全国の主要な遊園地のうち三分の一が、ジェットコースターなどの遊戯施設の部品に
ついて、内部亀裂などを調べる探傷試験を年に一回以上実施するよう定めている日本
工業規格(JIS)の検査標準を把握していなかったことが十二日、共同通信の調査で
分かった。
検査標準の存在を知りながら、守る必要があると認識していなかった施設もあった。
独自の判断基準で検査を実施し、検査が不十分だった施設を合わせると、四割近くが
検査標準を満たしていなかったことも判明した。
大阪府吹田市の「エキスポランド」の事故では、一年三カ月間探傷試験を行って
いなかったことが分かっており、業界内で周知徹底されていない現状が浮き彫りに
なった。年次検査で報告を受ける自治体の審査態勢や、検査員の資格制度にも原因が
ありそうだ。
コースターを運行している主要な遊園地から検査状況などを聞き取りし、二十九
都道府県の五十一施設から回答を得た。
検査標準を知らなかったのは十七施設で、「(行政から)通達がなく伝わっていなかった」
「メンテナンス業者に任せていた」などと理由を挙げた。製造会社や検査の委託先から
存在を知らされた施設も複数あった。
検査標準の存在を知りながら自主基準で検査していた九州地方のある遊園地は
「検査標準は目標であって強制力はない」と回答。「絶対必要とは考えていなかった」
「参考程度だった」とした施設も少なくなかった。
一方で「常識」「それ以外に基準がなく当たり前」との回答も数多くあった。
自主基準を定め運転回数や稼働年数により数年に一度探傷試験を実施していた施設
や、一度もやったことがないという施設もあったが、いずれも事故を受けて「今後は
順守する」と回答している。
日本工業規格(JIS)の検査標準は安全を守る最低限の規定で、“業界の常識”のはず
だった。しかし「当然知っている」と回答する施設がある一方、「情報がなかった」として、
まったく認識していなかった施設も少なくなかった。
JISは業界団体などの原案を有識者らの「日本工業標準調査会」が審議、大臣が制定
する。強制力はないが、業界の指針となる。ジェットコースターの検査標準は一九七五年
制定。探傷試験の実施を定めた項目は当初から盛り込まれている。
「必須だと思っていた」(リナワールド、山形)、「JISに加え独自基準でもやっている」
(富士急ハイランド、山梨)との施設がある一方、知っていながら「絶対に必要だとは思って
いなかった」との回答も。メンテナンス業者に任せきりの施設も目立った。
コースターなどの定期検査資格を与える国土交通省の外郭団体「日本建築設備・昇降機
センター」(東京)は、有資格者向けに年二回開く講習会で、検査標準に触れている。
関誌でも取り上げ、改正時には変更点を解説してきた。
しかし受講は任意で、機関誌も資格者全員に配られるわけではなく、「情報が入って
こなかった」と漏らす施設担当者も。三年から五年に一度は参加するよう呼び掛けている
が、「来ない人は自分で調べるしかない」(センター幹部)のが現状で、センターは受講の
義務化などを検討している。
http://www.saitama-np.co.jp/news05/13/21x.html