1 :
774RR:
2 :
774RR:2007/03/27(火) 01:43:07 ID:pGZVMuxE
1乙!
3 :
774RR:2007/03/27(火) 01:43:42 ID:/F+Y+Vz6
さて、魔棲男さんも華沢さんも、話の続きが気になりますね!!
タラオ、カツオの作者さんのも楽しみですね!!
4 :
774RR:2007/03/27(火) 03:13:10 ID:uwMUMA1b
5 :
774RR:2007/03/27(火) 03:35:37 ID:gnPhCl4w
6 :
774RR:2007/03/27(火) 19:08:35 ID:sFlmit1R
7 :
774RR:2007/03/27(火) 19:18:14 ID:H6P8lUEc
8 :
774RR:2007/03/27(火) 20:01:14 ID:PdzNWC2b
9 :
774RR:2007/03/27(火) 20:04:51 ID:jI9Rg6kV
10 :
774RR:2007/03/27(火) 20:05:29 ID:nub7Fe0T
新スレおめ
前スレの
>>997の続きが読みてぇじゃねえかよwww
11 :
774RR:2007/03/27(火) 21:36:25 ID:J6+TR6Qs
ガチンコ支援
12 :
774RR:2007/03/27(火) 21:59:37 ID:TJhBM2IM
ガチンコage
13 :
774RR:2007/03/28(水) 01:38:35 ID:LkvtSucW
何気にがチンコますおさんが気になるwwwww
14 :
774RR:2007/03/28(水) 03:07:51 ID:wNfQe/sS
>>4 ちょw作品集1のコトリバコ怖すぎww便所行けねぇwww
15 :
774RR:2007/03/28(水) 06:47:44 ID:UonnzcGh
自己責任
舐めてました(((;゚Д゚)))ガクガクブルブル
16 :
774RR:2007/03/28(水) 18:47:01 ID:0fR+HDKJ
俺は怖くてコトリバコしか読めなかった…
他のヤバイ?
17 :
774RR:2007/03/28(水) 18:56:57 ID:k+2ch6YW
お薦め作品集を全部読んで金縛りにあうのは俺だけで十分だ…
恐かったorz
18 :
774RR:2007/03/28(水) 19:06:09 ID:UonnzcGh
>>17 自分も恐ろしいのですが興味に負けておすすめ読んでいますorz
まだ全部は見終わってませんが金縛りは勘弁でふ
スレ違いスマヌ
19 :
774RR:2007/03/28(水) 19:12:10 ID:k+2ch6YW
てかIDが2chなオカルト…orz
スレ違いだし消えるか。
20 :
774RR:2007/03/28(水) 19:12:43 ID:uwcxcpqL
>>1 スレ立て乙でございます。
続き、今しばらくお待ちくださいませ。申し訳ないです。
22 :
774RR:2007/03/28(水) 22:32:22 ID:w5nhcBtj
いいえ。保守して待っておりますゆえ!
くねくね。
23 :
前スレの964:2007/03/29(木) 00:01:14 ID:ubNCIDcH
24 :
774RR:2007/03/29(木) 01:46:10 ID:MI+9JNx3
25 :
774RR:2007/03/29(木) 02:47:01 ID:q9uZAgov
>>23 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| アパム!アパム!弾!弾持ってこい!アパーーーム!
\_____ ________________
∨
/ ̄ ̄ \ タマナシ
/\ _. /  ̄ ̄\ |_____.| / ̄\
/| ̄ ̄|\/_ ヽ |____ |∩(・∀・;||┘ | ̄ ̄| ̄ ̄|
/ ̄ ̄| ̄ ̄| ̄| (´д`; ||┘ _ユ_II___ | ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|
/ ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄|( ” つつ[三≡_[----─゚  ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|
/ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄| ⌒\⌒\ || / ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄|
/ ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄] \_)_)..||| | ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄| ̄ ̄
 ̄ ̄ /|\
26 :
波平旅行記:2007/03/29(木) 03:39:41 ID:A83S7QJl
大変ご無沙汰させて頂いております。
9ヶ月にも渡り仕事が忙しく半端な形でぶっころがしてた波平旅行記2ですが、
執筆のために仕事を辞めさせられ、執筆環境を整える意味で関東から遠く九州まで引越しをさせられました。
お目汚しかと思いますが、完結まで見守っていただければ幸いです。
無職のうちに完結したいと思います。
27 :
774RR:2007/03/29(木) 03:42:19 ID:A83S7QJl
ttp://www.cd90.net/2ch/sabu26.html 続きからお楽しみください
ぬぅっと出された彼の大きな右手に、ふいに板付基地傍のレストランで握手の別れを思い出した。
我も彼もずいぶんと老いた、長い間連絡も途絶えたままだった、ハーレーも手離し完全に別々の人生を歩んできた。
しかしすべては瑣末なものとしてあっという間に飛んでいってしまった。
もはや彼と握手を交わしているときに、心はすでに一緒にハーレーを駆っていた頃に帰っていた。
[プライベートは愛称で]当時のルールも生き生きと蘇ってくる
「やぁ、ボイル。久しぶり。」
口を突いた言葉にロブスター氏も笑顔でこたえる。
ほんのわずかな会話で3人は当時に戻ってしまったようだった。
積もる話もあるが、立ち話もなんだからと彼の車に乗り込んだ。
大型のハッチバックはごちゃごちゃと荷物が積んであったがまだまだ広さはゆったりあった。
しかしながら驚かされることばかりだ。単純に車が右を走るだけでもえも知らぬ違和感を感じる、特に右左折時は対抗車線に入り込んでしまったと思うほどだ。
その上大きな車がものすごく速いスピードで走っていくのだ、スピードメーターは80を指しているが目に映る速度はそれ以上を感じさせるものばかりだ。
メーターがマイル表示と知ったのはずっと後のことだった。
28 :
波平旅行記:2007/03/29(木) 03:43:03 ID:A83S7QJl
ボイルは大都市L.A.の中心部やコリアタウンなどを回って、ハリウッドの看板の見える丘やチャイニーズシネマスタジオなど有名どころをつれ回してくれた。
その合間にも昔話に花が咲き、近況など取り留めのない話は尽きることはなかった。
3時を回って夕方近く、今日は疲れもあるから早めに戻ろうという提案で宿に向かった車内で、ボイルがとんでもないことを言い出した。
「波平のとっていた宿はキャンセルの電話をしといたよ。あのあたりは最近治安がよくないんだ。」
「大丈夫。うちに部屋が空いてるから泊まるといい、ハハハハハ」
何を言っているのかいまいち理解できずにきょとんとしていると
「それに明日も早いしな」と言ったっきりニヤニヤとするばかりで、以降何も教えてくれなくなってしまった。
相変わらず何かたくらんでいる顔だ、こうなってはどうしようもない。
フネと顔を見合わせて提案に乗ってみることにした。
車はフリーウェイを1時間ほど走った高級住宅街の中に入っていく。
どの家も広い庭に芝生とプールがあり、アメリカンクラシックな大きな家が建っている。
日本では信じられない規模でもココではどうと言うことはないらしい。
自慢のワイフと二人暮しには少し広すぎるし、市街地から少し遠くて不便だと言っていた。贅沢な悩みである。
その夜は彼の自慢のワイフの自慢の手料理を味わった。
互いの夫婦のなれ初め話など大いに盛り上がったが、ワインに酔ってしまったのか早々に客間で休ませてもらった。
直に寝てしまったところを見ると、飛行機とはいえさすがの長旅にフネも疲れが回っていたようだった。
まだ旅行は始まったばかりである。
29 :
波平旅行記:2007/03/29(木) 03:43:40 ID:A83S7QJl
朝食を頂きながら今日の予定を話し合うが、ボイルは何か考えがあるようで相変わらず何も教えてくれない。
最愛のワイフ、シャルルもボイルと一緒でニッコリとおんなじ笑顔でするりとかわしてゆく。二人はまだ何か隠している。
フネと共にまな板の上の鯉は素直にサプライズを楽しもうと、半ばあきらめた。
朝食を取るとあわただしく出発した。
車でしばし走ったところは、大きな倉庫のような建物で表には看板が上がっていた。
「「アングラーモーターカンパニー」」
ボイルは自慢のハーレーを見せてくれるつもりだったようだ。
どう見ても開店前で事務所であわただしく準備をしている中、男がひょっこりと顔を出した。
「ジェネラル、ずいぶん早いお越しですね、準備できてますよ」
軍役時代のかつての部下が今はバイクやを営んでいるらしい。
小柄な中年男はつづける
「相変わらず人使いが荒いんですから、いきなり電話で今週中に何とかしろなんて・・・」
悪態をついているようだがボイルも中年男も笑顔であるから、気心の知れた仲のようだ。
ボイルが紹介してくれた話によると、かつての部下アングラー氏であるという。
軍人よりも当時から商売のほうに才能があったようだ。
30 :
波平旅行記:2007/03/29(木) 03:44:14 ID:A83S7QJl
そうこう話すうちに倉庫の裏から若い整備士が一台のバイクを押してきた。
無骨で荒々しいスタイルがきらきらとした煌きをまとって、いっそう力強さを感じさせる空気を身にまとった車体。
太いタイヤはそれだけのパワーを発揮するであろうことを容易に想像させ、ヘッドライト周りの曲線は艶かしくもある。
昔出会ったそれとは著しく違ったスタイルであっても、内に込められた魂はより色濃く輝いて見える。
まさに「ハーレーダビッドソン」そのもののであった。
ボイルはいとおしそうにシートをなでながら、キラキラとした少年の目で自慢げに話し始めた。
「どうだ波平、こいつが今の愛車さ」
キラキラときらめく車体は確かにボイルのセンスを随所に感じさせる、荒々しさの中にも紳士のあり方が詰め込まれているようだった。
ボイルのそんな姿をシャルルはあきれたように笑っていたが、話が長くなる前に何かをボイルに耳打ちした。
やはりこの二人「何か」企んでいる。
自分とフネだけではなくアングラー氏もそう思ったようだ。
「ちょっと仕事が・・・」と言いかけて引っ込もうとしたアングラー氏をボイルが捕まえてなにやら小声で自分たちに聞かれないように話しているのだが、明らかに困った顔をして大げさに身振りでダメだと言っているのは見て取れた。
しかしかつての上官に掛かっては断りきれないかのように諦めて言われるままに倉庫のシャッターをあけさせられるアングラー氏とボイルのやり取りは気の毒ではあるが少々滑稽でもあった。
31 :
774RR:2007/03/29(木) 06:00:17 ID:GZNsh7sM
( ゚∀゚)アハハ八八ノヽノヽ
まさか此処に来て波平旅行記が戻ってくるとは・・・
凄い嬉しいじゃないか!
お帰りなさい!
(ノ・∀・)ノ=C
32 :
774RR:2007/03/29(木) 09:12:50 ID:DQqZ4JzV
!!!!!!!!!
波平さん!
いよいよ遙かなる地平を目指すのかっ?
CCCCCCCCCC
ウ、ウラヤマシス…
33 :
774RR:2007/03/29(木) 15:53:47 ID:DSVVMmFH
ボイル・シャルルの法則ってPV=nRTだっけ?
34 :
774RR:2007/03/29(木) 16:09:09 ID:NAzliKRk
35 :
774RR:2007/03/29(木) 16:47:09 ID:A83S7QJl
>>33 よって、その愛は(理想愛ならば)常に一定である <指定誤差3%以内>
36 :
774RR:2007/03/29(木) 17:57:54 ID:mUmrlL1V
37 :
774RR:2007/03/29(木) 22:06:34 ID:Aknhdl3E
>>28 チョン害なんか行ってどうすんだ?
まともなアメリカ人ならあんなとこ連れて行かないぞ
ネタとしてなら知らないwww
38 :
774RR:2007/03/30(金) 04:51:56 ID:Y+rsoa/s
>>37 チョンが空想で書いて投稿してるのかもしれないでしょ、察してあげなよ。
39 :
774RR:2007/03/30(金) 09:13:26 ID:iAker4tr
>>37 >>38 おまいら、小説に何で一生懸命なの?
それとも、俺が釣られたのか?
40 :
774RR:2007/03/30(金) 10:19:20 ID:o3TG4VHr
>>39 チョンネタは欠かさず食いつくのが2CHクヲリティでつよヽ(´ー`)ノ
41 :
華:2007/03/30(金) 20:11:04 ID:ve3RS5tK
>>1 スレ立てお疲れ様です。
波平さん つC
↓【沈黙の駻馬編】続きです↓
42 :
華:2007/03/30(金) 20:11:44 ID:ve3RS5tK
合宿卒業から次の日、私達は免許センター職員の何度も同じ事を繰り返し延々と続く内容を聞き終え、免許が配布された。
早川さんは配布された免許証を見るなり「えぇー!私こんな悪人顔じゃないよ〜」と苦笑いする。意外と私の写真はそのままの私で撮られていた。
「それでは皆さん、無事故無違反で良いバイクライフを楽しんで下さい」という職員のセリフと共に二輪免許取得者達への免許交付が終了した。
私達二人はすぐさま電車に乗り込み朝日ヶ丘へと向かう。
「花ちゃんこれからどうするの?」何度も免許を眺める私に早川さんが聞いてきた。
「う〜ん、まずはとおちゃんに免許見せてから海鮮組のみんなに免許見せてくるわ」胸躍らせながら答えた。
「それじゃ、私も両親に見せたらマスターの所にいくね〜」早川さんは嬉しそうに言う。彼女も私と同じ様に何度も免許証を出したり、しまったりしていた。
「うん、じゃ私も終わったらマスターの所行くわ。久し振りにアップルパイ食べたいし」という私に間髪入れず早川さんは言う。
「ふふふ、実はね〜!マスターお手製のフレンチトーストがメニューに加わったんだよー!」その笑顔から新メニューの美味しさが伺えた。
「ああっ!そっか!8月からお店閉めてるんだったっ!」と慌てて早川さんは言う。 そういえば前にマスターが8月はお店閉めてバイクで旅に出るという事を思い出した。
「今年は北海道行くんだって!北海道よく行くらしいわよ〜」羨ましそうに早川さんは言う。
「それじゃ!ポップさんの所に行こう!もうTDRあるハズだし!」無邪気な笑顔で早川さんが提案し、私も用事が済んだら向かう事にすると伝えた。
私が高校三年の一学期に猛勉強とアルバイトの生活をしている間も早川さんは「珈琲・浦野」と「POPモータース」へ遊びに行っていた。
聞くところによれば新メニューのフレンチトーストも私達が合宿に行く前にメニューに加わったとの事だ。お手製のフレンチトーストは暫くおあずけとなってしまった…
43 :
華:2007/03/30(金) 20:12:21 ID:ve3RS5tK
一度早川さんと別れ自宅に駆け足で戻り父に免許を見せた。
「おぉー!取ったか!やはり合宿は早いね」いつもの優しい眼差しで喜んでいた。「花子、田中さんの所でバイク買うのかい?」二言目に父はそう聞いてきた。
「うん、そうしようと思ってるよ」と答えれば「そうか、そうか」といつもの調子で笑顔を見せる。
「これから海鮮組に行ってくるね。今日帰り遅くなるから」と元気良く事務所を飛び出れば父は「行っておいで」と嬉しそうに見送ってくれた。
海鮮組事務所に到着しドアを勢いよく開けて「こんにちは〜!文学さんいますか〜?」と声を出す。
幾つか並べられた事務所の机には事務員の貝塚さんと鮫肌さんの二人が居た。
「文学なら横浜の実家に帰ったよ」本を読みながら鮫肌さんはそう答える。鮫肌さんの手に開く本の表紙を見れば銀河鉄道だった。
私が本のタイトルに気付くと貝塚さんはクスクスと小さく笑い出す。
「バ、バカヤロ!そ、そんなんじゃねぇよ!」と顔を赤らめ照れ臭そうに言う鮫肌さん。貝塚さんは更にクスクス笑い出す。
「ち、ちげぇーよ!アイツに読めて俺に読めねぇ訳がねぇじゃねぇーか!」真っ赤になった顔で必死になる鮫肌さんに「グフフ」と笑ってしまう。
あの一件以来二人はよく喧嘩するものの、なんやかんやと仲がよく鮫肌さんがよく文学さんの面倒を見ているのを仕事中によく見かけた。
「おぅ!花じゃねぇか!」タオルで汗を拭きながら事務所に入ってきたのは海親方だった。
「免許取れたんか?見せてみろ」海親方が言うと私は待ってましたと言わんばかりの速さでスッと差し出す。
「だっはっはっはっ!いい女に撮れてるじゃねぇか!良かったな!」と豪快に笑いながら免許を眺めた。
44 :
華:2007/03/30(金) 20:12:58 ID:ve3RS5tK
その後貝塚さんからお茶を頂き、雑談を終え私が帰ろうとすると海親方が私に言う。
「花、おめぇ田中んところでバイク買うんだってな!こないだ初めて会ったが、アイツぁ芯のふてぇ男だ!よ〜く面倒見てもらいな」と言う。
私は「はい」と答え事務所を後にし「POPモータース」へ向かった。
メイン通りを歩く。海鮮組の工事進行状況を見ながらポップさんの所に足早に歩いた。
工事途中の道路には車がすし詰め状態で渋滞になっている。そんな車の渋滞をすり抜けるように原付や大型バイクが走り抜けてゆく。
まだ今年出たばかりでピカピカの「GSX400S」も環八へと駆け抜けていった。
この「GSX400S」の乗り手が後に≪銀色の傭兵≫と呼ばれ無数の傷をカウルに刻み、私達の前に現れる事になるが私はこの時知る由もなかった…
メイン通りから細い路地へと曲がりPOPモータースに到着すると店の前には翁のSRXが置いてあり、店内には早川さんと翁が覗き込むように奥の作業場を見ていた。
そっと後ろから声を掛けると「おぉ!花沢君、免許取ったんだってね。おめでとう」と翁が笑顔で言うと奥からポップさんの声がし「よっし!後は始動だけだ!」という声と共にバイクを押してショールームにやって来た。
この瞬間、未知なる世界のジグソーパズルにひとつ、ふたつとピースがはめ込まれ、最後のピースを今これからはめ込もうとする私の姿がそこに居た…
45 :
華:2007/03/30(金) 20:18:40 ID:ve3RS5tK
ね、寝ます…orz
46 :
774RR:2007/03/30(金) 20:23:57 ID:srHR4aXy
つC
47 :
774RR:2007/03/30(金) 22:39:32 ID:XpHbXUHp
いよいよ88と華の…
48 :
774RR:2007/03/30(金) 22:53:10 ID:2q0nEF5L
ちょwwwwwオレの愛車カタナ登場wwwww(`・ω・´)
カッコよく書いてくだせぃ(*´∀`*)
49 :
774RR:2007/03/31(土) 02:02:59 ID:2DQbD6mE
つC
50 :
774RR:2007/03/31(土) 14:56:08 ID:Ek7WY43T
ついに豚魔の88公道デビュウなるか?
51 :
774RR:2007/03/31(土) 19:52:45 ID:3veO2eE+
華乙
52 :
華:2007/03/31(土) 20:01:02 ID:sEJDhgQs
来週忙しいので連日投稿になりますが先にアップしておきます。
↓【沈黙の駻馬編】続きです↓
53 :
華:2007/03/31(土) 20:01:45 ID:sEJDhgQs
「あ!花ちゃん、意外と早かったね!」と早川さんが小さく手を振り声を掛けてきた。
「うん、急いできちゃったっ!」と答えると奥の作業場からポップさんが一台のバイクを押してショールームにやってきた。
―――…ドクン…――…ドクン…―――
「ふぅ、後は始動させてみてエンジンが掛かるか、という所ですね」と田中は楽しそうに88年式NSR250Rを眺める翁に言った。
「ふふふ、きっと動くさ。しかし…この88の加速は相当なモノじゃないのかね?」と田中に聞く。
「えぇ…コイツは暴れ馬ですよ」と笑いながらキャップのツバをクイッと上げた。
「あ、花沢君いらっしゃい!って…随分痩せ…た… あ、あれ?どうしたんだい?」と花子の様子がおかしい事に気付く。
「あれれ…?花ちゃんどうしたの?」早川は花子を心配し顔を覗き込む。
―――…ドクン…――…ドクン…―――
私は目の前のNSRに魅了されてしまった…
赤白のボディーのアンダーカウルからテールカウルまで、空へと突き刺すようなライン…
丸みを帯びたフロントカウルは時代を感じさせるも何かを感じさせる圧倒的な存在感…
言葉が出なかった…
当時何処を見てもNSR一色で別段NSRなんて珍しいバイクでもない。ましてやこの赤白の88年式だって私は間近で眺めた事もある。
だが、何故か…何故か目の前のNSR250Rに心惹かれる感情が湧き出てしまった。
―――…ドクン…――…ドクン…―――
54 :
華:2007/03/31(土) 20:02:23 ID:sEJDhgQs
「私が…私がエンジン掛けます」このNSR250Rのオーナーでもないのにも関わらず私は大胆にもポップさんに強く要望した。
「あ、あぁ…そ、それは構わないけども… ふふ、気に入ったのかい?」と嬉しそうな顔で田中さんは私に聞いてきた。
「この子が…」私は理由にもならない不明な言葉を発しながらNSR250Rに跨る。
―――…ドクン…――…ドクン…―――
「え?ど、どうしたんだい?さっきから?」と少し心配するも笑いながら田中は花子に聞くも、花子には聞こえていなかった。
花子はおもむろにキックアームを開き右足を乗せる。キーをクルッと捻る。 そして一気に花子はキックアームを踏み下ろした。
パスン…
なんとも気の抜けた音だけがショールームに響き渡った。
「ふむ…どうだか…」そう翁は呟きながら懐からハンカチを取り出し眼鏡を拭いた。
「は!花沢君!もう一回、もう一回キックをおろすんだ!」田中は花子に声を大きくして伝えるも花子は微動だにせずジッと計器を眺めていた。
「花ちゃん、もう一回!もう一回!」と無邪気に様子を伺う早川。
そんな三人のやり取りさえ今の花子には見えていなかった…
―――…ドクン…――…ドクン…―――
私はNSR250Rの計器を眺めていた。そして周りの声や音が全く聞こえなくなっていた。
そんな状況で計器を眺めれば耳鳴りがキーンとしてくる。
人間が全く音の無い部屋に数分も居れば耳鳴りがするという状況を、このショールームで体験していた。
ポップさんがなにやら私に話しかけているのが雰囲気でわかったが何を言っているのか聞こえなかった。
55 :
華:2007/03/31(土) 20:02:58 ID:sEJDhgQs
その時だった。タコメーターの針が2,3ミリ程ピクンと動いた様に見えた。有り得ない話だ。
私がキックを下ろしてから随分時間が過ぎたように思う。何もアクションを起こしていないのにタコメーターの針が動くなんて有り得ない事だ。
だが、私はこの時無意識に「そう…」と小さく呟いてキックを優しく踏み下ろした。
ヴィィイ゛イ゛イ゛イ゛とチャンバーからもの凄い量の白煙と共にNSR250Rが咆哮し、その白煙はショールームを覆う様に広がっていった。
「おぉ!掛かった…か…」そう翁が呟いたのが聞こえた。不思議と耳鳴りは治まり、みんなの声がハッキリと聞こえてきた。
「ふぅ、凄い白煙だ」笑いながら換気の為にショールームのドアや窓を開けた。
「すっごい!凄い!花ちゃん凄いじゃない!」そう早川さんは驚いた表情を見せた。
「そ、そう?そうなの?」と近寄ってきた早川さんに私は尋ねた。
「そうだよ〜!これ、ず〜っと動いてなかったんだって!」そう言う早川さんから、このNSR250Rの経緯を聞いた。
「ふふ、ポップ君 88は花沢君を選らんだんだね。」そう翁は言いながらポップさんの肩をポンと叩く。
「まさか、マシンが人間を選ぶなんて」と、まんざらでもない笑顔を浮かべて翁に言葉を返すポップさん。
「どうだい?その88気に入ったかい?」優しく無精髭を触りながらポップさんが聞いてきた。
「88?(ハチハチ)」私はその言葉が気になった。
「あぁ、88ってのは愛称さ。88年式だから88って呼んでいるんだよ」キャップを被りなおしてポップさんは答えた。
「私、この88がいいですっ!」とアクセルを捻りながらポップさんに言う。88も答えるように咆哮を上げる。
「はははは、元気いいじゃないか!」笑いながらポップさんは右手でOKサインを見せてくれた。
56 :
華:2007/03/31(土) 20:04:05 ID:sEJDhgQs
「やったー!少しアクセル回してもいいですか?」と聞けばポップさんはヤレヤレといった表情を翁と早川さんに見せて「いいさ」と答える。
私は88のアクセルを更に捻った。腰下から感じるクランクの鼓動。アクセルを捻れば応える様に反応するタコメーターの針。
ハンドルから神経が伸びたかの様な感覚でフロントカウルからテールカウルまでの端から端まで神経が通うかのような感触。
「この子は…生きてる…」そう呟いた。
「ねぇ!ポップさーん!私のTDR、TDR〜」と駄々をこねた子供の様にポップさんにせがむ早川さんの姿を見て、一度88のエンジンを切った。
「はははは、そうせかさない、せかさない」と大笑いしながら奥の作業場から真新しいブルーのTDRを引っ張ってきた。
「キャー!カワイイー!」と歓喜する早川さんの姿を見て一歩後ずさりするポップさん。そんな姿を見て翁は笑い出す。
「私もエンジン掛けていいですか?」と聞く早川さんにヤレヤレといった表情を私と翁に見せて「いいさ」と答える。
見事に一発でエンジンを掛けてタンクを撫でる早川さんの姿を見て本当に嬉しそうだなと皆感じた。
私も早川さんも愛機が決まり納車へと話は進んでいった。
「う〜ん、早くても来週末くらいになっちゃうかな」とポップさんが言えば「じゃぁ、土曜日納車でお願いします!」と早川さんが答える。
「あ、ゴメンね。来週の土曜日はちょっと出かけるんだ。日曜日でもいいかい?」とポップさんは聞いてきた。
「はい!」と声を揃えて私達は答えた。
「それと、保険だけども必ず任意保険は入って貰いたいんだ」と言うポップさんに翁は頷く。
任意保険加入の説明を受けて私達二人は任意保険加入用紙に記入した。
「あ、あの、それで私の88の値段はいくらになるんですか?」と恐る恐るポップさんに聞いてみた。
「元々不動車だったしね。中身はまだ2000kmしか走ってないけど安くしてあげるさ。」と言いながら電卓を叩いて表示してくれた。
その額へは新調した衣服類の値段分が足りず、どうしようと困れば「足りない分は後ででもいいさ」と笑いながらポップさんは応えてくれた。
57 :
華:2007/03/31(土) 20:04:45 ID:sEJDhgQs
正直この価格は嬉しかった。なんとか今月末に入るアルバイト代でなんとかなりそうな額だ。
「それとお願いがあるんだけども、暫くの間は週に一度必ずウチに来て様子を見させてもらってもいいかな?」とポップさんは私に聞いてきた。
「はい」と答え私はバイク購入用紙にサインした。
「やっとバイクに乗れる〜」と嬉しそうにはしゃぐ早川さんに翁が「よかったね」と優しく微笑みかける。
「あの子にうまく乗れるかしら…」そう不安そうに思ってしまい私は腕を組んだ。
「はははは、大丈夫さ。僕の後ろにいい先生が優しく指導してくれるさ」と右手の親指を立ててクイッと翁に向ける。
「はっはっはっはっ!ポップ君は本当に神経が図太いね」と大笑いする翁の姿が印象的だった。
「わかったよ。ポップ君。私が二人にキッチリ交通社会を教えるとしよう。」そう応え、ポップさんはキャップのツバをクイッと上げて「お願いします。」と笑顔で言葉を返した。
私達は嬉しくなり翁へ「お願いします!」と元気に言うと「はっはっはっ!結構!結構!」と翁として出会った頃と変わらぬ笑い声で返してくれた。
「それじゃ来週の日曜日から都内を少しずつ走ってみるか。」そう翁が提案し話は進んでいった。この日だけは海鮮組のアルバイトをお休みさせて貰うようにしようと思った。
高校二年の終わる頃に私を助けてくれた異形の者であった翁から、バイクの楽しさを教えて頂ける事になるとは夢にも思わず嬉しくて仕方がなかった。
嬉しさのあまり私は再び88に跨った。
未知なる世界のジグソーパズルに最後のピースをはめ込む。
そのジグソーパズルにはHONDA・NSR250R88年式に跨り、青空へと駆け昇る私の姿が映っていた。
この瞬間 NSR250R88年式と共に「花」から「華」へと昇華する物語の歯車がゆっくりと回り始めた。
58 :
774RR:2007/03/31(土) 20:10:54 ID:rTYjmykh
つC
59 :
華:2007/03/31(土) 20:19:33 ID:sEJDhgQs
【沈黙の駻馬編】はこれで終わりです。
次回から【星に願いを編】になります。
たまごごはん食べて…ね、寝ます…orz
60 :
774RR:2007/03/31(土) 20:39:59 ID:/C+KOjV7
華さんおつかれさまです。
納車の時の何ともいえない高揚感、誰しも覚えがあるはず…
先が楽しみっス。
61 :
774RR:2007/03/31(土) 23:16:11 ID:g38YIqcT
つC
次五郎のシルビアを思い出した。
62 :
774RR:2007/04/01(日) 03:45:07 ID:fErXk0Mp
華乙
63 :
774RR:2007/04/01(日) 03:49:32 ID:j1YZh+Jk
サブちゃんのアナル
65 :
774RR:2007/04/01(日) 22:21:50 ID:lpoP5SkE
66 :
774RR:2007/04/01(日) 22:35:39 ID:Zwg5bqvd
>>65 ぶ厚いくちびぃるぅにぃ〜 75本!wwwwww
67 :
774RR:2007/04/02(月) 14:00:30 ID:IDBKR/rD
68 :
774RR:2007/04/02(月) 16:48:02 ID:A8KqHDSA
69 :
774RR:2007/04/02(月) 19:35:05 ID:A0yL+3HD
70 :
774RR:2007/04/03(火) 01:38:02 ID:MV303797
>68
知っておく必要はないが、その突っ込みはちょっと恥ずかしい。
71 :
774RR:2007/04/03(火) 11:44:10 ID:EGKaEibg
>>70 どう見ても若本なんだが…
タイトルに若松って書いてあるから突っ込んだんだよ?
72 :
774RR:2007/04/03(火) 15:05:42 ID:c0gQyjYB
華支援CCC
73 :
774RR:2007/04/03(火) 15:25:00 ID:ilNofZlc
>>71 リアルで周りの人から察しが悪いとか気が利かないってよく言われてるでしょ
74 :
774RR:2007/04/03(火) 16:48:07 ID:BeTDiXbn
友人に薦められて華を全部読みました。
物語の持っていき方が緻密で面白いです。
今後も楽しみにしてますので頑張って下さいm(_ _)m
75 :
68=71:2007/04/03(火) 16:54:18 ID:CR8SxXmG
スクライド 若松でググったけど意味が分からんかった…
だれか教えてorz
76 :
774RR:2007/04/03(火) 19:52:25 ID:CSOlxZyV
今日あたりクルー
77 :
774RR:2007/04/03(火) 22:17:47 ID:LBRhuuTC
>>75 何年か経ってから読み返せば、きっと分かるようになってるよ。
78 :
774RR:2007/04/03(火) 23:17:04 ID:OxEFuTT8
>>77 そうやって煽ることしか能の無い人には聞いて無いんだけど?
79 :
774RR:2007/04/03(火) 23:35:15 ID:gYC9B3M1
>>78 洒落を説明するのは無粋じゃないか
わからないならわからないなりに流しておけよ
80 :
774RR:2007/04/03(火) 23:39:40 ID:OxEFuTT8
>>79 そうか
若本を若松と間違えるのは洒落だったのか
スレ汚しスマソ
そういえば最近タラオの人来ないね
あの話のせいでTLに心が揺らいでるんだが…
81 :
774RR:2007/04/03(火) 23:59:51 ID:LBRhuuTC
じゃあ説明してやろうか?
若本って直接書かず、似たような別の名前にすること自体が洒落なんだよ。
82 :
774RR:2007/04/04(水) 00:07:46 ID:cXjQKBoJ
>>81 追記するならば穴子の有名な産地の一つが伊勢若松だ。
83 :
774RR:2007/04/04(水) 00:16:57 ID:HDPB4+/B
なるほど
深いな
84 :
774RR:2007/04/04(水) 00:41:17 ID:22ScnM0Z
爽快ドラッグ☆強力わかもと
85 :
774RR:2007/04/04(水) 02:28:40 ID:5WWKXIqv
若本を若松って書くことが洒落なの?
面白くないね〜。
86 :
774RR:2007/04/04(水) 13:08:26 ID:9YB6E6ow
粘着にも程がある
なんて書くと顔真っ赤になるんだろうなぁ
87 :
774RR:2007/04/04(水) 20:01:07 ID:WVw67T4w
ムキー
88 :
774RR:2007/04/04(水) 21:11:44 ID:iDjX/Txv
小説書いてみようと思うんだけど、まとめサイトへの掲載の基準とかあるの?
やっぱり管理人さんの一存?
89 :
魔 棲 雄:2007/04/04(水) 22:26:35 ID:XjGTntQf
ご無沙汰してしまって申し訳ないです。出張等が重なってしまいまして。
週末には再開出来ると思います。もう暫くお待ち下さいませ。
90 :
774RR:2007/04/04(水) 22:37:23 ID:32F+QyCm
>89
ファンは少なくないが義務じゃないんだから、マイペースで。
91 :
774RR:2007/04/04(水) 23:05:02 ID:i3R4snIK
>>88 大体のが掲載されてるみたい。
ま、一回だけ書いて逃げたりしたらそれはアレだが
92 :
774RR:2007/04/05(木) 02:50:42 ID:1zBeikf5
93 :
774RR:2007/04/05(木) 07:47:55 ID:RKYzowY8
94 :
774RR:2007/04/06(金) 07:49:48 ID:12Vfia3K
あげ
95 :
774RR:2007/04/06(金) 17:58:22 ID:5d54bE1G
上がれ
96 :
774RR:2007/04/06(金) 18:55:24 ID:YijWigjZ
昨晩の首都高、いつもより単車の走り屋が目立っていたけどなんか特別な日?
追悼とか記念日とかさ?
爆音でフラフラと後ろから突っ込んできそうになったヤツがいて怖かったよ
97 :
774RR:2007/04/07(土) 00:48:17 ID:ocNN/YO8
深夜は全然いなかったけど?何時位?
98 :
774RR:2007/04/07(土) 01:14:00 ID:Nw+1PdU+
>>97レスどうも
AM3時くらいだね、湾岸線〜天現寺で降りて六本木や赤坂近辺ウロウロしてたけど、下に降りてもC1や3号線から聞こえる爆音は凄まじかったよw
まあオレの感覚でいつもより単車の音が賑やかに感じて違和感あっただけかもしれん
いつも深夜はこの辺りウロウロしてるんでね
99 :
774RR:2007/04/07(土) 14:06:55 ID:esbsAShF
ヤマハメイト
100 :
774RR:2007/04/08(日) 00:17:45 ID:iB/tSTjm
100!
101 :
774RR:2007/04/08(日) 19:01:09 ID:iNYR9rhg
さっきサザエさん観てたのよ。そしたら一家団欒のシーンでマスオさんとタイコさんが並んで座ってたのよ。
ティンティンが硬くなっちゃったよぉ・゚・(ノд`)・゚・
こんバカ息子が!
102 :
774RR:2007/04/08(日) 21:06:28 ID:8e5u9jaN
今日は中島がMVPだろw
103 :
774RR:2007/04/08(日) 21:24:13 ID:BftF4gsI
タイコさんのマムコをペロペロしても許されるし中で発射までしたノリスケはマジ羨ましい
タイコさんの尻穴のシワの数まで知ってるかもしれないなんてマジ羨ましい
子供を寝かしつけた後の二人の時間マジ羨ましい
【SCENE112】
棺と祭壇の置かれた和室に僕とアナゴ君は座った。ただ、黙って座っているしかなかった・・・。
この家に居る者の誰もが押し黙っていた。壁掛け時計の秒針が進む小さく周期的な音が、僕の頭の深層に喰い込むように響いて
いた。
・・・僕は眩暈のような感覚に襲われていた・・・。
平衡感覚を失ったように、座っているのに気を抜くと倒れそうだった。目の前の畳の目が、近いのか遠いのか良くわからない。
僕の脳は、突然に起こった非現実的な現実を処理しきれず、静かに悲鳴を上げているようだった・・・。
・・・鈴木さんが死んだ・・・。鈴木さんが死んだ・・・。何故?どうして?
去年の今頃、一緒に鈴鹿サーキットに行ったじゃないか。一週間前、一緒に第三京浜を走ったじゃないか。・・・数日前、一緒に
鮒田食堂で晩飯を食べたじゃないか・・・。
鈴木さんが死んだって?やっぱり何かの間違いでは無いのか?目の前に横たわる鈴木さんは、今にも起きてきそうじゃないか・・・。
鈴木さんの遺体と対面してもなお、僕には遂に悲しみの感情が湧いてこなかった・・・。まるで僕の脳が自動的に自己防衛
するかのように、現実を受け止めること、そして考える事を自ずから拒絶しているようだった・・・。その代わりに、僕の眩暈にも似た
気だるさは、壁掛け時計の秒針にシンクロするようにどんどん大きくなっていった・・・。
夕方が近づいてくるにつれ、弔問客が多くなって来た。僕とアナゴ君は、一旦鈴木さんの棺の側を離れ、部屋の隅に座っていた。
親戚の叔父さんや叔母さんであろう人たちや、学生時代の同級生であろう人々が次々に鈴木さんに焼香をして行く。誰もが物言わぬ
鈴木さんの姿を前に嗚咽を漏らし、あるいは人目をはばからず泣いていた・・・。
そんな弔問客の姿を、僕はただ黙って見ているだけだった・・・。
そのうち、鈴木さんのお父さんが寺から僧侶を連れて戻った。弔問客の数とこれから読経が始まる慌しさの中で、鈴木さんの
お父さんに挨拶をする余裕は無かった。
読経は上の空の僕の頭の中を通り抜け、周囲のすすり泣きは他人事のようだった・・・。
鈴木さんの納められた棺は、寺へ移された。移動手段を持っていなかった僕らは、鈴木さんのお兄さんの車に同乗させてもらった。
寺までの短い車中で、お兄さんは僕らに言った。
「もしかしたら弟から聞いてるのかも知れないけど、あいつには僕以上に『兄』と慕っていた男がいてさ。」
・・・首都高で亡くなった『兄ちゃん』の事に違いなかった。
「弟が物心ついた頃には、俺はもう中学生くらいだったからね。一緒に遊んだりなんて事はほとんど無かったんだ。その代わり、
ウチの隣に弟の一つ年上の子がいてね。弟はずっとその子について歩いてたもんだよ。」
お兄さんは昔を懐かしむように少し笑ってそう言った。鈴木さんとあまり似ていないと思ったその横顔は、目尻の笑い顔がドキリと
するくらい良く似ていた・・・。
106 :
774RR:2007/04/08(日) 22:29:13 ID:032AWT71
魔棲雄氏ktkr!!!
つCCC
「その子もね、バイク事故で死んだんだ。弟の目の前でだったそうだよ・・・。あの頃のあいつの気の落としようといったら、見て
いられなかったよ。・・・僕は年の離れた、ろくにあいつとまともに向き合った事も無かったダメな兄でね・・・。そんなあいつに気の効いた
言葉の一つすらかけてやれなかったんだな・・・。」
お兄さんは、自嘲気味に小さく溜息をついた。
「・・・バイクは嫌いさ・・・。・・・いや、申し訳ない。君たちの事を悪く言うつもりは無いんだ。・・・ただ、ね・・・。弟から大切な人を奪い、
僕から弟を奪い、今度はアナゴ君に弟と全く同じ辛い思いをさせてしまったバイクという乗り物がどうしても・・・ね。」
普段であれば、バイクを悪く言われると決して心地よいものでは無いが、この時ばかりは何も言い返すような言葉が見つからなかった。
むしろ、正体不明の罪悪感が僕の胸を襲った・・・。
よく聞けば、ゆっくりと語る鈴木さんのお兄さんの声もまた鈴木さんによく似ていた・・・。その声で、「バイクは嫌いさ」と言われた事が
なんだかとても辛かった・・・。
それっきり、鈴木さんのお兄さんは口を開くことは無かった。粛々と葬儀を進行しているように見えた彼の、弟の死への真意が
垣間見えたような気がした・・・。車は程なくして寺に到着した。
通夜が始まった。僕らは、慌しく通夜の準備が進む会場後方の片隅でおとなしく座っているしかなかった・・・。事故現場に居あわせた
「バイク仲間」がでしゃばる雰囲気ではなかった。タカ子さんは、鈴木さんの自宅の時と同様に、言い知れぬ哀しげな瞳を湛えながらも
凛とした姿で静かに座っていた・・・。
自宅以上に訪れたたくさんの弔問客の数が、鈴木さんの人柄を物語っていた。多くの参列者は鈴木さんと同年代の若い年代だった。
おそらくは、学生時代の同級生なのだろう。誰もが涙で目を腫らしながら鈴木さんの爽やかな笑顔の遺影に手を合わせた・・・。
読経が済み、通夜振る舞いが始まると会場は小さな同窓会の様相を呈していた。会場の数箇所に、小中高それぞれの時代の鈴木さんの
同級生の輪が出来ていた。
彼らは、小声だがそれでも鈴木さんが死に至った事故について語っているであろうことは断片的に聞こえてきた。
「バイクで・・・」
「そうバイク バイク・・・」
「トラックに・・・」
「危ないよねぇ・・・」
「一人で?」
そんな彼らの言葉の一つ一つが、僕の心を強烈に締め付けた。決してそうではない事は解かっているのに、それでも鈴木さんを
死に至らしめた原因の一端が自分にあるように思え、それらの言葉は僕の心を追いつめる。おそらくアナゴ君も・・・、いや、当日一緒に
走り、現場に居合わせた彼にとっては、僕以上にそれらの言葉は心に重く突き刺さっていただろう・・・。
そして、アナゴ君は手付かずの膳を前にその場を立った。
「・・・アナゴ君・・・」
「ん?便所さ・・・。」
事故後、初めてアナゴ君の笑顔を見た。そしてそのアナゴ君の笑顔は、これまで僕が見たことが無い、ゾッとするほど精気が抜けた
ものだった。目は相変わらず真っ赤だった。
アナゴ君はしばらく戻って来なかった。僕は心配になり、探しに行こうと立ちかけた時、傍らに初老の男性が座り、丁寧に礼をしてきた。
「フグタさんですね?この度は、遠くから足を運んで頂きましてありがとうございます。」
鈴木さんのお父さんだった。
若かった僕は、こんな時に返す言葉を知らなかった。あまつさえ、鈴木さんの死の原因の一端を担っているような罪悪感に苛まれて
いた為、僕はもうただ頭を下げ返すほか無かった・・・。
「あの遺影、ツーリングの時のものなんですよ。」
お父さんが、祭壇の遺影に目をやりながら言った。
「息子の死んだ原因がオートバイですから、そのオートバイに乗っている時の写真を遺影にするのは少し気が引けたんですがね・・・。
手元にある写真を見返してみても、オートバイに乗っている時が一番いい顔をしているんです。」
晴天下で絞りを随分と開放して撮った写真らしく、鈴木さんの顔意外の背景はボケている。しかし、そう言われてみると、鈴木さんの
背後に写っている白と赤の構造物はCB1100Rの一部分に間違いなかった。
「どの写真を見てもオートバイに乗っている時が一番活き活きした顔をしているんです。こんな時だって言うのに、見ているこっちが
思わず笑顔になってしまうようなね・・・。」
僕は黙って聞いていた。聞きながら、鈴木さんの何度も見た笑顔が僕の脳裏を駆け巡っていた。
「ひとつお聞きしたいのですが・・・。」
鈴木さんのお父さんは、僕のほうに向き直って言った。
「・・・息子は・・・あの子はオートバイに乗っている時、幸せそうだったでしょうか?」
言い知れぬ罪悪感に支配されていたその時の僕でも、その問いに対しては自信を持って答える事が出来た・・・。
「・・・はい。」
やはり鈴木さんに良く似た笑い皺を目尻に作りながら、鈴木さんのお父さんは言った。
「ありがとうございます。少しだけ救われたような気がします・・・。」
それ以上、僕は何も言う事が出来なかった・・・。その一日だけで僕はたくさんの人達の哀しみに染まった顔を見てしまった・・・。
そんな人達を前に僕は言葉を失い立ち尽くす事しか出来なかった・・・。
111 :
774RR:2007/04/08(日) 22:39:26 ID:gPiXx2xL
葬儀ってのは生きてる側が辛いんだよな
おまいら氏ぬなよ
112 :
101:2007/04/08(日) 22:56:11 ID:iNYR9rhg
>>102 だなw 事実を知った時の中島の顔!恐らくあの瞬間取ったね MV(ry
って
マスオ来てるゥゥゥ!いつの間にか来てるゥゥゥ!!
(ノ・∀・)ノ=C
113 :
774RR:2007/04/09(月) 12:25:44 ID:B0h+kA4Y
涙した
114 :
774RR:2007/04/09(月) 17:49:30 ID:nT7Hdcbz
_,,..i'"':,
|\`、: i'、
\ \`_',..-i
\|_,. -┘
タタタッ _ノ ) ノ
ノ ///
_// | (_
.. レ´ ー`
ティッシュどうぞ
115 :
774RR:2007/04/09(月) 21:33:04 ID:f9UsqEdy
>>114 それが最後の一枚なんでしょ?
それ抜いたら、急に「ぎゃー」て絶叫しつつ、こっちを睨みながら、「ガクッ」て
死ぬんでしょ?
だからお前のティッシュなんか抜かないぞ。抜くもんか!
116 :
774RR:2007/04/10(火) 14:22:02 ID:uZlNtEPM
下からポケットティッシュを補充すればまだ使えるよ
117 :
774RR:2007/04/11(水) 01:50:18 ID:PHYUuVVa
作者さん頑張れーっC
118 :
774RR:2007/04/12(木) 01:13:16 ID:+boLKVV2
保守がわりに置いときますね
つ(冷や酒)
119 :
774RR:2007/04/12(木) 01:40:38 ID:qlx09z5z
一年以上続いてるのに、魔棲雄氏の意志の硬さに乾杯。
つC
120 :
774RR:2007/04/12(木) 02:07:14 ID:K3TOGtmk
決して下がらないクオリティにも乾杯。
121 :
774RR:2007/04/12(木) 05:46:13 ID:UrnVYbZI
そして作家にたいする皆のwktkに乾杯
122 :
774RR:2007/04/12(木) 10:04:19 ID:UuPp0Mtm
君の瞳に乾杯
123 :
774RR:2007/04/12(木) 15:21:37 ID:NUS+VlNO
更に今日誕生日のオレにも乾杯
124 :
774RR:2007/04/12(木) 17:14:17 ID:F+B95Sz+
そして鈴木さんに献杯
125 :
774RR:2007/04/12(木) 19:11:39 ID:LorMbeOj
俺は疲労困憊
126 :
774RR:2007/04/12(木) 19:45:42 ID:1gA4JviB
お前のカアチャン淫売!
127 :
華:2007/04/12(木) 20:52:03 ID:SSsIym1D
【星に願いを編】
シャァアァァアアァァアア…乾式クラッチから奏でる独特のサウンドがPOPモータースの前でエンジン音と共に静まる。
「こんにちは〜」小柄な青年はドアを開けながら奥で作業する田中に聞こえる様に大きな声で挨拶をした。
「おぉ〜 堀川君、どうだい?ガンマの調子は?」奥の作業場から汗だくになった田中がタオルで汗を拭きながらショールームへと現れた。
「ぜ〜んぜん、全く問題ないですよ。」笑顔で答える堀川。
「そうかい そいつは良かった。 どうだい?公道走り始めた感想は?」そう田中は微笑みながら堀川に聞く。
「公道は怖いですよ。サーキットが如何に安全か良くわかりましたよ。」と堀川は額に滲み出る汗を手で拭いながら答える。
「はははは、そりゃぁそうさ。」笑いながら田中が答えれば堀川は鼻の頭を擦る。
「それで新しいタイヤ届きましたか?」待ちきれんばかりの笑顔で堀川は質問すれば「あぁ、届いてるさ」と田中は答える。
「それじゃ!今日お願いできますか!?」と意気込んで聞くも田中は「ゴメンね 明後日お客さん二人納車でね。今日も他のお客さんの整備で手一杯さ」と申し訳無さそうに答える。
「そうですか… タイヤ交換いつ頃出来そうですか?」と額の汗を拭いながら聞く堀川。
「明日は臨時休業でね… 明後日の午後でいいかい?」と田中が聞けば堀川は嬉しそうに「お願いします!」と答える。
128 :
華:2007/04/12(木) 20:52:41 ID:SSsIym1D
「で、お父さん 向こうで元気してるのかい?」そう田中は堀川に聞けば「はい」と元気よく答える。
「勿体無かったね。いい成績残した所で、一番の理解者のお父さんが単身赴任だなんて…」と田中は残念そうに語る。
「仕方のない事ですよ。僕も母もわかってますから」そう堀川は答える。
「ふふ…随分物分りいいんだね?」と堀川を少しからかう様に田中は笑う。
「い、いえ…ぼ、僕はそんなつもりじゃ…」と言葉を慌てて返す堀川を見て田中は「ふふ、そういう所が物分りいいのさ」と更に笑う。
「自分にはわかるのさ、走り方で性格なんかもね 堀川君はマシンの物分りが早いのさ」と田中は笑顔で言葉を伝える。
「そ、そんな事は…」と答える堀川に「冗談さ」と笑って田中は答える。
「そうだ!この前の話の続き聞かせて下さいよ!ポップさんがマルセイユの海岸のほら穴で生活してた話の続き!」と堀川は目を輝かせて田中に言う。
「はははは、いいさ じゃぁ奥の作業場で仕事しながら話すけどいいかい?」と田中は堀川に言い聞かせる。
花子達の納車を迎える二日前、POPモータースでの出来事。
花子は平日は海鮮組にて受験勉強、土曜日はアルバイトをして過ごしていた。
そして土曜日、田中はハイエースで関越に乗り群馬県前橋市郊外の墓地へと姿を現す。
129 :
華:2007/04/12(木) 20:53:18 ID:SSsIym1D
田中は助手席に束ねられた純白の菊を手に持ち、慣れた足取りで一つの墓石へと足を運ぶ。早朝の朝霧の中、数羽のツバメ達が低く旋回し田中を横切る。
田中は墓石の前に立てば、既に菊の花束がひとつ添えられていた…
(え…?! じ、自分より早く来た人が居る…誰だろう…?)困惑しながらも、手に持つ純白の菊をそっと添えて線香を立てる。
空は朝から黒くどんよりとし、真夏の朝という割には少しばかり涼しい。
田中はキャップを脱ぎ、足元へ置く。そしてそっと手を合わせ目を閉じる…
(お久し振りです… お元気ですか? 自分は元気です… すみません…今年は一番に来れませんでした…)ゆっくりとそして深く墓石へ一礼をする。
(それと、今年から自分の店を始めました。 開店直前に父が他界し色々ありましたけども、自分は今も楽しくやってますよ…)
ザァァァ―――…
黒く覆われた空からは強い雨が降り始める。だが田中はジッと墓石の前で目を閉じ手を合わせる。
(そして先月、息子が産まれました。来年はココに妻と息子を連れて来ますよ…)
田中は一年の出来事を墓石に報告するかの様に一つ一つゆっくりと天へと念じる。
ザァァァ―――…
雨は強く強く降り注ぐ。 そしてピシャッ…ピシャッ…と小さい足音だが力強い音を立ててゆっくりと田中に歩み寄ってきた。
130 :
華:2007/04/12(木) 20:53:53 ID:SSsIym1D
「風邪…ひくぞ…ポップ…」傘を差したイナダモータースのイナダが田中を傘の中に入れる。
「お!親方…」驚いた表情をし田中はイナダへ会釈をした。
「やっぱり…おめぇだったか…」そうイナダは細く呟く。
「………」田中は再び墓石を眺め目を閉じる…
「あの二人がな… 数年前に言ってたよ。 毎年必ず俺達より早く花が一つ添えられてる…ってな…」イナダはそう田中に言葉を伝える…
「開店祝いの時によ… まさかと思っててな…」とイナダは更に言葉を添えた。
「イナダモータースで…」と田中が声を小さく出すと「ん?」とイナダは耳を傾ける。
「イナダモータースで働いていた頃… 出来るだけその事を言いたくなかったんですよ…あの人達だって辛いでしょう…」と田中は答える。
「………」イナダは黙って田中の話を聞く。
「自分も辛いんですよ… だから…ずっと黙っていたんです… みんな辛いんですよ…」田中の頬から熱い雨粒が弧を描く。
「俺も毎年ココに来てるんだよ。 そして思い出してるんだ」とイナダは言う。
「それじゃ…この菊は…」と田中が聞けば「そうだ」と答える。
ザァァァ―――…
二人は再び墓石に手を合わせ始める。
(鈴木さんや これがあの時のひよこの田中だよ…)そう念じて目を開く。
そして田中の背中を見ては鼻の下を左手の人差し指でスッと擦る。
(へっ!ひよこがでかくなりやがってよっ! でもよ、鈴木さんや こいつぁいいメカニックになって帰ってきた。)
(だからよ、こいつの事、みんなの事、そっと見守ってやって欲しい。)天へと届けと思う気持ちでイナダは墓石を眺める。
131 :
華:2007/04/12(木) 20:54:28 ID:SSsIym1D
一時的な雨だったのか、いつしか雨は止み、雲の隙間から太陽の光が差し込んでくる。
少しずつ…少しずつ気温は上がり始め、蝉が鳴き始めていた。
「ポップ…おめぇ今日車か?」とイナダが聞くと「えぇ、車ですよ」と答える。
「すまねぇが、帰り送ってもらっていいか?電車とタクシーでここまで来ててな」とイナダが言えば田中は「はい」と答える。
二人は墓石へ別れを告げ、田中とイナダはハイエースで関越道を東京方面へと車を走らせる。
埼玉へ入れば路面は濡れておらず乾いており、上へ上へと太陽が昇り、直射日光が車内に差し込む。
「ポップ… 店はどうだ?うまくいってんのか?」と外の景色を眺めながらイナダは運転席の田中に問う。
「えぇ 少しずつですけど」と答えれば「そうか」とイナダは答える。
「息子さん達、元気でやってますか?」と田中は高速道路のセンターラインを眺めながらイナダに聞く。
「へっ、ったくよ!最近出入りしてる二十歳に満たねぇ娘っ子に全員鼻の下伸ばしてやがらぁ!」とイナダは言う。
「はははは、いい雰囲気じゃないですか」と田中は笑う。
「ったく…ちったぁしっかりしてもらいてぇよっ!」といつもの調子でイナダは苦笑いをする。
「ロブは元気してんのか?」とイナダはまた田中に問う。
「えぇ、この前エアメール来ましたよ。相変わらずお元気ですよ、ウチの監督は」と笑いながら答え「そうか」と外の景色を見ながら答える。
そんな姿を田中が覗き込めば、イナダの口元が緩んでいた事に同じく口元が緩む。
132 :
華:2007/04/12(木) 20:55:10 ID:SSsIym1D
「ポップ…鈴木さんは死んじゃいねぇよ」突然イナダは田中に言う。「えっ!?」と驚いた表情で景色を眺めるイナダを一瞬見る。
「本当にな… 本当に人が死ぬってのはな その人の事を誰も思い返す事がなくなった時、人は初めて死ぬんだよ」とイナダは言う。
「えぇ、鈴木さんは死んでないですよ。ずっと…」田中はその言葉に納得した。
「ふふふ」と田中が笑えばイナダは「なんだ?ポップ、気色わりぃな!」とイナダは言う。
「意外と親方って詩人なんですね。」と少しばかりイナダをからかう。
「バカヤロッ! 難物みてぇなすだれ頭と一緒にすんじゃねぇ!」と笑いながら田中に言い聞かせる。
そんなイナダの姿を見て田中は大笑いした。
二人を乗せたハイエースは世田谷へと向かい、田中はイナダモータース近くの路地でイナダを降ろしては挨拶をし自宅へと帰った。
東京熱帯夜が世田谷を襲う。蒸し暑い夜を迎えるも花子達は興奮冷め切らず、まだか?まだか?と布団の中で待ちわびては眠りに付く。
そして二人が待ちに待った日曜日。天気は晴天。日差しが差し込むPOPモータースへと開店直後に二人はやってきた。
133 :
774RR:2007/04/12(木) 21:00:04 ID:8381zNrv
つC
134 :
華:2007/04/12(木) 21:01:47 ID:SSsIym1D
ね、寝ます…orz
135 :
774RR:2007/04/12(木) 21:04:08 ID:8381zNrv
「本当にな… 本当に人が死ぬってのはな その人の事を誰も思い返す事がなくなった時、人は初めて死ぬんだよ」って台詞イイネ!
136 :
774RR:2007/04/12(木) 21:07:34 ID:8381zNrv
「本当にな… 本当に人が死ぬってのはな その人の事を誰も思い返す事がなくなった時、人は初めて死ぬんだよ」って台詞イイネ!
「小僧ども、ソープでも行って童貞という濡れた服を脱いで、オマエたちを馬鹿にした女たちを押し倒してやっちまえ!」
みたいなヒトの小説で読んだような台詞だ
137 :
774RR:2007/04/12(木) 21:41:38 ID:LfH+zABD
確かにイイ台詞だが、ソープで童貞を捨てるような小僧と一緒にされちゃぁ、
やるせないね。
親族を亡くせば、少しはその言葉の深みが解るだろうが。
138 :
774RR:2007/04/12(木) 22:15:02 ID:8381zNrv
>>137の小僧よ、俺の書き方が悪かったようだ
『北方謙三の小説で読んだことのあるような台詞だ』
と言えばわかってもらえたかな?
139 :
774RR:2007/04/12(木) 22:16:33 ID:DWO/6NP6
140 :
774RR:2007/04/12(木) 22:37:13 ID:+boLKVV2
華乙
141 :
774RR:2007/04/12(木) 22:40:41 ID:5kvalo6b
142 :
774RR:2007/04/12(木) 23:47:53 ID:f2THzft0
つC
>>138 こんなマターリしてるスレを荒らすのはやめてくれまいか
143 :
774RR:2007/04/13(金) 13:59:25 ID:jw5w0DPk
ほら穴で生活ってすげーなw ほんと金無かったんだな…
144 :
774RR:2007/04/15(日) 02:41:15 ID:bBd1wDUJ
ほしゅ
145 :
774RR:2007/04/15(日) 13:53:47 ID:4VONDYez
146 :
774RR:2007/04/15(日) 18:36:45 ID:ZbOdzxBe
このスレの話にサザエがあまり出てこないのはなぜ?
147 :
774RR:2007/04/15(日) 19:10:50 ID:k9WfximD
148 :
774RR:2007/04/15(日) 20:50:00 ID:Vfbk/NQ6
149 :
774RR:2007/04/15(日) 21:23:30 ID:Hr8JHWWg
このスレじゃ全然主役じゃないよ。
150 :
774RR:2007/04/15(日) 21:35:32 ID:VaRs26P7
スレタイからしても、主役は決してサザエさんではない。
まぁ、サブちゃんも殆ど出てこないけどw
151 :
774RR:2007/04/15(日) 22:34:49 ID:lQzesqoc
152 :
774RR:2007/04/15(日) 23:44:34 ID:/Di09bd6
ラスボスは、サザエの情報収集能力かと
153 :
774RR:2007/04/16(月) 08:11:59 ID:yNy8haEN
自律型生体情報集積回路―SA・THE・E―
154 :
774RR:2007/04/16(月) 08:16:02 ID:7/bMZSN2
キモ!
155 :
774RR:2007/04/16(月) 18:38:49 ID:37w3DwaT
もう生体兵器がらみの流れにいくのは止めようぜ。
まぁ、このスレがここまで発展したのはその流れの所為だけどもさ。
156 :
774RR:2007/04/16(月) 22:08:37 ID:YLOgON9/
魔棲男を止められるのはアナゴさんだけ
157 :
774RR:2007/04/16(月) 23:14:05 ID:v1IZVGb7
>>153 日本の教科書英語しか履修してない俺では
サ・ジ・イーとしか読めない
158 :
774RR:2007/04/16(月) 23:17:55 ID:2EkaMENU
今朝、コンビニの駐車場で暖気中のGPZ900Rとそのオーナーに「マスオさん!」と
声をかけたら、思いっきり睨まれた…。驚かせてしまってすみませんでした。
159 :
774RR:2007/04/16(月) 23:19:56 ID:E/EyIHC/
実際、嫁さんの実家で肩身が狭いんだよ
160 :
774RR:2007/04/16(月) 23:47:02 ID:48LxpzWN
>>158 見ず知らずの人間にそういう事を言うなんて…
このスレ無しじゃ生きていけんな。
161 :
774RR:2007/04/17(火) 01:02:28 ID:49DXNPTT
162 :
774RR:2007/04/17(火) 10:18:13 ID:JuT0JeH/
163 :
774RR:2007/04/17(火) 23:45:40 ID:2/M4TICl
>>155 現行のストーリーと完全アナザーストーリーならいいんじゃないか?
アナザーワールドというかパラレルワールドというか。
その上面白ければいうことなし。
164 :
774RR:2007/04/17(火) 23:54:26 ID:2/M4TICl
>>155 現行のストーリーと完全アナザーストーリーならいいんじゃないか?
アナザーワールドというかパラレルワールドというか。
その上面白ければいうことなし。
165 :
774RR:2007/04/17(火) 23:59:52 ID:rIel4J9G
166 :
774RR:2007/04/18(水) 18:13:57 ID:agK2g/m7
h
167 :
774RR:2007/04/18(水) 20:05:47 ID:btO5I2OP
落ちないか心配
168 :
774RR:2007/04/19(木) 00:25:20 ID:a78Dn/kh
age
【SCENE113】
鈴木さんは、純白の入道雲が眩しい、突き抜けるような夏の青空に昇っていった・・・。
地上にたくさんの嘆きと悲しみ、そして少しの骨片を残し、鈴木さんは僕達の前から姿を消した・・・。
火葬に先立つ告別式の際、焼香の列にひときわ参列者の目を引く長身の外国人が居た。レッドだった。
事故や葬儀場をどこで聞きつけてきたのか・・・。とにかく彼はここに現れた。敬虔なクリスチャンだった彼が仏式で手を合わせることは
無かったが、祭壇を前に右手を胸にあて鈴木さんと最後の別れをしていた・・・。
黒いスーツ姿の外国人と鈴木さんの関係を知る由も無い他の参列者の視線を尻目に、会場後方に座っていた僕らに一瞬目を向けると、
軽く敬礼のような仕草をして彼は立ち去って行った・・・。
火葬場で、僕は鈴木さんの手の指と思われる骨を拾った。大きく力強かった鈴木さんの手・・・。どうしても目の前の白く小さな骨の
破片とのイメージが重ならなかった・・・。骨箸で拾った細く小さな指の骨は、箸先で脆く崩れた・・・。
そして、ついに僕は一連の鈴木さんの葬儀の中で、鈴木さんの死に対しての現実感を得る事が出来なかったのだった・・・。
鈴木さんが死んでから葬儀が終わるまでは、まるで熱病にうなされながら見る夢のように、現実感に乏しく、そして心地悪い時間が
流れていた・・・。鈴木さんの死に対して、脳がまるで正常な段取りで消化できていなかった。
だから、東京に戻れば鈴木さんが待っているような気がしたし、第三京浜に行けばCB1100Rと競い合えるような気がした・・・。
骨箱に鈴木さんの残骸が納められた時、呆けて火葬台を眺めていた僕は我に返った。そして、アナゴ君が居ない事に気が付いた。
寺に戻ってもアナゴ君は居なかった。・・・いつから居なかっただろう・・・。火葬場に行ったのは覚えている。拾骨の時は・・・どうだったろうか。
ひとしきり、探したがアナゴ君の姿は無かった。もうここには居ないだろう。おそらく東京へ向かったのだ・・・。
アナゴ君が心配になった僕は、鈴木さんの遺影に手を合わせ、鈴木さんのお兄さんに挨拶をし寺を後にした。10mほど歩いたところで
たった今、別れを告げたばかりの鈴木さんのお兄さんに背後から呼び止められた。
「おい!フグタ君!」
「はい。」
「・・・バイク・・・気をつけろよ。アナゴ君にもそう言っておいてくれな・・・。」
鈴木さんに良く似た笑い皺を目尻に作りながら、鈴木さんにそっくりな声でお兄さんはそう言った・・・。
アナゴ君が心配だった。葬儀への参列という「すべき事」が終わった今、僕らがすることは何も無い。そうすると、ぽっかりと開いた
心の穴から、自責や後悔の念という負の思考が際限なく湧き出してくる・・・。アナゴ君はなおさらだろう・・・。
今、アナゴ君を一人にしてはおけない・・・。僕はタクシーで駅に向かい、迷わず上越新幹線のチケットを買った。
一人、200km/hで流れる景色を眺めながら、鈴木さんを想う・・・。思い返してみれば、脳裏に浮かぶ鈴木さんの顔は、全て笑顔だった・・・。
あの晩、僕がレポートに時間を割かれず二人に同行していたら・・・きっと様々なタイミングがずれて事故は回避できたのではないだろうか・・・。
だとしたら、学生の分別をわきまえず、学業をおろそかにしレポート課題を受けてしまった僕のせいだ・・・。
・・・いや、そもそも僕達と鈴木さんが出会わなければ、鈴木さんは死なずに済んだのだ・・・。僕達が鈴木さんの前に姿を現してさえいなければ
今頃、鈴木さんは東京の会社で何事も無く働いているだろう・・・。
僕達が鈴木さんと出会ったのは、北海道だった・・・。夕刻に、ガス欠で路肩をバイクを押して歩く鈴木さんに会ったのが最初だったな・・・。
あの日は僕が転倒して大幅に予定が狂ったんだっけ・・・。
・・・あぁ、そうか・・・。僕がヨンフォアで不用意な運転をしたが為に転倒を喫し、その結果、鈴木さんと出会う運命が訪れたんだ・・・。
僕じゃないか。鈴木さんが死んだ原因を作ったのは、僕じゃないか・・・。たくさんの人に悲しみを与え、未来ある若き好青年の命を奪った
根本的な原因を作ったのは・・・なんだ・・・僕じゃないか・・・。
鈴木さんの命を奪った直接の原因は、信号を無視して交差点に突入した四輪車にあるのは明白である。・・・しかし、この時の僕にそんな
理性的な判断をする頭の余裕は無かった・・・。
葬儀の際に芽生えた自らがバイク乗りであることに対する自責の念は、疲れ果てた僕の心の中で大きく膨らみ、鈴木さんの死の原因を
全て自らの責任に転化する負の思考のループに陥っていた・・・。おそらくは、当時のアナゴ君もそうであったであろう事は想像に難くない。
そして、僕は車掌に促され初めて列車が東京に到着していた事に気がついた・・・。
僕は駆け足でアナゴ君のアパートへ向かった。都会の猛暑と暑苦しい喪服の取り合わせは、僕の全身から大量の発汗を促したが、僕は
そんな事に目もくれず駅の構内を走り、電車を乗り継いだ。アナゴ君のアパートに着いたときは、Yシャツはもうそれ以上の汗を吸い込む事が
出来なくなっていた。夕暮れの紫色の空が、今まで見たどんな夕焼けよりも哀しく見えた・・・。
アナゴ君の部屋をノックした。応答は無い。鍵は掛かっていなかった。ドアを開けると、喪服の上だけが乱雑に脱ぎ捨てられていた。
だが、彼は部屋に居なかった。・・・戻って来てはいるようだが、しかし・・・何処へ?もしや、と駐輪場に目をやるが、カタナはそこにあった。
・・・僕は一箇所だけ心当たりがあった・・・。確証は無かった。だが、何故か確信を持ってアナゴ君はそこに居ると思えた。
そして、僕は鮒田食堂に向かって歩き始めた。
173 :
774RR:2007/04/19(木) 00:42:37 ID:mHK5ihmx
キタァ(゚∀゚)
174 :
774RR:2007/04/19(木) 01:17:52 ID:zEKQhGts
マスオ氏乙です
でマスオの続きマダー?( ・∀・)っ/凵^☆チンチン
175 :
774RR:2007/04/19(木) 02:19:11 ID:BVG9G72Y
CCCCCCCC .。゚+.(・∀・)゚+.゚ *。.。*゚'゚*。.。☆ヽ
176 :
774RR:2007/04/19(木) 03:45:56 ID:a78Dn/kh
C
177 :
774RR:2007/04/19(木) 06:14:51 ID:PUZe+gNe
C
178 :
774RR:2007/04/19(木) 07:25:28 ID:H3hGTjys
アナゴ君が気になる
魔棲雄氏wktkして待ってます!
179 :
774RR:2007/04/19(木) 08:43:23 ID:oj5AOHjw
つC
自分の枯れない涙が不思議に思える
180 :
774RR:2007/04/19(木) 09:19:44 ID:h1/EzWFT
魔棲雄氏
ほんま楽ませてもらってます^^
181 :
774RR:2007/04/19(木) 20:29:41 ID:MJ2u/tv8
CCCCCCCCCC
182 :
774RR:2007/04/20(金) 00:03:38 ID:MJ2u/tv8
紫煙
183 :
774RR:2007/04/20(金) 20:13:36 ID:WSwQcwAj
マスオさんの趣味が献血なのはこの事故のせいなのか
184 :
774RR:2007/04/20(金) 23:31:26 ID:+Jv6bs1q
今夜はゆっくり飲みましょう。。。
つ(ぬる燗)
185 :
774RR:2007/04/22(日) 01:55:47 ID:MjaZC13+
お疲れ様です。
186 :
774RR:2007/04/22(日) 08:02:07 ID:ZLUOnXtG
つC
187 :
波平旅行記2:2007/04/22(日) 11:35:12 ID:GreW0pkw
無職のプーなのでこんな時間に書き込んでみる。
遅筆で申し訳ないです
188 :
波平旅行記2:2007/04/22(日) 11:38:14 ID:GreW0pkw
ゆっくりと開かれるシャッター。
まるで神殿の扉が開かれるように感じたのはその内側からキラキラと光輝くそれらのせいだけではない。
そこにありうる全ての物がまとう空気がそう見せたのかもしれない。
まさに宝物殿の御開帳といった様子で開かれた向こうには、クロームのきらめきまぶしいハーレーたちが鎮座していた。
水銀灯に照らされまぶしいような輝きは目をそらせない美しさをまとっている。
輝きの奥に見える荒々しさ、それでいて身に纏った高級感、雄々しく、艶かしい、美を求めたそのいでたちは息を呑み圧倒されてしまう。
ボイルはにこやかに告げた。
「波平、跨ってみろ」
薦められるままにゆっくりと車体に近寄り、そっと手を触れる。
指先から伝わる感触が電気のようにつま先から脳天を駆け巡る。
もはや自分自身ではどんな表情をしているかわからないが、おそらく頬は緩み笑顔であったろう。
そうさせる魔力がそこにある、まさに存在感によってのみその存在が証明されるようなオーラを纏った車体があった。
アングラー氏は呆れ顔でこっちを見ている。
しかし、周りのことなど気にすることはできない。
一応フネと顔を合わせたはずだが、表情は覚えていない。
もはやそこにあるのは自分のほかにその車体だけだった。
ゆっくりと足を振り上げてまたがる。
腰に伝わる重さが力強い。遠い昔にまたがった感触を思い出そうにも、時代の流れは無常なものだ。もはや別物のような存在感、ブランクとはいえないほど新鮮な感動が伝わる。
ずしりとした感触を感じて車体を起こす。
肉厚な感触は高級感を伴ってよりいっそう大きさを感じさせる。
跨ってハンドルをしっかりと握ればエンジンをかける必要もない、やはりそこに存在した車体は確かに長い時を経たハーレーだった。
189 :
波平旅行記2:2007/04/22(日) 11:39:12 ID:GreW0pkw
不意にボイルは車体に手を伸ばし、すぐさまシリンダーにキーを差し込むとおもむろに捻る。
そんなわずかな動作は確実に股下のハーレーに命を吹き込み、インジケーターランプが点灯する。
あたかも、深い眠りから静かに目覚めるように、未だ物言わぬ車体は確かに生命を感じさせる。
オートバイを生き物や女性にたとえる例が多くあるのは、まさしく頷ける。
促されるままスタータースイッチに手をかける。
昔はキックだったなどと野暮なことは言うつもりはない、セルモーターは二輪車とは思えない力強さでクランクを回す。
フライホイールの重量バランスを強調するかのような力強いセルモーターは、そのままその車体に宿る未知なる力量をあらわすようでもあった。
まるで初めてハーレーダビッドソンを感じたときのような郷愁・・・それ以上の喜びを感じさせられるほどである。
ボイルがチョークノブやアクセル開度を補助してくれたおかげで、3度ほどでエンジンに火が宿った。
実にあっさりとしたもので、ケバケバしいタペット音も振動も心地よい存在感を示す。
言葉でで描くといかにも叙事的な感じを受けなくもないが、確かに振動も騒音もガタピシとした不良品感もすべてスポイルされて、近代の工業製品らしくなってしまって味気ない。
190 :
波平旅行記2:2007/04/22(日) 11:39:57 ID:GreW0pkw
・・・・・・・
・・・・・
・・・
申し訳ない、「嘘ではないが、嘘だ」。
もはや今にも走り出したい衝動(自分の所有物ならすぐにでも走り出していたろう)に駆られてしまい、冷静な反応はできていなかった。
何度も同じ表現で恐縮だが、ハーレーとはそこに宿る魂こそがハーレーたる所以であろう。
「気に入ったようだな」
ボイルのその言葉はすべてを物語っていた。
そのとおり、気に入ってしまった、心は既にフネを後ろに乗せてイージーライダーよろしく無限の荒野に走り出していた。
唯一困惑していたのはアングラー氏であったろうが、既にボイルに釘を刺されていたのだろう、苦笑いを浮かべながら
「Mr.波平無傷で返してくださいよ、本当に、お願いしますね、冗談じゃなく・・・」切実とはこういうことだろう。
かくして、その足でボイルの計略に乗って内陸部を目指すことになった。
目的地は大渓谷(グランドキャニオン)世界に名だたるアメリカの大自然の芸術作品である。
191 :
波平旅行記2:2007/04/22(日) 11:42:13 ID:GreW0pkw
日曜だから昼間に暇でも問題なかったのか・・・鬱
曜日感覚がない方がよっぽどつらいや
誰か仕事世話してくれないかな・・・
192 :
774RR:2007/04/22(日) 12:36:14 ID:ZXNofaEN
仕事のお世話は出来ないがwktkならできる!!
(・∀・)wktk!!
>>190 つC
昨日は会社のツーリング。天気に恵まれた今期初ツー、気持ちよかったです。
でも20台の先導は大変でしたw
・・・で、その代償として今日は子守です。
退屈だなぁと思ってたら波平さんが!Good timing!
もちろんバイク旅ではありませんが、カリフォルニアとグランドキャニオンには
一度だけ行った事があります。(と言っても海外旅行経験がそれだけですがね)
日本よりも強烈なコントラストの突き抜けるような青空や心地よい乾いた風が印象的
でした。
wktkしてお待ち申しております。
194 :
774RR:2007/04/22(日) 15:32:06 ID:JuagQsWC
あっこんな時間にマスオさんが!!
ファンです。マジでサイン欲しい
195 :
774RR:2007/04/22(日) 15:33:26 ID:d3djfBY3
C
196 :
774RR:2007/04/22(日) 19:22:49 ID:YC1BMPrr
今日のサザエさん。
アナゴさんがマスオに言った「君だけに貧乏クジは引かせられない」って言葉に
ちょっと感動。
197 :
774RR:2007/04/22(日) 19:30:55 ID:M9TR4hXH
つまりあれか
サザエさんを引いてしまったマスオさんに対して
アナゴさんも敢えてタカ子さんを・・・
198 :
774RR:2007/04/22(日) 20:06:26 ID:VkGt4z4N
昨日の夜、波平てば復活したのに全然続きこないジャマイカ!ヽ(♯`д´)ノ なんて考えてたのよ。・・・いやホントに。
で今ふとスレを見る。そしたら降臨してるじゃない。波平旅行記。ほら例の。
・・・俺ピーン(・∀・)とキタね。気付いたね。俺ら運命の赤い糸で繋がってるって事に。
よし。結婚しyo(ry
199 :
774RR:2007/04/22(日) 22:36:21 ID:TatDxegS
波平は俺の嫁
200 :
波平旅行記2:2007/04/22(日) 22:59:14 ID:hvqkQ4wY
就職あきらめて家庭に入るって選択も増えたってことでよいのでつか・・・
201 :
774RR:2007/04/23(月) 20:02:23 ID:RHOr4kS3
レ/ __,ノ ヽ、__ ´ノ_ ヾ、
/ __ __ l ト!
/ ・ l ・ l イィ `ゝ
/ `´ l`´ ノ 予
/ r―-、 `ー iィr‐-、/
! { 、 l|
l `ー`ー‐'^ー'′、 __ノ l
l __ ヽ / ┌`
l/ ヽ ヽ / ,ィ!
├‐ヽノ--〉 ヽ /l/
/人 / /ヽ、
// `ーr'′ / \ヽ
202 :
774RR:2007/04/23(月) 20:17:04 ID:A/iptscV
>>魔棲雄氏
毎回楽しみに見てます。
亀レスで重箱の隅ツツクのだが、
上越新幹線の大宮開業は82年11月 上野開業は85年3月 東京開業は91年6月
80年代の話だと思ったんで気になってしまった…
203 :
774RR:2007/04/23(月) 22:19:51 ID:BvoZ/L2h
まぁ、8時丁度のアズサ2号な訳だ
204 :
774RR:2007/04/23(月) 22:29:46 ID:OyRcb6Ys
205 :
774RR:2007/04/23(月) 23:00:58 ID:sjYq8z7g
206 :
774RR:2007/04/23(月) 23:29:36 ID:Z7aojRW8
ここの小説読んでたらバイクの本が欲しくなってきて、遂に初めてバイク本を買ってしまった。
題名は「俺様の宝石さ」、著者は浮谷東次郎。面白いです。
207 :
774RR:2007/04/23(月) 23:38:04 ID:9Bu/hNJP
つ 大薮春彦「汚れた英雄」
208 :
774RR:2007/04/24(火) 00:01:42 ID:EU/oHkiI
>>202 さらに重箱なのだが、作中じゃ「東京駅」じゃなく「東京」になってるんだから
問題無くね?
東京(都内)に帰ってきた、つー意味だろ。
作者が一年以上作品をあげなかったので、私は作者の職場に対し社会的影響というものを使いました。
作者が今、バイトをしているのは、私が作者の社長に「彼が社長に対し呑みの場で悪口を言う」と吹き込むことによって彼の社会的立場を悪くすることにより
作者を退職に追いやり、地元に帰ることを余儀なくし、見事地元に帰らせプーにすることにより、
時間を作らせた事によります
皆様は、私の活動によって波平旅行記の続きを読めることになったので私の行為は正当だったのだと信じます。
作者より、「自分ばかり作品を上げるのは不公平だ」との声により、私も作品を作ることになりました。
全く以って迷惑な話でです。
しかし、作者をその気にさせ作品を上げさせるのが編集の役目と信じ作品を製作中です。
・・・・・お楽しみに!
全く以って墓穴です
210 :
774RR:2007/04/24(火) 21:18:01 ID:XbxUV72w
211 :
774RR:2007/04/24(火) 21:40:39 ID:+UOAZ4fr
212 :
774RR:2007/04/24(火) 22:18:28 ID:KlAWPJQu
とうとうこんな低グレードの馬鹿までが登場、と言うわけか。
213 :
774RR:2007/04/24(火) 23:17:59 ID:uVFqG3jb
>>210 ジュワワ、ジュワワワ。
つまりこういうことだ。
214 :
774RR:2007/04/25(水) 00:39:35 ID:0WzbfEdc
>>209 私は波平旅行記作者と同じ会社に勤務する者です。
作者が1年以上続きを書かなかったので、書かせる時間を作らせるために
社長に彼の悪口を伝えることで、彼を退職に追い込むことに成功しました。
結果、彼は作品を書く時間が取れることになりました。これが私の編集者
としての仕事だったと自負しております。
215 :
774RR:2007/04/25(水) 13:41:46 ID:dYiDCYrl
病室の窓からの光が、室内に浮遊する塵を反射させている。空気はほとんど動かない。
窓際のベッドに寝ているルパンを銭形は見つめる。銭形とルパン。既に年齢は55と52。
緑や赤のジャケットではなく、薄水色の病院服を着ている。
全身にチューブが繋がれ、心音を告げる電子音が、一定のリズムで鳴っている。
沈黙。銭形は一度、大きく息をする。いったい、俺は、この30年間何をしてきたのか…
この会見をずっと夢見てきたのに…答えは何も得られない
「とっつぁん、久しぶりだなぁ」いつの間にか目を覚ましたルパンが掠れた声を出す。
「ルパン、なんでこんなとこにいるんだ?」銭形は質問した。
「知らねえよ。気がついたらこんな身体になっちまってたんだ」ルパンは答えた
「俺が30年も・・ずっと追い続けてたのに」銭形の目には涙が浮かんでいた
「一つ、お願いを聞いてくれねえか」ルパンは今にも眠りそうな声を出す
「お前の頼みなんて…」言いかけて、銭形は嗚咽で続きが言えなかった
「まあそういわずに頼むよ、とっつぁん。」
ルパンは少し逡巡してから、言う。「俺を、殺してくれねえか」
銭形は自分が予期していた通りの答えがきたので、きつく目を閉じた。
「どうせほっといたってもうすぐ死んじまうんだ、頼むよ」
銭形は懐のピストルに触り、考える。これは自分が望んだ結果なのだろうか…
「頼むよ…」再度、ルパンは言う。
銭形の頬には涙が伝う。「ルパン、本当にいいのか」
「その必要はねえよ」ルパンはすぐに答えた。
「頼む」
銭形はルパンの頭を狙って引き金を引いた。部屋の空気が動く。
轟音。静まって、心電図が異常を告げる音。
銭形は立ち上がって部屋の窓から外を見た。外はまぶしい。
「待ってろよルパン。すぐに捕まえにいってやるぞ」
銭形はつぶやいて、ピストルに弾が残っているかを確認して、言った。
216 :
774RR:2007/04/25(水) 17:56:11 ID:AqX6UVar
ナンカキターヽ(´ー`)ノ
217 :
774RR:2007/04/25(水) 18:45:07 ID:3WYPWaqq
そして、いきなり大学のキャンパスに押し入り、33人を・・・
218 :
774RR:2007/04/25(水) 20:47:22 ID:nEHexYCO
とっつぁ〜ん・゚・(つД`)・゚・
219 :
774RR:2007/04/25(水) 22:38:05 ID:ORtNxgOZ
220 :
774RR:2007/04/26(木) 01:02:22 ID:2hva9Huh
221 :
774RR:2007/04/26(木) 12:45:28 ID:okQoGfzn
222 :
774RR:2007/04/26(木) 22:00:30 ID:Fc1An8HU
305 名前:民主党議員HPより[sage] 投稿日:2007/04/26(木) 00:04:40 ID:Fc1An8HU
9条改憲は日本の為にならない。
日本人ではない朝鮮総連や民団でさえ、日本を心配して改憲への反対運動を行ってくれている。
私は日本人だが、「改憲すべき」などという者は、日本人として彼らに恥ずかしいと思います。
Q.中国から身を守る為、戦争に対する抑止力が必要では?
A.前提から間違っています。そもそも、中国は日本に派兵しようと思えばいつでもできました。
なぜなら、日本には9条があるため、空母や長距離ミサイル等「他国を攻撃する手段」がない。
つまり日本に戦争を仕掛けても、本国の、命令をだした幹部の命は絶対に安全なのです。
「安心して戦争を仕掛けられる国」を、中国は、今まで攻めずにいてくれたのです。
Q.それは日米安保によるものでは? そして、その日米安保も絶対ではないのでは?
A.中国の良心を信じられないのはなぜですか? そして、日米安保は絶対です。
知り合いの韓国人の評論家も「絶対だ」と言っていますし、私も同じ考えです。
更に、9条が消えても米国の戦争に協力する義務は発生しませんが、米国が被害者の場合は別です。
米国は日本を守る為に戦っても、(9条があれば)日本は米国を守る為に戦う必要がないのです。
Q.9条が本当に「平和」憲法なら、世界中で(日本以外に)1国も持とうとしないのはなぜか?
A.これは、日本以外のすべての国が誤っているとも言えます。
「敵国に攻撃が届く国は攻められづらい」というのは、誤った負の考え方です。
(もっとも韓国や中国の軍に関しては、日本の右傾化阻止の為でもあるので例外ですが)
更に日本の場合、隣国が韓国・中国・ロシアと、GDP上位の安定した信頼できる国ばかりです。
Q.「9条改憲派」は「戦争反対派」。侵略者に戦争を挑発する、戦争憲法(9条)を撤廃したいのです。
A.それは、貧しい考え方ではないでしょうか?
中国や北朝鮮を信じる「強さ」があれば、そんな考えにはならないはずです。
日本が信じれば、彼らも信じるでしょう。そして、真に美しい関係が始まるのです。
223 :
774RR:2007/04/26(木) 23:41:30 ID:AJjCQgVg
お花畑もいいところだな
ACT.1 西へ
静岡から東名、名神、中国、山陽と高速をノンストップで走ってきたヒロシ。
休憩は大津SAで一回取っただけだ。彼とFのタフさを証明する。
ヒロシは山陽姫路東ICで高速道路に別れを告げ、一般道へと入った。
数km走らせると、彼が楽しみにしていた姫路城に着いた。
姫路城、別名・白鷺城は世界遺産にも登録されている、日本が誇る名城だ。
姫路城の美しさとFの美しさをヒロシは重ねた。
が、ヒロシの本当の目的地は此処ではない。ヒロシは更に西を目指す。
西に行くなら、姫路バイパスと国道2号線だろう。
が、敢えてヒロシはそれを避け、国道250号線に進路をとった。
網干の街中を抜けると、250号は海沿いの道へと変貌した。瀬戸内海だ。
ここから相生辺りは、七曲りという風光明媚なワインディングロードになる。
七曲りは播磨地区のタチの悪い走り屋共が出没することで、度々問題になっている。
幸い、ヒロシが訪れた時には、そういう輩は皆無だった。
Rのキツいコーナーが続く。減速の上手いヒロシはきっちりコーナーを片していく。
ファミリーカーも多いため飛ばせない。が、ヒロシはそれなりのペースにも
かかわらず、この七曲りを楽しんでいた。
相生から赤穂に入る高取峠を越えた。陽は傾き始めていた。
ヒロシはここで休憩を入れるつもりだったが中止し、一泊することにした。
無理して夜通し走る旅ではない…。急がなくてもいいのだから…。
ヒロシは播州赤穂駅近くのビジネスホテルにチェックインした。
──昔だったら赤穂の海浜公園でキャンプだろうな。ヒロシはニヤついた。
シャワーで汗を流し、さっぱりとした所で服を着替えた。
ヒロシは適当に赤穂市街を徒歩でぶらついてみることにした。
227 :
774RR:2007/04/27(金) 17:59:00 ID:QROsqJKQ
プハー!やっぱり一日の終わりのビールは最高だぜ〜!
ん?なんだまるこ?しけたツラしやがって…
ってなヒロシしか想像できない自分がいる…
ヒロシは赤穂城跡を見学した。…ヒロシはお城マニアなのだろうか?
帰路、ヒロシは上機嫌だった。友蔵への土産に塩味饅頭も買った。
ファミリーレストランで夕食を食べたヒロシは、ホテルに戻ると
すぐさまベッドに潜り込んだ。心地良い疲れからか、ヒロシが眠りの世界に
入っていくのは言うまでもなく早かった……。
翌朝、ヒロシは赤穂御崎を目指してFを走らせた。御崎の駐車場には
早朝にも関わらず、キャンプを終えたとおぼしき家族やツーリングチームが多数散見された。
空は1年に何度あるかというぐらいに晴れ渡っていた。澄み切った視界の向こうには
小さな島々が見え、更に右側に眼を移すと、周囲の島よりも一際大きな島が見えた。
──小豆島だ。
229 :
774RR:2007/04/27(金) 18:36:53 ID:sp2+IrQ+
久々キタ-------
…ヒロシは全身に瀬戸内海の潮風を感じた。波の音もそれに同調した。
名残惜しい気分もあったが、ヒロシは御崎を出発した。
再び250号を走ると、県境を知らせる看板が見えた。ここからは岡山県だ。
しばらく山間の町を走らされていたが、また250号は海に出た。日生港だ。
ヒロシも信号待ちの最中、ジェット越しにまた磯の匂いを感じた。
空腹を覚えた。そういえば、朝食を抜いた。ヒロシは朝昼を兼ねた
食事をする為、さびれた定食屋に入った。
定食屋は老夫婦が2人で切り盛りしていた。夜は居酒屋になるそうだ。
ヒロシはそこで、「カキオコ」なるものを店主に勧められた。
カキオコとは牡蠣を使ったお好み焼のことで、日生の名物らしい。
ヒロシは迷わずそれを注文した。
日生は漁業が盛んで、その中でも牡蠣が名産だ。冬がシーズンの牡蠣だが、
10月でもなかなかいける。(※作品の設定は10月半ば)
カキオコは非常に美味しかった。ヒロシは清水の皆にも食べさせたい、と強く思った。
ツーリング先で食べたものはマズくても、ウマく感じることがある。
後で取り寄せて食べてみてがっかり、ということもよくある。
が、このカキオコにはそれは無さそうだ。きっと後でも美味しいだろう。
後で分かったことだが、この定食屋は日生に数多くあるカキオコを出す店でも
屈指の味を誇る、老舗の店だった。
>>230以降は
「ACT.2 CB750F、備前入り」
です。m(_ _)m
233 :
774RR:2007/04/27(金) 20:09:45 ID:ndGwWX1D
>>227 確かにな。
キャラ設定が日本国民共通の認識を持たれて無いというか、オリジナルも
さほど緻密な設定がなされていないと言うか。。。
難しいキャラだとおもうが頑張れ。つC
満腹になったヒロシは、Fと共に再び250号に戻った。
10km前後走ったところで、伊部の交差点に。ここで2号線と合流した。
しばらく2号線を快走すると、一般車ゼロのオールクリア状態に。
ここでヒロシはペースアップ。100km/h近くでクルーズする。
2号線の脇道の市道に入っても、前走車はいない。道が狭く、ツイスティなので
80km/h前後に抑える。川沿いの道は景観も良い。山陽道の高架をくぐり、
道が山の裏側に入ると、ヒロシは背中に寒さを感じ、震えた。
今まで背を暖めていた太陽が、山に隠れてしまったのだ。
5km程走ると、閑谷学校に到着した。
閑谷学校は庶民の為に作られた学校では、日本で最初といわれている。
昭和初期まで、一部の校舎を使用して授業が行われていたというのだから驚きだ。
この日は、講堂や資料館で生徒達が熱心に課外授業に取り組んでいた。
九州の方から来たバスツアー客も大勢いた。まる子とさきこを連れてくることが出来たら…
と思うと、ヒロシの胸は熱くなった。
大池公園で用を足した後、ヒロシは北上し、美作方面にFを進めた。
236 :
倉敷市民:2007/04/27(金) 21:49:54 ID:p8eLAteF
つC
Σ(゚д゚lll)ガーン||||| 倉敷にはこないのか…
>>236 ネタばらしになってしまいますが、もうすぐ行きます。
続きは後日…
238 :
774RR:2007/04/27(金) 22:27:04 ID:Gdr5t3WG
ヒロシさんC!!
239 :
774RR:2007/04/27(金) 22:29:55 ID:J1a8BpSV
赤穂の人間っす。まさか、自分の地元が舞台になるとは思わなかった。
嬉しいです。岡山も近いからよく行くので楽しみにしてます。
つC
240 :
774RR:2007/04/28(土) 00:14:12 ID:pn4Li46h
京都いいとこ一度はおいでませ〜(´∀`)
241 :
774RR:2007/04/28(土) 02:06:54 ID:nmXyw3Fb
242 :
774RR:2007/04/28(土) 23:14:14 ID:1KefWqKe
ちょwwwヒロシ来てたwwwwwww
マスオさんとか花沢さんとかスゲエ好きなんだけど
第三京阪とか言われてもマタークわからんかった
でも七曲がりワカルwwwwww
つC
あと、こちらへ起こしの皆様は姫路城へは姫路南で下りた方が早いですよ
ヒロシはどっか寄り道する所があったのかな
243 :
774RR:2007/04/28(土) 23:58:03 ID:Q6WMHe31
いいねぇ。地元の岡山、兵庫が舞台だと情景が目に浮かぶよ。
つC
【SCENE114】
息を切らし辿り着いた鮒田食堂。もう開店していても良い時間だったが、まだ「準備中」の札が掛けられていた。
店の引き戸に手を伸ばした時、ほんの一週間ほど前にここで鈴木さんと食事をした記憶が蘇った。今日、骨になったばかりの
鈴木さんがここに居るような奇妙な錯覚に捉われ、そしてもちろん当然の事ながらこの引き戸の向こうに鈴木さんが
居ない事は解かっていても、その残酷な事実を改めて目の当たりにするのが怖くて、取っ手に掛けた右手が瞬間、躊躇した。
立て付けの悪い引き戸を開けると、やはりアナゴ君は居た・・・。
三つあるテーブル席の一番奥。僕らの指定席、そして一週間前に鈴木さんと晩飯を食べたそのテーブルに、アナゴ君は居た。
テーブルに顔をうずめ突っ伏しているアナゴ君の肩に鮒田食堂のお母さんが手を置いていた。カウンター席の向こう側、
厨房のオヤジは、僕の方に顔を向けるといつもの陽気な顔とは正反対の表情で何も言わずに頭を左右に振った。
「・・・探したよアナゴ君。・・・きっと、ここだと思ったんだ。」
僕はアナゴ君の傍らに歩み寄った。お母さんは目頭を押さえながら僕と入れ替わるように静かに厨房へ戻っていった。
傍らに立ったままの僕にアナゴ君はそのままの姿勢で言った。
「・・・なぁ、フグタ君・・・」
僕は黙って彼の次の言葉を待った。アナゴ君は、ゆっくりと吐き出すように言った。
「たった・・・四日前だぜ・・・。ここで鈴木さんと飯を食ったの・・・。君が来れなかった日さ・・・。」
「ここで地図を広げて北海道の話してさ。俺はラーメンと餃子で、そう・・・鈴木さんは生姜焼き定食だったなぁ・・・。鈴木さんさ、
それ美味そうだなぁって言って俺の餃子を一つかっぱらったんだ・・・」
「たった四日前だぜ・・・たった・・・。それが、今日はもう骨・・・に・・・。」
その語尾はほとんど声にならないほどの小さく消えていった。
「・・・アナゴ君・・・」
その重い呟きに耐え切れなかったのか、鮒田のオヤジは聞こえない振りをして仕込みの準備を始めた。キャベツを千切りに
するトントンという音が狭く静かな店内に響き渡る。
アナゴ君はゆっくりと頭を上げた。涙こそ流していなかったが、その目は真っ赤に充血していた。
「なぁ、フグタ君。鈴木さんと初めて会った北海道で鈴木さんが言ったこと、覚えてるか?」
「・・・どのことだい?」
「鈴木さん、どうして俺達はバイクじゃなきゃ駄目なんだろう・・・って言ってたんだ。どうしてこの乗り物に夢中に
なっちまうのか、って・・・」
「・・・」
「・・・どうかしてると思うよ、自分でも・・・。鈴木さんが死んでも・・・バイクから離れられないと思っている俺が居るんだ・・・。
・・・フグタ君はどうなんだ?君はこのまま降りられるか?」
僕は少し考えてから、首を横に振った・・・。
「鈴木さんだって、幼馴染の兄ちゃんが死んでも降りなかった・・・。いや、降りられなかったんだ・・・。どうしてだろうな・・・。
おかしいよな。どうして俺達はそうまでしてバイクに乗り続けるんだ?」
バイクの魅力を説明する為に語り尽くされたような言葉は数多いが、アナゴ君の問いに対しての適切な答えとしては
そのどれもが適当でないように思えた。
「・・・俺達にとって、バイクって何なんだろうな・・・。」
ガタタンガタタンと、電車がガードを通過する音が鳴り響いた。僕はその問いに答えられずただ立ち尽くすだけだった・・・。
唯一つ、解かっている事・・・。それは、僕はバイクから離れられないということ・・・。
鈴木さんを失ってもなお、我が身を魔の世界へ誘う鉄のマシンに対する欲望が消えていないと言う事・・・。
あぁ、そうか・・・。死神は200km/hで駆け抜けるコーナーの先に居るのではない。自らが跨ぎ、操るその二輪の
機械にこそ宿っているのかもしれない・・・。バイクは、僕達を何処に連れて行こうというのだろうか?
「バイクって何だろうな」
鈴木さん、そしてアナゴ君の問い掛けは、僕の心の中で無限地獄のように答えの無い漆黒のループとなってゆっくりと
駆け巡っていた・・・。
その後、鮒田のオヤジは無言で佇む僕達に食事の代わりにビールを勧め、食堂のテレビで巨人戦を流し始めた。
僕は、「こんな時に」と思ったのだが野球放送の実況と応援歌で騒がしくなった店内で、勧められるままアナゴ君はジョッキで
2杯ほど飲むとそのままテーブルで眠ってしまった。
決してアナゴ君にとっては多くない酒量だったが、鈴木さんの事故後ほとんど眠っておらず疲れていたのだろう・・・。
打席のクロマティをいつものおちゃらけた様子で応援している鮒田のオヤジさんも、このような時の人への接し方を
弁えており、さすがは年長者といったところだった・・・。
「アナゴの兄ちゃんは今晩はここで寝かせていきな」
オヤジと二人で僕はアナゴ君を厨房の奥の鮒田家の居間に運んだ。僕も泊まっていく事を勧められたが、駅裏の細い
路地の小さな自宅兼食堂である鮒田食堂に僕まで厄介になるわけには行かないと思い、アナゴ君を預けて僕は店を
出た。
酔いつぶれたアナゴ君に対して、酔えなかった僕はあても無く歩き始めた・・・。アパートには戻りたくなかった。
一人になると、鈴木さんの死の原因について自責の念に押し潰されそうで怖かった・・・。気がつくと僕は再び駅に来ていた。
午後九時前、僕はイナダモータースの前にいた。店のシャッターはまだ開いていた。奥の作業場に人の気配があった。
「・・・よう!フグタの兄ちゃんじゃねぇか。」
店に突然現れた喪服姿の僕に、流石のイナダのオヤジさんも少し面食らったようだった。しかし、オヤジさんもまた
鮒田のオヤジと同じように僕を慮ってくれ、どうしたんだ?とは聞いてこなかった。
「・・・で、しっかり見送ってきたかい?」
オヤジさんは目の前のGSの作業を続けながら聞いてきた。僕は無言で頷いた。
「悪かったなぁ、葬式に行かなくてよ。・・・でもよ、まぁいつもの事なんだ。許しとくれや・・・。」
オヤジさんは、箱からボルトを手の感触だけで選びながら言った。
「・・・この仕事やってるとよ、こういうこと・・・お客さんが事故で逝っちまうっていうのは一回や二回じゃねぇんだ・・・。
でもよ、俺ぁ一回もバイクで死んじまったお客さんの葬式に出たことは無ぇんだよ・・・。」
強面のオヤジさんが、こんなに寂しそうな顔をしているのは始めて見た。
「いや、出た事が無ぇってよりも出られないって方が正しいな。・・・とてもじゃねぇけどよ・・・嘆き悲しむ家族の前に、そのバイクを
売った者として顔を出せなくてな・・・。メカは自信を持って出してるつもりだがよ・・・、そういう理屈じゃなくてな・・・。」
車両に組みつけようとしたボルトが、珍しくオヤジさんの手からこぼれて床を転がった。
オヤジさんもまた、バイクに関わるものとして死んでいった人たちとその家族に対して、得体の知れない罪悪感に
押し潰されそうになっている一人に違いなかった。
しばらく僕は何も言わず、やはり無言のまま作業を続けるオヤジさんを見ていた。
そのうち、作業場の奥の扉の向こう側、バイク倉庫を僕は気にしだした。何故かそこから、嫌な気配が漂っているような
気がした・・・。僕は思わずオヤジさんに聞いていた。
「オヤジさん・・・そっちの倉庫には・・・」
「ん?・・・あぁ・・・いや、見ねぇほうがいい・・・」
「・・・あるんですね?」
「・・・。」
「・・・見せて下さい・・・お願いします・・・。じゃないと僕、まだ鈴木さんが生きているような気がしてしまって・・・」
「・・・バイクの形、してねぇぞ・・・」
オヤジさんは顎でしゃくって僕を倉庫へ促した。僕は恐る恐る扉へ近づき、そしてその向こうを見た。
暗くて良くわからなかった。しかし、たくさんの直立したバイクの中にひとつだけ床に寝転がるような塊があるのは解かった。
オヤジさんが壁のスイッチを押して灯りをつけてくれた。・・・そこに、鈴木さんの相棒の変わり果てた姿があった。
見るも無残なその残骸は、元があの美しいCB1100Rとはにわかに信じ難い姿と化していた。
フレームは曲がりあるいはちぎれ、フロントフォークは折れ、タンクは一枚の板のように潰れていた・・・。ホイールは
タイヤとともに曲がり、カウルはもはや数え切れないほどの破片に分断されていた・・・。
高速交通機動隊に追われた僕を救い、僕やアナゴ君と共に米兵達と戦い、北は北海道 南は鈴鹿サーキットまで各所を
僕達と共に走り、第三京浜を数々の羨望の眼差しを受け駆け抜けたホンダ最強の空冷CBは、僕の眼前で二度と
走る事の叶わない鉄とアルミとプラスチックの塊と化していた・・・。
マシンサイドの真っ赤な「R」の一文字だけが、かろうじて自らの以前の姿を寂しく主張しているようだった・・・。
僕は震えていた・・・。もはや戻る事の出来ない輝ける時の残骸の前に立ち尽くしていた・・・。そして悟った・・・。
鈴木さんは、本当に死んだのだ・・・と。
251 :
774RR:2007/04/29(日) 00:58:17 ID:EDCxUDnu
なんでこうもまたリアルなんだ…
今まで読んだどの小説よりも情景が目に浮かぶ…。
つC
252 :
774RR:2007/04/29(日) 00:59:08 ID:NIbPUbvW BE:1190582977-2BP(1333)
リアルタイムktkr!
つC
253 :
774RR:2007/04/29(日) 01:03:14 ID:STQgE4R/
ううっ…。怖くてGWはバイクに乗れん…。
つC
254 :
774RR:2007/04/29(日) 01:04:20 ID:C6mpZo/M
。・゚・(ノД`)つC
255 :
774RR:2007/04/29(日) 01:17:52 ID:octqZPfz
C
256 :
774RR:2007/04/29(日) 01:36:41 ID:BEthSXCn
CCCCCCCC
257 :
774RR:2007/04/29(日) 02:34:06 ID:XPkQUG/5
涙CCC
258 :
波平旅行記2:2007/04/29(日) 04:06:24 ID:0xRKEHQm
悲しすぎます、鈴木さんの死が
一人のバイク乗りとして、これほど悲しいとおもう反面
文章としてこれほど感銘を与える魔棲雄氏の表現力に感嘆とします。
同じバイク乗りとしてバイクでは死ねないと再認識させられました。
今後の魔棲雄氏の活躍を祈念いたします。
259 :
774RR:2007/04/29(日) 07:12:00 ID:p/Y2T7oC
つC
声を上げて泣いてしまった。入院中の病室なのにorz
260 :
774RR:2007/04/29(日) 09:43:52 ID:2tu9esMC
CC
まとめサイトの最初の方を読んでいたんだけど
ポカンとする僕を尻目に、鈴木さんはこう付け加えた。
「・・・死んじゃったら、なんにもならないからね・・・。」
焚き火を見つめながら、そう語る彼の目はどこか寂しげに見えた・・・。
「な〜んてな」
と鈴木さんはお茶を濁した。
のところで 。・゚・(ノД`)
261 :
774RR:2007/04/29(日) 18:50:59 ID:Dy511Jgz
おまいらタイコさんの実家見たですか?
262 :
774RR:2007/04/29(日) 20:40:01 ID:RuhwDahY
来週のサザエさん、サブちゃんメインの話がある。
楽しみだ。
263 :
774RR:2007/04/29(日) 21:38:22 ID:XPkQUG/5
ああ
・サブちゃんオナニー覗かれる
・花沢さんが貢いだホスト
・ナカジマ初めての万引き
の3本だったな
264 :
774RR:2007/04/29(日) 23:25:16 ID:PC52vczd
おい。
昨日佐賀県で自爆したグラストラッカ海苔を助けて
応急修理までして、お礼も受け取らず名前を聞いたら。
「マスオ」と「アナゴ」と答えたヤツ
ちょっと来い。
ありがとう。
ほんとにありがとう。
妹からの伝言は・・
ろくにお礼も言えず申し訳ありません。
あなた方に再度お会いできるまでバイクに乗り続けます。
・・です。
本当にありがとう。
流れぶった切ってスマン。
265 :
774RR:2007/04/30(月) 00:17:29 ID:iKtY0q40
めちゃくちゃカッコいいじゃねえか
マスオにアナゴ
なんかこう、このスレでコイツラとつながってる感じがすごい好きだ。
266 :
774RR:2007/04/30(月) 18:30:15 ID:mVjYG8iP
>>264 人違いならスマソだが、妹さん昔カレー屋でバイトしてた?
267 :
774RR:2007/04/30(月) 18:39:40 ID:vEITBGwa
漏れも今日碓井バイパスでニンジャ&カタナの二人連れ(2台連れ)を見た!
ピースしたら返事してくれたよ♪
268 :
774RR:2007/04/30(月) 20:01:19 ID:5XzEcdKe
>>266 俺は
>>264ではないが、この2ちゃんでそんな個人が特定されそうな返答が返ってくると
思うか?
269 :
774RR:2007/04/30(月) 20:11:29 ID:7NQQjYAh
カレー屋でバイトしてたか否かで個人が特定できたらスーパーハカーもビックリだな。
270 :
774RR:2007/04/30(月) 20:36:06 ID:4WlSBUs/
佐賀県、グラトラ、女、カレー屋バイト、昨日自爆
ここまで情報でたな
271 :
774RR:2007/04/30(月) 20:52:55 ID:5XzEcdKe
272 :
774RR:2007/04/30(月) 23:14:13 ID:E+ivCaRD
サブは過去に両親の反対を押し切り、レースマネージメント会社を経営する磯野波平のもと、
ヨーロッパのロードレース選手権に出走した経験がある。
しかし、とあるレースにてクラッシュ→骨折→スランプと散々な経験をする。
時同じくして、波平は「いい加減にせんかレーシング」を立ち上げる。
波平はサブを不要とし、サブはチーム左様から戦力外通告を受ける。
結局、帰国後に配達員として小さな酒屋に就職した。
GSX-R1100、ZX-11にも乗るが、一番似合うバイクといえば、やはりジャイロだ。
273 :
774RR:2007/05/01(火) 01:23:52 ID:wDNocwv+
魔棲雄さん、いつも心に響く物語をありがとうございます
個人的な意見ですが、僕はバイクで逝った親友が、もし今話す事が叶ったなら
多分僕がバイクから降りることを止めるような気がして今も乗り続けています
バイクに乗らなかったら今の自分は無い、それはこの先も同様だと思っています・・・
274 :
774RR:2007/05/01(火) 10:08:19 ID:FIEmM15D
>個人的な意見ですが、僕はバイクで逝った親友が、もし今話す事が叶ったなら
>多分僕がバイクから降りることを止めるような気がして今も乗り続けています
誰か翻訳頼む
275 :
774RR:2007/05/01(火) 10:21:06 ID:ml0EYxFq
>>274 日本語としては特に問題無く伝わったがな。
おたくの国の言語に翻訳してくれというなら悪いが俺には役不足だ。
ウリとニダしか知らんもんでな。
276 :
774RR:2007/05/01(火) 10:58:19 ID:DC9yKBmT
>>274 自分なりに解釈してみたよ
「もし、バイク事故で死んだ友人と話すことが出来たとしたら、彼は私がバイクに乗ること
を反対するどころか、バイク乗りであり続けることを望むのではないかと思う。故に私は今
もバイクに乗り続けている。」
というのはどうかな?
277 :
774RR:2007/05/01(火) 11:19:43 ID:FIEmM15D
>>276 有難うございます。
ぱっと読んだ人にも理解しやすく、きれいな表現ですね。
>>275 なるほどw
その書き込みで、おおよそ貴方の人柄を推測できました。
貴方とは一切コミュニケーションを取りたくないので
「ID:ml0EYxFq」をNG登録しますねw
278 :
774RR:2007/05/01(火) 13:34:20 ID:7ugNQxvK
. .: : : : : : : : :: :::: :: :: : :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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Λ_Λ . . . .: : : ::: : :: ::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::
/:彡ミ゛ヽ;)ー、 . . .: : : :::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::
/ :::/:: ヽ、ヽ、 ::i . .:: :.: ::: . :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
/ :::/;;: ヽ ヽ ::l . :. :. .:: : :: :: :::::::: : ::::::::::::::::::
 ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ ̄ ̄ ̄ ̄
279 :
774RR:2007/05/01(火) 14:38:48 ID:kVvMLVsa
280 :
774RR:2007/05/01(火) 14:39:26 ID:kVvMLVsa
281 :
774RR:2007/05/01(火) 14:43:53 ID:SmWY5J/z
はいはい下らないことで荒れない荒れない
まったりまったり
ACT.3 作州とCB750Fと風と
(※ちびまる子ちゃんは70年代後半ですが、この小説は00年代後半です。)
道を北に行くと、吉永という小さな町に出た。そこでヒロシはFを給油し、また北に上がった。
3km程走ると、道は八塔寺川に沿ったものとなった。しばらくハイペースで流していると、
1台のバイクに追いついた。…ZZR1400だ。荷物を満載している。ツーリング中か?
ヒロシは数km、そのZZRについて行った。ZZRは減速し駐車場に入った。
八塔寺川ダムに着いた。ZZRの彼の目的地はここなのだろうか。
彼はダムの隣にある公園に入っていった。ヒロシは彼を追わずに、ダムを少し見学してから
Fを再び始動させた。更に北に走っていくと、キツいヒルクライムが現れた。
180度ターンが続く。ヒロシは年甲斐もなく、思いっきりこの道路を攻め始めた…。
非常に見通しの悪いブラインドコーナーが多い。ヒロシは細心の注意を払いながら曲がる。
視界が開け、コーナーが緩くなってきた。頂上に近づいている。八塔寺ふるさと村に到着した。
吉永のガソリンスタンドからのトリップメーターは既に20kmを数えていた。
のどかな村の風景はヒロシを癒した。ヘルメットを脱ぎ、煙草に火をつける。
聞こえてくるのは風と鳥の鳴き声だけだ。
ヒロシはふるさと村を散策する。古寺や茅葺き屋根の民家がそのまま保存されていて、
趣深い。小川のせせらぎと水車の回る音が胸を打つ。
煙草を消し、里山の美味い空気を味わっていたヒロシ。山の向こうから何やら
レーシングサウンドが聞こえてきたのに気づいた。
…岡山国際サーキットか?ヒロシはFのエンジンに火を入れた。
先程来た道を引き返す。今度は下りだ。ヒロシは怒涛のスピードで
八塔寺山を下る。5分足らず走ると、岡山国際に着いた。
この日は地方選手権が行われているようだった。
ヒロシは大きく伸びをすると、西にFを進めた。
岡山らしい、ゆるい山道を流していくと、大きな川に出た。吉井川だ。
国道484号を快調なペースで走っていくと、喉が渇いてきた。
お好み焼のソースは、ヒロシが食べ慣れた甘ったるいものではなく、
広島系、即ちスパイスが効いた若干辛めのものだった。
ヒロシは菊ヶ峠のドライブインに入った。駐車場には観光バスが数十台
停まっており、店は賑わいを見せていた。ヒロシがグローブを脱いでいると
爆音のハーレー軍団が一斉にエンジンを始動させた。全て県外からの
ツーリングのようだった。
ヒロシはトイレに行き、その後缶ジュースを買って、ビッグスクーター達の盆栽を眺めた。
前述の通り、ヒロシのCB750Fは外装をスペンサーカラー化し、リアのサスをコニ製の
物に変えただけである。最近は、フェンダーレス化とバックステップ化が気になっている。
カスタム資金を捻出するのが、今のヒロシのお財布事情からは難しかった。
ACT.4 南へ駆ける…?
盆栽を眺めていると、ヒロシはタイヤをついつい見てしまう。
…笑いがこみあげた。だが、オーナーの青年達が戻ってきたので
ヒロシも笑いを我慢しながらFの所へ戻った。
ヒロシは菊ヶ峠を出発した。八塔寺を出て、既に30km強も走った。
今日一日の走行距離は100kmを越しただろうか?
少し走ると、ドイツの森の近くに来た。ここは岡山県の人間は皆知っている
有名な公園だ。ここに用事はないのでパスする。
ヒロシは岡山市街地方面に南下しているつもりでいた。
しかし、実際は西に進んでいた。ヒロシは途中で合流してきた
赤いテスタロッサを追いかけているうちに、道を誤ってしまったのだ。
「…やっぱフェラーリは速いなぁ。チキショー」
途中でテスタが消え、悪態をついていると、現実に引き戻されたヒロシは
驚愕した。…吉備高原都市?どこだ?ここは。
ヒロシは路肩にFを停め、地図を広げた。どうやら、加茂川という所に
来てしまったようだ。時刻は15時を少し回った。
吉備高原は岡山県のちょうど真ん中より、気持ち西にシフトした所にある。
ヒロシは国道429号で南下することにした。
時間にして20分、快適に巡航すると、岡山市の北西部・足守に入った。
そこから細い田舎道を走っていると、高松城跡が見えた。
秀吉は信長の命により、高松城攻めを任された。高松城は難攻不落の城であり、
戦いは持久戦となった。しばらくし、城を堰で囲むという作戦を開始した。
これが“高松城の水攻め”だ。堤防が完成すると、梅雨と相まって水が溢れ、城は水没した。
この後、城主・清水宗治の切腹、中国の大返しが起こる。
ヒロシは高松城跡を見学し、その後、最上稲荷で旅と交通の安全を祈願した。
287 :
774RR:2007/05/01(火) 21:36:53 ID:0KNR2tQ3
うわ
学生時代に何度も走ってる所だ
景色が目に浮かぶよ
288 :
774RR:2007/05/02(水) 00:33:36 ID:Uw51OYXF
普段その辺よく走ってるよ・・・
実は俺一番楽しみにしてたんですよ。>>ヒロシ
最近碌な事がないが楽しみが増えましたよ。
289 :
774RR:2007/05/02(水) 01:00:40 ID:hQDfQm54
つC
城好きな俺にはたまらないな。
290 :
774RR:2007/05/02(水) 01:06:24 ID:kLLEEaU5
>ヒロシは菊ヶ峠を出発した。八塔寺を出て
神奈川で言う椿ライン ターンパイクみたいな走り屋ルートみたいな物と理解していいかな?
291 :
774RR:2007/05/02(水) 03:16:10 ID:pIKiBw1A
292 :
774RR:2007/05/02(水) 03:20:34 ID:5Bhrvpv4
↑半グロ注意。
293 :
774RR:2007/05/02(水) 10:05:01 ID:6nT7PdFp
す、すずきさん…
294 :
774RR:2007/05/03(木) 20:15:03 ID:3Wc2nTA3
あげますよっと
295 :
774RR:2007/05/04(金) 05:16:20 ID:WeOVVd1r
どんなスピードで突っ込んだらこんな状態になるんだ。。。
296 :
774RR:2007/05/04(金) 08:06:30 ID:b4kQYBYX
こえーよ。
297 :
774RR:2007/05/05(土) 10:18:47 ID:YNFPdPgQ
hoshu
298 :
774RR:2007/05/05(土) 18:40:35 ID:Jw28wTuG
本日未明、首都高C1外回り
事故で亡くなったバイク乗りの冥福を祈る。
299 :
774RR:2007/05/05(土) 19:51:10 ID:6VCouAjN
なにもバイクで死ななくてもなぁ…
悲しいね
300 :
774RR:2007/05/05(土) 21:59:12 ID:mzi4RoQ+
301 :
774RR:2007/05/05(土) 23:55:20 ID:IlZVb8J8
つーか高速の路上で口論とか救いようがないだろ・・・
轢いた方に当然落ち度はあるが、同情する。
302 :
774RR:2007/05/06(日) 02:03:12 ID:TKcjxYvP
常磐道の一番右車線に車を停めてケンカしてた人たちも
撥ねられて死んだんだよね。こういうのって、撥ねた人が
かわいそうだと思ってしまう不謹慎な漏れ。
【SCENE115】
1985年、夏。・・・僕らは北海道へ行かなかった・・・。
バイクが人生の根幹となって数年。日本という小さな島国において、バイクという乗り物とその乗り手を最も羽ばたかせる
ことの出来る北の大陸への夏の巡礼。僕とアナゴ君が年に一度の一大イベントとして心躍らせ心待ちにしていた北海道
ツーリング。しかしその年の夏、僕らが北海道の土を踏む事は無かった・・・。
もう一人、僕達と共にその北海道行きを楽しみにしていた人が世を去った・・・。残された僕達に、予定通り北海道へ渡る
気力など残されてはいなかった。
何もしたくなかった。
鈴木さんの葬儀を終えて三日。僕は全くアパートの部屋から出ること無く、万年床に寝転がり過ごしていた・・・。
蒸し暑い。開け放ちっぱなしの窓から聞こえるセミの鳴き声が喧しい・・・。僕もまた、まるでセミの抜け殻のようにほとんど
動く事も無く、部屋の天井を眺めていた。
無精ひげがこんなに伸びたのは、バイクを知る以前以来であろうか・・・。北海道に行くはずであったから、アルバイトも
入れていない・・・。いや、バイトの予定があったところで、とても働きに行く気にもなっていなかったろう。
葬儀が終わったあとの鮒田食堂以来、アナゴ君には会っていなかった。鈴木さんの死の現場に居合わせた彼が、
僕以上の後悔と責念にかられている事など容易に想像できた。
僕はアナゴ君のことも心配だったが、会ったところで自分の心すらままならない僕に、彼の僕以上の苦しみを癒せる
自信など無かったし、もしかしたらバイク仲間である僕と会うこと自体が彼にとって辛い事なのでは・・・との思いが、
アナゴ君と会うことを僕に躊躇させていた・・・。
気だるい体を起こし、窓から駐輪場を眺める。アパートの駐輪場には、カバーが掛けられたままのGPZ900R Ninja・・・。
事故以来、もう10日ほどもエンジンに火を入れていない。購入以来これほどの間、Ninjaを動かしていないことは無かった。
事故が無ければ、今頃北海道の大地を走っていただろう。予定通りであれば、今日あたり宗谷岬に到着している頃だろうか。
真夏の暑い風に吹かれて、Ninjaに掛けられたバイクカバーがそよいでいた。僕は複雑な思いでそれを見つめた・・・。
Ninjaを眺めながら思う。バイクとは一体なんなのだろう・・・と。
バイクがもたらす掛け替えの無い至福・・・そして、その引き換えの如く存在する死のリスク。それはまさに悪魔との契約の
ようであり、鈴木さんが死んだ今、本当にバイクが悪魔の遣いのように思えた。
恐ろしい・・・本当に恐ろしい・・・。そう思うのはバイクが潜在的に持つ死のリスクだけではなかった・・・。
それは・・・先述した「何もしたくない」というのはある意味で真実ではなかったからだ・・・。
確かに、鈴木さんの死による喪失感は生活に関わるほとんどの行為に対して行動する気力を失わせていたのだが、ただ
唯一失われていない欲求があった・・・。
・・・バイクに乗りたい・・・。
大切な人が死んで、なお湧き上がるバイクへの欲求・・・。それが、この無機質な機械に潜む悪魔の存在を確信付けるようで、
僕は本当に怖かった・・・。
窓の外に夕闇が迫る。また、夜が来る・・・。
僕は鈴木さんが死んでからこの数日、夜に怯えて過ごしていた。夜の闇と静寂は、自らの意思に反して思考を研ぎ澄ます。
すると、思い浮かぶのは鈴木さんの事・・・。北海道で始めてあった時や、第三京浜を駆け抜ける背中。保土ヶ谷PAでの笑顔。
そして、棺の中で冷たくなった鈴木さん・・・。くしゃくしゃに潰れたCB1100R・・・。それらが代わる代わる脳裏に浮かぶ。
そうした鈴木さんの思い出は、いつもいつしか鈴木さんの死の原因へと傾き、そして自責の念が襲い掛かってくる・・・。
僕達の存在が、少なからず鈴木さんの死の遠因となったのは確かな事だ・・・。それは、厳然たる事実なのだ・・・。
・・・眠れない・・・。静寂が怖くて、ラジオをつける。だが、その音は僕の耳を素通りするばかり。
苦しい・・・。この数日の苦悩は、バイクを知る以前に部屋で一人悶々と得体の知れない思い込みによってもたらされていた
悩みなどとは比べようも無く重いものだった・・・。
鈴木さん・・・。どうして死んでしまったんですか・・・。どうして・・・。
「バイク乗りはバイクで死んではいけない」と教えてくれたのは鈴木さんじゃないですか・・・。なのに、どうして・・・。
この苦悩は、もはや自分ひとりの力ではどうにも出来なかった・・・。若かった僕は親しかった人の死、そして自分が関わって
しまった死について自分の中で処理できるほど強い心を持ち合わせていなかった。僕は心の奥底で何かに救いを求めていた・・・。
いや・・・。「何か」では無い・・・。
僕は、この苦しみを紛らせてくれる唯一の存在に気がついていた・・・。だが、気がつかない振りをしていただけなのだ・・・。
苦しみから逃れる為にそれに傾倒すること・・・。それこそ、まさに悪魔との契約のようで恐ろしかった・・・。
昼と同じように、気だるい体を起こし、窓を開ける。部屋からの光に照らされた駐輪場で、バイクカバーから僅かにはみ出した
Ninjaのサイレンサー。そこには『devil』のプレートが怪しい光を放っていた・・・。
308 :
774RR:2007/05/06(日) 14:29:03 ID:WcNPi/g8
つC
外出しないでよかった。
309 :
774RR:2007/05/06(日) 14:51:35 ID:jHhglXcE
保守がてら覗きにきたら、、、
リアルタイム記念牧子
310 :
774RR:2007/05/06(日) 15:57:31 ID:rZMe2ndO
うおお きたこれ
311 :
774RR:2007/05/06(日) 16:54:34 ID:NxaOQQ9r
魔棲雄氏乙です
昨日の事故と重なってすごく重くて考えさせられますね…
華氏待ってるぞ〜!!!
312 :
774RR:2007/05/06(日) 18:44:12 ID:L1tDDqlu
今夜のタイトル、
『サブちゃんの行方』
…いなくなったサブちゃんの行き先は、まさか…!
313 :
774RR:2007/05/06(日) 18:50:27 ID:D8IKX28I
サブのジャックナイフ炸裂!
やっぱりSABUはスゲーぜ!
314 :
774RR:2007/05/06(日) 20:15:05 ID:/YFa2eui
マスオ氏GW乙です
315 :
774RR:2007/05/06(日) 22:40:52 ID:5J0k8ScW
魔棲雄さんに感謝
316 :
774RR:2007/05/07(月) 16:36:26 ID:qJK8Zi3l
大乙ですっ!!111
社内保守
317 :
774RR:2007/05/07(月) 20:18:22 ID:vDDJsOJf
まさに悪魔
つC
318 :
774RR:2007/05/08(火) 00:35:05 ID:P/LajGju
319 :
774RR:2007/05/08(火) 01:24:01 ID:+VjjiOXj
グロ注意
どこがどう潰れてるかよく分からん・・・
320 :
774RR:2007/05/08(火) 02:49:03 ID:A1dvjGew
パソコンから見れねーじゃん バカか
321 :
774RR:2007/05/09(水) 00:13:32 ID:+7ptmXDw
ageついでに。
まとめ読み返してたんだが、インディアンのオヤジが鈴木さんに渡したバンダナに
託したメッセージって「good luck」だったんだな・・・。
なんか切なくなった。
322 :
774RR:2007/05/09(水) 02:25:38 ID:It0EP/LZ
323 :
774RR:2007/05/09(水) 12:44:16 ID:ljnVuL+E
もうフォルダ名からしてグロいじゃねぇか
324 :
774RR:2007/05/09(水) 17:35:32 ID:nzjfuSTo
無関係のスレに平気でグロ貼る奴の気が知れない。
疾病により、執筆をちょっとお休みさせていただきます。
順調に回復しておりますし、大した病気ではないので心配しないで下さい。
来週、再来週中の復帰を目指します。早く続きができるよう頑張ります。
ご迷惑をおかけしますが、今後とも宜しくお願いします。
326 :
774RR:2007/05/09(水) 18:59:43 ID:x7tPtpr+
327 :
774RR:2007/05/09(水) 19:08:16 ID:LhgAiWv9
焦らずに治癒に専念してくだせぇ
ワシら待ってる側はスレの保守して気長に待ってます
328 :
774RR:2007/05/10(木) 11:58:35 ID:asq1IUjB
書
329 :
774RR:2007/05/10(木) 12:26:52 ID:fydu2gEj
タラヲまだかよ
330 :
774RR:2007/05/10(木) 23:38:14 ID:J5kDZaB2
バブー
331 :
波平旅行記2:2007/05/11(金) 00:17:23 ID:vO+o5E4U
黒いメタリックのジェットヘルを二つ借り、タンデムシートにフネを乗せ、ボイルの先導で走り出す。
ずいぶんと久しぶりの感覚に少なからず恐怖心を覚えたが、ボイルは気を使ってくれたのか右車線の右端をまずはゆっくりと走り始めた。
しかしながら、ロスの車は速い。
すぐ左側をものすごい速度差でフォードやGMの大きな車が駆け抜けてゆく。
しかし、こちらのハーレーも安心感のある鼓動を刻み少しもビクリともしない。
恐れることなく路面をけるハーレーは、やはりアメリカの大地においてこそ、その本領を発揮するようだ。
暑いロスの日差しは力強く波平の乗ったハーレーをキラキラと輝かせている。
しかし、幾ばくかの問題もある。
スラックスにジャケットといういでたちだ。
観光客としてなら申し分ないが、バイクに乗るにはいささか不向きだ。
どうも胸元は風を受けて冷え込むようだし、バタバタとまとわりつくスラックスも気になる。
そんなことを考えながらボイルの後を付いてゆくと、大通りから路地を抜け昨日訪れたコリアンタウンの方へ出た。
332 :
波平旅行記2:2007/05/11(金) 00:17:58 ID:vO+o5E4U
一軒の町外れの小さな店の前にバイクを寄せると、ボイルは降りるように促して、店内に入っていく。
胡散臭いエスニック調の暖簾の奥にモヤモヤと香が炊かれたような煙が立ち込めている。
その奥には髭モジャの白髪の年寄りが、髪を編み真っ赤なバンダナを巻き、くすんだシルバーのアクセサリーをジャラジャラさせて椅子に座ってパイプをふかしていた。
なるほど、アメリカでは皆自分が好きな格好をしているのだなと納得させられる。
暗さに目が慣れると店内には所狭しと革製品やデニム素材の衣類が積み上げられていた。
商売っ気のないと言ってしまえはそれまでのような、怪しい店だがボイル曰くココなら物凄く安くいい品物が手に入るのだそうだ。
ボイルとシャルルにそれぞれ見立ててもらって、フネと揃いで一式のコーディネートをしてもらった。
レザーのパンツにデニムのジャケットど派手なデザインのシャツに濃いブラウンのレザーベスト。
フネにはデニムのスリムパンツに白の厚手のブラウス、お揃いのブラウンのレザーベストにカントリー調の大判スカーフを合わせた。
なんだかいかにもって感じないでたちの出来上がりだ。
しかし、ハーレーで高揚した気分にはこのくらいがちょうどいいのかもしれない。
少し恥ずかしいが、何だかフネと二人何十年もタイムスリップしたかのような気分だ。
ボイル夫妻が今なお若々しくハーレーに乗り続けれるのも、こういう魔力があるからだろうか。
333 :
波平旅行記2:2007/05/11(金) 00:18:29 ID:vO+o5E4U
最早言葉は要らない。
顔を合わせてにやりと笑うと颯爽とハーレーに跨り走り出す。
車の流れにも驚かない。
70マイル以上で快調に走り、フリーウェイで一路東を目指す。
目指すはルート66。
北東へ貫くこの道が我々の旅路だ。
だんだんと町から離れ土の色が濃くなる。
焼けた大地に乾いた風が踊り、荒れた路面から跳ね返る振動も祝福しているようだ。
「ようこそアメリカへ」「まぁ、楽しんでいけよ」
もしかしたら開拓者たちもこの空気を求めて新たなる地を目指したのかもしれない。
20代に戻った心は浮き上がり、背中にしがみつくフネを感じながら、太陽を背中に背負い走っている。
無性に腹の底からわきあがってくる衝動、まさに叫びたくなるような、
もしかしたら本当に叫んでいたかもしれない。
「最高だ!」
334 :
波平旅行記2:2007/05/11(金) 00:21:55 ID:vO+o5E4U
連載遅くてごめんなさい。
就職活動は順調に黒星を集めております。
一応、すし屋でアルバイトを始めたので出前の合間に旅行記をひねったりしておりますが
なにぶん急がしいくなってきたのであしからずご了承ください。
335 :
774RR:2007/05/11(金) 01:14:53 ID:kOhOX5sS
波来た−−−!
336 :
774RR:2007/05/11(金) 02:18:30 ID:OvVaQ9kd
つC
車種なんだろ?
俺脳内で波はV−ROD。まぁ個人的に欲しいだけだがw
レッドパパはソフテイル系チョッパー。
337 :
774RR:2007/05/11(金) 20:38:06 ID:GXa58IDY
空冷では無く水冷Vツインを搭載したV-RODは、ハレ海苔からはハレと認められないという。
338 :
774RR:2007/05/11(金) 21:33:49 ID:OvVaQ9kd
>>337 いやー、でもいい加減そんなこと言ってられる時代じゃないっしょ。
339 :
774RR:2007/05/11(金) 22:01:07 ID:0okGs8DC
V-RODやナイトロッドはハレの中ではかなり格好いい方と思ったが、
よく考えたらそれより安い値段でブルバードM109Rとか買えるんだよな。
ファットボーイはいいな うん。
340 :
774RR:2007/05/12(土) 01:26:23 ID:+xLh7psO
341 :
774RR:2007/05/12(土) 09:14:55 ID:e/EidXMW
>>339 ファットマン リトルボーイはいいな うん。
342 :
774RR:2007/05/12(土) 10:47:57 ID:ra7HYWuo
343 :
774RR:2007/05/12(土) 10:51:11 ID:JalaZuVE
うん、不謹慎だ。
日本人として恥ずかしいね。
344 :
774RR:2007/05/12(土) 13:25:52 ID:qadq4USc
本人はブラックだと思ってるんだろうけど
全然面白くないね。
345 :
774RR:2007/05/12(土) 13:57:24 ID:hCGw107s
346 :
774RR:2007/05/12(土) 14:49:12 ID:OtYm55j8
そもそもファットボーイっつ名前自体が、ファットマン+リトルボーイだろ
347 :
774RR:2007/05/12(土) 17:12:42 ID:2AtzkiEL
もう意味わかんね
348 :
774RR:2007/05/12(土) 20:16:52 ID:lqZAxWA+
F…FORZA
A…AR125
T…TDM900
B…BMW Motorrad
O…Oo400,OmaewaKAZEda
Y…YZF-R1
349 :
774RR:2007/05/12(土) 20:25:28 ID:JalaZuVE
あれだろ、ファットボーイは車体色はB−29をモチーフにして、名前は日本に投下した
二発の原爆から引用したっつー話だろ。
ホントなのかねー?ハレーにとっちゃ最大の輸出国相手に、そんな意味の無い皮肉を
込めてもなんの得も無いと思うんだが。
350 :
774RR:2007/05/12(土) 23:09:01 ID:DcO2h4AG
>>348 BとOがおしい
F…FZR1000
A…AX-1
T…TZR250R
B…BW's
O…OW01
Y…YZF-R1
ヤーマハーマンセー
351 :
774RR:2007/05/12(土) 23:50:32 ID:OtYm55j8
>>349 今でこそソコソコのネームバリューだが一時は日本車のせいで倒産寸前まで行った時期があるし
日本車の輸入規制を政府に働きかけてた時期もある
そんな時代に企画されたバイク>ファットボーイ
まあ、アメリカ人にしたら隼とかのネーミングとさほど変わらん意識かもしれんが
352 :
774RR:2007/05/12(土) 23:54:35 ID:qadq4USc
直訳するとデブ少年
そこらへんのネーミングセンスはもう・・・ねぇw
プリミティブでカッコイイって言うのとはちょっと違うよなぁ。
353 :
774RR:2007/05/13(日) 01:07:50 ID:3dUHCfOt
354 :
774RR:2007/05/13(日) 18:55:13 ID:ZUUDMKvD
355 :
774RR:2007/05/13(日) 19:10:48 ID:fD+ezBXk
マスオに肩車されたタラオの「パパ〜もっと速く走ってくださーい!」というセリフに
魔棲雄の姿を思い起こしたのはオレだけか?
で、来週は「マスオ通勤バトル」だっけ?
本国サイトを和訳してみると
ファットボーイ=脂肪男の子(子供)となる。
チョットわろた午後の一時、皆様如何お過ごしですか?
357 :
774RR:2007/05/14(月) 20:04:26 ID:nk6Q99uB
>>356 >ファットボーイ=脂肪男の子(子供)
そのまんまじゃねーかww
358 :
774RR:2007/05/14(月) 23:56:46 ID:Lw8sih2u
さすが3人中2人がデブの国
【SCENE116】
僕は生来、卑怯で弱い人間だった・・・。
東京への進学を、嫌いな郷里から逃れる為の方便に使い、女手一つの母を煩わせてまで上京する打算的な性分を
持ち合わせていた・・・。
昔から・・・子供の頃からそうだった。ガキ大将肌の兄貴を嫌いながら、時に応じては彼の威を借りる卑怯者だった・・・。
皆さんもご存知だろう・・・。何度と無くその機会に恵まれながら、傷つく事を恐れ、タイコさんにその気持ちを伝える
ことが出来ない臆病な人間だった・・・。
人当たりよく、温厚に思われることの多い僕の真ん中には、他人を畏れ、なおかつ自らを嫌悪し自信を持てずにいるが故の
当たり障り無く済ませようとする性根があった・・・、いや、今もまだあるに違いない。
そんな僕が二十歳のときに巡り合ったバイク・・・。バイクが僕を変えてくれたと思っていた。僕はバイクに乗る事で、
陰鬱な過去と決別できたのだと信じていた・・・。
だが、自らの人生における大切な人を失ったとき、その根拠の無い自信は幻想だと知った・・・。
あれほどまでに強く変われたと信じていた自らの心が、鈴木さんの死によって一歩も前に進めなくなった事を自覚した時、
バイクに乗る事によってもたらされたと強くなったと信じていた自分の姿が、張りぼての様に中身も頑強さも伴わない
単なる骸であることを知った・・・。
そして、だからこそ逆説的にではあるが、気がついたのだ・・・。自分はバイクによって強くなったのではないと・・・。
・・・バイクに乗っているその刹那の時、ギリギリに人並みの正常な心を保ってられるのだという、哀しい真実に・・・。
しかしながら、バイクをはけ口にして辛い事から背を向けてはいけないという言い訳じみた理屈を盾に、その事実を
認めたがらないひどく頑固な自分も居た。
自分一人では困難をなんら解決できないくせに、一丁前に自らの心に悪意地を張る性癖もまた、僕の小人間振りを
説明するに適当な事由である。そう、僕は卑怯で弱いくせに、それすらも認めたがらない性根の小さな、そしてややこしい
人間だったのだ・・・。
・・・だから、僕はアナゴ君に憧れた。友であり、対等の立場と目線にいながらも、そのシンプルで豪快な性格に憧れた。
鈴木さんが死んだ時、あるいは余程アナゴ君の方が救いを求める立場にあったに違いない。それは、鈴木さんが絶命した
一部始終をその目で見てしまった事に加え、事故の当日という最も事故のタイミングに多大なる影響を与えたであろう時間を
鈴木さんと共に行動した事が、アナゴ君の後悔の念を僕の数倍にも増幅させているであろうことは、容易に想像できた
からだ・・・。
だからその日、アナゴ君が僕の部屋に来た時は本当に驚いた。そして、全てに納得できなかったとしても、その時の
僕達に残されたただ唯一の、苦悩から魂を救う方法で行動を起こすべきだったのは僕の方がよほど適切だったと思うと、
恥かしくもある・・・。やはり、僕は弱い人間だ・・・。
鈴木さんの葬儀からちょうど一週間が過ぎたその夕方・・・。
僕はバイクこそがこの自責と後悔を紛らせ、刹那とはいえ救ってくれると心のどこかで解かってはいながらも、やはり万年床に
仰向けになって動きあぐねていた。
窓の外では、昼のセミに変わって夏の夜虫の鳴き声が聞こえていた。蒸し暑い夕方だった・・・。
通りを走る学生の自転車の音、遠くに聞こえるクルマのクラクション、高架を走り抜ける電車と踏み切りの音・・・。そんな
日常の、耳にも止まらない生活音の中から、聞き覚えのある音が少しずつ大きくなってくるのが聞こえた。
その音はその他の音を飲みこみ、どんどん大きくなってくる。・・・バイクの排気音だった・・・。
僕はぼうっとその音を聞いていた・・・。
近づいてくるなぁ・・・。四気筒だ・・・。改造マフラーだな・・・。カタナの音に似ているな・・・。あ、停まった・・・。
僕は、この数日間の煩悶で疲れた頭でそのバイクの排気音の接近と停止を他人事のように聞いていた。そして、ふと我に
返った。
停まった!?アナゴ君か?
僕が反射的に万年床に飛び起きたと同時に、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
僕は慌ててドアに駆け寄り、そして思いっきり開けた。・・・そこには、僕の親友の顔があった・・・。
「・・・よう・・・」
僕は少し痩せたであろうアナゴ君の顔をポカンと口を開け数秒眺めると、続いてその服装に目をやった。
革ジャン、革パン、そしてブーツ・・・。小脇にはヘルメットが抱えられていた・・・。
驚きで声も出ない僕を尻目に、まるで人相が変わってしまったかのように疲れ果てた顔で、自嘲気味の笑顔をたたえて
アナゴ君は言った。
「・・・まぁ・・・そういうことさ・・・。なぁ、出ないか?」
・・・僕らがそれまでと全く異なる気持ちで、再びバイクに乗る時が来ていた・・・。
363 :
774RR:2007/05/15(火) 02:53:38 ID:CqXu1NiZ
つC
いつも楽しみにしています。
364 :
774RR:2007/05/15(火) 03:22:17 ID:rg7LaMhY
ゾクゾクしたすげーよ作者様
つC
365 :
774RR:2007/05/15(火) 07:03:47 ID:Hz0GI8tG
やべぇ!!
魔棲雄さんつCCCC
366 :
774RR:2007/05/15(火) 07:04:09 ID:LIGAUUtt
C
367 :
774RR:2007/05/15(火) 09:54:55 ID:hueSoJ/b
つC
ほんとに良作!
感動を覚える
368 :
774RR:2007/05/15(火) 11:09:07 ID:UsZnLWbT
作者さん乙!
一旦保守しておきます。
369 :
スペクター龍一 ◆k9Tn5.k4rg :2007/05/15(火) 12:37:50 ID:Jp/BFj7t
荒らしの俺でも大事にしたいスレだな。
感動した
370 :
774RR:2007/05/15(火) 12:46:38 ID:6v8br6jk
荒らしの心までも動かすとは
読み返してちょっと推敲。
>>359の空欄込み18〜20行目を・・・
>あれほどまでに強く変われたと信じていた自らの心は、鈴木さんの死によって一歩も前に進めなくなった事を自覚した時、
>張りぼての様に中身も頑強さも伴わない単なる骸であることを知った・・・。
・・・に差し替え願います。
大掛かりに推敲を入れた際に取りこぼしてしまいました。申し訳ありませんm(_ _)m
372 :
sage:2007/05/16(水) 00:38:27 ID:wotSEi7Q
つC
>>369 |д゚)Σ ぐを。龍タンを久しぶりに見つけた。
どっか荒らしてたんですかよ?
>>373 まぁ、あまり雑談してるとウザがられるからアレだが
そろそろ暴走りの季節になってきたから出てきただけだ。
アナゴ、漢だな…
375 :
774RR:2007/05/16(水) 23:59:07 ID:pIvpKizA
保守
お世話になっております。
・・・最近、少々遅筆のわけですが・・・。とにかく人間の心を描き出すのは難しい・・・ということに
尽きます・・・。そして、陰鬱になるw
オーソドックスなところでは漱石や芥川など、明治期の文豪は人間の深層心理を表現することに
特に腐心していたように個人的には思います。あの頃の文豪には自殺が多かったのもなんとなく
解かる気がして・・・。(もちろん、我が遅文を彼らに並び評す気など毛頭ありませんがw)
ちょっとブルーになりがちな気持ちのリフレッシュの為、これまで登場したキャラの中でも
明るいイメージの人物で外伝を書いてみました。
前後編仕立ての本日は前編です。お目汚し、失礼をば m(_ _)m
【マスオ物語外伝 〜タイコの告白〜】
私、箱入り娘だったんです。
フフ、自分で言うのも可笑しいですね。でも親の立場になった今思い返しても、やはり過保護な両親でした。
一人娘でしたので、大事に大事にされてきました。人はその成長に応じて、一人で出来る事の範囲が
広がってゆくものですが、それが私の場合は明らかに同年代の子より遅れていました。それは、本来私が
すべき事を、親がいつのまにか済ませてしまうことに少なからず原因があったように思います。
とにかく、私は手を汚さずに育ちました。そしてその弊害に自らも気がつかないほど、私の周囲は両親の
築いた強固な防壁で覆われていたんです。
でも、そんな少なくとも両親にとっては善意の情報操作をもってしても、遂に私は私自信が著しく世間に
疎いということを高校生になったあたりから気がつき始めていました。難しく言うと、自我というものでしょうか。
もちろん両親のことは大好きでしたが、その両親への愛情を幼少の頃と少しも変わらず胸に抱いたまま、
それでも人より遅れて芽生えた反骨精神もまた、私の心の中で控えめに、しかし確実に育っていきました。
だから大学で自転車部に入ったのは、自分自信の精神的成長をのぞむ気持ち半分、両親に対する
つまらない意地が半分だったんでしょうね。
でも、若い時分でしたから、その時は後者の気持ちには自分自身でも気がついていなかったような気が
します。とにかく、日々が新鮮で精神的成長という目的に対する手ごたえを感じていました。
私の大学の自転車部は、部の中で異なる方向性を持った二つのグループに暗に分かれていました。
ひとつは、競技性の強いスポーツ指向のグループ。もうひとつは、サイクリングなどのレジャー性を
重視するグループ。そのふたつのグループが、とくに敬遠するでもなく自然に混在していました。もちろん
私は後者のグループです。
そんなふたつのグループを持った自転車部でしたが、年に一度、グループの境無く皆が楽しみにしている
恒例のイベントがありました。夏の北海道への自転車旅行です。
これは、入部してから知ったイベントでした。実はもう、不安で不安で仕方が無かったんです。だって、
北海道ですよ?地図で見たってとっても東京から遠いですよね。なんたって一番上のほうなんですから。
親元から離れて暮らした経験と言えば修学旅行程度だった私は、とっても心配でした。そしてとっても困り
果てました。春に入部してからそれまでに部で走った一番遠い所といえば湘南程度だった私は、いきなり
そんな遠いところに文字通り本当に自分の力で漕ぎ走らなければいけないという未経験の一大事の前に
すっかり心配だけで胸がいっぱいになってしまいました。
それでも、そもそも部に入った理由というのが他に頼りがちな自分自身の改革を望んでのことだったわけ
ですから、北海道は遠いし、大変そうだし、不安だから・・・という理由で参加をボイコットする事はひどく
自己矛盾しているように思われました。だから、もう本当に、私としてはそれまでの19年ほどの人生の中で
使ったことがないほどの勇気と決断力を振り絞って、参加を決断したわけです。・・・でも、7月に入るころには、
やっぱり心配で心配で、それが募ってお腹を痛くしたこともありましたけど(笑)
遠いと思われた北海道ですが、東京からの距離はさほど問題ではありませんでした。なぜなら、東京発の
フェリーで苫小牧まで一気に移動したからです。先輩や友人との楽しい船旅でしたので、それまでの心配は
すっかり取り越し苦労だと思っていたくらいです。
・・・ところがです。私の想像を大きく超えていたものがあったんです。それは、北海道の広さでした。私は
その北海道の広さに、すっかり翻弄される羽目に陥ってしまったわけです。
東京生まれの東京育ちの私にとって、その広さは全く想像の域をはみ出していました。それまでの、頼りない
私にさえ、若さに任せれば東京23区の中でも埼玉寄りの北区あたりから上野、神田、新橋、品川・・・と抜けて、
神奈川あたりまで・・・要は東京を縦断するなんてことは半日程度もあれば可能な事でした。そして、「都道府県」
の広さに対する私の認識はそんな程度のものだったんです。笑わないで下さい。箱入り娘だったんですから。
先に申し上げた「心配」の原因だって、「東京から遠い」という多少的外れな理由だったんです.
とにかく、北海道は広かったです。部には様々なペースの人間が所属してました。とにかく速さを追い求める
屈強な男性から、ある意味では私以上の世間知らずのお嬢様まで、それはもう異種混合チームのようでした
ので、おのずから走行ペースだって様々です。私は毎日、いつだってビリでした。その日の宿泊場所である
キャンプ場に着いた時、もうほとんど夕食の準備が出来ていると言う事は珍しくありませんでいた。それでも、
最初の数日は少しだけ悔しくって意地を張ってペダルを漕いでたんです。それでも、すぐにそんなふうに
走るのはすぐに止めにしました。
なぜなら、北海道の想像以上の広大さには少なからず辟易させられてはいましたが、それ以上に北の大地の
山々や草原や澄んだ海と空の雄大な景色、それに頬をなでる風の心地よさにあてられて、マイペースでも
ただ走っている事が気持ちよく思えてきたからです。それに気がついてから、私は私とペースのあう友人と、
ゆっくりでもとにかく完走して東京に帰ろうと思って走り続けました。
その日は、屈斜路湖畔のキャンプ場を出発して、釧路に向かうルートでした。
足に自信のある部員は、その途中で迂回して摩周湖に立ち寄るルートを選択していました。なぜ「足に
自信のある」という条件がつくのかというと、摩周湖を臨む展望台に辿り着くためには、急な峠道を登らなくては
いけなかったからです。
私は摩周湖を見るのを始めから諦めていました。だってそうでしょう。毎日、一番遅れてキャンプ場につく私は、
少なからず皆に迷惑を掛けているように思っていましたから。皆、迷惑だというような顔はしていません
でしたし、おそらくは心根もその通りだったのだと信じていますが、それでも例えば夕食の準備をすべき
新入部員の私が、毎日のようにそれを結果的に人任せにしてしまっていましたし、そんな事もあって自分の
内の問題として摩周湖に寄り道をすることが良しと思えなかったんです。
ただ、やはりとても心残りでした。なぜなら、摩周湖は大学に入り自転車部に所属する遥か以前より、私の
憧れの場所でしたから。
写真やテレビで見る、おおよそ日本とは思えない神秘的で美しいその湖を、私は昔から見てみたいと思って
おりました。だから、摩周岳の西麗を素通りする時、私はとても悔しく、そしてとても悲しく、自転車を進ませ
ながらも涙が出そうになりました・・・。
・・・いえ、結果的にこの旅で思いがけない事から摩周湖を見る夢は叶ったんです。それは、本当に偶然が
偶然を重ねた上で奇跡的に叶った夢だったんです・・・。それは、この旅行での・・・いえ、それまでの私の人生の
中で、最も思い出深い出来事でした・・・。
前置きがすっかり長くなってしまいましたが、これから書き記す事が、無理だと諦めていた摩周湖を見る事が
出来た顛末と、それ以上に心に残るあの人との束の間の出会いのお話です・・・。
その日も例の如く、同じペースで走る事の出来る友人と、マイペースで釧路へ向かっていました。友人は、
前の晩にキャンプ場の公衆電話から実家に電話を入れた際、同居するおばあちゃんの具合が少し悪いとの
連絡をうけていました。おばあちゃん子の友人は、その日の朝からいてもたってもいられないという様子でした
が、弟子屈の町を抜ける際に心配が高じたのか、再び実家に連絡を取りたいと公衆電話に止まりました。
同走する私のペースが乱れるのを悪いと思ったのでしょう。すぐに追いつくからと、彼女は私に先に進むように
言いました。私も無下に断わる理由も無く、それどころか、私がいるとゆっくり話をすることが出来ないだろうと
思い、友人はすぐに追いついて来てくれると勝手に予想し、一人釧路に向けて走り出したのです。
・・・道を間違ったのは、それからすぐのことでした・・・。
私はすっかり釧路に向かっていると疑いもせず、ペダルを漕いでいました。そのうちに、少しの不安が湧き
起こりましたが、それは一向に追いついてこない友人に対してであって、道を間違えたことには少しも思い及び
ませんでした。その時、私は弟子屈から北にある釧路市に向かっているつもりで、実はひたすらに東の標津町の
ほうに向かって進んでいたんです。どれほどの方向音痴だとお思いでしょう。
・・・笑わないで下さい。箱入り娘だったんですから・・・。
確かにおかしい、と思ったのは友人と別れてから一時間も経った頃でしょうか。いえ、ここに至っても、私に
追いついてこない友人の事を「おかしい」と思ったんです。そして、不意に道端に止まろうとした時です。自転車の
後輪にフニャフニャという嫌な感じを覚えたんです。
自転車経験の少ない私でも、「あっ!パンクだ!」と直感しました。自転車を降りて、後輪に何が刺さっている
のかという事を確認している少しの間に、空気はすっかり抜けてしまいました。
さぁ困ったぞ、と私は腕組みをしてしまいました。仮にも自転車部でしたので、パンク修理はもちろん教わって
おりましたが、いざ一人で作業を行うとなると、まったく自信なんてありませんでした。
生まれ付き、楽観的なきらいのある私は、友人を待つきっかけが出来たなどと当初は甘く考えていました。
友人が追いついたら、一緒にこの苦難を乗り越えようなどとも考えていました。そんな風に、自分を納得させて
すぐに作業に取り掛からないほど、私はパンク修理にまるで自信がなかったんです。
パンクした当初、私がどれほど呑気に構えていたのかといえば、道端に座り込んで空がきれいだなぁとか、遠くの
牧草地に見える馬の親子が可愛いなぁなんて考えていたり、お父さんから借りたライカというカメラで周囲の
風景を撮っていたりしたことからもわかると思います。
そうして30分もした頃、もちろん一向に追いついてこない友人と、身動きの取れなくなった自分の状況に対して
初めてリアリティを伴った不安が湧き起こってきました。
さっきまで、心地よさの一要素だったはずの静寂が急に怖くなってきました。車もほとんど通りません。
私は、その恐怖心に近い状態まで膨らんできた不安感に打ち勝とうとしたのか、無意識のうちに諦めていた
パンク修理に取り掛かっていました。
荷物の中からパンク修理セットを出して、自転車を横にしました。タイヤレバーをタイヤとホイールの間に
差し込もうとしましたが、慣れない女手でなかなか上手くいくはずもありません。あまり無理な作業を行うと余計に
チューブを傷めてしまうということは知ってましたが、その適度な力具合が解からず、作業は一向に進みません
でした。
そのうち、空が夕暮れを帯びてきました。夜が来る・・・。私の心臓はこれまでに無いほど速く拍動しました。
どうしよう、どうしようと焦る気持ちは、慣れない作業をなおの事不確実にしました。
私は本当に狼狽していました。美しいと思っていた北海道の広大な原野が、そのまま私の命の脅威となって
いるような心持ちでした。
・・・その時、私は半ベソをかいていたと思います。そして、あの人の到着があと5分も遅れていたら、私はその場で
声を上げて泣いていたと思います・・・。
焦り、作業に没頭する私の背後にオートバイが停まったことには気がつきませんでした。
「大丈夫ですかー?」
その声で、初めて私は我に返ったんです。・・・ヘルメットの奥に丸メガネをかけた細身の男性が立っていました・・・。
(後編につづく・・・)
384 :
774RR:2007/05/17(木) 02:32:26 ID:AroiNS9j
つC
後編楽しみにしてます。
385 :
774RR:2007/05/17(木) 06:05:14 ID:K9yeIqbX
朝からC
386 :
774RR:2007/05/17(木) 08:24:20 ID:M6Ft5e6m
同じく朝からC
387 :
774RR:2007/05/17(木) 08:55:29 ID:aVvZ9G1L
朝からROMANCEC
388 :
774RR:2007/05/17(木) 12:48:19 ID:2lkqQ55s
つC
ヤタ!昼休みにのぞきに来て良かった!
389 :
774RR:2007/05/17(木) 16:02:05 ID:QzgbP3j/
ロマンティックage〜るよ〜
390 :
774RR:2007/05/17(木) 21:43:13 ID:G1d+89iv
sageてるじゃねぇかw
魔棲雄氏つC
391 :
774RR:2007/05/17(木) 21:53:14 ID:p7JA1CB5
同じ人が書いたと思えないくらいの作風の違いに驚いた。
ホント天才。C
392 :
age:2007/05/18(金) 15:03:24 ID:MMOb+p+3
ロマンチックage
ごめんなさい。書いてみたところ、思いがけず長くなってしまいました。
本日投下分を【中編】とさせて下さい。
あわせて、まとめサイト神の方にも前回投下分の結びを(中編に続く)に
修正願いたいと存じます。
それでは、お目汚しをば。
【マスオ物語外伝 〜タイコの告白〜 中編】
私は、オートバイに乗る男性に対する偏見を、もしかしたら少なからず持っていたかもしれませんでした。ライダー
は粗野で不良なのだというイメージさえありました。だから最初は、彼の登場自体をパンクの次に訪れた不意の
アクシデントとして受け止めていたくらいです。
ところがその人がヘルメットを脱いだ時、私の一方的な誤解は解けました。なぜなら、その人はあんまりに優しい
目をしていたからでした。
少し神経質そうで、それでいて人に圧迫感をまるで与えない彼の物腰は、すぐに私の警戒心を取り払いました。
私は正直にパンク修理が出来ない事を伝えると、彼は私に代わって作業を行ってくれました。
顔は優しそうでもやはり大きく力強い男性の手は、確実に作業をこなしていきます。私はまだ修理作業が終わる
前から、「あぁ良かった、たすかった」と安堵しました。
大袈裟かも知れませんが、それでも命の不安すら感じていた私にとって、その人は映画で見たスティーブ・
マックィーンやジェームス・ディーンよりもおおいに頼れるヒーローに思えました。
・・・その日の夕方に私の危機を救ってくれたヒーローの名は、フグタ マスオさんといいました・・・
パンクの修理が終わると、もう一つの驚くべき事実を私は耳にしました。
フグタさん・・・いえ、もう初めてお会いした時から今までずっと下の名前で呼ばせて頂いていますからマスオさん
と記させて頂きますが・・・マスオさんに釧路に向かっていたはずの私が、実は釧路に向かってなどいなかった
ということを教えてもらいました・・・。
一難さってまた一難です。マスオさんはこの時間から自転車で釧路に向かうのは無理だと言います。私はもう
頭が混乱してしまって、どうしたらよいか解からなくなってしまい「困ったなぁ」と呟きました。そんな時、また
マスオさんに手を差し伸べてもらったんです。
マスオさんは、困り果てた未熟者の旅人を放ってはおけなかったんでしょう。近くのキャンプ場で御一緒
しませんか?と私に提案して下さいました。パンク修理だけでなく、キャンプだって満足に一人で出来なかった
私にとって、それは天の導きのようにありがたい一言でした。
・・・そんな風に少なくとも私にとっては、マスオさんとの夢のように楽しく、そして儚い数日が始まりました。
今にして思えば、私はなんて世間知らずの無防備な女だったのだろうと思います。なんの疑いも無く初めて
会った男性に着いて行き、彼のテントのぴったり傍らで眠ったのですから。本当に、あの時出逢えたのが
マスオさんで良かったと思います。当時の私の世間知らずから来た暴走の数々を、マスオさんがおかしな
方向に誤解していなかったかどうかだけは心残りです・・・。
部にも迷子になった連絡が取れ、数々のハプニングをマスオさんに助けてもらって安心しきった私は彼にすっかり
心を許していました。だから、先に記したような自分の過保護な生い立ちと、それに対する自己改革への思いを
いつしか語っていました・・・。そんな事、誰かに話して聞かせたことなどありませんでした。そして、マスオさんは
黙ってそれを聞いてくれました。
それでも連日の足手まといぶりに加えその日の大失態ですから、話しているうちにすっかり弱気になってしまった
んですね。私は、弱音を口にしたんです。なんと言ったかはハッキリと覚えてませんが、自分はやはり弱い人間
なのかもしれない、というようなことだったと思います。
・・・そうしたら、それまで優しい瞳で黙って私の言う事を聞いてくれていたマスオさんが、真剣に私の弱気を
嗜めてくれたんです。あなたはそれでいいんだ、あなたは自信をもっていいんだ、と真剣に背中を押してくれた
んです。こんな事を正面から言ってくれる人は初めてでした。嬉しくて涙がでました。そしてその時もう既に、
大学の仲間とはぐれてしまった自分の状況のことなどすっかり忘れてしまっていました。
その、マスオさんと出会った夕方からその夜のエピソードだけでも、彼は私の心に確かな足跡を残してくれたはず
でした。それだけでも、それまでの人生で最も心に残る出会いであり、大切な思い出にできるはずでした。
でも、マスオさんが私にくれた思い出はそんな程度じゃ済みませんでした。マスオさんは大きな翼で私の夢を
叶えてくれたんです。
それは、翌日の早朝でした。開陽台の夜明けの景色の雄大さに感動する私に、マスオさんは摩周湖は見たのかと
聞いてきたんです。私は見ていないと言いました。そして、本当は見たかったのだけれど、到底無理だったので
諦めましたという内容も伝えたんです。
そうしたら、マスオさんはごくあっさりと私を摩周湖に連れて行ってあげると言ってくれたのです。私には、すぐには
その意味が解かりませんでした。
マスオさんは、大きな翼を持っていました・・・。オートバイです。
もちろんオートバイの後ろに乗るのは初めてでした。マスオさんは私にヘルメットを貸してくれました。ヘルメット
からちょっぴり男の人の香りがして、私は少しドキドキしました。マスオさんは丁寧に、どこそこを掴んで乗りなさい
という事も教えてくれました。
正直言うと、あまりに突然の展開に、私は少し半信半疑でした。あれほど強く憧れて、そして涙と失意のうちに
諦めた摩周湖に今すぐに連れて行ってくれると言うんです。マスオさんの後ろに乗っても私にはその実感があまり
ありませんでした。
ところがオートバイが動き出したとき、その二つのタイヤの乗り物がとても大きな大きな可能性を持った乗り物で
あることを実感しました。
後ろに跨っただけでも、とても大きくそしてとても重そうなことは判りました。けど、エンジンの力がタイヤを回した
時、そのあまりの力強さに驚きを隠せませんでした。私は無意識のうちに「すごい、すごい」と子供のように声を
あげて喜んでいたように思います。
本当にオートバイは「翼」でした。速く、力強く、たくましく、北海道の早朝の原野をオートバイは駆け抜けました。
そして、その力強さ溢れるオートバイのスピードと力を実感した時、私は確実に憧れの摩周湖へ向かって
いるんだという希望が心の中に溢れてきました。
私はいつのまにかマスオさんの背中に抱きついていました。ここで打ち明けますが・・・、私は出発前に聞いた
ちゃんとした乗り方を忘れてしまったわけではありませんでした・・・。ただ、衝動的に目の前にある頼り甲斐ある
広い背中にしがみ付きたくなったからです。私の心に何かが芽生え出した瞬間だったのかも知れません。
そして、私があれほどまでに憧れていた摩周湖に到着しました。摩周湖は私の想像をはるかに上回る美しさ
でした・・・。
私の頬を涙が伝いました。それは目の前の湖の美しさや、長年の願いが叶ったことだけが理由ではありません
でした。私は、私をここに連れてきてくれた心優しい人の事を思ったとき、どうしても流れる涙を止める事が
出来なかったのです。
「マスオさん、私の夢を叶えてくれてありがとうございます。」
私の意識を追い抜いて、素直な心が言葉となって思いがけず溢れ出ました。・・・それは、あまりに遅く訪れた
私の初恋でした・・・。
私は、硫黄山や屈斜路湖畔をマスオさんと歩いたとき、確かに幸せを感じていました。たった数時間のデート
でしたが、私にとってこんなに楽しい時間はそれまで過ごした事がありませんでした。
それは決して刺激的なものではありませんでしたが、ゆったりと流れる彼との時間はむしろ少女時代に
思い描いていた恋愛のイメージそのままでした。まるで夢のような時間でした・・・。
こんなに短い時間の間に、マスオさんはたくさんの思い出とぬくもりを私にくれたんです。
・・・でも、それが本当に夢のようにいつかは醒めなければならない幻想であることに、私は気がついていました。
マスオさんの気持ちを確かめるのが怖くて、私は私の気持ちをマスオさんに伝えることはついに叶いませんでした。
当時の時代的に今ほどの開放的な恋愛が一般的ではなかった以上に、私達はあまりに恋愛に対して不慣れで
そして臆病ものでした。
・・・私達と言いましたが・・・、これは決して自惚れでは無く今にして思えばきっとマスオさんも私に好意を抱いて
くれていたはずだと、そう女の勘が知らせています(笑)
もっと私に勇気があれば・・・私の人生は今と違うものとなっていたのでしょうか?
・・・いえ、実は私、マスオさんと居るほんの数日の間に、たったの一度だけ勇気を振り絞った瞬間があったんです。
それは、マスオさんと二人きりで過ごした最後の夜でした・・・。翌日には開陽台で部の仲間と合流する事が
決まっていたので、私はその時が自分の気持ちを伝えられる最後の機会だと感じていました。
その夜、眠る為にそれぞれのテントに入って少ししてから、私は思い切って隣のテントに居るマスオさんに質問を
したんです。
「マスオさんは、恋人とかいるんですか?」と・・・。
それをきっかけに私は自分の気持ちを最終的には伝えようと、決死の覚悟で紡ぎ出した言葉でした。・・・でも、
マスオさんからは返答はありませんでした・・・。きっと眠ってしまっていたんだと思います。ドジな私は声を掛ける
タイミングをすっかり間違っていたんでしょう・・・。なんだか急に哀しくなって、ちょっぴり泣きながら私も眠りに
つきました・・・。そして、永久に私はハッキリとマスオさんに自分の気持ちを伝える機会を失ってしまったのです。
その翌々日の早朝、私とマスオさんは開陽台でお別れしました。私は、屈斜路湖畔で買ったニポポ人形に
伝えられなかった思いを込めてマスオさんに渡すだけで精一杯でした・・・。
私の初恋は、結果的に失恋に終わりました。実は翌年の夏・・・1985年だったと思いますが、その夏も私は
北海道を自転車で訪れています。もう、自転車に乗る事よりもほとんどマスオさんとの再会を夢見ての参加
でした。・・・でも、結局マスオさんに会うことは出来ませんでした。そして、おそらく永遠にマスオさんに再会
することは出来ないんだろうな、と私は思っていました・・・。
だから、数年後に今の夫と結婚を決めたとき、夫が学生時代に居候していた世田谷の伯父の家に挨拶に
行った際、そこでマスオさんと突然の再会をしたときは、心臓が止まりそうなほどに驚きました。
その家で、マスオさんは奥さんと新しい人生を既に歩いていたんです・・・。
お互いに知った関係でありながら、もちろんそれと知らない周囲の人に紹介された私達。私は思わず、あっと
声を上げそうになりましたが、マスオさんは他の誰にも気が付かれない様に咄嗟に私に目配せをしてその場を
収めました・・・。私はその時、マスオさんと私の間に永久に超えることの出来ない厚い壁が出来ていることを
実感したんです。
もちろん私は夫を愛して結婚したのですから、予想外のマスオさんとの再会がその後の私にことさらに何かを
訴えかける材料になりはしませんでした。結婚式の準備、そして私のお腹には新しい命が宿っていた為、
様々な結婚へ向けての現実的な作業の中で、学生時代のおぼろげなロマンスを改めて思い起こしている
閑など無かったんでしょう。それに私はむしろこの先、あの優しく暖かいマスオさんと親戚として近しい関係で
居られることに対して、無邪気に喜んでいたくらいでした。
再会したマスオさんは、もうお父さんでした。会社勤めをしていて、オートバイは降りたようでした。
マスオさんがオートバイを降りた顛末については、長くなるので省かせてください。そして、それは妻である
サザエさんとの出会いに密接に関係していることでした。
その後生まれた私の息子が、一才、二才と成長していく過程で、イソノ家とそこに住むフグタさん夫妻とは
家族同然の付き合いをしていきました。私の子と、マスオさんの子が仲むつまじく遊ぶ様子を、私はとても
幸せな気持ちで眺めていたものです。
ただ、イソノ家でマスオさんと再会した時から、私の胸にはなにかしらのつかえがありました。・・・それは
マスオさんの様子でした。もともと北海道で出会った時、マスオさんはとても大人しい人でしたが、その内に
秘めた優しさと暖かさを感じる事ができました。そんなマスオさんの雰囲気は、再開した後も基本的には
同様だったのですが、それでも私はそこになにかしらの違和感を感じていました。
家族の前では妙に明るく振舞っていると思えば、ひとりで居るマスオさんは酷く寂しげな顔をしていました。
常にお酒に頼っているわけでは無いのですが、酩酊して家に帰ることも少なくなかったようですし、なにより
タバコの量が多いのは、北海道でのマスオさんの様子と明らかに食い違っているように思いました。
極端に言うならば、裏と表がマスオさんの様子に表れていました。奥さんであるサザエさんを含め、家族は
そのことに気がついていないようでしたが、私にはハッキリとそれが見て取れました。
それは、年を経てまたは社会人になって落ち着いた、という一般的な人の変化とは違うように私には思えました。
なんと言えばよいのでしょうか・・・。マスオさんの中に、なにか黒い影が潜んでいるような気がしました。
それでも前述の通り、結婚準備やその後の子育てに忙殺されていた私は、それ以上深くマスオさんの様子に
注意を払えないまま数年が過ぎていったんです。
突然ですが、私の悩みを聞いてください。・・・私にだって悩みがあるんです・・・。それは、夫の事です。
まず誤解して欲しく無いのですが、私は夫のナミノを愛しています。そして当然、子を愛しています。
ですから苦しいのです。愛情が無いのであれば、ここまで苦しくなんてなりません。
何が苦しいのかというと・・・。その・・・、夫がよく解からないんです・・・。
あの人は明るくて快活で人懐っこい愛すべき人格の持ち主です。私も何度、彼の笑顔に救われたか解かり
ません。
底抜けに明るく、一切の悩みは無いように見えます。いえ、私は仮にも妻ですので断言させて頂きますが、
夫には人生に根ざした深い悩みは一切無いと言えます。
そりゃ、お小遣いの額だの、編集者として担当しているイササカ先生の原稿の進み具合だのという、日々の
生活の些末なことに対する不満や心配はその時に応じてあるんでしょうが、夫の人格と生き方に裏打ちされた
継続的な苦悩などはまるで皆無だと思います。
いえ、それは決していけないことではなく、むしろ誰にとっても多かれ少なかれ憧れの対象となるべき性格
なんでしょう・・・。でも、本人にとっては良いことでも、その周りにいる人間にとっては良い事で無いかも
知れません。現に私はそんな夫の人並み外れた陽気さやデリカシーの無さに、彼の真意をいつまでたっても
見つけられないでいるんです。
要は夫の人格がよく解からないのです。人は泣いたり笑ったり怒ったりといった感情を時に表面に表す事で
周囲の人間に自分の思いや自分という人間そのものを知らせるのだと思います。映画なんかのお話の世界では、
人格的につかみ所の無い人を、寡黙だったり無表情だったりといったキャラクターとして表現する事が多く
ありますが、夫はそれとまったく逆方向の陽の感情のみで日々を生きているので、結局のところ精神的な起伏という
面では寡黙だったり無表情だったりという人と同じように平坦であり、そして解かり辛い性格なのです。
夫はいつもニコニコ笑っているので、日々の生活のイライラから来るケンカをしたことなどほとんどありませんが、
そのかわりに夫のデリカシーの無さが原因で私がへそを曲げた事などは幾度かあります。
その度に夫はゴメンゴメンと謝るのですが、その謝罪の言葉に中身が無いのです。いえ、夫が打算ではなく
真剣に謝っているのはもちろん良くわかるのですが、それはただ一生懸命謝っているだけなのです。
私がどうして怒ったのかという事に対して思考が向く事はありません。だから、似たような別のことでまた私が
不機嫌になったりもするんです。
夫の中には、まるで他人が存在していないようなのです。夫も私を愛して結婚してくれたのでしょうが、おそらく
彼の中には私を愛している自分がいたとしても、一人間として、妻としての私というものが存在していない
ことでしょう・・・。
ここまで書くと、まるで私は夫を憎んでいるようにも思われ兼ねませんが、何度も言うように私は夫を愛して
おります。ただ、そのとらえどころの無い彼の屈託のなさが辛いのです。悩もうにも、その悩みの対象を私は
完全に掴み切れていないため、それが出口の無い空虚なトンネルを歩くようでとても辛いのです。
人知れず霞のような正体不明の悩みに直面したとき、息子はもう4歳になっていました。2歳頃に最もひどかった
反抗期もすっかりなりを潜め、少し子育ても楽になってきました。結婚後から続いた忙しさがそんな風に
一段落して、自分を見つめなおす時間が出来たからこそ、そんな正体の解からない悩みが芽生えてきたのかも
知れません。・・・そしてその頃もう一人、気になりだした人がいました・・・。マスオさんでした・・・。
親戚として再会したあの日以来感じていたマスオさんの内に棲む「影」の正体を、私はひどく気になりだして
いました。その時の私にはなぜマスオさんをそんなに気にするのか解からなかったのですが、それが気になる余り
眠れなくなった夜もあったくらいでした。
・・・そして、何故その時期にそんなにマスオさんの事が気になり始めたかというと、それは子育ての一段落という
私の事情意外にもあったんです・・・。
私は、マスオさんの奥さんであるサザエさんの秘密を、ふとしたことから知ってしまったのでした・・・。
それは横須賀に住む旧友の家に呼ばれて、遊びに出かけた帰りのことでした。友人の家をおいとました私は、
もう一人の友人と駅に向かって繁華街を歩いていたんです。時間は21時を少し過ぎていたでしょうか。
その繁華街の一角で、サザエさんを見たんです・・・。呼びかけようとした私は、すぐにそれを止めました。なぜなら
サザエさんの隣にはマスオさんではない男性がいたからです・・・。
サザエさんは親しげにその男性と腕組みをして楽しそうに歩いていました。私は驚きで、隣にいた男性の顔を
見るのも忘れてしまったくらいでした。
それは単なる知り合いを超えた艶かしい何かを感じさせるのに充分の光景でした・・・。私は彼女がマスオさんを
裏切っている事を直感していました。
確かに東京からみた横須賀は、人目を避けるのに適当な場所のように思えました。横浜でしたら買い物や食事に
来た知り合いに会ってしまう可能性もありますが、三浦半島の袋小路である横須賀は特別な理由も無い限り
少なくともサザエさんのことを知る近所の人が訪れる可能性も少ない為、人目を忍ぶには最適だったかもしれません。
いえ・・・、そんな事はどうでもよいのです。私は震えていました。その光景への驚きの為ではありません。
・・・怒りでです。
社会的に言えば、私はこの状況に対して怒りを感じる立場では無かったはずですが、何故か私の心はそれまで
感じたことの無い言いようの無い怒りの感情に支配されていました。マスオさんの優しい笑顔と暖かさを思うと、
悔しくてたまりませんでした・・・。
そんな私を尻目に、罪深き男女はネオンと雑踏の中に消えて見えなくなりました。
彼女当人をその場で捕まえて叱責しなかったのは正解でした。そんな事をしていたら、今頃マスオさんは私達の
前から姿を消さなければならなかったことでしょう・・・。
私は怒りの感情を理性で抑え込み、その代わりにイソノ家へ普段を装い電話をしました。中学生になったカツオ君が、
「姉さんは友達と会いに埼玉へ行っている」と教えてくれました。やはり私が横須賀でみたのは紛れも無く「密会」
だったんです。
その日から、私はなおのことマスオさんのことを意識するようになっていました・・・。傍で見る限り、マスオさんは
妻の裏切りに気が付いていない様にも見えました。
私は、夫への形の無い悩みと共に、誰にも言えないフグタ夫妻の秘密を心の奥に隠しながらしばらくの間、日常
生活を続けていました。
ある日、公園でタラちゃんと遊ぶマスオさんに会いました。息子とタラちゃんを遊ばせ、私達はベンチでその様子を
見つめながらごく普通の親戚らしい会話を交わしていました。
再会した頃から感じていた「影」の存在を差し引いても、その日のマスオさんは少し元気が無いように見えました。
それでも私の言葉に笑顔をみせて答えてくれるものですから、それがむしろ痛々しく私の目には写りました。
私はやはりマスオさんの心に影を落とす正体について知りたいと思っていました。私はどうしてもマスオさんの事が
気になって仕方がないんです。・・・その理由はその後、ある思いがけない人から諭されて気が付いたのですが、
それは後述いたします。
とにかく、私はマスオさんの憂いを自分に可能な事であれば取り払ってあげたいとまで思っていました。その為には
どうしても憂いの原因を知る事が必要だったんです。
私はマスオさんが私と初めて会った時と何か違う事を知りながら、まるでカマをかけるように言いました。
「マスオさんは昔から変わりませんね。優しいところなんて特に。」
マスオさんは遊ぶ子供たちなのか、それとももっと遠くの空なのか、わからない場所を見つめながら言いました。
「・・・そうですか?僕は変わったと思ってます。自分が解からなくって疲れるくらいです。出来る事ならあの頃に戻りたい
くらいです・・・。」
少し寂しげな笑顔のマスオさんから出てきた力無い言葉は、まるで隣にいる私に向けられていないように聞こえました。
あの頃、という言葉がいつを指し示しているのかも判然としませんでした・・・。少なくとも私と過ごした開陽台を思って
言った言葉ではないように思えました。
マスオさんも言った後ではっと我に返り、自分の言葉があんまりだと思ったのでしょう。いつも皆に見せる笑顔と
言葉に戻って、すこしおどけながら前言を撤回しました。
・・・でも、私はその言葉が思いがけずマスオさんの心底から出てきたものだと確信しました。確かにマスオさんの
心の中に影を落とす過去があると実感しました。・・・でも、それが何なのかまではもちろん解かりませんでした。
私はマスオさんの得体の知れないが確かに存在する陰鬱な過去と、サザエさんの隠し事を思い心が沈みました。
そして、ますます彼の事が気になりだしていったんです。
(後編につづく)
409 :
774RR:2007/05/19(土) 01:38:28 ID:i4s/E3xV
激しくCCCCCCCCC
410 :
774RR:2007/05/19(土) 01:44:40 ID:89Qp/qIH
なんという文章量。
これは激しくくCCCCCCCCCC
411 :
774RR:2007/05/19(土) 01:48:30 ID:8UgEmrkn
読む度に鳥肌立たせないでくれ・・・文章上手すぎだ・・・
つC
412 :
774RR:2007/05/19(土) 02:15:35 ID:7/VRJF9I
まさかココからさらにサスペンティックに持っていくとは・・・
413 :
774RR:2007/05/19(土) 02:18:09 ID:Nzq7LihL
おんもしれえぇぇぇぇ!!
つC
414 :
774RR:2007/05/19(土) 02:40:21 ID:LRZ/trO9
単なるサイドストーリーかと思いきや、「魔」の部分に踏み込んでいくのか…!
wktk
415 :
774RR:2007/05/19(土) 02:51:22 ID:d4iyABN+
鳥肌立った!!CCCC
416 :
774RR:2007/05/19(土) 08:00:03 ID:hRBN19t2
本編読み返したが、確かに開陽台で夜にテント越しにタイコに声を掛けられたかの
ような表記が存在するんだこれが。
魔棲雄、バカだなぁ〜もう!
417 :
774RR:2007/05/19(土) 09:39:06 ID:usuuzhe8
(;゚д゚)こっ、これは…
ただごとじゃないぜ?
ますますこのスレから離れられなくなっちまう…
418 :
774RR:2007/05/19(土) 09:43:11 ID:G7AlVYv8
もしや初代にもどってついにサブ登場なのか?
419 :
774RR:2007/05/19(土) 09:53:24 ID:C/IjcRgg
チクビが起ったぜ、こん畜生!
つC
420 :
774RR:2007/05/19(土) 10:32:58 ID:JPckw+ok
まじで、すごい!
つC
421 :
774RR:2007/05/19(土) 10:52:58 ID:CwKy/sj2
バイク乗りの陰と陽に、知らず知らず惹かれてしまうタイコが無性にカワユスCCCCCCCCCCCCCCCCCC
422 :
774RR:2007/05/19(土) 12:54:12 ID:zCHc1xF+
CCC
423 :
774RR:2007/05/19(土) 12:58:44 ID:h7ZIMtV1
CCCC
早く続編が読みたくて仕方ない!
424 :
774RR:2007/05/19(土) 13:29:16 ID:0nKUEEn5
ていうか、オイ!サザエ!
425 :
774RR:2007/05/19(土) 13:46:11 ID:pVNGp0Qg
むしろサザエLOVE
426 :
774RR:2007/05/19(土) 15:07:14 ID:2A5qggvx
後編が待ちきれないッ!
427 :
774RR:2007/05/19(土) 16:44:20 ID:83dSfRwR
CCC!!!
428 :
774RR:2007/05/19(土) 19:03:15 ID:aeW10kfJ
マスオとタイコのわかっていたハズの新展開wktkす!
429 :
774RR:2007/05/19(土) 21:59:23 ID:JPfS5dzi
それなんて昼ドラな展開wktk
430 :
774RR:2007/05/19(土) 22:58:50 ID:Hv0beR4J
サブーー-----ッ!!!!
431 :
774RR:2007/05/20(日) 12:20:12 ID:YfopqHKj
マスコ=イクラ
432 :
774RR:2007/05/20(日) 13:43:24 ID:uID2sIhA
生産地偽装問題に…
433 :
774RR:2007/05/20(日) 18:59:14 ID:LnARMipB
今日のサザエさんが仮面夫婦に見えた
投下いたします。予想より大幅に長くなってしまいました。大変申し訳ありません。
これより投下いたしますが、全部が投下されるまでしばしお待ちくださいませ。
それではお目汚しをば・・・。
【マスオ物語外伝 〜タイコの告白〜 後編】
確かにマスオさんの心の奥底には得体の知れない影が横たわっている・・・。私はその日の公園の
やり取りで、その思いを確信としました。
そして、私の心は痛みました。マスオさんが後ろ暗い影に縛られながら生きている事が私には
とても悲しいことでした。そして追い打ちを掛けるようなサザエさんの裏切りを思うと、もうマスオさんの
笑顔を見ることすら辛いのでした。
過去と妻の裏切りに挟まれた孤独なマスオさんを救いたくても救えなかった私は、たとえ彼の憂いの
理由が何であろうとも構わないから、その寂しい背中を摩周湖を見に行った時にオートバイの上で
そうしたように抱きしめたい衝動にすらかられました。
そして、もちろんそんなことが許されるはずも無い親戚という関係に、初めて苛立ちを感じたんです。
私はそれから、非常に不安定な心持ちで生活を続けていました。それはもちろんマスオさんの
ことだけでなく、捉えどころの無い夫への悩みも含まれていたのです。しばらくは眠れない日々が
続きました。
サザエさんの事もあったし、息子も幼稚園に入りましたのでイソノ家に足を運ぶ回数も自然少なく
なっていきました。もちろんサザエさんに会う機会は往々にしてありましたが、彼女の様子は私と
初めて会った時と何も変わっていませんでした。むしろぎこちなくなったのは私のほうだったような
気がします。
そして、夫と同じように明るく元気で快活な陽の気性をもつ彼女が、実は人に言えない夜の顔を
持っていると知ったとき、私はますます夫という人間もわからなくなっていったんです。それまでの
人生の中で、これほどに多くの悩みが心の中で渦をまいたことはありませんでした。しかもその
悩みの原因のどれもが、私が動いて解決の出来る類の問題では無かったのも私のストレスの
一因となりました。私は始めて、人間が少し怖いと感じていたんです。
消すことの出来ない胸の苦しさの中から、どうせなら私はマスオさんの事を積極的に考えるように
なりました。それは学生時代のほのかな思い出も同時に思い出せるから少しは心が安らぐという
ことが理由なのか、直接私に関係の無いことだから夫のことよりは実感としての苦しみが少ない
というやや利己的な考えが働いたからかどうかは解かりません。
ただ、確実にいえることはマスオさんが苦しみから解放されれば、また私も少なからず幸せな
心持ちになれるだろうということでした。
その微かな救いを求めて、私はマスオさんの過去を知ろうと思いましたが、なかなかそれは難しい
ことでした。でも、私はそのマスオさんの心の深部にせまる僅かな手がかりを見つけたんです。
それはイソノ家とフグタ家、そして我が家で日光にハイキングに行った時のことでした。
その三家が集まると10人の大グループになるのですが、もう大きくなったカツオ君とワカメちゃんは
友人との約束を優先させたので、参加したのは8人でした。
8人乗りの大きなレンタカーを借り、マスオさんの運転で私達は日光に向かったのですが、その
途中の休憩で立ち寄った明智平の駐車場で、私は学生時代と同じ、ただ優しいマスオさんの
表情を見たんです。
437 :
774RR:2007/05/21(月) 01:13:13 ID:nh7Zzf0v
リアルタイム挟まれキタコレ
連投支援牧子
お土産屋で買い物を済ませた私は、トイレに行った夫と息子より先に車に戻りました。その時、
マスオさんは運転席で、開けた窓から何かを見つめていました。その時の表情は、なんの憂いも
感じない、とても優しく暖かく爽やかなものでした。
・・・彼の視線の先にあったのはたくさんのオートバイでした。彼は周囲の誰にも見せない何色にも
染まっていない透明な瞳で、それらのオートバイと談笑するライダー達を見ていたんです。
その時、初めて私は意識的にマスオさんもまた、ライダーであった事を思い出しました。そして、
北海道で見たマスオさんの快活とした笑顔と一緒に私の記憶に思い浮かぶ乗り物は、確かに
オートバイであることに気がつきました・・・。
およそ十年振りに再会したあの頃のマスオさんの表情を見たとき、彼の人生にとってオートバイが
実はとても重要な位置付けにあるのではないかと直感したんです・・・。
それから少しもしないうちに、私は思いがけずにマスオさんの「影」の正体を知ることになったんです。
その日、私は幼稚園から帰った息子と二人で街に買い物に出かけました。用を済ませると、息子が
チョコレートパフェが食べたいといい始めたんです。私も少し歩きつかれたので、喫茶店に入る
ことにしました。暑い真夏の盛りでした。私達はしばしの涼を求めてその店に入ったんです。
息子はその店のチョコレートパフェがいたくお気に入りでした。偏食気味の息子が良く食べるくらい
ですから、たしかにその店は美味しい人気のお店でした。ですから、お昼を少し過ぎていたのですが
店内はあいにく満席でした。息子をなだめて出ようか、それとも待とうか迷った時、店内から不意に
私を呼ぶ声が聞こえました。
「タイコさ〜ん。」
「あっ!マスオさん、こんにちは。」
「良かったら、ここ相席しませんか?」
窓際の日当たりの良い席から私に向かって手を振っていたのはマスオさんでした。スーツ姿で
仕事中らしかったマスオさんの向かいには、やはりスーツ姿の男性が座っていました。
「おっ!イクラちゃん、しばらく会わないうちにずいぶん大きくなったなぁ〜。」
私はいつもその人と会うとき、申し訳ないなと思いつつどうしてもそこに目が行ってしまうのですが・・・、
大きな唇が特徴的なマスオさんの会社の同僚のアナゴさんという方でした。
「奥さん、どうもお久しぶりです。フグタ君がどうしてもサボりたいって言うもんでしてね。」
「おいっ!お茶にしようって言ったのはキミじゃないか!」
マスオさんは、自分のコーヒーカップを持ちアナゴさんの隣に移動しました。私もアナゴさんとは
初めてお会いするわけでは無かったのですが、それまでも特にまとまった会話などはしたことは
ありませんでした。それでも、アナゴさんは「良い人」というオーラを全身に纏っているような人
でしたので、特にこれといった気を使う必要も無く、私達はとりとめのない世間話をしていました。
すぐに私は気が付きました。アナゴさんと一緒にいるマスオさんは屈託無く良く笑うのです。
彼らの麻雀やらゴルフやらといった話を聞いている限り、二人は会社の同僚以上の良き友人
関係であることが感じられました。
そうしてふと、私はアナゴさんについて知っている数少ない情報の中から、この人がマスオさんと
学生時代から親交があるということを思い出したのです。・・・この人なら、もしかしたらマスオさんの
過去について何か知っているかもしれないと思いました。
息子のチョコレートパフェが運ばれてきたのと同時に、マスオさんのポケットベルが鳴りました。
「あ〜、部長からだ。」
「おいおい〜、また突発業務か?勘弁してくれよぉ。今日は早く帰りたかったんだけどなぁ。」
「怪しいなぁ、最近週末になればアナゴ君は早く帰りたがるじゃないか。ま、電話してくるよ。」
「おぅ。」
マスオさんは店内の公衆電話に向かいました。まだ携帯電話が普及していなかった時代、
彼らはこうして出先で連絡を取り合っていたんです。私は公衆電話に向かうマスオさんの
背中を見送り、少し笑ってアナゴさんに言いました。
・・・この時、私はマスオさんが席を外した事を千載一遇のチャンスと思っていました。そして、
はじめからマスオさんの「影」を掴むという目的を持ってアナゴさんに話しかけたんです。
「本当に仲がよろしいですね。」
そんな私の言葉に、アナゴさんは照れくさそうに頭を掻きながら答えました。
「いやぁ。大学時代からの腐れ縁です。」
「東京に来てからお知り合いに?」
「えぇ。大学一年の頃からですからねぇ。もう十年になりますよ。」
「じゃあ、アナゴさんも早稲田?」
「いえ学校は違うんですよ。まぁ、下宿が近所だったし、ちょっとした縁もありましてね・・・。」
そこまで言うと、さっきまで気持ちよい笑顔だったアナゴさんの顔が、少し曇ったように見えました。
やっぱり何かある・・・。その時代にマスオさんの秘密が隠されている・・・。そして、この人はその
全てを知っているんだ・・・。私は確信を得ました。
私は普段全くと言っていいほど使うことの無い意地悪を、目の前のアナゴさんにぶつけようと
思ったんです。今、機会を逃すとまたしばらく、マスオさんの影の正体に近づけないような気がして
いました。私は私の確信に満ちた予想を遠慮なくアナゴさんにぶつけたんです。
「それってもしかして、オートバイ・・・ですか?」
アナゴさんは、少し驚いたような顔をしました。
「・・・よくご存知で。」
「共通のご趣味だったんですね。」
「・・・趣味というか・・・まぁ、そんなところですかね・・・。」
「今はお乗りになってませんの?」
「・・・まぁ、はい・・・。」
それきりアナゴさんは、急に口ごもったようになり、もう砂糖とミルクをいれてあってかき混ぜる
必要の無いコーヒーをスプーンでかき混ぜ始めました。
443 :
774RR:2007/05/21(月) 01:18:17 ID:nh7Zzf0v
連投支援
おぼろげながら、マスオさん、そして同時にアナゴさんの背負った過去を知った今にして思えば、
その時の私はとても辛い言葉でずけずけとアナゴさんの心に立ち入った嫌な女でした。
でも、私だって必死でした。常識的に不自然にならない程度の言い回しで、それでもマスオさんの
核心を引き出そうと必死でした。
私としては、「オートバイ」という言葉を使ったのはマスオさんとアナゴさんの若い頃の関係性を
知ろうとしただけでなく、「オートバイ」という乗り物がマスオさんに落とす影になにかしら繋がって
いるような気がしての事ですから、そこから先も私はその一点でアナゴさんを攻め落とそうと
考えていました。だから、私はとっておきの私の秘密を持ち出してアナゴさんを会話に引き込もうと
思いました。
「実は私、マスオさんのオートバイの後ろに乗せてもらったことがあるんですよ。」
「え!?そりゃあ、最近のことですか?」
「いいえ、学生の頃です。もちろん名前は解りませんが、赤と黒の大きなオートバイだったなぁ。」
「・・・ニンジャ・・・か・・・」
そう呟いたアナゴさんの言葉に反応したのは、大人しくチョコレートパフェを食べていた息子でした。
「にんじゃ!にんじゃ!しゅりけんだー!しゅっしゅっ!!」
「うわぁ、やられたぁ!」
アナゴさんは、おどけて息子を相手にしながらも、過去の記憶のどこかにひっかかったようで、私に
問いかけてきました。
「もしかして、北海道で・・・ですか?」
「えぇ・・・。秘密ですよ、秘密です。私、主人と会う以前に、北海道でマスオさんと会っていたんです。」
私は、「秘密」という言葉を効果的に使ったつもりでした。暗に引き換え条件のような言い回しを
することでアナゴさんの知っている「秘密」も手中にしようとしたんです。
「いえ、誤解なさらないで。秘密と言っても若い頃のことで、なんだかお互いに気恥ずかしい気が
するっていうだけの理由で誰にも言っていないだけなんです。特に何も・・・。」
私は、何も言われていないうちから自分で切り出したことなのに勝手に言い訳をしました。もしかしたら、
頬も赤くなっていたかも知れません。アナゴさんは少し笑いました。
「84年ですねたしか。そういえば開陽台でフグタ君は少し怪しかったような覚えがありますよ。ハハハ、
確かにあの頃の彼ならあなたが言い訳をするまでもなく女性を相手に滅多なこたぁ無いでしょうね。」
・・・あの頃、という言葉が気になりました・・・。私が始めてマスオさんに出会った1984年から
それ以降のどこかの時期で、マスオさんが変化する何かがあったのだという確かな証拠を、その
アナゴさんの何気ない言葉の片隅に見つけました。
・・・今しかない。この時をおいて他に、マスオさんの「影」を掴むチャンスは無い・・・。
そう思った私は、アナゴさんに気が付かれないように小さく深呼吸をしてから、まっすぐ核心に
踏み込む問い掛けをしました。
「マスオさんって、若い頃・・・私と会った後に、何かあったんでしょうか?」
その私の質問を、今度は特に驚いた素振りも無くアナゴさんは聞いていました。・・・そうきたか・・・とでも
言いたげな表情でした。
それでも、アナゴさんはすぐに核心について返答することを拒み、そのかわりに質問で返してきました。
「・・・どうしてです?」
それは二通りにもとれる反問でした。「フグタ君の何処を見てそう思うのか?」という意味と、「なぜ、既に
家庭を持つあなたが、他の男の過去について知ろうとするのか?」という二つの意味にとれたんです。
後者については、前述の通り私自身がマスオさんの過去を気にする理由についてそもそも自分でもうまく
説明がつかなかったし、それについて言い訳のような事を言うのは返って不自然に思えたので、私は
無視を決め込むことにしました。そうして、前者の意味あいについてのみ答えることにしたのです。
「マスオさんは、初めて会ったときも、そして今も変わらず優しくて暖かい人です。・・・いえ、昔といっても
学生時代にマスオさんと一緒にいた時間なんてほんの3日程度だった私がこんな事を言うのも変だと
思いますが・・・。それでも何か昔と違うような気がするんです。ふとした時に、ゾッとするくらい寂しそうな
瞳をしているマスオさんを見るときがあるんです。そして、昔と変わらないように見えるマスオさんの優しい
振る舞いが今は妙に痛々しく見えるときがあるんです。」
私は捲くし立てるように、ほとんど一息でそう言いました。決死の覚悟で私の疑問の核心をアナゴさんに
ぶつけたんです。アナゴさんは最後まで黙って聞いていましたが、少し考えてからこう言いました。
「奥さん。・・・それは、少なからず受け取る側の心の問題にも繋がってるんじゃあないでしょうかねぇ?」
アナゴさんにそう言われて、不意に夫の事が頭に浮かびました。そして、とらえどころの無い夫のことで
とらえどころの無い悩みを抱いている私の胸のうちをアナゴさんに見透かされたような気がしました。
飄々として、いつもとぼけているように見えるアナゴさんは、意外にも手強い相手でした。
私は返すべき言葉を失って、伏目がちにアナゴさんから視線を外しました。
でも、自滅したはずの私に助け舟を出してくれたのは他でもない、アナゴさんでした。真剣に問い掛けた
私に対しての義理なのか、それともその後に言葉を失った私に何かしらの事情を感じて同情して下さった
のかは解りませんが・・・。アナゴさんは真面目な顔で私に言いました。
「いや、失礼しました。奥さんの質問が意外に的を得ているもんでしてね。思わず話しをそらそうとして
しまいましたよ。」
そうして、アナゴさんはコーヒーを一口飲み、小さく溜息とも深呼吸とも付かない息をしてから私に言いました。
「奥さん。あなたのおっしゃる事は正しい。確かに、彼は学生時代に一つの悲しい経験をしている。それが
彼の、おそらくほとんどの人が気が付かない憂いの部分に大きな影響を与えていることは間違いありません。
・・・そして、私も全く同じことが原因で人間が変わってしまった男の一人です。僕らはその暗い過去の部分を
共有している。僕らは、奥さんが先ほどおっしゃったように仲がよいとよく人に言われる。それは僕らの、
切り離したくても切り離せない重い鎖の両端に縛り付けられているという一種の一体感が、人にそう思わせる
理由なのかも知れませんねぇ・・・。」
448 :
774RR:2007/05/21(月) 01:24:19 ID:V/fp0UO1
C
アナゴさんのゆっくりとした言葉を、私は黙って聞いていました。
「奥さん。覚悟はおありですか?なんとなく気が付くことと、ハッキリと知るということとはその重みが違います。
その事に関してのフグタ君の過去というのは、そのまま私の過去とも言えますので、その気になれば
ほとんどの事実を話す事だって私には出来ます。・・・ただ、やはりフグタ君の過去の一切を勝手にあなたに
お話しする権利など私にはありません。だから、大まかな輪郭だけしかお話しすることは出来ませんが・・・
それでも、奥さんの心に少なからず僕らの暗い影が落ちるかも知れませんよ?それでも、お聞きになる
覚悟はおありですか?」
私は自分でこの問題に首を突っ込んでおきながら、それを聞いて急に怖くなりました。まさに今、今まで
知ろうと思いながら知れなかった、マスオさんに暗い影を落とす過去を知れるところまで来ているのに、
いざその段階になってみた時、私は逃げ出したいような衝動に駆られたのです。
だからといって、ここまで聞いてしまった以上、逃げ出すわけにもいきませんでした。私はその恐怖心を
かき消すために、わざと冗談めかした返答をしました。
「私、主人が小説の編集者をやってますから少しだけわかりますが、アナゴさんって文学者か哲学者
みたいな物言いをされるんですね。」
アナゴさんは、私の意外な返事に少しだけ目を丸くして言いました。
「バイクに入れ込んでた時期だって、乗っていないときはアルバイトか書籍あさりかって生活だったん
ですよ。物書きになる夢なんて早々に捨てましたけどね。こんな顔で、意外でしょう?それに、ほら
なんとかを持てば人は哲学者になるっていうじゃありませんか。」
私とアナゴさんは顔を見合わせて少し笑いました。そして、私は決意とともにアナゴさんにお願いを
しました。
「・・・聞かせて下さい、マスオさんの過去のこと。知らずにいる方が、なぜか心が痛むんです。」
「解りました、話しましょう・・・。ただ、先ほども言った通り、私の一存ではあまり深くは話せませんよ。
それに・・・奥さんだから話すんです。理由は後から述べますが、いいですか?奥さんだから
話すんです。」
私はただひとつ、こくりと頷きました。アナゴさんは、その重い口を開きました。
「そんなややこしい話でも、壮大なストーリーでもありません。ただ、人の命に関わった事です。奥さんに
とっちゃ拍子抜けしてしまうかも知れませんが、本当に単純な話なんです。
・・・僕ら二人にとって兄貴のように慕っていたバイク仲間が、その頃・・・85年の夏に死んだんです・・・。
ただ、それだけの話です・・・。」
451 :
774RR:2007/05/21(月) 01:26:49 ID:03iw9jkw
C
ただ、それだけ・・・。アナゴさんはそう表現しましたが、私にとっては思いがけず重い事実でした。
私は、心のどこかで友情や恋愛といった人間関係に起因している事だと思っていたのです。だから、
それが人の命に関わっていた事を知ったとき、頭が少しくらりとしました。
「その人の死については、あまり詳しく聞かないで下さい。その人が死んだ瞬間の事に関して言うならば
私はフグタ君よりも深く癒しようも無い傷を心に刻んでいる・・・。目を閉じて思い浮かべるだけでも、
目の前が血の色に染まるような記憶です・・・。」
オートバイに乗らない私でも、オートバイがある意味でとても危険な乗り物であるという認識は
ありました。オートバイ仲間の死・・・。それだけで、当時に何が起こったのかということは充分に
理解できました。
「人間というものは、死というものを解っているようで解っていない気がします。命は地球より重いとか
命より大事なものは無いなんて言葉は常識のように語られていますが、もちろんその意味自体に
誤りはないんでしょう。でもね、その言葉を使う人の背景が空虚なことがほとんどです・・・。
年老いて天寿をまっとうできれば、むしろそれは幸せな死なんでしょうが、身近な人のあまりに早く、
そして突然の残酷な死を目の前にした時、人は言葉と思考をいっぺんに失います・・・。そして、僕らは
その時、時間が止まったんです・・・。上を向いて歩けなくなったんです・・・。」
453 :
774RR:2007/05/21(月) 01:27:48 ID:03iw9jkw
C
アナゴさんは、言葉を選びながらゆっくりと話し続けました。
「あぁ、上を向いて歩けなくなったというのは当時のフグタ君の言葉でしてね。真っ直ぐ前を向いて進む
気力は失われて、それでいて立ち止まって手持ちぶたさになるのも余計に辛い・・・。だから、苦しくても
とぼとぼとどこかに向けて歩くしかない・・・。そんな僕らの当時の気持ちを象徴する言葉だったから、
よく覚えているんです。」
長電話のマスオさんは一向に戻っては来ませんでした。息子は少し前から眠そうに左右に揺れながら
チョコレートパフェを食べていましたが、ついに私に寄りかかり眠り出しました。眠る我が子の頭を私の
膝のうえに移し、私はアナゴさんの言葉を聞きつづけました。
「僕らは自分たちを責めました。少なくとも、僕たちがその人の目の前に現れなければその人は死なずに
済んだんですからね・・・。」
私はアナゴさんが過去を語りだしてから初めて口を挟みました。マスオさんとアナゴさんを慰めようと、
思いがけずに出た言葉でした。
「・・・でも、そんな事を言っては辛いでしょう・・・。人はその先にある悲劇を願ったり知っていたりする上で
出会うわけじゃないんですから・・・。」
「・・・そうなんです。その通りですよ。でもね、その時の僕たちはそのあまりの衝撃の前に神経が衰弱していた。
とてもまともな判断をすることが出来なかった。それに、若かったから自分自身の心の処し方も知らなかった。
でも、確かに奥さんのおっしゃるとおり、それだけでは・・・自分を責めているだけではどうにも辛すぎるんですよ。
だから、心の隅で自分を責めつつも、もう反対側の隅では世間一般を責め始めていたんです。」
「世間一般?」
アナゴさんは、表通りの車の渋滞を一瞥したかと思うと話を進めました。
「そうだなぁ・・・。広い意味での世の中という意味では無いんです。少数派である二輪車に対して、道路上で
理不尽な常識を振りかざす四輪車・・・という意味合いでの「世間一般」です。これは、バイクに乗らない方には
実感として理解できないかも知れませんし、この話の中では理解いただけなくても一向に問題ありません。
それに、今にして思えばやっぱり若くて愚かな考えです。でも、とにかく自分を責めていないと辛いし、さりとて
それだけでもまた別の意味で辛いから、自分達の外の世界をも呪い始めたんです。」
私には、オートバイに乗る人の気持ちがにわかに理解できたとは言えませんでしたが、それでも当時の二人が
苦悩の渦の中に居たことだけは充分に理解できました。
「上を向いて歩けなくなった僕らが、それでも何処へ向かうとも知れず進むための存在がバイクでした。奥さんには
矛盾して感じられるかもしれない。そもそもの悲劇の根本に救いを求めるなんてね・・・。それでも、僕らには
それしか無かった。バイクしか無かったんです。」
アナゴさんは公衆電話の方を見て、マスオさんがまだ戻ってこなそうな事を確認すると、再び言葉を続けました。
「そして、僕らは荒れていったんです・・・。救いであったはずのバイクも、時によってはその荒れを増幅させる
存在となりました。まぁ今にして思えば、荒れていたからこそその時期を乗り越えられたとも言えるかも
しれませんが、とにかくその頃の僕らは荒んだ、刹那的な生き方をしていました・・・。」
私は、彼らのその当時の「荒んだ生き方」というものの内容までを聞く気にはなれませんでした。原因が
解かっただけでもう充分でした。その先の詳細を知ることがとても怖かったのです。だから、私はアナゴさんに
言葉を止めて欲しいと思っていたのですが、アナゴさんはそんな私の気持ちを察したように言いました。
「その荒れた生き方がどんなものだったのかまでは僕には言えません。フグタ君の名誉にだって関わるかも
知れませんからね。・・・それに奥さんだってそこまで知りたいわけでは無いのでしょう?」
私は頷きました。そして、胸が重くなりました。・・・とても、私がどうにかできる問題では無かったのです。
マスオさんの過去に横たわる「影」を出来る事なら取り除いてあげたくてようやく知ったその事実は、
とても私が手を出せるような問題では無かったんです。私は自分の無力を恨みました。そして、アナゴさんに
対して正直に自分の気持ちを述べました。
「・・・ごめんなさい・・・無理に聞き出してしまったみたいで。もっと申し訳ないのは、それを聞いてしまった
ところで私はマスオさんを救ってはあげられないということです・・・。私は無力です・・・。」
アナゴさんは過去を話していたそれまでの硬い表情から、いつもの柔らかい表情に戻って言いました。
457 :
774RR:2007/05/21(月) 01:30:46 ID:03iw9jkw
C
「・・・しかし驚きましたよ。奥さん、あなたはフグタ君のことを実によく解かってらっしゃる。あの頃の
出来事を知らない人で、フグタ君の心の「影」の存在に気が付いたのはあなただけです。ことによると、
サザエさんよりもフグタ君のことをよく解かってらっしゃる。」
私の言葉に直接返答をせず、アナゴさんはそう言いました。そして言葉を続けました。
「僕があなたに僕らの過去をお話したのは他でもない。奥さんがフグタ君の救いになりうると思ったからです。」
「・・・なぜ?」
「人は、その過去を受け止めて包んでくれる存在が必要なんですよ。僕の場合は幸いに・・・妻が、その過去に
亡くなった人の忘れ形見みたいなものです。全てを知っていて、それで何も言わずに僕と人生を共に
歩いてくれている。もしかしたら、僕に気がつかれない様に軌道修正してくれているのかも知れませんがね。
僕は妻の存在があるからこうして日々を平気な顔をして生きていられるのかも知れません。まぁ、上州名物
カカア天下ですがね。」
そして再びアナゴさんはすこし沈痛な面持ちになって言いました。
「ところがフグタ君の場合は・・・ちょっとね。サザエさんは彼の過去を知らない。それにあんな性格でしょう?
なかなか人のデリケートな部分に気が付きにくい性格なんでしょうな。フグタ君だって自分から言い出そうとは
しないし、言ったところでどこまで重く受け止めてもらえるかも怪しいでしょうね。」
私は思わず、脳裏に明るく快活でだからこそ捉えどころの無い夫の顔を思い浮かべました・・・。
459 :
774RR:2007/05/21(月) 01:32:06 ID:nh7Zzf0v
連投支援
「それにね、今のフグタ君の状況はちとややこしい事になっていましてね・・・。サザエさんに彼の救いを
求めるような状況ではないんですよ・・・。」
それを聞いた時、横須賀で見たサザエさんの事が頭に突然浮かび、私の体はビクッと動きました。
私の膝で揺らされて、テーブルの上のコーヒーカップがカチャッと鳴りました。
「・・・奥さん、もしかして知ってらしゃる・・・?」
私は下を向いたまま、「偶然見たんです・・・。」と小声で呟やきました。そして、ふと何故アナゴさんが
それを知っているのかを考えた時、私は驚いて顔を上げました。そしてアナゴさんに聞きました。
「まさか・・・マスオさんも?」
アナゴさんは、露骨に大きな溜息をつきました。そして、相当に哀しい目をして言いました。
「・・・はい、彼は知ってしまっている・・・。彼は・・・フグタ君は全て知っていながら、普段どおりに暮らしている。
いつも通り笑い、いつも通り会社に行き、いつも通り家に戻る・・・。彼は言いました。僕はそれでも妻を愛して
いるんだ、と。彼女のパワーを貰って僕は生きてこれた。とても感謝している。だから、今回の事だって
そのパワーが少し間違った方向に行っただけなんだから、僕は許すんだ。・・・ってね。」
「・・・そんな。」
「えぇ、僕もその話を知った時は怒りました。お人好しも大概にしろってね。いえ、お恥かしい話
なんですがね、彼の胸倉に掴みかかりましたよ。でも彼は言うんです。きっと僕のせいなんだからって・・・。
・・・たぶん彼は怖いんです。早くに父親を亡くして母子家庭だった彼が、思いがけず手に入れた賑やかで
幸せな家庭を失うのが怖いんでしょうね。自分さえ我慢していれば・・・そう思っているんだと思います。」
461 :
774RR:2007/05/21(月) 01:32:59 ID:03iw9jkw
C
462 :
774RR:2007/05/21(月) 01:34:10 ID:V/fp0UO1
C
私はもう流れ出す涙を止める事が出来ませんでした。ポーチからハンカチを取り出して人目はばからず
目頭をおさえました。アナゴさんはそんな私を前にして、少し慌てたようでした。
「ですから、奥さん。あなたにお願いするんです。どうか、フグタ君を照らす光になってあげて欲しいと・・・。」
「・・・でも、私どうしたらよいのか・・・。私なんかにはどうにもできません・・・。」
アナゴさんは、優しい口調に戻って言いました。
「奥さん、今まで誰にも話してこなかった僕らの過去を何故あなたにお話したのか、理由を説明します。
いえ、お気を悪くしないでいただきたい。僕はこれは真実だと思ってます。・・・奥さん、あなたは
フグタ君にずっと恋をしているんだと思います。」
「そんな・・・私・・・。」
「いえ、解かっております。僕が妻を愛するように奥さんが旦那さんのことを愛しておられるのも。しかし、
そういうこととは少し次元の違う話なんです。おそらく奥さんの心にとってフグタ君は、ご主人や
息子さんとも異なる大切な一本の幹になっているはずです。学生時代から大切に少しずつ育ててきた
確かな心の拠り所のはずです・・・。」
少しクサイですかね、とアナゴさんは顔を赤らめました。
「あなたはフグタ君の様子につぶさに気が付いた。そして、その心の内を知りたいと思った。知らないと
居ても立ってもいられなかった。剥きになって僕からそれを聞き出そうとした。そしてそれを知ったとき、
あなたは泣いた・・・。
そんな感情を表す言葉を、僕は「恋」以外に知りません。あなたは常識的な人間として、幸せに結婚生活を
続けながら自分でも気が付かない心の深い深いところで、静かに穏やかにフグタ君を想っているんです。」
私はアナゴさんの言葉を否定しませんでした・・・。いえ、むしろ自分でも気が付かなかったもやもやとした
部分を明るみにしてくれたその言葉を私は清清しい思いで聞いていました。・・・そう、私はマスオさんに
ずっと恋をしていたのかもしれませんでした・・・。
「そしてね、これはあなたがフグタ君のバイクの後ろに乗った事があると教えてくれた時に僕の頭の中で
繋がった事なんですがね、たぶんフグタ君も今僕があなたの恋心を説明したのと全く同じような気持ちを
あなたに対して持っているんじゃあないでしょうか?」
「えっ!?」
「こう見えても、僕は彼と十年来の非常に濃い付き合いをしている。彼のことは大体よく解かっているつもり
です。だから、あなたとフグタ君が学生時代の北海道で出会っていたと知って、ふと思い返しました。
確かにフグタ君はあなたとあなた以外の女性に対する様子が違う。さっき、ここに入って来たあなたを
見つけた時だって、彼の目はすっかり輝いていた。・・・断言します。あいつもまた、あなたに対する恋心を
大学時代の北海道に時間を止めたまま持ち続けています。」
465 :
774RR:2007/05/21(月) 01:36:47 ID:03iw9jkw
C
さっきの私の恋心を見抜かれた時と異なり、あまりに予想外だったそのアナゴさんの言葉を、私は
にわかに信じがたく感じました。
そして、アナゴさんは突然かしこまったようにテーブルに両手を置いて私に頭を下げました。
「奥さん、どうかフグタ君を救ってあげて下さい。もはやそれが出来るのは世界中に奥さんしかいないんです。」
私はそのアナゴさんの姿が、いつかのテレビドラマで見た「娘さんを僕に下さい」といったような姿にそっくりで、
それが少し滑稽だったので苦笑しながら言いました。
「頭を上げてください、アナゴさん。・・・でも私、どうしたらいいんでしょうか・・・?」
「いえ、特に何もする必要は無いと思います。」
「え?」
「今までどおりのあなたでいいと思います。そして、近くで見守っていて欲しいんです。それで充分だと
思います。それでは奥さんは納得しないかも知れませんが、少なくとも奥さんはフグタ君の過去を知った
わけで、これまでの得体の知れない距離感が少なからず縮まったはずです。奥さんがフグタ君の苦悩を
知ったことは決して無駄ではない方向に動くと思います。」
「・・・そうでしょうか?」
「奥さん、人は光一つ無い夜道を歩く事なんて出来ません。でも、月明かりさえあれば、ゆっくりでも前に
向かって歩いていけるものです。さっき、僕は奥さんに彼の光になって欲しいとお願いしましたが、そんな
月明かりのような存在になっていただきたいのです。彼の闇を優しくほのかに照らし導く存在になって
頂きたいのです。」
言い終わってから、「やっぱりクサいですな」とアナゴさんは頭を掻きました。
「私に出来るでしょうか?」
「・・・僕じゃあダメなんです。同じ傷を受けたもの同士ではダメなんです。傷の舐めあいでは、ともすれば
より深い闇に落ちてゆくスパイラルに陥りかねません・・・。実際、あの頃の僕達はそうでした・・・。
どうか、どうか、一人真っ暗な底にいるあいつの事を救ってあげて下さい・・・。」
私はアナゴさんが、心の底からフグタさんの事を理解し、そして心配しているのだという事を感じました。
その様子に、「親友」という本来使えばチープになってしまう言葉がしっかりと存在していると感じました。
そして私は、自分に出来る事ならマスオさんを救ってあげたいという望みを持っていたことを思い出し
ました。私にも出来る事がある・・・、私にしか出来ない事がある・・・。そう思ったとき、打算も躊躇も無く
私はアナゴさんに答えていました。短くても、確かな意思に基づいた返答でした・・・。
「・・・わかりました。」
「・・・ありがとうございます。なにとぞ・・・。」
・・・長かった会話は、その短い二言で終わりを告げました。
マスオさんの過去と現在に対する少し辛い気持ち。気がつかされた私自身の奇妙な恋心。そして、
アナゴさんの優しさ・・・。たくさんの感情が私の中で入り混じり、少し心が疲れましたが、それでも
相当大きな胸のつかえが取れたような爽やかな気持ちでした。
「普段はこんなに喋らないんですよ。唇が重いんで疲れるんです。いやぁ今日は疲れたなぁ。」
笑っていいものかどうか困っている私を前に、アナゴさんは突然バツの悪そうな顔で言いました。
「奥さん・・・。僕は奥さんの秘密を聞いたし、フグタ君の過去だって勝手に話してしまった。それで
自分のことだけ何にも言わないのはもの凄く腹持ちが悪いのです。・・・だから、僕の秘密も話します。
奥さんにとっちゃあ、ちっとも足しにならん事ですが、聞いてください。・・・実は・・・。」
アナゴさんは、声を潜めました。私は心持ち首を前に寄せアナゴさんの小さな声を聞こうとしました。
「さっき、僕はバイクに乗ってないって言いましたがね・・・。申し訳ない、ありゃウソです。ホントは
乗ってるんです。」
「えっ?マスオさんはご存知で?」
「いやぁ、知らんでしょう。確かに就職してから一度はやめたんです。もろもろの理由が積み重なってね。
でも、僕は我慢できなかった・・・。やっぱり乗っちゃったんですよ。
ただ、自分からフグタ君を誘うのは怖いんです。バイクに乗ると、いつ何が起こるか解かりませんからね。
自分から誘ってフグタ君に何かあったとしたら、僕はもう生きていけない。死ぬしかないでしょうな。
だから彼を誘うのが怖いんです。・・・ただ、たぶんそのうちフグタ君も自分からバイクの世界に戻ってくると
信じてます。ですから・・・誰にも内緒ですよ、奥さん・・・。」
「えぇ、わかりました、約束します。指きりでもします?」
「いやぁ、こんなところで勘弁してください〜。」
469 :
774RR:2007/05/21(月) 01:39:13 ID:bNFBFWZ6
C
私達は、ここまでの会話の中で初めて心の底から笑いあいました。そしてマスオさんの過去を聞けたのが、
この人の口からで本当によかったと思いました。そして、マスオさんがこの人に会えたのは本当に幸運だとも
思いました。
・・・アナゴさんは、マスオさんを救うのは「僕じゃあダメなんです」と言いました。でも・・・それは嘘です。
マスオさんはおそらく何度と無くアナゴさんに助けられたでしょう。そして、アナゴさんもまたマスオさんに
助けられたんでしょう。二人の繋がりが二人の存在を馴れ合うことなく支えあっているのだと、私は
感じていました。
そこに、やっと電話を掛け終わったマスオさんが帰ってきました。それを横目で確認したアナゴさんは、
今までの私との会話が全くウソのように元の様子に戻り、そしてやや大きめの声でマスオさんに向かって
言いました。
「おう!長かったなぁ。部長、なんだって?」
「アナゴ君、大変だ!今日、シーバス社に山本君がプレゼンに行くはずだったろ?」
「あぁ、あいつ張り切ってたなぁ。」
「それが、山本君、さっき会社で資料の準備してて書類の入ったダンボール箱持ってギックリ腰に
なっちゃったらしいんだよ!」
「なにィ!?あの、バカ・・・。」
「で、プロジェクトの経緯を把握してる僕達が代わりに先方に行ってくれって言われたんだ。」
「でも確か4時からだったろ?今から間にあうか?それに俺達の営業はどうするんだよ。」
「僕らの業務は小林君に電話で引き継いでおいたから代わりに行ってもらうよ。とにかく、僕は先に
シーバスに向かって事情を説明するから、君は社に戻って資料を持ってきてくれないか。」
「よし来たっ!」
「じゃあ、タイコさん申し訳ないですけど僕らは先に行きますね。」
マスオさんがそう言ってレジに向かうと、アナゴさんはテーブルの上の伝票を私達の分まで持っていこうと
しました。
「あっ、それは・・・」
するとアナゴさんは、悪戯っぽい事務調子で言いました。
「こちらは依頼料でございます。先ほどの件、なにとぞよろしくお願いいたします。」
「なになに?なんの話?」
「なんでもねーよ!いいから早く行けっ!」
「わかったよ。じゃあ、タイコさん、また!」
そして二人は転がるように仕事に戻っていきました。窓の外を走ってゆく二人。アナゴさんがチラッと
こっちを見て会釈をしました・・・。どうかフグタ君をよろしくお願いしますと言わんばかりに・・・。
私は、そんな二人の関係を少し嫉妬しました。そして、気持ちのよい二人の後姿が雑踏に消えてゆくまで、
私はずっと見守っていました・・・。理由のわからない、でもあたたかい涙が頬を伝っていました・・・。
眠りから覚めた息子が、その涙を見て「ママ、どうしたの?どこか痛いの?」と聞いてきました。
私は笑いながら、「大丈夫よ。嬉しくて出る涙だってあるのよ。」と言いました。そう言ってから、アナゴさんの
クサいセリフ回しに乗りうつられたような気がして、私は苦笑しました。
そうして、私の心の苦しみはその日を境に溶け出していったのです・・・。
473 :
sage:2007/05/21(月) 01:43:01 ID:VMHArCWR
つC
誰か映画化してくれ
それから私は、それまでと変わらないマスオさんとの関係を保っています。そして掴み所が無くたって
おそらく私を裏切っていないであろう夫の事も変わらず愛しています。
内緒なんですが・・・あれから少し経ってマスオさんもオートバイに再び乗り始めたようです。周囲の
誰にも秘密で乗っているようですが、駅前を駆け抜けていった真っ黒の大きなオートバイに乗っていた
のは確かにマスオさんだったと思います。ヘルメットで顔を隠した無駄です。私にはあの「背中」で
わかっちゃうんですから。
それと前後するように、マスオさんに少し変化があるように思えました。彼の笑顔にあの日の開陽台で
見た面影が戻ってきたような気がするんです。もちろんそれは私しか気がついていません。
それが再び乗り始めたオートバイのおかげなのか、アナゴさんが言ったように私が少なからず力に
なれたのかは解かりませんが、それはどっちでもよいのです。それで私も幸せな気持ちになれるん
ですから。
475 :
774RR:2007/05/21(月) 01:44:26 ID:nh7Zzf0v
4円
私はマスオさんの月です。マスオさんを遠くから見守る月です。それはちっとも辛い事じゃありません。
マスオさんと一緒に居るとき、いつだって学生時代のように少しドキドキして、そして暖かい気持ちに
なれるんです。もしかしたら、時に人生の中で挫けそうになる私の足元を転ばないように照らしてくれて
いる月はマスオさんなのかも知れません・・・。
私はそんな関係を、とても幸せに思っています。私はずっと、マスオさんを青い光で照らす月でありたい
と願っています・・・。
笑顔絶えない愛する夫・・・。いとおしい我が息子・・・。過保護だった大切な両親・・・。そして、優しさと
ぬくもりをくれるあの人・・・。私は人生に感謝しています。いつだって悩みは絶えませんが、そんな
苦労も含めた私の人生を彩る人々の存在に今は感謝しています。
・・・私が学生時代に専攻したイタリア語に、こんな格言があります。
Malgrado tutto,la vita e` bella,degna di essere vissuta.
〜何があったって人生は素晴らしい。生きる価値があるものだ。〜
月は今日もあの人を照らします・・・。
そう、あの人に出会えた素晴らしい人生に感謝しながら・・・。
〜Fin〜
477 :
774RR:2007/05/21(月) 01:46:02 ID:V/fp0UO1
乙
478 :
774RR:2007/05/21(月) 01:47:49 ID:hCRUrSEc
リアルタイムktkr!
CCCCC
479 :
774RR:2007/05/21(月) 01:48:46 ID:03iw9jkw
ネタスレの頃から付き合ってるけどスゲー興奮した!
480 :
774RR:2007/05/21(月) 02:09:31 ID:nh7Zzf0v
なんなんだこの清涼感は、、、
俺じゃ表現できねえなw
猛烈4円
481 :
774RR:2007/05/21(月) 04:48:46 ID:/GFxkBED
CCCC
30回読んだ
乙です!
最高!
482 :
774RR:2007/05/21(月) 05:55:43 ID:NZbEBfW4
感想を書こうとしたが安っぽい言葉しか出てこないぜ
とにかくCCCCCCCCCCC!!
続きが気になって夜も眠れな・・・おやすみ
483 :
774RR:2007/05/21(月) 06:54:43 ID:dtkWUi2Z
つCage
484 :
774RR:2007/05/21(月) 06:59:54 ID:jgaIf/yy
CCCCCCC!!!!!
アナゴさんの、奥さんのくだりで泣けた
485 :
774RR:2007/05/21(月) 07:28:03 ID:GVRjfDLb
何か書かずにはいられない〜CCCCCCC!!!!
486 :
774RR:2007/05/21(月) 07:29:52 ID:9EFdrrdz
泣けた…
『電車男』に続いて単行本にして貰いたい位に素晴らしいCCCCCCCCCCCCCCCCCCCCC
487 :
774RR:2007/05/21(月) 07:37:30 ID:8Gu5uRr1
通勤途中の電車の中なのに人目をはばからず泣いた
488 :
774RR:2007/05/21(月) 08:06:37 ID:aDLB8RgF
おもしろい 最高
すごいです
489 :
774RR:2007/05/21(月) 08:20:48 ID:Em2T16Q1
文章をみて拍手するのって初めての経験。こりゃー仕事できねーわ。
つC
490 :
774RR:2007/05/21(月) 10:12:49 ID:BpckPaHq
こりゃたまらん。。。感涙ですわ
つC
491 :
774RR:2007/05/21(月) 11:22:34 ID:iosBnRiN
泣いた・・・
つPURPLE HAZE
492 :
774RR:2007/05/21(月) 12:45:23 ID:iCIWh2GX
俺も泣いたぜ…
つゴールドエクスペリエンス
493 :
774RR:2007/05/21(月) 13:47:02 ID:o1DPClIk
あんまり俺を泣かさないでくれよ
(つωT)
494 :
sage:2007/05/21(月) 18:59:54 ID:jkKoJaZ7
オレも今朝の通勤電車でや読んでたけど
かなりウルっときちゃったぜクソ
こ、今後こんなの書いたら許さないんだからっっ
495 :
774RR:2007/05/21(月) 19:13:41 ID:1vsSwPyX
>唇が重い
ここで、思わず笑って顔に手をやったら、頬が何故だか濡れていたよ…
496 :
774RR:2007/05/21(月) 19:25:20 ID:NuVMTiSa
締め方が素晴らしすぎる…感動したC
497 :
774RR:2007/05/21(月) 20:01:39 ID:N+9fFbjd
激ワロタ。「サザエさんはあの性格だから人のデリケートな部分に気付かない」
確かにw
ていうかこんな大人なサザエさん聞きたくねえよ!
498 :
774RR:2007/05/21(月) 20:36:50 ID:pmLOC1/x
イイ!
しかし、魔棲雄の最終回じゃないでしょうね?
魔棲雄の続きまだまだ読めるんですよね!?
499 :
774RR:2007/05/21(月) 20:51:32 ID:iU0nbKGw
タイコと指切りしてェ〜!
500 :
774RR:2007/05/21(月) 21:11:39 ID:RmfAwgGg
感動のあまり職場で脱糞したC(←トイレットペーパー)
つC
501 :
774RR:2007/05/21(月) 21:14:42 ID:2wEBPWhh
一言だけ。
アナゴさんに惚れた!!
502 :
774RR:2007/05/21(月) 21:35:31 ID:H5X8iT76
惚れた、アナゴさんに惚れた!
アナゴさんのあの分厚い唇にならフェラされてもいい!
503 :
774RR:2007/05/21(月) 21:57:32 ID:Y8ETlUCb
荒んだ二人のDQN行為にwktk
ハンマーグローブで窓破ってドライバー引きずり出すんだろ
504 :
774RR:2007/05/21(月) 23:50:39 ID:UnLxNv4j
いや、きっと暴走族の総長とガチンコタイマンレースだろう。
505 :
774RR:2007/05/22(火) 01:33:03 ID:kM2XYskS
>>504 懐かしい設定じゃのぉ…
あのスレも遠い日々になってしもうた。
ここは末永くあってほしいのぅ…
(´・ω・`)っC
506 :
774RR:2007/05/22(火) 10:13:30 ID:7BNaFlq3
つC
読んでいて夏目漱石のこころを思い出した。
507 :
774RR:2007/05/22(火) 11:28:30 ID:iKNP07F7
つC
「バイクに乗り続ける限り青春は続くんだ」で
グッと来ました。
諸事情でバイクを手放すかどうか悩んでいたときに
このマスオ物語に出会いました。
バイクに乗り続ける、青春を終わらせない
決心がつきました。
ありがとうです。
508 :
774RR:2007/05/22(火) 12:35:01 ID:1m9/Shqb
>>507 アンタのコトだ
今回魔棲雄読んでなくてバイク手放したとしても
いつかこっち側に戻ってくるだろうがなクーックククククク…
509 :
774RR:2007/05/22(火) 13:43:07 ID:RYpF5oNo
誰の心にも魔棲男のように魔が棲んでいるという事か。
510 :
774RR:2007/05/22(火) 15:39:58 ID:e65yf0ff
>>魔棲雄氏CCC
ありがとうございます
511 :
774RR:2007/05/22(火) 18:54:25 ID:mizNw7Tx
ん〜、ここは相変わらずクオリティ高すぎですね〜
時期が時期なら即Flash化されてそう。
512 :
774RR:2007/05/22(火) 19:51:20 ID:U9ZM8v8F
気分転換で書いたものがこのクオリティっておかしいだろ
魔棲雄氏脚本で映画化してくれよ〜
513 :
774RR:2007/05/22(火) 21:37:39 ID:rt9brM+O
>>506 確かに似てるとこもあるかもね。
と言ってもパクリって事じゃなく、ある人の過去が気になる→過去を知るっつー流れは王道だからね。
さしずめ・・・
先生→マスオ
私(&お嬢さん)→タイコ
K→鈴木さん
先生の書いた遺書→アナゴ
乃木准将→イクラ
ってとこだな。
514 :
774RR:2007/05/22(火) 21:56:58 ID:E5f6mcuw
乃木准将→イクラ
ちょwwwwww
515 :
華:2007/05/22(火) 22:26:02 ID:Ir157bvw
魔棲雄 つC
本当に面白いです!読んでてドキドキしました。
今後の展開凄く楽しみにしております。
私用が重なりタイプする時間が取れず更新出来ませんでしたが
久し振りに更新します。
↓【星に願いを編】続き↓
516 :
華:2007/05/22(火) 22:26:47 ID:Ir157bvw
日差しが差し込むPOPモータースへ私は汗だくになりながらお店へと駆け込んだ。
私が一番だ!と意気込んで「おはようございますっ!」と豚鼻から蒸気機関車の様な力強い鼻息を撒き散らしながらポップさんへ挨拶をした。
だが、待ちきれなかったのは私だけではない。 既に早川さんが奥の作業場でTDRを我が子の様に可愛がりながら、まだ汚れてもいない車輌を磨いて私を待っていた。
「は、早川さん…は、はやいっ!」目を輝かせてTDRを磨く早川さんを見てスグに声を出した。
「うふふ、だって〜 早く乗りたくってっ!」異常なまでのテンションの見せ付けられ思わず笑ってしまった。
「花ちゃん、昨日寝れた〜?」と手を止めることなく笑顔で私に聞いてきた。
「うん、早く乗りたくなっちゃって でも気付いたら寝ちゃってた」と額の汗を拭いながら答えた。
「私も興奮しちゃって でもちゃんと寝れたよ〜」と嬉しそうに答える早川さんを見て私も嬉しくなった。
ドッドッドッドッ―… ヴァルン―… 歯切れの良い空冷OHC単気筒が店先でピタリと止まった。
「あ、翁だっ!」早川さんはSRX独特のサウンドでスグに翁だと気付きショールームへひょいと身を乗り出した。
徐々に気温が上がり始め、日差しは更に強くなる。だが、翁は私を助けてくれたあの日と変わらぬ姿でショールームへと一歩、一歩と歩き出す。
あの時と変わらぬレザーのギュッ、ギュッという音と共に。
シンプソンのミラーシールドを開き、いつもと変わらぬ優しい瞳で「早いね、お二人さん」そう言いながら大きなドラムバッグを床に置き、ヘルメットを脱ぎ出した。
「おはようございます。今日から宜しくお願いします」と二人で挨拶をすれば優しく微笑む。
517 :
華:2007/05/22(火) 22:27:32 ID:Ir157bvw
「おはよう、二人共。昨日は寝れたかな?」と聞く翁の言葉に口元でクスッと二人共笑いながら「良く寝れましたよ」と私達は答えた。
「そうか、結構、結構」と両手を腰に付けて笑い出す。
「今日から二人の事、お願いします。」そうポップさんはキャップを脱いで一礼する。
「ふふふ、ポップ君 二人にちゃんと交通社会を教えるさ」そうポップさんへ言い出した。
「さて、二人共 早速公道をこれから走る訳だけども、ヘルメットやジャケットそしてグローブは持っているかな?」と翁は私達に聞いてきた。
「あっ!!ヘ、ヘルメット…!!」と私が咄嗟に言葉を出せば早川さんも「ああっ!」と声を出した。
「はっはっはっは!免許とバイクに夢中になりすぎてライディングギアを忘れるとはね」と苦笑いしながら翁は私達をからかう。
「ほ、本当かい?二人共? てっきり一式揃えているものかと…」とポップさんも苦笑いしながら笑い出した。
「浦野君がね、よく二人の会話を聞いてる時にライディングギアの話が出てこなかったと言っていたものでね まさかと思って用意したんだよ」
そう言いながら足元に置いたドラムバックを開いて白バイ隊員の様なジェットヘルメットを二つと革のグローブを2つ私達へ手渡した。
「あぁ〜ん… TDRに夢中になりすぎてヘルメットとグローブ忘れるなんて…」と早川さんは恥かしそうに言い出した。
「ホントね…免許取るのとバイクに夢中になりすぎたわ…」と私も同じく恥かしくなった。
「そのヘルメットとグローブはウキエのお古だがね。」と私達に説明し出した。
「えっ!!ウキエさんバイク乗るんですかっ?」とあまりにも唐突に言い出す翁に驚いて私は声を張り上げてしまった。
「はっはっは、ウキエは都内の白バイ隊員だよ。」と笑いながら翁は答える。
聞く所によれば短大卒業後に警察学校へと進み、今は新米白バイ隊員として都内を巡回しているそうだ。
いずれは神奈川へ移動を要請するらしいが、それが何故なのかは今の私達には分かる筈も無い。
518 :
華:2007/05/22(火) 22:28:17 ID:Ir157bvw
「そういえば、翁は…この真夏にその黒の革ジャン…暑くないのですか?」と私は翁に質問した。
「もう歳だからね。体を冷やさないようにしているのだよ」と本当なのか?嘘なのか?そんな誤魔化したかの様な顔をしながら答えた。
「さっ!二人共、ヘルメットとグローブはめて思うままに行くがいいさ」とポップさんはポンと私達の背中を掌で押す。
「それでは、二人のライディングギアを買いに上野バイク街へ行くとするか」と翁は何やら嬉しそうに言い出す。
「いいですね。二人に似合ったモノを選んであげて下さい」そうポップさんはタオルで顔の汗を拭い、私達の車輌を外へと運び出した。
これから私の愛機となるNSR250Rを私は眺めた。 空は雲ひとつ無い青空へアンダーカウルからテールカウルへ突き刺す3本のラインが眩しい。
「ふむ、ポップ君 あの88は残してあるのかな?」そうポップさんに問う。
「ええ、クロスミッションと軽量フライホイールはそのまま残してあります。リミッターも解除されてますよ」とポップさんは答える。
その意味がまだ私にはわからなかった…
その内に秘めた『求めれば応える獣』が私の血を沸騰させ『花』から『華』へと昇華させるにはまだまだ先の事になる。
「彼の娘だ。女の子だし身を削るような事はせんだろう」そう翁はポップさんに小声で言ったが私には何て言ったのかメイン通りから聞こえるトラックの音でよく聞こえなかった。
「大丈夫ですよ。 マシンが人を選んだ… ですよね?」とポップさんは翁をからかう。
「はっはっはっ! それを信じない人間が『大丈夫』かな?」と意地悪する様な顔でポップさんをからかっては二人は大笑いしだした。
519 :
華:2007/05/22(火) 22:29:08 ID:Ir157bvw
私達はヘルメットとグローブをはめ、キーを回しキックをしてエンジンに火を入れる。それを見て翁もセルを回す。
2stのサウンドと単気筒のサウンドが心地良く織り交ざる。
「二人共、ゆっくりでいい。ゆっくり発進して確実にシフトアップさせていくんだ。シフトアップ後にいきなりアクセル回さない様に気をつけて」と大きな声で私達にポップさんは説明する。
翁はカシャンとミラーシールドを降ろし、ゆっくりと進み出して「よし、行こうか!」と声を出した。
私達は声を揃えて「はいっ!」と答えニュートラルから1速へ入れ、ゆっくりクラッチレバーを開き始めた。
ポップさんが店先で私達を見送るのが左ミラーから見える。翁がポップさんへサムアップしポップさんもサムアップで返す。
それを見た早川さんも真似てサムアップをポップさんへ贈る。
そんな姿を見て笑いながら私もポップさんへサムアップして私達はゆっくりと、今ポップモータースから走り始めた。
これから翁の厳しくも優しい交通社会の事や危険予測、そしてバイクの乗り方を時間を掛けてゆっくり…ゆっくりと確実に叩き込まれる。
そしてバイクの『本当の楽しさ』をこれから私達はこの人から教えられる事になる。
520 :
華:2007/05/22(火) 22:34:49 ID:Ir157bvw
ね、寝ます…orz
521 :
774RR:2007/05/22(火) 22:34:54 ID:ywRkkc80
wktk
522 :
774RR:2007/05/22(火) 23:02:16 ID:K0e5hzxE
前回までのあらすじ忘れてしまった
523 :
774RR:2007/05/22(火) 23:12:36 ID:MvogXbnf
ウキエさん白バイ隊員かYO!
524 :
774RR:2007/05/22(火) 23:21:42 ID:e65yf0ff
華氏待ってました!CCC
525 :
774RR:2007/05/23(水) 00:01:49 ID:wCrqNTeW
アナゴくんの喋りが、すべて若本声で再生された俺が久々にスレを覗きに来ましたよ・・・
ハナさんもマスオさんも、GJ!
526 :
774RR:2007/05/23(水) 00:34:10 ID:Qizm2AFR
マスヲ氏のあの作品を読んだ後は華のはかなり見劣りするな…
しかもブランク開きすぎてすっかり忘れたし。
527 :
774RR:2007/05/23(水) 00:52:26 ID:Z6yoDfHq
ああ華ってまだいたんだ、乙w
528 :
774RR:2007/05/23(水) 01:06:44 ID:L3CJV0Y/
>>525 俺も。 しかも全く違和感がないんだ 魔棲雄氏スゴス
つC >華氏
イササカ先生の言葉の一句一句が物書きのそれらしいところに萌えですw
どうぞ、マイペースでお進め下さいませ(お互いにねw)
え〜。大変長くなってしまい申し訳なく思うところの「タイコの告白」ですが、ちょっと後述させて
下さい。
>>506さんに関しては、非常にするどい御感想を頂き、ドキリとしました。
私も、書いているうちに全部じゃないんですが、それでも何かに似てるなぁ、と思ってたんです。
で、あぁそうか「こころ」だと。
>>376で自ら漱石の名を既出しておきながらいまさらだなぁなんて
思っちゃいましたw
ある人の心の影を突き止めたい人や、そのある人の影が人の死という過去に繋がったりしている部分は
確かにその通りなんですよね。いえ、もうただ学生の頃好きだったお話なんですが、十年以上経って
無意識にインスパイア(まぁ偶然かもしれませんが。そもそもありがちな話ですしねw)されていた
ことに少し驚いたりして。
で、今、学生以来初めて少しだけ読み返してみたんですが・・・、いやもう、今で言うツンデレや萌え
(特に「お嬢さん」なんて典型的萌えキャラw)といった要素を、大正時代に先取りした偉大な先人の
偉業(?)に改めて気がついちゃったりして、新発見がいっぱいで面白いです。
>>525、
>>528さん
若本ヴォイスに関してそのような感想を抱いて頂き、「してやったり!」と嬉しい次第ですw
何故かと言うと、今回は特にアナゴ君のセリフ部分を念入りに自分で若本ヴォイスの
物真似(似てないんです、これがw)で確認、修正を加えたんですからw
・・・最近、自分で振った展開の重苦しさに少し筆が重かったんです。タイコの一件で、少し
吹っ切れたような気がします。本編もなんとかかんとか作成中ですので、しばしお待ち下さい。
530 :
774RR:2007/05/23(水) 02:15:25 ID:KLmdbDxj
C
ノリスケの活躍にも期待
531 :
774RR:2007/05/23(水) 02:35:01 ID:iQ4FYSLI
ありがちな話て・・・それは漱石に失礼かと
とにかく魔棲雄氏、華氏に
つC
つC
532 :
774RR:2007/05/23(水) 05:35:04 ID:qgq7agDY
>>531 あ、これは失礼いたしました。
「ありがち」というのは、私の方に対してのみあてはめたつもりでした。
発表された時間軸的に見ても、もちろん漱石の作品が「ありがち」なもの
では無い事は明白です。言葉足らずで誤解を招いてしまい申し訳ありませんm(_ _)m
>>474 ご指摘感謝です。該当部分を、
>>ヘルメットで顔を隠したって無駄です。
・・・に訂正いたします。
534 :
774RR:2007/05/23(水) 07:02:44 ID:cfJzxCD8
華乙
535 :
774RR:2007/05/23(水) 07:03:43 ID:qgq7agDY
>>533 べ、別に続きなんて期待してないんだからね!?
た、たまたま気づいたからだけなんだらっ!!111
536 :
774RR:2007/05/23(水) 07:25:34 ID:rm9E7uz+
>>531 そんな言葉尻よりもさ、あのタイミングで裏話まで持ち出して初期消火と華への援護射撃を
買って出た気遣いを汲んであげて欲しいな。
537 :
774RR:2007/05/23(水) 09:40:42 ID:C8gEfcYV
マスオ物語も素晴らしいが、華物語も素晴らしい。
きっといつか、この二つのストーリーが交錯する場面があると思う。
二人の思惑を越えて、どこかでシンクロする物語…。
久しぶりに素敵な小説に出会えた気がする。
538 :
774RR:2007/05/23(水) 13:07:07 ID:Qizm2AFR
無理に交錯させるような発言はやめろよ。
作者タソが書きづらくなるだろ。
539 :
774RR:2007/05/23(水) 13:35:37 ID:t/C6KmNZ
まとめ人も乙
540 :
774RR:2007/05/23(水) 18:44:40 ID:gIZ4cxXn
基本パラレルでいいんじゃないでしょうか。
作者様各位にC
541 :
774RR:2007/05/23(水) 19:36:20 ID:53ab5A5k
542 :
774RR:2007/05/23(水) 20:11:16 ID:Z6yoDfHq
そんなことねえよ
2ストなんか興味ないし
543 :
774RR:2007/05/23(水) 20:39:42 ID:lFejcX4v
オレは542の童貞に興味ないけどな(´_ゝ`)
544 :
774RR:2007/05/23(水) 21:02:31 ID:4qkPc1Lq
時系列的には、アナゴ外伝のしばらく前の話
になるのかな?
545 :
774RR:2007/05/24(木) 16:40:42 ID:mz42BRP9
ちなみにオレも童貞
546 :
774RR:2007/05/24(木) 18:11:14 ID:+ULjMkbi
>>545 聞いてねえよww
ちなみに俺も童貞
作者様C
547 :
774RR:2007/05/24(木) 19:59:20 ID:hu65MGjF
マジでここ覗くの楽しみなんだよなぁ。
じらされてる感じもまたイイ!
CCCCC
あと、おれもここ二日ほど童貞だけどな。
548 :
774RR:2007/05/24(木) 20:12:22 ID:JsUYyJ39
俺は2年半童貞
でもまだ前の女が好き
カエッテキテクレ
549 :
774RR:2007/05/24(木) 22:26:01 ID:EjWZg/qs
作者さんは何のバイク乗ってるんだろう?
ちなみにオレは女相手には童貞
550 :
774RR:2007/05/24(木) 23:16:29 ID:8RPGSRDs
>>549 ってことは
アッーーーーーー!?
(((゚Д゚;))))ザクグフゲルググ
551 :
774RR:2007/05/25(金) 04:14:49 ID:JlKqKlKD
ニューハーフと昔したけど俺には合わなかったな
突っ込まれてもただ苦しいだけですた
552 :
774RR:2007/05/25(金) 10:53:58 ID:yWgUN3lK
マ、マジレス?((((;゚Д゚)))アワワワワワ
553 :
774RR:2007/05/25(金) 11:27:32 ID:l9blVbda
というわけで童貞
つ童貞
554 :
774RR:2007/05/25(金) 14:23:16 ID:dT9H95rV
タバコも酒もやめられない俺だけど
とりあえず、童貞だけは自己記録更新中。
555 :
774RR:2007/05/25(金) 18:14:20 ID:Gyc67EJP
ね、寝ます…orz
556 :
774RR:2007/05/25(金) 21:02:39 ID:RFuYolio
>>551 最後まで行ったおまいスゴス!
いじくってたら一様、濡れはするんだけどどうも我慢汁の臭いくさいのよね
なんか冷めちゃって最後までイカなんだ
557 :
774RR:2007/05/25(金) 22:33:55 ID:/8q8fVKL
×一様
○一応
558 :
774RR:2007/05/26(土) 12:24:06 ID:z/bfTP8c
童貞スレからアナルスレに
つC
559 :
774RR:2007/05/26(土) 15:03:02 ID:yXIzKzVE
最っ低
専門スレに行け
560 :
774RR:2007/05/26(土) 15:13:33 ID:7ZA9ZaLJ
まあ、そう言うなw
イサキは嫌いじゃないんだろ?
561 :
774RR:2007/05/26(土) 16:21:57 ID:Pf+J+RVK
流れぶったぎるが、お世話になった人がバイクで亡くなったようだ…
まだ信じられない。そこに居て当たり前の人が、そこに居ない事に…
今入院している身で偉そうなことは言えないけど、みんな、絶対にバイクで死なないでくれ。
562 :
774RR:2007/05/26(土) 17:33:37 ID:xuyZHJ+f
明日は我が身か…ガクブル
563 :
774RR:2007/05/26(土) 20:19:21 ID:DHtIWDwq
>>561…なんもいえんけど、はやく体を直すんだ。
その方の分まで人生楽しみなよ。みんな気をつけような…
CCCCCCCC…
564 :
774RR:2007/05/26(土) 22:21:31 ID:QNYpJ39E
>>561 この時期に事故って入院すると辛いよね。
俺も5年前轢き逃げに遭って(犯人は2日後に逮捕)
GW中、井の頭通りに面した病院の窓からツーリングに行く
バイクをうらめしい表情で見ていた。
565 :
561:2007/05/26(土) 23:55:15 ID:Pf+J+RVK
>>563>>564ありがとう。
すでに二カ月半近く入院してるのだけど、先日また違う部位の骨折が発覚し手術、退院はまだ先になりそうです。
魔棲雄物語で思うのですが、本当に四輪のバイクに対する運転が呪わしい。
安全には非常に気を付けていたはずなのに、横暴運転四輪により今ここにいる現実。
それに加えて、言葉で聞いただけでいまだ現実感の伴わない、身近な人の死。
それでも、体が治ればバイクに乗ってしまうと思います。
なぜバイクなのか、バイクじゃなきゃ駄目なのか…
やはり魔物が棲んでいるのかな?
長々と駄文乱文すいませんでした。(こういう話嫌な方ホントごめんなさい)
亡くなった方は、おそらくここの住人でした。
あちらに行っても、好きなバイクに乗ったり、このスレを見てくれてたらいいな、と思います。
566 :
774RR:2007/05/27(日) 11:15:01 ID:yGH0S8iw
>>565 漏れは四輪乗りですが、一応気をつけて走ってるつもりです。
ただ、二輪に気を使うようになったのは原付に乗って走ってた事もあるからかなと言う気はします。
法定30km/h、実際の最高速でも60km/hぐらいしか出ない原付で大通りを走ると、やっぱり二輪の扱いの酷さを感じるんですよね。
(まぁ、四輪の方でも軽に乗ってるから扱いが酷いのはあまり変わらないんですが…)
やっぱり、四輪にしか乗らない状態だと二輪の状態って解らないので、
四輪免許の更新の時にでも、原付で大通りを走るような事をしたら良いんじゃないかと思います。
免許センターには大体の所でたくさんの原付が配備してありますし(原付免許を交付してるんだから当然でしょうが)、
やろうと思えば出来そうな気はするんですよね。
…まぁ、実際に外に出るのは危険だとかいろいろあるんでしょうけど、実際に危ない状態を体験しないと解らないと思うんですけどね。
漏れは気をつけて走ってると言っても、のんびりしたペースで走ってるという事もあるから、
中免マシンぐらいだと漏れの軽より確実に速いので、大抵は気を使って混走するような事はないんですけどね。
でも、原付に対しては距離をあけて追い越すとかやっていますよ。
(DQN車にギリギリで追い越しされて怖い思いをした事があったので)
長々と失礼しました。
作者様の投下、楽しみに待っています。CCC
567 :
774RR:2007/05/27(日) 18:52:04 ID:HxGZ4cmy
流れをプッタ切ってすみません。
サザエさんを直視できない…(゚д゚)=3
568 :
774RR:2007/05/27(日) 18:56:30 ID:BAUzsMPf
「タイコの告白」にある通りのノリスケのキャラ描写にワロス
569 :
774RR:2007/05/27(日) 19:08:09 ID:eH0OaUcE
ヒロシが活躍中だぜぇクーッククククク…
570 :
774RR:2007/05/27(日) 19:10:46 ID:eH0OaUcE
あぁ、すまねぇ…
子供が今日のちびまる子ちゃんのビデオ見てたよ
サザエさんの後にまる子ってコトはないね
571 :
774RR:2007/05/27(日) 20:45:05 ID:jcB5saos
今更だが、マトメサイトの『魔棲雄』の「あらすじ」を読み直してきた。
正直、あの時はまだ予感すらしていなかったが改めて読むと、震えがきた。
初めてマッドマックスPt.1を観たときにも似た高揚を味わった!
これからにも期待しまくりだぜ!
572 :
774RR:2007/05/28(月) 01:44:24 ID:RO0pcNvL
>>566 実際に乗ってみないとそのものの特性って言うのは分からないですよね。
バイクにはバイクの、四輪には四輪の、大型トラックやバスにはそれ特有の特性があって、
その特性の異なった物が混在して走っているのが公道の現状。
自分は最初原付→普通二輪→普通一種→大型二輪→大型一種→大型二種と免許を取ってきたんだけど、
車の免許の教習中にはいかに自分が四輪の事を考えないで走っていたか
大型自動車免許を取った時にも同じく大型車のことを考えた運転をしていなかったと痛感しました。
本当は体験学習みたいな感じで、免許取得や更新の際に所持してない免許の車種で教習所のコースか何かを
走ってみる機会があると良いんでしょうけど、現実的には不可能ですよね。
573 :
774RR:2007/05/28(月) 09:31:40 ID:Xyvfygcy
四輪vs二輪の話になると収拾つかなくなるからこれくらいにしとこうや
574 :
774RR:2007/05/28(月) 11:07:20 ID:fOIA+dKb
おばちゃんが一番危険ということでok
575 :
華:2007/05/28(月) 21:08:17 ID:dD/MCjkf
出発してから朝日ヶ丘駅から伸びるメイン通りに入り翁は私達をゆっくりと先導する。
私はてっきり環八に入り、そこから大きな通りを使って上野まで向かうものだと思っていたが、予想を遥かに越えた道を選び始めた。
というのも、私達3人がPOPモータースを出発したのが午前11時前だが、上野バイク街に到着したのは午後2時前になったからだ。
翁は大きな道を使用せず、わざと私達を細い道や視界の悪い場所、都内に入り乱れる複雑な交差点などをゆっくり走る。
「さて、二人共 ここの交差点だけどもね…」と翁は複雑交差点に差し掛かれば、そこに潜む危険性を丁寧に私達に教えてくれた。
時には冗談交じりの事を言いながらも一時停止を守る事や左右確認をする事などを教えてくれた。
早川さんが驚いていたのが駐車されているトラックを追い越す時、その前方に死角となる部分に人がいるという翁の指摘には心底驚いていた。
「あ、危なかった〜 わ、私一人だったら絶対進んでた…」と早川さんは驚きを隠せなかった様だ。
「そうだね。 こういう状況もありえるのが交通社会なんだよ。」と翁は一度エンジンを切って私達に説明し出した。
「教習所では本ばかりだったから解らなかったけども…実際はもの凄く怖いのですね。」と私は翁に言葉を返した。
「特に気を付けたいのは自分の通る道の近くに学校やスーパーがある事だね」と翁は言う。
「えっ?学校は分かる気がします。子供の飛び出し…ですよね? でもどうしてスーパーなのですか?」と早川さんは翁に質問した。
「ふふふ、それじゃ実際にこの近くにあるスーパーの近くに行ってみようか。」そう言いながら再びエンジンに火を入れ進み出した。
576 :
華:2007/05/28(月) 21:08:59 ID:dD/MCjkf
200m程進んだ所で近所の主婦と思われる人達が自転車でスーパーに向かう様子が私の目に映り込んできた。
すると一台の自転車が特に確認もせずスーっと道を横断しスーパーに向かう光景が見えてきた。
翁は決して慌てる様子も見せず一時停止をし、手をスッと差し出して横断しようとした主婦に渡るようにと合図する。
再び私達は進み出してスーパーの駐輪場に一時駐車して翁の話を聞く。
「よくわかったかな?」と翁は自販機からアイスコーヒーを3つ取り出して私達に差し出した。
「さ、ノド渇いただろう?浦野君のコーヒーとまでいかないけどね。」と笑いながら私達にアイスコーヒーを手渡した。
「ありがとうございます。 スーパーの近くって意外と危険なんですね…思いもしませんでした…」早川さんは缶のプルタグを取りアイスコーヒーを口へ運んだ。
「そうね。いつも買い出しに行く時こんな感じだし… バイクに乗って初めて気付いたわ…」と私も予想外の事に驚いていた。
「お二人はバイクという乗り物が交通社会でどのような位置にあるか知っているかな?」冷たく冷えたアイスコーヒーを翁はグイッと飲む。
「交通社会での…位置…ですか?」と早川さんは困惑しながら翁の顔を覗く。
「う〜ん… 位置?」と私も困惑して翁の顔を覗く。
「バイクという乗り物はね、人を轢いてしまう事もあれば車に轢かれる事もある。そして車と違うのはボディーに守られていない事だよ。」
「転んでしまえば速度によっては怪我をするし、最悪の時は死亡事故にも繋がる。 楽しい乗り物ではあるが厳しい乗り物でもあるんだよ」
そう言いながらアイスコーヒーを飲み干して自販機の横に備え付けられた空き缶入れに缶を入れた。
577 :
華:2007/05/28(月) 21:10:24 ID:dD/MCjkf
私は翁の言葉が教習所で教えられた事と同じ事なのに、現場でその状況を見せ付けられ、危険な状況を目の当たりにして本当に教習所で教えられた意味を理解した。
「わかるかな?お二人さん。バイクは楽しい乗り物だよ。だけどね、楽しいだけじゃ駄目なんだよ。」優しくも厳しい瞳で私達に語り掛ける。
「はい よくわかりました。」私と早川さんは声を出してアイスコーヒーを飲み干した。
「ふふふ、厳しい事ばかり言っているけども、交通ルールを守る事が被害者にも加害者にもならないし楽しくバイクに乗る事が出来るのだよ。」
「さて、もう少しでバイク街だね。君達にピッタリのライディングギアを探しに行こうか。」と嬉しそうに言いながら再び私達はバイクに乗り上野へと向かい出した。
翁の先導の下、私達は無事に上野バイク街に到着し、バイクを駐輪させてバイク街へと繰り出した。
様々なバイクが並べられたり社外品の部品が所狭しと並べられていたり、無数のヘルメットが一直線に並べられていたりと360度全てが二輪の世界だった。
「す、すごい…こ、これがバイク街?本で見たより凄い…」と私は素直な感想を口に出した。
「きゃぁ〜凄い凄い〜!花ちゃん アレ、アレ〜 すっごい綺麗なハ〜レ〜!!」と早川さんも落ち着かない様子だった。
「驚いたかな?お二人さん? さ、まずはヘルメットを探そうかな。」と慣れた足取りでAraiやSHOEIを取り扱う店舗へと足を運んだ。
「先ずは気に入ったものを色々被ってみるといいよ。」と翁は言う。
「あの?やっぱりフルフェイスの方が安全ですか?」と早川さんは翁に質問した。
578 :
華:2007/05/28(月) 21:11:16 ID:dD/MCjkf
「そうだね。綺麗な顔に傷は付けたくないのでは?」と片目をパチッとウィンクさせて早川さんをからかう。
「んも〜、翁のい〜じ〜わ〜る〜!」と早川さんが言えば翁は大笑いした。
「私、この赤いヘルメットにしようかしら?」と私はAraiのヘルメットを手に取った。
「ほう、気に入ったのかな?どれ、被ってみなさい。」と笑顔で私に翁は薦めヘルメットを被ってみた。
「シールドを開けてごらん。」と翁は私に言えば、シールドを慣れない手付きで上へ開き、翁が「失礼」と言いながら私の肌の張り具合を見出した。
「花沢君、少しばかり大きいかもしれんね。フルフェイスは少々キツメの方が良い。」と言い出せば店員へもう1サイズ小さめを持ってくる様に指示した。
再び装着したフルフェイスは少々キツメだったが、私はこのヘルメットに決め早川さんも同じくヘルメットを決めたようだが…
「ねぇ?ねぇ?店員さん? この白のヘルメットだけどTDRと同じ青ってないの〜?」と瞳を輝かせて聞き出す。
「す、すみません… 青は無いのですよ…」と少し困った表情を見せながら丁重に答える店員さん。
「はっはっはっ!なかなかあの青はヘルメットではないかな。余裕が出来たら後日にでも塗装屋さんでお願いすのはどうだい?」と翁が提案した。
「なるほど〜!じゃぁ私、このAraiの白いフルフェイスに決めたっ!」と早川さんもヘルメットを決めた。
会計を済ませ翁は次に「お二人にプレゼントがあるから少し寄り道しよう」そう言いながら翁はバイク街の細い裏路地を進み出した。
人一人がやっと入れる位の細い裏路地の奥に「革の安光」と書かれた古臭い店に入り、テーブルには20代後半の女性が一人でカウンターに佇んでいた。
579 :
華:2007/05/28(月) 21:12:11 ID:dD/MCjkf
「あれれ〜?翁さん、久し振り〜!今日は両手に花ですね〜」と二ヤッとからかいながら女性店主は店へと招き入れた。
「ふふふ、久し振りだね、二代目さん」そう言いながら翁は言葉を返す。
「今日はどうしたのです?随分若い子連れちゃいまして」またもや二ヤッと笑いながら翁に聞いてきた。
「彼女らはね。今日初めてバイクに乗り始めてね。君の所で彼女等にピッタリのグローブをと思ってね。」と翁は店内を見渡しながら女性店主に言う。
「なんだ、そういう事ですか。OK!OK! お二人さん、手を出してごらん」私達は女性店主の言われるままに手を差し伸べた。
暫く私達の手を触り、二組の黒い革グローブを取り出した。
「こっちがあなたで、こっちがあなたのね。きっと二人共動かしやすい筈だから、先ずは試してみなさい」そういいながら女性店主はタバコに火を付けた。
ギュッ!ギュッ!と音を鳴らしながらグローブをはめて、指を動かしてみるが驚いた事に違和感が無かった…
失礼かもしれないが、ウキエさんのお古のグローブよりもずっと動かしやすく手に馴染む感触が心地良かった。
どうやら早川さんも声は出さなかったが顔を見る限り私と同じ事を思っている顔つきだった。
「ふふふ、すごいだろう?彼女は若いけども革製品のプロフェッショナルなのだよ。」と驚く私達に翁は嬉しそうに言う。
「す、凄い…こんなに手に馴染むなんて… あ、も、もしかして翁もここで?」と早川さんが聞く。
「そういう事だね。私はこのお店との付き合いは古くてね。先代からの仲さ。」と自分の革ジャンをポンと椿のワッペンが縫い付けられた右手のグローブで叩きながら笑う。
そんな翁の椿のワッペンを見て何か言いたそうな女性店主が気になったが、彼女はタバコの煙をフゥーと吹かして灰皿に灰をポンと捨てる。
「そのグローブは私からのプレゼントだよ。お二人もこれからは交通社会の一員だ。」と嬉しそうにそして優しい目で腕を組みながら笑う翁。
「あ、ありがとうございます。」と私達は深々とお辞儀をして店を出た。
580 :
華:2007/05/28(月) 21:13:04 ID:dD/MCjkf
私と早川さんが店先へ出ると翁は店内で女性店主と話しているのが見えた。私達をチラッと見て「すぐ行くよ」と言い、再び女性店主と話し出した。
「……まだワッペン付けてるんですね…」女性店主は髪をかき上げ目を下に向け翁に問う。
「まだ…か… 私は伝え続けているだけだよ」少し疲れた顔で翁が答える。
数秒の沈黙が続く――
「あまりご無理なさらないで下さい。」深く一礼をして翁を見送る女性店主。
「覚えておくよ。」そう言いながらシンプソンのヘルメットを掲げ外へと出る翁。
「待たせてすまないね。 さぁ、お腹すいただろう?何か食べに行こうか?」私達の背中をポンと押して私達は歩き出した。
その後、私達は食事をしてウェアを選び、バイク街での用事を全て終え一時的にお借りしたヘルメットとグローブをPOPモータース宛に荷物をまとめ運送便で送った。
時間もまだあるという事で翁は「海でも眺めに行ってみるかな?」と提案し私達も賛成した。
新しいヘルメットに手に良く馴染む革のグローブ、そしてウェア。 なんだかライダーらしくなった自分に少し照れ臭かったが嬉しくもあった。
そんな私達の最初のツーリングは驚きもあり楽しくもあり、初めての交通社会に怖がりながらも充実した時間を過ごしていた。
そして、私は何故早川さんがバイクに乗ろうと思い立ったのかという理由を夕日の沈む海を見ながら彼女から聞かされる事になる。
翁を先頭に私達は開発途中の江東区埋立地付近への海へと向かい出した。陽は徐々に落ち始め空は青とオレンジが綺麗に重なり合っていた。
581 :
華:2007/05/28(月) 21:17:58 ID:dD/MCjkf
ね、寝ます…orz
582 :
774RR:2007/05/28(月) 21:39:40 ID:0YRsT30q
華さん乙です
CCCC
583 :
774RR:2007/05/28(月) 22:14:04 ID:0R4LEsGP
昨日のサザエさんはカオス過ぎたw
584 :
774RR:2007/05/28(月) 23:46:33 ID:a6dXs1VY
585 :
774RR:2007/05/28(月) 23:54:43 ID:iq7Zl47S
586 :
774RR:2007/05/28(月) 23:58:46 ID:1dyYwk6f
正直、あの程度でキレる波平もなんつーか・・・
587 :
774RR:2007/05/29(火) 01:03:17 ID:O85bibKt
588 :
774RR:2007/05/29(火) 01:37:33 ID:bJMwiOHx
589 :
774RR:2007/05/29(火) 07:06:25 ID:xmUCCRpU
華乙
590 :
774RR:2007/05/29(火) 08:42:53 ID:pMpyBbbS
591 :
774RR:2007/05/29(火) 13:32:51 ID:7746v0Hx
華氏 つC
イササカ萌え
592 :
774RR:2007/05/29(火) 14:18:12 ID:He6EgSMP
華氏 つCCCCC
593 :
774RR:2007/05/29(火) 19:51:18 ID:Thcdh64C
ニコニコのログイン制限解除ってなんだよ。
こんな使えないところ、使うんじゃねぇよ!
594 :
774RR:2007/05/29(火) 20:32:14 ID:CwIw62j6
595 :
774RR:2007/05/29(火) 23:07:35 ID:AmJJ31SI
>>576 缶コーヒーが発売されたのは90年代に入ってからだったと思ったけど
596 :
774RR:2007/05/29(火) 23:09:56 ID:nbMV5pki
>>595 そりゃねぇな。
じいちゃんの葬式(1987年)にはジョージアもUCC缶コーヒーも存在してた。
597 :
774RR:2007/05/29(火) 23:15:23 ID:yFqb8KYt
ビーボよりうまいのはビーボだけ! とか。
595はペットボトル茶とかその辺と勘違いしてると思われ。
598 :
774RR:2007/05/29(火) 23:16:21 ID:fTwTYTgN
プルタグじゃなくてプルタブだしなw
599 :
774RR:2007/05/30(水) 00:23:06 ID:msrwxlkj
600 :
774RR:2007/05/30(水) 00:25:30 ID:WhbiR4y5
600
601 :
774RR:2007/05/30(水) 01:27:57 ID:rp95O5Ah
携帯だとまとめサイトの小説が途中で途切れてわからん…
いつか書籍化までワクテカしてよう
初代スレの雰囲気って馬鹿らしかったよねwww
小説が来るまでさーて来週の(ry
この雰囲気も好きだったwww
とにかくワクテカしてます
602 :
774RR:2007/05/30(水) 06:16:58 ID:tB63eEZy
>>579 「こっちがあなたで、こっちがあなたのね。きっと二人共動かしやすい筈だから、先ずは試してみなさい」
の
きっと二人共動かしやすい筈だから、先ずは試してみなさい
これ日本語でおkなんだが、単に俺の語彙が少ないだけか?
603 :
774RR:2007/05/30(水) 08:46:30 ID:gj+1lX5j
うん。
604 :
774RR:2007/05/30(水) 09:34:32 ID:Osk43cz8
感感俺俺キター!?
そういや、超先生もバイク事故だったんだよな…
605 :
774RR:2007/05/30(水) 20:59:23 ID:K989S7Cs
606 :
774RR:2007/05/30(水) 21:27:34 ID:FG0mwbwF
すれたいワロタ。
意外にインパルスなんか似合ってそうだ
607 :
774RR:2007/05/30(水) 21:54:01 ID:HUe6vzJV
>606
誤爆なのか
釣りなのか
608 :
774RR:2007/05/30(水) 22:14:11 ID:tB63eEZy
きっと二人共動かしやすい筈だから、先ずは試してみなさい
だけど
先ずは試してみなさい
はわかるよ
きっと二人共動かしやすい筈だから
普通に使うか?
609 :
774RR:2007/05/30(水) 22:16:27 ID:D3U88v10
だんだん添削コーナーになってきてるなwwww
つC>華さん
魔棲雄の続きはもう少しお待ち下さい〜m(_ _)m
611 :
774RR:2007/05/30(水) 22:30:08 ID:yfdta4sT
612 :
774RR:2007/05/31(木) 13:04:44 ID:LVIh4ech
作者様各位 つC
そこらへん脳内変換でいいんじゃね?
魔棲雄氏の時も色々つついてるが、作者各位は金貰ってるわけじゃねぇし
読み手が脳内変換すりゃ済む様な希ガス
なんだかこのスレの今の雰囲気嫌だな…
せっかく波平氏やヒロシ氏、華氏が戻ってきてこれだと
どの作者も書きづらくね?
613 :
774RR:2007/05/31(木) 14:01:31 ID:y9B+uhYI
できればカツオ物語も読みたいね。
614 :
774RR:2007/05/31(木) 14:11:25 ID:LdT/vYIq
タラオを読みたいが無理だろうな
本人の今の様子じゃ…
615 :
774RR:2007/05/31(木) 15:04:35 ID:Efakfysy
616 :
774RR:2007/05/31(木) 20:08:44 ID:vqFeiSw7
>>614 本人って、タラオの知り合い?
(;゚д゚)
617 :
774RR:2007/05/31(木) 22:50:52 ID:LdT/vYIq
>>616 いろいろあるでしょ
完全バーチャじゃないでしょ2ちゃんは
×本人の
○本人が でした
またロムに戻ります、失礼
618 :
小さな恋物語:2007/05/31(木) 22:59:19 ID:n5Jgtl5I
窓から入ってくる光の眩しさに目が覚める。時計を見ると9時を過ぎたあたりだ。
ホテルの食堂で食事を取り、一旦部屋に戻る。
バックを開け、明日の見合いで着る服をクローゼットに移し始める。
ジャケットはアイロン、パンツはフロントよりプレスを借り、皺を伸ばすのも忘れない。
ジャケット、パンツ、シャツと移ったとき、シャツに珈琲の染みがあることに気付いた。
珈琲を飲んだ後の後始末を怠った時にでも付いたのか、左胸のあたりに染みがついている。
「気を付けていたつもりだったんだけどな」
きれいなシャツが今着ている一枚しかないのに気付く、背広に慣れる為に背広で寝ていたのだ。
「昨日の時点で気が付いていればこっちを着て寝たんだけどな」
替えのシャツは一着だけで良いだろうとタカをくくっていた。
今着ているシャツをホテルで洗ってもらい、明日着ていこうと思っていたのだがそれでは今日着るシャツが無い
入社してからついこの間まで、研究室ばかりで着衣に気を払わないないツケがここで出てしまったようだ。
それにしても、東京−福岡間のツーリングで何度も飲んだ珈琲がこんなアクシデントを起こすとは。
今着ている服も手入れしておこう、こう皺くちゃでは格好が付かない。
619 :
小さな恋物語:2007/05/31(木) 23:00:06 ID:n5Jgtl5I
「シャツを買わなきゃな」誰も居ないのに思わず声に出てしまう。
ここ数年で一人で居る時間が減ってしまった所為か、沈んだ声の独り言が嫌に耳につく
隣にいつもの親友が居ないことに何故か寂寥感を感じてしまう。
見合いは明日だ、ショッピングという良い暇つぶしが出来たと思えばこのアクシデントも悪くはないかと思い直す
初めて来た土地なので土地感が無く、フロントへシャツの売ってある場所を聞く。
「ここらでシャツを買うにはどこに行けば良いかな?」
ホテルマンが言うには、丁度このホテルは福岡の繁華街である天神の中心街から近く、シャツを手に入れるのに苦労はしないようだ
620 :
774RR:2007/05/31(木) 23:00:43 ID:fWqDHCao
wktk
621 :
小さな恋物語:2007/05/31(木) 23:01:13 ID:n5Jgtl5I
天神の中心である西鉄福岡駅へ向かう為、ホテルから出て横断歩道にて信号を待つ。
空を仰ぐ、雲一つない抜けるような青空だ。今日は蒸し暑くなるかもしれないな。
ビルが邪魔をするので空を見つけるには上を向かねばならない。
福岡は日本でも有数の都市であることを思い出す。
看板を見るに、横断歩道を渡ってすぐはカメラ屋か・・・・・使い捨てカメラでも買って、帰り道に写真でも撮ろうかな。
東京と違い、どこから沸いたのかと言うほどの人は居ない。多過ぎず、少な過ぎず丁度良い人ごみだ。
住むのには丁度良さそうな都市だなと思う。
信号を待つ人の中に違和感を感じた。ふと目を向けてみる。
白いブラウスに黒いスカート黒いベストの装いの女性がスクーターの横に立って何かしている。
信号待ちの間に見ていると、キックでスクーターのエンジンを掛けようとしているようだ。
その割に一向に掛からないようで、とうとうスクーターの脇にしゃがみ込んでしまっていた。
少し気になり女性に話し掛ける。
「どうかしましたか?」普段の自分を考えれば、女性の隣にバイクがなければ絶対に出来ない行為だ。
622 :
小さな恋物語:2007/05/31(木) 23:02:26 ID:n5Jgtl5I
「さっきまで走っていたのに急に変な音がしだして」
「こんなこと初めてで」
「動かなくなったんです」
「どうしたら良いのか分からないんです」
「エンジンが掛からないんです」
「買ってもらったばかりで」
まくし立てるように返事が返ってきた。その勢いに思わず圧倒されてしまうが、聞こえた単語を整理すると今の話で大体見当がついた。
暇な事でもあるし、今は午前中であり時間はたっぷりとある。
「少し見せて頂けますか?何とかなるかもしれませんよ」
人生の中でスクータータイプは乗ったことがない。
周りにも乗っている人が居なかったので少し見てみたい気も手伝う。
イタリア製のベスパ、探偵物語の主人公が乗っていた物に似ている。同じ物だろうか?
623 :
小さな恋物語:2007/05/31(木) 23:03:22 ID:n5Jgtl5I
キルスイッチは・・・・OK、キーも入ってる、車体を前後に動かしてみる・・・動く、車体を振ってみる・・・音はしない。
キーを抜きシートを開ける、コックを回してガソリンの量を見る。
・・・・もう一回確かめる。
心配そうに見つめる女性を見て、いたずら心が湧いてきた。
深刻な顔で考え込むよう見えるように気をつけながら
「どのメーカーのバイクにも良くある故障だね、これになるとバイクは絶対に動かなくなってしまうんだ」
こう告げると女性の顔色が真っ青になり
「ど〜しよう〜父さんに怒られちゃう〜」とおろおろし始めた。
「どういう故障なんですか?直らないんですか?」
そう聞いてくる女性に、打って変わって明るい顔さりげない声で答えた。
「ガス欠さ、ガソリンがなくなっちゃったんだよ」
624 :
774RR:2007/05/31(木) 23:08:26 ID:iOsU+V8f
CCCCCCCCCCCC!!
625 :
小さな恋物語:2007/05/31(木) 23:15:33 ID:n5Jgtl5I
「もう、意地悪な人ね。あなたって」
一転して顔が真っ赤になり、張りのある声で僕を責めてきた。
肩を叩いて来る彼女の仕草にもかわいらしさを感じる。
普段から活発な女性なのだろう、膨れっ面でもこんなに綺麗なのだから、笑顔も素敵だろうなと素直に思う。
「ちょっと痛いよ、お嬢さん。ホテルで最寄のガソリンスタンドを聞いてくるからちょっと待っててくれないかな?」
最寄のガソリンスタンドは、このホテルから南に向かって「国体道路」に出て右に行けば良いようだ。
「ガソリンスタンドの場所が分かったよ。このままじゃ動かないから押していってあげるよ」
そう言うと彼女は驚いた顔で
「仕事はいいの?近いんだったら自分で押していけるわよ」
背広を着ていたため仕事中のサラリーマンと間違えたようだ。
「仕事で来ている訳じゃないからね。今日一日は暇なのさ。それに、女性に力仕事をさせるわけにはいかないだろ?」
「来てるって、貴方はどこの人なの?」
「東京からね、野暮用で福岡まで来てるんだよ」
初対面の女性に、見合いで福岡に来ているなどと言うのも憚られた。
何よりこの女性は好みである。チャンスは残しておくべきだろう。
626 :
小さな恋物語:2007/05/31(木) 23:16:45 ID:n5Jgtl5I
「これが国体道路よ」
片側二車線の道路に出て右に曲がる。300mほど行くとガソリンスタンドが見えてきた。
「いらっしゃいませ」
店員が元気な声で挨拶してくれる。スクーターを押してきた為か続けて、
「何かトラブルですか?」と聞いてきた。
「ガス欠でね、満タンでお願いできるかな?」
「ベスパのP150Xですね。・・・・・確か2%の混合ですのでオイル代も掛かりますが宜しいですか。」
混合だったのか、こういう時は詳しい店員が居てくれて助かる。
「全部お任せして良いかな。出来れば給油の後に一回エンジンが掛かるか試してほしい。私は中で話しているから。」
「勿論大丈夫ですよ、終わりましたら前まで持っていきますので少々お待ちください。」
627 :
小さな恋物語:2007/05/31(木) 23:18:32 ID:n5Jgtl5I
店内に入ると彼女は備え付けの椅子に腰掛けていた。
財布から小銭を出して自動販売機の前に立つ、珈琲は甘いジョージアしかないがしょうがない。
「お嬢さん、何か飲みますか?」
「お嬢さんと言うのは辞めてくださるかしら、私には」
「山野小百合と言う名前があるんですからね」
不自然に間があったけれど警戒しているのかな?
「これは失礼しました。それで、山野さんは何か飲む?」
「私も珈琲を頂きます」
自販機から2本の缶珈琲を取り出すと、店員がエンジンを掛けている姿が見えた。エンジンは無事に掛かったようだ。
・・・・・程なくして
「終わりました。エンジンも掛かりましたよ。それにしても、P150Xは81年に生産が終わっていませんでしたっけ?その割には随分綺麗ですね」
珈琲を山野さんに手渡しながら
「へぇ、随分経ってる割には確かに綺麗だね。新品で通用するくらい綺麗だから、全く乗ってなかったのかな?」
その言葉に、山野さんは少し頭に来たようだ。
「失礼ね、一週間前に買ってもらったばかりよ。操作に少し手間取ったけど、倒したりはしてないわ」
店員は車が入ってきた為、また表のほうへ出て行った
「ふむ、数年経っていてあの状態、ちょっとしたミステリーだね」
ちょっとからかう風な口調で言うと
「女性もバイクも秘密が有った方が魅力的なものよ」
「確かに」
思わず両者共に笑みが漏れる。
628 :
小さな恋物語:2007/05/31(木) 23:19:20 ID:n5Jgtl5I
笑い声が途切れると同時に会話が途切れる。僕は彼女を誘う次の手を考えていた。すると山野さんから
「バイクを押して来てくれたお礼しないといけないわね。」と言ってくれた。
義理堅い女性だな。しかし好都合だ、計画に修正を加える。
「山野さんはこれから時間はあるかい?明日の為にシャツが一枚欲しいのだが選んで欲しいんだ」
「私の見立てでいいの?」
「自分で見立てるより良さそうだよ。その服、似合ってるよ。」
629 :
小さな恋物語:2007/05/31(木) 23:24:15 ID:n5Jgtl5I
スクーターをホテルに置かせてもらって、彼女の提案で岩田屋に向かう。
・・・・・明日の見合いの場所は地下の食堂だったな。
デパートに入り、入り口の看板を見る。
紳士服売り場は4階か、エスカレーターで紳士服売り場に向かう。
4階に着くと、山野さんを先頭にシャツの置いてある店を回る。
三店ほど回ってから最初に入ったお店に入っていく。山野さんは店員が来るより早くシャツを取り
「やっぱりこれが一番良さそうよ、ちょっと高いけどどうかしら」
値札を見るとお店の雰囲気通りシャツは少し値段が張るが背に腹は代えられない。彼女の手前見栄もある。
「良いね、じゃぁこれを頂くよ。サイズはあるかな?明日使うので値札とかは取って欲しい」と店員に告げる
「畏まりました、少々お待ちください」
「支払いを済ませてくるからちょっと待っててくれないか」
レジにて店員が初めて仕事以外のことを口にした。
「綺麗な奥様ですね。この後は婦人服売り場でお買い物ですか?」
どうやら夫婦に見えたらしい。少し嬉しくなって
「そうだったら良いけどね、彼女とは今日知り合ったばかりなんだよ。」
「失礼致しました」店員が笑ったように見えた。
僕は急に恥ずかしくなり、
「支払いはカードで一回でお願いします」と支払いを早めに済ませて店を出ようとした。
630 :
小さな恋物語:2007/05/31(木) 23:25:43 ID:n5Jgtl5I
支払いを終えシャツを片手に店を出る。
「ありがとう、いい買い物が出来たよ。お礼に時間があれば少し早いけど、この後食事でもどうだい?」
「お礼のお礼じゃ、いつまでたっても終わらないわよ。でも良いわ、ご馳走になります。どこに行くの?」
どこに行くといわれても、初めて来た土地なので何があるのか分からない。
「そうだね、ティファニーでなんてどうだい?」
「うふふふふ、おかしな人ね。私の知っているお店で良いかしら?」
残念、映画はあまり見ないのだろうか外してしまったようだ。
631 :
小さな恋物語:2007/05/31(木) 23:26:35 ID:n5Jgtl5I
岩田屋を出て、そのまま商店街らしき「新天町」へと彼女の先導で入っていく。
彼女はその中の「ビクトリア」と言う名前負けをしてそうな釜飯屋に入った。
その店のメニューはそんなに高くはなく、気を使って貰えたようだ。
僕はすきやき、彼女は鮭の釜飯を注文した。
・・・・・味の方はヴィクトリア女王と言うよりカメルーンの都市くらいかな。
食事も終わりに近づいた頃、ガソリンスタンドの時から気になっていることを彼女に質問した。
632 :
774RR:2007/05/31(木) 23:39:12 ID:FiEt8nYM
C
633 :
小さな恋物語:2007/05/31(木) 23:58:21 ID:B3vChfHL
「あのベスパは、一週間前に買ったんだよね?」
「そうよ、父に交換条件としてねだってみたら買ってくれたの」
「へぇ、何の交換条件?」
「女性は秘密が多いものよ」
「失礼しました、君は魅力的だもんな」
その言葉に、彼女は顔を赤くして、
「当然でしょ!・・・・・ところで何でそんなにあのバイクのことが気になるの?」
「山野さんは推理小説は好きかい?ちょっと気になるじゃないか、数年前に生産中止になったものが、今新品同様で出てきた!なんてね」
「推理小説は好きよ。確かに推理小説にありそうなネタね」
「そうだろう?話を戻そう、ねだったのはいつなんだい?」
「そうね、10日ほど前よ、私もこんなに早いとは思わなくてびっくりしたわ。そんなに私のことを・・・・」
語尾が小さくなっていき聞こえなかったが、聞き返すと不興をかってしまうだろう。
「実質2日で納品か、と言うことはあのべスパは随分前に買われていた物だろうね」
無い頭で推理を続ける、気分はもう探偵だった。
「そうなの?私はそういう物だと思っていたわ」
「いやいや、外国車だしね。この場合、元々近くに保管してあった物を名義変更して持ってきたと見るのが自然そうだね」
「ふうん、外国車なんだ。」
「そうだよ、それも知らなかったのかい?じゃぁどうしてベスパをねだったんだい?」
「映画で見たのよ。ローマの休日、オードリー・ヘプバーンが綺麗で、グレゴリー・ペックが格好良くて。何よりロマンチックじゃない。子供の頃に見てから憧れていたのよ。いつか、ああいう風に街を走ってみたいって」
───・・・・これはチャンスかな
「グレゴリー・ペックの代役には力不足だろうけど、僕が運転して君が後ろと言うのはどうだい?残念ながら案内は山野さん、君にして貰わないといけないけれどね」
山野さんは首を傾げて少し考え込んだ後、
「ここから中央警察署って近いのよ」と嬉しそうに言った。
了承して頂けたようだ。しかし、慌てて
「そこだけは外そうよ、君も知らないおじさんのキスは欲しくないだろ?」
634 :
小さな恋物語:2007/05/31(木) 23:59:16 ID:B3vChfHL
本回線が書き込み規制に引っかかったので回線変えてました。今日はここまで
635 :
774RR:2007/06/01(金) 00:43:30 ID:7QmlDLYc
ビクトリア行ったのかwwwww
っC
「案内と言うより観光ね、住んでいるところの観光案内って難しいわ」
根が真面目なんだろうな、真剣に考え込んでいるので、助け舟を出す。
「そこまで堅苦しくなくていいさ、今日はどこに行く予定だったんだい?」
「川端商店街の川端ぜんざいを食べに行くつもりだったの」
「ぜんざいか、京都の西園寺ぜんざいみたいなもの?」
「西園寺ぜんざい?何なの、それ?」
知らないようだ、そういう事には関心がないのかな。
そういう方面には疎そうだ、まだ確定ではないが恐らくはフリーだろう。
「よし、人も多くなって来たし、まずはそこに行って次を決めよう」
店を出て、ホテルへスクーターを取りに行く。道すがら
「そう言えば、ヘルメットは私の持っているものしかないわよ。どうするの?」
「東京からここまでバイクで来たからね、自分の分はあるよ」
「見かけによらず、行動派なのね」
「最初は軽く見てたけどね、実際走ってみるときつかったよ」
「年の所為じゃない?」
その言葉に苦笑する。僕は何歳に見えているのだろう。
「まだ24歳だよ、体力には自信があるんだけどなぁ。ところで、君はいくつなんだい?」
「女性には・・・」言い終わるより早く
「秘密が有ったほうが魅力的だったね。」
そう言えば女性に歳の話は禁句だったな。
637 :
774RR:2007/06/01(金) 01:14:29 ID:oQHIIcn4
「今日はここまで」
…って、日付変わった瞬間から来るのかyo!ww
C
ホテルに戻り、地下の駐車場へ自分のヘルメットと彼女のスクーターを取りに行く。
「さてと、川端商店街と言うのはどっちなのかな?」
「え?練習もなしに乗れるの?」
「任せてよ」自信満々に答えた。
普段は大型バイクを乗りまわす僕だ、スクーターの運転になんて梃子摺る訳がない。
スタンドを立てたままキックでエンジンを掛ける。一発で掛かった。ガス欠だけのトラブルで良かった。
暖気の時間を取る為、ヘルメットを自分のバイクから持って来て山野さんに渡す。
「臭くはないと思うよ」
「自分のヘルメットを使うからいいわよ」
「運転する男ががっちりと固めてて後ろの女性はそうでもない。これは、紳士的ではないからね。ベスパに
は似合わないだろうけど、我慢して欲しいな」
山野さんは納得してくれたのか僕のヘルメットを受け取り、代わりに彼女のヘルメットを渡してくれた。
暖気もそろそろ良いだろう。
スクーターに跨る、左右のブレーキを握り、車体を押してスタンドを下ろす。
そうだ、2人乗りだし初めて乗るので加速などを知りたい。
「駐車場を一回りしていいかな?」
「存分にどうぞ」
左右のブレーキをはなし、アクセルを開ける。
エンジンはアクセルを開けている事を主張する音を奏でるがタイヤは全く動かない。
「???あれ?」
「どうしたの?早く駐車場を走ってみたら?」
心なしか山野さんの唇の右端が上がってるように見える。
ベルトかチェーンか分からないが・・・・駆動系のトラブルか?第一歩で躓くとは、自分のバイクで行こうか。
いや、それに山野さんはうんとは言うまい。スクーターを修理に出すのに時間を食われ、山野さんはそのまま帰ってしまうだろう。焦りで考えが纏まらなくなってくる。
『動け!動いてくれよ、今動かないと意味がないんだ』
祈りもむなしくスクーターは2st独特のエンジン音を奏でるだけだ。
頭がショートしそうなほど熱くなる。何が悪いのか考える内、一つ違和感に気付いた。
山 野 さ ん が 落 ち 着 き 過 ぎ て い る 。
イタリア人め、自分たちは軟派なくせに、人の恋路は機械まで邪魔しやがる。
同じ枢軸国だったじゃないか。日本男児の邪魔をしてくれるなよ。
イタリアの物で信じられる物は理論だけと言う言葉も思い出す。全くその通りだ。
考えられる限りの悪口を頭の中で目の前のスクーターに叩きつけた後、覚悟を決めて山野さんに尋ねる。
「故障じゃないよね。何で動かないのか教えてくれないか?」
山野さんは意地悪く笑い、
「貴方のバイクもそうだろうけど、こうなっていると絶対に動かないのよ。」
──これは、仕返しか
「意地悪だなぁ、ぜんざい奢るからさ。」
・・・・・まだ、許して貰えないようだ。とうとう観念して、
「・・・・・教えてください」
山野さんは堪え切れなくなったのか、少し吹き出してから、
「ギアがニュートラルなのよ、1速に入れることをお勧めするわ」
640 :
774RR:2007/06/01(金) 01:42:09 ID:J7hNE2l1
CCCCCCCCCC
part4 1/2
山野さんによる、ホテルの地下駐車場でのベスパ講座が始まった。
得意気に、そして誇らし気に話すその姿。
その姿を見て、山野さんは本当にこのスクーターが好きなんだなと思う。
なによりの収穫は、彼女の笑顔はやはり綺麗だったと言うことだろう。
左の後輪ブレーキと思っていたレバーはクラッチだった。
後輪ブレーキはどこかと言うと右足のつま先に対して、存在感を控えめながらに主張していた。
こいつがイタリア人並に自己主張してくれていればと思ったが過ぎた話だ。
「このベスパの一番の特徴は、え〜っとグリップクラッチ?」
先生が生徒に対して半疑問形では困るな、バイクのクラッチは大体はグリップに付いているのだからと
「グリップ・・・・チェンジあたりなんじゃない?」
と、こちらも半疑問形で返してみる
「そうそう、グリップチェンジです。左ハンドルに数字と点々があるでしょ?点々がニュートラルなのよ」
よく見てみると、確かに数字と点が交互に並んでいる。これは面白い構造だな。
今までスクーターと呼んでいたが、それは外側だけ、中身は立派なバイクだった。
外側を羊のように可愛らしさで油断させて、中身は狼か、イタリア人め。思わず笑みが零れる。
part4 2/2
「今度こそ、駐車場を一回りしてきて良いかな?」
「えぇ存分にどうぞ」
女性が後ろに乗るのだから飛ばせない、スピードで怖がらせては逆効果であろう。
グリップチェンジの間隔・感覚を覚える、ニュートラルに入ってないかチェンジの度に一々確認していては危険だろうからだ。
30分ほど駐車場内をぐるぐると走った事で操作のコツは大体掴めた。
慣れるてくるとこれほど面白い乗り物はないのではないかと思わせる。
イタリアと言うところで生まれた物は、機械も人間も惚れさせるのが上手いらしい。
山野さんを見ると僕のヘルメットの匂いを嗅いでいるようだ。臭かったかな?
「さて、じゃぁ出発しようか。後ろに乗って」
声を掛けると、慌てた声で返事があった。
「もういいの?じゃ、じゃぁ行きましょうか」何故か顔は真っ赤である。
山野さんはスカートを履いている所為か、横のりで、腕を僕の体に回してきた。
この体勢は・・・・スピードを出したくなる誘惑に襲われる。
早くも誓いを破りそうだった。
気を引き締めて、ハンドルを握りなおす。
しかし・・・・・イタリア人の皆さん、どうもありがとう。
part5 1/3
ホテルの駐車場を出て「明治通り」を東へ向かう。西鉄福岡駅前の交差点で信号待ちで止まった。
信号待ちしている前を同じ会社と思しきバスの行列が走っていった。
これは、福岡独特の風景なのだろうか、初めてみた僕は面食らってしまう。
よく見れば片側四車線なのに、バスとタクシーで混雑しているようだ。
夜の新宿駅前とまでは行かないが、気分をイラつかせるのには十分な渋滞だ。
あっちに出なくて良かったと安心する。
明治通りは混んでいなかった。
片側二車線の道路はレンガ風のタイルを敷いた歩道に並木を配しており見た目も良い。
並木を通して射す日差しが気持ちいい、飛ばしても面白いだろうが、街の雰囲気を楽しめる少し遅いくらいが一番楽しめるバイクのようだ。
道なりに進んでいくと、橋が見えた。その向こうに噴水のある公園。
更にある橋の向こう側には左側に映画館らしき建物と真っ白なホテル、右にはテレビでよく見る看板の群れが現れた。
と言うことは、ここからが中洲か、何を見ても大丈夫なように顔を引き締めておく。
心配は空振りに終わる。パチンコ屋が一店あったくらいだ。
橋を通る時も思ったが、街の街灯や歩道のタイルを見ると、お洒落に気を使ってあるようだ。
またもや、橋が見えてきた。
その手前には背の高いデパート玉屋、川の向こう側には蕎麦屋らしき店舗が窓際なら川の眺めが良さそうな立地で営業していた。
「ここが川端通り商店街よ」玉屋と川を挟んだ向かい側にアーケード街があった。
ベスパを止めてから、二人で川端ぜんざいのお店に向かう。
活気溢れる商店街と言うのが第一印象、ここも天神に負けないくらい通路は人で溢れていた。
「いい雰囲気の商店街だね」思ったことをそのままに言う
「そうでしょ?山笠の季節になるともっと人が多くなるのよ」
644 :
774RR:2007/06/01(金) 02:20:20 ID:oBx02NHu
どこまで続くと言うのだ…
作者乙
part5 2/3
川端ぜんざい店は店舗ではなかった。
川端商店街の中にあるのはあるのだが、建物がない。ぜんざいを売っている屋台と御神輿らしきものが
あるだけである。祇園祭りに使われる山鉾くらい大きく、飾りはこちらのほうが派手だ。
ぜんざいを受け取り、席に座る。奥のほうに行けば川も見えるようだ。席は店の奥の、川の見える所に取った。
お神輿には、「頑兵闘東宝」と書かれた板が刺してあった。題名だろうけど題材が分からない
「へぇ大きいね。お金も掛かってるんだろうな」
飾りの部分だけで高さは3〜4m程だろうか豪華というより勇壮な姿を見せ付けていた。
「山笠って言うのよ、大きいでしょ?これを皆でかいてタイムを競うの。山笠があるから博多なのよ」
「描く?」絵を描くように手を動かしながら聞き返す。
「あぁごめんなさい、山笠を担いで競争するの」
こんな物を担いでしかも競争か、凄いものだ。
「父もお汐井とりで、箱崎宮まで走ってたわ。この頃はタクシーで行ってるみたい、日頃自分は若いって言い張るけど、体は正直ね」
その姿を想像したのだろう。山野さんはこっちも嬉しくなる様な笑顔で笑っている。
「お汐井とりって?」
「行事に出かける前、砂を体に振りかけて事故のないように祈願するの。禊(みそぎ)を砂でやるのよ。」
「箱崎宮ってここから近いのかい?」
「JRの駅で言うと2つ分だからそんなに遠くはないわよ」
「決まった、山野さんのお父さんじゃないけどバイクでお汐井とりをやろう」
646 :
774RR:2007/06/01(金) 02:31:39 ID:VoyJCFNn
サブちゃんって、ボスカブ?
part5/13(の予定) 3/3 part8、9、11を平行して執筆中
店を出ると、右手に帽子屋が見えた。
「帽子屋か、ちょっと入ってみても良いかな?」
「いいわよ、何か欲しい物でもあるの?」
「必需品だよ、表で待ってて」
店内に入ると初老の女性が迎えてくれた。
店員だろう、そのまま店の奥に入っていく、店の中ほどにそれはあった
「これをください」買った帽子はボルサリーノ、格好だけでも近づいておこう。
ついでに、もう一つ。
「何を買ったの?」
それに答えて袋から帽子を取り出してかぶる。
「ちょっとはグレゴリー・ペックに近づけたかな?」
「シルエットは近づけたみたいよ」
手厳しいな、しかしこれだけではない。
「これをかぶって」と麦藁帽子を手渡す。拒否されないうちに続ける。
「今日は暑くなりそうだからね。」
麦藁帽子は返されることはなく、山野さんは素直にかぶってくれた。
「やっぱりその服装に麦藁帽子は良いね。可憐さが出てきたよ」
「あら、いままでは可憐じゃなかったって言うの?」
「凛としていて、独立独歩な女性の雰囲気。それはそれで良いんだけどね。王女は可憐な雰囲気だっただろ?形から入ろうよ」
オードリー・ヘプバーンよりジュリー・アンドリュースに近くなってしまったようだが、どちらも美人だし良いか。
山野さんが口を開くより早く、
「さて、お汐井とりと行きますか」
part6/13 1/3
明治通りを東に進む、大きい道との交差点で信号待ちとなる、信号名は呉服町。右前方に寿屋が見える。
ここでは後ろにバス、対抗車線にもバス、目の前もバスが左右から2台ずつ4方向に進んでいく。
一体、何台バスが走っているんだろう。
バスがなくなれば渋滞も解消するんじゃないかと言うくらい多く見かける。
道なりに真っ直ぐ走り、またもや橋を渡る。こちらの橋は洒落っ気がないな。
「あの信号を右の方に入っていって」
「了解」
指示通りに右に入る、左手には大きな建物が立っている。何だろうか?
ふと右手の高台に公家らしき服装の銅像が見えた。興味がそそられてベスパを脇に止める。
何も言わずに止まったので山野さんは不思議そうな顔で僕を見ている。
「あの銅像は誰なんだい?」
寄り道に時間を多く割くつもりはないので、質問は簡潔にまとめる。
「さぁ誰だったかしら、公園の名前は東公園よ。銅像に名前が書いてあったと思うから確認する?」
外から見ても緑の多い公園だ、少しくらい歩いてもいいだろう
「うん、歴史には興味があってね。そうしたいんだけどいいかな?」
「私も気になってきたからそうしましょう。」
そのままベスパを止めてから、歩いて銅像に向かって歩いていく。
東公園の中は、全体的に緑の木々に囲まれた公園で、夏でも涼しく感じられそうだ。
銅像には「亀山上皇像」と書かれていた。
「亀山法皇か、確か京都五山の南禅寺を開いた人物だったかな。」
「博識なのね」
「大阪出身で歴史は好きだからね。なんとなく覚えていただけだよ。でも、何で福岡に銅像があるのだろう?」
「大阪出身って、東京から来たんじゃなかったの?」
「大学が東京でね、そのまま東京で就職したって訳さ」
「東京の大阪人って訳ね」
「そうでんがな」
映画「パリのアメリカ人」と掛けてあるのだろうか?そうだとしたら山野さんの映画を見る基準が分からない。
part6/13 3/3
謎を残したまま東公園を出る。
・・・・・ベスパの前に二人ほど人が居る。
警官だ!?
急いでベスパの元へと戻る。すると警官の片方が博多弁丸出しで話し掛けてきた。
「ここに止められたら困るっちゃけどね」
「すみません、あの銅像が気になって名前を確かめに行っていたのですよ。」
「あ〜亀山さん。言葉の感じからすっと、にいちゃん福岡の人間じゃなかね?」
「えぇ東京から来てまして・・・・・。ところで、亀山法皇は「京都五山の南禅寺」と言う繋がりは知っているのですが、何故福岡に銅像があるのか気になりまして」
「そりゃ、元寇の時、天皇だったからやろうもん」
「ははぁそう言う繋がりでしたか、すっきりしました。刑事さんは物知りですね。もしかして歴史が好きなんですか?」
「すいとうばい、まぁ戦いのほうばかりやけどね」
いい雰囲気だ。ここで、お巡りさんに近づき耳元で
「彼女とデートの最中なんです。デート代がギリギリでして、違反切符は勘弁願えませんか?」
とささやいた。
お巡りさんはニヤリと笑って
「そう言うことならよかよ、頑張ってものにしいやい」
とささやき返してくれた。
警官二人といい雰囲気で別れられたが、気になる事が一つ減ってまた一つ増えた。
「山野さん、ベスパから10分と離れてないと思うんだけど、あのお巡りさんはなんであんなに早かったんだろうね」
と聞くと山野さんはすぐに答えてくれた。
「この目の前の大きな建物が県庁なの」
「うん」
「隣にも大きな建物があるでしょ?」
「あるね」
「あれ、福岡県警察本部なの」
それを聞いて、慌てて周りにキスを狙っている中年親父が居ないか首を振って探してしまった。
part7/13 1/6 まだまだいくよ
気を取り直して先を急ぐ、段々と建物もビルより家が多くなってきた。
JR箱崎駅の前の信号で止まる。
左に鳥居が見える、ここが箱崎宮なのかな?。
意外に小さい八幡様のようだ。
「箱崎宮ってここかい?」
山野さんはヘルメットもそのままに頷いた。
「じゃぁベスパを止めてお参りしようか」
その言葉に山野さんは頷かず、
「ここは裏口よ、初めて参拝するのに裏口からじゃ失礼でしょ。あそこを左に曲がって」
箱崎宮には裏口があるのか、ところ変わればというがこれにはびっくりだ。
山野さんの言葉に従い左に曲がり細い路地に入る。
左には箱崎宮の敷地を主張するかのような塀が続いていた。
「大きい道にぶつかるまで真っ直ぐよ」
砂を取りに来た筈なのに海岸はまだ見えない。
part7/13 2,3/6 そろそろ「僕」の正体に気付く人が出てくる頃
・・・・・前言撤回、箱崎宮はとても広いみたいです。
大きい道──標識から国道三号線と分かった。──にぶつかり左に曲がる。
すぐに大きな鳥居が見えてその下にベスパを止める。
三号線を挟んだ向かい側にまたも鳥居があり海岸が見える。
鶴岡八幡のように長い参道に思わず興奮してきてしまう。
「お参りを先に済ませようか」
その言葉に山野さんは
「長い参道でしょ?日本の三大八幡様の一つなのよ」
誇らしげなその姿に対抗心は消え失せてしまった。
参道は1kmほどあるように見える。往復となると2kmは超えるなぁ。
しかし、この興奮の前では大した距離ではない。
「さあ張り切っていきましょう」山野さんは右拳を空に上げながら言った。
山野さんも元気だ。
『本当は禊が先なんだけどね』と言う言葉は口に出さないでおいた。
駐車場にベスパを止めて、箱崎宮に向かう。駐車場の向かいに野球のグランドが見えた。
今日は子供たちの姿は見えず、少し寂しさを漂わせている。
「弟は野球が好きでいつも友達と空き地で野球をやっているの。私も野球が好きよ」
「弟さんの野球を見るのがかい?」
「混ぜて貰って打つの。白いボールが遠くまで飛んで行くと、嫌な事も一緒に飛んで行くみたいで
すっきりするの、その瞬間が一番好きね」
意外な言葉が出てきた。
弟さんは中学生から高校生と言うところだろう。そんな中で球を打つことが出来るとは。
華奢とは言わないが筋肉質でもなさそうな体なのに。運動神経が抜群なのだろうか?
考えが顔に出ていたのか
「年が離れてるの。弟はまだ小学生よ」
もう3時半!?明日仕事なので途中ですが寝ますね。
中途半端なところで切ってしまってすみません。
654 :
774RR:2007/06/01(金) 07:19:35 ID:JyS5mPId
きっと二人共動かしやすい筈だからはねーよ
655 :
774RR:2007/06/01(金) 09:38:36 ID:5ZBujG79
恋物語さん激しく乙です!
初めて九州が舞台!たいぎゃ楽しみにしとっけんが、CCCCCCCすっばい!
656 :
774RR:2007/06/01(金) 11:21:33 ID:Mb1TgJaE
657 :
774RR:2007/06/01(金) 12:23:46 ID:NJJrcmY9
九州=DQN
658 :
山笠のあるけん博多たい:2007/06/01(金) 12:25:17 ID:e75LtkVc
激しく乙ばい。
福岡市民にとってはタマラン設定になっとるけんwktk度数も上がるったい。C
659 :
774RR:2007/06/01(金) 14:51:48 ID:JTTViHRF
作者乙
続きが気になるので
CCCCCCCC
660 :
774RR:2007/06/01(金) 17:39:37 ID:SqYzaHRv
大阪在住の佐賀県民が来ましたよ
ばり期待しとるけんねCCCCCCC
661 :
774RR:2007/06/01(金) 18:41:38 ID:ErxucNZH
ばり〜って佐賀の言葉なんだ!
NUMBERGIRLの歌詞にでてきたけど、方言だとは思わなかった。
つうか、正確には何弁???
662 :
774RR:2007/06/01(金) 19:52:13 ID:sZyeeWMs
京都在住の福岡人も楽しんどるばい!がば期待しとるけんね(笑)
出来たら女性にも福岡弁ば話して欲しか〜。いまさら不自然やろうけど(^^;
激しくCCCCC
663 :
774RR:2007/06/01(金) 19:57:32 ID:y0l5TqG6
ばいって福岡の言葉なんだ!
おぼっちゃま君が喋ってたけど、方言だとは思わなかった。
つうか、正確には何弁???
664 :
774RR:2007/06/01(金) 20:35:37 ID:oCVbBh6/
つC
いいねぇ。作品もいいんだけど、ここの所は流れがいいね。
昔はサザエさん系以外の小説が投下されると、例えそれが良作品であっても
スレ違いだ、なんだでしょっちゅう荒れてたよ。
665 :
774RR:2007/06/01(金) 20:42:40 ID:FqpyLv4v
そうだったっけ
666 :
774RR:2007/06/01(金) 21:14:57 ID:WyCLTGym
>>663 小林よしのりも福岡の人やから分からんね。
667 :
774RR:2007/06/01(金) 22:14:07 ID:ufz/CJ8N
668 :
774RR:2007/06/01(金) 22:16:17 ID:SqYzaHRv
>>661 「ばり」は福岡て思うっちゃけど、雰囲気でついついw
ちなみに佐賀は「がばい」ばい!!
669 :
774RR:2007/06/02(土) 09:32:44 ID:df0jQ/1a
>667
そうなの?俺は全く誰の話なのかわかっていない。鈍いのかな?
670 :
774RR:2007/06/02(土) 11:30:33 ID:jSH2c6+j
岩田屋で気付いたけどなあ。
671 :
774RR:2007/06/02(土) 15:23:55 ID:kXctUs1d
そもそも福岡という時点でサザ(ry
part7/13 4/6
楠と松が参道の両脇を進む僕らに枝を揺らして微笑みかけてくる。
湿度が高いはずなのに、木々を通る風が体から不快感を取り去ってくれる。
「気持ちのいい風ね」
麦藁帽子が飛ばないように抑えながら山野さんが言った。
絵になるな、映画に撮るのなら今のシーンは入れたくなるね。
「どうしたの?」
黙って山野さんを見ている僕を不審に思ったのか、山野さんは怪訝そうに僕を見ている。
両手の親指と人差し指で四角を作り、その間から山野さんを片目で見る。
「絵になると思ってね。ほら、顔に日がさして、風に帽子が揺れている。周りは緑に囲まれている。映画のヒロインさながらだね」
山野さんは帽子を押さえた手はそのまま、僕のほうへ体を向けてから、
「主演女優は良いのだけれど、主演男優は誰なのかしら?」
うん、いい笑顔だ。見ている僕まで嬉しくなって来る。
「監督兼主演男優というのはいけないかな?予算が少ないんだよ」
「うふふ、しょうがないわね。でも主演男優ならここで何か台詞があるんじゃない?それ次第ではここは名シーンになるかもしれないわよ」
「うーん、そうだなぁ。まずは舞台設定からいこう。参道は海から続いて本殿まで続いている」
頭の中で物語を作っていく
「過去、生命は海から生まれた。本殿で未来へ祈る。という事は、今立っているところは現在というところだね。
過去と現在と未来を繋ぐ道の途上で、男と女が一組、僕がジーン・ケリーなら歌が入るだろうけど、グレゴリー・ペックならそうだな・・・『これからの過去も未来も君と歩んでいきたい』ってところかな」
そう言って山野さんのほうを見ると、麦藁帽子の両縁を手で押さえて顔を見ることは出来なかった。
「意外に貴方は小説家に向いてるかもしれないわよ」
及第点は貰えた様だ。
part7/13 5/6
山野さんとの会話のおかげか本殿に着くまでの道のりは疲れも感じさせず、気づいたときには最後の鳥居をくぐっていた。
まずは手水、この手水と言うのは順番があるらしいけれど、よく覚えていない。
とりあえず、両手を洗い口をすすぐ。
左手に赤い玉垣で囲まれた物が見えた。
覗いてみるが何もないように見える。
脇にある案内の看板を読んでやっと分かった。
運が湧き出る『湧出石』か、恋愛運も湧き出てくれるかな?
「山野さん、運が湧き出るんだってよ、触ってみようよ」
その言葉に、
「嫌よ、私は『運』と言う文字がつく言葉が嫌いなの。」
女の人はオカルト好きなものと思っていたのに・・・・山野さんの意外な言葉に思わず
「なんでだい?」
「運って付くとその人の能力とか判断・行動を無視したような気分になっちゃうの。勿論、その時の状況もね。
特に『運命』って言葉が嫌いね。人間って、自分の行動・能力の中で生きていくものでしょ。誰かに操られている訳じゃない。未来って一定じゃないって思ってるの。
運命には逆らえないってTVドラマとかで言ったりするけれど、それも人間を無視した発言だと思うわ。何よりも悔しいじゃない。
私は誰かの作ったシナリオに沿って生きてるわけじゃないし、そんな状況で生きてきたなんて思いたくないもの」
「じゃぁ神様も信じていないのかい?」
「いいえ、神様は居ると思うわ。居ないと困るもの」
「なんで困るんだい?」
「旅行で出雲大社に行ったの、その時に絶対叶えたい事をお願いしたの。だから居ないと困るわ」
・・・・出雲大社ね。大国主命だったか・・・・会社の島根出身の子が言ってたっけ良縁・恋愛・結婚の神様だって。
「そうか、女心は難しいね」
山野さんの顔はやはり真っ赤になった。
674 :
774RR:2007/06/02(土) 17:18:22 ID:nkAuZj3O
小さな恋物語さんリアル乙
つC
part7/13 6/6
お参りも終わり、参道を海に向かって戻る。
国道三号線を横切り、鳥居をくぐって浜に至る。
しばらく歩くと聞こえてくる波の音も大きくなってきて、砂浜が見えてきた。
護岸工事なのか砂浜ではなくコンクリートの浜の上に砂が乗っている形だ。
「ちょっと寂しい砂浜だね。」
庇うかのように山野さんは
「海というものは少なからず人を寂しくさせるものよ。貴方の言葉ではないけれど、海から生まれた命だもの、海に帰りたくなってしまうのかもしれないわよ」
「そうかもしれないね。」
波の音を聞ききながら、潮風と波に反射する光に身を委ねる。
目を閉じて感じる潮の香りと規則的な波の音は、確かにどこかへ帰りたくなるような気持ちにさせる。
狭い海から遠くを眺める。両岸をコンクリートの陸地によって取り残された砂浜は枯山水を思わせる。
ここに夕日が入れば『現代に取り残された過去の砂浜』という題名で良い絵が撮れそうだ。
しかし、水平線ではなく陸地がその風景に待ったをかける。
「海の向こうに見える陸地は何ていうんだい?」
すっかり映画監督の気分になっている僕は邪魔者の正体を知りたくなった。
「志賀島よ、博多で唯一夕日が海に沈むところが見えるところなの。とても綺麗よ」
「島なのか、じゃぁベスパでは行けないね」
綺麗という言葉に反応して行きたくなるが、島ではバイクのみでは行けそうに無い
時間的に船で渡ったとしても帰りがどのくらいになるのか分からない。
落ち込む僕に山野さんは
「あら、行けるわよ」
と、事も無げに言った
「島なんだろ?どうやって行くんだい?」
「簡単な事よ、海ノ中道を通っていけばいいのよ」
「海ノ中道!?海の中を道が走ってるのかい!?」
「そうよ、道の両側が海で海の中を走っていくの」
「海の中って・・・・トンネルなのかい?」
「いいえ、両側海を見ながら、勿論空も見えるわよ」
何のことやら分からない、モーゼの十戒のような道なのだろうか?
「百聞は一見にしかずって言うでしょ、行きましょうか」
冒険心と探究心を刺激された僕は勿論
「いこういこう」
と子供のように答えた。
677 :
774RR:2007/06/02(土) 17:27:32 ID:Fgy5uYuM
イイヨイイヨ
つC
678 :
774RR:2007/06/02(土) 17:30:55 ID:uaGCtm0w
CCCCCC
早くセックスしてくれ
part8/13
ウキウキしながら国道三号線を走っていく、広い道なのでとても気持ちよく走れる。
まぁ例によってあのバスも走っているんだけど・・・・
幹線道路の所為か右手には飲食店がちらほら見える。マンションも多いようだ。
しばらく走っているとまたもや橋が見えてきた。川が多い街だなぁ。
橋を渡る途中で左にも橋が見えた、丁度電車が走っていたので線路なのだと分かった。
この風景は好きだな。
田舎っぽい雰囲気は、東京で仕事に追われながら長く住んでしまうと自然と好きになってしまう。
東京に行くまでは出来るだけ都会に行きたいと言う一心で好きじゃなかったのに、人間って不思議なものだな。
part8/13
繁華街──香椎──を過ぎたところで立体交差に出くわす。
手前の看板で確認していたので、迷わずに495号線に入っていく。
時折温かい風に冷たい風が混じる・・・・海が近い、海ノ中道を想像してドキドキして来る。
寒いのか山野さんは体を背中に押し付けてきた、別の意味でドキドキして来る。
──海に急ごう
「あの信号を左折よ」
「了解」
国道495号線から県道59号線に入っていく。
国道から県道に入ってしまうと建物よりも空の方が支配力を強める。
太陽がその真ん中に居て、早くおいでと手招きをする。
その太陽を追いかけるように西にベスパは走っていく。
──まだ沈んでくれるなよ。
今度は右手に線路を見ながらの道になる。
自分のバイクに乗っていたなら電車と競争したくなっただろうが、それをベスパでやってしまうと楽しくはなさそうだ。
何より後ろのレディに怖い思いをさせちゃいけない。ここは自重しよう。
part8/13
しばらく走ると海に出た。
海を挟んで博多の街が見える。
さっきは向こうに居たんだよな、別世界に来たような気分になる、後ろに件のバスが前に走って居なければ尚更だっただろう。
「あそこのカーブを曲がったら海ノ中道よ」
山野さんが僕の肩越しに指をさす、海ノ中道の正体を知りたい僕はスピードを上げたくなるのを必死に堪えながらカーブを曲がって行った。
「ん?何の変哲もない道路なんだけど・・・・」
「えぇ地名は『海ノ中道』よ本命はまだ先」
「君は嘘つきだ」
「嘘じゃないわよ、そんなに言うなら帰ってもいいのよ」
ここで帰られても困る。本命が別にあるというのならそれを見てみたい。山野さんへの非難は諦めて
「次は本命のときに言ってくれよ」
「覚えていたらそうするわ」
肩透かしにあったけどこれが本命じゃなくて良かった。
まぁ片側二車線になったことだし気持ちよく走れそうだ。
自分のバイクでも走ってみたいな。
静岡の一号バイパスのように海辺でストレートが長いけど、海からの強い横風も同じかここは諦めた方が無難だな。
part8/13
気持ちいいほどの直線となだらかなカーブで構成された道は風さえなければ北海道に匹敵するのになと思う。
「突き当りを右ね」
「了解」
海浜公園を右に見ながら進んできた道を右に曲がる。木はまた松が多くなってきた。海が近いみたいだな。
曲がってから小学校が見えてきたあたりで山野さんが
「このあと松の間から海が見えてくるの、その後左に緩やかに曲がっていった先が本命よ」
「今度は本当だろうね?」
一度騙されている立場がそうさせたのか、疑り深くなっていた。
「本当よ、今まで貴方に嘘付いた事があって?」
「・・・・・自分の胸に聞いてみるといいよ」
「胸に?もうエッチね」
「え?なんで?」
こんなやり取りをしている間に松の間から海が見えてきた。そろそろか?
松林を抜けるとそこは絶景だった。
左に穏やかな博多湾、右に荒々しい玄界灘。
その真ん中を聖地に続くかのような、志賀島への参道が続いていた。
確かに『海ノ中道』だ。
僕はその光景に興奮する。
この衝撃は東名上りで由比PA手前のトンネルを抜けた瞬間に富士山が見えるあの衝撃に似ている。
「どう?海ノ中道でしょ?」
「うんうん、確かに海ノ中道だよ。山野さんはウソツキじゃなかったんだね」
「そうよ、正直者で美人なお姉さんよ」
聞こえなかった事にしてこの不思議な風景を味わう。
日本にはこう言う人を興奮させる風景があと幾つあるんだろう?
出来れば全部洗い出して全部回ってみたい。
なんで学生時代にこんな気持ちになれなかったんだろう。
社会人になってしまった今ではその愚かしさが恨めしい。
「目の前の山に見えるのが志賀島。あそこに海の家が見えるでしょそこを右に曲がって」
さっきの言葉を無視されて怒ったのか山野さんはぶっきらぼうな案内をしてくれた。
683 :
774RR:2007/06/02(土) 19:24:51 ID:/416RGD7
CCCC
箱崎のお宮さんは方生夜の時にデートで行ったなぁ…あの高速に阻まれて沈みゆく夕陽が憎いんよ。
あれ、目に塩水が(´Д⊂)
684 :
774RR:2007/06/02(土) 19:26:39 ID:/416RGD7
方生夜→方生会だた…orz久々だったんで感じも思い出せない(´・ω・`)ショボーン
685 :
774RR:2007/06/02(土) 22:00:22 ID:L+/xlF9H
小さな恋物語りって,なんか狗飼恭子と村上春樹を足して割ったような感じの温度だな
大好きだ
686 :
774RR:2007/06/02(土) 23:20:21 ID:LXcf+Ix8
つC
自分の体験談も交えてないとこういう味は出ないな。
この書き方はなんか俺に似ている。
687 :
774RR:2007/06/03(日) 10:25:04 ID:EPojKDPa
しょっちゅう出てくるバスは西鉄だよねw
part9/13
海の家を右に回って海岸沿いに走る。
道のすぐ外側は3mほどの高さを挟んで海だ。
熱海に向かう国道135号線よりはましだけど、こちらの方が道の曲がりが急で数も多く油断すると落ちてしまいそうな感覚が強く、怖い。
10分ほど走って砂浜に出た。
「ここよ、ベスパを止めて砂浜まで歩きましょう」
ベスパを駐車場に止めて歩く、太陽は海という名のベッドに入る用意を始めたくらいの位置に居る。
綺麗な砂浜だな、きめが細かい砂でサラサラしている。
砂浜の砂なんてどこも同じと思っていたが何で違うのだろう。
「山野さん、ここの砂ってサラサラだね」
「山も作れそうにないし、文字を書くのも難しそうね。」
「それは困ったな」
「どうして困るのよ」
「手紙さえ書く事は出来ないじゃないか」
「砂浜に手紙を書いても波や風が消しちゃうじゃない。相手には届かないでしょ、別に良いじゃない」
「手紙を投函したら手紙は手元に残らないだろ?」
「それはそうね」
「それと同じ事さ、波や風が手紙を相手まで届けてくれるんだよ。海は世界中に繋がってる。風には国境はないだろ?」
「見かけによらずロマンティストなのね」
part9/13
過ぎ去ったあの日を昨日のように思い出す。
離れると分かっていたら、もう会えないと分かっていたら、もっと話していたかった。
もう一度会って話す事が出来たら、心の底の暗い部分は今より救われるのだろうか。
流木を拾い砂に手紙を書いてみる。
『もう一度会いたい』
すぐに波が受け取ってくれたけれど、相手に届くだろうか。
「『もう一度会いたい』ね、良い人にでも書いたの?」
山野さんに見られてしまったようだ。
昔の自分に戻ってしまっていて今一緒に居る人のことを忘れてしまっていた。
失礼な話だ。恥ずかしさも手伝い僕は慌てて
「いや、そんな人は居ないよ。今までそんな人も居なかったよ」
山野さんは存在を忘れられていた事を気付いた為か信用できなかったのか拗ねた様な、怒ったような口調で
「貴方は口が上手いから数え切れないほど居ると思ってたわ。」
「あ、ほらあそこからの眺めが良さそうだよ、あそこに座らないかい?」
女の勘は鋭いと言う、経験の浅い僕はこう言う時逃げの一手しか浮かばない。
「まぁいいわ、男の人にも秘密は必要でしょうしね」
「うんうん、必要必要。そうだ、男の秘密が多いとどう見えるようになるのかな?」
「信用出来なくなって行くんじゃない?」
山野さんは許してくれないようだ。
part10/13 1/5
砂浜に腰を下ろし海を見る。
押しては返す波の音に、楽しかったあの頃に帰る事が出来なくなった自分、永遠にあの頃に留まってしまったあの人を思い出す。
逢ヶ魔時・・・・
昼と夜の狭間のこの時間は辻に妖怪が走ると言う・・・文字通り魔が差してしまった。
「山野さん、これからもベスパに乗り続けるのなら一つ約束してほしい事があるんだ」
「なぁに?」
「・・・・・あのね、バイクに乗る人は決してバイクで不幸になって欲しくないってことだよ」
あの夏の日のことを思い出す。
僕の人生の中で最もと言って良いほど悲しく、辛く、苦しかった夏を。
「いきなり変な事を言うのね。何でそんな事を言うの?」
「あ、いや、バイク乗りってね。車と違ってバイクに乗っているってだけで仲良くなれるし、困っていたら助けてあげたくなっちゃうのさ。僕と山野さんみたいにね。
バイクって言うのは不思議な乗り物であり・・・・、友であり・・・、恋人なのさ・・・・。
そんな同じ仲間との再会がそいうことって言うのは嫌だよね」
上手く誤魔化せただろうか、まさか本当のことを言うわけにもいくまい。
顔を見たら嘘がばれそうで、山野さんの顔を見ずに海を見続ける。
何も言えない空気が流れる、自分の言った事に後悔する。
昔を思い出し右手を強く握ってしまう、痛みが走るが握る力は弱くならない。
空気を変えようと口を開こうとしたが、先に沈黙を破ったのは山野さんだった。
「いいわ、約束してあげる。私はバイクでは死んだりしないわ。でも貴方もその約束を守ってね」
「うん。勿論だよ。僕はバイクでは死なない・・・・・死んではいけないんだ」
「もう一つ約束して」
山野さんの言葉に握り締めていた右手が緩む
「なんだい?」
「どんな理由であってもそんなところで再会したくないわ。だから一日でいいから私より長生きしてね」
・・・・プロポーズ?
全身が熱くなっていくのを感じる。
顔も真っ赤だろう夕日でカモフラージュされていればいいけれど、それは無理だと分かっている。
山野さんの顔も真っ赤になっているからだ。
「・・・・・の、喉が渇いたね。ジュ、ジュースでも買ってくるよ。な、何が飲みたい?」
全身の熱で口の潤滑油も乾いてしまったようで口から出て行く言葉がぎこちない。
山野さんも俯いてしまって顔は帽子に隠れてしまっている。
「そ、そうね・・・・・冷たいお茶をお願いするわ。夏だから、暑いから。」
二人とも動揺を隠せない。
僕は逃げるかのように、全力疾走で自販機に向かった。
part10/13 3/5
自動販売機で清涼飲料を買う。
一気に飲めるだけ飲み呼吸を整える。
なのに未だに心臓がバクバクと激しく鳴っている。決して全力疾走の影響ではない。体ではなく心の影響だ。
好みと言っても恋人でもない女性にプロポーズのような言葉を言われたからって何故ここまで動揺するんだ。
『普段』の僕なら・・・・いや『普段』?今日の僕は初対面と言う事がなかったとしても女性に対し口が回りすぎる。
ガソリンを入れ終わったところで『普段』なら別れていただろう。
そうか、僕はそんな時から彼女に対し恋に落ちていたのか・・・・
自分の鈍さに愕然とする。
そうか・・・これが恋か、もっと早くに自覚して長い時間楽しんでいたかったな。
もう彼女と居られる時間はそう長くないのに・・・・
「はい、お茶だよ」
「ありがとう」
山野さんは振り返りもせずにお茶を受け取る。
「隣・・・座ってもいいかな?」
「いい・・・いいに決まってるじゃない!」
初めて会ったときよりぎこちなくなっている。
僕は恐る恐る、彼女は緊張しすぎだ。
太陽はそんな二人に構わず。ゆっくりと夜へと交代を始めていた。
part10/13 4/5
太陽が名前も知らない島の右側へ沈んでいく、山野さんの言葉通り夕日は幻想的な光景を見せながら海へと消えていく。
しかし、それは同時に山野さんとの別れの時間が確実に近づいていることを僕に教えた。
「今日」が終わっていく・・・・
「今日」を見守る役目を、太陽は月に交代し、月は星々と一緒に「今日」を見守る。
人間が月を見守られる時間まで「今日」は続く、人間はいつまでも「今日」を味わっていたくて、
月との別れを惜しむが悲しいかな、月はまたその役目を太陽と交代する。
明けない夜はないのだ。
『太陽よ、そのまま沈まないでくれ。』
必死に祈るが、人間一人の祈りだけでは星の瞬きさえも止める事は出来ない。
目頭が熱くなる。涙が出そうになるが必死に堪える。まだ別れの時ではない。最後まで笑顔でいよう。
山野さんとの思い出は笑顔だけで構成されていたい。彼女の中の僕もそうであって欲しい。
山野さんは今どんな顔をしているのだろう、頭は真っ直ぐ夕日の方へ向けられていて、色の白い横顔を
夕日が赤く染めている事しか確認できない。体を起こし確認するのは簡単だが、確認したが最後
分かれることが出来なくなり、全てを投げ捨ててこの人をどこかに連れ去りたくなるかもしれない。
それは自分も山野さんにも幸福をもたらさないであろう。必死に堪える。
part10/13 5/5
一分、いや一秒でも長くこの人と時間を共有していたい。何の打算も計算もない、
素のままの自分の叫びを抑え別の言葉を上から包んで、頭の中の万分の一の大きさで体外へ出て行かせた。
「お腹がすいてきたね、晩御飯を食べに行こうよ」
山野さんももう落ち着いたのか言葉に澱みなく
「そうね、実はもうお腹がペコペコなの。ご馳走してくださる?」
「かしこまりまして、お店はどこに致しましょうか?」
「とりあえず、渡船場まで行きましょう。家に電話しなくちゃ」
二人に残された時間はどのくらいだろう。いつまでも「今日」と言う「休日」が続けば良いのに。
part 11/13
海ノ中道方面から海の家で曲がらず真っ直ぐ行った所に渡船場があった。
すぐ傍の自動販売機の前にベスパを止めると、山野さんが公衆電話へ走っていく。
「あ、母さん。連絡が遅くなっちゃってごめんなさい。イカ子と会ったから晩御飯を一緒に食べてくるわ。
心配しないで今夜は遅くなっても帰るから。明日の用意はお願いね」
電話が終わった。山野さんが振り向いた。
別に変な意味はないが、家族に対して嘘をつく姿に背徳感を感じる。
「明日、何かあるの?」
「・・・・・秘密よ」
「そうか・・・・君は魅力的だよ」
今日何度となく繰り返されてきたやり取りもそれまでのようには笑えない雰囲気を醸し出す。
山野さんと見つめ合う、上手く次の言葉が出てこない。
「ご飯は・・・天神あたりで・・・いいかしら」
山野さんの言葉も歯切れが悪い。
「あ・・・あぁそうしようか」
ベスパを止めた自販機の前へ歩いていく。
自販機の前で博多湾を挟んで向こう岸をみる。
地上の星が眩しく煌いている。この暗い雰囲気もあの光の下に行けば払われるだろうか。
ふと、周りより高い位置に航空障害灯が光るのが見えた。
「あの高い建物は何かな?」
「あぁ福岡タワーよ。去年イベントがあって今は再開発中なの」
「行って・・・・みたいな」
「いいわ・・・・行きましょうか」
ベスパに乗り天神方面に向かう、通ってきた道を戻るだけの事で何も楽しい事はない。
通ってきた時のドキドキも、帰っていく・・・別れるときの恐ろしさを感じ始めた今では影を潜めていた。
天神では、何かを食べたがメニューも味も覚えていない。
満腹感が確かに何かを食べた事を教えてくれた。
期待を裏切るかもしれませんがえちーはありません。今日はここまで
698 :
774RR:2007/06/03(日) 16:48:38 ID:6uEx3kKh
つC
699 :
774RR:2007/06/03(日) 18:19:49 ID:19GlPuo6
700 :
774RR:2007/06/03(日) 18:39:44 ID:Oiz8/PrT
701 :
774RR:2007/06/03(日) 18:54:14 ID:PNp3P8M7
伊佐坂&甚六久々に見たw
702 :
774RR:2007/06/03(日) 22:12:44 ID:155bwTpg
>>700 死ねとはなんですか!
「すみませんが、宜しかったら死んで頂けませんか?」と
相手に対しての謙譲の心を含ませるものです。
そうすれば、言われた方としても
「じゃあ、ここはひとつ死んでみようかな?」という気になるというものです。
703 :
774RR:2007/06/03(日) 22:29:49 ID:nAVzGQBQ
うーむ、大阪出身で東京の大学を出て東京の会社に勤めて福岡の岩田屋デパートの
食堂でお見合い…どっかで聞いたような? それとイカ子ちゃん?
とりあえずC
704 :
699:2007/06/03(日) 22:57:38 ID:19GlPuo6
705 :
774RR:2007/06/03(日) 23:38:16 ID:DaEBBi44
つC
昨日読んだ「いま、会いにゆきます」より面白いぞ
part12/13 1/5
何もないコンクリートの平原の真ん中に、雄雄しく一本の塔がそびえ立っている。
これが童話なら、塔の上から髪の梯子を下ろして貰って囚われの身のお姫様を助け出せば良いのだが、
現実の世界にはそんなご都合主義はない。
「これが福岡タワーよ、去年だったら博覧会を見物できたのに、タイミングが遅かったわね」
博覧会か、幼稚園くらい子供の頃に、家族皆で大阪の万博に行ったっけ。
月の石には訳が分からずとも凄く興奮したことを覚えている。
「凄く高そうだね、東京タワーとどっちが高いだろう?」
「確か東京タワーのほうが高いわよ、数字でしか知らないけど福岡タワーは230から240mだったと思うわ」
「東京タワーは330mくらいだから、東京タワーのほうが高いね」
二人の間に静寂が訪れる。昼間の元気は太陽に持っていかれたのか言葉が出てこない。
「今、何時かしら?」
part12/13 2/5
腕時計を見る。蛍光塗料が針に塗ってあり、アナログでも時間が分かった。
この機能を今まで気に入っていたが、今日はこの機能が恨めしい。
「9時・・・・・20分だね」
「馬車が南瓜に戻ってしまいそうね、私はそろそろ・・・・」
別れたくない、まだ一緒に居たい。しかし、そうもいくまい、物語は佳境に入り始めたようだ。
僕は手を前へ伸ばし、
「12時の鐘がなる前に、ダンスの相手をお願いできませんか?シンデレラ姫」
その言葉に山野さんは微笑んで、スカートの裾を少し上げお辞儀をした。
「喜んで勤めさせて頂きますわ、王子様」
月と星々の観客が見守る中、広い舞踏場の大きな柱時計の前で、音楽のない、二人だけのダンスパーティー
が始まる。
二人ともお互いのパートナーから目を離さず、静かな会場に二人の靴の音だけが規則的に響ていた。
観客はそれぞれの席で静かに二人を見守ってくれている。
part12/13 3/5
どのくらい踊っただろう、疲れてきたのか、山野さんのステップが遅くなっていく。
山野さんが俯き加減になる、そのまま額を僕の胸に当ててステップも止まってしまう。
山野さんの頭は僕の胸に収まっている、髪から汐の香りがする。僕は一生この香りを忘れないだろう。
繋いでいた手が離れる、離れてしまった僕の手は山野さんの背中を周り、山野さんを抱きしめる。
山野さんの肩がピクンと跳ねたが、頭は胸から離れず、しばらく抱き合っていた。
『このまま時が止まってしまえば良いのに。』
時は止まらなかった。
ゆっくりと山野さんが顔を上げる、月明かりに美しく光る瞳が僕を捕まえる。
二つの瞳が僕を捕らえ続ける、指先一つ動かすことが出来ない・・・・動かしたくはない。
ゆっくりと山野さんの瞼が閉じられていく。
閉じられていく瞼につられるように、僕の瞼も閉じていく
徐々に二人の距離が縮まって行く、唇が重なっていった。
part12/13 4/5
永遠とも思われる長い口付けが終わる、山野さんの体が僕からゆっくりと離れていく。
「ガラスの靴は置いていけないけれど、代わりに貴方の名前を頂いていっても良いかしら」
別れの時間だ、頭の中では鐘が鳴り始めた。
「フグ田、フグ田マスオ」
彼女の中で僕の名前がいつまでも生き続けられるように、一字一字噛締めながら答えた。
山野さんは首を傾げながら、
「どこかで聞いたことがある名前ね」
彼女に名乗るのはこれが初めてである。そんな事を言うのは何故だろう。
彼女はクルリと僕に背を向け、ベスパの方へ歩いていく。
昼間あれほど言葉が出てきた僕の口は、魔法の効力が消えうせたかのように沈黙したままだった。
part12/13 5/5
山野さんはベスパのエンジンを掛け、ミラーに掛かっていた僕のヘルメットを差し出す。
半日振りにヘルメットは僕の元に返ってきたが、これが別れの合図に思えて悲しい。
「では王子様、私はこれで失礼します。魔法の解けた姿は見られたくないの、追って来ちゃ駄目よ」
「本当の姿まで秘密だったのか、魅力的なはずだよ。」
僕の持つ、彼女を特定する情報は名前だけだ。
物語と違って探しようはない。
「いい休日をありがとう」一生忘れないという言葉は胸にしまっておく。
ベスパは山野さんを乗せ走り去っていく、コンクリートの平原に静寂が戻ってきた。
帽子を目深にかぶり回れ右をする。
2,3歩歩いてから空を仰ぐ、涙が零れないように・・・
「さて、どうやってホテルまで帰ろうか」
part13/13 1/6
窓から入ってくる光の眩しさに目が覚める。時計を見ると9時を過ぎたあたりだ。
ホテルの食堂で食事を取り、一旦部屋に戻る。
昨日の出来事が夢だったように思える。東京に帰ってしまったらもう二度と会えないであろうと言うことに、少し落ち込んでしまう。
今日はお見合いなのだから、落ち込んだままでは相手に失礼だろうと思ったが、その前日に他の女性に恋に落ちているのだから今更かと自嘲気味になる。
それでもこのままではいけないと気分転換の為にシャワーを浴びる。
シャワーを浴び終え着替えを始める。シャツに手が伸びたときに山野さんの選んだシャツであることを思い出す。
「全く、失礼な話だよな」
part13/13 2/6
時間は10時30分を回ったところだ、気分を転換しきれないままホテルを出る。足取りは重い。
向かう先は岩田屋の一階の入り口玄関。そこでおばさんと合流して、その後自分は食堂で相手が来るのを待つだけだ。
予定の時間は11時30分のはずだから45分前に来てしまったことになる。おばさんもまだ来ていないようだ。
途中の本屋で何か買って来れば良かったなと思うが、どうせこれからしばらくは本を読んでも頭に入るまい。
10分ほどしておばさんが来た。落ち込んでいる顔を緊張と取り違えたのか。
「心配しなくても、取って食われはしないんだから」
と、底抜けに明るい声で背中を叩かれた。こういう時こういう人には救われない。
part13/13 3/6
食堂に予定の時間の20分前に入り、入り口に向かって背中を向ける形で座った。
これでは相手が来たときに分からないじゃないかと思う。おばさんはこういうところが抜けている。
実家の母も兄も自分も少し抜けているところがあるから、これは家系と言う奴だな。
「フグ田さん、フグ田さん」
入り口の方から声がする、相手が来たのだろう、おばさんが入り口の方に駆けて行く。
自分もそれに続いて歩き出す。
入り口に立っていたのは頭頂部に髪の毛が一本、顔つきはまさしく頑固親父と言う50過ぎあたりの紳士と
やはり50過ぎくらいの、やさしげな雰囲気を漂わせる、まさしく日本のお母さんと言うべき女性が立っていた。
おばさんが紳士と話している。あの紳士から推測すると娘さん、確か名前は「サザエ」だったか---は30過ぎか、
ここに来て見合い写真を見ていないことに後悔すると共に、どう断ろうかと言葉を考え始めた。
「こらサザエ、こっちに来て挨拶をせんか」と老紳士が言うや否や若そうな女性が俯いたまま入ってきた。
part13/13 4/6
「磯野サザエでございます」俯いたまま頭を下げたので、慌ててこっちも
「フグ田マスオです」とお辞儀を返した。
あれ?どこかで聞いたような声だなと思い顔を上げると、そこに居たのは
「山野小百合さん?」
「マスオさんじゃない、何でココに?」
「お見合いだよ。君は昨日僕から名前を聞いて気付かなかったのかい?」
「だから、聞いたことがあったのね。マスオさんこそ私の顔を見て今日の相手だって分からなかったの?」
「おばさんが写真を送ってこなくてね。写真を見てなかったんだよ、名前も聞いていたのと違うし、分かるわけ
がないじゃないか」
お互い顔は真っ赤になっており、両者の付き添いも訳が分かってない状態だ。
笑うしかないとはこういう状態を言うのだろう。
小百合さん、もといサザエさんが、自分の胸元を見ていることに気付く。そこで
part13/13 5/6
「このシャツ似合ってるかい?」
「見立てた人が良かったみたいね」
part13/13 6/6
この後、両者の付き添いから説明を求められ、呆れられながらも、無事にお見合いは終わった。
東京に帰ったら、あの人情と唇の厚い親友に今回の事を話してみよう。
作り話と笑われるかもしれないが、本当にあった小さな恋物語なのだ。
小さな恋物語episode2 sideM完
to be continued sideS
数の数え間違えで無理やりぶった切ってしまいました。
恥ずかしい事この上なし。
今回の作品はどうでしたでしょうか、次の作品も展開上バイクの出番が少ないのはご了承ください。
717 :
774RR:2007/06/04(月) 01:00:19 ID:vboJv/9F
おっしゃるようにいきなり話が尻すぼみになりましたねwww
ただ次回作も期待してますCCCC
718 :
774RR:2007/06/04(月) 01:00:24 ID:d3z5HOwb
(;´Д`)つC
719 :
774RR:2007/06/04(月) 01:00:48 ID:1YAE/XIX
っC
720 :
774RR:2007/06/04(月) 01:02:19 ID:wkV9wk+R
リアルタイムktkr
つCCCC
721 :
774RR:2007/06/04(月) 01:16:44 ID:iXRr8fnt
魔棲雄乙つC
722 :
774RR:2007/06/04(月) 03:04:43 ID:2wgUPsbJ
切ないままに終わらなくてホッとした
っCCCC
723 :
774RR:2007/06/04(月) 09:35:18 ID:WdVtnMAi
マスオが古い映画俳優に見えてきた・・・
724 :
774RR:2007/06/04(月) 19:44:54 ID:uUfUE+Qt
正直…こういうハナシ好きです
乙でした!つCCCC
725 :
774RR:2007/06/04(月) 22:22:16 ID:E84mynRY
>>714 ちょっとまて
道考えてもサザエのキャラが違うだろwww
726 :
774RR:2007/06/04(月) 23:12:51 ID:T0JGSQPf
道って?
サザエは百道に住んでんじゃなかったっけ?
キャラはココでは在ってないようなものだからいいと思う。
つまり、作者乙
727 :
774RR:2007/06/05(火) 04:09:58 ID:ollobVD6
>>726 たぶん
“どう考えても…”
なんだと思う
728 :
little_love_story:2007/06/05(火) 05:48:39 ID:RFCeLkGQ
サザエのキャラが違うという点はside Sで補完します
729 :
774RR:2007/06/05(火) 07:43:41 ID:rDTOxqcX
これどっちかというとタイコさんのが似合う
サザエがあんなお嬢チックとか最後のオチで吐いた
730 :
774RR:2007/06/05(火) 09:28:16 ID:g8LfLnvO
マスオをどう想像してもJ・P・ベルモンドしか出て来ないよーな仏映画じみたSSだったw
731 :
774RR:2007/06/05(火) 18:32:36 ID:pUJO/gMZ
マスオさんて研究室詰めだったのか。
732 :
774RR:2007/06/05(火) 23:37:41 ID:3SrZa+Lf
日本は日本独自の文化を持ち、そして国民はみなそれを誇りに思っている。
そして、神道に根ざした「自称を掘り下げて考える」という哲学的思考は、
先頭術、芸術にとどまらず、茶の湯といった文化様式や小笠原という作法までも
様式化し、伝統を論理的に構築して広めていくという他国には例を見ない方法を
至るところに取り入れるようになった。
その世界感は現在でも日本人の根底に根差しており、現代の風習においても
その作業は進められており、日本のANIMEにおいてはサブカルルチャー的文化
において熱狂的な流行となったエヴァンゲリオン(エヴァと呼ばれる)と
言ったもにに限らず、Mrs.Sazae & her neighborhood(サザエさん)に至るまで
が研究対象となり、The secret report of Isono Family(磯野家の謎)といった
本までが研究書として発売されるに至っている。
このような論理的思考を日本では道(DOU=WAY)と呼び、柔道、剣道、茶道、
イカリゲン道、サザエ道などと言う。
ということなのではないかと。>道(
>>726)
733 :
732:2007/06/05(火) 23:42:01 ID:3SrZa+Lf
×自称
○事象
×言ったもにに限らず
○いったものに留まらず
×(サザエさん)に至るまでが
○(サザエさん)のような家族向けのANIMEに至るまでが
思いついたら止らなかった。
しかし止らなかった。
書きながら反省していた。
734 :
華:2007/06/06(水) 01:38:04 ID:rqHYadSW
>>598 本当ですね…恥かしい限りです…orz
>>599 おっしゃる通りですね…orz 以後気をつけます。
お二方、ご指摘有難う御座いますm(_ _)m
↓【星に願いを編】続きです↓
735 :
華:2007/06/06(水) 01:38:53 ID:rqHYadSW
「ここら辺で休憩しようか?」そう言いながら翁はヘルメットのシールドをあげる。
私達は88とTDRを並べて海を眺めながら、ちょこんと地べたに座りだした。
「そこで少し待っててくれるかな?」再びシールドを下げて翁は缶コーヒーを買いに走り出してしまった。
「バイクって凄いわね。私、東京のこっちまで来るの初めてだわ」私は夕日を眺める早川さんに言った。
「ホントねぇ…ホントにバイクって凄いわ」少し寂しげな表情を見せる早川さんに私は「どうしたの?」と顔を覗いた。
「ちょうど一年前の今頃だったかなぁ…夕日が眩しくって」と寂しげな顔をしながら話す早川さんを見て私は少し考えてしまった。
いつも何か事があれば早川さんは必ず私の話を聞いてくれた。そして親身になってアドバイスしてくれたり励ましてくれた。
今度は私の番だ。そう思い私は早川さんに「私でよければ…聞くよ。」と早川さんの瞳を見つめて笑顔で言った。
「ありがとう、花ちゃん…あのね…私一年前に…」
――早川は花子に一年前の出来事を語り出した――
736 :
華:2007/06/06(水) 01:40:13 ID:rqHYadSW
一年前の夏。 早川は一人の男性に恋をしていた。正確には「恋」ではなく「憧れ」なのだが、若い彼女にはまだわからなかった。
「えっ!…そ、そう…です…か… ご、ごめんなさい…し、失礼します…」早川は今にも泣きそうな声でその場を立ち去る。
その男性というのは近所に住む大学生の男性で、よく早川に勉強やら様々な話をしてあげていた。
なんでも知っているその男性に早川は強烈に憧れ始め、早川にとって尊敬出来る男性であった。
そして一年前の夏、早川は勇気を出して交際を申し込むも、その男性は遠距離ながらも大切な人が居るという事を告げられ、その場を立ち去っていた。
まだまだ恋少ない早川にはショックは大きく、ただフラフラと朝日ヶ丘の駅前を呆然としながら歩くことしか出来なかった。
早川は頭の中で「大切な人が居る」というセリフが延々と繰り返される様に流れ、駅前交差点の歩行者信号が赤にも関わらず涙を浮かべて歩き出してしまった。
虚しく歩くその姿をオレンジ色の夕陽が早川には眩しすぎた…
キキー!!
「バカヤロゥ!死にてぇのか?!」大きなバイクに跨る一人の男が早川に怒鳴りつけた。
だが、そんな怒鳴り声ですら今の早川にはうわの空で、ただただ涙を浮かべているだけだった。
バイクの男はそんな早川の様子を見て、ただ事じゃない事に気付いた。
(こりゃ、とんでもない子猫に捕まっちまったな…)バイクの男は早川を安全な所に誘導し始めた。
737 :
華:2007/06/06(水) 01:40:59 ID:rqHYadSW
「お嬢さん、何があったか知らないけど… まず…涙…拭こうか」そう言いながらバイクの男は早川にハンカチを手渡した。
バイクの男は大きなバイクを移動させてヘルメットをズボッと脱ぐ。座り込む早川の顔を見ては困った表情を浮かべながら話し出した。
「お嬢さん、恋の…悩み そうだろう?」そう言いながら男はハイライトに火を付け白煙をフゥーと優しく上へ吹いた。
早川は見ず知らずのバイクの男に何故か優しく包まれた感情を抱き、頭を下へコクンとおろした。
「お嬢さんはその人の事、本当に好きかい?本当に好きなら悩むんだ。悩んで苦しんで恋するものさ」そうバイクの男は言い出した。
早川はチラッとバイクの男の顔を見上げるが、夕陽が眩しすぎて男の顔がハッキリと見えなかった。
「恋と愛の違いってお嬢さん、わかるかな?」そうバイクの男は早川に言い出した。
若い早川にはまだまだ難しすぎる質問だった。当然早川はバイクの男が言う「恋と愛」の違いがハッキリわからず首を横に振った。
「恋は人を想う 愛は大切な人を守る 俺はそう考えてるんだけどな。ちょっと難しいか…一概には言えないけどね」
バイクの男は少し照れ臭そうに頭を掻きながら答えた。
「お嬢さんはどっちなんだい?」そう早川に質問してきたが、早川には答えることが出来なかった。
(ふぅ…こりゃ相当だな…)バイクの男は腰に手をあてた。
「お嬢さん、よかったらおじさん話聞くよ」優しくバイクの男は声をかけた。そして早川はうっすらと涙を浮かべながら顔の見えないバイクの男に経緯を話した。
738 :
華:2007/06/06(水) 01:41:44 ID:rqHYadSW
「そうか… それはショックだね…だけどおじさん一つだけわかった事があるよ」と早川に言う。早川はバイクの男の顔を覗き込んだ。
「きっとお嬢さんはその人の事、憧れていたんだよ。厳しい言い方かもしれないけど、恋は憧れだけじゃ駄目さ。」ポンと早川の頭に手をのせて優しく撫でた。
「憧れだけじゃ愛にはなれない… ちょっと難しいけど、たくさん恋すればわかるさ。ま、おじさん偉そうに言っているけど大して恋してないけどね」
そう言いながらバイクの男は苦笑いしながらハイライトの煙を吐き出す。
「本当に人を好きになると、そりゃぁ苦しいものさ。苦しくて悩んで、そして初めてその人の事を大切に想う」
「大切に想い出したら…ふふ…そこからはおじさんからの宿題…かな?」そうバイクの男は照れ臭そうに言い出した。
早川の心の中でモヤモヤしていたものがスゥーっと晴れていく。
「さ、おじさんは友人を待たせててね。そろそろ行くよ。元気だしてな」そう言いながらバイクの男は夕陽を浴びる大きなバイクに跨り出した。
早川は夕陽が眩しい中、バイクの男に「あ、あの!ハ、ハンカチ!あ、洗って返しますので…」とバイクの男に必至に言う。
「いいさ。そのハンカチたくさん持っててね。よかったらあげるよ。それじゃぁ元気だしてね」シールドをカシャンとおろして風の様に去ってゆく…
――早川は一年前の事を花子に話し終えた――
739 :
華:2007/06/06(水) 01:42:32 ID:rqHYadSW
「素敵な方ね。優しい人に早川さん出会ったんだね」と私はこの話を聞いて翁に助けられた時の事を思い出した。
「うん、顔はハッキリ見えなかったけど、唇が大きかったのは憶えてるんだ。」そういいながら早川は一枚のハンカチを取り出した。
「これがその時のハンカチなんだぁ」パッと広げれば、そのハンカチには『江戸前 男前』の文字と何かを象った絵が描かれていた。
(す、すごいセンスのハンカチね…)私は心の中でそう考えてしまった。
「この『うなぎ』すっごく可愛くって!」と早川さんが言う。
「そ、そうね…」私にはそれしか言えなかった…
「でね、その人のバイク乗ってる姿見てカッコイイなぁ〜って思っちゃってね。単純だけど私も乗ろう!って思ったの。」と嬉しそうに早川さんが言う。
私は早川さんに笑顔が戻って良かったと思った。
「そういえば、その人のバイク何だったの?」と私は早川さんに聞いて見た。
「KATANAだよ。特徴的だもん。」確信した表情で早川さんは答えた。
トットットットッ… 翁が缶コーヒーを持って私達の所に戻ってきた。
「花ちゃん今の話、二人の秘密だからね!」と早川さんはハンカチをしまいながら私に言っては「うん」と私も答えた。
「いやいや、待たせてしまったね。」缶コーヒーを私達に手渡して夕陽を見ながら私達3人は暫し雑談し始めた。
740 :
華:2007/06/06(水) 01:43:18 ID:rqHYadSW
初めてのツーリングはそれは楽しくて、バイクに乗って休憩してみんなで話して…ただ、ただそれだけなのに楽しすぎるあまり気がつけば陽が沈んでいた…
「む、もうこんな時間か…はっはっはっ!楽しい時間はすぐに過ぎてしまうね」翁は笑いながら言い出す。
「そろそろ、帰りましょうか」と早川さんが言えば翁は「そしたらいきなりだけども首都高で帰ってみようか」と提案してきた。
「えっ!えぇー!!い、いきなりですかっ!?」と私達は驚いた。
「大丈夫さ、ゆっくり走ろう。意外と回りはスピード出していないものさ」と翁は言う。
その後、翁から首都高を走る上で注意事項を聞き、私達はゆっくりながらも二輪乗車初日で首都高に乗り朝日ヶ丘まで帰る事にしてみた。
近くの首都高入口から料金を支払い私達は首都高を走り出した。思っていたほど交通量は多くなく、翁は50〜60km程のゆっくりした速度で周りに迷惑の掛からないように先導し始めた。
そして私達3人がC1へ合流し世田谷方面へと向かう途中、電光石火で3台のバイクが走り抜けていった…
先頭を突き抜けていったのはNSR250R−SPロスマンズカラー、そのロスマンズに寄り添う様にTZR250Rが私達を追い越し斜線から白煙を巻き上げ過ぎ去ってゆく。
そして数秒遅れてGSX400Sが身を伏せながら前の二台を追う様に過ぎ去っていった…
「な、なんてスピードなの…」私は3台のバイクの走り抜けるスピードに驚いた。
ただ、私はまだ知らなかった… この時過ぎ去ったTZR250Rの乗り手が『大空かおり』だった事を…
そして…もしかしたら私とかおりの運命の歯車はこの瞬間から動き出していたのかもしれない…
――花子達が無事帰宅する頃、都内某PAで3台のバイクの乗り手が雑談をしていた――
741 :
774RR:2007/06/06(水) 01:47:34 ID:4BHs+WJM
華乙 つC
742 :
華:2007/06/06(水) 01:53:32 ID:rqHYadSW
「そういえば、その人のバイク何だったの?」と私は早川さんに聞いて見た。=×
「そういえば、その人のバイク何だったの?」と私は早川さんに聞いてみた。=○
「大丈夫さ、ゆっくり走ろう。意外と回りはスピード出していないものさ」と翁は言う。=×
「大丈夫さ、ゆっくり走ろう。意外と周りはスピード出していないものさ」と翁は言う。=○
嗚呼…orz
ね、寝ます…orz
743 :
774RR:2007/06/06(水) 02:02:44 ID:xCHYjEMF
つC
744 :
774RR:2007/06/06(水) 02:05:11 ID:uYcs9o5b
華さん乙です!
今夜は遅いですね、よく寝て明日に備えてください!
…しかし、今回アノ人が絡んでくるとは…イイヨイイヨーCCCCCCCCCC
745 :
774RR:2007/06/06(水) 05:08:52 ID:k47Q0xJU
華氏CCCCCC
746 :
774RR:2007/06/06(水) 07:27:14 ID:ImM+ClCp
華乙
747 :
774RR:2007/06/06(水) 10:35:25 ID:K0fk29ef
江戸前 男前
っC
748 :
774RR:2007/06/06(水) 15:28:16 ID:B3T6I1Yo
華氏つC
華氏の物語って設定よく出来てるよな。
物語構成と人物設定が凄くイイ!!
やべぇ…あの頃思い出したら2st乗りたくなってきたww
749 :
774RR:2007/06/06(水) 18:28:05 ID:mrUCvSJT
元3XV海苔の俺がC
また乗りたいなぁ〜
夜の帳降りた首都高某PA。
そこへ迫力有る低音の排気音を響かせながら、二台の黒い大型バイクが滑りこんできた。
先客のバイク乗り達の視線が、その二台のバイクと、それを駆る二人の黒ずくめのライダーに注がれる。
その視線には、畏怖と敬意が含まれていた。
二人のライダーの片割れ、黒いGSX−R1100を駆るライダーの視線が、自販機の前で止まる。
そこには二人の少女と老人が楽しそうに語らっている姿があった。
真新しいヘルメットを抱えた少女達。穏やかな笑顔の老人。
初心者だろうか?楽しげで日の光を思わせる華やかな雰囲気を二人の少女は漂わせていた。
その視線を掌が遮った。
もう一台のバイク、ZX−11を駆るライダーの掌だった。
「兄貴……」
「見るな……太陽を望むな……俺達には眩しすぎる……」
「……ごめん兄貴……」
「行こう兄弟……俺達の……俺達だけの太陽を探しに……」
「……あぁ……暗闇の果てに……」
751 :
774RR:2007/06/06(水) 20:46:01 ID:mfIZYCMh
752 :
774RR:2007/06/06(水) 21:18:17 ID:YrpQ8KVx
さっき、首都高でやったアナゴ兄貴凄かったです!
ガチムチのアナゴ兄貴がフグタ君連呼で
753 :
774RR:2007/06/06(水) 21:30:52 ID:a4aaSWC8
>750
なんか最近の仮面ライダーにいなかったか?w
754 :
774RR:2007/06/06(水) 23:52:27 ID:yIY/9w0u
パンチとキックだな
755 :
774RR:2007/06/07(木) 08:13:04 ID:BDCRBhLd
パンチと言えばジョンだろ
756 :
774RR:2007/06/07(木) 14:50:38 ID:XGnQstX7
ショウリョウバッタ兄弟かよwww
【SCENE117】
行き場の無い後悔と、埋める術を知らない喪失感を胸に抱きながら僕たちは再びバイクに跨った・・・。
いや、正確に言うならば、そんな心底の苦悩があるいは霧散するのではないかという僅かな希望を
バイクに寄りかからせていたに違いなかった。
それまで、僕たちはバイクから確かに幸福を享受していた。走るバイクから得られる様々な官能的
要素は僕らに爽快感をもたらし、それがすなわち単純に僕らの幸せだった。バイクに乗るという
行為をただ純粋に人生の至福に位置づけていた。バイクはいつだって、僕達にとって幸福の
シンボルだった。
だが僕らは、そんな幸福の上にのみ約束付けられた、単純で、だからこそ純粋なバイクとの関係性を
壊した・・・。壊すしかなかった・・・。
常にバイクから幸福を享受する側だったはずの僕らは、大切な人の死によって精神が大きく揺らぎ、
倒れそうになった時、バイクに心の救いを求めた・・・。物言わぬ機械に、一方的な自分達の都合を
押し付けたのだ。
・・・この時、僕達にとってバイクという乗り物が単純なる享楽の具で無くなったように思えた・・・。
主人の後悔と苦悩を払拭するよう暗に要求された、哀しき慰み物のような存在に思えたのだ。
僕が出発の準備をする間、アナゴ君はアパートの外階段に腰掛け、タバコを吹かしていた。彼は
ずっと黙ったままだった。
Ninjaを手に入れてから、これほどの期間を不動にしたことは無かったが、それでも10日ほどの
眠りからエンジンはいともあっさりと目を覚ました。
日はもう沈み、夜が来ていた。薄暗いアパートの駐輪場の片隅で、暗黒に棲む得体の知れない
獣のような息づかいで、devil管から呻き声をあげるNinja。
そのマシンの不気味な鼓動を聞いて、僕は不安に襲われる。マシンに苦悩の捌け口を求めようと
している自身の心というものは、実は気のせいなのかも知れない・・・と考える。
暗黒の淵で積極的に僕達を呼ぶ死神は、あるいはこのマシンの内に潜んでいるのかもしれない・・・。
弱化した心の隙を、その死神は見逃す事無く、再び僕らをスピードの世界に手招きしているのかも
しれない・・・。僕らはバイクに苦悩を背負わせようとしているつもりで、実はバイクという名の死神に
呼び寄せられているのかもしれない・・・。
そう考えると、不本意な立場に置かれているのがバイクなのか己なのかが解らなくなる。そして、
ますますこのバイクという乗り物のことも解らなくなってゆく・・・。
『どうして僕たちはバイクじゃなきゃ駄目なんだろうね』
在りし日の鈴木さんの問いが頭をよぎる・・・。同時に、それを何気ない一言として捉えていたその頃の
無邪気な自分よりも、よほどその問いへの答えに遠い今の自分の意識に気が付く・・・。
・・・そして、何もかもが解らないまま僕はバイクの背に再び跨った・・・。僕らは終始無言のまま、
バイザー越しに一度だけ目を合わせると、それを合図にするかのように夜の街にマシンを進めた。
・・・何故、バイクは走るのか?それは、止まると倒れてしまうからだ・・・。
そんな要領を得ない禅問答のような答えが、その時の僕には理解できるような気がした。僕らは
立ち止まると本当に足を踏み外しそうだった。ともすれば、人外の道を転げ落ちそうだった。
そんな僕たちが、ギリギリの意識を保って何処へ向かうとも無く前に進む為には、この乗り物の力を
借りるしか無かったのだ。
Ninjaとカタナは走った・・・。ただひたすらに前に向かって走った。二輪車という工業製品としてこの世に
産み落とされた唯一つの目的を遂行するが如く、二台のバイクは力強く、前に向かって走った。
正直に言えば、僕らの心に満ちた苦悩を払拭するという役割を、バイクは実に粛々と果たしてくれた。
都内の下道を第三京浜玉川ICに着くまでの間、僕は鈴木さんが死んでから初めてその贖罪意識から
離れられたと感じた。それは、バイクに乗る楽しさという純粋な思いによってもたらされた感情では
なかった。前を走るアナゴ君のペースがあまりにも速かったのだ。
カーブや交差点、そして何よりも通りを埋め尽くす四輪車の群れに対し、アナゴ君は尋常ならざる
勢いで突っ込み、そしてパスしていく。彼に付いていこうとすると、もはや頭の中に余計な思考を置く
余裕など無い。
僕らの行く手を意図的に阻むかのように次々と灯るクルマのブレーキランプやウィンカー。左右の
側道から現れる合流車両。そんな邪魔者達の合間に、おぼろげに、そして不確実に存在する
わずかな隙間・・・。僕たちは、そのか細いラインに対して到底適当とは思われない速度で駆け抜ける。
僕は前を走るアナゴ君の背中に、底知れぬ闇の淵を感じていた・・・。
狂おしげに、悶えるようにクルマの群れを掻き分け走る彼の背中に、僕は寂寥感と一抹の不安を
感じていた。
彼のリスキーな走りは、以前の熱いながらも生命感ほとばしるそれとは何かが違っていた。彼の
走りはまるで捨て身だった。
数日前に彼の身の上に起きた悲劇を知らぬ人の目には、そのあまりに危険な暴走は未必の
自殺志願者のように見えたであろう。
・・・いや、彼のその走りの理由を知っている僕の目からも、彼は『未必の自殺志願者』にしか
見えなかった・・・。走り出してから、この僅かな間に僕はアナゴ君の事が、少し心配になっていた。
玉川ICから第三京浜へ上がる。以前となんら変わることの無い夜の高速ステージ。変わったのは、
僕らの心。そして、僕らの傍らにCB1100Rが居ないという事実・・・。
3速・・・4速・・・各シフト段を、それまで使うことの無かったレッドゾーンまで回しきると、エンジンは
不気味な金切り声をあげる。その音は遮音壁に反射し、僕自身を包む。それが己の愚かな行為を
客観的に突きつけられているように思えて、僕は少し不快になる。
僕らは、襲い来る自責の念と、焦燥と、喪失感から逃れようとスロットルを大きく開けているような
ものだった。200km/hで流れる景色に、そんな思いを溶かすように僕らは走った。
アナゴ君は相変わらず、死と紙一重のライディングを僕の目の前で繰り広げていた。彼はそのままの
速度を保ちながらクルマとクルマの間を突き抜ける。そして、苛立ちを隠すことなく車列を縫うように
、掻き分けるように前へ前へひたすらに走る・・・。
・・・彼がその瞳で見た事・・・見てしまった事・・・。それは、想像を絶する地獄であったのだろう・・・。
彼の心には、もう消すことの出来ない血に彩られた記憶がある。その衝撃で作られた心の穴は、
僕のそれ以上なのだろうと、その狂おしく走る背中を見ながら、僕は感じていた・・・。
そんな何か暗黒の意思に突き動かされるように乱れ走るアナゴ君の背中を見ながら、僕の中では
先刻の不安がますます大きく膨らんでいった。
アナゴ君もまた、鈴木さんの後を追うように居なくなってしまうのでは無いだろうか・・・。いや、もしかしたら
この苦しみから解放されたいが為に、そうなる事を願っているのでは無いだろうか・・・。いずれにしても
この苛立ちと哀しみがもたらすライディングの果てに、彼もまた、僕の目の前から姿を消してしまうのでは
無いだろうか?と、激しい不安に襲われる・・・。アクシデントが起こったのはそんな時だった。
もうすぐ保土ヶ谷PAに着く。その時だ。僕達が走る車線に、左隣のレーンから一台のクルマが突然、
ウィンカーも出さずに割り込んできたのだ。
・・・いや、ウィンカーを出していなかったことはともかく、「突然」という言葉には語弊があるかも知れない。
そのタイミングが「突然」に思える原因はむしろ僕達の速度にあったに違いないのだから。
200km/hで走る僕達の進路を塞ぐ、黒いスポーツカー。確か、セリカだった。そして、急減速をかける
カタナとNinja。特に前を走っていたアナゴ君は、僕以上のブレーキングを強いられた。
僕の目の前のアナゴ君は、後輪が十数センチほども宙に舞い上がるほどの急制動をかけた。再び
アスファルトを捉えたカタナの後輪は、キュッと小さくスキッド音と少しの白煙を巻き上げる。ゴムの香りが
瞬間、鼻を刺す。
・・・先ほどの懸念が早速的中しそうになり、僕は相当に肝を冷やす。
しかし当のアナゴ君は、そんな危険を意にも介さず、そのままそのスポーツカーの真後ろにピッタリ
つけると、煽り出したのだ。スポーツカーのテールに反射する一際眩しいカタナのヘッドライトは、
ハイビームを意味していた。そしてアナゴ君は、エンジンを吹かしそのクルマを挑発する。
そしてそのまま、僕らと件のセリカは保土ヶ谷の料金所へ滑り込んだ。
保土ヶ谷PAで、当然のことながらそのセリカのドライバーとアナゴ君はトラブルになった。そもそも、
停車中のセリカに悠然とヘルメットを脱ぎながら歩み寄っていったのはアナゴ君の方だった。
アナゴ君が近づいてきたことを察した相手のドライバーは、怒り心頭で車外に飛び出す。助手席からも
その友人であろう男が出てきた。僕がアナゴ君を止めようと駆け寄るのよりも早く、ドライバーが口火を
切った。
「テメー!!煽ってんじゃねェぞ!ぶっ殺すぞ!!!」
アナゴ君は、そんなドライバーの罵りを意に介さず、ただ自分の言葉のみを、ゆっくりと、そして腹の
底から搾り出すような声で言った。
「おい、オメーら・・・。オメーらの周りに白いサバンナに乗ってる奴は居ねぇか?知ってたら正直に言え・・・。
隠しやがったら・・・ぶっ殺すぞ・・・。」
相手のドライバーと同様、「殺す」という只ならぬ言葉をアナゴ君は使った。そして、それはドライバーの
使った軽薄な脅し文句とは異なり、ある意味で覚悟と決意とに満ちた、重々しい迫力に満ちていた・・・。
「あ・・・あぁっ!?テメー、やんのかコラ!!」
相手がアナゴ君の胸倉を掴んだ。しかし、アナゴ君はすぐにその手を払いのけると、逆に相手の胸倉を
両手で掴み、ひねり上げた。相手は爪先立ちになった・・・。
「・・・知ってんのかって、こっちは聞いてるんだよ・・・。おい・・・どっちなんだ?本当に殺すぞ・・・。」
アナゴ君の目は血走っていた。こんな顔をした親友を僕はそれまで知らなかった・・・。
そして、その迫力に気圧され身動きできずにいたのは相手とその友人だけでは無い・・・。僕もまた、
その動けなくなっていた者の一人だった。
「し・・・知らねーよ・・・。・・・離せって・・・。」
「・・・。」
相手が言葉を発して僕は我に帰る。そして、相手の首を絞めんばかりに凄むアナゴ君を背中から
羽交い絞めにする。
「アナゴ君!やめろ!やめろってば!」
「・・・本当に知らねんだな・・・?」
「あ、あぁ・・・本当だ・・・。」
そして、アナゴ君は相手から手を離した。只ならぬ気配を察した顔なじみのライダーが数人、こちらに
向かってきた事もあって、セリカの二人は逃げるように保土ヶ谷PAから立ち去っていった。
そのセリカのテールを見つめながら、アナゴ君は小さく溜息をついた・・・。そして、僕は悟った。
・・・アナゴ君は、たった一人で鈴木さんの仇を探そうとしている・・・。そして・・・そして、彼の心には
暗黒の闇がぽっかりと開いてしまっている・・・。
その闇が、想像以上に深く暗いことを目の当たりにし、僕は茫然となった・・・。
その後、レッド達が保土ヶ谷PAに現れた。
彼らは僕達が来るのを毎日のようにここで待っていたという。僕達を見つけたレッドは、「よく戻ってきたな」
というような事を叫びながら、代わる代わる僕達を人目はばからず抱きしめた。
春に奥多摩で重症を負ったマイケルも、今は松葉杖で順調にリハビリを行い、事務ではあるが業務にも
復帰した事、そして様々なとりとめの無い事を、彼らは努めて明るく、時に僕らの肩を抱きながら
続けざまに話してくれた。
彼らは、鈴木さんの事には一言も触れなかった。不器用ながら、僕らを元気づけてくれようと一生懸命
なのが僕らにも感じられ、それが少し辛かったが嬉しくもあった。
彼らの純粋な心遣いに触れ、アナゴ君も少し笑っていた。・・・だがその日、アナゴ君の心の闇にはっきりと
気がついてしまった僕は、彼の寂しそうな笑顔を見ているのが辛かった・・・。
僕の友・・・、大学一年のあの日、アパートの一室で鬱屈した日々に飲み込まれそうになっていた僕を
日の当たる場所に連れ出し、救ってくれた我が友が、心を病み命を削るような走りに没頭して行こうと
している事が耐え難い苦痛に思えた・・・。
僕はアナゴ君を救いたかった。いや、救わなければ時を経ずして彼がこの世から消えてしまいそうに
思えた僕にとって、彼の救出は僕にとっての命題であるように思えた。
あるいは、彼を救う為に奔走する事が、鈴木さんを失った事による自責の念に対する贖罪であり、
ある種の癒しであると感じていたのかもしれない・・・。
とにかくその日、僕はアナゴ君の心を救おうと決意したはずだった。
その時は自分はまだ、アナゴ君より幾分かは心の余裕があるのだとも思っていた・・・。
・・・しかし、大切な人を失って崩れかけた心を抱いていたのは僕も同じだった・・・。僕もまた、あとほんの
少しの刺激で崩壊しそうな心を抱えていたことに、その時は気がついていなかったのだ・・・。
・・・僕もまた、傷つき弱った心に最後の一撃を待つ身であったことにその時は気が付くはずも無かった。
僕にとって、死に彩られた夏はまだ終わってはいなかったのだ・・・。
その夜、部屋に戻った僕はラジオから流れる大好きな九ちゃんの歌を聞きながら、アナゴ君を救うことを
胸に誓ったことを覚えている・・・。・・・それが空しい誓いとなる事を、僕は知る由も無かった・・・。
1985年の8月も、半ばに差し掛かろうとしていた・・・。
767 :
774RR:2007/06/07(木) 23:22:43 ID:BkScBUzX
C
手に汗握ったよ
768 :
774RR:2007/06/07(木) 23:23:37 ID:WaLrGHSo
ktkr!!!!
つC
769 :
774RR:2007/06/07(木) 23:52:41 ID:tSAfG6X0
(;゚д゚)ゴクリ…!
Σ(゚д゚ )はっ!
(;゚д゚)っ彡CCCCCCCCCC
770 :
774RR:2007/06/07(木) 23:58:16 ID:FEikf3o5
いつもありがとう
つC
771 :
774RR:2007/06/08(金) 00:18:15 ID:LCvIXoVP
魂が締め付けられるぜ…
C
772 :
774RR:2007/06/08(金) 00:30:04 ID:xVgEQMO0
軽く話の中にトリップしてしまった
つC
773 :
774RR:2007/06/08(金) 00:31:58 ID:RcGq94sk
HA☆NA☆SE!
C
774 :
774RR:2007/06/08(金) 03:33:07 ID:HuVQv683
続きがすんげ〜楽しみ!!C
775 :
774RR:2007/06/08(金) 04:03:41 ID:8H7o1x08
つC
「殺されたから殺して、殺したから殺されて・・・それで最後はほんとに平和になるのかよ!?」
という言葉を思い出した。恨みたい気持ちはわかるが・・・アナゴさん大丈夫かな・・・。
776 :
774RR:2007/06/08(金) 08:18:30 ID:pd4Ac/Ob
つCCCCCCC
言葉一つ一つにゾクゾクして、気が付いたら頬が濡れてたぜ
777 :
774RR:2007/06/08(金) 08:25:36 ID:50JVBFkb
彼女とケンカしたとき、バイクに感情をぶつけ
走っていたことを思い出した。
それこそ激しいブレーキングでリヤが浮いたことは幾度と無くあったけど、
何れ死ぬと思ったからそれ以降、バイクという無機質な機械に
感情をぶつけることは辞めた。
作者乙 つC
778 :
774RR:2007/06/08(金) 15:35:35 ID:Xwr1EoWW
おもしろいです 最高
779 :
774RR:2007/06/08(金) 16:10:04 ID:VtJjbRE0
生々しいほどにリアルだ…
書籍化してほすぃ。。。
つCCCCCCC
780 :
774RR:2007/06/08(金) 16:57:58 ID:sjI1b6Zx
つ C
781 :
774RR:2007/06/08(金) 20:49:57 ID:BELJY0KJ
書籍化とかほざいてるヤツらは本人か関係者か出版社?
氏ねじゃなく自爆して死ねよ
782 :
774RR:2007/06/08(金) 21:08:45 ID:TNxtqupF
顔も見えない見ず知らずの人に憶測でキレるとは
自閉傾向がお強いんですね
783 :
774RR:2007/06/08(金) 21:14:39 ID:rZ/Etn4l
切れる理由も少しわかるよ
前に良い物語だからって通報した奴居るからな
二次創作なんて物はコッソリやって楽しむもんだ
784 :
774RR:2007/06/08(金) 22:21:47 ID:XDwKoL4h
>>781 ま、気持ちは解るけどさ、作者さん本人にまで疑うのは行きすぎさね。
確かにウザイよね。今、まさに読めているんだからそれでいい。
それをさらに印刷物にして書店に並ばせることに単なる一ファンとして
なんのメリットがあるのやら。
785 :
774RR:2007/06/08(金) 22:33:02 ID:JTzxInME
そりゃ酷いな
とにかく最後まで読み続けれる環境を皆で維持しなきゃね
つ C
786 :
774RR:2007/06/09(土) 02:09:06 ID:u0oCPrNi
書籍化なんたら〜
てのはそれぐらい面白い、他の人にも読んでもらいたい
あるいはタダで読むには出来過ぎてる
って気持ちの現れだろ
いちいち噛み付きなさんな
つ四円
787 :
774RR:2007/06/09(土) 03:40:53 ID:5RtEKcnG
これだけ死に考えさせられる文読んでも
あっさりと「死ね」って言うのは考え物だな。
788 :
774RR:2007/06/09(土) 03:58:29 ID:qqTep1EX
そうだな 4ね
789 :
774RR:2007/06/09(土) 09:22:18 ID:UFzPkPtL
じゃ俺はCするね
筆者の方々に
790 :
774RR:2007/06/09(土) 09:46:55 ID:Zwnksl3d
そういや先輩の兄貴が白のサバンナ乗ってたわ
バイク引っ掛けたか聞いてこようか?
791 :
774RR:2007/06/09(土) 10:30:24 ID:gTvW0Z1R
>>786 >あるいはタダで読むには出来過ぎてる
どう見ても書籍化マンセー野郎です
792 :
774RR:2007/06/09(土) 11:04:38 ID:EVIxNusM
魔棲雄氏、乙。気にせず続けられよ。
俺も活字として手元に有れば、一生本棚に収まる宝物になると思う一人だ。
だが、版権の問題もあるだろうし
甘ったるい恋愛物しか興味のない出版社や一般が食いつくとは思わない。
バイク乗りは確実に食いつくだろうが、バイク乗りなんて少数の少数だ。
だから俺は、纏めサイトからテキスト化して保存してある。
完結した日にはプリントアウトして
俺の本棚に末永くまつられると思う。
久しぶりに魂が揺さぶられるバイク小説を読んでいる。
つ「水」
793 :
774RR:2007/06/09(土) 11:19:50 ID:rRxnXhsU
もしかしたら既出の質問かもしれんが教えてくれ。
鈴木さんが大学生の頃「兄」と慕っていた人が首都高で死んだ話を二人にしたとき、鈴木さんは自分が「長男」で下にしか兄弟がいないから…と言っていたよな?
しかし遺族のなかに歳の離れた鈴木さんの実の「兄」がいただろ?これってどういう解釈なんだ?
794 :
774RR:2007/06/09(土) 11:35:00 ID:gOrAF6f6
修正されたんでしょ
795 :
774RR:2007/06/09(土) 11:35:38 ID:Zwnksl3d
腹違いとかあるじゃん
796 :
774RR:2007/06/09(土) 12:42:26 ID:UH/kq80Z
797 :
774RR:2007/06/09(土) 13:27:18 ID:3cs1en5t
>>793 鈴木さんには歳の離れた兄がいた。
歳が離れているがゆえにあまり交流もなかった。
鈴木さんが学生時代にお兄さんとの間には何らかの確執(おそらくバイク絡みであろう)があり、
それは鈴木さんの記憶から消したいほどのことであった。
社会人になった時には、鈴木さんは兄の存在すら忘れ、「自分が鈴木家の長男なんだ」と思いこむようになった。
そんな時、北海道へツーリングへ出た。そして、若い二人と出会った・・・。
↑俺の解釈はこんなんですけど、いかがでしょう?
798 :
774RR:2007/06/09(土) 13:27:48 ID:0CYBqN/e
今の魔棲雄物語の流れで最高とかゾクゾクしたってのみると
俺も関係者の自演か?って思わされるところはあるな
北海道とか三京の話あたりは最高に面白かったが
物語とはいえ、人が亡くなってるのに最高とかゾクゾクしたって感想は如何かと思う。
盛り上げようとしてるのはわかるが鈴木さんが亡くなったあたりから何か関係者の自演っぽくみえちまう
今の魔棲雄物語って作者の描く方向性ひとつで面白くもなるし暗くもなると思う
ここは静かに物語を読むのが一番いいような希ガス
魔棲雄氏も変に担ぎ上げられて書きづらいだろうに
ま、俺は楽しみにしているよ つC
799 :
774RR:2007/06/09(土) 14:03:57 ID:mUZWRA3J
文の一つ一つの文字からマスオ アノゴの心の叫びが私の心に雷のように舞い降りてきた。
共に尊敬でき 共に兄として慕え そしてバイクというものを通じて心を通わすことのできる親友を
失った二人の心を感じると自然と涙がこぼれてきた・・・・
作者様CCCCC!!!!
800 :
774RR:2007/06/09(土) 17:23:50 ID:5RtEKcnG
>>798 平気で自演っぽいって書く方がよっぽど(ry
>>793 ご指摘ありがとうございます。
【SCENE106】の以下の部分を修正願います。
>「物心ついた頃からいつも一緒に遊んでた。長男で下にしか兄弟のいない僕にとって兄貴みたいな存在だったよ。
>いつのまにか兄ちゃん、兄ちゃんって呼んでたよ。」
↓
>「物心ついた頃からいつも一緒に遊んでた。年の離れた兄しか兄弟のいない僕にとって兄貴みたいな存在だったよ。
>いつのまにか兄ちゃん、兄ちゃんって呼んでたよ。」
・・・大まかな筋書きは出来ており、現在もおかげ様でその通りにストーリーを進ませていただいておりますが、
細かい点で至らない部分もあり、ご迷惑をおかけする事もしばしばとは思いますが、今後ともよろしく
お願いいたしますm(_ _)m
802 :
774RR:2007/06/09(土) 21:55:21 ID:q6RlSTSv
了解しました!
つか今からもう一度『魔棲雄』読み返してみます!!!
803 :
774RR:2007/06/10(日) 18:49:33 ID:v0q2V9PC
マスオ&アナゴ&ノリスケが番組中揃うの初めて見たw
804 :
774RR:2007/06/10(日) 18:51:02 ID:3JudNR++
家の裏に転がしてあったビールケースはリアをリフトさせるのに使う
805 :
774RR:2007/06/10(日) 18:59:40 ID:8eXnSKD8
カツオが家出したらバイクで日本一周するな
806 :
774RR:2007/06/11(月) 12:28:55 ID:V5UcL2vm
age
807 :
774RR:2007/06/12(火) 01:25:16 ID:14CMzp0l
>>805 ついていった中嶋が、だるまのっけたカブで工事現場に突っ込むわけだ
808 :
774RR:2007/06/12(火) 02:41:58 ID:ni3XTXce
809 :
774RR:2007/06/12(火) 05:09:36 ID:fvAAl3Gu
いつのまにやら姫だるまも乗っかっているわけか
810 :
774RR:2007/06/12(火) 08:46:59 ID:ei1CgyS1
>>807 もちろん一速全開の蛇行ウィリーでだよな?ww
811 :
774RR:2007/06/12(火) 21:19:08 ID:ueQyCSro
なまら怖いっしょ〜
812 :
774RR:2007/06/12(火) 22:42:06 ID:4RPouRNn
>807
ちょwwww現場うちの近くwww
813 :
774RR:2007/06/13(水) 23:33:25 ID:aZ1miQ+I
hosu
814 :
774RR:2007/06/14(木) 11:34:30 ID:IiiR4ikr
安芸
815 :
774RR:2007/06/14(木) 19:58:37 ID:fbMeZwIw
支援ほす
816 :
華:2007/06/14(木) 20:39:11 ID:a1FDge79
「お〜い!磯野〜!」ヘルメットを左手に持ちながら中嶋ひろしは磯野カツオと大空かおりの元へ駆け寄る。
「遅せぇぞ!中嶋〜」冷やかしながら磯野は笑って中嶋を迎える。
「明日から受験までの間、バイク封印だからって飛ばし過ぎだよ!磯野〜」胸のポケットからハイライトのソフトケースを取り出す中嶋。
「それでも喰らい付いて来るのお前位だぜ? よく言うよ」満更でもない笑みを浮かべる。
「それで中嶋君、何かわかったの?」と大空は中嶋に問う。だが中嶋は両手を広げ肩をすくめて「さっきそこの人に聞いてみたけど…さっぱり…」と中嶋は答える。
「なぁ?磯野〜?見間違えじゃないのか〜? 大体10年前のバイクだぜ?RZなんて…」と中嶋はハイライトに火をつけながら聞いた。
「そうよカツオ あなたとロスマンズが簡単に抜かれるわけ無いじゃない」大空もカツオに聞いた。
「いや…本当だよ…追越から一気に行かれたんだ…クソッ!」悔しそうに磯野は言う。
「そんなロートルなバイクに新式が抜かれる訳無いじゃない ロートルは嫌いよ!」大空は磯野を慰めるかのように肩に手を添えて言う。
(ふぅ…いつもながら見せ付けれくれるよ)中嶋は大きくハイライトの煙を吸い込む。
817 :
華:2007/06/14(木) 20:39:57 ID:a1FDge79
「白の…白のジャケットの左肩に…」そう言い掛ける磯野に中嶋は「どうした?磯野?」と問う。
「白のジャケットの左肩に【坊】って刺繍されてたよ…忘れもしねぇ…」ギュッと拳を握って磯野は言い出した。
「【坊】ねぇ… 大体、RZに白のジャケットなんて目立ちまくりだから少しは情報あってもいいんじゃないか?」中嶋は自分のGSX400Sを眺めながら言い放った。
「ねぇ?今日くらいその事忘れて思いっきり走りましょうよ! 明日から受験勉強でしょ?私と同じ大学行くんじゃなかったの?」大空は言う。
「そうだよ磯野 明日から受験勉強なんだからさ 今日は思いっきり走ろうぜ?付き合うよ」中嶋も磯野に言った。
「チェーッ!大学推薦固い奴に言われちまうなんてね」いつもの皮肉めいた中嶋への言葉を言えば中嶋もやっといつもの磯野に戻ったな、と安心した。
「そういや、途中に変なの3台居たな なんだったんだ?あの3台?」磯野は思い出したかの様にふと言い出した。
「あぁ〜居た居た!一番前がSRXで次がTDR最後がNSRだろ?」中嶋は煙草の灰を灰皿に捨てながら磯野に言った。
「あの丸っこいNSRなんなの?」不思議そうに大空は磯野に言う。
「あぁ、かおり アレは88(ハチハチ)88年式のNSRだよ」磯野は大空の頭を撫でながら優しく言う。
「私ロートルなバイクは嫌いよ!88年なんて古すぎよ やっぱりカツオのロスマンズが一番よ」大空はツンとした表情でカツオの胸に頭を沈め込んだ。
「ははははは そう言うなよ、かおり 同じNSRなんだからさ」と磯野は寄り添う大空を優しく包んだ。
818 :
華:2007/06/14(木) 20:40:43 ID:a1FDge79
「それで中嶋、本当にやるのか?」磯野は中嶋に真剣な眼差しで聞けば「あぁ…」と静かに答える。
「金どうするんだ?あれからバイトなんてしてないしさ」と磯野は心配そうに中嶋に聞く。
「あぁ、ドルさ 手元にいくらかあるからそれでなんとかしようとね」そう中嶋は答える。
「チェーッ、全国模試1位の奴は考える事が違うよな」からかいながらも冷やかして磯野は中嶋を見る。
「まぁそう言うなよ。磯野が受験勉強している間にカタナの改造と修行に行って来るからさ。春にまた走りに行こうぜ?」と磯野を宥める。
「あ、カツオさ〜ん!お久し振りです〜!そうそう例のRZの奴ですけど先週ウチの…」と一人の男が磯野に駆け寄る。
「か、か、か、かおりさんっ!こ、これっ!あ、あ、あ、あ…の プレゼントです!受け取って下さいっ!」両手でプレゼントを差し出す男達がワラワラとやってくる。
(ホント彼氏が目の前に居るのにこいつらもよくやる…)そう思っている内に中嶋へ同じGSX400S乗りやGSX250S乗りの仲間が駆け寄ってくる。
「中嶋さん!お久し振りです!あ、あの!ちょっと自分の調子悪くて…」そう答える同じGSX400Sの仲間の言葉に「ちょっと見せてご覧。」手馴れた手付きで面倒を見始める。
彼ら3人がPAに現れれば同世代のバイク乗りから磯野・大空・中嶋は憧れの存在へとなり始めていた…
そして来年の春には3人が各々に変わり始め、彼らは首都高に名を刻み始める。
819 :
華:2007/06/14(木) 20:41:29 ID:a1FDge79
磯野カツオは威風堂々とした風貌と威圧感を持ち合わせながらも、首都高を走る同世代のライダー達の面倒見が良く、圧倒的かつ安定的な走りで同世代のライダーからカリスマ的存在へと変貌してゆく。
そして誇らしく、気高く輝くロスマンズに威風堂々と跨る彼を人はいつからか【皇帝・磯野カツオ】とまで言わしめる。
大空かおりは少女から女性へと変わる美しさと持って生まれた美貌で、猛烈に男性ライダーからの支持を得る。大学入学後は「かおり親衛隊」なる、磯野カツオ公認の取り巻きが出来てしまう程の人気がでる。
磯野カツオの天性的な走りに付いて行けるそのスマートな走りが女性ライダーからも支持され、彼女もまた首都高のカリスマへと変貌する。そして【女帝・大空かおり】が君臨する事になる。
中嶋ひろしは磯野と大空が受験勉強に勤しむ中、一番最初に名を轟かせる事となる。これからの数ヶ月、彼は師と仰ぐ男性から愛機を限界まで軽量化しエンジンチューンを施す事になる。
妖刀をひっさげ北関東に埋もれる猛者共を次々と撃破しては、愛機も一つ一つ激戦を終え、外装に苦戦の傷跡を残してゆく。
そして彼は北関東の猛者共に首都高から来た傭兵【銀色の傭兵・中嶋ひろし】として名を轟かせ同世代のGSX400S乗り達から熱烈な支持を得て彼もまた一人のカリスマと化してゆく。
彼らが首都高に名を轟かせる事になるにつれ、また彼らも運命と言う名の歯車が動き出すことになる…
820 :
華:2007/06/14(木) 20:42:17 ID:a1FDge79
「そうだ!磯野!お前っ!」中嶋は思い出した様に磯野に怒鳴り出した。
「どうした?中嶋〜?」あっけらかんとした表情で中嶋を見つめた。
「お前、ワカメちゃんに俺のベル番勝手に教えただろ!?」困った表情で磯野に言えば磯野は苦笑いする。
「いいじゃない ワカメちゃん高校じゃすごい人気なのよ?」大空は中嶋に言う。
「ちょっと待ってくれよ〜 2時間置きにメッセージきてみろよ…勘弁してくれ磯野…」中嶋は困り果てる。
「ワリィ、ワリィ中嶋… ワカメの奴、俺が父さんの盆栽割った事チクるって言うからさ…」と小声で言い出す。
「友達売るなよぉ〜!」と泣きそうな顔で中嶋が言えば胸元のベルが震える。「うわ…また来たよ…」更に泣きそうな顔をする。
「それだけ中嶋君の事好きなのよ」そう大空は中嶋をからかう。
「だってワカメちゃん、堀川君と付き合ってるんじゃないのか?」中嶋は二人に聞けば「別れたらしいよ」と磯野が答える。
「付き合っちゃえばいいじゃない?不満なの?」大空は中嶋に問う。
「俺は小便臭ぇ女は興味ないんだよっ!」ハイライトの煙を吐き出して中嶋は言う。
「おいおい、俺の妹だぜ?随分いってくれるじゃねぇか!」大笑いしながら磯野は腹を抱える。
「チェーッ!言ってくれるよ…」中嶋は磯野を見てそう言い放った。
「さ、もう一回りしましょ!明日になったら勉強なんだからカツオ!」頬に軽くキスをしてTZR250Rに跨る大空。
「そうだぜ?中嶋 気にすんなよ〜 意外といい女かもしれないぜ?」そう言いながら磯野はPAを颯爽と出発する。
「お〜い!磯野〜!待てよぉ〜!」ヘルメットを急いで被り中嶋もPAを出る。
まだまだ彼らは若い。だが来年の春、神の悪戯かの様に彼らも運命の歯車に翻弄される事になる…
821 :
774RR:2007/06/14(木) 20:49:41 ID:iV2lCJYc
つC
822 :
華:2007/06/14(木) 20:51:06 ID:a1FDge79
もうちょっと【星に願いを編】続きます…
梅雨明けに椿ラインでも走ってきます…orz
ね、寝ます…orz
823 :
774RR:2007/06/14(木) 20:53:03 ID:JQt28Dha
走り屋だったのか
びっくり
824 :
774RR:2007/06/14(木) 22:11:57 ID:Su/Op+jY
かおりのビッチな雰囲気にオッキした。
825 :
774RR:2007/06/14(木) 23:55:16 ID:B10QNNbl
華乙
826 :
774RR:2007/06/15(金) 04:48:03 ID:ExAZk6jE
タラカムバック
827 :
774RR:2007/06/15(金) 12:47:15 ID:z56vdZku
そしてカツヲ達の前に神帝が立ちふさがる
828 :
774RR:2007/06/15(金) 17:30:55 ID:gOq+4nLm
首都高バトル思い出したw
華氏つCCCCC
829 :
774RR:2007/06/15(金) 17:39:55 ID:Gmy7KaoB
×神帝
○迅帝
RSを首都高版で出してくれんかね…
830 :
774RR:2007/06/15(金) 19:54:45 ID:kGyifeLI
よし、漏れも今日から童帝と名乗るぜ!
【SCENE118】
・・・確かにバイクは、どす黒い苦悩に埋もれゆこうとしている僕達の心を、刹那的ではあるが真っ白に
してくれた。
それは、死と紙一重のリスキーな走りとの引き換えだったが、それでも僕らにとってバイクは僅かな
光明に見えなくもなかった。
決してその裏側にいる死神の影を意識しなかったわけではない・・・。だがそれでも・・・、事によっては
その死神に魂を握られたとしても、ひとときの苦悩から逃れる術を僕達は選んだ・・・。
鈴木さんの死から初めてバイクに跨った夜の翌日も、僕とアナゴ君は第三京浜を走った。
アナゴ君の行き場のない思いをぶつけるような身を削る如き走りは前の晩と全く変わらず、僕は
幾度か肝を冷やし、そうして彼を元の陽の光の元へ導く為にはあまりに無力な自分を痛感する・・・。
それは至極当然の事だった。己もまた、暗い闇の淵に身を落としそうになりかけている。そんな僕に
自分以外の人が救えるはずもなかった・・・。
いや・・・。ともすれば僕もアナゴ君のように行き場の無い苛立ちや焦燥を、心のどこかであからさまに
他者にぶつけたいと願っていたのかもしれない。
だが、当初の僕はそうはしなかった。道を踏み外しそうになっている友を目の当たりにし、心のどこかで
僕だけは・・・と「我慢」をしている自分がいたのだ。
その日もアナゴ君は一台のスポーツカーに狙いを定め保土ヶ谷PAまで追い詰めたが、カタナを
降りて歩み寄ったところで逃げられ、苦し紛れにPAのゴミ箱を力一杯蹴飛ばした・・・。
僕はそんな彼を見ていることしか出来なかった・・・。なまじ同じ苦しみを共有してしまったばかりに、
慰めの言葉をかけようとしても、そんな言葉になど癒すことの出来ない心理状態もまた理解できてしまう
為に、僕は彼に対して言うべき言葉を何も持てないでいた・・・。
・・・僕よりも、4人の米兵の方がよほどアナゴ君のささくれだった心を幾分か癒してくれているようだった。
その日、レッドは例の派手なサニートラックで保土ヶ谷PAに現れた。助手席には未だギプスが痛々しい
マイケルの笑顔があった。陽気なマイケルは松葉杖でアナゴ君に駆け寄ると黒い顔の真ん中に真っ白い
歯を光らせながらアナゴ君との再会を喜んでいた。すると、アナゴ君にも微かに笑顔が戻る。
・・・僕は彼らに感謝していた。彼らは僕らの心の傷を理解し、そして慰めようと自分たちなりに行動に
移しているようだった。
そんな日が3日ほど続いた。ある日などは、やはりスポーツカーを煽ろうとアナゴ君が仕掛けようとした
タイミングで突然レッドが追いついてきて、大袈裟で茶目っ気たっぷりのハンドサインを出し、アナゴ君の
凶暴な部分を抑えこんだりもしてくれた。
そして彼らは別れ際に、「明日も会おうぜ!」と言って手を振る・・・。そんな数日間程度でアナゴ君の
心の暗黒の部分が消えていったようには見えなかったが、それでもそれが拡大して行く傾向にも無い
ように見えた。
ただ・・・僕はそんな束の間の時間の後、部屋に戻って一人になるのが怖かった・・・。
一人になるとどうしても鈴木さんの事を思い出し、そして自責の念に駆られる・・・。自分と関わってしまった
事で死への道を歩んでしまった鈴木さんの事を思い、思わず万年床で枕をきつく抱きしめる・・・。
そして、ふと思い出してしまう・・・。あぁ、予定では今日が鈴木さんと富良野で落ち合うはずだったなぁ、と・・・。
そんな苦悩の連鎖の末に、それを刹那でも忘れさせてくれるバイクに乗りたくなる。
・・・今日も第三京浜に行こう・・・。そんな事を思いながら浅い眠りにつく頃には、もう夜明け・・・。そんな
毎日だった・・・。
忘れもしない・・・。その日は暑い日だった。夕焼けがきれいな日だった。夕立は無さそうだった・・・。
僕はその日、意を決してアナゴ君の前を走った。彼に少しでも無茶な走りをさせたくない一心での
判断だった。
彼は僕の前に出て、綱渡りのようなラインでクルマの間を駆け抜けたいようだったが、Ninjaはカタナを
上手く押さえ込んでくれた。僕の気持ちを知ってか知らずか、アナゴ君も無理に僕の前に出ようとは
しなかった。
保土ヶ谷PAに着いてから、彼は僕に向かってひねくれた笑顔で独り言のよう小さな声で言った。
「・・・好きにさせてくれよなぁ・・・。」
僕は聞こえないふりをして、言葉を返さなかった・・・。
その日、レッドたちは保土ヶ谷PAに現れなかった。Ninjaとカタナのエンジンが冷え切ってしまうまで、
僕らは何をするでもなく、僕らの心を束の間癒してくれるバイク仲間が現れるのを待っていたのだが、遂に
彼らは保土ヶ谷に現れることは無かった。
「・・・今日は来ねぇのかな?」
「急な仕事でも入ったんじゃないか?」
「・・・行くか・・・。」
「あぁ・・・。」
そして、僕らはここに来た理由の一つを満たせないまま、それぞれの部屋への帰途に着いた・・・。
その日の第三京浜道路からの帰り道。深夜にも関わらず、東京の街が何か落ち着かず、浮き足立って見えた
のは気のせいでは無かったのだろう。僕はその日の衝撃と、その後の虚脱感を今も忘れてはいない・・・。
僕は鈴木さんの死以来、静寂の夜が嫌で耳に入らないラジオのスイッチを毎夜入れていたのだが、その日は
放送されているはずのラジオ番組ではなく、何か切羽詰った感のアナウンサーの声が流れていた。それは、
ラジオなど聴く気の無かった僕の耳さえ奪うほどの緊迫感に溢れていた・・・。
・・・羽田発、大阪行き・・・。524人もの乗客を乗せたジャンボジェットが、行方不明・・・。墜落した可能性大・・・。
埼玉県、長野県、群馬県など、複数の地点で墜落を示唆する現象の確認・・・。情報は交錯していた。
ラジオのチャンネルを変えても、どこの局もその未曾有の大惨事を想像させるに難くない状況証拠を繋ぎ合わせ、
その信憑性に関わらず次から次へと新しい情報を流し、あるいは同じ内容を何度も繰り返す報道を行っていた。
幾つか可能性を挙げられていた墜落地点の一つである「群馬県」という地名から、僕はすぐにその報道とは
無関係なのに、群馬が故郷だった鈴木さんの事を思い出した。
そうして自分とは無関係なはずだったこのニュースに対して、航空機の「墜落」という言葉の裏側に高い
可能性で存在するであろう、人の「死」という事に思いを馳せる・・・。
・・・ほんの数日前に大切な人を亡くし、人間の「死」というものに対し非常に感受性が高まっていた僕に
とっては、そのあまりに痛ましい事故はそれだけでも僕の心に突き刺さる出来事だったに違いない・・・。
・・・だが、この事故はある意味、僕にとって「無関係」な事では無かったのだ・・・。
ニュース報道の中に、「米軍」や「横田基地」というフレーズが聞こえ始め、レッドたちが今日は第三京浜に
来れなかった理由が解かったような気がした。
続けざまに入る報道から読み取れる状況を積み重ねると、どうやら群馬、もしくは長野の山中に墜落した
ことは確定的なようだった・・・。
「500名を超える・・・」。キャスターのその言葉に、僕は逝ってしまった大切な一人の人と、そのたった
一つの死がもたらしたあまりに大きな悲しみを思い浮かべ、そのあまりの人数に気が遠くなりそうな
思いに襲われる・・・。
乗客名簿の一部が読み出され、行く先が故郷大阪であったことや、帰省シーズンであったこと等から、
上京しているはずの数人の知り合いの名がよもやありはしないかとラジオの前に釘付けになる・・・。
そして、しばらくラジオを複雑な思いで聴いていた僕に衝撃的な情報がもたらされた・・・。
「・・・この便には、歌手の坂本 九さんが搭乗していた可能性が・・・」
それを聴いた瞬間、全身の血流が止まったかのような感覚に襲われた・・・。
837 :
774RR:2007/06/15(金) 22:21:41 ID:N4yXMRep
色々考えさせられるよなぁ
つC
838 :
774RR:2007/06/15(金) 22:54:56 ID:ExAZk6jE
マスオ氏最高だぜ
つC乙
ささくれてゆく若者…
839 :
774RR:2007/06/15(金) 22:56:28 ID:VXCeO+rh
つC
840 :
774RR:2007/06/15(金) 22:56:31 ID:/UkVmpR9
あの事故があった時代だったんだな。
あれはジャンボジェットの安全神話が出来かけてた矢先の事故だけに衝撃が大きかったな。
841 :
774RR:2007/06/15(金) 23:00:24 ID:0BbDod2J
C
842 :
774RR:2007/06/15(金) 23:16:00 ID:bdtobVc5
ゾクゾクきた
筆の進めかたが素晴らしすぎる
きっと、直で知ってる四十過ぎのライダーなら尚更ゾクゾクなんだろうな
843 :
774RR:2007/06/15(金) 23:31:13 ID:/UkVmpR9
おーい・・・
38だがリアルタイムでニュース見てたぞ。
NHKのTVでは木村太郎アナが夜通し原稿読んでたよ。
844 :
774RR:2007/06/15(金) 23:43:39 ID:ExAZk6jE
オレは35歳
訂正させて下さい。
>>833 >保土ヶ谷PAに着いてから、彼は僕に向かってひねくれた笑顔で独り言のよう小さな声で言った。
↓
>保土ヶ谷PAに着いてから、彼は僕に向かってひねくれた笑顔で独り言のように小さな声で言った。
>>855 >524人もの乗客を乗せた
↓
>524人もの乗員・乗客を乗せた
実際の痛ましい事故をフィクションの中に取り入れることには少なからず迷いもありました。
もし快く思わない方がいらっしゃいましたら、謝罪いたします。
ただ、85年とその夏に起きた仲間の死というストーリー展開の中で、その時に起きたこの事故の
事をどうしてもスルーできませんでした。
当時、小学生だった自分にとっても、初めて人間の死というものを考えるきっかけとなった事故
でもありましたので・・・。
846 :
774RR:2007/06/15(金) 23:52:07 ID:G8Pm+BF8
(゚ω゚)ニャンポコー
847 :
774RR:2007/06/16(土) 00:22:46 ID:2OMY14wH
つC
話の深さに心からCCC
848 :
774RR:2007/06/16(土) 01:59:17 ID:7E5SdhGw
墜落事故のことはよく分からないけど現在22歳の俺にとっての阪神大震災のようなものか…
849 :
774RR:2007/06/16(土) 02:38:01 ID:GKzvkYhX
850 :
774RR:2007/06/16(土) 09:36:19 ID:am/sHMBE
そんな85年生まれの俺がC
C
あの当時はハナタレでしたが、飛行機恐怖症になるには十分な出来事でした。
亡くなられた方々のご冥福を祈るばかりです。
852 :
774RR:2007/06/16(土) 21:03:26 ID:/WZonYT7
>>848 wikiとかで「123便」で検索してみ。墜落に至る緊迫した状況と墜落後の悲惨さに
言葉も出ない。
地震ももちろん痛ましい天災だったし較べるつもりは無いけど、
この事故は完全なる人災だったから余計にやりきれなかったよ。
853 :
774RR:2007/06/16(土) 21:37:37 ID:GWwwUrZN
ウチの親の知り合いもあの事故で亡くなったよ。
滅多にそういう表情見せない親なんだけど、
さすがに落ち込んでた。
854 :
774RR:2007/06/16(土) 22:20:30 ID:bu4ql2nA
『逆噴射』『機長!やめてください!』
なんて言葉が不謹慎ながら流行ったな
八幡山のあの病院の前を通るだびに思い出すよ
855 :
774RR:2007/06/16(土) 22:44:35 ID:/WZonYT7
それは85年の123便、御巣鷹山じゃなくて、その2年くらい前の羽田冲だな。
856 :
774RR:2007/06/16(土) 22:53:24 ID:zf+iB8je
そうそう。
そんで堕ちたのは747じゃなくてDC-8。
心身症(だっけ?)なんて言葉も流行ったよね。
857 :
774RR:2007/06/17(日) 00:35:52 ID:PxDNTLum
逆噴射は羽田沖のだったよね。
あの時も知り合いが乗っていないか心配だった。
身近な人以外なら死んでもいいというわけではないけど。
858 :
774RR:2007/06/17(日) 01:47:27 ID:uGPL24VE
たしかフォーカスかENMAとかいう雑誌に、墜落直後の写真出なかったっけ?
アイドル(名前忘れた)の投身自殺遺体写真と共に、かなり物議を醸してたな…
859 :
774RR:2007/06/17(日) 01:54:51 ID:0lleD/ea
860 :
774RR:2007/06/17(日) 02:07:37 ID:w8TnUYCE
あの当時、日本国中でその名を知らぬ者が居ないほど有名になったK機長。
後に心身症と診断され、前述のごとくマスコミ報道ではイニシアルで呼ばれる
ようになったのだが、「いまさら名を伏せてどうすんだ」と思ったよね。
でも、月日が流れた今日、あの片桐機長の名を知らぬ世代が出てきている。
時代は変わったなぁ。
861 :
774RR:2007/06/17(日) 02:42:19 ID:ZIOmKLHn
自分も↑の会話を見て検索して初めて詳しい話を知ったクチです
なんか事故があったらしい…くらいには知ってたけど…
862 :
774RR:2007/06/17(日) 02:50:42 ID:6HMdcIwo
863 :
774RR:2007/06/17(日) 03:34:45 ID:WV5CJBrV
864 :
774RR:2007/06/17(日) 08:24:05 ID:BExoqvMN
>>862 テラ若本www
マイカーなんて言葉10年以上ぶりに聞いた
865 :
774RR:2007/06/17(日) 11:06:28 ID:7s+X3rQ9
漫画「海猿」にも、これを題材にしたのがあったな。
だいぶ改変してあっても、いつ見ても泣きそうになる。
866 :
774RR:2007/06/17(日) 15:27:45 ID:uKdr9wxZ
なんか御巣鷹と羽田沖がゴッチャになった流れじゃないか?
867 :
854:2007/06/17(日) 15:34:03 ID:iNNGmEHB
868 :
774RR:2007/06/17(日) 21:00:37 ID:7XKVhb8E
♂高山の事故は丁度お盆で大阪に寄生虫だったからかなりインパクトあったな。
3日ぐらいはずっとニュースばっかり見てた、10歳の夏。
869 :
774RR:2007/06/17(日) 21:55:42 ID:1M0L9uHr
「墜落遺体」を読むことを、お勧めする。知らない世代には。
俺はリアルで厨房だったけど、この事件の痛ましさと、救助された中学生の
女の子の露出に不謹慎な興奮を得たことは、妙な背徳感の矛盾を感じたものだ。
だが、近年のボイスレコーダー公開に当たり、これほどまでに痛ましく且つ、
関係者全てに重い課題を残した事件であることを、改めて痛感した。「墜落遺体」は、
ぜひ読むことをお勧めする。ボイスレコーダーの「ドーンと行こうや」には、
今だに泣けてくる・・・。
870 :
774RR:2007/06/17(日) 22:33:51 ID:JFPz0cfH
マリコ 津慶 千代子
どうか仲良くがんばってママをたすけて下さい。
パパは本当に残念だ きっと助かるまい 原因は分らない
今5分たった もう飛行機には乗りたくない
どうか神様たすけて下さい
きのうみんなと食事したのが最后とは
何か機内で爆発したような形で煙が出て降下しだした
どこえどうなるのか 津慶しっかりたのんだぞ
ママこんな事になるとは残念だ さようなら
子供達のことをよろしくたのむ 今6時半だ
飛行機はまわりながら急速に降下中だ
本当に今迄は幸せな人生だったと感謝している
乗客K氏の遺書
・゚・(ノД`)・゚・
871 :
774RR:2007/06/18(月) 01:22:39 ID:6aDVjeLq
ばかやろう思い出させるんじゃねーよ('A`)
872 :
774RR:2007/06/18(月) 09:01:24 ID:AOf3z1ju
昨日ツーリングで上野村通ってきた。
スカイブリッジのシャボン玉が尾根の方角に消えていく光景は見てて涙が出そうになる。
873 :
774RR:2007/06/19(火) 00:47:28 ID:KbgZK6IU
以前、発電所のダム工事の関連で、上野村に滞在したことがある。
夜中になると、普通ありえない人影がたくさん見えて参った。
未だ成仏できない方々が少なくないようだった。
874 :
774RR:2007/06/19(火) 01:16:06 ID:xV/gzYMC
>>873 俺もそういう理由であの辺には近寄れない。
冥福を祈る気持ちはあるけど、それとこれとは別問題だし。
875 :
27才喪男:2007/06/19(火) 15:30:49 ID:YcdBrqFE
墜落遺体奨めてくださった方ありがとうございました
通販で注文して今日届き、一気に読みました
途中涙が止まらず大変でした
全く知らない事故でしたが真実を知った事により自分の中で気持ちの変化もありました
亡くなった方々が安らかに眠れるようご冥福をお祈りしたいと思います
スレ違い失礼しました
876 :
774RR:2007/06/19(火) 17:38:56 ID:mXgi0y/e
今日、Ninja(GPZ900Rじゃなくて、ZX-10R)にお乗りの
マスオ(魔棲雄じゃなくて、増夫)さんと一緒に仕事をした。
877 :
869:2007/06/19(火) 21:42:25 ID:uueAnhvd
>>875 それは良かったです。ですが、搭乗者の坂本九さんは、こうも歌っています。
「上を向いて、歩こう。涙が、こぼれないように・・」
涙無くしては語れない事故ではありますが、坂本氏は決して涙を喜びますまい。
魔棲雄氏の作中に登場する、マスオが「上を向いて云々」という台詞が、
これとリンクしていることも、理解していただけたでしょうか?
だとすれば、作中のマスオ氏の心中いかばかりかと案じてしまう。
878 :
774RR:2007/06/20(水) 21:58:41 ID:V18sisWo
age
879 :
774RR:2007/06/21(木) 13:54:13 ID:5ZgR9KJC
あ
880 :
774RR:2007/06/22(金) 00:15:43 ID:lfOrnCZX
い
881 :
774RR:2007/06/22(金) 00:20:58 ID:hGW6l9l/
し
882 :
774RR:2007/06/22(金) 00:31:56 ID:Q8dLyUHJ
ゅ
883 :
774RR:2007/06/22(金) 01:20:24 ID:wgnoGLHS
う
884 :
774RR:2007/06/22(金) 01:57:35 ID:H7XTe0eW
た
885 :
774RR:2007/06/22(金) 02:46:03 ID:+jQL4NFs
だ
886 :
774RR:2007/06/22(金) 05:07:44 ID:ggQauma7
お
887 :
774RR:2007/06/22(金) 06:11:37 ID:L2ZlT6zQ
う
888 :
774RR:2007/06/22(金) 06:42:01 ID:BsN/xM1r
航空事故という繋がりでしかないが、日航羽田沖墜落事故って、
ホテルニュージャパン火災の次の日だったんだよな。
ガキだったせいもあるが、それまでの人生で見た事もない大見出しの新聞が
2日も続けて配達されて、世の中一体どうなっているんだと恐ろしくなり、
何か大きな事件があるたびに、その時の感情がトラウマのように蘇る。
魔棲雄さんの書いてる御巣高山の日航機墜落事故の時もそうだし、911の時もそうだった。
889 :
774RR:2007/06/22(金) 23:18:16 ID:/SBv7nuu
ほ
890 :
774RR:2007/06/22(金) 23:21:57 ID:MWAkQn4I
いいスレだ。感傷だが別の形で出会いたかったぞ
891 :
774RR:2007/06/24(日) 00:22:36 ID:U86ZaHGH
保守
静かですね〜
892 :
774RR:2007/06/24(日) 00:51:03 ID:A/LnQ9AJ
893 :
774RR:2007/06/24(日) 00:57:48 ID:A+9FIxhj
>>892 奇遇だなぁ、まったく同じ事を考えたよ。
894 :
774RR:2007/06/24(日) 14:39:57 ID:Js9UfWWX
台風の季節はまだ先だぜ
895 :
774RR:2007/06/24(日) 16:35:43 ID:uKCTSjBw
ぬおおおおおおお
896 :
774RR:2007/06/24(日) 18:47:10 ID:UYIOuGT2
金二郎おもしろい奴だなw
897 :
774RR:2007/06/24(日) 19:09:14 ID:KuOKS0MI
898 :
華:2007/06/24(日) 21:08:49 ID:BmqpUkTD
魔棲雄さん つC
↓【星に願いを編】↓ 続きです。
899 :
華:2007/06/24(日) 21:09:41 ID:BmqpUkTD
花子達の夏が過ぎ、秋の訪れと共に少しずつ日中の気温が下がり始める。
そんな秋深まる中、花子は平日は受験勉強。土曜日は海鮮組でのアルバイトを続け、日曜日には伊佐坂と早川の3名で都内の名所を少しずつ回っていた。
花子は定期的に田中へ88の定期点検を週に一度必ず行い、88も問題なくエンジンは動き車輌の状態は全く問題なかった。
そしてこの日は都内ツーリングを早めに切り上げ、3人は喫茶『珈琲・浦野』のカウンターでマスターの浦野を交え雑談をしていた。
「ここ数ヶ月でかなりの所を行ったわねぇ。」私はマスターお手製のフレンチトーストを頬張りながら今までのツーリングを思い返していた。
「そうねぇ。東京タワーに東京ドーム。羽田空港に浅草寺。皇居一周にオフィス街…まだまだあるわね。」ブルマンを口に運びながら早川さんは答えた。
「ふむ…翁 そろそろ気温も下がってきた事だし…行くかね?」マスターがコーヒーカップをキュキュッと拭いて音を鳴らしながら翁に言い出した。
「そうですな。そろそろ見頃かもしれませんね。浦野さん。」少しばかり嬉しそうな顔で翁はマスターに言葉を返した。
「え?何がですか?」早川さんは興味津々で二人に問い詰めた。私はやり取りを見ながらフレンチトーストを追加注文していた。
「ふふふ、いつもこの時期にね。浦野さんと出掛けているんだよ。そりゃぁ最高の所でね。」と翁はここで言葉を止めた。
「え?何処ですか?何があるんですか?」早川さんは身を乗り出して聞き出そうとしていた。
900 :
華:2007/06/24(日) 21:11:51 ID:BmqpUkTD
「知りたいかい?早川君。」白髭を触りながらマスターが早川さんに言い出せば「うんうん!」と早川さんは答える。
「どうだい?翁。彼女達にも見せてあげては?良い経験だと思うけどね。」野太く低い声で翁に言う。
「ふむ…確かに良い経験かもしれませんな。 所々休憩挟めば無事到着出来そうだし、二人も徐々に運転に慣れてきてるからね。」そう言葉を返す翁。
「ねぇ?ねぇ?二人共!何処にいくつもりなの?」早川さんは気になって仕方が無いのかダダを捏ね始める。私はブルマンをグイッと飲み、アップルパイを追加した。
「長野じゃよ。早川君。」なにやら嬉しそうにマスターが答えれば「長野?長野に何があるんですか?」と早川さんが聞く。
「かっかっかっ!それは…」とマスターが言葉を止めれば「うんうん。」と早川さんはマスターの顔を覗き込む。
「秘密じゃよ。」笑顔で返すマスターに早川さんはカウンターに乗り出した体をズルっとすべらせる。「もう!いじわる!」いつもの調子で早川さんが言えば二人は大笑いする。
「よし、二人共。来週の土曜日の夕方にここにバイクで集まって長野に行ってみるかい?」翁がそう提案してきた。
「はい!行きます!行きます!ね?花ちゃん行くでしょ?」ポンと背中を叩かれ「グフォッ!グフォッ!」と咳き込みながら私は頷いた。
「って…花ちゃんフレンチトースト2枚も食べたの?」驚いた表情で早川さんが聞いてきた。
「だって美味しいんだもん…」下を向きながら私は答えた。
「よし、それじゃ来週の土曜日の夕方、ここで集まろう!厚着してくるようにね二人共。今の長野は寒いからね。」と翁が言えばマスターも「寒いからね。」と笑いながら言った。
901 :
華:2007/06/24(日) 21:12:41 ID:BmqpUkTD
そして私は土曜日に海鮮組のアルバイトを夕方前に終わらせ急いで自宅へと戻った。
「父ちゃんただいま〜!」ガラガラっと店のドアを引いて「父ちゃん、今日伊佐坂先生と浦野さんと早川さんで長野に行くけども行ってもいい?」と聞いた。
「ほほぅ、あのお二人と? 長野か。ふふふ、行っておいで。」あっさりと了解してくれたのには驚いたが、父にお礼を言って庭から88を引っ張り出した。
「花子?何時くらいに帰ってくるんだ?」と父が聞けば「日曜日の夕方になるって伊佐坂先生言ってたわ。あ、食事…今何か作ろうか?父ちゃん」少し父が心配になった。
「ははははは、大丈夫だよ。行っておいで。父ちゃん何処かで食べてくるから。花子も美味しいもの食べてきなさい。」優しく父は気遣ってくれた。
「うん、ありがと 父ちゃん。準備出来たらすぐ出発するね。」私は大急ぎで準備し喫茶「珈琲・浦野」へと向かった。
POPモータースを横切り喫茶「珈琲・浦野」の前にはSRXとTDR、そして一際存在感のあるアメリカンが地に響くような重低音を響かせて私を待っていた。
「花ちゃ〜ん!」手を振りながら早川さんが私を迎える。
「えぇっ!こ、これマスターのバイク…なの?ハーレー乗ってるんだ!それにしても…凄い荷物の量ね…」インディアンとSRXに積み込まれた荷物を眺めて言い放った。
「ふふふ、私と同じ事言ってる、花ちゃん」笑いながら早川さんが私に言う。「え?ち、違うの?」と言えば早川さんが「これはね。インディアンってメーカーのバイクなんだって!」
「インディアン? 聞いたこと無いわ…」私は初めて聞く名に戸惑った。
902 :
華:2007/06/24(日) 21:13:26 ID:BmqpUkTD
「かっかっかっ!知らなくて当然じゃよ!」いつもより張りのある野太く低い声で店のドアから黒ずくめのライダーが二人現れた。翁とマスターだ。
「インディアンはね二人共。アメリカでもっとも古いバイクメーカーでね。君達が生まれるもっと前に生産中止になったバイクなんだよ。」そうマスターは言う。
「えぇ?そ、そんなに古いバイクなんですか?!」私は驚きながらもマスターに答えれば「そろそろ50年モノの骨董品じゃよ」白髭を触りながら嬉しそうにインディアンを眺める。
「とても50年も前のバイクに見えないだろう?浦野君はこのバイクを大切にしているからね。」翁も嬉しそうに言葉を添える。
私達は暫くインディアンというバイクを眺め浦野さんから自慢のポイントを色々聞かされ、嬉しそうに話す浦野さんを見て自然と笑顔になっていた。
「さて、そろそろ出発しようか!」翁はグローブをギュッとはめ込めば浦野さんはバンダナを左腕にギュッと縛り「行こうか!翁。」と声をかける。
翁のSRXが先頭を走り、次に早川さんのTDR、そして私の88が続き、最後尾に浦野さんのインディアンの順で環八を練馬方面へと進み、関越道に乗り始めた。
そこから80km程の速度で関越を進み、最初の三芳PAで簡単な休憩を取り始めた。
「さて、お二人さん。ここからはちょっとスピード上げるけどいいかな?」そう翁が言えば私達は「はい!」と答えた。
903 :
華:2007/06/24(日) 21:14:15 ID:BmqpUkTD
トイレ休憩後に同じ順番で走行し始め、スピードも120kmで巡航し始める。
「す、凄い…バイクって…こんなに速いの?」そしてまだまだアクセルに余裕のある88に私は驚いた…
「こ、この子…一体何キロ出るのかしら…」そんな疑問が出てしまったが、翁や早川さんの背中を見たり仕草を見ているだけで楽しくなり、いつしかその疑問も消え純粋に高速巡航を楽しんでいた。
三芳PAを出てから所々で休憩をたっぷり挟み、上越方面に向かい、出発から3時間弱で長野の某ICで私達は高速道路を降りた。
これから何が起こるのか?一体長野に何があるのか?すっかり辺りは夜となり薄気味悪さもあったが何故か心がドキドキしていた。
904 :
華:2007/06/24(日) 21:24:29 ID:BmqpUkTD
椿ライン最高でした。帰りの小田厚は相変わらずですね…orz
今年は梅雨が短そうでツーリングには最高です。また何処か行ってきます。
ね…寝ます…orz
905 :
774RR:2007/06/24(日) 21:29:22 ID:I/ktz/Ok
乙です
906 :
774RR:2007/06/24(日) 22:19:36 ID:x7qboVjy
華乙
907 :
774RR:2007/06/25(月) 01:44:26 ID:vJ1wMX80
華氏 つCCCCC
908 :
774RR:2007/06/25(月) 11:52:22 ID:6TK+W12I
おつC
909 :
774RR:2007/06/25(月) 19:11:05 ID:SUPddsWl
普通に上信越道とおってるけど、現代の話なん?なのに上野に装備を買いに行ったの?w
910 :
774RR:2007/06/25(月) 19:25:31 ID:sB+FtHJt
今、サザエさん観てるんだけど、堀川君って小学生のくせに前髪怪しいな。
911 :
774RR:2007/06/25(月) 20:40:53 ID:lucMlxOp
912 :
774RR:2007/06/25(月) 20:41:44 ID:QlpMLLYv
913 :
774RR:2007/06/25(月) 20:46:26 ID:lucMlxOp
914 :
774RR:2007/06/25(月) 20:51:14 ID:SOcJyWVf
ほんとうにひどい・・・
915 :
774RR:2007/06/25(月) 21:11:48 ID:TYhjglgu
916 :
774RR:2007/06/26(火) 12:52:37 ID:rTnvHPyY
>>911 いや、時代考証もしないでの書きっぱなしは正直読んでても萎える。
917 :
774RR:2007/06/26(火) 13:47:28 ID:V/K7MtrU
読ませていただいている身でこんなこと言うのもアレなんだが、
華氏にはもうちょっと推敲して欲しいと思う。
頭痛が痛い、みたいなのが多くて、
気持ち良く読んでてもそこで止まってしまうのよ。
執筆ペースはもっとゆっくりで良いから、落ち着いて書いてくれるのきぼん。
918 :
774RR:2007/06/26(火) 17:44:48 ID:BuHPxxlc
919 :
774RR:2007/06/26(火) 19:08:32 ID:PlJGa0yl
>>917 頭の中で変換しろよ
お前に華氏以上の文章が書けるのか?
華氏がオレらから金取って小説書いてるんなら文句も出るかもしれんが、違うだろ?
オレには、お前が評論家のフリしてる池沼に見えて仕方がない
920 :
774RR:2007/06/26(火) 19:36:47 ID:JWKcCJU4
まだアドバイスのレベルかと…
921 :
774RR:2007/06/26(火) 19:57:48 ID:6Tbv0Nid
流れ的に、大半の住人は魔棲雄に甘く、華(&新鋭作家)に厳しい希ガス。
922 :
774RR:2007/06/26(火) 20:44:11 ID:aftUjobr
信者だか出版社の中の人か知らないけど定期的に涌くね
923 :
774RR:2007/06/26(火) 22:10:24 ID:+Sew6Jzv
これだけの名作を、金も払わず読めるのが当然と感じられる、ゆとり世代。
自己には甘く、他人には容赦なく厳しい。
最近は、小学生の親世代ですら、「我が家では子供に掃除させていないので、
掃除当番はさせないで欲しい」とか、「自由奔放が教育方針なので、うちの子
『だけ』にはしからないで下さい』みたいな親も、多いらしいね。
そういう甘やかされた人間も、2ちゃんはできるんだよな。
いちいち構っていたら、どうしようもないよ。
924 :
774RR:2007/06/26(火) 22:23:24 ID:dVPgkJUL
>>923 ゆとり世代には道徳の授業がないらしいからな。
925 :
774RR:2007/06/26(火) 22:35:49 ID:PWY4NLrM
無理矢理論点ズラして教育方針に結びつける923も大して頭良くなさそう。
926 :
774RR:2007/06/26(火) 22:47:39 ID:MhY1bK6F
>924
マジか!じゃあ働くおじさんとか見てないんだな。
そりゃろくな人間にならんわ。
夕方。帰宅したカツオは愛機であるエイプ50を庭から表に引っ張り出した。
一発のキックでエンジンは目覚め、排気音が周囲の空気を震わせた。
カツオはフルフェイスに半袖Tシャツという、安全に気を配っているのか、
いないのか、ハッキリしない独自のスタイルでそれに跨がった。
「暖気OK…。よし行くか。」
エイプはゆっくりと前に進み始めた。
何故カツオのバイクはエイプなのだろうか?理由は多々ある。
カツオの原付免許では当然のことながら、選択肢は50ccに限られる。
そして、4スト且つリターン式ミッションを持つバイク。
アフターパーツの豊富さと、スタイルも選考材料だ。
これらを総合的に判断して、カツオは初めてのバイクにエイプを選んだ。
2ストはカツオの好みではない。臭いと急激な加速が苦手なようだ。
929 :
774RR:2007/06/26(火) 23:11:15 ID:tx+KXKJ3
>>926 「中学生日記」おもしろいけど現役中学生は観てないだろうな。
あれは大きいお友達向けの炉利番組だし…。
カツオのエイプは中古車だ。購入した時には前のオーナーの手によって、
結構イジられている状態だった。スピードメーターは100km/hスケールの
ものに交換され、脇には後付けのタコが装着されていた。
マフラーもモリワキが奢られ、カツオは喜んで飛びついた。
支払い総額は20万、バイトで貯めた金を一括ではたいた。
今、カツオの胸は将来への期待でいっぱいだ。普通二輪を取得し、
ボアアップ…。バイトのやり甲斐を益々感じていた。
931 :
774RR:2007/06/26(火) 23:15:49 ID:V/K7MtrU
>>919 「俺はそんなこと思わないから、今まで通りのペースで頑張って!」とか書けば良いのに
都合の悪い意見を封じ込める方向に行くのはゆとりの典型。
漏れをいきなり池沼と呼ぶ、君の方が余程作家や、果てはスレを殺すと思うがな。
>>921 他の作家諸氏の文章は違和感ないんだけど、
華氏は連載当初から今までずっと同じ調子だなぁと。
話自体は面白いだけに勿体ない、もう一皮剥けて欲しい、と思う訳です。
憎くて叩いてる訳じゃ決してないのは分かって欲しい所。
車の流れに合わせ、40km/h台後半で巡航する。カツオが30km/h制限を
守るのは警察の前だけだ。しかし、無視されがちな二段階右折については
いつでもきちんとやる。カツオの変わったこだわりのひとつだ。
バイパスで行った最高速テストでは80km/hをマークした。
購入後に自らで交換した最高速向けスプロケが効いているのだろう。
カツオは練習場へ続く脇道にに入った。
933 :
774RR:2007/06/26(火) 23:31:14 ID:aftUjobr
>>923 出版社がやってるならさー、もうここでやらなくていいからさっさと出版すれば?
うざいんだけど
ID変えてまで乙
934 :
774RR:2007/06/26(火) 23:33:47 ID:zqsbtEbu
三河屋サンにはジャイロキャノピー
練習場といっても、隔離された通行量の少ない公道に過ぎない。
正体は工業団地だ。「関係車両以外通行禁止」の看板をスルーし、
カツオはエイプを全開にした。広い道幅、長い直線を直角のカーブで
繋ぐここは、カツオのテストコースと化していた。天敵の大型トラックが
通らない時間帯を狙って、カツオはよくここに練習にくる。
エイプを乗りこなす為の努力なら厭わない…。カツオには確固たる
強い信念が存在していた。
936 :
774RR:2007/06/26(火) 23:43:57 ID:kPzz2I34
三河屋さんは酒屋だからCD250U。って、もう売ってないか。
ブロックパターンの純正タイヤは、残り溝がかなり減っていた。
この日はギアチェンジ習得の為、ライテク本片手に汗を流した。
ブレーキにも一抹の不安を感じた。手付かずの純正状態だ。
減速の重要さを感じたカツオはボアアップよりも先に、ブレーキを
改造することにした。練習を終えたカツオは工業団地を出て、
産業道路に合流した。辺りは暗くなりはじめついた。
暫く快調に流していたカツオ。だが、背後から凄い勢いで
追い上げてくる一台に息を飲んだ。
938 :
774RR:2007/06/26(火) 23:52:09 ID:uiK6n4qo
>>917 こうすりゃいいのに
『鼻はつまんないからマスオしか読まない』
「はっ…速ぇ!なんだありゃ!」
威圧感をミラー越しに感じたカツオは振り返った。
F1マシンの如く甲高いエキゾーストノートが近づいてくる。
「バリ…オス……?」
カツオが口をついたが瞬間、青色の駿馬は白い類人猿の前に出た。
そして、思春期の青年は胸の膨らみとヘルメットから出た後髪を確認した。
「お…女?」
940 :
774RR:2007/06/26(火) 23:58:58 ID:b8GAAxqc
なんかさっきから「首領蜂・SERIES」ってのが
スルーされまくりなんだけど…(汗
941 :
774RR:2007/06/27(水) 00:01:21 ID:Zeuyu/iM
942 :
774RR:2007/06/27(水) 00:08:29 ID:SYiYE/UI
虚を突かれた、とはこういうことを言うのだろうか。カツオは
酷く狼狽していた。今まで女の子の乗る原付スクーターや
仕事人のカブ・スリーターをカモって遊んでいた自分が急に
恥ずかしく思えてきた。何バカやってんだ俺は…。
家に帰ると、無意識のうちに教習所の申込書に手がのびていた。
【SCENE119】
・・・九ちゃんの乗った飛行機が堕ちた?
僕はその突然の衝撃的な情報を、にわかに信じる事が出来ず、都合の良い理屈を勝手に頭の中で
作り上げたり繋ぎ合わせたりして必死で否定しようとした。
乗り遅れたりして、本当は乗っていないのでは?同姓同名の別人では?
しかし、報道は彼がその便に乗っている具体的証拠を次から次へとラジオの前の僕に突きつける。
やはり・・・僕が愛してやまない九ちゃんは、その便に乗っていることに間違いないようだった。
僕はその夜、窓の外が明るくなってもラジオからの情報に耳を傾けていた。
その時、僕は九ちゃんが墜落機に乗っていることは認めても、命は助かっているものと本気で
信じていた。・・・まさか、あの九ちゃんがいきなり死んでしまうはずなんて無い・・・。そう思っていた。
・・・突然、この世から居なくなってしまうなど露にも思っていなかった大切な人が、突然にこの世から
居なくなってしまった後だというのに・・・僕は人間の命の儚さをどうしても認めたくなかったのかも
知れない・・・。
陽は高く上り始め、正確な墜落地点が長野県から群馬県に訂正されると共に、被害状況が刻々と
明らかになっていく。僕はそんな声だけのラジオ報道を聞きながら、九ちゃんを心配する気持ちが
募り、テレビ映像をこの目で見たくなる。
・・・どこだ?テレビが見られるのはどこだ?鮒田食堂はまだ開店していない・・・。そうだ!学校だ!
夏休みでも校内には入れるはずだ。学食のテレビだって見られるに違いない・・・。
そう思った僕は、大学に行く為に着替えを始めた。その時だ。
『・・・墜落現場から、数人の生存者が発見された模様です。現在、自衛隊が救出活動を・・・』
生存者というラジオからの声に、僕は色めき立つ。そして、何故かとても安堵したのを覚えている。
九ちゃんも生きているに違いない!・・・何故か、僕はそう信じて疑わなかった・・・。僕は普段、学校に
行く時には使わないNinjaに跨り、意気揚々と出発した。九ちゃんは生きている!そう信じて・・・。
あるいは僕は鈴木さんの死以来、押し寄せる現実の非情さを受け入れたくなかったのかも
知れなかった・・・。だから頑なに九ちゃんが事故機に乗っていることを否定したり、命を落としている
可能性を想像しようとしなかったのかも知れない。だが、僕が学校のテレビで見た「現実」は、
まるで容赦の無いものだった・・・。
僕は、あわよくば学校まで移動している間に九ちゃんの生存情報がもたらされているかも知れない
などとも考えていた。・・・だから、その時の衝撃はなおの事、重いものだった・・・。
案の定、学食のテレビは墜落事故を報道する番組が流されており、テレビの前には部活や
自習で学校を訪れた数人の学生の姿があった。
そこで僕が見たものは、希望の二文字が消し飛ぶようなものだった・・・。
報道ヘリからの映像は凄まじいものだった・・・。
深い山中の、とある山の頂上付近に飛行機の形を連想させる黒く巨大な焼け焦げの痕がくっきりと
刻まれていた・・・。
いたるところから立ち昇る白い煙・・・。黒焦げのひしゃげた残骸・・・。誰かが悪戯でそこに置いた
ように佇む上下逆さまの着陸脚・・・。かろうじて主翼の一部であることが認識できる板状の部品に
読み取れる航空会社の社名が事故が本当に起きた事を物語っていた・・・。
・・・その映像から、生命の匂いはまるで感じ取れなかった・・・。女性らしき生存者が自衛隊の救難
ヘリに隊員と共に吊り上げられる映像が繰り返し流されていたが、むしろそんな生存者のほうが
その地獄のような状況の中で特異な存在に思えた・・・。
僕はその場で、佇んだ・・・。そして、九ちゃんの命がとてつもなく高い確率でこの残骸の中に散った
であろう事を認識せずには居られなかった・・・。
・・・僕が敬愛する歌手、坂本九の死が正式に確認されたのは、その3日後のことだった・・・。
『・・・坂本九さんの御遺体が、御家族によって確認され・・・』
その日、幾度と無くそんなフレーズをラジオで聞いた・・・。
夕暮れを追いやるように東の空から迫り来る漆黒の闇の下、僕はNinjaをほとんど無意識のまま
走らせていた・・・。
鈴木さん・・・、そして九ちゃん・・・。これほどまでに人の命の儚さを思い知らされた事は無かった・・・。
人間とは・・・命とは・・・人生とは・・・。答えの出ない自問は、僕の頭の中を猛烈な勢いで回っていた。
・・・人は何故、死ぬのか・・・。死ぬのに・・・何故、生きるのか・・・。
気がつけば、いつのまにか僕は第三京浜を走っていた・・・。
120km/h程度のペースで僕はライディング以外のことを考えながらクルージングしていた。
大きくて、優しかった鈴木さん・・・。僕達の兄のように頼れる存在だった鈴木さん・・・。
そんな鈴木さんが何故、暴走車によって命を奪われなければならなかったのか・・・。あんなに
真っ直ぐで、輝ける瞳をしていた若い命が消えなければならなかった理由とはなんなのか・・・?
敗戦国のコンプレックスをまだ引きずっていた1960年代。戦勝国である米英で堂々たる歌声を
披露し、日本人・・・とりわけ思春期の若者を歌で応援し続けた九ちゃん・・・。
僕がこの夏、北海道で視るはずだったテレビ番組での活動のように、社会福祉にその優しい目を
向けていた九ちゃん・・・。そんな九ちゃんが、志半ばで残酷な死を迎えねばならなかった理由とは
なんなのか・・・?
鈴木さんの死で疲れ果てていた僕の魂は、九ちゃんの理不尽な死によってとどめを刺された
ようなものだった・・・。
真っ直ぐに生きていた人達。周囲の人々にとって太陽のように明るい存在だった人達が迎えた
惨たらしい最期・・・。それは若かった僕にとって、人間の営みに無常と非情を感じるに充分な
出来事であった・・・。
そうして力無くNinjaを走らせる僕の背後に邪悪な気配を感じたのは保土ヶ谷PAまでもうすぐの
地点だった。
バックミラーを眩しく照らすクルマのライトで僕は我に返った。いつのまにか、僕の後ろには
一台のクルマがピッタリと張り付いていた。
そのクルマはパッシングや空吹かしで僕を煽る。明らかに僕をターゲットにしている事は間違い
無いようだった。
僕はNinjaに鞭を打つ。そのクルマはミラーの中でみるみる小さくなってゆくが、すぐに保土ヶ谷
料金所に着いてしまった。
保土ヶ谷PAにNinjaを停めると、そのクルマもまた十数メートル離れた場所に停まった。黒い
セリカだった・・・。僕はヘルメットを脱いだ。
「ほら!やっぱりこの間のクチビル野郎の仲間だぜ!」
「ホントだ!おぉ?今日は一人かぁ!?」
「ハハハ、弱っそうだな〜、おい。どうする?やっちまうか!?」
そのセリカの運転席から降りてきた男は、数日前にアナゴ君ともめた男に違いなかった。
以前は友人と二人連れだったが、今日はさらに二人の仲間を引き連れている・・・。もしかすると
アナゴ君に仕返しをする為に、第三京浜に現れたのかも知れなかった。
クルマから出てきた彼らは、僕の方に向かってニヤニヤ笑いながらゆっくりと歩いてくる。どうやら
アナゴ君を見つけられなかった腹癒せを、仲間である僕で晴らそうとしているようだった。
・・・しかし、もっと大きく、得体の知れない理不尽な現実に対する腹癒せを晴らそうとしているのは
どうやら僕の方だった・・・。
以前の僕であれば、尻込みしてしまうようなシチュエーション。しかし、その時の僕の心中は、
この夏に僕を襲った数々の受け止め難い現実に対しての怒りに打ち震えていた・・・。
・・・どうして鈴木さんが・・・、どうして九ちゃんが、死ななければならないんだ・・・。それなのに、
それなのに・・・、どうしてこんな連中が我が者顔でのさばっているんだ!
・・・僕は容赦無い現実に対する苛立ちを晴らすため、拳を固く握り締めた・・・。
「おい!この前のクチビル野郎は・・・」
僕の目の前に立ちはだかったセリカのドライバーがそう言い終わる前に、僕は右の拳をその
下卑た笑顔にぶち込んだ。
「グハッ!!」
・・・初めて人を殴った・・・。ことのほか心地よいと感じている僕が居た・・・。相手は鼻血を流して
アスファルトに倒れこんだ。
「りゅ・・・竜ちゃん!」
「て・・・テメェ!何しやがる!」
その時、僕が暗く圧し掛かる現実に対する腹癒せに放った一撃はその一発のパンチのみだった。
その後の僕は、ご想像の通り他の三人の仲間のサンドバックと化してしまったからだ。
「オラッ!テメェ、立ちやがれ!」
「ぶっ殺してやる!」
何発のパンチと蹴りを見舞われたかは覚えていない・・・。僕がアスファルトに突っ伏しても彼らは
僕を無理矢理に引き立て、甚振ろうとした。出血が鼻からなのか口の中からなのかも解からなかった。
その時、PAのドライブインの方向から数人の大男がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
「Hey!Hey!Hey!Hey!!!!」
「うおっ!なんだよあのデカい外人達!こっちに来るぜ!?」
「や・・・やべ!仲間か?」
「おい!とにかく逃げるぞ!」
血相を変えて駆け寄ってくる米国軍人の迫力に、男達は逃げるようにクルマに乗り込み去って
いった。
「HAHAHA!ケンカは弱いナ、Ninja Boy!」
アスファルトに仰向けに倒れる僕の肩に手を掛けながらジョージそう言った。
「Hey!Ninja Boy!泣いてるのか?」
アスファルトに倒れながら仰ぎ見る満天の星空が歪んで崩れた・・・。僕は泣いていた・・・。
・・・もうダメだ・・・。僕は短い時間の中で、多くの精神的支柱を失いすぎた・・・。
アナゴ君の為に自分だけは真っ直ぐに立つつもりだった。僕は平静を装って生きていけるつもり
だった。だけど・・・、だけど・・・僕はもう、失ったものの大きさに耐えられない・・・。
レッドやジョージから涙を隠そうと横を向いた僕の目に入ったのは、在りし日のあの人が遺した
アスファルトに刻まれた筆跡だった・・・。
『 魔 棲 雄 』
・・・ゴメンなさい、九ちゃん・・・。もう・・・上を向いて歩けそうにない・・・。
僕は、そう漆黒の天空に向かって呟いた・・・。
>>魔棲雄さん
つC
ろくに確認もせず、残レス数も少ないのに投下してしまって申し訳ないです。
【SCENE119】が、物語における『第一部完』のような内容でしたので、
キリ良く@8台目に収めてしまおうと焦ってしまった次第です。
特に投下中の首領蜂さんには、話の腰を折るようで申し訳ないことをして
しまいましたm(_ _)m
華氏&首領蜂氏 つC
>>953 いえ、私は大トリの魔棲雄さんが来るまでを繋ぐ
前座のようなものなので…。
どうかお気になさらないで下さい。
つC
第二部、期待しています。
955 :
774RR:2007/06/27(水) 01:04:51 ID:Sd89ByBU
着々と魔に染まってゆく…。
世代が違うから日航機事故の当時の状況は分からんのだが
今資料を読んでみると言葉も出ない…。
C
956 :
774RR:2007/06/27(水) 01:57:07 ID:oOePY1nx
>>939がネタなのかわからないwww
突っ込んでおくと巨乳でパツパツの服でも着てない限り胸はわからんお
あと後ろ髪って・・・バサバサやるようなヤツいないだろ・・・
957 :
774RR:
マスオさんお疲れ様ですC
劇中のマスオさんはロックだね