プーシキン

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1えべげーにー
青銅の騎士 age
2吾輩は名無しである:02/12/29 23:26
倉木麻衣!
3吾輩は名無しである:02/12/29 23:29
ロシアのプーさん
4吾輩は名無しである:02/12/29 23:39
俺、最近まで何故かモーパッサンをロシア人だと思ってた。
5吾輩は名無しである:02/12/30 00:14
プーキシンだろがw
6吾輩は名無しである:02/12/30 01:35
>>5
はぁ?
7無名草子さん:02/12/30 12:12
「大尉の娘」は結構好きだった。
8吾輩は名無しである:02/12/30 12:26
ロシア人の本って、比較的にだけどあまり売ってないんだよな。
ブックオフに。
9吾輩は名無しである:02/12/30 12:30
プー失禁?
10流星少年:02/12/30 12:37
プーシキンも生きてれば今年で203歳か・・・。
11吾輩は名無しである:02/12/30 13:11

5 名前:吾輩は名無しである 投稿日:02/12/30 00:14
プーキシンだろがw

12吾輩は名無しである:02/12/30 13:35
あんまりファンいないね。

まあ他の有名作家と違って、たとえば
「青銅の騎士」読みたいと思っても
全集とか絶版本とかじゃないと読めないからねえ。
13吾輩は名無しである:02/12/30 13:54
題名を忘れてしまったけど、旺文社文庫にはいっていたロシアの盗賊の話が好きです。
未完なのが、本当に悔やまれる。
14吾輩は名無しである:02/12/30 16:00
ツルゲーネフ→ドスト→ゴーゴリ→プーシキン
という道を辿ってプーシキンに辿り付きますた。
15吾輩は名無しである:02/12/30 19:15
新宿→中野→荻窪→プーシキン→吉祥寺
16ixion:02/12/30 20:25
オネーギン大好き。
17吾輩は名無しである:02/12/30 21:48
こりゃまた渋いスレがたったな。
これからのスレの伸びに期待。
18吾輩は名無しである:02/12/31 00:01
渋いか。

プーシキンって日本じゃいまいちだけど、
他の国じゃどうなんだろうね。
19吾輩は名無しである:02/12/31 09:42
インディアンの間ではあまり有名じゃないらしいよ。
20吾輩は名無しである:02/12/31 09:43
プーシキン燃え〜
21吾輩は名無しである:02/12/31 12:25
このまま作品の話をせずに1000を目指したい。
22吾輩は名無しである:02/12/31 12:32
23吾輩は名無しである:02/12/31 23:00
年末あげ
24吾輩は名無しである:03/01/01 00:09
>>22
ワラタ

でも、学生さんプーシキンってわかってよかったよ、
「はぁ?誰だよこいつ」とかじゃなくて(w
25吾輩は名無しである:03/01/01 21:40
>>24
近頃の学生は勉強家だな(藁
26吾輩は名無しである:03/01/05 10:35
本のあいだに挿しはさまれて
忘れ去られたひともとの花。
乾きはて香りも失せたこの花は
ふしぎな夢を心にはぐくむ。
27吾輩は名無しである:03/01/05 10:51
大学で第二外国語がロシア語だったんで
プーシキンの名前は知ってる
いまも「スペードの女王」は手元にあるけど
いまだに読んでない。
これ面白いですか?
281828nen:03/01/08 16:30
>>26
本のあいだに挿しはさまれて
忘れ去られたひともとの花。
乾きはて香りも失せたこの花は
ふしぎな夢を心にはぐくむ。

この花はいつどこに咲いていたのだろう。
だれの手に なんのよすがに摘みとられて
ここにさしはさまれているのだろう。
それはわたしの知る人か 見知らぬ人か。

なつかしい出会いの日の思い出に
別かれの嘆きのよすがのために
それともひとり歩きのつれづれに
しずかな野辺で また森の木蔭で。

いま彼は あるいは彼女は
どこにいるのだろう。けれどもすでに
ゆかりの知れぬこの花のように
はかなく消えているかもしれぬ。

このスレはわしが乗っ取った。(そんなにくわしかぁねえけど)
291828nen:03/01/08 17:14
>題名を忘れてしまったけど、旺文社文庫にはいっていたロシアの盗賊の話が好きです。
>未完なのが、本当に悔やまれる。

盗賊でなく、叛乱をあつかった作品ですが、プガチョーフの叛乱を題材にした
「大尉の娘」という秀逸作品があります。この作品は家庭小説としてはすばらしい
出来です。実はこの「大尉の娘」も未完ですが、それは検閲を意識して作家自ら
カットした箇所があるくらいですので、物語としては立派に完結しております。
3026:03/01/08 22:20
>>28
違うんだよ、実は
dat 落ちしそうになったら
一連ずつ書いてちまちま保守しようと思ってんだよねw
31吾輩は名無しである:03/01/08 22:54
プーシキン全集はどうですか?
321828nen:03/01/09 17:13
>>14
大抵、ドストから入っても、プーシキンにまで
関心を寄せるロシア文学読者はあまりいないかも。
19世紀ではドスト、チェーホフ、トルストイ、ゴーゴリ、ツルゲーネフ、
の定番くらいでしょうか。

>>27
「スペードの女王」はドストの「罪と罰」にも影響を与えているので、
必読の価値ありです。きっとプーシキン→ドスト体系が理解できますよ。
作品自体はお手許にあるように短いです。また簡潔な文体で書かれています。
ところがどっこい密度は濃いです。短編のお手本のような作品です。
短編では「ベールキン物語」という短編集もすばらしい作品です。

>>26,>>30
そうでしたか(笑)
「詩集」をお持ちなら、ネタはたんまりありますね。
「秋(断章)」とか(笑) わたしも探してみましょうかな?

>>12,>>31
「プーシキン全集」は改造社と河出書房新社から、ごっつ昔に出てましたね。
河出書房新社のは名訳です。ただ分厚くて重いのが難点です。
33吾輩は名無しである:03/01/10 20:31
これまた濃くなりそうなスレだな、こりゃ。
ツルやドス、トルを悪くいう奴はたくさんいるけど、
プーシキンを悪し様にいう人はあまりいない。ロシアでも尊敬されている。
だからいまいち日本では流行らんやろう。
福田一也がロシアの「国民作家」のことをツルゲーネフとかほざいた
本があるらしいが、とち狂ってるのか?

原語からの訳は「神曲」を訳すくらい、プーシキンの作品も困難だろう。
「オネーギン」の訳はどれがいいか? 意見ききたい。
34吾輩は名無しである:03/01/10 21:08
プーシキンは「エフゲーニー・オネーギン」だけか。
「ボリス・ゴドゥノフ」もあるだろう。
マイナー?
35吾輩は名無しである:03/01/10 21:39
めじゃー
36吾輩は名無しである:03/01/10 21:41
歌劇があったような>ボリス・ゴドゥノフ
誰の?
37吾輩は名無しである:03/01/11 21:16
ボリス・ゴドゥノフはムソルグスキーです。
スペードの女王もたしかオペラになってた。

この人ってドストにも引用があったりするよね?
日本でいうとやはり漱石クラスの国民作家?
381828nen:03/01/14 20:08
>>37
「スペードの女王」はチャイコフスキー編曲の分で有名です。
「3・7・A」「3・7・Q」ですよ。

ドストエフスキーがパロッて知られるのは「白痴」の
アグラーヤがムイシキンに当てこする詩が有名です。
昔貧しき騎士あり、そんな題だったと思います。

>日本でいうとやはり漱石クラスの国民作家?

どうでしょう。プーシキンは詩人として親しまれることが
多いので、ひどい話、松尾芭蕉の方がたとえとしては
適切かもしれません。ご意見お願いします。
39ミンコフスキー:03/01/14 23:10
プーシキンの作品は文学というよりも、詩だと思います。詳しくは、

「プーシキン伝」 著 池田健太郎 中央公論社

などを参照してください。それと、岩波文庫で神西清さんの名訳が読めるので
是非読んでみてください。個人的には「オネーギン」は筑摩書房から出版されて
いるものが良いと思います。
4033:03/01/15 16:33
>日本でいうとやはり漱石クラスの国民作家?

>松尾芭蕉の方がたとえとしては
>適切かもしれません。

うむ。イメージとしては正しい。松尾芭蕉、小林一茶、
日本の風流を詠んだ人間と、ロシアの栄光を謳った人間、
互いに共通するのは自然への情だ。プーシキンのいいところは
漱石ほど理知的でなく、むしろ情熱があるところだ。
41吾輩は名無しである:03/01/15 16:53
誰か「青銅の騎士」のコピペおながいします。
42吾輩は名無しである:03/01/15 22:25
>>38
なんとなくそれわかる、
芭蕉っぽい!
43吾輩は名無しである:03/01/15 22:29
>>41
おごれる馬よ どこへおまえは飛んで行くのか?
どこに蹄をとめるのか?
おお 運命の威力ある支配者よ!
おんみこそ ロシアの国を あの馬さながら
深淵の際 目くるめく高みの上に
後脚で立たせたのではなかったか?


「青銅の騎士」と「スペードの女王」の
なんか「軽めの」というか「微妙な」狂気っぽい感じがわりと好きです。
44吾輩は名無しである:03/01/16 00:30
バババ、バンザーイ!プーシキンスレ立ってる!
10数冊位しか読んでないんだけど、大ファンの大大大ファンです!
もう、本当にクソみたいにファンなんです(笑)
以前からマニアックに語り合いたいと思っていたので、嬉しすぎる!
これから、思い出したようにぽつりぽつりと書き込みます!


451828nen:03/01/16 15:02
青銅の騎士
  ――ペテルブルグの物語――      木村彰一訳

    序
 この物語に描かれたできごとは事実にもとづいている。洪水の細部にわたる点
は当時の雑誌から借用した。好事家はV・N・ベルフの編集に成る報道記事を参
照されたい。


    序 詩

 荒涼たる河の岸辺
壮大な想いに充ちて 彼は立ち
遠方(おちかた)を見つめていた。彼の前を広びろと
河は流れ 流れに沿って ただひとつ
見るかげもない丸木の舟が走っていた。
苔むした両岸の湿地帯には
赤貧のフィン族の住む丸太の小屋が
そちこちに黒ぐろと見え
霧にかくれた太陽の
光もとおさぬ密林が あたり一面
ざわめいていた。
461828nen:03/01/16 15:03
        彼は思った。
ここからスウェーデンを威(おど)してやろう。
思い上ったあの隣国への面当てに
ここにこそわれわれは都市を築こう。
われわれがヨーロッパへの窓をあけ
海辺にしっかと足をふまえて立つのはここだと
自然がきめてくれているのだ。
やがて とりどりの旗を插(かざ)した客人たちが
未知の波濤を越えてここへやってくる。
そのときは心のどかに宴(うたげ)を張ろう。
471828nen:03/01/16 15:04
百年経った。若い都は
北方の国ぐにの精華(せいか)として 驚異として
暗い森 しめった沼地のただなかから
誇りかに壮麗の姿を現(げん)じた。
その昔 フィン族の漁夫
哀れを誘う自然の継子(ままこ)が
ただ一人ひくい岸辺に立ち
古網をあてどもなしに水底(みなそこ)へ
投げ入れていた所 そこにいまは
さんざめく河岸沿いに
宮殿・塔の壮大な建物が 整然と
すきまもなしに立ち並び 船どもは
群れなして 世界の果てから
ゆたかな埠頭へ押し寄せてくる。
ネヴァ河は御影石の装い凝らし
水の上には数かずの橋が渡され
あまたの中州は
濃緑(こみどり)の苑(その)におおわれ
かくて新しい都の前に
古都モスクワの光は薄れた
さながら新しい后(きさき)の前の
太后(たいこう)のように。
481828nen:03/01/16 15:05
 私は愛する ピョートルの創れるものよ。
私は愛する おまえのきびしい整斉(せいせい)の容(すがた)を
力に充ちたネヴァの流れを
その岸の御影石を
おまえの柵の鋳鉄の唐草を
私が自分のへやにいて
灯りもつけずものを書き あるいは読むとき
行き交う人もようやく稀な街路に眠る
巨大な建物たちがくっきりと見え
海軍省の尖塔(せんとう)はあざやかな光を放ち
金色(こんじき)にかがやく空に
宵闇の訪れるいとまとでなく
たそがれの空の光が 半時の夜(よる)を過ごして
はやあけぼのの光へとうつろいゆくとき
思い深げなおまえの夜々の
透明な薄ら明かりを 月の照らさぬ輝きを。
私は愛する きびしいおまえの冬の日の
しずまりかえる大気を 酷寒を
広やかなネヴァの岸辺を走りゆく橇のひびきを
薔薇よりも色あざやかな少女の頬を
舞踏の会の輝きを ざわめきを 人声を
また一人身の男らの集う宴(うたげ)の席の
音もさやかに泡立つ酒を
青びかりするポンスの焔を。
491828nen:03/01/16 15:06
私は愛する 練兵場の
将兵の壮んな士気を
歩兵や軍馬の
単調な美しさを
整然とゆれ動く隊列の中の
常勝の旗のあのきれはしを
戦場でもののみごとに射ぬかれた
青銅の兜のあの輝きを。
私は愛する 尚武の都よ
北方の国の后が
帝家に皇子(みこ)を贈るとき
あるいはロシヤが敵を降して
またも捷利をことほぐとき
あるいはネヴァが 薄青の氷をくだいて
春の日の感触に こおどりしながら
海へとはこびゆくときの
おまえの城塞(しろ)の砲煙を 砲声を。

 ピョートルの市(まち)よ うつくしくあれ
ゆるぎなく立て ロシヤのように。
願わくは 征服された自然とおまえの
和解のときがくるように。
フィン族の住む入江の波は
遠い昔の虜囚(とらわれ)の恥を忘れよ。
甲斐のない怨み抱いて
ピョートルの永遠(とわ)の夢想を乱さぬがよい!
501828nen:03/01/16 15:07
 恐怖のあのとき
いまもその思い出は新しい……
ではそれを 友人諸君 きみらのために
これから話してきかせよう。
悲しいそれは話となろう。
511828nen:03/01/16 15:13
   第一篇

 暗澹たるピョートルの都の空に
十一月が秋の冷気を息づいていた。
整然たる囲いの端(はし)に
ざわめく波をはねかせながら
ネヴァはしきりにもがいていた さながら病者が
不安な寝床(ねどこ)でのたうつように。
時刻(とき)はすでに晩(おそ)く あたりは暗く
雨は腹立たしげに窓を打ち
吹く風は悲しげに吼えていた。
こうした折りに 訪問先から
うら若いエヴゲーニイは戻ってきた……
この物語の主人公(ヒーロー)を
私はこの名で呼ぶことにする。こころよい
ひびきの名だし それにまた私のペンは
とうからこの名に馴染んでいるのだ。
苗字なんぞはどうでもよかろう。
なるほどそれは かつては知らぬ者のない
苗字であったかもしれぬ。
またあのカラムジーンのペンによって
祖国の伝説に鳴りひびいたこともあろう。
だが いまは世に忘れられ
うわさにのぼることもないのだ。わが主人公は
コロームナに住み どこかに勤め
貴顕(きけん)の人と往き来せず
世を去った身寄りのことも
人の忘れた昔のことも 惜しむ気はない。
521828nen:03/01/16 15:14
 さて 家に戻ると エヴゲーニイは
外套を脱ぎ 服をも脱いで 身を横たえた。
だが さまざまな思いに心乱れて
長いこと寝つかれなかった。
いったい何を考えたのか? それはわが身が
貧しいこと はたらいて
暮らしをも立て 体面も
保ってゆかねばならぬこと。
神さまがもっと沢山 知恵と金とを
恵んではくれないものか 世間には
遊んでいられるしあわせ者たち
頭のにぶいのらくら者でありながら どうしたわけか
暮らしの楽な連中もいるというのに!
自分はたったの二年勤めたばかりだ。
彼はまたこうも思った 天候は
おさまりそうもない。河はいよいよ
水かさを増してきている。ネヴァ河の
橋もおおかたはずされたろう。
そうなればあのパラーシャとも
二日 三日は別れることになるだろう。
エヴゲーニイは そこでほっと溜息をつき
あれこれと思いにふけった 詩人のように。
531828nen:03/01/16 15:16
『結婚する? おれが? してなぜ悪い?
それはもちろん つらくもあろう。
だが それがなんだ。おれは若いし体も丈夫だ。
夜を日についで働くこともできるのだ。
なんとかして つつましやかな
こざっぱりしたかくれがをしつらえて
そこにパラーシャを住まわせよう。
一年か二年たったら――
地位もできよう。家族の世話と
子供らの養育とは
パラーシャに任せよう……
こうして二人は生きてゆく 墓場まで
手を取り合って進んでゆく。
孫らが二人を葬ってくれるだろう……』

 こんな思いに彼はふけった そしてその夜は
悲しみに胸ふたがれて 切に祈った
風が そんなにもあわれな声で泣かぬよう
雨が そんなにも腹立たしげに
窓の戸を打たぬよう……
541828nen:03/01/16 15:17
           そのうちついに
彼は眠たい目をとじた。やがて
見よ 荒天の夜(よ)の闇は薄れて
ほの白い日が訪れる……
恐るべき日が!
        ネヴァ河は夜もすがら
吹き荒れる嵐に逆い ひたすら海を目指したが
放埓な嵐と海とのたわむれに圧倒されて……
ついにあらがう力も失せた……
一夜明くれば その岸辺には
群集がひしめき合って
怒濤のしぶきと 山なすうねりと
泡に見とれた。
だがネヴァは 入江から吹く
風に堰(せ)かれて逆流し
中州を水に浸していった。
自然はいよいよ暴威を振るい
ネヴァ河は鼎(かなえ)のようにたぎり立ち 渦を巻き
盛りあがり 吼えたけり
やがて突然 けもののように怒り狂って
市(まち)を目がけておどりかかった。人はみな
逃げ走り あたりはにわかに
空虚となった――水はたちまち
窖(あなぐら)という窖に流れ込み
運河また 水門目がけて殺到し
ピョートルの都はかくてトリトンの神さながらに
下半身水を浸して ぽっかりと浮かび上った。
551828nen:03/01/16 15:18
 包囲! 突撃! 兇悪な河波は
盗賊さながら 窓から家にはいり込む。丸木の舟が
走ってきては その艫(とも)がガラス戸を打つ。
濡れた蔽いのかかった盤台
小屋の破片や丸太や屋根板
貯え好きな商人の手持ちの品じな
貧乏所帯のがらくた道具
この天変に落ちた橋
墓場から洗い出された柩など
街から街へと流れてゆく!
             人びとは
神の怒りを目前に 罪障の報い待つのみ。
ああ! すべては滅ぶ 住む家も 食うものも!
いずこにそれを求めよう?
             恐怖のこの年
先帝はまだ 栄光につつまれて
ロシヤの国の統治していた。憂悶の
色もあらわに 先帝はバルコンに出て
「神のみわざは 皇帝の
手にすら負えぬ」そう言って 腰をおろして
思いに沈み 悲しげな眸を凝らして
このむごたらしい禍いのさまを眺めた。
広場はすべて湖と化し
通りは広い流れとなって
その湖に注いでいた。宮殿は
悲しみの島とも見えた。
勅命が出た――こちらの端(はし)からあちらの端へ
近い街 遠くの街をへめぐりつつ
荒れ狂う水のさなかの危(あやう)い旅へ
将軍たちは出ていった
恐怖にとらわれ 家にいて
水に溺れる人びとを救おうがため。
561828nen:03/01/16 15:19
 ちょうどそのとき ピョートル広場の
一隅に聳え立つ新築のさる邸宅の
見上げるばかりの表階段
その上に 生けるがごとく 前足ひとつ
持ち上げて立つ 家の守りの獅子像ふたつ
大理石のその獅子の背に
帽子もかぶらず 腕組みしたまま
身じろぎもせず 色いたく青ざめた
エヴゲーニイが跨(またが)っていた。彼の恐怖は
あわれわが身のためでなかった。
貪婪な河が高まり
靴底を洗ってゆくのも
雨がはげしく顔を打つのも
吼えたける突風が あっという間に
帽子を奪い去ったのも 彼は感じていなかった。
571828nen:03/01/16 15:28
絶望の色を浮かべた彼の眸は
たったひとつの方角に注がれたまま
いささかも動かなかった。そこには
湧きかえる水の底から
山なす波が立ち昇り 荒れ狂っていた。
そこには嵐が吼えていた。そこには破片が
漂っていた……ああ ああ! そこには――
悲しいかな! 打ち寄せる波の間際に
入り海の渚に近く――
簡素な塀と ひともと柳と
古びた小屋があったのだ。そこに二人が
一人の孀(やもめ)と 一人の娘が
住んでいたのだ……それとも彼は
夢を見ているだけなのか? それともわれらの
あらゆる生命(いのち)は 所詮むなしい夢なのか?
この世への天の嘲笑だったのか?
581828nen:03/01/16 15:30
 さながら悪鬼に魅入られたかのように
大理石の獅子像に繋がれたかのように
彼はその場を離れられぬ! ぐるりは水
水のほかには何もない!
ただひとつ 彼に背を向け
湧きかえるネヴァの岸辺
片手を前へさしのべて
青銅の馬に跨り 見上げるほどの
高みに峙(そばだ)つ像(すがた)があった。
591828nen:03/01/16 15:31
   第二篇

 だがいまや 破壊に飽き
ほしいままな狼藉に疲れて
ネヴァの水は引いていった。
惚れ惚れと暴虐のあと眺めつつ
惜し気もなしに獲物をあとへ
棄てながら。非道の輩もこれと同じだ。
狂暴な一味徒党を引きつれて
村へ押し寄せ 家に押し込み 人を斬り
略奪 破壊の限りをつくす。哀哭(あいこく) 歯ぎしり
凌辱 罵言 恐惶 怒号!……
だがやがて掠めた品を持ちあぐみ
追っ手を気遣い 疲れはて
盗賊どもは家路をいそぐ
道に獲物を落としつつ。
601828nen:03/01/16 15:32
 水は引き 敷石道が
現われる。わがエヴゲーニイは
気もそぞろ 期待と恐怖と
憂愁に胸いためつつ
ようやく和(な)いだ河へと急いだ。
だが 勝ちほこる河波は
なおも憎げに湧きかえっていた
下で火が消え残ってでもいるように。
なおも波の面(おもて)は泡におおわれ
ネヴァ河は苦しげにあえいでいた
いくさの庭を逃れ帰った軍馬のように。
エヴゲーニイは眸を凝らす。小さな舟が目にはいる。
見付けものでもしたように 彼は駆け寄る。
船頭を呼ぶ――
呑気な性(たち)の船頭は
十コペイカに大よろこびで
怖しい波間を越えてはこんでゆく。
611828nen:03/01/16 15:33
 老練な漕ぎ手は長いこと
荒れ狂う波とたたかった。
小舟はたえず 剛胆な乗り手もろとも
寄せては返す波の深みへ
消えようとした――だがついに
岸辺についた。
       あわれな男は
行きなれた場所へ行こうと
行きなれた通りを走る。見れど見れど
見分けはつかぬ。無残な眺め!
行く手は足の踏み場もない。
なぎ倒されたもの 吹きとばされたもの
家いえは あるいは傾き あるいはまったく
崩れ去り あるいは波に
持ち去られ 死屍累々たる
あたりのさまは 戦場も
かくやとばかり。エヴゲーニイは
我を忘れて 苦しみに力萎えつつ
ひたすら走る。行く手には
封印された手紙のような
予想もつかぬしらせを持って
運命が待っているのだ。
もう町はずれ。この先に
入江があって 入江のそばにあの家が……
おや これは?……
621828nen:03/01/16 15:34
         足がとまった。
うしろへ戻る。また引き返す。
あたりを眺める……歩き出す……またも眺める。
あの家があったのはこの場所なのだ。
これが柳 ここにたしか門があったが――
それも流されてしまったらしい。では家は?
暗い予感に胸ふたがれて
なおもあたりを歩く 歩く。
大きな声でひとりごつ――
と 不意に 額を叩いて
からからと笑いだした。
           夜の霧が
おののく市(まち)におりてきた。
だが人びとは寝もやらずに
過ぎ去った日のことを
互いに語り合っていた。
           朝の光が
疲れはて 青ざめた雲をすかして
しずまり返る都の上を照らしたが
きのうの不幸の名残りすら もはや
見出すことはできなかった。禍いは
早くも緋色のおおいに包まれていた。
ものみなは旧(もと)の秩序にかえっていた。
631828nen:03/01/16 15:41
解放された都大路を 早くも
あのひややかな いかにも情のなさそうな
顔をした連中がゆききしていた。役人たちは
夜のかくれがをあとにして
勤めに出かけた。不死身の小商人(こあきんど)は
しょげもせず この大損の埋め合わせは
お顧客(とくい)につけさせようと
ネヴァの荒した窖の
扉を開いた。あちらこちらの屋敷から
小さな舟がはこび出された。
             フヴォストフ伯爵
天の愛するれいの詩人は
すでに不朽の詩によって
ネヴァの河畔の禍いを歌っていた。
641828nen:03/01/16 15:42
 だが あわれなあわれな わがエヴゲーニイ……
悲しいかな! 混乱した彼の頭脳は
怖るべきあの衝撃に
堪え得なかった。彼の耳には
ネヴァと風とのさわがしいざわめきが
鳴りひびいていた。怖ろしい思いに充ちて
言葉もなしに あてどなくさまよい歩いた。
ある夢がしきりに彼を苦しめた。
一週間たち ひと月たった――それでも彼は
自分の家に戻らなかった。
主(あるじ)のいない彼のへやは
約束の期限が来ると
家主が貧しい詩人に貸した。
家財道具を引き取りにすら
エヴゲーニイは来なかった。ほどなく彼は 世間との
交渉を持たなくなった。日がな一日ほっつき歩き
夜は波止場をねぐらとして 人が窓から投げ与える
一片のパンで露命をつないだ。
身につけていた古びた服は ぼろぼろに
裂けてくずれた。悪童どもは彼を狙って
あとから石をなげつけた。
御者の鞭も 一再ならず
彼を見舞った。もはやまったく
道の見分けがつかなくなって
いたからだ。それにどうやら――打たれても
気付く様子はなさそうだった。心をさわがす
内部の音が 彼をつんぼにしてしまったのだ。
こうして彼は 不幸な日々を
送るうち けものとも人ともつかず
何やら得体の知れぬもの この世の人とも幽霊とも
つかないものになってしまった……
651828nen:03/01/16 15:43
                ある日 彼は
ネヴァの波止場で眠っていた。夏の日は
秋へとうつろいかけていた。小雨まじりの
風が吹き、陰気な波は
ぶつぶつと泡をふき 埠頭に飛沫(ひまつ)をあげながら
なめらかな石段をたたいていた
請願人が けんもほろろな裁判官の
家の戸をたたくように。
あわれな男はふと目をさました。暗かった。
雨がばらつき もの憂げに風が吼え
はるかむこうの宵闇に 夜警の声が
風と互いに呼びかわしていた……
エヴゲーニイははね起きた。まざまざと
過ぎし日の恐怖を思い出したのだ。彼はあわてて
立ち上り とぼとぼと歩き出したが やがて突然
歩みをとめた。気違いじみた
恐怖の色を顔に浮かべて
そっとあたりをうかがった。
思いもかけず さる大邸宅の
入口の柱の下に彼はいた。その家の表階段
その上に 生けるがごとく 前足ひとつ
持ち上げて立つ 家の守りの獅子像ふたつ
して正面の暗がりの 柵めぐらした
巌(いわお)の上の高みには
片手を前にさしのべて
青銅の馬に跨る像(すがた)があった。
661828nen:03/01/16 15:43
 エヴゲーニイは身をふるわせた。怖ろしいほど
はっきりと記憶がよみがえったのだ。彼は認めた
洪水が猛威を振るったこの場所を
情(なさけ)容赦もない波が 彼のぐるりを取り巻いて
憎さげにあばれまわったこの場所を
あの獅子を あの広場を また暗がりに
青銅の頭(かしら)を高く持ち上げて
微動だにしなかったあの人物を
みずからの運命的な意志によって
海のほとりに市(まち)を築いたあの人物を……
立ちこめる靄(もや)をすかしてほの見えるその像の怖ろしさよ!
額の上に現われた なんたる思考!
身内にひそむ なんたる力!
あの馬の躯(からだ)にみなぎる なんたる熱気!
おごれる馬よ どこへおまえは飛んで行くのか?
どこに蹄をとめるのか?
おお 運命や威力ある支配者よ!
おんみこそ ロシヤの国を あの馬さながら
深淵の際(きわ) 目くるめく高みの上に
後脚(あとあし)で立たせたのではなかったか?
671828nen:03/01/16 15:45
 その像の台座のまわりを
あわれな狂者はひとめぐりして
世界の半ばを支配する者のおもてに
狂暴な眸を向けた。
胸はふたがり 額はつめたい
鉄柵に押し当てられ
目は薄い霧におおわれ
心臓を火がかけめぐり
血が湧き立った。陰鬱なおももちで
誇りかな像(すがた)の前に彼は立ち
暗黒の力の呪縛にかかったように
歯を食いしばり 拳を握って
「ようし 魔の建設者め!」――
憎さげに身をふるわせて呟いた
「いまに見ておれ!……」そして突然
一目散に駆け出した。峻厳な
皇帝(ツァーリ)の顔が 一瞬 はげしい怒りに燃えて
しずかにこちらをふり向いた
ような気が 彼はしたのだ……
ひっそりと人のとだえた広場の上を
走りつつ 彼は背後(うしろ)に聞いていた――
敷石道をふるわせて 重おもしげに高らかに
ひびきわたる蹄の音を――
雷(いかずち)ともまがうその音を。
青白い月の光に照らされて
片手を高くさし上げて
蹄の音も高らかに
《青銅の騎士》は追ってくる
その夜一夜(ひとよ)は 哀れな狂者が
いずこを指して逃げようと いたる所へ
《青銅の騎士》は追ってきた
重おもしい蹄の音をひびかせながら。
681828nen:03/01/16 15:46
 このとき以来 あの広場を
たまたまよぎる度ごとに
彼の顔には困惑の
色が浮かんだ。苦しみを
和(やわら)げようとでも思うのか
そそくさと手を胸に当て
くたびれきった帽子を取っては
おびえたような目を伏せたまま
顔をそむけて彼は通った。

            入り海に
小島がひとつ見えている。時折りここへ
帰りおくれた漁師らが
網載せた舟をもやって
貧しい夕餉(ゆうげ)を炊(かし)いだりする。
役人たちが 日曜などに
住む人もないこの島へ 遊びがてらに
小舟に乗って来ることもある。草ひとつ
生えない島だ。あの洪水は
気まぐれに 朽ちかけた小屋を一軒
この島へ打ち上げた。水際に
この小屋は真っ黒な茂みのように立っていた。
この春のこと 一艘の平底船が島に来て
この小屋を運んでいった。小屋は無人で
荒れはてていた。しきいの際(きわ)に
われらの狂者が発見された。
つめたい骸(むくろ)は その場所に
ねんごろに埋葬された。
691828nen:03/01/16 15:55
>>41
>>45-68 が「青銅の騎士」全文です。意外と長いものです。
引用は「プーシキン全集2」(河出書房新社)からです。
プーシキンの詩の世界を充分堪能できると思いますので、
読んでみて下さい。
70吾輩は名無しである:03/01/16 21:01
>>45-68
乙。
7141:03/01/17 21:25
どうも>>45-68

手数かけますた。はい、しっかり読みます。
ドストエフスキースレにもリンク貼るです。
7233:03/01/17 21:32
>>45-68
すごいな。

俺がもっているのは筑摩の世界文学大系26。
「青銅の騎士」は谷耕平訳だ。こちらは散文的だが
木村訳は韻文重視とみた。いい味を出している。
731828nen:03/01/17 21:38
>>71
ドストエフスキーは「二重人格」に、「青銅の騎士」の
パロディを用いているとされます。

>>72
>>39がいっている「オネーギン」の訳もありますか?
できればご確認ください。
74吾輩は名無しである:03/01/17 21:43
プーシキンはマイナーなので、これからは作品のことを書くではなく、なるたけ作品を引用してほしいとおもいますた。
そしたらプーシキンの魅力がもっとよく伝わるかもしれないし読者も増えるのではないかと………。提案だけなのでsage。
7533:03/01/17 21:48
>>73
筑摩は金子幸彦訳。
761828nen:03/01/20 19:20
>>75
筑摩は金子訳でしたか。どうも。
金子訳は中央公論社から出ている分もあります。

>>74
2ちゃんも素人が集まる場ですから、プーシキンについて
紹介していくのもいいかもしれません。
私が面白いと思うのは、詩人の少年時代の「伝説」です。
これからヒマなのとき、少しずつ紹介していこうと思います。
771828nen:03/01/23 18:11
プーシキン伝説その一 詩人の祖父について
詩人の祖父は皇帝に節を守った男だったらしい。でもそのいっぽうでは「血の気の多い、残忍な男」とも詩人が書いている。
それは祖父が最初の妻とフランス人家庭教師との仲を疑い、妻を屋敷内の牢に閉じ込めてワラの上で死なせ、いっぽう家庭教師を
「裏庭で封建的にしばり首にしたという伝説のためだそうだ。
78吾輩は名無しである:03/01/23 22:36
>>77
ずいぶんやなジジイだなw
79吾輩は名無しである:03/01/24 00:23
>>77
祖父って黒人の?
801828nen:03/01/24 21:27
>>79
>>77に記したのは、プーシキンの父方の祖父です。
黒人の先祖は、母方の系譜になります。
母方の曾祖父なる人が、ピョートル大帝の寵愛を受けたアビシニヤ生まれの黒人です。
どうして母方の曾祖父アブラームが暑いところか北国へと来たのかというと、ピョートル大帝の
時代は黒人の給仕が常習となっていて、偉い人たちの「気晴らし」として連れてこられたようで
す。ただアブラームは才能に恵まれていて、のちに陸軍大将にまでなるのです。
811828nen:03/01/24 21:35
以下、引用します。

  この曾祖父アブラーム(またはイブラヒム、1697or8〜1781)は、通説によれば、トルコに
 入貢した土候を父に、アビシニヤ北部に生まれたことになっている。彼は八歳でコンスタンチ
 ノポリスのトルコ後宮に人質にやられた。一説によれば、父が高齢になってからの子で、その
 愛情を一身に集めたところから、異母兄たちに売り飛ばされたのだともいう。またひとりの姉
 が、弟を運び去る船を追っていつまでも泳ぎつづけ、ついに溺れ死んだという話もある。いず
 れも伝説の域を出ない。一七〇六年、アブラーム少年はさらにロシア宮廷へ連れて行かれた。
 これについても、少年が自分の意志で進んでロシア宮廷へ来たという話と、宮廷の装飾用に何人
 かの黒人少年を送れというピョートルの命令を受けて、ロシア公使が宰相を抱き込んで後宮から
 盗み出したという説とがある。
82吾輩は名無しである:03/01/28 15:43
つーづーきーはー?
83吾輩は名無しである:03/01/30 13:32
プーシキンこぼれ話

政治的な詩を書いてオデッセアに流されたプーシキンは、
心臓を病んだので療養のために外国に行きたいと
当局に願い出た。
願いはもちろん却下され、代りに馬の病理学の著書で知られた
フセワロードフという獣医にかかることを命ぜられた。
84吾輩は名無しである:03/01/30 22:25
ぽーるーたーわー?
851828nen:03/01/31 20:16
>>82
せめて>>45-68を読むなりして、簡単な感想でも書いてもらえませんか?

今回はプーシキンの両親についての話。
母ナジェージダはアビシニヤ人の流れから「やや切れ長の目、鷲のような横顔、浅黒い皮膚」の美人だった。
父セルゲイ・リヴォーヴィチは怠け者。
両親とも詩人の教育には見向きもしなかった。
母は引っ越し魔で不安定な性格だった。急に腹を立てて黙り込むことも多々あって、この沈黙は数日、数週間、
ときには数ヶ月の間つづくこともざらであった。幼少の詩人にとってはやりきれん話だ。
母の詩人への仕打ちとしては

 サーシャ(詩人のこと)には幼いころ両手の手のひらをこすり合わせる癖があり、またよくハンカチを
 どこかに落として来た。母はこの癖をきらって、わが子が腹を空かせるのもかまわず、丸一日、両手を後ろ
 に縛りつけておいた、とか
 ハンカチのほうは、「おまえをわたしの副官にしてあげる」と言いながら、上衣を着せてやる。その上衣
 には、副官の胸の飾り紐のようにハンカチが縫いつけてある。そのハンカチは週に二度だけ取り替えてくれ、
 来客の前にもそのままの姿で出て行かなければならなかった。……

などの話が有名だが、これははっきりいって精神的虐待ですよ!
詩人は生涯、両親に対して愛情をもつことはなく、祖母のマリーヤと乳母のアリーナから愛情を注がれた。
乳母に対しては「お母さん」と呼んでいたとか……。
86吾輩は名無しである:03/01/31 20:20
有名だけど、
トルストイ『アンナ・カレーニナ』のアンナの容姿のモデルはプーシュキンの娘。
871828nen:03/01/31 20:24
>>86
知らなかったですねえ。プーシキンには子供が4人くらいいましたが、
どの子かわかります?
8886:03/01/31 20:35
桑原武夫氏の解説から引用します
マリア・アレクサンドロヴナ・ガルツングは詩人プーシキンの娘で
アンナの容姿のモデルであり、トゥーラ市の社交界で優雅さ、美しさ
を讃えられた。
891828nen:03/01/31 20:42
>>86
ありがとうございます。
さすが若い頃、女には目がなかったトルストイ、目の付け所が違いますな。
優雅さ、美しさということは、娘はプーシキンの妻ナターリャの血を受け
継いだ可能性が高いですね。
実際の列車に飛び込んで自殺する記事とは別のエピソードですよね?
9086:03/01/31 21:02
鉄道自殺したのはもちろんプーシキンの娘ではないけど
実際あった事件でトルストイはその解剖を見に行ったそうです。
ちなみにトルストイが「アンナ」をかくきっかけとなったひとつにこんな逸話があります。
トルストイの長男がプーシキンの小説を朗読したとき、その書き出しに
感心して「書き出しというのはこうでなくてはいかん。プーシキンは
私たちの先生だ。こうすれば、読者をいきなり事件の中心的興味に
誘い込んでしまう」といって書斎へ行って数頁書いたそうです。


911828nen:03/01/31 21:11
トルストイが感心したプーシキンの小説の書き出しとは
どの作品か、興味のわくところです。
短編集『ベールキン物語』などは書き出しがとてもスッキリして
読者の関心をとらえます。ほかにはやはり『大尉の娘』でしょうか。
92吾輩は名無しである:03/01/31 21:15
「アンナ・カレーニナ」はいきなし浮気の話題から入るので
効果がありますです。
プーシキンだたーら、「駅長」が引き込むかと。。。
9386:03/01/31 21:18
「客は別荘へ集まってきた」
となってますが、これはどの作品ですかね?
941828nen:03/01/31 21:42
>「客は別荘へ集まってきた」

このくだりは、プーシキンの小説がこの言葉から始まるということでしょうか?
別荘とか田舎・静養などの語句が登場するのは『エフゲーニー・オネーギン』ですが、
出だしは違いますね。
951828nen:03/01/31 21:44
他、ご存知のかた、教えてください。
96吾輩は名無しである:03/02/01 00:58
どんなにきつくしぼってみたとて
これ以上はなにひとつ出てくるまいよ
97吾輩は名無しである:03/02/01 19:52
>>37
国民的作家って称号には、名前は知られてるけど、
実際にはほとんど読まれてないっていう、
不名誉なイメージもあるけど、
今のロシアではどうなんでしょうね。好んで読まれてるのかな。
981828nen:03/02/03 18:09
>>93=86
どういうことか分かりました。迂闊というか私の無知でした。
あなたが書かれた『客は別荘へ集まってきた』は、
プーシキンの数多い未完作の一つで、正式な標題がついていない作品なのです。
この未完作は1831〜32年にかけて制作されたとされています。
今は品切れとなっている新潮文庫の『スペードの女王 他』にも、しっかり所収
されていました。新潮では『客は**家の別荘に』となっています。書き出しは

  客はぞくぞく**伯爵家の別荘へと集まってきた。広間は、新作の喜劇を上演していた劇場か
 ら一時に乗りつけた淑女紳士でたちまち満たされてしまった。客はめいめい、お茶のつがれてい
 る円卓までたどり着くと、まずこの家の主婦に挨拶をして、ふたたび人波のなかにまぎれこんで
 しまうが、そこではまだ、カルタも会話もはじまってはいなかった。するうち、だんだんに秩序
 がたってきた。婦人たちは長椅子に席をしめた。そのまわりには男子連の輪ができあがった。ホ
 イストの場も定められた。数人の若者だけがまだ立っていて、パリ製の石版画の鑑賞が、一般の
 会話にとって代った。

ですので、>>96 のいっていることは、意図はどうあれ、文意としてはまんざら間違っていないかも
しれないわけです。
99吾輩は名無しである:03/02/03 18:20
>>97
ロシアでプーシキンは小学生のころに習うぞ。詩を主に。
「オネーギン」を習う歳になると最初の一節だけは暗唱させられる。
でも、日本の学校の教科書で漱石の「夢十夜」の第一夜しか習わない
みたいに、ロシアでも全編は学校で読まれない。
100えべげーにー:03/02/05 23:02
>>96
「コロームナの家」ハケーン
10133:03/02/06 19:53
>>100はおそらく1だろう。
おまえ恥ずかしくないのか? スレ立てたやつが運営の中心におらんとは
どういうつもりじゃ? 立て逃げか?

プーシキンの邦訳の刊行歴について知りたい。俺が知っているのは
『プウシキン全集』(全五巻)中山省三郎他訳(改造社)
『プーシキン全集』(全六巻)木村彰一・川端香男里他訳(河出書房新社)
『エヴゲーニイ・オネーギン』金子幸彦訳(筑摩書房)
『エヴゲーニイ・オネーギン』木村浩訳(集英社)
『プーシキン詩集』稲田定雄訳(新潮社)
いずれも、文学全集・名詩集。ほかにあったら教えてくれ。
102えべげーにー:03/02/06 20:23
>>101
ごめんよw

邦訳あとは
「ジプシー・青銅の騎士 他二編(=パフチサライの噴水・ポルタワ)」(岩波文庫)
など。
でも「悪魔のトランプ占い」とかそういうのも入れたらきりないと思うよ。

じゃあね。
103吾輩は名無しである:03/02/06 22:20
age
1041828nen:03/02/07 21:00
>>101
邦訳の分については、あなたが挙げた本のほかに新潮文庫で

『スペードの女王他』(中村白葉訳)
『大尉の娘』(中村白葉訳)

が昔にありました。
105吾輩は名無しである:03/02/09 18:54
百年が過ぎた --- そして力強く、誇らかな、
かくも情熱の意志にみちみちた
これらの人々から何がのこったか?
106あぼーん:あぼーん
あぼーん
107吾輩は名無しである:03/02/10 19:18
105 :吾輩は名無しである :03/02/09 18:54
百年が過ぎた --- そして力強く、誇らかな、
かくも情熱の意志にみちみちた
これらの人々から何がのこったか?

作品は何?
1081828nen:03/02/12 19:42
詩人が少年の頃、プーシキン家の客間には伯父のワシーリイの
関係でカラムジン派の人々が多く出入りして、談笑、議論、自作の披露、
あらゆる作品を朗読しあったそうだ。小さかったプーシキンも
その片隅にいて話を聞いていた。
伯父ワシーリイについて、詩人自身は「わがパルナス(詩文)の父」と
行っている。実父とは大違い(笑)
この頃、詩人は父の書斎にあったあらゆる本を読みまくる。古今東西の
戯曲、詩、政論、哲学、かなりの多く種類にまたがっていた。
詩人がどうしてフランス語を身につけたかといえば、フランス革命後、
ロシアへ亡命してきた人間たちを積極的に雇うのが当時のロシアの
一般的貴族の教育方針だったからだそうだ。
109 :03/02/12 22:53
小学校のときに悪魔のトランプ占い読んでなんて切なくて美しい話だろうと感動しました。
そして大学生になってようやくプーシキンの作品だったと知りました。
悪魔のトランプ占いに入ってたお話の題名を教えていただけませんか?
スペードの女王の他には何が入っていたのでしょう?
110吾輩は名無しである:03/02/13 15:59
一ヶ月くらいでDAT落ちしたツルゲーネフスレとはちがって
よくやっているな。がんがれ。
1111828nen:03/02/13 21:22
トロくさいようですが、>>96>>100の意味がようやくわかりました。
『コロームナの家』の最後に登場するセリフとその前の質問の
答えを重ねあわせたのですね。

>>109
「悪魔のトランプ占い」という本があったのでしょうか?
プーシキンの本は、なかなか記録に残っているものを探すのは
困難ですので、出版社・出版年などもう少し情報をお願いします。
もしかすると「悪魔のトランプ占い」に所収されていたのが、
『スペードの女王』だけだったかもしれないからです。
11233:03/02/13 21:27
>>111
一応つっこんでおくが、>>96が『客は**家の別荘に』のことを
知っていたかどうかは定かではないことを考慮に入れよ。
詳しい人間だったら、もっとマシなレスをしていたかもしれない
からだ。
そして、もし知っていたくせに、96がいやみレスしたとしたら、
性格がねじまがっている可能性もあるのだ。

このスレには性格悪い奴が幾人かいそうだ。
1131828nen:03/02/13 21:44
>>112
どうも。御気持はありがたく御受けいたします。
ただ、ここは煽っても仕方がございませんので、
黙殺ということにいたしましょう(笑)

あなたが以前質問された邦訳の書籍についてですが、
『日本プーシキン書誌』といったこれまでの邦訳を
すべて網羅した書籍があるようです。一般に購入できる
ものではなく、学会の刊行物じゃないかと思われます。
念のためあたってみられてはいかがでしょう?
114109:03/02/14 17:49
ポプラ社から出ていてもう絶版になっている本です。>悪魔のトランプ占い
訳の感じも素晴らしかった(小学生の私にとって)と記憶しております。
1151828nen:03/02/14 20:17
>>109
『悪魔のトランプ占い』の所収作品については、

http://homepage2.nifty.com/te2/b/home.htm
http://homepage2.nifty.com/te2/b/b033.htm#b10809

のサイトのコピペをさせてもらいます。

☆『悪魔のトランプ占い』児童書

ポプラ社/ポプラ社文庫<47> /怪奇・推理シリーズ(1986/07)(206頁)[38×14]
著:プーシキン、他
文:渡辺節子
  1 シトースの家                        34 レールモントフ
  2 スペードの女王                      38 プーシキン
  3 消え失せた手紙                      41 ゴーゴリ
  4 恐ろしい占い                       70 ベストゥジェフ=マリンスキィ
    あとがき トランプ占い                  4 渡辺節子

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/browse/-/489986/250-5956869-8559412

によれば、おっしゃるとおり今も販売中ですね。
1161828nen:03/02/14 20:18
>>1>>104
少なくとも私よりは詩人のことについて、はるかに詳しいと存じます。
あなたの豊富な学習量を活かせば、より有意義なスレになると思いますので
より詳細かつ素人に丁寧な心あるレスをお願いします。
1171828nen:03/02/14 20:19
盗賊の兄弟                  川端香男里訳


 腐れ行く亡骸の山に、
集まって来たのは、からすのむれではない。
夜、ヴォルガの岸の焚火のまわりに、
向こう見ずどもの徒党が集まったのだ。
何と雑多なまぜ物か! 衣裳も顔も、
種族も、言葉も、身分までも。
農家や僧院や牢屋から
流れ流れて一稼ぎやるために集まった。
みなの胸のうちなる目当てはひとつ──
権力も、法律もなしに生きること。
そこには男々しきドンの岸辺から
脱走して来た男の姿も見えた、
黒い巻髪のユダヤ人も、
曠野(ステップ)の荒々しい息子たち、
カルムィクやぶざまなバシキールも、
赤毛のフィン人も、無為怠惰に暮らしつつ、
いたる所放浪するジプシーもいた!
危険、血、頽廃、嘘いつわりが
この恐ろしい家族のきずなだ。
このなかには、石の心をもって
ありとあらゆる悪業を重ねた者がいる。
あわれなみなし子をつれた寡婦を
冷たい手で切り捨てた者がいる、
そいつには子供の呻きが面白いのだ、
ゆるしを乞おうと容赦はせぬ、
人殺しはそいつには楽しい、
若者のあいびきのように。
1181828nen:03/02/14 20:19
 みな静まりかえり、やがて月が
みなの上にその青白い光をそそぐ。
すると泡立つぶどう酒のさかずきが、
手から手へとわたって行くのだ。
湿った大地に手足をひろげ
浅い眠りに落ちる者がいる──
すると不吉な夢はかけめぐる、
その罪深い頭の上を。
話にふける者には、話が
陰うつな夜の無為の、時の長さを縮める。
みな口をつぐんだ──みなの心を
新入りの物語がひきつける、
みなが彼をとりまき耳を傾ける──

「おれたちは二人だった──弟とおれだ。
二人はいっしょに大きくなった。
子供のころは、よその家で養い育てられた。
子供のおれたちには楽しい暮らしじゃなかった。
おれたちはもう貧乏の声を知っていた、
つらいはずかしめも堪え忍んだ。
そして早くからおれたちを波立たせた、
はげしい羨望の苦しい思いが。
みなし子のおれたちの手には
あばら家一つ、畑一つ残されてなかった。
悲しみのなか、心労のなかに生き、
そのめぐりあわせに倦みはてた。
かくして二人で相談をした、
別の運命を試みようと。
おれたちが友とたのんだのは
ダマスク鋼の短剣と暗い夜。
小心も悲しみも忘れ去り、
良心も払いのけてしまった。
1191828nen:03/02/14 20:20
 ああ、青春よ、向こう見ずの青春よ!
そのころは、よいあんばいの暮らしだった、
死のおそれも物ともせずに、
おれたちはみな山分けにした。
そのころの話だ、明るい月が
のぼって行き中天にかかると、
穴ぐらからおれたちは出て、
森の危険な仕事へとおもむく。
樹のうしろに坐って待つのだ──
この夜ふけの道を行くものは
金持のユダヤ人でも貧しい坊主でも、
みなおれたちのもの! みな取り上げる。
冬になると、ひっそりした夜、
向こう見ずのトロイカに馬をつけ、
歌い、口笛をふき、矢のように
深い深い雪の上を飛んで行く。
おれたちと出会うのをおそれないものがいたろうか?
安酒場の火が遠くに見えた──
さあ、あそこだ! 門口へ乗りつけ、戸をたたき、
大声であるじを呼び出し、はいりこむ──
みんな只だぞ、飲んで食って
おまけにきれいな女を可愛がる。

 ところがいいかね? しくじったのだ。
兄弟同士酒宴(さかもり)を始めてまもなく、
捕えられ──そして鍛冶屋のやつに
二人ともども枷につながれ、
番兵にしょっぴかれて牢屋入り。
1201828nen:03/02/14 20:21
 五つも年上だったおれの方が、
弟よりも堪え忍ぶことができた。
鎖につながれ、息苦しい牢屋で、
おれは助かったが、弟はばてた。
息もたえだえ、苦しみにさいなまれ、
正気も失い、熱い頭で
おれの肩にもたれていた、
死にのぞみつつ弟は繰返しささやいた──
『ここにいると息がつまる……
森へ行きたい……水を、水をくれ!……』
だがもだえる者に水もやれなかった。
弟はまた渇きに苦しみ、
汗は玉のように流れた。
毒ある病の熱が、
弟の血と心をかき立てた。
もうおれの顔さえもわからず、
呼びかけるのだった、
絶え間なく自分の友や仲間に。
弟は言った、『兄貴、どこへ隠れた?
自分だけでどの秘密の道を行くのだ?
なぜこの悪臭を放つ闇のなかに
兄貴はおれをおいて行ったのか?
1211828nen:03/02/14 20:27
平和ないなかからこのおれを
鬱蒼たる森へとさそいこみ、
夜になると、猛くまた恐ろしく、
人殺しを初めて教えたのは、
兄貴その人ではなかったか?
それが今ではおれをおいて自由気まま、
けがれなきひろびろとした野をひとり闊歩し、
鉄の錘のついた棍棒を振りまわし、
羨むべき幸運にめぐりあい、
自分の仲間のことなど忘れてしまったのだ!……』
するとまた執拗な良心の呵責が
彼の心中にもえあがった──
眼の前に幻がむらがり、
遠くから指をあげて威嚇する。
なかでも、昔おれたちが斬り殺した
老人の姿が、ことしげく
彼の心にやって来た。
病んだ弟は両手で眼を蔽い、
その老人のため、おれに懇願した──
『兄貴! あの人にあわれみの涙を!
あんな年を取った人は殺さないでくれ……
しわがれたあの叫び声がおそろしい……
あの人を放してくれ──危険はないのだ。
あれには温かい血の一滴もない……
兄貴よ、白髪頭を笑うな、
苦しめるな……そうすれば、その祈りで
神の怒りをやわらげてくれようもの!……』
1221828nen:03/02/14 20:27
おれは恐怖をおさえ聞いていた、
病人の涙をとどめ、
たわいない幻を払ってやりたかった。
あの森この森から牢屋にやって来た
死人たちの踊りを見ていたのだ、
おそろしい囁きを聞くかとみれば、
突如、迫り来る追っ手の蹄の音を聞き、
彼の眼は狂暴に光った。
髪の毛は逆立っていた。
そして全身木の葉のように震えた。
するとまた眼前に幻が見えた、
広場の人々の群れが
そして処刑の場へのおそろしい歩みが、
むちが、峻厳な死刑執行人が……
恐怖にみたされ、気を失って、
弟はおれの胸に倒れかかった。
このようにして幾日も幾夜も過ごし、
一刻たりとも休むことはできず、
おれたちの眼は眠りを忘れた。
1231828nen:03/02/14 20:28
 だが若さが勝ちを収めた──
ふたたび弟は体力を回復した。
ぞっとするような病気は去った。
それとともに幻も遠ざかった。
おれたちはよみがえった。するともっと強く、
昔の暮らしを慕う気持がつのった。
魂は森に、自由な暮らしに飛んで行き、
野原の空気を渇望していた。
獄舎の闇も、格子越しの暁の光も、
番兵の呼び声も鎖のぶつかる音も
飛んで来る鳥のかすかな羽音も、
みなおれたちには堪えがたかった。

 ある日、おれたちは街のなかに
鎖をつけたまま集めに行った、
町の獄舎のためのほどこし物を。
そこでひそかに話をきめた、
かねてからの望みを果たすことを。
かたわらに河がざわめいていた、
その河に向かった──高い崖から、
どぶん! そして深い水を泳ぎ始めた。
二人をつないだ鎖をかちかちと鳴らし、
足をそろえて水をけった。
砂で覆われた小島が見える、
急な流れをかき分けて、
その島にまっしぐら。
1241828nen:03/02/14 20:29
うそりには叫び声、
『つかまえろ! つかまえろ! 脱走だ!』
二人の番兵が遠くから泳いで来る、
けれどおれたちは島にあがり、
足枷を石でたたき割り、
水でぐっしょり重くなった
ボロボロの衣服を脱ぎすてた……
追手の来るのが見える。
けれども大胆に、望みありとばかりに
腰をすえて待つ。一人は早くも
溺れ、水を飲み、呻き、
鉛のように底に沈んだ。
もう一人はやっと深みを泳ぎ抜き、
銃を手にして川の瀬をまっすぐに、
おれの叫びなど耳にも入れずやって来る、
だがそいつの頭にまっすぐに
二つの石が飛んで行った──
波の上に血がほとばしった。
彼も溺れたのだ──水のなかに
おれたちはもう一度はいったが
無理して追いかける者はいなかった。
1251828nen:03/02/14 20:30
向こう岸にたどりつき、
森のなかへ逃げこんだ。
だが可哀そうな弟は……
この骨折りと秋の水の冷たさが
やっと得たばかりの力を奪った──
また病が彼を倒した。
そして不吉な幻が訪れた。
三日の間病人は
まんじりともせず、しゃべりもしなかった。
四日目にはどうやら、
悲しい定めに心を配り、
おれを呼んで手をにぎった。
火の消えたまなざしは
苦悩に襲われていた。
手を震わせて、弟は溜息をついた、
そしておれの胸の上でこときれた。
1261828nen:03/02/14 20:31
 冷たい骸のそばにおれはとどまった。
三日三晩離れようとはしなかった、
死んだ者が目をさますのを待っていた。
そしてはげしく泣いた。
やっとのことで鋤をとった。
罪深き祈りを弟の墓穴にささげ、
亡骸を地中に葬った……
それからは昔ながらの手仕事に
ひとりもどって来たのだが……
過ぎた月日はもう決して帰りゃせぬ!
酒盛りも、陽気な夜通しの遊びも
われらのすさまじい襲撃も──
弟がすべて墓へ持ち去った。
おれはひとり陰鬱に日を送り、
おれの酷薄な心は石と化し、
胸のうちではあわれみの心も死んだ。
けれど時にはおいぼれには情をかける──
老人を殺すのはおそろしい、
頼るものとてない年寄りには、
手をどうしてもあげられぬ。
つらい牢屋で、鎖につながれ、
病みつき、精も根もつき果てて、
深い苦悩に正気を失いつつも、
年寄りは殺すなとおれに頼んだ弟を
おれは思い出すからなのだ」
1271828nen:03/02/17 21:39
http://book.2ch.net/test/read.cgi/book/1041171779/l50

>>109

ごめんなさい。他のスレと勘違いして一部言葉を誤ってしまいました。

>>115

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/browse/-/489986/250-5956869-8559412

によれば、今は古書扱い、と訂正します。失礼しました。
1281828nen:03/02/17 21:42
>>13

旺文社文庫に入っていた作品かどうかわかりませんが、
>>117-126
に『盗賊の兄弟』を載せてみました。
129マダムB:03/02/18 09:54
>>1828nenさん
引用ありがとうございます。楽しみに読ませていただいています。


白葉訳の新潮文庫は2冊もっていますが、『オネーギン』はどれが
評判いいのでしょうか。
岩波文庫・木村訳と講談社文芸文庫・木村訳は手に入れやすいようですが、
少し高くても、ナボコフ注釈など反映させた群像社・小沢訳にしようかと
思っています。判断としてどんなものか、ご教示いただけたら幸甚です。

『オネーギンの手紙』をビデオで観てみました。英国制作なので英語だから
変なのですが、良い映画だと思いました。白い雪に覆われる季節が長い土地
なので、ロシア人(富裕層)の美意識は高いのかも…と考えることがあり
ます。それを再認識させられた映像でした。
旧弊なモラルで揺れる人びとの内面もまた、私が文学で好きなテーマです。
1301828nen:03/02/18 21:52
>>マダムBさん

どうもっす。
『エヴゲーニイ・オネーギン』は

講談社文芸文庫の木村彰一訳と、岩波文庫はたしか池田健太郎訳だったと思います。
集英社の世界文学全集で出ていた木村浩訳、今も入手可能な中央公論新社の
金子幸彦訳などもあります。マダムBさんのおっしゃるとおり、群像社の
小沢政雄訳は高価ですが、最新の研究を踏まえている点ではこれまでの分と
読み比べる価値があるとおもっています。私はまだ手がけていないので、
なんともいえないのですが…。

『オネーギンの手紙』は見たいと思っているのですが、レンタルにないん
ですよ。どうしようかと思ってます。
感想を拝見したかぎりではよさそうですね。
13141:03/02/18 21:58
「悪魔のトランプ占い」もってます。
そのなかの「スペードの女王」短いのでコピペしませうか?
132マダムB:03/02/19 09:57
>>130
アドバイスありがとうございます。
『青銅の騎士』とともに群像社のものをとりあえずオーダーします。
岩波は池田訳です。書き間違えてすみません。

それに映画は『オネーギンの恋文』でした。
ふたりの出会いや別れのシーンも、決闘シーンも見事にできて
いると思うので、機会があったらぜひお試しください。
大きなレンタル店でなければ置いていないと思いますが。

>>131
新潮文庫では40ページで結構量があると思いますが、それ抄訳?
でも、児童書の文庫形式の出版物って、気の利いた若手訳者を起用して
編集されているものがあり、要チェックです。

では、また、いずれ。
13341:03/02/19 17:29
マダムBさま
ポプラ社文庫は児童書ですた。もちろん長〜いですけど、
普及版より短いのです。子供向けなのでひらがなもおおいです。
ではかかりませう。
         ♠T
 冬の夜、ひまがあって金もある若い貴族たちがあつまって、
「さて、なにをするか。」
となれば、まずトランプときまっている。今夜も近衛士官ナルーモフのところで、トランプの寄り合いがあった。
 一同勝った負けたとむちゅうになっているうちに、長い夜もいつのまにかすぎ、朝方の五時ごろに食事が
でた。勝ったほうは、きれいに料理をたいらげているし、大負けに負けたのは、がっくりして食欲もない。
 それでも酒がはいると、それぞれ口がかるくなってきた。ナルーモフががっくり組の一人に、
「おい、きみはどうだった?」
「いつもどおりさ。ともかくついてない。なにをやってもダメなんだ。ゲームに熱くなって目がくらむというわけでも
ないのになあ。」
「たしかにきみは、人につられたりはしないね。強情というのかな。
 ところでゲルマン、きみはどうしてやらないんだ? かけ勝負をするどころか、カードにさわりもしないじゃな
いか。」
 あるじ役のナルーモフが、おとなしく料理をたいらげている工兵士官に声をかけた。
「それでいて、勝負のあるところにはいつもつきあって、こうして五時までじっとみてるんだから、ふしぎなもの
だ。」
 ゲルマンとよばれた工兵士官がこたえた。
「勝負は大好きなんですよ。ただわたしは、よぶんなお金をもうけるために必要な金を使える身分ではない、
ということです。」
「ゲルマンはドイツ人である。だから、なにごとも計算づく。それだけのことさ。」
と、客の一人、トムスキィが、笑いながらゲルマンをからかったが、きゅうにまじめな顔になって、
「だが、ふしぎといえば、うちのおばあさんのアンナ・フェドトヴナ伯爵夫人のほうがもっとふしぎだよ。」
「と、いうと?」
「おばあさんがどうしてトランプをやらないのか、わからないなあ。」
「そんなのちっともふしぎじゃないじゃないか。八十すぎのばあさんがトランプをやらなくたって、どうってことない
だろう。」
135 :03/02/19 17:33
「ではきみは、あの話を知らないのか?」
「あの話って?」
「よし、ではまずきいてくれ。おれは、六十年も昔のことだ。当時、おばあさんはすばらしい美人で、それが
パリへでかけて、パリで人気のまとになって、モスクワのヴィーナスとまでいわれていたそうだ。
 そのころパリのご婦人方には、ファラオンというトランプ・ゲームがはやっていたらしい。あるとき宮中でゲーム
会があってね、その会でおばあさんはオルレアン公とかけ勝負をして、それこそひどい負け方をしてしまった。
そこで、もどるとすぐ夫に、つまりわたしのおじいさんに、
『わたし、これこれだけ負けてしまいましたの。あなたがはらっておいてくださいな。』
と、いいつけたものだ。わたしのおぼえているところでは、おじいさんというのは、まるでおばあさんの召使いみ
たいで、なんでもいいなりになっていた。妻を火みたいにおそれていたわけだ。
 だがこのときばかりは、とんでもない負け高をきいて、がまんできなくなったんだろうね。そろばんを持ちだして
きて、
『少しはかんがえてほしいですね、半年のうちに五十万も使いはたして。ここはパリですよ。モスクワにいるとき
みたいに、すぐさま金がつくれるものではないのだから。』
と、きっぱりはねつけたのさ。するとおばあさんはおじいさんのほおをびたっと一つはたいて、さっさと別な部屋へ
いって、一人でねてしまった。
 そうやってつぎの朝、また夫をよびつけた。きっと、一人寝の夫が後悔していいなりになるのをあてにしてい
たのだろうね。
 ところがおじいさんは、『だめです』の一点ばり。とうとうおばあさんは、生まれてはじめて夫にいいわけしてみ
たり、泣きついてみたりしたのだが、まるでダメ。おばあさんはこまりきってしまった。そのとき、ふとある人物を
おもいだしたんだ。
 きみたち、サン・ジェルマン伯爵の名はきいたことがあるだろう? 不老長寿の薬をみつけたとか、どんな
金属でも金にかえる法を知っているとか、とかく評判のよくなかった男さ。スパイだとういう説もある。それは
ともかく、くらしぶりはどうどうとしていて、当時のパリの社交界でもすこぶる勢力があったらしい。
136 :03/02/19 17:34
 おばあさんは、この老伯爵としたしくて、彼が大金を自由にできることを知っていた。そこで、『すぐにおこし
くださいませ』とかいた手紙をおくったのだ。
 伯爵がたずねてくると、おばあさんはなみだながらに夫のひどいしうちをうったえて、『今となっては、あなたの
友情とごしんせつにたよるほかありませんの』と、たのみこんだ。
 サン・ジェルマンはしばしかんがえこんでいたが、やがて、
『マダム、お金をお貸しするのはたやすいことですが、そうすれば、こんどはそれをわたしにかえすまで、やはり
心が休まりますまい。それよりもっとよい方法があります。もう一度かけをして、負けをとりかえすことです。』
『でも、わたしにはもう、かけるもとでがありませんのよ。』
『いやいやお金はいらないのです。まずわたしのいうことをおききください。』
 そういってサン・ジェルマンは、おばあさんに、かならず勝てるという、ある秘密を教えたのだ。
 その夜、おばあさんはベルサイユでひらかれたトランプの会にあらわれた。もとじめはオルレアン公だ。おばあ
さんは、ちょっとしたつくり話をして借りをまだかえさないわびをいい、公をあいてに勝負した。そして三まいのカー
ドでつぎつぎ勝って、みごとにきのうの借りをとりもどした。」
「その、かならず勝てる三まいのカードというのは?」
 若い士官たちは、いっせいにトムスキィにたずねた。トムスキィは、たばこをふーっとふいた。
「それがね、おばあさんはだれにも教えないのだ。それさえわかればなあ。」
 がっくりした一人が、
「それじゃ、まぐれかもしれないじゃないか。」
「つくり話さ。」
137 :03/02/19 17:35
と、ゲルマンがいいきった。ところがトムスキィは、自信たっぷりにいったものだ。
「そうはおもわないね。というのは、これは伯父のイワン・イリィチがはなしてくれたことだが、うそいつわりのない
ことだといっていたよ。
 チャプリツキィは知っているだろう? 何百万と使いはたしたあげく、こじきのような死にかたをした男だ。彼
が若いころ、だれかに三十万ほど負けてしまった。むろん、チャプリツキィはやけになったさ。うちのおばあさん
は、むちゃな遊びかたをする若い連中にはきびしいほうだったが、どういう風のふきまわしか、かわいそうにおも
ったんだろうね、三まいのカードの秘密を教えたのだ。三まいのカードをじゅんにかけるように、そして、二度と
トランプのかけに手をださないとやくそくさせてね。
 チャプリツキィは、いわれたとおりのカードに、勝つごとに倍の金をかけて、みごとに負けをとりかえした。」
「そんな手があるのに、孫のきみにも秘密をいわないなんて。」
「そう、じつにざんねんだよ。おばあさんにはむすこが四人いて、わたしの父もその一人なわけだが、みんな
トランプぐるいだったのにね。そのうちの一人にだって教えないし、自分でも、その後はけっしてトランプを手に
しないのさ。」
「おや、もう明るくなったよ。ねる時間だ。」
 一同はさいごのかんぱいをして、わかれた。

         ♠U

 三まいのカードの話は、おそろしくゲルマンの心をひきつけてしまった。
 ゲルマンはロシアにうつりすんだドイツ人を父として生まれ、多少の財産もうけついでいた。しかし野心家
でもあり、手がたい男でもあるゲルマンは、その遺産にはその遺産にはけっして手をつけず、もっともっとふや
して、いつかはゆったりくらすことを夢みていた。強い心でかげごとにはいっさい手をださず、つましくしていた。
それでいてうまくとりつくろい、なかまたちにけちくさいといわれないようつとめていた。
 だが、心の中では、とあくに恋こがれていたのだ。みんなの勝負をみているだけでもわくわくする。
「ひょっとして……もしもあの年よりの伯爵夫人が三まいのカードの秘密を教えてくれたらなあ……そうしたら、
運だめしをせずにいるものか。」
138 :03/02/19 17:38
 首都ペテルブルグの通りをぶらつきながら、ゲルマンは三まいのカードのことばかりをかんがえていた。
「なんとかききだす手はないだろうか。うまく会ってとりいるか。それより愛人になるというのはどうだろう。しかし、
八十すぎのばあさんだからな。明日にもぽっくり死ぬかもしれない。時間がないというわけだ。それにしても、
あの話はほんとうなんだろうか……。
 いや、つまらないことはかんがえまい。<よくはたらき、節約し、遊ばない>、これが、おれの三まいの勝ち
札だ。これをまもっていれば、今の持ち金を何十倍にもできるはずだ。」
 こんなことをはてしなくおもいながら、いつのまにかある大通りの、ひどく古風なつくりの屋敷の前をとおりか
かった。屋敷では舞踏会でもあるのか、まぶしいほど明るい玄関口に、ひっきりなしに馬車がのりつけてくる。
そして、きかざった女たち、重そうな毛皮コートの大物たち、しゃれた身なりの外国人などが、礼儀正しい
玄関番にむかえられて中へ消えていく。
 ゲルマンはおもわずたちどまり、街角の巡査にたずねた。
「これは、どなたのお屋敷だ?」
「伯爵夫人、アンナ・フェドトヴナさまのです。」
 ゲルマンは身ぶるいした。屋敷のまわりをさんざんうろつき、みすぼらしい自分の部屋にもどってきたのは
もう夜ふけだった。そのあとも長いことねつかれず、やっとねむったとおもうと、緑色のカード・テーブルがあらわ
れ、札たばの山、金貨の山がならぶ。おもしろいほど勝ちすすみ、札たばを残らずかきあつめるのだが、さて
勝ち札は、とみると、どれもまっ白で、そこにかいてあるはずの数字がなかった。
139 :03/02/19 17:41
 よく日、とうに日ののぼったころにゲルマンは目をさました。消えてしまった夢の財産にため息をつき、また
もや首都の通りをあてもなくぼんやり歩いているうちに、いつのまにか老伯爵夫人の屋敷にきていた。
「まるで、なんかの力にひっぱられているようなだあ。」
 そうおもい、なに気なく窓をみあげた。その窓に、黒い髪のふさふさした女性が一人、本を読んでいるのか、
手仕事でもしているのか、うつむいているすがたがみえる。と、その人が、ふと顔をあげてゲルマンのほうをみた。
その顔は若々しく、愛らしく、黒々としたひとみがかがやいていた。
 しゅんかん、ゲルマンは、いなずまのようなひらめきに全身をつらぬかれた。
         ♠V
 年老いた伯爵夫人アンナ・フェドトヴナは、おけしょうのまっさい中だった。待女が三人つきそい、一人は
紅のつぼを持ち、一人がヘアピンのはいった小箱を、あと一人はまっ赤なリボンのついたぼうしをささげてい
る。夫人は若いころの流行をそのままに身なりをととのえ、ねんいりにおけしょうした。これを六十年間つづけ
てきたのだ。しかも、花のさかりはとっくにすぎさっているのに、まるで気にかけていなかった。
 すっかりしたくがすむと、老夫人は窓べでししゅうをしている若い娘に声をかけた。
「リーザや、馬車の用意をいいつけて。おさんぽにでましょう。」
 リーザは手早くししゅうをかたづけはじめて。
「まあ、なんておぐずなの。早く馬車の用意をいいつけて、というのに。」
「ええ、今すぐに。」
 リーザは、つぎの間に走るようにはいっていった。ところが老夫人はつくえの上にある本に目をとめると、
「おや、この本は? そうだ、だれかが貸してくれたものだね。リーザや、おまえ、なにをしてるの?」
140 :03/02/19 17:42
「今、着がえを。」
「いいから、ちょっとこっちへおいで。この本を読んでみておくれ。」
 リーザが二ページほど読んだところで、老夫人は大きなあくびをした。
「もうたくさん。なんてつまらない本だろう。持ち主につっかえしておやり。で、馬車はどうなったの?」
「ご用意できておりますわ。」
「で、おまえの着がえはまだなの? まあ、ほんとにのろまさんだこと。やりきれやしない。」
 リーザはまた自分の部屋にかけこんだ。ところが二分もしないうちに、老夫人は力いっぱい鈴をならした。
三人の侍女と従僕がかけこんできた。
「おまえたちの耳はどうかしているとみえるね。どうして、すぐこないのだえ。リザヴェータ・イワノヴナに、わたし
が待ちくたびれているといっておいで。」
 そこへリーザが、外出のマントにぼうしをかぶってはいってきた。
「おや、たいそうなおめかしだこと。さてと、お天気はどうかしら。風がでたらしいね。」
「いいえ、しごくおだやかでございます。」
「おまえたちのいうことはあてにならないからね。風窓をあけてごらん。ほら、やっぱり風だ。それにずいぶん冷え
こんでること。でかけるのはやめにしましょう。リーザや、馬をはずしておしまい。」
 ……なんてみじめなことだろう。リーザはおもわずうつむいた。
 ほんとうにリーザは不幸な娘だった。早いうちに身よりをなくし、伯爵夫人にひきとられてのだが、「他人の
パン」はにがかった。
 なにも、老夫人が意地悪だとか、悪い人だというのではない。ただ、名門に生まれ、お金がたっぷりあって、
美人で、ちやほやされ、そのうえおとなしい夫にかしずかれ……という生活がつづいたあまり、他人のことは
まるでわからないわがままかってな人になっていた。今の世の中のことをまるで知らないためにけちで、そして
人に冷たかった。
 老夫人は今も、社交界のもよおしがあれば、かならずでかけていった。こってりあつげしょうをし大昔の流行
服をつけて、はなやかな舞踏会にあらわれ、まるでめずらしい置物みたいに、かたすみにじっとうずくまってい
た。
141 :03/02/19 17:43
 来客たちは、だれもがいちおう老夫人に儀式のようにあいさつをする。しかしそれきりふりむきもしない。老
夫人のほうも、厳格にあいさつをうけてはいるが、もうあいての顔もみわける力もなかった。それをいいことに、
召使いどもは、ひつぎにかた足をいれている老女のものを、せっせとくすねとっていた。
 その老女のわがままや、けちや、ぼけの被害をもろにかぶっているのが、リーザだった。そのうえ、きまった
お小づかいをきちんともらってもいないのに、いつもみんなと同じようにきれいにしていないときげんが悪い。
そのみんなというのは、ごく少数の上流婦人たちのことなのだ。
 社交界では、いっそうみじめなおもいをさせられた。親のない、つまり持参金のない娘は、だれも人なみに
あつかってくれない。舞踏会でリーザがおどれるのは、ペアがたりないときだけ。そのくせ令嬢たちは、衣装を
なおすとかなんとかのときになると、えんりょなく彼女の手をひっぱって手つだわせるのだった。
 リーザはいつも、自分を、このつらいくらしからすくいだしてくれる王子さまをそっとさがしていた。だが軽薄な
青年たちは、上流の「おじょうさま」方にばかり目をむけて、リーザをみようともしなかった。ほんとうは、リーザの
ほうが百倍もかわいらしいのに。そまつな自分の部屋の暗いろうそくの光のゆらゆらするベッドで、リーザは
どれほど泣いたことだろう。
 ところがある日のこと。いつものように窓べでししゅうをしていて、ふと通りに目をやると、若い工兵士官が
じっとこちらをみているのに気づいた。べつに気にもせず、またうつむいて仕事をつづけたが、五分ほどして外
をみると、士官はまだ同じところにいる。リーザはつとめて外をみないようにしてししゅうをつづけた。
 二時間もして食事の知らせをきき、たちあがりしなに外に目をやると、あの士官はまだその場にたっていた。
「おかしなこと。」
とおもいながらも、リーザは、その日はそのままわすれてしまった。
 つぎの日、リーザは老夫人といっしょに馬車でさんぽにでかけた。すると玄関わきに、きのうの士官がいた。
えりをたて、顔をかくすようにしていたが、ぼうしのつばの下に黒い目がきらきらしてリーザをみつめている。
リーザは恐いようなおもいで馬車にのった。
142 :03/02/19 17:44
 さんぽからもどると、リーザはいそいで窓べにかけよった。と、あの士官はきのうと同じところにたちつくし、じっ
とこちらをみあげているではないか。リーザは生まれてはじめて味わう感覚にふるえ、窓をはなれた。
 その日からというもの、若い士官のすがたはきまった時間にかならずあらわれた。リーザはうつむいていても、
彼の近づいてくるのが気配でわかるようになった。
 士官がいつもの場所にたつと、リーザは顔をあげて彼をみる。二人がみつめあう時間は一日ごとに長くなっ
ていき、彼女のひとみが彼にむけられるたびに、士官の青白い顔がぱっと赤らむのをリーザははっきりとみた。
そして七日め、リーザはついに彼にほほえみかけた……。
 つぎの日、いつものようにさんぽにでるという老夫人を、従僕が二人がかりで馬車におしいれていると、あの
士官がすっとよってきた。どぎまぎしているリーザの手をきゅっとにぎりしめると、さっと消えてしまったが、彼女の
手の中には手紙が残っていた。
 リーザはいそいで手紙をかくして馬車にのりこんだ。だがもうそのあとは、なにも耳にはいらないし、目にも
とまらない。老夫人がいつものように、
「この橋はなんというの?」
とか、
「あれはなんとかいてあるの?」
 などと、もう何十ぺんもきいたことをくりかえしたずねても、うわのそらで、とんちんかんなことばかりこたえてし
まう。とうとう老夫人は怒りだした。
「いったい今日はどうしたというの? きこえないの、それともわからないの? わたしがまだ耳もたしかで頭も
しっかりしてるというのに。」
 その小言も、リーザはきいていなかった。家へ帰りつくなり部屋へかけこんで、あの手紙をとりだした。それは、
「はじめてあなたをおみうけしましてより……」
と、胸のおもいをつづった恋の手紙だった。やさしくて礼儀正しくて、若い娘をおびやかすこともなく、リーザが
おもわずため息をついたほどの文だった。
143 :03/02/19 17:45
 しかしリーザはこまりはてた。あいてがあまりにだいたんにおもえたし。
「どうしたらいいのかしら? わたし、こんなかるはずみなことをしてしまって……もう窓には近よらないでいよう
かしら? そうすれば、いずれあの方の心もさめるでしょうし。それともきっぱりと、ことわりのへんじをかいたほう
がよいのかもしれない……。」
 かわいそうな娘には、相談できる人がだれもいない。それで、さんざんかんがえたすえ、「……二度とこのよ
うなこと、なさらぬよう」とへんじをかき、士官のすがためがけて手紙をなげたのだった。士官は手紙にかけよっ
てひろうと、すがたを消した。そしてつぎの日も、そのつぎの日も、すがたをみせなかった……。
 三日して洋装店から、目のくりくりした少女が書きつけを持ってやってきた。なにか払い残しでもと、リーザが
あけてみると、おなじみのあの文字がならんでいる。あわてておしもどし、
「なにかのまちがいではなくて? この書きつけ、わたしのではありませんもの。」
「いえ、まちがいございません。どうぞごらんくださいまし。」
 少女は自信たっぷり、わかったふうの笑いをみせた。
 しかたなくあけてみると、「……ぜひ二人だけでお会いしたく」とつづってある。リーザはその強引さにあきれる
やらおどろくやらで、手紙をやぶってしまった。
「やはりまちがいです。人ちがいよ。」
「もしお人ちがいでしたら、やぶったりしてはこまります。あの方におかえししなくてはなりませんもの。」
「そんな。ともかく二度とこんなもの持ってこないでちょうだい。それに、これをたのんだ方に、少しはつつしむよう
にともうしあげて。」
 しかし士官はあきらめなかった。毎日のように、菓子店やぼうしの店の使いが手紙をとどけてきた。その内容
も、最初の礼儀正しくやさしいものから、熱くほとばしるように情熱的になっていった。もうおさえきれない、とい
う心のみだれが文字からも伝わってくる。
144 :03/02/19 17:46
 しだいにリーザも手紙によわされて、おくりかえすどころか、やがてへんじをかくようになった。そのへんじも、日
ごとにやさしく長くなっていき、そしてついに彼の「ほんのつかのまでもかまいません、ことばをかわしてほしい」とい
うねがいにこたえたのだった。
「金曜日の夜、某大使の館で舞踏会があります。伯爵夫人もおでかけになり、わたしもおともして、二時まで
はそちらにおります。その夜でしたらば、人目につかずお会いできるかもしれません。
 伯爵夫人がおでかけになりますと、召使いたちはすぐひきとってしまいます。玄関番もしばらくは入り口に残り
ますが、じきに部屋にさがります。そこで十一時半に家におこしになり、まっすぐおもての段をあがって控えの間
におはいりください。
 女中たちはみな一つの部屋にあつまっておりますから、だれにもとがめられることはないとはぞんじますが、もし
だれか控えの間にいました場合は、『伯爵夫人はお内か』と、おたずねくださいまし。『ご不在』といわれましょう
から、どうかそのままお帰りくださるように。またつぎの折にいたしましょう。
 だれもいなければ、そのまま控えの間からまっすぐ左へおいでください。広間、客間とすぎますと、夫人の寝室
にあたります。その寝室の、ついたてのかげにおはいりになりますと、小さな扉が二つみつかりましょう。右の扉は、
夫人もたえておはいりになったことのないお部屋です。左手の扉は通路の間に通じております。通路の間に
あるまわり階段をあがりますと、わたしの部屋になりますゆえ。」

         ♠W

 金曜日の夜十時、ゲルマンはすでに夫人の屋敷のそばにいた。
 その夜はすさまじくふきあれていた。風がうなり、しめった雪が四方八方からたたきつけてくる。雪に街灯は
かすんでしまい、道をいく人などだれもいない。
 その吹雪の中に、ゲルマンはフロックコートだけでたっていた。体中あついおもいでふるえ、なにも感じない
らしい。
145 :03/02/19 17:49
 やがて雪嵐にもかかわらず、屋敷の玄関前に馬車がひきだされた。背中がすっかりまがっていかにも老女
という感じの夫人が、毛皮の外套にくるまってあらわれ、従僕たちがおしあげるようにして馬車にのせた。その
うしろに、髪に花をさし、うすいマントをはおったリーザのすがたがちらりとみえた。
 馬車がぎしぎしと重苦しい音をたてて遠ざかり、吹雪にかすんでみえなくなると、玄関番が大扉をしめ、部屋
部屋のあかりも消えた。通りをいったりきたりしていたゲルマンが街灯によってポケットの時計をたしかめると、
十一時二十分になっていた。ゲルマンはそのまま街灯の下にたちつくし、やくそくの時間を待った。
 十一時半きっかりにゲルマンは石段をあがり、玄関にはいった。玄関番のすがたはない。
 おもての階段をすっとあがって控えの間の扉をあけるとランプがともり、よごれたいすをつなぎあわせた上に
召使いが一人ねむりこけていた。ゲルマンは音をたてないようにそのそばをぬけ、まったくあかりのない広間、
客間をとおって夫人の寝室にはいった。
 部屋のかたすみには火のともった黄金のランプ。そのあかりにかがやく、古びたイコン。色あせた絹ばりの
いす。金メッキのはげた長いす。壁ぎわの羽クッション。それの壁には、二まいの肖像画。── 一まいは四十
ぐらいのあから顔の男性で、でっぷり太り、軍服には勲章がひかっている。もう一まいは、もっと若くて気の強そ
うな美女だった。
 部屋のすみずみには、かざり小箱やルーレット、羽扇、置時計、それに、いろんな婦人方の遊び道具がごた
ごたとならべてある。
 ついたてのかげにはいると、小さなベットと、手紙のとおり二つの扉があった。左の扉をあけると、リーザの部屋
へつうじるというまわり階段がみえる。しかしゲルマンはその扉をしめ、右の扉の中にはいりこんだ。
 時間はゆっくりとすぎていった。どこからももの音はしてこない。客間の大時計が十二時を打ち、つづいて広
間やほかのところからも十二時を打つ音がしたが、じきにしずまりかえってしまった。ゲルマンは暗闇の中で冷
たいペチカによりかかったまま、おちつきはらい、運命を待つように、ときがくるのを待っていた。
146 :03/02/19 17:50
 ついに二時になった。すると小さく馬車の音がして、それがせまってきてとまると、たちまち屋敷中がざわざわ
と波だった。「お帰り……」「お帰り!」という声がひびき、部屋にあかりがともされていく。
 やがて三人の老女中が寝室にはいってきた。老夫人がぐったりとしてつづき、大いすにぐたっと腰をおろした。
 わずかなすきまからのぞきみしているゲルマンの目の前を、リーザがいそぎ足ですぎた。だが、彼は石のように
身動きしなかった。
 老夫人は女中たちに手伝わせ、鏡の前で衣装をぬぎはじめた。かつらをとるとヘアピンがばらばらととびち
り、短く刈った白髪頭があらわれた。銀のぬいとりのドレスが下に落ち、ぶくぶくにむくんだ足がみえて……
しかしナイトキャップをかぶり白い夜着になってしまうと、どうやらふつうの老女らしくなり、さっきほどにはみにく
くなくなった。
 着がえがすむと、夫人は女中たちをあかりごとさがらせ、また大いすにしずみこんだ。年よりのくせでねむれ
ないのだろう。イコンの前のわずかなあかりの中で、夫人はまっ黄色にみえ、たるみきったくちびるももぐもぐ
させながらしきりに首をふっている。どんよりした、死んだ人のような目──。
 とつぜん、その首の動きがとまり、顔にまだ生きているしるしとおもわせる表情があらわれた。みたこともない
男が目の前にたっていたのだ。その男──ゲルマンは、低いけれどはっきりとした声でいった。
「おしずかに。どうか、おしずかに。おねがいがあってきた者です。」
 老夫人は、くちびるをたるませたままだまっている。
 ゲルマンはきこえなかったかとおもい、耳もとまで口を近づけて、もう一度いった。老女はやはり無言だった。
そこでゲルマンは、かまわずつづけた。
「あなたはわたしに幸せをさずけてくださることができるのです。それも、あなたのごそんにはならぬことで、で
す。あなたは、三まいの勝ち札をつづけてあてられる、とか。」
 老夫人にも、男がここへきたわけがのみこめたらしい。しばらく口をもぐもぐさせていたが、ついにこういった。
「あれはじょうだんでした。遊びです。」
147 :03/02/19 17:52
「そんなはずはありません。チャプリツキィには教えてやったではありませんか。」
 老夫人は不安そうな目をした。しかしすぐにまた無表情になった。
「わたしに、その三まいのカードの数字をどうか教えてください。なんのために秘密をまもりとおすのですか。あ
なたのお孫さん方は、それでなくてもお金持ちです。これいじょうもうけても、むだにするだけですよ。わたしは
そんなことはしません。お金のありがたさをよく知っています。ですから……。」
 老夫人はこたえない。ゲルマンはひざまずいた。
「わたしはなんなりと、あなたの心のままにつかえましょう。どうか教えてください。もしも恐ろしい誓いをたてて
いていえないのでしたら、その罰を、わたしの魂がひきうけましょう。それに、あなたはもうご老体です。なにが
おしいのでしょうか? 教えてくだされば、わたしは子、孫の代までも、あなたのために祈りをあげて……。」
 老女はひとことも口をきかなかった。ゲルマンはくやしさに血がのぼったのか、ポケットから銃をとりだした。
「おいぼれめ! いやならこっちにもかんがえがあるぞ! さあ、いうんだ!」
 銃をみたとたん、老夫人の顔はひきつり、はげしくのけぞった。体をかばおうとするように両手をあげ、その
まま動かなくなってしまった。
 ……老伯爵夫人は死んだ。

         ♠X

 リーザは、着がえもしないままうなだれていた。
 きてくれているかしら、いえこないでと、ふるえるおもいで部屋の扉をあけ、だれもいないのがわかったしゅん
かん、ほんとうにほっとして……そしてそのままものおもいにしずみこんでいた。
「いったい、わたし……どうしたことかしら? こんなに深いりしてしまうなんて……。はじめて窓の下でみかけ
てからまだわずかしかたっていないというのに。手紙をかき、しかも、夜ふけに家によびいれるなんて。わたしが
知っていることといったら、手紙のさいごにかいてある名前だけなのに……。」
 そのときふいに扉があき、ゲルマンがはいってきた。リーザはびくっととびあがった。
「どちらにおいででしたの?」
「伯爵夫人の寝室に。今、でてきたところです。夫人はなくなりました。」
「えっ。」
「どうやらわたしのせいらしい。」
148 :03/02/19 17:53
 ゲルマンは窓わくに腰かけ、トムスキィからきいた三まいのカードのこと、どうしてもその秘密を知りたかったこと
など、すべてをかくさずにうちあけた。
 リーザはぼうぜんとしてきいていた。
 ……では、あのもえるようなねがいは、熱いおもいをこめた手紙は、わたしへの恋ではなかったのだ。お金に
恋し、もえていただけだったのだ……。ばかなこのわたしは、恐ろしい悪魔を王子さまとおもって手びきしてし
まって……。
 リーザはもうおそい後悔で、声をおさえて泣いた。
 ゲルマンもくちびるをかみ、しずんでいたが、心にあるのはリーザの泣くすがたではない。彼女にすまぬことを
したなどとはおもってもいない。ただ、この三まいのカードの秘密が永久に消えてしまい、おかげで、夢にみた
ばくだいな富を手にいれることができなくなったくやしさに、胸がきりきりいたむだけだ。
 やがて空が明るくなってきた。リーザがろうそくをふき消すと、朝の光が白いすじとなって部屋に流れこんでき
た。だまりこくったままのゲルマンに、やっとリーザが口をきいた。
「どうしたらいいのでしょう。外へでる秘密の階段へは、あの寝室をとおらないといけない。……わたし、恐く
て……。」
「その階段の場所を教えてください。一人ででていきます。」
 リーザは小さな鍵をわたし、場所を教えた。ゲルマンはリーザのうなだれた冷たいひたいにキスし、でていっ
た。
 ゲルマンがまた夫人の寝室へふみこむと、夫人は昨夜のままに、いすでのけぞっていた。その死に顔をみて
も、ゲルマンの良心はいたみはしない。ただ、さきほどまでひそんでいた右の扉にはいり、手さぐりでかくし扉を
さぐりだしたときに、ふと、こんなかんがえが頭にうかんだ。
「そうか。六十年前には、ここをとおって、カードの秘密を知っている男がかよってきたってわけか。サン・ジェル
マンもチャプリツキィもとっくに墓穴の中でくさりはてるまで待たせておいて、やっと女君もあの世へおでましか。」
 ほそい階段がおわるとまた扉で、これも同じ鍵であいた。
 ゲルマンは、外へぬけるろうかへでた。
149 :03/02/19 17:55
         ♠Y

 夫人が死んで三日め、修道院で葬式がおこなわれた。ゲルマンもでかけた。信心なんてまるでないくせに
迷信深い彼は、老女のたたりが恐く、形ばかりのゆるしをこうつもりだったのだ。
 修道院はいっぱいの人だった。ひつぎの中の死人は白い服に白いずきんをかぶり、胸で手をあわせている。
ひつぎのまわりを喪服の一族の者や召使いがとりかこんでいた。だが泣いている者は一人もいない。夫人は
高齢だったし、今さら心をいためる人もなく、一族の人々などとうにこの世の人あつかいにしていなかったのだ。
 やがて式がおわりに近づいた。親類たちがじゅんに別れをつげ、つづいて一般の人が列になってすすんでいっ
た。
 ついにゲルマンも決心してでていった。もみの若枝をしきつめた床にひれふし、やがてたちあがると、死人と
同じような青い顔をして段々をのぼった。そして夫人の体に顔を近づけたとき……ふと夫人がかた目をあき、
にやりとした。
 あっとあとずさりしたとたん、ゲルマンは段をふみはずし、床にあおむけにたおれこんだ。頭をきつく打って、そ
のままくらくらっとなった……。
 その日めずらしくゲルマンは酒をのんだ。「老婆殺し」という心の声を酒でしずめようとしたのだが、そうはい
かなかった。それどころか、いろいろなおもいがもやもやとふくらんでくる。夜ふけになってようよう家に帰った彼は、
そのままベッドにころがってねむりこんだ。
 どれほどねむったのか。目をさますと、月の光がひたひたと部屋をひたしていた。時計をみると三時に十五分
まえ。またもや老夫人の顔がうかび、ゲルマンはねむれなくなった。
 そのとき、通りのほうからチラリとだれかが窓をのぞきこんだ。彼は気にもとめなかったが、一分ほどすると、こ
んどはおもての間で扉のひらく音がした。よっぱらった従卒かとおもったが、そのぶようなかるい足音がする。
そして部屋の扉があいて、白づくめの老婆がすーっとよってきた。それは伯爵夫人だった。
150 :03/02/19 17:56
「わたしの心できたのではありません。教えてやれとのおおせです。<3(トロイカ)><7(セミョルカ)><1(トウズ)>、
このじゅんでカードを張れば、勝ちます。ただし、一晩に一まいしか張ってはいけません。そして勝ったら、死
ぬまでとらんぷをしないこと。また、リザヴェータを嫁にしてたいせつにするならば、わたしを殺した罪はゆるし
てあげます……。」
 力のこもった声でいいおわると、またすっと扉からでていった。かすかな足音、扉の音、そしてだれかが窓
からのぞきこんで……。
 ゲルマンは、長いことぼうぜんとしていた。やっとのことでわれにかえると、玄関をみにいったが、扉には内が
わから錠がおりていた。
 彼は<3><7><1>の数字をしっかり紙にかきこんだ。

         ♠Z

 ゲルマンの頭は3と7と1にうめつくされた。なにをみても、3、7、1の形がすけてみえる。夢にまであらわれ
て、3の花がさき、7の門がそびえ、もはや彼の心には老夫人の顔もリーザも消しとんでしまった。なんとかし
てこの秘密のカードをじっさいにためしてみたい。そればっかりで、心のやすまるひまがない。そうだ、休暇を
とってパリへいこうか。パリでどうどうと勝負してやろうか……。
 そこへ、ながってもないチャンスがあらわれた。モスクワのチェカリンスキィが、ペテルブルグにやってきたのだ。
 チェカリンスキィは、ごく上流の紳士ばかりをあつめた会員制のとばくクラブをひらいていた。勝てば利の高い
手形をとり、負ければその場で現金ばらいをするというきまりで生涯をすごし、いつのまにかばくだいな財産を
つくったという男だ。陽気な性格、愛想のよさで人々をひきつけ、その経験深さでだれからも信頼されている
チェカリンスキィが、やってきたのだ。
 そこで、これまで舞踏会めぐりだった若い連中は、たちまち彼のとばくクラブにのりかえた。ゲルマンもナルー
モフにつれられてやってきた。
151 :03/02/19 17:59
 チェカリンスキィは六十ぐらい、いかにもおだやかな紳士といったふうをしていた。血色のよい丸顔には心の
よさがみえ、みごとな銀髪で、目もとにはいつも笑みがあって魅力的だった。チェカリンスキィはうちとけたよう
すで二人とあく手し、
「どうぞおくつろぎください。」
といって、また勝負にはいった。
 りっぱなサロンのほそ長いテーブルのまわりには、ぎっしりとトランプ狂たちがならんでいる。そこで、カードの
分配にはおそろしく時間がかかった。チェカリンスキィは一まいなげては手を休め、みんなにかんがえをまとめ
るゆとりをあたえたり、また、いろんな要求にもていねいに耳をかたむけたりしていた。
 そうやってやっと一まわりして、彼が新たにカードをくばろうとしたときだ。人々のうしろからゲルマンが手を
さしだした。
「わたしにもくばってください。」
「ついにやるのか。」
とナルーモフは喜び、つきがくるようにとゲルマンを祝福した。
 チェカリンスキィも笑顔で頭をさげると、
「かけ金はいかほどでしょうか? ちょっとここからでは書きつけがみえませんので。」
「四万七千。」
 ゲルマンの声に、人々はいっせいに彼をみた。チェカリンスキィもねんをおすようにいった。
「しつれいながら、どなたさまも二百七十五いじょうかけた方はないようにぞんじますが。」
「かまいません。わたしのカードをうけてくださるか、それとも……。」
「わかりました。ただおそれいりますが、みなさまの信用をたいせつにしておりますので、かけ金はこの場で精
算していただくきまりになっております。わたし一人でしたらおことばだけでじゅうぶんですが、いちおうきまりで
すので、持ち札に現金をのせていただきたいのですが。」
152 :03/02/19 18:01
 ゲルマンはポケットから手紙をとりだし、チェカリンスキィにわたした。彼はざっと目をとおすと、それをゲルマン
の持ち札にのせた。
 カードがくばられた。右手には<9>、左手には<3>がでた。
「やった!」
 ゲルマンは持ち札をさっとひらいた。あちこちでつぶやき、ため息がきこえた。
 チェカリンスキィもちらっとまゆをくもらせたが、すぐもとの、おだやかな笑顔になった。そして、
「ではどうぞおうけとりください。」
と、ポケットから手形をとりだし、きれいに支払いをすませた。ゲルマンは手形をうけとると、ナルーモフがまだ
ぼうぜんとしているまに、さっさと一人で帰ってしまった。
 つぎの晩も、ゲルマンはチェカリンスキィの家にあらわれた。すぐに人々が席をあけてくれたし、チェカリンス
キィも愛想よく笑顔をかえした。
 一勝負すんだところでゲルマンもカードを張り、きのうの倍額をかけた。
 カードがくばられた。右に<ジャック>、左が<7>。ゲルマンが持ち札をおこすと、<7>だった。
 ほーっというような声が、ホール中にあがった。チェカリンスキィもはっきり顔色かえたが、その場で九万四千の
しはらいをした。ゲルマンはそっけないたいどでうけとり、そのままホールをでていった。
 三日め。またもゲルマンはクラブにあらわれた。一同も彼を待ちうけていて、将軍やおえら方、ほかのゲーム
をしていた者までが、この勝負をみようとしてテーブルをとりかこんだ。
153 :03/02/19 18:02
 チェカリンスキィはかわらず笑みをうかべてはいるが、顔色ははっきりとあおざめている。まるで一騎打ちをみる
ようで、二人の手が二組のカードをぱっときりさき、チェカリンスキィのきったカードをゲルマンがきりなおした。
 ゲルマンが自分の持ち札を張り、その上に手形の山をのせた。あたりはしずまりかえった。カードをくばるチェ
カリンスキィのの手がふるえている。
 右手に<スペードの女王>、左に<1>がでた。
 ゲルマンもふるえるおもいで持ち札をおこすと、さけんだ。
 「トウズだ!」
 「いや、<女王>の負けとぞんじますが。」
 チェカリンスキィがあくまでやさしく、心からの笑顔をみせていいなおした。ゲルマンが、はっと自分の手をみると、
張ったはずの<1>は消え、<スペードの女王>がひらいていた。
 この指がまちがえるなんて。そんなはずがない!
 そのとき、スペードの女王の顔にくしゃくしゃとしわがより、にやりとかた目をつぶってほくそえんだ。
 「あの婆あだ!」
 ゲルマンは絶叫し、たちすくんだ。

         ♠[

 ゲルマンは今、精神病院の十七号室にいる。なにをたずねてもへんじをしない。ただ、「トロイカ・セミョルカ・
トウズ」、「トロイカ・セミョルカ・トウズ」、とつぶやいているだけだ……。
15441:03/02/19 18:10
>>150
の3行目、とらんぷをトランプとカタカナにすべきですた。
ほかミスあったらごめんちゃい。
15541:03/02/19 18:30
また目に付いてしまった・・・・。
>>150
したから7行め、ながってもないは ねがってもない が正しかったですた。
156吾輩は名無しである:03/02/20 13:45





1571828nen:03/02/20 16:11
>>134-153
とてもすばらしい。怪奇児童文学としてもすぐれていると思いました。
渡辺節子氏の文もやさしくて読みやすいだけでなく、作品の神秘的な
ところも余さず書いています。

簡素な縮訳ということもあり、全訳版からすると削除した箇所もたくさん
あるにくわえ、あえて変更したところもあるのではと思います。たとえば、
結末の精神病院に入ったゲルマンがつぶやく言葉は、全訳では
「3、7、1」「3、7、Q」です。渡辺さんのは「3・7・1」を
繰り返しています。ゲルマンの未練を強調したかったのかもしれません。
他にはばあさんの葬式でゲルマンが卒倒したと同時にリーザも気を失うのが
全訳ですが、児童ものではそこまで書かなかったようですね。
158吾輩は名無しである:03/02/21 16:50
>>16
ニューヨークのMETでオペラ見たよ。割と象徴的な演出でした。
159マダムB:03/02/21 22:12
いーなー、生オペラ。

METの音楽監督をつとめていたジェイムズ・レヴァインがドレスデン国立
管絃楽団を率いてルカ教会で録音したグラモフォンのCDがある。
オネーギン役のトーマス・アレンは1987年のこれが録音デビュー。そして、
現代最高のタチアーナと言われるミレッラ・フレーニ。
ふたりとも当初は、ロシア語テキストに難儀したらしい。
解説書から、チャイコフスキーの興味深いエピソードを少し引いてみる。

○チャイコフスキーは、オペラ作曲の際、特定場面を集中的に構想するのが
 常であり、タチアーナが夜通し手紙を書く場面から取りかった。ちょうど
 その頃、彼自身も音楽学院の弟子のアントニーナから手紙を受け取る。
 彼女に対して冷淡なオネーギンを演じるまいと思った作曲家は結婚する
 ものの、神経衰弱から自殺未遂まで起こす。重荷に感じていた同性愛を自制
 するため家庭生活に憧れていたのに、これは何とも皮肉な展開だった。

160マダムB:03/02/21 22:16
○教養あるロシア人によく知られた『オネーギン』のオペラ化は、チャイ
 コフスキーには二の足を踏むものであったが、ところどころ適当な個所、
 つまり「叙情的場面」を拾うことにした。プーシキンの詩を用いた部分も
 あるが、チャイコフスキーが書いた詞は、理想のオペラを作るために劇的
 コントラストに対する直観を大切にしている。たとば中央社交界と田舎家を
 対比させるのに、上品なポロネーズと面白おかしいワルツの2種のダンスを
 使い分けるといったようなこと。
○作曲期間は1877年5月から翌年2月であったが、本格的な上演は1881年
 1月、モスクワ・ボリショイ劇場。それまでは音楽院で部分的に上演され
 たり、歌手の個人宅で何とか通し上演(この時、チャイコフスキーは
 外遊中)されたり、プロでない学生による上演だった。
○チャイコフスキーはタチアーナのラーリン家と同じ田舎領主の層の出身。

小澤征爾が全幕通しでやらないだろうか。ま、やるとしても一部かな?

1611828nen:03/02/24 20:11
オペラの「オネーギン」とはいまいちイメージがわかないのですが、
一度みてみたいものです。再評価の波が立ちあがればいいのですね。
1621828nen:03/02/28 20:50
『スペードの女王』再読してみました。訳者によってさまざまでした。
いくつか紹介したいと思います。どの訳がいいと思うか、意見のほうを
よければお願いします。また訳者を当ててみてください。

 二人の手はいっせいに動いて、二組のかるたの封が宙にとんだ。チェカリンスキイの
まず切った札をゲルマンが切り直した。さらに彼は自分の札を張り、そのうえに手形を
山と積んだ。それはあたかも決闘を見るようであった。不気味な沈黙が四囲を領した。
 チェカリンスキイはふるえる手に札をくばった。右手には『女王』が、左手には『一』が
出た。
「『トウズ(一)』がやった!」とゲルマンは言って、持ち札を起こした。
「いや、『ダーマ(女王)』の負けとぞんじますが」とチェカリンスキイがやさしく言いなおし
た。
 ゲルマンは愕然と自分の手を見た。張ったはずの『一』は消えて、開いたのはスペー
ドの『女王』であった。彼は自らの目を疑った。──この指が引き違いをするはずは
ないのだが。──
 そのとき、スペードの『女王』が目をすぼめてほくそえみをもらしたと見えた。その生き
写しの面影に、彼は悚然とした。……
「あいつだ!」彼は目をすえて絶叫した。
 チェカリンスキイはすばやく手形の山をかきよせた。ゲルマンは立ちすくんだまま動か
なかった。
1631828nen:03/02/28 20:51
各自がカルタの封を切った。チェカリンスキーがカルタをまぜた。ゲルマンはそれを切って、
自分の札を張り、それを銀行券の束でおおった。それは、さながら決闘であった。深い
沈黙があたりを領した。
 チェカリンスキーは札を配りはじめた。その手はふるえていた。右にはクィーン、左には
1が出た。
「1の勝ちだ!」とゲルマンは言って、自分の札をおこした。
「いや、あなた、女王は負けでございますよ」と、チェカリンスキーがいたわるように言った。
 ゲルマンは戦慄した──実際、彼の手には1のかわりにスペードの女王が立っていた。
彼は自分の眼を信ぜず、どうして札を引きちがえたかわからなかった。
 そのとき、彼には、スペードの女王が眼を細めて、にたりと笑ったように見えた。あまり
の似かたに彼は悚然となった……
「婆あだ!」と彼は、恐怖に駆られて叫びだした。
 チェカリンスキーは、勝った銀行券を自分の方へ引寄せた。ゲルマンはじっと立ちすく
んでいた。
1641828nen:03/02/28 20:52
ふたりはそれぞれ新しいカードの封を切った。まずチェカリンスキイがカードを切った。ゲル
マンはそれを切りなおして、自分のカードを張り、その上に銀行券の束を積んだ。それは
まさに決闘であった。深い沈黙があたりを支配した。
 チェカリンスキイがカードを配りはじめた。その手は震えていた。右に「クイーン」、左に
「一(トウーズ)」が出た。
「『一』の勝ちだ!」ゲルマンは叫んで、自分のカードを起こした。
「いえ、あなたさまの『女王』の負けでございます」
チェカリンスキイはおだやかに言った。
 ゲルマンは一瞬身を震わせた。たしかに、手のなかのカードは「一」ではなくて、スペー
ドの女王だった。彼は自分の眼が信じられなかった。いや、合点がいかなかった。この自
分がカードを引きちがえようとは。
 その瞬間、彼には手のなかのスペードの女王が眼を細めて、にやりと笑ったような気が
した。彼は愕然とした、あの老婆に生きうつしではないか……
「あの婆あだ!」彼は恐怖の叫びをあげた。
 チェカリンスキイは負けになった銀行券の束を手もとへかきよせた。ゲルマンは身じろぎ
もせずに突っ立っていた。
1651828nen:03/02/28 20:55
個人的には>>164に引用した分が好きです。
>>162は古株の人が訳しています。
はっきりいって研究者たちはその古株に気を遣いすぎて
います。あまり名訳だとは思えないです。
16633:03/02/28 21:37
ひさしぶりに書き込みが。まだスタレておらんのだな。

「スペードの女王」の第5章葬式の場面にみられるように、全訳版の作品は
怪奇というより心理劇だと思われる。全訳版の葬式の場面では

 その瞬間、彼には、死人があざけるように彼を見て、片眼をしばたたいたように思われた。
仰向けに下へころげ落ちた。リザヴェータ・イワーノヴナも気を失った。

のであって、決して死体が動き出したりしたわけではないのだ。秘密を教えに来る
場面でもゲルマンはへべれけに酔っている。つまり譫妄症がひどくなってきている
ことを意味している。ラストの賭けで症状が絶頂に達するわけで、わしは本当に
ゲルマンがゲームで大勝していたのは、単なる偶然か、それとも勝負すらもともと
なかったことではないかという気もするのだ。
167吾輩は名無しである:03/03/03 19:56
葬式の場面でゲルマンは老婆の隠し子じゃないかと
参列者がイギリス人にふきこむ台詞は笑えた。
イギリス人は「oh?」と答えるんでしたよね。
168吾輩は名無しである:03/03/04 21:36
すげえコピペサイトだな。わしもいっちょやってやるか。


<むかし世に貧しきひとりの騎士ありけり…>

むかし世に
貧しきひとりの騎士ありけり。
ことばすくなく
飾りなく
打見に面ざし悲しげに
色蒼ざめたれど
心すなおに
胆ふとかりき。

人のさとりのおよばざる
さる幻をいだきしが
それが思いはいとふかくかれが心に刻まれぬ。

ジュネーヴさしてゆく旅の
道のかたえの十字架のもと
イエス・キリストが御母なる
おとめマリヤのすがたを見たり。

それより心恋いこがれつつ
ほかなる女を見もやらず
世をおわるまで
そのひとりにも
言問うだにも
うたてく思う。
169吾輩は名無しである:03/03/04 21:37
それより頸には
布にかわりて
数珠をうちかけ
人目いといて
はがね造りの兜の面頬ひきあぐることもなかりき。

神にもイエス・キリストにも
はた精霊にも
祈らざりければ
さてもあやしの騎士かなと
世のひとかたみに語り合えり。

うちつぎて夜もすがら
聖母が御像のまえにひざつき
愁いのまなかい打ちそそぎ
ことばなくなみだ流せり。

信と愛とに満てる心を
ゆるがぬ誠の願いにゆだね
楯のおもてに血汐もて
Ave,Mater Dei(1)としるしたり。

かかりしほどに
おのこらは
ひるむ敵ばら迎えうち
心の女が名をおらびつつ
パレスチーナの荒野を馳せぬ。
170吾輩は名無しである:03/03/04 21:37
Lumen Coelum,Sancta Rosa!(2)
騎士は並びなき大音声をあげ
攻めたたかいて
ひしめきかこむ邪教のやからを蹴散らせり。

はるけきおのが館に帰り
かたくこもりて日をすごすほど
恋こがれつつ
愁いにやつれ
聖餐も受けで空しくなりぬ。

いまわのきわに悪魔きたりて
騎士が霊をば
おのれが国に
つれ行かんとたばかりて
いとあしざまに神に告げたり。

これなる者は神にも祈らず
精進の勤めもおこたり
イエス・キリストが御母の上に
道ならぬ思いをかけぬと。

されど聖母は
かれが上をば
いともあわれにおぼしめされて
ふた心なきおのれが騎士を神の国へと迎え入れぬ。


    (1)聖母に幸あれ
    (2)御空のひかり、きよきばら!
171吾輩は名無しである:03/03/07 21:55
ムムッ。『白痴』のか!
172吾輩は名無しである:03/03/07 22:52
このスレで話題のプーシキンの本を図書館で借りてきたよ。
でも、軍人が出てくるロシア小説、あんまり好きじゃない。
1731828nen:03/03/12 16:27
>>172
プーシキンの本とはどのほんでしょうか。よかったら教えてください。
作品で軍人がでてくるものといえば、『大尉の娘』『ピョートル大帝の黒奴』
『ベールキン物語』などがあります。
1741828nen:03/03/12 16:41
>>168-170
これはこれは!
ドストエフスキーの『白痴』を読む人にはいい資料の引用どうもです。
私も詩集で読み直してみようと思います。
175172:03/03/12 20:01
>>173
平凡社のロシア・ソビエト文学全集/2というのです。
収録されてる作品は、大尉の娘、ピョートル大帝の黒人、故イヴァン(中略)ベールキンの物語
スペードの女王、ドゥブローフスキイ、キルジャーリの6つでした。

チェーホフなんかだと、市井の人が登場するお話が多いですが、
プーシキンは(私が読んだ中では)貴族や兵隊の世界の話が多いみたいですね。
1761828nen:03/03/13 21:52
プーシキンも貴族で、追放されていた時期にも軍人や貴族に
世話になっていたこともあり、その過去の環境が作品に反映されていると
いえそうですね。
ただプーシキンはジプシーの世話になったこともあるのですよ。
これはこれでおもしろいと思います。
177吾輩は名無しである:03/03/17 23:33
「死せる魂」の主題は
プーシキンから譲られたそうですが、
プーシキンだったらどんな風に書いてたかな??
1781828nen:03/03/18 20:19
>>177
プーシキンはゴーゴリの『ジカンカ近郷夜話』を高く評価しましたが、
その評価基準は詩人の散文におけるフォークロア的な姿勢がみられると
思うのです。
しかし、『死せる魂』となると創作として興味を覚えたとはいえ、
世俗的すぎたのかもしれません。だからゴーゴリの諧謔やどぎつさを
知っていた詩人は、主題をゆずったと想像できます。
もし詩人が『死せる魂』を書いていたなら、あっさりした風刺ふうに
変貌していたでしょう(笑)
179吾輩は名無しである:03/03/20 17:22
ゴーゴリはリアリストで、詩人ではない。
そういえばゴーゴリスレきえちったね。
180マダムB:03/03/22 00:21
11月にキーロフ・オペラが来日して「エフゲニー・
オネーギン」を演るようです。

9日(日)15:00神奈川県民ホール19,000〜40,000円
11日(火)12日(水)18:30東京文化会館20,000〜40,000円
*日本語字幕付

行きたいなー。でも、子どもの歯科矯正で恐ろしく費用が
かかりそうなのでw、当分ぜいたくはできない…。残念。

ちなみに、15&16日はNHKホールでプロコフィエフ
「戦争と平和」、17〜19日は東京文化会館でムソルグスキー
「ボリス・ゴドゥノフ」の予定だそうです。

>ゴーゴリ
『外套』が、メルヴィルの『バートゥルビー』やカフカの『審判』
などと頭の中でごっちゃになりますが(鬱屈した事務屋の話だと
いう単純な理由から)、読後の印象が一番ユカイなのは、やはり
『外套』です。
ラストで霊の世界へ行っちゃうのって、何かルーシ的な印象が…。
ナボコフの『目』や『透明な対象』なども、そういうルーシ的な
ところから来ているのだと感じる。朝鮮系の作家が書いた『リス』
も読みかけでやめてしまったけれど、そういう内容でした。
異界のものがごく自然に跳梁跋扈する幻想性に、民族的なものを
感じます(多民族だけれど)。
1811828nen:03/03/24 19:48
>マダムBさん

ロシアは多民族国家(連邦)なのに、民話の種類となると
どこか似ているような気がします。とくに霊魂の考え方などは
土着の宗教と正教との融合が色濃いです。

オペラの情報ありがとうございます。それにしても値段高いですねえ。
東京までいくにもお金かかるから、どうしようか、と思うのですが、
私も無理っぽいです。
もし観賞される人がいたら、感想を期待したいです。
182若者の墓(ニコライ・コールサコフの思い出にささげる):03/03/31 18:26
   ……かれは消えた
恋と楽しみに育まれたやさしい若者
彼はいま ふかい眠りとおだやかな
墓のさむさに つつまれている……

   春の木陰に輪をえがいて
こころゆくまで舞いたわむれる
乙女のすがたを かれは愛した。
けれど にぎやかな輪おどりのなかに
もはや かれの歌ごえも聞こえない
183吾輩は名無しである:03/04/07 00:16
わたしの名前の なにがきみにいるのだろう?
わたしの名前など 亡びてしまうだろう
遠い岸辺にくだける波の 悲しいざわめきのように
ひっそりした森の 夜の葉ずれの音のように。
1841828nen:03/04/07 21:47

<あなたにとって私の名前がなんになろう?>

あなたにとって私の名前がなんになろう?
それははるかな岸の悲しい波の音のように
うつろな深山のくらい夜のひびきのように
やがてはかなく消えはててしまうだろう。

そしてむなしく思い出の紙の上に
いのちの失せたその跡をとどめるばかり
さとるにかたい言葉もて書きつづられた
ひめやかな墓の飾りのいしぶみのように。

私の名前がなんのよすがとなるだろう?
うつろいさかまくあまたのおののきのなかに
ひさしく忘れ去られて もはやあなたの胸に
いとしい清い思い出を蘇らせはしないだろう。

けれど悲しみのおとずれる日にはおだやかに
私の名前をくちずさみ そして心に告げなさい──
わたしを思うひとりの人がいるのだと
わたしはその人の心のなかに生きているのだと。
1851828nen:03/04/15 21:41
dat落ちを防ぐためにも何か書いておかないと。

どなたかプーシキンの墓に行ったことのあるという人います?
186吾輩は名無しである:03/04/19 23:28
2年ほど前、ペテルブルグに観光旅行に行った。
案内のお兄さんに日本でロシア文学はすごい人気だと言ったらうれしそうにしていた。
ロシアでは誰が一番読まれているのかと訊いたらプーシキンだと言われた。
運河沿いのプーシキンの博物館に行ったら小学生か中学生の団体がいて説明を受けていた。
係りのおばさんが熱心に説明してくれたが、ロシア語なので日本から来たのかと訊かれた
以外はさっぱりわからなかった。
本当はトイレの場所を訊きたかったんだ! 我慢していて展示物を眺めるどころでなかった。
プーシキンの墓は行ってません。どこにあるかのも知りません。

187山崎渉:03/04/19 23:29
   ∧_∧
  (  ^^ )< ぬるぽ(^^)
188吾輩は名無しである:03/04/25 21:13
あんなけるんに。
1891828nen:03/04/28 17:19
>>186
観光旅行に行った書き込み、どうもでした。
運河沿いのプーシキン博物館はプーシキンが決闘し重傷を負ったときに
運び込まれた家です。
遺骸はペテルブルグから秘密裏にミハイロフスコエに運ばれました。
ミハイロフスコエに近いスヴィヤトゴルスキイ修道院に詩人は埋葬されました。
ミハイロフスコエはド田舎で国立公園に指定されています。
行き方はモスクワもしくはペテルブルグからプスコーフに向い、そこからまた乗り継いで
行かねばなりません。
190吾輩は名無しである:03/04/28 19:34
そこ、ホテルあんのか?
1911828nen:03/05/06 20:28
>>190
プスコーフに一泊すれば、日帰りでどうにかなります。
192180:03/05/07 16:46
博物館の展示品には英語の解説はついていないの
でしょうか?

ロシアは年をとったときに、人生を総括するような
意味合いで旅してみたい土地(まだ、モスクワ空港の
トランジットホテルにしか行ったことがないのです)。
その修道院にも必ず行ってみたいです。

189の1828nenさんの書き込みは、訥々としているのに
何かものすごく詩的ですね。情景が目の前にさーっと
拓けるような気がしました。
1931828nen:03/05/07 20:47
>>192
ロシアは外国人用の三つ星以上のホテルや大きい美術館をのぞいて
あまり英語による解説などはなされていません。
私はペテルブルグの詩人が息を引き取った家には行きませんでしたが、
モスクワのプーシキンの家博物館には行きました。英語の解説を期待
したのに、そううまくはいきませんでした。

>ロシアは年をとったときに、人生を総括するような
>意味合いで旅してみたい土地(まだ、モスクワ空港の
>トランジットホテルにしか行ったことがないのです)。
>その修道院にも必ず行ってみたいです。

60歳くらいの日本人観光客も珍しくないですよ。
194吾輩は名無しである:03/05/12 20:39
ロシア、香港・中国からの空の便のシャットアウト。あげ。
195吾輩は名無しである:03/05/14 21:35
>>193
1828nenよ、アルバート通りのプーシキンの家博物館、月曜日閉まってねえ?
196吾輩は名無しである:03/05/14 21:39
博物館、美術館は月曜日大抵閉まってるやろ。ロシアでも例外はなし。
197吾輩は名無しである:03/05/14 21:41
月曜日に開いてるのはクレムリンだよ。
198吾輩は名無しである:03/05/15 05:01
まだ「スペードの女王」を読んだばかりなんですが、
夢中で引き込まれました!
短編でこれだけ怖い話を書けるなんて・・・!
1991828nen:03/05/15 21:00
>>198
おお、「スペードの女王」を読まれましたか。
この短編は世界の怪奇小説のなかで屈指の名作だと思います。
たんたんとした語り口なのに、ぐいぐい引き込む力があります。
2001828nen:03/05/15 21:02
「地球の歩き方46ロシア」によれば、アルバート通りのプーシキンの家博物館は月・火が休館のようです。
201吾輩は名無しである:03/05/15 21:21
アルバート通り、それは憧れの地名
202吾輩は名無しである:03/05/15 21:24
またはモスクワの原宿。
203吾輩は名無しである:03/05/15 21:37
モスクワで一番にぎやかな場所。
204ちょっと:03/05/19 20:32
「ぼくはプーシキンがお気に入りです」
とロシア語で言うとしたら?
205吾輩は名無しである:03/05/19 20:59
プーシキン・モイ・リュビーミイ・ピサーチェリ
2061828nen:03/05/20 20:41
>>204
>>205さんのレスでいいのではないでしょうか?
発音はわかりかねますが、

   Пушкин− мой любимый писатель

で、いけるでしょう。
207205:03/05/22 20:40
>>206
Я люблю этого Пушкин.
でもいい。
20833:03/05/22 21:22
おっ、あがってる。

>>189
プーシキンの墓碑のあるところを正確にいえば
プスコフ県スヴャトゴールスキイ修道院墓地だろう。「県」をつければより正確。
決闘は1837年1月27日に行なわれ、死んだのは28日。葬儀は2月1日に行なわれた。
埋葬は2月6日。
209吾輩は名無しである:03/05/22 21:31
ああ、即死じゃなかったんですか。
それは、むごい。
2101828nen:03/05/22 21:45
>>209,>>33=208
臨終は一日ずれていると思われます。
28日に妻と子供たちに別れを告げ、死んだのは29日でした。
プーシキンの臨終の言葉は
「人生は終わった。息苦しい、胸がつまりそうだ……」
と伝えられています。
ということは致命傷を負ってから、詩人は丸一日苦しんだことになります。
想像を絶します。
21133:03/05/22 21:47
>1828nen
指摘どうもっす。
212吾輩は名無しである:03/05/23 00:45
>>210
女房はすごい美人だものなぁ・・・あんな女の為なら
命賭けたって惜しくないと思われ・・・(笑

このスレ初見ですが、面白い! 
>>45-68 木村彰一訳←大変な名訳でつな、驚いた。
>>117-126「盗賊の兄弟」訳者川端香男里氏は川端康成の娘婿でしょうに。
リズムや香気、詩情…やはり訳者次第でずいぶん違いまつな。

プーシキンの母方曽祖父は、アビシニアの出身でつか!>>81
詩を捨てたランボーが向かった地、武器商人として後半生を生きたアビシニア
「アビシニアのランボー」という名伝記がありまつな…意外なプーシキンとの
繋がり・・・。
その曽祖父は一時トルコの後宮(ハレム)に居たという話で、
橘外男作「コンスタンチノープル」が浮かんだ。謀略でトルコの後宮に
閉じ込められたドイツ美女の物語…トルコハレムの様子がまるで見てきたようにw
喚起力のある描写で書かれていて、黒人の宦官頭や宦官数百人、女主人公を
陵辱する奴隷達など出てきまつ・…そうか、プーシキンの…再読するか、って(笑

>>86-88 トルストイ「アンナ・カレーニナ」のモデルがプーシキンの娘…
あの美人妻と、エキゾチックな血も混じるプーシキンとの間の娘なら、
さもありなんと・・・。娘の肖像のあるサイトとかないでつかね、見たいぞ。

いや、楽しませてもらいました、とりとめもなく書き散らしてすまそでつ。
作品のUP乙かれです、優良スレですな、ぜひ続けてください。

213212:03/05/23 02:09
>>212 2行目の(笑 ←抹消。なにげに書いたが、まずかった。
けしてプーシキンを揶揄しているわけではありません、誤解なきよう。
妻の美女ぶりへの感慨
2141828nen:03/05/23 16:06
>>212-213
いやいや(笑 は付けてもいいと思いますよ。
どうしてかといいますと、プーシキンの妻ナターリヤは社交界で成功しましたけど、
決闘に関することでは、ナターリヤは実はプーシキンと決闘したダンザス(ダンテス)と
不倫の関係を築こうとした可能性が、ダンザス自身の手紙か何かで明らかになっている
からです。
このあたりの事情はきわめて複雑で興味が尽きないところなのですが、とりあえず
ナターリヤは美しかったけど性格的問題は詩人を悩ませたといえるでしょう。
2151828nen:03/05/23 16:12
決闘の約半年前にプーシキンが自分の命はもう長くないだろうことを
予感していたと思わせる有名な詩があります。コピペしますね。


          Exegi monumentum

わたしはおのれに人業(ひとわざ)ならぬ記念碑をたてた。
そこに民のおとないは絶えぬであろう。
それはアレクサンドルの帝(みかど)の記念柱よりも
なお高く屈することなくそびえ立つ。

いな わたしの亡びることはないであろう。
しかばねは灰となるとも わが魂は朽ちはつることなく
世々わが竪琴にやどりて 月の下に
歌びとひとりだに生きる限り わが栄光は亡びない。

わが噂は大いなるロシヤの国原にあまねく伝わるであろう。
そこに住むなべての民がわが名を呼ぶであろう
誇りたかきスラヴの子孫も フィンの民も
今は未開のツングースも 荒野の友なるカルムイクも。

わたしはすえながく民のいつくしみをうけるであろう
竪琴をかなでて よきこころを呼びおこし
わがきびしきとき世に 自由をたたえて
たおれた者へのなさけを呼びかけたゆえに。

おお ミューズよ 神のこころにしたがえ
さげすみをおそれず ほまれを求めず
うつけき者の言葉に耳をかすこともなく
たたえの声も またそしりもひややかに聞け。
     一八三六年八月二日 カーメンヌイ・オストロフ
216吾輩は名無しである:03/05/24 00:45
214-215を読んで、『オネーギン』のタチアーナにさせたラストの決心、
つまり貞節を守り通させるようにしたことを考えると、何か切なく
なってきますねー。

壮大なるロマンスが多いロシア文学者のなかでも、プーシキンほどロマン
ティックに生きた人もなかなかいないだろうと思って『プーシキン伝』の
ようなものを読みたくなりました。

ロシア人研究者の書いたものがいいなと思いましたが、邦訳でもっとも新しい
水声社のアンリ・トロワイヤの手になるものが772Pで、7000円!
ベリンスキィの書いたものものも値段が張るのでびっくりです。
図書館に頼るとして、買うならやはり邦人研究者のものかなと思いました。
2171828nen:03/05/26 21:04
>壮大なるロマンスが多いロシア文学者のなかでも、プーシキンほどロマン
>ティックに生きた人もなかなかいないだろうと思って『プーシキン伝』の
>ようなものを読みたくなりました。

>>39さんに、情報がありますよ。
ロマンティックといえば、若いころからプーシキンは多くの女性をナンパ
しています。「ドン・ファン表」の存在をご存知ですか? 詩人が声を
かけた女性(婦人・夫人・その他)が一覧になっている表なのですが、
この中に本名がわからずともかなり有力な立場にある貴族の夫人とか
入っていたりするようですね。
ある舞踏会の席で『スペードの女王』のタチヤナのような老嬢の頬に
カーテンの陰からいきなり飛び出してきてキスをしたことが皇帝に
知られ問題になったりしたエピソードもあるようです。尤も、皇帝は
「よろこんだのはむしろあの婆さんの方だろうよ」と言って不問に
帰したとか(笑)

トロワイヤの『プーシキン伝』はちょっと高いなあ…。
2181828nen:03/05/27 15:10
上の記事、

>『スペードの女王』のタチヤナのような老嬢



『スペードの女王』の伯爵婦人のような老嬢

と訂正しまっす。
219吾輩は名無しである:03/05/27 16:15
(乱調文学事典)
プーシキン=シーチキンを食べておならをすること。
                  既出すか?
220吾輩は名無しである:03/05/27 21:33
221シェクスピ:03/05/28 01:21
プーシキンめっちゃ好き
222吾輩は名無しである:03/05/28 05:21
>>5
ロシアのプーキシン外相
ダッケ?
223山崎渉:03/05/28 08:49
     ∧_∧
ピュ.ー (  ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎                      山崎渉
224吾輩は名無しである:03/05/28 09:35
>>1828nenさん
217の書き込み拝見して、ますます伝記が読みたくなりました。
2251828nen:03/05/29 16:32
伝記でも指摘されているとおり、プーシキンの人生は
彼の作品のなかのエピソードとあまりにもドラマチックに
重なることがあります。
『オネーギン』のレンスキーなんかそうですね。
226吾輩は名無しである:03/05/29 18:51
>>168-170
ドストエフスキーのプーシキンへの言及は、その『白痴』だけじゃなく
『貧しい人々』にも。

「…私は無学な人間です。これまでにわずかしか読んでいません。そして今
プーシキンの本と出会ったわけです…ワーリニカさん、こういうことも
あるんですね、こうして生きていながら、自分のすぐ近くに、自分の一生が
すっかり事細かに書かれてる本があることを知りませんでした。それに、
自分でもそれまで思ってもみなかったことが、そういう本を読み出すにつれて、
何もかも少しずつ思い出しもするし、発見もするし、その謎も解けてくると
いったことが!・…」    ―『貧しき人々』から―

なかなか凄いハマり方です<ドストエフスキー
227204:03/05/30 21:36
>>205-206
おくれましたが、どうもっす。あしたロシア人と交流会があるので言ってみま〜す♥
228吾輩は名無しである:03/06/01 20:27
プーチー・プー
229吾輩は名無しである:03/06/01 21:09
プーシキンについて詳しい方多いようですので教えて下さい。
ネットで河出版全集第1巻の収録作品を調べたら「コーカサスの捕虜」という詩が入っています。
私、ロシヤ文学は人並みに好きな積りですが、今まで「コーカサスの捕虜(又はとりこ)」という
のはトスルトイの少年物語と理解してました。以前少年少女文学全集が盛んに出版されていた時代
「コーカサスの虜」は「イワンの馬鹿」と並んでトルストイの作品としてよく出されていました。
上記プーシキンの「コーカサスの捕虜」は読んだことありませんし、手元に全集もありません。
トルストイは原久一郎訳の全集が手元にありますが、特に解題でプーシキンにも触れていません。
それでこの両者の関係なのですが、プーシキンの詩を元にトルストイが少年物語にしたのか、
古くからある話を元に両者が書いたのか、たまたま同じ題の作品に過ぎないのか、という点、
ご存知の方いらしたら教授願います。
2301828nen:03/06/02 18:43
コーカサスの捕虜
   ──物語──        川端香男里訳


   献 詞

      N・N・ラエーフスキイに

   ほほえみをもって受け取ってくれ、友よ、
   自由な詩神(ミューズ)のおくりものを。
私は君に捧げていたのだ、
追放された竪琴(リーラ)の歌と
   霊感にみたされた無為の時を。
悲しみに沈み、罪もなくほろび行き、
四方からぼくをそしるささやきを聞き、
   裏切りの冷たい短剣が
   愛の重苦しい夢が
   ぼくを引き裂き、ぼくの力を奪ったときも、
君のそばなら安らぎを見出すことができた。
安らぎを得──ぼくらはたがいに愛しあい、
わが上に荒れ狂う嵐を鎮め、
ぼくは安らかな隠れ家で神々を頌めたたえた。
2311828nen:03/06/02 18:44
   別離の悲しい日々には
   ぼくの物思わしげな歌声が
   私にあのコーカサスを思い起させた、
いかめしい隠者、陰鬱なベシトゥ山は
コーカサスの村(アウール)や田畑の
五つの頭をもてる支配者で、
   ぼくにとっては新たなるパルナスだった。
忘れることができようか? 石ころだらけの山の頂きを、
沸き出ずる泉、うらさびれた平原を、
炎熱の荒野を、君とぼくとが
   若き日の感動を分けあった土地を。
この山の中には雄々しい盗賊が駆け回り、
   ひっそりとした静寂の中には
   霊感の荒々しい精霊がひそんでいる。
   おそらくここで君は思い出すだろう、
   心にしみるなつかしい日々の思い出を、
   情熱と情熱のせめぎあいを、
おなじみの夢、おなじみの悩みを、
   そしてぼくの魂の秘密の声を。
2321828nen:03/06/02 18:45
ぼくたちの人生は離れ離れになった、
安らぎの抱擁のなかで花咲く年を迎えるや
勇者たる父を継ぎ、選ばれたる若者、君は
流血の戦野、降りそそぐ敵の弾丸のもとへと
誇り高く飛んで行ったのだ。
祖国は感動し君をいつくしんだ、
愛らしい犠牲(いけにえ)のように、希望の確かな光として。
ぼくは迫害の手にかかり、早くから悲しみを知った。
中傷と、復讐に燃える無智の犠牲となった。
だが、自由と忍耐をもって心を鍛え、
   ぼくはよき日をわずらいを忘れて待っていた。
   そしてこの友、あの友の仕合わせは、
   ぼくには、あまきなぐさめとなったのだ。
2331828nen:03/06/02 18:46
   第一部

 村(アウール)の家の戸口にのんびりと
チェルケス人たちが坐っている。
このコーカサスの息子たちの話は
死ぬか生きるかの心乱れる戦(いくさ)のこと
自分の持馬の美しさ、はたまた
野生の女の愛撫の逸楽のこと。
思い出すのは、過ぎ去った日々の、
あがらいがたき襲撃のこと、
老獪なお頭(かしら)たちのはかりごと、
むごたらしいチェルケスのサーベルの一撃、
避けようもない射撃の的確さ、
打ち砕かれ灰にされた村々のこと、
そしてとりこにされた黒い瞳の女たちの愛撫のこと。
2341828nen:03/06/02 18:49
 話は静かに続いて行く。
月が夜霧のなかに浮かぶ。
すると不意に現われた、騎馬のチェルケスが。
年若いとりこを投縄で
急いでひきずって来たのだ。
「ロシヤ人だぞ!」──掠奪者は絶叫した。
村中が叫び声を聞きつけて
怒りひしめき押し寄せた。
だが捕虜は冷やかにおし黙り、
二目と見られぬ傷を顔に受け、
しかばねのように身動きもしなかった。
敵の顔も見ようとはせず、
脅かしも叫びの声も聞いてはいない。
その頭の上には死の眠りが舞い、
死の冷気がその息をとらえている。

 そして長いこと年若い捕虜は
重苦しい忘却のなかに横たわっていた。
すでにその頭の上には真昼が
楽しげな光に包まれて輝いていた。
そして生気が彼のなかによみがえり、
定かならざる呻きの声が口からもれた。
日の光にあたためられて
あわれな男はそっと身をおこした。
弱々しい眼差しであたりを見まわした……
すると眼にはいる──頭の上に
峨々(がが)たる山々がそびえているのが。
2351828nen:03/06/02 18:50
盗賊をなりわいとする種族の巣、
チェルケスの自由の防壁。
若者は自分が囚われの身であるのを思い出した、
恐ろしい夢のおののきのように、
すると聞こえる──不意に鳴り出すのだ、
枷をはめられた二つの足が……
すべてを、すべてをこの恐ろしい音が語るのだった。
眼の前の世界が暗くなった。
さようなら、神聖なる自由よ!
彼は奴隷だ。
      あばら屋のかげ、
刺のある柵のそばに横たわっている。
チェルケス人は野に出(い)でて、見張りはいない、
人気(ひとけ)のない村(アウール)は静まりかえっている。
彼の前には荒涼たる平原が
緑のヴェールのようにひろがっている。
かなたには同じ形の丘の頂きが
列をなしつらなっている。
頂きと頂きの間にただ一つの道があり、
暗い遠いかなたで姿を消している──
すると若い捕虜の胸は
重苦しい思いにかきみだされた……
2361828nen:03/06/02 18:51
 この道は遠くロシヤに通じている、
その国で彼はわずらいもなく誇らしく
炎のような青春を迎えたのだ。
その国で初めての喜びを味わった、
愛らしい多くのものを愛した、
恐ろしい苦悩を心に抱いた、
嵐のような生活のために
希望と喜びとあこがれをほろぼした、
そしてよき日の思い出などは
枯れしぼんだ心のなかにしまいこんだ。
彼は人々と世界を味わいつくし
頼りない生のまことの意義を知った。
友の心にも裏切りを見出した、
愛の空想のなかにあるのは愚かな夢、
とうの昔に軽蔑していたお定まりの虚栄や
偽善的な敵意や無邪気な中傷の
犠牲(いけにえ)となるのにもあきがきて、
この世にそむき、自然を友とし、
彼は祖国の土地を捨てて
このはるかな国へ飛んで来た
自由の楽しいまぼろしを胸に抱いて。
2371828nen:03/06/02 18:52
 自由よ! なおもお前を求めて
彼はこの荒れはえた世界に来たのだ。
烈しい情熱で感情を消し去り
夢想や竪琴(リーラ)には興味を覚えなくなったが、
心ときめかせて耳かたむけるのだ、
自由よ、お前の魂のこもった歌には。
そして信念と炎のように熱烈な祈りで
お前の誇り高い偶像を抱くのだった。

 もはや事は終わった……この世に
希望のよすがをもとめるすべもなく。
そしてお前、最後の夢も
そのお前も、姿を隠した。
彼は奴隷。石の上に頭を垂れて
彼は待つ、たそがれの空の夕焼けに
悲しい生命の火が消えるのを、
そして墓場のかげを渇望するのだ。
2381828nen:03/06/02 18:53
太陽は山のかなたで光を失い、
ものさわがしいざわめきが遠くに聞こえた。
輝く大鎌をきらめかせて人々が
野原から村へ歩いて来るのだ。
家に着いた。明りがともされ、
ざわめきの音が入り乱れ、
それもやがてしずまって、すべては
夜の闇、安らかな逸楽にいだかれた。
けわしい岩間を流れ行く
山の泉の水がはるかに光る。
コーカサスの山々は眠りにつき
黒の被いを身にまとっていた……
しかし、月の光をあびて
深い静けさのなかを足音しのばせ
歩みよるのはだれか?
かのロシヤ人はふと我に返った。
眼の前ににこやかに、物言わず
チェルケスの若い女が立っている。
若者は黙っておとめを眺め
そして思う──これは心まどわす夢、
疲れ切った五感の空しいたわむれだ、と。
かすかなる月の光に照らされて、
なぐさめと哀れみの微笑をもって、
彼女はひざまずいて、
彼の口元にそっとすすめるのだ、
さわやかな馬の乳(クムイス)を。
だが彼は自分を癒す飲物のことを忘れた。
彼の高なる心で、とらえるのだった、
快い言葉の魔法の響き、
そして若いおとめの眼差しを。
2391828nen:03/06/02 18:54
その異国の言葉はわからない。
だがその愛らしい眼差し、頬の輝き、
そのやさしい声は語るのだった──
生きるのです! そして捕虜は生き返る。
そして残りの力をふりしぼり
やさしい命令にしたがって
身をおこした──そして恵みの盃で
渇きの苦しみをいやしたのだ。
そして石の上にふたたび、
苦しげに頭を垂れた。
しかし光の失せたその眼差しで
ずっとチェルケスの若い娘をみつめていた。
それで彼の前に長いこと、長いこと
彼女は物思わしげに立っていた。
あたかも無言のまま共に居て
捕虜の心をなぐさめようとするように。
思わず知らずおりおりに、
口を開いては何か言いかける。
溜息をついては一度ならず
その眼に涙があふれるのだった。
2401828nen:03/06/02 18:55
 影のように日々がつぎつぎと過ぎた。
山の中、家畜の群のかたわらで
枷につながれて捕虜は日を送る。
しめった涼しい洞穴(ほらあな)が
夏の暑熱の日に彼を隠してくれる。
銀色の角(つの)のような月が
暗い山のかなたに光る時、
木蔭に隠れた小径(こみち)を通り、
チェルケスの女が囚われた人に持って来る、
酒に馬乳に雪の白さの黍(きび)を、
蜜たっぷりの蜂の巣と共に。
彼とひそやかな夕食を共にする。
彼の上にやさしい眼差しが憩う。
定かならざる言葉とまじり合う
眼差しと手ぶりの会話。
彼に歌って聞かせるのは山々の歌、
そしてまた仕合わせなグルジヤの歌、
そして待ちきれぬ思いに
伝えられるのは異国の言葉。
はじめて、おとめ心に
女は愛した、仕合わせを知った、
けれどロシヤの若者は早くから
愛の情熱を失っていた。
彼の心は応えることができなかった、
この子供のような率直な愛に──
おそらくは忘れた恋の夢を
思い出すのを恐れたのだ。
2411828nen:03/06/02 18:56
 青春は不意に枯れることはない、
感激が不意にわれらを見捨てることもない、
そして思いがけない喜びを、
まだ胸にいだくこともある。
しかし、お前、初恋の
生き生きとした感動よ、
その歓喜の天上の炎よ、
お前がふたたび飛び来ることはあるまい。

 おそらく、希望を失った囚われの子も
わびしい苦しみに慣れてしまった。
囚われの身の憂い、反抗の情熱も
心の奥にしまいこんでしまった。
朝早く、朝の涼気の中、
陰鬱な岩の間をさまよい歩き、
物珍しげな眼差しでみつめた、
灰色や、赤や青の山々の
はるかに見える巨大な姿を。
何と壮麗な眺めなのか!
雪の永遠の玉座、
山々の頂きは
雲また雲の不動のつらなりと見え、
そのなかの双頭の巨人、
水の冠をいだき光っている
巨大で壮大なエリブルス山は
青い空のなかに白くそそり立つ。
2421828nen:03/06/02 18:58
うつろな響きととけあって、
嵐の前ぶれの雷鳴のとどろく時、
囚われの男は、村をのぞむ山の上に
いくたび、身動きもせず坐っていたことか!
黒雲がその足元にかかり、
曠野にはほこりが舞い飛び。
すでにおそれおののく鹿は
岩の間に隠れ家を求めている。
鷲は断崖から飛び立って
空の高みで鳴き交わしている。
馬たちのざわめき、家畜の群の鳴き声は
すでに嵐の音にかき消されてしまう……
すると不意に谷間めがけて雨と霰(あられ)が、
稲妻を通し、雨雲の中からほどばしり出る。
雨は奔流となって流れ、
けわしい坂道を掘りくずし
年古(ふ)りた石をつき動かす──
囚われの男はされど、山の高みより
雷鳴など物ともせずに
雷とどろく雨雲のかなたに
太陽が立ちもどるのを待っていた、
そして嵐の病み衰えた唸り声に
何か楽しげに耳傾けるのだった。
2431828nen:03/06/02 18:59
 しかしこのヨーロッパ人はいつも
風変わりなこの人々に心ひかれていた。
このコーカサスの山の人々にまじって
その信仰、風習、教養を観察した、
そして愛した、その生活の簡素さや、
客もてなしの良さ、戦好(いくさず)き、
自由な身のこなしの速さ、
そして軽やかな足、力強い腕までも。
彼は何時間もじっと見ているのだった、
時折、敏捷なチェルケス人が
広々とした曠野や山の中を
毛の深い帽子に黒いマントで
鞍に身を伏せ、あぶみにしっかり
すらりとした足でふん張って
戦いにあらかじめ慣れるために
馬の足にまかせてかけめぐるのを。
彼は魅せられた、
単純な戦いの衣裳の美しさに。
チェルケス人のまわりには武具があふれる。
それは彼らの誇りであり慰めである。
そこには甲冑、火縄銃、矢筒、
クバーニの弓、短剣、輪縄があり、
そして仕事の時も、閑暇の折も
変わらぬ友なる、両刃の剣がある。
2441828nen:03/06/02 19:01
何ものも彼をわずらわすことはない、
何ものも重荷とはならぬ、
徒歩にても、騎馬にてもいつも同じ。
いつも同じ敗北を知らぬ不屈の姿。
のんきなコサックにも恐れられる
チェルケスの宝は、その駿馬(しゅんめ)、
山の牧場に育った
忠実で忍耐づよい友。
洞穴(ほらあな)や生い茂った草むらの中で、
狡智にたけた掠奪者は駿馬とひそむ、
そして旅人の姿を見かけると、
不意に思いもかけぬ矢を射かける。
一瞬のうちに彼の強い一撃が
この避け難い戦いにけりをつける。
そしてこの旅人を山の峡谷へ
投縄にくくりつけ引いて行く。
馬は火のようにたけり走る
全速力でまっしぐらに。
馬にはすべてが道となる──
沼も林も、茂みも、巌も谷も。
血潮の跡がそのあとに続き
荒野にひづめの音がひびきわたる。
急流が現われ、白波を立てざわめいている──
馬は泡立つ深みに身をおどらせる。
すると旅人は川底に投げこまれ、
にごった水をごくりと飲み、
精も根もつきはてて死を願い、
死が眼の前にせまるのを見る……
だが力強い馬はまっしぐらに
泡立つ向こうの岸へと彼を引き上げる。
2451828nen:03/06/02 19:03
 あるいは、月も照らさぬ夜の影が
掛布のように山々の上にかかる時、
雷に打たれ川の中に落ちた
枝のいくつもある木株を取って
その年古(ふ)りた根や枝に
チェルケス人はぐるりとかけつらねる、
自分の戦いの装具一式を、
楯にマント、甲冑にかぶと、
矢筒に弓を──そして急流の中に
音もなく疲れも見せず
木の株のあとについて身を投ずる。
うらさびしい夜。川はほえたける。
力強い流れが彼を運び行く、
人里離れた岸辺に沿って。
この小高い丘(クルガン)の上に
槍にもたれてコサックたちが
川の暗い流れをみつめている──
そのそばを、闇のなかに黒々と
かの悪党の武具が流れて行く……
何を考えているのか? コサックよ。
過ぎし日の戦(いくさ)のことを思っているのか?
死の戦場で露営のことや
軍隊の戦いを称える祈りや祖国のことを
思い出しているのか?……心まどわす夢よ!
さようなら、自由のコサックの村よ、
父祖の家よ、静かなるドンよ、
戦争よ、美しいおとめらよ!
ひそやかにしのび寄る敵は岸に着き、
矢筒から矢を取りいだす──
さっと飛んだ──そしてコサックは
血潮をあびた丘の上から倒れ落ちる。
2461828nen:03/06/02 19:05
 天候不順の続くころおい、
チェルケス人が父の家で
平和な家族と時を過ごし、
炭火が灰の中でかすかに燃える時、
そして荒涼たる山中で足をとめられ
疲れ切った旅人がやって来て
忠実な馬の背からとびおりて
おずおずと火のそばに腰をおろす時──
その時善意にみちた主人は立ち上がり
やさしく言葉をかけてやり、
馥郁(ふくいく)たる盃でなぐさめの赤ぶどう酒(チヒーリ)を
客にふるまってやるのだ。
しめっぽいマントをかけ、煙る小屋の中で
旅人は安らかな眠りをむすぶ、
そして朝になると、一夜の宿の
客を好む人々の家をあとにする。
2471828nen:03/06/02 19:07
 明るい精進あけ(バイラン)の日には
若者たちがよく集まって来る。
遊び遊びそしてまた遊ぶ。
矢でいぱいの矢筒を取りあい
翼ある矢を打ち放って
雲間の鷲を射抜いたり、
あるいはけわしい丘の上から
隊伍を組み、じりじりして待ち
合図とともに駆けくだり、
鹿の群が大地を打ち叩くのに似て
平原をすっかりほこりで覆い
足なみそろえて走って行く。

 けれど戦(いくさ)のために生まれた人の心には
この単調な平和は退屈だ。
そして無為の気ままな遊びは
しばしば残忍な遊びで乱される。
酒盛りの気違いじみた陽気な気分の中で
チェルケスの剣が恐ろしくきらめいて
奴隷の首が飛び、年端も行かぬ子供たちが、
喜び騒ぎ拍手することも稀ではない。
2481828nen:03/06/02 19:08
 だがロシヤの若者は冷やかに
この血なまぐさい慰み事を見ている。
彼は遊戯より名誉を愛し
死の早からんことを願った。
容赦なき名誉のとりこである彼は
自分の最期の時が迫るのを死って
決闘の場にあって冷やかに心たしかに
死をもたらす鉛の玉と向き合うのだ。
おそらく深い思いに沈んだ彼は
親友たちにとりかこまれて
にぎやかに飲みかわした
その時のことを思い浮かべていたのだ……
過ぎ去った日々を悲しんでいるのか、
希望を裏切った日々のことを?
あるいは好奇の目で眺めていたのか、
この荒々しい単純な慰み事を、
そしてこの野蛮な民の風習を
その忠実な鏡のなかで読みとっていたのか──
彼は深い沈黙の中に秘めていた
自分の心の動きを。
そして彼の秀でた額にも
何も変わったしるしは見えなかった。
何も歯牙にかけぬ大胆さには
恐ろしいチェルケス人もおどろいて
その若い年をあわれんで
ひそひそとおたがい同士
その獲物の良さを誇りあった。
2491828nen:03/06/02 19:10
   第二部

 お前は知った、山の娘よ、
心の歓喜を、生の甘さを。
お前の火のようなあどけない瞳は
愛と喜びを物語っている。
夜の闇の中でお前の友が
物言わずお前に口づけすると
甘い思い熱き願いに身をやかれ
お前がこの世のことを忘れてしまい、
こう語り出すのだ──「いとしい囚われの人よ、
悲しげな眼差しを明るくしておくれ、
自由のこと、祖国のことは忘れておくれ。
わが心の王よ、あなたといっしょに
この曠野に身をかくせるのは楽しいこと!
私を愛して! 今にいたる誰も
私の眼に口づけしたことはありません。
静かな夜、ひとり寝の私の床に
黒い瞳のチェルケスの若者が
しのんで来たことはありません。
私は情知らずの美しさの
薄情な娘という評判をとりました。
私は自分に定められた運命を知ってます。
父と峻厳な兄がこの私を
よその村のいやな男に
金(きん)と引き換えに売り渡すつもり。
でも父と兄に私はお願いしている、
それでだめなら短剣か毒を選びます。
何かわからぬ不思議な力で
私のすべてがあなたにひきつけられる。
あなたを愛します、やさしいとりこよ、
私の心はあなたに酔いしれています……」
2501828nen:03/06/02 19:11
 だが彼は黙ったまま、あわれみの心で
恋こがれるおとめをじっと見ていた。
そして重苦しい思いにみたされて
おとめの愛の言葉に耳傾けた。
彼は夢想のなかに沈んだ。過ぎ去った日の
思い出が心の中にひしめきあい、
そして涙さえも二つの眼から
さんさんとあふれ流れてきた。
望みなき愛の憂いが、
鉛のように心の中に横たわっていた。
とうとう彼はおとめの前に
その心の悩みを打ち明けた──
2511828nen:03/06/02 19:12
「ぼくを忘れておくれ! お前の愛や
お前の熱中にぼくは値せぬ。
貴重な日々をむだにしてはいけない。
他の若者をさがすがよい。
その人の愛がぼくの魂の
悲しい冷たさに代わってくれよう。
その人は忠実で、よくわかってくれるだろう
お前の美しさ、お前のやさしい眼差しを、
まだ幼い口づけの情熱を、
そして火のような愛の言葉を。
ぼくは情熱の犠牲となって
喜びも望みもなく、しぼんで行く。
不幸な恋の跡、魂の嵐の
恐ろしい跡をお前は見るだろう。
ぼくを捨ててくれ、だがあわれんでくれ
ぼくのいたましい運命を!
不幸な友よ、なぜもっと早く
ぼくの眼の前に現われなかったのか!
ぼくが希望があることを信じ
すばらしい夢を信じていた時に。
だがもう遅い。幸福のためには
ぼくは死んだ男だ。希望の幻影は飛び去った。
このお前の友は恋の喜びを忘れ
やさしい感情には石となってしまった。
2521828nen:03/06/02 19:13
 何とつらいことか、死んだ唇で
生き生きとした口づけに答えることは、
そして涙あふれるその眼と
冷たい微笑が出会うことは!
むなしい羨望の心にうみつかれ、
感覚を失い眠りこんだ魂で
熱烈な娘に抱かれつつ、
他の女(ひと)を思うのは、何とつらいことか!……

 かくもゆったりと、かくもやさしく
お前がぼくの口づけを飲みほす時、
そして愛の時間がお前にとって
すみやかに静かに過ぎ去って行く時、
その時ぼくは静けさの中で涙をかみしめ、
心もそぞろに、悲しみに沈み
夢の中のように眼の前に見る、
永遠にやさしい人の姿を。
その姿に呼びかけ、そこへ行こうと願う、
口もきかず、見えもせず、聞こえもしない。
我を忘れお前に身を委ねつつ
そのひそかな幻を胸にいだく。
その幻に曠野で涙をそそぐ。
幻影はいたるところぼくについて来る
そして孤独なぼくの魂に
暗い憂いを吹きこむのだ。
2531828nen:03/06/02 19:14
 ぼくに残しておいてくれ、
手足のこの鎖を、孤独の夢を、
思い出を、悲しみを、涙を。
それを切り離すことはお前にもできまい。
お前はぼくの心の告白を聞いたのだ。
さようなら……お別れにお前の手をくれ。
冷たい別離が女の愛を
悲しませるのは一時(いっとき)のこと。
愛が去ると倦怠がやって来る、
美しい女(ひと)はまた愛を知るだろう」

 口をあけたまま、若いおとめは
涙もなく声をあげて泣いていた。
暗い、すわった眼差しに
無言の叱責がこめられていた。
影のように青ざめて彼女は震えていた。
愛する男の手の中に彼女は
冷たいその手を置いた。
そしてやっと愛の苦しみを
悲しげな口調で注ぎ出すのだった──
2541828nen:03/06/02 19:15
「ああ、ロシヤの人よ、何ゆえに、
あなたの心も知らぬまま、
永久(とわ)の愛をと、心をまかせたのでしょう!
あなたの胸にこのおとめ心が
すべて忘れて休らんだのも束の間。
喜ばしい夜を数多くは
運命は与えてはくれませんでした!
いつの日かそれはまた帰って来るのか?
あるいは喜びは永久(とわ)に消えたのか?……
囚われの人よ、あなたは、
憐れみの心だけからにせよ
黙っていつわりの愛撫で
世間知らずのおとめをだませたでしょうに。
私はやさしい従順な心づかいで
あなたの運命を慰めてあげたものを。
憂いに沈む友の眠りの時、
安らぎの時を守ってあげたものを。
あなたはそれを望まなかった……
でもあなたの美しい女(ひと)はどなた?
ロシヤの人よ、愛し愛されているの?……
あなたの苦しみは私にもわかります……
だから私にも思いきり泣かしておくれ
私の不幸を笑わないでおくれ」
2551828nen:03/06/02 19:16
 彼女は口をつぐんだ。涙と嘆息が
あわれなおとめの胸をしめつけた。
口は無言のうちに嘆き訴えていた。
正気を失ったまま彼の膝をかきいだき、
ほとんど息も絶えだえであった。
それで囚われの男はあわれな娘を
そっと起こして言うのだった──
「泣いてはいけない。このぼくも
運命に追われ、心の苦しみを味わった。
ぼくだって愛し愛されたことはない、
ひとり愛し、ひとり苦しんだだけ。
そしてくすぶる炎のように消えうせる、
うらさびしい谷間に忘れ去られて。
愛する岸辺から離れた地で死ぬだろう。
この曠野がぼくの墓となるだろう。
追放の身のこの僕の骨の上で
重く鎖も赤く錆びて行くだろう……」

 夜の星々が輝きを失った。
透き徹って見えるかなたの空にはっきりと
白い雪をかぶった巨大な山々が見えた。
頭を垂れ、眼を伏せて
二人はおし黙ったまま別れて行った。
2561828nen:03/06/02 19:18
 陰鬱な捕虜(とりこ)はその時から
ひとりで村のまわりをさまよい歩く。
朝焼けが炎熱の地平線の上に
次々と新しい日をもたらし、
夜また夜が相次いで去って行く。
いたずらに彼は自由にあこがれた。
かもしかが茂みの間にちらりと見えるのか、
鹿が霧の中を駆け去って行くのか?──
彼はさっと起き上がり、鎖をがちゃつかせ
彼は待つ、コサックが忍びこんで来ないかと、
チェルケスの村の夜の破壊者、
奴隷たちの勇敢な解放者たるコサックが。
声をかける……でもあたりは黙したまま。
ただ川がざわざわと波音を立て、
人間のにおいを嗅ぎつけた野獣が
暗い曠野をかけめぐっているだけ。
2571828nen:03/06/02 19:19
 囚われのロシヤ人は時には
山の中に戦いの叫びがひびくのを聞いた──
「馬だ! 馬につけ!」走り、ざわめく。
銅の馬勒が鳴り響き、
マントは黒々とひるがえり、よろいは光り
鞍をおかれた馬が立ちさわぎ
部落がみなあがて襲撃にそなえる。
そして野生の戦(いくさ)の子らは
川の流れのように山からほとばしり出て
クバーニの岸辺を走り歩き
貢物を無理やりに集めるのである。

 村は静まった。家のわきの日なたには
番をする犬どもが寝むっている。
色浅黒い裸の子供たちが
のびのびと羽をのばしてさわいでいる。
その曽祖父(ひいじい)さんたちは車座になってすわる、
きせるから煙が青くうずを巻いている。
黙って若いおとめの
聞きなれた歌声に耳を傾ける、
すると老人たちの心も若返る。
2581828nen:03/06/02 19:20
   チェルケスの歌

     一

 川にはとどろく大波が走り
山には夜の静けさがある。
疲れたコサックはまどろんでいた、
鉄の槍にもたれながら。
眠るな、コサックよ、夜の闇に
チェチェン人が川を渡って来るから。

     二

 コサックが丸木舟で行く、
川底に綱を引きながら。
コサックよ、川に溺れてしまうよ、
暑い日ざかりに水あびをしていて
小さな子供が溺れるように。
チェチェン人が川を渡って来るから。

     三

 聖なる川の岸辺に
豊かなコサックの村が栄える。
楽しげな輪舞がひろがる。
逃れよ、ロシヤの歌い女(め)たちよ、
美しき女(ひと)たちよ、家に急げ、
チェチェン人が川を渡って来るから。
2591828nen:03/06/02 19:22
 おとめたちはこううたっていた。ロシヤの男は
岸辺に坐り、逃げ去ることを夢見ている。
しかし、囚われの男の鎖は重く
底深い川の流れは早い……
いつかたそがれがせまり、曠野も眠り、
巌の頂きも暗闇の中に隠れた。
村の白壁の家々に
月の青い光がさしている。
鹿は川のほとりでまどろみ
夜遅い鷲の鳴き声もやんだ。
そして馬たちの足音だけがぼんやりと
はるか山のかなたから聞こえてくる。

 その時人の気配がした、
おとめのヴェールがちらりと見えた。
やがて──悲しげに色蒼ざめて
あの人の彼のもとに近づいた。
美しいおとめの口は言葉をさがし、
その眼には憂いがあふれ
そして髪は黒い波となって
その胸と肩に落ちかかる。
一つの手には鋸(のこぎり)がきらめき、
もう一つの手にはダマスクの短剣がある。
おとめの姿はあたかも、ひそかな戦い、
戦(いくさ)の勲(いさおし)を求めて行くかのよう。
2601828nen:03/06/02 19:23
 囚われの男に眼差しをあげて
山のおとめは語る──「お逃げなさい、
どこでもチェルケス人に見つかりません、
さあ、急いで。夜の間をのがさぬように。
この短剣をお持ちなさい。この闇の中では
誰もあなたの行方に気づきますまい」

 震える手で鋸をとって彼女は
若者の足元に身をかがめた。
鋸のもとで鉄が金切声をあげる、
思わず知らず涙が流れた──
そして鎖は切れてがちゃりと落ちる。
「あなたは自由よ、お逃げなさい!」
おとめは語る。だがその物狂おしい眼は
嵐のような愛の高まりを語っていた。
彼女は苦しんでいた。風が音高く吹き
おとめのヴェールを巻き上げた。
ロシヤの若者は叫んだ、「わが友よ!
ぼくは永遠に死ぬまで、お前のもの。
この恐ろしい土地を二人してすてよう、
ぼくといっしょに逃げよう……」、「だめよ、だめ、ロシヤの人よ!
生の甘い楽しみ、それはもう消え去った。
私は知ったの、すべてを、喜びを、
そしてすべては過ぎ去った、あとかたもなく。
とてもかなわぬこと? あなたには愛した方がいた!……
その方を見つけて、愛しておあげなさい。
それ以上私が何で苦しむことがありましょう?
何を憂い悲しむことがありましょう?……
さようなら! 愛の仕合わせが
いつもあなたにありますように。
さようなら──私の苦しみなど忘れるのです。
お手を私に……最後にのぞんで」
2611828nen:03/06/02 19:24
 彼はチェルケスの娘に手をのばし、
よみがえった心で彼女のもとに飛んで行った。
そして別れの長い口づけが
愛の結びのしるしを刻んだ。
憂いと悲しみにみち、手と手をとって
そっと川岸へとおりて行った──
そしてロシヤの若者は、波さわぐ深みに、
はや、泳ぎ行き、波をかきわけ泡を立て、
はやかなたの岸の岩に着き、
はやその岩にしかとつかまる……
突然、定かならぬ波音がざわめき
そしてはるかに呻く声が聞こえる……
さびしい岸辺に彼はおり立ち
来(きた)りし方を眺めやる、岸辺はしるく
泡立つ波で白く見えるのだった。
しかしチェルケスの若い娘は
岸辺にも山のふもとにもいなかった……
すべては死んだよう……眠りにおちた岸辺には
風の軽やかな音が聞こえるばかり、
月の光に照らされて、波立つ川の面には
一つの波紋が流れ去り消えて行く。
2621828nen:03/06/02 19:26
 彼はすべてをさとった。これを最後と
別離のまなこでじっとみつめる、
柵にかこまれた人気(ひとけ)のない村(アウール)を、
囚われの身で家畜の群を追った野原を、
鎖を引き引き歩いた崖を、
荒々しいチェルケスの男が山の中で
自由の歌をうたっている真昼に
しばしの憩いに休らんだ小川を。

 空の深い闇がうすらぎ、
暗い谷間に昼の光がおりて来た。
朝焼けが空にかかった。小径をはるかに
解き放たれた捕虜(とりこ)は歩いて行った。
すると眼の前の霧の中にはや、
ロシヤの兵の銃剣がきらめき、
そして見張りのコサックが
小高い丘(クルガン)の上で叫びかわしていた。
2631828nen:03/06/02 19:27
   エピローグ

 こうして「夢想」の移り気な友、詩の神(ミューズ)は、
このアジアの土地へ飛んで来て
おのれの花環のためにつみとった
コーカサスの野育ちの花々を。
戦いの中で育った人々の
荒々しいよそおいが詩の神(ミューズ)の心をとらえた、
そしてしばしばかの魅惑の魔法の使い手は
私の前に現われた、この新しい衣裳をまとって。
人気(ひとけ)の絶えた村々のあたりを
詩の神(ミューズ)はただひとり岩の間を歩き
肉親を失ったおとめらの歌声に
そこから耳をすまし聞き入った。
戦士たちの村、勇ましい
コサックたちの立ちさわぐさまを、
墳墓の丘(クルガン)を、静かな墓を、
そしてざわめきと馬のいななきを愛した。
歌と物語の女神は、
さまざまの思い出にみたされて、
おそらくは繰り返し語ってくれよう、
恐ろしいコーカサスの語り伝えを。
あの遠い国々の物語を
ムスチスラフの古き決闘の話を
復讐にもえるグルジャびとに裏切られ、
亡ぼされたロシヤ人の話を語るであろう。
2641828nen:03/06/02 19:28
そして私はあの栄光の時をほめたたえる、
血なまぐさい戦いのにおいをかぎつけて
怒りたけるコーカサスの地に向かって
われらが双頭の鷲がとびかかった時を、
白髪まじりのテーレク河のほとりに
ロシヤ軍の太鼓が鳴りひびき
大胆不敵の面(つら)がまえで合戦に
血気にはやるチチアノフが現われた時を。
英雄よ、私はお前をほめたたえる、
おおコトリャレフスキーよ、コーカサスのむちよ!
嵐のごとくお前が駆けすぎたところでは──
お前の歩みはまるで黒い病(ペスト)のように、
人々を屠りほろぼすのだった……
お前は今復讐の剣をすて
戦(いくさ)がお前の心を楽しませることもない。
平和に退屈しながら名誉ある病いを得て
無為の安らぎと
家庭の団らんの静けさを味わっている……
だが見よ──東の国が叫びをあげる!……
雪白き頭を垂れよ、帰順せよ、コーカサス!
かくてエルモーロフが乗り出して行く。
2651828nen:03/06/02 19:29
 そして激しい戦いの叫びも静まった。
すべてロシヤの剣の前にひれ伏した。
コーカサスの誇りの高き子たちよ、
お前たちは戦い、恐ろしい最期をとげた。
だがお前たちを救えはしなかった、
われらの血も、心を魅する甲冑も、
山々も、勇ましい悍馬も、
荒々しい自由を愛する心も!
ちょうど抜都(バク)汗国の民のように、
コーカサスは先祖たちを裏切り、
戦いに飢え渇いた声を忘れ
勇ましい弓矢をも捨ててしまうだろう。
お前たちのすみかであった谷間にも
旅人はおそれをいだかず近づいて行き、
お前たちの苦しみと死についての、
語りつがれた、人知れぬ伝説を世に広めることだろう。
2661828nen:03/06/02 19:55
>>230-265が『コーカサスの捕虜』(1821)です>>all
河出書房新社の全集1からです。

>>229
私もその辺りの事情に就いて知りたいと思っています。
トルストイは詳しくないのですが、トルストイはプーシキンの作品をたくさん読んではいましたね。
プーシキンの作品以外にもレールモントフにも通じていたとも思われます。
コーカサス地方は現在のアゼルバイジャン、グルジア、アルメニアの辺りで、地図で言えば
カスピ海と黒海を挟んだところですね。この三国の南や南東はトルコとイラン(当時はオスマン・トルコ)で
19世紀ロシア帝国の急速な膨張の際のいわば玄関口だったところです。この辺りにプーシキンは事実上の
追放の「刑」を受けましたし、レールモントフも子供のころに療養のために来たことがあります。
彼らはここでいろんな伝承を聞かされ、またプーシキンはその頃バイロンの詩に強い影響を受けたようです。
それが上の作品に顕われています。
さてトルストイは若いころ露土戦争(クリミア戦役)でこの地方に従軍し、陣中で「セヴァストーポリ物語」を
書いています。これを読んだアレクサンドルT世が、才能あるトルストイを戦死させてはいけないと言って、
ペテルブルグに呼び戻したといわれます。そのときトルストイにはコーカサス地方の哀しい話といくらか接する
機会があったのは想像に難くありません。それがのちの短編『カフカスのとりこ』(1872)へと継がれていくのでは
ないでしょうか。

(これからはsage進行でいきましょうか。)
267204:03/06/02 20:45
>>230-265 おつでーす♥
ロシア語言ってみました。通じませんでした。通訳の人に発音してもらってようやく通じました。
お粗末。。。
268吾輩は名無しである:03/06/02 21:44
ここは一種の電子詩集ですな(@O@)
269吾輩は名無しである:03/06/02 23:13
>>230-266
プーシキンの詩を書いていただき、どうもありがとうございます。

トルストイの「コーカサスの捕虜」を失念している人のため、要約を以下に書きます。

コーカサスに勤務する青年仕官ジーリンは、帰路途中、同僚コストゥイリンと共に
ダッタン人の群に遭遇し捕まる。ダッタン人達は身代金を寄越すよう手紙を書けと捕虜二人に迫る。
彼らの要求する額は高過ぎて親には払えないのでジーリンは拒否する。書いても嘘の住所を書く。
器用なジーリンは道具の修理等でダッタン人達に重宝されるようになる。
特に小さな女の子ジーナには人形を作ってやり仲良くなる。
その間密かに脱走用の穴掘りに精を出す。友と脱走するがコストゥイリンが怪我をするので二人とも捕まってしまう。
ジーリンが繋がれている所へジーナがやってきて、ダッタン人達が殺そうとしていると告げる。
ジーナに逃走の手助けを頼む。ためらっていたが最後は手伝ってくれる。
ジーリンはジーナにおまえのことは一生忘れないと言って逃げる。
夜通し歩き、最後は友軍のコサック兵に会い助かる。
コストゥイリンはその後、高額の金を払い買い戻された。

プーシキンの詩とは似てる所がありますが、同一ではありませんよね。
もちろんトルストイはプーシキンの詩は知っていた筈。それにこれは童話の一つで、
私の持っている本の原久一郎の解題では、童話は他の作品の書き直しもあるとあります。
尤らしい解釈はプーシキンの詩に触発されて、トルストイが童話を書いたのでしょうか。
トルストイの研究者なら当然に知っている事柄でしょうが、推測はこのへんで。
270吾輩は名無しである:03/06/03 21:53
>>204
>>267
ちょっと違うは通じないよ。
英語でもロシア語でも本国の人の耳には何言ってるかわけわからんそうだ。
日本語は母音が五つしかないからどうにか通じるんだけどさ。(ゴメンsageるね)
2711828nen:03/06/04 20:31
>>226
やはり出ますよね。ドストエフスキーにおけるプーシキンの話題は尽きることがありません。
ドストエフスキーはいくつかの紙面にてプーシキンの詩は完璧であると書いています。
晩年のプーシキン記念祭の講演内容も
「プーシキンこそは予言であり、指標であります」
「彼はロシヤ精神の志向が疑いもなく全世界的なものであることを明らかにしてくれました」
みたいな発言が繰り返されているくらいです。
ドストエフスキーにとってプーシキンの作品は、ヨーロッパでないロシアを確信させるのに
大いなる影響を与えたのではないかと思います。
272吾輩は名無しである:03/06/06 15:43
>>269
トルストイの短編をもとにした映画『コーカサシの虜』↓

ttp://www.uplink.co.jp/dvd/uld/uld009.html

ttp://www.people.or.jp/~russia-eigasha/arc/films/k/kokasasu/

273あぼーん:あぼーん
あぼーん
274吾輩は名無しである:03/06/10 20:09
プーシキンの母方の先祖のルーツ、エチオピア、アビニシアって
いわれてるけど、最近カメルーン説ってあるの知ってた?
275あぼーん:あぼーん
あぼーん
276エフゲニー:03/06/15 18:53
オネーギンにスペードの女王、大尉の娘、でもさあ、みんなでベールギン物語は話題にしないの?射撃、駅長、葬儀屋、吹雪、百姓女。

ここで始めてレールモントフがでたから、そっちのいいと思うけど。現代の英雄、仮面舞踏会、ムツイリ。
それからカラシニコフ(AK47じゃないよ)がでてきた抒情詩なんかもいいんじゃないかな?
277吾輩は名無しである:03/06/15 19:56
「石の客」「モーツァルトとサリエーリ」
2781828nen:03/06/25 16:16
>>276
エフゲニーさん、どうぞ「ベールキン物語」について話題を振ってください。
「ベールキン物語」は傑作短編集であることはまちがいありません。
秀逸は「駅長」だと思っています。
カラムジーンの「哀れなリーザ」は読まれたことありますか。「駅長」の
あとでも先でも「哀れなリーザ」は一読をおすすめします。
279吾輩は名無しである:03/06/30 21:17
「射撃」(ベールキン)でも銃のはなしが。。。
決闘で死にたかったんじゃないのかねえ。

「百姓女」萌え〜。
280あぼーん:あぼーん
あぼーん
281あぼーん:あぼーん
あぼーん
282吾輩は名無しである:03/07/01 10:05
>>277
「モーツァルトとサリエリ」て何?
ビデオでみた
283吾輩は名無しである:03/07/03 21:43
「モーツァルトとサリエリ」はプーシキンの短い戯曲。
この作品がきっかけで、ほんとうはモーツァルトを惜しみなく援助したサリエリが
後世、モーツァルト殺害の疑いまでかけられたとまでいわれるほどにまでなった
ある意味故人サリエリには迷惑な作品。
プーシキンの目の付けどころはいいんだけどね。
284吾輩は名無しである:03/07/07 20:28
ということは「アマデウス」はプーシキン原作なの?
285山崎 渉:03/07/15 09:07

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
286吾輩は名無しである:03/07/16 21:55
>>284
可能性は大いに考えられる。映画はサリエリがモーツァルトの過労死を招かせたからな。
287吾輩は名無しである:03/07/20 20:38
今夜の10時半はNHK教育に注目age。
288吾輩は名無しである:03/07/25 16:59
アンナ・ケルンってどうしてそんなに詩人の気を引いたのでしょうか?
ミューズにはふしだらな女が意外と多い気がします。
289吾輩は名無しである:03/07/28 15:25
ギリシアの女性詩人サッフォーといっしょだね。
ダリやアポリネールでいうガラ、プルーストにアゴスチネリ、
ツルゲーネフにヴィアルドー夫人、バルザックにベルニー夫人、
サルトルに5人の美女、って感じ(^^)
290吾輩は名無しである:03/07/28 16:56
ふしだらな・・・
>288
自分は全然モテた記憶のない女がそんなふうに言いがち。
魅力的な女には、男が群がる。その中でも
卓越した才の持主を選んで侍らせる、それだけの才智をも持っている女・
そこらの凡女とは、オンナの次元が違う
291288:03/07/28 20:10
>>290
ふしだらな生活をしていたからといって、才知がないとは限らないよ。
アンナ・ケルンは次から次へと男を変えたけど、素養は豊かだったのです。
プーシキンとは別れた後も、友だちでプーシキンの親族の付添人までしたよ。
292288:03/07/30 18:09
上のカキコは
プーシキンと別れたあとも、友達関係は崩さなかったってことね。(^^;)
293Evgenij:03/08/01 11:33
死ぬ前のプーシキンの借金は膨大で、借金の半分は博打で負けたもの。
奥さんはよく我慢したと思います。またプーシキンの詩は原文で読むと
音が美しく、その天才ぶりがよくわかります。作品の内容も諸行無常が
せつせつと歌い上げられ、その上になお人生の快楽や奇跡、非凡人の
営為と凡人の幸不幸が同情をもって語られています。日本文学の珠玉の
作品の良さもプーシキンを読むとさらに深く感じられるようになります。
博打の負け高も破天荒ですが、こんな天才に触れることができるだけでも
文学のすごさを感じます。ほぼ同じ時代にアレクサンドル−デユマと
プーシキンという黒人の子孫が文学に活を入れた、というのも不思議な話
です。
294あぼーん:あぼーん
あぼーん
2951828nen:03/08/01 17:31
>>293
ひょっとして>>1さんですか?
借金と言えば、ナターリヤの親元のゴンチャローフ家の財産も逼迫していました。
もっともナターリヤ本人だけの責任というわけではありませんが、没落貴族のはしり
ということはできそうです。ナターリヤの母は、プーシキンが金を持っていなくても、
詩人が貴族の家であることを譲歩の理由として結婚させ、挙式の日に馬車を雇う金を
プーシキンに頼んでいるくらいですからね。
それはそれとして、ナターリヤはプーシキンの賭博の借金に苦しめられましたが、
彼女は社交界で大人気者になったことですし、またプーシキンの仕事にも理解を
示すことがあまりなかったであろうことも指摘されています。だから我慢したのは
プーシキンもナターリヤも半々としてもいいのでは?
296山崎 渉:03/08/01 23:52
(^^)
297Evgenij:03/08/02 16:18
ナターリヤ=悪妻説が支配的な中で、日本の小野理子さんが良妻説を発表したけれども
やはり通説を覆すには至りません。ただ、30年代のプーシキンの傑作はナターリヤを
ぬきにしてはありえなかっただろうと僕は思います。悪妻もまた文才を鍛えるのです。
でも悪妻の浮気の噂で決闘しなければならない、というのは辛い話です。浮気相手と
されるダンテスは本気だったのですが。結局、あの決闘はプーシキン自身が死にたくて
死にたくてしようがなかった、といわざるをえません。彼は作家であると同時に、
ロシア文学の破滅型主人公ですね。
298吾輩は名無しである:03/08/04 14:09
ナターリヤは社交界で成功したので、女としてはしあわせだと思う。
299山崎 渉:03/08/15 10:16
    (⌒V⌒)
   │ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  ⊂|    |つ
   (_)(_)                      山崎パン
300吾輩は名無しである:03/08/18 16:18
再婚してからも美しかったナターリヤ。
彼女を美しかったとする証言は多いです。
御追従もあったのかもしれないけど。300get。
301あぼーん:あぼーん
あぼーん
302吾輩は名無しである:03/08/18 18:01
>>300
証言・・って、肖像が残ってるだろ? すっげえ美人!
いまの女優なんか
かなわないよ、ものすごい美人!
303Evgenij:03/08/18 19:15
ナタ−リヤ程度の美女はロシアにはいっぱいいる。バレエを見れば
すぐわかる。プーシキンはドンフアン表なる付き合い相手目録を作って
いたが、彼を本当に愛してくれた女性はいなかったのではないかな?
黒人の子孫として可愛がってくれた人は多かっただろうが。
サミー デーヴィス Jrのようなもて方だったろう。
しかし、男友達には最高に恵まれ、彼等との交際がロシア史の最良の
文化を作り上げた。プーシキン=ホモ説を唱える日本人もいるくらいだ。
その説は嘲笑されてはいるが、彼と友達の心あたたまる付き合いの仕方は
人類の歴史においてロシア人のもっとも誇りとしていい。
日本でも夏目漱石のまわりにはすぐれた文学者がいっぱいいたが、
プーシキンはそれをはるかに上回る。女運はよくなかったが、男運は
最高だった。
304吾輩は名無しである:03/08/18 19:29
>>303
ぬぁにを言ってる、ロシアに逝ったことあるけ?
デブンデブンに太る体質のロシア女を、目近で見たことあるけ?
厨房が知ったかで背伸びして書くと、誤る。

アノネ、本物の文学者は同類の資質を持った連中と惹き合うし、
先達として後輩を引き立てる努力を惜しまないタイプの作家も居る。
プーシキンはその詩才によって同時代の芸術家は無論、
後代の人々まで広く惹き付け、ロシア最高の詩人として称えられた。
漱石は、教育者としての一面を色濃くもっていたから、
やってくる学生や後輩や弟子達を受け入れて(木曜会)
懇切丁寧な付き合い方をした。漱石の膝下から、優れた文学者が育ったと
いう方が適切な表現。
305吾輩は名無しである:03/08/18 19:30
漱石は
旧制一高&東京大学の教授→朝日新聞専属作家、
だから、当時の日本の最高学歴の人々が周りにいたのは当然の成り行き。
友人、知人は全部、日本の指導層だった、
庶民は小学校にさえいけないような時代だったんだ。
306Evgenij:03/08/19 11:38
人それぞれ知ったかぶりで生きている。他人に考えさせるような言葉が吐ければ
無知でも有益だろう。ところで漱石やプーシキンのように回りの人間を育て
られるふとっぱらの文人が今いるのだろうか?村上春樹はどんなつきあいを
しているのだろう。比較する価値もないだろうが。
プーシキンは自分のテーマをゴーゴリに譲ったり、歴史家や思想家達のまえで
自作を朗読したりするなかで、自分自身の独自の作品を発表していった。
男が男に惚れる、という羨ましい世界だった。
307吾輩は名無しである:03/08/19 16:50
>>306
19世紀のロシア文学者でいう村上春樹のタイプはツルゲーネフだろうね。

>>303
彼を本当に愛した女性は「アルバムに」の彼女は…? 一時の気の迷いかしらん。
308吾輩は名無しである:03/08/21 15:29
ツルゲーネフが村上春樹みたいだったって? どうかねえ。
共通点は政治的な活動をしなかったことだろ?

ナタリヤの肖像画は、Гауか誰かの水彩画でみるね。
よく知られているのは水彩画の彼女。他の肖像画で真正面の彼女を
みたことあるけど、そんなに今の時代ではそんなに美人とは思わなかった。
19世紀の人気の顔ってやつもあったんだろ。
309吾輩は名無しである:03/09/02 14:27
プーシキンとゴーゴリが出会ったころのことを教えてください。
310吾輩は名無しである:03/09/04 14:37
朝、学校に遅刻しそうになったプーシキンは、
かどのところで勢いよく人とぶつかった。
プーシキン「おい、気をつけろ!」
ゴーゴリ「お前こそ!」

何とか学校に間に合ったプーシキン。
先生「今日はお前たちに転校生を紹介するぞ」
ゴーゴリ「転校生のゴーゴリです。みなさんよろしく」
プーシキン「あーー!お前はあのときの!」

こんな感じであったと想像されます。
3111828nen:03/09/04 15:26
どうもみなさん、御久しぶりです。

>>309
>プーシキンとゴーゴリが出会ったころのことを教えてください。

ゴーゴリがプーシキンと邂逅したのは1831年、ゴーゴリが22歳のときですね。
年譜によれば、ゴーゴリはこの年の夏、ツァルスコエ・セーロの近くにあるパヴロフスカでソログープの伯母の
精薄の息子の家庭教師になっています。ゴーゴリは色々な動物の絵を書いては、その鳴き声をあげて生徒に教えたそうです。
すると、たまたま、この家の近くに夏の避暑で逗留していたプーシキンと知り合うことになります。
この年の9月にゴーゴリは『ディカーニカ近郷夜話』の第一部を出版し、プーシキンは激賞しました。
312プーシキン初心者:03/09/06 23:37
岩波から出てる詩集と古本で買った「大尉の娘」を読んでプーシキンを好きになったの
ですが、プーシキンの伝記をみると、詩や「オネーギン」などロシア語の原著で読んだ
方がもっと面白そうですね。ロシア語どころか英語もドイツ語も最低の成績だったので、
語学には全く自信がないのですが、ここの住人にはロシア語で楽しんでいる方がいらっ
しゃるのでしょうか?
313吾輩は名無しである:03/09/08 17:23
原書で読めるほどの実力はないけど、ロシア語のアルファベットのローマ字読みで
なんとか声に出してみてら、感じは出てたりして(w

>>45-68
ペテルブルグの青銅の騎士像について、マニアックなページをハケーン。
ttp://www.d8.dion.ne.jp/~rudin_dn/zapishite2/petersburg041.htm
ttp://www.d8.dion.ne.jp/~rudin_dn/kittie/diary.htm
314プーシキン初心者:03/09/08 23:18
>313
なるほど。とりあえず韻だけでも楽しめるかもってことですね(w
315吾輩は名無しである:03/09/22 17:34
>>311 ゴーゴリはプーシキンを崇めていたんだろう。
そうでなきゃあんなに熱狂しないよ。
こんにちは。2年ぶりに来てみた文学板、まさか
プーシキンスレが立っているなんて思いもよらず、感激です。
過日神保町のHAYKAでプーシキン作品集をgetいたしました。
まだ取りかかっておりませんが、オネーギン、スペードの女王、ベールキン物語など
主要作品が軒並み収まっており楽しみです。
しかし、これ、こども向けアンソロジー中の1巻なのですよ。
こんなものを読めるロシアの小学生、羨ましいぞゴルァヽ(`Д´)ノ
317吾輩は名無しである:03/09/25 23:58
ロシア語がスラスラペラペラのロシアの小学生が羨ましい(つД`)
3181828nen:03/09/26 16:28
>>316どうも、こんにちは。
子供向けアンソロジーのプーシキン作品集とは初耳ですね。
全訳版よりもたのしく読めるかも。
昔の世界文学全集ではプーシキンの巻もみられ、読者にとっては掘り出し物が
あるかもしれません。
それからスレの>>134-153にポプラ社版の『スペードの女王』が引用されてます。
319吾輩は名無しである:03/09/26 16:39
>>214
決闘した相手がダンテス。「ダンザス」はプーシキンの付添い。
>>318
過去レス嬉しく読みました。たくさんの御紹介有難うございます。

>子供向けアンソロジーのプーシキン作品集とは初耳ですね。
そうなんですか。私はてっきり、ロシアの子供はフツーにプーシキンを
読むのかとばかり思っておりました。
3211828nen:03/09/29 17:24
>>320
もちろん、ロシアで子供のころにプーシキン作品に親しむのは日常茶飯です。
昔はどうあれ最近の日本の子供がプーシキン作品を読んでいるかとなれば、
「プーシキン」という名も聞いたことがないというのが実状でしょう。

>>319
名前を混同して書いてしまいました(w
322吾輩は名無しである:03/10/01 19:42
「ピョートル大帝の黒奴」って?
323吾輩は名無しである:03/10/07 18:45
「大帝ピョートル」アンリ・トロワイヤに出てくるので読め。
324吾輩は名無しである:03/10/07 19:34
プシーキンの方が言い易いよ
3251828nen:03/10/09 20:54
>>322-323
トロワイヤの『大帝ピョートル』は伝記ですので、最初に入るのは難しいと思います。
『ピョートル大帝の黒奴』はプーシキンの散文で、ごく初期かひょっとすると最初の
散文作品だったような気がします。作品自体は未完成ですが、フランスの貴婦人に
恋をしたピョートル大帝お気に入りの黒人が、フランスの社交界からロシアに帰ってくる
というおもしろい設定です。主人公のモデルがプーシキンの母方の曾祖父であることは
よく知られています。
先週から>>316のプーシキン作品集に取りかかりました。
露文を読むこと自体かなり久し振りでして、お子様向けの念入りな注釈があっても
なお辞書の御厄介になりつつ、なかなか進みません。
600ページ以上あるので読破に2年はかかりそう。大昔読んだ作品もありますが忘れ
果てておりますし。
でもそれだけに長く楽しめるわけですが。

今のところ、リツェイ時代の詩を読んでいます。
皆さん書いてらっしゃるように、音の美しさをあらためて感じています。
そのなかから、プーシキン青年の、戯れているように見せつつも一本気な気性が
伝わってきます。
「いなせ」という言葉が少し近いかもしれません。
3271828nen:03/10/20 21:39
リツェイ時代のエピソードとして、友人がピョートル大帝をテーマにした詩の課題に困っている時に、
プーシキンがその機知を働かせて、難問を打開し、それが評判になった話をごぞんじですか?
328吾輩は名無しである:03/10/20 21:41
原文読めるってすごいなぁ。
>>327
いいえ、存じません。
プーシキンはどんな解決策を考え出したのですか?
3301828nen:03/10/22 17:28
 学習院の生徒たちのクラスで、「日の出」についての作文の課題がでた。
これは昔の国語教師たちが好んだテーマだった。生徒全員が作文を終わって、
教師にわたした。一人だけ作文のできない生徒がいて、このために授業が終わ
らなかった。その生徒はぼんやりしていてこのとき、そんな高揚した主題につ
いて書く気分になかったらしい。作文用紙にただつぎの一行だけ記した。
「見よ、西側から姿をあらわす、自然の皇帝(ツァーリ)が……」
 これを読んだプーシキンがいった。「どうしたんだ。きみ、まだ終わらない
のかい」
「そうなんだ。一言もでてこないんだ。頼むから助けてくれよ。ぼくのせいで
みんな教室から出ていけないんだ」
「じゃあ、これでどうだい」そういってプーシキンは、友人の最初の句につけ
て、つぎの詩でしめくくった。
「さて、驚いた民衆(ナロード)は、おおいに、とまどう。
 寝床に就くべきか、はたまた、起きあがるべきか」

といったアネクドートです。

私は原文ではほとんど読めませんが、声に出してみるときれいな響きに
なるようで、ロシア人が読めばすごく魅了されます。
331吾輩は名無しである:03/10/23 01:49
ロシア三キン

プーシキン
クロポトキン
ポチョムキン
332吾輩は名無しである:03/10/28 21:22
プーシキンの詩は膨大で日本で出ている全集でも訳出されてるのは
半分に満たないと聞いたが?
>>330
御紹介ありがとうございました。

>声に出してみるときれいな響きになるようで
きっとそうなのでしょうね。
プーシキン作品の多くに曲がつけられ、歌曲やオペラになっていますが、内容の
深さもさることながら、ことばの響きの美しさが、音に敏感な作曲家たちを惹き
つけたのだと思います。
>>331
不思議惑星「キン」ザザも仲間に入れといてあげてください(笑
335吾輩は名無しである:03/10/31 14:10
つーか、330の小噺はピョートル大帝をテーマにしてねえよ。
アレクサンドル1世(皇帝)と自然の王様(太陽)を
かけたんだろ?
3361828nen:03/11/04 15:30
>>335
記憶違いでした。
337最近落ちてるね:03/11/07 15:37
ツァルスコエ・セローの思い出

   気むずかしい夜のとばりがおりた
   まどろむ大空の天蓋の上。
ひっそりとしたしじまに 眠りこんでしまった、谷間も茂みも
  白っぽい霧にとざされた遠くの森も。
かすかに聞こえてくる 樫の木の木蔭に走りいる小川のざわめき、
かすかに息づいている 枝々の葉に眠りこんだそよ風が、
そして ひそやかな月が 悠然とした白鳥さながら
   銀色の雲間に 泳いでいる。

   泳いでいる、そして 青白い光で
   あたりのものを くまなく照らしている。
年老いた菩提樹の並木が 目の前にひらけて
   丘や草地が 姿をあらわす。
そこにわたしは目にする 若々しい柳がポプラとからみ合い
たゆとう水の透きとおった面(おもて)に うつっているのを。
野原のさなかの女王たる白百合は おごり高ぶるように
   けんらんと美しく花咲いている。
338吾輩は名無しである:03/11/07 15:52
   御影石の丘々をつたって幾つもの滝が
   ビーズ玉の川をなして 流れ落ち、
そこの静かな湖水では ナーイアスたちが
   退屈そうな波を はね返している。
そして そこのしじまのうちには かずかずの宏壮な宮殿がそびえ
天のアーチによりかかり 雲の群を目ざして飛ぶ。
この地ではないか 地上の神々がやすらかな日々をいとなんでいるのは?
   これではないか ロシヤのミネルヴァの神殿とは?

   ここではないか 北方の王城楽土とは、
   こよなく美しいツァルスコエ・セローの庭園ではないのか。
そこでは 獅子をうち負かしたロシヤの力強い鷲が 眠りについている
   平和となぐさめの懐にいだかれて。
かの黄金の時代は 永遠に走り去ってしまった、
偉大な女帝の王笏(おうこつ)のもとで
仕合わせなロシヤが栄光の冠をいただき
   おだやかなとばりのうちに 花咲いていた時代は!
339吾輩は名無しである:03/11/07 19:05
美しいね。ありがとう。
340吾輩は名無しである:03/11/12 17:05
   ここでは一歩ごとに 心のうちに浮かんでくる
   過ぎし年月の思い出たちが。
いましも ひとりのロシヤ人が あたりを眺めまわして 溜息とともに重々しく語る。
   「すべては消え失せた 偉大な女帝はもはやおわしまさぬ!」
そして もの想いに沈みこみ 草の茂った岸辺の上に
かれは 黙然と坐りこみ 風の音に耳をすます。
流れ去った年月が その目の前にひらめき
   そして 魂は ひそやかな魅惑にとらわれる。

   かれは目にする、波また波にとりかこまれ
   がっしりした 苔むすいわおの上に
記念碑が そびえ立ち、雙(そう)の翼をひろげた
   若鷲が その頂上にとまっているのを。
ずっしりとした鎖と 雷神の矢とが
そびえ立つ円柱に 三重にもからみついている。
台座のまわりでは 白い波がざわめきつつ
   きらめく水泡にくだけて 静まっていく。
341吾輩は名無しである:03/11/15 19:14
ナボコフ『青白い炎』文庫版
便乗age
342吾輩は名無しである:03/11/17 18:00
   奥深い陰鬱な松林のかげには
   飾りけない記念碑がひとつ そびえ立っている。
おお カグールの岸辺よ この碑はおまえにとって恥辱にみちたもの!
   そして いとしい祖国にとっては栄光にあふれるもの!
きみらは永遠に不滅である、おお ロシヤの巨人たちよ
荒れ狂う戦いの時代に生まれ うちつづく戦闘にはぐくまれたきみらよ!
エカテリーナの友であり領袖(りょうしゅう)であるきみらのいさおしは
   子々孫々までも語り伝えられるだろう。

   おお 戦乱あいつぐほまれ高き世紀よ
   ロシヤ人の栄光を目(ま)のあたりにした時代よ!
きみは見ていた、オルロフ ルミャンツェフ スヴォーロフたち
   スラヴ人のたけだけしい子孫たちが、
ゼウスと見まごう雷神さながら 勝利をうばいとってきたのを。
その大胆なかずかずの功績に 世界はおそれ いぶかったもの。
デルジャーヴィンとペトロフは この英雄たちに ほめ歌をつまびいたもの
   ひびき高い竪琴の弦にのせて。
343金の魚:03/11/19 15:52
 青い海のすぐそばに
じいさん ばあさん住んでいた。
ちょうど三十と三年(みとせ)のあいだ
古土小屋に住んでいた。
じいさん 網で魚とり、
ばあさん 糸をつむいでた。
ある日じいさん網投げりゃ──
かかったものは藻草だけ。
二度目に投げたその網に──
かかったものは海草類。
三度目投げたその網に
かかってきたは魚(うお)一尾、
魚(うお)は魚(うお)でも金の魚(うお)。
金の魚(さかな)は三拝九拝!
人の声で言うことにゃ、
「じいさん 海へ放しておくれ、
身の代(しろ)たんとあげるから。
お望み次第のものあげる」
じいさん いぶかり びっくり仰天。
漁師稼業も三十と三年(みとせ)、
もの言う魚(うお)とは前代未聞。
じいさん 魚を放してやって
やさしい言葉をこうかけた。
「金の魚よ お大事に!
身の代(しろ)なんかいらねえよ。
青い海へ帰るがええ、
気随気ままに遊ぶがええ」
344金の魚:03/11/19 16:15
 家へ帰って じいさんは
世にも不思議な事件を語り、
「きょうは魚をとりそこねただ、
ただの魚じゃねえ 金の魚。
わしらとおんなじ言葉でしゃべり、
頼んでいただ 海へかえして、
身の代たんと出すからと、
お望み次第のものやると。
わしは身の代とる気になれず、
そのまま海へ放してやった」
ばあさん 相手に食ってかかって、
「あんたは大馬鹿 間抜けだよ!
身の代さえも取れないなんて!
せめて桶でも取ってくりゃいいに、
うちのはすっかり壊れているで」
345金の魚:03/11/19 16:27
 じいさん海へ出かけていって、
見れば──ちょっぴり荒れ模様。
金の魚を呼びだすと、
金の魚は泳ぎ寄り、
「なんの用でしょう おじいさん?」
じいさん ぴょこんとお辞儀して、
「憐れんどくれ 魚の女王、
うちのばあさん小言言い、
わしはうるそうてかなわない。
あたらしい桶がほしいとて。
うちのはすっかり壊れとるでな」
金の魚が答えるにゃ、
「くよくよせずに お帰んなさい、
あたらしい桶がありますよ」
ばあさんのもとに帰ってみると、
あたらしい桶がおいてある。
一層がみがみ ばあさん小言。
「あんたは大馬鹿 間抜けだよ!
馬鹿めが 桶などねだってきてさ!
桶じゃ大して得にはならぬ!
魚のところへ取ってかえして、
お辞儀し 家をねだってこい」
346金の魚:03/11/19 16:32
 そこでじいさん海辺へ出かけ、
(海は少々濁ってた)
金の魚を呼びだすと、
金の魚は泳ぎ寄り、
「なんの用でしょう おじいさん?」
じいさん ぴょこんとお辞儀して、
「憐れんどくれ 女王の魚、
一層がみがみ ばあさん小言、
わしはうるそうてかなわない。
小言ばあさん 家をねだるで」
金の魚が答えるに、
「くよくよせずに お帰んなさい、
いいです 家はできてます」
土小屋へ帰ってみると、
土小屋などは跡形もなく、
明るい部屋の家が建ち
白い煉瓦の煙突や
板ぶきの樫の門までついている。
窓辺に坐ったばあさんは
口をきわめて亭主に小言。
「この馬鹿たれめ ほんとの間抜け!
馬鹿め 家などねだりやがって!
取ってかえして 魚に頼め、
重労働の女はごめん、
旧家の夫人になりたいと」
347金の魚:03/11/19 16:38
 じいさん海へ出かけていって、
(青い海は不穏な気配)
金の魚を呼びだすと、
金の魚は泳ぎ寄り、
「なんの用でしょう おじいさん?」
じいさん ぴょこんとお辞儀して、
「憐れんどくれ 魚の女王、
ばあさん前より小言がひどく、
わしはうるそうてかなわない。
百姓女はもうごめん、
旧家の夫人になりてえと」
金の魚が答えるにゃ、
「くよくよせずに お帰んなさい」

 ばあさんのもとに帰ってくると、
見れば びっくり そびえる御殿。
階段に立つばあさんは
高価(たか)い黒貂の胴着を着、
頭にゃ晴着の錦の頭巾、
首にゃずっしり真珠の飾り
手には宝石(いし)入り金の指輪、
足には赤い靴はいて、
前に立ってる忠義な家来を
なぐり 弁髪引きまわしてる。
じいさん 自分のばあさんに、
「貴族の奥さま こんにちは!
これであんたも満足じゃろう」
ばあさん 亭主をどなりつけ、
厩(うまや)仕事に追いやった。
348金の魚:03/11/19 16:46
 一週 二週とたつうちに、
ばあさん 一層おかんむり。
亭主をまたまた使いにやって、
「もどって 魚に頼んでこい、
旧家の奥方 もうごめん、
気ままな女王になりたいと」
じいさんびっくり 手をあわせ、
「なに言う 気でも狂ったか?
歩き方 口ききようも知らんのに。
国じゅうの笑いものになるばかり」
ばあさん 一層怒りだし、
亭主の横面はりとばし、
「よくもお前は立てつける、
このわたくしに 旧家の夫人(おくさま)に?──
海辺へ行けと頼んでいるだ、
行かなきゃ 無理にも連れていかせる」

 じいさん海へ出かけていって、
(青い海は黒ずんできた)
金の魚を呼びだすと、
魚は泳ぎ寄ってきて、
「なんの用でしょう おじいさん?」
じいさん ぴょこんとお辞儀して、
「憐れんどくれ 魚の女王!
ばあさんまたも八つ当たり。
わたしゃ貴族夫人(おくさま)もうごめん、
気ままな女王になりたいと」
金の魚が答えるに、
「くよくよせずに お帰んなさい!
よろしい! 女王になってます!」
349金の魚:03/11/19 16:53
 ばあさんのもとに帰ってみると、
なんと 目の前に王宮が建ち、
そこで女房のばあさんがいて、
女王になって 卓につき、
貴族たちにかしずかれ、
外国産の酒つがせ、
紋章つきのケーキ食べ、
斧を肩に いかめしい
番兵どもが立っている。
じいさん これ見て──びっくり仰天!
妻の足下に額(ぬか)ずいて、
「おそれ多い女王 こんにちは!
これであんたも満足じゃろう?」
ばあさん 相手にゃ目もくれず、
目ざわりだ 追っぱらえと命ずると、
貴族たちは駆け寄って、
襟がみつかんでつまみ出し、
戸口に番兵駆けつけて、
斧ですんでに殺さんばかり。
みんなさんざんあざ笑い、
「自業自得だ、無礼者!
お前にゃこれはいい教訓。
身のほどをわきまえろ!」
350金の魚:03/11/19 16:55
 一週 二週とたつうちに
ばあさん 一層おかんむり。
亭主をさがしに家来をやると、
じいさん見つけて 連れてきた。
ばあさん 亭主に言うことにゃ、
「もどっていって 魚に頼め。
気ままな女王ももうごめん、
海の女の領主になって、
大きな海に住み暮らし、
金の魚に仕えさせ、
走り使いもさせたいと」
351金の魚:03/11/19 16:58
 じいさん 強いて逆らわず、
敢て反対唱えずに、
じいさん 海へ来てみると、
海は真っ暗荒れ模様。
怒れる波は激しくうねり、
盛んに動き 咆え猛る。
金の魚を呼びだすと、
魚は泳ぎ寄ってきて、
「なんの用でしょう おじいさん?」
じいさん ぴょこんとお辞儀して、
「憐れんどくれ 魚の女王!
ばばあのやつめ しようがない!
あいつ言うには 女王もごめん、
海の領主になりたいと、
大きな海に住み暮らし
お前さんに仕えさせ、
走り使いもさせたいと」
魚はなんにも言わないで、
水を尻尾でぴしゃりとたたき、
深い海へと去ってった。
じいさん しばらく返事を待って、
待ちきれなくて 帰ってみると──
目の前にゃまた土の小屋。
敷居に ばあさん腰かけて、
前にゃこわれた桶ひとつ。
352吾輩は名無しである:03/11/20 23:01
七五調って読むのすごい疲れるね
3531828nen:03/11/27 15:52
『金の魚』もしくは『漁師と魚の話』ですねー。
引用ありがとうございます。>>343-351
ばあさんの物欲が大きくなるごとに、海が荒れていくところが
おもしろいですね(笑)

日本で出版されている童話で最も新しいのは
http://books.yahoo.co.jp/bin/detail?id=31210454
ですね。

>>352
リズムをつかんだらいかがでしょう。ラップみたいに。
354吾輩は名無しである:03/12/01 20:45
やぱーり『金鶏物語』が最高かと。
355吾輩は名無しである:03/12/08 18:11
この物語に風刺あり。
356吾輩は名無しである:03/12/16 19:01
ttp://www.wombat.zaq.ne.jp/propara/articles/034.html
ナボコフ研究者・若島先生のサイトより
357I LUV LIV:03/12/17 11:35
Liv Tylerが美しい映画Onegin見ました。原作にもまあまあ忠実。細かい違いを3つ挙げよ。
358吾輩は名無しである:03/12/22 21:16
リヴ・タイラーは何の役ですか。タチヤナ?オリガ?
359吾輩は名無しである:03/12/23 04:26
リヴ・タイラーがターチャでしたよ、たしかね。
ちなみに決闘で死んじゃう方の人がバイアットの『抱擁』にも
出演していて、グウィネス・パルトロウさんの元恋人役でございます。
グウィネス・パルトロウさん、そういえばCOLD PLAYの人と結婚された
そうですね。
360I LUV LIV:03/12/23 12:56
http://www.lovelylivtyler.com/movies/onegin.shtml
ここに良い写真あり。Livは最後でロシアおばさんになったところも良かった。
恋愛ものの映画では今まで見た中で最高だ。2位はGreat Gatsby。
361吾輩は名無しである:03/12/23 13:01
LIV1のとうちゃんのほうが有名じゃないの。
362I LUV LIV :03/12/24 10:14
いま「指輪」映画に萌えてる少年少女はとうちゃんのほう知らんでしょ。
Oneginの好きな個所は英訳はどれも好かん。ナボコフ訳もいまいち。
なので、自分で直訳してみました。

Chapt.7 XIV

And in loneliness severe
More strongly her passion burns,
And about Onegin far
Her heart speaks more loudly.

She will not see him;
She must hate him,
The murderer of the brother; (?)
The poet was lost... But of him
Nobody remembers, to another
His bride was gave.

The poet's memory was carried away
As a smoke in the blue sky,
About him two hearts, perhaps,
Still long... On what to long?..
363HH:03/12/24 11:04
ナボコフ(thread)からコピペ&修正。
http://book.2ch.net/test/read.cgi/book/1024407321/l50

>>>現実と虚構がごっちゃになってた。…イッテキマツ。

私の頭の中もずっと混乱してます。

PushkinがOnegin書いた。(Oneginの中にPushkinも登場する。)それをNabokovが注釈した。
NabokovがLolita書いた。それをAppelが注釈した。
Nabokovが「KinboteがShadeの注釈した」書いた。それをBoydが注釈した。
364吾輩は名無しである:03/12/24 16:47
 ほんと、そんなのばっかりだよね(笑)ドンキホーテ講義とか。
 それと、びーとふの『ぷーしきん館』を購入しました。
まだちらっと目を通しただけですけど、どうも、そっち系の匂いがする。
365I LUV LIV:03/12/29 07:35
http://www.lovelylivtyler.com/movies/onegin.shtml
ここに良い写真あり。Livタチヤナを見たら「カリオストロの城」のクラリス(?)に似ていると思った。
(時々書いてないとスレが「過去ログ倉庫行き」になるのか? (2ch初心者))
366吾輩は名無しである:04/01/01 06:44
3日おきにでもカキコがあればDAT落ちはないと思われ。
367吾輩は名無しである:04/01/06 13:09
たしか、プーシキン家では、家族同士で話する時にフランス語つかってた、と読んだ。


3681828nen:04/01/07 15:09
前に『プーシキン全集6』の書簡を見ていたら、
プーシキンの書簡は、全部とは言わないまでも
フランス語の分も多かったと思います。
詩人自身も、ロシア語よりもフランス語の方が、
堪能だったのではないでしょうか。
369吾輩は名無しである:04/01/07 15:14
 新ロシア人が金の魚を獲った。
「どうか情け深いお方。青い海に私を返してください」と魚は懇願した。そしたら、
あなたのどんな望みでも三度果たします」
「いや、四つだ。最初に三つで、それからさらに一つ」
「民話では三つだけということになっていますが」
「あんた、臭うニシンだ! おれはあんたをすぐに乾かして酒の肴にしよう。それ
なのに、おれに何か命じる気か」
「わかった、わかった。四度にしましょう。では問いをかけてください」
「100万ドルもらいたい」
 新ロシア人の前に100万ドル入ったバッグがあらわれた。
「じゃあ、今度はチェチェン戦争を終わらせてほしい。あの戦争ではおれは損ばかり
しているからな」
「いえ、これはわたしの手に負えませんね。大きな政治問題で、高位高官の大物たちが
やることで」
「干物にするか!」
 チェチェン戦争は急速に終わりに近づいた。
「さあて、今度は二組のグループを和解させてもらいたい。一つのグループはおれ
から金をまきあげ、別のはおれを守ってくれるが、彼らどうしで争ってるんだ」
「いや、その要求は非現実的です。かれらは互いに憎みあっているのだから」
「やっぱり酒の肴にするか!」
 双方のグループは早急に手打ちをはじめた。
「さて今度は最後のお願いだ。妻がまれに見るワニのような女でね。離婚を望まない
ので、こりゃだめだとわかった。殺そうと思ったが、彼女も警護をつけて歩いている。
こうなったらあれを美人に仕立てて、性格をやさしく善良にしてもらいたいんだ」
 新ロシア人は書類入れから写真をとりだし、魚に見せた。こちらは長いこと、見入っ
ていた。
「な、な、なあるほど……それで、さっき、あんたは干物のことを口にしたんだね?」
370吾輩は名無しである:04/01/07 16:06
 スターリンはプーシキン記念碑の複数の計画案を検討していた。
 第一案は、プーシキンがバイロンを読んでいる、というものだった。
「これは歴史的には正しいが、しかし政治的には正しくない。党の総路線が
示されていないのではないか?」
 第二案は、プーシキンがスターリンを読んでいる、というものだった。
「これは政治的には正しい、しかし歴史的には正しくない。プーシキンの
時代には、わたし、同志スターリンはまだ本を書いていなかった」
 第三案が政治的にも歴史的にも正しいことが判明した。それはスターリンが
プーシキンを読んでいる記念碑である。こうして記念碑が建てられ、開幕式で、
みなが眺めると、スターリンがスターリンを読んでいた。

ttp://www.d8.dion.ne.jp/~rudin_dn/zapishite2/petersburg044.htm{芸術広場}
371吾輩は名無しである:04/01/15 15:14
>>367 たしか、プーシキン家では、家族同士で話する時にフランス語つかってた、と読んだ。

どう言う感覚? 全員バイリンガル?
372吾輩は名無しである:04/01/15 16:09
>>371
当時のロシア貴族たちの公用語は、フランス語だったから家族同士でフランス語つかうのは
自然だったかも。エカテリーナ2世がロシア語の編纂の命令を出したのが18世紀後半だから、
下層身分の大衆と貴族たちとの公用語は混在していたというのが実状かもしれません。
プーシキンは乳母からスラヴ・ロシア語を独自に聞いて習ったそうです。でもプーシキンは
フランス語の方が得意だったと思いますよ。
373どうも。:04/01/19 14:44
どうも。小説・詩などをロシア語で書くということは普通に行われていたのでしょうか?
3741828nen:04/01/19 18:48
>>373
 あとで調べてみるとエカテリーナ2世の命によるロシア言語アカデミーに
よるロシア語辞典は1783年に出たようです。ということは18世紀ロシア文学
の曙は、公権力側が帝国内の言語をロシア語に統一し始めた時期と重なりま
す。
 18世紀末の時点で、ロシア語で作品を書いた有名人に『ロシア国史』を書
いたニコライ・カラムジンの存在があります。プーシキンの先達で師でもあ
るカラムジンは、感傷的ロマン主義の作品『哀れなリーザ』(1792)という
ロシア文学史上の珠玉の逸品を残しています。この作品はロシア語で書かれ
ていて、ロシア語によるロシア文学作品の始まりといってもよいでしょう。
ですので、ロシア語による文学作品は18世紀末の時点で、部数こそ現代とは
比較にならないくらい少ないですが、出版されてはいました。
 しかし出版物によって美しいロシア語文法の規則性が大衆に浸透するのは、
やはり19世紀を待たねばなりませんでした。その大衆が使用するロシア語の
浸透に、つまりは大衆にロシア語の美しいモデルを感化し、教科書の役割を
も担う形になったのが、プーシキンの詩だといわれています。ロシア文学者
があたかも自分のことのように、プーシキンの近代ロシア語の確立に対する
貢献度は大きいという評価を下したがるのは、そういった背景があるわけで
す。私も事実上のプーシキンの詩によるロシア語への貢献度はかなり高いと
認めるのは、やぶさかではありません。
375吾輩は名無しである:04/01/22 06:38
そう言えばプーシキンの漫画が始まってますね。
もっとも、主人公はナターリアのようですが。
376吾輩は名無しである:04/01/26 05:57
何ですかそれは? 
そういえばプーシキンが自分で落書きしてた絵もちょっとマンガっぽいかも。
まさかそれと似てるとことはないと思うけど。
377吾輩は名無しである:04/01/26 18:19
>>375
詳細説明希望。
378吾輩は名無しである:04/01/28 18:11
>>375
日本国内で?それともロシアで?
379吾輩は名無しである:04/02/01 11:53
「オネーギン」って岩波文庫と講談社文芸文庫のどっちがいいですか?
380吾輩は名無しである:04/02/02 10:05
「オネーギン」は池田健太郎訳と木村彰一訳の
他にも金子幸彦訳、木村浩訳、最も新しい
小澤政雄訳
http://www.gunzosha.com/books/ISBN4-905821-74-6.html
と多士済々の訳者の作品がありますです。この際、一つずつ
検討してみては?
私は昔の集英社の文学全集「プーシキン」の木村浩訳がおすすめです。
古本屋でしか売ってないですけど、見つけたら100円で買えるかも。
381吾輩は名無しである:04/02/05 03:41
3821828nen:04/02/13 21:11
>>381
プーシキン夫妻についての漫画化ですか。
おもしろい試みだと思います。
ナタリヤの母がどのように描かれているのか
たのしみですね。
383「青銅の騎士」:04/02/23 19:02
384吾輩は名無しである:04/02/26 08:15
保守
385吾輩は名無しである:04/02/29 22:04
ツルゲーネフとは青春の喜びという意味。
386吾輩は名無しである:04/03/04 19:31
ところで青銅の騎士像はなにをあらわしているか知ってる人いますかね?
あの像は下にヘビをふみつけているんですよ! ヘビは当時のスウェーデンの
象徴なのです。像が北向きになってるのは、スウェーデンにピョートルの
勝利を見せつけるためなんですって。像はかなりの大きさだそうで、
いつの日か見に行きたいものです。
387吾輩は名無しである:04/03/09 13:14
388吾輩は名無しである:04/03/09 19:05
>>386-387
勉強になりますた。
389吾輩は名無しである:04/03/25 02:42
良スレage
390吾輩は名無しである:04/04/05 19:02
>>386
「詩人に」という詩を知ってるか?
あれも一読するだけであらゆる意味が込められているぞ。
まぁ、詩というのはそういったものだが…。
391吾輩は名無しである:04/04/07 20:13
>>302
プーシキンの妻
http://www.d8.dion.ne.jp/~rudin_dn/zapishite2/petersburg065.htm
マリーンズの助っ人の奥さんよりもええなぁ。
392吾輩は名無しである:04/04/12 20:21
俺はマリーンズの奥さんの方がいい…
393吾輩は名無しである:04/04/18 22:02
>391
すごくきれい。
水彩の肖像画って珍しい気がします。
394吾輩は名無しである:04/04/19 18:01
ナタリヤに対してはその美貌にニコライ1世が鼻血たれた話が
ありますからな。(実際に鼻から出血したわけじゃないぞ)
水彩画とはいえ、描かれたのが1840年代ということは、
かなり美化されているか、年をくっても美貌が衰えなかった
ということじゃないかしら。
395吾輩は名無しである:04/04/27 20:51
ダンテスは同性愛者だったという説も
あるけれど、実際はどうだったの?
ナタリヤが同性愛者のダンテスと寝たと
しても、プーシキンには痛くもかゆくも
ないのでは?
396吾輩は名無しである:04/05/02 00:41
___ 青銅の騎士像の台座の文字。

___ピョートル1世へ
___ エカテリーナ2世より
___ 1782年

___とある。
___ この文字の向こう側にはラテン語で同じこと
___が記されている。

なぜラテン語で同じことが記されてるのですか?
397吾輩は名無しである:04/05/02 01:03
どうせガイシュツだろうけど

シーチキン
398吾輩は名無しである:04/05/02 01:48
(゚д゚)ウマー
399吾輩は名無しである:04/05/05 06:57
映画化されたオネーギン見たけどイマイチだった。
400吾輩は名無しである:04/05/05 19:42
ロシア文学に登場する女性のファーストネーム
語尾の発音が全て英語の「a」の発音で終わるのには
何か意味があるのでしょうか?
401吾輩は名無しである:04/05/05 20:16
どうせガイシュツだろうけど

プーシチン

402我輩は名無しである:04/05/06 01:16
オネーギンは映画より是非オペラで見ることをお勧めします。
オネーギンのオペラは初心者でもすんなり楽しめるくらいに、
チャイコフスキーの音楽がとても聴きやすいです。

例の映画ですが、オネーギンとレンスキーの男性側の俳優は良かったけれど、
タチアーナとオリガはミスキャストと感じるくらいこの役に合ってなく期待外れ。



403吾輩は名無しである:04/05/06 11:42
>>396
まだラテン語が「公用語」として貴族の学問の対象に
なってた時代だからと推測されます。1780年代には
教会でしか使われなくなってたであろうラテン語ですが、
「権威」はあったというわけです。ロシア言語アカデミーの
発足は青銅の騎士像の除幕のあとでしたからね。
404吾輩は名無しである:04/05/08 10:42
プーシキンこそロシア文学の元祖
405吾輩は名無しである:04/05/08 12:30
まだ「ベールキン物語」「スペードの女王」「大尉の娘」
「エフゲニ―・オネ―ギン」しか読んではいないが、やはり優れたもの
だと思う。ベールキンは駅長がゴーゴリやドストエフスキーに影響した
だけに、相当な意味を持つロシアの文豪だ。レールモントフも見落として
はいけない。
406吾輩は名無しである:04/05/10 01:50
今、筑摩書房、世界文学大系26昭和37年発行本を
図書館から借りて読んでるのですが、仮に
購入する場合何かお勧めはありますか?
407吾輩は名無しである:04/05/10 02:07
>>401
座布団とれ。

「シーチキンをたべたら、おならがプーと出ました。プーシキン」
「木久蔵さんに一枚やっとくれ」
4081828nen:04/05/10 14:15
>>406
筑摩版ということは、いろいろな訳者で構成されている分ですね。
もし、ほんだらけやブックオフなどで手に入るようでしたら、昔の
集英社版の文学全集のプーシキンの巻がお勧めかもしれません。
また、今は品切の新潮文庫の『スペードの女王』でもいいと思います。
新潮文庫の『スペードの女王』は他の未完成の短編が所収されています。

>>401,>>407
知っててやっているのか、知らずに笑いを取ろうとしているのか
判断がつきかねますが、一応まじめにレスをすると、プーシチンになる
人物は本当にプーシキンの周囲にいました。というよりプーシキンの
親友なのです。
イワン・プーシチンは、プーシキンが学習院に入学したとき、
名前が似ているという理由で真っ先に詩人と知り合いになった人物で、
詩人への回想記まで残しているのです。
学習院卒業後、プーシチンはデカブリストとしての道を歩み
詩人とは感動的な別れを経験することになるのです。
実際、詩人の詩集に「プーシチンに」という作品がありますので、
だまされたと思って一度読んでみるのもおすすめかも。
409吾輩は名無しである:04/05/11 03:05
>>408
ありがとうございます。
購入の際は参考にさせて頂きます。

4101@CLIE ◆GodOnnFcO. :04/05/13 01:07
プーシキンの作品で購入できるものってある?
高校の時図書館の全集でよんだんだけど、、
訳が昭和28年とかそんなので半分日本語じゃなかったので読み直したいのだけど、、
411吾輩は名無しである:04/05/13 21:13
>>410
http://www.books.or.jp/によれば

『金の魚』プーシキン著 みやこうせい訳 ワチェスラフ・ナザルーク 絵 2004/02 \3,150 未知谷
『金のさかな』プーシキン作 ワレーリー・ワシーリエフ絵 松谷さやか 訳 2003/11 \1,470 偕成社
『青銅の騎士』 プーシキン作 郡伸哉訳 2002/11 \1,050 群像社
『ピョートル大帝のエチオピア人』プーシキン著 安井祥祐訳 2001/05 \1,260 明窓出版
『金鶏物語』 プーシキン作 ビリービン絵 山口洋子 訳 1999/07 \1,575 MBC21(東京経済)
『エヴゲーニイ・オネーギン』 プーシキン著 木村彰一 訳 1998 \1,365 講談社
『サルタン王の物語』山口洋子訳 プーシキン文 ビリービン絵 1997 \1,575 MBC21(東京経済)
『エヴゲーニイ・オネーギン(完訳) プーシキン著 小澤政雄 訳 1996 \3,150 群像社
『ロシアT』プーシキン・レールモントフ他著 1991 \4,384 集英社
『金のにわとり』プーシキン原作 ゾートフ,O.K.絵 斎藤公子編 1990 \1,470 創風社
『サルタン王ものがたり』斎藤公子編 プーシキン作 ゾートフ絵 1985 \1,890 青木書店
『露滴集』プーシキン他著 レールモントフ他著 小澤政雄 訳 1985 \2,100 群像社
『スペードの女王・ベールキン物語』プーシキン著 神西 清 訳 1967 \525 岩波書店
『ベールキン物語』プーシキン著 小澤政雄 訳 1955 \1,050 大学書林
『世界の文学セレクション36 11 プーシキン ゴーゴリ ツルゲーネフ』中央公論社

これだけ出てくるが、値は張るものの群像社がおすすめかな。
4121○CLIE ◆GodOnnFcO. :04/05/13 23:49
>>411
どうもありがd
聞かない訳者ばかりだね、、
訳者としてはだれがお勧めでしょうか?
なんかググって見たら昭和30年代になくなった人とかが多い、、
413吾輩は名無しである:04/05/14 10:24
ドストエフスキーからかって苛めるのは得意だったらしい
ドストは地下生活者の手記の主人公状態になって発作おこして泡ぶくぶく
414吾輩は名無しである:04/05/16 01:12
日本語訳文が大変力強く綺麗なのですが、実際
原文ひゃどうなんでしょうか?
415吾輩は名無しである:04/05/16 01:13
日本語訳文が大変力強く綺麗なのですが、実際
原文はどうなんでしょうか?
416ちょっとだけよ:04/05/17 13:17
>>415
「オネーギン」の序詩は、こうです。

Не мысля гордый свет забавить,
Вниманье дружбы возлюбя,
Хотел бы я тебе представить
Залог достойнее тебя,
Достойнее души прекрасной,
Святой исполненной мечты,
Поэзии живой и ясной,
Высоких дум и простоты;
Но так и быть -- рукой пристрастной
Прими собранье пестрых глав,
Полусмешных, полупечальных,
Простонародных, идеальных,
Небрежный плод моих забав,
Бессониц, легких вдохновений,
Незрелых и увядших лет,
Ума холодных наблюдений
И сердца горестных замет.
417吾輩は名無しである:04/05/17 13:19
>>413
そんな史実はありません。
迷惑な書き込みは控えるようにしてください。
418吾輩は名無しである:04/05/17 16:47
>>400
ロシア人の名前の特徴は、
http://www.coara.or.jp/~dost/17-ab.htm#a
に詳しいが、どうして、ターニャ、ソーニャ、アンナなど
語尾に英語の発音でいえばaがつくのかは、わからん。
ロシアの文化・社会史の方で尋ねたほうがいいかもしれん。
419吾輩は名無しである:04/05/17 19:45
>>417
ドストからかわせたら大家だってのは有名な話だぜ
パニクったドストが泡ぶくぶく
420吾輩は名無しである:04/05/18 14:53
ロシャー語で書かれても分かりませんがな・・・
オネ―ギンもまたロシア特有の悲恋の小説
422吾輩は名無しである:04/05/22 17:12
プーシキンとかドストエフスキーとか
今となっては馬鹿馬鹿しくて読めないよな
父と子とか罪と罰とか19世紀的単細胞の典型だよな
あんなの大真面目に書いて評価された時もあったんだな
423吾輩は名無しである:04/05/22 18:01
>>422
        | Hit!!
        |
        |
   ぱくっ |
     /V\
    /◎;;;,;,,,,ヽそんなエサで
 _ ム::::(,,゚Д゚):| 俺様が釣られると思ってんのか!!
ヽツ.(ノ:::::::::.:::::::.:..|)
  ヾソ:::::::::::::::::.:ノ
   ` ー U'"U'
大尉の娘にでてくる
女帝とはやはりエカテリーナのことだったのかな?
4251828nen:04/05/24 15:51
>>424
そうです。エカテリーナ2世(大帝)です。
『大尉の娘』の時代はちょうど18世紀後半で
ロマノフ王朝黄金時代です。
エカテリーナ2世の頭を最も悩ました問題が、
プガチョーフの反乱だったのです。
プーシキンはプガチョーフ反乱史を手がけるにあたり、
プガチョーフのことを嫌っていたそうですが、
創作となれば逆に反乱の首謀者を魅力ある人物に仕立て上げる
という作家の真骨頂を発揮しています。
426Ге:04/05/24 19:59
>>422
Это слебо вам понятно?
Больной должен лежать в постели.

>>423
Ты любишь ловить рыбу?
─Нет,я люблю есть рыбу.
427VON・トーマス・マン:04/05/28 19:45
やはりそうだったんですね。あれは有名なプガチョフの乱を題材にした小説ですから、
そういう結末でしょうね。しかしながらあのエカテリーナの分別には驚きました。
放蕩女で有名なエカテリーナの卓越した決断にはただただ脱帽。
42836歳節約ママ ◆baeGuFHffI :04/05/28 20:09
「大尉の娘」良かった。
「オネーギン」と違ってスラスラ読めた。
プガチョーフがなんとも憎めないキャラクターだったなあ・・
42936歳節約ママ ◆baeGuFHffI :04/05/28 20:13
「大尉の娘」良かった。
「オネーギン」と違ってスラスラ読めた。
プガチョーフがなんとも憎めないキャラクターだったなあ・・
430VON・トーマス・マン:04/05/28 20:21
まあいえている。ところでお互いに美香には相応の仕打ちを受けたね。
今自分のpc壊れているから外部からの送信だけど・・・

今はトーマス・マン読了に向けて充電中。
431VON・トーマス・マン:04/05/28 20:29
プガチョフのあの人格は忘れなれなかった。あの異常なほどの警戒心
の欠如には本当にあれだけの勢力を誇った反乱者の行動なのかと疑う
気持ちが今でも薄れていない。
43236歳節約ママ ◆baeGuFHffI :04/05/28 20:48
「大尉の娘」はもっと長くしても良かったと思う。

433VON・トーマス・マン:04/05/28 22:45
それは云えているかもしれない。あれは長いほうがもっと重厚な味がでて
もっと醍醐味を覚えるような秀作になれていたかもしれない。
4341828nen:04/05/31 18:54
>>426
ほどほどにね。(笑)

>>427-429,>>431-433
『大尉の娘』についての意見、とても楽しく読ませてもらってます。
私もプーシキンの筆によるプガチョーフの描き方は伊達じゃないと
思っています。

蛇足ですが、実際のプガチョーフ像は、とにかく「俺の反乱に協力したやつは、
みな自分の土地を与えてやる」という触込みで農民軍を組織した
そうです。農民軍がいともたやすくできた背景にはロマノフ朝黄金期を
支えるのに相当な代償(農民への負担)が払わされていたことがあり、
ヴォルテールに心酔したエカテリーナ2世による政策の最大の矛盾があります。
このあたりのことを、自由への賛歌を詠ったプーシキンが、実際はどう考えて
いたのかは分かりませんが、小説の中でお上にもの申すような気持ちを
ぶちまけようとした、それが作品のなかのプガチョーフ像だったのかも
しれません。
43536歳節約ママ ◆baeGuFHffI :04/05/31 20:06
あるサイトで見たんだけどロシア人にはドストエフスキー、トルストイ
よりもプーシキンのほうが人気があるって書いてあったけど
これ本当かな??

どう考えてもドスとトルはロシア作家に限らず全世界の作家と比べても
突き抜けてると思うんだけど。
436吾輩は名無しである:04/05/31 20:36
本当だよ。
何といってもロシア近代文学の父なんだから。
あとはゴーゴリもそう。
ド氏の場合は、ソ連時代、禁書扱いだったから
人気だけではプーシキン・ゴーゴリに劣ると思う。
4371828nen:04/05/31 20:51
そうですね。世界的に有名な作家がその本国でどれだけ
読まれているかという話になるような気がします。
不適切な例えかもしれませんが、たとえば『源氏物語』は
世界中に知られていますが、日本国内では漱石の作品の方が
圧倒的に読まれているという感じでしょうか。
古典作品の中で、プーシキンがロシア国内でドストエフスキーや
トルストイやツルゲーネフ以上に読まれているというのは、
間違いではないでしょう。必修ならぬ必然課目と選択科目が
あったとするなら、前者がプーシキン、後者がドス・トル・ツルと
いえる?(w
トルストイの民話以上にプーシキンの民話はとてもリズム感がよくて
暗唱しやすく、何より難しい言葉を使っていません。また国語で
『オネーギン』や『スペードの女王』は、早いうちから学校で必ず習う
ようです。
最近の統計では首都圏に住む人の三割以上が「プーシキンの詩」を好むという
結果が出ています。
43836歳節約ママ ◆baeGuFHffI :04/05/31 20:58
なるほどね。
学校で習うってのは大きいね。

翻訳で読んだ限りでは「オネーギン」はすごい読み難い本だったけどね。
4391828nen:04/05/31 21:02
正直、『オネーギン』は日本語に起こすのが、もっとも困難な
ロシアの国民文学だと思います。
『草枕』の冒頭をロシア語や英語にして、ネイティブに読ませても、
あの質感までは伝わらないでしょうね。
44036歳節約ママ ◆baeGuFHffI :04/05/31 21:07
>>439

ああ、確かにそうだよね。
翻訳じゃ絶対伝わらないよね。

本当に古典文学なんだね。
4411828nen:04/05/31 21:09
あと、ロシア語の韻律が大いに関係しています。
ここが日本語とロシア語の大きな壁みたいです。
4421828nen:04/06/14 21:54
>>439
×あの質感までは伝わらないでしょうね。
         ↓
○あの質感を外国人が理解できないのと同じことでしょうね。
「ボリス・ゴドノフ」を読んだ。結構面白い展開が売り物の戯曲だった。
プーシキンの本は2年ぶりだったが、読むたびに斬新さを覚えていく。
この戯曲は幕の数を示したものがなかったが、その場面の移り変わりには、
納得がいってしまう。
444マンコーマン ◆TmeaYmcWyM :04/06/16 23:17
「ボリス・ゴドノフ」糞おもろなかった。
場面変えることでストーリを展開させてるのが稚拙だと感じたな。
だいぶ前に読んだんでよく覚えてないけど。
そう思う人もいてもいいと思う。
でも歴史の真実をそれなりに表現したのだから、あれはあれで優れた作品と
して評価していいと思う。
446吾輩は名無しである:04/06/17 21:16
>>444
Прежде чем писать,подумай как следует.
4471828nen:04/06/17 21:24
『ボリス・ゴドゥノーフ』を読んだ方の書き込みとは、うれしいですね。
プーシキンはドミートリー皇子の死を、ゴドゥノーフの陰謀による暗殺である
と信じていました。だから、あのような演出をしたわけですが、暗殺が真実で
あるかは史実を紐解いても未だ確証はありません>>445
ですが、劇作としては大変よくできていまして、私は偽ドミートリーが
想いを寄せるあのヒロイン(マリヤ?)がとても気に入っています。
あの挑発をされて冷静でいられる男はいないかも(笑)
「ボリス・ゴドノフ」はそれなりに一定の評価をされる方からそうして評価される
ことは非常に嬉しいことです。まだロシアが黎明期だった頃を描いた作品だからこ
そ興味を惹かれたことは確かです。
449吾輩は名無しである:04/06/19 09:10
私はオペラ「ボリス・ゴドノフ」に感銘をうけたことから、プーシキンの原作を
読みました。
ムソルグスキーの「ボリス・ゴドノフ」も素晴らしいです。
ボリスの苦悩の描写のドラマチックなこと、震えがきました。
ロシアという国の歴史にも一気に興味がわきました。
450 ◆cjNMMnnJn2 :04/06/19 21:19
「ボリス・ゴドノフ」愛する人は結構歴史に大きな関心持つ人が多いですね。
ボリス・ゴドノフ以外には「石の客」「サリエーリとモーツァルト」を読んだ
ことがあります。
他にも戯曲があったならば教えてください。
452吾輩は名無しである:04/06/21 20:10
『ルサルカ』とかあるね。未完だけど。
ドボルザークのオペラ『ルサルカ』と
関係あるのかしらん?
453Czar.Vladimir ◆ZnBI2EKkq. :04/06/22 05:38
>>452
今度探してみます
4541828nen:04/06/24 20:08
>>453
河出書房のプーシキン全集にしか入っていない気がします。
図書館でなら可能性があるかもしれません。
455吾輩は名無しである:04/06/25 22:42
    無 題

ふるさとの、昔ながらの習はしを
異郷で私はかしこく守り
春の明るい祭りの日に
小鳥を一羽放してやる。

こんな小さな生き物でも
自由を与へてやれたので
今更神に不平もなく
私の心は慰められる。
456吾輩は名無しである:04/07/14 21:51
ひょとして私訳?>>455
それならすごひ。
457Chapt.7 XIV:04/07/28 03:49
И в одиночестве жестоком
Сильнее страсть ее горит,
И об Онегине далеком
Ей сердце громче говорит.
Она его не будет видеть;
Она должна в нем ненавидеть
Убийцу брата своего;
Поэт погиб... но уж его
Никто не помнит, уж другому
Его невеста отдалась.
Поэта память пронеслась
Как дым по небу голубому,
О нем два сердца, может быть,
Еще грустят... На что грустить?..

http://www.worldlingo.com/wl/translate/ja/
そして孤独の厳しいより強いので情熱の焼跡、
そして遠いそれOnegin について声高に告げる中心。
それはそれを見ない;
それはそれで憎悪の兄弟のキラーなる;
詩人は... 死んだ しかし既に誰も覚えている、 既に花嫁は他に戻った。
詩人の記憶はスカイブルーの煙として運ばれた、
それ2 つの中心、 それはある場合もある
まだtyuey のgrustyat... 悲しいがある何か。。

シリル文字をローマ字に変換するツール(Web page)ありませんか?
Онегине  ⇒ Onegine (?)
458吾輩は名無しである:04/07/28 20:28
459吾輩は名無しである:04/08/27 20:09
講談社文芸文庫のオネーギン買ってきたので読みますage
460吾輩は名無しである:04/09/01 09:18
無題の叙情詩が多いのは、短い詩が余技に過ぎないものだったからなのだろうか。
それとも、そういう流行でもあったのか。
461吾輩は名無しである:04/09/06 20:37
age
462栗尿夫:04/09/15 11:00:03
>>460
個人的な意見だから根拠はないけど、逆にタイトルが必ず付いていなけれ
ばならない理由もないと思う。
タイトル付の詩の中身の傾向や、伝記に残される詩作のプロセスからする
と、思いがあって作る詩と、韻が思いついたり、自然と湧き上がってくる
言葉を綴った詩もあったかに思われるので、その違いが現れているのでは
ないかと。
プーシキン文学の学術研究者はどう考えているのか知らないけどね。
463吾輩は名無しである:04/09/24 21:29:04
ロシア人なら詩の出だし聞いただけで暗唱してみせるがな。
464吾輩は名無しである:04/09/24 22:27:10
>>463
やはりそういうものか…
465吾輩は名無しである:04/10/13 15:05:42
http://homepage3.nifty.com/hermony/moscow.htm
 そうしてしばらくすると、チャイコフスキーの同性愛志向を疑う世間の目がうるさくなり、また熱心にラブレターを贈ってくる女性、アントニーナ・イワーノヴナがいたものですから、彼は結婚する事にしました。

その時手がけていたオペラ「エフゲニー・オネーギン」のストーリー(タチアーナが恋文でオネーギンに思いを打ち明けるも冷酷にあしらわれる)が影響していた、という推測もあります(寺西春雄)。

チャイコフスキーは、最初のアントニーナからのラブレターに対してそっけない返事をした事を、自分をオネーギンの冷酷さに重ねて後悔していた様子が見られるのです。ですから、この推測は的を得ているのではないかと考えられます。
466吾輩は名無しである:04/10/14 20:55:30
まぁ、チャイコフスキーは「オネーギン」のヒロインに
自分の周囲の女性をみていたのかもしれませんね。
そうかんがえれば、いかにもロシア的という感じがしますよ。
467吾輩は名無しである:04/10/14 22:10:40
468吾輩は名無しである:04/10/29 21:22:52
10/26に原卓也氏が亡くなったそうな。
ロシア文学に精通されていた人としてご冥福をお祈り申し上げる。
469吾輩は名無しである:04/11/17 17:46:58
ロシアでは「オネーギン」の名場面など暗誦できる人が多いそうだが、
日本で言うと百人一首とか芭蕉の名句のようなもんか?

ロシア人が「オネーギン」を覚えている方が量が多いような感じだが。
4701828nen:04/11/17 20:58:30
>>469
たとえば以下の文なんかがそうです。
 けれどもついに、旅のおわりも近づいた。行く手には、
白き石もて築かれたモスクワの町、その町の空高く、古き
寺院のかずかずの丸屋根が、もゆるがごとき、金色(こんじき)
の十字架をかがやかせている。ああ、国びとよ、かつてわたしの
目のまえに、ゆくりなくも、この町の、あまたの寺院や鐘楼や、
また庭園や宮殿が、半円形に開けたときに、わたしの胸は、どん
なにふかい喜びに、みたされたことだろう。気まぐれな運命に
もてあそばれて、にがい別離の旅にあるとき、モスクワよ、
わたしはいくたびお前のことを思いうかべたことだろう、
モスクワ……わがロシア人の心にとって、このひびきには、
いかに多くの思いがこもり、このひびきから、いかに多くの
思いが呼びさまされることだろう。
『エヴゲーニイ・オネーギン』第7章36節

『オネーギン』は韻文小説としては長いものの、やっぱりロシア国民ならば
心を打つような場面というか、風景画のような、言葉がちりばめてあります。
上の文はタチヤナがモスクワに引っ越す場面にある、モスクワという都市を
詠ったものですが、想像すればいかにもTVで見られるクレムリンや周辺の
ロシア正教の寺院が思い浮かぶという感じです。
もちろん、ストーリーの核をなすタチヤナの恋文や、決闘前の舞踏会、決闘、
最後の社交界なども重要でしょうが、それらの核な場面の前後に描いてある
ロシアの自然や、登場人物のロシア人的気質などが、作品を暗唱できるぐらい
ロシア人の心に響くものだと思います。
471吾輩は名無しである:04/11/22 20:57:32
誰の訳?
472吾輩は名無しである:04/11/26 20:57:40
>>471金子。
473吾輩は名無しである:04/12/11 17:58:53
プーシキンもサロンの寵児だったのでしょうね。(サロンの寵児と言えば: ルソー、リスト、ショパン、ダランベール, Pascal, フォーレ)

「サロン主義」を英語などで何というかご存知でしたら教えてください。

寵児 darling // enfant cheri // favored child
運命の寵児 child of fortune // darling of fortune // favorite of fortune // minion of fortune
時代の寵児 hero of the times // wonder boy
文壇の寵児 darling of the literary world
http://www.horagai.com/www/cine/eiga/e2000b.htm
*[01* 題 名<] オネーギンの恋文
*[01* 原 題<] Onegin 製作年 1999 英国

>> 湖の桟橋で銃を向けあう決闘シーンはカメラの勝利だが、タチアーナがいかにも田舎くさいので、興ざめ。

Liv Tyler は田舎くさくなかった。最高の美しさ。指輪映画より美しかった。
475吾輩は名無しである:05/01/11 14:42:23
>>473「サロン主義」、おもしろい言葉だね。それらしい雰囲気がわかるよ。
こんなん外国語でどういうのか? フランス語でありそうだね。
476吾輩は名無しである:05/01/25 20:08:03
映画板からきました。
タルコフスキーの「鏡」で少年が朗読するプーシキン書簡って日本語訳で読めますか?
内容は「ロシアはヨーロッパではない」みたいなものでしたが。
4771828nen:05/01/25 20:29:05
>>396
遅レスですが、青銅の騎士像にあるラテン語表記は
「モスクワは第三のローマ」という思想と関係あるかも
しれません。その思想は首都がペテルブルグに移っても
変わらなかったと想像してしまいました。
詳しい方、コメント願います。
478吾輩は名無しである:05/01/27 18:20:35
「モスクワは第三のローマ」だからペテルブルグに移ってもラテン語の権威が生きてたっていうの?
18世紀後半に入ってまでその思想に意味があったとは思えないけど。貴族の一般教養としてラテン語が
当然視されてたから、じゃないの?
479吾輩は名無しである:05/01/27 18:41:26
>>476
『プーシキン全集6』(河出書房新社)p335
480吾輩は名無しである:05/02/02 21:54:46
476です。ばりしょーえ・すぱしーぼ。
481吾輩は名無しである:05/02/03 04:39:02
>>480
ロシア語では、アクセントのない o はアと読むから、
スパシーバが正しい。
482吾輩は名無しである:05/02/07 21:21:50
476です。重ねてスパシーバ。481さん。
483吾輩は名無しである:05/02/17 19:11:56
>>479
そのチャアダーエフへの書簡はプーシキンの書いたものにしては
ちょーと矛盾してるかもね。その矛盾してるところを分析するのも
おもしろいと思うのさ。
484吾輩は名無しである:05/02/24 18:28:43
「オネーギン」の邦訳は、木村彰一訳(文芸文庫他)が
〈韻文小説〉の形式を可能なかぎり日本語にした、という評価のようですが、
いちばんましですか? 
例えば、ロシア文学以外の分野の日本語論文に引用するとして。
内容(筋)を理解するには、岩波文庫訳がいいとも聞きますが(-.-)??
4851828nen:05/02/25 20:57:12
>>484
岩波文庫版の池田訳はお手頃で一番平明だと思います。
韻律はともかくとして、訳が原書に忠実かもしれません。
昔の集英社の文学全集にあった木村浩訳は口語体で
けっこうくだけてて好きです。
486吾輩は名無しである:05/02/26 01:13:05
散文訳の方が、内容には忠実だぞ。
韻文は、字数や音合わせのために意味がずれてるところがあるから。
ただ、国民詩人として愛されたプーシキンなのだから
韻文で読むのが醍醐味だとは思うけどな。
487484:05/02/26 05:35:17
>>485-486
ありがとうございます。
「昔の集英社の文学全集にあった木村浩訳」というのは知りませんでした。
図書館ででも探してみます。
488吾輩は名無しである:05/02/26 22:34:37
プーシキン全集って6巻とかあるの?
小説いっぱいありますか?
「大尉の娘」「エフゲニイオネーギン」「スペードの女王」
これくらいしか手に入らないよ。小説もって読みたいでつ。
だから、もっと小説くで〜。プーシキンこそわが青春!
少年少女もプーシキンを読んだらいいのになあ。
4891828nen:05/02/28 19:58:48
>>484
>>486さんのとおりかもしれません。
ちなみに第7章36節で、少し違いを検討してみると

 だが見よ、ようやく間近に迫った。行く手には白い石の都モスクワの、古い寺院の丸屋根が、
炎のように金色(こんじき)の十字架をきらめかせて燃えている。ああ、同胞(はらから)よ、突然行く手に教会や、鐘楼
や、庭園や、宮殿がずらりと半円形に開けているのを見た時、私はどんなに嬉しかったことか。
さすらい漂うわが運命にもてあそばれて、悲しい別離の旅にある時、モスクワよ、私は幾たびお
前のことを思い浮かべたことか。モスクワ……わがロシア人の心にとって、この響きには、どん
な沢山の思いがこめられていることか。どんな沢山の思いが鳴り響くことか。(岩波の池田健太郎訳)

 だが、もう旅路の終わりが近づいた。一行の行く手には、白い石の都モスクワの古い正教寺院の
円(まる)屋根が、金色の十字架をきらめかせながら、炎のように燃えていた。ああ、同胞諸君よ、
かつて私の目のまえに、寺院や鐘楼や庭園や宮殿などの眺めが半円をなしてあらわれたとき、私は
どんなにみちたりた思いにかられたことだろう! 私が漂泊の運命にもてあそばれて、悲しい別離を
味わっていたとき、モスクワよ、私は幾たびおまえのことをしのんだことであろう! モスクワよ……
このひと言のひびきのなかには、ロシア人の心にとってどれだけ多くの思いがこめられている
ことだろう! どんなに多くの思いが鳴りひびいていることだろう! (昔の集英社版、木村浩訳)

金子訳は>>470に、講談社文芸文庫版は書店にあります。
あなたの感性に合うものを探してみてください。

>>488
第六巻は書簡集です。未完成の分を含めると、そこそこあります。
490光芒生:05/03/01 23:50:57
プーシキンってなにから読むといいですか?
491吾輩は名無しである:05/03/02 19:56:04
詩人だから、まずは詩集がいいかも。でも最近売ってないから図書館にしかない。
小説だたーら「大尉の娘」か「スペードの女王」だね!
プーシキンの生涯について知りたいなら「プーシキン伝」池田健太郎著がおすすめ。
492光芒生:05/03/02 23:58:30
>>491
ありがとうございます。図書館でさがします。
「スペードの女王」ってなんか聞き覚えありますね。
春休みに突入したらゆっくり読みます。
493光芒生:05/03/03 00:06:16
プーシキンって決闘で殺されたとか便覧に書いてありますね。
494吾輩は名無しである:05/03/03 02:48:00
そうだよ。
ただ、当時の決闘はわざとはずすのが一般的で
死んだりしないようになっていたので、
暗殺されたのでは、という説も有力。
495吾輩は名無しである:05/03/04 19:38:15
>>492-493
>>494もいってるとおり、プーシキンの決闘による死は謎が多いです。
決闘をテーマにしたフィクション
「プーシキンの決闘」原求作 著
まであるくらいです。伝記では
「プーシキン伝」アンリ・トロワイヤ 著
「プーシキン伝」池田健太郎 著
で知るのがおすすめです。



496光芒生:05/03/05 00:27:55
>>495
ありがとうございます。
今度よみまつ。
4971828nen:05/03/07 18:46:44
『プーシキン全集6』(河出書房新社)p335

159 P・Y・チャアダーエフ〔フランス語〕
     (一八三六年十月十九日、ペテルブルグからモスクワへ)
 抜刷をお送り下さってありがとう存じます。満足をもって拝読いたしました。それが翻訳されて活字
になったことにびっくりしましたけれども。もっともわたしはその翻訳にも満足で、原文のエネルギー
と自然さがそのまま保たれています。思想に関して言えば、ご存知のとおり、わたしはすべての点であ
なたと同じ意見の持ち主とは申せません。教会の分裂がわが国を他のヨーロッパから切り離してしまっ
たこと、わが国がヨーロッパを揺り動かした偉大な出来事にひとつとして参加しなかったこと、それは確
かにそのとおりです。が、わが国にはわが国独自の宿命があったのです。それがロシヤであり、その広
大無辺の空間があればこそ蒙古族の襲来をも呑み込むことができたのです。ダッタン人たちはあえてわ
が国の西の国境を越えようとせずに、われわれを背後に留めたままにしておいた。彼らはやがて自分の
荒野へ退き、こうしてキリスト教文明は救われたのです。この目的達成のためには、わが国はまったく
独自の生き方をしなければならず、その生き方はわれわれをキリスト教徒として留めながら、しかし他
のキリスト教世界とはまったく別のものたらしめた、そうしてこのわが国の殉教によってカトリック・
ヨーロッパのエネルギッシュな発展はあらゆる障害を免れ得たのです。あなたはおっしゃっておられま
す、わが国がキリスト教を汲み取った源は清らかではなかった、ビザンチンは軽蔑に値してきたし、げ
んに軽蔑すべきだうんぬんと。ああ、友よ、しかしイエス・キリスト自身、生まれはユダヤ人ではなか
4981828nen:05/03/07 18:49:00
ったのでしょうか。エルサレムは異教における説話ではなかったのでしょうか。その点からすれば福音
書もそれほど驚嘆すべきものではないのではないでしょうか。わが国がギリシャ人から採り入れたのは
福音書と伝説であって、子供じみた狭量や空論ではなかったはず。ビザンチンの習俗がキーエフの習俗
になったことは一度もなかったのです。わが国の僧侶はフェオファン以前に尊敬に値していた。法王政
治の卑劣さによってみずからを汚したこともなかったし、当然のことながら、人類が何よりも統一を必
要としていたそのときに、宗教改革の火の手を挙げたこともなかったのです。こんにちのわが国の僧侶
たちが時代おくれなことは、確かにそのとおりです。その理由を申しましょうか。それは彼らがひげを
生やしている、そのためですよ。彼らは良き社会に属していないのです。いっぽうわが国の歴史上のく
だらなさについては、わたしは断然お説に同意するわけにはまいりません。オレーグやスヴャトスラー
フの戦い、領地のための内乱、──あれにしてもあらゆる民族の若さの特徴である沸き立つ動揺、火の
ような見境のない行動に満ちた生活にすぎないのではないでしょうか。ダッタン人の襲来は、悲し
い、大いなる光景です。ロシヤの目ざめ、その力の発展、統一への動き(むろんロシヤの統一ですが)、
両イワン、ウーグリチにはじまり、イパチエフスキイ修道院において完了した壮大なドラマ、……はた
してこれらは歴史ではなく、青白い、なかば忘れられた夢にすぎないのでしょうか。ではピョートル大
帝は? 彼こそは全世界史です! ではロシヤをヨーロッパの入口に立たせたエカテリーナ二世は?
あなたをパリへ入城させたアレクサンドルは?(手を胸にあてて考えてごらんなさい)、あなたは現在
のロシヤの状態に何か意義のあることを、後世の史家のどぎもを抜くような何事かを、ごらんにはなら
ないのでしょうか。あなたは後世の史家がわが国をヨーロッパから除外するとお考えなのですか。わた
しは個人的には心から陛下に愛着を覚えています、が、自分の周囲で見ている一切のことに、わたしは
4991828nen:05/03/07 18:51:24
とても歓喜を覚えるわけにはいきません。文学者として──わたしはいらだちを覚え、正直な人間とし
て──わたしは侮辱を感じています。が、名誉にかけて申します、わたしはこの世の何物を代償として
も祖国を変えるつもりはなく、また神が与えたもうたそのままの形で、わが祖先の歴史を捨ててほかの
歴史を持ちたいとは思いません。
 ひどく長い手紙になりました。あなたとの議論を終えるにあたって、わたしはあなたの「書簡」のな
かの多くのことが極めて正しいことを申しあげておかなければなりません。実際、白状すると、わが国
の社会生活は悲しむべき代物です。この世論の欠如、あらゆる義務や、正義や、真理に対するこの無関
心、人間としての思案や品位に対するこのシニカルな軽蔑、──それを思うとまったく絶望におちいり
ます。あなたはそのことを大声で言って、ほんとうにいいことをして下さった。ただあなたの歴史的な
信念があなたに害を及ぼすことがないか、お案じしています。……最後に、あなたが原稿を雑誌社に渡
されたとき、おそばにいられなくて残念です。わたしはどこにも行きませんので、あなたの論文がどん
な感銘を与えているのか、あなたに申し上げることができないのです。吹き散らされることのないよ
う、希望しています。「同時代人」第三号、お読みになりましたか。『ヴォルテール』と『ジョン・タ
ンネル』の論文はわたしのもの。コズロフスキイは、もしも断固として文学者となる気を起こしたなら
ば、わたしの神となったことでしょう。さようなら、友よ。オルローフやラエーフスキイにお会いにな
ったら、宜しくお伝え下さい。あなたの「書簡」について、彼ら平凡なキリスト教徒はなんと言ってい
るのですか。
5001828nen:05/03/07 18:55:09
>>476
じっくり読んでみました。本当に興味深い書簡です。
プーシキンがロシアで支持を受けているひとつの理由がここにあるかもしれませんね。
501吾輩は名無しである:05/03/11 20:39:32
なんかドストみたいね。
502シェクスピ:05/03/13 05:47:36
「馬が蹄に違和感を感じ」って部分が好きだわ
503吾輩は名無しである:05/03/16 19:01:58
チャダーエフの哲学書簡って読めます?
手に入らないんだ。
504吾輩は名無しである:2005/03/23(水) 20:44:52
どこや?「馬の蹄・・・」って。誤爆か?
505吾輩は名無しである:2005/05/18(水) 12:11:45
(´ー`)age
506吾輩は名無しである:2005/05/28(土) 00:41:59
こ。。。こんなスレがあったなんて
507吾輩は名無しである:2005/06/11(土) 12:18:02
-
508吾輩は名無しである:2005/07/06(水) 14:19:03
-
509吾輩は名無しである:2005/07/09(土) 06:31:14
「感情教育」という言葉についての疑問
1.フロベールが題名に使う前からあった?
2.フランス語では一般的にどういう意味?
3.以下の英文では「思春期の性的な初体験・初恋」の意味で使っている。英語では一般的にこういう意味?

「Nora: The Real Life of Molly Bloom」by Brenda Maddox
Page 21: "... yes O yes I pulled him off into my handkerchief . . ." Nothing interested Joyce more than Nora's sentimental education, as "The Dead" proves. In the case of Willie Mulvagh, whose very name Joyce bestowed on Molly Bloom's first lover ..."

『感情教育』 青年のロマン主義的理想とその挫折を描いたフローベールの自伝的作品。
Gustave Flaubert "L'Education sentimentale", 1869
『新集世界の文学14 フロベール』(中央公論社、1972年)所収(山田【じゃく】訳)

あらすじ
【1】 七月王政下、身を立てるためパリに出てきた法科の学生フレデリックは、出版社社長アルヌーの夫人と知り合って恋心を抱く。
アルヌー夫人はフレデリックの好意に気づきながらも、単なる知り合いとして以上の親交を許そうとしない。彼は年金を持ち、前途を有望視されながらも、この恋のために出世のチャンスを逃してばかりいた。

 やがて二月革命が起こり、フレデリックと友人たちは混乱のパリであてのない遍歴を続ける。娼婦ロザネットとの関係、ダンブルーズ夫人との交際、フレデリックの帰郷を待つ故郷のルイーズへの拒絶。
アルヌーの没落がすすむうち、フレデリックはとうとうアルヌー夫人と二人で会う約束を取りつけるが、夫人の息子の急病のためこの約束は破られる。

 20年ののち、依然として無為の生活を送るフレデリックは、すでに老境に入ったアルヌー夫人と再会する。互いへの愛情を持ちつづけた二人は情熱的な告白を交わし、そのまま別れる。
そしてしばらく後のある冬の日、フレデリックと友人のデローリエは、成功しなかった自分の半生を振り返り、青春時代をなつかしむのだった。

・・・これをさらに簡略化すると、要するに次のようになるであろう。「理想を抱いていた青年が恋にも仕事にも挫折して結局は平凡な人生を送る」。

  ↑  ストーリー(Plot element)がプーシキン「オネーギン」と似てる点がある
510吾輩は名無しである:2005/08/14(日) 03:12:00
以前古本屋で岩波の「プーシキン詩集」を手に入れてずっと嬉しくて読んでたんだけど、
さっきググったらふつうに岩波文庫から今も出版されてた。
絶版本かと思って得した気分になってたんですが・・・・
でも「改訳」となっていたので、僕が持っているのとは内容が違うのでしょうか。
「昭和28年初版」となっているのを所有しています。
詳しいことをご存知の方は教えて下さい。
511吾輩は名無しである:2005/08/22(月) 00:47:14
おおこんなスレが
512吾輩は名無しである:2005/09/09(金) 10:11:53
プー資金
513吾輩は名無しである:2005/09/25(日) 06:30:49
プーシキンいいねー
514無名草子さん:2005/10/16(日) 11:52:07
u
515吾輩は名無しである:2005/11/30(水) 17:36:22
ナターリヤの肖像画で、美しいの見たことないです
どなたか、これぞというのがあったら教えてください
516吾輩は名無しである:2005/12/16(金) 22:36:26
樫の木があった
517名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中:2005/12/31(土) 18:43:03
東京にプーシキン美術館ってあるけど、何か関係あるのかなあ?
518名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中:2005/12/31(土) 21:36:42
プーシキン美術館展じゃなくて?
519名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中:2006/01/04(水) 03:17:33
昨年11月頃かな?NHK-BSで「オネーギンの恋文」という映画を
観まして、初めてプーシキンのことが気になりました。
短いけれど魅力的な作品でした。イギリス作品なのかな?
ファインズ兄妹が主演と監督を務めてましたが、作品への
愛情を感じました。美しい作品ですね。
原作を読もうと図書館へ行きましたが全集ものばかりで
小さい字に重い本ばかりなので、文庫を探しています。

レスを読んで地味ながら熱心なファンがおられるのが
よくわかりました。また来ます。
520名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中:2006/01/05(木) 00:18:07
オネーギンの文庫なんて見たことも聞いたこともないよ。
あったら俺も買いたいよ。
いや・・・・・・
普通に岩波文庫にありますが・・・・・・・
講談社文芸文庫にも・・・・
昔、新潮文庫にも・・・・
524520:2006/01/08(日) 19:10:58
昨日近所の書店行ったらスペードの女王と詩集があったので買ったよ。
525名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中:2006/01/16(月) 22:21:19
>>524
そろそろ感想を
526itsuwoり:2006/02/01(水) 06:13:33
「スペードの女王」って
プーシキンの作だったんだ!どんな筋ですかあ?
旧東ベルリンに「プーシキン通り(strasse,
ストラーセ)」とうのがありました。私が30年前に行った時、
道を尋ねた時知りました、
スペードの女王なら青空文庫にありますよ。
大して長くないので読んでみてはいかがでしょう。
528名無しさん@自治スレッドでローカルルール議論中:2006/02/05(日) 20:57:36
だれかサンクトペテルブルクのプーシキン記念館?

行ったことある人いる?
529吾輩は名無しである:2006/03/18(土) 21:43:59
翻訳古すぎ
530吾輩は名無しである:2006/03/18(土) 22:01:44
>>528
プーシキン美術館のこと?
去年上野でプーシキン美術館展やってたよね。
プーシキン没後100年だっけ?の記念に名前かえただけみたいですよ。何も関係ないみたい。
でもまあ絵はそれなりによかったですけど。
531吾輩は名無しである:2006/03/25(土) 21:01:39
>>530
そう、それ。高田馬場駅でプーシキン美術館展のポスターを見たので、何も知らない私はプーシキンは絵も描くのかとえらく感心させられたのよ。
532吾輩は名無しである:2006/04/02(日) 07:05:44
age
533吾輩は名無しである:2006/04/30(日) 01:55:17
プーシキン美術館は、モスクワのそれかな。
20世紀絵画が多く展示されていて見応えがある。
あと、レプリカの石像がいろいろあっておもしろい。

ペテルブルクのプーシキン記念館てのは、ツァールスコエ・セローにあるやつ?
ペテルブルク近郊の町にあるんだよな。というか村か、セローだし。
ペテルブルクには、行ったことあるんだけど、そこには行かなかったよ。めんどくて。

モスクワのプーシキン記念館は良かったけど。
534吾輩は名無しである:2006/05/20(土) 16:50:56
こんなのあったなんて
535吾輩は名無しである:2006/05/27(土) 21:59:58
大尉の娘、オネーギン、スペードの女王・・・
わたしはオネーギンが一番好き。
タチアーナのような報われない恋をしてます・・・誰か助けて。
536吾輩は名無しである:2006/05/28(日) 00:29:57
ぷーしきん 女房が美人 女房が美人
537吾輩は名無しである:2006/06/01(木) 23:07:42
>>535
一回、離れてみるといいんじゃないか?
原作に忠実に
538吾輩は名無しである:2006/06/28(水) 20:01:59
あげ
539吾輩は名無しである:2006/07/12(水) 11:14:30
hosyu
540吾輩は名無しである:2006/07/28(金) 13:45:40
女の為に決闘して死ね      
541吾輩は名無しである:2006/08/17(木) 08:13:38
で?
542吾輩は名無しである:2006/08/20(日) 21:31:20
スペードの女王age

ttp://www.nhk.or.jp/art/
8月20日( 放送時間 22:00〜0:15 )
● ボリショイ・バレエ「スペードの女王」
543吾輩は名無しである:2006/09/12(火) 23:54:36
良スレ 保守
544吾輩は名無しである:2006/09/19(火) 15:49:50
オネーギン映像集めてみました。

最後のシーン
オペラ
http://www.youtube.com/watch?v=rZCEgzcphlg
http://www.youtube.com/watch?v=f6aymOM3iVE
バレエ
http://www.youtube.com/watch?v=XlShShWLC6
タチヤーナの夢のシーン
http://www.youtube.com/watch?v=FvDZRSp3KFA
545吾輩は名無しである:2006/09/20(水) 18:06:34
上の、バレエのだけ間違えてたんでもう一度はります。
最後のシーン バレエ
http://www.youtube.com/watch?v=XlShShWLC6A&
546吾輩は名無しである:2006/09/26(火) 02:48:03
オネーギンの映画は女優がイマイチでしたね・・・
あんなガタイのいいタチアーナなんてヤダ。
あれじゃ夢想癖のある少女には見えん!!
もっと薄幸そうな人がよかったなあ。誰だろう?
547吾輩は名無しである:2006/09/29(金) 21:57:03
>>535
バレエの 最後のシーンの いいね。
泣けてくる
548吾輩は名無しである:2006/11/29(水) 20:49:11
ほんとだ!
2ページ使って宣伝してるから、てっきり連載かと思った。
549548:2006/11/29(水) 20:49:45
スイマセン、誤爆しましたorz
550吾輩は名無しである:2006/12/09(土) 00:27:47
なんきょう
551吾輩は名無しである:2006/12/11(月) 23:33:34
そういえば、今年のはじめごろにNHKのカルチャーアワーでよくやってたよね
プーシキンとスペードの女王の特集。
552吾輩は名無しである:2006/12/11(月) 23:34:23
全集を買っちまったぜ。
553吾輩は名無しである:2006/12/11(月) 23:42:20
プーキシン最高
554吾輩は名無しである:2006/12/15(金) 10:59:23
岩波版って字が小さいうえに注釈ばっかで読みづらくて嫌いなのですが、
何か読みやすい形でプーシキンの作品って出版されてませんか?
555吾輩は名無しである:2006/12/15(金) 12:19:06
プーシキンの新刊自体、数が出てないからねえ。

古本屋でプーシキン全集を入手するのがよいかと。高いけど。
556吾輩は名無しである:2006/12/15(金) 22:31:43
>>554
でも岩波文庫の「スペードの女王・ベールキン物語」「オネーギン」「大尉の娘」は
改版されて字が大きくなったよ。
岩波以外でなら講談社文芸文庫から「オネーギン」が出てたはず。
557吾輩は名無しである:2007/02/03(土) 23:49:27
ベールキンだったら断然吹雪が好き
吹雪をもとにした音楽っていうのもあって、その音楽も吹雪のイメージぴったり!
プーシキンの作品はどれも情景が目に浮かぶけれど、これが一番。
558吾輩は名無しである:2007/03/01(木) 07:55:10
>545
こっちの方が好き
559吾輩は名無しである:2007/03/01(木) 07:56:14
560吾輩は名無しである:2007/03/27(火) 23:17:28
>>528
ペテルブルグのプーシキンの家博物館は充実していますよ。
芸術広場から歩いていけるからぜひ行ってみては。
「プーシキンの家博物館」でググッたら詳しいことがわかるよ。
561吾輩は名無しである:2007/05/24(木) 03:42:39
図書館でオペラのレーザーディスクを見た。
だいぶ話を膨らませているね。
562吾輩は名無しである:2007/06/23(土) 07:47:58
最近岩波の詩集からはまりました。
ネットで検索して読んだ「青銅の騎士」がとても素敵だったので本が欲しいのですが、
文庫で出ているでしょうか。
おこずかいの範囲で買えるものが良いのですけれど、全集とか探すべきでしょうか。
563吾輩は名無しである:2007/08/03(金) 16:54:31
「青銅の騎士」なら岩波文庫にあるよ。
ttp://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/32/5/3260460.html
もっとも品切れ中だけど。
564吾輩は名無しである:2007/08/19(日) 05:00:29
こんな黴の生えるようなスレがあるかとおもえば、よく動くのに削除されるスレもあるのね。
澱んだ水が腐るように、板全体が臭いのも、納得がいくわw
565吾輩は名無しである:2007/09/08(土) 22:01:40
確かにすげえ
566吾輩は名無しである:2007/10/08(月) 15:46:53
あげあげあげ
567吾輩は名無しである:2007/10/10(水) 02:09:26
引きこもりニートの俺が、魂だけはロシアの皇帝になれる作家 プーシキン
568吾輩は名無しである:2007/12/10(月) 12:35:40
569吾輩は名無しである:2007/12/10(月) 12:36:43
570吾輩は名無しである:2007/12/10(月) 20:36:35
>>564
文学板は教条主義がそれなりに生きていますから。
571吾輩は名無しである:2007/12/29(土) 20:16:06
実はかなり好きだ
読みやすいと思うけどどうだろう
572吾輩は名無しである
大尉の娘とかボリス・ゴドゥノフとかの歴史ものはさくさく読めるな。

>>562
半年遅れだが、『青銅の騎士』は群像社から1000円で出ている。
まあ厨房工房でも手は届くだろ