アニメのSSスレです。クロスオーバーもありです。
エロパロはダメ。
妄想しろ!そして書くべし!
書き手の少ないアニメでも一カ所に集めれば盛り上がるはず。
いままで専用のSSスレが無くて書き倦ねていた人も
ここで書くとよい。
3 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/27(日) 04:54:18 ID:Gt6LrFCe
誰かC.C.メインで書いてくれ
タイトルは反逆の長門有希で
最近ゼロの使い魔とジョジョやハガレンのクロス見て
ゼロとジャンクの絡み
という電波を受信しつつある俺ガイル
仮にまとまったとしたらここに投下してOK?
5 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/27(日) 12:28:26 ID:iF0HfsFm
>>4 全然OK
まなび書きたいけど先に舞-HiME書こうかな
いっそのことクロスさせるべきか
>>5 サンキュー!
まだ漠然としてるからラノベとアニメ見てくる
7 :
序章(オーベルテューレ):2007/05/27(日) 22:08:25 ID:ug2yRcoT
これは「出来損ない」と呼ばれ苦悩した二人の少女の…
「ゼロ」と呼ばれた少女と「ジャンク」と呼ばれた少女の物語
サモンサーヴァント――
トリステイン学院の生徒が二年生の進級時に行われる使い魔召喚の儀式。
これにより呼び出された使い魔は召喚主たるメイジに仕える文字通り運命共同体となる。
いわば魔法使いの一生を左右する重要な儀式と言えよう。
そしてこの桃色の髪の、若干の幼さの残る小柄な少女
…ルイズもまた自らの使い魔を召喚せんと奮闘しているのだが…
「あーあ、また失敗してやんの」
「まったく!何回失敗してんのよ!」
「ゼロのルイズ!サッサと終わらせろよ!」
散々な言われようであるが仕方ない。彼女はサモン・サーヴァントの儀式に何回も失敗しているのだ
「いい加減にしろ!ゼロのルイズ!」
「仕方ないわよ。だってゼロだし」
あんまりな罵詈雑言に頭の熱くなるルイズ。そもそも彼女はあまり気の長い方ではない。
「黙りなさいよあんた達!いいわよ!ここであんた達なんかとは比べ物にならないような
強くて美しくて気高い使い魔を召喚して汚名挽回といくんだから!」
どこぞの軍人さんも言ってたことが汚名は挽回するより返上したほうがいい
8 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/27(日) 22:10:39 ID:ug2yRcoT
ルイズは今一度儀式にかかる
「(こんなに大見得を切った以上失敗する訳にはいかないわ…!)」
そして一呼吸おいて高らかに叫んだ!
「宇宙の果てのどこかにいる私のシモベよ!神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!私は心より訴える…我が導きに、応えなさい!」
力強い呼び掛けとともに手にした杖を振り下ろす!
ドッカァァァァァァン!!
先程から何度も起こしている大爆発。またもや儀式は失敗かと思われたが…
「何…?あれ…?」
ルイズの見上げた空の彼方から舞い降りてきたのはたった一枚の紙だった
「なんだ?あれがヴァリエールの使い魔か?」
「いや、流石にただの紙が使い魔ってのは流石に…」
「でもルイズだぞ?ゼロのルイズだぞ?」
周りの声には耳も貸さず降りてきた紙を受け取るルイズ。そして紙面をみるなり困惑した表情になる
「ミス・ヴァリエールどうしました?」
そこへ今回の儀式を担任した学院の教師、コルベールが駆け寄ってきた。
「ミスタ・コルベール…これは一体…」
「これは…何かの契約書みたいですな…」
ルイズの持っていた紙、それは黒薔薇の縁取られたシンプルだが美しい契約書のようなものだった
しかし書かれていたのはこの一文のみ
まきますか? まきませんか?
とりあえず序章だけ投下、携帯厨で見づらいかもしれないが許して
次回の更新はちょっと未定です。あとタイトルどうしよ…スレ汚し失礼…
9 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/28(月) 02:50:30 ID:Ei94QGB6
ルイズは俺がもらっていくゼェ(・ω・)
リング上でも余裕の表情がそこにあった。
「その程度でよく勝ち上がってこられたわね」
対する少年は苦痛に悶え、マットに片膝をついていた。
「くっ…ちょっと油断したけど、まだまだ勝負はこれからっ!」
世紀の大イベント超人王座決定戦もあとは決勝戦を残すのみ。
名誉、欲望、執念、憎悪
ミスった
名誉、欲望、執念、憎悪 、全てを飲み込み、そして打ち砕いて勝ち上がってきた二人の強者 …。
ハルヒ VS のび太
この興奮必至のカードに観客もwktkが止まらなかった。デスマッチ確実だぜ。
だが、決勝という舞台に立ちのび太は少々気後れしていた。開始早々のハルヒの素早いタックルに気付かなかったのだ。
両足を刈られ、そのまま流れるようにマウントに移行、十数発の連打を浴びていた。
それでも、この場にいる資格を持つ者だ。全身の油でにゅるりと脱出し、なんとかピンチを切り抜けた。
「もうちょっと楽しませてよね」
ハルヒはまだ立ち上がらないのび太ににじり寄って行く。油断。ハルヒは目の前の男をあなどっていた。
一歩、二歩と距離が縮まり、あと1メートルの所でのび太は急激に立ち上がり、頭突きをその顎に見舞っていた。
よろめき後ずさるハルヒに追い打ちをかけようと、力強く足を踏み込んだ。
マットにめり込む足。震脚によって生じた勁は、脚、背中、肩、腕と一瞬のうちに駆け抜け
打ち付ける拳から一気に放出された。
「うおおおおおおらぁぁぁっっ!!」
のび太の発勁をモロに喰らってしまったハルヒは、ロープまで一直線に吹き飛ばされてしまった。
手応えバッチリ!まともに受けて立ち上がれるはずが無い!…だが、のび太のそんな甘い考えは
すぐに打ち砕かれることになる。
13 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/28(月) 09:15:42 ID:KmkMq6Aw
過疎スレかと思ったら2つも来てる!!
期待age
14 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/28(月) 10:35:55 ID:Ei94QGB6
期待すべきか否か…
俺はちょっと楽しみ。期待してもいいんじゃね?
もう一つ投下
「私のピザはまだか」
C.C.は好物のピザがなかなか届かないことにいらだっている様子だった。
「心配しなくてもそのうち届く」
そんなルルーシュの声も大して聞いてはいない。
窓からじっと外を眺めているが、人の影一つ目に映ることは無く、ただ時間だけが過ぎてゆく。
はぁ、と息をもらしベッドに座り込むと、そばにあったぬいぐるみを抱え込みゴロンと横になった。
「遅い…」
やれやれ、とあきれつつ、ルルーシュはパソコンのモニターに向き直った。
ピンポーン
その音に反応し、C.C.はすぐさまベッドから起きあがり、期待に胸躍らせてゆく。
「ちわー、三河屋です〜」
「ようやく来たか」
階下から声が聞こえると同時に、ドアの方へと歩き出す。それを見たルルーシュは
押し戻すようなジェスチャーをし、
「俺が取って来る。おまえはここで待ってろ」
玄関へと降りて行った。
「何をやっているんだ、ルルーシュは」
実際はほんの数分の間であったが、待ち遠しさから幾分長く感じていたに違いない。
ふと、背後に気配を感じ振り向いてみると、奇妙な出で立ちをした化け物が窓辺からC.C.を見つめていて、
にっこりと微笑んできた。
「おなかがすいているのかい?僕の頭を食べるといいよ」
そいつは部屋に上がり込み、ちぎった自分の頭の一部を差し出してきた。
「何者だおまえは」
臆すること無く問いかけるが、不気味な笑顔でじわじわ近づいてくるソレに、何か得体の知れない
危険を感じ取る。ならば先手必勝。こちらに向けられた頭の一部を払い落とし、スキだらけの側頭部に
思いっきり、力一杯、全力でハイキックをぶち込んだ。
「ぐへあぁあぁぁっっ」
完璧に入ってしまい、一瞬で意識が吹き飛んだに違いない。バタリとその場に倒れ込むと微動だにしなかった。
「いったいなんなんだ?こいつは」
少しして戻ってきたルルーシュは、部屋の中央に倒れている物体を見下ろしながら、少女に問いかける。
「私にわかるわけ無いだろう」
ピザをほお張りながらどうでもいいと言った態度で答える。そんなやり取りをしていると、突然そいつは
立ち上がり、首を左右に動かし始めた。
「いや〜、今のはちょっと効いたな〜」
よくよく見ると、頭がでかすぎだし、真っ赤な衣装にマントと、とても下劣な格好をしている。
こんな格好で外を歩けるのか?どう考えても変質者だ
ルルーシュは一瞬面食らっていたが、当然訊かねばならないとそいつの前に歩み出た。
「おまえは一体何者だ。ここでなにをしている」
「俺か〜?クックック…俺はな…いや俺様はッ!正義のヒーローだァァァァッ!!グハハハハハハ」
高らかに響くその笑い声は、とても正義のヒーローとは思えないほど品のないモノだった。
「本部からの指示でオマエらをぶっ殺しにきた。毒入りアンパンは失敗したがまあいい。
力ずくで行くぜぇぇ。これも運命だッ悪く思うなよぉぉぉぉ!」
「そういうことか…それならこちらも容赦はしない」
殺す…そんな言葉を聞いてもルルーシュが平常心でいられたのは、抗えるほどの力を手に入れていたからだ。
「ルルーシュ、さっそく使うのか?」
「ああ、こんな時のための力だろう?」
「みせてやる…これがC.C.から与えられたスタンドの力だ!」
>>10-12 ワラタ
いくら女の子でも小学生をいたぶりまくるなんてひでーよハルヒw
ルイズ「ここはどこ?」
ハルヒ「異世界人発見!さぁSOS団に入りなさい!」
ハルヒ「キョン、パン買って来い」
ルイズ「キョン、ジュース買って来い」
キョン「もういいかげん怒ったぜ!二人ともオレのマグナムでヒーヒー言わせてやる!」
その後キョンの姿を見た者はいない………
THE END
20 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/29(火) 20:53:25 ID:D+JqN8tc
誰かハガレンのエドがルイズの使い魔になった奴を書いてくれないか?
それがあったスレが消えてしまったんだ
22 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/29(火) 22:03:16 ID:D+JqN8tc
保守
>>20 なんか前見たら移転してた
今はどこ行ったかわからないや…
俺も好きだったんだけど…
後ここのゼロの使い魔にも期待
>>23 わかるか同士よ
あのスレで書いてた氏はここに来るだろうか
25 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/30(水) 01:46:11 ID:B+9qXzkA
あげます
ルイズが触手に犯されるSSはまだか
このスレは刺激が足りねえな
とっておきのを貼ってやろう
二人ともたくさんの汁を漏らしていたので、二人の間に大きな染みが
出来上がった。
「僕はあなたが写真の男にしていた事をして欲しい」
ビリーは嘆願した。
「どっちのだい?ビリー」
「知ってるくせに。顔に射精されていた方……僕はあなたにあれをして欲しい
んだ」
デイブはビリーのブリーフを下ろし、そして自分の下着も脱いだ。
彼らは下腹の間を粘つかせながら、ベッドの上を転げまわった。
デイブはビリーの身体を、彼の汁を舐め上げながら降りていった。
ビリーの股間にたどり着くと、彼は指をやさしくビリーのペニス、
睾丸に這わし、そして尻の割れ目に指を走らせた。
彼はペニスを絞りあげてもっとたくさんの先走り汁を吐き出させ、
それを塗り付けた。
ビリーは初めてのフェラチオをしながら、興奮に震えた。
デイブの快感の巣が熱くなりすぎ、もう我慢できなくなった時、
彼はビリーの胸に上って自分のペニスをビリーの顔に擦り付け、
透明で粘ついた先走り汁の跡をつけていった。
「ビリー、口を開けるんだ。
俺のをしばらく吸うんだ」
ビリーは喜んでペニスを口に含み、男の熱いコックの香を味わった。
彼は舌を尿道口に押し込み、デイブの汁を吸った。
デイブはもう気をやることを我慢出来なかった。
彼は岩のように堅いこわばりをビリーの顔から引き抜き、少年の微笑む顔の上で
ペニスをしごき始めた。
「ビリー、俺のスペルマが欲しいんだな。そうだろ?
おまえは本当にそのかわいいスケベな顔でスペルマをうけとめ、味わい、感じ
たがっているんだ…ああ。
おまえの目にそれが浮かんでいる。おまえは本当に俺のほとばしりが欲しいんだな。
よし、いくぞ…」
ドピュ!
バシャ!
ピシャ!
尾を引いて、こわばりからのほとばしりはビリーのあけられた口に発射された。
若者の舌は全ての男の本気汁を集められるだけ集めようと突き出された。
彼の口からはずれた白く熱いスペルマは、鼻や顎や頬に当たってしたたった。
デイブは睾丸の汁をビリーの顔とそのあけられた口に向けて何度も何度も発射し
続けた。
「僕も行っちゃう!」
ビリーは悲鳴をあげた。
デイブは素早く動き、彼の最後のスペルマの雫をビリーの口に吐き出すとともに、
少年の美酒を吸うためにビリーの道具を口に含んだ。
ビリーは間をおかず、待ち受けているハンサムな空軍戦士の口に、男のほとばしりを
噴出した。
ビリーのペニスはデイブの口にピッタリとくわえられていた。
デイブの暖かく、スペルマでいっぱいの口の中に暴発するたびに、ビリーの全身は
こわばり、上下に揺れた。
ビリーは今までの人生でこんなに激しく、そして気持ちよく射精したことはなかった。
彼は口の中のデイブのペニスとスペルマの味をいとおしいと思った。
そして、その二つの感覚はさらに激しくビリーを射精させた。
それは、暖かい感じでだった。
お互いの信頼。
最後は、二人とも絞り出して、転がって離れた。
デイブはベッドの周りをまわって、ビリーのそばに横になった。
お互い見合って、デイブはビリーにキスした。
それはビリーが知っているようなキスではなく、濡れた口はお互いの熱い精液を舌で
混ぜ合わせるようにキスしてきたのだった。
突然、彼らは彼らの痴態への賞賛の拍手を聞いた。
それはリチャードだった。
彼は戸口に立って、彼は、ハンサムな空軍戦士と若い少年によるみだらなセックスを
見ていたのだった。
リチャードは裸で、既にしたたらせている堅いモノを誇示していた。
ビリーとデイブはお互いを見て、その後、3人とも笑った。
リチャードは、ベッドのビリーのそばで仲間に加わった。
彼はビリーとデイブの至る所に手を這わし始めた。
デイブはビリーに言った。「俺達はもうちょっとリチャードに気をつけるべき
だったかも。俺達にこの家を使わせてくれた時から。どう思う?」
「確かに、何か…」
「俺は君のようなかわいいケツが好きなんだ、ビリー。向きを変えて、俺にちょっと
舐めさせてくれ」
ビリーは少し驚いたようだったが、向きを変え、尻をリチャードに見せた。
芸術品を正味しているかのように、デイブは前屈みになって、そのやわらかく、たく
ましく、若い尻に手を這わせた。
両側の尻たぶに手をあて、彼はリチャードに小さいピンクのアヌスを見せようと両手を
開いた。
リチャードは舌を湿らせ、割れ目の頂上からすぼまった穴まで舐め始めた。
そして彼は睾丸を舐め、それから目的の場所へ上に戻った。
ビリーは今アヌスが感じているような感覚は今まで感じたことがなかった。
彼はリチャードの舌が自分のきつい、小さいアヌスに押し込み、そして尻の中に入ってくる
のに従い自分のペニスがまた堅くなってくるのを感じた。
「ああああああ!」
ビリーは吠えた !
デイブはビリーにささやいた。「君はこれが好きなんだろう?どうだい?
そうだろう?気に入ったらしいな」
デイブはビリーの下半身に手を伸ばし、堅いペニスにふれた。
彼の仲間が若いブロンドを舐めているのを見る興奮が、彼のペニスに再度
魂をみなぎらせた。
リチャードは舐めることが好きだった。
彼はアヌスを吸うことが好きだった。
彼の舌がつかれると、かれは指を湿らし、そしてやさしくビリーを指で犯し始めた。
ビリーはベッド上で揺れていた。
彼が揺れるので、彼の体の下でこわばりがデイブの手で上下にしごかれていた。
デイブはビリーに再度優しく話した。「リチャードが君のかわいい尻を犯したい
らしい、ビリー。
最初は少し痛いかもしれないけど、一度それが入れば君も好きになるよ。
約束する。
もし望むなら、君が犯されている間、君のをしゃぶるよ」
「僕はとても熱いよ、デイブ、僕にやりたいことをして、さっきあなたがした
ように僕を激しくいかせて」
それはリチャードが聞きたかった全てだった。
彼はビリーの尻から指を引き抜き、そしてビリーの横に横たわった。
そのおかげでデイブはビリーの堅いペニスに触ることが出来た。
リチャードが位置につくと、デイブにウィンクした。
リチャードが彼の肉棒をビリーのケツマンコに押し込むと同時に、再度リチャードは
その口にビリーのペニスをとらえた。
「おおおおおお!」
ビリーはリチャードのペニスがアヌスに入る時、恐怖で叫んだ。
リチャードが彼の8インチの肉棒をビリーのかわいい泡のような尻に深く
深く押し入れている間、デイブはビリーの尻をしっかりと両手でかかえ、
ビリーの若く堅いこわばりを口にくわえていた。
ビリーは初めてアヌスにペニスを迎える恐怖からわめいて、叫んでいた。
「やめて!
やめて!
ちょっとだけ…」
ビリーは叫んだ。
「わかったよ、坊や。すこし止めてこいつになじんで貰おう。
でもな、俺はまだ数インチしか君の中にいれてないし、まだ5インチ以上も
残ってるんだぜ」
リチャードは言った。
少しの時間のあと、ビリーは力を抜き、リチャードは男根を少しずつビリーの中に
入れこんだ。
デイブはビリーのペニスが急に口の中ではねたのを感じ、リチャードがビリーの
腸の奥にある快感の巣をとらえたことを知った。
「おお! 神様!」
ビリーは巨大なペニスが彼の敏感な前立腺を打つのを感じ、悲鳴を上げた。
完璧な快感がビリーに訪れ、リチャードはやすやすと彼のペニスの全てをビリーの
中に押し込んだ。
ビリーは自分が熱くて堅い二人の男に挟まれていることに気づき、ビリーの体は
興奮でふるえた。
一人は彼の若いペニスを吸い、もう一人は彼の中深く彼を犯していた。
リチャードは彼にセックスの快感を与え始めた。
入れては出し。
入れては出し。
速く、更に速く。
亀頭がビリーの前立腺に触れるたびに、ビリーは更に多くの先走り汁をデイブの口の
中に漏らした。
リチャードは速く、激しく犯し始めた。
新鮮な若いケツを味わい、彼はビリーの中に出すことを望んでいた。
デイブはビリーの足を開き、少年のペニスを吸っている間もリチャードの肉棒がビリー
を犯す様を見れるようにした。
「いきそうだ!
締め付けろ、ビリー!」リチャードは叫んだ。
ビリーはリチャードが最後の激しいストロークを行うのを感じ、そして
リチャードはビリーの中に射精した。
それは同様にビリーを頂点に導いた。
そして、彼の腸がリチャードのいやらしい淫汁で満たされると同時に、ビリーは別の
絶頂をデイブの飢えた口の中に発射していた。
「ああああああ!」
神様!
神様!
おおおお!」
ビリーは犯され、射精され、そして同時に吸い出され、声を限りに叫んだ。
ビリーがあまりにも激しくふるえるので、ペニスがデイブの口からこぼれ、
デイブの顔中やセックスしていたベッドのシーツに射精した。
リチャードはビリーをきつく抱きしめ、そして脱力した。
デイブは叫んだ。「はやく、リチャード、俺に入れさせろ」
彼はリチャードと場所を交代し、すぐに自分のペニスをビリーの熱くゆるんだアヌス
に埋め込んだ。
リチャードは、シートに放出されたスペルマを舐め取るために動き回り、そしてデイブ
の顔のビリーの精液を舐め取った。
ビリーのペニスまで下におり、彼はビリーのペニスをのどで綺麗にした。
デイブがその空軍で鍛えた肉棒でビリーのケツマンコをえぐっていると、
リチャードの舌が彼のペニスとビリーのケツの間を動いているのを感じた。
リチャードは位置を変えて、デイブが熱い、たくましいケツを突いている間も
ペニスとアヌスを舐められるようにした。
デイブはもう出ると叫び、リチャードはデイブがビリーの中に一発また一発と男汁を
そそぎ込んでいる間にさらに密着した。
ビリーのアヌスからザーメンがにじみ出ると、リチャードはまるでうちの
中のザーメンは一滴たりとも無駄にしないかのようにそれを舐め取った。
数分、彼らは静かに一緒に横たわっていた。
最初に口を開いたのはビリーだった。「ありがとう…本当にありがとう。
また出来るかな?」
デイブはビリーをその腕に抱きしめ、応えた。「もちろん、ビリー
まだまだ出来ることはたくさんあるさ。
しかし、俺達はすぐ路上に戻った方がいい。
私は午後9時には基地につかないといけないし、君はお兄さんに会うんだろう」
「兄さん…ああ…すっかりわすれてた」
リチャードにさようならを言い、そしてすぐにもどることを約束した後で、
デイブとビリーはニューハンプシャーのピース空軍基地に向かった。
7時頃、デイブとビリーはニューハンプシャー、ポートモスのピース空軍基地まで
あと25マイルのところにいた。
「おい、君!
すまないが……やあ……私はダンだ。
君の名前は?」
私は震える声で返答した。
「僕はビル。
やあ、ダン。
どうしたの?」
私が思うに彼は私が若い事がわかったのだろう。
再度話しはじめるのに少し間があった。
私はペニスをしごき続けた。
「君の個室に行ってもいいかな?
君に何か聞いてもいいかな?」
私は男が私のペニスを見たいと思っているのをわかっていた。
私はとても怯えていたが、同時に興奮していた。
私は本当にペニスが欲しかった。
それは例えば貴方が今までしようとは思わなかったが、それを
したらとても気持ちがいいと知っている事をするようなものだった。
「いいよ、来ても。
まずお尻を拭かせて」
私は言った。
私は自分を拭いたが、トイレに座ったままだった。
私はドアの掛け金をはずした。
男はズボンのジッパーを上げて入ってきた。
ダンは40歳くらいの大人だった。
彼ははげかかっていて、ビール腹で、バドワイザーの野球帽を
かぶっていた。
彼が近づくにつれ、私は彼に古いスパイスの匂いを感じた。
彼は私に微笑み、握手しようと手を出してきた。
「ビル、ダンだ。
どうしたんだい?」
「別に」
私はおとなしく返事をした。
(僕はお母さんがトイレのドアを叩く前に急がなきゃいけない)
私は考えた。
ダンは明るくどん欲な目で私の7インチの堅い少年のペニスを見つめた。
彼は唇を舐めた。
「私は君が自分の手でここでイこうとしてることに気付いた。
見たところ、君はあまり上手く行ってないみたいだ。
私に手伝わせてくれないかね?」
私は彼の目をまっすぐ見た。
私たちはそれ以上話す必要がなかった。
男はジーンズを引き下げ、そして私が今まで見た中で最も大きいペニスをあらわに
した。
彼が当惑したように見えたのは、きっと私の目が見開かれたからだろう。
「これがとても大きい事は私もわかってる。でも今まで一度も計った
ことはない。
数人の女性がこれを見て逃げ出したよ。
彼女たちはこれが引き裂いてしまうんじゃないかと怖がったんだ。
怖がらないで。君の喉にいれるとか、強制はしないよ。
単に舐めて、しゃぶるだけでいい。
君は今までに男を吸った事はあるかい?」
ダンは尋ねた。
私の頬が熱くなったので、きっと私は赤面したのだろう。
「いいえ。
他の人のを触った事もないです」
彼は暖かく微笑んだ。
「そうか、何も恐れなくていい。
大人のダンが君が知るべき事を全て教えてあげよう」
十分だった。
私は時間を焦っていて、男はセックスするのに何時間もあるかのように
話していた。
「ねえ、急がないと僕の母さんがノックしに来るんだ」
大人の男は眉をひそめ、うなずいて近寄ってきた。
彼のペニスが私の顔にあたった。
「それをゆっくりと含むんだ。ぼうや。
最初は少し亀頭を舐めるだけにするんだ」
丁度私が舌を彼のペニスに当てたとき、トイレへのドアがきしんで開いた。
私は驚きと恐怖で彼のペニスを噛んでしまいそうになった。
私を安心させるかのように、ダンは優しく手を私の頭に置いた。
私は再び顔の前にある巨大な肉竿の大きい亀頭を舌でいじりはじめた。
私はだれかが近くで小便をしているのを聞いた。
私は唇をダンのペニスの下側に持ってゆき、そして唇でしゃぶりはじめた。
私は口でたくさんのつばを彼のペニスに付けてゆき、彼の全ての場所を
舐めた。
私は本当にそれを楽しみ始めていた。
私の手は更に強く私の頭を押していた。
私はその時、自分のしゃぶる音がとても大きくなっている事に
気付いた。
幸いな事にトイレの別の男はまだ小便をしていた。
私は誰かがおならをするのを聞いた。
水がシンクを流れ始めると同時に私はダンのペニスの亀頭を初めて口に
含み、それを吸い始めた。
別のおならの音がトイレの別の人から発せられた。
私はダンの顔に張り詰めた緊張を見て取れた。
彼は見つめていて、快感の音を発しないようにしていた。
私が彼に快感を感じさせている事を、私は知っていた。
奇麗な堅いペニスのにおいに優るものはない。
その日、私は初めてその臭いを嗅ぎ、そしてそれに魅了された。
私が女性と結婚した後も、私は奇麗な堅い男性のペニスをまだ
欲しがっていた。
それは私を狂わせる特別なオーデコロンだった。
ペニスのにおいは、いつも私自身のペニスを興奮させた。
私の少年期以来ずっと、私はトイレ、更衣室、そしてシャワーの
男性の匂いをかぎ続けた。
私は誰かがその匂いで堅くなったことを知っている。
私が13歳の時から愛しはじめた素晴らしい白い汁を吐き出すあの
ペニスを私はいつも探していた。
1978年5月の、ちょうどその日。
トイレの見知らぬ人は最終的に大きい音を立ててドアを締め、トイレから離れた。
私たちはまた二人っきりになった。
ダンは手で私の頭を愛しそうに撫でながら、柔らかい喘ぎ声を出した。
「ぼうや、今までペニスを吸ったことがないにしては、君は上手すぎる!」
彼は叫んだ。
ああ!
私は上手なのか?
その賛辞は、私に更にそれをすることを望ませた。
私はもっと彼の大きいペニスを口に含み、そのマッシュルームのような形をした
亀頭が喉の奥に触れると、むせそうになった。
この時はまだディープスロートを覚えるときではなかった。
ああ、私はその時はディープスロートが何かすら知らなかった。
私は空気が再び流れるまで彼のペニスを口から出した。
私は吸いながら、舐めた。
彼はさらに大声でうめきはじめた。
ダンの目はきつく閉じていて、そして尻を私の顔に突き入れた。
彼はとてもやさしく、私の顔に突き入れ始めた。
彼は私が扱えるだろうと彼が分かっている量以上のペニスは、決して
私の口に突き入れようとはしなかった。
しかし彼のペースは速くなっていった。
私は手を彼の後ろに回し、彼の裸の尻を感じた。
彼が私の口に突き入れている間、私は彼の尻の産毛を撫でた。
私は手に彼の汗をかいた肌を感じていた。
私の鼻孔で彼のじゃ香のような臭いを嗅いだ。
私のペニスは、私が受けていた官能的な刺激に激しく勃起していた。
ダンは身体をこわばらせ、亀頭だけが私の口に残るまでペニスを引き抜き、
そして情熱的に吠えた。
「うおおおおおおおおおおお!」
私は最初の噴出にむせた。
それがいきなり起こったので、私はそれをすぐに味わうことは
出来なかった。
それは私をとても驚かせた。
最初それは喉の下の方にひっかかった綿菓子のように感じ、私は
飲み下した。
それは液体には思えなかった。
それはとても濃かった!
そして、私の味蕾が感覚を取り戻し、私はしかめつらになった。
私の最初に味わった男性の精液の味は、必ずしも気持ちいいものではなかった。
男が口に射精した時、その男が好きならばその精子を飲み下す事で
好意を示す事が出来る、と昔呼んだエロ雑誌に書いてあった。
留意すべきは、私が呼んだのは異性愛の雑誌で、男の精液を飲み下すと
言っているのは女性だった。
しかし私は同意した。
この男は私に良くしてくれた。
私が彼の汁を飲み下さなかったら、彼を侮辱することになるだろうと
私は思った。
なので、私は急いで飲み下しはじめた。
私が彼の射精を飲み下す度に、彼はそれを私の口満杯に吐き出した。
これはおそらく1分くらい続いた。
彼の全身はリラックスした。
僕は捕まったかと怖がっていたが、彼が帰ってくるのを僕が待っていたと彼に思われているのを知って安心した。
彼がそう考えるのなら、これは彼のためのものだった。
ああ、誰にこれを話しているのだろう。
彼は僕をベッドに寝かせ、彼はシャツを引き抜き、ズボンのボタンを外し、パンツを脱ぎ、
すぐに裸になった。
彼の大きなセックスの為の肉棒が上を指していた。
彼は手を僕のスカートの中に入れ、僕の岩のように固くなった肉棒に手を伸ばし、僕の隣に
横になって僕の偽の胸をもてあそび、僕はまるで彼の奥さんになったように感じながら横に
なっていた。
それが、彼のペニスにもっとも悪い形で奉仕したいと僕を思わせた。
僕は彼の上に転がり、69のポジションになった。
彼は僕のスカートを捲り上げ、ピンクの綿のパンティー越しに僕の尻を舐め始めた。
僕は彼の大きなペニスをつかみ、僕の小さな口で出来る限り飲み込んだ。
自分がこんなに飲み込めると知って、僕は驚いた。
僕は彼の8インチのうち6インチを飲み込んでいた。
彼のペニスは細く、僕のと同じくらいの太さだった。
僕はその感触を愛し、亀頭の先から滲み出す先走り汁も愛した。
うんんんん。そう、僕の舌は彼の8インチの肉竿全体を探査していた。
肉竿を上下に。
同じ時、僕の尻は良くこなされ、濡らされていた。
彼は僕のパンティーを尻たぶの下へと引きおろし、舌を僕のアヌスの穴の周りや中へと突き
入れた。
ケンは僕の後ろの方でうめき、彼は僕の尻を舐め、僕も彼のペニスをしゃぶり、彼のを扱き
始め、舐め、しゃぶり、彼が僕の喉の奥に射精するよう懇願した。
彼は腰を上下に降り始め、僕の口から出したりいれたりし、僕は彼が硬直するのを感じた。
僕はいつもイく直前にそうなった。
彼はもう長くない、ということが私にはわかった。
私は彼をもっと早くしごき、僕の舌は彼の亀頭を激しく愛撫し、僕の唇は彼の肉竿を抱え込み、
彼の巨大な性器を上下に滑った。
彼のザーメンは僕の口に発射され、何度も何度も噴出し、僕は飲み下しつづけたが、彼は制御
出来ないほど発射していて、ザーメンが僕の口からこぼれ始め、僕は出来るだけ早くそれを
すすり、彼は僕の口の中で絶頂を越えていた。
僕は彼の最後のスペルマを飲み下し、唇にこぼれた分を舐めて綺麗にした。
ケンは喜びの長いため息を漏した……
「あああああああ、うん、一番すごいフェラチオだったよ」
「言葉だけでしょ?」
そう言って僕は向きを変え、彼の横に寝た。
「いや、ウソじゃないよ。前の妻はフェラチオがヘタだったんだ」
僕たちは二人とも笑い始めた。
「僕には良い先生がいたんだ」
僕は彼の目の中を覗き込み、微笑んだ。
「元妻の服が本当に良く似合う、でも今からは裸になった方がいいね」
彼がブラウスのボタンをはずしてスカートのチャックを開けたとき僕は横になったままで、僕
のパンティーは既に僕の尻半ばまでおろされていて、僕はすぐに完全に裸になった。
彼は仰向けに寝て、彼の柔らかくなって濡れているペニスは僕のまだギンギンに堅いペニスの
上にあった。
彼は身体を滑らせ、僕のペニスを取り、フェラチオし、それはとても上手だった。
僕は彼の口の中にペニスがあるのが好きだったが、でも彼のアヌスにも入れたかった。
僕は、彼が僕を犯したように恋人を犯したかった。
彼がまた僕を私を驚かせたのはその時だった。
彼は仰向けに転がり、そして僕に床に立つように言った。
彼は自分の足を引き寄せ、僕に好きなようにするように言った。
僕はベッドに飛び込み、上体を折って唇で彼の尻へと突っ込み、彼のすぼまった穴にキスし、
舐めまくった。
むむむむむ、彼のアヌスの唇の味は素晴らしかった。
むむむむむ、湿ったアヌスの穴は、すぼまるたびに僕の舌を吸い込んだ。
僕の舌は、彼のアヌスの深さ2インチのところまで潜っていたに違いない。
「おおミッキー、そうだ、そうだ!!!
おお、うん、もっと、深く」
彼は懇願した。
僕の舌は応え、僕の顔面全体が彼のアヌスの穴へと這い上がろうとするほど僕は彼の飢えた尻
を満足させたかった。
「ああ、そうだ、おお、うん、さあ、私のアヌスを犯すんだ、美少年よ」
僕は立ち上がり、ペニスに手を添え、彼の湿った穴へと導いた。
僕は深呼吸し、入り口へ少しずつ前進し、2インチほどもぐりこんだ。
ケンは少しの苦痛にうめいているように思われた。
僕は引き抜き、そしてさらに深く突き入れ、彼の目はしっかりと閉じていて、彼の顔はゆがみ、
僕は引き抜き、そしてまたさらに深く突き入れた。
彼はため息を漏らし、それから微笑んだ。
僕は、自分のペニスが彼を物凄く興奮させていることが分かった。
この事実は僕をとても興奮させ、僕は自分の少年ペニスを全部、彼のトンネルの中に突き入れ
た。
彼は大きい情熱的なうめき声をもらした。
「ああああああ!おお、ミッキー、そうだ、
おお、うん……続けて!」
僕は狂ったように彼を突きはじめ、彼の尻たぶに叩きつけられるにつれ僕の睾丸は急速に一杯
になり、電気が僕の身体を走り、僕は1分に1マイル分も彼を突き、まるでエンジンのピス
トンのようだった。
僕は彼のアヌスに入れたり出したり、入れたり出したりして犯すだけの機械になっていた。
そして僕はペニスを周りにグラインドさせ始め、左右に、そして上下に、入ったり出たり、
その顔の微笑みから、彼はそれを気に入ったことがわかった。
僕は生きていることを実感していた。
まるで僕が彼にとってのセックスの神になったかのように。
彼のキツいいやらしい穴を犯すためだけに使わされたかのように。
その瞬間、僕は彼のアヌスのトンネルにスペルマを発射し、何度も噴射し、突き入れて抜く
度にザーメンは彼のアヌスから漏れ、その漏れたザーメンは尻の割れ目を滴っていった。
「ああああああ、そうだ。
おおおお、そうだ」
41 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/30(水) 15:06:43 ID:SR/Z4Opk
なんというカオス
ひとつも投下しないうちにスレが死んでしまった…
43 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/31(木) 20:31:53 ID:9NAvLHeB
44 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/31(木) 21:15:33 ID:9NAvLHeB
保守
投下来るまで雑談でもしようぜ。
見たいクロスとか。
とりあえず俺はスクライド×ゼロの使い魔が見たい。
ってかゼロ魔のクロスのしやすさは異常w
ここはゲイSSスレなのでルイズは≫43のスレに移動するべし
>>46 勝手な思い込みで職人さんが投下しにくい雰囲気作るなダラズ
>>45 ルイズが何もしなくてもスクライド勢が何もかも虚無にしそうだなwww
ここでカズマと劉鳳のベッドシーンの登場だ!
51 :
7:2007/06/05(火) 22:43:02 ID:d57D/Zhf
あうー、物語が大して進まないのに文章量だけが増えてくー
何度推敲しても減らないー。やっぱりSSは難しいー
…それでも明日投下していいですか?
wktk
54 :
7:2007/06/06(水) 06:52:28 ID:Mv/4lkAc
何度も失敗した末、ついに使い魔の召喚に成功したかと思われたルイズ。しかし現れたのは
まきますか? まきませか?
と、書かれた謎の契約書。
流石に困惑を隠せないルイズだがそれは今回のサモン・サーヴァントを受け持ったコルベールもまた同じだった
「姿を見せる前に契約を求めるなんて…先生、今までにこんなことって…」
「いや、こんな前例は…なんとも面妖な…」
通常サモン・サーヴァントでは使い魔となり得る者が直接呼び出される。
姿を見せずにいきなり契約を迫るケースは未だかつて無いことだ
「あの、先生…やっぱり私、これに契約しなきゃいけないんですか…?」
ルイズは不安を隠せなかった。しかし無理もない。基本的にサモン・サーヴァントにおいて使い魔との契約に二度目は無い。
何者であろうと呼び出した者と契約を結ぶのが掟なのである。失敗する以外にやり直しは許されないのだ。
「ミス・ヴァリエール。先程説明したが春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールの中で侵すことのできない最も神聖な物の一つ。
出てきたものが何であれ例外は認められない…
…が、今回ばかりはそうも言ってはられないか…」
険しい顔を崩ししコルベールはため息をついた
「と言うことは…」
「これまでに無い事態の上に得体の知れないことが多すぎる。
儀式のやり直しも認めよう。まあ最終的な判断は君に任せるがね」
55 :
7:2007/06/06(水) 06:53:28 ID:Mv/4lkAc
「儀式のやり直し…」
確かにこのままコントラクト・サーヴァントを行うのは危険かもしれない。
あまり考えたくないが契約後、凶悪な悪魔を呼び出した末に魂を取らる等の可能性もありえる。
やはりやり直すべきか…
「なんだ?また結局失敗かよ!」
「あんだけ派手にやっといて…さすがゼロのルイズよね!」
「はいはい、ルイズルイズ」
ルイズは周りの好き勝手な物言いに腹が立った
(今回は失敗したんじゃないのに!)
…そう、儀式は失敗した訳では無い
何者かは確かに自分の呼び掛けに答えた
それもこんな特殊な方法で契約を求めてくるような使い魔なのだ、ただ者ではあるまい
もしかしたら自分の望んだ強大な力の持持ち主なのかもしれない
――腹は決まった
「いいでしょう、結ぶわ…この契約!」
「良いのだね?一度契約したが最後、後戻りはできないのだよ?」
「ヴァリエール家の三女たる者何が来ようとも後ろは見せません!」
「…わかった、君の意見を尊重しよう」
ルイズは懐から羽ペンを取り出し周りの生徒達を見回す
「見てなさい!アンタ達ををアッと言わせてやるんだから!」
そして「まきます」をに○をつける
――契約は結ばれた
56 :
7:2007/06/06(水) 06:56:11 ID:Mv/4lkAc
「…何も起こらないじゃないの」
そう、何も起こらなかった。
天が割れ巨大な竜が光臨することもなく
地が裂け荒ぶる巨人が現れることもなく
澄み切った空には鳥が鳴き大地は爽やかな風が草木を揺らしている
肩すかしを食らった気分だ。何かの悪い冗談だと思いたい
「…また失敗なのね」
落胆を隠せないルイズ
あれだけ大見得きってこの様とは…
また皆の笑い物になるのかと思った矢先――
ドサッ
何かが落ちた音
振り返ってみるとそこには一つの鞄が…
ルイズはおろかルイズを見ていた周りの生徒やコルベールすらどこから現れたのか気づかなかった
ルイズは突然の、の鞄の出現に戸惑いを隠せなかった。だが契約をした後に現れたのを見ると…
「これが…私の使い魔?」
見た目は変哲もないただの鞄のようだ
不安ではあるがルイズは鞄に手をかけた。後ろではコルベールが待機し、不測の事態に備えている
(何を迷ってるのルイズ?もう後戻りは出来ないのよ!)
自分に言い聞かせそして意を決しついに鞄を開けた!!
「出てきなさい!私の使い魔!!」
57 :
7:2007/06/06(水) 06:58:53 ID:Mv/4lkAc
――鞄の中には一人の少女が眠っていた
「これが私の使い魔…」
その少女は流れるような銀色の髪に雪のような白い肌、
服は黒を基調とした優雅なドレスを纏い静かに横たわっていた
だが一番目を惹いたのは…
「黒い…翼……!!」
。まるで天使、いや、堕ちた天使を思わせる一対の黒翼。
自分は堕天使を召喚してしまったのか!?
しかし起きる様子がまるでない。
不穏に思いそっと抱き上げてみる。ルイズよりもさらに小柄な少女だったが…
「この子…息してない!心臓も止まってる!?」
「ル、ルイズが…ルイズが堕天使の死体を召喚したぞ!」
「何呼び出してんだ!」
「なんて罰当たりな!」
ルイズはおろか他の生徒までパニックになり辺りは騒然となった
そんな中コルベールだけがルイズに悠然と歩み寄りルイズの抱いている少女を調べ始めた
「これは…安心するんだミス・ヴァリエール、落ち着きたまえ。
君が呼び出したのは天使の亡骸などではないよ。これを見てみるんだ」
コルベールが少女の袖を上げ腕の間接部を見せる
「球体型の間接…ってことはこれは人形!?」
「ああ、そのようだね。見たまえ、ここにネジもある」
まきますか?まきませんか?とはこのことだったのだろう。
「これが人形だなんて…?肌なんか人間のそれと全く変わらないわ」
人形の頬に手をあてルイズは呟いた
「さあ、このネジを巻くんだ。恐らくはそれで動き出すのだろう」
「はい」
後ろの首元にあるネジ穴にネジを入れ何度か巻いてみる
「…うわっ!」
直後人形は紫色の妖しい光に包まれ、ルイズは思わず手を離してしまった
しかし人形は倒れること無く自らの足で大地に立つと
俯いたままぎこちなさそうに一歩一歩ゆっくりと歩き始た
そして俯いた顔が上がり遂にその瞳が開かれる
紫色の瞳をした鋭い眼孔そして――
「…64万、4690時間と16分ぶりの目覚めね…」
どこか艶のある少し低めの声で人形は呟いた
58 :
7:2007/06/06(水) 07:04:23 ID:Mv/4lkAc
なんか契約の段階だけで前中後と長くなりますが
それは俺の文才の無さが原因なので勘弁して下さい…
原作一巻見てたらコルベール先生の話し方が少し違ってたので修正
投下GJ
今後銀様の活躍に期待。
GJ!俺も期待!
GJ!!ものすごく期待してます
銀様きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
64 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/11(月) 23:03:14 ID:7hAyGPxv
ルイズも、コルベールも驚きを隠せなかった
その人形はネジを巻ききった後自らの意志で動き出したのだ!
「ミス・ヴァリエール!君は何かこの人形に命令したのかね!?」
「いえ…ネジを巻いたら勝手に…」
「自律式の人形…?馬鹿な…有り得ない…」
このハルケギニアの地に意識を持った無機物、もしくは動く無機物と言う物は珍しくはない
前者にインテリジェンスソードと呼ばれる物がある。
魔術師の手により意志を持った剣の事である。感情を変化させたり人間と会話もできる魔剣のことも可能だ
後者はゴーレムやガーゴイルが挙げられる。主の命により単純な動作や作業をこなす土や金属で出来たしもべである
ただし、これが自我を持ち尚且つ自らの意志で動ける物となると話は別になる
インテリジェンスソードは自らの意志で動く事ができず、例えばどこかに移動するとなれば人に直接頼んだり、
水系統による精神操作により自分を触った生物を操る等の手段を用いなければならない
反対にゴーレムやガーゴイルは意識も何も無く主の、しかも単純な命令やプログラムしか実行できない。文字通りの操り人形だ
しかしこの人形はその両方をかねそえた未知の存在であった
ハルケギニア広しと言えど自律式の自動人形を完成させた魔術師は未だに存在しない。一体誰がこのような人形を…
65 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/11(月) 23:06:13 ID:7hAyGPxv
不敵な笑みを浮かべ妖しい雰囲気を醸し出す謎の人形。
「ふぅん…なんか辺鄙なところに来ちゃったわねぇ?」
周りを見ながらそうつぶやく
(変な格好した人間達ねぇ?
マントに杖?まるで魔法使いだわぁ)
まあ目覚めた時代がそういう物だと自答しそれ以上は深く考えなかった
色々とこの人形に聞きたいことはあったルイズだが、何と言うか当然と言うか人形に発した第一声はこれだった
「…あんた誰?」
そう、この人形何者なのか?
「私は誇り高きローゼンメイデンの第一ドール…水銀燈…」
「ローゼンメイデン?スイギントー?」
(聞いたことの無い言葉だわ。辛うじてわかるのは第一ドール…
一番目の人形と言う意味かしら?スイギントーは多分名前よね…)
「貴女が私を呼び出したミーディアムかしらぁ?」
「そ、そうよ!私があんたを呼び出したのよ!」
どこか余裕たっぷりな水銀燈に気圧されないようルイズは強気に答えた。
まあ確かに彼女を呼び出したのは紛れもなくルイズだ。…ミーディアムとは何なのか分からなかったが
「…なんか冴えない子ねぇ…」
「んな…!」
初対面でこの言いよう
「い、いきなり契約者に対して失礼なこと言ってくれるわね!?アンタ!!」
「だって、いっぱいいっぱいなのに強がってるの丸わかりなんだものぉ。」
(プッ…確かに…)
密かに賛同する周りの生徒達
ルイズ本人は気付いてないが実に分かり易い
「くっ…!言わせて
おけば〜!」
66 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/11(月) 23:07:16 ID:7hAyGPxv
「…まあいいわぁ。それじゃあ早速私と契約してもらいましょうか」
「ちっともよくなーい!って契約…?さっきの紙が契約書じゃなかったの?」
「あれは言ってみれば仮契約。本番は私自身と契約してもらうのよ」
「本番ね…それってもしかして…く、口づけのこと…?」
ルイズは頬を赤らめ恥ずかしそうに言う
「話が早くて助かるわぁ…ゴホン…では契約を始めるとしましょう」
本契約の口づけを受けるべく水銀燈は手をルイズの方へ差し出した
少し赤面したルイズだが手に持った杖を水銀燈の前で振り何やら呪文を唱え始める
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール…」
「長ったらしい名前だこと」
「うっさい!…あー、五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
(使い魔?なんの話かしらぁ?)
この時まで水銀燈とルイズの間には若干の食い違いがあったのだが彼女は気付かなかった。
…気付いたのはルイズの祝福を受けてから
「…え?」
ルイズは水銀燈の手には目もくれず…
「ち、ちょっと、貴女何を…!」
初めて動揺した顔を見せる水銀燈
「いいからじっとしてなさい」
ルイズは水銀燈の頬に手を当て…
「あ…」
「ん…」
ルイズの唇が水銀燈の唇に重ねられた
67 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/11(月) 23:09:37 ID:7hAyGPxv
水銀燈は突然のルイズのキスに大慌て
「なななな、何をするのよいきなり!」
「だから使い魔の契約でしょ?契約は口付けじゃないの?」
「違うわよ!私ちゃんと手を差し出してたわよねぇ!?そもそも使い魔って何…うっ!?」
水銀燈は思わず手を抑える。左手の甲がとても熱い
「すぐ終わるわよ。待ってなさいよ使い魔のルーンが刻まれ…きゃっ!」
そしてルイズもまた手を抑える。ルイズもまた右手の人差し指に焼けるような熱さを感じた
「ルーン!?ひ、人の体に何刻んでるのよぉ!」
(お父様からいただいた大事な体なのに!)
「あ、あんたこそ一体…!」
だが双方熱いのはほんの一瞬。
膝をついた水銀燈にコルベールが駆け寄り左手の甲を確かめた
「ふむ、珍しいルーンだな」
そこには見慣れない文字…と言うか模様のような物が刻まれていた
そしてルイズ。彼女の右人差し指には銀色の薔薇の彫刻のなされた指輪が一つ…
「聞いてないわよ!ミーディアムの契約にこんな落書きみたいな物が刻まれるなんてぇ!お父様になんとお詫びすれば!」
先程の不気味さとは打って変わって激しくまくしたてる水銀燈
「ミーディアムって何のことよ!それより御主人様にこんな指輪押し付けるなんていい度胸してるわね!使い魔の癖に!」
「そっちこそ使い魔使い魔って訳わかんないことを…
何ですって!?貴女が御主人様!?何寝ぼけたこといってるのかしらぁ!主人なのは私よぉ!!」
「はぁ!?冗談にしては笑えないわね!そんなに小さい人形の癖に私の御主人様?お笑いだわ!」
「小さい?貴女に言われたくはないわねぇ!この発育不良の胸無し!!」
「!!人が一番気にしてることをーーー!!」
「…それじゃみんな、教室に戻ろう」
激しい口喧嘩を繰り広げる二人をよそにコルベールは他の生徒を引き連れ帰って行った…
何はともあれ…
ゼロとジャンクの契約は結ばれた
68 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/11(月) 23:11:45 ID:7hAyGPxv
自律人形云々は俺の勝手な想像なので本編で矛盾するような描写があれば抹消して下さい…
やっと契約完了…
…もしかして説明臭い文章で読みにくいですか?
やべえなかなか面白えw
>>68 別に問題無いかと。GJです
>>68 全然そんな風にはおもわなんだ。
契約に対するそれぞれの認識の違出てて面白かった。
流石の水銀燈も、相手も契約しがたがってるとは思うまいなw
GJ!
双方の契約の食い違い、使い魔のルーンと薔薇の指輪のW契約とはうまいなー。GJ!
GJ!!
73 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/13(水) 10:11:05 ID:ckys30Oh
> 「あ…」
> 「ん…」
> ルイズの唇が水銀燈の唇に重ねられた
なんかエロいなぁ…w
> 「はぁ!?冗談にしては笑えないわね!そんなに小さい人形の癖に私の御主人様?お笑いだわ!」
笑えるのか笑えないのかどっちだよルイズwww
続きが楽しみです!
74 :
名無しさん:2007/06/14(木) 23:56:27 ID:lc3EtikD
GJ!!! 面白い!! 自信もって思うがままに書いてください〜
これはいいスレ
76 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/17(日) 00:38:43 ID:nJP0n0yI
時刻は夜をまわろうとし、東の空に月が顔を見せ始めたころ、ここはトリステイン魔法学院生徒寮の一室。
ルイズの部屋である。その十二畳程の大きさの部屋に二人の少女…いや、この場合は一人と一体と言うべきか…
色々とゴタゴタしたものの儀式も無事終わりルイズは水銀燈を連れて自分の部屋に帰ってきた
さて、その儀式だがどうやら双方共に食い違いがあったようだ
ルイズは使い魔としての契約を、水銀燈はミーディアムを得るために契約を行った
結果は…お互いの手を見ればお分かりだろう
ルイズの右人差し指には薔薇をあしらった指輪が、水銀燈の右手の甲には不思議な紋章が刻まれている
互いの認識の違いを正すべく色々と話を交わしてみたのだが…
「信じられないわねぇ…まさか契約した先が異世界だったなんて…」
開かれた窓縁に座り天を仰ぎながら言う水銀燈。
(でもあれを見たら信じるしかないわよねぇ…)
その瞳に映るのは冷たく輝く大きな二つの月…そう、天には彼女の見慣れぬ二つの月が輝いていた
「おまけに魔法の世界ですってぇ?まるでファンタジーの世界じゃないのよぉ」
ルイズの話によればここは魔法が存在しそれが万物の中心とする世界。
彼女自身も実際に人が何か呪文を唱え空を飛んだのを見た。信じるしかないだろう
「私だってそうよ、別の世界から来た上にローゼンメイデンとかアリスゲームとか…
そもそも自律式の人形が実現してたなんて…」
くどいようだがこの世界に自律式の人形を完成させた者はいない。
それは魔術師の、その中でも人形師と呼ばれる者達の永遠の課題とまで言われているのだ
「あと私以外に六人はいるわねぇ」
「あんたの創造者って何者なのよ…」
「お父様は天才なのよ」
「そんな簡単に片付けないでよ。研究家なんかに知れたら大慌てするわよ?」
「まぁ信じようが信じまいが関係ないわぁ、私のミーディアムとしての契約を交わした以上、
貴女は私の力の糧となってもらことになるんだから」
「ちょ、ちょっと!力の糧とかなんか物騒な事を…」
「心配しなくていいわよ、ほんのちょっぴり力を借りるだけよ。少なくとも力をとられすぎて死ぬようなことは無いわぁ。多分」
「多分!?」
「ああ、あと私は他の子と違って力の吸収に際限がないからよろしくねぇ」
「よろしくじゃなーい!」
「怒っちゃだめよ…血圧上がっちゃうから…乳酸菌とってるぅ?」
77 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/17(日) 00:41:44 ID:nJP0n0yI
ルイズは激しく息を切らしながら抗議するものの、水銀燈はそれをかわすように、からかうように答える
彼女に振り回されっぱなしだ
(まったく…やりにくいことこの上ないわ…)
「まぁ私の話せることはこのくらいかしらぁ?
ところで…使い魔云々の契約自体は私にも理解できたんだげど…具体的に何すればいいのよ?」
(来たわ!私のターン)「フッフッフ…知りたい〜?」
すごく嫌な…じゃなかった、(含みのある)眩しい笑みを水銀燈に向けるルイズ
「正直あまり知りたくない…と言いたいけど
そっち(使い魔)の契約も受けた以上はそう言う訳にもいかないわよねぇ…?」
こちらは苦笑いを浮かべ水銀燈は言った
「当然よ!それじゃあ聞きなさい!まず第一に!使い魔は主人の目となり耳となる能力が与えられるわ!」
「私の見たものが貴女にも見えると言ったところかしらぁ?」
「理解が早いわね」
「で…?何か見えるの?」
「…無理みたい。何も見えないもの…」
「…ダメダメじゃないのよ」
「アンタのせいでしょーが!」
「知らないわよぉ、そんなこと」
「あ!まだあるわよ!使い魔は主人の望む物を見つけてくるのよ!例えば秘薬とか!」
「秘薬ってなんなのよ?」
「魔法を使う時に使う触媒よ。硫黄とか苔とかね」
「やぁよ。なんか面倒くさそうだし危なそうだし。と言うか分からない物なんか見つけられないわよぉ」
「…そうよね、あんた秘薬の存在も知らなかったのよね…」
額を押さえどこか諦めたように呟くルイズ
「そしてこれが一番なんだけど…使い魔は主人の守護を担う存在なの!
その能力で敵から主人を守ることが最も重要!…なんだけど…」
ルイズはジト目で水銀燈を見やる
「…何よ?何が言いたいのよ?」
もっとも、彼女もルイズが何を言いたいのか察しはついてるようだが
「あんたじゃ無理よね…私より小さい人形だし」
「し、失礼ねぇ!私だってその気になれば!」
「ドラゴンやグリフォンも倒せるの?」
「う…それは、ちょっと難しい…かも…」
流石の水銀燈も口ごもらせた
「だからあんたにできそうなことやらせてあげる。掃除に洗濯。その他雑用!」
「…はぁ、わかったわよ…」
「つべこべ言わないの!私もちゃんとあんたを世話してあげるんだからそのくらいは…え?」
78 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/17(日) 00:42:43 ID:nJP0n0yI
意外だった。ルイズは水銀燈と出会ったばかりだが彼女がどんな人間…訂正、どんな人形か把握していたつもりだった
彼女ならこんなことは絶対嫌がるに決まっていると思っていたのだが…
「嫌に素直ね…てっきりすごく嫌がると思ってたのに」
「仕方ないじゃないの」
水銀燈はさっきまでの不敵な笑みを浮かべていた表情から突然真剣な顔となり真面目な口調で話しだした
「貴女は私との契約でミーディアムとなった。そして私は貴女の契約で使い魔に。
例え不本意とはいえ契約は契約。双方共にその義務は果たすべきでしょ?」
言われてみればごもっとも。だがルイズは水銀燈の口からそんな言葉がでるとは思わなかった
「あんた…意外にそういうとこしっかりしてるのね」
「ある程度は貴女の言うとおりにしてもいい。
そのかわり貴女も私のルールには従ってもらうわ。主に衣食住の提供、アリスゲームへの協力と言ったところかしら?」
「…わかったわ。交渉成立。でもちゃんと私の言うことも聞いてよね?」
「まあ善処してあげるわぁ」
真剣な口調も元にもどり水銀燈は答えた。
79 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/17(日) 00:43:40 ID:nJP0n0yI
(まぁとりあえずアリスゲームとやらが始まるまではこの子の衣食住を負担してあげれば…)
…!?
ここでルイズは不自然なことに気づいた
「ちょっと待ちなさい!あんたさっき衣・『食』・住って言ったわよね!?」
「何よぉ、それぐらいは世話してもらっても罰当たらないでしょうに」
「そうじゃなくて『食』って何よ!」
「そのまんまよ、ご飯食べさせてってことよぉ」
「あんた食べ物食べるの!?人形なのに!?」
「人形がご飯食べるのに何か問題あるのかしらぁ?」
「大ありよ!自律式どころか食物を摂取する人形なんて!」
自我を持つと言うだけでも十分すごいのに…これはもう人形の域を越えている
何故か頭が痛くなった。この人形、ルイズの中の常識と言う物をどんどんぶち壊しにしていく
「なんか今日はもう疲れたわ…眠くなってきた…」
「あら本当、もうこんな時間。私も眠りの時間だわぁ」
「それじゃ今日はこれぐらいにしときましょ。…あ、」
ルイズはベッドに倒れこんでから最後にもう一つだけ気づいた
この部屋はルイズ一人しか住んでいない。故にベッドは一つだけ。自分はベッドに寝ればいい。
では水銀燈は?
(犬や猫なら床に眠らせればいいんだけど…)
彼女は人形とはいえ見た目は普通の少女。流石に床で寝ろなんて言いにくい。ましてや、住む場所は保証するといったばかりなのだ
(ってことは…これしかないわよね…)
一つのベッドに…2人で一緒に寝るしかない
なんだかこっぱずかしい
(で、でも普通にぬいぐるみ抱いて寝てる人間もいるんだし。人形抱いて寝るのにも何も問題ないわよね!
そ、そうよ!使い魔のために仕方なくよ!仕方なく一緒に寝てあげるのよ!わ、わ、私ってご主人様の鏡よね!)
自分に言い聞かせる。別に抱いて寝る必要は無いのだが
「と、ところで、あ、あんたの寝るとこなんだけど、良ければ、じゃなかった、仕方ないから…」水銀燈に向き直りルイズは不自然にどもりながら話しかけたが…
「それじゃ、お休みなさぁい」
彼女は最初に入っていた鞄の中に入りこむと中から閉めようとしていた
「な、何よそれ!」
「何って私の寝床よぉ?ローゼンメイデンにとって鞄の中で眠りつき夢を見るのは神聖なことなの。
それ以外の場所で眠るなんて考えられないわぁ。と言うかここ以外では眠れないのだけれど。で、何かしらぁ?」
呆気にとられるルイズ
彼女には普通に寝床があったのだ。ルイズ決死の誘いは空振りに終わってしまった
「そ、そりゃよかったわねぇ!そんなに良いベッドがあるなら私と寝る必要なんか無いものねぇ!か、勝手にそこで寝てなさいよ!お休み!」
「なに急に不機嫌になってるのよ…わからない子ねぇ…」
ルイズは魔法の灯りを消しベッドに勢いよく潜り込み水銀燈は鞄を中からガチャリと閉めた
少しばかり時間もたち安らかな寝息が二つ
二人の少女の大変な1日はようやく終わりを告げた
今回も面白かったよ
GJ!!
乙です。ルイズは思いっきり外しましたなあw>実は寝床があった
バズーカ砲やゼロ戦がどうなるのか楽しみです。
バズーカ砲→過去に召喚されていた金糸雀(キュルケかタバサが契約)
シエスタの祖父とゼロ戦→過去に召喚されていたジュン(64)と真紅(シエスタの祖母)
自分ならこうすると妄想。作者さんの発想に期待。
これこれ、あまりプレッシャーをかけてはいかんぜよ
展開予想は自重しとけ
今回もよかったですw
ぐ、GJじゃないの!
き、期待してあげるわッ!
ジョジョスレ→あの作品のキャラがルイズに〜スレ→ここ
と誘導されてきますた。なんだこのスレ
いいぞ!もっとやれ!グッジョブです!
>>79 これはなんというツンデレコンビ……。
先が楽しみでたまらねえぜ!
今回もGJ!
87 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/19(火) 21:19:02 ID:qAHrI8ck
※注意
今回は少し趣向を変えているため一部の人には読みにくいかもしれません
それでもよろしければどうぞお読み下さい
↓これより本編
カチャ…
少女の寝息しか聞こえぬ薄暗い部屋から何かの開く音。それは部屋の隅に置かれた一つの鞄から出たものだった
そしてその開かれた鞄から一人の少女が出てくる
「ん〜清々しい朝ねぇ」
漆黒の翼をバサリと広げ大きな背伸びをする少女…水銀燈。そしてベッドで眠っている少女、ルイズの方を見た
「ん〜メロンパンがこんなにたくさん〜もう食べられないわ〜」
眠りながら既に使い古されたフレーズを呟くルイズ。寝言のテンプレとも言えるお約束の一言。しかし何故メロンパン?
「とりあえずこの子を起こさなきゃねぇ…」
水銀燈がカーテンを開くと眩い光が差し込み部屋を照らした
「朝よぉ、起きなさい。ナg…間違えた。ルイズお嬢様?」
お嬢様なんて言ってるが多分彼女のことだから皮肉っているのだろう
…待て、今なんか言いかけなかったか?ナgって何だ?間違えたって何だ!?
「ふぇ…?もう朝なの?…ってあんた誰!?」
ルイズは寝ぼけ眼をこすったと思いきや突然怒鳴りだす
「はぁ…貴女もう自分の契約者忘れちゃった訳ぇ?」
水銀燈はやれやれと言った手振りでため息をついた
「ああ、そう言えば昨日召喚したのよね…」
ルイズは起き上がるなり大きなあくびを一つして水銀燈に命じる
「下着と服〜」
「はいはい。…下着ってどこよぉ?」
「そこのクローゼットの一番下よー」
しぶしぶと服と下着を取りルイズに渡す。不本意だが昨日約束したことなので文句は言わない
下着を身につけたルイズは再びだるそうに呟く
「服、着せて」
「…貴女、服を自分一人で着れないって訳じゃないわよねぇ?」
「あんたは知らないだろうけど貴族はしもべがいる時は自分で服なんて着ないのよ」
「全く…世話のやける子なんだからぁ…」
水銀燈は仕方なくブラウスを手にとりルイズに着せてやる
「んーよきかなよきかな〜あんた意外に服着せるの上手いわね」
「アリスになった暁にはお父様の御世話をして差し上げなきゃいけないでしょお?
その為に色々できるようにしておいたんだけど…」
まさかこんなことの役に立つとは
「…なんかわかんないけど、ずーっと昔からあんたにこうやって服着せてもらってるような気がする…」
「奇遇ねぇ?何故か私もそんな気がするのよねぇ?昨日会ったばかりなのに…何故かしらぁ?」
少なくとも二人が前世ではお嬢様とそのメイドさんだったりするなんてことは無いと思われる、多分
88 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/19(火) 21:20:23 ID:qAHrI8ck
ルイズの部屋を出ると同じようドアが壁に並んでいた
そのうちの一つが開き中から燃えるような赤い髪の女の子が出でくる
女の子と言ったが身長はルイズより高く体つきは大人に近い。むせるような色気を放つ女性だ
「おはよう。ルイズ」
赤毛の彼女はルイズを見るなりにやっと笑い挨拶をかわす
「…おはようキュルケ」
ルイズは露骨に嫌そうな顔で挨拶を返した
「ねぇ?昨日のサモン・サーヴァントであなたも使い魔召喚したのよね?何召喚したのよ?
ちなみに私は誰かさんと違って一発でこんな素敵な子呼び出したのよ?フレイム!」
彼女は…キュルケは突然会うなり嫌みに話を切り出し出し自慢げに使い魔を呼び出す
(典型的な嫌な奴ってとこかしらぁ?こういうのス○オって言うのよね?意味は分からないけど)
水銀燈はそう思っても口には出さない
キュルケに呼ばれのっそりと彼女の部屋から真っ赤なトカゲが現れた
「火トカゲよ!見て?この尻尾!ここまで鮮やかな炎の尻尾は間違い無く火竜山脈のサラマンダーよ!
ブランドものよー!好事家に見せたら値段なんかつかないわよ!」
「ふぅん…これがサラマンダー?初めてみたわぁ。本当にこんなのがいるのねぇ〜」
床に降りサラマンダーをまじまじと見て物珍しそうに水銀燈は言った
「ルイズ…何なのこの子?」
「私の使い魔よ?」
「プッ…あなたサモン・サーヴァントで人間呼び出してどうするのよ!」
「私は人間じゃないわよぉ」
「は?何言ってんの?あなたどう見ても人間じゃないのよ!」
バカにした口調で水銀燈を指差し言うキュルケ
確かに水銀燈は見た目はちょっと小柄で翼を生やしているが
それ以外はどう見ても人間です。本当にありがとうござました
「はぁ…あんた、ちょっとドレスの袖上げて」
「全く…私の体は見せ物じゃないのに…」
水銀燈が腕の袖を上げる
「球体関節…ってこの子人形なの…!?」
そう、水銀燈の手首と肘の部分は人間のそれと違っていた
「そうよ?おまけに自律式で自動式!」
「自律式!?実現されたなんて聞いてないわよ!?そんな人形!」
「その通りよ。ブランド物どころの騒ぎじゃないわ!
好事家に見せたら値段つくどころか研究者に押収されてバラバラにされて調べ上げられるわよ!!」
「死んでもそんなことにならないようにしてよねぇ?
ああ、ハジメマシテ私は誇り高きローゼンメイデンの第一ドール水銀燈。コンゴトモヨロシク…」
89 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/19(火) 21:21:25 ID:qAHrI8ck
水銀燈はキュルケにいつもの妖しい笑みを浮かべ慇懃無礼に自己紹介
彼女もキュルケの性格はあまり好ましくないらしい
キュルケは内心舌打ちした
(聞いてないわよ!どうせゼロのルイズのことだからただの人間とか、
それもなんか冴えない地味な平民あたりを召喚して途方に暮れてると思ったのに!)
どうでもいいがなんでそんなに使い魔の例が変に具体的なのだろうか?人間だの地味だの平民だの
「そ、そう!なかなか面白い使い魔ねぇ!ゼロのルイズにぴったりな変な子で!それじゃ、お先に失礼〜!」
そう言うと引きつった笑いを浮かべ炎のような髪をかきあげ去っていった
ルイズは水銀燈を見やり小さく呟く
「…あのキュルケに一泡ふかせたってだけであんた呼び出して良かったかもね?」
「ん?何か言ったかしらぁ?」
「な、何でもないわよ!」
「ところであの子も言ってたし昨日から耳にしてることなんだけど…ゼロのルイズの『ゼロ』って何なのよ?」
「…ただのあだ名よ。ちなみにキュルケは『微熱』。微熱のキュルケ」
「あの子のはなんとなく納得できるけど貴女はなんで『ゼロ』なの?」
「あんたには知らなくていいことよ」
「うーん、貴女の通った後はペンペン草一本生えないからゼロだとか…」
「そんなわけないでしょ!どんな危険人物よそれ!」
「そうよねぇ?なんかバカにされてる感じだったし…
ああ!わかったわぁ!ゼロと言うのは貴女のむn…」
水銀燈はルイズの体の一部を見ながら言いかけたが…
「……!!!」
「…やっぱりなんでもないわぁ」
ルイズの無言の圧力と鬼気迫る表情の前に大人しく引き下がった
90 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/19(火) 21:23:05 ID:qAHrI8ck
ルイズと水銀燈が朝一番に向かったのは学園内の食堂だった。
かなりの大きを誇る食堂だ。内部はゆうに百人は座れる出あろう長いテーブルが3つ並び
生徒だけでなく先生も食事をとっている。学院内全ての食を担う場所なのだろう
食堂に入るルイズと水銀燈。水銀燈は入るなり近くにあった小人の銅像とにらめっこ。
そんなにその銅像が珍しいのだろうか?
「見ての通りここは食堂よ。正式名称は…」
「『アルヴィーズの食堂』でしょお?」
ルイズに向き直り答える水銀燈
「何で知ってるのよ?」
「この子に教えてもらったのよぉ」
彼女はさっきまで見ていた銅像に目を向け言った
「…銅像が喋る訳ないでしょ?」
「それはあなた達が耳を傾けてないのよ、この子達結構お喋りなのよ?え?なぁに?」
とまた銅像に向き直る
どうやら本当に会話をしているようだ
「え、そうなの?やっぱり?そりゃそうなっちゃう訳よねぇ」
「何よ?その子なんて言ったのよ」
「貴女のこと『食べ物の好き嫌が多いから背も胸も大きくならないんだよ』って言ってるわぁ」
「こいつらすました顔してそんな事考えてるの!?
…って、大きなお世話よッ!!」
「はいはい怒らない怒らない。乳酸菌足りてない証拠よぉ?ささ、席にお着きになって嬢様?」
性格はアレでも礼儀はわきまえているのか水銀燈は使い魔らしくルイズの席の椅子を引く
…なんか馬鹿にされてるニュアンスがあるのは気のせいだろうか?
水銀燈はルイズを座るのを見届けると自分はその横の席に腰掛けた
「朝から無駄に豪華ねぇ?私もこれ頂いていいのかしらぁ?」
「本当は良くないんだけどね、約束は約束。特別に許可してあげる」
どこかから「ひでぇ!俺の時は床に座らせられた上に貧相なスープと固いパンだけだったのに!」と言う一般人で平民の声が聞こえてきたような気がしたが多分幻聴だ。
気にしない気にしない。そう怒るなよ。乳酸菌とってるか?才人。
「本当に食べてるわね…」
「そりゃ食べるわよ。お腹すいてるし」
食事をとる水銀燈見て呟くルイズ
見た目はほぼ人間近いので時折忘れてしまうが彼女は人形である
ナイフとフォークを器用に使い優雅に食事をとる様は実に愛らしい
(黙ってれば見た目はいい子なのに…)
…おそらく水銀燈もルイズに対し同じ事を思ってると思われる
91 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/19(火) 21:25:49 ID:qAHrI8ck
食事が終わればいよいよ授業が始まる。
教室は大学の講義室のような物だった
ルイズと水銀燈が中に入ると中の生徒が一斉に振り向く。
(あれがゼロのルイズの使い魔か?)
(アイツ人間なんか召喚したのかよ)
(いや、それが人形だってさあの娘)
(人形?ガーゴイルやゴーレムみたいなもんか?)
(噂によると勝手に動いてるらしいぜ?)
生徒達は何かヒソヒソ話を繰り広げている。いろんな意味で有名な彼女とその使い魔に興味が尽きないようだ
「人気者ねぇ?貴女」
「いや、あんたのせいだから」
周りの生徒も様々な使い魔を連れていた
特に水銀燈の興味を惹いたのは彼女の世界ではおとぎ話やファンタジーの世界の生き物とされている空想上の生き物だった
「あれってバジリスクよねぇ?」
「そうよ。下手にさわると石にされるから気をつけなさいよ」
「あの目玉のお化けみたいなのは?」
「バグベアーね」
水銀燈が指差した先には巨大な目玉がと浮かんでいた
そのバグベアーと水銀燈の目が合った
するとバグベアーはぷかぷかと浮かびながら水銀燈に近づいてくる
「…何なのよコレ」
近くまで近づいてきたがやはり少々グロテスクだ
「安心なさい。別に危害を加えようって訳じゃなさそうだし」
バグベアは水銀燈の方を向きその一つ目をニッコリさせる
(見た目はアレだけど別に悪い子じゃなさそうねぇ…)と思った矢先
「このロリコンどもめ!」
ピシッと言う何かが凍りつくような音とともに水銀燈の顔が引きつった
「縁起がいいわね、あんた。女の子がバグベアに鳴かれるのって吉兆なのよ?」
「このロリコンどもめ!」
「変な鳴き声よね?生物学者が言うには『世界の少女に祝福を、全ての少女に幸福を』って意味が込められてるそうよ?」
「このロリコンどもめ!」
バグベアーは水銀燈に黒い触手のような腕を差し出した
「ほら?握手求めてるわよ?」
水銀燈は引きつった顔のまま腕をとり
「あー、その、よろしくね…」
と返すしかなかった
「このロリコンどもめ!」
バグベアーの方も嬉しそうに答えた
そんなやりとりをしていると扉が開き教師らしき中年の女性が入ってきた
間もなく授業がはじまる
――そして水銀燈はここで知ることになる。何故彼女が…ルイズがゼロなどという二つ名で呼ばれているのかと言うことに
「はっはっは、いい様だな!」
舞台はいきなりヴェストリの広場
ガイガンは青銅のゴーレムに一方的にタコ殴りにされている
大勢のギャラリーの前で醜態をさらす使い魔の姿についつい
ばっくれようかと考えたルイズだったが唐突にある考えが閃いた
それはコントラクト・サーヴァントの際に流れ込んできたガイガンの記憶
黒い巨獣や黄金の三つ首竜といった強烈なイメージの中でもひときわエキセントリックな
印象を与える統制官と呼ばれていた男
(ひょっとしてガイガンを戦わせるには「アレ」をやらなくてはいけないのだろうか?)
かなり本気でばっくれようかと考えたルイズだったが
「しょせん『ゼロのルイズ』の使い魔、見かけ倒しもいいとこだな!」
ギーシュの嘲笑が覚悟を決めさせた
両脚を踏ん張り背筋をしゃっきりと伸ばす
天に掲げた両腕を頭の上で交差させ声を限りに
「ガイガァァァン、起動ォォォォォォッ!!!」
↑
すいません、誤爆でした
パロネタ多すぎwwwwww
笑わせてもらいました。
どこから突っ込めばいいんだwww
このコンビ見ていずれは引きこもりとメイドネタはやるんじゃないかと思ってたがw
あとベアード様までw
そんな私があなたに贈れる一言はこれだけです
「このロリコンどもめ!!」(←ほめ言葉)
GJ!
久しぶりにいい水銀燈を拝ましてもらったわ
誤爆らしいがGJを送るよw
CJ!そういやナギとマリアさんだよなw
うわぁ!CJってなんだ!GJだよGJ!
>「アリスになった暁にはお父様の御世話をして差し上げなきゃいけないでしょお?
>その為に色々できるようにしておいたんだけど…」
ちょっとこの台詞にしんみりしてしまった……。
それにしても、この二人って相性いいなあ。
今回もGJ! した。
家事手伝いが得意な銀様ってのもなんか新鮮w
ホッシュ
「皆さん。春の使い魔召喚は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、
こうやって新学期に様々な使い魔を見るのがとても楽しみなのですよ」
教室に入ってきたシュヴルーズは満足げに微笑んで言う
「やっぱりあの人も魔法なのぉ?」
「当たり前じゃないの」
教室を見回すシュヴルーズにちょうど会話をしているルイズと水銀燈が目に入った
「おやおや、変わった使い魔を召喚したものですね?ミス・ヴァリエール?」
「ゼロのルイズ!召喚出来ないからってどこのお嬢様連れてきてるんだよ!」
いい加減説明するのも飽きてきたが彼女は見た目こそ人間に近いがそうではない
先程の生徒間の噂話でも半信半疑だった者がほとんどだったが、まだ水銀燈が何者であるかは学園内には広まっていないらしい
「違うわ!きちんと召喚したもの!一見この子はただの人間だけどね!
あんた!あれ見せてやんなさい!」
「はぁ…いい加減このやりとりもうんざりしてきたわねぇ…」
彼女が人形であるという証明、球体型の関節を見せる
「嘘だろ?この子人形なのかよ!」
「あなたが操ってるの?」
「でもゼロのルイズなだけに規格外だよな…
「はいはい!静かに!なかなか興味深いことではありますが授業を始めますよ!」
シュヴルーズが騒ぎ出した生徒達を一喝し静かにさせる
もっとも、彼女の言った通り興味深いことだし色々聞きたいこともあった。だが時間は押しているのだ
シュヴルーズはこほんと重々しく咳をし杖を振る。机の上に現れたのは石ころがいくつか
「私の二つ名は『赤土』赤土のシュヴルーズです。土系統の魔法をこれから一年皆さんに講義します」
講義が始まった。その内容は水銀燈にとっても十分興味深いものだった
魔法の基礎となる四大系統。火・土・水・風。それに失われし虚無を合わせた五つの魔法系統
そしてそれらの系統を足すことによりさらなる力を発揮すると言うこと
そして今回の科目は錬金
シュヴルーズが実際に錬金を行った。短くルーンを呟き石に杖を振る。
するとただの石ころだったそれはピカピカ光る金属に変わっていた
「ゴゴゴ、ゴールドですか!ミセス・シュヴルーズ!?」
キュルケが興奮しながら聞く
「いえ、ただの真鍮です。ゴールドを錬金できるのは『スクウェア』クラスのメイジだけです。私はただの…」
シュヴルーズはこほんと咳をし言った
「…『トライアングル』ですから」
錬金を目の当たりにした水銀燈もこれには関心を寄せたようだ
「ふぅん…その気になれば純金さえも生み出せる人もいるのねぇ…相場も何もあったものじゃないわね…」
「その辺は上の人達が考えてくれてんのよ。多分」
「あのおばさん3つ系統足せるから『トライアングル』なのよねぇ?ところで貴女は幾つ足せるのよ?」
水銀燈が何気なく聞いた質問、しかしそれを聞いたとたんにルイズの顔が曇る。そして
「…どうでもいいじゃないのよ。そんなこと…」
ルイズはうつむいて苦々しく言った
「何よぉ…急に沈みこんじゃって…ちょっと聞いただけじゃないのよ…」
色々と言いたい水銀燈だったが、そこにシュヴルーズからの注意が入った
「ミス・ヴァリエール!」
「は、はい!」
慌てて顔を上げるルイズ
「おしゃべりをする暇があるなら、あなたにやってもらいましょう」
シュヴルーズと水銀燈以外の教室の全員の顔が凍りつく
「え?私?」
「ちょうどいいわぁ。貴女の実力を見るチャンスじゃないのよ。やってみなさいよぉ」
水銀燈も後押し。周りの生徒は口には出さないが(何言ってんだコイツ!?)と言わんばかりの驚愕の表情
あのキュルケもルイズに向かって「ルイズ。やめて」と蒼白な顔で懇願している。だが…
「わかりました。やります」
クラスメート達がさらに青ざめる。まるで死刑宣告でもされた罪人のように…
ルイズは緊張した面持ちで教壇へと歩いていった
104 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/24(日) 23:14:21 ID:wZ7RLWar
ルイズはシュヴルーズの隣に立ち自前の杖を取り出す
シュヴルーズはにっこりとルイズに笑いかけた
「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を強く心に浮かべて」
「はい。…何を錬金しようかしら…」
ルイズ色々と金属を思い浮かべ悩みだす。が、なかなか決まらず頭を抱えていると意外なところから助け舟が出た
「鋼よぉ。鋼を錬金なさい」
水銀燈からの一言
「なんで鋼なのよ」
「いや、なんとくよぉ」
でも確かになんとく悪く無い気がする
「鋼ね…。先生!鋼を錬金してみます!」
何故だかわからないがこれなら成功率が高そうに思えたのだ
尚、余談だが生徒達の頭の中に(鋼の錬金術…)と言う謎のフレーズが思い浮かんだが、もっとも、それが何なのかはわからなかった
まあ正確には兄貴のほうだし…
「(見せてもらいましょうか…私のミーディアムの魔力とやらを)」
真剣な眼差しをルイズに向け実力を測らんとする水銀燈。ちなみに彼女とシュヴルーズを除く者達はみな机の下に隠れてしまった
そして水銀燈の隣の生徒が彼女に警告する
「あんた何やってんだ!早く隠れろ!怪我したいのか!?」
「はぁ?何言ってるの貴方?」
「あんたルイズの使い魔なのに知らないのか!?いいから隠れろ!悪い事言わないから!」
「わかったわよぉ…何なのよまったく…」
渋々自分も机の影に隠れた
だが彼女は結果的にこの生徒に感謝することになる
ルイズは目をつむり、短くルーンを唱え杖を振り下ろした
目線だけ机の上に出した水銀燈の見たものは…
ドッカァァァァァァァン!!!
105 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/24(日) 23:16:55 ID:wZ7RLWar
教室に響く轟音と爆発。ルイズが石ころに杖を振り下ろした瞬間、なんとその石ころは机ごと大爆発を起こした!
爆風はシュヴルーズを吹き飛ばし前列の机や椅子を巻き上げ、砕き瓦礫となって降り注ぐ
さらにこの爆発で使い魔達も大騒ぎ!キュルケのサラマンダーは眠りから叩き起こされた怒りで炎を吐きマンティコアは飛び上がり窓を突き破り外へ
その穴から大蛇が入り込み誰かのカラスを飲み込む
阿鼻叫喚の地獄絵図とは言ったものだ
煙が晴れ教壇が見えてくる。そこには煤だらけで真っ黒のルイズ
そしてシュヴルーズは傍らで倒れてピクピクしていた。どうにか死んではいないみたいだが傷は決して軽くないようだ
で、この騒ぎの張本人のルイズはと言うと…
「ちょっと失敗したみたいね」
取り出したハンカチで煤を払いながら意に介した風もなく言った
これがちょっとだって?冗談にしてはキツすぎる。当然他の生徒からの猛反撃を食らう
「ちょっとじゃないだろ!ゼロのルイズ!」
「いつだって成功の確率ゼロじゃないかよ!」
(ああ、だからゼロのルイズなのね…)水銀燈は呆れながらも『ゼロ』の由来を理解した
106 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/24(日) 23:19:38 ID:wZ7RLWar
「まったく…派手にやってくれたわね…」
「悪かったわね、派手にやっちゃって」
瓦礫の山となった教室を見て呟く水銀燈。ルイズも苛立ちながら答える
ルイズの大爆発のおかげで授業ができなくなり、ルイズと水銀燈を残し外の生徒は帰っていった
ルイズと水銀燈が教室に残った理由は勿論この惨状の後片付けである
「さぁ!さっさと終わらせましょ!あんたはあっちから!」
「まったく…誰の所為だと思ってるのよぉ」
「つべこべ言わないほらほら!さっさと手を動かす」
ルイズはまったく悪びれた様子もなく、なかなか手を動かさない水銀燈を叱咤する
「その必要は無いわぁ。めんどくさいし」
水銀燈はそう言うと静かに目を閉じ精神を集中させはじめた
(あの娘に…真紅にできて私にできないことはなくてよ)
そして目を見開き教室全体に横に手を振った
すると…なんと教室じゅうの吹き飛んだ机や椅子、バラバラにやった瓦礫までがまるでビデオの逆再生のごとく元通りとなっていく!
流石のルイズもこれには唖然とした
「なによこれ!あんたの魔法?いや、先住魔法なの!?」
「時間のネジをちょっと巻き戻しただけよぉ。原理とかは私にも分からないわぁ」
「分からないってあんた…」
「貴女は歩いたり走ったりするのにいちいち原理なんか考えるの?」
ようは彼女にとってはごく自然のこてとなのだろう
これにより水銀燈を高く評価したルイズだが…
「でも傑作よねぇ…まさか錬金とやらであ〜んな素敵なことになるなんてぇ」
水銀燈自らその評価をぶち壊しにしてしまった
「錬金!あ!ボカーン!しっぱぁい!ゼロなだけにしっぱぁい!」
彼女の悪い癖だ。別にルイズが憎いわけではない。水銀燈からしてみればちょっとからかっているだけなのだが…
ルイズはこれまでになく不機嫌な表情だ
「お嬢様、この私がお嬢様を称える歌を作りましたわぁ」
恭しく頭を垂れ嬉しそうに言った
ちなみにルイズの眉はひくひくし肩は怒りにうち震えている
それでもルイズは答えた
「…いいわ、歌ってごらんなさい」
水銀燈は嬉々として歌い出す
「爆弾〜みたいに〜♪錬金をしぃ〜っぱいしたら♪みんなが〜♪ど〜こ〜までも逃げ〜るね〜♪時間のは〜てまで♪」
晴れ晴れするような愉快な口調である。おまけにこの人形、無駄に歌がうまいのがルイズの苛立ちに拍車をかける
「ある〜晴れ〜た日のこと〜♪魔法以上の瓦礫が♪限りーなく降り注〜ぐ♪不可能じゃないわぁ♪」
それにしてもこの人形、ノリノリである
そしてルイズの怒りがついに頂点に達した!
ルイズ、リミットブレイク!!
ルイズは不機嫌な表情を一転させニッコリとさせ水銀燈に告げた
「素晴らしいわ。まったくもって晴れ晴れ不愉快な歌で」
「いえ、それほどでもないわぁ」
誉めてない誉めてない
「こんな歌を歌ってくれる使い魔にはご褒美をあげなきゃね…
…あんたしばらくご飯抜き」
「んな!?」
素っ頓狂な声を上げ驚愕する水銀燈
「ちょっと待ちなさい!ほんの少し悪ふざけしただけでこの仕打ち!?契約はどうなったの!?」
「うるさい!うるさい!うるさーい!んなこと知らないわよ!こっちにだって限度って物があるのよ!!
呪うなら己の軽薄な行動を呪うのね!バーカ!バーカ!バーカ!」
そのままルイズは一人で立ち去ってしまった
これには水銀燈もこれには思わず苦笑い
「…もう二度とあんな歌歌わないわぁ…」
水銀燈は落胆した声で嘆く
「…次はもっとうまくやらなきゃ」
…訂正。この人形まったく懲りてない
107 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/24(日) 23:22:00 ID:wZ7RLWar
昼食抜かされた水銀燈は校内を文字通りふらついていた
とくに描写してなかったが彼女の移動は宙に浮きまるで魔法のフライのように飛ぶ
だがその移動も空腹のためかあっちにフラフラこっちにフラフラ。仕方がないことだ、薔薇乙女だってお腹は空くのだ
もっとも、水銀燈の場合ある意味、生まれた時点で決して解消できぬ永遠の空腹に才悩まされているのだがここでは敢えて伏せさせてもらう
「何よぅ…ちょっとからかっただけなのに…」
彼女にとってゼロの二つ名と魔法の使えぬと言うコンプレックスは水銀燈が思っている以上のストレスだったのだろう
それを思うと水銀燈も今更ながら罪悪感が沸く。…何故なら彼女にもルイズに勝るとも劣らぬコンプレックスがあるのだから
(考えてみればあの娘がゼロと呼ばれるのは私がジャンクって呼ばれるのと同意気よね…)
以下、水銀燈の脳内。
まず思い出したのは緑色のドレスを来た三番目の妹
「翠星石…」
「ジャンクはどんなに頑張ったってジャンクですぅ!」
日頃から毒舌家の彼女からの一言。憎まれ口ばかり叩いている為いい加減慣れていたがやはりこの一言には腹が立つ
次はシルクハットをかぶった大きな鋏を携えた少女
「蒼星石…」
「僕がこんなジャンクごときにやられたなんて…お父様に合わせる顔がない…」
日頃真面目かつ悪口をいわない彼女だからこそグサリとその言葉が突き刺さる
そして今度は金髪の巻き髪の眩しい桃色のドレスを着た小柄な少女
「雛苺…」
「水銀燈もうにゅー食べるのー!」
「ああ、ありがとぉ…」
お腹好いたわねぇ…回想にまで空腹がついて回る
その次はおでこの広い日傘をさした少女
「…誰だったかしらこの娘?」
「ひ、ひどいかしらー!」
飛ばしましょ。次よ次
紫色のドレスを着た片目に眼帯を付けた感情の乏しい少女が現れた
「薔薇水晶…」
「じゃんくろーど・う゛ぁんだむ」
意味が分からなかった。まあこの娘自体よく分からない娘だし…
108 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/24(日) 23:23:23 ID:wZ7RLWar
そして最後に出てきたのは紅いドレスの元恩人であり…そして憎むべき宿敵となった少女
思い出されるのは袂を分かったあの記憶
「…真紅ッ!」
「ジャンク…作りかけの…ジャンクのくせにッ!!」
断っておくが前述の通りこれは水銀燈の脳内(脳があるのか不明だが…)、言わば妄想の産物である(一名を除いて)
薔薇乙女達の名誉の為に言っておくが余程のことが無い限り敵対するとは言え彼女らが姉妹をジャンク呼ばわりすることは無い
…真紅に関しては『余程の事』が起こってしまった悲しい一例だが…
だが空腹でイライラしている水銀燈にはそんなことはどうでもよかった。
最後に思い出された忌々しき記憶。その少女に向かい水銀燈は怒鳴りつけた
「うるさいッ!私はジャンクなんかじゃないッ!!」
空腹でできた幻覚なのか宙に浮かぶ真紅に大声を張り上げる
「きゃあ!」
ちょうど曲がり角となっていた廊下。突然大声を上げた水銀燈に驚き1人の少女が尻餅をついた
「…メイド?」
水銀燈の見下ろした先にはまさしく使用人。彼女の言う通りすなわちメイドの格好をした少女が倒れていた
GJ! 待ってました
ゼロ魔スレからGJゥ!
自分のペースでゆっくり続けて貰えると非常に嬉しい
望むならこのスレにも神父の加護があらんことを
GJ!かなり好きだわ
GJ
だけど、歌なんてサイトのほぼパクリじゃねーか
水銀燈のキャラ的にコケするやりかたが違うんじゃね?とは思ったぞ
>>108 散りばめられた小ネタが笑わせてくれるぜw
ルイズと水銀燈、互いのコンプレックスを持ってきたのがよいと思いました。
今回もGJ! 期待してますぜ〜。
自分はこの話好きだぜ。
GJ!続きまってるよー
>>112 ある程度原作基準だしそれぐらいはよくね?
それに銀様も市販のラジオやドラマCDじゃ悪ノリしたらこんな感じになったような…
何はともあれGJ!
GJ!
そういえば、ドラマCDだと真紅とシエスタは中の人同じなんだな。連想は多分しないだろうが。
>(あの娘に…真紅にできて私にできないことはなくてよ)
劇中では真紅が水銀燈に「あなたにできることはわたしにもできる」と言っているが、その逆は
明言されていない。歩き方すら真紅が教えたものだし。
それだけに、ここで対抗意識が出てくるのはよかった。
水銀燈にとって真紅は一番好きで一番憎い気になる存在なんだろう。
わざわざ別れてからの時間まで数えていたのは真紅だけだし。
GJ!
だけど銀様は羽ぱたぱたしてるのに人間と区別つかんのかね?学生どもは。
んー、ドールを人間の子供と見間違えるって流石に無理があるような
ドールってそんなにでかかったか?
なんというかわいいツンデレども
こいつらは間違いなく俺の嫁
結構辛口の意見も多いのなw
でもマンセーの嵐だけでなく疑問を持って建設的な意見が出るのもいいね
俺はあまり考えず楽しんでたけど…頭悪くてスマン
今回もGJ!!
保守age
次の投下は日曜日ぐらいですかな?期待!
ホッシュホッシュ
保守〜銀様ガンバ〜w
毎回感想や批評ありがとうございます。
自分も結構その場のノリで書いてるフシなので後から見るとまずったかな…と言うような箇所も少なくありません
これからはもう少し考えながら書きたいところですが…まだ至らないところも多いと思います
それでもよろしければ駄文ですがこのSSをどうぞお楽しみ下さい
では次レスより本編。今回は少し長めですが勘弁!
129 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/30(土) 01:32:29 ID:/vfY+kUC
曲がり角からの突然の怒声にびっくりし、尻餅をついてしまったメイド
「あいたたた…」
そう言いながら彼女はお尻をさすっている
「ふん…少々気が立ってて気づかなかったわ。悪かったわね…」
水銀燈はぶっきらぼうにメイドに言い放ちそっぽを向く
本当に反省してるのかと言いたくなる、限り無く不躾な謝罪の言葉と態度これでも彼女は己の非を認めているのだが…
しかしメイドは「ひっ…」と怯えるような声を出し大慌てでその場に立ち上がり
「も、申し訳ありません!貴族の方の前でとんだお見苦しい失態を!」
と深々と頭を何度も下げながら謝罪し始めた
彼女は別段謝るようなことをしていないのにだ。むしろ被害者とさえ言える
「はぁ?貴族ぅ?何を言ってるのよ貴女?」
「え?だってそんなに綺麗なお召し物を…
…そう言えば人にしては小さいような…」
恐る恐る頭を上げ水銀燈を見て言うメイド。日本人を思わせる黒髪をカチューシャでまとめたどこか素朴だが健気な感じするの少女だ
「悪かったわね…そりゃ小さいわよ。人形だもの…」
水銀燈は向き直り不機嫌に呟く
「人形…?あ、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔になられたと噂の…」
「なんで知ってるのよ」
「いえ…先程お食事中だった貴族の方々のお話しが耳に入りまして…あの、本当にお人形さん…なんですか?」
物珍しそうに水銀燈を眺めながらメイドは言う
「何よぉ!そんなに動く人形が珍しいのかしらぁ!」
先程のイラつきがまだおさまっていないらしい。水銀燈は特に気に障る事でもないのに声を荒げる
あと、貴女はとても珍しい人形ですと何度言えば…
「ご、ごめんなさい!
…でも何故そんなにお怒りになられてるんですか?」
例え相手が失礼な態度をとろうとも不平も言わず身を案じる。この少女、メイドの鏡だ
「…貴女には関係無い」
またそっぽを向き遠くを見つめ水銀燈は言った
(そうよ…こんな娘に構ってる暇は無いわ…早くなにか食べ物探さなきゃ)
全国の水銀党員を幻滅させそうな情けない思考。だか彼女を責めないでほしい。彼女だって生きるのに必死なのだ
え、何?それがいいって?
ともかく、このメイドに事情でも話せば助けてくれるかもしれない。だが薔薇乙女たる者、見ず知らずの少女に物乞いをする等というはしたない真似をする訳にもいかない
ここでお腹の一つでも鳴れば空気を読んだメイドが食事でも手配してくれるのだろうが
人形たる彼女は様々な事情でお腹が鳴ることは決して無いのだ
130 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/30(土) 01:33:42 ID:/vfY+kUC
「でも何かお困りのようですし…」
それでもメイドは食い下がる。この少女、困った人はほっとけないといった性分なのかもしれない
だがそんな気遣いもイライラ頂点の水銀燈には逆効果だったらしい
「うるさいわねぇっ!こっちはお昼ご飯ぬかされてこの永遠の空きっ腹をどうやって満たそうかと必死なのよぉ!
あんまり邪魔するとジャンクにするわよ!ジャンクにぃ!!」
あ、キレた。おまけに言ってることは最悪にカッコ悪い上に八つ当たり。この人形、乳酸菌足りてない
だがメイドの方は特に気にすることもなく
「ああ、お腹がすいてるんですね。それではこちらへ…」
と言うと食堂裏のほうに歩き出した
少々癪だが後をついて行く水銀燈
「私、シエスタといいます」
「…水銀燈よぉ」
「変わったお名前ですね」
何か言いたげな水銀燈であったが、このメイド…シエスタが今の自分の助けになるであろう事を察し、黙ってついて行くことにした
131 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/30(土) 01:35:30 ID:/vfY+kUC
ここはトリステイン魔法学院の全ての「食」を生み出す食堂裏。つまりは厨房のことだ
水銀燈がシエスタに連れてこられた場所である
シエスタは水銀燈を片隅に置かれた椅子に座らせ
「ちょっと待ってて下さいね」
と言うと小走りで厨房の奥に消えていった
少しばかり時間も経ち戻ってきたシエスタの手には温かいシチューの入ったお皿
「…何よこれ」
それが何かは水銀燈も気づいてるはずだが
「貴族の方々にお出しする料理の余り物で作ったシチューです」
「これを食べさせ…これを私に食べろと?」
これを食べさせてくれるの?と言いかけたのだがこの期に及んでまだ憎まれ口を叩く
人間に舐められる訳にはいかないとでも思ってるのだろうか?
だがシエスタは尚も気にしていない
「ええ、よろしければ」
考えてみればシエスタは若くともこの学院でワガママな貴族達の世話をしているメイドだ。それらの傲慢な輩に比べれば水銀燈の憎まれ口など可愛い物なのだろう
何しろ貴族に口答えや無礼等を働けばお返しは口ではなく危険な魔法で返ってくることもありえるのだから
「…まあいいわぁ、いただいてあげる」
水銀燈は相も変わらず不機嫌を装う。内心は嬉しさでいっぱいの癖に…
そしてスプーンでシチューを一口分すくって口に運ぶ
「(美味しい…)」
思わず顔をほころばせるがシエスタが見ているのに気づき慌てて顔を不機嫌に戻す。そしてもう一口
「本当にお人形さんでもお食事なさるんですね」
感心するように呟くシエスタだが一心不乱にシチューを口に運ぶ水銀燈の耳には聞こえていなかった。そしてその皿はあっと言う間に空っぽになった
「いかがでしたか?」
とのシエスタの問いに
「…悪くはなかったわね」
むすっとした顔で答えた水銀燈だが…
本当は十分に満足していた。思わず顔をほころばせた様やすぐに空になった皿がそれを物語っている
それでも水銀燈はむっとした顔を崩さない。
だが…彼女は気づいていないがバレバレだった
何故なら彼女、不機嫌な顔をしながらもそのシンボルたる背の黒翼。それが「私、ご機嫌です!」と言わんばかりにパタパタしている
ええ、それはもう大好きな飼い主に頭を撫でられ、嬉しがって振られる子犬の尻尾のようにパタパタと
不機嫌な表情とは裏腹に嬉しそうにパタパタしている翼の対比に思わずシエスタも笑みが漏れる
「よかった!お代わりもありますよ?」
「…あ、余ってるのなら貰ってあげてもよくてよ!」
この人形本当に素直でない
心の中では(やったわぁ!)と歓喜の叫びでも上げてることだろう
そして二皿目も夢中になって食べ始める水銀燈を見てシエスタは
「(ああ…これって)」
「…今貴女、野生のカラスを手懐けるのってこんな感じなのかな?って思ったでしょ」
「(うっ!鋭い!)」
と、水銀燈に胸の内を看破され冷や汗をかいたりした
132 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/30(土) 01:38:33 ID:/vfY+kUC
「ご馳走になったわね…」
「はい、お粗末様でした」
食事も終わり水銀燈も満足したようだ。頃合いを見計らってシエスタは水銀燈に聞いた
「ご飯いただけなかったんですか?」
「ちょっとゼロのルイズってからかったら、髪を真っ赤に染めんばかりに怒っちやったのよぉ。それで食事抜き」
「まあ!貴族にそんなこといったら大変ですわ!水銀燈さん!」
「本当にちょっとからかっただけよぉ。…まあ少しやりすぎた気もしないでもないけど…
あと、水銀燈さんだなんてかしこまらなくてもいいわぁ。別に貴族じゃないんだし」
満腹になって少しはシエスタに気を許したらしい。彼女にしては珍しい譲歩だ
「でしたら銀さんとお呼びして…」
「なんですかぁ〜?だからかしこまらなくてもいいっつってんだろうがコノヤロー。私に万屋でも開けってかぁ〜?」
「はい?」
「…失言だったわ、忘れなさい…
後、私のことは呼び捨てで結構よぉ」
「でも…」
「つ、つべこべ言わないの!私がいいと言ってるのだから別に良いのよぉ!」
不機嫌そう…と言うより困ったような、少し照れた表情で水銀燈は言った
「はい、わかりましたわ。水銀燈」
シエスタも水銀燈が少しだけでも自分に感謝してくれていることを感じ、嬉しそうに頷いた
「さて…お腹も満たされたし食後に軽く運動がしたくなったわねぇ
…貴女、何か私ができそうなことあるかしら?」
水銀燈はわざとらしく、言い訳がましく口を開いた
「はい?」
シエスタの方は意味が分からないように聞き返す
「つ、つまりよ…私が貴女の助けになってあげれるか、みたい、な…」
水銀燈の声はだんだん小さくなり口をもごもごさせる。顔は恥ずかしそうに俯かせながら
「えーと、つまりお手伝いをしてくれるってことでしょうか?」
「そ、そういうことよ!感謝なさい!私が人間の手伝いをするなんて…じゃなくて勘違いしないでよね!私はただ体を動かしたいだけで…」
パニックになってるのか水銀燈の言っていることはむちゃくちゃだった
素直に「昼食をご馳走してくれたお礼に何か手伝ってあげるわぁ」とでも言えばいい物を
目を回しながら必死に言い立てる水銀燈に微笑みながらシエスタは水銀燈にお手伝いをお願いした
「では、デザートを運ぶのを手伝ってもらえますか?」
「問題無いわぁ、このローゼンメイデンの第一ドール。水銀燈の力をもってすれば造作もないことよ」
よくわからないがすごい自信だ。ただデザートを配るだけなのに…
133 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/30(土) 01:41:05 ID:/vfY+kUC
ところ変わってトリステイン魔法学院内の図書館。ここはその中でも教師のみが閲覧を許された通称「フェニアのライブラリー」
薄暗いその一区画に灯る星の光のような小さな灯り、そしてそれを反射し恒星のごとく輝く灯り…否、それは人の頭だった
この禿しい…間違えた、激しい光をU字ハゲに反射させ書を読みながらぶつぶつ言っている男性教師こそ
何を隠そう、先日のサモン・サーヴァントの担任教師にして『炎蛇』の二つ名をもつ火のメイジ。ミスタ・コルベールであった
彼はルイズの呼び出した使い魔の少女の事について昨夜からこの図書館にこもり調べ物をしていたのだ
まずは人形やゴーレム、ガーゴイルに関する資料。無論、自動人形に関することを調べるためだ。しかし結果は得るものは何もなく
どの書物も最後は「自動人形なんて無理無理、そんな訳だから諦めろ」と言う結論で終わってしまう
「(…だめだこりゃ)」
後ろ髪ひかれる思いで(ひかれるほどフサフサじゃないだろーが。なんて死んでも言えない)自動人形の調査は断念したが彼にはもう一つ気になることがあった
それは彼女の「右手」に現れた不思議なルーン
珍しいルーンだった。彼は幾度かコントラクト・サーヴァントにも立ち会ったが奉職して二十年、あんなルーンは見たことが無い
最初は一般区画で調べていたもののそこではコルベールの求めた答えは見つからなかった
「フェニアのライブラリー」で浮遊魔法により最上段の本まで目を通し、
ひたすら目当てのルーンを探る。片手には彼女に現れたルーンのスケッチ。もう片方には次々と入れ替わる書物の数々
限り無く不毛な作業だが彼の努力は見事報われることとなった
今コルベールの手元にある本は始祖ブリミルの従者となりし使い魔達を記した物
その中の1ページを目にし思わずあっ!と声をだし驚き、魔法の集中を乱し床に落下しそうになるが慌てて立て直す
そしてその書を抱えるとある場所にすっ飛んでいった
コルベールの行き先はこの学院内で最も強大かつ博識であろう人物の居場所
学院最高権力者の部屋、すなわち学院長室であった
134 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/30(土) 01:42:36 ID:/vfY+kUC
学院長室は本塔最上階にある。その部屋の中央、重厚なつくりのセコイアのテーブルと椅子に座っておられるお方こそ…
「わしがトリステイン魔法学院学院長オールド・オスマンである!!」
自己紹介ありがとうございます学院長
「どうかなさいましたか?オールド・オスマン」
そう言ったのは彼の秘書であるミス・ロングビル
「いや、特に意味は無いわい。少々退屈でのう…」
オスマン氏は椅子から立ち上がり理知的な凛々しい表情でロングビルに近づく
彼の顔に刻まれ皺は大樹の年輪のごとく彼の過ごしてきたであろう歴史を物語る
百歳、いや三百歳とすら言われるオスマン氏の年齢。それを知るのは彼のみ…いや本人すら知らないのかもしれない
「オールド・オスマン」
「なんじゃね?ミス…」
「暇だからと言って私のお尻を撫でるのはおやめ下さい」
人事のように羊皮紙に走るペンを眺めロングビルは言った
オスマン氏は口を半開きにするとよちよち歩き始める
「わしの毎朝はケロッグコーンクリスピー。自転車通学がしたいんじゃが…」
「都合が悪くなるとボケたふりするのもやめてください」
そのようなやりとりをしているなかドアを蹴破らんと言わんばかりに勢いよく入室してくる人影
「オールド・オスマン!」
「なんじゃね?騒々しい」
荒い息をはきつつ飛び込んで来たのはコルベール。そのまま大慌てで報告を始める
「たたたた、大変です!」
「落ち着きたまえ、大変なことなどあるものか。全ては小事じゃよ」
「ここ、これをご覧ください!」
「んん?なんじゃ、『始祖ブリミルの使い魔達』?こんな古い文献なと漁りおって。ミスタ……えーと、ミスタ…ミスタ…なんだっけ?」
「コルベールですッ!お忘れですか!?」
「おお、悪いのう。そんな名前じゃったな。そう怒りなさんな、血圧あがるぞ?乳酸菌とっとるかのぅ?」
「ともかく!これを!」コルベールの渡したものは水銀燈に現れたルーンのスケッチと本のとあるページ
それを見た瞬間オスマンの氏ののほほんとした表情は一変。キラリと目を光らせそれが細くなると、険しい色となる
「…ミス・ロングビル、席を外しなさい」
ミス・ロングビルは席を立ちドアの前まで行くと一礼した後部屋を退室する
それを見届けたオスマン氏重々しく口を開いた
「詳しく説明するんじゃ。ミスタ・コルベール」
135 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/30(土) 01:46:09 ID:/vfY+kUC
そのころ、そんな重々しい事態に学院長室がなっているとも知らず
水銀燈とシエスタはデザートのケーキを配っていた
水銀燈がはさみでケーキをつまみ一人ずつ配っていく様子を物珍しく見ている貴族達
「なんだか見せ物にされてるようで気に入らないわね…」
手伝いという立場上、小声で不平をつぶやく水銀燈
「みんな水銀燈に見とれているんですよ。ほら、まるでおかわいい人形さんみたいで…ってお人形でしたね」
「か、かわいいなんて言われても何もでないわよ!」
突っ込むのはそこですか
話ながらも作業は順調に進んだ
しかしその時奥の一角から冷やかすような声が
「なあ、ギーシュ!お前、今誰と付き合っているんだよ!」
「誰が恋人なんだ?ギーシュ?」
ギーシュと呼ばれたメイジはすっと唇の前に指を立て
「付き合う?よしてくれ、僕にそのような特定の女性はいないのだよ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」
と真顔でこっ恥ずかしいセリフを返す
ナルシストにしてフェミニスト見てて不愉快になる典型だ。おまけに自分を薔薇に例える等…
文字通り薔薇乙女の名を冠する水銀燈には聞き捨てならぬことだが…
(あんなのと関わり合いになるのも嫌ね…)と考えここは無視することにした
その時ギーシュのポケットから何かが落ちる。ガラスでできた小瓶、中には紫色の液体が揺れている
(関わり合いになりたくないって思った矢先に…まったく…)
誰も気づいた様子が無い。気にくわない人間だがそのまま知らんぷりするのも誇り高き薔薇乙女の名折れ。水銀燈は一つ大きなため息をついて言った
「貴方、ポケットから何か落ちたわよぉ」
しかしギーシュは振り向かない、天然か故意かはわかりかねる
水銀燈ははさみをシエスタに預け小瓶を拾いギーシュに差し出す
「落とし物だと言ってるのよキザ男」
ギーシュはけだるそうに水銀燈と小瓶を見ると少しだけ動揺した様子を見せたがすぐに立ち直り言った
「何を言っているのかわからないね?これは僕のじゃない」
だがギーシュの友人達はそれが何か知っていたらしい
「おおっ!この香水はもしや、モンモランシーの香水じゃないのか!?」
「そうだ!その鮮やかな紫色はまさしくモンモランシーが自分のためだけに調合してる物!
ってことはお前が付き合ってるのはモンモランシーか!」
「残念ながら違うね、彼女の名誉のために言っておこう…」
ギーシュが何か言いかける前に彼の前に茶色いマントの少女が歩いてきた
「ギーシュ様…やはりミス・モンモランシーと……」
そしてボロボロと鳴き始める
「待ちたまえケティ、彼らは誤解しているんだよ僕の心に居るのは…」
バチン!という乾いた音と共にギーシュの言葉は…ケティと呼ばれた少女の平手打ちで遮られた
「その香水があなたのポケットから出てきたのが何よりの証!さようなら!」
彼はやれやれと言わんばかりに肩をすくめる
だが、彼の不幸はこれでは終わらない
続いて歩いてきたのは巻き髪の見事な少女。なんとなく自分の姉妹の末っ子を思い出す水銀燈だが
彼女は…モンモランシーはあいにく雛苺ほど無邪気な性格では無かった
モンモランシーはいかめしい顔つきでギーシュの前にやってきた
「モンモランシー!違う、彼女とはただ一緒にラ・ロシェールの森まで遠乗りしただけで…」
一見冷静な態度だが今度は動揺を隠しきれていない。冷や汗が一筋だが頬に垂れる
「やっぱりあね一年生に手をだしていたのね…」
「お、お願いだよ洪水…ゲフンゲフン!香水のモンモランシー。咲き誇る薔薇のような顔をそのような憤怒の形相で変形させないでくれよ!僕まで悲しくなるじゃないか!」
ギーシュの動揺はさらに広がっているらしい。言っている事の一部が嫌に不自然だ
だが当のモンモランシーはまったく聞く耳持たずといった感じでテーブルねワインのビンをつかみドボトボとギーシュの頭上から注ぐ
そして
「嘘つき!」
と怒鳴って去っていった
沈黙が流れる中ギーシュはハンカチで顔を拭くと
「あのレディ達は薔薇の存在を理解していないようだ」
と呆れるような言った
136 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/30(土) 01:50:28 ID:/vfY+kUC
水銀燈は(自業自得ね、一生やってなさい…)と心の中でつぶやき作業に戻ろとした矢先
「待ちたまえ」
と彼女の背にギーシュの声がかかる
「何かしらぁ?」
「君が軽率に香水の瓶なんか拾うから二人のレディの名誉に傷が付いた。どうしてくれるのかね?」
なんと言うキザ男…一言聞いただけで呆れてしまった…この男間違い無く水銀燈に責任転嫁するつもりだ
「自業自得と言う言葉をご存知かしらぁキザ男さん…いえ、フラレ虫さぁん?二股かけてる貴方が悪いのよ」
あまりにも正当な物言い、そしてフラレ虫という単語にギーシュの友人達もどっと笑う
「その通りだフラレ虫!お前が悪い!」
ギーシュの顔にさっと赤みがさす
「いいかい?メイド君…えーと君はメイドでいいのか?とにかく!僕は君に話しかけられた時知らないふりをした。話を合わせる機転ぐらいあってもよいだろう?」
「くっだらなぁい、例えこの場を凌げたとしても二股だなんてどうせすぐにばれちゃうことに気づかないなんて本当におめでたいわね
あと貴方、胸に刺さってる薔薇がぜんっぜん似合って無いわよ」
これには周りの貴族も大笑い。ぽかんと口を開け唖然としているギーシュをよそに水銀燈は話を続ける
「それに貴方が薔薇ですって?とんだお笑いだわ!」
「な、なんだと!」
ふん…と鼻を鳴らし真面目な表情で語りだす水銀燈
「…覚えておきなさい。薔薇はその身に鋭い棘を持ち他の者を寄せ付けようとしない孤高の花よ
それでも何故、人は薔薇に手を触れようとするのか?答は簡単。例え棘が刺さろうとも惹かれるほどの魅力が薔薇にはあるからよ」
「何が言いたい…!」
「本当に貴方が薔薇のような気高さを持つならば彼女達は貴方を離れたりはしない。彼女達は貴方の二股と言う名の棘に…愛想を尽かし去っていった。つまりは貴方の魅力は薔薇に遠く及ばないと言う事ね」
「!!」
ギーシュの胸にグサリと刺さる水銀燈の言葉
「…もっとも、それ以前に薔薇のごとき気高き者は二股だなんで最低な真似はしないでしょうけどねぇ?そんな棘持つこと事態が問題なのよ」
水銀燈は不適に笑みを浮かべ言い放つ
「メイド風情が…!平民風情がよくもそんな知った口を!」
ギーシュの怒りが頂点に達したようだ
「残念だけど私はメイドでも平民でもない」
「…黒いドレスに翼、人間より一回り小さい体…そうか、君がヴァリエールの呼び出した人形の使い魔だな…!」
「あら、ご存知だったのかしらぁ?光栄ねぇ!」
「こんな屈辱は初めてだよ…君は貴族に対する礼をしらないようだね…」
「お生憎様。少なくとも貴方みたいな貴族に対する礼は持ち合わせてないわねぇ」
「よかろう調度いい腹ごなしだ。君に礼儀を刻んでやろう、決闘だ!」
文字通り体に直接刻みつけるつもりなのだろう
だが水銀燈は踵を返しオロオロしながらも事態を見守っていたシエスタの方へ歩いていく
そして顔だけ向き直り言い捨てた
「結構よ。今言ってた事を聞いてなかったのかしらぁ。貴方に対する礼など持ち合わせてないし、持ち合わせる予定も無い」
「ふん、逃げるのか?」
「そんな安い挑発にのるのはお馬鹿さんだけよ
お人形遊びがしたいなら自分で買って一人寂しくお部屋で遊ぶのね」
口での戦いは水銀燈が一枚上手のようだ
ギーシュは後ろで色々とわめいているようだが
水銀燈は歯牙にもかけず背を向け遠ざかっていく
だが…
137 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/30(土) 01:52:42 ID:/vfY+kUC
「流石は出来損ないのゼロのルイズの使い魔だね!これだけ侮辱されて何も思わないとは!飼い主と同じの出来損ないだ!」
何気に言い放ったギーシュの一言
(出来損ないですって…!)
これを聞き水銀燈はうつむいてギーシュの方に向き直ると冷めたような声で言った
「気が変わったわ…」
「…!」
突然の心変わりにギーシュも不自然に思う
「その決闘、受けて立つわよ」
「何…?」
水銀燈から発せられる重圧。そして…
「遊んであげると言ってるのよ」
水銀燈のうつむいた顔があげられた。その瞳に灯るは憎しみと言う名の光
表情にあらわれているのは彼女がこの地に降り立ち初めて見せる感情、すなわち…『怒り』である
次回、薔薇を名乗るドールとメイジの決戦…!
>>137 これはいいツンデレw
素直じゃない水銀燈の描写にニヤニヤしちまったぜ。
それに、バラに関する講釈もいい感じですな。
今回もGJ! した。
GJっす!
次回は銀様のサディスト的側面が見れそうだな
気のせいか学園長の中にマサルさんの校長を見たような
今読み直したら誤字がすごく多い…申し訳ない
今度からはもっと推敲しなきゃ…
GJゥ!
強がっても体は正直な銀様萌え
薔薇のくだりで薔薇もどきのギーシュを論破する銀様に痺れた
かなりのボリュームでも全く読むのが苦にならなかった。もう一度GJ!
銀様ルイズと相性いいなぁ……
羽ぱたぱた銀様カワイイよ銀様
薔薇を語る銀様カコイイよ銀様
そしてこの世界では確認されているのか乳酸菌!
GJです
香水拾うのはシエスタの役だと思っていたが、御飯を食べた後の銀様はお優しいのですね
GJ!!ギーシェがエドの時より酷い事になりそうな予感www
GJ!と言ってあげるわ、感謝しなさい!(ツンデレ風味で
素晴らしいよ〜銀様がステキだよ〜生きるのに必死って辺りが(なに
最後のデキソコナイにキレる辺りがキャラ出ててGOOD!
GJ!
銀様はやっぱり
真紅に憎しみだけじゃなく思うところがあるんだろうな・・・薔薇・・・
激しく乙。
1号だけじゃなくて他のローゼンナンバーズの場合も見たいなあ
緑の子とか青い子とか
>>147 愛と憎しみはよく似ている。
赤い子が呼び出されたら、ルイズの方がこきつかわれることは間違いないな。
鞭をふるおうとしたら、ツインテールがとんでくるし。
スーパーツンデレタイム来たぁぁぁぁぁぁ!
と思ってたら後半のシリアスな銀様に痺れた
言い回しとかもいいねぇ‥‥
ぐっじょぶ!
銀様かわいいよ銀様
羽のところなんかもうホントかわいいね。
_r ''~丁ニ=┐__
rイヾ l | /~ヽヘ
ベ - ┴‐- </ `l
. 〈/ / \ ヽ;k
く 〃 .:.:ヽン{:'.
f≫/:/:./ :!:; ヽ:ヽ .:lヽ :.:.:.:.V=ハ
《 ∨/:.:.l.:l .:!:l .:.:}:.:! :.l:.:!:.:ハ:.:.lヾ、ゞ
||/リ:.|.:.|:.l :.l.:k:. .:.:ハ:.j _;ムバ|:/:.;}|K/| ハ二二 l
≫イハ:.:l.:.l`ト儿 \ノ オ少t;ァ j:.:.;イl|||:.:| 厶ヽ__ヽ
〃 ルヘ:.ヽヾ 卞云 ´┴‐'ノ/::|:l|:!!:.:! .| ピルクル|
. /;.:":. .ゞ、ヽ.:_:> '_, "" フ:.:.: .|:l|ヾ.:.ヽ | /,|1000 :!
//.:.:.:r┘ 〉:.:.:/个ト、.`´ イ.厶.:.:.:.|ィ―‐‐‐┐ l´ ̄`l〜゙'| ノマ々|
//.:.:.:./┴‐'7.:.:∧ ヽr‐イ二´t≦__」:.:.:.| ハ |'  ̄`|g::| ・ω・ !
//.:.:.:f厂 /.:.:/セ \} Z /ハ\ ! .:.|  ̄r‐ ヘ ヽ___.L.--┴ー┴- ,,」
/〃 .:.:.:./j: /:/ 己\{ Z/ l|キ|! ヽ!.:./ r/┘ ==  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ == 、
/:.// .:.:.:r-V:: // { ̄ >' |_ ||=;|| |/ ゞ ̄〈( ////ン- ―ーク-っ// )〉
./;/ / .:.:.{{≫′ 〃 }/ 」/ `'||‐'||-〃 ハ 〈` ー== /‐ 、____三彡'==一″
レ /==ラ W フ广T / l / /Y_ /
/.:..:/ イ^フーr‐ァヘ /j レ′ ∠_〉 /∧厶
!/ 彡≦{_l リl.:.:l.:.:ト-K / 彡"k;ヌ 〃/ ∧
/ / ニ__) !:ハ:.:.!.:.:>\ ∧≧<レ ヽ__ >!
. / イl / \ .{:! l:.ハ:.}ミ≧ /:./〃/\/ ス 丁:l:.:!
/ /ヘl/ Y´ ∧、 ヾ >ハミ三≡= 、 ∠ =孑':.:./ /; / /_,イ十":./!.:|
. l / /ヽヽノ ,ム<レク ! \ヾミ三 ≡≡三ヨ// / / 才.:.:./ l:.:!
| // ,Vイフ rヘ 、 V l \  ̄ ̄ ̄ス / ' l /.:.:.:.:/ l:/
| / / `ム;f 、 l入〉 l \ / ∧′ ∧_/!.:.:.:.: / 〃
| !. / / ヽlJヽク l // ∨ / |:.:.:/ /'
|ハ__/ / >| / ∨/" l/
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l ~ーえ〜―- 、 │ l !
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l`ー―--- 一'´ ! マ、 _____, イ
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Hosyu
>>148 逆に考えるんだ
自分で別の薔薇乙女が召喚されるssを書けばいいやと考えるんだ
蒼い子が好きだな〜庭師のハサミとか微妙な武器ダケドw
しかし誰よりも剣を持つのが似合いそうな気がする。あの帽子が良いねw
翠が来たら激しいツンデレ合戦になるな
問題は誰に対してデレるかだな
ローゼンのツンデレ率高いな、そう言えばw
凄まじいツンデレ合戦! 三人のツンデレが七万の軍勢を蹴散らす(なに
スレの雰囲気がなんか違うなと思ってたら、あの作品のキャラがルイズに〜スレと間違えて見てた‥‥
そういやここってアニメSS総合スレだったな
他のSSは来ないのだろうか…
無論ゼロの銀様には満足してるけど
しかし漫画のローゼンは…
ゼロの傭兵の良作っぷりは異常
あれもう終わったんじゃなかったっけ
エドの奴も連載の人が行方が知れなくなってるけど
他の人がやってるみたい
>>165 俺は金をいらない子とは言わないが
一番は蒼い子だろ
一番は雪華綺晶。異論はある程度認める。
なら、俺は薔薇水晶を貰っていく。
のっけから高レベルなSSが展開されてて噴いたww
りんとした気高い銀様もいいけど、こういうお茶目な銀様もいいよな
最も、どう評価を受けるかってのはこれから次第
高い評価を受けるような作品になってもらいたい
!
>>169 ツンデレに目を奪われがちだが食堂のギーシュ前哨戦で気高き銀様の片鱗が現れ始めてるし、きっと決闘でもやってくれるさ!
更新楽しみにしてます!
悪いが真紅は俺の嫁だ
銀様は俺の指導者です(><)
出たな水銀党
>>173 少なくとも銀様の愛されっぷりを見る限り作者さんは間違いなく水銀党員
嫌いなヤツで書き続ける事はできないからな。
「あんた誰?」
澄んだ青空の下、 黒いマントの下に、白いブラウス、グレーのフリップスカートを身に着けた
少女が自分を身をろしている。
黒いマントをまとい手には杖。まるで魔法使いのような格好だ。
(……誰? ここ、は……)
由詑かなみは首をかしげた。
自分は確か、いつものように水守と同じベッドで眠りについたはずだ。
状況を確認しようと、とりあえず周囲を見回してみる。
――嘘!?
一瞬、頭の中が真っ白になった。
周りは草原。目の前の少女と同じ服装をした若者達が自分を囲むように立っている。
遠くに城が見えた。絵本に出てくるような城が。
――ここはロスとグラウンドじゃない!?
驚愕がかなみを打ちのめした。
心臓がやたらと煩い。耳元に移動したかのようだ。
と、その時。
「ハ・・・ハハハハハハ」
「はっはっはっやってくれるぜまったく!」
「平民! 平民を召喚するなんてさぁ!」
「さっすがゼロのルイズ?」
周囲から一斉に哄笑が上がった。
こちらを指差してゲラゲラと笑っている。
――誰? この人たちは一体何を言っているの?
かなみの心の壁を恐怖が這い登った。
「うるさいわね! ちょっと失敗しただけよ!」
目の前の少女が顔を真っ赤にして怒声を上げ、忌々しそうにかなみを睨みつけてくる、
強い視線を向けられかなみは思わずたじろいだ。
すぐに少女はぷいっと視線をそらし、
「ミスタ・コルベール! もう一回だけ召喚させて下さいっ!」
一人の男に向かって訴えた。
その男は、真っ黒なローブに大きな杖を持っていた。まるでお伽話の魔法使いだ。
「それは駄目だ。ミス・ヴァリエール」
「どうしてですか!」
悲鳴染みた声で少女が、男に食ってかかる。
だが男は動じた様子もなく
「使い魔の召喚は神聖なもの。
気に入らない、という理由で契約をしないなどと言うことは認められん」
重々しい口調で言った。
少女はしばらくの間、唇を噛み、握り締めた拳を震わせていたが、
「……分かりました」
呟くように言うと、かなみに向き直り息を吸い込んだ。
「――我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔と為せ」
杖がそっとかなみの額にふれ、少女が顔を近づけてくる。
桃色かかったブロンドの髪にすき通るような白い肌に、とび色の瞳。
同姓であるかなみですら、思わずドキリとさせられるほど美しい顔立ちだった。
その顔にある形の良い唇が――。
かなみの唇に触れた。
「な、何するんですか!?」
反射的にかなみは少女を突き飛ばしていた。
その大きな瞳に見る見るうちに涙が浮かび始める。
何が何やら分からない所にもってきて、いきなりキス。
ファーストキスだったのだ。それが、よりにもよって同姓と。
「何よっ! 私のだって不本意なんだからっ!
よりにもよって平民の女なんかとっ!」
「なっ!?」
カっと頭に血が上るのをかなみは感じた。
いきなりキスをしておいて何たる言い草か。
状況の異常さも何もかも忘れて、かなみが抗議しようと口を開き変けたその時。
「あ、熱っ!?」
体が炎で燃やされたように熱くなるのをかなみは感じた。
熱は収まらず一点に――左手の甲に収束していく。
「――っ!!」
あまりの熱さに声をあげることも出来ない。
幼い少女が、涙を流しながら左手を押さえて転げまわる姿は無惨だった。
生徒達のある者は目をそらし、ある者は非難がましい視線をルイズに送った。
「す、すぐ終わるわ。もうちょっとだけ、ちょっとだけ我慢しなさい。
『使い魔のルーン』が刻まれているだけよ」
少女が言い終わるのとほぼ同時に熱さは消え、かなみは大きく息を吐いた。
額に汗が噴出しているのが分かる。
男――コルベールとか呼ばれていた――が近寄ってきてかなみの甲に目をやった。
「ふむ……珍しい使い魔のルーンだな」
かなみの目が大きく見開かれた。
いつの間にか、自分の左手に見慣れない文字が浮き上がっている。
「一体……なんなん、ですか? あなたたちは……」
ようやくかなみはそれだけを喉の奥から搾り出した。
事態の急展開につぐ急展開に、まったく頭がついていかない。
「さてと、じゃあみんな教室に戻るぞ」
かなみの問いは、無視という形で返答された。
それでも気力を振り絞って言い募ろうとして――
かなみは息を呑んだ。
男が宙に浮いたのだ。
(……アルター能力?)
――違う。
わずかに残った理性と思考が即座に否定した。
アルター能力発動に伴ういくつかの現象がないということもあるが、
アルター能力者であるかなみには分かる。
あの力はアルターではなく、何か別の力だということが。
男に続き、他の面々も宙に浮き上がると、城のような建物に飛んでいく。
「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」
「あいつフライはおろか、レビテーションさえまともにできないんだぜ」
「その平民、あんたの使い魔にはお似合いよ!
嘲笑の言葉を発しながら遠ざかっていく。
残されたのは、彼らがルイズと呼んだ目の前の少女とかなみだけ。
嘆息が聞えた。
「……あんた、何なのよ!」
少女が腕組みをして、自分を見下ろしている。
既に精神的に疲労しきってしまったかなみにからは、
思考力も何かを尋ね返す気力も失われていた。
それでも――。
「……かなみです。由詑かなみ」
何とかそれだけを言い、かなみは少女を見上げたのだった。
銀様召還SSの素晴らしさに触発されて書いてしまった……。
なんというょぅι゙ょ虐待ゲスルイズ
このルイズは間違いなくフーケ戦で半ミンチになりワルドに結婚詐欺に合う
当然最後はカズくんにシェルブリットで粉々になる
181 :
176:2007/07/05(木) 04:49:50 ID:OgxFUQNl
「――信じられないわ」
眉間に皺を寄せてルイズは天井を仰いだ。
目の前の少女が言うには、少女がいたところはロストグラウンドという『異世界』の一地方だという。
「……私もです」
硬い声でかなみは言った。
目の前の少女、ルイズ――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール――が言うには、
ここはハルケギニアにあるトリステイン王国のトリステイン『魔法』学院だという。
『魔法』
かなみは、ロストグラウンド生まれのロストグラウンド育ちである。
『本土』や他の地域に行ったことはない。
それでも流石に『魔法』などというものが使われていないことは知っている。
何より――。
かなみはチラリと窓の外に目をやった。
あの二つの大きな月が、ここが異世界であることを物語っていた。
ぎゅっと膝の上に置いた手を握り、かなみは目の前の少女に視線を向けた。
ルイズが言うには、このトリテスティン魔法学院では2年生になると、
メイジ――魔法使い――が一生をともにする使い魔を召喚する儀式を行う。
その儀式によって呼び出されたのが、自分だというのだ。
「……なんとか元の世界に帰る方法は無いんでしょうか?」
「無理よ」
縋るようなかなみの問いかけは、短い言葉によって切り捨てられた。
「あなたが、他の世界から来たなんて信じられないけど、別世界を繋ぐ魔法なんて知らないもの」
「じゃあ、どうやって私をここに連れてきたんですか!?」
「こっちが聞きたいわよ!」
苛立たしげに桃色の髪をかきあげながら、
「ほんとのほんとにそんな魔法はないの!
大体、別の世界なんて聞いたことがないもの!」
「でも、私をこの世界に連れてきたんですから、元の世界に戻す事だって――」
「いい加減諦めなさいよ。
私だって、あんたみたいなのが使い魔なんて嫌だけど、取り消すことはできないし……」
ルイズはうんざりしたように、かなみの言葉を遮った。
出きるものならやり直したいのは、自分だって同じだ。
平民。しかも10歳くらいの女の子。
ルイズの口からため息が漏れた。
(どうしていつもいつも失敗しちゃんだろ……)
慣れ親しんだ自己嫌悪の波が押し寄せてくる。
ゼロのルイズ。
忌まわしい汚名を返上しようと思っていたのに。
成功したと分かった瞬間、一瞬天にも昇るような気持ちになったというのに。
ルイズは唇を噛んだ。
「……わかりました。
帰る方法が見つかるまで、ルイズさんの……。使い魔になります」
聞えてきた声に、ルイズは自己嫌悪と思考の井戸の底から浮かび上がった。
「……でも、使い魔って一体なにをすればいいんでしょうか?」
「使い魔っていうのはね……」
言いながらルイズはかなみの全身に視線を走らせた。
華奢な身体。小さな手足。
半ば絶望的名気分になりながら、ルイズは言葉を紡いでいく。
「1つ。使い魔には目となり耳となる能力が与えられる。
……けど、私達には無理みたいね。何も見えないもの。
1つ。主人の必要とするもの、例えば秘薬なんかのの探索を行う。
……これもできそうにないわね。異世界から来たんじゃどれが秘薬かなんて分かるはずないわ。
1つ。これが一番重要なんだけど……。主人の身を守る」
ルイズは天井を仰ぎ、今日何度目かの嘆息を漏らした。
「……考えるのもバカバカしいわね。
あんたじゃ、野良犬にも勝てそうにないもの」
視線を上に向けていたルイズは、かなみの眉がぴくりと動いたことに気付かなかった。
「ま、あんたが出来そうなことをやらせてあげる。洗濯。掃除。その他雑。
それくらいはできるでしょ?」
「……はい」
声量は小さかったが、その声はしっかりとしていた。
(どうやら、下働きの経験があるみたいね。
どっかの屋敷で奉公でもしてたのかしら?)
まったく役に立たないという最悪の事態は避けられたとしり、ルイズは少し胸を撫で下ろす。
もっとも、それでも使い魔としての価値が限りなく「ゼロ」に近いという事実は変わらないけれど。
(やめやめ……。もう寝ようっと。考えてたら暗くなっちゃう)
ルイズはベッドに座ると、寝巻きに着替えるため服を脱ぎ始めた。
下着をかなみの方に放り、
「それ、明日洗濯しておいて」
「……分かりました」
あくびを漏らしながら、ベッドにもぐりこもうとしてルイズはハタと気付いた。
(この子の寝床……。どうしよう?)
まさか人間を召還してしまうとは露ほども思っていなかった。
用意などしてあろうはずもないから、当然、ベッドは自分用の物が一つだけしかない。
いくら平民とはいえ、10歳ぐらいの女の子を床で寝させるというのはあんまりというものではないだろうか?
チラリとかなみの方をうかがうと――。
「あんた……。それでいいの?」
そこには、床に横たわったかなみの姿があった。
「平気です」
どうやらこの少女はかなり困窮した生活を送っていたらしい。
それでもやはり気が咎めるものを感じ、
「これ、使いなさい!」
ルイズは毛布を投げ渡した。
「……ありがとうございます」
少女は頭を下げると、毛布にくるまった。
ルイズは顔をしかめた。
少女の顔は人形のようで、声は石の如く硬い。
「……機会を見て、先生に異世界と異世界を繋ぐ魔法に心当たりがないか聞いてあげるわ。
ひょっとしたら知ってるかもしれないから」
数瞬の間があって、
「ありがとう、ございます」
感謝の言葉が返ってきた。
石のようだった声音がわずかに和らいでいるのを感じ、ルイズは少し安堵する。
と、同時に安堵した自分に腹が立ち、
「か、勘違いしないでしよね!
あんたを送り返せれば、私は晴れて次の使い魔を召還できるってだけなんだから!」
早口に言って、ルイズはベッドにもぐりこんだ。
(何で貴族である私が、平民に気なんか使わなきゃなんないのよ!)
指を打ち鳴らしてランプを消し、ルイズは布団に顔をうずめたのだった。
かなみもルイズもかわええ(*´Д`)
そーいや、この二人ヒロイック・エイジで双子役やってるな
おぉ神が二人もwww
「……ん」
覚醒しきらない瞳に映ったのは見知らぬ天井。
かなみの意識は急速に覚醒へと向かった。
(あれ……。私……)
意識が覚醒するにつれ、昨日の記憶が蘇ってくる。
召還、ルイズ、使い魔……。
「そっか……。そうだったんだ……」
呟きながら、身体を起こす。
窓から見える空は薄っすらと茜色に染まっている。
部屋の主は、安らかな寝息を立ててまだ夢の中だ。
かなみは、脱ぎ散らかされたルイズの服を持って部屋を出た。
(……洗濯場ってどこかなあ?)
昨日、ルイズに一通り案内してもらったので――すさまじく大雑把であったが――
外にはなんとか出ることができた。
けれど、水場はどこなのか、洗濯道具はどこで調達すればいいのか、皆目検討がつかない。
かなみがため息をついたその時。
「どうしたの? あなた」
振り向くとそこには黒髪をカチューシャで纏めた優しげな顔立ちの少女がいた。
「いえ……その……」
元々人見知りするタチであるかなみは、思わず口ごもってしまう。
すると少女はポンと手を打ち、
「あなた、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう平民の子?」
かなみは目を丸くした。
「どうして、それを……」
「噂になってるもの。召喚の魔法で平民が呼ばれたって。
でも、まさかこんなに小さな女の子だなんて思わなかったけど」
「……あなたも魔法使いなんですか?」
「まさか!」
鈴の音のような笑い声を響かせながら、
「私もあなたと同じ平民よ。
貴族の方々をお世話するために、ここでご奉仕させていただいてるの」
「そうなん、ですか……」
柔らかな少女の笑みにつられるように、かなみも笑みを返す。
硬くなっていた心がほぐれていくような気がした。
「――私、かなみです。由詑かなみ」
「私は、シエスタよ……。ところで、かなみちゃん」
「はい?」
「ひょっとして……。洗濯場をさがしてるんじゃないの?」
自分の持っている洗濯物を指差され、かなみは当初の目的を思い出す。
「はい……。何処にあるか、分からなくて」
「やっぱり……。こっちよ」
メイド服の少女、シエスタに促され、かなみははシエスタの後について歩き出した。
■
「――そう、じゃあその人達と連絡も取れないの……」
かなみの説明に――異世界ということだけは伏せて遠い国から召還されたことにした――
シエスタの顔が曇った。
貴族の横暴は今に始まったことではないが、いくらなんでも酷いと思う。
(こんな、小さな子が……)
シエスタはぎゅっと眉根を寄せた。
「……辛くない?」
「平気です」
慣れた手つきで金タライの中の洗濯物を洗いながら、かなみは答えた。
「ルイズさん、そんなに悪い人じゃないみたいですし……」
高飛車で偉ぶっているが、根は悪い人間ではない。
昨日のやり取りから、かなみはそう判断していた。
それに、いつぞやのアルター使いを頭目とする集団にさらわれて
山の中で奴隷のように扱われていた時に比べればマシな待遇だ、とも思う。
「強いのね、かなみちゃんは」
シエスタの声には驚きの響きがあった。
小さく首を振り、
「そんなこと、ないです……。でも、私決めたんです。強くなるって……。
カズ君がびっくりするぐらい強なるって。だから……負けて、られないんです」
気丈さを感じさせる声だった。
けれど、その声はやはり少し震えていて。
その横顔には、何かに耐えるような感情が浮かんでいて……。
「そう……。えらいね……」
シエスタはそっとかなみの頭を撫でてやった。
指先からかなみの身体が小刻みに震えているのが伝わってくる。
その震えが収まるまで、シエスタは頭を撫で続けた。
「――ありがとうございました」
「どういたしまして」
洗濯を終え、礼儀正しく頭を下げるかなみに、
「私、大抵は厨房の方にいるわ。
困ったことがあったら、いつでも言いに来てね」
シエスタは微笑みながら言った。
「でも、シエスタさんだってお仕事が――」
「こら! 子供のクセに遠慮なんかしないの!」
チョンと額を小突かれ、かなみは驚いたように目を見開いた後、
「……分かりました」
そう言って、はにかむように笑った。
もう一度ペコリと頭を下げて走り去っていくかなみの小さな背中を見送りながら、
シエスタは手を組み、祈りを捧げた。
――どうか、あの幼い少女にこれ以上苦難が訪れませんように、と。
■
かなみが部屋に戻ると、ルイズはまだ眠っていた。
(そろそろ起きた方がいいんじゃないかなぁ?)
部屋の外からは、ざわめきが聞えてくる。
しばらくの逡巡の後、
「あの……朝ですけど……」
かなみはルイズをゆすった。
ゆすり続けること数十秒――。
「ん〜? そう、分かったわ……。って、誰よあんた!!」
流石に呆れるものを感じ、
「かなみです。昨日、あなたに召還された」
少しぶっきらぼうにかなみは言った。
「ああ、使い魔ね……。昨日、召喚したんだっけ」
あふあふとあくびをしながら、ルイズはベッドから起き上がった。
(言われなくても起こすなんて、けっこう気が利くじゃない)
そんなことを思いながら、タンスに手を伸ばす。
一瞬、「着せなさい」と命令しようかという考えが頭をよぎるが、
ルイズはすぐにその考えを打ち消した。
自分より小さな子供に服を着せてもらうというのはみっともない。
手早く着替えをすませ、
「行くわよ!」
ルイズはかなみに声を飛ばした。
「どこへ、ですか?」
「食堂よ。ほら! はやくしなさいよ! 朝ごはんに遅れるでしょ?」
ルイズはドアを開けた。
ルイズとかなみが廊下に出た瞬間、いきなり目の前に並んだ3つのドアの一つが空き、
一人の女性――いや、少女が現れた。
彫りの深い顔に朝黒い肌と燃えるような赤髪。むせるような色気を放っている少女だ。
何より特徴的なのは――。
かなみは、思わず視線を自分の胸元にやってしまう。
そこには大平原が広がっていた。
かなみはもう一度赤髪の少女の胸元に視線を送った。
そこには山がそびえ立っていた。
(水守さんより……大きい……)
同居人の一人、桐生水守もかなりのプロポーションの持ち主だがこの少女には及ばない。
かなみがこっそりため息をついたその時。
「きゃっ!?」
かなみは小さく悲鳴を上げて飛びすさった。
のっそりと巨大トカゲが赤髪の少女の背後から姿を現し、小首をかしげてかなみを見つめてくる。
「あら、見かけないおチビちゃんね?」
「ちょっとキュルケ! 私の使い魔を怯えさせないでよ!」
キュルケ――どうやら赤髪の少女はキュルケというらしい――の唇が釣りあがった。
「あら。もしかしてこの子がルイズが召喚したっていう使い魔?
へぇー、本当に人間なのねぇ」
小馬鹿にしたように鼻を鳴らしながら、キュルケはかなみに顔を近づけた。
しばらく観察した後、
「ふぅん……。磨けば光りそうな子じゃない」
キュルケの意外な言葉に興味をひかれ、ルイズはかなみの顔を見やった。
よくよく見てみれば確かにかなみは整った顔立ちをしている。澄んだ碧色の瞳も美しい。
キュルケの言葉に内心で同意しつつも、
「……どうでもいいわよ、そんなこと」
ルイズは吐き捨てた。
自分の使い魔のことに関して、先にキュルケに気付かれたことがシャクだったからだ。
「まぁ、そうようねぇ。使い魔にするなら私のフレイムみたいのがいいわよね〜」
勝ち誇ったように胸を逸らし、キュルケは高笑いを響かせた。
「見なさいよ。この鮮やかで大きい炎の尻尾……。正真正銘、火竜山脈のサラマンダー。
好事家に見せたら値段なんかつかないわよ?」
「そりゃぁ、良かったわね!」
ルイズは歯噛みしつつ吐き捨てた。
「素敵でしょ? あたしの属性ぴったりだわ」
「あんた『火』だものね」
「ええ。『微熱』のキュルケですもの」
何やらよく分からないことを言い合っている二人から視線をそらし、
かなみは火とかげをしげしげと見つめた。
こんな生き物を見るのは初めてだ。
「――ゼロのルイズの使い魔ちゃんは、私のフレイムがお気に入りかしら?」
「い、いえ……」
急に声をかけられて身体をかたくするかなみを見て可笑しそうに口元をほころばせ、
「あなた、お名前は?」
「……由詑、かなみです」
「ゆた、かなみ……。変わった名前ねえ」
そう言うと、キュルケはさっとその赤髪をかきあげ
「じゃあ、お先に失礼。がんばってね、可愛い使い魔さん」
颯爽と去っていった。
その後姿が、見えなくなるのを待っていたかのように
「なんなのあの女! 自分がサラマンダーを召還したからって!
威張っちゃって、もう! くやしーっ!」
ルイズは地団駄を踏んで悔しがった。
「……使い魔ってそんなに大事なものなんですか?」
恐る恐るかなみが尋ねると、
「あったり前でしょ!
メイジの実力を測るには使い魔を見ろって言われているぐらいよ!
なんであの馬鹿女がサラマンダーで、私は――」
がくりとルイズの肩が落ちた。
そのまま、元気のない足取りで歩き出すルイズを見て、かなみはなんだかルイズが気の毒になった。
確かにあの立派な火とかげと自分では、見た目のインパクトも能力も違いすぎる。
(洗濯物取り込んだら、部屋のお掃除しようっと)
役に立たないなりに、自分のできることをしてあげよう――。
無理矢理つれてこられたことも忘れ、人のいいかなみはそんなことを思った。
■
「ここが『アルヴィーズの食堂』。平民はまず入れない場所よ」
「はぁ……」
意図せずしてかなみの口からは感嘆とも驚嘆とも取れる吐息が漏れた。
学年別に並べられた豪華な飾りつけのされた長テーブル三列に、
ローソクや花、そして果物の盛られた籠が載っている。
食事の内容は、丸のままの鳥のローストに、魚形のパイ、 そしてワイン。
かなみの中にある高級感という単語をそのまま具現化したような風景がそこにはあった。
「本当は使い魔は外だけど、あんたはあたしの特別な計らいで、中に入れてあげるんだからね。
感謝しなさい!」
口をポカンとあけて立っているかなみに、ルイズが恩着せがましく言ったその時。
「ゼロのルイズ!
召喚出来ないからって、その辺歩いてた平民を連れて来るなよ!」
太っちょの少年の怒声に、周りでドッと笑いが起きる。
ルイズの眉の角度が急激に上がった。
「うっさい! かぜっぴきのマリコルヌ!
私はきちんと召喚したもの! この子が来ちゃっただけよ!」
「嘘つくな! サモン・サーヴァントが出来なかったんだろう?
それと俺は風邪なんかひいてない!」
「あんたなんかかぜっぴきで十分よ!」
しばし、少年――マリコルヌというらしい――とルイズは睨みあった。
「とにかくそいつを、その席に座らせるのは許さないからな!
そこは僕の席だ。そいつがいたら、僕が座れないだろ!」
「はあぁ?
じゃあ何よ、この子に床で食べろって言うつもり?」
――当たり前だ。
といおうとして、マリコルヌは言葉を無理矢理口の中に引き摺り戻した。
幼い少女に対して「床で食え」と言う年上の男、という構図を傍目から見た場合、
物語的に言ってザ・悪役、という風に見えるのではなかろうか?
そんな思いが急激に心の中に湧き上がったからである。
階級意識が刷り込まれているとはいえ、この年頃の少年とはカッコつけたがるものであり、
異性に対して残酷になれない年頃でもある。
悔しそうに唸り声を上げつつ、マリコルヌは予備の椅子を調達させるべく、
憤然として歩き去った。
マリコルヌとは対照的に勝利者特有の得意げな笑みをうかべつつ、
「ほら、そこ座んなさい!」
「……はい」
見たこともない豪華な料理に目を奪われているかなみの横顔をみた瞬間、
――あれ? 何か違うような。
ルイズの胸中に困惑の風が吹いた。
(そういえば……。座らせちゃったら、計画が台無しじゃない!)
ちゃんと上下関係を教え込もうと「あんたは床で食べなさい」と言うつもりだったのを思い出し、
ルイズは頭を抱えたい衝動に襲われた。
(んも〜。マリコルヌの馬鹿が余計なチョッカイかけてくるから!)
ついいつものクセで反発してしまったではないか。
(私のバカバカバカ)
そんなルイズの苦悩とは無関係に、
「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ――」
祈りが始まり、ルイズは慌てて瞑目し、祈りに加わった。
ほどなく祈りが終わり、ナイフとフォークの音が静かに響き始めた。
ルイズもフォークとナイフを取り上げようとして、ふと気付き隣に視線を送った。
案の定と言うべきか、かなみは大量のフォークとナイフと睨み合って硬直している。
(やっぱり……)
ため息をつきつつ鳥のローストを切り分け、さっと皿を交換。
「あ、あの……」
「そっちじゃなくて、使うのは隣のフォーク!」
小声でルイズは指示を飛ばした。
(テーブルマナーも教えなきゃなんないわね)
ああもう面倒くさい、とルイズが罪のない魚形のパイを乱暴に切り刻んだその時。
「バリエール様。これは、どちらに――」
メイドの手の平にある薄いスープの入った皿をみて、 顔が引きつりそうになるのをルイズは感じた。
「……それはもういらないわ。
まさか人間が来るって思ってなかったから、作ってもらっただけだもの」
――本当はそれを食べさせるつもりだったんだけど。
首をかしげるメイドを一睨みで追い払い、ルイズはかなみに視線を送った。
どうやら食べるのに夢中で気付いていないらしい。
「……そんなに美味しい?」
「はい! とっても!」
少し頬を上気させながらかなみは答えた。
実際、こんなに美味しいものを食べたのは生まれて始めてだった。
パンの柔らかさからして、いつも食べている石のようなパンとは雲泥の差だ。
「そ、そう? じゃあ、これも食べていいわよ」
かなみの素直な反応に、思わずルイズはそんなことを言ってしまう。
「ほんとですか?」
「当たり前でしょ。ほらっ、遠慮しなくていいわよ」
「ありがとうございます」
感謝の言葉が心地よい。
悪くない気持ちで、ルイズはグラスを取り上げ、中のワインを啜った。
「それじゃ、私行きますね」
「え?」
食事を終え、食堂の入り口を出た所でかなみにいきなりそう言われ、
ルイズは虚を突かれて立ちどまった。
一体体どこへ?
そんなルイズの困惑いに気付いた風もなく、
「ちゃんとお部屋のお掃除しておきますから」
「そう……。じゃ、しっかりやんなさいよ」
「はい!」
かなみが駆け去って数秒後、教室へ連れて行くつもりだったことを思い出し、
(なんか、上手くいかない……)
ルイズは額に手をやって嘆息したのであった。
195 :
176:2007/07/06(金) 22:35:30 ID:HFJ90VJX
以上です。
乙!かなみカワユス
GJ! どっちも可愛いよ〜
かなみに「決闘だ!」とか言ったギーシュが非難の視線で袋叩きにあるのが見えるw
かなみ可愛いよかなみ
GJゥ!
かなみって誰?あるたー??
ょぅι゛ょは世界を変えるなw
かなみならギーシュもフーケもワルドも7万の軍勢も良心の呵責から攻撃できんだろうww
>>198 ダメな男(スクライドの主人公)を甲斐甲斐しく世話をするおばちゃん達のアイドルです。
>>197 母性本能を刺激しまくりなかなみだと特に女性陣からは冷たい視線を浴びそうだなw
ワルド、かなみならルイズも虚無もそっちのけでかなみに求婚するんじゃね?wwww
よつば召喚を考えたが、どう考えても零戦に乗って戦うところがむりだ。
いっそ何も起こらない日常で書くか?
スクライド知らんけどこれはおもろいわ
>>203 作者繋がりであずまんがキャラとかどう?
うへへ
■
「あ、お帰りなさい」
夜。
いつもの如く、実技を失敗させて周りから嘲笑をプレゼントされ、
怒りと失望を抱えてドアを開けた瞬間耳に飛び込んできた澄んだ声に、
ルイズは思わず硬直した。
きょとんとした目で見つめてくるかなみに
「……ただいま」
ぶっくらぼうに答えながら答えながらルイズは、部屋に目を走らせた。
見事に整頓され、床も窓枠も磨き上げられている。
(なかなかやるじゃない)
メイドとしては及第点をやってもいいなと思いながら、ルイズは椅子に腰を下ろした。
「あんた、今日何してたの? ずっと掃除してたわけじゃないでしょ?」
「掃除が終わった後は、厨房のお手伝いをしてました」
ルイズは眉を軽く上げた。
「何で、そんなことすんのよ?
あんたは私の使い魔なんだから、他の人間に奉仕する必要なんてないのに」
「あ、いえ……その……」
もじもじと胸の前で指をこすり合わせながら
「なんだか、身体を動かしてないと……。落ち着かなくて……・
駄目、ですか?」
おずおずとかなみが尋ねてくる。
「……別に。あんたの好きにすればいいわ」
奇特な性格だとは思うが、別に止めさせる必要性もない。
「そういえばあんた、言葉は喋れてるみたいだけど、こっちの字は読めるの?」
「いいえ」
「そう。なら、まずは読み書きからね」
「……え?」
怪訝な表情で尋ね返してくるかなみに、
「いいこと! あんたはこの私、
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔なのよ。
だからあんたには、私の使い魔にふさわしいふるわなきゃならない義務があるの。
ナイフとフォークがどれか分からないなんてもってのほか!」
呆気に取られているかなみをキっと睨み、
「この私がじきじきに教えてあげるんだから、感謝しなさい!
ちゃんと復習もすんのよ!」
「は、はあ……」
「はぁ、じゃなくて、はい! よ」
「は、はい!」
「よろしい!」
ルイズは、ふふんと胸を逸らした。
(よし、完璧ね!)
師になることでかなみより一段上の立場に立ち、その上で必要なことを教え込む。
まさに完璧ではないか、とルイズは一人、悦にいった。
「じゃ、早速始めるわよ。そこに座りなさい」
神妙な面持ちのかなみを丸テーブルの前に座らせ、ルイズは声を張り上げた。
こうして、ルイズとかなみの共同生活は始まった。
意外と、と言うべきか二人の生活は割と順調であった。
かなみにとって、掃除洗濯をやるのも大人の中に立ち混じって働くこともいつも通りのことであったし、
元々豊かな暮らしをしてたわけでもない。
今の境遇は寧ろ生活水準が向上しているようにすら、かなみは感じていた。
――大好きな人達に会えないのは、とてもとても寂しかったけれど。
とはいえ、それを表に出すような脆弱さとは無縁なかなみは、
無邪気な笑顔と元気な声、そしてその働きぶりでたちまち厨房の人気者となった。
ロストグラウンドにいた時と同じように、「いい子だねえ」「働き者だねえ」
といった言葉を周囲の大人たちから浴びせられ、照れたような笑顔を浮かべながら、
毎日ちょこまかと大人たちの間を駆け回って、かなみは仕事に励むのであった。
ルイズは、かなみを召還したことはそう悪くなかったかもしれないと思い始めていた。
学園に入って以来、『ゼロのルイズ』という忌まわしいあだ名をもらって馬鹿にされ続け、
友達など望むべくもなく、誇りだけを支えにひたすら周囲と戦う日々を送ってきたルイズにとって、
自分を馬鹿にしないかなみとの会話は楽しかった。
多大な精神的疲労と苦痛を抱えて部屋に帰ってきた時に耳に届く、
「お帰りなさい」というかなみの明るい声は、心を癒してくれた。
少なくともキュルケに「あなた最近楽しそうねえ? 男でもできたの?」
と言われてしまう程度には、ルイズはかなみとの生活を楽しんでいたのである。
――ルイズ本人は決して認めようとしなかったが。
とにかく、二人の少女の共同生活はそれなりに上手くいっていたと言ってもいいだろう。
あの瞬間までは。
210 :
176:2007/07/07(土) 23:47:10 ID:z4LOCpdP
以上です。短くてサーセン。
あ〜もう可愛いよ、かなみにルイズ!
なにやら不穏な終わり方!? ずっと平和でも良いのだけれど、イザコザも大いに結構w
とにかくGJだぜ!!
続き期待
213 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/08(日) 02:40:25 ID:r2XuHuXq
ようこそ!我が同志よ!いや、正直な話一人だけでSS書くの心細くて…
共に頑張っていきましょう!
↓以下本編。今回も無駄に長いです。ギーシュ決闘編だけなのに…
214 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/08(日) 02:41:26 ID:r2XuHuXq
「貴族の食卓を荒らす訳にもいくまい。ヴェストリの広場で待っている」
そう言い残しギーシュは去っていった
シエスタがぶるぶる震え青ざめた表情で水銀燈を見つめている
「水銀燈…貴族をあんなに怒らせるなんて…おまけに決闘だなんて!」
「ふん…問題ないわよ。あんなボンボンのお坊ちゃんにこの私が遅れをとるとでも?」
そこに駆けつけてくるルイズ。どうやら事の一部始終を見ていたらしい
「ちょっとあんた!何してんのよ!」
「あら、お嬢様。ご機嫌いかが?」
「ご機嫌いかがじゃないわよ!決闘なんか勝手に受けちゃって!」
「あんな醜態をさらしたくせにおこがましくも薔薇を名乗るなんて気に入らないのよ。ましてやそれを私のせいにするなんて。それに…」
(それにあの人間はこの私の最も嫌う言葉を私に投げかけた。だから…許す訳にはいかない…!)
瞳を細め苦々しく心の内で呟く
『ジャンク』・『できそこない』水銀燈の最も嫌う…嫌悪すると言ってもいい言葉だ
前にも述べたがルイズに対するの『ゼロ』に匹敵する侮辱の言葉と言える
ギーシュは彼女の前では決して言ってはならぬ禁句を言ってしまった
この尋常ではない怒りは無論これによる物。今の彼女の心の中はそれ一色しかない
いや、水銀燈の中にはもう一つそれとは少し違う感情があった
あの時ギーシュの言った『できそこない』の対象は水銀燈だけではない。彼女のミーディアムたるルイズも含まれていた。彼女の仇名である『ゼロ』のオマケ付きで
そのことが何故か水銀燈はひどく気に入らなかった
無意識の内にルイズの境遇の中に自分を垣間見たのかもしれない
誰かのために戦うなど自分の性に合わないと思う
だからあくまで自分の名誉を守るついでにルイズの名誉を守ると理由付けて決闘を受けた
だがルイズは水銀燈の胸中など知る由もない
「謝っちゃいなさいよ」
「謝るですって?断るわね」
「悪いことは言わないから!あんたが少しは不思議な力が使えるとしても、メイジには絶対勝てないの!」
「何よ、貴女心配してくれてるの?」
「べ、別に心配なんか…いや、それは…あんた一応私の使い魔なんだし…」
一人で勝手にしどろもどろしているルイズをよそに水銀燈はギーシュの連れに決闘の場を問いただす
「ヴェストリの広場だったかしら?それってどこなのよ?」
「ああ、こっちだ」
恐怖に震えるシエスタとなんだが一人ブツブツ言っているルイズに背を向け貴族に連れられ水銀燈は決戦場へと向かう
「水銀燈…」
シエスタはそのまま立ち尽くしその場から動くことができなかった
そしてこちらははっと我に返ったルイズ
「ああ!待ちなさい!もう!使い魔のくせに勝手なことを〜!」
小さくなっていく水銀燈の後姿をルイズは文句を言いながらを追いかけた
215 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/08(日) 02:42:40 ID:r2XuHuXq
学院内の『風』と『火』の塔の間にあるヴェストリの広場。大きく場所の開けた中庭はまさに決戦場としては最適だと言える
この短時間にどう聞きつけたか分からないがすでに広場では見物人が溢れかえっていた
「来たぞ!ルイズの使い魔だ!」
生徒達の一角から声が上がる
「――来たか」
腕組みした手に薔薇を模した杖を持ち静かに呟くギーシュ。一見冷静だが内心腸が煮えくりかえっていることだろう
その視線の先に――
漆黒の翼をはためかせ広場に入ってくる黒衣の少女
「――待たせたわね」
紫色の鋭い双眸でギーシュを睨みつける少女…水銀燈
広場の中央、険しい面持ちで対峙する両者。共に自分の信念とも言える物をを侮辱され、平和的解決などは有り得ない
「ちゃんと逃げずに来たようだね」
「貴方ごときに何故逃げる必要があるのかしら?」
ギーシュは水銀燈の挑発を聞き不機嫌にぴくりと眉を動かす。
「その減らず口がいつまでも叩けるか見ものだな」
そしてギーシュは杖を掲げ高らかに名乗りをあげた
「我が名はギーシュ!人呼んで『青銅』のギーシュ!我が前に立ちはだかりしルイズの使い魔よ、名乗られよ!」
そして頭上に掲げた薔薇を決闘相手に向けた
何処からともなく水銀燈の手に羽が集まり黒い薔薇を作り上げる
そして水銀燈も薔薇を横に振り名乗りを上げた
「私は誇り高きローゼンメイデンの長女。第1ドール、水銀燈…!」
「ローゼンメイデン…薔薇乙女とは言ったものだな。ならばどちらが薔薇の名に相応しいかこの決闘で決めようじゃないか!」
「誇り高き薔薇の名…貴方にはすぎたものだわ」
そして水銀燈は手にした薔薇を放り投げる。決闘開始の合図はその薔薇が地についた瞬間
誰が決めた訳でもない。だが二人にはすでにそう言う認識だった。
文字通り暗黙の了解と言うものなのだろう
両者は薔薇がゆっくりとスローモーションのように落ちるよう感じた。
そしてそれがが地についた瞬間…!
ギーシュは薔薇の杖を振り下ろし、水銀燈は背の翼を大きく広げる
――決戦の火蓋は切って落とされた
216 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/08(日) 02:44:22 ID:r2XuHuXq
先手必勝と言わんばかりに水銀燈の翼から無数の羽が発射される
まるでダーツを思わせるように発射されたそれは真っ直ぐにギーシュへと向かっていった。
しかしそれはギーシュに当たること無く彼の前方に現れた『何か』に阻まれた
「これは…!」
ギーシュの前に現れ羽の鏃(やじり)を阻んだのは甲冑を纏った女性型の騎士
ギーシュの薔薇…薔薇の形をした杖から放たれた一枚の花びらが変わったものだ
「言っておくが僕はメイジだ。だから魔法で戦う。故に…君の相手は僕の生み出した青銅のゴーレム、『ワルキューレ』がお相手しよう!」
「ちいっ!」
舌打ちしなおも漆黒の鏃を放つ水銀燈
だがそのゴーレム、ワルキューレは気にもかけずこちらへ突進をかける
黒い嵐を平然と突破し右拳を突き出すワルキューレ
金属的に強度の低い青銅と言えど金属には違いない
当たれば並みの戦士でも卒倒しかねない一撃、
ましてや水銀燈は人間よりも非力な人形。当たればそれだけで致命的である
「くっ…」
それでも水銀燈は翼をたたみ紙一重で横に避ける
流石はアリスゲームを生き残るだけのことはあると言えるだろう
ローゼンメイデンとして姉妹で戦う宿命に生まれた彼女は戦闘経験も決して少なく無い
だがワルキューレはなめらかな動作で水銀燈の向き直ると追い込むように左右の拳を連続で拳を突き出す
そこまでの速さでは無い。冷静に見切れば避けきることも可能。だが…
「どうしたんだい?逃げているだけでは僕には勝てないぞ!」
その通りだ。どんなに攻撃を避けようともこちらから攻撃に転じなければ水銀燈の勝利は無い
しかし相手は青銅の塊。彼女の持つ攻撃手段による破壊は限られている。
攻撃に転ずるならら彼女最大の攻撃をぶつけるしかない
「ならば…!」
翼を広げ後方へと飛びワルキューレと距離を大きく離す水銀燈。これにはワルキューレの追撃は間に合わないらしい
素早さはこの戦いで水銀燈の数少ないアドバンテージと言えた
間髪入れずワルキューレが迫ってくるが水銀燈はそれすら無視し力を背中の片翼へと集中させる。
――イメージは…全てを噛み砕く黒竜のアギト
そしてワルキューレが彼女の間合いに入った瞬間一気に力を爆発させた!
その片翼が大きく逆立つと、拳を振り上げ殴りかからんとするワルキューレに食らいつく!
「なんだと…!」
突然水銀燈の背から現れた漆黒の竜にギーシュも目を見張る
黒竜のアギトと化した翼はワルキューレを噛み砕くことは出来なかったものの、それに食らいついたまま広場にある木に激しく叩きつけた
大木を揺るがし広場に大きく響く激突の轟音
さすがのワルキューレもその青銅の身体がひしゃげ、動かなくなると光の粒子となって消滅した
217 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/08(日) 02:46:04 ID:r2XuHuXq
(やったわ…)
息切れをおこしながら水銀燈は内心で安堵した
消耗が激しく連発は出来ない上に、足を止め力を撃たねばならねリスクの高い彼女最大の武器
だがその一撃は見事青銅のワルキューレを撃退したのだ
周りの貴族も大騒ぎだ
「やりやがった!」
「やるもんだな!ギーシュのあれを破るとは!」
しかし当のギーシュは全く持って余裕の表情
「フッ…見事だよ。僕のワルキューレを破るとはね」
「…おとなしく降参なさい。そんな玩具じゃ私は倒せないわ」
強気の発言だが先程の攻撃による水銀燈の消耗は決して少なくない。苦しげに語る様がそれを証明している
「フ…馬鹿を言っちゃいけないな」
ギーシュはあくまで余裕の態度を崩さない
その自信に水銀燈に嫌な予感がよぎる…
「いやいや、すまなかった。考えてみれば麗しきレディとは言え我が決闘相手には違いない。手加減等するのは失礼だったな」
「手加減…なんですって?」
ギーシュが再度杖を振り、花びらが七枚地に落ちた
「言い忘れたが僕が錬金できるワルキューレは一体だけでは無いのだよ」
彼の言葉通り七枚の花びらが光を放ち人型のシルエットとなる
しかも…今度のワルキューレは各々の手に多数の武器を持っていた
これには流石の水銀燈も絶句するしかなかった
(厄介な事になってきたわね…!)
「本気で行かせてもらうとしよう。かかれッ!ワルキューレ!」
ギーシュは薔薇を水銀燈に向けワルキューレをけしかける
突撃用のランスを突き出し迫り来るワルキューレが二体。長剣を携え後に続くワルキューレが三体
そしてギーシュの前方に立ち塞がり長剣と大盾を構えたワルキューレが二体
先頭のワルキューレが加速を付けその槍先で水銀燈を貫こうとする
辛くも一体目の突撃を身をひねりそれを避けた。その横を勢いも殺さず駆け抜けるワルキューレに水銀燈も背筋が凍る
しかしすかさず二体目のランスが追撃をかける
「くっ!」
一体目を回避し態勢の崩れた水銀燈に迫り来る二本目の槍先。翼を大きく反対に振り重心を移動させ回避を試みる
先程まで自分がいた場所に槍が突き出され空を切った。こんな物を食らってしまえばひとたまりもない
どうにか槍は避けられたもののワルキューレの猛烈な突進が水銀燈をかすめた
だが…かすっただけなのに彼女の体に凄まじい衝撃が走る
「ぐうっ…」と呻き痛みに堪えるも肩を押さえ屈み込んでしまう水銀燈
だが敵は待ってくれない。この隙を逃さず頭上に剣を振り上げた三体目のワルキューレが切り込んだ。その剣が振り下ろされようとしている
水銀燈はとっさに羽を右手に集め自分の右手に剣を形成させる。ワルキューレの斬撃を受けとめるためだ
だがいかせん分が悪い。非力な人形たる彼女ではワルキューレの重い一撃は受けきれないだろう
彼女は状況判断を誤った。しかし今の彼女にできる抵抗はこれいしかなかったのも事実
(しまっ…!)
しまった!と言い終える前にワルキューレの剣が無情にも振り下ろされた
決闘を止めようと人混みをかき分けやっとのことで二人の決闘の見える位置まできたルイズ
だがその目に写るのは今まさにワルキューレの刃が水銀燈に振り下ろされると瞬間
ルイズは思わず目を覆ってしまった
ガキィィィィン!
金属同士のぶつかり合う音が響く
(え…?)
水銀燈は何が起こったのかわからなかった
…振り下ろされた剣はなんと自分の両手の細腕に握られた剣で止められていたのだ。自分自身も信じられなかった
それだけでは無い。
体の奥底から力がわいてくるような不思議な感覚
水銀燈の剣を持った右手には契約時に刻まれたルーンがまばゆく輝いていた
218 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/08(日) 02:46:58 ID:r2XuHuXq
ワルキューレの重い剣を自らの剣で受け止めた水銀燈
彼女の細腕にはそれ程までの力は無い筈だ
変わったことと言えば右手に輝くルーン。とっさに剣を握った瞬間に光り出したものだ
どうにか一命はとりとめた
疑問は尽きないところだが今は目の前のワルキューレに集中する
鍔迫り合いの形となり、力は均衡し両者とも剣は動かない
水銀燈は急に力を抜きワルキューレの側面に回り込む。
突然の脱力により勢いを止められず前に崩れるワルキューレ
水銀燈はその勢いを剣に乗せ体を回転させつつ遠心力をのせた斬撃をワルキューレの右手に叩き込んだ
宙に舞う剣を持ったワルキューレの腕。すかさずそのまま脳天から叩き斬ろうとするが…
水銀燈の背後に感じる殺気、ルーンにより感覚も研ぎ澄まされているらしい。後ろも振り返らずに宙返りし、背後から襲いかかってきた四体目のワルキューレの頭を飛び越える
水銀燈を狙ったはずの横薙に薙払われた四体目の斬撃が右手を飛ばされた三体目のワルキューレに襲いかかった
青銅同士のかち合う耳障りな音とともに刃は三体目を切り裂きそれを消滅させた
その隙に四体目の頭上背後に回り込んだ水銀燈も天高く剣をかかげその脳天に振り下ろす
再び鳴り響く金属のかち合う音
しかし…水銀燈の渾身の一撃を食らったはずのワルキューレの頭は少し頭を切り裂かれただけ
「そんな…!」
水銀燈は驚愕の表情を浮かべる
ワルキューレの剣を受け止め、青銅の塊であるその腕を切り裂いた彼女の剣はそれで限界が来ていたのだ。ルーンの強化は武器にまでは及ばなかったらしい
宙を舞う金属の破片…水銀燈の持つ剣が…澄んだ音と共に砕け散った…
水銀燈の意識が折れた剣に奪われた時間は一秒にも満たない。が、ワルキューレが体勢を立て直すには十分だった
振り向き様に放たれるワルキューレの袈裟懸けの刃。意識をそちらに向けた時にはもう遅い
とっさに翼前面に展開し盾にするが…それでも大きく吹き飛ばされ地面に叩きつけられる水銀燈。それも頭から落下する危険な落ち方だ
「ぐうっっ!」
苦しそうに呻く水銀燈を目の当たりにし、ルイズが駆け出した
「もういいじゃない!メイジ相手にあんたは十分やったわ!だからもうやめて!」
「断るわ…!例えこの身が朽ちようとも…あの人間を許す訳に行かない…
この私を…そして『貴女』を『できそこない』なんて…言わせない…!」
「え…?」
「邪魔よ!どきなさい!」
水銀燈はフラフラと立ち上がり駆け寄ったルイズの手を振り切りギーシュへと向かっていく
たった一撃食らっただけ。それなのに彼女の受けたダメージは深刻だった
(あの娘が決闘を受けた理由…まさか私の為に…?)
水銀燈の背を見つめルイズは思う
そう問えば水銀燈は頑なに否定するに違いない。
だが決闘の半分の理由はまさしくそれだった。今の『貴女を』と言う言葉は無意識に漏れたものだ
水銀燈は…自分自身とルイズの誇りの為に戦っている
右手のルーンの輝きも失せ、体は満身創痍。それでも彼女は戦うことを止めない
水銀燈はワルキューレを無視しその操手たるギーシュ本人を狙うが…
その行く手を阻むランスと剣を持ったワルキューレが二体ずつ
「破れかぶれで僕自身を狙うつもりかい?無駄なことを!」
仮にこれを凌げてもギーシュの前には盾を構えたワルキューレが二体。勝つのはもはや絶望的だ
そして決闘開始時の水銀燈の素早さは見る影もない
ギーシュは四体のワルキューレで水銀燈を囲んだ
「最後のチャンスだ。もし君が今僕に謝罪すればこれで手打ちにしよう!続けるならそれ相応の覚悟をしてもらうがね!」
武器を構えジリジリとワルキューレが迫る
「謝罪ですって…?」
「そうさ!『私のせいで2人のレディの名誉を汚してしまい申し訳ありませんでした。薔薇の名は貴方にこそ相応しい!』そう言えば君を許そうじゃないか!」
219 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/08(日) 02:48:46 ID:r2XuHuXq
断れば即座にワルキューレの武器が水銀燈を貫くことだろう
この上なく危機的状況。それでも彼女は退かない
「死んでも…嫌…!!」
苦しい表情に不敵な笑みを浮かべ言った
「ならば…望み通り死なせてやろう!やれ!ワルキューレ」
ギーシュの命により剣が、ランスが、一糸乱れずに振り下ろされる
「くっ!」
痛む体に鞭打って翼を羽ばたかせ上空へと逃れる水銀燈。四方を囲まれた今逃げ道は上方のみ
しかしそれはギーシュの思考の予測範囲
「なかなか頑張るじゃないか!だが甘い!」
ギーシュはワルキューレを下がらせると短くルーンを唱え、大地に向けた杖を振り上げた
次の瞬間、水銀燈が立っていた地面が隆起し槍の先のような岩がまるで高射砲のように放たれる
ワルキューレの猛攻を凌ぎ多少安堵していた水銀燈に襲いかかる対空放火
「く…ああっ!」
何発もの岩の穂先に突き上げられ再び墜落し地面に叩きつけられた
そしてベキッ!と言う何かが折れるよな嫌な音
彼女の象徴にして戦いの生命線たる黒い片翼があらぬ方向に曲がっていた…
勝敗はついたも同然と言える。しかしギーシュは決闘を止める気はないらしい
「降参しろと言っても無駄なのだろうね?すぐに楽にしてやろう!」
かろうじて水銀燈は意識を保っているがもはや体は死に体、それでも立ち上がろうとする
そこに割り込んでくる人影
ワルキューレから水銀燈を庇うように両手を広げ立ちふさがったのは鳶色の瞳を潤ませたルイズ
「何のつもりだい?ルイズ。神聖な決闘に割って入るとは!」
泣き出しそうなのを我慢してルイズは言った
「もう勝敗は決したわ。だからお願い、この子を、水銀燈を許して」
「断る。君の使い魔から受けた数々の無礼、許し難い。彼女から謝罪の言葉でもでれば別だがね」
ルイズは瞳を閉じ少し間をあけるとギーシュに悔しげに告げた
「わかったわ…この子が謝らないなら…つ、使い魔の主人たる私が…しゃ、謝罪するわよ…」
「ルイズッ!止めなさい!!」
水銀燈が声を荒げる
「あんたは黙ってなさい!水銀燈!」
ルイズも俯き声を荒げた。地面には彼女の涙がポタポタと落ちている
それでも水銀燈は言った
「いいえ!言わせてもらうわね!ルイズ、貴女がやろうとしていることは私、そして他ならぬ貴女自身を侮辱していることも同然!」
「で、でも!」
「貴女は認めるの…?自分が『できそこない』だと、自分が『ゼロ』だと!」
「そ、それは…」
(自分だってそんなこと認めたくない。だがここで止めなければ水銀燈が…)
「認めたくないのね?そう、それでいいのよ。仕方がない?そうしなきゃ私が助からない?そんな理由で頭を下げる必要など無いわ!
貴女は誇り高き私のミーディアム、自分自身の誇りを裏切る真似等許さないわ!」
本当は止めなきゃいけないのに…不本意でも謝らなければならないのに…
ルイズはそう思いつつも水銀燈の強い眼差しを受け何も言えなくなった
それを見ていたギーシュは苛立ちながら告げた
「下がりたまえルイズ!もはや君にできることなど何もないのだからな!」
ルイズの心に突き刺さる心無い言葉
しかし水銀燈はふと何かを思い出したように言った
「いや…あるわ…!ルイズ。貴女にできることが…」
「わ…私にできること…?」
「覚えてるかしら…?契約した夜に言ったことを。貴女のミーディアムとしての力、使わせてもらうわ!」
220 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/08(日) 02:50:37 ID:r2XuHuXq
その瞬間、ルイズの右手にした薔薇の指輪が熱を帯び眩く輝き出し水銀燈の体から光が溢れる。
あまりの眩しさにギーシュが、見物人達が目を覆う
その光がおさまり中から現れた水銀燈は土にまみれていたドレスは埃一つなく折れた翼も修復され、傷や失った体力も完全に回復されていた
そして凛とした態度でギーシュ、ワルキューレを見据える
「――刮目なさい。ローゼンメイデンの…真の力を!」
完全に復活をなし遂げた水銀燈が高らかに告げた
「何度やっても無駄だ!」
ギーシュは剣を持ったワルキューレをけしかけた
水銀燈は修復された黒き翼を広げそこから再び無数の羽を飛ばす
「今更そんな物を!そんな物が僕のワルキューレに効くものか」
しかしギーシュは即その認識を改めることになる
脆弱な筈の彼女の羽、それがワルキューレをいとも簡単に射抜いた
「え?」
予想外の事態に唖然とするギーシュ
ワルキューレは漆黒の矢…否、漆黒の弾丸と化し羽による黒い嵐に蹂躙され為す術もなく破壊されていく
文字通り蜂の巣となった二体のワルキューレはガタッと膝をつき前のめりに倒れた
「くっ…!ひ、怯むな!かかれぇ!」
ギーシュは今度はランスを携えた二体を向かわせる
迎え撃つ水銀燈。彼女の右手に再び羽が集約し剣を形成。そしてルーンもまた輝き出す
一列に並んで突進してくるワルキューレ。しかしそれが加速に入る前に一瞬でその間合いに踏み込んだ
体が羽のように…いや風のように錯覚した。そして腰だめに構えた剣をすれ違い様に一閃!
突進を始めた筈のワルキューレがピタリと止る。剣を振り抜いた水銀燈はギーシュの方を見やりその剣を彼に突きつける
「闘いは…これからよ!」
水銀燈の背後でズッ…という音と共にワルキューレの上半身がずれて地面に落ちた
221 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/08(日) 02:51:56 ID:r2XuHuXq
突然凄まじいまでの力を発揮しゴーレムを一瞬で蹂躙した水銀燈にギーシュはパニックをおこす
「うわあああ!行け!お前達も行くんだよ!!」
自分の守りに付けていた二体を外し、けしかける
盾を掲げ分厚い防御を維持したまま突進してくるワルキューレに水銀燈は一瞬で接近し一体を斬りつけた
堅固な盾を物ともせず肩から胴まで刃を切り込ませる
が、そこで刃が止まった。切り裂かれたワルキューレが水銀燈の手をがっちりと固定し体をはって動きを封じる
「かかったな!そっちはフェイクだ!本命は後ろさ!ワルキューレごと切り裂いてやる!」
パニックを起こしても考えてるところは考えてるらしい
その言葉通り押さえられた水銀燈の背後からワルキューレの片割れが襲いかかった
しかし、水銀燈は「フッ…」と笑みを浮かべ翼の片方を逆立てる
再び彼女の背に現れる翼の黒竜。だがそれは一瞬で形成され背後のワルキューレにそのアギトを開いた
ガチン!と言う音と共に顎が閉じワルキューレの上半身をかっ攫う
半身を食いちぎられたそれ下半身だけで力無く後ずさりし、バタリと倒れ動かなくなった
水銀燈は押さえつけていたワルキューレも力任せに真っ二つに切り捨てると服についた埃をパンパンと払った
「ばかな…僕のワルキューレが…ぜ、全滅!?」
ギーシュは目を大きく見開き恐怖にうち震える
「――貴方自慢の手駒は葬り去ったわ。…さあ、覚悟はよろしいかしら?」
水銀燈が冷たく言い放つ
ギーシュは震えながらも、も杖を手離さなかった。貴族としての意地か、恐怖で離せないだけか
ゴーレムの錬金は間に合わない。ワルキューレが錬成されている間にギーシュは一瞬で水銀燈に真っ二つにされるだろう。
自分だけの力でこの化け物と戦わなければならない…ダラダラと冷や汗を流しギーシュは思った。それでも――
「今更あとに退けるかぁぁぁぁぁ!」
絶叫しルーンを唱え大地を隆起させるとそこから岩石を水銀燈に打ち出した
岩石は水銀燈を射抜き…いや射抜いたと思った瞬間に彼女の体が霧散した
「残念、残像なの」
ギーシュの足元からする声。水銀燈は地面すれすれにギーシュに切り込み翼で足を払う
ギーシュは転倒しつつも杖を離さず水銀燈に杖を向け魔法を放とうとするが…
彼の闘志もそこまでだった。水銀燈は杖を斬り払うと返す刀をギーシュの喉元に突きつける
「チェックメイト…!」
ギーシュの見上げた先には冷たい笑みを浮かべ自分を見下ろす水銀燈の顔
「ま…参った!」
ギーシュは顔を青ざめさせそう言うことしかできなかった
222 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/08(日) 02:53:36 ID:r2XuHuXq
ギーシュの敗北宣言を聞き周りから歓声があがる
しかし…水銀燈はギーシュの喉元から剣を動かさない。冷や汗をかきつつギーシュが不穏に思っていると水銀燈が口を開いた
「貴方…黒薔薇の花言葉をご存知かしら?」
突然の意味の分からぬ質問。何も言わないギーシュに構わず水銀燈は続ける
「黒薔薇の花言葉に決まったものは無いの…でも、私が知ってるのはこの二つね」
そしてその顔に狂気とも言える笑みを浮かべ言い放つ
「『あなたを一生許さない』・『彼の者に永遠の死を』」
「あ…あ…」
ギーシュの膝がガクガクと笑い腰が抜ける
(殺される…嫌だ…死にたくない!)そうは思っても体が動かない
自分の使い魔の勝利に安堵していたものの、水銀燈の物騒な物言いにルイズがすかさず待ったをかける
「水銀燈!駄目よ!殺しちゃ駄目!」
止めに入ったルイズのまだ涙に濡れた瞳を水銀燈は剣をギーシュから離さず見据える。そして一つため息をついた
「ふぅ…冗談よ。命まではとらないわ」
ギーシュからようやく安堵の吐息が漏れた
「ただし、決闘のけじめとして私の言うことを聞いてもらうわよ」
「あ、ああ…勿論だよ…」
ギーシュはどんな無理難題を言われるか分からないが殺されるよりマシだと結論づけて承諾した
「さっき言った『できそこない』と言うのを訂正なさい」
「…はい?」
ギーシュは彼女の言ってることがイマイチ理解出来なかった
「そ、そんな事でいいのかい…?」
「そんな事って何よ、私にとっては大きな問題よ」
ギロリとにらむ水銀燈に慌ててギーシュは要求をのんだ
「あ、ああ!申し訳ない!先程の『できそこない』と言う言葉は訂正させてもらうよ!君こそが気高い薔薇として相応しい!!」
「一言余計だけどまあいいわ…でももう一人忘れてないかしら?」
ルイズに目配せして言う水銀燈
「ル、ルイズ!少々気が立ってたんだ!思わず君を『できそこない』呼ばわりしてすまなかった!今後二度と『ゼロ』等とも呼ばないよ!」
「あ、いや、私は別にそんなには…」
少々ばつが悪そうにルイズは呟いた
だが水銀燈はこれで満足したらしい
「結構。あと、これはお節介だけど貴方を離れた二人にも謝罪するのね。貴方のせいであの二人の面目も丸つぶれよ」
「あ、ああ…冷静に考えれば僕の方が悪いね…」
今更だがギーシュは反省しだす
「自らの非を認めるのも紳士の勤めよ。薔薇を名乗るならもっと精進なさい」
水銀燈は踵を返す
「行きましょ、ルイズ」
そして広場を去っていった
「あ!水銀燈!待ちなさいよ!」
慌ててルイズは後を追った
銀様支援
キター!支援
ご馳走様ー、GJ!
226 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/08(日) 03:05:40 ID:r2XuHuXq
「見たかね?ミスタ・コルベール」
「ええ…」
オスマン氏とコルベールで「遠見の鏡」により決闘の一部始終を見ていた
「よもや『ガンダールヴ』に関する報告を聞いた矢先にその力を見ることになろうとはな…」
「ええ…しかしもう一つ、あの後さらにあの人形から不思議な力が…」
「ふむ、あの使い魔、謎が多すぎるのう…あの人形何者なのじゃろうか?」
「『ディテクト・マジック』の反応ではUnknownとしか出ませんでしたが…」
「『誰とも知れぬ者』か…ますます分からんもんじゃな…ミスタ・コルベール。この一件はわしが全て預かる。無論王室にも他言は無用じゃ」
「こんな人形を耳にすれば王室はのどから手がでる程欲しがることでしょうな…かしこまりました」
227 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/08(日) 03:07:22 ID:r2XuHuXq
部屋への帰り道にルイズは水銀燈に聞いた
「ねぇ…なんであんなにボロボロになるまで戦えるのよ?」
「決まってるじゃないの。誰だって心の内に一つくらい絶対に譲れないことがあるのよ」
「それがあの『できそこない』扱いされたこと?それって命までかけるようなことなの?」
「だから絶対に譲れないってことなのよ、命を賭けてでも自分の誇りは偽らない。それが私が薔薇乙女として生まれた定めよ」
ルイズは誇らしげに言う水銀燈に本当の貴族としてのあり方を見た気がした
「あんた言ったわよね…?私の誇りの為にも戦ってるって、あの戦いは私のためでもあったの?」
「!!そ、それは…」
水銀燈は口ごもった
あの時思わず漏れてしまった言葉
「それは、つ、ついでよ!私の誇りを守る為のほんの気まぐれよぉ!」
水銀燈は本当は本心で漏らしたことだがそうだとは言えなかった
「んな…!」
ついで扱いされてちょっと腹が立つルイズ
「貴方こそ、私の危機に泣きながら謝ろうとしたわよねぇ?何?そんなに私のことが気になったのかしらぁ?」
いつもの調子を取り戻し水銀燈が茶化す
「か…勘違いしないでよね!べ、別にあんたがどうなろうと知らないけど。世話係が居なくなるとふ、不便になるじゃないのよ!」
こちらも純粋に水銀燈の身を案じて謝罪しようとしたのに思わず憎まれ口を叩くルイズ
「何よそれぇ!私を使用人扱いにしかてないってことぉ?」
水銀燈もその物言いに不平を漏らす
「そ、そうに決まってるわよ!あんたなんか私にとってそんな認識なんだから!…で、でも今日の活躍に免じてご飯抜きは撤回してあげなくもないわ!」
「ふ…ふん結構よぉ!こっちだってあんな傲慢知己な貴族なんかに囲まれて食事するなんて御免よ!またあんな事に巻き込まれるかもしれないし!
でも…でも貴女がどうしてもと言うならついて行ってあげなくもないわぁ!」
…このツンデレどもが
ああだこうだ言い合いを繰り返す二人。息が続かなくなるまでその応酬が続いた。双方息をぜぇぜぇさせて言葉が続かなくなる
そしてルイズが突然真面目に告げた
「でも約束して…もう二度とこんな無茶な決闘は受けないって」
「何よ。唐突に」
「黒薔薇の花言葉、私も一つだけ知ってるわ…」
「…聞かせてもらおうかしら」
「それはね…『貴女はずっと私のもの…』…勝手にどっか行っちゃったりしたら許さないんだから…」
ルイズは恥ずかしそうに言った
水銀燈は並んで歩くルイズを追い越し、彼女に顔だけ振り向けて言った
「ま、善処してあげるわ」
その顔は裏表の無い純粋な微笑みを浮かべていた
今更だが…決闘中に初めて互いの名前を呼びあった二人の少女
これはほんの少しだが二人の距離が近づいた証なのかもしれない
228 :
あとがき:2007/07/08(日) 03:10:49 ID:r2XuHuXq
投下完了!
いやー!相変わらず長くて読みにくくて申し訳ない!
先頭描写もわかりにくいかと思われますがそこは各人の補完をお願いします
では今回もありがとうございました!
追伸
タイトルを募集したいのですが…どなたか考えて頂けないものか…
自分のネーミングセンスはアレなんで…
ローゼロメイデン
……俺のネーミングセンスはもっとアレのようだ
GJ!ツンデレ同士の会話かわゆいw
自分もタイトルネームのセンスなんて皆無ですけど
メグが言ってたように
私の黒い天使!
楽勝かと思いきや劣勢からの逆転劇GJ
タイトル「二人はツンデレ」
なにこのツンデレの二乗
そしてなんかギーシュが結構強いし負けたあとは意外と潔いな
これはまさかギーシュ×銀様フラグ
乙
銀様もギーシュもカッコよかったよ
アニメ第二期が「ローゼンメイデン トロイメント」
アニメ特別編が「ローゼンメイデン オーベルテューレ」
ゲーム第一作が「ローゼンメイデン ドゥエルヴァルツァ」
ゲーム第二作が「ローゼンメイデン ゲベートガルテン」
だからこれのタイトルも「ローゼンメイデン ○○○○」にするといいんじゃないかな
○の中は思いつかないけど
ドイツ語で0はヌルとイマイチ
虚無で「ローゼンメイデン ニヒツ」とか
ドイツ語で使い魔は「Begleiter(ベグライター)」らしい
さっきまであの作品〜スレ見てたからギーシュの健闘っぷりに吹いた
それはともかく作者氏GJ
「ローゼンメイデン フォーアラードゥング(Vorladung - 召喚)」
「ローゼンメイデン フェアトラーク(Vertrag - 契約)」
これだと挙げ出したらきりがないな
GJ!
剣を寸止めとは銀様なんとお優しい。
てっきり
「貴方のワルキューレ見たいに、バラバラのジャンクにしてあげようかしらぁ?」
とかギーシュをさんざん言葉攻めにしてくださると思ってたぜ!
ルイズやシェスタに気を使って丸くおさめたんだろうか?
ゼロのミーディアムとかどう?
241 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/08(日) 06:20:18 ID:hgAc70cH
虚無の薔薇、というのはどうかね?
ミーディアムの設定、ガンダールブの設定、すべてが絡まっていて素晴らしい!
あと黒薔薇の花言葉が良いね〜激しくGJ!!
メイメイが出てないのには何か理由があるの?
『ツンデレ使いは引かれあう』か
GJ、GJゥ!
つゼロの黒薔薇
銀様の人GJ!
一つだけ気になったんだけど、剣持ってルーンが輝いたってことはガンダールヴだよな?
ガンダールヴのルーンは左手だと思ったんだけど単なる間違い?それとも銀様はガンダールヴともまた違うのかね?
クオリティ高いからそこだけ気になったんだ。
ギーシュって石飛ばせたのか?
>>247 原作でギーシュの使ってる魔法はゴーレムの作成、花びらを剣や油に変える錬金、亜人を転ばせた魔法の3種類。
それ以外の魔法が使えるかは不明、仮にも軍人の家系で身内に高位の軍人が何人もいたりする家系なので
戦闘系の魔法が使えても不自然では無いな、ゴーレムが一番得意そうだが(ギーシュ兄もゴーレムつくってたし)
ゼロの使い魔大人気だ
タイトルの応募有難うございました!かなり悩んみましたが
>>240氏のゼロのミーディアムを使わせて頂くことにします
>>246 大して重要でも無い複線のために右手にしてましたが
それが有り得ないことと御指摘頂きました
…俺の…ミスだぁぁぁぁぁぁぁ!!
すみませんが彼女のルーンは最初っから左手と補完して下さい
ああ…勉強不足が身にしみる…
次回の更新はまだ未定です。これからもアドバイスや突っ込み等よろしくお願いします!
それでは…良い夢を…
マロンの「あの作品が〜」スレに連投で投稿不可能になった場合、
支援してくれるほど人がいないような深夜とかだと
こっちに残りを緊急避難で貼るとかしても大丈夫かな?
逆にこっちで規制されたときに向こうに避難とかもOK?
>>251 少なくともアニメのSS総合だから悪くは無いと思うけど…(アニメ以外のクロスはなんとも言えないが…)
と言うかこちらで連載されているSSをそちらに移籍させれば…
なんて言ったら怒られるだろうか?
ここで続いてるSSはゼロ魔クロスしかないし、まとめもそっちで保管できるし…
"アニメ" SS総合スレからきたなんていったら
また、馬鹿が沸いて荒らしていくと思うので移籍はお薦めできんな
一個SS潰されてるしなー
>>247 二次創作オリジナルで石を飛ばしてるSSがあって、なぜか真似する奴が出てきてる。
多分原作であった魔法だと勘違いしてる原作未読者だろう。
>>256 >>絶叫しルーンを唱え大地を隆起させるとそこから岩石を水銀燈に打ち出した
石筍が生えて、敵に刺さっていくように感じた。
ジョジョスレの石礫は、杖を銃にみたてて、石がぶっ飛んでくイメージを持っていたんで
個人的にはだいぶ違うと思うんだが。
>>257 俺もそんなイメージ。魔法の名前言ってないし意図的に石礫を避けたのかな?
もうその話秋田
>>257 避難所の雑談スレで石礫について論争が起きた時、
石礫はそのイメージみたいな魔法なんじゃないかという意見も出てたのでそうとも限らない。
まったくもってどうでもいい話で話題変えるが…
ゼロ魔クロス以外でこのスレにSS投下はあるのだろうか?
>>262 ない、などと誰が決めた?
SSはいつだって大歓迎だ。
職人さんを待とう
ブラックラグーンとARMSのクロスでロックの代わりにARMS主人公、のパパを配置!
奴一人で全ての事件解決させて終了
それ、ゼロ魔が関わってないじゃん。
と思ったが、スレタイを見たらアニメSS総合だった。
作者様方、SSを待っておりますぞ。
>>267 そこはあえて他のメンバーを鍛える為に見守る側に
まあホントは第二期の双子の殺人鬼の姉の方を何とかして助けて欲しいだけなんだ
話しの流れ的に救うのは無理とはわかってるんだけど、
それでも、それでもあのサラリーマンならきっとなんとかしてくれる…!
>>268 やあ俺
時々ルイズが〜スレとごっちゃになっちゃうんだな、これが!
ブラクラとフルメタも相性がいいかもしれん
273 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/12(木) 03:56:35 ID:PzyQ0wkl
元がエロゲだがファントムとブラクラのクロスオーバーは読んだ事があるな。
……って、これはアニメSSではないか。
>>288 グレーテルだっけか?
可愛いかったよね
288まで支援
銀様来ないかな〜
新しいSSも来ないかな〜
保守
この流れなら言える!
ぬるぽ保守!
ROM専の俺がここでぬるぽ保守
ガッ!
質問だけど、
ゼロ魔のクロスSSを『あの作品のキャラがルイズに召喚されました』のまとめwikiにまとめたらまずいかな?
似たような質問を向こうでもしてます。
問題がないのなら別にいいんでね?
こっちはまだまとめないし
向こうさんはおkみたいなので、作家さんの意見が出てから決めさせてもらいます。
ぬるぽ
ここでまたもROM専だった俺が
ぬるぽ
グレ子さんキタ━━━━━━ !!
……ってそれ違うから!
グレーテルでググって一番上にヒットしたのを持ってきたんだw
サーセンwwww
7時までに職人が来なければ俺はぬるぽ神になる保守
そんな神などいらないガッ!
>>289 言い忘れてた
突っ込みありがとう('∀`)
ぬぽる
ガガガガガガガガガガガガガッ!!
なんだこの流れwwwだがぬるぽ保守
なんだこの流れwwwだがぬるぽ保守
なんか変な流れだな
300 :
ゼロのミーディアム:2007/07/16(月) 22:50:46 ID:tK+JPWqj
やっと書き上がった!2300から投下してオーケー?
人いないかもしれませんけど
かまわん
「ゼロのミーディアム」を書き手の許可無しで
>>282が言ってるwikiに載せた人が居るみたいだが
303 :
ゼロのミーディアム:2007/07/16(月) 23:01:48 ID:tK+JPWqj
おけ、投下開始!
「薔薇人形に♪薔薇人形に♪薔薇人形にごっすんごっすん五寸釘ぃ〜♪」
素敵なセンスの歌をノリノリで口ずさみルイズの衣類を洗濯板でゴシゴシと洗っている水銀燈
ちなみに今彼女が歌っているのはアリスになった暁にお父様にご披露する「お父様は大変なものを盗んでいきました」である
しかしそんな彼女の思惑は歌ほどおめでたくは無い。彼女は昨日の決闘を思い起こしていた
(あの子から…ルイズから引き出した力…戦っている最中は気付かなかったけど今考えたらすごい物だったわね…)
思い返しながらも手は止まらない
洗い終えたネグリジェを籠に入れ水銀燈は次の物に手を伸ばす
ルイズから発現させた力、脆弱だった羽を青銅を貫く威力にまで引き上げ、一度は砕かれた剣を今度はそれを一刀のもとに斬り捨てる域にまで強化させた物だ
水銀燈がミーディアムから力を引き出すのは初めてでは無い。が、ここまでの効果をもたらしたのはルイズが初めてだ
(これだけの効果を考えればミーディアムの負担はかなりの物でしょうに…)
後でそれをルイズに聞いてみたのだが…
「負担って何よ?ちょっと指輪が熱を持って温かくなった気はしたけど?」
なんて言葉がルイズから帰ってきたらしい。
つまり…あれだけの効果を出しながらも彼女から引き出せる力はまだまだ余裕と言えるのだ
(フフ…メイジとしてはともかくミーディアムとしては当たりをひいたのかもしれないわねぇ?)
そんなことを考え真剣な顔でお電波な曲を歌う様はちょっと怖い
「…死してなお、この世に未練!残せしは魑魅魍魎!」
さらに歌の方向性が変わってきているが気にしては負けだ
そんな水銀燈の後ろ姿に近づいてくるメイド姿の少女
「精がでますね、水銀燈?」
「あら、シエスタ」
メイドは水銀燈の後ろから声をかけた。昨日、決闘前からすでにピンチだった彼女に救いの手を差し伸べた少女、シエスタである
シエスタは不自然に手を腰の後ろに回し何かを隠している
「無事だったんですね…活躍も聞きましたよ?
…すみません。私、あの時何もできませんでした…」
あの時とは無論、食堂でのギーシュとのいざこざの事だ。あの騒動の中、シエスタはただ見ていることしか出来なかった事を悔やんでいるのだろう
「別に気にする事はないわよぉ。貴女には関係無い話だし」
「…魔法の使えない平民にとって貴族は恐怖の対象と言っても過言じゃないんです」
「まあ分からなくも無いわねぇ…」
魔法の力は水銀燈もその身を持って知った。体験者は語る、と言ったところか
「でも私はこうして健在よぉ。余計な心配など不要だわ」
「あの…私、水銀燈のために服を作ったんです!その、ほら!水銀燈のお召し物綺麗だし掃除とかで汚れちゃうし!」
そしてその手に隠していた物は…
「これって…メイド服?」
「はい!サイズの一番小さいものを私が手直ししたんです!水銀燈ならきっと似合いますわ!」
正直水銀燈はお父様から頂いた黒のドレス以外の服を着る気はあまりないのだが…
キラキラと瞳を輝かせ水銀燈を見つめるシエスタの表情の前には流石に断るのが気まずかった
「ええ…ありがとう…使わせてもらうわぁ…」
水銀燈は苦笑いしてそう言った
シエスタはそれにも気づかず
「それじゃ、この後も仕事がありますので!」
と嬉しそうに帰って行った
(ふぅ…思えば私も丸くなったものね。以前なら何のためらい無く突っ返したでしょうに…)水銀燈はスキップしながら去っていくシエスタを見送りながら思った
具体的な数字は伏せておくが彼女がローゼンメイデンとして生まれ、流れた時間は長い。そして幾多の人間と彼女は契約した
かつて孤独を好み群れることをよしとしなかった水銀燈
しかし繰り返される出会いと別れを経てその心も変わって言ったのだ。…そう、彼女の妹達がそうであったように…
(まったく…真紅達に見せられたものじゃないわね…)
「なーんてセンチメンタルに浸ってる場合じゃないわよねぇ?さ、洗濯、洗濯っと」
やっぱり昔の彼女からは想像出来ない発言
人間…いや、人形変われば変わる物と言ったところか
>>302 作者の方が良いなら放置
駄目なら削除しておこう。
305 :
ゼロのミーディアム:2007/07/16(月) 23:03:31 ID:tK+JPWqj
「ただいまぁ〜」
洗濯も終わり水銀燈はルイズの部屋に戻ってきた
「お帰り。洗濯に行ってたのね」
「あらぁ、もう起きてたの?珍しいわねぇ」
水銀燈の言葉通りルイズはすでに起床し着替えをすましている
「今日はちょこっと遠出するからね、さ!あんたも準備なさい!」
「遠出ぇ?授業はどうするのよぉ?」
「今日は虚無の曜日だから授業は無しなのよ」
この世界の日曜日かしら?と水銀燈は思った
「ふぅん…でもどこに行くのよぉ?」
「トリステインの城下町よ」
「何をしに?」
「そ、それは…」
突然しどろもどろになるルイズ
…実は彼女。ただ水銀燈と一緒に遊びに行きたいだけだったりする
魔法の事や性格の都合でこの少女、ずばり女友達と遊びに行く経験と言う物が少ないのだ
「そ、そうよ!あんたに剣を買ってあげるためよ!」
ルイズはとっさに閃いた言葉を口走るが、水銀燈は興味無さそうに答えた
「剣?別にいいわよぉ。もう持ってるし」
そして彼女の手に羽が集まり剣を形どった。意味もなく左手のルーンが輝いている
どうやらこのルーン剣に反応してるらしい
(く、空気読みなさいよこの呪いの人形!)
ルイズは心中で愚痴るが切り返しの言葉はすぐに出た
「青銅のゴーレム相手にも刃こぼれして折れちゃったけどね〜」
ちょっと意地悪く答えるルイズ
「うっ…それはぁ…」
そこをさされると水銀燈も痛い。ルイズから力を引き出せば問題無いことだが。あまり頻繁には使う物ではない
切り札は最後までとっておくものだ
「だから私があんたに剣を買ってあげるわ!」
(そうよ…昨日だって私の為にも戦ってくれたし…)と心の中で付け加える
水銀燈もようやく察した。ああ、つまりこの子は昨日の礼がしたいのだと
「まぁいいわぁ。貰えるものなら貰ってあげるわよ」
水銀燈は素っ気なく言った
「まったく…ホント素直じゃないわね…」
「だからぁ…それは貴女に言われたくはないと何度言えば…」
306 :
ゼロのミーディアム:2007/07/16(月) 23:05:51 ID:tK+JPWqj
手な訳でやって来ましたトリステインの城下町。流石はこの国の中枢。人の多いこと多いこと
「のわりには道は狭いのねぇ…」
「狭いって、これでも大通りなんだけど」
「これでぇ?」
道幅は5メートルあるかないか。そこを老若男女、大勢の人間が行き来しているため結構混雑している
「でもこう言った雰囲気、嫌いじゃないわよぉ?」
道端に並ぶ露店をキョロキョロと興味深く見回し水銀燈は言った
そんな水銀燈を見てルイズも小さな笑みがもれる
「まあ時間に余裕もあるし少し寄り道するのもいいわね」
「あの看板って酒場よねぇ?」
「そうよ。ガラの悪い傭兵なんかがたむろしてるから近づいちゃ駄目よ」
「あのバッテンのついた看板は?武器屋?」
「武器屋じゃないわ。あれは衛士の詰め所」
「交番みたいなものかしらぁ」
「コーバンって何なの?」
片や貴族の娘で片や呪いの人形(←失礼…)でも年頃の女の子には違い無い。二人(一人と一体?)ともおしゃべりしながら楽しそうに大通りを進む
ふと水銀燈の目にとある露店が目に留まった
「どうしたの水銀燈?…なにこれ。牛乳?」
「これは…!」
物珍しげに店を覗く二人に露店の店主が声をかけた
「いらっしゃいお客さん!こいつは牛乳を発酵させて作った新しい健康食品だよ!どうだい?美容にもいいよ!」
「美容に効果あるの?こんなのが?」
「ルイズ…、ヨーグルトを…乳酸菌を甘く見てはいけないわ…」
水銀燈がルイズを見据え答えた
「え?これがあんたがいつも言ってた乳酸菌なの?」
「そうよ。まさかこんなところでお目にかかるなんて…」
「…ふーん、これがねぇ。せっかくだから食べてみよっか?」
「いいのぉ?」
「いいわよ、大して高くないし。主人、お二つ貰えるかしら?」
「まいど!」
「で、買ってみたのはいいんだけど…食べてお腹壊さないでしょうね…」
ルイズは白いどろりとした液体をスプーンでかき混ぜながら言った
「チーズの遠い親戚みたいな物よぉ。貴女もチーズは普通に食べてるでしょ?」
「チーズね…まあとりあえず一口…酸っぱぁぁぁぁぁい!!」
ルイズの叫びが通りに木霊する
「ちょっとルイズ、いくらなんでも大袈裟じゃないのよぉ」
「いや、スッゴく酸っぱいじゃないのよコレ!これが乳酸菌!?あんたこんなのが好きなの!?」
「乳酸菌の良さが理解できないなんてまだまたお子様ねぇ」
と言いながら水銀燈も一口
…彼女は知らなかった。元々彼女の世界で口にしていたヨーグルトや乳酸菌飲料は万人に飲みやすく味を整えてある事を
加糖したりジャムをつけたりと工夫を凝らした結果が水銀燈が元の世界で摂っていたそれだ
当然今食べたヨーグルトにそんな工夫がされてる訳も無く…
「酸っぱぁぁぁぁぁい!!」
今度は水銀燈の絶叫が城下町に響き渡り青空に吸い込まれた。
…でも勿体無かったので二人とも頑張って全部食べた。良薬は口に苦し(酸っぱし?)とは言ったもの。これでちょっとは綺麗になれるかもよ?
支援
308 :
ゼロのミーディアム:2007/07/16(月) 23:07:55 ID:tK+JPWqj
「まぁ確かに体には良さそうだったけど…もうあんまり食べなくてもいいかな…」
「こんな…こんなはずじゃなかったのにぃ…」
げんなりしながら歩いている二人。すると今度はルイズが一つの店の前に立ち止まった
「ルイズ?どうしたのよぉ?」
立ち止まったのはパン屋の前。そこに外売り用の机が出され、その上に甘い匂いを漂わせた菓子パンが並べられている
「今度は私があんたに美味しい物を教えてあげるわ」
そしてルイズは店主を呼び出した
「おっ!これはこれはいらっしゃいませお嬢様!」
「また来てあげたわよ。いつもの奴、二つね!」
どうやらルイズ、この店のお得意様らしい。店主は手慣れた手つきで紙袋に菓子パンを二つ入れるとルイズから代金を貰い袋を手渡す
「まいどあり!今後ともご贔屓に!」
店主の言葉をバックに二人はまた大通りを歩き出した
ルイズが袋からパンを出し水銀燈に手渡す
「これってメロ…」
「違うわ。クックベリーパイよ」
「いや、これどう見てもメロンパ…」
「これはクックベリーパイよ!それ以上でもそれ以下でもないわ!!」
何故か知らないがこのルイズ非常に必死だ
「そ、そうなの…。悪かったわね、クックベリーパイなのね…」
ルイズ必死の説得により流石の水銀燈も折れた
見た目はどう見てもアレにしか見えないが中にクックベリーとやらが入っているのかもしれない。
どっかの討手が大好きなアレがパイに見えるのか?なんてツッコミが来そうだがそこは華麗にスルーさせて頂く
メロ…クックベリーパイににかぶりつくルイズ。思わず彼女の顔に幸せそうな笑みがもれた
「うん…これはなかなか…悪くないわねぇ」
水銀燈も一口食べ素直な感想をもらした
「でしょカリモフが一番なのよ!」
「でも良家のお嬢様が歩き食いなんてはしたない事していいのぉ?」
「これに限ってはいいのよ!あ、でも母様や姉様には内緒ね!」
たわいもない会話だが二人とも実に楽しげだ
、水銀燈も思えばこうやって友達感覚で遊びに行く事など初めてなのだから尚更なのだろう
元の世界では普通に人形が町中を堂々とウロウロする等考えられない事だその後はオープンカフェでお茶したり、露店に並ぶアクセサリーを見回したり、お城を見物しに行ったりしながら二人は町を回った
「結構ぶらぶらしちゃったわね。そろそろ剣買いにいかないと」
「あら本当ぉ。もうこんな時間」
そして今回のメインイベント。剣の購入へと移ることになる
「ところで武器屋ってどこにあるのぉ?」
「こっちよ。この路地の先が武器屋なんだけど…」
ルイズの指差した先は大通りから外れた狭い路地。ゴミ等が道端に散乱し悪臭が鼻をつく
「なんか不衛生なとこねぇ…」
「だからあんまり来たくないのよ」
あまり気乗りしないルイズと水銀燈だったが仕方なく路地に入っていった
そして四辻に出て立ち止まる二人。ルイズはキョロキョロと辺りを見回す
「ビエモンの秘薬屋の近くだったから、この辺なんだけど…」
「あの看板がそうじゃないのぉ?」
水銀燈の指差した先に剣をかたどった看板が下げてある
「あ、あった。そうよ、あれが武器屋」
ルイズと水銀燈は石段を上り羽扉を開け店に入っていった
砂糖入れろ砂糖 支援
310 :
ゼロのミーディアム:2007/07/16(月) 23:10:16 ID:tK+JPWqj
店内は昼間にもかかわらず薄暗い。ランプの灯りが壁や棚に陳列された剣や槍を鈍く照らしている
そして店の奥にパイプをくわえた胡散臭い中年の親父が一人。この店の主人だろう
ルイズをジロジロと見やり紐タイ留に描かれた紋章に気づくと(おいおい…貴族かよ…)と言い出さんばかりに顔をしかめた
「旦那、これでもうちはまっとうな商売をしてまさぁ。お上に目を付けられることは何も…」
「客よ。剣を見せてもらえるかしら?」
ルイズの客だと言う言葉を聞きとたんに主人は騒ぎ立てる
「ほほお!こりゃ珍しい。貴族の方が剣を!おったまげた!」
「私が使うんじゃないわ。使い魔よ。この子が使うの」
ルイズが水銀燈の方を向いて言う。主人が水銀燈を珍しそうに眺めた
「使い魔さん?お付きの侍女さんといったとこですかい?」
「侍女ねぇ…」
水銀燈が苦笑した
「こちらのお嬢さんの剣を見繕えばよろしいので?」
「ええ、適当に選んで頂戴」
主人はそれを聞くと倉庫の奥にいそいそと消えていった
「鴨がネギしょってやってきたわい…」
なんてこっそり呟きながら…この世界にも鴨鍋ってあるのだろうか?
小汚い武器屋でも水銀燈の興味の対象になるらしい。彼女は壁や棚に置いてある武器に興味深々だ
そんな水銀燈にルイズが注意する
「あんまり触んないでよ。壊して弁償なんてゴメンなんだから」
「わかってるわよぉ」
なんて言いながらも水銀燈は一本の剣を手にとった
「これ、なんて書いてあるの?」
「えーっと…なになに〜?エクスカリパー?」
「なんか偽物臭い名前ねぇ…それじゃこっちは?」
「ロトの剣って言うらしいわね」
「この剣は?」
「アイスソード。見たまんま氷の剣ってとこね」
「なんか不吉なオーラが漂ってるわね…」
そりゃ殺してでも奪われることで有名な呪いの魔剣ですから
「あら、これって…」
水銀燈が次に手にとったのは他の剣と違い刀身の反ったどこか趣ある雰囲気の長剣
「珍しい形の剣ね。名前はガーベラストレートだって」
「さしずめ菊一文字と言ったところかしらぁ?でもこんな所で日本刀だなんて」
「ニホントー?なにそれ?」
「こういう片刃の反った剣の事よ。あらぁ?もう一本あるわね?」
「えーっと…何これ、読みにくい名前ね〜」
「なんて銘なの?」
「贄殿(にえとのの)シャ…」
「ストップ!そこから先は言っては駄目よ!!」
とくにルイズがこれ持ったら物語の収集つかなくなるので本気で勘弁
ちょwシャナw 支援
312 :
ゼロのミーディアム:2007/07/16(月) 23:11:36 ID:tK+JPWqj
そんな事をしているうちに主人が1メイル程の片手剣を持って戻ってきた
「そういや、昨今は宮廷の貴族の方々の間で下僕に剣を持たせるのがはやっておりましてですね、
それでよくお選びになるのがこのレイピアでさあ!」
「貴族の間で剣を下僕に?何で?」
「へえ、なんでも『土くれ』のフーケを名乗る盗賊が貴族のお宝を荒らし回っているとか言う話でして
おかげでそれに恐れた貴族の方々は下僕にまで剣を持たせる始末でさあ」
だがルイズは盗賊の話にはさほど興味を示さずその剣を見る
細い…すぐ折れてしまいそうなレイピア。水銀燈の羽の剣とさほど変わらなそうだ
せめて鋼…とは言わないから青銅ぐらいは軽く斬れる物がいい
「もっと大きくて太いのがいいわ」
「お言葉ですが剣と人には相性ってもんがございます。そちらの侍女さんを見るとこれぐらいが無難かと…」
「そうよ。使うのは私なんだけどぉ」
主人と水銀燈が抗議するがルイズは聞く耳を持たない
「大きくて太いのがいいと、言ったのよ」
店主は無言でぺこりと頭を下げると倉庫に戻っていった
「ちっ…素人が生意気に」
…とつぶやきながら
「ルイズ…私あんまり大きな剣なんか使いたくないんだけど…」
水銀燈がため息をついて言う。彼女の背丈は幼児が少し大きくなった程度の高さ
先ほどのレイピアですら彼女にとっては人間で言う大きめの長剣と変わらないサイズなのだが…
「大丈夫よ。世の中自分の背丈以上の大剣振り回すような輩だって結構いるわ
あんたも私の使い魔なら大剣の一本でも使いこなしなさい!」
ルイズの無理難題に水銀燈は呆れて口を噤んだ
まあ確かに探せばドラゴンころしとか斬艦刀なんて代物を振り回す屈強な戦士もいることはいるが、それを小柄な人形の少女に求めるのは如何な物か
主人が一振りの剣を持って戻ってきた
「お待たせしやした。こいつなんかいかがです?」
全長1.5メイルはあろうかという大剣。両手で扱えるように柄が長くがっちりとしている
ところどころに宝石を散りばめた豪華な装飾と鏡のような両刃の刀身が薄暗い店内に眩く光っていた
「店一番の業物でさ!一流の貴族の従者足るものこのぐらいは腰から下げて欲しいものですな!
と言ってもこいつを腰に帯刀するのはよほどの大男でないと無理でさあ。そちらのお嬢さんなら背中にでも背負って…
…やっぱちょいと無理な気もしやすな…」
主人は水銀燈を見て思わず本音が漏れた
だがルイズはこの剣に満足したらしい。貴族の性分と言うか何でも一番でないと気がすまないのだろう
隣で顔をしかめている水銀燈をよそにルイズは値段を訪ねる
「おいくら?」
「こいつはかの有名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿の鍛えたものでして…」
「いくらかと聞いてるのよ。私は貴族よ!」
主人の能書きを無視してルイズは(貧相な)胸を張って言った。主人は淡々と値段を告げる
「エキュー金貨で二千。新金貨なら三千」
ルイズが不機嫌に顔をしかめる
水銀燈は相場も貨幣価値も分からないが少なとも高価であるとしか認識できなかった。故にルイズに尋ねる
「そんなに高いのぉ?これぇ?」
「…立派な家と、森付きの庭が買えるくらいの値段よ」
「こんな剣がねぇ…」
「名剣は城に匹敵しやすぜ」
「新金貨で百しか持ってきてないわ」
ルイズは貴族である故にこんな買い物の駆け引きなど知る由もない
あっさり自分の手持ちをばらしたルイズの言葉に主人は話にならないと言わんばかりに手を振った
「まともな大剣ならどんなに安くとも相場は二百でさ」
ルイズは顔を赤くする。たかが剣がそこまで値が張るなど知らなかったのだ
この剣は買えないようだが水銀燈は別に気にした様子は無い
ロトの剣は強いんだろうけど勇者しか使いこなせないからなぁ支援
314 :
ゼロのミーディアム:2007/07/16(月) 23:14:21 ID:tK+JPWqj
「別にいいわよ。こんな煌びやかな剣、私のガラじゃないわぁ」
「でもやっぱり買うなら一番のがいいじゃないのよ」
「嫌よ。こんな無駄に豪華でテカテカした剣なんて。これ、武器って言うより装飾品みたいじゃないのよ。部屋の壁に掛けてるのがお似合いだわぁ」
「やっぱあんたにはこれぐらいの持たせたいんだけどな…」
「値段なんか関係無いわ。どんな剣でもちゃんと実用的で私に合ってるのなら何でもいいわよ。
見てくれなんか問題じゃない、さっきのレイピアでも十分よ。」
別に気遣っている訳ではない。これは水銀燈の率直な意志だ。こんな派手な剣は彼女の趣味じゃないらしい
「…と言うか私にこんな大きい剣を使わせる気なの?」
「えー。私の使い魔なら大剣の一本ぐらい使いなさいよ〜」
しつこく食い下がるルイズ。しかし文字通り思わぬところからそれを非難する声が上がった
「生意気言ってんじゃねぇ!そこの娘っ子!」
ルイズと水銀燈が声の方を向いた。主人は「またかよ…」とつぶやいて頭を抱える
「おめえそこの親父の言ってたこと聞いてなかったのか?剣にだって相性ってもんががあんだよ!
小さな従者に無理矢理でっけえ大剣を使わせるだぁ?ふざけてんじゃねぇ!!」
「なんですってぇ〜!」
突然の予期せぬ暴言にルイズが熱くなる
だが声の聞こえた先にはただ乱雑に剣が積んであるだけ
「わかったらさっさと家に帰りな!もっと剣について勉強し直すこった!世間知らずの貴族の娘っ子!」
「し、失礼ね!」
水銀燈がすっと声をする方に近づく。当然誰も人らしき者はいない
彼女は積み上げられた剣の山を見やり一本の剣を手にとった
「貴方ねぇ?さっきからの声の主は」
「ほお〜俺に気づくたぁあんたやるな」
水銀燈が手にとったのは錆の浮いたボロボロの剣。そこから声が発せられているのだ
「やい!デル公!お客様に失礼なこと言うんじゃねぇ!」
「デル公ねぇ」
水銀燈がまじまじと剣を見つめる。全長は先程の剣と変わらないが刀身は薄手な長剣
ひどく浮いた錆がその剣が作られてどれほどの月日がたったかを示しているがお世辞にも見栄えがいいとは言えない
「これってインテリジェンスソード?」
ルイズが当惑した声をあげた
「インテリジェンスソードぉ?何よそれ?」
その問いには主人が答えた
「インテリジェンスソードたぁ意志を持った魔剣のことでさあ。ったく、いったいどこの酔狂な魔術師が始めたんでしょうかねぇ?剣を喋らせるたぁ…
おまけにこいつはやたらと口が悪いわ、客に喧嘩売るわで閉口してまして…
やいデル公!これ以上失礼があったら貴族に頼んでてめえを溶かしちまうぞ!それとも叩き折ってジャンクにしてやろうか?ああ!」
「ジャンク…!!」
その言葉に反応し水銀燈が瞳を細める
「おもしれえ!やってみろ!」
熱くなった剣も退かない
「やってやらあ!」
主人がこちらに歩いてくる
水銀燈が剣に問った
「謝らないの?ジャンクにされるわよ?」
「へっ、見損なっちゃ困るぜ。例え見てくれはこうでもなぁ、俺は六千年と時を生きた…生きた…あー、なんだっけ?
とにかく俺は言ったことは曲げるつもりはねぇよ。剣として生まれた誇りにかけてなぁ!」
「ふぅん…」
水銀燈の興味がこの剣に向く
「それにこんなつまんねぇ世界にも飽き飽きしてたとこだ!ジャンクにだってなんだってなってやるぜ!上等だ!」
「例えここで朽ちようとも後悔は無いのね」
「男に二言はないぜ。
ところであんたさっきなかなかいいこと言ったじゃねぇか。剣の価値は値段や見てくれじゃない、か
…カッコだけの貴族や戦士に聞かせてやりてえとこだ。あんたみたいなのに看取られて逝くなら俺も本望だぜ!」
>>309 中世では砂糖はむちゃくちゃ高いとマジレスしつつ支援
結構デルとうまくやれそうだな 支援
317 :
ゼロのミーディアム:2007/07/16(月) 23:16:09 ID:tK+JPWqj
「フ…面白い…!」
水銀燈が口元をニヤリとさせ呟いた
「貴方、名前は?」
「デルフリンガー。記憶の片隅にでも置いてくんな!」
そして近づいてきた主人を遮り彼女は言った
「この剣、私が預かるわ」
「お嬢さん、こんな剣持ったって何の得にもなりやせんぜ」
「喋る剣なんて珍しいし、何よりこの剣の気性…興味深いわ。ルイズ、これにしましょ」
ルイズはいやそうな声をあげた
「え〜。そんなのにするの?もっと綺麗で喋らないのにしなさいよ」
そこに剣が口を挟む
「気遣いはありがてえとこだが俺はよ…ん?」
断りかけた剣だが突然押し黙る。まるで水銀燈を観察するように。しばらくして剣が驚きながら言った
「こいつはおでれーた!見損なってたぜ、あんた『使い手』じゃねぇか!」
「『使い手』?何の事よ?」
「気が変わったぜ、俺を買ってくれ!いや、姐さん!あんたの舎弟にしてくだせえ!!」
「姐さん…」
姐さんだの舎弟だの微妙な物言いに水銀燈が顔をしかめた
六千年云々とか言ってたから少なくともこの剣の方がはるかに年上だろうに
水銀燈と剣のやりとりを見ていたルイズ。他に買えそうな剣も無いので主人に剣の値段を尋ねた
「あれ、おいくら?」
「あれなら百で結構でさ」
「剣の相場は二百じゃないの?」
「こっちにしちゃ厄介払いみたいなもんでさ」
主人が手をひらひら振って言った
財布から金貨をじゃらじゃらとカウンターに金貨をばらかれ。主人が慎重に枚数を数える
「新金貨百、確かに!毎度!」
かくしてデルフリンガーは水銀燈の手に渡った
「ところでお嬢さん、どう言う風に帯刀させやしょう?」
デルフを鞘に納め主人が聞いた
「帯刀?」
「ええ、腰に下げやすか?背中にしょいやすか?」
「そうねぇ…やっぱり背負おうかしらぁ…」
翼の可動の邪魔になるためたすき掛けにはできない。そのため水銀燈は右翼の付け根に垂直にデルフを引っ掛けた
それを見てルイズが無意識に感想を漏らす
「…運命(デスティニー)…」
「…!!」
水銀燈の顔が引きつった。たしかに今の水銀燈の左翼に銃器を引っ掛ければまさにあの不遇の名機
「や、やっぱり腰に差すわぁ!」
負け犬フラグがたってたまるかと言わんばかりに水銀燈が訂正した。そして腰に帯刀してみるが…
「…バランス悪っ!」
またルイズからのツッコミが入った
まあ身長が1メイル前後の水銀燈に長さ1.5メイル近いデルフリンガーを帯刀させようとすることに無理があるのだろう
結局周りの邪魔になるという理由が決定打になり水銀燈はデルフを背負う事にした。尚、彼女は常に宙に浮いてるため縦に差しても問題ない。だが…
「おーい、姐さん。俺引きずられてんだけど〜?もうちょい高く飛んでくんね?」
背中のデルフリンガーからの声
「…うっさい!」
水銀燈は乱暴にガチンとデルフを鞘に納め黙らせた
318 :
ゼロのミーディアム:2007/07/16(月) 23:18:27 ID:tK+JPWqj
剣も買い終え学院に戻ってきた二人。日はとっくにに沈み空には二つの月が輝いている。結構遅い時間だったので二人とも帰ってそうそうすぐに寝ることにした
遊び疲れたのか二人は寝床にはいるやいなやすぐに寝息を立て夢の世界へと誘われた
夢の中、水銀燈が立っていたのは薄暗い廃墟の街だった
「ここは…私のフィールド…」
nのフィールド、ローゼンメイデン達がアリスゲームを繰り広げる戦いの舞台である。その中でもこの朽ち果てた街並みは水銀燈の心象風景を具体化した言わば彼女のテリトリーだ
辺りを見回す水銀燈の視界に紫色の発光体が映った
「あれは…メイメイ!」
メイメイ、水銀燈の人工精霊の名前だ。人工精霊とは各ドールに一体付き添う言わば彼女達の従者とも言える存在
メイメイはまるで「ついて来て」と言うように辺りをせわしなく飛び回ると奥の道に飛びさって行く
「待ちなさい!メイメイ!」
水銀燈はメイメイの後を追った
幾多の道を曲がり朽ちた建物を抜けメイメイが向かった先は開けた広場
「やっと…追いついたわ」
メイメイを発見し安堵する水銀燈
そこに何者かの声がかかる
「黒薔薇に秘められし言葉は様々、『終わり無き憎しみ』・『彼の者に死の制裁』・『恒久の束縛』…」
「誰ッ!?」
水銀燈が振り向いた先には一枚の鏡
「ですがその黒薔薇の花言葉からあえて一つ挙げろと言われれば…私はこれを挙げましょう。そう、『儚き夢』…」
声の主は鏡の中に移る黒い燕尾服を纏った人影だった。暗がりのため顔は見えない
「人の夢とかいて『儚い』とはよく言ったもの、果たして夢破れるのは異界に舞い降りし黒き翼か…はたまた翼を拾いし異界の少女か…
それを決めるのは他ならぬ貴女なのですよレディ?」
鏡の中の人影が顔を明かした。いや、その顔は人の物ではなかった
「さて、お久しぶりと言うべきですかな?」
「ラプラス…!」
水銀燈の目に映ったのはシルクハットをかぶった兎の顔
nのフィールドに存在しアリスゲームの運営を担う者、ラプラスの魔であった
支援
320 :
ゼロのミーディアム・あとがき:2007/07/16(月) 23:21:37 ID:tK+JPWqj
仕事の関係でなかなか筆が進みませんでした。スミマセン
本当は土曜の深夜あたりに投下したかったんですが…
だいたい自分は週一のペースで更新になるのでご了承下さい
あと、まとめにつきましてはむしろありがたいのでこのまま補完して下さい
では失礼…
>>320 あらそう?
・・・ごっめーん、消した!
んじゃ正式許可出たんで、申し訳ないけど
まとめててくれた人、ページを作り直して下さいな。
勝手に入れる奴もひどいが勝手に消してる奴はどうしようもないな…
どちらも良かれと思ってやってるから性質が悪い
ごめんよ、「無断掲載なんだから消した方がいいかも」って意見が複数出てたからさ・・・
つまり『向こうのwikiの管理人』は、どうしようもない奴だって事さ・・・・・
wiki関係の話題は以後あっちのスレで。
>>320 投下乙でした。とりあえずメイド服に期待w
327 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/07/16(月) 23:46:48 ID:Is92m+jk
>>309 塩を入れても良いぞ(半分マジレス)
スレと離れるが,トルコ人にとって「甘いヨーグルト」は想像できない代物
(日本人にとっては「チョコレート味のご飯」を思い浮かべるようなもの)
GJ!忘れてた。
>>327 つまりシナモンと砂糖をたっぷり入れたミルクライスみたいなものか
(中世ヨーロッパにはマジでそんなデザートがあったとか)
作家さんの許可がでる前にまとめをしてた者です。
許可が出る前に先走ったマネをして申し訳ありませんでした。
>「これってメロ…」
>「違うわ。クックベリーパイよ」
>「いや、これどう見てもメロンパ…」
>「これはクックベリーパイよ!それ以上でもそれ以下でもないわ!!」
とりあえず自重しろw
GJ!
つんでれ二人組はいいな!心が安らぐ
>「…運命(デスティニー)…」
あんたって人はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
超GJ!!楽しみにぬるぽ保守させてもらってます
>「…運命(デスティニー)…」
ガンダールブの印が光りながらパルマフィオキーナする水銀燈を
思い浮かべて勝手に燃えたw
>>310 今更だが、妙齢の淑女を「旦那」呼ばわりしてよく店ごと吹っ飛ばされなかったな。
>(5)商人などがひいきにしてくれる男の客を呼ぶ語。また、俗に目上の男性を呼ぶ語。
>「―、もう一杯いかがですか」
そういえばトロイメントで蒼星石にパルマ風の技を繰り出してたような…
>>336 トロイメント見てないんだ・・・レンタルされてないのかな
どこに行っても一期はある二期が見当たらない
グッジョブ!ところどころの小ネタもらることながらラストのシリアスにも期待!
>>335 いや、それ原作基準
誰か五寸釘につっこめwwww
ごっすんごっすん☆
スクライドの方にも期待
五寸ロリ、略してゴスロリ
スクライドの職人さんが来るまで落とさはしない!
いま渾身のぬるぽ!!
ガッ!
週一ペースなのに保守に対する反応速度は異常ぬるぽ
ガッ!
だがそれがいい!
かなみの職人さんまだかなー
明日の昼休みまでにガッされなければ俺はぬるぽ神
とりあえず ガッ!
>>278の中の人なのだが・・・
まさかこんな流れになるとは思いもよらなかったぬるぽ保守www
ガッ!
ROM専だった俺がなぜか毎日ぬるぽ
昼飯食ってもガッされなければかなみは俺のモノw
嫁にはやらんガッ!な
なんか変な流れだな…ぬるガしかレス無いし
もうここの職人さん達ルイズが〜に移ったほうがよくね?
「あの作品の〜」はスレ消費早いから、週1で投下されたとしても3スレぶりの投下だぜ…… ってなるからなぁ。
wikiがあるから読むぶんには困らんけど、人によっては投下しづらいかも。
空気悪くなる予感が・・・
まぁ俺も調子に乗ってぬるぽばっかして悪かった
>>356 職人は忘れられるのガッ一番怖いらしいからなぁ
気長に待つしかないか…無理やりスマソ
なんだかなあ
なんにせよ俺は職人さんを待ってるよ
週一の楽しみなのは間違い無い
ふと思ったんだがかなみのアルターって他者の
思考とリンクする能力だよな、ルイズの思考とリンクしたらどんな反応すんだろ
>>362 実家での扱いとか、学園での他者の視線とか、魔法が上手く使えない自責の念を共感して
この人も大変なんだなーと世話を焼いてたら、姉妹のように仲良くなった二人を幻視した。
364 :
予感(1):2007/07/20(金) 23:05:16 ID:nz34OqLu
惑星ハルケギニアの衛星軌道上に展開したギルガメス宇宙艦隊
艦隊司令レイパードは旗艦オバンデスのブリッジでメルキア本星からの超空間通信を受けていた
「惑星ハルキゲニアはアストラギウス銀河の中心にありながら長らく不可侵とされてきた星だ、そして
我々の科学文明とは根本的に異なる魔法文明を発達させてきた星でもある。ハルキゲニアの秘密を解き明かしたものが
全銀河の覇権を握ると言っても過言ではない、貴官の任務は重要だぞレイパード」
「お任せくださいバッテンタイン閣下!」
一方トリスタニアを制圧したバララント軍の旗艦レズビアンでは口先三寸でギルガメスの追求をかわすつもりが
動かぬ証拠を突きつけられたロッチナが怒り心頭に発していた
「何という事だ!あのロクデナシの三匹が捕まっていたとは!!」
「ギーシュ達が?」
「そうだ、こうなっては下手なごまかしは通じん」
「ルイズを渡すつもりか?」
ナイフを突き付けるような才人の視線をいささかもたじろぐ事無くロッチナは見返す
「そうだ、“虚無の使い手”さえ手に入れば連中は撤退する。この星をギルガメスに渡すわけにはいかん」
再びオバンデス艦内
「あ〜あ、シエスタのヨシェナヴェが懐かしい…」
トレイの上で目を剥いているダボフィッシュの塩焼きとにらめっこしながらぼやくギーシュ
「結局私達体よく交渉のダシにされた訳ね」
いつも強気なキュルケも内心憎からず思っているルイズが自分達のせいで窮地に陥っているとあって意気消沈すること夥しい
「大丈夫、サイトがいる…」
天上天下不動のマイペースを貫くタバサがボソッと呟く
「そうよ、ルイズのピンチにダーリンが黙ってるはず無いわ!」
「ひょっとしたら僕達助かるかも!?!」
途端に盛り上がる二人を尻目にダボフィッシュにかぶりつくタバサ
「不味い…」
レズビアン艦内ではルイズを乗せたシャトルが発進準備を進めていた
ルイズの“受け渡し”に護衛として随伴する二機のファッテイが最終チェックを受けるハンガーに才人はいた
「そんなに殺気立った顔してちゃ『これから強盗します』って宣伝してるようなものよ、ガンダールブさん」
バララントの女性士官服に身を包んだフーケだった
なんだこれはなんだこれは!?
ボトムズかよwww
367 :
予感(2):2007/07/21(土) 00:04:45 ID:fsazM7J7
「ハーイ、そこのお兄さん(はあと)」
才人を脇に押しやるとにこやかに笑いながらファッテイへと歩み寄るフーケ
「俺に何か用か?」
美人士官の突然の訪問に疑問を抱きながらも頬を緩めるATパイロット
それが面白くないもう一機のパイロットは先に行くぞと言い捨てハッチを閉めるとハンガーを出て行く
「貴方を見込んでお願いがあるんだけど…」
と言いつつフーケはゆっくりと胸のジッパーを下げていく
ゴクリと生唾を飲み込みパイロットが身を乗り出したところで
「キャオラッ!!」
フーケの四本貫手がパイロットのレバーに突き刺さった
あっという間に悶絶したパイロットを放り出しコクピットに収まる才人
「…借りはいつか返す」
「いいわよ別に、こっちはこっちの思惑があってやったことだから」
シャトルに乗り込んだファッテイは艦首区画にある船倉で降着姿勢をとって待機する
ランプが閉じる直前ファッテイのカメラアイがロッチナに連れられたルイズを捕えた
気丈に振舞ってはいるが表情に怯えの色が濃いのもやむおえまい
恋と魔法のおファンタジアな世界に生きてきた少女の現実にいきなり鉄と硝煙の匂いにむせ返るハードボイルド
ロボットアニメの世界が侵攻してきたのだ
トリスタニア上空三万五千キロでギルガメス艦隊とランデブーしたシャトルはラウンドムーバーを装備したスコープドッグ
に先導されオバンデスの格納庫に収容された
ルイズを伴ったロッチナと護衛のファッテイ、レイパードと幕僚達をガードするスコープドッグが格納庫で対峙する
「“虚無の使い手”をお渡しした後ギルガメス軍には速やかに撤退していただけますな?」
「我々はこのままハルキゲニアに留まります、トリスタニアにも駐留軍を降下させる予定です。両軍穏やかにいくことを願いたいですな」
ロッチナの恫喝めいた問いかけにぬけぬけと答えるレイパード
「それは困る!“虚無の使い手”を渡した以上撤退していただく!!」
「残念です、バッテンタイン閣下の強い要望ですからな」
茶番はここまでとばかりにレイパードの背後に控えていたスコープドッグが動き出し鋼鉄の腕をルイズへと伸ばす
思わず後ずさるルイズを無骨なマニュピレーターがとらえようとしたその時
ファッテイのカタパルトランチャーが火を吹きルイズに迫るスコープドッグが少女の目の前で爆散する
「逃げろルイズ!」
「サイト!?!」
なんだこの燃える展開は
( ゚∀゚)彡盗まれた過去♪探し続けて♪
370 :
予感(3):2007/07/21(土) 09:52:06 ID:fsazM7J7
「決裂だ、応戦しろ!」
脱兎のごとく逃げ出しつつ叫ぶレイパード
スコープドッグが発砲を開始すると同時に足裏のバーニアと背部スラスターを吹かし才人のファッテイは滑るように横移動する
ヘビイマシンガンの銃弾は展開についていけず標的のように突っ立っていたもう一機のファッテイを引き裂いた
「サイトーッ!」
「構うな!!」
ロッチナがルイズをシャトルに押し込むと同時にスタンバイしていた操縦手が艦首発射管からミサイルとエネルギー砲を斉射
メインエンジン全開に加え大気圏離脱用の緊急ブースターまで使用して格納庫から飛び出す
「戦闘開始!」
ロッチナの号令一下臨戦体制で待機していたバララント艦隊が襲撃行動を開始
ファッテイと宇宙戦闘機B・FH−14がギルガメス艦隊に向かって突撃していく
「全滅だと?12機のATが3分足らずで…」
コンスコン!コンスコンじゃ(ry
格納庫の戦闘は一方的な展開になっていた
ファッテイのコントロールレバーを握る才人の左手のルーンが輝くと思考が冴え渡り周囲の動きがローギアをかませたように
緩慢に感じられる
感覚が研ぎ澄まされ視界の外の敵の動きまでが手に取るように分かる
“ルーク、フォースに身をゆだねるのだ”
カット!カット!カット!
ガンダールヴの力によってスーパーコンピューターを凌ぐ思考速度と反応速度を得た才人が操るファッテイは行く手を阻む
スコープドッグを射的場の的のように撃破しつつ
オバンデスの艦内深くへ進んでいく
「ダーリンだわ!やっぱり来てくれたのね!!」
営倉に閉じ込められた三人にも次第に近づく戦闘の気配は伝わっていた
「サイトー!こっちだこっち!!」
ギーシュの声に答え鋼鉄のドアが轟音とともに内側に向かって凹む
二度、三度とファッテイの鉄拳を叩きつけると大きく歪んだ扉の隙間に指を突っ込み一気に引き剥がす
「ダ〜リィ〜ン!もう一生ついていくわぁ(はあと)」
熱烈な投げキッスを送るキュルケ
「よく来てくれたなあ〜兄弟ぃ〜」
涙を流しながらファッテイの足に頬ずりするギーシュ
「長居は無用…」
お前淡白だな
( ゚∀゚)彡俺は彷徨う♪見知らぬ町を♪
ペッシ召喚…
小ネタにあったな、あれを長くしたらルイズとペッシの成長物語になりそうだ
首ないけど
373 :
372:2007/07/21(土) 14:29:37 ID:PF+2W4Af
ごめん誤爆した
374 :
予感(4):2007/07/21(土) 22:02:23 ID:fsazM7J7
才人の先導で格納庫に辿り着いた三人は小型艇に乗り込んだ
「いつでもいいわよダーリン!」
操縦席に座り発進準備を整えたキュルケが才人のATに通信回線を繋ぐ
お前宇宙船の操縦できるのかよという突っ込みは全力でスルーする(作者が)
「楽勝だったな」
エンジンを始動させ格納庫から発着場へと自走を始めた小型艇の機関士席でエンジンが正常に作動していることを示す
緑のランプを睨みながらもう脱出したも同然にギーシュがいう
「前…」
タバサの返事に前方へと目をやるとエアロックの手前で二十機を越すスコープドッグが待ち構えていた
「サイトチャンッ!!」
才人を呼ぶ声も思わず裏返ってしまうギーシュ
「すぐ片付ける」
古新聞を片付けるような調子で言うと才人はファッテイをスコープドッグの群れの真っ只中に突入させる
たった一機のバララントATに雨霰と撃ち込まれるヘビィマシンガンとソリッドシューターとペンタトルーパーとロックガン
だが本来は宇宙戦用の装備であるバーニアと突撃ブースターを駆使しスコープドッグを上回る速度でホバリング機動を行う
ファッテイを捕えることが出来ない
必中を期して放たれた銃弾が魔法のように躱されたと思ったときにはファッテイのハンディロケットランチャーから放たれた
砲弾がスコープドッグを血と肉片と鉄屑を突き混ぜたジャンクへと変えている
才人の援護によって無事オバンデスから脱出した小型艇は後衛を才人にまかせ一目散にバララント艦隊を目指した
「姫様、あれを!」
王宮の自室に篭りバララント軍との交渉に頭を悩ませていたアンリエッタは恐らくは生まれて初めて聞くであろうマザリーニ枢機卿の
心底狼狽した声にバルコニーに出てみると言葉を失った
地平線の彼方が見たこともない極彩色の輝き−そこに才人がいればオーロラみたいだと言っただろう−を放っている
「あれは…聖地の方角ですか?」
やっとのことで震える声を絞り出したアンリエッタの見守る前で光はひときわ強烈に輝くと百万の雷を集めたかのような
巨大な光球を空に向かって打ち上げた
「一体何が、何が起こっているのですか…?」
同じころ衛星軌道上の才人もスコープドッグや宇宙戦闘機と戦いながらいいようの無い胸騒ぎを覚えていた
(おれの体のどこかに、何かが感じられた。予感。そうだ、俺だけが知る闇からの予感だ。そしてあの恐ろしいことが起こったのだ…)
装甲騎兵ボトムズ第46話「予感」のメインキャラを「ゼロ魔」キャラに置き換えただけのクロスオーバーとも言えない作品
銀様やかなみタンの新作が投下されるまでの繋ぎとして投下した
当然のごとく続編など無い
GJ!いまいち食指の動かなかったボトムズに俄然興味が
出てきた。ってかもう借りてきたw
ぬ
る
ぽ
ガッ
あの作品のキャラが〜に銀様SSの中の人がついさっき来ていたようだ
ぬるぽガッはただスレ消費して
るだけっぽいからやめてほしい
ぽよ by宇宙警察
が〜ん!まだ新作は投稿されてなか
ったのね〜
381 :
ジャンクの人:2007/07/22(日) 18:55:27 ID:RhUAe98I
申し訳ない!ちょっと今週時間がとれずに執筆が進んでないんです!
本日中の投下はかなりキツいのでもう少しお待ちいただきたい!
週一更新とか言いながらで本当にごめんなさい!
俺はいつまでも待ってる!
これがじらしプレイと考えれば逆に良いw
なぁに、ベイダースレで免疫はついているw
わたっし まーつわー いつまでもまーつわー
ぬるぽしてガッのスレはこちらですか?
じっくり待たせて貰おうか。
388 :
ゼロのミーディアム:2007/07/23(月) 23:22:08 ID:57jyMhnZ
ちょっとだけ書き上がった…2330投下します
誰かいますか〜?
389 :
ゼロのミーディアム:2007/07/23(月) 23:30:36 ID:57jyMhnZ
水銀燈のフィールド、暗き廃墟の中にある広場。その一角に不自然にかけられた鏡に映ったのはnのフィールドに潜みし兎のクラウン、ラプラスの魔…
「ふう…ようやくお会いすることができましたよ」
やれやれと言わんばかり右手を額に当てながらうやうやしく首を振りラプラスの魔がつぶやく
そしてシルクハットをかぶり直すと水銀燈に向き直った
「ふん…珍しい事もあるものねぇ。道化者の悪戯ウサギが私を探しているなんてぇ…
で、私に何の用なの?くだらないこと言うようならその皮ひん剥かれる事になるわよぉ?」
水銀燈の物騒な物言いにクックックと含み笑いをするラプラス
「これは手厳しい…。せっかく貴女にとって重大とも言える事をお伝えするために馳せ参じたものを…」
「重大?信じられないわねぇ。貴方と関わって起こることと言えば大抵はろくでもない厄介事ばかり…
本当に皮剥いじゃおうかしらぁ?知ってる?皮を剥かれた肌には塩水がよぉく効くのよぉ?」
妖艶な笑みを浮かべ水銀燈が言った
「フフ‥‥貴女の口から因幡の白兎とは趣深い‥私をかのエンシェントデューパー(古代の詐欺師)に例えて頂けるのは光栄の至り
…ですが残念ながら今回ばかりは何の含みもありませんよ…」
「ならばさっさと要件を言うのね。信用はしないけど」
「アリスゲーム」
「!!」
その言葉を聞いたとたんに水銀燈がその瞳を鋭く細めた
「そう、始まるのね…この地でアリスゲームが…」
だが…水銀燈のつぶやきにラプラスが返した言葉は彼女には全く予測できないものだった
「アリスゲームは…始まりません」
390 :
ゼロのミーディアム:2007/07/23(月) 23:32:53 ID:57jyMhnZ
「…なんですって?」
水銀燈が聞き返す。ラプラスの言っている事はひどく単純。それでもあまりの予期せぬ一言に彼女の理解が追いつかなかった
「今言った通りですよ。レディ?アリスゲームは始まりません
…このままでは永遠に」
何の感情も読めぬ表情でラプラスは答える
事の重大さとは裏腹にラプラスのその淡々とした言いように水銀燈の怒りが一瞬で沸点まで上がった
「何を馬鹿な!くだらない冗談も休み休みに言いなさい!八つ裂きにされたいの!?」
だが水銀燈の怒声を気にもかけずラプラスは語り始めた
「…前回の戦いも結局決着がつかずあなた方姉妹達は眠りにつくことになる…
そして幾多の月日が経ち再び目覚めの時を迎える事となった…」
「突然何を…!」
「まずは静聴願いましょう
…それぞれ己のミーディアムを得るべく散らばりゆく薔薇乙女達。だがそこに思わぬアクシデントが起こります
…姉妹の一人の行方が完全に消失したのです。演劇の主役たる姉妹達に一人でも欠員がでてしまえばアリスゲームの続行は不可能…」
「くだらない!そんなことの為にアリスゲームを取りやめるなんて…残りのドールで決着をつければいい物を!」
「本当にそうお思いですかな?」
「当然じゃないのよ!」
「クックック…」
再びラプラスが含み笑いを始める。まるで前にいる水銀燈を小馬鹿にするように
「何が可笑しいッ!!」
「いや、失敬…。ですが貴女ほどの者がお気づきにならないとは…
行方不明となりし姉妹の一人…お心当たりありませんかな?
…例えばこの世界とは全く違う世界へと飛ばされたとすれば…」
「ま、まさか!!」
水銀燈の顔が青ざめた
「ようやく気付かれたようだ…。突然姿の消えた少女。どれだけ我々の世界を探しても見つからないはずです…
何故なら彼女は我々とは違う世界、異界へと降り立ちそこで新たなミーディアムを得てしまったのだから…
そう、貴女の事なのですよ!黒薔薇のローゼンメイデン!!」
「!!」
ラプラスから放たれた衝撃的な言葉に水銀燈は絶句するしかなかった…
391 :
ゼロのミーディアム:2007/07/23(月) 23:34:31 ID:57jyMhnZ
驚愕の表情を浮かべ固まる水銀燈にラプラスが言った
「たしかに『このまま』ではアリスゲームは始まりません
…もっとも、貴女がこちらに戻ってくれば別ですがね」
そして救いの船を出したかに見えた
「戻る…戻るわ!元の世界に!!」
水銀燈がすかさずそれに飛びつく
彼女は忘れていた。目の前の兎が救いをもたらすような善人等では無いという事に
…むしろラプラスがいる場所はその対極
「ほぅ?それは彼女を捨ててですか?」
ニヤリと口元を歪ませ意地悪くラプラスは言った。そして彼の隣に映る桃色のブロンドの髪をした少女…その表情はどこか悲しげだ
「ル、ルイズ…」
「安心して下さって結構。これは彼女の幻影に過ぎない
…だが今一度お聞きしよう。彼女を裏切ってこちらに戻ると言うのですね?貴女は!」
「そ、それは…」
ローゼンメイデンとして生まれた水銀燈の存在意義
それはアリスゲームを制し完全な少女『アリス』となりお父様…すなわち創造主ローゼンに合うこと
ルイズとはただたまたま巡り会い契約を結んだミーディアムに過ぎない
ローゼンとルイズ。どちらを取るべきかは言うまでもないはず。だが…
「……」
水銀燈はラプラスの問いに答えることができなかった
「どうなさいました?レディ?」
そんな言葉も水銀燈には聞こえていない
薔薇乙女として生まれた宿命。ルイズを捨ててでも元の世界に帰り、アリスゲームに復帰するのが正しいと言うのが彼女の本心
だが…ほんの数日しか共に過ごしただけのミーディアム
出会い…そして予期せぬ二重の契約・ゼロとジャンク…似た悩みによる葛藤・ギーシュとの決闘で近づいた心・まるで友人のように遊び歩いた城下町
それらが水銀燈の心に思い起こされる
だがラプラスはそんな心中を知る由も…否、知った上で言い放つ
「黙っているだけではわかりません。さあ、答えていただきましょう、
『帰りますか?』 『帰りませんか?』!!」
苦悩する水銀燈に催促するかのように問うラプラス
「私は…私は!!」
水銀燈は顔を俯き苛立つように言うが答えは出てこない
するとラプラスはシルクハットを目深にかぶり視線を隠しながら言った
「…まあいいでしょう。どの道私には貴女をこちらに呼び戻す術がないのですから…」
「な…に…?」
俯いた顔を上げラプラスに尋ねる
392 :
ゼロのミーディアム:2007/07/23(月) 23:36:43 ID:57jyMhnZ
「貴女を探すため、幾多の扉を開き気が遠くなる程の数の鏡を抜け、ようやく見つけたか細い光、貴女の従者が放つ輝きを辿りここまで来たものの…」
ラプラスが自分と水銀燈を隔てる目の前にある鏡をコンコンと小突く
「最後に立ちはだかりしこの鏡。これをどうしても抜けることができない」
鞄に入って眠っていた水銀燈は知る由もないがこれはルイズのサモン・サーヴァントにより使い魔を呼び出すための鏡であった
「つまり…こちら側に帰るとしても貴女自身でその手段を見つけなければならない」
「そんな…!」
さらなる絶望が水銀燈を襲うがラプラスは続ける
「幸い貴女のお父様はとても慈悲深きお方。貴女が戻らぬ内にアリスゲームを再び始めるという事はないでしょう…」
水銀燈が少しだけ安堵するが…
「ですが…彼は貴女だけのお父上と言う訳ではない…。あまりにも長い間こちらに戻らなかったり…戻るのを諦められた場合は…」
「ど、どうなるのよ!」
「愚問ですな。それは貴女自身が最も御存知のはず!」
ラプラスの言うとおりだ。それは水銀燈本人が知っている事。だが彼女は認めることができなかった、認めたくなかった
だがラプラスはそれを残酷にも言い放つ
「あえて言わせていただきましょう。もしもこちらに戻れなければ貴女はアリスゲームの輪から外され、アリスとなる権利を…貴女のお父様と合う権利を永遠に失う事となる」
それは水銀燈にとって死刑宣告に近いものだった
393 :
ゼロのミーディアム:2007/07/23(月) 23:41:01 ID:57jyMhnZ
「よく考えることです…今貴女がいる場所は『9秒前の白』。
…それが『9秒後の黒』となる前に決断をして頂きたいものですな」
『9秒前の白』とは現実に対し少しだけ後ずさりして立ち止まることができる世界の事
それが『後の黒』となれば…お分かりだろう。もはや取り返しのつかない過ち、それが結果として確定してしまった世界を言う。つまりは…後悔しても遅いと言うことだ
ラプラスは水銀燈に背を向け奥に歩き始めた
「ま、待ちなさい!ラプラスッ!!」
呼び止められたラプラスは水銀燈に顔だけ振り向き別れの言葉を告げる
「願わくば次お会いする時はこちらのnのフィールドで…。それではレディ、ご機嫌よう。よい夢を…」
そしてラプラスの魔は鏡の奥の暗がりへと消えていった
「ラプラスッ!」
鞄が乱暴に開かれ息を荒げた水銀燈が中から出てきた
そこは彼女のフィールドではなくルイズの私室
「今のは…夢…」
夢と言えど彼女達ローゼンメイデンとその他の者ではその認識は違ってくる。ある意味彼女らの見る夢は現実以上に意味を持つ
その証拠に水銀燈の周りを舞う紫色の光…
「ありがとうメイメイ…心配してくれてるのね…」
主の所在を知らせるため水銀燈のフィールドをさ迷っていた彼女の従者、人工精霊のメイメイが水銀燈を気遣うように瞬いた
「よい夢をですって…?」
苦々しくつぶやく水銀燈。先程まで会っていた礼装の兎が目に浮かぶ
「私にとってこれ以上の悪夢は無いわよ…!」
そして彼女は奥のベッドに目を向けた。閉め忘れたカーテンから月明かりが射し眠れる少女の穏やかな寝顔を照らす
ルイズはとても気持ち良さそうに眠っていた
「まったく…人が深刻に悩んでるのに…」
自分をこの世界に呼び出した張本人であるルイズ。言い方は悪いが水銀燈の苦悩の原因となった少女。だが彼女は不思議とルイズを責めようとは思わなかった
だが水銀燈は決断しなければならない。『9秒前の白』が、『9秒後の黒』になる前に…
彼女の脳裏にラプラスの声が反芻された。
『帰りますか?』 『帰りませんか?』
394 :
ゼロのミーディアム・あとがき:2007/07/23(月) 23:46:24 ID:57jyMhnZ
以上です。上記の通り筆が進まず投下の量がガクッと落ちてしまい申し訳ありません
そしてもう一つ。作中の理由のため水銀燈以外の姉妹は残念ながらこの作品の舞台には立ちません
何度か姉妹達の絡みを考えはしたのですが結局まとまらずこのようなことになりました。他のドールズを期待していた方々には残念な結果となりますがご了承下さい。そしてごめんなさい
それでは皆様、良い夢を…
GJ!
なんちゅう選択肢を出すんだ。
ゆっくりやろうぜ。
GJ!
他のドールは出ませんか・・・
確かに下手に勢揃いさせてもゼロ魔関係なく
グダグダになるのが目に見えてるから仕方ないかも。
次も待ってます。
GJゥ!
銀様をゼロ魔世界で惰性で進めてだらけさせないための思いやりと見た
やや展開は慌ただしくなるかも知れないが、gdgdにさせるくらいなら、な
この決断に僕は敬意を表するッ!
乙です。
確かにドールが勢ぞろいしちゃったら、ドールどうしのかけあいがメインになっちゃって
「ゼロの使い魔の世界を舞台にしてるだけであんまりゼロの使い魔のキャラクターとかは関係ない話」
になっちゃう危険もあるかもね。
GJ
古代の素兎にエンシェントデューパー…
確かに彼の兎詐欺と同様、立ちの悪い奴らですね。
>>393 相変わらずGJ! です。
ラプラスが出てくるたあ思いませんでしたぜ。
さて、これが銀様の心にどんな影響をもたらすのか……。
楽しみになってきましたぜ、GJ!!
GJ
寝る前に覗いてよかった!
バイク板常駐でシャア板をたまに覗く程度の俺は
あなたのssのためだけにここに来ている!!
おおおおお。銀様きてたーーーーーー!
GJ
結局帰れないのか。みんなこっちにこいよw
GJ!ラプラスの言葉の数々が実にそれっぽい!そして今後の銀様の葛藤がどうなるのか・・・
続きが楽しみです!
かしらー
なのー
保守
保守なのだわ
保守
どうも皆様…ジャンクです
またまた申し訳ないぃぃぃぃ!!毎週更新とか言っておきながら今週も私事で忙しくって微妙な筆の進み方になってます…
それでも今週中にはなんとか……と言いたいのですが。まだ目処がつかないので大きな口は叩けません
それでもお待ち頂けるのなら頑張って書きたいと思いますのでどうかよろしくお願いします
・追伸
実はもう一つ謝らなければならないことがあります……
先週忙しいなんて行っておきながら浮気して小ネタ一個書いて日頃お世話になってる「あの作品のキャラが〜」スレに投下しました…
「んなもん書く暇あるなら本編書けや!」なんて言われるかもしれませんが、突然の電波受信で思わず…
本編への間に合わせとは言いません。即席で書き上げた駄文ですが読んでくれたら作者が泣いて喜びます
題名つけるのも忘れていたため、まとめで「ルパンの小ネタ」として載せてくれた方にこの場を借りてお礼を申し上げたい!
では皆様……あーばよ、とっつぁーん!!
妙に配役がはまっていてワロタがあれは貴様かー!
気にすることなど何もない、GJゥ!
おまいかよww
確信したっ!ドSだっw!!
あれは笑ったぜ、こっちでGJ!
おまえさまがアレを書いたのか!
面白い作品だったぜ
銀様は道産子かよw
あのルパンと爽やかなワルドはあなたの仕業かwww
あんまり無理はしないで下さい、ゆっくり待たせてもらいます!
ルパン大好きな俺の心を捉えたあの作品はおぬしか!w
銀様も忘れないでねwww
ここで言わせてもらおうGJ!
俺は次の選挙までには北海道に移住するっ!!
はっはっは、こうなる事を見越して既に北海道に居住済みよ。
まさかあのルパンが氏とは思わなかったwでも銀様も忘れないで〜
>>414 銀様の中の人は普通に道産子w
中の人などいない!
酔っ払いが保守!!
いや別に必要無いのは知ってるんだけどさw
北海道ツーリングいきてーーーマジでw
422 :
421:2007/08/02(木) 09:51:33 ID:/gu1TIaF
すいません、誤爆でした…
誤爆の割には流れに沿った書き込みだな
424 :
421:2007/08/02(木) 19:43:19 ID:ZSDxa+cU
いや、俺バイク板住人でさ
連休近いからツーリング関係のスレ見てたんだわ
んで誤爆…
ほす
天日干し
保守
428 :
ゼロのミーディアム:2007/08/06(月) 00:36:35 ID:JsUSJVFB
突然だが投下します!
さてさて、水銀燈がルイズにミーディアムの契約を、ルイズが水銀燈に使い魔の契約を交わして一週間がたった
あの夜の出来事は確かに水銀燈に多大な衝撃を残したが。彼女は至って普通に(文句は言うものの)ルイズの世話を続けてる
水銀燈はこの地でアリスゲームは行われないとは言え契約を破棄しなかった。何故なら彼女がルイズの保護なしにこの見知らぬ異邦の地を生きていくのは難しいからだ
そして……水銀燈はあの夜の事をルイズに知らせていない
彼女らしからぬとお思いだろうが水銀燈はそれを伝えるのをためらっていたのだ
理由?それは彼女にも説明できない。元の世界に帰るのが正しいのだろう、だが……何故かルイズをほっといておけない
そう言う考えを彼女は何度も何度も自問自答した。だがその結論は毎回決まって答えの出ない平行線のまま……
もっとも、とうのルイズは水銀燈がそんな悩みに苦しんでいること等知ることもなく毎日を過ごしている
ただ…最近少しだけ水銀燈の様子がおかしい事に気づいた
それは彼女が買い物に行った虚無の曜日の翌日から、時おりまるで何かを考えるように呆けるようになったこと
無論それは水銀燈の結論の出ることのない自問自答の事。だが困ったことに水銀燈、仕事の最中にも呆けだすことがあるのだ
今朝もそんな1コマから物語は始まる……
薔薇乙女の朝は早い。規則正しい生活、早寝早起きが彼女達の信条。淑女の嗜みとでもいったところか
まあどこかの第1ドールは時々夜に出歩き月夜の散歩と洒落込んだりすることもあるのだが
部屋の片隅にある鞄がガチャリと開き中から黒衣黒翼の少女が出てくる。だがげんなりとした表情の彼女、水銀燈の顔は夢見最悪と言った模様
ちなみに今回彼女が見た夢は。ツナギを来た無駄に男前な顔立ちのルイズがベンチに座り
「私の使い魔を
『やりますか?』 『や ら な い か』」
とニ択を迫ってくる物だった。………え?ニ択?
実に珍妙極まりない夢だが水銀燈の心中、すなわちルイズを捨てられないと言う彼女なりの良心の叱責から来る物なのかもしれない
そんな陰鬱な気分で1日の始まりを迎えた水銀燈だが、作業着とも言えるシエスタからもらったメイド服に着替え始める
正直お父様からいただいたドレス以外の服を着たくはなかったが……
それと共にドレスを少しでも汚したくないと言う事もまた事実。勿体無いと言う理由も付け加え、結局彼女はそれを着ることにしたのだ
なお、シエスタには語頭に「か、勘違いしないでよね!」と付け加えその事をありのままに説明したのだが
とうのシエスタはただ鼻血をダラダラと流しながらうんうん頷くだけだった
一言余計だったらしい。水銀燈の言いたかったことは多分彼女には、伝わって、ない
429 :
ゼロのミーディアム:2007/08/06(月) 00:39:01 ID:JsUSJVFB
(まったく……こんな奇っ怪な夢を見るなんて…私、疲れてるのかしらぁ……?)
そう考えベッドで寝息をたてているルイズに近づく。その寝顔はさっきの夢に出たいい男ではなく愛らしい少女の物
「う〜ん……今こそあんたをぶったおして…過去の落ちこぼれだった私と決別するのよ〜」
だがルイズはその幸せそうな寝顔に反して穏やかでない寝言をぼそぼそとつぶやく
そんな夢の世界を堪能しているルイズに水銀燈が声をかけた
「ルイズ!朝よぉ。起きなさぁい!」
ルイズは「ん……」と小さく声をあげ……
「あの世で私にわび続けろツェルプストーーーーーーーッ!!!!」
突然ガバッと起き上がったかと思いきや、かっ!と目を見開き絶叫した
そしてその後きょろきょろと周りを見回した後にため息をつく
「なんだ…夢だったんだ……あ、水銀燈。おはよ…」
「ええ、おはよう。…ってどんな夢見てるのよぉ…貴女」
「せっかくキュルケのあれに匹敵する物を手に入れたのに……」
残念そうにルイズはつぶやいた
(胸か、胸なのね)とは水銀燈の心中の弁。無論それを口に出せばご飯抜きと言う重罰が下されることが確実であるため黙っておいた
まあ最悪そうなってもシエスタに言えば食事を手配してくれるのだろうが
ゴシゴシと目をこすりルイズはいつものように水銀燈に言った
「したぎ〜」
「はいはい…」
クローゼットの下の棚をしぶしぶ開けて下着を取り出す
(やっぱり解約して帰っちゃおうかしらぁ…でも帰る手段がねぇ……)
彼女の呆け癖が始まったらしい……水銀燈はぼーっと考え事をしながら下着をルイズの頭から着せた
そんな彼女にルイズが声をかける
「ねぇ、水銀燈……」
ルイズの冷ややかな、そして何故かくぐもった声
(……でもなんかほっとけないのよね。少し素直じゃないけど根は悪い子じゃないし。いや、だからと言ってそれでお父様をないがしろには……)
だがその声は水銀燈の耳には入ってなかった。彼女の頭はそれどころではなかったのだ
「水銀燈!」
ルイズは今度は強く、怒気をこめて水銀燈を呼びかける
「え?何かしらぁ?」 我に返った彼女の目に飛び込んできたルイズの顔に水銀燈は唖然とした
もう一度説明させて頂く。水銀燈はぼーっと考え事をしながら下着をルイズの頭から着せた
…下着(パンツ)をルイズの頭から着せた
「……あんたの認識じゃパンツは人の顔に被せる物なの…?」
ヒクヒクと顔を引きつらせながら言うルイズ。パンツの足穴から怒りに満ちた瞳で水銀燈を睨みつける
「あ……」
水銀燈は口を閉ざしぼーっとした表情でルイズを見つめた
「……」
ルイズもまた水銀燈を無言で睨みつける。場は気まずい沈黙に包まれるが……
「…」
「…」
「……」
「……」
「………」
「………」
「…………」
「…………」
「………プッ」
「!!!!!」
その沈黙を破ったのはルイズの間抜けな格好に思わず吹き出してしまった水銀燈
これにはルイズの怒りも極限に達した
「クロスアウッ!」
謎の掛け声と共にルイズは近くの棚から乗馬用の鞭を引っ張り出す
その後「フオオオオォォォォォォ!!!」と言う凄まじい気迫と共にパンツを被ったまま鞭を振り回し追いかけてくるルイズから水銀燈は必死こいて逃げ回る羽目になったとさ……
深刻な悩み事を抱えているのは分からないでもないが呆け癖もほどほどに…水銀燈
430 :
ゼロのミーディアム:2007/08/06(月) 00:42:02 ID:JsUSJVFB
「はぁ、はぁ…と…とにかく、あんたにそうやって…頻繁に呆けられると困るのよ…使い魔の品評会が…近々行われるのに……」
「ぜぇ、ぜぇ…品評…会…?な、何なのよ…それぇ……?」
壮絶な追いかけっこの末、疲れ果てた二人。朝っぱらから全力で走り回って息も絶え絶えだ
ルイズは一つ深呼吸をし水銀燈をビシッと指差して言った
「文字通りよ!二年生進級時に召喚した使い魔を御披露目するの!それで芸とかやってみんなにアピールするのよ!」
「芸って…貴女私をペットか何かと勘違いしてないかしらぁ?」
水銀燈が思いっきりジト目をつくりルイズを睨む。その不機嫌な眼差しに少しルイズがたじろいだ
「べ…別にあんたをペットとは思ってないけど……仕方ないじゃないの……
普通使い魔で出てくるのはハルケギニアに住む生き物であんたの言うペットみたいな物だし…あんたみたいなケース初めてらしいし……」
ルイズは言った通り使い魔とは言え別に彼女をペット扱いしている訳ではない。そのため水銀燈の抗議にちょっと罪悪感を感じた
「でも、私だけ品評会に使い魔を出さないなんて訳にはいかないのよ…お願いだから……」
そして少しうつむき、彼女にしては珍しく申し訳なさそうにそうつぶやいた
「はぁ……仕方ないわねぇ…命令だなんて言ったら即刻突っぱねてたけど……お願いじゃ仕方ないわぁ」
水銀燈もルイズの心情を理解したらしい。少々顔をしかめ渋々了承する
この返答に感極まったルイズは曇った顔を輝かせ水銀燈に抱きついた
「本当?ありがとー!水銀燈ー!」
「ちょ、ちょっとぉ!大袈裟なのよ貴女!」
まんざらでもない水銀燈だが。それと同時に彼女に後ろめたさが芽生える
……何故なら彼女はルイズを捨てて元の世界に帰ることになるかもしれないのだから
水銀燈はブンブンと首を振りその事を一時置いておく。とりあえず今は品評会の話だ
「一つ貸しにするわよぉ?でも何をすればいいのかしら?」
ルイズもそこまでは思いついていなかったらしい。うーんと唸って腕組みして考え始める
「うーん…どうせだから他の使い魔と違ってあんただけにしかできないことを……そうだわ!」
ルイズが何かを閃いた
「あんた歌うまかったわよね?なんか歌いなさい!」
ルイズは自分が錬金に失敗した時、水銀燈がそれを歌いながらからかっていた事を思い出したのだ
「歌?そんなにうまかったかしらぁ?あれが?」
「ええ、腹立つぐらいにね……。でも、あの時のアレ歌ったら…分かってるわよねぇ?」
アレを思い出してルイズはちょっと不機嫌になった
「待ちなさいよぉ。私は別に歌なんて…他にも何か考えられそうな事あるじゃないの」
「え〜。あんたの声聞いてると歌って踊れそうなイメージあるのに〜」
「歌はともかく踊りって何よぉ……まぁ案としては考えといてあげるけど……」
まだ品評会までの時間は十分にある。とりあえずまだ決めつけるには早いと言う事で、この案は保留と言う形をとり今回の品評会の話はおひらきになった
「追いかけっこしたり品評会の話をしてるうちに朝ご飯終わっちゃったじゃないのよ……」
「あら本当。災難ねぇ」
水銀燈が他人ごとのように言う
「誰のせいよ誰の…。もういいわ、私ちょっと早いけど教室に行くわね。後の掃除とかよろしく」
「はいはい、行ってらっゃい……」
ルイズは自分の鞄を取り部屋から出て行く。水銀燈はその後ろ姿を手を振って見送った
431 :
ゼロのミーディアム:2007/08/06(月) 00:46:28 ID:JsUSJVFB
バタンとドアがしまりルイズの足音が遠ざかっていく
「歌、か……」
自分以外誰もいなくなった部屋で水銀燈が一人つぶやく
「そう言えば昔はあの子の歌をよく聞いていたものね……病室の窓から空を見上げながら」
あの子と言うのはずっと昔に水銀燈のミーディアムとなった一人の病弱な少女
病院の一室から聞こえる彼女の歌声が水銀燈は好きだった。目を瞑れば今も少しだけ思い浮かぶ。穏やかな表情で静かに歌うあの子の優しげな表情が
「懐かしいわね、確か…こんな歌だったかしら……?」
瞳を閉じたまま水銀燈は過去の記憶をたどるように小さく静かに歌い始めた
あの時はただ聞いているだけだった歌。それを今度は水銀燈自信が歌っている
水銀燈は歌いながら思う。あの子が聞いたらなんと言うだろうか?今思えば自分はあの子に何もしてやれなかった、
せめてもっと優しくしてあげてれば…自分も一緒に歌ってればあの少女はきっと喜んだ事だろう……
だがそれはもう叶わぬ夢…。月並みな言葉になるが失ってからこそ初めてその存在の大切さを知るとは言ったものだ。水銀燈はそれを痛感していた。今更後悔しても遅いのにだ
遠い記憶を思い起こし、水銀燈の胸の内に郷愁の念が生まれた。アリスゲームを抜きにしてもやはり元の世界に帰りたい。
だが……もしルイズを捨てて帰ってしまえば自分はその事を一生後悔するかもしれない
今、昔のミーディアムを思い、自分が悔いているように……。彼女の中であの少女とルイズが重なった。
もうこんな思いをするのは嫌だ、だが帰らねば自分の存在意義を否定する事になる。ならばどちらを選ぶ?
ルイズか?お父様か?
歌い終わった水銀燈の表情はどこか弱々しく見えた。結果的にこの歌がもたらしたのは更なる葛藤だった。彼女の中で問題への答えが更に遠くなっていくのを感じた
「おでれーた!あんたにんな才能があったたぁな姐さん!」
突然声をかけられて水銀燈が驚く。ルイズがいない今自分以外ここには誰もいないはずなのに
彼女は忘れていた。この部屋に住んでいるルイズと水銀燈意外の住人…いや、住剣(?)の事を
「私とした事がうっかりしてたわぁ…貴方の事を忘れてたなんて」
そう言って彼女の目線は鞄の横に立てかけられた一本の剣に向けられる
「おいおい、そりゃねーぜ!自分の舎弟を忘れるなんてよ〜」
鞘から少しだけ抜かれて。鍔の上の金具をカタカタさせながらそう言うのはインテリジェンスソード、デルフリンガーだった
「別に舎弟にした覚えはないのだけれど…まあいいわぁ、それより恥ずかしいとこ見られちゃったわねぇ……」
「んなこたぁ無いさ。俺は長いこと剣やってるがよ、こんな綺麗な歌聞いたのは初めてだぜ!いや、ホント見事なもんだよ。おめぇもそう思うだろ?娘っ子!」
「娘っ子?」
水銀燈が首を傾げて聞き返した。後ろからするとパチパチと誰かが拍手する音が聞こえてくる。思わずその方向に向き直り見た先にいたのは……
「ええ、見事なものだっわ水銀燈。やっぱり私の目…いや、耳に狂いは無かったようね」
そう言って微笑みながら手をパチパチ叩くルイズの姿
「ルイズ…教室に行ったはずじゃ……。いいえ、それよりいつからそこにいたのよぉ」
恥ずかしいところを見られたとでも思っているのか、水銀燈はルイズから視線をそらす
「ちょっと忘れ物しちゃってね…部屋に戻ってきたらちょうどあんたが歌い始めたとこだったの。
でもあんたの歌、本当によかったわ。これはお世辞抜きでね」
「や、やめなさいよ……そんな事言われたって私は別に……」
水銀燈が頬を朱色にそまらせうつむく。だが背中の黒翼をパタパタさせている様子からして悪い気はしていないようだ
「でもこれで決まり!あんたのこの歌声をもってすればかなりの高評価を得られるはずよ!品評会はいただきね!」
そう言ってルイズがガッツポーズをとるが……
「ルイズ……悪いけどこれは歌えないわ」
水銀燈がどこかばつが悪そうに言った
432 :
ゼロのミーディアム:2007/08/06(月) 00:50:27 ID:JsUSJVFB
「え〜なんでよ〜?」
「それは……とにかくこれは駄目。私にだって色々事情はあるのよ……」
悪く言うつもりは無いが、この歌は自分を惑わせる。更なる悩みを生み出すかもしれない
そして何より、できれば自分の思い出の中でそっとしておきたかった
色々と言いたげなルイズだったが水銀燈のどこか悲痛な面持ちの前に問いただす事をやめた
日頃わがままな所もある彼女だがこういう所に限ってはそれを理解しているのだ
「わかったわ、何か思うところがあるのね……それを強要するのも悪いしね」
仕方がないといった表情だが少しだけ笑ってでルイズはきびすを返す
「でも本当に良い歌だった。恥じる事なんか無いわ、もっと自信もちなさいよ!!」
そう言うとルイズはまたドアの向こうに消えていった
「まったく…別に恥じてる訳ではないのだけど…」
水銀燈が一つため息をはいて呟く
「でも気にかけてもらうと言うのも悪くないわね……」
そしてて少しだけ微笑んだ
「あー勿体ねー勿体ねー。姐さんの歌声なら品評会とやらも優勝できるだろうによ〜」
デルフリンガーが残念そうに言った
「別に優勝なんかいらないわよぉ。それに品評会みたいな大勢の人間に歌を披露するならこういう歌はあまり合わないわ」
「そーなの?俺、剣だからそこんとこよくわからねーんだけどさ」
「そんなものよぉ。アイドルなんかはもっと明るくてノリの良さそうな歌を歌って会場を湧かしたりするらしいわぁ」
「アイドルってなんだ?姐さん?」
デルフリンガーからの質問。どうやらこのハルケギニアの地ではアイドルなんて概念は無いらしい
「えーっとねぇ、どう説明すれば……大勢の人の前で歌ったりするのが仕事の人間の事よ」
「よくわからねーな〜。酒場で歌ったりしてる歌姫みたいなもんか?」
「酒場の歌姫とは違うけど、舞台とかそういった広いとこに人集めて歌ったりするらしいわぁ…」
「オペラみたいなもんか?」
「近いけどなんか違うのよねぇ……オペラよりもっと堅苦しくなくてファンを湧かせたり…」
水銀燈は今一つ自分が説明したいことを伝えられずにいる。デルフも剣でなかったら首を傾げていることだろう
「ああもう!アイドルってのはこういうことするのよ!」
言葉で伝えられなければ実際に見せるしかない
水銀燈の手に黒い羽が集まり星形の板を作り出しそれを頭につけた。どうやらこれ、髪飾りらしい
そして胸に手を当て発声練習
「ゴホン…あー、あー」
いつもの彼女の声より高めの声、俗に言う裏声と言うものだ
そして高らかに声を上げた
「トリステイン魔法学院のみーなさーん!水銀燈で〜す!今日は私達の為に集まってくれて有難う!!」
なんと言う事だ……この人形実にノリノリである。ちょっとハイテンションになっている水銀燈
デルフが唖然としている事にも気づいていない
デルフに口があればポカーンと大口を開けていることだろう。だが水銀燈の暴走は止まらない
「そーれ♪そーれ♪乳酸菌飲料〜♪はいっ!!」
水銀燈はなんだかよくわからない歌を歌いながら奇妙なポーズをとる。多分彼女の脳内ではバックで五色の爆炎が派手に上がっている事だろう。儚かった。故に美しかった
ちなみに水銀燈がとっているポーズ、昔の文献によると『死刑!』と呼ばれる伝説のポージングらしい。
だが、それは悲劇の始まりだった
水銀燈がそのポーズでビシッと指差した先にいたのは一度はここに戻り、そしてまた出て行ったはずの人影
再び部屋に戻ってきたルイズがあんぐりと口を開け無言で立っていた
433 :
ゼロのミーディアム:2007/08/06(月) 00:51:58 ID:JsUSJVFB
「ル、ルイズ…また、なんでここ、に……」
水銀燈から感じられる明らかな動揺。肩をわなわなさせながら途切れ途切れに言う
「えーっと、そ、その……さっきは忘れ物取りに来たんだけど…。あ、あんたの歌声聞いて満足してその事忘れてて……。また取りに戻ってきたんだけど……」
ルイズがそう言いながら水銀燈から顔を逸らして忘れ物の教科書を鞄に入れる
「…」
「…」
「……」
「……」
朝一番以来の気まずい沈黙が再び。だがある意味あの時以上に空気が重い。今度はルイズから口を開いた
「……銀ちゃん連日働き過ぎて疲れてるアル。今日の仕事は免除してあげるからゆっくり休むヨロシ」
どこの国?と言うかどこの星?と言った感じでカタコトに言うルイズ
「水銀燈、今日の仕事は免除。水銀燈、覚えた……」
その瞳からは生気が感じられない。水銀燈もまたカタコトの抑揚の無い声で答えた
「それじゃ、私、授業があるアル。私は別に何も見てないアル。気にすることないアル」
そう言ってルイズは走り去っていく。あと、あるのかないのかどっちなんだ
ルイズが去っていった部屋の中央で、水銀燈の体がまるで糸の切れた操り人形のようにガタリとに崩れた
皮肉な物だ、彼女は操り糸を必要としない自立式の人形なのに
「お、おい…姐さん?」
デルフリンガーの心配そうな声も彼女の耳には入らないそして……
「いっそ殺してぇぇぇぇぇ!!」
水銀燈の魂の叫びが、部屋にかけられたサイレントの魔法すらぶち抜き学院内に響き渡った
尚、これがトラウマとなり水銀燈とルイズは品評会で歌を披露するのを断念したことを追記しておこう
434 :
ゼロのミーディアム・あとがき:2007/08/06(月) 00:56:12 ID:JsUSJVFB
皆様、お待たせしました。ようやく書き上がり御披露目となりましたがストーリーはぜんっぜん進んでません!
この駄文を読んでくれる皆様とその応援が何よりの喜び!まだ少し忙しいですが頑張って続きを書きたいです!
では皆さんお休みなさい!よい夢を!!
ちょw神楽自重w
GJ
銀様に俺の乳酸菌飲ませてあげたい
中世編といいプラントの歌姫といい何処まで俺のツボを突くんだあんたは
GJ
GJ。
しかしこの二人のコンビを見ていると和むな、癒される。
当の二人にはトラウマ刻まれたみたいだがw
GJ!中盤の歌の話はいいのに、前編後編のサンドイッチで台無しwww
銀ちゃん+釘宮=神楽
なんだこの見事な方程式
ライブアライブと変態仮面ネタに吹いたw
見ていない間に銀様いつも来るから困る。
乳酸菌の歌で優勝だあああああああ!
GJ!
見てはいないだろうけどそれを承知で一言言いたい。
銀様の作者さんあの作品のキャラがルイズに召喚されましたのスレに
来てもいいんじゃないだろうか。せっかくの良作なんだし。別にスレ違いでも
ないですから。よかったらですけど。
>>444 元々は別の板の別のスレの作品だしなぁ。
それに、あっちがこっちに追い出したりした事例も有ったような気がするぞ。
>>445 んなことあったか?
あそこはアニメだろうがゲームだろうが何でもありの状況だからここに追い出されるような作品はなかったと思うが
ジョジョキャラ召喚したやつがジョジョスレに誘導されたくらいだが、あれは専門スレがあったからだし
ちなみに俺は下手にスレ移ると読者が混乱するからここで続けた方がいいと思う
私もここで続けて欲しい
最終的には職人さんが決めることだと思うけど
個人的にはここで続けて欲しい、あっちは流れ早すぎて
追いつくだけで一苦労…ここが埋まってから移動なら
まだまだ理解できる
あっちのWikiでまとめて読めるから別にどっちのスレでもいい
こっちでのんびり続けて欲しいなあ……
どっちにいってもついていくぜ!
作者さんの好きなようにしてほしいな。
俺もこっちでのんびりやってほしい
453 :
ジャンク:2007/08/15(水) 09:56:52 ID:yA3G5SQQ
しゃーっ!やっと仕事から戻って短いけど休暇に入れた!
色々あったけど私は元気です。近いうちに続きを投下できるように頑張ります!
よし!言ったからにはこれでもう後には退けない!!
クールビズ待機してるぜ
ゼロミーさんあいとあいとー!
>>446 すんごい遅いけど、追い出したというと例の真性のことかな。
このスレに追い出した訳じゃないけど
突然ですけど投下しますね
「なんだか幸先の悪い1日の始まりねぇ……」
げんなりした顔で食堂裏に続く廊下を進む水銀燈。
しかしそれも朝っぱらからルイズ追いかけまわされたり、恥ずかしいところを見られたりと散々な有り様で本日のスタートを迎えたのだから無理は無い。
彼女は今日は厄日かしらぁ…と小さくつぶやく。
もっとも、そのおかげで本日は仕事は免除され1日OFFをいただけた訳だから一概にそうとは言いきれないだろう。
人間万事塞翁が馬とは言ったもの。まあ水銀燈は人間じゃなくて精巧な生きたアンティークドールなんですけどね、ハイ。
食堂裏に向かう理由は無論、朝のゴタゴタの所為で摂れなかった朝食を摂るため。ルイズには悪いが水銀燈にはシエスタに食事を頼むと言う裏技があるのだ。
「おはよう、シエスタはいるかしら?」
しかし厨房の入り口から入ってきた水銀燈を出迎えたのはで日ごろ世話になっているメイドではなく、
テーブルの上に山盛りになってる野菜…いや、なんだか草の様な物。
「なんだか青臭い…何よこれぇ…」
水銀燈が顔をしかめた
すごい量だ。大皿に山盛りになったそれはそこらじゅうに青臭く、苦い臭いを撒き散らしていた
「あ、水銀燈。おはよございます」
そこにようやく見知った顔が現れる。黒髪にカチューシャをつけたメイドが水銀燈に声をかけた
「シエスタ!なんなのよこれぇ!」
顔をしかめたまま水銀燈が抗議した。とうのシエスタはあはは…と困った顔で苦笑い
「よくぞ聞いてくれた!『我らの天使』!!」
それに答えたのは厨房の奥からひょっこり現れた太った親父。彼こそがこの魔法学院厨房の主たるコック長、マルトー親父。
『我らの天使』と言うのは勿論水銀燈の事。そう呼ばれる経緯は言うまでもないだろうが
要約すると水銀燈が貴族たるギーシュを決闘で一泡ふかせた事に感動したと言ったとこか
話を元に戻そうマルトーがその草っぽいものについて熱弁し始めた
「こいつぁな、はしばみ草で作ったサラダだ!」
「ハシバミソウ?」
水銀燈が聞き返す
「ああ!はしばみ草ってのは栄養価が高くて健康にはもってこいの食材でな、不本意だが貴族共の体を考えて今日の朝食で出してやったんだがよ…」
マルトーがドン!とテーブルを叩く
「どいつもこいつも俺が丹誠込めて作ったこのサラダを残しやがる!ちょっと苦いからってなんだ!!あいつらには食い物への感謝ってのがねぇのか?おい!」
「…そんなに苦いの?」
「食べてみればわかりますよ?」
シエスタからフォークを渡された水銀燈。山盛りになったはしばみ草の皿から一口失敬
「うっ……」
マルトーの調理の腕は確かである。苦味はそこそこ抑えられているはずだが…それでも強い苦味が水銀燈の口に広がりその顔を引きつらせる
「これは…」
水銀燈が口を噤んだ。マルトーの言うことはもっともだがこれを出された貴族達の気持ちもわからなくもない
「それだけじゃねぇ!今日はさらに町から仕入れた珍しい食材も出してやったのによ!見てくれ『我らの天使』!」
「珍しい食材?」
マルトーが厨房の隅っこを指差した
水銀燈が目をやった先にあったのは大きめの鍋に入った白いどろりとした液体
「これは…ヨーグルト!」
それは先週町に出た際ルイズと一緒に食べてその酸っぱさに驚愕した水銀燈のソウルフード、乳酸菌もといヨーグルト。
「こいつもだ!こいつも酸っぱさ抑えて少しは甘めに味付けして食いやすくしてやったのに!」
マルトーは健康を害さない程度に砂糖を入れたべやすくして出したが彼らはこれも受け付けなかったらしい。
水銀燈はこれも一口貰う。甘すぎずも、酸味を抑えた味付けに彼女は感心しマルトーの仕事を高く評価したが、同時にそれを認めぬ貴族達に落胆した
「悲しいわね、この食材と調理法は見事な物なのにそれを理解できないなんて…」
「私も同感」
不意に水銀燈の後ろからか細い声で何者かが同意した。
賢明な皆様なら「はしばみ草」というキーワードを聞いた時点でピンと来ただろう。
はしばみ草の影に彼女の姿あり、
どこぞの猫型ロボットのどら焼き・奇天烈なサムライロボのコロッケ・ポパイのほうれん草・雛苺のうにゅー
……そして水銀燈の乳酸菌に並ぶ『彼女』のはしばみ草
458 :
ゼロのミーディアム:2007/08/19(日) 00:46:54 ID:dfQX3uOM
水銀燈の後ろに立っていたのは青みかがった髪にブルーの瞳を眼鏡の奥に光らせた小柄な少女
「ミス・タバサ!よく来てくれました!」
シエスタがその少女を出迎えた
「はしばみ草を理解してもらうため」
タバサは短くそれだけをつぶやく。水銀燈はその淡々とした物言いと感情の読めぬ表情にどことなく、かつて対峙した偽りの薔薇乙女を思い出した
「よくぞ来てくれた!嬢ちゃん!」
マルトーも彼女を歓迎する
「俺のはしばみ草のサラダをうまそうに食ってくれるのはあんただけだぜ!あんただけは貴族の鏡だ!」
「美味しいのに…」
タバサは寂しげにつぶやき置いてあったフォークを取りはしばみ草の山から一口とって口に運ぶ
「タバサ嬢にも来てもらったのは他でもねぇ。どうすりゃあのボンボン共にこのはしばみ草やヨーグルトを食わせられるかを話し合うためだ!
『我らの天使』!おめぇさんも参加していきな!」
マルトーが言った。えーと、つまり…トリステイン魔法学院給食委員会?
水銀燈が内心でため息をつく。
(私、また厄介事にまきこまれたのぉ…?)
議題はたった今マルトーが言った通り。『アルヴィーズの食堂』の長机にマルトー以下調理場で働くコック及びメイド、そしてマルトーの横に水銀燈とタバサが並んで座っている
会議は始まるも早速難航していた。食事を残した奴にペナルティをつけるだの。全部食べなきゃ外に出さないだの、いっそ出す食事は三食全部はしばみ草とヨーグルトにするだのと
過激な意見が出るがそんなこと強行すれば報復として魔法の雨あられが降りかかることは必至
やはり味を良くして食べさせるしかないと言うのが最初の結論。しかし片やあまりの苦味故に、他の食材の味を殺しかねないはしばみ草。片や最近作られ、まだ調理法の確立されていないヨーグルト。
前者はそれ故にサラダぐらいしか食べる手段が無く、後者はまだまだ研究が必要で調理法の確立に時間を要する。
話し合いは困難を極めてた。
そこにかかる鶴の一声ならぬ鴉の…ゲフン!ゲフン!あー、天使の一声
水銀燈がとんでもない意見を出した
「逆転ホームラーン!ヨーグルトとはしばみ草を混ぜちゃえばいいのよ!!」
それは逆転ホームランもとい逆転ほむーらーん
アロエヨーグルトと言う物がある。アロエの葉肉のシロップ漬けを加糖したヨーグルトに混ぜた食品。
水銀燈が思い浮かべたのはまさにそれだ。
「苦いアロエにヨーグルトが合うのだからはしばみ草だって合うに決まってるわぁ!」
とは彼女の弁。だが…考えてみればアロエとはしばみ草は全く別物。
マルトーが懸命にその腕を振るい出来るだけの調理しているが彼の腕をもってしてもうまくいくかどうか…
マイナスとマイナスを足してもプラスにはならない。水銀燈はそれを考えていなかった
かくして皆の前に出された緑と白の混じったなんだかドロドロした一品のデザート。とは言うものの見た目は悪くない。
少なくとも貴族達も見ただけ手をつけないと言う事は少なくなりそうだ
問題は味だが…水銀燈、マルトー、タバサ、シエスタ以下コックとメイド達がスプーンで一口それをすくい口に運んだ
次の瞬間皆の口から何かを噴き出した。やっぱり失敗だったか。アチャー…
「うーまーいーぞー!」
皆さんの口から光の柱が噴き出したような幻覚を見たような気がした
…え?本当に?成功?マジっすか!?
マイナスとマイナスは足してもマイナス。しかし、マイナスとマイナスはかければプラスとなるのだ!
はしばみ草を蜂蜜のシロップに漬け健康的な甘みを加え、それをヨーグルトへ。
ヨーグルトの酸味がはしばみ草の苦味を緩和し酸味をはしばみ草に漬けられたシロップで抑えると言う奇跡的なバランス!!
イチゴにミルク・生ハムにメロン(僕はあんまり好きじゃないです)・バターに醤油・ギースにしょうゆ(名曲)
に並ぶ新たな食材の組み合わせ(以上、筆者の独断と偏見)が誕生した…
!その名もはしばみヨーグルト!!
459 :
ゼロのミーディアム:2007/08/19(日) 00:49:11 ID:dfQX3uOM
「すごいです水銀燈!まさかヨーグルトとはしばみ草がこんなにあうなんて!」
シエスタが目を輝かせた
「ま、まあ私にかかればざっとこんなところよぉ!」
実は適当な事言っただけで正直自信は無かった水銀燈。だが成果は上々。つまり結果オーライ
「やっぱおめぇは『我らの天使』!食堂に舞い降りた天使だぜ!」
マルトーがバシバシと水銀燈の背中を叩きガッハッハと豪快に笑う。あと食堂に舞い降りた天使とか地味にカッコ悪い
「ちょ、ちょっとぉ!痛い!痛いってば!」
コック、メイド達が集まり水銀燈を中心に集まり彼女をもみくちゃにすると胴上げを始めた
「水銀燈ワッショイ!水銀燈ワッショイ!」
いや、いくらなんでも、やりすぎ
「や、やっぱり…今日は厄日だわ……」
ようやく地上に下ろされフラフラしている水銀燈。そんな彼女に迫る最後の刺客。
スッと水銀燈の前に表れたのは青い髪に眼鏡をかけた仏頂面の少女。
タバサはがっちりと水銀燈の両手をがっしり掴み握手をするとブンブンと大きく腕を振る
「恩人」
そして表情を変えずに短くつぶやいた。
彼女も喜んでいるようだ。よく見ると口元がほんの少しだけ緩んでいる
はしばみ草を万人に薦められる打開策を閃いた恩人と言ったところなのだろうか?
ここに水銀燈とタバサの奇妙な(それも微妙に一方的な)友情が誕生した。
そして満足したのかタバサは杖を持つとスタスタと歩いて厨房を出て行った。
460 :
ゼロのミーディアム:2007/08/19(日) 00:51:13 ID:dfQX3uOM
「まあお腹は膨れたから結果はいいとして…あ、」
自分の食欲が満たされ思考にも余裕が出来た水銀燈。現在朝食を摂らずに腹ぺこで授業を受けているであろうルイズの事を思い出した
…ん〜?では今まで会議に参加してたタバサの授業は?とりあえずそれは置いておこう
(朝食を採れなかった原因の一端は私にもあるのよねぇ…)
もうすぐ休み時間。少し軽めの食べ物を彼女に差し入れしようかと水銀燈は考えた
しかしハッと我に返ると首をブンブンと横に振る
(い、いえ!朝は別に私が悪いとは思わないわよ!
でもここで恩を売っとけば後々良い事ありそうよねぇ!べ、別に本当はあの子がお腹空かせてても何とも思わないけど!)否定するのは原因の方ですか、どうやら差し入れ作戦は決行するらしい。水銀燈はシエスタに一つ頼み事をした
「シエスタ。短い時間…休み時間にでも食べれるような、何か軽めの物作って貰えるかしら?」
「はい?お弁当ですか?」
そんなお願いにシエスタが首を傾げて聞き返す
「違うわ。ルイズへの差し入れよ」
「はぁ…ミス・ヴァリエールへの差し入れですか」
「色々あってあの子、今朝の朝食摂れなかったのよ」
「色々あったって?」
「何があったかは聞かないで頂戴…」
水銀燈が恥ずかしそうにそっぽを向いて言った。
シエスタは余計な詮索はせずにそれを了承する
「わかりました。サンドイッチでいいですか?」
「ええ。助かるわぁ」
シエスタが厨房の奥へと消えしばらくすると片手に小さめのランチパックを持って戻ってきた
「こんな感じでどうでしょう?」
箱の蓋を開けると一口サイズのサンドイッチが小綺麗に並んでいる
「ええ。ありがと、上出来よ」
シエスタが箱に蓋をし水銀燈に手渡した。
「仲がいいんですね」
「べ、別にそう言う訳じゃないわよ…でもたまにはこんな気まぐれもあっていいじゃない!」
シエスタに言われ言葉を濁して答える水銀燈。
貰うものもらったら踵を返しそそくさと食堂を出ていく。
シエスタは翼をはためかせて去っていくその姿を微笑みながら見送った
「本当、素直じゃないなぁ…ご主人様と同じで…」
461 :
ゼロのミーディアム:2007/08/19(日) 00:55:46 ID:dfQX3uOM
ここはたった今授業が終わり休み時間になった教室。机にぐたーっとしているのは空きっ腹のルイズ。
「あうー、お腹空いた〜」
頭があまり回らないらしく、その目は虚ろで焦点が定まっていない。
そんな彼女がぼーっと宙を見上げていると黒い翼を生やした小柄なメイドさんが目に映った
「ああ…とうとうお迎えが着たようね…まさか天からの使いの正体がメイドさんだったなんて…天使の翼って本当は黒いのね…。
お父様、お母様、エレオノール姉様…は別にいいや……。ちい姉様、あなたより先だつ妹の不幸をお許し下さい…」
そう言って胸の前で手を握り祈るようにつぶやくと、ガクッと机に突っ伏した。実に大袈裟なことだ。たった一食抜いたぐらいで…
「あら残念。天に召されたのなら…この差し入れは必要無いわよねぇ…
せっかくサンドイッチ作ってもらったのに……」
そんなルイズの目の前にちらつかせたランチボックスを遠ざけ背を向け立ち去ろうとする水銀燈。
しかし突如彼女の足をガシッと掴む腕。思わずビクッ!として振り向いた水銀燈の見たのは幽鬼のごとくギギギ…と面を上げたルイズの顔
「差し入れ…?サンドイッチ…!?」
鬼気迫る表情で瞳を見開き言うルイズ。
ちょっとしたホラーだ、普通に…いや、とっても怖い。
こんなのが真夜中の暗い部屋のド真ん中にいたり、テレビの中から這い出てきたりしたらお茶漏らしそうだ。
「そ、そんなに切羽詰まってたの?」
水銀燈はそのルイズの姿に肝をつぶしながらもボックスを差し出した
「ああ、生き返るわ!」
ルイズがサンドイッチを頬張りながら言った。
「本当に生き返った、もとい蘇え…いえ、黄泉帰ったみたいねぇ…」
ルイズの横に座った水銀燈が机にほおずえをついて呆れたように言う。
だがルイズのその幸せそうな様に少しだけ彼女の口に笑みが漏れていた。
実にほほえましい光景だ。他の生徒達もそれを
(生)暖かく見守っている
一人の生徒がからかい半分でルイズを茶化した
「ルイズ!お前まるで弁当忘れてお母さんに持ってきてもった……」
しかしそれもヒュッと言う風切り音と共に飛んできた何かに遮られる
彼の頬の薄皮一枚を切って後ろの壁に突き刺さる黒い羽。
「……今、何と言ったのかしら?」
水銀燈がニッコリと笑いかけて聞いた。
怒っているらしい…人間なら笑いながらこめかみに青スジ浮かばせてピクピクさせている所なのだろうが、
生憎と人形たる彼女に血管なんて物は無いため純粋な笑みを彼に向けている。その爽やかな天使の微笑みが逆に恐い
「たしかお母…」
「お、お姉様です!ハイッ!」
水銀燈の声を遮って生徒が光の早さで言い直す。
「まるでお弁当忘れたドジっ娘にわざわざ届けにきたお姉様のようです!
ミス・ヴァリエールの使い魔たる貴方は使い魔の鏡です!」
そして脂汗をだらだら流しながら必死で弁解した。
「水銀燈、そのくらいにしてあげなさいよ」
食った食ったと言わんばかりにお腹をさすりながら言うルイズ
水銀燈は口元に手を当てクスクスと笑い
「フフ…ちょっとした冗談よぉ。でも貴方もレディに対する言葉には気をつけるのね」
生徒にそう注意した。冗談にしては少し質が悪い。
「本当は半分本気だったんじゃないの?」
ルイズが笑いながら言う
「貴女は一端のレディが母親呼ばわりさて黙っていられると思って?」
「冗談!私なら魔法で吹き飛ばしてるわ!」
そんな二人の会話に周りの生徒達も楽しげに笑っていた
「だってよ!御主人様の方じゃなくてよかったな!」
「ああ、ルイズのアレは威力にムラがあるからな。本人が手加減してるつもりでも木っ端微塵にされちゃかなわないぜ」
「失礼ね!なんなら試してあげよっか?手加減はしないけど」
「ルイズ!自重なさい!」
そんな微笑ましいやりとりを見て人だかりはさらに湧き、笑い声は絶えない。なんだかんだ言ってこのコンビ、いい感じだ。
462 :
ゼロのミーディアム:2007/08/19(日) 00:59:10 ID:dfQX3uOM
そんなルイズと水銀燈の周りに集まる人だかりを見つめる一人の女性
燃えるような赤い髪に褐色の肌、グラマスなボディが悩ましい通称『微熱』のキュルケ
彼女はあまり興味無さげにそちらの方を一別していたがその視界に水銀燈が入った瞬間、その口元をニヤリと歪めた。
水銀燈が何か負の念のような類を感じ、キュルケの方を見たがもう彼女はそちらを向くことなく他の男子生徒とお喋りしていた。
水銀燈が瞳を細める。
(気のせいかしら…?なんだかあっちから不穏な視線を感じたのだけれど…?)
「どうしたの水銀燈?急に怖い顔しちゃって。乳酸菌とってるぅ?なんちゃって!」
そんな水銀燈にルイズが半分心配、半分からかって尋ねた
「何でもないわぁ。って、人の決め台詞とらないでよ!」
「アレって決め台詞だったの!?」
ルイズのおかげでうやむやになってしまったが、水銀燈の勘は正しい。しかし気づくのが少し遅かった。
水銀燈を見つめていたキュルケの瞳には不穏かつ危険な光が宿っていたことを、彼女は知らない。
キュルケが一体なにを考えているのか……それを水銀燈が知るのはもう少し先の話となる。
463 :
ゼロのミーディアム・あとがき:2007/08/19(日) 01:00:36 ID:dfQX3uOM
あれ〜?おかしいな〜?今回の話で品評会→フーケ襲撃までやる筈だったのに…
原作と比較すると寄り道ばっかでストーリー進まないなぁ……
ま、続きはあらかた頭の中にあるので、そこまでお待たせする事無く次回に続(けられればいいなぁ)くはずですので。いやはや
あとはしばみヨーグルトはタバサとの出会いのために作ったまったくのデタラメなので…
真似してぢごく見ても責任とれませんのであしからず……
・移籍の件について
とりあえずこのスレが終わるまではここで続けられればと思っています。もしもこのスレが終了してあちらさんがOK出して頂ければ…
迷惑かもしれないけど「あのキャラがルイズに〜」スレさんで書いてみたいなとも思ってみたり…
もっともまたまた先になりそうですけど。
この続きは本スレ終了前にでも……
では皆さん、明日(主に三日目)に備えてお休みなさい!!
GJです。
スレはまだ半分も残っているしゆっくり頑張ってください。
三日目は地方在住にはあまり関係がないのですよ、おやすみなさいませ。
GJゥ!
むしろ本編と関係の無い日常編をどれだけ
自然に書き連ねられるかが二次SSの醍醐味でしょう
ということではしばみヨーグルトが食べたいです…
進行度なぞ気にせずまったりやってくださいな。
かつて、ほうれん草の雪解けというほうれん草のおひたしにヨーグルトをあえて炒めた給食があってな
その臭さはまさに味の万博やでぇ〜って感じでとにかく食えたもんじゃなかった
>>466 その乳酸菌はあきらかに死んでるですぅ……
いつの間に投下されていて困るな。
GJ!!!!我らの銀様はやっぱり可憐だ。
ちょっと銀様胴上げしてくる。
469 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/20(月) 10:15:36 ID:xDWDTRhe
age
470 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/21(火) 01:26:21 ID:Hp9v9u9A
age
寝る前に一つ質問したい。
某スレでクーガーがハルケギニアに召喚されるSSがフルボッコにされていたが
こっちならOKなのだろうか?
472 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/22(水) 06:10:25 ID:yXuEhOiA
いんじゃね
まあどう考えても一人だよな
基地外っぽいので皆触るのを嫌がってスルーしてただけ
ぶっちゃけ今なら某スレに投下しても問題ないと思う
上の方にあるかなみSSの人も煽り喰らったんだっけ?
保守なのー
翠と蒼ならタバサの母を救えるだろうか?
ここって、ゼロの使い魔関連以外もいいの。
今何か考えているのだが。
別にゼロ魔限定ではない。
今はそれしかないからゼロ魔の話が多くなってる。
ここって、ゼロの使い魔関連以外もいいの。
今何か考えているのだが。
(たぶん)アニキャラであればおkなんだぜ!
アニメ同士じゃないとダメ?
「待ちなさいルージーッ!」
「誤解だよミィ!」
「うるさいうるさいうるさいっ!コトナだけでなくあんなオバサンにまでデレデレしてーっ!」
当人にとっては必死だが傍から見ている限り初々しいカップルの痴話喧嘩としか思えない少年
少女の追いかけっこを見てランバ・ラルは苦笑した
「あまり子供をからかうものではないぞハモン」
「腕利きのゾイド乗りと聞いていたのでもっと年のいった子かと思っていたらあんまり可愛かった
のでつい…」
ラルに窘められ仇っぽい笑顔を見せるハモン
コトナさえ“小娘”に感じさせる圧倒的な人妻オーラにウブなルージがボーっとなるのもある意味
不可抗力である
「ここにおられましたかラル殿」
「おお、ダ・ジン殿か」
ラルとハモンの前に現れたキダ藩の重鎮はまもなく軍議が始まることを告げた
「では、行ってくる」
「本当に討伐軍に参加なさるのですか?」
「どうやってこの世界に飛ばされたのか皆目分からん以上地球への帰還は無理と考えた方がいい、
根無し草の我々が生き延びるためには現地勢力に味方を作るほかあるまい。それに…」
ここまで真顔で言ったラルは次には悪戯を思いついた少年のような笑みを浮かべた
「実は密かに憧れていたのだよ、悪の帝国を打倒する英雄譚の主人公側に立つことに」
「子供ですか貴方は?」
「無論それだけではないぞ、戦功を上げ討伐軍の中で確固たる地位を築くことは部下達の生活の
安定に繋がる」
「言い訳は結構ですわ、なんのかんの言っても貴方が一番愛しているのは戦場の風だということ
は良く知っています」
「いや、それは二番目、一番お前だ」
「嘘ばっかり…」
城の中庭で人目も憚らず濃厚な接吻を交わすラルとハモン
心ならずも目撃者となってしまったルージとミィは真っ赤になって機能停止に陥る
ドズル中将の勅命を受けホワイトベースを追跡していた特別任務部隊が砂漠に消えて三週間
突如発生した次元断層に飲み込まれ惑星Ziへとやってきたジオンの蒼い巨星とその部下達
が身を寄せるズーリの街でキダ藩藩主ラ・カンを総司令官としたディガルド討伐軍が動き出
そうとしていた
偶然見かけたし、支援
銀の人が来るまで落としはしない!
たまたま来たから支援しとくわ
ごめんなさい、身内に不幸が起こってゴタゴタしてて書くのが遅れてます…
皆さんそろそろ興味薄れてるかもしれませんが自分はまだ続けたいと思っていますのでどうかよろしくお願いします……
近々投下の予定…
ゆっくりでいいさ
書き続けてくれるならいつまでも待つ
むぅ……まずは親族の方のご冥福をお祈りしますよ。
そしてあくまでリアル優先で良いかと……。
490 :
ゼロのミーディアム:2007/09/06(木) 22:46:20 ID:EHQIc2oC
突然だけど投下しますね
↓以下本編
「で、水銀燈。これからどうするの?」
「そうねぇ、特にあてなんかないし…適当にブラブラしようかしらぁ…」
水銀燈が肩をすくめる。召喚されてそこそこ時間はたつもほとんどルイズの世話をしたり授業に同席したりと時間をとられ、暇な時間の使い方など考えもしなかった
「せっかく休みあげたんだからもう少し有意義に使いなさいよ」
「有意義って言われてもねぇ…」
「なんなら図書館に行ってみたら?読書に明け暮れる休日なんてのも悪くないんじゃないの?」
「図書館……」
悪くない。ルイズとの契約を続けるか否かを別としても、いずれは元の世界に帰らなければならないと思った。
学院の図書館の蔵書量はかなりの物だとルイズが言っていたし、その中にもしかしたら帰る手段や召喚術の詳細について書かれた書物があるかもしれない。
「そうね、行ってみるわぁ、図書館に。」
そうして一つ頷くとルイズに別れを告げ教室を出ていった。
491 :
ゼロのミーディアム:2007/09/06(木) 22:50:54 ID:EHQIc2oC
「……の前にちょっと休憩っと」
朝から色々と騒ぎに巻き込まれてちょっと疲れたのだろう。水銀燈が今いるのは学院内本塔の建つ中央の広場。
その一画にあるベンチにちょこんと座り彼女は空を見上げていた。見上げた空は青く澄み渡り、ぽかぽかと暖かい日差しが気持ちいい。
彼女はうつらうつらしながらベンチにもたれている。
「いい天気ねぇ…」
その声が少しずつ小さくなり。そして瞼が次第に重くなる
「……」
そして愛らしい寝顔を浮かべつつ、いつしかその意識は夢の世界へと飛んだ。どうやら薔薇乙女も居眠りをするらしい。
「水銀燈、やはり私が一番愛しているのは君だよ…」
水銀燈に一人の青年がやさしく語りかける
すらっとした長身で美しい金髪をしたその男性。目元が髪に隠れてその表情は伺うことはできない。
が、夢の中の水銀燈はそれが何者であるのか理解していた。
「ああ、お父様!勿体無いお言葉です…」
その言葉通り、それは彼女のまだ見ぬローゼンメイデンの創造主にして謎多き人形師ローゼンその人。
「ああ私の可愛い娘よ。もう私の元を離れないでくれ、ずっと私のそばにいてくれ!」
そして夢の中のお父様は水銀燈を抱きしめた。
「はい…水銀燈は…ずっと貴方のおそばを離れませんわ……」
まさに至福の一時。ようやく自分の望みが叶い、彼女はその瞳に涙すら浮かべている。
「本当?じゃあ、あんたはずっと私の使い魔よ!元の世界になんか帰さないんだから!」
「!?」
青年の声が突如少女の愛らしい声と変わる。驚いて自分を抱きしめる人間を見直すと…
「ル、ルイズ!!」
いつの間にかお父様の姿は現在のミーディアムたるルイズの姿に変わっていた。
「ねぇ、言ってくれたよね…?私のそばを離れないって…」
ルイズが悲しげな表情で水銀燈を真っ直ぐ見据え尋ねる。それも純真かつ切なげに。
「それは…その……」
水銀燈はその視線に耐えられず顔を背けた。そしてばつが悪そうに口ごもるが…
「そっか、嘘なんだ…ずっと一緒って言ってくれたのに…」
ルイズはその態度を悪くとったらしい。その顔が泣きださんばかりの表情となり鳶色の瞳に涙が浮かぶ。
「ま、待ちなさいよ!私は別に嘘なんて!」
慌ててまくし立てるがルイズはそれに構わず妙な行動を取り始めた。
「私の物にならないならいっその事!」
ルイズが水銀燈を抱いたまま…いや、拘束したままルーンを唱え始めた。
492 :
ゼロのミーディアム:2007/09/06(木) 22:53:03 ID:EHQIc2oC
「ルイズ!一体何を!」
いつの間にか持っていた杖を振り下ろすルイズ。同時にぽろぽろと大粒の涙がその瞳からこぼれた。
「水銀燈…私と一緒に死んで!」
ルイズの放つとんでもない爆弾発言。しかし爆弾と化したのは彼女の言葉だけではない。
なんと、ルイズの頬を伝い流れ落ちた涙が地面に落ちたその瞬間、それが大爆発を起こしたのだ!
涙をニトロにでも錬金したのだろうか?地に落ちた涙から激しい閃光が、爆炎が巻き起こり水銀燈とルイズを包み込んだ。
「ひゃああああああ!?」
素っ頓狂な叫び声をあげ夢から叩き起こされた水銀燈。
「ゆ、夢なの…?」
彼女は息を切らしながらつぶやきと眉間に手を当てる。
「これまた…とんでもない夢を見ちゃったものね…」
朝方の夢に負けず劣らず奇妙な夢である。ルイズから身を引く事を選べばやはり今の夢のように悲しむのだろうか?
まあ少なくとも、夢みたく無理心中を図って爆殺!なんて事にはならないだろうが……
水銀燈は息を荒げたまま辺りを見回す。遠くの塔の一画からモクモクと煙が上がっていた。
位置的には先程ルイズに差し入れを届けに行った場所、おそらくルイズがまた魔法を失敗したのだろう。
水銀燈が起こされた原因もあの失敗魔法なのかもしれない
(あの子も不憫ねぇ…
ちゃんと努力はしてるのに……)
ルイズはああ見えてなかなかの努力家なのだ。日夜ゼロの忌み名を返上すべく人知れず魔法の鍛錬を行っているのを水銀燈は知っている。
が、魔法は成功せず爆発ばかりが大きくなっていく始末。水銀燈も思わず同情するのも無理はない。
「それにしたってなんなのよぉ…。朝から続くこの不可解な夢……」
正直身が持たない…と思う。
まるで何者かが答えを催促するように水銀燈を責め立てるような夢を見せるのだ。
しかし何者か?と言われてもそれは答えかねる。別に誰かが意図的にこんな夢を見せている訳ではない。
彼女自身が無意識の内に答えを急いでいるのだ。
(はぁ…ホント、どうすればいいのよ……)
一つ大きな溜め息をつき頬に手をやり困った表情を浮かべた。
その時、授業が終わったのか塔から生徒達の集団が出てきた。
その中の一人が途方に暮れている水銀燈に気づき彼女に近いていく。
「おやおや、何をそんなに浮かない表情をしているんだい?
これでは君の可愛い顔が台無し…いや、悩ましげな少女の顔と言うのもなかなか……」
キザったらしく言いながら歩いてきたのは胸に真紅の薔薇を挿した金髪の少年
「あら、ギーシュじゃないの…」
そう、それは以前水銀燈とヴェストリの広場を舞台に決闘を繰り広げたギーシュ。
例の決闘でその名を学院内に名を広め、一目置かれるようになった水銀燈だが。そんな彼女を最も評価しているのは何を隠そう決闘を挑んだギーシュ自身だった。
それ以来ギーシュは進んで水銀燈との交流を深めている。
まあ彼が美女に目がないと言うこともあるのだろう……例えそれが人形であっても
水銀燈は膝に頬杖をついたまま目線だけギーシュに向ける。
ギーシュは優雅に胸の薔薇をとると香りを楽しむように自分の顔の前にかかげた
「どうかしたのかい?君がそんな顔をしているなんて珍しいじゃないか」
「それはこっちの台詞よぉ。どうしたのよその顔」
片手で頬杖したままジト目でギーシュの右頬を指差す水銀燈。その先ギーシュの頬には真っ赤な紅葉が散っている。見事な平手打ちの跡が…
「これはその……」
「大方、女の子口説いてるとこあの巻き髪の子あたりに見られてバチーン!ってとこでしょ?」
「な、何故それを!」
「やっぱり……その癖治ってないのね…」
「当然さ!君の言うことはもっともだが、薔薇は女性を楽しませるためにあるという考えは変わらないからね!」
「無駄に前向きなのね……。ねぇ、知ってる?怨みのこもった傷ってそれが晴れるまでずっと残り続けるの。その紅葉も永久に……」
そう言うとクスクスと意地悪な微笑を浮かべる。
「こ、怖い事言わないでくれたまえ…」
ギーシュもたらりと一筋汗を流し苦笑する。そして一言断りをいれ水銀燈の横に座った
493 :
ゼロのミーディアム:2007/09/06(木) 22:55:54 ID:EHQIc2oC
「…でね。確かに君の言う他者を阻む孤高の薔薇の棘と言うのはごもっともだけど何も棘の意義は一つだけではないと思うんだ」
ギーシュは水銀燈に自分の薔薇に対する解釈を延々と語っている。
「ふぅん…まあ一理あると言えばあるわねぇ。ふられた原因も貴方の二股って悪い意味の棘が原因だったし」
「そ、それは…お願いだから忘れてもらえないだろうか……」
「はいはい…」
「とにかく!僕の中では薔薇の棘は大切な人を守るためにあるのではないかとも思うんだ!
だから己の棘を鋭くするのは決して悪いことではないのさ!」
ギーシュは拳を握りしめて瞳を燃え上がらせ力説した。だが水銀燈の対応はあくまで冷ややか。
「貴方の場合その大切な人って対象が多すぎなのよ。
あんまり棘にばかり栄養送りすぎると肝心の花が咲かないわよぉ?」
そう言う水銀燈は焦点の定まらない瞳でぼーっと空を見上げている。さっきの夢がまだ彼女を悩ませているのだろう。
受け答えはするもどうも心ここにあらずと言った感じのようだ。
「水銀燈……本当にどうしたんだい?悩み事なら僕でよければ相談にのろうじゃないか」
その深刻そうな様子にギーシュも心配そうに聞いた。
「相談…?貴方に?」
考えてみれば人に意見を求める等思いもしなかった。ルイズには伏せておきたい事だしそれ以外の人間には相談するほど親しい者などいなかった。
その点ギーシュは少々頼りない相手だがそこそこ親交はある人間と言えよう。
「そうね、せっかくだから相談してあげるわぁ」
水銀燈がギーシュに向き直る。
だが薔薇乙女に関する事はミーディアム意外に話す事は避けたい。自分が別世界から来たことも隠さなければならない。
故に水銀燈はたとえ話でギーシュに意見を聞いた。
「例えばの話よ?貴方が…そうね、あの時の食堂の二人に。モンモランシーとケティだったかしら?この二人から同時に求婚を求められたらどうする?」
ギーシュはひた隠しにしているが彼の本命は実はあのモンモランシー。そのため自分の意志に忠実になるならモンモランシーをとるだろう。
だがそれではケティの想いに答えられず彼女を悲しませる。
ギーシュのモットーは「全ての女性に優しく、僕は女性達を楽しませる薔薇なのだ!」である。女の子を悲しませるのはギーシュの信念に反する事。
正直に本命を取るのが正解なのだろうがそれを選ぶのにためらいがある。水銀燈の境遇に、少し似ている。
「……よくわからないが君はこれに似た悩みを抱えているのかい?」
「恋愛関係とは少し違うけど……。否定はしないわね」
「まあいいさ、モンモランシーとケティか…うーん」
ギーシュは顎に手を当て考え始める。
「うーん…」
彼のポーズが腕組みして首をすくめるものに変わった。
「う〜ん……」
今度は髪をくしゃくしゃとかきむしり始める。……悩んでる悩んでる。
「う〜〜ん………」
さらに地面に屈み込み頭を抱え出す。
「う〜〜〜ん!!!」
終いには頭を抱えながら地面をゴロゴロと転がりだした。まさに今の水銀燈の苦しい心境を味わっているのだ。
「はぁ……悪かったわね、変な事聞いちゃって。もういいわ、忘れて頂戴……」
たいして参考にはならなかった。いや、自分が直面している問題の深刻さを再確認する事になった。
水銀燈は本日何度目かわからない大きな溜め息をつくとベンチから飛び立つ。
そして青々とした芝生の上をうんうん唸りながら転がり回るギーシュを後目に広場を後にした。
494 :
ゼロのミーディアム:2007/09/06(木) 23:01:07 ID:EHQIc2oC
本塔にある図書館。以前ルイズに案内されて来たことがあったため場所は覚えている。その時は中に入らなかったから内装などは水銀燈は知らないのだが。
「ふぅん、これはなかなか見事な…」
一歩足を踏み入れる水銀燈、中を見てさすがに驚嘆する。
それもそのはずこの図書館、実にスケールが大きい。30メイル近い高さの本棚が壁際に無数に並びその様は実に壮観
「でもこんなに多いとどれから手を着ければいいのだか……」
そう言ってキョロキョロしていると水銀燈の視界に奥から頭の薄い中年の男性が現れた
「おや、君はミス・ヴァリウールの…」
「貴方たしか召喚の儀式に立ち会ってた先生よねぇ?」
本を片手に出てきた男性が身なりを整え自己紹介を始めた。
「ええ、私はコルベール普段は火の系統の授業を担当している。こうして話をするのは初めてだね、ミス・ええっと…」
「水銀燈よぉ。よろしく、コルベール先生」
「ああ、こちらこそよろしく。ミス・水銀燈」
そう言ってコルベールは手を差し出し握手を求めながらも、まじまじと彼女を見回す。別にいやらしい目で見てる訳ではない。
珍しいのだ、自律して人間同様に感情をコロコロ変えるこの人形が。研究家としてのサガだ。
「レディをジロジロ見るのはあまり感心できないわねぇ?コルベール先生?」
差し出した手を握り返しが言うとコルベールは気づき慌てて謝罪した
「おお!これは失礼した!いやしかし…本当に君が人形とは……いやはや」
感心したようにつぶやくコルベールを見ながら水銀燈は考える
(この人…あの時の儀式の責任者だったのよね…ならサモン・サーヴァントの事にも詳しいはず……)
「しかし図書館を訪ねてくるとは君も何か調べ物でも?」
願ってもないチャンスだ。コルベールの方から質問を求めてきたのだ。
「ええ、ちょっと気になった事が。サモン・サーヴァントについて少々…」
「召喚の儀式のことを?それが何か?」
「使い魔の召喚ができるなら反対に送還は可能なのかしら?」
「送還…つまり元いた場所に送り返す事かね?」
「その通りよ」
コルベールは一つコホンと咳をして説明を始める
「使い魔の召喚は儀式の中でも神聖かつ重要なものでね、一度呼び出した使い魔の変更と言うものは許されない。
つまり送り返す必要が無い故に送還の魔法も存在しないのだよ」
早速あてが外れた。しかしめげずにもう一つ質問。
「使い魔がいる状態でサモン・サーヴァントを行った場合は?」
「唱える事もできぬよ、サモン・サーヴァントを再び唱えるには一度使い魔を失わなければならないのでね」
「失うって逃げ出されたりして?」
「否、つまり使い魔が死んだ場合の事を言う」
それらの答えに水銀燈は落胆を隠せなかった。儀式に詳しいであろう教師でこの答えなのだ。
「もしかして君はミス・ヴァリエールの使い魔をやめたいのかね?」
コルベールが聞いた。
当然の疑問と言える、現在使い魔をやっている者が送還の方法を聞いて来たのだ。遠まわしに帰りたがっていることを知らせているような物だ。
「別にぃ……。ただ疑問に思っただけよ」
そう答える水銀燈だがそうは思っていないように見える。ガッカリしたような不満な表情がその顔に浮かんでいた。
もっとも、コルベールはその様子を眺めてはいたが、他人の事情に口を挟むべきではないと思ったのか、単に自分とは関係無いと思ったのかそれ異常追求しなかった。
(まあこんなに簡単に解決できるならラプラスが何とかしてるわよね…)
帰る方法はどうにかして自分で調べるしかない。そう結論づけた水銀燈。とりあえずこの図書館で情報収集する事から始めることにした。
「ねえ、私もここの本読ませて貰ってもいいかしらぁ?」
「教師のみ閲覧の本棚にある物は駄目だが、一般用の本棚でよければ」
それを聞き彼女はありがとうと一言言って図書館の奥へと消え去った
…と、思ったらすぐにコルベールの元に戻ってきた
「どうかしたのかね?」
「字が読めなかったわ」
495 :
ゼロのミーディアム:2007/09/06(木) 23:03:11 ID:EHQIc2oC
「とりあえずこれから始めるといい」
コルベールが差し出したのはドラゴンやグリフォンといった怪獣や幻獣が扉に描かれた本。
「これって…何?」
「怪獣図鑑といったとこかな?これを見て文字を覚えて行くといい。ミス・ヴァリエールに頼めば読みながら字も教えてくれるだろう」
「ルイズにねぇ…そんな面倒な事やってくれるのかしらぁ……」
渋るように顔をしかめる水銀燈にコルベールは笑いながら言った
「少々気難しいところがあるがあの子は意外に面倒見はよいし頭もよい。ちゃんと頼めばうまく文字も教えてくれるだろう」
帰るための文献を調べるために文字の習得から始めければならないとは…先の長い話だ
「でも何もしないよりはマシよね?」
受け取った本を小脇に抱え水銀燈はつぶやく。千里の道も一歩から。
だだし、彼女がこれから歩む道のりはその故事をこえる険しい物となるだろう。
なにせ彼女の目的地は少なくとも歩いて帰れるような場所ではないのだから。
そうして図書館を出てルイズの部屋に帰ろうとする水銀燈。
だがそれを見つめる一人の…もとい一体の影があった。
しかしその赤い影はきゅるきゅる鳴くと彼女に気づかれまいとして早々と姿を消した。
一体何の目的があっての事なのか、水銀燈は知る由もない。
496 :
ゼロのミーディアム:2007/09/06(木) 23:06:27 ID:EHQIc2oC
部屋へと帰り自分の鞄の上に座り図鑑をまじまじと読んでいる水銀燈。
中には元の世界ではお目にかかれぬ様々な生き物が載っているが…
「…よし!何一つわからないわぁ!」
何故か自信満々に言った。そう、絵の下に名前や解説が載っているのだろうが全く持ってチンプンカンプンだった。
そんな風に悪戦苦闘している内にルイズが帰ってきた。
「ただいま〜」
「おかえり」
水銀燈はそっけなく本とにらめっこしたままルイズに返事をする。
「あ、本借りてきたのね」
「借りたのはいいけど字が読めないのよ」
目は本から離さずに言う水銀燈。この少女、結構ムキになる質なのか血走った眼で本を食い入るように見つめている。
「単に眺めてるだけで字が読める訳ないでしょ!貸してみなさい!」
「ちょっとぉ!何するのよ!返しなさいよぉ!!」
水銀燈の講義を無視しルイズは取りあげた本をパラパラ捲る。
「頭のまぶしい先生に薦められたのよ。これで文字覚えるといいって……」
「なる程、図鑑ね。動物で文字を覚えようって寸法なのね」
水銀燈はコルベールが言っていた事を思い出した。
(ルイズに頼めば本を読んでくれる文字を教えてくれる……。頼めば…)
癪と言うか恥ずかしいと言うかよくわからない感情が水銀燈の中で渦巻く。それでも顔を赤くして口ごもりながらルイズに向かって言い始めた
「ね、ねぇ、ルイズ…その……本なんだけど…」
「私がこれ読んであげよっか?」
「え?」
ルイズからの思わぬ誘い。
「あんた字覚えたいんでしょ?」
「ええ…。でもいいの…?」
「いいわよ別に。使い魔の教育も主の務めよ。」
そう言ってルイズはベッドの上に座り水銀燈に手招きする。
「さ、座んなさい!」
そして自分の膝の上をパンパンと叩いた
「座んなさいって…貴女の膝の上に!?」
「並んで読むより読みやすいじゃないの。あんた小さいんだから」
「で、でも!」
「なに恥ずかしがってるのよ。いいから来なさいって」
「そ…そこまで言うなら仕方ないわねぇ!……貴女の膝に座ってあげるわよ!」
水銀燈はどこかギクシャクしてルイズの前まで行く。
「お、お邪魔するわぁ……」
そしてよく分からない断りを入れてルイズの膝に座った。
「はいはい、お邪魔されたわ。……間近で見るとあんた綺麗な髪してるわね。」
「そ、そんな事より。早く始めなさいよ!」
水銀燈が照れ隠しに言った言葉にルイズがちょっと不機嫌に言う。
「違うでしょ?人に物を頼む時には?」
「う……」
別にルイズが嫌みで言っている訳ではないとは承知の上だが、水銀燈はそれを言うのはまたも少しためらわれた。
だが、何よりルイズが好意を持って教えてくれる事を考え……
「…お、お願い……するわ…」
「うん、よろしい。それじゃ始めるわね」
顔を俯かせ恥ずかしげにお願いする水銀燈にルイズは満足げに言った。
497 :
ゼロのミーディアム:2007/09/06(木) 23:10:21 ID:EHQIc2oC
「これが火竜よ。赤いのが雄で緑のが雌。これには赤竜と緑竜って書いてるわ」
「この二匹に共通した言葉が竜って意味なのね?って事はこっちの頭についでる言葉が赤って意味でこっちが緑って事?」
「いいとこに目付けたわね。その通りよ」
意外に二人の読書は順調に進んでいた。このようなやりとりを繰り返し断片的ではあるが水銀燈は少しずつ文字を覚えていく。
そこそこ厚い本ではあったがそれも残り3分の1になった。
「これは…風竜?でも風と竜って言葉の間に別の文字があるわね」
「これは風翔竜って言うらしいわ。なんでも風を操り嵐を呼ぶとか」
「らしいってどう言うことよぉ?」
「ここからのページは現実にいるかわからない生き物が載ってるのよ」
「ふぅん…」
ルイズがパラパラページをめくるとライオンに龍の翼が生えたようなのやカメレオンとドラゴンを足して2で割ったような生き物などが描かれている。
そして最後に載っていたのは漆黒の龍鱗に身を包んだ明らかに他の竜種とは違う風格を漂わせたドラゴン。
「伝説の黒龍だって」
「黒龍…」
ルイズの言葉に水銀燈がつぶやく。
「そ、黒龍。その咆吼は千里を越え歴戦の戦士すら震え上がらせ、放たれるブレスは山をも崩す。って書いてあるわ」
水銀燈は黙って何かを考えている。彼女の後ろ姿を見ているルイズ、その背に生えた黒翼が不自然に横に延びているのに気づいた。
「??」
ルイズが不思議に思いその先を目で追っていく。大して長くは無かった。しかし追った先にあった物を見て肝を潰した。
「うわぁ!!」
それもそのはずルイズの目に飛び込んできたのはたった今話していた黒龍のアギト。水銀燈の翼が形成した翼のドラゴン、彼女の必殺技。
「あらぁ?無意識のうちに出来ちゃってたみたいね」
ルイズ驚きの声を聞き悪びれもなく水銀燈がつぶやく。
「びっくりさせないでよ!突然!!」
ルイズがだらだらと汗を流し言った。
「悪かったわね。でもいいこと思いついちゃった!」
軽く詫びながらもニヤリと笑っている水銀燈。何か企んでいる。しかし彼女の言う『いいこと』とは?
それを問いただそうとするルイズだったが水銀燈が「ヒ・ミ・ツ」だの「教えてあげなぁ〜い!」だの「禁則事項です」だの言って教える気配全く無しのでしぶしぶ諦めた。
「いずれ分かるわよぉ。それも近いうちにね」
とは水銀燈の弁。少々不安ではあるがその近いうちとやらに期待するとしよう。
「本も読み終わったし、もう寝ましょっか」
「そうねぇ、もうこんな時間だし」
水銀燈が部屋の片隅にある自分の鞄を開け中に潜りこむ。
「じゃ、灯り消すわよ」
「……ねぇ、ルイズ」
鞄を半開きに開けて水銀燈が外を覗くようにしてルイズに声をかけた。
「ん?どうかしたの?」
ベッドに入ったルイズが首を傾げ水銀燈の方を見やり尋ねた
「その…、あ…」
「あ?」
「ありがとぉ…本、読んでくれて…。そ、それだけよ!お休みっ!」
水銀燈はそれだけ小さく言って内側からバタンと乱暴に鞄を閉めた。
「はいはい、どういたしまして」
水銀燈の感謝の言葉に微笑みながらルイズがパチンと指を弾く。
ランプの灯りが消え部屋に真っ暗な帳が降り、水銀燈の慌ただしくも楽しかった休日がようやく終わりを告げた。
498 :
ゼロのミーディアム・あとがき:2007/09/06(木) 23:14:32 ID:EHQIc2oC
色々と私情はありましたがどうにか投下できました…
なかなかショッキングな出来事があり少し落ち込みもしましたが
誰かが「悲しみを執筆に変えて書けよ国民!」と言っていた気がするのでこれからもよろしくお願いします!
では皆様お休みなさい!
……今回はネタがマニアック過ぎたかな?
GJ
銀様かわいいよ銀様
GJ。ホントこの二人は可愛いな。
ところでクシャルダオラが居た気がするのは気のせいかな?w
GJ
そういえばアノ火竜の色って 銀金緑蒼赤桃 だったよねw
見ていないうちに新作キテター!
GJ!
よく読むと炎王龍や霞龍の説明があるな
お前らの守備範囲に広さに感心したわ
俺全然わかんねぇw
ともあれ銀様GJ!!
アニメ最終回に出る予定のテファの中身が銀様って噂が……マジでか!?
>>カメレオンとドラゴンを足して2で割ったような生き物
何処のステルス古龍ですか
ほっしゅ
銀様!銀様!銀様!銀様ぁぁぁぁあああぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!銀様銀様銀様ぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!水銀燈様の麗しき銀色の髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
漫画6巻の銀様かわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
アニメ特別編の主人公で良かったね銀ちゃん!あぁあああああ!かわいい!銀たん!かわいい!あっああぁああ!
コミック8巻も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!コミックなんて現実じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら…
水 銀 燈 様 は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!nのフィールドああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵のルイズが僕を見てる?
表紙絵の銀様が僕を見てるぞ!銀様が僕を見てるぞ!挿絵の銀様が僕を見てるぞ!!
アニメの水銀燈様が僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕には銀様がいる!!やったよママ!!ひとりでできるもん!!!
あ、コミックの銀ちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあ真紅様ぁあ!!ス、翠星石!!巴ぇぇぇえええああああああ!!!雪華綺晶ぅぅうううううううああああ!!
ううっうぅうう!!俺の想いよ銀様へ届け!!薔薇乙女最凶にして可憐な第一ドールの水銀燈へ届け!
保守
おい、改変し忘れか?w ルイズが残ってるぞ?
あとカリモフは声優ネタだから、そこもアレンジすると良かったかもしれん。
保守
かなみの人の復帰を切に願う
もっしゅ
ふんも保守
インテリジェンスソードの頭脳に、
動くゴ−レムの体で人形できないか。
銀様を待ちつつ保守
保守してドン
「復活!悪の要塞入江診療所!!」
大量のゲッター軍団が各地に出現
????「お久しぶりですね。『東京』の皆さん。いかがですか?私のオヤシロ様・・・、ゲッター軍団は?」
政府幹部「その声!」「その姿!!」
入江 「私の名は入江・・・。入江京介。冥土から甦った男・・・。
そう、この世の終末メイド・イン・ヘブンを見るために・・・」
政府幹部「ばっ馬鹿な・・・。それが完成すれば・・・。」
入江 「何をいまさら。さあ、研究は発表されなければ価値はありません。
でなければあの子達が許してくれませんからね」
赤坂「どういう事ですか!我々が出撃出来ないなんて!」
大石「軍の決定ですよ。どうやらあの子に乗せるようです」
赤坂「な・・・。あの子は確か永久刑務所の中にいるはずじゃ・・・」
入江「K・・・。今度こそ私が守ってあげます。
さあ寄生虫とゲッター線の前に業を重ねてきた愚かな人類よ!
世界最後の日を見るときが・・・」
??「うるさい!」
入江「何!?」
レナ「それはてめえのやる事だよ監督!」
入江「レナさん!!」
レナ「久しぶりだね監督!どうやって生き返ったか知らないけど
今度こそこの手叩き割って地獄にに送り返してやるよ!うおおおおおおおお!!」
ゲッターは取り出した柁で次々と敵を切り裂いてゆく。
入江「やめなさい!それ以上はあなたのためにはなりませんよ!」
レナ「黙れ!あんたが雛見沢症候群とオヤシロ様を利用して何を企んでいるのか私は忘れちゃいない!
私は自分の筋を通さなければならない!だから今度こそ私の手で・・・」
入江「・・・悟史くんの時もそう言ったのですか?」
レナ「う・・・、だっ黙れと言っているだろうがあああああああああ!!」
なんだこれはwww
チェェェンジゲッタァーワン!スイッチオォォン!
レナ「オヤシロビイィィム!!」
レナの乗ったゲッターは鬼神の如く暴れまわり、次々とゲッター軍団をスクラップに変えていった。
入江「成る程・・・。元部活チームのお母さんは伊達じゃ無いと言うことですか」
レナ「ナメるなああああ!!」
レナの目は蛇のように怪しく光り、瞳はとぐろのようにぐるぐるになっていた。
レナ「もらったぁ!!」
ゲッター軍団を振り払ったレナは、生身で診療所に出ている入江に向かって柁を降り下ろしたが見えない壁によって遮られる。
入江は後ろに佇む大型カプセルを庇うような形で仁王立ちしていた。
レナ「どけえ!監督!!」
入江「はははは!何も知らないとはやっかいな人間ですね君は! いいですか?よく聞きなさい。
このカプセルは我々寄生虫とゲッター線に関わった者全ての人が夢見た物、背負わなければならない宿命その物!
もし私が退けば世界その物がどうなるか解りませんよ!」
レナ「うるさい!私は世界やそのカプセルがどうなろうと知ったことじゃない!
ただ、自分の勝手で仲間をバラバラにしたあんたと!後1人殺せば!私は・・・」
??「いけない」
レナ「何!?」
入江「K!」
??「それは行けない事だ・・・。何故なら・・・」
その時、全てのゲッターは分離、合体を始めた。
レナ「な、なんだ!何が起こっている!?」
入江「始まったのですよ。メイド・イン・ヘブンが・・・(しかし、これでは早すぎる!)」
カプセルにヒビが入り、緑色の溶液が漏れる。中にある人影はカプセルを突き破り飛び出してきた。
圭一「チェェェンジ!真!メェェェェイドイン!ヘェェェヴゥゥゥゥゥン!!」
メイド服を着た男が空に向かって吼えた
レナ「なっこれは・・・、うわあ!」
茫然としている間に敵に後を取られたレナ。
その時、地面の下から現れたドリルが敵を切り裂いた。
レナ「オヤシロ2!それに・・・、オヤシロ3!?」
夏美「もうその辺にしといたらどうなんですか監督?こんな事をしても無意味ですよ!」
レナ「夏美ちゃん!?っということは2に乗っているのは!」
詩音「・・・・・・・・・・・・」
レナ「貴様かぁ!しおおおおおん!!」
520 :
ゼロのミーディアム:2007/09/23(日) 23:45:25 ID:exrydCpy
こんばんは!突然だけど投下ー!
↓以下本編
さて、突然だが『土くれ』のフーケと呼ばれる盗賊を御存知だろうか?
デルフリンガーの置いてあった武器屋で少し話題になったものの、
ルイズが興味無し!と言わんばかりにスルーしてしまったため詳しくは語られなかった。
そこで僭越ながら少々ここで補足させて頂こう。(まあここを見ている方達には不要なのだろうが……)
『土くれ』のフーケとはその二つ名の示す通り土系統の魔法、その中でも主に錬金を得意とする盗賊である。
盗みのターゲットは主にトリステインの裕福な貴族達。
北に宝石の散りばめられたティアラがあると聞きつけば夜闇にまぎれ音も無く忍び込みこれを頂戴し、
南に先帝から賜った家宝の杖が有れば屋敷を派手に破壊してこれをいただく。
ある時は得意の錬金と潜入術を駆使し華麗に、またある時は巨大なゴーレムを使い豪快に仕事をこなす様は凄腕と言ってよいだろう。
まさに天使のように繊細に、悪魔のように大胆に。
もっとも、被害を被る貴族からすれば悪魔や疫病神以外の何者でもないのだろうが。
双月が天頂に達した深夜。その『土くれ』のフーケが魔法学院の本塔、宝物庫の外壁に垂直に立っていた。フーケは立っている壁から伝わってくる異質な感触に舌打ちする。
「流石は学院本塔の外壁…。固定化もさることながらこの厚い壁……」
今度は強めに壁を蹴った。それでも外壁は少し擦れて小さな傷がついただけ。
「固定化の重ね掛けで錬金は問題外、ここまでぶ厚いと壁だと私のゴーレムでも破壊はキツい……。まったく、あの禿チャビン、物理衝撃が弱点なんて言っといて……」
フーケは腕組みして目を閉じる。
(やっとここまで来たのよ……。『破壊の杖』…諦める訳にはいかないわ)
そして色々な手段を考えてみるのだが、これと言った物は浮かばない。少しばかり時間を置いてフーケが一つため息をついた。
「はぁ…やめやめ。今日は取りあえず様子見ってことにしとくわ」
手をひらひらと振り呆れた顔を壁に向ける。
望みの品はもう目と鼻の先、だがそこに越えねばならぬ一枚の分厚い壁が立ちふさがる。
……そのまんまですね、ハイ。
フーケが塔の壁を蹴り双月輝く夜空にその身を翻した。
「まあいいわ、待ってればきっと機会は回ってくるはず…」
そして闇夜に溶け込みその姿を消した。
いずれチャンスは来るとは呑気な事を言った事だが……。
意外にもその機会とやらはすぐに来ることになる。
521 :
ゼロのミーディアム:2007/09/23(日) 23:47:51 ID:exrydCpy
「ねえ、水銀燈。あんたちゃんと覚えてるんでしょうね?品評会の事」
ルイズが自分の前に浮かぶ黒翼の少女に聞いた。
「当然よ。忘れてる訳ないじゃなぁい」
黒いドレスの裾を優雅に揺らし水銀燈がルイズに向き直る。
「…と言うか貴女、この光景見てて私が忘れてるとでも?」
そうして水銀燈が広場を指差し言った。青々とした芝生の敷かれた広場には、ルイズと同じ黒い色のマントをまとった二年生達が自分の使い魔を相手におめかししたり芸をしこんだりと溢れかえっている。
だがルイズにとって満足した答えではなかったらしい。
「そうじゃなくて!ちゃんと何やるか考えてるのかって事よ!」
他の使い魔達は主人の期待に答えるべくその主人と芸を練習をしている。
だからルイズはそれらを「品評会への備え?私には関係ないわぁ」と言わんばかりにのほほんとしている自分の使い魔に不安を感じていたのだ。
だがそんなルイズの不安に反して水銀燈、きっぱりと答えた。
「もちろん」
「え?」
「ちゃんと考えてるわよぉ。だから貴女は心配しなくても大丈夫」
「い、いつの間に……」
意外な答えだった。水銀燈のしっかりした言葉に安堵しかけるルイズ。
しかし最近の彼女の様子を見てても別に出し物の練習をしている気配などなかった。
自信ありげに胸を張る水銀燈にルイズは疑いの眼差しで再び問いかける。
「……本当なんでしょうね?一体何やるのよ?」
「だからそれは秘密って言ったでしょ?近い内に分かるとも」
「…?そんな事言ったっけ?……あ、」
近い内に分かると言う言葉でルイズは思い出した。
「もしかして本読んでた時に言ってた『いいこと』?」
「そうよ、大当たりぃ〜」
水銀燈はそう言ってパチパチと拍手するが、その何となく小馬鹿にしたニュアンスにちょっと腹がたった。
だがあの怪獣図鑑と品評会用の出し物にどんな繋がりがあるのかは今一つピンとこない。
ルイズがもっと詳しく問いただそうとした矢先、
水銀燈が何かに気づいたのかピタリと立ち止まる。ルイズも彼女の視線の先を見やった。
「あ!あれがミス・ヴァリェールの使い魔の黒い天使さんじゃない?」
「ほんとだ!あの子お人形さんなのよね?かわいい〜」
そう言って遠くから水銀燈を指差す二人の女子生徒。マントの色は茶色い、学院の一年生なのだろう。二人の生徒は笑いながら水銀燈に手を振っている。
水銀燈も苦笑いしながら手を振って答えた。
「あ〜!手振ってくれた!」
「今日良いことあるかも!」
その様子に生徒は嬉しそうにキャーキャー騒いで塔の中へ姿を消した。
「あんた意外に人気者なのね」
「例の決闘でなんか変に有名になっちやったみたいなのよぉ…」
困ったように言うがまんざらでもない様子。
まあ、見た目愛らしい黒い天使のお人形が、学院内をうろついているのだ。水銀燈は学院のちょっとした名物のようになっていた。
妙な例えになるがこちらで言う、昔話題になった河川敷に現れるアザラシや直立するレッサーパンダのような物。
妙と言うか何か嫌な例えとなったが水銀燈もそれ察しているためまんざらではないとはいえ素直に喜ぶ事もできなかった。
(どうせなら憧れのお姉様とかの方がよかったわぁ…)
水銀燈が苦笑するのも仕方はない。
522 :
ゼロのミーディアム:2007/09/23(日) 23:49:28 ID:exrydCpy
とりあえず自分の使い魔がそこそこ知れ渡っていることにルイズは気を良くしたのか水銀燈に問いただすのを止めた。
「…まあいいわ。でもちゃんと準備しといてよ?失敗して大恥かくのはあんただけじゃないんだから」
水銀燈がいつもの不敵な笑みを浮かべ自信を持って答える。
「フッ…大船に乗ったつもりで待ってなさい、本番ではドカンと一発決めてあげるわぁ!」
そしてそう言った後口元を手で覆いクスクスと不気味に笑いもう一度つぶやいた
「そう…文字通りドカンとね……。フフフ……」
……何企んでるんだこの人形。
そんな風に気味悪く笑う水銀燈を見ているルイズ。一度は解いた疑いの眼差しを向けつつタラリと冷や汗を頬に流してつぶやいた。
「……やっぱり心配だわ」
この不吉な予感が杞憂でありますように……
彼女は心の底からそう願った。
広場で使い魔と戯れている二年生達の中に見知った顔もいた。
塔の壁際に屈み込んでいるのはギーシュ。彼はでっかいモグラを相手に見つめ合ったり抱き合ったりしている。どうやらこれがギーシュの使い魔らしい。
「ジャイアントモールね」とルイズが言う。なる程土のメイジたる彼にぴったりの使い魔と言えるだろう。
知らぬ仲ではないので声でもかけようかと思う水銀燈だったが
彼の、目の下に隈を浮かべた顔で半笑いをしながら使い魔に抱きつく様子を見て近づくのをやめた。
気持ち悪い事この上ない、徹夜で仕込みでもしているのだろうか?
広場の隅っこに座り本を開いているのは先日食堂で会ったタバサ。
本番も近いと言うのに使い魔も連れず随分と余裕の様子だ。
(そう言えばこの子の使い魔は?)
と水銀燈が疑問に思った直後、巨大な影が広場を横切り翼をバサバサとはためかせタバサの横に舞い降りる。
「あれって図鑑にもあった…」
「風竜を呼び出したって言う子がいたって聞いたけどあの子の事ね…」
タバサの脇に降り立ったのは先日の図鑑にも載っていた風竜だった。
風竜は尚も読書を続ける主人にに顔をすりよせているが主人は無視して本から目を離そうとしない。
「風竜を召喚するなんてあの子メイジとしてもできるわね…」
ルイズがどこか羨ましそうにつぶやく。ルイズの言っている事は正しい、タバサは風系統のかなりの使い手なのだ。
「召喚した物でメイジとしての格が決まっちゃうのぉ?」
「そりゃそうよ。なんせ…」
「メイジの実力をはかるには使い魔を見ろって言われてるのくらいだものね」
ルイズの言葉を遮り水銀燈の疑問に誰かが代わりに答えた。
523 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/23(日) 23:52:23 ID:exrydCpy
その聞き覚えある声を聞き露骨に嫌そうな顔でルイズが後ろを振り返る。
いつの間にか二人の後ろに立っていたのは以前にも会った赤髪の女の子…と言っていいのかわからないくらい色気ムンムンな女性と、
その傍らに立つ燃え盛る尻尾のサラマンダー。
「キュルケ…」
「はぁい、元気してる?」
ニッコリと笑いかけ気さくに声をかけたキュルケに対しルイズは嫌悪感丸出しで言った。
その様子を端からみていた水銀燈。キュルケとサラマンダーのフレイムを交互に見やりポンと手を叩いた
「あ、なる程。貴女達見てたら納得」
キュルケの系統は火にして通り名は『微熱』、そして呼び出したのは火トカゲ。実に分かりやすい。
「わかってもらえたかしら?お人形さん?」
キュルケが水銀燈の方も見てニッコリと笑いかけた。
それは一見普通の笑顔に見えた、しかし水銀燈はその裏にある何かを直感する。
作り笑いだ。このキュルケ水銀燈に対し何かよからぬ感情を抱いているらしい。
水銀燈もニッコリと作り笑いを浮かべた。
「ええ、勉強になりましたわ」
わざと含みのあるように慇懃無礼に答える。キュルケもまたそれに気づきその笑顔を一瞬だけ妖艶にニヤリとさせた。
「フフフ…」
「フフフ…」
水銀燈とキュルケ、双方普通に笑っているがその目元に黒い陰がさして見えるのは気のせいだろうか?
そう言えばこの二人、なんとなく雰囲気が似ている。
(……空気重いわ)
両者の間に渦巻くドス黒い気配に蚊帳の外だったルイズが後退りした。
「それじゃあ私、フレイムと品評会の練習しなきゃいけないから」
キュルケはそう言って大してルイズもおちょくらずに去っていく。
フレイムもきゅるきゅる一鳴きして彼女の後に続いた。
(傍観してただけなのになんか疲れた…)
これが女のドロドロした戦いと言う物なのだろうか?ルイズには少し早すぎたのかもしれない。
「ねえ、ルイズ」
げんなりしていたルイズに水銀燈が声をかける。
「ギーシュは土のメイジだからモグラ、タバサは風竜ってぐらいだから風系統でしょうね、キュルケは火だからサラマンダー」
指折りながら使い魔と主の系統を並べていく。そしてそのもう一つの疑問を投げかけた。
「じゃあ私を呼び出した貴女は何の系統なのかしら?」
言われてみればごもっとも。ルイズ腕組みをし、首を傾げて考え出した。
そもそもルイズは魔法を使うと全て爆発として発現するのであって、彼女が魔法を使えないというのはいささか語弊がある。
勿論系統に関係無く爆発するためその属性はわからないが、メイジである以上必ず何かの系統はあるはずだ。
「あんた火とか風とか操ったりできる?」
「うーん、火に関しては少しだけ…でもサラマンダーとか火竜に比べると…」
実際水銀燈、その黒翼から青白い炎を放出したり出来るのだが、怒りにまかせて発現したり、
跳ね返されて自分が炎に捲かれたり(おかげで一度死にかけた、と言うか死んだ)と自在に操れるとは言い難い。
本人もあまり良いイメージが無いのか苦々しく答えた。
そして風、土、水にいたっては全くの管轄外だ。
524 :
ゼロのミーディアム:2007/09/23(日) 23:53:54 ID:exrydCpy
「と言う事は…残る系統と言うと…『虚無』だったかしら?」
水銀燈は真っ当に言ったつもりだったがルイズはプッと吹き出して無い無いと手を振った。
「んな訳ないでしょ。虚無は遠い昔に失われた幻の系統よ?本当にあったのかすら眉唾物なのに」
「そうなの?虚無の系統」
「……あんた、もしかして虚無じゃなくって『虚無』と書いて『ゼロ』って思わなかったでしょうね?」
少々怒気を孕み苦笑いしてルイズが言う。
(『ゼロ』…!)
水銀燈がその言葉にピクリと反応した。途端、彼女の顔に影が差しうなだれるように俯かせる。
別段本気で怒った訳では無いのだが。
「水銀燈…?」
「ゼロだなんて……そんな事思わないわよ……」
突然沈んでしまった水銀燈にルイズが首を傾げた。
この一言、ルイズにとってはたわいもない冗談のつもりだったのだが水銀燈にとある疑念を浮かび上がらせた。
彼女は考える。
(ルイズに系統と呼べる物はない…そしてこの子は魔法を使えず『出来損ない』扱いされてゼロと呼ばれている……
ならその『出来損ない』に呼び出された私は……!)
自分の忌諱するあの言葉が頭をよぎる。彼女は認めない、認める訳にはいかないのだ。
「大丈夫?具合でも悪いの?」
自分の顔を覗き込むミーディアムの顔に水銀燈が我に返る。
それと同時に心配そうに見つめてくるルイズに罪悪感を感じた、思わず彼女を出来損ない扱いした事に。
「ルイズ」
水銀燈は鋭い目つきで契約を交わした少女を見つめる。
「へ?」
「貴女が私を召喚した事を、後悔はさせないわ」
「と、突然何よ。別に私後悔なんかしてないわよ」
気の沈んだと思っていた自分の使い魔の突然の真面目な口調にルイズは目を丸くした。
「そう言う意味じゃない。今言った言葉の意味…今度の品評会で証明してあげる」
「?」
水銀燈はそう言って未だ頭に疑問符を浮かべているルイズに背を向けると、心中でこうつぶやく。
(そうよ、私もルイズも出来損ないなんかじゃない……)
そしてぎりっと歯を噛み締めた。
(私は……ジャンクなんかじゃない……!!)
落ち込んだりやる気を出したりと忙しい自分の使い魔に戸惑いを隠せないルイズだが
「よくわからないけどやる気になったんだからまあいいや」
と結論づけ水銀燈の後ろ姿を見つめていた。
無論彼女の内に秘める思惑などわかるはずもない。
525 :
ゼロのミーディアム:2007/09/23(日) 23:57:45 ID:exrydCpy
そして迎えた品評会当日。
特設された舞台の前に生徒、教師ら等学院中のメイジ達が集い、二年生達の従えた個性豊かな使い魔達の芸に心踊らせていた。
ルイズは舞台の袖で他の生徒達の使い魔達に視線を向ける。
使い魔は小さなカエルから巨大なドラゴンまで種類は様々。しかし皆、主人の期待に応えた渾身の一芸をもって観客を沸かせていた。
その様子を見ていたルイズ少々不安になった。
(みんな力入ってるわね…ちょっと心配になってきたわ……)
そして隣にいる自分の使い魔に目を向ける。
「……」
水銀燈は静かに待機所に設けられた椅子に座っていた。だがその表情は険しい。
気合いが入っていると言うより気負いすぎていると言った方がいいくらいだ。
だがルイズが不安な理由はそれだけではない。なんとルイズ未だに自分の使い魔が何をするのか知らされていないのだ。
(まあ多分アレよりかはマシよね……)
ルイズの言うアレとは…現在、舞台中央で大量の薔薇の花にまみれているギーシュ&ジャイアントモールのヴェルダンデの事だ。
おまけにギーシュ、前回見た時の目の下の隈が取れてない、むしろ酷くなっていた。非常にシュールな光景だ。
……こんな事やるために徹夜してたのだろうか?
観客の方も皆さんコメントに困るといった感じで、まばらに小さく起こる拍手がそれを物語っている。
もっとも、当のギーシュは微妙な反応にも気づかず決まった!と言わんばかりの笑みを眠そうに浮かべている。…まあ本人が満足してるならいいか。
水銀燈もいつの間にか隣でギーシュの出し物を見ていた。そして今まで黙りこくっていた重い口を開く。
「ギーシュ……やるわね……!!」
どうやら水銀燈の心にはストライクだったようだ。顎に手を当て深刻そうにつぶやいた。
「ま、まさかあんたも、あんなのやるつもり!?」
ここにきてルイズに焦りが芽生えた。冗談じゃない!あんな微妙すぎる芸なんかやられたら大恥かいてしまう!
「いえ……流石の私もあんな斬新なのは思いつかなかったわ……。ギーシュ、恐ろしい子…!」
「恐ろしいのはアンタのセンスの方よ」と突っ込もうとするルイズ、しかし観客から沸いた一際大きい歓声につられ意識をそっちに向けた。
526 :
ゼロのミーディアム:2007/09/24(月) 00:00:10 ID:U+PWcwmA
ルイズの見た先にいたのは学院の空を舞う鮮やかな水色の風竜を駆るタバサ。
彼女の使い魔、風竜のシルフィードの力強くも美しい羽ばたきに観客は皆魅せられている。
「……あんなのが使い魔とか反則じゃないの…珍しいにも程があるわよ」
ルイズが拗ねるようにつぶやく。
「何よ、珍しさなら私だって負けてないわ。だから貴女ももっと胸をはりなさい!」
水銀燈の叱咤激励に少し励ましされたルイズだが(アンタが何するかわかんないから不安なんでしょうが……)と心中で愚痴った。
次に舞台に立ったのはキュルケ&サラマンダーのフレイム。
キュルケはお得意の火の魔法とフレイムのブレスを合わせた彼女らしいド派手な芸を披露。
巻き起こる炎がキュルケの艶のある体を、フレイムのたくましい体躯を照らしをこれまた観客を沸かせた。
「ぐう…ツェルプストーの奴…。腹立つくらいに見事ね〜」
「あの子らしい派手な芸ね…。敵ながら天晴れと言っときましょうか」
「みんな頑張ってはいるけどやっぱりあの風竜とキュルケのが頭一つ抜きん出てるわね」
これは現時点でのルイズの評価。
観客の反応通りやはりタバサとキュルケが今のところトップを争っていると言える
「ええ、このまま行けば優勝は恐らくキュルケかタバサ……」
水銀燈もまたそれに同意した。
「あとギーシュ」
「いや、それは無いから」
そしてついに出番を迎える二人。
「続きましてミス・ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール」
司会進行のミスタ・コルベールが呼びかけた。
「出番よ、準備は?」
ルイズが自分の使い魔に聞く。
「ええ、いつでもよくってよ」
ようやく水銀燈もいつもの不敵な笑みを浮かべ答えた。
「行くわよ、水銀燈!!」
「仰せのままに御主人様……」
この日限りとなるであろう従順な使い魔の顔を作り水銀燈が言う。
この品評会で私達を認めさせる、そんな思いを胸に秘めて彼女は瀟洒な使い魔を演じ始めた。
ルイズが深呼吸をして舞台へと歩き出し水銀燈が後を追う。
舞台の袖から桃色の髪の少女と黒翼の人形が、ゼロとジャンクの凸凹コンビがステージの中央へと踊り出た!
527 :
ゼロのミーディアム:2007/09/24(月) 00:06:55 ID:U+PWcwmA
舞台中央に立つルイズと水銀燈。まずはルイズが一歩前に出て紹介する。
「し、紹介いたします!わたくしの使い魔、す、水銀燈です!種類は…えーと…人形?」
こういった場に慣れていないのか少々上がり気味で水銀燈を紹介しだすルイズ。
人形?って…紹介されてるのに聞かれても正直困る。
ルイズをフォローするように水銀燈も前に出る。そして漆黒のドレス、そのスカートの両裾を摘んで持ち上げ恭しく一礼。
「皆様、お初にお目にかかり大変光栄でございます。わたくしの名は水銀燈…。我が主ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに仕えしお人形…」
そして舞台の上からにこやかに笑いかけた。
彼女をよく知る者が見れば自分の頬をつねって夢かどうか確認するような異様な光景。
ルイズの顔を立てようと言うのか完全なよそ行きの顔を見せ水銀燈が優雅に御挨拶。
「誰だお前ーー!?」等と言うこと無かれ。
人形と言えども水銀燈も一端のレディ。完全な少女アリスを目指す彼女はその気になれば礼節の行き届いた様子を見せる事だって十分できる!
……見せるだけと言うのが少々勿体無い気もするが。
ルイズは水銀燈の演出する見事な使い魔の様子に感動していた。
(やればできるじゃないのよこの子、いつもこんな感じならもっと嬉しいんだけど……)
最後はやっぱり愚痴になってしまったが…。
ルイズの瀟洒な使い魔に観客からも感嘆の声があがった。
そしてそれとは別に…
「お初じゃないぞー!知ってるぞー!」
「いつものSっ気はどうしたー!」
「銀様に踏まれたいー!」
「ああん!お姉様〜」
一部の生徒が大きく沸いた。
どうやら水銀燈、思った以上に学院内に知れ渡っている上に知らぬうちにその人心を掌握している模様。
水銀党ハルケギニア支部の樹立も近い。
掴みはOK、ルイズはとりあえず一安心。だが問題はこれからだ。
(さ、あんたの手並み拝見と行くわよ)
ルイズが後ろに下がり舞台の前に立つのは黒翼の少女。
その片翼がドクン!と胎動するように見えた。
いや、錯覚ではない。黒い翼が波打つように流動し形を変えていく。
そしてそれは異形の、ドラゴンのアギトへと形を変えた。
528 :
ゼロのミーディアム:2007/09/24(月) 00:08:22 ID:U+PWcwmA
観客の中の生徒からひそひそ話が聞こえてくる。
「おい…あれって例の決闘で青銅のゴーレム食ったって話の黒龍だろ?」
「え?食われたのってゴーレム作ったメイジの方じゃなかったっけ?」
「さっきの薔薇まみれがそいつだから食われてはないだろ」
「いや、消化される前に救出されたとか…」
「でもあれ異次元空間に繋がってるって噂で……」
何やら噂に尾鰭がついてエラいことになっている様子。
だが今の時点に限っては好都合。せいぜい驚嘆してもらうとしよう。
水銀燈はそう思い顔だけルイズの方に向けた。
「ルイズ、少し力を借りるわ」
「え?私も手伝う芸なの?」
「ええまあ…。でも貴女は何もしなくていい」
「言ってる意味が分からないんだけど」
「それはね…」
突如ルイズの指にはめられた薔薇を模した指輪が輝きだし熱を帯び始めた。
「言葉通りよ、貴女の中の力を引き出させてもらうの」
ルイズから指輪を通じ流れてくる力を黒龍のアギトと化した翼に収束。その禍々しさすら感じさせる口から光が溢れ始める。
指輪が一層熱を持ち、さらに自分の体から力を抜けていく感覚にルイズが慌て始めた。
「ちょちょちょちょちょちょーっと待って!いやホント、一体何するつもりよ!?」
水銀燈も少々苦しげに顔を歪ませ答えた。どうやら彼女自身にもかなり負担がかかっているらしい。
「黒龍のブレスは山をも崩す、そうだったわよね?」
「山を崩すの!?」
「……流石にそれは無理だから、ちょっとした花火みたくドカンとあげたかったのだけれど……!」
水銀燈は歯を食いしばり必死に力の制御を試みる。
「これは思いの他骨が折れそうだわ……!」
大気が震え、龍の上顎と下顎の間に供給された力がバチバチ稲妻のごとくと走った。
アギトの中の光が凝縮されまばゆい光を放つ光球と化していく。
見ていた生徒達はおろか教師達もその尋常ならざる様に騒ぎ始めた。
「水銀燈!あんた本当に大丈夫なの!?」
ルイズは苦痛の表情を浮かべる自分の使い魔を気遣ったがもはやその声水銀燈には届いていない。
水銀燈は力の制御を行いながら何かをぶつぶつつぶやいている。
「負けない…」だの「認めさせ…」だの「出来損ないでは…」だの断片的に聞こえてはくるが何を言っているのかはわからない。
「…っ!」
ルイズの指輪がずきっと疼いた。痛み共に水銀燈の心の中を垣間見る。
その心の中、あるのはたった一言の言葉。それでもはっきりと水銀燈の心の声が聞こえた。
(ジャンクじゃない…私はジャンクじゃない…!)
「ジャンク…?」
疼く指を押さえルイズがどこか悲しげな顔を黒い翼へと向けた。
翼の内の光球はさらに膨れ上がりもはやそのアギトに収まりきれないまでに達している。
黒龍が大きく震えだし禍々しさに拍車をかけその限界が近い事を物語っていた。
水銀燈は目を見開き叫んだ。
「私は、ジャンクなんかじゃないッ!!」
ズドン!と大砲でも発射したかのような轟音と共に光球が空へと撃ち出された。
その反動で龍を模していた翼が形を崩し羽を大量に撒き散らす。
さらに水銀燈の視界がぐらりと大きく揺れ霞んだ。やはりこの負荷は凄まじいものだったのだろう
「水銀……」
ぼやけた意識の中自分のミーディアムが駆け寄るのが辛うじて見えたが近づく前にその言葉は聞こえなくなり、
彼女は舞台に膝をつくと前のめりに倒れ意識を手放した。
529 :
ゼロのミーディアム:2007/09/24(月) 00:10:41 ID:U+PWcwmA
倒れた水銀燈は舞台袖へと運び込まれ、床に寝かされたる。
命には別状無いようだ。意識はまだ無いが先程言っていた「ジャンクじゃない…」と言う言葉を繰り返しうなされている。
(ここまでこの子を苦しめる『ジャンク』って一体……)
ルイズは苦しむ水銀燈の頬を撫でながら思った。
頬をなぞっていた指が銀の前髪に差し掛かったその時、赤みを帯びた紫紺の双眸がパチリと開かれる。水銀燈が意識を取り戻したらしい。
「水銀燈!大丈夫!?」
「ええ、何とか…ここは…?そうよ!品評会!……つうっ!」
声をあらげるも頭を押さえて呻く水銀燈。まだ負荷は彼女の体に残っているらしい。
「品評会は…中止になっちゃったわ」
「中止?何でよ?」
「それはね…」
ルイズが指差した先にあったのは魔法学院の中央の塔。だが、五階の壁の一部が大きくえぐれ煙があがっている。
「何よあれ…怪獣でも出たの?」
「何も覚えてないのね…」
水銀燈の言葉にルイズが呆れるように言った。
「あんたがやったのよ…あれ」
「……私が?」
発射と同時に気を失ってしまった水銀燈は知らないが、
翼の黒龍から撃ち出されたブレスはそのまま本塔の五階外壁をかすめその部分を後片無く消滅させると、そのまま天に昇り破裂。
まるで太陽がもう一つ現れたかのような大爆発を起こし学院を眩く照らしたのだ。
もし射角がもう少しずれていたら学院長室ごと消し飛ばしていただろう。
「おかげで大騒ぎになっちゃって、幸い怪我人とかはでてないけど」
「そう…悪かったわね」
水銀燈がシュンと申し訳無さそうに沈んだ。
「別にいいわよ。あんたは十分頑張ったと思うし」
「……でも見苦しいところを見せてしまったわ」
だがルイズは優しげに微笑んで水銀燈の頭を撫でてあげた。
「気を失った事?そんな事ないわ、あんなの凄いの見せられたらそんなの帳消しよ」
「ルイズ…」
落ち込んだ顔で水銀燈はルイズを見上げた。いつも見せないような表情。ヤバい…すごく可愛い。
「こ、この話はこれでおしまい!取りあえずお疲れ様と言っておくわ!!」
顔を赤くしてルイズは水銀燈から顔を背けた。そこでふと頭に思い浮かんんだ事が一つ。水銀燈に訪ねてみる。
「ねえ、水銀燈。」
「何?」
「……『ジャンク』って何なの?」
530 :
ゼロのミーディアム:2007/09/24(月) 00:14:16 ID:U+PWcwmA
とたん水銀燈の顔が凍りつき驚愕の表情になると自らを抱きしめるように腕を回し震え始める。
(え?なんか…まずい事聞いちゃった?)
まずいどころの話ではない。地雷も地雷の核地雷。
知らないとは言えルイズは彼女の前で最も口にしてはならない言葉を言ってしまった。
「ル、ルイズ…なぜそれを…?」
水銀燈のルイズを見上げる瞳が虚ろになり震えた声で尋ねた。
「いや…あんた品評会中にも言ってたし、気を失ってる時も……」
ルイズはばつが悪そうに頬をポリポリと掻いた。
「や、やっぱり今の話無し、無かった事にして!」
そして慌て自分の言ったことを否定する。まさか水銀燈がここまで拒絶反応を起こすとは思わなかったのだ。
「こればかりは私もあまり話したくないの…」
水銀燈は俯いたままルイズに呟き…
「……でも貴女の『ゼロ』と言われている事と同意気、とだけ言っておくわ…」
顔を上げて弱々しく笑ってそう言った。
「私と同じ…?」
本当は詳しい話を聞きたい。だが日頃の行いからは想像もつかね弱々しい水銀燈の様子を見るとルイズはそれを聞く事がはばかられた。
なお、塔の件については事故と言う形で処理されルイズと水銀燈に責任は問われなかった。
銀様!銀様!支援
532 :
ゼロのミーディアム:2007/09/24(月) 00:18:14 ID:U+PWcwmA
時刻は夜をまわり昼間の騒ぎも嘘のように収まったころ、ルイズと水銀燈も自室でくつろいでいた。
ようやく元気を取り戻しいつもの調子で水銀燈はぶつぶつ言いながら自分の翼を手入れしている。
例のブレスを撃ち出した際に派手に翼がばらけたため、片翼の羽の大部分が切れたり逆立ったりとボロボロになっていたからだ。
昼間の、自分の使い魔の凄まじいまでの能力を目の当たりにしたルイズがベッドの上に座り呟く。
「…もしかしてあんたアカデミーが開発した試作兵器とかじゃないでしょうね?」
そのあまりの言い草に翼をブラッシングしていた水銀燈が膨れっ面になった。
「失礼ねえ!お父様のお造りになられた薔薇乙女を兵器扱いするなんてぇ!」
「あんなの見せられたら仕方ないでしょ?」
「それなんだけど正確にはあれは私じゃなくて貴女がやったような物なのよぉ?」
「どう言う事?」
「あの時言ったわよね?『力を借りる』って。力を吸い取られるような感覚もあったでしょお?」
今一つピンとこないのかルイズがしかめっ面を浮かべ首を傾げた。
「だぁかぁらぁ〜貴女の中の力そのままを引き出して私はただそれを撃ちだしただけなのよぉ!
……貴女の方こそ体の中に変な魔物とか禁術でも封印されてるんじゃないの?」
「冗談じゃないわ!怖いわよそれ!!」
たわいの無い会話だが水銀燈の言葉はあながち間違ってはいない
。薔薇乙女は指輪を通しミーディアムから力を、時に強制的に吸収する事も出来る。
――それは例えミーディアム本人ですら認識してない力であろうとも。
あの時品評会にいた生徒はもちろん教師や、あのオールド・オスマン氏すら見抜けなかった、水銀燈を通して引き出されたルイズの内に眠る力。
それが古代に失われた伝説の力と言うことを、本人達は知らない。知る由も無い。
「ふぅ……やっと手入れが終わったわぁ……」
水銀燈はようやく形の整った翼をぱたぱたとさせてため息をついた。
彼女はブラシを投げ出すとスッと部屋の窓に近づきそれを開くと……
「ちょっと散歩してくるわぁ」
ベッドの上で杖を弄くってたルイズにそう言って窓辺から飛び立っていった。
「あんまり遅くならないようにね〜」
一応注意はしておいたがルイズの声がちゃんと聞こえていたかはわからない。
水銀燈が散歩と称して来た場所は以前ギーシュとの決闘の舞台となったヴェストリの広場。暗くなった広場には人影はなく黒翼の人形が一人佇むのみ。
「隠れても無駄よ。――出てきなさい」
水銀燈が塔の影を睨み言い放つ。
その言葉を受け出てくる赤い影。きゅるきゅる言いながら姿を表したのはサラマンダーのフレイム。
水銀燈が表情をやわらげ少し笑みを浮かべて言った。
「悪いけど貴方じゃないのよ」
そして次の瞬間その瞳がまた鋭く細められる
「…私が用があるのは――貴方のご主人様の方」
「へぇ?気配は消してたつもりだったのだけれど」
塔の影から人の影が現れフレイムの後ろに立つ。
「こちらから出てきてあげたわよ。感謝なさい……キュルケ」
「あら、お名前を覚えて貰えるなんて至極光栄ね、お人形さん」
豊満な胸を強調するように腕組みして現れたのは褐色の肌に赤い髪がまぶしい火のメイジ、
『微熱』のキュルケだった。
533 :
ゼロのミーディアム・あとがき?:2007/09/24(月) 00:21:01 ID:U+PWcwmA
何だか長くなりましたが無事投下できてよかった…
あとやっとフーケの名前だせた……
読みにくいですがもうちょいお付き合い下さい…
楽しみにしていたんだぜ
そういえば薔薇乙女ってくんくん探偵が好きなんだよな。たしかにちょっと趣味が悪…
銀様GJゥ!
ゼロとジャンク、虚無の使い手と薔薇乙女、
これほど相性の良いものがあっただろうか
GJ!
フーケさんが登場したりキュルケが何か企んでたり銀様砲が凄まじかったり、
後ルイズと銀様が可愛かったりであぁんもぅ!
銀様!銀様!銀様!銀様ぁぁぁぁあああぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!銀様銀様銀様ぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!水銀燈様の麗しき銀色の髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
漫画6巻の銀様かわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
アニメ特別編の主人公で良かったね銀ちゃん!あぁあああああ!かわいい!銀たん!かわいい!あっああぁああ!
コミック8巻も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!コミックなんて現実じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら…
水 銀 燈 様 は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!nのフィールドああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵の銀様が僕を見てる?
表紙絵の銀様が僕を見てるぞ!銀様が僕を見てるぞ!挿絵の銀様が僕を見てるぞ!!
アニメの水銀燈様が僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕には銀様がいる!!やったよママ!!ひとりでできるもん!!!
あ、コミックの銀ちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあ真紅様ぁあ!!ス、翠星石!!巴ぇぇぇえええああああああ!!!雪華綺晶ぅぅうううううううああああ!!
ううっうぅうう!!俺の想いよ銀様へ届け!!薔薇乙女最凶にして可憐な第一ドールの水銀燈へ届け!
銀様GJ!!!!!うわアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああ
久々に銀様分を補充させていただきました。乙
GJ!!!!!!!!!
ここって見てないうちに新作来るから困るよね〜
銀様かわいいよおおおおおうわあああああああ!!
541 :
ゼロのミーディアム:2007/09/26(水) 23:29:35 ID:Bwox5V+r
ちょっと尻切れだけど投下しますね
↓以下本編
夜闇に暮れたヴェストリの広場。寮からは遠いこの広場で現在灯りとなるのはほぼ夜空に輝く2つの月のみ。
その月明かりに照らされて塔の影から出てきたのはキュルケ。
ふふんと鼻をならし彼女は水銀燈に正面から向き直った。
「ようやく2人っきりになれたわね。少々お時間頂けませんこと?お人形さん?」
「ええ、そのつもりできたのだから…。あと私の名前は水銀燈よ。お人形さんなんて名前じゃないわ」
「これは失礼…水銀燈」
「で、この私に何の御用かしらぁ?」
前回の続きのような不穏な気配が二人の間に渦巻く。
「あなたの……コレを頂きたいの」
キュルケが自分の左胸を指差しトントンと叩いた。
「へぇ…?」
水銀燈も狂気じみた笑みを浮かべて翼を大きく広げる。これでいつでも羽を放つことができる。
……つまり襲いかかってきた瞬間いつでも先制できる。
「理由を教えて頂けるかしら…?」
内から滲み出る狂気を隠そうともせず水銀燈が問った。
「それはね……目障りだったの。あなたがちやほやされてるのが…」
「ああ、あなたいつもそこの火トカゲで私の事見てたのよねえ?」
ちょくちょく自分を見つめる赤い影のことに気づいていたらしい。
ルイズが言っていた主と使い魔の感覚の共有を思い出す。
「あら、お気づきだった?」
「くっだらなぁい…。そんな事のためにわざわざ私を呼び出すなんて」
「私としては大きな問題よ」
そうしてキュルケが一歩前に出る。水銀燈はそれを牽制するように威圧し禍々しい気配を醸し出す。
その殺気を感じ取りキュルケの傍らにいたフレイムが主を守るように彼女の前に立った。
「素敵なナイトですこと」
「ええ、私自慢の忠臣ですから。……お下がりなさいフレイム、これは私と彼女の問題なの」
フレイムを追い越しキュルケは手で待ったをかけ自分の使い魔を下がらせた。
「ホントにホントにおバカさぁん……。品評会のアレ、貴女も見たわよねぇ?その上で私に挑むなんてぇ……」
「お生憎様、うちの家系は代々火遊びが大好きでして」
「フフ……火傷ではすまなくてよ?」
二人の間に夜風が強く吹き抜け広場の草木を大きく揺らす。
風がおさまり広場が再び静寂に包まれようとしたその瞬間、キュルケが水銀燈に向かって駆け出した!余裕の表情を崩さず水銀燈は迎え撃つ!
火と風の塔の間、再びこのヴェトリの広場を決闘の地として、妖艶な二人の魔女の舞踏が今、ここに!
542 :
ゼロのミーディアム:2007/09/26(水) 23:34:48 ID:Bwox5V+r
始まりませんでした。
「ああん!もう我慢できない!抱きしめさせて〜!!」
「……はい?」
くっは〜とキュルケは息をもらし満身の笑みで水銀燈に抱きついた。
あまりの突拍子な言葉に水銀燈は凍りつき、あっさりとキュルケに捕まる。
「いっつもずっと見てたわ!ああ!この背徳的な黒い翼とドレス!鋭い紫紺の双眸!最高よ〜!」
キュルケはそのまま水銀燈に高速で頬ずりを始めた。
「ちょ、ちょっと貴女!私の命が欲しかったんじゃないの!?」
「私が欲しいのはあなたの心!左胸指差したでしょ!」
「そう言う事!?私を目障りって言ったじゃないの!」
「ええ!目障りだったわ!あなたのまわりに沸いた取り巻きが!
それにあなたいつもヴァリエールと一緒だし、ずっと2人っきりになりたかったの!」
その高速の頬ずりがさらに加速し始める。
「熱っ!このままじゃ私の方が火傷じゃすまなくなる!」
キュルケのまさちゅーせっちゅを受け水銀燈も大慌て。
「と、に、か、く!離れなさい!!」
そして抱きついたキュルケを無理やり突き飛ばした。
「んもう、つれないわね……」
地面に倒れたキュルケが瞳をキラキラさせて水銀燈を見つめる。
「さっきの会話の流れからなんでこうなるのよ!?せっかくボロボロの翼も直して万全の状態で決闘に望もうとしたのに!」
「わざわざ私に会うためにおめかししてくれたの?嬉しい!」
「くっ!」
駄目だ、恐らく今のキュルケには何を言っても彼女の都合よく解釈するだろう。
話は通じない、しかし相手は別段敵意がある訳ではないため力ずくで排除する訳にもいかない。
……と言うかあまり相手にしたくない。
ならば水銀燈の取るべき手段は一つのみ。
「付き合ってらんなぁい!!」
三十六計逃げるに如かず!!彼女は回れ右をして翼をバサリとはためかせると本塔の方へと飛んでいく。
「ああん!待ちなさいよ水銀燈〜!」
キュルケもまたフライを詠唱して小さくなる黒い翼の後を追った。
543 :
ゼロのミーディアム:2007/09/26(水) 23:36:11 ID:Bwox5V+r
水銀燈の後ろをピタリと追従してくるキュルケ。流石の彼女も舌を巻いた。
「しつこいわねぇ!どの道私はルイズの契約者!貴女の物になんかなる訳ないでしょ!」
「我が家系は昔からヴァリエール公爵家から欲しい物は全て奪わせて貰ってきた!貴女も例外じゃなくてよ!」
「ああもう!どうすればいいのよこれぇ!」
「水銀燈!あなたのためにマドリガルを綴ったの!マドリガル、恋歌よ!
……恋歌?そうよ!私あなたに恋したみたいなの!」
自分で勝手に納得してキュルケがさらにズレた思考を展開する。
「私は女の子で人形なのよ!?」
「そんな事関係無いわ!いつだって愛の力はどんな障害だって乗り越えてきたのだから!」
「性別はおろか人間ですらないのに!乗り越えられる訳無いでしょうがぁぁぁぁぁ!」
水銀燈が半ばキレ気味に叫んだ。だがキュルケは気にせずさらにスピードを上げ水銀燈に肉薄する。
……恋は盲目とは言うがこれは度が過ぎている。
「聞いて!私のマドリガル、我が身から溢れ出る熱情の律動(リズム)を!」
捕まるまいと水銀燈もスピードを上げた。そして後ろを振り向きキュルケを見やる。
「ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー! アノノアイノノォオオオォーヤ! ラロラロラロリィラロロー! ラロラロラロリィラロ! ヒィーィジヤロラルリーロロロー!」
「何言ってるのこの子!?」
満身の笑みで得体の知れない歌を歌いかっ飛んでくるキュルケに水銀燈も肝を潰す。……原曲はすごくいいのに。
完全にトリップしてしまったキュルケをどうするか悩んでいる内に本塔に差しかかった。そして塔から見知った顔が出てくるのを確認した。
「タバサ!」
タバサは小柄な体に似合わぬ大ぶりな杖を右手に、左脇に本を挟んで塔の扉を閉める。そして上から自分の名を呼ばれ空をを見上げた。
544 :
ゼロのミーディアム:2007/09/26(水) 23:37:38 ID:Bwox5V+r
タバサの前に黒衣の天使が降りたつ。
「助けて!変出者に追われているの!」
少女はいつもの眠たげな、感情の読み取れぬ表情で首を傾げた。
少し遅れてキュルケも到着しタバサに声をかけた。
「タバサ!その子捕まえて!」
「貴女もタバサを知ってるの!?」
「運が無かったわね!その子は私の親友よ!さあ!捕まえて頂戴!!」
だが呼ばれた彼女は水銀燈の後ろから動かず親友であるはずのキュルケに対し杖を構える。
「タバサ!?」
「運が無かったのは貴女のほうねぇ!貴女とタバサが親友なら私はこの子の恩人なのよぉ!お、ん、じ、ん!!」
例の食堂の一件が幸を奏したようだ。自分の背で構える少女を頼もしく思った。
「退きなさいキュルケ!貴女も私とタバサを相手にドンパチは避けたいでしょ!」
「むう…私の親友すら押さえておくとは流石は私のお人形!」
「勝手に貴女の物にしないで!」
タバサは水銀燈の後ろからキュルケを見据えていたがふと、その視線がパタパタしている黒い翼に移った。
よく見るとこの翼、黒い艶が美しく見た目より柔らかそうでふかふかしている。
彼女はふらふらとそれに近づくと突然ばふっとその翼に顔をうずめた。
「ひゃっ!」
水銀燈が慌ててタバサに振り返る。
「ななななななな何なの突然!?」
タバサは珍しくうっとりと恍惚とした表情を浮かべて言った。
「シルクの肌触り……」
「ああ〜!ずっる〜い!私もやりかったのに!」
タバサがキュルケの方へと駆け寄り水銀燈に向き直った。
寝返りやがった畜生!!タバサの裏切り者!ガリ!アスラン!ストレイボウ!
とまでは言わないが水銀燈の心中はまさにこんな感じ。
「ね、ね、どうだった?あの翼?」
キュルケがタバサに耳打ちする。
「抗い難い誘惑」
タバサはにへら〜っと笑って答えた。
…あのタバサをここまで言わせ、こんな表情まで出させるとは水銀燈、恐るべし。
「形勢逆転ね」
「翼…ふかふか…」
手をいやらしくワキワキさせ、ずいっと黒いお人形へと迫る大小2人のメイジ。
水銀燈絶体絶命のピンチ!!
「ああ〜っ!あんた達何やってんのよ!!」
聞き慣れた甲高い声を聞き水銀燈が声のした方を振り返った!
545 :
ゼロのミーディアム:2007/09/26(水) 23:40:32 ID:Bwox5V+r
桃色の長い髪を揺らし走り寄ってくる水銀燈のミーディアム。始祖は彼女を見捨てていなかった!
「ルイズ!来てくれたのね!」
「あんまり遅いから心配してきてみればあんた達!なに人の使い魔にちょっかいだしてんのよ!」
実力的には二人に劣るかもしれないが今の水銀燈には心強い味方。
真っ向から二人のメイジと対峙するルイズの横顔が輝いて見えた。
「別に大したことじゃないわよ」
「翼をもふもふ」
悪びれもなく答えた二人のその言葉を聞きルイズが眉をひくつかせて怒り出す!
「そのためにこの子を…?ふざけないで!」
「そうよ!もっと言ってやりなさいルイズ!」
ルイズの怒髪が天を突きキュルケとタバサに向かって言い放った!
「この子の翼をモフモフするのは私なんだからぁぁぁぁぁぁ!!」
「そうよそうよ!……って、何ですってぇぇぇぇぇぇ!?」
水銀燈再び絶叫。ルイズもまたキュルケとタバサの方に駆け出し水銀燈に向き直る。
ブルータスお前もか!ルイズのヨヨ!アリシア!シーマ様!
どうやら始祖ブリミルはハルケギニアに生まれた者以外にはあまり優しくはないらしい。
「最初にモフモフするのは私よ。それなら手伝ったげる」
「仕方ないわね、あなたの使い魔だし」
「わかった……」
「ああああ、貴女達!いつか絶対あの世で詫び続けさせてやるんだからぁぁぁぁぁ!」
再び塔の壁に追い詰められた。迫り来る壁が三人となりその逃げ道を完全に封鎖。
水銀燈今世紀最大のピンチ!!
「ルイズ、タバサ。あの子にジェットストリームモフモフを仕掛ける!」
「了解よ!」
「了解…!」
今にも飛びかからんばかりに血走った眼の三人。キュルケの統制の元、三人一列となって突撃をかけた!
(落ち着きなさい、落ち着くのよ水銀燈……こんな時は素数を数えればいいと誰かが言ってたわ…)
彼女は荒げた呼吸を沈めて冷静になる。
(1・3・5・7・9・11・13・15・あいーん・つう゛ぁーい・ぐーてんもーげん・いーあるいーあるいちいちいちいち
・テトラクテュス・グラマトン…。あ、今のフレーズ歌の歌詞に使えるわね、メモメモっと。)
水銀燈は最早どれから突っ込めばいいか分からない程に錯乱していた。
彼女は懐から取り出した紙に何やら書き始め……
「あいーん・つう゛ぁーい……違ぁぁぁぁぁぁう!!」
それををビリビリと破り捨て本日何度目か分からぬ絶叫をあげた。
もはや打つ手無し!自暴自棄になりキーッとヒステリックに唸って自分の髪をかきむしる水銀燈。
しかしそんな折り、彼女はルイズ以下三人の後ろに何か巨大な影を見たような気がした。
目の錯覚か?と目をこすりもう一度見てみる。
やはり錯覚等ではない、迫り来る三人の後ろに立つのは山のように大きい人型の何か。
「ルイズー!後ろ後ろー!」
警戒を呼びかけるがルイズ達は全く意に返さずこちらに向かってくる。
「そんな古い手に引っ掛かるもんですかーっ!」
そして三人がかりで水銀燈をがっしりと押さえその翼に魔手が伸ばされようとしたその時!
ドスン!と彼女らの後ろで巨大な何かが大地を踏みしめ、大きな地響きが三人+一体を揺らす。キュルケが振り返り驚愕した。
「な、何よこれ!」
「ゴーレム……それもかなりの使い手……!」
タバサは表情を固くして呟いた。
「何でこんなのがここに…」
ルイズはただ呆然として見上げていた。
そう、現れたのは全長30メイルはあろうかと言う巨大な土の巨人。肩に黒いローブを纏ったメイジらしき者を乗せて、それがこちらへ向かってくる。
「貴女達!何ぼーっとしてるの!逃げるわよ!」
水銀燈の渇が入り三人が我に返った。
すかさずルイズ達は走りだしてその場を離れ、水銀燈も上空へと離脱。
今まで彼女らのいた場所にズシンとゴーレムの足がめり込んだ。
(ふざけた真似してくれるわね…!どこの誰の仕業よ!)
水銀燈は大きく翼をはためかせ術者の顔を拝んでやろうとゴーレムの頭に向けて上昇していった。
546 :
ゼロのミーディアム:2007/09/26(水) 23:44:02 ID:Bwox5V+r
「はぁ…はぁ…何なのよ…あれ」
全力でゴーレムから逃げ出し近くの草むらに滑り込んだルイズが息も絶え絶えに言った。
「聞いたことがあるわ……巨大なゴーレムを操り盗みを働く謎の盗賊…」
息を落ち着かせたキュルケが言う。
「土くれのフーケ…」
相も変わらずの仏頂面でタバサがキュルケの後に続けた。盗賊と言う言葉にルイズが大慌てする。
「盗賊!?もしかして学院の宝物を!?ど、ど、ど、どうしよう!」
「落ち着きなさいよヴァリエール。盗むにしてもお宝があるのは誉れ高きトリステイン魔法学院の宝物庫よ?
厳重な固定化が複数のスクウェアクラスの手でかけられてる上に、壁はすっごい厚いって話だし。あのフーケでも忍び込むのは無理よ」
キュルケの楽天的な意見。しかしそこでタバサが口を挟む。
「それは万全な常態での話」
「万全ってなによタバサ?…あ、」
キュルケが言ってる最中に思い出した。そしてルイズも。あの昼間に起こったとんだアクシデントの事を。
「……そう言えばどっかの誰かさんが派手に消し飛ばしちゃったのよね…」
ルイズが自分の使い魔が昼間やらかした事を目に浮かべ頭を抱える。
「それもご丁寧に宝物庫の壁を綺麗さっぱりとね…」
「で、でもちゃんと壁は直ってるし固定化だってかけ直してるはずよ!」
自分の使い魔の責任問題に発展すると思ったのか早口でまくし立てるルイズ。
それに対しタバサは無表情で呟く。
「たしかに壁は錬金で完全に修復された。物理的衝撃による破壊は困難」
そしてその顔を険しくして話を続ける。
「ただしおそらく、今かけられている固定化はあくまで間に合わせ。フーケの技量が今のそれを上回るとしたら……」
ルイズとキュルケが青ざめて顔を見合わせた。
「どんなに分厚い壁でも錬金の前では無意味。
そしてフーケは錬金でも名手と知られる土のメイジ……!」
タバサが冷静に、しか厳しい事実を躊躇なく二人に突きつけた。
ゴーレムがその巨大な腕を宝物庫のある五階に伸ばしフーケがそれを伝って壁の前に立つ。
そして壁に手を当て伝わってくる感触にフッと笑みを漏らした。
「掛かっている固定化はトライアングルの物、だがこのレベルのなら……!」
懐から鉛筆ほどの長さの杖を取り出しそれを指揮棒ほどの長さに伸ばす。
「私の錬金で破れる!!」
ルーンを唱え壁に向かって魔法を放った!『錬金』は光の輪を壁の表面に描くと、その中心から砂となってさらさらと崩れていく。
そして物の数秒で壁にトンネルのような穴がぽっかりと開いた!
フーケは穴から宝物庫に侵入、様々なお宝の中からお目当ての品『破壊の杖』を探し始めた。
無数の杖が壁にかかった一画に目を付けたフーケ、その中にどう見ても杖に見えない品があった。
不思議な金属でできた全長1メイル程のそれには鉄のプレートがかけられ、ご丁寧に『破壊の杖。持ち出し不可』と書いてある。
「ビンゴ…!」
フーケはパチンと指をはじき破壊の杖を手に取る。フードから見えた口元だけで深い笑みを浮かべ、入った穴に向かって走り去る。
「ととと、いつもの奴もやっとかなきゃね…」
後ろを向いたまま杖を振った。すると杖が立てかけてあった壁に文字が刻まれ始めた。刻まれた文面の内容はこうだ。
『フーケは大変な物を盗んでいきました』
破壊の杖まで簡単に盗まないで♪
「……ちょっとお茶目すぎたね、やっぱりいつも通りにしとこうか」
『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』
フーケはその文面に満足気にうなずくと穴を出てゴーレムの右腕に飛び乗る。
しかしフーケを出迎えたのはゴーレムだけではなかった。
「逃さないわよ!!」
双月をバックに左手を輝かせ細身の剣を構えた翼のシルエットがフーケに襲いかかった!
547 :
ゼロのミーディアム:2007/09/26(水) 23:45:47 ID:Bwox5V+r
「何者!?」
フーケは瞬時に杖を構え頭上に降ってきたその剣を受け止めた。
「盗人風情に名乗る名などない!」
「あなたは…!」
小柄な体にも関わらず水銀燈がフーケを圧倒している、その刃がその頭上に迫ったその時。
「ゴーレム!」
フーケの命令でゴーレムの左手が水銀燈を掴もうと迫りくる!
「ちいっ!」
彼女はフーケから離れ、掴みかかってくる巨大な土の手を避けた。
そのままゴーレムの肩に乗り逃走を計るフーケ。ゴーレムが二本の巨大な腕を振り回し水銀燈を寄せ付けない。
「あなたのおかげで望みの品が手には入った!感謝するわ!」
フーケは皮肉をこめた感謝の言葉を水銀燈に向かって言い放つ。そして学院外の草原に出ると。ゴーレムをしゃがませ地面にに駆け下りた。
「好き勝手言ってくれるわねぇ!!」
水銀燈も後を追おうとするもそれを邪魔するゴーレムの腕は尚も健在。
腕を必死に回避する彼女の視界でフーケがどんどん小さくなっていく。
(このままでは取り逃がしてしまう……!)
「メイメイ!」
水銀燈が自分の人工精霊を呼び出した。すると翼から紫色の蛍のような光が現れ彼女の周りを飛び交う。
「あのメイジを追いなさい!!」
水銀燈が叫ぶように命令をする。メイメイはチカチカと肯定するように強く瞬きフーケの追跡を開始した。
「頼んだわよ、メイメイ…!」
残ったゴーレムの攻撃を避けながら水銀燈は人工精霊に望みをかけた。
やかてフーケ、メイメイとも見えなくなると突然ゴーレムが崩れ落ち巨大な土の山となる。
月明かりに照らされた小山のような土くれを残し、フーケは『破壊の杖』をその手に姿を消した。
548 :
ゼロのミーディアム:2007/09/26(水) 23:48:01 ID:Bwox5V+r
翌朝……
トリステイン魔法学院ではは昨夜から蜂の巣をつついた騒ぎが続いていた。
何せ、秘宝『破壊の杖』が盗まれたのである。
宝物庫に学院中の教師が集まり壁に空いた綺麗な円形の穴を見て、口をその穴と同じようにあんぐり開けていた。
壁には『土くれ』のフーケの犯行声明が刻まれている。
『フーケは大変な物を盗んでいきました』という文に×印がかけられ、そのすぐ下の壁に
『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』と刻まれているのを見た教師達。
好き勝手に喚き始めた。
「おのれ土くれめ!なんたる屈辱か!」
「ナメた真似を!貴族達の財宝を荒らす忌々しい奴が!」
「学院の宝まで簡単に盗まないで!」
「あ、頭が痛い……鈍痛鈍痛鈍痛鈍痛……」
そして誰の責任になるか押しつけ合いを始める。貴族のくせに非常に見苦しい。
「皆の者、静粛に!!」宝物庫の扉が開かれ学院長オールド・オスマン氏が現れた。
「ここでどんなに文句を言おうと杖は戻らぬ。
誰の責任かと問えば我々全員じゃ。無論私も含めてな……。
よもやこの学院に賊が入るとは誰も思わなんだ……」
厳しい表情を浮かべオスマン氏が深刻に言う。
俯いた顔を上げ気を取り直し、オスマン氏はそばにいたコルベールに聞いた。
「犯行の現場を見ていたのは誰だね?」
「この三人です」
コルベールは後ろに控えた三人を指差す。ルイズ・キュルケ・タバサの三人が前に歩み出てオスマン氏に一礼した。
水銀燈は三人の後ろに控え、宝箱の上に足を曲げて座り込み、忌々しげに穴を睨んでいる。
「ふむ、君達か」
オスマン氏は意味深そうに後ろの水銀燈を見つめた。
「……何よ」
その視線に気づいた彼女は不機嫌な様を隠さずに壁の穴を睨みつけていた瞳をギロリとオスマン氏に移す。
オスマン氏は慌てて目をそらし三人に説明を求めた。
「あの、まず大きなゴーレムが現れました。そのゴーレムの腕を伝ってメイジが宝物庫の壁の前に立つと錬金らしき魔法で……」
「なる程、あの穴は錬金によるものか。間に合わせの固定化では無理もないの……」
ルイズが説明を続ける。
「そして何か宝物を持ち出してまたゴーレムに乗ったところで……」
549 :
ゼロのミーディアム:2007/09/26(水) 23:54:02 ID:Bwox5V+r
水銀燈がルイズを見て言った。
「この子と交戦しました」
「ふむ」
「水銀燈、学院長に説明を」
「はあ、わかったわよ…」
水銀燈は一つため息をつき宝箱から立つとオスマン氏に説明を始める。
「最初、顔を拝んでやろうと剣で能天を斬りつけたら杖で防がれたわ、
鍔迫り合いになったけどゴーレムに邪魔されて一度離脱。以後、振り回した腕が邪魔で賊に近づくことすら出来なかった。
賊はゴーレムを私の足止めに残して逃走。後に残るは崩れた土の山だけよ」
「ふむ…追うにも手掛かり無しじゃのう」
オスマン氏が髭をなでながら言う。
「あ、手掛かりと言えば私の…」
「遅くなりましたわ」
そこで水銀燈の言葉を妙齢の女性の声が遮った。
「ミス・ロングビル!何処へ行っていたのです!大変ですぞ!事件ですぞ!」
コルベールが顔を真っ赤にさせて興奮した調子で言った。あっちっち〜茹で蛸茹で蛸〜。
「申し訳ありません。朝から急いで調査をしておりましたの」
対照的にミス・ロングビルは落ち着き払ってオスマン氏に告げる。
「今朝方の騒ぎに気づき、宝物庫を見ればこのとおり。フーケのサインを見つけた私はすぐに調査を始めました」
「仕事が早いの、ミス・ロングビル。して結果の方は?」
「はい、フーケの居所がわかりました。」
「な、なんですと!」
コルベールが素っ頓狂な声をあげた。
「誰に聞いたのじゃね?」
「近在の農民に聞き込みを行ったところ…近くの森の廃屋に黒ずくめのローブをまとった『男』が…」
「……?私、直接会ったけどあの声は間違いなく……」
女だと水銀燈が言いかけたところで、誰にも気づかれることなく宝物庫に入ってきた紫光に気づく。
(メイメイ!)
フーケ追跡から無事帰還したメイメイ。フラフラと力無く飛びその瞬きも弱々しい。よほどの距離を追ったのだろう。
(ご苦労様、結果を聞かせて頂戴)
メイメイがチカチカと暗く瞬き主にその成果を報告。
「…何ですって!?」
思わぬ報告の内容に彼女は思わず大声をあげた。
宝物庫にいた以下全員が水銀燈に振り向く。
その中でロングビルの顔が引きつった。水銀燈の存在に気づいていなかったからなのだが……一体何故?
「ああ、失礼。独り言だから気にしないで。」
独り言にしては大きすぎだが、そんな事に構ってられないと皆、再びミス・ロングビルの報告に耳を傾け始める。
(よくやってくれたわメイメイ。ゆっくりお休みなさい)
水銀燈の労いの言葉に嬉しそうに瞬くと、メイメイは元いた黒い翼の中に帰って行った。
その後、水銀燈はいまだ報告を続けるロングビルに意味深な視線を送る。
しかし、今の時点で彼女の向けた視線の意味、その真意にに気づく者は誰もいない……。
550 :
ゼロのミーディアム・あとがき:2007/09/26(水) 23:57:52 ID:Bwox5V+r
やっとフーケ襲撃完了!
自分的に前回の話がちょっと重めだったので今回は笑えないジョークを交えてお届けさせてもらいました。
あとマチルダさん、ゴーレムが派手すぎてあんまり錬金が話題にならないので…
せっかくだから俺は錬金で盗みをはたらかせてみたたぜ
次回で土くれのフーケ編完結!…するといいなあ
GJJJJJJJJJJJJJJJJ!
色々言いたいが何よりも
もふもふしてえ!
>ガリ!アスラン!ストレイボウ!
>ブルータスお前もか!ルイズのヨヨ!アリシア!シーマ様!
テラ裏切り者w その他水銀党と化してるキュルケとか危うく虚空からの使者になりかけた銀様とかツッコミ所満載だなw GJ!w
ああ……なんてGJ!
シリアス→ドタバタ→シリアスのリズムが心地いいなあ。
あと銀様にじゃれつきたがるキュルケとか、にへら〜と笑うタバサが微笑まし過ぎるw
銀様!銀様クンカクンカしてえええええええ!!!
乙&GJ!最初戦闘始まるの?と思ったら別の意味で始まったwwww
いいな〜俺もモフモフしたい〜〜〜翼と言わずに全身モフモフしたい〜〜〜
銀様GJゥ!
突っ込み所満載だが指摘されてないところで
五寸釘自重しろwww大好きなのは解ったから!
そして俺ももふもふしたいんですが構いませんねッ
GJなんだぜ
もう信じられそうなのはモンモン一筋のギーシュくらいかもな。役に立つかわからないけど
パロネタはある程度控えたほうがいいかもねー。
それを踏まえた上で超GJ!銀様の翼に包まって寝たい。
じゃあ俺はミニオン・キュルケに突っ込んどこうw
確かにアレは名曲。イトケンらしからぬ音楽だけど、間違いなくサガ史上に残る
何はともあれ超GJ
フーケ「貴方には勝て無いわね・・・まったく。」
銀「戦わない内に諦めていいの。」
フーケ「ええ、その触りごこちの良さそうな翼を見ていると、破壊の杖なんかどうでも良くなってくるわ(ワキワキ)。」
銀「えっ・・・ロング・ビル、いえ、フーケお前もかっ―――。」
フーケ「さあ、モフモフの時間よ。」
ここ漫画オンリーですか?
明らかに原作ネタのハルヒのSS書きたいんだけど専用スレが見つからない・・・
↑漫画じゃなくてアニメです。サーセン
>>560 アニキャラ個別かVIPかエロパロに行け
アニキャラ個別にはキャラ別のスレがあるんで話のメインとなるキャラのスレで
アニメのSSを書きたいときはまずその作品関連の保管庫があるかどうかググって
そこからスレに行くのが無難
565 :
ゼロのミーディアム:2007/10/02(火) 22:36:33 ID:ff739S5K
一段落ついたので投下〜!土くれのフーケ−前編−をお楽しみ下さい
↓以下本編
コルベールが王室に通報してフーケを追ってもらうように提案したがオスマン氏が即座に却下する。
「馬鹿者!んな事しとる間にフーケは逃げてしまうわい!
それに、身にかかる火の粉を己で払えぬようで何が貴族か!この問題は我ら学院の手で解決する!」
オスマン氏大激怒。
日頃のエロボケジジイ(失敬)ぶりから想像もつかぬ迫力だ。
そして教師達を見回し声高らかに有志を募った。
「これよりフーケ追撃及び破壊の杖奪還隊を編成する。我をと思う者、杖を掲げよ!」
しかし誰も杖を上げようとしない。困った顔で皆オスマン氏から目をそらす。
相手は国中を騒がす悪名高き盗賊、しかも巨大なゴーレムを作り出す強力な土のメイジと来たものだ。
いかに学院の教師でも躊躇うのは致し方ないか……。
「なんじゃ?おらぬのか!フーケを捕まえ名をあげようとは思わぬのか!
誇り高き魔法学院の教師達がなんたる様か!情けない!」
(同感…ホント、なっさけなぁい)
その様子を水銀燈が後ろから黙って見ていた。再び宝箱の上に座り込み冷ややかに教師達を見回す。
(自称誇り高き貴族とか名乗っといて腰抜けばっかりじゃないのよ。
…つまんなぁい。いっそのこと、ここでメイメイの報告バラして……)
ふと水銀燈の視界の隅で誰かが杖を掲げた。
(あら?ちゃんといるのね。貴族の中にも勇気と使命感に満ちたメイジが)
そうして視線を移した先にいたのは……彼女もよく知る桃色の髪の少女。
「ルイズ…!」
「ほう、ミス・ヴァリエール」
水銀燈が小さくつぶやき、オスマン氏が興味深く言った。
「ルイズ、貴女本気なの?」
「もちろんよ、貴族に二言はないわ」
水銀燈がルイズの隣に並び固い表情を浮かべ聞いた。
教師達すら躊躇するこの任務、それをメイジとしては未熟極まりない彼女が名乗り出るとは……。
ルイズの気性を理解していたつもりだったがまだ認識が甘かったらしい。
水銀燈が眉間を押さえ顔をしかめる、まさかここまで向こう見ずなな性格だとは思いもしなかったのだ。
「ミス・ヴァリエール!やめるんだ!君は生徒じゃないか!」
コルベールの反対にルイズはきっと唇を強く結び言い放つ。
「誰も杖を掲げないじゃないですか!ならばこの私がフーケを捕まえてご覧にいれます!」
( ゜∀゜)o彡○銀ちゃん!モフモフ支援
567 :
ゼロのミーディアム:2007/10/02(火) 22:38:30 ID:ff739S5K
その凛々しく真剣な表情を見ていたキュルケ、
(この子もよくやるわ)と深く溜め息をついた。
「流石はヴァリエール…その根拠の無い自信はどこからくるんだか……」
(あんたらしいって言えばらしいけどね)
フッと微笑みキュルケもまた杖を掲げた。
「ミス・ツェルプストー!君まで!」
「ヴァリエールに負けてはいられませんもの!」
コルベールがさらに驚いたが、キュルケは瞳を閉じ口元に笑みを残したまま得意げに答えた。
キュルケが杖を上げた直後にもう一本杖が上がる。キュルケの隣にいたタバサがその長い杖を掲げていた。
「タバサ、これは私のルイズに対する気まぐれよ。あなたがつき合うことないわ」
キュルケがそう言うもタバサが短く答える。
「乗りかかった船」
そして少しだけを彼女も小さく笑った。
「……それに心配」
キュルケが感動した面もちでタバサを見つめルイズも感極まりお礼を言う。
(あと、もふもふ)
水銀燈だけ突然その背中にゾクリと悪寒が走る。彼女はキョロキョロと周りを警戒するが悪寒の理由はわからずじまいだ。
「水銀燈、あんたも来るのよ」
「……」
すぐに答えず彼女は顔をしかめ少し考え事を始めたが、何かを決めたように頷いてルイズに言った。
「……いいでしょう。大元の原因も私みたいな物だし。それを清算する願ってもないチャンスだもの」
黒衣の天使は先程のキュルケやタバサとは正反対の触れれば切れるような凍りついた薄笑いを浮かべて言葉を続ける。
「……それにあのメイジ、散々私をコケにしてくれたしねぇ?」
そして何故か一瞬だけミス・ロングビルに赤みがかった紫紺の瞳を向けた。
「よかろう、君達の決意しかと受け取った。」
「オールド・オスマン!?」
「彼女達は敵を見ている。それにミス・タバサは若くしてシュバリエの称号を得た騎士と聞いているが?」
その『シュバリエ』と言う言葉にルイズ・キュルケはもちろん教師達も驚いて皆タバサに注目したが、
当のタバサは返事もせず水銀燈の翼をじーっと見つめつっ立っている。オスマン氏の話を聞いていたのかも怪しい。
「本当なの?タバサ?」
「……?」
キュルケの質問に対しタバサは無表情で首をかしげるばかり。
「ちゃんと学院長の話ぐらい聞きなさいよ……」
「と言うか私の翼から目を離して!落ち着かないから!」
……どうやら本当に話を聞いてなかったらしい。
支援
569 :
ゼロのミーディアム:2007/10/02(火) 22:40:07 ID:ff739S5K
オスマン氏はゴホンと一つ咳払いをしキュルケを見つめる。
「さらにミス・ツェルプストーはゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した名家の出身。彼女自身の炎の魔法もなかなかの物と聞く」
キュルケはオスマン氏の言葉に髪をかきあげた。
ルイズは次は自分の番だとばかりに胸をはるが、彼女を前にオスマン氏は「あー」だの「うー」だの唸って困っている様子。
つまり……ルイズの誉めるところをなかなか見つけられなかった。
「ルイズ……」
水銀燈以下キュルケ、タバサまで生暖かい眼差しをルイズに向けた。
「そんな目で私を見ないでぇぇぇぇ!」
これはまずいとオスマン氏は目を逸らしながらもルイズを無理矢理誉め始める。
「その…ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを排出した公爵家の息女で……。
それにあの、えーと、あー、将来有望なメイジと聞くような聞かないような……。」
そしてだらだらと汗をかき始め視線を右往左往させていると銀髪黒翼の人形が目に入り熱っぽい目で見つめた。
「おお!そうじゃ!その使い魔はあのグラモン元帥の(ドラ)息子であるギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ったという話ではないか!」
ルイズが大きくずっこけた。そして下から自分の代わりに誉められた使い魔を膨れっ面で非難がましく見上げている。
「何よ、別に私が悪い訳じゃないのに……」
「……おまけに宝物庫にかかったスクエアメイジの固定化をぶち抜き、分厚い壁を錬金も使わずに消滅させたのも彼女らしいしの」
「うっ!」
少々の嫌みを込めたオスマン氏の言葉に水銀燈が自分の胸を押さえた。
オスマン氏は思う。彼女が本当に伝説の『ガンダールヴ』なら、……そして自分も知らぬ彼女の得体の知れぬ力をもってすれば、
いかに相手が土くれのフーケと言えど遅れは取らないだろうと。
「そうですぞ!なにせ、彼女は伝説のガンダムッ!?」
コルベールの言葉をオスマン氏は慌て口を押さえて塞ぎ小さく彼に耳打ちした。
(ミスタ!ワシ意外に他言は無用と言ったはずじゃぞ!)
(ははあ!申し訳ございません!)
そういや今の格好はデスティニー 支援
571 :
ゼロのミーディアム:2007/10/02(火) 22:42:01 ID:ff739S5K
オスマン氏はさも何事もなかったように振る舞い四人の少女に向き直った。
「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する!!」
オスマン氏の威厳ある声にルイズとタバサとキュルケは真顔になり直立する。
「杖にかけて!!」
そして三人同時に唱和してスカートの裾をつまんで恭しく礼をした。
(ほら!あんたも!)
(はいはい……)
水銀燈もルイズにせかされて仕方無しに自分のドレスの裾をつまみ頭を下げた。
「オールド・オスマン。私がフーケの場所まで案内しましょう。同行することをお許し下さい」
ミス・ロングビルが前にででオスマン氏に言った。
「うむ!彼女達の力となってくれ!魔法温存の為に馬車を用意する。それで向かうのじゃ!」
「かしこまりましたわ」
「やっぱり来るのね…」
「それはそうよ。ミス・ロングビルがフーケの場所知ってるんだもの」
「……ああ、そうよね」
呆れたように答えた水銀燈に腹立たしさを感じるルイズだったが、
彼女が自分に背をむけ宝物庫を出ようとするのを見てその後ろ姿に声をかけた。
「どこに行くのよ?」
「デルフを取ってくるわ。またあんなゴーレムが出たら私の剣じゃ心細いもの」
「ゴーレムが出たら剣なんかじゃ無理よ」
「それでも無いよりましよ。それにせっかく買ったんだから使わなきゃ損でしょ?」
「ぶえっきし!」
ルイズの部屋の片隅でボロボロの剣がくしゃみをした。
「あー、ちくしょうめ〜誰かが噂でもしてんのかね?それともただの風邪か?」
デルフリンガーがガチャガチャと鍔を鳴らして
何やらブツブツ言っている。
……剣がくしゃみ?剣が風邪?
ルイズの部屋に向かう途中の廊下で水銀燈は見知った顔に会った。
「水銀燈?こんなに朝早くから何かあったんですか?」
「それがね?ちょっと聞きなさいよシエスタ」
ばったり出会ったメイドに彼女は事件の経緯とこれからの任務についてベラベラと話しだした。
…いいのかコレ?学院長の特命なのに。
「まあ!あの土くれのフーケを捕まえに!」
「そうなのよ。まったくルイズと来たら…。まあ事件の原因は私でもあるんだけど……」
「ですけどこれから出発するんじゃ朝ご飯は食べれませんね」
「あ……」
水銀燈は口をポカンと開け固まった。空きっ腹での盗賊討伐など御免被る。
「ねえ…シエスタ、悪いのだけれど……」
「はいはい、すぐにご用意しますからちょっと待ってて下さいね!」
そう言ってニッコリと笑いシエスタは駆け出す。
「厨房で待ってますから〜!!」
「頼んだわよ〜」
遠くの曲がり角でもう一度こちらを向いて手を振るメイドに黒翼の人形も手を振り返してお願いした。
ガンダム支援
573 :
ゼロのミーディアム:2007/10/02(火) 22:43:38 ID:ff739S5K
人の夢と書いて『儚い』、月の夜と書いて『腋』。
そして女が三人で『姦しい』とはよく言ったもの、ではそれが五人となったらどうだろう?
答えは馬車を見ての通り。
姦しいのはルイズ・水銀燈・キュルケの三人。
タバサは無言で本を読んでるし、とミス・ロングビルは物静かに馬の手綱を握っている。
つまり…やっぱり普通に姦しかった。
「だ〜か〜ら〜!この子から離れなさいよツェルプストー!」
「何よー!減るもんじゃないし良いじゃない!ね?水銀燈!」
「うざいわ。離れて」
「ああん!ツンツンしてて素敵!ねぇデレてデレて〜」
年甲斐も無く痛々しい言動でキュルケは体をくねくねさせて水銀燈に迫る。
彼女はトントンと後ろから肩を叩かれそちらの方を振り向いた。
「ん?なに?タバサ?」
「イタい(主に言動が)」
無表情…いや、鉄面皮の顔のまま言い放たれた親友の痛烈な一言に、キュルケは馬車の隅にうなだれるように体育座りをしてがっくりと落ち込んでしまった。
タバサは口数こそ少ないが、その言葉に込められた意味は実に重いのだ。……爆弾発言とも言うが。
「まったく…やっと静かになったわね。……ん?」
手綱を握っているミス・ロングビルを見やるルイズ。そして少し疑問に感じた事を投げかけた。
「そう言えばミス・ロングビル、何故あなたが御者を?手綱なんて付き人にやらせればいいのに」
ミス・ロングビルはにっこりと笑った。
「いいのです。わたくしは貴族の名を無くした者ですから」
だが、どこか諦めの入った表情に見えるのは気のせいだろうか?
「だけど貴女は、オスマン氏の秘書なのでしょう?」
「ええ、でもオスマン氏は身分の差などあまりこだわらないお方ですから」
「ふぅん、ちゃんと貴族にもそんな人がいるのね」
貴族の中にも身分等にとらわれない者がいると言うことに水銀燈も感嘆する。
「ま、学院長やってるぐらいの人柄だもの」
「ちょっとセクハラが激しいですけどね」
「差し支えなかったら身分を追われた事情をお聞かせ願いたいわ!!」
こう言った話が大好きなのか馬車の隅っこにいたキュルケが復活し御者台に座ったミス・ロングビルににじり寄る。
何という変わり身、何という回復力。
だがミス・ロングビルは微笑みを浮かべたまま口を閉ざしている。あまり口に出したく無いのだろう。
「いいじゃないの。教えてくださいな〜」
支援
575 :
ゼロのミーディアム:2007/10/02(火) 22:45:11 ID:ff739S5K
キュルケのあまりのデリカシーの無さにルイズが眉をひそませそれを注意しようとした矢先、
「やめなさい、キュルケ…!」
水銀燈がいつになく厳しい顔で、冷たくキュルケに言った。
「人には触れてはならない傷みと言うものがあるのよ。例え時間がその傷を癒やそうとも忘れる事は、消える事は決して無いの……!」
彼女はギリッと歯を食いしばり憎しみすら込めた眼差しでキュルケを睨みつける。
「そして古傷を抉ってまでそれを聞き出そうとする等恥ずべき事だわ。
ましてやそれが人生の転機となった話となるなら以ての外よ!!」
反論一つ許さぬ、強い意志を秘めた言葉だった。
弱々しい自分と、それに憐れみを寄せた紅い薔薇の少女との過去、水銀燈はそれを思だしていた。
人生の転機、思えばあの少女との別離が自分の戦いの宿命の始まりだった。
「す、水銀燈どうしたのよ突然?」
「そ…そうよ、ちょっと暇だからお喋りしようとしただけなのに……」
忌々しい過去を思い出し憎しみの炎を燃え上がらせた水銀燈だったが、
驚きに青ざめたルイズとキュルケを見てハッと我に返り落ち着きを取り戻す。
「い、言い過ぎたわね……ともかく他人の過去を詮索するのはあまり好ましい事ではないでしょ?」
二人から顔を背けてごまかすように早口で言い直した。
「確かに、無粋」
手元の本をパタンと閉じてタバサもまた水銀燈の言葉に同意した。
その表情が若干険しい。もしかすると彼女もまた、何かつらい過去があるのかもしれない。
(自分の事を棚に上げてよく言ったものね……)
水銀燈は嘆くようにそう小さく言い捨て自嘲気味に首を振った。
576 :
ゼロのミーディアム:2007/10/02(火) 22:46:38 ID:ff739S5K
馬車が重っくるしい雰囲気に包まれてしまった。
これからフーケを捕まえようと言うのに気が滅入るような陰鬱さが彼女達に渦巻いている。
「……とりあえず腹拵えといかない?」
この状況を打破すべく。水銀燈が膝の上にのせていた箱に手をかけた。
「あ、それ!」
ルイズはそれに見覚えがあった。以前朝食を食べ損ねて空腹に呻いた時、休み時間に水銀燈が持ってきてくれた箱だ。
「シエスタ特製サンドイッチぃ〜」
箱の中身には一口サイズの色とりどりのサンドイッチが所狭しとならんでいる。
「まったく……ピクニックに来てるんじゃないのに」
「よだれ出てる」
キュルケが真面目ぶって言うも、タバサのツッコミどおり美味しそうなサンドイッチを前によだれを垂らしているのではいささか説得力に欠けた。
それだけシエスタのサンドイッチが魅力的なのかもしれないが。
「甘いわね、キュルケ。かつて古き戦場においてコウメイと言う名軍師がこんな言葉を残しているの……」
水銀燈のその言葉にルイズ、キュルケ、タバサが首を傾ける。
「……腹が減っては、戦はできぬ!!」
「「おお!!」」
「正論…!」
三人が驚くように声を上げた。
いや、かの諸葛亮孔明も流石にそんな事は言ってないから。
「うーん、やっぱりおいしいわ」
「ま、こう言うのもわるくないわよね」
「……(もぐもぐ)」
朝食を抜いて来たため三人とも一心不乱に食事をとりはじめた。
水銀燈も一つサンドイッチを手にとりミス・ロングビルに差し出す。
「ミス・ロングビルもお一ついかがぁ?」
そして切れ長の瞳をさらに細め、いやに挑戦的な韻を含ませて言った。
「ではお言葉に甘えてわたくしも……」
彼女は渡されたそれを手にとり片手で手綱を持ちながらそれを口に運ぶ。
彼女は水銀燈の攻撃的な物言いを受け流すように終始微笑んだままだった。
「シエスタだったわよね?二度もご馳走になったんだし、一度はお礼にいかなきゃね」
「この任務が終わったら行ってあげるのね、あの子も喜ぶわぁ」
577 :
ゼロのミーディアム:2007/10/02(火) 22:48:54 ID:ff739S5K
深い森の中、一行が開けた場所に出た。学院の中庭程の広さの空き地の真ん中に廃屋が一つ。
元は木こり小屋なのか朽ちた炭焼き窯と壁板が外れた物置が隣に並んでいる。
5人は小屋から見えないように茂みに隠れ小屋を監視していた。
「わたくしの情報ではあの中にいると言う話です」
ミス・ロングビルが小屋を指差す。
「作戦会議」
タバサがそう呟きがちょこんと正座して、地面に絵を書き始めた。
作戦の内容はこうだ。
まず偵察兼囮が小屋の中の様子を確認。
↓
そしてフーケが入ればどうにかして外に出す。無論小屋の中には土がないためゴーレムの生成は不可能。
↓
フーケが外に出たところをゴーレムを作り出す前に魔法の集中砲火で沈める。
単純な作戦ではあるが理にはかなっている。
「偵察兼囮はこの子にやってもらいましょう。……メイメイ」
水銀燈の言葉に呼ばれ彼女の翼から蛍を思わせる紫光が現れる。ルイズが不思議そうにそれを見つめ聞いた。
「これはなんなの?」
「私の人工精霊のメイメイよ。言ってみれば……私の使い魔ね」
「使い魔が使い魔を持つなんて……」
「色々言いたいことあると思うけど今はそれどころじゃないでしょ?」
水銀燈が自分の手のひらにのったメイメイに語りかけた。
「お休み中に悪いわね、もう一仕事頼むわ」
主人の言葉に微塵に不満を感じる事無くメイメイは瞬くと、地面スレスレを飛んで小屋に近づいていった。良くできた従者だ。
「本当に大丈夫なの?」
「あの子は優秀な私の従者よ?戦いのサポートだってこなしてくれるわ。追跡・偵察・囮、何でもござれ…なんてね?」
そして小屋の周りをぐるぐる飛んだメイメイが主人の元に戻り耳元でチカチカと瞬く。
「誰もいないそうよ?」
それを聞き恐る恐るもルイズ達が小屋に近づこうとしたその時、
「ちょっと待って」
水銀燈がそれに待ったをかけた。
支援
579 :
ゼロのミーディアム:2007/10/02(火) 22:54:44 ID:ff739S5K
「何も5人全員で小屋に入ることはないわ。見張りや周りの警戒だって必要よ?」
水銀燈が他4人を見回して続けた。
「捜索に3人、周囲の警戒に1人、見張に1人で分けましょう」
彼女の提案に皆賛同し大きく頷く。
「ではわたくしが周囲の警戒を……」
「警戒はタバサ、貴女にやってもらうわ」
ミス・ロングビルが言うのを制して水銀燈が素早く言った。
「貴女は使い魔の風竜で空から警戒して」
「わかった…」
タバサはそう言って口笛を吹いてシルフィードを呼び出す。
「見張りはキュルケ、貴女に任せたいのだけれど……」
「えー、なんで私がそんな地味な役……」
水銀燈が嫌がるキュルケに目配せしてそれを諭す。
「お願いよキュルケ」
そして片目を閉じてウインクした。その様子に水銀燈が何かを察した彼女は、
「しょうがないわねー。愛しの水銀燈の頼みじゃ断れないわ〜」
と言って森の茂みに戻り周囲に注意を向けた。
水銀燈はタバサとキュルケ二人の後ろ姿に警戒と見張りを託し、残りの2人に向き直る。
「さ、行きましょ。ルイズ、ミス・ロングビル」
「よーし!フーケの手がかり、探すわよ〜!」
「え、ええ……」
やる気を出して張り切るルイズの横でミス・ロングビルが曇った笑顔で水銀燈に返事をした。
580 :
ゼロのミーディアム:2007/10/02(火) 22:57:52 ID:ff739S5K
小屋の中に入った水銀燈達がフーケの残した手がかりが無いかを探し始めた。
水銀燈が目を付けたのは狭い小屋の片隅にある露骨に怪しいチェスト、木でできた大きな箱の事だ。
「まさかこーんなところに盗まれた破壊の杖があったりしてぇ……」
クスクス笑いながらチェストの蓋を開ける。
「……何よこれ」
チェストの中を見て彼女は我が目を疑った。
それは明らかにこのハルケギニアに、魔法の世界に有るはずもなく、相応しくも無い代物だった。
この世界にも似たものがあるのかとそれを手にとった瞬間、左手の甲のルーンが輝き出しそれが何であるかを水銀燈に告げる。
「やっぱりこれは私の世界の……でも何故?」
「それが破壊の杖です!」
水銀燈の手に持っている物を見てミス・ロングビルが驚きの声を上げる。
「これが破壊の杖!?」
水銀燈もまたそれに驚いた。
「え?もう見つかっちゃったの?なんかあっけないわね…。あ、でもあとフーケを探さなきゃ」
水銀燈はとりあえずこの杖がここにある理由については置いておく事にしたらしい。
ルイズのフーケを探さなきゃと言う言葉に反応し彼女は言った。
「ねえ、どうしてフーケは破壊の杖を置いて姿を消しちゃったのかしらぁ?」
「うーん。……何でだろ?」
ルイズが腕組みをしつつ首を傾げる。
「ルイズ、私は貴女に聞いたのではないの。私はミス・ロングビルに言ったのよ?」
ミス・ロングビルの顔が凍りつきピタリと固まった。
「そんなに私の事邪険にしなくてもいいじゃないの」
「気を悪くしたなら謝るわ。でも別に貴女を除け者にした訳ではないの。……ただ、ね?」
ルイズの拗ねるような抗議をなだめるように水銀燈は彼女に笑いかけた。
不意に小屋の中にバサッと言う何かをはためかせる音が鳴り響く。
水銀燈の日頃は小さい漆黒の翼が大きく広がった。
さらに言葉を続ける。
「他人の推測より本人に直接聞いた方が早いでしょ?違うかしら?ミス・ロングビル。いいえ……」
そして、ミス・ロングビルを紫紺の瞳を細めて見やり、微笑みを狂気の笑みに変えて言い放った。
「『土くれ』の、フーケ……!」
支援
582 :
ゼロのミーディアム・あとがき:2007/10/02(火) 23:02:08 ID:ff739S5K
前回次で完結したいなー
……なーんて言ったのに前編・後編となってしまい申し訳ありません!
今回の前編は嵐の前の静けさと言うことで目立った動きはありませんが、次回は久しぶりのバトルなので張り切っていきたいと思います!
では皆様よい夢を!お休みなさい!!
オマケ・NGシーン
「そうですぞ!なにせ、彼女は伝説のガンダムッ!?」
「だぁれがガンダムですって!?くるァァァァァァァァ!!」
「水銀燈!突然何!?」
「ルイズ!可憐な乙女が屈強なガンダム扱いされたのよ!?黙ってられるもんですか!
そこに直りなさい!ジャンクにしてあげるわぁ!!」
「ガンダムって何よ!?!」
「まあまあ、ミス・水銀燈。明鏡止水の心ですぞ?怒りでは真のスーパーモードは引き出せませんから。ねえ?オールド・オスマン」
「認めたくないのう。若さ故の過ちと言うものは……」
「貴方達知っててやってるでしょ!!」
「とにかく落ち着いてよ!!」
「放して下さいルイズ!わたくしは……彼の者達を、自由と正義の名の下に討たねばならないのです!!」
「水銀燈の髪がルイズと同じ色に……。タバサ、なんなのあれ?」
「電波受信……?」
GJっしたー
>「水銀燈の髪がルイズと同じ色に……。タバサ、なんなのあれ?」
やめて、そのペルソナに飲まれないで!w
銀様もふもふ
魔法学院一の宝は破壊の杖なんかじゃなくて銀様の羽にちがいない
銀様かああいいいよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
GJ!破壊の杖はくんくん人形だった!
それはないかw
586 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/03(水) 20:27:47 ID:tjUHMpig
いかん! 銀様が暗黒面に堕ちてしまうWWW
ああ!なんかいいところで終わってる!!
続きを、銀様続きを!!
>「放して下さいルイズ!わたくしは……彼の者達を、自由と正義の名の下に討たねばならないのです!!」
らめぇぇぇぇ!ラクスに汚染されちゃらめぇぇぇぇ!
されるならむしろアナブラにですね?(ぉぃ
銀様落ち着いて
定期age
保守
保守
593 :
ゼロのミーディアム:2007/10/18(木) 21:15:00 ID:xCAfF3IK
突然ですが書き上がったんで投下しますねー。
注:無駄に長いです。お茶とお菓子を用意して…とまでは言いませんが、規制は受けてしまうかも……
↓以下本編
「……え?」
水銀燈の口から言い放たれた衝撃的な一言にルイズの思考が一瞬停止した。
「……!!」
そんなルイズを後目にミス・ロングビルはすかさず懐から杖を取り出そうとする。
「動くなッ!」
だが広げられた翼から針のように鋭い羽が放たれ、ロングビルの頬をかすめて背後の壁に突き刺さった。
その頬にピッと朱線が入り、赤い雫が一筋垂れると彼女の手は杖を持つ前に動きを止める。
「……ある程度あなたには感づかれてるとは思ってたけど、まさかここで仕掛けてくるとはね」
ミス・ロングビルのその眼鏡の奥にある優しい目が吊り上がり、猛禽類を思わせる目つきへと変わる。
「ようやく本性を表したようねぇ?」
水銀燈もまたロングビル…いや、フーケに劣らぬ狂笑を浮かべる。
「やっぱりあの時の皮肉は失敗だったわね……。声を覚えられた上に恨みまで買ってしまうなんて……」
「まあそれもあるけど。貴女をフーケと断定した決定打はこの子なの」
水銀燈のまわりを紫色の小さな光がふよふよと飛んでいる。
「言ったはずよ。この子は『追跡』・偵察・囮何でもこなすと」
「ますます迂闊だったわ…。この私がつけられてたなんて」
フーケが深い溜め息を吐き肩をすくめる。しかし追い詰められたにも関わらず、さらりと言った。
「さっきの答えを聞いてないわねえ?さっさとこれ持って逃げればよかったのに何故学園に戻ってきたの?」
「使い方が分からなかったのよ。振ろうが魔法かけようが、うんともすんともいわないのだもの。
……魔法学院の者なら知ってる人間がいてもおかしくないでしょ?」
「とんだお馬鹿さんだわぁ……。それで捕まってるのだから世話ないわねぇ?」
「ひどいわ、結構傷ついてるのに…それにまだ私は捕まった訳じゃないわよ?」
そしてフーケは挑戦的にに口元を釣り上げた。この期に及んでまだ観念していないようだ。
その言いぐさと態度に水銀燈は眉間に深い皺を寄せて不機嫌な顔つきになる。
「フン…減らず口を……。ルイズ、ロープでフーケを縛るのよ」
「わ、私が?」
蚊帳の外だったルイズが突然声をかけられて驚いた。
「ええ。そうすればこれは貴女だけの手柄よ?今ここにはキュルケもタバサもいないのだから」
「あ、あんたそのためにキュルケとタバサの人払いをしたの!?」
「そうよ。品評会の失態はこれで帳消しね、まさに計画通り。フフフ……」
水銀燈はそうして歪めた口元を手で隠しクスクスと妖しく含み笑いをした。
「あんた……悪い女だね……」
フーケが呆れたように言った。
「ほめ言葉として受け取っておくわぁ。……貴女に言われるのは癪だけど」
あまりの急な展開に頭の回転も追いつかずどこか釈然としなのだろう、
ルイズがロープを片手におっかなびっくりフーケへと近寄っていく。
ともあれこれでフーケの身柄を拘束すれば任務も完了なのだ。
「じゃ、じゃあ、ミス・ロングビル……じゃなくて土くれのフーケ、大人しくお縄に……」
「ふん…悪いけど私はまだ捕まる訳にはいかないのよ」
こちらが支援する!
フーケは頬に垂れた血を親指で拭い口元に持っていくと、それを舐めてニヤリとした。
彼女はあくまで余裕の態度を絶やそうとしないのだ。
「この土くれのフーケを甘く見てもらってはこまるね」
しかしその言葉と裏腹にまるで観念したように懐にやろうとしていた手を下に降ろす。
「いい加減貴女も年貢の納め時よ。第一、このピンチをどうやって切り抜けるつもりなのかしらぁ?」
「これがピンチだって?」
フーケは水銀燈の言葉一笑付す。
「こんなの……、私にはピンチの内には入らないよ!!」
そう言い放った瞬間彼女のおろされた袖口から丸い玉がゴトリと床に落ち勢いよく煙が吹き出す。
「煙幕!」
水銀燈もルイズもそれに目を奪われた一瞬、フーケは煙に紛れて姿を消す。
水銀燈も羽を撃ち出すもそれはむなしく空を切った。
そしてガラスか何かが割れるような音が小屋の中に響き、音がした先で人の影が外に飛び出す。
「しまった!」
水銀燈が舌打ちするも時すでに遅し。おそらくフーケは窓を破って外に逃れたのだろう。
彼女はデルフリンガーを掛けた右翼の反対、つまり左の翼の付け根に破壊の杖を引っ掛けて小屋からの脱出。
外に出た水銀燈が見たのはフーケが魔法の詠唱を終え地面が隆起し、人の形を象る様だった。
「水銀燈!大丈夫!?」
ハンカチで口元を押さえてルイズも小屋が飛び出してくる。
「ええ、だけど不覚をとったわ…!」
完全な人の形をとった巨大な土の塊を見上げ彼女は口惜しげに歯噛みした。
シルフィードを駆り空から森を偵察していたタバサも広場におこった異変に気づいた。
「ゴーレム…!」
遠めに見えた動く巨大な土くれを確認すると、風竜をすかさず小屋に反転させ彼女は仲間の元へと急ぐ。
「どう言うことなのよこれ!」
小屋の周囲を歩き回りながら見張りをしていたキュルケがルイズ達の元に駆けつけた。
「私はちゃんと見張りをやってたわ!なのになんで!」
「別にあんたがサボってたなんて言ってないわよ!」
ルイズとキュルケ、互いに怒鳴りあうようにして言い争う。
ルイズでは話にならないと、苛立たしげにキュルケは赤毛をかきあげると水銀燈に状況の説明を求める。
「詳しい話は後よ、率直に言うわ」
水銀燈は苦々しい顔をしてゴーレムの後ろで腕組みしてこちらを見据える人影を指差した。
「フーケの正体はミス・ロングビルだったの」
「そう言うこと、悪いわね」
フーケは悪びれも無くそう言うと杖を水銀燈達に突きつけた。
「行け!ゴーレム!」
主の命令を受け巨大な土くれがズシンと大地を踏みしめて少女達に迫る。
「まったく、なんなのよ!もう!」
キュルケは胸元から杖を引き抜き呪文を唱えた。
杖から彼女の象徴たる紅蓮の炎が巻き起こりゴーレムを業火で包み込むが、ゴーレムは全く意に介さない。
次に広場に大きな影が高速でよぎった瞬間、上空から巨大な竜巻が巻き起こりゴーレムにぶつかった。
水銀燈が見上げた先には長い杖を風竜の上から振り下ろしたタバサの姿。
だがこれもゴーレムにとっては涼風程度にしか感じないらしい。
「…!!」
何事もないように歩みを進めてくるそれを、タバサは険しい表情で見下ろした。
支援
「無理よこんなの!」
「退却」
「やむを得ないわね…」
キュルケが叫びタバサと水銀燈が呟く。
タバサがシルフィードを降ろしてこちらに来るように手招きした。
水銀燈とキュルケもゴーレムに背を向けてそちらに駆け出す。
だがその背後で何か弾けるような音を聞き、彼女はそちらを振り返った。
そこにはゴーレムに杖を振りかざしたミーディアムの姿。
「あの子ったら…!」
水銀燈は空中で急ブレーキでも掛けるかのように進行方向を無理やり反転させる。
逆十字の刻まれたドレスの裾が翻り彼女はルイズの元へと翼を羽ばたかせた。
水銀燈はルイズへと近づきながら声を荒げて怒鳴りつけた。
「何やってるの!貴女も逃げなさい!!」
だがルイズはそれに耳も貸さずに唇を噛み締める。
「嫌よ!あいつを捕まえれば、誰ももう、私をゼロのルイズとは呼ばないでしょ!」
「貴女では無理よ!第一キュルケやタバサの魔法も効かなかったのに!」
「やってみなくちゃわかんないじゃない!」
「何を馬鹿な!身の程をわきまえなさい!」
ゴーレムの右足が持ち上がりルイズの頭上に影が差した。ルイズを踏み潰すつもりのようだ。
だがルイズはまだ諦めていないらしく杖を片手に呪文を唱えている。
(かくなる上はこれで!)
水銀燈は舌打ちして左の翼にかけた破壊の杖を手に取った。左手のルーンが光りその扱い方を脳裏に刻む。
「使い方がわからなかったって言ってたわね……」
畳まれた砲身を伸ばし、肩の下から腋を通して腰だめにそれを構えた。
「お望み通り見せてさしあげるわ!!」
そして安全装置を解除して引き金に指をかける。狙うはゴーレムの上半身。
さて、今の水銀燈だが翼を大きく広げて右の翼にデルフリンガーをマウント。
左の翼に掛けていた銃器のような破壊の杖を腋の下で腰と手で固定しゴーレムに構えている。
そう、似てるのだ。あの不幸な『運命』に巻き込まれたアレに。背中のビーム砲を構えてるアレにそっくりなのだ。
……別にそれが悪いとは言わないが……何か嫌な予感がする。
だが構わず彼女は引き金を引いた。
しゅぱっ、という栓抜きのような音が破壊の杖から放たれたが、それと同時に派手な爆発音が広場に響きそれをかき消す。
破壊の杖が着弾した訳ではない、爆発音はルイズの放った魔法だった。
ファイヤーボールか何かを唱えたのかわからないが、それは以前の錬金の授業で見せた大爆発に匹敵するものだった。
ゴーレムの振り上げた反対側の足、軸足にそれが直撃してゴーレムのバランスを大きく崩す。
人型の土の山が仰向けに轟音を轟かせて転倒、
そしてゴーレムの上半身を狙って破壊の杖から放たれた弾頭は着弾せずに白い尾を引いて青く澄み渡った空に吸い込まれ……
遠くに落ちたのか爆音を森の奥に轟かせる。
――つまり、見事にゴーレムを外してしまったのだ。
支援
支援
「嘘!?外したの!?」
それは運命の悪戯か運命(デスティニー)の呪いか、水銀燈は愕然とした。
転倒したゴーレムはその衝撃で所々ひび割れてはいたが周りの土をかき集めてすぐに元の形に再生する。ダメージはほぼ皆無と言っていい。
「破壊の杖の力、しかと見届けたわ……。まさにその名に恥じない素晴らしい威力!」
当たればゴーレムを跡形も無く消し飛ばしてたであろうその一撃に、フーケは戦慄するも興奮を隠せない。
「これであんた達は用済みだけどねえ!」
フーケがゴーレムを立たせ、再びルイズに向かって拳を振り上げさせる。
ルイズは再び呪文を唱え出した。水銀燈は破壊の杖を乱暴に投げ捨てた。
そして悲痛な声でルイズに叫ぶ。
「もう打つ手がないの!逃げて!ルイズ!!」
「あんた言ったじゃない!」
完成した魔法を放つもゴーレムの表面で小さく爆発しただけ。
「ギーシュと決闘した時、ボロボロになったのに自分には譲れない事あるからって!」
「こんな時に何を!」
「私はあんたのその姿にに真の貴族の姿を見た!私だって譲れない物があるの!」
ルイズが杖を構え握りしめる。
「ゼロだなんて呼ばせない!魔法が使えるものが貴族じゃない!」
ゴーレムに向かって目を見開き彼女は叫んだ。
「敵に後ろを見せない者を、貴族と呼ぶのよ!!」
再び振り下ろされる杖、だがその思いも虚しく唱えられた魔法はゴーレムの胸あたりで小さく弾け土を少し抉っただけだった。
振り上げられた土の拳がルイズに向かって浴びせられる。
その視界に巨大な拳が広がり彼女は目をつぶった。
その時……黒い疾風がそこに滑り込みルイズに体当たりするように抱きかかえ、地面をゴロゴロと転がって拳から逃れた。
土埃が巻き起こる中、水銀燈がおもむろに起き上がりルイズに向かって手を振り上げる。
パン!と、乾いた音が響き渡った。
水銀燈がルイズの頬を叩いたのだ。
「いい加減になさい…私はそんな事を貴女に伝えた覚えはないわ!」
ルイズは呆然として水銀燈を見つめた。
支援
支援
「ルイズ、貴女はとんでもない勘違いをしているわ」
水銀燈はルイズの鳶色の瞳を見つめ厳しくも淡々と言った。
「あの時確かに、私は譲れない物があるから闘ったと言った、だけど死に急げだなんて一言も言ってない!」
「だって、私……いつもゼロってバカにされて…!」
ルイズの目からポロポロと涙がこぼれた。彼女の嫌うゼロという呼び名、それを見返したい気持ちは水銀燈もわからなくもない。
彼女自身もまたルイズと同じ苦しみを知っているのだから。
……だが、今のルイズの無謀を認める訳にはいかないのも事実。
「貴女がここで勇敢に…いいえ、無謀にもフーケに挑んで命を散らしたとしても、皆から仮に勇敢だったと言われたとしても……」
水銀燈の鋭い瞳が少しだけ緩み悲しげな顔となる。
「それでも貴女はずっとゼロのまま…。勿論、返上する機会なんて来ることはないの……」
ルイズの肩に手をかけて水銀燈は続けた。
「どんなに辛くても逃げてはいけないわ」
「逃げてなんかないもん!だから私はフーケに……!」
「だから違うのルイズ、生きる事から逃げないで。死んで楽になるなんて間違っても思っては駄目…」
嗚咽をならしながらルイズは黙って聞いていた。
「自分に付けられたゼロの仇名、それを返上するのが貴女にとっての大事な事よね?
なら貴女もこんな所で終わる訳にはいかないのでしょ…?」
水銀燈は昔のことを紡ぎ出すように遠くの空を見上げ語り始めた。
「これはある子から私が教わった事。……いけ好かない子だったわ。だけどこの言葉だけは今もこの胸に残っているの……」
そしてルイズに微笑みかけて言った。
「「生きることは戦うこと――だって、そうでしょう?」」
「あ……」
ルイズの耳に水銀燈の声と誰かの声が重なった。
そして涙で瞳潤ませたルイズは、優しく笑いかける使い魔の面影に、顔も見知らぬ彼女の姉妹を見る。
「生きることは…戦うこと…」
ルイズはその言葉を心の中で何度も反芻した。
「なかなか泣ける話ね。きっと役者でも食っていけるわ、あなた」
ゴーレムの後ろで事のルイズと水銀燈のやりとりを見ていたフーケが言った。それもハンカチを目に当てて皮肉気味に。
「あら、待ってくれるなんて貴女も案外良いとこあるのね」
冷笑に細めたれた眼差しで水銀燈が肩越しにフーケに振り返り答えった。
「なに、破壊の杖の使い方を教えてくれたお礼よ」
「だけどそれも無駄に終わるわ」
艶のある漆黒の翼が翻り無数の羽が辺り一面に舞い散る。
「貴女が破壊の杖を手にする事はもうないのだから。……貴女の思うようには私がさせない」
「面白い!やれるものならやってみなさい!」
フーケは自分に伸ばされたゴーレムの腕をかけ上がり肩の上に立つと、ルイズから目を離し水銀燈を標的として見据えた。
水銀燈はルイズに目配せして逃げるように促す。
「下がってなさいルイズ。フーケは……私がどうにかするから!」
「で、でもあんた一人じゃ!」
「一人じゃないわ」
ルイズの薔薇の指輪がほのかに熱を帯び始める。
「指輪が…」
涙を拭いルイズは淡く光る指輪をじっと見つめていた。
「私が貴女の想いは私が預かる。だから力を貸して……ルイズ。」
ミーディアムから力が引き出され、水銀燈の身体の隅々まで浸透していく。
彼女の言ったとおり一人だけの力で戦うのではない。ルイズの内に秘めたる想いを胸に水銀燈は力強く言った。
「私が、貴女の剣になってあげるから!!」
支援
ばさぁっと翼を打ち鳴らし翼の生えたシルエットがゴーレムの身長より高く飛び上がった。
雲一つ無い蒼天を背に水銀燈は眼下からこちらを見上げるフーケとゴーレムを、額にかかった銀色の前髪の奥から険しく見下ろす。
「デルフ」
右の翼に背負った剣に向けて声がかけられた。
「ZZZ…」
しかし返ってくるのは鍔から発せられるいびきのような音。こんな状況でデルフリンガー、どうやら今までずっと眠っていたようだ。
「いやに静かだと思ったら……起きなさい!デルフ!」
水銀燈が呆れはてて眉間を押さえながらもデルフを叩き起こす。
「ん〜?もう朝?なんか用でもあるのか姐さん?」
眠たげな声がガチャガチャという音とともに背から聞こえた。
「前々から思ってるんだけどその姐さんて呼び方…いえ、今はそんな事はどうでもいいわ。
貴方を抜くわよ。いいわね?」
「おお!やっと俺が役立つ時がきやがったか!」
目が完全にさめて歓声をあげるデルフリンガーに水銀燈が眼下のゴーレムを見て言う。
「あれが相手よ」
「ほおー!おでれーた!こりゃまたでっけぇのが出たもんだな!」
驚嘆するように呟くデルフに不敵に笑いかける水銀燈。
「フ……臆したの?」
「ハッ!冗談!俺を誰だと思ってやがる!」
「いい返事よ」
彼女は優雅な挙動で、スッと右手を横に掲げた。カシャンという澄んだ音と共に、見えない力でデルフリンガーが抜き放たれその右手に収まる。
さらに水銀燈は大きく一回深呼吸をして瞳を閉じて剣に語りかけた。
「デルフ、」
「ああ、」
彼女の身には少々アンバランスなそれを両手で持ち、下段から構える。同時に左手のルーンが輝き始めた。
そして翼を逆立て剣の柄の握りを強く締めると……
「行くわよ!!」
「おう!!」
その言葉と共に瞳を見開き羽を巻き上げゴーレムに、空から一直線に翔け下りる。
その左手のルーンはかつてない程に眩い輝きに包まれていた
風さえものけぞらせて上空より黒衣の天使が飛来する。禍々しい黒塗りの翼を鋭く逆立たせ、朽ちた剣を携えた堕天使が。
だが自分を打ち倒さんと襲い来るそれをフーケは軽く鼻で笑った。
「どんなに意気込もうと所詮は小さな人形……」
軽く杖を振りゴーレムに迎撃させるように指示を出した。
「少しは不思議な力が使えるようだけど私のゴーレムを抜く事など不可能よ」
ゴーレムがまるで羽虫でも払うかのように、急降下して斬りかかる水銀燈を右の平手で打ち落とそうとする。
だが土くれの掌が打ちつけられる瞬間、彼女の体がブレて霞のように消え去った。
土くれの剛腕が空を切り、その二の腕に一閃光条が走る。そこから重い音をたて巨腕が地に落ちた。
ずれ落ちた土くれの塊、その裏には剣を振り下ろした水銀燈の姿が!
「な…に…?」
フーケが目を疑った。土で創造されたゴーレムと言えど、魔法で圧縮して固められその巨大な体を支えられるだけの耐久力はある。
だがこの人形、それもゴーレムの数十分の一程度の小さな人形が、一太刀の下にその巨大な腕を斬り捨てたのだ。
呆気にとられているフーケをよそに水銀燈の翼から漆黒の鏃が放たれフーケに殺到する。
それをフーケは、ゴーレムの左手を盾にして凌ぐ。分厚い土の壁に阻まれ羽の鏃はフーケに届くことは無かった。
支援
支援
「ちいっ!」
水銀燈はデルフリンガーを突き出すように構えた。狙うは刺突、左手ごと突き破ってフーケを貫くつもりだ。
逆立てた翼を広げ突撃をかけようとした矢先――
「後ろだ!姐さん!!」
「…ッ!!」
デルフリンガーの警告に彼女は長い銀髪を振り乱し、後方に横薙の斬撃を放った。
たった今切り落とした筈の右腕が彼女に掴みかかろうとしていた。
だが、振り向きざまの渾身の薙払いが五指を切り裂きどうにか難を逃れる。
「なんて再生力なのよ…」
「気ぃ抜くな姐さん!これだから土のゴーレムってのは厄介なんだよ!」
忌々しく水銀燈とデルフが呟く。
だがさらにその背後に迫る気配。彼女は後ろ振り返らずに急速にそこから離脱。
水銀燈のいた位置に向かってゴーレムの左拳が猛スピードで振りぬかれた。
フーケとゴーレムから距離を離し水銀燈はそれを睨みつける。
「あの時と同じ、近づけない…!」
「ふん!誰が呼んだか知らないが、土くれの二つ名は伊達じゃないのさ!」
最初は面食らったフーケだったが、自分に手を出すのが容易でないことを相手に知らしめ落ち着きを取り戻す。
あの夜同様、彼女の行く手を阻む二本の巨大な腕。倒すべき術者、フーケは正に目と鼻の先なのに、水銀燈にはその距離が遙か彼方に感じられた。
「だったらこれで!!」
ルイズから引き出された力が翼に宿り、鏃が弾丸に変わりゴーレムを襲う。
ゴーレムの体に無数の穴が穿たれるが、それも決め手にはならなかった。
蜂の巣と表現しても良いぐらい穴だらけになったゴーレム。
だが大地から多量の土を吸い取り穴を埋めると、瞬く間に元の形を完全に象った。
青銅をも穿つ漆黒の弾丸といえど再生を繰り返す土くれの前には効果が薄いのだ。
おまけにフーケは両腕をがっちりと前に重ねてそれを防ぎ、羽の一枚すら届かなかった。
「どうしたんだい?あんな大口叩いといて、私を倒すんじゃなかったの?」
あざ笑うかのようにフーケが水銀燈を挑発した。
「畜生!いちいち腹立つ事言いやがって!!」
「本当…癇に障るわね…!」
その憎まれ口にデルフリンガーも水銀燈も苛立ちながらそう吐き捨てた。
支援
ルイズは使い魔と巨大土くれの戦いを、胸の前で手を握りしめ見守っていた。
ギーシュとの決闘の時をもはるかに上回る動きで水銀燈はフーケのゴーレムを翻弄する。
だがそれでも土の巨人は揺るがない。彼女も善戦してはいるがこのままでは力で押し切られてしまうだろう。
少女の胸の前で祈るように握られた両手、その右手にはめられた薔薇の指輪が淡い光と熱を放ち続ける。
天使の翼がはためく都度に、掲げた剣が振られる都度に、その指輪が強く、熱く輝いた。
そしてその熱と煌めきと共に彼女の心が指輪を通し伝わる。
(水銀燈は私の為に戦ってくれている……)
確かにそれは嬉しかった。彼女は自分の心の襞をもすくい取ってくれている。
だがそれと同時に己の無力さを痛感した。
自分の力を得て戦っていると言えど、ルイズ自身に危険は及ばない。
ルイズは直接戦えるだけの力が欲しかった。その手で水銀燈を助けたかった。
ゼロの少女は静かに目を閉じて薔薇の指輪を左手で覆った。
(今の私にできる事は、ただあの子の無事を祈るだけ…それだけだなんて……)
彼女は悔しげにそう思った。
その閉じられた瞳、暗闇に閉ざされた筈の彼女の視界が突如クリアになる。
迫り来る土くれの拳。視界が目まぐるしく揺れ動きそれを紙一重でかわす。
景色が高速で移り変わり、蒼い空を、眼下に鬱蒼と繁った森を映し、そしてゴーレムとその肩の上に立つフーケを目に捉えた。
視覚だけでは無い。かすめた剛腕がうなる音、風を切り空を翔け、翼がはためく音。
それがルイズの耳に聞こえてくる。
「これって……」
ルイズも言っていた事だが、使い魔は主人の目となり耳となる能力を与えられる。
感覚の共有……ルイズは水銀燈が戦っている様を直に体感していた。
――いや、感じたものはそれだけでは無かった。
ルイズの指輪と水銀燈のルーンの相互作用により視覚と聴覚の他にもたらされる不思議な感覚。
彼女は閉じられた瞳の中、ゴーレムの内部に点在する無数の何かに気づく。
「これってあの子の……」
そしてこれが自分に与えられた、あの子を助ける為の力だとルイズは直感した。
閉じた瞼を彼女は見開く。その眼差しは固い決意が込められた純粋かつ真っ直ぐな物、
ルイズは杖を引き抜きゴーレムの前に躍り出た。
「おい!姐さん!大変だ!娘っ子が飛び出してきやがった!」
「ルイズが!?」
襲い来る腕を打ち払い、斬り伏せる水銀燈にデルフリンガーが慌てた声で知らせた。
続けて繰り出された頭上から落ちてくる土くれの手刀を受け流し、水銀燈は少し離れた所に現れたルイズの元まで下がる。
「ルイズ!危ないから下がってなさいと言ったでしょ!」
声を荒げてミーディアムに忠告するがルイズは決意に満ちた眼差しを使い魔に向け、戦う意志を表明した。
「水銀燈、私も戦うわ」
「引っ込んでろ娘っ子!いくらなんでもおめーをフォローして戦うなんざ無理だ!」
デルフリンガーも乱暴に言うがルイズはそれに構わず水銀燈に告げる。
「一つだけ、やってみたい事があるの」
その顔は先程までの功を焦ってがむしゃらに魔法を乱射していた時の顔ではない。
「……勝算があるのね?」
ズシンと大地を揺らしこちらに向けて歩いてくるゴーレムにデルフを構え、顔だけ向けて水銀燈はルイズに問う。
「うん……きっと成功させるから!」
ルイズのはっきりとした返事、水銀燈はそれが根拠の無い自信による虚言では無いことを感じた。
「……信じるわ。どうすればいいの?」
「うおっ!?乗るのかよ!?」
自分の使い手の肯定の返事にデルフリンガーも驚きのを隠せない様子。
地響きが大きくなりフーケとゴーレムはすぐそこにまで迫る。
ルイズは表情を曇らせ、躊躇うように言った。
「私がゴーレムを攻撃するまで……。ゴーレムから守ってほしいの!」
「だーかーら!おめーをフォローするのは無理だと何度言えば……」
「わかったわ、ちゃんと成功させなさいよ?」
「嘘ぉ!?マジでか!!」
デルフの声を遮り水銀燈が言った。そして口元を少しだけ微笑ませる。
確証がある訳では無い、だが今のルイズはきっとこの状況を打開する。ルイズと自分を結ぶ左手に輝くルーンがそれを感じさせた。
「貴女には指一本触れさせないから!!」
杖を構え再び目を閉じ意識を集中させるルイズの前で水銀燈が立ちふさがりゴーレムを迎え撃った。
支援
ゴーレムの上から水銀燈を無言で見据えるフーケだが、内心では焦っていた。
確かに相手はゴーレムを抜いて自分を直接攻撃することは出来ない。
だがフーケもまた疾風の如く飛び回る漆黒の人形に一撃も食らわせる事もできず、ゴーレムの腕をいとも簡単に落とされているのだ。
(一体こいつは何者なの?何故こうも戦えるの!?)
フーケの中に少しずつ恐れとすら言える感情が芽生えはじめる。
そしてそんな中、突如自分の前にのこのこ姿を晒したルイズに、彼女は不安な内情をごまかすような憤りを外に出す。
「何を企んでるかは知らないけど…わざわざ私の前に姿を現すなんて良い度胸してるわね…!」
そしてゴーレムが足を振り上げルイズに向けて踏み下ろそうとした。
「先にあんたから片付けてやる!」
だが振り上げられた足に向かって横一線に黒い影が走る。
「聞いてなかったみたいね!あの子はやらせないわ!!」
巨大な足を膝から両断させた影がゴーレムの胸の高さで止まり翼を大きく広げて立ちはだかった。
水銀燈の翼から鋭い羽が無差別に撃たれ漆黒の雨がフーケとゴーレムを襲う。
フーケはゴーレムの右手で羽を遮り左手を振り回し水銀燈を振り払う、土くれの手がうなりをあげて彼女に向けて振り下ろされた。
「……もしかしたら私、とんでもない事引き受けちゃったのかもね」
それを前に水銀燈が自嘲するように薄く笑う。
自分の頭上に迫る一撃、後ろにルイズが控えている以上退くわけにはいかない。
「まったくだぜ……、娘っ子もなに考えてるか分からないのによぉ」
「愚痴ったって仕方ないじゃない、もう決めちゃったんだから。……私達はやるだけの事をやるだけよ」
「仕方ねーなあ、腹くくろうぜ!姐さん!」
「悪いけどそれは無理ね」
水銀燈の一見弱気ととれる一言にデルフが呆れるように鍔を鳴らす。
「おいおい、適当にやって止められるような相手じゃないぜ?あのゴーレム」
「フフフ…違うわよ。私にはね……」
自嘲気味な笑みを浮かべたまま水銀燈は柄を絞り剣を強く握り直しす。
「……色んな理由で腹くくれないのよ!」
そう言うと自ら土の掌に向かいを構えた剣を叩きつけた。
支援
1メイル程しかない人形が、不釣り合いな大剣をその手にゴーレムの腕を斬り伏せる。
この戦い、フーケは何回斬られた箇所を再生させたかわからなかった。
「あ、あんたは何者なのよ!先住魔法のマジックアイテム?アカデミーの新兵器!?」
フーケの恐れが顕著になってきた。彼女は早口でルーンを唱え杖をゴーレムの振りかぶった拳に向ける。
その拳が浅黒く変化し、鈍い光沢を表面に宿した。
「やべえ!あいつ、土の拳を鋼鉄に変えやがった!!」
「鋼鉄!?」
それを見たデルフが焦るようにまくし立て、水銀燈も驚愕の表情を露わにした。
彼女のすぐ後ろには杖を構えたルイズの姿、避ければ自分のミーディアムに鋼鉄の腕が襲いかかる。
水銀燈は驚きに満ちた表情を正しデルフに檄を飛ばした。
「デルフ!受け止めるわよ!!」
「本気かよ!?」
自分ごとルイズを叩き潰そうと真正面から鋼鉄の塊が勢いをつけて突き出された。
水銀燈は全身を引き締め鋼の拳に向けて剣の腹を構えて迎えうつ。
「貴方も男なら歯ぁ食いしばりなさい!!」
「仕方ねえ!俺も腹くくってやらあ!もっとも腹も歯も無ぇけどなぁ!!」
「忌々しい人形…主ごと砕け散れ!!」
フーケの怒声とともにゴーレムの拳が水銀燈を襲った!
ガキィィィィーーーン!と金属を打ちつける音が大きく響き、耳をつんざく甲高い音にフーケ思わず顔をしかめた。
(流石にこれを食らえば…!)
だが確かな手応えを感じ、やっと厄介な敵を排除したとほくそ笑む。
「言ったはずよ――」
拳の影から聞こえる声、そしてフーケは自分の耳と目を疑った。瞳を閉じ杖を掲げるルイズは健在。そして――
「ルイズには、指一本触れさせないと!」
鋼鉄の拳の影には剣の腹でそれを受け止めた漆黒の天使の姿があった!
「何故なの!?何故あんたはそんな小さな体で戦える!?こんな真似までして!?」
フーケの中に蓄積された恐怖の感情が抑えきれなくなったのだろう、その美貌が歪み、青ざめヒステリックに叫んだ。
「何故ですって…?」
ギリギリと苦しげにも拳を止めたまま水銀燈は不敵に口元を釣り上げる。
「決まってるじゃない……この子を守ると言ったからよ!!」
そして苦しげな表情ながらも皮肉に笑って言った。
「貴女にはわからないわよね。盗人の貴女ができるのは奪うことだけ……。守るものなんて何も無いのだから……」
「なんだって……!」
だがその言葉を聞いた瞬間恐れおののき青ざめていたフーケの顔が豹変した。
彼女はゴーレムの拳を引き上げさせ、もう一度振りかぶる。
「知ったような口を聞くな!!」
憤怒の表情で怒りに満ちた叫びと共に、鋼の拳が再度繰り出された。
ミーディアムの力で身を固めデルフリンガーで受け止めるも、激しい衝撃が水銀燈の体を突き抜ける。
「ぐぅっ…!」
球体関節が悲鳴をあげ、全身にショックが走る。それでも彼女の意地と不屈の心が拳をルイズに届かせない。
「お前に!なにがわかる!『あの子』を守ために全てを失った私達の苦しみが!」
だがフーケは怒号とともにさらにその鋼鉄の塊を何度も打ちつけた。
「それでも私はあの子を守りたいんだよ!守るものの一つくらいあるんだよ!好きで盗賊なんかに身を落とすものか!!」
「痛ぇぇぇ!姐さんマジ無理!俺ブチ折れるから!マジで!」
「弱音なんか聞きたくないわね…。だけど突然なんなのよ……!」
「あんたがなんか怒らす事言ったんじゃねぇの!?てかマズいってコレ!」
フーケの感情剥き出しで怒りを上乗せした拳の連打に水銀燈の防御が少しずつ崩れ始めた。
「でもあの子のためなら私は盗賊にだって、悪魔にだってなってやるのさ!!」
一際勢いのついたゴーレムの一撃がデルフリンガーを跳ね上げ水銀燈の防御を打ち崩した。
「そんな!」
「うわあああ!破られた!」
「あの世で!悔いるのねえ!!」
がら空きになった水銀燈に鋼の拳が叩きつけられるかと思われた瞬間……
ゴーレムの腕が内部から爆発し轟音とともに砕け散った。
フーケも、水銀燈も何が起こったかわからなかった。
「そ、そんな馬鹿な!なんで!?」
「なんだかよくわからねーが助かったぜ……」
「一体なにが起こったの…?」
その呟きに答えるように後ろから声が聞こえてきた。
「できた……」
水銀燈の後ろでルイズがゴーレムに杖を突き出していた。
「あんたが戦ってる最中に、よくわからない変な感覚を感じたの」
ルイズが目をつぶりルーンを刻みながらも淡々と説明を始める。
「でもあんたが守ってくれてる間にぼやけてたそれがわかってきたわ。その正体はね、あんたの撃った羽だった」
詠唱が完成し、振り上げた杖を真っ直ぐに振り下ろした。
「まるで自分の手の中にあるように感じたわ。そこで閃いたの。……それに私の魔法をかければどうなるかってね!!」
ルイズがかけた魔法は『錬金』。以前の授業の時と同じくそれは失敗して爆発を引き起こす!
ゴーレムの脇腹あたりが爆破され土くれの体をぐらつかせた!
「あんたの仕業か!」
千載一遇のチャンスを絶たれ、ゴーレムに痛手を負わされたフーケが歯噛みしてルイズを睨んだ。
ゴーレムを動かそうにもダメージが予想以上に大きい。フーケは魔法力をゴーレムの修復に当て込んだ。
(今はゼロって言われてもいい、これが私なりの戦い方よ!)
心内でそう呟き巨大なゴーレムに真っ向から対峙するルイズが声高らかに使い魔に告げた。
「水銀燈、今度は私があんたを守る番よ!!」
ゴーレムの中に無数に点在する羽を感じルイズが間髪入れず魔法を唱え、放つ。
表面には大してきかない爆発でも内部から炸裂すれば話は別、ゼロのルイズがトライアングルのフーケを圧倒していた。
フーケは地面へと降り全力でゴーレムの修復を続ける。
今のゴーレムは言わば体内に何個も爆弾を抱えているような物だ、その上にいればいつ爆発に巻き込まれるかわからない。
ルイズの魔法はゴーレムを再生に専念させ、攻撃させる暇さえ与えない。失敗魔法はゴーレムの再生力を少しだけ上回り、小さいながらも明確なダメージ与えていた。
「はぁ…はぁ…」
だが魔法を放ち続けるルイズの声に陰りが出てきた。
詠唱が息切れを起こしその顔が少し苦悶に歪む。
無理もない。休みなく連続で魔法を唱えているのだ、かかる負担だってかなり大きい。
ゴーレムの再生がルイズの破壊力を脅かし始めた。
だが砕けてできた穴が修復され塞がれようとした瞬間、
そこに火球が着弾し再びそれを打ち砕く。さらにそこに伸びた竜巻がその傷を大きく広げた。
「まさかあんたが本当にフーケを圧倒するなんて思わなかったわ!ヴァリエール!」
「助太刀する」
ルイズの両隣に炎と風、赤と青の二人のメイジが駆けつけた!
「キュルケ!タバサ!あんた達逃げた筈じゃ!」
ルイズの驚きの声にキュルケがウインクをしておどけて答える。
「ええ、逃げてたわ。…でもあんたが一歩も退かず戦ってるのを見せらたら、ね?」
「見捨てる訳にいかないから…」
キュルケに続きタバサも小さくもしっかりと呟いた。
「あんた達……。あ、ありが…」
感極まったルイズが二人にお礼を言おうとしたがキュルケがその唇を人差し指でそっと塞ぐ。
「はい、そこまで。礼なんか後々!さあ、あんたも杖を構えて!一気にたたみかけるわよ!」
「今こそ勝機…!」
一瞬呆気にとられたルイズだったが、その顔に笑みが戻り、彼女は杖を振り上げて呪文を唱えだした。
「キュルケ!タバサ!私に続きなさいよ!!」
三人の中央にいたルイズが一歩前に出、ゴーレムに向け杖を振り下ろした。
「こいつはおでれーた!本当にやりやがった!あの娘っ子やりやがった!」
「だから言ったでしょ?あの子はやるってね……?」
ルイズを中心とした三人の魔法による波状攻撃はゴーレムの回復速度を凌駕し、土煙を巻き上げながらその体が少しずつ崩していく。
それを後ろから水銀燈とデルフリンガーが拳を防いで痛めた体を休め、眺めていた。
「このままいきゃ、あのゴーレムぶっ倒せそうだぜ!ちょっと時間かかるかもしれねぇけどよ!」
「私は時間をかける気は無いわ」
水銀燈がまだ痺れの残る体を押してルイズの後ろにまで来た。
「この戦いの幕は私の手で引かせてもらう!」
水銀燈の墨染めに染められた翼のうち、片方がドクンと胎動するように波打ち流動を始めた。
崩れた体から巻き上がる土煙がゴーレムを覆い隠し、目視できなくなるにまでに広がった。
それだけの量の土がゴーレムから崩れ落ちているのだ。
焦燥感にかられ、だらだらと冷や汗を流すフーケ。この状況をどう抜けるか必死で考えていた。
(どうする!?もう精神力も底をつく!このまま根比べを続けるのは分が悪い!)
いっそのことゴーレムを残して逃亡を計ることも考えた。
だがせっかく手に入れた破壊の杖、その威力を見た前でアレを手放すのは非常に惜しい。
フーケは考えが纏まらないままふとゴーレムを見上げる。
そしていつの間にかルイズ達の魔法が止んでいた事に気づいた。
辺りにはもうもうと土煙が立ち込め確認は出来ないが魔法がゴーレムに当たる音が一切しないのだ。
ルイズ達の方が先に精神力が切れたのか?
――違う。フーケはその考えを即座に否定する。
彼女は察した、もう魔法を撃つ必要が無いのだろうと、何かとっておきの奥の手があるのだと。
これは幾多の修羅場をくぐった勘だった。彼女の背中に冷たい汗が一筋垂れる。
(ヤバい……何かとてつもなくヤバい予感がする!)
空気が張り詰め、大地が鳴動しはじめた。
さらにバチバチと雷でも帯電するような激しい音が土煙の奥から聞こえる。
(何なの!何が起こっているの!?)
そのフーケの心情に答えるように突如、突風が巻き起こり土煙が吹き飛ばされる。
「視界良好!感謝するわ。タバサ!!」
「今度はよく狙って。……あとお礼はモフモフ一回」
フーケの目に映ったのは剣を大地に突き刺して翼の片方を黒龍の頭へと変えた水銀燈の姿だった。
そのアギトがブルブルと禍々しく震え、エネルギーの奔流が渦巻き、今まさに放たれんとしている。
「水銀燈、大丈夫なの?」
ルイズは水銀燈の背中から抱き寄せるようにがっちり掴んで聞いた。
「ええ、…あの時に比べればなんとかね……」
後ろを支えてくれるミーディアムがいてくれる、それだけで彼女の負担は遥かに軽くなった。
ミス・ロングビルとして品評会に立ち会っていたフーケも知らぬはずがない。
スクウェアメイジが設計した宝物庫の防御すらかすっただけで消し飛ばし、
角度がずれていたら学院本塔をも吹き飛ばしていたとすら言われる黒龍のブレス。
それが自分に向けられているのだ。
「ちいっ!冗談じゃないよ!」
フーケの頭にはもう破壊の杖の事など微塵にも無かった。
水銀燈達に背を向けゴーレムをけしかけてすぐに逃亡を計る。
だがその逃走経路を塞ぐように火柱が走った。
「あら!この子があなたの為にもう一度花火を打ち上げてくれるのに、逃げるなんてひどいんじゃないの?」
キュルケが炎を走らせ、杖先から上がる煙にふっと息を吹く。
「せっかくだからご覧になってはいかが?……特等席でね!」
そして片目を瞑ってちょっと意地悪っぽく言った。
支援
水銀党としてもしえん
腹くくれないと吼えた銀様にもしえん
黒龍のアギトがギリギリにまで開かれ、溢れ出るエネルギーが光の弾に収束されていく。
水銀燈は冷ややかに目を細め勝利を確信した笑みを浮かべて言い放った!
「受け取りなさい……貴女への、手向けの花よ!!」
もはやゴーレムの前進が敗れかぶれにさえ見える。その巨大な土の巨人に向けて轟音とともにブレスが撃ち放たれた。
。
支えていたルイズも反動で尻餅をつき、漆黒の羽が大量に舞い散る。
水銀燈はどうにか意識を保って頭を押さえつつも光弾の行方を見守った。
水銀燈を媒介として撃ち出されたルイズの力は、ゴーレムに吸い込まれると同時に眩い閃光と大音響を巻き起こし炸裂。
太陽が地上に現れたかのような膨大な熱量の光球がゴーレムを跡形もなく消し飛す!!
そして光球が縮退し、光の奔流が治まる。後に残ったのは直径10数メイルのクレーターだけであった。
「今度こそやったわ…うっ……」
頭を押さえたまま水銀燈が呻きその体がぐらりと揺らいだ。その片翼は品評会の時と同じく、反動でボロボロになっている。
ルイズ、そしてキュルケとタバサも彼女に駆け寄る。
「水銀燈!」
「あんまり頻繁に使える物じゃないわね……これ」
尻餅をついていたルイズが慌てて起き上がり使い魔の体を支えてあげた。ルイズに体を預けた水銀燈は気だるそうに呟いた。
「やったわね!流石は私が見込んだお人形よ!」
キュルケが赤毛をかきあげた後嬉しそうに水銀燈に抱きついた。
「……」
タバサはどさくさに紛れてまだ無事な方の翼にばふっと顔をうずめた。
……あ、水銀燈に突き飛ばされてひっくり返った。
起き上がったタバサは後頭部を打ちつけたのか、頭の後ろを両手で押さえてぷるぷるしている。
いつもの無表情な顔だが水銀燈に向ける視線が抗議がましい。
だがそんな一体と三人の前に突如現れた人影。
「最後の最後で詰めを誤ったね……あなた達!」
焦げたローブに身を包み現れたのはゴーレムごとブレスに巻き込まれた筈のフーケだった。どうやらギリギリで逃げ延びたらしい。
そして……彼女に回収され、その手に握られた破壊の杖が水銀燈達に向けられる。
ルイズもキュルケも、タバサすらも驚きを隠せず絶望に満ちた表情で、杖の空虚な暗い砲口を凝視していた。
支援
長らくお待たせしましたがフーケ戦をどうにかお届けできました。どこで切ればいいか分からず無駄に長く……
あと優勢劣勢の波がちょっと激しすぎたかなぁ……?
銀様は何だかんだ言って身内には結構優しい人(?)だと思います。
……もしかしたら真紅の言葉を水銀燈に言わせたのは、お隣さんのローゼンクロスの方に悪い事をしてしまったかもしれません……
ともあれお楽しみいただければ幸いです。今回もありがとうございました!
そして支援をして下さったみんなに多大な感謝を!
・余談
こんな所で出す話題ではないとは承知。でもあえて言わせていただきたい。
アニメ最萌トーナメントブロック決勝8日目
A 水銀燈@ローゼンメイデン オーベルテューレ
B ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔
……僕はどっちに入れればいいの?
虚無(ゼロ)は何も答えてくれない……。教えてくれ、ごひ!!
625 :
5飛:2007/10/18(木) 22:03:03 ID:aEpk9fjF
ルイズ様が正義だ!!
乙でしたー
626 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/18(木) 22:51:05 ID:vaEcxaL+
乙!ミーディアムの人涙目ww
なんという試練だww
銀様こそが正義だ!!
神がいた
GJ!べネ!良い仕事だ、ミーディアムの人!えーと、他になんか褒める言葉がないものかっ。
しかし銀様の主砲になりつつあるブレスはワルド相手には相性が悪そうだ。
フーケさんとは古傷抉り合って和解しにそうだしなー。
後、投票は両方に入れれば良いと思うよ。ほら、他の人のPC貸して貰t(爆発&ブレス
GJ!銀様とルイズがっちりはまってんなー
あと投票…強く生きてください
超乙です
PCでも携帯でも投票できるじゃないか!
乙でした!
ここはあえて投票しない権利を発動してはいかがかな
ああ……蝶サイコーにブラボーでした、ヒャッホウ!!
ところで投票ですが、携帯なりネットカフェ利用するなりして双方に……ってのはダメでしょうか?
ぐっじょーぶ!銀様とルイズの支え合いがいいなぁ!他のキャラも輝いてる!
お、銀様キテター!毎度いつの間に来てるから困るぜぇ
乙&GJ!みんなの立ち回りも戦闘の展開もおもしろかったぜ。
頭抑えてるタバサがかわいいなwww
あと投票の事はデルフもあなたのSSで言ってるじゃないか。
腹ァくくれwwwww
水銀党員としてはルイズには悪いけど断固銀様支援する!
今宵もアンニュ〜イあげ
こんばんは、ミーディアムの人です。
今俺の中で一つの時代が終わりました……。水銀燈とルイズ悩みに悩んだ末自分は水銀燈に投票しました。
……悔しいけど僕は党員なんだ
ルイズは水銀燈の遺志を継いで頑張れ!党員の異端者と呼ばれようが俺はゼロのミーディアムの作者!最後までルイズを応援する!!
……なーんてアホな事を言いに来たのではなくて、気になった事があったので少し……このスレ容量適にどうなんでしょうか?
なにぶん自分SSなんか書くの初めてな物で、そな事も考えた事も無くて……
ちょっと長めの一話ぐらい入るかなぁ…?ちなみにこの話で一章は終了する予定ですが。
あと、ここが終わったらよろしければ「あの作品のキャラがルイズに〜」スレで書かせて頂ければと思っているのですがそれはどうでしょうか?
……失礼にもまだ運営の方にも話を通してないのですが。
御意見、アドバイス等どうかよろしくお願いします
なお、このような場で最萌の名を出し不快に感じた方もおられると思いますが、
この両者のクロスを書く身としてはあえて触れざるをえませんでした。
不快に思われた皆さんには深くお詫び申し上げたい……
では皆さん、よい夢を…お休みなさい…
ここの容量見てみた……480kbなんですか、微妙ですね。
でも、一話くらいならなんとかなると思う。まずは投下してみては?
駄目だったら、改めて他スレで投下すれば良いと思う。
「あの作品のキャラがルイズに〜」スレでの投下は、事前に予約さえ入れれば問題ないと思う。
おそらく、スレの住人は歓迎してくれるでしょう。皆、良作に飢えてますから。
心配ならば、避難所に投下という手もあります。そこならまったく問題ないですし。
それはともかく、次で第一章終了ですか、期待しています。
ミーディアム氏乙ー。
スレ容量だけど60kb近く有るし何とかなるんじゃないかな。
合流も大丈夫でしょう……というか、時々居ませんでしたか?w
むしろこのスレの次スレを立てるかが問題かも。
ミーディアム氏以外、殆ど音沙汰がないですから……。
>>637 ここ次スレはいらないと思うんで行ってもいいんじゃないっすか?
あなたの銀ちゃんは大好きなんだけどいつのまに来てたりするからね。ここ目立たないし。
俺はこっちでやってもらった方がありがたいな
あっち早いから見てられん
ミーディアムの人乙です
あっちの住民でもある俺は大歓迎だけど、一回あちらで聞いてみると良いかもしれない。
>>642 ミーディアムはすぐ載るしな
>>637 初めてでこれだけ書けるならたいしたもんだ。
俺もあっちのスレでやってほしい。あっちのスレをよく見てから向こうに参戦してほしいよ。
ここもうミーディアム氏以外今いないみたいだしね。
向こうは早すぎるからなぁ
こっちでマイペースにやって欲しい
まぁ最終的は作者さんが決めることだけど
確かに雑談とかしにくい雰囲気ではあるな。
すぐ後に投下が来て余韻が吹っ飛ぶって事もあるし。
647 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/10/29(月) 18:09:47 ID:HMo/sKFS
アニメSS総合スレなのにゼロ使しかないんだな
>>647 それしか…というかミーディアムの人だけしか続かなかった結果と言うべきか・・・
どうでもいいが地味に初代ゼロ魔クロススレよか古いんだなここ
銀様早く来て欲しい...
銀様が来た時ッ!
それはこのスレが終わる時だッ!!
たしかに、容量的に次の銀様登場がこのスレの終わりを迎えるときだな。
次スレ立てる準備すっぺ。
653 :
ゼロのミーディアム:2007/11/05(月) 23:41:48 ID:m6M36pKG
行くぞゼロ。……これが最後の出撃だ
↓以下本編
フーケが先程の水銀燈と同じように、破壊の杖を脇に抱え込むように構え暗い砲口をルイズ達に向ける。
外れはしたが、当たればそれは確実にあの巨大なゴーレムを打ち砕いていたであろうその威力。
弾が落ちた森の一角はぽっかりと荒れた空き地となっていた。
正に『破壊』の杖の名に偽りなど無い。
「全員杖を捨てなさい」
その破壊の矛先をちらつかせフーケは荒く息を吐く。命からがらあのブレスから逃げ延びたのだから仕方はないか。
ルイズ、キュルケ、タバサは苦渋の面もちで杖を放り投げた。
「お人形さん、あなたもよ。その剣を捨てるの」
水銀燈は無言のまま地に刺したデルフを引き抜きガシャンと地面に落とした。
「お、おい…姐さん…」
「デルフ、情けない声出すんじゃないの」
丸腰の三人の後ろから水銀燈がスッと前に出る。キュルケ、タバサもルイズを守るように寄り添う。
「まだ諦めてないの?あなた達」
「生憎ゲルマニアの女と言うのはどこかの国の女ほど潔い物では無いのでして」
キュルケが軽口を叩くもその顔は緊張に固まっている。その褐色の頬に一筋冷や汗が流れた。
「わわわわ、私だって最後まで諦めないわよ!この子に教えられたんだもの!」
ルイズも震えながらも声を荒げて強がる。
「いいいい生きることは、たたたた戦うことだって!!」
少々呂律が回っていないが彼女もまた恐怖には屈しなかった。タバサも無言のまま頷きフーケを見据えていた。
「……だそうよ。どうするの?土くれさん」
水銀燈は全くもって余裕の表情。この窮地に何が可笑しいのか口元に笑みすら浮かべている。
往生際が悪いとすら言える彼女達の反応。だが、フーケは顔を曇らせて憂いを込めて言った。
「……惜しいね、私のゴーレムに真っ向から挑んだその勇気と実力、そして土壇場での肝の据わった態度、実に惜しいわ……」
何を言っているのだろうか?
そんなフーケにルイズ達が疑問に満ちた視線を送った。
「私は貴族は嫌いだが、あなた達みたいなのは別よ。その姿、上でふんぞり返った無能共に見せてやりたいよ」
そして一つの取引を持ちかけた。
「頭に血が上っててね、跡形もなく吹き飛ばしてやろうかと思ったが気が変わったわ。
どうかしら?命は助けてあげるからこのまま私を見逃してはもらえない?」
その思わぬ提案にルイズ達の動きが一瞬固まる。
そんな中で水銀燈がそれに対しすぐに口を開いた。表情は変わらず口元を釣り上げたままだ。
「いいわよ」
フーケはどこか安堵したように息を吐いた。
「話がわかるじゃないか。賢明な判断だよ」
「水銀燈!何を!?」
使い魔の即答にルイズが思わず驚きに満ちた声を上げる。
654 :
ゼロのミーディアム:2007/11/05(月) 23:44:14 ID:m6M36pKG
水銀燈はそんなミーディアムをチラリと一目見やると途切れた言葉を続けた。
「ただし、破壊の杖は置いて行きなさい。杖の奪還が私達の主の任務なのよ。貴女も分かってるでしょ?」
フーケは眉をひそめた後に少し間を置いて口を開く。
「……あなたには馬車での件でも感心したわ。私の正体に気付いた上であんなフォローしてくれたのだからね」
馬車の件とはキュルケがフーケに身分を追われた理由を聞こうとしたのを止めた事だ。
「それはどうも…。で、答えの方は?」
「だがそれは出来ない相談ね。これは渡せないし、あの子を置いて捕まるなんて私には考えられないもの」
「……さっきの言い分といい、その言葉といい、貴女にも守る人がいるのね」
「ああそうさ、だから私はここで捕まる訳にはいかない。だからお願い。私にこれを撃たせないで」
端から見れば明らかに主導権を握っているのは破壊の杖を向けるフーケの方だ。
それなのに、フーケの方が水銀燈に対し懇願と言ってもよい表情で見逃すよう頼み込んでいる。
撃つのを躊躇するフーケを見やり、根は決して悪い人間ではないのだろうと水銀燈達は認識した。
「……さっきの失言は詫びるわ。貴女がただの盗人では無い事も分かった。……でもこちらも手ぶらでは帰れないわ。見逃すのは、無理よ」
だが水銀燈は譲らなかった。先程の非礼を詫びる意志は見せるも明確に逃すことは否定する。
つまり――交渉は決裂した。
「……残念ね」
フーケが悲しげな面持ちで引き金に指をかける。
「貴女の言い分は分からなくもない」
水銀燈はフーケに歩み寄るようにゆっくりと浮いたまま前に出た。
「……むしろ奪うことしか知らなかった私が、あんな事を言ったのは筋違いも甚だしいのかもしれない」
ルイズに召喚される以前。水銀燈はローザミスティカを姉妹で奪い合う宿命に姉妹の中でも特に執着していた。
それを思い出し彼女は力無く笑みを浮かべ、フーケに前進しながらも右手をかざす。ひらひらと羽が集まり細身の剣が現れた。
「さようなら……」
フーケはたった一言、そう呟く。近づいてくる人形に向け、引き金にかけられた指が引かれた。
しかしその暗い砲口は沈黙を保ち弾も、魔法も出る事はない。それどころか引き金すら落ちもしない。
「な、どうして!?」
カチカチと何度も引き金を引くが破壊の杖はうんともすんとも言わないかった。
「だけど私は退かない」
剣を手にした事で左手のルーンが輝きを放つ。ばさぁっと翼を打ち鳴らし水銀燈はフーケへと翔け出した。
「く、来るな!」
フーケは恐れるように目を見開き破壊の杖を投げ捨て自分の杖を取り出そうとする。
だがそれよりも速く、黒い疾風となった水銀燈が一瞬でフーケとの距離を詰める。そして……
「私も、あの子を守ると約束したのよ……!」
彼女は顔を俯かせフーケの腹に剣の柄をめり込ませて呟いた。
「そん、な…テ…フ……」
「……許しは乞わないわ」
最後にフーケは誰かの名前か何かを呟き崩れ落ちるが、それも言葉半ばに途切れ彼女の意識は闇へと沈んだ。
水銀燈が右手の剣を一振りするとそれは無数の黒い羽となって舞い散る。
そして地面に落ちた破壊の杖を手にとってルイズ達に向き直った。
「……フーケを捕まえて、破壊の杖を取り戻したわよ」
少し後味の悪い終わり方だけど、と心の内でそう呟いた。
655 :
ゼロのミーディアム:2007/11/05(月) 23:45:56 ID:m6M36pKG
そんな彼女にルイズが駆け寄ってくる。
「ええ、お疲れ様…」
水銀燈の傍らに立ったルイズは倒れたフーケを見下ろす。
「この人にも大切な人がいるのよね」
水銀燈と同じ事を感じているらしい。任務は無事完了したが素直には喜べないようだ。
「ねぇ水銀燈、この人が捕まっちゃったら、それを頼りにしてた人は……」
ルイズの悲痛な面持ちでフーケを見下ろしたまま言うが彼女の使い魔は言い終わる前に冷たく言葉をかぶせた。
「考えちゃだめよ。一歩間違えれば私達の命が危なかったのだから」
「でも!」
「月並みな例えだけど人が幸せになると言う事はその分誰かが不幸になると言う事なのよ」
自分達が破壊の杖を奪還し持ち帰るか、フーケが破壊の杖を持って逃亡するか、互いに譲れぬのなら勝った方がそれを手にするしかない。
その結果最悪どちらかが命を落とす可能性すらあったのだ。
「……みんなが幸せになるなんて虫のいい話なんか無いのよ」
もっとも、水銀燈本人も真紅達と戦っていたころには思いもしなかった事だ。
(考えもしなかったわ。戦う相手の事情なんて……)
薔薇乙女としてアリスゲームに参加していた彼女、敵対したドール達にもそれがあったであろう事を今更理解した。
(それでも私はここで終わる訳にはいかないのよ。元の世界に、戻るまでは……!)
水銀燈は瞳を瞑り、これでいい、これでいいのよ。と、小声で自分に言い聞かせるように呟いた。
ルイズはそんな使い魔の様子を見て、ブレスの反動で痛んだ片翼を愛おしげに撫でる。
「翼、またボロボロになっちゃったわね……」
「命あっての物種よ。これで助かったのだから良しとするわ」
朽ちた翼から伝わるルイズの手の温もり、これがミーディアムを守った証だと体感する。
心の痛みを少しだけ和らげてくれるその温もりが、今の水銀燈には有り難かった。
656 :
ゼロのミーディアム:2007/11/05(月) 23:47:59 ID:m6M36pKG
魔法学院学園長室、部屋の主のオールド・オスマンは無事フーケを捕らえ、破壊の杖を手に帰還した四人の報告を聞いていた。
窓辺に立ち外を眺めながら重々しくオスマン氏は口を開く。
「うむ……。よもやミス・ロングビルがフーケじゃったとはな……。美人だったもので何の疑いもなく秘書に採用してしまったわい」
(どういう理由よぉ…)と水銀燈が元より鋭い瞳をさらにキツく細め、苛立つように呟く。
(抑えてよ…)ルイズも小声で耳打ちした。
「いったい、どこで採用なされたのですか?」
後ろに控えていたコルベールが尋ねた。
「街の居酒屋じゃよ。私が客で彼女は給仕をしておったのだが…そこで即決してしまったんじゃ」
(居酒屋の給仕を即決ですって!?)
場にピシッと亀裂が走ったような気がした。水銀燈の顔が凍りつく。いや、オスマン氏意外の人間達の顔も凍りついている。
「……どのような理由で?」
コルベールがジト目でさらに促う。オスマン氏はダラダラと汗を浮かべてその視線から目をそらす。
「き、給仕をしておった彼女のな?お尻をついついこの手が撫でてしまったんじゃ。
……だが彼女は怒らんかったので私の秘書をやらないか?と……」
「へぇ…お尻を、ねぇ……?」
水銀燈はわなわなと肩と声を震わせた。
――その刹那、彼女の眼前で薔薇の種か何かが弾けるイメージがよぎった。
突然、ガシャン!という荒々しい音と共に背にかけたデルフリンガーの鯉口が切られ、その刃が半ばまで抜かれた。
ルイズは慌ててそれを鞘に戻し、それまでだんまりだったデルフが鍔をガチャガチャ鳴らして騒ぎだす。
「だから抑えて水銀燈!」
「とにかく落ち着け!姐さん!」
「止めないでデルフ!ルイズ!この人のせいで!この人のせいで私達がどれだけ苦労したことか!」
目が据わっている。光を無くした紫色の瞳で、不気味な眼光をオスマン氏に向けて水銀燈はルイズの腕の中で暴れていた。
「気持ちは分かるけどよぉ!」
「そうよみんなあんたと同じ気持ちだから!でも我慢して!」
「もう我慢なんかできないわぁ!あの好色爺をジャンクにしてやるんだからぁぁぁーー!」
オスマン氏は羽交い締めにされた使い魔とそれを押さえている主人を見やりハンカチで頬の汗を拭った。
「……魔法も使えると言っておったので採用したんじゃが、やっぱりまずかったようじゃのう……」
言い訳がましく呟くオスマン氏だが、あまりフォローになっていなかった。周りの抗議の視線がグサグサとオスマン氏に突き刺さりそれを物語る。
「……死んだほうがいいのでは?」
コルベールはボソッと呟きそれを聞いていたキュルケが呆れ果ててうんうん頷く。
タバサもまたいつもの無表情でこくこく頷いていた。
657 :
ゼロのミーディアム:2007/11/05(月) 23:49:58 ID:m6M36pKG
ルイズは水銀燈をなだめ落ち着かせる。必死の説得のかいあって、水銀燈も不承不承で剣を納めて引き下がった。
…不機嫌な顔つきで射抜くような眼差しをオスマン氏に向けたままだが。
その視線にばつが悪そうに咳払いをし、オスマン氏が居心地悪くも厳しい顔つきをしてみせた。
「さて、君達。よくぞフーケを捕まえ破壊の杖を取り返して来てくれた」
誇らしげに三人のメイジは礼をした。黒衣の人形は無言でぶすーっとオスマン氏を睨んだまま。
「フーケは城の衛士に引き渡し破壊の杖は無事宝物庫に収まった。つまり一件落着じゃ」
オスマン氏が一人ずつ頭を撫でていった。睨んだままの水銀燈も頭を撫でらると、一つ溜め息をついてその眼差しを緩め呆れた表情になった。
「君達に『シュヴァリエ』の爵位申請を宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。
ああ、ミス・タバサはすでに持っとるから精霊勲章が授与されるはずじゃ」
「本当ですか!」
キュルケが驚きと歓喜の混じった声をあげ顔を輝かせた。
「ああ、無論本当じゃとも。君達はそれだけの働きをしてくれたのだからの」
ルイズも喜んでいたが隣にいる水銀燈を見つめ顔を曇らせた。
「何?どうかしたの?」
その顔を見て水銀燈が首を傾げる。ルイズはオスマン氏の方に顔を向けた。
「……オールド・オスマン。水銀燈には何もないんですか?」
オスマン氏もそれに申し訳無さそうに答えた。
「残念ながら彼女は人形じゃからな……」
「そうよぉ。人形が爵位なんか貰える筈無いでしょ?それに私、そんなの別にいらないわ」
「それはそうだけど……」
今回の騒動は、この天使を模したお人形がのおかげで解決したようなものだ。(まあ事件の発端となったのも彼女なのだが)
そんな水銀燈に何も出ないと聞きルイズは納得がいかないらしい。
「すまんのう」
オスマンの言葉に水銀燈は肩をすくめて興味なさそうに言った。
「気にしなくていいわよぉ。私はただ品評会の失態を返上したかっただけだしねぇ?」
ルイズはそんな使い魔を見て優しく微笑み。
「だから私はあれが失態だなんて思ってないのに…」
そしてせめてものご褒美びに水銀燈の頭を撫でてあげた。
「ふ、ふん……」
銀色の流れるような長髪がルイズの手で解かれる。水銀燈はまんざらでもない様子で少しだけ頬を赤らめた。
658 :
ゼロのミーディアム:2007/11/05(月) 23:51:55 ID:m6M36pKG
オスマン氏がぽんぽんと手を打った。
「さてと、今日は『フリッグの舞踏会』じゃ。事件も無事解決したし、予定どおり執り行うとしよう!」
「舞踏会!!」
水銀燈のそれまでの表情が嘘のように晴れ、彼女もパン!と胸の前で手を合わせた。
「そう言えばそうでしたわ!水銀燈も舞踏会好きなの?」
キュルケが顔を輝かせ水銀燈に聞いた。
「いえ!聞いたことはあったけど初めてなのよぉ!ああ!夢にまで見た舞踏会!」
その一転して翼をパタパタとさせてはしゃいでいる様子にオスマン氏も満足げに微笑む。
「それは何よりじゃよ!今夜の主役は君達じゃ。是非とも楽しんいってくれ。勿論しっかりと着飾っての!さあ、早速用意してくるといい!」
三人が一礼してドアに向かい部屋を退室しようとする。
浮かれていた水銀燈もルイズの後に続くが、ふと何かを思い出したように立ち止まった。
「水銀燈、どうかしたの?忘れ物?」
それに気づいたルイズ振り向きが心配そうに見つめている。
「いいえ、ちょっとね……先に行ってていいわ」
浮かれた顔を正し、黒衣の天使はドレスの裾を優雅に翻しオスマン氏に向き直った。
「少しお時間頂きたいのだけれど。学院長さん?」
「ふむ、何か私に聞きたい事がお有りのようじゃな」
「ええ…色々とね」
「よろしい。ミス・ヴァリエール、悪いがしばしの間君の使い魔をお借りする。…かまわぬかな?」
「は、はい!」
ルイズは心配ながらもオスマン氏の真剣な眼差しに慌てて学院長室を出て行った。
「して、この私に聞きたい事とは何かな?言ってごらんなさい、できるだけ力になろう。なに、君に対するせめてものお礼じゃよ」
セコイア造りの椅子に腰掛け優しくオスマン氏は問いかける。
ふと、その視界の片隅に期待に胸膨らませがら話を待つコルベールが映った。
「あー、わくわくしている所を悪いがミスタ、出来ればこの話は私と彼女の2人っきりで――」
「私は構わないわよ。知らない仲でもないのだし、協力者は多いのに越したことはないわ」
オスマン氏の言葉に水銀燈が口を挟む。本人が良いのならと言う理由でオスマン氏はコルベールもこの場に残る事を許した。
659 :
ゼロのミーディアム:2007/11/05(月) 23:53:20 ID:m6M36pKG
「とりあえずこれから聞かせてもらおうかしら?」
水銀燈はそう言って自分の左手の甲をオスマン氏に向ける。
「これは一体何なの?剣を持つと突然光り出して体が軽くなったの。知らない筈のロケット…破壊の杖の使い方まで分かったわ」
オスマン氏はコルベールと顔を見合わせ悩むような表情を浮かべるが、コルベールに説明を促した。
「これはガンダールヴの印、伝説の使い魔の印だよ」
「伝説の使い魔?」
水銀燈の疑問にはオスマン氏が答えた。
「そうじゃ。始祖ブリミルに仕えし伝説の使い魔ガンダールヴ。なんでも、ありとあらゆる『武器』を使いこなしたらしい」
「あー!そーいやそうだった!俺もようやく思い出せたぜ」
(なんでそんな重大な事忘れてるのよ…)
背負った剣のマイペースさに少し不機嫌になったが水銀燈は無視する。
「始祖ブリミルってこの世界の神様の事よね?」
「そうじゃよ。おお、もしかするとその印はブリミルから贈られたのかもしれんのう」
「ふぅん……こんな神様に喧嘩売ったような姿の人形にそんな物贈るなんて、
いい趣味してるわね。その始祖ブリミルと言うのは」
自分の堕ちた天使のような漆黒の翼とドレスを見やり水銀燈は妖しく笑った。
「これこれ、滅多なことを言ってはいかんよ。始祖はこのハルケギニアに生まれし者達に等しく慈悲を与える。君とて例外ではないのじゃよ」
「だったら尚更酔狂な神様だわ」
この左手のルーン……ガンダールヴについてはとりあえず満足な答えは聞けた水銀燈。すかさず次の話を切り出した。
「――だって私、この世界で生まれた訳ではないんですもの。その言い分だと慈悲とやらは得られそうにないわね」
この世界。と、言う単語にオスマン氏も、コルベールも眉をひそめた。
「え?姐さんどゆ事?」
デルフリンガーも彼女が言ったことをよく理解出来ずに聞き返す。
「おそらくルイズの召喚が私をこの世界に呼んだのでしょうね。
そう、私はこことは別の世界で作られた人形なのよ」
水銀燈の衝撃的な発言は長き時を生きたオスマン氏をも驚かせるには十分な言葉であった。
660 :
ゼロのミーディアム:2007/11/05(月) 23:55:08 ID:m6M36pKG
「あの破壊の杖……あれは私達の世界のロケットランチャーと言う武器なの」
「なんと……」
「マジか!こいつぁ、おでれーた!」
デルフリンガーが背中でおでれーた!おでれーた!と五月蝿く騒ぎ立てた。
水銀燈はそれを鞘に乱暴に押し込んで戒める。
「これで静かになったわ」
(そりゃ無いぜ姐さん……)
オスマン氏は机に肘をつき両手を組んで顔を隠すように俯かせる。
組まれた手の奥から剣呑な眼差しが目の前の漆黒の人形に向けられた。
「このルーンもそれを示したわ。教えて。あれをこの世界に持って来たのは誰?」
それでも水銀燈はその眼光に物怖じせずに問いただす。
オスマン氏は大きく息を吐き顔を俯かせたまま語り始めた。
「……今より三十年前の事じゃ。森を散策していた私はワイバーンに襲われた。まだ私も未熟な上に不意を付かれての……、あの時はもう駄目かと思ったわい」
「それと今の話に何の関係があるのよ?」
「まあまあ、取りあえず今はオールド・オスマンのお話に耳を傾けようじゃないか」
オスマン氏の突然の昔話に水銀燈の機嫌が損なったがコルベールがそれをなだめた。
「だが動けなかった私の目の前でワイバーンは爆散した。見ると後ろに破壊の杖をワイバーンに向けた不思議な出で立ちの男がおった。
私は彼に助けられたんじゃよ」
「その人が破壊の杖を…その人は今どこにいるの!?」
オスマン氏は口を噤んだ。沈んだ顔を上げて水銀燈の紫紺の瞳を見つめる。悲しみに染まった遠い目だった。
「お願い、教えて!」
なおも無言のオスマン氏。だが彼女の哀願の前に、ついに折れて真実を口にする。
「――眠っておるよ、母なる大地に抱かれて安らかにのう…。
いや、彼にはそれすらも語弊があるか。彼は私を助ける前から既に酷い怪我を負っていたのじゃ」
水銀燈が絶句する。オスマン氏は遠い目のままに続けた。
「手厚く看護したがもはや手遅れだった。今でも耳に残っておるわい。ベッドの上でうなされた彼の言葉を、『ここはどこだ。元の世界に帰りたい』――とな」
「間違い無いわ…その人は私と同じ世界の人間よ!」
悲しみに暮れるオスマン氏には悪く思うが彼女はさらに問いただした。
「一体誰が、どうやってその人をこの地に呼んだの?」
オスマン氏は瞳を閉じて首を横に振った。
「悪いがそれも分からなかったんじゃ…最後まで、な……」
支援
662 :
ゼロのミーディアム:2007/11/05(月) 23:57:24 ID:m6M36pKG
「そんな、せっかく帰る手がかりを見つけたと思ったのに……」
水銀燈は悔しげに嘆く。見つけた手がかりはあっと言う間に消えてしまった。
そして、オスマン氏の恩人が迎えた最期に戦慄する。最悪、自分もまたこのまま二度と元の世界に戻れずこのハルケギニアの土と……
「――冗談じゃないわ……!!」
誰にも向けられる事の無い憎しみの感情、やり場のない怒りが心の内に渦巻いた。
水銀燈は鬼気迫った形相で虚空をにらみオスマン氏は再び顔を下に向ける。
何とも重々しいプレッシャーに支配された空間だが頭の眩しい第三者がその空気を破った。
「ミス・水銀燈、今の君にも色々と思うところ有るようですが、一つだけ聞かせてもらえるかな?」
図書館の時とは反対に今度はコルベールが水銀燈に向けて質問した。
「単刀直入に聞こう。君は一体何者なのだね?」
それに顔を俯かせたオスマン氏も反応する。
「うむ、私もそれは知りたかった。報告によれば土のゴーレムと互角に戦い最後にはそれを完全に吹き飛ばしたそうじゃな?」
気持ちを切り替えたオスマン氏は、浮かない顔をキリッとさせ真剣な表情となった。
「宝物庫の件といい、君がただの魔法の人形とは思えない。普通のゴーレム、ガーゴイル等では説明がつかないんだ」
さらにコルベールがオスマン氏の言葉に付け加えた。
顎に手をやり考える水銀燈。
前にも言ったが出来ることならミーディアム以外に、薔薇乙女に関する事項は話したくはなかった。
……だが相手は自分の問いに、分からないことが有るとは言え全て包み隠さず答えてくれた。
そして何より学院長のオスマン氏と教師にして研究家のコルベールの協力を得られるなら心強い。
「背に腹は代えられないわね。いいでしょう、話してあげるわ……」
(「背に腹は代えられない」。彼女がこの言葉を使うのはどうかと思うが)
水銀燈もオスマン氏と同じように大きく一つ吐息をはき、薔薇乙女に関する情報を二人に明かし始める。
663 :
ゼロのミーディアム:2007/11/06(火) 00:00:13 ID:ZQgauGZn
水銀燈から一通りの話を聞いたオールド・オスマンとコルベールの驚きようはかなりの物だった。
滅多なことでは動じないオスマン氏も感慨深げに髭をいじっている。
「人形師ローゼンとアリスゲーム、nのフィールド……そして君のような人形があと6体もいるとは!」
研究者たるコルベールは特に興味津々のようだ。
「あの宝物庫やゴーレムを破壊した力は?君の姉妹は皆、あんな事ができるのかの?」
これはオスマン氏の質問。
「いいえ。あれはミーディアムから引き出した力を撃ちだしただけ、言ってみればあれはルイズの力よ」
「あれがミス・ヴァリエールの力じゃと?」
オスマン氏もルイズの噂は聞いている。どんな魔法をも失敗して爆発させる通称ゼロのルイズ。
オスマン氏もルイズの潜在する力があれほどの物とは見抜く事は出来なかったのだ。
「何となく君がミス・ヴァリエールに呼び出された理由が分かった気がするよ」
コルベールが感心するように言った。
「うむ。君のその不思議な能力は、彼女に秘められた力を導くにうってつけと言えるしのう」
まあ、それが何かはわからんがの。とオスマン氏は付け加える。
勝手な事を言ってくれる。水銀燈は内心そう思って苦々しく笑った。
もっとも、それに対し悪い気がしないのをさらに不思議に思う。
……だが彼女がこのままここにずっといるわけにも行かないのもまた事実。
「ラプラスの魔が言っていたわ。確かにこの世界と私の世界は繋がっている。
だけどその間に存在する鏡のような境界を越えることが出来ないらしいの」
実際にラプラスは彼女の目の前に立った。
だが会話すら可能な一見薄っぺらなその境目の正体は、全く通り抜けることの叶わぬ、見た目とは裏腹に分厚い代物だったのだ。
「フィールドを我が物顔で飛び回る悪戯兎ですら通るのが無理ならあの鏡は使えないと見て良いでしょうね。
つまり私は自分の手で帰る手段を探さなきゃならないの」
支援
665 :
ゼロのミーディアム:2007/11/06(火) 00:01:36 ID:m6M36pKG
「野暮な事を聞くようじゃがこの世界に留まろうという考えは無いかね?」
「ええ、きっとこちらの世界も住めば都ですぞ?」
双方聞いてみるが、水銀燈は首を横に振った。
「アリスゲームが行われない以上、考えられないわね。
貴方達は召喚の儀式は神聖だと言ってたけど、私にとってアリスゲームもまた神聖不可侵な物よ。
……その輪から外される事は私達ドールにとって死に勝る苦痛だわ」
「言うなればミス・ヴァリエール……いや、我々は君の存在意義を奪ったも同然と言う訳じゃな」
オスマン氏の言葉に、水銀燈は少し間をあけて、ためらうように答える。
「……あの子を悪く言うつもりは無いけど、否定はしないわ。――だってそれが事実なのだから」
ミーディアムはこの場にいない、水銀燈は本心をそのまま口にした。
直後、彼女の後ろでガタンと扉が揺れる。
「誰だ!」
コルベールが杖を引き抜き扉に向けて振った。魔法によりバタン!と開かれる重厚な学院長室のドア。
そしてその先にいたのは桃色のブロンドの眩しい少女の姿。
ルイズだった。彼女は水銀燈の事が気になりこっそりとドア越しに話を聞いていたのだ。
ところが、今の話を聞いて動揺し、大きな音をたててしまったのだろう。
「ル…ルイズ、も、もしかして今の話を!?」
「え、えっと…その……」
水銀燈の青ざめた表情と震えた声にルイズはもごもご口ごもって後退りする。
そして、それに耐えられなくなったのが無言のまま慌てて走り去ってしまった。
「待ってルイズ!!」
彼女は立ち竦んだ。いずれ話そうと思っていたがまさかこのような形で伝える羽目になろうとは……。
だが、走り去ったルイズが気になり、気を取り直すとオスマン氏との話が途中にも関わらず部屋を飛び出しルイズを追いかけていった。
異邦の人形もまた部屋を去り、ここに残るはオスマン氏とコルベールの二人。長い沈黙の後オスマン氏はコルベールに顔を向ける。
「彼女は…私の恩人じゃ。ミスタ・コルベール、お主もあの子が帰る手段を調べてほしい。無論私なりにも調べてはみる」
「もとよりそのつもりです。……それに彼女のいたという世界の事も興味深いですしね」
水銀燈の助けとなる。それが彼女の神聖な儀式、アリスゲームに横槍を入れた我々の務めだと。
義を重んじる彼らはそう胸の内でつぶやいた。
支援
667 :
ゼロのミーディアム・あとがき:2007/11/06(火) 00:02:57 ID:ZQgauGZn
すいません!最後の最後で長くなってしまったので2話に分けます!
でも予告通りこのスレでの投下はこれでお終いです。
まだ「あの作品のキャラが〜」スレも無い当時、適当に妄想してた自分にこのような場を与えてくれた本スレに感謝を!
続きはこれまた予告通り「あの作品のキャラがルイズに召喚されました」スレにお引っ越しとなりますので、これからもどうかよろしくお願いします。
いこうぜ…新たな光(とき)を求めて……
ゼロとジャンクの伝説に、終わりは無いのだから……!
『ゼロのミーディアム』アニメSS総合スレ編
完
……一巻分はここできれいに完結させたかったなぁ
GJ!!!!!
ハラハラするところで区切るなんてズルイ
ルイズは大丈夫かな…
乙彼ー
「あの作品のキャラが〜」スレでお待ちしています
薔薇乙女の作品が増えるのは嬉しい事です
私はなんで話を短く出来ないんだろう、ブツブツ・・・
乙かれ!
今までもアンタの銀様が好きだったしこれからも応援するよ。
乙!!
乙カレー!!
本スレに移動した後の更新も、楽しみにしています。
673 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/11/17(土) 16:01:03 ID:nQ3ablgW
保守上げ
何故なら、俺が何かを書きたいと思ってるから
>>673 後30kbしかないのを踏まえてのその言葉……すなわち君は次スレを欲するという事か!?
>>674 ごめん。踏まえてなかった。
でも次スレ立てて貰えるなら立てて欲しいかもしれない。
てか、他に書き手はいないのか?
676 :
メロン名無しさん:2007/11/18(日) 12:11:03 ID:ny/YYbby0
いきなり出現したこのスレは移転?
移転したらしい。何故だ?
>>675 他の書き手さん、音沙汰が無くなってたからな……。
一体どこに移転したんだ?
あのキャラスレまとめからたどって来たんだが
ギコナビの表示だとアニメサロンになってるんだ、コレが。
削除整理板に行ってみたら削除依頼が出てたらしい
他のSS関係スレは残ってるのにいきなりこのスレだけ移転されてもなぁ…
とりあえずサロンに飛ばされたということは削除するようなスレではないけど
板違いと言えない事はないと削除人に判断されたということ
そしてもう容量もないわけだが次スレどうする?
681 :
メロン名無しさん:2007/11/20(火) 06:33:17 ID:N+rKfUxQ0
age