広島家の人々2

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1佐々岡爺
ウヒョスレで話題になった元旦の中国新聞記事
五人の誓いhttp://da1567.hoops.ne.jp/gonin.htmから生まれた物語
「広島家の人々」を中心とした広島ネタスレPart2です。

【前スレ】
2001年後半型ビッグレッドマシン
http://kaba.2ch.net/test/read.cgi/base/995963952/
【関連スレ】
カープ内に派閥はあるか? (カープバトロワ)
http://kaba.2ch.net/test/read.cgi/base/1002715486/
【過去ログ】
http://da1567.hoops.ne.jp/
2代打名無し@ス:01/11/08 00:27 ID:/Olgx9tD
ありがとう〜!1さん・・・(涙
3 :01/11/08 00:29 ID:U7N1XGzn
そういえば佐々岡の爺はまだダウン中?
4 :01/11/08 00:36 ID:5Ip9Cr9r
新スレおめでとうございます!!

アフォな自分には担保の意味がまだわから〜ん(w
マゾなカーサ&サドな緒方も気になります(w
そういえば、竜士釈放?
5今までの登場人物1:01/11/08 02:11 ID:/Olgx9tD
前に64さんが作ってくれたリストに追加して。()内は初登場回
(広島家の人々20で誰だかわかったら(20)という感じ)です。
もちろん名前が出る前に登場している人物はたくさんいます。
背番号順。まだ登場してない選手の背番号はとばしてます。

00:子犬のシマ(29)
0:鯉城駅駅員木村(24)
1:広島家用心棒前田(74)
2:輝裕(1)
3:父浩二の友人、鉄人祥雄(1)
4:輝裕の親友兵動(3)
5:漁師の町田(12)
6:漁師の浅井(12)
8:父・浩二(1)
9:刑事の緒方(80)
10:知憲住職(2)
11:竜士の一番弟子の子分・横松(49)
12:河豚(7)
14:博樹の親友澤崎(110)
15:博樹(1)
16:備前亭泰山(49)、UFO仮面(49)
17:名古屋コーチン鶴田(番外)
6今までの登場人物2:01/11/08 02:13 ID:/Olgx9tD
18:佐々岡の爺(1)
21:エンドウ豆(2)
22:母犬ケン(24)、甲斐の父(52)
23:竜士(2)
24:貴哉(1)
25:貴浩(2)
29:小林青年(49)
30:マスター玉木(76)
32:西山堂(6)
33:鶏のロペ(7)
34:UFO仮面の中の登場人物ヨシキ君(77)
35:新米臨時教師松本(103)
37:バイオリン弾き岡上(120)
38:前田の子分・朝山(74)
41:絵師森笠(125)
42:手品師ラドウィック(番外)
43:手品師ヤング(番外)
44:郵便配達員福地(13)
45:金本寺の仏像(番外)
46:教師の山崎(3)
47:小作農島崎(11)
48:小作農サトヤス(11)
49:ピエロのエディ(14)
7今までの登場人物3:01/11/08 02:15 ID:/Olgx9tD
50:竜士の子分・栗原(55)
51:前田の子分・末永(74?)
52:ベチの弟分・健太(56)
54:テキ屋の兄ちゃん・ベチ(54)
55:日雇い人夫福良(116)
57:建の息子甲斐(52)
58:竜士の子分・長崎(50)
59:小作農サトヒロ(11)
60:級長の田村(3)
61:日雇い人夫伊与田(116)
64:竜士の子分・井生(70)
66:お地蔵矢野(番外)
68:広池(64)
その他
鬼大下(大下教頭)(3)
松原(47)
元広島家使用人・江藤(57)
工事監督官・西田(116)
中盆の男・清原(123)
大野(番外)
町医者福永(番外)(95)
安仁屋婆(番外)
8代打名無し@ス:01/11/08 02:24 ID:/Olgx9tD
現在、番外編も含めて61人登場しやした。これで次回ハセガー登場で初登場
人物がどっと・・・。ほとんどの選手がこれで登場するんじゃないかと(w
あと末永。74で名前を書かなったのはおらのミスだね・・・。近いうちに前田と
一緒に再登場する予定なんで、その時には今度こそちゃんと名前を書いておきやす。

>>3
佐々岡の爺ももうすぐ復活予定っす!

>>4
今はまだ担保の意味が完全にわからなくて大丈夫だよ。
じきにだんだんとわかってくるから(w
でもだいぶタネを明かしたぞ。これでノムケンが登場したら
バレバレかもしれん(^^;
竜士は・・・。これも次回以降に理由がわかりやす。
カーサと緒方の関係・・・。う〜ん、いろいろ理由があるんだけどね(^^;
まあ、これも今のところノーコメントとしておこう。
964:01/11/08 02:57 ID:RF1H4fta
新スレ乙カレーでした。
ってよく考えれば、矢野地蔵途中だったんですよ(;´д`)
今日ちょっと進めたんですけど忘れられてるかもしれん(自分も忘れてたし)
登場人物の中に酒井がいないのも哀れなんで、うぷさせてもらいます。
10番外編「矢野地蔵」8:01/11/08 03:02 ID:RF1H4fta
7はhttp://kaba.2ch.net/test/read.cgi/base/995963952/733

「なんだそれは?」
住職は差し出されたそれを見て質問した。
「これは、離れ離れになった自分の子供と分け合った木彫りの鮒の半分なんです」
「お主、子供がおったのか?」
「遠い昔の話ですがね」
浅井が苦笑する。
「遠い昔って、まさかその子供は亡くなったとか?」
「それがわからないんですよ。生き別れになってしまって」
「生き別れ?」
「元々妻は子供が小さい頃に亡くなってしまったんです。私は何とか
 妻の代わりをつとめようと頑張ってました。他の足手まといになると
 わかっていても、漁の際には必ず大輔を連れて行くようにしていました。
 それは大輔が10歳になるまでかわらぬ生活風景でした」
浅井の回想を住職は羊羹を食べながら静かに聞いている。
「ところがある時、嵐にでくわいましてね。わしらが遭難せぬよう必死に
 なっとる時に大輔が海に落ちてしまったんです。ひどい風雨でしたし
 海も荒れてたのでもしかしたら大輔はもうこの世にいないのかもしれません。
 けど、わしはもう一度大輔に会えると信じてます。そしてその時のために
 これを肌身はなさず持ってるというわけです」
「そうか…」
「まあ、大輔が生きてたらあの地蔵と同じくらいの立派な青年になってるんだろうなあと
 思うと、これがあそこで見つかったのもあながち偶然ではないのかもしれませんね」
それを聞いて住職は言った。
「なんなら子供に会える様この地蔵に祈ってみてはどうだ?案外こういうものは
 その霊が宿ってたりするからな。お前さんの願いを聞いてくれるかもしれんぞ、
 自分を育ててくれた婆さんのことを思い出してな」
11番外編「矢野地蔵」9:01/11/08 03:05 ID:RF1H4fta
それからというもの浅井はランニングの途中には必ず村上山に立ち寄り、あの地蔵の
所へ向かうようになった。たまには供え物など持って行き、また雨が土からしみだして
水滴が地蔵にポタポタ落ちてる時などは家からコウモリ傘を持ってきてさしてやったりも
した。町田は不思議がった。あの地蔵に一体何をそこまでする必要があるんだろうかと。
それくらい浅井は地蔵のもとに通い詰めていた。

一方、地蔵は地蔵で困っていた。突然殺され成仏できない最中にこの地蔵に魂を移らせ、
安仁屋婆が死んだ後一人でのんびりしてきたというのに、ある日突然一人の男が願いを
叶えるために自分のもとにあししげく通ってくるようになったのである。困った困った。
願いをかなえる能力はまだ健在とはいえ、自分が死んだ時みたいにうまい具合に能力が
発揮できないかもしれない。それに死んだかもしれない息子に会わせろだなんて、
もし本当に息子が死んでたらどうするんだい?ミイラにでも会わせろって言うのかい?
矢野地蔵が矢野青年だった頃から、彼はのんびりとした性格の持ち主だった。それ故に
相手から何か言われるとその雰囲気に飲まれて泣き出すことが多々あったけれども。
だからこうも熱心に祈られると逆に困ってしまうのが矢野地蔵(であり矢野青年)らしかった。
昔安仁屋婆が話してくれた「笠地蔵」っていう話はたしか笠をかけてくれたお礼に
正月のご馳走を持っていってあげたんだっけ。傘はかけてもらったけどどうやって
あの人の息子をもっていっていいものやら。
―――とりあえずそれらしい人を探しにいってみるか。


では、雰囲気が180度異なるバトロワの続き書いてきます(w
12 :01/11/08 13:22 ID:h9Wgqg/c
な・・・なんか中島みゆきの歌が似合いそうなどん底っぷりだ(涙
13_:01/11/08 18:15 ID:/TDYD306
おぉ、新スレができとる!お疲れ様です。
登場人物紹介、人間じゃない選手の淡々とした説明にワロタ

ハセガー登場楽しみです。
しかし博樹は不幸が似合うのぅ(失礼)
14 :01/11/08 18:28 ID:JwhbPbTp
34:UFO仮面の中の登場人物ヨシキ君(77)
↑ワラタ。出てきた時の爆笑がよみがえったYO!
15ロペ:01/11/08 19:53 ID:bQZK4kR5
>>12
昭和枯れすすきも似合いそう。
16貴哉って河豚持ってったの?:01/11/09 00:36 ID:4YvM7H74
>>15
ワラタ
17代打名無し@ス:01/11/09 00:51 ID:cuYqk3jy
スマソ・・・。今夜は続きを書くのが難しそうだ(鬱 ハセガーを待ってるひと
も少し待ってくんさい。

>>64
おっ、酒井登場♪ バトロワもがんがってください。しかし達ちゃんつくづく
いい性格しとんなぁ(^^;

>>12
な、中島みゆきっすか・・・。そこまでズンドコでしたか・・・。

>>13
こんな役が似合ってしまう[・ ε ・]ってと、ファソながらアヒャ状態っすが
今年の不幸ぶりは見事こんな感じだったからなぁ。そろそろ浮上させんと。
兄弟スレのヒッキー[・ ε ・]には藁ゥしかなかった・・・。

>>14
ヨチキがこの設定になったのは、宮島の落書きから。弥山のふもとの小屋に
「助けて ヨシキ」って書いてあったんよ。大爆笑したのはいうまでもない(w

>>15
貧〜しさに負けた〜♪ いいえ、世間に〜負けた〜♪ ララララ・・・

>>16
当然持っていっています!そのシーンはこのあたりっす。
http://kaba.2ch.net/test/read.cgi/base/995963952/788
18助けて ヨシキ(w:01/11/09 01:38 ID:7A9HevfW
ヨチキといえば、浦和で迫丸コーチに「さこさん、さこさーん!」
と一生懸命呼びかけていたが、まるで気づかれていなかった。
トホホな感じで印象的だった。
19ョチキも助けて!:01/11/09 08:00 ID:/hKSSlBj
>>18
ワロタ
がんがれョチキ!
20 :01/11/09 12:20 ID:ULYY+8oV
          |
      ∧ ∧
       [-ε -]  ハヤク シアワセニ ナリタイ・・・
      〜(∩∩)────────────────
      /
    /
21ひろき:01/11/09 22:53 ID:0jXKfZSo
          |
      ∧ ∧
       [-ε -]  アゲ・・・
      〜(∩∩)────────────────
      /
    /
22[・ △ ・;]ハァハァ@ス:01/11/10 03:20 ID:DwDP6P98
2001年ビックレッドマシンがdat逝きになる前に、過去ログを
全部過去ログサイトに移動していたら、こんなに時間がかかってしもた(鬱

現在132まで収録してありやす。
文章の修正、そしてレイアウトも全面的に変更しやした。
続きは土曜日に書く予定です。遅くなってスマソ・・・。
そろそろギャグが増えていくんで、中島みゆきも枯れすすきの心配も
もう大丈夫っす。

>>18-19
浦和でそんなことが(w でも浦和で噂のヨチキの投球を見れたときは感動したよ。
また2軍の試合が関東に来てくれんかのぅ・・・。

>>20-21
ひぃ、ヒッキー[・ ε ・]だよ・・・スマソ(泣
23:01/11/10 12:39 ID:U/x5WNCi
楽しみにしてまーす!
24 :01/11/10 19:02 ID:Y2RpbyTt
>>22
がんがれ〜。楽しみにしてるよ(・ε・)
25 :01/11/10 22:42 ID:Vl/Fjm1U
一応保全age
26広島家の人々133:01/11/10 22:48 ID:l6QtmJgL
「博樹兄ちゃん・・・!」
竜士は博樹の姿を確認すると、泣きそうな顔で飛びつくように博樹に抱きついた。
「良かった!良かったぁ・・・売られていない。博樹兄ちゃんが年増のババアのツバメに
慰みものにされずに済んだんだ・・・!」
しがみつくように抱きついてグスグス泣く弟の姿に博樹もホロリときたが、竜士の口から
飛び出す信じられない内容に、思わず力いっぱい竜士の頭をはたき倒した。
「イタッ!」
竜士は布団の上に突っ伏する。澤崎は腹をかかえて笑った。
「どこからそんな想像が出るんだよ〜。」
「えっ、だ、だって・・・あの・・・。あ・・・あ・・・ぁああああああ!」
竜士は何度も拳を床に叩きつけて、怒りの声をあげた。
「あ、あいつ〜〜!!人の弱みにつけこんで・・・!ちくしょー!」
澤崎はまだ腹を抱えて爆笑していた。博樹は少し顔を赤らめてそっぽを向いていた。
「ところで、竜士は今までどこに行っていたんだよ。」
澤崎の問いに、竜士はあっと小さく声を上げ、はずかしそうに下を向いた。
「それがサツにしょっぴかれて、この間まで・・・。」
えっと目を丸くして、博樹と澤崎は竜士を見た。
「それがムショに入れられたのが2日間で済んだんだ。働き先の小料理屋の若旦那が
保釈金を持ってきて・・・。」
「あの長谷川の若旦那が?」
「うん、まあ・・・。」
竜士は釈放までいたった経緯を二人に話した。

独房の竜士が駐在所の警官に引っ張りだされ、表の入り口の部屋にやってきた時、
そこでは刑事の緒方を中心におかしな試食会が繰り広げられていた。
机の上に小料理屋の若旦那長谷川の指示で、奉公人の倉が持ってきた重箱から
一つ一つ小鉢を出していく。
「刑事さん、これがウチの新作の会席御膳です。」
「か・い・せ・き・ご・ぜ・ん・・・。ほぉ、これは豪華なもんだなぁ。」
「この会席御膳の一番の売りはこれ。」
長谷川は一つの小鉢を緒方に差し出した。
「ウチで作った特製のキムチ。これを一品料理を入れる間に必ずお出しする。
日本人向けに味付けも改造しました。どうぞ、刑事さん一つ食べてみてください。」
「ふ〜ん、なかなかに熟したキムチがまたいい按配に・・・。」
竜士はしばらくの間、目が点になってその光景を見つめていた。が、ハッと我にかえって
大声で長谷川に叫んだ。
「な、なんでお前がここに来ているんだよ!」
27広島家の人々134:01/11/11 00:02 ID:CcdZSwKI
「こら、保釈金を持ってやったきた人物に対して、その言い草がないだろう。」
緒方は竜士の方に振り向いて眉をひそめた。
「へっ?」
また竜士の身体が固まった。長谷川は無表情で竜士に振り返った。
「クッ、ククククククク・・・。」
竜士は下を向いて、おかしくてたまらないというように声を殺して笑った。
「ま、まさか、あんたに助けてもらうようになるとは思わなかったぜ。」
「これこれ。」
緒方はキムチを食べながら竜士をたしなめた。
警官が竜士の手錠を外した。竜士はやっと自由になった両手首の関節を
確かめるように何度も動かした。そこへ駐在所の外から聞き覚えのある子犬の
鳴き声が聞こえてきた。
「えっ・・・?」
あわてて竜士は駐在所の入り口に飛び出した。
「シマ!」
首のあたりが傷だらけのシマが喜んで竜士に飛びついた。
「お前、この傷・・・。肉の部分まで見えているじゃないか。」
竜士はシマの身体の確かめて首輪を外した。
「若旦那、この礼はまた後でゆっくりと。刑事さん、これで俺は釈放ってことでいいんだよな。」
「ああ、構わんよ。」
緒方はキムチが相当気に入ったのが、まだパクパク食べながらのんびりした口調で
返事をする。
「よっしゃ〜!」
シマの怪我の意味が気になる。博樹がどうなったかも気になる。竜士は気もそぞろに
広島家に向かって駆け出した。竜士の腕の中のシマがバタバタ暴れる。
「お前、走れるのか?」
竜士はシマを地面におろした。後ろ足で軽く地面を掘ると、シマは全速力で広島家に
向かって走っていく。
「お、おい。待てよ!」
必死に竜士もその後を追いかけていった。

「・・・というわけで、ここに帰れた訳で・・・。」
博樹と澤崎は土間に入ってきた泥だらけのシマを見下ろした。
「シマにも何かあったんだろうな。それにしても使える犬だ・・・。」
竜士はコクンとうなづいた。
「そうだ。こいつの怪我の手当てをしないと。」
竜士は土間におりてお湯を沸かしはじめた。
28広島家の人々135:01/11/11 01:18 ID:CcdZSwKI
コケコッコー

たくさん餌を与えられたロペが、今日は元気よく朝の鳴き声をあげた。
竜士はぼんやりと目が覚めると、階段を降りて雨戸を開けた。茶の間に引かれた布団では
博樹がぐっすりと眠っている。竜士は起こさないように茶の間の部分だけカーテンを引いて
風通しのために廊下の窓を開けた。
「・・・・・・。」
縁側に腰をおろして、竜士は頬づえをついて庭でじゃれている子犬のシマとにわとりのロペを
見ていた。
「竜士、おはよう。もう起きていたのか・・・。」
あくびをしながら、澤崎が奥の部屋から出てきた。竜士は後ろを振り向いてコクリとうなずいた。
顔を洗いに澤崎は土間に降りた。竜士はまた視線を庭に戻した。
「どうした?」
ぼんやりとただ庭を見つめている竜士に、澤崎は隣に座って声をかけた。
「ん・・・。」
空返事で竜士は庭を見つめている。
「なあサワ兄ちゃん。兄弟って、兄弟ってなんだろう・・・。」
突然、竜士はポツリと呟いた。
「ん。」
昨日同じ言葉を博樹もいった。
「俺さぁ、なんだかわからなくなっちゃったよ。俺のやってきたことは間違っていたのかなって・・・。
あっ、博打はまずかったってわかってるけどさ・・・。」
「・・・・・・。」
「貴浩や貴哉や輝裕は、今どんな気持ちでいるんだろう・・・。」
「・・・・・・。」
「俺、今まで博樹兄ちゃんに一人でためこむなって責めてきたけどさぁ、
俺も人のこといえないよなぁ。」
自嘲気味に竜士は笑った。
「俺も含めて兄弟全員、そして佐々岡の爺もおんなじ過ちをしていたんだ。
それがこんな結果になって・・・。」
竜士は下にうつむいた。
澤崎はポンと竜士の肩を叩いた。竜士ははにかみながら笑った。
「そうだ!」
澤崎はスクッと立ち上がって奥の部屋へ戻ると、ある物を持ってもう一度竜士の隣に座った。
「新しくロボットというのを作ってみたんだ。この四角い頭といい、胴体や足といい、
竜士にそっくりだろう。」
ニッコリ笑ってロボットを竜士に差し出す澤崎に、竜士は絶句してロボットを見つめた。
29代打名無し@ス:01/11/11 01:25 ID:CcdZSwKI
今日のところはこのへんで・・・。
ハセガー、倉、キムチが初登場。キムピン、鈴衛あたりもじきに登場するでしょう。
(待ちに待たせて、ハセガーこんな感じでよかったでしょか(汗 )
そろそろ貴浩の居場所がわかりやす。そして貴哉の再登場も間近か。
アキヒロ。ああ、まだ出せないな(・ ε ・)は・・・。
30 :01/11/11 01:26 ID:QxWEY7Wl
( ̄∀ ̄)「俺にソクーリなロボット・・・(・∀・)イイ!! 」
31 :01/11/11 01:50 ID:II9yb6W7
     ____
    /       \
   /三三三三☆三\
  /∵∴∴,(・)(・)∴|
  |∵∵/   ○ \|
  |∵ /  三 | 三 |  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  |∵ |   __|__  | < 本スレでやれ 馬鹿
   \|   \_/ /  \_______
    \____/
    , -/へ/\/`- 、
   /./  ./o    i. \
32 :01/11/11 02:01 ID:H0xMhmO6
若旦那のはせがー&奉公人クララ萌〜

良かった・・・浮上してますね、広島家。
ところでシマ大丈夫かぁー!
貴浩登場近いんですね!?よっしゃー楽しみです。
33 :01/11/11 02:57 ID:SZx29pCp
キムチ・・・緒方に気に入られて良かったね・・・(w
34_:01/11/11 19:13 ID:iK96Iv3F
保全age
35  :01/11/11 21:13 ID:S7oWpg1t
キムチに対しての突っ込みが少ないのが笑える。
36_:01/11/11 21:47 ID:5LuiSfq5
>>35
そんなキミの突っ込みにワラタ
助清さんも神宮行ってたんですね。
自分は朝っぱらから行ってました。
黒田いなくて残念。なぜいないんだ〜。
楽しみにしてたのに!
粗いさんには終始笑かしてもらったが。
しかしプロが負けたらアカンでしょう…。
37広島家の人々136:01/11/12 01:14 ID:y9S62Viy
「博樹兄ちゃん、ボクね、今のままでいいんだ。兄ちゃんたちが無理して兄弟がバラバラに
なるくらいなら、今のままでいい。」
輝裕が金の入った巾着袋を博樹に差し出して、ニッコリ笑う。
「輝裕・・・。」
博樹は笑顔の輝裕を呆然と見つめ、震える手で輝裕の手にしている巾着袋に手を伸ばす。
そこで輝裕の姿が消えた。

「・・・・・・。」
一体いつまで眠ってしまっていたのか。もう一度視界にうつった見慣れた家の光景に、博樹はまだ
朦朧とした頭でうっすらと目が覚めた。
「よっ、おはよう!」
庭で洗濯物を干していた竜士が、縁側から威勢良く声をかけた。ハッと博樹は急に意識がはっきりした。
「今、いったい何時なんだ!」
あわてて壁にかけられた振り子時計を見る。時計の針は午前10時を少し過ぎていた。
「・・・・・・。」
目を大きく丸くして、そのまま博樹は起き上がることができなかった。
洗濯物を全部干し終えた竜士は縁側から家にあがり、よそいきのこざっぱりした洋服に着替える。
「たまにはいいんじゃねぇの〜。」
竜士は笑って軽口でちゃかした。
「澤崎は?」
「ああ、畑に行ったよ。おじさんに連れられて一度手伝ったくらいだなぁって、やけに面白がって
鍬とザルを持って出かけていったよ。」
「お、おい、そこまで・・・!」
博樹はあわてて布団から起き上がろうとした。だが
「ちょっと、待ったー!」
振り返った竜士におおげさに声で制止されてしまった。
「大事なことを忘れてないか、博樹兄ちゃん。」
「えっ?」
「担保!」
「!」
「まだこの赤紙が担保だと完全に決まったわけじゃないんだぜ。それに一回目の金利は結局支払って
いない。そこへ担保の対象になった人間がのこのこと外を出歩くのも、狙ってくださいといっているもんだ。」
「・・・・・・。」
「相手がまだどう出てくるかわからない。その怪我は前向きに考えて、今は怪我人はおとなしくここで横に
なっていた方がいいって。」
「・・・・・・。」
「といっても、俺も担保はまずその“赤紙”がらみだと思うけどな。だいたいムラの大黒柱の親父が兵隊に
取られてああなって、間髪おかずに跡を継いだ博樹兄ちゃんに来るか?いくら今度の兵隊の法律が欠陥
だらけといったって、そりゃおかしすぎるって・・・!」
「博樹兄ちゃん、ボクね、今のままでいいんだ。兄ちゃんたちが無理して
兄弟がバラバラになるくらいなら、今のままでいい。」
輝裕が金の入った巾着袋を博樹に差し出して、ニッコリ笑う。
「輝裕・・・。」
博樹は笑顔の輝裕を呆然と見つめ、震える手で輝裕の手にしている巾着袋に
手を伸ばす。そこで輝裕の姿が消えた。

「・・・・・・。」
一体いつまで眠ってしまっていたのか。もう一度視界にうつった見慣れた
家の光景に、博樹はまだ朦朧とした頭でうっすらと目が覚めた。
「よっ、おはよう!」
庭で洗濯物を干していた竜士が、縁側から威勢良く声をかけた。ハッと博樹は
急に意識がはっきりした。
「今、いったい何時なんだ!」
あわてて壁にかけられた振り子時計を見る。時計の針は午前10時を少し過ぎていた。
「・・・・・・。」
目を大きく丸くして、そのまま博樹は起き上がることができなかった。
洗濯物を全部干し終えた竜士は縁側から家にあがり、よそいきのこざっぱりした
洋服に着替える。
「たまにはいいんじゃねぇの〜。」
竜士は笑って軽口でちゃかした。
「澤崎は?」
「ああ、畑に行ったよ。おじさんに連れられて一度手伝ったくらいだなぁって、
やけに面白がって鍬とザルを持って出かけていったよ。」
「お、おい、そこまで・・・!」
博樹はあわてて布団から起き上がろうとした。だが
「ちょっと、待ったー!」
振り返った竜士におおげさに声で制止されてしまった。
「大事なことを忘れてないか、博樹兄ちゃん。」
「えっ?」
「担保!」
「!」
「まだこの赤紙が担保だと完全に決まったわけじゃないんだぜ。それに一回目の金利は
結局支払っていない。そこへ担保の対象になった人間がのこのこと外を出歩くのも、
狙ってくださいといっているもんだ。」
「・・・・・・。」
「相手がまだどう出てくるかわからない。その怪我は前向きに考えて、今は怪我人は
おとなしくここで横になっていた方がいいって。」
「・・・・・・。」
「といっても、俺も担保はまずその“赤紙”がらみだと思うけどな。だいたいムラの大黒柱の
親父が兵隊に取られてああなって、間髪おかずに跡を継いだ博樹兄ちゃんに来るか?
いくら今度の兵隊の法律が欠陥だらけといったって、そりゃおかしすぎるって・・・!」
39広島家の人々137:01/11/12 03:15 ID:y9S62Viy
国民を徴兵する法律は、昭和に入ると同時に「徴兵令」から「兵役法」に改正された。
20歳以上の男子のうち徴兵検査で甲種合格をしたものを中心に2〜3年軍隊に
入営することになる。ただ「兵役法」の場合、現役を除隊した者、また現役兵として
入営しなかった者も召集される対象とされた。父の浩二はこれで大陸に出兵した。
だが、問題はこの法律で徴兵されるといっても、まだ本格的に大がかりな戦争に突入して
いなかったこの時代、実際は全体の3割程度しか兵役に徴兵されなかったことだ。
もともと軍人を希望する以外、ようは運不運で兵隊にとられるかどうかが決まっていた。

「他の兄弟が兵隊に取られる可能性があるかっていったって、俺はこの肩で第二乙種。
(兵役に取られる順番が一番後回しにされる。)貴浩も寺の関係で住職がいろいろ手回し
したらしいって聞くし、貴哉は徴兵検査は来年、いくら男ばっかりの家族だからってこうも
召集されるのは、どうみたっておかしいよ。後はたて続けにムラ長を兵隊にとって
求心力の弱まった緋鯉村をのっとろうとしている奴がいたらって場合だが・・・。」
「・・・・・・!」
竜士はニヤリと笑った。
「だけど、そう仮定しても、じゃあなぜ博樹兄ちゃんを襲って怪我を負わせたのか、そこが
わからないんだよなぁ。博樹兄ちゃんを兵隊に送りこみたいのが目的なら、これでご破算
だし・・・。」
博樹は傷だらけの自分の身体をじっと見た。
「それに、俺がサツに連れていかれる寸前に言ったあの男の言葉。あれは結局どんな意味
だったんだろう・・・。」
「なんていわれたんだ。」
「あんたがいると邪魔なんよ〜。」
「・・・・・・。」
二人は、ちゃぶ台の上に置かれた赤紙をあらためて見た。
「俺たちを狙っているのは複数の存在ってことなのか・・・。」
「さあ・・・。」
竜士は壁にかかっていた上着をはずした。
「とにかく相手の目的がはっきりわからないうちは、サワ兄ちゃんのいう通り、下手に
動くのはやめよう。それでいいように振り回されるのはもう真っ平ゴメンだし、それに・・・。」
「・・・・・・。」
「俺たち兄弟、佐々岡の爺も含めてお互いのこと知らなすぎたしさ・・・。」
博樹はうつむいた。
「ははは・・・。笑っちゃうよな。仲がいい、仲がいいっていわれてさ、こんな落とし穴が
あったなんてさぁ。」
竜士はわざとおどけて大笑いに笑った。
40/:01/11/12 03:21 ID:xpRfl+lE
・・・・
41代打名無し@ス:01/11/12 03:43 ID:y9S62Viy
もう少し話を続けた方がいいよなぁ。これじゃ全然話が進んでないし・・・。

なんだか難しい話題も出てきてしまいやしたが、ここでそろそろ説明しないと
ラストに話が展開しにくいので、じきに噛み砕いて話の中に入ってだんだん事情が
わかってくると思うんで、もしわからなくても今のところサラリと流してくんさいm(_ _)m

昭和前期を設定にもってきたなら、とことん利用してやれと思ったら、こんなもんが
できまして、果たしてネタとして成立するか、ちと昭和史の勉強もしてみやした(汗
ヨカタよ。ちゃんと裏付けもついてきてくれてのぅ。これでダメだったら、9月中旬に
プロット組み立て直しだったんでホッとしやした。
あえていうなら時代は昭和5〜10年の間くらいでしょかね。
これ以後の時代はキツいっす。はだしのゲソスレを読んでますますそれは・・・。

今日は貴浩、貴哉、佐々岡の爺の再登場の目星が見えるところまで何とか書いて
みやす。まず長男、次男が立ち直ってくれないことには三男以下もどうしようもないんで
そこまではキッチリと書いておきやす。

>>32
シマはあと2回ほど活躍しやす!いや、使えますよ、シマは(w

>>33-35
キムチ・・・あれで良かったのかキムチ(汗

>>36
寝坊と電車の接続の悪さでま〜た球場に遅れちゃってね(鬱
黒田はもういいっすよ。 おらにとっちゃいつものことだから(w
ああ、やっぱり〜(^^; パや大学の選手をたくさん見れて、おいおいな
場面もたくさんあったけど、久しぶりのナマ試合充分堪能しやした(w

>>40
スマンのぅ・・・。引いたかな(^^;
42 :01/11/12 04:17 ID:QpUsgB/i
ああ・・だんだんフカーツの兆しが・・・(wえかったよう
43広島家の人々138:01/11/12 05:37 ID:y9S62Viy
一人一人が突き当たった壁を、みんなが知っているとは限らなかった。わかっているとは
限らなかった。こうなったことで昨夜、兄弟たちそれぞれに起きた出来事を突きつめていって、
博樹と竜士はア然と呆けるほかなかった。
輝裕がそこまで追いつめられていたことも知らなかったし、貴哉が家出までしてしまった
事情もわからなかった。貴浩が行方不明になったのも、博樹が大下から借りた金を泥流に
落としたことが理由だったのも竜士は全然知らなかった。お互いがこうであろう、相手もこう
思っているに違いない、自分のわかる範囲の中で勝手に思い込んで思いやって、互いを
追いつめさせていった。
佐々岡の爺がああなった時気づいたはずなのに、博樹はこれ以上傷つくことを恐れて、
結局4人の弟たちを追いつめさせた。それは竜士も同じで、自分の主張を押し通したがために
他の兄弟そして自分の子分たちもドツボに引き入れてしまった。
「俺さぁ、これから福永先生のところにいってくるよ。結局ドタバタして爺の見舞いに全然
行けなかったし、爺のことも心配だから。あと金本寺に行って貴浩のことも・・・。」
博樹はビクッとした。
「サツのところで、住職に俺の子分の一人をさらわれちゃったんだよ。昔、貴浩がウチから
引っ張られていったように。あいつが今どうしているか気になるし、もし無事なら住職が何か
たくらんで貴浩を隠していたとしても、あいつなら何かつかんでいるかもしれないからさ。」
竜士は苦笑した。
「でも、結局は俺の下でチンピラやっているより、住職のところにいる方があいつのために
なるのかもな・・・。」
竜士は空笑いでさびしく笑った。
「とにかくこれからは対話をしよう。今みたいにそれぞれの事情をつき合わせたら、
答えが見えはじめた部分もあるんだから。」
「・・・そうだな。」
博樹はうつむきながら小さく笑った。
「よぉーし!じゃあ・・・。」
竜士は土間に飛び降りると、鎌と包丁を持って茶の間に上がり、ちゃぶ台の上に載せた。
「おいおい・・・。」
「甘い!家にいたって、いつあいつらに狙われるかわからないんだぜ。いざとなったら、
これで抵抗する!逃げれたらどっかに隠れる!」
プッと吹きだして博樹は笑った。
「笑い事じゃないよ。ほ〜ら、いっているそばから来た来た。見たことないぜ、あんな奴。」
いかにも物腰の良さそうな人物が、思いつめた表情で広島家にやってくる。玄関に立ち
ふさがるようにして、竜士はその人物を迎えた。相手はハッと竜士を見てすぐに声をかけた。
「あの・・・貴哉くんのお兄さんですか?」
竜士が、そして茶の間にいた博樹があっと小さな声を洩らした。
44代打名無し@ス:01/11/12 05:43 ID:y9S62Viy
ふう、ここまで書いたら次の展開にうつれるな。

なんだかカーサの再登場の方が早そうだよ。後、甲斐たんとお鏡たんか・・・。
それから貴浩?それともこの前後? まあ次回予告はこんなところか。

>>42
フカーツしているように見える?それはヨカタあるよ(w
45_:01/11/12 12:30 ID:g6TgYNKc
り、竜士がマジメだ〜。
アホver.竜士とメリハリついてて(・∀・)イイ!
カーサ再登場期待age
46広池オタ:01/11/12 15:13 ID:xSIAka8y
広池がいい人でヨカタ。
47 :01/11/12 22:15 ID:1tXblRC0
えんどうまめage
48 :01/11/12 22:16 ID:1tXblRC0
ageてなかった・・・ハズカシ
49_:01/11/12 22:27 ID:YeQo+oJm
>>47-48
まぁ、ええことよ。
50 :01/11/13 00:23 ID:Mgh+aPmY
この選手から野球を取ったら・・・ というスレで極道?物の
小説が始まってます。カープの選手も金本、前田、新井さん
などが登場しているので一度のぞいてみてはいかがでしょうか。

http://kaba.2ch.net/test/read.cgi/base/1002328316/l50
51代打名無し@ス:01/11/13 00:32 ID:oX3gocvk
>>50
ぎゃはははははは(w
腹がよじれるほどワラタ。
兄貴と粗いが最高だ〜!!
52広島家の人々139:01/11/13 02:19 ID:i93Fg/b8
相手の男性は自分の名前を広池と名乗り、貴哉と出会った経緯、そして貴哉の行方を
探してここに訪ねてきたことを語った。
「私が貴哉くんに、貴哉くんは学校に行かないの?と尋ねてしまったのがいけなかったんです。
いつもおっとりしていた貴哉くんが、あの時はひどく動揺して私に反論してきましたから。」
「・・・・・・。」
「それで輝裕くんの進学のことも聞いた私が、私の養子にならないかと貴哉くんにいったんです。」
ハッと顔をあげて、博樹と竜士は広池を見た。
「私は東京で一人暮らしですし、私の給料なら貴哉くん一人ぐらい上の学校に通わすことも
できる。その方が貴哉くんのためにも輝裕くんのためにもいいのではないかと思って・・・。」
博樹と竜士は、貴哉によく似た容貌の紳士的な雰囲気をもつ広池を複雑な気持ちで見た。
「でも、それは私の軽はずみな考えでした。すみません・・・まだ貴哉くんの行方が見つからない
のなら、それはそこまで貴哉くんを追いつめさせてしまった私の責任です。」
広池は手をついて深々と頭を下げた。
「博樹兄ちゃん、これで貴哉が家からいなくなった理由もわかったな・・・。」
竜士が淡々と、だがどこかさびしそうな声で、その場の静寂をやぶった。
養子という見方もある。しかし貧乏な広島家からの口減らしの意味もある。輝裕の進学と
引き換えに口減らしの対象になるとすれば、竜士が働きに出、貴浩が金本寺に連れていかれて
弟子となった今、残る対象は貴哉しか残っていなかった。そしてそれはうすうす貴哉も自覚して
いたはずだ。そして広池からそれを提示された。その時に相談できる兄弟が誰も残っていなかった。
貴哉の頭の中が完全にパンク状態になってしまうのも当然である。
「顔をあげてください。」
博樹は広池に声をかけた。
「こちらの方こそ、今まで弟がお世話になりました。」
博樹は頭を下げた。竜士もコクンとうなずく。
「弟とも話していたんですよ。家族のこと、兄弟のこと。今まで当たり前に思っていて、こうなる
まで気づかなかったこと。広池さんの気持ちはよくわかります。家族って・・・あたたかい。ホッと
できる。どこかで求めてしまうものなんだと・・・。」
「・・・・・・。」
「貴哉も、弟もそれを無意識にどこかであなたに求めていたのかもしれません。」
「俺たちが貴哉の気持ちを汲み取ってやれなかったなぁ・・・。」
竜士がしんみりとうつむいて呟く。広池は身体を震わせながら、顔をあげてじっと二人を見つめると
またガバッと頭を下げた。
53広島家の人々140:01/11/13 03:25 ID:i93Fg/b8
「じゃあ貴哉がいなくなった理由もわかったことだし、ちょっくら貴哉の行方を探しに行くとするか。」
カラッと明るい声で竜士はスクッと立ち上がると、タンスから貴哉の服を取り出した。
「これで、あとは・・・。」
竜士はシマの名前を呼んだ。首が赤チンだらけのシマが喜んで土間に入ってくる。が、竜士の手に
握られた貴哉の服を見ると、きゃんきゃんと大きな声で吠え、サッと庭に駆け出していった。
「ほ〜ら、あいつは何か知っているかもしれない。博樹兄ちゃん、じゃあこのまま爺のところと
金本寺にも寄ってくるわ。」
竜士は貴哉の服をほっぽりだして履をはくと、上着を片手に勢いよく家を飛び出した。庭先では、
シマが竜士に早く来るようせかすように吠えている。
「わかったわかった!」
竜士はシマの示す場所へ、できる限りの速さで後を追いかけていった。

「お、おい、シマ。ここが貴哉の居場所か?」
竜士は呆然と港で立ち尽くした。シマはくぅんくぅんと海に向かって小さな声で鳴いていた。
「ここはいつも貴哉が河豚を釣っていた場所の一つじゃないか・・・。」
竜士はガクンと腰を下ろした。岸壁ではやせこけた河豚が何匹もすいすいと泳いでいる。
「まさか、河豚と一緒に海に身を投げたなんてことしてないだろうなぁ、貴哉・・・。」
竜士は四つんばいで岸壁を見下ろして、気持ちよさそうに泳ぐ河豚を見て、ため息をついた。

今日も今日とて、横松は知憲住職の下働きにおわれて金本寺中を飛びまわっていた。
無理矢理にこの生活に慣らされてしまったような気がする。朝5時から本堂ではじまる
朝の勤行も、最初のうちこそコクリと居眠りをして住職から関節固めをくらったが、そのうち
住職の後ろでお経の一つも少しは唱えられるようになっていた。
一日三食の食事作り、そうじ、洗濯と休む間もないほどの忙しさも、それが当たり前になって
くると、何故かどこか余裕が生まれてきた。夕食を食べた後、住職は文字の書き方を教えて
くれた。学校に行ったこともない割に、意外に横松が豊富に物事を知っていたので住職は驚いた。
「紙芝居をよく見ていたからだよ。」
「ほぉ、一体どんなのが好きだったんだ。」
「小林青年とUFO仮面!UFO仮面のポーズが面白いんだ。こうやって「UFO仮面!」って
やって・・・。」
「・・・そ、そうか。」
興奮しながらうれしそうにUFO仮面のポーズをとる横松に、さすがの住職もついていけず、
空笑いでごまかした。
「さあて、次は庭の草取りか・・・。」
横松はザルを物置から取り出した。住職は今日は奥の広間に座り込んで何やら考え
込んでいる。
ひゅ〜♪と軽快な口笛の流れが下の石段から聞こえてきた。
「えっ?」
横松は草を取る手をやすめて、立ちあがった。
飄々とした雰囲気の青年が、金本寺の境内に入ってきた。
54代打名無し@ス:01/11/13 03:46 ID:i93Fg/b8
140まで逝ったか。140でこの辺か・・・。まあラストが見えてきているような気も
するが、まだ乗り越えなけりゃいけない山場が2、3あるね・・・(汗

今日は>>50の893ネタといい、読売バトロワといい、いやぁスゴイっすね(^^;
読売バトロワの二岡編は正攻法で来るか興味しんしんだったけど、いやはや
まっすぐ来た来た。ちょと感動してしまいやしたヽ( ´ー`)ノ
形を違え、狙っているところは「広島家」と一緒だ♪
「広島家」の今の展開で謎がまださぱーりわからない方は、ヒントが
あの読売バトロワ二岡編に隠されてますけぇ、読んでみてくんさい。
あっ、こっちで二岡が登場する予定はありやせんよ。
マジメに出したら簡単に収拾がつく人物じゃないっしょ(汗

>>45
とうとう狂言回しの主役の一人が博樹から竜士にバトンタッチ。
まだしばらくの間、竜士大活躍っすよ。いろんな顔を見せてくれると思いやす(w
カーサもだんだんおいしい役になっていくぜよ。

>>46
ヨカタ。広池のキャラは最初からこんな感じで考えてやした。
やっぱりまず第一印象がいい人なんだよな〜。あと大人のイメージ(w

>>47-49
ほっこりした(w いつもあげてくれてありがとう。
ま〜めまめまめ まめまめ ェンドゥ〜♪
55 :01/11/13 08:11 ID:915QFacb
>>50
粗いさんはどこ行っても粗いさんだねぇ(w
56_:01/11/13 20:30 ID:5J1buCCf
あれ?貴哉は広い毛タンとこいったんではないのか?
あてが外れた。どこいったんだ、ホントに。

読売バトロワ、2岡編泣けるじゃねーか。
これがヒント?
う〜んワカラン。マターリ続きを待つか。
ゴール近し?がんがれ助清さん!!
57 :01/11/13 22:55 ID:cpcfCMz3
俺も貴哉は広池タンのとこに行ってるのだとおもてたYO
58広島家の人々141:01/11/14 01:06 ID:vzxy2WIZ
「うひょ〜〜〜♪」
青年は興奮して右へ左へと金本寺の境内の中を飛びまわる。檀家の人?それにしちゃ
変な人だなぁ、それとも参拝客?そんなに有名な寺だったのかなぁ、ここって。
横松は怪訝な表情で目を輝かせて駈けずりまわる青年を見ていた。
「どうした、何かなにかあったのか、横松。」
青年の奇声が客間にも聞こえてきたのだろう。知憲住職が憤然として本堂の廊下に現れた。
「あっ・・・。」
目の前の出来事を伝えようと横松が言葉を発する前に、
「ああ、あんたがこの寺の住職なのか。」
青年がとびっきりの笑顔で本堂の階段に駆け寄った。
「なんじゃあ、お前は?」
あきれて知憲住職は青年を見下ろした。だが青年は意も介さず
「なあ、この寺って絵馬とか何にも飾ってないのか?」
と、目をらんらんにして住職に尋ねてきた。
「なんじゃ、就職活動か・・・。」
知憲住職はくるっと後ろを向いて元の部屋に戻ろうとする。
「あっ、ちょちょ、ちょっと待ってくれ〜!」
青年はあわてて半紙と携帯用の筆を取り出すと、サラサラと一筆書きで絵を描いて
住職に無理矢理差し出した。
「ほぉ・・・。」
知憲住職は思わず感嘆の声をあげた。横松も気になって住職のもとに駆け寄った。
「あっ・・・!」
「よぉし、採用決定!ちょうどウチの奥の客間のふすまが古くなって、新しいのに変えよう
と思うとったんじゃ。お前に新しいふすまの絵を書いてもらおう。」
「やったぁーー!これでしばらくの間、食い扶持に困らない!」
青年は両手をあげて大きな声をあげて喜んだ。横松は目を点にして、信じられない気持ちで
青年の描いた絵と住職を交互に見た。住職は客間を緊縛された女の絵でうめるつもりなの
だろうか。
59広島家の人々142:01/11/14 01:07 ID:vzxy2WIZ
「ところで、おぬしの名前は?」
「あ、俺は森笠っていいます。」
森笠はニッコリと笑顔で答えた。
「ふむ。で、この絵はどこで習得して・・・?」
「俺、伊藤晴雨にあこがれて、これは独学で・・・。」
「なるほど伊藤晴雨か。最近あこがれる若者が随分増えたと聞くな。そうか、伊藤晴雨なら納得だ。」
知憲住職はあきれた表情も見せながら笑った。伊藤晴雨とは、世間を震撼させた緊縛絵師。
彼の描く絵はみな女性を縛り、なぶらせ悲痛な表情を浮かべさせたものばかりで、その淫猥な
世界から警察にも捕まった経歴も持つなかなかに奇矯な人物である。
「でも、晴雨は日本髪の女性が縛られ、苦しみ喘ぐ姿にこだわりますけど、俺はそれを今風の
女性で・・・。」
「それで三つ編みの女学生の緊縛絵なんだ。」
ぼそっといった横松に、えっと顔色を変えて森笠は横松を見た。
「観音堂で見たよ。三つ編みの女の子が縛られて喘いでいる絵。」
横松はニコッと笑っていった。
「お前、あれを見たのか〜!」
森笠はすっとんきょうな声をあげて、作務衣姿の横松をしげしげと見た。
60代打名無し@ス:01/11/14 01:21 ID:vzxy2WIZ
今日は朝から仕事なんで、このくらいで・・・m(_ _)m

高畠華宵まではかわいかったが、伊藤晴雨までいったらヤバイかな・・・(^^;
知るひとぞ知る、一部では非常にマニアをいて有名な昭和前期を代表する緊縛
画家です。同期が竹久夢路で、晴雨が緊縛絵のモデルにしていた女性を夢路が
奪って自分の絵のモデルにしたというエピソードもありやす。
緊縛絵ばかりでなく、緊縛写真も撮っていて、もうもろエロの世界っすよ。
ウヒョスレ住人は好きかもね・・・(^^;

>>55
粗いさんはいつも笑えるね、ホント(w

>>56-57
広池たんのところに行くと思われてましたか。ありゃりゃバレバレの
展開だなと思っていたら、そうっすか。まあ兄弟で3番目に立ち直って
くれるのが貴哉ですから、もう少し再登場を待ってくんさい。
河豚がポイントっす(^^;
(もう完全に河豚があってこその貴哉になってる(汗 )
61   :01/11/14 01:50 ID:BBabsyX5
カ、カーサ?!!!(w

てことは(・ ε ・)or( ̄粗 ̄)のどっちかが最後ですか?うーむ
62 :01/11/14 08:40 ID:uWv0d0Co
河豚・・・なにげにおいしい役なんじゃ・・・?(w
ともかく、浮上の兆しが見えてきてほっとしてるYO!
63 :01/11/14 09:56 ID:G7BYmfjY
>もう完全に河豚があってこその貴哉になってる
同じ食材なのにこの違い……はっ、もしやキムチも後々重要な役どころに!?(w
64 :01/11/14 13:43 ID:V1rQRwj8
アゲときます。
65_:01/11/14 14:57 ID:wSAZCjgr
>>63
河豚は生物だが、キムチは調理後だからな〜(w
カーサぁゃιさ満点!
自分のイメージは、二の腕を出して絵を書いてます>カーサ
66 :01/11/14 16:44 ID:S04sKhq0
カーサの描いた緊縛絵・・・(;´Д`) ハァハァ
67 :01/11/14 20:28 ID:pKv9zFMJ
いまさらですが二岡編読んでみました。
う〜んあれがヒントって事は・・・広島家も周りの人間から
邪毘屋にお金で買収されるって事ですかい?
68 :01/11/14 23:10 ID:WQkj0C8F
age
69 :01/11/15 05:01 ID:GImVIJeB
森笠の描いた緊縛絵は藤崎詩織似だったであろう
70_:01/11/15 06:15 ID:Ew05xyUE
age
71_:01/11/15 20:50 ID:A7KhiKhS
続き期待age
72 :01/11/16 01:27 ID:jxQSmZMu
保全age
73代打名無し@ス:01/11/16 02:23 ID:3C2pUeNe
パソ、壊れたし・・・(鬱
いつまで、今の状態で使えるか・・・・゚・(ノД`)・゚・。
頻発フリーズの心配さえなくなったら、続きうぷするよ〜ォロォロ
74広島家の人々143:01/11/16 04:24 ID:/7JcagRx
ランチタイムが過ぎ、あれほどいた客も今は誰も姿がなく、甲斐は流しでのんびりと
食器を洗っていた。もう一人の雇われ人岡上は、もうすぐ店にやってくる。
玉木はゆったりとカウンターで煙草を吸っていた。
カランカラン
楽器の他に小さな手提げ袋を持って、岡上がやってきた。
「あっ・・・。」
パッと顔を輝かせて、甲斐は流しから店の入り口の岡上のもとに駆け寄った。
「これがこの前話したもの。」
岡上は無表情に近い顔で甲斐に手提げ袋を渡した。
「ありがとう!」
甲斐は袋を受け取ると、早速ソファに座って中を開いた。
「そこにお父さんの手がかりがあるといいんだけどね。」
玉木は灰皿に煙草をつぶして、甲斐の座るソファに近寄った。
「父さんと最後に別れた場所が緋鯉村ってわかっているから、あとはお祭りをやった神社か、
雨を降らしたお坊さんのいるお寺の名前がわかったら、何か手がかりがつかめるかも
しれないと思って・・・。」
「西国七十番霊場巡礼。岡上くん、君も随分信心深いんだね。」
「いえ、別にただ寺や神社を巡ったりするのが好きだから・・・。」
反対側のソファに座っていた岡上はどう答えればいいか、頭をかきかき、照れながら
返事をした。
「あっ、あった!」
突然、甲斐が大きな声をあげた。玉木と岡上は同時に甲斐が指さした小冊子の記事に
目を向けた。
「第十番札所 赤裸山 金本寺!多分このお寺が雨を降らしたお坊さんのいるお寺だよ。」
「へぇ・・・、そこは行ったことがないな。」
「どうだ、早速明日あたり二人で緋鯉村へ行ってみては?」
玉木の提案に、甲斐と岡上はかなり驚いた表情で玉木を見た。
「そこにお父さんの手がかりがあるなら、早いうちに行った方がいいだろう。だけど、担保の
意味がまだわからないうちは、甲斐くんが単独行動を取るのは危険すぎる。」
「・・・それで俺も一緒に?」
「寺社巡りが趣味なら、一ヶ所多く寺を見れて、君にとっちゃ万々歳じゃないか。」
ニッコリ笑って図星をいう玉木に、岡上は無理に笑ってごまかすほかなかった。
「じゃあ、これが二人の電車賃。」
「マスター、そこまで!」
「なぁに、こうなったらとことん付き合うよ。これも縁だからね。あっ、緋鯉村に着いたら、
広島家にも是非訪ねなさい。そこに君のお父さんと同じ“担保”になった博樹さんがいるから。
そこでもお父さんの手がかりがきっとつかめると思うよ。」
「マスター、あ、ありがとうごさいます。」
甲斐は涙ぐみそうになりながら、深々と玉木に頭をさげた。
75代打名無し@ス:01/11/16 04:47 ID:/7JcagRx
くそ・・・、今日は続きをたくさん書くつもりが計算違いだったぜ(鬱
ネットとWpadのいかれる心配がなくなったのだけは、不幸中の幸いだったが。
スマソ、こんなところで時間オーバー。続きは明日、佐々岡の爺再登場まで書こうと
思うとりやす。貴浩まで・・・いけるかな・・(汗

>>61
う〜ん、どっちなんでしょ。まだそれは書いてみないとわからない。でも(・ ε ・) の
可能性のほうが高いかな。5人目、最後の一人が立ち直ったとき、あの5人の誓いのシーン
へそのまま話が続いていくので、5人目立ち直る=ほぼ最終回と思ってもらっていいです。

>>62
キムチ、出番がちと遅くなっちゃったね(^^; キムチを重要な役にするとしたら、番外編を
書かないと無理かも。でもハセガーと竜士で奉公時代の竜士の番外編を1本書くつもり。
すぐに書けるかどうかわからないけど、その時にキムチは登場させようかと思ってやす。

>>65-66
>自分のイメージは、二の腕を出して絵を書いてます。
へへへっ、おらもそのイメージでカーサは絵師に決まったんよ(w
スマンのぅ・・・伊藤晴雨に例えた形になっちゃって・・・。でも晴雨も
美学を持ってその道を全うした人ですけぇ、カーサも自分なりの主張を
これからいうよ。信じてくだせぇ、後半登場ながらカーサの役どころは
かーなりおいしいんだよ!

>>67
ノムケンが登場すると、どこが狙っているところか確実にわかると思いやすヽ( ´ー`)ノ
今のところ、似ているところといえば人身売買の点っすよね。

>>69
それじゃ、カーサの「広島家」での最後は伝説の樹の下で・・・(w
76あっ、書き忘れ(汗:01/11/16 04:52 ID:/7JcagRx
過去ログ140まで更新しやした。
あぅ、それにしても141の誤字脱字が多すぎるぜよ。反省。
77広島家の人々144:01/11/16 14:51 ID:EpybBITh
父と再会し、別れたのも緋鯉村だった。あの夏祭りの日から二月近く過ぎている。
汽車の窓から見える田んぼの稲も、気持ちばかり穂をたれはじめていた。
「緋鯉村か・・・。あまり聞いたことがない村だが・・・。」
岡上は小冊子の金本寺の案内を見て首をかしげた。ずっと窓べりに肘をつけて外の風景を
見ていた甲斐が振り返り、コクンとうなずいた。
「ボクも、この前の夏祭りではじめて行った村なんだ。」
ある日突然、甲斐の家の郵便受けに一通の封書が入れられてあった。見慣れた父の文字に
甲斐はあわてて中を開いた。そこには簡単な鯉城駅周辺の地図と鯉城駅行きの切符が。
いつも父との再会は、こんな唐突な形で実現する。緋鯉村のことも、そのいつものことだと思って
いたが、こうして一つ一つ話をつき合わせてみると、緋鯉村こそ父がこのように消えてしまった
すべての理由が隠されているような気がする。あの時もそうだった。夏祭りの日、突然降りだした
雨に、傘を買ってくるといって建は甲斐のもとを離れ、そのまま帰ってこなかった。木立の下で
ずっと建の帰りを待っていた甲斐に、村人の誰かがあるひとから頼まれたといって、傘と小さな
包みを渡した。甲斐は包みを開けた。わずかな金と帰りの切符が入っていた。建に買ってもらった
犬のぬいぐるみを抱きしめて、甲斐は人気がなくなっていく神社の境内で一人うつむいていた。
「あっ、切符の拝見よろしいでしょうか?」
二人の座っているボックスに車掌がやってきた。車掌は切符に記されている鯉城駅の文字に
目を大きく見開いた。
「お客さんたち、鯉城駅に行かれるんですか!じゃあ広島輝裕くんのことを知りませんか?」
甲斐と岡上は思わず顔を見合わせた。広島・・・マスターがいっていたあの広島家のことなのか。
「いえ、一週間前いや二週間前ぐらいでしたかね、お客さんたちとちょうど同じくらいの年恰好の
その輝裕くんが鯉城駅から汽車に乗ったのはいいんですが、途中で姿が消えてしまいましてね。」
「途中で・・・消えた?」
「はい、まさか汽車から飛び降りたとも思えないのですが、私もその汽車に乗り合わせていて非常に
気になってまして・・・。鯉城駅の駅員さんも大層心配されているんですよ。もしどこかで輝裕くんの
行方がわかったら、私に教えてもらえないでしょうか。あっ、私の名前は車掌の林といいます。」
頭を下げる林に二人も軽く会釈したが、頭の中は消えた広島輝裕なる少年のことでいっぱいに
なっていた。
「神隠しの村なのだろうか、その緋鯉村ってところは・・・。」
岡上の言葉に、甲斐は返事をかえすことができなかった。
78広島家の人々145:01/11/16 15:53 ID:EpybBITh
「ちっ、ダメだ・・・。手がかりがつかめない。」
貴哉の行方は結局、港から先はまったくつかむことができなかった。足を棒にして、一日中いたる
ところを探しても貴哉の行方を知るものが誰もいない。
「俺の考え方がまだ甘かったか・・・。」
その気になったら、弟3人の行方はすぐにわかるだろうと竜士は思っていた。が、現実は厳しかった。
「これで佐々岡の爺まで姿が消えましたなんていったら、もうシャレにならんぜ、ったく・・・。」
だが、そのシャレにならないことを竜士は目の前に突きつけられた。
「ぁぁあああああああ・・・!どうして〜〜〜〜っ!!!」
福永医師の前で、竜士は遠慮なく恨み節をあげた。
「つい、おとといですよ。佐々岡さんの姿が消えてしまったのは。まだ完全に身体がなおったわけではないん
ですけどね・・・。」
ため息まじりに事の経過を話す福永医師に、おずおずと竜士は治療費のことを尋ねた。
「ああ、そのことなら佐々岡さんがちゃんと・・・。」
爺が消えたベットの上には、ちゃんと自分が稼いだお金と物々交換で得た品物が整然と置かれていた。
「そういうところは、とても律儀な方でしたからね。」
律儀はいいが、まだ身体もなおってないのに動き回ってしまう爺の性格はどうにかならないものか。
まだ広島家には暴走する人物が一人残されていた。
「はぁ・・・。」
ペタンと竜士は床に座り込んだ。
「これで貴浩や輝裕も見つかるんだろうか・・・。」

その頃、佐々岡の爺は覚悟を決めた表情である山を登っていた。遠くからだんだんと剣を交える音が
聞こえてくる。そろそろ目指す庵に近づいてきたらしい。
「・・・とうとう来たんか。」
庵の主は、佐々岡がくることを見越していた。
「ええ。こうなったら、もう今しかないでしょう。」
息をぜぇぜぇさせながらも、佐々岡は決死の表情で語った。
「・・・そうだな。」
庵の主、前田はゆっくりとうなづいた。
前田は軒下に吊るしてある鐘を鳴らした。サッと剣を交える音がやみ、庵のまわりを囲った竹やぶから、
子分の末永が姿を現した。
「奥の部屋の戸棚に入っている手箱を取ってきてくれんか。」
「はい。」
片膝をついていた末永はすぐに立ち上がると、庵の裏手に消えていった。
いれ代わるように、もう一人の子分の朝山が庵の障子を開け、縁側で膝まづく。
「あ・・・・・・。」
佐々岡の爺は絶句し、そのまま地面にヘタリと座りこんでしまった。
「ど、どうして・・・!」
庵の中にいる人物を指さし、佐々岡の爺はやっとのことで言葉をつむぎだす。
「ああ。」
前田は庵の中を振り返って、うなずいた。
「神経が衰弱した状態で放浪しているところを見つけたんよ。だが完全に身体も精神も弱りきっていてのぅ、
ここで静養させていたんだが・・・。」
前田は佐々岡の爺に視線を戻した。
「なんだったら、これからは爺がここで世話したらどうじゃろうか。その方が爺も安心じゃろうて。
なに、広島家のことはワシと子分たちで交代で様子を見ているけぇ、心配せんでも大丈夫じゃよ。」

あとは夜に・・・。
79 :01/11/16 16:42 ID:/JrBiuZh
うをーーこれは(・ ε ・)?それとも貴哉?前田がらみだと・・・
しかし佐々岡じいもむちゃするなぁ(w
80 :01/11/16 16:55 ID:6WODdYQP
(・∀・)イイ!! 物語もだいぶ佳境?まだまだ?
ヨコ&ハセガー(+キムチw)の番外編も楽しみだー
81_:01/11/16 17:26 ID:s1+sWimX
うーむ、謎だ。全然先が読めぬ。
相変わらずの竜士のセリフはなごむなぁ。
いつも絶叫してるね>竜士(w
またそこが本人っぽいのだが。
甲斐タン&お鏡タンとどう繋がるのかも楽しみです。
82 :01/11/16 17:58 ID:fyUJEb8A
末永再登場だ!ヲタとしては嬉しい限り。
んでもって甲斐たんと(’。’)たん(お鏡たんも)
爺と前田も気になるぁ。
83 :01/11/16 19:25 ID:jUEfTWAx
うわー駄目だー面白すぎです!!
もうかなり虜になって授業中もケータイでチェックしてるからパケ代が
かなりやばいことに・・・。前田のとこにいるのは誰だ〜?
二の腕絵師カーサにワラタよ(w
助さんも助さんのパソもがんがれー(w!
84 :01/11/16 23:12 ID:02oR/QNM
広島博樹さん萌え〜
85広島家の人々146:01/11/17 00:57 ID:hwFLXS3N
今日も朝5時から勤行が始まる。横松はサッと起き上がって駆け足で本堂に向かった。
知憲住職の読経は約1時間近く続く。それが終わると今度は朝食作りだ。手ぬぐいを頭に巻いて
横松は厨に入ると、昨日摘んだ菜っ葉を刻んで味噌汁を作りはじめた。
森笠が金本寺に住み込むようになって、食事を作る分量が増えた。知憲住職、横松、森笠、
いや朝食だけはあともう一人分必要だった。横松は、お椀にカマドで炊きたてのご飯と味噌汁を
入れてお盆に載せると、外に出て寺の裏手にまわった。そしてポケットから鍵を取り出す。
「よっ!」
突然、後ろからいきおいよく横松は背中を叩かれた。ショックで一瞬横松は小脇に抱えていたお盆
を落としそうになった。
「森笠さん!」
「いやぁ、スマンスマン。が、なんだよそれ?」
「朝のお供えもの。」
いつもの調子で好奇心旺盛にお盆を覗き込む森笠に、横松はとまどい気味に答えた。いいんだろうか、
このまま中に森笠を入れてしまって。しかし鍵まで取り出しては、もうごまかすこともできない。横松は
住職にばれないことを祈って引き戸を開けた。
「ほぉーー!」
森笠は当たり前に中に入った。やっぱり・・・。横松は冷や汗を流して仕方なく後ろの引き戸を閉めた。
両側に整然とした白壁と、そして延々と頂上まで続く石段が続いている。一見ひなびた、ありきたりに
見える金本寺のどこに、こんな裏の世界があったなんて思うだろう。森笠は驚嘆の声をあげて、白壁を
見回しながら早足で階段を上がっていった。
「で、その朝のお供えものっていうのは?」
クルッと振り向いて、森笠は横松に尋ねた。
「山の神さまにあげるものだよ。」
「山の神さま?」
「うん、ずっと緋鯉村を見守ってくれている山の神さまだよ。昔から緋鯉村では、この山から魂が生まれて
死んだらこの山に帰るっていわれているんだ。」
「どこの村でも語られているありふれた伝説だな。で、この階段を上がるとその神さまが住んでいると。」
「うん・・・。」
二人はその後は無言で階段をのぼっていった。そのうちかやぶき屋根といかめしい風格の大きな門が
二人の前に立ちふさがった。横松はお盆を階段に置くと、門の下に小さく備え付けられた小窓を開けて、
空のお椀がのったお盆を取り出すと、持ってきたお盆を小窓の中に入れた。そしてまた元のように小窓
を閉める。
「ふーむ。」
森笠は腕組みをして取り出された空のお椀と横松、そして鬱蒼と繁った門の向こうの光景を見回した。
「きったねぇ食い方の神さまだな。」
「・・・・・・。」
「本当にこいつ、神さまかよ。どっかのタヌキか野良犬が食い散らかしたもんじゃねえの。」
「・・・・・・わからない。」
横松は小さな声で返事をした。
「・・・もしかしたら、人間かもしれない。」
「へっ?」
「・・・もしかしたら、この作務衣を着ていた前の人、竜士の親分の弟って人かもしれない。
自信はないけど・・・。」
86広島家の人々147:01/11/17 01:41 ID:hwFLXS3N
森笠はあっけに取られて、しばらく横松を見ていたがそのうち、ぎゃはははははっと転げまわって笑った。
「じゃあ、あの住職がそいつをここに閉じ込めちゃったってことか。それもまた哀れなこったな!」
「・・・・・・。」
「多分、ここは昔のひとの魂が集まった墓場だぜ。人が住めるような場所じゃない。だいたいこの
鬱蒼とした森を見れば歴然としているわ。これは典型的な昔の墓場の形だ。」
「だから、山から魂が生まれて、死んだら魂が帰るといわれて・・・。」
「多分な。へぇ、ここから海もよく見えるんだな。一方は魂が帰る山、一方は無に戻る海。
そして囲まれた間に存在するのは・・・ふうん、ちゃんとうまく出来ているじゃないか、緋鯉村ってさ。」
森笠は満足そうに笑った。
どういう意味だろうか、横松はさっぱりわからなかった。
「ここは相当、村人に愛されたムラだってことさ・・・。」
横松の様子を察して、森笠は笑顔で答えた。それでも横松はさっぱりわからなかった。

それから森笠は奥の客間に閉じこもって、絵の構想を練ることに専念してしまった。横松はさっきの
森笠の言葉が気になって、お茶をもって客間を訪ねてみた。筆を持った腕を前に伸ばして、森笠は
片目を閉じて、絵の構図のあたりをとっていた。
「森笠さん。」
お茶を畳の上に置いて、横松は森笠に声をかけた。
「ん・・・。」
仕事に夢中になっていて、森笠はあいまいな返事を返す。横松は畳に正座した。
「森笠さんは、ここのふすま全部に縛られた女の子を描くつもりなの?」
「ん・・・。」
最初気のない返事を返していた森笠が、その後ブーッと吹きだして畳に突っ伏した。
「お前、俺をそんな目で見ていたのか。」
「だって、観音堂の絵といい、住職に見せた絵といい、みんなあれは・・・。」
「ちっ。」
森笠は思いっきり横松の頭をこづいた。
「俺は悲しい〜。そんな風にしか俺、見られていなかったんかよ〜!」
そして大仰に畳を叩いて、森笠は悔しがった。
87代打名無し@ス:01/11/17 01:57 ID:hwFLXS3N
なんかこのまま書いてるとだらだら長くなってしまいそうなんで、
今日はこの辺で・・・。隠喩ばっかりが続いてなかなか核心にふれない状態
が続いておりやすが、だんだん外堀は埋めてますんで、あともう少しで
ハッピーエンドの布石がつながりやす。
今回は横松とカーサの「山から魂が生まれて、死んだら魂が帰る」がハッピー
エンドの一つの理由になっておりやす。後は山=貴浩、海=貴哉という記号が
これでできやした。さて(・ ε ・)は、どこから現れるか。カーサはかなり
鍵となる人物っすよ。

>>79
さて誰でしょう。行方不明の人物は現在たくさんいるでなぁ(^^;

>>80
佳境にいってるような気もするし、まだまだのような気もするし、
いい加減そろそろ完結させたいんですがね・・・。マジで200逝くのかな(鬱
ヨコ&ハセガーの話は多分、ハセガーが主役になると思うよ。

>>81
今年も球場や中継で叫ぶ横山を結構見たもんで、自分の中ではすっかり・・・(^^;
次回、金本寺に甲斐たん&お鏡たん登場っす。

>>82
末永はこれから登場しやすね。(’。’)たんはさてどうなかったか。ここまで
来たら(’。’)たんのことは甲斐たんの方からアプローチするほかないんで、
ここもどういう結末を迎えるか。広島家の兄弟と同時進行っす。

>>83
パケ代大丈夫っすか(^^; これ以上ヤバくならないように早く完結に
持っていけるようにするね。
といいつつ、これから再登場人物目白押しなんだよね(汗

>>84
おっ、博樹兄ちゃんに萌え意見が出た(w ははは・・・それはヨカタよ。
88  :01/11/17 08:11 ID:6ue9ILsH
ごめんよカーサ、そんな目でしか君を見て無かったよ・・・(w
89_:01/11/17 15:38 ID:oW+OKzGz
ごめんよカーサ。同じくそんな目でみていたよ。
でも君にも原因があると思うぞ(w
さがりすぎなので、あげ。
90_:01/11/17 23:29 ID:5MFREgGd
うぅ、あまりにも鬱だ。>チビのアレ。
広島家の面々、はよ浮上してくれぃ。
鬱すぎるのでそれしか楽しみがナイ。
91代打名無し@ス:01/11/17 23:43 ID:Muq8ojeb
まさか今日という日にやっちゃうとはね・・・>(・ ε ・)
これで吹っ切れて浮上してくれると思ったんだが、なかなか・・・(鬱

今日は続きどうしよう。おらはやっと気持ち的に落ち着いてきたけど
書いたほうがいいのかな?祭り状態も気になるし・・・
92 :01/11/17 23:50 ID:PWHCmCkr
こんな夜は現実逃避。
93アキヒロがんがれ:01/11/17 23:51 ID:PWHCmCkr
>>91
書いて欲しいです・・・って、無責任かな。スマソ。
94代打名無し@ス:01/11/18 00:02 ID:W3pVxldS
じゃあ続き書きますわ。ただ野球板の状態を見て、
今日はスレをあげないかもしれんす。
アキヒロの出番がないところなのが良かったのか、悪かったのか・・・
95 :01/11/18 00:51 ID:hnme8On0
助さん、カプファソの皆さん、がんがりましょう。
続き楽しみにしております。
96どうして〜:01/11/18 01:32 ID:2WK+f8OD
なんか日本で放送がある試合では活躍できてないよね>(・ ε ・)
今まで無かったのに・・・・こんな日にやってしまうとは(泣笑
こりゃオフのテレビ出演>広島は無いか〜
97広島家の人々148:01/11/18 02:20 ID:C67JQWla
「いいか、俺の絵はなぁ、例えるなら鏡、空間みたいなもんなんだよ。」
「鏡?空間?」
また訳のわかんないことをいう。横松は困ったように首をかしげた。
「んーとなぁ、じゃあ例を変えて、ここに一枚の小銭がある。」
森笠は巾着袋から穴の開いた銭を取り出し、畳の上に置いた。
「これは小銭の表の面だ。じゃあこれをひっくり返すと・・・」
「裏」
「そう。で、これはなんだ?」
森笠は小銭をつまみ上げて、表裏両面を横松に見せた。
「・・・・小銭?」
「よしよし♪」
ニッコリ笑って、森笠は横松の頭を撫でた。
「つまり表であれ裏であれ、同じ小銭だ。一つのものが一つの面だけで出来ている
わけじゃない。必ずこうして表と裏がある。ここまではわかるか?」
「うん。」
「じゃあ、今度はこうしてみる。」
森笠は、小銭の穴に糸を通して結び、横松の前にぶら下げた。
「今、こうして小銭がぶら下がっている。ここがちょうど真下にぶら下がっているのはわかるな。」
「うん。」
「じゃあ、真下だとはっきりわかるように、その位置にこの筆を立てて持っていろ。そうそう、で。」
森笠はぶら下げた小銭を左右に揺らした。
「あっ・・・!」
ちょうど左右等分に小銭が揺れる。横松は目を丸くして小銭を見つめた。
「これをもっと大きく揺らしても・・・どうだ、必ず中心はその筆を立てたところだろう?」
「うん!」
「右があれば必ず左がある。そして片方の振りが大きくなればなるほど、
反対側も同じ幅で大きくなる。ようはこれが空間みたいなもんだよ。」
「つまり片方だけじゃない、どんなことがあっても中心にバランスが取れてるってことだね。」
「それで、もう一度この絵を見てみろ。さあ、どういう意味になる?」
森笠は自筆の緊縛された女の絵を、横松の前に差し出した。
「う〜んと、この絵の人は女だから、反対の意味は男。」
「それで緊縛の反対はなんだ?」
「開放!」
目を輝かせて、横松はパッと顔をあげた。森笠はニヤリと笑って何度もコクコクとうなずいた。
「で、どこをどうやったら、この部屋のふすまに緊縛女の絵を書かなきゃならないんだ?」
「あ・・・。」
上座の床の間を除き、残り三面がふすまで囲まれている。そこをすべて緊縛された女性の絵
で覆われたら・・・。
「ということだ。」
「じゃあ、森笠さんはここに何を描くか、もう決めたの?」
「ん?まぁな。さっきのあの“奥の院”の墓場でだいたい決まった。あっ、これから俺、題材の
スケッチをしに、出かけてくるわ。住職がなんかいってきたら、伝えておいてくれ。」
「えっ?」
その時、寺の入り口からなつかしい声が聞こえてきた。
「おーーい、住職ー!横松ー!誰もいないのか〜〜!」
「竜士の親分!!」
横松は取るものもとりあえず、寺の外に飛び出した。
98広島家の人々149:01/11/18 04:15 ID:C67JQWla
「あ〜あ、ここで貴浩の手がかりもつかめなかったら、どうしようか・・・。」
さすがに少々滅入った気持ちで、竜士は金本寺の石段を上った。
金本寺はシーンと静まりかえっている。竜士はイヤな予感がした。
「二度あることは三度ある・・・かも。」
そこへ
「竜士の親分!!」
本堂の廊下から飛び降りて、作務衣姿の横松が竜士のもとに駆け込んできた。
「良かったぁ!すぐに釈放されたんだ、竜士の親分!!」
「横松!」
竜士も元気そうな横松の姿にホッとして、子供のように抱きついてきた横松の背中を
ポンポンと叩いてやった。だが、その横松の後ろで妙な視線を感じる。
「へっ?」
本堂の廊下でニヤニヤ笑いながら、あの森笠がいた。
「ぁぁあああああああ!な、な、なんでお前がぁーー!!」
ぶるぶる身体を震わせながら、竜士は森笠を指さした。竜士の大声にびっくりして横松
も後ろを振り向く。
「ああ、森笠さんならこの前の観音堂の緊縛絵を描いた人だよ。」
「はぁぁ?」
気の抜けた返事で、竜士は呆然と森笠を見るほかなかった。
「なんだ、二人はそういう関係だったのか。そこまでは気づかなかったなぁ。」
森笠はケラケラ笑って、例の視線で竜士を見下ろした。
「おい、よくもこの前は騙してくれたな!」
「騙した?俺が?何を?」
「シラを切るつもりかよ。担保で売られて年増のババアのツバメや慰みものに
されているっていったのはどこの誰だよ!」
「年増のババアのツバメ・・・・・・ああ!お前の兄ちゃん、無事だったか?まさか
お前、アレをマジで受け取ったんかよ!」
そういうと森笠は廊下の欄干をゴンゴン叩いて腹を抱えて爆笑した。
カッと顔を赤らめて、ツカツカと竜士は森笠のいる本堂の廊下の下まで歩いていった。
「へぇ、ムショで会ったときと比べて、ずいぶんと地味な恰好になったんだな。
それならいかにもここの村人って感じだ。」
森笠は欄干に腰掛けて、相変わらずからかうような視線で竜士を見下ろす。
「いつムショから出られたんだよ。」
「ん、だいたいお前と同じ頃かなぁ・・・。」
「で、どうして金本寺に?」
「ここの客間のふすまの絵を今度描くことになったんだ、俺。」
「客間のふすまにお前、緊縛絵を描くつもりなのか!」
森笠は思いっきりずっこけた。少し離れたところから二人の掛け合い漫才のような会話
を聞いていた横松は軽くあきれたため息をついた。さっきは森笠のうんちく話にうまく
のせられたが、二人の会話を聞いてると、やっぱり本当のところはそこに戻るかもしれない。
99代打名無し@ス:01/11/18 04:48 ID:C67JQWla
こういう日に限って、メリハリあるシーンを書く日じゃないんだな(鬱
なんとか早めにストーリー展開を持っていきたかったけど、一番しばらく
の間、ラストのオチのための説明が必要になる場面だった。
ちょいと時間も時間なんで、ここで一旦区切り。また起きたら続き書きやす。

これで貴浩の居場所はもうおわかりかと。金本寺奥の院の墓場に一日一食で
閉じ込められておりやす。ここを出るには貴浩自身が何か答えを見つけなくて
はならない。これも「広島家」ハッピーエンドの重要な鍵の一つっす。
それとノムケン登場が時間の問題になってきやしたね。実は今頃になって同時
進行で動く登場人物が急に増えて、誰を最初に登場させればいいか、テンポの
関係でずいぶんと悩まされて・・・(;´Д`) もう貴哉を再登場させても
いいころなんすが、タイミングがつかめない。甲斐タン&お鏡たん、そして
前田&末永・朝山子分ズと佐々岡の爺、緒方、ノムケン、そしてカーサ&竜士
・横松、ハセガーetc・・・これが同時進行で次々に行動を起こす。いい場所が
見つかったら、早めに貴哉は再登場させよう。

>>90-95
まだ、あのスレはレスがついているし、はじめて(・ ε ・)のエラーを
まじまじ見たひとにはショックが強すぎたかね。さんざん(・ ε ・)の
エラーは見て、腹が立ったときもあるけど、責めて批判し倒してなんとかなる
ならともかく、(・ ε ・)の場合はそれは逆効果になることをかぷファソは
知っているからね。過度な批判をしているひとはそれで自分の自己満足を得る
ためにやってるんじゃないかな。事情をよく知らない他球団ファソには一概に
そうとはいわないけど、RCCとか見てるといつもそう思ってしまう。
選手によって対処の仕方が違う。(・ ε ・)の場合は過度な批判は互いに
マイナス効果になってしまう。なんかそれを今日再確認させられたっすよ・・・。
100 :01/11/18 08:25 ID:CCvjaHhh
愛のない批判は見ててつらいな・・・。
(・ ε ・)ヲタの自分は昨日は本当につらくてウヒョスレにも来れんかった。
叩きスレまで立ってたのか。。。

それにしてもカーサ(・∀・)イイ!!
竜士とのやりとりになごんだYO!
貴浩は一日一食で大丈夫なんだろうか(w
101 :01/11/18 10:55 ID:phx1z0Oy
貴浩出てきたときは細くなったそうなんだが(w

>>100
自分も怖くて深夜になってから後ろの変でコソーリ読んでたよ・・・
冷静に考えればあれだけシーズンでやってしまったものがいきなりよくなるはずも無く。
そんなんだったらカプのコーチ陣面目なしだし・・・
あしっかし全日本に入りたがってただけに、今回は相当つらいと思われ

ここでは幸せになってほすぃ
102 :01/11/18 12:32 ID:FyVqQtjm
そうそう愛のない批判は辛いね。
ただ叩きたい・煽りたいだけで
来てる人もいるし。
でもここは和むよ。
カーサ(・∀・)イイ味出してるね
103 :01/11/18 12:55 ID:rHyvWe/D
まだageなくてだいじょうぶですかねえ。
バトロワは一度ageて荒らされずに流れたようですが・・・
104/:01/11/18 12:58 ID:ah59zRik
カプファソには辛い週末になってしまったね。
チビ、がんがれ。
確かにアイタタやっちまったゴルァだが。
ダメージ大なチビが心配で、叩く事はできないよ。
応援してる人がいっぱいいる事も思い出してほすぃ。
一日一食(心配)の粗いさんは何してんだ?難しい顔をして目を閉じている粗いさんを想像(w

ところでカナリ下がってるんだが、あげてもいいものかな?
誰かいない?いいと思う?
105 :01/11/18 13:07 ID:63NDr+bv
これで終わるような奴じゃない!>チビ
106_:01/11/18 13:27 ID:csn7kywX
思い切ってage
何事もありませぬよう…
107 :01/11/18 13:28 ID:rHyvWe/D
 
108 :01/11/18 13:29 ID:Ce185/Gz
ウヒョスレでやれ馬鹿
109広島家の人々150:01/11/18 19:05 ID:k5eCIwIP
「あ〜あ、どうせ俺はそんな目で見られてんだ。いいんだ、いいんだ、もぅ・・・。
いちいち説明すんのもめんどくさくなっちまったよ・・・。」
森笠は廊下にしゃがみこんで、「の」の字を書きはじめた。
「だってお前、公衆わいせつ罪で捕まったんだろ?」
森笠の目がキッと光ったかと思うと、竜士めがけて欄干から飛び降り、あっという間に
竜士の横をすり抜けた。その間、竜士は一歩を動くことができなかった。
いつの間にか森笠の手には竜士の巾着袋がおさまっている。
「あのなぁ〜、俺はこれでサツに捕まったんだよ!」
森笠の表情に、さすがにひきつった笑いと青筋が浮かんだ。
「じゃあ、あのムチの傷はなんだってんだよ!」
「ぁぁああぁぁぁああ〜!もうチンタラやってらんねぇ、横松!こいつをさっさと奥の院の弟のところ
に連れていってやったらどうだ!」
「うわぁぁ!住職に知られたらぁーー!」
横松はあたふた両手をあげて、森笠の言葉をとめようと森笠のもとに駆けよった。だが、その後
シーンと金本寺の境内が静まりかえった。
「住職はお出かけのようだな。いいチャンスじゃねえか。何の気兼ねもなくあそこに行けるぜ。
なぁ、お前のところも兄ちゃんといい弟といい、いろいろと大変だな!」
ポンと力強く森笠に背中を叩かれた竜士は、固まったまましばらく返事をかえすことが
できなかった。
「・・・なぁ、こいつのいったことは本当か?横松・・・。」
「う、うん。」
「本当にあそこに貴浩がいるのか?」
「・・・多分。」
「・・・そうか。」
やっと3人目の兄弟の居どころがつかめた。竜士は安心感からガクッと力が抜けていった。
「ほれほれ、今からそんな状態でどうすんだよ。住職が帰ってきたらまたややこしくなるし、
行くなら今しかないんだぜ。」
森笠は竜士の腕を掴むと、奥の院の入り口の引き戸まで強引に引っ張り、走りはじめた。
「おい、横松も早く来いよ!」
事の成り行きの変化にまだついていけない横松に、森笠から遠慮なく催促の声がかかる。
「は、はい。」
あわてて横松は後を追いかけていった。
110広島家の人々151:01/11/18 22:00 ID:fDqgD7BW
目の前で、すべてを拒絶するようにいかめしい門が竜士の前に立ちふさがる。
「ここに・・・この中に貴浩がいるのか?」
半信半疑で竜士は重々しい木製の門に手を触れ、後にいる横松と森笠の方に振り返った。
横松はコクンとうなづいた。カッと血がのぼって、竜士は何度も拳で門を叩いて貴浩の名を
大声で呼んだ。だが、何の反応もかえらない。
「くそ・・・。」
竜士は頭をガンガンと門にぶつけた。一体何を考えているのか。知憲住職の意図がさっぱり
つかめなかった。
「なぁ、お前は金本寺にこんなところがあった事を知っていたか?」
不意に話題を変えて、森笠が竜士に声をかけた。
「知らねぇよ・・・。」
門に頭をつけたまま、つっけんどんに竜士は答えた。
「じゃあ、この光景は?」
森笠は竜士の両肩を掴むと、強引に反対に振り向かせてニッコリ笑った。
「あ・・・・・。」
竜士は今まで見たこともない緋鯉村の全貌に、言葉をなくした。
「なっ、うまく出来ている村だろう、緋鯉村って。ここまで標高が高い場所からじゃないと、
すべてがわからないように作られているんだぜ。一見単なる自然に囲まれた村のように
見えながら、実態は何から何まで計算つくされた人工的な村。それもここまで高い場所
なら村を一望できるのは、ここだけだ。」
ガサゴソと門の向こうから物が動く音がした。ちらっと森笠は後ろを振り向くと、そのまま
説明を続けた。
「目の前に見えるのは海。だけど入り江が深く入った形で両側に立ちふさがる岬が
外からの視線を拒んでいる。港からまっすぐ進む以外、水平線は見えないし、岬を越える
まで外には出られない。そして、ここと港がまっすぐ一本の線で結ばれて、その中間点に
ちょうど位置するのが・・・。」
「俺の住んでいる広島家だ・・・。」
森笠は深くうなずいた。
「おいっ、そこにいる貴浩って奴!お前もよく聞いておけよ。もしかしたらそこに緋鯉村の
とんでもない謎が隠されているかもしれないからな!」
ハッと竜士は門を振りかえり、森笠の顔を見た。森笠はニヤリと笑っている。
「森笠・・・。どうしてお前がそんなに知っているんだ・・・。」

なんか荒れ気味のようで心配なんすが、あげてみやす。
111 :01/11/18 22:42 ID:1Q1zVvbS
カーサカコイイ…というか、一体何者なんだ(w
112 :01/11/18 23:36 ID:pjKnLoCj
カーサ・・・ただのエロ氏じゃなかった(w
秘密ってなんだろう・・・ドキドキ
113広島家の人々152:01/11/19 00:19 ID:sIVz51/Q
ハッと竜士は門を振りかえり、森笠の顔を見た。森笠はニヤリと笑っている。
「森笠・・・。どうしてお前がそんなに知っているんだよ・・・。」

「別に。俺は何も知らないよ。たださ、お前も変に思っていたんだろう?何故邪毘屋が
執拗にこの村を狙ってくるのかってさ。」
「!」
「ムショで言っていたよな。どうして広島家ばかり緋鯉村ばかり、こんな目に会うのかって。」
「・・・・・・。」
「で、どうだったんだ?「担保」は仕組まれていたものだったのか?お前の兄ちゃんは
どうなったのか?どうだ、少しは答えが見つかったのか?」
「・・・・・・お前、何者だ?」
竜士はジリジリと頭を振って後ずさった。森笠からあの笑みが消えた。
「このままあいまいにしてもいいっていうなら無理強いはしねぇよ。でも、ここに来てみてさ、
俺、邪毘屋の狙いが何かわかっちゃったよ。あの時はからかって、ツバメだ慰みものだとか
言ってみたけどさ、もしかしたら本気でお前の兄ちゃんを殺すつもりでいたかもな。それでも
広島家が抵抗したら次にお前を、そして弟たちを・・・。」
「・・・!」
竜士は愕然として一歩も動くことができなかった。横松も呆然と竜士をそして森笠を見る。
「・・・お前の狙いは何だ?」
「えっ、俺?」
また森笠はニコッと笑った。
「緋鯉村への永久就職。いい加減ムショとシャバのいったりきたりの生活は飽き飽き
してんだよ、もう。」
「こんな貧乏村に?」
「うん。これほど面白い村はそうそうないからな。」
「・・・・・・。」
「どうする?今度は俺もマジで付き合うよ。このままジリ貧でつぶされていくか、それとも
勝負に出るか。」
「・・・・・・。」
「多分このことをお前の兄ちゃんも知らないだろうな。で、それを知った時、今度は確実に
邪毘屋に命を狙われる。一か八かの賭けだが・・・。」
「竜士の親分・・・。」
青ざめた表情でうつむいたままの竜士を、心配そうに横松が声をかけた。トラウマに近い
賭け事をもう一度要求されている。竜士はどう判断するのだろうか。
「なぁに、その兄ちゃんが生きるか死ぬかは、お前よりこの門の中の弟くんの手にかかって
るさ。こいつが金本寺の奥の院の秘密をさっさと解いてくれたら、何の問題もなくすべてが
解決する。兄ちゃんの命をこの貴浩って奴に賭けるのさ、どうだ?」
森笠は門をコンコン叩いて、元のからかうような明るい笑顔で竜士に話をもちかけた。
114広島家の人々153:01/11/19 01:43 ID:sIVz51/Q
竜士は門の前に進み出て、貴浩に声をかけた。
「どうする、貴浩?賭けてみるか?」
「俺ができる限り手伝うよ。こっちも永久就職がかかっているからな。それともそこから
逃げるか。鍵ならその気になったら俺、開けられるぜ。それともただ、そこに閉じ込め
られたままでいるか?」
後ろから森笠も声をかける。しばらくの間、門の向こうから何の反応もかえってこなかった。
竜士はため息をついて、また暗くうつむいた。そこへ
「・・・竜士兄ちゃん。」
小さく、か細い声が竜士を呼んだ。
「貴浩?」
あわてて竜士は門をどんどんと叩いた。
「俺、やってみるよ。やりたい・・・それで広島家がなんとかなるなら。元に戻れるなら・・・。」
「貴浩・・・。」
博樹との経緯がある。貴浩にとってもこの話はかなり酷なものである。だが、これがうまく
いったらこれほど良い起爆剤はない。
「そうだな。お前にとっても広島家にとっても、もうこれに賭けるしかないのかもな。
博樹兄ちゃんには俺から伝えておく。なに、お前がちゃんと結果をともなえば心配することは
ない。そう信じよう・・・。」
「うん・・・。」
横松は悲痛な面持ちでその様子をじっと見ていた。知憲住職は知っているのだろうか。
知っていて貴浩をここに閉じ込めたのだろうか。そもそも金本寺の主である知憲住職なら、
その緋鯉村の秘密に気づいてないはずはない。なのにわざわざこのような遠回りなことを
させるのだろうか。わからなかった。
竜士は森笠に向かってコクンとうなずいた。
「じゃあ、早期解決に向けてやったるか!」
森笠は携帯用の筆と紙を取り出し、奥の院の門から見える緋鯉村の見取り図をさらさらと
描きはじめた。

汽車が鯉城駅のホームにすべりおりた。甲斐と岡上は早速駅に降りると、鯉城駅駅員の
木村に切符を渡し、広島輝裕のことを尋ねようとした。だが、木村の視線は後ろの陸軍の
軍人に釘付けになっていった。
「野村さん、お久しぶりです!緋鯉村に帰ってこられてきたんですね。」
野村は、少しはにかんだ表情で木村に向かって笑った。
115代打名無し@ス:01/11/19 01:56 ID:sIVz51/Q
ノムケン登場。ここでまただいぶ謎が解けていくでしょう。
もうただひたすら、今までの謎解明に話は突っ走っていくと思いやす。
今までバラバラだったストーリーがそろそろ一つに固まってくるので
どんなオチになっていくか、気長に待ってくらさい(汗
アキヒロ編はこれとは少し切り口が違いやす。まず貴浩、そして貴哉に
決着をつけてもらいやしょと・・・。さて、もう少し書いておくか。
今週いっぱいでケリつけたいっす・・・。

>>100-105
(・ ε ・)のこともやっと落ち着いてヨカタ。兄弟スレの兄貴がいいたいことを
すべて代弁してくれたから、もう後は何もいうことはないっすよ。
帰国してから、いいスタートがきれるといいっすよね。

>>111-112
カーサ、おいしくなってきたでしょ。ウヒョスレ住人にとっても人気が
高いから、とにかく気ぃつかったよ(w でもまだ裏の顔があるんすよ(^^;
116 :01/11/19 08:32 ID:IFCtUGjN
みんなカコイイなぁ(w
しかし前田・ノムケンはしぶーい役(になりそう)なのに
緒方ん・・・妙にコミカルな気が・・・(w

(・ ε ・)ベストナインだそうで。また逆なでしそうな・・・
本人も余計辛かろうて・・・ガンバレー(必死)
117_:01/11/19 12:42 ID:XR9uIuDw
むぅ…ワカランぞ。謎だらけだ。
続きが気になってしゃあないよ。
とりあえず、「の」な字を書いていじけるカーサに萌え萌え〜。
118 :01/11/19 14:06 ID:QdFh+GbS
カーサのキャラ最高じゃね〜こりゃカーサヲタにもなるっちゅうねんw
話もいよいよ佳境てな具合で(・∀・)イイ!!
もうすぐ終わるのかとチト寂しいが…

>>116
(・ ε ・)のベストナインコメント読んで
(・ ε ・)的コメントにワロタ
ネタキャラで終わるにはモターナイからマジがんがれw
119 :01/11/20 00:14 ID:hsJS+HS5
ぼちぼちage
120代打名無し@ス:01/11/20 00:51 ID:W3djNr59
スンマソン。今日はドラフトの成功で頭がイパーイで続きが書けない・・・。
明日の深夜書きますけぇ、もう少し待ってくんさい。

>>116
いわれてみれば、緒方んが一番コミカル系になってしもた。
そんなつもりはなかったんだが・・・(汗

>>117
ゴメソ、もう少し待っててけれm(_ _)m
カーサの正体もそろそろ判明。明日か明後日あたり、
謎の一部は完全に判るようにしたい・・・。

>>118
カーサ、そんなによくなりましたか?そうっすか。それはヨカタ(w
いや、もうそろそろ終わらせましょ(^^;
でも寂しいといってもらえて、それもうれしいっす。アンガト
121うざいから:01/11/20 00:53 ID:9/w8YcyY
本スレにはくるなよ。
122広島家の人々154:01/11/20 06:14 ID:6PU+KzkH
つもる話もいろいろあるのだろう。とても2人の間に入って尋ねられる雰囲気ではなかった。
「帰りに、また聞いてみよう。」
岡上の言葉に、甲斐はうんと小さくうなずいた。
鯉城駅構内を出て、岡上は小冊子を開いた。中に簡単な金本寺に行く地図が載っている。
「こっちの道だ。」
岡上が指さした先は、前に建と会うために通った夏祭りの神社に行く道とまったく同じだった。
あの時を確認するように、また同じところを歩いていく。突然、通りのどこかから父が現れても
何もおかしくない不思議な感覚に甲斐はおそわれた。
「あっ!」
祭りの舞台となった神社の鳥居が見えてきた。誘われるように、甲斐は走って鳥居をくぐり抜けた。
その後を岡上が追いかけていった。二人が神社の境内に消えたのと入れ替わるように、
通りの道をせっぱつまった表情で竜士が駆け抜けていった。
神社はあの時の賑わいが嘘のようにひっそりと静まり返っていた。人も、参道を埋め尽くした
夜店も、まわりを抒情的に彩った提灯の灯りも、はじめから何もなかったように、すべてが
跡形もなく消えている。
甲斐は、建に犬のぬいぐるみを買ってもらった夜店の跡で立ちどまった。
「おい、あれがもしかして金本寺か?」
岡上が参道の先に見える山の中腹の建物を指さした。甲斐は本殿にあがる石段を駆けのぼった。
その先には、知憲住職が花火をぶち上げた小高い丘がある。そしてその真後ろにそびえる山の
中腹には、いかにも寺社仏閣といった独特の建物が姿を現していた。

「よぉ、すまんな。こんな辺鄙な場所に案内して。」
あばら家といっていい農家の建物の囲炉裏で、知憲住職がおどけた声で客人を出迎えた。
野村は一風変わった趣向に半分度肝を抜かれた様子で囲炉裏端にあがった。
「石橋、すまんが酒の瓶をもう一つ持ってきてくれ。」
「はい。」
石橋と呼ばれた、いかにも農家の子といった風情の少年が、土間にある甕から瓶に酒を汲みあげた。
「なあに、これでもこの界隈では清廉潔白な高僧で通っているからな、そうそう平然と人前で
酒を飲むわけにいかのうてのぅ、今までは佐々岡がこっそりと買うてきてくれたが、あいつが
例のごとく身体を無理してなぁ、壊れて倒れてしもたんじゃ。」
「それで、ここを・・・?」
「おお、今年もたくさんの小作農たちが貧乏のあげく、ちりぢりに村を去っていったが、
こんな少年まで何もわからぬよその世界に一人でほっぽりだしてしまうのはちと酷じゃろう。
それでワシが遠慮のう飲める酒の場所と番人をしてもらおうと思うてな。これも慈善事業の
一つじゃよ。」
そういうと、知憲住職は囲炉裏の中で暖めていた酒瓶を取り出して、野村の盃に酒を注いだ。
123広島家の人々155:01/11/20 06:15 ID:6PU+KzkH
「ところで、手紙にも書いてあったが、大陸に出征する予定はもうはっきりと決まってしもうたのか。」
「後一ヶ月以内には、日本を離れることが決まっている。」
「そうか・・・。」
今度は手酌で知憲住職は自分の盃に酒を注いだ。
「だから、日本を離れる前に一度ちゃんと親父さんの骨をお参りしたいと思ってな。手紙に書いて
あったのは本当なのか?広島の親父さんが戦死したっていうのは・・・。」
「ああ。親父の戦友という奴が白木の箱を持って広島家を訪ねてきたよ。ただし、中に遺骨は
入ってなく・・・遺体を見つけることが出来なかったそうじゃ・・・。」
野村は無言で盃を見つめていた。
「それで、この緋鯉村の荒廃ぶりなのか。まだまだ長男の博樹には、広島家の子供たちには
荷が重たすぎるというわけか。」
「ああ、そうじゃなぁ。広島家の兄弟はどれもまだまだ未熟者じゃ。ワシもそれならできる限り
手助けをしてやろうと最初は思っていたが・・・。」
「思っていたが・・・?」
「やめた。」
知憲住職はポツリと呟いた。
「ワシがいちいち何でも手助けしておったら、あいつらはいつまで経っても自立できん。
子供、子供と思うておったが、もう上の三人はとっくに親離れする年じゃったわ。だから、
あえて突きはなしてみた。」
「・・・・・・。」
「貴浩は今どこにいるか、野村は想像がつくか?」
突然クスクス笑いながら、知憲住職が質問をふっかけた。
「いや。」
「あそこじゃ。」
知憲住職が指さした先を辿って、しばらくの間、野村は絶句した。そしてプッとふきだした。
「ず、随分と無茶なことをしおったな。」
膝を叩きながら、野村は声をあげて笑った。つられて知憲住職も豪快に笑った。
「なつかしいな。小さい頃一度間違って迷い込んで、広島の親父さんたち長老にひどく
怒られたことがあったが、あれから自由に出入りしてもいい場所になったのか?」
「いや。」
酒の酔いも手伝って、住職の口はひどく軽くなっていた。
「貴浩のような甘えた根性な奴は、あのくらいの場所に閉じ込めんと性根がなおらんと
思うてなぁ。」
「ひでぇ奴・・・。」
野村は笑いがとまらなかった。
「だが、ワシもそうそう鬼じゃないぞ!」
間髪おかず、酔っ払いながら知憲住職は酒瓶をドンと床の上に叩いた。
「一つ聞いておきたいことがある。徴兵制度の仕組み、あれはどのようになっておる?」
「えっ?」
唐突な質問に、野村の表情から一瞬にして笑いが消えた。
124代打名無し@ス:01/11/20 06:19 ID:6PU+KzkH
もう書ける時に書いておきやす。
今日は一日中仕事で帰宅が遅いんで、続きは早くて夜遅くの予定っす・・・。
125  :01/11/20 08:16 ID:GCrp0sJ+
助さんガンバ!!
126代打名無し:01/11/20 19:18 ID:ZJZNqHm8
石橋タンコソーリ登場萌え〜。
住職カコイイなぁ。
カーサと同じくらい何考えてるかわかんないYO!
毎日ワカランワカランぬかしてて、黙って待ってろ!て感じっスね(w

>助清さん
お忙しい中がんがって!あんま無理せぬように…。
127 :01/11/20 20:34 ID:jeXcaLAI
緋鯉村みたいなところが実際にあったら旅行に行きたいね。
のんびりと。
128代打名無し@公演中:01/11/20 22:25 ID:cH8LhHXB
>>121みたいなのは気にせず
頑張ってください〜<スさん

うちは住職好き(笑)ですが、貴浩がどうなってるか気になるとこです…。
129 :01/11/20 23:10 ID:wwnHWQrw
>>127
金本寺でお参りして、お土産は西山堂のあんこ餅を(w
130 :01/11/21 00:37 ID:Fluk4HgB
お祭りの時に逝ってみたいな
131 :01/11/21 20:57 ID:fLqRRvuF
age
132_:01/11/21 20:58 ID:ne4a70N6
age
133132:01/11/21 21:01 ID:ne4a70N6
カブタ。
134代打名無し@ス:01/11/21 22:25 ID:OpVtPqap
帰るのが遅くなってスンマソン。今から書きやす(汗
(クソォ なんのために都心に行ったんやろ。いきなり休講はやめてくれ(怒
往復3時間以上かかるんや。アホらし・・・。)
ちと、住職とノムケンの会話から文章が変なんで、そこからうぷしなおしやす(鬱
今日で一部謎が解明するとええのぅ・・・。
ところで、モナ板に「大正昭和擬古」というのがあって、
http://isweb31.infoseek.co.jp/novel/qkana/
昭和初期文体に変換するスプリクトを見つけやした。
(んなことしている暇があったら、続きをですね・・・。)
「広島家」の文章がこうなったんすよ(藁

【出だし】
うすく東の空が赤く染まつたり。

突然、庭でせはしなくニハトリが朝の雄たけびの聲をあげた。
其の聲につられ、ハッと博樹は目が覺めた。
「・・・しまれり。もう斯くなる時間か。」
あはてゝよれ/\の古びた白いシャツに野良仕事用の汚れたるズボンをはくと、
博樹は雨戸をあけた。庭では弟の貴哉と輝裕がニハトリを追ひかけ乍ら、
卵を探せり。

【博樹】
誰もおらざりき。廣島家のどこも人の面影が殘つておらざりき。
其れ計りであらず。何時も博樹たちが歸ると元氣よく鳴いて驅けつけてくる
子犬のシマも、繩を引きちぎつて何處かにいなくなつてをりたり。
庭に殘つてゐたのは、通りすがりの人に餌をもらつてからんじて生き殘つてゐた
小屋の中の鷄のロペのみ。
「ほ、本當に誰もおらざるのか・・・?龍士・・・貴哉・・・輝裕・・・?」
うわごとをいふやうに、澤崎の手をふりきつて博樹はフラ/\し乍ら、家中を
探しまはりたる。
さうだ、裏庭に河豚の入つた桶あれば、貴哉は家事の賄ひで出かけて
ゐる丈やもしれぬ。
「貴哉・・・。ゐるんだろ、なあ。貴哉・・・貴哉・・・。」
なれど桶は置いてなかりき。
「龍士。お前だつて賭博がたてこんで遲くなりたる丈だよなぁ・・・。
輝裕、お前だつて・・・!」
博樹はもう一度家の中に戻り、土間を茶の間をグルリと見囘せり。然乍ら・・・
人がまつ度くおらざりし事を告げる蜘蛛の巣の數々。而して特有のカビの匂ひ・・・。
ぼんやりと博樹は家屋を見つめた。
「はゝはゝはゝはゝは・・・。」
博樹から笑ひがこみあがつた。
「あはゝはゝはゝはゝはゝ・・・。」
投げやりな笑ひが、廣島家の家屋に響き渡つた。
「つゝう・・・!」
背中にヅキンと痛みが走つた。博樹は顏をしかめて土間の柱に身體をもたれたり。
涙がとまらなかりき。
「俺、俺・・・なに遣つて來たるんやろか。
俺のやつ來る事はなんだつたんならんか・・・。」
土間に入つた澤崎は、かける言葉が見つからなかりき。博樹は未だ泣きたい氣持ちを
必死にこらへをりたり。なれど、とうたふ柱にうち崩るゝやうに倒れ、號泣せり。
135その2:01/11/21 22:28 ID:OpVtPqap
【竜士】
龍士は顏面眞つ青になつて激しく首を振る。又青年はケラケラ笑つた。
「俺は森笠。しがない繪師をやつてんだ。」
森笠に名前を名乘られて、龍士は改めてまじ/\と森笠の姿を見た。
すつかり夜目にも慣れて、さつきはぼんやりとしかわからなかりしまはりの光景が
ハッキリと見ゆる。
「・・・・・!」
龍士は目を疑つた。森笠の肌のゐたる處に赤い線状のアザがつゐてをる。
「嗚嗟、是れか?」
龍士の視線に氣が付いて、森笠はニンマリと笑つた。
「つ度く、此處の刑事も好きだよなぁ。何かにつけてビシバシと鞭で俺の身體を
ぶつんだぜ。」
呆然と絶句したる龍士のスキをつゐて、森笠は龍士のふ處にもぐりこみ、
龍士の着てゐる服の袖をまくりあげた。
「あ〜あ、斯くも白い肌なら俺よりしつかり跡が殘つちやうかなぁ・・・。」
「ぎやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
全身に鳥肌を立てゝ龍士は森笠のもとを逃げ、牢屋の入り口の鍵のもとへ
驅け寄つた。
ガチャガチャどう動かしても、鍵はびくともせぬ。
「くそ〜!開けろ〜!!開けてくれぇぇぇぇ〜〜!!」
「ちぇ、シケた奴だなぁ。」
あはてふ爲ゐて檻をガタ/\搖らす龍士を尻目に、森笠は龍士のふ處から
かつさらつたタバコに愚癡をこぼせり。

【貴浩】
「住職。是れから俺、畑に行つてきてもいゝですか?」
ソッポを向いたまゝの知憲住職の視線丈がジロッと貴浩に向けらる。
「佐々岡の爺がゝうなりて、今ウチの田畑は博樹兄ちやんと貴哉しかいなくなりて、
後、兄弟で畑を手傳へるのは俺しかいなくて・・・」
「語尾はちやんとしろ!」
「は、はい!」
貴浩はビシッと背筋をのばして正座せり。
「住職、お願ひ致候。俺を畑に行かせてください!」
住職がジロッと貴浩を睨みつけたまゝ、暫時の時間が流れたり。
「・・・よからん。」
ボソッと知憲住職が返事をせり。と同時に貴浩は飛び上がつて喜んだ。
「有難度く御座候!」
もう一囘ペタンと正座して深々と頭を下げると、貴浩は氣もそゞろに廊下に
飛び出して行きたり。
136さあ急いで続き書くべ(汗:01/11/21 22:29 ID:OpVtPqap
【貴哉】
あれつ、此處はどこならん?何處かで見たやうな風景なれども思ひ出せぬ・・・。
ふと目が覺めた貴哉は思ひがけぬ周りの光景に戸惑ひ、飛び起きやうとせり。
然乍ら、身體の一部の自由がきかあらず。
「・・・手錠!!」
貴哉の兩手に手錠がゝけられをりたり。あはてゝ貴哉は周りをもう一度見囘せり。
閉ぢ込められたる部屋は3疉か4疉くらゐ。くすんだ灰色の壁に粗末なベット。
窓には鐵格子がはめられ、申し譯程度に備え付けられたる机には桶が置いてあり、
中では河豚がすい/\と氣持ちよさゝうに泳いでゐる。
貴哉はどうにか此の状態を打開しやうと、ベットの上で體勢を變へて下にずり落ちた。
手錠をつけ乍らも、貴哉は何とか立ち上がる事ができた。と、其時、入り口の
扉の向かうからビシィと革のしなる音がせり。
「えつ?」
貴哉は身を構へた。
「つ度く、此の忙しき時に本官の仕事の邪魔をしをつて。何時迄もシラを切らず
さつさと白状せんか!」
其れはムチを持ちたる刑事の緒方なりき。

【輝裕】
「ま、待て!」
あはてゝ木村は立ち上がり、ホームに飛び出せり。
「あ・・・。」
其處にはキツい眼光で、然乍ら兩目にいつぱい涙を爲た輝裕の姿がありき。
輝裕はキッと木村を睨みつけると、ホームに近づかうとなす汽車に向かひていく。
考へるより先なりき。木村は飛び込んで後ろから羽交ひ絞めで輝裕の動きを止めた。
「離せ、離せぇ!」
木村の腕の中で泣き乍ら輝裕は激しく叛抗せり。汽車は白い蒸氣を吹き上げて
驛に到着せり。狂つたやうに輝裕は暴れまくる。
「ダメだよ、そんなる事をしちやあ。兄殿たちが悲しむならん、輝裕くん。」
輝裕は兄なる言に激しく反應せり。
「知るか、知らないよ!もう知らないよぉー!」
兩手を頭にあてゝ、悲痛な絶叫の聲を輝裕はあげる。
「もうイヤだよ。わからない・・・わからない・・・一體どうすればい云ふていふんだよ。
何もやも・・・何もやもゝう捨てたい・・・。」
而して木村の腕の中で急に力をなくし、輝裕はペタンとホームに坐り込んだ。
137 :01/11/21 22:36 ID:+Ff/vYUI
またずいぶんと趣のある文章に・・・(w >昭和初期文体

続き楽しみにしてます。がんばれー!
138  :01/11/21 22:59 ID:pJc/SDoA
す、凄い言い回しだ(w
139 :01/11/21 23:39 ID:p2Ft90+B
>「有難度く御座候!」

カコヨスギ。粗いのくせに(w
140広島家の人々144&145(改訂版):01/11/21 23:46 ID:OpVtPqap
「よぉ、すまんな。こんな辺鄙な場所に案内して。」
あばら家といっていい農家の建物の囲炉裏で、知憲住職がおどけた声で客人を出迎えた。
野村は一風変わった趣向に、半分度肝を抜かれた様子で囲炉裏端にあがった。
「石橋、すまんが酒の瓶をもう一つ持ってきてくれ。」
「はい。」
石橋と呼ばれた、いかにも農家の子といった風情の少年が、土間にある甕から酒を汲みあげた。
「なあに、これでもこの界隈では清廉潔白なありがたーいお坊さんで通っているからのぅ、
そうそう人前で平然と酒を飲むわけにもいかんのじゃよ。それでも今までは佐々岡がこそーりと
買うてきてくれたのじゃが、また例のごとく身体を無理させてなぁ、とうとうこの間倒れてしもうたんだわ。」
「それで、ここを・・・という訳か。」
「おお、今年もたくさんの小作農たちが貧乏のあげく、ちりぢりに村を去っていったがな、
こんな少年まで、何もわからぬ世界にほっぽりだすのは、ちと酷じゃろうて。
それで、ワシが遠慮のう飲める酒の場所と、番人をしてもらおうと思うてのぅ。
なになに、これも慈善事業の一つじゃよ。」
そういうと、知憲住職は囲炉裏の中で暖めていた酒瓶を取り出して、野村の盃に酒を注いだ。

「ところで、手紙にも書いてあったが、大陸に出征する予定はもうはっきりと決まってしもうたんか。」
「後一ヶ月以内には、日本を離れることが決まっている。」
「そうか・・・。」
今度は手酌で知憲住職は自分の盃に酒を注いだ。
「だから、日本を離れる前に一度ちゃんと親父さんの骨をお参りしたいと思ってな。手紙に書いて
あったのは本当なのか?広島の親父さんが戦死したっていうのは・・・。」
「ああ。親父の戦友という奴が白木の箱を持って広島家を訪ねてきたわぃ。ただし、中に遺骨は
入ってなく・・・いろいろと手を回して探したらしいんじゃがのぅ、遺体を見つけることが出来なかった
そうな・・・。」
野村は無言で盃を見つめていた。
「それで、この緋鯉村の荒廃ぶりなのか。まだまだ長男の博樹には、広島家の子供たちには
荷が重たすぎるというわけか。」
「ああ、そうじゃ。広島家の兄弟はどれもまだまだ未熟者じゃ。」
突然、腹立ちまぎれに知憲住職は大声をあげて、盃を投げた。すぐ、こっそりと石橋が盃を拾いに
向かう。
「じゃけん、ワシもそれならできる限り手助けをしてやろうと、最初は思うとったが・・・。」
「思っていたが・・・?」
「やめたわ。」
知憲住職はポツリと呟いた。
「ワシがいちいち何でも手助けしておったら、あいつらはいつまで経っても自立できん。
子供、子供と思うておったが、もう上の三人はとっくに親離れする年だったわ。
じゃけん、あえて突きはなしてみた・・・。」
「・・・・・・。」
141広島家の人々145(改訂版)+ちと追加:01/11/22 00:59 ID:gCHLauiy
知憲住職の言葉に、しんみりとした親心がこもっていた。野村は目を細めて、石橋からもらった
新しい盃に酒を入れて、住職に渡した。
「ところで貴浩は今どこにいるか、野村は想像がつくか?」
急にクスクスと笑いながら、知憲住職が質問をふっかけた。
「いや。」
野村は軽く首を横に振る。
「あそこじゃよ。」
知憲住職が指さした先を辿って、野村は絶句した。そしてプッとふきだす。
「随分と無茶なことをしたんだなぁ。」
野村は膝を叩きながら、声をあげて笑った。つられて知憲住職も豪快に笑った。
「なつかしいな。小さい頃一度間違って迷い込んで、広島の親父さんたち長老にひどく怒られた
ことがあったが、あれから自由に出入りしてもいい場所になったのか?」
「いや。」
酒の酔いも手伝って、住職の口はひどく饒舌になっていた。
「貴浩のような甘えた根性な奴は、あのくらいの場所に閉じ込めんと性根がなおらんと思うてなぁ。」
「ひでぇ奴・・・。」
野村は笑いがとまらなかった。
「じゃが、ワシもそうそう鬼じゃないぞ!」
間髪おかず、知憲住職は赤い酔っ払った顔で、今度は酒瓶をドンと床の上に叩いた。
「一つ聞いておきたいことがある。徴兵制度の仕組み、あれはどのようになっておる?」
「えっ?」
唐突な質問に、野村の表情から一瞬にして笑いが消えた。
「住職。なぜいきなりそんな質問が飛び出すんだ。」
とまどいながらも、野村は少し険しい顔つきで知憲住職を睨みつけた。
だが住職はまったく動じない。
「ああ、いうちゃるいうちゃるわい。野村よぉ、あの徴兵制度は欠陥品じゃわい。
あれはお国をつぶす制度じゃわい。軍のおエライさんたちは一体何を考えているんなら。」
「ごちゃごちゃ抜かすに、ハッキリといったらどうだ!」
盃を投げ捨て、野村はカッと怒りにはやり、住職の襟首をキツく両手で掴んだ。
石橋がまたこっそりと部屋の後ろにまわって盃を拾う。知憲住職はクククッと笑った。
「その様子じゃと、お前は何も知らんようだのぅ。安心したわ。」
そして野村の手を外すと、さらりと“博樹に赤紙が来た”と本題を告げた。
「!」
野村の顔色が変わった。
142広島家の人々156:01/11/22 03:11 ID:gCHLauiy
「緒方さん、もうすっかりそのキムチが気に入ったんですね。」
今日も駐在所の机で顔をほころばせながらキムチを食べている刑事の緒方に、
駐在所付きの警官佐竹はからかうように声をかけた。
「ああ、俺もキムチがこんなにうまい食べ物だったとは知らなかったよ。
あの長谷川の若旦那ってのもなかなかやるな。あれはいい料理人になる。」
「でも、そのキムチがおいしく感じるのは、もう一つ理由があるんでは?」
クスッと佐竹は笑うと、緒方に向かって深々と頭を下げた。
「おめでとうございます。これで懸案だった事件も、ほぼ解決が見えてきましたね。」
緒方はニッコリと笑った。
「佐竹にも随分と世話になったな。今まで長い間本当にどうもありがとう。お前の励ましも
あってなんとかここまでやってこれたよ。」
「これで晴れて本署に復帰できる目処も出てきたということで。いいなぁ、俺も出世の
チャンスがあったら、是非その恩恵にあやかりたいもんですよ。」
「お前も近いうちに会えるさ。大丈夫、お前の頑張りがいつか必ず報われる日が来るさ。」
「そうっすか。じゃあ緒方さんのいう通りに俺も前向きに考えてみて・・・。」
笑いをこらえながら佐竹は、駐在所の外にある自転車をひっぱり出して、緒方に手を振った。
「じゃあ、俺は街の巡回があるので、しばらくの間。緒方さん、調子にのって腹を壊さないように!」
「ああ、気をつけるよ。」
緒方も駐在所の外に出て、佐竹を見送った。
「さあて、確実に事件を解決させるために、もう一つカマをかけてみるか・・・。」
ひとり言とともに緒方はニヤリと笑って、駐在所の中に戻っていった。

「そんな馬鹿な・・・。いくらなんでも、それはありえない話のはずだ!」
「じゃあ、やはりあの赤紙は・・・。」
野村はまだ完全に事情がつかめず、知憲住職の意図するところがわからない。
「なぁ、なぜ広島家の長男に赤紙が来たんだ?」
「それはワシが知りたいところなんじゃよ。広島の親父さんが戦死したとこっちがわかったのは、
約2ヶ月前のことじゃ。たった2ヶ月じゃ。それで今度は跡を継いだばかりの長男の博樹に
赤紙が来た。いくら未熟者でも博樹はムラの長ぞ。ムラの核となるものをそうそう立て続けに
ムラから引き離して、軍は緋鯉村をつぶすつもりか?緋鯉村はそれほど軍ににらまれるような
ことをしとったか。じゃが、軍に別の事情があったら、話は別だ。」
「・・・・・・。」
「これは、その軍のやむにやまれぬ事情の裏をかいた事件・・・そうワシはにらんだんじゃが、
どうだ?だからワシはお前に聞いたんよ。一体、軍の徴兵制度の仕組みはどうなっているん
じゃと。」
ふう・・・と肩の力を抜いて、野村はもう一度囲炉裏端に座った。
「住職の予想は、当たっているかもしれんな・・・。」
143広島家の人々157:01/11/22 04:50 ID:gCHLauiy
「あれ、マスター。甲斐くんたちは今日は?」
今日は玉木一人が開店休業の状態で、ソファでタバコを吸っている。澤崎はキョロキョロと
店を見回して、マスターの玉木に尋ねた。
「ああ、甲斐くんは今日は緋鯉村に。で、一人じゃ心配だから岡上くんも一緒に行くように
私が・・・。」
「なんだ、じゃあすれ違いになってしまったのか・・・。」
澤崎はガクッと肩を落として、カウンターに座った。
「えっ、じゃあサワさんは今まで緋鯉村に?」
玉木はカウンターに戻って、いつもの通りコーヒーを作りはじめた。
「うん。あれからいろいろあってね・・・。」
「博樹さんの担保の件で、何かわかったんですか!」
期待をこめて玉木は澤崎に尋ねた。澤崎はちょっと困ったような表情をして、うなずいた。
「完全にそうだとはいいきれないけど、まずこの予想でそれほどはずしていないと思う。」
「で、担保の意味は一体?」
「徴兵逃れの身代わり。」
キョトンとした表情で、玉木は澤崎を見た。
「どこをどうやって、そういう答えが・・・?」
澤崎は苦笑した。
「マスターがそう思うのも無理ないよ。ボクも最初は唖然として頭がまわらなかったんだから。
でも博樹のところに赤紙がきたんだ。広島家はこの前、父親が戦死したばかりだというのに。
いくら今度の徴兵の法律が不公平な欠陥だらけのものであるといっても、広島家は緋鯉村の
村長の家だ。村の要となる家の、それも家長ばかりに軍も召集令状を渡すかな?となると、
考えられるのが、偽造文書・・・。」
「軍を騙したと・・・それは相当にやばい犯罪じゃないですか!!」
「でも徴兵逃れの続出は、最近新聞紙上を騒がすほど頻繁に起きている問題だからね。
まあ、この不景気・・・それも無理ないことだと思うけど、それを逆手にとって金儲けをたくらむ
ような奴がいたら、借金を背負って身動きできない人間に徴兵の役目を背負わせたら。
そのカラクリと偽造文書さえバレなかったら、取引きをした中間の人間だけがどんどん金を
もうけられる仕組みになっている。」
「でも、そう考えると甲斐くんのお父さんは?確か甲斐くんのお父さんは・・・。」
「そう、建さんのことを考えると、この仮説は成り立たない。建さんの存在が担保の意味を
なおさらわからなくさせていた。でも二人の担保の意味を一つに考えるから、わからなく
なるんであって、建さんの担保の意味はまた別のところにあるとすれば、この仮説の不備
な点は一切なくなるんだよ。あと、建さんの担保の意味がわかれば何の問題もないんだ
けれど。と思って、マスターのところに来てみたんだけどね。甲斐くんは緋鯉村か・・・。
なんかついてないなぁ・・・。」
澤崎はふぅっとため息をついた。
144代打名無し@ス:01/11/22 05:39 ID:gCHLauiy
あともう一息、ノムケンから事情説明がないと徴兵逃れ=担保の意味が
つかめない人もいるかと思いやす(汗
ま、その辺は158、159で完全に説明がつくかと。建たんの意味も165あたり
までにはわかるでしょ(^^; ちょと今、ホントに登場人物が多すぎて、
ここのやり取り、誰を最初に登場させて大丈夫か、確認の作業に時間がかかる(泣
ほんの2、3分の違いで緋鯉村の中を登場人物がくるくると移動しやすから。
1章、1章が時間かかってすんません。続きはノムケン&知憲住職の会話→
甲斐たん&お鏡たん金本寺到着→竜士、ハセガーと出会うの順までは間違いないっす。
その続きがまた・・・。あぁ、貴哉再登場はいつになるのか(涙

>>125-126
あんがと〜。住職はね・・・何も考えてないかも(w

>>127,129-130
緋鯉村はだいたい自分が一人旅で行った中国・九州の各地をモデルに
書いてるんすよ。(どこがどこを舞台にしたのかは、また後で紹介しやすね。)
夏祭りで余裕があったら書いてみたかったのが、朝山・末永二人が演じる神楽
のシーンでした。東の人間からすれば神楽は新鮮。こっちは神楽より農民歌舞伎
のが盛んだから。

>>128
ありゃまあ、奇遇だ!おらも演劇板住人やっておりやす(w
最近すっかりROM住人になってしまいやしたが(^^;
割とミュージカルを見に行っていて、今度のジキルとハイドも迷っている。
でも金ねぇし(鬱 来年そうそうの宝塚の前田智徳=轟悠の雪組ラスト公演も
一度見にいってみたいと思うし・・・。↑はシャレにならないほど瓜二つっす。
どっちも極度な肥後もっこすだしね。バッシングのされ方も。でも、こんな理由で
宝塚を見れるようになって轟ファソになった自分も逝ってよしだろうなぁ(^^;

>>137-139
すごいっしょ(w ( ̄粗 ̄)の台詞はとくに凄かったね(爆
粗いのくせにか・・・。まあ、確かに(w
145 :01/11/22 08:28 ID:fbwHaYHZ
お疲れさまでっす。はぁ〜なぞがなぞを呼び・・・(w
146 :01/11/22 19:30 ID:W75oBUL2
東日本では神楽はあまりなじみじゃないのですか?
知らんかった・・・
その農民歌舞伎見てみたいな
147代打名無し@ス:01/11/22 21:37 ID:8KZ+5BD8
また過去ログが随分と増えてしまったんで、150まで収録しやした(汗
これから続きを書きやす。念のため、一回あげときやす。

>>145
はぁ、やぱーり謎は解明されてないんね(^^; こりゃカーサの正体が
わかるまであいまいな状態が続くのかな・・・。

>>146
神楽は宮崎、広島、島根がさかんじゃないっすかね。とくに広島は神楽は
当たり前という雰囲気でビクーリしやしたから。東日本は埼玉、東京の一部
あとは東北地方ぐらい。他はほそぼそと生き残っているかどうかぐらいの
規模だと思いやす。
もし緋鯉村での神楽シーンを描くとしたら、モデルは広島市の阿刀神楽が
いいななんて思うとりましたが。ラストで書ける余裕があるか・・・
http://www.shimazaki.com/festival/hiroshima/atou_kagura/indexj.html
148 :01/11/22 23:33 ID:NEjl4vxF
そうだねー自分広島人だけど、千代田町とか県北地域は特に盛ん。
実家の中学でやったりしたし。追っかけとかいたりするんだ、これが(w
14964:01/11/23 00:10 ID:AyyHYMg2
神楽の話で盛り上がってますな。かくいう自分も神楽好きなんですが(w
それより農民歌舞伎とやらがどんなんか知りたい。普通の歌舞伎より質素なんかな?
そういえば朝山も末永も九州出身だ。北部九州は神楽が盛んなのかどうか知らんけど似合いそう。
150ゴーグルで検索したら・・・:01/11/23 00:16 ID:t8lnpOZ3
いっぱいあった(wなんか東広島市にもあるらしい。
子供が中心なのかな???
151広島家の人々158:01/11/23 01:02 ID:h5+FSoTF
「確かに今、軍は大きな問題を抱えている。徴兵をまぬがれるために、各地でムラを
逃げ出す青年が続出していることは、住職も知っているんだよな。」
「ああ。こんなド田舎の緋鯉村でも、新聞ががなり立てて、どんどん情報は洩れておるわ。
まぁ、ワシも逃亡する若者らに同情するがな。一度徴兵されたら、ろくろく食事も取れぬ
安月給で休みなく働かされ、この不景気で一度職を離れたら、二度と再就職できず、
除隊できても路頭に迷うことになる。上の将校に殴られコキ使われ、戦争で生きるか
死ぬかの瀬戸際に追いつめられ、あげくの結果がそれじゃのぅ。働き手の男が一人しか
おらぬ家は、家族全員死ねといっているもんじゃ。また、それが全員が公平に課せられて
いるものなら、お国のために皆、どんなことがあっても耐えぬけるものじゃ。しかし・・・。」
「・・・・・・それが課せられるのは、臣民の中の約3割ぐらいだ。」
「じゃろう。だから死刑か禁固の刑をくらう危険を犯しても、逃げようとする青年が続出する。
徴兵に引っかからずに済むように狂奔する者がいる。で、博樹の召集令状の一件だ。
野村、お前はどう思う。ワシはこれは徴兵逃れをしようとした者の身代わりに利用されて
しまったものと考えてみたが。」
「借金の肩の代償としてか。」
「ああ。だが、それが実際に可能なのか。どこで博樹は徴兵の対象とされてしまったのか。」
「・・・・・・。」
「もう一度聞く。徴兵される人間はどうやって決められるのだ?」
野村はギュッと唇をかみしめて、目を閉じてうつむいた。
「・・・・・くじ引きだ。」
「はっ?」
「くじ引きで選ばれた者が、徴兵の対象となる。」
「な、なんと。くじ引きで人生が決められてしまうのか!そりゃ、また・・・なんじゃ、そりゃ!」
憤然やるかたなく、チッと知憲住職は舌打ちをした。
「それが軍の公平という言い分だからな。」
「じゃが、くじ引きとはまた・・・。となると、博樹が選ばれたことは単なる運の悪さという
意味にもなるのかのぅ。」
ショボンと肩を落として、知憲住職はグイッと盃の酒をあおった。
「いや、広島の親父さんのこと、そして緋鯉村の村長という立場を考えれば、博樹は
もともと徴兵の対象から外されるはずだ。」
「じゃあ、やはりこの赤紙は!」
知憲住職は喜々として身をのりだした。
「ああ。誰が巧みにくじ引きをする文書を偽造した結果だ。」
ニヤッと唇の端を上げて、知憲住職は力いっぱい酒の瓶を床に叩きつけた。
「そして博樹が、広島家がこうなって一番喜ぶ相手はまず、あの邪毘屋じゃ!」
ガシャンと勢いよく酒の瓶が粉々に割れた。
152きぃ〜〜!!@ス:01/11/23 01:15 ID:h5+FSoTF
大変遅くなってしまい、すんまへんm(_ _)m
あれからすぐに、アウトルックに30通も一挙にウィルスメールがやってきて。
いや、自分のは感染しないようにもう予防してあったんすが、プレビュー画面
が出るように設定してしまっていたのが失敗で、またフリーズしまくり。
パソをなおすのに随分時間がかかってしまいやした。
ちくしょ〜!!おら宛てのメールじゃないんだ。MLのドキュソ野郎宛てのが
こっちにどんどん来てしまったんだ!くぅーー・゚・(ノД`)・゚・。

神楽で盛り上がってやしたね。広島は県北地域の方がさかんというのは
聞いたことがありやす。そんで県北地域が山の神楽で県南地域が海の神楽だと。
朝山&末永には鬼を倒す武士の役をやらせてみたいんすよ(w
神楽は動きの速い薪能と考えてもらうのが一番わかりやすいかな。演じるのは
だいたい青年より大人の男性ばかりっす。
農民歌舞伎は質素です。レベルの落ちた素人歌舞伎というと酷評になるか。
でも神秘性では断然神楽の方が上っすよ。
さあ、頭切り替えて続きを書くべ・・・。
153  :01/11/23 01:33 ID:JRY0Tavl
ありゃ〜大変でしたな・・(汗アウトルックは危険だから使わないほうがいい・・・
と大学の情報処理で言われタッス・・・

神楽は剣とか火花が出るようになってたりするからカコイイよ!(w
たまにやけどする人がいるけど・・・(ノД`)・゚・
154 :01/11/23 01:46 ID:bNALbZts
おおーなんかだんだん分かってきたような、まだ分からないような(w
住職&野村は渋いなぁ。(・∀・)イイ!感じっす。

神楽自分も好き!去年半おっかけしてたし。
あのきんきらきんの衣装、来たとこ是非見てみたい。もちろん、化粧付きで(w
155154:01/11/23 01:48 ID:bNALbZts
間違えた。
来たとこ→着たとこ。逝ってきます。
156広島家の人々159:01/11/23 03:56 ID:h5+FSoTF
「なんか変だ。どっか何かがおかしいよ!」
竜士が去った金本寺で、横松は鬱屈したどうしようもない気持ちを本堂の仏像にぶつけた。
「んなこといったって、仏さんだって困るだろう。」
本堂の廊下の階段で草履のひもを結びながら、森笠は横松の行動をたしなめた。
「じゃあ、このまま広島家の兄弟の中で命のやり取りの決着をつけさせるのは当然だと。」
「あいつらがそれを望んだんだから、いいじゃねえか。」
「そこまで追いつめさせたのは、まわりの人間だよ。絶対、住職も森笠さんもどっか変だよ!」
森笠はだまって、興奮しながら森笠をなじる本堂の横松を見ていたが、くるっと足元に視線を
戻すと、スクッと立ち上がった。
「じゃあ俺は、さっきも言った通り題材のスケッチしにこれから出かけるから。後は留守番
頼むな、横松。」
まったく相手にされていない。横松はググッとはらわたが煮え繰りかえりそうな衝動に襲われた。
「あの・・・。」
寺の門の入り口に、自分と同じ年頃の少年がいる。ハッと横松は我にかえって、入り口の少年に
視線を合わせた。
「あの、ここが夏祭りのときに雨を降らしたお坊さんのいるお寺でしょうか。」
少年の言葉に、横松は目を大きく丸くした。村の人間でない者が、あの夏祭りのことを知っている。
「あの・・・うちのお寺の檀家さんの人ですか?」
そう口走ってから、横松はそれがかなり的外れな発言だったことに気がついて、あわてて両手で
口をおさえた。檀家の人だったら、雨を降らしたお坊さんなどという言い方は絶対にしない。
少年はニッコリ笑って軽く首を横に振ると、自分の名前を甲斐と名乗り、こういった。
「実は、行方不明の父の手がかりを探しにここに。一緒に見に行った緋鯉村の夏祭りの時に
父とはぐれて、それで雨を降らしたお坊さんなら、何か知っていないかと思って・・・。」
「住職なら、今出かけていて留守だよ。」
横松はさらっと即座に返事をした。甲斐は非常にがっかりした表情をして肩を落とした。
「じゃあ、先にマスターがいっていた広島家に行ってみようか。」
横にいた岡上が甲斐に声をかけた。甲斐はコクンとうなずく。横松の耳がピクッと反応した。
「広島家ぇ!」
横松の唐突な声に、金本寺を後にしようとしていた甲斐と岡上は面食らって、横松の方に
もう一度振りかえった。
「ねぇ、そのお父さんと広島家にどんな関係があるんだっ!」
横松の真剣なせっぱつまった表情に、甲斐は直感で何か手がかりを感じた。
「父と広島家の博樹さんという人が同じ借金の担保になっていると、ボクが働いている店の
マスターから教わって・・・。」
森笠はハッと目を大きくした。横松は雷に打たれたように、しばらく微動だにしなかった。
「俺、多分その人のこと知っているよ。お父さんの名前、建さんっていうんだろ?壺振りの建さん。
竜士の親分と一緒に俺、邪毘屋の賭場で建さんとよく会ったんだ。」
「壺振りの建さん・・・。賭場・・・。」
今度は甲斐がショックのあまり、しばらく動くことができなかった。岡上が心配そうに甲斐を、
そして横松の姿を見る。自分の知る父とはあまりに違いすぎる。甲斐は横松の言葉を何度も
反芻しながらも、なかなか頭の中に入ることができなかった。
157代打名無し@ス:01/11/23 04:22 ID:h5+FSoTF
トラブル続きで遅れる遅れる・・・そんなアホな・・・(泣
明日(23日)は、こんなことがなければ1日中続きを書きやす!
といいつつ、ここ2日ほどトラブル続きでこの結果なんだよな・・・(鬱

明日の予告は、竜士とハセガーが出会って→博樹兄ちゃんと甲斐たんが会って+α
→そして金本寺に戻る甲斐たんと住職が出会う。ここのα部分がミソか(w

>>153-154
神楽って相当人気あるんすね(w いいなぁ、身近でやってくれるならもっと
見に行ってみたいっすよ。来年、うまく市民球場の試合の日と折り合いが
つかないかのぅ。化粧つき・・・末永なんかとくに似合いそうだ(w

>>64さん
北部九州は、南部よりそれほどさかんじゃないと思いやす。あっちはまた
何だろう。長崎や唐津だと、おくんちのイメージがあるけど、
久留米とか佐賀。なんかあったかなぁ(汗
158 :01/11/23 04:30 ID:lrhGar4A
あ、・・・・ハセガーの存在すっかりわす・・・ごほごほ・・・

甲斐たん・・・そりゃショックだべ(w

神楽は祭りのある10〜11月が一番盛んですからなぁ・・・試合とは
あんま折り合わないかも(ノД`)・゚・
159代打名無し@ス:01/11/23 22:01 ID:OOJNF+PR
最近、動揺もあってロクな文章をあぷできなくて、このままここにあぷ
したものを読んでもらうのも恥ずかしいんで、過去ログで文章を修正しやした。
http://da1567.hoops.ne.jp/kako113.htm (151〜159)
↑から以下の続きは読んでくだせぇ(鬱 自己嫌悪。
160広島家の人々160:01/11/23 22:02 ID:OOJNF+PR
竜士は全速力で広島家に向かって走っていった。森笠から聞かされた緋鯉村の仕組み。
これで邪毘屋が執拗に緋鯉村を広島家を狙っている理由が、おぼろげながらわかった。
やはり邪毘屋は緋鯉村を乗っ取ろうとしていた。そしてその為に一番邪魔な存在が父の
浩二であり、次に跡を継ぐであろう博樹、そして自分の順だった。
「理由がわかったなら、このまま黙っているわけにはいかねぇ!俺たち兄弟で勝負に出て
邪毘屋の鼻を明かしてやる!」
通りの向こうから、見覚えのある人影がこちらに向かってやってきた。
「あ・・・。」
血気にはやっていた竜士は、その人物の姿にパタッと足の動きを止めた。
「長谷川の若旦那・・・。」
急に別の現実がよみがえった。竜士が今こうして緋鯉村で自由に動いていられるのも、
長谷川が保釈金を払って留置所から釈放してくれたからだ。そして、竜士の里帰りの
期間はもうとっくに過ぎていた。
「若旦那、この前は本当にすまない。ありがとう。保釈金のことはもう少し待ってくれないか。
今、実家がそれどころでなくて、俺がいなくてはどうしようもない状態なんだ。これにケリが
ついたら、すぐに店に戻る。保釈金の借りもちゃんと返す。だから頼む、あともう少しの時間・・・」
「保釈金のことは別に気にしなくていいよ。」
整然とした表情で、長谷川は抑揚のない口調で竜士の言葉をさえぎった。
「それに俺は一銭も警察に金は払ってない・・・。」
一瞬、長谷川のいっている意味がわからなかった。竜士は呆然と長谷川の顔を見た。
長谷川の表情はまったく変わらない。
「あと、これからは店に戻ってもらわなくてもいい。」
竜士はなかなか言葉を見つけることができなかった。
「・・・な、なんだ、俺、クビになったんか・・・。」
やっとのことで口に出た言葉と共に、竜士は気の抜けた半分自虐的な笑いがこみあがった。
「あっ、若旦那!やっと竜士さんが見つかったんですね!」
竜士の真後ろから、料亭長谷川の奉公人の一人鈴衛の大きな声が聞こえた。
竜士はハッとして後ろを振り向いた。隣には同じ奉公人の木村一喜がいる。反対側の道からは
やはり同じ奉公人の倉と小畑が、長谷川と竜士の姿を見つけて駆けつけてきた。
「な、なんだ?お前らまで全員ここにやって来たんかよ!」
竜士はとまどいながら、久しぶりに会う朋輩をかわるがわる見た。木村が持っていた包みを
長谷川に渡す。長谷川は包みを開けて、竜士に差し出した。
「・・・・・・!若旦那・・・、これは一体・・・?」
「お前の保釈金となる金だったものだ。」
何十枚ものの札の束が竜士の目の前にある。竜士は震えながら、信じられない気持ちで
その束を手に取ろうとした。が、寸前で長谷川にかわされてしまった。
161広島家の人々161:01/11/23 23:08 ID:OOJNF+PR
「この金をお前にやってもいい。だが実家のために使うつもりなら、俺はこれを渡すつもりはない。」
キッとした表情で、竜士は長谷川の顔を見上げた。
「じゃあ、どういうつもりでこの金を?わざわざ自分に金があることを見せつけるためかよ!」
長谷川は静かに首を横に振った。
「俺の店から独立して、これで新しい店を作らないか?」
「へっ?」
想像もしない言葉が、長谷川の口から飛び出した。
「新しい場所に料亭長谷川の支店として、お前が店の主となる。いつかこうしようと思って
いたんだ。俺がちゃんと一人前となった時に・・・。俺がここまで来れたのもお前のおかげでも
あるからな。これはその時のお礼として用意していた金だ。良かった・・・保釈金で消えなくて。」
はじめて長谷川はニッコリと笑った。
「新しい店のために、こいつらの中から好きなのを選んで連れていっていい。店が軌道に
のったら、お前の身内の人間を雇うことができる。どうだ、お前にとっても、店の発展のために
俺にとっても悪い話ではないと思うが・・・。」
「ねっ、一緒にやりましょうよ、竜士さん!」
鈴衛が声をかける。竜士はぼーっと突っ立ったままうつむいていた。そしてシュシュッと鼻をすすった。
「・・・・・・まいったなぁ。・・・そういうことかよ。」
必死に笑いでごまかしながら、だんだん竜士の声はしめったものに変わっていった。
「それにしても竜士さんのいう通り、今相当実家の方でやぱいことがあるんですか。俺がここに
来るまでにも、なんか胡散臭い人間が何人もこのあたりを通りすぎていったのを見たんすが。」
倉の言葉に、ハッと顔をあげた。
「そいつらがどこに行ったかわかるか、倉。」
「あっちの方向へ・・・。」
倉が指さした先は広島家だった。
「また邪毘屋か!」
まだ森笠から聞いた緋鯉村の仕組みを博樹に話していない。じゃあ邪毘屋の目的は?
いずれにせよ急を要する事態であることは間違いなかった。
「スマン・・・。実家でまた何か騒動が起こりそうだ。事件が解決したら、またこの事はゆっくりと・・・。
そして若旦那。」
「ん?」
「・・・ありがとう!」
サッと片手を出して長谷川と握手をすると、竜士は朋輩たちに大きく手を振って、あっという間に
駆け去っていった。
「これで完全に解決するといいですね・・・。」
姿が見えなくなるまで、長谷川たちは竜士の姿を見送っていた。
162あと5人・・・:01/11/23 23:12 ID:OOJNF+PR
ふふふ・・・とうとう未登場人物が残りあと5人となりやした!
26:廣瀬、28:瀬戸、39:小山田、56:田村(彰)、70:ブリトー

ここまで来たぁヽ( ´ー`)ノ あとはずるずる長引かないように完結まで。
では、まだ続きを書きやす!
163 :01/11/23 23:13 ID:YU0zrXOh
ブリは邪毘屋の用心棒ブリ?
164 :01/11/23 23:22 ID:hfij0ETe
せ、瀬戸・・・微妙なのが残ったね(ノД`)・゚・
165_:01/11/23 23:51 ID:FSVYFXOA
>>164 ワラタ
まぁ、そう言うなって。

ハセガー素敵な若旦那だなぁ。
166164:01/11/24 00:18 ID:VHzwR4nT
>>165
だって・・・どんな役柄になるんだよぅ・・・(ノД`)・゚・
167 :01/11/24 00:25 ID:oBYG9MsT
捕手陣奉公人従える若旦那はせがー萌え!
あと5人かぁ。廣瀬タンが気になるな〜。
>>166
コレ>(ノД`)・゚・にワラタ
168広島家の人々162:01/11/24 01:05 ID:wLPXT6Lj
甲斐は、半分放心状態で広島家への道を辿っていった。賭博、壺振り・・・まったく想像できない
世界の話である。だんだん甲斐は父の真実を知るのが怖くなってきた。
「どうする?このままマスターのところに帰るか?」
足取りもおぼつかなくなった甲斐に、岡上が気をつかって声をかけた。甲斐は激しく首を横に振った。
「こうなったら、とことん父のことを調べつくしてみるよ。やっぱり緋鯉村だ。緋鯉村で何かあったんだ。」
岡上は、横松に教わった広島家への道を地図で確認した。
「どうやら、あれが広島家らしい。」
いかにも庄屋といった、しかし今にも壊れそうなボロい建物が二人の視界の中に入った。
博樹は縁側に座ってニワトリのロペに餌を与えていた。まだ若いが年の割に落ち着いた雰囲気を
かもしだしている。
「あの人が博樹さんっていう人だろうか。」
「なんかそれっぽい。声をかけてみようか。」
岡上の言葉に甲斐はうなずいて、こそーりのぞいていた生け垣の影から広島家の庭に踏み入れた。
「!」
何者か浮浪者のような恰好の集団が、突然広島家の中へ襲いかかった。咄嗟に岡上は甲斐を
かばった。男たちは博樹ばかりでなく、岡上や甲斐たちも取り囲み、今にも攻撃しようと身を
構えている。ニワトリのロペがあわてて庭中を飛び回って逃げ出した。子犬のシマが博樹に
よりそって激しく吠えた。
博樹は縁側に置いておいた鎌を構えて、浮浪者たちと対峙した。だが、どこか表情に余裕が
感じられる。その時
「ちぃ・・・。ちと目を離したすきにこれかぁ!」
真剣を構えた前田が、裏庭から颯爽と現れ、峯打ちで次から次へと倒していった。
「前田さん!」
博樹は笑顔で前田を出迎えた。
「随分余裕ある態度じゃのぅ。ワシが来ることを見越していたか?」
博樹はコクンとうなずいた。
「でも前田さんがこなかったとしても、今度は俺は動揺しません。」
「ほぉ・・・。いぅたな。」
「ええ。俺がどっしりと構えていれば、ささいなことで広島家はビクともしない。今はそれが
よくわかりましたから。」
「フン、いうてろいうてろ!」
鼻で軽く笑いながら、前田は最後の一人にトドメの一撃を与えた。あわてて浮浪者たちは
広島家からほうほうの態で逃げ出した。
「じゃがのぅ、今度の敵さんはお前というよりも、そっちの坊やたちがお目当てだったようじゃのぅ。」
はじめて博樹は視線をそちらに向けた。顔面蒼白で、甲斐と岡上はおそるおそる博樹と前田の姿
を見た。
169広島家の人々163:01/11/24 02:43 ID:kCQAM+RQ
一体父さんは今、何をしているんだろうか・・・。
泣きそうな顔で甲斐は鯉城駅に向かってトボトボと歩いていった。マスターのいう通り、同じ担保の
立場に陥った建のことを博樹はよく知っていた。そして甲斐にできる限り、自分の知っていることを
丁寧に教えてくれた。だが、建の行方までは博樹は知らなかった。
だが博樹の身に起こったことを見ればわかる。建の今の立場も博樹とさほど変わらないところに
追い込まれているのではないか。賭博・・・壺振り。カタギの世界とはまったく違うところに父は
外れてしまった。もしかして、今置かれている位置は博樹より苛酷なところにいるのかもしれない。
駅の入り口の広場に何やら不必要に笑ってこちらを見ている一人の中年の男がいた。
甲斐と岡上が男の姿を確認すると、ヘラヘラ笑いながら近づいてくる。
「マスターのいう通り、お前一人じゃ危険過ぎるぜ、ここは・・・。」
何度も起こる仰天した出来事に、岡上は舌打ちして男を睨みつけた。
「甲斐くん、お父さんは見つかったかぁ?」
ハッとして、甲斐は男を胡散臭そうな目で凝視した。
「あんまり無茶な行動はせんほうがええよぉ〜。甲斐くんも、ああなりたくなかったらなぁ〜。」
男は二人の態度にまったく構わずに、鯉城駅のはずれに盛り上がっている土饅頭を指さす。
「あれが何が知りたかったら、この鯉城駅の駅員さんに聞いてみんさい。」
「あなたが、父のことを知っているんですね。」
視線を外さず、甲斐は真正面に向き合って男に言葉をいった。
「あなたが父を陥れたんですね!もう・・・父を・・・父を帰してください!これ以上・・・」
「バカ、それ以上真っ正直にぶつかるのは危ない!」
そのまま男に怒りをぶつけようと立ち向かう甲斐の身体を、必死になって岡上は止めた。
甲斐は岡上の制止から抜け出そうと懸命にもがく。男を睨みつける目からだんだんと涙が
溢れ出していった。
男の顔から笑みが消えていった。そしてふところから一冊の冊子を取り出して甲斐に近づいた。
「甲斐くんに、これを。」
甲斐の動きがとまった。そして男が差しだす冊子を、ためらいながらも手に取る。中には何も
書き込まれてない。和紙で作られた一冊のノートのようだった。
「これは・・・ご朱印帳?」
岡上がポツリと呟く。男はうなずいた。
「約束しよう。甲斐くんがそのご朱印帳すべての頁に金本寺の記帳の印を入れたら、
その時にお父さんはこの緋鯉村に現れると。ただし必ず一回の参拝につき、あのコーヒー店
から往復してもらう。とにかく余計なことに首はつっこまず、ワシのいうがままに行動をおこして
くれたら、そう長い日を待たずにお父さんと再会できる。甲斐くんとお父さんの身の安全も保証
しよう。どうじゃ、そこまで父を恋しく思うなら、どうってことないことだろう?」
170 :01/11/24 02:52 ID:31rX+SRA
ま、前田萌え〜(wカコイイなぁ・・・

ってこの謎男は誰じゃ。。
171広島家の人々164:01/11/24 04:12 ID:kCQAM+RQ
岡上はご主印帳の頁数を数えた。非常に簡単な作りで全部で8頁しかない。
「今日ここへ来た分も数えていいのか?」
「ああ、構わんよ。」
「となると、毎日通うとしてあと7回。あと一週間・・・。早くてあと一週間で甲斐の父さんを
帰してくれるというのか。」
「ああ、お前さんたちが余計なことさえしなくちゃ、ちゃんとご主印帳の印が埋まったとき、
無事にお父さんは甲斐くんの前に現れるよ。そして二度と消えていなくなることはない。どうじゃ?」
「それはどこも立ち寄らず、店と金本寺を往復すればいいということですね。」
「そうじゃ。」
「父のことは誰にも尋ねず、黙って朱印をもらいに行けばいいということですね。」
「そうじゃ。」
「そうしたら、必ず早くてあと一週間で父を帰してくれる。本当に・・・本当に信じていいんですね。」
「ああ。必ず約束しようじゃないか。」
「・・・わかりました。やります・・・!」
「甲斐・・・。」
キッと決意を秘めた表情で男を見る甲斐を、岡上は不安そうに見た。男の表情がまた変わった。
やさしく我が子を見守るような目で甲斐の頭を撫でる。
「早くお父さんと再会できるとええのぅ・・・。」
そういうと、男は甲斐たちが通った道とはまた別の方向へ去っていった。言葉もなく岡上は男の姿を
見送った。甲斐はご主印帳を胸に抱きしめて、じっと男の後姿を見つめている。
「いいのか?これで・・・。」
「うん。」
「このままあいつのいうことを信じるっていうのか・・・?」
「うん。多分父さんをひどい目にあわせた人だと思うけど、あの人がそういうなら、
もうそれを信じるしかほかないよ。」
「あ〜あ。」
ため息をついて後ろを振り返った岡上の視界に、さっき男が指さした鯉城駅のはずれにある
土饅頭がうつった。
「あの・・・。」
岡上は鯉城駅の構内に入って、駅員の木村を呼び出した。
「あそこにある土饅頭は誰を埋めたものなんですか?」
岡上の言葉に気がついて、甲斐も二人のもとに駆け寄った。
172代打名無し@ス:01/11/24 04:24 ID:kCQAM+RQ
カーサの正体がわかるのが、もう目の前のところまできたのに、
ぅぅ・・・眠い。続きはまた起きてから書きやす(鬱

これで7割方謎の部分が判明すると思いやす。それで博樹、竜士の確認作業が
済んだら、話は貴浩、貴哉の部分にうつりやす。ああ、やっと貴哉を登場
させるメドが・・・(泣 それが終わったら輝裕パート。それで5人の誓い、
最終回の順です。瀬戸はどこで登場するでしょ〜(^^; いかにも瀬戸な役かもよ(w

>>163
ブリは食材ケテーイなんだよ。
>>164
瀬戸が登場したら笑ってけれ(w
>>165
このシーンを書くまでにハセガー登場がここまで遅くなるとはね・・・。
素敵といってもらえてヨカタよ。
>>167
捕手陣がハセガーの部下という設定は最初の頃リクエストがあったんで
こんな形にしてみやした。廣瀬っすか。小山田とコンビを組んで登場っす。
割と明るい熱血な役で登場ですヽ( ´ー`)ノ

>>170
前田カコヨカタ?それはヨカタよ〜♪まだまだ前田は登場しまっせ。
謎男っすか。それは建たんに刀を突きつけた人ですだ。
173広島家の人々163(改訂版):01/11/24 22:20 ID:8GFNShX+
駅の入り口の広場に何やら不必要に笑ってこちらを見ている一人の中年の男がいた。
甲斐と岡上が男の姿を確認すると、ヘラヘラ笑いながら近づいてくる。
「マスターのいう通り、お前一人じゃ危険過ぎるぜ、ここは・・・。」
何度も起こる仰天した出来事に、岡上は舌打ちして男を睨みつけた。
「甲斐くん、お父さんは見つかったかぁ?」
ハッとして、甲斐は男を胡散臭そうな目で凝視した。
「あんまり無茶な行動はせんほうがええよぉ〜。甲斐くんも、ああなりたくなかったらなぁ〜。」
男は二人の態度にまったく構わずに、鯉城駅のはずれに盛り上がっている土饅頭を指さす。
「あれが何が知りたかったら、この鯉城駅の駅員さんに聞いてみんさい。」
「あなたが、父のことを知っているんですね。」
視線を外さず、甲斐は真正面に向き合って男に言葉をいった。
「あなたが父を陥れたんですね!もう・・・父を・・・父を帰してください!これ以上・・・」
「バカ、それ以上真っ正直にぶつかるのは危ない!」
そのまま男に怒りをぶつけようと立ち向かう甲斐の身体を、必死になって岡上は止めた。
甲斐は岡上の制止から抜け出そうと懸命にもがく。男を睨みつける目からだんだんと涙が
溢れ出していった。男の顔から笑みが消えていった。そしてふところから一冊の冊子を
取り出して甲斐に近づいていく。甲斐の動きがとまった。
「・・・・・・これを。」
男が差しだす冊子を、甲斐はためらいながらも手に取った。中には何も書き込まれてない。
和紙で作られた一冊のノートのようだった。
「これは・・・ご朱印帳?」
岡上がポツリと呟く。男はうなずいた。
「どうじゃ。ワシと約束しようじゃないか。甲斐くんがそのご朱印帳すべての頁に金本寺の
記帳の印を入れた時、その時にお父さんはこの緋鯉村に現れると。」
「えっ?」
いきなりの男の言葉に、甲斐はなかなか反応することができなかった。
174広島家の人々164(改訂版):01/11/24 22:23 ID:8GFNShX+
岡上はご主印帳の頁数を数えた。非常に簡単な作りで全部で8頁しかない。
「ただし一回の参拝につき、必ずあのコーヒー店から往復一回じゃ。とにかく余計なことに
首はつっこまず、ワシのいうがままに行動をおこしてくれとったら、そう長い日を待たんで
お父さんと再会できるというこっちゃ。甲斐くんとお父さんの身の安全も保証しようじゃないか。
どうじゃ、そこまで父を恋しく思うとるなら、どうってことない条件じゃろう?」
「今日ここへ来た分も数えていいのか?」
「ああ、構わんよ。」
「となると、毎日通うとしてあと7回。あと一週間・・・。早くてあと一週間で甲斐の父さんを
帰してくれるというのか。」
「ああ、お前さんたちが余計なことさえしなくちゃのぅ、ちゃんとそのご主印帳の印が埋まった時、
無事にお父さんは甲斐くんの前に現れる。そして二度と消えてなくなることはない。どうじゃ?
悪くない話じゃろう。」
「それはどこも立ち寄らず、店と金本寺を往復すればいいということですね。」
「そうじゃ。」
「父のことは誰にも尋ねず、黙ってご朱印をもらいに行けばいいということですね。」
「そうじゃ。」
「そうしたら、必ず早くてあと一週間で父を帰してくれる。本当に・・・本当に信じていいんですね。」
「ああ、必ず。」
「・・・わかりました。やります・・・!」
「甲斐・・・。」
キッと決意を秘めた表情で男を見る甲斐を、岡上は不安そうに見た。男の表情がまたガラッと変わった。
やさしく我が子を見守るような目で甲斐の頭を撫でる。
「早くお父さんと再会できるとええのぅ・・・。」
そういうと、男は甲斐たちが通った道とはまた別の方向へ去っていった。言葉もなく岡上は男の姿を
見送った。甲斐はご主印帳を胸に抱きしめて、じっと男の後姿を見つめている。
「いいのか?これで・・・。」
「うん。」
「このままあいつのいうことを信じるっていうのか・・・?」
「うん。多分あの人が父さんをひどい目にあわせた人だと思う・・・・・・でも、あの人が
そういうなら、もうそれを信じるしかないよ・・・。」
「あ〜あ。」
ため息をついて後ろを振り返った岡上の視界に、さっき男が指さした鯉城駅のはずれにある
土饅頭がうつった。
「あの・・・。」
岡上は鯉城駅の構内に入って、駅員の木村を呼び出した。
「あそこにある土饅頭は誰を埋めたものなんですか?」
岡上の言葉に気がついて、甲斐も二人のもとに駆け寄った。

すまんこったなす・・・(泣。もうこげなことしとうなかばってん、
クライマックスその1で駄文あぷじゃのぅ、つぅことで許してつかぁさい・・・ペコペコ
ではこれから続きを・・・
17564(ジプシー中):01/11/24 23:51 ID:mqBnyBfw
>助清さん
お疲れさんでーす。あまり無理せぬよう。
廣瀬と小山田楽しみにしてます。
ばってん萌え〜。ふいに「ばってん荒川」思い出した(w
176  :01/11/25 00:04 ID:Kg+VrdY/
土饅頭・・・ももしや・・・瀬・・・(ノД`)・゚・

>64さん
じぷすぃ・・・?
17764(ジプシー中):01/11/25 00:14 ID:2r7Z5PSn
>>176
昨日野球板にきた「1000行く度に板を転々と移動するスレ」についていって
点々としている最中なのです。
あっちは進みが速いんで、なかなか続きを書く暇がとれない(w
178広島家の人々165:01/11/25 00:20 ID:719S8fms
「ああ、この土饅頭。これはうちの駅のホームで大怪我をしていた犬のお墓なんだよ。」
木村は岡上の質問にすぐに答えてくれた。
「犬のお墓・・・。」
甲斐は土饅頭の前にしゃがんだ。さっきの男がわざわざ指さした場所である。そして犬のお墓・・・。
「あの・・・その犬って茶色いメス犬じゃなかったですか。それでお腹の中に子供がいて・・・。」
木村の顔を見上げて、甲斐は思いつめた真剣な表情で尋ねた。
エッと木村は驚嘆して、マジマジと甲斐を見た。
「ほとんどキミのいう通りだよ。いや、子供はお腹の中じゃなくて、多分生まれたばかりでそばに
寄り添っていたけどね。かわいそうに・・・。子供をかばうことで精一杯だったんだろうね。ボクが
子犬と一緒に毛布にくるんで、牛乳をあげようとした時に息をひきとったよ。」
「・・・・・・それは・・・汽車にひかれて・・・?」
「いや、金本寺の住職がいうには、集団でリンチされた傷だったらしいよ。首輪の跡あたりに
あった刀で切られた傷が致命傷だったらしい・・・。」
「・・・・・・ケンだ・・・。」
かすれた声で甲斐が呟いた。
「ここにいるのは、うちで飼っていた犬のケンだよ!」
ペタンと座り込み、甲斐は土饅頭の上に身体を伏せて号泣した。
「じゃあ、キミがあの犬の飼い主・・・。」
木村も呆然と、何度も地面に拳を叩いて泣き伏す甲斐を見つめた。
すべてが緋鯉村につながっていく。不気味なほどに甲斐の身の上につながっていく。
甲斐は犬のケンをかまいながら、父のいない生活の寂しさをまぎらわせていた。そんな主人の
気持ちを察したのであろうか。犬のケンは子供を身ごもっていながら、甲斐の父・建の手がかりを
探しにあちこち飛びまわるようになった。たまに建が身につけていたと思われる品物をくわえては
大喜びで家に帰ってくるケンを、何度甲斐はうれしさのあまり抱きしめたことであろう。
だが、ある日からケンは二度と家に戻ってこなくなった。そしてしばらくして、父の建から緋鯉村の
夏祭りへ誘う手紙が届いた。甲斐は何も知らず、緋鯉村のあの神社の屋台で犬のぬいぐるみを
買ってもらった・・・。
「で、子犬の方はどうなったんですか?」
甲斐を案じながら、岡上は子犬のその後を尋ねた。
「ああ、子犬はこのムラの広島輝裕くんが欲しいっていってね、今は広島家で飼われているよ。」
「・・・・・・広島輝裕。」
また同じ名前の人間に戻った。そして広島家。では、さっき広島家で襲われそうになった時、
博樹のそばによりそって激しく吠えていた犬・・・あれがケンの子供だったのか。
「車掌の林さんから聞きました。今、その広島輝裕くんが行方不明になっているって・・・。」
ハッと木村が顔色を変えた。
「キ、キミたち、輝裕くんのことを何か知っているのか?」
気色ばんで岡上に輝裕のことを尋ねる木村に、岡上は無言で首を横に振った。
「でも、ここまで甲斐のお父さんのことで緋鯉村や広島家がつながっていくなら、その輝裕くんの
ことも、もしかしたら・・・。」
甲斐が涙をふいて立ち上がった。
「これから、もう一度金本寺に行こう。」
「甲斐・・・。」
「あの人のいう通りにご朱印を集めて、早く真相を知るんだ・・・。」
「ご朱印?」
木村は首をかしげて、岡上に尋ねた。
「このご朱印帳全部の頁に金本寺の朱印を押してもらった時、甲斐のお父さんを帰してもらう
約束をしたんです。でも、ここまで甲斐のお父さんと緋鯉村や広島家がつながっているのなら、
このご朱印帳の印がいっぱいになった時、もしかしてその輝裕くんのこともわかるかもしれない。」
岡上の言葉に木村は目を大きく丸くして、甲斐が胸で抱いているご朱印帳を瞬きもせずに見た。
179代打名無し@ス:01/11/25 00:27 ID:719S8fms
いよいよオチ(その1)の166!
かーなり神経使うと思いますんで、あぷがまた遅くなるかと思いやすが
今日ここはしっかり書き上げますで、今まで予想していたオチが当たって
いたかどうか、皆さんご確認してくださんせヽ( ´ー`)ノ

>>64さん
ここまで来たよ〜(泣 もうあと大物未登場人物は廣瀬ぐらいだもん。
ホとしたよ・・・。あとで落ち着いたらメールしますわ。ジプシーか。
時間があったら、やてみたい(w

>>175
ははは・・・。瀬戸はちゃんと生きているから安心してくんろ(w
まだしばらくの間、登場予定はないよ。175ぐらいまでには登場すると
思うけど。(マジで200完結を覚悟してきやした・゚・(ノД`)・゚・。 )
180広島家の人々166:01/11/25 02:44 ID:719S8fms
男はゆっくりとした足取りで緋鯉村の中心の通りを歩き、感慨深げに周りの気色を見回した。
「やっと、これで肩の荷を下ろせるところまで来たんだのぅ・・・。」
遠くから男の名前を呼ぶ声がした。男は声のする方へ振り向いた。
「・・・川さん!達川さ〜ん!」
「ゴラァ!まだ大声でワシの名前を呼べるところまでいっとらんわ!」
息せき切って駆け込んでくる青年・・・森笠に、すかさず達川はカウンターパンチをくらわした。
「イテッ!」
反動で森笠は軽くふっとばされた。
「ったくなぁ。で、どうじゃった?緋鯉村に入って、少しはわかったんか?」
「ああ、それそれ!」
頬をおさえて、ひぃひぃ泣く真似をしていた森笠は、パッと飛び起きると興奮した声で達川に
飛びついた。
「もうバッチリ!邪毘屋の狙いがはっきりわかったっすよ!いやぁ、やらしい〜やらしい〜!
噂には聞いていたけど、本当に何でも欲しがる邪毘ちゃんなんだなぁと。こんな貧乏な村の
始祖伝説まで普通手をのばすっかっての。まあ、その強欲なところが、こうやって足のつく
結果を生んだんかもしれないっすけどね。」
そういうと、森笠はまた例のごとくケラケラ笑って、達川の背中をポンポンと叩いた。
「で、達川さんのところは?俺は緋鯉村の仕組みをもう広島家の次男、三男坊に話してしまった
んすよ。でも、これを広島家の人間が知ることを一番邪毘屋は嫌がってたんじゃなかったっすか?
なんつったって、その秘密を受け取る権利は広島家が持っている。邪毘屋としては、緋鯉村を
乗っ取ってから、ゆうゆうと自分たちで秘密を解いて、お宝を独り占めするつもりだった。
じゃないと、こんな遠回りな方法で広島家を追いつめないっすよね。でも、このままだと広島家の
次男坊が長男に緋鯉村の仕組みを話すのも時間の問題なんすよ。俺がそう仕向けたから。
どうしよう・・・。後は達川さんの方が早く決着してくれないと、俺、みすみす広島家の兄弟を
邪毘屋の攻撃にさらしてしまうことになる・・・。」
わざとおおげさにショボンと気を落としてみせる森笠に、達川は苦笑してニヤリと笑った。
「その辺はもう大丈夫じゃ。もう証拠は充分に揃った。後はこれを軍に渡して、軍と警察の双方
での手続きを終えれば、邪毘屋はもうお縄も同然の状態じゃよ。」
「本当!じゃあこれで晴れて緒方さんも本署に戻れるということで・・・!」
「ああ、お前もこれで完全に無罪放免じゃ。捜査に協力した礼として、今までのスリ罪の経歴も
全部消してやるわぃ。」
「やったぁーー!!」
大声をあげて森笠は万歳三唱をした。
「ん、ちと黙っておれ!」
通りの向こうから、一人の陸軍将校がこちらにやってくる。
「そうそう、ワシはあいつを待っておったんよ!」
達川はニコニコ笑って、向こうからやってくる野村に声をかけると、ポケットから警察手帳を取り出した。
「これは邪毘屋の徴兵詐欺の資料で・・・。」
野村は達川の一言でそれが何を意味するかすぐにわかった。そして、達川が差し出した大きな
封筒の書類を受け取ると力強くうなずいて、すぐに鯉城駅に向かってカツカツと早足で去っていった。
後ろで森笠が声にならない歓声をあげて、何度も笑顔で万歳を繰り返していた。
181広島家の人々167:01/11/25 05:12 ID:719S8fms
「で、これからあの壺振りの建さんのことはどうするんすか?こうして事件が無事に解決
したのも、担保になった建さんを邪毘屋の中に忍びこませて汚れ役をやらせたからっしょ?
後もう一人、広島家の長男博樹さんを担保に陥れて無防備な囮として利用したことも。
あの2人がいなければ、俺がこまこま動いても、こうもうまく解決はしなかったすよ。」
「・・・そうじゃのう。」
「とうとう今日なんて、建さんの息子が金本寺にやってきましたよ。あともう少しで事件が完全に
解決するっていうのに、ああも動かれちゃあ、かえって自分の親父さんをムショに入れる手助け
をしちゃってる。かといって、あんな真面目そうな子を広島家の次男のように強引にムショに
隔離するわけにもいかんでしょ。達川さん、これから一体どうするんすか?」
「・・・そういうところは、ホンマ良く似た親子じゃのぅ。あやつらは」
達川は苦笑いを浮かべた。
「達川さん!」
森笠は半分いらだったような声をあげた。
「いやなぁ、似たようなことをあの建さんも二度もやろうとしよったんじゃ。あやつの性格じゃ、
事件の捜査のために邪毘屋の中にもぐりこんでくれといって、シラフでばれぬようやれる
ような玉じゃあない。じゃけん、ワシに脅されてこういう羽目に陥ったように見せかけたんじゃが・・・。」
「達川さんがやると、しゃれがしゃれにならなくなるからなぁ。」
「敵をあざむくには味方からと思うてやったら、本気であやつがおびえて、広島家の長男に
担保の話を持ちかけた時、担保はやめた方がいいとこっそり長男の博樹にぬかしにいきよった。」
「ぶははははははは・・・。」
「あのときゃあ、どれほどこの役をお前に切り替えようかと思ったか・・・。じゃが、お前じゃと
いかにもな奴で邪毘屋が手の内をくれんじゃろう。ホンマ博樹が別の人物から金の手はずを
つけた時はこれでおしまいかと思うたが、あそこで濁流に全部金を落とした広島家の三男坊、
あいつがこの事件解決の殊勲賞じゃ。」
「ひゃはははは・・・、ひでぇ殊勲賞。」
「で、次が博樹をなんとか徴兵の対象に持ち込むところまできたとこじゃ。ワシがうまく騙して
邪毘屋に借金の担保の対象として博樹が徴兵の対象として可能であることを持ちかけた。
ここでコロッと引っかかったところに、欲にくらんで爪が甘うなった邪毘屋の業の深さが出て
きおったのぅ。後はここで下手に余計な茶々を入って、事が複雑化して博樹を見殺しにせん
ように、少々頭に血が昇っておった次男の竜士をムショに隔離した。そして残るは邪毘屋に
気づかれぬよう浮浪者に襲われる形で博樹に怪我を負わせることじゃ。ここでまたあの建が
邪魔をしようとしよった。」
「・・・・・・。」
「『これ以上、人をもてあそぶのもいい加減にしてください!』とぬかしてな。じゃがここで
この形で博樹に怪我を負わせぬと、囮のための召集令状が本当の出征に変わってしまう。
まだあの時は、この時点で事件が解決するとは思うておらなんだからなぁ、じゃけん、
これ以上邪魔せんように、あやつは別の場所に閉じ込めておいたわ。事件が完全に
解決するまで、あやつも邪毘屋の手下の一人の扱いとなるけぇのぅ。事情を説明して、
お前のように捜査取引で罪を完全にチャラにするまで、あやつの性格じゃ危のうておいおい
安心して表に出すことも出来んわい。」
182代打名無し@ス:01/11/25 05:16 ID:719S8fms
168で全部事件の説明がつくのだが、時間が・・・(涙
この時点でもだいたいカラクリはわかったでしょか(^^;

次は貴浩が解く緋鯉村の謎の方っすね。これは意外に簡単に
わかると思いやす。
ふぅ・・・今日で完結させるつもりがまだまだ・・・。甘かった・・・。
183 :01/11/25 07:04 ID:fUP0grkL
たっちゃん・・・何でこんなに切れ者なの・・・(w
広島兄弟もまだまだ手のひらの上ってことっすね〜
184 :01/11/25 08:09 ID:wvxOiC6z
おお、以前達ちゃんが恐い人で出てきたシーンで
「裏がある」みたいなレスを戴いたのはこれだったのか。
もう天はほぼ線になってますね!
達ちゃん&カーサコンビナイス(w
185 :01/11/25 21:40 ID:e5xjr6XO
(□ι□)「ageますけぇね」
186185:01/11/25 21:42 ID:e5xjr6XO
(・ ε ・)「ってsageてた・・・鬱死」
187広島家の人々168:01/11/25 22:59 ID:jm+Unyjh
「でも、じゃああの甲斐って子はどうするんすか?このままじゃ、もうあの子はとまらないっしょ。
せっかく事件が解決しても、最後の最後で犠牲者が生まれてしまうかもしれないじゃないっすか。」
「じゃけん、あの子にはさっき鯉城駅の前でご朱印帳を渡したわ。」
「ご朱印帳?」
「無事に父親が帰ってくるよう毎日寺に願掛けに通う孝行息子。なんつぅうるわしい光景じゃ・・・。」
「はぁ・・・・・。」
「そうでもせんと、もうあの子も黙って待ってられんじゃろうて。これで自分の飼い犬が殺された
ことも知った。捜査の秘密を守るためとはいえ、あれだけはちとかわいそうなことをしたのぅ」
「なるほど・・・。」
「金本寺にはお前もおるけぇ、あまり心配はしとらんがな。それより、お前はこれから
どうするんじゃ?」
「えっ、俺?」
森笠は自分の顔を指差して、それからクスクスとしのび笑いをもらした。
「むふふふふふ・・・俺はこのまま緋鯉村に永久就職!」
「はぁ、緋鯉村になんぞ職でもあったか?」
「ぁあああ、ひでぇな達川さん!仕事は当然、俺の絵の腕一本に決まっているじゃないっすか!」
「それでまた金に困って、元のスリに戻るのがいつものオチじゃろう。」
「んふふふ・・・それが違うんだなぁ、達川さん。そうそう広島家の博樹さんには当然、捜査の
功労として、俺と同じように何か見返りは用意してあるんだよな。」
「ああワシから借りた借金はすべてチャラ。日雇い労働で稼いだ金もすべて本人に返すつもりじゃ。」
「ということは、建さんの功労金も今までの借金のチャラ。ふぅん・・・これでどれだけ広島家の金に
余裕が生まれるかなぁ。それで・・・ぐふふふふふふ・・・。」
「おいおい、黙ってとらんでさっさというたらんかぃ。お前がそこまで確信するっちゅうこっちゃ、それは
緋鯉村の秘密・・・」
「そうそう、多分あそこには俺が永久就職できるお宝が。だってあそこは・・・」
森笠はバシバシ興奮しながら達川の肩を叩いて、緋鯉村の秘密を語りはじめた。

「あっ、また来た!」
横松はキョトンと目を大きくして、金本寺の石段を上がってきた甲斐と岡上を見つめた。
さっきとは別人のように、とくに甲斐は暗く思いつめた表情をしている。広島家で何かよくないこと
でも知らされたのだろうか。横松は顔を曇らせて、甲斐に声をかけた。
「住職は帰ってきてますか?」
「えっ、住職?」
そうだった。知憲住職を訪ねて二人は金本寺にやってきたのだった。
「待ってて。もう住職はこっちに帰ってきているから。」
すぐにバタバタと駆け足で横松は知憲住職を呼びにいった。
188広島家の人々169:01/11/26 00:14 ID:EEDhQIzG
「なんじゃあ、ワシを訪ねての客人?」
知憲住職は頭をポリポリ掻きながら、本堂の廊下に現れた。
「住職は壺振りの建さんのことを知らない?」
「壺振りの建さん・・・・・・はて・・・ワシは知らん。」
横松の質問に、知憲住職は困ったように首をかしげた。
「いえ、もうそのことはいいんです!」
甲斐は二人の会話をさえぎって、ご朱印帳を住職に差し出した。
「ほぉ、キミたちはありがた〜い参拝客か。」
知憲住職はニッコリ笑って、真剣な表情でご朱印帳を差し出す甲斐から、それを受け取った。
「そこにご朱印をお願いいたします!」
甲斐は深々と頭を下げた。不思議そうに住職はご朱印帳と甲斐を見比べた。
「なんじゃ、えらく薄いご朱印帳じゃのぅ・・・。」
「あっ、それは・・・。」
隣にいた岡上が、事情があってそのご朱印帳がいっぱいになるまで金本寺に願掛けを
しなくてはならなくなったことを住職に説明した。横松があっと小さな声をあげて、
心配そうに頭を下げたままの甲斐の姿を見る。
「ほぉ・・・。横松がどうやらその事情を知っておるようじゃのぅ。よっしゃあ、じゃあその
ご朱印は横松が書くといい。」
「ぇええ!俺、ご朱印の書き方なんてわからないっすよ。」
「ふん、いつもやってるお習字とまったく同じことじゃ!」
岡上は目を点にして、住職の姿をマジマジと見た。雨を降らすこともできる霊験あらかたな
坊さんと甲斐の話から想像していたが、これじゃあ単なる破戒坊主ではないか。
あわてて奥の部屋から手箱を持ってきた横松に、知憲住職は一つ一つ説明して、
ご朱印帳の最初の頁に手習いの習字の言葉を入れさせた。
「それで次は朱肉で印を押して・・・。」
横松は手箱の中から丸い形の判を取り出して、文字の上に押した。デカデカと紙面の中心に
筋肉モリモリの腕の形のハンコが押される。
(こ、これがご朱印ご朱印ご朱印ご朱印・・・・・・。)
真面目な顔でご朱印帳を見つめる甲斐の手前、言葉に出せなかったが、だんだん岡上は
頭が痛くなってきた。

「博樹兄ちゃん!」
広島家の荒れ果てた庭の惨状に、竜士はサッと冷や汗を流して、あわてて家の中に駆け込んだ。
「よっ、竜士おかえり!」
外とは裏腹に、博樹は茶の間で前田と一緒にお茶を飲んでくつろいでいる。
「へっ?」
「竜士、佐々岡の爺の居所がわかったぞ。今は前田さんのところで静養しているそうだ。」
博樹は満面の笑みで竜士に佐々岡の爺の近況を告げた。
189代打名無し@ス:01/11/26 00:27 ID:EEDhQIzG
ここで一旦キリがいいので中休み。次回から貴哉の話にうつりやす。

ここまでの話で一応説明しなければならないのがご朱印帳のことかもしれやせん。
寺社巡りが好きな人にはお馴染みなもんなんすが、A6ぐらいの台帳に各お寺や
神社のサインと印を押してもらう(非常にこの言い方は語弊がありやすが・・(汗 )
いうなればスタンプラリーみたいに考えてもらっても結構っす。
(寺社関係の人が見たら、すごく腹をたてそうな例えっすが・・・)
○○番巡りとかいうのは、願掛けでそれを全部出かけてご朱印を集めるもので、
後で掛け軸に一枚一枚貼って奉納して願掛けは完了です。
寺社巡りが趣味というなら当然やっているよねご朱印集め、お鏡さん(w

>>183-184
そういうことなのでした(w いやぁ、やっとここのシーンを書けて
気が楽になたよ。

>>185
これ、達ちゃんの顔文字?(w
190 :01/11/26 00:59 ID:rAatWNUz
今日はイパーイ見れてめっちゃ嬉しい!
おつです!>助さん
達ちゃんカコ(・∀・)イイ!と思ってたら最後、筋肉もりもりハンコに
やられてしまった(w
邪毘屋の悪巧みは分かった!あとは貴浩にかかっている緋鯉村の謎かぁ。
191広島家の人々170:01/11/26 04:28 ID:EEDhQIzG
さざ波の音が、海辺の掘っ立て小屋の中に心地よく流れてくる。
「今日はここが寝床だね、ベチの兄貴。」
弟分の健太は早速小屋の中に散らかっている漁道具を片付けて、簡単な寝床の用意をした。
ベチは入り口の戸を開けたまま、じっと海を見ている。
「本当に来るの、ウチさん・・・?」
「ああ、多分な・・・。」
「でも、あの手紙の内容で?あれには俺たちの出稼ぎに行く予定の場所しか書かなかった
のに・・・。」
「それでも、多分来るとして、この2,3日の間には必ずあいつはやって来る。」
「・・・・・・。だから海のそばの小屋が寝床・・・か。」
ここは本土から少し離れた島々の一つ。ベチと健太は夏祭りの日からしばらくして、島と島を
渡り歩きながら、夜店や大道芸などでその日暮らしの金を稼いでいた。
今日も今日とて、通り沿いでの余興で3日分程度の食べ物を買うお金を稼ぐことができたが、
ベチが突然、寝るなら海のそばの空き小屋がいいと、まったく別の方向へ歩き出していって
しまう。そこは緋鯉村からの定期船が来る港の方向だった。2日ほど前に、ベチは貴哉から
頼まれたガラクタの景品を売った売上金を自分の居場所を告げる手紙と一緒に、緋鯉村の
貴哉宛てに封筒で送っていた。健太はあの夏祭りの時以外、貴哉とは一度も会ったことが
ないのでさっぱりわからないが、ベチには何やら確信できることがあるのだろう。こうして居場所
を定めてからというもの、じっと海を見つめ、あてどもない友人が来るのをずっと待っていた。
「ベチの兄貴。じゃあ俺、何か食べ物を探してきます。」
「ああ・・・。」
掘っ立て小屋の入り口は砂浜に下りるようになっている。一足踏むごとに砂浜の中に食い込む
感触に少し顔をしかめて、健太は堤防を越えた海沿いの街道に向かって歩き始めた。
しばらく歩いて、やっと堤防を越えるところまで来た時だった。
「あ・・・・・・。」
健太は目を疑った。ベチのいう通り、本当にあの貴哉が、さざ波ぎりぎりの砂浜を足をとられて
つまづきながらもこっちにやってくる。
「ベチの兄貴!」
あわてて、何度も転びながら健太はベチのところに舞い戻った。
「やっぱり、来たか・・・。」
笑顔でベチが貴哉を出迎える。
河豚を小脇に抱えた貴哉は、ボーッとした表情でベチと健太の姿を確認した。
192代打名無し@ス:01/11/26 04:36 ID:EEDhQIzG
貴哉編突入。つまりこういうわけで貴哉は広池のところではなく
ベチのところへいったわけですが・・・。
その理由と兄弟ってなんだろう貴哉編が話の中心です。
この話の後半から時系列が今までの話とつながるんで、そこで
貴浩の緋鯉村の謎解き話も加わってきやす。もうここまで来たら、
早く輝裕も再登場させたいYO・・・。

>>190
金本寺のご朱印のハンコは筋肉もりもりハンコだけじゃないんすよ(^^;
横松と甲斐のご朱印話も、合いの手で物語の中に入ってくるんで
どんなバージョンがあるか楽しんでくだされ(w
193_:01/11/26 07:24 ID:zZaCNgme
なるほどー、ウッチーベッチーか(死語?)
おそまきながら、膝を叩いた次第です。

実は自分朱印集めが趣味なんですよ〜。
今年初めて市民球場行った時に、厳島神社でもらった朱印は宝です。
金本寺のも欲しい。イヤ、マジで。
194 :01/11/26 07:58 ID:ZhTvRC6+
なんか集めたら筋肉が襲ってくる夢でも見そうなんですが・・・
195 
筋肉モリモリハンコ面白すぎ!
次のも期待してます。兄貴に関係あるもの
ばかりかな?
ウチはベチのとこに行ってたのかー。
河豚と一緒に(w