1 :
代打名無し@実況は実況板で:
3 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/06 11:39:45 ID:iBKLmE+f
,'⌒⌒ヽ
/ λ W λ i ヽ
く ゝ` ‐´ノ,,ゝ
( .)~==~)つ
レノ人__人!
(/(/
御機嫌いかがですか?NOIRのChloeが
>>3ゲットです・・・・・。
>1 スレを立てるのは私だったのに!私のはずだった!!
>2 スレはあなたを必要とはしていない。それだけ言えば充分でしょう。
>4 これがあなたのレスか。・・・・・なるほど、つまらん。
>5 すべては過去スレ過去ログに記されています。
>6 答えは・・・・・答えは自分で見つけるように。スレ住人はいつもそう言っています。
>7 私が全身義体化サイボーグとして復活し「魔法先生ネギま!」に登場しているのは秘密です。
>8 あなたは、コピペを、貼る。なんの躊躇いもなく、貼る。
>9 あなたはノワールのエロ画像を失ってしまった。だからそんな顔をするんですね・・・・・。
>10 どうして・・・・・・・・・・どうしてッ!?
>11 嘘つきぃッ!!
>12 ・・・・・・・・・・ノワール・・・・・。
>13-1000 私、
>>2ゲットできて幸せです。
4 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/06 11:52:36 ID:iBKLmE+f
5 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/06 19:53:34 ID:QqLzrL/R
5
>1 乙!
職人さん乙!
失礼、元保管庫さんの所のは「若虎BR紅白戦」でした
千葉マリンBRは2スレ目いってるよ
そらそうよ
11 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/08 00:28:24 ID:sbzjuPen
age
12 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/08 10:35:33 ID:rBhJ5Jks
i::::::::::::::::.:.:.:.:::.:.:.:::.:.:.:.:::.:.:.: : : : : !: :l: : : : : :.:.:.:.:.:.:.、:.:.ヽ
i:::::::::::::::::.:.::::::.:.:.!:::.!::.i::::::::.:.: : : :li.: :|: : : : : :.:.:.:.:.、:.:.!:.:.:i
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. /イ{i::::{ !|:::::ハヽ VYrノ / ̄.ヾ.ュ::リ 〉レ' V:.:/ ,ソ
li::::ヽl:::::::::iト、 ´ ̄ l {( )} 「` /:.:.:.レ′
V^ヽ:::::::::ト、. | ヽニ / | /!:.}:.:.| ・・・・・・・・・・
__,...}ハ::::::::ヽ l〉{ { } }〈| /::}/ヽi}
,. --┴─-- ̄ ``\ l iト--イi K-'⌒ゝ ⌒ヽ
/:::::、_:::::::::......... _>' ⌒`ヽi i‐-l 、 Y ´... \
. /::::/:::`:::ヽ、::::__;:::-‐ ' { l ! } }--─- 、ハ
// ...::;:::- '´ ノ ー-- L_j...__r-=-ヽ、 ヽ}
./ _,. '´ ....://:〈 ___ ヽヽ } \ }、
{::. '" ....::::::::::/..:/::::::::::i ‐-_(  ̄  ̄ ̄ ヽ::..`ヽ、 { ヽ
|::::::::::::::::::::::::::::::::::...::::::::::::::::::::! __(⌒ ` ー- .. ∧/ `ヽ ハ
lヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::( ` ‐ 、  ̄ ̄ ! } / /
.!:::\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::(`` - 、._` ー----- ,ノ/ レ′
.ヽ::::::\:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::> 、. `` ー 、 // _,. /
13 :
猛虎会!:04/11/08 10:50:05 ID:HnBE/IF9
こら!糞若虎!おまえら刺ねや!
>>991より
第六章・弱き者への鎮魂歌
目の前の井川は、その両手におかしな形の武器を持っていた。
一見するとダウジングに使用するアレもようにも見えたが、どうやらそうではないらしい。
鳥谷は、井川がトンファーという武器を持っているのだと気づいた。
「ケッ、ザマぁねぇな鳥谷。あんましお荷物になるんで捨てられでもしたか?」
「井川さん…やめましょうよ、殺し合いなんて」
震える声で鳥谷がそう言うと、井川は1オクターブ高い声を出して笑った。
「うひゃひゃひゃ、殺し合いだって!?馬鹿言うな、そんな事はしねえよ!」
「そ、それじゃあ…」
思いがけない井川の言葉に、鳥谷の頬は僅かに緩んだが、次の瞬間その頬に井川の渾身の一撃が見舞われた。
「ぶごっ、い、井川さん…どうして…?」
「てめェは俺に一方的に痛めつけられンだよ。殺し合いなんてするワケねぇだろ。ぎゃははは」
そう醜く笑うと井川は、立て続けに腕、顔、腹部などを5・6発殴りつけた。
「ぐ、ぐゥ…」
「どうした、もうギブアップか? つまらねェな、もっと吠えてみろよ!」
「…こんなの…卑怯、です…」
「はぁ? ンだってぇ?」
「動けない僕を痛めつけるなんて、信じられない…スポーツマンなんだから、正々堂々と…」
「うるせェ!!」
井川は、鳥谷の顔面を蹴り上げる。
「――ぐぁッ!」
吹っ飛ばされた鳥谷は、数メートル先で仰向けになって倒れた。
「だからテメーは甘ェっつぅンだ! 勝ちにこだわるのがプロなんだよ!」
「はァ、はァ…」
「恨むなら、根性無しに生まれた自分を恨むんだな…」
「僕は…勝ち負けなんて、どうでもいいんだ…ただ野球が出来ればいいのに…なのに、どうして…」
気づけば、鳥谷の双眸には熱いなにかが込み上げてきた。
鳥谷は、それを拭うこともせず、ただひたすらにそれを流し続けた。
そんな鳥谷を鼻で笑うと、嘲るように井川が言った。
「お前の事情なんて知らねェよ…テメェはただ黙って俺に殺されりゃいいんだ」
「そんなに闘うのが好きなら、やりたい奴だけでやればいいのに…何で僕まで巻き込まれなきゃいけないんだ…」
「カン違いするなよチキン野郎。俺は闘うのが好きなんじゃねェ。――勝つのが好きなんだよ!」
「な、南無三っ!」
「俺のために哭け! そして死ね、鳥谷イィィィィィィィィ!!!」
両腕で頭を隠し、土下座をするかのように縮こまって祈った。
神様仏様、どうかお助けください。そして、力に狂った者たちに天のいかずちを与えてください…!、と。
――弱いのぅ――
えっ…?
――祈るだけやったら、誰も助けてくれへんよ――
だ、誰…?
――力、欲しいんとちゃうか?――
力を…くれるんですか? 裁きを与える力を…?
――そらそうよ。ただ、無理にとは言わんわ。お前が望むならやってもエエと思っとるよ――
欲しい、力が欲しい!
――あー、そやな…別にやってもエエんやけど…――
えっ? ど、どうしたんです?
――まぁええことよ。そやったらやるわ、力。欲しいんやろ?――
おお。ち、力! これが力か! すごい、溢れる、漲る力が僕の中に!!
――気に入ったなら何よりや。好きに使えばええのとちゃうかな――
ま、待ってください! あ、あなたは一体!? な、名前は――?
――ええか、これだけは覚えとくんや。力というのは望めば望むだけ手に入る、オレのようにな。これは何十回も言ってることよ――
望めば望むだけ…これが、僕の力! 誰にも負けない最強の力!!
その瞬間、鳥谷の中の大事な何かが弾けて飛んだ。
「も、燃えろォ!!」
死を目前にした鳥谷は、必死の思いで両手を前に出した。
その眼は堅く閉ざされている。
顔を伏せ、体育座りのように縮こまっていた鳥谷の周りの気温が不意に上昇した。
(……?)
いつまで経っても死が訪れないことに訝る。
ゆっくりと眼を開くと、目の前で何かが激しく炎上していた。
馴染みのないその光景に、鳥谷は一瞬呆気にとられる。
(…ああ、そうか。僕はきっと、もう死んでるんだ…。ここは地獄か、天国か…)
だとすれば、死なんてモノは案外味気のない話だ。
こうしてちゃんと手足も動くし声も出せる。
生きているときと殆ど違いがない。
鳥谷は、死を体感出来た自分にちょっと誇らしくなったと同時に幻滅もした。
あれ程までに畏れていた死が、この程度のことだったなんて、と。
「ふふん、まぁいいか。今の僕は生を超越した存在、言わば神の同種とも言えるのだからね」
それにしても井川の奴、動けない僕を痛めつけた挙句殺してしまうなんて忌々しい。
せっかく死人になれたんだ、早速あの野郎を呪い殺してやるとするか。
そう思い立ち上がろうとすると、右足に痛烈な痛みが走り、思わず転倒してしまった。
「な、なんだ!?」
倒れてから、生前の自分は右足を骨折していたことを思い出した。
(くっ、忌々しい今岡め、お前もあとで呪い殺してやるからな…!)
痛みと言えば、骨折の他にも先ほど井川に散々殴られた箇所も随分痛む。
まったく、折角選ばれた存在になったと言うのになんて不便なんだ。
そう言えば、さっきから目の前で燃えているこれはなんだろうか。
よく見ると人の形をしているようにも見える。
僅かに死臭も漂っていた。
「なんだコレは、まさか井川か?」
その当て推量も、近くに落ちていた井川の帽子を発見すると確信となった。
そうすれば当然「なんで井川が燃えてるんだ?」という疑問が浮かんでくる。
25分ほど蹲って考えると、先ほど自分が井川に向かって「燃えろ」と口走っていたことを思い出した。
(だから燃えたのか…? いや、まさか。僕は爆薬どころかマッチすら持ってないよ)
しかし、誰がなんと言おうと目の前の井川は燃えている。
そこで鳥谷はひとつ実験をしてみることにした。
「も、もっと燃えろ…」
井川に向けてそう言った瞬間、井川は音を立てて燃え上がり、あっという間に灰になり、骨すらも消し去った。
それを見た鳥谷は、始めこそ眼を丸くして驚いたが、ふとした弾みで笑いが込み上げてきた。
「ふふふ、そうか。そういうことか…」
目の前の残骸をその右足で踏みにじってから、顔を歪めて笑った。
「僕は神すらも超えてしまったと、つまりはそう言うことなんだな…」
その日、太陽が天頂にたどり着く頃まで鳥谷の哄笑は響き渡った。
鳥谷は、先の白昼夢を覚えてはいない。
18 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/08 12:07:01 ID:o/8inE69
,. -‐ ''''''''''''' ‐ヽ 、_
,. '´,.--、,r‐''_ァ'^', ||、_,、`ヽ、
i ̄、`ヽ/ /ブ,. -‐'"´/ i,!レ' ヽ-、.ヽ
! -、ヽヽr'-''" . ∧.,、 ヽL_.`、
ヽ ::: >'′ ..: :/ .:.: /ー'‐l `.、!_ ゙、
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/ ./ :/ .| :.:イ _,:|:. .:.i|:.i ___|: ト、:. i! ',
./ .:.l :/ .:| :i'T :..:ハ:...:.:|.!:.! |`|`|:.: .: i:.:. ', >1乙彼
| .:.:./!/.. :.:.l,:| ,.L/‐-゙,:.:.:.|ヽ! , ,z;.L/、.|:./:. 、 |:.:.:. i
|.:.:/ |:.:.|. :.:l l/./o;;`ヽ\:.i /o;;`ヽレi:.:.:. |l:.:.i,:. |
ヽ:| ',:.:l:.:. :.:゙,. l゚t;..r‐l ヽ、 l゚t;..r‐l !.:.:.:.:l:.:.l l:/
゙! Nヽ:.:.:.:.\ゝ-'‐'′ ゝ‐'‐',ノ:.:.:.:/.:./ /
l ヽ\,:.:ヽ`ー ' `ン:.:.:.:/'
| | |ヽゝ`` ヽフ ー‐'フ''''"
| | ! ``i‐-,.. _ '' ,, ‐''i´
,' i |r'' ̄`ヽ、ーt`r-´',r`'" ̄``i
l _ |. |.! `'r--/ ,'``ヽ
|ヽT7'i | !ニ= ..|.....!,ニ‐ / ゙;
. └‐/ \ | l ....::..;:'|‐|、::.::.::.::.::.::,' ゙;
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/ / / |l!i | l \. ゙;
19 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/08 14:50:34 ID:GMTYPskd
まじレスすると、井川はこんなキャラじゃないでしょう…もっとボーとしてそうだが。もしかして井川ギライですか
>>19 5作品同時進行なんだし、本人のキャラを尊重しすぎるとどれも似たような話になってしまうぞ
自分の思ってたような扱いじゃないからってそういうこと言うなら
バトロワ読むのはやめといたほうがいい
「こんなキャラじゃない」のは井川だけじゃない
21 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/08 17:40:44 ID:GMTYPskd
そうですね。失礼しましたm(_ _)m
22 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/08 18:11:25 ID:JZzjH5Qo
このスレ立て主は、氏にさらせ(#゚д゚)ゴルァ
23 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/08 18:14:20 ID:3YfsCKpR
ああ、ほんと(笑)
何十回も言ってることよ
328氏乙です
鳥谷が天然のアホの子みたいで面白かったです
井川が氏んだがのがちょっとショックですが…
前スレ
>>988 24.辿り着く場所
自分も彼のようになるのだろうか?
彼みたいにうち捨てられ、何人ものチームメイトの目に晒されるのだろうか?
痛む身体を引きずりながら、前川勝彦(背番号25)は恐怖した。怖かった。
末端からどんどん冷たくなっていく自分の身体も、白くかすむ視界も、全てが
ぼやけていく中で一つだけ妙にクリアな聴覚も。
この恐怖は彼との遭遇が発端だった。
体育館から出て左に曲がってすぐ、土の上に無造作に転がっていた彼―――
中村泰広。少し奇妙な体勢で倒れており、息がない事は一瞥して明らかだった。
あの時自分は何を思ったのだろう?
自分の行動の理由をはっきりとは理解しないまま、夢中で彼の死体をずるずると
移動させた。周囲に誰かいるかも知れない。誰か―――具体的には、中村を
殺した殺人者が今、自分のこの行動を逐一見ているのかも知れない。それが
チラリと頭を過ぎって嫌な汗が流れたが、だとしても一度抱えた中村を放り出す
気にはなれなかった。誕生日の近い同い年の彼だったが、自分よりは
一回りほど小柄な体格をしていて、力を入れるたびに四肢が頼りなくぶらぶらと
揺れる。後じさりしながら彼を引きずり、茂みの奥の木の陰へと横たえた。
仄白い月明かりに浮かび上がった顔があまり苦しそうではなかったのが、一番
印象に残っている。ひとすじ、ふたすじ、口元からつやつやと光る粘性の液体が
伝って、薄っすらと開いた唇の奥が得体の知れない昏さに満たされていた。
息絶えてなお漠然と前川を見上げてくる彼の目は、一体何が起こったのか
解らないとでも言いたげに見開かれ、しかし吸い込んだ光を収束させるつもりも
ないらしい。息もせず、瞬きもせず、ただ無心に見つめてくる中村がひたすら
悲しくて……哀しくて、その顔を直視していられないと思った。そんな顔で、
そんな目で見ていられてはたまらない。
目を閉じさせ、手を胸の上で重ねさせると、彼はまるで眠っているかのように
見えた。しかし消しようのない生臭い匂いがそれを否定してきたのに辟易する。
これ以上現実を突きつけないでくれ。これ以上、オレの琴線をずたずたに
するような真似はやめてくれ―――。
人目につかぬようにと移動させ、死に顔を整えてやった中村の亡骸だったが、
結果的には前川の後に出発した選手の内の幾人かがそれを見る事になる。
体育館の周囲が鬱蒼とした森になっていて、殆どがけもの道であったために
誰がどこを通るか解らない状況だったからそれは致し方ない。それでもあんな、
壊れたオモチャのロボットのような、使い捨てにされたぼろきれのような、無残な
格好で放置されているのを捨ててはおけなかったのだ。
どちらにしても、あの後の事を前川が知る由はない。ただ、自分のした事が
自己満足ではなかったのだと思い込んでおくだけだ。
(オレも、死ぬんやろか?)
腹を探ると縦一列に幾つかの穴が開いていた。その数を確認する事はもはや
無駄だと解っている。つまり―――自分の死を予測したのに他ならない。
フラフラする足元を見下ろすとそこは凄まじい様相を呈していた。白かったはずの
ピンストライプのスラックスが今や、道化師が穿くズボン宜しく紅白のだんだら
染めに様変わりしている。小さい頃に二、三冊ほど読んだような覚えのある
江戸川乱歩の『少年探偵団』シリーズ。あれに出ていた。怪人二十面相が
ピエロに変装して子供をかどわかしたり、ものを盗んでいったり。二十面相って、
こんな派手な服着てたのか?
「は、は……」
どうでもいい事を考えている自分がおかしくて、前川は乾いた笑いをこぼす。
こんな時に思い出す事ではない。どうせならもっと有意義な事を思い出すべき
だろう。そう、例えば自分の家族、友人、色々な思い出。『悪童』で通っていた
昔の事とか、一緒に頑張った選手たち。近鉄にいた頃の出来事。
(そうや……近鉄も、なくなってまうんやなぁ……)
この馬鹿馬鹿しすぎる殺人合戦は阪神を消滅させるためのものらしい。どうして
こんなしち面倒くさい方法を取ったのかは皆目見当がつかなかったが、既に
死人が出てしまった今となっては考えてみても仕方のない事だろうか。
近鉄も阪神も共に経営者側の意向では消滅予定で、近鉄は合併、こっちは
殺し合い。手段が違うだけで目的は同じなのだが、おいおい冗談やないでと
前川が呟きたくなるのも無理からぬ話だ。―――無論、冗談ではないところが
最も恐ろしいポイントなのは言うまでもない。
(酷いなこれ。広島のユニフォームやったかて、ここまで派手やないやんか)
前川はもう一度自分の身体を見下ろした。真っ赤だ。鹿の子まだらに白が
残っている以外、残りの面積は赤で埋め尽くされている。シューズの中にまで
ぬるぬると血が溜まり、歩くたびに靴下と指が滑った。倒れてしまわないのが
不思議なくらいのおびただしい出血量だと他人事みたいに思う。
「……ゴホ、ゴ、ボっ……」
びちゃ、びちゃと地面に落下したもの。自分のものだが直視に耐えない。咽喉を
逆流し、ねっとりとした塊になって立て続けに飛び出したそれは砂を赤く汚し、
太陽に晒されるまま粘り気の強い光を放っていた。苦しさと痛みに浸された
意識は朦朧としていて役立たずも同然なのに、身体を蝕む激痛はどくりどくりと
脈打ちながら前川を責め立てている。こうやって立って歩いている事自体が
奇跡みたいなものだ。いっそ死んでしまった方がどんなにか楽だろうと思わない
でもなかったが、あっさりと生きる事を放棄してしまうのも何だか癪に障る。
―――本当は解っていた。こんなに酷いやられ方をしているのだから、自分の
身体はそう長くはもたないだろう。それでも抵抗したかった。そう思うだけの
反骨心は未だ失われることなく、自分の中に息づいている。
移籍して一年目、新しい場所で精一杯やろうと心に決めていたのに、結局
不本意なままシーズンは終わってしまった。だから来季に向けての意気込みは
強かったし、そしてそれは何も自分だけではない。歳の近さもあってよく喋った
吉野も、他の二軍の選手たちも、来年こそはと判で押したが如く同じフレーズを
胸の中で唱えながら、めいめいが努力を重ねてきた。それを痛いくらいに解って
いるからこそ、易々と監督たち、経営者たちの思い通りになりたくなかった。
(……でも)
みんながみんなそうではないという事実に前川は絶望する。この戦いに参加
させられた選手がみんな、自分のように考えるというわけではない。自分が今
瀕死の状態で苦しみに喘いでいるのがいい例だろう。奴らの命令通りに仲間に
銃を向け、平気で発砲するような人間だっているのだ。
今朝までに殺されたのが四名。単純に考えて、選手の中に四人の殺人者が
いてもおかしくはないという事になる。
(せや、この殺し合いに乗りよった奴がいてる……片岡さん、みたいに)
近づきかけた自分に視線をくれて、そのまま一寸の躊躇もなく銃を向けてきた
片岡の顔が脳裡に浮かんだ。今年前半、自分と同じように故障で鳴尾浜にいた
彼だ。真面目で熱心で、よく話もしてくれる先輩。―――否、先輩『だった』。
ついさっき見た彼の顔が、いつも見ていた同じ人間の顔であるはずなのに
いやにグロテスクなものに見えたのは錯覚ではあるまい。あそこでニヤリと
冷えた笑みを浮かべられる事が信じ難かった。自分には他人を皆殺しにして
生き残ろうという貪欲さも、何のためらいもなくチームメイトを殺せるだけの
捻じ曲がった度胸もない。
そう、片岡は笑っていた。それが前川には酷くショックだった。
(悲壮感もへったくれもあれへんかったやんか、片岡さん)
薄く口の端を吊り上げて、彼はマシンガンを構えていた。―――悲しいかな、
あまり俊敏とは言い難い自分の身体であるからして、反応が遅れたのは事実だ。
それでも必死に身体を捻り、コンクリ塀の後ろに飛び込んだ。内臓に焼きごてを
直接当てられたような何とも形容出来ない激痛を感じながら、ひたすら逃げた。
粉砕されたコンクリートの粉塵が煙幕になってくれた事、片岡が銃の反動で
体勢を崩した事、それからマガジンの装填に手間取った事が幸いしてとどめは
刺されずに済んだが、致命傷を負ったのは明白だろう。片岡もそれを解っていた
からなのか、いつまで経っても追って来る気配はない。こんな事を想像するのは
胸が悪い話なのだが―――『放っておけばいずれ死ぬだろう』と思われたのだと
考えるのが一番自然だ。弾薬の数は限られているのだろうし、資源も体力も
無駄遣いはしないに越した事はない。殺し合うにせよ、逃げ回るにせよ。
(―――アホか、オレは。また今更どうでもええ事考えとったな)
顔を上げると目当ての家屋が視界に納まる。あと何メートル?解らない。
距離感覚もとうの昔に狂っていた。とりあえずあそこまで行こう。行ったから
どうにかなるわけではないけれど、あそこまで行って中に入ろう。疲れはピークに
達している。それからの事は……それから考えればいい。
後ろを振り返る余裕はなかったが、自分がここまで歩いてきた道はきっと緋色に
染まっているのだろう。そしてそれはもうすぐ途切れるようだ。こんなところに
足跡を遺したって何の意味もない。元の世界に遺せなかった、遺したかった
ものは沢山あるのに―――
ああ……そろそろ限界、か?
足を前に出そうとするが、蟻地獄に捕らえられたかのようにびくとも動かない。
歯を喰いしばる力すら残っていなかったが、それでも必死に前へ進もうとした。
二、三メートル前にぼやけて見える木の引き戸に向かって、すり足の要領で
体重を移動させる。あと少し、あともう少しなんだ。神様仏様、誰でも構わない。
もう少しだけ時間が欲しいんだ。あの扉に辿り着いて、中に倒れ込むまでの
たった数分でいい。けちけちする事ないじゃないか。
このまま死んでしまうのだとしたら、せめて屋内で死にたいと前川は思った。
野晒しは嫌だ。雨に打たれ、風に足蹴にされ、太陽に灼かれて、独りぼっちで
転がっているなんて嫌だ。中村みたいに目を見開いたまま、何で死ぬのかすら
解らないまま、身体だけ置いてどこかへ行ってしまうなんて―――そんなの、
哀しすぎるじゃないか。
足がもつれ、バランスを失って前川の身体は前へと倒れた。突き出した手の甲が
扉に当たったのを感じてそのまま身体を預ける。もたれた木の感触は優しく、
冷えた指先と頬とに素朴な温かさを伝えた。ははは、前のめり、大いに結構。
『倒れる時は前のめり』って言葉もあるし、仰向けに倒されて死ぬよりかはいい。
―――それにしても、本当に時間がないみたいだ。
中村、あれで良かったよな?結局あんなところに放り出して来てしまったけれど、
あれがオレにとっては精一杯だったんだ。理不尽な理由でお前が殺されて、
怒りもあったし恐怖もあった。何の感情が噴き出したのかは解らなかった。ただ、
せめて少しでも穏やかに眠れるといいなって、そう思って。
(せやな……向こうに行ったら、訊いてみたらええやんな)
どこに行くのか、そもそも行く場所なんてあるのか、そんな事は解らない。
さっきからそればっかりだ。世の中解らない事だらけ。自分自身の気持ちも
解らないし、他人の気持ちも解らない。答えが本当にあるのか、あったとしても
辿り着けるような場所にあるのか、それも知るところを超えている。
それでも何となく、中村には会えるような気がした。
会ったら訊こう。
あの時、瞳孔の広がりきった目で自分を見つめていたわけを。
薄く開いた唇が伝えたかった、最期の言葉を。
【残り42人】
マエカー・゚・(つД`)・゚・
リレーの生存者中やる気になっているのは
今岡、片岡、太陽、桜井、喜田か。まだ思ったより少ないな
濱中もその可能性が高いけど、三東が謎だ
34 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/09 14:28:00 ID:8pHLGbd7
age
今岡はやる気になってるとはチト違うと思うが
36 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/09 19:31:59 ID:pYQBajvg
マエカー悲しいよマエカー…(ノд`)
>>14-17より
「うぅ…」
自分の呻き声で目が覚めた。
日が出ているのに、薄ら寒いとすら感じる気温。
今まで生きてきた中で、最悪の目覚めといっても良かった。
“朝起きたら、自分の利き腕がなくなってました”
…笑えない。
まだ自分が夢の中に居るんじゃないかと邪推したくなるほどだ。
もしそうだったらどれ程良かったか…
狩野恵輔は最悪の気分のまま、ふと隣を見た。
すると、自分の隣で三東が眠っていた。
(三東さんが傷の手当て、してくれたのかな…)
確か昨日か一昨日か、誰かに襲われて…そこから先の記憶がない。
誰だったかな、思い出せない。
ああ、頭が痛い。
倒れていた僕を、三東さんが助けてくれたんだ。
――ホントウニ?――
きっと、これからも一緒に行動してくれて、僕を安全へと導いてくれるんだ。
――イイヤ、ソレハチガウヨ――
三東さんには、感謝しなくちゃね。
――ドウシテ? ソイツハ敵ダヨ?――
何だろう、さっきから頭の中で声がする。
疲れているのかな?
え、三東さんは敵?
僕を助けてくれたのに?
よく思い出してごらんって?
いやだよ、思い出そうとすると頭が痛むんだ。
う〜ん、そこまで言うならわかったよ。
えっと、確か…休んでいたら、誰かが草の陰から飛び出してきて…誰だったかな、まぁいいや。
その誰かは、大きな刃物で僕の右腕に…
それが誰だか思い出せって?
そう言われても…暗かったし、顔も見てないよ。
え、三東さん?
僕を襲ったのが、三東さん…?
そう言われてみてば、そんな気もする…
うん、僕を襲ったのは、三東さんだ。僕から野球を奪ったのは、三東さんだ!
(憎い…)
僕から野球を奪った、三東さんが憎い…
え、殺していいの?
でも、人殺しは犯罪だよ…?
敵だから殺していいって?
ああ、そうだよね。敵なら殺してもいいよね。
そうそう、殺しておかなきゃ、こっちが殺されちゃうからね。
うん、わかってるよ。いますぐに殺すよ。
確かここに…ああ、あった。
小さな果物ナイフ。
最初からずっと一緒だった、僕の唯一の味方。
え、きみも僕の味方だって?
う〜ん、そう言えばきみは誰だい?
僕自身? きみは僕自身なのかい?
ああ、そうだったんだ。それなら僕の味方だよね。
だったら一緒に、三東さんを殺そうよ。
僕と一緒に、敵を滅ぼそうよ。
銀色に光る果物ナイフを、無防備に眠る三東の心臓に突き立てる。
――ネェネェ、カンタンニ殺シチャツマラナイヨ。モットクルシメテカラ殺ソウヨ――
え? あ、そっか。そうしようか。
じゃぁ、まずはこの辺がいいかな。
狩野は果物ナイフを心臓からずらし、右の肩口付近に突き刺した。
「ぐぁぁあ!!」
突然身体中を走った痛みに、三東はビクンと体を揺らして眼を覚ました。
「な、なんだ…? か、狩野…?」
ははは、きみも見たかい。面白かったね、いまのカオ。
もっと見たいなぁ、敵が驚くカオを。
うん、もっとたくさん見てみようよ。時間をかけて、ゆっくりとね。
「か、狩野…どうして…」
「いやだなぁ、三東さんが僕の敵だからに決まってるじゃないですか…」
「敵…どういうことだ」
右の肩を押さえ、脂汗がにじみ出る痛みをこらえて三東は訊いた。
「三東さんは、僕の右腕を奪ったから…。僕の未来を奪ったから…」
「右腕!? ち、違う! それはオレじゃない。お前をやったのは――うがぁッ!」
「敵、敵、敵なんだ。三東さんは、敵。返して、僕の右腕、返して。僕の野球を、返して」
「か、狩野…正気に還れ、オレはお前の、敵なんかじゃない…」
「嘘。そんなことを言って、今度は僕から何を奪うの?」
「くっ…狩野…」
「もう騙されない。もう僕から何も奪らせはしない」
狩野は三東の喉笛を突いた。
次に蹲ったその背中を刺し、そのまま腹を蹴り上げた。
三東は口を開いて何かを言おうとしたが、ひゅぅひゅぅという音が聞こえるだけでそれは言葉にならなかった。
ははは、これで敵は滅びるよ。
愉快だなぁ。
え? 敵は他にも居るの?
そっか、それじゃあまだ滅ぼしたわけじゃないんだね。
うん、わかった。じゃあこれを殺したら、次の敵を殺しに行こう。
きっと全部の敵を滅ぼしたら、僕の右腕も戻ってくると思うんだ。
あ、やっぱり君もそう思ってたんだ。
うん、きっとそうだよ。ぜったいに僕たちの右腕を取り返しにいこうね。
でも、もうちょっとこれで愉しんでから行こうよ。
ああ、愉快だなぁ。
…三時間後、三東は断末魔の叫びを上げることなく狂死した。
“三東洋・死亡 開始から17時間42分”
さんとー・・・
狩野が… びっくりしますた。
第三章
島の端にある砂浜を一人の男が走っている。吉野だった。
しかし様子がおかしい。
吉野は泣きそうな顔をしていた。
見ると吉野の後ろから誰かが追いかけてくる。
そいつは全身にガンベルトを付けガトリンクガンを持って吉野を追い掛け回していた。
「♪タイホー!タイホー!殺しがすっき〜フホフホフホホ!タイホー!タイホー!」
白雪姫のハイホーの替え歌を歌いながら銃を乱射する男
大豊泰昭だった。
大豊は逃げる吉野の背を狙い撃ちにし、吉野を蜂の巣にした。
「んふっ、んふふ。」
嬉しそうに吉野の死体を眺める大豊。
ガトリンクガンを下に置き、
背を向ける吉野の死体をひっくり返し、
苦悶の表情を浮かべる吉野を見て大豊は悦に浸っていた。
そして大豊は殺した相手の死体を撮影するという、あまりいいとは言えない趣味があった。
吉野をそのコレクションに加えるべくデジカメを取り出そうとしたそのときだった。
大豊の視界になにか透明で細い糸のようなものが映った。
「んぐっ!」
一瞬何が起こったのかわからなかったが、
どうやら後ろから誰かに釣り糸のようなもので首を絞められている様だ。
なんとかもがこうとするがものすごい怪力で首を絞められているため、
結局振りほどくことはできなかった。
ただ手足をジタバタさせるだけだったが、やがてそれさえもかなわなくなくなった。
「・・・」
大豊が死んだのを確認すると男は大豊が装備していたガトリンクガンを手にした。
そのころ野崎社長は社長室で、
愛人をはべらせながら腹心の藪から鳥谷死亡の報告を受けていた。
「フン。使えん奴じゃ。ゴールデンルーキーが聞いてあきれる」
「まあよい、他にも刺客は沢山送ってある。大豊辺りも順調にやっとるようじゃしな。藪、もう下がってよいぞ。」
「ハッ!では失礼します!」
「クックック。まずは阪神を乗っ取り、やがて私はプロ野球界全体を支配する。真の支配者はナベツネではなく、この私だ!フハハハハ!」
「ウッフ〜ン。ノザッキーステキ〜♥」
女にしては妙に野太い声で話す愛人。
「君もステキだよ。“光子”」
野崎の愛人はなんと、
女装した達川だった・・・
濃厚なディープキスを交わす二人。
・・・野崎はかなりきわどい趣味をしていた。
すると誰かがコンコンとドアをノックしている。
「なんじゃ?藪か?入れ」
しかしドアが開いた瞬間、野崎は驚愕する。
ドアからでてきたのは藪ではなく、壮絶な闘気と確かな殺意だった。
野崎の目に映ったもの、それは・・・
“野崎の嫁”だった。
野崎のバトルロワイアルが、今・・・“始まる。”
井川、桧山、金本、桟原の四人はジャングルの中でキャンプをしていた。
「ふあ〜よく寝たのう。みんなもはよ起きんか!」
金本が一番に起き他の面々を起こす。
「うーん。ねむいですねー」眠気眼をこする井川。
「あれ?金本さんそのバッグどうしたんですか?」
「ん?なんじゃ?」
見ると、後ろに黒い革のバッグがおいてある。
とりあえず開けてみる。
「・・・!これは!?」
中に入っていたのは、四丁の拳銃と弾薬だった。
「なんでこんなとこにこんなもんがあるんじゃ?」
四人はそれぞれ拳銃を手にしてみる。まだ使用されていない真新しい銃のようだ。
「誰かがここに置いていったみたいですね。でも何のために?」
訝しげな表情を浮かべる井川。
すると・・・
「あれ?こんなとこにフランス人形が落ちてますよ?」
桟原がフランス人形を発見し、手に取ろうとした。
だが井川は本能的にそれが危険だと悟った。
「触るな!!」
井川が怒号を挙げる。
「えっ?」
桟原がきょとんとした表情を浮かべたそのときだった。
ものすごい爆音と共に、人形が爆発したではないか!
桟原はとっさに身を引いた為怪我はなかった。しかし・・・
煙の中から人影が見える。
「ククク・・・流石にブービートラップに引っかかるほどアホやないみたいやなあ・・・。」
煙の向こうから話す陰の声は聞き覚えのある声だった。
やがて、煙が薄れ次第に姿が明らかになっていく。
それは迷彩服に身を包み、
ガンベルトを身に付け、両手でガトリンクガンを抱えた伊良部だった。
「伊良部!!これはどういうことや!お前も野崎の手下なんか!?」
桧山が伊良部を問い詰める。しかし
「野崎?何であんなジジイの言うこときかんとあかんねん?」
「じゃあ、何で・・・」
「オレは別に誰かに恨みがある訳やない。殺しや。ただ単に殺しを楽しみたいんや。」
190cmを超える大男は目の半分以上が白目という鋭い目つきで桧山をにらみつけながら
そう話した。
「それにしても大豊のオッサンを殺して獲ったこのガトリンクは、つかえるでえ。さっきもこれで、小宮山や田村を殺したった。命ごいする時のあいつ等の表情は最高やったなあ。」
そういいながら伊良部は笑った。しかし目が笑っていなかった。
「さあ、話はここまでや。お前らも死んでもらうでえ。」
そういいながら伊良部は銃口を四人に向けた。
そのときだった。
「クッ!!!」伊良部がひるんだ。
井川が伊良部の目に砂を投げたのだ。
「みんな!密林の奥へ!」
伊良部がひるんだ隙に、井川と桧山、は右へ、金本と桟原は左に二手に分かれた。
「なめおってえ!」
まるで赤くなったヒキガエルのような表情を浮かべ激怒した伊良部は
ガトリンクを乱射しながら密林の奥へ四人を追った。
密林の中にけたたましい銃撃音がこだまする。
伊良部のガトリンクガンに対し、木などに隠れながら
拳銃で応戦する井川と桧山。
しかし日米ハーフでアメリカ人の父を持つ伊良部は、
幼いころから密かに父から訓練を受けていた。
いわばプロだ。素人に簡単にやられるようなタマではない。
伊良部の打ったガトリンクガンの流れ弾が木に当たりまるで血液のように樹液が飛び散る。
桧山と井川はひとまず木の陰などに隠れた。
「なんや?お前ら?隠れたって無駄やぞ!この森にはたくさん罠がしかけとるんや!」
そういうと伊良部は周囲を徘徊し始める。
徐々に伊良部が迫ってくる恐怖に支配されそうになった、そのとき
カランカランと音がなる。
伊良部が仕掛けた鳴子だった。
「なんや。やっぱお前らブービートラップにひっかかるアホやったんやなあ。」
嬉しそうな顔で鳴子のある茂みに近づいていく伊良部。
「さあどこや?どこにおるんや?ん・・!!!!」
側の背の高い草むらに手を掛けようとしたそのとき
伊良部の首の後ろに稲妻が走った。
ドサッと音を立て、崩れ去った伊良部の首の後ろには一本の針が刺さっていた。
異変に気づいた井川と桧山が表に姿を現す。
そこで二人が見たものは地面に倒れふす伊良部の死体と、
そのすぐ側にたって二人を無言で見つめる和田コーチの姿だった。
続く
なんか三池崇史の映画みたいでウケる
テンポが良くて(・∀・)イイ!読みやすいしおもしろい、職人さんGJ!
和田コーチは味方なんだろうか・・・。
54 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/10 17:50:02 ID:A13/nlDi
up
55 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/10 18:26:51 ID:A13/nlDi
up
56 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/10 19:48:28 ID:I3H07pwj
/
職人さんGJ
野崎の嫁乙
バラエティ豊かだな、ホント…。
59 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/10 20:58:49 ID:w37PotmW
良スレだな。スレタイで分かる
60 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/10 21:23:35 ID:w37PotmW
up
61 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/10 22:27:42 ID:IDKjEyPM
野崎
あげ
63 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/11 00:24:27 ID:PgNc/3RJ
タイホー!タイホー!の歌が頭から離れん
バラバラで簡潔やけどおもろい
トラバト、死角はないな!(笑)
>>26 25.For what have you lived?
古ぼけた公園の、ブランコで揺れながら沖原佳典(背番号5)は
何故か動けずにいた。
俺は何のために生きてきたんだろう。
小さな頃から野球が好きだった。スターに憧れ、いつの日か野球
選手になる事を夢見ていた。
その夢は日増しに膨らみ、練習を重ね技を磨き、ついにドラフト
で指名され夢のプロの世界に足を踏み入れた。ある意味、野球の
ために生きて来た、と言える。
だがプロに入ってからは生きるために野球をしている、と言えた。
激しい競争を生き延びて。戦力外通告は決して人ごとではない。
(今と似てるじゃないか。)
激しい競争を生き延びて。殺し、殺されるという事は人ごとでは
ないのだ。
だが生きるために殺せと言われて殺す奴が何処にいるんだろう。
自分の手を血で染めてまで、そう今なら、チームメイトをこの手に
かけてまで、生きたいと思うだろうか。
だが。
朝の放送で既に4人、死んだ。
死因までは言わなかった。皆が皆自殺する訳がない。
生きるために殺した奴がいるのだ。
果たしてそれは責められるだろうか?
沖原にとって答えは否、である。
(だってもしかしたら、自分がそうなるかもしれない。)
なりたくはないけど。
「みんな何考えてんのかなぁ。」
きい、とブランコが軋む。後一時間ほどで昼の放送がある。
また誰か死んでしまったのだろうか。
ふと、公園を見渡す。小さな砂場、ジャングルジム、ブランコ、
滑り台。つい二日ほど前までは子供たちが遊んでいたのだろう。
だが今は殺人ゲームの舞台となっている。そう。非日常……
非現実感、とでもいうのだろうか。
「……公園にこんなんがあるから余計違和感があるんよなぁ。」
沖原の支給された武器はデザートイーグルだった。「砂漠の荒鷲」の
名を持つ強力な銃。この場に最もそぐわぬ部類のモノ。
デザートイーグルを見つめながら、沖原は生きたいとも死にたい
とも思わなかった。自分がどうしたいのか、沖原自身にも全く分か
らなくなっていた。
(だって生きるためには皆を殺さないと。)
少なくとも人を、仲間を殺すために今までやってきたんじゃない。
ただなんとなくぼんやりと銃を見詰めていたが、人の気配を感じて
顔を上げると、一人、立っていた。
「三東だ。」
「沖原さん。」
三東は頭から爪先まで、所々赤く染まっていた。
(あぁあれは血だ。)
「久しぶり。立ってないでこっち来たら?」
「……沖原さん怖くないんですか。」
「どうして。」
「人殺しかもしれない。」
「三東は怖い?」
三東の形の良い眉がひそめられた。
「俺だって人殺しかもしれないよ。」
右手にデザートイーグルを構える。
「……撃つんですか。あなたに、俺が撃てますか。」
三東の顔が残酷に歪む。どうしてか、怒りは感じなかった。
何故か哀れみすら感じた。
三東は、殺したんだろうか。あの、左手に持つノコギリで。
「試してみよか。」
沖原の指が引き金にかかる。
ぐ、と引く。三東は目を閉じて身を翻した。
「……ばーん。」
だが弾丸は飛び出す事はなかった。セーフティを下げてなかったのだ。
草むらに身を沈めていた三東が顔を上げる。
「セーフティ下げるん忘れてたわ。」
「沖原さん……。」
「……俺、さっきから何で生きてきたのか考えててん。なぁ三東。
お前何の為に生きてんの?教えて。」
「…………。」
三東は答えない。苦々しげに沖原を睨み、一気に走り去っていった。
沖原は、ただ何もせず眺めていた。端から殺そうとは思ってはいない。
いつもの三東なら、何と答えただろう。
三東の走り去って行った方向に視線を留めながら、沖原は誰に
言うでもなく呟いた。
「……行っちゃった。」
「そうですね。」
「!!!」
何故返事がある。
有り得ない声に振り返る。振り返った瞬間、何かが喉を貫いた。
ごり、ぐ、と体を嫌な音が駆け巡り、熱が一気に喉に集中する。
血が噴き出して視界が赤くなった。
「ぐ、…あ、…はっ。」
喉から伸びてるのは日本刀?
その日本刀の先にいるのはーー伊代野?
笑ってる。何で笑ってるんやろ。
もう死ぬというのに、伊代野の顔が赤く染まりながら尚笑っているのが
逆に滑稽だな、と思う自分が、沖原は何だか可笑しかった。
……そういや、まだ答え出してないな。俺、何のために生きてきたんやろ。
もう、いいか。
死んだら天国へ行くらしいから、そこで考えればいいか。
伊代野が日本刀を抜く。
赤く染まり事切れた沖原の体がぐらりと倒れて、血染めのブランコが
静かに揺れた。
【残り42人】
>68の続きです
26.タイムリミット
桟原将司(背番号40)は腕の時計を見た。12時まであと1時間を切った。急がなければ。
「頼みますから、行きましょう。ほんまに。後生ですから」
薄暗い洞窟の壁にもたれて座る牧野塁(背番号35)に懇願する。
「だから、何度も言ってるように俺はもう駄目だ。利き腕がこれではどうにもならん」
牧野は普段通りの柔和な表情で言う。彼は右の二の腕に重傷を負い、動かせなくなっていた。
昨日、三東に襲われている牧野を桟原が救ったのは体育館を出てほどなくしてのことだった。
牧野が座って荷物を確認していると、白鞘の短刀を手にした三東が突然斬りつけてきたという。
通りかかった桟原が木刀を振り上げながら駆け付けると、三東は牧野の武器だったノコギリを
持って逃げ去った。桟原は牧野の右腕に応急処置を施し、落ち着ける場所を探して
この森の中の洞窟を見つけたのだった。まさか今日ここが禁止エリアになるとも思わずに。
「これ以上、お前の足手まといにはなりたくないからな」
「足手まといなんて! 牧野さんがいてくれはるだけで俺、どんなに心強いか」
「怪我さえしなければな。でもこんな俺にかまっていたら、いずれお前までやられるぞ」
桟原は次第に焦り始めた。牧野の落ち着き払った様子に怒りすらおぼえてくる。
正午までにこのエリアから逃げなければ、首輪が爆発して死んでしまうのだ。
(あかん、どうしたら牧野さんを連れて行けるんや。こうなったら、最後の手段か――)
意を決して右手の木刀を両手で握り直した。その動きを見た牧野はふっと軽く笑った。
「それで俺をぶん殴って気絶でもさせて連れてくってのか? お前一人ならともかく
俺を引きずって逃げる時間は到底ないな」
桟原ははっとした。
「牧野さん、まさか、それでギリギリまで黙ってはったんですか?」
今朝、六甲おろしの大音量をものともせず眠りこけていた桟原は9時すぎに目を覚ました。
朝食を終え、今後について話していた10時半にようやく牧野は放送の内容を告げたのだ。
なぜ早く教えてくれなったのかと桟原は怒ったが、その理由が分かった。目の前の牧野は
微笑んでいるだけで答えないが、有無を言わさず自分だけを逃すためだったのだ。
桟原の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「すんません、ほんまにすんません。俺、ほんまにアホや。なんでちゃんと
起きとかへんかったんやろ。てゆうか、そもそもここを選ばんかったらよかった・・・」
「そんなこと気にするな。お前が来てくれなかったら俺はあそこで死んでいた。それより――」
今度は牧野が時計を見た。
「もう40分しかない。ぐずぐずしてるとお前も死ぬぞ。走ればまだ十分間に合う」
「俺…これから一人でなんて無理です」
「お前は大丈夫だ。新人なのに大活躍したじゃないか。それにこの状況であれだけ
寝てられるんだからな。けど、明日からはちゃんと起きられるようにしろよ」
牧野は冗談ぽく言うと、左手で自分のカバンを桟原の足元に放り出した。
「ほら、そいつはお前にやる。助けてくれて、ありがとうな。絶対に生きのびろよ」
しかし桟原は涙を流しながら立ち尽くしている。不意に牧野が声を荒げた。
「早く行け!」
その声にはじかれるように牧野のカバンを拾うと、桟原は涙をふいて一礼した。
「・・・ありがとうございます。俺・・・牧野さんのこと忘れません」
「ああ、俺も忘れないよ」
牧野はまた優しい笑顔に戻った。桟原はもう一度深々と頭を下げると、駆け出した。
一人になると牧野はがらんとした洞窟の天井を仰いだ。様々なことが頭の中を廻る。
タイガースに来て1年、古巣ブルーウェーブの合併問題が持ち上がった時は
その前に移籍した自分の幸運に感謝したが、こんなことになるとは想像もしなかった。
(まったく、分からないもんだな)
それにしても、この1年間いろいろなことがあった。起用法に不満がないではなかったが
まずまずの成績を残し、甲子園の大歓声の中でお立ち台に立つこともできた。
チームにもなじみ、若い投手たちからは兄のように慕われた。
その一人である三東が――と思うとやりきれない気持ちになった。無言で襲い掛かってきた
彼は明らかに尋常でない目をしていた。彼に対する恨みや憎しみはなく、この恐ろしい
ゲームに毒されてしまったのかと思うと牧野の胸は痛んだ。そして桟原。彼も自分に
懐いてくれた選手だった。なんとか生きのびてほしいと祈った。
時計を見ると、あと数分で12時だった。
(無事に脱出できただろうか)
牧野は静かに目を閉じた。
桟原は木の陰に座って呼吸を整えていた。ランニングが苦手な身には30分もの全力疾走は
目がくらみ心臓が破裂しそうだ。ようやく人心地がつき、自分が今いる位置を確認すると、
かろうじて禁止エリアを脱していた。ホッとして時計に目をやると、針は今しも12時を
指そうとしている。桟原は立ち上がって洞窟のある方向を振り仰いだ。
何も見えず何も聞こえなかった。涙だけがあふれてきた。
【残り41人】
職人さんたち、みんなまとめて乙です
リレーの分なんだけど
マエカー死亡時点
>>31で残り42人なので
沖田さん死亡
>>68で残り41人
牧野死亡
>>71で残り40人が正しいのでは
しかし、二日目朝から正午にかけてで12人も死んでるのか
うちの若手どもはやる気ありまくりだ
サジキ図太いよサジキ(ノ∀`)
牧野も死んじゃいましたか・・・
しかし職人さん達みんな心理描写(゚Д゚)ウマーですね。
職人さんGJです!
沖さん、牧野・・泣いた・・・・。・゚・(ノД`)・゚・。
hosyu
オッキー、たまらん・・・
77 :
924:04/11/11 23:17:26 ID:kqtsNLzW
>>69-71書いた者ですが、よく考えると禁止エリア広すぎますね・・・
実際は数百メートル四方くらいの設定なのかな
話が成り立たなくなりそうなのでこの章は無かったことにして頂いても結構です
すみません
取り下げが多発してややこしい事になってるバトロワスレもあるし、
所要時間と時間軸と、あとちょっと文章をいじればいいんでないの?
因みに原作バトロワだと大体1エリア212メートル四方前後っぽい。
すみません、26章(
>>69-71)書き直しました。大筋は同じです
>>68より
26.タイムリミット
桟原将司(背番号40)は洞窟の外に出た。眼前にはぽっかりと白い雲を
浮かべた抜けるような青い空と、同じように青い澄んだ海が広がる。
「ほんまにええ天気ですねー。隠れてるのがもったいないくらいや」
振り返り、内部の壁にもたれて座る牧野塁(背番号35)に話しかけた。
「けど、ここは安全みたいっすね。島の外れやし、だーれも来ぇへんし」
昨日、三東に襲われた牧野を桟原が救ったのは体育館を出てほどなくしての
ことだった。牧野が荷物を確認していると白鞘の短刀で突然斬りつけられた
という。通りかかった桟原が木刀を振り上げて駆けつけると、三東は牧野の
武器だったノコギリを持って逃げ去った。桟原は右の二の腕に重傷を
負った牧野を手当てし、落ち着ける場所を探してこの洞窟を見つけたのだった。
「サジ、ちょっとこっちに来てくれないか」
右腕をまったく動かせない牧野は左手だけで地図を広げつつ桟原を呼んだ。
「朝の放送なんだが、まだお前に言ってなかったことが1つあるんだ」
「はあ、なんですか?」
今朝、大音量の六甲颪をものともせず眠りこけていた桟原は9時過ぎに起きた。
牧野から放送の内容を教えてもらったが、直接には聞いていないのだ。
「実は俺たちが今いるA-5は正午から禁止エリアになる」
思いがけない言葉に桟原は飛び上がらんばかりに驚いて腕の時計を見た。
「正午って、あと15分やないですか! そんな大事なこと、なんでもっと早く」
牧野は慌てる桟原にかまわず地図を示しながら平然と話を続けた。
「いいか、A-5内でこの洞窟はここ、かなり北東寄りだな。北は海、東は断崖に
続くから海岸に沿って西へ逃げるしかない」
「ほ、ほな早よ逃げましょ! ここにおったら首輪が爆発するんでしょ!?」
桟原はカバンを肩にかけて立ち上がり、牧野の左手を引っ張った。
しかし牧野は動こうとせず、普段どおりの柔和な表情で言う。
「お前一人で行け。俺は利き腕がこれでは足手まといになるだけだからな」
「足手まといなんて! 牧野さんがいてくれはるだけで俺、どんなに心強いか」
「こんな怪我人にかまっていたらお前の身にまで危険が及ぶ」
「頼みますから、そんなこと言わんといて下さい! 一緒に来て下さい!」
埒のあかない押し問答が続く。桟原は焦りながらどうすれば牧野を
連れ出せるのか懸命に思案した。自分の木刀で気絶させて連れて行くことも
考えたが、いかんせん時間がなさすぎる。そう思ったとき、桟原はハッとした。
「牧野さん、まさか、それでこんなギリギリまで黙ってはったんですか?」
有無を言わさず自分だけを逃がすために――。牧野は穏やかに微笑んでいる
だけで何も答えない。桟原の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「すんません、ほんまにすんません。俺、ほんまアホや。なんでちゃんと
起きひんかったんやろ。てゆうか、こんなとこに来たのが間違いやった…」
桟原は泣きながら両手で自分の頭を何度も殴った。
「そんなことはない。お前がいなけりゃ俺はあの時死んでいた。それより――」
牧野は時計を見た。
「もう時間がない。ぐずぐずしてるとお前も死ぬぞ。走ればまだ余裕で間に合う」
「俺…これから一人でなんて無理です」
「お前は大丈夫だ。新人なのに大活躍したじゃないか。それにこの状況であれだけ
寝てられるんだからな。けど、明日からはちゃんと起きろよ。命に関わるぞ」
牧野は笑いながら言うと、自分のカバンを桟原の足元に放り出した。
「ほら、そいつはお前にやる。助けてくれて、ありがとな。絶対に生きのびろよ」
しかし桟原は涙を流したまま立ち尽くしている。不意に牧野が声を荒げた。
「早く行け!」
その声にはじかれるように牧野のカバンを拾うと、桟原は涙をふいて一礼した。
「…ありがとうございます。俺…牧野さんのこと絶対に忘れません」
「ああ、俺もお前のことは忘れないよ」
牧野は元の優しい笑顔に戻った。桟原はもう一度深々と頭を下げると、駆け出した。
桟原が去ると牧野はがらんとした洞窟の天井を仰いだ。タイガースに来て1年、
古巣ブルーウェーブの合併騒動が起こった時はその前に移籍した自分の
幸運に感謝したが、こんなことになるとは想像もしなかった。思わず苦笑する。
(まったく、分からないもんだな)
それにしても、この1年間いろいろなことがあった。起用に不満もあったが
まずまずの成績を残し、甲子園の大歓声の中でお立ち台に立つこともできた。
チームにもなじみ、特に若い投手たちからは兄のように慕われた。
その一人である三東の変貌を思い出すとやりきれない気持ちになる。
無言で襲いかかってきた彼は明らかに尋常でない目をしていた。
彼に対する恨みや怒りはなく、この恐ろしいゲームに毒されてしまったのかと
思うとただ胸が痛んだ。そして桟原。彼も自分によく懐いてくれた選手だった。
なんとか生きのびてほしいと祈る。時計を見ると、間もなく12時だった。
(無事に逃げられただろうか)
牧野は静かに目を閉じた。
桟原は岩陰で呼吸を整えていた。何度も岩場で転びそうになりながら必死で走り、
心臓は破裂しそうだった。ようやく人心地がついて今いる場所を確認すると、
既に禁止エリアを脱していた。ホッとして今度は時計に目をやると、針は今しも
12時を指そうとしている。桟原は立ち上がって洞窟のある方向を振り仰いだ。
何も見えず、何も聞こえなかった。涙だけがあふれてきた。
【残り40人】
age
職人の皆さんお疲れ様です。どの職人さんも丁寧な描写でイイ(・∀・)!!
楽しみにしてますので頑張って下さい。
>>40より
「ここが…そうなのか…」
とある薄暗い部屋の中で、藤川球児はひとりつぶやいた。
スイッチを入れ、部屋を明るく照らす。
一見すると、まるで狂科学者の研究室にも見える。
ここは、野村がサイボーグの制作を行った場所である。
緻密な暗号やパスワードを掻い潜って、ようやく藤川はここへたどり着いたのだった。
藤川は、その部屋をざっと見渡す。
すぐに“それ”を見つけた。
薄緑色の液体で満たされた透明のカプセル。
その中には、野村が最新技術を駆使して制作した殺人機械の最後のひとつが入っていた。
生前の野村が自慢げに語ったのを聞くと、あのランディ・バースをも超える最強の戦士だったそうだ。
だがそれも、完成していれば、の話だ。
結局、野村はこれを創り上げることなく死亡した。
こんなものが完成せずに済んで、本当に良かったと思ってる。
(…見たところ気配は感じない。やはり気のせいだったか……?)
先ほど、藤川は未完成のはずの実験体から大きな力を感じた。
急いでここを訪れたが、どうやら徒労だったようだ。
「だが…」
藤川は日本刀の鞘を走らせる。
「念には念を入れよう」
その刃を、かの無機物へと向ける。
人工的に、強制的に造られた複製人間。
お前も死ねば、黄泉路を逝くのか?
それを考えると、すこし空しくなった。
「オレもお前も、所詮は強者の手の中で走り回る駒に過ぎんワケだ。こうして考えてみれば、お互い哀れな存在だな」
黙して動かない、その失敗作(おちこぼれ)に語りかける。
「案ずるな。ここでは人はたくさん死ぬ。お前が比良坂の道を寂しむことはないだろう…」
心の中で小さく“悪いな”とだけ言って、藤川は柄を握り締める。
「ヤァッ!!」
気合いのこもった叫び声と共に、その名刀を振り下ろす。
しかし藤川の意思と関係ないところで、その一太刀は実験体を両断する寸前で動きを止めた。
(……!)
先ほどまで、カプセルの中で頭を垂れていたその実験体が、ゆっくりと顔を上げたのだ。
その二つの眼はきっちりと開かれていて、ほんの一瞬だけ藤川と視線が交差する。
「お前は……! 何故…?」
藤川は刀を構えたまま、口だけ動かしてそう言った。
実験体は答えない。
自分の行く手を阻む透明のガラスを破壊し、まるで藤川など視界に映っていないとでも言いたげにその脇を通り過ぎた。
藤川は、微動だにしない。
やがて、その男の気配が完全に失せると、藤川はまるで糸の切れた人形のようにその場にへたれこんだ。
(す、すごい殺気だった…。もし一歩でも動いたら、きっとオレは消されていた…)
オレの勘はハズれちゃいなかった。
間違いなく、ヤツを放置しておくのは危険だ。
早めに手を打たなければ…。
すぐに監督のところへ行こう。このことを報告しなければ…
(しかし、あの実験体…
良く似ていた…あのお方に――)
《生命反応がなくなりました、ただちに爆破します》
「ほな、さいなら」
お決まりのアナウンスが聞こえると、今岡はさっさとその場を離れた。
関本の死による爆風を背に受け、次なる目標を探していた今岡は、ひとりのタテジマを見つけた。
背番号は44。関本健太郎の番号だ。
(関本…?)
いいや、そんなはずはない。
関本ならたった今、この手で殺したばかりだ。
なら、あの男は何者だ。
影武者の類か。
「おもろいやん…」
その頬に、挑戦的な笑みを浮かべる。
「オレがこの眼で確かめたる!」
今岡は、その背を追って駆け出した。
――彼にとって、誰かの死は次の戦の始まりに過ぎないのだろうか。
リレーのほうのまとめサイトはないの??
>89
??フツーにリレーも収録してくれてると思うが…
92 :
代打名無し@合併反対:04/11/14 16:25:51 ID:70ZOy4nz
age
リレー、まだ2日目の昼なのに1/4以上が死んでしまいましたか・・・
ちょうどいいんじゃないか?
第四章
「和田さん!なんでこんなとこにおるんですか?」
桧山がそうきくのも無理は無い。
和田や一部のコーチ陣は今回のキャンプには遅れてくるはずだったからだ。
桧山が小走りに和田に近寄る。
和田コーチは無言のままだ。
「和田さん・・・?」
やがて和田コーチが重い口を開く。
「二ヶ月前、オレやオマリーは野崎社長の不穏な動きを探知した。
今回のキャンプで何か企んでいるだろうとな。
つい最近も1リーグ制の動きを阻止するため、
あのナベツネとすら戦った切れ者だ。
何かとんでもないことをしでかすかも知れないと思っていたが、
まさかこんなことになるとは」
「・・・・・・」
周囲に思い沈黙が流れる。
「こういう状況になれば人は変わる。鳥谷のようにたまっていた不満が爆発し暴走する者、この伊良部のように殺人に快感を覚える者。野崎は人間のそういう脆さに付け込み、
この馬鹿げた殺し合いをさせ何人もの将来ある若者たちを殺した。
そんな野崎をオレは絶対許さない。」
そう静かに話す和田コーチだが、
その胸に並々ならぬ怒りをひめているであろうことは
誰の目にも明らかだった。
「野崎はこういった選手たちとは別に大豊やフィルダーなどの刺客を送り込んでいる。
いつどんな奴がおそってくるか分からない。
だからみんなに拳銃を渡した。ぜひ役立ててくれ。
オレはこれからも単独で行動を続ける。お前たちも気をつけてくれ。じゃあな。」
そういうと和田コーチはジャングルの中に消えようとした。
「和田さん!」
井川によびとめられ和田コーチが振り向く。
「必ず生きて再会しましょう!」
和田コーチはフッとつぶやき少しキザな感じで笑った。
「もちろんだ!」
そういった後、和田コーチは歩みを再開し密林のおくへ消えていった。
和田コーチとのつかの間の再会だった。
一方、金本と桟原は伊良部の襲撃以降、完全に井川たちから離れてしまった。
密林のなかを歩けど歩けど、井川達は見当たらなかった。
「金本さん、井川さん達みあたりませんね・・・僕もう疲れたんですけど・・・」
桟原はかなり疲労がたまってきたようだ。
だがそんな桟原に金本は渇を入れる。
「馬鹿もん!鍛え方がたらんのじゃ!筋肉をつけられい!」
「そんな・・・筋肉だけでどうにかなるもんじゃないですよ・・・」
半泣きで答える桟原に金本はため息混じりで話した。
「全く・・・なさけない奴じゃのう。ん?」
「どうしたんです?金本さん?」
98 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/15 15:41:04 ID:LdqvYioK
「しっ!静かにせい!何か聞こえんか?・・・」
たしかに何かが聞こえる。だが何だ?何の音だ?
・・ャ・・・!・・・ギャ・・
・・・ギャー!
「ひっ、悲鳴じゃ!あっちの方向じゃ!急げ!」
金本は悲鳴のした方向にものスピードで駆け抜ける。桟原もドタバタとその後を追った。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ〜金本さん〜」
金本がむかった先にあったものは、旧日本軍が使用していた大型の廃病院だった。
しかし壁には甲子園のように濃い緑色をしたツタが纏わりつき、
窓はガラスが全て割れていた
そして長い間雨ざらしにされた影響だろうか
ツタの隙間から見える外壁や入り口の扉は錆付き建物はかなり傷んでいるようで
まるで何というか典型的な幽霊屋敷とでもいうのだろうか
しかし誰に対してもそういった類の印象を与えそうな建物だった。
ゆっくりと慎重に金本が扉を開ける。錆付いたドアは重く、
開いた瞬間ギィィィと音を立てた。薄暗い部屋の中に開いたドアの向こうから光が差す。
その光が照らした部屋の奥にあったものを見て
二人は鈍器で殴られたような衝撃を受ける。
そこにあったものは
血まみれのムッシュ吉田の姿だった。
「吉田はん!どないしたんですか!?」
金本の呼びかけ気付いた虫の息のムッシュが金本のほうに首を動かした。
「おお・・・」
額から血が滴り落ちるムッシュは少し安堵の表情を浮かべた。
「キヨ・・・」
「は?」
「阪神に来てくれ・・・お前の力が必要なんや・・・」
「・・・」
よくわからないが、金本を清原と勘違いしているらしい。
「・・・縦縞を横縞にかえてもいい・・・」
そう話すムッシュの顔はとても満足そうだった。
だが、そういった後、ムッシュはもう何も話さなくなった。
「意味分からんのじゃが・・・なんでワシがキヨさんなんじゃ!」
「・・・あの金本さん。」
その様子を今まで黙ってみていた桟原が口を開いた。
「あの・・・金本さんの両手・・・」
「ん・・・ハッ!!!」
なんと金本の両手はムッシュの首を絞めていたのだ。
二人の間にある意味おみ沈黙が流れる。
「・・・ハハハ。まあどの道死んどったんじゃし、まあ気にすんな!ハハハ・・・」
しかし、あわててごまかす金本に対して桟原は沈黙を続けるだけでなく、
顔が青ざめて小刻みに震えている。
「・・・」
「何じゃ!桟原。そんなにひかんでもいいじゃろ!」
「いや・・・金本さん後ろ・・・」
桟原は金本の後ろを震える指で指していた。
「ん?・・・うおっ!!!」
後ろを振り向いた金本はまた目を疑った。
そこには、数人の死体が横たわっていたからだ。
それは筒井、中村豊、藤川の死体だった。
傷跡から見て、全員刃物の様なもので切り殺されたような感じだった。
とそのときだった。サイレンサーを付けているような小さな銃声が鳴った。
それと同時に桟原がひざをついて倒れたのだ
「桟原!!!どうしたんじゃ!」
金本が桟原の元へ駆け寄る。だが
桟敷原はポカンと口を開けてマネキンのように硬直している。
その弾丸は桟原の心臓を貫いていたのだ。即死だった。
桟原は悲鳴をあげる暇もなく死んだのだった。
「グフフフ・・・金本の声がするちゅうことは桟原が死んだんか。」
なんとも形容しがたい笑い方だった。
そしてそれは闇の向こうから近づいてきて、
入り口から指す光にてらされて徐々に姿が明らかになった。
下腹部に背番号80が刺繍された漆黒のジャージに身を包んでおり
右手にはまだ硝煙がでているサイレンサー付の拳銃をもっているその男は
まるで趣味の悪いオブジェのような容姿をしており
阪神タイガースの暗黒の18年を象徴するような負のオーラを身に纏っていた。
そう、阪神タイガース第30代監督
“岡田彰布”である。
「岡田監督!生きとったんですか!?」
金本がそう思うのも無理は無い。
岡田の乗っていた一号機はタラスコに打ち落とされていたのだから。
「最初から野崎の企みなどお見通しよ。死んだのはワシの影武者よ。
グフフフ・・・それにしても野崎め、あんな奴に野球界は支配させんよ。
なんでって・・・お前、真の支配者はワシやからないの。
これこそ、どんでん返しというものよ。わがまま? そりゃあ、当然そうよ。」
勝ち誇ったように多分岡田なりに笑っているらしい表情を浮かべる。
しかし・・・何か不気味だ。
「さて、阪神を支配するためにお前らには死んでもらうで。
もうタイムリミットや。何十回と言ってることよ。」
そういうと岡田は銃口を金本のほうへ向けた。
その構えに隙は無い。なんとも岡田らしくないが・・・
――――絶体絶命だ。
――――絶体絶命だ。
だが金本がそう思ったとき、
岡田のポケットから何か音楽のようなものが鳴った。
岡田の携帯がなっているようだ。ちなみに着メロは“槇原敬之”だった。
・・・なんとも岡田らしい着メロだ。
不機嫌そうな顔をしながらも電話に出る岡田。
「攻撃中やから分からん!・・・えっ、ああ、すんません。
えっ、殺すな?しかし・・・はあ・・・期待してもらって結構です。」
なんだか電話の向こうで誰かに怒られているようだ。
しかも何故か電話なのに
頭を下げてぺこぺこしている。
そんな会話が2,3分続いた後、岡田は携帯を切った。
「何か(考えが)浅いな。・・・」
よく分からないことを言う岡田。
やがて金本に話し出した。
「・・・今日は見逃したるわ。ちょっとだけよ。」
突然そういうと岡田はどすどすと音を立て中年太りの体を揺らしながら
暗闇の奥にきえていった。
このバトルロワイアルには、野崎だけでなく、
様々な陰謀がうごめいている。
そして今、また新たに陰謀を持つもの・・・
岡田彰布が暗躍を始めたのだった。
続く
リアルタイムでみれた
乙です
あいかわらずおもろいな、バトロワなのにw
age
781氏乙です
こっちはまたもの凄い勢いで人が死んでますなw
ムッシュの清原ネタに声出して笑ってしまった
しかし和田さんはどうやらまともらしくて一安心
781氏GJ!!
毎回おもしろいバトロワ乙です!
岡田のキャラに笑ったよw
乙です。
781さんのネタ、いやお話がもうすっごく楽しみなんですが…
どんでん返しワロタ
donden・・・
攻撃中だからわからん・・・ワロタw
>>81 27.偶然じゃない
井川は濡れた手をぞんざいに振って水滴を落とした。米と水を鍋に流し込んで
火に掛けた後、その手をぶらぶらさせ、結局ズボンの尻で適当に拭っておく。
(……うっせー、っつの)
耳をごんごんと穿つメロディが果てしなく鬱陶しかったが、終わるまでの辛抱だと
ひたすら手を動かす。嫌な気分の時は何かしていた方が気は楽だ。
六甲颪がこんなに忌まわしく聴こえる日が来るなんて、誰が想像しただろう?
『えー、みんな頑張っとるか?監督の岡田や』
どこか楽しげにすら聞こえるその声音が、今は憎い。
勝った時、完封した時、ノーヒットノーランを達成した時、自分を迎えてくれた
あの笑顔はニセモノだったのか?
『お前を信じる』と、背中を叩いてマウンドへ送り出してくれたあの時の手は?
試合の前に選手を激励した言葉は?ミーティングの時の真剣な表情は?
―――怨み言を言っても詮無い事だろう。ただ悔しくて腹ただしい。それだけだ。
『正午の定時放送や。連絡もあるさかいによう聞いといてくれ。まず7時から12時の
間に死んだんは、5番沖原佳典、19番筒井和也、25番前川勝彦、27番野口寿浩、
36番中林佑輔、42番下柳剛、47番佐久本昌広、48番石毛博史、68番萱島大介、
69番松下圭太、92番藤川球児の11名。……あ、ちゃう、12時ちょうどに牧野が
死んどる。35番牧野塁が追加で12名や。ペースも上がって来とってええことよ』
監督はいたく上機嫌でいらっしゃるらしい。
(クソッ―――)
読み上げられた死亡者名の羅列の中に、何の違和感もなく収まっている
ある人物の名前。思わずペンを握る手に力を込めると、名簿のその名前の上で
微かに震えたペン先ががりっと紙を抉った。
どうしようもない。時間は巻き戻らないし、あの人に会えなかったのは運命だ。
それでも、色々としぶといあの人だから、まだ会うチャンスはあると思っていた。
どうしてくれんだよ。言いたい事、沢山あったのに。
選手名簿に印をつけながら舌打ちをする。怒りが治まらない。嬉々として死者の
名前を読み上げる岡田にも、名簿に並ぶ見慣れた名前に淡々と『死んだ』線を
引いていく自分にも。これはまるで予定調和のような光景ではないか。
悲しみが閾値を越えたのか何なのか、とにかく今の自分はあの人が、そして
沢山の仲間が死んだ事に対して涙が出ない。一方でそれが申し訳ないような、
後ろめたいような、そんな気分にもなる。それに違和感を感じる。
『泣く』というのはカタルシスだ。自浄作用に過ぎない。だから泣いても仕方が
ない。泣いて物事がどうにかなるわけじゃない。―――ずっとそう割り切って
いたはずの自分が、今、酷く泣きたいような衝動に駆られている。涙なんて
出やしないのに。身体中のどこを逆さにして振ったって、涙なんて簡単には
出て来ない自分なのに。
―――きっと、彼が泣くのを見たせいだ。
彼が、あんな顔で、あんな子供みたいな顔で泣くからだ。
顔を上げるとその彼がいる。怒りではなく、悲しみを感じているらしい彼がいる。
ぽかりと目を開けたまま転がっていて何を考えているのかよく解らなかった。
彼と現選手会長は『何考えてるか解らん奴』の両頭だ。前々監督がことある
ごとにそれをぼやいていたのだが、井川にとっては寧ろその前々監督の方が
何を考えているのか解らない事が多かったような気がする。―――余談だが、
チームメイト曰く『わけ解らん奴』ランキングで二人の次にくるのは井川だそうだ。
井川本人にはすこぶる納得の行かない話である。
『えーと、それでや。朝の放送で禁止エリアの話したけど、平田が一日二つやと
少なすぎる言うてな。ちょっと変更するからメモしといてくれ』
緊張感なく重要事項を告げる声にせっつかれ、地図を引き寄せた。五角形を
斜めにぐにゃりと潰したような島が描かれている。北端がA-5とA-9、南端が
J-3あたりか。さして広くはないが、森や山があるために移動は容易でない。
『えーと、正午からA-5ってのは言うたな?そんで、午後3時からF-2、6時から
G-7、9時からI-2。エリアが百個あんのに一日二つやと全然意味あれへんしな』
マイクの向こうで、そうですねーとか、そのくらいでちょうどええんとちゃいます?
とか、誰かが合いの手を入れているらしい。全くご苦労様な事だ。
井川は藪に視線を送り、次いでそれを手元に落とした。
一本52円の安ボールペンに、皺になった地図。シェードの汚れた薄暗い電灯と
窓から差す光に照らされた傾いたテーブル。線で消された名前。埃っぽい匂い。
左利きの自分と、左手の指を失くした男。
どこかノスタルジックなような、それでいて作りものじみた光景だと思う。
『お前らな、ただ逃げ回ってるだけではアカン。自分から動いて攻撃せななぁ。
何回も言うてる事よ』
(アンタは、一年間俺たちを引っ張ってきたんだろ……?)
どの口でそんな事を言うのかと憤る井川にお構いなく、じゃあ頑張るように、と
適当に締めくくって放送は六甲颪に切り替わった。このふざけたスタイルを
崩すつもりはないらしい。悪趣味ここに極まれりというところか。
(F-2、G-7、I-2―――全部で、三つ)
今いるのはD-9。どのエリアからも離れている。急ぐ必要はない。急いては事を
仕損じる、どころかこのゲームでは命の危険に直結する事になりそうだ。
卓上に両肘をついて地図を眺める井川のつむじに、唐突に藪の声が刺さった。
「―――なぁ、井川」
「……何スか?」
「……」
「藪さん?」
呼びかけたっきり沈黙したのを不審に思って近くへ寄る。枕元から覗き込むと、
熱のせいで浅黒い顔が更に不健康な色を帯び、目がぼうっと潤んでいた。
逡巡しているのか単に熱のせいで鈍くなっているのか、暫くの間沈黙したまま、
乾いた唇を半開きにしてぱちぱちと瞬きをしている。
(あーもう。黙るんなら最初っから言わない方がいいっぺ、藪さん)
「―――何で、こんな事になったんだと思う?」
井川の心の声が聞こえたのか、ややあってから藪は口を開いた。
「ずっと考えてたんだ。どうして、監督はオレたちにこんな事させるんだと思う?」
「藪さんはどう思うんスか」
「……質問に質問で返すなよなー」
唇を尖らせ、しれッとした目でセコいぞいがわーとぼやく藪。
この人は自分より十も年上なのにこの子供っぽさは一体何なんだ、全く。
(まぁ、元に戻ったって事かも)
どこか悲しげなままだが、口先だけでも元に戻るほどには落ち着いたのだろうと
都合良く解釈しておく。いい傾向だ。またぞろ自虐モードに入られては堪らない。
「井川は、何も考えなかった?」
「いや……実は俺も凄く気になってて」
よっこいせ、とじじむさく呟きながら椅子に掛ける。布団にぽいと投げ出された
ぐるぐる巻きの彼の手を視界に入れまいとしながら、背もたれに腕と顎を乗せた。
「めっちゃ思いましたよ。何で、こんな面倒な事させるんだって」
「―――殺人は犯罪。殺人教唆も殺人罪の刑になる。あと強要罪に脅迫罪、
オレたちに支給する武器の調達プロセスで銃刀法……ああ、結構一杯あるな。
とにかく監督たちのやってる事は明らかに犯罪だ。考えなくても解る」
そう、初歩的な事だよ、ワトソン君。藪は無事な方の右手でこめかみを押さえ、
軽く唇を舐めて続ける。
「他にもあるかもな。オレも大学の般教生噛り知識だし細かくは解んないけど」
「爆弾とかなら爆発物ナントカ罰則もありますよね。かなり罪重いやつ」
「……お、ちょっとだけマイナーな知識持ち出してくんのな」
コナン知識か、それ。藪が問うてくるのにニッと笑い、そういう事にしときますと
適当に誤魔化しておく。本当は土ワイ知識なんだけど。
「格好つかんとか何とか言ってましたけど、殺し合いゲームなんてめちゃくちゃ
メンドくないっスか?解散なら非難は凄いだろうけど、多分罪になんないし」
「そうそう。仮にこの事が公になったとしたら、この殺し合いをオレたちに強要した
監督たちは刑法上もアウトだろうし、社会的にも当然アウト。でも最後に
生き残った一人は緊急避難、正当防衛、過剰防衛、心神喪失に耗弱……
何でもいいけど刑の減免可能性があるんじゃないかな。少なくとも監督たち
よりかは情状酌量の余地がありそうな感じだし。―――んで、口止めされた
そいつが、良心の呵責から社会的地位を失う覚悟で洗いざらい喋れば?」
少し首を傾げて見上げてくる藪に、『お手上げ』のゼスチュアで一言。
「ジ・エンドっしょ」
「だよな」
長いセリフで疲れたのか、彼はふうと息を吐き出した。額に薄く汗が浮いている
のを濡れたタオルで拭ってやると、サンキュな、と言ってちょっと笑う。
「そいつが喋んなかったとしても、『後始末』が大変だぞ。死因バリエーション
豊富な55人分の死体―――お前なら、どうやって合法的に死んだ事にする?」
「一人だけ生き残るなんてどう考えても怪しいスね。最後に生き残った人も
後で殺しちゃうってのもありえますけど」
こつこつと椅子の背を指で叩き、井川。
「例えば死体を全部飛行機か何かに積んで、それごと墜落させるとか。でも今の
科学捜査技術は凄く発達してるらしいし、そんなんで誤魔化せるもんスかね」
「解剖されたらバレそうだよなぁ……いっそ孤島で遭難して、食糧の奪い合いで
ホントに殺し合いをしたって事にした方がまだマシかも。でもそうなると
監督とかコーチは何してたんだって話になるか」
えげつない会話だが、藪という人はそういうところに割と無頓着な面がある。
差し支えなく遣り取りが進行しているのは井川自身もそうであるためだ。
「これがバレたら親会社はおろか、球界全体が間違いなくとんでもない事になる。
わざわざそんなリスクを犯してまで、このゲームをやる理由は?」
「……思いつかねっぺ」
考えれば考えるほど、不可解な事項が箇条書きになって頭の中に溢れ出し、
モヤモヤとした不快感が溜まっていくばかりだ。嘆息して井川は頭を掻く。
藪の疑問はもっともだ。法治国家ニッポン、こんな馬鹿げた事をやる必要が
どこにある?
「そこに、何かポイントがある気がするんだよなあ……」
「ポイント?」
「そう、ポイント」
「―――このゲームをどうにかしてやめさせる、ポイントっスか?」
我が意を得たり、というように藪は上目遣いに井川を見つめてきた。元エースと
現エース、どうやら変わり者同士で気が合うらしい。
「井川はどうなんだ?」
「そりゃ……そりゃ黙ってあっちの思い通りに殺されるなんて、冗談じゃないっぺ」
「だと思った」
はは、と藪は笑う。いつものようなハッタリをかますような笑い方ではなく、酷く
疲れたような力のない笑い方だ。口が達者なままである事はよく解ったが、
やはりメンタルでもフィジカルでもダメージは依然残っているらしい。
「今年あった色んな事を考えるとさ……この殺し合いも、本社の古狸連中の
単なる思いつきなんかじゃなさそうな気がするよ。近鉄とオリックスの
合併問題であれだけ紛糾したんだ。今、こんな馬鹿な事やらかすからには
……それなりの理由があるはずだと思わない?」
「プロ野球の再編は、まだ終わってないって事っスか」
まだそこまで断定は出来ないけど。井川の言葉にこくりと頷き、藪は言った。
きっと偶然なんかじゃない。偶然や気まぐれで仲間が殺されたり、殺したり、
目の前で死なれたり。そんなの冗談じゃない。
「―――オレはもう、誰かが死ぬのは、嫌なんだ」
ぽろりとこぼれた、疲れきった言葉と磨り減った笑み。
変わらないように見えて彼の内部は激変していた。何か、とても大切なものを
破壊されてしまったのだ。その事に井川はわけもなく不安を覚える。彼が今
ここで死んでしまうような錯覚を覚える。何考えてるんだ。さっき助けたばっかり
じゃないか。第一、タダで死ぬような人じゃないのは自分がよく知っているだろ?
(でも、シモさんは死んだ)
死に顔も、死に方も、いつ死んだのかも知らない。それでも下柳は死んだ。
それは本当だろうが実感は湧かない。真実はいつも一つだそうだが、これは
いかにもインチキくさい死だ。ゲームのキャラクターのように、リセットすれば
元通りになってしまうような感覚を惹起する恐るべき『軽さ』がそこにはある。
(シモさん、俺に黙って死んじゃったんだな)
人間、いつかは死ぬ。それがいつになるかは神のみぞ知るというやつだが、
今回に限ってはそうではないのではないだろうか?得体の知れない魔物が
自分たちを殺そうと、爪をとぎ目を光らせ手ぐすね引いて待ち構えている。
このゲームにはセオリーがあるのだ。生き延びるのは偶然だが、死ぬ方には
番狂わせが生じにくい。死ぬべくして死ぬ。そこには正当な理由も理に適った
要件もないのに。
(―――藪さんも、死ぬ?今、俺の目の前で笑ってるのに?)
胸の内で反芻したあやふやな死のイメージに、少し、寒くなった。
【残り40人】
119 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/16 10:25:02 ID:14XIx42D
age
>>113−118
542氏、いつもお疲れさまです
丁寧な描写でイイ(・∀・)!!
御大・・イガー・・゚・(つД`)・゚・
542氏乙です
ゲームの背景も徐々に明かされるのかな?楽しみです
島の具体的な形が出てきましたが、地図がいりそうですね
さっと読んだところ、東の端は崖(6)、体育館の南北に山(7)
体育館から西に行くと建物がある(9)
体育館の東方は山でしばらく行くと民家が数軒(10)
A-5に牧野と桟原のいた洞窟。付近の海辺は岩場(26)
D-9に藪と井川の潜む民家がある(27)
その他に砂浜(13)、草原(14)、公園(25)などがある、などなど
体育館の場所は不明だけど島の真ん中のようですね
542氏GJです!
あの人、ってやっぱり下さんだったんだなイガー・・・涙が止まらん・・・。
542氏の描写を元にマップ作ってみました
http://49uper.com:8080/html/img-s/23087.gif 青字は作中ではっきりと場所が確定できた人物
黒字はおおまかな場所(東側、西側など)が示された人物
どれも最終登場時点での場所です
出発地点の体育館はとりあえず中央あたりに配置しておきました
赤は禁止エリア、黄色は禁止エリア予定地です
おそらく924氏は区画を5×5で考えてたようで
542氏は原作と同じ10×10で設定しているのでA-5の位置に若干矛盾点が
924氏さえよければ、26章の「かなり北東寄りだな」の部分を
「かなり北寄りだな」に修正してもらえれば問題ないと思います
地図の縮尺を原作の設定と同じと仮定すると
甲子園を中心にして東西が今津駅〜武庫川女子大
南北が2号線〜甲子園浜ぐらいまでの大きさの島だと思われます
なにかおかしい部分があれば指摘お願いします
これがあってかえってやりにくくなるようならスルーして下さい
age
125 :
924:04/11/16 23:07:00 ID:gFhdphej
>>123 GJです!こうして見ると位置関係がはっきりしますね
甲子園周辺のたとえも分かりやすいです
自分は仰るとおり5×5で考えてしまっていました
939氏の所に10×10の図があることに気付かず_| ̄|○
保管庫さんに修正をお願いしようと思います
ご指摘、ありがとうございました
126 :
542:04/11/16 23:31:21 ID:XkbTowVa
>>123 お疲れ様です。自分も大体こういう形を想定していました。
他の職人さんたちに確認を取らず、自分が勝手に設定を作ってしまったのが
おこがましいような気もするのですが……
職人さん乙です
>>121で挙げられている様な位置を大体でも
推定できれば、と考えていますが・・・
それとも話が進んで解明されていくのにまかせる
方が良いでしょうか?
128 :
514:04/11/17 17:54:07 ID:ItrHm6vg
>>123 お疲れ様です!例えもわかりやすくてとても見やすいです。
自分もこんな感じだろうと想像していたので、作成していただき
明確化しました。本当にありがとうございます。
>>542氏
いえいえ、設定を作って頂きありがとうございます。
話に生かさせて頂きます。
自分もちゃんと書かないと_| ̄|○
age
職人さん方、いつも乙です
5作品同時進行だけどそれぞれ特色があっておもしろい
このスレに直接書かれているわけではないけれど
元・保管庫さんの若虎紅白戦もいいですね
>>118 28.さらば友よ
「お前は気が弱いんだよ。」
春先、冗談めいて言った言葉に、筒井はただ曖昧に「そうだな。」と言っただけ
だった。
それから約半年。筒井が一軍のマウンドに立っていた。後ろには、自分がいる。
ついにここまでやってきた。
試合終了後、6回3分の1を投げて無事初勝利を上げた筒井に近づき声をかけて
やる。
「初勝利おめでとう。」
「おう、ありがとう。」
少し誇らしげに笑ったその顔は、半年前とは違って自信が表れていた。
「俺、やっとスタートラインに立てた気がするよ。」
「そうか。頑張ろうな。」
ローテーションに入った筒井が投げて俺は遊撃を守る。いつか、そう遠くない未
来に当たり前になる筈だった光景。
どうして、何で、こんな−−
そこまで思い出して、自分が涙ぐんでいる事に鳥谷は気付いた。気がつけば桧山
と矢野は同じ部屋にはいない。察してか、鳥谷を一人にしてくれたのだろう。
(矢野さんも桧山さんも辛い筈なのに)
定時放送が流れた時は、鳥谷はゲームが始まって以来眠っていなかったので眠り
こけていて、起きたら矢野がひどく沈痛な面持ちで放送内容を告げた。禁止エリ
アと、死者の名前。あまりにも多い死者は、改めて狂った現実を鳥谷に知らしめ
た。どうにも堪え切れず目を閉じ壁に凭れてぎり、と歯を食いしばる。行き場のな
い怒りはさ迷い何処へも行けない。分かっている。ゲームの主催者に怒りをぶつけ
ても死んだ16人は帰ってきやしない。
始めは、自分は殺す気だった。最後に生き残るために、自分に害を与えてくる人
間は、殺す気だった。だが、いざ自分が『残された』側の人間になった今、こんなに
も悲しく辛い。
そう、例えば矢野を殺したら。
彼の家族は勿論、彼を慕う投手陣も今の自分と同じ気持ちになるのだろう。それ
を分かった上の今の自分に人が殺せるだろうか。
「俺はまだ狂ってないんだな。」
このおかしな世界で、まだそんな事を考えられる自分はまだ正常なのかもしれな
い。
(待てよ、正常って何だ。)
いや違う。自分はもう狂っているのかもしれない。人を殺していないから正常、
というレベルの世界ではないのだ。では狂うとはどういう事なのか。
殺すことを躊躇う事はおかしなことだとでもいうのか。正常な判断をしている
つもりでも、もうそれは毒された結果の思考なのかもしれない。
「っ、畜生。」
どうにも煮詰まって近くにあった古ぼけたカセットデッキの再生ボタンを、何気
なく押す。音が掠れつつ流れてきたのは、クラシックの代表曲とも言えよう『G
線上のアリア』。ループしかけた思考が止まる。バイオリンの旋律が、傷ついた
こころに染み渡る。去り逝く友に、先輩に、仲間に、これが聞こえていればいい
と鳥谷は思った。
「なあ筒井、聞こえるか。」
窓の外は、深い空に静かに雲が流れている。新人合同トレの時の休憩に、新人皆
で見上げたあの鳴尾浜の空に通じる空だ。
もう一度あの時に戻れたなら。夢のような未来を描いていたあの瞬間は、もう二
度とやって来ない。死んだ人間はいつか忘れ去られるというけれど、自分は絶対
に忘れはしないと鳥谷は誓った。
「俺は−俺達は生きる。」
静かな覚悟を秘めて、鳥谷は底から立ち上がった。生きるため、まずは何か食べ
なければ。力がないと、何も出来ない。
「矢野さん、昼飯まだありますか?」
生きるために必要なことを、今は一つずつしていかなければならない。そう、最
後まで悔いが残らないように。
【残り40人】
鳥谷ええ子やなぁ
age
鳥エエ子や、ほんま。
トラバトの中では、まだマシなグループに入れてる様だし。
第七章・神様、仏様、岡田様
(殺気……?)
ランディ・バースは、後方から猛烈な勢いで迫り来る気配を感じた。
あまりの気迫に、バースは思わず身構える。
その男――今岡誠は、バースの前で足を止め、不敵な笑いを浮かべた。
「何や、誰かと思ったら、まだ野村のオモチャが生き残っとったんか」
「イマオカ…」
「まぁええわ。折角や、オレが直々に壊したる」
「ま、待て。キミへのテストはもう済んだ。キミと争う理由は私にはない」
「あほう、オノレになくてもオレにはあるんや。嫌でも付き合うてもらうで」
言うや否やの先制攻撃。
今岡はバースに襲い掛かる。
「せいッ!!」
振り下ろした木製バットがバースに直撃する。
なにせ、いままで数多の猛者を静めてきた一撃だ。
当たればただでは済まないハズ――なのだが、先に力尽きたのはバットの方だった。
「ちっ、なんや…?」
「察しの通り、私は人間ではない」
バースは、その一撃を受け止めた右の腕を見せる。
鍛え抜かれた金属で構成されたその躯には、わずかな傷さえも存在しなかった。
――ただ一点を除いて。
「なるほど」
「わかったら、無駄に藪をつつかないことだな。私はキミを見過ごそう」
「その心遣い、痛み入るで」
そう言って、今岡は含み笑う。
バースは、今岡が戦闘を諦めたものと思い、安堵のため息をついた。
だが、それは違った。
「無敵とちゃうやろ、自分」
「――!」
「誰にやられたんや、ソレ」
今岡は、ただ一点――バースの額を見つめて言った。
「ぐっ……」
バースは思わず言いよどむ。
その表情には、もう余裕は伺えない。
「ソコ弱いんやろ? おっさん」
「…だとしたら、どうする」
バースは含みのある言葉を言う。
最後の駆け引きだ。
これを逃せば、戦闘は回避できないだろう。
「どうするもこうするもないやろ」
“明らかな虚栄”
今岡は、バースの一言をそう受け取った。
折れたバットのグリップを握る。
その断面は剣山のように尖っていて、一見しただけで危険だとわかる。
丁度いい塩梅だ。
「チョロチョロ動くんやないで、面倒やさかい」
「くっ――!」
今岡がそう凄むと、バースは思わず逃げの一歩をとった。
「動くなって言ったやろうが!」
瞬間、今岡は鬼のような瞬発力でバースの進路に入り、その前に立ちはだかる。
「聞き分けのワルイ玩具は、壊さなあかんなァ」
折れたバットを、バースの顔面目掛けて突き上げる。
しかし、バースも馬鹿ではない。
始めから顔を狙うとわかっているなら、躱すのは容易だ。
そして、隙の出た今岡のわき腹に一撃をくれる。
痛恨の打撃に、今岡は地に膝をつかせた。
「お、オノレ…」
「この場は引き下がろう」
「逃げるんか」
「何とでも言うがいい」
バースは、不意に穏やかに笑うと、今岡に向けて言った。
「また会おう。だが、その時は敵としてではない」
「どういう意味や」
今岡がそう訊いた時には、すでにバースは姿を消していた。
「さすがは最強助っ人様や。一筋縄じゃいかんってことやな」
わき腹をおさえながら、今岡は近くの樹木に寄りかかって座る。
「まぁええわ、美味いモンを味わって食うのも“おつ”やさかい」
「それにしてもアイツ…変なコト言うとったな…」
確か、テストがどうとか…
野村め、まだ何か企てを残していたのか。
(ふん、嘗めくさりよって。いずれそれも明かしたるわ…)
先ほどまで小雨だった空模様も、いつしか本降りへと貌を変えていた。
>>328氏
GJです!
今岡の鬼のような瞬発力・・・のくだりにワロタw
今岡w最初乗り気なかったのにw
今岡は何をやっても笑えるんですが…
age
職人さん待ち保守
第七章
>>137-139より
その日の雨は勢いを増すばかりで、球場内の不快指数も順調に上昇していった。
そんな中、深い森林の中は雨の勢いも少し弱まり、まだマシと言える状態だった。
野口らは、三遊間からレフトへと抜ける森を彷徨っている最中だった。
「野口、ちゃんとそっち持ってや」
「持ってる」
「そやったら、何でこんな重いねん」
「仕方ないだろ、文句言うな」
ウィリアムスの首を掴んでいる矢野。
ウィリアムスの足を掴んでいる野口。
気を失い、完全に脱力しているウィリアムスは、二端を掴まれているだけなので、身体の中心は“く”の字に折れ曲がっている。
もしここに冷静な人間が居たとすれば、彼は必ずこう言うだろう。
もう少し運び方を考えろ、と。
それほどまでに、二人の行動は効率が悪かった。
「ひぃ、ひぃ、ふぅ…」
「………」
「あぁん、はぁはぁ…」
「…………」
変な声を出して歩く矢野に、野口は訝しげな表情を浮かべていたが、やにわに矢野はいきり立った。
「ほうら、見てみぃ!」
「な、何がだよ」
「俺はこんなに疲れとる言うのに、お前は息も切らしとらん。ズルしとる証拠や!」
「…なんだズルって。別にしてないよ。小学生かお前」
「ズルに小学生も中学生もあるかい。もうやってられへんわ」
そう言って、矢野は手を離す。
「あっ、おい!」
――がんっ!
自然の物理法則に従い、ウィリアムスの後頭部は地面に叩きつけられた。
「あ〜あ、矢野。お前な…」
「なんや、別にエエやろ。だいたい、何が悲しゅうて昨日俺を殺そうとした奴を運ばなあかんねん」
無責任な矢野を糾弾しようとした野口に、矢野は憮然とした様子で言い返す。
「えっ、殺そうとした? ウィリアムスがお前を?」
野口は驚いたように聞き返す。
「いきなり襲い掛かってきたんや。そやさかい、俺と藪は離れ離れになってもうた」
「ふーん、そんなことがあったのか」
「今のコイツは殺人鬼やで。助けたところでなんも得せんのと違うか?」
至極真面目な表情で問う矢野に、野口は少し考え込んだ。
「それでも、オレはこいつを助けるよ」
しばしの後、そう言うと野口は、倒れたウィリアムスを肩に担ぎ、ふらつきながらも歩き出す。
「チームメイトだからな」
「まぁ、お前ならそう言うと思ったわ」
呆れたようにそう言うと、矢野はため息をついた。
「でもな」
表情を変えて、矢野は続ける。
「助けてもろうたところで、そいつは感謝せえへんやろうな。いや、それどころか目ぇ覚ました瞬間に殺されるかも知れへんで」
「そうかもな」
「理解に苦しむで。大体お前、傷だらけやないかい。無茶のしすぎや」
「この程度の傷で、誰かが助かるなら安いものだ」
野口がそう言うと、矢野は険しい表情で空を睨んだ。
「…まぁええわ。何もかも覚悟の上やっちゅうんなら、俺は何も言わんわ」
「協力してくれないのか?」
「何でそないワリに合わんことを…。それに、藪も探さなあかんでな」
そう言って、矢野はその場を立ち去ろうとしたが、ふとした弾みで振り返った。
その瞬間、矢野の表情が驚愕に変わった。
「おい、野ぐ――!」「Knucklehead!!」
ふたつの叫び声が同時に聞こえた。
聞こえると同時に、野口の後頭部に痛烈な痛みが走った。
「ぐっ!」
「野口ッ!」
頭を抑えて蹲る野口に、矢野が駆け寄る。
その野口の背中から、ウィリアムスが飛び上がった。
「ジェフ! おまえっ…!」
「Get lost!」
ウィリアムスは矢野に向かって一直線に走り、ナイフを抜いた。
ナイフを振り上げる瞬間、矢野はミットでその攻撃を受け止めた。
「シット!」
「目障りやで! 早よ失せろっ!」
その右腕を両手で掴み、肩越しに投げつける。
一本背負いだ。
空中で一回転したウィリアムスは、地に叩きつけられ、苦しそうに呻いた。
ウィリアムスは、仰向けに倒れたまま動かない。
意識はあるようだが、それ以上襲い掛かってくる余裕はないらしい。
「野口、平気か?」
「あぁ、すまない…」
頭をさすりながら、野口は立ち上がって礼を言った。
「言わんことやないで、野口。結局骨折り損や」
「確かに、そうだな…。でも、もしこうなるとわかっていても、オレはウィリアムスを見捨てることは出来なかっただろうな」
責めるように厳しい口調で言う矢野に、野口は自嘲の笑みを浮かべた。
「ほんまに困った奴やで、お前は。――さて」
矢野はウィリアムスに顔を向ける。
倒れたままのウィリアムスは、矢野を一瞥してから言った。
「オレを殺すか」
「………」
「…それもいい。早く殺せ」
「アホ抜かせ」
「……?」
ウィリアムスは、思わず首をひねる。
「次会う時まで、ここで頭冷やしとくんやな」
そう言って、矢野は踵を返した。
「お、おい矢野…」
野口は困ったようにウィリアムスを横目で見たが、すぐに矢野の後を追った。
独り残ったウィリアムスは、立ち上がるわけでもなく、眠るわけでもなく、ただその場にありつづけた。
木々の合間から降り注ぐ雨が、ひたすらにウィリアムスの身体を打った。
「………」
不意に、雨に打たれるウィリアムスの瞼には、雨ではない雫に濡れた。
面白いしいつも楽しみにしているのですが
野口は矢野より年下なのでこの言葉遣いはちょっと
つっても僅差だし、同じポジでライバル同士なんだからいいんじゃない?
実際はどうなんだろ
既に方言も口調も様々なうえに性格も個々が思ってるのとイメージ違う選手も
あるだろうから気にしたら読めないぞ。
まあ性格の受け取り方は様々だから特に思わないけど
野球界は完全年功序列だから、年上を呼び捨てはおそらくありえない。
こういう年齢設定とかだけは、ちゃんと調べてから書いてくれないかなー。
実はそれだけが、どうしても気になってしまうんだよな。
最低限の設定だと思うので…>年齢
小説は書けないがネタスレで選手に会話させる時
上下関係がおかしいとすぐ指摘が入るので
その辺は注意するようにしている
性格や方言と違って年齢は明確なものだし
調べればすぐ分かるので押さえておいて頂きたいな
保守
雲は真っ暗に染まり、日の光を悉く遮った。
雷がひとつ鳴った。
轟音と共に、ひとりの男の叫び声が響いた。
「俺のことはいい、お前は逃げろ!」
その言葉を聞くや、別の男も険しい表情で叫ぶ。
「アホ言うな、お前も来るんや!」
「あいつは俺が抑えてる、その隙に逃げるんだ!」
血まみれになった自分の身体を抱いて、久慈は言う。
「オレを見くびるなよ! お前を見捨てて逃げろって言うんか!」
「どの道俺はもう助からん。二人死ぬより、一人死ぬほうがましだ」
「そやけど、そやけどッ…!」
片岡は頭を振る。
――『どっちも一緒よ』――
その時、その男の声が響いた。
「来た…! 早く行け!」
久慈は残った力を振り絞って、片岡の背中を押した。
「くっ――ゆ、許せ久慈!!」
片岡は、後ろを振り返らずに全力で駆けた。
生存へと向けて必死に走る仲間に、久慈はささやかな笑顔を向けた。
「生きろよ、片岡……」
『うるわしい友情やな、グフフフ』
「ほざけよ、化け物ふぜいが」
久慈はその者に向けて、血の混じった唾を吐きつけた。
『その化け物に殺される気分はどうや?』
「けっ」
『…まぁええことよ、そろそろ遊びは終わりや』
「………」
ごくり。
今度は、口に溜めた唾を吐き出さずに嚥下した。
これから先、どうなるかは予測できなんだが、これだけは言える。
“俺は、死ぬ――”
(だが……)
――ただでは、死なんぞ!――
『これで終わりよ』
言い終わると同時に――いや、それよりも早くその者が迫る。
(来る――!)
がすっ!
久慈の鳩尾に、その者の拳が叩き込まれる。
「がはっ…!」
まるで赤子を放り投げるかのように、久慈の身体は数十メートル飛ばされる。
「ぐぅ…はは、ははは…」
不意に、久慈の頬は緩んだ。
『何がおかしいんや』
「さぁな、何となくだ。…遊びは終わりなんだろう? さぁ、ひと思いに殺せ」
『死を望むか。まぁ、そらそうやわな』
「………」
『最期の頼みくらい聞いてやるわ。次で終わりよ』
「………」
さぁ、次だ。
最初で最期の、好機だ。
これを逃せば、この災いが他の誰かに降り注ぐ。
それだけは、絶対にこの俺が阻止する。
久慈照嘉の名に賭けて――!
久慈の心臓目掛けて、その者の手刀が降りかかる。
その手刀は、物凄い疾さだったに違いないが、久慈にはひどくゆっくりであるかのように思えた。
それは、一瞬に賭ける久慈へ対する、神様からの最期の贈り物だったのかも知れない。
ならば、その慈悲を甘んじて受け入れよう。
そして、この命を喜んで投げ出そう。
次の瞬間、その手刀が久慈の腹部を貫いた。
(今だ……!)
がしっ!
そして、久慈は最期の力を以って、その者の身体にしがみついた。
『何…?』
「へへへ…やった…」
『気でも狂ったか、そんな状態で何が出来る』
しがみつく久慈を、振り払おうともせずにその者は嘲笑した。
「このリストバンド、知ってるか…?」
『――!?』
久慈がそう言うと、それまで余裕に満ち溢れていたその者の顔が、初めて驚愕に歪んだ。
それを見るなり、久慈の頬は盛大に弛緩した。
「これはな…俺が死んだら……」
“爆発するんだぜ”
久慈は、その者の耳元で小さく囁いた。
もう、久慈には声を出す力すら殆どない。
声を出す力すらないのに、久慈の身体は、その者の身体にしがみついて離れなかった。
『く、くそっ! 離れろッ!』
「ぐふっ!」
鼻息すらかかる距離で、久慈は血を吐いた。
(訳ない、人生だったよ……)
その者をがっしりと抱いて、とうとう久慈は事切れた。
《生命反応がなくなりました。ただちに爆破します》
その声を聞くなり、その者はまるで人間のように驚愕し、狼狽した。
『離れろ、離れるんや! クソっ、死人のくせして、なんて力なんや!』
『おのれ、おのれェェェ――!』
阿鼻叫喚の叫びと共に、弔いの雷が強き餞を贈った。
“久慈照嘉・死亡 開始から19時間12分”
ども。
年齢と口調はいちお考慮してやってますが、
これもエゴってやつでして、矢野―藪―野口だけはどうか勘弁してやってください。
性格付け+バトロワという特殊な状況
呼び捨てになるのも出てくると思われる。
328氏乙。久慈カコイイ…合掌。
328さん本人もクールでいい!
久慈さんかっこいい!
メガンテの腕輪と思ったゲーマーの俺。でもカコイイ。
元保管庫さんとこの若虎紅白戦もいいね。
ほしゅ
保管庫さんの、若手中心の紅白戦という設定がおもしろい
キャラでは面倒見のいい沖原と金澤が好きだな
桜井のヒールっぷりもかっこいい
捕手
>>162 矢野−藪は同い年で付き合いも長いからガチで分かるとして
野口にはなにか並ならぬコダワリを感じるw イイ!!
多分実際は野口の方が敬語だろうなと思いつつも
個人的には328氏の矢野・野口のやりとりが好きなのでもっと見たい
特にウィル運んでるあたりの口ゲンカがこんな状況下でもタノスイ(´∀`)
>>133より
29.父の言葉
定時放送が終わり静けさを取り戻した森の中、茂みの陰に座り込んだ
小宮山は青ざめた顔で選手名簿を凝視していた。間近で見てしまった
凄惨な殺人劇のショックから立ち直れないうちに知らされた12人
死亡の情報。その中にはとりわけ馴染みの深い年若い選手たちの
名もあった。しかし昨日、田村の死体を発見した時と同じく、
彼らの死を嘆く気持ちは怒涛のように押し寄せる恐怖にたちまち
かき消されていった。
(全部で16人も、いったい誰が殺したんだ。誰が、誰が)
名簿を持つ手が震える。先ほどの悪夢が脳裏にありありとよみがえる。
むごたらしい殺害の瞬間以上に直後の太陽の無表情な顔こそが
小宮山を凍りつかせた。人を殺すことに対する一切の恐れも躊躇も
痛みも捨て去ったかのような顔。16人もの死者が出ているのだ。
生存者の中には他にもあのようになった人物がいるに違いない。
それも一人や二人ではないだろう。ぞっと背筋に悪寒が走った。
心を落ち着けようと目を閉じて胸を押さえると、傍らの小さな拳銃を手に
取った。ワルサーPPK/S――それが小宮山に与えられた武器だった。
両手で持って顔の前にかざし、じっと見つめる。
(駄目だ。これがあったところで、かなわない)
大きく首を横に振ると、力なくまた地面に銃を置いた。
(自分には人は殺せない。あの時、思い知らされたんだ)
萱島が殺された直後、小宮山はその気があれば太陽を攻撃できた。
見つかって踏み込まれたなら自分の命が危うい。彼を放っておけば
また誰かが犠牲になるかもしれない。何より、武器とポジションでは
圧倒的に有利だった。しかし――ひたすら身を縮めて隠れること
しかできなかった。
(そう、自分には人を殺す勇気なんてないんだ)
小宮山は両手で膝を抱えこむと、その上にぐったりと頭を乗せた。
(もう嫌だ、もう。殺し合いなんかするためにプロに入ったんじゃない)
ちょうど1年前の今頃は、ドラフトを目前に控え希望に燃えていた。
不安はあったがプロ入り後のどんな困難も乗り越える自信があった。
小宮山はおとなしく涙もろい反面、幼時から鉄拳制裁も辞さない父に
厳しく鍛えられ、芯の部分はむしろ人一倍強靭だった。
(でも、もう無理だよ。これじゃ困難にもほどがあるよ……父さん)
――強くなれ。
小さい頃からいつも父に言われてきた言葉だ。
(だったら、今の状況で強くなるって、どういうこと?)
伏せていた頭を少し上げた。このゲームで生き残るには迷わず他人を
殺せる強さが必要だ。人を殺す勇気が。さっきは確かにそう思った。
(父さんは、俺が殺しに殺して生き残ったら、喜んでくれる?)
違う気がする。父はそんなことは望まないと断言できる。
(じゃあ、強さって何なんだろう)
小宮山は恐怖を忘れてしきりに考え始めた。そういえば、プロ入りに
当たってもう一つ父から強く言われたことがあった。
――どんなに辛いことがあっても自分を見失うな。
(これも分からないや。俺は自分を見失っているのか、いないのか)
今の自分は、怖い。ひたすら怖い。死にたくない。かと言ってこの
殺人ゲームに乗ることはできない。
(でも、普通は誰だってそうじゃないのかな)
再び太陽の仮面のごとき表情が浮かぶ。では、一見して普通では
ないと分かるあの状態はどうなのか。小宮山は考え続けた。
(父さん、俺は自分が強いとは思えない。でも、まだ自分は見失って
いない気がする。……たぶん)
膝を抱えたまま小宮山は頭を上げた。
(だって、どんな状況でも、何も思わず人を殺せる方がおかしいはず
だよ。これは間違ってないよね?)
小宮山の心は絶え間なくおびえ悲鳴を上げながらも懸命に崩壊を
食い止めていた。それこそが彼の強さといえたが、残念ながら本人は
そこまで思い至らなかった。しかし、あれこれ思考を働かせるうちに
先ほどまでのすさまじい恐怖は次第に静まっていった。
辺りに人がいないことを確かめ、小宮山は立ち上がった。ポケットに
銃を突っ込み、カバンを肩に担ぐ。茂みから出ると、少し開けた
所に萱島の遺体が太陽に殺されたままの状態でうつ伏せに倒れて
いた。表情は分からないが、延髄の刺し傷と若干飛び散った血の跡が
生々しい。小宮山はゆっくりと歩み寄り、そばに立った。
「ごめんなさい」
涙とともに呟くように言った。無残に殺され死体となった萱島に
おぞましさしか感じなかったことがひどく申し訳なく思えたのだ。
今も恐れがないではないが、悲しみの方が強い。それは彼ばかりでなく
加害者である太陽に対しても同じだった。
(太陽さんは、もう、元に戻らないのかな)
二人ともファームで一緒に頑張ってきた先輩だというのに、小宮山の
眼前で殺し合ったのだ。いや、二人だけではない。昨日から今日に
かけて自分の知らない所でどれだけの惨劇が繰り広げられたことか。
小宮山は静かに涙を流し続けた。
どのくらい時間がたったのか、長いようにも短いようにも思われた。
小宮山はせめて人目につかぬようにと、萱島の遺体を引きずり、
近くの潅木の下に運んだ。小宮山より軽いはずのその身体は
ずっしりと重く冷たく、明らかに生きた人間とは違っていた。
(本当に、本当に萱島さんは死んでしまったんだ)
また涙が溢れてきた。移動を終えると、小宮山は帽子を脱いで
脇にはさみ、萱島に向かって胸の前でそっと手を合わせた。
帽子をかぶり直すと小宮山は踵を返し、歩き出した。この付近は
禁止エリアとその予定地からは外れており、無理に移動する必要は
ない。下手に動けば、生者であれ死者であれ誰かに遭遇する
可能性もある。それでも、ここに居続けることが耐えがたかった。
(何があっても自分を見失わないように――)
小宮山は心の中で繰り返しつつ、森を後にした。
【残り40人】
泣き虫だけど強い子のバンビがんばれ。
小宮山、健気にがんばれ
親父さんはリアルですげー怖いらしいね
小宮山の誕生日だから小宮山主人公だったのかな
おお!そうなのかも
182 :
代打名無し@清原獲得反対:04/11/28 14:49:39 ID:V1KULD1a
age
>>177 30.サバイバー
正午を過ぎ、しんと冷えていた山の空気もいくらか暖まっている。
それでも林威助(背番号38)は震えていた。
涙を流したくない。様々な感情が言い表す言葉もないほど極まり、絡み
合っていたが、泣くことだけはしたくなかった。泣けば涙とともに今のこの
思いさえ外へ流れ出て消え、そうしたら全てがどうでもよく思えてしまい
そうな気がしていた。
こうした状況―――生き残りをかけたサバイバルゲームにおいて、最も
危険とされるのは弱気になること、楽になりたいと願うこと、そして自暴
自棄になることだ。根底にあるのが怒りでも悲しみでも何でもいい、とに
かく現状に立ち向かうのだという強い気持ちを持ち続けなければ、自滅
する。
そうして全部を飲み込むと、意思とは無関係に肩が震え、喉が引きつれ
るのだった。制御し切れない心の深い部分がそうさせているのかもしれ
ない。
林自身にも把握することが難しいその部分には、たくさんの顔が浮かび
上がって渦を巻いていた。次々と死んでいく仲間達の顔。中村泰広、
上坂太一郎、萱島大介―――刺激し合い、励まし合い、あの最高の
舞台に上がって活躍することを誓い合い、ともに目指した仲間が死んで
いく。その顔が、目にしたわけでもない死に顔が、林をぐらぐらと揺さぶる。
林は岩の上に広げた地図と名簿を見下ろし、名簿の余白にボールペンを
突き立ててめちゃくちゃに動かした。黒い線が幾重にも重なり、いびつな
形の黒い丸ができ上がる。なおも力任せに書き殴ると、岩のくぼみに引っ
かかったペン先が紙を裂いた。
「……もう」
嫌だ。もう嫌だ。こんなのは嫌だ。
口をついて出そうになった言葉を慌てて飲み下し、二度と出てくるなと
腹を抱えてうずくまる。
―――生きる。
必ず生きて帰るんだ。もう媽媽(マーマ)を悲しませるわけにはいかない
のだから。
強く、強く思え。生きると。決して死なないと。
眉間に力を入れて目を開くと、じわりと活力が湧いてきた気になった。
大きく息を吸い込むと、澄んだ空気が体の隅々まで行き渡って癒して
くれ、耳を澄ますと、すぐそばを流れる川のせせらぎが心を落ち着けて
くれる。
きっと何か方法があるはずだ。ここから抜け出す方法が。人間の作った
システムなら必ずどこかに穴がある。脱出さえなれば、まだ生きている
者達を救うことも容易だ。
林は岩陰から這い出し、川面に手を触れた。冷たい。底の小石が綺麗に
見える。澄み切ったその水を顔に浴びせると目や鼻の奥の熱が冷めて
凝固し、腹の底の方に下っていっておとなしくなった。
悲観的にならない。希望を失わない。自分を見失わない。それでいい。
―――生きてさえいれば何とかなる。
理不尽な争いの中で死んでいった仲間の無念も何もかも、全て引き受け
生き抜いてみせる。
そうとなれば、長期戦も見越して水や食糧を節約しなければいけない。
デイパックには菓子パンが3つと、2リットルのミネラルウォーターが1本
あるだけだ。林は川の水で腹を膨らませ、岩陰に戻って食事を取った。食
べ物を口にするのはどれほどぶりだろう。クリームパンがこんなにも美味い
ものだとは思わなかった。
今はこれで終わり、と自分に言い聞かせて三口目をかじりつこうとし、林は
ふと視線を移した。視界の隅に何か―――誰かが侵入した気がする。
木々がうまい具合に前後して生え、こちらからは覗ける隙間のない向こう
側を移動しているようで、姿はなかなか確認できない。
袋が音を立てないようパンをそっと地面に置き、林はデイパックから取り
出した白木の棒をベルトの背中側に差し込んだ。
もちろん攻撃するつもりはない(相手がどんな目的を持った人物であれ、
林にとっては敬愛する仲間の一人には違いないのだ)が、万が一反撃
が必要になった時のために備えておかなければならない。
―――『備えあれば憂いなし』だっけ?
麺棒ごときが『備え』になるかどうかは置いておくとして。
人がいるのは確かのようだ。土や落ち葉を踏みしめる音がやけに大きく
聞こえる。警戒心がないのだろうか。わざと音を立てているのだろうか。
その足音は右方からだんだん近付いてき、それにつれて対象を見る角
度も変化して姿を確認できるようになってきた。
同じユニフォームを着ている(それはそうだ。ここには選手しかいない
そうだし、自由に出歩けると思われる監督達もユニフォーム姿である)。
体つきはいかついが上背は際立ってはいない。胸の番号は―――4。
いや、14。アリアスだ。
アリアスはなぜか両手を挙げて歩いている。それは銃を突きつけられた
時などにとるホールドアップのポーズとしか見えないものだった。
どういうことだろう。何者かに脅され歩かされているのか。しかし他に人
影らしいものは見当たらない。
林はさらに身を小さくして岩に隠れ、相手の反応を探るために、映画や
ドラマによくあるのを真似て小石をアリアスに向かって投げた。木に跳ね
返り、コンと気持ちのいい音が辺りに響く。
アリアスの足が止まった。木々の隙間から見える限りで判断するには、
音のした方を見ているようだ。つまり林の潜む岩陰の方を。
―――アホ!
失敗した。自分の正面に相手がいるのにそこへ石を投げ込んでどうする。
林は慌ててデイパックを取り、岩陰から飛び出した。幸いなことに背後の
川はすねの辺りまでの浅さで幅も広くなく、流れが緩やかだ。そこへ
突っ込んで対岸に渡った。
―――『逃げるが勝ち』ってこういう時に使うのかな。
アリアスの足との勝負なら、この状況では膝が多少不安な自分でも、下手
をしなければ勝てるだろう。しかし、
「待ってくれ!」
そのまま勝利を目指そうとした足に悲痛な声が突き刺さり、がっちりと
地面に縫い止めた。
背後の男は『プリーズ』と言っている。
林は英語に堪能というわけではなかったが、簡単な日常会話程度なら
理解できた。アリアスは、自分は何もしない、君に聞きたいことがある、
頼むから行かないでくれ、と平易な英単語を並べ叫んでいる。
振り返ると、川の向こうにやはり両手を挙げているアリアスがいた。
【残り40人】
187 :
515:04/11/29 16:34:12 ID:hvnAq+aM
>>123氏他、地図作成に関わられた皆さん、遅くなりましたが
乙&ありがとうございました
地理的なものに弱いので大変助かりました
今後これを活かしていけるよう精進します
相変わらず丁寧な文。GJ
>>186 31.マーター
かじりかけのクリームパンをデイパックに大事にしまい込み、風にまくられた
地図を広げ直す。(戻ってきてよかった。危うくパンも地図も放り出したままで
逃げ出すところだった)
「ここはどこ?」
自分の地図とボールペンを手にしたアリアスがゆっくりと丁寧な発音で言う。
「えっと、川……がここだから、たぶんこの辺です」
川の線をペンの尻で辿り、G-4を差し示した。川はG-5とG-4の境目辺りを
源としてG-4をまたぎ、H-4をかすめてH-3にある池(湖か沼かもしれない。
川にしても、名までは記されていなかった)に続いている。林の印象では、
現在地はかなりの上流に思えた。
「禁止エリアは?」
「こことここはもう入れません。ここの、F-2が3時から」
「3時か。近いな……」
アリアスは口中でひとりごち、林の地図を覗き込んで自分の地図に禁止
エリアを書き写した。なぜか最後にF-2を黒い線で丸く囲う。
「F-2、G-7、I-2。これから禁止になるのはこの三ヵ所だけ?」
「はい」
「そう。アリガトウ」
日本語で礼を言われ、林も思わず日本語で「どういたしまして」と返した。
おかしな感じだ。二人とも外国人なのに。林がちょっと笑ってしまうと、アリ
アスもつられたように微笑む。優しい顔だった。あのまま逃げなくて本当に
よかったと思う。
アリアスは定時放送の内容が理解できず困っていたのだそうだ。林も、
岡田監督には悪いが、声がこもっていて聞き取りづらく少々苦労したから
アリアスの焦燥に共感できた。
それにしても―――アリアスのように言葉のわからない外国人選手まで
参加させるとは、どういうことだろう。
確かウィリアムス(背番号54)もいたはずだが、彼はどうしているのか。
アリアスのように無防備に歩き回り(思えば、危険な禁止エリアを知る
目的で人を探してむやみに歩き回るというのは、誰かと遭遇して攻撃さ
れる可能性、既に立ち入れない区域に踏み込んでしまう可能性を考え
ると、あまりに危険が過ぎるのではないだろうか?)、誰かを探していた
りするのだろうか。
「ウィリアムスには会いましたか?」
心配になってそう問うと、アリアスはすっと表情をなくして首を振り、ここ
にいない者の姿を探すように遠い視線を揺らす。
「ジェフに会えれば一番よかったんだが……。それでも君に会えたんだ
から俺はラッキーだ。神にも感謝しないとね。本当にありがとう」
アリアスは胸の十字架に触れて笑い、折り畳んだ地図をユニフォームの
ポケットに突っ込んで立ち上がった。そして傍らに置いていたデイパックを
掲げて見せる。
「これは親切にしてくれたお礼だよ」
ポンとデイパックをひとつ叩き、茶目っ気たっぷりにウインクした。その
意味が、それをくれるという意味がわからず、林はデイパックを見つめて
数秒を過ごすことになった。
アリアスが林のそばに置いたデイパックと、二度目のアリガトウを残して
去ろうとする頃に、やっと口だけが動き出す。
「ちょっと待って」
とっさに出た制止の言葉は日本語だったが、アリアスはきびすを返し
かけた格好で動きを止めた。
「どう……どうするんですか? これがなかったら困るでしょう」
アリアスが持っているもの、身に付けているものと言えば、林の見た限り
では尻のポケットの地図と首から下げた金の十字架くらいだ。ボールペン
でさえ、ついさっきデイパックの中に戻していた。きっと水も食糧も―――
武器も、この中に入ったままだ。それを置いていくなんて。
「俺にはもう必要がないから」
「どうして? 何をするつもりですか」
嫌な感覚が背中の辺りを這い始める。
どうして必要ないんだ。どうして―――どうしてここへ来た?
そうだ、危険だ。禁止エリアという危険を知るために動き回る(しかも丸腰
でだ)危険を冒すなんて、矛盾しているだろう。それもわからないほど混乱
しているようには見受けられないアリアスの静かな表情を見上げ、林は
うまく出てこない言葉を何とか形にしたくて口を開けるのだが、ぱくぱくと
空振るばかりで役に立たない。
危険だ。危険だが―――危険だと考えていなかったとしたら?
林は生きたい。死ねない。だからこの首についた忌まわしい装置が爆発
することも、誰かと行き会って戦闘になることも、林にとっては危険だ。
その逆なら―――?
「これは自殺になるのかな」
そう呟いたアリアスの顔は、陽光による陰影のせいだけでなく暗く見えた。
「君はどう思う? やはり主はお許しにならないだろうか」
アリアスの神は、殺生はもちろんのこと自らの命を絶つことも禁じている。
しかしこの狂った現実の中で、その戒めに忠実に従うことは容易くない。
悪魔の誘惑は多々ある。まさに試練だ。信仰を試されている。
敬虔なる男は、当然ながら殺人の罪は決して犯さないと決めたそうだ。
のみならず、誰かの手にかかることも、それは相手の罪になってしまう
ためにできないことだ―――と言う。相手もまた被害者であり、苦楽を
ともにした仲間であるから、神に裁かれ地獄へ送られるようなことには
したくないのだ、と。
だから誰も殺さず、誰にも殺されないため、自殺ではない自殺法を探し、
首輪を爆発させることを―――間接的な自殺を選択した。
キリスト教の信仰とはそうしたものなのだろうか。林にはわからない。
アリアスは神を欺こうとしている。それは罪ではないのか?
林が聞いていても、どこか足りなかったり矛盾が感じられる考えだった。
だからアリアスはおかしくなってしまったのだ、と断じれば簡単だったが、
林に通じる言葉を探しながらとつとつと語る姿の前にはそれも無理だった。
アリアスはどこまでも静かで、真摯だ。そして今もなお苦悩している。
一人きりでずっと考えていたのだろう。天地もわからない闇の中をさまよう
ような気分だったろう。
他人に話せたことでいくらか気が楽になったようで、アリアスはひとしきり
話し終えたところで息をついた。
「言い訳して逃げてるだけか……」
寂しそうに微笑む横顔に、林は胸が苦しくなってうつむく。
苦しい。そして腹立たしい。なぜアリアスが苦しまなければならない?
こんなゲームのせいだ。こんなゲームを許す奴のせいだ。そうだろう?
神が本当にいるなら、天と地と、その狭間の全てを創造したのが神である
なら、この殺人ゲームを許したのもまた神ではないのか。懊悩する子らを
見下ろし、楽しんでいるのではないのか。
「……そんな奴、信じるなよ」
他人の信仰を否定してはいけない。信心深い者が多く、多宗教でもある
国に生まれ育った林はそれをよく心得ていたが、自分自身も驚くほどの
正体不明の激情は止められるものではなかった。
「あんたを苦しめてるのは神様じゃないか。苦しめるだけ苦しめといて助け
てもくれない、そんな神様なら、そんな神様なんか、捨てればいいだろ!」
自分の発するセリフに煽られ、最後には声を荒げていた。
そうして吐き出せば我に返るもので、アリアスの驚いたような顔をちらりと
確認した林は、ばつが悪くなって抱えた膝に顔を伏せた。救いは、つい口
から出たのが英語でも日本語でもなく、祖国の言葉だったことか。
「すみません」
膝の間に鼻を埋めた格好のまま謝ると、アリアスの手の平が林の頭を
柔らかく叩いた。そう促されて顔を上げれば、やはり優しい顔で笑うアリ
アスがいる。
「……僕は……あなたに生きて欲しいです」
殺さず、殺されず、生きて帰る。それでいいはずだ。死ぬことなどない。
こんなに優しい人が死ぬことなんてない。
林は自分の話をした。説得できるかどうかは自信がなかったが、話を
聞かせてもらった代わりに自分の話もしておくべきだと思った。
日本へ行けと言ったのは父だったこと。日本に来る直前にその父が
亡くなったこと。それでも母は悲しむ姿を見せず、また苦しむ姿も見せ
ず、異国にいる息子のためにたくさん働いて仕送りを続けてくれたこと。
両親を誰より尊敬していること、大好きだということ。
「媽媽(マーマ)を―――お母さんを、悲しませたくないんです」
家族を失う悲しみも辛さも、母はもう今以上に知る必要はない。だから
死なない。母の未来には、幸福以外はあるべきでない。その幸福は、
自分が嫌というほど与えてやるんだ。だから生きる。
「あなたにも家族がいるでしょう。あなたの神は、家族を大切にしろとは
言わないんですか?」
林は天使のように愛らしい子供を思い出していた。父が死んでしまったら
あの子はどうなるだろう。あの子の母は? それは林自身よく知っている。
自らの命を絶つことは、人間だけが持つ権利かもしれない。しかしその
前に、生きることが生物としての義務であり、死によって悲しむ者のいる
人間の果たすべき責務だ。それは神が決めたのでも誰が決めたのでも
なく、そういう風になっている。
だから―――生きたいとか生きた方がいいとかではない。
「僕らは生きなければいけないんです」
アリアスは涙を流していた。
目の周りも鼻も、顔中が赤くなっていてみっともない。それでも宗教画の
ような美しさを、林は見た。
―――汝の隣人を愛せ
―――汝の敵を愛せ
林でも知っている、聖書に載っているという有名な文句が頭に浮かんだ。
きっとキリスト教というのは愛を教えているのだろう。
今アリアスは家族を思い、その愛の深さから泣いている。
愛は美しい。だからアリアスが美しく見えた。
彼と彼の神を冒涜する暴言を吐いたことが悔やまれた。
頬を拭ったせいで少し濡れている手に握手を求められる。手を重ねると
強い力が返ってき、林にはそれが生命力のように感じられて安堵した。
「俺は誰かに止めて欲しかったんだと思う。きっと、本当は生きたかった
んだ。ありがとう。君に会えてよかったよ、リン。本当に……本当に」
ほっとして、嬉しくて、腹の方から温かいものがふわふわと上がってきて
目頭を熱くする。嬉し涙などしばらく忘れていた。そういう涙もあるのだった。
少しくらい―――そう思い、目のふちに掴まっている水滴を送り出して
やろうとまぶたを下ろす。その一瞬の暗闇に顔が映った。
―――媽媽……泣いてる? どうして?
目を開けると奇妙な音がした。雲の影でも差したか、目を閉じる前より
視界が暗い。向かい合い座っているアリアスの体が右へ傾ぐ。頬を
伝ったしずくがあごの先に留まって揺れているのが感触でわかる。
何だ? 何が―――
「大丈夫?」
日本語。よく知っている声。高い位置から聞こえる。アリアスは岩に寄り
かかり、斜めになっている。血が―――血が
「リン? リンさん。リンちゃん。リンリーン。おーい」
目の前で手の平がひらひら。あごの先のしずくが落ちた。目の前の、
手の平の、指の先の、赤い色は血。アリアスの血だ。
「は」
『ひ』だったかもしれないし『へ』だったかもしれない。喉の奥から空気が
飛び出て、声にならない音を作った。
アリアスの目は開いているから、寝ているわけじゃない。だけど林の
知らないところを見ている。こちらを向いた左の側頭部は、何だかよく
わからない状態になっている。そこを穿った大きな石は、
「マジで大丈夫?」
藤原通(背番号2)の片腕に抱えられていた。
―――生きると、言ってくれたのに
【残り39人】
藤原め、なすびのくせになんてことしやがる
515さん相変わらず乙です。
でも・・・ジョージィィィー!。・゚・(ノД`)・゚・。イキルッテイッタノニー!!
藤原はリンを助けようとしたのかな?
でもそれが勘違いだった・・・?
515氏乙。
泣いてしまいますた・・・アリアス・・・
・゚・(つД`)・゚・
515氏うまいっす。
うまい・・・うますぎる。すげー切ないよ・・
さすが515氏!!
あなたの文章にはいつも感嘆させられております。
ジョージ…うううジョージィィィィィ…。゜(゚´Д`゚)゜。ウァァァン
わかりやすい!!ありがとう!
GJです!見やすいです。
直接リンク貼ってもらっても全然構わないですよー。
こういうのは保管庫のほうで作った方がいいのかなぁ…?
何か要望などあれば言ってもらえると嬉しいです。
余力があればおながいします
206 :
202:04/12/02 17:58:08 ID:EdgK4z3E
>>204 いつも乙です。
作者別・選手別のインデックスが保管庫にあったらな と思ってました。
でも保管庫さんに何もかもしてもらうのもなー と自分で作ってみた次第。
許可もらえたんで
>>202のリストから直接読めるようにリンクさせてもらいました。
>>202に保管庫からリンクしてもらうのでもいいし
ページまるごとコピーして持っていってもらうのでもいいし
内容だけコピペしてレイアウトはそっちでやってもらうのでもいいし
何でもいいんで、保管庫にこういうインデックスを設けてもらえたら嬉しいです。
勿論無理にとは言いません。気が向いたらお願いします。
ジョージ・゚・(つД`)・゚・
せめて、せめて・・・
32.予感
「あー、すっかり遅くなっちゃったなぁ」
ごちながら、腕にはめたクラシカルな時計の文字盤に視線を落とした。
午後1時半を回っている。昼時をちょっと過ぎたという時間帯だろうか。
朝のローカル番組の収録を終えた後、色々と打ち合わせなどしているうちに
時間が過ぎてしまったようだ。今日は早めに帰って、資料を読まなければ
いけないと思っていたのに。
放送局の地下駐車場は薄暗く、乾いて冷えたコンクリートが底冷えを誘う中に
こつん、こつん、と自分の靴音が響いた。靴はいつもピカピカにしておかねば
気が済まないタチだ。身嗜みとしては勿論の事、綺麗に磨いた靴を履くと
すっきりしたいい気持ちになるし、仕事も気分よくこなせるような気になる。
そういうわけで、毎晩夕食を食べた後、妻が台所で洗い物などしている間に
玄関で靴を磨くのが彼の日課だった。
薄手のコートに包んだ身体を震わせ、車のドアを開ける。隙間から仄かに
漂う芳香剤の柑橘の香りに安心しながら、身を滑り込ませてエンジンをかけ、
真っ先に暖房をつけて―――スイッチから指先が離れた瞬間、携帯が震えた。
ポケットから流れてきた軽快なナンバーは『君の瞳に恋してる』。いつ聴いても
いい曲だ。これを聴くと色々な事を思い出す。甲子園のマウンドに立つ自分。
ロジンバックの感触。怖いのにどこかわくわくする、不思議な緊張感。
かつて暗黒時代の中にありながら『セ・リーグ最強の中継ぎ部隊』と呼ばれた
阪神リリーフ陣の要、伊藤敦規(元背番号47)は携帯電話をぱくんと開いて
ディスプレイを確認し、少し笑うような表情をしてから耳元に当てた。
「もしもし、遠山?」
『あ、もしもしアツさん。遠山です。今ちょっといいですか?』
電話の相手はその阪神での元同僚、遠山奨志(元背番号52)だった。
いつもは割とのんびりとしている彼なのだが、何故か今日は落ちつかない、
そわそわした声をしている。
「どしたの、なんかあった?」
『それが……』
問いに対し、遠山は微妙に声を低めた。彼のややぽっちゃりした顔が、
難しく顰められている様が目に浮かぶ。何かを言い出そうとしているのに
上手く言い出せない、そんな数秒の沈黙に伊藤は気を利かせる。
「今、車の中だから。周りに誰もいないよ」
『あっ、そうですか』
「何か話でもあるの?」
途端にほっとしたような声音になった遠山だが、緊張感は未だ拭えていない。
水を向けてやると、彼は電波の向こうで一つ咳払いをしたようだった。
この男は割と形式に拘るタイプで、何かする時にやたらと形から入りたがる。
まぁそこが長所でもあるのだが。そう思ったところで漸く彼は口を開いた。
『あのね、アツさん。アツさんとこの前一緒にメシ食いに行った時、あの話
したでしょ?ほら、阪神の来季のコーチ就任要請の話』
「あぁ、その話―――あ!そっか、そう言えばあの時、お前オレの車ん中に
ハンカチ忘れてったんだよな?大丈夫、心配しなくても持って帰って
洗濯しといたし、今度会った時にでも……」
『あ、有難うございま―――って、違います違います!アツさん、そんな話じゃ
ないんですよ。そんなアホな用事で掛けたんじゃありません』
何だよそれー、アホって何だよアホって。アイロンまでちゃーんと掛けて
やったのにさぁ、などとぶーたれる伊藤に、遠山は深く嘆息して言った。
アツさん、真面目な話なんですよ、真面目な話。
「ふーん。で、そのマジメな話って何?」
現役時代からのトレードマークだった長い髪をわしゃわしゃと弄りながら、
シートの上で一つ伸びをする。勿体つけて一層トーンを落とした遠山に、
芝居がかってるなぁと茶々を入れかけた、のだが。
『実はですね。昨日、球団からいきなり電話が掛かってきて、「申し訳ない
けれどコーチの話はなかった事にして下さい」って言われたんですよ』
「……は?」
思わず、間の抜けた声を出してしまった。
突拍子も無い話題に返す言葉を見つけられないでいると、耳元で聴こえる
ぐっと低くなった声が、どう思います?と続けて訊ねてくる。
(何だ、そりゃ)
話が殆どまとまっていたところに、唐突な断りの電話。いかにも失礼な話だ。
社会一般の認識からするとかなり非常識なのではなかろうか。自分なんて、
引退してから家業を継ぐ為に必死に覚えてきた仕事に戻らない覚悟で
受けた話なのに。
「それで?それだけを愚痴りに電話してきたんじゃないんでしょ?」
『相変わらず察しがいいですね。そうなんです。最初は何か一方的過ぎて
面食らっちゃったんですけど、よくよく考えてみると電話を入れてきた人が
変な感じだったな、って。とにかく「後ほど正式にご連絡致しますので」の
一点張りで、要領得ないし。それで腹立ったんだけど、直接球団事務所に
行ってみたんです』
「そしたら?」
『なーんかね、様子が変なんですよ。職員が行ったり来たりでバタバタ。
段ボール箱一杯の書類とかが運び出されたりして、大掃除か家宅捜索でも
してるのかって思うくらい。挙句、事務所に入ろうとしたら入口で止められて、
「申し訳ありません。お話は後日という事で」ですよ?』
遠山自身も困惑しているのだろう。声が若干ウンザリした響きを帯びている。
うんうんと相槌を打ってやり、話の先を促した。
『久万オーナーが亡くなって、新しい人がオーナーになったでしょ?それと
関係があるのかも知れないと思って、事務所の人にその事を訊いたら
反応が微妙に変わったんですよ!それでも何も話しちゃくれなかったけど』
まくし立てる遠山に対し、押し黙った伊藤の頭には疑問符が飛びっ放しだ。
今から別の人間に就任を打診するのは幾ら何でも遅すぎやしないだろうか。
遠山に問題があるとは思えないし、様子が変だという球団の動きも気になる。
突然の就任要請の白紙撤回、球団事務所の異変、曖昧な職員の態度。
加えて、オーナーの代替わりと職員の不審な反応。
(キナ臭いなぁ)
なかなかどうして、怪しいキーワードのオンパレードだ。特に今年のような
一大騒動が球界を襲った後とあっては、何事も疑ってかかるにしくはない。
『で、どうも様子がおかしいなと思って、葛西に電話してみました』
「……あいつ、何か言ってた?」
『それが繋がらないんです。何回掛けても、電源が入ってないか電波が
届かないってアナウンスが流れて。自宅の方も誰も出ないし』
その葛西稔(元背番号13)は二軍コーチを務めている。忙しい身だろうから
単にタイミングが悪かっただけかも知れない。しかし遠山は言う。
『球団に「選手やコーチ陣は今どこで何をしているんですか」って訊いても
「お答え出来ません」だし。MBSの担当に訊いてみても解らないって言うから
これは何かあるのかも知れないな、って思ったんです』
「うん、それで?」
『葛西がダメならって思って片っ端から電話掛けました。和田さん八木さん、
藪、矢野、桧山に今岡に福原に吉野……全員、ダメ。藪と矢野と福原は
奥さんに連絡ついたんだけど、皆ダンナから連絡がないって言ってました。
昨日の朝に練習で集合掛けられて出て行って以来、全く音沙汰ナシ。
でね、アツさん。それだけじゃないんですよ』
「え、まだ続くの」
『もうちょっとですから―――それでね、その八木さんから今朝早くに
電話が掛かってきてたみたいで、留守電が入ってました。八木さんも何か
変だって言ってるんです。具体的な事は言ってなかったんですけど、
とにかくおかしい、何かあるって。しかも、「もし自分で駄目だったら
宜しく頼みたいけど無理だと思ったら忘れてくれ」とか、そんな変な事も
言ってました』
そこまで一気に喋ってやっと、これでおしまいです、と遠山が締めくくる。
―――確かにおかしな話だ。
はっきりとはしないが、遠山の語ったストーリーには不自然な点が多い。
しかしあやふやな事柄が多いだけに、どこから手をつければ良いのか
見当がつかないのも事実だ。結局、伊藤は端的な感想を述べる。
「何か、変だね」
『でしょ?オーバーホールもしないまま主力選手まで帯同して練習ってのも
変わってるし、八木さんも何を言いたかったのかよく解らないんですよ。
大体、球団側も今になって話を反故にするってのはどういうつもりなんだか。
―――ねえ、アツさん。何か、随分おかしな事ばかり起きてる気がしない?』
おかしいどころの騒ぎではない。選手や関係者とはまるっきりの音信不通、
八木は妙なメッセージを残したまま連絡が取れなくなった。
伊藤は嫌な予感が沸いてくるのを抑える事が出来ない。
「どういう事なの、それ……」
『絶対、何かあったに違いないよアツさん。何か、何かあったんだよ』
「おかしいね、絶対おかしいよ」
『球団事務所の様子もそうだし、何か普通じゃないんですよ。
ダイエーみたいな親会社関連の身売り云々じゃないとは思うんだけど、
寧ろもっと違う、何か変な事が起きてるような気がして』
少し間を置いて遠山は呟く。アツさん、これって一体どういう事なんだろう?
何の前兆なんだろう?
奇妙な、狐につままれたような気持ちになる。
さしあたり、遠山と直接会って話す約束を取り付け、伊藤は電話を切った。
自分が何を出来るのかは解らないし、単なる杞憂かも知れない。それでも
うち捨てておくわけには行かなかった。自分の性分からして、苦楽を共にした
仲間たちが苦しい思いをしている、或いはするのだとしたら、黙って見ている
事など出来やしないだろう。
電話を切ってすぐ、それを待っていたかのように再び着信音が鳴り響いた。
今度は『カンナ八号線』。『君の瞳に恋してる』より以前にテーマ曲にしていた
ものだ。いまいちノリの悪い曲だったせいか、リリーフに出て行く時に外野の
新庄や坪井に笑われまくった覚えがある。―――懐かしい思い出だ。
暗黒時代と揶揄されたあの頃は、和田や八木が現役で藪がエースだった。
桧山や坪井、新庄、今岡たちは未だ若く、遠山、弓長、葛西ら、自分を含めた
中継ぎ陣は盤石の呼び声が高かった。
新庄も坪井も、もう阪神にはいない。昔の話だ。伊藤がいた頃とは随分と
変わったものだ。当たり前だと言えば確かにそうだろう。だがそこに伊藤は
一抹の寂しさを感じてしまう。それがいいのか悪いのかは、また別の問題だ。
伊藤は息を吐いて携帯の画面を見た。鮮やかに光っている。その表示が。
『阪神タイガース 球団事務所』
ぞくり。
首筋に、ひたひたとやってくる嫌な冷たさ。
『―――絶対、何かあったに違いないよアツさん』
つい先ほど耳にした遠山の声が頭の中に蘇り、酷い胸騒ぎに襲われる。
どうしたんだ。何があったって言うんだ。
伊藤は通話ボタンを押す事を躊躇した。遠山と話していた内容を思い出し、
わけの解らない嫌な予感を覚える。一体何が起こっているのか―――
不気味なものでも見るような目で、伊藤はディスプレイを暫く凝視し続けた。
【残り39人】
>542さん
中継ぎ課キター(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)
課長に天然入ってるところやカンナ八号線の着メロとかツボを抑えてる
215 :
代打名無し@実況は実況板で:04/12/04 10:35:32 ID:IHn8fdEH
age
課長&係長キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!
君の瞳に恋してるのとこで「うおっ、課長!?」ってびびった。
うまいなあ。
続きが激しく木になる
なんか暗黒時代思い出しちゃって涙出てきた・・・・
課長遠山葛西ありがとう・・・
>>161より
岡田は、一人で壬午園球場を歩いていた。
ふと、一本の樹の前で足を止め、口を開いた。
「藤川か」
「はい」
すると、その樹の陰から藤川がまるで忍者のように姿を現した。
「何の用や」
「例の実験体の件ですが…」
「あー、復活したんやったな、確か」
真面目な話をしているというのに、間の抜けた口調で岡田は言った。
「ええ。その最後の一人ですが、行く先々で殺戮を繰り返しています」
「あー、そやな。アイツも今まで出番ナシやったわけやし、うずくんやろ」
「そのようですね。ずい分な暴れぶりでしたよ」
「奴が動き出したとなるとやっかいや。もう止められんのとちゃうか」
岡田がそう言うと、藤川は口元に手をおさえ、クスクスと笑った。
「いえ、それがですね…」
「? なんや、どうしたんや?」
「どうやら、奴は大きな痛手を負ったようです」
「なんやて…?」
藤川の言葉に岡田は思わず、うまそうにかじっていたスルメイカを地に落とした。
「久慈との対戦で、返り討ちに遭った、ってところですかね」
「久慈? 久慈ならさっき死んだやろ」
訝りながら岡田が聞く。
「ええ、僕も少々驚きました。あんな行動に出るなんて…」
「奴はどうなったんや、死んだんか?」
「わかりません。ですが、深手を負ったのは確かでしょう」
「ああ、ほんと」
最強の兵器と謳われた者たちが立て続けに退いたのを知って、岡田は思わず苦笑したが、内心では密かにほくそ笑んだ。
複製人間どもは確かに便利かも知れないが、この岡田にさえ害を及ぼす危険性のある、諸刃の剣だ。
もし彼らに太刀打ちする術がないのならば、自分の立場が危うくなろうものだが、この体たらくならばでかい顔はさせん。
(始末するにこしたことはないやろ…)
重傷だというのならば、バースにも、奴にさえも勝てる。オレが倒す。
「グフフ、エエとこどりよ。要は勝てばええんよ」
岡田はもう一度、にやりと笑った。
“その瞬間”は唐突に訪れた。
背高草の奥で、思わぬ呼び声がかかり、振り返れば奴がいた。
この地域は、連日の濃霧によって高湿度が保たれており、シダや菌糸がよく育っていた。
茸の上には新しい茸がひょっこりと姿を現した。やがてその上にも新しい茸が出てくることだろう。
そんな、幻想的で…すこし寂しい場所の一角で。
二人は出逢った。
「矢野…か…?」
突然の邂逅に、藪はその眼を丸くする。
「ちょっとの間やったけど、随分久しぶりに感じるなぁ」
特に驚いた様子もなく、矢野は屈託なく笑った。
意識とは無関係に、互いの頬が緩んだ。
「大層な物言いだな。簡単に死ぬかよ」
藪と矢野は、互いの肩を叩きあい、がっしりと握手を交わした。
「金本さん、赤星」
野口は、金本と赤星の居るほうに向かい、声をかける。
「おお、野口。元気にしてたか」
「無事みたいで何よりです」
「ああ、お互いな」
挨拶もそこそこに、合流した5人の選手たちはこれからのことについて話し始めた。
「矢野よ」
最初に口を開いたのは藪だ。
「赤星と金本には言ったが、俺はここを出て行くつもりだ。お前はどうする?」
「な、なんだってー!?」
これに驚いたのは、矢野ではなく野口だ。
「どういうことだ藪!」
「なに怒ってんだよ、野口…」
憤る野口とは対照的に、冷静な口調で藪は言った。
「一人で去るつもりか!?」
「いや、矢野と一緒に行くつもりだ」
「オレと…?」
「逃げるのか? 他の仲間を置き去りにするつもりか!?」
「好きでやってる殺し合いだ。邪魔してやるほど野暮じゃないさ」
その言葉に、野口は思わず拳を握り締めた。
上目遣いに藪を睨み、低い声で言う。
「藪、お前…!」
「まぁ落ち着けよ、野口」
金本が、野口の肩を数回叩く。
「金本さん…でも…」
「出て行きたいって言ってるんだろ、行かせてやるべきじゃないか。二人の問題だ、黙って見てろよ」
「二人…?」
興奮が醒めた野口は、訝る顔で聞き返した。
「ふむ…愉快な話やな。それで、ここを出てどうするつもりなんや?」
話が切れたタイミングで、それまで黙っていた矢野が口を開いた。
視線をすこし上にずらして、藪は口を大きく開いた。
「野球をしに行くんだよ」
すっ、と藪は右手を挙げる。
「――よし、乗った!」
矢野はその手を勢い良く叩く。
パァァン、と心地よい音が響いた。
その後、二人はもう一度がっしりと握手を交わした。
ども。
テスト期間だったんで暫く空けてました。
これからはちょこちょこ書いていきたいです
224 :
代打名無し@実況は実況板で:04/12/05 11:52:26 ID:qb1OsS3l
>>223 乙です
頑張ってください
あげときます
225 :
代打名無し@実況は実況板で:04/12/05 14:56:12 ID:6vZ4RmcE
藪…そろそろ佳境かな?
乙です
いつも乙です!
テスト…大変ですね、これからも忙しいでしょうが
がんばってください!