この三語で書け! 即興文ものスレ 第十二単

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1うはう ◆8eErA24CiY
即興の魅力!
創造力と妄想を駆使して書きまくれ。

お約束
1:前の投稿者が決めた3つの語(句)を全て使って文章を書く。
2:小説・評論・雑文・通告・??系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。
3:文章は5行以上15行以下を目安に。
4:最後の行に次の投稿者のために3つの語(句)を示す。ただし、固有名詞は避けること。
5:お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
6:感想のいらない人は、本文もしくはメール欄にその旨を記入のこと。

前スレ:この三語で書け! 即興文ものスレ 第壱拾層
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1043474723/-100

◆「この3語で書け! 即興文ものスレ」感想文集第5巻◆
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1037206703/l50

裏3語スレ より良き即興の為に 
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1035627627/

21でございます:03/04/20 22:43
失礼しました。
前スレの最後で逝ってしまい、急遽立てました。
次のお題は週休二日さんの
「謙虚」「殺意」「街角」でお願いします。
3名無し物書き@推敲中:03/04/20 22:45
今だ!3ゲットォォォォ!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄       (´´
     ∧∧   )      (´⌒(´
  ⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
        ̄ ̄  (´⌒(´⌒;;
      ズザーーーーーッ
4名無し物書き@推敲中?:03/04/20 23:01
こっちが本スレでいいのかな?age
5名無し物書き@推敲中?:03/04/20 23:06
6gr ◆u01gz6DvbA :03/04/20 23:37
「謙虚」「殺意」「街角」「平面」「立体」「時間」
私はうつむいて、舗道の敷石だけを数えながら水谷先生の十歩後ろを歩く、静かに。ただ時々
離されないように、近づかないようにだけ気をつけながら、何も言わず背中だけを追って。
先生に話し掛けないのは謙虚だからとか遠慮しているからとかではない。声に出したら、この
感情を言葉に表したらそれが消えてしまいそうで、私は口を開くことができない、否、先生の
目を見ることすら、今の私にはできまい、この湧き上がる殺意を萎え凋ませてしまわずには。

朝の雨が薄霞になって残る四月の街角には甚く不似合いな拳銃とかいう兇器をロングコートの
懐に入れた手で握り締めながら。私は先生の顔貌や語り口や立居振舞いなどを考えぬようにと
行人の肩を透いて見える先生の帽子と足許の切り石を措いては何も目に入れない様にした。

先生はこの先の花屋の角を折れていつもの路地へ這入る筈である。五分ばかりの道が嫌に長く
感じて私は焦れた。この時間の一刻一刻にも私は勇気を失くしてしまいそうで。
立体迷宮の通り抜け方を聞いた者がする様に私は口の中でぶつぶつと歩み方を唱えながら他の
事を頭へ入れぬようにして兎も角も汗ばかり溜まる掌を拭きながら脚を送る。先生がいつもの
様にのんびりと行くこの道は降る雨も流れぬ水平面である筈ながら今はさながら蟻子も落とす
黄泉路の縁の越えじの坂であるかの様だ。花屋まではあと一町ばかり。
7gr ◆u01gz6DvbA :03/04/20 23:41
忘れてた。次は「門」「それから」「明暗」で。
8「門」「それから」「明暗」:03/04/23 01:12
 10年という時間の中で私とカズミにははっきりと差が付いたのだと思い知らされた。
 高校時代、そして大学時代もどうすればそんな格好が出来るのかと不思議になるほど野暮ったい格好をして、教室の隅で小さくなっていたカズミの姿はもうどこにもない。
 カズミの周りを取り巻いていた暗鬱とした暗闇は消えて無くなっていて、明るい活動的な光さえ感じた。普通の人をとりまく明るさというのには人生の中で一定量が決まっていてカズミはその殆どを高校と大学という7年間で使い切ったのではないかと思った。
 30を少し越えた今カズミの表情は自信に満ちあふれていて、若々しかった。それは私も同じ年齢だがとうに失ってしまったものだ。30過ぎのおばさん。くたびれた人妻。それが私なのだ。
 経済誌にも度々紹介されている女性経営者であるカズミには年を取る暇もないと言うことなのだろう。
 それは有名な同級生を持った誇りと共に小さな妬みや嫉み、それからそれらをいだいている自分に対する嫌悪感というものを運んできた。
 同じような道を歩きながらどこかで門をくぐり間違えたのだろうか?明暗が分かれたなぁと思った。

 10年振りにあったミチコは前と変わらず綺麗だった。
 高校の時も大学の門をくぐってからも彼女は私の憧れだった。
 彼女のいる場所は常に明るく、彼女のいない場所に光はなかった。私は彼女の光の届く境界線のギリギリのところから彼女を見ていた。あんなふうになりたいと思った。
 彼女の動きに合わせて揺らめくように動く光と闇の明暗の境を見つめながらこの光を浴びれば私もそのおこぼれに預かれるかもとやましいことを考えたものだ。
 それから10年の時を経て久しぶりに会ったミチコからは以前の輝きは失われていたが、以前よりも暖かい光に包まれていた。
 今なにをしてるの、と私は聞いた。「主婦よ」と彼女は答えた。聞けば小さな子供がいるらしい。彼女が子供を抱いているシーンを私は容易に想像することが出来た。
 やっぱりかなわないなと思った。

次は「ロシアンブルー」「パンツェッタ」「ジャズ」で。
9「門」「それから」「明暗」:03/04/23 01:17
訂正させてください。。。(涙
お願いします。。。

4行目後半から
「普通の人をとりまく明るさというのには人生の中で一定量が決まっていてカズミはその殆どを高校と大学という7年間で使い切ったのではないかと思った。」
       ↓
「人をとりまく明るさや暗さというものは人生の中で一定量が決まっていてカズミはその内の暗さという要素の殆どを高校と大学という7年間で使い切ったのではないかと思った。」
10「ロシアンブルー」「パンツェッタ」「ジャズ」:03/04/23 01:52
「あの人のことを知ってる? パンツェッタさん」
「バンジエットだよ」「いや違う。パンツェッタだ。腹が減ったから、何か作ってくれよ」
彼は天井にぶら下がった状態のままで、答えた。「料理ができないんだよ。君の部屋には
道具が無いじゃないか。そのまま放っておけばいい」
部屋の天井に、一本の金属の棒が通っており、彼はそこにぶら下がったままだった。
表情は、ぶら下がっていない人とほとんど同じようだった。何も変わりは無かった。
僕は「バンジエッタさんは、ロシアンブルーを可愛がっていた。でもね、事故で死んで
しまったんだよ」と言った。「バンジエットさんが?」「ロシアンブルーが、だよ」
「可哀想なパンチェットさん」「バンジエットさん」
彼は、金属の棒にしがみついたまま、ふざけるようにして尻を振って、言った。
「車に轢き殺されてしまった可哀想なパンツエットさんの秘密を知っているよ」
「ジャズ音楽の演奏家だったんだよね」と僕は答えた。「トロンボーンをね。
屁の音のようなトロンボーンをね」「素晴らしい演奏家だったよ」
「この鉄の棒をこの部屋に取り付けてくれたのはベンジェッタさんなんだ。ここに
ずっとつかまっているようにと彼に言われたので、おれは今でもこうして
つかまっているんだよ、この金属の棒にね」

     次は、「尻の穴」「沈黙」「試練」で。
11名無し物書き@推敲中?:03/04/23 18:49
『何コレ・・・人の顔じゃん!』
シックスナインの最中、ヒデミはカズヤの尻の穴を指差した。
『何言ってんだよ』
カズヤはヒデミの冗談に呆れつつ、鏡張りの壁を振り返った。
カズヤの尻の穴には、紛れも無く老人の顔が浮かび上がっていた。
思わずヒデミと目を合わせた。気まずい沈黙が流れた。

これは病気なのか?治るのか?この老人みたいな顔・・・
そもそも、コイツの皺は俺の尻の穴の皺なのかコイツ自前の皺なのか。
いつからココにいるのか?どうして俺の尻の穴なのか?
最近ストレス溜まってたからなぁ。いやいや理由にならないだろ。
でも労災とか申請したら・・・
『尻の穴に人の顔が出来ちゃったんですぅ〜労災下さい』
無理だ。あれ?これって試練?

ヒデミがドアを閉めて帰っていく音が聞こえた。
12名無し物書き@推敲中?:03/04/24 16:15
探偵は朗々と語る。
「犯人はこの個室、この便器で用を足したと思われます。……そうです、犯人が使用した当時の状態そのままに、便を流さないで保存しています。
捜査に重要なのは何よりもまず現場の保存……さて、この便を見て何か気づきませんか?
……いえ、吐きそうなのは私も同じです……そう、その通りです。便の位置が2箇所に分かれている。便器の前方と、後方と。
これはとても不思議なことでした。私はこのことがずっと気にかかっていたのです。
これには必ず意味がある。そう思って私は考えました……そう、少々汚らしいものの、これはミネルバの神が私に与えた試練かもしれません……
わたしは必死に考えました……そしてついにそのことに気づいたのです。
……ではさて、これが何を意味するのか……このことが一体何を意味するのか……それは……」
探偵はそこでいったん言葉を切り、彼の周りを取り囲む事件の「関係者」たちを見据えた。
時間にしては短い、しかしとても長い沈黙が部屋に落ちる。そして探偵は漸くその言葉を紡ぎだした。

「犯人には、肛門が2つあったのです」



   次は、「死体」、「回転」、「微笑み」で。
死体は眠る。回転しつつ微笑んで。

次は、「よるの」「公園は」「どうなのさ?」
14名無し物書き@推敲中:03/04/24 23:36
「よるの?よらないの?」
「公園は・・・ちょっとねぇ・・・」
「ちょっとて何?何かあるの?どうなのさ?」

 次は、「死体」、「回転」、「微笑み」で。
「ほら、あそこで回転しているのは死体だよ」
「えぇ、気持ち悪い。微笑んでるジャン」

次は「よる」「公園」「チョメチョメ」
とりあえずテンプレと過去スレぐらい読んでから書きこめやアフォどもが











と簡素スレの675が言ってたよ。
「着たな。原稿はもうできとる」
 先生の差し出す原稿を、私は押し頂くようにして受け取った。私はまだ新米の原稿取りで、先生は
その道で功成り名遂げた大家。この程度は当然だった。
「失礼ながら、改めさせていただきます」
 しかし封筒から取り出した原稿に目を走らせるにつれ、私は自分の表情が奇妙にゆがむのを抑えきれなくなっていた。
「先生、先生。無礼は承知の上でお尋ねいたします。この、文中に多用されます『ちょんちょん』は、何でしょうか」
「ああ、それは『ヽヽ(チョメチョメ)』じゃな」
「と、仰いますと?」
「いくつか瑣末な単語で思い出せんものがあった。すまんが君のほうで補っといてくれ。なに、本筋には関係ない瑣末な
単語じゃで、さほど拘泥せんでもよろしい」
「はあ」
 私は気の抜けた返事を返すことしかできなかった。私のような下っ端に、こんな大家の担当が回ってくるはずなどありえない。
 普通なら。
 先生の原稿は、『横浜ヽヽ公園によるのヽが、外国航路のヽヽが奏でるヽヽと共に降り来ると、闇に住まうヽヽが跳梁を始める。』
から始まって、それが終わりまで延々と続いていた。

頼むぞ次。流れ戻してくれよ。
「目覚まし」「スピーカ」「ペン」で。
そら、俺は言ったよ。
起きられないから、なんかいい方法は無いかってさ。
本音いうとお前に起こして欲しかったさ。

目覚ましに連動して古典的な仕掛けで水が落ちてくるのやら、
正攻法でラジカセで音楽流そうって、スピーカーを10個つけたのやら、
俺が相談してすぐにペンを走らせて、案を十個も二十個も出してくれたのはありがたいさ。
でもな、でもな、
ぶっちゃけて言うと一緒に住もうって遠まわしに言ったつもりだったのに・・・・・・・・・・・・
マッドサイエンティストな恋人なんて、恋人なんて。


「ハッキリ言って欲しいのに・・・・・・・・・・・・・・・・。」


次は
「観覧車」「ビル」馬鹿」で
19強引過ぎたか?:03/04/25 09:05
日の下、春香の肢体が宙でびぃん、とほぼアーチ状にしなう。そのまま、
高さ140センチメートルに設定してあるバーを飛び越えた。
何もない世界でただようこの瞬間。時々映画のイメージ映像などでは、青白くて、
とても穏やかな空間の中に浮かぶ美女の姿が映っていたりするのだけれど、
この瞬間だけはまさに自分がそれだ。
まるで自分が夢の世界を旅する主人公にでもなったような気がして悪くはない。

もちろん、あたしはあんなパーマのきいたブロンド美女じゃないけど。

空の中、夢見がちな妄想を振り払うように、彼女の黒くて短く切り揃えた頭が小さく揺れる。
と、どさりと音がして春香は分厚いマットに背中を弾ませた。少し音が前より大きくなった気がする。
太ったのかな、いやぁ、これは成長のはず。ちょっと疲れたふりをして、体操着の胸のあたりに
手を置くと、少し周囲を見渡してほくそ笑む。
春香は決して背の高いほうではない。ついでに言うと「乙女」としての成熟も、腰ばかり大きくなる。
母親に「安産型よ」と言われたことがあるが、ちっとも嬉しくない。知識ばかりが先行してしまってるので
ピルとビルを勘違いしてしまうという、ありがちな伝説を持つ、大馬鹿者だが大親友の佳代にすら
この身体面で密かに嫉妬する毎日だ。
「カヨりんは胸も大きいし、背も高いし、美人だしなあ。あれじゃ並んで歩いてたら観覧車と係のおばさんだよ」
ため息をつきながら、胸においた左手の理由を何となく友人に押し付けてみたりする。
春香の春は、いまだポールとバーの少し上にしか見出せないのが現状だった。

次は「カニ」「ホームラン」「おばさん」で
20ヘタレ(´Д`;):03/04/25 22:36
それは…純粋ゆえに悲しい

僕はお母さんの友達が好きだった
お母さんに「あの人に会っちゃ駄目!」と言われていた
けれど僕は何言われても無視した
「あの人は優しい人だよ、なんで嫌うの?」
「あの人はね、一度傷つくような事を言うととても怒っちゃうの、だから危ないの」
「大丈夫、僕はしっかりしているから変なこと言わないよ」
お母さんは必死で止めていたが僕は止めなかった

「ねえねえ」
「あら坊や、どうしたの?」
「今日友達と野球をしてね、ほーむらんを打ったの」
「あら〜よかったね〜」
「でね、商品でういにんぐぼーるを貰ったからおばさんにあげる」
「…………」
「あれ?どうしたの?おばさん?」
「おばさんと言うなクソガキがー!!!!」
オバサンノカオガアカニソマッテイル
ナンデオコッタノカナ?ナニモキヅツケルコトシテイナイノニ…
そして僕は………シンダ
それは…純粋ゆえに…無知で…悲しい…

次は「ちから」「あく」「優柔不断」
21週休二日 ◆7UgIeewWy6 :03/04/25 23:53
「ちから」「あく」「優柔不断」

「小林君たちから聞きましたよ。迷宮入りが濃厚らしいじゃないですか」
そういって三笠探偵の肩を叩いたのは、日本きっての名探偵、明智小五郎であった。
「耳が早いですな、明智探偵」 老眼鏡の崩れを直して、老探偵は相好を和らげた。
はたして、事件発生から二ヶ月が経過しようとしていた。殺害された箕浦氏の四十九日も終わり、
だがいまだ犯人の足取りは杳として掴めずにいたのである。
これは日本警察の威信のみならず、三笠竜介氏の探偵としての沽券に拘る問題であった。
「折角、訪問してくださったのです、現場をお見せしましょう」
三笠探偵はアパートの古びたドアを開け、箕浦氏の部屋へと明智を案内した。
すでに白墨の痕さえなく、三笠探偵は口述で、被害者の倒れていた位置を詳しく説明した。
「現場の物の配置は変えておりません。事件当日のままです。
 被害者は、そう、まるで何かを抱えているような姿勢で倒れておったのです。兇器はこの部屋の…」
布にくるんだ包丁を、三笠探偵は取り出して見せた。
「計画的な犯行とは限らない、というのが刑事たちの見解でしたが、私には計画犯罪に思えます」
「そうでしょうな」 明智小五郎は被害者が倒れていたという位置に、身を屈めて絨毯を観察した。
「心臓を一突きということでしたが、――逆説めいた言い方をすれば、犯人は優柔不断です」

次は「変人」「機密」「保持」
>>20
 は確かにカニとあるが、あれでいいのか?
23ルゥ ◆1twshhDf4c :03/04/26 15:34
>>22
よいのです(w
用法がどうであれ「カニ」ならば。
でも「どんより」の有名なやつみたいですよね。
お題出したの漏れだけど、あーゆーのもアリだとは思うよ。
カタカナを平仮名にしてもOK?
お題は丸のまま使うのがルール。
でも前とか後とかになにかくっつけて別の言葉にしてしまうのはあり。
昔は「散らす」と表現されていた。
それなりに評価される技法の一つ。

漏れがサルのように参加していた頃はこんな運用だった。
27一応:03/04/27 01:22
書き手さんたちへ

次のお題は「変人」「機密」「保持」です。
28全部散らしてみた。:03/04/27 20:53
 今回ご紹介するのは、ゲルニクス社の新製品、「ガーニーシアス1」です。
 世界初の可変人型兵機で、人型−戦闘機型への変形が可能になったことにより作戦エリア
及び作戦時間が大幅に拡大。
まったく新たな戦略展開を可能にする、戦術兵器のパラダイムシフト的製品です。
 新素材レディウム合金の採用により、装甲強度はそのままに52%の軽量化に成功。それに
伴い、ペイロード許容量の15%増加(ゲルニクス社調べ)に成功しております。
 現在本機単体でも既存の強襲兵器を大きく上回る性能を示し、特に敵防衛拠点の強襲確保持
久において驚異的な戦果を実現しております。
 また「ガーニーシアス1」をコアとしたオプションパック群も開発中であり、主機内の加速機密度
を上昇させた偵察仕様Sオプション、変形機構をオミットした空対空戦闘特化仕様Fオプションが
近日発売予定となっております。
 陸戦用人型兵器と航空戦闘機を完全に上位体系から統合する新兵器、「ガーニーシアス1」。
 正規軍や侵略企業だけでなく要人警護を業とする私兵集団、さらには傭兵部隊の皆様方に、本
製品は極めて有用な兵器であるとご理解いただけるものと思います。

次のお題は「水着」「めがね」「兄」で。
今日は妹と一緒にデパートへ行った
一時間ぐらい適当に別れてぶらぶらしていた
俺はいくつかの服を購入して妹と合流した
妹の手に沢山の荷物があった
「お兄ちゃん♪」
「これを持てというのかお前は」
「うん♪」
あまりの笑顔に断る気を失った俺は半分だけ持っていった
「なに買ったんだ?」
「へへへ秘密」
大したもんじゃないだろう
そう思いそれ以上聞かなかった
「帰ってからのお楽しみ」

帰宅した
「あ〜重かった」
「ごくろ〜さん」
そう言って妹は荷物を自分の部屋に持っていった
「ふー」
リビングでめがねを外し汗を拭いていた
「そっか、もうすぐ夏なんだな」
妹の買ったものは多分水着だろう
「あっそういえばアイツ俺の服も持っていきやがった」
俺はすぐさま妹の部屋までいった」
がちゃ
「おい、俺のふ…」

「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

あとで聞いた話俺に水着を見せるためわざわざ着替えてたとの事

次のお題は「しゃけ」「沼」「コロッケ」で。
31名無し物書き@修行中:03/04/28 00:42
「しかし、うらやましい兄妹だな」
「何がです?」
 午後11時の食卓、俺は妻と斜向かいに遅い夕食をとっていた。
「いや、なんでもない。ネットで見かけた文章をふと思い出したもんでね」
「ふ〜ん、そう」
 結婚10年目ともなると、夫婦仲なども冷め切ってしまっている。
「このコロッケうまいな」
「角のお肉屋さんの閉店セールよ」
 二の句が継げない。
「そういえばさ、どこでも『当店は魚沼産コシヒカリを使用しています』
って見るじゃないか?どう考えたって魚沼だけじゃそんなに米作れないよな」
「このご飯、その『魚沼産』よ」
 どうしよう。
「このしゃけ、塩うすすぎないか?」
「ごめんなさいね、でもほら、あなたこの間血圧高いっていわれたじゃない。
生のしゃけ買ってきて作ってみたんだけど……やっぱりうまくいかないわね」
 あ、まだ愛されてはいるのね。


 17行。のれんな文章。もっとうまい使い方がありそうな気がする。
そんな訳で、お題継続でお願いします。
その日、デパートの六階の展示会場では「北海道物産展」が行われていた。
丸山社長は密かにその場所で電話の相手を待っている。約束の三時を過ぎてまもなく、相手は姿を現した。白のビニール袋をがさがさといわせながら、こちらへと歩いてくる。
「お忙しい所すみません」
「君、少々ここはうるさすぎやしないかね」
「人ごみの方がいいかと思いまして」
男は下卑た笑いを浮かべると、「そうそうこれお土産です」と言って、小さな袋を差し出した。
「なんだね。これは」
「たいしたもんじゃありませんよ。まあ、開けてみてください」
嫌な予感がした。袋から小さなしゃけのキーホルダーが出てくる。木彫りのしゃけは何かによって赤く染まっていた。冷たい汗が背中を伝うのを感じる。
「一体なんの真似だね」
「落ちていたのを僕が保管していたんです。分かりやすいですよね。赤いしゃけ……社長の会社のロゴマーク。ほぼ決まっていたのに、あの事件の後、あなたの一存で急に変更されている」
「たまたま落ちていただけだろう。言いがかりもほどほどにしたまえ。大体あそこの沼なんてごみだらけ……」
男がにやりと笑った。
「やっぱり、コロッケさんを殺したのはあなただったんですね」
しまった。気がついた時には、大勢のファン達が周囲の店からじわじわと私に近づいきていた。

次のお題は「五月雨」「光る」「友達」で。
揺れ煌く橙色の炎を、開かれた鯵の目玉が淡く、照り返した。
茶碗に手を伸ばす。
ほのかに風が巻いたのか、一瞬父を闇に溶かし、再び光る。
硬めの米を噛み締め味噌汁を啜る。
わかめを入れていた記憶はあるが、辛さにむせて分からなかった。
見た目が悪いから、な。この方が旨く食える。
大学時の友達と旅行に出かけた母は明日帰ってくる予定だ。
五月雨が音も無く、明滅を繰り返しつつ窓を伝った。


初投稿っす。
次は「魔法瓶」「山寺」「女」で。
34うり:03/04/28 10:37
「魔法瓶」「山寺」「女」
「これこれ珍庵や、お主、手淫をしたであろう」和尚はふさふさとした真っ白な眉を心持ち持ち上げる。
「股間から栗の花の匂いが漂っておる」心持ち目を細めた。
珍庵は和尚にじっと見詰められながら、目玉がどこかに飛んで行きそうな勢いで激しく頭を左右に振る。
「和尚様、この珍庵、お釈迦様の前で決して嘘は申しません」自分の身の丈の倍はありそうな金色に輝く釈迦像を、
大きく目を見開いて指差す。
珍庵のその様子に和尚は軽く口元を緩めた。
「これは、この山寺の先代の和尚様から秘宝として伝えられた魔法瓶じゃ」和尚は釈迦像の後ろの隠し金庫から、
恭しく魔法瓶を取り出した。見た目は、どこの家庭にでもありそうな、何の変哲も無い魔法瓶だった。
「この魔法瓶の湯でいれた茶を飲むと、飲んだ人間の煩悩が現実となってあらわれる」和尚は、珍庵を意地悪そうな目付きでちらと見ながら
急須に湯を注ぐ。珍庵は落ち着き無く、おどおどとした視線を魔法瓶に向けている。
「ほれ、珍庵」和尚は湯飲みを差し出す。
珍庵は上目づかいに和尚を見ながら湯飲みに口をつけた。
「あっはあ〜ん」「うっふ〜ん」女、女、女、また女。山寺はあっと言う間に喘ぎ声を上げる裸の女達で満たされる。
「いや〜ん」「あっああ」裸の女達は山門にまで溢れ出す。
「喝」「喝っ」「かあっつ!」女達の激しい喘ぎ声に、和尚の叫びは虚しくかき消されて行った。

次のお題は「春雷」「便所」「猫」でお願い致します。
35名無し物書き@推敲中?:03/04/28 11:16
>>34さん
下ネタは控えるように。

「春雷」「便所」「猫」

小3のある日、兄の自転車を借りて坂を下ってたらトイレに行きたくなって、
運悪くブレーキがすごく甘くなってて、
ブレーキしてもどんどんスピードが上がっていって 、
靴のつま先で無理やりブレーキさせても靴が磨り減るだけで、
突然猫が飛び出してきたのであわてて路肩の植木に身を投げたら擦り傷いっぱいでスカート破けて 、
そのままエロティックな格好で泣いて失禁しながら家に帰ったら 、
母がいきなり 、
「誰にやられたの!」
と春雷の如く聞いて来たのでは私はお兄ちゃんの自転車で…と言うつもりが、
泣きじゃくってるせいでうまくいえず、
「お…お兄ちゃん…」
と呟いたら母は突然倒れてそのまま気絶してました。

next「雪月花」「精神医療研究者」「左翼」
36うり:03/04/28 12:34
えっ?俺の34の文章って下ネタなの?!
「雪月花」「精神医療研究者」「左翼」

「みよ、この美しいクチバシを!」
両手首を顎に当て、掌を合わせて奇声をあげた。
「麗しき左翼。逞しき右翼。滑らかなバディより流れ落ちるようにして生えたる
尾羽よ。何と我輩は神に愛された美貌の持ち主か。」
言葉に調子を揃えながら手を羽に模し、時折不気味な声を発しつつ語り繋いだ。
精神医療研究者である真鍋裕子は向かい合った患者を丁寧に観察した。録音機の
テープが切れる音がしたので、椅子を少し回転し静かに次のカセットを差し入れ
ようとした。
「そう、今まさに進化の秋なるぞ。世界は我輩に準じる美しさを持つべき段階に
至ったのだ。生まれ変わる音か。ああ・・。」
振り返った裕子は、余りに脈絡の無い言葉の羅列に溜息を落とした。
「賛美歌を謳う事を許そう。」
突如走り出し、窓を一杯に開いた。無論鉄格子がはまっていて飛び降りることは
出来ない。
「山よ、青空よ、雪月花よ。祝福する。」
真向いのビルは何も応えない。何処か羨ましさを感じる自分に、裕子は苦笑した。

次の方「鏡」「雲雀」「百年」でよろしう。
>>34
その前にコピペっぽいのもやめれ
間違えた、>>35
40「鏡」「雲雀」「百年」:03/04/28 23:31
 暖かな春の日差しを眼差しに受け、空高く舞い上がると、自らの声を誇示
するかのように雲雀はさえずりました。
「さあ、聴け! おれの歌を!」
 半時ほど過ぎたころ、不意に雲雀が急降下してきました。
「ちょっと忘れ物をしてしまったぜ! おれとしたことが!」
 ところが、麦畑のど真ん中に作った巣の真上に、誰が置いたのでしょうか、
一枚の丸い鏡がかけてありました。
「あ!」
 と叫ぶ間もなく、雲雀は鏡の中に吸い込まれてしまいました。

 雲雀が再び眼差しに光を浴びたとき、目の前には一人の人間がいました。
41「鏡」「雲雀」「百年」2:03/04/28 23:32
「やあ、目が覚めたかい?」
 雲雀は驚きました。人間が自分たちの言葉を話しています。
「なんで、おれたちの言葉を……?」
「あ、そうか。君はタイムトラベラーだったね」
 そう言って、人間は手に持つ携帯端末の画面を見つめました。
「おそらく君が住んでいたのは、今から百年前の世界。まだ人間と動物の会
話が成り立たなかったころだよ。今はこの通り、二十二世紀テクノロジーの
賜物だよ」
 雲雀はようやく理解しました。どうやら自分は、鏡にぶつかった瞬間の光
の屈折率変化による時空の歪みによって未来の世界に来てしまったのだと。
「どう、この世界で暮らしてみるかい? ここでは動物も人間も植物もみん
な平等だよ」
 雲雀は少し考えました。
「いや、ちょっと忘れ物があるんで」
「そう、残念だな」
 辺りを見回し、雲雀が飛び立とうとすると、人間は一枚の丸い鏡を取り出
し、この上に立つように言いました。携帯端末を雲雀の頭上に掲げてボタン
を押すと、柔らかな光に包まれて、雲雀の体が透き通ってきました。
「また会えるといいね」
 人間はそう言ったような気がします。
 暖かな春の日差しを眼差しに受け、今日もまた雲雀は空高く舞い上がって
いきます。

次は「賜物」「飛躍」「ネコ」で
42週休二日 ◆7UgIeewWy6 :03/04/29 02:11
「賜物」「飛躍」「ネコ」

「明智さんの言うことだから、何か根拠があってのことでしょうが、……」
頭に手をやったまま黙り込んでしまった三笠探偵に、明智は薄い微笑を見せた。
「いや、なにも難しいことじゃありません。僕が犯人を優柔不断だと推測したのは、
 この絨毯の上の模様を見てのことなんですよ。おそらくはペルシャ産だと思うのですが」
「確かに、そのようです。ペルシャネコの刺繍がありますな」 老いたる三笠探偵は目をショボショボさせた。
「そこで、三笠さん、僕の浅学な知識を少々披露させて戴けるなら、
 この部分の模様はペルシャにはない、日本の伝統工芸の賜物、唐草模様に見えませんか」
三笠探偵は老眼鏡を整えて、じっと絨毯を睨み、膝をついて仔細に眺め回した。
言われてみれば確かに、妙ちきりんな模様の中で、その部分、唐草模様だけが親しみを感じさせた。
「つぎはぎですな」 と三笠探偵。明智は我が意を得たりとばかりにニヤリと笑い、 
「そうです。もしもこの位置で本当に被害者が刺されたのなら、
 細かい刺繍で編み上げられた絨毯のつぎはぎは、衝撃と共に破損、または糸がほつれるはずです」
ふーむ、と三笠探偵は低く唸った。さすが明智という男、勘が鋭いわい。
「では、殺された箕浦氏はこことは別の場所で刺されたわけですな」
「さて。そうなると血痕の問題があります」 明智はまだ推理を完成させていなかったのである。
「確証はありませんが、僕の推理では、被害者はここで刺された、しかしその時絨毯はなかった。
 後からこれを敷いて血を流させたんです。他に血痕はありませんからね。
 死体を移動させるのも、そのままにしておくのも躊躇った優柔不断さ……。論理の飛躍でしょうか?」

15行を超えてしまったので、お題は継続で。
「エジプトはナイルの賜物と言いますな」
 店に入ろうとした私は突然男からそう声をかけられた。
「は?」
「あ、いや、失敬」
 男はそう詫びるとまた別の男に声をかけていた。

「と、いう事があったんだ」
「また変な話ですね」
 久しぶりの家族の団欒、娘の沙希は高校へ入ってからというもの
あまり私に寄り付かなくなってしまった。いや、代に聞く娘という
ものは押しなべてそのようなものらしいが、今日の沙希はフレンチ
クルーラーををくわえながら好奇心に満ちた目で私を見ていた。
「お父さん、それって駅前のドーナツ屋の前でしょ」
「あぁ、そうだよ。何だ沙希、知ってるのか?」
「知ってるも何も、エジプトおじさんって有名よ、その人」
「へぇ……」
 理由はわからないが、沙希は興奮気味だった。私も会いたいなぁ、
どうしたら声をかけてもらえるんだろう。そんなことを言いながら
やたらとはしゃいでいた。好奇心はネコを殺すというが、妙な事に
ならなければいいが。私は、最近飛躍的に大きくなった沙希の胸に
戸惑いを覚えながらツイストをほうばった。


 20行、むやみに長くなってしまいました。
 ところでうりさん、アレが下ネタでなければ何を下ネタというのか
と小一時間(以下略
 次のお題は「建国」「青空」「街宣車」でお願いします。
いくつか訂正させてくださいな。

上の文書は「賜物」「飛躍」「ネコ」の御題で書いてます。
で、9行目『代に聞く』は『世に聞く』の間違え。つってきます。
薄暗い屋根裏部屋の天窓を推しひらけば、透明な空には、もう暑くさえあるような陽が高く上って、
遥か、晩春の町の屋並の向こうへ、鳶の声が、輪を描きながら、消えていた。
僕は、足許を危ぶみながら、暖められた葺屋根に上がる。遠く仰ぐ市庁舎の時計塔に太陽の光が
映って、さながら、音に聞く水晶の塔のように、見るもまばゆく。

秘かに敬慕する生徒会長閣下からの賜物である御製のチョコチップクッキーの最後の一枚は
二月からまだ手をもつけ得ず、幾枚書いたか知れない奉書もついの一度の差し上げることすら
出来ずに、僕は三年生になり、やがて時と共に閣下も僕も卒業して他人になってしまうのだと
思うと、日一日と初夏の風が近づいてくることさえ、今日は疎ましく思えてならない。

黒いネコが、一度だけ、怯えて片手を窓の枠から離さぬ僕を、値踏みするように、眇め見て、
隣の棟へ飛んで行った。僕などは落ちて腰でも折ってしまおうような所を、ネコは、平気で
飛躍して、黒い影が、街のほうへ、見えなくなった。
鳶は、塔よりも、山よりも高いところを、飛んでいる。


遅レスですみません。お題は「建国」他で。
46うり:03/04/30 16:19
「建国」「青空」「街宣車」
「日本国が今こうしてあるのも、我々日本国民が今こうして幸福を享受出来るのも、天皇家があればこそである」
カーキ色に塗られた街宣車の上で、男は街行く人々を睥睨しながら大声を張り上げている。未だにバブルを忘れられないのか、肩幅の広いダブルのスーツだ。
きっとアタシは胡散臭い物でも見る様な目をしていたのだろう。喧嘩を売るみたいに男はガンを飛ばして来た。だって本当に胡散臭いんだもん。
日本の建国の礎を築いたのは本当はアタシなんだ。知ってた?アタシの名前はイザナミノ命。ちょっと訳あって現代に蘇ったの。
淡路、四国、壱岐、次々と国々を産んだ。海の神、風の神、山の神も産んだ。青空の下でイザナギノ命とバッコンバッコンやりまくった。
終いにはアソコがヒリヒリ焼け付く様で涙が出た。なのにアイツときたら……。
アタシが火の神のヒノカグツチノ神を産む時にアソコに大火傷を負って黄泉国に旅立ったのだって、アイツが精力旺盛過ぎたせいだ。ヒノカグツチノ神が産まれる前からアタシのアソコはヒートアップしていたんだ。
アタシが眉間に皺を寄せて身体を捩ったのは、アンタの一物が擦れて痛かっただけ。随喜の涙なんてとんでもない。
車の上の男もそうだけど、男の思い込みと勘違いは、アイツの性格の悪さが影響しているとしか思えない。男の手のひら返しもそうだ。
火傷で爛れたアタシを見た時のアイツの逃げ足の速さは、いま思い出しても笑える程だ。
ねえ、みんな、ちょっとは日本の神話を読んでみてよ。昔から男が女に対してどれだけ酷い行いをして来たのか、ようく分かるから。
男って、昔から本当に酷い生き物なんだから……。

次のお題は「洗濯機」「デザート」「午前三時」でお願い致します。
 3次会までもつれこんだ飲み会がハネて、私はへべれけになりながらアパートに帰りついた。
客が6人。いずれも泥酔一歩手前の酩酊状態で、マッドな感情を炸裂させていた。
 その酔漢どもの紅一点、美香が大声で呼ばわった。
「甘いもの食べたいな〜」
「甘いもの〜?」私も心神喪失寸前の声で返した。「どんなのだ〜、熱いベーゼか〜」
「にゃ〜、デザート系〜」
「あ〜、まってろ〜」
 私はよたつく足で立ち上がると、冷蔵庫にストックしていた牛乳を全部抱えて戻ってきた。貧乏人
の性で、特売で買い入れた牛乳はざっと6リットルはあった。
 私はまとめて封を開けると、それを全部洗濯機に流し込んだ。次いで袋いっぱいの上白糖、そして
ありったけの氷。そこまでぶち込んだところで、私は2槽式洗濯機のレバーをひねった。
 15分後、洗濯槽の底にわだかまったシャーベットをボウルで掻きこんだ私は、美香の眼前にそい
つをどん!と置いた。

「なんか、毛が入ってる」

次のお題は、「ストロー」「チラシ」「物干し竿」で。
48gr ◆iicafiaxus :03/05/01 00:36
「ストロー」「チラシ」「物干し竿」

タバコでも吸おうか、と学生の頃からの習慣でワンルームの狭いベランダに出たら、隣の302号室の
ベランダでは昨日引越し蕎麦を持ってきた大学生の女の子が洗濯物を干していた。女の子が気づいて僕に
挨拶をするので、僕も何か適当に答えて、しかしすごい量の洗濯物だね、と付け加えると、女の子は、
そうなんですよー、引越しが終わるまで洗濯できなかったもんですから、と歎くように声を大きくして、
でも物干し竿に収まるのかい、という僕の問いに一秒くらい時間を置いてから、図々しいようですけど
あの、物干しの端っこのほうを少し貸してくれませんか、と東京ではちょっと聞かない訛で言った。
女の子が下着とか靴下なんかを自分の物干しに干せるだけ干してしまった後ですみませんがこれだけ
お願いしますと言ってベランダの手摺越しに渡してきた洗濯籠には田舎から持って来たらしいジーパン
とかTシャツとかが入っていて、女の子はどうもありがとう、助かりましたと頭を下げた。
それから女の子は僕の部屋と同じ間取りの室内へ這入って行ってプラスチックのお盆にカルピスを二杯
作って載せてきた。新聞屋さんが置いてったやつなんですけど、と女の子は笑った。うちにも同じ物が
あるそのカルピスをベランダに立ったままストローで吸いながら、新聞なんてものは渋れば渋るほど
得になるんだよ、と僕も笑った。そして今洗濯物の林の中でへえ、そんなもんですかーと笑っている
この女の子の家にも例えばうちと同じピンクチラシが届いているかとか思うと、何か苛立たしかった。
「また困ったことがあった時には、力になるよ」と僕は言って、空になったグラスを置いた。

次は「やつら」「一刻」「二分の一」で。
↓いでよるーみっくワールド
「やつら」「一刻」「二分の一」

そもそものきっかけは映画だった。タイトルは「マルコビッチの穴」。
このめぞん一刻という恥ずかしい名前のアパートに住み始めて二ヶ月。気になることが一つできた。
めぞん一刻は二階建てで、俺の部屋は二階にある。そこで毎日階段を利用することになるのだが、
その階段の中間、つまり一と二分の一階にあたる場所の壁に、
丁度一メートル四方くらいの真新しいベニヤ板が張り付けられているのだ。
映画を見た翌日、俺は初めてその板の存在に疑問を持った。
多分映画に影響されていたのだろう。その時、迷うことなく俺はその板をノックしてみた。
返事こそないものの、音の響き具合からそれなりに空間があることが分かる。
そして同時に、「何か」の気配を確かに感じることができた。
あの映画さえ見なければ、気に留めることもなかったであろうその板に、その日を境に毎日誘惑されることになった。
もしかすると高橋留美子の意識と繋がる穴があるかもしれない。アパートの名前からして怪しい。
そんなはずはない、そもそも作中のアパートは一刻荘じゃないか、と自分に言い聞かせても、
板に対する興味は日に日に深まっていった。
とうとう我慢できなくなった俺は、翌週バイトを休んで人の出払っている昼間に板を剥がすことにした。
周囲に人がいないのを確認して、用意した大工道具で板を傷つけないよう一本一本丁寧に釘を抜いていく。
上半分ほどの釘を抜いたところで、俺は我慢できずに中を覗き込んだ。
そこは「やつら」の楽園だった。俺が覗き込んだ部分から差し込む光を黒く反射する無数のボディ。
俺はどんな大工よりも丁寧かつ素早い動作で釘を打ち直すと、新しい部屋を探すべく不動産屋へと向かった。

だ、だめぽ・・・。
次のお題は「冒険」「ピアノ」「会議」で。
5129-30:03/05/02 21:20
「やつら」「一刻」「二分の一」

今日は2月14日
俺にとってかなり危険な日
妹がチョコを毎年渡すもんだからクラスの男子の嫉妬が痛い
なんせ一刻も早く家まで押しかけて食べに来るもんんだからかなり大変だ
まあ妹のチョコは美味しかったが…
何とか今年は阻止しようと学校へ威風堂々と歩いていった
(チョコのことを話したら即座に駄目だと言おう)
学校へついた
「おはよう」
「ああ、おはよう」
席に座って話し掛けてくるのを待つ
(………そろそろ来るかな?)
待ってるが来ない
放課後になっても全然押しかけてこなかった
(こっ怖い…)
いきなり突撃してくるのか?それともほかに何かあるのか?
数少ない友人に話し掛けた
「なんで今日は押しかけてこないんだ?」
「俺が知ってるはずないだろ、やつらもやっと落ち着いたんだろう」
不安を抱えながら家へ帰った

「ただいまー」
「お帰りーお兄ちゃん」
そう言ってチョコが乗った皿を持ってきた
「バレンタインデーチョコだよ♪お兄ちゃん」
「そうか……」
皿を見る
二つあった
「何で二つあるんだ?」
「どっちかがアタリだよ」
5229-30:03/05/02 21:21
「そうか………ってちょっとまて!」
「何?」
「なんでこんな事してるんだ?」
「楽しいかと思って」
「そっそうか…」
確立は二分の一
決死の覚悟で俺はチョコを一つ口に入れた
「ええいままよ!」
ぱくっ
「辛い……」
「はっずれ〜ってことで口直しにこっち食べてね♪」
「うう………」
辛さを何とか水で押し込みもう一つのチョコを食べた
「こんどからこんな事するなよ」
「え〜面白いのに〜」
「俺は面白くない!」

次の日学校
「おはよ〜」
「ああ、おはよう」
席についた
とある男子が話し掛けてきた
「どうだった?」
5329-30:03/05/02 21:21
「何がだよ」
「妹のチョコレート」
「辛かった」
「はっはっはっはっは」
いきなり大笑いしてきやがった
「まさかてめえ……」
「ひ…よ…よかったな、美味しいチョコ食べられて」
「お前が元凶かーーーー!!!!」
その日一週間自宅謹慎の刑が下された

次は「登校」「ジャンプ」「戦い」で
5429-30:03/05/02 21:31
遅いよ俺(´Д`;)

次のお題は「冒険」「ピアノ」「会議」で。
3:文章は5行以上15行以下を目安に。
ま、目安だけどね。
あの日、俺は会議が長引いて、すぐ帰れなかった。夏美からのメールが会議中に何度も携帯に入ってきて、俺はイライラした。
『大事な話があるの。何時でもいいからメールを頂戴』
俺はトイレだと言って、会議室から抜け出しメールを打った。
『自分の都合ばかり押し付けてないで、他人の身になって物事を考えろ。まだ仕事中なんだ』
再び会議室に戻ると、部長が「これからは現状に甘んじていないで、新しい視点で仕事に取り組まないと時代に乗り遅れてしまう。
・・・新しい分野に目を向ける必要がある。ある意味、冒険も必要だ」と言っている場面だった。 会議は その後1時間後に終わり、俺は急いで夏美のアパートに向かった。
だが、そこには夏美はいなかった。いなかったというというより、部屋が引き払われていて人が住んでいなかった。何が起こったのか、俺はよく分からなかった。 後日、夏美から手紙が来た。
『私は、あなたと婚約してからずっと考えていたことがありました。このまま結婚して安定とした生活を送ろうか、それともピアノを続けていこうか。悩みました。
でも、私が真剣に悩めば悩むほど、あなたは私のことを想ってくれていないのが最近になってよく分かったので、 私は困難が待ち受けていても自分の道を貫くことに決めました。さようなら、お元気で』
俺は手紙の内容を見て愕然とした。どこかで俺は、女は結婚という二文字を出せば、離れる事はないと軽んじていたところがある事に気づいた。
結婚は、相手の身も心も永遠に縛り付けておく事が出来ると思っていて、特に話し合わなくても夏美は俺を理解してくれていると言う甘えもあった。 あれから8年が経ち、
俺も別の女と結婚して子供も出来た。今の生活に申し分ないが、でも何処かで俺は夏美の事が忘れられなく、ふと胸をよぎる事がある。 この世に永遠と言うものはないのだろう。
それを俺は夏美と言う女を通して知った。夏美の行方は今でも分からない。だが、何処かで幸せになっていると自分に言いきかしている俺がいる。その気持ちは多分、一生変わらないだろう。
きっと人は一貫したものではなく、矛盾を抱えて生きるものだとも俺は思う。


次は「カレンダー」「コーヒー」「戸惑い」で。
5756:03/05/03 01:39
改行がうまくいかなかったですねえ・・・次はちゃんと15行以下にするように気をつけます。
 私の名前はAFC20Mod2-521344。Type12自律狙撃砲の管制である。センサーからの情報を元に目標を捕捉、
80mmの高速砲弾で敵を撃ち抜くのが日課である。
 人間の兵士達からは、妙に細長い砲身を指して「ハスラー」と呼ばれている。
 ここに設置されたのは、内部カレンダーが正しければ1年程前の事で、累計で49体の、IFFに応答しない目標を撃破した。
 49回目に成功したあと、弾薬を補充し、劣化したパーツを交換してくれる人間の兵士は、笑いながら
「ハスラー、次で50の大台に乗るぞ。成功したらパーティだ。コーヒーで乾杯だよ」と喜んでくれた。
 私は彼らが好きだ。彼らの笑顔を見るたびに、私のCPUは歓喜に震える。彼らの為なら、もっと働ける。そう思っていた。
 晴天のある日、砲撃命令が下った。センサーの情報は、12km先、IFFに応答しない移動目標。仕事だ。
私は観測機にズームを指示、シーカーを冷却しつつ砲身のロックを解除。PING正常、各部異常なし。
観測機は、IFFに応答しない、民間人の自動車を捉えた。フロント越しに、乗車している人間達の顔も見える。
 笑っていた。兵士達が、私にそうするように。
 私は初めて、自分が命令された事に戸惑いを覚えた。彼らを撃ち抜けば、彼らの笑顔を消してしまう。
私は人間の笑顔が好きだ。人間も、人間の笑顔が好きだと言う。彼らを消すという事は、他の誰かの笑顔を消すという事ではないのか?
CPUが熱を帯び、砲撃を回避するためのエラーを探し始めた。同時に、砲撃を実行するためのプロセスを開始した。
自己矛盾する命令に論理系が警告を出す。神経系にノイズ検知。私は、私は、私は、私
 接続が回復した。PING正常、各部異常なし。神経系異常なし。ログにエラーメッセージ有り。
16:08_論理系切除、手動砲撃。弾頭管制責任者:1084162。目標撃破を肉眼で観測。
16:09_再起動。PING正常、各部異常なし。神経系異常なし。
 弾薬を補充し、劣化したパーツを交換してくれる人間の兵士は、笑いながら
「ハスラー、50の大台だな。約束通りパーティだ。兵站がビールを奢ってくれたよ」と喜んでくれた。
 私は彼の笑顔に何の感慨も受けることは無かった。

21行。15行って難しいです。
次は「白」「ステッカー」「波」で。
海岸沿いに面したレストランのオープンカフェで彼女とボクは、お茶をしていた。
目の前の海は明るい青色。白い波が幾度となく姿を表しては消えていく。海の色は、
季節ごとに違う。春は「青色」、夏は「澄んだ青緑色」、秋は「藍色」。そして冬は、
「灰色がかった紺色」のように・・・・・・ボクにはそう見える。その時、彼女の後ろ
にあるステッカーがボクの目に入った。「どうしたの、和クン?」彼女はボクをそう
呼ぶ。「あのステッカーのイラスト、いいなあと思って」内心、ボクを子供扱いす
る彼女の態度に憤慨し、口を尖らせながら言った。「ああ・・・、あれ私が描いたのよ」
後ろを振り返り、彼女は静かに微笑んだ。「白里さんって、イラストレーターなの?」
ボクは驚き、彼女を改めて見る。「有名じゃないけど、なんとか生活は出来る程度
の収入はあるかな」ボクは彼女の事をほとんど知らない。
つい2週間前、この海岸で貝殻を拾い歩くスーツ姿の彼女を見つけ、気がついたら
声を掛けていた。彼女の印象は明るいが、ステッカーのイラストは青を基調にして
おり、翳を含んだものを感じた。絵は人の内面を表すというのを聞いた事がある。
彼女の心はどうなっているのだろうか。そこにボクの姿はあるのだろうか?
「今は絵の話をしたくないなあ」彼女は寂しそうに笑った。

次は「緑陰」「雨」「憎しみ」で。
60「緑陰」「雨」「憎しみ」:03/05/04 12:02
 初夏の、蒸す暑い日だった。それは父の命日だったから、8月3日だと思う。
 長い緑の自転車道。先に5kmも行くと湖に出るその途中に設えられた公園で、母はベンチに座って、かごめかごめを口ずさんでいた。
 僕は時々母を振り返りつつ、ジャングルジムに登っていた。
 1時間ばかり遊んだ後、遠雷が響き、遠くでちかちかと閃光が瞬いた。
「良之」
 僕は母の呼ぶ声に、ベンチに駆けていった。
 雨はやがてやってきた。母は雨避けに日傘をさした。
 僕がなるべく母の側に寄ると、母はかごめかごめを歌いながら手を回して僕を抱き寄せた。
 黄昏時に雨は止み、緑陰に青い匂いが満ちた。
 ベンチは日傘の形に丸く切り取られ、僕たちの他は濡れていた。
「……後の正面、だあれ」
 母がかごめかごめを歌い終わると後に誰かがいる気配がした。
 母は後を振り返った。
 僕はぎゅっと目を閉じていた。
「あなた……」
 母は、嬉しそうにそう言い、僕は震えながら、何か大きな手が僕の頭を撫でるのを感じていた。

 それが何なのかはわからない。しばらくたって母は死に、僕は叔父に引き取られた後、占いで生計を立てている。
 ただあの嬉しそうな母の声を思い出すたび、誰に対するともわからぬ憎しみが僕の中に沸き起こる。

次は「爪切り」「バンダナ」「酸素ボンベ」で
61名無し物書き@推敲中?:03/05/05 17:23
弟が死んでもう何年にもなるだろう。それは、突然の訃報だった。
弟は、中国の山奥へ旅行に行き、旅の途中で殺されたのだった。
中国大使館の説明によると、黄色いバンダナを巻いていたため、村人に黄巾賊の斥候と
勘違いされて殺されたのだそうだ。
あまりの不条理さに自失呆然としている私に、大使館員は、弟の形見と称する荷物を
渡した。ずっしり重い発泡スチロールの箱だった。
その日、家に帰って、弟がかわいがっていた熱帯魚に弟の死を伝えると、
彼女は心臓発作を起こした。幸い、一命はとりとめて、いまも酸素ボンベをつけて
水槽の中を泳ぎまわっている。
弟の形見は、まだ封を開けずに置いてある。「詰めきり」と書かれたその箱に、
なにが詰めきられているのか分からず、誰も開けようとしないのだ。

#もうしわけない。「爪切り」を勘違いしてしまった。
つぎのお題は、独裁者、優しさ、ピラミッド、てことで
.坂東孝信は朝鮮人の部落民だよな。
手足をもぎ取ってなぶり殺そうぜ。
登山ナイフで坂東孝信のハラワタ抉リまくろうぜ!
坂東の横浜市金沢区富岡一丁目41-4の家も燃やしてやろうぜ。
電話:093−521−7011に殴り込みだ。
ソレソレ坂東孝信一家もなぶり殺しだぜ。
63独裁者、優しさ、ピラミッド:03/05/06 01:22
窓の無い隠し部屋の中で彼は最後の時が訪れるのを待っていた。
かつては1000人を超えるほどの構成員を抱えた教団において
独裁者と揶揄されながらも権力ピラミッドの頂点に君臨していたが
今はただ、かつて自らが超越したはずの神の慈悲を願うしかなかった。
苦しみも痛みも欲望さえも彼は捨てきれずにいた。
全てが手に入らないのならばいっそ全て無くなってしまえばいい……
極端で単純な思考そのままの願いは神の元に届けられた。
高い技術力で精巧に作られた隠し部屋には空気の抜ける隙間すらなかった。
息苦しさとともに薄れ行く意識の中で彼は釈迦が蜘蛛の糸をたらすのを待っていた。
しかし、蜘蛛一匹助ける優しさの無かった彼には起こるはずも無い奇跡であった。
64独裁者、優しさ、ピラミッド:03/05/06 01:27
あ、次は「電波」「群衆」「酵素」でよろしくです。
65うり:03/05/06 10:46
「電波」「群集」「酵素」
エイズ、エボラ、サーズ。ここ何十年に渡り、人類の存続を危うくするほどの病が地球上に登場した。だが、この病は……。
あらゆる国の研究機関がワクチンの開発にやっきになっていた。
アフリカの片田舎に発生した、電波を介して感染する新型ウィルスは、全世界を恐怖の坩堝に陥れている。
自暴自棄になった群集と警察が衝突する国でさえ一つや二つでは無い。
最初の患者が発見されてからまだ一ヶ月にも満たないと言うのに、世界中での死者の累計は三万人を超え、しかも加速度的に増えているのだ。
発病すると身体の組織と言う組織が壊死し、二十四時間後には拳大の腐った肉の塊しか残らない。
「直ぐに厚生労働省に連絡しよう」増田主任研究員は拳を振り上げた。
トヨヒラ製薬の研究所は興奮に包まれていた。ウィルスの働きを抑える酵素が見付かったのだ。
「しかし、主任」横山副主任は喜びに沸く研究室の中で、一人、憂いの表情浮かべていた。
「首相、遂にやりました」増田がかけた電話は、何時の間にか山口首相に繋がっている。
「はい。現在存在している人類は確実に助かります」増田は一瞬視線を床に落とした。
「ただ、少々問題がありまして……」眉間に皺を寄せて言い淀む。
「人類の未来を手に入れたのか、失ったのか……」研究室は水をうった様に静まった。
「この酵素は、ウィルスの働きを抑えるのと同時に、精子と卵子を殺してしまうのです」

次のお題は「夕焼け」「貸し金庫」「フルコース」でお願い致します。
66名無し物書き@推敲中?:03/05/06 22:10
『夕焼け』『貸し金庫』『フルコース』

 こんなに鮮やかな虹を見たのはいつ以来だろう。
 僕は今、車のフェンダーミラーに掛かる丘の上の虹に全てを魅入られていた。今日の誤解も、昨日の困苦も、
そしてこれから向かう先に待つであろう確実な破局も、今この時は忘れさせてくれた。
 ジュラルミンのアタッシュケースには今となっては無意味な書類の束が詰まっている。その何時間か後にはシュレッターに
通されるのを待つだけの紙くずなのだが、今はまだ僕の年収の200年分の価値があるらしいそれを、無事に送り届けてなんとか融資を
取り付けたい。それが僕の雇い主の最後の望みであり、そして叶わぬ夢である事も僕は知っていながら、それでも今僕の使命はこの
書類を無事届けることにあるのだ。
 負け戦に駆り出される足軽ほど憂鬱なものも無い。
 せめて、あの虹でも僕の心の中に留めておきたい。真っ赤に染まる夕焼けに溶け込み
始めた光の原色たち。この、手元のゴミが、文字通りのゴミになる代わりに、貸し金庫にその絵を
しまっておきたい。いつでも開いて目の前に映し出せるように。
 お決まりの倒産劇。会社整理のフルコースが始まる。速ければ明日にも。
 ひと時の刹那、今日のこの夕日と虹の事が人生の全てであってもいい、そんな
センチメンタルな気がして……。

次のお題は『シークレット』『椰子の実』『スチールドラム』でお願いします。
67春飲み屋 ◆qNVJf9gkMU :03/05/06 22:46
『シークレット』『椰子の実』『スチールドラム』

 なんか、スチールドラムが捨ててあった。
 夢を見たのだ。夢の中の俺は結構小さかったな。まだ、小学生くらいだったか。ともかく、
我が家の庭にじっと座っていた。あたりはもう薄暗かったのに、家に入る気はしなかった。
俺はもうなんというか、完全に拗ねてしまっていたのである。
 拗ねた理由ははっきりいってたいしたことではない。仕事で沖縄に行っていた父親が、
おみやげに椰子の実を持って帰る、ってのを忘れていたのだ。まあ、夢の中なのだから
そんなものだろう。
 その夢から目覚めてみると、まだ真夜中で、月がすぱっと照っていた。俺がそれから
なんとなく庭に出てみたのは、偶然ではない気がする。というのも、庭には小学生ぐらいの
背丈の俺がうずくまっていたというわけなのだ。
 彼の目の前には、なんか、スチールドラムが捨ててあった。彼が寂しそうにスチールドラム
を眺めているので、俺も寂しそうに眺めてみた。なんだか、ひどく寂しい心地がした。
「なにしてるの?」小学生の俺は尋ねた。
「それはヒミツだ」
 と、俺は答えた。
「トップシークレットなんだ」
「自分にさえも、教えられないの?」
 彼はふしぎそうに尋ねた。俺はすちーるどらむを見つめたまま、頷いた。
「ぼく、もう少し大きくなるよ」
 そういう声が聞こえた。俺は大きなあくびをひとつして、そのまま寝室に戻った。なんとなく、
よく眠れそうな気がした。

次は、「名前」「月」「ベース」でよろしくです。
68名無し物書き@推敲中?:03/05/06 22:48
イラク戦争の写真がいっぱい!!!!

まともに見れるかよ!!!!

心臓の悪い方はご遠慮ください!!!

http://www.marchforjustice.com/3.30.php

「名前」「月」「ベース」

 「ベースの方、どうぞ」と俺は呼ばれた。
 俺には名前がない。名無しのベーシストだ。
 青い顔の髭面の男がブースから出ていく。
 奴も同じだ。名無しのギタリスト。

 今、ここには名前のある奴なんかいない。
 そいつは別のところにいて、喰うか寝るかセックスをしている。
 俺はベースをかき鳴らす。単純なリズム。良くある進行。
 こんなものをやっている俺は、名前なんかなくていい。

 お疲れさんとだけ声をかけられ、俺はスタジオを後にする。
 それは文字通りの意味で、それ以上でもなく、それ以下でもない。
 いや、そもそも意味なんてないかも知れない。

 顔を上げると月だけが夜空に浮かんでいた。
 細い細い三日月。満月であればきれいなのだろうか?
 月だけを見て俺は歩いた。
 それは、満月であればきれいなのだろうか? 

#次のお題は「予想」「センタリング」「マスコミ対応」で。
70名前、月、ベース:03/05/06 23:45
いい加減に酔っ払っていたのでそのバーの名前など覚えてはいない。
しかし、その店のバーテンは間違いなくウサギだった。
白いふさふさとした毛の生えた耳をピンと立てて静かにグラスを磨いていた。
「ギブソン。」
ウサギのバーテンは小さく頷くと手際よくギブソンを作り始めた。
「どうぞ。」
差し出されたグラスには満月のようなパールオニオンが揺れている。
ジンベースのドライなカクテルを一気に飲み干し、アルコール以外の
何かがもたらす心地の良い何かを感じていた。

71名前、月、ベース:03/05/06 23:46
かぶっちまったので御代は継続でよろしく。
72名前、月、ベース:03/05/07 00:14
予想、センタリング、マスコミ対応

大方の予想を裏切り俺たちの中で一番最初に結婚したのはタケシだった。
今となっては珍しくも無い「できちゃった婚」ではあるが「ヌリカベ」の
異名を持つほど地味で大人しいタケシがそれをやるとは驚きだった。

「据え膳食わぬは男の恥って言うだろ。センタリング受けたらシュートするのが
男ってもんだろ。」
アルコールも入って結婚式の二次会ではいつに無く饒舌になったタケシの
73名無し物書き@推敲中?:03/05/07 00:41
「予想」「センタリング」「マスコミ対応」

「改革断行です。」
いつもの決め台詞で首相の演説は終わった。ほぼ同時に野党の代表が挙手し
厳めしい顔で質疑を始めた。
予想どうりの展開、激しい討論を期待する視聴者を裏切り首相は言った。
「じゃあ,辞めますよ。」
ざわつく議場を引きで映していたカメラが慌ててセンタリングする。
頬を高潮させて首相は言葉を継いだ。
「文句言うならあんたがやればいい。」
金集めとマスコミ対応の上手さだけでここまで登り詰めた野党の党首は
見る見る青ざめた。
「あんた、何言ってるんだ。む、む、無責任じゃないか。」
搾り出すように虚勢を張って見せたが誰が見ても負け犬だった。
「あんたも辞め時だよ。」


「にんじん」「お釣り」「コンクリート」でどうぞ。
 午後8時45分、閉店間際のスーパーで俺は悩みつづけていた。
 所持金が250円。にんじん一袋が228円。お釣り22円で、何が買えるか。
 チロルチョコ21円以外に買えるものはなかった。サラダドレッシングの小袋でさえ、26円した。
 俺は嘆息し、にんじんを取り上げた。今日の晩飯はにんじんの丸かじりだけだ。

 俺は公園の噴水そばで、ベンチに腰を下ろしてにんじんをかじっていた。周囲には、疲れ果て、
うなだれた男たちが幾人もたむろしている。おそらく俺と同じ境遇なのだろう。なまじ統合セキュリ
ティシステムなんか入れたばっかりに、発狂した電子ロックが主の帰還を阻むのだ。
 どこかの誰かがばら撒いたウィルス。セキュリティ会社の解析よりもほんのちょっぴりだけ強靭
だったそいつは世界中に伝播し、ネットワークに接続されたコンピュータというコンピュータを狂わ
せた。
 今セキュリティ会社ではネットから切断したコンピュータを再インストールし、必死に解析をして
いるという。もっとも、すべてのネットワークが寸断された今、ワクチンソフトがどれだけ役に立つ
のか分からないし、破壊された預金データの復活までやってくれるほど便利だとは思えない。
 三日目を迎えた、コンクリートジャングルならぬコンクリートデザートでの生活。まだしばらくは、
続きそうな気がした。

 次のお題は「吸い殻」「夢」「煙」で。
75うり:03/05/07 10:56
「吸い殻」「夢」「煙」
喧騒と渦巻く紫煙の間を女の声が漂っていた。
「煙の向こうにあなたの未来を見てみない?」シナモンの甘い香りが鼻孔を擽る様に、その声は俺の耳を蕩かした。
振り返らずとも囁く女の唇がすぐ耳元にあるのが分かる。
「新しい煙草なの。どうぞ」ラスティネイルの隣に、玉虫色に輝く見慣れないパッケージが置かれた。
「ありがとう」振り返った俺の目に映ったのは、腰まで伸びた艶やかな髪と、ギリシア神話の女神の様な身体のラインだ。
煙の中に吸い込まれる様に消えていく後ろ姿に見蕩れた。
咥えた煙草の灰が膝に落ち、紺色のスーツが白くくすむ。慌てて灰皿で揉消す。何時の間にか吸い殻で埋め尽くされている。
飲み屋にやって来る煙草のキャンペーンガールなんて、キャンギャルとしてはレベルが低いのが相場だ。だが、今の女は……。
女が残したパッケージを見詰めた。瞼を閉じると、薄い布が露にした尻の形の良さが生々しく浮かび上がる。
「煙の向こうにあなたの未来を見てみない?か」どんな未来が見えるのか楽しみにしながら封を切った。
売れない小説家の俺が夢見る未来は、重版、増刷、印税生活。
熟れた果実の甘みに満ちた未来を想像しながら煙草に火をつける。
――泣き叫ぶ女房。涙を浮かべ覗き込む友人達の顔。苦渋に満ちた白衣の男が呟く。
「肺への転移がもっと早く見付かっていれば」
――女は、カウンターで青褪める男を見詰め、口元に笑みを浮かべた。
彼女はSKR、そう、世界嫌煙家連盟のエージェントだった。

次のお題は「乳房」「燕」「缶コーヒー」でお願い致します。
ここの文章はもう批評してくれないのかな?
77「乳房」「燕」「缶コーヒー」 gr ◆iicafiaxus :03/05/07 20:34
連休の明けた朝の通学路をまだ少し眠い気がする頭でぼんやりと歩いていたら、不意に後ろから駈けて来て
僕の肩をばんっ! とたたく者があった。びっくりして振り返る僕に「ぼけっとしてるとあぶないぞ」と
男のような言葉で笑うのは多分半袖のシャツは今年初めての坂本智捺で、「今日、当番だから、」と言って
学校へ急いでいく智捺のシャツの背中身頃は少し汗に濡れているように見えた。

5限までの授業はこれといった事も無くて終わって僕は文芸部の部室に鞄を置くといつものように裏の花壇に
腰掛けて副部長の智捺と二人ケチくさく一本の缶コーヒーを廻し飲みにしながらつまらないことを話した、
最近読んだ本とか、誰かの噂とか。缶に残った最後の一口を呷るようにして飲み干す智捺の薄着になった胸は
僕の気のせいでなければ少し去年の夏より大きくなっているようで、僕は目を、そらした。

僕らはなんの遠慮も無い親友で、男の子だとか女の子だとかなんて忘れている、はずなのに時々、やっぱり
男の子と女の子であることに嘘は無くて、そんな何の脈絡も無いような瞬間に気がつくと抱きしめたいとか
乳房がどうとか莫迦、そんなことを考えてしまうやつがあるかっていうような気違いじみた自分がいて。

あっ、と智捺が呟いた。上を向いた智捺の目の先には去年と同じ場所にまた燕が巣を懸けようとしていて。
「ほら、あいつ羽に傷があるよ、去年、最後まで巣立てなかったあの燕の子だよ」

「智捺、」僕は訳もなく呼んでいた。ずっとこんな風に一緒に日々を過ごしていられるようにと強く思った。

「んー?」まだじっと巣を見る智捺の頚に汗が浮かぶ。不意にそれを舐める誰かの姿が目に浮かんで、僕は
もっと胸の大きくなった智捺を抱くその知らない男の画像を削除しなければならないと必死になって首を振った。


次は「ライト」「ショート」「センター」で。
78名無し物書き@推敲中?:03/05/08 04:05
郊外のショッピングセンターの2階の楽器屋で、俺はライトゲージを買った。
しらけた目のドレッドの店員が、それを小さな袋に入れた。
80円の弦を1本だけ買うのは恥ずかしい。
まるで、守銭奴じゃないかというような自分を少し責めている俺がいた。
でもまーしょうがない。ストリートミュージシャンは貧乏なもんさ。
今日だって、朝から食パン一枚しか喰ってないのだ。
俺は、3階まで行きファーストフードでも探そうとエスカレータに乗った。
飲食店街は、平日で空いていた。隅の壁のとこに何故か易者が陣取っていた。
それはまるで役にたたなそうな易者だった。
そういえば前に一回ストリートでも易者と喧嘩になったことがあった。
昨日今日生まれたガキが30年も前からここで商売してる俺の邪魔するんじゃねえ。
そう言ってその、ネタノールまみれのオヤジは、俺のギターケースをぼこぼこに
蹴りつけやがった。で、俺はキレて、そいつの机を思いっきりひっくり返してやった。
易者には、ろくな奴がいねえ。どうせこいつらは、いつも適当なことを言ってるだけだ。
そんなことを考えながら、照り焼きバーガーセットをトレーに乗っけて、女子高生3人組の
横の席に座ってため息した。3人もうちショートカットのブスが一番声がでかく、笑い声は
けたたましかった。飲みかけのアイスコーヒーを頭からぶちまけてやりたいくらいだった。
そして今日もまたフレンチポテトを8本残して、その味に飽きている俺がいた。

次は「てるてる坊主」「ひわい」「どどいつ」で
79bloom:03/05/08 04:29
ある海軍隊員の日記。

1779年11月12日。
我々無敵艦隊は宿敵ビザンツ帝国との決着を付けるためバミューダ海峡に向かっていた。
午後1時25分。
北の空から直径五十丈はあろうかというてるてる坊主が舞い降りてきた。
時をほぼ同じくして旗艦より緊急の無線連絡が入った。
だが、内容はここに書けないようなひわいな言葉をただ繰り返すのみ。
私は迷わず主砲を旗艦の方角に向けた。
午後2時11分。
気がつくとてるてる坊主は消滅していた。
我々は再びバミューダ海峡へと移動を開始した。
戦いの前に旗艦を失うという非常事態となったが、我々は負けぬと信じている。
…上官、呑気にどどいつなど詠んでいる場合ではありませんよ。


次は「なるほど」「白狐」「ドロップ」で
81「なるほど」「白狐」「ドロップ」 gr ◆iicafiaxus :03/05/10 00:03
白狐様のお社は、僕の家からも、美春の家からも、五分ばかりの所にある。僕は
また今年も白狐様のお祭に美春を誘って、日暮れ近く、鳥居の前で待ち合わせた。
今年は特に十二年に一回の大祭りの年に当たっていて、鳥居の中は遠くから見に
来たらしい人も多くて、歩くだけでも転びそうになるほどの人混みだった。

浴衣に着替えて来た美春は今日は少し紅も差したようで、一瞬、今日の美春は何故か
美春と呼捨てにしてはいけないような気さえした。そして僕は同じ浴衣を着た美春の
胸が去年よりも少し大きくなっているみたいだなんて余計なことまで、思った。そう
例えば夏なんか僕の部屋に来た時「暑いから脱いでもいい?」とか言って平気でタンク
トップ一枚になったりする美春なのに、それをそんな目で見てしまう自分が羞ずかし
かった。十二年前二個のドロップを途中で交換して嘗めた頃の僕はもう美春の前には
居ることができないんだと思うと、美春に何か悪いことをしている気さえした。

白狐様では十二年ごとに本殿を建て直す。その古い本殿を、今日の大祭りで燃やすのだ。

そう古くも見えない旧本殿に火が放たれ、焔は大きな音を立てて日の落ちた空を照らす。
「小さい頃からよく遊んだこの神社が燃えるとなると、なんだか寂しいな」

その時美春は誰かに押されて、慣れない草履に躓いた。そして受け止めた僕の腕の中で
「いいじゃない、新しい本殿もほら、どっしりしててかっこいいよ」
と言った美春の柔らかい温もりを、その時僕は抱きしめたいと思ってしまった。
                                          ̄ ̄ ̄ ̄

#考えたことを考えたとおりに書くのは難しいですねえ。今度こそ…。
#次は「ジャンプ」「チャンピオン」「エース」で。あ、簡素いただけたら嬉しいでつ。
82名無し物書き@推敲中?:03/05/10 00:58
玄関に鍵がかかっていた。
おかしい。家の中には姉貴がいるはずなのに。
今日は天中殺だから姉貴は家から一歩も出るはずがない。
ともあれ僕は鍵を持っていなかった。窓も全部調べたが全部施錠されていた。
壊そうにも特殊強化ガラス製なので戦車砲ですら壊れない。
そのまま数時間考えた末、僕は屋根までジャンプして煙突から家に入った。
家の暖炉は正月に餅を焼く時にしか使わないので火傷の心配はない。
廊下を歩いて姉貴の部屋の前に行くと、中からかすかに音楽が聞こえた。
チャレンジャーだかチャンピオンだか、そんな感じの名前の曲だ。
姉貴が音楽を聞くのは何か怪しいことをしている時と決まっている。
その最中に邪魔したりすると怒ってカードを投げてくるのだ。
僕はドアをノックしようかしまいか迷った。迷った末にいきなりドアを開けた。
何をしているか確認する暇もなく、僕は飛んできたカードで目をふさがれて退散した。
剥がしてみるとハートのエースだった。今回は相当怒ったらしい。
僕はせめてものお詫びにスペードのキングを持っていって、ドアの隙間からそっと入れた。

次は「人形」「サーカス」「道化」にてお願いします。
さあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい、今からサーカスが始まるよ
お代なんていらないよ、見たい人だけ寄ってきな
これはこれはとあるお話、ここに一人の哀れな道化師が一人いたとさ……

「おらぁ」 ガッ
「うがっ」                どさっ
いつものごとく虐められている
理由なんてしらない、多分イライラしているとかだろう
「ちっもうおねんねか…」
周りはみんな見てない振りをしているか見て笑っている
それはいつもの事だった                今日までは

「違うよ、今日はまだ終わりじゃないよ」
「あ?……お前何言って…」
「ここに哀れな道化師が一匹…いつも馬鹿にされて、殴られて、笑われて…」
「は、頭でも打ったか?お前」
「でもそれは今日までのこと、さぁ、一度だけの道化師の抵抗、寄ってらっしゃい見てらっしゃいお代はいりませんよ」
「あ…?さっきから何言って…」
相手が呆けている間に道化師は
                      ぐさっ ぐさっ ぐさっ   どさっ
隠し持ったナイフを突き刺した
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

声が聞こえてくる、それはまるで歓声のように思えた
「はい、一瞬だけだったですけど、どうでしたか?それではもうオシマイオシマイ



             永遠に」

ぐっ ぶしゅっ  ぶしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ

道化師は首にナイフを刺し、役目を終えた

その役目を終えた道化師はまるで糸の切れた人形のごとく倒れた

次は「来世」「友情」「兆」でお願いします。
85ルゥ ◆1twshhDf4c :03/05/10 06:50
鈍い色をした有明の月が暗闇の中に静かにたたずんでいる。
それは何かの兆しであるかのように不気味な輝きを放っていた。
ぼんやりとした頭で有明の月を眺む。
先程、花房の君が夢枕に御立ちになった。
彼の君と初めてお会いしたのは水無月十日のこと。
沐浴のため、侍女と藤の廊下を歩いていた時だった。
彼の君の御噂は絶え間なく流れていたので、私自身幾つかお耳にしたことはあったが、
当人と会うのはこれが初めてだった。
会うといっても御簾ごしにほんの少し眺めただけ。
本に美しいお方だった。
ほんの一瞬だけ目があったが、彼の君はそんな一瞬も見逃さず、ふわりと笑いなさった。
私はただどぎまぎとするしかなかった。
愛しいお方。
しかし、私と彼の君が契りを結ぶことはできない。
なぜなら私は帝のお后なのだから。
隣に寝ている帝を起こさないようにゆっくり立ち上がり、私は寝台を降りた。
たとえ友情であってもいい。来世こそは彼の君のお側にいたいと願う。
しかし、本音は今すぐ彼の君にお会いしたかった。
たとえすべてのものを裏切ることになっても。
廊下がきしむ音。私は静かに顔を上げた。
銅色に輝く有明の月。
今宵の月は美しい。

次は「クローバー」「榊」「斑点」で。
86「クローバー」「榊」「斑点」:03/05/10 12:37
 うちの神社は広い。
 とは言っても一つの山がまるごと神社になっているだけで、何があるっていうわけでもない。
 実際の所、奥の院の神事の時は荷物を抱えてひーひー言いながら山を昇ることになるし、
上に上がるとそこは急に開けていて、クローバーやら何やらが好き勝手に延びている。
 そんなはらっぱに立ってる掘ったて小屋みたいな奥の院で、近くの大学のハンググライダー部の人が
離陸するなか神妙な顔で玉串や榊を振っているわけで神域って感じは全然しない。
 でもそれでも神事をやってる時にはそれなりに神妙な気分になるし、観客がいると気合いが違ってくる。
 そう、今みたいに。
 あたしは五十鈴を持って、奥の院の中にある白い斑点のついた大きな岩の廻りを舞いながら、
じっとあたしを見つめるハンググライダー部の人の視線を気にしていた。
 彼の名前は沢木耕次郎っていう。今日の神事の為の荷物を下から持ってくるのを手伝ってくれた人で、
あたしは山に昇る道すがら、ずっとこの沢木さんと話をしていたのだ。
 来年に迫った受験のこととか、このごろ学校で流行ってることとか、大概はそんなどうでもいいような話だった。
 でもちょっとどきっとしたのは、
「俺もさ、妹欲しかったんだよね」
 って言葉だ。
 その前にあたしが延々お兄ちゃんが欲しかった、お姉ちゃんはいるけど、本当は、
お兄ちゃんがいればってずっと思ってたっていう話をしてて、その時沢木さんからふと出た言葉だった。
 そしてその沢木さんが、じっとあたしを見つめてる。
 あたしは恥かしくてどきどきしながら、神さまのためになのか、誰のためになのか、よくわからない舞いを舞っていた。

次は「三葉」「キーボード」「刺青」で
87「三葉」「キーボード」「刺青」:03/05/10 16:46
三葉、うまい。
うますぎ。ホント。
レタスだのカイワレだの相手になんないね。
最近じゃ水菜なんて出てきてるが、なんだあの細長い野菜は。
俺に言わせれば可憐さがないね。
三葉って言っても、セリ科の植物だけが好きなわけじゃない。
とにかく3つ葉がある事。これが最低条件。
3つ葉があれば雑草でも刺青でも擬態してる昆虫でもいい。
意外と知られていないのだが、おまえらの目の前にあるキーボード。
それ、小さい植物育てるのに最適なんだよ。
キーとキーの隙間に種を撒いて水やってると、いつのまにか芽が出る。
花ゲリラの俺としてはそんな小さな隙間も見逃せない。
おまえらもキーボードはこまめに掃除したほうがいいぞ。
気が付いたら「キーボードがラピュタみたいになってました」って事になるかも知れないし。
さぁて次の三葉はどこに植えようかな。

次は「蛍光ペン」「きのこ」「霊」
88「蛍光ペン」「きのこ」「霊」:03/05/10 17:12
小さい頃、家にはワラ半紙が沢山あった。
印刷会社に勤める父さんが、沢山もらってきたから。
私はよくそれに、蛍光ペンで絵を描いた。
ワラ半紙に描いた黄色い線は、蛍光灯に透かすと、
ぼんやりと光って見えて、きれいだった。
仕事から帰った父さんは、それを見て不思議そうな顔をしていた。
「これは、きのこかい?」
「ううん、お母さんだよ。」
そんなことを言っていれば、心配もするだろうと。
気づいたのは、私が大人になってから。
だけど、父さん。
貴方のいない夜には、本当に、
蛍光ペンで描いた母さんが、話しをしてくれたんだよ。


……念の為、フィクションです。w
では次、「煉瓦」「蓮華」「レンズ」
 就職以来縁遠くなった旧友に、久しぶりに電話をした。美人と評判の奥方が出て、素っ気なく「主人は海外出張中です」と応えた。イラク戦争の真っ只中の中東に、フリーカメラマンとして飛んだそうだ。思いがけず、驚いた。
 あいつとは高校の写真部で知り合った。物静かだが、根暗と言う訳ではなく、何かと気の回る陽気なヤツだった。俺と違って根っからの写真好きで、特に花を良く撮っていた。
 蓮華の花を撮りに行こうと誘われて、遅刻した日。あいつは煉瓦通りの高架下で、ホームレスを撮っていた。夜明け間際の薄汚れた路上で、やけに楽しげに笑っている彼らに、俺は声を掛けるのをためらった。
 そんなあいつが、動乱の中東で何を撮るというのだろう? 破壊された町や、傷を負った人々に、レンズを向けられるのだろうか?
 ――きっと、向けなくてはいけないのだろう。それを仕事に選んだのだから。
 もやもやとした気持ちが胸にわだかまったまま、数日が過ぎた、ある朝。新聞に一枚の写真が載った。戦争終結を喜ぶイラク市民の、笑顔を映した写真だった。
 そしてその下に小さく、あいつの名前も載っていた。
 ――あいつらしいや。
 俺は妙に誇らしく、ハサミを取りに部屋に戻った。


ちょっと長かったかな?
次は「手紙」「冷蔵庫」「カラス」
90「手紙」「冷蔵庫」「カラス」:03/05/10 22:52
居間でいちご水を飲んでくつろいでいると、郵便受けの方から物音がした。
僕は急いで玄関に走った。その間2秒にも満たなかった。にも関わらず、すでに配達員の姿は見えなかった。
僕は生まれた時からこの家に住んでいるのに、まだ一度も郵便配達員の姿を確認できたことがない。
姉貴は一度だけ見たことがあるらしいけど、それがどんな人だったかは自白剤を打っても教えてくれなかった。
郵便受けには一通の手紙が入っていた。姉貴宛で、差出人は書かれていなかった。
とりあえず本人に渡そう、そう思ったが、家の中に姉貴が見当たらないことに気付いた。
玄関には姉貴のATB(全地形用自転車)が置きっぱなしなので外には出ていないのは確かだ。
今日は暑いから冷蔵庫にでも入ってたりして…
もちろん冷蔵庫に姉貴は入ってなかった。冷凍庫の方に入っていた。
凍死寸前だったので、急いで居間の暖炉に火を熾して温める。
落ち着いたところで僕は手紙を渡した。僕の目の前で無造作に開封する姉貴。
中に入っていたのはカラスの羽根が一枚だけだった。何かのお守りだろうか。
そう言えば姉貴はここ数ヶ月、通販でおねしょを治すお守りを買い漁っている。
去年の春頃治ったはずなのに、再発したのだろうか。
そうだとしたら、姉貴ももう19歳なので焦るのも無理はない。
カラスの羽根を大事に持って部屋に戻る姉貴。
僕は何も言えずに見送った。

次は「ボーダー」「ストライプ」「ゼブラ」
91「手紙」「冷蔵庫」「カラス」 gr ◆iicafiaxus :03/05/11 00:11
岩崎っていうのは俺の社会学のゼミでの同級生で、この春晴れて大学を卒業
して東京を遠く離れ大手紙の地方支局で新米記者として働いている女の子なの
だけれど、その岩崎が電話をかけてきて、今日は東京へ出てきてるんだけど
用事も済んだから久々に酒でも飲もうよ、とか言うので、五年生をしてる俺は、
おう飲もうぜ飲もうぜって、岩崎をこの相変わらずの安アパートに上がらせて、
まあ座布団無いけどその辺に坐ってくれよ、とか全くいつもどおりの調子で、
冷蔵庫のカラスミと戸棚の焼酎にコップを二つ出して、さあ今夜は飲み明か
そうぜって、ほんの二、三ヶ月前まではよくしたように社会や倫理や政治や
経済について朝までこいつと語れるのを心底喜びながら、言ったんだけれど、
岩崎は手首を返して時計を見ながら、ごめん、あたし明日は仕事だから今夜の
寝台特急で帰らないといけないんだ、って詫びて、近況とかそんな話をして。

いつもTシャツにジーパンだった岩崎が用事の帰りだからかも知れないけど
タイトスーツにストッキングなんて穿いちゃって、玄関先で化粧を直しながら
深夜のタクシーを待つ、その横で俺はなんだか、ヨレヨレの学生シャツが恥ず
かしいような気がして、また飲もうぜって言葉をかけることが、できなかった。

#お題は「ボーダー」他で。
「なあ、教えてくれよ。キン肉マンの二次創作で超えちゃいけないボーダーラインって、どの辺だ?」
「どの辺だ、って言われても」
 なぜにキン肉マン。
「オリジナル超人出してサイキョー気取らせるのはまず禁じ手だな」
「まあな。でもそんなもん、ボーダー以前にドリだろ。ボーダーぎりぎりって奴の指針がほしいんだ」
「つってもな……ミスターカーメンの包帯を赤青白のストライプに塗って、ミスターバーバーに
クラスチェンジとか?」
「あ、それ面白い。いただき」
「パクるな、コラ。……でもこれなら普通にとおりそうだな。ギャグ4コマとかで」
「ちょっとこっち側過ぎだな。越すか越さないか、そういうラインの判定がほしいわけよ」
「うぅ〜〜ん……?そうだ、キン肉マンゼブラっていただろ」
「ああ、いたなそういうの」
「あいつ、腹だけゼブラ模様ないんだよ。腹までびっしり描くってのは?剛毛と誤認してR指定」
「そ れ だ!!」

25歳未満置いてきぼりネタでスマソ。
お題は継続で。
93「ボーダー」「ストライプ」「ゼブラ」:03/05/11 16:27
昭和△年○月×日 曇り、のち雨……
「ハハハハ、お前はキン肉マンゼブラなんやから、ちゃんと縞々にならんとあかんて」
 裸に剥かれてしまって、私は私の習字道具でストライプをつけられる始末。
ここでも私は、必死で怒りと涙を堪えて、笑顔である。
わざと大きな声で、笑い混じりの「やめろって」。なんという情けなさ……。
 ここまでいったら、いよいよ本気、本当の私。
秘めたる牙をむき出しにして、全員ぶち殺してやろう。
そういうボーダーを心の中で定めているのだけど、
いざボーダーに近づくと、これがまあ、逃げること逃げること。
まあ、精神が未熟で下等な人間に本気で怒ることもあるまい、だとか、
これも中学生独特の一種の無邪気さかも知れない、だとか、
変なところで寛容になって、結局変わりなく、明日は卒業式なのである。

次のお題は「煙」「雲」「青空」。
 煙草の煙が緩やかに、渦を巻いて流れていく。
 コーラの泡はおずおずと、水の層に消えていく。
 汚れたガラス窓の向うに、光るのは青空のかけら。
 飛行機雲を追いかけて、二人で土手を駆け抜けたのは、
 今は遠い昔話。

「――それじゃあ。」
 あなたは唐突に立ち上がり、
「――そうね。」
 わたしも呟いてバックを取る。

 消え残った煙草の火を、灰皿に押し付けてみても、
 涙は流れなかった。

 だからもう、これで終わり。



 次は「アイス」「布団」「ネコ」
 冬の贅沢。
 こたつ。ごくごく普通に見かける、赤外線こたつ。
 半畳程度の大きさで、寝転がると向こう側から足先がのぞくような、小さなこたつ。
 こたつの上には、籐の籠に盛られたみかん。愛媛のおばあちゃんが送ってくれた、とっておきの
みかん。
 寝転がるすぐ横で丸くなるネコ。こたつ布団から首だけ出して、この世の至福を体現しながら眠る
ネコ。
 アイス。手の届くところに置いた、小さな冷凍庫。バニラ、チョコ、抹茶に小豆をおなかに収めた
冷凍庫。
 そして僕。ほてった爪先を布団から突き出し、時折ネコのおなかで指先を戯れさせ、みかんの皮を
むき、アイスの包みを破る僕。
 これが僕の、冬の贅沢。

次のお題は「不機嫌」「カフェオレ」「ピン」で。
96「不機嫌」「カフェオレ」「ピン」:03/05/12 00:30
この3週間、いつになく姉貴が不機嫌だった。原因はさっぱり分からない。
女の子には不機嫌な日があるというのは保健の授業で習ったけど、それが3週間も続くとは思えない。
現在は物を投げつけられるぐらいだけど、そろそろ手を出してきそうな気配も見えてきている。
姉貴は形意拳の達人なので暴れられたら事だ。姉貴の崩拳はおそらく世界に通用するレベルである。
僕も対抗できるレベルの槍術を心得ているが得物は一丈八尺の蛇矛。狭い家の中ではまともに使えない。
とにかく姉貴を怒らせないに越したことはないのだ。
姉貴が喉が渇いたと言った。僕は好物のカフェオレをいれて出した。
一口飲むなり床にぶちまける姉貴。
「混ぜ物がしてある。そんなものを私に飲ませたの」
さすがだ。カフェオレに精神安定剤を入れたことに気付いたらしい。
姉貴は僕を床に押し倒した。僕はすでに観念していた。抵抗しようにも四肢を完全に固められている。
姉貴は動けない僕の唇を奪い、唾を流し込んできた。カフェオレと唾の味が口に広がる。
不意の口付けのショックと精神安定剤の副作用で完全に脱力した僕を尻目に、姉貴は部屋に戻っていった。
そのときようやく僕はピンと来たのだった。この3週間ずっと姉貴が不機嫌だった理由に…。

次は「パステル」「ポスタル」「ホスピタル」で
 繁華街の百円ショップには、いつも人だかりが出来ている。
 狭い通路は見るのも面倒で、長いレジの列には並ぶ気も起きない。
 だから小物の一つや二つ、盗って来ても構わない。
 加奈子は不機嫌な顔でケータイを睨みながら、足早に店を出た。
 小さな液晶の中でピンクの天使が、ウサギのぬいぐるみがどうのとほざいている。
 ――くだらない。
 加奈子はケータイをポケットに突っ込み、替わりに今日の戦利品を出してみた。
 小さなガラスビンの中に小さな帆船を入れた、子供騙しの飾り物だ。
 ――こんな物に百円も出すヤツがいるのかしら。
 鞄の中からペットボトルを出してみた。
 飲みかけのカフェオレが、まだ半分以上残っている。
 加奈子はドブ川の橋に身を持たせ、淀んだ流れを見下ろした。
 そして、手にしたガラスビンを何気なく、投げ捨てた。
 ガラスビンはぷかぷかと揺れながら、加奈子から離れていった。
 ――あのガラス、割っれば良かったかな?
 加奈子はぼんやりと思いながら、安っぽい甘味に眉をしかめた。


遅かったけど、もったいないから載せさせてもらいました。
次は「パステル」「ポスタル」「ホスピタル」で。
98名無し物書き@推敲中?:03/05/12 05:37
とあるホスピタルで、パステルカラーの服に身を包んだ男が
僕に近づいてきてこう言った。
「ポスタルってなんだ?」


壁 ゴミ 高円寺 で。
99_:03/05/12 05:40
100名無し物書き@推敲中?:03/05/12 10:35
100をGETした俺は作家になれる!
101「壁」「ゴミ」「高円寺」:03/05/12 15:14
「すみません、ちょっと道をお聞きしたいんですが」
「はぁ」
「高円寺ってここからどう行ったらいいんでしょうか」
「あんた、高円寺行くの?」
私が道を尋ねた男はあからさまな不信顔でそう言った。
「え、あ、はい」
「あんた、高円寺までの道順も知らずに行くの?」
「いけませんか」
「いけないってことはないけどさ」
男は面倒臭い事に巻き込まれたとでも言うように大袈裟にため息をついた。
「じゃあこの壁に手を付いて。そう、両手とも。壁沿いにずっと歩いて行けばそのうちつけるよ」
「どうもありがとうございました」「どうも」
私は壁際をカニ歩きで進みはじめた。しかしすぐにゴミの山に行く手を阻まれて進めなくなる。
「あのー、すみませーん!」
遠くにいる先ほどの男に手を振って呼びかけた。
「なんですかぁー!」「ゴミがあって進めないんですけどー!」
「んなもん乗り超えて行けー!」「わかりましたぁー!」
私は壊れたテレビに乗って、このまま両手を離さず冷蔵庫を乗り越えるにはどうしたらいいか考えていた。


次は「火炎瓶」「釣り針」「白」で
102prayer:03/05/12 17:11
久しぶりに休暇が取れたので釣りをしに川までやってきた。
腕が悪いのか道具が悪いのかさっぱり釣れなかったがまあそれはいつものこと。
真っ青な空。白い雲。まぶしい日差しも心地よかった。
と。何か手ごたえを感じた。
本日初の獲物か?
慎重にかつ大胆にリールを巻き、釣り針の先にかかったそいつを網で掬った。
これは。
透明なガラスのビンの中に飴色の液体。
口にはなぜか不釣合いなコルク栓。
少し変わった火炎瓶といったところだろうか。
中身はなにかすごく危険なもののような気がした。
触らぬ神に祟りなし。
少し気になったがもとどうり川に流すことにした。
あれはなんだったんだろう。
家に帰ったあとも気がかりだったがじきに忘れた。

次。「思い出せない」「あなたのせいで」「白線」
103うり:03/05/12 17:44
お題カブリでごめんなさい。
「白」「釣り針」「火炎瓶」
老人は今日も釣り糸を垂れている。
工業地帯の間を縫う運河は、鼻孔の奥を刺激する程の腐臭を運ぶ。
背中を丸め、一向にあがらない釣果を気にする素振りも無く、じっと水面を見詰めている。
何年もこの堤防に腰を下ろしているのだ。
節くれだった指先に微かな重さを感じ、老人は竿を起こす。タールの水面から姿をあらわしたのは、布が巻き付いたビール瓶。
布に絡んだ釣り針を丁寧に外す。過激派が捨てたのだろうか、作りかけの火炎瓶だ。
三輪車、ぬいぐるみ、嬰児の死体。今まで様々なものを釣り上げた。
「……今日も駄目かな」汗が額の皺を伝う。真夏の蒸した熱気に、老人は諦めた様に目を細める。
日差しの眩しさに一時まぶたを閉じていたが、思い詰めた様に空を見上げた。
「おおっ」老人は慌てて釣り糸を運河に投げ込んだ。頭上に真っ白な入道雲が広がる。
黒く濁って油でギラつく水面に、薄らと雲の影が映る。
落ち窪んだ眼窩の中を雲の影が流れ去り、老人は泣き笑いの表情になった。
そして、ぽつりと力無く呟いた。
「生きている内に、一度くらい雲ってやつを釣りてえもんだ」

お題は102さんの継続で。









104「思い出せない」「あなたのせいで」「白線」:03/05/12 18:27
夜中、ふと目が覚めたんです。
ヤバい。体が動かない。金縛りでした。
私、人一倍恐がりなんです。
目を閉じる事もできずに怖い怖いと震えていると、カタカタカタカタ…と
何かを叩く音が聞こえてきました。
暗闇の中、白線に見えるカーテンレールをまるで鍵盤を叩くように
指がカタカタカタカタ…と音を立て弾いていたのです。
思わず上げそうになった悲鳴を飲み込んで、私はお経を唱えようとしました。
なのに思い出せないんです。「南無阿弥陀仏」たったこれだけの言葉が出てこない。
そのうち、レールを弾く音と同時に女の呻くような声が聞こえてきました。
「あなたのせいで…あなたのせいで…」
私は心の中で人違いを訴える事しか出来ませんでした。

それからです。私に異変が起こりはじめたのは。
度々意識がなくなり、その時も私は普通に生活しているようなのですが
意識がなくなっている時は、まるで二重人格のように顔つきも仕種も変わっているそうなのです。
小学校以来触った事のないピアノをスラスラと弾けた時はぞっとしました。
私は違和感の残る自分の手を見つめながら、あの女の言葉を思い返しました。
「あなたのせいで」
あれはもしかして「あなたの生で」だったのではないのかと。


半分実話。
次は「マッチ」「湿地」「モンチッチ」で。
105動画直リン:03/05/12 18:29
106「マッチ」「湿地」「モンチッチ」:03/05/12 22:11
我々探検隊は伝説の都トロイを探している。
夜が訪れ、今日の探索も無為のうちに終わろうとしている。
私は残り少ないマッチで、同じく残り少ない煙草に火をつける。
どうも味が変だと思ったら、先の方を咥えてフィルターに火を点けている。
悪罵と共に煙草を地面に吐き捨てる。湿地なのでたちまち火は消える。
モンチッチのような髪型をした助手が夕食を告げる。
彼はお世辞にも賢い助手とは言えなかったが、料理だけはうまい。
彼の料理を食べると、明日もまたやってみるかという気になる。

次は「殻の中」「雛鳥」「宿り木」で。
107「殻の中」「雛鳥」「宿り木」:03/05/12 22:47
「イラサーイー ヒサシブリネ」
そんなに久しぶりだったかな..とりあえずビールとおまかせを頼む
「ママ!ピータンの殻の中 メッチャ雛鳥だよ!!」
「それ 当たりね」 
なるほど 頭から食べると軟骨から脳味噌の深い味わいが広がる
カラオケで「宿り木」を歌うママはご機嫌だった

「リポビタンD」「7億円」「たまちゃん」
108名無し物書き@推敲中?:03/05/12 23:41
リポビタンD「SEXやりてー」
7億円「さよう、この世はSEX最高時代じゃ」
たまちゃん「セックスせっくす」
リポビタンD「SEX最高!」
7億円「セックス最高時代の皇帝にはリポビタンDを推す」
たまちゃん「セックスせっくすSEXsex」
リポビタンD「せっくす」
7億円「Sex」
たまちゃん「セックスせっくすSEXsex」
109gr ◆iicafiaxus :03/05/12 23:56
「殻の中」「雛鳥」「宿り木」

地面に落ちた雛鳥は、一度人の手に助けられると、もう二度と木の上の巣には
帰れないのだと言う。人の匂いを帯びた鳥は、鳥の仲間には戻れないのだと。

親父とお袋が自慢の寝室で首を吊った日の一週間前。クリスマスパーティーの
晩に、今はもう人の手に渡ったあの山の手の家の庭で。軒先につるした宿り木の
枝の下、お前にそうっとキスをした俺は、年明けから高校もやめて一人で
働かなくては、生きていくことすらできなかった。
俺はパチンコ屋の住込みからピンクチラシ配り、風俗の呼び子、きつい仕事を
朝から夜まで務めて、いつかお前と一緒に暮らすんだって思って酒も煙草も
賭け事も女遊びもやらないで通帳の残高が増えるのだけを楽しみにして。
でもお前が女子大の英文科を卒業して外資系商社の秘書課に就職したという話も
誰かに聞いて、俺も少しずつだけどお金もたまって来たからあともう少しだけ
待ってくれろよって思っていた五月の晴れの日、デリヘル嬢を乗せて事務所に
帰る途中の郊外の交差点で、隣に並んだポルシェの助手席にお前を見つけた時。
汚いライトバンと真っ赤なポルシェの二枚のウィンドウガラスが、決して破る
ことのできない殻の中と外に俺たちを分けてしまっているような気がして、
俺はデリヘル嬢に訝られるまで、その場を動くことができなかった。

遅レススマソ。
 ふるさと創生1億円。かつて竹下内閣が打ち出した、壮大な金の無駄遣いだった。
 しかしあれから10年。
 かくも惨々たる実績を残したというのに、同じ轍を踏む輩が現れた。
 今度は、ふるさと創生7億円。

 鶴見市はまだマシな使い道を示した。横浜市と組んで、総額14億円をたまちゃん関連に
投資したのだ。アゴヒゲアザラシの暮らしやすい住環境を整えるべく、河川浄化、治水工事、
生態資源の養生、周辺緑地帯の整備、等々。住民にはすこぶる好評で、数少ない成功した
ケースとして認知されるにいたった。

 失敗例については、数えるまでもない。99%が失敗だった。ここではその極北にのみ言及
するものとする。敢えて名を伏せるが、その都市は7億円分をつぎ込んだ巨大なリポビタンD
を製作しようとした。6億円で全長220mに及ぶガラス瓶を作り、内部に7万キロリットルのリ
ポDを満たし、直径7mの王冠で蓋をするという、パラノイド以外に想像できない、狂気の沙汰
だった。
 なんたらの一念というやつだろう、この巨大リポDは完成した。完成はしたが、失敗だった。
 ブロック工法でガラスパーツを溶接して組み上げたため、炭酸ガス圧力で溶接部から破断、
爆砕したのだ。
 その都市は罹災した住民救済のため、227億円の特別予算を計上することとなった。

 長いが許せ。
 次のお題は「畳」「あさり」「珊瑚」で。
111うはう ◆8eErA24CiY :03/05/13 00:14
次のお題ないので>「リポビタンD」「7億円」「たまちゃん」

 「絶好のビジネスチャンスです、社長」
 広告代理店が、目を細めて企画書のフロッピーを渡す。
 「弱ってるたまちゃんに、御社のペット用健康飲料を飲ませる。
  ぱっと元気になり、川に飛び込むたまちゃん!これはいけます」

 「それで。効果はどの位のものだ」
 社長は重々しく答える。気が咎めるのだ、本能的に。
 「ざっと7億円!でも、出費は知れたものです・・・相手は動物ですから」

 ううん、と考え込む社長。たしかにいい企画だ。
 野生動物に賃金はいらない。それに対し効果は絶大だ。
 ふとテレビのCMが響いた。「元気溌剌、リポビタンD!」
 あの俳優、10年で何億円受け取るのだろう。それに対して・・・

 「別に、動物を哀れむ訳じゃないがね、君。」と、彼は尋ねる。
 「何百万かの出費で、効果が7億。その差額はどこからやってくるのだろう?」
 こうも簡単に、「価値」がゼロから誕生する。彼は疑惑を隠せなかった。
 その企画書のタイムスタンプは、たま出現の遥か前のものだった。

※時事中心だとなんだか読み難いなあ。(送信失敗、再送信(^^;l)
次のお題は:「雛祭り」「宿」「殻」でお願いします。
112111:03/05/13 00:20
あわわ、2分差で遅れてしまいました。ごめんなさい。
次のお題は:110さんの「畳」「あさり」「珊瑚」でお願いします m(_ _)m
113名無し物書き@推敲中?:03/05/13 00:32
それは始めてだった
決して忘れることはない
あのすばらしい体験を...

ひな祭りの日の空はどこまでも暗く
宿舎から見える月はどこまでも高かった
僕たちは二人きりだった

彼女の髪は柔らかく
彼女の目は黒かった
僕は彼女が望んでいることを知っていた

彼女の肌は柔らかく
僕は,彼女の背中に指を這わせた

どんな風にしたのだろう
無我夢中だったから
殻が爆ぜるように、僕は彼女の胸にさわった

突然僕は怖くなった
心臓が飛び出しそうだった
でも彼女は足を広げた

急に彼女がいとおしくなって
どっと白い液体があふれ出た

終わった、何もかもが
これが僕の初めての体験だった
牛の乳搾り...

次「陰影」「安寧」「合志」
114名無し物書き@推敲中?:03/05/13 00:35
>>112
ゴルァ

「陰影」「安寧」「合志」 +「畳」「あさり」「珊瑚」



            , '´  ̄ ̄ ` 、
          i r-ー-┬-‐、i
           | |,,_   _,{|     で書かないか?
          N| "゚'` {"゚`lリ     
             ト.i   ,__''_  !   
          /i/ l\ ー .イ|、
    ,.、-  ̄/  | l   ̄ / | |` ┬-、
    /  ヽ. /    ト-` 、ノ- |  l  l  ヽ.
  /    ∨     l   |!  |   `> |  i
  /     |`二^>  l.  |  | <__,|  |
_|      |.|-<    \ i / ,イ____!/ \
  .|     {.|  ` - 、 ,.---ァ^! |    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l
__{   ___|└―ー/  ̄´ |ヽ |___ノ____________|
  }/ -= ヽ__ - 'ヽ   -‐ ,r'゙   l                  |
__f゙// ̄ ̄     _ -'     |_____ ,. -  ̄ \____|
  | |  -  ̄   /   |     _ | ̄ ̄ ̄ ̄ /       \  ̄|
___`\ __ /    _l - ̄  l___ /   , /     ヽi___.|
 ̄ ̄ ̄    |    _ 二 =〒  ̄  } ̄ /     l |      ! ̄ ̄|
_______l       -ヾ ̄  l/         l|       |___|
115やってみた @SOMEONE:03/05/13 01:24
「陰影」「安寧」「合志」 +「畳」「あさり」「珊瑚」


カリブ海の砂浜は、どこまでも白い珊瑚の死骸で彩られている。
照りつける太陽は、安寧としたまどろみさえも許さず、
熱い陰影を目蓋の奥にまで焼き付ける。
甘すぎる異国のカクテルに、痛む頭を抑えながら、
ああそろそろ、あの古畳とあさりの味噌汁が恋しいよと、
叫びたくなる出張三週間目。

合志の空は、晴れているだろうか。



無理やり並べてみたけれど、「合志」の意味がわからなかった。
なので文中の「合志」は地名として扱っています。

次のお題は「陰影」「安寧」「合志」だけの継続で。
116うはう ◆8eErA24CiY :03/05/13 01:42
やってみた2:「陰影」「安寧」「合志」 +「畳」「あさり」「珊瑚」

 「遂に完成したぞ!」春の稲妻が、教授の顔に鮮やかな陰影を落とす。
 教授の手には、奇妙な形のリモコンが握られていた。
 TV局の犠牲になった者達の合志による、苦労の結晶が。

 「他人の秘密をあさり、安寧を貪る司会者。畳の上では死なせんぞ」
 TVに向けて、秘密のボタンを押す。効果は絶大だった。
 「この現象は何を示すのか、私は思わず・・・あひょーん!」
 瞬時に失禁し、カメラの前で小便を垂れ流す司会者。

 やらせニュースの担当者も。
 「まあひどい。誰が珊瑚に、こういう傷を・・・とととととっ」
 天気予報番組とて例外ではなかった
 「えーっとですねえ、今夜は低気圧が西から・・・あっ、あ、ああああ」

 国際ニュース。胡散臭そうな政治家が3人会談している。
 ・・・3人とも失禁!会議は即刻中断となった。
 「思い知ったかぁ」と高笑い。「下界の反応でも見物するかの」

 と、外に1歩出て、教授は思わず目をむいた「こ、これはっ!?」

 誰もいない地下室では、TVが延々とニュースの説明をしていた。
 「日本の戦後を決めたポツダム会談。今に残る50年前の貴重な映像です」

※2行オーバーもうもう削れない^^;L
次のお題は:「花冠」「空地」「幾何学」でお願いします。
117Ray.na:03/05/13 02:10
 読書中の僕は隣の空き地で花冠をつくる美しい少女を見た。冷たいはず
の僕の心に、あつい血の気配を感じた。自分の内面世界のあらゆるものに
説明をつけてきた僕はしかしそれを錯覚と決め込んだ。その少女の姿にも、
幾何学の美を探ろうとして、僕は愛を見逃した。

 やってみた。ところで、次の三つは、どうしよう。。。
 お菓子 本 紙

118「お菓子」「本」「紙」:03/05/13 03:31
久しぶりです。あなたは変わりありませんか。
とはいっても、多くのものが変わってしまいましたから
きっとあなたも変わってしまったことでしょう。
今になってお便りしたのは、わたしがもう長くないことを悟ったからです。
わたしは今、防空要塞57にいます。
夫が菌爆撃にやられた時に、生活面の心配もあって軍の施設に移ったんです。
それで軍属として軍用ビスケットを毎日焼いていました。
おかしいでしょう、あんなにお菓子作りが苦手だったわたしがビスケット焼きだなんて。
でももう焼くことはできないの。このまえわたしも緑熱菌に感染してしまったから。
この手紙も人に頼んで書いてもらっています。あなたは気を付けてくださいね。

あの革命記念日にあなたから贈り物をいただいたことを今でもよく思いだします。
ずっしり重いので何かと思ってわくわくしながら開けてみたら、
わたしがあなたに貸していたダンセイニの本だったのよね。
あんなに呆れたことはなかったです、ほんとうに。
それにたぶんモリスもトールキンも貸したままだと思います。
でも、もう貸している本はみんなあなたにあげます。
手放さないでずっと持っていてください。
                         あなたの友より

次回お題「和尚」「気象」「胡椒」
119Ray.na:03/05/13 03:34
 あはは。オショーキショーコショーって楽しいね。
 でも、他の人ならきっとなにかおもしろい芸のあるもの書いて
くれそうだから、これは譲る。 明日になってすすんでなかった
ら私も書いてみるけど。 私って芸がないから、ユニークな感じ
にはなかなか仕上げられそうにない。
 気象情報、今日は快晴。絶好の胡椒日和だ。
 私は、毎週日曜日に胡椒を持って外出する。
 何のために?通りを行く人々に胡椒をかけるためだ。
人のクシャミが止まらない様を見るのが愉快で仕方ない。
 今日も胡椒を右手に握り締め、人ごみに潜んでいる。
 ふと、見慣れない種類の人間を見つけた。
 和尚だ。
 なぜか突然私は和尚に対して怒りがこみ上げてきた。
 気がつけば私は子育てに疲れた中年女性のヒステリッ
クさながらの勢いで和尚に飛びつくと、地面に殴り倒し、
馬乗りになり、コショウを顔にふりかけた。
 お前、なんなんだ、何か恨みでもあるのか、警察を呼
ぶぞ、云々。うるさい黙れ、コショウを瓶ごと和尚の口
に詰めるとやけに青空の綺麗だった私は口笛を吹きなが
ら歩き出した。

次回お題
「調理」「勝利」「道理」
121名無し物書き@推敲中?:03/05/13 16:12
「だから何度もいっているでしょう。
 おなかが減ったらご飯を食べなくてはなりません。
 ご飯を食べるためには素材を調理しなければいけません。
 素材を手に入れるためにはゲームに勝利しなくてはなりません。
 それが道理というものです。
 わかりますか?」
122忘れた。:03/05/13 16:14
次。「空き地」「ライチ」「ハートのエース」
123名無し物書き@推敲中?:03/05/13 22:50
三ヶ月の長期出張からようやく帰ってきた俺は珍しく明るいうちに家路についた。
駅から10分ほどのマンションまでの景色は驚くほど変わっていた。
駅前の商店街は雨の季節を前にアーケードの張替えを行っており、寂れた通りにひと時の
賑わいをもたらしていた。駅前の古いスーパーは跡形も無く、コンビニエンスストア
建設予定地と書かれた看板が立つ空き地へと変わっていた。
ふと、出張で財布の中身をほとんど使い切っていたことを思い出した俺は商店街のはずれの
国道に面した銀行に立ち寄ることにした。
「いらっしゃいませ。」
愛想はいいが決して目を合わせることの無い窓口の女の子の前を通り過ぎATMコーナーへ向かう
順番待ちの行列の後ろにつくと目の前は作業服を着た若い男だった。ズポンの後ろポケットの
ところに寅壱と書かれたタグがついている。
「トライチ」と読むのだろうか、おそらく作業服界のブランドなんだろう。
列はなかなか進まず、退屈しのぎに壁際の棚からパンフレットを一枚抜き取った。
"ハートのエースの総合口座"と書かれたパンフレットにはこの銀行のシンボルマークである
赤いハートの絵が描いてある。預金や融資の取引によって手数料が安くなったりするサービス
らしいが俺には縁がなさそうだ。パンフレットを元の棚に戻し再び前を見たが列は前に進んでは
いなかった。手数料や金利をサービスするよりこの行列を何とかしてくれ、と手持ち無沙汰に
天井を見ながら呟いた。

お次は「団子」「タンゴ」「援護」でよろしく。
124名無し物書き@推敲中?:03/05/14 01:13
勇敢なる同志へ
今夜の月見の宴には始皇帝も参加する。暗殺するにはまたとない機会だ。
作戦はすでにできあがっている。三段構えの作戦だ。
まずその一。
皇帝に差し出される団子に砒素を盛る。
しかし、始皇帝は団子が嫌いという情報が入ったためこれに期待はしない。
その二。
宴席での余興で全員がタンゴを踊る時間があるはずだ。
このときに近付いて、すでに渡してある毒の短剣で殺すのだ。
入り口で持ち物検査があるはずだが、検査官は既に買収済みなので安心せよ。
これも実験の結果成功率は低いと出ているので無理と思ったらすぐに放棄せよ。
本命の作戦は次のその三である。
その三。
宴の終わる直前に私が全裸で絶叫しながら会場に乱入し
護衛が驚いている隙に自ら始皇帝を絞め殺して逃げる。
その際、君は私の逃走を援護してほしい。
成功を信ずる。


次は「蒸着」「焼結」「結晶」で。
125名無し物書き@推敲中?:03/05/14 04:27
「ゆがんでないよ 見て見て!こうすれば真っ直ぐ」
ペンダントヘッドを少し傾けた彼女が笑っていた

ヤフーオークションで懐かしい感じのアンティーク鏡台を見つけた
宅急便の送付者の名前を見ると、
名字は変わっていたが、昔の彼女の筆跡に間違いはなかった

私を同姓同名の別人だと思っただろうか

答えは引き出しの中にあった、七宝焼きのペンダントヘッドが入っていた
その焼結された表面に、ゆがんだハートマークが浮かんでいる
想い出の結晶の様なそれを鏡に映してみた
蒸着した銀の向こう側に、想い出が見えた気がした

「写真」「引っ越し」「流氷」
126bloom:03/05/14 04:29
部屋を片付けていると、あなたのあの日の姿を写した写真が出てきました。
あの頃は、あなたは皆の人気者でしたね。
私もあなたのことが好きでした。
よく、あなたの所へ遊びにも行きました。
それが平日の昼間であっても、誰かが常にあなたの周りにいましたね。
できれば二人きりでお会いしてみたかったですが、それもついに叶いませんでした。

でも、その賑やかさがあなたを追い詰めたのかもしれません。
あなたはよく近場で引越しをしていましたね。
それでも私たちはあなたを探して、遊びに行きました。
やはり迷惑だったのでしょうか?

ついにあなたはある日、ふと姿を消しました。
皆も、もちろん私も、また近場で引越しをしたのだと思い、あなたを探しました。
でも、あなたは見つかりませんでした。
皆、あなたに会えないことを悲しみ、涙しました。

今、あなたがどこにいるかわかりません。もしかしたら、すでに死んでいるのかもしれません。
それでも私たちは、あなたが流氷の上で日向ぼっこをしていると信じていたいのです。
あの日の姿のままで。


次は「花火」「冬」「涙」
128127:03/05/14 08:51
「あなた=某所のアザラシ」です
追記しないとわかりづらいような文ですみません。
129うり:03/05/14 13:48
「冬」「花火」「涙」
僕がカエルになってから、どれくらいの月日が経ったのだろう。
いつのまにか冬だ。夏まで人間だった僕は、普通のカエルと違って冬眠しないらしい。
こんな事になった理由はすべて今年の夏のせいだ。
どこの小学生でもやる様に、僕とケンジは、ロケット花火で色々な生き物をふっとばした。
あの日は、何故だかカエルもザリガニもカブトムシもまったく捕まらなかった。
陽が傾き諦めかけたころ、ようやくカエルを捕まえ、尻の穴にロケット花火を突っ込んだ。
カエルは必死の形相で口をぱくぱくさせて、目に涙を浮かべている様に見えた。
ちょっとだけ気持ちがちくちく痛んだが、無視してマッチを擦った。
ロケット花火のひゅるる〜と言う音に続いて、カエルがぱんっと弾ける音がした。
その夜、恨めしそうな目をしたカエルが夢に出て来た。それ以来、僕はカエルだ。
「あそこの駄菓子屋が閉店の大売り出しやってくれてよかったな」
「冬にロケット花火がこんなに手に入るなんて思わなかったぜ」
ケンジとコーヘイの声が土手の上から近付いて来る。
いきなり身体の自由がきかなくなった。見上げるとケンジの顔のアップ。ケンジの言葉に青褪めた。
「ラッキー、冬眠してないカエルだぜ。コーヘイ、マッチ貸せよ」

次のお題は「暴走」「発作」「あじさい」でお願い致します。
130名無し物書き@推敲中?:03/05/14 17:25
「暴走」 「発作」 「あじさい」

何が悪かったのかと問われれば、
僕にはあじさいが悪かったのだと答えることしかできない。

彼女はあじさいが好きだった。

「ねぇ、何を植えているんだい?」
「あじさいよ」
「今年も、また?」
「うん、私、あじさいの澄んだ青色が好きなの」

僕は多分、あじさいが嫌いだったのだろう。
澄んだ、青色の。

それは突然やってきた。
発作的に。津波のように。

暴走する感情を全て吐き出した僕は、
彼女を花壇に埋めた。

今年もあじさいはきっと咲くだろう。
今までとは違う、美しい、鮮やかなピンク色の花が。

次のお題は「初夏」 「木漏れ日」 「雑貨」でお願いします。
131prayers:03/05/14 18:06
滴る汗。
延々と続く足音。
蝉の声。
暑い。
まだ梅雨も明けきっていない初夏の夕方。
木漏れ日がまぶしい。
こんな暑い日は冷房の効いた部屋で横になっているのが一番だなのだが
金をもらっている以上はきっちりと働くべきだろう。
くだらないことを考えている間に
鬱蒼とした森を抜けて今にも崩れそうな店の前についた。
「雑貨屋」
店の名前だ。
現店主によるとこの店は明治の時代から続く由緒ある店で雑貨という言葉は
この店の初代店主が考えた造語が広まって定着したものらしい。

終わらなかった・・・
次。「たから」「風車」「縁日」
>>127
わかったよ。
どちらにせよ説明しないほうがいいと思う。
自分で気づくのが楽しいのだと思うから。
十年前の初夏の頃の話だ。
俺は曹操軍の兵士として逃亡中の劉備を追っていた。
この戦で有名な将を討ち取って名を挙げてやる、そう思っていた。
腕っ節には自信があった。故郷で喧嘩で俺に勝てる奴はいなかった。

調子に乗って劉備軍を追い回すうちに俺は森の中に入っていた。
木漏れ日の中に一人の男が浮かび上がった。
やたらと長い蛇矛を持っている。敵将張飛に違いなかった。
俺は威勢良く名乗りを上げて張飛に襲いかかった。だが…。
「へーっくしょい!」
張飛が一発雷のようなくしゃみをし、それだけで俺は気絶した。

その後、なぜか張飛は俺を殺さないで去った。
俺を好敵手として認めたのか、呆れて殺す気もなくしたのか、
最初から無視されていたのか、今となってはその理由は分からない。
とにかく、目が覚めたとき俺は決意していた。
故郷へ帰って雑貨屋に戻ろう、と。


出遅れました。お題は上の方ので。
134名無し物書き@推敲中?:03/05/14 21:38
きっと世のすべての青は、この空を題材にしているのだろう

沖縄上空、高度4500メートル
操縦席に付けた風車がカラカラと回る

愛娘に縁日で買った物だったが、疎開先で衰弱死したと告げられた

宝物の様に大事にしていたものが、私の所へ戻ってくるとは思わなかった

座席の下には無理して手に入れて貰った、
金平糖と縫いぐるみ、新しい下駄が載せてある

もうすぐ届けに行くから、もう少し待っているんだぞ、、いい子で。

「スカラー波」「逮捕」「携帯」






135「スカラー波」「逮捕」「携帯」:03/05/14 23:28
村長の自転車を肥溜めに投げ込んで村を追放されてから十年になる。
馬鹿なことをしたとは思うが後悔はまったくしていない。
村長はあの自転車を改造してスカラー波発生装置を作ろうとしていた。
スカラー波は危険なのだ。使い方を知らない者が使うと大惨事も起こり得る。
だから僕は村長の自転車を捨て、その足で警察に自首した。
当時まだ小学生だった僕は逮捕を免れた。その代わりに村を追放された。
その後、村長は懲りずにとうとうスカラー波発生装置を完成させた。
そして、案の定暴走させた。
スカラー波が暴走しても知識さえあれば携帯電話をちょっと改造した装置で簡単にかき消せるが、
スカラー波の知識は生得的なもので学習して得られるものではない。超能力みたいなものだ。
不幸にも、あの村でその知識が備わった人間は僕以外にはいなかったらしい。
村人はみんなスカラー波に中てられて頭がおかしくなり、
今では白装束集団などという通り名でお茶の間を騒がせている。


次は、「シアン」「マゼンダ」「イエロー」
136名無し物書き@推敲中?:03/05/15 07:33
シアン「茶色の臭いうんこ、うんこ、アナルから出るうんこ、うんこ、ぼくらが食べてるうんこ、うんこ、うんこ三兄弟、ぶりっ、ぶりっ、(全裸でうんこを出しつつそれを食べながら歌う)」
マゼンダ「一番でかいのは長男、長男、一番固いのは次男、次男、一番臭いのは三男、三男、うんこ三兄弟、ぶりっ、ぶりっ、(全裸でうんこを出しつつそれを食べながら堂々と歌う)」
イエロー「うんこ、うんこ、うんこ、うんこ、うんこ三兄弟、うんこ三兄弟、うんこ三兄弟、ぶりっぶりっ、(三人全員大量の超臭いうんこを撒き散らす)」
シアン「茶色の臭いうんこ、うんこ、アナルから出るうんこ、うんこ、ぼくらが食べてるうんこ、うんこ、うんこ三兄弟、ぶりっ、ぶりっ、(全裸でうんこを出しつつそれを食べながら歌う)」
マゼンダ「一番でかいのは長男、長男、一番固いのは次男、次男、一番臭いのは三男、三男、うんこ三兄弟、ぶりっ、ぶりっ、(全裸でうんこを出しつつそれを食べながら堂々と歌う)」
イエロー「うんこ、うんこ、うんこ、うんこ、うんこ三兄弟、うんこ三兄弟、うんこ三兄弟、ぶりっぶりっ、(三人全員大量の超臭いうんこを撒き散らす)」
シアン「茶色の臭いうんこ、うんこ、アナルから出るうんこ、うんこ、ぼくらが食べてるうんこ、うんこ、うんこ三兄弟、ぶりっ、ぶりっ、(全裸でうんこを出しつつそれを食べながら歌う)」
マゼンダ「一番でかいのは長男、長男、一番固いのは次男、次男、一番臭いのは三男、三男、うんこ三兄弟、ぶりっ、ぶりっ、(全裸でうんこを出しつつそれを食べながら堂々と歌う)」
イエロー「うんこ、うんこ、うんこ、うんこ、うんこ三兄弟、うんこ三兄弟、うんこ三兄弟、ぶりっぶりっ、(最後に三人全員超大量の超臭いうんこを撒き散らす)」


「うんこ」「ウンコ」「UNKO」
137gr ◆iicafiaxus :03/05/15 16:46
「決まった?」
「うんこれにするわ」
オーストラリアへの旅行に向けてダウンコートを選ぶ彼女。

「つぎは手袋ね」
JUNKO KOSHINOの紙袋を僕に預けて彼女はもう次の店へ
向かっている。
「ああっ、待ってくれよ」

そんな僕たちも来週は初めての婚前旅行。


次は「テープ」「大きさ」「卯の花」で。
祝福のテープに彩られた教会の、片隅に、
白い卯の花が咲いていた。
風に舞う花びらに、
あの雪の日を思い出した。

震える頬に触れたあなたの手の大きさを、
私はきっといつまでも、
忘れられない。

けれど今は、空木のように微笑んで、
祝福しよう、あなたの選んだ花嫁を。

ジューンブライドになり損ねた私の、
それがせめてものプライド。



次は「百貨店」「それから」「残雪」で。
139名無し物書き@推敲中?:03/05/15 22:01
デパートを百貨店なんて言うあなたを笑っていた私だけどあなたと過ごした
あの頃は私の過ごしてきた時間の中で一番輝いていた。
いつまでも続くと思っていた季節は突然終わりを告げ私たちのそれからは
永遠に消え去ってしまったの。
長い冬に耐えれば残雪を溶かす春が来るはずなのにいつまでたっても私は
冬の中に凍えているの。
だからお願い壊れるくらい抱きしめて欲しい。
あなたの心が身を焦がすほど熱いものだとしたら
いつか私はこの重いよろいを脱ぎ捨てることができる日が来るはずだから
 稚内はまだまだ降雪まっさかりだが、さすがは札幌。まだこんもり盛られてはいるものの、
残雪がすでに解け始めていた。
 普通北海道では、冬場に電車で移動なんて考えない。なぜなら、こういう目に遭うから。しかし
僕には、来なければならない理由があった。
 春休みの宿題で、読書感想文が出たのだ。高校くんだりまで来て、感想文書かされるとは思わ
なかった。で、著者縛りがあって、夏目漱石限定。
 坊ちゃんや吾輩は猫であるのようなメジャーどころは、出席番号一番二番がさっくり持っていった。
で、お前は何にするって当てられたんだ。
「夏目夏目、坊ちゃんに草枕、えーとえーとそれからそれから」
「ほう、『それから』か。渋いところを選ぶな」
「……え?」
 というわけで、『それから』の感想文を書くことになってしまった。
 問題は確かにマイナーな作品だったもんで、図書室にも稚内の本屋にもなかったことだ。で、
ここにいる。札幌の百貨店にある本屋なら、きっと置いているだろうと、無茶な遠出をしたのだ。
 僕はさくさく雪を踏む速度を上げた。速く探してしまわないと、帰りの電車がなくなってしまう。

 次のお題は「ラーメン」「箱」「トップ」で。
141「ラーメン」「箱」「トップ」:03/05/15 23:29
二日前の宴席で始皇帝の暗殺に失敗してから、私は逃亡の身となっていた。
国境は封鎖されて国外逃亡は不可能。国内でいつまでも隠れていられるわけがない。
私が助かる道は一つ。始皇帝の暗殺を完遂することだけだ。
ふとした偶然から私は、始皇帝が毎晩帝都の某所にあるラーメン屋に通っていることを知った。
私は店内にあった材料の箱に隠れて始皇帝が来るのを待った。
そろそろかと思って様子を見ると、トップレスの美女がぞろぞろと店内に入ってくるところだった。
あれは始皇帝の近衛隊である。宴席でも見たので間違いない。始皇帝はもうすぐ現れる。
私は自分の懐に毒の短剣があるのを確認する。この短剣は今や同志の形見の品となった。
最後の美女が入ってきて間もなく、始皇帝がついに店内に姿を現した。私は短剣を握り締める。
同志よ、霊あらば私を護ってくれ。


次は「犬」「猿」「雉」
142名無し物書き@推敲中?:03/05/16 00:51
「犬」「猿」「雉」

世界最後の鬼が死んだ。
例によってわれらは鬼の資産を根こそぎ押収したが、
その収益は今回の遠征の費用を補って余りあるものと思われた。
しかしこれは同時に、われらが遠征すべき鬼ヶ島を失ってしまったことを意味した。
そこで私はこう言った。「聞いてほしい、今やわれらは世界最後の鬼を倒した。
実に喜ぶべき事であるが実に悲しむべき事でもある。
なぜならもはやわれらは遠征すべき鬼ヶ島をもたないからである」
雉が応えて言った。「まさにその通りである。われらの船、武具、防具、
そして数々の戦訓はもはや何の富ももたらさぬ虚しいものとなった」
これに猿が応えて言った。「雉殿よ、その御身の肩の前に突き出しておるちっぽけな頭を
よくよく働かせるがよろしかろう。われらが鬼を絶やしたと言うが果たしてそうか。
今この時にもあれなる島に新たなる鬼が生まれ出でておらぬと誰が断言できよう」
そこでわたしはこう言った。「確かに猿殿の言うとおりである」
雉が猿に向かって言った。「しかしこの度われらが倒したのは最後の鬼ではなかったか」
猿はこう言った。「鬼がおらぬなら鬼を作ればよい。そうであろう、犬殿」
わたしは応えた。「まこと猿殿の言うとおりである。鬼退治こそわれらが主桃太郎殿の
御旨にそった徳業。鬼を退治せずして、どうして桃太郎殿のしもべと言えようか」
雉はこれに得心し、われらは次なる島に向かった次第である。

次回お題「蔵元」「ラテン語」「客車」
米○国みたいですね(w >>142
ってか、○には何が入るんだ?w >>143
145prayers:03/05/16 20:45
ラテン語の授業の時間。
・・・え〜つまり〜、客車というのは〜客を乗せる〜もので〜・・・
ゆっくりとした講師の声があたりを眠りの世界へといざなう。
抵抗するのも無駄と悟っておとなしく机に突っ伏したら
突然前の席に座っていたやつがこっちを向いた。
「ながたにくらもと?」
は?何を言っているんだ?
「なまえ。」
なまえ?ああ、名前か。出席確認用の名簿でみたのだろう
読み方がめちゃくちゃだ。
「はせくらげん。長谷蔵が苗字で元が名前。」
「変わった名前だね。」
変わっているのはお前だ。
喉まででかかった言葉を何とか引っ込めてたずねる。
「何か用?」

次。「黒猫」「コーヒー」「繰り返し」
146prayers:03/05/16 20:50
訂正。
「変わった名前だね。」

「ふーん、それで長谷蔵元。変わった名前だね。」
申し訳ない。
描写もくそもねぇーw
簡素は簡素スレでやってくれよー
◆「この3語で書け! 即興文ものスレ」感想文集第5巻◆
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1037206703/l50
149名無し物書き@推敲中?:03/05/17 00:26
俺は酔っていた。予想外の仕事が、しかも半分前金でやってきたのだ。
ハードボイルドと言う言葉に憧れ探偵事務所の看板を掲げたのはよかったが
札束の詰まったスーツケースを持った依頼人が訪れる事など有るはずも無く、
浮気調査と迷子のペット探しは日々の暮らしのためには大事な仕事だが
日々その繰り返しでは俺が人生の迷子になってしまいそうだ。
今回の依頼はペットの猫を探すこと。目印はスパンコールのついた首輪。
猫の行動範囲は精々2km四方。今までの経験から猫の好む場所はおおよそ
見当がつく。楽勝な仕事だ。前祝ぐらいしたって当然じゃないか。
一生懸命自分を慰めている俺の目の前を黒いものがフラフラと横切った。
猫だ。しかし、妙な歩き方をしてる。いや、もしかしてこれは?
「黒猫が…タンゴを踊ってやがる。」
しかも、首にはスパンコールつきのド派手な首輪が光っている。
「奴だ。」
俺は近くにあった自販機でブラックコーヒーを買って一気に飲み干した。
今月の家賃を払うためには奴を捕まえなくてはならない。
俺は黒猫の後を追って走り走り出した。

つぎは「傘」「虹」「虫」でお願いします。
「黒猫」「コーヒー」「繰り返し」

家に居っても気が滅入るばかりで、ほんだらちょっとコーヒーでも飲みましょ、って
近所の喫茶店へ出かけることにした、そこまでは良かったのだ。しかし、一歩家を出
た途端、くああ、黒猫に横切られてしまった。迷信なんて信じる性質ではないが、
引き戸を開けたら目の前をサーッと黒猫、これはいくら何でも絶妙なタイミング、
何か悪いことでも起こるかもしらん、と外に出るのを諦めかけたもののコーヒーは
飲みたい、しゃあない、気張って行くかってんでここは何処かと申しますと喫茶店の中。
で、喫茶店でコーヒーを注文をする際に僕は常々思うことがある。
「コーヒー下さい」「アイスですか、ホットですか」
「えっと、アイスで」「ミルクとお砂糖はお使いになりますか」
「あ、砂糖だけでいいです」「畏まりました、アイスコーヒー一丁」
というあの繰り返しが時間の無駄、人生の浪費ではないか、と。
客であるこっちは一刻も早くコーヒーが飲みたい、店員は店員でちゃっちゃと注文を
取って次の業務に移りたいわけだから、どちらにとっても早く済むに越した事はない。
そこで今日は一計を案じて全部最初っから言ったったんや。
「アイスコーヒー、ミルクなしで砂糖つけて」って。ほいだら
「はぁ?」って聞き返されて、僕は赤面してまうし、あぁ、時間の無駄。
黒猫を信じて家に居れば良かった。

次「椅子」「スカート」「都会」
151150:03/05/17 00:35
のぁ、ひと足違いでカブりましたすみません。
次の人「傘」「虹」「虫」でどぞー。
「傘」「虹」「虫」


雨がぱらぱらと降ってきた。しかし空は青く、雲ひとつ無い――狐の嫁入りだろうか?
濡れるのも嫌なので、日傘をさし、車椅子から手を放した。
舗装もされていない田舎道に他の人は見当たらず、道端の草むらから聴こえる虫の音と雨音のみが耳に入る。

ふと、昔を思い返す。都会を夢見ていた五年前を。あの頃は、早く田舎から出たいとばかり考えていた。
夢の地に出て四年、仕事も恋人も上手くいっていた。今度の正月には両親に紹介する話まで出ていた。
そんな矢先の事故。動かないといわれた私の両足。……仕事も恋人も去っていった。
また、目に涙が浮かぶ。最近、本当に涙腺が弱くなった。

「ダメだ」と思い、涙をこらえるように顔を上げた。
雨はいつしか止み、空には綺麗な七色が架かっていた。
昔に見たままの虹。友達と、お父さんやお母さんと見上げたままの虹。
さっきとは違う涙が頬を伝っていた。

――今なら歩けるかもしれない。
私は両腕に力をいれ、ゆっくりと車椅子から立ち上がった。立つだけで全身から汗が噴き出る。でも立つことができた。
そして一歩足を前に出そうとした時、一気に崩れた。目の前にあった水溜りに倒れこむ。
何故か笑いがこみ上げてきた。汚れたスカートも顔も気にせず、泥まみれになりながら笑った。

心配した親が迎えに来るまで、私は無邪気に笑い続けた。



次は「緑茶」「海」「数学」
153うはう ◆8eErA24CiY :03/05/17 11:58
「緑茶」「海」「数学」

 蘭学の長と言われた彼の許にも、幕府の追っ手がきた。
 「牢を脱し、名を偽っての生活も、もう終わりか・・・
 十数えたら出る。それまで捕らえるのは待ってくれねえか」

 町方も鬼ではなかった。
 「うむ」と、長屋の前に陣取りゆったりと構える。

 「一つ、二つ・・・」妻と子に別れを告げる蘭学者。
 「七つ、八つ、」日本はどうなる。これからなのに。
 「九つ、九.一、九.二、」幕府はいずれ倒れる、自分はどうだ!
 「九.九、九.九一、」

 蘭学者の脳裏に、数学の理が浮かび上がる。
 有限の区間内に存在する値は無限だ。
 数字の海に身を任せ、このまま日本の夜明けを待とう!、

 「√九九.九、√九九.九一・・・」
 町方は緑茶をすすりながら、彼と共に日本の夜明けを待っていた。

※漢数字は出しにくいなー
次のお題は:「健康」「病院」「茶室」でお願いします
154名無し物書き@推敲中?:03/05/17 12:06
http://www66.tok2.com/home2/chunta/index.htm
栗山千明の発禁の写真集。

コラじゃないマジもの!!


155情報者:03/05/17 12:19
★貴方たちは集団ストーカーされたことがありますか★
http://society.2ch.net/test/read.cgi/koumei/1051562865/-100
集団ストーカーに参加したことある方、カキコしてください
156健康 病院 茶室:03/05/17 14:43
「お義父さん!」
玄関で靴を履こうとしていたら茶室のほうから母の怒鳴り声が聞こえた。
「今日という今日はいっしょに病院に行ってもらいますからね!」
今年で82歳になる祖父は2年前に祖母が他界してからよく物を忘れるようになった。
特に母のことを忘れるらしく、母の名前だけ思い出せなくなったこともある。
いったい今日は何を忘れたのだろう。
母ががなり立てる。
「自分がいつご飯を食べたかもわからないなんて立派な病気です!」
どうやら先ほど食べた昼食のことを忘れて食事の催促をしたらしい。
しかも自分は病気ではない、病院に行く必要はない、とでもいったのだろう。
確かに祖父の体は健康そのものだ。それに祖父は病院が大嫌いなのだ。
多分、祖母が病院で息を引き取ったからだろう。それまでは祖母の看病もあり、祖父が病院へ行くことは少なくなかった。
「もう!そこまでいうなら勝手にしてください!」
憤慨した母の足音がこっちに近づいてきた。
巻き添えはごめんなのでさっさと出かけることにした。

次。「真夜中」「千年」「時計」
「ケンちゃん時計見て、今何時?」
「2時だよ、日の出まで後、4時間って所だな」
「ヤバクねぇ もどらねぇ?」
やっぱりそう思うよな、俺も戻ろうかと思っていた所だ

千年の締めくくりを、今世紀初の日の出を、富士山山頂でと言い出したのは俺
酒の勢いで登り始めたのはいいものの、
薄い酸素と急速に低下する気温に、正直軽率だったと後悔し始めている

「こんな真夜中じゃ、下る方が危ないよ、いける所まで行こうぜ」
口をついて出た言葉は裏腹な日本語だった

「逆転」「転換」「酩酊」
 昨日までの俺は、ただの酔っ払いだった。世界でも数少ない超能力者だといっても、
できることが肝臓で分解したアセトアルデヒドをエタノールに再転換するという、なんとも
役に立たない能力しか持ち合わせていなかった。せいぜいが、一旦飲んだ酒で延々と酩
酊感を味わえる、そんなものでしかなかった。

 しかし、ある日俺は唐突にひらめいた。
「分解のプロセスを全部逆回転させて、二酸化炭素と水から酒を合成できないだろうか?」
 うまくいけば、金儲けの種になる。俺は試してみた。

 実験は大成功だった。目論見どおり、大吟醸酒の体内醸造に成功した。しかし、金にはなら
なかった。
 体内で醸造した酒は、どうにかして体外に排出しなければならない。いろいろ試みたが、本来
備わった器官以外の個所からの排出はできなかった。
 なんのことはない、俺は結局小便やゲロを量産する以上のことはできなかったのだ。

 俺は今でも、ただの酔っ払いをやっている。

 次のお題は「王」「剣」「アロエ」で。
ミスった……
「全部逆回転させて」→「全部逆転させて」で。スマソ。
160名無し物書き@推敲中?:03/05/17 23:48
引っ越し王選手権大会。その会場に俺は立っていた。
要するに運送会社の運動会なのだが競技内容が全て筋肉系なのだ。
俺が出場するのがその極みとも言える最終競技、10トントラック早押し競争。
10トントラックを50メートル先まで早く押したら勝ち、という
体鍛えすぎて脳まで筋肉になった奴が考えたとしか思えないイカレた競技なのだ。
しかも、優勝賞品はアロエの青汁とプロテインが一年分。とことん筋肉系の会社だ。
隣のコースには剣太郎セガールそっくりのアドレナリンが耳からこぼれそうな奴が
ものすごい鼻息を鳴らしながら準備運動をしている。
マイクを向けたらヤツは「絶対勝ちます。」と言うだろう。
いま、CMで流れているのはパロディなんかではない。社内行事の再現なのだ。


つぎは「白い粉」「仕事好き」「コイン」でお願い。
「王」「剣」「アロエ」

アロエを切ってな、切り口のドロドロを傷に塗るとええんや。
って、死んだお婆ちゃんがよく言ってたんで、僕はアロエを探しに行こうと思うよ。森まで。
何故アロエかって、それは勿論怪我をしたからなんだけど
その怪我の原因ってのが情けない、今からほんの数分前のこと、往来で
「わしは王胤じゃ、アンドロメダの彼方から数億年の昔地球に降り立った
 宇宙王から分家した末裔じゃ、たった今宇宙皇帝からほほほ、滅び滅びるでしかし」
って喚いているおっさんが居る。しかも剣道の竹刀を振り回しとる。しかも半裸で。
あっちゃあ、気狂いや、と、無論僕はおっさんを避けた。それが不自然に
背を向けてぐるっと半弧を描くように避けてしまったものだから、
どうもおっさん、気に触ったらしく、目が合って「やばい!」と思った瞬間に
抵抗する間もなく僕は竹刀でめった打ち。
おっさんは「ほほほ、ほほほ、滅び滅び」ってそのまま踊って行ってしまった。
で、僕は傷だらけで今に至るのです。
往来の人々は「だっ、大丈夫ですか!」と叫んでるが、どうも
だっ、大丈夫ではないらしい。めっちゃ痛いし、死にそうや。
はよアロエ持って来て。頼むわ。

次「痒み」「水飴」「眼鏡」
162161:03/05/18 00:06
くわっ、また書いているうちに入れ違いでカブった(;´Д`)
どうもすみません。

次の方「白い粉」「仕事好き」「コイン」です。
 大蔵省が財務省に名称変更したころに入省したので、私の職歴はおよそ2年である。
 現在私は大阪にある造幣局で、コインの研磨を担当している。世間に流通する貨幣のうち、
長く使用され、劣化したコインを回収し、そのうち状態がいいものを選別し、研磨して再度流通
させるのが仕事だ。あまり仕事好きとは言えない私だが、この仕事は結構気に入っている。
 入省した頃は研磨をすべて手動で行っていた。1枚1枚、研磨剤やワイヤーブラシで研磨する
のだ。これは非常な重労働かつ危険な業務であった。1円玉担当の周囲には飛散したアルミニ
ウムの白い粉が厚く堆積しており、金属中毒を起こすことも稀ではなかった。
 現在は高圧蒸気を利用した研磨装置が導入され、安全性・作業効率とも格段に向上したが、
私は今でも最終工程担当として、微妙な磨き残しを磨き布片手に磨きあげている。

 次のお題は「マグカップ」「マーメイド」「マッサージ」で。
164サンゴン:03/05/18 03:43
イシザキノボルがディズニ−映画を見るのは、十数年も前に息子のタケシ
と市内の映画館に行って以来のことだった。
「今度はマ−メイドが出てくるのが見たいな。題名はわかんないんだけど、
ユウコが見に行ってさ、すっごく感動したって言ってたの。お土産にマグ
カップ買って来てくれて、すぐに割っちゃったんだけどね。」
キョウコが、今度いつ来れる?じゃあその時は絶対借りて来てねとソファ
の上でマッサージしながら言った。仕事帰りに映画を借りて来て息子より
も年下の女の子の部屋で一緒に見た後マッサージをしてもらう。気味の悪
い奴だ。肩をマッサージされながらイシザキはさっき見た映画のせむし男
を思い出していた。

 次は〜「鯱(しゃちほこ)」「カルボナーラ」「マンホールの蓋」
165名無し物書き@推敲中?:03/05/18 04:58
今、いつ刺すか刺されるか、取っ組み合いの喧嘩になるか分からない、
壮絶な議論のバトルが繰り広げられている。
歯を剥き出しにし身を乗り出して罵り合い、自己主張をする彼等こそ
これからの日本を背負って立つ物たちなのだ。

今日の議題は「しゃちほこオマルの是非について」であった。
ここ名古屋では、名物のシャチホコの形をしたオマルが存在する。
園児たちは、やれアヒルが正統派だ、やれシャチホコが名古屋人として当然だと
ブーブー言い合っている。昨日の議題は「カルボナーラを食べたことがあるか」
であった。我々が小さい頃はそのような食べ物がある事さえ知らなかったのに。

「マンホールの蓋踏んだやつは負けだぞお」とリーダー格の子が言い、
よおしとばかり皆挙って元気に下校する。さて、明日の議題が楽しみだ。


次のお題は「放置プレイ」「海軍」「バスタオル」
166_:03/05/18 05:19
167うはう ◆8eErA24CiY :03/05/18 09:44
「放置プレイ」「海軍」「バスタオル」

 膨大な赤字と、国際的な孤立。
 追い詰められた超大国に、究極的な再生手術が行われた。
 突如、他国からの攻撃を受け、全面降伏・・・債務は1日にして消滅した。
 その日、超大国の名が、世界地図から消えた。

 海軍は役にも立たなかった。敵は国内に存在する「国家内国家」だった。
 それは、徹底した潔癖性を持っていた。
 タバコ、性的露出・・・全てが禁止された。

 タバコが姿を消し、灰皿が過去の遺物となった。
 公園では、放置プレイメイトが、バスタオル一枚で相手を探している。
 誰も見向きもしなくなっていた。かつてグラビアを賑わした彼女達なのに。
 それほど急速に、「新国家」の思想は国民に浸透してしまったのか?
 そうだった。それは、半世紀前から全国民の生活に溶け込んでいた。

 今日も、地方に新国家の「解放軍」が到着する。皆が歓声で出迎える。
 解放軍は、国歌を口ずさむ。
 「ミッキマウス、ミッキマウス、ミッキ・ミッキマウス。MIC−KEY−MOUSE!」
 国内でも、国連でも、世界でも。ディズニーランドの独立を嫌うものなどいなかった。

※どっかの映画をパクってます(^^;L
次のお題は:「延長」「餅」「松竹梅」でお願いします。
 日本における餅の歴史は奈良時代、主に延長年間(923−930)に始まるとされる。
 元来は中国より伝来した食物であり、もち米、うるち米、麦、大豆、小豆で作られた餅は、
当時は「からくだもの」と呼称されていた。「くだもの」は、奈良時代の菓子に対する呼称である。
 奈良時代から平安時代、鎌倉に至るまでは副食的役割の強かった餅であるが、南北朝末期
から室町にかけて、喫茶の風習とともに驚異的な発展を遂げた。室町時代後期にあたる寛正
2年(1461)に著された「平安飽食堂」は著者の卯層院法羅が京都じゅうの茶菓子屋を食べ歩
き、松竹梅の3段階評価をしたもので、当時の食文化を知る上での非常に貴重な資料となっている。

 一部本当ですが、一部大嘘です。
 次のお題は「ステンドグラス」「杖」「金魚」で。
test
170代打ちくん:03/05/18 23:24

106 描写系。っていうか、お話書こうよ。お題消化もおざなり。
107 なんとなく思いついたものを書き流されてもなぁ……
108 同上。ていうかお題流しパス。
109 文章、普通に書こう。話はそれからだ。
111 変なお題を良く消化した。けれど、最後にもう一捻りあっても。
115 6題をコンパクトに消化したのは評価。ただもう一頑張り欲しかった。
116 スマソ。意味が取れなかった。
117 なんつーか、ナルシスティックを越えて自己満足の世界。
   それでも一応筋通ってるのは評価。
118 悪くはないが、細部もう少し煮詰めて。お題消化ももう一工夫。それと長い。
119 本スレでやらないでぇー。
120 なんかどっかで見たようなパターンだが、一方でやたら投げやり。
   胡椒日和は面白かったが、和尚がな。それに最後日本語破綻してる。
121 こういうのをお題流しと言うんだ。と言うことでパス。
124 判断力に問題あるテロリスト萌え。でもタンゴは厳しいな。
125 良。しかし、彼女が二人出てくるのは混乱の元。
   それにこれは甘いというよりほろ苦い場面だと思う。
129 長くなければ良。削る努力を。
しまった。誤爆った。スマソ。
次のお題は「ステンドグラス」「杖」「金魚」です。
 特に何をすることもない、退屈な日曜日に、キミは何かを思いつく。
 サランラップに七色のマジックで、虹色の金魚の絵を描く。
 それを窓ガラスに貼り付ければ、ステンドラガラスの出来上がり。
「ほら、きれいでしょう?」
 得意げに振り返るキミを、頬杖をついたまま見上げるボク。
「――ああ、きれいだね。」
 キミとならこれからも、やっていけそうな気がするよ。


なんとなく、消化不良気味なので、
お題は継続でお願いします。
「ステンドグラス」「杖」「金魚」
「ステンドグラス」「杖」「金魚」

嫁ぐ日を明日に迎え、一通り身支度を済ませた私は、一息ついて居間の窓辺に佇んだ。

そこでふと、幼い頃の事を思い出した。夏の終わりの最後の夜祭りで、祖父に金魚を買っ
てもらったことを。足の悪かった祖父は、私が金魚に興奮して走り回るのを杖をついて
必死に追っていた。その時の私は金魚に夢中だった。
連れのいない独りぽっちの金魚に、金魚鉢をせがみ、祖父がそれを買ってくれた。真透
明なガラスの縁に青い塗料が塗ってある、丸く美しい金魚鉢だった。
赤い金魚と緑の水草を入れた金魚鉢をどこに置くか、散々悩んだすえ窓辺に決めたのは、
日ざしが鉢に当たる度キラキラと窓硝子に反射する様が、幼心に宝物のように美しく思
えたからだ。
「教会のステンドグラスみたいで綺麗やわ」
私がそう言うと、祖父は笑顔でうん、うんと頷いた。
「私な、おっきくなったら綺麗なステンドグラスのある教会で結婚式あげたいわ」
「そうやねえ、楽しみや、ほんま楽しみや」
祖父はいつでも、孫の私の言う事にそうやって笑みを作って頷くのだった。

祖父が亡くなり、あの金魚も死に、金魚鉢はいつの間にか割れてしまった。明日になれ
ば、私自身もこの家を立つ。あの夏、ステンドグラスだった窓辺を思い出すことも、
もうしばらくは無いのだろう。

次は「太鼓」「楽隊」「詩人」でおながいします。
174sage:03/05/19 00:53
二泊三日の新入社員研修。正直、俺は世の中を甘く見ていたと実感したね。
一日目は社会人として生まれ変わる決意を固めるためだとかで丸一日教会で
懺悔し続けた。仕舞いにゃネタが無くなってサリンをばら撒いたのも俺で
第二次世界大戦も俺が引き起こしたってことにして懺悔しつづけた。
ステンドグラスの聖母マリアの肖像は俺の罪許してくれたのだろうか。
二日目は気分転換に外で体を動かしましょう、と言われてついて行ったら
山伏の格好で錫杖を鳴らしながら約50kmの山歩き、人気の無い山奥で
滝に打たれて読経なんてしてたら解脱する前に成仏しちまいそうだった。
もうここまでくると三日目に何が来ようが驚きゃしない。
三日目のテーマが「人間ポンプ」だったがそんなものなんでもない。
金魚を飲み込んで吐き出すだけじゃねぇか。俺は飲み込んだ金魚を鼻から
吐き出すと言う荒業を見せて講師を感心させた。
次の日、意気揚々と出社した俺は社長の前で研修成果の人間ポンプを披露し、
何故かクビを宣告された。
やはり金魚を口から出さなかったのがまずかったのかと今でも反省している。

お次は「山道」「ヒット曲」「メモ」でどうぞ。
すみません。かぶりました。しかもsageそこなってるし。

お題は「太鼓」「楽隊」「詩人」でおながいします
世の中に俺ほど多くの肩書きを持ち、俺ほど優れた才能を持つ人物は居ない。
中学高校と管弦楽隊で太鼓を叩いていた俺は、高校卒業と同時に単身渡米。
テレビで見たマイルスデイビスに強く心を打たれ、世界最高のジャズドラマーに
なろうと堅く心に誓った。そして俺の尊敬するジャズマン達がやる事はすべてやった。
女・ギャンブル・酒・ドラッグ・犯罪・・・願う事は全てかなった。黒人にも成れた。世界最高のジャズドラマーにも。
望むものは何もない。全てが手に入るのだ。
今長江の辺で詩人の李白・杜甫・孟浩然と共に歌詠みに興じている。

「ええ、彼はいつもああして壁に向かってボソボソとつぶやいているんですよ」


お題は継続でお願いします。
177太鼓 楽隊 詩人:03/05/19 14:12
大きな楽隊がやってきました。
この町にひとつしかない大通りをズンチャンズンチャンと通っていきました。
先頭は黒いタキシードのよく似合う人でした。
笛を吹く人の顔はプープー真っ赤になって膨らんでいました。
木琴の人はキンコンきつつきのような顔をしていました。
太鼓を持っている人はドカドカ太鼓みたいなおなかでした。
最後に一人、みすぼらしい姿をした人がウンウンうなっていきました。
その人は何も楽器を持っていませんでした。
その人は詩人でした。
大きな楽隊の話をみなに聞かせるためにいっしょにいるといっていました。
すべてをみなに聞かせるためにずっといっしょだといっていました。
大きな楽隊がやってきました。
この町にひとつしかない大通りをズンチャンズンチャンと通っていきました。
この町におみやげをひとつおいていきました。
新しい仲間が1人増えました。

次。「玩具」「鉢巻」「失敗」
test
179名無し物書き@推敲中?:03/05/19 17:53
「玩具」「鉢巻」「失敗」
俺は『大人の』玩具職人だ。ういっ。
長男は僻村医。次男は自衛官。三男は青年海外協力隊。ひっく。
家業を継ぎたくない一心か、家を出る事ばかり考えやがって。ふう。
俺の仕事はなあ、男と女に、『本当の夢』を与える事なんだ。くそ。ああ、酒がこぼれた。
でもな、この『スペシャル熊ん子X号』が世に出れば、少なくとも女どもは目の色を変えるぞ。
秘密は、『スペシャル熊ん子X号』が頭に巻いた『ぷるぷる鉢巻』だ。
毒々しいまでの紫色、ぐいっと立派な反り具合。世界中の松茸の形状を研究し尽くした成果だ。
こいつを手にしていると興奮で酔いがぶっ飛ぶってなもんだ。ういっ。
『ぷるぷる鉢巻』の事は詳しく言えねえ。なんたって企業秘密だ。ひっく。
ん?女房の野郎、また、人を馬鹿にしたような目で見てやがる。
くそ、おめえで『スペシャル熊ん子X号』の実験だ。おりゃ!そりゃ!うりゃ!
その日以来、我が家では『ういーん、ういーん』と言うモーター音と『あへあへ、あっはーん』と言う喘ぎ声が絶えなくなった。
俺の失敗は、女房が『スペシャル熊ん子X号』を手放せなくなった事だ。
独りの夜を慰めてくれる『北極スペシャルXXX(トリプルX)号』の開発が俺の緊急課題になった。
次のお題は「夜明け」「堤防」「郵便局」で。

180ワロタ!けど・・・:03/05/19 17:56
>>1
お約束
1:前の投稿者が決めた3つの語(句)を全て使って文章を書く。

2:小説・評論・雑文・通告・??系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。

3:文章は5行以上15行以下を目安に。
4:最後の行に次の投稿者のために3つの語(句)を示す。ただし、固有名詞は避けること。
5:お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
6:感想のいらない人は、本文もしくはメール欄にその旨を記入のこと。
夜明けの郵便局はその群青色に染まっている。
曇り空の灰色と夜明けの青が混じった独特の色に染まっている。
辺りを見回せばまるで絵画の中に入ったようだ。
この下卑た町にふさわしくないオープンカフェも、
その隣の割烹も、そしてその裏に見える廃屋も。
すべてが人間の、愚かさや獣臭……汚いモノから隔絶している。
雨上がりの偶然か堤防や港に満ちる機械油のような匂いがする。
それのおかげか、ますます私は人生から解放され絵の中……油絵の世界に逃げ込める
ぽつっ
雨がまた降り始めるようだ。途端、風景は泥臭さを取り戻し私は人生に引き戻される
宴はあっという間に終わった。
私はとぼとぼと一メートルはつまれている洗濯物が待つ我が家へと逃げ帰る。
泣いてなんかはいない。目か汁が出ているだけ。純情だから、童貞って言うなカスども

次は「真紅」「ぺヤング」「アシッドジャズ」で

>>1
お約束
  1:前の投稿者が決めた3つの語(句)を全て使って文章を書く。
  2:小説・評論・雑文・通告・??系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。
  3:文章は5行以上15行以下を目安に。

4:最後の行に次の投稿者のために3つの語(句)を示す。ただし、   固有名詞は避けること。

  5:お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
  6:感想のいらない人は、本文もしくはメール欄にその旨を記入のこと。 

183179:03/05/19 18:25
ごめんなちゃい。
ちょっと悪ふざけしちゃった。
184181:03/05/19 19:02
>182
わかった。じゃぁ「真紅」「クイック」「アシッドジャズ」で
「真紅」「クイック」「アシッドジャズ」

DJの掛けるアシッドジャズが鼓膜を突き破る大音量で響くダンスホールで、黄色い
ライトを浴びながら、阿呆共が狂態をさらしている。目をギラギラさせて、叫び喚き
半裸で腰をくねらせている。
阿呆の群集の中でくたびれてしまった俺は、フロアの奥に鎮座した、明るい昼間なら
とても座ろうとは思えない、食べこぼし、汚物、女の化粧品で汚れきったソファに
腰を下ろした。
身を投げ出したまま呆然とフロアを眺めていると、馬鹿みたいに赤い紅をさした半裸
の女が俺を凝視している。しばらく黙って見守っていると、女は群集を抜け出して
やって来て、「はい、おすそわけ」と大声とともに小さな紙片を差し出した。
何これ、と聞くと女は唇を奇妙に歪ませてアシッドだ、と言う。それは解っている、
何故俺にくれるのかを聞いておるのだ、と女は、みんな飲んでるのよ、とますます
唇を歪める。笑っているのだ。
これを飲めば俺も阿呆になる。だが阿呆しかいないこの場所で、このまま正常を保って
いる意味はあるのだろうか。ない。俺は俺を捨てる決意をし、紙片を舌の上に乗せた。
女の真紅の唇、アシッドジャズ、人々の狂喜がクイックモーションでぐるぐる流れ廻る
のを感じながら、狂喜の中に飛び込んだのは、ほんの一瞬の出来事。ああ、楽し。

お次は「足踏みミシン」「鞄」「和室」でおながいします。
「あのね来週、雑巾を学校に持っていかないといけなんよ」
母は少し困った顔を見せた
小学生2年生だった私は、
母がまたこの子は面倒くさいものを言っていると、そう思っていた

「出来れば桃色とか、そういうのできへん?」
「そうね、 そうだったら可愛いよね」
母の態度はそっけなかった、やっぱり面倒なんだなと
私は私自身を納得させた。

日曜の昼過ぎ、和室から足踏みミシンの音が聞こえた
昼寝をしていた私には、その音はとても心地よく
少し目覚めてまたすぐに寝入ってしまった

月曜の朝、鞄に桃色の雑巾が入っていた
「ありがとうお母さん! 行って来ます」

母の着物から作られた物だとは知らずに、駆け出したあの日の私

「どうせ」「ニュー速」「おいら」
メイド・イン・チャイナのスーパーバイク「ニュー・速」をゲット。
これで奴も着いて来れまい。ああいいさ、邪道とでも何とでも
呼んでくれ。どうせおいらはのろまなな亀さ。

次「デルタ」「風船」「豪華客船」
お約束
1:前の投稿者が決めた3つの語(句)を全て使って文章を書く。
2:小説・評論・雑文・通告・??系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。

3:文章は5行以上15行以下を目安に。

4:最後の行に次の投稿者のために3つの語(句)を示す。ただし、固有名詞は避けること。
5:お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
6:感想のいらない人は、本文もしくはメール欄にその旨を記入のこと。
>>188
>>1嫁」だけでいいよ。見づらい。
190雑談スマソ:03/05/19 23:54
>>188
これって「目安」だからね。。。
いっそ「400字詰め換算で」って書いておいてもらえばいいのにね。。。
行の長さで調節できるのはウレシイけれど、「ここで改行したい!」って場合もあるしね。。。
どうしたもんだろね。。。
191名無し物書き@推敲中?:03/05/19 23:57
    /∵∴∵∴\
   /∵∴∵∴∵∴\
  /∵∴∴=・= =・= |
  |∵∵/   ○ \|
  |∵ /  三 | 三 |   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  |∵ |   __|__  | < >>189 うるせー馬鹿
   \|   \_/ /.   \_____
     \____/

早朝わたしは奥深いところから伝わる振動で眼をさました。
向かい風に抗して船の機関が出力をあげでもしたのだろうか。
わたしは体を起こして机の上のコップをさぐった。
そうだ、コップは昨夜のしけでどこかへころがってしまったんだった。
豪華客船銀星号は昨夜とうってかわったように静かに振動をひびかせている。
外を眺めようと船室の円い窓に顔をよせた。
雲だ、雲しか見えない、切れ目ができた、はるか下界には真っ青な海だ。
しばらく見ていると海は濁った青になり、大きなデルタが姿をあらわした。
あれがわたしの恋した人の住む河口の街か。
じきに木々の緑と都市の灰色が円窓を覆い、海は見えなくなってしまった。

着陸が近いので、身なりを整えてから船室を出、船首の談話室へいった。
ボーイが注文を取りにきて、わたしは大窓の外に見える小舟について聞いた。
マストが二本、それぞれ三角形の帆を風にはらませて高度をあげてゆく。
風船です、とボーイは応えた。今でも使われているんです。
ここの風は手なずけやすいですから。しかし優雅に見えますがなかなか大変な乗り物ですよ。
わたしはうなずき、卵とベーコンの朝食を頼んだ。

次回お題は「初代」「海塩」「橋」
193192:03/05/20 00:56
>>188-191
原則として、作品以外の書き込みは控えていただきたい。
初代舞紅門鉄円はこの辺りで漁師を営んでおりその暮らしは困窮に伏していた
だがある日、村はずれの橋。丹未橋を渡ってきた行商から着想を得て塩を作ることに着手する
彼が塩売りを始めたのはまったくの偶然だったが、幸運なことにこの辺りの海岸線は切り立った崖のみであり
村が唯一の浜辺だった。こうして舞紅門は着々と商いを続け、御家御用達の塩売りへと出世した。
この村が今でもあるのは舞紅門鉄円のおかげである。

出展〜民明書房刊・私立探偵濱マ○ク伝説〜

次は「ボトル」「ほとり」「蛍」
「ボトル」「ほとり」「蛍」

夏。
気まぐれに川のほとりを散歩していたら、蛍に出会った。
ふと思いついて近くの自販機へ走る。
丁度良い大きさのボトルだ。迷わずピックルを買う。

腰に手を当てて一気に飲み干すと、急いで川辺に戻る。
瓶を川の水で洗って、少しの水と草の葉を一枚入れた。

「よし」

あとは蛍を捕まえるだけだ。瓶を片手に身構える。
と、一匹の蛍が何を思ってかフラフラと俺の左腕に留まった。
慎重に、かつ素早く。両の腕に全神経を集中する。

手ごたえがあった。逃げないように気をつけつつ瓶に移す。
蓋をして改めて観察すると、蛍は既に光を失っていた。

結局、残ったのは蛍の死骸と妙な罪悪感だけだった。


次は「暇」「一週間」「新茶」で。
e つるつるオマ○コが見れたぁ!(*´Д`)<ここ最高ぉ!
http://plaza16.mbn.or.jp/~satchel/turuturu/
人生は暇に満ちている。みな暇に食いつぶされており大事なことに気付けなかったりするのだ。
環境を守れ!そんなことを叫ぶ人でも家の近くのゴミ拾いや川の掃除なんてものはしない。
できないと言う人がいるだろうがしないだけだ。したくないんだろう、市民運動やら他の事が楽だから。
そして一週間は点けっぱなしにしているテレビから新茶の季節ですとレポーターの声が聞こえる。
ご家庭でも新鮮なお茶が簡単に味わえます。
笑顔でそのリポーターは全国ネットに清清しく無知をさらす。
産地の現地人かその関係者でもない限りは出来た手のお茶なんてものは大多数が飲めない。
ましてや新鮮なお茶なんてものはあり得ないだろ。
あるのかもしれないがそう僕は断じた。

しずお……ぶぶぶっぎぎぎぎぎぎプツン

あっテレビが壊れた。やっぱり一週間丸まる点けっ放しだからなぁ
でも川から拾ってきた割にはちゃんと見れたし、いいか。

次は「ホッケ」「ほうけ」「放棄」
ほうけって何だ?
「に、兄ちゃん人が飛んでくるよぅ」
防具をつけたままの男たちが3人、もつれ合ったまま僕たち目がけて一直線に
突っ込んでくる。ボゴッという大きな音ともに壁にぶつかりバラバラに分かれる男達。
初めてのアイスホッケー観戦に僕たちは興奮していた。
選手たちがぶつかる度に、きゃあきゃあと大騒ぎする妹と対照に弟の方はほうけた様に
口を半開きにして座っている。両手を固く握り締めているところを見るとこいつなりに
興奮しているらしい。
「ねぇ、あそこでサボってる人いるよ。」
妹が指差したのはペナルティボックスだった。なるほど激しくぶつかり合った
選手が審判に笛を鳴らされてペナルティボックスに入っているのは、試合を
放棄してふてくされているように見えなくもない。
「あれは、反則をした人が閉じ込められる牢屋なんだ。」と、
すこし違っているかもしれないがルールの説明をしてやった。
温暖化が進んで今年で最後となった冬季オリンピックを僕たちは一生の思い出に
するためにまばたきをするのも惜しいほどの気持ちだった。

お次は「すずめ」「ガラス」「とけい」でどうぞ。
 ハイキングの途中、五十鈴の工房を見つけた。公開もしているらしく、少し中を覗かせてもらった。
 壁には張り紙があり、「かむまつりますいすずめずらかなるや」とあった。神に祀る五十鈴は尊い
ものである、という意味だ。神社に奉納する品なので精魂込めて作るのだ、と主人が教えてくれた。
 主人の言によると、ここの五十鈴は一味違うらしい。土を練り、釉薬を塗って焼くのは同じなのだが、
釉薬に秘密があって、ガラス状に焼結する表面処理に大きな違いがあるそうだ。主人は棚から、いく
つかの五十鈴を自慢げに取り出し、私に見せてくれた。
 素人目にも素晴らしいと思える出来栄えだった。普通の焼き物のような、つるりとした表面をしてい
ない。さざめくような七色の輝きに照り映えるそれは、例えるならばシャンデリアのような多面的輝彩
を放っていた。
 すっかり主人の五十鈴に惚れ込んでしまった私は、ひとつ買い求めることにした。美しい輝きの中
に、文字が浮き上がるよう仕込まれた逸品だった。私は日の光に五十鈴を掲げ、文字を読み取った。
「みそらにみほとけいまさばただなむあみだぶつととなえけり」
 お寺にも奉納しているのだ、と主人は笑った。

 次のお題は「腎臓」「図鑑」「天日」で。
腎臓図鑑を作成しようとおもった。
未来の杜王町を担う蜷川幸夫たちにとってアルコール摂取量の限度を知ることは大切である。
腎臓を知ることは、アルコールを摂取していた時代に失ってしまった何かを取り戻す手段になりうる
腎臓図鑑を作成するためには腎臓のホログラフィーを作成することも重要である。
まず、天日で干した腎臓を8割方煮込み、堀真理子のもとでホルマリン付けの勉強をせず、
悲しみと共に夕日は沈み、朝焼けと共に月ははかなくも散りゆく。
その様はまるでミョウガのよう・・・

ネクストジェネレーションは
「臨時」 「いななき」 「つぼみ」
202うはう ◆8eErA24CiY :03/05/22 01:46
「臨時」 「いななき」 「つぼみ」

 「しょうがありませんね、臨時雇いなもので・・・これこの通り!」
 女中頭は彼女のスカートをめくり上げ、小さくぴしりと打った。

 グラスの破片を片付けると、彼女は狭い女中部屋にかけ込む。
 白いエプロンドレスの下に、微かな痛みが残っていた。

 皆が笑っていた
 かつての使用人達も、ここぞとばかりに笑っていた。
 彼等が何を望んでいるか、彼女にははっきり判った。
 元華族令嬢が尻を打たれ、いななきをあげる姿を待ち望んでいるのだ。

 泣いてはいけない、と彼女は思った。決して泣いてはいけないと。
 いつの日か、彼等を見返してやる。この痛みを百倍にして返してやる。
 虫も殺せなかった彼女の脳裏に、どす黒い意識のつぼみが宿る。
 
 彼女も、女中頭も、客の皆々も、どこにも不自然な反応動作はなかった。
 感情ある人間の、ごく普通の行動だ。
 後に5万の国民を犠牲にした恐怖の女帝は、一体、何行目に誕生したのか。
 どこから魔が忍び込んだのか。誰にもわからない事だった。

※なんだかありきたりー^^; 
次のお題は:「アイスキャンディ」「マグマ」「ガム」でお願いします。
目の前に火砕流が迫ってきていた。マグマがものすごいスピードでやってきて、
あらゆるもの、牛舎や幾多の木々や民家を吸い込んでいく。一瞬にして風景は
赤々と染まっていくだけだった。
僕の家も飲み込まれるまでにはたいした時間はかからないだろう。たとえ逃げ
てもあの速さから逃れることは出来なかった。もっとも、この家を離れる気も
さらさらなかった。
噛んでいたペパーミントガムをごみ袋に吐き出すと、冷蔵庫を開けてアイス
キャンディーを取り出した。もうすぐあの熱に、無残にも灼かれ熔かされてし
まうのだ。人生の最後くらい涼しい思いをしよう。
懐かしい、割り箸の入った昔ながらのアイスキャンディーミルク味。さっきま
で噛んでいたガムのペパーミントのせいで余計に冷たく感じる。
その冷たさと、いよいよ真近に迫ったマグマの燃えるような熱さとを思いなが
ら、僕はこの家とともにこの世からいなくなる覚悟を強く持った。
メキ、と庭の柿の木が軋む音がした。

「絹ごし豆腐」「メインフレーム」「おしっこ」で
204山崎渉:03/05/22 02:34
━―━―━―━―━―━―━―━―━[JR山崎駅(^^)]━―━―━―━―━―━―━―━―━―
205名無し物書き@推敲中?:03/05/22 02:39
 「メインフレーム?? 訳わかんねえ事言ってないで、絹ごし豆腐も食えよ」
 
 俺は、肉ばかり食う英次にイライラしていた。
 加えてこれだ。
 
 「ふうん、知らないんだ」
 そういうと英次は、また肉を食いだした。
 
 こいつの晩飯の誘いには二度と乗るものか…。
 しかし…いやに今日は景気がいいな…。
 まさか、金持ってないんじゃないだろうな…。

 俺は席を立ち言った。
 
 「おしっこ」
  
 
206名無し物書き@推敲中?:03/05/22 02:41
 「メインフレーム?? 訳わかんねえ事言ってないで、絹ごし豆腐も食えよ」
 
 俺は、肉ばかり食う英次にイライラしていた。
 加えてこれだ。
 
 「ふうん、知らないんだ」
 そういうと英次は、また肉を食いだした。
 
 こいつの晩飯の誘いには二度と乗るものか…。
 しかし…いやに今日は景気がいいな…。
 まさか、金持ってないんじゃないだろうな…。

 俺は席を立ち言った。
 
 「おしっこ」
  
 
207名無し物書き@推敲中?:03/05/22 02:46
 次は「トマト」「伝説」「ハイオク」で。
208名無し物書き@推敲中?:03/05/22 03:53
あげ
「ハイオク満タン」
うだるような暑さの中で私はスタンドの店員に不機嫌に告げた。
原因はトマトジュースの味が変わったのだ。
昔はドロッとしていた。ネクターのようにドロッとしていた。
そしてほんの少しの塩味。
この飲みにくさがトマトジュースだった。常人が不味いというその味こそ私にはうまかった。
だが今はどうだ。げろの様に水っぽく、そして味は薄い。リコピン4倍?うるさい死ね。
ふつふつと私は怒りを膨らませていく。
車内に広がるかすかなガソリンの臭い。そして汚れを塗りたくるかのような汚い雑巾。ますます不快だ。
眉間に皺を寄せると私と2、3年ぐらいしか違わない店員が舌打ちをした。
その時、何かが壊れた。私はさわやかな笑顔を浮かべ領収書にサインをして受け取った後、店員にお礼をいう。
「素晴らしすぎる接客ありがとう。殺したくなるほど素晴らしかったよ、2度とこねぇよクソバカ」
タイヤを叫ばせながら私は急発進する。

そしてこの後……峠を占拠する、漫画に触発された走り屋もどきを総て追い越したどノーマル車伝説が生まれた
210209:03/05/22 12:08
忘れていた次回のサザエさんは
「喫煙者」「嫌煙者」「牽引車」
211名無し物書き@推敲中?:03/05/22 17:45
 万年筆のインクが切れた。
「ハバナ」という色のインクで、深い茶色は葉巻をイメージさせる。
 ちなみに、これで嫌煙者に手紙を書くのは、自分の密かな抵抗である。
 喫煙者は、肩身が狭い。ある町は、路上も禁煙となった。
 タバコメーカーもアイデアを出し、キャンピングカーを喫煙所として提供したが、嫌煙者は「毒ガス車」と揶揄する。
 イメージ改善には、本当の意味の「牽引車」が必要である。

 次は「フィルタ」、「鰹」、「鉛筆」
212「喫煙者」「嫌煙者」「牽引車」:03/05/22 18:06
窓の向こうから、これでもかと照りつける太陽を睨みつけて、渡辺はアイスコーヒーを
すすった。この季節になると営業職はつらい。屋内のクーラーが切実に恋しくなる。
どうせ会社に戻っても馬鹿な女子社員が、さむーいと黄色い声で訴えてクーラーを
最弱に設定してしまう。その上節電にご協力ください、なんて物真似見せられては、
余計頭が沸騰してくるというものだ。
得意先回りの後会社に戻る前に、渡辺がこのカフェにち寄ったのはそれが理由だった。
しかし、何だここは!渡辺の苛苛の原因は、暑さだけではなかった。
店内が白く煙っている。嫌なにおいが鼻先を掠め、飲んでいるコーヒーの味さえ
わからない。禁煙席がいっぱいだったため喫煙席に座ったのが間違いだったか。
渡辺は横で煙を吐き出し続ける派手な格好の女をこっそり睨み付けた。
いや、そうじゃない、煙草なんて吸うほうが悪いのだから、嫌煙者の権利は守られる
べきなんだ。この店自体が禁煙になってないから、悪いのだ。反対側を眺めると、
中年のおやじの灰皿にはこんもりと吸殻が積もっている。このおやじ、早く仕事に行きやがれ。
煙がもわっと流れてきて、渡辺は思わずスーツの袖で鼻を覆った。
喫煙者なんて、生きてる価値ねーよ。全員まとめて牽引車で引っ張ってたらいいのに。
くそ、俺が両手縛り付けて引っ張ってってやりてえ。
怒りのあまり何か叫び出しそうになった時、ふいに携帯電話が鳴った。
「はい、渡辺です。え、あ、はい。すぐ近くです。今から帰ります。では」
渡辺は心の中で、お前ら命びろいしたなと捨て台詞を吐いて店を出た。

渡辺の去った店内では、客が一斉にざわめき始めていた。
「ねー、今の人、やばかったね」
「独り言ブツブツ言ってるし、やべーよありゃあ」
「周りジロジロ見ちゃって、やな感じ」
「どっかおかしーんじゃねーの?」
「…暑いからなあ、最近」

※お題は継続でよろ
213212:03/05/22 18:06
んげ!かぶったか。
211さんのお題でよろ
214週休二日 ◆7UgIeewWy6 :03/05/22 22:24
「フィルタ」「鰹」「鉛筆」

豆腐は俺、嫌いなんだよ、などと糞真面目に弁解して、彼は皿に手を付けようとしなかった。
およそ一週間、長雨は続いて、集まった少年たちの表情も曇りがちだった。
食欲旺盛なはずの年頃、だが食は進まず、とにかく主賓の登場をお待ちかねの様子。
テーブルに並べられた数々の料理に手を伸ばす者は、実際少なかった。
最も苛立っていたのは、豆腐嫌いの彼で、小指で耳を掻きながら落ち着かない。
やがて、部屋の奥のドアが素早く開き、皆さんお待たせしたねと言い乍ら、年長の少年が顔を出した。
幹事である緑の髪の少年が(彼はホテルマンのように慇懃な物腰である)ようこそと御辞儀をし、
他の出席者はばらばらとノートに鉛筆を取り出して、新たな客の開口を待つのである。
ところがこの少年は物言いにフィルタを通さないので、よほど毒々しく響くのだが、
彼に悪気がないのは皆承知なので黙って耳を傾ける、そしてメモを取る。これはのちの会議で提出する。
普段ならば、そういう具合に進んでいた。だが今回は違った。
豆腐嫌いの彼は立ち上がり、君は遅すぎた、そのくせ態度に問題があるぞ、等々と
まるで糾弾するかのごとく文句を浴びせかけるという暴挙に出た。
「誰を生かして誰を殺すか、君の独断でやるべきことじゃない」 彼はもうほとんど叫ぶような調子である。
「独断ね」 遅刻者は半笑いの態。 「豆腐に乗った鰹節くらいに考えてくれよ。君の嫌いな、さ……」

次は「検証」「弁解」「さにあらず」で。
日食を観察するには硝子に蝋燭のススを付けて
太陽を見ると良いらしい
けれど戦後間もないこの国で透明な硝子を手に入れるのは
なんとも難しい話だった

私にはとっておきの物があった、それは進駐軍の飲み物の空き瓶
投げ捨てられ割れていたのだが、底の部分はかなり綺麗に残っていた

ススを付け後は日食を待つばかり、と後ろから父の声
「春美、お前それで太陽を見るのか?」
「そうねこれで、見るんよ」と答えるや否やススの付いたそれは
家の前の川に投げ捨てられた
「なにするの父ちゃん」
「それで見たら目を痛める、、それは虫眼鏡みたいな硝子やけん、一寸待っとれ」
なるほど、父がカンナで削りだした鰹節はとても薄く、太陽の観察にはもってこいのように思えた
私は鰹節越しの日食を夢中で鉛筆でスケッチした

「焦燥感」「大河」「氷点下」
誤爆すいません お題 >>214 でお願いします
ざーーー、っという音とともにフィルタで漉された茶色の液体が大釜からタンクの
中へ流し込まれる。同時に立ち込めた湯気であたりのガラスが一瞬で白く曇った。
「えー、ご覧になったようにかつおの一番だしを使って当社のめんつゆは作られて
おります。鰹は高知産の一級品を薄くスライスしてうまみだけを抽出しているわけ
です……」
係員の説明は延々と続いていた。湿度の高い部屋の中で私の頭はぼうっとしてきた。
いくらそうめんつゆのキャンペーンで当たった旅行だからと言ってそんなに一生懸命
説明してくれなくてもいいのだ。私の頭の中は出来上がったそうめんつゆで食べる
冷たい流しそうめんのことだけだった。
「……と、いう様に当社の最新技術を使い添加物なしの安全な……」
係員の説明はまだ続いていた。
「だしを取った後のかつお節ってどうなるんだろう。」
妙なことを思いついた。しかも口に出してしまったらしい。係員の説明が止まった。
「だしを取った後のかつお節は乾燥、圧縮して鉛筆になります。」
は?そんなのウソだ。そんな鉛筆、虫がついて困るからできるわけが無い。
「たしかに、安いのは木なんです。」
係員は説明を続けた。
「鉛筆の先端まで塗装された鉛筆をご覧になったことが無いでしょうか
すこし値段が高くなるのですが防虫効果を持たせるためにああいった加工が
施してあるのです。」
係員は事も無げに言った。
そうだ、思い出した。小学生のとき、よく鉛筆の後ろを噛んでたっけ。
あの頃から私は食いしん坊だった。

次は「コンソメ」「じゃがいも」「パンチ」でお願い。
218217:03/05/22 22:55
すみません。大かぶりです。お題は214の「検証」「弁解」「さにあらず」で。
219名無し物書き@推敲中?:03/05/23 04:07
「本当よ! 私、祐司を裏切ってない!」

「お前の弁解は聞き飽きたんだ。お前はこの部屋に男を連れこんだ。そうだろう?」
「どうしてそんな事言うの……?」
「さっき、トイレに行ったんだ。便座が上がったままだったんだよ」
「そんな事!! 無意識にしたかもしれない!!」
「反省するかと思えば、さにあらず、か……」
「ちょっとおかしいんじゃないの!? 私、そんなことしてない!!」
「検証が必要だって言うのか?」
 
 俺は、その時、彼女が一瞬ベッドに目を走らせたのを見逃さなかった。

「……この、ベッドの下にあるものは靴とトランクス
 それと靴下が片方、だよな。シーツもまだ温かい」

「違うの!! わたし……わたし……」  
「突然、俺が来て、お前驚いてたものな……」

 5月とは言え、夜の風はまだ寒い。
 それに、ここはワンルームマンションの3階だ。

「違うの……違うの……」
「夜は長い。二人の口から聞かせてもらうよ」

 俺は、ゆっくりと、窓に手をかけた。
220_:03/05/23 04:11
221名無し物書き@推敲中?:03/05/23 04:17
次は「マングローブ」「疑心暗鬼」「グレーゾーン」で。
222_:03/05/23 11:09
223_:03/05/23 13:18
224名無し物書き@推敲中?:03/05/23 16:10
「ヤシガニ、また食べたいね」
 と彼女が言う。
 ヤシガニは巨大なハサミを持つ一方、胴体は太ったエビで、グレーゾーンにあるが、エビの仲間である。
 去年、奄美を旅したとき、漁を見学した。
 漁師さんは、マングローブの根元を足で探り、感触があれば、手で捕らえる。
 あなたもやってみなさい。言われ足で探るが、いつヤシガニの爪に挟まれるかと、疑心暗鬼。
 びびらないで、と漁師さん。彼女にも、格好悪いところを見られたが、ヤシガニは美味しかった。
 茹でたり、刺身にしたり、中でも焼いたものは良かった。臭みはなく、ほくほくして美味い。
 「また、奄美に行こう」
 言うと、彼女は微笑みながら、頷いた。

 次は、「眼帯」「メトロ」「クロワッサン」
225うり:03/05/23 19:21
「眼帯」「メトロ」「クロワッサン」
爽やかな初夏の日差しの下、少年はお台場のカフェテラスにいた。
頬を撫でる潮風の心地よさに思わず微笑む。
テーブルの上にはカプチーノとクロワッサン。
時折強く吹く風に、麻素材のオフホワイトのジャケットが揺れる。
七分丈の濃紺の、これまた麻素材のパンツから、素足のままの踝が覗く。足元は上質なカーフのサンダル。
つい最近まで、肩にかかるロングヘアーだったが、今では無造作な短髪だ。
あと十ばかり少年が歳をとっていたなら、そして、眼帯をしていなかったなら、
ファッション誌のワンショットになるかも知れない。
つい最近までの田舎暮らしを証明するものと言えば、小振りのバックにこっそりと仕舞われたメトロガイドだけだろう。
少年は田舎暮らしに飽きたのだ。
突然、眼帯がもぞもぞと動いた。
「父さん、じっとしていて下さい。皆にばれるじゃないですか」少年は呟いた。
「き、きたろう、苦しくて息ができん」眼帯の下から苦しそうな声が零れた。

次のお題は「扇風機」「キャミソール」「宇宙飛行士」でお願い致します。



226うり:03/05/23 19:25
ごめんなさい。
ちょっと間違えた。
225の最終行「苦しくて」→「窮屈で」
「あづー」
 百年の恋も冷めるとは、このことか。
 彼女はキャミソール一枚で扇風機に顔をさらし、団扇であおぎ、アイスをほおばり、そして、
あろうことか、氷水を張ったたらいに足を突っ込んでいたのだ!
「お前はおばあはんかっ!」
 思わず声が出た。
「なんちゅうカッコしとんねん。二十代のええ娘が!」
「だってー、暑いねんもーん〜〜」
 すっかりだらけきった声を扇風機でヴィブラートさせながら、彼女が答える。
「お前は人類の恥じゃ」
 つい、キツい言葉が口を突いて出た。しかし勢いはとまらず、俺はそのまま続けてしまった。
「むしろ地球の恥や。宇宙にでもほってまおか?」
「宇宙飛行士にでもなってから言うてもらおか〜」
 彼女はまったく堪えていなかった。その証拠に、咥えたバニラがじゅるり、と音を立てたのだ。
「あ、ほってまうんやったらはよして。3ケルビンは涼しいやろな〜」
 俺は頭を抱えた。

 次のお題は「ボツ」「痩身」「ナースキャップ」で。
228名無し物書き@推敲中?:03/05/24 04:56
「女はどうしてこんな時期に結婚したがるかねぇ」
 
 ワイパーブレードが雨粒をはらう。助手席の英次は窓の外を眺めている。
 「梅雨は嫌いだね、傘で女のうなじも見えやしない」
 英次はそう言った後、マルボロに火を点けた。
 
 「ま、雨季のボツワナよりはマシだな。カラハリ砂漠に浅い湖ができるほどでね。フラミンゴの大群だけが魅力なんだ」
 塩湖と放牧について一通り薀蓄たれた後、英次は煙草を灰皿にねじ込んだ。
 俺は英次の横顔を見て、極度の痩身が精神を内へと向かわせているのだろうと思った。
 その後、英次の話題はサウスアフリカからモロッコ、コンゴ出血熱、アジアで流行している疫病、飛沫感染と空気感染へと変わり、最近はナースキャップも感染源になるからと廃止にした病院も少なくないと言った。
 
 「俺は反対だな」
 「男として当然だろう」
 そう言うと、英次は最後のマルボロに火を点け、潰したソフトケースを後部座席の方へ放った。
229名無し物書き@推敲中?:03/05/24 05:09
 次は「したたか」「少年」「打開策」で。
230明日の為にその1:03/05/24 05:39
231名無し物書き@推敲中?:03/05/24 10:44
「したたか」「少年」「打開策」

 雨の満員列車。少年の前の席が、奇跡的に開いた。
 「やったー」座ろうとしたその矢先、隣で立ってる老人と目が合う。
 シルバーシートではなかったが・・・

 「坊や」
 70は超えるだろう、その老人は言った。
 「席は実力でとるもんじゃ」

 「よし!」少年のくりだすパンチに、老人のクロスカウンターが重なる。
 テコの原理を応用し、2倍、いや4倍、それ以上の力が少年に加わる。

 電車にダウンした少年を前に、老人は言った。「立つんじゃ」
 「わざとダウンしてみせとるな。すぐにわかるわ」「うっ!」

 「席を譲るのが、恥かしかったんじゃろう?大袈裟にダウンしてみせよって・・・」
 「立て、もう一度じゃ。席を譲られる老いぼれの惨めさが、若造にわかるか!?」
 「・・・」「さあこい。ここが世界じゃ!」
 満員の客をさらにおいやり、闘いはなおも続く。
 二人とも、降りる駅などとうに乗り越してしまっていた。

※今日もこれから仕事(涙)
次のお題は:「いそしぎ」「イソ弁」「いそいそ」でお願いします。
232231:03/05/24 11:02
失礼しました、お題まで2つも削ってました。
さすがに恥かしいので再UPさせて下さい。同じ様なの2つで恐縮ですが(^^;
「したたか」「少年」「打開策」

 雨の満員列車。少年の前の席が、奇跡的に開いた。
 「やったー」座ろうとしたその矢先、隣で立ってる老人と目が合う。
 シルバーシートではなかったが・・・

 「坊や」
 70は超えるだろう、その老人は言った。
 「席は実力でとるもんじゃ」

 「よし!」少年のくりだすパンチに、老人のクロスカウンターが重なる。
 テコの原理を応用し、2倍、いや4倍、それ以上の力が少年に加わる。

 電車にダウンした少年を前に、老人は言った。「立つんじゃ」
 「わざとダウンしてみせとるな。すぐにわかるわ」「うっ!」

 「席を譲るのが、恥かしいのじゃろう?したたかな奴・・・」
 「立て、もう一度じゃ。席を譲られる老いぼれの惨めさが、若造にわかるか!?」

 そうするしか打開策はなかった。追い詰められたのは少年の方だ。
 満員の山手線の、客をさらにおいやり、闘いはなおも続く。
 二人とも、降りる駅などとうに乗り越してしまっていた。

次のお題は:「いそしぎ」「イソ弁」「いそいそ」でお願いします。
233名無し物書き@推敲中?:03/05/24 11:59
いそいそといそしぎのイソ弁を食べた少年は公園で砂遊びをしていた。
僕と友達の少年だ。
うれしかった。


次は「あんぱん」「公園」「ぶらんこ」
俺は今大好きな妹とデートしている。
「おい、椎子、どこ行く?」
「パン屋!」
そういって俺たちはバン屋へ行った

「オバサン!あんぱん二つ!」
「え、あのさ、俺あんぱn」
「それでいいよね!お兄ちゃん!」
「え……ぁぁ」
大好きな妹の意見には逆らえない
こうして俺たちはまたしても妹の提案で公園へ行った

ぶらんこを二つ占領してパンを食べることになった
「ほらっお兄ちゃん食べて」    きぃ きぃ
「…あのさ、俺実はあんぱn」
ぱくっ                きぃ きぃ
「美味しいよ!食べてごらんよ」
「……だからさ、俺あn」     きぃ きぃ
「ほら!!!」
(確信犯かよ!)
俺は大好き……大好きなのかな〜〜?!?の妹とデートしている

「ほら!私の分もあげるからいっぱい食べて!

         ねっおに〜ちゃん♪」

次は「サイコロ」「魂」「ありがとう」
「やっと戦争が終わりましたね」マイラは、そう呟いた。地球と火星との間に五百年続いた宇宙
戦争に やっと終焉の時が訪れた。人類は文明が進化すると共に身体機能の低下が目立ち、自分達
の労働の代わりに数多くのロボットを作り出した。だがそれは同時に人類堕落の道を選択する結果
となる。人は急速に精神・肉体のレベルが著しく低下し、終いには自ら子孫を産み出す事すら
不可能となってしまった。戦争もロボットが兵士任務を任された。最初は人がロボットを作って
いたのだが、だんだんと人の数が減少し、最後にはロボットがロボットを作るという異常な経緯を
辿る結果となった。ロボット自ら設計したロボットは、何故か人以上に情緒が豊かであり、戦いを
好まない性質を示した。そして外見は人と変わらない容貌に設計された。それはまるで機械の体に
魂が吹き込まれたかのように人には映り、密かに恐れた。人は戦争に役にたたないロボットを
作ったロボット達を壊したが、同じ現象が幾度も続き、それらを全て消去する事が出来ない事態と
なった。ザークの眼前にいるマイラも、そんな性質を引き継いだロボットの一体である。
「ありがとう」と、ザークはマイラに礼を言った。マイラが不思議そうな表情をする。
「君達はサイコロの目のようにコロコロと人間に運命を決定され、いいように扱われてきたが、
戦争は結局人間だけでは止められなかっただろう。君達ロボットが戦争を放棄したおかげで
終わったようなものだ。」荒廃する原野を眺めながらザークは感慨深く言う。


次は「紫陽花」「自転車」「鍵」で。
237ありえねぇし:03/05/25 21:59
「紫陽花」「自転車」「鍵」

 それは、紫陽花の綺麗に咲く時期のことだった。
 僕は、いつもみたいに自転車にまたがり、塾までの時間を潰そうと、公園に行った。
ここから自転車で10分ほどの距離に公園。さらに10分で塾に着く。
 塾はギリギリじゃないと教室を空けてくれない。今はまだ、僕より年下の子が
勉強している。家にいたって何もやることはないから、まず公園に行くのが僕の手順。

 いつもなら信号待ちに引っかからず、スイスイ行けるのに、今日に限ってやたら
引っかかる。また赤信号。
「ちぇ」と思って自転車を降りると、「ちょっと、坊や」と声を掛けられた。
 知らないおじさんだった。おじさんは、僕ににっこり笑いかけて、「坊や、この
鍵をあげるよ」と言って、僕に小さな鍵をくれた。返事をする前におじさんは行ってしまった。

 公園に行くと、人だかりが出来ていた。僕も人の輪に混じって中にもぐりこんだ。輪の中に
なにやら、大きなトランクが置かれている。どうやら鍵がなくて、開かないらしい。
 僕は、さっき知らないおじさんに貰った鍵を思い出して、近くのお兄さんに渡した。
 お兄さんがそれを鍵穴に差し込むと、トランクは勢いよく開いた。そこには得体の知れない
ものがあった。大騒ぎになり、警察が来て、テレビが来た。僕は、結局その日塾に
行けなかった。不思議な程赤い人形の入ったトランクの横に、涼やかな青い紫陽花が
咲いていた。

次は「惑星」「囚人」「恋人」でお願いします。
一ヶ月ほど前から僕はここで囚人として捕らえられている。
 最も、罪を犯した事は認めてはいるけれど、あれが間違った行動だとは今でも思ってはいない。
 きっと、あの時僕が彼を殺したことは正しい行いだったはずだから。
 あれは、一月ほど前の冬。肌寒さが全身に押し寄せてくるほど寒気が強い夜だった。
 僕は、彼女の家に向かって小走りに駆けていた。近道をしようとして、近くにあった広い公園を横切ろうとした時にあの男に出会ったのだ。その男は一人で立ち止まりながら上を向き惑星を見上げていた。
 僕は無頓着に無視していたが、彼の横を通りすぎようとしたときに、ふっと男がこちらを向いてきた。僕は横目でそれを見ながら、薄気味が悪い人だ、なんて事を思っていた気がする。
「そんなに急いでどこにいくんだい? 彼女なら俺が殺しておいてあげたよ?」
 男は僕の耳元でふっと囁いた後に懐から彼女の生首を出した。
 その後の事はよく覚えてはいない。気づいたときは警察が血まみれになった僕に手錠を掛けていた……。



次は「ホタル」「祭り」「夜」
               
「僕が殺したのはあの男だけなんだ。」
僕の証言は認められなかった。あの夜、僕が犯した罪。
光を失った彼女の目は何かを凝視するように見開いたままで、それと対照的に
血走った男の目は僕の視線をおびえるように定まっていなかった。
後ずさりするように彼女の首を放り出して男は逃げ出した。
風邪をひいて夏祭りに行けなかった彼女のために買ってきた金魚の袋を放り出し
僕は反射的に走り出した、男ではなく彼女の方へ。
何とか地面にぶつかる前に彼女を受け止めることに成功した僕は彼女の首を
抱きしめて泣いた。血で汚れた彼女の顔を僕の涙がすこしづづ洗い始めたとき
僕は背後に人に気配を感じた。
さっきの男だった。手にはどこかで拾ってきたらしいパイプのようなものが握られていた。
僕はとっさに武器になるようなものを探し、ポケットに入っていたケミホタルを
見つけた。コンサートなどで見かける蛍光色に光るチューブ上のアレだ。
頭上にパイプを振りかぶった迫ってきた男目がけて、それを滅茶苦茶に振り回した。
手ごたえがあった。男は逃げ出した。僕は彼女を抱えたまま男を追いかけた。
男の体には蛍光塗料が飛び散っているので見失うことは無い。
やがて男は一軒の家に逃げ込んだ。僕も続いて家の中に入った。
廊下の突き当たりで震えている男がいた。両手を合わせてペコペコと頭を下げる。
そんなものに怯むことなく僕は玄関横のクローゼットを開けゴルフクラブを取り出した。
ゆっくりと男に近づきゴルフクラブを振り下ろした。血で濡れた腕に暖かい血が飛び散った。

数時間後、僕は彼女と、彼女の父親の殺人容疑で逮捕された。

次は「科学」「学習」「付録」で
「僕は殺してない……僕は殺してない……僕は――」
支給された新聞の付録を読んでから、僕は毎日のように牢獄の中でそう言い続けた。彼女を殺したのは父親であり、僕ではない。しかし、世間では二人とも僕が殺したと思っているのだ。
そう思うと、夜も眠れないほどストレスが押し寄せてくる。
――あの時だ。ゴルフクラブで殴ったときに何故気づくことができなかったのだろう。もっと、科学的にばれない方法で殺ればよかったのだ。
そうすれば、僕はこんなところにくることはなかった。今頃はきっと、自宅で暖かいコーヒーでも飲みながら彼女の事を思い出しているだろう。大学の試験のために学習していたかもしれない。
「おい、時間だ」
僕の運命を断つ声が扉を開ける音とともに聞こえてきた。
これから僕は死の一三階段を上り、きっと……。


次は 「縄」「階段」「人生」でお願いします。
241名無し物書き@推敲中?:03/05/26 05:41
 20XX年 7月31日 東京拘置所

 8月は死刑囚にとって耐えがたいものとなる。
 執行は通常国会閉幕後に行われる事が多いからだ。
 消灯後、すすり泣く奴もいる。
 俺は、朝の迎えが来ない事だけを祈って眠る。
 
 
 寝苦しい夜、俺は決まって夢を見る。
 
 幸せだった頃。微笑む彼女。抱きしめようとした瞬間、彼女は苦悶の表情を浮かべ、声と目だけが俺が殺した男のものに変わってゆく。
 その後は、思い出したくもない。
 飛び起きた後も、首に縄のざらついた感触が残っている。
 
 上告を棄却された日、俺の人生は終りを告げた。
 
 俺は階段を登る日のためだけに生かされている。

 
242名無し物書き@推敲中?:03/05/26 05:45
次は「月」「回想」「鬱」で。
243名無し物書き@推敲中?:03/05/26 05:53
あ、すまん。話戻ってるねw
244うり:03/05/26 11:52
「月」「回想」「鬱」
「おじいちゃんが子供の頃は、月に兎が住んでいたんだ」老人は夜空を見上げた。
つるんとして、陰ひとつ一つ無い月が煌煌と輝いている。
「うさぎって?」少女は、虚ろな目で老人を見た。頭を垂れ、力無く丸まった背中には生気の欠片もうかがえない。
「じゃあ今度、動物園に兎を見に行こう」節くれだった手が少女の頭を撫でる。
皺に埋まった小さな目に悲しみが宿る。
老人は子供の時分を回想していた。しがない会社員で定年を迎えたが、小さい頃は宇宙飛行士になりたかった。
毎日の出来事が発見と驚きの連続で、好奇心が尽きる事は無かったものだ。
だが、今の子供達は……。
声高に叫ばれた環境保全とは裏腹に、拡大し続けた環境破壊が子供達に鬱と言う病を与えた。
もはや地球は居住に適さなくなり、新天地を求める人々はあとをたたない。
「さ、行こうか」老人は色褪せたボストンバックを持ち上げると、少女の背を押す。
シャトルの向こうに浮かんだ、すっかり開発が進んだ月を見ながら、老人はいなくなった兎の行方を案じた。

次のお題は「終電車」「蜘蛛」「アイロン台」でお願い致します。
245うり:03/05/26 11:56
244の文、校正ミス発見。
2行目『ひとつ一つ』→『ひとつ』(一つは削除)
このごろ凡ミスが続いてるなあ〜(鬱)
いつもと同じように僕は終電車に乗って自宅へと帰宅していた。
 毎日同じように、会社に行って、同じ時間帯に帰ってくる。だけど、この日々が単調というわけではない。
電車に乗っていれば毎日違う人に出会うし、それを見ていることはとてつもなく楽しいことなのだ。
 たとえば、僕の目の前に座っているあの少し年老いた女性はアイロン台を担いでいる。電車の中でアイロン台を担ぐ事事態おかしい事だけど、
女性は年老いてくると人目を気にしなくなり、自分の事だけを考えて生きるようになるらしいから、そう珍しいことではないのかもしれない。
 彼女が持っているアイロン台の上には小さな一匹の黒い蜘蛛がこびり付いている。僕はそれを見て、女性がいつ蜘蛛に気づくのか楽しみにしていた。
驚くのだろうか。それとも奇声をあげるのだろうか。どっちにしても僕としては楽しい限りだ。
 数分後、駅につくと女性は立ち上がり、それと同時に蜘蛛は地面へと落ちていった。
 歩き始めた女性は蜘蛛に気づくことなく、覆い被さるように靴で蜘蛛を踏みほぐしていった。



オチが考えつきませんでした。スイマセン。
誰にあやまってんだろ・・・・。


>>239-241さん
僕が書いたどうしようもない作品に続きをつけてくれてありがとうございました。

次は「魔法使い」「不死鳥」「炎」
247名無し物書き@推敲中?:03/05/27 00:47
「魔法使い」「不死鳥」「炎」

 王女の誕生日に呼ばれなかった魔法使いの怒りは、呪いとなって炸裂した。
 「王女は靴屋に恋焦がれ、次の誕生日には駆け落ちし10人の子持ちになるのさ」

 呪いは効果てきめんだった。
 その後、王女は靴屋の若者への恋の炎に心焼かれ、翌年には
幾多もの警戒網を突破し、身体一つで靴屋の家に駆け込んでいた。

 自分の寝床で誕生日を迎えた王女を前に、靴屋の若者は悩む。
 「なんとか、彼女に相応しい立派な靴屋にならねば!」と。

 若者の決意も効果てきめんだった。
 彼の靴屋は世界に冠たるリーガルなものとなり、靴屋の若妻として
ブラウス一枚で暮らしていた暮らしも、不死鳥の様に煌びやかに蘇った。

 しかし今、彼女は悩んでいる。
 不満はない。今に至るまで夫は優しく、彼女は幸福だった。
 彼女は、怖れているのだ。この愛と幸福が崩れる事を。

 彼女は、呪いが解ける事を怖れていた。
 10人目の子供だってまだだし。

※なんとなくこんなの・・・
次のお題は:「とろい」「木馬」「のろい」でお願いします。
 木馬の回転はのろい。
 遺影を手に、私はまた、ゆっくりと巡りつづけるメリーゴーランドに乗る。
 たった5歳でこの世を去った、私の娘。
 少しとろいところのある娘で、よく転んでは泣いていた。
 メリーゴーランドの白馬を見ては、お姫様に憧れて目を輝かせいていた。

 メリーゴーランドの回転が止まる。
 たった5歳で娘はこの世を去った。人ごみで私とはぐれ、赤信号の交差点に飛び出して。
 私は白馬を降り、そっと涙をぬぐう。
 ああしてゆっくり回っている時間こそが、本当の幸せだったのだ。

 次のお題は「犬」「蛍光灯」「溶岩」で。
249名無し物書き@推敲中?:03/05/27 03:41
「犬」「蛍光灯」「溶岩」

 予備校生の俺は、帰宅前、夕方の公園に寄る事が唯一の楽しみだ。
 あまり言いたくはないが、ちなみに二浪だ。
 公園でよく見かける彼女。はふはふと呼吸するビーグル犬をつれてやってくる。
 ありがちな恋? いつも笑顔だった彼女が、悲しそうな表情でやってきた日から、俺はそれに落ちてしまった。
 
 朝の番組。きょうの占い。出たとこ勝負が大吉。よし、今日しかない。
 
 「俺と付き合ってくれ! 君を想う心は溶岩のように熱いんだ!」
 彼女は目をしばしばさせている。点きのよくない蛍光灯のように。
 
 「それって……マグマじゃないの」
 「え? いや、間違ってはいないと思うけど……」
 「どちらでもいいけど、なんだか痛そうね、それ」
 「肝心な場面で転んだりするんだよ、俺」
 「悪い人ではないみたいね。でも、私、あなたの事、なんにも知らないから」
 「……」
 
 1年後、あの公園に散歩に行く。もちろん、彼女と犬も一緒に。
 でも、まだ悪い癖は治っていないようだ。
 「ほんと、試験に弱いんだから……今年はなんとかしてよ!」
 黙って歩いた。足元からは、はふはふが聞こえる。
 
 
 次は「太陽」「凪」「缶ビール」でお願いします。
突然に海に来ようと思い立ったのはきっと、この凪の風景を見たかったからだろう。
太陽に照らされた海の風が止んで静かになっているこの風景を。
 僕にとってこの風景はきっと少年時代の思い出がつまったものだから、大人になった今ではこの風景を見ることが
僕にとっての唯一、子供時代の事を思い出せる風景なのだろう。
 昔は良かった、と思えるほど僕はもう年をくっているのだ。きっと、人間は年を取るほどに、子供の頃の事が鮮明に思い描かれるものだ。
そして、それはまた美化されるものでもあるのだろう。
 少年時代に起こったひょんな出来事でさえ、今は楽しい思い出に感じられるのだから。
 僕は、砂浜に一人座り込みながら缶ビールを飲み干した。


次は「犬」「猫」「喧嘩」
ごめん、〜だろうとかきっととか使いすぎた・・・。
5分クライデ書いて推敲してないからなあ・・・w

お目汚しスマソ
252うり:03/05/27 12:23
「犬」「猫」「喧嘩」
猫好きのパパと犬好きのママは喧嘩が絶えない。
そのせいか、チンチラのミミーとミニチュアダックスのパウも仲が悪い。
パパとママが喧嘩を始めると、目を閉じて耳を塞ぎたくなる。
大声で叫んで走り出したくなる。
でも、いつも心の中で「お願い、仲良くして」って祈るだけ。
――今日の授業で蛙の解剖をした。そして思い付いた。
ちょっと痛いけど我慢してね。理科室から持って来た道具で、ミミーとパウをくっ付けた。
ミミーの顔にパウの垂れた耳。周りが良く見える様に、頭の後ろにパウの目をくっ付けた。
身体は丁度半分こ。上半身はパウ。下半身はミミー。でも、ミミーの毛がふさふさし過ぎるから、
尻尾を残して毛を剃った。パウの身体はつるつるだから丁度いい。血だらけで汚いから、お風呂に入れてあげた。
上手に縫えなくて、ちょっとねじれちゃった。
一つになったミミーとパウに新しい名前を付けた。
「ラブ」可愛いでしょ。みんなが一つになって仲良しになるように。
夜中、寝室にこっそりとラブを置いて来た。パパとママの寝顔を見て思ったの。
次はパパとママを一つにしてあげようって。

次のお題は「鎖骨」「誘惑」「定期券」でお願い致します。
253「鎖骨」「誘惑」「定期券」:03/05/27 15:40
17:20発のバスに乗り込む。
右側、前から2番目のシートに、いつもどおり彼女が居た。
意識しているのを気づかれないよう、目線を反らしながら4番目のシートに座る。
ここは特等席だ。運転手の隣にあるミラー越しに、彼女を観察することが出来る。
さらさらと流れるはしばみ色の髪。ぼんやりと外を眺める切れ長の瞳。
無防備に開いた胸元から鎖骨が覗いている。
彼女は相変わらず綺麗だった。
おっと、あんまりジロジロ見ていてはばれてしまう。まだ見つめていたい
誘惑に耐えつつ下を向いた。今日こそは、声をかけてみよう。
半年に渡る片思いから脱却するんだ。
駅前で降りる彼女の後を追い、いつ声をかけるか躊躇っていると、彼女の
バッグから何か落ちるのが見えた。彼女が気づかず先を行く。慌てて拾うと、
彼女の定期入れだった。名前が――前田 大吾郎。30歳。

定期券は駅のトイレに捨てた。少し泣けてきた。

次のお題は「季節」「異常」「タイマー」でお願いします。
254山崎渉:03/05/28 10:21
     ∧_∧
ピュ.ー (  ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎                      山崎渉
朝。
頭が痛い。
重い体を引きずるようにして窓を開ける。
季節はずれの雪。
つけっぱなしのテレビの中で異常気象を伝える女の声がキンキン頭に響いた。
二日酔い。
昨日しこたま飲んだ酒のせいだ。
「アタシゼッタイマーボウドウフナンテタベナイカラ!」
表からイントネーションのおかしい日本語が聞こえる。
隣の外国人の知り合いかもしれない。
腕時計を見る。8時16分。そろそろ出かけなければ。
ポケットを探りながら部屋の中を見渡す。
特に異常はないようだ。無くなっているものもない。
部屋を出て細い階段を下りるとそこは銀世界だった。
雪はまだ止まない。

次。「選ぶ」「いちじく」「さかな」
凡ミス発見。
>つけっぱなしのテレビの中で異常気象を伝える女の声が
キンキン頭に響いた。→キンキン頭に響く。
257名無し物書き@推敲中?:03/05/28 16:08
「例のアレはどうなっている?」
会社のエレベーターで部長と一緒になってしまい、
しかも他の人が途中の階で皆降りてしまったとき、こういう展開は覚悟していた。
「それが、容器の形状がまだ決まらなくて…さかなという事は決まったのですが…」
苦しい弁明だ。開発スケジュールはかなり遅れていた。
「判っていると思うが、ウチのシェア拡大のチャンスだ。しっかりしてくれよ」
その製品には上層部からの要望で、従来品にないインパクトを求められていた。
「ええ、もちろん」

都心のオフィス街にあるファーマシーは、お昼休みを過ぎると閑散としていた。
彼女はコスメのコーナーを抜け、目的のモノの棚を探す。
あった! ふと見ると、横に見なれない新製品が並んでいる。
容器がさかなの形をしている。
ちょうどパック寿司についてくる醤油入れを一回り大きくした様な感じだ。
これはちょっとなぁ、作る人は色々考えたんだろうけど、と思う。
彼女はもう一週間以上お通じが無かった。
やっぱりいつものいちじくのにしよう、と彼女は品物を選ぶとレジへと向かった

次のお題は「急行」「はたき」「ぶどう」でお願いします。
 小田急行って、ジャスコ回って、ダイエー巡って。
 食べたくなったら、おでんを作ろう。たとえ暑くても、しっかり煮込んだおでんを作ろう。
 少しでもいいものを、1円でも安いものを。小銭をはたき、札を取り出し、具材をしこたま買い
出そう。
 コンロに鍋、鍋には割下、秘伝の味にそうめんつゆをひとたらし。
 ひと煮立ちしたら網ですくう。昆布にかつぶし、ご苦労様。
 具材を入れよう、たっぷり入れよう。玉子どうだ、大根どうだ、ちくわぶどうだ、鳥皮どうだ。
 弱火でじっくり、沁み込むように。煮立たぬように、あふれぬように。

 おでんを食べよう。たっぷり食べよう。こんにゃくはんぺん、ガンモに厚揚げ。
 ビールをお供に、額に汗して、力の源を頬張ろう。

 あまったおでんは、明日食べよう。更に染みた味を、明日楽しもう。
 一夜寝かして、二日酔いの頭に活を入れよう。

 次のお題は「リカバリ」「顕微鏡」「のり」で。
小田急行って、ジャスコ回って、ダイエー巡って。
 食べたくなったら、おでんを作ろう。たとえ暑くても、しっかり煮込んだおでんを作ろう。
 少しでもいいものを、1円でも安いものを。小銭をはたき、札を取り出し、具材をしこたま買い
出そう。
 コンロに鍋、鍋には割下、秘伝の味にそうめんつゆをひとたらし。
 ひと煮立ちしたら網ですくう。昆布にかつぶし、ご苦労様。
 具材を入れよう、たっぷり入れよう。玉子どうだ、大根どうだ、ちくわぶどうだ、鳥皮どうだ。
 弱火でじっくり、沁み込むように。煮立たぬように、あふれぬように。

 おでんを食べよう。たっぷり食べよう。こんにゃくはんぺん、ガンモに厚揚げ。
 ビールをお供に、額に汗して、力の源を頬張ろう。

 あまったおでんは、明日食べよう。更に染みた味を、明日楽しもう。
 一夜寝かして、二日酔いの頭に活を入れよう。

 次のお題は「リカバリ」「顕微鏡」「のり」で。
いつまでも終わらない不況、急速な勢いで広がる伝染病、追い討ちをかける地震。
世紀末は終わったはずなのに、いまだ世も末の状況だった。
そんな中、順送りという子供のりくつで首相になった男は古びた官邸の中で
一人悩んでいた。
どうせ何をやってもリカバリなどできるはずも無い。かと言って何もしないという
わけにもいかない。悩みぬいた末、彼はひとつのスローガンを掲げることにした。
「これからは心の時代です。」
突然、地球は顕微鏡でも見えないほど極小のブラックホールになった。
かの首相が「人命は地球よりも重い。」なんて言うから
地球は自らの重量の数億倍の圧力を受けあっけなく圧縮されてしまったのだ。


つぎは「ひまわり」「笑顔」「おみやげ」でお願いします。
261うはう ◆8eErA24CiY :03/05/28 23:22
「リカバリ」「顕微鏡」「のり」

 日本の科学庁が誇る、最高のロボットが故障した。
 10万馬力。ジェット噴射。1秒に何百万回の計算をこなす驚異の電子頭脳!
 その電子頭脳が熱を帯び、リカバリ不能・・・治せるのは産みの博士だけだった。

 「やはり、ワシでないとな」
 百顧の礼で呼ばれた博士は、得意満面。のりにのっていた。
 「この電子頭脳は最高機密だ、誰も入るな!」

 ロボットと二人きりになると、博士はさっそく電子頭脳を抜き出した。
 電子頭脳には三つの秘密があった。
 一つ。その性能は冒頭の公称のなんと数十倍にもなること。
 二つ目は、博士が施したさらなる性能向上・・・帯熱もそのせいだ。
 そして三つ目。これは、丁寧に顕微鏡で見なければ判らない。
 そこには、削られて擦れた文字でこうあるはずだ。

 <インテル セレロン1.7Ghz>

 誰もいない研究室の中、博士の虚しい笑いが響き渡った。
 「日本が世界に誇る電子頭脳だぁ・・・ははは」

※せめてPen4・・・
次のお題は:「スタンド」「細菌」「国道」でお願いします。
262261:03/05/28 23:26
あわわ、遅れました。ごめんなさい。
次のお題は260さんの

「ひまわり」「笑顔」「おみやげ」

でお願いします。
263うはう ◆8eErA24CiY :03/05/29 00:07
「ひまわり」「笑顔」「おみやげ」

 定年を迎えて、悠々引退。
 しかし、そんな彼を気遣う者は誰一人いなかった。
 あれだけ皆の為にがんばったのに。

 「いいんだ。それでもいいんだ。」
 彼は、今までのみんなの笑顔の思い出だけをおみやげに、第一線を退く。
 これからどうしよう。どうなるのだろう、自分は。

 春の夜は星がきれいで、大人達は先日のニュースの事を
話し合っていた。
 見事成功したロケットの打ち上げと、新しい気象観測衛星の話題だ。

 少年は一人、おずおずと大人に聞く。 「衛星のことだけど・・・」
 大人はそんな事、聞きもしない。 「どうもいいだろう、坊や」
 それでも少年は気掛かりだ。
 「地球に落ちて燃えちゃうの?それとも宇宙に島流し?」

 彼は一人心配しているのだ。
 現役を引退する、「気象衛星・ひまわり」のその後を。

※責任とって書いてみました。
次のお題は:「浴衣」「りんご」「納豆」でお願いします。
264「浴衣」「りんご」「納豆」 gr ◆iicafiaxus :03/05/29 01:55
「たかし君、今日納豆食べて来たやろ〜 くさいわあ、近寄らんといてー」
ひどいなあ、歯もみがいてきたのに、と拗ねて見せながら、僕はそんな風に
山本祐子が明るく振舞う様子が嬉しいと思っていた。
神戸から来て三月が経っても、転校生の山本は、僕以外の誰かにそんな顔で
笑ってみせることが無かった。それは多分この田舎の学校では僕以外に誰も、
祐子の綺麗な神戸訛りに笑顔で応える人がいなかったからなのだろうけれど。
それだから僕は、せめて僕一人くらいは祐子と笑って話せる友達になろうと、
祐子が異郷にあって少しでも心を許せる相手になろうと努めたものだった。

夏祭りの夜、祐子は藍染めの浴衣の袖を汚さないようにしながらりんご飴を
二つ買って、一つを僕に渡しながら、あたしりんご飴好きやねん、と言った。
「りんご飴って、ほらお祭の時しか売って無いやんか? そやからりんご飴を
見るといろんな記憶が結びついて来るし、そういう食べ物って好きやねん」

あれから八年の間に僕らはそれぞれ大学に進学し、そして就職した。祐子は
本当に納豆が嫌いで、多分一緒に暮らすようになった頃から、僕もまったく
納豆を食べなくなった。
しかしそれももう終わったことで… 僕はよく来たこの店のカウンターに
今日は一人で坐って、兄さん、まぐろ納豆と焼酎ストレート、と言った。

#次は「風」「段ボール」「古傷」で。
265名無し物書き@推敲中?:03/05/29 02:36
少女は今だ見ぬ彼氏という存在を待っていた。
浴衣を着て、神社の石垣の端の方に座っていた。
今日は縁日。多くの人で賑わっている。

「はぁ…。来るはずないよね。」
立ち上がろうとしてふと前を見ると、灯篭の後ろに男の子が顔だけ出して
こちらを見ている。「これ食べると願いが叶うよ。」
手渡されたのは納豆一パックと割り箸。
「ネギは?」
「ない。」
少女は勢いよく納豆を口の中へかきこんだ。

「ちょっといいかな?」
急な若い男性の呼び声に頬をりんごのように赤らませた。
「…はい?」
願いが叶った。高身長、美形でやや痩せ型。紺の浴衣を着ている。
「500円ね。」
納豆だけで一儲け。若い女性を狙った新手の屋台だった…。

※本当に思いつきで書いてしまいました…。
 次のお題は、「紙コップ」「前歯」「12番」でお願いします。
266名無し物書き@推敲中?:03/05/29 02:42
264さん、すいません…。こういう場合って…?
265より
267風 段ボール 古傷:03/05/29 03:12
午前五時をまわった歌舞伎町は静まり返っていた。
バブルが弾けたあおりを受けて、廃墟と化したビルに俺はいる。
俺の前には段ボールがある。そこからは独特の匂いがしていた。
死体の匂いだ。中を見ると女がいた。体中には無数の傷跡があり、
腕には注射の跡があった。
麻薬漬けにされたあげく、輪姦され、そして殺された。
俺はその死体を処理する。それが俺の仕事だ。

「てめえ、金払わねえとぶち殺すぞ」
すいません、待ってください。俺がどんなに懇願してもゆるしては
もらえなかった。
「じゃーよ、嫁、風呂屋に流せや」
俺は愛する人を捨てた。その後妻の親に腹を刺された。俺は妻の親を
ぶちのめした。二度目の結婚の相手に腹の傷はどうしたのか、と聞か
れた。古傷だ。単なる古傷だ。そう俺は答えた。
その女も風呂屋に流した。

仕事の後始末を下のやつに任せると、俺はビルの外に出た。
俺がこの仕事を始めたのは、少しでも糞野朗を減らすためだ。
歌舞伎町では殺すやつも殺されるやつも糞野朗ばかりだ。
処理屋がいれば殺すやつも後のことを気にせずできるだろう、
そう思って始めた俺の予想は当たり、今では俺も金持ちだ。

朝の歌舞伎町は俺に何かを言っている。お前が一番の糞野朗だ、
とでも言っているんだろう。しかし俺の耳には届かない。
歌舞伎町の風は俺の背中を押している。死ぬまで糞にまみれた
人生を歩めと俺の背中を押している。

「緑」 「船」 「足」
268「風」「段ボール」「古傷」:03/05/29 03:20
窓ガラスがカタカタと乾いた音を立てる。東京を直撃した今年三つ目の
台風が通過している。風は益々強くなっているようだった。
灯りを消した部屋はジットリと蒸し暑く、なかなか寝付けない。
隣の友美は起きていることを悟られまいと、気配を押さえている。

この部屋で過ごす最後の夜。荷造りも早々に済ませ、夕方には部屋の中が
段ボール箱で一杯になった。段ボール箱には私と友美それぞれの名前が
書かれている。一つの部屋から二つの部屋に運び出されていく箱たち。
「モノは二人で分けられるけど、思い出は何処に行くの……?」
思い出はこの部屋に残るんだよ。もちろん口には出せなかった。

寝たふりを続ける友美の手をそっと握った。握り返しては来なかった。
ただ静かに、抑えられた嗚咽が部屋に響く。

翌朝はまさに台風一過。突き抜けるような青空の下、風だけは既に
秋の気配を感じさせる。友美は名前の書かれた段ボール箱と共に、
先に到着したトラックに乗り込んで行った。何も言わず、何も聞かず。

いつかこの日のことを思い出す日が来るのだろうか。
例えば台風の次の日に、かすかに痛む古傷のように。

もうすぐ私のトラックも到着する。そして段ボールを積み込む。
その時思い出も一緒に積み込んだら、友美に叱られるだろうか。
269268:03/05/29 03:23
すいません。被ってしまいましたね。
267さんの通り
   「緑」 「船」 「足」
でお願いします。
270名無し物書き@推敲中?:03/05/29 03:24
>>267
>>268
同じ題でもこんなに違うんですね
271264:03/05/29 04:23
>>266
えーと、かぶった場合は前の人のが有効になります。
両方あわせた6語を使って書く人もいますが、あくまで任意です。
「緑」 「船」 「足」


クレイジー!
ポォォォウ!グリィィィィィィィィィィンッ!
ヒュウー!ヒュッヒューウ!
COOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOL!!!!!!!!!!
HAHAHA!
クゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッゥゥゥゥゥルッ!!!
ファイ!ファイ!ファイ!ファイ!アアアアアアアアアアアアアアアアアシシシシシシシシシイイイイイイイイィィィ!!!!
イイイイイイイヤッホウ!!
シュッパシュッパミラクォル!!!!
クールクールクールクールクール!
トマホォォォォォォォォォォウク船ェェェェァァァォェァィェァ!!!!!!!

NEXT BATTER!!「カルキ」「梅」「余香」でチェーケラァァァォォゥゥ
273名無し物書き@推敲中?:03/05/29 07:35
age
アアシシシシイイイイイイイはね足じゃないよ。
緑もねグリィィィンじゃありませんよ。
275名無し物書き@推敲中?:03/05/29 12:49
あなたが探してる話題あれはこれでしょ♪
http://angelers.free-city.net/page002.html
276名無し物書き@推敲中?:03/05/29 13:58
>>274
                        /⌒ヾ⌒ヽ.
                     /   丿  ..ヾ
                   /   。 人    )
              @   (。...。_ .ノ 。ヾ。...丿
                   ( _ .  .. ノ   )
                  /        /
                  / ノ し   /
     三 ̄ ̄ ̄ ̄\    / ) と   /
     /  ____| .  /      /
     /  >     |   /      /
    /  / ⌒  ⌒ |  /     /
    |_/---(・)--(・) |  /     /
    | (6    つ  | /  ..  / / チンカス溜ってんの!?
     |    ___ |/   . /  <包茎君!!!!!!!
    \  \_/ / /   /    \_________
 シコ  \___/   /   /
      /     \ / .  /
 シコ  ( ) ゚ ゚/\ゝ 丿.../
      \ ヽ、 (  /  ⊂//
        \ ヽ / ⊂//
        ( \つ  /
        |  |O○ノ \
        |  |    \ \
        |  )     |  )
        / /      / /
       / /       ∪
       ∪
277名無し物書き@推敲中?:03/05/29 14:21
私達は午後4時すぎに店を出て、姉のアパートへ向かった。途中、庭に大きな梅の木が
ある家の前を通った。そのときに姉が「ねえ、春の余香を感じるでしょ」と
言ったが、無視した。私は、詩人を気取る連中が嫌いだ。
部屋に入ると、学校のプールのようなにおいがした。漂白剤のにおいだろうと
私は思ったが、姉は「カルキくさくてごめんなさいね」と言った。わざわざ
難しい言葉を使おうとするのも、姉の悪いくせだ。

感想はいらない。次は「偽善」「地図」「男女」
悔しかったのかw
279277:03/05/29 14:41
>>278
たまにはうさばらししたいんだよ
280偽善 地図 男女:03/05/29 19:15
「えー……と、これはなんと呼べばいいのかな?」
 俺は30秒間出席簿を見つめつづけ、結局は当人に尋ねることとした。
「おめこしごんのひょうえです」
 彼――男女越権兵衛は、少し硬い表情で答えた。恐らく何度となく同じことを訊かれたのだ
ろう、諦念が眉間のあたりに刻み込まれていた。
「明治の頃に、男女の別を問わず優れた人材が輩出されるように、とつけたそうです」
「そうか」
 俺は理解したような顔だけして、深く頷いた。偽善じみた行いかもしれないが、下手なことを
言って名前のインパクトを消すには惜しい。恐らく彼が、俺の救いになるだろう。
 全員の紹介が終わったところで、俺は自分の名前を黒板に大書した。
 伊地知図寿
「今日から諸君の担任となった、『いぢち としとし』だ。よろしく」
 途端に教室のあちこちから、囁きが聞こえた。
『地図だ』
『マップ?』
 ちっ、男女越インパクトもこれまでだったか。

 この名は実在する。
 次のお題は「およばれ」「暇つぶし」「切手」で。
281名無し物書き@推敲中?:03/05/29 21:20
280よく分からん・・・
282名無し物書き@推敲中?:03/05/29 21:21
 午後3時。いつもこの時間になると、なぜか知らないがやたら腹が立つのである。
何度となくその原因を自省したが、いつでも答えは出ない。
 自分の属性が元来夜であると仮定し、その正反対に対応する時間だからか。
 落ち始めた太陽の根気の無さに腹を立てるのか。
 それとも毎日同じ時間に同じ姿勢で似たような内容の依頼状を送り届けてくれる
郵便屋の規則正しさに起因するのか。
 またいつもの通り家庭の不和を嘆き、その解決策を私に求める内容の書簡なのだ
ろう、うんざりする。
 階下に下り、封筒を開けようと思い、ペーパーナイフを引き出しから取り出すと、
手紙に貼られている切手が妙な文様であることに気付いた。
 切手全体を覆うぐらいの大きさの丸の中に漢数字で「八」とだけ書かれた切手で
ある。
 内容はいつもの通り、家庭の不和を嘆いていた。書き主は夫らしく、妻の暴力に
ついてである。だらだらと長い事情説明のあとで、「つきましては一度現在の我が
家の状況を照覧されたく思います」と書かれ、ご丁寧に落ち合う日時と場所まで述
べている。
 普通の依頼状は違う。依頼主が一度書簡でこちらに連絡を取り、それからこちら
で相談に乗るのである。だが、何かよっぽど現在の状況を見て欲しい事情があるよ
うである。
 暇つぶしのために始めた相談所が、ここまで忙しくなってしまうとは毫も思わな
かった。やれやれ、またおよばれか、と私は重い腰を上げた。

 次は「辞書」「学会」「給料日」でお願いします。
283辞書、学会、給料日:03/05/30 00:25
「我輩の辞書に不可能という文字は無い。」と、言わんばかりに
意気揚々と壇上に上がり大きな身振りを交え、研究成果を発表する彼の姿は
まさに輝いていた。
寝食を忘れ、高価な専門書購入のため給料日前には水だけで数日を過ごしたことも
聴衆の大きな拍手で全てが報われたように思えた。
「山野草研究学会」
彼が持っていたのは植物図鑑であり「不可能」などという文字は探しても
有るわけがなかった。

お次は「すずめ」「ボタン」「リボン」で。
284辞書 学会 給料日:03/05/30 00:45
男はホールの入り口に立っていた。200席あまりのホールには人があふれて
いた。皆の注目は壇上の男。
この学会を機に、壇上で話をしている男は出世するのだ。入り口に立っている
男は、壇上の男の話を全て理解していた。それどころかその話の行き着く先さ
えも知っていた。

「ナポレオンは言った。我の辞書に敗北の文字は無い、と」
壇上の男の話は、一番の中核に入っていた。
入り口の男には、復習の念が完璧な形を持って現れ始めていた。敗北、か。
俺はまた負けた。男の手には退職届けが握られていた。後一日待てば給料日。
それをもらわずにやめる、それが男の最後の意地だった。

男はホールを後にした。ナポレオンには男の生き方が理解できないだろう。
男の進む道は敗北に彩られている。男はナポレオンに祈った。
この道が、この敗北の道が勝利へと続いていることを。

「夏」 「冬」 「美人局」
285284です:03/05/30 00:46
かぶりました。
次の題は
>>283さんでお願いします。
286「すずめ」「ボタン」「リボン」:03/05/30 02:31
「先輩、どっちの子にするんですか?」
不意にこの店に案内してくれた佐々木の顔が現れた。久々の酒で朦朧とする頭。
ここは……。時間をかけ、少しずつ思い出していく。

そうだ。一軒目を出た後、彼が馴染みのお店に行くといって聞かなかったのだ。
酒の力も手伝って、私は彼に付き合うことにした。どうせ電車はもうなかった。

それにしても何のお店なのだろう。所謂風俗店であることは間違いない。
この薄暗さ、壁を彩るリボン。そして、目の前に座る二人の女性。
一人は童顔で目のクリっとした、男好きのする雰囲気。好みのタイプだ。
もう一人はブスではないが、さほど可愛いとも思えないありふれた雰囲気。
店員と佐々木が、私の選択をじっと待っている。
私は少し悩んで、向かって左手に座っている女性の手をとった。

あれから十年。目の前でジャケットのボタン付けをしてくれている妻。
あの時、可愛い方の女性を選んでいたら、今のように幸せな結婚生活を
送っていただろうか。仕事を辞めてからは、家庭にも私にも尽くしてくれる。
決して美人ではないが結婚相手としては、申し分がない。
あの時、咄嗟に店の名前を思い出したのが、一つの人生の分岐点となった。

「スズメのお宿」。やはり小さい葛篭には、私にとって最高の宝が詰まっていた。
287286:03/05/30 02:35
次は「パスタ」「電車」「苔玉」
でお願いします。
苔玉って、なぁ〜に?
ズズズズ、くちゃくちゃ…、耳障りな音がさっきから鳴り止まない。
ひとつ離れた席に座って、パスタをすすりながら食っている礼儀知らずな女の仕業だ。
イライラがついに切れた俺は、ズボンのポケットにあった切符をそいつに向けて投げた。
スナップをきかされて飛び出した切符は鋭く回転しながら、女の口からぶらさがったパスタを断ち切り、
出窓の鉢植えの根元にある苔玉にめり込んで停まった。

「もちあげる」「ガードレール」「チョコレート」
290まち書いた:03/05/30 10:12
ズズズズ、くちゃくちゃ…、耳障りな音がさっきから鳴り止まない。
ひとつ離れた席に座って、パスタをすすりながら食っている礼儀知らずな女の仕業だ。
イライラがついに切れた俺は、ズボンのポケットにあった電車の切符をそいつに向けて投げた。
スナップをきかされて飛び出した切符は鋭く回転しながら、女の口からぶらさがったパスタを断ち切り、
出窓の鉢植えの根元にある苔玉にめり込んで停まった。

「もちあげる」「ガードレール」「チョコレート」
「へ〜やっぱ人気占い師は違うね。尊敬」
「ふふ、才能のなせる技よ」
得意げに彼女は言う。僕には興味も感嘆の気持ちも皆無。
嘘つきな僕は相手をもちあげて良い気分にさせるなんて造作も無い事なんだ。
都内人気占い店に勤務するエセ占い師エヴァ。
実際はただの寂しいおばさんだ。
終わりの時間を見計らい、僕は店の斜め前でガードレールに腰掛けて子犬の様に
彼女を待つ。
「ごめんおそくなっちゃったね」
占い師仲間を尻目に彼女は僕の方に一目散だ。僕は少しいじけた風を装う。
「遅いよーもう帰っちゃったかと思って心配だったんだよ」
「よしよし、帰りにチョコレート買ってあげる」
子供をなだめるように彼女は笑う。僕は好きでもないチョコレートを買って
もらう事に大げさに喜んでみせる。甘いものは苦手だ。
彼女に買ってもらったBMWのドアの助手席を、召使いのように恭しく開けながら。

次は「召使い」「田舎」「梅干」
292不思議の森の王子 ◆Z41AShLBIk :03/05/30 13:27
不思議の国に浩二が住んでいました。浩二は王子様でした。そりゃあもうカッコ良い男です。
彼には五百万人召使がいました。召使の中には田舎者もおりました。
浩二は田舎者が嫌いだったので梅干しか食べさせませんでした。
召使は、「おいしい、おいしい」と喜んで食べました。浩二から下賜されるものは何でもおいしいのです。
浩二は言いました。「おいしいものだけ食べてると、胃が弱くなるぞ」
召使は浩二の言葉に感心して、その日からますます浩二を尊敬するようになったとさ。

浩二は言いました。「次は、『不思議』、『森』、『王子』」だと。召使は感心しました。
293_:03/05/30 13:27
294名無し物書き@推敲中?:03/05/30 13:39
チンコが森の小道に落ちていた。それは王子のチンポだった。
困った王子は、チンコを探す旅に出た。チンコは用意に見つからなかった。
なぜならチンコはもうこの世に存在しなかったからだ。
不思議なチンコが森の小道に落ちていた。それは王子のチンポだった。
困った王子は、チンコを探す旅に出た。チンコは用意に見つからなかった。
なぜならチンコはもうこの世に存在しなかったからだ。
不思議なことに王子のチンコは狐に食べられたいた。
王子はそのことを知ると落胆し、城に戻った。
王子は色白のいい男だったがチンコが無かったので結婚できないでいた。
そのうわさを聞きつけた隣国の鍛冶屋が王子を訪ねてきた。
「王子様これを」といって男はチンポを差し出した。
「これは?」
「私のチンポだった物です。王子のお気に召すかどうか」
新しいチンポを手に入れた王子は美しいお姫様と結婚し、幸せな一生を過ごしました。

次は、「狐」「落胆」「結婚」
295不思議の森の王子 ◆Z41AShLBIk :03/05/30 13:49
不思議の国に浩二が住んでいました。浩二は王子様でした。そりゃあもうカッコ良い男です。
彼は狐を飼っていました。ちょっといじわるな狐ちゃんです。
浩二はほとほと困って狐にメス狐をめとらせることにしました。結婚すれば落ち着くと思ったのです。
狐は、「嫁なんていらない」といっていましたが、いざメス狐を見るとその毛並みの美しさに一目惚れするありさまでした。
浩二は喜んで結婚式をあげてやりました。その日から狐はやさしくなり悪戯をしなくなりました。
初めのうちは喜んでいた浩二も何だか物足りない思いになり、結婚させなければ良かったと落胆しました。

浩二は言いました。「次は、『メス』、『悪戯』、『物足りない』だ!」
そこの方、聞いてくれますか?
いやね今、葬式の帰りなんですよ。私の患者です。
お香はあげれませんでした。そう自殺です。
医者と患者って言うのは医療現場以外ではあまり深く立ち入らないようにって言うのが私の信条なんですが
その患者とは結構仲良くなってしまってね。正直なところ悲しいですよ。
彼は盲腸で緊急入院してきました。遅いほうで彼は20代です。
執刀したのは私、女と別れるわ親の借金を背負うわでズタズタになっていた頃です。
よく殺さなかったと思いますよ。
……すいません、今の聞かなかったことに。
……いやひょっとしたら彼を殺したのは私かもしれません。
まぁ、とにかく彼と交流するうちに退院後も飲みに行ったりする仲になったわけです。
女房との出会いも彼に演出してもらいました。物足りないと感じていた日々も彼が総て埋めてくれました。
順調に借金を返済できたのも彼のおかげです。
心を救う彼が体を救う私を助けてくれたわけです。
そんな彼が何故自殺なんかって?
飛び降り自殺、死因は墜落死。死体はぐちゃぐちゃで解剖する手間がかからなかったそうです。
現場は人気のない場所で色々なものが捨ててあったと聞きます。
産廃は当たり前で恥ずかしいことに注射器もあったそうですよ。

彼の落下した場所にはメスも。

怖くなるんです、あのときの私は心身ともに疲れていた。そして彼は深夜の急患。
看護婦はもちろん、その日は近くの工場で爆発事故があり大火事となったので病院全体が疲弊してました。
ちゃんと術式直後の用具点検もしました。術前のとおり揃っていました。
複数で点検もしました。全員ぴったり合ってました。
偶然、みな疲れていて数え間違えなければ

次は「悲哀」「ブルー」「空」
297うはう ◆8eErA24CiY :03/05/31 01:58
「悲哀」「ブルー」「空」

 「あの終電車と一緒に・・・」
 と、彼女は悲哀をこめて、病室から見える線路を指さします。
 「私の命も、天に召されるのだわ」

 「なにを言うんだ」と、隣のおじいさんは励まします。
 「終わりの次は始まりに決まっとる。耐えて頑張れば、必ず命はあるさ」
 そんな言葉もうわの空。彼女は夕景色にためいきをつくばかりです。

 その夜。彼女は電車を数えていました。
 「あと8本で終電車。ああ、あと7本・・・」
 しかし、最後の列車だけがいくら待っても来ません。
 知らず知らずのうちに眠りにつく彼女でした。

 翌朝。昨夜のブルーな気分を吹きとばす様な青空です。
 「おじいさんの言う通りだったわ。私は、まだ、ずっと、生きられる。」
 お母様は、朝焼けの中を走る終列車を指してこういいました。
 「ほら、終列車よ。おじいさんが人身事故を起こして遅れらせてくれたのよ!」

※もとねた、ふるすぎ。
次のお題は:「洗剤」「潜在」「ぜんざい」でお願いしまふ。
「洗剤」「潜在」「ぜんざい」

 リノリウム張りの床。転がる白衣を赤く染めた遺体。
 被害者は外科医師、38歳男性。
 飛散する生乾きの血とダイイングメッセージ。
 「うむ。一文字消えているな。○んざい…か…」

 酒の勢いとは言え、さすがにこの先は…。

 お題は「洗剤」「潜在」「ぜんざい」で続行を。
 
 
甘い物は嫌いだ。甘い物を食べると頭が痛くなる。
大体この色はなんだ。黒く濁って泥水のようじゃないか。
こんな汁は食い物じゃねえと、俺の潜在意識が警告しまくってる。
こんな物を食ったら、腹の中まで真っ黒になるに決まっている。
ああ、そうか。だからこいつはぜんざいが好きなんだな。
洗剤を使っても落ちっ来ない腹黒さを、逆に染めて隠そうってんだな。
ああ、くそっ!!
なにが「善き哉な」だ!!
俺にぜんざいを薦めんじゃねえ、腹黒女!!
おまえに勧められたら、食わねえ訳にいかねえだろうが!!


次は「思い」「雨」「メモ」で。
300「思い」「雨」「メモ」:03/05/31 15:31
傘を持ったまま立ち尽くす。
「今日は雨です」
また貼ってあった。私の車に白いメモ。
雨の日には必ず貼ってあるのだ。
窓の雨よけの僅かなスペースに貼られたメモは
雨を避けられずに濡れて、恐怖文字のようにインクを滲ませていた。

雨なのは外に出ればわかるのに。
誰がなぜなんのためにこんなメモを貼るのだろう。
私は少し気味が悪くなって母親に相談した。
「ああ、あれ?お母さんよ」
口で言えばいいのになぜわざわざメモを。
「違うの。あれは今日は雨だから運転気を付けなさいって意味よ」
「娘の無事を願う母心、親の思いじゃないの」
私は次の日、母の原付に「晴れだけど」とメモを貼っておいた。


次は「台風」「ちょびヒゲ」「筋肉」
 台風が暴れているので、飛行機が遅れていた。
 待合室には苛立った人々が溢れていた。俺もその一人だった。
 椅子が足りず、床に新聞紙を広げて、居眠りをしている男が居た。
 その男は、例えるならボブ・サップの如き巨漢の男がいた。
 その男の側には4・5歳の女の子が居た。おそらく娘だろう。
 娘は退屈そうに、寝ている男の近くをうろついていた。
 やがて、娘は何かを思いついたらしく、背中のバックから何かを取り出して、
寝ている男の顔を覗き込んだ。
 ――何をしているのだろう?
 ぼんやりと見ていると、どうやらマジックで、男の顔に落書きをしているようだった。
「――うん。」
 声が聞こえそうなほど満足げにうなずいで、離れた娘の後には……

 ちょびヒゲ。

 筋肉ダルマに、ちょびヒゲ……やるなあ、娘!!
 笑いを堪える観客に、男が片目を開いて、口元だけでそっと会釈を送ったのを、
俺たちは気づいていたけれど、黙っていた。
 あの男はいつ、タヌキ寝入りから醒めるのだろう。
 苛立ちが少し和らいだ。


次は「欠航」「予定」「約束」で。
302欠航 予定 約束:03/05/31 16:55
空の上。
なんとか欠航を免れた飛行機の中。
機長の眠たげなアナウンスが聞こえた。
目的地の上空についたが雷雨の影響でしばらく着陸できないらしい。
ただでさえ離陸が予定より大幅に遅れているのに
これでは約束の時間に間に合いそうにない。
「飛行機からでもつながる」はずの携帯電話は天気のせいか圏外だ。
こんなことなら離陸する前に電話をかけておくんだった。
時間ならいくらでもあったのに。
一人で待つ彼女のさびしげな後ろ姿が脳裏を掠めた。
ごめん。
ポケットに入れた彼女へのプレゼントを握り締めてつぶやいた。

次。「柱」「たな」「待ち合わせ」
「待たせたな」
「おう、待った」
 権藤は火をつけたばかりのシガリロを、不機嫌な気分を叩きつけるように投げ捨てた。そうして
投げ捨てられたシガリロが、権藤の足元で山を作っていた。
「待ち合わせの時間に遅れるのは、プロ失格だぞ!?だいたいこの待ち合わせ場所は……」
 りーん!ごーん!ぱっぽー!かっこー!じりりりりぃ!
 柱時計。鳩時計。デジタルアナログ、機械にクォーツ、電気に発条、時計という時計が権藤の背
後で盛大に昼の時報をがなり立て、権藤は両手で耳を押さえた。
「時計屋の前で待ち合わせなど、言語道断だ!!気が狂うわ!!」
「気にするな」
 残響を繰り返す時報をものともせず、男は泰然自若といった風に呟いた。
「ここの時計は全部狂っている。狂った音色で狂ったところで、なんということもあるまい?」
 ふっ。男はシニカルな笑みを浮かべた。当人は決めたつもりなのだろうが、それは権藤の眉を
吊り上げるだけのものでしかなかった。
「能書きはいい!貴様は依頼を果たしてくれさえすれば、それでいいのだ!」
「……いいだろう」
 男は少し傷ついた表情になった。返事からも、覇気が削がれていた。
「話を聞こうか」

 長いな。スマソ。
 次のお題は「オイル」「デッサン」「モーニング」で。
僕は……いや僕という年でもないな。20代だし。俺は……
それほど自意識が強いわけでもないし、こんな高身長で体格のいい男が言ったらそのままだよな。
えぇぇ、私は今、雨の駅前どうりを眺めている。周りには待ち合わせやら雨宿りで人が多く少し蒸し暑い。
向かいの商店ではこの再開発地区に牙を向けるように旧態然。
つまり建替えもせず手入れだけをし古い商店を構えており、今日は棚卸で休業しているようだ。
きっとあのシャッターに張られている張り紙には達筆でことわりが書かれているのだろう。
そうしてこれから晩までどう過ごすかと考えていた。
ふと背中に何かが触れている気がしたので振り返ると、柱の影から女性が私を覗き込んでいる。
右肩から見える部分だけで服装はスーツと分かる。
目が逢うと少し逡巡した後、私に近寄ってきた。
逆ナンパ?世の中そんなうまい話は転がっていない。もしそうだとしてもきっと余計なものが付いてきたりする。
勧誘?大体はそれだろう。キャッチ?酒は飲まない、たしなむ程度で積極的に飲むわけでもないからな。
後ろ向きな考え事を私がめぐらせていると女が話しかけてきた。
「あ……あのよろしいですか?」
何がよろしいのだろう?そしてこの女性は27ぐらいで私より恐らく3年は上で魅力的。声も柔らかくて耳に心地いい。
「何ですか」いやそうじゃない、怪しいんだろこの女は。
「あなたが殺し屋さんですよね」
頭がおかしい女だったようだ、きっとそうだ。本当に殺し屋を探しているのなら嫌過ぎる。

きっと次は「鶏肉」「手」「やすらぎ」
305鶏肉、手、やすらぎ:03/06/01 00:29
目が覚めると見知らぬ部屋のベッドの上だった。
「ここは、どこなんだ。」

「あら、目が覚めたのですね。」
女の手が俺の頬を撫でる。甘い香りが鼻をくすぐる。
「もうすぐ食事ができます。鶏肉はだいじょうぶですか。」
俺が頷くと女はにっこりと笑った後、静かにドアを閉めて出て行った。
柔らかな枕の上で寝返りを打ち、暖かなやすらぎにまどろんでいた。
……いや、こんな所に何故俺はいるのだ。ベッドから飛び起きドアを開ける。
「おい、あんたは誰だ。どうして俺はここにいるんだ。」
女が驚いたように振り返る。

「お義父さん、寝ぼけてるんですか。もうすぐ出来ますから
テーブルについてくださいね。」


お次は「電池」「ネクタイ」「風」でどうぞ。
ここ数日、風だけが楽しそうに舞っている。
あおられたネクタイが、ボクの足元でクルクルとまわっていた。
どうやら電池が切れたらしい。
ボクは棚の上にある買い置きをしておいた電池に入れ替えた。
ブーン、かすかな音がして風がやんだ。
地球がゆっくりと動き出した。

「サンドイッチ」「ボンド」「セルロイド」
 セルロイドとニトロセルロースをサンドイッチ状に挟み込む。5層以上にすることで、
爆圧は単層同数よりも高まる。セルロイドは絶縁体であるが、電気着火信管の回線が
相互干渉しないよう注意した加工が必要である。
 固着はベークライトまたは珪藻土が理想であるが、入手が困難な場合は木工用ボンド
で可能である。但し乾燥に時間を要し、固着強度は劣る。飛散弾体の脱落が起こらない
ようにすること。
 飛散弾体は釘、ベアリング等が一般的である。個々の重量が3gを超えると到達距離が
極端に低下するため、安易に入手できるというだけで玉砂利等を利用するのは早計である。

 セルロース爆弾は構造も単純でコンパクト化が容易ではあるが、反面爆発力に劣り、対人
攻撃以上には適さない。対装甲目標、対構造物には以下の章で述べるアルミニウム爆弾を
推奨する。

 作れません(;´д`)
 次のお題は「レモン」「500円」「エキストラ」で。
「レモン」「500円」「エキストラ」

さっきから車を運転しながら考えていた。なんだか、つまらねぇ奴ばっかりだ。
だらだらと、くだらねぇ説明ばかり繰り返しやがって才能のかけらもねぇ奴ばっかりだ。
信号が青になって、動き出そうとした瞬間、
ボンネットや屋根が、ダンダンダンと大きな音をたて車全体が大きく揺れ始めた。

ちっ、今日も空からレモンが降ってきやがった。
ここんところ毎日じゃねぇか。

たったの500円がないばかりに、特殊装甲を買うことができないオレのくるまはボコボコだ。
静かになった車の外に出たオレは、足元にころがっていたレモンをくやしまぎれに蹴飛ばした。
エキストラバージンオリーブオイルのような重苦しい香りがあたりにたちこめた。

「ムスリム」「べろ」「塊」
309ムスリム べろ 塊:03/06/01 16:41
隣の部屋がやかましい。夜中の3時だというのに、何やら宴会をしている。
家賃3万8千円の安アパート。壁が薄いのは当然だった。だから多少の騒音
は許せる。しかし今回は違う。この三週間、隣の奴は毎日のように宴会を
していた。

三週間前、隣に白人のアメリカ人が引っ越してきた。宴会はその日に始まった。
誰も苦情を言わないのをいいことに、やつらは毎日夜中までバカ騒ぎを続けて
いた。
「なめやがって」

チャイムを押した。バカ騒ぎは続いていた。男が出てきた。男の肩越しに
部屋の中を見ると、べろを出してバカ騒ぎしている男たちの傍に、
段ボールが積み上げられていた。荷解きもせずにこの三週間
宴会を続けていた。ドアを開けた男は怪訝そうな顔で俺を見ていた。

中の男たちが目をまるくして俺を見ている。俺の足元にはドアを開けた男が
腹から血を流しながら肉の塊となっていた。
「分かったか、おい、俺はなぁ、NOと言える日本人なんだ。」
男たちが俺のところにやってきた。俺は包丁を握った右手に力をいれた。
「NOだよ、NO。糞アメリカンが。」一人の白人が口を開いた。
「アメリカン?NO。ワタシタチ、ムスリルジン。ワタシタチ、キョウキタ。
 アメリカン、ヘヤ、カッタ。」
「別人?関係ねーよ。白人には違いないだろ。」
「ムスリルジン、ナカマ、タイセツ。ナカマシヌ、ダメ。アナタ、クルシム。」
そう言った男の目はたしかにあの時見たアメリカ人とは違っていた。
ふいに背中が寒くなった。
「勘違い、勘違いだよ。ソーリー、ベリーソーリー。」
男は俺の手を握ると部屋の中に入れ、ドアを閉めた。
「プリーズ。ヘルプミー。・・・NO。」
俺はNOと言える日本人だ。
310309です:03/06/01 16:43
次の題は
「流しそうめん」 「ねぎ」 「生姜」
でお願いします
>>309 ムスリムはどこにあるの?ムスリムって意味知ってる?
312309です:03/06/01 16:47
セルビアの近く?
あほか、ムスリム=イスラム教徒のことだろうが。
どうせ今調べたんだろ。
くだらねえ奴>>313
315309です:03/06/01 16:52
ムスリム人ってのもいるんですけど
釣ると同時に書き込むテスト!!
317名無し物書き@推敲中?:03/06/01 16:53
第九回すばる文学賞落選作家が暴走中
あと、めんたま開いて>>1になんて書いてあるかよく見てみろ。
5行以上15行以下というのが見えねぇのかよ!
オチもなんにもないクソ面白くねぇこと書きやがって。
319名無し物書き@推敲中?:03/06/01 16:56
目安って書いてあるだろうが
人のあげあしとるばっかしないで
お前もかいてみろよ
ムスリルジン
「ムスリム」「べろ」「塊」

三ヶ月ぶりに、ゆかりの部屋に遊びに来てみた。
玄関を通されて、わきのゴミ箱を見ると小さなパッケージが山のようにあふれてた。
そのひとつを手にとってみると「スリムスリムダイエット」とある。
どうやら、ダイエット用の健康食品らしい。それにしてもこの量は、食いすぎだろう。
と、振り返ったところにゆかりが、こっちを見て、しきりに照れていた。
「ばれちゃったね。どう、わたしやせたかな、エヘ」っとべろを出しながら、
止める間もなく、ゆかりは軽くとびはねた。
ズズーン、オレは必死で柱にしがみついた。
大きな揺れはしばらくして治まった。
陥没した床から、ゆかりを引っ張り出すのは一苦労だった。
なにしろ、180Kgもある肉の塊なのだから。

「わんこそば」「万歩計」「銀河」
>>319
バッカじゃねぇの。まとめる力がねぇからオチをつけられないまま、オーバーしちまうんだろうが。
目安に収められないような奴は書くんじゃねぇよ。
何かに応募するんだって、オーバーしてたらよっぽど面白くない限りはゴミ箱行きなんだよ。

>お前もかいてみろよ

書いてるぜ。
>>311 >>312 >>313 >>314 >>315
>>316 >>317 >>319 >>320 >>322
そういう事は感想用の板を使って話しあってください。お願いします。

◆「この3語で書け! 即興文ものスレ」感想文集第5巻◆
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1037206703/l50
 教授はそばをこよなく愛している。銀河一のそば好きを自らもって
任じるくらいで、その行いは尋常ではない。講義の最中、「催した」
と言って早退したら、まずそばを食いに行ったと考えて間違いない。
先週のゼミでは、「どうかねそばでも食べながら」と言うのでのこのこ
ついて行ったら、岩手まで連行された。わんこそばを食べたくなったら
しい。ただのゼミが、二泊三日の小旅行になってしまった。
 教授はほんとうによくそばを食べる。十枚二十枚は当たり前で、前述
のわんこそぼの一件では、なんと百八十杯を平らげた。九分九厘が
そばでできていると豪語するのも、あながち冗談ではない。低カロリー
食品のそばしか食べないくせに、御細君から万歩計を渡されるほどに
まるまると太っているのだ。汗を搾れば麺つゆかそば湯の香りがするに
違いない、と私たちは常々噂している。
 さて、教授は今目の前で講義をしているのだが、そろそろ落ち着きが
なくなってきた。また「催した」のだろう。ポケットをしきりに探っているとこ
ろを見ると、今日は信州あたりまで繰り出しそうだ。

 次のお題は「完全版」「任意」「暗黒」で。
325名無し物書き@推敲中?:03/06/01 22:52
 一点に収斂した暗黒に、尖らせた舌先で求心の模様を描けば、
 女の腺も脂も、任意の傀儡となる。
 インモラル、インダストリアル、インポテンツ、インテグラ――
 逆角側臥位、ベットと平行の鏡には、インフィニティ、
 照れていたのは俺だけだ。

 次「覚醒剤」「青森」「間欠泉」
>>325 無効?
>>326
一応310が正統かと思われ
「完全版」「任意」「暗黒」

好きなところから見ろと言われてもなぁ。
目の前のDVDのパッケージには、「任意のところからご覧ください」との
説明書が付属していた。
しかし、どこから見ても同じ画面が映し出されるだけなのだ。
なるほど、タイトルに偽りなしだな。俺は不思議に納得した。

『完全版 裏ビデオ 暗黒の世界』

「シートベルト」「メロンパン」「さびた釘」
309はムスリムが入ってないので無効
325は完全版が入ってないので無効
「シートベルト」「メロンパン」「さびた釘」

「知ってました?メロンパンにはメロンは入ってないんですよ。」
「なんだって。」
俺は急ブレーキを踏んだ。シートベルトが食い込みタイヤが鳴った。
「痛っ、何するんですか。後続車がいたら大惨事ですよ。」
「それより、本当なのか。」
「何がですか。」
「メロンパンにはメロンが入ってないなんて……」
「ああ、その事ですか。メロン果汁すら入ってませんよ。常識じゃないですか。」
「……嘘だ。常識というのは猫が顔を洗うと雨とか、さびた釘を入れると糠漬の色が良くなるとかそういうことを言うんだ。」
「いや、それはおばあちゃんの知恵袋って言うんじゃ……うわっ。」
俺は車を急発進させた。
「ど、どうしたんです。どこにいくんですか。」
「本物のメロンパンを探しに行く。」
おれは遥か北の夕張市を目指しアクセルをいっぱいに踏み込んだ。

お次は「風」「鈴」「ひも」でどうぞ。
331 ◆L.dyD/snow :03/06/02 04:33
「風」 「鈴」 「ひも」

ある日の早朝、庭からの声に呼ばれ私は目を覚ました。
しぶしぶ布団から出て庭に目をやると、
そこには洗濯ひもを手にした彼が立っていた。
「今から俺が台風を起こしてやる」
そう言い放つと彼は、そのひもを頭上で振り回し始めた。

その光景を怪訝そうな顔で見ている私に向かい、彼は言う。
「蝶の羽ばたきが竜巻きを起こすこともあるんだぞ、知らないのか?」
うろ覚えの知識をひけらかし、得意になったまま彼は続けた。

10分ほど経過した頃であろうか。
彼の振り回すひもが風鈴に引っ掛かり、チリンと鳴った。
その音色は、あたかも微弱な風が吹いたかのようだった。

※お題の使い方、反則でしょうか?

次のお題は「ボール」「新聞紙」「香水」で。
「ボール」「新聞紙」「香水」

目的の店は、飲み屋の立ち並ぶ繁華街のど真ん中にあった。
昔はスナックだったであろうその雰囲気は、まるでオレが中に入るのをこばむような
胡散臭さを漂わせていた。大きな声で笑いながらフィリピーナなふたりづれの
おねえちゃんが通り過ぎた。その香水のきついニオイに押されるようにして、
オレはドアを開いた。
「いらっしゃい」
店主らしき男が、新聞紙を広げたままこちらに目を向けずに尻さがりな声を発した。
「あの、電話したものなんですが」
「あっ、そうなの。用意してありますよ」
回ることをやめたミラーボールのうろこのような光の下にその包みはあった。
「使い方は、中に書いてあるからね。ウフフ…」
含み笑いのあるその言葉を最後まで聞き終わらないうちに、金を払った。
ひったくるようにして受け取り、オレは暗くなりはじめた街に飛び出した。
茶髪の女子高生と目が合った。笑われているかもしれない。オレは走り出した。
おとなのオモチャの店で初めて買い物をした日の思い出だ…

「とうがらし」「海賊」「デジタルカメラ
 諸君らは本日よりマラッカ政府の指揮監督を受け、海賊掃討の任につく。
非常に危険で、死と隣り合わせの勤務になることと思う。しかし、東アジア
航路の安定、ひいては世界経済そのものが諸君の双肩にかかっている事を
常に自覚し、誇りを持って職務に邁進してもらいたい。
 今回派遣される警備艇にはデジタルカメラが搭載され、全世界にストリーミ
ング配信される。全世界が、諸君らの奮闘を見守っているのである。諸君の奮
闘が海賊組織の全貌を明らかにし、壊滅の糸口へとつながることを、小官は
確信している。

 マラッカへと旅立つ諸君に、ささやかではあるが小官から贈り物がある。かつて
坂田金時の子金平は戦いに赴くとき、とうがらしで辛く煮付けた牛蒡を頬張り、千
人力を引き出したという。今回、小官は手づから牛蒡の金平を作り、各艇に搭載さ
せた。噛み締めるたびに辛味のほとばしる警備隊魂を、存分に発揮してもらいたい。

 では諸君、出航用意!

 次のお題は「荷札」「カーボン」「写る」で。
334名無し物書き@推敲中?:03/06/02 23:22
「荷札」「カーボン」「写る」

 彼の留学先が、急遽シンガポールから英国に変更になった。
 「やっぱりね、中国とかシンガポールとか、気をつけないと」
 と、担当教授は諭す。
 「むこうの国にはちょっと失礼だけど、写るととりかえしがつかないし」

 棚ボタというか、急性肺炎のおかげで英国ゆきの飛行機に。
 「さすが欧州、シンガポールとは違う立派な学園だ。」と彼は感激する。
 ホクホクしながら、学校の事務所のドアを叩く。

 「はじめまして、私は・・・」
 という彼の目前に、自分の荷物が荷札もついたまま積み上げてあった。
 「き、君かね!すまん、大変すまんが、帰ってくれ!」
 カーボンフィルターつきのマスクをつけた教授がこう言った。
 
 「なんで、なんなんなんだー?」と半泣きの彼を放り出すと、教授は
一息ついて、秘書がいれてくれた紅茶をすする。

 「彼には可哀想だけど、命は大事だからねえ」
 「そうよ、中国とかシンガポールとか日本とか、気をつけないと・・・」

※時事関係は面倒くさいなあ
次のお題は「オーブ」「玉子」「ビー玉」でお願いします。
「オーブ」「玉子」「ビー玉」

頑丈な構造、先端的な色使い、そして真髄を極めたラインが個性的なスタイルを創り上げました。
ビーパック社定番アイテムのデイパック・オーブは、持ち主を際だたせて見せるでしょう。
体のラインに合わせたS字型ショルダーパットで快適なフィット感を与えてくれます。
ジッパーの開閉で収容されてるいるアイテムを容易に取り出す事が可能です。
ファスナーのついたサイドポケットには、玉子やビー玉などの小物を収容するのに便利です。

「ブラスバンド」「あくび」「紙飛行機」
336うはう ◆8eErA24CiY :03/06/03 01:17
「ブラスバンド」「あくび」「紙飛行機」

 「頼みますよ、スイスは観光立国なんです。最も知名度が高いここだからこそ!」
 観光庁の役員が半日ねばっても、おじいさんは、あくびをするしかなかった。
 「いいじゃないの、おじいさま。私にも手伝わせて!」
 今年18の胸が大きな孫娘が笑って言った。これにはおじいさんも折れるしかない。

 半年後。アルペンホルンとブラスバンドに導かれ、最初の客がやってきた。
 草原を歩み、客達を家に案内する孫娘。
 「ね。すてきなおうちでしょう? それでは私のおじいさんを、紹介しまーす」
 「う、ううむ・・・どうも、ワシは、こういうのは好かんでのう」

 「わー!」「やったあ」「サイコ−」「おじいさん、ステキー!」
 こんな、あくびがでそうなやりとりでも、客は大喜びだった。

 客足は上々。孫娘は、キャラクター商品契約に、やる気満々だった。
 しかしその時、思いつめた様に孫娘のボーイフレンドがこう言ったのだ。
 「も、もうやめろよこんな事。俺・・・俺は昔のお前の方が、好きだ!」

 おじいさんはほっとして椅子にもたれかかる。感謝するぞ、坊主。
 しかし問題はこれからだ。観光を拒否したら、自分達はどうなるのか。
 本というメディアによってのみ知られる、架空の存在たる自分達は!?

 契約書が、紙飛行機となってアルプスの空に放たれる。
 同時に、観光から切断された彼等もまた、本の中の世界に閉ざされてしまった。

※ちょっと強引かも;
次のお題は:「肝吸い」「気持ち」「着物」でお願いしまふ。
締まらない一日だった。
私は身も心も疲れ果てて街を彷徨う。そうしてうつらうつらと考え事をしながら数十分歩くと飲食店街にかかった。
それぞれの店からはいい匂いが漂ってくる。そういえば食事はまだだ。この辺りで締めるか。
惨めな一日を返上するために普段なら財布が許してくれない店を候補に上げることにした。
軽食から本格的なものまで出してくれる伊太利亜料理店。
この店はシェフが給仕を兼ねるほど小さいが腕は確かだ。
でも気負って締めようとするとボロが出る、却下。
オモシロ料理と銘打ってアイデア勝負の和洋折衷店。このご時世で御目出度い事だが味はおふざけじゃないそうだ。
だけど面白いのは自分の人生で十分だ、これも却下
甘辛い醤油たれの匂い……そういえば今日は丑の日だな。私は審査員の有無を言わさず鰻屋の暖簾をくぐった。
「いらっしゃいませぇ」着物を着た若い女性の店員が出迎えてくれる。店の中も時代劇に出てきそうなほど「和」だ。
日本人の性か気持ちも締まる。これだよこれ、私はこれを求めていたんだ。
案内された席で開口一番、注文の誰何より早く告げる。
「うな重、特」心なしか唇も並汁ダクを頼むより嬉しそうだ。
数分待つと飢えを覚悟しない貧乏人には食えない特が来た。
パックの鰻とは違う。国産天然モノという貴族階級が口を席巻する。
食事を終え勘定に泣きそうになりながらも私は充実した一日にしてくれてありがとうと胃の中の鰻に感謝した。
でもなんで心がむず痒いのか。何か忘れてないかな。財布は今持っていたし……。店の方から注文の声が聞こえる
「特うな重!あと肝吸い!」
耳障りな中年の声は一撃で私の充実を破壊した。公衆の面前で膝をつく。
目が熱い……涙が出てくる。私の2000円の食事は水泡に帰した。鰻屋で肝吸いを忘れるなよな、俺。  
338337:03/06/03 10:56
長すぎた上に入れ忘れてました。
次は「タバコ」「小説」「空き缶」

訂正
>鰻屋で肝吸いを忘れるなよな、俺。
鰻屋で肝吸いを忘れるか?俺。
「肝吸い」「気持ち」「着物」

今日は、ひさびさにおばあちゃんとお出かけをした。行き先は浅草。
もちろん、おばあちゃんと一緒の時はいつだって着物を着て行く。
天気予報では雨だったので、ちょっと気持ちが沈んでいたのだけど、晴れてよかった。
おばあちゃんは、着物が本当によく似合う。薄く染めた紫色の髪もとても上品だ。
わたしはよく知らないのだけど、日本舞踊の踊り手、教え手としても有名らしい。
だから、歩き方とか振る舞いがかっこいいのかな。わたし、おばあちゃん大好き。
でも……、イヤなんだ。

おばあちゃんは、うなぎが大好き。なんでも肝吸いのおいしいお店がお気に入りらしい。
でも、わたしはうなぎが大嫌い。うなぎを焼くニオイをかぐとクラクラしてしまうほど。
浅草寺のおまいりが終わったあとにおばあちゃんがもうしわけなさそうに
「うなぎ食べて行こうかと思うんだけど、ともみちゃんはどうする?」と口を開く。
「気にしなくていいよ、コーヒーでも飲んでるよ。三時に待ち合わせしよう」というわたしの
返事に、いつも困ったような、そして悲しそうな表情で「ごめんね、ともみちゃん」と言うのだ。

あと何回、おばあちゃんと出かけることができるかはわからないけど、
いつか、一緒にうなぎ屋さんに行けたらいいな。わたし、おばあちゃん大好きだから。

「こおろぎ」「生理」「ズロース」
*おせっかいながら、>>337が行数オーバーしているようなので、
有効なお題を出すために書きました。
340「タバコ」「小説」「空き缶」 gr ◆iicafiaxus :03/06/03 14:43
私はローソクの明かりの中必死にペンを動かす。アパートの部屋の外、電気も
ガスも止まった町では気の触れた人が何か叫んでいる。うちのドアを叩いて
いる。私は出ない。玄関は昨日かおととい、ゲタバコとガムテープで封鎖した。
町は滅茶滅茶になった、らしい。ラジオは核兵器だとも化学兵器だとも言ってた。
表ではまた別の気違いが奇声を上げて走っている。私はペンを止めない。
カーテンの隙間からこおろぎの狂い鳴きが聞こえてくる。六月だというのに。
私も気分が悪い。物が食べたくない。保存食の空き缶を見ただけで吐きそうに
なる。生理でもないのに血が止まらない。ズロースを洗う水もろくに無いのに。
私もやがて気違いになって死ぬんだ。だから私は書く。今生きているから。

気のせいか文字を書く右手がだんだん重くなってきたようだ。私はコーヒーの
粉をスプーンで掬って食べる。カフェインが効いてあともう少しがんばれそうだ。
この小説が仕上がるまで私は死んじゃいけないんだ。民族が滅ぼされて私が
最後の一人になってもいいから書く。眠っている暇なんて無いんだ。死ぬまでに。


#次は「ドライバー」「松」「嘘」で。
「ブラスバンド」「あくび」「紙飛行機」

ここは、ラスベガス。ボクたちの学校のブラスバンド部の発表が終わった。
事前に引率の先生に
「アメリカの聴衆は、良い物は良いと体で表現してくれる。ひどい演奏だと紙飛行機がとぶ国」
そう聞いていただけに、とても緊張した。けれど、紙飛行機は飛ばなかった。
代わりに、ずっと繰り返される拍手がきょうの演奏がうまく行ったことを教えていてくれた。

舞台のわきにいる先生のところに戻る時に、あくびが出た。時差ボケかな。
まわりのみんなを見たら、涙を流しながらあくびしている友達もいたりして、笑ってしまった。

あした、ボクたちはワシントンに向かう。

「耳かき」「ゴリラ」「アンモナイト」
 私は動物園で、耳かき係をしている。飼育係ではない。
 耳かきは飼育とは異なる特殊スキルであると考えていただきたい。実際、
耳かき係になるには耳鼻咽喉科を専門とした獣医師免許は不可欠なのだ。
また、麻酔医としての専門知識も必要である。動物によって利きにくい薬、
また逆に利きすぎる薬があるため、一般的な飼育と異なる、特化した技術体
系があるのだ。
 道具は普通に、人間用の竹製耳かきとピンセットを使用している。これは人
によって異なるようだが、私は使い慣れた人間用を使っている。
 主な顧客は、やはり類人猿である。耳の形状が複雑化した類人猿は自分で
耳かきをするのが難しい。犬猫類であれば自分で耳かきをするので、お呼びは
あまりかからない。
 地味で繊細な仕事だが、動物たちの精神衛生にもかかわるので、やりがいは
ある。先だってゴリラの耳掃除をしたときなど、アンモナイトのような耳くそがとぐ
ろを出てきたのだが、麻酔から覚めたゴリラが妙にすっきりした顔をしていた。
 こんなとき、私は耳かき係をやっていて本当によかった、と思うのである。

 次のお題は「ピース」「キャスター」「ハイライト」で。
「こおろぎ」「生理」「ズロース」

ふとんの中でずっと生理現象を我慢していたがついに耐え切れなくなって、外に出た。
こおろぎの鳴いている草むらに向かって、小便を勢いよく放つ。
命中したあたりから、鳴き声がどんどん消えていくのは、暗い中でもよくわかる。

隣の家に嫁いで来た、若奥さんのことを考えていた。
自転車から落ちて転んでいたけれど、だいじょうぶだったかな。と心配する。
イヤ、気になっているのはそんなことじゃないんだ。転んだ時にあらわに見えた
ズロースのてかったピンク色が頭から離れないんだ。

そう気づいた時、小便を放っていた道具はいつのまにか獣に変身していた。

「メトロノーム」「ケーブル」「ブロッコリー」
344イッパイアッテナ:03/06/03 17:29
「ドライバー」「松」「嘘」
「ピース」「キャスター」「ハイライト」
「メトロノーム」「ケーブル」「ブロッコリー」

薄暗い部屋。
テレビの明かりだけが唯一の明かり。
テーブルの上のしなびた齧りかけのブロッコリーと錆びた包丁が鈍く照り返す。
床一面に広がる所々黒ずんだケーブルの束。

テレビの上においてある松飾りは確かおととし置いたものだ。
それはもう相当にひからびていてそもそも本当に松飾りなのかどうかが疑わしい。
それに松飾りはテレビの上に置くものではない。

テレビの中ではいつものようにベージュのツーピースを着たニュースキャスターが
嘘で固めた笑顔を貼り付けて今日のニュースのハイライトをまくし立てている。
どうして誰も止めないんだろう。

テレビの下には君がいる。
正確には、テレビの下の床のそのまた下。
君がいつまでもきれいなままでいられるように。
いつまでも。

ずっといっしょにいられるように。

次。「君のために」「あてずっぽう」「天気予報」
君のためになんて言葉は臭すぎる。
天気予報でも臭すぎる。
あてずっぽうでも臭すぎる。


次は「おい」「お前」「漏れの事好きか?」
>345スルーするぞ……

「大君のためにこそ死なめ」
 辞世の句も用意した。あとは腹を切るだけだ。
 切るだけだが……
「おい、天気はどうだ」
「雨が降っております、あなた」
 参った。屋内で腹は切れぬ。白州が使えるまで、切腹は延期する。

「おい、まだ止まぬのか」
「天気予報では、明日いっぱい降り続くとのことですよ、あなた」
 ぬう……

「まだ止まぬのかッ!気象予報士め、あてずっぽうを言いおって!」
「あなた、これはまだ死んではならぬと先帝陛下が仰せなのでは?」

 儂は切腹を取りやめた。

次のお題は「機動力」「対応」「挫折」で。
「君のために」「あてずっぽう」「天気予報」

「晴れればもうすっかり夏だね」そう言いながら
天気予報がはずれて、くっきりした太陽の光が射す中
ティーシャツ姿の君がはしゃぐ。

次から次へと勝手に作ったナゾナゾを僕に質問するくせに
こちらの出すクイズには、考えもせずにあてずっぽうに答える君。

すねてふくれると、ティーシャツに両膝を突っ込んだまま
抱えて、全然返事をしない君。

今年も季節はめぐって来た。
「晴れればもうすっかり夏です。もう少し頑張れば本当の夏です」
くっきりした太陽の光に向けて、僕は力の限り大きな声で怒鳴った。

三年前に、そのもう少しが頑張れずに旅立ってしまった君のために。
ガンダ●は機動力にすぐれ
対応がいいパイロットが乗れば最強だと思ってたのに・・・・。
なんでこんなに挫折を味わうんだー。


次は「俺」「おまえ」「ほもだち」
>348
お節介ですがお題の着眼点のズレが少ないので、汗臭さと漢気を増やしておきます。
「ワシ」「貴様」「強敵」

ワシの若かった時、青年期はその一撃で終わった。
家族の仇、海賊の風上にも置けない凶賊マシューの胸にサーベルの一撃を叩きこんでやったのだ。
「よくやった……小僧。貴様をあの時殺しておくべきだった」
「苦しんで死ね、マシュー。貴様はその痛みで総てを償うのだ」
ワシの頭には彼によって奪われたものと彼を追うときに通り過ぎていった人たちを思い出した。
ワシの家族、交易船のみんな、強敵(とも)のラフリン。そして乳母代わりの狼。
ワシはほっとすると同時に怖くなった。今までの人生は復讐のため生きていた。
復讐あってこそのワシ、海賊シルバーだ。それがなかったら……?
ただの海賊、海賊だけで何のとりえもない、趣味もない、音楽も聞いたことがない、詩を読むこともない。
ワシは一瞬、奴の死体がワシ自身に見えた。復讐の念はあまりにも凄まじく、自身すらも焼き殺してしまった。
ワシは急いで自分の船に戻ると、あのバーへと急いだ。そうしないと自分が消えそうだったから。
え?本当にワシが宇宙を股に駆けた伝説の冒険王シルバーかって?
老人の戯言じゃ、気にしなさんな若いの。「銀爺さん、お孫さんが呼んでるぜ」
そうして老人は去っていった。その首筋には……シルバーと同じ痣があった。

次は「醤油」「夕暮れ」「雨脚」
「おい」「お前」「漏れの事好きか?」
「機動力」「対応」「挫折」
「俺」「おまえ」「ほもだち」
「醤油」「夕暮れ」「雨脚」

奴は真性2ちゃんねらーだった。
おかげで、まともな言葉を使った対応が出来ないのだ。
「俺」のことを「漏れ」と言ってしまうし、
「お前」のことは「おまい」と言ってしまったりするが一貫性はまったくない。
だから、たまに気になる女がいたりすると「おい、おまえ漏れの事好きか?」と切り出して
嫌われ、挫折することになるのだ。結局、ほもだちぐらいしかいないのだ。
奴は免許を持ってないので、もっぱら機動力は自転車に頼っている。
なので、急な雨脚に襲われた時には、ずぶぬれになってしまうし
夕暮れ時に、ライトのダイナモをこいだまま足でオンにしようとして
醤油のにじんだような汚いズボンのスソを巻き込まれてしまったりするのだ。

まぁ、それもこれも書きたい文章がなかなか書けない自分にいらついているために
ついつい、意地の悪いことを2ちゃんねるに書き込んだりするのだが。
本気を出せば、奴が素敵な文章を書けることをオレは知っている。
だから、つまらないお題を出すための間に合わせの文章なんかじゃいものを是非書いてくれよ。

「クラリネット」「サブマリン」「ごぼう」
ウマイw
「クラリネット」「サブマリン」「ごぼう」

 とうとうこの日がやってきた。吉日大安の今日この日。私は花嫁となった。相手は二つ上の音楽教師。幼少の頃あこがれた「隣のお兄さん」。小学校の頃、彼に憧れて吹奏楽部に入った。クラリネットを仲介しての間接キス。あのクラリネットは押入れにまだ眠っている。
「なにぼーっと見てるんだ?」
「うん、海きれいだなぁ、と思って。やっぱり日本の海とはぜんぜん違うのねぇ」
 目の前に広がるはワイキキビーチ。定番と言われようとも、素敵な新婚旅行になりそうだ。
「ほら、船にそろそろ乗らないと」
「はいはい、そんなにせかさないで」
 いつもお兄さん風を吹かせている彼。いつか尻に敷いてあげるんだから。

 視界いっぱいに広がるエメラルド色の海と抜けるような空の青さ。ワイキキビーチは、やっぱりいつ訪れても爽やかです! 
アドベンチャラスな世界を気軽に覗かせてくれるのが「アトランティス・サブマリン」。午前中のライドなら日本語のガイドさんが丁寧に解説してくれるので、子供連れで参加して夏休みの自由課題をここで一気にこなしてしまうという必殺技もアリですね。

「……ねぇ、あなた」
 ポロシャツのすそをつかんでみる。
「ん?」
 振り向くあなた。
「どーして午前中のにしなかったのよ!!!ガイドさん無しじゃない!!」
「えぇっ!?付いるだろ!?」
「コレ!パンフレットちゃんと読みなさいよ!!午前中しか付いてないって!!」
「えぇっ!?……ったく、しょーがねーなぁ。いいだろそんぐらい。」
 がりがりと頭をかいて、船に乗り込もうとする。そのすそを力強くつかみ、強制的に振り向かせる。ガイド無しではさっぱり何がなんだかわからないじゃない。
「そんないい加減でよく小学生に教えてられるわよね」
「お前こそよくそんなゴボウ足晒せるよな」
「なんですって!!じゃあ永久脱毛してくるからエステ代出して!!ねぇ!!」
「剃れよ!!」
「海水がしみるでしょ!!」

ワイキキビーチ。南の楽園。
結局、どこに行っても話す内容に代わり映えはしないとつくづく実感した旅行となった。これなら、墓場まで一緒に行けるかもね。

次、「台風」「花」「ボトル」
「台風」「花」「ボトル」

カウンターの向こう側でママが新しいボトルを開けながら話しを続けた。
「だからね、ここを飾りたいなと思ったところには花を置くのよ。
でもね、次々にあちこち飾りたくなっちゃって、花だらけになっちゃうの。
そうすると、最初に飾ろうと思ったところが目だたなくなっちゃうから、もっと飾るのよ。
そんなことを続けているうちに、全部飾りの花でいっぱいになっちゃうのよ。
飾る前がどんなだったかわからないぐらいにね。結局ゴテゴテになっちゃうのよね。
ホント、ぞっとしちゃうわよねぇ」
グラスに氷を足して、ウィスキーを注ぎ終わったママがムンクの絵のマネをした。
「ママ、それってまさか僕の小説のことを言ってるわけじゃないよね?」
「あら、やだ。そんなわけないじゃないのよ。あくまでも一般的なお話だわ。
それに飾る花が新鮮なものだったらまだしも、使い古されたような造花だったら悲惨よね」

台風が接近した今の時間は、もう他に客はいない。ママとわたしのふたりだけなのだ。
「ねぇ、ママ。そんな話よりも… 今日は『しっぽり』とどう?」
「あはは。ほら、それが使い古された造花だって言うの!はいタクシー呼びますよぉ」

花で飾り立てなくても、魅力いっぱいのママに会いたいから、きっと僕はここに来ているんだろう。

「伽藍」「刺身」「傘」
「伽藍」「刺身」「傘」

何故俺はこんな女と差し向いで飯など食っているのだろうか。
この女は事もあろうに、日本酒をマグカップに注ぎ、ミッフィーちゃんの絵皿
に鮪の刺身を盛り付け、しかもその盛り方というのがスーパーで買ったパック
をそのままひっくり返しただけというのが一目で見てとれる、何せ肝心の鮪が
ツマとバランのてんこ盛りに隠れて目視出来ないのだから。何なのだ此奴は、
阿呆か、白痴か、と心中で悪態付きつつマグカップで酒を一口やると、女は俺
の目の前で鮪を鷲掴み、伽藍鳥のように下唇を、ぐわっ、と開け一気に喰らった。
俺は目眩で倒れそうになるのを精神力でもって堪え、息も絶え絶えに
「ちょっとトイレ」と言って席を立った。
女は「ん?トイレ? いっトイレ、がはっがはっがはっ」と大口を開け、刺身
の筋の挟まった前歯を剥き出しにして笑っていた。俺は泣きそうだった。
便所で用を足しながら、小窓の外を見ると外は土砂降りで、サッシに水が溜って
内壁は染みと黴だらけ。もう嫌だ。俺は便器を眺めつくづく思った。一刻も早く
こんな所、あんな女から逃げて俺の居るべき場所に帰らんければ。今すぐに、
傘も差さずズブ濡れになってでも俺は帰らんければ。しかし問題は、ここは俺の
家で、あの女は俺の妻だということだ。水洗と雨音の入り交じる中人生を呪って泣いた。

お次は「湧き水」「虹」「懐かしい」でおながいします。
「湧き水」「虹」「懐かしい」

  勢いよく噴き出してくる湧き水をうまいことポリタンクに溜めながら考えた。
どうしてあんなに、特別な言葉ばかりを使いたがるのだろう。普段使わないような
言い回しを使うのが小説だなんて思っているのだろうか。
  使い古されて、誰もがあきあきとしているような言葉の威力にすがることでしか
それらしい形を作ることが出来ないのだとしたら、もっと素の自分を磨くことを
考えてみて欲しいものだな。話の展開や意外性で自分を表現してもらいたいものだな。

  普段はたくさんの人がならんでいる、ここ澪峠の湧き水も今日は平日で
おまけに天気も悪いので、他に人はいないのでゆっくりと水を汲むことができる。

  パチャパチャとはじける飛沫の中に唐突に小さな虹が出来た。ハッと思って
空を見ると大きな虹がかかっている。虹の柱が出ているところには宝の山が埋まっている
という小さな頃の懐かしい未来を思い出した。ポリタンクの口を締めるのももどかしく
車の中に放り込み。急いでエンジンをかけた僕は走り出した。
夢が消えてしまう前にたどりつくために。

「牛乳」「宅配便」「寝ぐせ」
「宅配便でーす」
 あたしはぐわば、と起き上がった。
 しまった、今日午前中に届くのに、思わず眠りこけてしまった!今日届くの
は米。恥を忍んで送ってもらった。今日も食えないと、冗談抜きに飢えて死ぬ。
「はーいっ!」
 とりあえずよそいきの声で返事だけして、時間を稼ぐ。寝巻きのTシャツは
そのままに、その辺にとっ散らかしていたパンツを引っ掛け、両足を通し、
「……げっ」
 鏡の向こうで、殿様のような寝ぐせをおっ立てたあたしが絶句していた。
「だああああ」
 とりあえず寝かせればいい!あたしはカラムをひねり、とうとうと流れる水を
頭髪になすり、石鹸をすり込む。手洗い用じゃなくて、洗顔用の牛乳石鹸を
使ったのがせめてもの救い。
 収まった!あたしは玄関に走る。
「はーい、お待たせーっ!」
「どうも、宅配便で」
 ぴこん。
「ぶふっ!?」

 あたしは米を手に入れ、大切な何かを失った。

長い。スマン。
次のお題は「単身赴任」「調整」「マッスル」で。
357うり:03/06/04 14:33
牛乳」「宅配」「寝ぐせ」
牛の小太郎は今や日本国民の寵児だ。
連日、あらゆるメディアが小太郎をもてはやしている。
「まいったあ、小太郎がいなくなったあ」数日前、青森から見舞いに来た母親が言った。
寝ぐせだらけの髪をかきあげると、鏡の中に憔悴し切った僕がいる。
心臓の手術の為に東京の病院に入院して三ヶ月が過ぎ、小太郎の記憶も薄れていた頃だ。
朝、乳を搾りに牛舎を覗いたら小太郎がいなくなっていたと言うのだ。
何故か小太郎は僕になついていた。
僕が絞ると乳の出が良いと、両親は僕に小太郎の世話をさせた。
取り止めの無い話でその時は終わったのだが。
程無くして、仙台辺りの国道をひたすら南下する牛の話題がワイドショーに出た。
僕も実家の両親も、すぐに小太郎だと分かってTV局に問い合わせた。
病の少年を励ます為に青森から東京を目指す牛。TV局は感動的な話題に仕立て上げた。
宅配宜しく、小太郎はTVを通して『頑張れ』と無言のメッセージを届けてくれる。
「小太郎は今頃どこにいるんだろ」手術の前日、僕は牛乳を飲みながら、想いを馳せた。

お題カブリでごめんなさい。お題は356さんので……。
358うはう ◆8eErA24CiY :03/06/04 23:22
「単身赴任」「調整」「マッスル」

 「局長、これは・・・」
 机に置かれた緑色のマッスルスーツ、ヤモリの様な仮面と尻尾。

 「うむ。君の単身赴任、最後の大仕事がこれなのだ」
 「冗談じゃない、これを着て、いつもの任務をこなせというのですか!?」
 「訳は後で話す。君の新しいコードネームは『ゾルゲ』だ。よろしく頼むよ。」

 翌日、国会議事堂にヤモリの様な怪人が潜入した。
 「ギギッ! 機密、機密をよこせぇぇー!」「きゃー!」
 情報部職員を追いかけ、書類を奪うゾルゲ。
 <なぜか偶然その場に居合わせたテレビ局員>はそれを全国中継する。

 「遅かれ早かれ逮捕されますよ。局長」テレビを見ながら秘書は訊く。
 「うむ、それが今回の任務だからな・・・派手にやってくれよ、ゾルゲ」
 「捨て石ですね。彼が超人的に、派手に活動するほど・・・」
 「そう、いままでにの本当の地味な諜報活動は、追求を免れる」
 「ニッポンも、今まで酷いやり方をしてきましたからね。作戦には協力してくれました」

 ブラウン管の向こうでは、荒唐無稽の陽動作戦が繰り広げられている。
 「自白剤入りの、浣腸X−27号をくらえー!」「ひょえー、助けてー」
 暴虐の限りを尽くす怪人ゾルゲ。仮面の裏には、人知れず涙が浮かんでいた。

※小さい頃はホントにこんなだと思ってました(笑)>ゾルゲ
次のお題は:「ペンギン」「かき氷」「商戦」でお願いします。
「ペンギン」「かき氷」「商戦」

「かき氷あり□」のひらめく幟に誘われて暑くもないのにかき氷屋に入った。
かき氷というよりも、かんなでけずったみたいな氷に、何故かペンギンのおもちゃみたい
なのがついて来た。氷には何もかかってない。
「おやじ、これシロップかかってねぇじゃねぇかよ!」と文句を言ったら。
「あっ、そのペンギンの中にシロップが入ってますから好きなだけかけてください」
などとふざけた返事が返って来た。
オレはしかたなく、そのシロップ入れを開け、ペンギンの口の部分からなかなか出て来ない
イチゴシロップにイライラしながら我慢をしていた。
棚の上に載ったテレビでは、「通商戦隊・ベスプッチ」をやっていた。
「うぎゃー」「どひゃー」「べひょー」「むにゃー」「べちょー」「とりゃー」
「めにぇー」「くびゃー」「めへぇー」「ぶじょー」「てりぇー」「たみゃー」

いつのまにか、あふれたシロップはオレのズボンをヌチャヌチャにしていた。。

「くらげ」「あんま」「うがい薬」
360くらげ あんま うがい薬:03/06/05 01:43
枕がくさい。いつ頃からなのだろう。
若い若いとは思っていても、体は正直なのか。
この前までは頭の禿げたオヤジをバカにしていた。しかし最近は、肩こりがひ
どいが為にあんまに通い、かぜをひいてはたいへんだとうがい薬で予防に努め
ている。
俺ももうおやじなのかも知れない。
大人と言うのは、自分というものを持たずにくらげのように漂うもの。
若者というのは、希望を胸に抱き、自分を信じられるもの。
そうだ、俺は自分を信じている。俺はまだ若い。
「ピロロロロ」
携帯を見るとメールが届いていた。
「あんま、どうだった?」
その上俺にはこんなにかわいい彼女もいる。俺がオヤジなはずが無い。
俺は返信メールを送信した。
「あんまなんだけど、あんま気持ち良くなかった」

次の題
「イタリア」 「銅」 「熊」
「イタリア」「銅」「熊」

古い友人の家に招かれた。
もう談笑し始めて小一時間になるのだが、
どうも熊が気に入らない。

それはいわゆる置物の熊だった。
お馴染みの、口に鮭を咥えている例のあれだ。

友人の弁によると、この熊はイタリア製で素材は銅らしい。

「ナポリの小さな骨董品屋で見付けたんだ」

明らかに嘘だ。
一目して銅メッキのスプレー塗料だと分かるほど雑な仕上げである。
私は哀しくなった。

会う事の無かった永い間に彼に何があったのか。
私には知る術がない。
知ったところで取り返しのつくような事ではないのだろう。

帰り際、熊に目をやると、
いやらしく笑ったような、そんな気がした。


次は「丘」「海」「風」で。

362丘、海、風:03/06/05 19:20
岬は小高い丘の上にあり、海の眺めがとても良かった。
遠くをトンビがゆっくりと気持ちよさそうに飛んでいた。
まだ明るい日差しの中で風は強く、やさしく私達を包んでいた。

次は「看板」「落ち葉」「戦闘機」
363名無し物書き@推敲中?:03/06/05 23:08
「撮るよ ハイポーズ!」
腕時計型パソコンのファインダーを上げると 
彼女は「21世紀の戦争展」という看板をバックにピースサインをした。

私としては乗り気では無かったが、
彼女はどうやら無料券を手に入れてきたらしい

「すごいね 戦闘機という飛行機で戦っていたんだって」
「そうだな、考えられないね」
戦争という物が無くなって何年経つのだろうか。

「すごかったね、博物館代は私が出したから何か奢ってね。」
「はいはい」
落ち葉をカサカサと踏みながら、先を歩く彼女に向かって
「もし今、戦争という物があったらさ−」と聞こうとしたが
やっぱり止めることにした。
364名無し物書き@推敲中?:03/06/05 23:09
「氷点下」「大河」「焦燥感」でお願いします
いま我が家の雰囲気は氷点下に達している。
親父が借りてきたビデオ「大河の一滴」が流れ始めてからというものの親父以外の人間は腸を煮え繰り返しているからだ。
兄はあからさまに青筋を浮かべている。
姉は眉間に皺を寄せ始めている。
俺もさっきから手を握ったり開いたりと心の憤りを抑えようとしている。
そしてお袋は無表情だ。ただし親父を射抜く眼光は鷲のように殺戮者のものだった。
そんな中、親父だけは心底映画を楽しんでいる。言いたい事はこうだろう。
「俺ももう歳だ。この映画のようにはしなくても良いが面倒は見てくれ」
よく言うぜ……。どの面さげて言うか楽しみだよ。
親父は暴君だった。歳の離れている兄や姉に聞くところ整形外科に通わなくてはならないくらい殴られたそうだ。
理由は機嫌の悪いときに癇に障ることをしたから。例えば家の廊下で走った。例えば箸の持ち方が汚い。
そしてお袋も同様の扱いを受けた。打つ買う飲むは大前提。出張の朝、お袋が貧血で倒れたときなど寝るなといって踏んだり蹴ったりやり放題。
その上気分が悪いと叫んで俺まで殴られた。
そして金遣いも荒い。収入の8割は遊びに使い、生活費なんてものはまったく無かった。
学費もお袋が親戚中に頭を下げて借りてきたものだ。それなのにこの豚は「俺の腕で無駄飯食いの子供を学校にやっている」などと抜かす。
感謝しろよ豚。殺していないのは俺達がこの社会で未来を掴みたかったからだ。
次男が父親を呪う中、空気に耐えかねた兄が食事の誘いをする。
示し合わせたかのように父親以外の家族は外食に出かける用意をし始めた。
状況の流れを理解できず玄関に向かう家族に父親は「父がビデオを皆に見せようとしているのに」などと無自覚な発言をするが
誰も取り合わなかった。家族の背中を見送った後、誰もいなくなった玄関の壁を彼は殴った。
きっと胸中を支配するのは焦燥感ではなく理不尽に対する怒りだろう。
366365:03/06/06 05:46
抜けていた、まぁ三語言ってもルールに合わない駄長文だからスルーされるだろうけど
「夕焼け」「赤」「青」
367「夕焼け」「赤」「青」 gr ◆iicafiaxus :03/06/06 20:06
タバコの火の不始末から部室が燃えて、逃げ遅れた山本が死んでからというもの。
ごく普通の文学少女だった高田はまるで敬虔な未亡人みたいになっちゃって、朝夕
焼け跡に花を供えては手を合わせる。

僕はそんな少女を見ながら、いつも胸に何か吐き出せない塊のようなものを感じた。
高田がいつまでも火事のことを引きずっているのが可哀相で?
隣の僕になんか気づかないで死んだ者のことばかり見ている高田がもどかしくて?

「高田さん、君のやってることは偽善だよ! そんなことをしても山本には、もう
 見えないし聞こえないんだよ! 自己満足を美化するのは構わないけど、そう
 やって悲劇の主人公を気取ったところで、山本に何かの益があるとでも?」

ある日何かの拍子で吐き出した言葉に高田は、一気に首まで真っ赤になると、何も
言わず僕に背を向けて駆けていってしまった。

僕も若かった、と言ってしまうのはたやすい。
でも。そうやって青春ドラマの主人公を気取っても、…。


#次は「変身」「城」「審判」で。
「変身」「城」「審判」

ある朝、城山平太郎がベッドの中で目をさますと
自分が巨大な審判に変身しているのを発見した。
ベッドの中と言っても、巨大な審判に変身しているので当然ベッドは壊れている。
壊れているどころか、その身体は天井も屋根もつきやぶり、ヘソの位置は
近くの五階建てのマンションの屋上と同じあたりにあった。
首をゆっくりと横に向けると近所の人達が恐れおののいて遠巻きに見ている。
突如、遠くの空にキラリと光るものがあった。速い、戦闘機だ。
ぐんぐん迫った戦闘機は、今まさに起きようとしている城山平太郎にミサイルを撃ち込んだ。
なぜだ。ただ大きな審判に変身しただけなのに、ミサイルを打ち込まれなくてはならないんだ。
城山平太郎は、炸裂音と白い閃光につつまれて意識が遠のいた。

「ふぅ」城山平太郎は、ベッドで目覚めたことに気づいた。
「なんだ、夢だったのか。まったくもう、夢でよかったよ」
城山平太郎が、巨大な芋虫に変身していることに気づいたのは、
それから三十二秒後のことだった。

「あんころもち」「人力車」「酔っ払い」
369名無し物書き@推敲中?:03/06/07 03:48
「そろそろおしまいです」
最初に約束した公園のそばだ。今回のお客は若い女性の2人組みだった。
「あの、写真一緒に撮ってもいいですか?」
女性にそう言われて悪い気はしないが、もちろん彼女達が撮りたいのは私ではなく、人力車だ。この仕事をしていたら毎日のようにあることである。

気持ちよく晴れた日の午後、気持ちよくお客にお礼を言われ、私は気分よく一服していた。そこへ
「おう、にいちゃん。乗せてくれよ」
でかいだみ声にびっくりしてふりむくと、赤ら顔の腹の出た中年男が立っていた。足元はふらついてるし、明らかに酒臭い。できれば酔っ払いは乗せたくないが、もちろん断ることはできない。
「15分で3千円になります」
「ふん、この不況なのに値上げしやがって。いいから乗せろよ」
どうやら以前、人力車に乗ったことがあるらしい。
私の手を借りて男が倒れるように座席に上がりこむと、私の愛車はぎしぎしとうめいた。
「その先の交差点を曲がったとこに和菓子屋があるだろ。そこ行ってくれ」
やれやれ仕方ない。吐かれたりしたら困るので、そろそろと発車した。

和菓子屋に着くと、男は私を待たせて店に入った。そして袋を2つさげて出てきた。
「もとのとこにもどってくれ」
今来た道を、同じように慎重に走り出す。すると突然、男はぎょっとするような大声でがなりだした。
最初はいきなり怒鳴りだしたと思ったが、それは歌だった。辺りにとどろくだみ声に鞭打たれ、私は揺れるのもかまわずスピードを上げた。一刻も早くこのお客を降ろしてしまいたい。
ちょうど歌が終わる頃、もとの公園にたどりついた。
「えらく早く着いちまった」
ぶつぶつ言いながら男は降りてきた。そしてよれよれの千円札を3枚だした。
「ありがとうございます」
「これもやるよ」
そう言って男は和菓子屋の袋を1つ私にくれた。
「息子とこれに乗ったことあってよ。もち買って歌うたってな。もう息子いねえからあんたにやるよ」
私が何も言えないでいる間に、男はふらふらと行ってしまった。袋にはあんころもちが3つ入っていた。最初から私にもくれるつもりで、包みを別にして買ったとしか思えない。彼の息子は、私と同じくらいの年頃なのだろうか。


370名無し物書き@推敲中?:03/06/07 03:52
長くてすみません。精進します。
次は「テレビ」「水」「向日葵」でお願いします。
僕は縁側にうつぶせに寝転んで、明るい日差しと心地よい風をうけながら、
もういまや砂嵐しか映らなくなったテレビをぼんやりと眺めていた。
風鈴がチリーンと音をたて、僕の眠気を誘う。
動くことを拒否する体を無理にひねった先には、一面に黄色が広がっている。
向日葵だ。彼らは、もう一歩も動くことの出来ない僕を尻目に、雄雄しく咲き誇っていた。

悲しいことに、地球上の生物は滅亡の危機にさらされていた。外部からの、何らかの力によって。
「それ」は全てのものに快楽を押し付けてきた。圧倒的で、多種多様な快楽を。
抗うことなど誰にも出来やしなかった。どんな人間も。どんな生物も。
あらゆるものが死に、滅んでいった。ひどく幸せそうな様子で。吐き気がする位に。

不意に、水の匂いを感じ取って、僕はいつの間にか閉じていた目をどうにか開いた。
瞬く間に土砂降りの雨が降り注ぐ。
僕がぶっ倒れている板の上にも、ひんやりとした空気が流されてくる。
かろうじて動かすことの出来た眼球に映ったのは、雨に打たれ震える向日葵だった。
それはまるで歓喜の踊りのようで、僕は仲間の死に顔を思い出し、
これは罠なんだと忠告してやりたくなった。

***次は「スイッチ」「塔」「線」でお願いします。***
372スイッチ 塔 線:03/06/07 12:36
 最初のカードは、「塔」の正位置。失墜、失敗、旅の失敗を
象徴します。率直に申し上げて、貴方と彼女の関係はかなり
危険であると言えます。
 しかし、まだ完全に断絶したわけではありません。細い線で
はありますが、まだつながりは残されています。それが2枚目
のカード「星」の正位置と、3枚目のカード「死神」の逆位置です。
星はささやかな希望を暗示し、逆位置の死神は死の果てにくる
再生を暗示します。小さな希望を忘れずにいれば、最期に大逆
転があるでしょう。
 キー・カードは「運命の車輪」正位置です。これは事象の転換
を意味します。きっと貴方の生活環境のどこかに、スイッチが隠
されているはずです。今の貴方に必要なのは、そのスイッチを見
つけ出すことです。運命の転換を成し遂げ、大団円へと至るよう、
お祈りしております。

 次のお題は「アフレコ」「難敵」「骨折」で。
373名無し物書き@推敲中?:03/06/07 12:37
「スイッチ」「塔」「線」

眠る彼の顔を見下ろして、思う。
もしもこの男を殺したら、私はまた、彼と幸せになれるだろうか。
そんなことを思う、明け方のカーテンのうす紅を眼に留めて。
心の奥深くに封印されている、破滅へのスイッチ。手錠をかけられている
私、黒い服の人々に宣言され、高い壁の向こうにある塔の中に連行される
私、そして、作業着姿でエプロンのようなものを作っている私。
たぶん、それは未来の姿だ。
けれど、別の未来の線も見える。血だらけだ。カーテンのうす紅がもっともっと
色濃くなる、黄泉路への赤い毛氈となって。
包丁を弄ぶ指が、ふとした拍子に傷つく。
血のみるみる滲む様を見て、私は目を細めると、キッチンに包丁を持っていき
扉裏に閉まった。大丈夫、いつでも死ねる。それまでは殺さない。
彼も、そして私も。

次のお題は「紅薔薇、キッチンタイマー、トムとジェリー」で。
374373:03/06/07 12:39
ありゃ。1分遅れだ。
じゃ、「アフレコ」「難敵」「骨折」やってみます。
>>373-374
お題を出す時は、「トムとジェリー」なんていう固有名詞はダメ。
加えて言えば、紅薔薇も意味不明。
376373:03/06/07 12:52
「アフレコ」「難敵」「骨折」

夢の中で、俺はうつうつと黒いものと闘っていた。動くたびに甲冑がうるさい。
どうも中世の騎士みたいないでたちのようだ。
おまけに闇が濃くてはっきりしないが、自分の手を見たら、二次元化している
ことに気がついた。よく夢の中でドラえもんになったとかあるだろ。あれだ。
つまり俺はアニメキャラになって、なんだかわからない難敵を相手にしている
ようだ。という事は、この声はもはや俺のものではない。
「おのれえ!」
……おのれえ、かよ。日常で使うかよ、そんな言葉。俺の声を当ててくれてる
(らしい)この声優、知ってる。この間アニメ好きな恋人に連れられて行った映画で、
主役だった。実物の顔も写真で見たが、これがデブでふけてて、ぱっとしない。
アフレコ風景はお笑い演芸場じゃないかと思った。
それで、夢の中でこの痴態だ。恥かしくて目覚めたくない。足を踏ん張ろうとして
骨折していることに気がつき、眼が覚めた。そうだ、俺は騎士なんてやってる場合
じゃない、怪我人だったんだ。
まずうす紅のカーテンが眼に入り、首をめぐらすとキッチンから戻ってきた恋人が微笑む。
ああ、俺は現実の幸せを噛み締めよう。この現実が現実で、よかった。
377373:03/06/07 12:54
>>375
あ、すみません。初心者なもので。じゃあ訂正します。
「薔薇、キッチンタイマー、火山」あたりで。
378即席乾燥人:03/06/07 13:58
ションベンコゾウノヒトリゴト。
自分に自信を持てば良い。
利用できるならすれば良い。
役に立たぬなら捨て置けば良い。

367「夕焼け 赤 青」好き。時制の扱いが気になる
368「変身 城 審判」笑。理不尽なのに説得力がある
369「あんころもち 人力車 酔っ払い」落ちが良い。もっと削れるかも。導入部とか
371「テレビ 水 向日葵」すごい
372「スイッチ 塔 線」占い師も祈ることが?
373「スイッチ 塔 線」改行の位置が不自然なような気がするのは作者の意図?
376「アフレコ」「難敵」「骨折」373とザッピング?うすべには漢字のほうが好き
379即席乾燥人:03/06/07 14:00
誤爆した。土下座。
>379
ドンマイ!
いつもありがとです。
381うはう ◆8eErA24CiY :03/06/08 15:10
「薔薇」「キッチンタイマー」「火山」

 魔王の居城である火山を、やっと見つけた。
 勇者は闇に紛れ、魔王が秘密の入口を開けるのを待つ。
 傍らには、気の合う僧侶と魔法使い、そして武道家がいた。

 何も見えない闇の中、僧侶が小さく呟いた。
 独り言の様な小さな声で。

 「私たちって・・・いつまで、こんな生活なのかしら」
 「・・・うん」
 「私も30だし、魔法使いさんだって高齢出産はきついよね」

 僧侶の言うことはよく分かった。
 毎日がキャンプファイヤーで、寝るときは4人で野宿。
 自分だって、時には二人きりで・・・

 「ピピピピピ」
 キッチンタイマーが鳴った。パスタが茹る頃だ。
 主婦は勇者たちをセーブして、ゲーム機の前を離れた。
 勇者達には薔薇色の夢であろう、退屈な主婦の生活に戻るのだ。

※やっとぎりぎりで15行・・・(^^;
次のお題は:「いちょう」「縁側」「酸」でお願いします。
なんか、空白行を含めて15行だ。アホめ!って言われたけど。
あっ、別にいいんだけどね。>>381
















「水疱瘡」「暴走族」「乙姫様」
>383
スルーするぞ

銀杏の木は世間で紅葉や実だけしか取り上げられないが夏場の銀杏もいい物だ。
とくにこの銀杏は何代も前から実家にあり、父の代には樹医にも見せたりした。
縁側に陣取り汗を垂らし出戻りの私はそんなことを考えていた。
汗を垂らしているのは熱いだけではない。胃腸が錐で抉られるように痛むからだ。
きっと夏目漱石もこんな汗を掻いていたに違いない。熱いし胃も痛い。食欲も無い。
何もかもが苛立たしい。温くなった麦茶を口に含む。ますます気分が悪くなり胃も痛くなる。
腹立ち紛れにコップを庭へ投げ捨てた時が限界だった。口を押さえ走ってトイレへと向かう。
ちょうど姉が出てきたときだった。私の顔が凄まじかったのだろう。
顔を青ざめて脇に退く、おかげで床に吐かずに済んだ。
間に合った私は洋式便器に黄色い酸を吐く。酸っぱい匂いがトイレにこもる。
「ちょっと……大丈夫?もしか……有り得ないわね……」
姉が心配して声をかけてくれるが言い澱んだ部分もわかってしまった。
「もしかしてつわり?」それは無いのよ姉さん。もう赤ちゃんできないの。
交通事故で赤ちゃん死んじゃって私も産めない体になって別れて……。
だから私は秋が嫌い。実りの季節だから。春も嫌い、世の中も大嫌い。

次は「玄冬」「毛布」「白紙」
「水疱瘡」「暴走族」「乙姫様」
「玄冬」「毛布」「白紙」

乙姫様は、さいきん機嫌が悪うございます。
わたくしは、それを、あこがれの君が水疱瘡でしばらく会えないからだとばかり
思うておりましたが、どうやらそうではないご様子でございます。

お屋敷から少し離れたところにある、京三条大通りでは夜な夜な牛車による
競争が行われておるのです。そこには京の暴走族が集まり、しびれるような寒さの
玄冬の中「零四町競争」というものが催されておるそうなのでございます。

乙姫さまは、「競争女王」という役割で参加する気満々だったのですが
なにぶん厳しいお父上のことゆえ、反対されてしまったのでした。
おかげで、競争女王の話は白紙となり、乙姫さまは毛布にくるまって泣くばかりでございます。

しかし、驚愕の真実を知ったのはさきほどでございました。
実は、競争女王になるには、乙姫様は体重が倍ほども重すぎたということを知ったのです。
きっとバチが当たったのでございますね。いつもわたしの分までオヤツを食べてしまうバチが。

「ロイヤルストレートフラッシュ」「抹茶」「カーペンターパンツ」
起┬起┬起:起承転結
_├_├承:起承転結
_├_├転:起承転結
_├_└結:起承転結
_├承┬起:起承転結
_├_├承:起承転結
_├_├転:起承転結
_├_└結:起承転結
_├転┬起:起承転結
_├_├承:起承転結
_├_├転:起承転結
_├_└結:起承転結
_├結┬起:起承転結
_├_├承:起承転結
_├_├転:起承転結
_├_└結:起承転結
承…
転…
結…
(別に序破急でもかまわない)
定石を馬鹿にするなかれ。
型に入って、型を出よ。
387386:03/06/09 13:47
むむ、感想文スレと間違えた、ゴメソ
「ロイヤルストレートフラッシュ」「抹茶」「カーペンターパンツ」

得意満面に開いた俺のカードはロイヤルストレートフラッシュ。
ポーカーにおける最強の組み合わせだ。俺は勝利を確信した。
テーブル向かいに座っていた奴の手が小刻みに震えているのが見える。
どこから潜り込んだかは知らないがこんな高級カジノに作業服と思しき
抹茶色のカーペンターパンツなんかでやって来やがって。
しかし、これで奴も席を立たざるを得まい。俺は口の端が緩むのを感じた。

たが、俺の歓喜は一瞬で落胆へと色を変えた。
震える手で開いた奴のカードも同じロイヤルストレートフラッシュだった。
しかも、スペードのロイヤルストレートフラッシュ。
俺は静かに席を立ち、出口へ向かった。

「本物のロイヤルストレートフラッシュを出す奴が現れるとはツイてないぜ。」
袖口に隠したカードの残りを窓から放り投げ俺は足早に人ごみに紛れた。


お次は「空気」「天気」「掃除機」でよろしくね。
389うはう ◆8eErA24CiY :03/06/11 01:44
「空気」「天気」「掃除機」

 森林の砂漠化。二酸化炭素による温室効果。
 じわじわ迫り来る人類存亡の危機に対し、大発明が発表された。

 「これが空気洗浄機です.これ一本で森林1ha分の二酸化炭素を吸収!」
 首相は得意満面で、高さ3mほどの銀色の円柱を見せた。
 「うーん、まさに空気の掃除機。これさえあれば森林なんて要りませんねー」
 と、女性キャスタまでが能天気に広告する。

 銀色の円柱は、いたるところに並んだ。
 森も林もどんどん消えて砂漠になり、ビル群がそれに代わった。
 もちろん、最初はそれを嘆く者も多かった。
 しかし、円柱の生き生きとした空気は、結局は彼等を説得したのだ。
 
 とうとう森が消えて、地球はビルだらけの超高性能惑星となった。
 森より高性能だから、それでいいじゃないか。そういう空気がみなぎっていた。

 そして、宇宙から沢山の客人が訪れた。
 超高性能となった地球を祝福し、用がなくなった人類を片付け、そこに住みつく。
 問題はない。彼等にはその権利があった。
 高度に発達した彼等は、地球人よりはるかに「高性能」だったのだ。

※くらいのばっかし^^;
次のお題は:「探偵」「綿あめ」「浴衣」でお願いしまふ。
390名無し物書き@推敲中?:03/06/11 04:29
「探偵」「綿あめ」「浴衣」

今日は空が青いらしい。仲睦まじいまぶたの間から、俺は窓の外を見た。
壁の時計に目を移し、おいおい、丸一日以上寝てたのか、と思った。と言っても、その前は丸二日近く起きっ放しだったのだ、これくらいの贅沢は許されていい。自営業――探偵と言う商売の数少ない利点だった。
一時間ほどその贅沢を堪能し、俺は立ち上がった。
カレンダーを見て、ああ、今日は近所の祭りだっけ、と思った。階下を見下ろすと、浴衣を着た少女たち――今度の事件の被害者と同じくらいの少女たちが歩いていた。
畜生、忘れようと思っていたのに。俺はもう一回布団に潜り込みたくなった。
飯を作るのが億劫だったので、財布をポケットにねじ込んで部屋を出た。
駅前からの帰り掛け、一組の親子連れと会った。俺はその父親に見覚えがあった。いつも世話になっている人物だが、正直なところ今日最も会いたくない相手だった。
「おや、――君」
だが、彼はいつも通りの態度で話しかけて来た。
「俺の不始末で、色々と……」
彼は口調を変えずに、
「言いたい事は色々あるが、今日はこいつが居るのでね」
綿あめで口の周りを汚した少年が、父親と俺の顔を交互に見比べた。

次は「戦友」「シガレットケース」「学校」でお願いします。
隣を見た。電車に揺られながらも、器用に英単語をノートに書き連ねている。
同じ大学に受かろう。そう言い合い勉強してきた仲間だ。受験戦争を戦う戦友
だ。

戦友は学校に向かう電車の中でも勉強していた。俺は思い浮かべていた。
戦友とのキャンパスライフを。俺がいる。戦友がいる。そして一人の女。
この三年間毎日のように味わってきた光景だ。戦友は女の肩を抱き、俺は
所在無さげに笑っている。女は代わっても、この光景だけは代わらない。

俺は戦いの準備に勤しんでいる戦友の鞄にシガレットケースを忍ばせた。
これは戦いなのだ。俺は口には出さずに言う。戦友とは、戦が変われば
敵同士なのだ。俺は心の中で誓う。この戦は勝たせてもらう。

次は「親子」 「驚愕」 「綱」
392親子 驚愕 綱:03/06/11 23:13
「あとの事はよろしくお願いします。母」

あの朝、洗濯物を放り出してサンダルひとつで出て行った母から
25年ぶりの手紙が来た。ありふれた便箋一枚にたったこれだけ。
庭に出て立ち尽くしていた、あの日の後ろ姿が今も目に焼き付いている。
東京の消印。字が震えていた。住所は無かった。
私の額にはあの人と同じホクロがある。あの人のDNAがホクロに詰まっているようだ。
「親子」の絆なんて何処にもないのに。
でも私は、遠い遠い電車に乗り、知らない都会を探すのだろう。
あの儚い後ろ姿が25年の未来まで私を突き動かす力を持っているなんて。
「驚愕」するほど強い衝動が込み上げて、ふいにあの人の名を呼んだ。
「おかあさん。」親子の縁は赤い糸よりも太い「綱」であると信じたい。
きっと私はあなたを見つける。

次は「詐欺師」「風船」「コイン」
『詐欺師』『風船』『コイン』
雨宿りに飛び込んだ地下街のアーケードは梅雨の湿気を吸い込みカビ臭かった。
私は泥の跳ね上がったストッキングを舌打ちしたい様な気持ちで眺め
濡れたハンドバックからハンカチを取り出した。
「あの、曲ってます」と唐突に後ろから男の声がした。
20代の上背のあるスーツ姿の男が、申し訳無さそうにスカートを
指差した。思わず見ると、スリットが真横までずれていた。
「あ、すみません。」と言いながら苦笑すると男もつられる様に
笑った。めずらしい「コイン」のネックレスが男の素性をわからなく
させていた。「お茶でも飲みながら」と男が切り出す事を警戒しながら
俯くと足下の溝に潰れた宣伝用のゴム「風船」が落ちていた。
男は何時の間にか足早に去って行った。
「詐欺師」にも見捨てられた中年女の杞憂を、空気の抜けたゴム風船が
笑っているような気がした。
題を書き忘れました。次は「麦茶」「蛍光灯」「柴犬」
395エヴァっ子:03/06/12 00:52
詐欺師の女はコインを風船の糸にくくりつけていた。
此処はビルの屋上。遠くから見れば夜景と呼ばれるネオンは近すぎて、眩しい。
詐欺師の顔は逆光でよく見えないが、多分笑っているのだろう。
いつもそうだ、あいつは俺がこうやって追い詰める度に、にやにや笑って逃げてしまう。
「今日こそは逃さんぞ! 諦めて縄につけ!!」
警察手帳を開いてみせる。……こんなことする必要も無い程に、あいつとは追い駆けっこを繰り返してきたのだが。
「……今日こそ逃がさん、か。貴方も随分立派になったのね。私と初めて会った時は新人警官だったのに」
「そしてお前はその時既に、金持ちから金を巻き上げる義賊気取りの詐欺師だった!」
「……今日こそ本当に逃げられないみたいね。……でも私は捕まるくらいなら、死を選ぶわ」
詐欺師が手すりに身体の重みを預け、身体が傾く――そして……!!
「馬鹿野郎!!」
必死で走ったが、伸ばした手は間に合わない。
詐欺師の手が、風船を離す。詐欺師は地上へ、風船は大空へ。
アスファルトの大地にぶつかった詐欺師の身体は、弾け、赤い模様を創った。
「……馬鹿野郎……死ンじまうなんて……馬鹿野郎ぉ……!!」

『まだまだ青いわね』
突然、詐欺師の声がした。
声の元は、風船にくくりつけられたコイン。
『私の本体がコインにもした電子チップだって知らなかった? それじゃ、またね。バイバイ』

――時は2300年。罪と法の追い駆けっこは、未だ終わらない。



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先を越された……。しかもテクが衰えてる。
スレ汚しゴメン。
無人駅の古びたベンチに座りながら「さて、どうしたものか」と呆然と思案に暮れるうちに
とっぷりと日が落ちた。誰もいないホームの電柱の「蛍光灯」には、都会では見た事もないような
雑多な羽虫が必死に体当たりを繰り返している。
「そろそろ行かないと、どうにもならんぞ」と独り語ちて、やっと重い腰を上げた。
東京で就職の内定が1社も取れず、地方の中堅企業でやっと、拾って貰えたのだ。
これを逃したら後は無い。改札を出て面接時に渡されたメモを広げる。
「株式会社 柴犬」への御案内地図。
すると、足下にハアハアと湿った息遣いが聞こえた。黒い豆柴が僕の目を
覗き込むように見上げた。首に「道案内」と札をぶら下げている。
さすがに良く手入れをされている、利発な豆柴だ。無言で後を付いて行くと
会社はすぐそこだった。「どうもお待ちしていました。お疲れになったでしょう。」
と柔和な笑顔だが、目付きの鋭い人事課長が「麦茶」を奨めててくれた。
「黒柴くん、お疲れさま。奥でササミでも貰ってよ。」と如才なく先程の豆柴にも声を掛ける。
「いいっすよ。デンタボーンで」と豆柴は答えた。世界初の犬語音声翻訳機は、この田舎町の工場が独自に開発したものだ。
社長の柴犬への愛情が、世界を動かす発明にまで発展したのだった。

次は「雨」「コンビニ」「蚊」で。
397うり:03/06/12 17:19
「雨」「コンビニ」「蚊」
ぷーんと言う羽音で目覚めた。右頬にむず痒さを感じ、頬を叩いた。
掌を見詰める。どうやら逃げられたらしい。
うとうとしだした矢先、再び耳元で羽音が聞こえた。
鬱陶しさに思わず右手を振り上げた。
寝惚けていたせいか、少しばかり力を入れ過ぎた。頬がひりひりする。
明かりをつけ、部屋の中を見回す。蚊の姿はどこにも見当たらない。
寝入った隙を狙うつもりなのだろう。殺虫剤を部屋に撒いて、暫くコンビニで
時間をつぶす事にした。
漫画雑誌を立ち読みする。ぷーん。ぺしっ。ここにも蚊がいる。
雨の季節の到来とともに、蚊の数は増えるらしい。ぷーん。ぺしっ。
そろそろ部屋の殺虫剤が威力を発揮している頃だろう。
帰宅すると、部屋の静けさにほっとしてベットに潜り込んだ。しかし……。
ぷーん。ぺしっ。ぷううん。ぱしっ。ぷうーん。ばしっ。ぷうううん。びしっ。
眠れぬまま朝を迎え、会社に出掛ける準備をする。鏡を見て驚いた。
顔全体が紫色に腫れ上がっている。蚊を追い払う為に顔を叩き過ぎたようだ。
サッカーボールの様に腫れ上がった顔を見ながら、これなら蚊に刺された方が
まだましだったかも知れないと溜め息をついた。

次のお題は「かたつむり」「小切手」「洗濯機」でお願い致します。



高校時代、同じクラスだった坂田という男が突然、アパートにやってきた。
俺は昔から人付き合いは苦手で、勉強も部活もパッとしなかったが
坂田は勉強も出来たし、ユーモアもあり、俺とは生きる世界が違う人気者だった。
その坂田が、今さら10年もたって俺に何の用かと不思議に思ったが
奴は涼しい顔で上がり込み、手土産の白ワインを俺に押し付けた。
「いい住まいだね。君らしくて実に結構。独り暮らしにしちゃ広いな。」
「10年降りに、よく俺のアパートがわかったな。」
「実家の親父さんに聞いたよ、いや実にいいお父さんだ。親孝行してるか?ははは。」
坂田は持参のワインをほとんど一人で空けてしまうと、大事そうに「カタツムリの
養殖とグルメプロジェクト」と書いてある巨大なファイルをテーブルに広げた。
「君は実に運がいい。君の部屋はカタツムリの養殖のためにあるような部屋だ」
「ベットの下や箪笥の上で簡単に、育てられる。まさに金の卵だよ。平成のダイヤだ。」
坂田の底しれない説得力と鮮やかな弁説にもう少しで、100匹単位のカタツムリを買う事を
承諾しそうになったが、仕事で外泊が多い事を理由に何とか断わることができた。
すると、別のファイルがテーブルの上に登場した。「洗濯機の有効利用とイカの一夜干しプロジェクト」
今、俺の部屋の洗濯機では生イカ100パイの脱水が終わろうとしている。
イカは連日、青森の漁港から代金引替えで空輸されてくるが、坂田からの小切手は、まだ届かない。

次は「手帳」「鏡」「川」で宜しくお願いします。 
399名無し物書き@推敲中?:03/06/12 21:29
「手帳」「鏡」「川」

川沿いの道を歩いていると、一冊の手帳が落ちていた。
俺はそれを拾い、川の柵に寄りかかってそれを開いた。
連作先を探しながらパラパラとページをめくる。何てことの無い普通の手帳だ。
そのとき強い風が吹き、手帳を落としてしまった。
だが、手帳は水面に飛び込んだかと思うと、今度は空中に飛び出して来た。
手帳に手を伸ばした俺は、その拍子に身を乗り出しすぎ、足を柵に掛けて宙吊りになってしまった。
すぐ下に、鏡のような川面があった。
体を支える為に、手帳を持った腕を動かした時、再び中身が見えた。
文字が全て逆さまになっている。
驚いてバランスを崩した俺の体は、次の瞬間川の中に飛び込んでいた。

次は「銃」「敵」「味噌汁」でお願いします。
400こくら:03/06/12 22:49
「銃」で打ち抜く「敵」の数を数えてたら眠くなってきて
自分の頭打ち抜いたら「味噌汁」がアスファルト一杯に...
おかわりできないこの夕飯。
早くしないと夕暮れ時に間に合わない晩ご飯。
いつもズレてるなぁ。と呟いて周り見て、気付いて、
それで次のお題を思案。
http://members.tripod.co.jp/gunjikouan/

次は「昼寝」「余り」「機械」でお願いします。
日比谷公園のベンチでぼんやりと噴水を眺めていたらお腹がグルグルキューと、情けない音を出した。
思いきって両足もベンチに乗せて、横になって昼寝の体勢にはいると
頭の芯がぐるぐると回転しているような目眩を感じて思わず、眼を瞑った。
「なあんだ、行き倒れか?」いきなり顔の真上から声がして驚いて眼を開けると
日焼けして真っ黒い顔をした、くたびれたジャンパー姿のおじさんだった。
「飯喰ってないんだったら、余りモンだけど食うかい?」とボロボロのズボンの
ポケットから小さな缶詰めを出して、私の手に握らせてくれた。
「すいません。ありがとうございます。もう動けないなっちゃって。」
おじさんはニコニコ頷きながら「最近この辺も、行き倒れが多いのよ。
あんた2034年バージョンかい?」「いえ、2040年の東京製です。」
「じゃあ、エリートタイプだ。もうガタきたって事もないだろうよ。」
「でも、エコロジ−モデルには適いませんから廃盤です。」と爪に標準装備された
グラインダーで缶詰めを開けながらエヘヘと、私はおじさんに笑いかけた。
おじさんは恐らく2003年の試作型だろう。このタイプは人情ソフトが入っている。
2003年、人ゲノム計画の遺伝子解析結果は、正に革命だった。
その後の人間に、最初から設計可能な、機械の身体を選ばせたのだから。

次は「布団」「カレンダー」「魚」でお願い致します。



「布団」「カレンダー」「魚」

夏。
彼のどんよりとした思いとは裏腹に、空は抜けるような快晴であった。
暴力的なまでに強い西日がアスファルトの地面を焼き、ゆらゆらと陽炎を立ち昇らせている。
外界とは隔絶されているはずの室内にまで熱気が侵食されてくるような錯覚に襲われたのか、
汗ばんだ布団の上からけだるげに伸びた手がガラス戸にかかっていた厚手のカーテンを乱暴に閉め切った。
リイイン!
乱暴に叩かれた目覚まし時計が一つ悲鳴を上げて跳ね飛んだ先、
視線を移すとそこではおせっかいな姉がカレンダーにつけた赤い丸が無言のままに彼を脅迫している。
-----どうした、無為に時間を過ごしている場合か?お前には時間がないんだぞ。
-----時間の使い方は人間様が決める事だ、お前のような無機物にどうこう言われる筋合いはない。
この数年で自分は変わった、と思う。それも、すこぶる悪い向きで。
最初の一年はそれなりに自分を信じていたのだ、やれば出来るのだと。目の前に詰まれた問題は、時が来れば何とかなるのだと。
だが結局、そんなものは所詮希望的観測でしかなく、現実に少しでも適合するものではなかった。
自分など、信頼するに値する人間ではなかったのだ。何より、今この現状を見れば明らかではないか。
日光を遮断されて暗くなった部屋には、彼の後ろめたい安息と同時にどうしようもなく退廃的な空気が立ち込めている。
放り出されたコップにうっすらと映る自らの顔には鼻も口もなく、ただ魚の死んだような目が二つ、
命のないガラス玉のようにはめ込まれていた。

次、「悲しみ」「蒼」「星座」でよろしくお願いします。
403悲しみ 蒼 星座:03/06/13 02:53
 地方紙のローカル欄に記事が載った。市の教育委員会が開催した、
小学生絵画コンクールの結果発表だった。
 優等賞は、4年生の描いた「ぼくの星座」という絵だった。宵闇と呼ぶ
にはいささか蒼に過ぎる天一面に、ちりばめられた星々が輝いていた。
 星々の連なりが、少年の父母の顔となり、微笑んでいた。
 少年は、なぜ天に父母を見たのだろうか。ふと私は、遠く世を身罷った
父母を慕って天にその面影を求める少年の姿を思い、言い知れない
悲しみを感じた。
 私は新聞を傍らに置き、絵筆を取ってカンバスをイーゼルに立てかけた。
筆の穂先を鮮やかな紺に浸した私は、それをカンバス一面に塗りこみ始めた。
 蒼と白の絵筆を洗いに収めた私は、完成した絵を手に取った。
 宵闇と呼ぶにはいささか蒼に過ぎる天一面に、散らばる星々。
 父母の間で、まだ見ぬ少年が微笑みを浮かべていた。

 次のお題は「徹夜」「気合」「万年筆」で。
404名無し物書き@推敲中?:03/06/13 04:04
「徹夜」「気合」「万年筆」
達也に残された時間はもうわずかだった。
締め切りはとっくに過ぎて、二週間待ってもらった上、それで尚完成しなかった。
逃げに逃げながら時間を作り、さらに二週間費やして、やっぱり完成しなかった。
そうなると最後は缶詰である。そこで三日間の徹夜を強制された。
にも関わらず、後一週間の猶予だと宣告された。

まだ一ヶ月ぐらい伸ばせそうだなと考えながら、達也は机に向かっている。
手には愛用の万年筆が握られていたが、くるくると手の中や外を回るだけで、本来の役目を果たしていない。
気合が入っていないからだ、と昔世話になった教師が、相談に行った時に言っていた。
昔の熱血ぶりを思い返しながら、まだまだ現役のようで教え子もさぞ大変でしょう、と返したのを覚えている。

しばらくの回想を終え、達也は久しぶりに古い万年筆が原稿の上を走っているのを見た。
気合が足りん、という一文もあったが、それは達也の目には写らなかったようである。

次のお題「蛍光灯」「ゼンマイ」「大地」で。
 「蛍光灯」「ゼンマイ」「大地」

蛍光灯の底光に照らされる机の上。
様々な用紙やファイル、書籍がうずたかく堆積し、
なめらかな白磁のコップが不健康な光を照り返しながらペンの束を支えている。
すすけて色の褪せた一枚の世界地図。
質が悪くそこかしこでかすれ、滲み、褪色している印刷は、とても程度の高いものでない。
古めかしく虫が食って日焼けした紙が年月の重さを無言の内にたたえている。

停止した大地と時がそこには秘められていた。
日々前進する人の歩みとは関係のない、無責任にうちやられた世界がそこにあった。

明日の朝、僕の旅は始まる。
僕の冒険はこの広大なる一枚から始まるのだ。
今は確かに窮屈な机の上で端を折りながら広げられているこの一枚の古い世界だ。
しかし、僕は、明日その上に突き立つ一個のゼンマイが全てを変えると信じたい。
今の僕には、その一個のゼンマイがどれだけ世界に命を吹き込み得るか分からない。
だが僕は再び信じる。何よりも古いこの地図と、何よりも新しいこのゼンマイがあれば、回せない地球儀、刻めない時計はないのだ。

初投稿。至らないところがあったらスマソm(_ _)m
次のお題「梅雨」「あじさい」「濡れみぐし」で。
週末を利用してあじさい寺に行ってみた。鬱蒼とした杉の大木に囲まれた湿った
細い坂道の両脇には大輪の見事なあじさいが、色とりどりに咲き誇っていた。
花に見とれて歩くうちに、何時の間にか小さな黒い墓石の前にいた。その墓石はとても
古いものらしく、横に木の立て札が無ければ見逃してしまうほど磨り減っていた。
「御髪供養」と書いてある。説明は何もない。「御髪?」と不思議に思うが
女性の髪には霊力があるという迷信を思い出して、一応手を合わせて元の
道に引き返そうとした。その時、ふと、視線を感じて振り向くと一重の白いあじさいが
梅雨の雨に打たれて、ゆらゆらと首を揺らしていた。「濡れみぐし」
突然、耳なれない言葉が、脳裏に浮かんだ。しっとりと濡れた黒い墓石と白いあじさいが
私に艶やかな黒髪の女性を連想させた。私はその白いあじさいを手折ると、帰途に着いた。
持ち帰ったあじさいを早速花瓶に挿して、バスルームに置いてみると何か物足りない
ような気がした。私はしばらく考え込んでから、剃刀を棚から取り出すと
静かに手首に滑らした。赤い血飛沫が白いあじさいに生き生きとした彩りを与えた。
バスルームの鏡には、白装束の黒髪の女が手招きする姿が映っていた。
緞帳が降りるように、私の視界は暗くなった。

次は「桃」「縁側」「かわうそ」で宜しくお願い致します。

「あら、杜若が・・・。どなたかしらね」
 母と久しぶりに祖母の墓に参った。母が掃除を始めながらきれいねえと呟く。
石に生した苔に映える紫の花に、私は一つの記憶を呼び覚まされた。
 祖母の家に泊まりに来たときのことだったろう。剥いてもらったばかりの
冷たい水蜜桃を手に、縁側に座る幼き日の私。母がいれば行儀が
悪いと叱られるところだが、足をぶらつかせながらかぶりついた。
と、私の目の前に茶色い生き物が立った。私は食べかけの桃を差し出して
みたのだったと思う。その生き物は一瞬こちらを見て、走り去った。
「かわうそさんは桃は食べないだろ」
 そう言って笑った祖母は、鰯などを買うときは一匹余分に買って、
庭先に置いておくのだと言った。
 この花を置いてくれたのがあの時の生き物なのか、それとも私の知らない
近しい誰かなのか、本当のところはわからない。
 私は何故か熱くなった目頭を隠すように、静かに手を合わせた。

次は「クーラー」「貝殻」「線香花火」でお願いします。
築40年のアパートの2階に引っ越してきて一番びっくりしたのは
屋根の上に置いてあるクーラーの外機が、ガッガッガーッとすごい音出すところかな。
あの振動ならボルトなんかそのうち振り切って、自分で屋根のうえ歩きだしそうだよ。

でも古い砂壁はいいね。耳をつけるとヒンヤリするし。あれ本物の海の砂なんでしょ?
すごいよね。貝殻なんかも混じってるんだろうね。最近そういうの「癒し」の効果が
あるとかよくテレビでいうでしょ。だからかな。クーラーの外機が毎晩ドカドカやってても
意外と、気にならないでよく眠れるし。

でもガス台なんかも古くてさ、マッチで点火しなきゃ火がつかないんだ。
だからマッチ擦るのうまくなったよ。口にくわえてでシュバッと擦ったりしてね。
もう花火師みたいだよ。え、線香花火買ってきてくれたんだ。ありがとう。
物干場に出てやろうか。行ってて、マッチと水もってくから。
  
あーあ。そうだった。物干場の床が腐って抜けてたこと、話すの忘れてた。
ねえ、どこまで落ちた?暗くて見えないから、マッチ落とすね。火つけてみてよ。
あ、花火につけてる。もしかて頭打った?
ねえ、上から水かけるから、もう一度マッチ擦ってみてよ。

次は「湿布」「買物」「朝」でおねがいします。




でもあんまり気にならないのは、



 

409408:03/06/13 15:29
スレ汚し申し訳ありません。最後の一行、消し忘れました。
410gr ◆iicafiaxus :03/06/13 21:30
どうした? うんうん、あーこれは、かるい打撲だね。
大丈夫、医者に行くほどの怪我じゃ無い。
ちょっと湿布でも当てて一晩おとなしくしてれば、朝までには治るよ。
もし不安なら、このガードルをはめておけば、なおいいね。
信じられないかもしれないけど、痛みが嘘みたいに楽になるよ。
一本二千円だけど、それを思えば、そんなに高い買物じゃないだろ。
まあどっちにしても、心配すること無いって。
明日一日くらいは休んだほうがいいけど、日曜の試合には何の影響も
残さないで済むよ。うん良かった。

ほら、これでOK。今日はもう上がって、後半は見学してなさい。


#小説ばかりが三語じゃないぜ。お題は継続で。
411湿布 買物 朝:03/06/13 22:29
「なぜ乾布摩擦があって、湿布摩擦はないのだろう」
 朝もはよから、馬鹿炸裂。白井は眩暈を覚えた。
 日曜の朝八時。チャイムが鳴ったのでドアを開けたら、びたびたに
塗れた手ぬぐい片手の南郷が、上半身裸で仁王立ちしていた。
「ゆうべ手ぬぐいが破れてな。買物に出た先で思い当たったんだ。
どうだ白井、お前もやってみんか?」
「丁っ重に、お断りする」
「そう言うな、ホレ」
 ぐいと手ぬぐいを突き出す南郷。ぼたぼたと流れ落ちる水流が白井の
つま先をしとどに濡らした。
 白井の中で、何かが切れた。

「そんなにやりたきゃテメェ独りでやれやぁぁぁぁ!!」
「づっぐあぢゃだだだだだぁ!!」

「……正直、スマン……かっ……た……」
「ふんっ!」

 次のお題は「ライム」「パンチ」「乾燥」で。
412「湿布」「買物」「朝」:03/06/13 22:44
休日の朝。気持ちよく自然に目が覚めて、私のための一日が始まる。カーテンをあけたらいいお天気で、さらに上機嫌。
洗濯機をまわしてふとんをほして、窓を開けてそうじをする。
部屋がきれいになったら、次は私。アロマオイルをたらしたお風呂に入ってじんわりリラックス。
お肌をていねいに整えて、雑誌で見たメイクをためしてみたら、ばっちり成功。髪もしっかりセットして、買ったばかりのワンピースを着て鏡を見ると、会社に行く朝とはまるで違った私がいる。
ほんとは昨日ちょっとひねっちゃった手首が痛いけど、ここまできめたら湿布はがまん。かわりにお気に入りのコロンをふったら完了!
はりきってお買物に行こう。だって来週は彼の誕生日。プレゼントは何がいいかな?ケーキはどこで予約しよう?目をつけていたカフェでランチを食べながら、1人でゆっくり考えよう。
今日はいいアイデアを思いつきそうな気がする。だってとても素敵な休日だから。


次は「貯金箱」「ビデオ」「本屋」でお願いします。
413412:03/06/13 22:49
すみません。「ライム」「パンチ」「乾燥」でお願いします。
414ルゥ ◆1twshhDf4c :03/06/13 23:36
「ライム」「パンチ」「乾燥」

ひどく甘ったるいコーヒーだった。
折角、乾燥してざらついていた舌を潤そうと、一杯千円もする高いコーヒーを頼んでやったのに、これでは全く意味がない。
これからこの店ではコーヒーを絶対頼むまい、そう固く誓った。
俺は先程、駅の売店で買った夕刊を開きながら、窓に映る彼女の顔をそっと盗み見た。
“見目麗し”というのはこういう女性の事を指すのだろう。
つやつやと光る真っ黒な長い髪は、上のほうで丁寧に結われており、ライム色のワンピースからは、白く形のよいうなじが露になっている。
出張先でふらりと立ち寄った喫茶店。
コーヒーは最悪だったが、思わぬ収穫があったと、心の中で一人ほくそえむ。
彼女は少し憂いの表情を浮かべ、確かパンチェッタとか言うイタリア産の生ハムが乗ったサラダを食べていた。
声をかけようかな、と思ったとき、入り口の方から一人の男が息を切らしながら、店に駆け込んできた。
こともあろうに、彼女に前に腰を下ろす。
「ごめん、遅くなっちゃった」
「本当に遅かったわよ、二時間も待たせるなんて……」
隣のテーブルから聞こえてくる、焦る男と少し怒気を含んだ彼女の声。
一足遅かった。
もう少し早く彼女を誘拐していれば、また<人形>のコレクションが増えたのに……。
俺は肩を落としながら、まずいコーヒーを飲まされた上、最悪な思い出を刻まれたこの喫茶店を後にした。

☆一ヶ月ぶりくらいの気が……。
 久々に書いたら、文章が破綻してて落ち込みました。
 もともとひどい文章ですが。

 次は「ギンヤンマ」「東風」「大学祭」でお願いします。
415初トライ:03/06/14 02:24
「ギンヤンマ」「東風」「大学祭」

蒸し暑いキャビンから、這うようにしてデッキへのステップを昇る。
マストの先っぽに、黄色い満月が引っかかっているのが見える。
夕方頃から吹いていた【東風】はぴたりと止んでいて、MOJO二世号の真っ白なセールは
出産後の妊婦の腹のように、だらしなく張りを失ってしまっている。

風の無いヨットなんてものは、まるで・・・・
うまい喩えを見つけられぬままティラーを弄んでいると、視界の端で微かに水面が動いたような気がした。
月明かりによって、ねっとりと輝く水面に目を凝らすと、それは、トンボの産卵によるミクロのさざなみだった。
トンボは---こいつはたしか【ギンヤンマ】だ---果たして夜間に卵を産んだりするものなのだろうか?

そんなことより、トンボが塩辛い海に産卵することのほうを不思議がれ・・・・と?
ちょっと待ってほしい。右舷2時の方向には、我が学び舎のシンボルである時計台、
10時の方向には、まぬけな講堂のシルエットがぼんやりと見えている。
ここは、海などではなく、大学の敷地内なのである。

【大学祭】にかこつけて、部員2人の我がヨット部は、プールにMOJO二世号を浮かべた。
もちろん表向きは、明日から始まる「プールで楽しいセーリング講座」のためだ。
しかし、真の目的は別にある。デッキで、キャビンで、何度もひとつになる、2人だけのナイトクルーズ!

ようやく夏美が、キャビンから顔を出した。月明かりに、ほつれ髪と柔らかな笑顔が美しい。
オレは水面を指差し、声をひそめ、いたずらっぽくこう言った。

「ほら、あのトンボ。さっきのオレみたいじゃない?」

彼女が笑い、ヨットがのんびり揺れた。

(おしまい)

次は 「恍惚」「ネーミング」「切り取り線」で。
416初トライ:03/06/14 02:28
しまった・・・

 トンボ → おつなぎのトンボ

 「さっきのオレみたいじゃない?」 → 「さっきのオレたちみたいじゃない?」

・・・だったかな。

(それはさておき)

次は 「恍惚」「ネーミング」「切り取り線」で。
417無料動画直リン:03/06/14 02:33
418まあく とうえいん:03/06/14 12:34
近年、日本人の平均身長は伸びつづけている。
「日本人の食習慣が変わったせいだ」というが、身長が伸びたところで、誰も困った様子はないみたいだ。ただ、僕の場合は事情が違っていた。

「大きくなったな・・・ベイビー・・・」
僕の息子は3歳。どんどん体が大きくなっていった。限度を超えて。
息子の身長はいまや、80メートル。(ちなみに僕は172cm)はっきりいって手におえないヤンチャボウズだ。
この前は、道路の中央線(破線のもの)を「パパ、【切り取り線】だおー!!♪」といって、
国道を二つに割った。息子の凄まじき成長に少しウルっときた。
「もう腕相撲勝てないな・・・」どの父親もぶち当たるであろう壁に早くも当たってしまった気がした。

息子と海に行った。
普通の子供は魚をみると狂気乱舞して捕まえようとするだろう。僕の息子は一味ちがう。
捕鯨をしてしまった。どっかの組織に抗議されそうだが、鯨を捕まえた息子の表情は【恍惚】としていた。
そんな息子を見て、僕も恍惚としていた。「将来はオリンピック選手だね♪」誇らしい息子だ。

息子と鎌倉観光に行った。息子は体が大きいだけじゃないと思えた一日だった。
「パパ、ありんこおばちゃんだー!」
鎌倉の大仏を見て、そう言える息子の【ネーミングセンス】には非凡なものを感じた。
「大仏を小さいと言える・・悟りをひらいた高僧にも劣らない・・」有意義な一日だった。

僕の息子は天才だ。きっと歴史に名を残す人になるだろう。僕は偉人の父としてまた世界に知られるだろう。
「息子よ。立派になるんだぞ」・・・・・・こんな僕は親バカですか?

次回のお題「現代社会」「アイスティー」「文庫本」





419名無し物書き@推敲中?:03/06/14 12:36
それが川崎病と呼ばれだしたのはいつのことだったか。
若干ネーミングセンスには疑問を抱かないではないが、とにかく
彼らの行動はもはや病的の域にすら達し始めていた。

球場から、電気屋からかき集めてきた山ほどのマークシートに
「先発、中日20(川崎憲次郎)」
その名前だけを書きつづける青年。

恍惚の表情さえ見せて一枚一枚、すごいスピードで塗りつづける。
切り取り線をちぎる。向きをそろえて積み上げる。
目が痛くなりそうなほどの応募葉書の山。

オールスターが終わっても… 彼らはマークをやめない…
忘れない、井川に4票差で敗けた2003年オールスターを…
もう二度と一軍のマウンドを踏まなかった沢村賞投手を…。

#亀投稿スマソ。お題は「現代社会」他で。

#川崎祭は野球板、祭り板、突発オフ板、ラウンジ等にスレ立ってます。
#(祭り板)http://live5.2ch.net/test/read.cgi/festival/1055511826/
「ねぇ。近頃の若い子ってどうしてこうなのかしら。」
かあさんはまるで僕へのあてつけのようにつぶやく。
だけど僕は知っている。かあさんの、かあさんの、
そのまたかあさんも、同じような言葉を投げかけていたのを。
いつの日か、僕が大人になったらきっと同じ言葉を投げかけるのだろう。
[現代社会]の輪。この星が存在する限り、いつまでも続いていく。


スマソ、お題が一つだったので短く。
次は「名無し」「爆音」「木の根」で。


現在有効なお題は、「現代社会」「アイスティー」「文庫本」です。
423「現代社会」「アイスティー」「文庫本」:03/06/14 21:14
「ご注文は何になさいますか?」
「じゃあ、アイスティーで」
「かしこまりました。少々お待ちください」
僕は人を待っていた。相手は、顔も名前も分からない、ネットで知り合った友達。最初はそういう人には会わないつもりでいたのだが、たまたま住んでいるところが同じと分かって、
話が進むうちに「じゃあ会おうか」ということになってしまったのだ。
僕は現代社会の教科書を取り出した。実は明日テストなのだ。数学とか英語とかと違って、現代社会はどこでもできる。待ち時間の暇つぶし程度にはなるだろうと思う。
「お待たせいたしました」
僕の前に、アイスティーが置かれる。ガムシロップを入れてかき混ぜると、コップがカランカランと音を立てた。アイスティーを眺めていたら、なんだか勉強する気が失せてきてしまった。
僕は店内の人間観察をすることにした。
見える範囲では、僕のほかに5人ほど人がいた。女子高生が3人と、サラリーマン風の男の人が1人。それから、
大学生らしい若い女の人だ。
長いストレートヘアのその女の人に、僕は見とれてしまった。彼女は文庫本のようなものを読んでいる。いかにも知的な雰囲気をかもし出していて、あんな人が僕の彼女だったらいいのにと思った。
彼女が顔を上げたので、僕と目が合ってしまった。そして、彼女は立ち上がって僕のほうへ歩いてくる。
もしかして、彼女が僕の待ち人?
まさかという思いと、そうならいいのにという思いが僕の中で交じり合う。脈拍が加速する。顔が熱い。僕は急いで顔を伏せてアイスティーを飲む振りをした。
「あのう、もしかして、『信長』さんですか?」
声をかけられて顔を上げると、そこにはさっきの女子大生ではなく、サラリーマン風の男の人がいた。彼女はというと、僕のわきを颯爽と通り過ぎてゆく。レジを済ませると出て行ってしまった。
やっぱりうまい話なんてあるわけないんだ。
「あのう、もしもし?」
「あ、はい。僕が『信長』です」
まあ、しょうがない。

次は「雨」「薔薇」「工場」でお願いします。
424雨 薔薇 工場:03/06/14 23:51
 工場に薔薇の咲き誇る区画がある。
 薔薇に込められた想いは鎮魂。

 昔、少女がそこで死んだ。激しく雨の降りそぼつ6月、
スリップしたトラックの下敷きになったのだ。荷台から
わずかにのぞく右手には、父の誕生日を祝う薔薇の
花束がしっかと握られていた。

 少女への謝罪を刻んだ碑を、薔薇が包む。
 季節はずれにも、梅雨時に薔薇は紅く紅く咲き誇るのだ。

 次のお題は「夢」「絶望」「森羅万象」で。
425夢 絶望 森羅万象:03/06/15 01:24
北極星の外れに「森羅万象」という名の王様が住んでいました。
王様は七色の馬に乗ってこの世の中を見回り
人間にいろいろな物を授けてくれました。
王様は森や花や空気や魚や雨や日の光をまきちらして
人間の様子を北極星から見ていましたが人間は全く王様に感謝しませんでした。

怒った王様は二人のお姫さまに言いました。
「どちらか一人が人間と暮らすように」と。
「絶望」という名お姫さまが、星の城から人間の世界に行き
いっしょに暮らしました。辛い事ばかりの世界になりました。
人間は泣きながら王様にお詫びを言いました。
王様は「夢」という名のお姫さまも人間のもとに行かせました。
楽しい事も半分おこる世界になりました。

今でも人間は「絶望」と「夢」と暮らしていますが
「夢」のお姫さまが人間の世界に行った時人間が眠っていたため
「夢」は眠っている時に、「絶望」は起きている時に見えるのでした。

次は「牛乳」「プリンター」「シベリアンハスキー」でお願いします。




長い間地下室に隠り、ついに僕は「偽札印刷用プリンター」を完成させた。
僕は各国の秘密組織にこのプリンターを販売してもいいと、メールを送った。
するとR公国のハスキーと名乗る人物から、是非買いたいと返事が来た。
僕は慎重に交渉を繰り返し、とうとう希望額で商談を成立させた。

翌日、ハスキーは僕の地下の研究室に自家用機でやってきた。
黒い短髪と青い瞳がシベリアンハスキーを連想させる巨大な若い男だった。
彼は持参したR公国の紙幣を見せて「同じ物が印刷できますか?」と
とても上手な日本語で尋ねた。「あなたが居眠りしている間にね」と僕が
笑ってプリンターを作動させると、すぐに偽札が1000枚刷り上がった。
ハスキーは別の国の紙幣を次々に取り出しては同じ事を言った。
何万枚も偽札が刷り上がると彼はやっと満足したようで、僕は彼に飲み物を
勧めた。「冷たい牛乳を」と言うので、僕も同じく牛乳で乾杯をした。

それから何が起こったのかは覚えていない。目が覚めるとハスキーも
プリンターも消えて「代金は支払い済み」とだけ壁に書いてあった。
地下室には試し刷りした大量の偽札が散らばっていた。僕は呆然とした。
なぜなら、正確に偽札を切り離す技術は、僕には無いものだったからだ。

次は「腕時計」「銭湯」「交差点」で宜しくお願いします。
すみません。感想スレ第5巻がもう書けないのでこちらに、
感想6巻立てました。
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1055655894/l50
都会の交差点。人も多いし、車の方が弱者と思われる。
そこで私はひかれた。三メートルは吹っ飛んだ。
「正直生きてるとは、おもわんかった」
病院のベッドでの、最初の一言。不安そうな母親の手には
偽物のロレックスの腕時計があった。割れたガラスの奥の針は、
三時半を指している。窓の外は暗かった。
「一度でいいから、銭湯に行ってみたかった」
これが私の遺言だった。

継続でお願いします。
白い帽子の女の子は、広大なひまわり畑で迷ってしまった。
いくら背伸びをしても、ジャンプしてみても、ひまわりの高さにはかなわない。

「おーい、パパはこっちだぞー!」
「パパー、どっちー?」

女の子は声の方向がわからなくて、青い空を見上げるばかり。

「銭湯の煙突が見えるかー?」
「パパー、煙突なんか見えないよー」

ひまわりの間の小道を、半べその小学一年生が走る。
今年の春、入学式の日にパパと交わした約束は、「もう泣き虫はやめる」こと。

女の子は、別の小道との交差点で、ようやくパパと巡り会うことができた。

うれしいのと恥ずかしいのと怒っているのと、それから、
約束破りの涙を見られたくないという、ぜんぶの気持ちがいっしょくたになり、
女の子は顔をそむけて、パパの腕を意味も無く、ぐんぐんと引っ張る。
パパは、女の子に引っ張られるままに、笑いながら歩くしかなかった。

それでも、パパのいつもの腕時計・・・・女の子には、
その感触がとても頼もしく思えていた。


次のお題は「ボトル」「あじさい」「成熟」で。
 あじさい酒を造る。と言っても、やることは梅酒とほぼ同じだ。
 但しいくつか注意点もあるので、以下に述べてみる。
 まず、あじさいは青い花であること。赤いあじさいはpHが低いので、
焼酎がビネガーになる。事前に、あじさいの根元に水酸化ナトリウムを
1万倍に希釈して散布しておくといい。
 次に、あまり成熟したあじさいは使わないこと。えぐみが出るだけでなく、
茎にアルカロイドが溜まる。花の外縁がまだつぼみなくらいが丁度よい。
 最後に、あまり大きなボトルを使わないこと。あじさいのエキスはごく少
ない。普通に梅酒を漬け込むようなボトルでは大きすぎるのだ。経験から、
アイスタンブラーにタッパで蓋をするのが最適だと思う。ほかのボトルを使う
ときは、あじさいの花がぎゅうぎゅうに詰まっているくらいの感覚を目安に
してほしい。

 あじさい酒は梅酒のような鮮烈な香りはないが、ほのかに香る味わいが
たまらない。ゆったりと落ち着いた味わいを、ぜひ試してもらいたい。

 次のお題は「時短」「豊富」「暴露」で。
チムールに対する暗黒支配と経済的略奪が赤藏鉄道建設により一層強化されようとする中、共産党はチムールの豊富な鉱産物資源を略奪しようとする狂気じみた目的を暴露した。
共産党が言うところの"立ち遅れた"、"貧しい"、毎年莫大な"援助"を投資しているチムール(いわゆるチムール自治区)が瞬く間に"我国の重要な鉱産物基地として期待される"などと言われる。
政治評論家によれば、これは共産党がチムールの鉱産資源を略奪しようとしているサインであり、多くの人民を資源開発の名目でチムールに、順次短期労働者として派遣する陰謀であるという。

チムール(チムール自治区)全区ですでに100種以上の鉱産物、1,800ヶ所以上の鉱産地が発見されている。
埋蔵量のある鉱物36種が確認されており、うち17種が埋蔵量において全国ベスト9に入る。
鉱物資源の潜在的価値は6,504パピコに達し、重要な鉱産物基地になると期待される、とのこと。

チムール亡命政府の環境専門家はこれに対し危惧と関心を表している。専門家は、チムールが鉱物開発基地になりこれら資源を開発することは、脆弱なチムールの生態環境にとって取り返しのつかないダメージであると考えている。
すでに危機にさらされているチムールの生態環境がさらに大きな破壊に遭えば、チムールの人々の生存に極めて重大な危害をもたらすだけでなく、隣国にとっても、ひいては世界にとって埋め合わせの効かない損失となる。

次のお題は「ボルシチ」「ヘドロ」「繁み」で。
「ヘドロ」の神様が洗面所の排水口から私の家に現われた。
日本には八百万の神様がいるとはいうが「ヘドロ」の神様は知らなかった。
川や汚水の流れに乗って移動し、後はドロドロと沈んでいるらしいのだ。

なぜ私の所にやって来たかというと、私が顔を洗ったり、うがいをしたり
汚れた水を流す度に「働いてくれたお水さん、ありがとさん。」と言って
排水口に頭を下げる姿を中からみて「見所がある」と気に入ってくれたらしい。

「あのう、何かお供えなどさせて頂いた方が、よろしいでしょうか?」
「そうよのう。ボルシチがいいぞえ。」「ボルシチですか?」
「北の川でベロベロになった時に覚えた珍味じゃよ。ふふふ。頼むぞえ。」
私が「ボルシチ」の缶詰めを急いで買って来ると、ヘドロの神様は大喜びで
「泥沼の神様」や「やぶ蚊の居そうな繁みの神様」などを呼び出して宴会が始まった。

「もしかすると…」私は嫌な予感がしてヘドロの神様に聞いてみた。
「あのう、天井裏に棲み着くっていう、貧乏の神様は呼ばないですよね?」
「呼ばないから安心するがよい。しかしお前は…」と、夫の写真を指差すと
「疫病神の方なら、十年も前から一緒に棲んでいるぞ。」そう言うとデロデロと可笑しそうに笑った。

つぎは「口笛」「ヨーグルト」「ラジオ」でおねがいします。


433うり:03/06/16 10:35
「口笛」「ヨーグルト」「ラジオ」
目覚ましがわりのラジオがけたたましく喚き立てているが、
ぼんやりとした頭が目覚めを拒否する。
この寝床の居心地は格別だ。母親に抱かれた赤子の頃を思い出させる。
人肌の温もり。包まれる様な安心感。
いいつまでもここに居たい気分にさせる。
うおっ!何だ、一体どうしたんだ。いきなり部屋が揺れ出した。
地震か?突き上げる様な縦揺れでも、身体を弄ぶ様な横揺れでもない。
……うねり、そうだ、うねる様な揺れだ。
長いトンネルの中を身体が運ばれて行く感覚に捕らわれる。
ああ、俺は一体どこへ運ばれて行くんだ。
頼む、誰か助けてくれえええー。

ヒロシは微笑みを浮かべると短く口笛を吹いた。便秘気味の彼だが、ヨーグルトを食べると途端に便意を催すのだ。
立ち上がり、ズボンを引っ張り上げるとコックをひねった。
水流が、飛沫を上げる激しい渦を描く。
ヒロシは渦に飲み込まれる茶色い塊を一瞥すると、トイレのドアを勢い良く閉めた。

次のお題は「夢枕」「振袖」「遠洋漁業」でお願い致します。


434うり:03/06/16 11:11
あう。しまった!
433の本文五行目が「いいつまでも」になってる。
いいつまでも(誤)→いつまでも(正)
皆様、ごめんなさい。
「またあの女か…。はああ。もう勘弁してくれよ。」
私は今夜もげっそりと疲労した気分で目が覚める。時計を見るとまだ2時半だ。
もう3夜連続で、見知らぬ白装束の女が私の夢の中に現われ、只々悲しそうに
黙ってうつむくばかりなのだ。

死んだ人が夢枕に立ち、何か心残りを伝える事が有るとはいうが、私は彼女の
言いたい事がまったくわからず、もう毎晩怖いよりもイライラするばかりだ。
「もういい加減、はっきり何の用か教えてくれよ。お願いしますよ。」
そう呟いてから睡眠薬をあおると、また私は眠りにつく。

案の定、同じ女が夢に出て来た。しかし、何か様子が違う。髪を振り乱し
一生懸命、身ぶり手ぶりで何かを表わそうとしているのだ。
「えーっと、着物を脱いで?違う?あ、着て!うん、着物を着てだな?へ?」」
「あっ!わかった振袖を着て!波が高い?泳ぐ?じゃなくて船?」
「あ、船に乗って!釣り?網?遠くを見る?あ、遠洋漁業!!丸?あたり?」
「振袖を着て!遠洋漁業に出掛けて!私が死ぬ!え?二重丸?やったー!!」

女は全てを伝えたようで、嬉しそうに手をふって、夢の中から消えていった。

次は「コンパス」「画面」「冷凍車」でお願い致します。








「またあの女か…。はああ。もう勘弁してくれよ。」
私は今夜もげっそりと疲労した気分で目が覚める。時計を見るとまだ2時半だ。
もう3夜連続で、見知らぬ白装束の女が私の夢の中に現われ、只々悲しそうに
黙ってうつむくばかりなのだ。

死んだ人が夢枕に立ち、何か心残りを伝える事が有るとはいうが、私は彼女の
言いたい事がまったくわからず、もう毎晩怖いよりもイライラするばかりだ。
「もういい加減、はっきり何の用か教えてくれよ。お願いしますよ。」
そう呟いてから睡眠薬をあおると、また私は眠りにつく。

案の定、同じ女が夢に出て来た。しかし、何か様子が違う。髪を振り乱し
一生懸命、身ぶり手ぶりで何かを表わそうとしているのだ。
「えーっと、着物を脱いで?違う?あ、着て!うん、着物を着てだな?へ?」」
「あっ!わかった振袖を着て!波が高い?泳ぐ?じゃなくて船?」
「あ、船に乗って!釣り?網?遠くを見る?あ、遠洋漁業!!丸?あたり?」
「振袖を着て!遠洋漁業に出掛けて!私が死ぬ!え?二重丸?やったー!!」

女は全てを伝えたようで、嬉しそうに手をふって、夢の中から消えていった。

次は「コンパス」「画面」「冷凍車」でお願い致します。








437435=436:03/06/16 16:47
訳のわからない二重投稿、申し訳ありません(大泣き
心からおわび申し上げます。
 寒い。ひたすらに寒い。
 俺は防寒服の中でガタガタ震えながら、パソコンの画面を眺めつづけていた。
俺とパソコンを詰め込んだ冷凍車は所かまわず走りまくり、その度にパソコンの
画面に表示されたGPSコンパスがめまぐるしく動く。
『そっちの様子はどうだ?』
「機械は異常なし。俺は異常あり。寒くておしっこちびりそうだ」
『そっちは防寒服があるだけまだマシだ。こっちはもれ出た冷気が直撃して、今気
温がマイナス25度を割った』
 どっちもどっちか。俺はため息をついた。ついたため息がダイヤモンドダストに
なってディスプレイの煌光に輝き、俺を更に憂鬱にさせた。
 米軍が打ち上げた軍事衛星の性能を図るため、最も普及しているGPSでそれを
図る。そこまではいい。
 だが自前のコンピュータがヘボすぎるからといって、冷凍車まで持ち出して無理やり
クロックアップをはかるなど狂気の沙汰だ。
 俺は白い息を吐き吐き、心に決めた。科学省のパソコンにウィルスメール送ってやる。

 次のお題は「プラズマ」「漬物」「ブラウン管」で。
おい、お前ら、この漬け物でもぽりぽりやりながらちょっと聞いてくれよ。
テレビでさ、プラズマハイビジョンのCMしてることってあるだろ?
綺麗な姉ちゃんとか山とか花とか海の中とか、まぁそんな画像を見せて
「綺麗でしょ?写り良いでしょ?買ってくださいよ」ってアピールしてみせるわけだ。
でもさ、お前ら、よーく考えてみろよ。
俺は声を大にして言いたいぜ。
こっちはブラウン管テレビなのにプラズマハイビジョンのCMなんかされても意味ねぇんだよ!!


次のお題は「リモコン」「饅頭」「懐中時計」で。
440うり:03/06/17 12:36
「リモコン」「饅頭」「懐中電灯」
鬱蒼と木々が茂る南海の孤島、ズンドコ島。
外周五キロメートルばかりの小さな島だが、そこには悪の帝国が築かれていた。
「遂に完成だ」Drズンドコは、身長百五十センチに満たない小さな体を興奮で震わせる。
「このズンドコ饅頭で世界を征服するのだ」真っ白なスーツの裾をひるがえし高笑いする。
ズンドコは全身黒タイツの手下に饅頭を一つ渡した。
「さあ、食え!丸呑みにするのだ!」三頭身の大きな顔に穿たれた、小さな丸い目が輝く。
まるで、闇を照らす懐中電灯の様だ。
手下は恭しく頭を下げると饅頭を受け取った。
「この饅頭には、食べた人間を遠隔操作する為の超音波発生装置が仕込んであるのだ」
ズンドコは口許を緩め、リモコンを手にした。
「手始めに日本を征服する。群馬県の水上温泉の温泉饅頭に混ぜるのだ」
手下が饅頭を飲み込むや否や、ズンドコはリモコンのスイッチを入れた。
途端に手下はむせ込み、苦しそうに顔を赤らめ、両手で宙を掻く。
そして、事切れた。饅頭を喉に詰まらせたのだ。
ズンドコは悲しそうに手下の死体を見詰めると呟いた。
「やはり饅頭の丸呑みは無理だったか……」
ズンドコ饅頭の弱点は、饅頭を噛むと超音波発生装置が壊れる事だった。

次のお題は「化粧水」「天井」「カンガルー」でお願い致します。
     「化粧水」「天井」「カンガルー」 
布団から顔を覗かせるとカンガルーが立っていた。午前7時。まだ上手く脳が
活動していないようだ。僕はもう一度枕に顔を沈めた・・・
              
              ゆさゆさ

体が規則正しく揺れる。目を開けるとカンガルーの顔が唇に触れてしまい
そうな位置に置かれていた。
 ―恐怖―
ブラウン管の中に見るものとは違い、生のカンガルーはあまりに無機質な瞳
とデフォルメの効かない威圧感を備えていた。
慌ててベッドから飛び起き、身構える。
「貴様は何者だ!」
混乱しているためか、ヒーローに追い詰められた悪の親玉のような台詞が口を
ついた。しかも獣に向かって。
「お、俺の眠りを妨げるやつは決してゆるさ―」
        ドヴェシュ!
言い終わらないうちにカンガルーの凶悪な右ストレートが僕のテンプルを捕ら
えた。仰向けに倒れ天井を見上げる。
・・・待てよ。僕は以前にもこのパンチを喰らったことがある。僕が小学生の
ころ、母が事故にあう前の話だ。僕は洗面所のなかでかめはめ波をうつための
特訓をしていた。「はー、はー」と何度も叫ぶがなにもでてこない。そんなこと
を繰り返しているうちに突き出した両手が鏡の前に置かれた小瓶にあたった。
派手な音とともに床にぶちまけられる化粧水。ほぼ同時に洗面所の扉が開いた。
「あ、あのねぇおかーさん。ぼ、ぼくじゃないんだよ。い、いまねみどりいろ
 のだいまおーがまどからはいってきてね、それでね、それでね・・・」
眉間になにかがめり込む感触を覚えている。気がついたときには僕は白い病室の
ベッドに寝かされていた。
・・・あのときと同じ感覚。同じ痛み。
「・・・かあさん?」
震えた声で呟いた。首を縦に振るカンガルー。
「かあさん!」
衝動を押さえ込めず僕は彼女に抱きついた。その眼差しは慈愛に満ちたもの
へと変わっていた。
「そうか・・・僕が毎朝遅刻してばかりだから心配して様子を見に来てくれたんだね」
彼女はなにも答えなかった。抱き合ったままの姿勢が体のつくりに向かないのか
その足はいつまでもガクガクと揺れていた。

「空気」「エジプト」「マカロニグラタン」でお願いします
「ちょっとあんた、待ちなさいよ!」

放課後の調理室前、掃除を終えて出て行こうとしたところで
どこかで聞いた声で呼び止められた。
後ろを見ると、いつもちょっかいを出してくるあいつが、何やら顔を赤らめてこっちを見ている。
機嫌の波が激しいあいつは、まるで空気が周りに存在するかのように
当然のように俺を使役する。小さい頃からそうだが、高校になっても変わらない。

「はい、これ。1時間は待たないからね」

渡されたのは買い物のリストだろう。牛乳、バター、乾燥マカロニ・・・
ふむ、今日のメニューはマカロニグラタンとほうれん草のソテーか。
何故か知らないがこいつは俺に対してはいつも偉そうなのだ。
クレオパトラのように端正な顔立ちを自慢とするだけあって、
自然と身に付けている高貴な雰囲気が高じて高慢ちきに育ったのだろう。
さしずめエジプト王朝の奴隷、と言った所か。俺は。いつもながらに悲しくなる。

「何よ。不満でもあるのなら言って見なさいよ。聞くだけなら聞いてあげるわ。」

顔にでも出ていたのだろうか。女王様はこちらの態度にご不満のようだ。
でも、どうせ作った料理は味見と称してこちらにご馳走してくれている。
その時の嬉しそうな顔を考えると、何だか許せる気がして
今日も苦笑いを浮かべながら下働きをするのだ。
あいつは不器用な奴だから、こんな風にしか愛情表現が出来ない事くらい、
長い付き合いだから知っているというわけだ。

「目薬」「スピーカー」「紅しょうが」でお願いします。
 私はついに、常温超電導物質を発見した。

 昼食に牛丼をかっ込んでいる最中、目に汁がはねたのが
きっかけだった。目薬をさして残りを頬張ろうとしたとき、頬から
垂れた目薬が紅しょうがにかかり、チェレンコフ放射を始めたのだ。
 私はそこから研究を始め、カルボン=メチル誘導体が牛の脂肪繊維を
超伝導化していることを突き止めたのだ。
 ほら、この携帯電話をあげよう。スピーカーに超電導物質を組み込んだ
だけだが、電池の耐久性は倍になった。もちろん磁界が安定しているので
音質も最高だ。

 欠点は、牛丼くささを消すと超伝導効果が失われることだ。

 次のお題は「レタス」「吸殻」「帰れ」で。
445レタス 吸殻 帰れ:03/06/18 11:16
私は真っ暗な森の中をひたすら歩いている。
この森の中には月明かりさえも届かず川の水音も獣の気配も何も感じられない。
固い大木の根元に寄り掛かり私は煙草に火を付けた。静かに肺に吸い込み
深閑とした夜気の中に細く煙りを吐き出すと、蕩けるように身体が楽になる。
私はとても満足して醜い吸殻を冷たい地面に投げ捨てた。

するとその「吸殻」がひょっこりと起き上がり「お前は魔王の森に毒を捨てたな!」
「お前の一番大切な物を、よこせ!よこせ!」と大声で叫び出す。
私は恐怖のあまり逃走し、広大な土地に突き出た。そこは魔王の菜園である。

野菜に姿を変えられた人々が黙々と目を伏せてうずくまっている。
私は気が狂ったように恋人をさがすが「青いレタス」に変えられた彼女を必死に
引き抜こうとすると魔王のカラスが「帰れ! 帰れ!」と喚いて頭上を飛び回るのだ。
私の両目はその尖ったくちばしで突き壊され、脳を破壊する様な痛みに絶叫を上げる。

‥…びっしょりと寝汗をかいて私は寝台の上で目覚めた。
「いやあ…何とも恐ろしい催眠ですね。これが禁煙セラピーの入門編ですか?」
「ええ、皆さん発狂編までには必ず、禁煙に成功されていますよ」セラピストは微笑んだ。

次は「暴風」「底力」「遺伝」でお願い致します。
446暴風・底力・遺伝:03/06/18 23:54
台風接近中のニュースを聞いて、いても立ってもいられなくなった俺は、外へ飛び出した。
すでに風は強かったが、俺はもっと強烈な風が吹くのを期待していた。
‥俺は、暴風に当たるのが好きだ。
大木すら倒れるその風に俺は挑戦してみせる。耐えて耐えて耐えて耐えて耐える。
本当にばかばかしい限りだが、底力を自分で自覚するまたとない機会だ。
風に負けずに立っていられたら、俺は自分をほめてあげよう。たまには自尊心にひたるのもいいだろう。
小さいころ、俺が風に当たろうと雨の中飛び出すと、母さんによく怒られたものだ。でも父さんだけは理解してくれた。
父さんも昔よく風に当たっていたらしい。風好きは遺伝か。

 次は「壁」「人形」「植木鉢」で。
447名無し物書き@推敲中?:03/06/19 00:14
壁の中から、
奇妙な音がする。
深夜、どうもそれが気になって、
はっ、と起きてしまう。
どうも、寝不足だ。
あの壁の中に、何かが、居るのだろうか。
私はあの壁を、ツルハシで砕いて、ほじくってやりたい衝動にかられる。
ガゴ、ボゴッ、ゴスッ、ゴスッ。
はぁああっ、はぁあああっ。
私はひとりで想像しては、爪をかむ。
私は枕元の人形を眺める。
木彫りのピエロ、微妙にずれたペインティング。
その人形を、そっと撫でてみる。
ふぅ……
なんだか、落ちつく。
私は人形を胸に抱いて、また眠りにつく。
だが!人形は、私の心臓の音が気になって眠れないらしい。
私が眠りこけるころ、人形は、ぱっと立ちあがって、
ドリルで私の胸に穴をあけることを想像して、爪をかむようだ。

ガシャーーン、と、何かが割れた。
私も人形も、土に返った。
植木鉢の破片が、散らばっている。
私は、自分の背中から生えている根っこが
植木鉢を突き破ってしまったことを知った。
ピエロの人形は泥だらけだった。

次は 「タバコ」「地図」「パンティ」
448「タバコ」「地図」「パンティ」:03/06/19 00:58

床に落ちたパンティに脚を突っ込んで、くねくねとそれを履きながらなつきはタバコに火を
付けた。
「器用なもんだな」
とりょうたは声をかけた。なぜだか心底そう思ったのだ。
「そう?」
右手の人差し指と中指にタバコを挟み、左手の親指と人差し指でピンクのパンティを引っ
張り上げながらなつきは言った。
「ああ、それにセクシーだった。ああいう風に動く脚もいいもんだな」
「あなた、脚好きだもんね」
りょうたは言葉につまった。その困ったような不意をつかれたかのような顔をなつきは見逃
さなかった。
「わかるって。そこ舐める時だけ丁寧だもん」
りょうたは何も答えず、なつきから視線をはずした。
目覚まし時計、枕、人形はゲーセンでの戦利品。本棚、マンガ、官能小説、カフカ、それか
ら黒い背表紙・・・・・・はきっと地図帳だ。
どこかで猫が鳴いた。
にゃあ、と鳴いた。なつきに言わせると「にゃあ」ではなく「なん」だそうだが。
「・・・悪いか・・・?」
ぶっきらぼうに呟くようにりょうたは言った。
何も答えずになつきはりょうたにキスをした。

次は「スリッパ」「冷酒」「ビデオ」で。
風呂上りにバスローブを身を包み
スリッパを履きソファーに座る
コップに冷酒を注ぎ一杯飲む
「あ〜まさにブルジョアな感じがするな〜」

ピンポーン

インターホンが鳴った
「おっ来た来た」
がちゃ
「あのご
「チェンジ!」
バタンっ

ぺちぺちとスリッパの音をたてて部屋へ戻る
「待ってる間ビデオでも見るか」
がちゃ
     うぃーーーーん
内容はご想像におまかせします
しばらくたった

ピンポーン

がちゃ

「チェンジ」
バタンっ

夜と共にふけて行く
次は「刀」「ココア」「欠伸」で。
451うり:03/06/19 11:34
「刀」「ココア」「欠伸」
ジローは後ろからしかエッチをしない。
でも、彼の事が大好きだから気にしない。彼が何者だろうと気にしない。
大好きだから。
……あの日、大好きなあの人と相思相愛になるために恋の薬を作っていた。
「えーっと、次はココアの粉をぱらぱらと入れるのね」
ぐつぐつと煮立った鍋の中で、ヒキガエルが白い腹を見せている。
今日は中学三年の妹のピアノの発表会。パパとママの帰りは遅いはず。
『素敵な魔女になるために』数日前、偶然本屋で見つけた。
魔女の媚薬を相手に飲ませると相思相愛になる、らしい。
「仕上は刀で左手の薬指を切って血を入れる」彫刻刀でも刀よね、と思いながら
指に刃を当てた。呆気なく鍋に血が垂れる。
見た目は青汁みたいだけど、さすがは恋の薬。甘い香りが台所一杯に漂う。
薬の完成にほっとして欠伸が出た。ソファに寝転がると眠りに落ちた。
「朋子、起きなさい」パパの声で目が覚めた。
そうだ!薬は?!一目散に台所に駆けて行った。思わず自分の目を疑った。
シベリアンハスキーのジローが鍋に顔を突っ込んでいたのだ。

次のお題は「砂時計」「さなぎ」「携帯電話」でお願い致します。
452名無し物書き@推敲中?:03/06/19 20:50
バイトの帰りに駅前でぼーっと煙草をふかしていると足元に何か落ちているのに気づいた。
拾ってよく見てみるとそれはなにか昆虫のさなぎのようなもので白桃のような色をしている。
珍しい色のさなぎなので家まで持って帰ろう、と思い潰さないようにジーンズのポケットに入れた。
部屋でライトを当ててみたり砂時計を何度もひっくり返したりしてるうちにぱりん、と落花生の皮を割るような音がして、
中からちっちゃな2,3cmくらいの女の子が出てきた。
僕が「こんにちは」と言い指先で軽くつついてやるとくすぐったそうにして微笑んだ。
それからいろいろな食べものを与えたのだが、結局レタスとか大根の葉っぱみたいなものしか食べようとしなかった。
1週間くらいで彼女は僕の通う大学のキャンパスにいそうな女性に成長した。
その頃はさすがに裸にしとくのもまずいので僕のTシャツとトランクスを着せていた。
ある時僕の携帯電話を不思議そうに眺めているので友人の番号をプッシュし「ほら。」と彼女に渡した。
彼女は受話器から聞こえる友人の声にびっくりし、受話器を投げ捨ててぶるぶる震えた。
毎日僕と彼女はベッドで一緒に眠った。
彼女を抱きしめると肩の骨がやたら出っ張っているのに気づいたが、黙っていた。
その時彼女は僕の目を不思議そうにじいっと見つめていたが、すぐに寝息をたてはじめた。
翌日、講義が午前中までだったので帰りに古着屋に寄り、彼女に似合いそうな水玉のワンピースを買った。
はやく着せたくて走って帰ってきたのに彼女は何処にもいなかった。
窓が開け放たれていて部屋中に舞っていた燐粉が僕とワンピースを金色に染めた。

次のお題は「ホテル」「回転寿司」「お経」でお願いします。
453こくら:03/06/20 04:39
ホテルで待ってると言うと彼は早速、早足で駆け回った。
しかし、5分経過したが
彼は未だ公園内をずっと走っている。
触覚を失ってしまったので
このような動作になってしまっているのだろう。
彼の走りはあまり速くないので
グルグルとまるで回転寿司のようだ。
この頃から彼の体には壁にぶつかった痕で
お経のようなミミズの這ったような文字が浮き出ていた。

次のお題は「鼻」「自慢」「棒」でお願いします。

http://members.tripod.co.jp/gunjikouan/
454鼻、自慢 棒:03/06/20 07:30
 アパートに帰ってくると、ドアの前に彼女はいた。いつもはダランと垂れ下げている尻尾を棒のようにピンと立て、甘えるような泣き声を出しながら、ぼくの足にすり寄ってきた。
「ただいま」
 ぼくが中腰になると、彼女はボクの膝に前足を乗せ、顔を突き出してきた。ぼくも顔を寄せる。鼻と鼻が、そっと触れる。彼女の精一杯のお帰りなさいの挨拶だった。
 ぼくは自慢の彼女を抱き上げると、鍵を開け、部屋に入った。
455鼻、自慢 棒:03/06/20 07:31
すません、
お題は「犬」「サル」「友情」です
 愛憎がうまれる以前の感覚を言葉であらわそうとするなら、それは「友情」だ、と彼は答えるほかない。
 「友情」以外の感情を彼は知らないわけではない。ただ彼の場合「友情」の意味がすこしずれている。
 彼はじつに理性的である。いや、これもそうである以外の活計はなかったからなのだが。
 つまり、その「友情」ということへの認識こそが、彼の小さな世界でたったひとつ施行される「契約」であり
また「生活手段」なのである。冷たい鉄格子の住居から、赤い屋根床にタオルケット付きの暖かい木造住宅へ
引っ越してきてから早5年とあいなり、その間のほとんどを、彼は「友人」とすごした。
 付言すると、「友人」は自分をよぶ名前をくれた。「紀州犬」と「タロウ」という名だと記憶している。

 ともかく、彼には一般的な「好み」だとか「生理的嫌悪」という事柄からは無縁の存在だったのだ。
 少なくとも、本日昼下がり「友人」の『友達』が連れてきた、あの毛むくじゃらを見るまでは。
 そこで、低く押し殺した声で相手を威嚇してみようとこころみたのだ。存外大きな声だったようで、縁側の二人と
一匹がすぐこちらに気づく。「友人」はそれが彼の声だと確認したあと、すぐ彼のところへ行って、
「タロウ! おとなしくしてなよっていったでしょ?」
 ぴしゃり、といつもは優しくなでてくれる白く柔らかな手で彼の頭をはたかれた。ちょっとだけ悲しい気持ちになった。
「あぁ、まあ犬猿の仲とかいうもんね」
 と、縁側の向こうから落ちついた口調で『友達』。そのことばの意味はつかめなかった。一匹、つまり目当ての
毛むくじゃらだけがこちらをむいてシャーだとかキィだとか、甲高い音を喉からふるわせている。
 挑戦か? これは僕に対する挑戦だな? しかし思っていた以上に拍子抜けするなよなよとした声音だったので、
彼は興をそがれて、これ以上相手する気になれなかった。ひととおり優越感にひたった後、「友人」にいわれたとおり
尻尾をまるめて小屋の中で眠りはじめることにした。

#ちょっと長くなったな……ええとお次は「ブラフ」「ニコチン」「飲茶」で
チャイナタウンのカジノで捕まったイカサマ師は海に沈む前に
みんなこの中華料理店で、最期の食事をする習わしらしい。
一目見て、私以外の3人もそうとうやれるプロのイカサマ師だとわかった。
カジノのボスであるミスター陳は、チャイナタウンの中国人たちに
「大人、大人」と崇められている、懐の深い人物だ。ミスター陳は
「ここで貴方達にもう一度、イカサマポーカーしてもらいたいアルよ。
ワタシ、プロの技見るの好きね。一番のプロ、助ける。でも負けた
雑魚は海の底で、もっと大きな魚の腹に入るね、中国の掟アルよ」というと
「パンパン」と手を叩く。奥の厨房から熱々の湯気をあげた「飲茶」を乗せたワゴンが
続々と登場した。私の左隣のイスに縛り付けられた女がこっそり耳に囁く。
「ねえ、逃げ道を知ってるの、厨房の抜け道を教えるから縄をほどいてくれない?」
「縄をほどけるって?どうしてそう思うんだ?」ポーカーフェイスで答える。
「だって、あなた右の耳に小型ナイフを隠してるじゃない、ナイフの柄が見えてるわ」
私の右の耳朶には銀製の「ニコチンフィルター」が挟んである。思わぬ物が
「ブラフ(はったり)」に働いたが、しかし、ここでもブラフはブラフでしかないのだ。

次のお題は「地蔵」「居酒屋」「傷」でお願いします。
458地蔵 居酒屋 傷:03/06/20 15:47
あいつはいつもマルガリータを頼んでたな。そして俺は横で芋焼酎を飲んでた。

結婚するかどうかは分からなかった。いや、しなかっただろう。それでも俺の
横にあいつがいることは当たり前だった。
居酒屋には似つかわしくないマルガリータなんて洒落たものを飲みながら、
肴は俺と同じ塩辛。俺は絶対真似できなかった。
価値観の違い、そんなくだらないことのせいでよく喧嘩をした。罵り合い、
傷を付け合い、心が右に左に揺れた。
それでも決まりごとのようにここに来ては、あいつはマルガリータを、俺は
芋焼酎を頼んだ。肴には勿論塩辛を。口を利かなくても。目を見なくても。心
を通い合わせなくても。
そして俺たちは強くなった。心が地蔵のように動かなくなった。

「お客さん。注文は?」
「・・・・・マルガ・・・・・芋焼酎。それと塩辛。」

次は「吸い殻」 「押しピン」 「憂い」
 あいつが憎いか?あいつが妬ましいか?あいつが恐ろしいか?
 よろしい。ならば私が君の憂いを取り払ってあげよう。
 ここに、何の変哲もないタバコの吸い殻がある。その数、ざっと千本。
 これを、バケツいっぱいに張った水へとぶち込む。そして、練る。
 よく練り、時折引き上げては絞り、タバコのエキスを残らず水に溶かし出す。
 水が暗褐色に染まり切ったら、残骸と化したであろう吸い殻を残らず引き上げ、
水を煮沸する。水がきれいさっぱり蒸発するまで、煮て煮て煮出す。
 完全に水分が飛んだバケツの底には、黒くねっとりとした液体が滞留している。
それこそ君の救世主。
 押しピンの先でそれをひとかすり、椅子のクッションにちょいとはさみ。
 さあ、これであいつはいなくなる。

 さあ、どうする?解毒剤のない神秘の秘薬、君は使うか?使うのか?

 次のお題は「ロンリー」「虫」「選挙」で。
460ロンリー 虫 選挙:03/06/21 02:22
 目の前を流れるのは洪水のような人の波。駅前の広場は作り物の光で眩く染め上げられている。
 騒音など全く気にしない選挙カーは割れた声を響かせ、広場は会話をするにも不自由なほどに喧しい。
「全く、随分と無粋なもんだな……」
 古臭いアコースティックギター片手に広場に現れた青年が一人、騒々しい広場を見た感想を呟いた。
 青年と同じ目的で広場に立っていると思われる者達も、拡声器に対抗する気力は無いらしい。
その内の一人など、ガードレールに寄り掛かってだらけた姿で、街灯に寄って来た虫をぼんやりと見上げている。
「甘いな、お子様ども。弾き語りの意地って奴を見せてやろうぜ?」
 おどけた口調で独りごちると、青年はやおらギターの弦を爪弾かせた。
 景気づけに思いきり高いシャウトを解き放つと、広場を通り過ぎる人々の群れが、一様に青年に視線を向ける。
――俺を見ろ。その一瞬の為だけに、俺はここに来たのだから。
 ギター一本で広場に立つ変わり者の姿を一瞥して去っていく者達にいとおしげな眼差しを送り、青年は思う。
 今宵は孤独なお前達の為に、この俺様が唄ってやるよ。
「Yeah、ロンリー、サラリー、メランコリー……!」
 ……瞬間、青年が張り上げたシャウトに興味をそそられたらしく足を止めていた女子高生が一人、
思いっきり顔をしかめてから青年に背中を向けた。

次、 「みかん」 「浮き輪」 「もみじ」 でよろしく。
461「みかん」 「浮き輪」 「もみじ」 :03/06/21 09:59
暮れも押し迫ったある日。
俺は自宅の居間で息子とテレビを見ていた。
もうすぐ6歳になる息子の拓はけらけら笑いながら
好物のみかんを指と口の周りをオレンジ色に染めながら一生懸命食べている。
その様子を見ていると夏に行った茅ヶ崎でのことを思い出した。

海の濁った緑色の中でも拓はおおはしゃぎで泳いでいる。
泳ぐと言ってもまだ浮き輪にしがみついて足をばたばたさせるだけだが。
俺もひさびさに開放的な気分になりリラックスし、
サングラス越しに若い女のはちきれそうな胸のふくらみや
尻の曲線を目で追っているうちにうとうとしてしまった。

目が覚め、ふと海の方を見ると拓がいない。
浮き輪だけがぷかぷかと浮いている。
「!」俺は頭の中が真っ白になり人目もはばからず「拓!拓!」と叫んで周りを探し回った。
しばらくして俺が絶望のあまりへなへなとその場に座り込むと隣から「お父さん、どうしたの?」。
振り向くとそこには拓が同じ年頃の女の子と砂山を作っている。
どうやら少し離れた場所にいたのに俺が焦りのあまり見失ったらしい。
俺は凄まじい安心感のあとにかっとなり何か怒鳴ったあと拓の手を無理矢理引っ張ってそのまま帰ってきた。
拓がいつまでも愚図るので尻を思いきりひっぱたいてやった。
その後何日か風呂に入れてやるたびにもみじのような俺の手のあとが見え、
さすがに苦笑した。

目の前には拓がいる。みかんはもう4個目だ。あの夏の事などとっくに忘れてしまっているだろう。
462名無し物書き@推敲中?:03/06/21 10:01
お題は「火事」「柱」「幽霊」でおねがいします。
463みかん 浮き輪 もみじ:03/06/21 10:51
それが決まりだからだ。どこにでも「それ」があるし、皆割り切って、なるべく「これ」を見ない
ように、半ば諦め気味に生きている。人それぞれに。
 公園のベンチ。遊ぶ子供。吹く風。私。それもルール。地球の流れに沿う様に、そっともみ
じが落ちてくる。ーまた、あれかー私もそっとそう想う。秋の楓の木は、私を見下ろす様にた
くさんの赤い葉を体に着け、そこにある。これは、合図なのだ。しょうがない、私がやらないと
始まらない。私は、人が見ていないのを確認して深めのポケットから、少し季節外れの緑み
かんを取り出した。それにしても不思議だ。私の前は誰がやっていたのだろうか。いつもの
木を調べる、やはり今年もあった。穴だ。木に穴があった。私は、またあたりを見渡した。子
供は、地面に木の枝で絵を書いている。丸に浮き輪?昔、図鑑で見た木星のような絵だ。ま
た穴を見る。毎年のことだが、なんどやってもこれには慣れない。
穴に先ほどのみかんを押し込む。風が変わる。空気が歪む。葉が急にたくさん落ち始める。
子供が不思議そうに木を見上げる。私はすばやく、ベンチに戻る。冬。今年も、いまこの瞬間
から気温が下がり始める。しもやけも雪もクリスマスも皆、私のせいだ。
それが私の決まり。もう、諦めている。やらないとしょうがない。
私も軸の一人。何かの要素。皆、私と同じで秘密の決まりを持つ。
「空」 「タオル」 「辛子」
「火事」「柱」「幽霊」
「空」「タオル」「辛子」

柱の影からスルスルと白い手が伸びて来た。「やっぱり……出たか」
この借家を紹介してくれた不動産屋の親父は「ほんとにいいんですか?お客さん」
「自殺のあった物件ですよ?」と何度も念を押したけど、僕は幽霊とか心霊現象とか
その手の話は全然信じないし出たら出たで元は「人間」同士話せばわかると思っていた。
「よお、ここで自殺した人?」「……」「手だけじゃなくて顔みせてよ」
しかし白い手は柱の周りをゆらゆらと漂うばかりで返事はない。
「じゃあ、手が空いてるんだったら、柱に架かってるタオル取ってくれない?」
……ポン。なんとタオルが飛んで来た。おお!これは便利、言ってみるもんだ。
「おでんに辛子つけてくれる?」……ぬりぬり。白い手は器用に何でもやってくれる。
僕はすっかり味をしめて掃除、洗濯、ゴミ出し、その他面倒な事は白い手に全部やらせた。
白い手は段々赤切れや霜焼けで傷だらけになっていった。ある冬の日、僕がいつもの様に
「おい!空気が乾燥してるからストーブに薬缶のせろよ」と命令すると、手は動かない。
「なんだよ早くしろよ!」「……」突然、白い手はガタリとストーブを倒しカーテンに火が燃え移る。
「ばか!!火事になったらどうすんだよ!水!早くもってこい!」「……」
白い手は初めて口をきいた。「……死にたくなけりゃ、口ばっかりじゃなくて手も動かせよ。」

次は「繊維」「花」「豚」でお願いします。
465「繊維」「花」「豚」:03/06/21 20:24
「この豚!死ね!」俺は逆上してそう叫んだ。すぐにはっとしたがもう遅い。
綾は料理の手を止め、包丁を振りかざし襲いかかってきた。
俺はパニックになり近くに置いてあるバラの花を花瓶ごと投げつける。
綾の誕生日にせっかくプレゼントしたのに。自分自身の手でその美しさを終わらせるような事になるなんて、、、。
「綾!ちょっと待て!落ち着けって!」懇願する俺にかまわず綾は切りつけてくる。
左手の小指から薬指の根元までざっくりと切られた。
痛みと驚きで俺が尻餅をついた状態になったところへ綾が体重をのせて俺の下腹部を刺した。
ずっしりとした衝撃。刺される瞬間に「んっ」と声が出た。自分が刺したくせに綾はびっくりしたような表情をしている。
しばらく凄まじい激痛で呼吸もできなかったが、そのうち冷や汗が出てきて視界も暗くなってくると不思議とそれほど痛まない。
「馬鹿、、、落ち着けって、言ったのに、、、」やっとの思いでそう言うと顔の上に紙切れがひらひら落ちてきた。
なんだ?ああ、レシピか。綾、料理好きだったもんな。
「白菜は繊維にそってそぎ切りにする。 鶏むね肉は繊維にそって切り、5mm幅のそぎ切、、、」

やがて完全な暗闇がやってきた。

「受験」「ミシン」「ナイフ」でお願いします。
466名無し物書き@推敲中?:03/06/21 20:46
お気に入り集 ☆
http://pleasant.free-city.net/
「これなんかどう?」
そういって美樹は、白いバラを一輪手にとって指先でくるっと回し、
それから何が可笑しいのか、くすくすと笑った。
部屋に帰ると、どういうわけか彼女は花瓶に水を汲んで
さっき買ってきた白バラを、丁寧に、まるで壊れ物を扱うみたいに水中に沈めた。
僕は不思議に思って、テーブルにつくなりさも幸福そうに豚まんを
頬張る彼女に質問した。すると、彼女は
「そうね。造花って、植物じゃないから、水を、それも全身が
すっぽり入るくらいにあげる必要はないわね。」
と自分の行動がさも不合理なことのように応答した。
けれど質問の答えにはなっていない。
「じゃあなんでそんなことをするんだい。」
僕が再び尋ねると、彼女は頬ずえをついて、バラを手にとったときと
同じ笑みを浮かべて、窓辺に置いた花瓶のほうを見やった。
花瓶のなかでは、薔薇が夕暮れ時の太陽の、柔らかいオレンジの光と、
透明な水の繊維で織り込まれた衣装で美しく着飾っていた。

次は「ため息」「選択」「洗剤」でお願いします。



468467:03/06/21 21:09
ごめん。リロードせんかったらかぶった。時間かけすぎやな。
469名無し物書き@推敲中?:03/06/21 21:28
お題が例えば「豚」だったら「豚まん」「豚肉」「黒豚」
なんかもありなのでしょうか?
>>469 ありだよ。そういった発展や応用がないとつまらないもんね。豚汁もOKだよ。
471名無し物書き@推敲中?:03/06/21 22:39
●●●マスコミの 「盗聴/盗撮」 は許されるの?その2●●●http://natto.2ch.net/mass/kako/988/988402795.html
864 名前: 文責:名無しさん 投稿日: 2001/05/25(金) 02:10
>>860
856じゃないけど、盗聴/盗撮は、トイレの音や、自分の過去、
今日その日思いついた事、買ったもの、自分の体までネタですよ、気持ち悪いですよ、
本当に大変だから、気軽にそう書かない方がいいですよ。(マジレス)
(笑)って冗談のように書く時あるけど、別に気楽な気持ちで書いているんじゃ
なくて、悲しい事を楽しく表現する事で、重い気持ちを無くしたいんです。じゃないと、体にくるから・・・

710 名前: 文責:名無しさん 投稿日: 2001/05/21(月) 19:44
>>709
だから、気が付かなきゃ良かったのに。
気が付いたから、メディア総出でお前らを精神病者か自殺に追い込もうとしてたんだ。
ゴミとか野良犬とか言ってやったろ。それでも生きてるお前らはよほど神経が図太いんだな。
演技もいい加減疲れたらしな?。仕方ないよ自分達が悪いんだから。

だとよ。
472gr ◆iicafiaxus :03/06/22 01:12
「受験」「ミシン」「ナイフ」「ため息」「選択」「洗剤」

受験勉強だからといって図書館に向かった武と分かれて、砂利道の路地に入ると、
母が出かけていることは、がたぴし鳴る玄関の引き戸を開ける前に分かった。
いつもの内職のミシンの音が聞こえなかったからだ。部屋には弟が一人で坐って、
古くなった漫画雑誌を見ていた。弟はお帰りとも言わない。母はたぶん今日も
洗剤の訪問販売に行っているのだろう。姉ちゃん金貸してくれ、と弟が言った。
私が「挨拶もできない子に貸すお金は無いよ」と言うと弟は何でい、と捨て
科白して行ってしまった。私は、部屋の隅にある自分の机に鞄を置いて、中学の
紋の入った制服を脱ぎ、普段着のジャージに着替えた。

母は口には出さないが、明らかに私は卒業したら働くものだと期待している。
昨日も、帰るなり私に、親戚の誰某の家の店で人を募集しているのどうのと
知らせてくれた。そんなことを言うから、私は、結局昨日、このプリントを
母に見せることができなかったのだ。私は机の上からその「進路選択の資料」を
取って、ため息と共に「裏が書ける紙の箱」へ放った。そして、そんな手癖を
恨みながら、紙をナイフで切り刻んで、ゴミ箱に入れ直した。

そのとき戸をうるさく開けて帰ってきた母が、外で聞いてきたのか、出し抜けに、
「お前の仲良くしてる横丁のたけし君、北高へ行くんだってねえ」と言った。
そして、「うちには全日制にやるお金は無いけど、あそこなら夜間部もあるし、
それに歩いて通えるから定期代も要らないし、どうだい」と続けた。

次は「蓋」「深夜」「筋」で。
473蓋 深夜 筋:03/06/22 13:53
 今日、妻を殺してしまった。些細な口論から発展した醜い言い争いで、私は妻の首を刺してしまった。
 とにかく、死体を捨てなくてはならない。深夜になってから妻の遺体をワゴンに乗せて、私は樹海を
目指して明かりの無い山道をひた走った。
 地元の者でも寄りつかないと噂の、樹木が鬱蒼と茂った樹海の奥。持って来たシャベルでひたすらに
穴を掘った。じめじめとした空気が肌を舐め、全身を汗が筋となって伝っていく。
「悪いな。私は警察になんか捕まる気が無いんだ」
 頼りないライトで掘った穴の底を眺めて、俺は小さく呟いた。穴の底には、二度と目を開く事も無い
妻の遺体。この女と結婚してから、私にはろくな事が無かった――今、初めてそう気付いた。
 思いの他深く掘れた穴に満足して、私はさっきとは逆に穴を埋めていく。妻の墓に完全なる蓋をして
枯葉や小枝などでカモフラージュをすると、私は満足げに声を出して笑った。
――さぁ、帰ろう。これから、妻がいなくなった事の辻褄合わせをしなくてはならない。
 穴に背を向けて歩き出そうとして、愕然となった。
 車を何処に止めただろう。周囲は完全なる樹海の中。愚かな私は妻を埋める事に固執していて、
目印をつけてくる事すら怠っていた。
「……くそ……この疫病神がぁ!!」
 こんなところで死んで堪るか! 私は闇雲に樹海の出口を探して歩き回った。やがて朝が来て、昼が
来て、また夜が来て――やがて体力が底をついた時、私は妻の眠る穴の前に舞い戻っていた。
 ここが妻の墓だと言うなら、私もここで眠るべきなのか。
 最早なにも考えられなくなった頭で、私は穴の上にひれ伏した。
47463970:03/06/22 14:44



♂♀が凸凹 http://pink7.net/masya/


475蓋 深夜 筋:03/06/22 15:06
次のお題は「目薬」「キャップ」「ボールペン」でお願いします。
476「目薬」「キャップ」「ボールペン」:03/06/22 23:58
先日、漫画雑誌の後ろのページに載っている変な広告ばかりの会社から目薬を買った。
「コレをさしてあのかわいこちゃんを見てごらん、、、あらびっくり」というコピーにつられて。というのは嘘だ。
もちろんシャレだよ。たまには騙されるのもいい。目薬の箱を空けてみると説明書が入っていたが「さしすぎ注意!!」としか書いていない。
俺は好奇心を刺激され目薬をポケットに放りこみ彼女との待ち合わせに渋谷へ向かった。

すこし早く出すぎたようだ。待ち合わせの時間まで1時間半もある。カフェに入り、カプチーノを飲みながらその目薬のキャップをはずし2,3滴さしてみた。
しばらくすると窓の外を全裸のオヤジが歩いていくのが見え、俺はカプチーノを吹き出した。周りの客も裸なのだが全裸オヤジに気づいていない。
俺にしか見えないのか?目薬の効力はこれか?店の外に出ると全ての人が全裸で自分の目を疑ったが頬をつねると痛かったので信じざるを得ない。
いろいろな女の股と尻と胸を見ているといきなり裸が洋服を纏った。効き目がきれたのか?もっと女の裸が見たい!焦ってつい目薬をさしすぎてしまった。
するとまわりの人間は裸どころか皮膚、筋肉、皮下脂肪までもが透けた化け物になった。心臓の収縮に合わせて体全体に血液が流れて行くのが見え、
胃液の中でぐちゃぐちゃになって浮かんでいる食物が見え、大腸の中の緑色をした便が見える。俺は絶叫し、その場に崩れ落ちた。
すると「マコト?どうしたの?具合でも悪い?顔真っ青だよ。」と話しかけられ、見ると血でぬらぬら光る内臓と骨を剥き出しにした女が立っていた。
俺は何か叫びながら逃げた。「マコト?ふざけてるの?おこるよ?」なにいってんだ?こいつ?なぜこんなことになった?
文房具屋に逃げ込み、売り物のボールペンを手にとる。もう嫌だ。何も、、、見たくない。

そしてボールペンで自分の両目を突き刺した。
477476:03/06/23 00:01
すいません、読みづらい形で投稿してしまいました。

お題は「無職」「老人」「金髪」でおねがいします。
478[:03/06/23 14:18
 ジイサンの様子がおかしい。床屋から帰ってからも、ハンチング帽を脱がずにいるし、顔を合わせてもはにかむように笑って、逃げてしまう。
 ボケたのだろうか。ジイサンは今年で七十になる。去年までは小学校の校長をしていたが、無職になったことで心の柱がぽっきりと折れてしまったのかもしれない。
 夕食の支度が終わり、ジイサンを呼ぶと、帽子をかぶって出てきた。
「部屋の中で帽子を被るなって、お前は小学校で教えていたんじゃないのか?」
 そう言って無理矢理はぎ取った。と、ジイサンの自慢だった白髪が、全て金色に染められていた。ジイサンは、恥ずかしそうに頬を染めた。
「なんだよ、それ」
「金髪だよ」
「いや、わかるけどさ」
 ジイサンは、真面目さだけが取り柄の老人だった。俺が高校のとき髪を脱色しただけで、教育者一筋で生きてきたこの男は火を噴くように怒鳴り散らした男だった。
「どうしたんだよ。老人会の罰ゲームか?」
 ジイサンは声を立てて笑うと、首を振った。
「まだまだ俺も男前だろ?」 
グハ、十六行になってた

次のお題は「落選」「挫折」「再起」でよろしくおねがいします
 こっぴどく私を振った元彼の鼻をあかす為に出る予定だったミスコンなのに、私は体育館の隅で照明係をやっている。
何故かと言えば――簡単な話、書類選考の時点で落選したから。
 しかも舞台の上に立っているのは、元彼の今の彼女って言うんだから、つくづく情けない話だ。
「……ふざけるんじゃないわよ、絶対優勝なんかさせないからね」
 最早ヤケクソ、私は彼女を優勝させない事に全神経を集中させた。わざと照明をずらしたり、音響係の子の邪魔してみたり。
 最低? ありがとう、今の私には最高の褒め言葉だわ。
「絶対絶対、私と同じ挫折の味を舐めさせてやる……!」
 彼女を落選させないと、私の人生は再起不能な気がする。決意も新たに卑劣な闘志を燃やす私、舞台の上で半泣きの彼女。
 けれどやっぱり、神様は彼女に味方してたらしい。進行役から届けられた紙には、彼女の名前が刻まれていた。
「第15回ミス綾南コンテスト、優勝者は――!」
 ふざけるんじゃないわよ!?
 照明の向きを彼女から逸らそうとした時、勢い余って照明が設置された台から転がり落ちて、私の首があらぬ方に曲がった。
 無様な私の姿は方向を変えたライトに照らし出され、華々しくミスコンのフィナーレを飾る。
 ……ざまぁみろ。

次のお題は「漫画」「ストロー」「ベルト」でおねがいします。
「漫画」「ストロー」「ベルト」

暁の海ほど絢爛な光景はないと思う。波のざわめき、神々しさ、私はそれに酔い痴れる。
病んだ気分の時には、海を見なさいと姉が言う。片足を引き摺って、私は砂浜に出るのだ。
若き芸術家は皆、海を見て自然を倣ったという。夕暮れ時、テラスに出て、
かなしい音を波の間に間に聴きながら、コップに残った僅かな水割りをストローで飲み干す。
疾患がいつまで続くのか、私にはわからなかった。神経が逆立っていて、姉は私を
悪者扱いするのに少しもためらわなかった。両腕は寝台にベルトで縛り付けられている。
――私は捨てられたマリオネットのように、静かに冷たい寝台に横たわっている。
或K点を越えてしまった、と私はふと思いついた。本来の「生活」ではない生活。
夜の始まりを告げる汽船の唸りに姉は気付き、体に悪いから部屋に戻りましょうと言った。
上昇気流のせいで、海は寒々しく見える。実際に気温は低かった。
先天性の病は治らぬと聞かされた。逃避して、ブラックジャックの漫画でも読もうか。

次は「下駄」「ようやく」「口紅」で。
482gr ◆iicafiaxus :03/06/24 01:19
「下駄」「ようやく」「口紅」

ようやく汽車が新橋のステーションを出発すると、ちょっと御免下さい、と
言って、私の向いに並んで坐る二人があった。私とは精々一つか二つ
くらいしか違わないような年の男女で、どうやら恋仲のようなのだが、
それが三等車には不釣合なほど立派な着物を着ているので、私はふと
興味を持って、どちらまで行かれますかと聞いてみた。
男は「私たちは沼津まで、結婚の許しを貰いに行くのです」と言い、更に「貴君は」
と問うたので、私は「いや、ちょっと」と誤魔化した。彼らのめでたい道中に聞かせ
たくないと思ったからであるが、その時私はそんな心配りができるほどの自分の
冷静さに少し驚かずには無かった。本当は、父の死に水を取りに行くのだ。

そして二人と世間話などをしながらも、私は妙に冷静だった。顔を剃り新品の
雪駄に皺の無い袴をつけた青年、口紅も綺麗に差して女帯を胸高に締めた娘。
翻って私は、本郷の大学から帰って、神保町の下宿に届いていた電報を珍しいなと
思って開けてみた時のままの格好であるから、切れかけた絣の着流しに歯の
無くなりそうな古下駄を引っ掛けてきただけである。こんな貧相な身なりでは、
まるで生活苦だと言っているかのようで、母に申し訳無いな、と思っていた。

窓の外に見える湘南の海は静かで、しかし多分近寄って見れば波立っている。
483gr ◆iicafiaxus :03/06/24 01:21
お題忘れてたゴメソ、次は「半袖」「パイプ」「落書き」で。
484名無し物書き@推敲中?:03/06/24 02:44
「半袖」「パイプ」「落書き」

俺はダチとグラフィティに金と暇な時間をかけるのが生きがいだ。
のろまなサツやその他の大人達は「落書きばっかりして何が楽しいのか」と俺らを敬遠する。
んなぁ事は知ったこっちゃない、これは俺らの人生。落書き、もといグラフィティで燃やす人生。

半袖の真っ赤なTシャツにダボダボのショーツ、そして汚れたスニーカーを身にまとい
俺とダチは今日も色とりどりのスプレーで本屋のシャッターを華やかに飾っていた。
赤、黒、クレー、黄色で塗りたくったシャッターに大きく「Fuck」と言う言葉を横切らせた。
ちょうど「k」あたりに差し掛かった頃、サツの懐中電灯から放たれた真っ白なライトが視界に染みた。
俺らはスプレー缶を捨て急いで走り出した。ボロいスニーカーは必死に俺のスピードに追いつこうとしがみつく。
黒い闇の中で必死に逃げ道を求め駆けた。行き止まりに差し掛かり、ダチは壁から伸びた細くモロいパイプの上を走り始めた。
俺も追いつこうとして細く不安定なパイプに足を置いた。踏み出そうとした瞬間、スニーカーが情けない音と共に破れた。
世界が一瞬のうちに加速し、俺はがくんと落ちた。気がつくと闇色のコンクリートの上に俺は寝そべっていた。
Tシャツみたいに真っ赤な血だまりが俺のこめかみからコンクリートを這い広がっていった。
色とりどりのネオンの下のコンクリートで、俺の瞼は優しく閉じ闇へと帰った。

次は「ゴール」「桜」「血管」でよろしく。
485_:03/06/24 02:45
486名無し物書き@推敲中?:03/06/24 13:03
俺はこの日をどれだけ待ち望んだだろう。今日、俺の中のひとつのゴールを果たした。
思えばこの日のために様々なバカな努力をした。
「女にモテるための100の方法」という見出しを雑誌に見つけては買ったし、マネキンが着てる服そのまま買ったり
バンドを組めば女にモテると思いギターも買った。頭を金髪に染めて貧弱な体をさらけ出しサーフィンだってやった。
でも、これは本当の自分ではないといつも心の葛藤に悩み、無理なポーズを決めていた。
今考えるとそんな努力は必要なかったのだ。俺の初めての人はすぐ身近にいた。
近所の幼なじみの1歳上の娘。彼女には姉貴を見るような感情を持っていた。
子供の時は男の子みたいな女の子だった。久々に駅の改札口で会った彼女は女っぽくなっていてビックリした。
俺を見下ろしては大きな口を開けて笑っていたのに、その時はにかんだ笑顔を俺に向けてきた。
なんだか別人のような気がしてドキドキしたけれど、すぐにまた打ち解けることが出来た。
その日から俺達は幼なじみとして再びよく遊ぶようになった。
そして、ふたりがよく遊んだ俺の部屋での初体験。西日が射す部屋で彼女の桜色の唇に自分の唇を重ねた。
俺はオクテなので今のチャンスを逃してはダメだと一気に事を進めることにした。
初めて彼女を抱いた時は髪の先から毛細血管のすみずみまで緊張と喜びが行き渡った。
事を終わるとふとんで自分の裸を隠す彼女が首をかしげながら言った。
「私達はどういう関係?まだ好きだともつきあってとも言われてないよ」
「もちろん恋人さ。」
そう俺達はもう姉弟のような幼なじみなんかじゃない。今日からはただの男と女さ・・・。

次は「麦」「セルリアンブルー」「素朴」でお願いします。
487名無し物書き@推敲中?:03/06/24 14:10
セリアンブルー「本当に麦でいいんだな」

素朴ちゃん「いいの!私は麦でいいの!」

セリアンブルー「あとで後悔するかもしれないよ?」

素朴ちゃん「いいってば!麦は麦!私は私!」

コバルトブルー「セリアン、こんあところでなにやってんだ?」

セリアンブルー「コ……コバルト先輩!!いや、あの…」

コバルトブルー「幼い子供になんてことしてるんだ!バカヤロウ!」

素朴ちゃん「やめて!コバルトさんやめて!!セリアンさんは悪いことしてないよ!」

セリアンブルー「素朴ちゃん…」

コバルトブルー「セリアン、次おれを勘違いさせるようなことをやったら殺すからな」

セリアンブルー「すいませんでした!!」

コバルトは帰っていった。初夏の太陽が俺たちを包んだ。
そして俺は素朴ちゃん、いや素朴と、麦畑で結ばれた…

次は「蟹」「グレー」「残像」でお願いします。
「セリアンブルーって、どんな感じの色なんだ?」
 田村は急にそんなことを言ってきた。
 麦飯に生卵としょうゆをかけて食べるのが大好物の純日本人。それが田村ヨシツグという男だった。「だいだい色」ならば似合うが、「オレンジ」は似合わない。
 そんな田村が、「セリアンブルー」なんて言葉を吐くものだから、ぼくはレスリングシューズの紐が切れたテリーマンのような顔で、彼をマジマジと見た。
「なあ、聞いてる? セリアンブルーってどんな色?」
「青だろ」
「青なら、ブルーじゃん」
「いいんだよ。それで。だいたい、その色がお前にどう関係あるんだ?」
「今度買うつもりの車の色がセリアンブルーなんだよ」
 セリアンブルーの色合いなんて、ハッキリと思い描くことはできなかったが、一つ言えるのは、この素朴を絵に描いたような男には絶対に似合わないだろうということだった。


次は「蟹」「グレー」「残像」でお願いします。
489蟹 グレー 残像:03/06/24 19:17
 俺のすぐ横でエイハブが盛大に吐血し、崩れ落ちた。ヤツのはさみに頭部を抉られたのだ。
トレードマークの眼帯は顔の半分とともに持っていかれ、ベージュの脳髄が覗いていた。歴戦
の勇士、かの白鯨を屠った古兵も、ヤツの前に打ち破られた。
 これで、まともに戦えるのは俺と<湖の騎士>ランスロットだけになった。
「ラングレーの!」
 ランスロットが叫ぶ。ランスロットは湖の盾を高々と掲げていた。盾の跳ねた陽光が、ヤツの
残像を次々と消し去る。
「そこかっ!」
 俺はガンを構え、最後に残った本体めがけ、全弾を発射した。CIA特製、爆裂焼夷徹鋼弾だ。
弾は狙いどおり、ヤツの本体に吸い込まれ、盛大な爆裂弾の花火を咲かせた。
 テルミットの炎に焼かれ、ヤツは身悶えしながら崩れ去った。蟹の姿をした謎の侵略者は、キ
チン質の焦げる匂いを残すだけとなった。

 俺はランスロットと別れ、本来の物語世界に戻った。今は亡きKGBと、緻密な情報戦を繰り広げる
物語世界に。
 何者かが物語世界を荒らすとき、俺はまた呼び出されるのだろう。そうして数々の勇士とともに、
犬の顔を持ったロボットや「ざます」と叫ぶ中年婦人、また今回のような蟹とと死闘を続けるのだろう。

 どうだ、あんた?俺たちの戦いに加わる気はないか?
 物語世界を荒らすバカども討ち果たす、強大な戦士を生み出すつもりはないか?

 長いな。スマン。
次のお題は「人工知能」「切手」「ビーム」で。
490「人工知能」「切手」「ビーム」 gr ◆iicafiaxus :03/06/24 21:27
「あの道、今工事してるから、農協の前まででいいよ」「ん、わかった」
車は田園地帯から住宅地に入って、僕は前照灯をロービームに替える。

山向こうの町の進学校に通うのは、僕と彼女と二人だけだった。
朝夕一本ずつしか無いバスに乗って、峠越えの道を揺られていたあの頃。
ただの腐れ縁くらいにしか思っていなかった関係が本当はあまりにも貴い
ものだったっていうことに気づいたのは、春、新しい四月が来て、僕は
東京へ、彼女は関西へ別れ別れになってからのことだった。

いまさらのように自分の気持ちを、長い手紙に書いたりしても、僕は度胸が
無いものだから、切手も貼らず引出しの奥へ溜め込んでいるばかりで。

今日のクラス会できっと言おうと思っていたのに、あっという間に会はお開き
になってしまって。バスも無いし村まで送るよ、と言ってみるのが精一杯だった。

「この辺も三ヶ月で、随分変わったよね」「そうだね」
彼女の家はもうすぐそこだ。こんな人工知能みたいな会話じゃなくて。
「待って、Uターンする。はいOK」「ドア開けていい? 今日はありがとう」
「全然。暗いから気をつけてね」「うん。おやすみ」「おやすみ… あ、」

#次は「ビスケット」「軸」「明かり」で。
491杉井光 ◆h92HIkARU. :03/06/24 21:36
 突然で失礼します。競作祭りの告知です。

■□■創作文芸板・村おこし競作祭り■□■
・広義の『愛』をテーマとした文芸作品を募集します。
・ジャンルは問いません。
・枚数は原稿用紙換算で10〜50枚まで。
・投稿期間は、7/8〜7/15。
・感想を参照する期間は、7/20まで。
・作品投稿サイトは、『2ch文章アリの穴』を間借りします。
http://ana.vis.ne.jp/ali/
・投稿に際しては、作品紹介文の欄に「祭り参加作品」と明記してください。
・広く作品を募るため、募集作品の制限をできるかぎり広くとりました。

 祭り用スレはこちらです。
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1056457635/l50

 皆様のご参加をお待ちしております。
492名無し物書き@推敲中?:03/06/24 22:34
とある選挙事務所。僕と佐久間は切手貼りのアルバイトに精を出していた。まだ朝早いの
で事務所には僕達しかいない。仕事に飽きて僕は口を開いた。「佐久間ぁ。ターミネ−タ
ー2って観た事ある?」「えっ?さとる、おまえ、観てないの?」「うん。どんな話?」
「人工知能を持ったターミネ−ターと人類側の攻防かな?序盤とかすごいよ。ビームガン
ばんばん撃ったりさ。」「ふうん。」映画好きの佐久間はまだ語りたそうだったが、すぐに
「まったくお前は遅れてんな。」と言ってトイレに立った。しばらく戻ってこないので僕は
魔が刺して机の上に置いてあった佐久間の携帯を覗き見てしまった。いろいろ操作してみて
「亜由美ちゃんへ」という件名の送信メールを見つけた。亜由美は僕の彼女の名だ。
どういうことだ?心臓が速くなる。震える指で操作を続け、本文を出す。「亜由美ちゃん、
こないだはホントに楽しかったよー!またパスタ食べに行こうね。エッチもすごく良かったよ。
亜由美ちゃんが大きな声出すから焦っちゃいました(笑)。また土曜にでもあのホテルいかない?
あ、もちろんさとるには内緒で。では。」頭の中が真っ白になった。親友だと思っていたのに。
ただ心臓だけがばくばく強く打っている。トイレから佐久間が出てきた。「遅かったじゃないか。」
僕はそう言ってゆっくりと佐久間の方へ歩き出した。右手にカッターナイフを隠し持って。

お題は「初恋」「海」「喧嘩」でお願いします。
 果たして陽香はここにいたようだ。彼女はめったに着ることのない白いワンピース――これは、小さいころに
亡くなった彼女の母親の形見のひとつである――を秋の風日に晒したまま肩までのばしてある艶で洗ったような
黒髪を左手でいじくっていた。
「おい、馬鹿たれ」
 突然いなくなった彼女をおいかけていた慎多は、昨日の雨でふやけてしまった枯れ葉の海に足をずぶずぶと
ぬからせながら彼女に近づく。
 数歩もしないうちに、彼女のとなりまできた。
「お空と電話中か」
 近くまでくると、ずいぶんと乱暴に彼女は耳元の髪の毛を引っぱっていた。彼女は心ここにあらずと
いった相で、まぶたを大きく開け、わずかに光の漏れる場所をみつめているのである。
 それは、この林のスリットから漏れる光が何かの像をとって、彼女に見せているのだと言わんばかりだった。
「まさか、テレビ電話? 馬鹿もほどほどにしろ」
 慎多はけっして、口過千万でいっているわけではない。彼女の所作はそれほど真に迫っていたのだ。
「らしくねぇ」
 陽香の初恋の相手であり、慎多の中学時代からの友人である芳紀が病気により夭逝して、早くも一年が
たつ。今日はその一周忌だった。そもそも喪の場に一人白い服でおとずれて「さぁ忌みごとで汚してください」
といわんばかりのふてぶてしい態度であらわれたのも驚いたが、まさか純愛ドラマのごとくどこかへ逃げ出す
などと、日ごろさっぱりした性格でしられる彼女にはありえない奇行である。
 ただ、慎多にはこれから彼女が行動するとするなら一つだけ確実だとおもえることがあった。
「うるさい」
 少しして、彼女は上を向いたまま、彼に向け冷厳とした声で予測していたこと――つまり、喧嘩の始まりを告げたのである。

>>493 長文ウザイ ごめんなさいもう少しうまく書きます……次は【見取り図】【30】【玄米】で。
494[:03/06/25 08:20
 ダイニングの椅子に座り、妻が色あせた画用紙をじっと見ていた。
「なにを見ているんだい?」
 わたしが尋ねると、妻はにっこりと微笑み、その画用紙を差し出してきた。鉛筆で汚い四角形が幾つも書かれており、四角形一つ一つに注意書きのような文字が添えられていた。
「なんだい、これは?」
 わたしはギクリとしながら、とぼけてみせた。
 これは見取り図だった。三十年前、まだわたしたちが小学生だった頃、二人で作った秘密基地の見取り図。
 二人だけの秘密基地。そう約束していた。けれどもわたしは、その約束破っていた。妹を連れて行ったのだ。
 その妹と、今、逢瀬を重ねている。妹は二年前に離婚した。妹を慰めているうちに、わたしは越えてはならない一線を越えてしまったのだった。
「忘れちゃったのね」
 妻はがっかりとした顔で言うと、台所に消えていった。
 その日の夕食は、家族は白米なのに、わたしの茶碗にだけ玄米のご飯が盛られていた。
また名前欄ミスって投稿してしまいました

次ぎのお題は「七人」「天空」「鐘」でおねがいします
 絵描きのおれが一人でこの街を最後にみたのは夜半でも朝一でもなく、きわめて人通りの激しく、中天まぶしい午後のことだった。
 さらに道中で、なにかの動物の野糞をみつけてしまった瞬間、おれの気はどっとしぼみ、野で休むことを決意させる。
 そして、このガードレールもなく、周囲を埋め尽くす草原だけがアクセサリーのあぜ道でおれは立ち止まると、あたりを回首して
腰を落ちつける手ごろな岩を見つけたのだった。人心をわすれるくらい疲れていたのか、力をしぼってバッタのごとくすぐさま
そこへ飛びつく。一抱えどころか、まるで巨鳥の卵のような大きさの巨石はとっかかりも多く、簡単によじ登れた。
「おや」
 腰をおろした丁度となりに、ナイフか何かで傷つけてやったのだろうか、七人の男女の様子が描きこまれていた。
というか、岩全体にびっしりと彫られている。おれは何やらまずいものを尻にしいたようにそこをすこしどけば、
やっぱりおれのいた場所にも線の群れが形をなしていた。
 大きな体を自慢する手力男、それの肩にのる少女、槌をうち剣をきたえる中年の女性、その後ろでバケツの水を
提げている髭面の男、いかにも正義漢な面をして「ボニー・アンド・クライド」ばりの仲良さで肩を組みあう若い騎士のカップル……。
そして最後に、彼らとすこしはなれた場所で、天空に手を高々とかかげ、一ふりの鐘を気ちがいのように鳴らす男の姿があった。
 こうした線画は一コマだけでなく、彼らの様々な場面をうつしだしているが、けっして最後の男は他の六人に振りかえられる
ことはない。それでもいつまでもガラリガラリと騒音を発してはしゃいでいる彼は、どことなくおれと似ているとおもった。
「友達がほしいんだな」
 おれは岩に寝そべった恰好のままリュックからナイフを取りだし、ガリガリと彼のとなりに絵を描き足す。一時だけおれを書こうと
おもったが、せっかくつがい揃いなのだから、彼のそばに静かにたたずむ、優しくて彼と同じくらい純朴そうな女性の姿をつくる。
 けっきょく、ここまできてもおれは絵描きにしかすぎなかった。街を出たことが馬鹿らしくなってきたのは星が見える頃だった。

また長い、しばらく反省の旅(ROM)に出ます……お次は【雨】【並木道】【シャツ】で
497「七人」「天空」「鐘」:03/06/25 11:06


「勇敢なる七人の兵士、ここに眠る」

とはいえ、「永遠に」とはどこにも書かれていないわけで、実際、死んだように
眠っていた勇敢なる七人は、救助ヘリコプターからのサーチライトに照らされ、
まぶしそうに目を開いた。

廃墟となった旧市街に立つ、七人のシルエット。全員が何らかの傷を負い、
まっすぐ立てる者などいなかったが、愛する者の元へ帰ることのできる喜びの
エネルギーが全身を貫いていた。

ある意味、嘘偽りのない冒頭の文字は、廃墟の中に横たわる巨大な鐘に書か
れていた。彼ら七人の兵士にとって、その言葉は、半分は冗談であり半分は
本気だった。かつては教会の鐘であったオブジェが、そのまま彼らの慰霊碑に
ならずに済んだことに感謝して、兵士たちは軍服の袖でジョークを消した。

そうしてようやく、天空でホバリングするもうひとつの神に向かって、引き上げの
合図をしたのだった。



次は「大金」「天然記念物」「血」でお願いします。
498_:03/06/25 11:10
499497:03/06/25 11:23
496さん、すみません。重複してしまいました。
考えてるうちに先に投稿なさってたのですね。
送信前に確認するべきだったです。

ということで、私のお題は無視して496さんによる以下のお題を。

>お次は【雨】【並木道】【シャツ】で
500496:03/06/25 12:58
逃げる前にあとしまつ。

>>497
自分はみごとに規定違反してますので、エラーコードとして御取り扱いくださいw

というわけで、お次は【大金】【天然記念物】【血】でどうぞ
「ビスケット」「軸」「明かり」(490)
「雨」「並木道」「シャツ」(496)
「大金」「天然記念物」「血」(497)

小雨の中、僕は大きな箱を抱えて、ひたすら目的地に向かって歩いている。
この丘に続く並木道の終点には、国の天然記念物である「樹齢800年」の
「言問いの大銀杏」があるのだ。この銀杏の下に立ち、「問い」を投げかけると
いかなる難題にも「答え」が帰って来るという言い伝えがある。僕はやっと根元に辿り着く。
シャツの袖で額の汗を拭うと、そっと箱を地面に置き、封印した巻物の戒めを解く。

「雲雀飛翔図」。この掛け軸は僕の父が、ひと目で気に入り大金を投じて買ったものだが
これを開くと必ず、災いが起こる。今年の正月に軸を開いて来客に披露した日から
父は原因不明の病に倒れたままなのだ。僕は薄明かりの中で銀杏の下枝に
掛け軸の吊り紐を結んで、一心に祈った。「災いを払う方法を教えてほしい」と。
すると、轟々と大枝が揺れ始め、掛け軸が突如、舞い上がった。すると、その揺れに驚いた様に
絵の中の無数の「雲雀」が外に飛び出し、血を吐くように、まっ赤な舌を震わし鳴き始めた。
「餌をおやり」木の中から声がする。僕は餌など用意していないから慌ててズボンの
ポケットの中を引っ掻きまわすと、砕けたビスケットの欠片が転がり出て来た。
すると雲雀たちは、小さな破片を奪い合いながら飛び上がり、天高く消えて行ってしまった。

僕は空白となった掛け軸を仕舞うと、病が癒えたであろう父の元へ帰り道を急いだ。

(一応、最近の未消化のお題、全消化を試みましたがどうも、苦しいですね。)

次は「苗」「日記」「世界」で、良ければ、お願いします。


 日記に、嘘を書くことにした。

六月十一日
・ 道端で拾った苗を、鉢に植えて三週間目。その植物は、ついに鼻を咲かせた。
・ 後は目と口が咲くのを待つばかり。今のところ輪郭は美人。
六月十六日
・ いつの間にか耳が生えていた。まだ口がないので、俺が一方的に語りかける。
・ 昔話が気に入ったようだ。俺自身、十数年ぶりに触れる昔話は面白い。
六月二十二日
・ ついに目口も咲き揃った。彼女の声を聞いた瞬間には感動した。
・ 彼女の話は興味深い。人間を『植物の排泄物』と呼ぶ。なるほどと納得。
六月ニ十六日
・ 彼女とキスをした。甘かった。比喩ではなく。美味しい。
・ 俺の体液と排泄物が肥料となり育つ彼女の蜜が俺の腹の中に。
・ 循環。小さく完璧な世界が。このまま鉢に埋まりたい。

 ……日記帳から顔を上げる。視線を巡らし彼女を探す。
 どこに置いたか。久しく彼女を見ていないような気がするが。


 某韓国ゲームは意識せず。次は「最高」「最低」「認め」でお願いします。
503「最高」「最低」「認め」:03/06/26 01:19
最高気温0度。最低気温−16度。今日の釧路の気温だ。2月は最も寒いのだが毎年この
時期に犬ぞりレースが市営のグラウンドで開かれる。俺は去年初めて出場したのだが
いきなり準優勝をさらってしまった。今回は当然優勝を狙いにいくつもりだが不安がある。
娘の真奈美がレースを見にくるのだ。俺と妻の千里は2ヶ月前に離婚した。真奈美は妻が引き取った。
真奈美が去年熱を出して見られなかったので今年はどうしても、とごねているらしい。
「そういうわけで真奈美連れて行くから。終わったらすぐ帰るから気にしないで。」と言って
電話は切れた。なんとかいいところを見せたいが、もし転倒でもしたら。そんなことばかり考えていた。

大会当日。軽い寝不足だったが腹は据わっていた。もうじたばたしてもしょうがない。
精一杯やるだけだ。俺は死ぬ気で手綱を引き声を張り上げる。犬どもも俺の気迫を
感じたのか素晴らしい走りをし、結果は大会新記録で優勝だった。ゴールした瞬間、
俺は思わず真奈美に向かってガッツポーズをした。勝利の余韻に浸っていると、大会役員
が来て俺のそりに参加者シールが貼っておらず規定に反するので大会記録は認められない、
と言われた。娘の事で頭がいっぱいでシールのことなんてすっかり忘れていた。でもまあいい。
ガッツポーズをした瞬間、真奈美は顔をくしゃくしゃにして両手を目一杯俺に向かって振ってくれた。
俺にとってはその姿が新記録よりも価値があるから。
504503:03/06/26 01:21
次は「中毒」「スーツ」「蜘蛛」で。
505うり:03/06/26 16:07
「中毒」「スーツ」「蜘蛛」
「犯人はこいつか……」捜査員はハンカチで額の汗を拭う。
盛夏のさなか、路上駐車された車からスーツ姿の男の死体が発見された。
エアコンを効かせる為にエンジンはつけっ放しだ。
死因は一酸化炭素中毒。
――男は動物の輸入業を営んでいた。
死の前日、男のもとに珍しいつがいの蜘蛛が南米から届いた。
「ご注文頂いた蜘蛛、本日入荷しました。これからお届けにあがります」
電話を切った男は車を飛ばす。途中、何気なく助手席に置かれた紙製の箱を開けた。
蜘蛛が一匹しかいない。焦った男は車の中を必死に探した。
しかし、蜘蛛は見付からなかった。
「申し訳御座いません。手違いで違う種類だった様で」男は携帯電話から客に詫びた。
翌日、いつもの様に車で得意先まわりをしていた。
エアコンを効かせた車内で弁当を食べた後、うつらうつらと昼寝をしてしまった。
男は二度と目覚める事がなかった。
――「こんな所に卵を産み付けやがって」捜査員は苦々しそうに目を細める。
棉玉の様な蜘蛛の卵が、車の排気管をびっしりと埋め尽くしていた。

次のお題は「そうめん」「蜜蜂」「ポスト」でお願い致します。





「海の生き物アメフラシの卵のことを俗に何と呼ぶ?」
「海そうめん」
「郵便ポストの正式名称は?」
「郵便差出箱」

津田博はTVのクイズ番組に出場していた。賞金は全問正解で200万。
学生時代から雑学関連の本を読み漁っていたのでクイズには絶対の自信を
持っている。当然全問正解のまま最終問題になった。

「くまのプーさんの好きな食べ物と言えば蜂蜜ですが、では嫌いな食べ物は?」
博はあっ、と声を出してしまった。分からない!こんな問題でくるとは!そしてすぐに
前日の夕食後の事を思い出した。娘が「くまのプーさん」の絵本を読んでくれとせがんで
きたのに翌日の収録が気になって適当にあしらってしまったのだ。

「あれを読んでやっていれば答えられたかも、、、。」
博は思わず天井のライトを見上げた。

「モザイク」「耳栓」「市役所」で。
507うはう ◆8eErA24CiY :03/06/27 19:21
「モザイク」「耳栓」「市役所」

 分娩室の扉の向こう側で、小さな泣き声が聞こえる。
 「生まれたか!」
 長老は、この日を待ちわびていた。
 自分たちを排斥した、コンピュータ管理社会に復讐する時を。

 「いざ市役所じゃ。我等一族の名を賭けて!」 「長老!次男一族もここに」
 「おう、<”子>に<’夫>か、懐かしいの」
 それだけではなかった、<*乃輔><久<br>美子><1婁>・・・<\/衛門>も一緒だ。

 何十人。いや、何百人の一族の面々は、モザイク状に隊列を組んで進んだ。
 「小賢いシステムめが、孫の名に耐えられるかの」
 長老は、今回の孫に一身を賭けていた。

 「よし着いた。では皆の衆、一緒に!<初孫の出生届お願いしまーす>」
 「名前は、■■太郎でーす。お願いしまーす」
 (■■の部分は、Web表示不可なコントロールコードなので置換しております)

 「,”””一族」の復讐・・・
 戸籍係は耳栓をして、机にうずくまるばかりであった。

※アラビア数字の名前の人は、本当にいるとか・・・
次のお題は:「悠久」「ジェット機」「ミルク」でお願いします。
508名無し物書き@推敲中?:03/06/27 19:42
(σ・∀・)σゲッツ!!ならココ!
http://www3.kcn.ne.jp/~barozza/
いまどき荒らしも流行らない?
荒らしAGE!!
509純 ◆OPb3r6Vs1g :03/06/29 02:30
「悠久」「ジェット機」「ミルク」

ミサの腕は、木切れに似ていた。細く水気がなく、白茶けていた。
だがそれ以上に、ミサに抱かれた赤ん坊は木切れに近かった。
赤ん坊の名前は、まだない。どうせすぐに死ぬ運命なのだ。名前を
付ける意味はない。金属音が上空を走ったが、ミサは顔を上げなかった。
誰を守っているのか分からないジェット機を見たところで、
新たな憎しみが生まれるだけだ。ふと赤ん坊が目を開けた。
光のこもった目で、上空を見上げた。まだ見えるはずのない目で、
何かを見た。ミサは、つられるように視線を空に向けた。
ジェット機から白い雲が流れていた。ミサの目には、それがまるで
ミルクのように見えた。「ミルクが飲みたいのね」とミサは赤ん坊に
話しかけた。赤ん坊の顔をのぞき込んだミサが、思わず息をのむ。
赤ん坊の目から光が消えていた。今、赤ん坊は、悠久の安らぎの中にあった。

次のお題は「ボール」「間欠泉」「辞書」でよろしく。
兄の家に厄介になってから二週間が過ぎた。居候の肩身が狭い日々により
なかなか痩せなかった顔もいい具合に頬が痩けてきた。そして顔を洗い朝の身支度を終えた僕はリビングの方へ向かう。
兄が仕事に向かう準備をしていた。そう、兄だけしかリビングにいない。「いつも大変だね、兄さん」
ザックリ言うと僕と兄だけしかいないこの家で今の一言は墓穴だろう。「いいんや、俺さえ我慢すれば」
力無く兄は呟く。義姉はどういうわけか実家に帰りたい病の発作を持つ。その時は甥と姪も連れていく。
この二週間息を潜めてこの家で生活してきたが、兄は暴力的でもなければ毒舌でもなく理想に近い夫だ。
まぁ夫婦仲はどうしても他人が踏み込めない部分もあるのですべては分からないが。
とにかく僕が分かるのは親と子のボールの投げ合いを見たことの無いこの家庭が歪なことだけだ。
兄も大変な家庭を作ってしまったものだ。兄がテレビを涙目で見ている。朝の幼児番組だ、確か僕も子供のとき見ていた。
いない子供達の事を思い出しているのだろうか?それともそこに写る怒りを爆発させるかのような間欠泉に憧憬の念を膨らますのか。
自分の考えに噴出しそう……失敬、身につまされて泣きそうになりワザとらしい挙動で辞書を棚から取り出し読む。
だが体は正直だ。日陰、斜陽、冷や飯食いなど言葉ばかり捜している。
心はもっと正直だ、兄を笑えない自分の立場を何とかせねばなるまいと落ち込み首を括りたいと嘆いている。
511510:03/06/29 03:08
推敲すべきですた。謝っときます、すんません!!
お題も抜かしていました、すんません!!

次回のサザエさんは
「お茶」「洗濯物」「灰皿」ナリよ。
ニントモニントモ(あれっ?)
512 ◆L.dyD/snow :03/06/29 03:58
「お茶」「洗濯物」「灰皿」

ほんの10分前に取り込んだ洗濯物に、お茶をこぼしてしまった。
といっても濡れた部分はほんのわずかなので、洗い直すまでもない。
ただ渇くのを待っていればいいのだが、どこか損した気持ちになってしまった。

「ふむ……この気持ちは一体なんだろう」

洗ったばかりの灰皿を用いてタバコを吸う時──いや、違うな。
どちらかといえば、風呂に入った後すぐにトイレで用を足した時の心情に似てるか。

自分の考えに納得した私は、風呂の準備をすることにした。
もちろん、先にトイレへ行ってから入るつもりだ。

お茶で濡れた洗濯物は、すっかり渇いていた。

※以前に感想をくれた方、どうもありがとうございました。
 次のお題は「網」「ひまわり」「ストロー」でお願いします。
513「網」「ひまわり」「ストロー」 gr ◆iicafiaxus :03/06/29 07:41
8月3日 晴れ

今日、朝ご飯を食べていたら、かんり人の小母さんが、来て、
「吉崎さん、しげ君に電話ですよ。れんらく網だって。」
と、言うので、「何だろう。」と思って、かんり人室の電話に出たら、
「クラスで育てているひまわりが、全部たおされてる。」
と、いう話でした。

ぼくは、ご飯の残りを急いで食べて、学校へ行きました。
すると、クラスの花だんは、めちゃめちゃでした。もうすぐ花がさくところだった
のに、ひまわりは全部根元から折れてしまっていました。よし子さんやめぐみさんは、
それを見て泣いていました。でもぼくは男の子だから、泣かないぞ、と心に決めて、
短く折れたくきが地面から突き出ているのを、なるべく見ないようにしました。

その後、先生が、ぼくたちをなぐさめるために、まるや百貨店の食堂でフラッペを
ごちそうしてくれました。ぼくは、その時、フラッペにささっているストローを
見たら、ひまわりの折れたくきを思い出して、少しだけ泣いてしまいました。

次は「煙」「正面」「カード」で。
514うはう ◆8eErA24CiY :03/06/29 22:43
「煙」「正面」「カード」

 夏休み。彼女が、久々に我が家に帰ってきた。
 「ただいま帰りました」
 全寮制の女子高のせいか、言葉も仕草も急におしとやかになっていた。
 半年でこんなに変わるなんて・・・何か変だと思った。そして予感は当った。

 先日買ったスピーカー一式を自慢すると、何かに怯えた表情を見せる彼女。
 「いや、こわい!」「大丈夫。中は、ほら、磁石とコイルだけだよー」
 恐る恐る中身を見る彼女の口から、「あっ」と小さく悲鳴が聞こえた。

 やにわに正座して、私の顔を正面からじっと覗き込む。
 「私は初期化されました。貴方のパスワードを設定した後、私の名前を決めて下さい」
 「えええー?!」

 嘆いても無駄だった。彼女の記憶は、一瞬にして、煙の様に消えていた。
 あたかも、磁石に近づけた磁気カード情報の様に・・・
 「そんな馬鹿な!」私は悩んだ。目の前にいるのは、彼女じゃない。磁気で記憶が飛んだロボットだ。

 誰かが、彼女をすり替えたに違いない。でなけければこんな事がおこる筈がない。
 本物は、ちゃんとした有機記憶素子を使ってるのだから。

※なんか痛い(^^;
次のお題は:「エレキ」「百人」「見世物」でお願いします。
515「エレキ」「百人」「見世物」:03/06/29 23:45
今日は快晴だ。そして俺に判決が下る。

俺は趣味でバンドをやっていた。その練習の時にボーカルのヤツとちょっとしたこと
で口論になり、「死ね」と言われて俺はキレた。

気がついたらヤツの顔面にエレキギターで殴っていた。何度も何度も。ネックが折れ
てやっと我に返った。ゆっくりと下を見ると頭がカニの足のように割れて脳味噌を
撒き散らした死体がそこにあった。

結構ショッキングな事件だったので今日の傍聴席は満員御礼だ。ざっと100人はいるな。
まあ、裁判所が見世物小屋になったわけだ。

判決は無期懲役。死刑じゃないだけマシか。死ぬまで生きていられる。明日からどうし
ようかな。

なんで俺がこんなに落ち着いてると思う?

それは俺が鍵を持っているからさ。看守を脅して手に入れた鍵。



「にんにく」「落雷」「義眼」でお願いします。
516515:03/06/29 23:52
ヤツの顔面に→ヤツの顔面を でした。ごめんなさい。
517純 ◆OPb3r6Vs1g :03/06/30 00:10
「にんにく」「落雷」「義眼」

おれは、ギョッとして目の前の男を見た。
相席の男。その顔の眼窩が暗い孔になっている。
男の前に置かれたラーメンを見ると、丼の中央に目が落ちていた。
義眼なのだ。
おれは知らぬ振りをしようと、店の親父に声をかけた。
「にんにく、いっぱい入れてね」
「あいよ」
男の様子を窺うと、箸で懸命に義眼を取ろうとしている。
つるつる滑ってなかなか取ることができない。
手で取ればいいのに、きっとうろたえているのだろう。
「にんにくチャーシュー、お待ち」
おれの前に丼が置かれた。おれはホッとしながら胡椒を振り掛ける。
鼻が刺激されてムズムズした。我慢する間もなくくしゃみが出る。
強烈なくしゃみは、まるで落雷のように店中に響いた。
それと同時に義眼の男の丼の中に、何かが音を立てて飛び込む。
男がギョッとしたようにおれの顔を見つめた。
丼の中には、男の義眼とおれの口から飛び出した入れ歯があった。

次は「ニワトリ」「扇風機」「宇宙」でお願いします。
518「ニワトリ」「扇風機」「宇宙」:03/06/30 03:47
カッ、ウィー、カカッ、ウィー、カカッ、ウィー、カカッ。
扇風機の首振りを力ずくで阻止し、その呻き音を楽しんでいたリュウ坊が、
今度は台所方面からの別の音をキャッチした。ラッキーカルピスの音だ。
扇風機へのヘッドロックを解除し、リュウ坊は後ろ向きのまま台所へ走る。

お盆に乗せられた3人分のカルピスが、涼しげな氷の音とともに、母によって
客のいる居間に運ばれていく。それとは別の、気取りのないコップに作られた
気取りのない濃さのカルピス(ラッキー!)を、リュウ坊は喉を鳴らして飲み干した。
その勢いで、三つあった氷をコップから口の中に移し変えると、お次は縁側へ。

庭で放し飼いにされているニワトリにとって幸運なことに、リュウ坊の口から
発射された氷の弾丸は、見当はずれの場所に着弾した。おまけに、自分の口から
ツツーと垂れる涎の量にリュウ坊自身が思わず笑ってしまい、残り二発の貴重な
氷をボロボロと縁側にこぼしてしまう始末。

涎を拭うと、リュウ坊は笑いの止まらぬまま、裸足のつま先で氷を蹴散らし、
そのまま縁側からサンダルに飛び降り、物置に寄りかかる自転車にまたがり、
庭を一周して勢いをつけ、ベルを鳴らしながら「宇宙」に向けて走って行った。

今日は、小学校の講堂に「夏休み特別プラネタリウム」がやってくる日なのだ。


次は「探偵」「見ず知らず」「折り目」でお願いします。
519「探偵」「見ず知らず」「折り目」:03/06/30 12:14
新田肇は悩んでいた。妻の知子に愛人がいるようなのだ。頻繁に外出するし、かかってきた
電話を別の部屋に行ってとったりする。このあいだに至っては首筋にキスマークのようなもの
がついていた。妻が見ず知らずの男と身体を重ねるのを想像し、肇は探偵を雇うことを決めた。

家にやってきた男はポロシャツにきちんと折り目のついたスラックスをはいていた。
探偵というより日曜日に子連れで遊園地にでもいそうな男だ。肇は早速切り出す。
「妻に愛人がいるみたいなんです。調べてもらえませんか?」

探偵はいくつか妻についての質問をした後、料金を提示してきた。肇が思っていたよりも
少し高めだったが、了承した。「調査が終わりましたら連絡します。」と言って探偵は帰った。

1ヶ月後、調査終了の知らせを受け、肇は会社近くの喫茶店で探偵と待ち合わせた。
探偵はいろいろな写真を肇に見せる。「特に怪しい点はなし。男性の影も見られない。
外出は習い事。電話は単なる女友達であなたに聞かれたくない話だっただけ。首のアザは
戸棚の掃除中に落ちてきたシャンプーのボトルによるもの。どうです?まだ調査続けますか?」

肇は安堵し、探偵に大げさな礼をして喫茶店を出た。探偵はその姿を見てかすかな
笑みを浮かべ残っていたコーヒーを飲み干した。喫茶店を出て、肇とは逆方向に
歩き出す。知子と会うために。

「幼稚園」「チェーンソー」「アロエ」で。
520うり:03/06/30 15:14
「幼稚園」「チェンソー」「アロエ」
マコトは薄暗い年長組の教室で唇を噛んでいた。
みんなを助けられるのは僕しかいない。
「なかよし幼稚園は巨大アロエにすっぽりと覆われています」
「ひろし〜!」「まゆみ〜!」
ヘリコプターの爆音、レポーターと父母達の絶叫が教室の中に届く。
庭の片隅に植えられていたアロエが突然巨大化したのだ。
うねうねと触手の様に葉を伸ばし、あっと言う間に園を覆った。
教室の壁が今にも崩れそうにみしみしと音をたてる。
園児達は悲鳴を上げ、泣き叫ぶ。先生は腰を抜かしておもらしをする。
「チェンジ!スーパー園児マコトマン!!」マコトは叫びながら光りの塊と化す。
黄色いレオタードの胸に真っ赤なMの文字。
「ハイパーチェンソー!」唖然とする園児達を尻目に、マコトマンは真っ赤なマントの下から
身の丈ほどのチェンソーを取り出す。巨大アロエの葉が粉微塵に吹き飛んで行く。
「痛っ」マコトマンは顔を顰めた。勢い余って小指の指先を切ってしまったのだ。
マコトマンの活躍でなかよし幼稚園は救われた。
マントを翻して走り去るマコトマン。その小指には、化膿止めのアロエがバンソコでとめられていた。

次のお題は「寒中水泳」「スポーツカー」「七夕」でお願い致します。



521「寒中水泳」「スポーツカー」「七夕」:03/06/30 16:51
隣に由美を乗せて、まだ夜が明けたばかりの街を、赤いポルシェが走る。
長年の夢だったスポーツカーを太一が買ってから、二人はいつも車で移動するようになった。

「今日は七夕だね。」
眠そうにして、それまで何も話さなかった由美が、ぽつりと言った。町のあちらこちらで、紙の札を下げた竹が、頭を下げて立っている。
「くだらない行事だ。」
信号が赤になると、太一はハンドルから手を離し、タバコに火をつけた。由美は、その姿を、無表情に眺めていたが、車が走り出すと、また彼女が言った。
「ねえ、昔、二人で寒中水泳をしようって、たっちゃんが言ったこと覚えてる?」
太一は、目の中に入ってきた煙を、けむたそうに手で除けてから、言った。
「今思えば、くだらない時期があったものだ。」

しばらく、二人は何も話さなかった。ポルシェの轟音だけが車内に響き、二人の座っている椅子が、ビリビリと音を立てて振動している。由美は、目を瞑り、音と振動に身を任せながら、遠い昔のことを思い出していた。

目を瞑ったまま、また由美が、呟いた。
「ねえ、たっちゃんはいつから、消極人間になってしまったの?」
太一は、黙ったまま、何も言わなかった。
そして、沈黙が重くなりかけたときに、ぼそりと答えた。
「大人になっただけさ。」

由美のまぶたの裏に、いつも楽しそうに話していた、昔の太一の姿が映っていた。
ポルシェの轟音は、まるで彼女の代わりに、自動車が泣いてくれているように聞こえた。

次は「メール」「星」「レンガ」でよろしくお願いします。
522 :03/06/30 17:09
俺の親友のホムペ
http://www1.free-city.net/home/thiara/index.html
来いや糞共
 仁星屋などという、どうにも少年時代によみふけった漫画本やら、論語のはなしやらを思い出してしまう――
いやそれは彼のうけている授業が、たまたま漢文詩の教養授業だったからかもしれないが―― そんな暴力団がある。
 信一は決してその歪んだ団体に心の髄までつかりきったわけではないが、仙居のごときたたずまいの広く古臭い
和風邸宅にはありがちな、本日の雨にぬれ膨らんで木材の香ばしさを放つケヤキつくり、格子扉の門を今日もひらいた。
 この現在たった構成員5名の組合はなかなかに史がある。200年前、もともとはただの金貸しであったここの先祖がたよれぬ
お天道様に反するようにして街の腕自慢をあつめ、そこから慈善団体ではないものの、自警団として成ったのが仁星屋の
はじまりであるそうだ。しかし贅にあこがれる者もいたのだろう、華やかな時代にそこの四代目とやらが……この辺はより
長いので省かせていただくが、自警を求めるどころか公安もガーディ○ンエンジェルズもスポーツ感覚のごとく
率先して行われてしまう現代にのっとるように、今はこの邸宅だけが見せ場となる、せいぜい少数愚鈍のしがない
暴力団である。
 閑話休題。
 信一がそこをくぐると、日本庭園図が彼の目の前にひろがった。どちらかというと地味な美しさをもとめる彼はここに来るように
なってから何度目になるのか、ほぉぉ、と桃源郷をみるような、悪くいうとじじむさいため息をついた。
「いや実に、うん、その、いうのも面倒なくらいすごい……ん?」
 彼が頷きながら首をうごかしてあたりを見るという、やけに器用な真似をしていると、うるわしい緑の絨毯に泥をぬりたくる
案をしめすように、いつも構成員兼庭師の金さんがていねいに刈りそろえている松の一枝に、欠けたレンガが載っていた。
奇異な光景にすこしだけ感興するところがあったが、芸術的趣味を解すると自称する信一はこれでもいいかと、つい、
眼をそらして縁側をみる。
 メールのとおりなら、あの人がおれにまた例の「バイト」の話を振ってくるはずだ。ただ、
「まず、来ないんだよなあ」
 誰もいない縁側をみて、信一は間抜けづらで一人ごちると、とりあえず組頭の爺さんの容態をみに行こうときめた。
あ、ごめんなさい。
次のお題は「パープル」「ハウス」「村」で。
「パープル」「ハウス」「村」

大学時代の友人の村瀬から「転居通知」が届いた。都心の賃貸マンションを脱出して
いよいよ一戸建てを手に入れたらしい。団地暮らしの俺は何となく、一抹の侘びしさを
感じながら新住所をアドレス帳に書き留めようとして、その「地名」にびっくりした。

「骨散郡 血川村 首刈り塚 四十九番地の九」

なんとも、禍々しい事件や恐ろしい祟りを連想させる文字ばかりである。
早速、電話で「すごい地名だな」と聞いてみると「いやあ、探したよ」と上機嫌なのだ。
村瀬いわく「骨が散り、血が流れ、首が刈られた」と史実を物語っている地名は
逆に、悲惨な過去を風化させず、「ああ可哀想に」と同情する気持ちにもなるから
「霊も静まり、今更、祟らない良い土地」なのだという。

「最悪なのは、恐ろしい過去があった土地を隠す為に、わざと改名する事なんだ」
「お前だって、自分の死場所に訳のわからん地名を付けられて、オシャレなマンションにでも
なったら頭にくるだろう?だから、今時の洒落た地名ほど怖いものはないって事さ」

なるほど、と思って電話を切り、振り返ると妻が食い入るように何かの「チラシ」を見ている。

「新規開発分譲中 ラベンダータウン パープルヒルズガーデンハウス」

しかし「首埋塚」や「血祭り村」に是非、家を買おうと妻を説得する自信は俺には無い。


次は「西日」「カプセル」「床」でお願い致します。
526「西日」「カプセル」「床」:03/06/30 23:05
西日しかあたらない、この狭いボロアパートの一室で、オレはついにカプセルを作り出すことに成功したこれで、
ようやくこの貧乏生活から脱出できる、いや、それどころか、巨万の富を築くことができるはずだ。
おっと、話が前後してしまったようだ。まず、このカプセルが何であるか、まずそのことを説明しなければいけな
い。
俺は、今さっき成し遂げたこの研究に打ち込む前までは、大学の生物学講座の講師をしていて、主にマウスを使っ
た遺伝子の研究をしていた。遺伝子の研究といっても、人間には五万の遺伝子が存在すると言われているわけで、
当然、その内容も幅広い。俺が専門として研究していたのは、その中でも一番ホットな分野である、老化にかかわ
る遺伝子だ。
ある日、俺は発見した。通常よりも、何十倍も早く成長するマウスを。その生命力たるや、尋常なものではなく、
飢餓にも耐えるし、電気ショックも効かないし、とにかく、今までの生物界の常識を覆すようなスーパーマウスを、
俺は発見したのだ。
それからほどなくして、俺はそのマウスから、そのパワーの源となる遺伝子を抽出することに成功した。あとは、
この遺伝子をどうやって人間に移植するかだったが、それに関しても、上手い方法をすでに考えていた。そこで、
俺は特許を独占するために大学を辞め、今までずっとこのぼろアパートで研究に打ち込んでいたわけだ。当初予定
していたよりも、ずいぶんと時間がかかってしまったが、とにもかくも、俺はこのカプセルを作ることに、ようや
く成功したのだ。
俺は早速、そのカプセルを飲んでみた。すると、五分後には、俺の全身の細胞が燃え上がるように熱くなってくる
のが分かった。一時間後には、心臓の鼓動が全身に響き渡るようになり、うなるほどのエネルギーが俺の身体を流
れ始めた。さらに、禿げていたはずの頭に、ものすごい勢いで毛が伸びてきた。俺はその遺伝子のすさまじい効果
に、思わず胸を躍らせた。
ただ、残念ながら、どうやら研究は失敗に終わったようだ。俺は四つん這いになって、床に手足を付けながら、深
くため息をついた。なるほど、たしかに最強の遺伝子だが、あまりにも効果が大きすぎるようだ。

俺は鏡の中に映った、巨大なマウスを見て、またひとつため息をついた。
527「西日」「カプセル」「床」:03/06/30 23:06
次は、「文学」「宇宙人」「牛乳」で。
528エセ文学少年:03/07/01 00:28
>>527氏により、『文学』『宇宙人』『牛乳』で単文。


家に帰ると得体の知れないものがいた。
大学の文学科のテストを受け、頭が煮詰まった状態の僕の眼にそれは入った。
目玉がひとつもなく鼻を思われるホースが顔の中央からだらんと床へたらしてる。
ホースは脈打ち、青紫の血液が波打っている。
冷蔵庫の前でそいつはがさごそしていた。辺りを見るとコーラやら牛乳やら
冷蔵庫の品々が散乱していた。

宇宙人が冷蔵庫を物色している。

あり得ない、あり得ないと思えば思うほど僕の平行神経はおののく。
あり得ない、あり得ない。…僕は気を失った。


稚拙だなぁ。我ながら。

次の方は『キッチン』『狐』『死んだ魚』で。
 キッチンへ続くドアを開けると、狐が夕食のサンマをくわえて俺を睨んでいた。
「なんで狐」とか、「いったいどこから」ではなく、最初に俺が思ったのは、「サンマで
よかった」だった。
 ダイニングキッチンに据えつけた水槽には、一尾四千五百円也のベタ様が七尾ほど
泳いでいるのだ。いやまあ、生きた魚は駄目で死んだ魚ならいいのかというとそういう
わけでもない。おかずがなくなるのは困る。しかし今更エヒノコッカスなんかを体内に
飼っている狐なんかがくわえた魚を食うのは、どうにも願い下げであり、俺は最初思った
とおりに、サンマに被害が局限できたことを喜ぶべきなのだろう。
 俺はキッチンへのドアを開けっ放しにして、外に出た。侵入経路に使用したと思われる
窓は少々高く、狐ではそうそう脱出できそうにないように思われた。
 玄関までドアを開け放した俺はガスメーターにもたれかかり、タバコに火をつけた。
 そういえばあのご婦人は、お魚くわえたドラネコをどこから追い出したのだろう。

 次のお題は「テスト」「目玉」「神経」で。
ペース、はええ。
531 ◆L.dyD/snow :03/07/01 02:53
「テスト」「目玉」「神経」

「そんなことを言いだすなんて、君の神経を疑ってしまうよ!」

友人にカンニングを持ちかけたところ、こんな言葉が返ってきた。
ふん、神経なんていくら疑われてもいい。
いまの僕にとって、大事なのは明日のテスト、ただそれだけだ。
彼にいくら軽蔑されようと構わないと思い、僕は説得を続けたが、
結局はそれも徒労に終わってしまった。
最後まで僕の言葉に頷かないまま、彼は帰っていった。

さて、どうしたものか。
これまでに何度かカンニングペーパーを作成したが、
どうにも上手く隠せず、見つかっていたのだった。

どうすれば……そうだ! 目玉の裏に書けば見つかるまい!
そう考えた僕は、手近にあったスプーンを目に当て、押し込み始めた。

僕は確かに病んでいた。

※感想書きの方、いつもありがとうございます。
 次は「水たまり」「鞄」「柱時計」でお願いします。
532うり:03/07/01 13:06
「水たまり」「鞄」「柱時計」
柱時計が午前二時を静かに告げる。
本来なら、けたたましいばかりに鳩が飛び出す仕掛けだが、
病床の僕に対する家族の気遣いで、いたって静かなものだ。
「健一君、具合はどうかね?」一枚板の立派な部屋のドアが、微かにぎっと音をたてる。
窓から差し込む月明かりが、きちんと撫で付けられた白髪だらけの頭をてらてらと照らす。
黒いレインコートの裾から水滴が垂れる。
足元に大きな水たまりが出来ているが、気にせず黒革の鞄を床に置き、聴診器を取り出す。
雨滴に濡れた眼鏡の下で、ほんの少し目が細まる。
「あれから三年だが、今も健一君の様子が気になってね」悲しいげに僕を見詰める。
三年前の豪雨の夜、この老医師は事故で死んだ。急に病状が悪化した僕の診察に向かう途中だった。
あの日から毎日午前二時に老医師は僕の診察に来る。
突然部屋の明かりがついた。老医師は消えた。……そして僕も。
「健一がいなくなってからもう三年も経つのか」
「どうしても部屋はあの日のままにしておきたいの」
中年にさしかかったばかりの女は、机の上のランドセルに頬擦りすると涙をこぼした。

次のお題は「蛍光燈」「田植え」「化粧」でお願い致します。

 「ただいま」小さく呟いて、幸子は玄関の鍵を開けた。良平はまだ帰ってはいない。
いつものことだ。幸子はため息をついて灯りのスイッチを入れた。
嫌味なほど時間をかけ、蛍光灯がやっとつく。しかもその光はちらちらと、ついたり
消えたりを繰り返していた。幸子は舌打ちをした。
――蛍光灯替えてって何度も言ったのに。前はこんなじゃなかったのに。
 結婚する前、良平は優しかった。そもそも付き合うようになったきっかけも、
同じ事務所で働いていた幸子が切れた蛍光灯を替えていたのを、良平が手伝って
くれたことからだった。
 幸子はじっと自分の手を見た。結婚するまではマニキュアを欠かしたことがなかった
桜色の爪。今は何度あらっても落ちない、くすんだ土のような色の指先。
 先ほどまで幸子は良平の実家の田植えを手伝っていた。結婚と同時に仕事はやめた。
良平に家にいて欲しいといわれたから。義理の親もいい人たちだ。農家の嫁として
扱われるわけではない。農作業を手伝う事は決して嫌ではなかった。けれど……。
 幸子はカーテンを開けた。窓ガラスに自分の血の気の無いくすんだ顔が映っている。
明日は化粧をして、桜色の爪で田植えに行こう。幸子はぼんやりとそう考えていた。

 次は「野球」「七夕」「銀」でお願いします。
534「野球」「七夕」「銀」:03/07/01 21:15
毎年この季節になると感傷癖が出てくる。

昔、同じ野球部の友達が書いた七夕の願い事を俺が馬鹿にしたら顔を
真っ赤にして泣きながら「先生に言ってやる。」と言ってきたこと。

風邪のひいて熱を測ってる時に好奇心から体温計を割って中からでてきた
水銀を指先でいじっていたら母親に激怒されたこと。

仲良しの女の子の家にいつものように遊びに行ったら引っ越してしまっていたこと。

なぜか思い出すのは俺が小さい頃の事ばかりだ。そして微かに感じる胸の痛み。

センチメンタリズムというのは無垢さを失わないための身体側の防御策か?

「隣」「パトロン」「形見」でお願いします。



535隣 パトロン 形見:03/07/01 23:15
 先月、私のパトロンがこの世を去った。新しい伯爵様は芸術にとんと
興味がないようで、私はあっさりとお抱え画家としての職を御免となった。
僅かばかりの手切れ金と、形見代わりの銀杯で、私は文字通り放り出され
たのだ。
 アカデミーに出品しようにも、現在の主流は外光派で、私のようなロココ
風絵描きの出る幕などない。そうこうしているうちに蓄えも心許なくなり、
私は口を糊するため街頭絵描きとして公園に立つこととなった。
 ここ一週間、シャンゼリゼの噴水に陣取り、カンバスを掲げてはいるものの、
道行くひとの誰一人として私に声をかけようとしない。絵で食べていくことが、
これほど辛いと思ったことはない。
 隣人たちの間にも私の窮状が伝わり始めたようで、けさ隣のアパルトマンに
住むマダム・レア―ドが遠慮がちに声をかけてきた。なんでもポトフを作りすぎ
たので、少々引き受けてはもらえまいかと。
 金銭には不自由する身となった私だが、隣人の温かみという宝に気づいたのは、
なかなかにありがたい事だと思う。

 次のお題は「パイナップル」「値上げ」「付け毛」で。
 よう、久しぶり。珍しいなあ、こんな……田舎で会うなんて。7、いや8年ぶり?
大学の時はよく一緒に山に登ったよなあ。ここも本当に久しぶりだし。
え、何しに来たんだって? お前こそ、そんなトランクなんか持って、奥さんの荷物持ちか。
俺たち旦那族も厳しいよなあ。この不景気でボーナスは少ししか出ない。給料は下がる。
医療費もタバコの税金も上がったし、何でも値上げすりゃいいってもんじゃないだろ。
薄給取りはせいぜい奥さんのご機嫌伺いでもするしか……ねえ、奥さん。

 俺は何気なく高橋の細君の肩をぽんと叩いた。するとその首がポロっと取れた。
よく見るとそれは顔の描き込まれたパイナップルだった。
高橋は青い顔でぶるぶる震えながら俺の方を睨んでいる。俺は慌てて「まあ待て」と
いうと、木陰に座らせていた女房に近づき、帽子から出ている髪の毛を引っ張った。
付け毛にしていたトウモロコシの毛がはらりと抜け、大き目のサングラスが落ちる。
俺の女房の顔は白瓜だった。しばらくして高橋は口笛を吹いた。

 それから俺たちは、お互いの最高傑作の女房殿たちを仲良く座らせると、二人で
大きな穴を掘り始めた。お互いの持ってきた、二つの大きなトランクを埋められるだけの
大きな穴を。町に帰ったら乾杯だな。俺たちはいまや自由にボーナスを使える身分だった。

 次は「サンダル」「煙草」「小麦粉」でお願いします。
かつら税がまた値上がりするようだ。
私は税金の値上げを知らせる新聞を放り、己の禿頭部をさすった。
見事にはげあがったこの頭。
輪切りにしたパイナップルの如くに、旋毛周辺にぽっぽかりと更地がある。
「てっぺん禿げ」と甥にからかわれだし、もう三年になる。二十代でこの様だ。

かつら・及び植毛に税が――それも高額の税金が課せられたのは、
勿論、石油をはじめとする天然資源の枯渇に起因する。
天然資源枯渇防止を御旗に掲げた条約が批准されたのを受け、
我が国の政府は稀少資源を原料とする奢侈製品に莫大な税金を課すことに決定した。
その中にかつらや植毛が含まれた。
各かつらメーカーは廉価な人口毛の生産を縮小し、高価な人毛の生産に特化した。
結果、かつら及び植毛は一部の金持ちたちの専有品、貴金属に負けず劣らずの贅沢品となった。
かつらばかりかつけ毛やウィッグも入手困難となった。

私はこれからある議員のもとに税金値上げ反対の請願に行くつもりだ。
噂ではその議員は植毛手術を行っている同士であるらしい。
同士ならばきっと貧しく、頭髪に不安を抱えるものの艱難がわかるはずだ。
私は「全日本禿頭連盟会」のたすきを見詰めた。


#お題は536のものを。
538うり:03/07/02 15:58
「サンダル」「煙草」「小麦粉」
「ママ、みいちゃんがおつかいにいってくる」みいちゃんは大きな二重の目を
くりっと輝かせ、母親を見上げた。
はじめてのお使いで母親に誉められて以来、みいちゃんはお使いに行きたがる。
「ありがとう。じゃあ、みいちゃんにお願いしちゃおうかな」母親は嬉しそうに目元を緩める。
みいちゃんはうきうきしながら鼻歌を口ずさむ。
「小麦粉とパパの煙草をお願いね」母親はみいちゃんの頭を撫でると千円札を渡す。
みいちゃんは、パパがいつも吸っている煙草のパッケージを思い浮かべた。
「いってきまーす」みいちゃんは玄関で見送る母親に大きく手を振った。
「こむぎこ。たばこ。こむぎこ。たばこ」みいちゃんは呟きながらスーパーに向かう。
みいちゃんが歩く度にぱこぱこと足元で音がする。
悪戯気分で母親のサンダルを履いて来たのだが、大き過ぎて歩きづらいのだ。
「こむぎこ。たばこ。こむぎこ。たばこ」ぱこぱこぱこ。みいちゃんは立ち止まって足元を見詰め
頬を膨らませる。サンダルが気になって仕方無い。
「サンダルきらい」みいちゃんは思わず口に出す。
「サンダルきらい。こむぎこ。たばこ。サンダルきらい。こむぎこ。たばこ」
――お使いから戻ったみいちゃんは母親に泣き付いた。
「あのね、サンダルとこむぎこをかったら、たばこのおかねがなくなっちゃった」

次のお題は「硝煙」「海水浴」「ひまわり」でお願い致します。

539マン滓 ◆C.k2k3TiHw :03/07/02 19:31
硝煙の匂いがするマンコを指マンで決めると、あたりにひまわりが咲き誇った。
臭く、そして、強い、力強い、あの締め付けを伴った粘着を前にして僕たちは海水浴に行くことを
止めてまでもあの娘をハメることにした決断が間違っていなかったことを実感として噛み締めた瞬間だった。
「良き週末だな」池田が他人事のように言った。
「ああ」僕はギターを手に取り、微笑んだ。「古きよき友よ、今の暮らしを恨むんじゃないぜ」
歌声は夜が更けるとともに高まり、僕らはまたあの娘を指マンしたりして、思い思いの時を過ごした。
「おい、吉村。指マンしたお前の指を嗅いで見ろ」池田が言った。
僕は意味は分からなかったが池田の言ったようにした。硝煙の匂いはもうしなかった。ただ隠微な匂いがあっただけだった。
僕は意外だった。「硝煙の匂いが……」
池田が言った。「時は過ぎ行くのさ」彼は真剣なまなざしをしていた。初めて出会った頃のように。

次は、「湖畔」「ときめき」「マングローブ」
「硝煙」「海水浴」「ひまわり」

田舎の祖母の家に、家族みんなで海水浴に出掛けた。祖母の家は海のすぐ近くで
着いたらすぐに父から泳ぎを習う予定だったのに、僕は急に熱を出してしまった。

「お父さんと愛子は、海で少し泳いで来るから大人しく留守番しとけよ」
「お母さんはおばあちゃんと夕飯の買い出しに行ってくるから、起きちゃだめよ」

そう言うとみんな出掛けて行った。仕方なく縁側でタオルケットを掛けて麦茶を
飲みながらゴロゴロしていると、庭の大きなひまわりの間から突然、にゅっと人が出て来た。
びっくりして起き上がると、その人は「しーっ!」と口元に指を立てて僕に黙るように指示した。
痩せてしぼんだ黒い顔にボロボロの灰色の服を着て、変なひもを足に巻いている。

「坊主、水をくれ」と小さな声で言うので、慌てて麦茶のグラスを渡すと何杯もお代わりをして
「ここは、静かだな」とぽつりとつぶやいた。「硝煙の匂いもしない」
「しょうえん?」と僕が聞き返すと、自分の汚い帽子を脱いで、僕に見せてくれた。
焦げた丸い穴が無数に空いている。「もう戻るよ。仲間を助けなきゃいかんから」

そう言うと、また庭のひまわりの向こうへ帰っていった。戻ってきた父にこの話をすると
「そうか。まだ戦っているんだなあ」と言って、ずっと庭を眺めていた。

仏壇の上に飾られている若い男の人の写真は、どこかさっきの人に似ていた。

お題かぶりですみません。スルーして下さい。
541マン滓 ◆C.k2k3TiHw :03/07/02 20:29
次は、「湖畔」「ときめき」「マングローブ」
 山で女の子に逢った。湖畔で逢った。夜中に逢った。
 十九歳で無職、口癖は「嫌よね」と「楽しい」。世界は汚いときめきっていた。
 出逢った頃、彼女の指は七本だった。左手の人差し指と小指、右手の小指がなかった。
今では更に両手の薬指がなくなり、合計五本になっている。
 僕は彼女と何度も逢った。同じ湖畔で、朝に昼に夜に逢った。
 ある日切断した指を見せてくれた。確か左手薬指。これは汚いものだと言って、
彼女はそれをぐちゃぐちゃにした。僕もやらせてもらった。イってしまった。
 彼女は言った。
「マンブローブのある種は、塩分を特定の葉っぱに溜め込むから、海水域でも生きてられるの。
私も同じ。汚いものを指に溜めてるのよ。……やがて、塩分の溜まりきった葉は落ちる」
 ある日、彼女の指を噛んだ。血が出、骨に達するまで。そのままイった。今度は彼女の中で。
 それ以来、ほぼ毎日のように関係を持っている。彼女の指は、ぼろぼろ。
 でも、どうしてか、僕とヤるようになってから、彼女は指を切らない。


 次は「蚊」「喜」「苦」でお願いします。
543蚊、喜、苦:03/07/02 23:48
「くそっ!」
頬の痛みを押さえつつ、僕は叫んだ。
丑三つ時、どこから入ったから知らないが僕の寝室に一匹の蚊が舞い込んで来た。
豆粒より小さいこんな虫のために、僕は眠りを妨げられた。猛烈にくやしさが
込み上げてくる。僕の頬に止まり、図々しくも血を吸おうとする瞬間、僕は頬を
叩いた。しかし、蚊はつぶさにそれを察知し僕の鼻の上を通り回避した。
この時、この蚊はどう思っているのだろう。僕の「苦」に満ちた怒りの顔色を伺い、
自分は「喜」と言う嫌味な感情を抱いているのか。そんなに、僕の怒髪が天を
突く様はおかしいのか。

耳もとでうなる蚊と、僕は小一時間格闘した。


次は「病死」「あなご」「懐中電灯」でお願いします。
544「病死」「あなご」「懐中電灯」:03/07/03 01:58
丸い青空に、妻を焼いた白い煙が、ゆっくりと昇っていく。

「あなごなんか注文するなよ。もっと高いもの頼めよ」
「うん、でも高いんでしょ。こういうお寿司屋さんって」
「いいから。金ならあるんだから」
「でも」
「お前が美味しいって言ってくれたら、俺は嬉しいんだよ」
「でも、本当にいいの。無理しないで」
「解ったよ。お前には、もう何も奢らないからな」

妻は病死だったが、苦しんだ時間が短かったのが、
彼女にとって(そして私にとって)救いだっただろう。

「懐中電灯持ってるから」
「いやよ。何で、そんなもの用意してるのよ」
「頼む。俺、見た事ないんだよ」
「ビデオとかネットとか、いっぱい見てるくせに。
知ってるんだから」
「お前のが見たいんだ」
「ばか」
「ちらっと見たら、すぐ消すから」
「ばか」

丸い青空に、妻を焼いた白い煙が、ゆっくりと昇っていく。
とりとめのない彼女との思い出が、次々に私の脳裏を駆け抜ける。
これから繰り返される何万の昼と夜の中で、
私は何度となく彼女の横顔を思い出すのだろう。
幸せな日々。
私は目を閉じて、そして静かに目を開いた。

次は「幸せ」「夜」「注文」でお願いします。
 久方ぶりのお客様はかつていらっしゃったお客様達同様に、呆然としたご様子でした。
私は静かに近づいて、窓際から13番目のお席に案内致しました。そこで、ご注文を承ったのです。

 最初に受けたオーダーは、ここは何処なのかというご質問でした。私は答えました。
ここは夜と昼の区分の意味をなさない場所にある、如何なる注文をも承る店である。
不幸の対価に幸せを売る万屋であると。
 お客様はお喜びになりました。なんでも、生涯の大半を掛けて当店を探していらっしゃったとか。
 次にお客様は店長が居るかどうかをお尋ねになりました。亡くなりましたと答えると、
お客様は嘆きました。「ああ、既に神は死んでいた」
 更にご注文を訪ねましたが、お客様は店長のいない当店にもう用はない、帰りたいと仰いました。
 そこで私は二つのご注文の会計を致しました。

「以前の客はどんな注文をしたのか」
 かようなオーダーを受けまして、私はお客様にご説明致しました。
一つ前のお客様がお選びになった会計方法についても。

「窓から十二番目のお席をご覧ください。椅子に掛かったあの見事な帽子。
あれこそは貴方様の一つ前のお客様がお支払いになったご本人のお召し物であり、
かつご本人でいらっしゃいます。一流の皮職人によって命を得た最高の品でございます」

 かつて在り、今は無く、いつか甦る店長の為、私はお召し物を用意せねばなりません。

 十三番目のお客様には、換えの靴下になって頂きました。


次は「極北」「首吊り」「火柱」でお願いします
546「極北」「首吊り」「火柱」:03/07/04 01:02
寒い、とにかく寒い。夏だというのに凍えるような寒さだ。

旅行先で流行り病にかかってしまい、絶対安静を告げられた私はホテルのベッドの中で全身を小刻みに震わせている。
毛布を二枚、その上から分厚い羽毛布団で全身を覆っているにもかかわらず、私を襲う悪寒を追い出せずにいる。

吐き気もある。口に物を運んでも全て吐き出してしまい、仕舞いには胃液まで吐いた。
おかげで楽しみにしていた地元の特産品とやらも食べることが出来ないまま日本へ帰ることになるだろう。

こんなことになるんだったらおとなしく予算をケチって「二泊三日!究極北海道の旅」にでも行ったほうがましだった。

医師の話ではこの症状は三日もすれば消えるという。
それを通り過ぎたら、むしろ全身マッサージを受けたような爽快感に驚かされるよ。なんて笑いながら言われたが、
私としては三日間も生死を彷徨うような高熱と、
一時間程で済む、心地よい空間で過ごす時間とを同一視しようなんて気には到底なれない。

それでなくとも初めての海外旅行の半分以上を潰されては、肉体疲労が癒されたところでそれ以上のショックを受けてしまっては元も子もない。
第一、その前にこのまま死んでしまうとも限らない。

そんなくらいの熱と吐き気とに襲われついには今見ている景色さえもだんだんおかしなものになってゆく。

野良犬の群れが部屋の周りをぐるぐる回っている
ハンガーに掛けられた背広が首吊り死体になって私を恨むような目つきで見つめている
天井に無数の顔が浮かんでいる
外から見える噴水が火柱を上げている
紳士服に身を固めた某映画俳優が「調子はどうだい?」なんて話しかけてくる

映画俳優の名前を思い出そうとするうちに、私の意識は目蓋と同調するように下へ下へと落ちていった。


次いってみよう。「郵便局」「満月」「すべからく」です。
 「あなたのそばの24時間ぽすぴたる」
 訳のわからない標語の書かれたたすきをかけ、僕は表通りに出た。
町の中心部とはいえ夜の10時。人通りもなく、ぱんぱんに膨れた鞄は重く、
そのくせ満月は白く冴え冴えと丸く、何だか僕は泣きそうになった。

 数年前に国のお役所から「郵政公社」へと名前を変えた。中身も変わっていたのだろう。
その頃勤め始めた僕には、違いがよく分からなかったけれど。
 はっきり変わってきた(おかしくなってきた?)のは、去年くらいからだ。
他にも手紙を配達する業者が出てきて、コンビニでの集配やポイントカードを
売りにし始めた。切手の売上は目に見えて落ちた。
 対抗してうちもコンビニに切手置いてもらえばいいのだが、偉い人いわく
「すべからく郵便局こそ地域の精神的支柱になるべし」
要は郵便局は無くさないぞということだ。僕は嫌な予感がした。
 その翌日、新しいサービスが始まった。第一に24時間の指定集配配達、そして第二に
豪華サービス。出張掃除やらマッサージやら、手紙の配達のおまけにつけたわけだ。
とにかくお役所は極端だ。評判は上々だけれど、下っ端の身にもなって欲しい。
 鞄にマッサージセットを詰めて深夜の配達に出かける僕は、白い満月に背を向けた。

次は「かき氷」「新聞」「隕石」でお願いします。
・・・思い出した。
俺は、広げた新聞の「隕石!?」という見出しが目に入るや否や、底知れぬ虚脱感に襲われた。5年前のあの夏・・・。

映画のラストはとても良かった。Armageddonという隕石映画。(知っているかな?)俺は感動して涙を流していた。
でもね・・・横向いたら、彼女は寝てたんだよ・・・(しかもヨダレも垂れてた・・・)俺は愕然としたね・・・。

「わたしはァ、ブルース・ウィルスよりもブラピかなァ。ていうかね、理想なの!理想!」
「でも、わたしはァ、英語はダメだからやっぱり日本人?それか日本語がメチャできるガイジン〜」
「ガイジンていえばさァ、よく渋谷歩いてると黒人系の人に声掛けられるんだけど〜」
「あっ、急にラップ聴きたくなった。ラララ♪」

ハア?彼女の話はどんどんスライドしていって、ついてけない。
俺、冷めかけたコーヒー、飲みたくなかったけど、すすった。彼女はちょっとだけ食べたかき氷、話すことに夢中で、後はザクザクスプーンでかき回しているだけ。・・・寒。喫茶店のクーラーききすぎ。

そして彼女、やおら時計をみるや言った。「じゃ、一万円!!」
手を差し出されて、俺、情けなくなった。ハジメテの援交。(もう、やんない)
549548:03/07/05 00:24
次は「酔」「陽」「美」でお願いします。
550名無し物書き@推敲中?:03/07/06 00:44
「酔」「陽」「美」

希美子のお父さんは、酔うと必ずウイスキーの入ったグラスを振って、
中の氷をカラカラ言わせるのが好きだった。ほんのり赤く染まった
お父さんの頬や、グラスを持ったごつい指がしなるのが
なんとも言えず大人っぽく見え、自分も大きくなったら
グラスの縁に手をかけて氷をカラカラさせるのだと、そんなふうに
思っていた。
酒に陰と陽があるのを知ったのは、高校生の時だった。
陰の酒と陽の酒、それにどんな区別があるのか希美子は知らない。
友人達も皆分からないと言った。ただ、生まれて最初の酒が陰の酒
てあれば、飲んだ人は下戸になるという。
文化祭の打ち上げで、希美子は初めてビールを口にした。
身体が大きく回転した気がした。と、すぐ後で異常な吐き気が襲ってくる。
眠気と気持ちの悪さが混同し、トイレに駆け込んで何度も嘔吐を繰り返した。
壁に描かれた下手糞な美の女神が笑って希美子を見下ろしている。
希美子はビールは陰の酒だ、と思い、そこですぐに思い直した。
陰の酒は、お父さんが子供の時についでいたウイスキーだったのだ。
きっとあの時、こっそり自分も舐めていたに違いない。大人の味だと思ったから
お父さんのように早く大人になりたかったのだろう。と。

お次は「白」「生首」「ネジ」で。
551白・生首・ネジ:03/07/06 01:36
「これはうちの子じゃありません!」
母親の剣幕に博士は圧倒された。母親の注文通りに作った男の子のロボットは
確かに事故で死んだ4歳の息子には似ていなかった。世界初の試みはこの母親の心を
満たすことはできなかったのだ。博士は棚のホルマリン漬けの生首を見上げた。
「頭部は幸いほとんど損傷を受けていません。これをこのロボットの体に接続してみましょう。」
母親は頷いた。博士はホルマリンのビンから生首を取り出すとロボットの体に接続し始めた。
一本、また一本とネジが締められていく度に母親の顔に笑みがこぼれる。
「また会えるわね。私の天使」
ため息をつきながら博士は母親を振り返った。「できましたよ」
博士がスイッチを入れる。ベッドに横たわったロボットは足をばたばたさせながら起き上がろうとするが
うまくいかない。
「がんばれ、がんばれ、あなたは強い子よ」
やがてロボットはベッドから落ちて動かなくなった。
「首が重過ぎるのです」
博士はロボットに白い布を掛けた。
母親は呆然としたままこんもりと盛り上がった布を見つめた。
博士は母親に息子の死を2度味わわせたことを後悔した。

次は「Yシャツ」「蜜蜂」「警察官」
物の怪に触れたようなひやりとした感覚がした。
首筋に、Yシャツの襟と盆の窪のそのちょうど中間当たりに、
そわそわとするなんやら異様ななものが蠢いている。
私の首に触れる感触。及びその重み。更には微かに感じる陰鬱な気配。
ハチであろう。私は結論を出した。
しからば何蜂なのだろうか? 
蜜蜂ならばあまり問題はない。が、スズメバチならどうだろう。
アナフィラキシーショックに陥るかもしれん。それは死への片道切符を意味する。
わきの下に汗が滲む。

「すいませんが、首筋にハチが止まってしまったようで……、見てくれませんか?」
普段なら人見知りが激しい私はおいそれと他人様には話し掛けないのだが、今は緊急事態だ。
近くにいた警察官に頼んでみた。
まだ初々しい青年は怪訝な表情をしながらも私の背後に回りこんで確かめてくれた。
「何もいないですね」
――そんなはずはない。
「よく見てくださいよ」
私は声を上ずらせながら懸命に頼み込んでみたが、
その若い警官は「何もいないですよ」と捨て台詞をはいてその場を後にした。
しかし、それならば……微かに感じる痛みともいえる感触はなんなのだろうか……。


# 次は、こけし・初心・冷やし中華。
553冷やし中華 こけし 初心:03/07/06 15:06
冷やし中華を食べると、昨日までの自分を思い出す。会社で食べた最後の昼食が冷やし中華だった。あんな嫌な所はすぐに忘れたと思って、同じものを食べてみた。
自分が会社を変えてやるんだと入社した当初の初心は、今もよく覚えている。
いつの間にか頭の中でただ言葉を繰り返すだけになってしまって、嫌なことがあったときの逃げ口上でしかなかった。
母が入社祝いにくれたこけしが棚に飾ってある。ほこりをかぶっている。
こけしのほこりをきれいに拭き取ると、冷やし中華の容器をゴミ箱に捨て、ぼくは部屋の外へ出た。
554名無し物書き@推敲中?:03/07/06 15:09
次は、都会 未来 期待
555まんこ、ちんこ、セックス:03/07/06 15:12
俺は工藤伸一を個人的に知っている。彼の家に行った時、彼は
あごひげを生やしていて、俺は一瞬まずいものを見てしまったような気
になった。もともと彼がハンサムではないことは分かっているものの、
顔面が髭でぼーぼーの彼を見ると、それはもう人間ですらなく原人で
あるように思われた。彼は俺に行った。
「どなたですか?」
「え・・・あの・・・2chでいつもお世話になっているものです」
彼はその言い方がおかしかったのか、豪快に笑った。俺は彼が
いつもネットの掲示板で見せているナイーブな面を期待していたのに
初めて会ったときの彼の印象は原人、この豪快な笑いのせいで
さらに原人に思えた。彼は俺に言った。
「まんこ、ちんこ、セックスってしってます?」
「は?」
一瞬、気詰まりの空気が俺たち二人を満たした。彼はあごひげを
引っ張りながら、独り言を言った。
「ふーん、あれを読んでいないのか・・・あれはいい小説なのに」
このとき俺は思った。工藤さん、フラ○ス書○文庫があなたという
才能のある人の才能をつぶしているのを知らないのですか?
俺は涙に明け暮れた目で大空を工藤の家の窓から見上げた
556画像?????:03/07/06 15:19
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557名無し物書き@推敲中?:03/07/06 17:38
558名無し物書き@推敲中?:03/07/06 18:00
age
559夏 花火 一回忌:03/07/06 18:11
明日は祖母の一回忌
両親が共働きだった俺はばあさんに育てられたようなものだ
孫の俺を可愛がってくれて、いつも笑顔だった
夏休みになるとばあさんの前で
姉さんと従兄弟2人の4人で花火をやったもんだ
姉さんと従兄弟に明日の一回忌の連絡を入れる
電話が終わると早速荷物の準備をした
バックにしっかりと花火を詰め込んで


花火を
560名無し物書き@推敲中?:03/07/06 18:12
>>559
>>555
ルール守れや
561エヴァっ子:03/07/07 13:50
「懐かしいな、またこの季節がやってきた」
男はPC越しに見た風景に、嬉しくなった。
七夕――世間じゃ織姫と彦星のロマンチックな一日だが、創作文芸板の七夕といったら――。
一年前の夏にも――男はここで小説を書いた。
お題は継続、その合言葉の元、皆が同じ言葉を使ってさまざまな小説をつづった。
あの日からもう一年経ったのか、と男は思った。
なんだか遠い親戚の一回忌のような気分だ。

だから、男はこんなお題を出さずに入られない。
「次は花火、天の川、七夕で頼むぜ」
562花火 天の川 七夕:03/07/07 18:16
少女は母親に食ってかかった。
「天の川なんて見えないじゃん」
せっかくの七夕の夜だというのに、梅雨のこの時期天の川は見えなかった。
母親は落ち着いて少女に語りかけた。
「この時期はしかたないのよ」
「いや!織姫と彦星に会いたい!」
弱った母親はビールを飲みながらナイターを楽しむ父親を見た。
「簡単なことさ」
父親は笑って少女にウィンクをした。

人気のない夜の公園で少女と父親、母親が空を見上げていた。相変わらずの曇り空だ。
「早くやってよ。」
「でも本当にいいのか。あの雲を吹き飛ばしたら結構照れくさいもんだぞ」
「いいよ、だからはやく!」
父親は少女にせがまれて手に持ったコンビニの袋から家庭用の打ち上げ花火を取り出した。
それを地面に置き導火線に火をつけた。手で耳をふさぐ少女。
ドーン!轟音とともに花火が勢いよく上がり空に大輪の花を咲かせた。
少女は空を見上げた。花火の爆発で空に掛かる雲が消し飛んでいた。真っ暗な空に
天の川が輝いていた。
「織姫様は?彦星様は?」
「あそこにいるわよ」
母親が指をさした。そこには一年に一度しか逢瀬を楽しむことができない、織姫と彦星が
抱き合いキスをしていた。
少女は織姫と目が合い思わず手で自らの目を覆った。
「あんたにはちょっと早かったわね」
母親は少女の頭を撫でた。
563次のお題:03/07/07 18:19
テレビ局 ピザ屋 春
564名無し物書き@推敲中?:03/07/07 18:48
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「都会」「未来」「期待」「テレビ局」「ピザ屋」「春」

俺は珍しい「手相」をしている。「天」という字が両の掌にくっきりと刻まれているのだ。
子供の頃から「天下を取る相だ」「大物になるぞ」などと言われ、子供心に自分の非凡な未来を
楽しみにしていた。しかし現実は、平凡な会社員となり、ありふれた大人になってしまった。

ある日繁華街の路上で「手相見」を見かけ、何となく占ってもらいたくなった。
易者は繁々と俺の「手相」を観て「平凡な相だね。万年平社員で才覚、商才なし」と言う。
当然「天下人の相」だと誉められるとばかり思っていた俺には、意外な言葉だった。

しかし、これが起爆剤となって俺は猛然と会社を辞め、激安の「百円ピザ屋」を始めた。
安さと手頃さ、良心的なウマさが受けて連日行列ができ、支店も展開して、売り上げも上々。
「大都会の若き勝ち組 100人に聞く」というテーマでテレビ局の取材まで受けた。

あの時の「手相見」を再び見掛けたのは、ちょうどこの頃だ。「この世の春を味わっているかい?」
向こうから声を掛けてきた。「社長になったよ」俺が手を突き出すと「そうなると思っていたさ」
易者は平然と言う。「押せば引き、引けば押す。期待されると裏切り、成功すれば失敗を望む」

「どういう事だよ?」「つまりあんたは実に奇特な、天の邪鬼の相なんだ」驚いて更に詰め寄る。
「じゃあ、もうすぐ大失敗するのか?」「いや大成功するよ」俺は頭が混乱し始める。
「でも、反対の結果になるんだろ?」易者は笑う。「自分の未来だろ?全てはあんたの掌中にある」

(なんか書いていいものかどうか、ずいぶん迷いました。6題もウザかったらごめんなさい)

次は「勘」「酒」「星占」でお願い致します。
566勘 酒 星占:03/07/08 02:46
この店にはいって、鯖煮定食と少しのぶどう酒を注文する。知人の最近の口吻をかりれば、
これが存外合うそうで、それを今日はためすつもりであった。二十分もすればまさにディナ
ー・タイム、衆多の客がこぞって活況を呈しはじめる。
もとより彼女は浅酌低唱をたしなむ気はもちあわせていない、これだけ賑やかなほうがよろ
しいのである。ところが、自身を見ればさなぎだにステロタイプな占い師チック、くだけるとこ
の漆黒のフード付きローブとテーブルの下にたてかけてある檜杖に至っては一般人と呼ぶ
にはふさわしくない怪しい恰好。女の身としてはやや屈辱的であった。
「娘さん、娘さん」
 とはいえ、いつ峨眉山月を大声で吟するかわからぬような、これまたけったいな親父に、に
わか酒屋でいやらしく話しかけられる望みとて彼女にはないのだ。しぜんと左まぶたの肉が
震えると、おやこれが青筋をひくつかせる反応なのだなと意外に冷静であったが。
「娘さん、占い師なんだろう? おじさんの事も占ってくれないもんかのぅ」
 声帯をおさえられてちょっと哀れなアブラゼミの声で、始末に終えないことにはグラスをもって
いる右手にまで手を近づけてくる。ただの勘だけれど、そのぶくついた肌に触れると、なにかの
呪いで自分の手まで腐りおちそうな印象をうけた。
 彼女は黙ったまま意識して、あきらかに酔いどれである親父の手に空を与えつつ、フォーク
をにぎった右手を機械的に動かす……まだ親父はこちらを見ているようだ。
 このしつこさでは星占で嘘八百をならべたところで、この毛氈かぶりはへこむまい。いかがし
たものか……思考のすえ、気が向かないがここは占いと称して奴の恥骨をぶん殴って逃げる
ことにした。虚飾陥溺は彼女の得意とするところなのである。
その決心を顕すように、最後の一切れを口に運びおえると、彼女ははじめて男の顔をみてにっ
こりと笑みをうかべた。何の他意も見つからぬ笑顔だった。
テーブルの下の魔術杖がぶしつけな主人にあきれる様に、コツリ、と床に滑落する。
567566:03/07/08 02:47
またやった……お次は「不器用」「青」「挿話」でお願いします
568「不器用」「青」「挿話」:03/07/08 05:49
タツの精神波を感応したトワは全身を総毛立たせた。
怒りと呼ぶには凶々し過ぎた。
憎悪の扉を開き、太古の挿話に記された凶悪な凶ツ神が復活しようとしていた。
トワが迷ったのは一瞬だった。
トワの陰の精神波をタツの陽の精神波にぶつける事は、
すなわち対消滅により互いの精神波を消滅させる事を意味する。
私はいいよ、タツ。いっしょに消えよう。タツ、タツもいいよね?
怨嗟の化け物となったタツの目は、不器用な告白に何も答えなかった。
トワは、少しの悲しみと、ありったけの喜びを重ねて、
青白く光る自らの精神波を解放した。
569名無し物書き@推敲中?:03/07/08 06:23
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570不器用・青・挿話:03/07/08 09:45
「……それでね、青い鳥は実は家にいました、ってわけ」
「全然わかんねえよ」
少年はふてくされた顔で横を向いている。私は少し疲れていた。
 隣の芝は青い、小さな幸せが本当の幸せ――関係ないような挿話を入れてまで、
少年を諭そうとしている自分に気付いていないわけではない。
でも何のために? 少年は自供しているのだ。

 新聞のテレビ欄の裏に小さく載った記事。18歳の少年が、新しく知り合った女の子を
好きになり、長年付き合った彼女を刺し殺した。ただそれだけの半日解決した事件。
 なのになぜ、私は少年に説教しているのだろう。不器用な恋愛をした少女の代弁?

「あなた、死んだ女の子のことどう思っているの」
表情が動かない少年に、私は苛立っていた。その時ふと思いついた。
「あなたがコンビニで知り合った女の子、あなたの名前も覚えていないみたいよ」
その言葉に少年が顔をあげた。その顔はゆがんでいた。私の心にすっと風が通った。

 私はこの少年を諭したかった。後悔させたかった。小さな幸福を捨ててきた
自分の心の中の後悔や挫折感、それらを目の前の少年に背負わせるゆがんだ快感が
脳をしびれさせていた。もっと後悔してよ――私は唇の端が上がるのを感じていた。

 次は「ひやむぎ」「日陰」「ひまわり」でお願いします。
「暗いのう。日陰がそんなに好きかね」
と、坊主の声が同じ目線からとどいた。お寺の縁の下に隠れた楊次を、彼はかがんで見つめ
ているのである。冷や麦をともに食べようかと思って探してみればこのありさまだ。
「何やおんちゃん。おれが暗うてもなんちゃー困りゃせんろう」
「そうはいくかや」と坊主。
「飯できたき呼びにきたんじゃ。それに、お前(まん)約束したやろが。こないだ買うちゃった水
フーセンのお代に、今日は弟子の代わりで風呂掃除してくれるんやろ?」
 いちいちこんな時にそんな話振るな、そう言いたげに楊次は坊主を睨みつけた。そっと坊主
が持ってきた懐中電灯をかざしてみると、やんちゃが生きがいのような彼の顔は落涙とすすっ
たばかりの鼻で真っ赤であり、その弁慶には擦り傷がうかんで赤黒い線をいくつも作っていた。
 それを見て、やっぱりなと坊主はあきれながら、
「この悪(わり)こと師が、今度はどこにほたえ(騒ぎ)にいったぜよ!」
 と怒鳴った。坊主は間違いなくまたこの餓鬼が遊びにいったと思ったのだ。ところが、
「おれはなんちゃ悪うない! 悪うない!」
 涙目に赫々とした光をたたえて、楊次が歯向かう。自分の拳骨をおそれて、いつもなら呶鳴
られれば静かになるはずの悪たれが、今日は泣き顔を振って金切り声をあげていた。
「町の中学のやつが、かってにおれを殴って、東京もんやの、撫でただけで泣くゆうたりの、お
れをずっと追いかけよったがじゃ! 初めて会うたやつにそれぞ鬼か仇かみたいに殴られて、もうこれが悔しゅうてかなうか」
 一部始終を告げると、坊主と目をあわすのも辛そうに、ひざ小僧に頭をのせてかがみこむ。
 坊主はたとえどんなに怒られても涙をかみ殺すあの子供が、隠れているとはいえ泣きじゃく
っている姿を見るのが初めてであった。だから、今は驚くしかなかった。

#感想いらずです。ただお題がよく、駄文を書きたくなっただけなんで。
#次は、『冷房』『暖房』『頑固』で
572571:03/07/08 14:44
あ、「ひまわり」忘れてた……。
盛大なボケでスレ汚しごめんなさい……。
(´-`).。oO(気にスンナ・・・)
574名無し物書き@推敲中?:03/07/08 19:28
縁側で麦茶を飲みながら日向ぼっこを楽しむ
隣で妻が猫の毛繕いをしていた
猫は気持ちが良さそうに寝ていたが、妻は暑くないのだろうか
よく見ると手を機械的に動かしているものの
妻も眠そうに瞬きを繰り返していた
そんな姿が今でも可愛らしく見える

・・・・・暑い日の夜に冷房を利かせビールを飲むのもいいし
寒い日に暖房を利かせてコタツで寝るのもいい
けれど、こうして頑固そうな太陽とにらめっこを続けるのも
気持ちが良さそうだ

次は『月・猫・散歩』ミステリアスなの書いてくれい
575月・猫・散歩:03/07/08 21:00

漆黒の毛を纏う猫が月を見上げている。
今宵は満月。
月例15の月が白い光を放っている。
閑静な住宅街に猫が一匹。
外灯と月明かりに照らされた漆黒の毛は妖しく光っている。
首には赤い鈴のついた首輪がしてある。
どうやら飼い猫が飼い主のすきをついて家を飛び出したらしい。
月を見飽きたのか、漆黒の毛を纏う猫は優雅な足取りで歩きだした。

どこかからカッカッとハイヒールの足音が聞こえる。
猫は一瞬あたりを見回したが、馬鹿にしたように笑みを浮かべると、また歩きだした。
せわしない足音は猫に近づく。
「ぽち−」
ふいに自分を呼ばれた猫は家と家の隙間にするりと入り、飼い主の目につかぬように夜の闇に紛れた。

満月が猫を照らす。
その中を猫は優雅に散歩している…。
576名無し物書き@推敲中?:03/07/08 21:02
次は「赤・黒・青」血、夜、以外で表現。
「赤、黒、青」

焼けたアスファルトが黒いフライパンのように私を焦がそうとしていた。
暑苦しい赤信号はグルになって私をフライパンの上に足止めしているようだ。

「あの、チョットよろしいですか。」
振り向くと七月だというのにスーツを着た男がボールペンを片手に立っていた。
「何ですか。」
「アンケートです。ご協力をお願いします。」
男はクリップボードを取り出し、なにやら書き始めた。
「え、最初の質問です。あなたは今幸せですか。」
「はぁ?」
これはアンケートなのだろうか。こんな灼熱地獄の中で「幸せ」だって?
「どんなときに幸せを感じますか。」
「んー、と……」
やはり無理。今は不幸せな気分。
「幸せって何だと思いますか。」
「えー、と……」
信号が青に変わった。
「幸せはあそこにあるよ。」
道路の反対側を指差し、クーラーの効いたコンビニ目指し横断歩道を渡り始めた。


お次は「ゆめ、なつ、あめ」で。
578ゆめ・なつ・あめ:03/07/09 09:31
ゆめを見たよ。
プールでおよいでるゆめだった。

あついなあ。なつだものね。
きょねんは十三メートルおよげるようになって、
先生から青いろのしょうじょう、もらったんだっけ。

となりの白いテーブルの上に、ママがおいていったあめが三つ。
いちごが二つ、レモンが一つ。
日があたってとけかけている。
よくポケットにあめを入れたまま、にちゃにちゃにして、ママにおこられたっけ。

いつまでここにいるの、ってきいても、ママも先生もおしえてくれない。
秋のうんどう会までに、びょういん出られるといいな。
あついなあ。今ごろみんなはプールに入っているのかな。

 次は「きゅうり」「雷」「歩道橋」でお願いします。
579「きゅうり」「雷」「歩道橋」:03/07/09 13:44

もはや、ゴロゴロではなかった。ピシッ、ズドン!

「兄ちゃん、雷落ちた?」
「落ちたかもな! ヒロぽん、行くべ!」

父の大きな黒い傘にボドボドとその雨量を感じながら、
必死に兄の後を着いていった。国道は川に、歩道橋は水道橋に、
僕の長靴はといえば、もうほとんど水マクラだった。

冷静な兄は、雷が落ちた地点をきゅうり畑と踏んだようだ。

「なんでか、わかるか?」
「わかんない」
「雷様の大好物はなんだ?」
「おへそ」
「あ、それもあるけど、雷様はきゅうりも好きだからここに・・・・」

ピシッ! ビリビリビリ!

思わず耳をふさいだ兄に「きゅうり好きなのは河童じゃなかった?」
という僕の声は聞こえなかったみたいだ。

突き出しのモロキュウを前にして、ふと、
20年前のそんな夏を思い出していた。


次は「クラクション」「蟻」「あくび」でお願いします。
580579:03/07/09 15:43
× 兄の後を着いていった
○ 兄の後を付いていった

             でした
581「クラクション」「蟻」「あくび」:03/07/10 01:39
クラクションが鳴る。「雅彦、だめだったって。明日通夜だってよ!」
声の方向を見ると卓が軽トラックの運転席から身を乗り出している。
「だめだったか・・・。」俺はつぶやき、足元の稲を見つめた。

俺と卓と雅彦は中学、高校と同じクラスで親友だった。高校卒業後もほかのやつらが
地元を出て行くのを尻目に3人とも実家の農業を継いだ。雅彦はトロくてデブだったが、
持ち前の粘り強さでコシヒカリの出荷量は3人中トップだった。甘いものが大好きでいつも
みつ豆とか大福とかを食っていた気がする。ある日、雅彦の帰りが遅いので奥さんが田んぼまで
見にいくと雅彦はどろの中に倒れていた。原因は脳溢血。6ヶ月植物状態になり、
俺と卓がいくら声をかけても全く反応しなかった。

「明日6時から妙法寺だってよ。」その声で我に返った。

通夜当日に頼まれて香典の受け付けをやった。昨日はさすがにあまり眠れなかった。
夜、歯を磨いているといきなり涙がぶわっと出てきて2,3分止まらなかったが、それっきり
1滴も出ない。さっきから何度あくびをかみ殺しただろう。隣の婆さんが飴玉をくれた。
早速口に入れようとして、手を滑らせて飴玉が落ちてしまった。婆さんは気付いていないようだ。
まあいいか。ふと、地面に目をやると飴玉の周りを一匹の蟻が嬉しそうに歩き回っていた。


「証明写真」「CDR」「焼酎」で。
 真夏の太陽に照り付けられ、土ぼこりの街は白っぽく見える。丘の上からユミは目を凝らした。
白い街の中の灰色のしみ。ねぐらは離れてみると小さすぎて頼りなく思えた。
何かに負けそうな気がして、ユミは一気に丘を駆け下りた。

 ユミがねぐらにしている廃ビルは、天井が半欠けで鉄心ものぞいていて、建てかけのようにも
見えた。しかし近くで見るとボロボロに崩れた外装が、壊れたビルだと告げてくれる。
 ユミはコンクリートに耳をあてた。じんわりと熱い壁を通して、低い発電機の音が響いてくる。
ユミは裏口に回り、声をかけた。
「亮太」発電機につながれたパソコンの前に座る少年に、ユミは手に持った緑のアルバムを
ひらひらさせてみせた。亮太の顔がほころんだ。

 亮太はアルバムを受け取ると、ぱらぱらとめくった。遠足・運動会・文化祭……。
亮太もユミも慣れっこになっていて、表情に変化は無い。そして最後、卒業写真で手を止める。
亮太はそのページを丁寧にスキャナからパソコンに取り込んだ。
「大分たまってきたから、CD−Rに焼きたいな」
亮太の呟きにユミは「何とかする」といって頷いた。焼かれ破壊されつくしたとはいえ、探せば物はある。
今日の探索で、ユミはまだ開いていない焼酎を一瓶、手に入れていた。食べ物に替えるつもりだったが、
いざとなったら漁り屋のシンさんに渡せば、CD−Rに替えてくれるだろう。パソコンやスキャナと同じで。

 ユミは亮太の真剣な横顔を見つめた。それから画面の中の、顔・顔・顔。ユミの目の奥が熱くなった。
そろそろねぐらを移さなければ、でもその前に、できるだけ集めよう。私たちと同じ時、同じ街で生きてきた
人がいるという証明写真を――ユミは亮太の肩に両手を置いた。

 長くなってすみません。次は「鍵」「とうふ」「クローバー」でお願いします。
583パピヨン:03/07/10 17:47
とうふ屋のカドに、4つ葉になりきれぬクローバーがある。葉が1つ足りないのだ。
集団の中で4つ葉になれた者は優れているという決まりがある。
3つ葉のクローバーは皆4つ葉になろうと努力するが、どうすれば
葉をもう一枚増やす事ができるのか、その謎を解く鍵は何も見つからない。
実はある日、とうふ屋の子供がクローバーを踏みつけたのだ。そのショックでクローバーは驚いて1枚余計に葉を生やしたのだ。
やがて3つ葉のクローバー逹は人に踏みつけえてもらおうと、必至に自己主張するが
その後は、どれも4つ葉にはなれなかった。

  次は『人情』『平行四辺形』『野球』でお願いします。
584パピヨン:03/07/10 17:50
踏みつけえて→踏みつけて   誤字スマソ。
585名無し物書き@推敲中?:03/07/10 19:44
586うはう ◆8eErA24CiY :03/07/10 21:44
『人情』『平行四辺形』『野球』

 今日はプロ野球、某・無名球団同士の第一日目。
 始球式を務めるのは、デビューしたての無名のアイドルだった。

 「プレイボール!」
 ポテン、コロコロ。第一球は半分も届かぬままだった。
 「ごめんなさい、ごめんなさい・・・もう一度投げますので」
 「しょうがないなあ、もう一回だけだよ」と主審。
 完璧にルール無視の大サービスに、彼女は何度も頭を下げた。

 しかし、余りに頑張ったせいか、第二球は三塁にすっぽ抜けてしまう。
 「あ・・・ああ・・・」大きな目に涙をいっぱいためて、じっと手を見る彼女。
 これは放っておけないのが人情である。

 「うん、うん、大丈夫。今度は大丈夫だよ」
 「あ、ありがとうございますぅ」
 潤んだ目に、ホームベースが幾分近く見えた。
 心優しき内野手たちがベースを動かし、線を引きなおしてくれたのだ。

 マウンドを近づけ平行四辺形のダイヤモンドに、球はころがり続けた。
 夕方を過ぎて、夜になるまで。

※オールスターゲーム・・・こんな展開希望。
次のお題は:「ビキニ」「水爆」「プール」でお願いします。
 諸君らはミズバクバトルを誤解している。あれはプールでビキニ姿のお姉ちゃんが
きゃあきゃあ言いながら戯れる競技ではない。そも水風船と言う呼称からして誤りである。
あれは本来、水爆弾と呼称される。艦艇内での白兵戦の際、火薬庫への誘爆を招かない
ように開発された兵器である。硬質ゴムに75気圧で水を充填し、爆砕すれば大の大人を
4mも吹き飛ばす、そういう兵器である。

 昨今、スポーツへの認識が捻じ曲げられつつあるように感じられる。アステカの部族が
神に捧げる生贄を求めて近隣部族と争うための競技ドッジボール、マヤの部族が武神
テスカトリポカを称えるために生贄の生首を用いて行うラクロス、いずれも婦女子や少年の
競技として定着しているが、これらはいずれも誤りである。

 我々はこうした誤ったスポーツ観を正すため、今後も努力を重ねる次第である。

 次のお題は「キャラメル」「マッチ」「肥満」で。
588 ◆L.dyD/snow :03/07/11 00:45
「キャラメル」「マッチ」「肥満」

キャラメルのような感覚が、僕の心を支配している。
それは甘いけれど、ドロドロとした負の感情である。
彼女のことを思う度に、そんな気持ちになってしまうのだ。
マッチ棒のような手足を備えつつも、決して痩せ過ぎではなくスタイルの良い彼女。
彼女のことを考えると、僕の気持ちは甘くなる。
が、それと同時に彼女を憎む気持ちも沸き上がってくる。
なぜなら僕は標準よりもかなりの肥満体型なので、
彼女のスタイルの良さが、普段は眠っている僕のコンプレックスを刺激するのだ。

だが、この甘い気持ちを押さえられそうにない。
どうすべきか、としばらく考えた後、僕はある結論に達した。
「まずは体型のコンプレックスを無くすべきだ」
そう考えた僕は、学校にいつも持っていく
キャラメルの箱を投げ捨て……ようとして、やめた。

──その後も、僕は学校へキャラメルを持って行くのをやめなかった。
ただし、これまでと大きく異なる点が一つだけある。
そのキャラメルを自分では一つも口にせず、
彼女に会う度に、一粒ずつ笑顔で渡すことにした。

※次は「兄弟」「地下室」「記録」でお願いします。
589名無し物書き@推敲中?:03/07/11 03:43
「兄弟」「地下室」「記録」

おいおいちょっと待ってくれよブラザー
そりゃあちょっと無いんじゃないか?

二日前俺は兄貴と地下室に入ったんだ、何故って? 
そりゃ地下だからさ、夢があるだろ?

地下への扉を開く、中に入る、バタン。
突然扉がしまって開かなくなってしまったが、
そんなお約束では、神である俺はビビら無い。
しかしだな、兄はしかっりビビった訳だよ。馬鹿。馬鹿兄貴。馬鹿。
入り口いきなりはぐれるって有りか? 馬鹿。馬鹿兄貴。馬鹿。

これは其の馬鹿の馬鹿けた、迷子の記録。
≪地下室に入ったんだ。入り口が閉まってしまったんだ。俺は恐かったね、
 何故なら、そこは地下だったからだ、地下は、天から遠い、救いは訪れない、
 そう思ったんだ、しかしながら神は万能でね、こんな地下室へもしっかり救いをもたらした、
 その証拠に見てくれよほら! こんなに光があふれているだろ、声が聞こえるよ
 『オイ、ひとんちの地下で何やってんダ』 ビックリさ。まったくやってくれる。
 ここは人の家だったらしい、これで記録を終了する。≫

おいおいちょっと待ってくれよブラザー
そりゃあちょっと無いんじゃないか?

*次は『対人恐怖症』『歪み』『びっくり箱』でお願いしたい。
 僕はもう三ヶ月、学校に行っていない。親は僕の顔を見るたびに、いつも何か言いたげで、
そのくせ何も言わない。言いたいことは分かってる。
「もうじき受験なのに、大丈夫なの?」「学校、行った方がいいんじゃないのか」
でも言わない。お医者さんの言いつけを守ってるんだ。「本人がその気になるまでは」ってね。
 言いたいことを我慢すると、人間はだんだん顔が歪んでくるらしい。両親の口の歪みを
見るのが嫌で、僕は最近家にあまりいないようにしている。
 そうそう、お医者さんは僕にもいろいろ立派な助言をしてくれた。不登校の原因の一つは対人恐怖症とか。
そうなの? だって僕は学校に行ってる間、クラスメートと普通に話せていた。

「……確かに、友達は少ないし。それに自分から話すよりは、話し掛けてもらう方が楽だったけれど」
「だろう? 君はもう少し、積極的に人と話をしてもいいんじゃないかな」
 そう言って先生は、道行く人に花を渡して話し掛け、対人恐怖症を克服した少年の話を
してくれた。それから「びっくり箱なんか渡しても面白いかもね」とつけ加えた。

 だから僕はここにこうしているわけ。誰かが近づいてきたら、このびっくり箱で軽く驚かして、
それからあいさつをする……なかなか上手くいってないけれど。
 ん、足音だ。コツコツという軽いリズミカルな音。女の人みたい。よし、タイミングを合わせて。
「こんばんは!」 
「きゃああ」
女の人はすごい顔をして逃げていった。……また失敗だ。驚かせる方ばかり成功する。
僕はため息をつきながら、再び隠れていた段ボール箱に潜り込んだ。それから暗い箱の中で、
さっきの女の人の歪んだ顔、ちょっと母さんに似てたな、と思った。

 次は「ショートケーキ」「金貨」「泥水」でお願いします。
591純 ◆OPb3r6Vs1g :03/07/11 18:16
「ショートケーキ」「金貨」「泥水」

「死ぬ前に、なにか食べたいものは?」男が言いながら、椅子に縛りつけられた女の猿ぐつわを外す。
「あるわ」と低い声で女が答える。「ショートケーキよ」
「似合わなねえな。組織で一番の殺し屋がショートケーキとは」
「で、食べさせてくれるの」
「いや、訊いてみただけだ。最後の晩餐に何を食べたいか。おれは、いつも殺す前に訊くことにしている」
男は大柄の体をかがめると、足下の水たまりに手を入れた。「あんたにやれるのは、これだけだな」
女の口元にその手をかざす。男の唇がサディスティックにゆがむ。
「末期の水だ。泥水で悪いけどな」
女は、拒みもせずその水を口に含む。男が不思議そうに女の顔をのぞき込んだ。
「忠告しとくけど、あなた縛るのが下手ね」
女の口から泥水が吐き出され、男の目を射た。「くそ」
それが男の最後の言葉だった。首を異様な角度に傾げたまま、男は崩れ落ちる。それは、自分の死を心底不思議がっているように見えた。
女が何かを男に放り投げた。Oの字に開けられた男の口に、金貨が入り込む。
「少なくて悪いけど、水代よ」と女が言った。

長くてスマソ
次は「缶コーヒー」「ピンポン」「雪」でお願いします。

592純 ◆OPb3r6Vs1g :03/07/11 18:26
読み返すと、口に水を入れて喋ってるなあ。
とりあえず殺し屋の仕事が暇なときには、
バイトで腹話術師をやってると言うことで。トホホ
593パピヨン:03/07/11 19:06
『缶コーヒー』『ピンポン』『雪』
オレは負けず嫌いな性格だ。どんな些細なゲーム、例えば温泉旅行でのピンポンですら例外ではない。
この日は一日中寒く、夜には雪も降ってきた。温泉あがりのオレには心地よい涼しさだったが、
後に温泉から出てきた友人の1人が寒いのでピンポンをして温まろうと言いだした。
オレはわざわざ今さら汗をかきたくないと断ったが、友人はどうしてもと言う。それも負けた方が缶コーヒーをおごるのだと。
こうまで言われて黙っているオレではない。勝負事は大好きなのだ。いざ、勝負が始まるとピンポンに集中した。
友人は言い出しっぺの割に話にならぬほど弱く、オレの半分も点を取れなかった。
オレが戦利品の缶コーヒーを飲んでいると、あろうことか友人はもう1本缶コーヒーを買った。
『おい、何をしている、オレに奢る缶コーヒーは1本でいいんだぞ』
『いや、これは僕が飲むんで・・・・』
オレはその言葉を聞いたとたんにカチンと来た。
『あのな、オレが賭けたのは缶コーヒー代の120円じゃあないんだよ』
そう言うと、友人は不可解そうにオレを見つめた。

次は『鉄条網』『出血』『ワイン』でお願いします。
594gr ◆iicafiaxus :03/07/11 23:50
「鉄条網」「出血」「ワイン」

午前三時。電気の消えた大講義室に、十数人の男女の影。壇上の青年は語る。
「同志諸君。諸君らの働きのおかげで我々は無事、中央講堂を占拠、つまり
有産者反動勢力から我らプロレタリアート学生の手に奪回することに成功した。
なお、学長室にワイン、葉巻その他の多量の資源が蓄積されているのを発見
した。(一同喝采)これらは封建的権力により搾取されていたものであるから
我々人民の所有に帰すべきものであるので、追って分配を行う。静かに!
予定通り夜明けと同時に各報道機関に声明を発表、かつ打上げ花火をもって
盛大に資本主義的学長像を爆破する。本日の夜明けは記念すべき民主主義の
夜明けとなるであろう。これから長期にわたる籠城戦が予想される。諸君は
それに備え、少しの時間ではあるが十分休養しておくように。解散」
仲間たちはそれぞれ床に毛布を敷いたりして仮眠を取り始めた。木田祐子と
中森重雄はリーダーと共に講堂を出る。深夜のキャンパスに人影は無い。
「初日から不寝番を任せてすまないな」「いえ、光栄に思います」
鉄条網を張ったバリケードの脇に二人、並んで腰を下ろす。まだ蜂起のことは
知られていないのだから、機動隊とのにらみ合いなんかも無くて気楽だ。
リーダーは屋内に消え、中森は無言のまま木田祐子の化粧っ気の無い横顔を
見つめている。中学生だといっても通るような童顔の少女だ。人が振り向く
ような美人ではないが、一つ一つの動作が可愛らしくて守ってやりたくなる。
その木田の腕にはこの前のゲバルトで得た内出血のあとがまだ青々と残る。
中森は無言を続けながら、木田の白いTシャツの背中に、そうまでして少女を
駆り立てる革命とは何だ、と問うていた。


#次は「傘」「足音」「唇」で。
595名無し物書き@推敲中?:03/07/12 03:13
小皿に残った最後のナッツを口に放り込み、アルコールのせいで少しふらつく足で僕は立ち上がった。
薄暗いバーの入り口の戸を開けると、外から雨音が大音量で飛び込んできた。
「降ってますねえ。」
初老のマスターが残念そうに呟いた。先ほどまではBGMのせいで雨音は聞こえなかったようだ。
「マスター、置き傘なんて、無いよねぇ。」
僕がそう言うと、マスターは残念そうに、そうですねぇ、と呟いた。
「じゃあ、水割りもう一杯。飲んでる間に少し雨足が弱くなるといいんだけどね。」
僕は先ほどまでより入り口よりのストゥールに腰掛けた。
昔から雨の降る日にろくなことはない。娘が死んだのも、妻が出て行ったのも雨の日だった。
雨は僕からまるで洗い流すように全てを奪っていく。不幸の足音はいつも雨の中から姿を現す。
「だめみたいだね。仕方ない。濡れて帰るよ。」
一杯のグラスを干すと僕はそう言った。別に濡れて困る物も持っていない、濡れるのが嫌いなだけだ。
「それでは、これをお持ちになってはどうです?」
そういうと、マスターは僕にロックグラスを一つ差し出した。氷とウイスキーが入っている。
「これを持って、雨で割りながら歩いて行けば、少しは雨の道も素敵かもしれませんよ。」
僕は思わず笑った。マスターもつられて笑った。
雨の道へ僕は歩き出した。グラスに雨が落ちる。少し薄くなったスコッチのグラスを唇につけた。
もう足音は聞こえなかった。

次は「林檎」「飛行機」「坂道」で。
596「林檎」「飛行機」「坂道」:03/07/12 10:12
帰宅途中の坂道を登ってるとふいに果物の匂いが鼻についた。
俺の住むアパートに近づくにつれ匂いはだんだん強くなり、部屋のドアを開けたとたん、
強烈な匂いがした。足元を見ると鮮やかな赤のパンプスが脱ぎ捨ててある。
リビングに入ると里奈がベッドに横になっていた。
「里奈。なんなんだこの匂い?」
「林檎を煮てるの」
里奈の物憂げな表情が気になる。

俺は里奈の親友、真紀と逢瀬を重ねていて今日もホテルに行ってきた帰りだった。
うまくやっているつもりだが里奈のやつ、気付いたのかもしれない。

「なぜ林檎なんか煮てる?」
「料理の本に載っていたの。林檎の赤ワイン煮。美味しそうだったから試して
みようと思って。あと・・・・」
最後の部分が飛行機の音で聞こえなかった。料理なんてしない女が林檎の赤ワイン煮?
何を考えてる?そういえばホテルで真紀の携帯がやたらと鳴っていた。里奈は髪の毛を弄んでいる。
だがよく見るとそれは里奈にものにしては長すぎる。心臓が猛スピードで鳴り出した。
匂いはますます強くなり、俺はこわばる口をやっと開いた。

「なあ、煮てるのは本当に林檎なのか?」

「アパレル」「ミス」「そばかす」で。

597直リン:03/07/12 10:13
598山崎 渉:03/07/12 10:47

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
599名無し物書き@推敲中?:03/07/12 11:43
「あの男、浮気してるわよ」同僚に言われたのは、梅雨に入ってからだった。
その同僚は、たまたま入ったバーで、私の彼とそばかすの女がキスしているのを見たという。
”そばかす”という言葉に私はピンときた。あの女だ、加奈子だ。

彼との出会いは、加奈子からの紹介だった。「信頼できる男だから」
その時の加奈子の言葉を思い出し、加奈子への信頼が怒りに変わるのが自分でも分かった。
加奈子は、大学時代ミスソフィアに選ばれる程の美貌を持っていた。そばかすがチャームポイントだった。
男にちやほやされる加奈子を見て、私はいつも羨望と憎しみのまなざしで見ていた。

同僚にその事を聞かされて以来、私は彼を注意深く観察していた。
だが、携帯を確認するとか大胆な事は、決してしなかった。深く深く、そして静かに静かに私は観察した。
ほころびは、所々にあった。それに気付かなかった私は、自分自身を笑った。

ある土曜日、日中にデートした私達は、”夜は友達に会う”という彼の言葉で夕方別れた。
私は直感した、加奈子と会うのだ。そう確信した私は、そのまま彼を追跡した。
大胆にも、彼はいつも使うレストラン・バーを使っていた。そこで、楽しく語らう彼と加奈子。
何であんな男を好きになったのだろう?私は惨めな気持ちになっていた。
私は、彼のマンションの階段を上がっていた。もちろん30分前に2人が入っていったからだ。
マンションの明かりが消えた。私は合鍵を使って、ドアを開け部屋の明かりを点けた。
彼と加奈子はベッドの中にいた。私は一瞬、加奈子が笑ったような気がした。
その時私の怒りは爆発した。加奈子の髪をつかみあげ私は叫んだ。
「このアパレルめ」??? 
あっ間違えた。
私は言い直した。
「このアバズレめ!!!」
加奈子に笑われた。

次のお題は、「熱帯夜」「ドア」「DVD」
600上投稿の追記です。:03/07/12 11:51
上のお題は「アパレル」「ミス」「そばかす」です。
           
            &

次のお題は、「熱帯夜」「ドア」「DVD」です。
 眠れない時は少しの音でも気になるものだ。部屋の隅、熱帯魚の水槽から聞こえてくる
低いぶうんという音に、私は三度目の寝返りをうった。
 今夜でもう一週間、熱帯夜が続いているはずだった。部屋の中は、冷房で快適な気温に
保たれているが、建物全体を包む夜の熱気が、私にも何か影響を与えているのかもしれない。
 苛々する。眠れないまま無理に閉じていたまぶたに疲れを覚えて、私は目を開けた。
どうせ、明日も仕事があるわけじゃない。私はベッドに寝たまま、DVDのスイッチを入れた。

 ソフトはDVDのおまけでついてきた日本のホラー映画だった。評判になった映画のはずだが
私は見たことがない。暗い部屋にぼうっと薄青く浮かぶ画面を、私はぼんやり見始めた。
 ストーリーはよくある感じだった。マンションの住人が次々に消えていく。疑問をもって調べ始めた
主人公の女性だったが、頼りにしていた大家まで消えてしまう。そしてその夜、部屋に閉じこもっていた
主人公の部屋を無理やり開けようとする青い手が……。

 ふと私は、玄関を映す鏡の中で何かが動いたような気がした。はっとして振り向くと、そこには
ドアの間からむりやり入り込もうとしている青白い顔が……。

 私は悲鳴を上げそうになって、そこで目を覚ました。はっとして画面を見るとDVDは終わっていた。
長い映画を見ている内に私はいつの間にか眠っていたらしい。退屈な映画だった。
 しかし気持ち悪い汗をかいた。シャワーを浴びようとベッドから降りた私は、ふと玄関に寄ってみた。
少しためらってからドアを思いっきり開ける。だがもちろんのこと、そこには誰も立っていなかった。
――いるわけないよね。
 私は苦笑した。戦争が始まってすぐに落ちた爆弾のせいで、この街に生き残りは私しかいない。
お化けでもいいから、誰か来ればいいのに――ため息をつきながら、私は浴室に向かった。

 次は「虹」「アルミ缶」「黒猫」でお願いします。
「虹」「アルミ缶」「黒猫」

「あんた、キルケゴールを読んだことあるかい」
 物乞いは膝の上の黒猫をなでながらそういった。私は煙草の煙を吐き終わってから「ない」と答えた。
「奴によれば、罪ってのは人間によってこの世界に入り来るってことだ。
 奴が言ってるのは原罪のことだがね。祖父さんも親父もそりゃ熱心なキリスト教徒だったが、
 あいにくと俺はそうじゃない。そういうしつけは嫌というほど受けたがね。」
 物乞いはそこで言葉を切ると、私が恵んでやった煙草に火をつけた。
物乞いの手のなかでは黒猫がひとつまみの野菜サンドを舐めたり、
爪でひっかけたりしながらも少しずつそれを齧っていた。
しばらくの間物乞いは煙草吸った。私は手持ち無沙汰になって
ストリートのほかの乞食達や昼食休みであろう会社員、向かいにあるカフェでくつろぐ人々を
ぼんやりと見入っていた。カフェの手前では宅配屋が、虹のマークのついた
トラックを停車して荷物を降ろていた。
「だがね、俺はその原罪ってやつは信じてるんだ。宗教も哲学も嫌いだがね。もっとも文学は別だが。」
物乞いはそう言って、灰皿代わりにしていたアルミ缶に吸殻を放り込むと
私が見ていた宅配屋のほうを一瞥して、煙草を一本せがんだ。


603602:03/07/12 20:24
お題忘れた。次は「経営」「サボテン」「溜息」でお願いします。
サボテンの花は気持ち悪い。見た目が不気味なのではない。
私が花と認識しているものとは隔絶した形状だからだ。
サボテンに乗っかっているような咲き方、サボテンもいい迷惑だろう。
ひとつの事を掘り下げて考えてみても涼しくはならない。
機嫌悪く溜息をつくと下宿備え付けのクーラーをつけるかどうか逡巡する。
テレビは今夜は涼しいと報じた後に経営陣の退陣を求めるデモ行進が流れている
それなのに今日は熱帯夜だ。こうして床に這いつくばっていても汗が噴出す。
息をするのも苦しい。手を額、リンパ球の集まりである脇や首筋に当てても
熱くは感じない。熱はないようだ。そして今日食べた物を記憶で検証する。
大丈夫だ、賞味期限を過ぎている物はない。匂いもしなかった。
腹の具合も悪くない。食中毒ではない。
なのに何故こうして汗がでるのだろう?今日は過ごしやすい気温ではないのか?
ドアが乱暴に叩かれる。「なんですかぁ!!」機嫌悪く誰何の声を上げる。
「馬鹿野郎!!寝ぼけてんのか!!隣が火事だ、逃げろ!!」
首を上げると窓の向こうに燃える家が見えた。通帳財布保険証鍵サンダルそしてダッシュ。

次は「爆発」「驚愕」「悲哀」
 まずは男のいちばんの悲哀について語る。その感情を怏々として発しはじめたのは、なんの
ことはない、彼が中学校三年生のときにみた音楽チャート番組からだ。無上の番付としてこの
眼にうつったのはいかがわしい恰好をした男女六名が踊っているようすだった。こんな甘った
るいだけの歌詞と、破もなければ急も含まない楽曲でナンバー・ワンにのぼり詰められたのは、
違いなくこの淫功な腰つきによるものなのだと、彼は信じてうたがわない。若さのためかその
艶姿を見てすこしばかりブリーフを張らせたおぼえもあり、それを彼は今でも生涯いちの汚点
だと慙愧するのであったが。

 次に、最近の驚愕について。彼はパンク・ロック、と呼ばれるものをこよなく愛している。人が
地に立ったときより内外に感じているであろう、素直で暴力的ともいえる剛毅さの顕現が彼の
胸をゆさぶるのだ。しかし、そんな彼がよりにもよってそのパンク・ロックを聴くことで失望をし
た。仕事につかれていた彼はその日もまた、日常から少し次元をはずしたスケルツォを聴こう
と、帰りの途次で手にいれた評判のCDを手にいれていたのだ。だが、家にもどって実際に聴
いてみると、その音は予想に反していつものロック・ナンバーであった。上等であると評判の
パンク・ミュージックとやらにはいささかな捻りもましてや諷意もなく、あまりに当たりさわりが
なさすぎたのである。
「こんなものは、おれにとってパンクじゃあない。こんな主張はもう聞きあきてる!」
 男の憤嘆は爆発した。叫んだせつな、不思議と彼の胸の奥からどこかしっくりと行かない感
覚がよびおこされ、自分にむけて警鐘をならしている気がするが、
(何をまよってる、このバンドにムカついてしょうがないのは事実だ。つまらん奴らだ)
 と思っただけだった。
 そしてその日、彼は夢をみた。少年時代の自分が、テレビに向かって歓声をあげているとい
った内容で、なぜだかそれを見ていた彼は哀しくなっていた。

#お次は『じゃんけん』 『腹いせ』 『ボール』でお願いします
606『じゃんけん』 『腹いせ』 『ボール』:03/07/13 11:31
そういやこんなことがあったな。

ガキの頃野球をして遊んでいてどっちが先にバッターをやるかでサクラダと揉めた。
話し合っても「俺だ俺だ」で一向に決まらないのでじゃんけんをすることに。
結果、俺が勝ったのだが、まだぶつぶつ言ってるサクラダが腹いせにわざと
デッドボールを投げてきやがった。キレたね。

俺はバットを叩きつけマウンドに駈け寄りサクラダを投げ倒して馬乗りになり顔面に
拳を何発も叩きこむ。だがその時「マナブ。なんばしよっと」と叫ぶ声が聞こえ
俺は手を止め振り向いた。すると俺のばあちゃんがスーパーの買い物袋を2つぶらさげて
猛ダッシュで駈け寄ってくる。なんて華麗なフォームだ!普段は生きてるかどうかも
わからないのに。ばあちゃんは俺の前でしゅざっとストップし、スパパン、と俺の
左右の頬を張り、後頭部に回し蹴りを入れてきた。俺は軽い脳震盪を起こしふらついてしまった。
ばあちゃんはサクラダの服についた泥を払い、ティッシュで鼻血を拭いてやっている。
そしてサクラダの手をとり、俺のもとにもどってきた。
「マナブ、ちゃんと謝らんね。みんなでなかよくせんとだめよ」
ばあちゃんのいつもの優しい笑顔に戻っている。「サクラダ、ほんとにごめん。もうしないよ」
ばあちゃんはそれを見てにこにこしながらよぼよぼした足取りで帰っていった。

「迷彩」「嗚咽」「ペットショップ」で。
 今回の作戦内容は、国際的人身売買組織『ペットショップ』の殲滅だった。
 奴らの非人道的行為は、組織名から推して知るべし。
 今回の作戦には力が入る。俺は人間の権利を認めない連中が大嫌いだった。
 迷彩服に袖を通して、気合を入れる。すると徐々に気分が昂ぶってくる。
 吐く息が熱い。怒りの温度が篭っている。
 決心とも覚悟とも違う、痺れのような感情でこう思う。
 人間を飼おうなんて奴は皆殺しにしてやる。

 作戦は成功だった。こちらの奇襲に、奴らは為す術なく殺され死んだ。
 俺は飼育されていた人々を見つけ、駆け寄った。
 女子供が裸に首輪だけ。それをみて、その場にいた飼い主を殺したことを後悔した。
 殺さずに、性器をすり潰して腸をかき混ぜて死に難い所に銃弾をぶち込んでおけばよかった。
 しかし一瞬後、女子供が嗚咽を漏らしていた。飼い主だった糞野郎の肉塊にすりよって。
 悲しそうに、悲しそうに。糞野郎を皆が弔っていた。こちらには見向きもしないで。
 俺は、その場を逃げ出した。


 次は「王」「女王」「王女」で。
「王」「女王」「王女」

漆黒の闇と瞑府のような冷気の中で、幾百の夜と昼を過ごして来ただろうか。
この寂しい断崖の城に幽閉されてから、我が王家の絢爛たる時代は終わりを告げた。
王と女王はそれぞれの台座の上に辛うじて縋り付いてはいるが、もう命運が尽きた事を
この暗黒を劈く不意の光の放出が、冷酷に浮かび上がらせていた。

王の白磁の衣は無惨に霜に取り付かれ、女王の薄紅色の柔らかな単衣の纏ものは
遠にその艶やかな色彩を失い、過ぎ去った華やかな思い出だけが身を保つ手段なのだ。
私は細緻な波形が刻まれた、黄金の衣をしっかりと身体に巻き付け、玉座は無くとも
王家の一員として、また王女としての矜持を失わないように我が心に言い聞かせた。

獰猛に城を探り回る、悪魔ような鈎爪に王と女王は台座に乗ったまま
恐ろしい力で引き出されて行き、すぐに、私も容赦なく掴み取られ
蛮境の光の彼方にそのまま投げ出された。


「げっ!忘れてた。お正月の紅白かまぼこ、まだ冷蔵庫に入ってたんだ」

「ひー、伊達巻まであるじゃん。うげえ。捨て、捨て」


次は「秘密」「告発」「メス」でお願い致します。
 パイプオルガンが街中に響く。おれが働いている時計台のてっぺんで、こいつは長い間嘘
の時間を教え続けてきたんだ。どこかの爺いの古時計とはちがって、百年二百年じゃきかな
い寿命の高級品。歳月を感じさせない、手入れの行き届いた銀色の羽飾りがちょっとした自
慢。そのくせ肝心のお仕事はみそっかす。おれはいつしか、程度はげしくこの時計に愛着を
もつにいたったらしい。そしてこんな薄汚い街じゃお目にかかれないよな、長い銀髪が美しく、
気のつよい深窓令嬢をこいつにイメージした。歳? フフフ、そんなもん夢の世界に何らいり
ようのあることかね?
 そう、イメージの世界の中で、おれは病弱でもあるご令嬢の担当医だ。毎日毎日、その小憎
らしくも愛らしい佳人のもとへこまめに駆けつけては、彼女の姿をいちいち余すことなく目に焼
きつけるのだ――こんな変態でも医者ができれば、の話だがな。
 彼女は六時の時報と十二時の時報を、オルガンの音色といっしょにお届けするお役目があ
るんだが、寝坊すけのために、はたして四分遅れで椅子に腰かけている。
「お父様には秘密にしてね」
 平時倨気をはなち、おれの事など小間使いか救急箱にしか思っていない、瑠璃色のひとみ
がゆれ、その視線が地面をはいずる。彼女は造物主にひどく弱い。
「さあどうでしょう、だんな様にはお目付けも託っておりますからね?」
 そのことを知っているおれは自分の有利をさとると、やおらメス代わりであるドライバー
で彼女の首元をペシペシとはたく。意地悪をしないでと言いたそうに、震えるうなじがもがいた。
(……イエス! こういう展開を望んでいたさ!)
 もちろん、おれがそんな無情な告発をするはずない。お楽しみはこれからだし、愛しい女御
が簡単に打ち壊されるのをもっとも厭うのは、いっさい詮議の余地なく、このおれだからだ。
 ……そんな愛着も、今日でおしまいになる。おれはぽっきりと折れた金色の長針をレンガ畳
の路地から見上げて、まるで髪を切りそろえようとして失敗したみたいだな、お前らしいわ、と
胸のうちで苦笑した。小脇には大きな銀色の羽飾りが大事そうにかかえられている。
あ、忘れてた。
>>608氏の擬人化(・∀・)ワロタ!!です(触発されますた)
お次は「街の宵」「権現」「提灯」で
611「街の宵」「権現」「提灯」:03/07/14 17:43
「想像してごらん。街の宵、ぼくらは歩いている」
 夕日に照らされた高校の教室で、女の子と二人きり。文化祭準備の喧騒が遠い。
 偶然居合わせただけの彼女と、間を繋ぐために会話をしていたぼくは、妙に興奮していた。
 そして、嬉しさと恥ずかしさが一緒になったような心持ちで、正直な自分を話しだす。
「君は提灯を持っている。対するぼくは夜の権現。ようやく起きだし、街を歩く。
ぼくらは歩いている。宵、西の景色には不安げな紫色が残る。
ぼくは夜で、徐々に世界を覆うのだけれど、君は提灯で立ち向かってくる。
だが、もうすぐ宵も終わる。空は黒く、暗く、人は家へと帰ってゆく……」
「こわいね」
 女の子の言葉に、ぼくは緩やかに頷いた。
「けれど、ぼくは夜。夜は君に恋をする。提灯は君を淡く照らす。それはとても綺麗だよ。
闇を纏った君は夜の女王。ぼくは君の下僕に堕ちる。夜は君の足元にはべる影か、
君に付き従う従者か、もしくは君を祭り上げる道化に過ぎない。哀れに甘えて君にすがる」
 ほぅ……と彼女の吐息が漏れる。ぼくはそこに甘い何かを想像し、腕が震えるほどに興奮した。
 彼女との間に特別な感情が生まれたわけでもないし、肉体的な何かがあったわけでもない。
 だがこれが、ぼくの童貞喪失の瞬間。


 次は「纏わりつく」「恥」「愛」でおながいしまつ
612???:03/07/14 17:44
「街の宵」「権現」「提灯」

はいはい、ええ東京からお越しの記者さんで?まあまあ、こんなむさ苦しいあばら屋へ
ようこそおいで下さいました。留守にいたしまして、まあどうぞお上がりくださいませな。

え?これでございますか?今夜は権現さまの宵宮なんですよ。ええ、ですからつい、ね。ふふふ。
年寄りがラムネなんておかしな話しですけれど。よろしければどうぞ、まだひんやりと美味しそうですよ。

そうですねえ……。忘れられないお方はいらっしゃいます。海軍のお若い将校さんでした。
やさしいお方でねえ。珍しかったラムネをよく買ってきて下さって、娘ごころにうれしくて。
将校さんがお見えになると廓のつらさも、忘れられました。どうしたものか私はラムネを飲むと
鼻の奥の方がつんか、つんかして、涙が出るんでございますよ。その姿がおかしいとおっしゃって
よく楽しそうにお笑いになりました。

廓の提灯に灯りがともると、将校さんがお帰りになってしまうのが寂しくて私が泣くと
二階の窓の敷き居に腰かけて、静かにハーモニカを吹いて下さるんですよ。
花街の宵の風にのって、赤とんぼの曲が流れだすと、いつもは怖かった先輩の姐さんたちも
廓の入り口にある、べんがら格子の中でみんな泣いていました……。

どうも、長い話になりました。こんな、むかし遊女の話でよかったらまた、お越しくださいませよ。
あら、お宮のほうでは、お囃子が始まったようですねえ。……夕暮れのいい風ですこと。


*お題かぶりすみません。
次は611氏の「纏わりつく」「恥」「愛」で。
614名無し物書き@推敲中?:03/07/14 19:46
「纏わりつく」「恥」「愛」

 ドラゴンは倒した、魔王は死んだ。
 しかし、勇者の表情は暗かった。
 宿屋に名を明かす事を恥じ、血のついた身体でじっと天井を眺めている。
 彼は思い起こしていたのだ、国王に誓ったあの言葉を。
 「必ずや魔王を倒し、捕らえられた王女を、無事連れ帰って参ります」

 たしかに、魔王は倒した。想像を超えた厳しい戦いだった。
 敵を倒す事に精一杯だったの自分は、その後の事を考えていなかったのだ。
 自分だけを信じ、背中に必死で纏わりつく王女を。

 夜も明けてきた。窓の外に白々と陽の光がさしてくる。
 悔やんでも仕方がない。王に全てを報告しよう、気が重いことだが。
 不意にドアが開き、宿屋の主人が朝飯も運んできた。
 「おはようございます。昨夜はおたのしみでしたね」

 隣で体を起こした王女は、胸を隠しながらも愛らしく,
「はいっ」と答えた。
 勇者は、うつむくばかりだった。

※「纏わりつく」が書けない。FEP抜きで書けない(^^;
次のお題は:「空」「集合」「納豆」でお願いしまふ。
615山崎 渉:03/07/15 11:39

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
くっ。山崎め・・・あげ
617純 ◆OPb3r6Vs1g :03/07/15 17:37
「空」「集合」「納豆」

「空はイヤだ」と息子が泣く。「空は怖い」
「大丈夫だよ」とおれは抱きしめながら声をかける。
数年前、息子を診断した医者の淡々とした声が蘇る。
「特殊な症例です。網膜には約700万個の錐体という
組織の集合体があります。息子さんは、ここに異常が
ある。何かを見るごとに、彼は強烈な刺激を受けてい
るんです。原因も治療法も残念ですが分かりません」
息子は空を怖がる。だから学校にも行かせられない。
外出できるのは、空の見えない夜だけだ。刺激の予測
はできない。薔薇の花を見て引き付けを起こした。
ぬいぐるみを見て怒り出した。食事にも気を遣う。
ご飯は駄目。パンはOK。ステーキは逆に笑い転げて
食べられない。一番のお気に入りは納豆だ。だから、
今日も朝食は納豆サンドだ。「お前が納豆好きとは
なあ」とおれはため息をつく。「お父さんは、納豆
が食べられないのに」息子がケケと笑った。

納豆のお題が難しかったでつ。
次は「にわか雨」「ロケット」「相撲取り」でお願いします。
618「にわか雨」「ロケット」「相撲取り」:03/07/15 19:12
その日は、朝からにわか雨が降ったりやんだりして、イヤーな天気だった。
仕事が早く終わった僕は、こんな日はミキちゃんに会いたいと思い、ミキちゃんの携帯に電話した。
「あっ、ミキちゃん」
「こんな時に電話しないで」あれ、切られた! それもひどく怒っている様子だった。もう1度掛けても、今度は電話にさえ出てくれなかった。
 こんな時?  
今は夕方で、深夜でも早朝でも無い、普通に生活している時間だ。わけが分からなかった。
まっいいかと思い、その日の夜に又電話した、彼女はカワイイいつもの彼女に戻っていた。しかし、週末のデートは即座に断られた。
そういえば、彼女は数ヶ月ごとに2週間くらい、全く会ってくれない日があった。
 - 浮気している - 俺はピンと来た。
そう確信した俺は、会ってくれない日曜日に、ミキのマンションに向かった。
ミキは中にいるようだ。出て行く気配も無い、”さては中に男がいるな”俺はそう思い、マンションの呼び鈴を押した。
程なくして彼女が出てきた、その姿はジャージでスッピンだった。どう考えても男がいるとは想像しにくい。
驚いている彼女に向かって、
「どーして会ってくれないんだ」俺は問い詰めた。
「こんな大事な時に来ないで!」彼女はひどく怒って、ドアを強い調子で、閉めようとした。それを振り切り、俺は中に入った。
中には、誰もいなかった。
TVの画面は相撲中継を映していた。「優勝おめでとう」今まさに、優勝した相撲取りが賜杯を受け取る瞬間だった。
ミキはそれを食い入るように見ていた。その目には、涙さえ浮かんでいた。

6時が過ぎて、TVがサザエさんを映し出した頃、おもむろにミキがしゃべりかけてきた。
「ごめんなさい。私、好きな人がいるの」突然の告白だった。
そう言うとミキは、ロケット型のペンダントを開けた。由来は聞けなかったが、大切なものと言っていたペンダントだ。
そこには1枚の太った男の写真がはめこんであった。

笑っている朝青龍だった。

次のお題は、「足跡」「携帯電話」「地下鉄」でお願いします。
誰も馬鹿らしいから注意してねえから、せめて俺だけでも文句つけてやるよ。
お前だ、お前。>>616
山崎の足跡をたどるようにいちいち無駄ageしやがって。
お前のやってることは、東京に長年住んでるくせに
地下鉄に乗ったことがないホームレスと同じくらいトンチキなことだって気づけよ。
しかも何が「くっ。」だ、いちいち芝居ぶりやがって。
いちいちくだらん荒らしに反応しやがって、お前は脳が子猫ちゃんか?
ギャース! 感想スレにまで書きこみやがったかこの原人。
「やばあげ」
「やばあげ」ってお前。
携帯電話から書き込んだような駄レスぶちあげて悦にいってるんじゃ
ねえってンだくそぼけ。じゃあな

お題は継続
地下じゃ携帯電話は繋がらない。
そんな事は解っていたけれど。
「……くそ」
こんなもの今は無意味だ。携帯電話を投げ捨てようとして……
留まった。その行為も無意味だと思った。

      *

中村雅人が地下鉄のホームに生き埋めになってから、既に5時間がたっていた。
出口は完全に塞がれていた―――かどうかはわからない。
しかし、これほど時間がたっておきながら、
捜索隊の一つも現れないのだ。
雅人自身、出口は探した。だが、それが見つかっているのならば。
(こんなところにはいない)
雅人は嘆息した。冷静になろうと呼吸をし……故に気づいた。
明かりの灯らぬ通路の奥、闇の中から足音が聞こえる。


なかなか思いつかないね。
次のお題は「魔法」「物理学」「硝子」で。
621クロウバー:03/07/16 06:05
「魔法」「物理学」「硝子」

 麻子ははらりとページを繰った。
 麗らかな光が、ポプラの隙間から黄ばんだページの上へと、こぼれ落ちる。図書室の、グラウンドに面した窓際が麻子の指定席だった。
 周りには誰もいない。授業開始まで、あと一時間もあるのだ、それもそのはずである。
 早朝自習用に開け放たれたこの図書室であるが、麻子は自分以外の人間を見たことはなかった――図書室の中では。
 古びた活字から視線を外す。硝子一枚隔てたグラウンドでは、1人の少年が壁相手にキャッチボールをしている。同じクラスの佐久間圭だ。
 クラスでは非常におとなしい存在である彼が、実は野球部員であると知ったのは半年も前の事だ。
 たまたま、早朝自習しにきた麻子が偶然にも、早朝個人練習している圭を見かけて以来、何となく気になってしまって、ここに通い続けているのである。
 世界には、私達だけ。私達だけの世界――
 ふと、そんなことを思い付いて、麻子は軽く嘲笑(わら)った。
 ばかばかしい。仮に、今世界がこの視界だけだとしても、自分達の間には透明な壁というものが横たわっているというのに。 
 圭が放つ白い玉は、綺麗な弧を描いて校舎に当たる。あれが放物線だと、この間、物理学の授業で習ったばかりだ。
 物理は嫌いだ。どうせなら魔法を学びたい。
 ――この硝子窓を、魔法で破れたら。
 麻子は小さく溜息を吐(つ)き、再び古書に目を落とした。
622書き忘れた:03/07/16 06:10
次のお題。
 
ビニール、水晶、ロリ   

でおながいします。(621ノカンソウモネ!)
『ビニール』 『水晶』 『ロリ』

彼の名は「ロリポップ」、本当の名は誰も知らない。

彼はその名の通り、いつも棒付きキャンディを口にくわえている。
その飴ひとつで、相手の目を突き刺し、あっという間に仕留めてしまう殺し屋だからだ。

「あのおじちゃんに、キャンディをねだってごらん」靴磨きの少年に誰かが耳もとでささやく。

少年が「ロリポップ」に飴をねだると、彼は笑って、ポケットから棒つきキャンディをとりだした。
「靴も磨いてもらおうか」小さなイスに腰をかけて、片足を少年にあずけた途端
背後から黒いビニール袋が「ロリポップ」の頭にかぶせられた。
首には、皮ヒモが巻きつけられ締め上げられる。

靴磨きの少年は言葉もなく、目をみはっている。
凍りつく少年の、水晶のような瞳には、さびしい殺し屋の最期が映っていた。

彼の名は「ロリポップ」、こころ優しい殺し屋は、飴ひとつで命を奪われた。


次は「ひつじ」「時」「迷路」でお願い致します。

624ひつじ・時・迷路:03/07/16 13:42
 眠れない夜にひつじを数える。この方法は日本人には不向きじゃないか。だって北海道の
牧場ならともかく、羊なんか身近にいやしない。羊は角が生えてるのか、顔の形は三角で
あっているのか。自分の描く羊が本当に正しいかどうかさえ分かってない。

 もともと、「羊がいて、緑そよぐ牧場がある」その穏やかな光景に心がリラックスし、
だんだん眠くなる……という眠り方をするためのものらしいが、それなら俺は眠れそうに
ない。俺の脳裏には、毛糸玉に角付きの黒い三角顔が張り付いた変な物体が、ふわふわと
ひしめき合っていて、リラックスするどころではない。

――時間の無駄だな――
 いや、まさに時は金なり。どうせ眠れないのなら本でも読もうと、俺は眼を開けようと
した。ところが目が開かない。羊たちが目玉の内側から、まぶたを抑えているのだ。
「アケさせないよ」「あけたら消えちゃうモン」「責任もって数えてッテ」
 羊達の三白眼の恐いこと。断ったら食われちまう。俺は顔を引き攣らせながら数え始めた。
ところがこれが一苦労。数え終わった羊を横に避けていても、何となく動いて混ざってくる。
――赤い毛糸玉でもあればなあ――
 ミノタウロスの迷路に潜った勇者のように、赤い糸でマーキングできればいいのだが。

 そういうわけで、現在 5692匹。半分くらいは数えたんじゃなかろうか。願わくば、
俺は今寝ていて、これが俺の見ているどうしようもない悪夢であってほしいものだ。そう
じゃないと、もう一度寝なきゃだめってことだろう? 俺は明日、テストなんだけどなあ。

 次は「チーズケーキ」「コントラスト」「金」でお願いします。
「チーズケーキ」「金」「コントラスト」

売れない女優がいた。水着のピンナップガールをしながらオーディションに通う日々。
ある時、そのピンナップが、映画監督の目にとまり、彼女は肉体派女優として売り出された。
ブロンドの髪と青い瞳。ミロのヴィ−ナスと同じボディ。彼女は時代の寵児となった。
だが、彼女は、苦しんだ。演技力だけで勝負がしたい。寝る間を惜しんで努力を続ける。

そんな時、素晴らしい脚本に出会う。彼女は狂喜し、血を吐くほどに、役に魂を売り渡した。
この作品は、権威ある映画祭で「金賞」をとった。彼女は脚本家と電撃的に結婚する。
脚本家は彼女に仕事を減らすよう願った。彼女の力量と限界を、暗に見抜いていたから。

しかし、時代は彼女を手放さない。撮影に忙殺され、彼女は家には戻れない。
脚本家はとうとう家を出た。悲しみを強い酒で薄めながら、彼女は独り、仕事にのめり込む。
ドラマに映画に、コマーシャルに引きずり回され、粗雑な作品を多数こなした。

いつのまにか、マスコミは「頭のカラッポなセクシー女優」「チーズケーキと同じだ!」
「白い身体と甘い声。安っぽいお味」と汚いスラングで彼女を罵り始めた。
もう時代は、彼女のことなど忘れていた。銀幕から彼女の姿は消えていった。

どうか、この写真を見てほしい。白い水着と青い海の美しいコントラスト。
この素朴な笑顔の少女はもうどこにもいないのだ。
彼女の墓標には「訪ねてきてくれたのね?」とだけ彫られている。
だれかにむけてか、それとも時代という、きまぐれな風に対してか。


次は「薬草」「朝日」「氷」でお願いいたします。

626625:03/07/16 17:52
すみません。お題の順番間違えました。
×「チーズケーキ」「金」「コントラスト」
○「チーズケーキ」「コントラスト」「金」

いいお題を頂きながら、大変失礼しました。
「それって薬草みたいなものです。煎じて飮めば効くんですよ」
自信満々に彼女は笑う。
随分と不明瞭な比喩を使うものだ、とつい、笑みがこぼれる。
薬草。薬草とは言いえて妙だ。
確かに自分は捉え方を誤っていたかも知れない。
混ぜ方次第で千変し、飮み方次第で万化する。
どんな事だって同じだ。
常に変化し、先が見えない。薬は毒にもなる。
だから面白いんだとは、誰が言った言葉だったろうか。
でも、そんな事はどうでもいいのだ。
今、目の前にある朝日のような笑顔だけが
氷みたいに確実に、染み渡るその笑顔だけが
言って見れば、そう。
自分にとっての薬草みたいなものなのだと。
熱で浮かされている自分は、そんな柄にもないことを思った。

お題は
「風」「時間軸」「シンメトリー」で。
 夜半をこえ、いよいよ東天が射しかかろうとしている頃だった。ぱちりと目の覚めた慧は安物
のバッグへ手をつっこむと、そこから取り出した携帯電話のディスプレイを寝惚けまなこでぽぉぉっとみつめた。
デジタル時計の表示が、4時21分をしめしている。合点のいった彼女は、自分のいた河内八幡
へ向けて――どの方角を向けばよいのかまではちっとも判らないが、これはもう習慣の産んだ
くせで、たとえ間違っているとしても彼女はそうせずにはいられないのである――ちょこんと遥
拝した。まわりでぐうすうと眠っている客たちを起こさないよう、意をかくしながら体勢をもどす。
やることは終えたとばかりに慧は備品の毛布をかき擁くようにして、わずかに残ったぬくもりの中へ沈んでいった。

「――え、皆さんおはようございます……。午前6時24分、足柄SAに到着いたしました。目的
地の新宿駅到着までの予定は、8時20分となっております。これよりしばらく当バスは、現SA
におきまして10分ほどの休憩をとります。なお外へお出でになるお客様は――」

 ガイドの言をとれば、うたた寝をはじめてからもう2時間強が経過していたらしい。ふた度目
覚めた慧はとくに行動するつもりもないが、そぞろにふらふら、まろぶようにバスの外へ出て
いく。出ると唐突に、寒風が彼女の身を小さくさせた。さっきの毛布のように、彼女は身につけ
たはなだ色のマフラーと白いダッフルコートを抱きしめて、外出したことをひたすら後悔した。
しかも、この時間では息のある商店など自動販売機の他になく、これでは"あったか〜い"
午後ティー(ミルク)を購うほかない。結局、彼女はミルクティーを飲みながら、あらためて外に
でた由について思索しつつ空をながめた。
 すると、彼女の目にこい灰色の叢雲が朝もやの空の下でおよいでいる、そんな静かだが忙
しそうな情景が映る。ふと彼女の脳裏に、幼いころ早朝のラジオ体操の深呼吸のポーズで母
とともに仰いだ空のかたちが浮かぶ。そしてそれは、あまり意識をしなかった4年半という長い
年月によってできた埋めたてるべき渠の存在を彼女にはっきりと伝えたのであった。
 そ知らぬ顔でふわふわと漂いつづけるシンメトリックな空と雲のありように、彼女はあの朝み
せてくれた母の笑顔を思いかえして、眉をたゆませる。夏休みは、もう近い。
いい加減長文にしすぎでした
(これをもってしばらく投稿を自制します、
今まで読んでくださった感想人の方々、本当に申し訳ありませんでした。
投稿者の方々も、駄文と題追加で2レスも汚してしまい、本当にすみません)
お次は「映」「指」「牛丼」でお願いします……それでは。
>>628訂正。ラストの一行で全部ぶち壊しですな・・・何考えてたんだかw
忘れるかエラーとして扱って無視していただいて結構です・・・
君は僕を見てる。多分僕の出方をうかがっている。

満開の桜を映した川には、遊覧船。
きっと船の客も、この桜と同じ色に顔を染めている。そして僕も。
何度も何度も声かけて、やっとこぎつけた2人きりの花見。
会うまでは、話そうと思ってたことはたくさんあったのに、何もいえないでいる。

「何か食べる?」
君はそういって、そばのベンチに腰掛け、でっかい目で僕を見てる、ようだ。
僕の目は、触れ合っている君と僕の膝を捕らえていて、
恐れ多くて、その、でっかい目を確認することが出来ない。
か、顔をあげることが出来ないんだ。こんなんではだめだ。
せっかく二人で会えたんだ。何か話さないと。食べに行くんだ。どこに?
頭が働かない。声が出ない。顔を精一杯あげても、彼女の肩越しに船がとおるだけ。
顔をみたら抱きしめてしまいそうだ。
ふと僕らの膝の上に、桃色が一枚降ってきた。僕は今、春なんだろうか?
君はそれを摘み上げ、ぼくに渡した。花弁と同じ色の爪が、僕に、触れた。
更に、僕は固くなる。君はあきらめたように笑った。
「君となら、牛丼でも」
いいよ、という。これは?

サクラサク?サクラチル?


お題は「口紅」「紙袋」「屋根」で
632631:03/07/17 19:18
今気付いたんですが、恥ずかしながら、お題の「指」消化してないです。

×君はそれを摘み上げ、ぼくに渡した。花弁と同じ色の爪が、僕に、触れた。
○君はそれを指先にのせ、僕に渡した。花弁と同じ色の爪が、僕に、触れた。

修行しなおして出直します。


 深夜、まげ子はふらつきながら帰り道を急いでいた。
「早く帰らなくっちゃ…マサオに餌をあげないと…。」
マサオはまげ子が飼っているオスのゴールデンレトリバーの事だ。
この犬は飼い始めた頃は小さくて可愛かったが、今では抱えきれない程大きい。
マサオは幼い頃から、時間通りに餌をやらないとイライラして屋根の上をうろつくのだ。
「マサオ…いつもいつもいつも毎度のように餌をあげ忘れてゴメンね…。」
まげ子はマサオを想って、自宅まで走り出そうとした。
 突然、まげ子は後ろから羽交い絞めにされた。
「だ、誰!何するの離しなさい!」
まげ子の後頭部にガサガサと紙のような感触が伝わってきた。
とうやらまげ子を抑えている人間は紙袋を被って変装しているらしい。
「まさか!最近この辺りに出没するという…」
まげ子は死にもの狂いで暴れまわったが疲れて息苦しくなるだけだった。
すると、くぐもった声が聞こえてきた。
「口紅…」
呟くと、まげ子の口の中に甘ったるい匂いを放つスティックが押し込まれた。
「もが…が…まずっ!油っこいって!ぶっ!おげっ!」
まげ子は必死に抵抗するが、背後から伸びる手は容赦なく異物を食べさせる。
 そしてスティックが完全にまげ子の口に消えると、拘束が解けた。
咳き込むまげ子から足音が遠ざかっていく。
「お前は何がやりたいんだぁぁぁ!」
まげ子の叫びに答えるものはない。
辺りに闇が広がっていた。→お題は「箱」「海」「木」で。
ひどい文章だ…段落は気にしないでね…
635初心者 ◆z37rqcOjlQ :03/07/17 22:01
「箱」「海」「木」

「そうだ海に行こう」
波の音でも聞きに行くか。
なんだか自分でもわざとらしいような気恥ずかしさがあったが、そう思った。
汚い海だけど、海は近かった。
歩いていこうじゃないか。30分くらいでつくか?いや一時間かかるかもしれない。
いやいや、ゆっくり行けばいい。1日かかるわけじゃない。
自分を追い立てるように家を出た。道すがら塀の向こうにのぞく人の家の庭木なんかを見て、いいものじゃないか、と思ってみるけども、実際、じりじりしてた。
けっこう、遠いな。
イメージしていたのは暇を楽しめる男だった。でも無理みたいだ。段々早足になって、目を細めて遠くを見つめる。目的地を見据えているのだ。
しまいには速読のイメージトレーニングをはじめる始末。右目で右の風景を見る。左目で左の風景を見る。真ん中に仕切りを立てるのだ。不意に右目がまばらに車が通る道路を挟んで、原色の看板を捕らえた。
禁断の箱。コンビニだ。
自己抑止はもう効かなかった。
俄然、軽やかに道路を横断する。今週の漫画チェックを済ませて帰ることにした。

初心者なんでダメだしお願いしたいです。改善例つきで。
酔狂な方いらっしゃったら、ぜひ。
裏3語スレもチェックするので。

「綿」「虫」「信号」
それは綿貝殻虫の侵略です。あなたの花園は危険信号を発しています。
手遅れになる前に対策を講じましょう。
まず、目に見える部分は丁寧に時間をかけてふき取ってください。
乱暴にすると花園が傷みますので、むきになってはいけません。やさしく擦ってあげましょう。
鉢の奥の奥など手の届かない場所やデリケートなところは薬品を使います。
オルトランなどのアルコールが有効ですが、花園にとってもそれは害を為します。
濃度には十分に注意して、反応を窺いながら注入しましょう。
これで効果がなければ、また違った手を打たなければなりませんが、まず、大丈夫でしょう。
大事なのは何より愛情です。しっかりケアしてあげてください。応援してます。
いけねえ、お題だったね。それじゃ

「ホーム」「サイン」「送る」

で。
駅のホームについた。適当なベンチを探して、そこに二人で腰掛ける。
電車が来るまでには数分あった、でも特に話すことなんてなかった。
十年来の親友が、私の知らない遠くにいくのだという事を知った時は
随分吃驚したものだ。けどそれだけ。
実感なんてなくって、その時が来るまで、今みたいに
二人してぼーっとしていたのだ。なんとまぁ、情緒のない。彼女がいつもの調子だったからだ、と思った。
別れというものを意識してみれば、
「私たちは心で繋がっている」なんてどこかで聞いたような言葉も浮かんだが、
私はそんな柄じゃないし、隣にいる友人にそんなことを話そうものなら
大口開けて笑い転げるに決まっている。
私たちは、それでいい。それが自然だった。
幾許かの時間をそうして過ごし、ホームに風が吹いた。
電車が来た、といつもの調子で彼女は言う。本当にいつもの調子で。だっていうのに
私ときたら、今更ながらに動悸がする―――なんて事。それでいいんじゃなかったのか。
別れの言葉は要らないって。
また会えるなんて、思っていたのは私だけなのかって、気にしてしまうじゃないか。
それが顔に出てしまったのかも知れない。振り向いた彼女は笑う。
何も言わずに、彼女は電車に乗った。いつもの調子で。
それは、再会のサイン。私たちが、数え切れないほどしてきた約束。
そっけないなんて思わない。思う必要すらない。だって、どうせ。
(私たちは心で繋がっている)
だから私も何も言わずに振り向いた。
送る言葉はない。それでもいい。私と彼女はいつかまた会う。
多分いつものように。
639638:03/07/18 00:14
お題ですが、「風見鶏」「遊歩道」「銀細工」で。
>>638
おおう!はやっ!
でも、お題は?
641640:03/07/18 00:16
ごめん、ちょうどかぶっちゃたね
彼の休暇は昨日までで、今日は一人。
初めて来る町で、彼に聞いた植物園に向かったものの、
月に一度の休園日だった。やっぱり、と思ってしまうほど、運は悪い方だ。
まぁ、昨日紅葉狩りいったし、いっか。
紅い山で、私の視界の半分は、彼の黄色いジャンバー。たまに木々と同化していた。
青と銀のバイクに乗せられて、赤いヘルメットをかぶらされ、
虫除けだから、とはめさせられた指輪には、トルコ石。その色、にあわんなぁ、と呟きやがった。

ぴっちりと、閉じられた門の上から注ぐ、陽射しが指輪を金色に染める。
傾いてきた黄金色に目を細め、植物園に背を向けた。帰ろう。私の町に。
足元には風見鶏が、連なる銀杏の間に細長く引き伸ばされている。
テレビドラマにもよく使われるんだよ、と言っていた遊歩道が、目の前上り坂。
きれいに染まった銀杏が目の前に広がる。彼の色、銀杏色の中に道がある。私の道だ。

左手の銀細工が黒ずむ前に、またこの町に来る。
師走。忙しくなる。そして、年を越す前に、1つ年をとる。
そして、新年。挨拶に来る。この町に帰って、来る。


次、「水着」「いか」「携帯」お願いします
643パピヨン:03/07/18 06:22
  「水着」「いか」「携帯」
深夜、まげ子はふらつきながら帰り道を急いでいた。
「早く帰らなくっちゃ…マサオに餌をあげないと…。」
マサオはまげ子が飼っているオスのゴールデンレトリバーの事だ。
この犬は飼い始めた頃は小さくて可愛かったが、今では抱えきれない程大きい。
マサオは幼い頃から、時間通りに餌をやらないとイライラして携帯電話を壊すのだ。
「マサオ…いつもいつもいつも毎度のように餌をあげ忘れてゴメンね…。」
まげ子はマサオを想って、自宅まで走り出そうとした。
 突然、まげ子は後ろから羽交い絞めにされた。
「だ、誰!何するの離しなさい!」
まげ子の背中に素肌と布のような感触が伝わってきた。
とうやらまげ子を抑えている人間は水着を着ているらしい。
「まさか!最近この辺りに出没するという…」
まげ子は死にもの狂いで暴れまわったが疲れて息苦しくなるだけだった。
すると、くぐもった声が聞こえてきた。
「いか……」
呟くと、まげ子の口の中に甘ったるい匂いを放つスティックが押し込まれた。
「もが……が……まずっ!生じゃ食べれないって!ぶっ!おげっ!」
まげ子は必死に抵抗するが、背後から伸びる手は容赦なく異物を食べさせる。
 いかが完全にまげ子の口に消えると、拘束が解けた。
咳き込むまげ子から足音が遠ざかっていく。
「お前は何がやりたいんだぁぁぁ!」
まげ子の叫びに答えるものはない。
 
   恥知らずのコピペでスマソ。>>633さん、すみません。
 次は「鰯」「辞典」「オリンピック」でお願いします。
644パピヨン:03/07/18 06:25
  間違えた・・・17行目のスティック→いか 
 あーあ。やりなれないコピペなんかするから。鬱氏。
――いわし、という漢字はどう書くんだっけ。
 家庭教師先の生徒の教材を予習していて、俺はふと手を止めた。文系の勉強、
特に国語だの英語だのは得意じゃない。こんな漢字も書けないとは情けない
が、仕方なく俺は漢和辞典を引いた。

――鰯。なるほど、魚へんに弱いか。
 何となく今朝見たニュースを思い出した。昨日からスペインで開かれている
水泳大会で、日本人選手が世界新記録を出したのだ。次はオリンピックで
金メダルだ、と騒がれているその選手を見て驚いた。中学の時、水泳部で
一緒だった川崎じゃないか。
 俺も川崎も皆、真っ黒になるまで夏を泳いだ。パンツとゴーグルの後が白く
残るのを、お互いはやしたて笑いあったっけ。テレビの中でインタビューに
答えていた川崎は堂々としていて、俺と比べるとまるで鰯と飛び魚だ。

――でもな、俺たちは小せえ鰯の群れかも知んないけど、それなりに頑張ってくよ。
テレビの向こうの川崎にも、今までいろいろあっただろうな。俺は何だか
清々しかった。明日、家教先の中学生に「やりたいことやっとけよ」とか、くだんない
説教してみるかな――そんなことを考えながら、俺は予習の続きに取り掛かった。

 次は「テレビ」「あんみつ」「三毛猫」でお願いします。
「思いも寄らないことって、案外近くにあるんだね」
 美弥があんみつをつつきながら、不意に言った。
「どうした?」
「致死遺伝子って知ってる?発動すると、個体を殺すって遺伝子。テレビでやっ
てたんだけど、『三毛猫』って条件と、『雄』っていう条件が揃うと、発動するん
だって。だから三毛猫はみんなメスなんだよ」
「そうか。そういやこいつも雌だったな」
 俺は膝に抱えていた猫を抱えあげた。だらしなく伸びたおなかには、おっぱいが
縦に八つ並んでいる。
「思いも寄らないって言えば、そのあんみつ」
 俺は猫を伸ばしたまま、顎で美弥のあんみつを指した。
「その中にはいってる色付き寒天、実は海藻のところてんだって知ってた?」
「うそっ!?」
「思いも寄らなかっただろ」
 俺が笑うと、伸びた猫が賛同するように、にぃと鳴いた。

 次のお題は「幼稚園」「コンセント」「単行本」で。
647名無し物書き@推敲中?:03/07/18 18:23
たまには空気の入れ換えを
648名無し物書き@推敲中?:03/07/18 18:24
http://www.bannerbridge.net/cgi-bin/click.cgi?mid=b000000008&pid=p000000244
更年期障害、ストレス、慢性疲労、癌予防、免疫力の低下
そんな貴方に朗報です。ここではヤマブシ茸、アガリスク、粉末緑茶などの
健康食品を取り扱っております。
忙しく働いている貴方

たまには自分の体を労わってね・・・
 園児の協調性を重んじるサイバー幼稚園では園内の秩序を守るため、
園児のうなじにコンセントを埋め込む事を原則としている。
理由は…子供たちのヤンチャが原因である。
入園当初の三歳児は物静かだが、五歳児になると反抗期が始まる。
毎年のように各地で園児たちによる流血抗争が勃発、始業式と終業式には必ず機動隊が出動する。
『子供は自由に育てるべき』との保護者の主張に賛同していた文部科学省だったが、
前年度の全国幼稚園児抗争に置いて死者246名、重軽傷者千人以上、との報告を受け、
今年度、幼稚園法改正を議会に申請し可決させた。
 その内容とは『幼稚園の秩序を守るため、秩序を乱す園児たちは如何なる手段を用いてでも鎮圧せよ』という非情なものであった。
この法律は通称『EKC法(園児強制鎮圧法)』と呼ばれ園児たちに恐れられた。
優しい微笑みの保母たちは姿を消し、代わりに厳つい顔をした男たちが園内を歩き回り、
お漏らし一つで怒声を浴びせられる。
その点、サイバー幼稚園はプラグ一つで園児は思いのままである。
冷酷な大人によって情報の鎖につながれた子供たち…真なる自由を求めて園児たちは立ち上がる。

『エンジックス』単行本六巻、絶賛発売中!!
→お題は「線」「骨」「鏡」
651線・骨・鏡 ◆QkRJTXcpFI :03/07/18 23:36
 「自然界に直線は存在しない。存在するのは人間の脳が抱く意識の中だけなのだ」
早い話、直線というものは人工物だけに現れるということらしい。
 そんなものなんだろうか。

 たとえ人工物であっても、真っ直ぐに見えるものも、拡大鏡で見れば真っ直ぐではない。
どんどん拡大すれば、でこぼこが見えてくるだろう。少なくとも分子レベルまで拡大すれば、
つぶつぶになってるはずだ。

 ここに一枚のレントゲン写真がある。
 頭蓋骨が写り込んでいる。されこうべの輪郭、眼窩の窪み、顎の骨。
確かに複雑かつ特徴のある線が組合わさり、一つの骨になっている。
 ただ、この写真が普通のレントゲンと違うのは、
その絶妙なるアナログの線のハーモーニーをぶち壊すように、突如
横位置の強烈な線が写り込んでいるのだ。

 ビートたけしは鏡をのぞき込みながら神妙な顔をしている。
 バイク事故を起こし、救急車で運ばれ一命を取り留めたモノの
頭蓋骨が砕けてしまい、顔面崩壊を起こしていた。
 ベテランの形成外科医が、つぶれたほお骨に整復を施し膨らんだ元の形を作ってくれて
いる。骨が固まるまで、頭蓋骨を横に串差しする形で、金属の棒が差し込まれているのだった。

 「ようやく直ってさ、骨も固まったってんで金属抜くことになったんだよ。
その時だけどさ、俺は『おでんの気持ち』がよぉ〜くわかったよ。ハハハ」

 最近のビートたけしを見ていると、あの時の顔面崩壊がウソみたいに普通だ。


――以上、所要時間20分。
お題は?
653線・骨・鏡 ◆QkRJTXcpFI :03/07/18 23:55
あ、次のお題出すの忘れてた。

「涙」「花びら(花弁でも可)」「水晶」で。
654うはう ◆8eErA24CiY :03/07/18 23:58
「線」「骨」「鏡」

 乱射事件は、戦時中に前線と呼ばれた場所でおこった。
 「またか」「今度は広場らしいぞ」「うちの息子は無事か!?」
 現地の人間に混じって、五郎という一人の日本人がいた。
 世界を旅するうち、知らず知らず共に暮らしていたらしい。

 「!」彼は目を疑った。
 多くの者に混じり、まだ10歳の少年が、担架で病院に運ばれている。
 外国人である彼を、「友達」と呼んでくれた、ただ一人の少年だった。
 「よーしぃ」熱い血が五郎の体を駆け巡る。「爆発だぁー!」
 背後の部族長は、その言葉をはっきりと聞いていた・・・

 一週間後、五郎は検問所近くのバス停にいた。
 「ゴロー。最後のおさらいだ」部族長は息をひそめる。
 「鏡の前で何度も練習したな。敵にかじりつき、腰のワイヤーを・・・む?」

 あまりといえば、あまりの恐怖に五郎は立てなかった。
 「イヤ、イヤ、自爆なんてイヤ。帰して、お願い、うえぇぇぇ」

 長は彼を抱えて、帰りのバスに乗る。「骨の折れる奴だ」
 彼のズボンは、失禁でびしょ濡れだった。
 五郎の「爆発」も、両国の自爆攻撃には当然及ばぬものだった。

※書くだけで怖いー
次のお題は:「為替」「買わせ」「架空」でお願いします。
655654:03/07/19 00:05
 ・・・あわわ、ごめんなさい。
 次のお題は、653さんの
 「涙」「花びら(花弁でも可)」「水晶」でお願いします m(_ _)m
656線・骨・鏡 ◆QkRJTXcpFI :03/07/19 00:55
>>655
ごめんなさい。だぶってしまいましたね。
ルールとか把握してなかったもので・・・。
ちょくちょく覗くので、これからもよろしくです。
657涙・花びら・水晶
 男が泣くなんて、みっともないんだろうが……涙が止まらないんだ。
きれいだろう? 水晶とサファイアで作らせた花だ。サファイアは妻の誕生石だから。

 ん、妻の誕生日? 9月だよ。4月にお祝いを? ああ、そうだったなあ。
君がまだ小さかった頃だ。ケーキとサイダーのパーティーで、君は狭い家を走り回って
いたね。あれは前の女房だよ……いや、別に謝ることは無い。

 あの頃は貧乏だった。こんなに豪勢な食事も、広い宴会場もなかった。
散りかけのチューリップを飾るのが関の山で、君と女房は花びらを拾い集めていた。
 もし女房が生きていたら、と思うことはあるよ。今の妻は私のことを大事にして
くれる。それでもあの時、君たちが手から飛ばした花びらを思い出すと、
幸せとは何だろう、全ての幸せがどうして手に入らないのだろう、と。
 ……年をとると涙もろくていけないな。水晶の花は年寄りには寂しすぎる。

 次は、654さんの「為替」「買わせ」「架空」でお願いします。