「―――、そこで記録はとまっておる。きっとこれはその婆さんが書いたもんなんだろうな」
「ということは、あそこにはその青年の亡骸が…」
「ということになるな。下手すると婆さんもそこで自害しとるかもしれん」
浅井は手にもっていた羊羹をポロリと落とした。そんな所を見つけてしまったなんて。
意外と小心者の浅井は祈った。バチが当たりませんように、と。
「しかしおかしな話じゃ。鼻毛を伸ばすなどと、たいした能力の持ち主じゃのう」
「そ、そ、そんなのはどうでもいいんですけど、わしは呪われたりしないですよね?ね?」
「知らん。そりゃお前さんの心がけ次第じゃ」
不気味な笑みを住職が浮かべる。浅井はますます怖くなった。
「そそそそそんな、住職!除霊してくださいよ!!不気味じゃないっすか」
「ほほーう、そんな怖い顔つきしとるお前にも怖いものがあったのか」
「顔つきと性格は関係ないでしょう!?いい加減おちょくってると怒りますよ!」
浅井はちょっと本気になって腕まくりをする。さすが海の男、体つきは住職に引けを取らない。
「わかったよ。すまんすまん」
住職は苦笑しつつ謝る。
「それにしてもよくそんな穴を見つけたもんだ。探し物のあったとか言っておったが…」
「…ええ、これを探してまして」
浅井が差し出して見せたものは木彫りの魚のようなものがついた首飾りであった。