この三語で書け! 即興文ものスレ 第六稿

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542「時刻設定」「結婚指輪」「コマドリ」:02/06/21 01:10
「この写真、何時のだったっけ?」
Yが独り言のように呟く。
私は荷造りを終え、整理の手を止めて小さなアルバムに見入っていたYの背後から、
そっとその写真を除きこむ。
リビングの窓の前。ウララカな暖かい日差し。その光に抱かれる様に
アルバムを覗き込むYと私。
写真の日付は92年6月7日、と刻印されている。二人はまだ会ってもいない。
ああ、この時、電池交換して、時刻設定してなかったんだよな、確か。あのカメラ。
「7年前のさ、サークルの合コンツアーの時だよ、それ。」
「あん時ねぇ。コマドリの民芸品なんか買ったんだ。あなた。ダッセぇー。」
「いやぁ、酔っ払ってて覚えてねぇんだよナ、その置物の事。電車に忘れちゃったし、ソレ。」
「この時はまだKと付き合ってたのよね、アナタ。」
「そうそう。お前がスクーバ始めたばっかで、俺らが皆でバイトで金持ち寄ってファラオに行くぞ!
って燃えてる時。」
「B君よね、この横で馬鹿ヤッテル子。」
「盛り上がってるよなぁ。何の話してたっけなぁ、この時・・・。」
アルバムを覗き込む私とYの、丁度目の前のテーブルの上に、そのアルバムの
入っていた小箱に収められていたのであろう、結婚指輪が置かれていた。
(指のサイズが合わなかったんだよな、あれ。プロポーズで出した時、焦ったよ。
それにしても、渡されたプレゼント、いきなり箱から出して嵌めようとするかぁ?)
私の口元は、その、つい昨日のような出来事に緩む。Yも、同じ気持ちでいるみたいだ。
私は彼女の肩にソッと顎をのせて寄りかかった。そして彼女はそんな私をいつもの
ようにヤンワリと受け入れる。そう、いつもと何も変わらず。

明日の昼、二人は別々の人生を歩み始めるため、この家を後にするのだけれど。

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次は、「リップスティック」「ソックタッチ」「マユズミ」でどうぞ。
AMが午前のことだったか、午後のことだったかが思い出せない。

田中は、プラスチックで出来たデジタルの目覚ましを手に持ったまま、
しばし虚空を睨み続けた。
この目覚ましは、朝が来ると鳥の囀りで起こしてくれるという優れ物だった。
つがいのコマドリの飾りがついている。

毎朝、同じ時刻に起きる田中には、就寝前にアラームの時刻設定を改める習慣はない。
設定はいつもそのままで、タイマーだけをセットすれば、そのままで寝られるのだ。

昼飯のラーメンを作った際に、アラームを適当な時刻に合わせた事が悔やまれた。
鳥の囀りを合図にチキンラーメンを茹で上げるという思いつきに、田中は夢中だったのだ。

「こんな時、由子がいたらな」
一人呟く田中の左手の薬指には、シルバーの結婚指輪がはめられている。
しかし元妻とは、1年も前に離婚が成立していた。
指輪は義理ではめているのでは無く、単に太って抜けなくなっただけなのだ。
決して悪い男では無いのだが、夫としては少し頼りなかった。

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なんか、長くなりそうなので、ここまでで。
次は542の「リップスティック」「ソックタッチ」「マユズミ」でどうぞ。
544[:02/06/21 02:00
−−ゲルマン百科事典第12巻134貢−−

<悪魔猫> 

厳密には、それは猫ではない。
客間の虎にしては少々欲が深く、裏切り者の愛玩にしては饒舌にすぎる。
歩く様はなるほど官能的だが、時には老婆のようでもあり、奇妙な三足歩行を得意とする。
ありふれた同胞たちと変わらず高所を好み、例えば日中は
教会の屋根上で太陽を拝んで過ごすが、どこか役者を気取っているような、
そんなしたたかさがギリシア人−−悲しみを知らぬ者たち!−−を常に不安に陥れる。
フランク王国の霊媒師学団の語るところによれば、それはかつて月の魔女の不実な僕であったそうだが、
高名な数学者アルバッキオの反論−−その歩幅は完全な円周率の二乗feetに等しい−−によって、
今ではむしろ双子の神の不出来な片割れとして認知されている。
545544:02/06/21 02:02
失礼。「猫」「屋根」「あくま」への回答です。

次のお題は542に同じく
「リップスティック」「ソックタッチ」「マユズミ」で。
546「リップスティック」「ソックタッチ」「マユズミ」:02/06/21 02:11
 怪獣は、いまや横浜スタジアムをも破壊しようとしていた。

 「いけない、決勝戦が危いわ」
 少女は、鞄からソックタッチを取り出し、空にかざす。
 先生の目を盗み、苦心して持ち歩く一本のソックタッチを。
 「変身!」まばゆい光に包まれて、巨大化する彼女。

 仮面で正体を隠す彼女には、二つの武器があった。
 常人の1万倍のパワーを発揮させるソックタッチ。
 ごく淡い口紅は、口喧嘩能力は町内会おばさんの91倍に加速させる。
 かくして地球は守られた・・・

 「お父さま、ただいま」疲れた体を引きずって帰宅する彼女。
 父の置手紙と、不揃いなおにぎりが食卓で待っていた。

 <仕事で遅くなる、すまん! 父>

 マユズミで怪獣化した父は、次の獲物を求め大阪湾を潜行してる最中だった。

※窪田まり子の漫画みたい
547あ、お題忘れた!:02/06/21 02:13
次のお題は:「もしも」「だから」「くるぶし」でお願いしまふm(_ _)m
548「リップスティック」「ソックタッチ」「マユズミ」:02/06/21 03:19
時代とは変化するものだ。
私の向かいに座っている女子高生が電車の中でリップスティックを塗り、マスカラを使って睫毛を整える
その間に、肩をぶつけた主婦が、同じように吊革にぶら下がっていたサラリーマンに短く謝罪する。
あんなにも揺れる空間で、よくもあれほど繊細な作業を完遂しきれるものだ。
わずかな時間で、ビデオテープでも早送りしているかのように、
良家のお嬢さん(あくまで想像に過ぎないのだが)は、夜の蝶のような蠱惑的な容姿に変貌を遂げていた
ほんのりとした上品な色の口紅に、うっすらと描かれたマユズミ、
そして淡いアイシャドーまでのせられては年齢が想像できない――制服さえ着ていなければ

古着でも脱ぎ捨てるかのように脱皮する彼女達に対し、私は拭い去り難い違和感に襲われる。
頑なに思い続けてきた。
社会に対する処世術とは、時代に揉まれ磨り減らされ否応なしに染みついていくものではないか?
だが、今では我々の世代はそれを声高に非難する頑迷さも、自らの一部として包含する柔軟さも持たない。
新しい息吹とは新旧の血生臭い闘争によって生み出されないといけないはずなのに
同時に、我々は――少なくとも私は怖れている。共に時代を謳歌しようとしたが故に時代から爪弾きにされることを
いつまでたっても時代に馴染めない魂、それが我々だ。

隣を見ると、ずり落ち過ぎたルーズソックスと格闘すべく、ソックタッチを鞄から取り出している少女がいた
以前娘に、ソックタッチとは何かと問うて、博物館のショーケースに収められた化石のように扱われた覚えがある。
保護指定を受けた私には今の最新の流行が皆目見当もつかない。

ルーズソックスの少女は、ソックタッチの粘着力が弱いのか、なかなか目的のフォルムを獲得できないでいた
――案外、強がっている彼女たちも時代に取り残されないよう必死なのかもしれない

そんなこんなと考えているうちに私は目的の駅を乗り過ごしてしまった。

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若い身空でこんな話を書いてしまった。これでも二十代。鬱だ氏のう
続いて、「もしも」「だから」「くるぶし」
549「もしも」「だから」「くるぶし」 :02/06/21 19:30
我々は気の遠くなるような長い年月をかけて復興への道程を歩んでいる
人類の科学技術は、それなりに進歩したといっていいだろう。
それはそれは――人の時間軸からはずれた歳月に形成された天然資源を使い果たし、
分厚い光化学スモッグで地球の大気を覆い尽くすほどだ。

結局、世界的な食料危機を回避する解決方法は見いだせなかった
星々を光速で自由に駆けめぐるための推進器も開発できなかった
次世代エネルギーの開発プラントに至っては、
ぐるりと数千キロ、周辺に人の立ち入れない夢の残滓として放棄されている

だから、人類は少しだけ現実的になった。
無尽蔵のエネルギー源への試みは凍結され、宇宙開発に至っては法的にまで禁止された。
遺伝子工学だけはまだ細々と続けられているが――まあそのことは、これからの話とはあまり関連がない
ご先祖たちは残念がるかもしれない。輝かしい科学文明の終焉を

でも、誤解しないでほしい。僕たちは限られた世界の中で精一杯生きている。
今の事態の打開への夢のような解決方法がないことは、過去の歴史が悲しいほど証明している
このことに父は反対しているが、現実に目を向けさせるために宇宙開発を禁じた統合政府のやり方は正しい
それでも――
もしも、空がもっと青ければ人々は星々の語らいに耳を傾けたかもしれない

さて、ここで舞台は急展開する。
時代遅れの――ほとんどジャンクと言い切って差し障りのない、水素ロケットで宙を目指すドンキホーテがいる。
恥ずかしながら私の父だ。人類には夢が必要だ。そう言い続けて既に二十年が経過している。
――爆煙を上げて一筋の光が上空に伸びていく!
まさか、エンジンに火がともるとは思わなかった。そもそもろくな軌道計算もせずにどこに行こうというのか?
だからこそ、この変人は宇宙を夢見ることができたのだろう。
祖母は卒倒し、母は、ここにはいない――機上の父を激しく罵倒した。
私も愚かなことだと思う。私は銀月の騎士になるべきだったのだろう。だが、だが、この胸にこみ上げるものはなんだ?
張りぼてのロケット――ロシナンテは、まだ目視しうる範囲、ほんの重力井戸のくるぶしのあたりで――あっけなく飛散した。

――九十六年
人類が星の見えない夜空に彗星を見たのは実に九十六年ぶりだった

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ああ、連続書き込みしてしまった。暇人だと笑ってくれい
お次は、「多聞」「外聞」「内聞」
550「多聞」「外聞」「内聞」:02/06/22 00:15
 連日の深夜残業。恥も外聞も無く公園にへたり込む。
 「あー・・・」しんど、と言おうとした矢先、黒服の男が現れた。
 「ちょっと待った。私が代わりに疲れてあげます」

 ベンチに横たわり、男はうめき出した。
 「ああ疲れた、しんど、もう歩けない、ここで野宿だー」
 ・・・代わりに疲れられて釈然としない。幾多聞く幽霊噺にも、こんなのはない。
 そこに、また一人の娘が現れた。
 「私が代わりに釈然としないでいてあげる!」

 やにわにうなだれて、ぽつんと呟く娘。
 「あーあ、なんだか釈然としない、どうしてだろう、あーあ・・・」
 疲労も釈然としないもやってもらって、何をしていいのかわからない彼。
 とりあえず家に帰ろう。「ありがとう、ではまた」

 「他のサービスのご案内聞いていきませんか?」という声を振り切って
 ・・・家に帰ると、既に一人の少年が代わりに帰ってくれていた。

 何もなくなってしまった彼。でも、不思議と寂しくはなかった。
 傍らで一人のお爺さんが、代わりに寂しがってくれていたから。


※谷川俊太郎のパクリ・・・なわけないけど(笑)
次のお題は:「チョコレート」「スリップ」「夏」でお願いします。
551「チョコレート」「スリップ」「夏(失敗)」:02/06/22 04:01
「チョコレートの原料となるカカオは元々南米の自生植物で、
 大航海時代には被征服民族の間で通貨として流通していたの。」
耀子は夜中の十一時半(試験明けで眠い!)に僕を叩き起こし、そんなことをとうとうと語り続ける
「当時は潰したカカオを砂糖を加えないまま飲料――チョコラートとして、王族の間に嗜好されていたというわ」
彼女が世界史に造詣が深いことは良く知っている。僕はこうして我慢強く聞いてあげないといけない。
決して我が儘な女性ではないけれども、時折こういうどうにもならない時もあるものだ。
「うん、それで?」
「と、当時は、それはヨーロッパ人の嗜好に合わなかったら、
 チョコラートがチョコレートになるまでは様々な努力・試行錯誤がなされてきたの」
正座した姿でスリットから覗く太股が色っぽい。それと、趣味は分かれるところだが、僕は日本人形のような耀子の顔を気に入っている
「うん、君の言っていることはよく分かるよ」
「カ、カカオは栄養学的見知からも効能が優れているの」
「へえ、それは意外だね。食べ過ぎると良くないと思っていたよ。うん?」
「た、たまには異文化に触れてみるのも悪くないと思うの!」
彼女はタッパに入れた(可哀想だがお世辞にも形は良くない)チョコレートをぽんと僕の目の前に置いて、
そのまま踵を返しててすたすたと帰ってしまった。

どうせなら、泊まっていってくれた方が嬉しかったのに。
帰り際、耀子は恥ずかしそうに呟いた――ありがとう

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ってか、お題は「夏」じゃん。ええ、良いお題だと思います。
長いのは嫌われますので、ここで諦めます。
というわけで、引き続き「チョコレート」「スリップ」「夏」
552「チョコレート」「スリップ」「夏」:02/06/22 10:26
「ほら、チョコレートで地べたに絵がかけるんだぞ」
トシユキは黒いアスファルトの上に茶色い線を引いた。
「もったいないよ」
アキエが咎めるのだが、トシユキは気にせず線を延ばし続けている。
「もう売り物にならないからって、沢山くれたんだ。食べ飽きたよ」

トシユキの家の駄菓子屋に、トラックが突っ込んだのは先月のことだった。
雨で滑りやすくなった路面で、擦り減ったタイヤがスリップしたらしい。
「最初は地上げ屋かと思いましたよ」
事故について語る時、トシユキの祖母は決まってそう切り出した。

1枚の板チョコは1本の長い線になった。
トシユキは汚れた指先をTシャツで拭って、自分の引いた線を満足そうに
眺めていたが、突然思い出したように、
「俺、夏休みが終わったら、いなくなるかも」
と言った。
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次は「カナブン」「鉛筆」「故障」
553名無し物書き@推敲中?:02/06/22 10:44
「よっぽど気をつけて走らねえと危ねえぞ兄ちゃん」
 ガソリンスタンドの店長が俺の車のタイヤを蹴った。
 おかしなことだがとても慣れた足つきに見えた。
「これ、スタッドレスでねえべ」
「ノーマルですが、やっぱり危ないですか」
「危ねえよう。金あんだったらここで履いてけ。スリップすんぞ」
 言われた通り、ここまで来る途中でも何度か危ないところがあった。
 道路に積もった雪は踏み固められて氷のようになっている。
「去年の夏もここに来たことがあるんですが、全然違いますね」
「そりゃそうさ雪国だもの。雪降ったらもうダメさ」
 だけどここでタイヤを買う金など無かった。準備もなしに飛び出してきたのだ。
「どうすんのや。履いてかねのが」
「はい。お金が、ちょっと足りないので」
「しゃあねえな」
 店長はスタンドの建物の中に入り、何かを手にして帰ってきた。
 近づいてきてそれが分かった。タイヤチェーンとチョコレートだ。
「貸してけっから。危ないとき自分で履いてけよ」
「あの、そのチョコは」
 店長はにやっと笑った。
「立ち往生したらカロリーが必要になんべや」

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書いちゃったので投稿。
続くお題は552氏の「カナブン」「鉛筆」「故障」で。
554「カナブン」「鉛筆」「故障」:02/06/22 11:40
小学校のとき夏休みの研究で提出した標本はどうなったのだろう?
カブトムシとクワガタが全然捕まえられず、カナブンばかり並べた覚えがある。
札に鉛筆で『カナブン』と同じ名前ばかり書きこみながら泣きそうになったものだ。
子供のころだから、昆虫学者がやるようにきちんと防腐処理が施せるわけがないし、やった覚えもない。
図鑑で昔、はらわたをちゃんと取り出さないといけないと読んだ覚えがあるが、そのとおりだと思う。

とりとめもない思索にふけっているとき、若い青年の声が耳に響いた。
「あ〜これ、エンジンまでいっちゃってますわ。うちじゃあ無理っすねえ」
レッカー車が来るまで、私のフォルクスワーゲンはそこに磔になっていることだろう。
――標本のように
ガソリンスタンドにはビートルズの『ヘルプ』が流れていた。

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おお、かなり即興で書けたぞ。嬉しい。
次は、「遺伝子」「改悛」「エリート」
555554:02/06/22 11:47
うげ!?
故障を入れ忘れた。阿保か俺は
556「遺伝子」「改悛」「エリート」 :02/06/23 04:07
「おまえ知ってるか?
 受精能力のある精子は全体のほんの一割ほどで、残りは他の男の遺伝子を殺すための文字通り
 ――キラー精子として機能するんだよ。これはエリートほどより多くの子孫を残す仕組みを……」
左手が一閃する。依然として交戦相手の士気は高く戦力も強大である。だが、戦略的重要拠点は死守せねばなるまい。
「では、同じ哺乳類であるオットセイの雄雌比については?
 たった一割の雄が、実に残り九割の雌を獲得すべく闘争するのだよ。これは何よりも自然が一夫一妻を否……」
汝、右の頬を打たるれば左の頬を差し出せ。痛そうな音が辺りを響き渡る。

指輪を嵌めたままひっぱたかれたため、皮膚を切ってしまった。
俺と彼女は同じ言葉で語りあえない。俺は理屈をこね回すが彼女は両手を振り回す。現代が文明社会なんて嘘っぱちだ。

彼女は俺の頬の手当しながら呟く
――ホント、馬鹿なんだから。浮気してないならそう一言言えば済むじゃない。
お互い興奮していたが、冷静になるといつも改悛の情に駆られる。こんな傷は、まあどうでもいい。
馬鹿馬鹿しくなってふとお互いに微笑みあう。
使用しているハードウェアもプロトコルも全く違うのによくもこんなにも通じ合えるものだ。

彼女にとって、(俺が専門にしている)生命の成り立ちやその行く末についてなんて、興味どころか意識の範疇にすらないらしい。
妻が今気にしているのは、俺の頬傷の具合と、今晩の料理(自信作らしい)の評判だ。

だから、だからこそ、子供の頃から――僕たちはずっと一緒にいる。

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「遺伝子」「改悛」「エリート」 なんてお題目だと(ストーリーが限られるし)小難しそうで萎えますかねえ。
忍びなくて自分でスルーさせてしまいました。

お次はわりと作りやすそうなお題目を、「モンタージュ」「パンツスーツ」「BGM」
557「モンタージュ」「パンツスーツ」「BGM」:02/06/23 08:22
 目撃者の証言により、犯人はパンツスーツの若い女性と判明した。
 警部は張り切る「よし、みんなで探すのだ。パンツスーツの女を!」

 鑑識課員は頭をひねりながら警部に相談。
 「えー、モンタージュ写真とDNA鑑識結果によりますと、犯人は」
 「そんなのはどうでもいい!パンツスーツだ。パンツスーツの・・・」

 他署から続々応援もやってきた
 「我々も捜査に加えさせて下さい!」「僕達も」「俺達も!」
 既に百人を超えた彼らの頭には「太陽にほえる」のBGMが流れ続けていた。

 「あのですね、だから、鑑識によるとですね・・・」
 誰も聞いていなかった。パンツスーツ。それだけで十分だった。

 ・・・が、2ケ月にわたる懸命の捜査にも関わらず、犯人は見つからなかった。
 パンツ一丁に上半身スーツ姿の女性は、ついに現れなかった。
 コンビニ万引き事件は、未解決に終わったのである。

※実は「パンツスーツ」の意味知らない^^;
 次のお題は:「記憶」「レバー」「遊園地」でお願いします。
558「記憶」「レバー」「遊園地」:02/06/23 10:25
『鶏レバーの味を文章で表わしましょう』
教卓の後ろに置かれたホワイトボードに、右肩下がりの文字でこう書かれている。
これは、白川が受講しているシナリオライター養成所の課題である。
課題が発表された後、受講者の間から軽い笑いがこぼれた。
白川も笑ったが、すぐにこれは難しいぞと思い直した。

おぼろげながら味の印象は掴めるのだが、それを文章にするとなると容易では無い。
しかし、記憶というのは面白いもので、レバーの事を思い出そうとすると、
それを食べた場所や、その時一緒に居た人の顔まで浮かんでくるものだ。
「レバー、レバー、レバー・・・・・・」
お経のように繰り返していると突然、白川の目の前に赤い観覧車が浮かび上がった。
突如沸いたイメージのあまりの鮮やかさに、白川は驚いて「あっ」と声をあげた。

あれは小学校の2年生の時だった。
白川は両親に連れられて、S県の遊園地に遊びに行った。
そこで両親の目を盗んで観覧車の裏側に回り込んだ白川は、
それと知らずに緊急停止用のレバーを引いて、観覧車を止めてしまった。
観覧車は30分間以上もの間止まり続け、ゴンドラに閉じ込められてパニックになった婦人が、
30メートルの高さから窓を破って地面に飛び降り、遊園地は大混乱となったのだった。

どうしてこんな大事を忘れていたんだろう。
白川の口内には、嫌な味のする唾液が溜まっていた。
レバーの味と、嫌な思い出と、酸っぱい唾液が混ざり合い、白川は吐いた。
559558:02/06/23 10:27
次は、「部屋」「シャツ」「象」
560「部屋」「シャツ」「象」:02/06/23 12:19
「象ってアフリカとかインドにいるんだよね、寒くないのかな」
「そりゃ寒いさ」と適当に相槌をうつ。
 学校さぼって二人で来たのはいいが、平日の動物園は寂しすぎる。
「このホッカイロ投げたら集まってくるかな? 『あったかいよー』っていって」
「止めろ止めろ。それに本当に寒くなったら厩舎に入れるだろう」
「そっかー。だから冬は動物園閉まっちゃうんだ」
 なんで学校さぼったんだろうかと、さっきから考えている。
 別に二人きりになりたかったわけじゃない。
 じゃあなんで学校さぼったんだろう。
 さっきからずっと答えは出てる。
 隣にいるデート気分の彼女には悪いが、俺はその答えを引き延ばしたいだけだ。
 制服のブレザーもYシャツもすり抜けて、秋の終わりの風が肌に触れる。
 もうじき冬が来る。
 アフリカにもインドにもいない。今おまえは日本にいる。
 象はその大きい体を自分の部屋に押し込めればいい。
「なあ今から学校に帰んね?」
 学校帰って勉強して先生と相談して進路決めて願書書いて……。

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次は「雑誌」「灯台」「層」で。
561「雑誌」「灯台」「層」:02/06/23 15:07
ザーザーザーザー
深夜3時。デスクの上にある電源がはいったままの14インチの小型TVでは、すでに番組がやっていない。
私は打開作を練っていた。我らが編集部の1週間の結晶である、「週刊2ch」
読者層はもちろん2chがなくては生きていけないような、「2ch依存症」の人間なわけだが、
そういういわゆる引きこもり体質の多い人間は、表紙にギコ猫がびっしり書かれた「いかにも」な
この雑誌を買う勇気がないらしく、立ち読みされて終わる部類の雑誌という不名誉な位置についてしまっている。
ようするに需要はあるわけなのだから、買う側の負担、つまりこの場合は「買うときの羞恥心」
を軽減してやればいいわけだ。つまり表紙デザインの改変である。
今までは2chのシンボルともいうべきギコ猫を、様々な形で登場させ、あくまでも2ch然とした雰囲気を目指していた。
それならば、2chという言葉と関連性のないものを表紙として使っていけばいい。
だが、あまりにかけ離れていても、私はどうかと思うのだ。
雑誌の表紙はその内容を簡潔にまとめた、いわゆる目次のようなものであり、
そこで興味を惹かれない限り、いくら2ch依存者達にとって買いやすい物だろうが、なかなか購買意欲自体が沸いてこないだろう。
なにか打開作は・・・。悩む私にの目が、ふと目の前のTVにとまる。相変わらず番組はやってない。
そういえば消すのを忘れていた。電源ボタンに指をのばそうとして、私は愕然とした。
そこにはまさに私の目指していたものがあったのだ。
「まさに灯台下暗しだったわけね・・・」
目処はたった。これで週刊2chの未来は安泰だろう。
私の指がTVのリモコンのチャンネルボタン、「2」にふれた。画面の内容は変わらなかった。

次は「夏」「うちわ」「パチスロ」で。
562みずし:02/06/24 02:01
俺はただいつものようにパチスロに行きたかっただけなのだ。
それなのに・・・
梅雨時だというのに今日は太陽がぎらぎらと照りつけ、これから到来する夏の予行演習であるかのように蒸し暑かった。
さすがにうちわしかない6畳一間の部屋でこの暑さに耐えられるわけもなく、空調の利いた近所のパチンコ屋に行こうと思い立った。
ポケットの中のなけなしの金―――幸い給料は日払いで貰える―――を確認し、俺の腕をもってすれば3時間は涼めるだろうと踏んだ。
その後は、と俺は自嘲した。財布だけでも涼しくなりゃそれでいいってことさ。
ところが、である。
俺は運悪く大通りの交差点で信号に引っかかってしまった。
仕方なく俺はうちわ(部屋から持って来たのだ)を頭にかざした。
その時だった。道の向こうから苦悶の表情を浮かべつつ必死に走り寄る女性の姿が視界に飛び込んで来た。
凛としたつぶらな瞳、荒い息を吐くふくよかな唇、上気してほんのりと紅い顔、それはまさに戦いの女神のように生命感に溢れ美しかった。
ふと、彼女の手に偶然にも俺のと全く同じ絵柄のうちわが握られている事に気づいた。
彼女も俺のうちわに気づいたらしい。そのまま彼女は俺の許へと駆け込み、耳元に暖かい吐息を感じるほど唇を寄せこう言った。
「3枚目のうちわ。」
そして何のことかわからず困惑する俺の頬に一瞬唇を押し付けた後、女性はまるで追っ手を恐れるかのように走り去ってしまった・・・
俺はこの後、「3枚目のうちわ」の謎を解くべく3年の歳月と6ヶ国にわたる旅をすることになる。
563562:02/06/24 02:03
「夏」「うちわ」「パチスロ」のお題でした。
次は「水」「魔」「瞬く間」で。
564「水」「魔」「瞬く間」:02/06/24 13:28
僕は学校のプールの授業を見学していた。なぜなら水着を忘れてしまったからだ。
ほかに見学してる人は誰もいなかった。僕は一人プールサイドのベンチに腰掛け、ぼんやり眺めていた。
みんな楽しそうだな・・、僕はみんなに羨望の眼差しを送っていた。
一人はバタ足をして、そこから水しぶきが太陽に照らされまぶしく跳ね上がっている。ある一人は潜水を長く楽しそうにやっている・・。
たまには眺めるのも悪くないか・・、温和な気分だった僕はうとうとしていた。その時、一声の悲鳴が上がった。
「キャー!!プールの底になにかがいる!!」
その声に僕ははっとして目を覚ました。そして悲鳴の上がったほうを見てみた。僕は凄まじい光景を目の当たりにしてしまった・・
僕が見てすぐにプールの中央付近に渦ができ、そして瞬く間にその渦は勢いを増してすさまじい渦潮の如くと化した。
そしてその渦潮の中心からは凄まじい形相をした「魔人」らしき物が顔をあらわした。
いつの間にか空には暗雲が立ち込めている。僕はこんな事がこの世にあっていいのかと錯乱してしまった。
だが実際に起こっている。僕は息をのんでその光景を見届けることにした。
プールに現れた魔人はまず巨大な腕を伸ばし、近くにいた引率教師をさらっていった。そして次の瞬間、あたりには激しい血飛沫が舞った。
魔人は引率教師を捻り潰し、その生き血を啜ったのである。プールは鮮血で赤く染まっていった。
キーンコーン・・、校舎から授業終了のチャイムが悲しく鳴り響いた。惨事をあざ笑うかのように・・
魔人が次の獲物めがけ腕を伸ばしたその時だった。空から、もう授業は終わったぞ、起きろ。と場違いの声が上がった。
だが次の瞬間、僕は陽光の下にいたのだった。僕は夢を見ていたのである。僕は胸をなでおろした。
それにしても恐ろしい夢だったな・・。僕は体に怯えを残しながらプールを後にした。
次は「横断幕」「サポーター」「稲妻」で


565「横断幕」「サポーター」「稲妻」:02/06/25 01:50
横断幕の用意という命令が下った。
俺はコンソールを操作し、所定のプロトコルに従って、
エネルギーの放出量をプログラミングした。
肉眼で観察はできないが、宇宙空間に横断幕が掲げられる。

俺の乗っている巡航艦随伴護衛艦、通称サポーターと呼ばれているが、
それ自身にはたいした火力も持たず、主に母艦たる巡航艦の補給や修理
など補助的な役割を担っている艦である。
ほぼ唯一と言ってよい攻撃手段として、横断幕の形成がある。
母艦に対して指向性のあるエネルギーを放出することにより、
特殊な力場を形成させ、そこに敵艦が接触することにより、ダメージを与える。
このような技術が開発された頃は、【横断弾幕】などと呼ばれていたが、
いつのまにか【横断幕】という通称が一般的になっていた。

眼の端に稲妻のような閃光が走った。敵はいきなり撃ってきたらしい。衝撃が走る。
人が死ぬ前には、走馬灯のように今までの思い出が浮かび上がってくると言う。
しかしその瞬間に、俺は地上で見た花火のことが思い浮かんだ。
どうやら、俺たちの艦は死神の鎌の一振りを逃れたらしい。
俺は帽子を拾い、被りなおすと、コンソールの前に座り、次に予想される指示に沿った
プログラミングを開始した。

次は、「あじさい」「発光」「酸素」でお願いします

566「あじさい」「発光」「酸素」:02/06/25 06:22
私は小学校の教員に向いていないのかもしれない。先日も、
「どうしてあじさいは色が変わるの?」
そう聞かれてその場で答えることができなかった。
たしか梅雨時になると色が変化すると記憶しているが、詳しい理由までは分からない。
――先生、大人のくせにそんなことも分からないんだ
全くもって面目ない。深夜、ぽつんと発光する蛍光灯の下でひとり調べ物をしている。
何々?――土壌の酸性アルカリ性の具合によって青から赤へ変化します
酸性……ええっと、酸化能力、つまり酸素を付加する能力であって……
ああもう!こんなこと子供達にどうやって納得してもらえば良いのだろう。

自分は真面目すぎるという。
そんな質問に対し、同僚が「その方が綺麗でしょ」と答えていたのを思い出す。
無難な答え方だとは思う。でも、小学生とはいろんな事に興味を抱く多感な時期でもある。
質問には自分のできる範囲で真摯に答えてあげるべきだと思う。

――私を悩ませる難題は続く。

空はどうして青いの?
どうして僕だけお父さんがいないの?
どうしてサンタさんの乗ってるソリは浮いているの?
分数のわり算なんて納得できないよ

私をあっと驚かす質問や、素朴な疑問、答えようがない難題、様々だ。
私が教えているのか、それとも子供達から教わっているのか。
あくまで生真面目に答えようとする自分は、しばしば、からかわれているとも思う。

ただ、子供達の質問の回数だけは増えていった。

---------------
殺伐とした昨今、こんな先生に巡り会えるといいねとか思って書きました。
次は、「波止場」「板挟み」「原動力」
567名無し物書き@推敲中?:02/06/25 08:41
「波止場」「板挟み」「原動力」

源蔵は今日も労働していた。
石炭を放り込み、弁を開け、缶のテンパアチュアを調節するのである。
源蔵は汗を拭かぬ。
右手は円匙の端を握り、左手は円匙の柄を握って居るのだ。
炉扉のリズムが彼に不断の労働を要求する為、源蔵は額を拭うことすら侭ならぬのだ。
源蔵は「波止場」と呼ばれる出張りに足を掛け石炭山の奥のほうに円匙を伸ばす。
黒く輝くダイアモンド、このエネルギイの塊が缶に入って炎となりこの大工場を動かすのである。
大工場から産生された工業品は渦潮のように市中へ流れ、やがて国土の隅々にまで行き渡る筈だ。
即ち源蔵がそれらの原動力なのである。
源蔵こそが原動力なのである。
石炭滓と煤煙で真黒に染まった顔、これが労働者源蔵の顔だ。
貧窮と多産に板挟みされる苦悩が滲み出て来るのだ。
己の両手以外何ひとつ持たぬ源蔵である。
働く事でしか解決できぬ問題なのだ。
だから源蔵は労働するのだ。
今日も源蔵は労働するのだ。

次回お題「焚き火」「船」「視線」
568名無し物書き@推敲中?:02/06/25 09:43
15行以上書くんじゃねぇゴルア
569567:02/06/25 15:19
もしかして16行書いた俺に言ってますかバーン
>>568
>15行以上書くんじゃねぇゴルア
16行以上とか正してみてさらに事態の混乱を招いてみるテスト

読み手に優しく改行したら15行越えるケースが大方だがどうする?
と発言して周りの視線を窺う試行錯誤

当面は15行(1行40文字くらい)を目安にしてみたらと提案して
渡りに船をつけ、護摩を焚き火のないところに煙を立てず、
スレの繁栄を模索する祈祷

こんな煽りでお題が流されてしまったこの事実――
出題された方に『禿』しくお『詫び』して文章を『結ぶ』次第であります。
571「焚き火」「船」「視線」:02/06/25 16:34
俗世から離れる冒険の一日目。
私がこの無人島に上陸して初めて過ごす夜。
夜営には火が欠かせない、そう思い私は近くの朽木を集め焚き火の準備をしていた。
火をつけようとした時、ふとどこかから視線を感じた。私はその視線の方向を振り返った。
そこには海上に浮かぶ一隻の漁船があった。船上の誰かがこちらを振向いたのだろうか。
いや、気のせいさ。この暗闇から人を識別できるはずが無い。
私はひとときの安堵を感じた。そして安堵と共に眠気もやってきた。
もう寝るか。
私は漆黒の海原の一点の燈を見ながら安らかな眠りについた。
こうして私の一日目の夜は更けていった。

次は「積乱雲」「コップ」「アンテナ」で

130じゃ天才とは言えんな。
180くらいないと天才とは呼びたくない。
573「積乱雲」「コップ」「アンテナ」:02/06/25 20:03
翌朝、空が白みだすと同時に、私は夢の世界から引き戻された。
体をゆっくりと起こし、目を瞑り、潮騒の心地よい音に耳を傾けた。

ここには、醜悪な人の世は存在しない。昨日、ほとんど思いつきで
無人島まで来てしまったが、後悔はしていなかった。残りの一生を
すべてここで費やしてもいいとすら思った。

目をあけて、砂浜に目をやると、波打ち際にはガラスのコップや空き瓶
なんかがポツリポツリと打ち上げられている。人間社会の切れ端が
こんなところにも迷い込んでいる。そう考えると、まるで自分のようで
滑稽に感じられ、口の端が自然とほころんできた。

さざめきたつ海原は、朝焼けの紅い光をかき乱しながら輝き、まるで
宝石が一面にちりばめられたような光景を描き出していた。水平線の上に
乗っかっている積乱雲も立体的に薄赤く染め上げられ、私の心をときめかせた。

ところで、そろそろテレビ放送が始まる時間だ。私は暇つぶしのため、
テレビを一台持ち込んでいた。あ、しまった。アンテナを忘れた。
ていうか、電波とどいてるのか? あぁ、やばいっ。
今日はウルトラマンコスモスが最終回だ。

私は、水平線に向かって船を走らせた。現実逃避は明日からにしよう。
テレビ、間に合うかな・・・。

次のお題は、「鉱物」「化石」「層」
574「鉱物」「化石」「層」:02/06/25 22:27
ヒリチェイはカモレ湾に面する小国である。
主要な産業はバナナなどの熱帯農業と観光業。
国民のうちヒリチュ人が68%、ハラ人が17%を占め、
その他にウロウ人、ナワシ人、レッキバ人などが居住している。
公用語はフランス語だが、実際に使用される言語はエレユイ語である。
エレユイ語はナワシ語を基層言語としてヒリチュ語やフランス語の影響のもとに形成された
一種のピジンフレンチであり、カモレ湾一帯の商業言語となっている。
宗教はカルメル会由来のローマカトリックが多数を占めるが、
レッキバ人の火山信仰やウロウ人の鉱物についての習俗は
フランス人勢力浸透以前のヒリチェイの宗教の一様相を今に伝える。
最近米国の石油会社によってカモレ湾口での石油資源採掘が行われ、
従来ベネズエラからの輸入に頼っていたヒリチェイの化石燃料事情に
大きな変革をもたらすものと期待されている。

次回は「期待」「フレンチ」「公用語」
「期待」「フレンチ」「公用語」
ヒリチェイはカモレ湾に面する小国である。
主要な産業はバナナなどの熱帯農業と観光業。
国民のうちヒリチュ人が68%、ハラ人が17%を占め、
その他にウロウ人、ナワシ人、レッキバ人などが居住している。
公用語はフランス語だが、実際に使用される言語はエレユイ語である。
エレユイ語はナワシ語を基層言語としてヒリチュ語やフランス語の影響のもとに形成された
一種のピジンフレンチであり、カモレ湾一帯の商業言語となっている。
宗教はカルメル会由来のローマカトリックが多数を占めるが、
レッキバ人の火山信仰やウロウ人の鉱物についての習俗は
フランス人勢力浸透以前のヒリチェイの宗教の一様相を今に伝える。
最近米国の石油会社によってカモレ湾口での石油資源採掘が行われ、
従来ベネズエラからの輸入に頼っていたヒリチェイの化石燃料事情に
大きな変革をもたらすものと期待されている。

次は「コピペ」「マジレス」「アイデア」
576574:02/06/25 23:00
>>575
やるなw
577「コピペ」「マジレス」「アイデア」 :02/06/26 00:47
時は既に丑三つ時、満月が霞んだ雲の向こうに朦朧と浮かび上がる。
びゅうと吹く風も、体にまとわりついてくるように重苦しい湿気を帯びている。

校庭に六星芒形の魔法陣を描き終わった僕は、魔法陣の前に座り込み、
地面に『The Servant』という本を広げ、ペンライトの明かりで、ある行をなぞった。
『The Servant』は、天使や悪魔を召還するためのアイデアが羅列されており、
僕が目を通した行には、天使・セラフィムの召還方法がかかれていた。
僕はしっかりと呪文を頭に叩き込み、やおら立ち上がり、両手を広げて叫んだ。
「ナトタビシコピペチーチッサー」

刹那、風がぴたりとやみ辺りを沈黙が包み込んだ。そして次の瞬間、
魔法陣から眩いほどの光が噴き上げ、ゆっくりと押し出されるように一匹の竜が
姿を現した。『The Servant』で見たことのある姿だ。
こいつは、悪魔・レヴァイアサンだ。

マントルが対流するように、濃厚な恐怖が全身へ拡がっていくのが分かった。
ジットリと手にかいた汗が、それが錯覚でないことを物語っている。
レヴァイアサンは、硬直したまま身動きが取れない僕に向き直り、次の瞬間、
ストロボ光線のように、その大きく裂けた口から勢いよく火炎を吹きだした。
次の瞬間、僕の頭は吹き飛んでいた。

次のお題は「小春日和」「初恋」「縁側」
578「小春日和」「初恋」「縁側」 :02/06/26 05:11
「これこれ、裕太も愛ちゃんも、喧嘩しちゃあいかんよ」
小さな頭をつーんと反らし合ってお互い口を利かない。けれど離れるわけでもない。
やんちゃな年頃で目に入れてもいい。どれだけ寿命が延びたことやら。
「聞いて!桑原のおじいちゃん!裕太、ワタシとケッコンしないなんて言うのよ!」
「ばーか!ばーか!健司おじさんも言ってたよ。ケッコンなんてメンドウだって!」
もう二言三言掛け合った後に、愛ちゃんはぐずぐずと泣いて走り去ってしまった。

「裕太や、お前さんから謝ってやんなさい」
「……僕悪くない」
駄々をこねるように、ほんのりと鼻を湿らしている。まあ、そのとおりなんだが。
「男の子はね、それはそれは広おい心を持っておるものじゃよ。
 儂はてっきり裕太もそんな強い子とばかり思っておったのじゃが……」
しばしの幼い逡巡の後、結果的に私はひとり縁側に取り残されることになる。
初恋もまだ知らない二人だけど、案外ずっとうまく行くのかもしれない。

ふいに、先に待っている妻のことが思い出される――私は幸せでした
では自分もそんな風に旅立とう。安らかな小春日和の最期のひとときであった。

---
とりあえず、次のお題は無難に無難に
「似顔絵」「小麦畑」「藤色」
久しぶりやね。みゆきちゃん。
手紙ありがとう。ホントうれしかったとよ。
わざわざ出してくれたのに、返事遅れてすまんかったね。

今年の正月に会って以来だけん、もう半年以上連絡
しよらんかったとねぇ。相変わらず元気でやっとるようで、
安心したばい。

おれも相変わらず東京でがんばっとうよ。やけど、ちょっとだけ
自信なくしとったとよ。
おれって、似顔絵とか得意だったけん、美大に入る前は
結構自信あっとうたい。やけど、周りの連中はもっと凄かったと。
小麦畑継ぐのいやだったけん、画家になるばいゆうて、
親と喧嘩して上京した手前、なかなか親には弱音吐けんと。

これからどげんしようかとか、悩んどったけど、
みゆきちゃんのこととか、ふるさとのこと思い出してたら、
なんか元気でてきたばい。

今年も正月しか帰られんのやけど、正月に会ったらまた話そうや。
そしたら、また手紙かくけん、元気でな。

斎藤色哉


次のお題は、「姫」「城」「不死」
方言はかなり適当です。
580名無し物書き@推敲中?:02/06/26 20:44
>斎藤色哉

な、なんかエロそうな名前・・・
581名無し物書き@推敲中?:02/06/27 00:36
私は目を疑った。もう30年も前にお世話をしていた姫が、この明治の街をあ
の頃と変わらぬ姿で通りの片隅で泣いているのだ。38歳になっているはずの
姫が8歳だったあの頃と変わらぬ姿で。もう80歳を過ぎた私が幻を見ている
のか?私は思わず近ずいた。
やはり姫だ。
私に気付いた姫は呟いた。
「どうして城をでたの?わたしはずっと待っていたのよ。」
「・・・・、どんなにあなたのそばにいたかったか。どんなにあなたの成長を
見守りたかったか。」
私は思わず言った。戦にかりだされ、戦乱の世が私と姫をひき裂いた。
もし、許されるのなら、この先の短い私を不死にして姫と共にまた日々を送り
たい。

もう一歩、近ずくと姫は煙の様に消えてしまった。
その後、風のたよりで姫は私が城を出たすぐ後に病で亡くなっていたことを
知った。

       「リモートコントロール」「バリア」「コピー」で夜露死苦
582「リモートコントロール」「バリア」「コピー」:02/06/27 01:49
「リモートコントロールって怖いなぁ。」
ワケの分からないことをいきなり呟いたのは、アタシの父だ。ボケーっと
居間のテレビでニュースを眺め、顔中の筋肉をたるませ無防備な表情をしている。
普通の家庭風景といえば、そうかもしれないが、アタシは内心ギョッとしていた。
というのも、死ぬ間際まで痴呆で家族みんなに迷惑をかけた祖父の姿が
ぱっと頭に浮かんで、それがまるで今の父のコピーのように一致したからだ。

祖父は、生前、リモコンを異常に怖がっていて、冗談でリモコンを
向けようものなら一目散に逃げていったものだ。なかなか可愛い反応だが、
今思えばこれも痴呆の症状だったんだろうと思う。

父は、今年で51だ。ボケるにはまだ早過ぎる歳だし、大黒柱にボケてもらっては
洒落にならない。それでもアタシは、恐る恐る父にリモコンを向けてみた。
父は怪訝な顔をして、アタシを見つめている。アタシは、そのまま2CHのボタンを押してみた。
「バリアー!」
父は、顔の前で両腕をクロスさせ、大きな声で叫んだ。このヤバめの反応は・・・。
アタシの脳裏によぎったのは、祖父の痴呆と付き合ってきた長い日々と、
これから訪れるであろう暗い我が家の行く末であった。

人知れず絶望に打ちひしがれていたアタシに、父が笑いながら言った。
「リモコンじゃ無理だって。さっき、父さんがマインドコントロールが怖いって言ったから、
そのつもりでやったんだろうけど。」

・・・お父さん、いい間違えかい?

お次は、「思い出」「国境」「手紙」
583「リモートコントロール」「バリア」「コピー」:02/06/27 02:09
 当世髄一とよばれた大奇術師だった。でも客は少ない。
 科学万能の22世紀、不思議は不思議でなくなっていた。

 「杖がひとりでに空間を浮遊します!」と言いながらも奇術師は思う。
 (でも、これって杖をリモートコントロールすれば誰でも・・・)
 もちろん彼はそんな事はしない。客もそれは信じてる。ただ・・・

 「鎖で縛られ、箱に閉じ込められた愛しき助手が、一瞬でニューヨークに!」
 (クローン培養のコピー人間がいれば簡単だよねえ、こんなの。トホホ)
 そんな事はおくびにも出さず、彼は最後の「空中ブランコ」に挑戦する。

 「さあ、安全ネット一切なし!高度100mの空中ブランコでーす」
 これだって、目に見えない電磁バリアがあるだろうと言われれば・・・
 気の緩みからか、ブランコから滑り落ち、地面に叩き付けられる奇術師!
 ・・・観客が密かに望んでいた最高の見世物である。

 薄れゆく意識の中で、奇術師はこう思った。
 「大丈夫さ。高度クローン技術で培養された俺のコピー人間がきっと・・・ぐふ」

※なんかくらい
次ぽお題は:「浴衣」「豊か」「味方」でお願いします。
584ごーぱっさん:02/06/27 02:11
ごめん、遅れました^^;
次のお題は>582さんの:「思い出」「国境」「手紙」でお願いします。
585「思い出」「国境」「手紙」 :02/06/27 04:36
世界にはどうして境い目があるのだろう。
ケーキでも切り分けるかのように国境に我が身を切り裂かれた人間にとって
なおさらそれが強く感じられる。内紛のおりに、
私の家族は、トルキア共和国と私の住むグルジニ自治州に色分けされた。
言葉も宗教も変わらないグルジニ自治州に、実は独立すべき明確な理由はない。
だが石油資本がそれを許さなかった。強引に議会を抱き込み独立を強要したのだ。
まだ、さすがに国際社会の承認は得られないものの、自治州としては
考えられないほど既に資本が入り込み、生活そのものは豊かと言えよう。
トルキア共和国の戦争の傷跡はまだ全然癒されないというのに――

風の噂で、私の家族は(腹違いの)妹を残して全員戦死したと聞いた。
それで私は、残された妹にいくらかの紙幣を同封して手紙を送り続ける。
私は昔の思い出を、妹は明日の暮らしを手紙に吹き込むことが多い。これが、
過去のみ糧に生かされている人間と、明日の糧が必要な人間の違いなのだろうか。

……
「なあジョン、あの未亡人の好きな花ってなんだっけ?」
「情報部の調査によるとたしか――ベルフラワー、押し花に使っていたらしいぞ」
「ああ、前の分の手紙に入っていたな。思い出話に付き合うのって実にキツイのだが」
「クビになりたくなければ黙って働け」

「それと、送られた分の紙幣は手当として支給されるらしいぞ」「確実に嫌がらせだな」
---
お題から悲しい話しか思いつかんかった。それと、改行の仕方が鬱陶しいの少し反省。
お次は(萎えないこと期待)、「群像」「レーゾンデートル」「ギャロップ」
586「群像」「レーゾンデートル」「ギャロップ」 :02/06/27 22:51
鬼野校長が卒業の祝辞に立った。壇上には何やら妙な段ボール箱もある。

え〜
君たちは高校を卒業と同時にこれから様々な岐路に歩み出すことだろう。
ある者は大学に進学し、ある者は社会に飛び出していく。例えるならば、
君たちは競馬場で遙かなるゴールを目指して一列に並んだ駿馬達だ!

――こほん
百合恵女史が軽く咳払いをする。空気が引き締まる。
教師ではなく女史と呼ばれているのはこのような理由からだ。
だが、今日の校長はひと味違った。

これから校門というゲートを飛び出して旅立とう!
君たちが青春の群像を謳歌するのはこれからだ!
幸い、世間の君たちへの注目はまだ高くない。
だがらこそ私は君たちのオッズはかなり高いと見ている!
私はみなに一点買いするぞ〜!

校長は段ボール箱を生徒達に向かってぶちまけた。紙吹雪が宙を舞う。
中身は大量の千円札だった。うお〜!という生徒の狂乱が広がる。
――それって一点買いなんかじゃない!
女史は見当はずれな悲鳴を挙げるが、幸か不幸か誰一人として聞いちゃいない。
体育館はお札を奪い合う生徒達で悲喜こもごもの修羅場と成り果てている。

いいか!現実は平坦な馬場ではない!山あり谷ありの障害物レースだ!
だが案ずるな!君たちには共にギャロップしてくれる友人がいるのだ!
そのことをこの話のレーゾンデーテルとして締めくくりたい!

……
「なあ、クビになった校長、卒業式前日、競馬で馬鹿勝ちしてたらしいよ」
「ふーん、それで、演説に出てきたレーゾンデーテルってどういう意味なんだ?」
「分からなかったのか?」「ああ、さっぱり」
「ならそれがあの話のレーゾンデーテルなんだろう」

---
好き嫌いが分かれそうでコワイ
お次は「青空」「駐車場」「擬餌針」
ギリシアで、新たに発掘された神殿から、無造作に並べられた人の像が多数発見された。
怒りの形相を浮かべ、今にも襲い掛からんとばかりの迫力を持った石像。
恐怖におののき、尻餅をついているへたりこんでいる石像。
「闘う群像」と名づけられた、これら一群の石像は、どれもこれも本物の人間と
見まごうほどの美しい造形を持っていた。
作られたのは少なくともルネッサンス以降。ほとんど全ての学者がそう思い込んでいたが、
放射性物質の半減期を利用した年代測定では、
石像が作られたのは紀元前1500年頃、という結果がはじき出された。

学者達はこの意外な結果をどうにも消化しきれず、百家争鳴の議論が
連日繰り広げられた。
「高度な技術を持った文明が昔にもあったんじゃないのか?」
「捏造だろう?」「宇宙人が作ったんだよ」「プラズマで説明できます」

どの学説も全く要領を得ず、議論は進まないうちにまた新たな発見がなされた。
MRIで石像の断面を解析したところ、石像の中に内臓などの輪郭が見つかったのだ。
こんな芸当は、科学技術が進歩した現在ですら不可能だ。
外面だけでなく、内面をも人間を忠実に模倣された石像。一体これらの石像の
レーゾンデートルとはなんなのだろう。誰が何のためにどうやって作ったのか。

学者が一層頭を抱えている中、今度は神殿の奥から新たに玉座が発掘された。
玉座に腰をかけていたのは、首の切り落とされた白骨だった。
そして、玉座のそばには馬がギャロップした蹄の跡も確認された。

--
先越されちゃった。
588587:02/06/27 23:04
もちろん次のお題は、「青空」「駐車場」「擬餌針」 のままで。
589586:02/06/27 23:08
レーゾンデーテル → レーゾンデートル
スマソ
[(フランス) raison d'etre]

外来語ということで堪忍してーな
590、「青空」「駐車場」「擬餌針」 :02/06/27 23:41
青空というでかいキャンパスの上を、浮雲がすいすい泳いでゆく。
涼風は肌を軽くなでる。春の陽気はなんとも心地のよいものだ。
こんな天気のいい日曜日は、遠くまでドライブしたくなってしまう。

祐一は浮かれ気分で、駐車場まで歩いていった。
そして、車のそばに一万円札が落ちているのを見つけた。
いい日には、いいことが重なるもんだ。
笑みを浮かべながら、祐一は一万円札を拾い上げた。
そうして財布に入れようと思ったら、手からお札が離れない。
祐一は自分の目を疑った。しかも、お札はだんだんと上に上がっていき、
終いには祐一の足は地面から離れてしまった。

一方、浮雲の上では、雷様の親子が釣りをしていた。
「パパ、擬餌針になんかかかったよ。」
「本当かぁ。今日は大量だなぁ。うちに帰ったら天ぷらにして食べような。」

次のお題は、「蘭学」「化け猫」「命」
591「蘭学」「化け猫」「命」
あたしと化け猫さんは大の仲良しだ。
お父さんやお母さんは化け猫さんのことを怖いって言うけど、
なんで怖いんだろう?あんなに優しいのに・・・
でもこんなことお父さんたちに言ったら、叱られるんだろうなあ。
「もう外に遊びに行ってはいけません!食べられたらどうするの!」なんてね。

今日もあたしはこっそり化け猫さんのところに遊びに行った。
化け猫さんはとっても勉強やさんだ。
あたしんちから持ってきた蘭学の本を面白そうに読んでいる。
あたしにはチンプンカンプンなんだけど、本の中身を
あたしにもわかるように教えてくれる。

「妙ちゃんは命ってどこにあるとおもう?」
「んー、ここかなあ?」そう言ってあたしは胸に手をあてた。
「うん、そこにも大事なものが詰まってるけど、本当はここにあるんだ」

そう言いながら、化け猫さんはあたしの頭を軽く撫でた。
化け猫さんの手は爪が伸びていて、ちょっと痛かったけど、
暖かくて、あたしは少しうれしくなった。

次は、「飛行機」「陰陽師」「オムライス」でお願いします