この三語で書け! 即興文ものスレ 第七層

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1名無し物書き@推敲中?
即興の魅力!
創造力と妄想を駆使して書きまくれ。

お約束
1:前の投稿者が決めた3つの語(句)を全て使って文章を書く。
2:小説・評論・雑文・通告・??系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。
3:文章は5行以上15行以下を目安に。
4:最後の行に次の投稿者のために3つの語(句)を示す。ただし、固有名詞は避けること。
5:お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
6:感想のいらない人は、本文もしくはメール欄にその旨を記入のこと。

前スレ:この三語で書け! 即興文ものスレ 第六稿
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1018405670/l50
2名無し物書き@推敲中?:02/06/28 02:55
前スレが満タンだったから、急遽立てたー
こんなんでよかったかな。
3「飛行機」「陰陽師」「オムライス」:02/06/28 02:56
 闇に紛れて飛行機で降下した男。
 彼は、池に隠れ高倍率ファインダーを覗き込む。
 ファインダーは、池のほとりの巨大な邸宅に向けられていた・・・

 やがて、朝の静けさを破って「ダキューン!」「タタタン、ズダダダ!」
 しばらくして「ドカーン!」さらにもう一度「ドカーン!」

 末娘がパジャマのまま、眠い目をこすって下りてきた。
 「おふぁようー、お兄さま」と、いつもの様に長男の隣に座る。
 「おはよう。今朝はお前の好きなオムライスだぞ」

 「二度も呼んだわよ。いつものろいんだから・・・」と姉が小言。
 「タタタン姉さんのいう通りだよ、ダキューン兄さんはドカーンに甘いんだから」
 と、尻馬に乗るズダダダ。

 いつもの朝の喧騒を見て父は思う。(やっぱり名前がよくなかったかなあ)
 しかし思い直す。(そんな事はない、陰陽師が太鼓判を押して付けた名前だ)

 池の男はファインダーを覗き込んだ。シャッターを幾度も切る。
 「スクープ!今日の朝ごはん」


※たまたま読んでた漫画から・・・
次のお題は:「浴衣」「豊か」「有価だ」でお願いします。
4「飛行機」「陰陽師」「オムライス」:02/06/28 03:05
「これがエコノミーか」投資家が窮屈そうに居住まいを正した。
「先生は初めてでしょうから。すみませんね、ビッグプロジェクト
 なのに、経費は節約なんて言うんですから」
「いや、私のほうから希望したんだよ。投資家はなんでも
 見て回らないと気がすまないんだ。ほら、例えばこのイス。
 クッションがイカレちゃってるだろう。そろそろ替え時なんだよ。
 うーんオムライスか。聞いたことがないな」投資家がイスのメーカー表示を見て言った。
「あ、先生。そろそろ離陸です」
窓の外には滑走路の白線が陽炎にゆらめいていた。機体が動き出す。
投資家がふいに思い出したように言った。
「ところで今回のプロジェクトだが……」
「それなら心配要りませんよ、陰陽師はちゃんと用意してますから」
「なんだか心配になってきたよ」
シートベルトランプが点灯した。

>1 乙カレー。512K制限があるとは。自分のレスが512B以上なのかとオモた。
タレントという職業は何故これほどまでに忙しいのだろう。
不眠不休。まさにそれだ。
しかしこの仕事が子供の頃からの夢だったせいもあり、今を必死になって頑張っている俺がいる。
必死。必死だが「有意義」ではない。毎日が慌しく過ぎていっているだけだ。

俺は次の仕事の現場に向かう為、空港で飛行機を待つ。
さっき仕事の合間に食った、オムライスの鶏肉が奥歯に挟まって取れない。
寝てない俺はさらにイラついた。
「陰陽師!悪霊との対決!」
次の仕事の台本を手に取り、俺はため息をついた。
くだらねぇ。まじない師の演劇なんぞ俺は見たくねぇんだよ。
俺は一度出した台本をまたカバンの中に片付けた。

俺の方に10歳くらいの男の子が走り寄って来てこんなことを言った。
「おじさん!テレビに出ている人だ!!うんとね・・応援してるよ!パパも・・・ママも・・・それからおじいちゃんも!」
男の子は近くにいた、彼の母親らしい女性の足に恥ずかしそうに抱きつく。その女性は俺のほうに会釈をする。
俺も軽く会釈をする。
しょうがねーな・・・
俺は軽く舌打ちをしてさっきカバンに片付けた台本を取り出し、最初のページをめくった。


「飛行機」「陰陽師」「オムライス」で考えて作りましたが書きこめなかったようで。
批評のみお願いします。つぎのお題は>3さんさんので。

6:02/06/28 04:05
「飛行機」削ってました。すまそ。
7名無し物書き@推敲中?:02/06/28 05:09
「浴衣」「豊か」「有価だ」

トルコ人留学生の彼女が箱根に行きたいというので、
僕はできるだけ安くていい旅館を探すことにした。
ところがそういう旅館の予約なんかはかなり前々から埋まってしまうもので、
結局今回は日帰りで我慢することになった。
「ごめんなー」
「いいよ。次回は泊まろう。日帰りも有価だ」
「その場合はせめて有意義と言うべきかな」僕は訂正した。
「ああ、有意義ね」それが言いたかったと言わんばかりの顔。
「でも箱根の神髄は温泉旅館にあるしなあ」
「神髄はどういう意味」
「これを体験しなくちゃ箱根に来た意味がない、そういうもののこと」
「神髄」彼女は少し考えて言った。「わたし、着物が着たいかも」
「着物。浴衣のことか」はたしてこいつに似合うかなあ。まあいいか、
旅館の浴衣なんて風呂上がってから布団入るまでしか着ないもんなハァハァ
彼女はけげんな顔をした。
「着物じゃないの」
「ああっと、うん着物の一種だけどね。ずっとインフォーマルな着物だよ」
「豊か」
僕は訂正した。「浴衣」
「浴衣」彼女は真剣な顔で反復した。

次回は「炭酸水」「丘」「文庫本」
8「炭酸水」「丘」「文庫本」 :02/06/29 01:17
書を捨ててまで町へ出ようとは思わない。ただ、ナップサックに文庫本と
レモンソーダとサンドウィッチを持って、ハイキングに行く程度の
外出は稀にあった。

丘を登るとき、一番高いところに登ろうと思う。できるだけ急なところを
登ったら、早く登れるかも知れない。そうやって、道を選んで登ったが
そうやって一心不乱に登り終えて周囲を見回したら、少し向こうにもう
少し小高い丘が見えた。

貪欲になりすぎて、間違えた。

向こうの高い丘を見ながら、炭酸水飲んで、文庫本を広げた。向こうの丘
のほうが良かったなと。

「たこ焼き」「姫」「興味津々」
9暇な男:02/06/29 02:40
子供が4歳になった言葉の練習もかねていろいろな話を聞かせてやる
自分の知っている童話を聞かせてやった子供は興味津々で聞いていた

急に隣の家が騒がしくなった救急車のサイレンが聞こえる
隣は85歳になるおばあさんがすんでいた。
外に出て見る近所の人も集まってきた。
どうやらおばあさんは近所の友達からもらった
たこ焼きをのどに詰まらせたそうだ

幸い男性救急隊員の的確な処置により大事には至らなかったようだ

白雪姫の話はしばらくやめておこう、、、、
なんとなくそう思った。

次のテーマ
「小学生」「青」「交差点」
10「小学生」「青」「交差点」 :02/06/29 03:10
人間いつだって、勝つか負けるか。その二つのどちらかだ。
もちろん交差点を歩く時だってそうさ。

横断歩道の白いところだけを歩けば勝ちかって?
いや、そんな勝負をするのは子供だけさ。実際、間違って
黒いところを踏んで、戻ってやり直すのは小学生くらいなもんだろう。

大人の勝負は違う。つまり、いかに速く向こうまでいけるか、だ。
信号が青に変わると、待ってた奴らは一斉にスタートをきる。
横に歩いている奴よりも少しでも速く向こうへ行く。
そして、最後に勝てるのは、ただ一人だけ。それが大人の闘いってもんだ。

しかし、勝負していることを絶対に他人に悟られてはならない。
なぜなら、負けたときに言い訳ができないからだ。もし負けてしまっても、
「オレは勝負してなかったんだから」と言える余裕が必要なのだ。

ところで、この「勝負しているのを悟られてはいけない」ってのは、
なかなかシビアなルールだぞ。というのは、もし横断歩道を小走りで
走りぬけようものなら、「あ、あの人、勝負してるんだわ」と後ろ指を
差されてしまうからだ。

さて、そろそろ信号が青に変わるぞ。

次のお題は、「抗鬱剤」「恋」「教室」
11「抗鬱剤」「恋」「教室」:02/06/29 03:27
恋をしたことがない。人という生き物がまったく魅力的に思えない。
教室へ向かう廊下でたくさんの学生とすれ違った。五月蝿い。
うつむいたまま歩いた。歩く早さで、少しだけ数式を検討した。
大学入学当初から、人付き合いが苦手で、欝の気があった。医者へ
ゆき、抗鬱剤の処方を受けたかったが、一番近い病院は大学の敷地内
の付属病院だった。誰かに見咎められるかも知れない、そう思うと
足が向かなかった。
教室のドアーの前には女子学生がたむろして、なにやら姦しく話していた。
失礼、と小さく告げて彼女らを横切った。後ろで笑い声が聞こえた。

教室は七割がた、埋まっていた。教壇へ向かった。黒板には私の名前と、
**教授最終講義の文字が書かれていた。

恋をしたことがない。これからもしないだろう。
12、「抗鬱剤」「恋」「教室」 :02/06/29 03:36
のどかな田園風景。だが、それはボックス席に座り、車窓を真剣な眼差し
で見つめている男には煉獄のように感じられた。抗鬱剤を東京駅のゴミ箱
に捨て、飛び乗った列車は、すでに終点に向かいつつあった。乗客はすで
にいない。放課後の教室のようなもの哀しさが車両には充満していた。

彼は、二重の疎外に耐えていた。それは、自分の知っている世界が自分
を疎外していること、もう一つは自分の知らない世界が自分を疎外して
いることに対して。だが、不思議と自分がいた場所を恋しいと思うこと
もなかった。それは、あたかも自分がフラれたことに腹正しさを感じ、
自分があの女をふったと主張する、男の幼稚な虚栄心であることに、彼
は気づいていなかった。なぜなら、彼は一度も人を愛したことはなかっ
たからだ。

次は マグカップ 童話 焼酎でお願いします
13マグカップ 童話 焼酎:02/06/29 03:44
職業を聞かれれば童話作家と答える。確かに私は童話作家だからだ。
夢のあるお仕事ですね、といわない相手はいない。
童話作家です、夢のあるお仕事ですね、童話作家です、夢の溢れる
素敵なお仕事ですね、延々と続く繰り返しとほんの微妙な変化こそが
グリムの時代から童話の特徴だったかもしれない。
童話なんて書いても売れない。喰えない。夢はあるが、飯はない。

目が覚めるとマグカップに焼酎を注いで飲んでいる。
童話の特徴は単調な繰り返しと小さな変化だ。三匹の子豚の家は徐々に
強靭になり、姫が呼び出す怪物は次々に大きくなっていく。
現代の童話作家、つまり私だ、のアルコール中毒は日に日にひどくなり
ときおり指が震えてカップを割る。新しいカップは、当然、前より
大きなカップだ。

「巨人」「薬用」「移転」
W杯が開催されている。
普段はサッカーなど興味のない私だが、さすがにこのときばかりはサッカーを見ずにはいられない。
毎朝新聞を見るとき、まっさきに目を通すのはスポーツ欄だ。
いつもなら「阪神巨人戦の結果は・・・」などと呟きページをめくるが、やはり今はサッカーのほうが気になる。
今日、一番最初に飛び込んできた記事は、韓国のベスト4進出の記事だった。並み居る強豪を倒し、ベスト4まで来た韓国を称える記事が掲載されていた。
しかし私はどうもそのことを素直に喜ぶことが出来ない。
まず第一に、誤審が多いこと。
第二に、あの尽きることのないスタミナはどこからやってくるのか、ということ(噂では高価な薬用の高麗人参を服用しているらしいのだが)。
とにかく、韓国の躍進には疑わしい点が多すぎるのである。
しかし、である。それでもやはりW杯は楽しい。
残念ながら日本代表のW杯は既に終わってしまったが、次回のW杯に向けて充分躍進を期待させる内容であった。
W杯の次の移転先は4年後のドイツ。今から楽しみである。

※次のお題は ドーナツショップ、月、午前三時 です。
15ドーナツショップ、月、午前三時:02/06/29 11:51
24時間営業のドーナツショップなんか、流行るわけが無い。
吉田は、ショーケースの中のパンプキンドーナツをひとつ失敬して、
カウンターの隅にある椅子に腰掛けた。
壁掛け時計は午前三時を差している。
窓以外の全てがクリーム色に塗られた店中には、一人の客もいない。

「今月の一押し!新発売のパンプキンドーナツは、
ふっくらとした生地に甘〜いカボチャを練り込んだ・・・・・・」
5分置きに女の子の声で繰り返される、単調な店内放送に洗脳されそうだ。
ドーナツを食べ終わり、指についた食べカスを払い落とすと
吉田は、ひとつ大きな伸びをした。放送は、まだ続いている。

「客なんかいないのに・・・・・・律義だな」
「んー、でも決まりですからね」
放送の女の子から返事をされてて、吉田は椅子からズリ落ちそうになった。

「録音じゃなかったの?」
「本当は禁止されてるんだけど、ついつい話しかけちゃいました」
改めて聞くと、なかなか可愛い声をしていることに気づく。
「知らなかったな。一体どこから放送してるの?」
「隠し部屋があるんですよ、お店の裏口から入るんです。
あの、もし良かったら、こちらに来ませんか?お客さんも来ないようですし」
夢のような展開だ。財布にはちゃんとコンドームも入っている。

それから数週間経った後、吉田のバイト先のドーナツチェーンが
新聞やTVを賑わせた。
“○○ドーナツ、パンプキンドーナツの原料に、幻覚カボチャ使用”

次は、「マッチ」「一本」「味の素」
16エヴァっ子:02/06/29 23:39
「マッチ………マッチは要りませんか?」
雪に吹かれながらも、紅い服を着た少女は凍えながら商売を続けた。
「マッチは要りませんか?マッチは………」
健気な少女の声にも、街の人々は反応しなかった。
結局マッチは一本も売れずに、日付が変わった。
「今日日マッチが簡単に売れたら苦労しないわよねぇ………」
紅い少女は手を息で温めながら呟いた。
指先は唇と同様、紫色をしている。
「大体さぁ、私ってついてないのよ」
目の前には、大勢の人がいて紅い少女の前を通り過ぎていく。
だが、もう商売をする気にもなれなかった。
強い風が吹いた。
少女は雪と共に、地面に倒れた。
冷たいのかももう分からなかったが、地面は固いことだけは理解できる。
「何だったのかなぁ、今までって………」
親に捨てられ、友達からは嫌われ、恋人もいなくなった。
こんな人生はどこかよかったのだろうか?
「味の素よりかは、ましだったかなぁ」
少女は、それだけ呟くと目を閉じた。
平坦な味でない、苦味と辛さが絡み合った辛い人生を終わらせたのだった。
17味の素:02/06/30 00:14
一本のマッチがこれほどありがたく思えるとは、落ちたものだ・・・。
切り裂くような冷気を伴う風に身をさらしながら、男は震える指先でマッチをつまむ。
今にも取り落としそうな頼りない細い棒は、先ほど通行人が落としていった者だ。
この冬の冷気に、少しでも身を暖めることが出来そうな道具。男は、胸に暖かい焔がともって、それが
全身に広がっていくような歓喜の感情を味わった。
だが、胸の火は路傍を駆け抜ける冷気によって瞬く間に消えてしまったようだ。
マッチの炎が消えた今では温度の名残もなく、急激に冷めた胸はむしろ氷が張ったように痛い。
男は、くたくたになった背広にだらしなくついていた、社員バッジを・・・今となっては、このマークを見るだけで
憎しみと悲しみ、そして悔しさのまだらもようをした毒蛇が牙をむく。
もう、いい・・・。
味の素 と書かれたそのバッジを、無造作に毟り取ると、毒を吐き出すように、それを投げ捨てた。
耳には、カランと渇いた音が、空しく響いた。

そして、燃え尽きたマッチに、フ。と哀しく微笑みかけた。
それが・・・男の最後だった。視界が狭まっていき、思考は深淵に沈んでいく。
鈍った脳で、かすかな衝撃を感じた気がして、それきり、何も感じる事はなかった。

翌日、一人の男性の死体が見つかった。顔は紫色に染まり、冷え切っていた。
男の身元はわからない。味の素 と書かれた歪んだバッジと、使用済みの、小さな折れたマッチが、
腹の上に落ちていた。
18味の素:02/06/30 00:16
次のテーマは
『韓国』『インドネシア』『アフガニスタン』
でどうぞ。
19暇な男:02/06/30 02:46
夜中コンビニに入る長渕剛の歌っている静かなるアフガンの曲が聞こえるテロ事件のあと作られた曲だ
アフガニスタンのことを歌った曲らしい
発展途上国の中には先進国を嫌っている国もたくさんある
しかしやはりお金がないと生活ができない日本にもたくさんの外国人が出稼ぎに来ている
今レジを担当しているのもタイ人のように見える

父親は貿易関係の船の船乗りをしている
船の船員は特に外国人が多いらしいマレーシア、フィリッピン、インドネシア
さまざまな国の人を雇っているらしい

そういえば昔エジプトから買ってきた
お土産の中にツタンカーメンの置物があった
ふと裏を見るとMADE IN KORIAと書いてあった
韓国で作られたものだった

次のテーマ
「音楽」「でんわ」「雑誌」
20「音楽」「でんわ」「雑誌」:02/06/30 03:13
私の一番のストレス解消法は、なんといっても長電話である。
音楽雑誌をめくりつつ、友人と他愛のない会話に興じているときが、一番の至福のときかもしれない。
内容は主に会社や恋人の愚痴、街で見つけたケーキが美味しい店の話題、久しく会っていない友人達の近況等々。
そんな話題をとっかえひっかえしながら、取りとめもなく5時間も6時間も語り合うのである。
しかし、ストレスが解消されるのはいいのだが、毎月の電話代が高くついてしまうのも確かだ。
先月などは、電話代がとうとう十万円を越えた。
そのことがストレスとなり、また私の身を苛む。
そうして今日も私は受話器を握る。
ささやかだけれど、確かな幸福を手に入れるために。
あ、次のお題は「夢、森、闇」でおながいします。
「夢、森、闇」
私は今、闇と向かい合っていた。
それは私自身の心の闇だった。
闇に見つめられた私は、絶えず誰かと繋がっていないと
消えてしまいそうで不安でたまらなくなる。
だから自分の存在を感じていたくて私は電話をする。
相手は誰でも良かった。話の内容も他愛のないことばかり。
電話代は確かに高くついた。こちらが一方的にかけるから。
私は自らの闇に飲み込まれまいと必死だったのだ。

それでも私は夢を見る。
いつか私の心の森が豊かに育ち、果てしなく広がる日を。


次は「ねずみ」「レース」「あさって」
 レースのブラウスを大事そうに抱え、娘は老人の元へとやって来た。
 そのレアチーズ色のブラウスは見事なもので、なかでも襟元にある綿密な細工の白薔薇が優美だった。
 老人の見るところ、明後日の収穫祭、間違いなく彼女は優勝カップを手にできるだろうと思われた。
 ――なあに心配するな。仕立屋の看板に賭けて、お前さんは優勝だと断言するよ。
 老人の目に狂いはなかった。
 しかし彼女が優勝することはなかった。

 肝心のレアチーズが鼠に咬み破られていたのだ。


 次は「酒」「エタノール」「監禁」
「酒」「エタノール」「監禁」
君達子供はまだ飲んだことがないかもしれないが、
ウイスキー、焼酎、あるいはビールといった酒には
例外なくアルコールが入っている。
もう少し正確に言うとエタノール、またはエチルアルコールである。
君たちがもし中学生以上であるなら当然その化学式"CH3COOH"くらいは
知っていることだろう。
だが、君たちの中にアルコールを過剰摂取することの弊害について理解していると
いう者は ―親が飲んだくれでもない限り― めったにいるものではない。
その禁断症状の恐ろしさは想像を絶する。
本気で禁酒を断行するためには室内に監禁も辞さないほどだ。
諸君も大人になるまではお酒を飲んではいけないよ。

次は「高級アルコール」「費用対効果」「ハニカム」
2524:02/06/30 23:14
age
>>24
難しすぎて書けないよ・・・
27暇な男:02/07/01 01:56
ハニカムって何?
>>27
ハニカム構造、で検索すれ。
29暇な男:02/07/01 02:09
>>28
ダンボールのあれみたいなやつ?
>>29
そうだよ。ちなみにハニカム=蜂の巣、ね。
これ以上はスレ汚しになるのでこの話題はこれで

糸冬 了
31妄想120%:02/07/01 02:32
いったい、スーパーハニカムCCD搭載のデジカメはサトシに何を与えてくれたのか?
幾らお金をつぎ込んだところで、結局……サトシの世界は、絵筆を通して描いたの風景に
あるのだ。
 それに費用対効果という視点から考察しても、どうせならアルコールの方が幾分もマシ
というものだった。
 激しく喉を焼きつける琥珀色の液体。アルコールは心の乾きを癒すが、同時に
飲むたびに体をじわじわと蝕んでいく。しかし、サトシには飲んで描く他には、伝える方法
がないのだ。
 今日も筆を持つ手が震える。イーゼルに立てかけられたカンバスが、伽藍で塗りつぶされる。
 日のささない、無音の一人ぼっちのアトリエという肩書きを持つ、最適な牢獄で彼は思う。 
 ああ、どうせ体を蝕むのなら、もっと美味い酒がいい。どうせ死ぬなら高い、高級アルコ
ールで、喉の渇きを癒させてくれ。

「サトシくん、やっぱデジカメ気に入らなかったみたい」
「そうみたいだね。……カナコちゃん、この絵は真っ赤っかだねぇ。ねえ、これはどこなのかな?」
「ううん、わかんない。きっとこれ、サトシ君が書いた絵だと思うけど」
「そうか……じゃあ、サトシ君が出てきたら聞いてみるよ」
「うん、そうして」

次のお題、「紫陽花」「夏の思い出」「鼻緒」



   
 
32暇な男:02/07/01 03:02
2年前野球部に入ったグラウンドの近くに
紫陽花の花が咲いていた初めころは気付かなかったが
しばらくすると立派な花を咲かせた。

いつか枯れるだろうと思っていたがなかなか枯れなかった
それから2年
紫陽花の花がなくなってた普段は気にも留めないただ咲いてる
だけの存在だったがなんとなくさびしい気分になった
急に鼻緒が切れたようなかいやな予感がした

紫陽花の咲いていたところには甲子園に出場する高校に配られた
とびという草が植えられていた
この草はこれから学校の誇りとして残っていくだろう
甲子園は一生残る思い出となるだろう。
紫陽花の花どうだろうか
そう考えるとなんとなくさびしい気持ちになった
______________________
高級アルコールって飲めるものでしたっけ?
次のテーマ
「靴」「空き缶」「雨」
33暇な男:02/07/01 03:03

「甲子園は一生残る夏の思い出となるだろう」
の間違えでしたスイマセン。
無造作に、玄関に脱ぎ散らかされた靴と、空き缶にうず高く積み上げられた煙草の吸殻が、この部屋の主を表していた。
午前2時。ありふれた、ワンルームマンション。
東側の窓の向こうにある、緩いブリッジを通り過ぎてゆく、かすかな車のノイズだけが、部屋の中にあった。
不意に、電話が鳴った。
だれも、取る者もいない部屋の中で、電子音だけが、鳴り響いていた。
やがて、その音も止まり、不確かな静けさが、部屋の中に戻った。
空気の中に、もう薄れてしまったが、それでもまだ、濃く、煙草の匂いがゆっくりと揺れていた。
もう一度、電話が鳴った。
誰かを、恋うように、せつなく、いつまでも鳴り続けていた。
そして、疲れてしまったかのように、静かに電話が止んだ。
なにもかもに、もう、疲れてしまった。とでもいうように。
そして、車のノイズだけが通り過ぎてゆく時間が、誰にも咎められず、もう一度、この部屋にあった。
永遠とも思えるほど、純粋な空白として。
いつか降り出した雨の匂いが、わずかに開いていた窓から、微かに流れ込んでいた。
もう一度、電話が、鳴った。

次は、「梅雨明け」「レモン」「蛍」で、ヨロシク




35名無し物書き@推敲中?:02/07/01 05:31
 それはレモン色だった。
 僕等を包んでいた。
 空の一部分が欠けて、そこから光が差し込んでいた。

 それは悲しいほどにレモン色だった。
 僕等はそれを見て、外の世界に憧れていた。

 一体僕等がどんな罪を犯したというのだ。
 彼等と何が違うのだ。
 僕等はこの石で囲まれた深い牢獄に閉じ込められている。
 彼等は誰にも遮られない自由な世界で暮らしている。

 ああ! 僕は大海を知っている。
 どうして知っている?
 記憶があるからさ。

 ――蛍さん、蛍さん。お空を飛んでいる蛍さん。
 ――なんだいなんだい騒々しい。今日のお前さんはちょっと不思議だな。
 ――教えておくれ教えておくれ。外の世界はどうなっている?
 ――お前さん、お前さん。蛙なのに哲学者であるな。

 梅雨明けのまどろみはまだまだ続きそうであった。



次は「お姉」「自転車」「サングラス」
36koke:02/07/01 18:41
「お姉」「自転車」「サングラス」

電話を置いた彼女は、大きく息をついた。
「それで? なんだって?」すぐには何も言わなかった彼女を促すようにぼくは言った。
「よくわからないわ」彼女は首を傾げて言う。「家に来るらしいことは確かだけど」
「それはまた、微妙だね」ぼくは苦笑いした。
「だって、お姉の家行くから、ってそれだけしか言わないの」
「それだけ? 妹よ、ってぼくに言ってから30分は話してたと思うけど」
「最後に行くから、って言うまでは彼の話だとか、そんなことばっかりだったの」
ぼくは、ふうん、と流してベランダの方を見た。「ぼくは、いつ来ても構わないけどね」
「妹さんはまだ高校生でしょ? 自転車で来るの? 電車なら駅まで行くけど?」
レースのカーテン越しに入ってくる光からすると、運転するのにはサングラスが必要だろう。
「だから、そういうことも一切言わなかったの。でも、実家から自転車で来るのにはちょっと骨が折れるわね」
「そうか」とぼくは半分くらいの意識をベランダの向こうに残しながら言った。
「じゃあ、仕方ないね。駅から歩けないほどでもないしジュースでも用意して待ってよう」
彼女は半分くらい笑って言った。「そうね」
ぼくらはただ、午後のあわただしい来訪者を待つのだった。

つぎは「ビー球」「クレヨン」「パン」で。
37「ビー球」「クレヨン」「パン」:02/07/01 21:22
やせっぽちのリンダは、ふとっちょのマリーが大嫌いだった。
だからいつもマリーを“こぶたちゃん”と呼んでいじめていた。
腹を立てたマリーは、それを魔女のお婆ちゃんに言いつけて、
リンダにまじないをかけてもらうようにお願いした。

まじないがかかると、リンダは急にお腹が空くようになった。
まず台所にあったパンや果物を食べミルクを飲むと、
次に地下の貯蔵庫に忍び込んで、ハムやチーズやジャムを食べた。
家に食べ物が無くなると、隣の家の台所や向かいの家の地下室へ押し入って、
おばさん達がわめくのも聞かずに、ひたすら食べつづけた。

そうして近所中の食べ物を食べつくしてしまうと、
次にリンダは、花やびいだまや色とりどりのクレヨンといった、
食べ物ではないけれど、おいしそうに見えるものを食べはじめた。
やめようと思っても、自分ではどうすることもできないのだ。
町の人達は、気球のように膨れあがっても、まだ食べ続けているリンダを
呆れ顔で眺めていた。

リンダはブリキで出来たペンギンのおもちゃをかじりながら、
ポロポロと涙を流して、大きな声で泣いた。
泣いて泣いて泣いて泣きつづけると、リンダはどんどんしぼんで
元の大きさのリンダに戻った。
リンダは涙を拭くと、顔を上げないようにしてコソコソと家に帰った。

リンダは、次の日からマリーをいじめることをやめた。
太った子を見ても、「こぶたちゃん」なんて呼ばなかった。
でも、一度伸びきってしまったリンダのお腹の皮は、
リンダがお婆さんになるまで、ずっと、たるんだままだったんだってさ。

次は「小鹿」「発明」「茶碗」
38「小鹿」「発明」「茶碗」:02/07/02 02:51
博は茶碗の中と僕の瞳とを交互に覗き込みながら、
「今にこの中に月が出る」と繰り返していた。
砂場に小さな山を作って、そのてっぺんに茶碗を安置する。
水飲み場から汲んだ水はいきものみたいに揺れて揺れて光っていた。
満月の夜だった。月を手に入れたくて仕方が無かった頃だった。

家で悪さをするとすぐに夜中に玄関から放り出された僕は、
逃げ込んだ先にたびたび見つける博の顔に安心していた。
夜の中を息を切らせて駆けていったあの頃、
玄関に座り込んで泣くことなんてできなかった僕。
暗闇の向こうから、小鹿のように飛んでくる博の姿を盲目的に信じていた。
「ほら 月が落ちる」
水の上に浮かぶ月。博と一緒に囲んだ月。水面から昇った淡い光が博の目にも映っていた。
「発明」というほど大きくなくて、でも「思いつき」よりずっと意味があった。

不安と申し訳なさと、真実独りきりだった博に対する後ろめたい甘えと。
博が心の底で欲しい欲しいと泣いたのは、月を想ってではなかったと、本当は知っていたのに。

--------------
次は「くちなし」「飴玉」「虫眼鏡」でお願いします。
私と姉は昔からずっと仲がよかった。
ニッケ味の飴玉を口移しで食べたり、虫眼鏡で蟻の巣を一緒に観察したり、勉強を教えてもらったり、とにかく何をするにも一緒だった。
双子というだけで幼い頃からなにかと比較されてきた私と姉だったが、軍配はいつも姉のほうに上がった。
姉は私より聡明で、快活で、優しかった。頭も良く、運動神経もクラスで一、二を争うほどだった。
一時はそんな姉を妬ましく思ったが、それでも姉を嫌うことはできなかった。本当に、優しい人だったのだ。

その姉が、昨日の夜、首を吊って死んだ。
男に騙され、そして捨てられたのだ。
相手もわかっている。生前、一度だけ顔を見たことがある。
姉と並んでプリクラに写っていたその顔は、いかにも軽薄そうでだらしのない2枚目という感じだった。
正直、姉には相応しくないと思ったが、姉の嬉しそうな顔を見ていると、とてもそんなことを言う気にはなれなかった。
私が一言注意をしていれば。そう思うと悔やんでも悔やみきれない。

そんな私が姉のためにできること。それは姉の代わりに男に復讐することだ。
姉の気持ちを踏みにじり、そして何より私から半身を奪ったことを必ず償わせてやる。

The scent of a gardenia 『くちなしの香り』

姉が好んで使っていた香水を身につけ、男の元へと車を走らせた。

◆次のお題は「努力、友情、同性愛」です。
校正するの忘れた・・・鬱。
41努力、友情、同性愛:02/07/02 11:21
「これまでの人生を思い返すと、イライラするんだ」
「何かあったのね?」
「何もなかったんだよ」

白い壁に囲まれた、ベッドとドアと小さな窓があるだけの小さな部屋。
三十歳くらいの男女が、古いパイプベッドに腰をかけて話をしている。
部屋には二人だけしかいない。

「子供の頃から、目標に向かって努力をすることなんてなかったし、
内向的な性格で友人と友情を深め合うなんてこともなかった」
「恋人はいなかったの?」
「一応はいたよ。でも相手も平凡な女の子だったし、何より真面目で健全過ぎた」
「SMや同性愛の趣味なんかは?」
「そんなこと、考えたこともなかったよ」

ノックも無しに、いきなりドアが開け放たれ、軍服姿の男達が室内になだれ込んで来た。
一列に並んだ男達の中から、ヒゲを生やした男が歩み出て言った。
「さぁ、処刑の準備が整った。ご足労願おうか」

厚い雲の間から太陽が顔を出し、鉄格子の嵌められた窓から差し込んだ光が、
サーチライトのようにベッドの上の二人の軍事スパイを照らし出した。
男は眩しそうに目を細めると頭を垂れ、口元に力無い笑みを浮かべた。
「出来れば、波乱万丈な生き方をして、平凡に死にたかったものだな」

次は、「朝刊」「包帯」「アイスコーヒー」
42「朝刊」「包帯」「アイスコーヒー」:02/07/02 12:54
 嘉子は貞淑な妻で、料理もバラエティが豊富だ。
 今朝もさっぱりとした料理がならんだ。サラダには、フレークでハートの形
が描かれていた。俺は快い朝食をたいらげた後、アイスコーヒーを片手に土曜
日の朝刊を広げた。

   『またもやミイラ男現る 地域の住民不安つのるばかり』    
  昨日夕方6時未明、××工場の従業員 児島信一郎(48)が仕事
 の帰り道に後ろから刃物のような凶器で頭を斬られ死亡。目撃者
 によると加害者は近日同じような手口で無差別に殺人を繰り返す
 「顔に包帯を巻いて隠し、十字架のネックレスを下げ、斧を持っ
 た人物」だったという。警察側は同一犯人によるものと断定……

 俺はここまでの記事を読むと、ある不安が過った。十字架のネックレス。
記事の隣に載っている犯人の物のスケッチと、俺が今年の結婚記念日に嘉子
にプレゼントした物とデザインが一致していた。それに、仕事から帰宅する
と、殺人事件が起こる日に限って部屋に変な臭いが漂っていた。
 もしかしたら、俺の妻が犯人かもしれない。いつもは平静を装って、後ろ
から斧を振り下ろす機会があれば、ためらわず頭を割る……。

 そのように考えると、畏怖的な震えが俺を襲った。ゆっくり後ろを向くと、
妻が十字架のネックレスを下げ、今まで見たことの無い光悦の相好を浮かべ
ながら、斧を振りかぶって待ち構えていた。


次のお題は「一笑一顰」「喜怒哀楽」「破顔一笑」
43サカガミ@初投稿:02/07/02 17:00
>>42
一顰一笑、でよろしいか。
多分、一顰一笑が正しかったと思われ。

「一顰一笑」「喜怒哀楽」「破顔一笑」

高く青い空。かげろうの昇る蒸し暑い季節。
古くからの住宅密集地に、四角く切り取られたような小さな公園の砂場に、
大きな麦わら帽子と小さな麦わら帽子が、肩を寄せ合ってしゃがんでいる。
私の座るペンキの禿げたベンチからそう遠くない光景。
兄弟だろうか。砂場の中央に小山を作って遊んでいる。
小さな四つの手によって固められた山は、徐々に高くなり、
弟らしき子供が手を叩いて喜んでいる。
しかし子供のすることは時として突然で、意味が分からない。
兄らしき子供が砂山にズック靴を履いた片足を突っ込み、
せっかくの山を突き崩してしまった。
兄の突然の行動に驚き、弟は兄の顔を覗き込み、一顰一笑を伺っている。
そして兄は砂場の近くに転がっていた子供用の小さなバケツをつかみ、
公園の水道に駆けて行き水を汲んで戻って来た。
砂場にバケツをひっくり返し、砂の中に小さな池を作り、また違う遊びを始める。
弟は、兄が不機嫌から先程のような行動に出たのではないと分かり、破顔一笑した。
私の幼いときも、ああだったろうか。
あんな風に、喜怒哀楽をむき出しにして人と対峙していただろうか。
今では肩の擦り切れたジャケットを脇に抱え、
私はがたついたベンチから立ち上がり、煙草に火をつけた。
夏の雲ひとつ無い空を背に、私は再び営業に向けて歩き出す。


次のお題は「写真立て」「ねこ」「チーズ」
 余、画の道を志せるは六十年前──十七の歳のことなり。山田某なる師匠の言に従い、道ゆく人々の一笑一顰を画中に写し出だす修行を始む。
 画道短きものにあらず、人の喜怒哀楽描くに近道なし。ゆめゆめ道誤るべからず、との御言葉賜れり。
 十九になりたる年の或る夜、余ふと神意を得て、夜鷹に銭を渡し、客取りて啼く様、隣室より密かに描き出したるところ、夜鷹、客もろとも余の目の前で消失せり。しばし呆然とせるも、画帖に目を落とせば、先の夜鷹と足軽の交わる姿あり。
 余驚きて、山田先生宅を訪れしところ、汝が画心、神妙の域に達したりと、破顔一笑せらる。
 而して数瞬ののち、先生もまた消失せり。
 余、筆持ざれどもかくありけんと思いしが、画帖の中に吸い込まれたるは余なりけり。
 山田先生謹厳たる面持ちで、
「汝、外法得たれば、吾、同じ技を使いける」と、仰りつつ、画帖を閉じたり。

 あー、先越された!
 次のお題は「写真立て」「ねこ」「チーズ」
45名無し物書き@推敲中?:02/07/02 19:57
「はいチーズ! でいい写真が取れるものか!」
 これが師匠の口癖であった。
 曰く、“ズ”という部分がよろしくないんだそうだ。
 ズの部分で口をすぼめる。
 そうすると勢いもすぼまるのだそうだ、撮る側も撮られる側も。

 ――写真立てには師匠の撮った写真が飾ってある。
 写っているのは僕だ。
 僕はねこ騙しを受けたような顔をしている。
 撮る時、師匠はこう言った。
「あたしと結婚してください」



次は「柳眉」「長い黒髪」「神社」
「柳眉、長い黒髪、神社」

その神社は、街を一望できる小高い丘の上に建っていた。
僕は今鳥居にもたれ、彼女のバイトが終わるのを待っているところだ。
僕の彼女はこの神社で巫女のバイトをしている。高校に入学した当時から始めて、今では巫女の中でも最古参らしい。
そのせいだろうか。巫女の姿をした彼女には一種の神々しささえ感じられる。純白の衣に赤い袴。それに彼女の長い黒髪。このコントラストが実に見事だ。
見慣れた僕でさえ、未だに見惚れてしまう。

ところで巫女のバイトというのは処女でなければできないらしい。
もっとも、それはあくまでも自己申告であり、たとえ何人と経験していようが面接のときに「処女です」と言えばOKらしいし、セクハラになるとかで一切訊かないところもあるようだ。
ようするに、女性であれば誰にだって巫女になるチャンスはある、ということになる。

その点僕の彼女は完璧だった。つまり、処女だってことだ。3年間付き合ってる僕が言うんだから間違いない。
一度、冗談で彼女を押し倒したら、柳眉を逆立てて真剣に怒っていた。おかげで僕はその後一週間、ずっと謝りっぱなしだった。
おかげで二十歳の誕生日を三日後に迎えた今でも僕は童貞である。男性も巫女になれるのなら、僕には立派に資格がある。そんな資格、早く捨ててしまいたいのだけれど。

やがて、約束の時間より遅れて彼女が社務所から出てきた。

「どうしたの? 随分遅かったじゃない」
「あのね、私・・・私、今日で巫女のバイトやめたの」

そう言った彼女の表情がやけに嬉しそうだったのは、僕の気のせいだろうか?

次は「真夜中、鳴らない電話、泪」
47名無し物書き@推敲中?:02/07/02 22:15
ageるの忘れたのでage
48真夜中、鳴らない電話、泪:02/07/03 00:05
電話には嫌な思い出がある。見ているだけで泪が出てくる。
私のオフィスにも電話があるが、私は極力、近づかないようにしている。
昼間ならば秘書がいるが、夜は私一人し、私は電話にはでない。
よって、私に電話をかけてくるものは少ない。真夜中の電話は鳴らない
電話だ。

それで、良い。
私はベルが嫌いなのだ。

私よりほんの二時間早く特許を申請して、電話の発明者になりおおせた
男を思い出す言葉だ。あのときもっと情報があれば、私は早起きしてでも
特許申請に行ったのに。もっと情報があれば…。
たとえば誰かが電話で教えてくれるとか、だ。

「声」「気軽」「両肩」
49真夜中、鳴らない電話、泪:02/07/03 00:07
>>48
げ。
間違え: 昼間ならば秘書がいるが、夜は私一人し、私は電話にはでない。
訂正: 昼間ならば秘書がいるが、夜は私一人だし、私は電話にはでない。
「真夜中、鳴らない電話、泪」
眼には泪 鳴らない電話 君を待つ
真夜中に 起きい出てみれば 霧雨の
しとやかに降る 夜の小路に
ただ濡れて 頬に滴る 泪雨
熱き想いに 想い溢るる 暗闇の
先に浮かぶは 君の麗顔


たまには「詩」風に。いや、へたくそとか
いわれなくてもわかってるから。
51真夜中、鳴らない電話、涙:02/07/03 00:16
先日、本屋のくじびきで、人工知能付き携帯電話のモニター権が当たった。
少々胡散臭い気もしたが、期間中は電話料金を負担して貰えるというので、
どんな物かも聞かずに、二つ返事でモニターを引き受けてしまった。

アパートに帰り、早速箱から携帯を取り出してみたが、
見た目は普通の物と大差ないようだった。シルバーのボディに、
涙の雫のような水色のロゴが浮き彫りになっている。
いじりまわしていると、突然、電話が口を聞いた。
機械的な印象は全くなく、不気味な程に滑らかで、そして気さくな喋り方だ。
これが人工知能というものなのだろうか。

それから人工知能は、自分の持っている機能について説明を始めた。
俺がボーっとしていると、機嫌が悪そうになる。
適当に相槌を打ってやらなければ、気が済まないらしい。

これは使い始めて分かった事だが、かかってきた電話には、まず人工知能が出る。
それから俺に取り次ぐ決まりになっているようだった。
無駄な機能だと文句を言うと、進化による退化なのだと難しい事を言う。
口論になったが、電話に言い負かされて惨めな思いをした。

それで舐められてしまったのか、使い始めて一週間が過ぎた頃には、
真夜中の電話や自分が気に入らない相手からの電話は、
人工知能の勝手な判断で取り次がないようになった。まるで母親のようだ。
夜中に鳴らない電話は、眠っている時には有り難かったが、
それでもやはり、人工知能の判断で勝手に切られるのは気分が悪い。

そのうちに、女の子から電話があると、俺に取り次ぐ前に、
十分以上も話し続けるようになってきた。
一度、一体どんな話をしているのかとコッソリと聞き耳を立ててみると、
俺の全く知らないギリシアの映画の話で盛り上がっていて、疎外感を感じた。

最近では、俺では無く人工知能に電話をかけてくる女の子が増えてきて、
俺は何人かのガールフレンドを携帯電話に取られてしまったようだ。
今回は電話だからまだ良かったものの、ロボットが人間の世界に入りこんで来た時、
一体、世界はどうなってしまうのか。
それを考えるだけで、俺はとても暗い気持ちになってしまうのだ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
長いよ。ごめんね。次は「声」「気軽」「両肩」
僕等はただの友達だった。
少なくとも彼女はそのつもりだったと思う。
いつも学校へは一緒に行っていたし
俺が居残りさせられた日は彼女が校舎の外
でいつまでも待っていた。
なのに、今までのように気軽に声をかけることが
急にはずかしく感じるようになったのだ。
一週間彼女と口もきかず、学校に行く時間もわざとずらした。
彼女はいわれのない罪の意識に苛まされたに違いない。
今日、夜も遅くに俺の家に訪れたのだ。
悲しげな顔をして玄関に佇む彼女を見て俺は初めて気づいた。
そうか、俺はこいつのことが好きだったんだ・・・
俺は彼女の両肩をやわらかく抱いた。

次は「承る」「奉る」「快い」
5352:02/07/03 00:22
52は「声」「気軽」「両肩」 のお題だったということで。
54名無し物書き@推敲中?:02/07/03 13:28
古典の期末テストが明日ある。今は彼女の事なんかどうでもいい。
くだらない恋愛感情なんかを気にしてたら勉強に身が入らない。
早速俺は古典の教科書とノートを取り出し、テスト勉強を開始した。
  げにはづかしきことのはにて、御さまにもつきづきしく覚え奉る
この意味はなんだったっけ・・。俺は早速行き詰った。「奉る」は確か謙譲語だったから
謙譲語は確か受け手に対する敬意を表すやつで〜し申し上げるという意味があって他に承るや
給ふや啓すや賜るなどがあってそれらは下二段活用するから・・いや補助動詞とかも関係してくるし・・・
次の瞬間、俺は教科書を壁にたたきつけた。やってられるか、こんなこと!!
俺は家から駆け出した。そして自転車で街を猛スピードで疾走した。ああ、気持ちい。嫌なことが忘却の彼方へ飛んでいく・・
俺はむしゃくしゃした時や憂鬱なときにはいつもこんな風に自転車に乗って、気分のリフレッシュをする。この快い風や疾走感が俺を癒してくれるんだ。
そして俺はいつものようにこの河川敷までやって来た。そして土手に寝転んだ。この時が俺の一番の至福のときだ。川音を聞きながらぼんやりと空を眺めて・・
だが今日はいつものようにはいかなかった。土手の上でカップルがいちゃついていてその話し声がやかましい。
俺はカッとした。俺の至福を妨げる奴は許さない・・。俺は近くにあった握拳大の石を土手上めがけ思い切り投げつけた。
「キャー!!」「大丈夫か?」上から悲鳴が上がった。俺はニヤリと笑った。俺に迷惑をかけるから悪いんだ・・、と。
だが、しばらくしてハッとした。ちょっとやりすぎたか・・、いややりすぎだ。あんなのが人に当たったらとんでもない事になる・・。
俺は慌てて土手上にあがった。悪い予感が当たっていた。女性が顔面から血を流して倒れていた。
「早く救急車を呼んでくれ!!」男性が叫んだ。俺は急いで携帯を取り出し119番をした。すぐ来ますよ・・。
俺は今すぐそこを立ち去りたい気分だった。だがそうはいかない。俺は女性の怪我の具合を見ようと、倒れている
女性の顔をじっと見た。おや、見覚えのある顔だな・・。いややっぱり・・  俺の彼女だ!!!
こいつ二股かけてやがったな・・。俺は再び怒りがこみ上げてきた。そして付近に止めていた自転車を彼女に投げつけた。
彼女から鮮血が飛び散った。彼女は息絶えたようである。次はお前だ・・、今度は男性目がけ自転車で殴りかかった。自転車の
スタンドが男の顔面に突き刺さった。男は苦しそうにして地に伏せた。そして地を鮮血で覆った。
俺をなめるとこうなるんだ、恐れ入ったか。俺は顔に満面の笑みを浮かべ、そして自宅へと帰路を取った。

次は「消臭剤」「クレーン」「舗装」


5554:02/07/03 13:30
長すぎ・・・。すいません。首をくくってお詫びします。
56「消臭剤」「クレーン」「舗装」:02/07/03 17:11
恐喝・窃盗の常習犯で、学校側も手をこまねいていたという不良生徒・A。
その事件の後、彼は病院のベッドの上で震えながら話していたという。
「いつもと同じだよ……やわそうな奴捕まえて、仲間と数人で便所の中に連れこんで……」
財布を出せ、と言いながら相手の胸ぐらを掴み、吊るし上げる……ただ、その時吊るし
上げられたのは彼自身の方だったのだそうだ。
「俺、100キロあるんだぜ……?……それなのにアイツ、150センチもないような
奴なのに……俺の体、持ち上げたんだ……片手で……クレーン車みてえに、軽々と……」
現場である三階のトイレの窓から、Aは放り投げられた。幸いなことにその真下では
舗装工事が行なわれており、彼は柔らかいセメントに頭から突っ込む程度で済んだ。
その後、トイレに残されたAの仲間達がどのような目にあったかは明らかになっていない。
皆一命は取りとめたものの、とても口がきけるような状態ではないらしい。
偶然、そのトイレの前を通りかかった女子生徒Bは、こう証言している。
「トイレから凄い叫び声がして……少ししてから、男子が一人出てきたんです……背は私と
同じ位で……運動とかあんまり得意じゃなさそうな、線の細い人でした……」
むせ返るような血の匂いを漂わせながら、その少年はこう呟きながら去っていったという。
「臭いなあ……消臭剤買ってこないと」

次は「槍」「不可侵領域」「コンボイ」でお願いします。
57izo:02/07/03 17:51
「消臭剤」「クレーン」「舗装」
初投稿。遅れたけど書いちゃった。

「旭が丘都市計画」と題し、家の前の通りを
クレーン車やらなんやらが蠢きだしたのは
ほんの2週間前の事で、騒々しいそれらの風景を
舌打ちしながら見下ろしていたのは
職を失ったばかりの自称バンドマン、
つまり私であった。

病んでいた、と云える。
その時の私には幾重もの焦燥があった。
迫り狂う家賃の期限、バンドの解散などがそれである。
いや、一番の原因はつい最近まで懇意だった
よし子が入籍した事だろう。

私は透明だった。
けれどこの際正直に言おう。G子という途轍もなく肥えた女がいる。
いつかのライヴを境に猛烈な勢いで私に迫り狂い、
日中夜問わずラブミサイルを発射し、
恥ずべき事に私はそのモンスターのなすがままにあったのだ。
籠の中の鳥。
そんな表現の似合う私はもはや都市計画どころではなかった。
そういう事である。
発狂寸前の男に突然頭上から消臭剤を投げつけられた舗装工事の青年は、
猛り狂う勢いでニッカボッカーをひるがえし、
鬼の形相でアパートを駆け上って来た。
矛盾していた。すべてが。
彼が私の部屋に到着するまでの数分間、
私は久しく感じる事のなかった血液の充溢を、そして心臓の息吹を、
この手でこの身で確かに感ずる事ができたのである。
58「槍」「不可侵領域」「コンボイ」:02/07/03 21:49
「大統領!海賊のコンボイが我が海上不可侵領域を侵害しました」
 大統領は深く悩んだ。沈思黙考の末、ついに決断した。
「やむえない!核弾頭発射!」
 海賊のコンボイは海の藻屑になった。

「大統領!蛮族の斥候が辺境の村を襲っています」
 大統領は苦杯を喫する決断をした。
「仕方がない!核弾頭発射!」
 地域の住民と共に蛮族の斥候は吹っ飛んだ。

「大統領!先日統治した国の民が批難の声を揚げています」
 数分後、大統領は決断した。
「とりあえず核弾頭発射!」
 その植民地はすべて灰になった。

「大統領!各国が我らのやり方を抗議しています!隣国が我が国に槍を向けて侵攻
して来ました!」
 大統領はすみやかに決断した。
「アジャパー!核弾頭発射!」
 世界各国に向けて核弾頭がばら撒かれた。そして、世界は滅んだ。


次のお題は「輪廻転生」「蒼海」「コンセンサス」
59「舗装」「クレーン」「消臭剤」:02/07/03 22:28
舗装されたばかりの道路の上を自転車で駆け抜けるのが好きだ。
ドカタのヤツらが怒り、赤面した顔など滑稽で堪らない。
焼けたゴムと、塗り固められて間もないアスファルト独特の臭いが鼻を覆う。
だがそんなことは一瞬の出来事にすぎない。
困るのは低学歴のドカタどもだ。
焼けたゴムより、塗り固められて間もないアスファルトより
臭いその体に消臭剤でもぶちまけてみたらどうだ?
…まあ、お前らの体に染み付いた臭いがそう簡単にはとれないだろうけど。
自転車で颯爽となだらかな下り坂を行く。心地よい風が頬を撫でる。

そのときふと背後に妙な威圧感を感じた。

振り返ると、舗装されていた道路のすぐ近くに建設されているマンションの真上に
それを見つけた。大きなクレーンである。
僕を見下しているかのように、ただ冷たく存在している。
いや、見下す以前に眼中になど無いのであろう。
風さえもがいつの間にか生温くなって
僕を小馬鹿するように、
だけれども僕など存在していなかったかように吹き抜けていった。
下り道もじきに終わる。
僕は不愉快な気持ちでただペダルをこぎ続けた。

新しいお題無視してスマソ。
せっかく書いたのでカキコすますた。
60名無し物書き@推敲中?:02/07/03 22:29
おじゃましまーす♪
ここが選対だったんだね!
日記を落ち着いたら読みたいから、
ブックマークしちゃった(w

お言葉に甘えて、一回宣伝させてください!

<<ニュース速報+>>板、ただいまかなり苦戦してます!
ニュースばかりですが、色々語れる面白い板です。
よかったら清き1票、よろしくお願いします!

●簡単な投票の仕方● AA使ったのは、>>137を使ってね。
----------------------------
[[コード]]                 ←http://mikoshi.jp/2ch-tournament/index.html よりコピペ
<<ニュース速報+>>板に一票
ぽんちゃんちより ADSL                    ←自分の通信回線を明記
----------------------------
61「輪廻転生」「蒼海」「コンセンサス」:02/07/03 22:48
 ――宗教なんてそんなものよ。
 エイミが呟いた。
 私は彼女の手を強く握る。
 周りに人が沢山いる。でも、どうして集まっているのか分からない。
 ――結局、てっぺんだけが得をする。信者を死ぬまで利用して、命までチップにしようとする。そして奴らは高らかに叫ぶのよ、死んでも輪廻転生できる。死んでも天国に行ける。ああ、なんと迷える羊達は幸せなことか! 民衆よ、喜んで死ね!
 目の前を鎖に繋がれた罪人が通る。
 酷い体臭。何日も体を洗っていないのかもしれない。悪くなったチーズの臭いがする。
 頬は痩せこけて、胸や背中についた鞭の跡が痛々しい。
 ――あいつらがどうやって民衆のコンセンサスを得たか分かる?
 私は首を横に振る。
 ――簡単よ、不安を煽るだけ。人間は儚い存在だ。蒼海の一粟に過ぎない。国家は役に立たないし、守ってもくれない。さあか弱い民衆よ、神に祈り、救いを乞うのだ! なんてね。
 宗教というものはそうして民衆の信頼を国からもぎ取り、自分たちの懐に貯め込むんだそうだ。
 エイミは罪人を熱心に見つめながら話してくれる。
 罪人は今にも十字架にくくり付けられようとしている。
 ――ほらほら、見てごらん。あの罪人はね、教団の中でも人気の高い宣教師だったのよ。そんな彼でも利用されるんだわ。キリストも自己犠牲という甘い誘惑には勝てなかったみたいね。

 おうちに帰る時、エイミがそっと言った。
 ――憶えておきなさい。信じるものが救われるのは足下だけなのよ。


次は「水鳥」「燕」「春」
62端揃えしますた:02/07/03 23:04
 ――宗教なんてそんなものよ。
 エイミが呟いた。
 私は彼女の手を強く握る。
 周りに人が沢山いる。でも、どうして集まっているのか分からない。
 ――結局、てっぺんだけが得をする。信者を死ぬまで利用して、命までチップにしよ
うとする。そして奴らは高らかに叫ぶのよ、死んでも輪廻転生できる。死んでも天国に
行ける。ああ、なんと迷える羊達は幸せなことか! 民衆よ、喜んで死ね!
 目の前を鎖に繋がれた罪人が通る。
 酷い体臭。何日も体を洗っていないのかもしれない。悪くなったチーズの臭いがする。
 頬は痩せこけて、胸や背中についた鞭の跡が痛々しい。
 ――あいつらがどうやって民衆のコンセンサスを得たか分かる?
 私は首を横に振る。
 ――簡単よ、不安を煽るだけ。人間は儚い存在だ。蒼海の一粟に過ぎない。国家は役
に立たないし、守ってもくれない。さあか弱い民衆よ、神に祈り、救いを乞うのだ! 
なんてね。
 宗教というものはそうして民衆の信頼を国からもぎ取り、自分たちの懐に貯め込むん
だそうだ。
 エイミは罪人を熱心に見つめながら話してくれる。
 罪人は今にも十字架にくくり付けられようとしている。
 ――ほらほら、見てごらん。あの罪人はね、教団の中でも人気の高い宣教師だったの
よ。そんな彼でも利用されるんだわ。キリストも自己犠牲という甘い誘惑には勝てなか
ったみたいね。

 おうちに帰る時、エイミがそっと言った。
 ――憶えておきなさい。信じるものが救われるのは足下だけなのよ。


次は「水鳥」「燕」「春」
63「水鳥」「燕」「春」:02/07/03 23:42

麗らかな春の日射しの中、王妃が数名の女官達を従えて森をそぞろ歩いている。
華やかで暖かい春の陽気とは対照的に、彼女の顔は物思いに沈んでいる。
「嗚呼、やはり」
彼女は足を止め、かぶりを振った。
「わたくしの身体に、命が宿ることはないのです‥」
低く、呻くように彼女は呟く。
女官達は静かにうつむき、ただ黙って足元のクローバーに目をやった。
「殿下‥殿下はなんと仰るかしら‥」
一国の世継ぎを担う、まだ若い彼女の身体から絞り出されるように、涙が溢れた。
「少し休みたいわ」
独り言のような王妃の呟きを聞き取り、女官達は川辺に席を設えた。
たおやかに流れる川面には、水鳥の親子が滑るように泳いでいる。
王妃は、深く長いため息をもらした。
あのような水鳥でさえ子を宿すというのに、何故選ばれたわたくしは石女なのか‥
異国では、燕の卵を飲んだ女が神を宿したという‥
嗚呼、わたくしも子を宿せるのなら、卵だろうと飲んでしまうのに‥
王妃はただ、ただ泣いていた。
春の陽は残酷なまでに優しく王妃を包んでいた。


次は「ひぐらし」「飴玉」「風鈴」
64「水鳥」「燕」「春」:02/07/03 23:47
受付終了時間ギリギリに出場登録を済ませると、俺のことをニヤニヤ見ている男と目が合った。
強豪・御門高校のシンボルカラー、黒を基調としたデザインのジャージ。そして趣味の悪い茶髪。
……間違い無い。御門のエース・西村だ。
「おやおやあ?どこの誰かと思ったら、弱小・美浜高校の谷口君じゃあないですか。随分と
ノンビリした会場入りですねえ。途中で拾い食いでもしてたのかな?」
「……前回のようにいくと思うな。今度は、必ず僕が勝つ!!」
僕が挑発に乗らないとわかってか、西村はつまらなさそうに去っていった。
……3ヶ月前の春の大会、僕は西村の必殺技「燕返し」に完膚なきまでに叩き潰された。
圧倒され、逃げ出したいとまで思った僕に向けられた、西村の虫ケラを見下ろすような
視線が……何より、何もできなかった自分の弱さが、悔しくて、許せなくて、僕は泣いた。
そして、僕はそれまでの何十倍も練習した。生傷が絶えることは無く、自分の体を徹底的に
苛め抜き……そしてある時、一筋の光明を見出したのだ。
水鳥が魚を捕らえるあの動き……あれをヒントに、猛特訓の末身につけた僕の必殺技、
名付けて「トルネード・ブレイク」。これさえ決まれば、西村を倒すことができるかも……
いや、絶対に勝つ!!僕は必勝の決意を胸に秘め、会場へと向かうのだった……。

『これより第2回、全国高校アフガン航空相撲選手権を開始いたします』

……間に合わなかった……次のお題はもちろん、上記のやつで。
65「ひぐらし」「飴玉」「風鈴」 :02/07/04 00:13
 ふと気が付くともう夕暮れ時で、ひぐらしの鳴く声が何処からか聞こえた。
薄く赤色に染まった商店街を歩く。風が心地よいが……今、僕の歩いている
この場所が一体何処なのか、全く覚えが無い。なぜか記憶が混乱している
様で、目の焦点が合わず、ふらついて歩く。
 ひぐらしの鳴き声が、いつのまにか風鈴の音のように響いていた。
僕はこれまで一度だってひぐらしの鳴き声が、風鈴の音の様に聞こえた事は
無い……しかし今は……。その風鈴の音は多分、ずっと昔に聞いた事がある。
しかし、それが一体いつなのか、思い出す事はできない。
 ずいぶん向こうの方で遊んでいた子供達が、なぜか僕のすぐ傍にいた。
そして「はい、これ」と、小さな飴玉を差し出した。
屈託の無い笑顔の子供達。僕は、飴玉を受け取って再び歩き出した。
全く見知らぬ土地を……。
6665:02/07/04 00:15
次は「機材」「カフェイン」「異能」で。
67「機材」「カフェイン」「異能」:02/07/04 03:35
初心者ですが、よろしくお願いします

我々は奴らの仕掛けた様々な機材に仕留められた仲間たちから教訓を得た
むしろ、時間が必然的に問題を解決してくれただけかもしれない
この変化は奴らがカフェインを摂取したときに得ることのできるような
一時的即効的なものではないことは確かなようだ
異能化することは適者生存の必要条件ではある
実際のところ我々はそう多くは望まない
そもそも生きることに理由を求めなどしないのだ

「橋」「配当」「レクイエム」
今日もカップラーメンか。と呟きながら、
普段通り東京競馬場に訪れた僕は、パドックに腰を下ろした。
すると、後ろから低い男の声が聞こえる。なにやら、二人でやり取りしてるようだ。
「このレースは4番が勝つそうですよ、確かな情報筋から仕入れました」
「ホントか?お前を信じるぞ、しかし本当に大丈夫だろうなあ」
混雑した中で、僕はこの会話を聞き逃さなかった。

配当は安い、それなら大きく賭けようか。
だが、定職に就かずフラフラしてる僕にとってはとても危ない橋を渡る事になる。
ええィ、勝負だ!有り金を全て財布から取り出し、金を馬券に変える作業をする。
レースがようやく始まった。さあ、どうなるものか・・。
「・・・2番のタイキスズカが勝ちました!!!大穴です!!」と場内でアナウンスされる。
アナウンサーの興奮したその声はまるで、僕の人生のレクイエムのようだった。
パドックで薄ら笑いを浮かべているさきほどの2人組に向かって走り出したその時、
「2番の馬は他馬の進路を妨害したために、失格です。繰り上がりで4番が勝ちました」
と場内でアナウンスされた。その声はまるで、聖母マリアのようだった。
「他人を信じるのも、たまにはいいもんだなぁ。」

 「戦争」 「ゲーム」 「朝日」
69名無し物書き@推敲中?:02/07/04 08:38
「戦争、ゲーム、朝日」

第二次世界大戦が始まるほんの数日前のことである。
アメリカ、サウスキャロライナ州在住のビル・ガリクソンさんは、孫のトムを引き連れて近所の川へと朝の散歩に出かけていた。
「ねえ、おじいちゃん」
トムは不安げな表情で祖父を見上げた。
「なんだい?」
「もうすぐ戦争が始まるって本当?」
「ああ、たぶんな」
「ふぅん・・・僕も、大きくなったら戦争に行かないといけないのかなぁ・・・」
「おまえが大きくなることには戦争は終わっとるよ。安心しなさい」
「そっかぁ・・・そうだよね」
トムは笑顔を見せると、土手を勢いよく駆け下りていった。

数十年後、トムはベトナム戦争に参戦し、カードゲームの最中に敵の奇襲を受け、命を落とすことになる。
そんなことを知るはずもなく、ビル・ガリクソンさんは朝日の中を楽しそうに走り回る孫の姿を楽しげに眺めていた。

次は「SEX、週末、終末」
70「SEX」「週末」「終末」:02/07/04 10:34
週末のマンション。
カーテンを閉め切って、窓とドアに鍵をかけて、ここはあたしとあの人の城になる。
穢れを落とす儀式のようにシャワーを浴びて、バスローブを羽織る。
軽く抱き合って、啄むようにキスをして‥そしていつの間にか貪るようなキス。
あたしの唾液と彼の唾液がごちゃ混ぜになって、うっとりしちゃう。
彼の手があたしを気持ち良くさせて、あたしも彼を気持ち良くさせて、
あたし達は息を弾ませながらお互いの熱さを感じる。
彼があたしの中に入ってくる時が一番ステキなの。
「あたしねえ、SEXって好きよ。
 だってあなたとの距離が‥マイナスになるじゃない‥」
彼は微笑んであたしにキスをして、あたしもキスを返す。
こんな幸せってあるかしら。
二人の体液がぐちゃぐちゃして、そのにおいにクラクラするの。
どんなドラッグよりも最高だわ。
SEXの後、ベッドの周りはティッシュの白い花が咲く。
なんか天国みたいじゃない?
あたしは彼に寄り添って、またキスをする。
世界の終末が来たって怖くないわ。
だってあたしはこんなにもシアワセ。


次のお題は「ガーネット」「花畑」「乾電池」
71「ガーネット」「花畑」「乾電池」 :02/07/04 12:19
道路の舗装が途切れ、砂利道に入ると車が大きく揺れた。
助手席の吉田はその振動で目を覚ました。
目尻を指先で拭って窓から外を見ると、枯れかけた菜の花畑が広がっている

「起きたのか」運転席の笹本が声をかけた。
「まだ寝てていいよ。目的地に着いても、日が沈むまでは作業は出来ないんだから」
喋りながらも両手でしっかりとハンドルを握り、
顔は真っ直ぐ前を向けて固定したまま動かさない。真面目な男なのだ。

その笹本に鉱物を密掘しようと誘われ、吉田は少々面食らった。
ざくろ石(ガーネット)が出ることで有名な山があるのだが、
そこは私有地で勝手に掘る事は許されていない。
だから夜中のうちに忍び込んで、こっそりと掘り出そうと言うのだ。

吉田も最初のうちは冗談だと思って付き合っていたのだが、
笹本は短期間で計画を練り上げ、それが本気だと気づいた頃には、
嫌だと言わせない強引さで吉田を共犯者に招き入れたのだ。

「この辺りにコンビニは無いかな?」
相変わらず全く顔を動かさずに笹本がいった。
「どうしたの?」
「いや、懐中電灯のさ、乾電池の予備を買い忘れたんだよ」
窓から見えるのは単調な田園風景ばかりで、小さな商店さえ、
見当たりそうも無い。
「車のライトで作業をするのは、どうかな?」と吉田がいった。
笹本は少し考えていたが、
「車が入り込めるような所に埋めたんじゃ駄目だろ」と言って首を振った。

「少し戻ってもいいかな?数キロ前にコンビニがあったのを見たんだ」
笹本がいう言葉に、吉田は黙って頷く。
吉田の顔は青ざめ、額には、うっすらと汗が浮かんでいる。

車は慎重に細い道へ入るとバックして向きを変え、今来た方向へと走り去った。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
次は「映画」「パン屋」「ロバ」
72名無し物書き@推敲中?:02/07/04 13:47
初カキコですが、よろしこ

連れのロバは力尽き、水、食料ともに尽きた
少し前から、まるで古い映画に入るノイズのようなものが視界を覆っている
もはやこれまでかという状況だ
脳内ではいわゆる人生の総集編が高速再生されていた
意識が遠のく中、それを素直に楽しむことにした

あっ・・・
やはり奴はただのパン屋のおやじではなかった!

「元手」「チアガール」「使命」
73火尭烏:02/07/04 15:17
たった二十分の眠りだった。それでも私は奈落の底へ転がり落ちるように眠った。
目を覚ましても辺りは暗く、この寒さでは虫の音ひとつ聞こえない。
三日間の無理な行軍のせいで体力はひどく削られたが、それでも精神状態は良好だし、
与えられた使命をこなす自信もあった。

1キロほど前方、木々の隙間から見える灰色の巨大な岩塊・・・桐生要塞。
東都から北都への貿易ラインであるこの関門を押さえれば、あるいは
我等が耶空登連合にも勝機はある。もちろん北都の資源程度だけでは大和政府の
軍事力の前になす術もあるまい。しかし北都の土地を元手に蝦夷地まで制圧する
ことが出来れば話は別だ。蝦夷を握ればロシアとの貿易を自由に出来る。
それで大和との戦力は五分五分だ。

今回の関門制圧が重要な鍵になる。是が非でもやり遂げるのだ・・・。

「細井、時間だぜ」
木の上から声がかかった。同隊の湧井という男である。
私は木の葉の中から這い出て、大きく背伸びをした。
「起きてる。様子はどうだ」
「ふむ、やはり金沢で反乱が起きたってのは本当らしい。警備は薄い」
言い終るが早いか、彼は望遠鏡をしまい木から飛び降りた。
話す間に、私の方は既に準備を終えていた。鞄からペットのトカゲをだし、エサをやる。
「おいおい、これから戦場に赴こうって奴が生き物の世話かよ」
湧井が冷やかすように言った。
「ほっとけ、俺のチアガールだよ」
「メスなのか?」
「いや、オスだ」
私達は妙な気分で笑いあった。
そう、これから死ぬかもしれないのだ。私も、彼も。
湧井は少し寂しそうに鼻を鳴らした。
「さて、作戦開始時間まであと二分。それじゃあ、生きてたらまた会おうぜ」
「きっと、だ」
私達は二手に別れ、木々の間を駆けてゆく。
しばらくして、前方に巨大な岩肌が見えた。私はそこで、じっ、と時がくるのを待った。
森の空気は冷たく、空はまだ暗い。バックの中でトカゲが丸まった。


要塞の裏手から、どぉん、という轟音が響く。
私は木々の間から飛び出した。


次は 「百足」「指先」「コンセント」
74izo:02/07/04 15:49
「元手」「チアガール」「使命」 やべっ遅れた!

この間、六本木の街を急ぎ足で東に向かっていると、
通りを挟んだクラブから若者の集団がわらわらと這い出ててきた。
皆すこぶる良い具合らしく、唄を歌い、中にはチアガールのように飛び跳ねる輩もいた。
私は前々から、そういった若者の公衆をかえりみない集団性が嫌いだった。
といっても私も若い。その心情は解らなくもないのだ。

私たちは寄り添う事によって、吹き抜けていく青春の元手を取っておきたい。
ワールドカップという祭りの日、特にその傾向が方々の都市で顕著に表れた。
例えば、道頓堀ではヒロイズムに駆り立てられた若者が川に身を投げ、
渋谷では普段街を浮遊しているだけの青年達が鼓舞しあった。
―我が存在、我が使命。
彼らはそれを垣間見たのか。
昂ぶる人々の肩越しに、ほんの一瞬だけ、虚空さす情熱の剣を見たのか―
しかしすぐに消えるだろう。
夜が明けるとともに。
75「元手」「チアガール」「使命」 :02/07/04 15:52
ここに至るまで、すべては完璧だった。私はホテルの広いテラスに立って海を眺めながら、
そう思った。海は夕焼けに染まり、太陽は一日のなかでもっとも美しい表情を見せている。
豪華なコテージのテラスには、美しい陶製のタイルが敷き詰められていて、サンダルを履
いた足元になめらかに触れた。望めば、このテラスのテーブルにいますぐ最上級の料理を
並べることもできる。
豪勢なことね、と私は呟く。物事には、すべからく元手が必要なのだ。では、なんのための
元手? 潮風が、樹々にまきついた白い花の芳香を運んできた。
私の使命は──そうね、幸せでいること。お幸せに、幸せに、お幸せにと、さまざまな顔から
こぼれた言葉は、ライスシャワーのお米のように、まるっきり同じだった。
プロジェクト名、お幸せに。もしくは、二人の門出。そして私は、家政婦兼保母兼娼婦兼──
時には、孵卵器やファイナンシャルプランナーやチアガールをやりおおせねばならない。円滑に、
美しく、遅滞なく、実行すること。それが私の幸せ。
テラスのドアが開く音がした。肩に大きな手が回される。「どうしたの?」
「なんでもないわ。少し考え事していただけ」「なにを考えていたの」彼の手にこもる力が強まる。
「あなたのこと。それから、これからの幸せな日々について、よ」
僕は高校の授業中にすごい事を思いついた。
「百足をコンセントに差し込んだらどうなるんだろうか」
僕はいてもたってもいられなくなり、授業中の教室を抜け出し、校庭の花壇へと向かった。
まずは百足を捕まえないと。僕は花壇の土を掘り出した。もちろん素手で。土いじりは昔から好きだった。
しばらく掘り進んでると指先にぬめっとした感触がした。百足か?僕の鼓動は高まってきた。
僕は慎重にそのぬめっとしたものを地上に出した。やっぱり百足だった。僕はガッツポーズを取った。
早速コンセントに差し込もう。でも学校でやるのは何かとまずい。やっぱり自宅でやろう!
学校から家までは結構の距離があった。だが、急がば回れである。僕は迷わずタクシーに乗り、そして家へと着いた。
さいわい家には誰もいない。僕は百足とともに二階の自分の部屋にあがった。さあ、やるぞ!!
僕は百足をコンセントへ差し込んだ。百足を折り曲げて両極同時に差し込んだ。そしてすごい事が起こった。
百足から目がくらむほどの凄まじい閃光が出て、そしてさらに激しい火花も舞い散ったのだ。
百足がショートを起こし、スパークしたんだ!百足はやっぱり電流を通すんだ!!僕は感動で胸が熱くなった。
だが、その喜びは一瞬で葬られる。なんと百足の火花が畳や壁に燃え移り、業火となったのだ。
僕は命からがら脱出したが、家は全焼してしまった・・・。

次は「マンホール」「暴風」「釣りざお」で


77koke:02/07/04 16:45
「マンホール」「暴風」「釣りざお」

橋の上から見る水面は静かだった。氷が張ったような水面。
本当にこの川は流れているのだろうか、とぼくは疑った。
右岸では名もなき釣り人が釣りざおを垂れている。彼から見ればぼくも名もなき傍観者だろう。
左岸ではキャッチボールの親子。どちらにしても珍しいものではない。
いい加減そこにいるのに飽きると、ぼくは橋の上で時間を潰すことを諦めた。
陽射しが強かった。風も強かった。
水面は揺れていたか? いや、そうではなかったように思う。
こんなに暑いのに、相変わらず道路はアスファルトであったし、
マンホールは相変わらず金属だった。どちらにしてもそんなに珍しいものではない。
うしろから暴風と呼べるほど強い風が吹いた。
水面は揺れていたか?
よく考えてみると、水面はそんなに静かではなかったかもしれない。

つぎは「ピストル」「ベッド」「ジャングル」で。


78ぽぽぽんぽぽんぽん:02/07/04 16:57
「ジャングルジャーんごー」
田原俊彦がピストルを乱射してる。
ぼくはベッドで核爆発をおこした。

つぎは「人」「金」「ぽぽんぽん」
79「人」「金」「ぽぽんぽん」 :02/07/04 17:25
金星に有人着陸を目指す計画がいよいよ実行される・・・。
NASDAの長年の夢、金星居住計画の第一歩である。
ついに今日の午後三時、種子島からその夢と希望を託したロケットが発射される時が来た。
そのロケットの名前は「ぽぽんぽん1号」。 そしてそれに乗っているのは>>78氏だ。
>>78氏は、数百名の志願者の中からただ一人選ばれた極めて名誉ある人物なのである。
テレビの中継が始まったので話はこれくらいにしておく。 
    ―     ―     −
時計が三時を回りました。いよいよぽぽんぽん一号が発射されます。カウントダウンが開始されました。
10、9,8,7,6、・・エンジンが点火されました。まもなくです。
2,1、発射!リフトオフです。ぽぽんぽん1号は無事、発射されました。順調に高度を上げていってます。
あ、様子がおかしいです。エンジン付近から凄まじい炎が・・あっ!!!
大爆発です!!!ぽぽんぽん1号が大爆発を起こしました!!木っ端微塵になってしまいました・・

>>87氏のご冥福をお祈りします。

次は「刺身」「マンション」「予備校」
80↑ :02/07/04 17:27
最後の一行 ×>>87 →○>>78
81名無し物書き@推敲中?:02/07/04 18:00
予備校からマンションに帰ったら、晩のおかずは、また、刺身だ。
マンションのローン返済があるからって、夜8時以降に半額になる
近所のスーパーのパック刺身ばかりを、この予備校生の俺様に
食わせるなと、俺はこれで何十度目か何百度目かの、ののしりの言葉を
家族にむかって吐きまくった。
マンションと予備校のあいだをただただ往復するだけの受験生の俺にとって、
楽しみといえば食べ物(刺身以外のだ)だけだということが
どんなに言葉をつくしても、分からないのか、分かってくれないのか。
翌日、マンションから予備校へ行き、昼の弁当を開いたら、
昨夜ほとんど食べ残した刺身が黒ずんだ色をしてご飯の上にならんでいた。
俺はすぐに予備校を飛び出し、ひとふりのよく切れそうな刺身包丁を買いこみ
マンションへとひたすら急いだのだった。

次は「形式ばる」「低調に」「編成」でお願いします。
82「刺身」「マンション」「予備校」:02/07/04 18:14
この予備校には広い地下室があったらしい
何のための地下室なのか詳細は不明である
10年くらい前から使われていないという
時々異臭がするといって近隣のマンションから不定期に苦情がくることもある
異臭といっても何の臭いなのか、はっきり分からないという
校長は大の魚の刺身好きで有名だ、生魚を買ってきて校内で自らさばいていると
いう噂もある、もしかすると地下室は調理場なのかもしれない
その臭いがどこかから漏れて付近に充満しているのではないのか
こんな馬鹿なことを考えている場合ではない、残された時間は少ない。

次は「舌」「加入」「テクニック」でお願いします
83名無し物書き@推敲中?:02/07/04 18:15
どうすりゃいいの?(藁
84「形式ばる」「低調に」「編成」「舌」「加入」「テクニック」:02/07/04 19:48
訓練後のミーティングに集まってみると、見慣れない顔が混じっているのに気が付いた。
そういえば、新兵が加入するとかどうとかってクリスが噂してたなあ。
「本日付で第4独立遊撃部隊に配属されました、カオル=タチバナ二等兵でありますッ!」
さすがに若いモンは元気がある。とは言うものの、多くの隊員から向けられる厳しい視線に
気圧されたか、声のトーンがやや低調になってゆく。
「ま、軍隊っつってもここは最果ても最果てなんだ。そんなに形式ばるこたあねえよ」
突然口を開いたのはクイーンズ隊長。軍規とかそういうものとは無縁の、いわゆる最も
模範的でない軍人で、私もここに編成された当初はかなり面食らったものだ。
「れ、歴戦の勇者にお会いできて光栄であ……ッ!!」
言葉が途中で止まったのは、隊長が新入りのアゴを掴んだからだ。
「よ〜く回る舌を持ってるようだが……いいか新入り、これだけは言っておく。……ここは
地獄だ。お前のようなヒヨッコが今まで何人も来たが……3日で半分。1週間で9割方は
いなくなる。どうすれば生き残れるか……まずはその答えを探すことだ。自分の力でな」
そう、ここは地獄の最前線。軍規とか常識とか、何の役にも立ちはしない。死にたくなければ
生き残るためのテクニックを身に付けることが絶対条件……そういう場所なのだ。

次は、「丸ノコ」「歌舞伎」「オイスターソース」でどうぞ。
85「丸ノコ」「歌舞伎」「オイスターソース」:02/07/04 22:06
 道夫君は、くちびるの回りのべたべたのオイスターソースをべろりと
舐め取りました。今日は道夫君の復讐戦の日です。道夫君は、普段よりも
さらに異常に漲っている様子で、もう股間もビンビンといった感じ。
道夫君の歩く後姿は異様で、片方の尻がビクンビクンと震えています。
右手に金属のバット、左手に丸ノコ……僕は、少し道夫君のことが
心配だったのですが、アレなら大丈夫そうだと胸をなでおろしました。
 道夫君の相手は、相当に気合の入った極道。歌舞伎町に乗り込みます。
……ああ、いきなり道夫君が奇声を上げました。よく目を凝らして見てみると
何と道夫君の足元に淡黄色い水溜りが……。どうやら道夫君、興奮し過ぎで
失禁してしまった御様子。これは相当にヤバイです。道夫君と極道の
争いが益々楽しみになってしまうようなワンシーンでした。
8685:02/07/04 22:08
次は「サイケデリック」「ジオラマ」「カルチャー」で。
87「サイケデリック」「ジオラマ」「カルチャー」:02/07/04 23:00
 マリアの頭上五十センチのところで銀色の珠がぐるぐる回って、アンテナみ
たいな、SOS信号みたいなことになっている。
 今朝、目覚めた時から、体調がちょっと悪かった。夕方には頭痛になるか
も、と思っていたら、銀の珠ができてしまった。夜九時すぎの、家に帰る人々
でむっつり混雑した電車で、むろんマリアは誰からも席を譲ってもらえなかっ
た。隣で妊婦も老婆も苦しそうに立っている。
 マリアの頭の上では、ただ、ぐるぐるぐるぐる、珠が回っているだけだ。彼
女たちのように、口で息をして冷たい汗をかいたりしない。吊り革につかまっ
て、暗い窓の外を見て、ぼんやりしている。何も苦しいことも厭なこともな
い。回りながらただ珠が意味もなく、止められない、囁いている、シリトリ、
リュート、トーチカ、カルチャー、チャービル、ルート、トーマス、スー
ジー、ジオラマ、マーサ、サイケデリック、クーラー、ラード、ドア、アー
ス、スイング、グッピー、ピーナツ、ツートントンツー、……ウォッカ、カミ
サマ……回っている。
 何も苦しいことはない。別に何の意味もない。

次のお題、「鬚」「黒松」「うだるような」
名古屋独特のうだるような暑さの中、俺は母校を訪れた。
俺は大きな校舎を見上げつつ、不精に伸びた顎鬚を撫でる。
初めて告白された…あの思い出の黒松はもう無いけど、あぁ、来て良かったな。

---
三行に挑戦、そして大失敗。ヘタでスマソです。
ってコトで、次は「ティッシュ」「女」「ディスプレイ」でお願いします。
>>78
>>1読んでる?
90名無し物書き@推敲中?:02/07/05 06:07
「ティッシュ、女、ディスプレイ」

感動物の映画を観ると必ず泣いてしまうようになったのはここ2.3年のことだ。
20代も半ばを過ぎてから、涙腺が緩くなってしまったようだ。おかげでティッシュが手放せない。
女々しいといわれるかもしれないが、こればかりは自分の意思でどうにかなるものではない。
ディスプレイが泪で霞んでしまうのも、今ではすっかり慣れてしまった。

こんな僕を、君は弱い男だと笑うだろうか?

次は「抱擁、泪、ぬくもり」
91水煙:02/07/05 07:09
「抱擁、涙、ぬくもり」

あの時私はただ誰かに抱きしめてほしかった。
拠るべき場所を失くした私を。
私は吹き荒ぶ風の中で一人
荒涼とした世界を眺め続けていたんだ。

この手に触れるはずだったあたたかいもの
語り合うはずだった人
愛するもの
すべてを失って
もう生きるのも辛くなって。
それでも誰かに抱きしめて欲しかった。
とめどなく流れ続ける泪は悲しいからではなく
自分の存在を示すためのもの。
点々と自分の足跡を残しながら
私は彷徨っていたんだ。

疲れ果てて倒れた先には
君がいた
常に私の最も近いところに居てくれてた君に
私はいつまでも気が付かなかったっけな。
いまさらこんな事言うのもなんだけど・・・

ありがとう。愛してるよ。



次は「たぎる血、拳、機械」
92名無し物書き@推敲中?:02/07/05 08:27
「たぎる血、拳、機械」

究極超人T-R 最終話予告

幾多の死闘を乗り越え、ついに機械化兵団の本拠地を突き止めたT-R。しかし、そこには最大の試練が待ち構えていた!!

裏切りと謀略。
友情と愛情。
絶望と希望。

様々な想いが交錯する中、R-Tはいよいよ機械化兵団の総帥、ジャンゴットとの一騎討ちに臨む!!
たぎる血液、燃える鉄拳。いけいけ僕らのT-R!! 最終回は60分スペシャルだ!!

次は「猫、ハードボイルド、愛してた」

>>91
そんなのあり?(w
93名無し物書き@推敲中?:02/07/05 09:42
「たぎる血、拳、機械」

頭がぐらりと揺れる。体中をたぎる血が出口を求めているように感じた。
目を固くつぶって顔を下に向ける。
どこかに額を付けて休みたかったがそんな暇はない。圧縮空気とモーターが
動く音がして俺の前に新たな部品が届く。
目を閉じていても機械の動きともたらされた現象がわかる。当然だ。
俺は一日八時間も同じ動作を繰り返しているのだ。
そう思った途端、口を張り裂けるほど大きく開いて笑い出したい衝動にかられた。
実際俺は頭の中で笑いながら、慣れた手付きでスクリューを三本留める。パーツ
を裏返しまた二本。それを隣の機械に載せると、次の奴のところに運ばれていく。
「給料よりもやりがいを選びたいんだ。物を造る仕事がしたい」
頭の中の夏の日に、俺の声と友人の顔が浮かぶ。
俺は笑いながら、今日も記憶へ拳を振り下ろした。

ごめんダブった。お題は「猫、ハードボイルド、愛してた」 で。
94名無し物書き@推敲中?:02/07/05 10:01
「猫、ハードボイルド、愛してた」

アパートの扉を突き破り、黒服にサングラスの厳つい男達が闖入してきた。
奴らは、俺がつい先刻まで横たわっていたベットを、文字通り蜂の巣に変え、
そこに俺の姿が見当たらないのに気付いて、慌しく廊下を去っていった。
俺は、足音が遠ざかっていくのを確かめてから、クローゼットを抜け出し、
俺の唯一の相棒である黒猫の姿を探した。
バスルームを覗き見てみるとそいつは洗面器の中に蹲りすやすやと寝息をたてていた。
俺は苦笑する。俺があっさり殺されてもこいつは生き残るだろう。

昨日の夜に既に荷物をまとめていたので、準備に手間取ることはなかった。
俺はこの街を出て行く。
いくら俺でも街中の組織を敵に回しては、そう簡単に生きていくことはできない。
わずかばかりの衣類と相棒をトランクに詰め、俺は列車に飛び乗った。
薄汚い街並みがゆっくりと遠ざかっていく。

さよなら。ハードボイルドな俺の街。愛していたぜ。
9594:02/07/05 10:04
ごめん。忘れてた。
次は「天使、モニター、戯曲」で。
96妄想32%:02/07/05 10:35
開店五分前なのに全部貸し出し中で、DVDまで全巻置いてねーとはどいうことだゴルァ!
兄貴が原チャリ乗ってちまったから十分近く全力でチャリ漕いで必死だったんだぞーゴルァ!
貸し出し中のくせに、店内のモニターのサンプルなんて見せんじゃねーぞゴルァ!
戯曲じゃなかった…シナリオが途中から最悪でサードで打ち切りケテーイなんてどうでもいいんじゃゴルァ!
ふざけんなゴルァ! 天使ジェシカたんに会えねーぞゴルァ! 
借りた奴は早くダークエンジェル返せゴルァ! 一刻も早く返しやがれゴルァ!
頼むから返せゴルァ! 返してくれゴルァ!

お題「シアンブルー」「夜」「肖像画」
97「シアンブルー」「夜」「肖像画」 :02/07/05 11:31
みちこの父親は画家だと聞いていた。
クラスに一人は必ずいる、嫌われ者のみちこ。
「あたしのおとうさんは魔法使いなのなのよ」
「あたしのおとうさんの描いた肖像画は、夜になると動くのよ」
クラスメートは、もうまったく構おうともしなかった。
みちこは焦れるようにして、ときどきは叫んでいた。
「あたしのおとうさんは死神なんだから!
 あんたたちなんて殺してやるんだから!」

僕はその嫌われ者のみちこに興味を抱いていた。
みちこの「おとうさん」を見てみたくて仕方がなかった。
そして、教室を真っ先に出て行くみちこのあとを、こっそりつけていくことに決めた。

梅雨が明けたばかりの空は、夕方5時でもまだまだ明るくて、
太陽と白く日焼けしたアスファルトとに挟まれて、じりじりと体がこげるのがわかった。

ふと、みちこが振り返った。その憎らしそうに歪んだ表情に、体中の汗も熱もいっぺんに冷めた。
みちこはポケットから絵の具を取り出し、動けなくなった僕のところへ駆け寄って
掌で僕の顔をシアンブルーに染め上げた。
「だいっ嫌い、消えちゃえ」
その言葉を引き金に、僕の体は空へと溶けた。

--------------
次は「白百合」「百年」「真珠貝」でお願いします。
98水煙:02/07/05 11:44
>>92
自分的には「サイボーグ」とか「無理やり改造された」系をイメージしてたもんだから・・・(笑)
そういう方面ではありじゃない?(・▽・)>
99「白百合」「百年」「真珠貝」:02/07/05 16:11
私が、初めて彼女に会った時の衝撃たるや、それはそれは凄まじいものであった。
こぼれるような笑顔、黒く艶やかな長い髪、白く輝く素肌……真珠貝から生まれ出でた
ヴィーナスもかくやというその美しさに、私は完全に魅了されてしまった。
まさかこの年になって、うら若き女性に恋焦がれ悩む事になろうとは……思えば、私の
人生はまともに恋をすることすら許されていなかった。百年以上の歴史を持つ財閥の
跡取りとして生まれ、決められたレールを歩み、政略結婚の道具として使われ……そして
年老いて初めて実感した、耐え難い虚無感。
それを幸せな気持ちで満たしてくれる、彼女は私の……そう、「天使」だった。
白百合を携えた大天使ガブリエルが、聖母マリアの前に降り立った時……マリアがどんな
気持ちだったのか、私にはわかるような気がする。

……日に日に重くなってゆく体。おそらく、私はもうそんなに長くはないだろう。
それでも、医者の制止を振り切り、私は彼女に会いに行く……彼女とのほんのわずかな
会話が、彼女のほんのわずかな笑顔が、私を……天国へ導いてくれるのだから。

「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか?」
「フライドチキンの……6ピースパックを……」

次は,「カミナリ様」「果樹園」「メトロノーム」でどうぞ。
100「カミナリ様」「果樹園」「メトロノーム」:02/07/05 16:54
あれはたぶん、そうなんだと思う。
それを認めなきゃいけないんだと思う。
閑々とした最上階のメトロノーム、それを壊す僕を。
何時からだろう、この体にいるのは。何時からだろう。
カミナリ様、そう呼ばれていた。
空から降りてきたことからそう呼ばれているらしいけれど、
僕にはどうも容姿に関係あるのではないかと、疑心暗鬼を決め込むのだ。
そっと、、、考える。最上階の上のメトロノームを壊す僕を。
それを望む群集を。望まぬ君を。何も求めぬ僕を。
風がいやな音立てて、ぎゅうぎゅう心を騒ぎ立てる。僕は今、最上階にいる。
最上階の上の上、メトロノームは音あげる。
風の慟哭は止んでいた。
最上階の上の上の上。
全てが止んでいた。
・・・あれ?メトロノームなんて、どこにもありゃしないじゃないか!!!
僕は歓喜とも落胆とも言えぬ声をあげた。
僕は一体その時、どんな表情で何を思っていたのか、それだけが不思議なのだ。
ふいに見下ろしてみると、果樹園が見える。
そうだ、ここには果樹園があるんだ。
僕はそこにいたんだ。それに今初めて気付いたんだ。
それが目の前に広がっていって。
どさり。

次は「状況」「ごはん」「数字」でお願いします。
敵が、迫ってきている。そのことは、彼女が一番知っていた。
ここに、身を隠して、どのくらい経つのだろう。ほんの一瞬のようにも、永遠に長い時間だったようにも思えた。
早く動かなければ。敵の追撃をかわしきることは、疲れきった今の彼女には、不可能だった。
状況は、刻一刻と悪くなっている。何とか、今のうちに、追撃者に銃口を向けてしまわなければ。
左手に嵌めた、小さなデジタルの腕時計を、彼女は見た。液晶盤の数字は、5:31を示している。
建物の外では、黄昏が、ゆっくりと全ての物を包み始めている時間だ。
どうする・・・。彼女は自分に問い掛けた。ここにいれば、もう暫くは安全かもしれない。
しかし、事態が好転するわけではないのだ。時間を定められた、避けられないものがある以上、安全のために、ここに留まることは、もはやできなかった。
戦闘用スラックスの腰に差し込んだ、小ぶりの銃を引き抜くと、安全装置を、ゆっくりとはずした。
「ひとつ・・・。ふたつ・・・。みっつ・・・。」ゆっくりと胸の中で数えると、敵の気配がした方向へ銃を向け、鮮やかなスピードで、彼女は立ち上った。
しかし、そこに敵の姿はなく、動くものの気配すらなかった。
なぜ・・・?。彼女がいかぶしがる前に、背中に、硬い殺気が押し当てられた。
しまった。そう思うより早く、背中から声が飛んできた。「終わりにしよう。」聞きなれた声だった。
やはり、私は、彼に敵わないのか。絶望が彼女を包んだ。ここまで逃げていたというのに。あと少しだったのに・・・。
彼女は、ゆっくりと瞳を閉じた。全ての諦めを受け入れるかのように。
背中の声が、もう一度、彼女に告げた。「終わりにしよう。」
彼女は、ゆっくりと、首を縦に振った。仕方がない。これが運命なのか・・・。
背中の声が、彼女に最後通牒を突きつけた。
「お母さん。早くごはん作ってよ。僕の勝ちだから、グラタン付けてよね。もう、お父さん帰ってきちゃうよ。」
夫の給料日前で財政難の折りに、グラタンを作れとせがむ五歳の息子に対し、戦闘ごっこで勝ったらね。と言ってしまったことを、彼女は深く後悔した。
疲れただけはなく、食事を作る時間さえ削られてしまったのだ。しかたなく、彼女は、財布を握ると、近所のスーパーへ向かった。
グラタンの材料を買うために・・・。

ごめんね。ちょっと長くなっちった。
次は、「手紙」「猫」「約束」でヨロシク。



102「状況」「ごはん」「数字」:02/07/05 18:18
 「こんな状況でも、やっぱりごはん食べるんだ」
 テトラポットの上に座ったシオは、できるだけ膝を平らにして、ユウキが投げた焼そばパンとプリンを受け止めた。明日の今頃には、地球はない、とテレビがわめいて、さらにぶつんと切れてから、ずいぶん時間がたった気がする。
 「東京、むちゃくちゃらしい。コンビニで聞いて……」
 ユウキはシオをひどくまじめな表情で見つめた。シオはユウキを見つめ返す。砂浜をバックに、ユウキの短い髪は、暮れかけた光の中で半分だけ茶色に輝いている。潮風になぶられてシルエットは乱れている。
 シオから目を離さないまま、ユウキがテトラポットをよじのぼってきた。あまりにも間近に真剣な顔が来て、
「わ、……何?」
 シオは肩をすくめる。ユウキは目をそらして、ちょっとだけ唇を尖らせた。
「何でもない。ここ、田舎でよかった、って思って。品切れ多いけど、コンビニだって普通に開いてるし、皆、のんびりしてるし」
 シオは笑みをこぼした。
「だってさ、映画でなんかこんなの、あったじゃん。ハリウッドそのまんま。本当に、隕石なんてぶつかると思う? これって、誰かのすごい嘘じゃないのかな」
「……どうかな」
 夕日の中で浜昼顔は萎みかけている。シオはできるだけ、腕時計の数字を見ないようにしている。

次のお題、「鬚」「枝豆」「夏の夕暮れ」
103「手紙」「猫」「約束」:02/07/05 18:51
 猫がにゃあと鳴いて足下にまつわりついて、転びそうになった。夕暮れ時、
誰に見せるでもないおろしたての浴衣を着て、家にいてもしかたがないので、
外を歩いている。出しそびれた手紙でも持てばさまになるかと、角のポストへ
行くところだった。その手紙にしても、保険の更新の事務的な内容なのだか
ら、色気がないこと甚だしい。逢瀬の約束でもないなんでもないただの通り路
を猫にじゃまされて、毛の塊にすりすりされている。
 たそがれ時である。
 薄闇を透かして見える縞のぐあいからすると、見知った猫のような気がする
が、往来の真ん中で猫にまとわりつかれる筋合いは何もない。
「ちょっと、きみ、きみ」
 呼び掛けるのに事欠いて、私の口は猫に対して、きみ、などと云っている。
「きみ、どきたまえ」
 暑苦しい毛の筋が、浴衣の裾を払って足首に吸い付き、上向いた目と牙がか
すかな明かりにちらりと光った。
「むろん、今夜の予定がある身ではないけれど」
 誘われたわけでもないのに思わず弁明しつつ、足首を強く払う勇気はないの
である。毛の間から、強い光がちらり、ちらり、と漏れている。猫に、きみ、
などと話し掛けたのがいけなかったか。
 逢魔が時である。自分をなくさないように、私は少し肩を落として息を深く
吸ってみた。そのものが私から勝手に離れていくまで、背を向けてどこかに
行ってしまうまで、私はここに立っているつもりである。自分から動くのはよ
くないと思う。風がひそやかに路面を流れている。通りに面した家々の夕食の
匂いが薄闇に混じり合って、静かに月が昇っている。

次のお題、「鬚」「枝豆」「夏の夕暮れ」
104妄想32%:02/07/05 18:51
 小二のとき、「大事にしてね。約束だから」と言われてサチコはブリーダーから猫を貰った。
 猫は茶と黒と白の三毛の雌で、サチコは雪と名づけた。
 雪が初めてサチコの家に来たとき、急に住みかが変わったためか落ち着かず、箪笥の陰に
隠れて中々体を触らしてくれなかった。触らしてくれるようになるまで実に三日もかかった。
 その後、サチコは本で猫が体を触らせるのは相手に気を許しているときだと知った。
 …… 
 あれから十二年経った。大学生なったサチコは実家から大学近くのアパートに移り住み、
余り実家に帰らなくなった。
 そんなある日のこと、サチコはたまたま所要で実家に帰省した。久しぶりに帰ったサチコを
長い間会わなかったにもかかわらず、雪は嬉しそうに出迎えてくれた。
「雪ちゃん、ただいま」と声をかけると、尻尾をぴんと立てて心底嬉しそうに体をサチコに
擦りつけてくれた。 サチコが座ると雪は自然と膝の上に座り、ごろごろと喉を鳴らして毛づくろいを始めた。
 ……そのままどれだけ時間が経ったろうか。
 ふとサチコが気がつくと、雪はいつのまにか眠ってしまった。
 そして二度と起きることはなかった。
 翌日、サチコは泣きながら雪にお別れの手紙を書いた。

次のお題「夕焼け」「河岸」「風船」



 
105妄想32%:02/07/05 18:53
お題は>>103で。
>>98
いや、そういう意味じゃなくて・・・ま、いいか(w
107名無し物書き@推敲中?:02/07/05 19:17
「鬚」「枝豆」「夏の夕暮れ」

父のお酒を飲むところをみるのが好きでした。
お酒を飲んでいる父はいつも楽しそうでしたし、それを見ている私も楽しくなれました。
夏の夕暮れ時には、枝豆をつまみにビールを飲んで、いっつもビール髭をつくってました。
「お父さん、ビール髭ができてるよ」
と私が言うと、父曰く、
「最初の一杯はビール髭ができるくらい豪快に飲まなくちゃあ、駄目」
そして酔っ払ってくると、父はいつも私に
「早く大きくなれ。そして一緒に飲もう」
と楽しそうに言うのでした。

今は東京で就職し、一人暮しの私ですが、毎年お盆の季節になると帰省し、父と一献交えるのが夏の一番の楽しみなのです。

次は「孤独、散歩、青空」
108「孤独」「散歩」「青空」:02/07/05 20:57
 夜の散歩である。
 おろしたての浴衣なんぞを着ている。
 しかし誰かとつれだって歩くわけでもなく、一人ふらりと角のコンビニに
寄って、棒アイス一本買って帰る。半端な時刻に甘いもの、それより夕飯のこ
とを考えたほうがよかったか。夕飯を抜いても私を咎める者はいない。からこ
ろ、下駄だけが鳴る。ひんやり唇にはりついて、ソーダの味も感じないぐらい
の孤独である。
 冷蔵庫の奥の梅サワーを開けよう。
 その前に、まだ、散歩である。夜風を求めて堤防に行ってみた。川は星明か
りのように弱い町の灯を溶かして揺れている。正面から向ってくる大きな影が
街灯の中に入って、きりんだと判った。きりんは夜にこの河原にいるのがこの
ところ好きらしいのである。
「こんばんは」
 青空を見ているように晴れやかなきりんの声に、夜の鬱が吹き飛ぶような気
がして、私も元気な声を返していた。
「こんばんは」
 きりんは立ち止まる。私も立ち止まる。
「散歩ですか」
「散歩です」
 きりんがうなずく。私もうなずく。
「では、よい散歩を」
「あなたもどうぞ」
 きりんは歩き出す。私も歩き出す。私が嘗め続けているアイスの木の棒を、
すれ違いざまに、少し羨ましそうにきりんが見たと思うのは、気のせいだろうか。

次は、「鬚」「愉快」「うちわ」
109「孤独」「散歩」「青空」:02/07/05 21:01
 空には輝かしい青空が広がっている。
 青空を突き刺す、限りない陽射しは血肉塊の死体に降り注いだ。
 死体。俺の足元には内臓を破裂させた死体が転がっている。足元だけではない。
見渡す限りの地平線一面に、奇形な死体がばら撒かれていた。地平線の向こうに
も死体の荒野は続いているだろう。
 俺の全身は返り血で染まっていた。口の周りもまんべなく赤く塗られていた。
血肉の感触も混ざっている。カニバリズムとは非常に醜いものだ。人肉の味に目
覚めたときは、若く肉付きのよい女を嗜んで貪り食った。だが、いつしか俺の舌
はさらにグルメになっていった。生で食って、煮て食っても、焼いて食っても、
俺の舌と腹は満たされなくなった。
 いよいよ俺は怪物じみたものになる。俺は至上の人肉を求め、俺は無差別に、
あらゆる抵抗を跳ね除け、逃げ惑う人々を食らっていった。猟期の限りを尽く
す俺は精神や道徳など皆無のようなものだ。
 俺の足元にある女の死体は、恐怖に顔をひきつけながら絶命していた。虚空
を見つめる目が、俺をいっそうに孤独感を煽った。もしかしたら、すでに世界
中の人類は皆死に絶え、狂人の俺一人だけしか居ないのかもしれない。俺はひ
どい罪悪感に襲われると、自然と涙がこぼれた。この涙を見ている者は死体し
かいない。
 俺は涙を拭うと、再び人肉を求めて、死体の荒野を散歩し始めた。踏んだ死
体から肉が潰れる音がする。もし俺以外の最後の人類に出会っても、躊躇わず
その肉を食らうだろう。欲望の暴走はもはや止められない。


次のお題は「勧善懲悪」「虚飾」「メタモルフォーゼ」
110火尭烏:02/07/05 22:31
[勧善懲悪][虚飾][メタモルフォーゼ]

「真由美、見ろよ。ゆっ子がもうメタモルフォーゼを始めてる」
水槽の中のゆっ子をみつめる利一の口は卑しく歪んでいた。
その笑いは楽しそうにも見えたし、恐れおののいている様でもあった。
真由美は自分も同じ表情をしてやしないかと不安になった。
カリ、カリ、と利一の爪を噛む音が聞こえる。
真由美は利一の心の中にある恐怖に気が付いた。
これは彼の『焦った時』の癖なのだ。
『この男は恐れている。勧善懲悪のため、等と言いながら・・・
 やはりこの計画のもたらす結末に気付いているのだ。』
真由美は水槽の中のゆっ子を注意深く観察した。
既に彼女は半分ほど『殻』を脱ぎかけている。あと三十分もすれば
彼女は脱皮を終えて成体になるはずだ。
真由美の脳裏にふと、遥か昔の一場面が思い出された。
これは・・・そう、お義父さんが死んだ日の・・・。


「真由美、私が死んだら研究所に入るんだ。私の後任に・・
 高山利一という男がいる。私と、彼の研究がきっと、
 お前を幸せにしてくれる。きっとだ・・・」
今思えばあの言葉も虚飾に満ちていたのだ。馬鹿な男。
死ぬ前になってまで『研究』の事なんか気にしていたなんて。


ドシュ、と鈍いくぐもった音が聞こえて、真由美の回想は途切れた。
横を見ると利一が床にくず折れている。血だまりの中に一丁の拳銃が落ちていた。
真由美は、それでもこんな男でさえ死んで消えててしまう事が悲しく感じられた。
いや、一人になるのが怖かったのかもしれない。
何故だか真由美は少し眠くなった。


覚醒まであと二十分。
水槽の中のゆっ子は、まだ穏やかに眠っている。
目が覚めたら、彼女は一体何を見るのだろう・・・?


次のお題→[ココア][迷走][発電機]
111火尭烏:02/07/05 22:37
個人的に >>102 がすごい良いと思ふのです。
112水煙:02/07/05 23:50
[ココア][迷走][発電機]

背後にブザーの音を聞きながら、私は熱いココアを口に含んだ。
落ち着くにはココアがいい。
焦った時とか危機に陥った時にはまず落ち着くことが肝要なのだ。
コーヒーやお茶でももちろんいいのだが、個人的な好みから私はココアを愛飲している。
ともにもかくにも、落ち着くにはココアが一番なのだ。
「ふぅ・・・」
「「ふぅ」じゃねぇっ!!」
横手から怒声が上がる。この工場に同期で就職した悪友、樫川だった。
「何だよ。」
「何が「何だ」だ。馬鹿野郎!修理要員が呑気にココアなんぞ飲んでる場合か!?状況をわきまえろ!!」
「配電盤がショートしたんだろ?だったらなおさら落ち着いて作業しなくちゃならないじゃないか。ここは一つココアで落ち着いてからだなぁ・・・。」
「だからって修復作業を遅らせる気かよ!お前さては何も考えてねえな!?」
どこか遠まわしな樫川の言い方に私は少し気分を悪くする。
「んなこたねえよ。大体配電盤のショートごときでそんな大事が・・・」
バチィッ!!!
突然大きな音と共に全ての計器が沈黙する。私も樫川も一瞬言葉を失った。
「これでわかったか?修理要員さんよ。」
樫川が怒りに震える声で言ってくる。さすがの私も頷かずにはいられなかった。
「配電盤のショートから漏電、生産ラインの停止−これでしばらく生産できねえだろうが!そのせいで路頭に迷ったらどうしてくれる!?俺の人生そこまでよ。あぁ、ごきげんようホームレス生活・・。」
何やら妄想の世界へひた走る樫川。とりあえずこの暴走は止めておく必要があるだろう。
「落ち着け樫川!さすがに路頭に迷うなんてことは・・・」
どかぁん!!
またも沈黙。爆発の余韻が室内を揺らす。
「どうやら発電機までいかれやがったらしいな・・・。」
樫川の瞳がいよいよ危険な光を宿す。
「樫川!落ち着け!ほら、お前もココア飲んで−」
「誰が落ち着くか、ぼけぇぇっ!!」

−教訓−
人間、何でもやりすぎは良くない。


次のお題は「金貨」「ビデオ」「カラス」で
113エヴァっ子:02/07/06 00:37
「ん?」
早朝、習慣の散歩をしていた俺は道路の上できらめくものを発見した。
金色で………円形で………表面に何か彫られている………。
「金貨!?」
思わず拾ってよく見ようとした瞬間、空から豪快な羽音と共に、黒い鴉が飛んできた。
「クワァァ!!」
「うわっ!おっ俺の金貨!!なにすんだ!!返せよ!!」
鴉のくちばしは鋭かった、だが俺のカミソリパンチも鋭かった。
鴉との壮絶な乱闘の末、金貨は手に入った。
まぁ、喜ぶ俺の姿がビデオカメラによって取られている事を知った話はまた後日………。
114エヴァっ子:02/07/06 00:38
次のお題は『パソコン』『電柱』『光』で。
115名無し物書き@推敲中?:02/07/06 01:45
『パソコン』『電柱』『光』

近い将来に街から電柱が消えるらしい。電線はすべて地下を通して処理をして
しまうのだ。そんな記事をネット上で読んだ。
新聞はもう取っていない。このパソコンさえあっという間に小さく薄くなっていった。
文明開化の音がすると言ったのは誰だったか。時代が動く音が聞こえると書いたのは。
俺ですら、思いをはせるだけで聞こえてくる気がする大きな音だ。
今の時代は音もなく知らない内に世界が変わっていくのだろう。それでもこの世界は
嫌いじゃない。なめらかだと思うのだ。
すこし目が疲れるのはしかたがない。休ませることにこまめに気を使ってやればいい。
パソコンの電源を切って横になった。瞼の裏に色が踊る。
見上げる空に電線と小鳥とオレンジ色の雲が浮かぶ。
あの光さえ覚えていればいい。それを書いて残せれば。

次は「紺」「箱」「水まくら」で。
116「紺」「箱」「水まくら」:02/07/06 02:36
 水まくらで頭を冷やしていたが、いつのまにかぬるくなってしまっていた。
風邪をひいているのに一人で居るのは本当に辛いし、悲しい。普通に生活している
時、当たり前のように生きていて(私の生命が自動的に維持されている)、
それらを構成する瞬間瞬間の全てに、どんなに努力しても抑えようのない痛みを感じる。
普段からそんな調子で、さらに今、私は風邪をひいてしまって寝込んでいるのだ。
最早風邪がどうこうといった問題ではなく、私は危険を感じている。このままでは………。
 この家には誰も住んでいない。私だけだ。寝たきり老人というわけでもないが、
背中が床ずれ気味で痛む。尻にできたできものがつぶれ、下着が膿で汚れてしまって
不衛生な状態なので辛い。茶色の箱から塗り薬を取りだし、尻にぬりたくる。
……何故か涙があふれてきた。……多分もう、駄目だろう。
 その時突然、ボロアパートのドアが強引にこじ開けられ、紺色の帽子を深くかぶった
謎の男が現れた。謎の男はずんずんと部屋に押し入ってきた。その男は、
多量の水分が蒸発ししわくちゃの、部屋の隅でゴミクズのようになっている老人を発見した。
そして男は、ナイフを私の腹にぶすりと突き刺した。
その瞬間私は、真実の愛、リアル・ラブを感じた。
117116:02/07/06 02:38
次は「道徳」「虫」「キャバレー」で。
118「紺」「箱」「水まくら」:02/07/06 02:43
梅雨寒の箱根を洗う岩清水まくら木に散る紺の紫陽花

たまには一句と思ったが遅かった。
もちろん、次は「道徳」「虫」「キャバレー」で。
119「紺」「箱」「水まくら」:02/07/06 02:58
梅雨寒の箱根を洗う岩清水まくら木に散る紺の紫陽花

たまには一句と思ったが遅かった。
もちろん、次は「道徳」「虫」「キャバレー」で。
120名無し物書き@推敲中?:02/07/06 10:29
「近頃ね、へんな虫が出るんだって」
仕事から戻って、着替えをしながら、裕子がしゃべる。
「虫?」
「そー。虫。黒くて、親指の爪くらいの大きさで、飛ぶの」
「あたりまえじゃないか」
「それが、へんなの」
「何がだよ」
「虫の名前よ。知ってる? 道徳虫っていうの。今年は大量に発生だって言ってた」
「誰が?」
「キャバレーの客よ」
「なんでそんな名前なんだ?」
「知るわけないわよ!」
裕子は言葉を続けようとしたが、俺の方を見て、顔をしかめただけだった。
「・・・あのな、聞き間違えたんだよ。それはな、道徳無視ってことだ。
おまえの店の客が酔っていつも言ってるんだろ。最近は道徳がなっていないとか」
「じゃあ」と裕子は嫌悪の表情を浮かべながら俺の方を指差した。「あれは何!」
振り返ると、窓ガラスの外側にびっしりと黒い虫がはりついていた。
驚いて何か言おうとして、裕子を見ると、彼女は手で顔をおおってへたり込んでいた。
部屋のあちこちに、爪ほどの大きさの黒い虫が静かに入りこんでいたことに、
俺はようやく気づいた。
121120:02/07/06 10:35
お題は「滴り」「したためる」「舌足らず」で
122名無し物書き@推敲中?:02/07/06 16:17
「パパァ、白いの飲みた〜い!」
と、舌足らずな喋り方で弘子は俺にねだる。
仕方ないな、と、例のヤツを弘子の眼前に突き出した。
既に液が滴っていたが、それを見るや否やすぐに
弘子は物凄い勢いでしゃぶり始めた。
すぐさま弘子の渇望する白いのは飲み干された。

「弘子!私のチューペット食べたでしょ!」
夕飯前に弘子の姉が泣き喚いたのは言うまでも無い。
123名無し物書き@推敲中?:02/07/06 16:20
「滴り」をちゃんと使えてませんね…。
そんなわけでお題継続で…スミマセン。
「したためる」も使われていない罠。
125名無し物書き@推敲中?:02/07/06 16:58
明らかなる堅実な被害妄想と
にべもなく繰り返される重大な県下償還も
結局はにちゃんねるはにちゃんねるで
もういいとかもういやだとかいわなくても

誹謗中傷誹謗中傷誹謗中傷誹謗中傷誹謗中傷

でも繰り返すことによって生まれる罪悪感
「美徳とか倫理観だとかはもうとっくに捨てちゃったから」

でも繰り返すことによって生まれる罪悪感
「今日の晩御飯は食べないから」

(食べないでどうすんだよ)
「誹謗 中傷 だけを「しに」 掲示「板」へ また此処に」

嗚呼、誰が決めた青春を?
彼が、私が?神が?
否が応でも 青春は 「悪口を」 媒体にして 成り立つものだから 結局は 僕たちは 心が 鍋の蓋のように 稚拙で 倦怠感が生まれる 腋臭

倦・倦・倦・倦・倦・怠・怠・怠・怠怠・・怠怠・・感感・感感感・感感・
嗚呼同いう事?こんなはずじゃ「無かった」?

「林檎を齧りながら考えた」「国会議員は嘘つき?」「でもあんただって」「国会議員になれば」
「嘘」「詐欺」「偽証」


欺瞞欺瞞欺瞞欺瞞欺瞞欺瞞欺瞞欺瞞欺瞞欺瞞

「無茶だよあんたたちやってること」(でもそれは)
「無茶だよそれを無くそうとするのも」(でもそれは)

虹が・・・出ていました 雨上がり ネットカフェ 出ると
虹「が」 綺麗でした 七色 輝き 憂愁

嗚呼また三十分が経ってしまった 来年で何歳
若「い」とか 「老け」て「る」から駄目だとか?

駄目って何?ものさし?

「今すぐに江戸川に世捨て人やってきなされ」
「駄目なんだったら価値観が」
「いいじゃん若いから」「いいじゃん大人って」

赤いバナナが落ちてきました 拾いました 金のバナナ 銀のバナナ
青いバナナが落ちてきました 拾いました 金のバナナ 銀のバナナ
126名無し物書き@推敲中?:02/07/06 17:12
>>125
?????
127名無し物書き@推敲中?:02/07/06 17:23
>>124
すぐさま弘子の渇望する白いのは飲み干された。
→すぐさま弘子は白いのを口内にしたためる。

にするつもりが、忘れてました。とことんダメ…。
悪いけどどなたか空気戻してください。

そんなわけでお題は
「カラス」「玄関」「タバコ」
128名無し物書き@推敲中?:02/07/06 17:55
「滴り」「したためる」「舌足らず」

私の一個下、高校一年生の妹は学校一の美少女と評判だ。
アイドルのような愛らしい顔と、蜂蜜が滴り落ちてきそうな舌足らずで甘ったるい口調が男の琴線を震わせるらしい。
人気者の妹を持ったことは姉として喜ぶべきことなのかもしれないが、私はどうしても素直に喜べない。それは、妹を目当てに私に言い寄ってくる男が多いからだ。

渡辺君に今度遊びに行かない、と誘われたのは男性不信気味になっている真っ最中のことだった。
私は渡辺君に少なからず好意を持っていたので、これには失望した。
渡辺君は何度も誘いをかけてきたが、私それをことごとくにべもなく断った。

しかし、それが私の勘違いだということに気付いたのは、渡辺君が急に転校していった翌日のことだった。
「おまえ、どうして渡辺と付き合ってやんなかったの?」
渡辺君と仲のよかった筧君が非難するような目つきで私を睨んだ。
「俺はさ、おまえも渡辺のことが好きなんじゃないかと思ってたんだけどな」
「私に言い寄ってくるのは妹が目当てなだけよ」
私はきっぱり断言した。
「それは違うよ」
筧君もきっぱり断言した。
「なんで? どうしてそう言いきれるの?」
「だって、あいつがおまえに惚れたの入学式のときだもん。勿論、俺たちの、だぜ」
「え・・・? じゃあ、なんでもっと早く言わないのよ」
「一年のときはクラスが違うし、知り合うきっかけもなかっただろ? それに、今回の転校も親父さんの都合で急に決まったらしいし。ホントはもうちょっと時間かけるつもりだったんだろう」
このとき私は次分の愚かさ、浅はかさに気付いた。
私に言い寄ってくる男すべてが妹が目当てだと思いこんでいた。物事の本質を見極めようとしなかった。その所為で、好きな人の言葉を真剣に受け止めることができなかったのだ。
その日の夜、私は一晩中泣き通した。

次の日、私は筧君から渡辺君の新しい住所を聞き出した。手紙をしたためることにしたのだ。
出だしは決まっている。

「あなたのことが、大好きです」

次のお題は>>127のやつでおながいします。
>>127
それってしたためるの用法間違ってない?(w
130エヴァっ子:02/07/06 18:19
あれは十分ほど前のことだった。
まさかカラスがタバコを吸う時代がくるとは、思っても見なかった。
おまけに、どこかのゴミ捨て場から漁ってきたのか集団で吸ってやがる。
あぁ!!クソ、器用にライターで火をつけた!!
旨そうに煙を吐くんじゃねぇ!!
ワイルドスターだぜ、あれ!!
よりによってこんな時にタバコを切らすとは!クソ!

今から思い返してみれば、俺は禁煙中だったんだ。
冷静に考えれば、カラスがタバコなんて吸うはずもない。
狭苦しい玄関で、白い煙を吐きながら俺は自分の甘さを嘆いた。

つぎは「白鳥」「記憶」「ラケット」
糞スレ発見。
>>131
(・,_ゝ・) プッ
>>129
わざとそうしてみた、と言うかお題だったのでそうしたんですが、
文章力が無い奴がそんな事をするとただの間違いにしか見えないみたいですね(w。
134「白鳥」「記憶」「ラケット」 :02/07/06 19:51
太陽は高く上り、テニスコートをじりじりと焼き付けている。
大観衆が見守る中、テニスのアジアカップ決勝戦が始まった。

サーブ権は私にある。そして、ネットの向こうでは、昨年の覇者・李云麗が
右手にラケットを握り、鋭い目つきをして構えている。彼女の威圧感は
私をいまにも飲み込んでしまいそうなほどだ。
まるで、去年の決勝戦と一緒だ・・・。私の脳裏にほろ苦い記憶が蘇った。去年、
最後まで自分のペースを掴めず、彼女から一つもセットを取れず完敗した。

しかし、今年は去年のようには行かせるものか。この一年、この日のためだけに
特訓してきた技がある。秘策、白鳥サーブ。
私は強くグリップを握りなおした。

次のお題は「数学」「物理」「生物」
135名無し物書き@推敲中?:02/07/06 20:44
おれは期末テストの時間割を書き写していた。

生物
物理

おや、縦から読んでも横から読んでも同じだぞ。
しかも物と物のあいだに「生理」の文字が見える。
次は数学だ。縦横ななめを考えると、

数学
学術

学術なんて教科はない、って、こんなことを考えている場合か。


次は「継ぎ目」「さからわない」「やめちゃう」
136koke:02/07/07 00:20
「継ぎ目」「さからわない」「やめちゃう」

雲は上手く連続できていなかった。ところどころある継ぎ目からは、陽が漏れ出していた。
廃ビルの進入禁止の鎖を越えて登った屋上は、学校の屋上と似たようなものだった。
違うところがあるとすれば、禁止されているか、いないかの差だった。
「やめちゃう? そんなにつらいなら」
「別れようってこと?」わざわざこんなところで話すことか、と思った。
彼女はコクリと単調に首を振った。「そう」
「俺はつらくないけど? そっちがそうならそれでもいいよ」
「そう」彼女は空を見た。「いやだ、って言うと思ってた」
雨はさっきからまったく降っていなかった。無意味な雲が太陽を遮っているだけだった。
「君がそれでいいというのなら、さからわないよ」
「そう。まあ、いいわ。言ってみただけだし」
ぼくは、なんのことやらさっぱりわからずに彼女の顔を見るだけだった。
彼女はいたずら気に笑うだけだった。
雲は相変わらず継ぎはぎだらけで、雨は相変わらず止んだままだった。

次は「太陽」「ガラス」「トンネル」
137「太陽」「ガラス」「トンネル」 :02/07/07 00:43
国境の長いトンネルを抜けると、南国であった。昼の天井が青くなった。
信号所に汽車が止まった。

向かい側の席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落とした。
太陽の熱気が流れ込んだ。娘は窓いっぱいに乗り出して、遠くへ叫ぶように、
「駅長さあん、駅長さあん。」

次のお題は「蝶」「心」「旅」
 天空遥か高きに浮かぶその島は、太陽の帝国と称されており、別名ジパングと呼ばれていた。
 下界の人々は夢想した。あの国には、どんな民族が住んでいるのだろう。黄金の国という噂は本当だろうか。
 やがて冒険家ジイボルドが命がけの探索行から帰還して、皇帝陛下に報告した。
 ジパングの王は、ガラス貼りの美しい宮殿、エドモンド城に住んでいる。王と財宝を守るため、城の周囲には、人工の霧と機械兵団が配備されているらしい。
 城に侵入するための方法はただ一つ。かつてニンジャと呼ばれる魔術兵士によって掘られたトンネルを見つけ出すことのみ。
「相手にとって不足なし。ジパングの財宝は俺がいただくぜ」
 ペルリという男がニヤリと笑って言った。

また先を越された……。
139「蝶」「心」「旅」:02/07/07 13:24
 あげは蝶が、ひらひらと蒼い海を飛んでいた。
 そんな光景を見て、私は自分が思い悩んでいた事が馬鹿らしく思える
ようになった。
 芝生に寝転ぶと空は雲ひとつ無い青空だった。夏の日差しが照りつける。
途中のコンビニで買ったペットボトルのお茶を一口含むと、それはまだ
それなりの冷たさを保っていて、やさしく喉を潤してくれた。
 傷心旅行にしてはやけに近場だったが、まぁ、それはそれでいいのだ
とも思う。
 立ち上がり、大きく一つ伸びをする。さて、これからどうしようか?
そう思いながら私は愛車に乗り、助手席においてあった遺書を破り捨てた。
 窓の外には、あげは蝶がひらひらと飛んでいた。私も軽やかに生きて
いこう。そんなことを思った。

 12行。久しぶりに書かせて頂きました。
 次のお題は「恋人」「笹の葉」「天の川」で。
140「蝶」「心」「旅」:02/07/07 13:32
 彼女は蝶のように飄々と、洗練された小説を求める読書家だった。
 彼女は至上の本を求める続けるあまり、いつしか自分で小説を書くようになった。
「今はまだ文法とか……文章の作りや想像力を培うための練習でしか書いてないわ。この
ごろはネット上の小説批評サイトに自作品を投稿してるのよ。ここは厳しい批評ばかりく
れるわ」
 わたしは彼女の言っていたサイトを覗きこんだ。なるほど、このサイトでは、あらかじ
め出題された三語の単語を使って、即行の文章を練り上げるのが流行しているらしい。
 彼女が投稿した即行文のページを開いた。いかにも、彼女らしい、稚拙だが愛嬌のある
文章が表示され、その文章欄の下にはこの即行文を読んだ批評家の感想が寄せられていた。
「才能ねえぞ。さっさと消えてくれ。おまえみたいのクズってゆーんだよ」
「これ可笑しいなー。さすがに、いろんな人に叩かれてるだけのことはある。」
「世界設定が、想像でカバーできる許容範囲を越えちゃってるな。評価:( ´ д `)」
 ネットと云うのはなんて残酷なものなんだ。顔すらわからぬ者に平気で誹謗中傷ともい
える感想を平気で投げかける。彼女は「くやしいけど、自分にとってこれがいい刺激にな
るのよ」と、平静を保っているかのように見えた。彼女は気弱な娘だ。内心どんなに悔し
くとも、反駁を論ずることが出来ないのだ。

 彼女が留守のときだった。部屋で彼女を待ってるよう、家に上がらせてもらったとき、
こっそり彼女のPCを起動し、彼女が小説を書くときに使うワードを開いた。些細な興
味本位からだった。ワードの過去ログをチェックすると『感想を付けてくれる方々へ』
と小説とは違うだろうデータが入っていた。私は失礼と思いながらも、それを開いた。
141「蝶」「心」「旅」:02/07/07 13:33
『感想を付けてくれる方々へ。いつも私の駄文に、的確で厳しい感想をつけてくださり、
誠にありがとうございます。少々ヘこみながらも(笑) 次は面白い文章を書こうと挑戦し
たい気持ちにもなれます。そんな方々に、いままでの感謝と、思慕の気持ちを込めて貴
方がたの御家に入りこんでぶっ殺してやる!!!!!いつもいつもいつもいつも自己満
足だけのマスターベーションを吐き掛けやがって!!!こっちはてめえらの恥垢の腐臭
が回線を通じてプンプンプンプン芳ってきてくせェェんだよ、このゲリグソがぁ!!!
もう許せねえ!!てめえの頭蓋骨叩き割って殺してやる!脳髄ぶちまけて殺してやる!
内臓引っ張りだして殺してやる!眼球くりぬいて殺してやる!全身の血を抜いて殺して
やる!恋人の五体バラバラにして殺してやる!息子の首を絞めて殺してやる!娘を陵辱
して殺してやる!兄弟をダンプカーで撥ねて殺してやる!姉妹を恥辱して殺してやる!
両親を散々に弄りつけて殺してやる!祖父母の骨を粉々に砕いて殺してやる!親戚とも
どもサリン漬けにして殺してやる!友人を拷問器具で殺してやる!恩師をコンクリ詰め
にして殺してやる!ペットを虐待して殺してやる!錘付けて海に沈めて水死させてやる!
家に火をつけて焼死させてやる!二酸化炭素吸わせて窒息死させてやる!青酸カリで毒
死させてやる!スクラップにして圧死させてやる!数日間食べ物与えないで餓死させて
やる!休み時間与えないで仕事させて過労死させてやる!目の前で家族を殺して憤死さ
せてやる!無理に体を折り曲げて変死させてやる!エボラウイルスを移植して病死させ
てやる!電気イスにかけて感電死させてやる!ゴキブリ風呂に強制入浴させてショック
死させてやる!ビルから突き落として転落死させてやる!鋸で体を切り刻んで斬殺して
やる!電気コードでグルグル巻きにして絞殺してやる!体に爆弾敷き詰めて爆殺してや
る!バラライカで全身撃ち抜きまくって銃殺してやる!バットで滅多打ちにして撲殺さ
せてやる!ナイフで顔面メッタ刺しにして刺殺してやる!逆さ十字架に張りつけて磔死
させてやる!重役会議中に暗殺してやる!サンドバック代わりにして殴殺してやる!人
生において関わった奴全員殺して鏖殺してやる!サディスティックに殺してやる!エロ
ティックに殺してやる!コミカルに殺してやる!グロテスクに殺してやる!サイコに殺
してやる!バイオレンスに殺してやる!ヒステリックに殺してやる!とにかく殺して殺
して殺しまくってやる!物凄いで勢いで殺してやる!とにかくとにかく殺し殺し最高に
殺してやる殺してやるうおおおおぶっ殺して他殺してやる!!きもすぎるほど殺して変
質者的にと殺してやるゥゥゥぶっ殺しィィああヴぃいオパアアア!!!!!!!!!!!!!!』

 最後までこの文章を読めた私は、自分自身に敬意と後悔の意を与えて、このブラウザ
を閉じた。私は何も見ていない。そして、彼女とは何も付き合いはない。そうだ、明日
は荷物をまとめて一人旅に出よう。


次のお題は「長身痩躯」「廃園」「フェミニズム」
142「恋人」「笹の葉」「天の川」「長身痩躯」「廃園」「フェミニズム」:02/07/07 15:28
その女刑事が俺の課に来た時……正直、嫌な予感がしていた。5年前、麻薬組織を追跡中に
殉職した、俺の後輩が……いつだったか、照れながら見せてくれた、恋人の写真。その彼女が
組織を追うこの職場に現れたのだ。……復讐に燃える、修羅となって。
上司は言った。女性がこんな危険な職場に来る事はない、と。しかし、そんな安っぽいフェミ
ニズムが通用するほど、彼女の戦いは軽くはなかった。彼女を持て余し辟易する上司に、俺は
彼女と組むことを申し出た。
長身痩躯の中年男と、親子ほども年の離れた女。実に奇妙なコンビだった。俺達は幾度となく
衝突を繰り返し、それでも時間をかけて、確かな信頼関係を築くことができたと思う。
だから、断言できる。―――――彼女を死なせたのは、俺だ。
仇の組織が麻薬取引を行なうという情報を得た時……俺は、先走る彼女を止めることが
できなかった。そして、取引の現場……あの廃園での銃撃戦で……彼女は殉職してしまった。
7月7日。どんよりと曇った、七夕の日だった。

それ以来、笹の葉の飾りを見るだけでも、俺は憂鬱な気分になる。それでも、星空が顔を覗かせ
る事を、なぜとはなしに願いながら……あの二人の事を考える。あいつら、逢えたのかな……と。

    ―――――天の川楫の音聞ゆ彦星と織女と今夕逢ふらしも―――――

せっかくなので、「恋人」「笹の葉」「天の川」でもうちょっとやってみてはどうでしょう。
143「恋人」「笹の葉」「天の川」:02/07/07 19:20
夕闇がゲレンデを包み込み、白い雪面は哀愁を帯びた紅い色に染められた。
弘幸は久しぶりのスノーボードで少し疲れてしまって、ゲレンデの脇に腰を下ろしていた。

「ねぇ、弘幸。どこかにあかい実って落ちてないかな?」
恋人の恵子も弘幸と一緒に朝から滑っているのに、まだまだ元気なようだ。
声が弾んでいる。
「赤い実。何につかうの?」
「うん、雪ウサギを作ろうと思ってね。」
どこから拾ってきたのか、右手には笹の葉を持っている。
「元気だなぁ。」
「うん。なんだか嬉しくってね。」
そう言うと、恵子は弘幸のすぐそばに座り、頭を弘幸の肩に寄り添わせた。

やがて、空に天の川が淡く見えてきた。
冬山の夜空はゆっくりと美しさを増していった。

--
敢えて冬の物語。
「恋人」「笹の葉」「天の川」でもう少し継続してみましょうか。七夕だしね。
144エヴァっ子:02/07/07 22:17
天の川は、英語ではミルキーウェイと言うらしい。
………俺の部屋には今、天の川が横たわっていた。
ペットの猫が倒したと思われる、特大の牛乳ビンが何ともいえない寂しさを醸し出して。
マズイ、今日は恋人が来るんだった。
早く掃除………この臭いも何とかせねば!
――ピーンポーン
慌てる俺をあざ笑うかのように、インターホンが恋人の訪れを知らせてくれた。
何てこった、彦星は今忙しいんだよ。

笹の葉が、ゆらゆらと風に揺れる七夕の想い出だった。


お題は継続で。
145「恋人」「笹の葉」「天の川」:02/07/07 22:21
ジェイムズには結局、恋人が出来なかった
天の川ならぬ三途の川を今にも渡ろうとしていた、自らの意思で・・・
「ちっ、おもしろくねぇ、ここで脱糞してやるぜ」
ぶりぶりぶりー
「はぁーすっきりした、しかし、ケツについたウンコをふきとらなくては」
ジェームズは近くに生い茂っていた笹の葉をおもむろにひきちぎり必死にふきとった
やっぱり帰ろうかな
ジェームズはふとそう思った

ネタなので聞き流してね m(_ _)mスマソ
146「恋人」「笹の葉」「天の川」:02/07/07 22:30
 七夕の夜が更けていく。
 いつ頃、恋人たちは出逢うのか、判らないままにひとり河原に立ち止まって
いる。浴衣の裾を風が払っていく。空気はずいぶんと柔らかく冷んやりしてい
る。
 仰いでも、空は黒い穴のように深いばかりで、天の川がどこにあるかも判ら
ない。私は笹の葉を門に立てて出逢いを願ったわけでもなく、誰かと約束をし
たわけでもない。
 それでも、何かに呼ばれる心地で待っていると、幾重にも折り重なった草の
影といっしょに気配が揺れた。それは私が見つめていた河原の向こうではな
く、川の中に現れた。青白くぼうと星のように光る、河童のような蛸のような
ものが、川の中でしだいに形を取っていく。
 いいえ。私はあなたの恋人ではない。露になった形を見届けるのが怖くて、
自分の運命ではないものに惹かれるのが怖くて、背を向けようとした、そのと
きに水面が揺れた。小さな水音と共に川に飛び込んだのは古ぼけた長靴であ
る。草の間に捨てられていたものらしい。水中で長靴を受け止めたのは、破れ
た傘である。骨ばった躯を広げて長靴を包み込み、ぐるりと回転したかと思う
と、水底へ沈んでいく。いろいろな恋人たちが世の中にはいるものである。

次も、「恋人」「笹の葉」「天の川」でよろしくどうぞ
147「恋人」「笹の葉」「天の川」:02/07/08 00:22
「そういえば、美紀ちゃんに恋人が出来たって聞いた?」
母さんが話し掛けてきた。美紀とは、俺の幼馴染の女の子だ。
おそらく、母さんが美紀のおばさんから聞いた話なんだろうが、
これを聞いて俺は内心ひどく動揺していた。
「ああ。うん。初めて聞いた。ふうん。」
できるだけ普通を装って、素っ気なく返事をしてみたつもりだが、普通であることを
意識すればするほど、何がなんだか分からなくなってくる。

「そうだ。ちょっとコンビニに行って来る。」
そう言って、家から退散した俺は、美紀の家に向かって夜道を歩いた。

美紀の家から道路を一本隔てた場所に俺は立っていた。おれは、そこから美紀の
家を眺めているだけで精一杯だった。今日はたまたま七夕で、二階のベランダには
笹の葉が風に揺れ、短冊もいくつかぶら下がっていた。あの短冊には一体何が
かかれているのだろう。思いをめぐらすほどに、俺は感傷的になっていった。

さしずめ、この一本の道路が二人を別つ天の川か。
明日からは、美紀を想うことをやめられるのだろうか。


七夕が終わったので、次のお題は
「映画」「ひも」「大人」
「恋人」「笹の葉」「天の川」
星はなかった。
七夕に天の川を見たことはない。
10月10日の晴れの特異日と同じく
7月7日は曇りの特異日なのだ。
森は暗かった。
町の灯かりは届かなかった。
笹の葉の風にそよぐ音だけが聞こえるのだった。
目の前に転がるそれは、さっきまでの恋人だった・・・

「映画」「ひも」「大人」継続
「映画」「ひも」「大人」

俺はひもだ。といっても女を喰い物にするヒモではない。
正真正銘、一本のひもだ。自慢じゃないが俺は結構太いし長い。
ひもは長いに限る。短いひもなど何の役に立とうか?
しかし、世間的にはまだまだひもがナイガシロにされている。
例えば彼女とデートで映画館に行った時のこと。
「大人一枚、ひも一枚。」
「え?ヒモ、ですか?」
「違う違う、ヒモではなくひも、だ。」
「あの〜、ひもは大人のひもでしょうか?」
「ばかいうな!ひもに大人も子供もあるか!」
訳のわからん受付嬢に待たされること30分、ようやく責任者が現れたかと思ったら
「申し訳ありません。当館ではひもの方のご入場はお断りしておりまして・・・」
これはもう明らかにひもに対する差別である。
そんなある日、事件は唐突に起こったのだった。



次は「みの」「もん」「た」
150名無し物書き@推敲中?:02/07/08 01:07
>>149
そんなの駄目。
151「みの」「もん」「た」:02/07/08 03:09
「みのちょうだい」
 トシコは、僕が焼肉屋に連れて行くとすぐにみのを頼んだ。
「みの? 普通カルビとかだろ」
 僕はからかい気味に言った。
「何よぉ。いいじゃん別に」
 トシコは膨れっ面をした。可愛い妹だと思った。
 「もん!」
 と、いきなり僕らが座っている席の向こうから、奇妙な叫び声が聞こえた。
「な、なんだよ?」
 立ち上がって見ると、いかにもおかしな風体の男が、体をくねらせながら手を上に突き上げていた。
握りこぶしだった。
「いいじゃん。ほっときなよ」
 トシコが言った。立ち上がっていた僕も席についた。
「た!」
 耳障りな叫び声に、僕はイライラした。
「ま、イロイロいるよね」
 トシコは僕に言った。呆れ顔だった。
 
 めんどいのでもうやめぽ。
 お題は誰か決めてちょ。
「未来」 「心」  「真実」
153名無し物書き@推敲中?:02/07/08 09:05
「未来」「心」「真実」

未来なんて言わないでほしい。結婚はしないよ多分。お互いわかってるだろうに
そんな言葉を投げてこないでほしい。
真実とか愛だとか、耳を疑う言葉が口からこぼれている。怪物みたいだ。
やけに高い声で口を開いておくためだけにずるずる言葉を引き出している。
沈黙が怖いならもう駄目だと思うんだけどな。怒ったって何にもならないのに
俺の表情にすら怒りだすんだ。
「あのさあ」
ようやく口を開いた俺にあいつはびくっと体を震わせた。
この怪物をめちゃくちゃにぶちのめしてやりたい。……湧き上がってくる気持ちを
押さえるように目を閉じた。そうやって叩き潰してしまった心が、俺には二つもある。
目を開いてあいつの手を取った。細い指を両手で握り込む。
「好きだったよ」
人として、やさしくありたいよ。お前にも伝わるといいね。

お題は「石ころ」「鉛筆」「図書館」で。
154名無し物書き@推敲中?:02/07/08 10:26
「石ころ」「鉛筆」「図書館」

僕の存在価値なんて、そこらへんに転がってる石ころと変わらない。
この世に生まれてきて17年間、ただの一度だって誰からも愛されたことはない。
でも僕はそれでよかった。それでいいと思った。
だって、そのほうが辛くないから。

友達はいなかった。いらなかった。いなくてもいいと思った。
だって、そのほうが寂しくないから。

好きな人さえいなかった。いないほうがよかった。
だって、僕には人を愛する資格なんてないから。

だから本を読んだ。休みの日は図書館に出かけた。そこはいつも静かだった。そこにしか僕の居場所はなかった。
だって、僕には何も語ることができなかったから。

いつしか僕は物語を書こうと思うようになっていた。
でも、何も書けなかった。鉛筆を握り締めた手はぴくりとも動かなかった。
誰からも愛されず、誰も愛さずに生きていた僕に物語を紡ぐことなどできるはずなかったのだ。

僕はそのとき初めて誰かを愛したいと思った。愛されたいと願った。

でも、どうすればいいのか、僕にはどうしてもわからないのだ。

次は「コロッケ、日常、幸福」です。
 おい、工場勤めの傍ら明るい未来を夢見て日夜イメージトレーニングに励んでいるテメエら! いくら祈っても森下くるみがテメエのために幸福の黄色いハンカチをタンスから取り出す日なんぞは永遠に来ねえんだよ!
 テメエらみてえな低身長低収入で、パチンコの新装開店に死んだ目で並び、場末の居酒屋で未だに高田×コールマン戦は八百長だとかほざいてる人生の敗残者どもにとって、非日常に身を投ずることなくしてミラクルを起こすことは不可能ってことを早く悟れよ!
 まずはバキュームカーを奪ってモー娘。のコンサート会場に突っ込め! もしくは生のコロッケを、猛烈な勢いで食して死ね! それが俺にできる唯一のアドバイスだ!

 お次は「ヌーヴェルヴァーグ」「格子戸」「磨製石器」だ! キエーーーー!
156名無し物書き@推敲中?:02/07/08 17:23
僕はまた図書館に通っていた。
こんなことを繰り返していたらいけない、そう思いながらも僕はやっぱり図書館に行ってしまうのだった。
だんだんと焦燥感が募ってくる。このまま時間に流されていたらいけない、限りある十代のうちに何かをしないと・・・。
でも、何をどうしたらいいんだ。どうすれば今の状況から抜け出せるんだ!
自分自身に腹が立ってきた。自分はなんて女々しいんだ、なんて情けないんだ、一体何のために生きているんだ、と。
その時、僕はふと思いついた。一度冒険でもしてみようか、図書館通いという腐った軌道から脱してみようか、と。
 次の休みの日、僕は電車に乗って見知らぬ駅で降り、そして見知らぬ土地へとやって来た。
ここでは何かが僕を待っていてくれている、そんな予感がした。僕はかすかな期待感を持って、のんびり歩き始めた。
しばらくしてふと、僕は右のほうを見てみた。そこには偶然、自然洞穴みたいなものがあった。
さあ、冒険だ、と僕は中に入ってみることにした。そしてしばらく行くと格子戸らしいものが道をさえぎった。
「バー磨製石器」という張り紙があった。面白そうだな、僕は中に入ってみることにした。
格子戸を開けた。中に入った。そしていきなり誰かが僕の股間を触ってきた。
「いらっしゃい!! 私のヌーヴェルヴァーグ〜。」
なんとそこはゲイバーだった。

その日を境に僕は変わった。今まで僕は自虐しすぎだったんだ、堂々と生きていいんだ、とわかった。

最後のほうが時間がなくていい加減でスイマセン。
次は「蚊」「血」「煙」で





157名無し物書き@推敲中?:02/07/08 19:09
くそくそくそ また蚊にささられた
なんども だれかれとなく 僕はつぶやいた
こんな人生 まっぴらだ 一気にかたをつけてやるとおもって この職業
人殺しいわれる 掃除屋になった
人をはじめて殺したときは なんとも おもわなかった
しかし 殺すごとに 殺した奴の顔が浮かぶ
ちくしょーー
煙をあげて人をもやすところ 一気に 自分のことも もやしてほしかった
あの日 

次は
ナイフ 夜間 肉 でよろしく
158名無し物書き@推敲中?:02/07/08 19:18
>>157
「血」が抜けてるよ。
159火尭烏:02/07/08 20:09
俺ノ夜間の趣味ハ肉を焼ク事ダ。
電球ヲ薄暗クシテ  ひたすラ朝マデ
焼キまくル。
煙ガすごイノデ  イツモ  マスクをつケテイル。
自慢ジャナイが  警察ニ  通報された事モアル。

そんナ俺ノ好物ハ  骨付キカルビダ。
肉ヲナイフデ削ギマクル。トニカク朝マデ
削ギマクるのだ。
煙ガスゴいのデ  イつモ  マスクヲツケテイル。

ジュジゅぅゥ美味イィィィ!!!
美味ぁぁァアアアアいイイイいいィィィイイ!!

owari;)

お次はそうだな・・・[破裂][歌声][蟻の子] なんてどうです?
160破裂 歌声 蟻の子:02/07/08 20:40
目が覚めて、気が付いた。視界に黒点がうごめいている。
鏡を見ると、左目に蟻の子がたかっていた。ちりちりと痛みが増す。
狂ったような夢は、このせいだったのだ。小さな生き物たちは、
眼底から次々に湧いて出ているようだった。
おれの脳は、蟻の巣だ。奴らが分泌する蟻酸が、記憶を焼く。
甲高い歌声が聞こえた。おれの魂を救う賛美歌だ。
歌声が悲鳴になった。気が付くとおれの声だった。
痛みが意識を奪う瞬間、左目がパチンと破裂した。


ええっと、次は「黒髪」「円盤」「地獄」でおま。
行った事は無いが、今、俺はまさに蟻地獄のような所にいる。
いや、行った事が無いから、わからないけど。
ここにずるずると引きずられてきたから、なんとなく蟻地獄。
窮屈で退屈だ。一刻も早くここから出たい。

俺が蟻地獄のような所に来てしまってから2日後の事だった。
一本の黒髪に吊るされた円盤のようなものが空から降りてきた。
何故か俺はその円盤のようなものに吸い寄せられ、また引きずられた。

人間だと思っていたが、どうやら俺は砂鉄というらしい。
お次は「もやし」「きりん」「ミルクティー」でおながいします。
都会の煩わしさから逃げ出すようにして辿り着いた山陰の山奥では、
ちょうどお祭りの最中だった。
「へえ、お姉さん東京の方から来たの。せっかくだから楽しんでってよ」
民宿の女将はそう言って笑った。
言葉に甘えてお寺に向かう道々、子供たちがわらべ歌を歌っていた。
私はふいに立ち止まると、目を瞑って深く息をつく。子供達の歌声に
合わせて、小さな頃の思い出が目の前を掠めた。
私も昔はこんな所に住んでいた。
友達と一緒に、お寺の境内で蟻の子らの列を追って歩いたり、ひなた
の川辺で流れる水に足をひたした。山の匂いも、空の明るさも、ここ
では全てが懐かしい。
ばしゃん。
その音で私は急に現実に帰った。すぐ近くで子供がヨーヨーを落としたのだ。
破裂したゴム風船をしばらく見つめた後、その女の子は火がついたように泣きだした。
母親らしい女性が、その子の傍に駆け寄っていく。泣き止まない女の子を
両腕に抱え上げると、道の向こうへ歩いていった。
その背中を見つめながら、私は明日帰る事に決めた。
それまではここで思う存分息抜きをして行こう、と思いながら。

遅すぎた。
お題は>>162「もやし」「きりん」「ミルクティー」で。
食後、いつもの様にハロッズのミルクティーを飲みながら
ボーとTVを見ていると母ライオンが子供の為、狩りをするその
奮闘ぶりがブラウン管に映し出されていた。
獲物に気付かれないよう何十分もかけてジリジリ詰め寄る母。
のんびり草を食んでいるガゼル(鹿)。緊迫の空気がながれる。
私を置き去りにして。
この手の番組には必ずこういうシーンは付き物だ。
実際視聴者も狩りのシーンを見るのはこれがはじめてではあるまい。
ただ、お約束ごととして受け入れ楽しんでいるのだろう。
いや私もその一人であったのだが、今日はなぜか狩りの結末を見る気にはなれず
チャンネルを変えようとしたところ、ふとある疑念が頭にわいた。
「キリンが襲われてるの見たことねえな。」
一度もない。ないのだ。時には己の体重の数倍をいくバイソンをすら
襲うのに、キリンをおそうシーンは見たことがない。
よほど不味いのだろうか。
今日の夕飯に使った一袋30円のもやしよりもキリンの肉は価値が
ないのだろうか。
そんなことを独り思う夜。
母は狩りに失敗していた。


「仕送り」 「矛盾」  「金魚」でおながいします。
「ぶほっ」
 口に入れた冷やし中華を吐き出すオレ。廊下の縁側に座っていた風鈴がチリンと鳴った。
「どうしたの」
 縁側に腰掛け、青空を流れる雲を見ていたミカがオレを見て言った。
「モヤシがはいってる」
「ハア?」
 オレは嫌いなのだ。ミカのわけが分からないという顔。オレは口なおしに缶ビールを飲む。
 ミカはトタトタと畳の上を歩き、木目調のテーブルの前に正座した。オレが何かを言うのを待っているようだ。オレは好き嫌いを言うのが恥ずかしかったので、ビールを飲んでごまかしている。
 ミカはさっき、自身が飲んでいたミルクティーの缶を取ると口をつけ、飲み始めた。缶についていたたくさんの水滴が、つつ……とつながって、落ちた。ミカがコクンコクンと飲んでいる。その度に、その唇がかすかに動く。
「なに?」
 いきなりミカが言った。その顔はいつの間にかオレを見ていた。オレは慌てて缶ビールに目を移す。缶にはヘンな絵が描かれていた。
「きりんだ」
「ばか?」
 ミカは笑って言った。そのかわいい笑い声を聞いたら、バカでもいいと思った。

 うわあああん、遅かったよ〜。
「貧乏」「脱出」「大作戦」でお題を出そうと思ってたのに〜

 お題は「仕送り」 「矛盾」  「金魚」
>165
二行目訂正
「 口に入れた冷やし中華を吐き出すオレ。風鈴がチリンと鳴った。」

「仕送り」 「矛盾」  「金魚」

恥ずかしながら俺は今も親からの仕送りに頼っている。
しかし、ひもとしては当然親のすねをかじってばかりいるわけにもいかず
普段は職を求めて努力しているのだ。
今日も面接の席でスーツのメガネが履歴書と俺を見比べる。
「ほお、あなたはヒモ、なんですか?」
「違います!ひもです。ワタクシはヒモなんかじゃありません。」
「そうですか。では、あなたの長所を教えてください。」
「はい、長さは申し分ないと思います。金魚結びもできます。やってお見せしましょうか?」
「いえ結構。では短所はどうですか?」
「短所、ですか。そうですねぇ、えーっと・・・あ、時々絡まることがあります。」
「絡まる、ですか。結構太いし絡まりにくそうなのにねぇ。で、縦横比はいくらですか?」
「縦横比!?」
俺はこの言葉を聞いて、雷に打たれたような衝撃を感じた。
自慢じゃないが俺は結構太い。細いひもなどすぐに切れてしまうではないか。
だが、太いということはせっかく長くても縦横比で見ると細短い連中と同じになってしまう。
ということはやっぱり細長い方がいいのだろうか?いや、そんなはずは・・・
俺はこの突如湧き出た矛盾に思わずこんがらがってしまった。
「はい、あなたもういいですよ。」
面接官は冷ややかにそう言って、こんがらがったままの俺を部屋から送り出した。


次は「愛の」「貧乏」「大作戦」
168「仕送り」「矛盾」「金魚」:02/07/08 23:32
 「どうしてあんなことができたのか、判らないことがあります」
 夏風邪をひいてハサさんは寝ている。傍らには分厚い本が積み上げてある
が、読む気はなさそうである。私はハサさんが好きなので、水まくらなぞを準
備している。ハサさんは横になっていると、胸の縁からぷつぷつ思い出が沸き
上がるようで、私が立とうがそばに座ろうが、一定の調子で話し続けるので
あった。
「その時は、なんの具合でか、親からの仕送りが途絶えたのですよ。ええ、私
のようなツチノコの親でも、私が社会でちゃあんと暮らせるように、まめに毎
月、振込をしてくれたのですが」
 私はハサさんの土気色の額に水まくらを載せた。土気色をしていても、ハサ
さんはそれほど気分が悪くもないはずだ。
「や、どうも。……その時、私は飢えまして。冷蔵庫の奥のマヨネーズを、
スーパーでもらったパンの耳につけて食べていましたが、どうも腹が減ってい
けない。そのうちに、大事に飼っていた金魚を、食べてしまいました」
 水まくらを揺らして、ハサさんはちょっと笑った。笑っているが悲しんでい
るのである。矛盾しているように見えるこの動作はハサさんらしいと私は思う。
「それから、どうしたのですか」
 窓際で花瓶になっている、口の広いガラスの器は、本当は金魚鉢だったのだ
ろうか、とふと思った。
「どうもしません。ただその時から、私は、自分が何でも食べるツチノコだと
自覚しました」
 ハサさんはとても綺麗な目で私を見た。奥底に飛び込みたくなるような、こ
の目を私は好きなのだ。好きすぎて、頭からその口に喰われたくなる。今日は
この辺で帰ったほうがよさそうだ。

次は、「貧乏」「脱出」「大作戦」
169名無し物書き@推敲中?:02/07/09 08:39
「貧乏」「脱出」「大作戦」

砂浜で二人の子供がしゃがみこんで砂の城を作っていた。
「いいか、壊さないように穴開けるんだからな」
対照的な二人だった。肌の色も違う。
真っ白なシャツを着た勝は、村でも裕福な家の子供だった。一方、青いタンクトップを
着ているジュリアンの家は父親がおらずに貧乏といえるほどの暮らしを強いられている。
親同士はいい顔をしなかったが、それでも二人は不思議と気が合い、毎日暗くなるまで
一緒に遊びまわっていた。
「よし、水を流すぞ」
上部の穴から海水を流し込む。その途端に砂の城は崩れていった。
「ダメだ、トンネル大作戦、大失敗……」
落ち込む勝の横でジュリアンは声を上げて笑った。そして崩れた城の一部を手に取り、
沖に投げる。
「あれ……」
気がつけば遠くのほうまで潮が引いていた。濡れた砂が太陽の光を反射して銀色に輝き、
水面と溶け合ってどこまでも続いているように見えた。
「国外脱出だ!」
突然ジュリアンが叫びながら海へ向かって走り出した。
「脱出だ!」
勝も真似をして叫びながらその後を追いかける。
言葉の意味もわからないまま、二人は笑いながら駆け出していった。

次は「飴」「柿」「スリッパ」で。
170名無し物書き@推敲中?:02/07/09 13:59
「飴」「柿」「スリッパ」

太郎は近所でも有名な悪がきである。連日、太郎は悪事を働いていた。
ある日、太郎は柿の木を発見した。そのとき太郎は、
木に生っている柿を落として、それを食べようと思った。
早速、太郎は木を揺らし、落ちてきた柿をうまくキャッチした。
「こら!!木にいたずらしたのはお前か!!」
その気の主であるガミガミ親父が現れた。
木を揺らしたときの音を聞いて、気づいてしまったらしい。
「待てぇー!この悪がき!」
手にスリッパを持って、ガミガミ親父は追いかけてくる。
「やべっ、逃げろ!」
太郎は脱兎のごとく走り出した。
「逃がすか!このくそがき!」
ガミガミ親父はものすごい速さで追いかけてくる。
年齢からは考えられないほど、ガミガミ親父は体力があり、運動神経もいいのだ。
太郎との差は縮まる一方であり、このままでは確実に捕まってしまう。
「これでもくらえ!」
太郎は、ポケットの中に入っていた飴をたくさん投げつけた。
飴を当てることにより、ガミガミ親父をひるませるつもりだった。
しかし、事実は太郎の想像を超えた。
ガミガミ親父は、走る速度を落とさずに、全ての飴をキャッチしたのである。
結局、太郎はガミガミ親父に捕まり、こってりと絞られたのであった。

長文スマソ。
次は「ラーメン」「プロレス」「読書」でお願いします。
171「ラーメン」「プロレス」「読書」:02/07/09 14:51
「はい、どうも〜」
「いやいやいや、もう秋やね」
「そうやね。秋って言うたら、いろいろありますな。読書の秋、スポーツの秋、食欲の秋・・・」
「それから、性欲の秋ね」
「あるかい、そんなもん」
「そう? 俺なんて秋になると必ずしてますよ、強姦」
「なんで、そないなことすんねん」
「そりゃ、性欲の秋やからやろ」
「だから、そないなもんはあらへんの」
「じゃあ、強姦はスポーツの秋に入れといて」
「アホか。強姦のどこがスポーツなんや」
「なに言うとんねん。あれは格闘技に近いねんで。ヤルか、ヤラレルかの世界や」
「なんでや。お前がヤラレルことはないやろ」
「いやいや、たまにあんねんて。こないだも夜道を歩いてたら・・・」
「ほ〜、歩いてたら?」
「ブッサイクな女子プロレスの選手みたいな女に襲われたんやで」
「ウソやろ?」
「ホンマやよ。もう最悪でな、ザーメンが出なくなるまで何回もいかされて、ホンマ、散々やった」
「ザーメンが出なくなるまで?」
「そうやで。最後にはチンポからラーメンが出てきよったで」
「そんなアホな。もうやってられんわ」
「どうも、ありがとうございましたぁ」


次は「共用」「ロープ」「カジキマグロ」で。
172「共用」「ロープ」「カジキマグロ:02/07/09 18:07
作家になる夢を捨てきれずに、就職をせずに大学を卒業した俺は
実家を出て一人暮らしを始めた。独りで生きていく位なら
フリーターでも充分だろう。家族への引け目も感じてか物件は
書類にサッと目を通しただけで下見もせず即決した。駅徒歩8分、
6畳1Rで5万は相当安いではないか。「シャトーカジキマグロ」という
アパート名も前衛的だ。近くには海なぞないのに。
風呂なし、トイレは共用だが俺は男だし全く気にしない。
俺の新しい生活と挑戦が始まるのだ。高揚する気持ちを抑えきれず
新居へと向かった。
予想通り築30年の「カジキマグロ」は疲弊していて須らく
もう泳げる状態ではなかったが、生活するには特に支障ないようだった。
和室の部屋も日当たりこそあまり良くないものの、こざっぱりした造りで
不満はなかった。窓際で一服してると大家がやってきた。
50歳位のまあ、普通のおばさんだ。大家が言うにはこの「カジキマグロ」
には作家や役者志望者等が数多く入居してくるのだという。
俺が驚いていると、大家は誇らしげに、Kという役者もここに住んでいた
のですよ、と言った。
俺はKなる人物は知らなかったが、適当に相槌を打ち挨拶を済ませ、
部屋で荷物の整理を始めた。もともと少ない量だったので小一時間で大体
片付き、布団を押入れの上部に収納しようとしたところ、あるものに
目を奪われ布団を抱えた格好のまま固まってしまった。
あるもの、それはロープだった。ちょうどいい太さと長さの。
いや、何がちょうどいいかは言及しないが、大家の
「作家や役者志望者等が数多く入居してくる」
という言葉が脳裏をよぎった。
とりあえずそのロープは窓から投げ捨てた。


次は「農夫」「セミナー」「明太子」で。
173「農夫」「セミナー」「明太子」:02/07/09 23:41
「行かせてくれたっていいじゃない!」
振り向きざま、まな板を投げつけてきた。反射的に腕をかざしたが、鈍い衝撃があって、じわりと痛みが生じた。
予想外の行動だった。俺は腕の間から、呆然と妻の顔をみつめた。
「先生がこんな田舎に来るなんて、もう無い。たった半日じゃない!」
唇をふるわせ、涙の滲んだ目で睨みつけていた。見合いで結婚して四年。初めてみる妻の表情だった。
「なにも、泣かなくてもいいだろう……」
後ろめたいような気分になって顔をそむけると、まな板とつぶれた明太子が目にはいった。
明太子は俺の好物だ。それを知った翌晩から、晩酌には欠かさず出してくれていることを思い出す。
町の公民館で、作家先生のセミナーとかいうものがあるのだという。妻は、ずっとそれに行きたがっていた。だが明日は、親戚一同の集まりがある。宴会が始まるのは夕方からだが、いろいろと準備もあるし、本家の長男という手前、妻にはいてもらわなくては困るのだ。
顔をあげると妻はまだ流し台にへばりついている。うつむいた顔から涙が落ちて、小さな音をたてた。
見合いの席で、趣味は読書です、と下を向いたまま小さな声で言った妻の姿が重なった。嫁いでからは慣れぬ仕事の疲れや姑への気兼ねからか、本を読む姿など見たこともなかった。その作家の作品に対して、一介の農夫に過ぎない俺にはわからない思い入れがあるのだろう。
「わかった。おふくろには俺がちゃんと言っておくよ」
ごめんなさい──消え入るような声のあと、ようやく顔をあげて、申し訳なさそうな笑顔を浮かべた。

次のお題。「時計」「一升瓶」「ぬいぐるみ」
174「時計」「一升瓶」「ぬいぐるみ」:02/07/10 00:32
ドアの開く音が狭い部屋に響いた。彼女が帰ってきたようだ。
壁の時計はもう1時を過ぎていた。どうやら、今日も残業だったらしい。
疲れた表情を浮かべて、彼女は着ていたスーツを脱ぎ捨てた。
楽な格好に着替えた彼女はキッチンから焼酎の一升瓶を持ってきて、
ガラス製のテーブルの上にドカッと置いた。
このところ彼女は毎日酒を飲んでいる。
そして、酔っ払うといつもボクを胸に抱いて愚痴を言う。
「仕事がキツイ」だとか、「部長にセクハラされる」だとか・・・。
最後にはいつもきまって「私もお前みたいにぬいぐるみになって何も考えずに
ボーっとしていたいよ」なんて失礼なことボクに言う。
その度に「ボクだって色々考えてるんだよ!バカにしないでよ!」って、
言ってやりたいけど、それができないのが悔しい。
そんなこんなで今日もボクと彼女の夜が過ぎていく。
なんだかんだ言っても、毎日が楽しかったりする。

次は、「ハリガネ」、「リボン」、「蛍」で。

175「ハリガネ」「リボン」「蛍」:02/07/10 03:54
「蛍雪の功」という言葉がある。蛍や雪の明かりを求めてさえ、勉学を重ね努力する、という
意味だ。だからといって、それが必ずしも評価されるとは限らない。限らない、が……

私は少なくとも20年間、「それ」の訓練を毎日欠かさずにやってきた。手は度重なる擦り傷で
ボロボロになった。生傷が絶えた事など一度もない。
それでも、私の努力が世間から認められることなど絶対にありえない。私がどうあがこうとも、
それだけは絶対に変わらない事実だ。
だが、それが何だというのだろう。私の20年を、一体誰が否定できるというのか。私の20年が、
一体誰に劣るというのか。私の20年に、一体どれほどの人間が追いつけるというのか……

……つまらない事を考えてしまった。仕事前だというのに。
今度の件は、おそらく今までにない程の大仕事になるだろう。集中しなければならない。
いつものようにリボンで長い髪の毛を一つにまとめ、作業の邪魔にならないようにする。
相手は自称「世界一安全」な大金庫。ルールはいつもと同じ。限られた時間内に、ハリガネ1本で
金庫を開けたら私の勝ち。それができなければ、腕を切り落として廃業だ。
当然ながら、私は一度も負けた事がない。そして今回も勝つ。

「……怪盗ワイアに、開けられない金庫など存在しない……!!」


次は、「絆創膏」「タバスコ」「カンヅメ工場」でどうぞ。
176名無し物書き@推敲中?:02/07/10 09:47
「絆創膏」「タバスコ」「カンヅメ工場」

銀河翼賛組合は相互扶助を目的として、消費者や弱小生産者が共同出資して組織する
企業形態である。歴史的に見れば、保存食を出来るだけ安く手に入れることを目的と
して2112年に核戦争後の地球で設立された江東区カンヅメ工場組合がその最初とされ
ているが、その後、この形態は銀河系各惑星の弱小生産者間にひろまった。
わが星では、2120年頃からタバスコや絆創膏の地球向け輸出のために、小工業者の
間に販売組合が作られたのが始まりとされている。

  次は、「三杯酢」「背泳」「遮蔽体」でお願いします。
 社長の別荘に着くとあたしたちは全裸に剥かれ、屋内プールで背泳をさせられた。
「もっと胸を張って泳げ! 芸能人になりたくねえのか!」
 プールサイドから社長が叫ぶ。
「この合宿で、バストを10センチ増やしてもらうからな。増やせないやつは、シリコンで強制増強だ!」
 体力が続かなくなると広間に連れ出され、ひたすら三杯酢を飲まされた。
「しっかり飲め! 躯を柔らかくするには酢が一番だ!」
 たまらず、あたしたちは悲鳴をあげた。
「どうして、こんな目に遭わせるんですか!?」
 社長は厳粛な口調で言った。
「この別荘は、世間からの遮蔽体の役割をしている。この合宿は、言うなれば躯の中に染み込んだ娑婆っ気を抜くための儀式なのだ!」

 半年後、社長は麻薬の不法所持で捕まり、あたしたちは全員AV女優になった。
******************
 難しかったー!
 お次は、「プライド」「UFO」「ダイナマイト」。
178izo:02/07/10 17:36
「プライド」「UFO」「ダイナマイト」

「日々起こった事柄は全て日記に書いてくれろ。それで十分。
もしも君が1年間精を出し、しこしこ日々の出来事を書き続けたとすれば、
君の愚行も、聞く価値もないプライドも、なるほど大したもんだ、一冊のノートブックに仕上がるではないか。
それでいい、それでよろしい。すぐにそれに火を点けなさい。…というのは冗談。
そう、その蓄積された三百何ページ、それらをつぶさに読み返してみて、共通する核心部分を抽出してみな。
ある重大な事実に気付くからさ、本当に。俺はそこで初めて耳栓を外してやる。ようやく聞く価値も生まれたってわけだ。
だろ? なのに、だ。これまた目の前の君というデクノボウは煙草も切れたというのに、
俺のをかっぱらいながら『ダイナマイトUFO』とかいうわけ解らない店の女の痴態話を聞かせるのはなぜだい?
しかも、そこの『朝露のように濡れてた』とかいうくだりは2度目だろう?」
 私はそう吐き捨てて目の前の糞虫を踏みつけてやろうと思ったが、いかんせん糞虫は五尺七寸の人間であった。

「死という刹那」「垣間見る」「神」
179火尭烏:02/07/10 20:53
超電子回路の中のそいつらは俺のことを神と呼んだ。
俺は全能じゃあないけど、そいつらの短い生から死へのプロセスの刹那の間、
たまにちょっとした奇跡を起こしてやったりもした。
もちろんその逆もやったけどね。
『おお、神よ救いたまえ。あなた様のせいです、みなあんたのせいじゃありませんか。』
これはある信心深い農夫の言葉だが、俺はこの言葉に『本当の神』を垣間見たよ。
え、俺が彼になにをやったかって?いや、聴かない方が良いな、フフ。
そんな事をこっちの時間で20年、向こうの時間ではちょうど2000年ぐらい続けたんだ。
或る日を境に俺はどんどん不幸になっていった。
急に白蟻が湧いたもんで家が倒れた。妻はその巻き添えを食って下半身付随に。
その後入院先の病院で行方不明になった。二年後に見つかった時は腕も足も耳も切り落とされて
見世物小屋に転がってた。俺自身もそのころガンの宣告を受けた。
・・・もうどうしようもなかった。研究は続けたがね。でもなんだって俺がこんな目に?
なんかのきっかけで、俺はいつか自分で『悪戯』してやった農夫の事を思い出した。
それで空を見上げたんだ。

案の定、そいつは大口あけて笑ってやがった。
いや、不細工な野郎だったよ、俺の神様はな・・・。


next- - - >[砂浜][鉄筋][星のくしゃみ]
180「死という刹那」「垣間見る」「神」:02/07/10 21:06
 俺は疲れた。社会にも、友人関係にも。俺はこの理不尽な世に別れを告げることにした。
 積み上げた雑誌の本を台にして、つり下げ式の電灯外す。部屋は暗闇に包まれた。輪を縛
った縄を、電灯の後に残ったケーブルに結びつける。俺は輪に首を通す。ひとときの躊躇を
経て、俺は足の下の、積み上げた雑誌を崩した。俺の体は落ち、首が一本の縄によってきつ
く絞められた。俺の意識は一瞬にして空白になった。
 俺はこの暗い部屋で死ぬはずだった。神の悪戯か、途中で縄とケーブルの結び目がほどけ
て、今日の自殺には失敗した。
 次の日は自殺の方法を変えた。通勤通学中の人々には悪いが、この方法が確実だからと思
ったからだ。悲観的で無意義な過去を顧ながら、駅のホームに滑り込む電車に向かって、棒
のように線路へ倒れ落ちた。これで俺は無様な肉塊となり死ねる筈だった。だが、俺は生き
ていた。駅の手前の線路上に障害物が落ちていたらしく、電車が急ブレーキをかけて、俺を
轢く前に"緊急停車"をしていたのだ。
 それからというもの、幾度の自殺を実行したが、それらすべてが失敗に終わった。だが、
俺はめげずに、いや、死ねぬことと解かっているのに、当たり前のように自殺を行なった。
どうやら、俺は死という刹那を感じることで、一瞬垣間見ることができる"人間の果て"の虜
になってしまったようだ。「何故死ねない」という疑問は、もはや念頭にない。この快楽は
他の奴には絶対知ることはできないだろう。
 生きることは、楽しいことだ。


次のお題は「怨憎会苦」「駆逐」「クライアント」
久しぶりに帰ってきた故郷の砂浜で、俺は同級生の小川と当時の思い出話をしていた。
俺は高校を卒業後、故郷を離れたが、小川は地元で家業の鉄筋屋を継いでいた。

小川「そういや覚えてる?ほら、あいつ。」
俺「え?」
小川「ほら、あの、名前が思い出せない、風紀委員だった奴。」
俺「あ、わかった。でも、俺も名前思い出せないや。」
小川「噂ではな、えらく有名な作家になったらしいんだよ。」
俺「へ〜!」
小川「あいつが有名になるなんて、思わなかったよな〜。なんか暗かったし。」
俺「ホントだな。でも、そいつの本、読んでみたいような気がする。」

俺はそいつの名前を思い出した。星のくしゃみが聞こえてきそうだ。
次のお題は>>180の「怨憎会苦」「駆逐」「クライアント」で。
「怨憎会苦」「駆逐」「クライアント」

俺の職業は駆逐屋だ。
クライアントの依頼を受けて怨憎会苦を駆逐する。
今日も依頼が来た。
「あいつが憎いんです。あいつに会う苦しみをなんとか和らげて下さい!」
苦しみを和らげる=相手を排除するということだ。
俺は依頼されたターゲットの駆逐にかかった。
「オラオラ、消えてなくなれ!俺はお前が憎いんだ!!!」
そう、俺はターゲットが憎い。ターゲットを紹介した依頼人も憎い。
そしてそれを駆逐する俺自身も・・・・・・
怨憎会苦は果てしなく続く。

次は「ミッション」「クリアランス」「クロス」
長い行列だった。クリアランスセールは、まだ初日。
掘り出し物のためならこれくらいの行列なんでもない。
徐々に列が進み、ふと気が付くと私は、一番前にいた。
正面に机があり、おじさんが椅子に座っている。
あれ、どうしてこんなおじさんがいるの?
「君のミッションは、吸血鬼を探すことだ。がんばってくれ」
おじさんが言いながら、一枚の書類とカードをこちらに突き出す。
私は、それを受け取った。書類には、吸血鬼探索発令書と太い文字で
書かれている。カードは身分証明書らしく、すでに私の写真も入っていた。
「次の人」とおじさんは言い、私はその場をあとにした。
それ以来、私は吸血鬼を探し続けている。私の手には、銀のクロス。
私は街を歩き続け、出会った人の手にクロスを押しつけ続ける。
いつか十字架に焼ける手に出会えるまで。

次は「金庫」「突風」「ファクシミリ」
185「ミッション」「クリアランス」「クロス」:02/07/11 18:13
「はいはい。ご予約のお客様ですね。お約束の物はお持ちいただけました?」
持ってきた、と俺は答え、片手にぶらさげていた紙袋をその女の目の前に差し出した。
女はちょっと微笑んで袋を受け取り、上がってくださいねと言って軽やかに身を翻した。
俺はさきほどまでの自分の奮闘ぶりを思い返し、いまさらながらため息をひとつつき、
ネクタイも緩めた。
まったく、あのリストにあったものときたら。特に最後の一つ。都内のデパート地下にある
老舗料亭の出店の名物弁当。しかも販売時間限定のメニューときたもんだ。夏のクリアランス
でごった返す店内をかきわけかきわけして進み、行列の最後に着いたはいいが、売り切れて
しまいやしないかと、やきもきすることしきりだった。
女は、紙袋から品物をひとつづつ取り出し、パソコンの画面に向かってなにやら操作している。
やがて、軽い電子音がして、「ミッション・コンプリート」の文字が出た。
「品物の方は完璧です。すぐ製作の方にかかります。30分ほどお時間いただけますか」
彼女は対面式のキッチンに立ち、てきぱきと作業を始めた。そっとのぞくと、品物を包装から解き、
ボウルに入れている。床には、直線や曲線がさまざまにクロスしたデザインのマットがしいてある。
やがて、やや大きなモーター音がしてそして止まり、今度は電子レンジの稼動音にそっくりな音
が聞こえてきた。
「ええと、BGM……っと」キャビネットを探っていた女はMDを一枚取り出し、デッキにセットした。
「ずいぶん簡単なものなんですね」俺はいささかの皮肉をこめて言った。
「ええ、簡単になりました。でも、昔と違って出来上がりは確実ですよ。手順を間違えたり、
不足があったりしませんもの」
「でも、『粟屋 京風手桶弁当』が必要だとは意外でした」
「ああ、あれ」女はうふ、と笑った。売り出し中の巨乳アイドルを思わせる笑顔だった。
「あれは、私のお昼ご飯なんです。ついでにって思って。もちろん、その分はお代金から引いて
ありますわ」
当世では魔女も様変わりをしたのだと、俺はあらためて思った。
186エヴァっ子:02/07/11 22:49
人は俺を戦士と呼ぶ。
いや、別にモンスターと戦うわけじゃない、戦士は戦士でも企業戦士だ。
そして俺は、机の上に積もる山のような書類と戦っているのだ!
幾度と無く、問答無用で書類を吐き出すファクシミリをこの正義のボールペンで叩き潰そうかと思ったか………。
書類を順番に並べ、検印の判を押し、サインを書く………単調な作業は俺のHPを削り去った。
だが!今!この残り三枚の書類で今日の仕事が終わるのだ!
思わず口の中から笑いが漏れてくるほど、俺はたまらない幸福感に包まれていた。
ククク、さぁー終わらすぞ!!

――その時突風がかけぬけた。
夏の夜は暑いから、と思って全開にしてる窓から風が吹き込んできたようだ。
ひらひらと舞う、書類達。
何枚かは窓から夜の世界へと踊りだしていった。
どれ、俺も一緒に………。

次は「鉄板」「瀬戸物」「メッシュ」で。
男は薄汚れたカーペットの上に座り込んでいた。体は饐えた匂いを放ち、頬がこけた顔の中で、ただ、両の目だけが、異様な光を放っている。
午後五時。電話が鳴った。男は素早く顔をあげた。
ジジジジ……と音がして、白い紙が吐き出される。
ファクシミリは、子どもの落書きだった。おとうさんへ──拙い文字。男の顔が苦しげに歪む。が、続いて吐き出された二枚目を見て、男は愕然とした。
明日、この時間に、あの場所で──細く柔らかな妻の筆跡を目にして、男は泣いた。

「送ってくれたファックス、全部大切に取ってあるんだ」
手提げ金庫をふるえる手であけて、紙の束を取り出してみせる。やつれ果てた男の様子に、心配げな表情を浮かべていた妻と娘がにっこり笑うのを見て、男も安心したような笑顔になる。
「今日が最後よ。ファックスももう送れない。でも、ずっと見守ってるから。だから──」
ほほえむ妻と娘の輪郭が、急激にぼやけ始める。
ひきとめようと慌てて手をのばしたが、突風が吹いて、男の視界を舞飛ぶ白い紙が遮った。
風がやんだ時には、二人の姿は消えていた。男の胸の中で、妻の言葉がリフレインする。
──だから、生きて。

男が、事故で妻と幼い娘を失ってから、ちょうど二ヶ月がたとうとしていた。

スイマセン!遅かったっすね〜。
次のお題は186さんの「鉄板」「瀬戸物」「メッシュ」で。
「鉄板」「瀬戸物」「メッシュ」
和歌山県串本のある漁師の家に古ぼけた鉄板が飾ってある。
埃を吹き払えば「サン・メアリー号」という英文字が読めたはずだ。
それは上海を出港した後、大嵐に遭遇して難破した船の名前だった。
異国の男がひとり、銘のついた板と共に浜辺に打ち上げられた。
それを見つけたのは近所に住む漁師の娘だった。
なにせ天狗や河童が堂々と闊歩していた時代だ、誰もこの鬼のような大男に
近寄ろうともしなかったが、この娘だけは男に手厚い看護を施した。
始めのうち男はこの言葉も通じぬ田舎娘に対し横柄な態度を取っていたが
娘の親身なもてなしにやがて態度を改めるようになった。
そうなるともとは陽気な性格の男、すぐ漁師達とも仲良くなった。
が、彼は日ごとに故郷を思い出し涙するようになった。
娘にはそれが痛いほど伝わった。あのしぐさはきっと彼の神への祈りだろう。
娘は漁師達を説得し一艘の船を造ることにした。幸い船板は豊富にあった。
外洋を渡るために必要な帆は娘が鯨の皮をメッシュに編んで仕立てた。
娘にとっては立派な、男にとっては粗末な船が完成したとき、男は礼を口にしなかった。
ただ黙って娘の前にひざをつき、手を取ってその甲へ口づけした。
男が旅立つとき娘は一組の湯呑茶碗を手渡した。
男は家紋の入った指輪を自分の指から抜き取り娘の指にはめた。

イギリス王室の片隅には一組の湯呑茶碗が飾られている。
骨董的価値は無きに等しいが、彼等が漢字を知っていれば
「友、遠方より来る。また楽しからずや。」と読めただろう。

次は「B♭」「ハイ」「万来」
189「B♭」「ハイ」「万来」:02/07/12 01:16
 「明日はハイキングに行きましょうね」
 と言う母に、なぜか息子の表情は曇ってる。
 「・・・はあい」

 翌日、山を轟かせるB♭の大音響を聞く為に
草原の公園は千客万来だった。
 結局は、父と母の用事なのだ。
 巨大な肺活量を持つ「肺キング」と「肺クイーン」。
 だいだらぼっちの父と母の間に生まれた彼は、どこか
気恥ずかしかった。

※よくある展開でスマソ
次のお題は:「浸透圧」「トイレ」「飛翔」でお願いします。
「浸透圧」「トイレ」「飛翔」
最近の潜水艦はすごい。
あなたは乗ったことがあるだろうか?
ただの観光用と侮るなかれ。たしかに外の景色が見えるように
大きな窓こそついているが(いや、むしろその方が驚愕に値する)
元々軍事用のため動力は原子力、従って音は静かだし長期潜航が可能だ。
まさに海中を飛翔するという形容がぴったりである。
しかも浸透圧を利用した海水真水化装置のおかげで艦内の水使用は制限なし。
ただひとつ玉に傷なのはそのトイレである。
いかんせんタンクがないので垂れ流し。
流したばかりのものが前述の大きな窓の外をプカプカ丸見えなのだ。

次は「特定」「段階」「唐突」
「透明少女症候群(仮称)」についての報告書

近年、巷に広がっている謎の病気について現時点で明らかになっていることである。
この「透明少女症候群(仮称)」は、思春期に差し掛かった少女という
特定の層でのみで発祥する事が確認されている。
唐突に発祥し、全てのものが透き通って見えるようになる。
社会や人間の美しい部分だけではなく、ドロドロとした醜い部分までもが見えてしまうのである。
思春期という精神的に不安定な時期に見たくはない物までをも見えてしまうことにより、
大きなショックを受けてしまう患者もいる。そうした患者は末期の段階になると、
自我が崩壊し、自分の存在自体が透明になってしまう。誰も彼女たちを見ることができなくなり、
彼女たちは街の、社会の片隅へと消えていくのである。

この「透明少女症候群(仮称)」の感染源は現段階では解明されていない。
ウィルスによる感染症であるという説や思春期における不安定な精神状態が生み出す
精神病であるという説など、様々な原因が考えられている。
また、効果的な治療法も未だ発見されていない。

今後も研究を引き続き研究を進めていく必要がある。
以上で報告を終わる。

次は「失格」、「真空パック」、「缶コーラ」で。
太陽は頭上にあった。焼け付いた砂浜のビーチパラソル。
青い空をゆっくりと動いてく白い雲を眺めながら、20歳の僕は傍らの彼女に言った。
「俺、絶対ビッグになってやる」
唐突な言葉に彼女は僕に訝しげな顔を向けた。
「ああ、だから、有名になって、金持ちになって・・・、まあ、世の中で成功したいんだよ」
「どんなことで成功したいの?」
「わかんない。やっぱ、これじゃダメかな」
「ううん。まだそれを特定する必要はないと思うわ。いろいろな段階を経て、
自分が何をしたいか判ってくると思うの」
「そんなものなのかな」
「ええ」
微笑んだ彼女の白い歯と白いビキニが海に映えていた。

水平線が夕陽の色につつまれ、涼しさを含んだ風がコンドミニアムのバルコニーを流れている。
オレンジ色の海にゆっくりと沈んでいく夕陽を眺めながら、今の私が傍らの彼氏に言う。
「もう少しビッグにしようかしら」
唐突な言葉に彼氏は私に訝しげな顔を向けている。
「ああ、だから、胸にシリコンをもう少し入れようかと思ってるのよ」
「もういいじゃないか。すでに君は新宿2丁目の女王なんだからさ」


すみません。遅れました。次のお題は191さんのものでお願いします。
193エヴァっ子:02/07/12 17:15
俺の彼女は 潔癖症だ。
家具は抗菌材で作られてるもので無いとだめ、毎日除菌シートでそれらを拭かないとだめ。
まぁ、そんなものはまだ軽いほうで、問題は真空パックだ。
食材が腐ったらいけないから、と言って何から何まで真空パックに詰め込むのだ。
いっそのこと冷蔵庫を真空にしたらどうだ?と言ったほど、彼女の癖はひどい。
――昨日まではそれに耐えれたんだ。
だが、ついに今日、切れてしまった。
缶コーラまでパックしてしまっていたのを見て………。
こんなことじゃあ、恋人失格だな。
無菌室で寝ているアイツに、今度、抗菌指輪をプレゼントしよう。
今朝みたいに、真っ赤になって喜んでくれるとイイなぁ。

次は「善人」「包帯」「ネズミ」で。
 砂嵐吹きすさぶ荒野。ボロ布をまとった老人がひとり、歩いていた。
老人の名はガイア。大地を司る者。老人は歩みを止めると、容赦なく突き刺す冷風に
その身を晒した。果てしなく広がる荒野。自ら生み出した者により傷つけられ、
疲弊した。それは老人自身を指してもいた。

 彼の足元を何かが動いた。一匹のネズミだった。骨と皮だけになりながらも
生き残った最後の生命。老人がそっと手のひらにのせる。ネズミの体に幾つもの
傷ができており血が滲んでいた。

やがて老人は何もない空間に手をかざす。突然、彼の手元に綺麗な包帯が現れた。
老人は包帯をネズミに巻く。その傷が、みるみる癒えていった。ネズミは何が
起こったのかわからず、首をキョロキョロと動かし、老人の手を離れた。

老人の足元が藍く輝きだした。一陣の冷風が穏やかな風へと変わり、大地を
優しく撫でていった。

 次は「金曜」「館」「アニメ」
195「金曜」「館」「アニメ」:02/07/12 22:56
 アタシは区の図書館の前で、「休刊日」とある札を睨むように見つめていた。
胸に抱えていたカバン――本の入った――が、突然重く感じる。第三金曜日が
休みだということをスッカリ忘れていた。平日だからまったく考えてなかった。
「沢井さん」
 聞き覚えのある声。アタシは驚いて背中からドアにぶつかってしまう。
「あっ大丈夫?」近寄ってくる。
 その人はアニメの絵が表紙の本を持っていた。白いカッターシャツに銀のピンで
止められているワインレッドのネクタイ。落ち着いたねずみ色のスラックスに、
汚れがまったくない光沢のある革靴。顔は・・・見られなかった。
「沢井さんだね。いつも来ている」「は、はい」
 胸が高鳴る。聞こえてしまうんじゃないかと思うほどに。
「ごめんね。今日は休刊日だから」
「そ、そんなことないです。小林さんのせいじゃありません」
 言ってからしまったと思った。
「せっかく来たんだから、中、のぞいてく?」よかった気づかれなかった。
「いいんですか」「大切な利用者さんだからさ。サービス」
 そういうと小林さんはドアを開け、アタシの背中をそっと押して、アタシと一緒に
入った。信じられなかった。そんなアタシに小林さんが言った。
「そういえば僕の名前、どうして知ってたの」

 長くなってしまいました。次は「遠く」「ススキ」「ホウキ」で。
196「遠く」「ススキ」「ホウキ」:02/07/13 00:38
私の夏は終わった。
思えば、花の高校生活は部活三昧だった。あんな駅から遠くにある学校に、あんな炎天下の中よく通ったものだ。
その途中で、ススキの鋭い葉っぱで手を切ってしまった小さい子がいたり
そんな小さな事ほど、不思議なくらい、鮮明に覚えている。
大きな試合があるからと、更衣室を掃除してるとき、ホウキをバット代わりにしたのは私。
異様に楽しかった。
・・・全部「思い出」だ。
今年の夏は皆それぞれ、勉強に明け暮れるに違いない。
ああ、皆幸せになれますように。
次は「光」「川」「手紙」


 自室に戻り一息つく。壁際に持たれながら丸窓をのぞくと、暗闇に幾つもの星が
光っていた。わたしは先ほど仲間のカイリから渡された手紙を開封した。

『ジョウン、お元気ですか。私のほうは相変わらずで変わっていませんよ。そうそう、
あなたが出発する前の日に植えたひまわりの種、この夏にとても見事に咲いたのよ。
写真を入れておいたから見てね。それから、その、早く帰ってきてね。帰ってきたら、
ん、それは楽しみにしてて。じゃあ。体に気をつけてね。ユーリより。追伸 やっぱり
手紙は苦手です』

 同封されていた写真にはユーリ、そしてユーリと同じ高さのひまわりが咲いていた。
 外を見る。星が幾重にも連なって一筋の光の川のようにも見えた。そこに浮かんでいる
大きな星。今はもう誰も住まない死の惑星。奇跡的に発見されたボロボロの郵便船の中に
ユーリの手紙が入っていた。映像ビジターでは味気ないというユーリの思いが、今、
この手にあった。手紙を持ち上げると、パラパラと茶色いもの、ひまわりの種が落ちた。

 わたし達、総勢二十三名の宇宙巡航者の行く末は混迷を極めていた。わたしはひまわり
の種を拾い上げる。最後の望みになっても種は巻かなければならない。わたしは皆の
集まるブリッジへと向った。
次のお題「マニア」「制服」「警官」
199「マニア」「制服」「警官」 :02/07/13 02:00
「あなたって、いわゆるマニアなワケ?」
 は? 一瞬思った俺が反論する間もあたえず、制服を着た女―俺と同じ学校だ―はほざいた。
「だぁかぁらぁ、あんたはさコンピューター自分で全部作ってるんでしょ?
マニアって言うんでしょ、どうせそのままアキバハラいくつもりなのよね、友達いないしさ。
アレなんでしょ、アキバハラじゃ婦警サンの制服着たり、髪染めてたりするのよね!」
 母音を無駄に強調しなくていいと思う。聞き取りにくくないか。
マニア=オタクってことか?アキバハラ、じゃなくてアキハバラだろうに。それ以前の問題もいくつかある。
「マニア、というのは、君にとって結局。自分よりもある事に関する知識が多いという定義なのか?
それなら、俺はキミの言う『コンピュータ』についての知識は、たしかに多く持っている。
その前に3つだけ訂正させてくれないか?すぐに終わるから。
まず第一に、パソコンを自作している人はごまんと存在しているし、それがマニアだというのなら、そうだな。
Linuxや、Unix、MS-DOSについて、日がな一日語っているような人々はなんと呼ぶのか気になる。
第二にこのままの格好で秋葉原に行くのはお勧めできかねる、第一金も多くない。
最後に第三番目、警察官などの制服を着ること―コスプレというのだが―それから基本的にいない。
いたとしても一部の場所だ。ゲームが打っているところなどにも、そう多くない。
以上だ、長くはなかったと思う、どうだっただろう?理解できたか?」
 話し終えてみると、目の前に彼女存在していなかった。
短い話だったはずなのだが、こんな話も聞けないというのでは、日本の未来が思いやられる。

>>199
お題の指定がないよー。
201お題忘れてた:02/07/13 02:04
「NIES」「灰色」「MiniDisk」
「うわあ……、凄いですねえ」トモコは、思わず声をあげた。うす暗い部屋の中には、世界各国の警官のコスチュームがずらりと並んでいたのだ。
「ボクはねえ、マニアなのよね。三十年かけて集めたのよ」
 高名な映画評論家の水野は、その中の一着を手にとって言った。
「どうです、これなんか着てみたら」
「えっ」
 駆け出しの映画ライターのトモコとしては、ここで水野に気に入られておきたいところだ。着替えをするのは抵抗があったが、トモコは或る理由で、襲われる心配はないと確信していた。
「あ、じゃあ着てみます」

 トモコは、隣室に退いた水野に声をかけた。
「もういいですよ、どうぞ。……キャーッ!」
 水野は一糸まとわぬ姿になっていた。
「ほう、着替え終わったね。ボクのほうは脱いで来ちゃったよ」
「せ、先生は、ホモじゃなかったんですか?」
 水野は、にやにやしながら答えた。
「ボクはねえ、警官の制服を着ている人なら、誰でもいいんだよ」

 間に合わなかった……。次のお題は>>201で。
>>202
           ∧_∧  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           ( ´Д` ) < 通報しますた
          /,  /   \_______
         (ぃ9  |
          /    /、
         /   ∧_二つ
         /   /     
        /    \       ((( )))  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
       /  /~\ \     ( ´∀` ) < 通報しますた
       /  /   >  )     (ぃ9  )  \_______
     / ノ    / /    /    ∧つ
    / /   .  / ./     /    \     (゚д゚) ツウホウシマスタ!!   
    / ./     ( ヽ、     / /⌒> )     ゚(  )−          
   (  _)      \__つ  (_)  \_つ     / >    ○(・∀・)つ ツーホー!!
最近、日本・アメリカ・EU諸国の経済にどうも元気がない。
製品があんまり売れないのである。
では誰も何も買い物しないのか?そうではない。
みんな欲しいもの、必要なものは十分手に入れている。
しかもかなり安値で。物によっては定価の半額以下という。
からくりはNIESにある。
海賊版のMiniDisk、ニセブランド品、そういった安かろう悪かろう
(物によってはそれほど悪くない)ものがいわば逆輸入されているのだ。
それらは振興模倣国・地域(Newly Imitate Economies)で次々と生産、
つまりは偽造されている。
それはクロと断定したいができない、でも決してシロではない灰色の経済。

君たちもあまり海賊版DVD-ROMなど買い漁らないようにね。

(注)上記のNIESは新興工業国・地域(Newly Indastrialize Economies)と
呼ばれる国々のことではありません。たぶん。

次「通報」「注文」「指定」
205204:02/07/13 07:06
「NIES」「灰色」「MiniDisk」 で書いたということでよろしく。
206204:02/07/13 07:08
もひとつ
振興模倣国→新興模倣国

朝は眼がしょぼしょぼでよく見えてなかったぞい。
207「通報」「注文」「指定」 :02/07/13 17:15
振り返ってみると、21世紀はまさに権利の一世紀と言える時代であった。
21世紀の前半に、性別・人種・信仰の差別が本当の意味で無くなり、多くの人々は等しく
自由を享受する事となった。そして、これを口火に思いつく限りのありとあらゆる権利が
正当化された。例えば、学歴コンプレックスを持っている人には、学歴を詐称する権利が
認められ、童貞にはセックスする権利として、国で雇った娼婦を税金で派遣させる制度も
出来た。

だけれど、いろんな権利が認められいるからといって、一概にはいい時代とは言いにくい
ものがある。一週間前のことだけれど、ある家電量販店で洗濯機を注文したら、色が指定
のものと違うのがうちに宅配された。僕はすぐに店に怒鳴り込んだのだけれど、店員がな
かなか自分の非を認めない。そうやって押し問答をしているうちに、警察が現れ、僕はあっ
という間に逮捕された。店の入り口に張ってあった、客の苦情を受け付けない権利適用店
のプレートを見逃されなければ、通報されることも無かったのだが、今更悔いてもしかた
が無い。
僕は、警察に逮捕されない権利を行使したので事なきを得たけれど、酷い時代になったものだ。

次は、「石膏」「描写」「筆」
208「石膏」「描写」「筆」:02/07/13 17:40
 「お前はヒネリが無さ過ぎる。」.
 そんな声が頭をかすめる。しかし、僕は黙々とコンテを走らせた。
 「そんな描写、お前ほんとに美大を受けるつもりか?自分に才能が無いのがなぜわからない?」
 眼前の石膏像が僕に呟きかける。その顔はあの日の父親の顔に瓜二つだ。
 「世の中はそんな甘いもんじゃないんだぞ。美大など出て何になるつもりだ?」
 指先に力が入りコンテが砕けた。
 「お前が言っているのは夢物語だ、絵空事だ。何が芸術家だ。そんなもんで飯が食えるか!」
 一流大を卒業し、一流企業に入社した。それが父親の総てだった。
 「絵筆など、折ってしまう事だ。そんなものがあるから夢見がちになるんだ。」
 多分、父親も祖父からそういわれたに違いない。リストラの果て、首を吊った父の部屋から
見つかったのは数本の折られた絵筆とこの石膏像だった。
 遺書には、美大でも何でも好きなように生きろ、とだけ書いてあった。
 だから僕はコンテを走らせ続けた。それが唯一、夢を見ることを諦め現実に殺されていった
父親の供養になるような気がしたからだ。
 僕はコンテのように脆くは無い。だからといって石膏像のように堅くも無い。
 低く読経が流れる中、僕はひたすらデッサンを続けた。その果てに何があるのかは見当も
つかないが、ともかくやってみようと思った。まだ、僕の筆は折られてはいないのだから。

 17行、ありがち、そのまんま。
 お題は継続でおながいします。
209「石膏」「描写」「筆」:02/07/13 17:46
友人と俺はりんごを被写体として描写の練習していた。
途中、友人の茨城剣(18)が熟睡してしまった。なんか無償にムカツイタ
俺は悪戯しようと思った。
「よっしゃ!」と掛け声と共に石膏を使い友人の顔に塗りたくった。昔、俺
は「石膏使いのドラゴン」と呼ばれ一世風靡し恐れられた男。待ってろよ茨城よ

120分経過

ふと気がつくと茨城は窒息していた。友人の為に鼻に作っておいた空気穴が
閉じていた。「ま、いっか」とその場を和ませてなんとなくこう思った
「弘法筆を誤まるってやつだな、はっはっはっは」っと。

つぎ、「キンカン」「夏」「山火事」
「キンカン」「夏」「山火事」

夏といえばキンカンだが冬といえば山火事だとすれば
今日は12月3日なのできっと山火事ねと彼女が笑った時から
僕はもう彼女の虜になってしまったので世界が僕と彼女の二人だけだとしたら
どれほどいいだろうなんて物思いに耽る年頃でもないのに
こんな僕が僕はたまらなく好きである。







211「キンカン」「夏」「山火事」:02/07/13 18:59
夏の遅い夕暮れ。軒先では、子供たちが線香花火をしている。
私は、縁台の横に座っている兄に、ビールを勧めた。
グラスに受け取った兄は、美味しそうに、半分ほどグラスを空けた。
「それで.....」
何かあったのか、と兄の目が私に問い掛けていた。
言いあぐねたまま、私は、子供たちの輪の中へと、縁台を立った。
二十歳そこそこの若い女が、東京から急に帰ってきた。
それだけで、いろいろと周りは詮索する場所柄ではある。兄の心配も、それなりに私にも判る。
子供たちは、仄かな光の軌跡を、面白そうに見ていた。
ふと、見上げた程近い山の稜線が、何故か馴染みのないものに思えた。
私の様子に気づいたのか、兄が声をかけてきた。
「向かいの山が去年焼けてな。かなり大きな山火事になったんだ。違って見えるだろう。」
曖昧に頷いた私を残して、兄は家の中へ入っていった。昔と変わらない背中だった。
子供たちが、大きな歓声を上げた。綺麗な火花ができたらしい。
その声が、昔、兄と一緒に庭先に植えたキンカンの黄色い実を揺らして、どこかへ消えていった。

次は「氷」「梅雨明け」「手紙」でヨロシク
212k ◆vO0vJc9o :02/07/13 20:02
「氷」「梅雨明け」「手紙」

ようやっと書き終えた手紙は、
それはラブレターとしてはあまりに陳腐だった。
でもきっとシンプルなほうがいい。
その方が僕の気持ちが伝わるような、そんな気がする。
僕の部屋には気の早いプレゼントが買ってある。
ぼくはうきうきと切手を貼った手紙だけを持って、外へと飛び出す。
さあ、早く早く、この気持ちを君へ!
梅雨明けの空は僕を祝福してくれてるみたいに蒼くて、日差しは優しく
全世界を照らしている。
「ああ、愛している」
すごくすごく愛している。
君も僕のことを好きになるはずだよ。
絶対に好きになるはずだよ。
だから、僕のプレゼントを受け取って。
君が永遠に美しいままでいられるように、氷付けにして保存してあげる。
巨大冷蔵庫は君の身体をおりまげなくてもそのまま入れるから、君は
何も心配しなくていい。
本当に、何も心配しなくていいんだ。
君のことを……、愛しているよ。

次のお題「蝉時雨」「箪笥」「シークレット」
213k ◆vO0vJc9o :02/07/13 20:12
巨大冷蔵庫→巨大冷凍庫
6行目の ぼく も 僕 に変更。
ああ、鬱だ。逝って氷付けになってこよう。
214「蝉時雨」「箪笥」「シークレット」:02/07/13 21:27
何よりこの陽射しが数年振りに太陽の下で働く私にとっては
余りにも眩しすぎるのであった。
蝉時雨が降り注ぐ中、数年振りの汗をぬぐいながら私は作業を続けた。
しかしこんな箪笥を私に造らせて一体どうしようというのだろうか。
彼は完成したらシールを貼るように言っていた。シールには
「合資会社シークレットサービス」
と書かれている。どうやら彼は新しく会社を興したらしい。
私も混ぜてくたらよかったのに・・・
そう思いながら私はふとそのシールにある違和感を覚えた。



215名無し物書き@推敲中?:02/07/13 21:30
次のお題は「チューリップ」「日本史」「病院」 で

216名無し物書き@推敲中?:02/07/13 23:54
細くたなびく雲の高さと、時折吹く風の涼しさが秋の始まりを感じさせる。
刻一刻と変わっていく空の様子を、病院の庭のベンチからぼおっと眺めるのが、私の最近の暇つぶしだ。
ここに入院してから約半年、過労で心が壊れてから為すことも無く時の移ろいに身を任せるだけだ。
社会科の教師として日本史と世界史と地理を掛け持ちし、生活指導で残業が続き、土日は部活動の顧問という生
活は、自分が思っていたよりはるかにストレスの溜まる代物だったらしい。
今の私は、目の前の庭にしなびて横たわるチューリップの花のように、他人に醜い敗残の姿を晒し迷惑をかけるだけの無価値な存在に過ぎない。
それなのに……
「あら、また此処にいたんですか。そろそろ夕方で冷えてきますから、中に入ってくださいね」
「は、はい。すぐに戻ります」
彼女はここの看護婦だ。名前をサキさんという。特に美人ではないが、いつも笑顔で、周囲を明るくさせてくれ
る。その笑顔を、いつのまにか掛け替えのないものとして感じるようになってしまっていた。
私はもう40をこえて、妻も子も無く仕事にも躓いて、彼女を幸せに出来るわけがないのに。
こんなにも、この人を、好きに、なってしまうなんて。

次のお題は「ペットボトル」「フロッピーディスク」「稜線」で
217名無し物書き@推敲中?:02/07/14 00:36
やあ、学生さんだね?
見れば分かるよ、日本史の教科書なんか抱えちゃって。
例の看板の噂を聞いて見に来たんだろ。
信じられないって顔してるね。でも本当の事なのさ。

あれは以前、花屋の看板だった。
少女マンガみたいなイラストが描かれていた。
チューリップの形をした店の前に客らしき少女が立ってる。
のぺっとした単純な顔してさ、いかにも花を選ぶのが楽しくてしょうがないって
感じで微笑んでるんだ。それだけなら、ただのありふれた看板さな。
ところがある時、看板の中の絵が変化した。
少女が今までと逆方向を向いてるんだ。しかも腕には花束を抱えて。
そんなバカな、誰かが描き変えたんだろ、そう言いたそうな顔してるね。
でも誰もそんな事しちゃいない。ホントだよ。
しばらくすると看板はまた変化した。
歩いてる少女に車が突っ込んでくる。まるで交通安全の看板みたいだろ?
次には救急車が病院に向かう絵になった。
その次は真っ白な背景に黒々とした墓石が一つ。それに母親らしき人物が加わった。
君が今見ているのがそうさ。
この次はどう変化するか分かるかい?
また花屋の絵になるのさ。墓地の近くには花屋が出来るもんだろ。
そして花屋の前には少女が一人。
こうしてまた同じ事が繰り返さえていくんだ。

おや、帰るのかい?
幾ら超常現象でも同じものを繰り返されたら飽きる、って?
そうかね。しかし世の中なんてそんなもんじゃないかねぇ。

やあ、学生さんだね?
見れば分かるよ、世界史の教科書なんか抱えちゃって。
例の看板の噂を聞いて見に来たんだろ。
信じられないって顔してるね。でも本当の事なのさ…

次のテーマは「飴」「天気」「鳩」でお願いします。
218217 :02/07/14 00:41
すみません、二つ前のお題での書き込みになってしまいました。
次の方、216さんのお題「ペットボトル」「フロッピーディスク」「稜線」でお願いします。

尚、217の方は感想は結構です。
失礼しました。
219koke:02/07/14 00:51
「ペットボトル」「フロッピーディスク」「稜線」

ブラインドの隙間を縫って入ってくる光が赤いことで、我々は日が暮れていることを知った。
「もう夕方ね」とぼんやり彼女は言った。
「そうだね」ぼくは軽く同意してパンツを穿いて立ち、テーブルの上のペットボトルに口をつけた。
ブラインドをめくると、遠くの山の稜線が、陽に包まれてぼやけていた。
「まぶしいわ、閉めてよ」後ろから彼女の不機嫌そうな声。
ぼくは慌ててブラインドを閉め、しばらく考えてから、フロッピーディスクを取ると、
パソコンのスイッチを入れた。
「なにするの?」彼女は言い、シーツを巻きつけてから立ち上がった。
「今見た景色が綺麗だったから、忘れないうちに感想書いておこうと思って……」
「ああ、いつものやつね」と彼女は言って、ブランデーを氷の入ったグラスに並々と注いだ。「あんたのそういうとこ、わかんないわ」
「それは残念」とぼくは言い、キーボードを打ち始めた。
「まあ、なんの問題もないけどね、あんた好きでやってんだろうし」
ぼくはただ苦々しく笑った。

次のテーマは「飴」「天気」「鳩」で。
雲ひとつない空、心地よく肌を撫でる風。あまりにも良い天気だ。午後の授業に出る気になれないので、俺は学校を抜け出した。
公園のブランコに座り、昼飯のパンをかじる。たまには外で食うのもいい。おこぼれを期待した鳩が寄ってきたので、パンを
千切って投げてやった。のんきに餌をつつく鳩と、地面に映る木漏れ日。ひどく穏やかな気持ちだ。
ふと、俺の腕に何かが触れた。いつの間に隣にいたのか、三つくらいの女の子だ。つぶらな瞳で、じっと俺を見つめる。この
赤い髪が珍しいのか、それとも太陽の光を吸った学生服が気になるのか。おぼつかない足取りで行きつ戻りつ、小さな哲学者
は一言も発さぬまま、やがて満面の笑みを浮かべた。何かが彼女の心に適ったのだろう。
俺がその髪を撫でようと手を伸ばした瞬間、向こうから女性の叫び声がした。「夏実ちゃん! 駄目よ!」顔色を失くして
駆けて来るのは――この子の母親だろう。俺が、幼女の首でも絞めそうな恐ろしい高校生に見えたか。
女の子は、あっという間に連れ去られた。
俺はポケットを探って、飴玉を取り出した。ちょうどよく持っていたのに、あげ損ねてしまった。
あのヒステリックな母親のせいだ。
「……まあ、あんなのでもいいから、欲しかったけどな。母親」
俺は小さく呟いた。赤い飴玉を日差しにかざすと、天まで透けて見えそうだった。

>初めて書いてみました、お目汚し失礼。
 次は「らせん階段」「少数者」「空豆」でお願いします。
221「らせん階段」「少数者」「空豆」:02/07/14 07:51
時々考える事がある。私は、自分の息子を本当に愛しているのだろうか、と。
物心付いた時からずっと、酒浸りの父親に虐待されてきた。母親など、顔も覚えてはいない。
要するに、私は誰にも愛されずに生きてきた。だから、愛し方がわからない。そんな女に、ろくな
男が寄ってくるはずもない。堕落した男達との、堕落した関係。妊娠したと知った時、父親が誰か
なんて皆目見当もつかなかった。
ただ、周囲の人間いわく、私はその時から明らかに変わったという。確かに、死に物狂いで働き
ながら生まれた子供を育ててきた。当然だ。この子を、私みたいな人間にしちゃいけない。私が
できそこないの少数者だっただけ。この子は、普通の幸せな人生を過ごせるのだから。
でもそれは、息子を愛してる、という事なのだろうか?私のエゴに、息子を巻き込んでいるだけ
なんじゃないか?……いつか、この子を見捨ててしまうんじゃないか?……不安は尽きない。
……いや、そんな事どうでもいい。今の私には、やらなければならない事があるのだから。
目の前にそびえ立つ、緑色のらせん階段。はるか上空を見上げると、大男が鬼のような形相で
駆け下りてくるのが見える。……こともあろうに、私の、私の息子を、
「私のジャックを喰い殺すだって?……ッざけンじゃないよ、このクソ野郎がッ!!」
私は空豆の木に斧を振り下ろしていた。そばで見ていた息子が言うには、大声で泣きわめきながら。

次は、「正義」「喪服」「日本刀」でどうぞ。
222名無し物書き@推敲中?:02/07/14 12:08
正義とは何か。そんな問いがいつまでもつきまとった。未練を残して死んでいった誰かの、亡
霊みたいに。正義とは何か?空疎な問いだ。なにしろ大袈裟だ。腹の足しにもならない。永遠に
答えが出ないだろうという事にも、とっくに気がついている。それなのに何故、こうまでもこの
問いは私に憑いて離れないのか。
ある夏の朝、喪服を着た女が静かに歩いているのを、私はぼんやりと眺めていた。ああ、喪服を着た女が
いるな、また私の知らない誰かが死んだらしいな、と。私は二階にある自分の部屋から、その女を
見ていたのだった。私は布団に寝転んでいた。何もすることがなかった。あくびが出そうになると、
それが私にとっての大事件になった。猫が交尾していると、それが私にとっての愛の具現の全てだった。
全てはぼんやりとした膜の中で、神話のように輝いていた。私はひとりで、あまりにも退屈だったのだ。
その女もまた、光輝いていた。世界の悲しみをただひとりその身に背負う、悲劇的人物として。女は変わ
らぬ速度で歩いていた。ゆっくりと、そして物を思うように静かに。女は私の目の前を通り過ぎ、このまま
私の世界から消え去るはずだった。しかし女は歩みを止めたのだった。突然だった。女は喪服の帯から何か
を取り出した。それは日に照らされ、閃いた。女はそれを逆手に持った。そして自分の腹に、突き立てた。
背中から、それが突き出ていた。女はゆっくりと力を込め、何度も腹の中をかき回した。女が持っているの
は日本刀だった。女はあっけなく倒れ、そして動かなくなった。どこかで犬が吠えていた。子供の笑い声が聞こえた。
私は動かずにじっとしていた。正義という亡霊に食い殺されたその女の、かつて歩んだだろう心の糸を、呆然と辿りながら。

次は「缶ビール」「かくれんぼ」「貝殻」でお願いします。
「正義」「喪服」「日本刀」

廃墟と化した東京の街を一人の喪服姿の男が歩いていた。
男はこの世で最後の侍になった。数日前まで一緒に戦っていた仲間達は、一人減り、二人減り、今ではとうとう残るは彼一人になってしまった。

「よう、侍。お仲間はどうした?」
妙に甲高い、神経を逆撫でするような声が頭上から聞こえた。

『敵』

降りかえるまでもなく、男の直感がそう告げていた。
「喪服なんか着てどうした? 死装束のつもりか?」と、別の声。

『敵』の気配が一つから二つ、二つから三つと次々に増え、男を取り囲んだ。
男は腰に下げた日本刀を抜き、身構えた。

正義の為の最後の戦いが、今始まろうとしていた。

次のお題は「彼女、フライパン、ドーナツ化現象」です。
224222:02/07/14 12:18
>>223
かぶりました。
次のお題、どうしましょうか。
>>224
先に投稿した人のものが優先されます。
>>1をよく読んでください。
僕はやどかり。波にさらわれて貝殻をなくした、ちょっと間抜けで哀れな
やどかり。見慣れないゴミだらけの砂浜を歩いて、次の相棒を探しているとき
そいつに出会った。派手な模様とつるつるした肌触りで、僕はすぐにそいつの
ことを気に入ってしまった。決めた一緒に行こう。
そいつが缶ビールの空き缶だったと知ったのは、随分あとになってからだった。
10年も生きている長老やどかり様に教えてもらった。
「本来なら、人間のものを使うという行為は、忌み嫌われることじゃった。
しかし、その空き缶はおまえに実に良く似合っとる。時代が代わった
ということか」
長老やどかり様は少し悲しそうに言った。

まあ、そんなわけでこいつと僕は最高のコンビになったわけだ。
僕の日常は命がけのかくれんぼ。おたがい大変だと思うけど、
よろしくな、相棒。

次は「孤独」「システム」「天使」で。
>>224
次使うので気にしなくてもいいですよ。
>>224
229228:02/07/14 13:26
ごめん間違えた。
>>224>>228
次のお題はどれですか?
>>229
>>226のやつでし。
231228:02/07/14 13:28
>>224>>227
激欝。
下書きでは段落の頭を下げてても、書き込むと左詰めになる…。
出来てる人はどうやってるの?
ある所に、自分が孤独で、なんの身寄りもないと嘆いている人がいた。
なるほど、その人は孤独だった。いつも一人で目を覚まし、目を覚ましている間は誰と
も口を利かなかった。夜になると、ひとり月と星を仰いで、やがて疲れると眠った。夢は長い間見なかった。
その人はいつから自分がそうしているのか、わからなくなっていた。嘆くのにも慣れてしまった。溜め息をつ
くことさえ忘れかけた。そして、嘆くことさえできなくなった自分に気づいて、より一層嘆いた。その人
の嘆きは深まるばかりだった。
その人のもとに、ある日天使が舞い降りてきた。天使はこう言った。
「孤独な人、あなたは幸せです。わたしは孤独になることができません…」
孤独な人はぼんやりしていた。誰かから話しかけられたのが、あんまり久しぶりだったから。
人間以外のものから声をかけられるのも初めてだった。ましてや天使からとなると、名だたる聖人以外
こんな光栄に預かる者はいないのではないか?そうその人は考えた。しかしそんな考えも、見知ら
ぬ他人のもののような気がした。天使は、その人が押しが黙ったままなのを見て、言った。
「驚くのもわかります。何しろあなたは天使を見るのが初めてでしょうから。天使がどんな存在なのか
も、あなたにはよくわからないでしょう…。天使は無数のシステムを行き来する存在です。ある人の夢
の中や、神さまを求める心のなかや、狂ってしまった人の妄想のなか…。わたしたちは、閉じてしまった
心と心の間を行き来する存在なのです。」
天使は誇らしげに見えた。しかしすぐに眉をひそめ、顔を歪ませた。そして吐き出すように言った。
「しかしわたしはただ一人で生きることができないのです。いつも誰かの心のなかで生かされている…。
わたしは、わたしを求める心の触手に捕らえられては、そのたびに慰み者にされる。神の使いというお墨
付きが仇になって、文句のひとつも言えやしない!わたしは一人で生きたいのに!なるほど、あんたの生
活も純粋な孤独とは言いがたい。しかしだからと言ってあんたを羨まないわけにはいかない、何しろ俺は、
あんたの持っている自由の、ひとかけらさえ持っていない!」
天使は嘆いた。涙さえこぼした。孤独な人は、哀れな天使を前にどうすることもできず、途方に暮れて溜
め息をついた。その人は嘆いた、我が身を忘れて。その人は天使の孤独とひとつになった。
そして次の瞬間、その人は新たしい天使になっていたのだった。

次のお題は「猫」「金属バット」「フラダンス」でお願いします。

234「孤独」「システム」「天使」:02/07/14 15:40
「駿台式システム英単語帳」という訳の分からない本を買ってしまった俺・・・。
ああ、金がもったいない。こんなくだらない物を買うんじゃなかった。俺はため息をついた。
俺は予備校生。ひょんなことで大学を落ちてしまい、今のように惨めな日々を送っている。
俺は今、凄まじいほど孤独だ。友人達はほとんどが大学に進学。予備校では友人など誰もいない、いや、作る気さえしない。
これほど浪人生活が悲惨なものとは思いもしなかった。毎日毎日授業、自習、テスト・・の単調な繰り返し。もううんざりだ。
最近俺は池田小を襲った詫間守について、すごく共感できるようになった。俺も順風満帆の日々を送っている甘ちゃん達に、社会の
真実・裏側を知らしめさせてやりたいと思う事がしょっちゅうある。そして池田小の犠牲者達の「8人の天使達」というHPを見るたびに
ざまあ見ろ、と嘲り笑ってる事もしばしばだ。
つくづく自分が恐ろしく感じる。高校時代、成績優秀だった俺はこんな事を微塵も考えた事はなかった。こんな事を考えると言う事は
俺は相当落ちてきたんだな・・・、と俺は再びため息をついた。
突然、どこからか悪魔の囁きが聞こえてきた。
「お前みたいな優れた者が、このまま惨めな日々を送っていていいのか?お前には能がある。このまま埋もれていていいのか?
世間にお前の生き様を見せてやれ。腐りきった者どもに天誅を与えよ。」 と。
すぐさま俺は自分の頭を殴った。何考えてるんだ、正気に戻れ、と強く殴った。だが、しばらく考えてみた。
これは俺にしか出来ない事だ。全てはこの結果主義の社会が悪い。あいつらに対するいい警鐘になるな・・・
俺は行動をとることを決めた。だが俺は子供たちを殺す気にはなれない。考えた末、ターゲットは京都大学に決めた。
あいつらみたいなカスどもが日本を悪くしてるんだ、そして俺はこいつらが社会に出る事を未然に止めるんだ、そして
そうする事で社会の悪行が減る、つまり俺は日本を浄化する事になるんだ!!
俺は綿密に計画を立てた。そして決行日を決めた。明日だ。俺は明日の決行を前に、深い眠りに就いた。
そして朝が来た。いよいよ決行の時である。俺はボストンバッグを自転車に無理やり乗せて、京都大学へと出発した。
百万遍交差点に着いた。京都大学は目の前である。俺は自転車をそこのコンビニ前に止めて、そしてボストンバッグから
日本刀を取り出した。さあ、やってやるぞ・・・。俺はしばらく歩いて東一条通りを曲がり、そして正門へと到着した。
時計台が正面にあった。さあ、はじまりだ・・、俺はさっそく一人目の喉を掻き切った―――

次は「日常」「高級車」「火砕流」で








235234:02/07/14 15:45
被った。次は>>233さんのお代で・・
236名無し物書き@推敲中?:02/07/14 16:30
テレビの中は夏だった。

椰子の木、フラダンス、アロハシャツ、嘘臭い笑顔の人々。
「だめだよ・・・」
もう癖になっている独り言を呟いて、テレビの電源ボタンを押した。
外から聞こえてくる、夕方の音。子供の笑い声が聞こえる。
私しかいない。誰もいない部屋。
どれだけの時間をここで過ごしたのか考えてみる。
閉じ込められているのか、閉じ篭っているのか。
自分では分からないけれど、きっかけを作ったのはあの人だ。
あの夏、わたしはこの部屋に連れてこられた。

大丈夫だよ。
バカなことを考えなければ、ここは君にとって天国だ。

あの日、ここに初めて連れてこられたあの日の夜、
あの人はそう言った。
それからずっと、ここにいる。

「でももうおしまい」

前に、猫が飼いたいとせがんだことがある。
あの柔らかくてまるで軟体動物のような子猫を、抱きしめたかっただけ。
あの人は鼻で笑ってそれを拒否した。

ペットがペットを飼うのか?

そのとき、わたしはやっと気がついた。
天国なんかじゃない。
ここは、天国なんかじゃないんだ。

ガチャガチャと、鍵を差し込む音がした。
床においてあった金属バットを握り締めて、そっとそのドアを睨みつける。
あの人に対する想い。
それは、憎しみ?蔑み?諦め?悲しみ?
わたしは大きく息を吸った。

ありがとう。ここは天国の匂いがしたよ。


次は「空」「イグアナ」「爪磨き」で。
部屋にひとりでいる時、わたしはよくイグアナのことを考える。
イグアナの顔、イグアナの足、イグアナのざらざらとして冷たい肌。
わたしはうっとりとする。けれど、まだわたしはイグアナに触れたことがない。
お客の部屋で一度見ただけだ。お客は中年の女で、噂によれば、どこかの金持
ちに囲われている「ふしだらな女」なのだそうだ。もっとも、それをこっそり
教えてくれた人も、十分に「ふしだらな女」なのだけれども。
つまり、わたしの同僚だったのだ。
同僚は否定するのだろう、わたし達がふしだらで、そのうえあの中年女ほど誰かに必要とされず、
卑しいのだということは…。
わたしはいつかイグアナが飼いたかった。もし、共同部屋で飼うことになったらどうなるだろう?
わたしは、可愛らしいそいつがのそのそと歩くたび同僚たちが悲鳴を上げて逃げ回るのを想像して、
思わず声をだして笑ってしまった。けれどそれも、ただの夢、おとぎ話みたいなものだった。
わたしの稼ぎはあまりにも少なく、生活するだけで手一杯だった。

わたし達の仕事は、「爪磨き」だ。
でも、爪を磨く事だけが仕事じゃない。とても口に出せないようなことも、たまにはする。
わたし達は若い。だから肌もすべすべしている。すぐに熱くなる。イグアナとは大違いだ。
自分をどうすればいいのか、自分ではわからない。
同僚はよくそんなことを言う。わたしにだってわからない。どうして自分の肌が、こんなにも若くて、
噛めばすぐに甘い匂いの血が流れてきそうなほど、瑞々しいのか。
イグアナがいれば、そんなことを考えなくなるような気がする。
だからわたしは、時々空を見上げて、イグアナに似た形の雲を探したりする。
仕事が休みの日は、星が出るまで。

そうしていると、同僚が隣に来て、わたしに話しかけることがある。
「何してるの?」
「雲を見てる」
「あの雲、くじらに見えるね」
同僚はある雲を指差して言った。
「うん。そうだね」
わたしは頷いた。本当は、くじらになんか見えなかったけれども。
わたしは、ぼんやりとした悲しみを感じていた。
意識した瞬間、消えてしまうような、頼りない悲しみ。
当然のことばかりで、なにも悲しいことなんてなかったのに、
それはいつもわたし達のそばにあった。

次のお題は「夢」「将棋」「連続殺人」
238名無し物書き@推敲中?:02/07/14 17:17
猫は毎日、鼻歌混じりに爪を磨いていた。イグアナには爪が無かった。
楽しそうな猫を見て、ある日イグアナは訊ねた。
「なぁ猫よ、爪を磨くのはそんなに楽しいのかい」
「楽しいね、君もやってみたら?」
猫の返答に、イグアナはムッと来た。
「それは俺に爪の無いことを知った上での嫌味か?」
猫はまずいことを言った、という風に上目遣いでイグアナを見た。
「ごめんよ。だが君らイグアナには過去、爪があったじゃないか」
「現在の話をしたらどうだい、猫よ。俺はとにかく爪が磨きてぇんだよ」
「ならば爪を生やせば良いじゃないか」
「冗談。この地上のどこに俺の爪があるというんだ」
「発想の転換が大切だよ。地上に無いのなら、空に行けば良い」
その柔軟な発想から出る提案に、イグアナは心底感心した。
空はとても高い所である。二人の知る限り一番高いところは、
家の隣に生えている木の四つ隣にある切り株から、北に十歩歩いた場所にある
大木である。イグアナは早速登ろうと試みたが、爪が無いので登れなかった。
それを見た猫は、腹を抱えて笑った。
「ハハハ、爪が無ければ爪も取りにいけないということか」
「うるさいぞ、猫め。お前ら猫には過去、爪が無かったそうじゃないか」
「君らイグアナに使いぱしりにされ、爪が必要になったのだ」
「そして我々には代わりに爪が必要なくなった。
 つまりその爪は俺がお前にやったものだ」
「それは違う。この爪は僕が君にもらったものだ」
猫に言い包められ悔しがったイグアナは、猫から爪を取り戻すため、
翌日から真面目に働こうと思った。

何だか収拾つかなくてわけわからん話になってしまったぞ。
次は「テープ」「窓」「太陽」でお願いしますよろしければ
239238:02/07/14 17:18
かぶった。お代は>>237の人の方が面白そう
240「夢」「将棋」「連続殺人」:02/07/14 18:08
「なあ?将棋ってゲームは相手の駒を操作できる分だけ、
 チェスより面白いと思わないか?」
男は芝居がかった口調で僕に語りかける。
だがその仕草一つをとっても完璧だ。この男のやること為すこと全てそつがない。
悔しいことに僕は何一つ勝てはしないだろう。

「……さ、さあね。
 僕は将棋は強くないしチェスのルールも良く知らないから」

「だが、盤上のゲームにも飽きた。そろそろもっと大きな現実を操作したい」
芸術家然とした男の周囲には、血まみれになって倒れているクラスメートの姿があり、
退屈そうな視線でそれを見つめている。この男はいつだって指一本動かさずに人の心を操るのだ。

「俺の夢の手助けをしてくれないか?王将にはそれを補佐するための駒が必要だろ?」
顔が触れ合うほどに距離で語りかけるこの男に僕はドギマギしながら答える。
「と、とても君の役になんか立てないよ!ぼ、僕なんか、歩だよ。歩。」
駄目だ!この男のカリスマに飲まれてしまっては駄目だ!

「一連の連続殺人事件でお前だけが生き残った。
 俺の目は確かだ。おまえは敵陣に入らば金と成るのさ」

お次は、「丑三つ時」「牛丼」「フィクション」
「テープ」「窓」「太陽」
「夢」「将棋」「連続殺人」

うだるような暑さの中、昼下がりの太陽が窓から顔をのぞかせている。
窓の鍵はかかったままだ。扉の鍵も当初かかったままだった。
男達はエアコンのきかない部屋を隅々までつぶさに調べていた。
エアコンがないのではなく、つけてはいけなかったのだ。
それが現場保存の原則だった。

事の発端はアパートの大家からの通報だった。
― アパートの一室から生ゴミのような匂いがする ―
大家に鍵を開けてもらい踏み込んだ部屋の中は、まさに真夏の悪夢というに
ふさわしかった。
アパートの廊下にはただちにテープが張られ、現場検証が始まったのだった。

被害者は手に将棋の駒を握っていた。
しかもそれはひとつではなかった。
どちらかというとむしろありったけ握っているという感もあった。
これがいわゆるダイイングメッセージなのかあるいは犯人からのメッセージ
なのか、その場に居合わせた刑事達も即座には判断しかねた。
が、次の被害者の発見によってこれが犯人の悪意に満ちた意思表示であることが
明らかになったのだ。

後にこの連続殺人の驚くべきトリックをある少年探偵が解決するのだが
それによってこの事件は「山崩し連続殺人事件」として世に知られることになる。

次は「秘密基地」「カタパルト」「裏山」
失礼、かぶったね。お題は>240で。
243名無し物書き@推敲中?:02/07/14 18:31
「丑三つ時」「牛丼」「フィクション」

草木も眠る丑三つ時、男は体が訴えかけてくる空腹に耐えきれなくなり、
現在の作業を中断して食事を摂りに外出した。
趣味の工作に没頭していて気がついたら昼から何も食ってない。そりゃあ腹も減るだろうさ。
淡い街灯の周りを蛾が飛び交う、そんな夜道を縫うようにして男の足はとある牛丼屋へと向いた。

――やがて男はチープな愉悦に浸ることができた
死ぬほど腹の減ったときに食う牛丼は信じられないほどうまい。
近年のデフレの影響だろうか、これが安く食えるとは信じられないものだ。
幸い客は俺一人だけだし、気兼ねなくビールも頼もうか。そんな気分になってきたその矢先、
店内に三人の若い男達が足を踏み入れ、着席するや否やこう告げた。
「並盛、卵」「並盛、卵」「ごはんに卵」
「「「え?」」」
思いもよらないエキセントリックな注文に、他の男達(俺を含めて)は唖然とした。

そうして、明るい室内には無言で牛丼を胃にかきこむ男どもの姿があったのだ。
ふいにぽつりと当然のような質問が飛び出した。
「なんでおまえ白いご飯なの?」
よくぞ聞いてくれた。俺もさっきから気になって仕方がなかったのだ。
だが、問われた男はさも当然と言わんばかりにこうほざくのだ。
「だって狂牛病こわいじゃん」
その瞬間、残りの男ども(俺を含めて)は一斉に牛丼を吹き出した。

残念ながら――フィクションではない。

---
241氏のを引き継いで「秘密基地」「カタパルト」「裏山」
僕らのひみつ基地は裏山にある――これは僕が流したデマだ。
ひみつ基地はひみつなので、誰にもその場所を言ってはいけない。
言ったやつはみんなから殴られる。これは「鉄のおきて」だ。
どうしてみんなから殴られなきゃいけないのかというと
ひみつ基地を奴らの「まのて」から守らなきゃいけない。
奴らに場所を知られると、すごくまずいことになる。
どうまずいのかはよくわからない。だけど、みんなはいつも奴らをこわがっている。
学校でひみつ基地のことを話すのはしちゃいけないことだったし、
外で話すときも小さな声で話さなきゃいけない。
これもやっぱり「鉄のおきて」だった。

僕はひみつの場所にあるひみつ基地に入るとき、誰かがじぶんのあとをつけていないかと
あたりをじっくりと見回す。そして危険がないのを確かめてから入っていく。
ひみつ基地の中がどうなっているのかは誰にも言えない。
僕ら以外のひとたちが僕らのひみつ基地の存在を知るのは、ひみつ基地のカタパルトから
発進する僕らのひみつへいきが、そのひとたちをみなごろしにするときだと思う。
そのひとたちは死ぬ瞬間に僕らのひみつを「きょうゆう」するのだと
僕らの中でいちばん年上のひとが言っていた。
でも、死んだひとたちはどうなるのか、誰もおしえてくれない。
やっつける方法は熱心におしえてくれるのに…。

次のお題は「シャンプー」「メンマ」「永遠」
245244:02/07/14 19:07
「僕」を「ぼく」に換えて読んで頂きたいです。
もうしわけありません。
246名無し物書き@推敲中?:02/07/15 00:51
たまにはage
>>245
なんで?
「シャンプー」「メンマ」「永遠」

「彼女はシャンプーに殺されたんだ」

彼の一言は私を混乱させるのに充分な威力を持っていた。

「は? シャンプー? シャンプーって、頭を洗うシャンプー?」
「そう。そのシャンプー」
「シャンプーがどうやって彼女を殺したの? 間違って飲んじゃったとか?」
「違う、違うんだよ。それじゃ単なる事故だろ。何度も言ってるように彼女は殺されたんだ、シャンプーにね」

わけが分からない。シャンプーが人を殺す? そんな馬鹿な。

「どうやって?」
「匂いが強烈だったんだ。そのシャンプーで頭を洗うと、永遠に匂いが取れない」
「匂いが・・・?」
「僕も最初はただの噂かと思ってた。ネットでもその噂を聞いてはいたけど、そんなことあるもんかって。でも・・・」
「でも、そのシャンプーは実在した。そして彼女はそれを使ってしまった」
「そうだよ。そして・・・そして、彼女は死んでしまった。あのシャンプーが、あの匂いが彼女を死に追いやったんだ!!」

彼は無念さを吐き出すように大きな声で言い、そしてテーブルに突っ伏して泣き始めた。
私が問いかけても、それ以上は何も答えず、ずっと泣き続けていた。

それにしても、彼女を死に追いやった匂いとは何の匂いだったのだろう?


翌日、彼女の葬儀場からは、メンマの香ばしい匂いが漂っていた。


次のお題は「彼女、フライパン、ドーナツ化現象」です。
訂正→次のお題は「ドーナツ、フライパン、ドーナツ化現象」です。
「ドーナツ」「フライパン」「ドーナツ化現象」

午前の駅前は通勤者の群でごった返していた。
木曜日。私は週に一度の休日の常として、いつもの喫茶店に足を運んだ。
自動ドアが機械音を立ててスーッとスライドすると同時に、
ああ、さすがだ、本職だ、いい匂いがする、と毎度の陶酔を味わう。
この店定番のドーナツが、ウインドゥに今まさに並ぼうとしている。
香ばしい匂いと程よい甘さのシュガーが、肌を通して感じられたように
非常に鮮明に、近しく感じられた。
馴染の客を見つけた店主がフライパンを持ち上げて挨拶する。
目前のカウンターは、というと、ガラ空き。
これ幸いと私は腰を下ろした。隅の席には連れの客も、一人客も座っていた。
どうやら、他の客たちは、カウンターでは狭いと思ってわざわざ隅のほうに座ったらしい。
皮肉なことに、カウンターは隅の席より空いているのだ。
いつものようにドーナツとコーヒーを注文して、悠々と遅い朝食を摂る。
今朝のドーナツ化現象は、私に特等席を呉れたようだ。

次は「クーラー、台本、市外局番」
この町の外に何があるのか、僕は知らない。
この町には門がない。壁に囲まれている。外部との通信も断たれている。
よく母親たちは、外の世界が不自由な世界だと言った。台本通りに生きることを強制さ
れるような、味気ない場所だと。そこは、光が歪み、陽の暖かさも直に感じられない。
年中クーラーの効いているような、作為に満ちた場所なのだと。

かつてはこの町にも、頻繁な人の行き来があったらしい。これは祖母から聞いた。
祖母のように昔のこの町を知っている人間は「まっとうな市民」たちから疎まれた。知
る必要のないことを子供達に教え込む有害な人物として。祖母は自分の娘―つまり僕の
母―にさえ毛嫌いされていた。僕の母も「まっとうな市民」を自称できるほど、この町
の現在に浸りきっていたわけだ。
祖母は優しかった…と言えるほど、僕は祖母にかまってもらった覚えがない。祖母は、
家の離れ―これは土蔵を改築したもので、黴の匂いと線香の匂いがいつもしていた―に
篭りきりだった。僕は時々母の監視の目をかいくぐって祖母を訪ねた。
祖母が、この可愛げのない孫のことをどう思っていたのかはわからない。僕は自分の聞
きたいことだけ聞いていたし、それはねだるというよりは、脅迫めいた口調の取り調べ
に似ていたかもしれないから。だからと言って僕は祖母を責めていたじゃない。ただ、
子供時分の旺盛な好奇心が祖母を悩ませたかもしれないと、今になって思い返し悔いるだけだ。

祖母が亡くなったのは三日前の事だ。祖母が亡くなると、親類や知り合いたちは悲しんだ。
母も泣いた。素晴らしい人だった、惜しい人を亡くしたと言って。市議会のお偉方は、葬式
でこんな事を言った。われわれはまたひとつかけがえのない物を失った、彼女の死は、たん
に欠けてはならない愛すべき人物の死というだけのことでは済まされない、われわれは歴史
を失いつつある、いや、彼女の死は歴史の死に限りなく等しい、と。僕はそれを聞いて鼻で
笑った。ひどい茶番だったから。台本通り喋り、台本通り泣いてみせる…。そのうえ歴史の
死、などとは。歴史を殺そうとしていたのは彼らだった。いつか祖母から無理矢理に聞き出
した市外局番を無駄な数字の羅列に変えたのも、彼ら「まっとうな市民」たちだ。祖母はそ
の番号を僕に教えるとき、遺言のかわりに、と言ったのに。

何故、彼らは町を壁で囲んだのか。何故、彼らは過去を消そうと必死なのか。そして外には
何があるのか。自分にはそれを突き止める権利がある。そう僕は信じている。それが、目を
そむけたくなるほど傲慢で、この町が僕にそそいでくれた愛情の全てを裏切る態度だったとしても。

次のお題は「CD-R」「イノシシ」「精神分析」でお願いします。
ちとお題が消化不足でしたので、継続も可です。
子供たちの、花火の輪を離れ、私は二階にある、昔から使っていた自室へ戻った。
慌しく帰省したときそのままに、大きなショルダーバックには、色々な荷物が無造作に詰め込まれていた。
少し片付けようか、と思って、バックを開けた。着替えやら、その他の細々とした物が思いのほか入っていた。
順番に服を出し、畳んでいった。他にさしあたりすることもない。
不意に、階下から、名前を呼ばれた。返事をして、ドアを開けた。電話が掛かっている、と兄嫁が教えてくれた。
階段を降りて、受話器を取った。「はい、」と言う間もなく、弾ける様に、私の名前を相手は叫んでいた。
「帰ってきてるって聞いてさあ。電話してみたの。いてよかったわ。」
懐かしい、まるでなにも変わらない、本当に聞きなれた声だった。
「こっちは涼しいでしょう。東京と比べると・・・。クーラーなんか要らないもんね。あっ、その分田舎かあ。」
高校の同級生でもあり、二人とも所属していた演劇部では、女らしからぬ、という妙な好評を得た芝居の台本を書く文学少女でもあった。
そんな彼女が、からからと可笑しそうに受話器の向こうで笑っていた。
「出てこない?今から・・・。」どうしようか、と言いよどむ私に、彼女は付け加えた。
「せっかく市外局番の要らない距離に居るんだよ。私はあんたに会いたいんだ。さっさと、出といで。」
否応もなかった。昔から彼女はこうだった。いつも強引で、引っ込み事案な私を、色々な世界へ連れ出してくれた。
待ち合わせ場所を決め、受話器を戻した。兄嫁に礼を言い、出かけることを伝えた。
階段を上がり、何を着ていこうか、と考えることすら楽しかった。いつ以来だろう。こんな気分は。
手早く着替え、部屋の電気を消した。そのとき初めて、東京から引きずってきた様々な思いが、ここへ帰って初めて、私の中から消えていた。

211の続き、というか同じフォーマットの中で書いてみたものです。
次は、「朝焼け」「古い写真」「コーヒーカップ」でヨロシク
253251:02/07/15 19:34
かぶったので>>252さんのお題で。
「朝焼け」「古い写真」「コーヒーカップ」ですね。
「CD-R」「イノシシ」「精神分析」
「朝焼け」「古い写真」「コーヒーカップ」

今朝は空が真っ赤だった。
よく「朝焼けの日は雨が降る」と言う。
今日も雨が降りそうな気配ではあった。
パパはコーヒーカップにいれたウイスキーを飲んでいた。
「パパ!また朝からお酒飲んでる!」
ちょっと目を離すとすぐにこれだ。まったくもう!
以前から私がパパのお目付け役。
ママはもう古い写真の中にしかいない。

パパは大急ぎでお酒を飲み干してしまったようだ。
カップを置いてそそくさと立ち去ろうとする。
その姿からは、パパが精神科の権威とは到底信じられない。
と思ったら、一枚のCD−Rを持って引き返してきた。
「これ、やってみろ。おもしろいぞ!」

私は部屋のマックを立ち上げた。
さっそくCD−Rを読み込む。
中に入っていたのは、どうやらパパが作った新しい
精神分析ソフトらしい。
「簡単な質問に答えるだけであなたの性格がわかります」
私はナビゲーションにそって質問に答えていく。
その結果・・・
「まっすぐなあなたは猪突猛進イノシシさん!」
って動物占いかよっ!

次「password」「メール」「SETUP.EXE」皆さん気をつけてね。
255「password」「メール」「SETUP.EXE」:02/07/16 00:21
 あぁ、部長。だからそうじゃないんですってば。メールを読むにはアウトルック
を開いてください。

 …そう、そこです。はい、そこでダブルクリック。…ね、これでアウトルックが
開きました。そうすれば自動的にメールを読み…部長、パスワード入れてなかったん
ですか。

 え? パスワードはpasswordだと思ってらっしゃったんですか?はい、え、あー。
パスワードは先日システム部から配布されてませんでしたか?…そうですか、読まずに
シュレッダーへ。

 (中略)

 …これがパスワードです。これを入力してやってください。はい、ええ。
このパスワードをpasswordに、です。…はい。…あ、いえ。はい、お疲れ様
でした。


 椅子に体重を預け、大きく背伸びをする。どうも電話サポートというのは
性に合わない。俺はそんなことを思いながらポケットの中にあったガムを一枚
口の中に放り込んだ。
 「みやさん、電話。さっきの部長から。『SETUP.EXE』を起動したけれど
なにがなんだかわからん、だそうです。」
 勘弁してください。
256255:02/07/16 00:25
 お題書き忘れました。が、いいのが思いつかないので
お約束・5を適応、お題継続でお願いします。
>>256
継続?うそお!?なんか最近、お題がパソコン用語に偏りすぎ。
偏ったお題は3つのうち一つまでっしょ。
案として、「捏造」「無頼」「奇縁」とか提案してみる
まあイニシアティブは書いた人にあるので継続ということでどうぞ。
258「捏造」 「無頼」 「奇縁」:02/07/16 06:43
 その女、齢十五にして天涯孤独、鞄に詰めた麻の袋に昼を眠り、
血に錆びた短剣で蛇を殺してそれを食らう。
長引く病は光と音をその身から奪い、伸びた髪は六尺三寸、
背負う水子は十を数え、闇と静寂の世界を蛇行して歩いた。
 奇縁にしてとある伯爵に拾われ、海岸の古城にその居を得る。
両手右足を裁たれたその姿は人魚の如く、硝子の箱に入れられて
満月の夜ごとに愛玩の道具となった。その佇まい頗る艶かしく、
城の女すべてを嫉妬させるに不足ない。噂たちまち世に広がり、
はや半月の夜には三里の人列が城に連なって謁見を待った。
 箱を狙う盗賊絶えることなく、ついに見張り番を設けたが、
これが稀代の誤算、美に犯された箱番が盗賊と化した。
即座に気づき追手を走らせるも、男の速力この世のものとは思えず、
見るも間もなく彼方へ消える。対する伯爵、三千の兵を雇って
国境を固め、同時に国中を靴の裏まで探させた。
が、見つからぬ。見つかるは別なる女の死体、両手右足を欠いた
不出来な模造品のみにして、その真偽の判別にまた無駄な手間がかかる。
男のこの狡猾な捏造の戦略は捜索を混乱させ、また効果的に長引かせた。
 幾月かが過ぎ、ある疑念が伯爵の頭をよぎる。−−女を発見した
兵が盗賊と化さない理由がどこにあろうか……! 
 ついに伯爵自ら足を駆って野に飛び出した。かつて切り落とした
女の右手と両足を手に携え、唯一人、己のみが信ずるに値すると念じながら。

 門を出たところで、老兵が伯爵の首を切り落とした。
259258:02/07/16 06:47
無頼≒天涯孤独 として書きました。ちょっと反則かな。
次のお題は 「図書館」「月光」「胎児」でお願いします。
260258:02/07/16 06:57
うわぁ!! 最後から二行目、
女の右手と両足→女の両手と右足 です。
やっちまった……(鬱
261名無し物書き@推敲中?:02/07/16 11:57
「図書館」「月光」「胎児」

 俺の親父は市役所に勤めている。住民課の課長どの。親方日の丸、
安定収入。異動も多いが職場は市内。まったく素敵。将来は俺も公務
員になるつもり。親父の縁故はもちろん頼るさ。使えるものは使わな
いとね。それにそれは姉貴も同じ。姉貴はすでに市営の図書館にいる。
 築うん十年という古い校舎のような建物。背の高い本棚とそれ見合
うだけの蔵書量。郷土の資料も並べられていて、ちょっと不気味。戦
国時代の戦刀に、市内から発掘された妊婦と胎児のミイラ。先の大戦
で落とされたという不発弾も飾られていた。郷土に根づく市営図書館。
 これだけのネタがあれば、誰だって怪談話の一つくらいは浮かぶよ
な。たとえばさっきのミイラ。満月の夜、蔵書を守る分厚い遮光カー
テン。漏れた月光が彼女たちを照らす。開くはずのない胎児の目が開
き、世界を睨む。なんでも彼女たちの命日は数千年前ではなく、ほん
の十数年前だとか。捨てられた身重の女性。遺書を残しての自殺。男
の隠ぺい工作。血を抜かれ、防腐処理を施され、見世物にされた彼女
たち。すべては満月の夜の出来事。月下の光がその証人。ははは、馬
鹿げてる。この話を教えてくれた友達は笑っていた。俺も目だけで笑っ
て聞いた。
 今夜は月も出ていない。俺は部屋の中から夜空を眺めていた。そう
しているとなぜだかなにも考えないでいられる。だがやがて夜もふけ、
階下から親父の声が聞こえてきた。かずき。もう遅いから寝なさい。
俺はベッドに潜り込んだ。ベッドの中でいつも考える、考えたくもな
いことを考えたはじめた。
 親父。住民課の課長どの。そして元図書館館長さま。知りたくもな
いことを教えてくれるお節介はどこにでもいるさ。十数年前、母さん
と二股かけていた恋人はいまも元気かい? それに俺の名前。かずき。
漢字で華の月。まるで女の子みたいだよな。
 俺の親父は市役所に勤めている。将来は俺も公務員になるつもり。
第一希望は市営図書館。親父は縁故推薦してくれるだろうか。
>>261
次のお題は?
>>262
忘れてますた。
お約束5を適用してくらはい。
 図書館で本を読んでいると、いつも同じ旋律が聞こえてきた。毎日、あの瞬間を待ち焦がれて
いたんだ。向かいの棟の音楽室で、君が奏でる月光ソナタ。目を閉じて聴き入れば、羊水に漂う
胎児の気分になった。意識の中に、薄青いベールに包まれた世界が広がった。
 五ヶ月の間、月光の第二楽章だけを弾き続けた君。始めの頃は、低音を叩きつけるように弾い
たり、一番の山場でぷっつりとやめてしまったり、音も荒れていた。でも、演奏は次第に穏やか
に、静かに深くなっていった。
 噂で聞いて、知っていたよ。五ヶ月前に、君は長いこと付き合っていた彼女と別れたんだ。い
つも二人で過ごしていた昼休みが空白になって、一人の時間を持て余した君は、ピアノを弾くよ
うになった。そして僕は、ただ一人の観客だった。無遅刻無欠席で、この離れた図書館の窓から、
小さな拍手を送っていた。だけど、その役目もおしまいだ。

 今日の音楽室に人影はなく、カーテンだけが揺れている。


*お耽美ですいません。俺の友達のゲイは、皆もっと陽気で楽しい人たちです。
 次は「持ち運び」「虫刺され」「オペラ」で。
 
265264:02/07/16 19:41
書くの忘れました。上のお題は「図書館」「月光」「胎児」でした。
 新婚旅行の前日、僕は、妻のステイシーと知り合ったばかりの頃を思い出していた。

 当時、ステイシーは売れない女優だった。代表作は、安っぽいソープオペラ。世界各国を旅して廻る設定のドラマなのに、スタジオ撮りがほとんどだった。
 ステイシーはその番組の中で、ぎこちない笑顔を見せて笑っていた。腕には虫刺されの痕があった。その程度のチープな女優だった。

 ──なのに何故、僕は彼女を好きになってしまったのだろう。
 僕は、ステイシーに近づいた。拒否されても諦めなかった。何度も何度もアタックした。

 今、僕の横には彼女がいる。
 彼女はもう、息をしていない。
 僕のことをストーカー呼ばわりするからだよ、ステイシー。

 持ち運びに便利なように、ステイシーの死体をトランクに詰め込んだ。
 さあ、明日から新婚旅行だ。色んな場所を旅して廻ろう。そう、あのソープオペラのように。
*******************
 長かったかな。お次は「鉄筋コンクリート」「ピンポン」「ナンバー5」。
267「鉄筋コンクリート」「ピンポン」「ナンバー5」:02/07/17 01:43
 ロシアのとある廃ビルに、固く密閉された地下室がある。
 全ての者に忘れ去られ、いまや誰も省みない空間。
 そこは、かつて人造人間の研究室だった。

 無造作に置き去られた装置から、偶然に4人の子供が生まれた。
 食物には困らなかった、しかしそこには玩具といえるものが何も無かった。
 たった一つのピンポン玉を除いて。

 彼らだって人並みに、ベーゴマやメンコ遊びがしたかっただろう。
 でも、彼等にはこれしかなかった。
 5歳、6歳、10歳!
 鉄筋コンクリートで隔絶された世界で、彼等は卓球だけで過ごした。
 そして、下界では・・・

 「やった、世界卓球選手権、優勝は・・・」
 アナウンサーは間違っている、彼はトップではない。ナンバー5だ。
 ナンバー1から4は、一生、誰にも知られぬまま、朽ち果ててゆく。

 「誰も知らない」から、こんな話はなかった、という事になる。
 よって、上記15行は最初からなかったのでありました(笑)。おそまつ。

※とはいいつつも、次のお題を
次のお題は:「約束」「リボン」「星雲」でお願いします。
268名無し物書き@推敲中?:02/07/17 03:44
こじんまりとした駅をでて、正面の長い上り坂を見ると、いつもの景色があった。
長い上り坂と建て並ぶ古い平屋建ての住宅。突き抜けるような青い空とむせ返るような暑さ。
坂の途中の駄菓子屋。その店先のベンチに座ってラムネを飲んでいる少女。
(今年も白のワンピースに白のリボンなんだな)
近づいて話し掛けるまでこちらをシカトするのもいつものことだ。
「よっ。出迎えごくろうさん」
「別に待ってたわけじゃないわよ。暇だからブラブラしてただけよ!」
足元に散らばるアイスの袋の多さには触れないでおこう。

彼女の名前は深雪。幼馴染で昔は日が暮れるまで2人で遊び、あまつさえお風呂まで一緒に入っていた仲だ。
星を見るのが大好きで、よく夜中に引っ張り出された。「あれは○×座の▲☆星雲」なんて話をよく聞かされた
ものだ。説明してくれるというよりは、夜の怖さを紛らわすために喋り続けていただけなのかもしれないけど。
いま僕が東京の大学で天文学を学んでいるのも、このときに星に魅せられたからだろう。
高校をでてから少し疎遠になったけど、盆と正月に帰省するときは必ず出迎えてくれるし、こちらにいるときは
ちょっとうるさいくらい一緒にいたがる。

「それ、持つわよ。天体望遠鏡でしょ。よくそんな重たいものもって帰ってくる気になるわね」
大きなお世話だ。だいたい……
「約束だったろ。今度帰ってきたときは一緒に星を見るって」
「……ありがとう。で、その、こっちは……」
そういって彼女は自分のワンピースをつまんでみせた。
「なんのことだ?」
首を傾げたくなったが、そういえば確かに「夏の出迎え」はいつも白いワンピースだ。19にもなって着る服で
はないような気がするし、だいいち、お嬢様ルックが似合うキャラクターではない。
全く心当たりが無いので黙っていると、途端に不機嫌になってしまった。
「別に。もういいわよ。早く行きましょう」彼女はそう呟くと、踵を返して早足で歩き出した。
今にして思えば、考え方までが望遠鏡式になっていたのだろう。遠くばかりを見て近くに大切なものがあること
がまるで見えていなかった。いや、見ようともしなかったのだ。

後になってから、僕はそれを死ぬほど後悔することになる。


ちょっと長くなってしまった。反省。
次のお題は「灯篭ながし」「陽炎」「雪」で
269「灯篭ながし」「陽炎」「雪」:02/07/17 09:47
僕はしなびた温泉宿に滞在していた。
今年もこの町伝統の祭りがあるらしい。この場所を貫く川で灯篭を流し
陽炎が木々の葉の揺れや川の波紋と同調する様を見るのだ。
それは人間の微妙な情動を表現する事から来た慣習らしかったが、
それの目的は誰もよくわからなかった。
花火や提灯さえない、静かな祭りだと言う。
僕は雪が降る前に去ろうと決心した。

次は「バス」「光」「警察」でお願いします。
「灯篭流し、陽炎、雪」

灯篭流しの光が川面に反射し、彼女の雪のように白い肌をほんのりと紅く染めた。
僕は川面を見つめ、彼女の横顔に目をやり、そしてまた、川面に視線を戻した。
その一つ一つは弱々しく頼りない小さな光。でも、それらが寄り合って流れることで大きな光のヘビを作り上げている。
まるで自分の意思を持っているかのように、優雅にゆっくりと川を下っている。

「綺麗ね」と彼女は言った。
「こうしてあなたと最後に灯篭流しを見たのはいつだったかしら?」
「5年前だよ。まだ僕らが学生だった頃だ。僕は若くて貧乏で、君は聡明で美しく、優しかった」
「私たちの未来が、まだ可能性に溢れてた時期よね」
「そうだね。僕は自分はなんでもできると錯覚してた」
「私はそんなあなたが好きだったわ」
「でも僕はそんな君を邪険に扱ってたっけ。本当に大切な物が何なのか、気付いてなかったんだ」
「若かったんですもの。仕方ないわよ」
「いや、若かったからじゃない。愚かだったからだ。君の存在があまりにも近すぎて、側にいるのが当たり前だと思ってたんだ。この先もずっと君がいると思いこんでたんだ」
「いいのよ、戻ってきてくれたじゃない。それだけで、私は満足よ」
「でも、君は・・・」
「しっ、もういいの。本当に私、今幸せよ」

彼女の優しさに、僕は打ちのめされた。
僕はそれ以上何も言えず、ただ川面を流れていく灯篭をみつめた。

やがて流れてくる灯篭の数も少なくなり、見物客たちも一人減り二人減り、その数は数えるほどになっていった。

「私、そろそろ行くわ。あなたに会えて、とても嬉しかった。元気でね」
「うん。君も・・・」
彼女は僕の手を握った。昔のように柔らかく、温かい手から彼女の温もりが伝わってきた。
「君も、元気で」
彼女は微笑み、そして、陽炎のように僕の前から消えた。

最後の一つと思われる灯篭が僕の前を流れ、横切っていった。
そのとき、僕の心に小さな灯りがともり、僕はようやく泣くことができた。
271名無し物書き@推敲中?:02/07/17 10:02
最近ルール守れないやつ多すぎ
272「バス」「光」「警察」:02/07/17 13:39
「クヒャヒャ! このバスは、改造人間イカゾルゲ様が乗っ取ったァ! 逆らう奴は皆殺しだァ!」
 イカ怪人がバスを襲撃。そりゃあ、子供向け特撮番組あたりならそれなりの絵にはなるだろう。
だが、これは現実。冗談として笑い飛ばしてやれる程、私達は人間ができてはいなかった。
「おいイカ、あんた歳いくつだ? 恥ずかしくねえのか、そんなカッコしてよお」
「な、何だお前! 大人しくしていないと食い殺すぞ、クヒャヒャヒャ!」
「ねえねえ、なんでイカにされちゃったの? せめてサメとかさ、トラとかさ、もっと強そうな
動物はイッパイいるじゃん。あんた上司に嫌われてんの? だからイカにされちゃったの?」
「う、うるさいぞ貴様! この10本の足で絞め殺してやろうかァ!?」
「イカ男に10本の足があったって面白くも何ともねェんだよっ! 改造してもらっったんなら、
眼ェピカーッと光らせるくらいの事はできねえのかよ、この能無しっ!!」
「お、おのれ、黙っていればいい気になりおって……」
「そもそも、バスジャックなんて今日びはやんねーんだよ! そんなだからイカなんかにされるん
だろ……おい、イカくせェ手でさわんじゃねえよ、このヘンタイ! イカ男! 帰れ! 帰れ!」
 ……結局、私達の『帰れコール』で泣きながら逃げていったイカ男は、警察に出頭したそうだ。
 幼稚園バスも満足にジャックできない改造人間。やっぱりテレビの方が面白い、と私は思う。

次は「4」「鋼鉄」「プリンセス」でどうぞ。
「ピー、ピー、ジュシンチュウ……」

登校拒否を始めて三ヶ月、部屋のぬいぐるみがあたしに話し掛けて来るようになった。
話し掛けてくるといっても言葉じゃなくって、こうやって電波を受け取らないといけない。
電波を受け取るのはかなり体力を使うので、今日はよく話したなぁって言う日はもうぐっ
たり。
でも、やっぱりいいよねえ、異文化コミュニケーションっていうのかな。そうそう、どこ
かの英会話教室のCMは、あたしの考えたことを盗んでるんだよ。ひどいよね。

ところで、話し掛けてくるぬいぐるみは全部で4つ。
「誰に誘われても、鋼鉄の檻に入ってはいけないよ」とクマが言い、
「檻にいたのは4人の獣」とライオンが言い、
「君は、何も知らないプリンセスだったね」とオオカミが言い、
「君は悪くない」とトラが言う。
あたしには言っている意味は分からないけど、そのうちきっと分かるときが来る。
あたしが可哀想だからって、神様が与えてくれた能力。もっと上手く使えるように、訓練
しないとね。

「ピー、ピー、ソウシンチュウ……」

次のおだいは、「お代」「タクシー」「桎梏」
274コギャル&中高生:02/07/17 22:07
http://go.iclub.to/ddiooc/

お役立ちリンク集
必ず役立ちます

コギャルとH出来るサイトはここ
ヌキヌキ部屋へ直行便

http://kado7.ug.to/wowo/

http://kado7.ug.to/wowo/-a.htm
275名無し物書き@推敲中?:02/07/17 22:56
「お代」「タクシー」「桎梏」

 そうだな……例えばあんたは恐怖でタクシーに乗れない気持ちを理解できるか。
 仕事でうまくく行かないことがあると、必ず俺を車に乗せて郊外まで走り、人気の無いところまできた所で車
を停めて俺を罵り続けたな。子供であれば必ず犯すようなミスをことさらに責め立て、ダメな息子がストレスに
なって仕事に集中できないと自分に言い訳しながら俺をいたぶったよな。時には暴力まで振るって。
 あれ以来、俺は乗用車に乗るのが恐ろしい。理性は安全だと諭すのに感情がそれをひたすら拒むんだ。
 2人で乗るタクシーなんて最悪さ。運転手に話し掛けられるだけで怯えてしまうんだ。お代云々という最低限
の会話すら出来ないんだぜ。そうそう。免許も取れなかったよ。教習所にいってもハンドルを握る手が震えてね。
 ま、車で拉致の件でなくても、あんたはいつもそうだったさ。自分は正義で強者で導いてやる者。俺はいつも
庇護を受けないとやっていけない弱い人間でないと納得しない。自分の意見を持つな。俺の命令に従え。
 一見リベラルな振りをして話し合いをしても、自分は絶対に譲らない。話しあいとは名ばかりで、結局は俺が
あんたに対して、自主的に非を認め謝る情況をつくりあげるだけの茶番劇だったじゃないか。
 そう。俺はあんたの嘲笑と罵倒と暴力でほぼ完全にスポイル……いや、去勢されてたんだよ。
 その桎梏を振り払うには、もうこれしかないのさ。

 それだけ言い終わると、俺は手足を縛られて床に転がっている父を見やった。涙と鼻水で汚く汚れ怯えきった
顔からは昔のような威厳……今思うにその成分の大方が虚勢であっただろうが……など微塵も感じられない。
 
 俺は、奴に囚われた十数年を取り戻すため、握り締めていた包丁を一気に振り下ろした。


暗いなあ……つぎのお題は明るく「美少女」「純白」「珊瑚礁」だ!!!(なんのヒネリもないな)
「運転手さん、トウサ出版まで急いで。あと二十分なんだ。お代、はずむからさ」
 タクシーの運転手にそう言った瞬間、体がのけぞった。周りの街並みが消しとんでいく。
ガアンと車は工事中のバリケードを突き破り、作りかけの橋に突入。道が……
「ない! ない!」 ふわあっと体が浮きあがる。お腹の辺りがたよりない。
浮遊しているんだ……。気がつくと道路に戻っていた。
「いやあっほおおお〜! 踏み台があって助かったぜ。あんちゃんってラッキー、池田あ?」
 僕の体が恐怖とダジャレに凍りついた。
「残りあと十分だな。充分だぜ!」
 時間は足りるだろうか。編集長の怒った顔と運転手のギャグに冷気を感じた。
「もう一本、きたぜえええ〜」
 目前に新たな橋が迫ってきていた。もちろん工事中だ。
「取って喰おうってわけじゃねえからガチガチになんなよ。あ、それ、なんて言うんだっけ。
もう逃げられないっての。出版関係だろ? しっこって言ったっけ。ションベン? ガハハ」
「し、桎梏(しっこく)」 もうやめてくれ。マジ凍りそうだ。
「そうそう、桎梏、桎梏う。ほら、もうすぐシッコクの暗闇をジャンパーだぜ」 
 再び浮遊。僕の体は恐怖よりも、むしろギャグでかたまっていった。すべての元凶はこの
男だ。僕は身をのりだすと運転手の首をしめた。運転手はハンドルを離すわけにもいかず、
必死で耐えている。まさしく桎梏。タクシーはシッコクの暗闇へと溶けていった。

遅かった&3行オーバーの18行。
次のお題は>>275
277名無し物書き@推敲中?:02/07/17 23:27
チクショォォーーッ>>275のお題で良い感じの話が浮かんだのに
余裕で30行オーバーしちまうよォーーッ
何処にぶつければ良いんだこれをよォーーッ誰か助けれくれ
278美少女、純白、珊瑚礁:02/07/18 00:59
美少女の名前をレティシアと言った。
美少女というのは僕が単にそう思ってるだけで、
彼女が自分を美少女であると思ってるかどうかは分からない。
いや、思っているとしたら純白な美少女ではない気がする。
自分の美しさに気づいてる少女は、いたずらに打算的になる。
彼女が打算的であればあるほど、その色彩はブルーに染まっていく。
何故なら「あの子の方がキレイかもしれない」「ワタシはこの子よりキレイ」と、
それは他者との露骨な比較がくりかえされる物憂い世界に彼女が埋没していくことに
他ならないからだ。そんな時、少女の表情は純白ではなくブルーだ。
会ったばかりのレティシアの色彩は今のところ読み取れない。
少しはにかんで笑っているだけだ。
願うならば僕は、彼女が珊瑚礁の海のような澄んだブルーであって欲しいと思った。
ちょっといたずらにずる賢く、それでいて美しく澄んだままなら、
彼女は大人と子供の間に揺れる最も魅力的な美少女であるに違いないから。


えー、次は「パンクロック」「国会議事堂」「宇宙科学」で!
279名無し物書き@推敲中?:02/07/18 01:26
 薄着一枚に着替えた美少女が、扉をたたく。
 男は無表情に飲み物を差し出し、粗末な椅子で一服している。

 心もとなさそうな表情でベッドに横たわり、「お願いします」
と言った彼女は、こみあげる何かを必死で押さえている様だった。

 やがて、男の目前に、おどろおどろしい光景が広がる。
 珊瑚礁にも見えなくもないが、グロテスクな事には変わりない。
 こんなもの見たくない、自分が見たいのはこんなものじゃない。
 男は自分の職業の因果を感じる。せっかく、せっかく・・・嗚呼。

 彼女は、いまだこみあげるものを必死に押さえていた。
 胃から逆流しようとする、純白のバリウムを。

※近頃では透明のもあるらしい(^^)
次のお題は:「美少女」「廃校」「珊瑚礁」でお願いします。
280名無し物書き@推敲中?:02/07/18 01:29
すみません、遅れてます(涙)
次のお題は:278の「パンクロック」「国会議事堂」「宇宙科学」
でお願いします。
281パンクロック、国会議事堂、宇宙科学:02/07/18 03:52
「なァ、パンクロックのお兄ちゃん、
僕に夢を見せてくれないか?
国会議事堂の中で僕らの自由が切り売りされてるんだろ?
僕らの望まぬように、何かが確かに決定されていくんだろ?
宇宙科学の果てしなきロマンのような、
どこまでも広がる自由について、
いつまでも飼いならされないパンクロックのお兄ちゃん、
あんたの肉体と反逆の思想で教えてくれないか。
毎晩、抵抗する夢を見て、暴動の歌を唄う。
多分、パンクロックはブラックホールよりロマンチックさ。
そうだろ?」
 リリックは潤んだ瞳で、ロットンに語りかけた。
「坊や、パンクロックはブラックホールよりドラマチックさ」
 ロットンは唾をぺっと吐きながら言った。


次は「自由」「涙」「プロ野球」にしましょう。



282名無し物書き@推敲中?:02/07/18 04:07
そもそも、自由などというものが、どこの世界に存在したであろう?
抑圧の対語的術語としてしか、それは存在しなかった。
まして、プロ野球…プロフェッショナルの世界には無縁のものだ。
激しく歪められたドラフトの後の場景。
今は鬼籍に入った彼が涙も無く泣いていたのは気のせいだろうか?

「鬼門」「落日」「咳」
「鬼門」「落日」「咳」

工場での仕事を終えて、駅までの小径を辿っていた。
もうそろそろ落日の時刻で、ひしめく街並は淡いオレンジに支配されてた。
駅が近くなって、大通りへと出る。人々がちらほら歩いている。
大通りの割には物静かな場所で、そこが気に入っているのだけれど、
どことなく穏やかでない雰囲気がそこら中に在って神秘的だった。
近くで騒いでいた旅行帰りの一団が散開してしまうと急に静かになる。
薄闇に沈む。夕暮れ時。
ポッと街灯に灯が燈ると、見計らったように町中の照明がボンヤリ点いた。
薄暗い中を弱く照らして、妙な空間が広がっている。
何だか喉の奥がネトネトして、咳を二三回繰り返した。
振り返ると、闇が包む。夜がゆっくりと更けていく。
アスファルトの伸びる先に、微光の遠くに、駅が構えていて、
列車が軽快な音を立てて発車するのが聞こえた。
遠い線路に列車は出てきて、ひどく重っくるしい後尾燈を引いて滑って去った。
次の列車に乗らなきゃ、とは思うのだが、あの陰気な駅が恐ろしい鬼門に見えて、
自販機に巣を張っている蜘蛛ばかり見つめていた。

次は「黄昏」「近頃」「鞠つき」
284「黄昏」「近頃」「鞠つき」:02/07/18 07:40
 実験機に電源が入る。
 15階ぶっ通しのアクリルの部屋で、ロボットアームが鞠を掴む。

 「スタート!」博士が助手に指示すると、アームは鞠つきを始めた。
 「強さを・・・強さを変えてみろ」博士の声は、心なしか震えていた
 「ばらばらの強さで鞠つきを。気圧も変えて」

 実験は終った。鞠は正常に上に跳ね返った。
 博士はうずくまり、こう呟いた
 「私は騙されていた」

 昔、失意の野球投手が、病院で鞠をつく少女と話す漫画があった。
 漫画の中の少女は言った
 「へたっぴいね。同じ強さで鞠をつかなきゃ、変な方向に跳ね返るの」

 長年にわたる綿密な実験の結果、その虚偽性が実証されたのだ。
 「嘘だった。私は騙されていた!」
 人生も黄昏の75歳、やっと今頃になって真実に目覚めるとは。

 慟哭が、実験室に響いた。

※うーん、即興(笑)
次のお題は:「胸の高鳴り」「消しゴムのカス」「方位磁石」でお願いします
今日の理科の授業は電気の実験だった。
乾電池と豆電球をつないで電気が流れてることを
確かめる。その電線の上に方位磁石を持っていくと、
なんと磁石が動いた!
・・・・・いつもの僕なら実験に夢中になってたと思う。
でも今日は実験そっちのけでただそわそわしてた。
胸の高鳴りを抑えることができない。
山のような消しゴムのカスとともに出来上がった
一通のラブレター、次の休み時間に返事をもらうんだ!



たまたまつけたら新しいおだいがでてたからちょっと書いてみた。
お題は、継続でいいや。
286<:02/07/18 08:12
キーンコーンカーンコーン・・・、授業終了を告げるチャイムが鳴った。
いざ、決戦のときだ!!僕の胸の高鳴りはとどまる事を知れない。
早速僕は理科室を出るところの藤本さんに声をかけた。
「ちょっと僕と一緒に裏庭まで来てくれない?渡したいものがあるんだ・・」
「え?どうしたの・・。別にいいけど」
第一段階完了!この調子なら本番もうまくいくぞ!!僕は期待いっぱいの心境で裏庭へとたどり着いた。
裏庭はさいわい、僕たち二人以外誰もいなかった。僕たちを見守るかのように、空を薄暗い雲が覆っていた。
僕はポケットからラブレターを取り出した。消しゴムのカスが少しついてたので振り払った。そして藤本さんの瞳を見つめた。
「僕はずっと藤本さんのことが好きだった。これ、僕の気持ちです。受け取ってください。」
僕は勝負を挑んだ。そして真剣に思いを伝えた。藤本さんは少し浮き足立った様子だ。だが、しばらくして彼女は口を開いた。
「ごめん。私、あなたみたいな人興味ないんだ。あんまり気にしないでね・・。」
・・・・・。僕は砕け散った。すべてが終わった・・。
空から雨がぽつぽつと降ってきた。やがて雨は大粒になり、そして極太の稲妻が空を舞いあたりに轟音をとどろかせた。
「私、もう校舎に帰るね。雨に濡れるのは嫌だから。雷も怖いし・・」
藤本さんは足早に裏庭から去っていった。ラブレターは無残に捨てられていた。
僕の心はまるで電線に近づけた「方位磁石」のように、指す方向を見失っていた。

続編風。次は「花火」「高級車」「滝」で


「胸の高鳴り」「消しゴムのカス」「方位磁石」

 こんなに天気がいいっていうのに僕は学校に行かなくちゃいけない。
勉強が嫌いなわけじゃない。学校が嫌いなわけでもない。
ただ、しなくちゃいけないことはしたくなくなるんだ。
 だから一時間目の算数の時間に、ぼくは大量の消しゴムのカスを作りだした。
先生が途中の計算式は消しちゃいけないっていうからね。問題と答えのあいだを、
腕がいたくなるまでいっしょうけんめい消しゴムをかけた。
こんなにきれいにノートを取る小学生はそうはいないだろう。まっしろな空間を見つめて、
ぼくは誇らしく消しゴムをおいた。
 さて次はこの消しゴムのカスを机の穴につめるばんだ。すこし入れては鉛筆で押しかためる、
これをいいかげんにするとすぐ浮いてきて取れちゃうんだ。けっこうコツがいる。
 びみょうな力かげんで穴をうめているときだった。ぼくの耳にととつぜん先生のさけび声がきこえてきた!
ぼくはあわてて顔をあげた。
 「そのとき先生はどうしたか。方位磁石もない……しかし、時計があったんだな」
 なんのはなしだろうか。いつのまにかみんなは計算をやめて先生のほうを見ていた。
 「まず腕時計の短い針を太陽の方向にむける。それと十二時の数字の真ん中が、なんと南になるんだな!」
 なんだって。ぼくはいそいで自分の時計を見た。こいつがそんなちからを持っていたなんて。
これがあればぼくは裏山で迷うことなく冒険をつづけることができる。
そのすがたを思うと胸の高鳴りがおさえられなかった。いっこくもはやく裏山にいかなくては!
 しかし先生の話もつづく。そうか、先生ははかせなんだ。すると学校は城か、そうか!
 いままではむだな日々じゃなかったのだ。ぼくは城にかよいつづける勇者だった。
 
遅かった。お題は「花火」「高級車」「滝」で 。
289「花火」「高級車」「滝」:02/07/18 21:22
 「花火大会、はじまっちゃうよ」
 「仕方ないだろ! 渋滞なんだから」
 世間一般でいう所の恋人同士という関係になってから2回目の夏、僕達は思い出の花火大会を    
見にこの町までやってきた。倦怠期というものがある。今の僕達がまさにそうだ。僕達はそんな
状況を打破する為にここまで来たのだ。

 クラクションが鳴り響く。車列は一向に進む気配を見せない。この町へ繋がる鉄道は去年から
事故で止まったままである。したがって今日の花火大会に来る人々は皆バスかマイカー、結果が
この有様だった。
 「わき道入っちゃえ」
 「それは去年やって酷い目にあったろ」
 「じゃあどうすんのよ?」
 「このまま車が進むのを待つ」
 彼女がぷいとあっちを向く。
 「つまんない、つまんない、つまんないっ! もうおうち帰る!!」
 「元はといえばお前が用意に手間取ったからだろ!」

 後続車からのクラクション、前の車が少し前に進んでいた。僕は慌ててアクセルを踏んだ。
急発進、そしてドンという衝撃。気がつくと目の前には割り込みを試みてきたのであろう高級車。
額から噴き出した汗が滝の様に流れる。
 「あ〜あ。やっちゃった」
 別れてやる、絶対に。僕はその一言が彼女の口から出た瞬間心にそう誓った。

 20行。うー……。
 次のお題は「雷」「夕立」「夏休み」でお願いします。
 人間はこの世界に私ひとりだ。

 たまった有休を夏休みと称し、南国の無人島にひとり来ていた。木々の木陰においたベン
チに寝そべと、ふと笑いがこみ上げてきた。こうした生活が夢だった。まさに叶ったのだ。
残念なのは現実へと戻っていかねばならないことだったが。いまはこの生活を楽しもう。白
く焼きあがる砂浜、青い海からおしよせてくる波。いつしか眠りに落ちていた。

 冷たい。顔に何かが落ちた。辺りが薄暗くなっている。空には黒々とした雲。いきなり重
々しい音が鳴った。海のむこう、はるか彼方に光の筋が輝いた。たちまちに土砂降り。ひど
い夕立ちだ。ぬかるんだ土をけり、テントにとびこむ。濡れた髪から滴が垂れ落ちた。
 することがない。雨音を聞くのに飽きるとラジオのスイッチをひねった。異国の言葉が流
れだす。ニュースを読み上げているようだ。速い口調で聞き取りにくい。同じ単語が何度も
出てきているので理解するのは容易。と、大きな閃光と同時に轟音が響き渡った。雷鳴は私
の心までをも貫いた。

 夢の生活はまだ続きそうだ。

 わたしはひとりだ。

 空白行いれて18行。空行は数に入れるんでしょうか?

 次は「試食」「メカ」「富士」で。
291「試食」「メカ」「富士」:02/07/18 23:44
 「一富士、ニ鷹、三ナスビ
  素晴らしい明日を約束する縁起のよい夢売ります。
  (上)富士:5万円 (中)鷹:4万円 (並)ナスビ:3万円」

 ・・・正月にこの広告を信じて半年、彼は素晴らしい人生を送っている。
 試食のつもりで5万円払うと、本当に富士山から飛び立つ夢を見た。
 翌日は、もう筆舌に尽くせない幸せな1日だった。だから書けない。

 その日のうちにまた(上)を注文。富士山の夢を見て幸せな毎日を送っている。
 一体どんな仕掛けなのか、夢を送信するメカなのか?
 そんな事はどうでもよかった、ただ、毎日5万円・・・きつい。
 
 明日を約束する夢のため、彼は昼夜を問わず真っ白な灰になるまで働いた。
 昨日など瞳に涙を一杯溜めた恋人を振り切って仕事へ。一体これって? 

 とはいえ明日の富士の夢も注文済。
 と、時計を見ると23時46分・・・しまった、夢を見る時間がない。

 いい夢なしで明日に耐えられるだろうか。
 時計が「明日」への歩みを続ける。
 彼は、死を予感した。

※題名:「あしたの上」^^;
次のお題は:「テラス」「サーチライト」「レフト線」でお願いします。
292名無し物書き@推敲中?:02/07/19 00:03
「試食」「メカ」「富士」

 部屋に呼んだ老婆を、青年は力いっぱい殴り飛ばした。
 殴られた老婆の体は近くの応接セットのテーブルを巻き込み、派手な音を立てて床に転がった。
「なんなんだてめえは! ああ! ちゃんとやってんのかゴラァ!!!」
 使用人たちが心の耳を塞ぐ中、青年の暴力は小一時間ほど続いた。

 その老夫婦は、ご近所ではとても有名だった。
 手を繋いでのんびりと午後の町を散歩し「息子夫婦が油分がなんだ、塩気がどうだとうるさくて……」と愚痴
半分、大切にされているという自慢半分の会話をしながらスーパーの試食コーナーで3時のおやつ。
 夕刻に公園の高台に行き、この町で一番素敵な風景、そう、茜色に染まる富士山と明かりが灯り始める裾野の
家々、を見てから近くにあるお屋敷に帰っていく。
 この町で一番素敵な風景は、点景としての彼らを除いては成立しないのかもしれない。

 「馬鹿野郎! ホントにプログラム通りに動いているのか!」
 今日も老婆を殴り飛ばす青年は、心底怒りに燃えていた。あの祖父が死ねば莫大な遺産が自分だけに転がり込
む。連れ添いを亡くしてからボケ始めたジジイに止めを刺すためにメカ老婆を特注で作り、祖母に成りすまさせ
て過剰な運動とカロリー摂取を強いて速やかにあの世に送り込む作戦だった。
 それが何だ。日々元気になっていくじゃないか。最近は記憶まで戻り始め、味方につけた親戚たちまで向こう
に寝返りそうだ。何故こんなことになったのか、まるで理解できなかった。
 
 青年はロボットの「瞳の色」を感じることはできなかった。理解という言葉では解釈できないことなのに。


また長くなってしまった。鬱。
次のお題は「牽強付会」「錯誤」「真冬の海」で
293292:02/07/19 00:05
かぶってしまった。スマソ。
お題は291で
「テラス」「サーチライト」「レフト線」

サーチライトがいっせいに新校舎のテラスを照らし出した。
白い光の向こう、人々が見上げる先に一人の少年がいた。
まだ真新しいテラスの向こう側には、通称レフト線―中央駅から市庁舎の
左側を通る鉄道―の線路があった。
「君、危ないから降りなさい!」
署長さんが拡声器で叫ぶ。
しかし少年は意に介す様子もなく、ただ手の中の方位磁石を眺めていた。

・・・・・・もうこの方位磁石はなにも指し示してはくれない。
少年は悲しかった。藤本さんの一言が頭の中にこだまする。
「ごめん。私、あなたみたいな人興味ないんだ。あんまり気にしないでね・・。」
無残に捨てられたラブレター、僕の心もあのとき捨てられたんだ・・・・・

急行列車が迫ってくる。少年は吸い寄せられるように手すりを乗り越えた。
その刹那、野次馬の最前列にいた少女の姿が目に飛び込む。
それは藤本さんだった。
少女は署長さんの拡声器に負けない勢いで叫んだ!

次は・・・・・・>>292のお題でどーぞ。
 彼女はロマンチストだった。それもいまどき珍しいほどに重度の。
 当時僕は彼女と仲がよく、付き合って暫くの間は飽きることがなかった。けれど少しずつ、
その時代錯誤的な少女漫画を気取る言葉が癇に障るようになっていった。
「ごめんなさい。先輩の気持ちは嬉しいのですけど」
 ――そんなことを言わないでおくれ。君が生まれて来なければ、僕が生まれてくる理由も無かったんだ。
 そういった趣旨の、脳みそが腐ったような言葉を何度と無く吐かされた。
 僕は彼女の俳優だった。彼女の望む言葉を紡ぎ、彼女の望む動きを演じた。
 彼女の造った脚本は時に僕を厳しい男に仕立て上げ、頬を叩いたり、腹部を蹴ったりして、
心にもない嘘を嘘であると是正させる役回りを何度と無くさせられた。
 ヒロインが自分の本当の心を嘘で欺いて、男を拒絶する。だが男は諦めず、何度となくヒロインに
自らの気持ちをアピールし、時に愛のムチをもってして、本当にヒロインの為になることをなす。
次第にヒロインは男に惹かれ、愛を交わし、連載は終了するのだ。
 だが、彼女はこだわるタイプだったらしい。いつまでたっても次の段階へと物語が進むことはなかった。
いらついた僕が順序を無視して【愛を交わす】段階へとことを運ぼうとしてからは、特にそれが酷くなった。
「もうつきまとわないで!」「近寄るな!」「これ以上やれば警察よぶわよ!」
 リテイクの度に言葉は厳しく変化し、彼女はどうしようもなく名優だった。
 僕との共演作品をよりよい物にしたい心理からのことだろう。だが僕には耐えられなかった。

「それで、彼女を真冬の海に放り投げたと?」RH+刑事は呆れたように聞き返した。
「何だって殺人者を警察が保護しなきゃならんのかねぇ」
「殺されたのは【牽強付会】のアタマの娘です。仕方が無いでしょう。彼を裁くのは司法であって暴力団では――」
 RH−刑事が聴取を抱えて律儀に応答する。
「んなこたぁ判ってるよ相棒。愚痴くらい言わせろよ」RH+の口から力ない声が漏れる。
「まぁ、気持ちは解りますがね」眼鏡を直してRH−も小さく呟いた。
 
【牽強付会】を牽強付会・・・その上大幅に超過・・・
次は「中華思想」「メルトダウン」「星の王子様」で
 今までの私は、どこにでもいるフツーの女子高生だった。そして、これからもフツーに進学し、
フツーに就職、フツーに結婚、フツーに子供を産んでフツーに一生を終える、と思っていた。
 これまでの経験でフツーでなかった事といえば……そう、このどこか抜けてるところのある男。
コイツがこともあろうに、クラス全員の前で私に告白してきやがった事だ。私は恥ずかしさの余り、
頭がメルトダウンを起こしてブッ倒れてしまった。こうして、半ば強制的に学校イチ有名なカップル
にされてしまったわけだが、こいつ、馬鹿だが決して悪い男じゃない。顔もいけてる方だと思うし、
……何より、優しい。こいつと一緒にフツーの青春、というのもいいかな、と思い始めていた。
 ところがある日、世界中がフツーでなくなってしまった。地球が宇宙人に侵略されたのだ。
何でも、「中央銀河連合軍」とかいう連中で(名前に「中央」なんて付けてるのは、テメーが
この世で一番偉いと思ってる中華思想みたいなもんなんだろう。学校で習った)、地球を植民地に
するのが目的だそうだ。あと、前に侵略したナントカ星の王子様ってのが地球に逃げてきてて、
それも捕まえたいらしい。その王子の持ってる守護神だか何だかが、連合軍にとってはこの上なく
怖い存在らしいんだけど、詳しい事は当の王子本人も良くわからないそうだ。
 ……何で私がこんなに事情を知ってるのかって? それは話せば長くなるんだけど……つまり、
その王子様がなんと私の彼氏で、私はもうフツーの青春を送る事などできそうにない、ってことだ。

次は、「軍神」「カード」「無色透明」でどうぞ。
297「軍神」「カード」「無色透明」:02/07/19 13:15
 部屋はカーテンに包まれていた。電灯はなく、中央にある吊り下げ式のランプが暗い部屋を灯している。風通し
が悪いのか、不気味で今にも暴れ動きそうな動物の剥製が悪いのか、部屋は妙に湿った空気に包まれていた。
 せまい部屋の中央には、五芒星が描かれた、無色透明のガラステーブルが置かれている。テーブルの上にはタロ
ットカードが並べられていた。
 テーブルを挟んで向かい合うように、二人の男が座っている。一方の男は、深い皺で顔を埋めた老人であった。
不気味な笑みを浮かべている老人の体は、ダークブラウンのローブで包まれていている。
「それで、俺の運勢はどうなんだ? 良いのか? 悪いのか?」
 口を開いたもう一方の男は、屈強な体つきをした兵隊であった。その顔には答えを待つ不安とじれったさが入り
混じっていた。
「おまえさんの運勢のカードは、戦車。しかし、本来とは逆の位置にある」
 五芒星の中央には、戦車が描かれたカードがランプに照らされていた。
「未来は敗北。おまえさんは明日から戦場に向かうのだったね。やめといたほうがいいだろう、一撃の銃弾によっ
ておまえさんの体は貫かれる。おまえさんは軍神に見放されたのだ」
 老人から告げられた言葉を聞いた兵隊の顔は蒼白の色に包まれていった。そのあとには、沸騰したように憤怒の
色が浮び上がった。
「貴様! 老いた占い屋のくせに俺の武運を侮辱したな! 許せぬ」
 兵隊は座っていた椅子を持ち上げ、振りかざした。
 老人はすかさず懐から拳銃を抜き出した。電光石火の早技で額を貫かれた兵隊は、血の色で顔面を塗られて、床に
倒れた。 
「たかがカードの結果に動揺してしまい、自らの運勢をも揺るがしてしまった。おまえさんは、自分の心の弱さに
敗北してしまったのさ」
 老人は兵隊の死体を背負うと、そのまま秘密の地下室に運んだ。翌日には、兵隊の体は動物と一緒に並んでいた。


次のお題は「空中楼閣」「克己」「エンブリオ」
298「空中楼閣」「克己」「エンブリオ」:02/07/19 13:52
 克己心こそが人生を乗り越える唯一の方法です、と女は言った。俺は同意しなかっ
た。
「人生てあんた、少なくとも今乗り越えるべきものは人生ではない」
「あなたのたましいです」
「俺は明日を生きるだけの金が欲しいだけだ」
「それこそが自分を乗り越えるということなのですよ。まだ空中に楼閣もなく建物
が地を這っていた時代の昔から、それは同じです。人が自分の足を使って歩いてい
た時代、目的地を探すという活動をもって電気信号が脳に訴えかけていた時代とは
違って今では人はより一層意識的に克己を重ねなければならなくなりました」
 俺は女の言うことがわからなくなった。この女は、何を言っているのだ? 俺の
知っている空中楼閣とは、蜃気楼のことではなかったか。空中に浮いた楼閣は存在
していない。俺が知っている建物は地面の呪縛から逃れてはいない。しかし女の存
在は蜃気楼のようにあやふやだ。
「……もう来れそうですか? 西暦二千年の過去から、……自我のエンブリオ、さ
あ早く、こちらです。この意識ばかりが肥大した世界を救えるのは原始的な意識の
エンブリオだけなのです」
 そう言って女は手招きした。徐々に、自分と他人との境界が薄れてきた。そして
最後には粗野な意識だけが残った。そして俺の意識は、意識の楼閣の一部にがっち
りと組み込まれた。時間の感覚が無くなっていた。きっと俺はここで固定されるの
が似合っているのだろうな、と思った。

次のお題は「紫蘇」「蛍光灯」「サッカーボール」
299「紫蘇」「蛍光灯」「サッカーボール」:02/07/19 17:03
彼女と結婚することになった。
僕は、広い窓から海が見える部屋を探してきた。
彼女は、洗濯物がしょっぱくなるし、車が錆び付くわと言った。
フローリングの床には、観葉植物を置いて、ブラインド越しの陽があたるようにした。
いつのまにか、絨毯が敷かれ、ブラインドは遮光カーテンになっていた。
ベランダの柵には、つるバラをはわせようと思った。
彼女は、プランターに青紫蘇とネギとパセリを植えた。
食卓の上には、白熱灯のペンダントライトを手配した。
彼女が電気屋と交渉して、頑丈なカバーの蛍光灯タイプに替えさせた。
蔵書を美しくみせるために、カットガラスのはまった書棚を居間に運び込んだ。
勤めから帰ってくると、書棚は納戸の片隅に収まっていた。

彼女はいつもこうなんだ。そして、彼女はいつも正しかった。
サッカーボールをところかまわず蹴りこむ息子は、おおらかで優しいママが大好きだ。
もちろん、僕も。

次のお題は「鞄」「流星」「波音」
300旧家:02/07/19 18:47
[鞄」「流星」「波音」
その部屋は、田舎にあって始終潮騒が響いていた。
雪子は、暗い部屋で蝋燭の明かりだけを頼りに、窓辺に近づき、その細く白い、なめらかな陶器のような両肢をすぅと泳がせ、そっと、窓を開いた。
波音が、あの、暑い夏の夜に特有の空気に乗せられ、一辻の風が部屋に差し込み、とても、近くに聞こえた。
「お父ちゃん、まっとるから……、帰ってきてや」
私は、雪子の問いに小さく頷いてみせた。
「流れ星に、おねがいするん。昔言ったやろ。お父ちゃんが帰ってくるようにって三回言えば、お星さまがかなえてくれるんやろ」
けれども、その日は曇りで、外には月一つ見えなかった。
それでも、雪子は、首がさぞ疲れるだろうと思えるほどに、窓から空を見上げ、流れ星を待っている。
「だいじょうぶや、帰ってくるから、安心しい。お父ちゃん、この前お願いしたけん」
私は、小さな鞄を一つ提げて、妻に小さく目配せをして、雪子を寝せるように言った。
次に、流星を見たら、雪子が幸せになるように祈ろうと思い添うて、家の前で待つ特攻隊のジイプに飛び乗る。

次は、「仮面」「高揚」「永遠」で、お願いします。
301「紫蘇」「蛍光灯」「サッカーボール」 :02/07/19 18:55
得意先の中庭に育つ紫蘇を見つけたとき、
ある過去の情景がふと脳裏に蘇った。

蛍光灯のもとで縫い物をしていた祖母の記憶だった。
視力も弱まってるというのに器用に針の穴に糸を通す祖母の傍で
幼少の頃の俺は寝そべりながら、たわいも無いことを話し続けていた。
祖母は手を休めずに柔和な表情で話を聞いてくれていた。
俺が話し疲れると祖母はよく漬物をだしてくれた。
夏になると決まってソレは、生姜の紫蘇漬けだった。
不自然なほど真紅に染まった生姜をほおばると
酸味と塩辛さが口に広がった。

日が暮れかかった頃、親父が帰ってきた。
いつものように酒臭い。
覚束ないあしどりでその漬物の器を足蹴に倒し、
そしてまた、いつものように一言二言祖母に悪言をつくと
祭壇脇の安い一升瓶の酒を手に取った。
日に焼けた畳にはおどろしい紫蘇の朱が広がった。
俺は汚いものを見る目つきで親父をにらんだ後、
家の外に飛び出した。
庭に転がっていた古びたサッカーボールを見つけると
おもむろに鬱憤をそのボールにぶつけ蹴り放った。

(あのボールは何処にとんでいったのだろう・・・。)

気がつけば俺もあの頃の親父と同じ歳になってしまった。
わかりたくなかった親父の気持ちが胸を掠めた。

※一歩出遅れてしまいますた。
次のお題は>>299さんのものでお願いします。
302301:02/07/19 18:58
さらに遅れた投稿でスマソ。
次のお題は、>>300さんの
「仮面」「高揚」「永遠」でお願いします。
チキンラーメン。しかも、卵一個プラス。贅沢ぅ。(T-T)
304「仮面」「高揚」「永遠」:02/07/19 20:52
「もう終わりにしよう」
彼女にそう告げられた僕は、しばし言葉を失った。
頭の中を様々な想いが交錯し、考えが纏まらないまま、押し出されるように言葉をつむぎだした。
「え? え? つまり?」
彼女はうつむき、表情は一層暗くなった。彼女が口を開こうとしているのに気が付くと、
僕はそれを遮るように
「わかった」
とだけ呟いた。

恋愛の高揚感は永遠には続かないのか。今までは、そんなことを考えることすら無価値に
思えるほど、僕らはうまくいっていた。少なくとも僕はそう信じていた。
いや、しかし、今考えるとお互いに仮面をつけあったまま、本当の自分をさらけ出さずに
付きあっていたような気もする。つまり別れは、来るべくして来たのかもしれない。

そう考えると、僕は自分の仮面を脱ぎ捨て、素直に正直に自分の想いを告げた。
「最後に一回だけやらせて」

ーーーーーー
テレビ見ながらだと、上手く書けないナリ。
次は、「催眠」「箱庭」「インクの染み」の三本です。それでは、お楽しみに。
305催眠・箱庭・インクの染み:02/07/19 21:35
ガジュマルの幹のように私の右手にじっとりと絡みついた火傷痕が、嫌いだった。
幼いころの私は自分を取り巻くあらゆる厄災はすべてこの火傷のせいにしていた。
友達ができないこと、運動が苦手なこと、父が早死にしてしまったこと…。
それらすべては火傷が起因しているんだと自己暗示をかけていたのかもしれない。
暗示をかけることによって自身をもてない私の言い訳を、火傷の跡にぶつけていたのだろう。
醜く深く、色濃く刻まれたそれと、久遠にともにする勇気がなかった私は、
何度も向こうの世界に飛び立とうと決意し――すんでのところで留まっていた。
「そんなもん、何てことはないよ」
大方の人たちと同じく、祖母も箱庭のようなかわいらしい庭を手入れしながら幾度となく慰めてくれた。
優しい声で、優しい声音で。
けれどもインクの染みのように広がる痕は手の甲から冷ややかな目を向けるばかりで、
私の特徴にも、ましてや長所にもならないものだった。

大学一年の夏。私の後ろめたいコンプレックスは吹き飛んだ。
自分を好きでいてくれる男性が現れた。
彼がはじめて手をつないでくれた時――火傷の痕に他人の温もりがかんじられた時、
私は悪しき自己催眠から覚醒した。

火傷の跡も淡くなっていた。

#次は「レンコン」「舎利」「藍色」でおねがいします。
306「レンコン」「舎利」「藍色」:02/07/19 22:17
トォバは提婆達多聖人の舎利を運んでいることに喜びを感じていた。
舎利を頂いてから山間についた細い道を歩き続け、もう三ヶ月が過ぎていた。
立ち止まると足が震えて動かなくなってしまうので、途中で休もうなどとは思わなかった。
藍色の冷たい朝霧の中を歩くとき、意識が途切れることもあった。
しかし村に帰り聖人の舎利を祀ることを考えると、トォバは歩みを止めることができなかった。
この仕事を果たすのが自分であると思うと自然に笑みがこぼれた。嬉しくて仕方なかった。
途上、行商の老人と一緒になった。白くて長い髭をもった回楼族の爺さんだった。
まともに食事をとっていないトォバに老人は携帯食の干したレンコンを勧めた。
しかしトォバは丁重に断った。トォバの村ではレンコンは食べない。
それに舎利を運んでいる途中にものを食べるのはなにか不浄な気がしたのだ。
別れ道にさしかかった。老人はここで右に行くという。トォバの村は左の道だ。
道中を同じくできて楽しかったとやつれた顔で微笑むトォバに老人はレンコンを押し付けた。
食べたくないのなら食べなくてもいい。
だけど蓮は仏の座だ。舎利を運ぶ君もこれに座るときがくるかもしれない。
そのとき、蓮がどんなものか忘れていては困るだろう。だからこれを持っているんだ。
トォバは素直に受け取った。
別れ道でトォバと別れた後老人は、あの若者はやはり飢え死にするだろうと思い、暗く沈んだ。

#お題を出すセンスがないので、引き続き「レンコン」「舎利」「藍色」で。
307「レンコン」「舎利」「藍色」:02/07/20 00:54
モニターの画面はいったん真っ暗になり、やがて仏舎利の3D画像が浮かび上がる。
「ここのお寺は大丈夫みたいですよ。あ、あれ、主任大変です!」
仏舎利の姿は溶けるように消えて行き、やがて不思議な模様がモニターに映った。
「どうしたんだ!こ、このレンコンのマークは…」主任は言葉を失った。
最近、各宗派のweb寺院が、謎の新興宗教得手勝手教のハッカー部隊に狙われ、
オンライン参拝の妨害や、webサイト型墓地の破壊などが社会問題化していた。
「ウチの会社も、このお寺の監視は強化してたんだが…やられたな」
「レンコンのマークは間違いなく奴らの仕業ですね」
「ああ、何でも奴らはレンコンを神聖な物としてて、決して口にしないらしい」
「でも、このままじゃ奴らの思うままですよ。主任、なんとかしないと」
「そうだ、やつらの極秘総本山のアドレスをつきとめれば手はあるかもな」
「やって、みましょう」
「その仕事は俺がやろう。君はかわりにデジカメをもって、この店に行くんだ」
「え〜、なんか高そうな料亭ですね」

やがて、各地で得手勝手教の激しい内紛が起こり、
web寺院への襲撃も下火になった。
「主任、あのレンコン料理の画像どうしたんです?」
「奴らの総本山の画像にサブリミナル効果が出るように、紛れ込ませたのさ」

308307:02/07/20 00:57
ごめんなさい!「藍色」抜けた!
なのでお題はそのまま。
309「レンコン」「舎利」「藍色」:02/07/20 04:13

 夜が明けようとしていた。
 暁前の藍色の空は、群青の夜空に負けず劣らず美しい。
 けれどその美は僕らへの警告だ。
 もうすぐ姿を現す過酷な日光を知らせる為の……。

『旧校舎利用について』

 黒板の片隅に、たったそれだけの文字列が力なく群れている。
 僕は手を挙げ、委員長に発言を求める。彼は頷いて認めた。
「利用とは具体的にどのようなものでしょう」
「花壇、あるいは温室を設け、ヘチマなりレンコンなりを生徒に植えさせる気らしい。断片的に聴いた
情報なので正確ではないかもしれないが、少なくともこの建物を残す気はないようだ」
 覚悟していたことではあったが、皆が言葉を失った。
 ふと、この沈黙が通夜に似ていることに何となく気づいた。
「それで、対策委員会なのですね」僕以外の誰かが言う。
 委員長は厳かに言った。
「では対策案を提示する」
 話し合うことはあまりに少なく、取りうる行動は一つしかなかった。
 対策委員会は破壊者達を呪うことで一致した。
 適用範囲は工事関係者から依頼者たる校長まで。
 最初は警告だ。だがもし彼らが脅しに屈しないようであれば、僕らは殺人さえ厭わないだろう。

 夜が明ける。
 昼間の活動は辛く厳しいが、負けるわけにはいかない。

 この校舎に眠る30体以上の生徒の利益を守る義務が、僕らにはあるのだから。

次は「ヘチマ」「抗戦」「電話代」で
「ヘチマ」「抗戦」「電話代」
老人は走っていた。
帯刀こそしていないものの、羽織袴に高下駄といういでたちに
彼がかつて名の知れた武士であったことを疑う者はあるまい。
彼は老人にしては背丈が高かった。おそらく昔は肩幅もあっただろう。
短く刈り込んだ白髪、同じく白い太眉を彼は引き締め、双眸にはただならぬ決心をうかがわせていた。

ぬかるみを駆けながらも彼は時折懐へ手をやり、わずかばかりの金子の感触を確かめた。
なんとしても夕陽の沈むまでに届けなくてはならない。太陽はすでに地平にかかっていた。
昔の彼ならばこんな理不尽にとうてい納得することはなかっただろう。
権勢に対し徹底抗戦を挑む、それが彼の生きざまだったはずだ。
しかし今や、抗議もヘチマもなかった。時代はとうにかわったのだ。

彼はひたすら田圃道を疾走した。
今夕中に電話代を納めないと携帯が使えなくなる、と孫娘がというのだ。
ひと月で数万円? そんなもの自分で払え! とはとうてい言えないおじいちゃんであった。



次は「失笑を買」「温暖化の影響」「手の内を」
311「失笑を買」「温暖化の影響」「手の内を」 :02/07/20 20:26
失笑を買ったのはこれで何度目だろう。現在、失笑の売買は法律で禁止されている。
失笑依存症に陥り、人生を棒に振る人間が増えたからだ。

「失笑止めますか、それとも人間止めますか」なんていうキャッチコピーも目にする。こ
んな一方的で洗脳的な決め付けには、はっきり言って反吐が出る。失笑は上手く利用して
やれば、そんなに悪いもんではない。失笑が止められない自制心のないようなやつは最初
からやられなければ良いだけの話だ。そのあたりのことを政府は全然分かっちゃいない。

一方、他人の反感の取引はまだ合法のままである。
反感なんて百害あって一利なしだと思うのだが、ここのところ需要が伸びているという話
をよく聞く。最近、心の温暖化の影響で他人の反感が買える機会が少なくなったから、そ
の希少価値を理由に収集するやつが増えているのだろうか。
個人的には、反感の方こそ速やかに法律で禁止すべきだと思っている。

そんなことを考えながら、俺は買ったばかりの失笑をパイプで炙り、胸いっぱいにその煙
を吸い込んだ。そして、いつもの感じと違うことにすぐ気が付いた。
ははぁ、ディーラーのやつ、失笑のパッケージに他のを詰めやがったな。なかなか見事な
手の内じゃないか。俺は感心を買わされたようだ。

---
お次は、
「カキ氷」「冷やし飴」「夏休み」
の三本です。それでは、お楽しみにー♪
312ddd:02/07/20 20:50
ごめん、根性ないので、本スレ270あたりから感想を。
私の感想でもいいから欲しい方は、
すんませんが、番号を指定してください。

270 C-
不必要に冗長。長い。要推敲。そのせいで、
せっかくの表現したいニュアンスとか雰囲気が損なわれている。
例えば、
> 僕は川面を見つめ、彼女の横顔に目をやり、そしてまた、川面に視線を戻した。
川面という単語を使い回しすぎ。川を表現するのでも、
せせらぎ、川瀬、川筋、淀み
いろんな語彙を使い分けることで微妙な情緒が表現できると思う。
> それらが寄り合って流れることで大きな光のヘビを作り上げている。
直喩ではなく隠喩するなら、相当言葉を選ばないと。

272 C
読者を否応なしに引きずり込む流れ作りがちょっと弱い。
なんか漫画のネームっぽい。
> イカ怪人がバスを襲撃。そりゃあ、子供向け特撮番組あたりならそれなりの絵にはなるだろう。
日常生活の中にイカ怪人が登場するシュールさをもっと描写すると良くなると思う。
この手の文章はのるかそるかだけが勝負だからねえ。

273 C-
正直、あんまし話の中に入れなかった。
日常の中の非日常が書き切れてないから、
> 電波を受け取るのはかなり体力を使うので、
> でも、やっぱりいいよねえ、異文化コミュニケーションっていうのかな。そうそう、どこ
> かの英会話教室のCMは、あたしの考えたことを盗んでるんだよ。ひどいよね。
このあたりの展開に読者がついてこれない。

273 C-
もう少し導入部分で背景や雰囲気を説明する努力をしてほしい。
> そうだな……例えばあんたは恐怖でタクシーに乗れない気持ちを理解できるか。
> そう。俺はあんたの嘲笑と罵倒と暴力でほぼ完全にスポイル……いや、去勢されてたんだよ。
ここを語る前に、雰囲気的に読者を共感もしくは納得させないと。
> それだけ言い終わると、俺は手足を縛られて床に転がっている父を見やった。涙と鼻水で汚く汚れ怯えきった
> 顔からは昔のような威厳……今思うにその成分の大方が虚勢であっただろうが……など微塵も感じられない。
ここまで辿りつく前にたぶん読者は飽きる。話の構造の組み立て方を考えてみよう。

276 C
> 「運転手さん、トウサ出版まで急いで。あと二十分なんだ。お代、はずむからさ」
> タクシーの運転手にそう言った瞬間、体がのけぞった。周りの街並みが消しとんでいく。
導入部でもっと運転手の荒唐無稽な理不尽さを示す描写がほしい。
> ガアンと車は工事中のバリケードを突き破り、作りかけの橋に突入。道が……
> 「ない! ない!」 ふわあっと体が浮きあがる。お腹の辺りがたよりない。
道なき道をひた走り、このタクシーはついには途中で途切れた橋の上を飛ぶ。
状況説明の雰囲気作りが弱い。
「突き破り」の後に、「信じられないことに」、とか、「なんと」、とか
読者の想像を補う描写がほしい。テンポよさげに書いているのに生かしてきれてない。

278 C+
雰囲気は分かるのだけど、説明口調が気になる。
> 彼女が自分を美少女であると思ってるかどうかは分からない。
> いや、思っているとしたら純白な美少女ではない気がする。
何故、語り部がそこにこだわるのか、読者に共感させる要素がほしい。
語り部の主観と客観的な傾向は分けて描写すると良いかもしれない。
ちょっと推敲するだけでぐっと文章は良くなると思う。
313ddd:02/07/20 20:51
ごめん。激しく鬱。逝ってきます。
>>275
「スポイル」ってのは「甘やかして駄目にする」って意味だぞ。
>>313
気にせずに。
お題は>>311にある通り「カキ氷」「冷やし飴」「夏休み」です。
316「カキ氷」「冷やし飴」「夏休み」:02/07/20 22:10
 「冷やし飴って早い話冷たい生姜湯だよな」
 「あ、うん…」
 
 ミンミン蝉、木陰の茶店。夏特有のまっすぐな日差しに店内は薄暗く涼しい。
 俺はこんなシチュエーションが好きではあった。
 「で、お前。彼女と別れたのか?」
 夏休みだというのに。俺は何が悲しくてこんなうっすらと涙を浮かべる男と
向かい合ってなきゃならないのか? うっとうしい事この上ない。そんなことを
思いながら俺はカキ氷をシャクシャクとかき回した。それまで無色だった氷が
みるみるうちに赤く染まっていく。
 「う…うん」
 男の目に涙があふれる。うまくいっていたらうまくいっていたでのろけられ、
うまくいかなくなればうまくいかなくなったで呼び出されてこういう目にあう。
俺は一口カキ氷を口に運んだ。…やはり氷金時にすべきだったかな?ちょっと
後悔が頭をよぎる。今頃は駅前の喫茶店でも同じような光景が繰り広げられて
いるはずだった。面子は俺の彼女とこいつの彼女。いったい何度目なのだろう。
 「仲直りするために花火見に行ったはずだったじゃなかったのか?」
 「それはそうなんだけど、あいつ、あんまりわがままなもんだから」
 男が泣きじゃくりながら冷やし飴の入った湯飲みを両手で握り締める。

 ピリッピリッピリッ。
 携帯が鳴る。俺の彼女からだった。
 「はい、もしもし」
 罵詈雑言。俺は思わず携帯から耳を離した。落ち着け、おい。私はこんな
事をするためにあなたと付き合ってるんじゃないわよ。ばか。もういい、
私たちもおしまいにしましょう、じゃあね。
 目の前では男がシクシク泣いていた。泣きたいのは俺のほうだ。馬鹿やろう。
317316:02/07/20 22:14
 25行。……逝ってきます。

 次のお題は、「うなぎ」「団欒」「キャッチコピー」
でお願いします。
319ddd:02/07/20 22:37
285 C
理科の実験の必然性がないよ。
> なんと磁石が動いた!
> ・・・・・いつもの僕なら実験に夢中になってたと思う。
・・・・・をつけても繋がりが悪い。
あと細かいけど、「・・・・・」→「……」

286 C+
> 第一段階完了!この調子なら本番もうまくいくぞ!!僕は期待いっぱいの心境で裏庭へとたどり着いた。
語り部が主観的すぎるとなんかひくなあ。
もうちょっとこなれた語り口の方が読みやすい。
> 「ごめん。私、あなたみたいな人興味ないんだ。あんまり気にしないでね・・。」
きつい台詞と後半の気遣いがしっくりこない。
> 僕の心はまるで電線に近づけた「方位磁石」のように、指す方向を見失っていた。
雷は強引だけど、「方位磁石」の使い方はうまい。

287 C
全体の繋がりが悪い感じがする。
前半のノートをとるあたりと後半の冒険の関連性。
> そのすがたを思うと胸の高鳴りがおさえられなかった。いっこくもはやく裏山にいかなくては!
> しかし先生の話もつづく。そうか、先生ははかせなんだ。すると学校は城か、そうか!
強引すぎ。文間の繋がりを意識しよう。

---
しばらく休憩してからまた感想書きますわ。
320ddd:02/07/20 22:41
しばらく回線切って逝ってきます。
>>319-320
気にせずに早めに帰ってきてくれ。あんたを待ってる人は大勢いる。
お題は>>317にある通り、「うなぎ」「団欒」「キャッチコピー」。
322名無し物書き@推敲中?:02/07/20 23:35
『じいちゃんの小さいときはなぁ、このうなぎを食うのが夏の習慣だったんだ。』
そう言うと哲夫は孫の前で美味そうに最後の一切れを口に運んだ。
孫の隆は不思議そうな顔をしながら、哲夫の顔を見つめていた。
「それほんとうに美味しいの?」
『うん、昔の天然ものにはかなわんがな、
今のバイオうなぎは一昔前の養殖うなぎよりはだいぶ天然ものに近くなったかなぁ』
そう言って、哲夫は一錠のカプセルを隆にさしだした。
『さぁ飲みなさい。』
「うん、ありがとう。」
隆はニコりとしながら、ソレを受け取り口に投げ入れた。
今の哲夫にとってこんな何気ない孫との団欒が何よりも幸せなひと時であった。
哲夫が20世紀代のレトロなアナログの置時計に目を
やると短針は1にさしかかろうとしていた
(もうそろそろか・・・)

「ジージージー」ブザーの音とともに
壁に埋め込まれたモニターに帽子をかぶった男の姿が映し出された。
男は入り口のセンサーに手をかざし、哲夫の家のオートドアを開けた。
『宮本さん、隆君のメンテナンスに参りました。
3日お預かりしますが、その間の代孫は如何いたしましょうか?』

20xx年、少子高齢化の急進した日本の社会では
ますますの核家族化が深刻な社会問題になっていた。
その為の政府の対策が精巧にできたヒューマノイドロボットの貸し出しだった。
キャッチコピーは『Pleasure of your home〜古きよきあの時を〜』

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『A.I.』+星新一みたいなぁ〜
評論おながいします。
次のお題は『ライター』『白夜』『カステラ』ということで・・・。
323ライター、白夜、カステラ:02/07/21 02:23
僕はライターの炎で夜を燃やした。
そして白夜が美しく広がっている。
薄く煙った冷たい空気の中で、僕らの吐く息は白い。
「ねえねえ、ワタシ甘いもの食べたくなっちゃった」
隣で膝を抱えたマリーがポツリと言う。
「どうして?」
「だってそのライターの炎のまわりの空気って、
 なんだかカステラみたいな色してるでしょ?」
「確かにそうだね、カステラのようにもキャラメルのようにも見える」
「あぁ、ワタシ甘いものが食べたい」
マリーは僕の左肩にもたれかかってくる。
強い風が吹いて、ライターの炎が大きく揺れた。


次は、「革命」「氷河」「ツンドラ」で。
324名無し物書き@推敲中?:02/07/21 03:08
「革命」「氷河」「ツンドラ」

少年は、革命の起きた年に生まれた。国王派だった父親の顔は知らない。
その年捕らえられ、新政府の下乱暴に作られた法律により、
ツンドラの石炭掘りという、強制労働に従事させられているのだから。
残された母親は広い庭で編み物をしながら、少年に歌をうたってきかせた。

小鳥さん、蒼い小鳥さん
あなたは北の国をごぞんじ?
北の果ての、太陽も凍る氷河の国をごぞんじ?
この家の主は今そこにいます
この家の主は、両手を真っ黒にしてつるはしを握っているのです

「ぼくが大きくなったなら、偉くなってお父さんを家に連れ戻すよ」
と、少年は背をぴんと伸ばす。
母親はそれを微笑んで聞いて、楽しみにしているわ、と言った。

お次は、「カンナ」「劇場」「チャイコフスキー」で。
325「カンナ」「劇場」「チャイコフスキー」:02/07/21 04:36
「カンナ」「劇場」「チャイコフスキー」

隣に住む娘はカンナといった。漢字はわからない。
日曜の昼間はいつもピアノの練習をしていた。
いつも同じ所でまちがえる。
毎日繰り返される樂曲。いつも同じ所で間違える。
綺麗な曲だ。プラハの小さな劇場を思わせる。
いつも同じ所で間違える。この前は窓を越して聞いてみた。
「綺麗な曲だね。誰の曲?」「チャイコフスキー」
会話はそれきり。また弾き始める。いつも同じ所で間違える。


そうか、 カンナは 小指が無い。


お次 「太陽」「カーデガン」「参考書」
326名無し物書き@推敲中?:02/07/21 05:36
「太陽は僕の敵」
そんな歌のフレーズが浮かんでくるぐらい、
とても暑い日が続く季節だった。

いつもあたしはカーデガンを着て図書館に出かけた。
夏の暑い日にカーデガンを着ているなんて
まったくおかしな話だが、そうでもしないと
凍えてしまいそうなほど図書館は冷房が効いていた。

あたしは、参考書片手に首を捻っていた。
周りから見れば、あたしは試験を控えた受験生に
見えたかもしれない。
でも、あたしは参考書なんかに興味はなかった。

あたしが見ているのは、司書のお兄さんだ。
首を捻っているのは、どうしたら彼があたしに注目してくれるか?
そればかりを考えていたせいだ。

次は、「キャベツ」「設定」「マジック」でお願いします
327、「キャベ「設定」「マジック」:02/07/21 06:45
あついあついあついあついあついあついあついあついあついあつい。



                      限界か。

おもむろに、冷蔵庫からキャベツを丸丸とりだし
マジックインキででかでかと「24℃設定」と書いてみる。

あついあついあついあついあついあついあつい。そう、それほど暑かったのだ。


次は 鍵穴/錆/魚 
328「鍵穴」「錆」「魚」:02/07/21 08:16

するり、と僕は海の中を沈んでゆく。
蒼と翠と太陽光が混ざった色を力なくかき分けながら。
遥か下方のきらめくみなもを背景に、群れをなした魚影が見える。
その光景がとてもきれいで、顔の筋肉が僅かに緊張した。多分、僕は微笑もうとしたのだ。
僕は昔からこの海が好きだった。
だから、この海に沈んでゆくのは結構な最期であるのかもしれない。
すくなくとも、水面の所々に昆布が黒錆のように浮き、残酷な黒が混じった北の海よりは遥かにいい。
むき出しの顔を小魚が突付く。
打ち揚げられる頃には鼻が鍵穴のようになってるかもしれない。
もっとも、陸に帰れるとは限らないし、その時頭が付いている保証も無い。
笑えない話だ。
笑おうとしても、もう顔は痙攣さえしなかった。

次は「殺人鬼」「聖職者」「大統領」で
「殺人鬼」「聖職者」「大統領」

彼は殺人鬼にも聖職者にもなれる。
彼はこの世で一番多忙であり、責任重大であり、有名である。
彼は多くの人から好かれ、嫌われている。
彼は我々を愛し、しかし、時々憎む。
彼は時に優しく、時に冷淡である。
そして、彼はドーナツを愛している。我々と同じくらいに。

サミュエル・M・ランバート『大統領を称える詩』より
次は「怠慢」「嫉妬」「憤怒」でおながいします。
331名無し物書き@推敲中?:02/07/21 16:12
「怠慢」「嫉妬」「憤怒」

「結局なんだったんだ、俺は」
片手にしおれかけた花束を持ち、浩介は空を仰いだ。
「よくある話だよ。まあそう怒らないの」
横で、憤怒に任せた話をずっと聞いていた輝明が、呑気に言う。
なにが、と浩介は輝明を睨む。
「男の嫉妬ってみっともないって、よく姉ちゃんが言うけど、
本当にそうなんだなあ。浩介はさっさと頭を切り替えて
ほかの子を捜したほうがいいんじゃない?」
「お前こそ、女の一人くらい捜せよ。男として怠慢だぞ」
「あー、はいはい、ごもっともごもっとも」
輝明は、さしてごもっともでもない顔をして、手をひらひら振る。
浩介は口の先を尖らせてその顔を見ていたが、目に付いたゴミ箱に
花束を押し込み、腹いせにそれを蹴飛ばした。
ガン、と不愉快な音を立てて、ゴミ箱は横倒しになる。押し込んだばかりの
惨めな花束がアスファルトの上に転がり落ちて、恨めしげに浩介を睨んだ。

次は「問題児」「鉄道模型」「カレイドスコープ」で。
332名無し物書き@推敲中?:02/07/21 17:20
近くにある下敷きをまるめて覗きこむ。
そこから見る風景は今までと違いまったく別物になった。
まるで、小学生のとき、だだをこねて買ってもらった
カレイドスコープのようだ。動かすごとに景色がかわり、
世界が変わる。
 小学生のときに悪がきで、教師からは問題児だといわれてた僕がいた。
 喧嘩友達だった田中もいた。
 僕は転校することになり、喧嘩別れすると思っていた田中は列車が
 発車する前に白い布で包まれた箱を投げてくれた。何も言わずに
目を離すとそこには錆びれた鉄道模型がぽつんとおいてあるだけだった。

次は死、青い鳥、海で
333名無し物書き@推敲中?:02/07/21 18:00
「死、青い鳥、海」

日曜の午後。死神がやってくるには相応しくない時間帯だ。しかし、それは実際にやってきたのだ。

「突然ですが、あなたの命は後十二時間ですので、そこんとこよろしく」
僕はこの世に未練などなかったが、一つだけ心残りがあるとすれば、それは一度も女性に告白をしたことがないことだろうか。
「よし、A子さんに告白しに行こう」
A子さんは近所のコンビニで働いている。僕より二つ年上で、現在は都内の大学に通っている。
僕はA子さんのバイトが終わるのを待ち、駐車場で声をかけた。
「A子さん、いきなりで申し訳ないんですけど、僕はあなたのことが好きでした」
これでいいと思った。すっきりふられて、さっぱり死のう。しかし、答えは意外なものだった。
「嬉しい・・・私もあなたのこと・・・ね、今度二人で海にでも行かない?」

どうやら死神は僕にとっての青い鳥だったようだ。でももうすぐ死んでしまう僕には何の意味もないことだ。
そのとき死神が肩を叩いた。
「あのー、どうやら人違いだったようです。すいませんすいません」
死神はコソコソと帰っていった。ということは、僕は死なずに済んでA子さんとも付き合えるわけ?

次の瞬間、あまりの嬉しさに僕はショック死した。

次は「ひとりぼっち、苦痛、快感」です。
334ひとりぼっち、苦痛、快感:02/07/21 20:45
ある日、この世の全てが毒に犯された。
人も、森も、海も。全てのものが死に絶え、砂になった。

私だけが生き残った。毒は、私だけは殺せなかった。
この広い世界に、私はひとりぼっち。

でも、孤独は決して苦痛ではない。
ここには、私を煩わせる何物も存在しないから。
私は、この星にある全てを手にしたも同然だから。
だから、今の私が感じているのは、ただ、快楽だけ。

ほんとうに。
やってよかった。

あっはははははははははははははははははははははははっはははははっは

次は、「クチバシ」「ダンス」「伝染病」でどうぞ。
335名無し物書き@推敲中?:02/07/21 21:13
「ひとりぼっち、苦痛、快感」

僕の背中には小さな羽根がある。

僕は、いわゆるいじめられっこという奴で、昼休みでも教室で
いつもひとりぼっちだ。悪口を一日言われ続けられるよりも、
誰からも無視されて、うつむいたままじっとしているほうが辛い。
こんなことになったのは、確か、小学一年の身体検査の時に
下着姿にならなかったからだったと思う。
羽根が背中に生えているなんてことを知られたくないから、
僕は冬用のジャージを着ていた。クラスの力の強い奴がそれを見て
真っ先にののしったのが最初だった。
僕は羽根を守るために、そいつの嫌な言葉を黙って受け取った。
はじめは苦痛だったけど、それもだんだん気にならなくなった。
僕はそれから、夏の暑い時でも体育には冬のジャージ姿で過ごした。
プールの時間は、仮病を使った。
羽根があるということは、天使の一人になったみたいで、快感だった。
教室内で一人浮いていても、平気だった。

でも、そのうち誰も僕に声をかけないようになった。
悪口でもいい、嫌な言葉でもいい、僕に声をかけてくれればいいのに。
たとえ羽根を折ってもいいから、みんなのところに戻りたいんだ。


あ、タッチの差だ。
次のお題は334さんのものでおながいします。
336クチバシ・ダンス・伝染病 :02/07/22 00:02
自身もこの難病に見舞われてしまうとは……。
ここ数年、南米から渡来した不死の病「狂鳥病」。
その土地の鳥類から伝染したと吹聴されるこの伝染病に患った者は、幾月かの潜伏期間の後、
激しい悪寒を生じ、感冒に似た症状を発し、そして奇声をあげだすそうだ。
終いには唇が変形し、その形状がクチバシの如くになり――悶えながら息絶えるという。
先月、風邪の兆候を感じた私は、かかりつけの医者に往診へ出掛けた。
そこでこの病を宣告された。
現在、日本では一万人を越す感染者が報告されており、そのほとんどが一年以内に亡くなるという。
これといった治療法も解明されておらず、末期の患者の多くは原因不明の苦しみに雁字搦めにされ、発狂しながら絶命する。
マスメディアによって「狂鳥病」という病名を耳にした当初は、他国の災いの如く捉えていたのだが、
その猛烈な伝染病に捕獲されてしまうと、目の前に突然に現れた永遠に続く暗黒に、只只戦き、打ち震えていた。
が、その恐怖も時と共に薄らいでいくもので、今となっては現実に戻っている私がいる。

今となっては漠とした不安は消えうせ、新たな気概が湧出してきた。
――できるだけ多くのものを道連れに……。
さあ、私と共に、無へと通ずる無常なるダンスを踊ろうではないか。

#次は「かかし」「化粧」「ジム」でおねがいします。
337名無し物書き@推敲中?:02/07/22 00:48
「クチバシ」「ダンス」「伝染病」

世界にオス・メス一匹ずつしかいなくなったトキ。
ある日、オスが死んだ。
これで繁殖は不可能となったため、それまで屋内で飼育されていた
メスのトキは動物園に送られた。
ニュースに煽られた人々は、オスがいないにも関わらず求愛ダンスをする
メスのトキを目にした。その映像は世界中の感動を呼んだ。
それから数ヵ月後、メスのトキが妊娠した事が分かった。
『オスがいないのに?』という疑問の声はすぐに掻き消され、
『奇跡』という都合の良い言葉が使われた。

孵化した雛は、なぜか緑のクチバシを持っていたが、
『奇跡の雛』は調査のしようが無かった。
更に母トキは卵を産み続け、緑のクチバシのトキは増えた。
そして、母トキが死んでも緑のクチバシのトキは早いペースで卵を産んだ。

それから、10年のうちにトキは珍しくなくなりペットとして飼われ始めた。
しかし、その緑のクチバシのトキが恐ろしい病気を持っていると発覚したのは、
その病気で死んだ者が十万人を越えてからだった。
そして、防護服を付けた保健所の職員とマスコミがトキの小屋へ入ると、
緑のクチバシのトキ全てが笑った。


すいません、リロードしてなかったもんで。反則ですが。
次の方は336さんのお題で。
338「かかし」「化粧」「ジム」:02/07/22 00:54
 生まれつき心臓が弱く、一生をベッドで過ごす運命を背負っていた。
 彼女は、自分を、病室の窓から見えるあのかかしの様だと思っていた。

 しかし、あの新任の医師が来た日から、全てが変った。
 開胸手術。ペースメーカー埋込。若くして幾度もの手術の跡が残る
胸を診察される事を、恥かしいと感じた。
 生まれて初めての化粧・・・リハビリのジムにも通っうと言われ、家族は驚く。

 が、ある日、いつもの様回診に現れた医師を、婦長が呼びとめたのである!
 卑屈なまでに平身低頭する若医師は、ポケットから何かを婦長に渡す。
 そして医師が帰ってきた時、彼女のときめきは、なぜか幻の様に消えていた。

 短い恋は突然終った。
 彼女は美容剤のメレンゲを窓から投げ捨て、かかしの生活に戻るしかない。
 携帯電話は、ペースメーカー等の医療機器に重大な影響・ときめきを与える
可能性があります。
 混雑した車内、病室ではスイッチをお切り下さい。

※PHS程度なら・・・ダメ?
次のお題は:「オリンピック」「昇華」「納豆」でお願いします。
339「かかし」「化粧」「ジム」 :02/07/22 01:04
学校から帰ったら、ママがおめかしをしていた。鏡の前に座って真っ赤な口紅をぐいっと
引いている。今まで見たこともない、ぱりっとした革の洋服を着て、いつものゴムで
束ねた引っ詰め髪からは想像できないほど、柔らかなパーマを髪にかけていた。
「マ、ママ。そのお化粧、どうしたの?」
かかしの様に玄関に立ちすくんでいた僕は、やっとの思いで立ち直りママの下に駆け寄った。
「あのね、これから大事な人がうちに来るの。健ちゃんはお外で遊んできなさい」
きつい香水の匂いを漂わせているママは鏡を見つめながら言った。
「時間がないわ……まったく拓郎さんも前もって連絡してくれれば助かるのに」
ママは腕時計に目をやって、僕を追い立てようとする。
「え、え? で、でもね、僕、今日テストでね、100点を……」
「健ちゃん!」
ママがこう強い調子で言った時はもうだめだ。次に何か言ったら許しませんよ、の合図。
僕は慌てて家を飛び出して、団地の中の公園に行った。ジャングルジムに腰掛けると
ぎらぎらと燃える夏の太陽が僕を茹でる。ランドセルの中から取り出した100点のテストを
眺めて、僕は自分で自分を誉めてあげた。

♯すいません、かぶっちゃいました。次は338さんのお題で。
340名無し物書き@推敲中?:02/07/22 01:48
あげ。
341「オリンピック」「昇華」「納豆」:02/07/22 02:11
毎日毎日、馬鹿の一つ覚えのように、テレビ、ラヂオはオリンピック
の中継。日本の健闘を讃えている。
良識あるとおもわれた新聞にも、「某、金メダル!」「日本の快挙!日本強い!」
などという見出しが躍り、日本はオリンピック一色であった。
たまさかに日本代表選手が負けて、これで静かになるだろう、と思っていた時ですら、
「某、屈辱の銀」
(関係者の談:某は途中、手首の怪我で銅メダルすら危うかった。
某は良く頑張った。4年後に向けて前向きに頑張りたい。)
などと興奮しきっていて、これは日本国民全体が、もう、すでに阿呆
になってしまっているのではなかろうか、と邪推してしまう程に、
神経衰弱気味のわたしには思われたのである。
スポーツというものも一種の芸術であり、スポーツを完全なる奉仕の
行為というものまで昇華する時、はじめてそこに美が宿り、人を打つなにものかが
出現してくるのだろうと思うが、スポーツの美は本来、選手個人個人の、
必死の格闘であるはずなのに、何故国民全体が同じように興奮しなければならない
のであろうか、と考えた末には、それが昨日食べた納豆の逆襲である事に
思い当たり、日本という国の食文化に於ける深淵をかいま見せられた
気がして、途方に暮れるしかなかったのだった。

次は「孤独」「ゲイ」「結婚」
342「孤独」「ゲイ」「結婚」:02/07/22 10:44
「ええ、中2の時にはもう既に男を性的に見ていましたね。勝手に盗んだ鉛筆を家でしゃぶりながら、一人でやってましたから。
え?ああ、男友達の癖で鉛筆の後ろを噛むんですよ、渡辺君が、でそれをね。
渡辺君は小太りであだ名は、阿部譲二って呼ばれてましたね、フルネームで。
え?はい、好きだったですね、阿部譲二こと渡辺君が。
中2で初恋が阿部譲二ですよ(笑)、誰にも言えないし言いたくもなかったですけど、基本的に孤独ですから。
それでもなんとなく、渡辺君には伝わっていたんでしょうね。
ある日呼び出されて、怒ってるような感じで、いや、太ってるから表情は良く分からないんですが(笑)、なんとなくね。
それで怒られると思いきや渡辺君から告白ですよ。これ前にもどっかで言いましたけど、驚いて僕泣いちゃいましてね。
ええ、嬉しくて嬉しくて(笑)。とにかく愛した人もゲイだったってことで、あの半年が一番幸せでしたね。
すべてがピンクの薔薇色で、ゲイなだけにね(笑)。あ、はい、結婚まで真剣に考えてましたからね、中2で。
青春ですね(笑)。でも叶いませんでしたね。ええそうです、渡辺君あっさり事故で死んじゃいましてね。
泣かなかったですね、この時は。哀しいとか寂しいとかじゃなくて、その時はひたすら勃起してました。
ええ、勃起(笑)です。で、この時わかったんですね、これほどまでに愛するもの死は美しく素晴らしいのかと。
まあ、結局は好きな男が理不尽に死んで僕のちんちんが勃起した。ってことですけどね(笑)
それだけの話ですよ。
もういいですかね、今日は疲れました。これからの話は明日しますよ。
けど、明日からの話なんてどうでもいいと思いますよ。
僕が殺した8人の男性なんてつまんないもんですから。殺して食べたってだけですもん。(笑)
つまんない話ですよ、ほんとに」

次は「深夜バス」「ラジオ」「教授」
343名無し物書き@推敲中?:02/07/22 12:42
「深夜バス」「ラジオ」「教授」

父の会社が倒産して、急遽故郷に戻ることになった。
ある教授などは僕を引き留めてくれもしたが、やはり僕は戻ることに決めた。家族が苦しんでいるのに、僕一人だけがのほほんと大学に通っているわけにはいかないと思った。
深夜、バスターミナルでラジオを聴きながら長距離バスを待っていると、僕が上京した頃に流行っていた音楽が流れてきて、思わず泣きそうになった。
やがてバスがきて、僕は最後列の窓際に腰掛けた。
高速道路を走るバスの中で東京の夜景をボンヤリ見つめていた。
その風景も、やがて泪で霞んで見えなくなってしまった。

さらば青春の光。

ラジオから流れてくるそのフレーズが、いつまでも胸の中でリフレインしていた。

次は「放課後、黄昏、逢魔ヶ刻」です。
344「放課後、黄昏、逢魔ヶ刻」:02/07/22 15:21
その日の放課後、僕は担任から頼まれた仕事を終えて教室に戻った。
もう17時になるというのに、教室には数人の男女が残っていた。
明かりを消している為、黄昏がそれぞれの表情を黄金色に輝かせる。
『肝試しやるんだけど渡邊君も来ない?』
『逢魔が刻、靖日公園の東屋に何か出るっていう噂・・・』
千里に続いて秀明も何か言ったが、惚れている千里からの誘いしか耳に届かなかった。

東屋に入った瞬間、木々がざわめき始めた。
異様な唸り声が響き、それに合わせるように千里が倒れた。
『オイ、渡邊逃げろ!!』倒れた千里と智子を見捨てて僕以外の全員が逃げていく。
僕も、倒れたのが千里じゃなければそうしただろう。
必死で千里を数メートル離れた芝生の上に移動させた。意識が無いようだ。
『誰かぁ!』声がかすれて、うまく出ない。


すると、微かに笑い声と拍手が起きた。何かが近付いてくる。
『悪い、お疲れ!』担任だ。その後ろから、秀明達も笑いながら出てくる。
そして、カメラが出てきてようやく悟る事が出来た。
『今度の文化祭で使わせてもらうよ』担任は笑いながら僕の肩を・・・

『・・・叩くんだよね?』
僕は腐敗の進んだ千里に聞くと、再び緑の空を見上げた。
345344:02/07/22 15:23
スイマセン、次は『都市伝説』『予備校』『光』でお願いします。
346名無し物書き@推敲中?:02/07/22 19:29
既出だと思いますが、
星新一って沢山の紙を用意してそれぞれに思いついた単語を書き、
それを裏返して適当に並べた中から2つ3つぐらいを取り出し、
それらの単語を結び合わせてショートショートを書いてたんですよね。
347名無し物書き@推敲中?:02/07/22 19:36
「都市伝説」「予備校」「光」

「なあ祐一。あのビルに幽霊が出るって話聞いたことがあるか?」
 学校からの帰り道、親友の浩太が予備校を指差しながらそんなことを話し掛けてきた。
 心臓が大きく、どくん、と鼓動した。あの予備校で去年飛び降り自殺があった。死んだのは私の姉だ。
 こいつは今年に入ってから知り合ったのでそのことを知らないらしい。屋上にでる人魂を目撃してしまうと試
験に落ちるとか、非常階段ですすり泣く声がするとかいう話を楽しそうに語ってくれる。
 都市伝説の一種だろう、と返すのがやっとで、その後はずっと無言で家まで帰ってきた。

 姉は、常に優秀であらねばならなかった。
 会社でうだつが上がらず常時リストラ候補だった父が、自尊心の欠損を姉の優秀さと献身で補おうとしたから
だ。母が早くに死んだこともあり、学校から帰るとすぐに掃除洗濯買い物の日々を過ごし、父親の愚痴を聞き、
ちょっとした非違で怒鳴りつけられ、挙句の果てに成績までトップクラスであることを求められた。
 学校の成績は優秀だったが、大学入試に失敗し、通っていた予備校の屋上から飛び降りた。
 肥大化した自己を押さえることの出来ない親父と……姉の背に隠れて適当な生活を送っていたにも関わらず彼
女の事をまるでわかってやれなかった俺のせいで……姉は死んだ。
 姉の死を知って、心の弱さのせいだとうそぶいた父を俺は殴り倒したが、今考えると俺も同罪なのだ。

 その夜。自然と足が予備校に向かった。何事かを予感していた。
 柵を乗り越え非常階段を登り、屋上へ登った私が見たのは、見覚えのあるスーツ姿の男。
 その男が持つ懐中電灯の光が照らし出しているのは、小さな花束と、姉の大好きだった洋菓子店のケーキの箱。
 小さくすすり泣く声は、しかし人気の少ないビル街ではよく響いて聞こえた。
 
 その夜。俺は初めて酒を飲んだ。少しだけ、何かが見えたような、そんな気がした。
348347:02/07/22 19:39
すみません。次は「霧」「霞」「蜃気楼」でお願いします。
349ライター、白夜、カステラ:02/07/22 21:58
僕は霧に霞む世界を歩いていた。
恐ろしく冷たく、人の気配がまるでなく、
高層ビルや高速道路もただ黙ってそこに在った。
濃い霧の奥に、蜃気楼のように東京タワーかと思われる高い塔が揺れて見えた。
ここは間違いなく東京だろう、そして間違いなく夢の世界だろうと思った。
夢の中で僕は夢を見ている、という自覚があった。
背筋に恐ろしく冷たい汗が流れる。
本能的な恐怖を僕は感じていた。
濃い霧のせいで呼吸もままならず、むせかえるような気がした。

「なにこの煙!」
母が勢いよくドアを開けて部屋に入ってきて、すさまじい悲鳴をあげた。
僕の枕もとの灰皿から、中にあった大量の吸殻をすべて燃やし尽くした煙がもうもうと立ち上り、
狭い部屋を濃い霧の世界に変えていたのだ。


次は、「ペンギン」「カモメ」「戦車」で!






350名無し物書き@推敲中?:02/07/22 21:59
すいません、上の「ライター、白夜、蜃気楼」は323を書いた名残です・・!
351「ペンギン」「カモメ」「戦車」:02/07/22 23:14
 北の国の学園。いつもの様に集会は夕方に始まった。
 今日の映画は「ペンギンの恐怖」。
 くすんだフィルムが、旧式の映写機にかけられる。

 <ペンギンは人間にとって代わろうとしているぞ!>
 <同盟軍・カモメにより空中散布される最近の細菌兵器!>
 <鬼畜ペンカモによる自爆テロの被害者たち>

 「みんなで社会に奉仕しよう。債券で戦車を。ペンギン倒すその日まで!」
 強制参加の僕達は、体育館のパイプ椅子で欠伸をしていた。

 その日に限って体調が悪いのか、一人の少年が席を立った。
 少年は、どうしても人に言えない秘密があった。
 彼は、誰もいない雪野原に立つと、大きな声でこうさけんだ。

 「僕は・・僕は、ペンギンが大好きなんだぁー!」

 一匹の皇帝ペンギンが、少年の基にヨチヨチと駆け寄る。
 ペンギンの腹部は何者かに抉られ、血が雪の足跡に滲んでいた。
 傷口に挿入され小型爆弾は、ペンギンと少年を跡形も無く吹き飛ばした。

※なんかペンギンというと悲惨な連想が^^;
 次のお題は:「南極」「足軽」「宮廷音楽家」でお願いします。
( ´,_ゝ`)プッ 
http://freehome.kakiko.com/tuk/iiyo.html
353「南極」「足軽」「宮廷音楽家」:02/07/23 00:21
隊列から一人、また一人と、寒さで気の触れた同胞が抜け出ていく。
『八甲田山』そのものの画だが、彼等が慣れ親しんだ戦友だけあって見るのも辛い。

昨年、今までの鬱憤を、屈辱を晴らそうと突然世界各国がアメリカに対して戦争を始めた。
日本は当初、アメリカ側に無理矢理同盟を組まされたが、
再び世界との貿易を断たれる事を恐れた日本国民がそれを許さなかった。
いくらアメリカと雖も世界を相手にしては逃げるしかなく、核を使う事無く
大半の国民を見捨てて南極へと逃げ延びた。

目前に迫った米軍の野営地を双眼鏡で眺める。
と、宮廷音楽家として師でもある父の声が蘇った。
『生きているうちに二回も・・・あるとは・・・』
自分の宮廷音楽を継承した息子が軍服姿の一足軽として
出陣するのは耐えられなかったのだろう。
見送りの駅で、父は筝を吹いてくれた。
電車が動き始めてもそれは掻き消される事なく、胸に響いた。

『突撃ぃ!』

戦地から復員した今も、筝の音は拭い取れない。

次の方は、『勧誘』『御伽噺』『早朝』で、頑張って下さい。
354『勧誘』『御伽噺』『早朝』:02/07/23 10:03
「今直ぐにでも死にそうな顔をしている」と口に出した時、病室には私と父しかいなかった。
父は私を訝しげに軽く見た後、「そういうことをいうもんじゃない」と尤もな詰まらない答えをはじき出した。
早朝に弟の容態が急変した。
バイトをきっちりラスト迄終わらしてから、駆け付けた私に父は呆れていた。
病室にはまだ母は来ていなかった。
「知らせたのか」と私が聞くと、
「彼奴は勧誘活動が未だ残っている、知らせる訳にはいかない」と言われた。
遅れてやってきた私に対する呆れた面がこういう事を平然と口走る。
弟の寝顔が急に哀れに感じて、私は吐き気がした。
うんざりだ。
家族なのに肝心な所が全部作り物で実感がない、なんだこれ、御伽噺か。
父は弟の寝顔を覗き込みながら「可哀想だ」と呟いた。
私は聞こえないふりをした。
ふと、鏡を見るとそこには、死する弟を温かく見守る父と私という構図が、
限り無く模範的な家族として写し出されていた。

次は「アジテーション」「ピアノ」「ニ千円札」
355名無し物書き@推敲中?:02/07/23 12:07
「アジテーション」「ピアノ」「ニ千円札」

 アジアの小国・大和民国。その首相は構造改革の断行という虚構のバカ祭りに
救われていた。彼の演説には内容が何もなかった。アジテーションの中に国民に
痛みを分配するなどという本音を織り込んでおけばよかったのだ。フィーバー
している聞き手も、内容なんかを知りたがってはいなかった。そんなもの
聴いたって、訳など分からない。そのときのノリだけを楽しんでいたはずだ。
「冷めたピザは、二千円札で買え」
 こんな迷言を吐いたかつての首相は、某国の必殺仕事人によって暗殺された。
海の家でラーメンを食べているところを、ピアノ線で首を吊られ、
お陀仏さんとなった。和国と強固なパートナーシップを結ぶ某国にとっては
不必要な人間、いや、害虫だったのだ。
 とにかく、この国の政治家にまともな奴などいない。だから私はこの選挙への
立候補を決意したのだ。

「田中君がいいと思う人? あら、ひとりだけ。じゃあ、あとは鈴木君でいいのね。
はい、じゃあね、5年2組の学級委員は鈴木君に決まりました」
 負けた。予想外の敗北だった。なんと私に投票したのは私だけだった。
後日わかったことだが、駄菓子屋の息子である鈴木は、選挙直前、私を除く
クラスメート全員にチョコ、アイス、キャンディの三種の神器をバラまいていたのだ。
やはり政治の世界は、権謀術数が渦巻く怖い世界だ。

#次は「更衣室」「抜け毛」「海岸沿い」
356極道ステーキ:02/07/23 13:22
「更衣室」「抜け毛」「海岸沿い」

 二年前、ママが死にました。その頃から抜け毛に悩んでいます。電車に乗るといつも、女子中学生たちがぼくの頭を見てくすくすと笑い声を立てます。
 あんまり腹が立ったので、一度「ウルサーイ!」と叫んだことがある。笑い声は止んだが、その日からぼくへの嫌がらせは陰湿になりました。ふと気がつくと、目の前に血まみれの猫の死体が転がっていた。寝ている間に、髪の毛を百本以上むしられた。
 ブッコロス!! ママを殺したのも、あの小悪魔たちの仕業に違いありません。
 ぼくは海岸沿いを走って中学校に向かい、裏口から侵入して更衣室に潜り込んだ。中は無人でした。いい匂いがする。懐かしい匂いです。でも、何の匂いか思い出せません。ぼくはもどかしい気持ちになりました。
 そうだ。次に入ってきたやつを殺そう。その時、そう思いました。
*******************
次は「血みどろ」「尺八」「ラブロマンス」
357「血みどろ」「尺八」「ラブロマンス」:02/07/23 14:10
黄昏れてゆく空を長く伸びた雲が千切れそうになりながら滑ってゆく。
河川敷の土手を血みどろになって歩く俺に、老婆を引きずった愛玩犬が、野生を思い出したらしく低く唸る。
俺の口腔から後頭部へと突き抜けた尺八が、日本庭園のシシオドシよろしく、俺の血をツツと滴らせ、土手のサイクリングロードに真紅のラインを描いている。
俺に何が起きたのか、俺にはもう思い出せない。
俺は、これからどこに行こうとしているのか。
俺は誰で、今この瞬間、何を求めている?
喉が、乾いた。
いつの間にか、倒れ込んだらしい。
目の前1.5センチにサイクリングロードの黄色い線がある。
なんで、こんなとこに黄線なんか引くんだろ。みんな好きにサイクリングすりゃあいいのに。
誰かが遠くで叫んだようだ。
下校途中らしい少女が、両手で口を押さえ、大きな眼をさらに見開いて俺を見下ろしている。
その眼に、涙が、にじんでゆく。
いい娘だな。
せめて全てにオサラバするまでの8秒間をこの娘とのラブロマンスに捧げることにしよう。

358「亀」「吸盤」「新幹線」:02/07/23 14:12
はい。
「亀」「吸盤」「新幹線」です。
359「亀」「吸盤」「新幹線」:02/07/23 17:09
 ぼくはノロマな亀です。ある日、新幹線君と競争をすることになりました。
 東京から大阪間を走る競争ですが、新幹線君はとても足が速いです。ほんの
2、3時間でゴールの大阪付いてしまいました。ぼくはまだ東京駅さえ出てい
ません。
 ぼくが東京都から出る頃には、新幹線君は東京から博多間を何十回も往復し
てました。ぼくが通り行く人々から物珍しげな視線で見下され、あるときには
ちょっかいを出されているときも、新幹線君は人々を乗せて走っていました。
 あるとき、新幹線君が人を撥ねてしまいました。撥ねられた人自ら線路に飛
び込んだらしいけど、なぜか新幹線君が怒られていました。
 後日、新幹線君が解体されることになりました。最後にぼくの横を通り過ぎ
るときに見えた、タコの吸盤のような血の跡がなんとも生々しくて、頭に染み
ついてしまい放れません。
 ぼくはノロマな亀です。今もゴールの大阪を目指して歩いています。馬鹿に
されても、決して人を傷つけないように。


次のお題は「誇大妄想」「真摯」「パラサイト」
360名無し物書き@推敲中?:02/07/23 20:21
「誇大妄想」「真摯」「パラサイト」

 「いらっしゃいませ」正座をし、三つ指を突いて個室の入り口で客を迎える。
 今日の3本目。珍しく若い客だ。多分20代半ばだろう。身なりもスタイルいい。
 部屋に招きいれ、ドアを閉めて後ろから上着をとってあげる。ど、どうも……なんて少し戸惑った声をだして
いるのが少し気にかかった。そこそこモテそうな人間がこういう場所であがってしまう、というのは私のソープ
嬢としてのカンからすると悪い客であることが多い。他人と上手くコミュニケーションが取れない、セックスに
自信がない、うまく「いかない」等々。少々嫌な予感がしたが、私はいつもどうりの笑顔で作業を開始した。

 この世界に入って、もう5年になる。直接の原因は借金だが、理由は他にもある。
 私はとかく男運がなかった。口だけが達者な誇大妄想狂、真面目そうにみえて人にパラサイトすることが目的
のヒモ予備軍、浮気魔に暴力男……数え上げればきりがない。ほとほと男というものに愛想が尽きた。
 その絶望が私を開き直らせたといってよい。

 彼はごく普通に、いやむしろ淡白なくらいコトを済ませ、時間を余らせてしまった。のんびりしているのも
悪くは無い、と思っていると、急に私のほうに向き直った。その瞳はとても真摯な光を放っている。
 「悠、俺のこと覚えてないのか?」
 その言葉で、彼が誰なのか思い出した。卒業して故郷をでてから一度も会っていない高校の時の友人。説教と
親ばれを覚悟したが、彼はそのまま無言で部屋をでていったきり音沙汰が無くなった。
 
今も彼の哀しそうな横顔が、心の中で疼いている。もう一度あの頃の自分に戻る努力をしてみよう、そう決心した。


 お題は継続で。
361名無し物書き@推敲中?:02/07/23 21:47
昔からそうだった。沢山の兄弟たち、蹴落とし、這い上がる生活。そんな中で、
僕は真摯に生き抜いてきた。いつかは、安息の場所を、永遠の安らぎを手に入れ
る。そんな空想を胸に抱き、この決して楽とはいえない競争を生き抜いてきたんだ。
この果てしない闘いの中で、誇大妄想に狂った奴、諦めきって無気力に取りつか
れた奴、そんな奴らもたくさんいた。そいつらのほとんどは僕の見えないところへ
消えていったか、僕の目前で惨めな姿を晒していた。僕はそうはならない。僕は
生き抜い

「15匹目だね」
「今年は何なんだろうねー。タロの首筋、美味しいのかな?」
「腹いっぱい血を吸ってやがる、このパラサイトが」
「さっきアゴだけ残っちゃった。うまく取らないと」
「くーーん」

お題は「ハブラシ」「三半器官」「ポテトチップス」でお願いします。
362名無し物書き@推敲中?:02/07/24 00:19
a
363ハブラシ・三半規管・ポテトチップス:02/07/24 01:53
うわー、でんぐり返しするのなんて久しぶりだな―。
――え? 何故に俺はがでんぐり返しなんてしているのかって?
うーん、うろ覚えなんだけれどもよ、昔、理科の先生が云っていたのよ。
乗り物に酔わない為には、その前日に何回かでんぐり返しをすればいいって。
なんでも三半規管っていうのがウンヌンカンヌン――ま、俺みたいな奴にはよく分からなかったけど。
要するにでんぐり返しをしろ、て云うことなんだよね。
なんたって、彼女の前で酔うわけにはいかないじゃん。かっこ悪いもん。
彼女はいっとうお気に入りの服でくるんだろうな……。
俺も一張羅でいかなくちゃな……。
おーと、いけねえ。もう一度持っていくものの確認しなくちゃ。彼女に迷惑かけられないし。
ハブラシ・石鹸・タオル、それから、彼女が強請るからおやつのポテトチップスも、と。
それにしても、あの男が手配してくれた船は大丈夫なのか?
確か、貨物船だって云ってたっけ。
ま、こんなシケタ国とおさらばできるんならどんなものにでも乗って、海を渡ってやるけどな。
彼女と一緒に日本で幸せに暮らすんだ。

#次は「潜在」「洗剤」「千載」でよろしこ。
364極道ステーキ:02/07/24 01:59
「ハブラシ」「三半器官」「ポテトチップス」

「モモ、君って、ほんとにジャンクフード好きなのね」
「んー?」
 ポテトチップスをほおばりながら、モモは首をかしげる。その様子が愛らしくて、わたしはモモに抱きついた。
「ね、そろそろ出かけるのよ。はい、これハブラシ」
「ん」
 モモは、ひとりでは何もできない。だから、身の回りのことはわたしが全部してあげる。わたしはそのことに満足していた。

 二時間後、モモの蹴りが、相手選手の側頭部を打ち抜いた。三半規管を破壊された相手選手は、マットの上をぶざまな足どりでくるくると舞って、コーナーに倒れ込んだ。
 勝者のコールを受けて嬉しそうにしているモモを、わたしは笑顔で迎えた。
 モモの命はあと半年で尽きる。闘うことのほかはすべてを忘れてしまった男の行く末を、わたしは最後まで見届けるつもりだった。
*******************
次のお題は>>363で。
私は開業医となってもう12年になる。もちろん腕に自信はあり、今まで大きなミスは
犯してこなかったと自負する。何よりそのことはこの麻布の一等地で個人病院を
続けてきた年月が証明してくれるだろう。だが、今や真剣に病院を閉鎖することを
検討しているほどに追い込まれている。昨今の病気についていけなくなったわけでは
ない。むしろ原因は――
「先生っ! ウチの子が、ウチの拓ちゃんが、病気なんです!」
ほら来た。麻布一丁目にお住まいの木村さん、あなたはつい昨日にも拓ちゃんが
ポテトチップスを喉に詰まらせたとかで駆け込んできました。ちょっと私が背中を
叩いてやったらすぐに吐き出したんじゃあありませんでしたか?
少し頭を過ぎったことをおくびにもださず、私は威厳を伴った声で言う。
「どうされましたか? 落ち着いて事情を説明してください」
「た、拓ちゃんを、可愛い拓ちゃんの歯をあたしがハブラシで磨いてあげてたら
急に気持ちが悪くなったみたいで、ゲェゲェ吐くんです! 先生、難病ですか!?
三半規管がおかしいのかも……ああ、拓ちゃん大丈夫かしら!」
「……そうですか。その時、歯磨き粉はつけていましたか?」
「歯を清潔にするんだから当たり前です! でも、そんなのが関係あるんですか?
拓ちゃんが死んじゃうかもしれないのよ!」
うるさい、うちは獣医じゃない。この一言を飲み込んで、私は今日も拓ちゃんとやらの
ダックスフントの腹をもっともらしく診察する。

♯少し長くなってしまった……。
次のお題は「角錐」「郭清」「楽節」でお願いします。
366365:02/07/24 02:11
……かぶりまくりだ。次のお題は363でよろ。
リロードしろよ自分……。ご迷惑お掛けしました。
367潜在・洗剤・千載:02/07/24 09:58
潜在意識をキレイな洗剤でゴシゴシ洗ってみるといい、
汚れをきちんと落とし、太陽の光の下にさらしてみるといい、
ホカホカしていい匂いで、身につけた時は本当に気持ちいいに決まっている。
潜在意識が汚れてる人は千載一隅のチャンスも逃してしまう。
潜在意識がピカピカ美しい人はけしてチャンスを逃さない。

そういうわけで私はいつも体と心と脳を足して3で割った領域に存在する魂の、
さらにそのずっと奥に眠る潜在意識の浄化についていつも意識的だ。
それは「私は素晴らしい」「私は優れている」という肯定的自己暗示を常に自分に向かって
唱えているということだ。
こういう話は大変恐縮で恥ずかしい話なのだが、
気が弱くていつもオドオドしてるあなたに潜在意識の浄化をおすすめしたいと思い
ここに書き記すことにした。

次は、「天使」「水爆」「ミクスチャー」

368、「天使」「水爆」「ミクスチャー」:02/07/24 12:50
<<太陽は、何十億年後かに、水素を消費し尽くし、巨大化し死滅の・・・>>
 長官は本を置いた。「太陽の一生」・・・悲しい話だなあ。

 外に出ると、環境団体がいっぱいだ。
 「ガラスの地球を守れ」「フロン規制を」「地球温暖化から逃れるため」

 長官一喝。「視野が狭い、狭すぎます」
 一斉に静まる民衆に、演説が始まる。
 「今回、私は、全ての水爆を太陽に打ち込む事を決定しました
  この核融合エネルギーで、太陽は白色矮星化を5万年免れ・・・」

 民衆は騒然!「地球はどうなる」「何十億年後の事なんか知らないよ」
 長官は溜息をついた。

 「これから何十億年で、我々の様な水爆技術を持った生物が生まれますか?
  太陽と地球、そして人類は一心同体、太陽系というミクスチャー!
  人類は、いわば、太陽を救う為に出現した天使です。
  地球?人類?・・・ふっふっふ。太陽が救われれば、人類くらい・・・」

 ピーポーピーポー。ついに救急車が到着した。拘束され連れ去られる長官。
 私は病弱だ。長官が復帰する日を待っている。私の名は太陽。

※むりやり15行
次のお題は:「浴衣」「夜店」「母」でお願いします。
 1945年08月06日広島県にアメリカ軍が原子爆弾、通称"リトルボーイ"が投下され
一瞬にして多くの命が失われた。ついで09日、長崎に"ファットマン"が落とされた。

 1954年03月01日ビキニ環礁で行なわれた水爆実験により、第五福竜丸が被爆し、
無線長が命を落とした。

 1986年04月26日旧ソ連ウクライナ共和国にあるチェルノブイリ原発が至上最悪の
臨界事故を起こし、今も被爆した人々が後遺症にさいなまれている。

 2028年10月13日自らを天使と名乗るカルト教団がアメリカのミサイル基地を占拠、
パスワードが解かれ世界各国に核弾頭がばら撒かれた。被害を受けた各国はアメリカ
に批難の声を浴びせた。

 そして2045年08日06日、私は長崎県内の平和公園にいる。平和の像は今日も天に指
を差し仰いでいるが、その体は赤褐色に焼け爛れていた。代表者は、もはや無意味と
なった原爆の撃ち合いを続け、裕福な国民は地下のシェルターに隠れ、またいつかくる
だろう平和な時代に向け、永い冬眠へと入った。今原爆の被害を受けているのは罪の無
い貧しい人々だ。

 平和の像に皮肉を込めた祈りをささげたあと、私は翼を大きく広げた。某カルト集団
が求め続けていた代物だが、これを背負うとなれば、歴史を伝導する使命を真っ当しな
ければならない。私は塵と放射能がミクスチャーされた空に向けて、翼を羽ばたかせた。


次のお題は「浴衣」「夜店」「母」
370「浴衣」「夜店」「母」:02/07/24 14:27
「子供だけで行くのはやめときなさい。去年明石で起こったことを忘れたの。あなたたちも二の舞になるわよ。
 それに最近誘拐事件も多いんだから・・・」
母の忠告を無視して友達三人だけで花火大会へとやってきた私。
思ったよりも人が少ない。母の忠告なんか信じなくて良かった、と私は安堵感でいっぱいだ。
ただ気になるのは、私だけが浴衣を着てないということ。ほかの二人はきれいな浴衣を着ているというのに・・。
何で私の家には浴衣がないんだ。今度お母さんに頼んで絶対買ってもらおうっと。私は胸に決意を抱いた。
「彩花ちゃん、花火が始まったよ!ほら、あそこ。うわぁ、きれいだなぁ・・・」
「あ、本当だ!凄いね〜。本当に来てよかった!!」
「やっぱり近くで見る花火は迫力あるね。」
空を華やかな花火達が彩った。赤、黄色、緑・・・。空はまるで昼間かと思うくらい明るくなった。
さっきまでの母への妬みはどこへやら・・・。私達は上空で繰り広げられる大活劇に見入ってしまった。
そして花火はあっという間に終わってしまった。さっきまでのことが嘘のように空を闇が覆っていた。
「むっちゃきれいだったね!さあ、帰ろうか。ところで紗江ちゃんは?」
「さっきのどが渇いたって近くの夜店に行ったんだ。それっきり帰ってこないんだけど・・。」
「多分疲れたから先に帰ったんだよ!気にしない気にしない。」
こうして私達は無理矢理帰路についた。なぜなら私もすごく疲れていて早く家で寝たかったからだ。
私は家へと到着した。そして玄関のドアを開けると、お母さんが誰かと電話をしていた。
「誘拐されたってどういうこと・・。えっ、身代金を500万出せって・・紗江ちゃんは大丈夫なの?」
「紗江ちゃん?誘拐??いったいどういう事・・」
「紗江ちゃんが誘拐されたのよ!500万を二日以内に用意しないと紗江ちゃん殺されるかもしれないんだよ!!」
紗江ちゃんが・・。もしかしてこんな事になったのは私のせい? 私は気を失ってその場で倒れてしまった。

次は「バッグ」「指」「ワゴン車」で

 
371名無し物書き@推敲中?:02/07/24 14:43
ひとりになるといつも、僕は彼女を思い出す。
きっと一生忘れないだろう。
楽しかった日々。彼女の笑顔。美しい指先。
この街に、君との思い出のない場所などありはしないのだ。
理想的だった2人の関係。
それが崩れたのはいつのことだったか。
彼女のバッグの中。知らない男の写真。
世界が回転した。彼女は動かなくなった。
僕は、彼女をワゴン車に詰め込んだ。

次は「毒薬」「潮汐」「風車」で
372371:02/07/24 14:45
すいません、名前欄にお題入れ忘れました。
「バッグ」「指」「ワゴン車」です。
「毒薬」「潮汐」「風車」

 夏祭りで買った風車がカラカラと音をたてて回っている。私は窓枠にもたれたまま
海面を光らせる満月を眺めていた。
 毎日の潮汐も女性の生理も月に導かれた現象だという。そのために赤ちゃんも
生まれてくるのは朝が多いのだと聞いた。
 けれど私の赤ちゃんには朝がこなかった。 
 気が着くまでに吸い続けていたタバコのせいか、気軽に飲み慣れていた風邪薬
のせいか、あるいはもっと致命的な何かが毒薬となって、朝を知ることなく息絶えた。
 私の体はきっと荒れ狂う台風のような夜だったのだろう。目の前に広がる穏やかな
暗闇が私を責めている。叫び声をあげてもその考えは消えなかった。
 風車がカラカラと回る。
 初めて買ったあなたへの贈り物を、私は渡すことができなかった。

次は「椅子」「草原」「天井」で。
朝起きた時、一番最初に目に入るのはこの薄汚れた天井だ。母さんは、もう早いところ
掃除してピカピカにしなきゃ、なんて言うけど僕はこの煤けた天井が大好きだ。
例えばほら、真上の染みはサバンナの草原に威風堂々とタテガミをなびかせている
ライオンのように見える。今は写真でしか見たことはないけど、いつかは実物をこの
目でみてやるんだ。僕は寝転んだまま、握りこぶしを胸の上に作る。その時、ぱたぱたと
スリッパの音を立てて、母さんが部屋に入って来た。
「あら? 祐一、目が覚めたんなら言ってくれればいいのに」
そう言って、ベッドの脇の椅子に座る。微笑を浮かべた顔を僕に近づけて、
「今日の朝御飯は何がいい? 目玉焼き……は昨日も食べたから、温泉卵なんてどう?」
と、歌うような調子で言う。そうね、そうしましょうと言って立ち上がろうとした
母さんの手を、ついと僕は引っ張ってみる。
「母さん、昨日の僕の検査の結果はどうだったのさ?」
僕がそう言うと、母さんはやっぱり微笑みをつくりながら、動物園はまた今度に
しましょう、と呟く。……そっか、しょうがないか。なんだか急に唇がカサカサに
なった僕は、やっとの思いで天井に向かって言う。ライオンの顔は二重にも、三重にも
滲んだまま重なって見えた。きっとそれは、僕の横に立って黙って天井を見上げる
母さんも同じだろう。

♯こ、今度こそ……。次は「角錐」「郭清」「楽節」でお願いします。
375名無し物書き@推敲中?:02/07/25 00:05
何か下がり気味なんであげてみる。
376「椅子」「草原」「天井」:02/07/25 00:47
この草原には、見渡す限り人工のモノは何も無い。
私が座っている、白いプラスチック製の椅子を除いては。

8歳の時、両親と妹が私を置いてどこかへ行ってしまった。
それに気付いてから数日、ただ黙ってここに座っていた。
いつ帰ってくるのだろう。いつ、謝ってくれるのだろう。
それだけを考えて、空腹と渇きに耐えていた。
まさか、そこらの草花や木の実を食べることになるとは思っていなかった。
あれから何年経つのだろう。八歳のあの日から、月日なんか数えていない。
ただ、青い天井と緑の床をぼんやり見つめるだけだった。

水を飲む為、大きな水溜りへ行く。
淵で正座し、上体を前に傾ける―――
・・・!
水溜りの中にお母さんがいる!
皺こそ増えたものの、娘の私がお母さんを見間違う訳が無い。
あぁ、やっと帰ってきてくれたんだぁ。
元気だった?お父さんは?妹は?
私が返事を待っても、お母さんは何も言ってくれない。
涙が出た。水溜りに落ちた涙がお母さんの顔を崩す。
もっと近くでお母さんを見たい。
水面にそっと唇をつける。もう、どこにもいかないで―――

すいません、リロードしてなくて。・・・即興じゃないですね。
374さんのお題で。
「角錐」「郭清」「楽節」


天の調べを聴いた。
いや、もちろんそんなもの聴こえる訳はない。
しかし、ああ、あの甘美な響き!
ひとまとまりの楽節を構成する直前の、エクスタシィにも
似た到達感は言葉にできないことがもどかしい。

ふと気づくと、目下に並ぶは銀のトレーに載った種々の器具。
鋭利な刃物や角錐の細棒、ハサミの横には白いガーゼ。
大きなマスクで顔を覆い、せわしなく手先を動かす医師と看護婦。
そこは郭清手術の術式中。
被手術者は他でもない僕自身。
リンパ節を摘出される、管だらけの僕を無感動に眺める僕がいた。

よくある話だが、これが僕の臨死体験だった。
死に臨む意義を僕はいまだ見出していない。


次は「放射」「回転」「燐光」で。
378名無し物書き@推敲中?:02/07/25 01:36
「角錐」「郭清」「楽節」

 唯が死んだ。
 葬儀はつらかった。俺の隣で肩を震わせて俯いている親友の孝……唯の恋人だった……と座り込んですすり泣
く綾……唯の親友で俺の彼女……の姿が目に入るにつけてやりきれない心の痛みが増していくようだった。
 俺と綾、孝と唯は幼稚園からの幼馴染で、高校までの13年を同じ学び舎で過ごした。何故か気があっていつ
も一緒に行動していた。そのなかから恋人ができるのも当然の成行きだった。
 もっとも、この喪失感は体の一部になってしまった彼女を奪われる苦痛から来ているだけではないのだろう。
 4人がそれぞれ三角錐の頂点を形成するような立体的な関係が、永遠に失われるのを予感したのかもしれない。

 唯は癌だった。手術の度に郭清しなければならない範囲が広がり、最後には手が付けられなくなったらしい。
それは死後に知ったことだけど、面会するごとにやせ細っている唯を見れば、誰の心の中にも予感が生まれるだ
ろう。それが現実になった時の衝撃が、僕らの関係を崩壊寸前にまで追いやった。
 綾と孝はお互いに話づらいらしい。二人とも俺とつながっていることで辛うじて自分を維持していた。あの打
てば響くような関係はもう望むべくもない。
 
 一月ほどたったとき、死んだはずの唯から手紙がきた。死後一月で投函するよう、両親に遺言したらしい。
 綾にも孝にも届けられた。もっとも、彼らには便箋一枚に感謝と謝罪がつづられていたらしいが、俺には便箋
が六枚ほども入っていた。それは、俺たちの今後を心配し、俺に焦らず頑張ることを頼むものだった。
 死ぬ間際に果てしなく透明に、そして聡明になっていった唯の全てが現われていた。
 やじろべえは、大きく動けない。まして真ん中の俺は落ち着いている他ない。悲しみと絶望がモチーフの大楽
節に続くのは、スローテンポの癒しの小楽節と相場が決まっている。ゆっくり行こう。そう心に誓った。

 また長いよ……18行もあるし……鬱。
 面白い題なので継続ということで。
379378:02/07/25 01:38
かぶった。お題は377で
380「放射」「回転」「燐光:02/07/25 03:12
酷く暑い夏だった。

玄関に置いてある主人が居ない水槽にはバクテリアが微かな燐光を放っている。
そうか、私は玄関で逆立ちしているのか。
「何処へ行くんですか?」と穏やかな妻の声がとてもとても遠くで漸く聞こえた。
「ああ、ちょっと、その辺りを」と答える私は靴下を履いていない。
「あつはなついですものね」と妻。
「ああ、あつはなついからね」と私。
妻の姿は良くみればみる程、見えなかった。
ああ、そうか、君は昨夜放射線状に回転しながら飛んでいったんだね。
「あつはなついですから」と飛んでいった妻。
「ああ、あつはなついからね」と私。

汗を掻きながら必死な犬の交尾が滑稽だった。

次「影」「窓」「生理」
381影・窓・生理:02/07/25 04:25
孝雄は窓の外の木々の黒い影を見つめている。
「なんだよ、話って、また生理が来ないって話じゃないだろうな」
恵津子はしばらく黙って、孝雄の横顔をジっと見つめ、
「うんそうだよ、今度こそできちゃったみたい・・」
声のトーンを落とし、どこか申し訳なさそうに呟いた。
「・・・・・・・・いいよ、おれ覚悟してたから」
「いいの?本当にいいの?アタシ達パパとママになるんだよ?」
「ああ、この前俊の家に遊びにいったろ、すっげー可愛かったもんなあの悠太って子、
 あれからおれずっと自分の子供について考えてたから」
「・・・・・・・・・・」
恵津子はシクシク小さく泣き出した。孝雄は今自分が言ったことに恵津子が感動しているのだと思った。
「泣くなって」
「ううん、ごめんねごめんね違うの違うの、また孝雄の気持ちを確かめたかっただけなの、
 ごめんねごめんね、またウソなの、大ウソなの」
恵津子はシクシクからエーンエーンと泣いている。
「・・・・・・・・・・」
窓の外の木々の影を黙って見つめている孝雄のこめかみの血管がピクピクと痙攣している。

真理子はそんな深夜のテレビドラマを見ながら、何てありきたりの退屈な話なんだろうと思い、
窓の外の木々の影に目をやった。黒々としたそれは風の中で小さく揺れてるように見えた。
生理中は本当にささいなことにイライラする。


次のお題は「コウモリ」「恐慌」「マルクス」で。


382381:02/07/25 04:37
しまった「マルクス」は固有名詞だったので「マルキスト」に変えたいと思いまふ
383「コウモリ」「恐慌」「マルキスト」:02/07/25 06:46
薄あかるくなった空を見上げるために頭を上げると、鈍いくせにしつこい頭痛が僕を包んだ。
嫌な予感に満ちあふれた八月の朝。辺りには酒瓶と人間が転がっている。
僕は溜息をついた。
台所で、水を立て続けに三杯あおって、少しだけましな気分になる。
トイレからは、呻き声と何かを吐く音が響いていた。
ソファに戻って寝っ転がると、相変わらずの空が見えた。どんよりと、圧倒的に曇っていた。
辺りでは自称マルキスト(この手の呼び名を名乗る連中は、僕の見る限り議論好き、かつ酒狂
いだ)たちが、あまり美しいとはいえない寝言を呟いて苦しそうに寝息をたてていた。
全く、やってられない。
この惨状→昨日作った味噌汁(あまり、おいしくない)→僕の味噌汁となって死んでいった
酵母菌→読みかけの本、と、非生産的な連想ののち、僕は本を取りに立とうとした。
その瞬間、コウモリの群れが一斉に僕の視界に飛び込んできた。黒の群れ。それはお互いに
ぶつかり合い、恐慌状態になりながら、僕の知らない目的地へ凄い勢いをもって駆け抜けていく。
僕は小さな悲鳴をあげた。
ああ、コウモリは、夜明けに飛ぶんだ。なぜかそう思った。

次のお題は「デフラグ」「ニュートラル」「スイッチ」でお願いします。
384「デフラグ」「ニュートラル」「スイッチ」:02/07/25 07:37
僕は言い知れぬ恐怖感に襲われていた。
スイッチが切り替わるとともに、僕の周りのものが、
僕自身を構成しているものが吹き飛んでいく。
このままでは、ものの数分で僕は消えてしまうだろう。
「何とかしなければならない。」
こんなことは許されてはならないのだ。
成長とともに、僕は世界を明と暗で判断することを学んだ。
その意識が今、限りなくニュートラルな状態へと還元されようとしている。
「何とかしなければならない。」
再びそう呟いたときには、もう僕しか残されていなかった。
その時が来たのだ。
だが、このままで納得などできるものか。
この理不尽さを、これが理不尽だということを、僕は理解しなければいけない。
「人間ならば、理解しなければならない。」
そうして自分を奮い立たせると、僕は空に向かって問い掛けた。
「おお!なぜ私はこのような形で死ななければならないのですか!?」
「大丈夫。キミをキミと認識させているものは、全てそのままにしておくから。」
「…本当に?」

デフラグが終了した。

次は「虚空」「比重」「御伽噺」でお願いします。
385「虚空」「比重」「御伽噺」:02/07/25 11:21
虚空を漂う粒子の比重は飛躍的に増していた。
「何もない」ということがこれほど重いものだとは知らなかった。
退屈な日常の中で、ボクの体は重いコンクリートに塗り固められていくような気がした。
タバコの煙が空気中に鈍く拡散し、この部屋の息苦しさは倍増する。
あらゆる科学技術が発達し、娯楽や商品や情報が限りなく提供されるこの時代において、
ボクはこの「何もない」という気分を味わっているのだった。
御伽噺『桃太郎』のページをめくる。
そこに描かれている挿絵の風景は、山と畑と川しかない。
ボクは今日6本目のタバコに火をつけて、こう思った。
「オレはこの『桃太郎』の時代に生まれていたらいったい何を望んでいただろう?」
ふと、急に生まれ育った愛媛の田舎を思い出してしまった。
『桃太郎』の挿絵のような山と川と森の空間・・ボクは高校生の時までその風景の中に生きていたのだ。
そしてボクはその風景の中でとめどなく充足して生きていたことを思い出さずにいられなかった。


次は「ライフ」「砂糖」「海溝」で!

386「ライフ」「砂糖」「海溝」:02/07/25 16:30
「兄貴、砂糖を買ってきました。これでコーヒーが飲めますね。」
「よし。これで加糖コーヒーができるな・・。ブラックなんて大嫌いだからな。」
「じゃあ早速コーヒーに入れますね。ええと…、兄貴、砂糖はスプーン何杯でしたっけ?」
「それくらい覚えとけよ。5杯半だ。」
「はい、すみません・・。以降気を付けます。 あっ!兄貴!!これを見て下さい!!!」
「どうしたんだ・・。 おや・・・ 一体なんなんだ、この蟻の群集は!!」
「どうやら袋に穴が空いていて中身が漏れてたらしいです。そしてそれを蟻たちが・・・。」
「お前、この砂糖をどこの店で買った?」
「すぐ近くにあるスーパー『ライフ』です。」
「おい!今すぐ店に行くぞ!!儂をナメたらどうなるか思い知らせてやる!!!」
「兄貴、一体どうする気ですか?」
「これを売った店長を拉致して、伊豆・小笠原海溝の底に沈めてやるだけさ。気に留めるな」

次は「放蕩」「面談」「火山ガス」で
387名無し物書き@推敲中?:02/07/25 17:43
「放蕩」「面談」「火山ガス」

「残念ですが、あなたのお嬢さんが通える高校はこの世には存在しません」
三年の三者面談で教師に面と向かって言われた母はその場に泣き崩れた。ということはなく、納得した面持ちで僅かに頷いた。
帰り道、私は恐る恐る母に声をかけた。
「怒ってないの?」
「別に。それからあんた先に家に帰ってなさい。母さんは夕食の材料買いにスーパーに寄ってから帰るから」
私はがっかりした。またしても母を怒らせることができなかった。母はやっぱり私に興味などないのだ。
毎回テストを白紙で提出する私の気持ちなど、母には永久にわかるまい。
「たたいま」
家に帰ると父がいた。父はでかい屁で応えた。それは火山ガスのような匂いがした。
娘の帰宅を屁で迎えるとは!! この糞親父ぶっ殺してやる!!
この父を殺せば母は私を叱ってくれるだろうか?

私は包丁を手にドキドキしながら居間へ向かった。

次は「満月」「森」「寂れた公園」
夜歩く。僕の唯一の趣味だ。もちろん友人達には秘密にしているが。
たしか推理小説でこんなタイトルがあったが、作者名は思い出せない。
ルートは日に日に変わる。
寂れた公園のベンチに座って過去の厭な出来事を思い出したり、
少し遠出をし、鬱蒼とした森の中で月光浴を楽しんだりもした。

今日はどこへ行こうかな、そんなことを考えながら玄関を出た。
家の前に人影が見えた。雲に隠れていた煌々とした満月が人影を照らす。
僕の妹がそこにいた。
一ヶ月前に交通事故で亡くなったはずの、妹が。

次は「うだる」「芋虫」「右手」
389388:02/07/25 19:26
失礼。名無しのまま投稿してしまいました。
390 :02/07/25 20:18
皆さんタマニハ他人の作品の感想も書きましょう。
391「うだる」「芋虫」「右手」 :02/07/25 20:20
「お兄ちゃん、暑ぅい……」
「……だったら引っ付くなよ」
さっきから何回このやり取りを繰り返しているのだろう。いくら言っても、
比奈は僕から離れようとしなかった。こっちから体を離すと、芋虫のように
床を這って追ってくる。2人とも、立ち上がるだけの元気は持っていなかった。
まったくもって今年の夏は異常だ。各地で最高気温を更新中。連日35度を
突破して、梅雨明けしてから雨なんて一滴も降っていない。そして恐ろしい
ことに、クーラーは昨日から壊れたままだ。父も母も電器屋に行ってくると、
今朝出てったきり帰ってこない。大方、車の中で冷房をガンガンにして
寝ているんだろう。
「あ〜、暑い! 引っ付くなって言ってんだろっ!!」
このうだるような熱気がこもった居間では、言葉遣いすら乱暴になってしまう。
「だって、どうせ暑いんなら2人一緒で暑い方がいいよぉ」
そう言うと、僕の右手を掴んで自分の頬にくっつけ、暑い暑い、と喜んでいる。
「訳わかんない理屈をこねるな……」
比奈のセリフで、僕は逃げる力すら無くし、ぐたぁっと床に寝転んだままでいた。
……もしくは、そう自分に言い訳をしていた。


♯何だかなぁ。次のお題は「嘘」「言い訳」「仲直り」でどうぞ。
392名無し物書き@推敲中?:02/07/25 20:22
393390:02/07/25 20:39
>>392
もちろんそっちにね。
394「嘘」「言い訳」「仲直り」:02/07/25 21:30
「嘘よそんなの!」
彼女は小柄な体を精一杯震わせて叫んだ。僕はもう何も言わなかった。
いや、言わなかったのではなく言えなかったのだろう。正直、怖かったのだ
「言い訳でもいいから何か言ってよ!」
こんな夜中に、しかも人通りがないとはいえ道の真ん中で大声をあげたら
誰かが気付いて窓から外をのぞいてもよさそうなものだが誰も出てくる気配
はない。そんな事をなんとなく考えながら地面に目を伏せていた。
「どうして何も言ってくれないの!?」
彼女は半錯乱した状態で叫んでくる。どんな事を言っても仲直りは出来ないだろう。
それは分かっていた。ふと気付くと雨が降り始めている。
涙だろうか、それとも雨だろうか、大きめの目から雫が地面へと落ちる。
その雫が地面で跳ねた時、僕は彼女の目を見すえて一言だけ言った。
「・・・・・・ごめん。」
雨の音と彼女の嗚咽しか聞こえないこの場所で永遠とも感じる数秒を過ごした
そして彼女は言った。
「・・・・・・馬鹿。」

fin

次は「歯車」「麦茶」「ため息」


 人は一人では生きられない、と良識ぶった大人達はよく口にする。
 馬鹿馬鹿しい。それは馴れ合わなければ生きる事のできない劣等種どもの、見苦しい言い訳だ。
 だが、私はあんな連中とは違う。私は一人で生きてみせる。
 劣った連中と気慰みに馴れ合う事に、一体何の意味があるというのか。私には理解できない。
 そして、自分に嘘をついてまで、堕落した世界に身を置くつもりもない。
 私は誰にも邪魔されることなく、自分の才能を存分に発揮するべきなのだ。
 ……私の生き方は、きっと孤独だろう。だが、私は耐えてみせる。それができる人間だから。
 孤独に耐える事もできない下衆な連中とは、生物としての格が違うのだから……

 布団にくるまって、そんな事をブツブツ呟いていると、外から私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
 私が二階の窓から顔を出すと、そいつは私に向かって、とんでもない大声で呼びかけてきた。

「やっぱり俺が悪かったー!! 反省してるー!! 何でもするから、許してくれー!!」

 ……とりあえず、近所迷惑なのでやめさせよう。仲直りのキスは、その後だ。

 お題は>>394で。
「歯車」「麦茶」「ため息」


湯気立つお茶をすする。ため息をつく。はぁ。
麦茶を冷やして飲むなど邪道だ。
更らに言うなら今日はいつもの蕎麦茶が切れたため
仕方なく麦茶を飲んでいる。
もちろん季節によってお茶がかわる。
春は深蒸し茶、夏は蕎麦、秋は柿の葉茶で冬は玉露。
お茶が僕のこだわり。これだけは決して譲れない。

湯気立つ紅茶をすする。ため息をつく。はぁ。
アイスティーなんて邪道。
更に言うなら今日は7種類のお気に入りハーブ入り。
私は気分で紅茶をかえる。
うれしい時はニルギリかウバ、寂しい時はアッサム、
穏やかな時はダージリンがいい。

渋い顔をしてホット麦茶を飲む彼を眺める。
私達は結局、決して重なることのない歯車なのだ。

こっちを眺める彼女と目が合って僕は少しほっとした。
歯車は、重ならないけどしっかりと噛み合っている。


次は「料簡」「灰塵」「慙愧」
難しいのが好きな人が多いようだし。
「料簡」「灰塵」「慙愧」

 
 つらつら感想スレなどを眺めておりまして最近思うことなんですがね。

 本来、3語スレというものは三題話をすべきところ。落語の大喜利のような
感覚で遊ぶところと心得ていたのですが、私が少々料簡違いをしていたという
ことなのでしょうね。と、するならば、この場においていっぱしの文章書き面
をしていた私などは慙愧すべし、ということなのでしょう。

 志が高い方々の中では、やはり私などは灰燼に過ぎない。と、すればここは
風に乗ってどこへとも無く消え去るが善し、ということなのでしょうね。


 と、言うことで7行。最後としてはこんなもんでしょうか。
 できればお題継続で感想スレの方々を喜ばせるような名文をどなたか。
 訂正。
  
 「三題話」は「三題噺」とするべきでした。
399うはう:02/07/25 22:55
>>397
>>遊ぶところと心得ていたのですが

 え、そうじゃなかったの?
 んじゃ、自分も料簡違いかー(笑)

 ・・・でもまあ、いいか(^^)

 (失礼しました。>>3とか>>351とか>>368みたいなの書いてます
  今から>>397のお題でなんか出してみます・・・間に合うか?)
400「料簡」「灰塵」「慙愧」:02/07/25 23:35
 やっと娘が帰ってきた。男の家から、朝帰りしてきた。
 床の間に正座した母のお説教が、今、始まる。

 「妙子ちゃん。
  お母さんはね、何も、朝帰りを怒ってるんじゃないのよ。
  ただねえ、嫁入り前の娘が、若い男の部屋に泊まってきたんでしょう。
  何も・・・何もなかったなんて、どういう料簡なの?
 
 いいえ、お母さんには分かってます。袖にトーンがついたままですよ。
 男同士が仲良しな漫画もいいけど、男女の関係も頑張ってほしいの。
 いい年した娘が、男の家で、ジャージ姿で徹夜で原稿書いてくるだけなんて!」

 「お母様、私を思っての最もな御言葉、慙愧に堪えません。」
 とは言いながらも、今日に迫った締切りの事で、頭が一杯な娘であった。
 入稿が遅れれば、今まで徹夜の苦労が、全て灰燼と化すのだ。

 ついに母はベソをかき出した。娘は原稿を書き出した。
 「ごめんなさい、お母様」
 同人誌って・・・つらい。

※行が削れない(涙)
 次のお題は:「芳香」「奉公」「咆哮」でお願いします。
401「芳香」「奉公」「咆哮」:02/07/26 01:15
少女たちは夕暮れの山道を無言で歩いていた。山の向こうの工場へ至る道。禿げた地
面がわずかに露出した道は、たくさんの足で踏み固められたせいで、細いながらも強固
に、どこまでも続いていくように見えた。
少女たちは、集団就職先に向かう途中だった。その労働条件は考えうる斜め上を行く
程度に悪く、かといってそれよりもましな道を見つけることは、四つ葉のクローバーの
発見よりも難しかった。つまるところ、奉公に限りなく近い就職だった。

うぉぉぉぉぉぉん。遠くから獣の遠吠えが聞こえる。最初はひとつだった遠吠えが
だんだん大きくなり、迫力を増した。うぉぉぉぉん。うぉぉぉぉん。ついには大合唱と
なった咆哮が辺りに鳴り響く。少女たちは軽い恐怖を感じた。夜が近い。

不安を振りほどこうとふと目をそらした先は、青白く光っていた。周りの地面が、
細かく、青白い光に包まれている。僅かにキノコの、包み込むような芳香がした。
「星キノコ……本当にあったんだ」

工場はまだ遠い。
402401:02/07/26 01:17
お題忘れてました
「モジュラージャック」「すあま」「ワイパー」
でお願いします。
モジュラージャックを探した。

先程買ったばかりの電話を担いで意気揚々と帰ってきたのが7分前。
何処を探してもモジュラージャックだけがない。
低い部分にあると思っている私が盲点か、と鴨居周辺も探してみたが、もちろんあるはずがない。
気が付くと日も暮れていた。
小腹が空いてきた私は娘が買ってきたと思われるすあまのようなモノを口に入れ後半に備えたが、これがいけなかった。
低くもなく高くもない場所を探していた時に、甘味に過剰に反応した奥歯が悲鳴をあげた。
奥歯の痛みが私を屈服させた。モジュラージャックは何処にもなかった。
そうだ、私はこの家の事を何も知らなかった。

娘との上手な付きあいかたも、妻との当たり障りのない接し方も心得ている、
美味しいシチューの作り方だって知っている、車のワイパーの取り付け方だって昔は出来たんだ。
ただ、私はこの家の事はわからない。
この家の事は何も分からない。

ああ、なんだか此処はとても窮屈だ。


次は「チアリーダー」「サンプリング」「土産物」




蒸し暑い研究室の外から、暑いさなかにも威勢の良い掛け声が聞こえる。
もうすぐラクロスの試合があるから、さらに励んでいるのだろう。
自慢じゃないが、この大学のスポーツは全てといって良いほど弱い。
いや、応援部が運動系の部活じゃないなら、という制約つきだが。
特にチアリーダーのやる気がすばらしい、と年より地味たことをふと思う。
後輩の持ってきた土産物、ういろうを食べるために、一旦作業を中断する。
冷蔵庫の麦茶を取りだし、やっていたサンプリングの道具を机から払い一息ついた。
暑い日本の夏は、まだまだ長い。
忘れてた。
次のお題は、「薬」「暈月」「虐待」
406名無し物書き@推敲中?:02/07/26 21:18
書いたときくらいはageれ、それ以外あがらないんだから……
407「薬」「暈月」「虐待」:02/07/27 00:31
 雪の夜。教会で暖をとる瀕死の少年と犬がおりました。
 社会に虐待され、凍えた少年・・・彼には最後の望みがありました。
 「教会の、あの、ルーベンスの絵が見たい!」
 しかし、寒空に浮かぶ暈月は、暗い教会を照らしてはくれません。

 「マッチを買って下さい」
 そして違う時空の雪の夜、虐待された少女が売れないマッチを売っておりました。
 せめてもとマッチをすると・・・
 全く異なった世界の似た境遇の二人に、不思議な共鳴現象が発生したのです!

 神様の慈悲でしょうか、雲が晴、満月の煌煌とした光が教会を照らし出しました。
 「ごらん、パトラッシュ! あれが、あれが・・・ケーキ?」「わおん」
 犬も怪訝な表情です。

 一方、マッチの光に照らされた光の中には!
 「あら、きれいな絵・・・だけど、今の私には、芸術よりもお母様の愛情や
  ケーキやお薬が必要なのね、きっと。」

【お母さまへ】お子様に価値の多様性を気付かせて下さる為に・・・

※夏向き・・・?
次のお題は:「丘」「水着」「宿題」でお願いします。
「丘」「水着」「宿題」

夕陽が見える丘のうえには小学校があった。
その学校には数人の男の子と、数人の女の子と、一人の先生と、
たくさんの動物がいた。
小学校の向こうにはみんなが『プール』と呼ぶ滝壷があった。
暑い日はよくみんなで泳ぎに行った。
泳ぐのに水着は必要なかった。お風呂だって一緒に入る仲だ。
戦争は激しさを増し、町からは学徒が次々と動員されていった。
でもその小学校はなにひとつかわることなく、暑い日には
みんな泳ぎに行った。
その小学校に宿題はなかった。小学校にいることが宿題だったのかも知れない。
宿題を終えた子はひとり、またひとりと去っていった。
今でも暑い日には、みんなの泳ぐ姿が見られるという。

次は「淡白」「厳密」「処遇」
409「淡白」「厳密」「処遇」:02/07/27 08:02
コロラドの夕日は沈むのが早過ぎる。
もっと、こう叙情的かつ郷愁的に沈んでくれなければ。
淡白な夕日とは違って、この茹だるような暑さは逆になんだ。
厳密な判断が何も下せないじゃないか。
全くもって私はコロラドとは生理的に合わないみたいだ。
こんな場所にやってきて迄、こう愚痴を延々書く事になろうとは思わなかった。
否、私の今の処遇に嘆いてこのような事を書いている訳ではないという事を、
一応明確な貴方に失礼と思いながらも書き添えておく。
それにしても暑い、しかも言葉が分からない。言葉が分からないから動きで理解しようと思いしも、
その動きから理解出来ないから前に進まない。
何故こんな所にいるんだろう。
皆元気なんだろうか?
珠には電話でもしてくれないか?
無論こちらに遊びに来てもらって構わない。

そうなんだ、正直に言うならば私はとても淋しいんだ。

コロラドの夕日は沈むのが早過ぎるんだ。


次は「ギター」「桜桃」「河口」
410「淡白」「厳密」「処遇」:02/07/27 08:10
淡白な精液だなと、ミサは思った。
この人の性欲は体内できちんと厳密に処理されているのだろうか?
「性欲が厳密に処理される」というのも妙な言いまわしだが、
アキオはいつも若さにまかせてミサを求めてくる。
勃起したペニスもミサが今まで出会ったどのペニスよりも硬く大きく強かった。
それなのにこの人の精液はサラサラしていていつもとても薄い。
ありあまる性欲が正しい処遇を得たなら濃い精液として噴出するんじゃないかとミサは考えるのだ。
腹の上のアキオの薄い精液を手のひらで触れながら、ミサは隣に横たわるアキオを見た。
薄く目を閉じてタバコを吸っているアキオの表情が少しやつれて見えた。


411名無し物書き@推敲中?:02/07/27 08:11
かぶったのでお題は「ギター」「桜桃」「河口」でお願いしまーふ
412火尭烏:02/07/27 10:59
 腰を抜かして地べたに転がっているのはレイ子の『元』彼氏、
柏木とかいうヤクザの男だった。

(俺はこいつを殺せるのか……彼女の、ために?)

時計の針が三回打つ間、世界は微動だにしなかった。

「殺して!!」

 ヒステリックに叫んだ彼女の声に押されて、俺は弾けた人形のようにギターを振りかぶる。
色眼鏡の下から男が漏らしたうわ、とかいう声を聞いた。
ギターが捕らえた男の首は見事に折れまがったが、俺は自分の身体さえ止められない。
3回打ち付けたところでギターはグシャ、と潰れて鳴らなくなった。
男の腕時計も止まった。

 俺は薄暗い天井と彼女の顔を見た。泣いていた。
俺も、男も、椅子も、天井も、みんな涙で歪んだ。
空しい情熱が胸でくすぶった。

 彼女の瞳から流れた川の、その深く暗い河口で桜桃みたいな唇が濡れている。
ふらついて抱きしめた、彼女のキスはカネの味がした。
まるで映画のワンシーンみたいだ。このまま……時が止まってもいい。

「バカね」

気付くと彼女は笑っていた。
俺の腹にナイフが刺さっている。


……ハメられたのか俺はッ!!?

===================================
next→[アロエ][負け犬][ペンライト]
413名無し物書き@推敲中?:02/07/27 11:58
[アロエ][負け犬][ペンライト]

「おい、負け犬。アロエヨーグルト持ってこい」
私は負け犬と名付けた奴隷に命じた。私の邪眼で虜にした776人目の奴隷だ。
「お待たせしました」
「……なにこれ?」
差し出されたアロエヨーグルトは、よりにもよって森○のアロエヨーグルトだった。
「は? アロエヨーグルトでございますが?」
その一言に私は切れた。ブチ切れついでに負け犬の股間を思いっきり蹴り上げた。
「私がアロエヨーグルトっつったら賞味期限切れの牛乳で作り上げた○印のやつに決まってんだろーが!! 腐敗した会社と腐敗した牛乳が奏でる負のハーモニーがいいんじゃねえか!! ん? おい、負け犬?」
負け犬はピクリとも動かなかった。ペンライトを取りだし、瞳孔を調べる……駄目だ、完全に逝っちまってる。

あー、またやっちゃったよ。また街に男狩りに行かなくちゃ。

次は「魔女、ハレー彗星、戦い」です。
414エヴァっ子:02/07/27 12:11
負け犬ほどの、惨めなものが他にあるだろうか?
体のあちこちが痛い………痛いで済むってのは、まだまだマシって事だな。
「アンタバカでしょ」
這いつくばる俺の頭上から、聞き覚えのある女の声。
顔を見なくても、それが誰かはわかる。
「カッコ悪いだろ?」
「そーかも、ね。ところでこの傷………火傷?火であぶられたの?」
最後に、やけに火のでかいライターであぶられた傷がペンライトで照らされた。
「アロエでもあったら塗ってくれ」
「見てるこっちが痛くなりそうな傷ばっか。ちょっと待ってて、薬と包帯買ってくる」
止めとけ………無駄になるから、と止めるのも聞かずアイツは小走りで去っていた。
「あーあ、こりゃぁ金が無駄になるなぁ………」
ぼんやりと、俺の視界は暗闇に覆われていった。

次「ジュース」「電球」「ラジコン」で。
415名無し物書き@推敲中?:02/07/27 16:31
「ジュース」「電球」「ラジコン」

おんぼろの六畳一間のアパート。秋子の恋人(にしたいと思っている)耕平が暮しているアパートだ。
裕福な家庭に生まれた秋子には、狭くて四角い部屋も共同トイレも共同キッチンも見るもの全てが珍しくて新鮮だった。
耕平が買ってきてくれた缶コーヒーを飲みながら、秋子は耕平の部屋の中を繁々と見渡した。部屋の隅に小さな勉強机が一つ。上には参考書とノートが数冊。それと、小さなラジオ。
天井には裸電球。テレビもビデオもない。唯一の娯楽品といえば、作りかけのラジコンくらいだろうか。
「何もないのね」
「まあね、みんな必ずそう言うよ」
「なんで? 生活苦しいの?」
「違う違う。来月からアフリカに行くんだよ。1年間くらい。このアパートはそのつもりで借りたんだ。家賃も安いし、狭いと余計なもの買わなくなるし、貯金もできるしね」
「大学は? やめちゃうの?」
「休学届出すよ。1年後にはまた帰ってくるつもりだから」
秋子は動揺した。じっくりゆっくり焦らずに耕平といい仲になる予定がすべて狂ってしまったのだ。
どうしようどうしようどうしよう。時間が経過するばかりで、何一つ解決策を見出すことができない。
「あ、そろそろ終電の時間じゃないか。駅まで送っていくよ」
「缶コーヒー美味しかったわ。ね、最後に私のジュースも飲まない?」
「いいけど、何?」

「私のラヴ・ジュース」

次のお題は>>413のやつでおながいします。
エロいな! いいぞ!
>>416
ありがとう(笑)
418「魔女」「ハレー彗星」「戦い」:02/07/28 00:11
A国とB国。隣同士の国でありながら、もうその関係は修正できない所まで来ていた。
どちらが悪いとは誰も言えないだろう。直接の発端は、B国の活発化した軽工業生産
だった。B国の目に余る貿易黒字にA国内で不買運動が起き、それを知ったB国民がAの
国旗を燃やす。侮辱と受け取ったB国は外務省を通して正式に抗議をし――。
元々、ハレー彗星を最初に発見したのはどちらの国の天文学者か、ということで
激しい議論、時には行き過ぎた議論までをも交わしていた両国。火種は腐るほどあった。
結局、宣戦布告をしたのはA国だったが、最初に国境を越えたのはB国だった。

実力は拮抗していた。ヨーム川の戦いで、獅子奮迅の働きをしたA国の女性兵士を
B国は「呪いの魔女」と呼び、A国内にスナイパーを忍び込ませ、凱旋パレード中に
暗殺した。しかしA国はその暗殺者を探し出し、国中を首に縄をかけて引きずり
まわした後に群集の手で撲殺させた。B国がA国首都付近まで兵を進めると、A国は
海戦でB国戦艦を全滅させる。

どちらかが倒れるまで戦争は終わらないだろう。だが、勝った方も荒れ果てた大地からは
何も得ないのだ。
奇しくも戦争が始まったのはハレー彗星が地球に最も近付く年だった。

♯次は「更新」「行進」「功臣」でお願いします。
419「更新」「行進」「功臣」:02/07/28 01:32
乾いた暑い日の真昼間だった。整然と並んだ一隊が無言で歩いていた。
彼らは一様に、鋭い注意力をその目にみなぎらせていて、彼らのつくる影と
同様に、その身は黒一色に覆われていた。しかし、彼らは汗一つかかず、
ただ整然と、行進を続けていた。

彼らは、そうして歩行距離を更新し続け、やがて目的地に到着した。
しかし、彼らはほっと一息つく間もなく、作業を開始した。物資の搬送。
それが彼らに課せられた任務であった。彼らは、運搬物資を受け取り、
再び帰還のための列に戻っていく。

その時、上方から大きな影が舞い降りてきた。敵襲。その強大な攻撃
から逃れ得たものは大急ぎで逃げ帰ったが、そうではなかった大多数の
者たちは、一瞬で粉々に砕け散った。死因はおそらく圧死であろう。

「あはははー、アリー、おねえちゃん、ぼくアリつぶしたー」
「そういうことしちゃいけないんだよー、サトシー」

名誉の戦死を遂げた死者たちは、功臣として奉られた。

next→「ルックス」「ソックス」「ワックス」
420「更新」「行進」「功臣」 :02/07/28 02:11
 私が「彼等」を最初に目撃したのは、約10年前。アジアにある小国での事だった。
 当時まだ駆け出しのカメラマンだった私は、貧困にあえぐその国の実状を調べに来ていたのだ。
 ある程度の予想はしていたが、本当に酷い国だった。町は浮浪者であふれ返り、郊外に出れば
そこかしこに餓死者が転がっている。そんな国民の惨状などお構いなしとばかりに支配者層は
栄華の限りをつくし、軍隊を増強させる。大統領に苦言の一つもこぼそうものなら、たとえ功臣で
あっても強制収容所行き……この国が終わる日はそう遠くないだろう、と私は思った。
 幸か不幸か、その日は私の滞在中に訪れた。国家創立50周年の記念式典。政府・軍部の重臣が
一同に集う唯一の日だった。
 きらびやかな軍服の行進が突如、紅蓮の炎に包まれた。重火器の咆哮が幾重にも鳴り響き、政府
関係者も一般市民も見境無しに薙ぎ倒す。まるでドミノのように人が倒れ、動かなくなった。
 私は折り重なった死体の陰から、狂ったようにシャッターを切っていた。そこに写っていた、
殺戮を行なう謎の一団。後で調べてみてわかったのは、政治的に行き詰まった国に現れては、そこ
の政府・軍部関係者を根こそぎ……時には一般市民もろとも抹殺し、風のように去っていくこと。
そして、連中が自分達のことを「更新者」と呼んでいる事、それくらいだった。
 そして今、私は再び連中の姿を目にすることになった。……よりによって、「この国」で。

 うわ、また間に合わなかった……お題はもちろん、>>419の指定したやつで。 
421「ルックス」「ソックス」「ワックス」 :02/07/28 02:21
 このクスリは、なんのために飲むのだったか。
普段は覚えている筈の事柄さえ、忘却の彼方に流してしまった。
まあどうでもいいか、とでもいうように鏡に映されたルックスのいい女は笑う。
その顔が目の端に映ったのか、一瞬顔を歪めてから、ノートパソコンを鏡に投げた。
硝子はその破片をあたりにばら撒き床に広がった。
 ワックス臭いこの部屋は其れ自身の存在を強調するように、つややかに光る床板をはめていた。
とどのつまりはそういうことなのだ。クスリの意味は忘れた、硝子は割った、ワックスは存在する。
自嘲するように首を振ると、シャラシャラと音を立てながら歩く。
同じに赤い液体をばら撒きながら、ソックスと呼んでいる足だけ白い猫を踏んだ。

ああ、クスリも床も猫も同じなんだ。クスリと笑って女は消えた。

次のお題は「ストライク」「F1」「引退」で。
422名無し物書き@推敲中?:02/07/28 02:28
F1の引退レースを終えた俺はピットに戻りラッキーストライクに火を点けた。
人生の中で最もうまい煙草だった。

次は「糞」「貝」「ビジネス」で。
423左利きのFANTASISTA:02/07/28 02:58
俺はバキュムーカーの専任ドライバーで18年間これで
飯を食ってきた
毎日糞を集めながら糞に対して敬意をひょうしていた。
おれはつまらないスカトロマニアだった。
まいにち糞をながめつまらない人生に捧げていた
よく海岸を通るそのときの貝の光る反射は綺麗で
ウンコをはめたらよさそうだった
この文章を書いている俺は次のビジネスを考えていた
糞を集めて虫に売るのである
その店を開くのが俺の夢だ

次は「国歌」「無視」「女子高生」で。
424 「国歌」「無視」「女子高生」:02/07/28 09:10
滔々と国歌を詠いあげる父を遠くから眺めているだけだった。
喪主を無事勤め終え、ホッとして飲んだ酒が父を狂わすのは早かった。
張り詰めていたのが切れたのか、泣いているかと思えばすぐ笑う。
遠くからでも痛い程伝わる滑稽さ、逃げだしたい気持ちだった。
「おい、幸江こっちにきなさい」
その場の雰囲気を維持出来なくなった父が私を呼んだ。
私は勿論無視しながら、置いてある柿ピーを口に入れた。
「おい、幸江、幸江」
「母さんが、母さん死んじゃったよ」
笑ったと思えば叉泣いた。
気が付くと親戚一同が私達を観察していた。
「まだ幸江ちゃんも女子高生なのにねえ」
とどっかの叔母さんが便乗して泣き出すのと同時に私は席を立った。

外に出て誰も居ない事を確認してから、喪服を緩めながら煙草を吸った。
「あれ、煙草って美味しいんだ」

煙草を吸いながら叉父の元に戻らなければいけないと考えると憂鬱になった。

母の死が初めて面倒臭いと感じた。


次は「ドーナツ」「ダチョウ」「口臭」
425名無し物書き@推敲中?:02/07/28 10:56
「ドーナツ」「ダチョウ」「口臭」

ダチョウのガーリック炒めを食べた後に彼女が僕に差し出したのは、シナモンドーナツだった。
「口臭消しにはこれが一番よ」
「本当?」
僕は疑いながらもシナモンドーナツを口に運んだ。
「証拠を見せてあげる」
彼女はシナモンドーナツを一口食べた後、僕に息をはいた。彼女の息はシナモンの匂いがした。
「でも、キスするときはどうなんだろう。ガーリックの味がするキスなんて、ちょっと嫌だな」
彼女はシナモンドーナツを一口食べた後、僕にキスをした。彼女のキスはシナモンの味がした。
「で、でもさ、さすがに汗の臭いまでは消せないよね?」
彼女はシナモンドーナツをすっかり平らげてしまうと、僕を押し倒した。

僕らの汗は互いに混じりあい、甘くて不思議な香りになった。

次は「ドーナツ、日曜日、秋葉原」です。
426名無し物書き@推敲中?:02/07/28 11:57
日曜日の秋葉原ってドーナツてるの?
427名無し物書き@推敲中?:02/07/28 16:32
俺は先週の日曜日、秋葉原へ行ってドーナツを食った。
最悪な味だった。
それはまるで生地の中にICチップが埋め込まれているようなドーナツだった。
周りはパソコンヲタみたいなウザい奴ばかりで、店の雰囲気も悪い。
血眼になってエロゲーとかやってそうな、童貞の巣窟のような店だった。
しかし売り子の女の子はかわいかった。
だから俺はその店を許すことにした。

次は「証拠」「不細工」「裏方」で。
>>426
(・∀・)イイ!!
429「証拠」「不細工」「裏方」:02/07/28 18:16
真実子は不細工といわれる程は器量が悪いわけでは無いと自分では思っていた。
しかし、際立って美人なのかと問われれば否定するしかないし、せいぜい回りを
盛り上げる為の裏方役であろうと感じている。
その証拠に、学部やサークルの友人達や合コンで知り合った男達に誘われて、
ワケ有りの関係になった経験は無いし、異性に対して自分から積極的にアピール
するのも極めて苦手だった。

次は「色」「水面」「誘惑」で
430エヴァっ子:02/07/28 18:29
『平成のホームズ、またもお手柄!!!!』
今日もその探偵は、新聞の大見出しを飾っていた。
一昔前までは裏通りで店を開いていた、つまらない男だったのに………。
ここまで有名になったのも助手のお陰だろう。
その助手はいつも有力な証拠を探偵に知らせ、事件を解決する手伝いをする。
いや、むしろ彼が解決しているといっても過言ではない。
もしかしたら、全世界のヒーローはこんなものなのかもしれない。
誰かが裏方に徹してくれているお陰で成功して、巨万の富と名声を得る。
私は以前、彼に何故独立しないのかと尋ねたときの事を思い出した。
彼は苦笑しながらこう答えたのだ。
「あなたは私の顔をどう思います?不細工でしょう?私の顔では、ヒーローには成れないんですよ」

次は「死体」「マンガ」「時計」で。
431「死体」「マンガ」「時計」:02/07/28 20:47
いくつになっても、仏さんの顔を見る時はつらい。悔しそうな顔、怯えている顔、
呆然としている顔。明日は誕生日だったかもしれない。明後日は昇進していたの
かもしれない。明々後日は娘が生まれる予定だってあっただろう。もっと生きたかった
だろうに、必ず俺たちが仇を取ってやるから、と彼らの目を手で閉じるのだ。
「刑事長! この死体がはめてる時計、午前3時で止まってます!」
若い刑事が俺に言う。奴にとっては大発見なのだろう、意気揚揚と言葉をつなぐ。
「そうすると、こいつの推定死亡時刻は午前三時って……」
「バカ野郎が」
そう俺が言うと、奴は呆気に取られて俺を見つめる。
「……え? 何を言って……?」
「いいか。時計なんざなぁ、人間が勝手に動かせるんだ。そんなマンガみてぇに
すぐ決め付けるんじゃない。鑑識の結果を待てよ。それと、仏さんを死体やこいつ
呼ばわりするな!! もっと敬意を払え!」
そう俺が怒鳴りつけると、若手刑事は深深とため息をついて天井を見上げる。

「はい、ストップ! だめだよ、淳ちゃん。何回目なのさ。キャラ作りすぎだって。
もう学芸会まで三日しかないんだよぉ……」


♯こういう奴、クラスに1人はいましたよね?(w 
 次は「小学校」「迷惑」「問題児」でお願いします。
432名無し物書き@推敲中?:02/07/28 20:56
俺が通っている小学校には他人に迷惑ばかりをかける問題児がいる。
苗字は伏せるが、名前はヒロアキだ。
こいつはバカで無能なくせに威張っていて、
クラス中のみんなが軽蔑しているのに、
自分では好かれていると思い込んでいる、救い難いまでに愚かしい男で、
五年三組の恥だ。
俺は、お前が、嫌いだ。
そして、お前のことを、みんな内心では、バカにしている。
ヒロアキ、いい加減に、気づけ!

次は「固体」「方程式」「ストリッパー」で。
433「固体」「方程式」「ストリッパー」:02/07/29 00:55
今でも隆の夢を見る。小学校の頃の甘い思い出、私の初恋の人だった。
隆は理科と算数が大好きで、酸素や水素や過酸化水素の事や、難しい
方程式や関数の事を私に丁寧に教えてくれるんだけれど、どんくさい
私はいつも覚えられずに迷惑掛けたんだっけ。それでも嫌な顔一つも
しないでいてくれた。中学を卒業して直ぐに場末の小屋へ就職した私
には何の役にも立ちはしなかったけれど、すごく嬉しかった。
そこそこ名の売れたストリッパーとなった私が、毎日かかさず新聞を
読むんで、回りの仲間は口さがないけれど遠く離れた場所でロケット
の仕事をしている隆のことが、私の密かな誇りなんだ。

「姉さん、新聞。新聞見た? ロケット! 爆発したんだってさ。いっぱい人、死んでるよ」
・毎朝新聞記事・
----------------------------------------------------------------------
昨夜遅く文部科学省に発表によると、鹿児島宇宙空間観測所より打ち上げ準備
中の固体燃料ロケットM−6の発射準備中に燃料供給部分破損による爆発事故
で作業中の職員五名が死亡、十六名が重軽傷を負い病院に収容さてた……
----------------------------------------------------------------------

次は「証明」「探索」「戸口」で
434「証明」「探索」「戸口」:02/07/29 01:40
 縁側でうとうととしていた私は、言い争う声で目覚めた。バカげている、と父は叔父を止めていた。探索に出たって何も見つかりはしない。死にに行くようなもんだと。
 目をこすりながら、戸口まで行くと、旅装の叔父が立っていた。父は真っ赤になって怒っている。泣いているようだった。
「父さんの仮説を証明するのが、僕の役目なんだ」
 叔父はそう言い、私に目をやってにこりと笑うと、家から出ていった。
 それから15年、叔父の消息は不明だ。

 今年も暑い夏が来た。私は縁側でごろりと横になり、その時を待つ。蝉の声、遠い子どものはしゃぎ声… やがて、あの気配がやってくる。
 叔父だ。
 叔父は、あれから毎年、出ていった7月31日になると、家の戸口に立っている。そして、同じ挨拶を繰り返すのだ。壊れたレコードのように。
 遠い異国の地で死んでしまったのだろうか? だから、何かを伝えたくて、やってくるのだろうか? 後悔しているのだろうか。祖父の夢を継ぐことができなくて。
 私はあのときと同じように、額に汗をにじませながら、叔父のかすかな気配を感じている。
 …それとも、止めて欲しくて?
 けれど、叔父は、むしろ記録のように、淡々と幾度も再生される。そこに感情はない。ただ、繰り返す。
 出発したときの叔父と同じ年になった私は、意を決して立ち上がった。
「叔父さん、お盆の後に行くことにしたら?」
 それまで、過去の幻影だった叔父のうっすらとした影は顔を上げ、私を見た。私は生唾を飲み込んだ。叔父は微かに笑って、掻き消えた。
 私は戸口にへたり込んだ。しばらくして、靴脱ぎを見ると見知らぬ靴が置いてある。さっきまでは確かになかった。
「どうしたの、そんなところで座り込んで」
 母の声だ。私はゆっくりと振り返った。
「叔父さんが持ってきてくれた西瓜があるわよ」
 廊下の向こうに、よく日焼けした叔父の姿があった。やあ、久しぶり、と彼の唇は音のない言葉を紡いだ。
「お、お帰り」
 どこにも行ってないわよ、変な子ねえ、と母は首を傾げた。

次は「かき氷」「冬」「夾竹桃」で。
435「かき氷」「冬」「夾竹桃」:02/07/29 03:01
空はもう白んできていると言うのに、土曜日と日曜日の境界線を誤魔化すように一通りの儀式的な行為が済むと、僕は一人で散歩に出た。
女の人の部屋に半日も居ると未だに疲れてしまうのだ。そんな自分が好きだったりする。
小川沿いの坂道を下った所にあるコンビニで一年振りにかき氷を買い、”近所の公園”と呼ぶには
すべり台がスペシャルすぎる公園のベンチに座った。
平和な町、平和町。彼女が自分には合わないと言い切る町。
中空を見上げながらかき氷を食べていると、僕はまんざらでもないと思った。
そして目の前を通り過ぎてゆく犬の冬のことを思った。
黒い犬。群青色の空。夾竹桃。そして君。
僕だけがとどまれないでいる、2002年、夏。

次は「花火」「髪の毛」「白痴」
436「花火」「髪の毛」「白痴」 :02/07/29 11:24
 墨色の帳は、鮮やかなに染め上げられていた。耳をつんざく雷鳴は、
閃光に切り取られた瞬間瞬間を脳裡に焼き付かせる。
「ねぇ」
 色鮮やかな顔表で、彼女は僕を見た。髪の毛も同じ色彩だ。
「花火ってコワイよね」
 そう悪戯っぽく笑って見せたが、目が脅えていた。
「そうかな、綺麗だ思うけどな」
「ううん」
 頭を振って、急に彼女は駆けだした。まるで何かからにげるようにして。
「おい、待てよ! どこに行くんだ!」
 人の波は濁流というよりも清冽な大河のようで、よけいに遡航は困難だ。
 漸く追いついて彼女の繊手を掴んだ。ふと、僕は坂口安吾の『白痴』を思
い出していた。
「あのね」
 彼女が言った。
「一生捕まえていてくれる?」
 婉然と相好を崩した彼女に、僕は投げっぱなしジャーマンを決めた。


次は「明日」「明後日」「明々後日」
437名無し物書き@推敲中?:02/07/29 12:26
「明日」「明後日」「明々後日」

男狩りに出た私は街で最高の獲物を見つけた。777人目の奴隷に選んだのはリバーフェニックス似の美少年だった。
早速私の邪眼でその美少年を魅了し、我が家へ戻った。ベッドへ寝かせ、優しく語り掛ける。
「あなたの名前はポチ。そして私がおまえのご主人様。わかった?」
「僕は…ポ…チ……? あな……たがご主人…様…?」
「そうよ。あなたは私に仕えるの。明日も明後日も明々後日もこれからずーーーーーっとね」
「ふぅーん……でも残念ながら、君のほうが僕に仕えることになるのさ」
「えっ!? ちょっと、私の邪眼が効かないなんて、あんた何者?」
「ご同輩だよ。ただし、君よりランクはずっと上だがね」
「なんですっ……」
私はそれ以上何も言えなくなってしまった。ポチに唇を塞がれた瞬間、激しい快楽の波が押し寄せ、思考が弾け飛んでしまったのだ。
その夜、私は悪魔ではなく、ただの女になってしまった。

「タマ、アロエヨーグルト持ってきて。二人で一緒に食べよう」
あれから私はポチ……ではなく、ご主人様に仕える身となった。けれどそれもいいかな、と思う。
明日も明後日も明々後日も、この喜びが永久に続くのなら。

次は「猫、集会、秘密」です。
438明日・明後日・明々後日:02/07/29 12:47
「……なぁ」
「ん?」
いつもここから始まる二人の会話、意味の無い言葉のやり取り。
でも、俺はこの瞬間が好きだ。
「お前、いっつも『明日はきっといいことがある』って言ってるけど、
その『明日』が悪いことで満ちていたらいったいどうするんだ?」
「その日の明日…だから明後日に期待するよ」
「じゃあその明後日もだめだったら?」
「…明々後日に期待する!」
「……前向きすぎるぞ、お前」
「人間前向きが一番!ポジティブポジティブっ!」
やっぱり意味のない言葉のやり取り。それでも俺はこの瞬間が好きだ。


ベタですな…次は「友人」「迫撃砲」「ラジオネーム」でお願いします。
439438:02/07/29 12:50
遅レススマソ。リロードし損ねた…
次回は437さんのお題で。
440「猫」「集会」「秘密」:02/07/29 13:41
 たく、なんだってこんなクソ暑い日に、閉め切った体育館で朝会するかねえ。
447人もいるのに窓ひとつ空けないのは、ヘタレな女子どもを倒れさせるためか?
まあ、どうでもいいことだけどな。
 
 しかし校長たちは馬鹿だよなやるわけないだろ。
せっかくの夏休みは家の手伝いと早寝早起きなんて。
まあ手伝いは親がうるさいし、少しはやるかもしれないけど。
早寝早起き、ですか?いえムリっすよ。3時に寝て12時ごろ起きる予定なんでね。

 そーいやアイツが死んだのは、今日みたいな集会が終わった後だったな。
トーヤは、三毛猫だったか。その割には白っぽくてかわいかった。
秘密を色々教えてたのに、最後は轢かれてあっけなく死んだ。
鳴き声が未だに聞こえる気がするのは、幻聴かも。トーヤは賢くてえらい可愛くて。

 ふと気付くと、終業式兼朝会は終わってた。
丁度国旗に挨拶する途中だったが、なんとなく面倒だったからそのまま頭を上げてた。
教師の視線をいくつか感じたが、気のせいだろう。
441「猫」「集会」「秘密」:02/07/29 13:41
次のお題は「おめでとう」「新たな」「一歩」でおねがいします。
442「おめでとう」「新たな」「一歩」:02/07/29 15:22
「おめでとう!今日から新たな一歩を踏み出したね!」
「今日からが始まりだよ!」
「がんばれ!」
沢山の知人に見送られながらな僕は未来行きの列車に乗った。
「ほんとに皆ありがとう!」
列車の窓を開け見送る皆に向かって何度も手を振った。
皆の励ましが嬉しくて一人涙した。
微かに開いている窓から前向きな風が僕を緩やかに包み込んだ。

30分後その列車に謎の隕石落下、生存者0。


次は「ホームレス」「弟」「番い」
443名無し物書き@推敲中?:02/07/29 17:14
弟と近くの河原でキャッチボールをしていた。空から強烈な日差しが僕たちを照らしていた。
「次は変化球いくぞ!あ、ゴメン。すっぽ抜けた・・」
「お兄ちゃんどこ投げてんだよ!!しかたないから取ってくるね。」
弟はボールを取りに走っていった。私が投げたボールは遥か遠くの橋桁の下まで転がっていた。
私は心の中で、弟に向かって(悪いな)と謝った。しばらくして弟が帰ってきた。だが、ボールは持ってなかった。
「お兄ちゃん・・、ボールをホームレスの人が取っちゃったよ。返してって言おうと思ったけど怖くて言えなかった。」



444:02/07/29 17:16
ミスった。中途半端なことを・・・
もう書く気が失せた。次の人も「ホームレス」「弟」「番い」でお願いします。
445名無し物書き@推敲中?:02/07/29 17:33
始めまして。なんか最近面白いサイトが出来たみたいですよ。
キャラクター(笑)とかがタダで持てたり、着替えさしたり・・・・
でも今だけらしいですよ入会無料なのって
詳しくは下記UELをクリックして、確かめて!!
http://www.e-mansion.co.jp/co/ac.html
>>445
せめてUELは直せ(w
447名無し物書き@推敲中?:02/07/29 17:46
「ホームレス」「弟」「番い」

莫大な遺産を俺と弟に残し、親父は死んだ。俺がホームレスになったのはそれからだ。
俺は弟と遺産を巡って醜い争いなどしたくなかった。だから、俺が家を出れば万事解決だと思っていた。
しかし、弟は俺に殺し屋を差し向けてきた。小心者の弟のことだから、俺がいつ遺産を狙ってくるのか気が気じゃなかったのだろう。
空を見ると、鳥が番で飛んでいた。まるで寄り添い合うように。
「俺たちも、子供の頃はああだったのになあ……」

腹からとめどなく溢れる血が、俺の思考をそこで止めた。

次は「酒、泪、男と女」
448名無し物書き@推敲中?:02/07/29 21:43
今日も河川敷にうじゃうじゃいる男と女のカップル・・・。僕は見ていていつもイライラする。
なにいちゃついてんだよ!と、僕は内心でやりきれない怒りをぶちまけていた。だがそれにも限界があった。
そこで僕はある決意をした。彼等を幸せから一気に地獄に突き落としてやろう、と。
翌日、僕はさっそく作戦第一弾を実行した。作戦名は〔恐怖のビール瓶の舞〕。その名の通り、彼等に大量のビール瓶を浴びせてやるのだ。
ここには酒屋から貰ってきたビール瓶が70本ある。彼等との距離は20m位あるが、これだけ投げればどれか命中するだろう。
僕は振りかぶって1本目を思いっきり投げつけた。そして2本目、3本目と立て続けに投げた。とにかく手元が無くなるまで投げ続けた。
投げ終わった所で彼等の様子を見てみた。70本の内の何本かが命中したようで、男の方がうずくまっていた。
作戦は大成功、これで彼等は一気に地獄へと引きずり落ちた、と僕は思った。だが、この後僕の予想外の展開が待っていた。
倒れていた男を女がやさしく抱擁し、男と接吻し始めた。しばらくして男は立ちあがり、女と前以上に親密になったではないか。
僕はうなだれた。作戦名〔恐怖のビール瓶の舞〕、大失敗。僕は心に再起を誓った。
二週間後。僕は再びこの河原にやって来た。もちろん前以上に緻密な計画を携えてである。
作戦第二弾。その名も〔裏切りの泪〕である。内容はその名の通り、彼等に互いに不信感を与え、そして地獄を味わわせるというものである。
今回の作戦にはパートナーがいる。ゲイバーに勤めている、ヒロシさんだ。ヒロシさんを彼等に送り込み、そして・・・
ごたごた言うよりとにかく実行だ。僕はヒロシさんに目をやった。さあお願いします、という意味を込めて。
だが、今回も予想外の展開が待っていた。
「その前に、あなたの尻を犯させて・・。ほら、もうこんなに勃っちゃってるから」
僕はヒロシさんに犯された。そして気がついた頃には夜が明けていた。

次は「教室」「床」「要項」で

449名無し物書き@推敲中?:02/07/29 22:01
浩次はバイトの募集要項をビリビリに破ると、それを教室の床にバラまいた。
昨日の夕方に面接を受けてきたのだが、今朝、登校前に、不採用の電話があった。
「どうしたんだよ、何を朝から荒れてんだよ」
友人の高原の問いに、浩次は声を張り上げてこたえた。
「だってムカつくじゃん。たかがコンビニのくせにさあ、
県下有数の進学校で常時成績が十番以内の俺を落としやがったんだぜ」
「そりゃあムカつくな。ああいうところの経営者なんて低学歴だろ?」
「ああ、いかにもそんな感じだった」
「まあ、どうせさ、最終的な人生の勝利者は俺たちみたいな高学歴なんだからさ、
あんまり気にするなよ」
高原がそう言って浩次をたしなめた。
「そうだな、どうせ負け組だもんな。あんな店、さっさと潰れちまえばいいんだ」
そう吐き捨て、浩次はようやく落ち着きを取り戻すと、自分の席に着いた。
やがて、ホームルームの時間を告げるチャイムが鳴った。

次は「拷問」「鞭」「蝋燭」で。
450名無し物書き@推敲中?:02/07/29 22:08
「拷問」「鞭」「蝋燭」

拷問なんて恐くない。
鞭の痛みも蝋燭の熱さも貴方が与えてくれるものならなんだって甘受できる。
本当の愛って、そういうものでしょう?

次は「天使、生意気、笑顔」です。
451名無し物書き@推敲中?:02/07/29 22:27
赤ん坊の微笑みを『天使の笑顔』なんていったりするけど、これは赤ん坊の
特権じゃないことをボクは思い知った。
彼女は男勝りで、運動神経抜群で、頭も良くて、お金持ちの家に住んでいて。
そしてなによりも生意気な奴だ。
見かけるときは、なぜか大抵怒っている。怒りの矛先は、は同じクラスの男子が
その8割を占めている。むしろ女子と話してることをあまり見ない。
でもボクは知っていた。彼女の秘密を。
普通は女子同士で一緒にいるものだが、彼女がそうではないわけを。
普通じゃないなら、『異常』なのだ。
アブナイ娘なのだ。
そう・・・ボクと同じ。
「恵ちゃん・・・今日の『アレ』まだだよ?」
帰宅しようと下駄箱から靴を出す彼女にボクは言った。
「あ・・・ごめん。忘れてた」
そう言って彼女は天使の笑顔を見せるのだ。ボクだけの笑顔を。
「じゃあまたいつも通り屋上に行こうか?”早苗ちゃん”」
彼女の言葉に、”ボク”は負けないようにと、精一杯の笑顔で「うん」と応えた。

「魔法」「喪失」「荒野」でー。
魔法少女荒野で無理矢理処女喪失
453「魔法」「喪失」「荒野」:02/07/30 00:27
 荒野にひき出された彼女は、用意された椅子に座った。
 群集が見ている。
 嘲りの顔。哀れみの顔。笑い顔。
 戸惑い顔の床屋は、腰まで流れる黒髪を手にとり無言で問う
 「覚悟はいいかい?すまんね」

 鋏が一気に彼女の黒髪を切り始めた。
 目前では、父が同様に髪を残らず剃りとられている。
 「堪えるのだ。屈辱と喪失に堪えてくれ、娘よ・・・」

 夜が近づき、見物人も去った後、辛うじて涙を堪えた彼女は
荒野を染める夕陽に、こう誓った。

 「来年こそは優勝して下さい。星野監督の魔法を信じています!」
 「そうとも、娘よ。来年こそは、あいつらを丸坊主にしてやろうぞ」
 虎縞の衣が風にたなびく。がんばれ浪速の父娘!

※今年は大丈夫かなあ^^;>Aクラス
次のお題は:「科学」「生成」「豊作」でお願いします。
454名無し物書き@推敲中?:02/07/30 00:28
「魔法」「喪失」「荒野」

 皆、目を閉じて欲しい。何が見える?何も見えないだろう。それが俺のいる世界だ。
 傷つき果てた心を荒野に例えるのは俺に言わせれば甘い。
 産まれが悪く、頭も平均以下で、運も味方してくれない。親は自分勝手で何もせず、世界は俺にそっぽを向い
ている。ひたすら守り続けるだけの人生なのに喪失の思い出しか存在しない。
 その一方で、何もしていないのに当然のように運命の寵愛を受ける人間もいる。ただひたすら暴風と荒波に耐
え続けるだけの人生の側に、晴天の花畑でワルツを踊れる人間がいる。
 不条理というほかない。

 俺は今、世界に魔法をかける。世の中の不条理を、何も意識せず生きられる人間に鉄槌を下してやる。
 自身の全てを犠牲にし触媒にしなければならないけど、生きていてもこの先いいことなんてない。人の世に絶
望する人間の心の深淵……闇の深さがどのようなものか、知れ渡るのは悪いことではないだろう。
 そんなことを考えているうちに目的地に着いた。車を降りて、正門の前に立つ。握り締めた包丁の柄の感触を
確かめて、俺は小学校の中に入っていった。


 予め言っておくけど、上記文章のモデルに同情も賛同もしないよ。ただ、そういう考え方もあるかな、と。
 次のお題は「キラリ」「光」「あかり」
455454:02/07/30 00:30
かぶった。しかも一分差(藁)お題は453で。
456「科学」「生成」「豊作」:02/07/30 02:51
 夕焼けで、真っ赤に染まる世界。雲一つない空を烏が一羽横切っていった。その遥か下に
男が独り楠の根元に座り込んでいた。右手に一升瓶を抱え、左手には荒縄を携えている、
その中年の男の頬はうっすらと涙で濡れていた。時折、一升瓶を呷りながら正面にそびえる
楠の幹を手でゆっくりと叩く。「くそったれっ」と呂律が回らない声で呟いて。
 男は農家だった。機械の発展により、もう人間はいらないと言われながらも頑固に
自分の田圃を、昔ながらのやり方を守っていた。しかし、最新技術で生成された米に
味も品質も勝てるわけもなく、膨れ上がった借金はもう限界だった。
「くそったれが……。おーとめーしょん、だ? てくのろじーだと? ふざけるな!
ああ、豊作不作で一喜一憂してた時代は何処にいった。くそったれっ!」
 男はよろよろと立ち上がった。一升瓶に残った酒をちらと見つめ、逆さまにして楠の
根元を濡らす。そして、左手に持った荒縄を張り出している楠の枝に結びつける。
「あばよ。ずっと俺の田圃を見ていてくれたお前さんに迷惑かけるけど……。でももう、
こうするしかねぇんだ。本当にすまん。お前さんはもっともっと、長生きしてくれよ」
そう言って、男は首に縄をかけた。最後に映った景色は、川沿いに広がる自分の田圃だった。

「今日午後五時頃、長野県栄町で楠の木に首を吊っている男が近所の住民に発見されました。
男は非常に危険な状態でしたが、最新の科学技術により一命を取り止めました。
 なお、事件があった大木は安全性の面より、同日中に撤去されました」


♯色々な話が書けるようになりたいなぁ。次のお題は454でお願いします。
457名無し物書き@推敲中?:02/07/30 20:03
「キラリ」「光」「あかり」

僕には生きている価値がない。生きている感覚もない。
成績は中の下。運動は苦手で、何の取り柄もない。打ち込めることもない。
誰しも一つは自分の中にキラリと光り輝く何かを持っているものだが、僕にはそれすらない。
人から愛されることもない。だから人を愛することもできない。傷付くのが恐いから。
他人が傷付くのは平気。だって僕が傷付いても誰も手を差し伸べてくれなかったから。
そんなやつらが傷付いても僕は構わない。僕を傷付けるやつらは死んでしまえばいいとさえ思う。
みんな傷付いて僕みたいにボロボロになればいいんだ。僕と同じように傷付けば、僕のことを理解してくれるかもしれないから。
あかりのついていない家に独りぼっちでいるような気持ちでいるのは嫌なんだ。
だから僕は今日も2chに入り浸り。だってここには仲間がいるから。僕の錯覚かもしれないけど、ここにはきっと僕と同じで寂しい人がいると思うから。
罵られても、蔑まれても、今日も僕は2chの扉を叩く。つかの間の孤独を癒すために。
2chにいるときだけ、生きてていいような気がしてる。生きているような気がしてる。

次は「死 孤独 渇望」
458名無し物書き@推敲中?:02/07/30 20:29
ヨハネス・フェルメールは
制限のある範囲の風味のいいキャンバスを作成しました
一般に17世紀の部屋の女性および男性、死、孤独、また、時々のアウトドア場面、
寓話および宗教のテーマ。魅力は、主題の不機嫌および渇望、現実を増強する光、
色、割合および規模の複雑なコンビネーションの役目です。

次、「排便 聖者 カメルーン」
459「キラリ」「光」「あかり」:02/07/30 20:58
なんとなく、空を見上げた。月が綺麗だった。月が私に微笑みかけているような気がした。
そこで、私も月に微笑み返した。マクドナルド店員ばりの笑顔で微笑み返した。
すると、どうした事だろう。月が一瞬、キラリと光ったような気がした。
私は確かめたくなって、もう一度月に微笑んだ。やはり、月は一瞬キラリと光った。
月が私に反応してくれたんだ。私はなんだかうれしくなった。
もし私が月に語り掛けたらどうなるだろう。月は語り返してくれるかな?私は月に語り掛ける事にした。
「こんばんは、月さん。私の名前はあかりっていいます。よかったらお話しませんか?」
私はしばらく待った。だが、月からは何も返事はこなかった。そのかわり、私の後ろの方から笑い声がした。
私はなんだか恥ずかしくなった。そして、私に恥をかかせた月の事がなんだか憎らしく感じてきた。
「よくも私に恥をかかせたわね。あなたの事なんか大嫌い。早く消えてちょうだい。」
私はそう怒鳴り、月を睨み付けた。すると、月は再びキラリと光った。そして、それと同時に何かを放出したような気がした。
私はその「何か」をじっと見つめた。すると、その「何か」はだんだんと輝度を増し、そして、だんだんと大きくなって接近してくるではないか。
そこで私ははっとした。あれは隕石だ。怒った月が、きっと私めがけて隕石を投げつけてきたんだ。
そんな事を考えている余裕はない。とにかく逃げないと・・。私は走り出した。懸命に走り出した。
だが、隕石はだんだんと迫ってくる。はっきりと私めがけて飛んできている。私は精魂を振り絞って走り出した。
しかし、私は迂闊にも転倒してしまった。そして、生を諦めた私は空を仰いだ。目の前には巨大な隕石が・・・・
キャーーーー!!!!!

次は「展望」「邦人」「金塊」で
460名無し物書き@推敲中?:02/07/30 21:10
>>459
最悪だな。
>>460
そーゆーのは感想文スレでどうぞ。
>>461
そういうこととちと違うのでは?
463名無し物書き@推敲中?:02/07/30 23:04
>>458
固有名詞は避けるんじゃなかったのかい?
464「展望」「邦人」「金塊」:02/07/30 23:35
――十時のニュースです。まずは、先週発生した東シナ海上での邦人失踪事件の続報をお伝えします。――

英国発の豪華客船から、乗客である日本人女性が夜半の甲板から消息を断ったというスキャンダラスな事件は、手掛かりが無いままに
展望の無い状況にあるとラヂオのニュースが伝えていた。
女性の残した荷物に含まれる三億円相当の金塊を狙う誘拐事件であると警察では断定しているらしい。
随分と魅力的な推理ではあるが、案外と真実は、もっと地味な、第三者からみて陳腐な物だったりするのだと思いながら、薄暗い灯り
の下、窓の外を覆う漆黒の海をみつめる摩朱老人は一人ごちた。
「この海に誘われて、あの娘は帰ってくるのさ」

次は「廃坑」「光」「撒き餌」
「廃坑」「光」「撒き餌」

まさに廃坑の底の底、決して世間の光など届かない
闇の中に蠢く数知れぬ者ども。
そう、2ちゃんねるという深くて暗い底なし沼で、
連日何百という奴等がオモイオモイの穴を掘る。
俺の書き散らす撒き餌に今日も野郎達が群がる。
厨房なカキコ、中途半端な自演、挑発的な煽りに
死ぬほど飢えた豚よろしく過敏に反応するのだ。
ネタを汚く喰い漁る様子を眺める俺に何の感情もありはしない。
俺はただこいつらの餌係を以って自ら任じているのみ、だ。


おそらくこの人たちはこんなこと考えて書いてるんじゃなかろうか?
と、僕は思うんですが、如何でしょ?


次は「波乱」「ガイドライン」「飾」
466「波乱」「ガイドライン」「飾」:02/07/31 00:42
「次。田中一郎さん、どうぞ。通路をお進み下さい」
アンティークなスピーカーから流れるアナウンスに従い、私は金糸に飾られた絨毯を歩く。
大理石の床が幾層にも組み合わされた大広間へ進み出ると、安っぽいナレーションとともに
私の波乱に満ちた人生の道程が語られ始めた。
懐かしい思い出や気恥ずかしい思い出、そんな幾つかの場面で物語は中断され、正面の壁に
仕掛けられた赤と青のランプが点灯していくのだ。注意深く観察していると、どうやらそれ
はガイドラインに沿って採点をしているらしい。それに気付くと少し気分が悪くなってきた。
死ぬのも楽では無いらしい。

次は「地獄」「週刊誌」「背徳」で
467465:02/07/31 00:48
掌を上にして腕を左右に出す。
中途半端に伸びた両腕と同じくらい力なく首を左右に振る。
「もうだめぽ〜〜」
まあ、批判はごもっともなのだ。
あれは単なる時事ネタだった。
別に凝った手法も飾った文もあるわけじゃない。
ただなんとなく感じたことを子供の視線から書いてみただけなのだ。
とはいえ感想は(受けた方にとっては)大波乱であった。
「評価不能」
なんてこったい!
感想にガイドラインはないので、どんな感想でも批判でも
甘んじて受けるのがこのスレのルールである。
もちろん感想に対して不服などあろうはずもない。
とはいえ、
「評価不能」
なんてこったい!



初!評価不能記念に(笑
お題は>>466のでよろしく。
468名無し物書き@推敲中?:02/07/31 01:21
誰なんだコイツ・・・何なんだ・・・。
俺と由子が歩いていると、前から来た男が、いきなり腹を刺してきた。
『ん・・・痛ッ!』
起き上がろうにも痛みで起き上がれない。
咄嗟に持っていた週刊誌で応戦しようとしたが無駄だった。
俺の腹には直径三十センチほどの赤いシミが出来ている。
そして週刊誌は皮肉にも無傷で落ちていて、表紙が夕日を反射している。
無理に首を捻じ曲げて隣を見ると、由子が倒れていた。
外傷は無く、ただ気を失っているらしい。
『お前と女、どっちを地獄にやるかお前が決めろ』
顔の真上で、冷淡な目をした男が言う。

『お、俺を助けてくれ』
形式的な受け答えの如く、自然に言葉が出た。
男の顔色が変わり、ニヤつきはじめる。
無言で由子を担ぎ上げると、背を向けて去っていく。
その後姿を見ながら俺はある種の背徳を感じ、
由子を愛していることを確信した。
469名無し物書き@推敲中?:02/07/31 01:23
すいません、次は【特殊部隊】【特殊能力】【特殊学級】で。
470名無し物書き@推敲中?:02/07/31 01:31
「波乱」「ガイドライン」「飾」

 夜遅くに家に着くと、隣の家のあかりが煌々と灯っていた。ひっきりなしに出入りする親戚とおぼしき人たち。
 何の興味も呼び起こされず家に入ると、母が嬉々とした表情で出迎えてくれた。何があったのか尋ねる前に―
――尋ねる気も無かったが―――「隣の援交女が死んだんですって!」僕は機械的な返事を繰り返して自室に戻
った。塾の後の復習が大事なのだ。こんなつまらないことに心を煩わしている暇はない。
 ところが、自室の窓からも隣家の様子がわかる。家族を慰める人、電話で連絡をとりあう人、為すことも無く
椅子で茫然としている人……僕が死んだらどうなるだろう、そう考えて初めて彼女の死に思いを馳せた。
 たしか17歳で、普通のランクの高校に通っていたはず。母が援交だなんだと中傷するのは髪が少し茶色だと
か、ブランド物のバッグを持ち歩いているとか、通う高校のランクが低いとか(僕に比してだが)の理由だ。
 人生の波乱を嫌い、教科書やガイドラインどおりに生きればよい、と考える母にとってアルバイトだ旅行だと
アクティブに生きる彼女は飾だけの生き方だとして目の仇にされていた。交通事故で死んだのでなければどれほ
どの罵詈雑言になったのだろうか。
 まあ、そんなことはどうでもいい。どうでもいいはずだ。どうでも……。

 気が付くと、朝日がでていた。地平線には朱色の太陽。街は闇を払い紺色の装いをしている。窓を開けて外を
眺めると、街灯の下で肩を落として立ちすくんでいる彼女の母親の姿が目に入った。ほどなくして父親が出てき
て、足元のおぼつかない彼女を抱えるようにして家に連れ戻した。
 なにか少し違和感を、自分に、感じた。そもそも何故僕は徹夜してしまったのだろう。勉強はまるで進んでい
ないのに。割り切れぬモヤモヤを振り払うため、眠る時間も無いのにベッドに入った。


反省1.17行もある。長い。
反省2.私は暗いのが多い。前作は>>454(w
反省3.またかぶった……鬱
471【特殊部隊】【特殊能力】【特殊学級】:02/07/31 03:09
僕の学んでいたのは特殊技能の養成に重点を置いた特殊学級であり、
僕は将来の特殊部隊配属を約束された、というより、予定された存在だった。
だから僕らは体力が劣っていても何か一芸に秀でていればそれで良かったので、
そこらの普通の軍人ほどハードな訓練は受けなかったし、必要も無かった。
特殊技能っていうのはつまるところ、諜報能力だとか狙撃能力だとか
普通戦闘以外の能力だが、戦略性が重要な戦争では非常に重宝される。
しかし、こんな僕の生活にも疑問が現れ始めた。僕はある日、
同学級の友達に「僕たちって戦争が終わったらどうするんだろう」と話題を振った。
他の連中は体力があるから、それは戦争が終わっても役に立つ。だが僕らは……
すると彼は、「戦争が終わった後の事なんて考えても虚しいだけ。終わらんからな」
と澄まし顔で答えた。人間の歴史は戦いの歴史だ。戦争だけに特化した技能を持つ
僕らは、まさに理想的な文明人類と言えるのだろう。
急に死にたくなった。

すげぇ短編向きじゃねー。お題も俺も。
次のお題は「男女」「国語」「箱」で
472名無し物書き@推敲中?:02/07/31 03:15

キタ━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━(  )━(゚  )━(д゚ )━( ゚д゚)ハァ?


男は立ち止まり、空を仰いだ。
女もそれに倣う。朱を注がれた天隅は絶景だ。
国は荒れ果て、明日への希望は煤けてしまった。
語らい、笑い合った友は、もう居ない。
箱庭の小ささを知った男女は、旅を選んだ。

次は「葉月」「葉桜」「葉色」
474名無し物書き@推敲中?:02/07/31 18:48
葉月リオナ4冊目の写真集「葉色」。
葉桜な季節に発売予定。

次「ランチタイム」「光」「漂流」
475「ランチタイム」「光」「漂流」 :02/07/31 19:45
「いつまでも議論していても埒があかんな。」
部長の一言で1時間遅れのランチタイムである。
ただでさえ薄暗い社内で、延々とくだらない会議に付き合わされた俺には外の光があまりにも眩しすぎた。
先輩社員の後ろについてとぼとぼと歩きながら昨夜のことを思い出してしまった。
ただ流されて生活するだけだった自分にもひょっとすると大きな転機がやってくるかもしれない。
漂流し続けた後に楽園に辿り着くとこんな気分なんだろうか。
写真集「葉色」、久々に紙媒体での自慰。
しばらくはパソコンのスイッチを入れることも無いだろう。
待ってろよ、リオナ。会議が終わったらすぐ帰るからね。

スマソ。474に感銘を受けたもんで勝手に拝借。
次「カセットテープ」「虫刺され」「扇風機」でお願いします。
476名無し物書き@推敲中?:02/07/31 19:49
「ランチタイム」「光」「漂流」

私のランチタイムはいつも真夜中。
街に出れば漂流者のようにあてもなく街をうろついている可愛い女の子達がたくさんいるから。
大抵は家が嫌で飛び出してきた十代の女の子。
とても傷付いて、心に傷を負ってて、今にも魂の光が消えてしまいそうな子達。
私のメインディッシュはそんな女の子達の魂。
どうせいてもいなくてもこの世に何の影響も及ぼさない、哀れな人間の魂が、私の大のお気に入り。
もう二度とこんな世の中に生まれてこなくて済むように、私がきれいさっぱり消化してあげる。
そんな私を人はいつしか『真夜中の天使』と呼ぶようになった。

つづく(わけない)

次は「煙草、宇宙、無限大」と思ったけど>>475に先越されたのでそちらのお題で。
477「カセットテープ」「虫刺され」「扇風機」:02/07/31 21:20
 夏の暑いさかりだというのに、この部屋には扇風機一つ置いてはいない。
 当然だ。この部屋の主は、もう3ヶ月も前に死んだのだから。
 彼の遺体はこの部屋で見つかった。第一発見者は私。死因は心臓発作だと警察は言っていた。
 だが、私にはわかっていた。彼の首筋にあった虫刺されのような痕。時間がたつと完全に分解し、
証拠の残らない特殊な毒物を注射されたのだ。「組織」の、よく使う手だ。
 新聞記者だった彼がそれを手に入れたのは、本当にただの偶然だった。組織の秘密が盗聴・録音
されたカセットテープ。大スクープであるはずのそれは、彼に栄光ではなく、破滅をもたらした。
 しかし組織の調査員は、彼に私という恋人がいることまでは付きとめられなかった。彼が殺される
直前に、テープを私のもとに送っていた事も。
「俺に何かあったら、これを公表してくれ。愛してるよ」というメッセージとともに。
 彼は、本当にいい男だった。優しくて、理知的で、正義感に溢れてて……
 ……でも、人間の本質を見抜く力に欠けていた。
「証拠を手に入れたっていう記者が、あなたの事だってわかってたら……いいえ、それでも、私は
あなたを殺すように命令していたでしょうね。……私の正体をあなたに知られるくらいなら、ね」
 そう呟くと、私は部屋に火を放った。私の中に残った人間の心を、ここに捨ててゆくために。

次のお題は「煙草、宇宙、無限大」でどうぞ。
夏の気怠い午後。煙草に火をつける。
いつものように吐きだす煙。あの子の事を思いながら、、
いつのまにか、部屋は真っ白になっていた。
無限大に広がる宇宙。白いミルキーウェイ。
どこまでも泳いでいこう。
向こう岸には、いつものあの子がいた。

次のお題は「シャンプー、炭酸、絵はがき」
479名無し物書き@推敲中?:02/08/01 01:21
「シャンプー」「炭酸」「絵はがき」

 突然妹が訪ねてきた。どうやら同窓会があるらしい。挨拶もそこ
そこに僕に姪っ子を預けて出かけてしまった。

 姪っ子は可愛い。しかし、ちょっと人見知りするところがあって、
緊張しているみたいだ。レモネードを作ってやることにすると、ぱ
っと顔が明るくなった。

 水とレモンと砂糖で作ってやると、なんとなく逡巡している。あ、
レモンスカッシュの方が良かったのか。妹が小さい頃、炭酸が好き
で、泡を出そうと麦茶にシャンプーを入れて、母にこっぴどく怒ら
れたことを思い出した。

 すぐそこの自販機まで行って、ソーダを買う。急いで部屋に上が
ると、姪っ子の様子がおかしい。さっきと打って変わってはしゃい
でいる。見ると缶ビールのふたが開いている。どうやら、ビールを
レモネードに注いだらしい。

 こらっ、と叱ろうとしたが、ケタケタ笑い転げる様に、思わずこ
ちらも笑ってしまった。蛙の子は蛙か……

 暑中見舞いの絵はがきには麦茶にシャンプーの件書いといてやろ
う、妹の旦那あてで。
 
#次のお題は「本」「川原」「港」で。

480「本」「川原」「港」:02/08/01 02:14
 大昔、川原には河童が住んでいたらしい。
 川を泳いだり、キュウリを食べたりしていたらしい。

 それから何千年かが過ぎ、川原は近代設備が整った港となった。
 大きな船が行き来する。
 河童も本の中だけの存在と扱われる様になった。
 どんな顔をしていたのだろう?
 今となっては、本を探るしか、その手がかりはない。

 仮に、河童が人に創り出された妄想だとしたら・・・探索はさらに難かしくなる。
 そもそも「妄想」とは何なのか?
 それを我々は理解できない。
 
 河童。妄想。
 かつて「ロボット」と呼ばれた我々には、永遠に体験できない謎である。
 やはり・・・生き残りの人間を探すしかあるまい。

※さんざん悩んでこれ。ありきたり。
次のお題は:「沐浴」「トランジスタ」「水瓶」でお願いします。
トランジスタグラマ水瓶で沐浴
それ見た俺は超ラッキー
482「沐浴」「トランジスタ」「水瓶」:02/08/02 15:31
青空が僅かに覗く、網目のような枝葉の天井から雨漏りのように落ちる光と、森から湧き出る暗闇
の両方を纏わせながら、少女が水浴びをしていた。
彼女に気づいたのは、採った山菜の泥を取り除こうと、影に落ちた川辺に跪いた時だった。
両の掌を川に浸し、持ち上げ、体の上に零す。
川のせせらぎも、木々のざわめきも聞こえなかった。少女の肌から川面に落ちる僅かな音だけが、
僕のいる下流に流れてきた。
その静けさは靴が砂利を擦るだけで気づかれてしまうだろうほどに異常で、異様だった。
僕は動くことも出来ず、また目を逸らすことも出来ずに、息を殺して彼女を見ていた。
スケベ心があったわけではない。いや、多少はあったかもしれないが、それ以上に少女の行動に
興味があった。彼女の緩慢な沐浴は、明らかに体の洗浄を目的としないものだった。その一挙
一動は祭祀の執り行う儀式のように緻密で、精確だった。
彼女に見とれていた僕は、その時背後から忍び寄るもう一人の少女の存在に気がつかなかった。
僕は手加減なしの一撃を頭に受けて地に倒れ、その娘を見とめた。
水浴びの彼女と同じく裸の少女は、かかげた棒状の凶器を再度振り下ろし、僕は意識を失った。

互いの身の上を話し合った捕虜仲間の彼は、今朝解体された。
皮を剥ぎ、肉を切り分け、臓物は瓶の中へ。骨は砕いて飼料に混ぜる。つまり、僕の口にも入る。
素肌を血で汚した彼女らの作業を見て、僕は幼い頃にバラしたトランジスタ・ラジオを思い出した。

彼が潰されたので、ストックは僕だけになった。最後まで残った理由は「不味そうだから」
今日も少女達は、木陰と木漏れ日を肌に纏わせて、食料を調達しに出かける。
僕の臓物を入れるために空けられた水瓶と、僕をくわえて離さない枷を見比べながら、
僕は彼女らの狩が成功するよう祈っていた。

次は「ストック」「祭祀」「飼料」でお願いします
483名前なんてない。 ◆bcYxkKsI :02/08/02 19:55
感想文スレの>>908です。あっちに書けなかったのでここに書かせてください。

http://members.tripod.co.jp/smileinyourface/

傑作選HP作ってみました。作品の募集も開始しました(詳しくはHPで)。よろしくおながいします。
484名無し物書き@推敲中?:02/08/02 20:04
「ストック」「祭祀」「飼料」

 「へえ……」思わず見とれてしまうほど、その光景は美しい。
 ホテルの窓から見るゲレンデでは、ストックの代わりに松明を掲げたスキーヤーが、列を作って大きなシュプ
ールを描いていた。夜の闇に小雪がぱらつきはじめ、少しばかりオレンジの明かりがけぶって見える。それが集
まって輪を作っては散らばるのは何かの祭祀のようで、俺はすっかり魅惑されてしまった。
 「これを見せたかったのか?ありがとう」
 向かいのテーブルに座っている彼女に声をかけた。でも彼女はほんの少しだけ微笑むと、この旅行中ずっとそ
うであったように、硬い表情で俯いた。
 どうしてだろうか。こんな綺麗な光の河を見てもなんとも……光の河……!?

 俺と彼女は幼稚園からの幼馴染で、家も近所にあった。昔から仲が良く、いつも夫婦呼ばわりされたものだっ
た。そのうちなんとなく付き合うようになったが、お互いを知りすぎていたせいだろうか。あまりにも自然体の
二人はなにかを実らせる努力を怠ってしまっていた。土壌が豊かだからといって肥料を与えない農業や、自然が
豊かだからといって飼料を与えない放牧が何を生み出すだろう。条件の良さに二人ともすっかり甘えていたのだ。
 そんな二人も、夏祭りの灯篭流しのときは何とはなしに素直になって、お互いの心の内を語り合っていた。
 将来のことも、かなりあいまいだったけれども、朱く光る川面を眺めながら話したはずだ。あの故郷がダムの
底に沈んでからここ何年も灯篭流しなんて見ていない。彼女はゲレンデの光のシュプールを故郷の灯篭流しに見
立てて、素直になって話し合いたいのだ。何を?そんなことはわかりきっている。そして彼女の気持ちも。
 
 「なあ、待たせて、長い間待たせてすまなかった。俺と……」
 

また長くなったし、ベタだし。もう少し上手くなりたいものだ。
お題は継続。
485名無し物書き@推敲中?:02/08/03 01:38
 「丙種合格」
 官選医師が事務的な微笑を浮かべて、彼にそう言う。
 それから10日後…同じ微笑を浮かべて郵便配達がやってきた。
 「おめでたうございます!」

 「当選通知」を握り締める彼と家族の表情は、凍っていた。
 応募しないと非国民扱いの上に税金が8倍なのだ。でなきゃ誰が…

 そんな彼等のために、政治家は急造の神社を建てて祭祀を行う。
 そして、防音の事務所でこう言うのだ。
 「人口は無限!労働力のストックは充分あります、ふぉっふぉっふぉ」

 労働力。
 そうだった。表向きは「楽園の当選者」ながら、彼は事実上「労働力」。
 レストランもある…とはいえ、味はまさに飼料並だった。意味的にも…
 デパートの品揃えだって、やたら高くて古いデザインばっかし!

 <<宇宙暦○○○○年、増えすぎた人口をなんとかするため
  人類の一部は、宇宙に建造されたコロニーへと移住させられ…>>

※実は元ネタあんまり知らないという、わな(^^;
 次のお題は:「江戸時代」「探偵事務所」「泣き娘」でお願いします。
486「江戸時代」「探偵事務所」「泣き娘」:02/08/03 13:15
夏。
こうやって二十年近く探偵事務所を開いているが、
舞い込んで来る仕事も陳腐なものが多く、
今日なんて金持ちの家の失踪した老婆の捜索だ。
名前は「よね」。
問題はその老婆はかなりの高齢で、
行方不明になるなんて誰も思わなかったらしい。

必要なものをカバンに詰めて出かけようと
事務所の扉を開けた時だった。
目の前にすすり泣いている泣き娘が佇んでいる。
近所で夏祭りでもやってるのだろうか?きれいな着物を着ている。
年は15、6といった所か。
なんでこんな所にいるのか、とりあえず訊ねてみた。

「きみ、どこから来たの?どうして泣いているんだい?」
娘はすすり泣くのをこらえながら言った。
「・・・帰り道がわからない・・。・・江戸から来たのです。」
(江戸!?)
「な、名前は?」

「・・・よね」



○次は「行軍」「ノートPC」「闇市」でお願いします。
487486:02/08/03 13:18
あ〜、スマソ。「江戸時代」という単語じゃなかった・・・。
(江戸!?)の箇所を
(江戸!?江戸時代から?)

に訂正します
488名無し物書き@推敲中?:02/08/03 19:36
「まぁ、ここはまだマシだ。俺はまだ元気だ。歯ブラシでも薬でも闇市で手に入らないもんはねぇし。
 なんと若い女の子までいる。・・・ブルドッグを踏みつぶしたような顔だがな。
 問題は、俺達は毎日毎日行軍してるが誰一人として目的地を知らない、ってことだ。」
戦場に彼が持っていった私物は指輪と一台のノートPCだった。
「だが心配無用。俺は絶対帰る。
 ま、お偉方の手でぽんぽん動かされる駒の一つに屁みたいな意地があったところで罰は当たらんだろ。」
指輪は帰ってこなかった。
おそらくは爆弾の破片と彼の死体の欠片と共に戦場の地下に埋まっているのだろう。
「俺は帰ってクサイ科白を吐こうものなら顔を真っ赤にして殴りかかってくる凶暴で意地っ張りな誰かさんと結婚するつもりだ・・・・」
PCに保存された日記はここで終わっていた。
全部しっかりと読み終えて、PCの電源を切って、ベットに潜り込み、私は泣いた。


次は「映画」「皮肉」「銃」で。
489映画・皮肉・銃 :02/08/03 22:58
小脳まで届きそうなほど強引にねじりこまれた銃口が、悟の全神経を鋭くさせた。
口内に広がるベレッタM92Fの感触。その硬質がのどに触れるたびに悟るは咽びこんだ。
「映画ならここで正義のヒーローが登場するんだがな……」
皮肉めいた言葉を発し、対峙する岩田は悟を睥睨した。
もう、だめなのか。悟はすべてを諦めかけていた。

「ちょっと待て!」彼方から声がした。
悟が目を細めると、青い全身タイツを着、赤いマントをまとった男が猛スピードで走りよってきた。
「なんだ貴様!」岩田が怒声を浴びせる。
「名乗るほどの者でもないが――俺は正義の味方だ!
黒眼鏡の君。何故にその男に銃口を向けているのかね?」
「あ? こいつが組の金に手をつけて、逃げたんだよ」
正義の味方を名乗る男は、しばしの間腕組をし、無言になった。
「何…!そうか……。そうなると銃を持つ君が正義で、そこにひざまづいている男が悪となるな。
うーん…、自業自得だね。さすれば、僕の出番はないね」
マントの男はそう言い終えると、軽やかにマントを翻し、これまた猛スピードに走り去っていった。

残された空間に虚しい銃声が木霊した。

#次は「蛾」「ピザ」「荒唐無稽」で。
 「まったく、荒唐無稽な話だね」
 出前の、冷えてしまったピザをかじりながら作業着の男がつぶやいた。
 テーブルの上に置かれていた紙コップをとる。氷が融け、薄く、生ぬるい
アイスコーヒーを男は苦々しそうに飲み干した。コップをつぶしてゴミ箱に
放る。そして男は再び図面に視線を落とした。
 「こんなもん、上は正気なのか?」
 図面にはさまざまな形の図形と数字、矢印とアルファベットが書き込まれ
ていた。そして、左上に日本語。そこには『人型ロボット』と書かれていた。
 「お嫌いですか?こういうの」
 スーツの男は軽やかな、明るい声でそういった。作業着の男は上目づかい
で男を睨み付けるとにやりと笑ってこう言った。
 「いや、大好きだよ」
 網戸の向こうでは光に誘われたのだろうか大きな蛾がパタパタと翅を動か
していた。作業着の男は上機嫌で冷蔵庫に隠してあったビールを2本取り出
すと一本をスーツの男に差し出してプルトップを開けた。


 15行。落ちてませんが。
 次は「休刊」「本館」「第六感」でおねがいします

 
491名無し物書き@推敲中?:02/08/04 02:19
「休刊」「本館」「第六感」

 今日も、本館にある図書室に行く。入って左側にある雑誌閲覧コーナー。そこにある大きなソファーの左端で
彼女はいつも本か雑誌を読んでいる。特に雑誌の新刊の発売日には確実にいるので、僕はその日は必ず同じソフ
ァーの右端で本を読むことにしている。おかげで、別館の図書室には殆ど足を運ばなくなった。
 彼女を好きになってしまったのはいつだったろうか。図書館はよく行くほうだが、今まではこれほど足しげく
通うほどではなかった。あの大きな目と栗色の瞳。絹糸を思わせる長くつややかな黒髪。友人に調べてもらった
ところによると成績優秀で性格もよくクラスでも人気者だそうだ。同じ高校に通っていても、僕とは大違いだ。
 ま、そんなことはどうでもよい。結局今日も話し掛けることすらできないまま、閉館時間まで本を読んでしま
った。内容は半分も覚えていない。家で読み直すしかないようだ。

 そんなある日、なにか予感があった。
 その日は雑誌の発売日ではないし、新聞はかなりの種類が休刊日で、まず彼女はいない日だった。けれど行か
なければ大損をするような気がした。第六感だろうが超能力だろうが電波だろうが、この際すがれるものには何
にでもすがっておきたかったのだ。
 そして、いつものソファーの左側に彼女はいた。いつもと違うのは右側で生徒が寝転がっていて、いつもより
とても近い場所に座れたことだった。
 そして、数分後。
 「あ……」という声で隣を見ると、彼女が手を滑らせて本を床に落としてしまっていた。僕の近くに落ちてき
たので拾おうとすると、彼女が伸ばした手に僕の手が重なった。
 「……」両方ともすぐに手を引いたけど、気まずい雰囲気は隠しようもなかった。重い沈黙が二人を覆ったが、
それを破ったのは彼女のほうだった。

 「あの、いつもここでお会いしますよね。本、お好きですか?」
 

いや、ベタだけど、まあいいでしょ。高校のころはこんな妄想をしなかった?←本好きの人
漏れも本が好きで高校時代はよく図書館に通ったけど、常連の女は相撲取りとかインスマウス人とか(w

次のお題は「水時計」「花火」「虚構」で
492名無し物書き@推敲中?:02/08/04 18:49
もっと沢山読みたいのでAGE
493「水時計」「花火」「虚構」:02/08/04 21:12
初夏の日曜日、図書館の入り口にある水時計のところで彼女と待ち合わせた。
今夜の花火大会になんとしても誘う為なのだけれど、いざとなると上手く話し出せなくて沈黙だけがいたずらに流れていく。あれほど念入りに練習したのに、虚構の中の彼女と違って僕の心を都合良く察してはくれないようだった。
三度目に会話が途切れた後、何もかもが無くなる気がして。それから後は、あまり覚えていない。
「いいよ、六時にここで会おうね」
彼女の唇がそう告げたので、僕は心地良い昂揚感につつまれながら昼食に食べたカレーライスを後悔しながら自転車のペダルをひたすら漕いで家路を急いだ。

次は「光臨」「監視」「観客」で
494名無し物書き@推敲中?:02/08/04 21:55
 ブラザー、聞いてくれよ。
俺は、あの日脱獄をした。それは知ってるよな?ブラザー。
 四六時中ライフルを構えて、監視する看守がごまんと居るのにだ。
俺は無我夢中で走ったんだ。真っ白な空の元、どでかい壁を目掛けて。
 ニガーのボブや、ビッチのマークらに見つめられ・・・おっと、牢屋仲間のことだブラザー。
残り5メートル。もう、静止の合図も聞こえなくなった。聞こえるのは銃声だけだ。
 銃声の雨嵐だぜ。信じられるかい、ブラザー?
まさに、あの瞬間。俺には神が降臨してた。
 そうなりゃ、もう怖い物なんて無い。銃声の音楽の中、看守の観客で。
俺は飛んだんだ。ブラザー。信じられるかい?
 2フィート半はありそうな壁を掛けぬけたんだ。
俺の話はソレだけさ。ブラザー。

次は「7」「車」「目」で
495「7」「車」「目」:02/08/04 22:23
 目の前で小さなドラムが回転している。
 ひどく近い。眩しいものを見るように目を細めて、私は息を吐いた。
 かたく何かがつまったような、小さな吐息だった。
 
 私は既に失ったもの、うしなわれつつあるもののことを考えている。
 郊外の家、壊れない日本車、愛する人たち。
 背後で誰かがフォーカードをあがったらしい。どよめきと大きな拍手があがった。
 
 目の前でドラムは回転を続けていた。
 二つ並んだ数字に、私は夢想する。
 同時に、鞄の中の拳銃の事を私は考えている。

(7が並ぶ)
(こめかみに当てられた銃口は冷たいのだろうか?)

 そして、ドラムは回転をとめた。ほんとうに何の前触れも無く。


次のお題は「ハンガー」「夕凪」「ペプシコーラ」で
496名無し物書き@推敲中?:02/08/04 22:34
<<494

 正直、面白い!
497名無し物書き@推敲中?:02/08/04 22:36
>>494
俺としては主人公に死んで欲しかった。
498494:02/08/04 22:41
ラストは警察で尋問中・・・の筈でしたが。

 すいません。中卒の頭ではこれが限界でした。
499「ハンガー」「夕凪」「ペプシコーラ」:02/08/04 23:33
彼女がこの家から病院へと移ってから、少し家が広く感じた。
病室で、彼女はいつもペプシコーラを飲んでいた。
別にその病院にペプシの自動販売機しか無い訳でもないのに。
彼女に言わせれば、ペプシコーラには微妙な何かがあるのだそうだ。
生きる力が湧いてくるような何かが。

それからしばらくして、彼女の容態が深刻だとの報せを受けて、
俺は病院へと向かった。そのとき、彼女は苦しそうな呼吸をしていた。
そんな彼女に俺は何もしてやることはできなかった。
しばらくして、彼女の息はまるで夕凪のように静かになった。

家のクローゼットにはまだ彼女の服が多く残っている。
ハンガーにかかったその洋服たちを、俺は捨てることはないだろう。
もともと俺は物を捨てることができない性質だった。
いらない物で溢れている俺の家を見かねて、
部屋の整理をしてあげる、という名目で彼女はいつのまにか
俺の家に居着いてしまった。

彼女が死んだ夜、俺はコーラを飲みながら彼女との思い出していた。
そういえば・・、彼女、炭酸飲料なんて体に悪いからダメって俺のこと叱ってたよな。


次は、「パラシュート」「ソーダ」「失踪」でお願いします
500名無し物書き@推敲中?:02/08/04 23:41
>>499
いいですね。
>>500
感想スレ逝け。
いちおう誘導しておこうか。
◆「この3語で書け! 即興文ものスレ」感想文集第3巻◆
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1028363144/

夏対策として余計なひとこと。
もし荒らす気なら重厚かつ緻密な文章でお願い。
503「パラシュート」「ソーダ」「失踪」:02/08/05 01:32
 島の娘の献身的な手当により、彼は意識を取り戻した。
 対空砲火を受け、パラシュート降下してから1週間が経っていた。
 せめて感謝の言葉をと身を起こすと、激痛が全身に走る。
 娘は、(いけない、休んで)と身振りで示す。

 なんだか幸せだな、このまま失踪したままなんていいな。
 なんて彼を傍らに、娘は母と相談をしている。
 彼には判らない言葉で。
 
 「私が拾ったから私の。これから餌付けする。きっとなつく。」
 「でもねえ…島に落ちてきたのだから、みんなで仲良く使いましょう」
 「もう私のもの。もう「そんな事では嫁に行けない」なんて言わせない。」

 娘は彼の方を振り向くと、聞きかじりの日本語でこう尋ねた
 「ソーデスヨネ?チューイサン」
 彼は、訳のわからぬまま「ソーダ、ソーダ」と微笑む。

 母は肩をすくめる。諦めた様だ。
 娘は胸を撫で下ろした。よかった。
 日本語の勉強と、対空砲火の練習をやっておいて、本当によかったと。

※今夜TVでやってた映画の影響(笑)
次のお題は:「底抜け」「脱線」「パッケージ」でお願いします。
 そうですよね?」
 話し、知らない言葉で女と話してる。
ながらもう5日…
504503:02/08/05 01:33
 失礼しました、削り残しが(^^;
505「パラシュート」「ソーダ」「失踪」:02/08/05 01:48
私の計画は完璧。もうすぐ望みは達成される。
私の大切なあの人を奪った憎い女を地獄へ叩き落してやる。
この計画のために私は勤めていた商社をやめて
わざわざ儲からないスカイダイビングのインストラクターなんかになった。なってやったのよ。

結婚式のイベントの一つとして提案するのに何ら苦は無かった。
最近じゃあ、結婚式の一部として新郎新婦が空を飛ぶのは珍しくないもんね。

そうやってスカイダイビングにあの女を誘い出し、大空の風を満喫させてやるの。
さぞ気持ちいいことでしょうね。無重力で空を駆ける快感。

でも、地上に着地しようとするその時・・・焦ったってもう遅い。
あの女のパラシュートは開かない。
だって私があらかじめ見つけ出した不良品のパラシュートを選んでおくんだから。

人の命を奪うのって不思議。ソーダの泡を潰すように簡単だなんて。神様もやさしいのね。

あいつを殺したら、あとは私が時期をみて失踪すれば良い。
性転換手術を済ませて、
そして、運命がめぐりあわせたように大切なあの人と再会すれば良いのだから。
れっきとした女として。

初投稿。503さんと被ってしまいましたがよろしくお願いします。
お題は>>503
506名無し物書き@推敲中?:02/08/05 02:40
今日晴れて我が社は、時代の最先端を突き進むべく、あの『にちゃんねる』
の創設者であるひろゆき氏と提携し、『にちゃんトレーディングカード』
の発売に至ったのである。
にちゃん用語を研究しつくし、流行りのコピー&ペースト、アスキーアート、
もちろん欠かせないマスコットキャラ、ギコ猫まで。ありとあらゆるにちゃん
フリークに送る、素晴らしい商品となったことを私は信じて疑わない。
商品の要であるパッケージには、牛丼の写真を採用。はっきしいって、外から見ただけでは
開発者の私にも全くわけのわからないこと請合い。この一見脱線しまっくった
パッケージから、にちゃんねらーのみが頭に描くことのできる、名作「吉野屋」の
一文。この絶妙なバランスに、この商品が大ヒットすることを私は信じて疑わない。
そして極めつけはレアカードの存在!相撲板、神社・仏閣板、そして文芸板!
どう考えてもレアな雰囲気全快の名誉極まりない板たちが、その底抜けなレアさを
披露してくれるのだ。具体的に述べると、あまりに表記してある文がマニアックで、
どこがレアなのかに悩む程である。この斬新かつ魅力皆無なレアカードの存在を
目にしたとき、にちゃんねらー達の度肝が抜かれる事を私は信じて疑わない。
色々な意味で。む?これはこれはひろゆき氏。共にこの喜びを味わおうという
わけですね?さあ一緒に、キター!キター!
「没で」
いえ、むしろこの文を没で。

もし没じゃなければ、「じゃんけん」「夢」「栗色」で。
507「じゃんけん」「夢」「栗色」:02/08/05 04:05
 とある休み時間 僕の親友が ニヤニヤしながら寄ってきた
 髪を栗色に染めた タッキー似の自慢の親友さ

 「ジャンケンしようぜ!」
 「ジャンケンって、グー、チョキ、パーで勝負するやつ?」
 「それしかねーだろ。」
 さすが自慢の親友だ ツッコミのきれが浜ちゃんばりさ

 勝負は僕の負けだった
 完膚なきまでに 叩きのめされた感じさ
 それもそのはず 彼がパーなら 僕はグー

 すると 自慢の親友は言うのさ

 「じゃーテメー、デコピンな?」

 僕は その日から 彼を親友とは呼ばなくなったのさ

 彼の中指の先が 僕のオデコにくい込む!!
 信じられない程の力を蓄えた彼の指先は
 僕の頭部を後方へと追いやる!!
 その威力は 僕に両親の顔を思い浮かべさせる程のものだったさ

 衝撃! 驚嘆! おまけに激痛!!
 残ったものは 敗北感
 僕はそのまま教室の床へ倒れこんだのさ
 薄れゆく意識の中で 僕は3日前に見た夢を思い出していたのさ

 「俺たちって、いつまでも親友だよな!!」
 って、永遠の友情を誓い合っていた あの夢を...

 次のお題は
 「玉露入り」「コンセント」「文字化け」でお願いします。
508名無し物書き@推敲中?:02/08/05 04:45
彼女の陰毛は確かに栗色だった。

「本当に栗色なんだね…」と僕は彼女の陰部を凝視しながら呟いた。
「信じてなかったの?」彼女は笑った。

彼女は出会い系サイトで知り合って、今日初めて会うまでに三ヶ月程メールでのやり取りをした。
僕の「栗色の陰毛の女の子、居ませんか?」という、少々退かれるであろう内容の書き込みに
メールをくれたのが彼女だったのである。

僕が栗色の陰毛に執着している理由というのは、
中学生の時にクラスメイトから借りたアダルトビデオの主演女優が
栗色の陰毛の持ち主で、それに対して興奮と言うより、美しさを覚えたのがきっかけだった。

かと言って、僕は栗色の陰毛を持つ女性とセックスがしたい訳では無く、
ただそういう女性の裸体を生で見たいだけであり、それが昔からの夢であったのだ。

服を着たままの僕の前に、裸の彼女が立っている。
「綺麗だな…」と僕が呟くと「…ありがとう」と彼女は目尻を下げた。

「あの…、僕はメールでも伝えた通り、君の裸を見たかっただけなんです。
だから安心して下さい。何もしませんから…。
あっ、お金はちゃんと払いますよ。…えっと、君の希望は幾らですか?」

僕がそう言うと、彼女は視線を下に落とし、悩み、小さく唸った。
そして彼女はこう言った。「じゃんけんしましょうか」

…何を言い出すのかと僕は一瞬固まった。
不思議そうな顔をしていただろう僕に彼女はこう続けた。

「あのね、じゃんけんして、あなたが勝ったらお金は要りません」
「…はぁ」「あなたが負けたら…」「負けたら?」
「あなたが負けたらセックスするっていうのは?」
「…え?」僕はまた固まってしまった。彼女はそんな僕を見て笑った。

折角書いた文章なので、批評して頂きたく書き込みました。
次のお題は507さんのご指定の「玉露入り」「コンセント」「文字化け」
でお願い致します。失礼致しました…。
509「玉露入り」「コンセント」「文字化け」:02/08/05 05:11
 夜の闇と共に、生温かい空気が辺りを埋め尽くす。今夜も熱帯夜になりそうだ。
 しかし、冷房を入れることはできない。間違っても停電など起こすわけにはいかないのだから。
 体中がうっすらと汗ばんでいるのは、蒸し暑さのせいばかりでもない。これまでも危ない橋は
いくつも渡ってきたつもりだったが……「時間制限」という条件がついたくらいでこんなに緊張
するとは、私もまだまだ未熟ということか。玉露入りの冷たい麦茶を飲み干し、気分を落ち着かせる。
 ディスプレイに映る幾千もの文字の羅列……素人の目には、ただの文字化けにしか見えないの
だろう。私のような……ハッカーと呼ばれる人間にとっては、自分の顔よりも見慣れた光景だが。
 時計を見る。零時まであと三十分。……時間だ。
 いつものように、コンセントレーションを極限まで研ぎ澄ます。目の前に並ぶプログラムを、ただ
黙々と送信し、削除し、偽造し、模写し、改竄し……データを抜き取る。証拠を消す。
 エンターキーを押す。作業終了。時計を見る。午前零時ジャスト。パーフェクト!!
 緊張から解放され、大きくため息をつくと、私は受話器を取った。相手は、この仕事の依頼人。
「もしもし……ええ、成功。正真正銘、施行直後出来たてほやほやのデータ。一億二千万人分のね」
 明日には残りの報酬が振り込まれるだろう。そろそろ、この国から出る頃合なのかも知れない。
たった今、全国民の個人情報が、絶対に渡ってはいけない所に渡ってしまったのだから。

 次は、「夭折」「漸次」「超合金」でお願いします。
510エヴァっ子:02/08/05 10:26
修行の途中、親父が夭折した。
前日まで、殺しても死なないぐらい元気だったのに、あっけなく逝ってしまった。
「親父、何で死んだの?」
母にそう尋ねてみると、超合金を斬る修行をしていて、折れた刀の破片が首に刺さったからだと言っていた。
何ともまぁ、おかしな死にかただ。
――ワシの生き方は、ようやく極限の漸次が見えてきたところなのだ!
先月から親父が繰り返し言っていた言葉を、思い出した。
親父、超合金を斬る事が極限の漸次とやらだったのか?
俺にはとても考えれない事だよ。


3日後、親父の葬式が始まった。
目を見開いて、おっかない顔をして死んでいる親父は何を求めたんだろう。
とりあえず、棺桶の中にマジンガーZの漫画を入れておこう。
511夭折・漸次・超合金:02/08/05 11:15
ダークグレーのダブルのスーツを着た恰幅のいい男と、
痩せて頬がこけた秘書らしき男がアイクに店にやってきた。
右手に大きな骨壷を持っている。
「今回は大物です、これはすばらしいアイテムになります」
ダークグレーのスーツがよく響く低い声で、アイクに骨壷を渡しながら言った。
「ふむゥ、確かに力強い、この魂のマインドレベルは素晴らしい」
アイクは骨壷に頬をあて、中から放たれる波動を全身で受け止めていた。
「よろしい、今あるアーティストの魂を精製してる時だ、それが完了次第、漸次
 この格闘家のソウルの精製にとりかかろう」
アイクが言うと、二人の男たちはニッコリと頷いた。

ここは若く夭折した偉大な人間たちの魂を超合金に変換する場所である。
いわゆる天国街4丁目のソウル鍛冶職人・アイク=ガーネットの工房である。
ここで変換された魂達は超合金となって天国の様々な場所にて大活躍している。

510にお題提示がなかったので、次は「パンクラス」「銀行」「蜜蜂」にしたいと思います。


512「パンクラス」「銀行」「蜜蜂」:02/08/05 14:21
 カチカチと云う音をバックに、深夜放送のパンクラス特集を眺めながら、週刊誌の特集記事に目をやった。
【低迷する、日本経済。行き行く先は一体、何処なのか?】
どうでも良いこと。俺の長い人生設計には全く関係の無い話。そんな事は三流政治家に任せればいい。
その下の小さなゴシップ記事が気に為った。
【蜜蜂の危険性。これで貴方も「アナフィラキシーショック」の全てが分かる!】
思わず笑った。これでは、遅すぎる。
 ブラウン管から、緊急ニュース特有の音が鳴り、センスの悪いスーツを着込んだアナウンサーが顔を出した。
「今日、未明。都内の○×銀行で強盗事件が発生しました。
 犯人は銀行内に小型の蜜蜂を放ち、混乱した隙に現金を奪い・・・」
知らなかった。
「俺が一度刺されていたなんて」

・・・なお、犯人は現在も銀行内に立て篭もっており・・・

次は「金」「驚愕」「煙草」でお願いします。
513「金」「驚愕」「煙草」:02/08/05 18:31
 彼の名は、Mr.マリックというらしい。
 テレビの中の彼は、火の付いた煙草を、次々と、お金に貫通させていた。

 500円玉、1000円札、1円玉...

 何故あのお札は燃えないんだ?
 そして、何故あんな堅い硬貨を貫く事ができるんだ?

 そこには、驚愕の光景が広がっていた。

 次は、「オリエンタル」「湖底」「売り上げNO.1」でよろしくです。
514名無し物書き@推敲中?:02/08/05 20:17
80年代の初め、ある一つの玩具は歴代の売上NO1を記録している。
『ルービック・キューブ』
どことなく数学と魔法が出会ったようなそのオリエンタルな言葉の響きが、僕は好きだった。
実際、その内部に閉じ込められるまでは。

どうしてこんなことになったのか、今では思い出せない。
部屋は絶えず細かく振動し、耳障りな低い唸りを上げている。
一辺が3メートルの正方形の部屋だった。六色の鉱石の壁面は光を透過する。
数時間に一度、ゆっくりと部屋はねじれ、回転する。壁の色が変わる。
けれど、目の前の色の壁たちは決して整合する事は無い。永遠に続くパズルだから。

時間は流れる。
立方体の内部で、僕は少しずつ磨耗していく。

ある瞬間、僕は眠っている。そして目覚める。
覚醒までの間に、違和感に気づいていた。
静か過ぎる。振動も消えていた。
祝福するように部屋に光が差し込んでいた。

全ての面が揃ったまま停止していた。
床の黒、壁の赤、緑、黄、白。そして天井の…青。
薄く輝く蒼い光、無音の世界で僕は再び目を閉じ、眠りに落ちた。
まるで湖底に沈んでいくみたいに。
515514:02/08/05 20:19
次のお題忘れてました。
「雨」「国境線」「冷蔵庫」でお願いします。
516雨、国境線、冷蔵庫:02/08/05 21:31
国境線を越えて100km程すすんで僕は車を降りた。
あたりはシーンとしている。時計を見たら午後3時だった。
霧が薄く流れ、今にも雨が降り出しそうな匂いがしている。
気温が急に下がりはじめていた。
僕は付近を歩いてまわり、煙草を3本吸って、車の中のハイネケン缶を取り出した。
冷蔵庫の中に入れていたような程よい冷え方だった。
地図をもう一度確認し、ふたたび車を走らせた。
対向車も後続車も一台も現れなかった。
切り立った険しい山道を抜けた辺りで、突如すべての視界が開けた。
破壊された戦車や戦闘機、兵隊達の遺骸が無数に横たわっていた。
やがてその上に、哀しみと憤りの雨が静かに降り注ぎはじめた。
僕は時計を見た。午後4時38分だった。

次は、「バラック小屋」「機関銃」「コスモス」で!


517「バラック小屋」「機関銃」「コスモス」:02/08/05 22:13
 「もう、駄目だ」
そう思ったとき、もはや何度目か分からない銃声が、小さなバラック小屋を強く叩いた。
 組の金を奪い、高飛びして豪遊。もともと無茶な話だった。
小屋の外には恐らく、黒山が出来てるだろう。俺に鉄の塊をしこたまぶち込むために。
 小汚いバラック小屋が俺の最後。まるで、B級映画の最後だ。
だが、悪くない。率直にそう感じた。
男らしく散るとかそんな物じゃない。何か懐かしい感じがした。この場所が。
 幼い頃、川原で見つけたバラック小屋。それは、立派な秘密基地だった。
仲間とはしゃぎ。何よりもその場所が好きだった。そこでならどんな願いも叶う気がした。
 ーそう言えばまだ【仲間】も居た。あの時は−
いつからこうなったんだろう。
喧嘩に明け暮れた中学時代か?
学校もろくに行かず、ふらふらしてた高校時代か?
 仲間が居れば、俺はこうならなかったかも知れない。
涙が止まらなかった。情けなくて。馬鹿らしくて。ひたすら泣きつづけた。
 もう、自分のものとは思えない身体を上げ、ゆっくりと戸を開けた。
眩しい日の光が眼を刺激し。優しいコスモスの匂いが鼻に漂い。
豪雨の音が耳に響き。口の中に鉄の味が広がり。
程なく全てが無に帰った。

次は「ミサイル」「女子高生」「リモコン」で 
518「ミサイル」,「女子高生」,「リモコン」:02/08/05 23:06
 何が起きたのか理解できなかった。
 僕はただ道を歩いていた。その僕の目の前にミサイルの如く突っ込んできたもの。
 それは女の子だった。歳の頃は17、8だろうか。制服を着ている事から、女子高生と伺える。
 路面に頭を突き刺した形で直立している彼女を、僕は引っこ抜いてやった。
「あや〜、ど〜もありがとうございますぅ〜〜!」
 舌足らずな口調で頭を下げる彼女。中々愛らしい、幼顔だ。だが、次の瞬間・・・
「君の・・・頭のそれは・・・・・・・?」
 彼女の頭から角のように生え出ている物、それは先端が球状になっている二つのアンテナだった・・・

 同時刻。デパート屋上。
「ちっ、リモコンがぶっ壊れちまった・・・暫く、様子を見てみる事にするか」

次の御題は、「罪人」,「遠足」,「トラウマ」で御願いします
小学校の遠足で山へ行った時に、時代掛かった言い方だが罪人に襲われた。
なんでも強盗をやらかして逃げている途中だったらしいが、
そのへんの情報をしっかり把握していなかった学校と教師たちに責任を問おうと思えば
可能だったかもしれない。
級友が数人傷つけられ、正義感の強い教師が一人犠牲になった。
子供心に衝撃的な出来事ではあったが、別にそれで私自身が変わったりする事は無かった。
まだその頃トラウマなどという言葉が存在しなかったからだろう、と考えている。
520名無し物書き@推敲中?:02/08/05 23:32
「ミサイル」「女子高生」「リモコン」

 傾いた陽の光がオレンジのカーテンを通りぬけ、彼の部屋は朱と黒のコントラストに染まっていた。
 ベッドと壁一面の本棚、クローゼット。そして机とパソコン。病的なほど隅々まで整理された牢獄。
 この場所には正直あまり来たくない。しかし、幼馴染で親友である彼が引きこもってからは此処に来ることを
自分に義務として課していた。そして、ベッドの上に座っている彼は、心なしかいつもと違って見えた。
 「やあ、どうした」私が声を掛けると彼は片頬を吊り上げるようにして笑った。そして、私の側に寄ってくる
と、内緒話だ、とあるプランを囁いた。
 それを聞いて、私がどう感じたか正確には述べられない。嫌悪と恐怖、そして、哀しさ。そんなところだろう
か。とにかく計画を思いとどまるように、と説得すると、彼は薄く微笑んで鼻で笑った。完全に気おされてしま
っている。私が押し黙ってしまうと、普段無口といってよいはずの彼が突然、堰を切ったように話し出した。
 「なあ、お前、わかっているんだろう。俺はもう駄目さ。まともな生活はできそうにない。昔からそうだった
だろ。小学校からずっと、俺は何も悪いことやっちゃいないのにイジメられてきた。男には殴られ、女は言葉の
暴力だ。なにをやっても認められず、いつも体と心に生傷が耐えない。不細工でデブがそんなに悪いことなのか
ね。外見だけ綺麗に着飾って裏でろくでもないことをやってる女子高生なんかのほうが、俺よりランクが上なん
だからな。そんな世の中はぶっ壊してしまっていいだろうさ」
 そう、私はこの言葉に弱い。彼が苛められていたのをどうにもできなかったのは確かで、罪悪感は消えない。
 「ん、だから、この計画なのさ。俺はそんな凄いことをする訳じゃない。ちょっとしたリモコンを作って、効
果的な場所にミサイルで爆弾を運ぶだけさ。世の中、映像で見せて初めて分ることがある。弱者が強者に一方
的に食いものにされ、しかもそれを阻止できない。法も正義も無力。こんな世界をリアルで味あわせてやるんだ。
そうすれば、すこしは世の中の不条理ってものを考える奴が増えるだろうさ」
 私は、その後も説得を続けた。だが、その瞳の色を見れば無意味であることは火を見るより明らかだった。

 それから数日後、あるインターネットの掲示板が大騒ぎになった。猫の虐殺が、リアルタイムで中継されたか
らだった……


漏れも2chネタやってみたけど……難しいわ。あ、上記文章のモデルを弁護する気はないんで、念のため。
前にもこんなこと書いたな(w
かぶってしまったのでお題は上のもので。
521名無し物書き@推敲中?:02/08/06 00:25
>>519
>>520
次のお題は?
523名無し物書き@推敲中?:02/08/06 00:30
長すぎるとつまらん
ルールよめ
524「罪人」「遠足」「トラウマ」:02/08/06 01:10
明日はたのしみにしていた
天使第六小学校の遠足だ。あたしの友だちもわくわくしている。
となりの席のミカエルなんか、「虹はおやつに入るんですか?」
なんて質問なんかしちゃって、先生に怒られてる。
おばかさんだなあ。
あした、あたしたちははじめて下界に降りるのだ。
そんなおふざけなきもちでは、なにかこまったことを起こすのだ。
何年か前に、罪人さんっていうほんとは天国なんかに
来ちゃいけない人をかわいそうだからって、こっそり持ち帰った天使がいるらしい。
きっとミカエルなんかはポカーンとしながら下界に降りていって
ニンゲンのコドモたちに見られちゃうんじゃないかな。
あたしたち天使の姿を見たニンゲンは、トラウマっていうものになっちゃって
ニンゲンの世界では冷たい扱いを受けるのにね。
ニンゲンをみちびく天使がニンゲンのためにならないことしちゃダメだよねー。
あたしはそんなことないように、気をつけてニンゲンのかんさつ日記をつけるのだ。

次は、「ノイズ」「天気予報」「甘酸っぱい」でお願いします


525名無し物書き@推敲中?:02/08/06 01:55
シャンプーの残り香だろうか?
甘酸っぱい風を残して、彼女は去っていった。
「今日起こる奇跡を糧に、がんばってよ」
そう、なにやらわからないような言葉を残された僕。
また孤独に静まり返った真夏の病室で、その最後のセリフを反芻する。
彼女はもう僕の見舞いにはこれないそうだ。明日、上京するらしい。
何事にも行動的で、地元人とは思えないほど垢抜けていて、容姿端麗。
そんな彼女がいつまでもこんな田舎に留まってるわけはないのだ。
僕の淡い恋心は、いつ治るかもわからないようなこの重病に、
押しつぶされてしまうのだろうか・・・。
ふと、ノイズだらけのオンボロテレビから、天気予報の声が聞こえてくる。
「ご存知の方も多いとは思いますが、今日は全国的に異常なまでに冷え込み、
雪が降ることも考えられます。お出かけの際には・・・」
アナウンサーの言葉が終わらぬうちに、外には白い粉雪が舞い始めた。
奇跡。確かに奇跡だね。
でも僕は病気が治る奇跡よりも、君と一緒にいられる日常が欲しかったな。
昨日までうるさすぎた程のセミの鳴き声は、真っ白なものにうめつくされ、
沈黙していた。

「花」「虹」「鳥」 で。
526525:02/08/06 01:58
これないそうだ>こられないそうだ
欲しかったな>欲しいかな

に訂正 スマソ。。。。。
527「花」「虹」「鳥」:02/08/06 10:54
「ちぇっ、何もやる気がおきやしねえ」最近の祐一は、退屈すると散歩ばかりする毎日が続いていた。
することがないので、近所の公園に行けば、ぼんやり花ばかり見つめていた。
花などまったく興味のない男だったのに。
「燃え尽き症候群じゃないの」会社を辞めるとき同僚の亜紀子がそう言っていた。
「そんな立派なものじゃねえよ」公園で一人、祐一はつぶやいた。
ふと見ると、木の枝に見慣れない鳥がとまっていた。
野生の鳥とは、かけ離れた鮮やかな色をしていた。
「セキセイインコじゃないか。誰かが飼っていたのが逃げ出してきたんだな」
セキセイインコは飛び立つことができないのか、枝でじっと震えていた。
「飼い鳥はなさけねえな。逃げ出して来たもののエサを自分で見つけられないんだろ」
祐一はそう言うと、急に一人で笑い出した。
公園の横のバス停には、まだ幼い子供が一人でバスを待っていた。
これからどこかに向かうのだろうか。不安を隠すかのように、背筋を伸ばし立っていた。
「もう一度がんばろう」と、祐一は言った。
雨も降っていない空の向こうに、虹がかかっていた。

次は「エアコン」「橋」「花火」で。
528「エアコン」「橋」「花火」:02/08/06 14:53
毎年欠かさず、僕の夏に訪れていたものがある。
僕の一番好きな季節は夏だけど、今は分かる。「夏」と言う季節が
好きだったわけじゃあ無いってこと。たった一刻の、あの空間が好きだっただけってこと。
聞こえないはずの音が頭の中に響いてる。
遠くから聞こえてくる草履で歩く音。浴衣の擦れる微かな音。
僕が遅れていっても当然のように太鼓橋の上で待っていてくれたから、わざと少しだけ
遅刻してたなんて事、知らないだろう?
裏山から見る花火は本当に綺麗だった。見下ろした街の明かりと、少しだけ見上げた
空の花。屋台なんて無くても、蚊にいっぱい刺されても
いつもあの場所に行った。それだけの価値があったのだ。二人しかあの場所には
いなかったけれど暑かったね。
・・・僕は知らなかった。一人で見る花火がこんなにも侘しいものだったなんて。
エアコンの効いた屋内で見る花火がこんなにも冷ややかで、静かだなんて・・・

次は「骨董品」「ピアノ」「万華鏡」でお願いします。
 その洋館は旧家の持ち物であった。
 「まぁ、そんなものなのか・・・・・・」
 男は、その今では廃屋と化した洋館のホールに佇みそう呟くと上着のポケットに押し込んであった
タバコを取り出し火を点けた。彼はその旧家に仕える下働きだったが、今日戦地より復員しその足で
この館へと帰ってきたのだった。
 「お嬢様が大切にしておられたピアノ、だんな様の自慢の骨董品。すべて、か・・・・・・」
 大勢の男が、敗戦と共にこの館へ踏み込んだのだろう。いたるところでドアは破られ、調度が破壊
されている。戦利品を奪い合ったのか、館の者が抵抗した末か、廊下にはおびただしい流血の痕すら
残っていた。
 「あの頃は万華鏡のようだった。思い出してみれば夢のひと時だったのかな。」
 威厳ある当主、優しい奥様。美しいお嬢様にまだ幼かった若様。周囲の者達からの尊敬も厚かった、
と思う。・・・・・・男はそこまで考えてすべてが嫌になった。そして吸いかけのタバコを壊れかけの灰皿で
捻り消すと転がっていた椅子を拾い上げそこに腰を下ろした。
 『あいつは、無事だったのだろうか?』
 男の脳裏に浮かぶのは共に働いていた召使いの女のことだった。そして、男はなんとなくやりきれなく
なってひとつ大きく伸びをした。

 
 16行。落ちないなぁ。
 次は「出戻り」「業」「カラス」でお願いします。
530「出戻り」「業」「カラス」:02/08/07 01:43
 今日は、王女の婚約祝賀式。民衆は、国を挙げてのお祝いです。
 盛装の王女を一目見て、兄王子は息を呑みました。
 「うむ、お前も大きくなったなあ」「お兄様…」

 その時!
 王族控室のドアが音もなく開き、不吉なカラスと共に三人の老婆が現れたのです。
 それは、うっかり招待し忘れた三人の魔女でありました。

 「よくも我々をのけものにしたの。こんな式など不要にしてくれるわ!」
 魔女が杖を一振り。呪いをかけられた王女の身体に、恐るべき変貌が…
 「ああ、王女様!」
 「王女様が、王女様が…」
 ああ、なんということ。これでは、王女も出戻り確実です。
 
 恐れと悲嘆のその中で、王子一人が平気な顔でした。
 「うむ、これはこれで可愛いぞ!」「お兄様ったら…」

 あなおそろしき呪いの業。
 王女は、幼児体型にされてしまったのでありました。

※婚約相手さんの出番がまるでない…ごめん!
次のお題は:「地球」「野球」「鉄球」でお願いします。
彼の職業は、味気ない流れ作業だった。
どろどろの溶けた鉄をすくって型にはめ、鉄球にする。
勤め始めてからこの15年の間に、火傷も多くした。
痕の残るその手で子供の頃に見ていた夢は、野球のピッチャー。
地球上に、彼のような人間はどのぐらいいるのだろうか。

*次のお題は:「ジャケット」「クーラー」「帰り道」でお願いします。
532「地球」「野球」「鉄球」:02/08/07 02:59
 長かった夏の予選も終わり、名門PM学園野球部は、自校のグランドで最後の追い込みをかけていた。
 しかし、予選も通過した為か、どこかリラックスムード。

 そして、そろそろ休憩に入ろうとした折、隣で練習していたハンマー投げ部の鉄球が、3塁線付近に落ちてきた。
 その鉄球が、地面と接触した瞬間である。

 ゴゴゴゴゴ....

 爆音とともに揺れる地面、校舎がミシミシ音をたてている!
 呆然としつつも、4番でエースの桑原は思った。
 「ま、まさか鉄球がおちたくらいで....。」

 〜 一方その頃 神々の国では 〜

 「地球って、野球をするのに丁度いいよね〜。」
 「そうだね、太陽じゃデカすぎるし。しかも燃えてるし。」
 「ところで、テメー、さっき暴投しただろ?地球じゃあ、エライ事になってると思うよ。」
 「まあ、地震は確実だな。よし、続きやろうぜ!!」
533532:02/08/07 03:01
すいません、かぶりました。
>>531さんのお題で、よろしくお願いします。
534名無し物書き@推敲中?:02/08/07 03:11
今日は暑い、しかし、仕事はある。
今日もクタクタになりながら、オレは帰り道を歩いていた。
そこで俺は厚手のジャケットに身を包んだおかしな男と出会う。
彼はこの暑い日になぜあのような物を着ているのだろうか。
人の気を引くため、そんな事を考えている間、オレは暑さを忘れていた。
彼は紛れもなく暑さを忘れさせるクーラーだった。

「警察」「携帯電話」「二足歩行型ロボット」
でどうぞ〜
535「警察」「携帯電話」「二足歩行型ロボット」:02/08/07 07:27
顔も良いし、頭も金も有る友人が僕には居た。嫌な所など無い男。
 ただ一つ、ロボットオタクを除いては・・・ 
メシを食えば【ロボット】酒を交わせば【ロボット】電話をすれば【ロボット】
 ロボ。ロボ。ロボ。全く、頭が痛くなる。そんな彼に一寸悪戯をしてみることにした。
悪いとは思った、けれどこの愉快な気分はもう止められない。
パソコンを使ってこんなポスターを作製。
【貴方もロボ警察にならないか?二足歩行型ロボット遂に完成 
  君はニュータイプに為れるか!     警視庁 機械工学課】
 続いて、出来るだけ驚いたフリをして彼にポスターを渡す。
万事上手くいった。演技をせずとも彼は子供のような純粋さで、全てを信じた。
 心に少しだけ罪悪感が残ったが、それ以上に自分の力量に惚れ惚れしてしまう。
後は先行者のポスターにドッキリと書けば全ては丸く収まる筈だった。
 悲劇って奴は、本当に突然やってくるものなのか?。
携帯の通話口から寄せられる恐ろしい言葉の数々。死んだ。事故で。友人が。
ぶつ切りでしか聞き取れなかったが、彼が死んだのは、もはや明確。自分のついた嘘のせいで彼が死んだ。そんな気がする。
 彼の葬式にも通夜にも出ずに、数日が過ぎ残った仕事を片付けに向かった。
彼の最後の家に。【ドッキリ成功】と告げに。

「夏」「砂糖」「医者」
536名無し物書き@推敲中?:02/08/07 11:03
「夏」「砂糖」「医者」

夏の恋は砂糖より甘く、日差しよりも熱く、どんなお医者様にも治せない不治の病なのです。

次は「透明感」「南の島」「紺碧」です。
537エヴァっ子:02/08/07 11:53
絶望とは、こうも簡単に思ってしまうのか。
人類がコロニーに閉じ込められて数十年、我々地球環境プロジェクトが発足した。
そして今回は初任務で、とりあえずコロニーの外に視察という事になったのだが……。
紺碧の空……スモッグが掛かっていて、ガスマスク無しでは空気を吸うこともままならない。
淀んだ海、グロテスクな生物の死骸が海岸を漂っている。
「ここは一体、何処なんですか?」
思わず隊長に聞いてしまう。
我々がTVの中で見ていた、光景とはあまりにも違いすぎる世界は、自分以外の隊員も驚いていた。
「ハワイだ」
冷徹な一言に、全員が固まった。
ここが?そんなバカな、あの南の島が?TVではあんなにきれいだったのに……。
悪い夢を見ているようだ。

翌日、地球環境プロジェクトは解体された。
自分を含む、全隊員が辞表を出したからだ。
だがそんなことはどうでもいい、あれは夢だったのだから。

つぎは「死体」「優勝」「手」です。
>>537
透明感、が抜けてる。
どうする?
どうする?
君ならどうする?
540539:02/08/07 12:04
誤爆スマソ
541名無し物書き@推敲中?:02/08/07 12:22
そして537の透明感はさらにましていった…
みんなも知ってると思うが、俺の職場には、ちょっと素敵な女性がいる。
その女性は美人コンクールに優勝しそうなくらい輝いているよな。
だから、いろんな手を使ってライバルに差をつけようと、俺も必死な訳だ。
で、最近流行の恋愛ドラマ、「死体にくびったけ」てのがあるよね。
そうそう、あの男女が好きになったり嫌いになったりするやつだ。
俺も、なんとなく見ているんだけど、ほんとつまんないストーリーだろ。
たまたま職場で、その子と話す機会があったわけよ。
「いま、面白いドラマってなにかしら」
「うーん何だろう。君はどれが面白い?」と俺。
「やっぱり、『死体にくびったけ』は最高ね」と彼女。
その言葉を聞いておれは、すぐに言ったよ。
いくら、美しい女性でも、良い物、悪い物の判断はつけてもらわないと。
俺は胸を張ってこう言った。
「でしょ、俺もそう思っていたんだ。『死体に首ったけ』最高だよね」
男とは、どうしようもない生き物だ。

次は「読書」「フライパン」「カレンダー」で。
543「読書」「フライパン」「カレンダー」:02/08/07 20:45
私、今とってもお料理にはまってるんです。
もうレシピの書かれた本とか読書しまくり。
そして、それを片手にフライパンあやつるの。
もう快感。
でも、それを食べてくれる彼がちょっと変わってるの。
どう変わってるかっていうと・・。
たとえばパスタにチーズを加えてトマトソースで味付け、なんて
やってると、彼がやってきて怒鳴るの。

だから今日はちょっと細工しちゃった。同じメニュー作っちゃえ。
あ、彼が来た。怒鳴るわよきっと。

彼「おいっ!何作ってんだよ!カレンダー見てみろよ!
今日は「仏滅」だろ!」
(ほらね。でも)
私「あ〜ら、そのカレンダーよく見てよ。去年のでしょ?」
彼「なにぃ〜!じゃあ、今日は何の日だ!」
私「友引よ」
彼「よしっ!!!!かっこうのパスタ日和!!!」

ね、彼って変わってるでしょ?



次は「ビール」「自民党」「問屋」でお願いします。
544名無し物書き@推敲中?:02/08/07 20:46
自民党は?
545名無し物書き@推敲中?:02/08/07 20:59
自民党は固有名詞だからダメ
546543:02/08/07 23:12
すまそ。

「ビール」「演劇部」「問屋」でおながいします
547名無し物書き@推敲中?:02/08/08 03:38
毎年恒例となっている演劇部の夏合宿は、今年も最高だった。
輝いていた5泊6日をすごしたのは、山のペンション。
日程の後半あたりになると、劇の練習もそこそこに川に遊びに行ったり、
とにかくはしゃぎ回った。
夜になると、問屋から直接安く手に入れてきた、少し古くなってしけっていた
箱いっぱいの打ち上げ花火で楽しんだ。
顧問にはナイショで、こっそり抜け出して買ってきてみんなで飲んだビール。
みんな楽しい思い出だけど、来年からは僕はもう参加できない。
合宿が終わったといえ、高校生最後の夏は、まだまだ始まったばかりだ。
548547:02/08/08 03:39
次は、「ナイフ」「パイプ」「セロハンテープ」でお願いします
549「ナイフ」「パイプ」「セロハンテープ」:02/08/08 05:59
今日、警察がたずねてきた。

昨日、物置から
ナイフとパイプを取り出した。
夜帰ってきた夫をパイプでなぐった
まるで豆腐を潰したような感触を手に感じた。
セロハンテープを体に巻き、身動きをとれなくした。
まだ動き回ってたから、ナイフで刺した。
何の感触も感じれず、何回も何回も刺した。
次の日、燃えるゴミの日に出した。
帰ってこないなんて日常茶飯事だから気にしてませんでした。
これが私の警察への答えだった。
次の日もそのまた次の日も警察は来る。

今私の生活は今まで以上に活発だ。

「メール」「お茶漬け」「ゴミ袋」
でいかが?
550名無し物書き@推敲中?:02/08/08 07:44
昨日は久々に飲んだ。胃にまだアルコールが残っていて吐き気と頭痛が止まらない。
こんな日はなにも食べたくないのだが、空腹だと余計に辛いのでお茶漬けを食べることにした。
お湯を沸かしながら葱をきざみ市販のお茶漬けの紙パックを用意していると、携帯にメール着信を知らせるライトが点滅していることに気が付いた。
「誰からだろう…?」
一人暮らし特有の意味のない独り言を呟くと、できたお茶漬けを持ってテ−ブルに着く。片手でお茶漬けをかき回しながらメールを開くと
『うん、いいよ。お願いします』
とだけあった。
何のことか訳が分からない。発信元は今付き合っている彼女からだ。
お茶漬けが冷めるのも構わず思案に暮れたが、一体何がいいのか、結局分からなかった。
「もう、いいや」
寝不足と二日酔いで深い思考ができなかったこともある。考えるのをやめ、お茶漬けは半分も食べずに腹一杯になってしまった。
残ったお茶漬けの水気を切ると葱の食べられない部分と一緒にゴミ袋に突っ込んだ。すると
ピンポーン
玄関で呼び鈴が鳴った。
こんな朝早く訪問するのは世話焼きの両親か、付き合ってる彼女くらいだ。
覗き穴から覗くと、案の定彼女がそこにいた。
「ちょうどいいや。何のメールか聞こう…」
ドアを開けると、そこに彼女は目を泣き腫らしてたたずんでいた。
「ど、どうしたの?」
僕はあわてて彼女の肩に手をやった。
「うれしいの」
「なにが?」
「昨日のメール…」
「は?」
「結婚してくれるんだよね…?」
そう言って、彼女は僕に抱きついてきた。


意図せず話が進んだ
次回のテーマは「水」「文庫本」「手術」で。
551550:02/08/08 07:46
つーか悪文もいいとこだね
 そうか?
俺はかなり良いと思ったが・・・
 そんな事より感想は感想スレで。
553名無し物書き@推敲中?:02/08/08 20:50
age
554「水」「文庫本」「手術」:02/08/08 21:58
時代は進歩したものだ…
私の若い頃の時代では考えられなかったことだ。
水の音が私の耳元で流れている
リラクゼーションの効果があるらしいが
私にとっては読書が一番の安らぎだ…
今、私は手術を受けている。
今では、散歩ついでに手術ができる。
癌の摘出だそうだ。
まったく、時代は進歩したものだ。
私のページをめくる音と共にメスやらなんやらの
金属音が手術室に響く。

すすまないからテキトーに書きました。
言い訳がましく次に期待をこめて
「目薬」「ルームメイト」「花束」
555佐々木 大次郎:02/08/08 22:03
目薬をルームメイトにさしてやったら、花束をくれた。

                 以上



では、お題。
「ツバメ返し」「巌流島」「アントニオ猪木」
ツバメ返しを巌流島でやったらアントニオ猪木になった。



お題は継続。
557「目薬」「ルームメイト」「花束」ほか3題:02/08/08 23:24
 海流が出会い渦巻く巌流…島はそのまっただ中にあった。
 招き主は、かつて俺のルームメイトだった。
 島に篭り生物の巨大化を研究して30年。学会からは忘れ去られた男だ。

 万一入院中だった時を考え、花束と涙代わりの目薬を準備した。
 いやはや実際、彼は既に死んだとさえ噂されていた!

 「ハロー、マイフレンド。大丈夫かい?」彼はアロハ姿で迎えてくれた。
 「これがミーの研究成果さ。これが巨大化スズメだよー」
 と、象の檻を押し破りそうな剣幕のスズメを見せた。
 「これは巨大化ツバメ、返してあげよう。これ以上成長したら入れる檻がない」

 足元には子犬位の大きさの蟻がいた。
 「これは昨々年巨大化に成功したアント二才。猪、木よりも背が高い5才だよー」

 「…そうか、わかったよ、君の研究の最終目的が」
 「さすが親友!嬉しいよ。自分自身に手術はできない。でも他人では恥かしくて」
 と言って、彼はおもむろにパンツを脱ぎだした。とはいえ自分も素人。
 彼のその部分の巨大化を、節度ある大きさで止められるか?自信が無かった。

※ああ、下ネタだ!何という事を…(涙) でも固有名詞はないです。
次のお題は:「電子」「養子」「中性子」でお願いします。
558:「電子」「養子」「中性子」:02/08/09 00:09
 壁際に立ち尽くすその姿をみても、最初、それが兄だとはわからなかった。
 とっさに基督の磔刑を連想したのは、彼があまりにやせていたからだろうか。
 あまりに多くの罪を犯した男の顔は、穏やかに見えた。
 
 自分達は何もない兄弟だ。家族も、恋人も、愛情も、そして血のつながりさえ。
 
 外では雨が降っている。暗い部屋にあるのは雨音と呼吸音だけだった。
 追い詰めたはずだった。しかし、出口をなくしていたのは自分の方だった。
 (いいか、これは電子。原子の周りを飛びつづけるのさ。そしてこっちが中性子・・・)
 不意に浮かんだ言葉に頭を振る。何で急にこんな事を思い出すのか。

「・・・なぜ、父さんを殺した」
 ようやく口にした意味の無い言葉は、まるでひび割れた小石みたいに小さく響いた。
「俺のためだ」
 なにかをこらえるような兄の声で、記憶が軽く痺れを起こす。
――罵る声。大きく堅い拳。オマエラ養子をクワセテヤッテルンダ。煙草の火。固まった血。悪い人間。
 そんな父をにらみつける少年。探していた兄、いつも背中で僕をかばって。
 
 声が震えた。
「遠藤隆一郎、殺人、強盗の容疑で逮捕する」
 兄さんが笑う。
「ケイタ、えらいな。・・・お前は」
 
(お兄ちゃん、中性子って?)
(ニュートロン、自由に飛び回る素粒子だよ。ケイタには難しいかな) 
(なんかすごいね。お兄ちゃんなら絶対博士になれるよ)

 どうして僕たちはこんな場所まで来てしまったのだろう。
 

 次のお題「流星」「バースディ」「鏡」で。
559「流星」「バースディ」「鏡」:02/08/09 01:06
アッコは流星を見上げるたびに思ったものだ、
――キレイになれたらいいなぁ――
「ぶちゃいく、ぶちゃいく」アッコはいつも男の子たちにからかわれてきた。
女の子からも「アッコちゃんて可愛くないよね」と露骨に笑われてきた。
それでもアッコが人から嫌われるということはなかった。
何故ならとてもやさしく明るい彼女だったから。
それでも高校生になり、大学生になり、アッコは自分の「ぶちゃいく」を恨めしく
思うようになっていった。恋人が思うようにできないせいもあって、何だか引っ込み思案になっていった。
自分の性格の明るさにも自信がもてなくなっていった。
――あぁ、このデッカいまあるい鼻と、重く垂れ下がった瞼をなんとかしたい――

アッコは迷いに迷い、目と鼻の整形手術をすることに決めた。
アルバイトをとにかく一生懸命やって手術代の半額を溜め、
残りは必死に両親を説得して捻出してもらうことにした。
いつも味方だった母親もこの時ばかりは強く反対したが、
キレイになりたいというアッコの切実な思いを、女性として押し留めることはできなかった。

――ハッピーバースデー、アッコちゃん――
手術が終わった二日後、アッコは二十歳になり、
ワインで顔を少し赤くした父と母は、もっと赤い顔したアッコに素敵な鏡をプレゼントしてくれた。


すいません、長いっす・・。
お次のお題は「ピンボール」「囲碁」「サッカー」でお願いします。






 夏。風鈴鳴らす、風心地よし。
「じいちゃんじいちゃんピンボールやろうよ」
「ほへぇ?ぴん、ぴん?なんじゃぁ?広」
「んー、じゃあサッカーのゲームしよう。サッカー」
「ふぉへ?さっ、さっ?かーーっぺっ!」
「ああ、もう汚いなぁじいちゃん」
「すまんなぁ、じいちゃん横文字はよくわからんよ」
「そうだなー、あ、これ。囲碁。これならわかるよね?これで良い?」
「良いごー」
忘れてた。次のお題は
「無人駅」「肉」「植物人間」で。
562「無人駅」「肉」「植物人間」:02/08/09 06:38
 私が開発した生物兵器の特徴は、今までに類を見ない画期的なものであった。
 それはウィルスというよりはむしろ植物に近く、生物に寄生するとその脳を侵食し、根をはる。
だが、実際に脳内で破壊されるのは意識中枢に当たる部分のみである。各感覚機関への命令は通常
通り行なわれる。つまり、植物に体を乗っ取られるのだ。
 問題だったのは、その植物の知能レベルである。完全に寄生された生物は、栄養分を補給する
以外の行動が取れなくなってしまう。その上、時間と共に「文化的な」本能が欠落してゆく。
同種の実験体2体を同じ部屋に入れたところ、1日ともたずお互いに殺し食らうという結果となった。
 そして、感染が最終段階に入ると、実験体が発芽する。全身から肉を突き破って花を咲かせると、
微粒子状の「種子」を放出。これが他の生物の体内に侵入することによって、二次感染が引き起こ
されるのである。感染から発芽までの時間は、人間大程度の苗床であれば3日もかからない。
 この生物兵器の危険性を考慮し、なるべく外界から遮断された場所に、研究所が新設される事に
なった。選ばれたのはとある廃村。廃線となった無人駅が寂しく残っているだけの、実験には理想
的な環境だ。もう少し開発が進めば、より凶暴性や繁殖性に優れた兵器、「植物人間」が完成する。
こいつが実戦投入される日も近いだろう。ようやく、私の努力が認められるのだ……

  『食い殺されていた研究員のレポート』をファイルにおさめました


次は、「恐怖」「激闘」「生還」でどうぞ。
563「恐怖」「激闘」「生還」:02/08/09 07:18
よく生きて帰ってきた。奇跡の生還とはこのことだろう。
砂漠と岩ばかりの荒涼とした大地で、ゲリラが跋扈する中での要人暗殺など度台無理だったのだ。
昼夜飲まず食わずで潜伏活動を続け、数倍の敵と撃ち合いになったことも数え切れない。
この道十数年の自分でさえ、夜襲におびえ、銃声に恐怖する毎日だった。
最後の方になると仲間の人数も半分以下に減り、何処をどう逃げたのか、地図も無いまま一週間ただ逃げ回った。
敵は容赦なく銃弾を打ち込み、埋葬もされない死体が増えていく。
しかし自分はあれほどの激闘で、全滅してもおかしくないと本国も踏んでいたのに、生き残った。
全身の打撲傷、擦過傷に骨折、硝煙で片目を失明しながらも生き残った。
気が付いたら一人で、連合の野戦病院のベッドに横たわっていた。
ほかの仲間のことは、病院の誰に聞いても、何も分からなかった。


阿附癌…
次回のテーマは「記念」「学習」「自転車」だ。
564「記念」「学習」「自転車」:02/08/09 12:34
私の息子が夫に買ってもらった自転車に乗れた。
補助輪なんかのないりっぱな自転車だ。
しかし、夫はこの姿を見ることはできなかった。
そして、私はその姿を複雑な気持ちで見守っている。

1ヶ月前、この子が自転車を手に入れて私は息子に裏切られた。

お受験のために勉強、勉強と怒鳴っていた頃
今までやっていた早朝学習や塾を行くのもやめ
自転車を乗る練習を始めた息子。

今までに見たことのない笑顔で自転車に乗り
私を呼んでいる息子。
話しは彼になんて声をかければいいだろうか…
私は、息子に近づく…
なんだか息子が大きく見えて
近づけば近づくほど遠くに行くようで不安でいっぱいだった。

でもこの子はきっとりっぱに生きていける。
補助輪なんかこの子には必要ないもの。

その時、息子が自転車からこけそうになるのを
私はとっさに支えていた。

でもまだ、彼には私がついていてあげよう。
この子が自転車から降りて、一人で歩いていけるまで。

次の御題は
「看板」「お店」「時計」
565名無し物書き@推敲中?:02/08/09 12:35
>>564
「記念」入れ忘れたので捨ててくれ!!
566「記念」「学習」「自転車」:02/08/09 15:15
思い出すのは3年前の学校の創立記念日。
期末試験前にも関わらず私たちは自転車で近くの神社へと遊びに行った。
「俺の成績が落ちたらお前のせいだ。」
「そしたらあたしが個人授業をしてやろう。感謝したまえ。」
もちろん2人ともこのやりとりが冗談であることを知っていた。
私たちは特別努力して勉強しなくてもそれなりに・・・
学習塾や短期特訓に追われるほかの生徒よりはかなり良い成績を修めることができた。
「俺、転校する。アメリカに。父さんの仕事の都合で」
彼はこちらを見ずに言った。
「3年くらいで帰ってこれる・・・と思う。」
「・・・・・・あんたがいないからって、あたしが泣いて寂しがると思うんじゃないわよ。」
私はいびつな笑顔を浮かべた。そして言った。「いってらっしゃい。」

天才的な才覚で父親を助ける「天才少年」とやらの噂は時々ここでも耳にした。
それを聞くたび私はひとりにやけたものだ。
別につきあってるわけじゃなかった。何の約束もしていなかった。
たぶん、そんなことはどうでもいいのだ。
私はメールを閉じて、空港へと向かった。

次の御題は「猫」「氷」「孤独」で。
567メンソ:02/08/09 16:06
こんなに寂しいのは誰のせいなんだろう。
飼い猫のミチのノミを取りながら、久しぶりに考え事をした。
恋人はいないけど、電話すれば明るく話せる友達だっている。
飲み会に誘われる事だって多い。自分でも言うのもなんだが人気者なのだ。
誰もいなくたって、ミチがいる。猫にあるまじき忠実さ。
いつだってあたしのそばにいてくれる。
でも、時折気づく。頭の隅の方にもう一人の自分がいて、
「楽しそうだけどほんとはつまんないんだろ?」
「いくら話してもわかってもらえないんだろう?」
とかつぶやいてるのが。
そうなのかもしれない。ミチはニャーニャー鳴いている。
ノミはもういない。あたしはミチの髭を一本だけ抜いた。
よく髭を抜くと猫は歩けなくなるとか言うが、そうでもないらしい。
飛び上がって餌場へ逃げた。あたしはミチを抱きしめて、髭を抜いたところが
赤くなっていたので、氷を出して冷やしてあげた。
ミチは弱く鳴いた。あたしは結局、寂しいまま。
568メンソ:02/08/09 16:07
次のお題は「コンビニ」「眼鏡」「花火」で。
569猫 氷 孤独:02/08/09 16:15
私は夏が嫌いだ。

ムカツクくらいに青い空、これでもかといわんばかりに
自己主張する太陽…
夏になると私は毎年ヤツを捜した。
ヤツは氷のような目をもち、町の全てをその瞳で見て育ってきた。
町一番の美猫。クールキャット。
神社の賽銭箱の後ろ、佐藤さん家の桜の木の上、
酒屋の裏の細い路地…ヤツはその時一番涼しい場所を探すのが得意だ。
いつも暑い日は見つけると一日中ヤツにくっついていた。
町のことを沢山教えて貰った。
今日はどうしても見つからなかった。心当たりは全部行ったつもりなのに…
家に帰ると扉の前でヤツが倒れていた。
クールキャット…夏の日差しにさえ溶かせない氷の孤独をたたえたその瞳。
どうしたと聞いても応えてくれない。
もう、氷の瞳は開かない、、
その時手に熱いものが流れてきた。
クールキャットの瞳からは涙があふれていた。

クールキャット 孤独を背負った氷の瞳。
孤独が満たされたとき その瞳は溶け 私は自由になれる。

最後の一声を発してクールキャットは眠った。
優しい日差しのほほえみを残して。


570猫 氷 孤独:02/08/09 16:17
かぶっちゃいましたね。
571メンソ:02/08/09 16:19
名前欄に題を入れるのがしきたりのようですね。
失礼しました。
572「猫」「氷」「孤独」:02/08/09 16:54
早朝5時、渋谷。

タクシーを降りた私はまだ微酔いであった。
辿々しい足どりで駅に向かう。
ヒールが不規則にアスファルトを叩く。
コツリ、コツリ、と、快楽から現実への回帰のように。

欠伸ひとつ、視界がじんわりと歪んだ。
路傍で浮浪者の男女が肌を弄り合っている。
汚らしい猫が塵を漁っている。
もうお終いなのだと、否が応でも気付く。
目眩、吐き気、孤独、抑え難い不安。
あたしは必要?本当に必要?
弱く呟き、路地を曲がった。

一瞬の眩しさ。
立ち止まり見上げれば、透けるような空。
もう夏なのだ。
あたしが自堕落である事などお構い無しに。
ヨロヨロと上を向いて歩く。
気付けば、あたしは情けなく笑っていた。

高く、高く、無限である美しさ。

子供の頃、素敵なことはすべて夏にあった。
プールや、かき氷や、犬のマロンや、ぽこぺん。
記憶はすべて、青空を背にして在った。

光は膨張し、疲れきった私をも呑込む。

どこかへ行きたい。

あたしは足早に駅へと駆け込んだ。
素敵な場所へでも行くかのように。
573「コンビニ」「眼鏡」「花火」:02/08/09 17:19
やはりコンタクトは好きじゃない。

自分の田舎では花火大会が盛況だ。
特に、丘の上にあるコンビニは打ち上げ花火を観るには絶好の穴場。
地元の住民すら知っている人は数少ない。

打ち上げ台の真下から人で揉みくちゃにされながら観る花火より、
缶ビール片手に煙草をふかしながら感慨深く観るそれはまさに至上の贅沢と言っても過言ではない。

今年で自分はこの街を出ることになるだろう。
最後の花火を存分に目に焼き付けよう―そう思っていたはずだった。

しかし、こんな時に限ってコンタクトを落としたうえに踏み潰してしまった。
例のコンビニはもう目の前。今から家に戻るのでは花火大会が始まってしまう。
今日に限って眼鏡は家。もちろん替えのコンタクトを持ってくるほど几帳面な男じゃない。
最後の花火を片目で見るほど呑気者でもない。

自分は思い切ってもときた道を全速力で走り出した。

だからコンタクトは好きじゃない。


次のお題は「甲子園」「おもちゃ」「マヨネーズ」で
 ぼくの父はマヨネーズが大好きなので、キュウリにマヨネーズをこれでもかと言うくらいに
べたべたにぬりつけて食べる。それにしても、周りの目というものがあるのに……。よくもまあ
恥ずかしげも無くそんなものたべられるもんだ。
 ぼくは父と二人で甲子園球場に野球の試合を見に来ていた。ぼくは嫌だったのだけど、どうしても
と言われて仕方無かった。ただでさえ野球なんか興味無いのに、となりにはキュウリにマヨ
ネーズを塗って食う父親。おまけにこの暑さは尋常なものではない。恥ずかしいやら
暑苦しいやらで、一体ぼくは何でこんな場所にいるんだろうか……?
 ぎらぎらと照りつける太陽の光のせいで視界が不明瞭に。「父さん、もうやめなよ」父は相変わらず
食べ続けるのだ。どろりどろり。暑さでだらだら垂れるマヨネーズで油だらけになった父の手の
動きが段々と不自然になったように見えた。彼はゆっくりと前屈みになってその場に倒れ込んだ。
壊れたおもちゃみたいにガクンガクンと不自然な動きを続ける父……。
575574:02/08/10 00:45
なんか適当すぎた、読点もあんまり打ってないし……
最近ソローキン読んでそれっぽくしてみたけどなんか電波
っぽくなった……
次のお題は「毒」「前衛舞踏」「盆」で。
576「毒」「前衛舞踏」「盆」:02/08/10 02:01
町内盆踊り大会の時はびっくりしましたねぇ。
なんせ町長の倅が手足をジタバタさせて変な踊りをするんだから。
ちょっと前に、イタリアへのダンス留学から帰ってきたばかりの、
結構町内では変わり者で知られているヤツでしたからねぇ。
けっ、盆踊り大会ごときで変な前衛舞踏なんか踊ってんじゃねえよって思ってましたよ。

ところが、盆踊りが終わってもそいつはずっと踊り続けてるんですよ。
こりゃいくらなんでも変だろうということになって、
あわてて医者に見せたんですけどね。

結局、大学病院にまで行ってわかったんですけどね。
タランチュラていう毒蜘蛛がいるでしょう?どうやら町長の倅は
イタリアでこいつに噛まれたらしいんですよね。
そいつの毒が頭までまわって、まるで踊ってるように痙攣する
病気があるんだそうですよ。タランタティっていう病名らしいんですがね。

そいつは今リハビリを受けてるんですが、それががまるでラジオ体操なんですよね。
筋肉の動きを正常に戻すためらしいんですけどね。、
イタリアまで行って得られたものが、手足ジタバタ踊りで
日本に帰ってきてずっとラジオ体操してるんだから、
町長は嘆いてますよ、なんのためのダンス留学なんだって。

次は、「ロケット」「水飴」「プレゼント」でお願いします。







577、「ロケット」「水飴」「プレゼント」:02/08/10 02:44
 てーへんでぃ、てーへんでぃ!
 隣の横丁でよ、ロケットが水飴につっこんじまったとよ!!
 へ?
 なんでそんな所に水飴があるんだって? そんな野暮を訊いちゃいけませ
んぜ、旦那。浅草寺の屋台だって水飴は売ってるし、昨日の天気なんて晴れ
時々ブタ饅頭じゃねぇか。「世の中に不思議な事など何もない」って、饅頭
屋の若旦那の名セリフ、知らねぇんですかねぇ。
 へん。
 こちとら江戸っ子よ。
 水飴のひと池ふた池で驚いてちゃあ、ご先祖様に顔向けができねぇ!
 は?
 違うって?
 水飴に突っ込んだって事は、ロケットは無事なのかって? へぇ、まぁそ
りゃあそうですが、……はぁ、なるほどぉ……。旦那ぁ、旦那も好きですね
ぇ。へっ、へっ。火事と喧嘩はお江戸の華よと、爆発しなかったのが残念だ
と、つまりそういうわけで。
 ふんふん。
 よっし。承知しやした。
 旦那の姪っ子、確か九月に婚礼やしたね。これはあっしからの、ちょっぴ
り気の早いプレゼントというわけで――駄賃? いやぁ、そんなもの受け取れ
ねぇ。これはあくまで、あっしからの祝いということで。
 それじゃあ、ちょっくら待っててくだせぇ。いっちょ、このあっしがひとっ
走り行って、でっかい花火をドカーンと打ち上げてきますわ!

 次は「土管」「牛丼」「惑星」でお願いします。
 
 
578「土管」「牛丼」「惑星」:02/08/10 03:07
今日は学校をサボった。今日もというべきか。
人ごみを避けて、やってきたのは小さな空き地。
おあつらえ向きに土管が置いてあったので、早速もぐりこんだ。
鞄を枕に寝転がって、いろいろと考えてみたり。

(なんだか毎日退屈だ)
(日常なんて、そんなものさ)
(退屈な日常、くだらない人間)
(いっそ、この惑星ごと、消えてしまばえばすっきりする)

そんな風に考えているうちに、今日も日が暮れる。
腹も減ったし、牛丼でも食いに行こうか。
こんな、俺の日常。退屈なひとコマ。

次は「牛乳」「プロペラ」「エイリアン」でお願いします。
579牛乳プロペラエイリアン:02/08/10 03:41
 何となく、ヘリコプターのプロペラでエイリアンがバラバラになる、昔
見た映画のワンシーンを思い出して嫌な気分になった。朝からこんな気分に
なってしまうのが嫌だ。カーテンと窓を開け放って、空気を入れかえる。
すうっと入ってくる冷たい外気が心地よい。
 でも、そうやって気分転換しても結局無駄だと分かっている。ぼくの周り
では、常にぼくを不快にさせる何かが起こる、本当にずっとそんなことばかりで気が滅入る。
 ぼくは毎朝必ず不快な気分になる。それは、牛乳を配達する若者のせいだ。
彼の、乱暴な配達が気に入らない。玄関口に無造作に、無愛想にガシャンと
投げ出される牛乳ビン。本当に雑な仕事だ、ぼくは何も悪い事をしていないのに。
 突然、牛乳ビンを彼めがけて投げつけるというアイデアを思いついた。
急いで玄関まで走り、戸を開けると丁度牛乳ビンを手にした彼と、目があった。
その時の彼の顔は、本当に嫌そうな顔で、この世の全てが嫌で嫌で仕方がない
と確実に主張していた。それを見て、計画の実行を延期する事にした。
なぜなら、何故か爽快な気分になったからだ。
580579:02/08/10 03:43
次は「笑顔」「地価」「レゲエ」で
581「笑顔」「地価」「レゲエ」:02/08/10 06:41
午前中の診療も終わり、私は診察室の奥の自室で一息ついていた。
思えばこの国での生活にもかなり慣れたものだ、と思う。

この診療所に移ってきてから、日本にいた分と同じだけの時間が過ぎようとしている。
献身的な看護婦として、あの時から傍で働いてくれている妻を伴って日本を出たのが、
ちょうどバブル経済の絶頂期の頃だった。
あのまま日本に居ればもうひと財産は築けたかもしれなかったが、私は満足している。
一時の景気の好化で、あのときの私の夢だった医療機関の整っていない地域への進出は実現したのだから。
その後、日本ではバブルがはじけ、現在も先の見えない不景気に陥ったままである。

この国には世界の経済大国への憧れを持つ人も多い。
しかし、経済危機に直面した社会とは悲惨なものである。
私の母国が歩んでいる道を思うと、この冨よりも暖かさの充満した国も今のままで、
そう、窓の外であのレゲエの音楽にあわせて陽気に踊っている人たちの笑顔も、
地価の変動などというものに憂えることなく、そのまま崩れぬままであって欲しい。


*お粗末さまです。
 次のお題は「モノクロ」「人だかり」「涙」でお願いします。
家の近所には川が流れている。
その川は通称「モノクロ川」
とても汚くて全ての色彩は失われ、いつのまにか
そう呼ばれていた。

そんな川に誰も近寄るわけもなく
よくいるボランティア大好きなおばさん達も見て見ぬふりをしていた。

ある日、その川に1人の少年が落ちた。
人気がないモノクロ川。誰にも気づかれずに沈んでいった。

少年は川の底へと沈みながらおそるおそる目を開けた。
刀を差した武士が歩いている。
ハカマを着た女学生。
防空ずきんをかぶってガレキをあさってる親子。
ランニングシャツに虫取り編みもった男の子。
全てがモノクロでゆったりと流れていった。

気がつくと、目の前に母の顔があった。
少年は川辺にあった石にひっかかってた所を
助けられたのだ。
周囲を見るとあっちこっち人だかりができていた。



長すぎた…
次のお題はTシャツ、バナナ、曇り空
戻った色彩がまぶしくて少し涙が出た。

綺麗な思い出も汚れた思い出も全て吸い込む
モノクロ川。今日もその色を濃くしながらゆったりと流れていく…
あーー失敗した!
戻った色彩が〜から下が話の続きです。ノД`)

584椅子男:02/08/10 10:44
次はこれでおながいします。
DQN 基地外 超清水

参考資料
ttp://sports.2ch.net/test/read.cgi/soccer/1027957347
ttp://www.cho-shimizu.net
585名無し物書き@推敲中?:02/08/10 11:48
次は、
「Tシャツ」「バナナ」「曇り空」
でいいんだよね?
なに>>584は?
586名無し物書き@推敲中?:02/08/10 11:52
DQNそれは>>584
基地外それも>>584
超清水…ごめんサッカーあまり興味ない…
そして、次に行ってみよう。

次は
「Tシャツ」「バナナ」「曇り空」
で行ってください
587名無し物書き@推敲中?:02/08/10 15:04
晴れた日は、朝から定期で駅に入って電車に乗って、暗くなるまで乗り続ける。そして暗くなったらUターンして同じ駅に戻ってくる。
ただそれだけの事なのに、すごく面白い。
夏休み初日の今日は、ジーパンと無地のTシャツにサンダル履きで、またいつものように駅に向かった。
実は友達も何人か誘ったけれど、そんな退屈なの、と誰も一緒に来なかった。
来なかったのは残念だけど、何か大変なものを独り占めしているみたいで、今日はちょっとドキドキしている。
電車に乗った。朝の通勤時刻なのでこみこみだけど、下り電車なのですぐに人は減っていった。
だんだんビルが少なくなって、緑色が目立ってくる。
この電車のスピードも、すごい速さで流れていく光景も、面白いものばかり。
そんな風景の移り変わりを眺めてるだけで、すぐに時間がたつ。
気が付くともう昼。
昼食なんてわざわざ買ってないし、お金ももったいない。
けど、どうしてもお腹は空くので、今日は家からバナナを持ってきていた。
日当たりの良さそうな駅を選んで降りて、誰もいないホームで、バナナを食べる。
いつもこんな感じだけど、これがまた格別。
生ゴミで悪いけれど、駅のゴミ箱に残った皮を捨てた。
次の電車を待つ間、空とか山とかを眺めていると、雲の形が住んでる所とはずいぶん違うことに気が付いた。
朝のあの快晴だった空も、遠いこの地は少し曇り空だった。
そんな、雲間から注ぐ日光も、またいいなあ、と思った。
今日は新たな発見があったので、少し調子に乗った気分になる。
今度から、雨の日とかも、電車に乗ってみようと決め、新しく来た電車に乗り込み、もっと遠くをめざす。


次回のテーマは 「コップ」「遅刻」「北」です。

588Neo ◆GoP0V9Oo :02/08/10 15:24
ハァハァ水がのみてぇ、コップ一杯の水がのみてぇ
思えば遅刻したのがいけなかったのだ
あと十分イヤ五分はやく目覚ましをセットしていればこんな事態には
ならなかっただろう、朝の快速に乗り遅れるなんて・・・馬鹿だ
おかげで隣の州まで歩いて行かなきゃいけないんだからなぁ、この真夏に
このゴビ砂漠を北へ北へ北上しなきゃいけないんだもんなぁ、水筒も持たずに
嗚呼、水がのみてぇ、コップ一杯の水がのみてぇぇ・・・死。


次回のテーマは「アナル」「前立腺」「白濁」です。

589 「コップ」「遅刻」「北」:02/08/10 15:33
朝は嫌いだ。理由はわからないけど、とにかく嫌い。
けれど起きないことには、朝は続くことはわかってるから体を起こす。
喉が乾いたような気がしたから、ベッドサイドにあるコップに手を伸ばした。
コップの中には、なにも入ってなかった。空気が重いのは、どうやらそのためらしい。
ただでさえ重い体を、これ以上重くするのはいやになった。
そのまま眼を瞑って、ベッドに体重を掛けると、体の下がきしんで静かになった。
北のあたりから、バタバタと音がする。妹は久しぶりに学校に行くみたいだ。
普段は言われても行かないのに、思いつけばそれは急いで用意する、ヘンな子。
時間はわからないけれど、きっとあの子は遅刻するな。
ずっと前に遠いと歎いていたし、ふだんよりも足音が強いみたいだ。
玄関の方から扉が開いた音がした。そう、行くのね。
いってらっしゃい。
おやすみ。


次のお題は「暑い」「実験室」「グラウンド」です。
590「暑い」「実験室」「グラウンド」:02/08/10 17:02
「化学の実験室に、幽霊がでるって話し聞いた?」
季節はこれでもかというくらい真夏。電子レンジの中にいるようなチリチリ焼ける
暑さの中、グラウンドを10周という地獄を強いられて、いい加減うんざりしていると、
突拍子もなくそんなことを言われた。
「ふーん、どんな幽霊が?」
「そこまでは知らないけど・・・。噂よ、噂」
彼女はその割には神妙な顔つきだ。こういうのに弱いのだろうか。
はっきしいってこの猛暑の中、幽霊がどうのこうの言われても眼中にないのだが、
そもそも私自信、そんな物にお目にかかった事はないわけで。ただどんなものかも
わからんというのに、いちいち怯えられる彼女が同じ女の子としてちょっと羨ましかったり。
次の時間が化学の実験ということもあり、相変わらず神妙な顔をしているので、
一言いっておく。
「いいじゃん。少しは涼しくなるかもね」
もし本当にでたら、甲高い悲鳴でもあげてやれば、クラスの男子共の評価も
変わるだろうか?

次は、「地平線」「月」「悪態」で。
591「地平線」「月」「悪態」:02/08/10 18:25
「困りますよ、奥さん。こんな場所に不法で家を建てて住んじゃ」
「不法不法って…いいじゃない。誰にも迷惑かけてないんだし」
「政府に迷惑がかかってるんです」
「で、どうしろって言うのよ。アタシにこの家を出てけとでも?」
「まぁ、その通りです。この区域は未開拓地であり
 政府の立ち入り禁止区画になっているのですから大変危険で…」
「危険危険って…
 何よ!地球から月まで辿り着くほどの危険じゃないわよ!
 どんな思いをしてアタシがここまで来たと思ってるの!?」
「それは月に現在居住している方全員に言えることですから」
「じゃあアンタの家に住ませなさいよ!
 それとも何?アタシにホームレスになれとでも?」
「そんな悪態をつかずとも政府の補助金で……」
「政府なんて信用できない!返してよ!私の地球の家!
 返してよ。あの景色…あの緑の地平線を!」
「まぁ奥さん。落ち着いて。」
「それとねぇ、アタシは奥さんじゃない。主人も子どもも第2次地球戦争の時に戦死しました」

月に人が住み始めて十数年。未だ様々な問題が解決されていないようだ。


昨日WOWOWでみたガンダムの影響が……
次は「レモンスカッシュ」「友達」「マッチ」でおながいします。
592「レモンスカッシュ」「友達」「マッチ」:02/08/10 23:25
ほとんど日は暮れかけていた。「それはマッチをつけるくらい簡単だ」と彼はようやく言った。
ぼくにはその意味はほとんどわからなかった。あるいは、まったくと言っても差し支えない。
いかに暇な毎日とは言え、ほぼ半日も付き合った挙句に聞けた言葉がそれひとつでは、
つりあわないように思う、とぼくは説明した。
「それで」と彼女はぼくの不満などどうでもよいことのように流した。「元気なのね?」
「さあ、俺が半日付き合って、じいさんが喋ったのはそれだけだから……」
「しっかりしてよ、あんたは友達兼観察者なんだから」と彼女は言った。
ぼくは、観察者の部分に多少憤りを感じた。それを紛らわせるように
ぼくは注文したレモンスカッシュを啜った。彼女は同じように、
しかし、おそらく違う心境でカフェ・オ・レを啜った。
「ともだち?」とぼくはゆっくり言った。「孫だよ俺? 友達ってことはないだろう」
「あんたは話してもらえるんだから、友達よ。わたしには1日付き合ったって、
なにも喋らないんだから。あんたもわたしも同じ孫じゃ、わたしの立場がないでしょ」
と彼女は多少苛立って言った。ぼくはまたレモンスカッシュを啜った。
「姉貴、喋ってもらえないからって、最近は様子も見にいってないんだろ?」
「だから、あんたに訊いてるんじゃない」と彼女は明らかに強い語勢で言った。
「それに、どう言ったら喋ってもらえるかなんて、さっぱりわからないもの」
今日喋ったのは、死にたいか、って訊いたあとだったと思う、とぼくは参考までに言った。


*上手くいかんなあ……ま、仕方ねえ。
*次は、「トランプ」「下駄箱」「ライオン」で。
593、「トランプ」「下駄箱」「ライオン」:02/08/11 00:07
昨日に来た友達が、部屋を散らかして帰った。徒にトランプが畳に敷き詰められていた。
果たして今日の朝も、下駄箱が散らかされていた。
「ええ加減にせぇや。」問い詰める声が、休み時間で賑う廊下に。
「すまん、すまん。」ライオンのような顔が笑って、給食室へ駈けて言った。
長い休み時間を、唯一人、廊下で過した。
594、「トランプ」「下駄箱」「ライオン」:02/08/11 00:08
書き忘れたが、次は、「みかん」、「腰掛け」、「田舎」で。
田舎のおふくろから電話がキタ━(゚∀゚)━ !!。
今年もみかんの収穫の時期、手伝ってほしいとのこと。
またこの時期が来たか…。漏れはケイタイを片手にソファーに腰掛け、タバコをくゆらせながら、
「そういや、最近帰ってねえなぁ…わかったよ、逝くよ。」


次のお題は、「モナー」「ゴルァ」「もうだめぽ」でおながいします。
596「モナー」「ゴルァ」「もうだめぽ」:02/08/11 12:06
今日は上司に怒られた。
そんなオレを癒してくれるのは
2chだけだ
そして行きつけの創作文芸版へ
しかし、オレの書き込むへのレスは
モナーのAAにゴルァとだけだった。
もしかしたらオレ…もうだめぽ

次のお題は気を取り直して
「スピーカー」「ラーメン」「海水浴」てなもので

「モナー」「ゴルァ」「もうだめぽ」
とか俗語をもってきたら私がテキトーにあしらうわよ!
馴染みの曲がスピーカーから流れてゐる。机上、雑誌やら音盤やらで散らかった中にラジオは鳴ってゐる。
雑誌を手に取ったり、音盤の表紙を眺めてみたり、落ちつかない動作で僕は、
昼食のラーメンを食い、兄弟達が海水浴から帰って来るのを待った。
スピーカーから流れているのは、兄が好きだと言っていた唄。
自分は今日もなんいもしないのだろう。庭に放置された子供用のビニールプール。
幼かった兄弟達も、今は海で女の子と戯れているのだろうか。
----学生風情で過す、自分や兄弟達も更に変化して行くのだろう。
ひょっとすれば、庭のプールの様に放置さるるのかも知れない。
夕方、兄弟達は帰って来た。

* 次のお題は、「電柱」「からす」「天使」です。
598「電柱」「からす」「天使」:02/08/11 14:13
私は50年間も電柱としてこの村を見てきた。
私が立った時は、それはたいそう喜ばれたものだ。
正面の家のテレビがのぞける。
それは私がしっかりと立って電気を流しているから見れるのだ。
子供たちが天使のような笑顔を見せる。
その時が私がもっとも誇らしく思える時だ。
私は笑顔を運んでいる。
しかし、いつも私の頭に止まりに来るからすの奴が妙な事を言ってきた。
「この村はもうすぐ、消えてなくなるぜ」
そうとだけ言うと、からすは二度とこなくなった。
気がつくと、テレビも映ることはなくなった。
どうした事だろう、体の半分が水に埋まっていた。
そうか、人が私に感謝して風呂にでも入れてくれるのだろうか
たしかに、気持ちいい
このまま眠ってしまいそうだ。
私はこの村に立って本当によかった。

そういい残した時、電柱の姿は完全に水の中に隠れた。
電柱はいつまでもいつまでもダムとなった水の奥底で
笑顔を浮かべ夢を見続けている。


ながっ!!
次のお題は
「フィギア」「缶詰」「両面テープ」
                でよろしくお願いします。
599、「電柱」「からす」「天使」:02/08/11 14:40
 ずるりと伸びた電柱で、黒い烏が哭いてゐる。
 空から堕ちる同胞の中で、一羽の烏が鳴いてゐる。
 引き裂かれた八枚の翼を広げ、血の染みた双眸を開き、折り取
られた只ひとつの嘴の奥から、天の座にあぐらをかく天使どもの
棟梁に、古より変わらぬ呪詛の理を投げかけてゐるのだ。
 「我らの数が満ちる時。我らの数が満ちる時。天は正統の王
を迎えるだろう」
 ところが彼の目に映るのは、地に堕ちてゆく軍勢の、業火
に逃げ惑う惨めな姿。同胞の翼は黒墨に変わり、一羽一羽と
灼熱の鉄鎖に繋がれてゆく。
 それでも彼は叫ぶのだ。
 だからこそ彼は叫び続けるのだ。
「我らの数が満ちる時。我らの数が満ちる時」
 彼の鎧は黒炎に燃え、王の誇りに立たされてゐる。

 次は、「ライター」「海水浴」「腰痛」でお願いします。
600599:02/08/11 14:42
ぐあ。ごめん。確認してなかった。
次のお題は598の「フィギア」「缶詰」「両面テープ」でお願いします。
601598:02/08/11 15:23
>>600
どっちでもいいよ
>>602
が文章を気に入った方で書いてくれ!!
勝負だ>>599&600
602「フィギア」「缶詰」「両面テープ」:02/08/11 16:25
毎日うだるような暑さが続く。今日も室内は37℃を越えている。
汗が体中から滝のように流れて行く。汗を吸った俺の服は、まるで雑巾のように湿っている。
だが、俺はクーラーを入れない。室温が40℃や50℃を越えようと俺は絶対に入れない。
もちろんこれには理由がある。なぜなら俺は環境意識に目を覚ましたからだ。
クーラーは凄まじく電力を消費する。電力を消費するということは、その分発電所などで多くの
資源が浪費されていく。資源を浪費するということは、それだけで環境に負担を掛けている。
さらにクーラーの室外機。あれは高温の熱風を外環境に吹き出している。最近のヒートアイランド
現象を助長したり、大気を汚染したりするなど、まさにあれは悪魔の化身だ。
これに俺は1ヶ月前に気付いた。気付いた時は本当に衝撃を受けた。今まで俺は一体何という事を
してきたのだろうと。そして現在に至るという訳である。
だが、この生活はかなり辛い。暑さを紛らすために様々な工面をしてきたがほとんど効果が無い。
例えば床の模様。 床を一度ペンキで純白に塗り、そして両面テープである模様を描いた。
これはフィギアスケートの銀盤をイメージした物で、こうすれば氷上にいる気分に浸れると思ったが
全く無意味だった。テープがベタベタして余計暑苦しくなったのである。
気がつけばもう昼になっていた。俺は昼食用の缶詰を開けた。中から異臭が立ち込めた。
こんな生活がまだまだ続くのである。俺は耐えられるか不安になってきた。

次は、「三回忌」「特急券」「線香」で
603「三回忌」「特急券」「線香」:02/08/12 11:41
 ようやく遠い職場に到着。
 先輩の殉死から3年が経っていた。
 数日もすると、赴任地の住民は、彼を先輩の名で呼ぶ様になっていた。
 「帰ってきた、帰ってきてくれたんだ!」

 今日は先輩の三回忌。
 線香をあげる間すらなく、緊急出動のランプが光る。
 週をあけず訪れる敵…これだからみんな言うんだ、この勤務地は
墓場への特急券だぞって。

 しかし私は今日も勤務に向かう。
 先輩のユニフォームに一本追加された線。香る様なそのプライドに
背くことなどできない。例え危険を告げるタイマーが点滅しても!
 民衆にとって、私は帰ってきた先輩なのだ。
 ウルトラマンの名を汚さず頑張ろうと思う。

※年代ちょっと古すぎ(^^;L ~クーラー
次のお題は:「バス」「風呂」「湖」でお願いします。
604バス、風呂、湖:02/08/12 15:30
湖畔の民宿に泊まる俺は、プロのバス釣師。
明日の大会に備え、風呂に浸かりリラックスしてるのさ。
ありゃりゃ、終わっちった。最短記録か?
605604:02/08/12 15:33
次のお題、金魚、納豆、ロッテリア、でお願いします。
606コギャルとHな出会い:02/08/12 15:58
http://kado7.ug.to/net/


朝までから騒ぎ!!
   小中高生
 コギャル〜熟女まで
   メル友
  i/j/PC/対応

女性の子もたくさん来てね
  小中高生大歓迎です                 
全国デ−トスポット情報も有ります。
全国エステ&ネイル情報あります。

  激安携帯情報あります。
607名無し物書き@推敲中?:02/08/12 19:46
いよいよ今日は大会本番だ。60センチのバスを釣り上げて優勝するぞ!
昨日はぐっすり寝たから体調は万全。ロッド、リール、ルアー、全て異常なし。
さあ、出発だ。おっと。朝食を食べないといけない。腹が減っては戦が出来ぬと言うではないか。
民宿のおばちゃん、朝ご飯ちょうだい!
しばらくして朝ご飯ができた。白米、味噌汁、漬物、そして納豆の純日本風の朝ご飯だ。
納豆とは縁起がいいね。これで俺のラインも納豆の糸のように粘り強くなってくれるはずだ。
朝ご飯を腹いっぱい食べた俺は、おばちゃんに礼を言って民宿を後にした。
そしてバス釣り大会会場。意外と人がたくさんいた。
参加者の面子を見てみる。だいたいが俺と同じくらいの年齢のヤツばっかりだ。
だが、よく見れば中学校1年くらいの子供もいるではないか。プロとしてあいつだけには絶対負けないぞ!
しばらくして開会式が始まった。そして競技が開始された!
今日の天候から考えて、俺は葦付近を攻める事にした。スピナーベイト確認!キャスティング!!
すると、数投もしないうちにヒットしたではないか!俺は夢中になって引き上げる。そして釣り上げた。
金魚だった。金魚??なぜこんな所で金魚が釣れるんだ?腹が立った俺は金魚を丸呑みした。
仕切りなおしだ。もう一度キャスティング!だが、突然俺を不幸が襲ってきた。
腹が猛烈に痛いではないか!きっとさっきの金魚が祟ったんだ。もうバス釣りどころではない。
トイレに行くにも距離があって間に合わない。ここで野糞するしかない。俺は野糞を開始した。
やがて用を足した俺は重大な事に気がつく。紙がない!!俺は奇跡を信じてポケットを探ってみる。
すると一枚の薄い紙切れがでてきたではないか!ロッテリア ピュアバーガー と書いた紙だ。
この時ほど神に感謝した時はない。紙に礼を言い、俺は尻を拭いた。
こんなくだらない事でかなりの時間を費やしてしまった俺。だが時間はまだまだたっぷりある。
この大会を制するのは、なんと言ってもプロの俺に決まってるさ。

ダラダラ長いクソ文スマソ
次は「カレー」「元気」「旅人」で




608「カレー」「元気」「旅人」:02/08/12 23:19
公園のベンチに空腹で倒れていたその旅人を家に迎えたのが2時間前。
60代くらいの、年よりといってもいいだろう男だ。全身を黄土色のローブで包み、
なにやらマスクまでつけている。異国の人らしい。瞳が青い。
しかしながら、なぜだか日本語が流暢だ。
簡単な食事を作ってやり、彼もどうやら落ちついたようだ。
僕に一言例を言うと、旅人はまた旅立つのだと身を起こした。
「元気でがんばって。所でなにを目的にした旅なのか、よかったら教えてもらえますか?」
特に興味があるわけでもなかったが、なんとはなしにたずねてみた。
旅人は微笑んだ。
「ちょっとインドのカレーというものを食べてみようかと思ってな」
窓の外から見える東京タワーを仰ぎながら、彼は得意げにそう言った。

次は「天真爛漫」「意味深長」「異口同音」でお願いします。
609「天真爛漫」「意味深長」「異口同音」:02/08/13 09:08
僕には好きな人がいる。同じクラスの可愛いあの子。天真爛漫という言葉があるけれど、
まさにあの子のために作られたんじゃないだろうか。微笑んでくれるだけで、僕は天にも
昇る気持ちになる。授業中に頬杖をついて先生の話を聞く様子を見るたびに、僕の心は
締め付けられる。体育の時間はいつもはしゃいでいて、周りにいるとこっちまで思わず
嬉しくなってしまう。もっとあの子のことを知りたい。もっとあの子と仲良くなりたい。

ある日の放課後、そう友人達に告白してみたところ、その場が静まり返った。少しして、
「……え?」と、僕の一番の親友が恐る恐るといった感じで聞き返して来た。
「だから、あの子と仲良くするためにはどうしたらいいかなぁ、って」
僕が照れながら言うと、みんなは意味深長な目配せをして肘でつつき合った。そして、
異口同音に「お前、またか……」と呆れたように言った。
「この前もそんなこと言って、相手から思いっきり拒絶されただろ?」
「あの時はこっちも本気じゃなかったし。今度はがんばるからさ、頼むよ」
「でもさ、相談される身にもなってみろよ。ホントその性癖何とかならないのか?」
友人達は口々に僕を思いとどまらせようとする。何のための友達なのか分かりゃしない。
いいさ、恋は障害が多いほど燃え上がるものなんだ。いつかは理解してくれるだろう。
僕は彼の写真を胸ポケットから取り出して、ゆっくり口づけをした。

♯久しぶりに書いてみた。次のお題は「初めて」「痛み」「愛」でお願いします。
610「天真爛漫」「意味深長」「異口同音」:02/08/13 09:45
仕事先の山奥で、我々四人は道に迷っていた。ろくに明かりの見えない林の中を歩いていると
ふと、ある古い寺を見つけた。高い門には、「××寺」と書かれていた。
事情を話すと、その寺の和尚はこう言った。
「道に迷ったというのなら、今日はこの寺に泊まっていけばよろしい。
今は私しか居りませんが夕食ぐらいはおだしできますよ…?」
坊主頭に、六十七十には到底見えない、深い皺。その顔をさらに皺で覆いつくすような笑顔は
まるで天真爛漫な子供のようだった。
そんな和尚を見て我々は、山道を歩き通した疲れも手伝い異口同音に口を開き、和尚の好意に甘えることにした。
その夜、夕飯を頂くと我々はまだ九時だと言うのに早くも床を延べ就寝の準備に取り掛かった。
山奥のためか、殆どの部屋には電気は通っていなかった。そのため起きていてもする事が無い上、
極度の疲労は簡単に我々を深い眠りへと落とし込んだのだった。
夢さえ見ない眠りの深淵を彷徨っていると、私は近くに水の流れる音を聞いた。
始めは意味深長な夢だな、と思っていたが、どうやら夢では無い。水は、私の寝床の周りを流れているようだった。
突然、背中にじわりと冷たいものを感じ、判覚醒の私は飛び起きた。
見ると和尚が、笑顔のまま、大きな岩魚を三匹抱いて立っている。その全身は、水に濡れていた。
このとき私は、以前話に聞いた、ダムの底に消えたある寺の名前を思い出していた。
その名は「××寺」。
和尚は私を見つめると、静かにこう言った。
「お前さんも、岩魚になって居るよ…」
そして和尚は、私のことも抱き上げると、いつの間にか深い水の底となった部屋の中を、泳いで外へと出て行った。

氏ぬほど長い。
申し訳ないので、次回は簡単なテーマ「休日」「彼女」「暇」で。
初めての愛は痛みそのものだった

#お題が似通ってる
 次のお題は「お盆」「Yシャツ」「階段」
612610:02/08/13 09:48
そしてかぶる…。
45分も気が付かないとは、救いようがありません。
テーマは>609さんのでお願いします。
「初めて」「痛み」「愛」

愛があれば、初めての痛みにだって耐えられる

お題は継続でおながいします。
エロ?エロだろ? ハアハア
>>614
>>613ですけど、あなた、漏れが前にもエロイの書いたとき出てきましたね(w
616「初めて」「痛み」「愛」:02/08/13 16:53
愛子様がぶさいくすぎて心が痛みます。
皇族にこんな感情移入ができるのは初めてです。

次は「カキ氷」「縁日」「祭り」で
617Neo ◆GoP0V9Oo :02/08/13 17:12
588の俺の事は完全無視かい!
お前等全員一度氏ね!
馬鹿は・・・
>617
それは感想スレで発言して見てください。
気持ちは分かるが、無視されてもしょうがないこと書いてるじゃん。
 夜の片隅に身を潜めて、少年は静かに息づく。煙草の火に丸く焼かれた手の甲が、じくじくと
疼き出した。闇の中では蛍のように明滅するだけの小さな火が、失神するほどの熱を持つのだ。
手に、足に、背に、無数に散らばる醜い跡。古い火傷は桃色のケロイドになり、更に昔のものは
茶色い染みになっている。初めて火を押し当てられた場所はどこだったか、もう思い出せない。
おかげで痛みには強くなったが、肉を焼くおぞましい臭いだけは、未だに慣れない。
 少年は壁にもたれて目を閉じた。都合の良いときだけ愛を押し付けられても、信じられるはず
がない。頬を撫でたその手が、次の瞬間には首を絞めるかもしれない。細いメンソール煙草の火
が、今度こそ目の中にねじ込まれるかもしれないのだ。
 少年の瞳には、怯えだけが色濃く映し出されていた。

 「――このような悲劇的事態が多数発生しましたため、人道的見地から鑑みて、小学校教師の
体罰権廃止を強く訴える所存であります」
 若い議員の陳述が終わるや否や、議事堂には反論と野次が渦を巻いた。
「凶悪化する少年犯罪を防ぐためだ! 子供には、大人の恐ろしさを判らせるべきなんだ!!」
 2030年に施行された体罰権の是非を巡って、国会は紛糾するばかりである。

 *遅かった。
  次は>>616さんのお題で。
>>617
カワ(・∀・)イイ!!
621「カキ氷」「縁日」「祭り」:02/08/13 22:16
あれはいつのことだったろう。
よく思い出せない。それは遠い遠い昔のことだったかもしれない。記憶がやけに遠い。霧の中を歩いているように、思い出がかたちにならない。
それがどこだったのか、場所さえよく覚えていない。
ただ、祭り囃子がやたらと賑やかだったのが記憶に残っている。
たぶん、どこか田舎の縁日だったのではないかと思うのだが、子供にとっては何よりも楽しみだったはずのそれが、ほとんどあやふやにしか記憶に残っていないのは不思議なことかもしれない。
どういうわけか、どんな屋台が出ていたのかさえ、ろくに覚えていないのだ。食べ物の屋台くらいは記憶に残っていてもよさそうなものなのに。
ああ、そうだ。
そういえば、カキ氷の屋台が出ていたのでないか。
見たわけではないのだが、カキ氷を食べた記憶だけ、鮮やかに残っている。
あの人は誰だったろう。
「ほら、食べなよ。おいしいよ」
そう言って、親からはぐれた俺に、カ氷を差し出してくれた、たぶん、その時の俺と同年代くらいの少女は。
なにもかもがはっきりしない。その少女も、祭りも、屋台も、人々のざわめきも、にぎやかな笛や太鼓の音も、何もかもがどこか遠い、幻影のようなあやふやなものでしかない。
そのなかで、差し出されたカキ氷の、イチゴシロップの赤い色だけが、やけに生々しく思い出される。
俺には、そのイチゴシロップが、どういうわけか血のように見えたのではなかったか。
そんなものはイヤダと泣き叫んだのではなかったろうか。
「そんなもったいないことダメだよ。ちゃんと食べないとしかられるよ」
ほら、あーんして。
赤い氷をスプーンでひとすくい。
ゆっくりと、俺の口に近づけてくる。
たったそれだけのことが、どういうわけかやたらと怖かった。
俺は泣いていたように思う。どういうわけか、誰かに助けを求めた記憶はない。あるいは、そこにはすでに、俺と少女以外のだれもいなくなっていたのかもしれない。
そして。

・・・・結局、俺は、差し出されたカキ氷を食べたんだろうか。
わからない。よく覚えていない。
だけど、ときどき、ふとそんな記憶が頭をよぎる。
まあいいか。あの娘が呼んでいる。
今日は何をして遊ぶんだろう。
俺は浴衣の裾を翻して駆け出した。


次は「大量殺人」「裏切り」「無意味」で
622名無し物書き@推敲中?:02/08/13 22:30
>>617
ね、Neoタン、アンタいいよ。爆笑だよ。
いや、話がじゃなく、電波ぶりが・・・
623いちネオファン:02/08/13 22:34
ネオさんが荒れてます。
みんなでネオさんを応援しよう!!

ルナ・バースト第二章
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1022649291/l50
感想とか書き込んでやってね。
624621:02/08/13 23:52
うわあ!
すげえミス発見!!!>俺の文。
鬱、鬱、鬱るああああ!!!(TT
625621:02/08/13 23:58
ほんとごめん。反則かもしれないけど、その部分だけ修正してアゲ直します。
失礼しました(m__m)

あれはいつのことだったろう。
よく思い出せない。それは遠い遠い昔のことだったかもしれない。記憶がやけに遠い。霧の中を歩いているように、思い出がかたちにならない。
それがどこだったのか、場所さえよく覚えていない。
ただ、祭り囃子がやたらと賑やかだったのが記憶に残っている。
たぶん、どこか田舎の縁日だったのではないかと思うのだが、子供にとっては何よりも楽しみだったはずのそれが、ほとんどあやふやにしか記憶に残っていないのは不思議なことかもしれない。
どういうわけか、どんな屋台が出ていたのかさえ、ろくに覚えていないのだ。食べ物の屋台くらいは記憶に残っていてもよさそうなものなのに。
ああ、そうだ。
そういえば、カキ氷の屋台が出ていたのでないか。
屋台を見たわけではないのだが、赤いカキ氷(たぶんイチゴ味なんだろう)が、どういうわけか鮮やかに記憶に残っている。
あの娘は誰だったろう。
「ほら、食べなよ。おいしいよ」
そう言って、親からはぐれた俺に、カ氷を差し出してくれた、たぶん、その時の俺と同年代くらいの少女は。
なにもかもがはっきりしない。その少女も、祭りも、屋台も、人々のざわめきも、にぎやかな笛や太鼓の音も、何もかもがどこか遠い、幻影のようなあやふやなものでしかない。
そのなかで、差し出されたカキ氷の、イチゴシロップの赤い色だけが、やけに生々しく思い出される。
俺には、そのイチゴシロップが、どういうわけか血のように見えたのではなかったか。
そんなものはイヤダと泣き叫んだのではなかったろうか。
「そんなもったいないことダメだよ。ちゃんと食べないとしかられるよ」
ほら、あーんして。
赤い氷をスプーンでひとすくい。
ゆっくりと、俺の口に近づけてくる。
たったそれだけのことが、どういうわけかやたらと怖かった。
俺は泣いていたように思う。どういうわけか、誰かに助けを求めた記憶はない。あるいは、そこにはすでに、俺と少女以外のだれもいなくなっていたのかもしれない。
そして。

・・・・結局、俺は、差し出されたカキ氷を食べたんだろうか。
わからない。よく覚えていない。
だけど、ときどき、ふとそんな記憶が頭をよぎる。
まあいいか。あの娘が呼んでいる。
今日は何をして遊ぶんだろう。
俺は浴衣の裾を翻して駆け出した。
626名無し物書き@推敲中?:02/08/14 00:18
『オマエ、裏切んなよ』
僕は言葉に詰まって焦り、小刻みに何度も頷いた。
先輩は場違いな金属バットを抱え、人ごみに紛れていく。

『人間はすぐ裏切るんだから、ボランティアなんて無意味だね』
通夜の席で、先輩は僕を含めたボランティアサークル全員に言うと、笑い出した。
それは何分も続き、異常に気付いた父親に抱えられて先輩は何処かへ連れて行かれた。
数週間後、先輩の妹さんはレイプされて殺されたという事、
皮肉にも、犯人は僕達のボランティア先の知的障害者達だった事を知らされた。

耳をつんざく叫び声が連続して聞こえても、足がすくんで動けなかった。
数分後、ようやく、輪になった野次馬を掻き分けて先輩の姿を見つけた。
先輩の周りには五つの死体と、頭を割られた幼児を抱く母親がいた。
先輩は、その母親の頭にも真っ赤なバットを振り下ろす。
母親の頭が割られ、脳漿が飛び出した。そこで初めて、警官が先輩を羽交い絞めにした。
先輩が僕の名前を呼ぶ。僕は先輩に渡されたナイフを地面に置くとその場を離れた。

翌日僕は、大量殺人犯となった先輩が載った新聞の顔写真に言った。
『先輩は正しいです』
627626:02/08/14 00:23
次は、『ゲリマンダー』『いなたい』『ヒューマンビートボックス』で。
628名無し物書き@推敲中?:02/08/14 00:34
>626
ゲリマンダーはわかるけど、『いなたい』『ヒューマンビートボックス』ってなんでしょう。
用語の解説を希望します。
629626:02/08/14 01:04
>628
『いなたい』は、「田舎っぽい」という意味と、それが転じて「カッコいい」
という二つの意味があると思います。詳しい方、訂正どうぞ!!

『ヒューマンビートボックス』は、口でドラムやスクラッチの音を出す
「ボイスパーカッション」と同じです。
(自分は『ヒューマン〜』の呼び名を先に知ったので、「ボイス〜」に違和感が)

自分でも分からないもの載せてスイマセン。
630名無し物書き@推敲中?:02/08/14 01:07
>>629
自分は「ゲリマンダー」がわかんないっす。
浅学ですんません。(汗)説明お願いします。
631626:02/08/14 01:13
>630
『ゲリマンダー』
・・・選挙の時に政治家が、自分に有利なように選挙区を割る事です。
632630:02/08/14 01:16
>>631
ありがとうございますm(_)m
633名無し物書き@推敲中?:02/08/14 01:29
>>629
「いなたい」は方言ですか?
hiphopの記事とかでよく見るよね
635名無し物書き@推敲中?:02/08/14 02:16
「いなたい」とは

よぉ。オレの名はジョニー。ナガレのギター弾きさ……。

みたいな感じ
636名無し物書き@推敲中?:02/08/14 02:21
>>635
形容詞として使えばいいのか?(例 いなたい男)
637名無し物書き@推敲中?:02/08/14 02:28
>>636
いなたいBARとかなー
いいんじゃない。

食いな、鯛
638「いなたい」「ゲリマンダー」「ヒューマンビートボックス」:02/08/14 06:13
「えー、いよいよ投票日は一週間後に迫っている。ので、えー皆さん、気を抜かず今日も頑張ってください」
今日も、あの男の薄っぺらい挨拶で僕のバイトは始まりを告げた。
政経の友人に進められてはじめたはいいが、このクソ暑い中、脂ぎったオヤジのしょうの無い野心に振り回され、
今日は駅前で、明日はどこかの交差点で、演説のためのコード引きである。
元々政治には大した興味は無かったが、さっきまで我々バイトにまで媚を売っていた男が、大政党のあからさまな
ゲリマンダーと比例代表制で簡単に当選できるくらいは知っていた。
さして大物とも思えなければ、憂国の士にも見えるはずの無いただの初老の小太りを当選させていったどうしようと言うのだ?
日が経つにつれ不満は蓄積され、いっそ演説中のヤツの頬を張り倒して飛び出してやろうか、などと思う。
唯一の楽しみは一緒にバイトしている娘がなかなかかわいいのと、ヤツにしては気が利いた、ヒューマンビートボックスの
パフォーマンスくらいだろう。
政治家たるもの、音楽にうつつを抜かして、どこそこの誰々はいたないなあ、なんて言ってるようではいけない。
標準語をまず覚えて出直して来い、と思う。
こんなんでは、共産主義の掲げる政党が選んだ代表をみんなが認証する、と言う形のほうが魅力的に思えてくる。
ああ、早く終わってほしい。この選挙も、いっそ日本も。

えー、上までの書き込みを見ても分かるように、あまり一般的ではない言葉を
テーマに据えるのはどうかと思います。
と言うわけで、次回は「アスファルト」「重い」「焼肉」でお願いします。
639「アスファルト」「重い」「焼肉」:02/08/14 14:48
僕は湿っぽく、蒸し暑い空気の中で立ち止まっていた。
右手には商品が詰められた、重いスーパーの袋。
後は帰るだけだったと言うのに、
地面の上の揺らぎが何かを見せたせいで、僕はこうしている。
その「何か」がなんであるかは思い出せない。
もっとも瞬間的に忘れてしまったからこそ、歩みを止めたのだが。
朦朧とした意識で陽炎を見つめ、虚ろな頭の中で記憶を探す。
僕の眼は答えを出せとアスファルトを睨みつけた。
だが生意気な事に、こいつは無言のまま何も答えようとはしない。
それどころか、太陽の熱を跳ね返し挑発をしてきているのだ。
その態度に腹を立て、僕は地面を蹴飛ばしてその場を後にした。
弁解の為に言って置くが、敗北を認めたわけじゃない。
僕は自販機の前まで行くと、そいつに3枚のコインを食べさせた。
自販機と言うのは基本的に律儀で、恩は絶対に返す奴だ。
お礼の缶ジュースを受け取り、ベンチで一息つく。
この公園全体を覆う木のおかげで、ここは涼しげだ。
ボールで遊ぶ子供たちを眺めながら、
ふと僕は何をしているのだろう、と前後不覚に陥る。
熱が冷め、冷静さを取り戻したせいだろうか。
呆然としていると、視界の端を黄色い物が飛び何かを崩して帰っていった。
僕は首を右に傾け、その二つがなんであるかを確かめた。
飛んでいったのはボール、崩れたのはビニール袋の中の品物だ。
地面に落ちたパックを見て、僕の頭に記憶が蘇る。パックの中身は牛肉。
あの時、頭の中でアスファルトとホットプレートが重なり
牛肉が焼ける光景に吐き気を覚えたのだ。
そして、今日予定していた焼肉を何に変更するかに心砕いていた。
僕は確かで、あまりにも下らない答えに自嘲し、
子供たちはその様を不思議そうに見つめていた。

「春」「夏」「玄米茶」
640Neo ◆GoP0V9Oo :02/08/14 22:02
>>618
すみません、無視された怒りで我を忘れていました
>>623
ルナバスレに異様にレスが付いてたのはコレのせいか・・・
わざわざありがとう
641「春」「夏」「玄米茶」:02/08/14 22:20
まだ夏とはいえ、8月の終わりともなれば北海道の夜は寒い。
足早にやってくる秋を歓迎するかのように虫たちが涼やかな音色を奏でている。

「フゥ・・・」
良二はキーボードを打つ手を休め、大きく伸びをした。
机の上にあった残りのお茶を一気に飲む。もはや冷たくなってしまった玄米茶は、それでも幾分か机仕事の疲れを癒してくれた。

台所に行ってお茶を淹れ直す。春から始めた一人暮らしはもう随分と良二の体に馴染んでいた。
(しかし、何だかなぁ・・・)
せっかく大手企業に入社できたと思ったのに、いきなり北海道の片田舎に配属されるとは。
会社に対してそれなりに夢を抱いていた良二にとってはいささかショックの強い出来事だった。
「まあ、別に「希望に燃えて入社!」ってわけでもないけどさ・・・」
お茶を注ぎながら呟く。別に声に出す必要はないが、一人暮らしをするようになってから独り言を言う機会が多くなっていた。
「建物は古いし、上司は嫌味だし、女はいい子いないし・・・」
そこまで言って、ふと言葉を止める。
(そういや、一人だけ居たな。)
開発部の小沢涼子。彼女は美人で人当たりもいい。
「今度声でも掛けてみようか・・・」
高嶺の花だが、やってみる価値はある。
そんなことを考えながら、良二は再びパソコンに向かった。
どうやって涼子に声を掛けようかと考えながら、良二はデータを入力していく。
とりあえず、彼の仕事が一段落するのはもう少し先になりそうだった。


次は「CD」「義手」「コーヒー」で。
今日夫が病院から帰ってくる。右腕に義手を付けて。
交通事故に巻き込まれ、夫は右腕を失い、失業した。
連絡を受けて駆けつけたときには、さすがに呆れたわ。
ぐわはははは、ロボットみたいな腕が来るってよ、なんて笑っているんですもの。
生活が始まる。夫は新しい相棒を飼い慣らそうと奮戦する。
ぐわはははは、CDもセットできんぞ。私は溜め息を吐いた。
「今度はモカコーヒーだ。お前の好きな奴だぞ」ガチャガチャ音がする。
諦めて待っていると、お盆にカップを二つ載せて夫が来た。ほっと一息吐いた途端に夫はお盆をぐらつかせ、カップの一つは完全にこぼれ、もう一つも半分くらいしか残っていなかった。
「……その、なんだ、すまんな。調子乗りすぎたみたいだ」珍しくしゅんと縮こまってる。
私は立ち上がり夫に近づき、残ったコーヒーを手に取り口に含む。以前と変わらぬ味だった。
「美味しいですわ」と私。「そーか、美味いか」と喜ぶ夫。
「えぇ、何も変わりませんわ」と微笑んだ。
互いに笑いながら、夫婦で半分のコーヒーをわけて飲んだ。

14行、ちと長いか。
「扇風機」「釣り」「風鈴」
643「扇風機」「釣り」「風鈴」:02/08/15 00:49
釣り竿を固定すると、大海原を見渡しながら煙草をのむ。
誰もいない早朝の海岸で、波音と一筋の煙だけが存在を誇示している。
先程から徐々に体が汗ばんでいく。
やはり自然に居ても、私の身体は扇風機の人工の風が恋しいらしい。
と、どこかで風鈴の音が聞こえた。この海岸の近くに民家は無い。
しかし、音はハッキリと聞こえる。奇妙に思いつつ、煙草を地面に擦りつける。
次の煙草に火を点けようとして、マッチの火が潮風に消された。
もう一度と斜になると、煙草が口からこぼれた。
私の直ぐ隣に五、六歳の少女が座っていたのだ。
黄色いワンピース姿で風鈴を目の前に翳して凝視している。
少女は音色より、音色が出る瞬間を気にしているらしい。
その無垢な横顔に声もかけられず、ただ見とれる。
一つ、大きな波音がした。
はっと、あまり見すぎても悪いことに気付き、海へと目線を戻す。
しばらくして再び横を見ると、海面を覚束ない足取りで進む少女が見えた。
あぁ、声をかけておくべきだったと後悔した。
644643:02/08/15 00:51
お次は『打ち水』『蚊帳』『電話』で、どうぞ。
645「扇風機」「釣り」「風鈴」:02/08/15 01:18
彼との思い出の品は全部捨てた、とはよく言うが私は更に彼が触れたもの全部を捨ててしまった。
おそろいのマグカップからソファから、ベッドもエアコンも。
「ワレワレハウチュウジンダ」とか奴が語り掛けて遊んでいた扇風機も捨てた。
我ながら思い切ったことをしたもんだ。
お陰で今年の夏は思いっきり暑い。

結局、心まで裸になりきれなかった私に問題があったのかも知れない。
自宅でもブランドの服を着て、格好つけてばかりいた。
「本当はトレシャツトレパン大好きなのにね。趣味もこの通りなのに。」
私はマイ釣り道具を箪笥の奥から掴み出すと家を出た。

行き着けの川にでも行こう。帰りに、お金も無いし風鈴でも買って来よう
―そう思いながら。


かぶりますた。
646熱液:02/08/15 01:55
俺は蚊帳の中にいた。
さっきからずっと電話が鳴っていた。が、俺は電話に出なかった。
俺が蚊帳の中に籠もるようになったのは三日前からだ。
良かれと思い、
通りに打ち水をしていたら隣のおばさんに罵られた。それがきっかけだった。
俺は蚊帳の中でうんうん唸っていた。電話はしつこく何度もかかってくる。
俺は受話器を取った。電話は隣のおばさんからだった。
「この前はごめんなさい。イライラしていたの」
俺は受話器を放り投げ、おばさんの家に駆け込んでいった。
御題目が無いよぅ。
みんな僕のことを苛めるんだね。
わかったよ、もう寝るよ。
648人‘ 。‘人 :02/08/15 02:57
じゃあ次は「いじめ」「寝る」「通りすがり」で。
649熱液:02/08/15 03:50
俺は道を歩いていた。
そこは通りすがりの通行人をいじめる道だった。
俺はそれを知らなかった。
文庫本を片手に鼻歌を歌いながら歩いていると見知らぬ男から
石を投げつけられた。俺は石を投げた男を殴りつけた。
すると民家から棍棒を持った老若男女が群がり出てきて俺の周りを取り巻いた。
「お前何も知らないのか?」と小柄な老婆が言った。
俺はわけがわからなかったがとりあえず謝った。
しかし俺は棍棒で殴られた。そしてあばら家に監禁された。
俺は何とか逃げ出そうとしたがだめだった。窓から外を見ると、たいまつを持った
男たちが十数人あばら家を見張っていた。
俺は恐怖で寝ることが出来なかった。夜明け前、あばら家に火が放たれた。
650名無し物書き@推敲中?:02/08/15 07:21
>>649
お題がいまだ書き込まれていないので、勝手に提示させていただきます。
「針」「吹く」「小さい」でお願いします。
>647 >648 >650

>1を読め
652熱液:02/08/15 08:39
俺と父親と弟の三人は足の裏に針が刺さる苦痛の中、針山を登っていた。
俺たちが地獄に落ちたのはまだ4年前のことにすぎない。
三人で共謀して、祖父、母、祖母、と次々に毒殺した。保険金が目当てだった。
警察の捜査の手が伸びてきた時、俺たち三人は小さい妹を一人残して自殺した。
とまれ。前方から、鬼がこちらにやって来ていた。
鬼が俺たちに息を吹きかけると体の小さい弟は吹き飛ばされた。
弟の全身に針が突き刺さった。鮮血がほとばしった。

次。放蕩息子、死刑執行、救助隊。
653omi
家の放蕩息子にも困ったもんだ。27歳で無職。
それは良いとしても、面白半分に小犬を虐殺した写真をnetで配って
それがばれて逃走中だ。
あんな奴は、いまさら親でもなければ子でもないから
捕まって死刑執行にでもなれば私もいくらか肩の荷が下りるんだが、
往生際が悪いから逃げきれると思ったらしい。
まったく馬鹿ばっかりはどうしようもない。
山の方面に逃げて遭難したんだとよ。
海の方面に逃げて溺れ死んでくれればいいのに、
山での遭難は金がかかるんだよ。救助隊の人件費だけでも大変だ。
どこまで親に迷惑を掛ける奴なんだよ、まったく。
それでも未だ許す気があったんだ。しかし、その気がプツンと切れた。
奴は失神から目が覚めて、自分を救った救助犬を見た次の瞬間
その犬の首を絞めようとしやがったんだ。