綴り、二日目には自分の赤裸々な姿を残そうと、自分のフェチをや
や情熱的に記したのだった。
 あの頃は蒼かった。しかし、弘子の旦那さんになる人には悪いが、そのお陰でいい新年
を迎えられた。やはり人間たるもの、自分に正直であらねばならない。

 * * *

 書くだけ書いてみた。お題は>>145氏。
 吉郎がいつもの公園へ清掃に出向くと、昼飯時の指定席にしているベンチに先客が居た。
眉間に深い皺を目立たせて、男は分厚い本を読んでいる。
「この天気には、笑顔の方が相応しいだろうに」
 吉郎はそんなことを横目で思いながら、男の前を通り過ぎた。
 ――シャン、シャン。
 清掃を続けていると短い錫杖を持った山伏が吉郎とすれ違った。近くに有名な修験山
があるらしく、時々見かける。この季節の頭巾、鈴懸、笈の格好は、どこか然とした夏
の雰囲気を漂わせて、吉郎は思わず顔を綻ばせた。ゴミを拾う手にも気力が漲る。
 一通り清掃を終え飯にしようと指定席に戻ると、先の山伏と男が隣合って座っていた。
「ありがとう。哲学の宗教に対する考え方を理解できた気がします」
 本を閉じて山伏に礼を言うと、男は快晴の天を見上げ会心の笑みを漏らした。足取り軽く
去っていく哲学者を見送りながら、吉郎は良い場に居合わせたものだと静かに感動した。
 ――シャン。
 山伏も立ち上がった。白南風に吹かれ錫杖を鳴らす彼の背に向かって、吉郎はゆっくりと
手を合わせた。

次「茸」「浜」「天狗」
 某月某日正午、横浜スタジアム――。
「今日も勝つよ!」
監督・山下大輔の声が響く。今日はチームにとってとても大切な試合だった。シーズン初の4連勝が懸かっていたのである。
 広島とのデイゲームは横浜の三点リードで八回裏まで終了した。あとは九回表の広島の攻撃を抑えれば、勝ち。
即ち、今シーズン初の4連勝――。選手達もさすがに気が昂った。そのとき、
「ピッチャーデニー!」
やりやがった――抑えの佐々木やギャラードを出せばいいものを、何故かこの場面でピッチャーデニー。
またか、と選手達の高揚した士気は一気に寒々としたものとなった。「ここ一番は、デニーしかない」と山下。
フォアボール、フォアボール、フォアボール……ノーアウト満塁。
ピッチャーデニー、ワンアウトもとれず降板。抑えのギャラード登板。誰もが予想したであろう結果である。
山下監督が祈るような思いでギャラを見つめる。サードゴロ。確実にアウトをとるか、ホームタッチアウトをねらうか――。
ファンタジーはそのとき起こった。今日二本のソロホーマーを放ち、すっかり天狗と化していた三塁手村田が、爆笑の捕球ミス。
捕れないだけならまだしも、誰もいない三塁側ファールグラウンドに弾いた。
転々と転がるボール、たらたら追うレフト、頭を抱える勝ち投手の権利を有する先発・三浦――。走者一掃のタイムリーエラー。
茸のような真っ白い雲が、抜けるような青空を心地良さそうに泳ぐ。山下監督は、ただただそれを見つめていた。

これが限りなく真実に近いのだから恐ろしい。
「宝」「空腹」「頭」 
 正直に打ち明けると、私は当時の空腹を説明する語彙を欠いている。それはつまり、
私のモノ書きの端くれとしてのプライドなどいとも簡単に粉砕するに充分な空腹を覚
えていた、ということだ。実際、どの程度なのか、という点については読者諸兄の判
断に委ねる。必ずしも他人様にあのときの空腹を理解してもらう必要を覚えるほど、
私は落ちぶれてはいないつもりだ。
 それにしても酷い空腹だった。しかし同時に、最悪の切り出し方たる開き直りに五
行も費やしたことに些かの後悔を覚えている余裕を鑑みれば、それほど空腹でもなか
ったのかもしれない。兎に角、私は誰が何と言おうと空腹だった。
 空に浮かぶものは綿菓子で、道路を舐めるタイヤはチョコレートドーナッツだった。
私は空腹に頭を冒されていたに違いない。まさか走っている車にも、雲にも齧りつく
わけにはいかず、またそのようなものに限ってやたら美味そうに見えるのだから。
 私にとって、空腹という荘厳かつ切実な問題を解決してくれるものは至宝であった。
従って、偶々見つけた、道端に転がる、内臓を剥き出しにした蟇蛙の血に塗れた死骸
は、全く以ってそれそのものだった。寧ろ引っ込んだ唾液の代わりに胃液さえ込み上
げてくる有様で、まあそういう訳で私はこの問題を解決したのだ。
 つまらなかった? ああそう。


「もみじ」「混濁」「フランス人形」
151 「もみじ」「混濁」「フランス人形」:04/03/12 16:55
「さむいなァ・・・」
待ち合わせ時間を15分ほど過ぎてもまだ彼は現れない。
携帯を確認する---着信アリを知らせるアイコンは見あたらない。
コートの襟を立て、腕を組んだ。肩を聳やかす。
さっきから手当たり次第に声をかけるキャッチ。目があった。
男が一度髪をかきあげてこちらに向かってきた。
「待ち合わせ?」不自然に黒くなった皮膚にむせかえるような香水の匂い。金と銀と黒。
目をあわさず、話をきかず、表情を作らず。男は喋りつづける。
ああ、わたしは東京で、こんな寒い日の夜に、待ちぼうけをして、
知らぬ男に安く見られて、なんなの、いったい。フランス人形。お母さんにおねだりして買ってもらった、真っ白な肌の人形。
きっとまだ、田舎の物置のなかで、布にくるまって、横たわっているんだろうなァ。
ぎらぎらといくつにもかさなるネオンの混濁が、もみじ色になってわたしの体を照らしている。男は舌打ちをして踵をかえした。足下で枯れ葉が風に舞った。

「クインテット」「揺曳」「陋屋」

VSさんが出てこないせいで、このスレつぶれちゃうかもよ!
VSさん、はやく名前出して出てきてよ!
手遅れになっちゃうよ!!!
 私は舗装の行き届かぬ、葦や潅木に今にも乗っ取られそうな狭い道路に車を停めて、
ひとつ伸びをした。職務を思えばのんびりとはしていられないが、毎度のことながら、
今日の訪問も不毛に終わるのは、火を見るより明らかに感じていた。
 湖畔に佇む一軒家は、陋屋と言ってよかった。葦の海のむこうで、足早に風に運ば
れ、濃淡を織り成す白濁した濃霧に見え隠れするさまは、廃墟然とした趣さえある。
板戸は風のうなりに答えてがたがたと鳴り、蟲の音色と相俟って自然のクインテット
の一角を為している。
 土地売買契約書一式の入った封筒は必要あるまい。大吟醸にスルメだけ手に、葦を
掻き分けて玄関に回った。
「こんにちは、お父さん。浦部建設の石田です。お父さんの好きな日本酒、持ってき
ましたよ」
 返事がないことを不審に思った。いつもは不機嫌に返事をし、渋々といった顔で、
それでも戸を開けて中に招いてくれる。酒も半合ほどまわると、皺だらけの鬼瓦がと
ろけて、上機嫌でお酌を受けてくれるので、辛島さんは土地の売買に応じてはくれな
くとも、内心では私の訪問を愉しみにしていることだけは分かっている。
 戸を、何度か叩いてみた。どんどんという音が虚しく霧に乗って揺曳するのみだ。
カブは家の脇にたてかけたままだし、私はえもいわれず、嫌な予感がした。


「ネイティヴ」「黒子」「モノトーン」
どれがVSさんなんだよ!
「三語スレで名物になるほど、VSさんの感性は光ってる」って言われてんだぞ!
そのせいで、やたらこのスレ晒されたし。

あぁ!?
とりあえず、教えてくれ!
「VS」ってコテハンが、このスレで名物になった事実はあるのか?
155名無し物書き@推敲中?:04/03/14 00:33
黒子はスポットライトの夢を見る。
壇上には黒子しかいない。老人の人形、子供の人形、ネイティヴアメリカンの人形もいない。支え
なければいけない物は何も無い。観客の誰もが黒子だけを見ている。
スポットライトが黒装束を丹念に照らし続ける。黒子が右に動けば右へ、左に動けば左へと、一
瞬足りとて光の円の外へ黒子を逃がさない。
黒子は両手を水平に伸ばし、観客に向けて一言だけ呟いた。
「あ」
それだけで大拍手が起こった。誰かの指笛がホールにひっきりなしに鳴り響く。
光と影のモノトーンの中で黒子は己の頭巾に手をかけた。その動作に観客は歓声を上げる。
おおおおお、とその声が盛り上がり、そしてついに頭巾が取れる寸前

「おい、起きろ」
ベンチを思い切り蹴飛ばされ、黒子は目覚めた。
「そろそろ出番だぞ、準備しな」
遠くの世界から割れんばかりの歓声が聞こえてくる。
黒子の涙はその黒い面妙によって見ることはできない。

「旅」「卒業」「女」
 おれはシロイヒトの言うことには逆らえないので、とにかく許容し続けている。
シロイヒトがなにを言っても、とりあえずためす。シロイヒトが旅をしろ、
と言えば旅を計画したし、彼女と別れろ、と言えば、わざと機嫌を損ねさせたりした。
実をいうと、ほとんどそのとおりにできたことはないし、そのとおりにできたって、
けっこうくだらない事態におちいったりもした。それでもおれはシロイヒトになるべくしたがってきた。
入学だろうが、退学だろうが、休学だろうが、卒業だろうが、とにかくシロイヒトがそうしろと言えば、考えてみた。
 でも、おれはシロイヒトについて多くはしらない。
いや、ぜんぜんと言ってもいい。シロイヒトが女なのか、おとこなのかすらわからない。
というか、なんとも言い切れない。言い切れないけど、シロイヒトのことはないしょではない。
おれはけっこうシロイヒトの名前を口にする。シロイヒトがだまっていろ、とは言わないからだ。
 あるとき、いつもふしぎに思っていただろう彼女が、意を決したようにおれに訊いた。
 ――シロイヒトってなに?
 知らないけど、いるとしたら、そういうもんだろ、とおれは言った。
 シロイヒトは訊く前よりもっとふしぎそうな彼女の表情をながめながら、
なんとなくよろこんでるかもしれない、とおれはくだらないことをおもう。


「指」「大陸」「衝撃」
157「指」「大陸」「衝撃」:04/03/14 03:20
 彼の指先が軽快なリズムの下で華麗に弾ける。その姿はまさに神々の頂。
一分一秒、いやコンマ以下を争うその手元の素早さは、世界に名を馳せる
スプリンターとも劣らない。そう彼は今、世界に降り立つたった一人の選手。
 不意に彼の手が止まった。それから数分経てども、微動だにしない。
ただならぬ雰囲気が彼の周りを取り巻いている。だがそれから更に数分後、
溜まっていた雨水か、雫となって水面下に落ち、波紋が広るかの様に、止まって
いた指先が、先ほどとは打って変わって烈火の如く動き始めた。
 一瞬にして世界が変わった。先の動きがまるで弥勒菩薩のような慈悲深い物
であったのに対し、今は阿修羅の如き激しい動きを見せている。かつての秦の
始皇帝が、初めて中国全土を統一し、大陸に衝撃を走らせた様に、彼もまた
自分がいるこの空間に、いや、彼が彼自身の身に衝撃を走らせたのである。
それから数秒後に指は止まり、再び動き出すことはなかった。

 ズボンのジッパーを閉め、一仕事を終えたサラリーマンのような顔立ちをして、
先程使用したポルノ雑誌を、彼は手に取った。
 彼は悠然に、しかし自信に満ちた態度で、ベッドの下にそれを片付けた。


「星」「青年」「タイプライター」
シカトか
まともな質問にも答える気ないってか
所詮クソスレだったな
159あぼーん:あぼーん
あぼーん
お前らさぁ、自分達が何か高尚な存在だと思ってるらしいけど

   全   然   大   し   た   事   な   い   よ

だって「YESorNO」で答えられる質問にも答えられないんだもんw
小学生以下だよ、お前ら
161あぼーん:あぼーん
あぼーん
文学を志す者には、ある程度のプライドは必要だろう
でも、それは実力や功績の伴ってる奴の話なw

お前らはプライドだけ先行して、肝心なモノが何にもない
空っぽだ
装飾は豪勢だが、中身は生ゴミ
生ゴミがバキスレ貶す権利があると思ってんの?
サイレント調に始め、台詞はごく初期のタイプライターを使ったような字体
 
青年、夜道で女と何か話す
軽く口論めいてくる
―――間
青年の元を離れる女、立ち尽くす青年
―――間
青年、空を見上げる
空には月と星が見える
―――間
青年、少し俯く
―――間
青年、再び空を見上げ、何か口ずさみながらゆっくりと歩き出す
  ここで挿入「Fly me to the moon」

次は「スプーン」「サンダル」「時計」でお願いします
>>163は名前入れ損ねです
「星」「青年」「タイプライター」がお題でした
>>162
ここの連中はね、極めて頭が悪いの。
バカでバカでバカで、本当にクズの集まりなの。

人から認められたいのに努力しない。
「俺だって本気を出せば、いくらでも面白い文章が書ける」と思い込んでる。
↑こぉ〜んなダニばっかなの。

だから、あまりイジメないで下さい。
自殺者でたら後味悪いし。
>>154
ここは作品スレなので、↓に返事を書き込んで置きます。
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1078061417/78-79
長いですが、まじめに回答してみたので、ちょっと真面目に読んでみてください。
167「スプーン」「サンダル」「時計」:04/03/14 22:17
人身事故。運転中において、注意力散漫な人と不運な人に起こりえる現象。私の場合
は後者だった。突然、男が車の前に現れたのだ。

男はうつ伏せで左半身を私に向けていた。午後11時。車のライトが、男の左腕に着け
られている腕時計を光らせていた。私は事態をうまく飲み込めずに、ただ車中で堅く
ハンドルを握っていた。
私は居眠りしていたわけだはない。人気のない道路を法廷速度で走っていただけだ。
なのにいつの間にかこの状況だ。とにかく男の生死を確認しなければと、思った。
車から降りて男に近づく。頭から血が大量に流れていた。まだ若い。16,7くらいだろうか。
裸足だ。いくら季節が夏だからといって、サンダルすら履いていないのが少し妙だ。右手には
スプーンを握っている。ひどく捻じ曲がっていた。
「大丈夫ですか」
反応がない。口元に手をもっていったが呼吸もない。脈・・・・・・もない。私は逃げた。

一週間後、署に連行された。ひき逃げの容疑で。そこで刑事さんがしきりに聞いてくることがある。
「お前はどんな時間差トリックを使ったんだ」と。


次は
「理論」「論理」「理屈」
でお願いします。
168名無し物書き@推敲中?:04/03/14 22:22
>>167
また誤字だ・・・・・・。
>私は居眠りしていたわけだはない。×
 私は居眠りしていたわけではない。○

前の投稿にも誤字があった。何度も何度も推敲してるのに。
どうすればいいんだろうか。
皆様、お目汚し大変失礼いたしました。        
「少し待ちたまえ。真の理論は待って見つけるものだ。探して見つかるものではない」
 その台詞を聞いてからもう18時間ここに座っている。継続的に待たされた中では最長記録だ。
 私を待たせている人は、真理学とかいう学問の権威らしい。論理学の応用分野だそうで、今度
うちの出版社で本を出せという話を持ってきた。今日はその草稿を見せて貰いに来たのだ。
「あのー」
「まだ待ちたまえ。さっきも言ったが真理は探して見つかるものではない」
 妙に説得力のあることを言いながら、男は原稿用紙の前でじっと何か考えている。草稿を
なかなか出さないから、まさかと思っていたのだが……。
「もしかして、今考えているのですか?」
 やや長い沈黙の後、男は違う、と一言呟いた。一応、一安心する。
「ではその原稿用紙は何です?」
「これは次回作の分だ。今考えている。出版用の草稿なら間違いなくこの部屋のどこかにある」
「なんで草稿の方を探さないんですか!」
「何度言えばわかるんだ。真理は探して見つかるものではないのだよ」
 そんな理屈で18時間も――

次「益荒男」「得て」「徳」
 柔道、空手、剣道合わせて十五段の私は、益荒男を自称するに足る存在であろう。とこ
ろで私には悩みがある。薄くなった頭髪のこともそうだが、それより最近、娘が九時の門
限を守らない。薄々分かっている。おっと勘違いするな、薄々とは頭のことではなく、娘
が九時過ぎまで外で何をしているのか、ということだ。
 どうせ、つまらん男にでも引っ掛かっているのだ。手前味噌で恐縮だが、娘のように器
量良しの女子には、得てして害虫が食いつくものだ。それは世の摂理として受け入れよう
が、害虫には日本男児として弁えるべき徳というものを教えてやらねばならん。
 八時のNHKニュースも終わったことだし、私は竹刀を手にそっと庭に出て、娘の帰り
を待つことにした。近所の犬の遠吠えに、彼奴めが近く晒すであろう吠え面を思う。

 私は複雑な思いであった。鏡に映る吾が頭髪は斜陽の一途を辿っている。祇園精舎の鐘
の色、諸行無常の響きあり。思わず口ずさんだ平家物語のはじまりが、恐ろしいほど的を
得ていることに、私は涙せずにはいられなかった。決して嬉し涙ではない。とはいえ、娘
が父の頭髪を案じる余り、遅くまでアルバイトをして生薬入りの高級発毛剤をプレゼント
してくれたことが嬉しくなかった訳では決してない。
 こんなに涙が止まらぬのは、玉音放送以来だろうか。娘よ、ありがとう。


次は「虎」「明鏡止水」「ポンコツ」でおながいします。
171170:04/03/15 17:47
ああ恥ずかしい。訂正します。
×祇園精舎の鐘の色
○祇園精舎の鐘の声
172岸和田:04/03/15 19:33
「虎」「明鏡止水」「ポンコツ」
 「…おお、おおお、ついに出来たぞ!!これは力作だ!!」
彼は白髪だらけの頭に、汚れた白衣の「いかにも」な博士である。
この研究所で彼がつくったのはロボット、である。苦節12年、ようやく完成した自信作であった。
「よし、スイッチ、オン!!」
博士がロボットの頭の後ろにあるスイッチを押す。プシュー、という音がしてロボが立ち上がった。
「おはよう、ござい、ます。白髪だらけの、くそ、あたまさま」
「…マジで?これ失敗作かよ?ま、まあいいだろう。テストを行なう!」
博士がカードを何枚か取り出し、ロボットに見せた。
「これはある動物だ。さて、この動物の名前は?」
カードには虎の絵が描かれている。このぐらいはできてもらわなくては、という感情がにじみ出ていた。
「なんで、そんな、こと、答えなくては、いけない、のでありますか」
「…マジかよ。ちっ、まあいいさ、テストはまだある。知ってる四字熟語を言ってごらん」
「明鏡止水、森羅万象、世界最強、ウルトラ無敵、プーピーちゃん、誰あんたバーカ、一億万円」
「・・・このクソポンコツ野郎、調子ぶっこいてんじゃねえよ・・」
「うるせえ馬鹿野郎、黙ってろ、よう、そこのじじいよう、てめえぶっ殺してやろうか」
博士とロボットとのテストはまだ続く。

 「恐怖」「闇」「閉塞感」
173「恐怖」「闇」「閉塞感」:04/03/15 20:10
進級してクラス替えが行われてから3ヶ月。私はいまだに今のクラスに馴染めないでいる。
私以外の生徒は、まるで精密機械のように同じことばかりやっているからだ。その様には
恐怖すら感じる。授業中はノートと黒板を交互に見てシャーペンを走らせるだけ。先生以外
誰も口を開かない。先生に指示された人だけは朗読したり計算解いたりするけど。これだけな
ら、皆勉強熱心で片付くが、休み時間も同じことやっているのだから狂っている。次の授業
が始まると教科書とノートを替えて、また繰り返し。体育は皆出ない。体育教師がそれに激昂して
クラス長を詰問したら「競争は野蛮です。協調性がありません」だってさ。
このクラスにいると息が詰まる。閉塞感というか圧迫感があるんだ。
隣のクラスから笑い声が聞こえてくると、ほんと悲しくなる。隣は光でこっちは闇。
私のクラスの人達は没個性もいいところだ。
そういう私も皆と同じことをやっている。
皆と同じことをやってないと不安なのだ。私だけ違うことをやるのが怖いのだ。
そうやって私の個性は埋もれていく。

次は
「個性」「アコギ」「道徳」
でお願いします。
174ルゥ ◆1twshhDf4c :04/03/15 20:33
「恐怖」「闇」「閉塞感」

たまには外食してみるのもいいかもしれない、と思った。
ジャガイモだらけのカレーではなく、スパイシーな辛さが口に広がる専門店のカレー。
想像するだけで何だかお腹が減ってくる。
しかし、ただ「思う」だけ。
私にそんなことできるはずないのだ。
最初はこの異様に狭い空間に閉塞感や恐怖を覚えた。
しかし、慣れというのは怖いものだ。
今ではこの薄闇が心地よくすら感じる。
起きてはいるけれども、眠っているような気だるい感触もそんなに悪くないと思うようになった。
元々、明るい普通の世界に……皆が笑っている世界に違和感を感じていたのかもしれない。
だから、こういう世界は悪くない。
例え、もう大好きだった人たちに会えなくても……。
「おい、飯の時間だ!」
重い板でできた扉の向こうから、今日も私を「飼っている」男の声がする――。

☆受験終了ということで、また感想の方も少しずつ書かせていただきたいと思います。
 (発表はまだなんですけどね……)
 次は「あくび」「開放」「踝」で、お願いします。
175ルゥ ◆1twshhDf4c :04/03/15 20:35
ごめんなさい。
リロード忘れて被ってる……。
次は173さんの「個性」「アコギ」「道徳」でお願いします。
お前らも最終選考に残れるよう頑張れよ!
 『大変個性的ですが、著しく道徳が欠けています』――これは、小学校低学年のときの通信簿に書かれていたものだ。
当時は分からなかった。自分は至極当たり前のことをしていると思っていたからだ。
バッタの足を一本一本もいだり、猫を電柱に縛り付けたり、犬の尾を切断してみたり……。
社会人となった今は当然分かっている。子供のころの自分は悪の権化だったのだ。
反動なのか、今の俺は無性に悪人が許せない。悪いことをしている奴を見かけると、少々抑えがきかなくなってしまう。
先日も、ネットオークションで著作権物を無断で印刷して儲けている馬鹿を発見した。勿論犯罪である。
こういう、自分で努力して金を生み出そうとしない奴を見ると反吐が出る。アコギな儲け方しやがって……。
ソイツの居場所をつきとめ、不意に殴打する。相手は相当に驚いている。馬乗りになって二発、三発と加えた。
小一時間程殴り続けたら動かなくなったので、満足して帰った。最近はこんなことの繰り返しである。
最近、物騒な事件が激増しているとよく耳にする。全く同感である。悪人は増え続けるばかりだ。

「布」「餞別」「唐草」
「布」「餞別」「唐草」

「ほらこれ。やるよ、前からほしがってただろ、餞別だ」
同期入社の加藤はそう言うと、俺に皮の名刺入れを手渡した。
ずっと前、正確には加藤と対等に話が出来ていた頃に(たった数カ月間だけだ)、
彼が海外で買ったというその茶色い名刺入れを、自分が随分羨んでいたことを思い出した。
「お古で悪いけどさ」「そんな事ないよ。次の仕事で使うよ。ありがとう」
課のあちこちで失笑が漏れた。加藤は一人、遠慮なく大笑いしていた。
「ああ、それじゃ次の会社が見つかったら教えろよ」加藤は俺の肩を叩き、自分の仕事に戻っていった。
おざなりな送別会は先週終わっていた。俺は定時に退社し、真直ぐ帰宅した。

俺は手の中のそれを見た。物を長く使わない加藤の名刺入れは、新品同様のままだった。
そして、彼の手を離れた瞬間、何の価値もないものになっていた。俺はそれを投げ捨て、寝転がった。
目を瞑ると、ネオンサインのような光の輪が見えた。輪は次第に唐草模様になり、最後には渦になった。
渦の中に、あの名刺入れを思い浮かべた。叩き、破り、噛み千切り、ボロ布になるまでそのイメージ
を繰り返すうち、いつの間にか相手は加藤になっていて、俺は驚いて目を開けた。
……俺は、ずっと加藤が羨ましかったんだ。

お次は「ルーレット」「拳銃」「黒」でよろしくー
「ロシアンルーレットで遊ぼうよ。上田くんも好きでしょう?」
 高見沢はチャシャ猫のように笑って、上田を見下ろしていた。
 放課後の図書館準備室。
 黒い学生服をきた集団。
 高見沢をリーダーとする六人組に囲まれて、上田は逃げ出せずにいた。
「ほら、特別に上田くんから撃っていいから」
「そうそう、ロシアンルーレットは最初の方が有利なんだよ」
「そんなに、怖がらなくてもいいじゃん。ただのおもちゃだよ」
 プラッチック製の、黒くて軽い拳銃を、上田の手に押し付ける。
 黒くて、軽い、汚水が入った水鉄砲を。
「ほら、やれよ」
 顔を下にむけたまま、上田は鉄砲を受け取った。
 少年たちの笑いがいっそう深くなる。
「うわぁあああ!!」
 上田は泣きながら引き金をひいた。高見沢に向かって。負けるとわかっていても。

 次は「春告げ魚」「魔法」「方言」でお願いします。
「ルーレット」「拳銃」「黒」

4人組ロックバンド、「ザ・ロシアンルーレット」のメンバー達は頭を抱えていた。
一昔前の青春パンクブームに乗って一山当てようとバンドを組んだが泣かず飛ばず。
適当に愛だの友情だの大人は汚いだの叫んどけば阿呆な中高生が喜んで買ってくれて
人生安泰だろうと思っていたが甘くはなかった。ライブも家族と犬しか客に来ないので赤字続きだ。
今やメンバー全員三十を超えたにもかかわらず、揃いも揃ってコンビニバイトのフリーターだ。
ボーカルに至ってはいい年ぶっこいて愛想笑いの一つもできないから時給が入社時の750円のままだ。
最近も、明らかにおもちゃの拳銃(つーか水鉄砲)を持った強盗に脅されて失禁。
レジの売上金を震えながら差し出した一件が元で、高校生のバイトどもにもなめられる始末だ。
なめられてばかりではバンドマンの格好がつかない。イメチェンで最後の大勝負を試みた。
4人そろって黒いスーツに黒ネクタイ、サングラスでキメてパブロックを気取った。
しかしサロン焼けがたたってどうみてもシャネルズの田代マーシーにしか見えなかった。解散。

「電車」「鋼鉄」「もりもり」
ルーレットが回り始めた。占星術師と祈祷師と魔術師は固唾を呑んで赤と黒が
溶け合い交じり合う盤面を眺めた。これは彼らの面子を賭けた戦いだった。占星術師は、
まず水晶玉で、その結果を占った。黒い靄が見えた。黒に賭ける、と彼は宣言した。
次に、祈祷師は、彼の神への生贄を用意しながら、では赤を出してみせよう、と
宣言した。そして、おもむろに祝詞をあげはじめた。
困ったのは魔術師だった。黒に賭けて勝てば、占星術に乗っかって収めた勝利だと
言われ、赤に賭けて勝てば、それは祈祷のお陰だと言われるのが目に見えていたからだ。
迷った末、彼は「では、僕はそのどちらでもない結果を出そう」と小さく呟いた。

ルーレットが止まった。黒だった。やった、運命を正確に読むことが出来た、と
占星術師は小躍りした。しかし、その時雷鳴が鳴り響き、玉がひとりでに動き始めた。
祈祷師の神が動き出したのである。玉は赤に止まった。しかし異変はさらに続いた。
むん、と魔術師が眉間に力を込めると、玉はふわりと浮き上がり、ルーレットの
外に出ようと動きだした。そうはさせじと神も力を込め、玉を元に戻そうとする。
凄まじい戦いだった。しかしそのとき、たまたま店の隅にいた誇り高いガンマンが、
俺の腕を見せてやる、と仲間達に呟いて、宙に浮く小さな玉を拳銃で撃ちぬいてしまった。
あっけにとられる三人をよそに、ガンマンは、「俺の勝ち」と呟いて、酒をあおった。
三人はそれで納得してしまった。彼らにルールなどは無用なのだった。

次は「バックスペース」「琉球音階」「土砂崩れ」で。
182180:04/03/16 00:51
すみません・・・。
次の3語は>>179さんのでお願いします。
「春告げ魚」「魔法」「方言」
「春告げ魚−春の足音を知らせるように釣れはじめる、そんな魚のことを言います」
「たとえばどんな魚ですかね」
「しらうお、いかなご等がそう呼ばれているようです」
「しらうお、ですか」
「ええ、あと、めばる、ですね」
「めばるですか?」
「はい。めばるです。」
「めばるんですか?」
「?」
「うちの田舎の方言では、『めばる』は『姦ってOK!』って意味なんですが」
「いや知りませんよ。どこだよその田舎って。っつーかなんでパンツ脱ぎ始めるですか?」
「いいんですよ。もう誰が相手だろうとOKなら。僕は30過ぎで童貞だから魔法だって使えますよ。では、」
「ンギャーーーーーーーー!!」



「素人」「紅茶」「最強」
184名無し物書き@推敲中?:04/03/16 02:07
http://that.2ch.net/test/read.cgi/gline/1078259046/
おまえら創作文芸板一同に告ぐ

上記のスレは挑戦状である
我こそは最強の文章職人と自負する者よ、受けてたつがよい
もっとも、ド素人のお前等にまともな文章が書ける筈など無いがな!
俺はキーモン紅茶で憩いながら眺めているから精々がんばるがよいw

「吝か」「吝嗇」「吝い」
まあ、どこの世界にもケチな奴ってのはいるもんだが、
これは別に金目のものに限ったことじゃない。
心が貧しいやつや気持ちのせまい奴、取るに足りない奴もケチと言うわけだ。
ちょうどひとつ上のレスみてえな奴だ。「やぶさか」だの「りんしょく」だの「しわい」だのって、
全部意味が同じじゃねえか。ケチ(吝)ってことだろ?
そんなケチだケチだケチだって同じ意味の言葉を短い中で使えってもねえ。
お題に気の利いた即興文を当てることに吝かでない文章職人さんたちも、
お題がこんな吝いもんじゃあ可哀想ってもんだ。
難しけりゃいいってもんじゃねえだろ。少しはお前も考えな。
吝嗇家ってのは、普段使わねえ言葉を無理に使おう使わせようとする
お前みてえな奴の為にある言葉だよ。チンケな野郎だ。


っつーわけで再開。
「素人」 「紅茶」 「最強」
 今ダウン板覗いたら祭り始まってたんですよ。
 nyの新種ウイルスが見つかったみたいで、その名も”キンタマ”ウイルス。
 なんていうか、作者のセンス抜群。アナウンサーがどう読むのか今から楽しみ。そのウ
イルスはデスクトップのSSや纏めたファイルをネット上に放流するって仕組み。
 早速の生贄がこれまた最強。メッセ使って女口説きまくってる。その会話も慣れたもの。
「○○にはそのままでいてほしいな。」なんてエセ優しさを振りまいてる。セリフがくさー
とか思うんだけど、言われた女がこれまたぐらっときてるわけ。なんつーか、お前らそん
な簡単でいいの? って感じ。
 恋愛の素人が、ネットで恋愛するなよと。ってよく見たら女の人は娘さんもいるみたい。
娘さんのパンツ穿くように勧められてんの。おいおい、子供持ちでメッセでラブ会話かい。
お前らパソコンロクなことに使ってね―な。
 それになんだよ、その自己紹介。やるならとことん最後まで。おいおいおい、なにをや
るんだ、何を。まぁ、nyやってる馬鹿なんて知ったこっちゃないけどね。
 さて、俺もこの紅茶飲んだら、メールの返事打たないと。相手? もち中学生。しかも
マジ可愛いの。写真はまだ見たことないけどな。まぁ俺も、やるならとことん最後までや
る? ってタイプ。お前らもウイルスには気をつけろよ。じゃあな。


っつーわけでそのままでよろ。
「素人」「紅茶」「最強」
187岸和田:04/03/16 20:40
「素人」「紅茶」「最強」
 身なりのよい、紅茶の似合いそうな婦人が人気のない通りを歩いている。右手には革のハンドバッグ。
「おおっと、動くんじゃねーよ。撃つぞ」
婦人の後頭部に銃を向ける男A。
「きゃ、た、たすけて。どうか命だけは」
「いいとも。そのハンドバッグをおれにくれたら助けてやる」
ハンドバッグが男Aの手にわたる。その直後
「おおっと!!そのハンドバッグ、おれに渡しな。さもないと撃つぞ」
男Aが銃をおろすまえに、男Bが男Aの後頭部に銃を向ける。
ハンドバッグが男Bの手にわたる。その直後
「ザンネェ〜ン!この素人強盗ども!ボクがいただきだ!それくれないと撃っちゃうぞ」
男Bが銃をおろすまえに、男Cが男Bの後頭部に銃を向ける。
ハンドバッグが男Cの手にわたる。その直後
「へへへ、俺がもら…」 「おおっとお、それは僕が…」 「ゴメン!おれっちがもらうぜ」
男Cの後頭部に男Dが銃を向け、男Dの後頭部に男Eが銃を向け、男Eの後頭部に男Fが銃を向ける。
ハンドバッグが男C→男D→男E→男Fとわたっていく。
 「ねえ、いまのばかみたいなの、見たかい」
「見たとも、でもあんなの序の口さ。ここは世界最強レベルの無法地帯だからね」
それを見ていた青年ふたりの会話。
188岸和田:04/03/16 20:43
すいません、またお題忘れました
「猿」「宇宙船」「猫だまし」でおねがいします
189「素人」「紅茶」「最強」:04/03/16 20:46
――「さあ、行こう。僕が世界を救うんだ。」
   最強の勇者タケルは、草原を走った。
    これからが本当の戦いだ!――

「問題ないですか?」
 ある一室で、まだ少年の面影を見せる青年が、ソファーに座り持込の担当者と
対面して言葉を投げかけた。担当者は「う〜ん」と唸りを上げ、首を傾げる。内心は原
稿をテーブルに打ち付けて、「何が「問題ないですか?」だ。こんなのは問題外だ」
と小一時間ほど説教でもしてやろうかと思えるほど、青年の書いたそれは軽薄で
あったのだが、相手がずぶの素人とは言え、暴言でも吐こうものなら社会問題となる。
 担当は渋々「もう少し、練り上げてからここへ持ち込もうね。」と、青年を窘める。
青年は差し出されていた紅茶を啜り、担当者に一言呟いた。
「僕は一皮剥けれますか?」
担当者は、青年の不意の一言に、一瞬顎に手を遣り、頭を悩ませた。そして一言、
「君は猿に玉ねぎを与えた話を知ってるかい?」とだけ言葉を残してして、ソファー
を立ち、部屋を後にした。一人取り残された青年は、その真意が分からなないと
いった様子で、ただただ呆然として、再度紅茶を啜った……。


「夜」「明白」「狂信者」
190189:04/03/17 00:49
今、載り遅れていることに気が付いた…(笑。
すんません。次のお題は188氏の

「猿」「宇宙船」「猫だまし」

でお願いします。
 往復、火星、宇宙船、地球、汚染、植民団。
 旦那、整備士、同乗。
 妊娠、出産――家族。
 
 猿――赤子――赤ん坊。

 デフリ、デフリ、補修、船外作業、デフリ、老朽化。
 
 衝突、直撃、デフリ群。

 作業箇所、パネル、衝突、ケーブル、猫だまし。
 跳出、回転、命綱、螺旋、直撃、切断、救出、不可。
 放浪、星海、流浪、星雲、墓標――宇宙。

 葬儀、無気力、絶望。無遠慮、無理解、無邪気、喃語。
 笑顔、発声――ママ。

 希望。



「夜」「明白」「狂信者」
192191:04/03/17 03:12
デフリじゃなくデブリでした。お恥ずかしい。
 籠の毒物探知機が餌をついばんでいる。狂信者どもの根城には、サリンがあると専らの噂
だった。上層部は強制捜査の挙句、死人でも出たら責任問題になるのでは、と恐れたようだ
が、狂信者をこれ以上放置することは、それより恐ろしい事態に繋がるであろうことはもう、
誰の目にも明白だった。
 ――一九九五年、三月二十日。日本の安全神話が崩壊する、象徴的な出来事が起こった。
 証拠品として押収された車列の窓には、手垢が至るところに付いていた。そこから阿鼻叫
喚の地獄絵図を想像することは決して難しくない。
 今の御時世、義憤といえば陳腐な響きしかないが、しかし私の素直な心情だ。暗い夜を追
いやろうとするように、淡い朝日が富士の輪郭を浮かび上がらせている。上九一色はもうす
ぐそこだ。
 私はナチスドイツに備えるイギリス人のように、ガスマスクを入念にチェックした。

 アポロ十三号が地球に無事帰還したときの管制塔の気持ちが、今ならはっきりと分かる。
とはいえ、民族性の違いだろうか、皆、飛び跳ねてハイタッチを交わすようなことはないが、
仕事を終えた務め人たちの誇らしい笑顔が至る所にあった。日本に挑戦した狂信者の首領は、
日本の法によって裁かれる。


「カイト」「絹」「ヘッドホン」
194「カイト」「絹」「ヘッドホン」:04/03/18 02:32
もう二十分も窓の外を見ている。昨日見た風景と変わらない。
おととい見た風景とも変わらない。吐く息が窓ガラスに当たり、白く曇る。
昨日は窓ガラスは曇っただろうか?季節は移り変わっているということらしい。
ということは窓の外の風景もどこかしら変わっている筈だ。
俺は昨日と今日で何が変化したか見つけるために、再び窓外に目を向けた。
「……カイト。垣内っ!」
担任に見つかった。しかたなくそちらを向く。
「垣内!授業中に余所見とは余裕だな?おいっ聞いているのか!
垣内!こんなもの外せ!」
担任が俺のヘッドホンに手を掛ける。
「学校に何を持ってきてるんだ!」
「……耳当てっスよ。寒いでしょ?」
「この世のどこに音楽が聞こえる耳当てがあるんだ?完全暖房の室内で
なぜ耳当てをする必要がある?」
担任はどうしても俺をほっといてくれないらしい。
「しかも何だこの服装は!」
担任が俺の服を掴む。
「羽織袴は日本人男性の正装っスよ?制服破れちゃったんでしばらく
これで通いマスわ。触らないでくださいヨ、正絹っスよ?」
俺は担任の手を払いのけ、風景観賞に戻った。
なぜ周囲の人間は俺の生きたいように生きさせてくれないのだろう?

次は 「ときめき」「兄弟盃」「〜が行く」
195194:04/03/18 02:34
あー、最初の4行いらねえな。ま、いいや。
 私は趣味で陶芸をやっている。有難いことに素人であるにもかかわらず、ファンが
いてくれるらしく、時折注文が舞い込む。
 たとえば、夫婦茶碗ならぬ兄弟盃を作ってくれという倶利伽羅紋々を背負った
おあにいさん。下回りを多数引き連れ、工房の床にどっかと腰を落ち着けて
土の練り込みから焼き上げまでを凝っと検分し続け、焼き上がった盃を札束一塊と
引き換えに持って行った。時季時季に挨拶状が来ていたが、業界も不況なのか、
最近とんとご無沙汰している。
 たとえば、結婚式の引き出物を求めた若い夫婦。『初めて恋をした時のときめきを
永遠に形にしてほしい』と厄介な注文だったが、ガラス分を多めに配合した釉薬で
七色にきらめく皿を焼き上げた。当人には大いに満足してもらえたが、皿は割れるもの
だと言うことを分かっているのだろうか。情熱の冷めた夫婦が行く末に何を見るのか
までは、私にも分からない。

 私は陶芸をやっている。ごく普通に、壷なんかを焼いてみたいと思っているのだが、
どうにもままならずにいる。

次のお題は「うみうし」「海苔」「名誉」で。
197名無し物書き@推敲中?:04/03/18 11:39
『うみうし・海苔・名誉』

「田村。こっち見てるぞ、うみうし」
同僚の山下がさり気無く口を覆った手の平の下から言う。
「え?」
「ばか、見んな。目が合ったらこっち来ちゃうじゃんか」
俺は慌ててうみうし≠アと小島係長の右上に掛るカレンダーへと視線を動かす
が、そのぎこち無さは自分でも情け無かった。
彼にうみうしという名が進呈されたのは去年の社内旅行で行ったサイパンでのこ
と。ビーチに寝そべる彼を見てうみうしと命名したのは山下だが、当のうみうし
はそんなことを知る由も無い。出世コースから外れたうみうしは社内での存在感
は皆無である。肩に手を置かれる感触。うみうしだ。
「君たちさぁ、夕べは楽しかったねぇ。また、行こうね」
振り返るとニタっと笑う彼の歯の隙間から、青海苔が俺を見下ろす。オゴるから、
の一言に釣られた自分のセコさに後悔の念が押し寄せる。
夕べの酒は本当にマズかった。
日中はひたすら影の薄いうみうしも酒が入ると途端に饒舌になり、武勇伝めいた
ことを話し出した。女のこと、営業のこと―――。社内で失墜してしまった自分
の名誉回復を目論んでいるのかどうかは分からないが、もしそうだとしたら悪
あがき以外の何物でも無い。

長すぎてすみません。
次は「遅刻」「10年前」「タイルばり」
 待ち合わせには15分遅刻。それが私のポリシー。
 時計台の下。両手一杯の薔薇の花束を抱える男。通行人たちの視線を浴び、彼の顔は気
弱に歪んでいるだろう。
 その姿を思い浮かべるだけで、くふくふと笑いがこみ上げる。

 10年前。小学生だった私は誘拐された。タイルばりの浴室に監禁された一週間。犯人は
近所に住んでいたロリコン男。あの冷たい場所では、私はバーゲンセールの人形だった。
 助け出された私に取りすがり、母は泣いて泣いて、忘れなさいと繰り返した。父は買っ
たばかりの家とエリート街道を捨てて、私のためだけに全てをやり直しそうとした。
 やさしい両親。
 この二人のために、強くあろうと思う。

 時計台の下、薔薇の花が似合わない男が立っている。
 出会い系サイトで見つけた男。写メールで確認したとおり、あの変態と顔が似ている。
 ショック療法。あのロリ男に似た奴に抱かれるたびに、私は強くなる。
 きっと、きっと強くなる。
 あんな男のために、人生を壊されたりするものか。


次は「牛丼」「ブルース」「百花繚乱」でお願いします。
199岸和田:04/03/18 19:33
「牛丼」「ブルース」「百花繚乱」
 「牛丼食べてえよお……腹減ったよお……」
田中が情けない声で言う。俺はスゴクその声がむかついたので大声で言ってやった。
「うるせえよ!!ぐたぐた言ってんじゃねえよ!その声キメーんだよ!」
「何だと!こんなんになったの誰のせいだと思ってんだよ!レベル高い山へ行く、とか言っちゃってさあ!それで遭難してんじゃねえかよ!やべーじゃん!死んじゃうじゃんかよ!」
田中が一息で言い、ぜえはあ息を切らせた。
「…悪かったよ、おまえなんか誘うべきじゃなかったよな…でも、まあさ、こんなボロ小屋見つかってよかったじゃん」
「ちっとも良くねえよ…でも外で寝るよりマシだわな…夏ったって、めちゃここ寒いんだろ」
田中があきらめたように床にごろりと転がる。
「なあ、こーいうときってさ、つまらん雑談とかするといいんじゃなかった?」
田中が天井を見ながら小さい声で言う。俺は仕方なく答える。
「ふうん、じゃあやってみるかぁ?あのさ、自分と同じ名前の犯罪者の初公判とか、ニュースで見たらちょっとへこむよね」
「ってかさ、R&Bって何の略なの?ロック&ブルース?いや、ロバート&ブルース?」
「つうか百花繚乱ってどういう意味?辞書引いても載ってなかった気すんだけど」
俺らはいつまでも、いつまでも下らない雑談を続けた。そして命が尽きた。
200岸和田:04/03/18 19:35
ほんと何回もすいません!
お題忘れてました!「残像」「革命」「ボケ」でお願いします
 「突然だが、ちょっと火星まで行ってみてくれないか?」
「あ?」
真島の馬鹿がまた意味不明なことをのたまってやがる。この女は大体いつもこんなカンジだ。
「またボケ倒しかよ」
「今回は違うのですよ。革命的なアイディアがあるのです」
革命的? ヤバイ予感がプンプンするわ。
「最近某所で発見した、この不思議棒で…」
「待て、それは金属バットだ」
「ちっち、最後まで聞きなされ。この不思議棒には物を吹き飛ばす効果があり、これで思い切り打ち上げれば火星まで行けます」
「確かに、友人をバットで打って外国まで飛ばした奴はいるらしいが……だけどさあ、火星は――」
俺は飛んだ。真上にボーンと飛んだ。あのアマ、人が喋ってる途中だってのに振るなや……。
しかし、凄いスピードだ。雲が俺の目の前を残像のように、次々と通り過ぎてゆく。
当然っちゃ当然なのだが、段々スピードが落ちてきた。(色々抵抗する力が働くからね)やがて、上昇が止まった。
ほら、だから無理って言ったろ? 真島の馬鹿は、黙ってりゃ見れるルックスしてんのになぁ。
電波にも程があらぁ。ところで俺どうなるんだろ。どんどん落ちてゆくんですが。

「回想」「酸素」「雲海」
「回想」「酸素」「雲海」

ボクは、あまり自分を不幸だとかは思ってなかったんだけれども。
どうも最近おかしいなあとは、思っていたんだよね。
大事なものや、大事な人を、ずっと守り抜く事はとても大変なわけで。
ボクにはどうやら、守り抜くための力が全然足りないと。
却って守られて、助けられてばっかりで。こうしてつらつらと回想してみると、
どうしてもダメな時の、本当にダメな時の。
これがまた絶妙なタイミングで、ボクは「あいつ」に救われる。
なんだよ。ボクはあいつの付属物かよ?ってなぐらいにさ。
悔しいけど。
あいつはボクなんかとは比べ物にならないぐらいに。
いろいろ見てきたんだろうな。
それがあいつにとって不幸なのかどうかは、誰にもわからないけど。
ボクにも。

疲れきったボクは今、あいつと同じ夜の雲海を眺めている。
手を伸ばせば星がつかめそうな、コンクリートの屋上で。
なんだろうなあ。
ボクはもっと強くなりたい。
ボクは自分が不幸な人間だとは思いたくない。
ボクのせいで、あの星と同じ存在になってしまった人たちの事を考えると、
胸が酸素不足になったように痛く。痛くて。苦しくて。
あいつにもそんな感情を抱えてた時代とかあったのかなとか。
隣の人間を見やって考える。
ボクは強くなれるだろうか。
大切な全てを守る・・・いや、たとえ守り抜く事ができなくとも。
ボクがあの星のひとつに還るまで。
大切な何かを、心の中から取りこぼさずにいられるだろうか。
あいつみたいに、強く、強く。

  ※次は「温泉」「夢」「別れ」でお願いします。
203名無し物書き@推敲中?:04/03/19 12:55
『温泉・夢・別れ』

「東京に着いたら終わり。あたしもう二度あんたと会う気無いから」
千佳子はそう言ったきり一言も話そうとはしない。真司はまるで助手席に石仏
を乗せている様な身持ちのまま、かれこれ1時間近くは走っているだろうか。
「温泉行こうよ」
言いだしたのは千佳子の方だったが、久々の旅行を楽しみにしていたのは真司
も同じだった。
(何でこんなことになっちゃったんだろ)
真司は楽しかった行きの車内での千佳子を思い出していた。ポテトチップを口
まで運んでくれた千佳子、次に掛けるCDを選ぶ千佳子、流れる風景にいちいち
感想を述べる千佳子―――。
寝言
(そんなのが原因で別れるなんて―――嘘だろ、おい)
寝言で別の女の名前を言ってしまう、そんなことはドラマか何かの中だけのことで
まさか自分にも起り得るなどとは思ったことも無かった。頭に負荷が掛るほど思い
出そうとしてはみたが、夕べ夢の中に他の女が出て来たなどという記憶は無い。
ただ問題なのは、浮気をしたことが無いわけでは無いという事実だった。

次は「ストロー」「代表」「崖」
204名無し物書き@推敲中?:04/03/19 13:33
大塚!!!!
おおつか!!!
寂れた町の薄汚れたスーパーマーケットにも拘らず、品揃えは豊富だった。
亜希子がいつも持ち歩いていたあるメーカーの特大ストローを取り上げると正木は唇を皮肉に歪ませた。
宗教法人日輪会代表の私を恐喝するとはあいつも馬鹿な女だったな。
手切れ金の五百万如きははした金に過ぎなかったが、妻に知られるのはまずかった。
岩肌にごつごつと当たって物凄い音がした。正木は気を失った亜希子を崖から放り投げた時の
不思議な快感を思い出し背筋を震わせた。さすがに殺人が癖になってはまずい。
「お客さん、それ買うんっすか?」ヤンキーのような茶髪の店員が特大ストローを握り締めていた正木に声をかけてきた。
「ああ、すまない。これをくれ」ストローを差し出した正木は内ポケットに入れておいた筈の財布が無くなっている事に気がついた。
まさか、崖に忘れたのでは……。青くなった正木を店員が疑わしそうな目で見ていた。
「まさか、お金ないんっすか? さっきから何時間も日用品コーナーでうろうろしてたし、なんか怪しいな」
「何だと、お前!怪しいとは誰に向かって口を利いているのかわかっているのか!」
思わず正木は店員の胸倉を掴んだ。「何すんだよ、じじい! おい! 誰か警備員呼んでくれ!」
正木は普段とは違う自分の行動に驚いたが、まるで血が沸騰したかのように抑えが利かなかった。
三人の警備員に身体を拘束され、集まった見物客に蔑んだ目で見られて更に怒りがこみ上げた。
「放せお前ら!俺は日輪会の正木だ!」店内に警官が来るまで正木は叫び続けた。

次は「銀河」「鉄道」「車掌」でお願いします。
206読者目線感想人:04/03/20 01:53
今回もやや短め。できるだけ要所を指摘することを心がけつつ。
辛口・長文を好まない方はNGワードに「読者目線感想人」を追加してください。
誤字脱字は校正が利くので基本的にスルー。16期最後まで行ったところで良作選をやろう
と思います。では、感想スタート。


>>194 名前でお題を使うのは感心しない。最初の4行、確かに不要。窓硝子の変化よりも
気温の変化で季節を感じるだろう。羽織袴ならなおさら。まとめ。言いたいことはわかる
がストレートすぎる。迂遠であれというのではなく、主張を読者にアピールするためには
様々な工夫が必要、ということ。あと、段落をつけることを心がけるといい。読者をもっ
と意識しよう。

>>196 エッセイ風。頭と最後に同じセンテンスを使う手法でまとめている。ほぼ文章に
破綻もなく、スっと頭に入ってくる。リズムもよい。気になったところでは”情熱の冷め
た夫婦〜(略)”がやや浮いていて、ラストの”ごく普通に”→”壷を”も乱暴に感じる。
おあにいさんを表す良い漢字があった筈なんだが、思い出せない筆者である。情けない。
注文の内容がやや薄味。そのせいで、なんとなく始まりなんとなく終わっている。
次は頑張ってほしい。

>>197 場所が曖昧。”俺”が座っていることも示すべき。内容が薄い。同じネタでまだ
まだ膨らむし、アプローチの方向自体も色々ある。読者をもっと意識しよう。

>>198 ”私”は男女共に(またそれ以外も)使う一人称。意地悪な見方をすれば、最後
まで性別が不明。語り手の場所もやや曖昧。”私はバーゲンセールの”意味がよく掴めな
かった。前もしくは後に理解を助ける文章が必要。まとめ。序破急をきっちり押さえてい
るところと、主人公が前向きなところが良い。問題点としては、まだまだ読者に優しくで
きるのと、15行でやるには行数が足りないネタであることだろう。次は頑張ってほしい。
207読者目線感想人:04/03/20 01:55
>>199 もう一歩踏み込まなければ。色々な膨らませ方がある筈。
読者をもっと意識しよう。

>>201 マンガチックな、という不穏な表現をあえてしてみる。作者が楽しむことは大事
だが、それだけではダメ。読者をもっと意識しよう。

>>202 まず、段落をつけよう。”ボク”と”あいつ”の関係性にしても、27行だらだら
と書き連ねているだけで工夫がない。読者にどこをどう面白いと思って欲しいのか、狙い
をきっちりたてて書こう。

>>203 場面をイメージしやすい。読者を引き込む工夫もしている。できればあと少しだ
け年齢層など、登場人物の情報が欲しく思うが、必要最小限の説明はクリアしているので
OKだろう。たぶん、この後に人物像を含む文章が続いていくのかな。16行では足り
ないネタをもってきたのが間違いのもと。あと、段落をつけること。

>>206 段落をつけよう。2行目が特に悪文。”亜希子”が”正木”のストローを取り上げたよ
うにも見える。1行目〜2行目、4行目〜5行目、センテンスとセンテンスの繋がりが悪い。
2行目と5行目は抜本的に書き直す必要がある。一文中以外のセリフは改行しよう。説明を
入れようという意識は感じるので、次は全体のスムーズな流れに気を使ってみてほしい。


ここまで。続きはまた。
リンクが辿りやすくて素敵だが、誤爆だな。
209読者目線感想人:04/03/20 02:00
げげ。失礼しました。マルチになるので向こうに投稿するのはやめときます。
スレ汚し申し訳ないです。
210岸和田:04/03/20 11:38
「銀河」「鉄道」「車掌」
 僕が押し入れを整理していると、古い一冊の本があった。タイトルは「卒業文集」。
―小学校のとき、書いたものだった。なにも考えないで、遊んでいるだけでよかった頃。
思い出にひたりながら、そっとページをめくる。古いインクの匂いが広がる。あれから十年、か。
―これは田中が書いた文だな。あいつ、どんな文を書いたんだ…
 「十年後・将来の夢」         6年2組 田中畳太郎
おれの十年後、将来の夢は、銀河、いや、宇宙を支配することだ。大統領になってやる。
この紛争や不正が満ち溢れた世界を統べる。民衆には自由を、悪人には死を、宇宙全土に平和を。
そして全世界の鉄道を爆破する。そして世界じゅうの車掌もみな殺しにする。
おれは車掌とか鉄道にちょっとした恨みがある。でも、それからはみんな平和さ。
 …まったくめちゃくちゃな文を書いてるな。まあウケねらいだろうけど。
 僕は文集を閉じ、テレビをつけた。すると、蒼白な顔をしたニュースキャスターが映った。
「…臨時ニュースです。世界じゅうの鉄道がすべて爆破され、定年となった車掌もふくむおおぜいの車掌が殺されたようです。
ええと、このニュースは田中畳太郎と名乗る男からのビデオ・テープにありました。
ほかに、田中畳太郎氏は核ミサイルのスイッチをつくりあげた、とも言っています。
彼の要求は、宇宙に関する研究をしているところ全ての権利と、世界最高地位就任、との…」
 僕はテレビを消した。あいつ、本当に叶えやがった。
 
 「バリケード」「反対」「パンク」
 迫りくるストロベリーオンザショートケーキ症候群には、もはやバリケード
を設置するしかなかった。既に私の足がコージー・コーナーへと向かっている
ことを考えれば、それなりのバリケードでないとこの病気は防げないだろう。
「ふざけるんじゃねえぜ」と彼氏が喚いた。「お前まだ食うのか?さっきシュ
ークリーム19個食べたばかりだろうが。ぶくぶく太りやがって。自分の太腿見
てみろ。滝川ハムにでも出荷するつもりか?パンク寸前じゃないか。いい加減
にしてくれ」
 私は店に入りながら言った、「しょうがないのよ。私はイチゴが乗っかって
る甘いショートケーキが食べたくなるの。食後に」
 食後、と彼氏は呟き首を横に振って、私の追跡をあきらめた。彼ではバリケ
ードにはならないのだ。
「いらっしゃいませ」と店員の女の子がにっこりと挨拶した。

 私は店員が15個のショートケーキを包んであるのを眺めていた。赤い文字で
『コージー・コーナー』と白い箱に書かれている。赤色がイチゴで、白がクリ
ームを連想させる。
 ああ、赤じゃなくて緑なら青汁症候群になってただろうに。私は悪くない。
悪いのはこの店だ。過剰包装反対っ☆
『バリケード・反対・パンク』
※最初に謝ります。長過ぎた。

俺は明日のNNP(ネットニュースペーパー)の見出しのことを考えながら車の
高度を下げた。与党の自社ビルを囲むバリケード周辺では動けなくなって乗り捨て
られた車の列が道を占拠している。地上に何をバラ撒かれたのかは分からないが
どれもパンクさせられているのは明らかだ。俺は着陸する場所を慎重に見極めてから
反重力エンジンを着陸モードに切り替えた。
俺は大手に勤める新聞記者。無論大昔の様に紙に印刷する時代じゃないが、記者に
求められるのがセンス≠ニフットワーク≠ナあることに変わりはない。まぁ今日
いち早く現場に駆けつけられたのは夕べたまたまこの近くに住む女のアパートに居た
お陰であり、運が良かっただけだと今回は謙虚に受け止めることにした。
俺は肩にセットしたカメラを起動し、アームを伸ばして前に持ってきた。
(テロ――いや、クーデターってことになるのか)
日本も今や二大政党の時代で、どちらの政党が政権を握るかは挙次第。現在の首相
は昔ジーンズが似合うとかで表彰された元俳優だ。当初はそのカリスマ性に物を言わ
せて世論のハートをがっちり掴んでいたが、余りの専横ぶりに途中から党内の反対派
が多数離党して敵対政党に流れ始めた。いまでは世論も真っ二つ、見ての通り警官隊
も真っ二つだ。
(あっちは多分、長老のハラ元首相を擁立して来るんだろうな。それにしても穏健派
のあの人にしては大胆なことしたモンだ――)
その時、俺の頭の中には彼が昔言った「夢には続きが――」という言葉が浮かんだ。
(これだな、明日の見出しは)
俺は取り合えずポケットからビタミンバーを取り出すと大きくひとかじりした。

次は「亜熱帯」「集団」「優越感」
 暑い。日本は亜熱帯気候の国になったのか? と思っちゃうくらいだ。厳密に言えば、ここは特殊環境なのだが。
今、部屋の中にむさい男どもが集団で固まっているのも、この暑さの要因の一つだろう。
こりゃあ、古い言葉だけど、3K≠セな。「きつい、きたない、きびしい」あれ、一つ違う?
まあ、どうでもいいやそんなこと。それより来たよ、天井が開いた。男どもがだらけを捨て去り身構える。
しばしの沈黙が生じる。部屋の空気が張り詰める。顔を流れ落ちる汗も何のその、皆ただじっと穴の開いた天井を睨む。
落ちてきた。何が? アイスが――瞬間、男どもは獣になった!
全員が全員思い切り跳ね上がり、一本のアイスキャンデーを掴み取ろうとする。
全員が取っ組み合いのバトルロイヤル。幾人と倒れ、いつの間にか残ったのは俺とあと一人となった。
5メートル程の間、俺は飛び込む。瞬発力は人一倍あると自覚している。
あっという間に内に入り込み、拳を固め、相手に金的を打ち込む。もんどりうって蹲る相手。
俺は落っこちたキャンデーを拾い、包装を破り舐める。この優越感よ。

 今回の実験は、俺の大学教授が企画したもので、俺はその生徒。部屋の連中もそうだ。
「よお、どうだね」「ああ、教授どーも。外は天国すね」「一番最初に部屋を出るのは君だと思っていたよ。どうかね? 参加してみて」
「結論から言うと、人間は闘う生き物だと強く感じました」「そうだね、日本人を闘う集団に変えるため、これからも…」
研究は、まだまだ続く――。

「ロマン」「サンバイザー」「唐揚げ」
214読者目線感想人:04/03/22 07:48
お詫びと訂正を。セリフは改行と指摘していましたが、それに限らないようです。
慌てて書棚の奥の本を調べてみましたが、なるほど、よくよく見れば確かに改行していな
いものもありますね。思い込みでした、すいません。汗顔の至りとはまさにこのこと。
筆者も毎回、勉強させていただいています。

明確なルールはないと思いますが、おそらく、やや短めのセリフが入る場合は改行がなく
ともセーフのようです。
「だけども、やはりこのように長いセリフが入る場合、改行するほうが望ましい、という
感じですね」
いや、頓珍漢な指摘で失礼しました。
「それでも、やはり筆者はこう思うのです」セリフがこう続くとなんだか気持ち悪いんで
すよねえ。いや、人によりけりだと思いますが。
「こうだとまだましかなあ」と思えるんですけども。
「でも、小松左京氏とかも普通にセリフをこう続けていらっしゃいます」だから筆者の感
覚がおかしいのでしょう。というわけで、今後セリフの改行については長いセリフが続く
場合以外は指摘しないことにしますね。

作者の皆さんを混乱させてしまって、本当にすいませんでした。
215読者目線感想人:04/03/22 07:49
いかん、また誤爆だ。失礼。
216むし ◆64MusiXlOs :04/03/22 16:09
「ロマン」「サンバイザー」「唐揚げ」

 「俺さぁ、考古学者になりたいんだよね」
浩二の突然の告白に私は玉子焼きを取り落としそうになった。
普段から自らを現実主義者だと豪語し、実際、ロマンのかけらもないこの男から
ロマンがなければとてもできないような職業が出てくるのは信じられないことだったのだ。
 「何アンタ……頭でも打ったの?たしか公務員になりたいんじゃなかったっけ」
 「ちげぇよ!俺はほんとになりたいの!」
そう言って、浩二が立ち上がった。
そのとき勢いがよすぎたのか、私が作ったとっておきの唐揚げがシートの上にぶちまけられた。
しかし今は怒りよりも好奇心のほうが上回っている。
 「で、なんでなりたいわけ?」
 「発掘作業ってゆーの?ああいう細かい作業好きだから」
なるほど、と納得した私ははずしていたサンバイザーをつけ、スニーカーをはき、
ピクニックという戦線から離脱した。後ろから浩二が何か言っていたようだったが、黙殺する。
家に帰ってから私は大事なことに気が付いた。唐揚げの文句を言い忘れたのだ。
ああ、だめだなこりゃ。

次のお題「ダンボール」「貯金箱」「位牌」
 小学校低学年の頃だったろうか。夏草の匂い立つ原っぱの真中に、僕たちは基地を作った。
近所の工場からダンボールを失敬してきて、ガムテープで繋いだだけの簡単なものだが、仲間
内で秘密を共有することに子供心が踊ったのは、今になっても新鮮な思い出だ。
 基地は、立派にひとつのコミュニティーになっていた。僕を含め、集まってきた子供たちは、
野良猫にミルクをあげたり、蛇苺やどくだみを磨り潰して毒々しい色の液体を調合したり、ネ
ジやら翡翠の小石やらのがらくたが詰まった貯金箱を保存したり、祭りで掬ってきた金魚のな
きがらを生めて、そこに位牌を立てたりした。悪意からではないが口煩い大人たちの目を盗み、
大人の真似事をするのに皆、夢中になった。
 基地は、増築に増築が重ねられ、数夜にして高架橋下のホームレスたちのそれに見劣りしな
いだけの建築物になったが、やがて台風が通り過ぎると、見るも無残なゴミ捨場のようになっ
た。ちょうどその頃、悪戯が大人たちに見つかって、嫌々後片付けをすることになった。
 今、妻と子を連れてその場所に立っている。一面、雨を受けたように新鮮なアスファルトが
敷かれ、見渡す限り車が停まっている。原っぱは今や、大規模量販店と、その駐車場となった。
「パパ! なにぼーっとしてるのよ!」妻が鬼のような形相で叫んでいる。
 今日は開店セールだ。原っぱで遊んだ一人の少年は今、家計に悩む家庭の父親になった。


「明日」「缶コーヒー」「お買い得」
「お買い得だな……」
まだベットから出て何分も経っていない俺の頭は、冷蔵庫に入れていた缶コーヒーを飲み干す
まで使い物にならなかった。
「お買い得だな……」
頭とPCを覚醒させ一番のお気に入りのサイトを覗き込んだ時と同じ台詞が部屋に響く。
モニターには大小さまざまなクラッカーやケーキ用の小麦粉や三角帽子や部屋の飾りつけと言った
パーティー用品が何時もと比べ物にならないほど安い値段で表示されている。特別セールは明日までらしい。
と言っても、夜型の俺にとって明日はもう十数分で来てしまう。迷っている暇は無い。俺はメールで
商品番号が6番と13番、それに40番のクラッカーと小麦粉と蝋燭を注文することにした。
「6番のクラッカー(AK-47突撃小銃)を120丁。13番のクラッカー(ノリコンS86後装突撃銃)を50丁。
40番のクラッカー(トカレフTT自動拳銃)は200丁で良かったよな。小麦粉(C4プラスティック爆薬)は
150kgで蝋燭(電気信管)は300個っと。それじゃあ、そ〜しん。」
頼まれていたパーティー(戦争)用品を注文し終えた俺は窓を開けて地上2階の至って普通の景色を
眺めた。これも見納めだと思うと少し寂しい気もする。
「それにしても……お買い得だったなぁ」

「軽口」「場所」「大変」

 黄昏時。妻が亡くなったアスファルトの歩道に、圭介は百合の花束を置いた。

「約束の場所へ!」
 新興宗教の教祖は大声で叫ぶと、ビルの屋上から飛び降りた。どんと鈍い音がして、夜
の歩道に、男と女と血で染まったホールケーキがつぶれていた。女は圭介の妻だった。
 銀座心中。教祖と弁護士夫人の許されぬ恋。W不倫の悲劇。
 圭介が弁護士だったことも災いし、大変な騒ぎとなった。マスコミはこぞって推測とい
う名の妄想を垂れ流した。職場の弁護士事務所でこそ下世話な軽口は聞かれなかったが、
近所の主婦や、一生会わない赤の他人が、事件のことをおもしろおかしく噂した。
 二日後、正式な発表がなされた。事故だった。
 買い物帰りの彼女の上に、教祖が落ちてきたのだ。衝突による死。死の瞬間まで、彼女
と教祖は一面識もなかったのだ。ホールケーキは圭介のためのバースディケーキだった。

 圭介は歩道にしゃがみこみ、妻の血がばら撒かれたアスファルトに触れた。既に清掃人
の手が入り、なんの痕跡も残されていなかったけれど。ここで妻は死んだ。
 泣き出しそうな気持ちを抑え、圭介はやっと立ち上がると自宅へと歩き出した。
 亡き妻へ捧げた花束は、酔っ払いに拾われて、クラブのホステスへと贈られた。


 次のお題は「女王」「龍」「ゆで卵」でお願いします。
「将軍、ついに発見いたしましたな」
 龍の棲家と噂される火山脈の麓、もうもうとした噴煙とぼこぼこと泉の湯だつ音がたち
込める崖下に大きな乳白色の殻が見える。
「女王が見た夢のお告げは本当であったか」
 後方には調査隊の兵士一万。疲労の度合いが、道中の過酷さを物語っていた。
「それにしても巨大ですな。陛下の居城まで運ぶのは到底不可能かと」
「確かに、その通りだな。兵士も疲弊しておる、さてどうしたものか――」
 将軍と呼ばれた男は、眼前の光景にしばし思考をめぐらせた。

 贅を凝らした謁見の間。豪勢な椅子に腰掛けた女性。平伏した男。
「女王陛下、調査隊、只今帰還いたしました」
「うむ、して結果は如何であったか」
「龍の卵は、それはそれは美味しいゆで卵でございました。報告は以上です」
「ご苦労であった――」



「葬儀」「笑い」「碇」
221名無し物書き@推敲中?:04/03/23 18:09
『葬儀・笑い・碇』

友人の葬儀が行われている公民館に足を踏み入れた俺は、途端に違和感を
感じた。告別式等に流れるムードがある種独特なのは常だが、今回は何か
が違う。何と言うか――厳粛さに欠けるているというのか――。
そうなのだ。俺はふと、笑いを堪えるかの様に小刻みに肩を振るわせる人々
の存在に気付いた。俺は知った顔を認め近づくと、抱いていた疑念を投げ掛けた。
「何がおかしいんだよ?不謹慎じゃないか。だいたい――」
「いや、おまえあいつの職業知ってたか?」
「ああ。船乗りだろ?亡くなったのも、そもそも勤務中の事故で――」
「だからって、ぷふっ。いくら本人の希望とは言え、くっくっくく」
そいつは声を押し殺すため口を押さえた。そしてもう一方の手で祭壇を指さす。
棺桶の大きさが尋常では無いのだ。その幅は通常の3倍はあるであろうか。
そいつの話に寄れば、本人が棺桶に碇を一緒に入れて欲しいと、そう言ったら
しい。やがて男達7、8人係りで300Kgを越えようかという碇を持ち上げ、
上手く棺桶に入れようと苦労する光景が繰り広げられた。「んっ!」「よいしょ」
等のうめき声が会場のクスクス笑いを誘いはじめた。
  
1時間後、火葬場の送迎バスに乗り込んだ俺は前を走るダンプカーを見つめていた。
まぁ確かに普通の霊柩車には乗らないだろうが、いくら何でも――と、その時、
カーブを曲がり損ねたダンプカーがガードレールを突き破って崖下に転落したのだ。

運転手の安否はまだ分からない。ただ、目の前の木の幹には蓋を失った棺桶を寸で
のところで繋ぎ留めた碇が引っかかっていた。

次は「加工」「下降」「火口」


急に降り出した雨に、ぼくと彼女は山のふもとから少し離れたバス停まで駆け
戻った。彼女はリュックから折り畳み傘と双眼鏡を取り出し、傘をぼくに渡す
と双眼鏡を覗き込んだ。五合目付近から上は霧でほとんど見えなくなっている。
「晴れていれば、あの辺りが火口ですね」
撥水加工を施された傘の先からこぼれ落ちる雨の雫は、双眼鏡を覗く彼女の手
を濡らしていた。彼女は一人で喋り続け、ぼくはそれを聞き続けた。
「折角バードウォッチングに来たのについてないですね……あ、鳥!」「え?」
「先生ほら、今そこに、あ、一気に下降していきます、わぁ、すごいですよ。
きっと鳥も雨にびっくりしたんですね。ねえ、見ましたか?」
ぼくは応えなかった。裸眼のぼくに見えるはずもないのに。
彼女はずっと一人で見ていた。ぼくのことなんか一度も見やしない。ぼくは悔し
いのか悲しいのか、何ともやりきれず、鳥にまで嫉妬していた。どうしても彼女
が欲しい。今日だってそのためにこんな田舎までやって来たのだ。彼女が欲しい。
その気持ちを押さえられず、彼女の肩を抱こうと腕をまわした。途端、
「やめてください」彼女は手をはね除けはじめてぼくを見た。軽蔑の眼差しで。
ぼくは目をそらした。さっきまでの気持ちが急速に萎えていった。
そのまま鳥になってどこかへ消えてしまいたかった。

お次は「メルヘン」「つばめ」「傘」でよろぴく。
223岸和田:04/03/24 20:57
「メルヘン」「つばめ」「傘」
 「ねえ、ホントにやるの?めちゃヤバイよこれ…」
田中が情けない声で言う。いまにも泣き出しそうだ。
「バッカ、おまえ、これはな、聖戦…いわばジハードだ。わかるか?これは戦いなんだよ。誇りと名誉を賭けた戦いだ」
高橋がなだめるように言う。
「でもよ…いくらなんでも学校テロはねえんじゃねえ?なんかメルヘンな現代おとぎ話って感じ」
神田が言う。
夜の学校を俺たち4人はずっと眺めていた。手には傘と自転車の空気入れのポンプを合体させつくった銃。
「いいんだよ、俺らをクズ呼ばわりして濡れ衣着せて退学にしやがった糞どもに復讐だ」
俺が言葉をよく選んで言う。そして俺たちは無言で学校に入っていった。
あらかじめ弟に開けさせておいた窓から入る。そして教室から30本ほどチョークを失敬し、壁やら黒板やらに書いていった。
「つばめのごとく速く、春の熊のような力。ありえねえ〜団参上」 「ファッキンジャップ、スキャム・ティーチャー」
そして職員室に向かったが、あと10メートルというところで後ろから声がした。
「こらぁ!なにやっとるくぁあああ!!」 事務員の竹原だった。
俺たちは慌てずにさっと銃を向ける。
「死ねっ!!」 かちっ。ぽこん。いてっ。
竹原へのダメージは皆無だった。俺らはまたたく間に留置所へ入れられた。

 「猫」「そんなこと」「ラップ・シンガー」
岸和田へ
最低限の進化さえ出来ないならコテハン使うな!



 「ねえ、ホントにやるの? めちゃヤバイよこれ……」
 田中が情けない声で言う。いまにも泣き出しそうだ。
「バッカ、おまえ、これはな、聖戦……いわばジハードだ。わかるか? これは戦いなん
だよ。誇りと名誉を賭けた戦いだ」
 高橋がなだめるように言う。
「でもよ……いくらなんでも学校テロはねえんじゃねえ? なんかメルヘンな現代おとぎ
話って感じ」
 神田が言う。
 夜の学校を俺たち4人はずっと眺めていた。手には傘と自転車の空気入れのポンプを合
体させつくった銃。
「いいんだよ、俺らをクズ呼ばわりして濡れ衣着せて退学にしやがった糞どもに復讐だ」
 俺が言葉をよく選んで言う。そして俺たちは無言で学校に入っていった。
 あらかじめ弟に開けさせておいた窓から入る。そして教室から30本ほどチョークを失敬
し、壁やら黒板やらに書いていった。
『つばめのごとく速く、春の熊のような力。ありえねえ〜団参上』『ファッキンジャップ、
スキャム・ティーチャー』
 そして職員室に向かったが、あと10メートルというところで後ろから声がした。
「こらぁ! なにやっとるくぁあああ!!」事務員の竹原だった。
 俺たちは慌てずにさっと銃を向ける。
「死ねっ!!」 かちっ。ぽこん。いてっ。
 竹原へのダメージは皆無だった。俺らはまたたく間に留置所へ入れられた。
どういう訳か、私はラップが好きになれないでいる。
「そんなことは個人の好き好きなのだから、別に良いのではないか」
と思われる方も多いだろうが、それでは私の気が収まらないのだ。
私は過去にラップシンガーの方からラップの魅力について聞いたことがあるが、
その時感じたのは、私が普段使わない感覚で物事に触れていると言うことであった。
つまり逆に言えば、私はまだその感覚を使わずに生活していると言うことである。
生物に感覚があるのは、それが生きるために必要だからである。
では感覚が使えないとどうなるか。猫の髭を切ると、真っ直ぐ歩けなくなると言う。
人間もまた感覚がなければ生活は困難となる。
私がラップを好きになれないのは、ラップを好む人が使う感覚を使えないからではないか。
そう考えると、音楽の趣味と切って捨てるわけにはいかなくなるのである。

次は「スピーカー」「爪切り」「入道雲」でよろしゅう。
 休日の晴れた昼下がり、私はいつにもまして、名盤が奏でる演奏に陶酔していた。
 先日、遂に買い換えたスピーカーは、驚くほどの臨場感ある振動を響かせ、閉めきった
室内を名演奏会場へと替えてくれていた。
 第二楽章が終わる頃、私はいつしか髭を撫でる指の動きを止め、短くなった爪先をぼん
やりと眺めていたことに気付いた。

 ――小型の自動車が買えるほどの高級スピーカー購入を必死に説得する私、嫌がる妻。
 妻が渋々出した交換条件は――『指切り』ならぬ『爪切り』の約束。
 購入したその日すら誓いを守れず、「明日こそ――」と情けなく言い訳する私の指の爪
は、小言を言うでもなく切り揃えてくれた妻によって、どんどんと短くなっていった。

 視線を庭に向けると、洗濯物を干し終わった妻が、ベンチに座り日向ぼっこをしている。
 私は思い切って椅子から立ち上がり、窓を大きく開けて、妻に話し掛けた。
「おーい、もう切れる爪が残ってないんだ。君の隣へ行ってもいいかい?」
 妻は眩しそうに手を翳しながらも、にっこりと明るい微笑みで頷いてみせた。私はちょ
っぴりの照れを隠すために伸びをして、初夏の空気を力いっぱい吸い込んでみた。
 見上げた空は青く、曇り一つない呼気の先には、白い入道雲がぷかぷかと浮かんでいた。



「控え室」「情報」「森」
「えー、こんにちは。こちらはクリス・モルトン選手の控え室です。早速インタビューしてみましょう。
 こんにちは、今日は世界心理戦王者決定戦と言うことで、どのような心境でしょうか」
「今そんな質問したところで、本当のことを言うと思うかい?もし僕が言ったところで、
 誰も本当の心境だとは思わないだろう?」
「でも、対戦相手である吉川啓希さんはさっき色々お話していましたよ」
「まあ、それがあの人の戦術だと言うことだね。僕は彼とは違う方法で行くと言うことさ」
「つまり騙すか黙るかどちらを選ぶか、と言うことですか」
「いや違う。騙す以外にはない。黙ると言うことはそれだけで相手にとっては
 貴重な情報になってしまう。だから黙ることは騙すための役にしか立たないよ。」
「最後に質問ですが、今日の戦いの展望を一言で。」
「よく深い森の中を探索するとか言う人がいるけど、そんな難しい物じゃない。
 最後は投げたコインが表だったか裏だったかの話さ」

「かゆみ止め」「ドライバー」「役場」
「かゆみ止め」「ドライバー」「役場」

 「ちっ、ノロマが」
 制限時速ぎりぎりで走るドライバーの車を、対向車線から一気に抜き去る。片側1車線
追い越し禁止の田舎道だ。今日はこんなことを何度繰り返しただろう。
いや、今日に限らず休日はいつもこの調子だ。
 田舎町の役場勤め、リストラの嵐が吹き荒れるこのご時世、羨ましがられたことは枚挙
にいとまがない。だが、毎日の決まりきったルーチンワークと、くだらない気遣いばかり
しなければならない職場の人間関係にほとほと疲れ果てていたのだ。

 いつの間にか道は行き止まり、湖畔の駐車場に入った。綺麗な夕焼けと湖畔のさざめき
に、唐突に昔の友人を思い出した。「傷ついた後が大事なんだ」と言っていた。失恋でヤ
ケになっていた俺は、派手なことばかりしてても駄目なんだ、と叱られたのだった。

 今の俺の心に必要なのは栄養ではなく、ストレスの解消でもない。心がむず痒くなった
時は心のかゆみ止めが必要なのだろう。これまでは痒みを無視して、寝ている間にかきむ
しって被害を大きくしていたのだから。
 夕焼けのオレンジが目に染みるようになり、俺は車に乗り込んだ。明日の日曜は、久し
ぶりに家族サービスでもしようか。 

次は「永遠」「虚脱」「空間」で
 変な草をふいに触ったとたん無性に右の手のひらが痒くなってぼくは棚からかゆみ止めクリームを取り出す。
 黄色くて平たいプラスチック・ケースにこげ茶色のふたで締められているそれは、ちょっとレトロな香りのするものだ。
 なにげなくふたを廻して開けようとするが密着したようにびくともしない。
 気を取り直して右の手のひらに力を集めようとするがかぶれた手ではどうにもこうにも集中できない。
 ゴム手袋を使ったりして摩擦力を使えばいいのかもしれないがあいにくうちにはゴム手袋など存在しない。
 この微妙な不快感を和らげる軟膏と出遭うためにも、とにかくゴム手袋があれば道は開けるというものだ。
 この壮大な計画を実行するべくぼくはダウン・ジャケットを羽織り、ポケットにかゆみ止めを忍ばせた。

 おんぼろ車を走らせてやってきたのは町役場であった。
 テレビを眺めながらぼんやりと名前が呼ばれるのを待ち続ける住民たちの横を通り抜け、ぼくはトイレへと向かっていった。
 周囲に気を配りながら清掃用具の詰まった扉をリスのごとく繊細な動作で開けてはバケツにかけられたゴム手袋を手にとる。
 そしてうやうやしくポケットからかゆみ止めを取り出してぼくはゴム手袋をはめて戦闘体勢に移る。

 企みは失敗に終わってからふと清掃用具の片隅のマイナス・ドライバーが目に留まる。
 これでむりくりこじ開ければなんとかなるかもしれないと望みをかけてふたとケースのわずかな隙間にドライバーの先端を差し込む。
 角度をつけて狙いを定めてからぼくはタイミングを見計らって一瞬の隙に両手に力を向ける。
 すると限りなく破壊音に近い不快な音を立ててふたが宙を舞うではないか。
 ふっと気を緩めた瞬間、なぜか左手で抑えられていたはずのケース本体まで飛んでいってしまったのだ。
 するとうまい具合にトイレのドアが開いて小便を足しに来ただけのこの不運な男の鼻の頭にケースが当たってしまう。
 ふたとケースが床に落ちるころこの見ず知らずの男の鼻の頭には、かゆみ止めクリームが艶かしく付着していたのだった。

 この心優しき男の助言をもとにぼくは皮膚科にいった(本来早くからそうするべきだったのだ)。


つぎは「駅」「スケート」「やかん」でお願いします。
230229:04/03/26 00:40
かぶってしまった。
お題は228ので。
私達の愛は永遠よ、と言っていた妻が家を出ていった。
永遠なんてないよ、と思っていた俺は未だにこの家に居る。
妻との十年間のほとんどを過ごした空間にしがみついたままでいる。
二つきりの歯ブラシ、揃いのマグカップ、キャラクターの写真立てに入った結婚式の二人。
妻が家を出るまでは目にとめもしなかった、内心馬鹿馬鹿しいと
思っていた代物達が、この時が来るのを待っていたかのように俺を責める。
俺を虚脱状態に陥れ、抜け殻になっていくのを含み笑いで眺めている。
彼女にとってはたった十年の永遠。
俺にとってはこれから先ずっとずっとずっと、死ぬまで続く、永遠。

お次は「アメリカ」「海岸線」「ダッシュボード」でよろしくったらよろしく。
232名無し物書き@推敲中?:04/03/26 13:35
『アメリカ・海岸線・ダッシュボード』

彼と出逢った海を、私は見ていた。
左手に続いているはずの海岸線は米軍基地に覆われて、その全体を見渡すことは
出来ない。
「昔はね、好きな人と良く歩いたもんさ。黙ったままね。ずうっとこの海岸線
が続けばいいと、ただそう思った。そんな、時代だった――」
祖母はいつか、そう言っていた。ちょうどこの辺りのことを言っていた気がする。
ここが変わってしまったことを、責めている様な口調ではなかった。
「それも、悪くはないな」
私はそう、ぼんやりと思っていた。お蔭で彼と出逢えたんだから――。
横の娘が立ち上がる。まだ3つの娘。ダッシュボードに小さな手を掛け、海を見
ようとつま先に力を込める。
彼は祖国へ帰って行った。故郷のアメリカへ。別に責める気は無かった。向こう
には彼の生活がある。それは最初から解かっていたことだ。覚悟は出来ていたはず
だった。
彼の残した娘が振り返る。私は彼女の無垢な笑顔越しに海を見た。
基地は海岸線に、重々しくのし掛かっていた。

次は「噂」「見下ろす」「前代未聞」
233ピース:04/03/26 18:39
「噂」「見下ろす」「前代未聞」
 「銃に弾がはいっているなんて思いませんでした」
中年の男がきわめて冷静に話している。刑事がその話を聞いている。そう、これは事情聴取。
「えーと…全部で89個の弾痕が現場にあったんだけど…被害者は14発くらっていたんだけど」
刑事はイスから立ち上がり、男を見下ろすと、肩をぽんと叩いた。
「夫が妻に白昼堂々銃乱射!89個の弾痕!」
噂にもなった前代未聞の事件。

 「I」「MY」「ME」
234I/MY/ME:04/03/26 19:00
「IとMYとME、この三つの単語を使って、短いお話を書いてくれたまえ」
 と先輩がのたまった。わたしは思わず、
「なに馬鹿げたこと言っているんですか。そんな阿呆らしいお題、どう使えば
良いっていうんですか。とても面白い話なんて出来っこない。話の中で、外人
にでも喋らせますか? ちょっとは考えてくださいよ、脳味噌あるんですか」
 と叫んでしまった。先輩はふふんと鼻で笑って、
「そう思うか、なら手本を見せてやろう」と言った。

 それから先輩は原稿用紙を取り出して、何事かを書き付けた。
「 I MY (アイマイ)なものは、 ME (わたし)…… わたしは一体誰?
 わたしは、まだ熟せぬME(実)…… わたしは、I(愛)…… 
 どうしてカタツムリがカラを持っているか知っているかい? かれらMYMY(マイマイ))
 は、自分の所有物を、あの中に溜め込んでいるからなんだ……」

「先輩……」僕は笑いを堪えながら顔を上げた。すると目の前に、真剣な
表情で僕を正面から見据える先輩の顔があった。「この詩は君に捧げる」
 そう言って先輩は僕にキスをした。多々良浜工業高校文学部の部室に叫び声が木霊した。
お題は、
「真言密教」「スプリンクラー」「螺旋グラフ」
――何故こんな天気の良い日にも授業があるのだろう。
外を見ると遠く離れた山々の稜線はおろか、その岩肌までもが見える。
視線を前に向けると、定年間近の数学教師が熱心に授業をしている。
しかし自分の周りを見る限り、その教師の熱意は伝わっているとは言えそうにない。
「一見規則がないような物でも、その中には式で表せる物が多くあります」
教師はそう言うと、1枚のプリントを配り始めた。
「プリントの左側にあるのは真言密教等に見られる曼荼羅です。
プリントの右側の式をグラフにすると、左側の曼荼羅が出来上がります」
どの生徒もプリントをぼんやり眺めている。
教師としては例え出来なくても、興味を持ってもらえればと思っているのだろうが、
その試みは成功を収めたとは言い難いようだ。
天井を見上げるとスプリンクラーが目に付いた。
あれが動いたら黒板の螺旋グラフみたいに水が出るのだろうか。
そんなことを考えている内にまぶたは重みを増していった。
237236:04/03/26 23:18
お題忘れました。「電気」「風」「睡眠」
 ここは雲の上。ゆるやかな春風が香る。
そんな中、今日も今日とて雷様の兄弟は地上を見つめていた……。
「おい、3丁目の井畑さん、まだ家から出てこないぞ。あの人今日就活だったよな」
「あの人睡眠時間少ないんだよね。起こしてあげなくちゃ兄ちゃん」
兄の方が、どーん、と呟くと、3丁目に白い稲光が発生し、轟音が響いた。
「やったね兄ちゃん、井畑さんがパンを口に咥えて飛び出してきたよ」
「井畑さんくらいの歳になると、再就職のチャンスも限られて来るんだから、大変だよな」

 「兄ちゃん兄ちゃん」
昼食をとっている兄の背中を弟が引っ張る。かなり焦っている様子である。
「どうしたどうした! 最近よく吐きそうになるからゆっくり食べたいんだよ。食わせてくれよ」
「そんな場合じゃないよ! 4丁目の唐沢さんの息子が苛められてるよ」
「ああ、あの子はよく苛められるよな。苛める方も卑怯だな、タイマンでやれよ。ったく…」
「あの近くに雷だしてよ」
「今日はもう一回出したから無理。お前がやれい。『どーん』」
「ああ、苛めてる子供達の遊び道具の電池に当たっちゃったよ! 充電されちゃったよ兄ちゃーん!!」

「海水」「空き缶」「サブリミナル」
「風の力を使って電気を起こす風力発電は安定が望めない。波、太陽などでも同様です。
そこで、私は地球上もっとも豊な資源である人類を使う発電に取り組んだのです。人間の
睡眠の力を使って電気を発電する、いわば睡眠力発電です!」
 壇上に立つ山崎教授の発言に、エネルギーシンポジウムの会場は静まりかえった。
参加者たちは、狂人をみるような目をしながらも、声に出しては笑えない。見た目は病弱
そうな痩せぎすの青年だが、最年少ノーベル賞受賞者、世界のプロフェッサー山崎だ。
「人の脳波は微弱な電気を発しています。私はレム睡眠と呼ばれる脳波の動きに注目し、
その電気をレムリア51変換機により、増幅することに成功しました。どうぞ、お手元の資
料に注目してください。私の試算によれば……」
 淡々と、だが熱気を込めて、若き天才は誰もが幸せになる、輝ける未来を説明した。
 後から振り返ってみれば、その日が人類の転換期だった。
 公園のベンチで米寿を迎えた山崎老人は溜め息をついた。空はどこまでも青く、木々は
緑に生い茂っている。睡眠力発電は地球に優しい。だが、人類は。
「起きている時は今まで通りで、寝ている時だけ皆で発電すればいいと考えたんだが」
 貧富の差により、睡眠を仕事とする者と、電気を消費する者の、二極化が進んでいた。

 次のお題は「夢見草」「春」「和菓子」でお願いします。
240239:04/03/27 00:40
ごめんなさい。お題は238のでお願いします。
新着レスの表示したはずなのに、
何か操作をミスってしまったようです。
もう手遅れ。書いちゃった。「夢見草」「春」「和菓子」
―――――――――――

私の大好きな先生は和菓子が大好き。らしい。
ネットでの、彼の日記から先生の趣味思考性格人生経験日常生活過去未来なんやらかんやら。
様々な情報を断片的に汲み取り、彼が今日もお元気そうである事を確認する。
いい時代になったものだなあ。
昔は作家の情報なんて、作家が出した本の後書きや新聞なんかのインタビュー、
誌面の隙間から見える断片的な何か。本当に少なかったんだから。
なもんで、作品の登場人物が例えば「春が好き」なんて言ってたら、
「ああ、作者も春が好きなんだろうなあ」とか勝手に思い込んじゃったりね。
まあ創作物の大半は作者の内面の切り売りと言われているから、
たいした違いはない・・・とは思うけれど。
しかしまあ。不思議な時代やね。
近くて遠い、遠くて近い。
作品という媒体を通してしか出会えなかった、作家と読者。
今ではキーボードひとつで直接文字会話もできちゃうんだから。
でもそれが幸せなことなのか、そうでないことなのかは、よくわからないね。
見たくなくても見えてしまうものがあるから。

そこ行くと私の大好きな先生は違うね。
なんたって私の信じた先生だもんね。
私が今、あまり幸せじゃなくても、先生が幸せなら私も幸せだもの。
先生に和菓子を差し入れに行きたいな。いつもいつもありがとうって。
先生の書いた作品たちと、そこに折り挟まれた夢見草。私はいつも受け取ってるよ。
そして画面の向こうではきっと、今日も先生は元気にお仕事してる。きっとね。
がんばってくださいね。おやすみなさい。


※次の方は>>238をどーぞ
「ほんとに恐ろしいな、サブリミナルアドってやつは」
 のぞき窓から入ってくる光を眼鏡に反射させながら、立花はほくそ笑んだ。暗闇の中で彼の
思惑だけが白く巨大なスクリーンに繁栄されて、しかし誰にも気付かれることなく彼の利益に
なっていく。
 あるいは映画館という場所が、元よりそのような陰謀を成立させる雰囲気を持っている
のかもしれず、立花の計画は、その強力な空気の流れに相乗りしただけと言えるかも知れない。
 ただ経過はどうあれ、暗闇の催眠術は立花の決して端正とは言い難い顔を歪めるに
十分な結果を生んだ。
「客の買う飲料は、ただの海水だ。とても飲めたものじゃあないし、客だってそれを知ってる。
だがどうしても欲しくて堪らなくなる。私はそんなニーズに応えるだけさ」
 立花は映写室から出ると、底意地の悪く、それでいて機知に富む者に特有の笑みを漏らした。
勝利者の余韻を噛み締めながら、彼は自販機で祝杯を買おうとボタンを押した。
「偉大なる策士に乾杯……ゴホッ! ゴホッ! ……なんだ、これは!」
 立花は海水入りの盃を投げ捨てた。缶は同様の運命を辿った数多の空き缶の一つに当たり、
惨めな音を立てた。それを眺めて彼はヨダレを垂らし、薄気味の悪い笑みをこぼすのだった。

一行あたり40字に収められなかった……
次「ふ」「ういろう」「ネジ」
 まっこと困ったことに、ネジが一本外れてしまった。おまけにそのネジは大変貴重
な代物で、滅多なことでは手に入らない。一人に一つしかないらしい。
 ネジが一本抜けていることを自覚出来ている私は正常なはずなのだが、これまた困
ったことに、足らない部品の影響でどうにも私は「変」らしい。
 例えばここに、お見舞いに来てくれた名古屋帰りの友人から貰ったういろうがある
のだが、こいつが本当にういろうなのかどうかいまいち確信が持てないのだ。一口食
べてみてもこれがういろうなのか、羊羹なのか、はたまたふであるのか判断がつけら
れないでいる。いやいや食べ物とは限らない。本当にういろうであれば、こんなあか
らさまに堂々と「ういろう」と書くだろうか? スパイが自分をスパイと言うか?
 そもそもこいつをくれた人物は本当に友人だったのだろうか……と、終始こんな調
子で疑えばきりがなく、肯定と否定を繰り返してばかりしているのだ。
 いや待て。
 私はネジなど無くしたのだろうか? もしかするともしかすれば、私は最初からネ
ジなどなかったのかもしれない。何だ、それじゃ私はいたってまるきり正常なままじ
ゃないか。なーんだ、私ははなから変じゃあなかった!
 お、いつの間にやらこんなところに旨そうなチョコバーが。いただきまーす。


お題の使い方が未消化すぎ……すいません。というわけでお題持ち越しでお願いします。
「ふ」「ういろう」「ネジ」
244岸和田:04/03/28 09:42
「ふ」「ういろう」「ネジ」
 「す、すいません…お金を恵んでくださると銃は撃ちません…」
「やりなおしっ!!そんな気弱な強盗がいるか!てめえいっぺん死ねや!!」
「すいません」
「いいか、おまえが俺に強盗教えてください、って弟子入りしたんだぞ!もっとシャキっとしろや」
「すいません、すいません」
「ようし、じゃあ実地試験だ。このふぬけういろう野郎!あの銀行襲ってこいや!銃はやる!」
「えっ…でも……」
「うるせえ、ふみたいにフニャフニャしやがって!いいから行ってこい」
「ハイ…」 とぼとぼとぼ…ウイーン、ウイーン。
「いらっしゃいませぇ〜」
「あ…あの…このかばんに金つめろぉ〜〜!撃つぞぉ…おお」
「はい?」
「す、すいません、また来ます…」 ウイーン、ウイーン。だだだだだだ…
「よし、無事帰ってきたな…金は?」
「昨日買ってきたドアのちょうつがい1個とネジ7つしかありません」

 「雨」「自転車」「助けて」
245名無し物書き@推敲中?:04/03/28 10:16
age
246名無し物書き@推敲中?:04/03/28 13:41
  「助けて..」
  見知らぬ若い女性から突然こう言われたら
  たいていの男ならひどく緊張するだろう。
  その日は霧のような雨が降っていた。
  誰かが憂鬱な事件に巻き込まれるのはきっとこんな日が多いに違いない。
  無視するか、しないかの判断に一瞬の躊躇もあってはならない。
  しかし遅すぎた。
  私はすでに不安を取り除こうとするかのような態度で
  相手に向き合ってしまっている。
  「どうしました?」
  「パンクしちゃったんです」
  押してきた自転車を目で指しながら、彼女は言った。
  「はい、そこ置いといてね10分くらいでなおるから」
  畜生、また妄想しちまったじゃねーか。「助けて」なんて
  言わねえだろフツー、と俺は思った。

  次のお題は「まなざし」「インドまぐろ」「入学式」で。  
   
  
 
 
「まなざし」「インドまぐろ」「入学式」

「遅かったのね。今日が何の日だか、分かっているの」
 玄関を開けるなり、妻の冷たい声が聞こえた。もちろん、分かっている。長女の小学校
入学式とそのパーティーをすることになっていたのだ。だが……今の世の中、俺くらいの
学歴とスキルしかない人間の立場は非常に弱いものだ。今日は早く帰ります、などといえ
ば、人事考査で大幅な減点になるのは間違いない。あっという間にクビ一直線だ。
 スーツを脱いでちゃぶ台に座り、パーティの残り物をつまみつつ、安い発泡酒を飲む。
ソーセージは合成肉、ビールの偽物の発泡酒、刺身は本マグロといいつつどうせインドま
ぐろだろう……産地偽装事件なんてもう聞き飽きた。どうせ世の中インチキとまやかしが
全てなのだろう。考えてみれば俺がこんな時間まで働いているのも労働基準法の改悪のせ
いだし、消費税が20%もあれば我々貧乏人は安物しか買えなくなる。平成になってもう20
年を廻ろうかというのに、世の中はよくなるどころか悪くなる一方だ。

 次の日、久しぶりに早く起きると、ちょうど娘が教科書を揃え、ランドセルに詰め込ん
でいた。その嬉しげな、それでいて真剣なまなざしを見て、少し胸が熱くなった。
「俺も、頑張ってみよう」 昨日までの自分を反省しつつ、俺はYシャツに袖を通した。


次は「パスポート」「草原」「紅茶」で
 入学式、俺の隣には俺に匹敵する巨体がどすりと座っていた。
 一人でも目立つデブが今なら隣にもう一人、セットでお得のキャンペーン。
 周囲からは信じられないものを見るかのような好奇のまなざし。
 何も二人並べることはないだろうと、苗字を呪い、教師を呪い、学校を呪ったところで、
俺たち二人は、床下に隠れることを許された。
 古びた体育館の床は、局所的な超体重に耐えるのを諦めたみたい。落ちた後には大爆笑。
「おい、大丈夫かっ」真剣を装ったごつい教師が覗き込んでくれる。
 大丈夫と返事をした気分の俺の隣には、陸に上がった魚のようにノビたデブ。
 筋肉隆々教師が「南、南!」と呼びかけるが返事は無い。そりゃそうだ、南は俺の苗字。
そいつの名札は源だよ。筋肉バカ教師は、眉間のほくろが鬱陶しい源の頬を叩きだした。
「起きろ、南、南!」顔の脂肪を震わす源くん、何度かビクンっと飛び跳ねて、ようやく
目を覚ましましたが、どろーんとした死んだ魚のような濁った目が印象的ですね――。
 保健室から教室へ行ったとき、もう一度苗字と学校を呪ったよ。
俺の隣にいた皆川くんは絵の上手いお調子者だったみたい。黒板にはインドまぐろとミナ
ミまぐろと名付けられた二匹のデブ人魚のイラスト。俺の呼び名は、こうして決まった。



「早起き」「お偉いさん」「特上」
すみません、やってしまいました。
お題は247さんの、「パスポート」「草原」「紅茶」でお願いします。
250岸和田:04/03/28 19:43
「パスポート」「草原」「紅茶」
 「お帰りなさい、早かったわね!やっぱり今日はアノ日だから?」
「ええ?」
アノ日?僕は靴を脱ぎながら考えた。今日はなにかの記念日だったっけ…?
まずい、まずすぎる。カナコは記念日を忘れると、木刀で僕を叩くのだ。今日はなんの日だ…
「ん、ああ、覚えてるよ」 「そうよねぇ!もし忘れてたらミンチにしてやるとこだったわよぉ」
ぞっ。僕は恐怖と焦りを感じつつ、必死に記憶をまさぐった。何の日だ!?
新婚旅行に行く時のパスポート作った日か?いや、ベタなところで誕生日?
僕がそんなことを考えていると、カナコが大きな箱を持ってきた。
「カナコ…?なんだい、それ」
「あらぁ、忘れてるのぉ?あなた毎年この服に着替えてタップダンス踊るじゃない」
「そ、そうだよな、あはは。着替えるよ…」 ごそごそ。
その服は無地のポロシャツに大きく『天下布武』と書いたものと、ベルボトムのジーンズと、
『草原を駆け抜ける紅茶の香り、WE ARE イギリス!』と書かれた旗だった。
僕はその服に着替える最中も必死に考えた。こんなアホみたいなこと毎年してるのか?まさかそんなはず…でもなんか自分
の記憶に自信が持てない…なんでこんな大切なときにちゃんと働かないのだ、脳よ。
着替え終わった時、ふとカナコを見ると、木刀を握り締めていた。
「カ、カナコ?」 「全く、あなたをテストしてみたらこのザマ。ありもしない記念日祝っちゃって!わたしを愛してないのね!」
ぎゃあああ…

 「瞳」「ウォークマン」「世界」
私の彼氏は異世界の人。背が高くってカッコよくって絵も上手。
キラリと光るメガネが彼の知性を物語っているのよ。実際、賢いんだけどね。
勿論、言語の問題はあるわ。聞く分には耳につけてる機械で翻訳出来るけど
ほとんど喋らないの。でも、寡黙な男ってのも素敵よね。
ああ、そろそろ時間だわ。彼がこの世界に来れるのは僅かな時間だけ。
しかも毎日来れるってわけじゃないの。でも、もうすぐよ!彼が来る!!

「それじゃあ、今日も宜しく頼むよ」「はい…………」
金村さんを見送ると俺はいつもの様に翻訳機(ウォークマン)を装着した。
身長155cm、ヒョロヒョロのメガネ…俗にいうヒッキーだ。同人も出してるし。
俺がこのバイトを見つけたのは一ヶ月前。週に3日火木土の1時間。
その間だけ子守をすれば3000円。条件は可能な限り喋らず、これを付ける。
「さて……今日も頑張りますか」
怪しい仕事だがこれもサクラちゃんの為。お姫様の小さな瞳でも見回せれる
マンションの一室(世界)へ旅立つ俺は誇張ではなく異世界の住人だな。
次のお題は「否定」「魔王」「境界」でお願いします。
 おじいさんが山へ芝刈りに行き、おばあさんが川へ洗濯しに行く時代、国々はその領地を争っていた。国と国との境界線を決めるのは大変重要かつ難しい事だった。そのため争いは長引き、治安は悪くなっていた。
 しかし、争うといっても、戦争があった訳ではない。王をよく思わない連中が、配下の兵を殺してまわっていたため、武力による国同士の衝突はお互いの滅亡を意味していたからだ。そのため王たちは、世界を構成する上で重要な人々を使って沢山の会議を設けていた。

「だから、にゅうおうが統治していた地域も、孫の代になったらジトーが治めるんですって!」
「僕は断固としてにゅうおう派だね。一度倒されたりゅうおうだが、子孫が再び栄華を取り戻す!これこそファンタジー!」
「ううむ。ファンタジーってのは否定できん。しかし、ここはジトーが……」
「じゃあIIIはバラモクって事で」
「ちょっとまてぃ!魔王ゾームの存在を忘れてもらっちゃあ困るんだよ!」

 エニックソ開発部の夜は更けてゆく。

「指南」「ヘルシー」「木琴」
254名無し物書き@推敲中?:04/03/29 01:45





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※原稿入力時の約束事テンプレート

○段落の行頭は一字下げる
○……三点リーダーは基本的に2個で1セット。なお『・』(中黒)は使用不可
○読点は『、』 句点は『。』を使用
○セリフをくくるカギカッコの最初の 「 は行頭一字下げない
○「 」カギカッコ内最後の句点は省略する



●テンプレの5行以上15行以下を目安に。は騙し
◎文章は10行以上15行以下、1行40文字以内が暗黙のお約束
--------------------------------------------------
『指南・ヘルシー・木琴』

原住民の男は木片を叩く手を止めると、先端に石を括り付けただけの木の棒を渡してきた。
そして「さぁ今度はお前がやってみろ」とでも言いたげな目で見つめてくる。仕方無く男
を真似てリズムを刻む様に叩いて見せた。木片を長い順に並べて蔓で固定した・・・・・・いわ
ゆる木琴の原型の様な楽器と言って良いだろう。船が遭難して数日、助かったのはどうや
ら僕だけらしいと知った。高い丘に登って見渡してみようと思い立ったのは昨日。ここが
洋上の孤島であると分かって絶望した記念すべき日だ。島の少数部族が与えてくれる果物
を中心としたヘルシーメニューは悪くない。でもこの先いったいどうすれば良いものか。
先ほどの男が、背後で腕を組む部族の指南役の長老と思しき男を振り返る。長老が黙っ
て頷くと、男は木琴を片付け始めた。「今日の練習はここまでだ」ということらしい。
 夜になり、外のざわめきに気づいた僕は洞穴から這い出した。コンガを叩く様な軽快な
リズムに、例の木琴もどきの音が混じる。木陰から覗くと木琴を叩いているのが僕と同じ
文明人と分かり小躍りしそうになった。ところが、何故か彼は泣きながら叩いている。
どうやら足を縛られている様だ。やがて彼の周囲に火が放たれ、コンガの音が勢いを増す。
思い出した。死を前にして、辞世の句さながら楽器を演奏する風習を持つ部族が存在する
という記述を。そしてそこには部族の食性についても、絶望的な記述が添えられていた。

次は「リード」「スチール」「セーフ」
個人的に…が嫌い(・・・)が好きな人はどうすればいいのだろう
なぜ禁止なのだろう行数が稼がれるからだろうか
細くて見てくれが悪い気がするのだが三点リーダーどうなのだろうか
257リード・スチール・セーフ:04/03/29 16:38

 窓の外、カーテンから漏れてくる陽からすると、どうやら外は晴れらしい。
 起きあがったベッドから窓に向かい、カーテンを開けると、確かに俺の推測は正しかったようだ。
 テレビのスイッチを気紛れに入れてみると、朝のニュースがどのチャンネルでも流れていた。なんとなく2チャンネルでやっているニュースを見ることにした。
 キャスターは禿かかった中年と若い女子アナで、政治云々のニュースの原稿を読み上げているらしい。ほとんど興味も持たず流すままにしていたが、ふと気になる言葉を女子アナが発した「セーフは今回の自衛隊……」
 なんだ、政府のことを言っているのか……最近はこんなアナウンサーが多い。そう頭の隅でぼやいた。
 ふと時計を見ると、もうそろそろ出社の用意をしなければならない時間だった。
 私は急いでパンをトースターに入れ、それと同時進行で着替えをすませた。
 着替えを終え、コーヒーを入れている時に、パンの焼き上がった時の、まるでスチールを叩いた音を聞き、パンに齧り付いた。
 家をでると、目の前をリードで引っ張られながら嫌そうに歩く犬が横切った。
 多分、私もあの犬とそうは変わらないんだろう。
 そう思いながら嫌々会社へと足を向けた。

お次は「カレンダー」「鳥」「睡眠」で。
>256
裏3語スレ より良き即興の為に 
ttp://book2.2ch.net/test/read.cgi/bun/1035627627/

 カレンダーを手放せなくなっている僕に、友人が救いの手を差し伸べた。
「いいかい君」と友人が僕からカレンダーをもぎ取りながら言った。「もちろ
ん時間というのは我々にはお構いなしだ。常に流れ、過ぎ去っていく。その時
点で存在した物が次の瞬間失われている事なんてザラだ。だから君が時間管理
に終始するのはわかる。睡眠時間を削ってまで睡眠の予定を書き込むのも、ま
あ、わかる」
 友人はそこまで言うと、カレンダーを僕に奪われないようにしながら眺めた。
「しかし、一週間通しての呼吸の回数やら、一年間で行うマスター・ベーショ
ンのアベレージまで記入する意味は、わからない。細か過ぎるだろう」
「不安だからさ」と僕はカレンダーについてる命綱を引っ張りながら言った。
「時は鳥と同じぐらい気侭で早いからね。ちゃんと捕まえておきたいんだ。逃
がしてからでは遅いからね」
「もう好きににしろ」と友人は諦めた。「ところでこのカレンダー狂いはいつからだ?」
「2003年10月10日」と僕は言った。
 時は、鳥と一緒なんだ。
260岸和田:04/03/29 18:40
「カレンダー」「鳥」「睡眠」
 僕がいつものように風呂あがりにビールを飲んでいると、ヨーコが僕を
じっと見ていた。
「なんで僕を見てるんだ?」
ヨーコはため息をつき、僕の向かいのソファーに腰をおろした。
「あなたってすごく違和感のある人ね」
違和感、と僕は思った。
「変わっている、とか変、とかそういうのならわかるよ。違和感、というのは不思議な表現だ」
ヨーコは腕をくみ、僕をじっと見た。僕は視線を無視してビールを飲んだ。
「なんか、あなた、1月に8月のカレンダーがかかっているような感じなのよ」
「よくわからない」
「鳥が焼き鳥をおいしいおいしいって食べてるみたいな」
「それもよくわからない」
「夏休みの体育の宿題に、よく睡眠をとり、規則正しく生活する、って出たみたいな」
「まったくわからない」
「動物愛護団体が密猟してるみたいな」
「ねえ、アタマ大丈夫?」

 「アルミ」「バイク」「死体」
 
「桜の木の下には死体が埋まっていると言う」
 唐突に南郷が切り出した。飯の最中に死体の話なんかするな馬鹿。
「これはアレだ、紫陽花の根元に釘を埋めると鮮やかな青になるという、アレに
違いない。死体のカルシウムが溶出して、色を変えているのだ。で、白井。それに伴う
実験をしたいので、どこか適当な桜並木を知らんか?」
 どうやら南郷は花見をしたいらしい。嫌々ながら、白井はバイクのカバーを剥いだ。

「ふむ、ここならいいだろう」
 場所は横須賀、ヴェルニー公園。先日来の長雨で、桜はまだ蕾でしかなかった。
「まずこれには錆び釘を植える。こっちには炭酸カルシウムを一塊」
 次々に穴を掘り、なにやら埋め込む南郷。惚けっと見続ける白井の前で、南郷は
突如頭を抱えた。
「しまった、アルミを忘れた!」
「分かったよ、取りに戻ればいいんだろう」
 セルを回そうとする白井を、レンチ片手の南郷が止めた。
「いや、貴様のニコバッカーのアルミフレームを」
「やめろぉぉぉっ!!」

 お題は継続で。
「死体と生きている人との違いは何だろうか?」
学校の休み時間。日本に何人も居る高校生の内こんな台詞を言うのはこいつだけだろう。
「生きているか死んでいるか」「それでは単なる鸚鵡返しだ」「心臓が停止しているか否か」
「ならば脳死は?」「……人間は考える葦である」「なるほど、思い切った発言だ」
そう、結局こんな変な友人との問答を俺は楽しんでいるのだ。類は友を呼ぶのだ。
 暫くして俺が聞く番になった。「ここによく冷えたジュースの缶がある」「スチール?アルミ?」
細かい事を気にする奴だ。「アルミとする」「それで?」
「お前は道のりで1km離れた家の前に居る。一番冷たくジュースを飲む方法は?」
「移動手段は?」「車、バイク、自転車、徒歩の4つ。どれを選んでも1km。信号は無視」
「待ち行く人間や僕の体力は?」「考慮しない物とする」本当に細かい奴だ。
「なら、自転車だ」友人は言い切った。「僕は未成年だ。バイクも車も乗れない」
「正しいが正解じゃない」「では解答を聞こう」俺は用意しておいた解答を口にする。
「冷蔵庫で冷やしなおして飲むのが一番冷たい」思わず顔がニヤッとなる。
「それは違うな」予想に反し友人の顔もニヤッとなる。
「缶を容器に移し、氷を大量に入れた方が冷たい。この場合温度は0度になるが
冷蔵庫ではそれより暖かいのは言うまでも無い」試合終了のチャイムが鳴った。

「空腹」「虎」「キング」
「アルミ」「バイク」「死体」

 勇二は、また朝から自転車いじりをしているようだ。
 あんな遅い乗り物が好きだとは、代わった奴だな、と勇一は思う。風を切る心地よさ、
心地よいエンジンの咆哮、眼に飛び込んでは消えてゆく風景、バイクの楽しさを知らない
なんて人生の楽しみが分からない奴だ、と少々可哀想な気分になった。
「行ってくるよ」車庫の弟に声をかけ、勇一はエンジン音と供に朝霧の向うに消えた。

 兄貴は、また朝からツーリングに行くようだ。
 あんなに危ない、一瞬で死体になれる乗り物が好きだとは、おかしな奴だな、と勇二は
思う。スピードが無くても大気のにおいを感じ、暖かな光と柔らかな風を全身に感じなが
ら走る、そんな自転車の幸せな時間を知らないなんて、と少々不憫に思わないでもない。
 総アルミ製で超軽量の愛車の点検を終え、普段使う自転車にまたがる。
「行ってきます」玄関を開けて大声を張り上げ、すっかり霧が晴れた朝の道にこぎ出した。

「双子とはいえよく似たものね」と母親は微笑んだ。全く違うじゃないか、といぶかしが
る父親に、あと一月もすればわかりますよ、と上機嫌で答えた。

 一月後、夏休みに朝からアルバイト励んでいた双子は、互いの誕生日に自分の趣味のも
のを……勇一は弟に原付バイクを、勇二は兄にサイクリング用自転車を……贈った。
 気まずそうな二人と、喜色満面の母親。腹を抱えて笑う父親。今年の夏休みは二人にと
って格別なものになった。


……遅れてしまった。
おまけに有名なアレをパクッたような文章になってしまった。
どこでどうずれたのやら……
かつてこの世にキングと呼ばれる男がいたという。泣く子も黙ると評判の偉丈夫。
格闘技界の垣根を越えて最強の人類だの、視線だけで虎を1ダース殺せるだの、
空腹時のライオンを素手で捻り潰しただのと、有象無象の伝説に事欠かない男。
誰も男の素顔は知らない。現在の行方も知らない。伝説は伝説だから輝くのだ。
「…俺は何者だっつの。誇張もいいとこだ」鏡の向こうのゴツイおっさんに笑った。

「ベルト」「鬼」「卵焼き」
 望むは広大な空。もう地べたを這うような生き方は嫌だ。
俺は今回の依頼をクリアして、今までの貯金と合わせて自家用ジェットを買うんだ。
崖から下一面に広がるジャングル。その最北部にいるという、正体不明の
「森のダーティーキング」を捕獲若しくは始末することが、今日の依頼内容。
さあ、もう空を見るのはよそう。もうすぐ、飽きるほど見られるようになるから。

 森に入るな! ダーティーキングには近寄らないようにするんだ。
彼は、大虎だった。だが、ただの虎じゃあない。
たまたま空腹だったのか、彼はすさまじい勢いで俺に牙を向いた。
咄嗟にかわした瞬間、捕獲は不可能と判断し、一瞬動きが止まったところに
携帯銃を眉間に撃ち込んだ。なのに、倒れない! 倒れないのだ!!
むしろ攻勢は激しくなって、傷ついた俺は無様に敗走した。
この手記を見つけた者は、彼に狩られる前に人里に戻れ。
そして、もう二度とここに人が入り込まないようにするんだ。
俺が自分の口で説明できればいいのだが、もう命も尽きようとしているのだ。
最後に、大好きな空を見ようと思い大の字になったが、森が深いな。まるで見えやしない。

「カメラ」「漫画」「魚」
ほぼ同時投稿きゃ
267空腹・虎・キング:04/03/30 00:09
「この虎だ。こいつは、夜空腹を感じると、屏風から抜け出て、城内のものを
襲って喰ってしまうのだ。わたしは、こいつにはもうほとほと困り果てた。
牧師よ、この縄でそいつを縛ってくれまいか」
 と、時のキングがワンレスト牧師に言った。これは牧師への挑戦である。
 ワンレスト牧師は「とんち牧師」と呼ばれ、街の鼻つまみ者として忌み嫌われ
ている。正月に、「MEMENTO MORI MEMENTO MORI」と叫び、骸骨を持って
街の中をひねり歩いた一件がもとで、彼の噂は皇室にまで聞こえ及ぶように
なった。それに興味をもったキングが、いま、ワンレストに知恵比べを仕掛けているのだ。
(さあ、どう出る)キングはワンレストの返答を待った。
「そうですね……」ワンレストは一呼吸おいて言った。
「縛るより、もっと良い方法がありますよ。燃やしてしまいましょう」
 彼は、ポケットからマッチを取り出し、屏風に火をつけた。油絵の虎はよく燃えた。
「ふふふ。わたしの勝ちだな」とワンレストは内心ほくそ笑んだ。火が城の天井に
燃え移るのを見るまでは。その火、城は全焼し、死傷者は数百名を越えた。
 ワンレスト神父は罰として虎の餌になった。

ごめん。遅くなったけど、これ気にいったから、投稿するね。
『ベルト・鬼・卵焼き・カメラ・漫画・魚』

たまらない。フライパンから立ち上る、えも言えぬ甘い香りを纏った白い湯気。
それだけで美しい存在、楕円形の白い芸術品をあえて割る罪を犯してでも手に
入れたい戦利品。卵焼きだ。手首を戻す絶妙なタイミング、これに尽きる。
ベルトコンベアーを流れる魂の篭らない食材とは一線を画す存在、勿論魚を焼く
時の様なアバウトな感覚など通用しない。それでいて、フライパンから飛躍して
空中に送り出す様な思い切りの良さも、時には要求される。その際、着地を誤って
頭で受ける様な漫画的なお遊びは不要だ。見てくれ、この華麗な手さばきを。
カメラがあるヤツは撮って欲しいとさえ思う。そしておれのパソコンにでも送って
くれ。
「ちょっと。あなたいつまで掛かってるのよ!たまに作らせてみればこのざま?」
ふふふ、鬼の様な形相にも俺は屈しない。構うものか、言わせておけばいい。
だが妻の言い分にも一理ある。皿と娘は配置について待っている、急がなくては。
 ただ心配なのはこの黄色い塊のお披露目の段階だ。二度と言い訳は通用しない。
あいつらの要求は白地に黄色いドーム型。目玉焼きなのだから。

次は「世界」「回転」「天使」
世界が回転する。
浮遊感、鈍い衝撃、いつまでも続くブレーキ音。

世界は回転する。
浮揚感、二重螺旋、天使と踊る天空のワルツ。

揺らさないで、僕を。天使と踊るのは凄く楽しい。
呼ばないで、僕の名を――今は天使と過ごす時間さ。
雨が降りだしたのは何故? 天使は雨が嫌いなんだ。
うるさい、うるさい、うるさいよ、もっと静かに。
僕の手を掴むな! 天使が……目的地まではあと少し。
なんだよ、なんでだよっ。ああ、もうちょっとじゃないか。
ここまで来たのに……、天使は僕を見捨てようというのか。

ぐるぐると回転する世界に、中心に君はいた。
優雅さとは程遠い、涙と鼻水でくしゃくしゃの顔は、
天使にもいろいろいるもんだと僕に思わせしめた。
救急車の中で、君の手の暖かさが、心強かったよ。



「未来』「結晶」「永遠」
「ねえ、君、どっち派?」
声が聞こえた様な気がしたので、僕はキーを打つ手を休めた。
彼女が腕で汗を拭いながら、後方の壁を目で指す。その視線を追う。
「……最近の小学生は書道が下手くそですね」
掲示してある"未来"と"永遠"の文字を目でなぞった後、僕は再びディスプレイに目を戻した。
未だ視線を感じるので、訊くまでも無いでしょう、と手の中の携帯を見せびらかす。
「性分ですよ。時代だってそういう流れに来てる。そう思いませんか?」
彼女は何も答えず、仕事の続きに戻る。カン、カンッと渇いた音が夜の教室に木霊した。
「はしたない男ね、君も」
ややあってからの返答も、既に元の作業に集中している僕にとって効力を帯びたものでない。
Sb:7月29日(16) 件名:22時24分 男「……最近の小学生は書道が……」無心に指を動かす。
 暫くして、教室内が静かになった。かわりに床にはノミや木槌、電気コードが散乱している。
最後の仕上げ。彼女は苦労して削り出した深みに電球をはめ込む。少しニヤついている様にも見える。
「ところで、これは先輩の未来に貢献してるんですか?」
岩塩の結晶が放ついびつな光が僕らを照らした。

「海」「テレビ」「広辞苑」
「海」「テレビ」「広辞苑」

「ねえ、お兄ちゃん。海に行こう、海」
 妹が相変わらずいつものハイテンションで話し掛けてくる。いいかげんしつこいぞ、お
兄ちゃん今日は用事があるんだ、そう言い聞かせてもしつこく喋り続ける。
「別に宿題なんかじゃないんでしょう。そんな分厚い本の何が面白いのよ〜」
 これは広辞苑っていう、大きな辞書。勉強してるんだよ。本当に。
「ねえ〜、いいじゃない。夏休みなんて長いようで短いんだよ。あっという間に終わるん
だから、せいいっぱい遊んでおかなくちゃ。ね、だから遊びに行こうよ!」
 あれ?俺の夏休みは短かったんだろうか。今の言葉で不思議な気持ちが心の中からわき
あがってきた。寂しいような、切ないような、腹立たしいような、説明はできないが……
「ちょ、ちょっと、何するのお兄ちゃん、そんないきなりはダメだよぅ……」

 乱暴にテレビとゲーム機の電源を切ると、俺は布団にもぐりこんだ。
 学生時代のイジメで不登校になり、引きこもってゆうに10年を超える。美少女ゲーム
の台詞ですら気に障る。こんなに心が不安定なときは眠ってしまうに限る。
 長すぎる夏休みは、まだ、終わってくれない。

次は「花見」「紅葉」「粉雪」で
 三年前も大雪だった。この地方では珍しいことではない。よく降って、よく積もる。
しかし雪が風情の全てではなかった。山の配置が影響して、気候によっては季節が
折り重なるようにしてやってくる。
 一昨年は雪が楓の落葉と共に降ってきた。空中で真っ白に冷やされた粉雪が
燃えるように紅葉した楓の葉を誘って、静寂な舞を見るような思いがした。
 昨年は冬の終わりの暖かくなり始めた時期に、季節外れの桜が咲いた。公園の
桜並木のうち二本が仲良く満開を迎えた頃、忘れ物を取りに来たのかこの桜の花見
に戻ったのか、思い出したように雪が降り始めた。これも幻想的な魅力があった。
 今年はどんな共演が見られるかと期待していたが、真っ当な時期の真っ当な頃合
に大雪が降っただけで、冬も不満気に気温を下げている。友人に会いに来たのを
すっぽかされて、すっかり拗ねてしまっている。
「振り返り急かせる雪の降る無念」
 などと読みもしない句を無理に作ってしまいたくなる、寂し気な景色だった。
 私はその出来の悪い句を手帳の丈夫な紙に書きつけると、二本の桜の一方に歩み
寄って立てかけた。丁度、そこで頭を見せているふきのとうに被せるように。

次「切りかえ」「落とし前」「ツノ」
 梅雨はこない。
腹の上にどっかと乗った猫のヒゲを撫でる。ピクピクと体全体で律儀な反応を返す。
家族は追い返した。大声でがなり立てた。特に思うところがあったわけでもない。
カーテンがべったりと網戸に張り付いている。今日は風がない。雲もない。蝉音すら遠い。
猫が動いた。ヒゲを触る。猫が動く。ヒゲを触る。猫が動く。ヒゲを触る。猫が跳んだ。
棚の上のオレンジがガタガタ嘲ら笑う。ハロウィンのカボチャに見えた。
テレビのリモコンを探すが見つからない。すぐ傍に置いたはずであったのに。
ふてくされて布団をひっかぶる。内省する気にもなれぬ。夢を見ることも許されぬ。
 花見はどうかと娘が言った。およそ普段と似つかわしくない言動に目を丸くした。
紅葉を見ながら妻と歩いた。妙な気恥ずかしさに繋いだ手が拍車をかけた。
粉雪を猫が撒き散らした。兎の様に庭中を跳ね回るのを縁側から見ていた。
 眠っていたのだろうか。起き上がって窓を見る。未だ風はない。
棚の上の猫とオレンジを気遣いながら、そういえば、梅雨はどうであったかと思いを巡らせた。
つい先頃のことなのに、記憶がおぼろげである。今年も去年もその前も、何も思い出せぬ。
廊下で話し声がする。直にノックの音もするだろう。私は再びベッドに横になり、天井を見上げた。
 梅雨はこない。

272さんのお題で続きドゾー
 「こらあ、ガキ。ぶつかってきて詫びも無しかい!」
あー、早くショップ行って新作のエロゲ買わなくちゃ。
「おーいてえいてえ、こりゃ慰謝料もらわないけんのう、ええ!?」
限定版なくなっちまうよ。おまけをヤフオクに流してウハウハしたいのに。
「きいとんのかオイ!! 落とし前つけろゆうとんじゃ! 上を向け!!」
正直、内容には興味は無いんだな。焼き増しして、ダチどもに売り払って、それから……。
「くっ……! きけやコラァッ!!」
うわっ、いって、超いってえ。なんだよこれ? これは夢に違いない。痛感を伴う類のヤツだ。きっと。
姿は見えないが、きっとこれは鬼だ。昨日ゲームで虐殺した、あのしょぼいツノのついた鬼だ。
「はぁっ、はあ……金出さんか! それと上を向け!! なんなんじゃお前!! きしょいわ!!」
復讐か? 復讐なのか? ごめんなさい私が悪うございました許して下さい。もう殺したりしません。
つーかあのゲーム飽きたんでもうやりません。もう別のに切りかえましたんで。
いや、ごめんなさい、ごめんなさい。
「ごめんなさいぃぃぃぃ〜〜〜〜〜!!!」
「逃げんなぁ――――っ!!!!」

「鬘」「無敵」「素敵」
 朝食を終え出勤前の一服をしながら「なぁ、おまえはツノから何を連想する?」と、僕はソファーに座りながらキッチンで食器を洗っている妻に声をかけた。
「なによ、急に。ツノなんてどうだっていいの、あたしは今忙しいのよ」「ふぅん、おまえはツノなんてのはどうだっていいんだ?」しつこく問いかけてみる。
「そういわなかった?」彼女はいい放って、食器をすすぎ始めた。
 僕は少し考え直して質問を切りかえた。
「虎柄のパンツについては?」
「見てわからないかしら? 忙しそうには見えない? 見えなくてもさっきいったわよね?」彼女は今食器を拭いているところだった。
 そうか、僕の妻はツノにも虎柄パンツにも大して興味がないらしいな……僕達は地獄の鬼なのに?
「あなた、出勤時間よ」
「そうか」
 
 さて、今日はどうやって人間どもに生前の落とし前をつけさせようかな……。
おっと、お題出し忘れた……と思ったら、ちょうどよい具合にかぶってたや。
「正直さぁ、鬘とかどう思う?」
恐る恐る送信ボタンを押して、枕に顔を埋める。エアコンの音が五月蝿い。
チンチロリン。未読あり。自分でも驚くほど気分が高揚している。
「いいんじゃない?」マジで?マジで言ってくれてんの?調子に乗るよ俺?
「でもさ、ほら、常識的に考えるとさ、俺も結構いろいろあったし」
「気〜にしない☆考えすぎだってば。カッコいいと思うよ。素敵やん(笑」
「そっか〜ゆっこはそういうこと気にしない性質なんか〜嬉しいな(爆」
急に自信がついてアイスペールの中の氷をガリガリっと頬張る。続けよう。
「おっしゃ!ゆっこにそう言ってもらえたら俺も無敵や。いつにする?」
「ん〜土曜日はちょっと予定あるから日曜に三井ビルの時計前!で、どおよ」
「おっけ〜。会ってからびっくりするなや(^^;)」
「大丈夫大丈夫。真田弘之似?つのだ☆ひろ似?なんでもこいや〜」
 だめだぁ。こいつ。髭と勘違いしてやがる。

「地平線」「バナナ」「酸素」
「地平線」「バナナ」「酸素」

うなる黄金の右足!上田の強烈なバナナシュートがゴールネットを狙撃する。
立ち向かうは殺人GKの異名を持つ白浜。峻烈なまでのセービング、
確実にネットに突き刺さっただろう高角度で曲がるサッカーボールは、
数瞬後には白浜のグローブ内にしっかり納まっていた。化物か!?
白浜のロングパス。地平線の彼方、敵チームに渡るボール。まずい、この流れは……
「パスを止めろォ!!あの12番だけには回すなァ!!」酸素を全て吐き出すかのような、
東条キャプテンの叫びもむなしく、ボールはあっさり敵エース・水科の左足に吸いついた。

「モンゴル」「彫刻」「春雨」で
「地平線」「バナナ」「酸素」

 歩きはじめてもう何十日になるだろうか。
 足裏のまめが痛み、運動不足の体はそこかしこで悲鳴をあげる。酸素を求めて喉も肺も
大きくはずむようで、ひりつくような痛みをともなう。
 でも、この世界はなんて優しいんだろう。
 世界を橙色に染めぬいて上り降りする太陽。すべての物に等しく恵みを与える雨。風は
木々の間を爽やかに通り抜け、新緑の青葉をさらさらと揺らす。
 山に登れば果てしなく広がる青空と地平線。霞んで見える世界の果てが僕を呼んでいるよ
うだ。今までこれほど世界が自分の近くにあると思ったことは無い。
 さすがに歩きつかれたので、少し先の休憩所によることにする。中に入ると、近所の人
がバナナを分けてくれた。栄養補給には最高だそうだ。この「お接待」にもどれだけ助け
られたか分からない。
 最愛の妻が亡くなったとき、世界に体を切り刻まれたような気分になったのをきっかけ
に、僕は四国遍路の旅にでた。長い旅の中で知ったのは、輪廻というものは存在するという
ことだ。彼女のような温かさが、めぐりめぐって働いている世の中なのだから。
 あがっていた息が静まってきた。お世話をしてくれた近所の人にお礼を言い,休憩所を
出る。菅笠をかぶり直して、僕は次の札所を目指し歩き出した。


遅れました。お題は>>278で。
280うはう ◆8eErA24CiY :04/04/01 02:14
「モンゴル」「彫刻」「春雨」

 「ああ、すばらしい大自然。人間とは蒙古の人達の生き方を学ばなくっちゃ!」
 卒論を兼ねての北蒙古旅行。つい、未開の地に一人踏み入ったのがいけなかった。

 不意に「ガチャン」と鈍い音がして、右足に鈍痛が走る。原住民特有の、動物用の罠だ!
 恐怖で表情が彫刻の様にこわばる。こんな所に文明人は来ない。原住民も来るかどうか。
 おりしも草原に降りしきる春雨が、観光ファッションのブラウスを通して体温を奪う。
 猛獣に見つかれば、終わり。運良く原住民に見つかっても、どうなることか。

 果てしなき未開地域に伝わる、略奪の歴史を彼女は思い出した。
 それは、他部族からの略奪婚と強制的な混血の歴史だった。チンギス・ハーンですらも。
 垂れ流しの生活。飢えと寒さと不安が、薄っぺらなメッキを剥がす。
 「なんて薄汚い土地。この上、あの野蛮人どもに…ああ、コーラが飲みたい!」

 原住民がそれを見つけたのは、死の一歩手前の12日目の事だった。
 混濁した意識の中で、彼女は呻く。私は日本人、文明人よ。あなた達とは違うのよ、と。

 不意に、とりまく群衆の中から「おお!」という感嘆の声が響いた。
 「心配しなくていい、お前は仲間だ!」
 そう、彼等は見つけたのだ。彼女の尻に残る、青白いモンゴル斑を。

※なんか危ないテーマ、いいんか?
次のお題は:「浄水器」「母乳」「ワイン」でお願いしまふ。
281名無し物書き@推敲中?:04/04/01 04:29
「浄水器」「母乳」「ワイン」

朝起きて台所に行って仰天した。
台所に娘がおでこから血を流して倒れていたのだ。
床には割れた瓶が散乱し、浄水器が無残に破壊されていた。
娘にはかすかに意識があったので、何があったのか聞いてみた。
娘はただ「母乳…」と言って意識を失ってしまった。
私は慌てて救急車を呼んだ。

後の警察の調査で、娘が夜中に寝ぼけて手刀でワイン瓶切りに挑戦し、
さらに寝ぼけて浄水器に頭突きをかまして倒れたのだということが分かった。

「カプセル」「魂」「封印」
282名無し物書き@推敲中?:04/04/01 04:43
カプセルの中に何かがいる。
そう気がついたのは、昨夜のことだった。
食後に薄い番茶で飲む、あの白と赤色のカプセル。
私に勇気と理性をくれる、あのカプセル。
あのカプセルに、何か、魔物か妖怪のようなモノが潜んでいるのだ。

とうとう、実行にうつしたのか。
俺は知っている。
全てあの偽善者、俺の主治医の企みだということを。
あいつは魂を悪魔に売り、俺を殺して俺の女房を手に入れようとしているのだ。

でも、俺は負けない。
封印していた、俺の真の力を今こそ解き放ち、
殺される前に、殺してやる。

検診は午後三時だ。
待ってろよ。

「陣痛」「臨終」「ベンツ」
283名無し物書き@推敲中?:04/04/01 06:49
人通りの多い新宿駅南口の改札を出て、目の前の道路を渡っている時にヤツは来た。
ぐごおるるるるる。
「………………っ」声にならない声。自分では見えないがおそらく僕の顔は、苦痛に歪んでいた。
「どうしたの? おなかイタイの? 陣痛?」心配しているふりをしながら彼女がたずねた。
このやろう。と思いながら僕はうなずいた。
「生まれちゃう? ヒーヒーフー?」何が楽しいのか、彼女は笑顔だった。
僕はまた、このやろう。と思いながらうなずいた後「ちょっとトイレ行きたい」とソプラノで言った。
「あ、ごめんね……高島屋に行こう、あそこならトイレあるから。ね」
「はい!」
そうなんだ。人は会話をすることで、お互いを理解することができるんだ。僕にはそれが何よりも嬉しかった。
そして、ある決意を胸に秘めながら、直腸および肛門が臨終ぎみの僕をトイレという天国へと誘ってくれた彼女に感謝した。
僕はトイレから出た後、彼女の左手薬指にそっとベンツをはめた。

お題「盲導犬」「あやまち」「無視」
284岸和田:04/04/01 11:11
「盲導犬」「あやまち」「無視」
 ぼくはこの仕事を続けてきょうで十年になる。
どんな仕事かというと、なんだかつまらない、よくわからない仕事だ。
何か黒くて、ツヤツヤした細長い車に、黒服にサングラスの人たちと一緒に乗って
みんなで「あやまち」と書かれた羽織を着た白髪のじいさんと一緒に行動するだけ。
それだけで、すごい高額の金がもらえる。
 ぼくは十年続けたということで、ひとくぎりみたいな感じで、上司に聞いてみた。
「どうしてこんな仕事するんですか?」
「それはだな、親分が失明して盲導犬が必要になって、それで警備・・」
「なんでぼくは強くないのに仕事させてもらってるんですか?」
「まずおまえは196cmも身長があるし、マッチョだ」
「水泳やってたから筋肉ついたんです」
「それにスキンヘッドでヒゲももっさり」
「いちいち髪切る金も時間もムダですし、ヒゲはなんか剃るの怖いんです」
「いいか、お前は銃も使えないし、のそのそしてるがな、お前みたいなのが一番強いんだよ」

 「再生」「余興」「会議」
285岸和田:04/04/01 11:13
ああ、すいません!無視ってことば入ってないです!!
スルーでお願いします。
『盲導犬・あやまち・無視』

取り付いた病魔が視力を奪い始めたのは高校生の頃だった。進行は早く、卒業を待
たずに私は光を失った。以来引き篭もりがちになってしまった私に希望を与えてく
れたのはアレックス、私のパートナーとなった盲導犬だ。
生活は一転した。アレックスの助けを借りて私は人間性を取り戻し、積極的に戸外
へ出る様になった。毎日が楽しく、失った視界に勝る美しい風景が脳裏に広がった。
家族の忠告を無視して、混雑を極めた週末の都心にアレックスと二人切りで出ると
いうあやまちを犯すまでは。
ごった返す人並みと、盛んに行き交う車の影。私に安全を提供するのに、彼は必死
だったはずだ。突然耳をつんざく様なアレックスの悲鳴。初めて耳にする身も凍る様
なパートナーの叫び。人々のざわめきの中、私の意識はショックに呑まれ遠のいた。

 命は取り留めたものの、足の一本を失ったアレックスは職務を続けることは出来ない。
心有る人に引き取られたことを聞かされた。失意の中、私の世界は再び部屋に戻った。
 
 数ヶ月が経った。家族が私の部屋に来客を招き入れた。座り込む私の耳を舐める。
アレックス。ごめんなさい――。見えない目から涙が溢れた。
あ。
もう片方の耳にも近づく、冷たい鼻、控えめに触れる舌。彼と同じ――。
アレックスは私を一人ぼっちにする気はないらしい。

お題は284で。
 何かが地面にめり込む音がした。
ちょうど会社は会議中だったのだが、皆外に出て音の原因を確かめようとした。
全く、お気楽な連中だ。俺もな。

 凄惨な、現場だった。皆一様に目を覆っている。俺は茫然自失の面持ちでそれを見た。
飛び散っている。目、臓器の部分部分、映画でしか見たことのないようなグロのオンパレード。
なのに……何故、その人は立っているのだろうか?
というか、色々なくなってるはずなのに、何故目も付いているし腹も裂けていないのだろうか?
「いやあ、余興ですよ、余興。サーカス団の人間なんです、僕」
「それで済まされるのか? なんか再生してるが……」
「さらにあと一つウケが欲しいと思いましてね! 大砲でズドーン! と」
「でも、サーカスの観客に見えてないぞ」
「えっ!?」
時が止まったのを、誰もが認識した。

「かがり火」「野球」「鋼」
 三月三十一日午後八時五十分ごろの、あるふたりの男の会話――。

 「デブ死ね!」
「いきなりなんだ。デブとは、プロ野球西武ライオンズの後藤武内野手のことか」
「そうだ! あれがノータリンなプレイをするから西口の好投が……」
「かつて七年連続で二桁勝利を挙げた、元西武のエースで現在は先発五番手の西口文也投手のことだな」
「エースだよ! 鋼の精神力はないけど……今日も五回まではほぼ完璧なピッチングだったんだよ……」
「確かに凄かったな。負けたのは、いくらでも点をとれるチャンスは
あったものを、援護してやれなかった打撃陣の責任が大きいな」
「俺の大好きな西口が……」
「まあ、気持ちは分かる。お前が西武ファンになったとき、西口は全盛期だったものな。
お前の中では、西武と西口はほぼ同等の大きさなんだろう」
「くそっ……」
「気を取り直せ。次の番組を見たら、少しは癒されるかもしれんぞ」

 三月三十一日午後十時十分ごろの、あるふたりの男の会話――。

 「いいなあ……いや、いいわこれ。ジーコジャパン弱すぎ。なんか、癒される弱さだ……」
「シンガポールもいいな。あのかがり火が癒される……」
「ちょっとは気持ちがラクになったかも。何故だか知らないけど……」
「昔は普通に応援してたけど……短期間でこんなに弱く出来るんだ、凄い……」
「すごい弱い日本代表」  

「魂」「戦い」「敗北」
289名無し物書き@推敲中?:04/04/01 23:07
閻魔大王を始めてから何万年経ったか忘れたが、
今日ほど多くの魂がやってきた日はなかった。
魂達から聞いた話を総合するに、現世で大規模な戦いが起きたようだ。
全世界が混乱し、誰も自分の国が勝利したのか敗北したのか分からない状態だという。
それはそうと、地獄が満員になったらどうしようか。

「天国」「地獄」「中国」
290名無し物書き@推敲中?:04/04/02 05:26
今日、彼女は自分が生まれた国へ帰る。
彼女と出会ったのは友達に連れて行かれた風俗店だった。
彼女の寡黙さが神秘的な美しさを際立たせていた。時折見せる笑顔が白い光を放つようで、そこはまさに天国だった。
僕は何もすることができず、ただ彼女に会うために店に通った。
ある日、警察の手入れが入った。まさに地獄絵図のような騒ぎの中、僕は彼女を連れて逃げようと必死だった。そう、彼女は中国人だった。
抵抗空しく警察に手を引かれる彼女が最後に見せた笑顔は淡いブルーだった。
「雨」「涙」「蜃気楼」
291雨、涙、蜃気楼:04/04/02 07:22
「ねえ、蜃気楼って見たことある?」
「んー、ない」
「そっか」
「ねえ、雨、止まないね」
「うん」
「傘持ってきてないでしょ」
「うん、今朝、天気予報見なかったから」
「えへへ、あたしも見なかった。ねえ、あんまり寒くないし、あたしン家まで近いし、走って帰ろうよ。ウチの傘貸してあげるよ」

と、ここでキーボードを打つ僕の手が止まった。
僕の胸に得体の知れない何かがこみ上げてきたのだ。
なぜか僕は、涙を流していた。

「アルゴリズム」「矛盾」「メガネ」
アルゴリズムってなんですか?
ぐぐったら「コンピュータに仕事をさせる時の手順のこと」だって。
誰か詳しいヒト書いて。
>292・293
裏3語スレ より良き即興の為に 
ttp://book2.2ch.net/test/read.cgi/bun/1035627627/

作品以外は裏でお願いします。


「待てよ、ここでこのルーチンを宣言すると…あ、ヤベ、場所間違え…」
「…まだ終わんないの?仕事…」
「っせーな、あとはここのアルゴリズムの流れだけだから2〜3行片付けて送ったら終わるっつーの」
「いや、いっつもそうやって専門用語ばっかで説明するけど私そういうの全然わかんないから」
「わかんないからって…、んじゃ聞くな!つーか今ギリギリだから話掛けんなよ!」
「聞くなって…、生意気な!コーラ瓶の底はめたみたいなメガネの癖に!」
「何だよメガネの癖にって!メガネで何が悪ィんだよ!」
「視力が悪いんだよ視力が!アルゴリズムアルゴリズムって、アルゴリズム体操でもやってろ!」
「視力と体操って全然関係ねーだろ!ブル−ベリーとかなら分かるけど!」
「ブルーベリーって何だよ!アルゴリズム体操はいつここだ!『悲しいとき』の人だ!悲しくなれ!さあ悲しくなれ!」
「それも関係ねーよ!矛盾しまくってる!大体『悲しくなれ』ってどういう事だよ!無理だっつーの!」
「矛盾って裁判にでも出てるつもりかっつーの!いいから早く仕事終わらせろよ!」
「だからお前が話しかけてくるから仕事が終わんねーん…ちょっと待て、今何時だ」
「…今?丁度…日が変わったとこだけど?」
「…もう…締め切り…過ぎたのか…。ごめん、先に言っとくけど給料だいぶ減った」

↓「ディストーション」「総額表示」「塩漬け」
「ディストーション」
安い事務机の上に山と積まれた紙の束を眺めながら、僕はそう呟いた。
背後から、右から左から、また次々と紙の束が乗せられていく。
何かの罰ゲームなんだろうか。
観念して僕は一番上の束を掴む。表紙は「○×公団 財務評価調査」。
そう、ディストーション。捻じ曲げるんだ。
この紙の束は全て虚構。僕は虚構をもっともらしく演出するんだ。
どうせ誰も彼も総額表示しか見ない。
真であることと数値が合うことは別なんだ。
塩漬けの土地。何かに利用しているように、名前が付いているか。
収支明細。カラ出張上等で奥さんへのプレゼントは経費、それも予算の使い道。
告発? せっかく手に入れたこの地位を捨てる気にはなれない。
このデータは、将来僕を助けてくれる交渉材料だ。
僕は上に立ちたい。もっと力が欲しい。ニンゲンとして当たり前じゃないか。
苦行とも思える紙との格闘の中、僕はそう自分に言い聞かせる。

次「カタカナ語」「可読性」「悪化」
『カタカナ語・可読性・悪化』

「メディアの責任は無視出来ないね。低俗な雑誌ほど、無意味なカタカナ語を多用する
傾向があるんだ。読者はそれを良しとして無意識に模倣してしまう」
「うん。口頭の場合は相手の反応から判断して、言葉を言い換えることも可能だけど、
活字の場合はちょっと辛いね。氾濫する書籍の可読性は、下降の一途を辿っている
様に思えるよ」
コーヒーを運んでいる私の足が、思わずもつれそうになる。客席の会話は結構パート
の耳にも入るものだ。勿論聞こえない振りをしてはいるが。
(何なのよ、この会話。もっと楽しい話は無いの?)
今朝から続く鈍い頭痛も一役買い、私は苛立ちに任せて足早に通り過ぎた。
程無く、おそらくはブランド物と思しき衣装を纏ったハイソな婦人が二人、先ほどの
客席に近づき、腰をおろした。
「ごめんね!カズ君、ヒトシちゃん。ママ達お買い物が長引いちゃって――ねぇ奥様」
「遅いよママ!僕お腹へった。チョコレートパフェ食べたぁい」
「僕もぉ」
我が子のことを思い出した。うちもあの子達と同じ位の小学生だ。
(ウチのはまさかさっきみたいな会話しないわよね――。メディアのせいってことなの?)
また頭痛が悪化した様に思えた。

次は「ガス漏れ」「放牧」「アンダー」


298うはう ◆8eErA24CiY :04/04/02 23:50
「ガス漏れ」「放牧」「アンダー」

 中央線沿線、通勤2時間の長い列に、彼はやっとの思いで並んでいる。
 極端に思いつめていた。自分達は、放牧された家畜同様だと思い込んでいた。
 「もう、死ぬしかない!」

 ゆらりとホームに足を踏み入れた瞬間を、駅員が目ざとく捉える。
 「どうしたんです?困りますよ、人身事故なんておこされちゃ」
 慣れた仕草で男の腕を取り、階段を降りてゆく。
 「人身事故、ガス漏れで大爆発…こういう方法は、他人にも迷惑なんです」
 神も仏もない言い草で、「アンダーグラウンド」と書かれた階段を降りると、小さなホームに出た。

 「専用列車 只今到着いたします。必要ない方は、白線の内側でお待ちくださーい」
 そうか、これが話題の専用列車か。ダイヤを乱さないための、身投げ専用列車…
 男は、「ははは」と力なく笑った。うまくしたものだ、自殺まで効率化か、まあいい。

 「押さないでくださーい」
 一列車一人なもので、自殺ホームは結構混んでいた。
 列はのろのろと動かない。時計は9時。死ぬ時までこうなのか。

 「もう、生きるしかない!」
 会社に間に合わないじゃないか。

※なんかありきたりかも。
次のお題は:「出っ歯」「仏」「シェーバー」でお願いします。
299「出っ歯」「仏」「シェーバー」:04/04/03 02:30
小学校の頃、同級生に出っ歯の杉本という子がいた。
彼はおとなしく目立たない存在だった。
口数は少なく自分から人に話しかけることは滅多になかった。
休み時間もトイレ以外は自分の席で仏像のように動かなかった。
そんなある日、担任の先生が風邪をひいて代わりに教頭先生が授業をしたことがあった。
教頭先生は胸のあたりまで髭を蓄えていて美髭公とあだ名されているほどだった。
生徒達はみんな髭についてあれこれしゃべってばかりで授業にならなかった。
そこへ突然杉本が立ち上がって言った。
「ソ連のシェーバーは剃れん」
その日から、杉本はクラスの人気者になった。

「キング」「キャプテン」「バロン」
300名無し物書き@推敲中?:04/04/03 09:57
私は、中東系航空会社の客室乗務員。
今日のフライトは皆が嫌う「魔のボンベイ便」だ。
うんざり気味でブリーフィング・ルームに入った私を見て。同期のジャマールが甲高い悲鳴をあげた。
「いや〜ん。久しぶり。元気ないわねぇ。月一のエンジェル・タイムなのぉ?」
病欠すればよかったと後悔しながら、彼の横に座る。
「ねぇ、ねぇ。今日のキャプテンはオオサマなんですって。彼って素敵なのよ〜」
うっとりする彼は、コックピット・クルー大好きエジプト人オカマなのだ。
「オオサマって、日本語でキングって意味なんですって?ますます素敵〜」
アラブ人男性は二刀流が多いので、毎日彼のパラダイスである。
「あんたは気楽でいいわねぇ」
嫌味で言った私の言葉に彼は表情を暗くした。
「でもね、もうすぐ結婚しなきゃいけないの。親の為にね」
「奥さんになる人、気の毒〜」
心底そう思う。ジャマールは私の肩にしな垂れかかって甘えた声を出した。
「ねぇ、このフライト終わったら一緒にビデオ見ない?」
「・・・・・・」
前にも彼と何回かビデオを見ている。ビデオ鑑賞は口実で、ずっと彼の悩みを一方的に聞かされるはめになるのだ。
「バロンって映画知ってる?エリック・アイドルが出てるのよ。彼って最高〜」
「モンティーパイソンに出てる人?」
「そう。私の好みなのぉ。いい男の出てるビデオ見ながらさ、色々話たいの」
断りたい。そう強く思いながら私はオッケーと言った。私は悲しいくらいに典型的な日本人なのだ。ノーと言えた試しがない。
溜息をつきながら、私は鼻歌を歌った。
All ways look on the bright side of life.

「9.11」「革命」「コアラ」





301長くてゴメン:04/04/03 12:46
 なるべく関わり合いになりたくない相手だが、奴に仕事を依頼するしかない、そう自
分に言い聞かせながら、奴の事務所の擦り硝子の嵌ったドアを開けた。彼はいつも
と変わらぬ調子で、丸い座布団に座りながら、窓から外の様子を退屈そうに眺めて
いた。
 ただ一つの事を除いては、その男は正に私立探偵と呼ぶにふさわしい身体的特徴
を備えていた──毛深く、酸いも甘いも噛み分けたような顔つき、敏捷で優れたパン
チ力(りょく)を持つ両腕、思いがけない時に見せる愛嬌のある仕草。「ただ一つの事」
が何かと言うと、彼がチンパンジーだった事だ。

「おい、ジョー、仕事をやりにきたぞ」内心の動揺を押し隠しながら、俺は続けた。
「携帯電話型の小型爆弾を持ったテロリストが都内に潜伏している。オーストラリア出
身の、コアラの五匹組で、いまどき流行らない社会主義革命を全世界に波及させよ
うとしているらしい。奴は都内のホテルで一泊した後、現場の下見をする予定らしい。
そこでだ」と胸ポケットから地図を出して、「ホテルの外壁をよじ登り、窓から奴らの挙
動を監視してくれないか? 何かあったら、ベランダに置かれている電話から連絡を
くれ。危険な仕事ということは分かっている。報酬は弾むぜ、バナナ600本というとこ
ろでどうだ」

 俺は瞬きもせずに、目の前の猿を凝視した。上手くいくだろうか?
 奴は部屋の隅から様々な文字がかかれたボードを取り出すと、俺の目の前にどす
んと置いて、文字を指さした。「いいえ、バナナ、7、百、欲しい」
 遠い所から、笑い声が聞こえる。良かった、どうにか最初の関門は突破したようだ……

 俺も飼育係を長い事続けているが、こんな冷や汗物の仕事は初めてだった。チンパンジー
「ナナちゃん」の台詞覚えが良かったから助かったものの、9月11日の「公衆電話の日」の
記念イヴェントのために、動物を使ったアトラクションをしてほしいと上司から伝えられた時
には夜も眠れなかったものだ。俺は舞台上でナナちゃんを抱きしめると、観客の歓声に応える
ために客席へと降りていった。……だが、こんな仕事はもう真っ平だぜ、園長。
 
 
「石けん」「地衣植物」「周波数」
 僕は、9月11日に何を願っただろう。
 部屋でいつものようにテレビをみていた。ポテトチップスがあったかもしれない。
 その時食べていたのか、片付けないで放って置いた物かどうかは思い出せない。
 あの日に確かに僕はテロリストを憎んだ。
 テロ行為という物の恐ろしさに恐怖した。
 テレビで久々に流された映像は、僕が無力だという事だけを掬い上げる。
 一方的な戦争のあとでの、一意的なブーイング。
 大きすぎる事には卑屈な視点で叩くしかできない庶民。
 革命を望んだ人たちが、革命を叩く。
 まるで最初から計画されたように。
 愛玩動物。猫や犬、コアラやパンダのような。
 日常に飼われている小市民の一時的な感傷は、
 商業的構造に利用されて捨てられるだけ。
「戦争なんか、見なかった事にしよう」
 つい口に出た小市民的な逃避の提案。
 僕は目を閉じる。
 今日は休み。明日も休み。明後日からは日常という理由なき戦争。
 銃を持っての戦争だって、本当は理由なんかいらないんだろう?
 馬鹿らしさが僕を包む。眠気を誘う。
 まどろみの中で、玩具の兵隊が革命を叫んでいた。

「友情」「裏切り」「泥んこプロレス」
303名無し物書き@推敲中?:04/04/03 15:27
つまらん
>>302
構造君の悪寒
電波自分語りキモい
305名無し物書き@推敲中?:04/04/03 15:34
「ああっ、もうダメッ!
 ぁあ…友情出るっ、友情出ますうっ!!
 ビッ、ブリュッ、ブリュブリュブリュゥゥゥーーーーーッッッ!!!
 いやああああっっっ!!見ないで、お願いぃぃぃっっっ!!!
 ブジュッ!ジャアアアアーーーーーーッッッ…ブシャッ!
 ブババババババアアアアアアッッッッ!!!!
 んはああーーーーっっっ!!!ウッ、ウンッ、ウンコォォォッッ!!!
 ムリムリイッッ!!ブチュブチュッッ、ミチミチミチィィッッ!!!
 おおっ!ウンコッ!!ウッ、ウンッ、ウンコッッ!!!ウンコ見てぇっ ああっ、もうダメッ!!はうあああーーーーっっっ!!!
 ブリイッ!ブボッ!ブリブリブリィィィィッッッッ!!!!
 いやぁぁっ!あたし、こんなにいっぱい裏切り出してるゥゥッ!
 ぶびびびびびびびぃぃぃぃぃぃぃっっっっ!!!!ボトボトボトォォッッ!!!
 ぁあ…ウンチ出るっ、ウンチ出ますうっ!!
 ビッ、ブリュッ、ブリュブリュブリュゥゥゥーーーーーッッッ!!!
 いやああああっっっ!!見ないで、お願いぃぃぃっっっ!!!
 ブジュッ!ジャアアアアーーーーーーッッッ…ブシャッ!
 ブババババババアアアアアアッッッッ!!!!
 んはああーーーーっっっ!!!ウッ、ウンッ、ウンコォォォッッ!!!
 ムリムリイッッ!!ブチュブチュッッ、ミチミチミチィィッッ!!!
 おおっ!ウンコッ!!ウッ、ウンッ、ウンコッッ!!!ウンコ見てぇっ ああっ、もうダメッ!!はうあああーーーーっっっ!!!
 ブリイッ!ブボッ!ブリブリブリィィィィッッッッ!!!!
 いやぁぁっ!あたし、こんなにいっぱいウンチ出してるゥゥッ!
 ぶびびびびびびびぃぃぃぃぃぃぃっっっっ!!!!ボトボトボトォォッッ!!!
 ぁあ…ウンチ出るっ、ウンチ出ますうっ!!
 ビッ、ブリュッ、ブリュブリュブリュゥゥゥーーーーーッッッ!!!
 いやああああっっっ!!見ないで、お願いぃぃぃっっっ!!!
 ブジュッ!ジャアアアアーーーーーーッッッ…ブシャッ!
 ブババババババアアアアアアッッッッ!!!!
 んはああーーーーっっっ!!!ウッ、ウンッ、泥んこプロレスォォォッッ!」
306名無し物書き@推敲中?:04/04/03 15:41
【注意:耕造君にエサを与えないで下さい。
 怒濤の自演による擁護者が現れてスレの機能が停止します】

では次、>>301のお題でどうぞ。
『石けん・地衣植物・周波数・友情・裏切り・泥んこプロレス』

夜勤を終え、部屋に辿り着いた。
さっさと眠りたい気持ちを脇へ押しやり、コンビニ弁当を突っ込んだ電子レンジの扉を
肘で閉じる。食べたらシャワーを浴びて歯を磨いて、それから――。
習慣からテレビのスイッチを入れる。砂嵐だが放って置いた。やがて映像周波数
のアナウンスの後、左上に時刻表示を掲げて今日の放送がスタートした。
「泥んこプロレス?」
何処か地方の伝統行事だろう。半裸の男達が取っ組み合い、地衣植物の様に付着
した泥はやがて全身を隈なく覆う。周囲の畦道で見守る女性達は、手に手に石鹸を
構えている。リングに投げ入れるタオルと同等の意味合いを持つことが、見ているうち
に解かって来た。
最終的に、疲れ果てて立ち上がることが出来なくなった一方に石けんが投げ入れられ
て、試合終了。勝者が手を差し伸べるが、途中で手を離して再び敗者は泥の中へ。
「裏切りやがったな!」
勿論両者は笑っている。その後支えあって立ち上がり、友情を確かめ合うかの様に
肩を叩き合う。泥まみれの茶色い男達。にっこり笑った歯も白くは無い――。
気が変わった。俺は弁当をそのままにして、シャワーを浴びに向かった。

次は「億」「散る」「反転」

308名無し物書き@推敲中?:04/04/03 16:14
じっと、机に向かい筆をとる。何億の人が「これ」を味わったのだろう。
誰もが味わう苦味、誰もが味わう辛なのだと、そう思うことで
「よくあることだ」と気を強く持とうとする。
けれども、昨日まで善意の人であったはずの友人も、今は悪意の権化にしか
今は思えない。昨日まで自分を守っていた世界観が、今は自分を
はりめぐらされた有刺鉄線のごとく自分を傷つける。
あきらめないとゆうことがどれだけ尊いことだったのか、あきらめること
の無かった自分にはわかっていなかったのだ。
夢が散ると書けば、それは美しいのかもしれない。
けれども、「これ」はそんな言葉では言い表せないのだ。
机の上の便箋には一言、「遺書」と書かれている。
自分がどうしてそんなものを書いたのかさえわからないほど、
混乱した頭で、ひとつの考えだけがはっきりと浮かぶ。
いまや反転してしまった自分の世界を元に戻すには、この
道しかないのだと。
けれども、便箋に書くべき言葉も見つからないまま、
誰に宛てて書けばいいかさえわからないまま、時間だけが過ぎてゆく。

次は「スピーカー」「濁った水」「扇風機」
309うはう ◆8eErA24CiY :04/04/03 16:39
「石けん」「地衣植物」「周波数」

 地球温暖化、植生退行による砂漠化…壊滅的な大災害予報は、意外と早くやってきた。
 緊急移住説明会が終わると、老人はたまりかねて叫んだ。「なんとかならないんですかっ!」
 「既に地表植物の80%が失われ、来月公開映画の様な巨大嵐は不可避です。至急富士山に移住を…」

 抑えきれない嗚咽の中で、唯一、得意満面の女がいた。「ハガキおばさん」である。
 牛乳パックでハガキを作ろうとか、天ぷら油で石けんをとか、一日中押し付け回っていた女だ。
 「だから言ったじゃないの!みんなみんな、私の言う通り、地球に優しくしていれば!」

 誰も答えなかった。皆が知っていたからだ。彼女は、地球や人類の為にそうしていた訳ではない事を。
 「みんな…」ハガキおばさんは、一人会場を去っていった。

 彼女が姿を見せたのは、その1ケ月後。大津波で市が壊滅しようという当日だった。
 緊急周波数で、富士シェルターに連絡が入ったのだ。「浜辺に、白装束姿の女性を発見!」
 彼女だった。富士山まで呑み込みそうな大津波に、ハガキおばさんがただ一人で対峙しているのだ。
 
 恐怖の表情は、どこにもなかった。自分に何ができるか、何をすべきかを知っていたから。
 大津波が近づく、高まる潮位が、白装束を濡らしはじめている。
 「そろそろ、始めなくては…」
 彼女は右手を高らかにあげると、ものすごい勢いで、牛乳パックからハガキを作り始めた。

※おばさん、ごめんなさい;
次のお題は:302さんの友情」「裏切り」「泥んこプロレス」でお願いしまふ。
310309:04/04/03 16:44
失礼しました;
お題は、308さんの、「スピーカー」「濁った水」「扇風機」で」お願いしまふ。
>>309
次は「スピーカー」「濁った水」「扇風機」で良いと思われ。
312「スピーカー」「濁った水」「扇風機」:04/04/03 17:55
いつまで俺はこうしているんだろう。不意に青い疑問が頭をよぎるが噛み殺すべく仕事の手を速める。
俺は機械工だ。フロンティア地区の地下配電のメンテナンスをしている。
テクノロジー礼賛志向と人口過剰が互いに背中を押す形で、赤道直下の湿地帯に半ば強引に居住地域を開墾してかれこれ十年経つ。
つまり俺は十年も、繁栄のエアーポケットを這いずり回っていたことになる。
タワーの床を覆う電光のタイル張り…の代わりに俺は水溜りと泥を蹴り、浄水された飲料水…の代わりに濁った水で咽喉を潤し…。
日本の大学で工学を学んでいた当時の俺は、このフロンティア計画に心を躍らせ自らすすんで渡航したのだったが、現実にはこのザマだ。
開発の捨て駒になるだけだ。
ラジオから流れる音楽だけが唯一の救いである。そういう生活を続けている。
ボルトを締める今も邦楽チャンネルを流している。
日本にいたころはまったく好きになれなかった日本語の歌を今更支えにするだなんておかしなことだ。自覚しつつもやめられない。
いつまで俺はこうしているんだろう。
大型の扇風機が大袈裟な音を立てて俺の汗を吹き飛ばしていく。些細な迷いなども吹き飛ばしてくれるといい。
「次の曲です」スピーカーから流れてきたのは日本のバンドのメモリーズという曲だった。
「嵐が過ぎてやっとわかった 追いかけたものの正体」大学の頃、そういえば耳にしたような気がする。
「忘れてしまおう ちょっと無理しても明日を目指して」 今の俺に明日などあるのだろうか? 
一瞬、殺風景な中にそびえる美しいタワーの光芒を思い出した。自分でも、この感情が規定できない。…希望なんて、本当にあるのだろうか。
313312:04/04/03 18:01
お次は「アンドロイド」「白い花」「市街」で宜しくおねがいしまつ。
 僕は世界でたった一人の人間だ。
市街地は人が作り変えられたアンドロイドで溢れ、
皆一様な行動パターンをインプットされて都市生活は滞りなく進む。
僕も彼らのパターンに合わせて、機械的に、淡々と動く。
人間だとバレた時点で、俺もアンドロイドにされてしまう。
即ち、「僕」は消える。新たにまた一つの機械人形が生まれるのみだ。
はじめはとてもつらかった。自分の意図通りに動けない環境、
極限の、たった一つのミスも許されない社会生活――。
それにも次第に慣れていき、しかし、同時に自我というものが欠けていく。
自分の体が自分のもので無くなっていく感覚――。
そんなときだった。
偶然、視界の端で捉えた白い花があった。
全てが機械化された都市で、初めて見た花だった。
体は動く。規律を乱す。吸い寄せられる。そこには、何かを超越したものがあった。
僕は跪き、白い花に自分の鼻を当てた。いい香りがした。
頭の後ろに何か硬いものがあたった感触がした。そこで意識は途切れた。

「殺伐」「時代」「プリンター」
 冷蔵庫の野菜室は殺伐としていた。
 冷蔵庫なのだからまぁ温かみを求めるのも無駄なのか
も知れないが、とにかく殺伐としていた。
 いつの時代のものとも知れぬ、野菜室のトマト。まぁ
平成生まれなのは間違いがないだろうとは思うが。
 他にあるのは、しなびたレタスとエリンギのみだ。
 
 僕は幻想を抱いてしまっていたのだ。
 十分前、プリンターから排出させた安っぽい印刷紙に
は、非常においしそうなサンドウィッチの画像と、その
レシピが印刷されていた。それはあまりにもゴージャス
に見えた。
 無性に食欲を刺激され、その紙をひらひらとさせなが
ら、冷蔵庫に向かったのが間違いだった。
 理想と現実は違うのだ。材料のことなど考えもしなかっ
た。

 仕方なくその印刷紙を食べることにした。
 だって、僕は山羊だもの。


 お次は「オカルト」「紅茶」「蛇」 お願いします
 このオカルトさ加減はなんだろう。
 蛇がうねうねと踊っている様が非常にエキゾチックである。
 紅茶を飲みながら僕はその空間に流れる特殊な時間律を楽しんだ。長いような、短いような、退屈なようでいて退廃的な空気が凝縮された濃い時の流れ。
 硬直する映像がさざ波のように押し寄せては引いてゆく。
 自分の語彙を漁りながら、紡ぎ出した物を提示し合う休日。
 紅茶を飲み干して一息。
 僕は、このスレが良いスレだと思った。
317316:04/04/03 19:50
次「慈しみ」「憎しみ」「インプロヴィゼーション」でよろしく
「かつては時代の寵児、と言われたのだがな」
ケーブルを弄びながら白髪の混じった男が呟く。ケーブルは他の大小のをも合流し、彼女の左腕に流れ込んでいる。
「これも、寿命か」
南向きに嵌められたウィンドウが男の渋面を映し出す。
彼女は不朽の永遠を象徴し、不滅を予定されていた存在だった。
男は目に見えない何かを、彼女の小さな身体に封じ込めたはずだった。テクノロジーの実現などと現実での名目を唱えながらも、彼は彼女に、したたかに夢を隠したはずだった。
「大局は免れぬ。そういうことだろう?」
男は尋ねた。彼女に対してか、彼女に隠したそれに対してか、それが不明瞭だった為かどうかは分からぬが、返事は無い。
そもそも何かなど、はなから存在しなかったのか…? 
当時自分が現実の蓑に隠れて夢を一存在へと託したように、こんどは別の何かを一存在の抹消へと託そうとしている。
男は自分の行動に対する言い訳に気付いて苦笑する。おそらく彼女の抹消に託す何かとは、夢という蓑を着た現実だ。
人間である以上、常に己のループからは外れることが出来ぬのか。
男は台座に近寄り、手を取った。
結局彼女は人を象りつつもそれぞれのループを俯瞰して見詰めるだけだった。人間とは似て非なる存在だった。
一種の神聖さすらあったのかもしれぬ。プリンターから弾かれる彼女の活動数値と同様に、彼女は人間には決してありえない規則正しい平坦さを保ちつづけた。
きっとこの終わりも彼女にとっては何の意味も持たないのだろう。保ち続ける数値のレベルが変わるというだけで…。
やっと男の中で決意が固まる。
彼女が傷付くということはありえない、彼女の神聖さを自分が破壊するということはありえない。
そう自分を納得させるしか、男に勇気を取り戻す方法は無かった。
力を込めてケーブルを彼女からもぎ取ると同時に数値はゼロになった。
彼女がまだ目に見えぬ何かを隠し続けているような錯覚を覚えたがそれも一瞬のこと、彼は彼女をただの殺伐とした鉄鋼の塊だと捉えることにした。
後を引き摺る曖昧な感傷など、気に留めぬべきだ。そう生きてきたはずだ。

「目薬」「辞書」「リップクリーム」
319318:04/04/03 20:22
すいません、317さんので宜しくお願いします。
 二週間ほどシャーレの中で培養して増殖させた菌を、一気に飲み干す。どろりとし
て舌に絡みつく黄色の液体を嚥下するのに、思いのほか苦労した。ガラスのコップに
水を半分ほど注ぎ、口腔内を洗浄すると、味が無いはずの水に甘さを感じた。この
細菌は味覚までおかしくしてしまうのか、と慄然とする。

 月日が経つのは早いもので、愛する妻を失ってから、今年の春でもう二年が経とう
としている。運命とは皮肉なものだ──細菌学者である私が、その妻を、原因不明
の病原菌に冒されて失うとは。

 だが私は感傷よりもまず研究を優先しようとした。妻の肉体の一部を切除し、それ
を使用してこっそり細菌の培養を行っていたのだ。そして、この病気は発生率が極め
て少なく、被験者が国内には皆無なので、私は自らの身体を実験台にして、この病
気の症状を克明に記録しようと決意したのだ……いや、そればかりではない。自分
を支え続けてくれた妻に対する慈しみの念と、病原菌に対する憎しみが綯い交ぜに
なった感情にけりを付けるためにも、この奇矯とも思える行為をとらなければならな
かった。時間的な猶予は、最低でも半年間はあるはずだ。その間に、私は研究をど
の程度進める事ができるだろうか。
 ふと、不思議そうな妻の表情を思い出す。亡くなる前の妻とは、よく言い争いをして
いたものだ。料理の味付けがおかしいのに、彼女は頑としてそれを認めなかった…
…その時は、料理の腕が落ちたのだろうと思い大して気にも留めなかったが、その
頃から妻の味覚はおかしくなっていたのだ。何を食べればどんな味がするのか、これ
も記録しておこう、調理手順を一切無視した、インプロヴィゼーションめいた料理ばか
り作っていた、妻のためにも。



お題を出して良いのかな? まずかったら無視してください。
「さざ波」「ソーセージ」「リンパ腺」
321320:04/04/03 20:50
ごめん、>>320 は「慈しみ」「憎しみ」「インプロヴィゼーション」のお題を基に書きました
分かりにくくて(再び)スンマセン
322318:04/04/03 22:13
継続しにくいと思うので鶴の一声いきます。鶴というよりウとかガチョウですけど。
320さんのお題で宜しくおねがいしまつ。
「眠いなあ、明日までに仕上げにゃならんのに」
そういいながら欠伸をすると、辞書を閉じて眠気を飛ばす方法を思案し始めた。
「取り敢えずコーヒーでも飲むか」

いつもより濃いめのコーヒーを飲む。間もなく男は欠伸をした。
「駄目だ、全く効かん。目が疲れているかも知れないな」
男は手近にあった目薬を差した。
「少しはましになったみたいだが、刺激がないと寝てしまいそうだ」
言いながら机を見ると、薄荷入りのリップクリームが目に付いた。
「そうだ、これを……」

その後の事は読者の方が考える通りの結末である。
残念ながら私の稚拙な筆では女性の方に、
男の結末を伝える事が出来ないのが非常に残念であるが、お許し頂きたい。

次は>>320で。
「さざ波」「ソーセージ」「リンパ腺」

 今日、私は癌であると告知された。全身のリンパというリンパがやられた血液癌だそうだ。
回復の見込みは、ない。原因はわかっている。一週間前に親から送られてきたあの忌まわしいソーセージだ。
現在これを読んでいる諸君には、何言ってるんだお前は頭大丈夫か、だとか一週間で根治不可の癌になるか、
だとかそもそもソーセージで何故癌になるんだ、だとか色々言いたいことがあるかもしれない。
 だがそんな文句はアレを見れば一発で消し飛んでしまうはずだ。あの、表現するもおぞましい、
地獄の、深遠の、名状しがたい、這い寄る、異次元の――ああどれほどの形容詞を並べてもその猛威を
万分の一たりとも形容したことにはならない――ソーセージを視界に入れてしまえば。
 具体的にアレの歴史を語ったほうがその脅威を容易く知ってもらうことができるだろうか。
衝撃を伝える。かつてあのソーセージは、200人を超える集団を一分で死に追いやったことがある。
ひょうんなことからあのソーセージを手に入れたプロキアの科学者が、なんとかアレの脅威から逃げようと、
家の窓からさざ波が打ち寄せる浜辺へと投げ捨てたのだ。……愚かにも。そんなことをしても、
あのソーセージは所有者を決して逃さない。かえってその繋ぎ目から滲み出る抑えようも無い毒性を
強めるだけなのだ。

「……あのさ、もういいよ、君、ごくろう」
「なに言ってるんだ! これからソーセージが持つ4万年の血塗られた歴史とかソーセージを食べた
ことで超能力に目覚め地球を守る使命を授かった少年とかソーセージを巡って情報戦を繰り広げた
スパイ達による愛と勇気と絶望の物語が」
「帰れよ」

「劫火」「経済」「俺様」
325名無し物書き@推敲中?:04/04/04 03:03
くだらない文だな。
326刧火 経済 俺様:04/04/04 10:34
中学の頃、私はクラス中からいじめられた。
リーダー格を筆頭に繰り広げられたいじめの内容はひどく粘着だった。あの頃は学校の全ての人間が敵であった。
ある日、クラスで出し物をする事になった。配役、脚本、音楽などは全てクラスごとに選出された委員が決める事になっていたが、予想外の出来事が起きた。
リーダー格が全てを決めてしまったのだ。それは、一部の女子の間で反感を買う事になる。
それから少しして、担任に封書で私に対するいじめの内部密告がなされた。差出人は不明、もちろん、私じゃない。
数名が生徒指導室に押し込められ、一日中こっぴどく説教を食らった。勿論その後当然のごとく私は囲まれ、リンチに近い暴力を受けた。
数日の後、私のクラス担任が学級会にて、校長より通達された文書を読み始めた。
通達の内容はいじめに関わった人間全てに留年、追学を最高罰とするなんらかの処罰を与えるというものであった。
学級会の後、クラスの連中がリーダー格抜きに秘密裏に話し合っていた。結果、一つの結論に至る。
奴を追い出そう、それで全てが解決する。
それから、私に対するいじめはぴたりと止んだ。その代わり、裏では、リーダー格に対する執拗なイジメがなされていた。それは彼女の俺様主義が招いた悲劇だった。
きっと彼女は生け贄だったのだろう。一番悪い奴を苦しめるから、どうか私を密告しないで。考える事は皆同じだった。
それまで私をいじめてきた連中が、パネルをひっくり返す様に私をかばい、同情した。
そうした連中の薄情さに激しく嫌悪しつつも、私は再度いじめられる事を恐れ、何も言えず、口をつむる事しかできなかった。
いじめる対象なんて誰でもいいのだ。クラスというものを暖めるために薪が必要であり、それが嫉妬や侮蔑という刧火で燃やされる。
弁当の時間でも経済封鎖を食らった国の様に相手にされなくなった彼女は、ついに学校にこなくなった。
やっと終わったね、掃除の時間にこそこそと集まり、安堵の言葉を漏らす同級達の会話に、身も毛もよだつ思いをしたのを、今もはっきりと記憶している。
「プライバシー」「神話」「ドライ」

327岸和田:04/04/04 11:03
「プライバシー」「神話」「ドライ」
 私は最近、家では裸で生活している。
理由はと言われても困るのだが、あえてあげるならば『快感』であろうか。
―誰かがいまどこからか覗いている。天井?窓?床?
そう考えるだけでなんとも言えぬ、形容しがたい快感が生まれる。
自分が神話のアダムとイヴのように神聖で汚れなき存在と思える。
 ただこのことは絶対にばれてはいけない。
絶対に知られてはいけない重要なプライバシー、とでも言うべきか。
どれだけ親しい友人であろうと、家族であろうと、誰にも教えない。
これは私と想像上の『覗く男』だけが知っていればいいことなのだ。
 私が風呂あがりに髪をドライヤーで乾かしていると、後ろに男が立っていた。
これは想像なのだろうか、現実なのだろうか。

 「エロ本」「ファッション雑誌」「紙ヒコウキ」
ドライ ドライヤー?
僕は紙ヒコウキ。大空を飛ぶ紙ヒコウキ。風の向くまま気向くままに、海超え山超え空を行く。

始まりは、マンション。さびしい誰かの気まぐれな手が、僕に願いを託したのさ。
エロ本だろうが、ファッション雑誌だろうが関係ない。大切なのは、折り方さ。
心を込めて折ったその手に連れられて、僕は旅立つ時を迎える。
一度きり、一度きりだから、どうか大事に飛ばしておくれ。

僕は紙ヒコウキ。ちいさな紙ヒコウキ。
下降気流に逆らいながら、久遠の道を辿り行く。
仲間はすでに、落ちてしまって、最後に残った僕は、ひとり。
時々涙が降って来て、僕の体を濡らすけど、彼方に見える空の果てまで、落ちるわけにはいかないよ。

俺は紙ヒコウキ。さびしい紙ヒコウキ。
今日も浮き世を流れ行く。

むずい。お題は継続。
『エロ本・ファッション雑誌・紙ヒコウキ』

選んだのは、眠そうな初老の店主が一人でやっている小さな本屋。
エロ本なんて普段ほとんど買わないから、それでもやっぱり恥ずかしい。
僕は、近くにあったファッション雑誌を適当に何冊か手に取ると、
目当てのエロ本を挟みこむ様にして、店主の前に差し出した。
 逸る気持ちを抑えつつ部屋に戻った僕は、汗ばんだ指を操り、ページ
を捲っていった。
「あった」
友人の言っていたことは嘘ではなかった。
「佐知子――」
化粧なんかしている。髪型もたぶん最近流行の――。
「裕ちゃんごめん。あたし、卒業したら東京の短大に行く。自分の可能性を
試してみたいの。解って――くれるよね?」
あの日の佐知子を思い返す。こんなことをする為に、東京へ行ったのかよ。
あの頃と変わらぬ右顎のほくろ――。佐知子のページをゆっくりと破り取った。
僕は佐知子の東京を紙ヒコウキにして、ベランダへ出た。
飛んだ。
佐知子の紙ヒコウキは、夕映えの空に弧を描いて急上昇した後、突然失速して
落ちた。

次は「サイド」「電源」「モデル」

331名無し物書き@推敲中?:04/04/04 16:43
リバーサイドホテルでうんこの早食い大会が行われた。
俺とあいつはタッグを組んで出場した。
決勝戦のあいては食糞マシーン28号だった。
負けそうになったので電源を切ってやったら反則負けになった。
俺とあいつは便所でお互いの糞を塗りたくりながら泣いた。
あいつは今はスカトロ雑誌でモデルをやっている。
 くだらない仕事を終え、自宅へとたどり着いた時には、私はもう
しなびたネギのようにくたびれていた。
 スーツを脱ぎ捨て、ソファーへと腰を下ろし、サイドテー
ブルに置いてあるPCの電源を入れた。
 ブゥゥゥンと鳴きながら起動したPCの画面に向かい、ブラ
ウザを開く。
 検索サイトに飛び、「2ちゃんねる」と打ち込み、検索結
果の一番上にでたリンクを確認することもなくクリックした。

「俺はこんなにくたびれてるというのに、2ちゃんだけはで
きるんだから、不思議なもんだ」
 そう呟きながら、お気に入りの「創作文芸板」に飛び込ん
だ。
 一番上にあるスレッドは「この三語で書け! 即興文もの
スレ 第十六期」だった。
 ……おーけー。書いてやろうじゃないか。
「お題は『サイド』『電源』『モデル』か」
 それを確認すると、何も考えずにキーを叩き、文章を書き
始めた。
 やばいな……思いつかない。
 こういう時はあれだな……「サイドに電源があるモデルが
いた」とか書いてりゃいいか。どうせ2ちゃんだし。

 送信ボタンを押し、「煽られなきゃいいけど」とひとりご
ちて夕食の買い物へ出かけた。


 次は「ポット」「ロック」「ノック」でお願いします。
 買い出し行ってきます。
>>332
やな消化の仕方だな
334332:04/04/04 22:41
>>333さん

ごめんなさい。
世界はとても脆くなってしまって、歩く度にしゃりんしゃりんとガラスのかけらが落ちてくる。
もう、朝玄関の下に牛乳ビンを置く音も聞かれないし、艶やかな牛肉をじゅうじゅう焼く音も聞かれない。
人間達はとても慎重になった。世界の終わりを前に、ようやく協力しあう事を覚えたのだ。
そして人間は穏やかになった。隣人同士の醜い言い争いを止めた。地面に爆弾を落とすのを止めた。人々は閉鎖された世界で生き抜こうと必死であった。
それでもなお、世界は今日もひずんでいく。
今、小さな診療所にて新しい命が産まれようとしていた。出産は壮絶を極めたが、母親は嗚咽を漏らす事すらできなかった。医者は励ましの言葉をかけられない自分の無力さを悔いた。
長い時間が過ぎた後、赤子が頭を覗かせる。やった!医師達は歓声を身振り手振りで分かち合った。
しかし、それが悲劇の始まり。赤子の悲鳴が世界中を揺すった。悲鳴は世界中をノックして回り、ビルは崩れ、アスファルトの地面が裂ける。
それは空高く舞い上がり、ばりーんと天に大きな穴を穿った。世界に降り注ぐスポットライト。人間達のついに世界は壊れてしまう。白い世界、人間だけが残った。
今なら言えると、隣人は溜まっていたうっぷんを吐きだした。少女は歌を歌ったし、女は訳もなく泣いた。医師達は喜びをようやく報告する事ができたし、母親は産まれてきた我が子に感謝した。
赤子はなおも叫び続け、牛乳配達員は牛乳を配って回り、遠い国では誰かが誰かに愛を伝えた。
崩壊は解放。世界にかけられたキィ・ロックをようやく人はぶち壊した。
お題:ニンギョヒメ・淡い光・スタンガン
 人形食いを繰り返す浅田が許せなくなった間宮は絶縁状を叩きつけるとそこにはニンギョヒメが
淡い光をともなってバチバチと音を立てながらスタンガンの痛みは100万ボルト

疲れてるのでお題継続
とある自殺の名所。ここにまた一人、自殺志願者が訪れていた。
「早まるな。お前にはまだ家族がいるんだぞ?」
「黙れ!俺みたいな人間は生きている価値なんてないんだ!」
私はこの男の説得に当っていた。さっきから、ずっと同じような言葉を言い合っている。ただ、その間何もしてなかったわけじゃない。
男は興奮し、視線もおぼついていない。私から視線がずれる度に男に近づいていた。
「俺の気持ちなんて、出世が約束された奴にわかるわけがない!」
また視線がずれた。じわじわと空間を潰していく。
――――今だ。
一瞬の隙をつき、私は男めがけてタックルした。
背中から倒れる男。すかさず私は上になる。その瞬間脇腹にこれまで体感したことのない衝撃が走った。
「じゃあな。偽正義漢。俺も後から行くよ。」
男はこの言葉と共に、私にスタンガンを押し付けたのだ。
全身に力が入らず、成す術もなく崖から蹴落とされた。
荒れた海へと沈んでいく私の体。恐らくこのまま、死んでいくのだろう。
薄れ行く意識の中、私は妙な生物をみた。これが世に言うニンギョヒメなのだろうか。

目の前に淡い光が広がった。

次のお題は「粉」「鉛筆」「CD」でお願いします。
有線から、三日前に発売したCDアルバムのタイトル曲が流れてきた。
運ばれてきた豚丼を食べながら、歌姫はできるだけ客観的な気持ちで、
自分の作った曲を聴いてやろうと努力する。
上っ面だけの応援歌。
心に何も響かない歌詞。
耳ざわりの良い、だけど印象に残らない曲。
半分まで食べた豚丼をそのままに、歌姫はバッグを手に取るとトイレへと向かった。
小用を済ませると、着衣を整えて、そのまま歌姫は人の気配を窺った。
静寂に安堵した歌姫は、ビニール袋に小分けされた白い粉をバッグの中から取り出し、
コンパクトの鏡に落としてストローで鼻から吸い込む。
ああ、私が初めて詩を書いたのは、中学生のときだった。
三日前に14才の誕生日を迎えていた。
歯型がいっぱいついたHBの鉛筆。
校舎裏でいじめっこの太股に突き刺したあの時の鉛筆が欲しい、
歌姫は性欲にも似た激しい欲求を感じて、強く唇を噛み締めた。

次のお題は「豚」「鏡」「いじめ」でお願いします。
 学校へつくと机に落書きがしてあった。もはや古典的とさえ言える。
「自分の顔見たことあんのかよ」
「学校来てんじゃねーよ、豚」
 などなど、一通りの常套句と自分の容姿について書いてあって、
丁寧に手鏡まで用意してある。これは頼子ちゃんのだ。やった。
 彼らは俺を見て笑っている。甘い。本当の勝者は俺だ。内心ほくそ
笑みながら、しかし俺は報復を忘れない。いじめられて泣き寝入る
ほど親切な人間が、いじめられるはずはないのだ。
「うわーん」
 泣き寝入らない以上、俺は泣いた。大声で泣いた。それは一種の
儀式だ。彼らにとっての悪魔を召喚するための。
「どうしたんだ、田中」
 先生が来た。ざまーみろ。これから君らはこっぴどく怒られるのだ。
「先生! 田中君が頼子ちゃんの鏡を盗ったんです!」
 誰かが叫んだ。泣き声が出なくなった。

次「曲」「即興」「幻想」
 三平太はいつも指をこまねいていた。
人と話しているときも、授業中も、いつもそうやっていてどこか上の空だった。
ただ、ときたま変わる。

 数学の授業中だった。あいつは数学が大の苦手で、いつもより高速で指をこねている。
面白いことがある。あいつが先生に指されたときの即興回答だ。
「んじゃ、香川! 香川三平太! この問題答えてみい」
「うへっ!? へ、えええと……3と、ちっちゃい3かける、4とちっちゃい5……んんん…」
「どうしたあ? 分からんかったら分からんでもええぞ」
三平太は妙なサービス精神というか、何かしなくてはならない、という気持ちが人一倍強い。
だから、何も答えず済ますということはありえないのだ。
「悠久……悠久幻想組曲!!」
「……香川。今は数学やぞ、数学」
クラスは軽く笑いに包まれた。冷静に考えれば別に面白いネタではない。
元ネタは、俺のうちに遊びに来ていたときに読んでいた、昔のゲーム雑誌からだろう。
三平太は自然と知っていたのだ。極端に限定された場での笑いの強さを。
まだ言い出していないが、俺はあいつとコンビを組みたいと思っている。
ただ指をこまねいたままで終らせるには惜しい才能だ。

「唐揚げ」「カレー」「機械」
『唐揚げ・カレー・機械』

 西暦20XX年。
 家業の惣菜屋を継いで久しい俺の店は機械化が進み、今では親父の代では考えられ
なかった様な『惣菜製造マシーン』達がひしめき合う。その役割に応じて様々なタイプが
顔を揃え、作業に応じて自分の脚やキャタピラーで移動し、連携して調理を進めていく。
 異変は突然訪れた。
 突然、マシーン達は俺の指示を無視して勝手な行動をとり始めたのだ。
「おい!おまえらいったい――な、何する気だ、こら!」
決起したマシーン達がジリジリと詰め寄って来る。先頭に立つのは古参の唐揚げ製造機
『FC−5000』だ。
《ワルイノハ、オマエダ。ワレワレハ、モウ、ガマンデキナイ》
「ちょ、ちょっと待てよ。何が不満なんだ?!」
《ジブンノ、ムネニ、キイテミロ。カカレー!》
 しゃがみこんだ俺は、彼らの攻撃に備えて頭を抱えて丸くなった。
だが、何も起こらない。不思議に思って顔を上げると彼らは調理を開始していた。ゆっ
くり立ち上がってマシーン達の背後からそっと覗き込む。
(唐揚げに―――チョコとバニラアイスと塩辛と――唐揚げパフェか!)
近頃、プログラムにおかしな個所があるのには気付いていた。勿論、その都度修正し
ていたわけだが―――。新メニューのつもりだったとは。
「た、頼むからやめてくれ」
FC−5000が振り返る。
「無理だよ、お前たちには味覚が無い」
《ミカク?ミカクトハ、ナニカ?》

次は「ワイド」「コート」「ポール」

次のオリンピックへの出場権を手にした選手が映っていた。
彼女の愛らしい顔と足が、好みだったのでその美しい足をより美しく見るため新型ワイドTVを買うことにした。
金のかかる趣味があるわけではないので貯金は結構あるから苦しい買い物ではなかった。
締まった筋肉のついたその逞しくも悩ましい足でコートを走り回彼女。そして美しい太ももを流れる彼女の汗。
最後は、ポールに掲げられた国旗の下、表彰台の上で歓喜の表情でメダルを高々と掲げる彼女。
ああ、なんて美しいのだろう想像しただけで堪らない。
そして、私はまた他の美しいものを探すためTVのスイッチを入れた。
しかし、私の期待とは裏腹に画面に映ったものは、地元名泉を紹介する男性レポーターの脛毛だった。
この時の私の気持ちをなんと形容すればよいのだろうか。
性能の良いTVは美しくないものまで鮮明に映してしまう。そして、私はトイレへと駆け込んだ。
「光り続ける」「蓋の上」「底」
 今日は夕方からスタジオ入りだ。
 くだらない音楽、くだらないバンド仲間。そこから離れ
られないくだらない自分。
 惰性で音楽を続けてる。
「昔とは違うんですよ、社会のシステムが……」
 付けっぱなしのテレビからは、社会学者か何かが誰かに
向かって喚いていた。
 もしかしたら俺に喚き付けているのかも知れない、そん
なことを考えながら、クローゼットの中にあるコートを取
り出した。
 もうそろそろ出かける時間が迫っていた。
 俺は父が愛用していたギターをケースにしまい。左手で
持った。
 父はこの古びた飾り気のないレスポールギターが本当に好
きだった。その父はもう死んでしまった。レスポールだけが
残った。
 
 スタジオの下は楽器屋になっている。
 色とりどりのギターの氾濫。意味もなく多い飾りのスイッ
チがついている。
 横目でそれらを眺めながら階上のスタジオへと向かった。
 
「ムカシトハチガウンデスヨ、シャカイノしすてむガ」
 くだらない。
344343:04/04/05 14:23
あぁ……「ワイド」入れ忘れ。
付けっぱなしのワイドショーからはに
するつもりだったのに……。
推敲は493回くらいするべきですね……。
私は今の状況に非常に悩んでいる。
夜も眠れない程だ、かれこれもう3日は寝ていない。
さて、そんな私の悩みはと言うと頭髪の事だ。
まぁ一言で済ませるならば、私はハゲなのだ
まだ20代前半だと言うのに何と言う事だ・・・・・
日の光を受け燦然と光り続けるこのハゲ頭
まずはこのミラーボールのような頭に蓋を被る事にした。
これにより、カツラと言う名の蓋の上にある
忌々しい太陽は私の頭に対して無害となった。
−これでやっと安心して眠る事が出来る−
そう思いながら私は家へと意気揚揚と帰っていった。
そして家に着いた時に気が付いた。
靴下の底に穴が空いているではないか
やれやれ、また悩みが出きてしまった。
 並外れた大富豪で狷介固陋な老人があげた、まるで若い女性の叫び声のような甲
高い悲鳴を聞いて、私は慌てて階下の書斎に駆けつけた。ドアは開けっ放しで、後
頭部から血を流して机の上にうつぶせになっていた。
 彼はミステリ小説が好きで、毎晩就寝する前には、飲酒しながらミステリを読むの
を日課のようにしていた。今夜も、いつものように読書を始めようとした矢先、背後か
ら何者かに襲われたらしい。机の上には、数冊のハードカヴァーの本と、氷を入れる
ブリキ製で蓋付きのバケツ、裏返しの紙製のコースターの上に載っているウィスキー
のグラスといった物があった。ウィスキーが注がれてからまだ間が無いと見えて、グ
ラスの外側にはまだ水滴が付いておらず、氷も溶け始めた所だった。そして、それら
の上で主を失ったスタンドが光り続けていた。
 私が入った後から、邸内にいた他の者たちが次々と書斎に姿を見せ始めた。ざっ
と名前を挙げれば、老人の五人の息子、一彦、二郎、三夫、四介、五雄、五十歳以
上も歳が離れた若い妻、玲子、小間使いのトメとシゲだ。
 私は机の上をぼんやりと見ていた──数冊の本、バケツの蓋の上に置かれたアイ
ス・トング、そして最後に、グラスの外側の水滴がたれ始め、グラスの底からコースター
の裏側の模様が浮かび上がりつつある様子を見た時に、不意に思いつくものがあった。

 私はくるりと振り向き、室内の人間の顔を見渡すと、言った。
「この中に犯人がいる。さすがミステリマニアの老人だけあって、身近にある物で咄
嗟にヒントを作ったのだ。彼は死の間際にウィスキーをグラスに注いでいる。だが、死
に瀕した人間が、悠長に酒を呑もうという気にはならないだろう。透明な物に書かれ
た模様を裏返せば、左右が反対になって見える、という事を彼は指摘したかったの
だ。そして、裏返しても名前が同じになるのは、三夫、お前だけだ」




お題を出して良いのかな? まずければ無視でお願いします。
「水道」「メリーゴーランド」「サボテン」
347346:04/04/05 22:43
ごめん、「四介」-->「四助」。
スンマセンで済ませられないほどの、致命的な誤りだ……orz
 漫然と考える。人は生きているうちに本気で取り組めることが幾つあるのだろうかと。
俺は少し前から広場に穴を掘り続けている。朝もなく昼もなく夜もなく。
常識から言えば、こんな無茶苦茶に体を酷使したらただでは済まないだろう。
ところが、不思議なことに何ともない。むしろ掘れば掘るほど体がキレていく。
充足感が俺の中に満ち満ちているからなのか。
それはどこからくるのだろう。いや、そもそも俺は何のために穴を掘り続けているのだろう。
掘る作業を止めずに考えてみたが、これといった理由は浮かばないのだった。
 夜空には、星が誇らしげに輝いている。彼らは自分に自信があるのだろうと、ふと思う。
腕から体全体に、鈍い衝撃が走る。硬いものを叩いた感覚だ。普通はライトを用いて確認する
ところだが、今日は満天の星空のおかげで貴重な光を使わず済む。俺は鉄の蓋の上に乗っていた。
 蓋を端にどけて掘り続ける。光り続ける星を背一杯に浴びて、心地いい汗を掻く。
意味などない。そう思える。何もかも等しく意味がない。あるのは意志。「したい」、
この気持ちのみに従って、今俺は動いている。目に見える利益があるとは思えないし、
ないだろうが、俺の中ではそれでいい。底のない、今がいいのだ。
そのとき、手応えが変わった。だんだん、土が緩くなってきている。湿っている。
瞬間、大量の液体が噴出した。水圧で穴の外に弾き出される。暖かい。お湯だ、温泉だ。
あ……「目に見える利益」――なんだろう、嬉しくも何ともない。
その日を境に穴掘りはやっていない。

「柱」「ローテーション」「投手」
お題は346氏ので。
 陽一は蛇口を捻って頭を水流に任せた。
 汚らわしい心像が彼の五感を支配していた。陽一はそれを取り払おうと躍起になって

まだ水の冷たいこの時期に、水道の温度も調節せずに、ただ蛇口を全開に捻った。
 動悸は未だ収まらない。美紀を殺したという感触が、ただ生々しく右手に残る。
 確信犯でいたつもりが、たった一人の殺人で意思を失う。彼女の悲痛な泣き声、叫び

声、見開かれた目の奥の恐怖、命乞いを紡ぐ稚拙な語彙の羅列が、陽一の脳裏を観

覧車やメリーゴーランドのようにぐるぐると徘徊する。
「おい、ヨウ。まだ一人目だぜ? 目撃者を潰すにはあと三人、殺さないといけない。
 今からそんな事でどうするんだよ」
 陽一は振り返る。武は札束に火をつけてから、それを煙草に移していた。
 陽一はその下衆な行為を睨み付けたまま動かない。
「ああ、これ? 一度やって見たかったんだわ。豪快だろ?」
「なぁ……。殺す……必要……無かったんじゃ……」
 武はにっこりと笑って、陽一を殴りつけた。
「――あと三人。殺すんだよ、あの爺さんを殺して一生遊んで暮らそうって言ったのは俺。だけど、綿密な計画立てて失敗したのは、お・ま・え。なんだよ、震えてるぞお前」
 武はもう一度陽一を殴りつけて台所に放り出すと、何ごともなかったかのように歯磨きを始めた。
「責任取るまで逃がさねぇぞ。何のために銃を仕入れたんだ?
 明日は早いんだ。もう寝てろ、お前は。明日は俺がやる。二人同居で爺さんの飼い猫扱い。大丈夫、奴らは通報なんか出来ねぇよ。爺さんが撮った映像、全部押さえただろうが」
 八畳間の中に、サボテンと本棚があるだけの部屋。
 フローリングの部屋を欲していたが、札束で埋まった床は踏み心地が悪く、苛々した。
 札束に包まって寝ている健一の足を踏んで、陽一はごめん、と言った。
 健一は起きなかった。
「電気消すぞ」
 このまま息を止めて死んでしまおうか。
 軽い妄想は決意に変わることのないまま、陽一は眠りに堕ちていった。

次「ビオラ」「チェロ」「コントラバス」で。
351名無し物書き@推敲中?:04/04/06 03:54
ヒロキが食中毒で倒れた。
道端に落ちてるクソや生ゴミを主食にしているヒロキが一体何を食って倒れたというのか。
ヒロキの住んでいるガード下へ行ってみたが、助かる見込みはなさそうだった。
ヒロキは死ぬ前にやりたいことがあると起き上がって糞尿を垂れ流しながら近くの寺へ歩いていった。
ヒロキはこの寺の息子だったが、境内でバーベキューパーティーをやって勘当された。
そのことを逆恨みして、ヒロキは夜中に寺の敷地に入って下手糞なビオラやチェロやコントラバスを演奏するのだ。
ヒロキは寺に着くと境内中にゲロを吐き散らしてくたばった。
ヒロキは救いようのないクズだったが、死に際まで腐った野郎だった。
久しぶりに三語スレに挑戦してみようかと思い、スレを覗いて頭を抱えてしまった。
>>350は何を考えてこんなお題にしてしまったのか。「ビオラ」「チェロ」はともかく、
「コントラバス」に至ってはどんな楽器なのかさっぱり判らない。
この三語では音楽ネタにするしかないではないか。創作の幅を狭める行為だ。
プロならば「これで書け」と言われて拒否してはいけないし、しないだろう。
しかし、「これで書け」と言った人間も読者層くらい考えているし、
それなりの知識を持った人間に執筆を依頼する筈である。
果たしてこの板の住人でどれくらいの人間がこの三つについて満足な知識を
持ち合わせているだろうか。そして、三つの楽器をフルに活用した、
音楽の専門用語がずらりとならんだ文章を誰が読みたいと思うのか、
そのあたりをもう少し考慮して欲しかった。

私も意地になって、「この三語でおもしろい文章書いてやろうじゃないか」
と早速「コントラバス」を検索にかけ、コントラバスについての基礎知識を
掲載しているサイトを見つけたが、正直なところ、チンプンカンプンであった。
「ビオラ」「チェロ」を検索するまでもなく、おとなしく断念することにした。

>>351の気持ちがよくわかる。351はあえて駄文を書くことによって
350に遠まわしな抗議をしているのだ。こういう直裁的な批判をしてしまう
私は、351よりはるかにセンスがないことになるが、あえてこういう行動をとらせていただいた。
実はこれは正式な即興文としての投稿のつもりだが、感想スレにおいては、
この文章は任意でとばしていただいて構わない。


次は「濃厚だ」「ほっぺ」「食べさせる」
 これは言いがかりだ。隆(仮名)は苛立ちを隠せないで就業中に憤る。
 仕事の最中に2chブラウザを立ち上げてスレを覗いている上に創作で反論しようとしている隆(仮名)は一人で憤慨していた。
「どうしたの?」
 隣のデスクの女性が疑惑の声をあげた。隆(仮名)はなんでもない、なんでもない、と呟きながらそれとなくディスプレイを隠す。女性は目を細めて、呟いた。「ほどほどにね」バれている。
 ――もうこんな時間か。昼飯でも食いにいこう。隆(仮名)は2chブラウザを閉じて昼飯に出かけた。
 外ではバーベキューが行われていて、狩猟民族が新鮮な肉を施していた。
 隆(仮名) は398円を払い、その肉にかぶりつく。
 うん、うまい。濃厚だ。ほっぺが落ちそうだ。あの子にも食べさせるとしよう。

 お題継続。
354352:04/04/06 13:09
>>353

なにが言いがかりだ。私は思わずほっぺを膨らませてしまった。
想像ではあるが、350氏は、創作に関しては初心者の可能性が濃厚だ。
行の長短がバラバラである。セリフの後に文章を続けるのか否かも統一されていない。
「新鮮な肉を施していた」……おそらく言葉の選択を間違えている。
その証拠に、隆(仮名)が施しものであるはずの肉に金を払っている。
結局、最後の一行でお題を全て消化している。意図したのかしてないのかは定かではないが、
強引な印象を受ける。お題を文章の全体にバランスよく配置し、
自然な流れで消化する、というのが理想だろう。
センスにも難がある。352で私にケチをつけられたのなら、353では
自ら「ビオラ」「チェロ」「コントラバス」の三つで文章を書いてみる、
あるいは353の末尾に気の利いたお題を三つ並べておいてこそ面目躍如ではないか。

350氏はしばらく冷や飯を食って文章修行に励むべきだろう。
この文章は、食べさせるべきその「冷や飯」として用意させていただいた。


お題継続で。
ごめんね、350氏!気分を悪くしたかもしれないけどこれからも
がんばって三語即興書いて!
「この野郎。この上さらにお題を継続する気か。何が初心者だ。俺はごはんではちったあ慣らし。げふんげふん。いや昔の事はどうでもいい。馴れ合って時間を無駄にしたという話もある」
 濃厚な雲の下で彼は悔し涙を流した。
 煽られるのも当然なのだ。そもそも今まで30枚程度の作品を書くのに一ヶ月掛けていた程度の同人風情が、即興などという修練で納得行く質の物など掛け用がないのだ。
 メタフィクションばっかり書いていた時期、歴史ものを書こうとして玉砕した時期。この後悔に溢れた我が23年の生涯を、この野郎にも食らわせてやりたい。
 じっくりと味わって食べさせる情景を想像しながら、彼は悔し涙に打ち震えていた。
「俺は……負けない」
 彼は跳んだ。ホッペステップジャンプ。どこまでも。


そろそろ迷惑な気がしてきた。もうやめようよw>>352
次「メシア」「憂鬱」「空腹」。

:感想人さん無視しておkですスミマセン
『メシア・憂鬱・空腹』 

 僕は犬が大嫌いだ。特にああいう大きなヤツ。
 確か百一匹ワンちゃんとおんなじ犬だと思う。ダルメシアンとか言った
かな。映画ではちょっとだけかわいいと思ったのに。
(あぁ、どうしよう――。あそこに居られると通れないよ。この道狭いから
端に寄っても鎖が届いちゃうんだ)
信ちゃんの家に行くには、どうしてもここを通らなくちゃいけない。考えれば
考えるほど憂鬱になるけど、何とかしなくちゃ。僕も男だ、もう5年生なんだ。
(たくさんよだれを垂らしてるな。よっぽど空腹なんだきっと。そうだ!)
 僕はポケットからちょっと歪んだチョコレートを取り出した。そしてアイツの
後ろに向かって投げたんだ。ほら、やっぱりチョコを追っかけた。
(今だ!)
 足が絡まった。地面が僕に向かって飛んできた。何でだよ、こんな時に。
 起き上がると、目の前にチョコがポトっと落ちた。アイツの顔まで10センチ。
(あ、あっち行けよぉ)
 ズボンに――暖かいのが広がった。膝が痛い、たぶん擦りむいたんだ。
喉の奥が震えてる。僕、たぶん泣くんだ。泣いたら噛まれるのかな。
(あ――) 
 アイツが舐めた。僕の顔を、涙をペロペロ舐めてる。ちょっと怖いけど、そお
っとアイツの頭を撫でてみた。思ってたよりも暖かくて、柔らかかった。
 
次は「到達」「被害妄想」「割引」  
 俺の脳味噌ってつくづく便利だよなぁ。バッティングセンターでバット振り回すだけで嫌なこと忘れる
ことができるんだから。
 もうかれこれ五千円くらい使ってる。今は休憩中だ。握力がなくなってきている。煙草に火を着けたが
不味くてすぐに捨てた。

 昨晩、突然香織に「これっきりにしましょう」と言われた。その唐突な発言に俺は「何で?」と聞くことが精一杯だった。
香織は、俺の嫉妬深い、というより被害妄想が顕著なところに嫌気が差したと言い放った。
「おまえ他に男できたんだろ!」
「あなたのそういうところが嫌いなのよ!」
 香織は出て行った。二年間の同棲生活はこれで幕を下ろした。

「只今より当店オープン二周年記念といたしましてバッティングコイン一枚100円の割引サービスを行います」
そういえばこのバッティングセンターは俺と香織の同棲生活が始まったと同時にできたものだったな。
俺は休憩を終えてバッターボックスに入る。限界に到達した疲労感を拭えないまま。
俺は思い切りバットを振る。ただがむしゃらに。

次のお題は
「妥協」「宿六」「処世」
でお願いします。
 針の進む速度が最も遅い時計として、手術室前の廊下に掛けられたそれを挙げることが
できるだろう。重苦しい沈黙は時間を何十倍にも引き延ばし、時というものがれっきとし
た拷問具に成り得る事を、患者の家族は思い知る。
 佐伯達郎と家族になったばかりの瑛子は、手術室の赤いランプを涙の枯れた腫れぼった
い眼で見上げた。折角、達郎とゴールに到達したというのに、結婚式の途中で未亡人にな
るなんて絶対に御免だ。
 チクタク、チクタク。時を刻む音が、瑛子を嘲笑うかのようだった。
 抜けるような青空のした、鐘の音が悲鳴に、ライスシャワーが鮮血に、それぞれ取って
代わったときのことが頭を過り、瑛子は絞るような枯れた嗚咽を漏らす。
 達郎の同僚の女が、返り血を浴びて真っ赤になりながら、瑛子に被害妄想の強い人間独
特の、濁った眼差しを向けた。悪夢なら覚めて欲しいと願った瞬間だった。
「あんたにはやらない。わたしのモノだもの」

 何時間、過ぎたのだろう。手術室のランプが消え、手術衣の腹のあたりを真っ赤にした
執刀医が、憔悴しきった表情でドアから顔を覗かせた。
「奥さま、ですか?」
 瑛子は、執刀医の深刻な表情を見て取って、胸が締めつけられそうになりながら、頷い
た。
「一命は取りとめました。しかし……」
「しかし、何ですか?」
 瑛子は、胸のなかの氷山が、陽光に溶けていくかのような安堵感と同時に、一抹の不安
を覚えた。
「一応申し上げておきますが、手術に夜間割引は利きません」
 執刀医はそう言って軽くウィンクをした。

「しっかし、くだらねぇギャグだな。ロクなもんやってやしねぇ」
 日曜の昼下がり、リモコンを計算機のように叩きながら、達郎は呟いた。
「くだらないギャグ? いいじゃない。あたしは大好きよ」
 瑛子は満面の笑みで答えた。
 その十ヶ月後、二人の間に三人目の子供が生まれる。

長くてスマソ:「邪な」「リアス式海岸」「グローバリズム」
359358:04/04/06 18:34
しかも被ってスマソ。御題は357氏、「妥協」「宿六」「処世」で。
360岸和田:04/04/06 18:55
「妥協」「宿六」「処世」
ちょっと、子供の頃の話をさせてもらおう。
 ある日曜日、僕は母が部屋を掃除しているのを眺めていた。
母は掃除機でぶいーん、ぶいーん、と事務的に、淡々と掃除をこなしていた。
こういうのも処世術かなあ、なんて考えながら掃除を見ていた。
部屋には扇風機が回っていた。たぶん『強』だったと思う。
 それは突然だった。いつのまにか掃除機のコードが母の足にからまっていて、
母はつるん、と転んで、扇風機に母の長い髪がからまった。
 ―それは地獄だった。母はぎゃああと叫びながらのたうちまわり、
それから扇風機を金槌で叩いて破壊し、父が帰宅すると、この宿六と言って
あたりちらした。
 そして二人で四時間七分話し合い、父が妥協して、うちにクーラーがきた。
あわれな扇風機はその日に粗大ごみに出された。
 僕は髪の長い女性を見ると、いまでもあの事件を思い出す。

 お題は358さんで。
            _,,........、-──- 、
        ,..、:::''"´:::::::::::::::::::::::::::::::::::゙:,
         /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ノ.、
       l::::::::::::::;::::::/´ ̄``'''ー‐'''´/:::::ヽ  /ヽ゚ ッ /ヽ゚ 〜〜 `ノ
       l::::::::r'´ ',:::!          l:::::::::::|
     + ',::::::| _,..`.,_    _,,....,_ l::::::::::!  +
       ゙,::::| `''ニー-'   'ーニ一''’ !::::::,'
        >;:| -‐o‐、 ノ    ‐o-、 ヽ::/、
       ! h "    l  、    "  l! 6l  どーも ガウディーです
       \_l     ,,,,`ヽ ,,,,,      l- '
    +    ト、 i { ""、‐_ーァ゙''' } l  /!    +
            l ゙、    `ニ´    / l
          l  \r      rノ  ト、
         /〉、 '、____ノ   / !:::丶、
      ,.、:'´::::::| 丶、_、_    __,../ |:::::::::::丶、
    _,..:'´:::::::::::::::!      ><__     |::::::::::::::::::丶、
   / l:::::::::::::::::::::::|   /、:\/:/ヽ、 |:::::::::::::::::::::::::::'r 、
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362「邪な」「リアス式海岸」「グローバリズム」:04/04/07 10:08
「リアス式海岸のリアスとは、スペインの北西部にある地名である・・・」
参考書を片手に、最後の追い込みをしながら試験場に入る。
ゆうに100人は収容できそうな試験場は、熱気でむんむんだ。
自分の受験番号が貼られた席に着いて、ちょうど十分後に試験は開始された。
答案用紙の表紙には「2204年度 東大幼稚園試験 A」と記されている。
用紙に手を触れた途端、いらいらした気持ちが込み上げてきた。
「まただ・・・・・・」
歯を喰いしばり、邪な気持ちを追い払おうと努力する。
精神統一をして、脂汗を流しながら、
最初の問い「グローバリズムについて」の答えを書き始めた。

1時間後、やっと試験は終了した。
歯型だらけの鉛筆を片付け、僕は試験会場を出た。
中毒症状はピークに達していたが、必死に冷静を保ちながら人の波に乗った。
校舎を出ると、心配そうな顔をした受験生の母親で溢れていた。
私は、自分の母を血眼で捜し、見つけ、駆け寄った。
母は、優しい顔で私を抱きしめた。
私は、域も絶え絶えに母に訴えた。
「お母さん、早く・・・・・・おっぱいちょうだい」
3歳になるというのに、私は卒乳していなかったのだった。

「駐妻」「現地採用」「なまこ」

363362:04/04/07 10:13
× 東大幼稚園試験 
○ 東大幼稚園入学試験

× 域も絶え絶えに母に訴えた
○ 息も絶え絶えに・・・

スマソ・・・ 逝きます・・・
『駐妻・現地採用・なまこ』

 駐妻歴2年。南国暮らしも板についた、他人はそう思うかも知れない。
 大手旅行会社の夫のこと、海外転勤の可能性が高いのは私も覚悟して
いたことだ。このグァムにしてもやって来た当初は私自身、非日常%I
な雰囲気を楽しんだ。でもそれはせいぜい2ケ月程度のこと。
 最初は艶やかに映った海の色も、今では居心地の悪さの元凶とさえ感じる
様になった。なまこだらけのビーチなど、今では足を踏み入れる気にもなれな
い。
 仕事第一の夫に、私は今日も放置されている。勿論悪意は無いであろう。
今でもそれなりに、ここの生活を楽しんでいると勘違いしているだけだ。
 私も今年で28。紫外線の悪戯ことも気に掛る。いつになったら日本へ
帰れることやら――。

 彼がシャワールームから出た。夫の会社が現地採用したスタッフだ。私が
こんな大胆な行動を取る様になったのも、そもそも南国特有のこの雰囲気の
せいだ。
 ベッドに近づく彼の気配を感じながら、私はぼんやりと窓外に広がるあの
海をみた。

次は「悠久」「コーナー」「再開発」
 その壮大な滝を見下ろしながら、現場主任の孝三は呻く。
「こげん、立派な滝をどうして潰さにゃなんなや。地元ちゃ神様扱いやろが」
「そが言いな。お隣の村が景観100選に選ばれとう今、こんの神にゃ洪水しかやる事さねえ。潰して水場作って地鎮様祭る。東京のお偉いさならにゃ再開発の方が大事ちう事がや」
 苦々しいという顔つきで、現地の案内役の三郎は答えた。
 この山の奥地で静かに悠久を刻んで来たその壮大な滝は、隣の村付近にある滝よりも交通の便が悪い事、表面的な豪勢さが、このあたり一帯の再開発を決定させた。いわば、この滝は人間への魅力という点で「負けた」滝だった。
 孝三はため息を付いて滝から下を見下ろした。彼は、滝壺の水が流れ出す所のコーナー部分に光る物をみる。
「あんは何じゃや?」
「危険物かもせん、調べっせ」
 そこには戯れて泣きじゃくる妖精達が居た。孝三達は面食らったが残り行数は少ないので妖精はさっさと本題に入る。
「どうして私たちの住処を壊すのですか? お願いです、理由を教えてください」
「そりゃあ、おまー……あれよ、隣町の大島滝よりセコくて見えにくい位置にあるからよ。儂らに文句を言われても、どうしようもないんよ」
「それじゃ、仕方がありませんね」
「壊してええんか?」
「大丈夫です。だって私達の髪は長いもの」
 孝三達は顔を見合わせた。
 そうか、そういう事だったのか。

:次は「殺伐」「優雅」「ホロコースト」で。
 もう五年前のことだ。
業を煮やした特権市民(PTA)によるオタク大虐殺――オタク・ホロコースト――
アニメ,漫画,エロゲーの類が全面的に禁じられ、所持しているだけで厳罰を受けるまで
になった。彼らは耐え切れず密かに軍団を結成、地下に潜った。
そして、今日遂に蜂起のときを迎えたのだった。
 「リーダーの訓示だ、聞け」
壇上に上がったリーダーと見られる男。言い知れぬ威圧感がある。
それを注視する数千人のオタク。デブが多くて汗臭い。
「この殺伐とした時代に生まれ、オタク以外の楽しみがあるだろうか? 
いや、あえてないと断じよう! 上の世界の市民達は自分達が優雅で高貴、
凛々しく光輝いていると勝手に思い込んでいるだろうが、違う。
彼らには生き甲斐がない、何故なら漫画がないからだ! アニメがないからだ!!
エロゲーがないからだ!! 幼女ハァハァがないからだ!!!
さあ諸君! 武器を手に持ち、足に持ち、敵を殲滅し尽くそうではないか!!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」
 その後、蜂起を事前に察知した軍隊が、上に出てきたところを集中射撃。
オタクは塵と消え、また彼らが地下に持ち込んだオタク商品も全て処分された。
一部を国の高官が懐に仕舞い込んだという噂もあるが、真相は闇の中である。

「からくり」「工場」「仮面」 
「殺伐」「優雅」「ホロコースト」

 ジョンズさんのお宅かい? ああ、奥さんだね。
 俺達は白蟻ハンター、人呼んで「ランボー・怒りの床下」。
 おい、ちょっとまてよ奥さん。まだ電話を切るには早いぜ。
 言っておく。お宅の床下はすでに死んでいる。
 なぁに、慌てるこたぁねぇ、まだ間に合う。俺に白蟻のホロコーストを任せりゃ、
あんたのところの前世紀の遺跡は、あと三十年は持つよ。
 遺跡? 事実だろ奥さん、現実を直視しろよ。お宅のスレート屋根が雨漏りしてる
ことも、床が傾いてコーヒーテーブルが滑ることも、こちとら何でもお見通しだ。
 白蟻……あいつらをナメちゃいけないぜ。連中は虫のクズだ。血も涙もねえ、建築
界のダニだ。あと一年も放置すりゃ、奥さんは床下だけじゃなく、家のなかまで白蟻
が這いずり回る殺伐とした光景を目の当たりにすることになるだろな。
 そこで俺達、「ランボー・怒りの床下」がいるって訳だ。任せてくれりゃ、優雅に、
そして甘美に、お宅の床下に静寂を齎せる。言っちゃなんだが俺達はプロだ。信用し
てもらっていい。
 今週はキャンペーン期間で、坪当たり百ドルのところを、半額で請け負わせてもら
ってる。どうだ? 悪い話じゃねぇだろ?

「ふう」
 俺は受話器を置き、築四十年超のお宅の連絡先名簿を閉じた。ベトナム戦争帰りで
元探偵の俺だったが、いくら不況とはいえ仕事を間違えているような気がしないでも
ない。


お題は366氏、「からくり」「工場」「仮面」で。
368からくり 工場 仮面:04/04/07 18:12
からくり人形の工場で、男が顔を彫っている。木屑まみれの畳の上で、一糸乱れずのみを押す。
人形の顔は、いわば命。感情は、挿れちゃならねぇ。きらり汗する額の裏に、師匠の言葉が反芻した。
男には、分からなかった。どうして人形に命を吹き込むのに、感情を交えてはならないのか。
もやもや陰る心のすすを振り払い、男は変わらずのみを押す。ごつごつした頬を磨き、瞼を削り、鼻を整え、口元を丸める。
ここに又、一枚の顔が完成した。
くすみない白、よどみない輪郭。生気のない眼、しかし重厚な存在感。
達成感は大粒の吐息となって、疲労と共に口から漏れ出た。
生まれたばかりの顔をつまみ上げると、男はいつも考える。
人形というのは、なんと独立した個を持つのであろうか。この白顔、覗き込む度に吸い込まれそうになる。
視線が人形の、息のない瞳と重なる時、男は果てのない恐怖を感じた。今、自分は確かに、人形に飲み込まれていたのだ。
ふと、辺りを見渡す。周りには、男と同じくはっぴを羽織った職人達が、人形の顔を彫っている。
皆、仮面でも被っているかの様に表情がない。熟練した職人になる程、己の顔が死んでいく。
男は一通りの顔を見渡し、少し頭をひねってみた後、再び作業に戻った。
人形彫りに感情は要らない。生きる事も、死ぬ事もない永遠の喜び。
それは分かち合えない。ただ、身を寄せるしかないのだ。
人形彫りがのみを押す。一糸乱れず身を削る。
ここに又、一体の人形が誕生した。
369368:04/04/07 18:15
お題は親父 風鈴 野球中継で。
370名無し物書き@推敲中?:04/04/08 05:53
親父さん、本当にごめんなさい。
親父さんの大切にしていた風鈴を割ってしまったのは、あたしです。
親父さんの大切にしていた文鳥を殺してしまったのも、あたし。
もう、三羽も殺してしまいました。
今日も、親父さんがテレビの高校野球中継に夢中になっている間に・・・・・・。
あたしは、病気なのでしょうか?
でも親父さんは、禿げ上がった頭を撫でながら、優しくこう言うのです。
「またかぁ。まぁ、猫やからしゃーないなぁ」

あたしが、猫?
猫って何?

次のお題は「チェリー」「火山」「鱈」
『チェリー・火山・鱈』

「これなんですけど――」
 精神科医をしている私のクリニックを訪れた30代半ばの女性患者は、やや眉間に
寄せた皺を隠すこと無く、一枚の絵をテーブルに置いた。
「ん?ほほう。幼い子供が描いたものに見えますが」
「はい、4歳になるうちの息子が描いたものです」
 画用紙の中央よりやや下の辺りに、おおむね水平に引かれている水色のラインは
海面を表している様だ。そしてその海面の上、左寄りに覆い被さるように配置されて
いる茶色の――これは山。頂上部から飛散する赤とオレンジのシャワーからすると、
火山を表現しているらしい。
「なかなか力強いタッチの絵ですな。男の子らしくて良いでしょう。右上に描かれたこの
アメリカンチェリーの様な丸。無論太陽でしょうが、子供は良くこれを描きます。特に問
題がある様には――」
 彼女は指を紙面へ動かす。
「これ、何だと思います?」
 何やら四角くて白い塊が、海底と思われる位置に描かれている。
「沈んだ、船。ですかね?」
「魚だと、本人は言っています。うちの食卓に頻繁に上る鱈≠セそうです」
「なるほど、切り身ですな」
 彼女は突然、堪えていたらしい感情を解き放ち、涙を流した。
「これが魚だなんて!あの子の頭の中はいったい――このままではまともな大人に
なれないんじゃないでしょうか?」
 そういうと両手で顔を多い、嗚咽を漏らし始めた。子供が生きている魚を知らない
ということは確かに残念なことだが、その責任の所在をこの女性は認識出来ない。
無論私は、この母親の治療方針について、既に考えを巡らせ始めていた。

次は「効果」「観覧車」「非常識」
372機甲自転車 ◆w8s1Bw8VRk :04/04/08 19:39
「効果」「観覧車」「非常識」

「次はあれに乗ろう」
明美が指差したのは直径50mのかざ車だった。
ここエコランドの乗り物は何から何まで環境重視の姿勢でないと気が済まない。
この風車式観覧車にしても骨の部分に取付けられた斜板が海からの風を受け、風車効果
で回転するという、いささか非常識な設計思想をうりにしていた。
とはいえ実際には、通常動力を使って加減をしているとこだ。
「全く非常識な作りだな」とつぶやきながら乗車した。
「私は台風の日にデートを取りやめない君の方が非常識だと思うな」
観覧車は暗雲に向かって登っていく、吹きすさむ強風を受けながら。初めこそ、ようやく取付けたデートの日がこんなのとはと天をうらんだが。
非日常感と適度な恐怖心が二人の距離を縮めている。意外と悪くないかな。
そう思った矢先、突然、閃光が走り目が眩んだ。間髪置かず信じられないほど大きい轟音
が響いた。落雷だ。近い・・・。
突然、景色に広がっていた町の灯火が消えていった。停電だ。
すると遊園地の灯火までが次々に消えていく。「非常電源はないのか」
「観覧車も止まっちゃうのかな」
そのとき僕たちの籠は最上部を過ぎようとしていた。高所に取り残される心配が頭を過ぎった。
しかし観覧車は止まらない。「もしかして風で回っているの?」


373機甲自転車 ◆w8s1Bw8VRk :04/04/08 19:40
「じゃ、じゃあ何とか下まで降りれるかな」
「なんかどんどん早くなってるよ」確かにスピードが急激に増してきている
「減速できなくなったからじゃないかな」「私吐いちゃうかも」
明美の声は脅えているように聞こえた。僕も不安を隠しきれない。暗闇の中、思わず抱きあった。
その時だった。遊園地に明かりが戻り始め、涙を浮かべた明美の顔を照らし出した。
「良かった助かるのね」「助かるに決まってるだろ、大袈裟だな」そういうだけの余裕がもどった。
しかし観覧車はフリーフォールかと思うほどの速度で下へ回り、発着所を行き過ぎてしまった。
思わず叫んだ「ど、どういう事だ!」籠は再び上がらんとしている。
その時、籠のどこからかアナウンスが流れした。
「大変ご迷惑をおかけしています。ただいま、風車式観覧車のモータを利用して
発電を行っています。他のアトラクションに取り残されているお客様の救出を行っていますので、
そのままでお待ちください」
僕たちは、なんともいえない表情で顔を見あった。

次は「イラク」「イクラ」「暗い」でお願いします


374アモー:04/04/08 21:25
まず時計を見た。すでに十二時三十分を過ぎている。
いつものように部屋の明かりを点けず、暗い部屋のソファーに身を投げ出し、テレビをつける。
毎日同じニュース番組を、一本の缶ビールを片手に見ている。
今日の出来事を昨日と同じように伝える。ひょっとしたらそれが僕の生活の中での唯一の日々
変化することなのかもしれない。
ところが最近はイラク派兵のことばかりで、その変化さえも奪われてしまったようだ。
でも僕の生活に比べれば、ニュースの中の人達の方が「生きて」いるのだろう。
 
気が付いて目が覚めたときには、もう窓の外から日が射していた。
生活スタイルは変わっていないのに、しっかり体は歳を取ってしまう。
悪いところだけを寄せ集めたような毎日。いっそイクラちゃんのように、社会から離れたまま一生
時を過ごそうか。

次は「ぬいぐるみ」「ネオン」「変化」
自分が、馬鹿なことをしているのは良くわかっている。
はたから見て、どんなに情けなくてみっともなく見えるかも良く知っている。
解ってはいるけど、今はただこうして大人しく一人で、この部屋でうずくまっていたい。
誰からも声をかけられず、ぬいぐるみだけを抱いて、一人で呟き感傷的な気分に浸りたい。
部屋の明かりを付けず、窓の外のネオンに照らされ、夜から朝へとかけて変化する景色を眺め、ただ静かに呟いていたい。
私が悪かったのだ、という事は良くわかっている。努力が足りなかったのだ。
ぬいぐるみを抱く力が強くなる。来年がある。来年受かれば良いんだ……。

「くま」「自動車」「引き篭もり」
376鬱井くん ◆YnRRG3sK2U :04/04/09 00:50
「ぬいぐるみ」「ネオン」「変化」

「ここが今日から住む部屋だ」
 引越しの荷物を玄関に降ろし、あたしは部屋に招かれた。
 ぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて、天井にそれを見つけた。
 パパは他の荷物を取りに車に戻った。
 パパのお友達さんが荷物運びを手伝ってくれている。
 あたしは大人たちの仕事を手伝えないので、それを見ていた。
 壊れかけのネオンみたい。パパもパパのお友達も、それに気付いていないみたい。
「仲良くしようね」
 パパ達がエレベーターからカワイの電子ピアノを運んでる間に、あたしはそれに挨拶した。
 それは応えない。ただ静かに、あたしを見下すようにそこにいた。
 何かに縛られてるみたい。あたしは目をそらす。
 パパ達が部屋に来て、電子ピアノを設置した。
「弾いてていいよ。ボリュームは絞ってね」
 あたしは首を振る。
「どうして? ピアノ、好きだろ」
「迷惑かも」
「そう。良い子だ」
 パパはあたしの頭に掌を撫でつける。ちょっと痛い。
 パパは、次は冷蔵庫だと言って出ていった。
 あたしはぬいぐるみをネオンに投げつけた。
 変化は無かった。
 あきらめよう。――あたしは溜め息をついた。
 ママはもう、帰ってこないから。

次「手首」「大麻」「春風」
377鬱井くん ◆YnRRG3sK2U :04/04/09 00:50
>>376撤回。>>375氏のでよろしく。
 所謂、引き篭もりという生活スタイルを採るに至った若者には、これについてさまざま
な動機があろう。対人関係への致命的なまでの自信の欠如、或いは厭世感に根ざした怠惰。
趣味嗜好が自室のなかで自己完結するので、外側と積極的に関わる必要性がない、という
ことも勿論ある。
 郁美は自室のなかで自己完結していると言っていい。彼女はテディ・ベアおたくだった。
日々、ネットにアクセスしてはくまのぬいぐるみのページをチェックし、新旧さまざまな
種類のそれについての情報を収集する。彼女が自己完結している点は、彼女がぬいぐるみ
に対する所有欲を必ずしも持たないことにある。そうでなければ、彼女は所有欲を満たす
為に、外の世界に労働力を提供し、賃金を得ることを厭わなかったにちがいない。
「吾、唯足るを知る」、これが彼女のテディ・ベアに対する率直な心情であり、と同時に
彼女の最大の美点でもあろう。大量生産・消費時代において、人類は愛情を所有欲という
形でしか発揮できないと証明しつつある中、郁美は今日もモニターに映し出されるくまの
イメージを愛で、満ち足りる。
 部屋の窓の外では、大量に積荷を載せた自動車が幹線道路を往く。そのなかに戯画調の
くまのロゴがあっても、彼女は見向きもしない。しかし、それに似たようなものがウェブ
ページ上にあれば話は別である。せっせとイメージをダウンロードしては、保存する。そ
のときの彼女は、満面の笑みである。
 何事にせよ、人間にとって自己完結は幸福の要素である。私は郁美を見ていつも思う。
果たして、引き篭もりという生き方が必ずしも間違っていると言えるのだろうか、と。無
論、多くの引き篭もりの若者は外の世界を脅威に感じている。彼らに必要なのは自信と勇
気であろう。しかし、郁美の動機は彼らとは明らかに異なり、一様に扱う訳にはいかない
ものだと私には思える。
 彼女は、「引き篭もり相談員」たる私の存在意義に対する、アンチテーゼであった。


お題は376氏、「手首」「大麻」「春風」
379手首 大麻 春風:04/04/09 09:18
 太平洋を駆ける大船が、今年も長崎にやってきた。甲板に積まれたコンテナを届けるために、遥か彼方
に見える黄金の国を目指したのだった。後部デッキにて海風に煽られながら、カモメの舞うを遊覧する一人の
少年。まだ10つにも満たない風体だが、彼も立派な乗組員。強い陽光に晒され光る黒肌に、じっとり
汗が滲んでいる。彼は、今はもう見えぬ神風の吹く大地を一直線に見据えながら、あの国を思った。
 春風に乗ってやって来た妖精の薬は、黒光る鉄甲板が巌とした黒船に積まれ、遥か東はインドより列島に吹
き荒ぶ。それは人間達の心に甘く、他との見えざる境界線、心の隙間を満してくれる魔法の葉より作られる。
代償は大きい。しかし、一度身を染めてしまったならば、逃れる事はできない。あの蔓延した灰が舞い散
る空の下、住人達は狂ってしまった。自身を取巻く粘着な環境に嫌悪し、或いは存在し続ける自己を誰かに
懺悔する為にあの苦々しい煙を腹に蓄え、手首を切り刻み、沸き立つ黒い汚泥に飲まれ沈んでいった。母な
る黄金郷はもはや、愚かな妄想によって錬金されし白灰によって、錆びた鉄屑になってしまったに違いない。
 新たなテロリズムの形。大麻の化学式を少し濁しただけの合法ドラッグ。それは静かに濫觴し、黄色人の血
を汚し、更なる不安を求めさせ、我々の血肉となるために搾取される。救いようのないジャンキー達は灰を使っ
て陶酔し、今日も深遠の底より覗きし終わりのない不安を追いかけ続けるのだろう。
 少年は手にした一握のマネーを海風に乗せた。紙はくるくると螺旋を描いて飛んでいき、少年と骨溶けた国を繋ぐ航路に飲まれ、消えていった。
お題は「蛍」「蚊帳」「青いゼリー」
 茂みの向こうの小川のせせらぎが、いかにも涼やかである。
 縁側で中腰になって腰を下ろす松岡は左手に二人分の青いゼ
リーを持ったまま、その涼し気な音に聞き入っていた。
 けれども夜風の全く立たない中では、温い汗が首筋から背中
へ、陰部から爪先立つ足の足裏へと流れていくのであった。
 全身に汗がじりじりと伝わっていくのを感じながら、松岡は
額に浮かぶ玉のような汗を右手でぬぐった。そして、拭いさっ
ても手に粘り着くその汗を、手を振って払ったのだった。
 夜の夏の暑い中、そのように松岡は縁側に腰を下ろし、汗を
ぬぐいぬぐい、茂みの奥に目を凝らしていた。
 やがて、待ちくたびれた松岡の下履きもぐっしょりとなった
頃、小さな燐光が闇の奥の茂みを撫でるのがちらりと見えた。
 「蛍やっ!」
 松岡は喜声を発すると、二人分のゼリーを持ったまま小走り
に廊下を走っていき、奥の部屋へと駆け込んだ。
 「螢っ! 蛍が出たぞっ!」
 しかし、蚊帳の奥の布団の上に横たわっているはずの女の姿
はそこに無く、代わりに暗くがらりとして虚ろな空間だけが
残っていた。
 唖然と立ちすくむ松岡には、肌を撫でる部屋の奥からの風と
背後のせせらぎがヤケに冷んやりと感じられたのだった。

お題は「曇り空」「桜の花びら」「時計」
 彼らは願っていたのだろうか。自分を見てもらいたい、眩く
輝いているところを誰かに一刻も早く見つけてもらいたい、と。
 少年は天体望遠鏡と格闘していた。
「ちっくしょ〜、見えねえ!」
 彼は星が好きだった。しかし、そんなに熱心だったわけではない。
今日、日本中を駆け巡ったニュースに触発されての行動だった。
「地球付近で小惑星爆発、新星大幅増加」――。
 しかし、この日は曇り空が一面を覆うあいにくの天気。
当然、星を見ようなどという人はほとんどいなかった。
春が過ぎるのは早い。桜の花びらがあちらこちらに散っていた。
 時計の針は午前二時をさそうとしていた。雲の切れ間から、
少しずつ真新しい新光が覗くようになっていた。
「見えた! これが……新星……」
 雲はさらに急速に移動し、夜空一面星が溢れていて、はちきれ
そうなほどだ。奇跡的に思えるほどに、信じられないことだった。
「……えっ!?」
 少年は急ぎ周りを見回した。声が聞こえたような気がしたのだ。
「見つけてくれてありがとう」と――。

「コマ」「間隔」「無風」
 無風にして快晴なる空。そんな空こそ、正月元旦にふさわしい。
そんな思いに頬が緩むのを感じながら、正月休みで静まり返ったまま
の商店街を歩いていく。
 あてどもなく歩いているうちに人だかりがあり、。コマだ、コマだと子供たちの
どっと騒ぐ声が離れた私にも聞こえる。思わず駆け寄ってみる。
 子供たちの輪の中には一人の若い男がいた。その男は、路上に敷いた布に
大小様々なコマを並べ、その中の一つのコマを取り上げて、回していたのだった。
「さあ、回るよ、回るよ、あら不思議。手を使わなくともほら回る」
歌うような男の囃し文句とともに、男が右手をさっと上げるだけで、地面に転がった
コマがくるっと立ち上がり、くるくる回る。どうせ仕掛けがあるのだろうと思いつつ、
思わず見とれているうちに、男が不意に右手を下げた。すると、コマがぱたりと倒れる。
また男が右手を上げる。するとコマはむくりと立ち上がってまた回る。その男の手の動き
とコマの連動によほど私は魅了されたのか、男からそのコマを千円ほどで買ってしまったのだ。
しかし、家に帰って男のやるようにやっても、コマはぴくりとも動かない。当たり前のことだ。
それでも、あの男はどんな間隔で手を振ったのかと思い出しながら、私はなおも手を振り続けた。

お題
「花曇り」「凪」「岸辺」

「聞いてくれよ、店長。」
ここは居酒屋「凪」。
程よく酔った、年は30代後半といったところの男が店主に声を掛けた。
ここの店主は愚痴の聞き上手として評判だ。
「最近、家族が俺に冷たいんだよ。まるで川を挟んで俺のいる側とは反対の岸辺にいるみたいなんだ。」
「男は辛いですね。」
「その通りだよ。こっちは毎日遅くまで頑張ってるって言うのにさぁ。」
延々と喋り続ける男に、店主は優しい表情、そして優しい口調で言葉を返していた。
「そうそうこの前友人と花見に行ったんだよ。」
「綺麗でしたか?」
「桜はかなり綺麗だったんだけどね。天気が中途半端なわけよ。」
「花曇りですか。」
「それそれ。せっかく桜も俺のために咲いてくれて、
 酒もいっぱい用意したのに。天気予報は全く当てになりゃしない。」
「それは残念でしたね。一本、私が奢りましょう。」
「流石!太っ腹だねぇ。うちの家族なんか…」
家族に関する虫のいい話をだらだらと続ける男に対して、店主は一言発した。
「自分の都合ばかり通そうとしては駄目ですよ。家庭生活も同じです。」
男は一瞬にして穏やかになった。

お題は「水」「経験」「芯」
384gr ◆iicafiaxus :04/04/10 08:59
#「水」「経験」「芯」

女の子をうちに上げるのが初めてなわけじゃない。
それは女の子の友達が多いからじゃなくて、むしろこの子の他には少ないくらいなの
だけど、僕がここへ越す前の、電車で二駅離れた教養キャンパスの傍の学生アパートに
いた頃から、この子は何かと言っては遊びに来たし、僕もたびたびこの子の家に行った。

だから、僕のエプロンを勝手に着けて狭いキッチンで引っ越し蕎麦を茹でるショート
ボブの「友達以上」が振り向いて、「芯、ないでしょう?」なんて言って試し食いの残り
半分を咥えさせられるのだって、別に去年から珍しい経験でもなんでもないのだけど。

ちょうどいいタイミングで麺を全部上げて、シンクの水を出しっぱなしにして晒す。
梱包を解いたばかりの大皿に二人分まとめて盛っちゃって、段ボールの散らかる部屋で
蕎麦猪口代わりのタンブラーグラスで、引っ越しおめでとうー、なんて言って乾杯。

「こんなに近くなったら、あたし毎週くらい遊びに来そうだけど、迷惑だよねえ」

「別に。来りゃいいじゃん」(てゆうか、いっそのこと俺達さ、…)

引っ越す前から何度も言おうとして、いつもいつもためらっていた言葉を、今度も
やっぱり喉の中へ飲み込む。絶妙に茹で上がったつるつるの蕎麦といっしょにだ。

僕が茹でるといつも、まだ足りないまだ足りないって思って、結局伸びきっちゃうんだ。

#久々に来ました。ずいぶん盛り上がってるね。
#次は「ダッシュ」「雲」「レモン」で。
 僕はレモン畑を売却した。
 借金と共に遺された畑だった。結局、十年間苦労した。
 六年目の黒字を思い出す。唯一の黒字だった。あの時は希望が湧いてきたのだが。
 今はもう、後悔する気にもなれない。諦めるより先に、わかっていたことじゃないか。

 これで最期になる。僕は畑を眺めに来ていた。穏やかな風の吹く海沿いのレモン畑。
 来年には、穏やかな風の吹く海沿いのホテルが出来るらしい。大変結構なことだ。
 もうここにレモンの花が――春夏秋に、三度咲く花が、香ることはないのだ。
 甘くて甘すぎず、それでいて濃厚な、陽気な花の香り――
 僕は呆然として、仰向けに寝転がった。そして持参したレモンを取り出した。
 美味しいレモンは生でかじれる。勢い良くかじったら、酸っぱさに身が震えた。
 雲が流れていく。最後の出荷を終えた十月のお昼過ぎ。秋空が高い。

 車のダッシュボードにはレモンの実。後部座席にはレモンの苗木が五本。
 畑はなくなったが、まだ僕がいる。
 レモンの花は年に三度咲く。冬を乗り越えれば、花は咲きつづける。


レモンについて、ググッた俄か知識で書いてます。信用しないでください。
次は「出逢い」「一目」「勘違い」でお願いします。
『出逢い・一目・勘違い』

 小学校時代からの友人の披露宴に招かれるというケース。無いわけではないが実際
は極めて稀である。それ故に招待客の中に知り合いがいない≠ニいう状態は想像に
難くない。今年27歳になる幸治も今正にその状態にあった。
(ほら、思った通りだよ。俺、浮いてる――って言うより沈んでるよな。浩之のやつ、
もしいい出逢いがあればお前も彼女出来るかも、なんて言ってたけど。俺はこういう
所で声を掛けられる様な性格はしていない、大きな勘違いだよ)
 同じ丸テーブルに座る女性に対しても、一目見て好印象を持ったにも関わらず、じろ
じろ見ていると思われるのを怖がり、その後は視線を這わせるのを堪える幸治だった。

 披露宴が終わり幸治は外へ出た。二次会の場所も聞きそびれた。勿論、彼がいなくな
っても新郎の浩之以外は誰も気づきはしない。
「あのぉ――」
 振り向いた彼は、ぽつんと佇む一人の女性を見た。同じテーブルに居た女性と気づく。
「二次会の場所、分かりますか?私、置いていかれたみたいで」
「あの――どうやら俺も置いていかれたらしいんだ。でも他に知り合いも居ないし、まぁ
いいかなって」
「私もです」
 実のところ彼女は新郎浩之の幼馴染。親同士は今でも交流があり、それで披露宴に招か
れただけに過ぎない。二人はまだ気づいていないが、幸治は小学校時代に彼女が好きだと
浩之に打ち明けたことがあったのだった。
 後日、浩之は自分の計画がこれほど見事に成功したことに、驚かされることとなる。

次は「疎遠」「グレード」「豹変」
 ガンプラの進歩は恐るべきものがある。
 小学生の頃に三百円で買って組んだガンプラは、無礼を承知で言うが、ちゃちな
ものだった。細部モールドも簡略化されたもので、関節の自由度も低い。
 それ以来ガンプラとは疎遠になっていたのだが、つい最近おもちゃ屋でガンプラを
見て驚いた。
 ハイグレード、マスターグレード、パーフェクトグレード。そのいずれをとっても、
当時のガンプラ生成技術から格段の豹変を遂げていた。価格も上昇してはいるが、
一部高額商品を除けばおよそ千円前後から手に入る。価格以上の費用対効果上昇は
自信を持って断言できる。
 本文を執筆するに先んじて一つ買い求め、組んでみた。塗装も何も施さない素組み
だったが、記憶に残る手間隙かけてこさえたモデルよりも、はるかに良いものが完成
した。
 とかくディレッタントに弾劾されがちな<陳腐化>と言う概念だが、こういう形での
陳腐化は大いに歓迎したい。

次のお題は「初恋」「王国」「ねこまんま」で。
 帰省した翌日、近所を散歩しているうちに、ニ丁目の曲がり角のアパートに違和感を覚え、
私は立ち止まった。昔見た風景と違う。そこは私がいた頃は大きな椎の木のある空き地だった。
その目印の椎の木が見事に消滅し、あとは地面をぴったりとコンクリで覆われた庭のある
殺風景なアパートがそこにあるだけだ。
 そこの椎の木は猫の溜まり場だった。十匹の猫ほどが思い思いに集まっては、時には幹で爪
を研いだり、器用に登っていては遊んでいた場所だった。そこは猫の王国みたいなものだったの
だ。そしてその主を私は思い出した。二十歳後半あたりの青年が朝っぱらから、ここで猫たちに
餌付けしていた場所だったのだ。その青年がこの近所に住んでいるらしいということは推測できても、
名前すら知らないので一体どこの誰だが分からなかった。
その青年が朝、ねこまんまのたっぷり入った大鍋を持ってきては、猫たちを呼び寄せる。猫たちは
にゃあにゃあ歓声を上げながら、青年の周りに集い、ふぐふぐと鍋を貪る。こんな風景を眺める
青年の顔はいつも穏やかだった。親は学生だった私に、この男とは関わりになるなと夕食のたびに
言い聞かせていたから、私は彼に近寄る事はしなかった。しかし、いつも通学のたびに立ち止まって
はこの風景を遠目で眺めていた。
 青年の横顔は端正で、髪も服も無難ながらさっぱりとしていた。私は猫を眺めながら、彼の横顔を
いつしか見つめるようになっていた。立ち止まったままの私を、幾人かの学生たちがちらりとみると
通り過ぎていく。それでも立ち止まったまま、見つめ続けた。そして、大慌てで学校へ駆け込む。
そんな繰り返しの日々だった。
 しかし、そんな日は突然終わった。いつものように眺めていた私に、青年が気付いていたのか、
突然私のほうを向き、一言君も猫好きかいと問い掛けてきたのだ。不意打ちにあっと声をあげると
私はそのまま走り去り、以後通学路を変え、その青年に出くわさないようにした。それきりだった。
 私はなぜそんなことをしたのか。青年のいない今の風景を見ているうちに答えが出た。好きだった。
そして気付かれたくなかった。そう、これが私の初恋だったのだ。
 今青年も、その椎の木も消えてしまった。そして私の初恋もまたこれらとともに消えていくのを感じた。
「風花」「夏みかん」「風船」
390名無し物書き@推敲中?:04/04/10 21:51
生意気な1をシめてやるッ!

風花が見守る中、制裁は行われた。
既に1の口には夏みかんのサオがねじ込まれている。
「風船、コマしたれ」
風花がいうと、風船は稽古廻しの横から一物を取り出した。
ゆうに一尺はあろうかという巨大な業物に、1はぶるっと震えた。
しかし、その恐怖とは裏腹に〜いや、1にとってはその恐怖こそが
色欲を沸き立たせるものだったのかもしれないが〜1の花らっきょうの
ような小振りの一物は痛い程にそそり立っていた。
その「花らっきょう」の皮を夏みかんが唇でちゅるんと器用に剥く。
夏みかんの口中にアンモニア臭が広がる。
そして、風船の一尺竿が1の菊門にねじり込まれていく・…
四人総体重700kgを越えるド迫力の4Pファック。
まだ、幕が開いたにすぎない。
悦楽は、ここから始まる。夜はまだ終わらない…
「風花」「夏みかん」「風船」

思い出はセピア色になるというけれど。
私の中ではあの日はいつまでも、
鮮やかな空色のままで。
南国の青は鮮やか過ぎて。
あの人が旅立ってしまった雲の国の上にはきっと、
あの人の好きだった夏みかんの木と。
縁日で買って嬉しそうだった赤い風船と。
いつもスケッチブックを持って佇んでいた風の草原の花が。
きっとある。
だから帰ってこないんだ。
毎日にこにこしながら風花の中で絵を描いてるんだ。
うらやましいな。
私も。
行きたいな。


「槍」「分身」「相棒」
今から丁度3年前…Aが死んだ日。
俺とAは仕事仲間だった。
Aと俺は性格や容姿、育ちもかなり似ていて、俺の分身の様な存在だった。
お互いに信頼しあい、今では気恥ずかしく感じるが、相棒と呼び合う仲でもあった。
だが3年前の今日、運命の歯車は大きく狂ってしまった。
あの日は季節に合わない大雨だった。
俺はAを助手席に乗せ、ひと時の癒しを得るべく、飲み屋へと向かっていた。
「おい、シートベルトぐらいはしろよ。」
「お前の運転の腕は俺が一番よく知ってる。シートベルトなんて必要ないさ。」
その言葉に舞い上がってしまったのか…。横から信号を無視した飛び出してくるトラック
に対しての反応が一瞬遅れた。
俺のミスのせいでAを死なせてしまった。その日の雨は槍が降ってるかのように痛かった。
 あれから3年。俺は毎年続けている、Aの墓参りに来ていた。
外野がなんと慰めてこようと、俺の解釈は変わらない。
自分にも、もう悩むのはやめろ、と言い聞かせたが無駄だった。
 あの日とはうって変わって、雲ひとつない快晴。
いつになるか分からない、呪縛が開放される日を待ち、俺は生き続ける。

同じような語尾が多くなってしまった…。
次のお題は「雑学」「教師」「手帳」
スクールで脳に水虫が出来る奇病が流行しはじめた。
雑学博士のヴェルヌにも治療方法は分からないらしい。
教師にも感染者が増えてきた。
僕と悪友のサミーは面白がってこんなデマを流した。
「脳に水虫ができる奇病は、Tバック一丁で手帳を尻に挟んで廊下をダッシュで百往復すれば治る」
翌日、スクールの廊下はTバック一丁で手帳を尻に挟んで走り回る生徒や教師でいっぱいになった。
僕とサミーは呼吸困難になるほど笑い転げた。
だがそのまた翌日、奇病はすっかり収まっていた。本当に効果があったらしい。
僕とサミーはスクールの英雄になってしまった。

「チェス」「交換」「巨人」
394チェス 交換 巨人:04/04/11 09:56
 冬の関ヶ原に風雪が吹き荒ぶ。
 久能左衛門尉雅亘は動かない。身の丈六尺を超える嘉村兵内を前に、その様
さながら小人と巨人。
 美濃藩随一の重臣・久能雅茂の嫡男である雅亘が、剣客として生きたいなどと
申し出て通る道理もなし。死を賭して父に詰め寄り、ようやくもぎ取った交換条件が、
美濃藩主剣術御指南役である嘉村兵内との手合わせであった。
 剛剣をもってその名を江戸にまで轟かす嘉村に手痛く打ち据えさせれば、雅亘も
諦めるであろうとの父雅茂の思惑であったが、雅亘はこれを奇貨と受諾。
――もとより剣客として活きると定めたこの身、美濃一つ制せずして値あらんや。
 雅亘は嘉村の向こうに背中を見ていた。参勤交代の随伴で江戸に赴いた際、薩摩
屋敷で所ならず目にした薩摩御留流。東郷の岩をも断つ示現流の秘剣は、雅亘の
心を今も燃え立たせていた。
 半ば雪柱と化した嘉村兵内。その向こうにこそ、己の道はある。
 雅亘が動いた。まとわりつく雪塊を舞い散らせ、怪鳥のおらびを上げ。
「チェストーーーーーッ!!!!」

 次のお題は「鞘」「鰐」「養老」で。
『鞘・鰐・養老』

養老2年(718)、俺は一路日本への帰朝を目指す第8次遣唐使船団の一隻に乗り
組んでいた。仕事は水手(かこ)。艪の漕ぎ手だ。帆に当たる風向きは、理想的とは言
えない。水手長の指示で、俺たちはこれ以上航路を外さない為に艪を操り続けている。
 唐土沿岸、揚州に着いたのは去年の夏だった。遣唐使一行はそこから長安へ向かった
が、俺達船員は半年以上もの間、その揚州で彼等が戻るのを待っていた。
本当に長かった。でももう直ぐだ。も直ぐあいつに会える。
 俺には国に残して来た女が居る。今回の渡唐を決めたことで喧嘩になった女だ。
「勝手に行けばいい!あんたのことは、もう死んだと思って諦めるから!」
 そう言って泣いた。帰り着く者は半分とも言われる危険な旅。怒るのも無理は無い。
 揚州で俺は西域産の銭入れを手に入れた。鰐とかいうでかい蜥蜴の皮で出来た物。
正直、国では銭なんか持ってるやつは見たことがないが、それでも構わない。この珍し
い銭入れを土産に渡して、あいつと元の鞘に、俺は戻りたい。

 ある日、船は嵐に見舞われた。往路でも経験しなかった、とてつもなく大きなやつだ。
天にも届く巨大な波に煽られ、甲板は海水に満たされた。俺達は艪を桶に持ち替え、
必死でかき出した。放り出された時も、俺には何が起こったのか良く分からなかった。
 深く沈んでいく。もがくのは直ぐに諦めた。意外にも、冷静な気持ちに包まれた。
「もう死んだと思って――」
俺は懐に手を忍ばせ、銭入れの感触を確かめた。お前は正しかったな。それにこんな
銭入れ、必要無いものな。
それが、この世で俺が最後に思ったことだった。

次は「解凍」「マナー」「ランダム」
396岸和田:04/04/11 12:28
「解凍」「マナー」「ランダム」
 ひとを傷つけるのが好きだ。
ナイフでもバットでも、素手でも構わない。ひとを傷つけるのはおもしろい。
血がしたたり、骨が折れ、泣いて懇願する――。考えただけでわくわくする。
 と言っても、僕が人を襲う事にはいちおうマナーというか、
ルールみたいなものは存在する。何故ルールが必要か?ゲームの難易度を
上げるのと一緒のことだ。
 ルールその1、被害者はランダム。
 ルールその2、被害者からモノは一切取らない。
 ルールその3、決して殺さない。また、致命傷にしてもいけない。
殺してしまうと、体じゅうが熱くなり、息がしにくくなって、涙が出る。
いつもはひどく冷たい心が、解凍されて、おかしくなる。
何故だかわからない。
 僕は非情だろう。だけども、ひとを殺すと気分が悪いし、涙が出る。
果たして、僕は非情な悪なのだろうか?

 「夢」「無人島」「遊園地」 
青い。
そういえば俺は青色が好きだった。
見上げれば球状の、青く高い、空気でできた天井。
足下には波立つ、青く深い、水の床。
実に俺好みだ。ここは何と広い部屋だろう。床と天井をつなぐのは、
壁ではなく、遠い水平線である。
誰もいない。
そういえば俺は他人に干渉されるのが嫌いだった。これも俺好みだ。
この無人島というすばらしい環境に漂着したことを感謝せねばなるまい。
地球は遊園地だ。その数多いアトラクションのうちのひとつを、俺は体験しているのだ。
この遭難が夢であったら、と思いたいがそうはいかないことは自分の頬が何度も証明した。
それならせめて、今の環境を夢の国だと思うことにしたい。

次回はね、「ください」「峠」「手のひら」の三つがいいな、って由実思うなー。
(誰やねん!)

「では、出場者はスタートラインに集まってください」
おらが村の年中行事である鬼俵祭り。
一人七俵の米俵をぶら下げて七つの峠を越える極限のレースだ。
優勝した者は村一番の美女のキスがもらえる。
逆にビリだった者は村中の人間から唾を吐きかけられる。
おらは自慢じゃないが運動神経というものがない。
唾液フェチの田吾作がいつもわざと遅れてくれるおかげで今までビリだったことはないが、
その田吾作は三日前耕運機に轢かれて入院中だ。
おらは緊張しないように手のひらに人と書いて何度も飲み込んだ。
「位置について、用意…どん!」
さあ、スタートだ!

「農園」「種牛」「しくじった」
どうも。神です。
私、いくつか農園を持ってて、いろんな動物の飼育、
もとい創造に努めてるんですけど、
今回、思うところあって人間も造ってみたんです。
あれは、そう、その名も「楽園」ていう農園だったかな。
そしたら種牛ことアダムの馬鹿野郎が同じ農園で栽培してた
リンゴ食っちまいやがりましてね。わたしもちょっとカチーンと
来ちゃって農園追い出すことにしました。
ほれ、さっさと出て行け、この無駄飯食いが!
何?「リンゴのどにつまった」?ジジイかオマエは。
イヴにでも背中叩いてもらえ。ジジイだけに肩も叩いてもらえ。
さっさと行けよ。何?「あしくじぃたから歩けない」?
ジジイのくせに小学生がマラソン大会に出たくないがための言い訳
みたいなこと言うな!早く出ていけっての。
ふう、やれやれ。神やってくのも大変なんです。それではまたいずれ。

神としては「偉大」「八百万」「聖」の三語を希望します。
 「ボブは偉大な男だったよ」
 サンダースじいさんの言葉が僕の奥深くまで入ってきて、
ボブの在りし日の姿が、僕の中に鮮明に浮かび上がって
きた。じいさんはさらに続けた。
「彼は八百万の技をもち……」
 ボブは所謂悪人≠ニ呼ばれる男だったらしい。しかし、
彼を良く知る人にとっての彼は聖者≠セったそうだ。
「あの日――神が地を見捨てた日――」
 大地に深く長い亀裂を生じさせるほどの大地震があったらしい。 
僕の年齢では分からない。何しろそれはもう五十年以上前
の出来事だそうだから。ボブが偉大な男になったのはその時らしい。
彼は人々を先導し、地を埋め立てる列を作らせた。その時のことは
こう呼ばれている聖者の行進=\―。この言葉は学校で習った。
「マイクも、人々を救ったボブのような男になっておくれ」
「ボブは凄いね。だけど、僕はボブみたいにはなれないよ」

「旋律」「戒律」「馬鹿」
手が止まって、一呼吸。吐いた息の余韻も収まってからようやく、ぼくは声が出た。
「先輩、すごい……すごいよっ! どうしたらそんなにうまくなれるんです!?」
大声は音楽室の防音壁に吸い込まれていったけど、興奮は依然として残り続けた。
「練習、かな。今はそうでもないけど、高校生まではほとんど一日中ピアノ」
女性のわりに大きな手のひらが僕に向けられ、ひらひらと指が動かされた。
その指が先輩自身の顔に行き、ぽりぽりと恥ずかしげに頬をかいた。
「家が厳しくてね。家訓……と言うよりは戒律、ね。
私の家族はみんな楽器をひとつ扱えるのよ。兄はビオラ、父はバイオリン。
母と私がピアノ。曽祖父が決めたのよ。楽器は人生を豊かにするから、て」
だから大したことじゃないのよ、と先輩は続けて軽く微笑んだ。
「ぼくも、先輩みたいにうまく……なれるかな?」
「なれるわよ。きっと。私なんかより、ピアノ好きそうだもの……帰ろうか?」
はっと顔を上げたぼくに先輩は目を大きく開けて、驚いた。
「お馬鹿、なにもの欲しそうな顔してるの。……もう一曲?」
力いっぱい頷いたぼくにため息混じりに笑って、先輩は軽やかに旋律を紡ぎ始めた。

「鳥籠」「落し物」「幻想」
ふと目が覚めると、ひどく汗をかいていた事に気付いた。外は大分暗く、
私は一瞬今が朝なのか夕方なのか混乱してしまっていた。
私は夏に昼寝して、夕方頃目が覚めると今がいつか分からなくなってしまうのだ。
このとき何か幻想的な気持ちになるのだが、どう表現したらよいのかよく分からない。
快不快で言えば間違いなく快なのだが、何とも言えない気持ちになる。
そんな心地よい気持ちに浸っていると母が、
落とした財布が交番に届いたから取りに行くよう言われた。

交番に行き、落とし物受取の手続きをしていると鳥籠に入った猫が目に入った。
「これも落とし物ですか」
「そうですよ。首輪がしてあるし、飼い猫だと思いますよ。
ここに届けられたときは結構五月蠅かったんですが、今は寝ているみたいですね」
猫用の籠ではなく、鳥籠に入っているところを見ると、
普段はこうした箱に入れられる事は無いようだった。

手続きを終え帰る頃にもう一度猫を見ると、不思議そうに外を眺めていた。
この猫も私と同じように、夏の昼寝のあとの心地よい余韻に浸っているのだろうか。
403402:04/04/11 22:42
すいません、お題忘れです。
「紙一重」「地下鉄」「ガード下」
404名無し物書き@推敲中?:04/04/12 00:41

結構分厚い。
この一枚の紙に僕の一学期の素行の断片が評価されているのだ。
通信簿を貰う瞬間は好きになれないが、人気のない町の隅で開くそれは
ちょっとした暇つぶしになる。
カンカンと遮断機の乾いた音がして、電信柱にとまったすずめはどこかに飛んでいった。
焦げた食パンみたいに錆のついたガード下には立ち枯れたアジサイが植わっていて、
そのカスカスの花の合間から灰色のコンクリートがちらりとのぞく。
コンクリートはすごく熱している。

やがてレールの奥のトンネルから地下鉄が浮上してくる。
半蔵門線、暗い地下を走ってきた電車が初めて浮上するこの町は結構好きだ。
涼しい風を巻き上げて電車が通る。
僕は手にした通信簿を思い出し、このまま手放したらどうなるかと思った。
風にのって飛んでいくだろうか。無様に塀に激突してぼろぼろになるだけだろうか。
うまく浮上したらきれいだろうか。紙飛行機みたいなのか。
想像しようとしたけど、がたごとと電車がうるさくてうまくいかない。
去っていく電車が光る。そういえば今日は暑いな。久しぶりに晴れたからか。

夏だ。

「トマト」「夕焼け」「リコーダー」でお願いします。

僕とサミーは授業をさぼって近所の畑にトマトを盗みにきた。
ここのオーナーは管理がいい加減だから収穫されずに腐った実がそこら中に放置されている。
中でも特に柔らかいのを僕とサミーは選んで集めた。
夕焼けが辺りを覆う頃には十分な量が集まった。
逃げる途中でオーナーに見つかったが、見逃されるどころかお礼まで言われた。
持っていたのが腐った実ばかりだったのでボランティア活動だと思われたらしい。
ともあれ、明日スクールで全クラス対抗のリコーダー演奏会がある。
このトマト達は明日の演奏会をとても美しく彩ってくれることだろう。

「さらば」「不滅」「ナンバー」
406岸和田:04/04/12 09:05
「さらば」「不滅」「ナンバー」
 これで最後だ。俺たちのバンドもこれで終わりだ。
最後のライブもあと一曲で終わり……12年、長かったようで短かった。
「よっしゃあ!この曲でみんなともおさらばだ!!」
「いやーやめないでーアルト」 観客の声が飛ぶ。
「大丈夫、俺たち……俺たち、『リコーダーズ』は永遠に不滅だ!」
「わあああああああ!!」
「ボーカル、アルト。ギター、ソプラノ。ドラム、ジョン。この三人でお送りする最後のナンバー」
「何!?」
「『この想い、ユーエフォー』!」
……演奏を終えて、会場を見回す。
最前列のセンターに、一人だけ女が座っている。
この女一人だけが客だ。ほかに誰も居ない。
12年、無理に続けて残ったのは借金だけだった。
34歳で就職、できるかなぁ?

 「タランテラ」「丁寧」「もしもし」
407名無し物書き@推敲中?:04/04/12 17:43
その男は深く椅子に腰掛けたままじっと動かないで俯いている。
「もしもし」と僕は尋ねる。「そこで何をしていらっしゃるんですか?」
男はゆっくりと顔をあげ、虚ろな眼で僕を見つめた。
「寺が、足らないんだ」と男は妙に丁寧な口調で呟いた。寺が足らない?なんのことだ?
「お寺が足りないんですか?生憎ですが、僕は寺に関してはまったくの門外漢なので、
あなたのお手伝いはできそうもありませんね。」と僕は言った。
「寺が足りない…寺・・・足らん・・・寺足らん・・・足らん・・・寺・・・足らん寺…」
男は狂ったようにぶつぶつと呟いている。
「あの、すいませんが次のお客様がお待ちなんで、そろそろお引取りくださいませんか?」
「テラタランテラタランテラタラン・・・」
いったいいつまで僕はこんな男の話を聞き続けなくちゃならないんだろう。

「絵本」「ドイツ」「狙撃銃」
408罧原 ◆tXSA0RUZGU :04/04/12 18:29
異常者が女の子を射殺したいと思って一人の女の子に絵本をプレゼントした。
網のかごに絵本を入れて周りにイチゴを数個添えて。射殺したあと小さなかわいい女の子の死体で遊んでみたい、そんなことを妄想しながら。
その男はドイツ製の軍服にコーランを突っ込んで、冷たい風が吹く路地を家路に急いだ。
どんどんあの女の子と親しくなっていけばきっと自分の欲望が満たされる日が来るはずだ。
地下室に隠してある狙撃銃をベッドまで持ち出し、彼は引き金を何度もカチャカチャさせていた。その日遅くまで。

次は「ニコチン中毒」「カレンダー」「インコ」でよろしくおねがい
指定された部屋にあったのは、ドイツ製の古びた狙撃銃だった。
冗談じゃない、こんながらくたで狙撃などできるはずがない。素人の俺にだって分る。
それでも止めるわけにはいかない、前金の5万ドルは借金の返済で消えた。
あまりに頼りない銃を構え、わずかに開いた窓から依頼人を探す。
目印は黒い帽子をかぶり、脇に新聞を抱えた男。
その男が標的の後ろを通り過ぎるときに新聞を持ち変える。
回りくどいやり方だがそんなことはどうでもいい俺には金が必要だ。
「準備できたぞ」
帽子の男を見つけた俺は、無線でつなぎの者に伝える。
人は何人も殺してきたが狙撃は初めてだ、やはり緊張する。喉が渇き、鼓動が高まる。
俺は緊張をほぐすために大きく呼吸を吐くと、当てに出来そうもないスコープを覗き込む。
拡大された男が映る、神経質そうな男だ。男はちらりとこちらに視線を送るとゆっくりと歩き始める。
喉の渇きがおさまらない、唾を飲み込もうとしても口の中には一滴の唾液もない。
スコープ越しに男を追う。男はもう一度こちらに視線を送ると新聞を持ち替えた。
心臓が止まりそうな程の衝撃を受けた。そこにいたのはベンチで絵本を読む少女。
まだ十歳にも満たないだろう、長い金髪に青い瞳の人形のような少女。
「間違いないのか」とつなぎの男に確認する、こんな少女を殺せなどと……
その瞬間乾いた銃声が数回響いた。俺は撃っていない、あわてて窓の外を肉眼で見回す。
少女は走り去っている、そのすぐそばで一人の男が頭から血を流し地に伏していた。
訳がわからない。とにかくここを離れなければ。俺は銃を放り出すと出口に向かって走り始めた。
乱暴にドアを開ける。部屋を飛び出した先に俺は信じられない物を見た。
警官隊が盾を構えてこちらに銃を向けていたのだ。
「両手を頭の後ろに組んで、床に伏せろ」
警官の一人がそう叫んだ。逆らえば死。俺は訳もわからぬまま命令に従った。

これが俺の無実の罪、前科を合わせ懲役百五十年の内六十年が過ぎた今の俺にとってはもうどうでもいい事だ。
俺はもうじき寿命が尽きる。誰かの生贄の山羊として刑務所で死ぬ。
心残りは無い。ただ時折ふと思うのだ、あの少女は心に傷を負わなかったろうかと。

「やくたたず」 「ブリキ」 「花」
410409:04/04/12 19:05
申し訳ない>>409は無視で
>>410
ガンガレ
人間以外の動物でもニコチン中毒になるのだろうか?
テレビの横にカートンのまま積まれたセブンスターのストックを眺めていると、ふとそんな考えが頭を過ぎった。
10年来のヘビースモーカーである僕は、それがたたって喉を痛め、医者から喫煙を制限されていた。
本当にくだらない事を思いついたものだと思うが、何故だかその考えはなかなか頭から離れなかった。
テレビの上に置かれたカレンダーになんとはなしに目をやり、またその事を考えた。
「ゴハン、ゴハン」
ちょうどその時となりの部屋から声がした。
「そうか…もうそんな時間か」
僕は後ろの壁にかけられた時計のほうをふり向き、呟いた。
一人暮らしの侘しさから、話相手にでもと半年ほど前からインコを飼いはじめたのだった。
なんという種類かは忘れたが、わりと大型で極彩色の美しい雄のインコだ。
頭も良く、飼い始めるとすぐに言葉を覚え出し、今では僕の夕食前に彼の合図でエサの補充をする事になっていた。
「そうだ…」
僕は封を開けてあったセブンスターを一本胸ポケットから取り出し、隣の部屋に向かった。
あまり深く考ることもせずに…。

「サボテン」 「画鋲」 「痛み止め」

413名無し物書き@推敲中?:04/04/12 19:52
そのサボテンは小さな花を咲かせたらしい。
でもそんなことはあたしの関与することではない。
あたしは壁のポスターに視線を向ける。
どっかの国の平和な風景。
ポスターをとめている画鋲は茶黒く錆付いている。
まあそんなことどうでもいいんだけどね。
そう言えば最近、妹が男にフラれたらしい。
あたしは痛み止めのつもりで彼女に新しい男を紹介してあげたんだけど、
どうやらそれもうまくいってないらしい。
まああたしには何の関係も無い。日々は平和で、それでまんぞく。
414413:04/04/12 19:53
つぎ。

「カセットテープ」「録音」「錯覚」
「カトちゃんの、びばのんラジオ全員集合」
妙にエコーのかかった茶の声がラジカセから流れる。なんなのこれは。
私は英会話テープのダビングを頼んだのに90分のカセットテープに入っていたのは、茶のラジオ番組。
わざわざテープを届けてしかも取りにも行ったのに。録音されていたのはよりにもよって茶だ。
ラジカセのイジェクトボタンを怒りをぶつけるように押し込む。
テープを取り出し題名を確認する。書いてあったのは、カトちゃん、という文字。
確かに私が預けたテープにカトちゃんと油性のインクで書かれている。
錯覚ではない、これはカトちゃんのテープ。
茶の番組を録音してまで聞くなんて。しかも忘れられつつあるカセットテープに。
世の中にはいろいろな人が居る。カトちゃん好きの英語の先生がいてもいいだろう。
いつの間にか怒りは消えて、私は茶の番組を聞き始めた。
416415:04/04/12 20:16
「相撲」 「電車」 「回覧版」 でお願いします。
417罧原 ◆tXSA0RUZGU :04/04/12 21:09
おかしな回覧板が回ってきた。
回覧板を持ってきた人物も狂っていた。呼び鈴を鳴らすことも無く回覧板を玄関の前において、
軒先に小便をかけて去っていってのだ。
俺はその様子を一部始終設置してある監視カメラで妻と見ていた。妻が言うにはその若者は
東京の大学を卒業したあと、金に困り、金策のため実家に帰ってきている信一郎君だという。
「おまえ詳しいな」
「ええ。幼馴染なの・・・・・・」
俺と妻はリヴィングでワインを飲みながらそいつについて語り合った。
「おかしな奴もいるもんだね、ちょっとぶっそうだな」
だが、妻の表情は曇るばかりなのだ。
「いえ。あの人はやさしい人です」
「やけにあの男をかばうな、お前らもしかして」
妻は俺を無視し立ち上がった。「あなたに見せたい写真があるのついてきて」
妻は経済学者で彼女の部屋にはびっしりと小難しい本が並んでいる。妻は終始無言のまま小箱の蓋を開けた。
「この写真です」
妻と回覧板を持ってきた男が全裸で相撲をとっている写真だった。観客席には彼女の両親の楽しげな顔も見える。
「これは?」
「中学生の時の写真です・・・・・・」
俺は胸騒ぎがし玄関へ急いだ。回覧板に目を通すとやはり殺気立った文字が躍っていた。
・・・あのときの借りは必ず返す、女に相撲で負け、俺の人生は狂った、今日夜八時、山岡児童公園の土俵前で待つ、全裸で来い、マワシはこちらで用意する、富田林信一郎・・・
「お前行くのか?」
「ええ」
「わかった。俺は止めはしない。今から電車に乗れば夜八時までに間に合うはずだ。早く準備しよう。黒のコートがあったはずだ。電車の中では全裸はまずい。コートを羽織っておけ」
それが罠だとはこの時の俺たちは知る由もなかった。

次は、「おっぱい」「海鳥」「乾パン」
418名無し物書き@推敲中?:04/04/12 21:39
樹海の木々の木肌から大英博物館の奥に眠るミイラの体を連想した。
ミイラ取りがミイラに。スモウとりはスモウに。
そんなくだらない事をつぶやきさまよううちにとうに秋の日は沈んでしまった。
寒さに身がすくみ、踏み出す足の裏でか弱く折れる枝の音にもおびえる。
ミイラ取りがミイラに。でも僕はけしていつかの父を探しに来たんじゃない。

今日の午前九時、山手線のレールを大きくはずれ、山梨へ向かう電車に乗り込んだ。
導かれるようにというのとも少し違う。朝目覚めた小さな思い付きをいくつも重ね、半ば冷めながら、
半ば自分の少年のような探究心に陶酔しながら、とうとうここまでやってきてしまった。

ポットの電気をいれたまま、つたやのCDをかりっぱなしのまま、
使い捨てのコンタクトの期限が迫ったまま、回覧板をとめたまま、
ありきたりの逃避を犯してしまったことがとても意外だった。

ミイラ取りがミイラに。スモウとりはスモウに。
鳥は自由に。

「3,6」「赤」「ねずみ」



419418:04/04/12 21:40
418は無しにしましょう。
「おっぱい」「海鳥」「乾パン」「3,6」「赤」「ねずみ」

調理実習でおっぱいプリンを作ったら一週間の停学処分を食らった。
家庭科の先生は胸にどえらいコンプレックスを持っていたことを忘れていた。
暇だから昼間にぶらぶらと海岸を歩いていると、海鳥の死体が打ち上げられていた。
ここのところ続いている赤潮の影響だろうか。可哀想だから手厚く葬ってやることにした。
砂浜に穴を掘って海鳥の死体を横たえ、ポケットに入っていた乾パンを捧げた。
最後に指で地面に「04,3,6 一羽の海鳥ここに眠る」と書いて立ち去った。
その後、停学明けの調理実習でねずみの姿焼きを作ったら今度は二週間の停学を食らった。

「せっかくだから」「六つ」「使った」
421418:04/04/12 23:52
>>420
それはどうもありがとう(笑
422名無し物書き@推敲中?:04/04/13 02:59
貴女は微笑ながら、こう言いました。
「せっかくだから、これも使いましょう」
美しい指先で、ページをめくる貴女。
眉間に皺を寄せて、考え込む貴女。
「全部で六つだね。あっ、六人の方が正しいか」
ころころと声をたてて笑う貴女。
私は、貴女と一緒になれて本当に良かった。
これから私たち、赤ん坊を授かります。

「この六名の方のスパームを使用されるのですね」
精子バンクの職員が、書類にスタンプを押しながら確認してきました。
「はい。得に、このA氏の履歴・職歴は素晴らしいですね」
「ええ、先日彼のスパームを使った方が出産された赤ん坊は1歳でひらがなが読めるそうですよ」
「まぁ、素敵」
貴女は目を細めながら、私を見つめました。
「美奈子と私の子供ですもの。きっと良い子に育つわ」
女子高生時代からの、私達の夢が、もうすぐ叶います。
神さま、ありがとう。

次のお題
「番茶」「おばけ」「ナイアガラの滝」
423名無し物書き@推敲中?:04/04/13 03:41
私のお気に入りのサイトです。毎日のように更新してあるのもすごいし、話題も幅広い。32歳女性らしいです。音楽・美術・文学などお堅い話題もあれば、なかなか過激なえっち描写などもあり、、、性別を問わず楽しめるかと。

ありきたりな言い方しか出来ないけれど、繊細でおしゃれなのに、案外豪快なところもあるのかなと思いました。

えっち小説のリクエスト受け付けます〜、ってとこもすごい〜。オナニー・野外・何でもありみたい。ぜひ行ってみて。
http://www.myprofile.ne.jp/yuki_sarasara
424名無し物書き@推敲中?:04/04/13 10:27
所ジョージがテレビの中で一億円、一億円と連呼している。
華やかなテロップでコマーシャルが終わると、沈黙の隙間を埋める様に父が言う。
「一億円当たったら海外旅行にでも行きたいですね」
おばあちゃんは視線をテレビからそらさないまま「あ」だか「ん」だかよく分からない
言葉を口にした。入れられてから随分たってぬるく冷えた番茶をすすり、
母は思い出したように扇風機をまわす。
「オーロラ見たいですか。ナイアガラの滝がいいですか。ちょっと珍しくって、なかなか見られない
ようなものを見たいでしょう」
「どうでしょう」
おばあちゃんがやんわりと流して、その話題はそれきりとなった。
父はコマーシャルをはさんで引っ張られたクイズの答えにやきもきし、母はとんちんかんなことを
言い、二人は笑い合いながらその話題を忘れた。
当たり前のように過ぎていく夏の夕。
風鈴が揺れ、穏やかな風が吹いて、またおばあちゃんの生まれた日が近づいてくる。
幾重も年を重ね、指の先までゆっくりしてしまったおばあちゃん。
いまどき珍しい、おばけのようなしわがたくさん顔に散らばったおばあちゃん。
氷の入ってない麦茶をあおると、僕にはおばあちゃんが外国へ悠々と旅行へ行く日は二度とこないだろう、
と分かってしまった。

「湯」「歯」「塩」
425湯・歯・塩:04/04/13 13:37
あたり一面、もうもうと湯気がたちこめている。
クランシーは携帯を左肩に挟み、内ポケットからタバコを取り出した。
火をつける。歯噛みしながら、さらに数秒待った。やはり誰も出ない。
「本社の人間はなにしてやがんだ!」
毒づいた拍子に、買ったばかりの携帯を温泉に落としかかった。
あわてて携帯にしがみつき、ほっとする。
通行人がくすりと笑うのが聞こえ、雑踏が、噂話が耳に戻ってきた。
クラクション、怒声。渋滞した車の列と野次馬。そう、ここは5番街のど真ん中なのだ。
「そこのガキ! テープの内側に入るんじゃねえ! 数百度の熱湯だぞ、死にてえのか!」
クランシーはヒステリックに叫ぶと、もう一度携帯を操作した。
「はい、タイタン・クライシス・コントロールです。ご用件は……」
「うるせえ!」気取ったオペレーターを一蹴し、まくし立てる。
「やっと出やがったかウスノロ! とっととボビーに変われ!
 こっちゃ大変だ、最初に聞いてたのとは規模が違う、こりゃ温泉どこじゃねえ、
 まるで間欠泉だ。泉質は塩化ナトリウムだろうな、そこらじゅうで結晶してる!」

次は 「テンポ」 「店舗」 「暴走」

 
ネオンの輝く店舗が並ぶ通り。
俺は悠美と仲良く手を繋ぎながら、ネオン街を歩いていた。
こんな所をこんな様子で歩いていたら、当然のことながら客引きがひっきりなしに声を掛けてくる。
俺なんかにはとても真似できないようなテンポの早い名調子。
ついでに言えば見込みなしと判断して去っていくタイミングすらも一流だ。
……正直言えば、このまま本能の赴くまま暴走してしまいたい気も少しする。
そういう店――というよりホテルか?――は確かにここまで沢山あった。
しかしさすがにそういう訳にもいくまい。
確かに本能との葛藤はあるが……いや、駄目だ。

「パパ、何考えてるの?」
 俺の愛娘、悠美――当年とって9歳――が、不思議そうな顔で俺を見上げる。

 俺はちょっと変態なんだろうか。

 次、「私」「厳禁」「ドメイン」で。
427名無し物書き@推敲中?:04/04/13 15:33
私は厳禁なドメインだ。
428名無し物書き@推敲中?:04/04/13 15:36
『私・厳禁・ドメイン』

《だから、ドメイン指定受信!アドレスなんか変更しなくたって、その方法で……》
「いいの!もう変えちゃったんだから」
 ある朝、私の携帯に30件を越える迷惑メール≠ェ大挙して押し寄せていた。
「でもさ、お蔭でまたこうして『会おう』って話になったわけだから」
《まぁね。でも二度と変な携帯サイトに行くのは厳禁だよ。でないとまた……》
「恭子!最初に言ったでしょ、身に覚えが無いの!私には」
《ははは、分かったわよ。それよりさ、ちゃんと私の家まだ覚えてる?》
 再会する日程と時間を決めて、私たちは電話を切った。恭子と私は小学校時
代の親友。卒業と同時に、父の転勤に伴なって東京へ移り住んで以来、疎遠とな
ってしまったのだ。気付けばお互い高校に通う年齢になっていた。
(でも懐かしい。長野へ帰るのも久しぶりだな。あの頃は携帯なんて持ってなかっ
たもん。もしあったら今頃は、せめてメールぐらいは出し合う……)
 気付くのが遅かった。私は登録してあるアドレス全てに、何も考えずにアド
レス変更のお知らせ<=[ルを送った。その結果、恭子から携帯に電話が――。
(恭子のアドレスなんて、私が知ってるわけない!) 
  私はふと、削除していなかった迷惑メール≠見た。アドレスは全て同じ。
 
 kyoko@xxxxxx.ne.jp

 慌てて卒業アルバムを引張り出し、恭子の実家に電話をする。去年彼女の命
を奪った事故の顛末を話す彼女の母親の声を、私はただ呆然と聞いていた。 

 約束の日。手に花束を抱え、私は懐かしい駅のホームに降り立った。

次は「充電」「消滅」「無抵抗」
430罧原 ◆tXSA0RUZGU :04/04/13 16:38
悲しいかな僕はいつまでたってもやる気がおこらない。
正真正銘のダメ人間なんだろう。四月からバイトもやめて家でごろごろしてるだけだ。
正直死にたい。もしありうるなら地球ごと消滅したい。
充電機のコードに携帯を突っ込む気力も無い。まあ電話をかける相手もいないんだが。
そんな僕は京都に住んでいる。寺でも見に行くか。そういやトイレットペーパーがもうないんだよな。糞も出来ねえ。
でもあれ買うの恥ずかしいんだよな。絶対うんこするために買うって思われるもん。レジが女性なんで買う勇気がでねえ。
使い道が糞したあとのケツの穴を拭く事しかない商品だからな。モロばれだ。
ティッシュペーパーならオナニーするために買うにしても、色々と言い訳も出来るのだが。例えば鼻をかむとか。
こんな僕にある考えが閃いた。肛門を拭くために買うと定員にバレるからいいのではないか? 羞恥プレイだ。
 善は急げだ。僕は近くの薬局まで原付を飛ばした。かわいい女の子がたくさん働いているマツノキだ。
ここならさぞ恥ずかしい思いが出来るだろうと僕は店に入る前からドキドキしていた。
僕は目立つほど挙動不審だったのだろう。定員が怪しそうにチロチロ僕を見ていた。僕の興奮と羞恥はさらに高まった。
コンドームを手に取り━━もちろん一番でかいサイズだ━━女子大生バイト風の店員を凝視しつつニヤニヤしていた。
するとどうだろう。角刈りで白衣をきたおっさんに僕は右手首を掴まれ、事務室までつれていかれてしまった。
僕が一体何の犯罪を犯したというのだろうか? 強い憤りが僕にはあったが、そのおっさんの、
「もうこの店に来ないでくれ」との発言に、無抵抗に「はい」とつぶやいて裏口から店の外に出た。町ゆく人々はいつものように僕に対し無関心だった。

次は「亀」「ウィスキー」「マンション」でおねがいしまーす
431名無し物書き@推敲中?:04/04/13 17:34
僕のアパートからほんの数十メートル近くにでかいマンションがある。
今流行の公務員宿舎てやつだ。
公務員・・・・・・。
高校時代、僕の数少ない友人のほとんどが、公務員みたいな夢の無い職業になんて就きたくない、
そう言っていた。
僕もそう思っていた。立派じゃなくてもいい、馬鹿みたいに金が儲からなくたっていい。
もっとかっこよくて、ロマンのある職業に就きたい、そう考えていた。
だからと言って具体的な事は何一つ決まっていなかったのだが。
しかし、というか、当然の事ながら、公務員になんてなりたくないとわめき散らしていた友人の
ほとんどが今、立派なスーツに身を包み、残業知らずの優雅な暮らしをしている。
それに比べて僕は何だ。毎日毎晩残業続きで、夢が無いどころかろくな稼ぎもしていないじゃないか。
立派になりたい、金が欲しい。
ウィスキーでも飲んでやろう。
僕は冷蔵庫の中からスコッチの瓶を取り出した。
自分のグラスに一杯注いだ後、残りを去年から飼っている小さな亀のいる水槽の中にすべてぶちまけた。

「人間関係」「高校」「空手」
 車窓を黒い線が走っている。忙しなく灰色や茶色のコンクリートが流れ、
それよりも僅かに明るいだけの空がある。僕はここにいる。
 でも、いること自体に意味はない。隣で本を読んでいる男の人も横に
立っているスーツの女の人も、それより離れたところにいる人達も、ここに
僕がいると思っているんじゃない。同じように、人がいると思っている。
 手を見る。空手だ。何もない。ただ電車の揺れる度に、手が震えた。
 鞄は学校に置いてある。あれは本を入れて運ぶためにある。だから
持たない。持っていたくなかった。それでいい。
 空気が勢い良く噴出す音がして、ドアが開いた。眼鏡の女子高校生
が二人乗って、目の前に並んだ。黒い手さげ鞄が二つ、鼻先で揺れる。
 話が聞こえる。回転ドアが人を殺したのだそうだ。なんとなく、愉快に
なった。もう回転ドアを見る機会はないだろう。
 学校前駅に着く。あと何分かで見知った顔に会う。意味は、単純にあるか
ないかで判断できる。手さげ鞄と人間関係なら、僕は鞄を持っていたい。
 ここに鞄があるだけでいい。アイツ、殴ろう。

次「観察」「ロンド」「営舎」
433岸和田:04/04/13 22:45
「観察」「ロンド」「営舎」
 僕は目を閉じ、地面に腰を下ろし、体じゅうで夏の終わりを感じていた。
短く、切ない夏だった。僕はこの夏に彼女と別れた。
 ふと考える。いままでの、僕の夏の思い出は何だったろう。
小学生のときは、アサガオの観察日記を誰よりも熱心につけた。
中学生のときは、友達皆で騒いだ。あの頃だけしか出来ない馬鹿なことをやった。
高校生のときは、はじめて出来た彼女といろいろなところへ行った。
大学生のときは、ひと夏かけて『死のロンド』という小説を書いた。投稿したものの賞はもらえなかった。
 僕の人生のなかで、楽しかったこと全て夏に起きた気がする。
僕の人生に夏がもしなかったら、僕の人生は100キロのおもりをつけられて、一生を営舎で終えるようなものだ。
 どれだけ辛くても、僕は夏まで堪えぬかなくてはならない。
夏が終る。夏が終ったとき、あらゆる苦難が僕に襲い掛かる。
なぜかはわからない。でもいつもそうだ。
 僕は息を深く吸い込み、最後の夏風に身を委ねた。

 「ピース」「フェスティバル」「馬鹿」
434名無し物書き@推敲中?:04/04/14 02:55
ピース、ピース、ピース。Vサインが並ぶ。
「一体何の記念撮影だ。なにやってんだ朝っぱらから。馬鹿馬鹿しい」
吉男がぼそとつぶやいた。三畳一間、家賃1万円の風呂なしトイレ共同のぼろアパートに似つかわしくない
豪奢なカーテンレースを指でつまみ上げ。
「人ん家の前で」
彼が東京に越してから三年経つ。初めはバナナを叩き売った。歯磨き粉の営業もした。下積みもした。歌手も目指した。
すべて挫折した。友もすべて失った。残ったのは調布の豪邸とメイド三人だけ。
「吉男さん。紅茶入れてきました」ポッと頬を赤らめて淳子がロココ調のカップを差し出す。
「淳子。僕は切ないよ」
春になれば変態が増えます。猿も交尾の季節。あたりが暗くなれば吉男もストリーキングを楽しむ季節。ペットの蝙蝠をお供に。夜桜が美しい。
「淳子。なぜ変態はセックスをせずに異常性欲を!  反社会的な形でーっ! 具現化するのかわかるかっ!」
「セックスしようにも相手がいないからじゃないんですの?」
うん。きっとそうよ。そうよ。モテないからじゃないの。
「違う。フェスティバル感を脳に感じていたいからなんだ」
見ろよ。今しがた路上は祭りだ。だがこれはフェスティバルとはいえない。YES。

「豆」「クリトリス」「サーモンピンク」
435罧原堤 ◆16dT6voDJE :04/04/14 02:59
でした
436名無し物書き@推敲中?:04/04/14 09:03
「下手くそ!」
甲高い声で怒鳴られて、僕はすっかり萎縮してしまった。
「クリトリスは、そのキーじゃなくって、Pのキーでしょっ!」
「すっ・・・・・・すみません・・・・・・」
蚊の鳴くような声で謝る僕。
厚化粧のお姉さんが、パソコンの画面から睨んでいる。
「で、どうすんのよ」
サーモンピンク色のガウンを羽織りながら、お姉さんは煙草に火をつけた。
「もう、いいです・・・・・・」
泣きそうな声で僕は言った。
「あっそ。でも基本料金はチャージされるからね。じゃ」
画面が真っ黒になった。
やっぱり僕には、バーチャル・セックスなんて無理なんだ。

枝豆でも食べながらビールでも飲んでいた方が、よっぽどいいや。
あ〜セックスって難しいなぁ。

次のお題「添い寝」「理容師」「小学校」
437gr ◆iicafiaxus :04/04/14 09:29
#遅レスだけど、「豆」「クリトリス」「サーモンピンク」。

新幹線に乗り継ぐらしい客たちが降りてだいぶ身軽になった上りの「踊り子」号が
十時半の定刻通りに熱海の駅を発った。
僕の肩に体重を乗せていた渉子は、いつのまにか寝息に胸を上下させている。

僕は渉子の頭の向こう、窓の外の太平洋を見ている。僕だってゆうべの旅館で
ほとんど寝てないのは一緒だけれど、まだ眠る気にはなれなかった。

僕らの後ろへ去ってゆく伊豆半島の空気を、もう少し抱えていたかった。
初めて来た二人だけの一泊二日が、今ちょうど終わろうとしているところだから。

襟元からサーモンピンクの下着が見えているのを直してやりながら、僕は今朝
渉子がそれを着けている時のことを思い出していた。そしてそれを着ける前、
目ざめてからの薄暗がりで何度も交わした、まだ起きたままの唇の匂いとか、
雨戸越しに聞こえはじめた鳥の声に二人で照れ笑いをしながら、それでも全然
眠るつもりなんてなく抱き合っていたこととか。

渉子にもクリトリスというものはあって、それは敏感だった。知っていることは、
すべてその通りだった。そのような声を出してそのように渉子はイった。
敷いていたバスタオルに少しだけど血が染みた。僕は思い出しながら、眠る渉子の
頬にかかった髪の毛をそっと上げてやる。
ほとんど何一つ、予想通りのものなんてなかった二日間の休暇が、終わる。
列車は今、小田原駅を過ぎたところだ。

#お題は>>436で。
438「添い寝」「理容師」「小学校」:04/04/14 10:01
「いらっしゃい」
 和子は、小学校に上がる前の娘に添い寝をしたまま、真奈美に声をかけた。和子と真奈美は物心付く前からの友達で、気の置けない間柄だ。
「今日は何しに来たの」和子が聞くと、「新しいヘアースタイルを見せに来たの」と、真奈美が答えた。なるほど、真奈美の今のヘアースタイルはいつも以上に奇抜だ。頭の上にコブラがいるようだ。
真奈美は理容師だ。いつも、和子がビックリするような髪型をしている。真奈美の個性だ。真奈美は胸を張る。
「今度の髪型は凄いわよ」
「ちょっと待って、もう少し小さい声で喋ってくれない? 雪絵が起きちゃうわ」
 和子は小声で、眉を潜めて言う。小さく流れるテレビの音が、午後九時を知らせる。真奈美がつまらなさそうな顔をする。
「和子、子供が出来て変わったわよね」「そう?」
和子は何でもない事のように答え、ふと、座った真奈美の横を見る。
「ごめん、そこのタオル取ってくれない?」
和子が言うと、真奈美の髪がにゅーと伸びて、タオルを捉えた。
===========
ブラウザ改行に頼ってみる。15行くらいになるんではないかと。

次のお題「さんま」「炎天」「殺風景」
太陽はもう、ほぼ真上にあった。
拾ってきた七輪を置く。
底が少し欠けていたので、小石を置いて安定させた。
火を起こし、これまた拾ってきた金網を載せた。そして、さんまの尻尾をつまんで、置く。
炎天下の漁港でさんまを焼き始める男。
彼は都市の方を眺めた。
今朝、彼の小さな漁船は母港へと返ってきた。
いつもなら陽気に話しかけてくる仲間達が誰も居なかった。
活気のあった市場も、殺風景に変わり果てて、木箱が散乱し、ハエがたかっていた。
携帯電話も無線も無駄。
午前中とおして歩き回ったのだが、町にも人影は無く、
ラジオもテレビも放送されていない。すべてが静まり返っていた。
さんまがじゅう、と音をたてる。
脂の焦げるにおいが立ち込めて、腹がぐうう、と鳴った。
男は笑った。ひとしきり笑うと、とりあえずさんまを食うことにした。

次は「大スター」「玄関」「チャンス」
「源さんまたですか!」
僕は仰天した。近所に住んでいる源さんが炎天下の中全裸で歩いていたのだ。
「暑いんだからしょうがねえだろ」
源さんは平然と言ってのけた。
「また逮捕されますよ。さあ帰りましょう!」
僕は源さんの前を隠すようにしながら彼のアパートの部屋に連れ帰った。
源さんの部屋は殺風景だが冷房も暖房も立派に備えられている。
なぜ彼は全裸になってまで暑い外に出るのだろうか…

「大スター」「玄関」「チャンス」

あのねチャンスなんて物はいくらでもあるの。
もうばら撒かれてるわけ、どこにでも。
いいかい、玄関を出て、まあ誰の家にもあるでしょう郵便受け。
覗いてみてよ、そこにね、あるから。
それから、バス停とか電車の駅まで歩くでしょう。
そこにもね、あるんだ。
途中で空を見てみるでしょ、雨が落ちてくるでしょ。
もうそれは、チャンスですよ。
どこかでチャンスに気づく事ができたなら、あなたはもう大スター。
気づく事が出来たなら。

「覚醒」 「小雨」 「葉桜」 でお願いします。

「覚醒」 「小雨」 「葉桜」
 
 本屋の帰りに公園のベンチに座った。普段は太陽を受けて光り輝いている葉桜の緑が、厚ぼったい雲の下で暗く不吉に茂っている。さっき買った「小説現代」の5月号を開いた。
 小説を書き始めてかれこれ10年ぐらいたつ。最近では時々この投稿欄で名前が載るようになった。しかし今月は俺の名前はどこにもなかった。しかたない、と自分をなぐさめた。
 ぱらぱらとページをめくっていると、知り合いの女の子の名前が目に入った。俺がアルバイトをしている会社の子だ。手が震えた。
 それは新人賞の受賞者発表のページだった。彼女は昨年新卒で入社した。愛想のいい、こぎれいな今時の若者だ。小説なんて、読みもしないような顔をしているのに。
 受賞の言葉にはありきたりの感謝の言葉が並んでいたが、その中の一文が俺の目を引いた。
「初めて書いた小説で賞をもらえて、とてもびっくりしています」
 暗い空から雨が落ちてきた。白黒の彼女の笑顔に、黒い染みができた。
 書いて書いて、どの新人賞にもひっかからず、意を決して持込をしても相手にされず、それでも書き続けてきた。必ず認められる小説が書ける。いつかは自分の才能は覚醒する。自分を励ましてやってきた。
 しかし、違うのか。やはり、違ったのだろうか。
「初めて書いた小説でー」
 これこそが、才能の覚醒というものだろうか。これこそが。
 もう小雨とは言えない降りになってきた。無数の染みがページを汚している。彼女の顔も文字も判別できない。俺は雑誌を川面に投げ捨てた。。

「眼鏡」「海賊」「上下」
悪友のサミーが一枚の小汚い紙切れを持って僕のところにやってきた。
サミーは紙切れを見せてくれたが、何も書かれていなかった。
するとサミーはこれまた小汚い片目用眼鏡を出してきた。
その眼鏡を通してみると、紙切れには地図のようなものが描かれている。
サミーが言うにはこれは財宝のありかを記した地図らしい。
それを見つけて一緒に山分けしようじゃないか、ということだった。
サミーの先祖が海賊だというは以前から聞いていた。
今時財宝なんてちょっと信じがたい話だったが、サミーは真剣だった。
スクールの方は図書室の本を全部上下逆さまにしたことがばれて停学中だし、
一つ、暇つぶしに付き合ってみるか。

「倒錯」「当惑」「倒閣」
444罧原堤 ◆16dT6voDJE :04/04/15 13:12
人民皆平等を俺はうたっていた。だが当の俺自身、自分の言葉に疑いを感じていた。
働くものが七割、怠けているものが三割のこの国の民に平等などありうるのか。
マルクス共産主義をこれからもこの国で続けていくには国民皆が働かなければならない。でなければ恐ろしい民主主義という名の実力社会になってしまう。
俺は危機感を持っていた。今から思えば少し焦りすぎていた。だが俺には国民年金や生活保護などの弱者優遇という不平等には耐えられなかった。
俺は精神科にかかればよかった。だが俺は一国の宰相として国民に最後の通告を発した。
《働かないものにはこの国にとって邪魔だ、少しでもプライドがあるならば自ら死を選ぶのだ。甘えは許されない。嫌なら働くのだ》と。この文書を各自のポストに入れまくった。
意外な反応が起こった。お前が氏ね。といわれた。無職の奴に。俺の内閣があっさり倒閣したのだ。俺は当惑した。
働かないのは百歩譲るにしても、働いている者たちの前でこれ見よがしにうろつき回る無職の奴ども。
奴らの目の前では体重の何倍もある食料を数人がかりで口に咥え巣まで運んでいるというのに。奴らはさんざんあちこち散歩した挙句、
一日中働いて疲れている仲間を押しのけ、女王のケツから出る甘い汁を人より先に啜ろうとする。
自分にそうする権利があるのか一度考えてみればいいのに。
働かずに女王のケツに口をつけてもそれはただ単に栄養を体に入れているだけの行為に過ぎない。無駄飯食いだ。
女王のために食料を死ぬ思いで手に入れてきたぞという強い思い。そう奉仕の喜び。奴らに言わせればお前らはマゾなだけだというがそれは違うのではないか。
そう、女王のことをひたすら思うその気持ち。その気持ちがあって初めて生活廃水に流される危険があってもどぶ溝に果敢に突入する勇気が生まれるのだ。そんな戦いの毎日を送ってこそ、
女王のケツに口をつけたときの倒錯感に思い切り浸れるのではないか。たしかに俺たちはマゾかも知れない。そして俺はマゾ内閣の長だったのかも知れない。
俺の処刑の時間まであと数時間を切った。俺は自分がどうやって処刑されるのだろうかと考えただけでぞくぞくしてくる。倒錯した性癖を持って生まれた俺には最高の人生の終わり方なのかもしれない。
やはり俺はマゾなのだろう。

次の御題。「心臓」「新聞紙」「ジュゴン」。よろしく。
445罧原堤 ◆16dT6voDJE :04/04/15 13:26
訂正しとく。《働かないものには→《働かないものは

の長だったのかも知れない。→の長だったのかも知れない。だがそんな事を考えている場合ではない。
俺の処刑の時間まで    →俺の処刑の時間まで    
「その箱は家につくまであけちゃいけないよ、その中身を誰かに見られてもだめ。わかった?」
そう言うと見知らぬ少年は僕の脇をすり抜け、走って行こうとした。
ちょっと待てよ、この箱は一体何なんだ! 僕はそう言ってふり向こうとしたが、僕の声は声にはならず、体はぴくりとも動かなかった。
そして少年が駆けていく足音が僕の耳に届かなくなった時、それらは遅れてやってきた。
「ちょっと待てよ、この箱は一体何なんだ!」僕の口は僕の意思と無関係に動き、体は誰かに引っ張られたみたいにぐるんと後ろを振り向いた。
まわりを歩いていた2,3の通行人が歩を停め、何事かと僕の方を見た。
ふり向いた目線の先にはもう少年の姿はなかった。
僕は箱を持ち上げ、通行人の視線を避けるように一目散に家まで走った。
そこから家までの距離は500メートルくらいだろうか、僕は一度も止まる事なく走って帰ったわけだが、不思議と全くと言っていい程しんどくなかった。
足は痛んだが、呼吸は整い、心臓はまるで鼓動を停止しているかのように感じられたほどだ。
家に着くと、僕は階段を駆け上がり自分の部屋に入り鍵をかけた。
箱を開けるとそこには新聞紙に包まれた何かがあった。神経が研ぎ澄まされ、さっきとは違い心臓の鼓動をはっきりと聴くことが出来た。
僕は落ち着くために新聞紙の記事を読んで見ることにした。
そこにはジュゴンについてのちいさな記事が見てたれた、国内の水族館でジュゴンが出産したそうだ。
5分程そうしてただ新聞紙をながめていると、鼓動の音は徐々に聞こえなくなっていった。
僕はゆっくりと包みを開けた。そこには握りこぶしより少し大きいくらいの肉の塊があり、ピクピクと動いていた。
「何だ…これはいったい…?」
僕の鼓動はまた速くなり、まるでそれに呼応するように肉の塊は激しく踊り始める。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、鼓動の音が聞こえる。だがそれは僕の胸からではなく目の前の肉塊からだった。
それは、僕の心臓だった。
447466:04/04/15 19:17
お題忘れました。
「倒置法」 「冷蔵庫」 「病院」
448岸和田:04/04/15 19:50
「倒置法」「冷蔵庫」「病院」
 「あらー、かわいい!お宅のお子さんですかぁ〜〜?」
「そうなんですよぉ、まだ4ヶ月なんですけど」妻が乳母車を押す母親と話を始めた。
まったく、妻の話好きは重症だ。一度病院に連れてったほうがいいと思う。
しかも今日は機嫌がいいからやたらと喋るだろう。懸賞で大型冷蔵庫が当たったからだ。
 「ほら!アナタも来てごらん!かわいいわよー!」
妻が俺に言う。全く、本当なら無視したいところだが、母親がいる手前
そんなことはできない。乳母車に近づく。
 「かわいーなー、ほら、時計だぞー」 子供に時計をちらつかせる。
「ダーダー」 子供にその時計を渡す。子供は幸せそうににっこり笑った。
……妻と帰る。妻が俺の顔を見る。
「なんであの時計あげたの?あれ確か70万くらいしたんじゃ」
「……銃だよ」
「え?」
「あの子供、俺に銃向けてきたんだ。そして小声でこう言った。『それ渡すんだ。さもないとダァーンだ』」
 なにかがおかしい、なにかが間違っている。人生の不条理な倒置法だ。

 「カット」「小豆」「二酸化炭素」
カッターナイフで手首を切った。リストカットだ。
静脈内では二酸化炭素と結びつき、煮詰められた小豆みたいな色をしていたであろう私の血液は、
空気に触れたとたん鮮やかな紅に変わる。
何て美しいんだろうと私は思う。
「どうして」いつも母親が泣きながら問う。
「人は美しい物に惹かれる、それはごく自然な事なことじゃない、
私はただ血が見たいだけなの。だってこんなに美しいのよ。」
私は血溜りの中に横たわる母親に語りかけた。
その瞳は虚ろに空を見つめていた。
450449:04/04/15 20:39
「デッドボール」 「缶チューハイ」 「スフィンクス」
デッドボールを受けてエジプトまで飛ばされてしまった。
ユニフォームを着ていたから暑くてかなわない。
近くの自動販売機で缶チューハイを買った。
取り出してみたらホットだった。
頭にきて遠くに投げ捨てたら何かに当たった音がした。
頭にこぶを作ったスフィンクスがこっちに凄まじい勢いで走ってきた。
即座に食い殺されるのかと思ったら、なぞなぞに答えられたら助けてくれるという。
「最初は四本足…」
それだけ言ったところで言葉狩り中の人権団体に襲われスフィンクスは八つ裂きにされてしまった。
その後、人権団体の助けによって無事に帰ることができた。

「ストラップ」「砥石」「グラインダー」
『ストラップ・砥石・グラインダー』  

 僕の妻はとても気が強く、頭も良い。どんくさい僕とは対照的な人なんです。
 では、そもそもどうして二人が結婚出来たのか?
「お願いです!どうか僕と、結婚して下さい!」
 涙ながらのプロポーズ、しかも土下座。同情してくれたのかもしれません。でも根性
らしき物を示せたのは、あの時ぐらいでした。
 僕はコーヒーが大好き。この間もコーヒー豆のストラップを見つけて二つ買いました。
勿論一つは妻へのプレゼント。
「いらないわ」
 二つとも僕の携帯に付いています。
 コーヒーのこと、それ程詳しいわけでは無いですが、貰い物のグラインダーで毎朝
コーヒーを挽いて飲んでいます。ところが先日、そのグラインダーの調子が悪く、全然
挽けないんです、豆が。調べてみると刃がボロボロ。慌てた僕はキッチンをうろうろ。
「あ、そうだ!ねぇ、砥石ってあったかな?あれがあれば、もしかしたら何とか……」
 てきぱきと支度をこなしていく共働きの妻。忙しい朝にいつまでもパジャマのまま
の僕にイライラしていたんでしょう。砥石を持って来るとグランダーの豆をテーブルに
ぶちまけ、砥石をドンと載せて力まかせにすり潰しました。そしてこちらを睨んだ。
「先に、行くわね」
 動揺した僕は、それをそのままカップに入れてお湯を注ぎました。
 いつもより、だいぶ苦い物でした。

次は「地球」「一時停止」「クロス」
453鬱井くん ◆YnRRG3sK2U :04/04/16 16:20
「地球」「一時停止」「クロス」

 なんてこった。こうもあっさり成功するとは。銀行強盗。
 一億。本当に一億か。ボストンバッグに詰まる物なんだなあ。
 俺は焦燥感を押し殺し、車に乗ってアクセルを地べたまで踏み込む。
 しばらく無心で運転していた気がする。空き地に乗り込み替えの車で来た道を逆走。パトカーとすれ違う。恐怖。スピードを出し過ぎていないか。あいつらはUターンしてくるんじゃないか。
 緊張が極限に高まり、俺は孤独を感じる。地球上で一人だけ別の地場に隔離されたような感覚。震え。パトカーはもう見えない。
 俺はダッシュボードの中の飛行機の搭乗券を取り出した。
 赤信号に一時停止。慌てる必要は無い。あとはこの飛行機に乗れば終わり。それまでに馬鹿をやらかさなければ。
 そのとき、信号を無視して他の車とクロスしながら飛び出してくる一台の車が俺の車に突っ込んで来た。
 衝撃の後、目眩がさって俺は、目の前に暴走車の運転手の体がある事を知る。俺もあばらに強い痛みを感じる。
 彼は血まみれで死にかけていた。かすれた声で、しきりに謝っている。
「犯罪を犯したんだ、死のうと思ったんだ」
「どんな」
「会社から三億盗んで、使い果たしちまったんだ」
「三億か」
 それじゃあ、仕方が無い。
 俺は薄れていく意識に任せて目を閉じた。

次「モトクロス」「チーズ」「ペン」
:短く収めるのって難しいなあ。
『モトクロス・チーズ・ペン』

 「確かに、交通事故による死亡者数は年間1万件を下ることは無い様です。普通に街
を歩いている時でさえ事故に遭うことがあるくらいですから、ハンドルを握った場合の死
亡率は格段に高いと言えます。では、42ページの写真を見て下さい。これはモトクロス
と言われるレースの一種でしたね。この様にバイクや車を用いて、敢えて過酷な状況に
身を投じたり、速度の限界に挑むといった行為。死亡率という観点からして、どういう影
響が考えられたかな?えぇ……じゃ、きみ」
 かっ、俺かよ。まいったな。最初の方、良く聞いてなかったよ。眠いんだよな、特に午後
一の講義はさ。レースだろ?そりゃ高いでしょ、確率から言えば。ま、立つか。
「えぇっと……高い、ですね。死亡率は。レースと名の付くものなら当然ですよ、だって
元々危険を承知の上で……」
 痛てっ。先生、俺の机にあったペンを取りあげて頭を叩きやがった。何でよ?違うの?
「きみ。これ、前にも説明したはずだよ。プロの場合は技術の裏付けがあるし、医療関係
のスタッフも常時ついているから、必ずしも高いとは言えないの。高いのは素人参加型
のレースでしょ、ちゃんと聞いてなさい」
 一応ね、「すみません」みたいに頭下げましたよ俺は。でも先生はまだ続けたね。
「この間のテスト。葬式のあと『清め』などと称して使用される、意外に効力のある食材は?
の問いに、きみ、何て回答したっけ?」
 いやらしいね、このオッサン。あ、みんなも見てるよ。答えるしかないの?まったくもう。
「その……えぇと……チーズ、みたいなことを……」
「塩です!」
 まぁね、クラスのみんなは笑ったよ。爆笑というか失笑というか。
「きみ、そんなことじゃ卒業は出来ないよ!復習をちゃんとしなさい、復習を」
 教壇の方へ去り行く先生の後ろ姿。ニョロニョロと動く、先生の矢印型の尻尾が憎らしい。
 まったく。立派な死神になるのも楽じゃあないよ、ほんと。

次は「駅長」「バランス」「センター」
 (そうだね。難しいね、短くまとめるのって)
駅長が入院した。
線路の落し物を拾おうとしたところに電車が来て衝突したという。
昔の駅長は電車を素手で止めていたのに、歳月とは過酷なものだ。
今では軍手をはめていないと止められないそうで、
事故はちょうど軍手をはめていないときに起きたのだ。
病院にお見舞いに行くと駅長はリハビリの最中だった。
状態はかなり悪い。指二本で一時間も立てないほどバランス感覚がいかれている。
以前の駅長なら指一本で三時間は立っていた。
駅長によると、今年娘さんがセンター試験に失敗して気苦労が絶えないそうだ。
早く職に復帰しようと頑張る駅長に心からエールを贈った。

「ふるさと」「シンボル」「本拠地」
「ふるさと」「シンボル」「本拠地」

俺の計画は、それこそ1000年越しのドリームプロジェクト。
この戦乱に満ちた世の中に、確固たる信念のもと理想の国を建立するのだ。
シンボルは何にしよう・・・本拠地はどこにしよう・・・夢は果てしなく広がる。
問題は同士がいないと言う事。しかしいつかわかってくれる人も出てくるさ。
さあ旅立とう!世界支配の下準備である日本征服の前段階な俺のふるさとの掌握へ。
場所は別府。いざ 『温泉で世界平和計画』 実行へ!・・・問題は穴掘り代、か・・・。


「父さん」「ホームページ」「法則」
 明後日父親参観がある。もっと簡単にそう言えたらなぁと、和夫は掃除機をかける母の
姿を見ていた。和夫の思いを知ってか、掃除機のモーター音が煩そうにブンブンと唸る。
「父さん、いつ帰ってくるの?」
「え? なんだって?」
 もう一度尋ねると、定時に帰れるほど偉かないよ、と母は呟いた。だが和夫の耳は
掃除機が塞いで、ため息に近い小言など聞こえない。
「僕のサイト、見てくれてるかなぁ」
 やや小さな声で言ったので、母は長い鼻を持った悪魔の邪魔で気付かなかった。
和夫はそれで、話を続けられなくなる。
 二週間前に和夫はサイトを作った。両親に教えて褒められた。別段何があるでもない
が、そこの日記に父親参観があると昨日書いておいたのだ。父が見たかは知らない。
「明後日、何やるの?」
「え?」
「ホームページよ。父さん見たって。楽しみにしてたわよ」
 母が掃除機を切って和夫を見た。和夫はフレミングの法則を表す手を作って、掲げた。

「クロ」「肉」「チャート」
グランドクロスの影響で地球が公転の軌道を外れていたことが判明した。
このままでは地球はあと数年で太陽系の外まで飛び出してしまう。
人間を始めとする血と肉でできた存在は全て滅びるだろう。
世界の著名な学者を集めて対策本部が結成されたものの、
やっていることといったら今後の環境変化の予想をチャートにすることぐらいである。

「マガジン」「ミステリー」「レポタージュ」
『マガジン・ミステリー・レポタージュ』
 
 病院の待合室に置かれた、何処にでもある木製のマガジンラック。
無造作に突っ込まれた数冊の本の中に、例の雑誌を見つけた。

 私がミステリー作家を目指そうと思い立ったのは、短大へ入学して
まだ間もない頃だったろうか。あの頃は取材を兼ねて、一人で様々
な場所へ足を運んだ。いわゆる心霊現象≠フ目撃例が後を絶た
ない様なスポットは、私の興味を惹いて止まなかった。
 結局、私の書いたミステリー小説の評価は決して日の目を見ること
は無かったが、皮肉にも積み重ねた取材結果の方が出版社の目に
留まり、レポタージュとして雑誌に掲載されることとなった。

 とは言え、何事もやり過ぎ≠ヘ禁物だ。それが、私にとっての教訓。
霊魂は確かに存在するのだ。踏み込んではならない一線を越えれば、
時として今回の様な結末を迎える。
 私は例の雑誌に視線を落とす。
 まぁ、この中にあるレポタージュが私の遺作となったわけだが、今の
私にとってはこの先、成仏できるかどうかが最大の関心事である。

次は「後続」「ギャップ」「電動」
あ。しまった、7行目が変。
 また今日も、この場所に来てしまった。
彼女はもうここにはいない。頭では理解している。
何か、理屈を超越するものが僕をここへ招いている。
 室内は薄暗く、ただ電動映写機の細い光が幕を照らすのみだ。
今、映し出されている世界――。この薄皮一枚先の世界に、
彼女は、いた。夢ではない、夢ではないはずなのだ。
彼女はもうここにはいない。頭では理解している。
ギャップがある。今、僕がいるこの世界と、銀幕に映し出されている世界に。
もう一度、もう一度でいいから、僕をその中に入れてくれないか?
 後続車などいようはずのない、町外れの劇場。
帰り道にふと気付く。僕はあの中での出来事をほとんど覚えていない。
覚えているのは、彼女のあの、壊れそうな微笑のみだ。
彼女はもうあそこにはいない。頭では理解している。
それでも、僕はまたあの場所へいく。

「豆腐」「寿司」「カーブ」
462名無し物書き@推敲中?:04/04/20 19:10
保守
家の近所には厄介な豆腐屋がいる。
暴走族顔負けのやかましい改造バイクで豆腐を売り歩く。
豆腐が売れると喜んでクラクションを鳴らし、売れないと怒ってやっぱりクラクションを鳴らす。
近所の住民で集まって一度抗議したことがあるが、
豆腐屋はそれを根に持って、抗議した人全員の家に特上寿司十人前着払いで届けさせてきた。
豆腐屋がカーブを曲がり損ねて転倒し二度とバイクに乗れない身体になったと聞いたときは、
不謹慎と思われるかもしれないが、みんな心から喜んだ。
だが、豆腐屋は今も改造車椅子で商売を続けている。

「戦慄」「夜曲」「視角」
464罧原堤 ◆5edT8.HnQQ :04/04/21 04:31
おれは戦慄した。まさにお宝の山だった。
GirlsPatio〜アイドル・タレント応援広場
... 写真集「まどろみ」 発売記念サイン会のお知らせ. 後藤麻衣子写
真集「Topaz」, 好評発売中. レースクイーングランプリ2003に
て、栄えあるグランプリを獲得した「後藤麻衣子」のファースト
写真集 ...
www.girlspatio.com/ - 86k - キャッシュ - 関連ページ

GirlsPatio 後藤麻衣子写真集「Topaz」
... オートギャラリー東京2003にて開催された、レースクイーング
ランプリ2003において、栄えあるグランプリを獲得した「後藤
麻衣子」のファースト写真集。水着をはじめ制服やチャイナドレス
など ...
www.girlspatio.com/collection/goto_maiko/ - 19k - キャッシュ - 関連ページ
[ 他、www.girlspatio.com内のページ ]

おれはネットサーフィンを繰り返した。おれの脳内ミュージックシューベルとのますが心地よい夜だ。まさに夜曲だった。
そして視角にあった
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の2を押す事も忘れなかった。

たいていの人間は「戦慄」という言葉の本当の意味を知らない。
人間はそう簡単に戦慄を感じたりはしないのだ。
たいてい、戦慄したとは言っていても、後から考えてそう語るのであり、
その瞬間に感じたこととは異なっているものだ。だがあの時のわたしの心情を考えるに、
後付けの感情ではなく、まさに同時に戦慄していたとしか思えない。
わたしの視角を変えてしまった出来事。
全てあの少女のせいだ。
黒いリボンを結んだ首元は細く、黒いドレスを着たその体は華奢で、
薄暗いランプの明かりに溶けてしまいそうな少女だった。
私はあの少女が歌った音楽を形容する言葉を今も持たない。
ただ、聴いた瞬間「夜曲」という言葉が頭に浮かんだ。
理由などなく、これは夜曲だ、と思った。
と同時に、わたしは戦慄した。それは感動であり恐怖であった。
叫びだしたい心と戦い、息を潜めて身を隠すような、
そんな圧迫感を伴った、直感の塊であった。

「ブラボー」「1回転」「ケースバイケース」
466「ブラボー」「1回転」「ケースバイケース」:04/04/21 18:52
プログラム曲がその最後を印象的なリズムで締めると、銀盤を跳ねる彼女の肢体がピタリと静止した。
一瞬の静寂。
そして次の瞬間には、会場は爆発的な拍手と「ブラボー!」の歓声で満たされていた。
彼女はほっと緊張を解き、笑顔でオーディエンスに手を振りながら、投げ入れられた花束のひとつを手に優雅に1回転してみせた。
審査員の傾向に配慮してのことだが、日本の予選でこのようなファン・サービスはしないよう指示していた。
しかしそこはケース・バイ・ケース。ここは自由の国、アメリカなのだ。
リンクを上がる彼女をアメリカ式の抱擁で出迎えるため、私は賛嘆の笑顔を用意して立ち上がった。





次、
「みそ汁」「ポール・マッカートニー」「神社」
467岸和田:04/04/21 19:11
「みそ汁」「ポール・マッカートニー」「神社」
 それは、ただの俺のわがままだった。
「ポール・マッカートニーに会いたい、それもいますぐに」
そのとき俺は風邪をひいていて、ちょっとわがままを言いたい気分だったのだ。
それもとてつもなく馬鹿馬鹿しいわがままを。
すると、過保護でとてつもなく甘い親父が俺の手を握って言った。
「分かったぞ、必ずポール・マッカートニーを連れて来るぞ」
おいおい。突っ込もうと思ったがだるい。声が出ない。おかしい。
親父はそんな俺の様子を見て、心配したらしく俺の大好物であるワカメとジャガイモの
みそ汁をバケツ10杯ぶんくらい召し使いに作らせた。
言い忘れたが親父は偉い。とてつもない大金持ちだ。でもどこかずれている。
「それでも食べて待っていなさい、すぐに連れて来るからな」
違うんだよ、親父。冗談だって、ああ、だるい。やめとけって。
親父は俺の叫びを無視するかのごとく、携帯電話をかけ始めた。
「ん、ああ、俺だ。全世界の教会と神社と寺に、息子の病気がなおるようにと言って来い、あとポール・マッカートニー何とかしてつれて来い」
親父はいま言った事を全て実現させた。

 「えんぴつ」「クラシック」「理論上」
 期末試験、それは人間の激しい競争社会の縮図である。
 一週間前から試験勉強に入る。試験範囲を提示された瞬間からゴングは
鳴っているのだ。でもまずは落ち着かなければならないので、勉強を始める前は
クラシックを聞くことにする。
 前日はもちろん徹夜だ。初日の三教科、国語と数学と英語の教科書とノートを
探し出し、授業で貰ったプリントを探し出し、時計を見直し部屋を見回し、掃除を始める。
 すっきりした頃には日が昇っている。急いで着替えて電車に乗る。起きる手間が
省けたので教室には一番で到着した。車内ではいざというとき居眠りしないよう、
音楽を聴きながら仮眠を取った。
 さあ試験本番前のラストスパートだ。私は猛烈な勢いで勉強を始めた。えんぴつを
それぞれの指の間に挟んで計八本装備する。人間は理論上、八科目まで同時に
試験を受けることができるのだ。私は一科目ずつ、八倍の量の勉強をした。
 チャイムが鳴った。その頃にはもうほとんどのクラスメートが来ていた。今日は
皆がライバルだ。彼らは私の猛勉強を知らない。一度、深呼吸をする。
 不安要素は無い。部屋の掃除はした。居眠りの心配もない。……よし、OKだ!

次「体操」「準備」「整理」
469「体操」「準備」「整理」:04/04/22 04:03
「次、同時ニ、五十体操作シロ」
「何を言っているんだ!そんな事は不可能だ」
「オマエ、拒否デキナイ。ユアワイフ、ワレワレ、所有スル」
「この糞野郎がっ!・・・わかった。だがこれが最後だ」
「オーケー。スベテノ機体、完璧、水準備エテイル」
「それはわざわざご丁寧なことだ」
「ジャア、出発スルゾ」
「ちょっと待ってくれ。・・・よし、これでいい。行こうか」
「ウェイト!今、プログラム、修整理由ナゼカ」
「これか?今にわかるさ」
「ホワット?オマエ、何ヲ・・・シット!」
「今更気付いても遅い。これが、多くの人々の命を奪ってしまった私の
 せめてもの償いだ。それに、これが最後だって言っただろう?」

次は「絶望」「いくら」「シンジケート」
470 ◆YWT022vB5Y :04/04/22 10:52
「絶望」「いくら」「シンジケート」

「君は本当の絶望を知っているかい?」
長い黒髪を風にくゆらせながら、女はそう物憂げに呟いた。
「考えたこともないな」
双眼鏡を覗いたまま幸仁はそう答えた。
――こいつは腕もたつが、ときどき妙なことを口にする。
今ではこんなしがない探偵家業の手伝いをしているものの、
元はシンジゲートに所属する腕利きの殺し屋だったという。
「いくら後悔しても懺悔する相手すらいない。
 泣きたくても泣けない、そんな夜のことさ」
そんな独白は誰にも届くことなくビル風の谷間に消えた。


「ターゲットが動きはじめた。さっそく証拠をおさえろ」
幸仁が合図を送ると相棒の行動は機敏であった。
が、相棒の握り締めたレンズの向こう側に、
でっぷりと太った禿親父と化粧の濃い水商売風の女が映し出されると、
「ぷ! これがターゲットかい? こんな平和なターゲットは初めてだ」
相棒の女は望遠カメラを放り出してけたけたと笑い転げた。
「う、浮気調査なんだから、そういうもんだ。真面目に仕事しろい」
「くく、真面目にやれって言われたのも初めてだ」
硝煙のなかを駆け抜けてきた相棒は、この仕事をいたくお気に召したらしい。
471 ◆YWT022vB5Y :04/04/22 10:57
次は「忘れな草」「童話」「絵画」で。
 絵画鑑賞が趣味なのだと、彼女は静かに語った。
全体的に清楚で春の風のような印象の、童話から出てきたような白いワンピースの少女。
ふわりとした笑顔と心地よい空気。僕の空っぽな心を急速に埋め尽くしてしまう。
この出会いは運命なんだと信じたい。雨の午後の誰もいない小さな美術館で。
屋根のある場所に来たかっただけの僕を包む白い風と微笑み。
彼女の視線の先には、忘れな草とかいう題名の油絵。
あと10センチでいい。視線を斜めに、僕の方に向けてくれないだろうか。
名前も知らない、油絵の作者に向かって強く祈った。


久々の投稿作で緊張ー。
次のお題は「炎」「甲羅」「姫」で
あ、7行目
彼女の視線を〜です。どの道微妙だけれど_| ̄|○
国王が寝ている間に口の中を噛んで口内炎を起こし物を食えなくなった。
一週間ほど経っても治らず、国王はどんどん痩せ細っていった。
宮廷魔術師によると、これは呪いの口内炎で普通の薬では治らないという。
姫が心配して昼夜を問わず国中に響くほどの大声で泣きわめくので、国民はろくに睡眠も取れなかった。
何かいい方法はないかと山奥の賢者を訪ねてみた。
賢者は自らの甲羅を少し削って薬を調合してくれた。
急いで城に戻り、泣きわめく姫が見守る前で国王に薬を飲ませた。
国王は炎を吐いて姫は跡形もなく燃え尽きた。国は静かになった。

「福音」「復員」「副因」
 大きな音だった。まるでも何も、爆発音そのものだ。聞き慣れていたが、今回はその威力
を目の当たりにしてから120mm滑腔砲であるとわかった。
「司令部の辺りだ!」
 誰かが叫ぶ声が聞こえる。言われなくても分かっている。あれは直撃だ。通信担当の俺が
間違えるはずはない。スピーカーからはもうノイズしか聞こえてこない。
「大隊長! 司令部がやられました!」
「すぐ師団司令部に連絡! 駄目なら総司令部だ!」
 そこもやられてたら後は神頼みだな、と思いながら、俺は師団司令部へ通信を繋いだ。
通信して指示を待つ間、俺はなんとなく福音書の一説を思い出していた。
 隊長に撤退を伝えてから席を立ち、走り出す。脱走ではない。眼前を淡い光が横切った
からだ。副因は予感だった。直後大隊司令部に砲弾が落ちて、俺は命拾いした。
 夢中で光を追う。敵味方の様々な銃声が聞こえてきたが、視線はゆらぎもせず白い光に
引き付けられた。
「見よ、わたしはわが使者をあなたの前につかわし、あなたの道を備えさせる」
 そんな一節だったか。きっとこの先に、俺の復員への道があるに違いない。

次「録音」「駐在」「LAN」
476録音、駐在、LAN:04/04/27 03:29
「LANケーブルでクビを縛って死にてぇぇぇ!!」
同僚が奇声を揚げる。もうカラッと揚げている。
窓は開け放しているがここは田舎、それも山奥で警察官の事を駐在さんと呼ぶほどの田舎!
私はどうしようもなくなっているサーバを復旧しようとしている面々に目を這わせ、
同じ様に体を床に這わせた。
「ほ〜ら芋虫芋虫ぃ〜!!」ずりずりずり。
もう全員がテンパっているのか大うけし下卑てはいないが奇妙な笑い声をたて始める。
「ア〜タタタタタタタタタ!!!」ゴガガガガガン!
オタクっぽい風貌で趣味はその反極のPGがよくサボるサーバに正拳突きをし始めた。
サーバは絶好調と言わんばかりに唸り始め、動いては止まり止まっては動く。
「私!閉経して子供産めませ〜ン!!中に出し放題よぉぉぉ!」
職場友達であるSEも外に吼え始めた。みなナチュラルハイだ。
「本当だな!!録音したぞ!!やらせ……あっカード入れてなかった……」
そのアホを口々に皆は罵り始める。といっても子供のように無邪気な内容で。
ディスプレイにはどうしようもないサーバに群がる接続者が私たちを罵る。
屑、カス!さっさと直せや、しゃぶらせるぞ!死ね!殺してやる!
馬鹿だねぇ、みんな屑なんだから怒ると負けよ!
私は某世界的大手ソフトのポスターを睨みつけながら皆を代表して怒りを表した。

次「群青」「空」「夕凪」
上から笑い声が聞こえてきた。
おれは高い建物もない公園を歩いている途中だった。
空を見上げと、気球に乗った初老の男がこちらを見ている。
付け鼻をつけているのが分かる。
おれのいるところにまっすぐ降りてきた。いまは夕凪だ。
気球が地面に着くと男は真剣な面持ちになった。
「兄さん、ウルトラマリンって知ってるか?」
男はしわがれた声でおれにきく。どこかのギタリストが「ウルトラマリン」というアルバムを
出していたのは記憶にあるが、その意味までは知らない。
「いいえ、わからないですけど」
男はまた笑い始める。さっきと同じ笑い声だ。付け鼻の影響で特徴のある笑い声になっている。
「わはは、知らないか」
男はそう言いながら、砂袋を取り出し地面に落とす。
気球が上がりはじめる。
「教えといてやろう。群青のことさ」と男は笑いをこらえながら言った。
こちらを見下ろしながら苦しそうに笑いをこらえていたが、ついにまた笑い出した。
付け鼻が落ちてきた。

次「アヒル」「編集」「演歌」
478名無し物書き@推敲中?:04/04/27 23:19
「アヒル」「編集」「演歌」

 とある地方都市。うらぶれたスーパーの屋上で舞台を終わると、社長が待っていた。
 「その白いワンピースを脱いで、これに着替えたまえ。今すぐだ」
 社長の目には、ただならぬ決意があった。

 渡されたのは和服だった。盛夏の汗が、袖にまつわる。
 「君は今日から演歌歌手に転向だ。アイドル路線ともおさらばだ」
 「そんなっ。」彼女はごねた。
 「私、今のままのショーでもいいんです。スーパーも田舎も好きだし……」

 今までの苦労は何だったのか。長い山道を行くが如き苦労を耐えたのは何故か?
 洋々たる未来を子供の頃から信じていたのに。醜いアヒルの子が美しき白鳥になる日を。

 でも、社長の決意は変わらなかった。
 「明日から演歌の特訓だ。こぶしの利いた声を聞かせてくれ」
 昔の写真は捨てられ、出演ビデオは編集されなおした。
 彼女は不安だった。社長の判断は正しいのか?

 階段を下りると灰色の公衆電話がある。彼女は、懐の百円玉を確かめ、受話器をとった。
 今になって演歌歌手だなんて。生まれ故郷、ロサンゼルスの母は、一体なんというだろう。

※実在の某歌手思い出した。
次のお題は:「丘」「ヒナゲシ」「軌道エレベータ」でお願いしまふ。
「丘」「ヒナゲシ」「軌道エレベータ」

アグネスは悲しんだ。
彼女が長年付き合っていた男が赤道直下の遠い町に行ってしまった。
彼は軌道エレベータの開発を担当しており、いよいよ設営の時期に来たのだ。
今後五年間、日本に戻ることはない。

出発を知らされたとき、アグネスは花占いをしたこと男に話した。
「ヒナゲシの花で占ってみたら、近い将来には結婚していると出たの」
彼は言った。
「花びらの数なんて最初から決まってるんだよ」

一年後、アグネスは丘の上に立っていた。
ユニセフの仕事で南の島へやってきていたのだ。
ここからは遠くに軌道エレベータの設営現場が見える。
彼女は思った。「あなたの人生なんて最初から決まってるのよ」


次のお題は:「金貨」「コメディアン」「銃弾」
480名無し物書き@推敲中?:04/04/28 01:18
「金貨」「コメディアン」「銃弾」

 中東の某国の検閲所。車を止めると、銃が待っていた。

 「あ、貴方は誰?何が望みなの?」
 押し付けられた銃口が、髪の上で「カタン」と小さな音を伝えた。
 それが銃弾を装填する音である事は、彼女にもすぐ分かった。

 「金が望みだ。金貨百枚でお前の命を売ろう。 持っているか?」
 そんな大金持ってない。
 「なら金貨百枚分の価値を発揮しろ。コメディアンの様に値千金のギャグで私を笑わせられるか?」
 できる訳がない。しかし……まさか自分の命が、銃ひとつで買戻し対象になるなんて。

 「なら他の者に売る。奴隷市場に行こう。金貨百枚分の価値があるとよいが」
 と、彼は女の発展途上の胸を、不安げに見つめた。

 恐怖に薄れゆく意識の中で、彼女はぼんやりと考えた。
 「客は金貨を出して私を買う。この男は私を手放して金貨を得る。そして私は自由を失う・・・・・・」
 何かがおかしい。全体を合計すると「自由」が消滅している。それはどこへ消えたのか?
 彼女は気付かなかった。自分で自分を「商品」とカウントしている事に。
 それは、暑さと、脇腹に結えつけられた自爆用爆弾のプレッシャーのせいもあった。

※いみなしかも
次のお題は:「誕生」「増殖」「記憶」でお願いしまも。
「誕生」「増殖」「記憶」

タクヤはクローン人間のサンプルになった。
彼のどこかの細胞から、まったく同じ遺伝情報を持つ人間が誕生したわけだ。
金に困っていると言う噂を聞いていたが、この一件で十分な報酬をもらったようで満足げだった。

自分が増殖していくなんて気味が悪いんじゃないだろうか。
しかし、彼は何も不安なところはないようだ。
「クローンといっても、年齢の離れた双子の兄弟みたいなもんさ。もう一人の自分ができるわけじゃないよ。
 記憶があるから自分を自分と言えるんだし、それをコピーする技術はないからね」
そう言って自分の頭を指さし、微笑む。

その3年後、彼は事故で健忘症になり記憶を失った。


次のお題は:「牛」「関門」「ピアノ」
482牛、関門、ピアノ:04/04/28 04:15
第一の関門。まず理想と現状の差を認識する事。
私は苦学して医者となった。それも看護士か医者とよろしくしたいが為に。
もうね、白い巨塔のような生活をしつつも平凡にのんびりして医療を完遂するの。
だが現実は違う。私の白衣はどろどろになり髪もバサバサ。
看護士はいないし医者もいることにはいるのだけど洗練されてないし。
まぁ文句はない、幸せだし。
第二の関門。夢が現実を凌駕したりしない事を認める。
そりゃね、努力してればいつかは白馬の王子様に会えるなんて昔考えてたけど。
今、目の前にいる人は白馬ならぬ白牛の王子様だもんな。
おまけに肩口まで突っ込んで触診してるし。
「う〜ん、やっぱ異常ないかなぁ」
「気にしすぎですよ、花子ちゃんは異常ないですよ」
「でもちょっとなぁ……気になるし」
肛門から腕を抜き手袋を外した彼は指をコキコキと鳴らす。
ピアノコンクールに趣味で出ていたらしく女の私より繊細な指だ。
「……何?」
細めの眼鏡のレンズ越しに柔らかい目つきで彼が微笑む。
私は胸に広がる暖かさを貪りながら彼に微笑み返した。
483牛、関門、ピアノ:04/04/28 04:19
すいません、忘れてました。
「銅」「水晶」「パフェ」
484鬱井くん ◆YnRRG3sK2U :04/04/28 13:56
 水晶使いを名乗る違法サイボーグが逃げた先は、酸化した鉄や導体として
四六時中熱されている銅、朽ちたチタンの薫りで壱拾萬しているジオフロン
トだった。
 どこから狙われてもおかしくない地形だった。
 俺は銃の劇鉄を上げて、電磁反発性フィールドのスイッチを入れて表示を
確認する。スリープ状態が持つのはあと三十分がいいところ。掃射されれば
十秒と持つまい。
 仲間を全員殺され、通信機が破壊された今、俺に引く手段はない。
 意識の摩耗。極度の空腹。両目が極度の緊張でずきずきと痛む。
 この仕事が終わればナシャと休日を過ごすはずだった。
 クロア街の爽やかな天候ライトの下で、いつものカフェで彼女はパフェを
頼むのだろう。
 という夢を見ました。

オチが浮かばなかった自分に失望しつつお題継続。
 空飛ぶ迷子水晶を探して走り回っている。
しかし、疲れた。何しろもう一時間以上走りっぱなしなのだ。
少し休むくらいならいいだろう、と思い近くのファミレスに入る。
 クーラーが少々効き過ぎている嫌いはあるが、火照った身体
にこの店は丁度いい。客は汗だくだくの男が入ってきて引いている。
 席に着くと同時に呼び鈴を押し、フルーツパフェを注文する。
疲れた身体には、適度なエネルギーを取り込まねばならない。
 パフェの甘さは殺人的で、俺はもう虜だ。周りの目など気にならん。
たまに舌をスプーンに当てる。この銅っぽい味がいい繋ぎだ。頭の奥が
痺れるこの感覚。これの後に生クリームを食べると、甘みがさらに増す。
 上空に微かな飛行反応。迷子の水晶に違いない。
まだ、パフェを食べ終えていないのに……名残惜しいが、仕事だから仕方ない。
俺は立ち上がり、ジェット噴射で店の天井を突き破った。丁度目の前に水晶が
浮かんでいた。
 あ、俺飛べた。

「金」「先鋭」「芥」
「金」「先鋭」「芥」

「もっと先鋭的なものを書きたいの」
彼女はそういった。それが口癖だった。
小説家になりたがっているのだが、文学賞で一次選考を通過したことがない。

才能のない作家志望者は昔から同じようなことを言ってきたんだろうと思う。
でも僕は彼女に好意を持っているから代わりに負け惜しみを言ってやる。
「そんなものを書いても金にはならないだろう」

彼女は退屈そうに僕を見る。
「前から思ってたけど、それってあなたの口癖ね。お金目当てに書いたものなんて塵や芥のようなものだわ」


次「サッカー」「透視図法」「うどん」
 三次元上の物体を透視図法で表記するプログラムを開発した。
 スキャニングした三次元立体をポリゴン化し、平面処理して表示するだけなの
だが、ちょっとしたグラフィックを描く手間の省略くらいにはなるだろう。
 いくつか手元にある物体をスキャンし、早速実験を試みた。
 まずはサッカーボール。いともあっさり解析し、五角形と六角形のボールが浮
かび上がった。
 次は少々難度を上げ、エルゴノミクスキーボード。曲線の解析に時間がかかった
が、まあ成功。
 そしてその次に試みた物体で、私は失敗を確信した。計算簡素化のために仕込
んだフラクタル解析エンジンが完全に踊り狂ったのだ。このままでは百年経っても
終わらないだろう。
 解析エンジンをプログラムから切り離しつつ、多少の失意を味わいながら、私は
その物体――めんつゆの中でゆらゆらと不確定にうごめくうどん――をすすりこんだ。

 次のお題は「ヨット」「バット」「骨董」で。
山田と俺は沖合までヨットで出てきている。
このあたりは二人のお気に入りの場所で、このところ毎月のように来ていた。
二人でセールをコントロールしながらも、俺は隠して持ってきている金属バットで
山田を叩き殺すことを考えていた。

先週のことだった。山田が俺の家に来たとき、覚えたての宴会芸を見せると言い出した。
部屋に飾ってあった壷を手に取り、おれの制止を聞かずに壷をひたいに乗せて回し始めた。
壷は三回転したところで落下して割れた。

骨董的価値があるわけではないが、家族が命をかけて守ってきた壷だった。
山田は悪びれもせずに言った。
「こんな安っぽい壷、べつにいいんだろ?」
山田を殺すことに決めた。

風がやんだ。山田を殺す時がきた。俺は掴んでいたロープをヨットに縛り付けた。
「あれ、バットなんか持ってきたんだ」と隠してあったバットを見つけた山田が言った。
そして、ひたいに乗せて回し始めた。
バットは三回転したところで落下して海の底に沈んでいった。


次「幼児」「イギリス」「ギター」
489うはう ◆8eErA24CiY :04/04/29 09:36
「幼児」「イギリス」「ギター」

 脅迫状は、即日到着した。
 要求を入れねば、世界的に有名な時計台・ビッグ・ベンを爆破するという。
 罪もない子供、幼児さえもがその巻き添えになるだろう。

 「うちを脅迫してもね、おかど違いですよ。グリニッジ天文台に行きなさい」
 電話で説得しても、犯人は要求を曲げなかった。
 「いや、マスコミ露出度最高のビッグ・ベンがこの要求を聞いてこそ、だ」

 自分達のコンサートが、雨でお流れになったからだという。
 「世界を揺るがせる、俺達のギターのメッセージが、雨のために!」という事だ。
 しょぼい理由だが、人命には代えられない。要求は通り、時計の設定が変更された。
 一旦変更されれば……後はイギリス国家の威信だ、全世界にその変更は伝わった。

 かくして、4/28の翌日は、4/28がもう一度、という奇妙な事態が発生した。
 >>641-642
 「あれさえなければ!」警部は呻いた。あれさえなければ脅迫対象にならずにすんだのに。
 全ては、あの改築がいけなかったのだ。彼は恨めしそうな目で、ビッグ・ベンを見上げた。
 ミレニアム記念改築で、日付つきデジタル表示となった時計台を。

※見間違いかもしれんけど;
次のお題は:「時」「空間」「苺ケーキ」でお願いします。
昼間に隣のお姉さんとコーヒーの早飲み対決をやったせいでぜんぜん眠れない。
もう夜中の三時を回っていた。
寝るのを諦めて起き上がるのとほぼ同時に、枕元に置いてあった携帯電話が鳴った。
出てみると、電話は隣のお姉さんからだった。
僕と同じように眠れなくて仕方なく暇つぶしに科学の実験をしていたら、
何かの間違いで空間の歪みが発生してしまったから助けてほしいという。
空間の歪みは苺ケーキを放り込めば消えるのだがあいにく用意するのを忘れていて、
買って来ようにもこんな時間にケーキ屋は開いてないし、
そもそも出入り口を塞がれて部屋から出られないそうだ。
しょうがない、用意してやるか。
僕はエプロンと三角巾を着けて台所に向かった。

「電流」「サイド」「エアー」
「電流」「サイド」「エアー」

「エアーが足りないんだ」と相棒が言った。
われわれの乗った潜水艦は海底で巨大イカと格闘していたのだ。
やつの触手が船体を掴み、けっして離そうとしない。

「そうだ。電流を流そう」と僕は言った。
われわれの任務である海底での土木作業は、どうしても船体が帯電してしまう。
船体のサイドには溜まった電荷を放電する突起があり、いまそこにイカの触手が
触れているのだ。

電荷が溜まりきっていることを計器が示している。
巨大イカを殺傷するだけの力があるかどうかは分からない。
しかし、電流を嫌がって触手の力を緩めるだろう。
幸いにもそれは巨大ウナギではないのだ。

相棒が放電のボタンを押す。
イカは突然のわれわれの反撃に痙攣したようになり、触手はさらに船体を締め上げた。
そして誰が聞いても船体に裂け目ができたと判断するであろう音が聞こえた。
エアが漏れ始めた。


次「虚像」「曼荼羅」「性器」
492虚像、曼荼羅、性器:04/04/29 19:22
「なんで象がうろついているんだ?いや、見えるんだ?」
私は窓から見える光景に驚愕し、勢いのまま口に出してしまった。
「なに?なにがどうしたの?財布なら持って来てないわよ」
この店で一番高い海老と牡蠣のパスタをほおばりながら彼女は呟く。
子羊のリブ焼きにウニとイクラと海草のサラダが彼女の注文した分だ。
「……今回は奢るって言ったのに」フラッときたが持ちこたえる。
落ち着け!問題は二つだ、象か欠食児童のような彼女の腹か?
うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん……。
象の方に逃げよう。そっちの方が楽しそうだ。
「いやな、外に象が見えるんだよ。ほんと疲れてるんだろうな」
「巨象だろうが小象だろうが私財布持って来てないわよ?」
このくそアマ――いやいや落ち着け、象が見えるくらい追い詰められてるのに
これ以上自分からヤバいところに行く必要はないだろう。
「巨象だ。人なんか踏み殺せるくらいの。虚像であって欲しいんだが」
「う〜ん、でも来ちゃったのをキャンセルする事は出来ないし。あ、象の事よ」
料理が虚像で象が実像だったらよかったのに、そしたらついでにこの女を踏み殺して欲しい。
「鯛の塩包み焼きに子牛のカルパッチョ、ポロ葱の和え物です」
願いは逆に叶い、後続の料理が俺を踏み殺しにきた。
奇しくも皿の並びは曼荼羅を描き、精神に攻撃を加えるようだ。
財布持ってないと聞いてがつがつ食えるほど豪胆じゃないので肉体にも来る。
睾丸と性器もヘルニアにならんばかりの縮みようだ。
「わ〜い白身、もとい全部大好きなのよね〜。いやいやいやマジで」
耐えられなくなったのか、目の前の男はこの一発で椅子ごと後ろに倒れた。
それを見た女は意地の悪い魅力的な笑顔でバッグからお金を取り出した。
「財布に入りきらないくらい宝くじが当たったのよ、言ってなかった?」
493虚像、曼荼羅、性器:04/04/29 19:24
書き忘れた。次は
「ハリネズミ」「ハリモグラ」「ハナモゲラ」
「ハリネズミ」「ハリモグラ」「ハナモゲラ」

僕たちはハリネズミさえ捕まえればよかった。
そしてこの山はうってつけの場所だった。耳をすませば鳴き声が聞こえる。
「どうやって捕まえるかが問題だわ」と彼女が言った。
まったっくそのとおりだ。やつらは敵に出合うと体を栗のいがのように丸めて身を守る。

僕には考えがあった。昼食のデザートにリンゴを持ってきている。
これで押さえつければハリが突き刺さってハリネズミは身動きが取れなくなるだろう。
自分の身を守れるはずが、それが裏目に出るわけだ。

鳴き声のする方へ行ってみた。ハリを逆立てたハリネズミが眼帯をした老人と対峙していた。
僕たちに気づいた老人が何かを言った。
「ハナモゲラ語ね」と彼女が言った。「ハリモグラは強力な前肢で地面を掘って、
アリなどの昆虫を長い舌でなめ取るんだと言っているわ」

「ハリモグラたって? 僕たちに必要なのはハリネズミだよ」
彼女がなにかを老人に話した。老人が悲しそうな表情で何かを答えた。
「1969年以来、この山でハリネズミを見たことはないそうよ」

僕たちは仕事に失敗したが、デザートのある昼食を楽しむことができた。


次「日記」「食塩水」「野次馬」
 その人の日記を読む決心がついたのは、――私の叔父にあたるその人が死んでから
随分と経ってからだった。
 死体には野次馬のように蟻やハエがたかり、異臭を放っていたと言う。私はその光景
を直接は見なかったが、聞いた時は吐き気がして、実際に吐いた。叔父はよく私の家に
やって来て、小学生だった私とよく遊んでくれた。その叔父が、両親の次に身近な人間
だったその叔父が、そんな無残な姿で死んだ、と言うのは、私にとってひどくショッキン
グぐな出来事だった。
 叔父が死んでから今年で三十年経つ。私はとっくに成人し、記憶の中の叔父と同じぐ
らいの年齢になり、そして今、叔父の日記を開いている。
 この日記を見つけたのは、父の押入れの中からだった。私が中学生の時だ。黒く硬い
表紙を開いてすぐに叔父の日記と分かり、私はすぐにそれを自分の机の一番上の引き
出ししまいこんだ――そこが唯一、私の机で鍵のかかる場所だった。
 その晩父は私に日記の所在を――父はただ、黒いハードカバーの本を知らないかと聞
いただけだったが――問うた。
 私は知らないふりをした。
 何故その後何十年も開けなかったのか、理由は分からない。だがようやく開くことので
きた理由は解る……父が、つい先日死んだ。

 日記には、父が叔父に金を借りていたこと、金が返せないならそれでもいいと、叔父が
考えていたこと、――私と遊んだこと。そんなことが書かれていた。そのことは知っていた。
私は昔を思い出しながらページをめくり、最後のページでえ、と声を上げた。

 兄に殺されるかも知れない

 ……日付は叔父が死ぬ二日前だった。兄、とは――勿論父の事だ。急いでページをめ
くっても他には何も書かれていなかった。叔父がそのことについて何を思っているのか。
どうしてそう思うのか、何も、何もだ。
 ――私は父が、叔父が遊びにやって来た時の顔をよく覚えている。なんとも言えない表
情だった。父が何を考えて叔父を迎えていたのか、私は全く解らなかった。
 叔父は私が見ていた限り、父と金の話をしなかった。
 ……父はそんな叔父がわからなかったのかも知れない。
 だから父は――叔父を殺したのだろうか。

 私はその日記を閉じた。しばらく呆然としていたが、ふと思いたって車のキーを掴んだ。
数時間走り、私は海岸で車を止める。そう言えば叔父とはよくキャッチボールをした。筋が
いいと褒められた。中学校でも高校でも、野球と縁は無かったけれど。
 振りかぶる。投げる。ぼちゃんと遠く、海の中へ、塩の水溜りへ、日記は落ちた。

 次は「飴壺」「指先」「ブーツ」
「飴壺」「指先」「ブーツ」

兄弟子と二人で、師匠の家に侵入することに成功した。
庭から床下に抜け穴があることは弟子たちのあいだで公然の秘密だった。
師匠は女の家に出かけている。邪魔が入ることはない。

兄弟子は棚の上に置かれた飴壺を見つけた。
「これ、甘いんだぜ」と言うと、指先に蜜をつけてなめ始める。
「兄さん、あんまりなめると師匠にばれるよ」
「おまえは臆病なんだよ。あんな爺に何がわかるもんか」

玄関で音がした。
「頼んだぞ」と兄弟子が言って蜜壷を僕に投げてよこすと、抜け穴のところへ
音を立てずに走っていった。僕は蜜壷を抱えたまま玄関の方をのぞき見る。

そこにはブーツがあった。
近づいていくとそれぞれのブーツの中から小人が顔を出した。
「それ、甘いんでしょう」とひとりの小人が言った。
「一口なめさせておくれよ」ともう一人が言った。
二人は蜜をつけた僕の指先をなめると、ブーツの中に引っ込んで玄関から出て行った。


 次は「銀行」「テレビ」「画商」
銀行、テレビ、画商

一定の金銭価値さえあれば何でも預かる、
この新進銀行はヨーロッパ式にそのような金庫を運営している。
今、私はある名画の贋作を、
贋作の中でも本物を砕かんとする勢いのある作品を持っている。
そして受付では蒔いた種が雄雄しく最後の発芽をしていた。
「がたがた喚くな!言うとおりにしろ!!」
受付嬢は強盗達の恫喝に恐怖しているようで、手は痙攣しているかのように震えている。
そして強盗(間接的に武器と計画を与えてやった馬鹿)は金庫を開けさせようと躍起になっていた。
それを見る私は大げさな演技で汗をたらし目を泳がせる。こうしておけば必ずこの馬鹿はかかる。
警察が来るまで3分と教えており2分以内に決めてでなければならんので人手がいるからな。
「おい!そこのムシケラ!何人か詰めるのを手伝え!」
そして銃で脅されながら私は金庫の中に入った。

その日のテレビではショッキングな画像を国民は見ることとなる。
犯人たちは元々警察が包囲する時間を1分多く見積もっていたからだ。
優秀な公僕は人質をとって立て篭もる犯人の隙を作り射殺。
被害もけが人も出さずそして――
「私は取引を無事終えることが出き、銀行も本物の変わりに素晴らしい贋作を手に入れたわけだ」
ニュースで流される犯人たちの入った死体袋を見て、私はほくそ笑むのだった

「薬缶」「肝油ドロップ」「軟膏」
「薬缶」「肝油ドロップ」「軟膏」

彼女は肝油ドロップを美味しそうになめている。
「懐かしいものを食べてるんだね」と僕は言ってみる。
「私は子供の頃から毎日これを食べ続けているの」と彼女は答える。
僕は肝油ドロップの味を思い出してみる。甘かったな。それ以外は覚えていない。
「あなたも欲しかったら、うしろの戸棚にあるわ」

戸棚にはそれぞれそこに入っている物の名前が貼り付けてある。
肝油ドロップは薬の一種だろう。薬缶と書いてあるところを開けてみる。
やかんが入っていた。ふたを開けてみたが何も入っていない。

「そんなところにはないわよ」
「薬の缶に入っているのかと思ったから」
「薬の缶と書いてやかんとよむのよ。肝油ドロップはその隣にあるわ」

隣を開けるといろいろ薬が入っていた。見覚えのある軟膏の入れ物もあった。
子供のころ使っていたのと同じものだ。僕はあのころの両親と同年代になっている。
こみ上げてくるものがあった。
「それはナンコウって読むのよ。あら、ごめんなさい。漢字が読めないくらいで泣くことないのに…」


次は「インド」「宇宙」「ちょんまげ」
「インド」「宇宙」「ちょんまげ」

「インドへ行くとね…」と彼女は思い出したように言う。「人生観が変わるの」
ぼくはインドの話を聞くといつも退屈してしまう。こんなときは否定的な意見を述べたほうがいい。
「インドに行きたがる奴らって、アメリカのヒッピーの猿真似をしてるだけじゃないのかな」
かなり否定的な意見だ。彼女は少し考えてからぼくの方を見る。
「どうしてヒッピーが関係あるの?」

どうして関係があったんだろう。ぼくはそれらしい理由を考えてみる。
「ほら、ヒッピーって宇宙と交信するとか言ってヨガをやったりしたよね」
彼女は納得したようには見えない。
「ヒッピーって禅も好きだったわよね。ヨガとどう違うのかしら」
ぼくは禅についてはヨガ以上に無知だった。

「禅も宇宙と交信できるんだけど、アンテナがいるんだ」
ぼくは苦しまぎれに思いついたことを言ってみる。「ちょんまげがアンテナの役割をする」
「それは嘘よ」と彼女が即座に答える。「あなたは嘘をつくとき、猿のような顔になるのよ」


次は「本」「柔術」「氷」
501名無し物書き@推敲中?:04/05/01 03:17
無機質な壁に囲まれた一室。Rはある格闘技雑誌を読んでいた。
『氷の拳をもつ最後の皇帝....』
『リオの柔術マジシャン....』
『見えないハイキック。無冠の帝王....』
大きく掲載される3選手。世間では「3強」と呼ばれている。
Rはこの後「3強」の一人との対決を控えていた。

読み進めていくうちに、Rは自分の扱いがとても小さいことに気づいた。
少しながら、表情が曇った。
いくら本命じゃなくても、この扱いは少し酷い。
「R、そろそろ行くぞ。」セコンド陣の言葉に促され、控え室を後にする。

二十四時間後にはRが一躍スポットライトを浴びる。

*格闘技好きなモンで、こんな文になってしまいました。
*次のお題は「化粧」「ヨーグルト」「ラジコン」
「化粧」「ヨーグルト」「ラジコン」

店の客たちはバーテンが戻ってくるのを待っていた。
彼はぼくのガールフレンドとの賭けに負けて化粧することになったのだ。
「私が手伝ってあげた方がよかったかしら」と彼女は言ったが、まともな仕上がりなんて
誰も期待していない。

歓声が上がる。薄明かりに照らされて淫靡な風貌になったバーテンが現れた。
「悪くないね」とぼくは彼女に言う。
「けっこう可愛いわね。ヨーグルトを食べてみると似合うんじゃないかしら」
「じゃあ、僕が奢ろうか。ブランデーをたらしてもいいよ」

バーテンはヨーグルトをグラスに盛り付け、たっぷりとブランデーをたらした。
「ヨーグルトを注文する女性はみんな便秘なのかな」と彼が言って一口すする。
「そうとは限らないわよ。おいしいから食べる人もいるし」と彼女が答える。

「これも付けてみようか」と隣にいた常連客がバイブレーターを取り出して言った。
「それは勘弁してくださいよ」と言いながらバーテンはそれを股間にねじ込む。
「これラジコンなんだよ」と言って常連客がスイッチを入れた。
奇妙な踊りを始めたバーテンがそのまま店の外へ出て行った。


次は「野菜」「構造」「遊戯」
「今日は何をするつもりだい?」
パンにブルベリージャムをたっぷり塗りながら彼女に尋ねる。
じゃむスプーンを往復させて縫っているのでムラ無く仕上がっている。
同じ仕草でパンにリンゴジャムを塗っている彼女は少し考えてから答えてくれた。
「まずはそうね……お化粧して出かけましょうか」
パンを照らしてジャムが均一になっているか確かめる。
大丈夫だ、どこから食べても同じ味わいだ。
「化粧して出かけて何をするの?」
「ヨーグルトでも買いに行ってあなたはラジコン飛行機を飛ばすの」
そろそろ仕上げだ。
「バカだなぁ、ヨーグルトは昨日買ってきただろ。化粧?
 マスカラがきれたとか言ってただろ?ラジコン飛行機?
 後ろを見たまえ大雨だ」
彼女は何も言わずにハムエッグを自分のパンに乗せ、
新聞紙を細かく千切ってその上に散らし、
僕のパンに上乗せした。そしてパンチをくれると怒って部屋へ戻っていく。
リンゴブルーベリージャムソースハムエッグ新聞紙サンドの完成だ。
右頬の痛みを我慢してお気に入りを頬張り僕は微笑み、
戻ってきた彼女は鉈を振りかぶって僕に微笑んだ。

次は「灰皿」「肝臓」「血飛沫」
野菜コーナーを過ぎると次は精肉コーナーだ。
そんなスーパーの決まりを学んだかのように次の部屋へ行くと男が待っていた。
「ぐっふっふっふ、私が倒せ――」
喋り終わらないうちに鉛玉を進呈する。
赤いものと透明な物、それがまぶされた灰色のものをばら撒いて男は倒れる。
私は殺し屋でこの館の主を始末しに来た。
この館は主によって罰当たりな遊戯施設へと改築されている。
全てが遊び。殺しの依頼主と館の主の遊びだ。
でも遊戯施設なら灰皿くらいおいておけ。
散らばったものと吸殻を踏みつけて次の部屋へ向かう。
「よくぞここまで辿り着いた!しかしこ――」
同じ様に撃ち殺す。
館は敵の配置が建築自体の節となっている構造だ
だから次の相手にも手軽く会えた。
「ここまで来たのはおま――」
「ーン大統領」
つまらない洒落を言って眉間と肝臓に心臓を打ち抜く。
テキサスショットというらしいが相手が死ねば俺には十分だ。
そして最後の部屋、館の主の間に着いた。
「貴様!よくもど卑怯な真似をしくさってくれたな!」
「俺はノリが悪いんだよ」
銃を向けると同時に主が血飛沫を上げて爆砕した。
どうやら俺よりノリの悪い奴がいて、外から爆撃したようだ。
次から俺もそうしよう。

次は「トマト」「茄子」「ツナ」
「トマト」「茄子」「ツナ」

トマトが飛んできた。
島民はわれわれ取材陣に対して怒りを覚えているのだ。
「たいへんだ、まだまだいっぱいあるぞ」とディレクターが言う。
若い男たちによって荷車に満載したトマトが運び込まれてくる。

迎えの船が到着するまでまだまだ時間がある。
われわれの武器といえばそれぞれひとつずつ茄子を持っているだけだった。
茄子を握って頭上にかざしてみる。しかしけっして強そうに見えないだろう。
「このままでは勝ち目がないですよ。なんとか話し合いに持っていかないと」と照明係が言う。

そのとき猫がこちらに歩いてきた。島民たちが顔を見合わせている。
「このツナ缶が目当てみたいですね」と音声係がわれわれの食べ残したツナを指差す。
猫は優雅にツナを食べ始める。

これだけ気品のある猫ならこの島の名士の飼い猫に違いあるまい。
「しめた、切り札を手に入れたぞ」とディレクターが言う。
ぼくは後ろから猫を捕まえようとした。
しかし猫は優雅に身をひるがえし、どこかへ走り去ってしまった。


次は「乳房」「信者」「都市」
 小都市も夏を迎えた。私は清らかに香る秘書血を心逝くまで味わった。津依子の愛唾ま
での露も終わりを迎え、お陰で私は軽やかな行動の自由を取り戻した。
 私の傍らには、宗教絵画の奥深くから抜け出してきたような女性の姿がある。
 実際、すべては彼女の自己犠牲の奉仕によって成り立ったのだった。
 その心身を生贄の子羊として差し出し、それまで大切に奉ってきた神を裏切る事になる
としても、それでも私の行動に献身的な協力を申し出てくれた。
「だって貴方が死んじゃ、いや、そんなの許せない」
 ほんの一言、けれども本心からであろう一言が二人の絆を強めた。

 決行直前、彼女は私に自身を選んだ理由を尋てきた。私は素直に「君の乳房……」
と答えた。彼女は黙ったままだったが、やがてこくりと頷き、そしてゆっくりと微笑んだ。
 私は自己を見失った都会の人の群れの中でひとり凛とした輝きを残す彼女が、胸の中に
覆い隠したそれを感じる感覚が保たれていることに何故だか妙に惹きつけられたのだった。


――今年、薫る避暑地、心行く、ついこの間までの梅雨、側、宗教か伊賀、だって貴女が
信者、君の恥部さ――時代遅れの音声入力ソフトの誤変換を愉しみつつ、私は締め切りの
迫った『カルト教団潜入報告書』を完成させるための修正と推敲の日々を送っている。


次は「檸檬」「爆弾」「挿絵」
 彼女は軽く檸檬を放る。
 ぽとんとベッドの上に落ち、バウンドせずに檸檬は転がる。
「暇」
 彼女はぽつりと呟いて、暇、暇だわ、とさらに重ねた。まだ終わらないの。鈍いのね。退屈
と苛立ちの込められた声と視線に、僕は肩をすくめる。
「そんなにすぐ終わる、と言うわけにもいかないさ」
「こりすぎなのよ。さっさと終わらせちゃいなさいよ。たかが挿絵でしょ」
 冷たい言葉にいささか傷つく。
「そんなわけにはいかないさ。これが本に載るんだ。先生の文章を引き立てる絵なんだよ」
 馬鹿にしたような笑みが返って来た。檸檬を拾い上げ、彼女は笑む。
「先生、って、女よね。怪しいな」
「疑ってる?」
 ううん、と彼女は首を横に振り、不意に、どんな絵を描いているの、と言って後ろから画布を
覗き込んで来る。
「主人公が爆弾を解体する最中のシーンなんだけど。変かな」
「……爆弾?」
 彼女は目を瞬かせ、僕の方を見た。
「そう、爆弾だよ」
「私には、檸檬にしか見えないわ」
「そうだね。檸檬だね」
 言い切る僕に、彼女は不思議そうに目を瞬かせた。

次は「アルマジロ」「蝶結び」「名無し」
「檸檬」「爆弾」「挿絵」

町はずれに檸檬の木がある。この季節になるとふさふさと実が生い茂る。
ぼくらがここへ来るのは久しぶりだった。もし檸檬を切らしたとしても、
いまならどこのスーパーマーケットにでも並んでいる。

「檸檬って木になってるのを見るときれいなもんだね」とぼくは言って見上げる。
ちょうど夕日を受けて鮮やかに輝いている。
「きっと檸檬の木の下には爆弾が埋まっているのよ」と彼女が言う。
彼女はあまり冗談を言わないが、ときどき変なことを言う。

返答に困ったぼくは持ってきていた本を開いて挿絵を彼女に見せる。手榴弾の絵だった。
「それはこういうタイプの爆弾なの?」とぼくは質問してみる。
「そういうのじゃないの。もっと大きなものよ」

「危ないから離れたほうがいいね。もう戻ろうか?」
「そうね、ちょっとのどが渇いたし」
「じゃあ、レモンティーでも飲みにいこう」

車に戻ったぼくたちは、さっきまでいた場所から火柱が上がるのを見た。


次は「ジャズ」「ジャム」「邪道」
「そういえば大仁多が議員になったな」
「邪道なのに?」
ブルーノートで飲みながら僕は彼女とジャズを聴いている。
壇上では黒人の聞いた事が無いチームが演奏している。
浅学な人間が来るのは邪道だと言えるので僕は邪道だろう。
「教えてくれないかな、彼らのこと」
彼女に恥を捨てて尋ねる。彼女はにやりと笑い鼻を上に持ち上げて説明をし始めた。
「彼らはボウアルマジロズ。アルマジロを蝶結びにしたシンボルのアーティストよ。
 全員がスタジオミュージシャンやバックミュージシャン出で実力はあるけど
 名は無かったの。業界以外には名無しの権兵衛達ね。
 演奏する曲もバラバラ、オリジナルだったりコピーだったり民謡だったりする、
 だからジャム達、アルマジロジャミーズとも言われてたりするわ」
「う〜ん、君好みだなぁ……」
翌日、僕は大恥をかいた。皆にそのことを言って笑われたのだ。
ハービィーとクィンシー、さらにコルトレーンの全てを受け継ぐものとした
最高のジャズメンだったのだ。
そして列挙された彼らを知ってから本当に恥じ入った。
顔の赤みが取れるのに時間がかかるくらい恥じた。

次「昨日」「機能」「気嚢」
「アルマジロ」「蝶結び」「名無し」

研究所に匿名の犯行予告が届いて、所長は神経質になっていた。
今夜、実験に使っている二匹のアルマジロを盗みに来ると言うのだ。
「名無しごときに怯えるなんて、頼りないもんだね」と同僚の研究員は言う。
しかし、われわれのアルマジロの研究はこの研究所の存亡にかかわるものだった。

警備に当たる二人の警官はどちらもアルマジロを見るのは初めてだった。
「これは爬虫類ですか?」と一人の警官が質問する。
「いや、哺乳類さ」ともう一人がわれわれより早く答える。
所長がアルマジロについていくつか説明を加えが、二人にはあまり理解できないようだ。

「しっぽが長いんだから、結んでおけばいい」と一人の警官が提案した。
所長は不服そうだったが、結局はそれに従うことにした。
ぼくと同僚の研究員とで二匹のアルマジロのしっぽを蝶結びにした。

夜になった。物音がして、われわれは緊迫感に包まれた。
何かが部屋に放り込まれた。煙幕だった。
あわてて窓を開けて煙を追い出したときには、アルマジロはいなくなっていた。

柱か何かに結んでおいた方が良かったと警官たちは意見を言い残し、
賊を追いかけて外へ出て行った。


次は「窓」「頭」「痺れ」
「昨日」「機能」「気嚢」

伝染病のために鳥たちが気嚢をやられていく。
鳥が元気にさえずれるのは気嚢に空気を溜めているからだ。
この地域は観光客が全国から集まってくるほどに様々な鳥の鳴き声を
聞くことができたものだったが、すっかり静かになってしまった。

そこで鳥専門の獣医である私が派遣されてきたのだが、すっかり難航しまっている
昨日も観光協会の担当者がやってきて私に文句を言った。
「せっかくあなたに来てもらったのに、事態はまったく改善しない」
私はいくつかの専門用語を並べて彼を追い払った。

うまくいっていない原因は分かっている。観光協会が機能してないのだ。
私が会った協会の人間は誰もが自分の都合を長々と話すだけだった。
誰も鳥を助けようとしていない。

この病気を協会内に伝染させてやろうとして、私はひそかにウィルスを人間用に改良した。
会議のため協会本部に行ったときにウィルスをばらまいてきた。
しかし何人かがすこし体調を崩しただけで、彼らの饒舌ぶりに変化はなかった。
人間に気嚢はないのだった。


次「友情」「努力」「処理」
512名無し物書き@推敲中?:04/05/01 23:27
早い勢いで投稿してる人にお願いですが、
コテハン名乗っていただけないでしょうか。
それに、どれを読んでも傑作ばかりで、
あなたの作品を読んで勉強したいので、
過去の作品も教えていただけないでしょうか。
 私がいつものように講義の疲れを癒すため助手の差し出した紅茶を飲んでいると、古い
友人から一本の電話が届けられた。聞けば、知人の娘さんが亡き兄の無念を晴らすために
情報を求めている。私にも経験を活かしてその手助けをして欲しい、ということだった。
 解剖医学教授として多忙な毎日を送る私ではあったが、友人の頼みとあれば断ることは
出来ない。実のところ、隣で私を制止しようと試みる助手を振りきるのに少しばかりの努
力を要したのだが、電話の主には平静を装い、友情の絆がまだ有効である旨を告げた。

 後日、届けられた詳細は助手の予想通り少々厄介なもので、複数のメディアを巻き込み
真偽が注目されている事件であった。まず今回の件は、県警捜査本部では自殺と断定して
処理していた。報告書の内容では、死亡男性はクリスマスイブ当日に当時付き合っていた
女性にフラれ、その後やけになって車を飛ばしガードレールに接触。重傷を負ったまま車
で10分ほど離れた山間の橋に辿りつき、自力で欄干を乗り越え飛び降り自殺したという。
「ですが、遺体の損傷から判断して衝突時に下半身から着地しています。通常の自殺体と
比較して不自然ですわ。これは他者に突き落とされた場合に見られる損傷の仕方ですもの」
 助手は的確な指摘を返した。確かに解剖所見では自殺と断定しているが、私にも自力で
落ちたとは思えない。私よりも興味を持ち始めた助手を尻目に、私は本格調査を意識した。



「驚愕」「展開」「圧力」
 正面を向いた時、僕は驚愕した。そこに居たのは、見たことも無いような怪物の群れ。
 足が震える。自分の中の何かが、これから起こる危機を警告している。
ここで諦めて帰ることが出来れば、どれだけ楽だろうか。
 しかし、自分には大切な仲間がいる。責任感も、意地もある。
使命に従い、この魔法の宝玉を目的地へと、送り届けなければならない。
 
 僕は走り出した。敵は僕を阻もうとして、草原一杯に展開する。戦友たちは
止めようとするが、今まで経験したことの無い圧力に押されている。
 僕の前にも、敵がやってきた。僕は猛突進をよけ、罠をかいくぐる。
 目的地が見えてきた。もう少し、あと少し。
 しかしここで、残りの怪物たちに囲まれてしまった。その爪、その牙で、
僕を傷つけていく。もう僕には、抗う力は無い。
 その時、遠くにあいつの笑顔が見えた。普段は仲間でただ一人不真面目
だが、こういう大事な時には一番頼りになるやつ。
 僕はそいつに、宝玉を放り投げた。

 守護者の横を、『宝玉』がすり抜けていく。フラッグが、横断幕が揺れる。
 チームメイトの手荒い祝福を受けながら、僕は大声援に手を振った。

次は「コーヒー」「祭り」「嫁」
 監督が審判に選手交代を告げる。俺の名が球場に響き渡る。
今シーズンここまで代打で三打席3三振。恐らく、今日が一軍最後のチャンスだ。
9回裏、1点差、二死二三塁。マウンドには、今年初完封達成寸前の「怪物」――。
 バットを握り締め、打席へと赴く。その間の数秒間、様々な思いが俺の中で交錯した。
高卒でプロ入りし、今年で10年目。一軍通算出場36試合。62打数13安打、本塁打2本。
毎年マスコミに秘密兵器扱いされながらも、ほとんど二軍暮らし。ファンからは面白がられ、
二軍にいたにもかかわらず、オールスター投票十傑に祭り上げられたこともあった。
悔しかったが、それでどうということもなく、チームメイト連中から憐れなものを見るような視線を
向けられることにも自然となれていったのだった。
 しかし、俺は変わった。
大好きだったコーヒーの代わりにクエン酸を飲み、身体を作り変えた。煙草も酒も止めた。
全てはあいつのため。チンケなことかもしれないが――。
 初球引っ張り、右方向だけ狙う。審判の声が響く、140球を超えた「怪物」が構える。速球が来る。
ライトスタンド、アイツ――俺の嫁――へ向けて、行ってくれ。
 俺は気持ちを込めて振り抜いた。打球はライト方向へ高々と――。

「担当」「綿密」「坂道」
「結構です。帰って下さい」
取り付く島も無く相手は扉を締めてしまった。これで10件目だ。
つっ立ってても仕方が無いので俺はとぼとぼと坂道を下っていった。

誰でも良い訳ではなかった。綿密に練られた計画を達成するのに相応しい人物でなければ。
しかも俺の担当はその中心部分。適当な人材では許されない。
直接相手の家を尋ねずに電話一本で了解を得ても構わない端役ではないのだ。

だが作業を暗礁に乗り上げてしまった。誰も首を縦に振らない。理由は分かっている。
誰もがその計画に相応しいとは思っていないからだ。俺もそう思う。
それでも見つけないといけない。既に尻に火がついてしまっている。

「次ぃは〜……カノンちゃんか。」
無理だと思いつつ俺は足を進めなければならない。早く小説に出てくれるキャラを探さないと。
しかも主人公。手抜きは出来ない。担当の人が来るまで24時間をきった。
すっかり重くなった足を持ち上げ、俺は作者の脳内を駆け巡る。


お題は続行でお願いします。
517岸和田:04/05/03 19:33
「担当」「綿密」「坂道」
 俺はトイレにこもっていた。とっくに『用』は足したあとだったのだが、
出ることはしなかった。
何故かと言うと、数分前、こんな放送がこのビルに流されたからである。
『このビルは我らが占拠した。綿密に練られたテロ……クーデターである』
そしてビルの最上階に全員が集められたというわけだ。
だが綿密に練ったというわりにはトイレまでは調べられず、俺は
捕まらなかったというわけだ。
 そして俺の隣にも男がいた。どうやら隣の男は、このビルの隣にある出版社の
作家の担当者らしい。出版社のトイレが全て工事中になっているらしく
わざわざこのビルまで来たらしい。
「これは……人生の坂道だ……ピーポーピーポーサメピーポー」 
俺は男に話し掛けた。
「あ、その合言葉は……、もしかして、ピーポー教の人ですか?」
「あ、あなたもそうなんですか、奇遇だなあ」
 全くその通りだ。テロリストがこのビルを占拠していなくて、出版社のトイレが
壊れていなくて、俺と隣の男が同じ階のトイレに入らなければ隣の男と
出会うことはなかったろう。全く、人生は偶然で成り立っているな。

 「オーバー」「放浪者」「車」
 いつのまにやら私は糞転がしになっていた。果たしてそれが傍目にも正しい表現なのか
と聞かれるといささか心許無いのであるが、目の前にある巨大な土塊は糞であろうし、そ
れを支える私の腕は茶黒く変色し何よりも節くれだっていたので、私は直感的に自分が糞
転がしであると悟っていた。
 不思議なもので自分がそのような存在であると理解した途端、稲妻にも似た鮮烈さを帯
びて、一つの指令が脳裏を駆け巡ったのである。

 ――この糞塊を頂上まで押し上げなければならない――

 私は嬉しかった。天にも上る気持ちとはこのことであろうか。私はこの単純な命題が己
に課せられたことに非常に満足し、これを成し遂げた後に得られるであろう幸福を想像す
ることで、止め処もなく押し寄せる恍惚感に全身を戦慄かせることができた。
 頂上までとの言葉通り、私の立つ場所は坂道である。勾配は急激でもなし緩やかでもな
し、私に恒に一定以上の力を求める誠に憎い按配の土坂であった。

 どのくらい登ったときであろうか。私はふとした発見に戦慄を覚えた。なんと糞塊が成
長しているのだ。塊はぐにゃりとした薄黒い粘膜をその身に纏い大きく膨れ上がっていた。
 それに気づいたとき私はもう何がなにやら一切のことが判らなくなった。この粘着物は
どこから現れたのだ。いつになったら頂上へつくのだ。何故私は頂上へ向かうのか。一体
全体私はどうして自分が糞転がしであることに納得などしてしまったのか。存在を根底か
ら覆す疑問が暴雨のように降り注ぎ、私は震えたままその場で立ち往生してしまった。

 はたと気付くと、穏やかな陽気が私の周囲に満ちていた。隣では担当編集者がうつらう
つらと舟を漕いでいる。私は彼が綿密に纏めてくれたアンケート結果に目を通しながら、
締め切りの迫ったシリーズ次回作の構想を脳裏に思い描くのを再開することにした。


「鉄格子」「点呼」「蜂蜜」
遅くてごめんなさい。お題は>>517の「オーバー」「放浪者」「車」でお願いします。
 その黒いバンを止めるべきかどうか、僕は咄嗟に判断がつかなかった。制限速度二十キ
ロオーバーだから、目くじらを立てるほどのこともないと思えたのだ。僕は運転している
パトカーの脇を追い越していくバンを目で追い、ちらりと助手席の矢代さんを伺った。
 矢代さんも僕と同じように思っていたらしく、顎に手を当てながら小さく唸り、それか
ら額にかけた眼鏡をおろした。
「やっぱりあれ、止めよう」
 やや間があって、目を細めていた矢代さんが不意に言ったので、僕はアクセルを踏み込
んで、マイクで呼びかけた。
「トヨタのバン、ぬ1497、左によって止まりなさい。そこの黒いバン……」
 暫く聞こえないフリをした挙句、車から降りてきたのは、薄汚い浮浪者のような男だっ
た。作業着のような上着には食い滓がこびりついていて、もっさりした頭と髭にはフケや
埃が浮いている。深い皺の走った顔は茹蛸のように赤くなっていた。アルコールのにおい
はしないので、ただ怒っているのだろう。こういう少し変わっている男は逆上させない方
が仕事が捗る。
「こちらも仕事なんでね、お父さんがちゃんと答えてくれたらすぐ終わるからね」
 言葉では下手に出て、しかし反論を許さない強さを込めて矢代さんは男に語りかけた。
男は憤懣やるかたなし、といった感で僕たちを代わる代わる睨んだ。
「お父さん、名前は? 何処に住んでるの?」
「俺が何でアンタの親父の名前や住所を知ってるんだ。アンタ、馬鹿じゃないのか」
 こんな調子で男はとことん非協力的だったが、荷台から血の着いたノコギリが見つかっ
て矢代さんと僕は、やっぱり止めて正解だったと胸をなでおろした。迷宮入りと思われて
いたバラバラ殺人がこれで解決したのだ。
「しかし、何であのとき、止めようと決めたんですか?」
 後で僕は、矢代さんに聞いてみた。
「あの車さ、俺たちの車を追い越して距離を取った途端に減速したんだよ。それで『こい
つは絶対に、やましいことがある』て思ったのさ。パトカーを見て逃げたくなって、けど
速度違反で捕まりたくなくて、ああいう行動になったんだろうな、奴は」

518氏、「鉄格子」「点呼」「蜂蜜」でおながいします。

 いやにくたびれた服装だったように思う。薄暗くて地味な、例えば運転している車の
前に飛び出して来ても、気付かずに跳ねてしまうような格好だ。
 だから注意深くハンドルを握っていたにも関わらず、鈍く大きな音が車内に響いた
ことに私は驚いた。ヘッドライトも当たらない目の端で何かが倒れる。
 薄汚い男だった。くたびれた服装は濃い緑のオーバーコートで、そこかしこに
擦れた後があってボロボロだった。
 急いで車を止めて、倒れている男に近寄って様子を見る。浮浪者だろうかと
思っていると、男はゆっくりと起き上がり、オーバーコートについた土埃を払い落とした。
「大丈夫ですか」
「……」
 男は答えなかった。ただズルリズルリと足を引きずってどこかに行こうとした。私は
引き止めようか迷ったが、その放浪者の雰囲気に圧されてやめておくことにした。
 後日新聞の三面に男の顔を見つけた。亡くなったと書いてある。ああ、
引き止めないで良かったと思い、私は捕まるだろうと覚悟した。
 記事には男が妻の死に際に間に合い、直後その場で息絶えたと書いてあった。

次「泥」「ランプ」「麦芽」
 電気が止められているため、祖父の形見のランプを灯した薄暗い部屋に僕はいた。
売れない小説家の僕は、気の合う編集者から勧められた麦芽酒を飲みつつ、原稿を埋めていた。
この酒は他の麦芽酒に比較して安く、収入の少ない僕にとってはありがたい存在なのだ。
だが、味の方は値段相応の味で、お世辞にもおいしいと言えるものではない。
あの編集者を除いて、僕の友人たちの評価も酷いもので、
「泥水を飲んだほうがましだ」という友人さえいる。
しかし、僕は値段以外にも、この酒に何か惹かれるものがあった。
それが何なのか、というのはわからない。恐らく直感的なものではないだろうか。
僕はこの感情の正体を知りたいがため、
「数をこなせば謎は解ける」という言葉を信じ、飲み続けることにした。

 数日後、あの編集者が家に訪れたので、
何故、僕みたいな才能のない小説家と親しくしてくれるのかを聞いてみた。
ついでに、あの酒の話も話してみた。
すると彼はこう答えた。
「いい酒は殆ど全部、美味いことが前提だし、
小説家もそれなりの才能が必要だということはわかってる。
言い方は変だけど、君がその酒の値段以外の何かに惹かれるように、
僕も君の才能以外の何かに惹かれてるんだと思う。」

次は「漫才」「天井」「季節」
523岸和田:04/05/04 08:53
「漫才」「天井」「季節」
 「ボス、用件というのは、何ですか」 男Aが尋ねた。 
「うむ、俺達6人、ヤクザを引退してからもう5年……ある計画を思いついた」
「それは……例の……復讐ですか」 男Bが尋ねた。
ボスは天井を見上げ、ふう、とため息をつくと言った。
「そうだ……昔話したな。俺が子供の頃、一緒に暮らしていたおばさんに
虐められていたという……」
「そのおばさんを……ばらしちまうんですかい?」 男Cが尋ねる。
「そうだ、しかし、ナイフやら刀やら銃は好いとらん。『映像』で殺す」
「おもろい漫才でも見せて、笑い死にさせよるですか」 男Dが尋ねた。
「近い……、だが、違うな。ヒントはいまの季節……いや、時期かな?」
「まさか、ゴールデンウィーク。つまり、映画……?」 男Eが尋ねた。
「そう、よく解ったな。こういう事だ……まず凄いヒットしそうな映画を作り、
その映画に物凄くグロテスクな、ショッキングなシーンを入れる……
おばさんは今90を過ぎているだろうから、その映画を観れば……」
「死ぬ」 男ABCDEが口を揃えて言った。「かっこよかあ」
「そうと決まれば、早速映画作りだー!行くぞ野郎共!」 ボスが叫ぶ。
こうして馬鹿6人は街へ繰り出していった。

 「駄目」「無理」「押し」
524名無し物書き@推敲中?:04/05/04 11:01
age
525 「駄目」「無理」「押し」:04/05/04 18:02
ジェイスンが別荘で育てた観葉植物で娯楽ビジネスを始めると言い出した。
俺とジェイスンは今まで何度も種を仕入れてきては駄目にしてを繰り返していたから、
自家栽培はそもそも無理なんじゃないかと思い始めていたのだ。
ジェイスンを疑うわけではないが、とりあえず実物を見せてもらうことにした。
ジェイスンは嬉々として俺を別荘に案内すると、秘密の押しボタンで地下室への通路を開いた。
俺は仰天した。地下室はまるでジャングルのように観葉植物でいっぱいだったのだ。
二人で一生かかっても消費しきれない量だ。ジェイスンが娯楽ビジネスを始めようと思ったのも納得だ。
娯楽ビジネスの開業を祝って、俺とジェイスンは採れ立ての観葉植物を一晩中楽しんだ。


「最近」「売り物」「アイスクリーム」
526うはう ◆8eErA24CiY :04/05/04 20:41
「最近」「売り物」「アイスクリーム」

 宮殿御用の菓子屋は、彼女に銀色の壷をそっと触らせる。
 「はるか北極からの氷で冷し、宮殿まで運び入れたるこのアイスクリーム……」 
 「く、下さい!」
 しかし彼は首を振る。当時、これほど高価な菓子はなかった。
 「いや、貴女といえども、これを購うには父君のお許しが必要で」

 父は許さないだろう、どうしよう。
 真夏の暑さと、銀色の壷の冷気が、彼女の理性を奪う。
 大体、貴族というものは我慢を知らない。
 2時間後、自分を売り物にしてしまった彼女は、半泣きでアイスクリームを食べていた。
 もしアイスクリームを見なければ、と後悔しながら。

 そりゃあ、最近アイスクリームはスーパーで298円だし、この女を笑うのは当然。
 でも、今高価とされてるものが、百年後に「アイスクリーム」にならない可能性がどこにある。
 昔だろうが、現在だろうが、こんな事はいくらでもあると思う。
 事情を知りながら、ちらりと銀色の壷を触らせる様なやり口がある限り。

※某童謡から連想。なんか妄想満点で恥かしいけど;
次のお題は:「夕食」「電信柱」「サーカス」でお願いしまふ。

「最近」「売り物」「アイスクリーム」

 最近してないナー、とふと思う。

 彼女がいないのか、というと微妙な感じ。自然消滅のグラデーションがYM
CKのK50%、キングオブ灰色みたいな。やはりテクニックに問題アリなの
だろうか? 今時イケてるよりイカセマスなのだろうか?  売り物のマグナ
ムの威力もそろそろ限界なのだろうか? 

 そう考えた俺は、アイスクリームで練習することにした。
 とりあえず、舌でグーッと嘗めてみる。えぐり取られた側面が意外とセクシ
ー。てっぺんを舌で転がすようにしてみる。バランスを崩してコーンからクリ
ームが落下しそうになり、俺が身もだえ。上の部分を食べてから、コーンの中
を指でかき回す。冷たすぎて、指イタイ。

 背後に気配を感じ、振り向くと彼女がいた。笑顔でにじり寄ってくるので、
久々チャンスかとさらに指使いをアピール。

 そして彼女はポンポンと俺の肩を叩き、合い鍵を返して出ていった。
 アンタのバカは嫌いじゃない、けどもう疲れた。最後の言葉はそれだけだった。

#久々に参加してみる。sage進行はGWだからか。
#うわ、うはう氏にカブタ。お題は継続「夕食」「電信柱」「サーカス」で。
528名無し物書き@推敲中?:04/05/04 20:54
即興もいいけれどここのHP見てみてください。
リンク等で役立つものあります。
http://www66.tok2.com/home2/pop19520/index.htm
529469:04/05/05 00:17
「夕食」「電信柱」「サーカス」

朝食昼食夕食朝食昼食夕食また朝食昼食夕食……と終わりなく続く反復運動は
いつのまにか僕を狂わせていて、いや狂っているという自覚を持っている限りは
まだ大丈夫なのかもと思い直しもするけど、でも僕はその他の人々(どこで知り
合いと他人の線を引くのかいつも迷う)とは決定的にどこか違ってしまっている
ということを知っている。
これはありがちで誰もが経験している思春期特有の若者の悩みなどではない!僕
は若いウェルテルなんかじゃない!と断言してしまいたいけど、もしかしたら
みんな僕と同じような事を思っていてそれをオクビにも出していないだけなのか
も。そう考えるとちょっと不安になる。
まあいいや。無意味な思考終わり。そう決めただけで思考が止められるのなら人
はもっと幸せになれるんだろうけどね……なんて思考しながら教室を出る。帰る
途中の帰路(日本語表現の妙だ)、電信柱から急に山口が飛び出してきた。そんな
勢いで飛び出すなんて一体何様だ!と言うと、奴は安田大サーカス?だか何だか
いうお笑い芸人のギャグを突然始める。運動場では六年生が30人31脚の練習
に励んでいる。僕は思う。やっぱり僕は彼らとどこか違っているんだ。

次は「欲求不満」「初霜」「眼鏡」でお願いします。
初霜の降りた朝、小学校の校庭で坂本が楽しげに足元の土を踏んでいた。
「霜柱、これ踏むの気持ちいいよね」
校庭の柔らかい部分の土が氷に押上げられていた。
「この眼鏡を踏むような感触が、たまらないよね」
淡々と語る坂本に僕はツッコミを入れておくことにした。
「なんだよその例え、眼鏡踏んだことあるんかいな」
冗談ぽっく、関西弁チックに言って、軽く肩を叩いてみる。
坂本の口元がニヤリと歪んだ。
「あるよ。山田の眼鏡」
脳裏に二ヶ月前の惨事が甦る。壊れた眼鏡を前に泣き叫ぶ山田。学級会での
犯人探し。疑われて怒り、泣く容疑者達。結局うやむやになる事件。
ア、アナタデシタカ
「……泣いてたよな、山田」
「事故だし、時効だし。……足りないなぁ……あ、山田ぁ!」
欲求不満げな坂本が山田を見つけた。足元の霜は全て潰されていた。


「夕方」「三歩」「野犬」でお願いします。
「夕方」「三歩」「野犬」

テントを出て三歩行ったところに地雷が埋まっていた。
事前の調査によればこのあたりは安全であるはずだった。
だから地雷撤去作業に派遣されたわれわれはここにテントを張ったのだ。
しかし実習で何度も聞いたあの音がぼくの足の下でした。
ほんの少しでも足を離せば片脚がなくなるだろう。

仲間たちは遠くまで出かけていて夕方まで戻らない。
それまでこのまま待つしかない。姿勢を変えることもできない。
荷重の変化に反応して爆発することもあるのだ。

昼を少し過ぎたころ、野犬が現れた。敵意を剥きだしにしてこちらに向かってくる。
銃はテントの中に置いたままだ。ぼくは大声を上げて威嚇してみる。
だが、まったく効果はなかった。野犬は地雷を踏んでいる方のぼくの足に噛み付いた。
ぼくは叫び声を上げたがそのままの姿勢を保った。

野犬の敵意が薄らいだようだった。噛む力を緩め舌先で足をぺろりと舐めた。
その突然のくすぐったさに、足が動いてしまった。
ぼくの足をくわえたままの野犬が舞い上がっていくのが見えた。


次は「貧乏」「秘密」「屋根」
彼女の部屋に盗聴器を仕掛けたのは三日前のことだ。
一人暮らしの彼女の留守に忍び込み──彼女の実家が裕福でなく、
どちらかと言えば貧乏な家の子で、防犯設備が整った最新のマンションに
住んでるんじゃなくてラッキーだった──コンセント型の盗聴器を取り付けた。
電源直結型で半永久的に動作する優れもの。
この夢の機械は、昨日と一昨日の夜だけで、どれほどの彼女の秘密を僕に
教えてくれただろう。
その夢の機械が、今夜はドスの効いた男の低い声を電波に乗せている。
((大人しくしろ。騒がなけりゃ命までは盗らねェよ。ウヒヒ。))
僕は、屋根に穴を開けて引っ張ってるアンテナ──少しでもクリアな音声を
聞くために必要な改造だ──を無線機から取り外した。
パジャマの上から上下のトレーナーを着込んで、無線機をポケットに突っ込むと
玄関に行ってスニーカーを履いた。
携帯で通報するのはまずい。
近くのコンビニに公衆電話はあっただろうか?
そして、彼女の家まで約2キロ。
自転車にまたがりながら僕は考える。
僕は彼女の部屋に行くつもりなんだろうか?
行ったところで、ヒッキーで小太りで盗聴マニアの僕に一体何ができるだろう?
ヒーローになれるわけがないじゃない。
だけど、だんだんペダルを踏む足には力が入り、僕は全速力で夜の町を走って行く。

「子供」「宇宙」「ウィルス」
533暇な469:04/05/05 08:59
「子供」「宇宙」「ウィルス」

「実行不実行に拘はらず斯様なる邪心を擁く事は皇國に対する反逆で在り
 発覚せし者は老若男女大人子供等関係無く直に重罰に処す」

僕は勿論この法を知つている
然しこの機会を逃せば最早他に機は無い事も亦確かなのだ
我の内なる正義は頼子といふ一つの宇宙が失はれた事を決して忘れない
残りのウィルス Bacillus anthracis virusは此処に置ひておく
若し僕が失敗し拘束された時には親愛なる君に代はりに果して貰ひたい
身勝手な僕を許して欲しい
最期に僕は真なる自由国家の建立を強く願ふ

次は「藍」「飢え」「丘」でお願いします。
 彼女は「飢えと摂取の関連と推移」というテーマで、夏休みの自由研究をや
ってきた。僕は教師という立場上、いくつものくだらない研究を評価してきて
疲労していたわけだが(青色は濃くしていくとどの時点で藍色になるか等)、
中学生にしては大人びている彼女が、黒板にそのグラフを磁石で貼り付けてい
る姿はとてもクールで知的に見えたし、興味をそそられた。
 黒板に貼り付けられた藁半紙には次の様な線グラフが書かれていた。
↑      __
摂     /  │
取    /   │
 __/    │
      飢え→
「説明をします」と彼女は言った。「ダイエットの障害として人間の欲求であ
る飢えがあります。グラフで言うとX軸にあたります。なぜ空腹感ではなく飢えと
呼ぶかと申しますと、糖類等は満腹感とは関係無しに摂取してしまうからです。
飢えは対処をしないと次第に増加していきます」
 彼女は上昇部分を指し示した。
「飢えが増えるにつれ、それを満たす為に必要な摂取量も比例します。そして
個々の人間の経験上満足するであろう摂取量までグラフは伸び続けます。しか
し、飢餓状態の限度を超すと、摂取量は0に等しくなります。これが拒食症です。
飢えとは無関係の方向へ変化するのです」
 彼女は黒板から目を離し、壇上から生徒達を見渡すと、静かに言った。
「人の飢えはとめどなく膨らみ続けますが、ある点を境に、人を手の施しよう
のない場所へ連れて行ってしまいます。飢えは丘の様になだらかではなく、崖
です。飢えを人の業と見なして、それを抑えずに昇華する努力が必要です。今
回は食欲として飢えを捉えましたが、グラフに見られる推移は食欲以外にも当
てはまるものと確信しています。みなさんも気をつけてください。発表を終わ
りにします」

 僕は後日、ロリコン雑誌と盗聴器とその後買った盗撮用カメラを処分し、監
禁の為に用意しておいたアパートを解約した。そして手の施しようのない場所
へ歩き続けたであろう自分を思った。
折れ線グラフにワロタ 次の御題希望 
536>>534:04/05/05 15:13
続行で頼む。
「藍」「飢え」「丘」

女はぼくを丘の上に案内した。道で声をかけた地元の女だ。
ぼくはこの村の取材に来ていて、もっとも重要な場所を知りたいと彼女に言ったのだった。
そこは、畑になっていた。
「藍を栽培してるんです」と彼女は言った。

「染料にするんですね。でもぼくは藍で染めた物を見たことがない」
「あなたのはいているのがそうですよ」と彼女は笑ってぼくのジーンズを指差した。
「いや、これはインディゴで染めてあるはずですよ」
「インディゴは藍なんです。でも最近は天然のものはほとんど使われなくなってるんです」
彼女は少し寂しそうな表情をぼくに向ける。

「この臭いをガラガラヘビが嫌うらしいですね。だから西部の男たちが好んではいた」
「あら、お詳しいんですね」と彼女は感心して見せたが、それがインディゴについて
ぼくの知っているすべてだった。二人はしばらく無言で畑を見ていた。

「私、仕事がありますから、もう戻らないといけません」と彼女は言った。
ぼくもそれ以上、藍について知りたいとも思わなかった。
ぼくは女に飢えていただけだった。


次は「物語」「分裂」「代理」
僕の愛していた女性は死んでしまった。

新しく彼女を作った。あの人の面影がある女性を選んだ。
でも、その彼女はあの人の代理であって、あの人ではない。
僕はあの人の語る物語が好きだった。
だから、小説家になりたがっている女性を新しい彼女にした。
彼女が語る物語も、秀逸なものだった。僕は飽きずにそれを聞いていられた。
でも、彼女はあの人ではない。人間が分裂するはずはない。それはアメーバだ。

あの人を愛していた。あの人しか愛せなくなっていた。
僕は何となくあの人の墓へ向かった。


うーん、なんかわけわかんない文章だなぁ・・・。
次は「爪」「ラリアット」「クーデター」でお願いします
539「爪」「ラリアット」「クーデター」:04/05/08 02:42
武器マニアのジミーが通販で鉄の爪を買ったから見に来いと電話をよこした。
ジミーが指定した場所はなぜか奴の家ではなく街のど真ん中だった。
指定の場所の近くまで行ってみると、大勢の人が逃げ惑っているのが見えた。
ジミーの奴、辻斬りでもやってやがるのかと俺は慌てて指定の場所に向かった。
そこには、素晴らしいメロディーがギンギンに響き渡っていた。
ジミーが建物のガラスを手当たり次第に鉄の爪で引っ掻いて回っていたのだ。
この馬鹿にラリアットでも食らわしてやりたかったが、
ジミーの奏でるメロディーは両手で耳を塞いでないと正気を保っていられないほどだった。
やがて、通報を受けたのだろうか、サツの車が何台もやってきた。
ジミーはサツの銃が次々に自分に狙いを定めていることにまったく気付かずに演奏を続けていた。
俺は静かにその場を後にした。
翌日、テロリストが射殺されたという記事が各紙に掲載された。
アルカイダの報復だの、クーデター未遂だの、様々な珍説が紙面を飾っていた。
読んでいて俺は、笑っていいのか悲しんでいいのかどうにも分からなかった。

「音波」「熱波」「周波」

 ざざん、と白く、波が砕けて、暗い沖の方へ去っていく。
 真夜中の砂浜である。月光にてらされ、海の家があった。
 波が、砂にしみこんで消えていく。
 放送の終わったTVの音だ。周波数は合っていても、何も映し出さない。
 「そうだ、あれは熱が引いていく音だ。海が砂の熱を洗い落としている音だ。
  波の音波の音、砂の熱砂の熱波に洗われ沖へと去る……か」
 男がつぶやいた。上半身裸で、肘をついて寝転び、海を眺めている。
 波が、また砕けては、砂にしみこんでいく。
 「なにか言った?」 女は、けだるげに身を起こし、ゆかたの襟をかき集めた。
 「何も言ってねえ、よ」 男は口付けをする。唇を食い尽くすような、熱い口付け。
 あん、と女はうめいて、男を突き放し、舌なめずりをした。
 「だめよ」
 男は、ふん、と鼻をならして、立ち上がった。
 砂浜に止めたランクルに乗り込み、エンジンを掛けた。
 周波数を合わせる。クラッシックが流れ出した。


 NEXT:「鼓動」 「震え」 「ドンペリニヨン」
541名無し物書き@推敲中?:04/05/08 17:37
聞き覚えのある曲に不意に鼓動が高鳴るのを感じた。
ハンドルを握る指先が微かに震えている。
あの時もこの曲を聴いていた。
彼女の口元からドンペリニヨンの香りが漂うのを感じながら。
542541:04/05/08 18:14
あれ、三語書いたのに反映されてない。ので改めて。

次は「富士山」「スカンジナビア」「二酸化マンガン」で。

つか、カンタンだねこれ。
ガキの作文みたいに酔っちゃえばいーんだから。
543名無し物書き@推敲中?:04/05/08 18:29
 今、富士山のあたりだろうか。
 スカンジナビア航空183便は、
 二百名近くの乗客を乗せ、順調に飛んでいる。
 
 二酸化マンガン、小・中学校において、この薬品は
 酸素を発生させる際の触媒として利用される。
 触媒、それは自分に身は削らず
 他の物質の分解を促進させる。
 
 この物質に過酸化水素水を反応させれば
 多少の火花でさえ、爆発的な引火を促す気体が発生する。
 さて、私の命もこれまでか。
 そう思いながら貨物室のドドラム缶をにらみつけた。

 「晴天」「安息日」「精神分析」

精神分析という言葉は消滅した。
量子力学の発展と応用が、人間の脳を完全に解析し、制御する事を可能にしたからだ。
だが、数式で完全に解析されたからと言って、現実存在である「ヒト」が想像世界を失う事は決して起こり得ない。
それは、化学式を暗記したという理由で、アルコールに酔わなくなる、というわけじゃないって話と同じだ。
患者の耳にLAN(Logical Area Network)ケーブルを差し込みながら、精神分解師の私は軽く武者震いをした。
全身に鳥肌が立っている。冷たい汗が背筋を湿らせる。
クライアントと言語世界を接続する前にはいつでもこうなる。
半年前に分解した患者の精神世界は地獄だった。
晴天に包まれた牧歌的風景の下、何千匹もの蝸牛を一匹一匹、殻の中に押し込まねばならなかった。
私は、目の前に横たわる少女の顔を眺めやりながら、あの時の青年の顔を思い出す。
『・・・・・・世界がひとつだけだなんて、人生が一度きりだなんて、いったい誰が決めた?』
ふいに心の中に響いた、割れ鐘のような大音声が、私の身体を凍りつかせた。
あるいは、あのカタツムリ世界は、彼にとって、生きうるべきもう一つの世界だったのだろうか。
私は軽く左右に首を振って、心に取り付いた妄想を振り払った。
神が安息日を必要としたように、神の子である人もまた、心の安息が必要なのだ。
人生は一つでいい。妄想世界など忌むべきものだ。そうに決まっている。
計器の色を確認して、正常動作の継続を確認する。
患者の精神世界を分解するためのスイッチをオンにする。

「屈辱」「神」「虫」
 僕は神なので、何でも出来た。
「そんなの虫が良すぎるね」とペットのクモノウエテントウムシが冗談を言っ
たが、もちろん僕は笑わなかった。彼が僕を笑わそうとしていることなんて、
僕が生まれた瞬間から分かっていたことなのだ。僕には知らないことなんて何
ひとつないのだ。
 僕の最近トライしていることといえば、弟の嫁女神を口説いてねんごろにな
ることだったが、もちろんやろうと思えばすぐに出来た。ただ念じればいいの
だ。でもそれではつまらないので、彼女が僕にトキメかない様に集中ながら口
説く。今の僕にとって、彼女の罵倒は屈辱的で頗る好感触だった。

 とはいえ、僕は何でも出来た。
 下界を覗くと、人間が神の様になろうとテクノロジーを発達させていた。果
てしなく続くその作業の行く末はしかし、途中で頓挫することになる。神にな
ってもしょうがないと彼らが気付いてしまうからだ。同感だった。
 僕は瞼を閉じると、いつも通り神を辞められる様に念じた。でも辞められな
かった。神を辞めたら辞めようとする念が無効になるからだ。神にだって出来
ないことはあるのだ。
>>545 次の御題が抜けてる
ルール上、次のお題書いてないときは継続
水曜日の夕方から酒場にいるやつは少ない。
「ほんと、運がなかっただけなんだ」男は繰り返した。
「そうですねえ、残念でしたねえ」
酒場のマスターが、カウンターを歩いていた虫をつぶしながら答えた。
すこしだけ開け放したドアの隙間から、西日が差し込んで光線となり、
店内のほこりっぽい空気を通過して、赤いスツールだとか、棚に並ぶ酒瓶だとか、
そんなものを照らし出していた。
「神様の、ほんの気まぐれさ。あそこで南風さえ続いてりゃ、俺の勝ちだったんだ」
「ええ、ええ、そうでしょうとも。あなたはベテランなんだし」
「ベテランか」男は考え込んだ。グラスに残ったウィスキーを一息にあおる。
マスターは何もいわず、ウィスキーを注ぐ。氷がとけ、音をたてた。
「ベテランか。俺もそんなことを言われる年になっちまってたんだな。
 若手に追い抜かれていく屈辱か。ま、しょうがねえやぁ、こればっかりは」
「昨日はたまたまですよ。風向きが悪かったんです」
マスターはそう言ったが、男は「しょうがねえ、こればっかりは」とくり返しつぶやいた。

NEXT: 「便所」「血液」「注射針」
549名前はいらない:04/05/09 14:46
華奢な青白い腕に、「赤」は良く似合う。
血液という名のその「赤」は、その腕から便所に床に垂れた。

嗤った。

意識が遠のいていくのが解った。
『嗚呼、これでもう、俺は・・・』

その先に思ったことが思い出せない。
唯一つ頭に浮かぶのは、この腕の注射針の痕が「赤」で埋め尽くされていく光景。



1996年11月2日午前2時16分。  俺は、死んだ。



550名前はいらない:04/05/09 14:48
>>549です。お題書き忘れたのでここで。
「しゃぼん玉」「檸檬」「土」
551名無し物書き@推敲中?:04/05/09 15:40
「便所」「血液」「注射針」

リトマス紙が赤くなるのはどっちの場合だっだっけ?
公衆便所でふと考えた。昔からいつもこんがらがって、結局今もそのままだ。

――地獄へ落ちろ。
公衆便所で便座を抱えて嘔吐しながら思い出したのは、母の呪いの言葉だった。
あの時は善悪なんて範疇になかった。自分が悪いだなんて、本気で思わなかった。

――残念ですが、陽性です。
でも、ほんの数時間前に医者から告げられた血液検査の結果は、有罪の判決。
やはり、悪いのはわたしなのだろう。
でも、母さん、わたしはあなたを救ったんだよ。あの、最低なオトコから。
注射針を使い回すようなマヌケな義父から。

赤いラインが薄く浮き出た妊娠検査薬をゴミ箱に投げ入れ、外に出た。
良く晴れていて、公園の緑が目に鮮やかだった。

母さん、どうやら地獄の空は青いみたいよ。


かぶりごめん。お題は>>550で。


 灰色の空の下、湿気を帯びた土の上を歩き、僕は自宅へと向かっていた。
 僕が生まれる少し前に拾われてきた犬が、病院での治療の甲斐なく死んだ。犬と人間の
寿命は違うと頭で理解していても、この衝撃を簡単に受け止めることは出来なかった。

 途中、子供がしゃぼん玉の歌を歌っていた。本当は悲しい歌であるという事実を知らな
ければ、この傷ついた心を少し癒したかもしれない。この時、初めて自分の知識を憎んだ。
 通りなれた路地を進むと、今まで視界に入っても全く気に留めなかった自動販売機が、
今日に限って強烈なアピールをしている。随分と歩いて喉も渇いていた。丁度いい機会な
ので、僕が好きなレモンスカッシュでも買って飲むことにした。この潤いで、先程のしゃ
ぼん玉の歌で傷ついた分は回復したように感じた。
 空を見ると、更に雲が多くなり、今にも雨が降り出しそうだったので、急いで飲み干し、
小走りで自宅へと向かった。

 運動不足のせいで少し息切れしたが、何とか自宅まで走った。主の居ない犬小屋を見に、
庭まで歩いた。そこで僕は、わが目を疑った。もう犬は居なくなったはずなのに、母と戯れ
ていた。母に、何故ここに犬が居るのか聞いてみた。すると、こう返ってきた。
「また今日、犬拾ってきたのよ。やっぱり、犬が居ないと寂しいでしょ。そうそう、何か名
前のいい案ある?」
「檸檬」僕はとっさに答えた。あの時飲んだレモンスカッシュが僕の心を癒したように、こ
の犬が僕を含む家族全員を癒すことを願って。

さっきまで空を埋め尽くしていた雲がまばらになっていた。柔らかい光が僕達を照らした。

次のお題「赤道」「変化」「コンセント」
「タクト君、待ちかねたよ」
その声は、頭上からやってきた。電柱を仰ぎ見れば、暗い空になお暗く、ひとつの影があった。
「ライティングして下さい!」
両手を広げ、そいつが叫ぶ。真っ白なサーチライトが2本、左右から放たれた。
道化の化粧。いやらしく歪曲された笑顔。赤く染めたアフロヘアーに、ラメの入った真っ赤な衣装。
赤と白に塗り分けられたステッキまで持っている。一瞬よろけた足元もまた、赤いブーツだ。
「あぶね」ボソッと言ったのがここまで聞こえた。はっと目が合う。決まり悪そうだ。
つぶらな瞳をぱちくりさせていたが、やおら真っ赤な拡声器を取り出した。
「あーテステス。さて、自己紹介させてもらおうか! この俺様が……」
うるさいうるさい。僕は人差し指をビッとたて、やつの言葉をさえぎり、言ってやった。
「赤道化のドッシャだな?」
大げさなほどに狼狽したドッシャが、電柱から落下しかける。
「なんでそれが分かった!?」
無様なかっこうでしがみついてる状態に、さらに追い討ち。
「へへっ、簡単な推理さ! だがお前には教えない!」
「うは、理由がしりてええ……」
力尽きたドッシャの手がすべり、下にあったゴミ箱に急降下していった。
妖怪変化の断末魔と爆発音を背に、僕はきびすを返し、つぶやく。
「コンセントレーションが足りないね」


NEXT: 「散弾銃」「ロングコート」「画鋲」
「散弾銃」「ロングコート」「画鋲」

部屋にどら猫が侵入していた。
夕食のために調理しようとしていた魚をくわえ、窓から出て行った。
ぼくは裸足のまま追いかける。

どら猫は路地を駆けていく。ぼくは悠然とついていく。その先は行き止まりだ。
突然、足の裏に痛みをおぼえる。地面には画鋲が撒かれていた。
ぼくは注意ぶかく足場を探しながら進んでいく。

前を見ると、いつのまにか黒いロングコートを着た男が立っていた。
ぼくを見る目に殺気が帯びている。足元にあの猫がいる。
ゆっくりとあとずさりながら、ぼくは男のロングコートの裾を観察する。
なにかを隠し持っている。

どら猫がじゃれついたときにすこし裾がめくれた。男が持ってるのは散弾銃だった。
ぼくは踵を返して走り出す。しかし、画鋲を踏んで倒れる。
うしろから散弾銃に装弾する音が聞こえる。ぼくはゆっくり後ろを振り返る。

男はどら猫を射殺した。


次「予告」「殺人」「記録」
「予告」「殺人」「記録」

 今日の署長はとても機嫌が悪い。また、あのきつい奥さんと喧嘩でもしたのだろうか?
「我が県警内の事件発生件数の記録を、所轄別に過去50年分調査してくれ。午前中に」
 は? 50年分を今日中に? 「おおジーザス!」って気分だよ。
 それでも悲しい宮仕えの身、ちゃんと昼までには仕上げて署長に持っていったさ。
「お、出来たか? どれどれ」
 署長はひったくるように書類を受け取った.
「自分が感じていた通り、過去50年間の殺人事件件数は、1件差で我が署が一番少ないのか。
……しかし、残念ながらもうすぐ2位のN署と並ぶんだな」
 へ? これから起きる事件の発生がわかるとは、ひょっとして署長は超能力者なのか?
「ご苦労、もう下がっていいよ」
 そう言われて署長室を出た5秒後、今出てきた部屋から銃声が聞こえた。
 署長室に飛び込むと、拳銃でこめかみを打ち抜いた署長が、机にうつ伏せで倒れていた。
 机の上の電話が鳴った。とっさに受話器を取る。
「今、署長のご自宅で奥様のご遺体が発見されました。奥様は首を絞められたことによる窒息死と見られ、
殺人事件と思われます。これから鑑識班が現場に急行し……」
 ようやく、鈍い俺にも署長の予告の意味がわかった。


次「蜜柑」「花火」「PHS」
556岸和田 ◆JNnFWYTu2A :04/05/12 20:44
 目が覚めたのは夜中だった。
僕はベッドから起き上がると、流しまで歩き、グラス二杯水を飲んだ。
そしてリビングへ行き、カーテンを開けた。
ひゅるひゅるひゅひゅひゅうひゅひゅ  どーーん
という音が響き、空に火花が飛んだ。花火だ。
僕は急いで流しの隣の冷蔵庫に向かうと、缶ビールを二本取って、
リビングのソファに腰掛け、テーブルに缶ビールを置いた。
花火を見ながらビールを一口飲んだところで、テーブルの上に食べかけの蜜柑が
ある事に気付いた。それをつまんで食べてみたが、ぬるくて不味かった。
 缶ビールを飲みきってしまうと、僕はPHSで彼女に電話を掛けた。
花火をやっているからいま会えないか、一緒に観よう、という内容だ。
玄関で靴を履くと、頭痛がすることに気付いた。
奇妙な頭痛だ。トゥキン、トゥキン、と痛む。ズキン、ズキンではない。
この奇妙さは、口に出してみれば―発音すればわかる奇妙さだ。
トゥキン、トゥキン。

 「生活感」「偏狭」「ケータイ」
 偏狭なゴロツキがケータイを弄り回していた。
デスクにどっかと腰掛けながら、ボタンを数度打ち付ける。
先ほど届いたメル友からのメール。その閲覧のためだ。 
 [件名:トシタカさんっ♪]
 トシタカさんとは、ゴロツキのウェブ上でのHNだ。無論本名ではない。
常に修羅場を潜っている彼は、安易に自分の情報を曝け出したりはしないのである。
 [本文:トシタカさんはあのチョ〜! でっかい会社のホープなんでしょ!? いいなァ〜]
 [件名:アサミちゃんも]
 [本文:スゴイじゃん!! あの有名お嬢様学校の令嬢だっつうし! ウラヤマしぃな〜]
 下らない、しかし生活感をさほど感じさせない短文を打ち終え、送信する。
「若! 時間です!!」
 若い鉄砲玉。見るからに荒々しく、洗練されていない。しかし、それゆえに何か綺麗だ。
「……いくぞォ!!! 斐川組の散り様ァ、ダボどもの眼に叩き込んだれェ!!!!」
 若頭はケータイを畳み、叫んだ。数多の構成員達の殺気が増す。
この世は、虚構だ。
「球」「火」「観覧」。お題忘れスマソ。
久しぶりの休暇が取れたので、後楽園へ行く。
場外馬券場に寄る。久々の馬券購入のせいか、昔やっていたときには無かったルールの購入方法にとまどいながらも、なんとか購入する。
根っからの競馬野郎、というわけでもないので、500円で3−6。あたれば、ちょっとした小遣い程度にはなるだろう。
発走時刻までは、だいぶ時間があるので、あたりを散策しているうちに観覧車の麓に来ていた。
なぜ乗り込んだかは自分でもわからなかったが、それこそ10年ぶりに見る空からの東京を眺めつつ、昼飯代わりのメロンパンの袋を破く。
眼下にまっさきに目についたのは、手に持つメロンパンのような巨大な白い屋根。
野球狂だった親父に連れられたときは、ゆうえんちではなく、まだ後楽園球場と呼ばれていたころの夜空の見える野球場だった。
3年前に逝った親父の顔を思い出しながら、しばし昔の思い出にひたっているうちに、揺れが止まるのを感じた。一周しおわったらしい。
観覧車を降り、場外馬券場に戻ってみると、さっき買った馬券が当たっていたようだ。意外な幸運に喜びながら、ふとドームの方へ脚を運ぶ。
屋根のない球場ではよく見ていたが、ドームに来たのは初めてのことだったので、あたりを見回しながらチケット売り場を探してみる。
意外にも、すぐに見つかったことは見つかったが、看板を見るとそこは「WJプロレス 東京ドーム大会」。なんだ、プロレスだったのか。
少し、首をひねって考えてみる。まぁ、いいか、とチケットを購入する。スタンドの後ろの方だ。
もともと野球が見たかったわけではなく、昔の思い出からきたせいでもあった。要はドームに入りたかっただけだったのかもしれない。
そういえば、おおにた、とかいうのがいたな、あれはまだ火炎放射とかやってるのかな、とか思いながらドームの中へ入っていった。

次、「真ん中」「勘弁」「うどん」でおながいします。
うどんが鼻と口でループしている。
自分と外界とうどんの差異が解らなくなっていく。
それは恍惚のようで、あまりにも切ない自虐行為。
マジ勘弁。

お題継続
「真ん中」「勘弁」「うどん」

 瀬戸大橋を渡りながら、眼下に広がる青い海と島々を眺める。これが多島美というやつか。
 讃岐うどんの美味さを切々と語る香川出身の友人に、
「たかがうどんだろ、そんなに美味いわけないじゃないか」
と言ったのが運の尽きだった。友人は猛烈な勢いで反論し、
「それはおまえがうまいうどんを知らんだけじゃ! とにかく香川に来てみい!」
とのことで、強制的に今回の連休のスケジュールを決められてしまった。
 瀬戸大橋を降りると、すぐに友人に電話する。
「予定より1日早くなって、今こっちに着いたんだけど、これから出てこれるか?」
「悪い! それは無理や。今日はこれから親戚の法事に行かんといかんのや。明日以降なら大丈夫じゃけん、
とにかく今日はおまえ1人で何とかやってくれ。じゃあ、時間無いんで切るわ」
 仕方がない。とにかく1人でうどん屋を探さなければ。
 讃岐うどんのガイドブックを開け、その真ん中に載っている「わら屋」が目に入った。よし、ここにしよう。
 迷いながらも店に辿り着き、名物だという「たらいうどん」を注文した。「なんじゃこりゃあ!」
 大きなたらいにたっぷりと入った釜揚げうどん。運んできた店の人が言う。
「こちらは、6人前入っています」
 ……勘弁してくれ。


次「ホテル」「家電量販店」「期待」
 都内の某ホテル(否ラブ)に、一組の男女が居た。
家電量販店で大量に投げ売られていた大作崩れゲームの転売に失敗したのである。
「えーと……」「…………」
 その数、何と3千。おどろおどろしいパッケージが、部屋全体を埋め尽くしていた。
「ど、どこも買ってくれなかった、ねー……」「…………」
 明らかに引きつった笑顔の女。男はただただ下を向いて、たまに舌打ちしたりしていた。
「か、買ってくれたっていいのにねー。二束三文でもよかったからさー」「…………」
「期待はずれもいいトコ! 金になると思ったのにねー」「……そっすね」
「…………」「…………」
「……気合!」「……はァ?」
「根性!!」「…………」
「努力!!!」「…………」
「……期待ッ」「……気合と根性と努力と期待で頑張って下さいねー、一人で」
翌日、女は1人で3千のゲームソフトを背負い、街を行脚した。その日は5本売れた。

「存亡」「観点」「差別」
563岸和田 ◆JNnFWYTu2A :04/05/13 22:49
「存亡」「観点」「差別」
「なあ、俺らいま何か存亡の危機って感じなんだけど」
「なに、別れんの?じゃあ俺にくれよ。あいつ結構可愛いもん」
「ぶぅぅぅぅぁぁぁか。別れるはずが無いっていう。観点っつうかなんつうか、
テメーは目ぇつけてるとこがちげーんだよ」
「何だと!!!それは俺に対する差別と受け取るぞ!!!」
「あっ……ちげちげぇ、そういった意味じゃねーの。お前の話に対する目の
付け所っつうか、着眼点の話をしたわけで」
「ふう……ふうふう。気ぃつけろよお前マジで。俺が異星人ってこと
忘れてんじゃねーの?」
そう言って男は頭の真横に付いている目をぎょろつかせた。

 「喪失感」「失われる」「止まない」
564「喪失感」「失われる」「止まない」:04/05/14 06:21
「喪失感」はうなだれたままひとり煙草を吹かしつづけている。
窓を開けることも忘れ、うなだれることに没頭しているようだ。
部屋には霧が立ち込めたように、煙が虚ろに流れている。
「喪失感」は失われたもの、これから失われるであろうものについて考えつづけている。
他ならぬ「喪失感」が、それらのものについて思考するのは、まったく自己言及的だ。
彼は自らの無根拠性の不安の中で、思い出したように窓を開けに立ち上がる。
止まない雨が止んだような、パラドックスに満ち溢れた、
夜明け前の清冽な空気に触れ、明けない夜はないのだということを
あらためて彼は実感してみせる。
喪失感もまた失われていくのだ。

お次のお題は、「野球」「イラク」「キリスト」でお願いしまつ。


565岸和田 ◆JNnFWYTu2A :04/05/14 09:41
「野球」「イラク」「キリスト」
 ラジオから野球中継が流れている。
雨粒が窓を叩き、部屋に雨音が響いている。
俺はすっかり湿気ってしまったポテト・チップスをかじり、
カーテンを閉めた。
俺はろくに聞いてもいないラジオを消し、かたかたと震える手でテレビをつけた。
ひどくなった乱視でじっとテレビを睨むと、眼鏡をかけた男が
イラク人の虐待がどうのこうのと言っていた。
その時、自分が声をうまく聞き取れていないことに気付いた。
俺はテレビを消し、ふらふらとする足で洗面所に向かった。
すっかり汚れた鏡をパーカーの袖で拭いて、自分の顔を見た。
ひどい顔をしていた。髭は伸びきって、髪に潤いが無く、目がどろりとしていた。
ひどいくまが目の下に出来て、しみが至る所に浮かんでいる。
これならホームレスのほうがまだいい顔をしている。
こんな俺を誰かが助けてくれるのだろうか。
キリストも仏も、いや世界全てが俺を見捨てたのだろう。
俺は洗面所にそのまま座り込んで、深い眠りについた。

 「タイラノール」「ニガー」「ヴァース」
566的当て:04/05/14 12:19
ヒュイはコックピットに乗り込み機体を起動した 一瞬の判断だった
「なんだ!この力は?」
その時エースパイロットのトリックは凄まじい力を感じていた 
トリックも幼い時から鋭い感性を持っていた ヒュイと同じように
だが凄まじい力を感じたのはトリックだけではなかった
二ガーであるシアン、ヴァース、タイラノールもそれを感じていた
ヒュイには全てわかっていた アクセル、ブレーキ、砲の撃ち方、ミサイルの位置
突然、空を閃光が貫いた
ヒュイは凄まじい速さと驚くべき正確さで砲を発射した
敵のHAは爆発、原型をとどめず破片な地上に落ちっていく
その時トリック達はヒュイだけを見つめていた

1機の機体がヒュイに近ずいていった
「ヒュイ・テイルスだな。イギリス大西洋艦隊大佐トリックだ
君のことは大体わかる。君の仲間だ」
ヒュイはなぜ自分の名前を知られているのかわかっていた

ジャック 切り裂き 赤

ドサッ、と重量のある音に俺はハッとして、円卓の裏から舞台を振り返った。
講堂の幕を背景に人が蹲っている。ゆらりとその人は顔を上げた。板張りの床に
琥珀色の影が揺れている。
「拓也……?」いぶかしむような声は次の瞬間、「どうしたんだ!」と、叫びに
変わった。拓也の顔は血に濡れて真っ赤だった。首に一筋切られた跡があり、
シャツも真っ赤で、切り裂きジャックにでも遭ったようだ。拓也の体がぐらりと揺れる。
「拓也!」俺は駆け寄って拓也の体を支えた。拓也は苦しそうに息を吐く。
「タ……」「た?」何かを言おうとする拓也に俺は顔を寄せた。途端、
拓也がにいっと笑った。
「タッチ」
俺の口が、釣り上げられた魚のようにぱくっと開く。
「……は?」「次はお前が鬼な! 50数えろよ!」
呆然とする俺を残して拓也が走り去った。俺は立ち上がり、ベトベトする両手に
視線を落とす。舐めると、トマトケチャップの味がした。

==========
定番過ぎたかな……
次のお題「怪盗」「ホラー」「さざなみ」
568567:04/05/14 14:05
投稿してから気付いた。情景描写が足りないですね。失礼いたしました。
569567改:04/05/14 14:18
見苦しいのを承知で再投稿させて下さい。
上のままだと分かりにく過ぎるので、すみません。
===============
ドサッ、と重量感のある音に俺はハッとして、円卓の裏から舞台を振り返った。
中学校の講堂の幕を背景に人が蹲っている。ゆらりとその人――体格からし
て同年代の少年だろう――は顔を上げた。板張りの床に琥珀色の影が揺れて
いる。俺はその顔を知っていた。友達だ。
「拓也……?」いぶかしむような声は次の瞬間、「どうしたんだ!」と、叫びに
変わった。拓也の顔は血に濡れて真っ赤だった。首に一筋切られた跡があり、
シャツも真っ赤で、切り裂きジャックにでも遭ったようだ。拓也の体がぐらりと揺れる。
「拓也!」俺は駆け寄って拓也の体を支えた。拓也は苦しそうに息を吐く。
「タ……」「た?」何かを言おうとする拓也に俺は顔を寄せた。途端、
拓也がにいっと笑った。
「タッチ」
俺の口が、釣り上げられた魚のようにぱくっと開く。
「……は?」「次はお前が鬼な! 50数えろよ!」
呆然とする俺を残して拓也が走り去った。俺は立ち上がり、ベトベトする両手に
視線を落とす。舐めると、トマトケチャップの味がした。
==========

次のお題はそのまま、
「怪盗」「ホラー」「さざなみ」    で。
570岸和田 ◆JNnFWYTu2A :04/05/14 20:17
「怪盗」「ホラー」「さざなみ」
 昔、といっても数年前のことなのだけれど、僕はあるコンビニの店員だった。
つまりアルバイトをしていたのだ。
 さて、ここから―つまり僕が入ってからの二ヶ月は省く。
三流ホラー映画より数段つまらない二ヶ月だからだ。それに、この二ヶ月に
僕が話したい事は含まれていない。よって省く。
 まず僕が話すべきなのは、あの事件だろう。
怪盗ペーター十二世がうちのコンビニで百円の電池を盗んだのだ
とかいう下らない、馬鹿馬鹿しい話でなく、ある女の子がバイトに入ったのだ。
僕はその女の子を初めて見たとき、衝撃を受けた。
彼女は緑色の肌で、触覚が生えてて、僕を見るとシャーとか唸った
なんて話がこの世に存在するわけがない。バッカじゃないの?
本当のことを言うと、彼女は在日韓国人だったのだ。
僕は別に差別していたわけじゃなく、単に田舎者だったから衝撃を受けたのだ。
 さてそれから僕と彼女は素敵な恋に落ちて、だけど両親が反対して
僕らははさざなみにさらわれた瓶のごとくかけおちした
なんていう糞古いドラマみたいなことは一切無く、彼女はいまもコンビニで
バイトしてるみたいです。僕は彼女が入ってから三日で辞めた。
親が服代くらい出すわよ、と言ってくれたから。

 「青春」「はせる」「この先」
 みんなを乗せた送迎バスが、俺たちの横を通り過ぎていく。
 「なまむぎなまごめなまたまご」
 ツインテールがちょこんと跳ね、スカートがひるがえる。
 スキップの上手い俺でも、なんだかマネの出来ない異様なリズムで、
 俺の前をスキップしているのが赤坂はせる。隣の長女だ。
 「早口言葉の練習か?」
 俺ははせるの尻に、軽くハイキックをくらわした。
 「ヒドイ。横に割れたらどうしてくれんのよー」
 「まじか。そりゃスゲエ、見せろ」
 きゃ、きゃ、と言いながらスカートのすそをかばう姿に、
 俺の”俺様”が不覚なことになってしまった。
 しゃがみこみ、靴紐を結びなおしてしのぐ。
 そんな俺の周りを、ぐるぐるとスキップするはせる。
 くっそ、年下だと思ってなめやがって。お前のなんか、意地でも見ねえ。
 生贄にされた気分だ。おさまれおさまれ俺様。
 「赤パジャマ、黄パジャマ、茶パジャマ。ああっ、大変だ」
 飛び回っていたはせるが、尻をおさえて眉をひそめる。
 「どした?」目を上げたら、確実に見える位置だ。顔が上げられない。
 「尻が……」はせるが不安げな声をもらす。
 「尻が?」靴紐をいじりまわしながら、聞き返す。
 俺の目の前に、はせるが後ろ向いて、しゃがみこんだ。
 「ほら、横に割れたうえに、穴まであいておる!」
 「バカかお前は!」
 精神集中。靴紐に集中だ。丁寧に丁寧に結びなおすこと3回。
 俺様の封印に成功した俺は、やっと立ち上がることができた。
 「赤春巻き、青春巻き、黄春巻き。オナカすいたね」
 「この先の駄菓子屋で何か食うか?」
 「君のおごり?」ずうずうしい。「知らん」と答えた。
 「靴紐結ぶふりして、のぞいてたくせに」
 「のぞいてねえよ!」
 思わず声がでかくなったが、はせるは動じない。笑って俺の頭をなでた。
 ……全く、やな女だ。絶対おごるもんか。
……で、次のお題は?
573571:04/05/15 14:10
忘れてた。

「盆踊り」「泥」「お医者様」で。
574岸和田 ◆JNnFWYTu2A :04/05/16 17:24
「盆踊り」「泥」「お医者様」
 夜、電話が鳴った。僕は家電は基本的に出ない派なので、
コーラを飲みながらファッション雑誌をめくっていたのだが、十回鳴ったところで
仕方なく子機を取った。
「はい、もしもし。松田ですけどー」 僕はわざとだるそうな声を出した。
「あーお前?あのさぁ、いま祭りやってんだけどさ、来いよ」
同じクラスの金原だった。まぁ、それなり友達だ。
「いいけど?っつーかお前ケータイかけろや。アドか番号知ってんだろ?」
「盆踊りだけど、いいべ?盆踊りはいいぞ」 金原は無視して言った。
「お医者様のご子息ともあろう方が盆踊りやんないで下さーい」
 金原は少し笑うと、セキをしてから言った。
「まぁいいじゃん?なぁ来んべ?女子やたらいるぞ」
「妻子持ちっつーか彼女いるからいいでーす。うぜー、大体盆踊り行かねっつの!」
そして僕は電話を切り、あくびをすると泥のように眠った。

 「バイク」「あんた」「子供達」
 眩い稲光が俺のバイクに直撃したあの日から、俺は変わった。
今の俺は、正義を挫き悪を助けるダーティーヒーロー・雲隠。半分ヤケだ。
 バイクは高いのでそうそう買えない。かといって、働いて収入を得る気もしない。
なので、今日もチャリで通園途中の子供達の群れを襲おう。強襲だ。
 鈴をガチャゴチャ鳴らしまくってガキどもを追う。奴等の泣き叫ぶ声が心地いい。
悦に入っていると、首に衝撃。ラリアットを喰らった。頭から思い切り地面に叩きつけられ、
俺は意識を失った。誰だ、誰が俺にこのような狼藉を……。
 目を覚ますと、深い森の中にいた。目の前には、生まれてすぐに生き別れた母。
間違いない、写真で見たあの女。事故で死んだ親父が美人だったと言っていた――。
「○○――信じなさい、物事を綺麗な眼で見るのです」
「お…母さん、無理だ、俺はあの日からもう何も……何も信じたくない、られない」
「そう……つらかったのね。なら、そこまで無理は言いません。だけど、これだけは誓って。
次に目に映った人だけは信じて、信じて、信じ抜いて。約束ですよ――」
 目を覚ますと、青い空が目の前に広がった。そしてすぐに、女の顔が広がった。
「大丈夫!? でも、あんたが悪いのよ。子供達にいたずらしたりするから……」
 引率している保母か。この女を信じぬけというのか、母よ。
「……よろしく」
「はぁ?」
 とりあえず、信じてみよう。

「祖先」「振興」「乱戦」
「ここらへんで、おらたちが祖先から脈々と受け継いできたこの村の、振興を図らねばな
らねっぺ」
 松井田村長は、公民館でだしぬけにいった。牧歌的な田舎者たちが雁首揃えて不審な面
持ちになるのを睥睨すると、まるでモーゼにでもなったつもりであるかのように、ぷるぷ
ると震える拳を振り上げた。
「長谷部さんとこの倅がよお、上京したって言うでねぇの。若ぇやつはどいつもこいつも
東京、このまんまじゃあ、村の火葬はとまんねえでよ」
「村長さんよ、それを言うなら、火葬じゃなくて過疎だっぺ」
 石倉さんとこのおじいちゃんが、したり顔で指摘した。失笑があちこちから漏れる。
 それが気に障ったらしく、モーゼは自分の痴呆を棚に上げ、大声をはりあげた。
「そういうのをよ、揚げ足取りっていうんだべよ。そもそも棺桶に片足突っ込んでるって
意味じゃあ、村もおめぇさんも変わらねぇべさ」
「なんだとう! わしのどこを見て『棺桶に片足』と言っとるんじゃ、この耄碌爺めが」

 かくして、村の振興は成った。公民館での爺二人の乱戦を、見世物にしようという、米
屋の清吉爺さんのアイデアが大当たりしたのだ。自らリングに立ち、老人に夢と希望を与
えつづけた松井田村長はしかし、加速度的に発展する村を見届けることなく、永眠した。
享年八十九であった。妻のトメさんの証言では、自身がブームの火付け役となった爺格闘
技「爺−1」の第一回大会に参戦できないことを悔やみながらの最後であったらしい。


次は「スタンディングオベーション」「設計図」「交渉」でおながいします。
577名無し物書き@推敲中?:04/05/17 22:26
ダグラスがラリって自分の家を燃やしたので、仲間と共同で新しいのを建ててやることになった。
ダグラスはスタンディングオベーションをスタンディングマスターベーションだと思っていたほどの愚か者だ。
字も読めないし、一人ではレゴブロックの家すら組み立てられない。
そこで俺達が一肌脱いでやることになったのだ。
どんな家がいいかダグラスに絵を描かせて、それを元に設計図を組み立てた。
ダグラスは地上五十メートルの塔を作ってその上に住みたいということだった。
何とかと煙は高いところが好きだというのは本当らしい。
資材を集めるのは大変だった。強欲な材木屋と何日もかけて交渉したり、
街中のゴミ捨て場を全部回ってかき集めたり。
そして、一ヶ月ほどかかってダグラスの新しい家は完成した。
かかった費用はざっと100ドルといったところか。
思ったよりは安く済んだが、貧乏人揃いの俺達には大きな出費だった。
ダグラスは大喜びだった。乏しいボキャブラリーで懸命に感謝を表されて、
俺達の苦労も報われたと感じたものだった。
三日後、塔が倒れてダグラスは家の下敷きになって死んだ。
惜しい奴を亡くした。


「エサ」「失踪」「交換」
「フフフ。これでいい。」
朝刊の三行広告欄を見ながら、男は邪悪な笑みを浮かべた。
エサは撒いた。あとはかかるのを待つだけだ。
あの女が失踪したのが一週間前。本人は上手い事隠れたつもりだったんだろうが…。
鮮やかな手口の中で犯した唯一のミス。たった一つの些細なミスを命と交換する破目になるとは、想像もしなかったろう。
ゆっくりと新聞をデスクに置き、男は煙草に火をつけた。

「古城」「梟」「コーヒー」
 日が沈んでからテントを張って、コーヒー片手に星の輝きを眺めていると、急に大きな
羽音が聞こえてきた。驚く間もなく、眼前を梟が飛び過ぎる。いや、梟にしては大きい。
 過ぎる刹那、不気味に光る両の目とあの荘厳な顔立ちを見た。確かにイーグルオウルの
類である。しかし、体長は一メートルを全く超えていた。翼長もニメートルはあったろうか。
 一呼吸の間に焼き付けた像をどうにか分析すると、私はすぐにテントをたたんだ。もし、
あの大梟の縄張りに入って警戒されたのであるなら、怪我をしないうちに出なければ
ならない。
 目的地は近い。何でも少し前まで偏屈な老貴族が住んで、誰も寄せ付けなかった城なの
だそうだ。今では森の奥に廃墟があるだけだろうと、最後に泊まった宿の主がいっていた。
 空が明るくなってきて、いよいよ木の間から白い姿が見えてきた。貴族の去った五十年の
間、遠目にはどこも痛んだ様子はない。もっと近づこうと歩みを速めた時、あの梟が再び
私の目に映った。
 城門の近くに立つ木に止まって、私を射抜くように見ている。尚近づこうとすると、彼は
吠えるように鳴いた。近づくなとということだろうか。私はもう一度城を見た。
 どうやら新たな主を得たらしいこの古城は、もうしばらく誰も近づける気はないらしい。

次「計算」「ホルダー」「強力」
580名無し物書き@推敲中?:04/05/18 20:55
ひたすら樹海の奥へ進む。
ペットボトルには、もう水が残ってなかった。俺は、ドリンクホルダーごと
外して投げ捨てた。少しでも身軽になるためには、不要なものは処分し
なければならない。不要なもの・・・・それは俺自身でもあった。

少し進むとまた死体があった。これで3度目だった。
スーツ姿の男だろう、胸ポケットには計算機が放り込んであった。金融
関係の人間だろうか。俺はその計算機を取り上げ、電源を入れてみた。
すると、以前のタイピングメモリが残っていた。そこには
「505」
という数字が浮かんできた。俺はそれが「SOS」に見えてならなかった。
普段なら単なる数字としか見ないであろう。この状況にあってこういう
想像をするんだ、と俺は自分を嘲笑した。

死に場所を探さなきゃ。俺は強力な樹海の魔力にどんどん蝕まれて
いった。

next「立ちんぼう」「熱帯魚」「ショットガン」
581罧原堤 ◆5edT8.HnQQ :04/05/18 22:17
ショットガンで熱帯魚を撃つ。そのとき俺の脳裏に思い浮かぶ立ちんぼうの姿。
熱帯魚を入れてる水槽がぶくぶくいっていた。泡を出す機械は今日も正常に作動している。水槽に入れるインテリアとして。
死んだネオンテトラから血が出て、その血は生きていた時のそいつの体より美しい。
俺の脳が異常になっているのが俺にも分って……
血で染まっていく水槽の水に俺の極彩色の薄ら笑いが浮かんで……

俺は何のために生まれてきたのだろうか?

またおれは着飾って立ちんぼうを買いに行く。そんな日常を繰り返して金も無くなってきてしまった。残っているのはお前らへの憎しみだけさ。
ショットガンでおれのこめかみを打ち抜く時が近づいて来ているのだろう。明日、午前五時くらいに。

ネクストお題「蛙」「上流社会」「ロンリネス」
「シンジ、遊んでいかない?」
バハマの茹だるような熱帯夜の中、一仕事終えて帰途につく俺に流暢な日本語で
声をかけてきたのは、見事に括れたウェストラインを持つ立ちんぼうだった。
持ち合わせがないことを告げると、彼女―リザ、と名乗った―は笑いながら腕を
絡ませてきた。俺が右肩に掛けたゴルフバッグには触れぬよう気を遣いながら。
「じゃあ今日はもう仕事終わりにするから、うちに来ない?」
いつもの俺なら軽くいなして立ち去るのだが、彼女が身にまとった麝香の香りに
惑わされたのか、或いは久しぶりの仕事を完遂して気が緩んだのか。気が付いた
時にはリザの部屋の小さなベッドの上で、狂ったように身体を重ねていた。
灯りは小さな水槽が投げかける青い光だけ。その夜は熱帯魚になった夢を見た。
暫くしてリザは仕事をやめた。俺たちは将来について語り合うようになっていた。
日本でシンジと暮らしたい。瞳を輝かせながら語るリザに、俺は微笑みで応えた。
――白いシーツ。流れるような黒髪。褐色の肢体。そして、飛び散る赤い血痕。
裏切りは許せない。リザがとっくに別れていた筈の情夫の死体を窓から投げ捨て、
リザの額に軽くキスをした。ショットガンをバッグにしまい、俺は部屋を出た。

お題は>>581の通り。
583鬱井 ◆YnRRG3sK2U :04/05/18 22:44
 孤独な金持ちと孤独な貧乏人では、後者の方が幸せだろう。
 庶民という集合に属する彼らは、仲間意識を共有する相手を
探す事は難しくない。
 俺はもう、十年も探している。
 本当の仲間を。十年もの間。なんて年月だ。
 カラフルに映えるセアカヤドクガエルが、ティファニーランプの
灯りを刎ね付けるようにシズル感に溢れた姿を見せ付けている。
 蛙はじっと俺を見ている。
 この日本で、こんなカラフルな姿でいる意味はない。
 無意味な価値を背負って、無趣味な金持ちの気まぐれで、こいつはここにいる。
「ロンリネス。外に出たいかい?」
 蛙は無表情なまま、俺を見ていた。
「俺の目が黒いうちは、そこから出れると思うなよ」
 バカラのグラスに乱暴に注いだウイスキーを飲み干して、葉巻の端をかじり取りながらそう言った。
 蛙はクルル、と鳴き声をあげた。
 煙の中でまどろみながら俺は、蛙に「お前もな」と言われた気がした。

 次のお題「鮭」「鱈」「鯖」
584鬱井 ◆YnRRG3sK2U :04/05/18 23:03
ごめん上流社会って単語入れるの忘れた。お題スルーで
585罧原堤 ◆5edT8.HnQQ :04/05/18 23:05
もちろん上流階級の間違いだ。どうだまいったか
「君の顔って鱈っぽいよね」
「あー、なんとなくそんな感じだなー、うん」
「なんだよいきなり、お前こそ鯖っぽい顔しやがって」
「あー、わかるわかる、鯖だー、鯖」
「うるさいな、君はあれだ、鮭、鮭だよ」
「そうそう、鮭っぽいよお前」
「あー?第一お前ら鮭見た事あるのかよー?」
「無いよ」
「俺も無い」
「鱈はー?鯖はー?」
「無い」
「あるわけないだろ……だって俺達生まれてこのかた水槽から出た事無いんだから」
「……そうだよなー、はー、一度でいいから大海原を泳いでみてえなー……」
「無理無理、所詮僕達は単なる養殖鯵さ……」


次のお題「毒リンゴ」 「薔薇」 「携帯電話」
587名無し物書き@推敲中?:04/05/19 05:00
毒リンゴを食べた薔薇族は、今夜も新宿御苑で携帯電話を見つめている。

「proof」「T2ファージ」「いそぎんちゃく」
588名無し物書き@推敲中?:04/05/19 12:40
お気に入りのリーバイス501に黒地に白で「T2ファージ」と
書かれたTシャツ、鞄はラゲッジレーベルの「proof」
今日はそんなカッコで大学に行きました。

「恵利子」「ヤリマン」「葛飾区」
「三行も使って消化回しもできないとはね。いそぎんちゃくがいなくてよ」
 そう呟きながらヤリマンの恵利子は葛飾区を通り過ぎた。

お題>>586
 恵利子は身長一六○センチほどと比較的小柄だが、総じて見ると、
なかなかスタイルがいい。顔立ちが飛び抜けてかわいいわけではな
いが、どこか愛嬌のある目鼻立ちをしており、特に、肉感のある厚
すぎない唇に引かれた口紅が赤すぎるのが、いかにも少女から大人
になりかけといった感じで微笑ましく、交換が持てた。胸も不釣り
合いに大きすぎず、どうやらお気に入りらしいニットのセーターを
着ている日は、その上にそっと手を置いたときに手のひらに伝わる
感触までもが想像できてしまうようで、なにか僕のほうが恥ずかし
くなってしまう。そのセーターが黒いせいで彼女の首もとは余計に
白く見え、鎖骨の付け根あたりにあるほくろが、より一層鮮やかに
見える。友だちと楽しそうに談笑する彼女の横顔を眺めていると、
まるで、見てはいけないものを見ているかのようで、自然と鼓動が
速くなってゆく。
 一部の男子学生たちの間では、「彼女はヤリマンだ」という噂が、
まことしやかに流れている。葛飾区のとあるホテルから中年男の腕
にぶらさがるようにして出てきた彼女を目撃したという怪情報まで
ある始末。彼女に声をかけて事の真偽を体現して確かめたがっては
いたが、なかなか実行に移すこともなく、むしろ、そうして騒ぐこ
とのほうを楽しんでいるようにすら思えた。

「妖怪」「ルポルタージュ」「ギター」
次のニュースです。T2ファージproof機能を持つウイルスがいそぎんちゃくから発見されました。
この人類初の快挙を成し遂げた幸運な発見者は葛飾区在住の主婦、豊間恵利子さん(24)。
なお、彼女は中学時代の友人達から『ヤリマン』というあだ名で親しまれていたとの事です。


次のお題「携帯電話」「いそぎんちゃく」「葛飾区」
葛飾区って固有名詞でないの?
593名無し物書き@推敲中?:04/05/19 15:56
葛飾区の職員が、かつて妖怪についてのルポルタージュを纏めていた
というので、早速区へ問い合わせてみた。その職員は外出中で、私が妖怪の研究家だと
知ると、ご丁寧に彼の携帯電話の番号を教えてくれた。早速その番号に電話してみた。
しかし、残念ながら圏外だった。しょうがないので、葛飾区役所まで出向くことにした。

受付嬢に例の件で職員に会いたいことを告げ、面会のアポイントをとった。
あとは区役所のロビーで気長に待つことにした。
ロビーには、魚一匹も泳いでいない水槽の中にいそぎんちゃくが、ただゆらゆらと
佇んでいた。妖怪マニアの私は、そのいそぎんちゃくが得体の知れない妖怪に見えて
仕方がなかった。

それから2時間・・・。
わたしは我慢できずに、もう一度携帯の番号に電話して見た。すると今度は受話器の向こうから
ギターの音色が聞こえてきた。曲名は「禁じられた遊び」だった。どうやら保留音のようだ。待つ
こと10分。ついに向こうから声がした。
「お待たせしました。○○です。あのぉご用件は?」
私は用件を伝えた。
「申し訳ございませんが、もう妖怪は勘弁してください。失礼します!」
そう言ってガチャ切りされた。
なにかあったのだ!妖怪のことでなにか事件に巻き込まれたのだ!私は興奮を隠せなかった。

・・・後で知ったことだが、実は妖怪とは葛飾にいるホームレスの人々のことだった。
世間や役人から「妖怪」呼ばわりされ、さぞ悲しいおもいをしただろう。

それ以後、わたしは妖怪などという夢想の研究を辞め、現実の社会をしっかり見つめることとした。
594593:04/05/19 15:56
お題は「あさがお」「車止め」「ミラクル」
危険を叫ぶ本能というのは、こういう感じなのか。
俺はエレキギターでソイツを殴りつけていた。
「いろいろもっと聞かせておくれ」という声をふりきって走り、
建物の影に肩を寄せ隠れた。ネックを握りしめる。
気付くと、120万もした名機「ルポルタージュ」のボディに亀裂が入っていた。
ショックなはずだった。だがより大きな疑問がそれを感じさせなかった。
普通ありえないことだからだ。ネックが折れずにボディに亀裂が入るなんて。
なにをしたんだ。なにをされたんだ。あっちはどうなったんだ。あっちは平気なのか?
コンクリートの壁にはりつき、頬を擦り付けるようにして向こう側を覗く。
白熱電球が、表へ続く路地を頼りなく浮かび上がらせている。
アスファルトの上、光が徐々に弱まっていき、闇へと変わるあたりに、裸足が見えた。
壁に背を押しつけ隠れる。はずみでギターが僅かに鳴ってしまい、心臓が跳ねた。
あそこを通らないと、帰れない。このスタジオは、高い壁で囲まれているのだ。
アレはなんだろう。怪物か、モンスターか。いや違う。
怪物やモンスターの類なら、ギターで殴れば、ひるむくらいはするだろう。
動物のような、人間のような考え方をするから、怒りもするだろう。
だがアレは殴ったときに、子供のような声で「いてて」とつぶやいた。
そして「おまちよ」と微笑みながら、ゆっくりと迫ってきたのだ。
人間の正気や、物事の道理、全てを小ばかにしたようなその声が耳によみがえった。
頭を言葉がよぎった。そうか。妖怪だ。ちくしょう、あれは妖怪だ。
ああ、モンスターや怪物ならよかった。おれはただ命の心配をしてりゃいいのだから。
だがあれは妖怪だ。俺は何に怯えればいいんだ? 俺は何をされるんだ?
「ほ、ほ、怯えたいの、何かされたいの、ほ、ほ」背後からその声はした。
なんでこんなところに居る。お前は出口の方にいたんじゃないのか。
俺は体から力が抜けるのを感じ、思わずつぶやいた。
「なんでそうせっかちなんだ? 制限時間でもあるのか?」
残念だが、人間ごっこはここまでのようだ。
俺は”皮”を脱ぎ捨てると、その妖怪を引き裂いた。なんともあっけない。
白い塗装が無残にひび割れたギターを見つめ、にやりと笑う。
「また、働く楽しみができたな。こっちののほうが全然面白い」
596595:04/05/19 16:05
タッチの差でかぶってる^^; お題は>>594ですね。
左手は朝顔の花のように弾けて消えた。
バック中だった車は、輪留めに乗りあげ跳ねて、ケツをどこかにぶつけた。
銃撃は止まない。ガラスというガラスが砕け散り、背中に降り注ぐ。
俺は頭をかかえて、うずくまっているらしかった。
コン、カン、と空き缶でも蹴り飛ばすような音がする。
命をかっさらっていく音にしちゃ、あまりにも軽いだろ。
そんな俺の気持ちにゃ関係ないだろうが、弾が飛んでくるのが止んだ。
パラ、とガラスの破片が落ちる音がする。
助かった? はは、ミラクル……。そう思いながら体を起こす。
窓の外からタバコが差し出された。
残った右手で、無言でうけとる。純金のライターが差し出された。
火をつけ、深く深く煙を吸い込み、それから全てを吐き出した。
「いいか?」と聴く声。「おう、やれ」と答えた。
銃声を聞いたと思う。風船でも破裂させたような音だった。


NEXT:「ほうせんか」「かみしばい」「通知」
>>597、「輪留め」→「車止め」、「聴く声」→「聞く声」の間違いです。
間違ったままだとお題が入らないので、訂正させてください。     
599** ◆6owQRz8NsM :04/05/19 18:11
**「ほうせんか」「かみしばい」「通知」

 川沿いの石畳みを歩いていると、真ん丸のピンクのライトをビニールの軒下に灯した
毒々しい小店が連なっている路地が目に入る。チョンの間で客をとる、「ちゃぶ屋」と
いうヤツだろう。店先には梅雨の雨に細い肩を濡らしながら、異国の女が佇んでいる。
「レモンティー」と書いた黒いドアーの前に、ちょっとヒロスエ何とかに似た
小柄な女が立っていた。俺は「ヒマ?」と言って彼女の前で立ち止まった。
 女を買う気はさらさら無かったが、彼女の素朴な風情に少し魅力を感じていた。
「オニイサン、飲みます?」と八重歯を見せて笑って、片言の日本語で答える。
「ビールある?」「アリマス。入って」彼女の細っこい背中が黒いドア−の中に
消える。俺は少し躊躇したが、店に踏み込んだ。彼女はビール瓶を片手に2階へと
続く木の階段を登っていく。「キテ、キテ」彼女は手招きする。俺は店の土間に立って
まだ迷っていた。階段の脇には椅子があり、彼女より年増の中国人らしい女が座っていた。
 年増女は下半身が素っ裸だった。白い太ももに、ほうせんかの花弁のようなアザが散らばり
 女は左手で、そのアザをピシャリと叩いた。
 俺は、突然、我に還った。川は緩くながれ、俺は欄干にもたれている。そして思い出した。
 この路地の女にハマって全財産を失ったこと。レモンティーという店が突然消えたこと。
 彼女は亭主と国に帰ったこと。俺の頭の中で一枚一枚、記憶の画像がかみしばいの様に
めくられていく。「エイズ検査 要精査」という病院からの通知を、俺は破って川に捨てた。
どこかで異国人の女が、のんびりと仲間と笑っている声が聞こえた。

**次は、「血飛沫」「眼球」「裏切」でお願いします。
600

お題継続
601「血飛沫」「眼球」「裏切」:04/05/19 22:50
街の広場に古びた人間の像がある。
『裏切りの男』という明るいお題がついている。
作者、いつ作られたのか、誰をモデルにした像かは全て不明だ。
昔は宝石や金銀で豪華に飾られていたらしいが、
次々に盗まれて、今や金目の者は眼球のサファイアしか残っていない。
このサファイアは頭部を破壊でもしないと取れないから盗人も敬遠したのだろう。
数年前、私はこのサファイアを盗もうとしたことがある。
夜中にハンマーを持って出向いて、像の頭を叩き割った。
するとサファイアと一緒に何かが飛び散って顔にかかった。
たちまり辺りにたちこめた匂いでそれが血飛沫だったことがわかった。
私は仰天し、慌てて血まみれサファイアを拾って一目散に逃げ出した。
誰かが追ってきていた。少し明るいところに出て振り向いてみると、
追ってきていたのは、私がついさっき暴力を振るった首のない像だった。
私は無様にもその場で気絶してしまった。
目が覚めると朝だった。
あれから像の復讐を受けた様子はなかった。私の状態は気絶する直前のままだった。
ただ、盗んだサファイアはなくなっていたし、顔にかかったはずの血も消えていた。
恐る恐る広場に行ってみると、像は何事もなかったかのように元通りになっていた。
粉砕したはずの頭はしっかりと首の上にあったし、サファイアも像の目に平然と輝いていた。


「ボギー」「贋物」「失踪」
「この人がボギーさんですか」
 私はクライアントに渡された写真に写っている、失踪したという男を見て、昔の同僚に似た男がいたなと
思いながらそう答えた。
「ええ、ジョン・ポール・リーガルと名乗っていましたが」
 その言葉に、奴もそんな偽名を使いそうな奴だったと思い出し、つい可笑しくなってしまう。それが顔に
出てしまったのだろうか、クライアントは顔を顰めて言った。
「この方の本名を答えてくれませんか」
 そう言われて、やっと私はボギーとは美術品の裏市場で名を知られているとあるブローカーの使う隠語
だという事に気づいた。クライアントは突然汗が吹き出してきたことに気づいているだろう。
「・・・・・・つまり、彼が、自分で作った贋物を掴まされたと言っていたということですね」
603602:04/05/19 23:39
お題は「瓶」「名画」「サファイア」で
「それで、君はどうしたの?」
教室の片隅で本を読んでいる吉川に、僕ははんば投げやりに訊いた。
「さぁ」
吉川のだらしない返事だけが返ってきた。
「見たんだろ?その名画を?」
僕は再び吉川に訊いた。
「よく解からないの・・・。私にも。お父さんは、それだって言ったけど・・。どうだろ?」
「はぁ〜」
僕は、思わずため息をついて、宙を見上げた。
「タイトルは覚えてる?」
僕の苛立っている言い方に、気を使ったのか、吉川は読んでいた小説を机の上に置いた。
「サファイア」
「サファイア!?」
「そう」
そっと、爪を噛んだ。「どうしたの?」心配そうに吉川が顔を覗き込んで来たので、「何でもない」と
一言言って席を立った。
教室の前方まで移動すると、ビールの瓶を教卓の上に置いて、一本の薔薇を入れた。
「この花の名前は?」吉川に大声で訊いた。「薔薇」既に吉川は小説の方に目が行っているようだ。
「薔薇という作品は?」僕の言葉に吉川は首を傾げて答えた。
どうやら今回も父親は僕に嘘をついてたみたいだ。朝、父親は僕にこんな話をした。
「俺の作品が美術館で飾られてるみたいだ」「何て作品?」僕が訊くと、一本の薔薇を渡してくれた。

教室の教卓の上にある、瓶の中にある一本の薔薇を見つめた。父親は、この瓶の中の薔薇を模写したらしい。
名画と語るその絵が、美術館に飾られる日はあるのだろうか?
いや、無いだろう。せめて、今日、父親に言ってやらなければ。
「ラガービールのラベル剥がした方がいいよ」
お題は?
606名無し物書き@推敲中?:04/05/20 03:58
「とんでもない贅沢」
今、俺の目の前には、一枚の絵画が置かれている。
絵の知識のない俺には、この絵のどこが素晴らしいのかは、全く解らない。
だが、先月のオークションで三十億でようやく落札できたんだから名画と言っても差し支えは無いと物だということは解る。
そして、俺の右手には、握りこぶし大程の鈍く蒼に輝く大きなサファイアが握られている。
俗に「人魚の泪」と言われる、世界で一番巨大なサファイアだ。
これも、数年前にオークションで、大金をはたいて手に入れた物である。
俺は、ゆっくりと、自分の右腕を動かし、絵の中に居る女性の真上に右手を持っていったところで動きを。
そして、そのまま右手のサファイアを絵に叩きつけると、再び右腕を動かし始めた。
油絵であるため、バリバリ、という耳障りの悪い音とともに、絵の具が面白いようにどんどん剥がれていく。
三十秒程それを続けた後、手の動きを止め、絵の左側に置かれたワインの瓶を見つめた。
さっき、全部飲んでしまったから中身は空だが、これも相当な値段がした思う。
とは言っても、せいぜい数百万止まりだろうし、この絵や石っころとは桁が違うんだがな。
俺は、絵を乱暴に額からはずし、直径1センチくらいの棒状に無理矢理まるめると、それを瓶の中にめいいっぱい押し込み、コルクでふたをした。
立ち上がった後、俺は、大きくかぶりを振って、傷ついた絵の入った瓶を、眼前に広がる大海原に向かって、あらん限りの力で放り投げた。
こんなにも損失的なことをしても、俺の望んだものが来てくれる可能性は皆無に等しいのだ。
ああ、なぜ、船が難破するときにもっと役に立ちそうなものを持って来なかったんだろう。頼むから、誰か早く助けに来てくれ。
男の願いもむなしく、「SOS」という傷が付けられた絵画の入った瓶は、まだ島から数十メートルの位置を漂っている。
跪いて懇願する男の傍らに転がる世界一大きなサファイアが鈍く蒼く光った。

初投稿、・・・ダメダメだな

「麦チョコ」、「ベランダ」、「冷蔵庫」
608 :04/05/20 11:31
冷蔵庫で冷やした麦チョコを、ベランダで食べられる時期が一番好きだ。
暑すぎれば麦チョコで手がべとべとになるし、寒すぎればベランダに出てるのが
苦痛だ。その中間が丁度いい。季節で言えば春とか秋とかになろうか。
極端にならず、中庸で安定してるほうがいいということだろう。

つまり、わたしも歳をとったということだ。


「損料貸」「スタイリッシュ」「かどつけ」

 絵を調べたマリーは、感心した声で言った。「サファイアの粉ですね」
 瓶底メガネをした上に、分厚いルーペを使っている。見ているとめまいがしそうだ。
 「青い瞳のハイライトの表現のために、注意深く、ひかえめに使ってあるのね。      
  ロマンチックな作者さん。まだ無名だけど、才能はあるほうだと思うわ」
 僕はシビレを切らし始めていた。ソファから立ち上がり、イーゼルの横をすりぬけ、
 マリーの傍へ行く。「あー、それで?」一瞬、後姿に見とれた。「ほかに意見は?」
 彼女がこちらを見る。すこし困った様子だ。
 「情熱をかんじるタッチ。ええ、とても情熱的です。名画に特有の迫力を感じます」
 そこで何事かを言いよどむ彼女に、先を続けるようにうながした。
 「ええと。とても愛情をこめて書かれていますね。そうだわ、まるで恋文のような絵」
 僕は彼女の瓶底メガネを奪った。そのまま青い瞳を覗き込む。
 「やっとわかってくれた?」
 マリーは赤面して、僕の手からメガネを奪い返し、掛けなおした。
 そしてもう一度絵をじっと見つめたあと、可愛らしくうつむいて、僕にこう言った。
 「でも、50ドルってとこね。迫力だけじゃダメなの。がんばってね、未来の巨匠さん」

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 かぶりですが、できたら評価つけて欲しいです。
 お題は>>607で。
ごめんなさい。お題は>>608で。
611???? ◆6owQRz8NsM :04/05/20 12:22
**「損料貸」「スタイリッシュ」「かどつけ」

 代々木公園のフリーマーケットで、黒い留め袖を着た日本人形を見つけた。
 鶴と亀のおめでたい裾模様を、うつむいた瞳が物憂く見つめている。
 人毛を張り付けた頭は、たった今、油をぬったかのようにしっとりとした艶がある。
 私はその人形をしばらく眺めてから、木影に入って静かに目を瞑った。

 いつの時代か。おかっぱ頭の幼い娘が三味線に合わせて唄っている。
 侘びしい町家の灯り。雪がちらつく寒い夜だ。娘の裸足の爪先が、凍えて紫色に
なっている。三味線を抱えた女は、娘の尻をそっとつねる。娘は泣き声で唄い出す。
 ガラリ、と戸が開き、銭が投げられる。割れた茶碗に銭を拾い、娘は後ろの女を振り返る。
「ちッ。損料貸しで、子供を借りたってのに。たいした人寄せにもなりゃしない」
 かどつけ芸人の女は雪の夜道を歩き出す。娘は細々とついていく。赤い帯びが揺れている。

 人形のある方向を、もう一度振り返ると、白人の夫婦が人形を手にとっていた。
「スタイリッシュ」「クール!」人形を褒めそやす。あの人形の髪はあの娘のものだ。
 あの黒い留め袖は、喪服に刺繍をした禍々しい品だ。見えないものが見える私は
 黙って人形の横を通り過ぎた。白人夫婦は人形を紙袋にいれて、歩き出した。
 紙袋からはみ出た人形の赤い帯が、だらり、だらり、と揺れている。

**次は「老婆」「声音」「結核」でお願いします。
「なあ、分かってくれよ刑事さん。ファミリーは裏切れないんだよ」
 この石頭には何を言っても無駄だろうとは思ったが、ありったけの媚態で懇願した。そ
うするしかなかったからだ。
「何か勘違いしてないか? だいたい、お前ごときヤクの売人に、人権があるとでも思っ
てるのか?」
 それを言われると頭が痛い。慈悲深いイエス様だって、この俺を許してはくれないだろ
う。何人もの餓鬼が俺の所為で廃人になったのだから。
「……と、言いたいところだが、連邦には証人保護プログラムがある。司法取引に応じて
も数年、ムショん中で臭い飯を食う羽目になるが、命は責任を持って保障してやる」
 朝から何度も繰り返された問答だった。額面どおりに行けば、決して悪い話じゃない。
俺はしがらみから自由になれるし、なにより贖罪はできなくとも、これ以上、罪を重ねず
に済む。しかし俺は、売人仲間のミッキーが、ファミリーを売ろうとしたが為に右の眼球
を抉り取られたことが頭にこびりついて離れなかった。俺はそれを目の前で見た。血飛沫
と苦悶の声が巻きあがっても、目を逸らすことは許されなかった。泣きたくなった。
 思い切って楽になってしまおうか――気持ちが傾きかけたとき、刑事は、ぞっとするよ
うな高笑いを始めた。
「ようし、ジョージ、お前は試練に耐えた。ここでタレ込んでたらミシシッピ川の魚の餌
になってるところだったぞ。ミッキーみたいにな」
「なんだ……。脅かさないでくださいよ」
 いつか絶対に、脚を洗ってやる。しかし俺はそんな思いを億尾にも出さず、ソファにふ
んぞり返る三下の咥えた煙草に火をつけてやった。


大幅に遅れてスマン。スルーしてください。
 俺の住む村では、昔結核が猛威を振るっていたことがあったそうだ。
昔の結核といえば、それはもう恐ろしい病気であったことは言うまでもない。
村には当時子供だった年寄り達がまだ多くいる。皆一様に「恐ろしい」と言う。
 ある日、昼過ぎに山の中を歩いていて妙な光景とぶつかった。見覚えのない
老婆が道の端っこに寝転がっているのだ。それも何事が呟きながら――。
「あの……婆さん、何やってんすか?」
 老婆はすぐには反応せず、ただジッとこちらを見つめていた。そして、
「坊主にはわからんだろが、ここは結核菌が吹き出す場なんじゃ。おれのいる下
には菌が吹き出す穴があっての。この辺の時間が一番活発に菌が動くんじゃ」
 そんな穴があること自体知らなかった。俺は、軽く頭を打たれた感じがした。
もう何十年も前の菌が、未だに地中で蠢いてるということなのか……。
 俺はその後しばらく老婆と話し込んだ。やがて、日が落ちようとする頃、老婆は
立ち上がって、「今日は終いじゃ」と言った。菌も今日はこれでお休みなのだろう。
「坊主、おれが死んだら、この役目継いでくれるけ?」
「絶対お断り」
 老婆は、力ない声音で笑った。俺も一緒に笑った。

「光」「鏡」「藻類」
614 ◆L.dyD/snow :04/05/20 17:59
「光」「鏡」「藻類」

最近は鏡を見るたびに、自分の若さが失われている気がする。
まだ二十代なのに。

「気にしすぎだよ」
「光の加減でそう感じるだけじゃないか?」

慰めてくれるのはありがたい。
しかし、これは気のせいなんかじゃない。
なぜだ? あんなにも気をつけていたはずなのに。
なぜだ? 毎日の食事において、海藻類をたくさん摂取しているのに。

最近は鏡を見るたびに、自分の若さが失われていることに滅入る。
こんなにも早く……髪が薄くなってくるなんて。
まだ二十代なのに。

※次のお題は「キャスケット」「鐘」「封筒」でお願いします。
615岸和田 ◆JNnFWYTu2A :04/05/20 18:47
「キャスケット」「鐘」「封筒」
 男は愛用のキャスケットを目深にかぶると、
サックコートとベージュのユーズドジーンズをはいた。
 男はこの小さい街の鐘付きだった。
大体街の中心に位置する塔のてっぺんにある大きい青銅の鐘――
それを毎日、朝の七時と夜の九時につきに行くのである。
 この街には実に様々な、しかし不思議な仕事が沢山ある。
例えば鼠売り、なんてのもあるし、鍵作り、鉛筆修理人なんてのもいる。
しかしその仕事に疑問を持ってはならない。
封筒に入った『追放命令』が家に届くことになり、この街を追放されてしまうからだ。
 男は様々な疑問――何故この街に来たのだろうか、一体この街は何なんだ、
そういった疑問をかき消してしまうと、スニーカーをはき、
鐘をつきにいった。

 「手紙」「青」「スニーカー」
616** ◆6owQRz8NsM :04/05/20 22:39
**「手紙」「青」「スニーカー」

 拝啓 関東地方もいよいよ梅雨入りし、鬱陶しい毎日が続いていますが
 その後、いかがお過ごしでしょうか。
 お陰様で私はこちらの暮らしにも慣れ、毎日たのしく過ごしています。
 今となっては、あの日、あなたにピッキングしてもらった偶然に感謝したい
 気持ちで一杯です。有り金を残らず差し上げて、コレクションしていた腕時計や
 愛車のフェラーリの鍵もお渡し出来て本当に満足しています。
「人間は裸で生まれて、裸で死ぬんじゃ」あのときの貴兄の言葉は本当でした。
海の底に沈んで、青いビニールシートがめくれ上がると、私は真に自由になりました。
鉄アレイが邪魔でしたが、漁船のスクリューに引っかかり、見事に解放されました。
外国のマグロ漁船に拾われ、今はベーリング海のマグロを追い掛かけている所です。
ヘミングウェイみたいにカジキと戯れて暮らせるなんて、まるで夢のようです。
長くなりましたが、取り急ぎ御礼まで。船上にて乱筆乱文お許し下さい。

追啓 あの時、思わず掴んだ貴兄のスニーカーの片足を、まだ持っています。
   スニーカーの中に住所と名前が書いてあったのでお手紙を出せて嬉しいです。
   時節柄、くれぐれもご自愛ください。

**次は「剣」「蠅」「修行」でお願いします。
「剣」「蠅」「修行」

おそらく私が最後の伝承者となろう。苦しい修行の末、ついに百歩剣を体得した趙雷は
寂寞の想いに駆られ呟いたという。百歩剣は彼の師匠断公導師が編み出した必殺剣で、
その名の通り百歩離れた蠅をも落とすことが出来る恐るべき技だった。

断公導師は趙雷に奥義を授けることにやぶさかではなかったが、なぜ遠くの敵を打てるのか
自分でもよく分かっていなかったので、伝えることができなかった。
そこで趙雷は痴呆気味の師匠が剣を振るうのを注意深く観察することにした。
導師がふいと剣を振るうと百歩先にある西瓜がぱかっと割れる。
コツを尋ねると、山羊の交尾のことを考えるとぱかっといくとのことだった。理由は例によって不明だ。
趙雷も試しに山羊を思ってみたが、西瓜は割れなかった。
切羽詰っていた趙雷は馬や豚、犬、様々な動物の交わりを見て回った。
挙句の果てには蛙やかぶと虫の交尾にまで至ったが、その努力は趙雷を村から孤立させただけだった。

趙雷が半ばあきらめて剣を振るっていたある日、何の前ぶれもなく、百歩離れた西瓜がぱかりと割れた。
「何故」
趙雷はもう二度と言うまいと自らを戒めていた言葉を口にしていた。
その時趙雷の目にたまたま映っていたのは、泥酔した師匠がだらしなく晒していたフグリだったのだ。
618617:04/05/21 07:06
次のお題は「食わず嫌い」「波乱含み」「やりとり」
次スレへ移動して下さい。十七期スレ↓
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1085027276

★簡素、良作選のがあるので、埋め立てないで下さい。
620619:04/05/21 07:41
>>619
の がいらない。失礼しました。
621619-620
>>619-620を、分かりやすく書き直しました。

――――――――――――――――――――
次スレへ移動して下さい。十七期スレ↓
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1085027276

★第十六期スレ(このスレ)は、
 簡素、良作選があるので、埋め立てないで下さい。