みんな、ずっと、一緒…の筈だったのに、どうしてこんな事に!?
こんなの、酷すぎるよ…だが、それがお前達の運命だ
戦え、ライダーは戦わなければ生き残れない…
果たして、彼女たちはどう戦い、どう生き残るのか!?
byあずま士郎
>鷹さん
新スレ立てお疲れ様です。
>鷹さん
お疲れさまです!感謝感激であります!
おー新スレわかったんだ。よかった。前スレは当方が使い切ってしまいました。スマソ。
お詫びもかねて、これから第13話を掲示したいと思います。どぞー。
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第13話士郎】
皆がちよと再会したミラーワールドの入り口でもあるミラーホールで、優衣が持ってい
た写真に写っていた男、神崎士郎は何かを探していた。
『ファイナルベント』
士郎の後方でライダーのバイザーがカードの効果を発動させた。それと同時に神楽達と
少し違う形状をしている仮面ライダーが出現した。漆黒のボディーに鮮やかな黄色で所
々装飾されており、仮面ライダーの特徴とも言うべき眼のプロテクターが無かった。
「オルタナティヴか・・・」
「ここで終わらせます!!」
擬似ライダーオルタナティヴは、バイク形態へと変身した自身の契約モンスターサイコ
ローグにまたがり、士郎へと高速スピンを繰り返しながら突進してきた。そんなオルタ
ナティヴを冷静に見つめながら士郎は虚空から一枚のカードを取り出して士郎自身が声
に出してカード名を読みあげた。
「プリズムベント・・・」
そんな士郎にかまわず一気に突撃するオルタナティヴ。しかし、ぶつかったと思ったそ
の瞬間、オルタナティヴは士郎の体をすり抜けた。急停止をしてサイコローグから飛び
降り、辺りを見回すオルタナティヴ。そんなオルタナティヴをミラーホールにある全て
の鏡から士郎が話しかけてきた。
《無駄だ・・・》
「く・・・やってみなければ、わかりません!」
そういうとオルタナティヴは手に出現させたスラッシュダガーでミラーホールの鏡を
壊し始めた。そんなオルタナティヴの行動を気にせず士郎は話を続けた。
《奪った8つのデッキを返せ・・・》
「カードデッキならあと1つを残してもう無いですよ。」
《・・・ライダーとなるべき者に授けたのか。ならいい。》
その士郎の一言で動きを止めるオルタナティヴ。
「みんなはあなたの思惑通り、願いを叶える為に殺しあうなんて絶対にしません。私
と一緒にコアミラーを見つけ出して、そして・・・壊してくれます。近いうちに必
ず。このあなたが作ったミラーワールドと一緒に」
《コアミラーをか?そしたらお前は・・・》
「・・・」
一瞬の沈黙のあと、弱々しく答え始めるオルタナティヴ。
「・・・わかっています。コアミラーが破壊されたら私がどうなるかも。それでも、
モンスターが人の命を奪うことは、絶対に終わらせないといけないんです!!」
大声を出したあまり、肩で息をするオルタナティヴ。そんなオルタナティヴの様子を
士郎は無数の鏡の中から無言で見つめた。唐突に1つ、また1つと士郎の姿が鏡から
消え始め、最後に残った一人も
「それなら違う手を考えるだけだ・・・」
と言い残して姿を消した。一人残されたオルタナティヴは、士郎が消えていった鏡を
いつまでも見つめていた。
【次回予告】
キィィン・・・キィィィン・・・
(私はちよちゃんのために、モンスターから皆を守るために、戦う・・・)
「変身!」
榊はゼブラスカルアイアンの追跡を始めた。
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
あ、新スレ作ったんですね。
とりあえず私もそろそろ書かないとね。誰も期待してないでしょうが…
失敗失敗
がんがれ〜!
お帰りなさいあずま士郎氏。当方はこのスレを考えたあずま氏を心待ちにしてました。
新作、期待しています^^。
さて、と。他の人達が書き上げるまでの間、当方頑張ります。第14話どぞー。
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第14話迷い】
「榊さん、朝だよ。」
次の朝、ソファで眠っていた榊を起こしたのは目覚ましではなく、優衣だった。
「ご飯作ったんだ。一緒に食べよう。」
と彼女は言い、榊はテーブルの上に二人分の朝食が用意されていることに気がつ
いた。
「さ、食べて榊さん。昨日のお礼だから気にしないでね。」
「いただきます。・・・おいしい」
「ありがと。私あっちの世界ではカフェの手伝いをしていたから料理には自信が
あるんだ。」
「その、ほんとに、おいしいよ・・・」
(榊さんって無口なんだ。何だかお兄ちゃんに似てるな・・・)
「榊さん、私もライダーになったんだ。ほらこれ」
そう言うと優衣は昨日ちよからもらった白鳥をモチーフにした絵が中央に描かれ
ている白いカードデッキをテーブルの上へと置いた。
「あなたもライダーになったんだ・・・」
「うん。・・・榊さんはどうしてライダーになったの?」
「私は・・・ちよちゃんに頼まれたから」
榊は優衣に神楽からデッキを渡された時のことやお互いの友人のことについて話
しながら朝食を食べた。
「・・・そうなんだ。こっちの世界も色々大変なんだ。」
「うん。・・・もう行かなきゃ。」
「そっか、大学生って、言ってたわね。私は、どうしようかな?せっかくだし、
こっちの世界で散歩でもしてくる」
「気をつけて・・・」
2人は一緒に外へと出た。榊は自らの選んだ進路、大学へと向かい優衣は散歩を
始めた。自分の身の上に起きたこととは関係なしに進んでいくいつも通りの講義。
講義をうけながらも、ちよの話してくれたことや優衣から聞いたこと、そしてラ
イダーのことを榊は考えていた。そして気がつけば講義も終わり、コンパなどの
誘いも彼女なりに丁重に断りながら、いつもの帰路を歩いていった。
キィィン・・・キィィィン・・・
(これは・・・共鳴・・・どこ!)
榊は近くからモンスターが現実世界に近づいた時の音でもある、共鳴が聞こえた
のを感じた。榊は周りを振り返り、人気の少ない裏通りで、まだらの模様で両腕
に角状の武器を装着したモンスター、ゼブラスカルアイアンが歩いている人をシ
ョーウィンドの鏡の中から角状の武器を交差させてスライスしようとしていてい
るのを発見した。
(く、ここからじゃあもう間に合わない・・・来てデストワイルダー!)
彼女はミラーワールドで契約したデストワイルダーに最後の望みをかけた。
「ガァァァ!」
咆哮と同時にデストワイルダーが反射しているショーウィンドから出現し、その
豪腕を振るい、ゼブラスカルアイアンに豪快な打撃攻撃を繰り出した。怯んだゼ
ブラスカルアイアンは急いでミラーワールドの奥へと逃げ出した。
「早く、あっちに!」
「あ、ああ・・・」
榊がそう言うとその人は慌てて逃げ出した。去っていくのを確認した後、静かに
デッキを鏡の前に突き出す榊。出現するライダーベルト。
(・・・私は、また戦うんだ・・・)
榊には一瞬迷いが生まれた。無理も無い。今まで争ったことが皆無だった人があ
る日突然戦いの場に立たされているのだ。だが、ちよの今現在の姿や、襲われた
人が心に浮かんだ時、もう榊は迷わなかった。
(私はちよちゃんのために、モンスターから皆を守るために、戦う・・・)
「変身!」
次の瞬間、榊は仮面ライダータイガとなった。デストワイルダーを追いかけ鏡の
中に飛び込む榊。一瞬の違和感があったあと再び最初にミラーワールドを訪れた
時と同じ、ミラーワールドの入り口、ディメンションホールへと着いた。そこに
は榊がディメンションホールからミラーワールドに行く為の次元移送機ライドシ
ューターが榊を待っていた。それを見ながら榊は優衣との朝の会話を思い出した。
《ライダーはミラーワールドに入っただけじゃあ、駄目なんだって。そのあと、
ミラーワールドに行くためにある乗り物・・・ライドシューターだったかな?に
乗る必要があるって、蓮が言ってた。》
(これが、ライドシューター・・・)
榊はライドシューターのシートに座った。すると自動的にシートベルトが装着さ
れ、ライドシューターに電源が入った。
(これかな・・・?)
ハンドルを握り、中央にあったスイッチを押す榊。途端にライドシュータは高速
でディメンションホールを駆け始め、榊はゼブラスカルアイアンの追跡を始めた。
【次回予告】
激しいぶつかり合いの音が聞こえる。
『ストライクベント』
榊は手に大きな力が宿るのを感じた。
「はぁ!」
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
18 :
メロン名無しさん:02/12/19 22:19 ID:B68/ODvQ
素朴な疑問。
専用サイト作ったのに、なんで2ちゃんで続ける必要あるの?
ああ、いつの間にか新スレできてた・・・
それはそれとしてあずま士郎氏復帰ですか。うれしい限りです
>>18 専用サイト≠再録サイト
隆起公式サイトみたいなもの(例えは悪いけど
「うんにゃ…一つだけ変わったよ」
【何?】
「消えていったライダー達の重さが2倍!に、なった。もうこれ以上は死なせない。人を守る為にライダーになったんだから、ライダーを守ったっていい!」
「とも…」
「下らないですねぇ…どうでも良い話はもう沢山です」
そう言って王蛇はベノサーベルをオーディンに向かって振り下ろすが
オーディンは、金色の羽を撒き散らしながら、姿を消すと
【戦いを続けろ。私と戦う事が出来るのは最後に残った一人だけだ】
姿を消したオーディンの声だけが、辺りに響き渡る
「序ノ口士郎よね?一年前にアメリカで死んだっていう」
「ワオ?ウワオォォ?(死んだ?ご主人様が?)」
「え?ご主人様って、まさかあなたの飼い主?」
「グワオ!ガウガウグルルゥゥゥ…(死んだなんて嘘です!ご主人様に会ったって人一杯いるんだから…)」
「ご、ごめんなさい…私の情報が間違ってたのね…」
そう言って令子は、そのまま黙りこんでしまった。その胸には一つのペンダントが光っていた
第29話|話92第
このクソあつい真夏の中、漏れジャーナルのクーラーは故障で動かなくなってしまっていた
必死に修理しようとしていた、ともだったが、突然来社した編集長に驚きのあまり
脚立から足を踏み外してしまった。だが、榊の運動能力を吸い取っていたともは慌てず騒がず
島田の肩を踏み台にして、前方へ空中回転。見事に机の上に着地に成功した
「よっしゃ、決まった!10点満点!」ガンッ!ドサッ!
着地に成功したまでは良かったのだが、落としたバケツを島田がヘディングでともにぶつけのだった
編集長は、令子に見合い写真を持ってきたのだったが、見せたのでもう約束は果たしたと言い
この話は終わりにしようとしたのだが、何故か令子は良い経験になるからと言って見合いを承諾してしまった
そして見合い当日
「桃井令子と申します」
「あなたは、遊び半分で来てるんでしょう?そうでなきゃこんな見合いに応じるはずがありません。そうやって僕の心をもてあそんで楽しんでいるんだ」
「い、いえ、そんなつもりじゃ…」
「では、僕と結婚したいと?」
結局お見合いは、破談で終わってしまった
「はぁ〜あ…どっかにいい男いないかなぁ…」
(ハァ…ハァ…)
「ん?」
令子は、誰かが自分を付けてきている様な気配を感じた
もういいかな?あずま氏おつ!当方も掲示しますね。第15話どぞー。
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第15話連携】
高校卒業後に初めてちよと再会したディメイションホールをライドシューターで移動
し続ける榊。永遠に続くかという景色の中、一筋の光が見えてきた。
(・・・眩しい)
一瞬の体への違和感のあと、ガラスが砕ける音と同時に強烈な光が目に入った。思わ
ず目を閉じ、少しずつ目を開けながら周りの景色を確認する榊。そこは普段生活する
現実と何ら変わらない風景に見えた。しかしよく観察してみると看板の文字や建物が
逆になっていることから、ミラーワールドであることがわかる。
(ここが、ミラーワールド・・・)
自動的にライドシューターが開きそこからゆっくりとミラーワールドの地面を踏む榊。
地面からは現実とまったく変わらない感触があり、最初は慎重に歩いていた榊も徐々
にいつもの歩幅に戻り、この世界に来た目的、ゼブラスカルアイアンを探すことを始
めた。榊は聴覚に集中した。
(聞こえる。あっちだ!)
激しいぶつかり合いの音が聞こえる。榊の契約モンスターであるデストワイルダーが
ゼブラスカルアイアンと戦っているのだ。榊は音のする方向へと急いだ。そこではデ
ストワイルダーがゼブラスカルアイアンを攻めてはいるのだが、スピードについてい
けておらず、翻弄されていた。榊が到着した時には、デストワイルダーの背後をとっ
たゼブラスカルアイアンが一気に攻め込み始めていた。
(このままじゃあ、駄目だ!)
気がつくと榊は自分の手にカードの効果を発動させるタイガ特有の武器でもある斧、
デストバイサーを握っていた。デッキからカードを取り出し、デストバイサーの中に
カードを装填する榊。自動的に動いた向きと反対方向に力を加えると何かが組み合わ
さった音の後、無機質な声が聞こえてきた。
『ストライクベント』
榊は手に大きな力が宿るのを感じた。その力を信じてゼブラスカルアイアンとの距離
を走りながら詰める榊。榊の動きに気がついたデストワイルダーは攻撃を続けている
ゼブラスカルアイアンをその両腕で強引に拘束した。必死にもがくゼブラスカルアイ
アンに榊はその力を爆発させた。
「はぁ!」
気合を込めゼブラスカルアイアンの腹部をストライクベントにより得た巨大な爪、デ
ストクローで貫く榊。素早く引き抜いたあと、すかさず後ろへと飛びのき、デストワ
イルダーも榊を見習うかのように同じ動きをした。よろよろと歩くゼブラスカルアイ
アン。榊の方へと近づこうとしていたが、やがて動かなくなり、最後に断末魔の咆哮
をしたあとその場で爆発した。その様子を静かに見つめる榊。ディスパイダーの時と
同じように淡く光る球体が現れ、ゆらゆらと不安定ながら大空へと飛んでいこうとし
ていたが、それに向かって跳躍したデストワイルダーによって吸収された。
(・・・勝ったんだ。あれ?どうしたのかな・・・?)
ほっとする榊の体に異変が起き始めた。体からたくさんの粒子が放出しているのだ。
デストワイルダーは困惑している榊の様子を感じ取り警告した。
(今スグ・・・汝ノ・・・世界ニ戻レ・・・モウ少シデ・・・汝ハ・・・消エル)
(消える?)
(全テガ・・・散ルト・・・存在ガ消エル・・・急イデ来タ道ニ・・・飛ビ込メ)
デストワイルダーの警告を受け取り元の道へと榊は急いだ。ライドシューターを見つ
け、目の前のガラスに深呼吸をした後飛び込むと、ガラスが砕ける音とともに変身も
解け、気がつくと裏通りのショーウィンドウの前で倒れていた。
「・・・」
様々な思いを胸に榊は立ち上がり、帰路を歩き始めた。
(他の皆は大丈夫かな・・・?)
榊の友を思いやる瞳だけが夕日を浴びていつまでもきらきらと反射していた。
【次回予告】
「・・・影よ目覚めろ・・・シャドウベント」
「私を呼んだのはお前か?」
「何故士郎さんがそんなことを・・・?」
「・・・決まってるだろ。コアミラーを壊そうとする奴らを止めるんだよ。力ずくでな。」
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
>27
乙〜!ノリノリですなぁ〜最近。凄い♪
他の娘らはどーしてんですか。ちゃんと契約できたのかな、気になる。
タイガたんは英雄になりますたT-Tあれは予想外でびっくり。
他のメンバーは神楽以外はこれから契約ですなー。
とりあえずよみ→かおりん→智&大阪って感じで書いてあります。
出来てはいるのですがこれから修正するので、気長に待ってねー。
では・・・第16話どぞー。
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第16話分離】
榊がゼブラスカルアイアンをストライクベントで撃墜した頃、ディメイションホール
を探索していたちよに異変が起きた。ちよの身体の粒子が激しく失われていったのだ。
「う・・・誰かが、モンスターを倒してくれたんですね・・・よか・・・た・・・」
ちよはそのまま気絶した。そんなちよに士郎は近づきカードを一枚虚空から取り出した。
「・・・影よ目覚めろ・・・シャドウベント」
ちよの周囲の空間が歪み、それと同時に激しい閃光がディメイションホールを包み込ん
だ。閃光が消えた後、ちよの隣にはもう一人のちよが出現していた。
「・・・私を呼んだのはお前か?」
「話がある・・・」
「ま、大体予想はつくけどな・・・」
そう言うと黒ちよと士郎は気絶しているちよの隣で話し始めた。
(・・・あれ?苦しくない。・・・え、私がいる!?)
再び眼を覚ました時ちよは自分と同じ姿をしたもう1人の自分が隣にいることに気付い
た。その姿はちよのように半透明というわけではないが、何故か身体が黒く見える。
「あなたは・・・?」
「やっと起きたか。私?私もちよだよ。そーだな、黒ちよってでも呼んでくれ」
「何故、私がもう一人いるんですか?」
「お前さっき気絶していただろ?その時士郎が何だったかな?そーだその人のもう1つ
の魂を開放するっていうカードをお前に使ったってわけ。つまり私はもう1人のお前
ってことさ。」
「何故士郎さんがそんなことを・・・?」
「・・・お前本当にそれを聞いてるのか?ミラーワールドを守るために決まってるだろ?
お前がコアミラーをライダーを使ってぶち壊そうとしてるのが気に入らないってさ。」
「・・・」
思わず黙り込むちよ。手に持ったデッキを空中に放り投げながら黒ちよは続けた。
「・・・でもな、お前もホントバカだよなー。皆の為には自分が犠牲になっていいと思っ
てんだろ?逆だよ逆。」
黒ちよが持っているデッキに気づいてちよは顔色が変わった。そのデッキはさっきまで自
分が隠し持っていたデッキだったからだ。
「そのデッキは・・・!!デッキを返してください!」
「何で?お前オルタナティヴのデッキがあるだろ?」
「・・・何のためにデッキを使うんですか?」
ちよの質問にしばらく沈黙する黒ちよ。やがて満面の笑みを浮かべながら応えた。
「・・・決まってるだろ。コアミラーを壊そうとする奴らを止めるんだよ。力ずくでな。」
ちよはデッキを空中高く放り投げた。出現するライダーベルト。ちよは落下してくるデッ
キを掴み取り、素早くベルトにデッキを装填すると同時にオルタナティヴへと変身する為の
パスワードを声に出した。
「変身!オルタナティヴ!」
そして次の瞬間、ちよはオルタナティヴへと変身した。
「・・・デッキを返してください。」
「こわいですねー。でも私は自分と戦う気なんてさらさらないですよー。ま、私は私のた
めに戦います。お前と違ってな」
そう言うと黒ちよは姿を消した。
(・・・皆が危ない!)
「行こうサイコローグ」
ちよはバイク形態に変身したサイコローグにまたがり、一気にディメイションホールを駆
け抜けミラーワールドへと突入した。
【次回予告】
(・・・!ついに来たか!!)
『CONTRACT』
無数の銃弾がよみに向かって飛んできた。
「駄目なのか!?」
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
黒ちよキタ〜〜〜!!
某スレのみたいに、どこか抜けてる可愛さはあるのだろうか?
大阪と百合狙ってるのだろうか(w
鷹さん早いですなー
全何話くらい行くんだろう
このペースだと・・・50くらい?
大体50+αくらいです。あとこれから出かけますので掲示出来ないのですが、
第17話の次回予告は↓のものになりますた。スマソ。↑の予告は次の第18
話にまわしますんでお許しくだされm(_ _)m
【次回予告】
キィィィン・・・キィィィン・・・
『ファイナルベント』
「さよなら優衣さん」
(私・・・ここで終わっちゃうのかな・・・お兄ちゃん・・・)
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第17話妨害】
朝、榊と別れた優衣は街を散歩していた。
(・・・ここのタイヤキおいしそう)
「すみません。子倉一つお願いします。」
「あいよ。」
「ありがとう。・・・あつつ」
(あっちに行くとどこにつながるのかな?)
自由気ままに歩いていた時、モンスターがミラーワールドから近づいている
ことがわかる共鳴が優衣の頭に響いた。
キィィィン・・・キィィィン・・・
(頭が痛い・・・)
優衣は周囲を見回した。突然すぐ目の前のオフィスビルから巨大な黒龍が飛
び出してきた。
「きゃあ!」
優衣は思わずしゃがみ、襲ってきた黒龍を避けた。残念そうな咆哮を残して
黒龍は再びミラーワールドへと消えていった。
(このままじゃあ、また、誰かが襲われる・・・追いかけなきゃ。)
「変身!」
優衣は鮮やかな白で装飾されたライダー、ファムへと変身し、黒龍が消えた
鏡に手を近づけディメイションホールへと向かった。
(これが蓮の言ってたライドシューター・・・急がないと!)
ライドシュータに乗り込み、ファムはディメイションホールからミラーワー
ルドへと向かった。
(どこに行ったんだろう?)
ミラーワールドに辿り着いたファムは黒龍を探し始めた。そんなファムの様
子を見ていた人物がファムへと近づいていった。
「・・・優衣さんですね?」
「え?どうして私を知ってるの・・・?」
「聞きたいことがあります。士郎さんの作ったこのミラーワールドをあなた
はどう思いますか?」
「え・・・お兄ちゃんの作ったって・・・それは本当なの!」
「・・・私の質問に答えてください。」
「モンスターが出現するミラーワールドをほっとけないよ。・・・ちよちゃ
んが言ってた。コアミラーを破壊したらミラーワールドは消えるって。私
は、人を襲うモンスターが現れるミラーワールドは絶対に、いや!」
「そうですか・・・なら、あなたも潰します!」
『ソードベント』
漆黒のライダー、リュウガはファムにブラックドラグセイバーを構えて突進
してきた。リュウガの攻撃を慌てて避け続けるファム。
「きゃあ!・・・どうして!ライダー同士は戦わなくていいはずよ!」
「ミラーワールドを閉じられると私が困るんです!」
(このままだと危ない!)
ファムは意を決してレイピアに似た自身のカードバイサー、羽召剣ブランバ
イザーにデッキから取り出したカードを装填した。
『ガードベント』
「ガキィイイン!」
「へえ・・・ならこうです!」
リュウガはファムのウイングシールドで攻撃が通じないと判断すると、その
場でバク転を連続で行ってファムとの間に距離を作り、リュウガのカードバ
イザー、龍召機甲ブラックドラグバイザーにカードを装填した。
『アドベント』
リュウガの契約モンスター、暗黒龍ドラグブラッカーが二人の前に出現した。
「さっきの龍!?あなたの契約モンスターなの!」
「ドラグブラッカー、目的はファムです!」
「ゴァァァ!」
「きゃあああ!!」
ファムはウイングシールドで身を庇ったが、ドラグブラッカーの強烈な体当た
りで吹き飛ばされた。
(う・・・身体が動かない。)
『ファイナルベント』
リュウガは戦いの勝負を決める必殺のカード、ファイナルベントをブラックド
ラグバイサーに装填した。途端にドラグブラッカーがリュウガの周囲を包み込
み、リュウガに己の力を注ぎ込んだ。その力でドラグブラッカーの口元へと宙
に浮いたリュウガはファムに別れを告げた。
「さよなら優衣さん」
ドラグブラッカーはリュウガに暗黒の炎を一気に吹き付けた。暗黒の炎の加護
を受けて黒い流星と化したリュウガはファムへと突撃した。ファムはリュウガ
がやけにスローモーションで近づいてくるように感じた。
(私・・・ここで終わっちゃうんだ・・・お兄ちゃん・・・)
『アドベント』
「え・・・きゃあ!?」
リュウガがファムに激突する瞬間、どこかでカードの使用された音が聞こえた。
それと同時に黄金の巨大な鳥がファムとリュウガの間に割り込み、リュウガの
身体をその巨大な鉤爪で握り締め、地面へと叩きつけた。その鳥はリュウガの
妨害をしたあと、現れたときと同様に一瞬で姿を消した。
「う・・・助かったの?」
リュウガは気絶しているらしく、少しも動かなかった。
「逃げなきゃ・・・」
ファムはよろよろと元の道へと歩き始めた。入り口を見つけ、手を近づけてい
る優衣に突然懐かしい声が聞こえた。
「優衣・・・お前は俺が必ず守る・・・安心しろ」
「お兄ちゃん!!」
(良かった・・・生きて・・・いた・・・ん・・・だ・・・)
士郎の姿を見て優衣は張り詰めていたものが崩れ、その場に倒れた。
「・・・う・・・お兄ちゃん!」
優衣が再び眼を覚ました時、そこは榊の家だった。
「よかった・・・」
「大丈夫・・・?」
「う、うん。」
榊はゼブラスカルアイアンを倒し、家に帰る途中のオフィスビルの前で
倒れているのを発見して連れてきたことを優衣に話した。
「・・・また助けてもらったんだ。榊さんありがと。」
「・・・」
(照れているんだ・・・何だかお兄ちゃんに似てるな・・・そうだ!)
優衣はミラーワールドでの出来事を思い出し、急いで榊に尋ねた。
「ねえ、近くに誰かいなかった?」
「いや、見なかったよ・・・」
「そう・・・」
(お兄ちゃん・・・どうして・・・?)
優衣は士郎のことを考えながら、再び意識を失った。榊は優衣が眠ったの
を見て、電気を消して、ソファーへと向かった。優衣の瞳から、涙が一粒
流れて消えた。
盛り上がってるところ、すみません。
第二話後半をぼちぼちと逝かせてもらいます。
『仮面ライダー 神楽』 第二話 <参>
「うぐぅ!」
背中に感じられる硬く冷たい床の感触と打撲の痛み。これがなかったら、神楽は未だに理解でき
なかったかもしれない――自分がその場に投げ倒されたことに。かおりに伸ばした腕に傍らから何
者かの手が添えられたか、と思った次の瞬間には、この有様だった。
「痛ててて・・・だ、誰だ!」
あわてて飛び起き、いったいどんな奴かと伺い見る。その表情が、たちまち警戒から驚愕に変わった
「お、お前は・・・!」
それは、うら若い娘だった。腰まである黒髪。そして、背が高い――170は楽に超えていよう。
・・・だが、神楽が驚いたのは、その点ではなかった。相手が、彼女のよく知る人物だったからだ。
先ほどのかおり同様、かつてのクラスメイト。いや、それ以上の、心を許した友だったのだ。
「榊、榊じゃねぇか!」
驚きはすぐに喜びにかわり、神楽は笑顔でその娘の名を呼んで歩み寄った。
「おいおい〜、久しぶりだな!元気か?なあなあ、何、今の技?お前やっぱり・・・うわ!」
・・・なのに、親しげに伸ばした手は再び迎撃の憂き目にあい、その身は床に叩きつけられる。
痛む背をさすりつつ立ち上がった神楽は、やっと旧友の様子が尋常でないことに気がついた。
顔に表情が無い。瞳に光が無い。そして、こちらに向ける視線に温もりが無い――まるで見知ら
ぬ誰かを見るような。
「・・・榊、どうしちまったんだ?わ、私がわからないのか?神楽だよ、なぁ」
「・・・・・・?」
「なぁ、忘れちまったのか、私を、なぁ、榊・・・榊ぃ・・・」
無性に、無性に哀しくて、神楽の瞳からは、いつの間にか大粒の涙がこぼれ始めていた。
「ね、ねぇ、ちょっと来て」
その様子に驚いたのか、それまで――騎士に守られたお姫様のようにうっとりと、ありさまを見
つめているだけだったかおりが、神楽に駆け寄るとその手を引いてカウンター脇のドアへと誘った。
「おい、榊はいったいどーなっちまったんだ!」
ドアを抜け、しばらく歩いた先にひらけた裏庭で、たまらず神楽はかおりを問い詰めた。まだ涙
声の彼女に答えるかわりに、かおりは花壇の手前にため息とともにしゃがみ込んだ。
「おい、かおりん!」
「・・・榊さんは、記憶喪失になってしまったの。ここ数年の記憶がないのよ」
「なにぃ、記憶が!?」
「うん。幸い日常生活には支障がないんだけど。私のことだって、本当はよくわかってないのよ」
「そんな、あの榊が!いったい何が原因で?」
「・・・それは」
かおりは心底つらそうな表情で、言葉を途切らせた。そっと手を伸ばし、花壇にあった置物――
木彫りの子猫の泥汚れを払い始める。
(猫か。そういえば榊も飼ってたっけ。なぜか猫に嫌われるあいつになついた、この世でたった
一匹の猫を。名はマヤー・・・え、ま、まさか!)
「おい、まさか」
「ま、マヤーが死んじゃって・・・さ、榊さんの目の前でトラックにひかれて、ぺちゃんこになっち
やって、それで、それで・・・」
かおりも泣き声になっていた。華奢な背中が震えている。
「な、なんだって!あ、そ、それじゃぁ・・・」
花壇に置かれた猫の置物。神楽はやっとそれが何を意味するのかに気がついた。
「これが、これがあいつの墓だっていうのか!!」
「そうよ・・・私が作ったの」
泣きながら続くかおりの告白を、神楽はなかば呆然として聞いた。
休みの日にそっと榊の後をつけていて、悲劇の現場に居合わせたこと。ショックで意識を失った
榊に付き添い、救急車で病院までいったこと。
「お医者さんが言うにはね、記憶を取り戻すには、失った部分の期間に多くの思い出を共有した
人間――親しい友人とかと過ごすと良いんだって。だからご両親を説得して、ここで住み込みのア
ルバイトをしてもらっているの」
「友人と過ごす、か・・・だったら、私も協力する!智やよみや大阪、ええぃ、こうなりゃアメリカ
に留学したちよちゃんにだって声かけて集まってもらうぜ!」
神楽の口からでた名前は、いずれも高校時代、榊と特に親しかった友人達のものだった。情に厚
い彼女らのことだ、きっと喜んで力を貸してくれるだろう。
「ダメっ!止めて、それだけは!」
「へ、なんでだよ?」
意外な拒絶の言葉に、神楽は戸惑った。
「榊さんは、いつだって凛々しくて、格好よくて、完璧じゃなくちゃいけないのよ!今の、こん
な榊さんを、知り合いに見せたくないの!とくに、とくにあの人たちには・・・」
「あいつらには、そんな気遣いや遠慮は無用さ。高校の三年間ずっとつるんできた仲間だぜ?」
「だから、だからよ。・・・ねぇ神楽、その役目はあの人たちでなくちゃいけないの?私じゃだめな
の?私と、あんたとじゃあ・・・」
「そっちが本音かぁ?お前、いくら自分があいつらほど榊と親しくなれなかったからって・・・」
「それは、あんたも同じでしょ?三年間?ふっ、あんたは二年間じゃない」
「なんだと、お前ぇ!」
思わず声を荒げる神楽。だが、かおりは平然と言葉を続けた。挑発するように・・・
「あはは、おっかしいの。自分がちよちゃん達並みに榊さんと親しいと思ってたんだ?全然違う
のに。ガサツなあんたらしい思い込みね〜。あはは、思い出しちゃった、あの時と似てる。あんた
が二年のクラス替えで同じ組になって、初めて榊さんに話しかけた時とね」
「あ、うう・・・あ、あれは」
唐突に脳裏に再現される、忘れたはずのあの時のこと。
――ずっと意識し続けていた。体育祭やマラソン大会などで競う唯一のライバルとして。言葉を
交わしたことは一度も無かったが、向こうもきっと思いは同じだと信じていた。
――しかし、それが単なる片思いだとわかった、あの時。親しげに話しかけた自分に向けられた
冷たい視線。
(そうだ、さっきと同じだった。だから、あんなに涙が・・・。榊にとって、私は、私は・・・?)
「顔も名前も、存在すら、榊さんの記憶になかったのよね。あはは」
「うるせぇぇぇ!だから、なんだってんだ!」
「・・・だ・か・ら、同じなのよ私達は。ね、神楽、力を貸して。二人だけで榊さんを・・・ね?」
「ふ、二人だけってお前、その、あの・・・」
なぜか否定の言葉がすんなり出てこない。
逆に、かおりの誘惑に屈したい気持ちがふつふつと沸いてくる。
いつもあまり考えずに行動する神楽の脳は、ライダーの件もあって、既に過負荷状態にあった。
「ま、また来る!じゃあな!」
そう言って逃げ出すのが、今の彼女には精一杯だった。
う〜ん、張ると微妙に(特に一行目)がずれる罠。
第二話は<四>まであります。長くてスミマセン・・・
新作乙
嗚呼榊さんが・・・
続きが気になる――
『仮面ライダー 神楽』 第二話 <四>
同時刻、すなわち平日のおだやかな午後。南青山の一角にある豪奢なオフィス。そこの主は執務
机でまどろんでいた。端正な額に汗がにじんでいる。それは激務による疲れか、あるいはもっと体
の奥底から発せられた危険信号なのかは、本人すらわからない。
「・・・んん、なんだ、あんたか。と、いうことは、また誰かライダーが死んだってこと?」
その男――弁護士・北岡秀一は背後の気配に気づくと、寝起きのけだるさをまとったまま、気配
の元に言葉をかけた。
「死んだのは、仮面ライダータイガだ」
答えたのは、神楽にデッキの継承を選ばせたあの男だった。
「タイガ?早くも二人抜きしたって奴だっけ?ふふ、儚いねぇ。やっぱり『慌てる乞食はもらい
が少ない』ってね?」
「・・・奴はライダーとしては優秀だったが、重大なルール違反を犯した。ゆえに処分されただけだ。
タイガのデッキは、別の人間に引き継がせた」
「おやおや、そーいうのってありなの?ま、いいけどね。替わったばかりってのは好都合だし・・・」
しかし、北岡が振り向くと、すでに男の姿はそこにはなかった。
一方、神楽は、旧友宅を飛び出したのはいいものの、新たな難問に直面していた。
「・・・って、ここはいったいどこなんだ。都内か?」
電柱にあるはずの住所表示を求めて、辺りを歩き回る。
そのおかげで、先ほどの喫茶店が「花鶏――あとり」という名前であることを知ることができた。
住居側の玄関に掛かっていた表札から、かおりの姓が『神崎』であったことも思い出せた。
そして、ついに待望の住所表示が!
「S宿区?おいおい・・・横浜まで電車で戻るしかないな。お金、あるかな?」
MTBを置きっぱなしにしてはおけない。財布の中の小銭を勘定しながら、駅がありそうな方角
へ移動する。頭の中では、先ほどの出来事が反芻されていた。
(・・・変だ、かおりんの言ってることは。絶対おかしい。なのに、なんで言い返せなかったんだ?
やっぱりバカだからなのか?脳みそまで筋肉なのか私は!ああくそ、もっと頭が良ければなぁ!)
その時だった。耳の奥底、脳にまで響くような不快な音が聞こえてきたのは。
(あーっ!考えすぎでついに耳鳴りまでしてきやがったか・・・いや、違う。これは!)
教えられずとも、ライダーとしての本能が、その音の意味を感じ取っていた。
(・・・来る!奴らが!)
神楽はちょうど三叉路の分岐に立っていた。素早く、それぞれの方角を見回す。
昼下がりの住宅街である。人気はなかったが、唯一、彼女の左方から中年女性が歩いてきていた。
その姿が、路上駐車のワゴンの脇を通り過ぎたとき、突如消えうせた!手に持っていたスーパーの
袋が地面に落ち中身が散乱する。
「この野郎ぉぉお!」
神楽は駆け出した。彼女には見えたのだ。女性が無数の白い糸に巻き取られ、磨かれて鏡のように
なっていた車体側面に引き込まれたのを。
「変身!」
走りながらも器用に変身動作を終えた彼女の体は、ふたたびタイガへと変わった。勢いそのままに
フロントガラスへと身を躍らせる。
光の粒子が乱れ飛ぶ境界を通り抜け、タイガ=神楽は再びミラーワールドに降り立った。
「どこだ!!・・・う、うわわ!」
探すまでもなく、敵はすぐそこにいた。その姿は蜘蛛そのもの。だだし、大きさはトラック並みで
体は金属を思わせる銀色に覆われている。
・・・しかし、彼女が悲鳴を上げたのは、その姿に驚いたからではない。大蜘蛛の口の下に、血だまり
と肉塊――先ほどまで人間であったものを認めたからだ。
また犠牲者が一人。そして永遠に帰らぬその人を、知らずに待ち続けることになる人たちが・・・
「くぅ、くうう!よくも、よくも・・・この野郎ぉ!ぶち殺す!」
神楽は仮面の下で己が不甲斐なさに泣きつつ、叫んだ。大蜘蛛も反応し、威嚇の声をあげる。
(頭で念じて、引けばいいんだったな。よぉし、出て来い『爪』ぇぇ!)
怒りに震える手が、デッキから一枚のカードを引き抜いた。敵もその動作を何事かと警戒し動き
を止め、両者はそのままの姿勢で固まった。数十秒ほど。・・・だが、何も起こらない。
「あれ?おーい、爪、出ろ〜、出ろ〜」
そう言いつつ引いたカードを振ってみたが、やはりだめだ。
大蜘蛛が『ふざけやがって、このアマ!』といわんばかりに猛攻を開始する。
「ど、どーなってんだこりゃあ!あ、うぁぁぁ!!」
悩む間はなかった。硬く尖った脚が、人間をたちまち噛み砕いた顎が、間断なく襲いくる。
気がつけば、タイガ=神楽は初陣でいきなり窮地にたたされていたのだ。
ミラーワールドは現実世界と鏡像の関係にある。よって、大蜘蛛との戦いの舞台は、先ほど神楽
が変身した場所――住宅街の一角だ。ただし、全てが左右反転し、通常は命あるものはモンスター
ぐらいしか存在しないが。
その近隣で一番高い建物――高層マンションの屋上から、タイガの戦いぶりを眺めている姿があ
った。緑を基調としたボディの随所を覆う防具はどこか機械的で、ロボットの類を連想させる。
「やれやれ、カードの使い方も知らないとはね、神崎士郎もどういうつもりなんだか・・・」
組んでいた腕をほどき、サブマシンガンのような物を手に取る。それはマグナバイザーという名
の連射銃、すなわち武器であり、また、もうひとつ重要な機能を持っていた。
「ま、いいけどね。俺は『漁夫の利』って、けっこう好きだし」
その男――仮面ライダーゾルダは、けだるそうに己がデッキから一枚カードを引いた。カードに
はデッキの刻印と同じ紋章――水牛が描かれている。続いてマグナバイザーの弾倉にあたる部分を
開き、カードを挿入した。これこそが正しいカードの使い方なのだ。
『ファイナル・ベント』
弾倉が閉じられると、機械的な音声が確認を促すかのようにカードの名称を読み上げる。同時に
地響きとともに巨大なモンスターが姿を現した。
鋼鉄で鎧われた直立する猛牛とでもいうべきその姿、名をマグナギガという。
「それじゃあ、バイバイ。新入りさん・・・」
その背にあるアダプターにバイザーの銃口をセットし、ゾルダの指がゆっくりと引き金を引いた。
その少し前。神楽が去った後の花鶏では、邪魔者も消えて、穏やかな時間が流れていた。
「・・・あの、榊さん。よろしければ、爪のお手入れをさせていただけませんか?」
榊はどこか虚ろな目のまま軽くうなずくと、カウンターの席につき、手を卓の上に置いた。
満面の笑顔で隣に座ったかおりは、道具を取り出すと、さっそく作業にとりかかった。
いわゆる『爪切り』などは使わない。切るときの衝撃で爪に微細なヒビが入ってしまうからだ。
専用のバッファと呼ばれる目の細かいヤスリで、丹念に丹念に仕上げてゆくのだ。
(・・・あ、鳴ってる。近いな。きっとあいつのことだから、変身しちゃって戦ってる)
かおりの耳にも、あの音が聞こえていた。意味も知っている。しかし何ら動揺は見られない。ま
るで、あってもなくてもいいBGMのように聞き流し、愛しい人への奉仕を続けていた。
(だけど無駄よ、神楽・・・カードの使い方も知らないで、勝てるわけない)
仕上げのオイルを塗り終えると、かおりはその出来ばえに満足げな吐息をついた。
もともと形のよい榊の爪が、神々しいまでに美しく仕上がっている。
「きゃああ〜!・・・素敵、まるで宝石みたい!」
耐えきれず、かおりは嬌声をあげて己の作品に頬ずりしまった。
そして、そっと上目遣いで、榊の表情をうかがう。
その視線は相変わらず冷めていて、先ほど神楽に向けたものと変わりはなかったが、彼女の目に
はそれが、優しく自分に微笑みかけているように写っていた。
甘くしびれるような快感が、体の奥底から全身へと広がってゆく。
(あ〜ん、幸せ、幸せ・・・私はこの幸せを守るためなら、何だってできる・・・だから、神楽・・・)
先ほどのやり取り、そして高校時代の神楽とのさまざまな思い出が、スナップ写真のように脳裏
に浮かんでは消えた。
(あんたのこと、嫌いじゃなかったよ。むしろ好きだったけど・・・きっと言ってしまうものね、榊
さんのことを、あの人たちに。だから、ごめん、ごめんね。ばいばい・・・)
そして、再びミラーワールド。
タイガはカード使用をあきらめ、素手での攻撃に切り替えていた。
しかし大蜘蛛はパンチが当たると痛がりこそするが、その動きは鈍らない。素手では牽制するの
が精一杯のようだ。
(ち、だめか。これじゃあ何百発打ち込んでも、埒が明かないぜ!どうすりゃあいいんだ!)
敵の反撃を回避しつつ、次なる手に思いを巡らせていたタイガ=神楽だったが、しかし・・・
(あううう、なんだ!背中にゾクッときたぞ)
背中の産毛が全て逆立つ感触。そして・・・
(に、匂う。なんだ、きな臭い。なんの匂いだ・・・危険?死の予感!?)
彼女の嗅覚が嗅ぎつけたのは、まさにそれだった。匂いの強い方角を見やると、彼方のビル屋上
に大型のモンスターの姿が認められた。その前面の装甲が開いてゆく!
あとは、全て無意識の行動だった・・・視界が白黒に変わる。大蜘蛛の攻撃が、とたんにスローモー
ションになる。全身を巡るエネルギーが、両脚へと集中する。そして、一気に開放された!
そのコンマ数秒後、周囲は爆炎と衝撃波の渦まく地獄と化した・・・!! (続く)
と、いうわけで第二話でした。駄文を長々と、申し訳ありません。
また、好きなキャラが不本意な扱いを受けてお怒りの皆様、どうかお許しを。
北岡のセリフ、いまいち、彼らしくないですし。『龍騎』毎回、録画しとけばなぁと後悔。
次回予告・・・これにも、お詫びせねばならないことが。
第二話予告に書いた台詞、本編では無かったり、少し違うのもあります。
これは『仮面ライダー龍騎』でも、予告のカットが本編では放映されない場合があることのパロ
ディ・・・ではなくて、予告を書いてる時点では、粗筋ぐらいしか考えてないからです。すみません。
では、第三話予告?いきます。
『仮面ライダー神楽』
「死んでるな・・・まぁ、当然か。とはいえ、念には念をいれないとね」
「あうん、こらぁ・・・私、眠ってるとき触られるの嫌いって知ってるだろ」
「見せてもらったぜ、カードの使い方!」
「ケガで入院したんだって、あいつ。神楽ちゃん、悪いけどお使い頼める?」
「ちょっと、その、ポケットの青い奴、見せてもらえるかな?」
戦わなければ、生き残れない!
おお、新作ですねー
龍騎の中でキャラを入れ替える方法なんですか
これからどういう風にあずまんがのキャラクターが入ってくるんだろう
楽しみだ・・・
いつの間にやらいらだとばるさんの新作が
続きが果てしなく気になるのですが、
とりあえず、オリジナルストーリーのあずまんが龍騎の序章、
書かせていただきます
序章
あの高校卒業から二年
高校の門で別れた皆は、それぞれの未来へと続く道へと進んでいった
榊、神楽、歩、暦、智はそれぞれ現役で合格した大学へ
かおりは一年遅れで大学へと進学
そしてアメリカへと渡ったちよは研究所に・・・・・・
些細なことから発見されたミラーワールドという新たな世界
ある理由でちよはその研究に参加していた
研究とはミラーワールドを人口問題諸々の解決手段にできないかというもの
ただし、ミラーワールドには人間はおろか、こちらの世界の物質は安定して存在できない
せいぜいが一分で光の粒となってしまうことが非常に大きな、そして致命的な問題だった
その問題の解決策として、ちよはライダースーツというものを作り出した
ライダースーツとはミラーワールドの物質と現実世界の物質の擬似融合体
それで身を覆うことによって、ミラーワールドで消滅の危険なく存在を維持できる時間を飛躍的に長くする
ことができるということに狂喜する研究仲間たち
しかしちよにとってそれはただの通過点に過ぎなかった
ライダースーツの開発によって研究者たちのなかでも一目おかれる存在となったちよはある助言を得て、そ
れに更なる改良を加えようとしていた
それはミラーワールドに存在するモンスターの力をライダーに加えること
すでに存在を知られていた「モンスター」という存在は、その危険性は示唆されていたが、その時点ではこ
ちらの世界の人間と同様、二つの世界を行き来することができなかったこと、さらにライダーの完成にはモ
ンスターの力がどうしても必要だったという理由からである
さらにそのとき既にちよはカードを介することで理論上は確かにそれが可能であることを知っていた
無論自身が作ったカードに自信がなかったわけではないが、研究仲間を不要な危険にさらすわけには行かず、
ちよはひとりで己の作った契約のカードでモンスターとの契約を成功させる
モンスターとライダーとを互いに結びつけることの出来たカードは全部で11枚
さらにちよはカードの保護およびライダースーツ装着時の安定化をかね、入れる契約カードと同じモンスタ
ーの力を込めたカードデッキを作った。
しかしちよは己の為したことが成功したとき、安心すると同時に、自分のしてきたことを振り返り、ふと恐
れた。ミラーワールドと現実世界という明らかに別なものを無理やり繋げることは果たして本当に正しいこ
となのだろうかと
それはミラーワールドと現実世界の境界を薄くすることにつながると思ったのである
そして不安は現実となった。
ライダーと契約モンスターの誕生により、より拡大された扉から、世界を超え突然現れたモンスター
最終的にそうなる可能性は考慮していたものの、それはちよの予想よりはるかに早かった
ちよたちは数人の犠牲の末、モンスターを再びミラーワールドに押し込め、さらに一時的にカードデッキを封印することでミラーワールドとの扉を閉じることに成功する
そしてそれを機に自体は急転する
突然の実験室におけるミラーワールドとの断絶
気がついたときアメリカにおけるミラーワールドの扉は完全に閉じていた
理由は分からなかったものの、ちよはひそかに胸をなでおろした
しかし、ひそかに調べてみて愕然とする
ミラーワールドの扉は彼女の祖国日本、その東京で再び開こうとしていた
一度扉が開いてしまったら、現段階でできるという条件付きならば、彼女の知る限り閉じる方法は1つしか
ない
それはちよの作ったカードデッキおよびカードをすべて破壊すること
その両者がミラーワールドとこの世界との間の架け橋の一端を担っているのは間違いない
しかしそれには大きな問題があった
それは一度破壊したら容易には作り直せないということ、
無論、破壊したら最後、現実世界からミラーワールドへのアクセスは極端に制限されることになる
さらに、ちよはそれによる両世界の断絶は一時的なものでしかないということもすでに知っていた
ちよはミラーワールドとの扉を完全に閉じるため、カードデッキを破壊するのを断念し、さらに東京にいる
はずの旧友達がモンスターに襲われるのを防ごうとする
しかし、ちよがその事実を知ってカードデッキを研究室から回収したほんの数日後、ちよの属する研究室は
原因不明の爆発を起こし、ちよ以外の研究員は全員死亡、そしてちよは行方不明となるのだった。
以上、序章でした
あう、63で改行しくじった
ちなみに矛盾するようですが次回作は第一章です
予定としてはライダーの数に倣って全13章で完結させたいなぁ
と思ってたりしますが・・・・・・無理かもしれません
では、第一章(前編)書き込ませていただきます
第一章
アメリカでちよの所属する研究所爆発――→ちよ消息不明
しかし、そのニュースは日本ではごくわずかしか流されることは無かった
そしてそれと前後してちよのかつてのクラスメイトを始めとした数人に送り主不明の小包が届けられる
不審に思い、警戒しながらも彼女達が包みをあけると、その中にはさらに厳重に封をされた箱が入っていた
同封されていた手紙に曰く この封は安易には決してあけないでほしい。そして・・・・・・
かつてちよの同級生で良き友でもあった榊にもその小包は届けられた
榊も他のみな同様、首をかしげながらそれを開け、中に入っていた箱にさらに首をかしげた
ただ、榊自身にもなぜか分からないが、それはゴミ箱へ行かず、榊の机の一部を占領することとなった
そしてそれが届けられた数日後・・・
いつもと変わらぬ一日、朝起き、大学に行く、そんな日常の一コマの中
「あれ・・・?」
榊−現在獣医系大学の3年生−は大学で己の鞄の中にその箱が入っているを見つけた
自分で入れた記憶がないので榊が大学に行くとき、机の上においておいたそれが鞄に偶然入ったか、ノート
の間に紛れ込んでいたかのどちらかだろう
特にたいしたことでもないので、それについて、榊は特に考えることなく、鞄のサイドポケットに入れ、す
ぐに忘れてしまった
ほんの数時間後、己の運命をそれが左右することになるなど知る由もなく・・・
講義が終わり、家−高校時代と違い一人と一匹暮らしである−へと榊は歩を進める
家で待つ愛猫のことを考えると自然にその足も速くなる
まだ春のため、日はすでに傾いてはいるものの、まだ十分に明るい
そして榊が相変わらず人気のあまりない駅前のビル街に差し掛かったとき
榊は奇妙な耳鳴り音を感じた
ガラスを引っかいた音に似て非なるその音、それがまるで頭に直接響いたかのような感覚
ほぼ同時にあたりを見渡し、その音源を捜す榊
「今のは一体・・・」
聞きなれぬはずのその音に感じる、言い知れぬ、そして底知れぬいやな予感
前日から東京では連続して原因不明の失踪事件が続いていたのだが彼女が知る由も無い
うめき声を聞き、榊は振り向いた
眼前わずか数メートル。榊の目の前で会社帰りと思われる男性が慌てたようにのどに手を掛けている
そして、まるで何かに引っ張られたかのように体勢を崩し、そしてさらに驚くべきことに、自分の意志では
ありえない速度でそのまま引きずられるかのように近くのガラスの中へと姿を消した
そのとき確かに榊は男性の首に白い糸のようなものが巻きついていたのを見た
(見間違い?違う!でも、じゃあ、今のは一体・・・)
およそ現実離れしたその光景に榊はまず己の目と頭を疑った。
そして数日前に読んだ文章が彼女の頭に唐突によみがえる
怪しい包みに同封されていた手紙、そこにはこう書いてあった
この封は安易には決して開けないでほしい
ただ、もし鏡かガラスの前で人が消えるという事件が身近で何件も起きた、
その時はこの封を解いてほしい、と
(そういえば、あの箱、今日大学で・・・・・・)
その箱が鞄の中に入っていることに思い当たり、サイドポケットから出しその場で封をといた榊は同時に首
に衝撃を感じた
ガラスから伸び、首に巻きついた白い糸、否、紐
先に見た映像が頭の中でリピートし戦慄が走る
箱の中から出てきたのは片手に収まるくらいの黒く薄い直方体の箱、そしてもう一通の手紙
否応無しにパニックに陥りつつある頭を無理やり落ち着け、榊は手紙に目を通す。
―これが読まれているということは、東京で最悪の事態が起こったことを意味します
――その前提で話を進めます。まず信じてください、これからの文に嘘・偽りはありません
―――急には信じられないかもしれませんが、鏡の中にはミラーワールドという異世界が存在します
――――その世界にはモンスターと私たちが呼ぶ怪物が存在し、鏡の中に人を引きずり込んで餌とします
―――――目印として、モンスターが鏡の中からこちらの世界に干渉するときは特殊な音が出るはずです
――――――もし、万が一榊さんがモンスターに襲われたときは、同封したものを使ってください
―――――――モンスターの現れた鏡にそれを突きつけ
「突きつけ」のあとが数文字消され、さらに相当急いで書いたのか、そこから下から走り書きになっている。
しかし、読めないほどではない
―――――――――契約の言葉を言ってください。契約の言葉は・・・・・・
文中の同封したものとはこの薄い直方体のことだろう
ためらったのは一瞬だけだった。
送り主の名前はない。
しかし、このようなものを送ってきたという事実と、筆跡から大体予想は付いていた
これの送り主であろうその少女の顔が頭に浮かぶ
榊は知っている。その少女が笑えない冗談を言うような娘ではないことを
そして何よりも、手紙の持つ非現実感よりは、今体験している非現実感のほうが上だ
強烈な力で鏡の中に引きずり込まれる直前、榊は手に持った直方体の箱をガラスにかざし、迷わず契約の言
葉を叫んだ
――――――――――契約の言葉は、変身、です
「変身!」
体に走る奇妙な感覚、それは変身のものなのか、鏡の中に入ったが故なのか
白い紐によって引きずり込まれた鏡の中の世界で榊の姿は黒き鎧を纏った騎士のようになっていた
同時に体の隅々まで今まで感じたことのない力で満ち溢れている感覚がある
己の変貌と、鏡の中にいるという事実に戸惑う間もなく目の前に現れた巨大な物質
《キシャァ》
不気味な音を立て、その一部分が開く
巨大すぎて一瞬分からなかったが、それが蜘蛛のモンスターであることを理解することで襲ってくる恐怖、
今度は生理的なもの、を榊はかろうじて押し殺した
しかもあろうことか、相変わらず首に巻きついている白い紐は今開いたその口に端を発している
「こんなもの・・・え?」
嫌悪感を催し、あわててそれに力を加えた瞬間、その紐はあっさりちぎれとんだ
さらに、唐突に突き出されたモンスターの足に榊は反射的に足に力を加えた
眼前を通り過ぎるモンスターの足
軽く斜め後ろに飛んだだけつもりなのに、榊の体は数メートルの空中にあった
(・・・すごい、これが、私?)
さっきまでびくともしなかったそれをやすやすと引きちぎれたこと、そして蜘蛛モンスターの足を避けたこ
とで、榊は己の腕力と運動能力に驚きを禁じえなかった
彼女は運動神経はかなりいいほうだが、それでも少なくともさっきまでの数十倍の力が出せている
腕力もまた然りのようだ
おそらくはそれが今纏っている黒い鎧の力なのだろう
今相対しているモンスターが友好的でないことを確信し、榊は己の心を決めた
そのまま機敏に蜘蛛の後ろに回り、いつの間にか手に持っていた剣でモンスターの足を切りつける
「っ、」
常識的に考えて己の剣はモンスターの足を切り裂くだろうという予想はあっさりと裏切られた
カーンという金属音に似た音が鳴り、衝撃と共に榊の剣がはじき返される。
蜘蛛の足は予想以上に硬く、傷つけはしたものの、その手の剣ではたいしたダメージを与えられたようには
見えない。
一歩後退した時、榊は己が何か持っていることに気がついた
以上が、第一章(前編)
稚拙な文章で申し訳ないです
後編は、できれば24時間以内くらいに・・・
いらだとばるさんとミネルバの梟さんキター!!
オツ&続き期待sage
>74
乙鰈〜♪
緻密に練り上げた作品の予感!期待大!
さぁ、あとは大物ライターのお二人の東條を待つばかり・・・
77 :
76:02/12/26 22:26 ID:???
あうう、東條→登場っス!
死んで英雄にって意味じゃあ、もちろん無いっス!
タイムリミットまであと40分ほどか・・・戦え、戦え・・・
・・・まこと申し訳ありません
というわけで25時間たってしまいましたが後半です
(これは・・・)
その右手に握られていたのはカードデッキに同封されていた紙、しかし、先ほどまで確かに白紙だった部分
に文字が浮かび出ている
一回顔を上げ、蜘蛛モンスターがゆっくりとこちらに向こうとしているのを確認すると、榊は可及的速やか
に文章に目を通した
―この部分はミラーワールドでしか読めないようになっています
――ただ、おそらくゆっくり読める状態ではないと思うので端的に説明させてもらいます
―――カードデッキに入っているアドベントと書かれたカードを手に持つ剣に入れてください
カードデッキというのは初めて見る名前だが、おそらく先ほどの薄い箱だろう
一目しか見ていないが、確かカードらしきものが入っていたと記憶している
そこまで考えて榊ははたと気がついた
カードデッキを持っていたはずの左手には、今剣が握られている
では、カードデッキはどこだ?
一瞬本気であせったが、どこにあるのかはすぐ分かった。
(・・・どうしてこんなところに?)
榊はいつの間にかベルトの正面部分についているそれに手をやった。
間違いない。たしかにそこにはカードが数枚入っている。
榊はいったん後ろに引き、モンスターから間を取ると、手に触れているカードを一枚引いた
それに黒い蝙蝠らしきもの、そして「アドベント」と書かれているのを確認すると、榊はそのカードを、手
に持つ剣の手元へと滑らせる
剣の鍔とも柄とも刀身とも付かぬところにある、カードを入れるのにちょうどいい大きさの窪み
カードがそこに収まると同時に、その横の羽のような部分が閉じ、認識音らしい声が響いた
<アドベント>
その声に一瞬遅れて榊の耳へと羽ばたきの音が飛び込んでくる
そしてその主が榊の目の前へと姿を現す
第一印象は、黒
その姿がカードに書かれた絵柄と同じものであることを理解するのに一瞬の間を要した
色、形ともに榊の頭の中の蝙蝠という動物とかなりの度合いで一致する
ただしそれは大きさが数メートルあるという一点で蝙蝠ではありえない
さしずめ蝙蝠型モンスターといったところか
そしてその蝙蝠型モンスターが口を開いたとき榊は再び戦慄を覚えることになる
『貴女が私と契約し人間・・・』
その蝙蝠モンスターが発した声が理解できるのだ。
決して日本語ではありえないその声は直接頭に響き、そしてそれをさも当然のごとく脳が受け止めている
『私はダークウィング。私の力を受けた貴女のその姿はナイトという・・・』
「・・・ナイ、ト?」
『そう。私と貴女は、そのマスクを通して会話できる。今こうして話しているのは、貴女に力の使い方の説
明が必要だから・・・』
めまぐるしく回転する事態を理解すべく榊は必死で頭を回転させる
・・・・・・説明とは何の説明なのだろうか?
『契約したというのに何も知らないのか?汝は私と契約したことによりライダーと呼ばれる存在となり、戦
いにおいて私の力を使役することができる、その使い方』
顔に出ていたのだろう、ダークウィングは明らかに呆れている口調になった
『今の貴女、仮面ライダーナイトのデッキ構成はソードベント・剣、ガードベント・盾、ナスティベント・超音
波、トリックベント・分身、これに私を呼び出すアドベントと切り札であるファイナルベントを加えた6枚』
『カードデッキからカードを引いて、ダークバイザーに入れなさい・・・』
マスクを透し頭に響く音、それに従い榊は再びデッキからカードを引き抜いた
今度のカードにはソードベントと書かれている
そのカードに描かれている絵は、おそらく剣なのだろう
ためらわず、榊はそれを先ほどと同様ダークバイザーへと差し込んだ
<ソードベント>
その音とともにダークウィングから一筋の光が榊の手へと伸び、そして一振りの得物を残して消えた。
カードに書かれた絵から予想は付いていたが、ソードベントという割にはその武器の形状はむしろ篭手の付
いたランスに近い。
すでに目の前に蜘蛛モンスターの足があることを確認し、手にした漆黒の刃、ウィングランサーを榊は振り
払った。
刃はその軌跡上にある蜘蛛の足をまるで薄紙を裂くが如く切り裂く。
《ガァャ》
モンスターの悲鳴に似た声、それと同時に横殴りの衝撃をうけ、榊の体は一瞬で数メートルを移動した
どうやら側腹部を足でなぎ払われたらしい
さすがに足を切り裂かれて黙っていられるほど気の長いモンスターではないようだ
しかし、その攻撃をうけてすら、大怪我はもとより小さな怪我すら負っていないことに榊は再び驚いた
すぐに立ち上がった榊に、一本を失い残り七本となった足の内四本を使い、モンスターは、しかし先ほどま
でとは比べ物にならぬ速度で襲いかかる。足を失ったことで榊を油断できぬ獲物とみなしたのだろう
剣で捌くも流石に一対四では多勢に無勢、さらに一本を切り落としたところで足に勢いよくはじかれ、その
剣は手を離れ宙を舞った
『・・・あ、一度使ったカードはいったんミラーワールドから出ないとふたたびは使えない。覚えておいて。』
再び頭に響く声
そういうことはもっと早く言ってほしいと心の中で思いながら
さらに一歩下がり榊は再びカードデッキから一枚のカードを取り出した。
「ファイナルベント」とそのカードには書かれている
そこに書かれた絵柄は、先までの二枚のカードと異なり具体的なものではなく抽象的なもの。
榊はその絵に見覚えがあった
一瞬考え、今己のベルトについているカードデッキの文様であることに思い至る
『ファイナルベント、それは必殺のカード。貴女の手札の中の切り札』
切り札という言葉に、榊は一瞬の逡巡の後、そのカードをダークバイザーへと差し込んだ
<ファイナルベント>
その音とともにダークウィングがいったん榊の背後に回ったかと思うと、次の瞬間榊のその体は天高く投げ
出された
まるで意識が体に取り残されたように、その体が動くのをまるで他人の体が動いているかのように客観的に
感じる
そして上昇した状態でいったん静止し、それとほぼ同時に体の周りに闇が訪れる
しかし、見えぬはずの己の外面、そして下に控えるモンスターの姿がなぜか榊には見えた
黒き螺旋のごとき己の姿。そして、その切っ先は紛れもなく眼下のモンスターに焦点を合わせている
蜘蛛モンスターは警戒しているのか、その複眼で榊のほうをじっと見つめ、動こうとしない
(致命傷を狙うとしたら・・・頭部)
榊はそう考え、モンスターの頭へと慎重に狙いを定めた
一瞬の落下感、そしてすさまじい衝撃
衝突の直前、おそらく危険を感じたのだろう、モンスターは回避行動をとったため、狙い通りの直撃とは行
かなかったが、榊のファイナルベントは蜘蛛モンスターの後ろ半分を吹き飛ばした
『狙いが甘い・・・』
最期の反撃を予想し、その手の剣、ダークバイザーを構えなおす榊
しかし、瀕死の蜘蛛のモンスターは後ろを向き逃げ出すのであった
『追って止めを刺さないの?』
「・・・もう勝負は付いている」
『・・・・・・たぶん後悔することになる』
ダークウィングは嘆息したようだった。その姿からはかなりミスマッチだが。
榊が一体何を後悔することになるのか訊く前にダークウィングは再び語りかけた
『・・・今から追ってももう遅い。そろそろ時間が迫っている
そのまえに言っておかなければいけないことを最後に二つ。
たとえライダーといえども今の貴女ではミラーワールドには10分しか存在できない。それを超えると体が
光の粒子となって消滅することになる。だからそれより前に必ず入ってきた鏡からもとの世界へ帰ること。
決して忘れるてはだめ。
そして、私との契約について。私は契約、そして私の命がある限り貴女を助けよう。ただし、貴女は契約の
代価にその核を私と共有する必要がある、いや、正確に言うと既に私は貴女の核の半分を預かっている』
「核?」
『汝の世界の言葉で言うと魂に近い。つまり貴女が私を裏切り、私が消滅したとき、貴女の半分の核も消え
ることになる。それがどういう事態をもたらすかまでは分からないけど、少なくとも何も起こらないという
ことはない。
ただし、私が死なない限りあなたの核は決して破壊されることはない。つまり、私と貴女は一蓮托生という
ことになる。ただ、モンスター、人間を問わず核は私等の糧。貴女が戦うことを放棄すれば、預かっている
貴女の核は私の糧となる可能性もある・・・』
(それは・・・一蓮托生なのか?)
話を聞く限りどこをどう考えても一蓮托生ではない。
一方的過ぎるその理不尽さに声を上げるまもなくダークウィングは羽を大きく羽ばたかせると虚空へとその
姿をくらませた
鏡から出る直前に榊は始めて己の姿を見ることができた
黒き体。そしてその顔には蝙蝠を彷彿とさせるマスクがある。
驚き疲れてぼんやりと、それを見る限りどう考えても視界が狭くなりそうだが、実際はなぜかは分からない
が視界に変化はない、どうしてだろうなどと榊は考えた。
「・・・・・・」
そして、まるで小説か漫画のような事態の急変化に声もなく、そのまま鏡の中へとその身を投じる
鏡の中から出て、希薄な現実感にやや呆然としながら榊は自分の家へとゆっくりと足を進めた
「『研究所謎の爆発、天才少女生存絶望か?』、そんな・・・」
戦いの最後、己のファイナルベントの衝撃で灰となって散った手紙を思い出し榊は最近のニュースを調べ、
研究所の原因不明の謎の爆発とそれによってかつての同級生美浜ちよが行方および生死不明になっているこ
とを知るのであった
とりあえず、ミラーワールドの設定には多分にオリジナルが入っています
出す予定のライダーは13人ですが、リュウガは出ません
といってももちろんアギトやクウガを代わりに出すわけではないのでご安心を
投稿が遅れたお詫びに、連続して第二章、行きます
第二章
榊は己の手の中にある薄っぺらい箱を弄びながら、哲学的な問いを自問自答し、それをしている己をさらに
自問自答した。延々と続く同じ疑問の堂々巡り・・・・・・
――自分は一体何をやっているのだろう
その薄っぺらい箱、正式名称カードデッキ。一見したところ、それほどたいしたものではない
素材は不明。一見すると金属のようだが、それにしてはかなり軽い。
表面には金色で模様が入っている。見るものが見れば蝙蝠を意匠化していることが分かるだろう
そしてカードデッキの名の通り、その中にはカードが数枚入っている
ここまではいい。問題はここからだ
このカードデッキによって榊はライダーと呼ばれる存在になって、鏡の中に入ることができる
ライダーはミラーワールドに生息するモンスターと呼ばれる存在と戦う力をもっている
これも百歩譲って認めるとしても、ここからは流石に納得しがたい
ライダーになるためにはモンスターと契約すると、モンスターと戦い続けなくてはならない
ライダーは複数いて、信じられないことにライダーを狙うライダーもいる
しかもそのライダーを狙うライダーの中には榊の知り合いもいるらしい
そして何よりも問題なのは、榊にライダーであることを放棄できない理由があることなのである
ずっと戦わなければ自分の核(魂のようなものらしい)の半分がなくなること
そして榊が戦いを放棄すればそれだけモンスターによってたくさんの命が奪われること
出かけた溜息を食い止め、榊は目を閉じると今日の昼のことへと考えを沈ませた
休日、買い物目的で町を歩いていた榊は再びモンスターの出現を音で知った
数日前の蜘蛛モンスターとの遭遇、あれから榊は外出するときは必ずカードデッキをポケットに入れて持ち
歩くようにしていた
現場に急ぐ榊。しかし着いたとき榊はそこで思っても見なかった顔を見ることになった
かつてのクラスメイト春日歩−通称及び以後呼称大阪−との再会
「春日、さん?」
「榊ちゃん!久しぶりやなー」
ちよがアメリカに行ったので、全員がそうそう頻繁に集まるわけにもいかない
前回は同じく同級生だったかおり、通称かおりんの合格祝いもかねて全員が一堂に会した
それ以来だから約一年ぶりということになる
しかし榊の耳はそんな大阪の言葉を聞いてはいなかった。
その目は大阪の手へと集中している
「!、春日さん、その手の・・・」
榊が見つめている大阪の手、そこにはその表面の模様こそ違え、榊の持つものとほとんど同じカードデッキ
が握られていた
それが何を示すのか、理解するのには一瞬で事足りた
驚くべきことに彼女もライダーになっていたのだ
彼女があわててそれをポケットの中に入れるのをみて、榊は己のポケットから自分のカードデッキを取り出
した。それを見てだろう、大阪の顔に驚きと、そして確かに安堵の表情が浮かんだ。
「榊ちゃんもライダーになっとったんかー、なんていうライダーなん?」
「私は・・・仮面ライダー、ナイト」
一度しか聞いていないはずなのに、榊の口からは自然にその名が出ていた。覚えていたことに自分でも驚く。
「ナイトって言うんか、わたしのは龍騎いうんやー」
そういうと二人は申し合わせたように鏡のほうへと向き直った
「・・・変身」
「へんしん」
まばゆい光がほとばしる。一瞬の後、その場から二人の姿は忽然と消えていた
モンスターに引きずられ、強制的にミラーワールドに連れ込まれた前回と異なり、今回は自らミラーワール
ドへと赴くことになる
その際の移動方法としてライドシューターなる特異な形のバイクがあるということを榊は初めて知った
また、どうやらライダーは違っていてもライドシューターの意匠は共通らしい
榊が黒きライダーなのに対し、大阪の変身したライダーの色は赤。姿もかなり異なる。
大阪の契約モンスターはその名の通り龍なのだろう。
その左手には龍の顔をかたどったバイザーがついている。
そしてミラーワールドで合間見えたモンスター
信じがたいことにそのモンスターはほんの数日前榊が戦った蜘蛛モンスターだった
与えた傷はふさがり、それどころか前回戦ったときにはなかった、人型の上半身が付け加えられている。
ただ、変わらぬその下半身と、榊の変身したライダー・ナイトに向けられる殺気がそれをこの前戦ったモン
スターだと知らしめている。
「あれはこの前私が戦ったモンスター・・・、でも少し姿が変わっている」
「ということは・・・、ええっと、榊ちゃん、あのモンスターに負けたん?あれ、でも無事やなぁ」
「・・・ファイナルベントで体半分が無くなったから止めは刺さなかった」
後悔することになる、というダークウィングの言葉が脳裏によぎる
己の甘さのせいで、罪もない誰かが犠牲になったかもしれない、その思いが心に重く重く圧し掛かる
大阪はそれを察したらしい
「榊ちゃん、悪いのはモンスターや。自分を責めたらあかん」
「・・・・・・でも、」
慰めようとして言葉を選んでいるのだろう、わずかな沈黙の後、次の大阪の言葉は明らかに明るくなってい
た。
「そうや!多分まだ大丈夫やー。榊ちゃんがあれと戦ったのはついこの前何やろー?」
「・・・そう、だけど」
「ドラグレッダー、あ、わたしの契約モンスターな、が言ってたんやけど、モンスターは一回ミラーワール
ドから現実世界に来るのもえらい大変やから、相当強いモンスターやないと同じ日とかすぐ次の日にはこれ
へんらしいんや。今日は私が気づいたから誰も襲われてへん。だからたぶん、」
言葉をつなげられたのはそこまでだった。
二人の間を通り過ぎる影、それを察知し、二人はそれぞれ後ろへ一歩跳躍した
蜘蛛モンスターが矢継ぎ早に突き出す4本の足の連鎖攻撃
それを避けるのに精一杯で、二人はゆっくりと言葉を交わすことはおろか近づくことさえままならない
明らかに前回よりも力と速度が上がっている
状況が状況だけに榊も、むろん大阪の言葉も大きいが、流石に気を取り直していた。
気休めかもしれないが、それでも可能性があるのならば・・・
そして、これ以上犠牲を出さないためにも・・・
「今度は逃がさない・・・」
「そやなー」
蜘蛛から間合いを開け、二人はカードを手に取った
<トリックベント>
<ストライクベント>
ナイト=榊の体が6つに分身したのと、龍騎=大阪の手に龍の顔が付いたのはほぼ同時
「うわ、榊ちゃんすごいなー、分身かー。わたしも負けてられへんなー」
そういうと龍騎=大阪は勢いよく龍の顔がついた右手を前に突き出した
龍騎=大阪とモンスターとの距離は数メートル
距離が離れすぎていて届かない、そう思った榊は眼前の光景に己の認識を改めた
蜘蛛モンスターの吐き出した糸をあっさりと焼ききる炎、それは紛れもなくその龍の口から出ている
ストライクベントの名から、てっきり相手に打撃で攻撃するものだと思っていたのだが、その龍の口は、今
蜘蛛に立て続けに命中している火炎弾を吐き出すためのものらしい
(負けていられない、か。私の台詞だな・・・)
そう心の中でつぶやくと榊も体を前に滑らせた
一発一発が軽くても、数撃てば必然的に威力は上がる
手に帰ってくる衝撃に耐え全力で打ち込めば、数回切り込むことで足くらいなら切り落とせる
龍騎=大阪が注意を引き付けておいてくれたこともあり、たいした妨害もなくナイト=榊は瞬く間に六足を
切り落とした
物質が重さを支えるためには最低でも三足が必要
残り二足となった蜘蛛モンスターは重力に従いその身を地に付けた
流石に多足で支える体だけあり、一度地に伏すと動くことすらままならないようだ
動きが完全に止まったのを確認してだろう、龍騎=大阪がカードデッキから一枚のカードを取り出した
その図柄が、龍騎=大阪のベルトについているカードデッキと同意匠のものであることから、榊はそれがフ
ァイナルベントであることが分かった
「とどめやー」
「あ、待って・・・・・・」
けじめの意味で榊は自分にやらせてくれるよう大阪に頼むと、己のデッキからファイナルベントを引き抜い
た
数秒後の爆音。その一撃は蜘蛛モンスターを今度こそ木っ端微塵に吹き飛ばした
『ソードベント』
勝利の余韻に浸るまもなく背後から耳に響いた機械的な声
振り向いた二人の目の前にあったのは二本の剣を構えたライダーの姿だった
戸惑う二人に二刀流で巧みに切りかかる謎のライダー
よどみのないその攻撃は、二人を同時に翻弄する
≪ソードベント≫
ほとんど絶え間ない攻撃の一瞬の間隙を付き響いた二重の音声
ナイト=榊と龍騎=大阪二人の手の中にまったく同時に、やや姿が異なる剣がもたらされる
それぞれがそれぞれの剣を構え応戦する二人
二度、三度と剣と剣がぶつかり、辺りに金属的な音が鳴り響く
「あかん、」
「くっ・・・」
剣の数なら二対二だが数の上なら一対二。
有利のはずのその戦い、しかし剣を交えるごとに二人はその、おそらくはフェニックスをモチーフにしてい
るらしいライダーに圧倒され、後退を余儀なくされていく
二人を壁まで追い詰め、しかし止めをさすことなくそのライダーは剣を納めた
「まだこの程度ですか・・・、」
二人にとって意味の分からぬことを一人呟くと、そのライダーは二人のほうに向き直った
そして、再び口を開いたとき、その口から出たのは衝撃的な言葉だった
「あなた達もライダー同士戦いなさい。己以外のすべてのライダーを倒したとき、そのライダーは己の願い
をかなえることができます」
なんといえばいいのか分からず、口を開かぬ二人
それを気にも留めず、そのライダーの言葉は止まらない
「どんな願いを適えられる。それを知ってすでにライダー同士の戦いをしているものもいます。
そしてその中にはあなた達の良く知っている者も・・・・・・」
最後の一句、それを聞き、二人の口から同じ言葉が同時に発せられた
「嘘だ!」
「ウソや!」
「信じる信じないはその目で見て、あなた達が決めればいい。そしてそれからのことも・・・」
そしてそのまま謎のライダーは踵を返し、二人がかろうじて聞こえるくらいの声で小さく呟くと、その前か
ら立ち去った
「また会いましょう、大阪さん、榊さん・・・」
その瞬間、榊は一瞬奇妙な感覚にとらわれた。まるでその相手が榊の良く知る人物であるような・・・
男か女かも分からぬ中性的な声としゃべり方。身長も170を超える榊と同じくらいあり、榊の知っている人
物で該当者は思い当たらないにもかかわらず、拭いきれぬその感覚
現実世界に帰り、ほぼ同状況で変身した事を確認した後二人は持っている情報を交換した
榊は聞いてはいなかったが、野良モンスターが連続して現実世界に干渉できないというのは事実らしかった。
しかし、それ以外の情報はすべて二人とも共通していて、それ以上得るものはなかった
現時点で特に知りたいことに対する回答は二人とも持っていない
すなわち
彼女達と敵対する存在、モンスター
彼女達が変身するライダー
鏡の中の異世界ミラーワールド
そしてカードデッキの送り主
明言はされていなかったが、大阪もそれの送り主が誰であるかうすうす予想はしていた。
そして大阪も榊同様、先のライダーに妙な感覚を受けたという
榊はちよについてのニュース、彼女が行方不明であることを告げると、連絡先を互いに知らせ二人はその場
で別れた
そして、二人は気がつかなかったが、物陰から鏡から出て来た榊と大阪を見る影があった
「榊、大阪、あの二人もライダー・・・、大阪はともかく榊は放っておくと厄介ね」
その影の手の中にあるものは紛れもなくカードデッキ
蛇のような柄の入った紫のカードデッキを持ったその影は、二人が分かれるのを見て、黙って姿を消した
というわけで立て続けの第一章後半、第二章です
長文かつ乱文で申し訳ないです
なお、キャストが名無士郎さんのとかなり被っているのは・・・多分偶然です
偶然だったらいいなー(現実逃避)
といいつつもう何人か被ってたりしますが
すみません。見逃してやってください
いきなり破ってしまったのでいつまで、とは言いませんが
第三章も近いうちに・・・
というか、かなり下がってきているのでageときます
ミネルバの梟さんおつ!第三章期待しておりまする。
当方も第17話を掲示しますね。どぞーm(_ _)m
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第18話狙撃】
「ふう・・・少し休むか」
そう呟くとよみは論文を書いていた手を止めた。ちよや皆との衝撃的な再会
のあと、今までとは違う、何かが始まる予感をよみは感じ取っていたのだが、
特に何かが起こることも無く、大学に行き、講座を受け、論文を書くという
普段どおりの生活を送っていた。こうなったらあの非日常な出来事自体、自
分の思い込みではないかと疑う時もあったが、机の上に静かに存在するカー
ドデッキを見るたびにその考えは消失するのであった。
(やれやれ・・・何も起きないんだが、どうしようか?ま、それだけ平和っ
てことかもな・・・小腹が減ったな。何か食べるか)
よみはあくびをしながら自分の部屋から出て冷蔵庫のある居間へと向かった。
キィィン・・・キィィン・・・
(・・・きたか。)
ライダーにしか聞こえないかすかな共鳴。よみは期待と不安が入り混じった
複雑な表情でコートを手に取り居間へ向かった足で家の扉を開け歩き出した。
(く・・・一体どこからなんだ?)
よみがそう戸惑うほどかすかな共鳴であった。走りながら探し続けるよみ。
やがてよみは、ショッピングセンターの鏡の1つにモンスターを発見した。
(見つけた!あそこか。)
ちよとの再会のあと、様々な資料を集め、変身ポーズを研究していたよみは、
自分のもっとも得意とするフォームをベースにゆっくりと動き、変身した。
「変身!」
そして次の瞬間よみは一人の仮面ライダーとなった。
「てや!」
自分を奮い立たせるために掛け声を掛け、少しの気恥ずかしさを胸に、ミラ
ーワールドへと行くよみ。何かに吸い寄せられるように以前ちよと出会った
ディメイションホールをあっという間に通り過ぎ、気がついた時はいつもの
風景が逆になった世界、ミラーワールドで倒れていた。
(ふー。着いたのか?・・・ここでは文字が逆になるのか。面白い。)
物珍しそうに様々な看板の逆字を読んでいたよみは、自分の前に仁王立ちし
ている存在に気付いた。それは、頭部にバッファローのような角の生えた深
緑のモンスター、マグナギガだった。
(これがモンスターか。)
初めて出会うモンスターにどう対応するか考えるよみ。マグナギガはよみに
向かって両手から銃弾を発射し始めた。慌てて近くの物陰によみは隠れた。
(当ればあぶないな。・・・さて、と。私もやるか。)
マグナギガが一旦攻撃を中止して近づき始めたのを確認したよみは、意識を
集中してカードの効果を発動させる為にも使う銃、機召銃マグナバイザーを
出現させ、両手で握り締めた。
「は!!」
物陰から飛び出し、よみはマグナバイザーで標的に構え発射した。銃弾が命
中しマグナギガは怯んだ。効果があることを確認したよみは間髪いれずにマ
グナバイサーを連射し、しばしの間銃声だけがミラーワールドに響いた。
(やったか?)
己の銃弾で出来た煙幕を、しばし見つめるよみ。だが、傷一つつかず平然と
立っているマグナギガを見て思わず苦笑した。
(あれだけやったのにに無傷なのか。カードを使うしかないな。)
よみはカードデッキから1枚のカードを取り出しマグナバイザーに装填した。
『CONTRACT』
(・・・力を感じる。ちよちゃんが言ってたな。えーっと・・・そうだCO
NTRACTはモンスターと契約できるんだったな。その契約のカードで
撃つってことは・・・あいつを?む、どこに行った?)
よみはいつのまにか姿を消したマグナギガをいつでも撃てるよう油断無く構
えながら探し、発見したが少し遅かった。マグナギガはよみの後方に回り込
んでいたのだ。無数の銃弾がよみに向かって飛んできた。
「ぐ!・・・負けるか!」
マグナギガの凄まじい威力の銃弾で、よみはコンクリートの壁に激突した。
しかしよみは攻撃で吹き飛ばされながらも、契約の力が宿ったマグナバイザ
ーを撃った。その銃弾が命中したマグナギガは動きが止まった。よみは壁に
激突した痛みに耐えながらゆっくりと立ち上がりマグナギガに声を掛けた。
「おい、聞こえるか?契約したモンスターはライダーと交信できるんだろ?」
するとマグナギガは視線をよみに向けて返事をした。
(ソナタハ我ト契約スルモノカ?)
「ああ、そうだ。お前名前は?」
(まぐなぎが)
「で、私がお前と契約して得るライダーの力の名前は?」
よみはライダーがモンスターと契約することで不思議な響きの名前と力をラ
イダーが得られることに資料から気がついていた。
(・・・ぞるだ)
よみは少し考えていたが、先程の攻撃を思い出し、意地悪く笑いながらその
名前を却下した。
「そんな名前気に入らないなぁ。もっと違うのはないのか?」
(・・・ナラバ・・・仮面らいだーうーし・・・契約ハ・・・)
よみは慌ててマグナギガの言葉を遮った。
「わー!待て待て!やっぱりゾルダでいい!な!決定!」
(・・・デハソナタハ仮面らいだーぞるだトナル・・・)
デストワイルダーが榊に告げたようなことをよみに告げるマグナギガ。
「そうか・・・な、なんだ?」
よみは突然飛んできたブーメランが自分に向かって飛んできていることを知
り、横に転がって避けた。ブーメランが戻っていった先を見ると、新たなモ
ンスター、テラバイターがいることに気づいた。
「おい、マグナギガ、力を貸せ。」
(駄目ダ・・・)
「駄目なのか!?」
(かーどヲ使エ)
「・・・そうだったな」
『シュートベント』
よみはマグナギガのシンボルカラーである緑色に鮮やかに装飾を施されたカ
ードデッキからカードを1枚取り出し、マグナバイザーに装填した。その途
端、空中から巨大な重火器、ギガランチャーがよみの手元へと落下し、受け
取ったよみはテラバイターに照準をセットした。
「これで終わりだ。」
反動が大きかったが、ギガランチャーから発射された銃弾は外れることなく
テラバイターに被弾し大爆発を残した後、テラバイターを跡形も無く消し去
った。
「ま、こんなもんかな。」
よみは己の契約したモンスターの力に満足しながら元の世界へと戻った。モン
スターと契約した真の仮面ライダー、ゾルダはこうして誕生したのであった。
【次回予告】
「・・・榊さーん・・・えへへー」
「私は大丈夫です!」
「こら!人を襲ったりしちゃダメでしょ!・・・げ、いっぱいいるんだ・・・」
(あなたもライダーなんですか・・・?)
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
>100
ミネルバの梟さん、乙です。
似た設定のほうが、いかにもSS作家=ライター同士のバトルって感じがして
わくわくします。がんがってください。
>108
鷹さん、乙です。
叱られてるのは、デストワイルダー?くうう・・・可愛いぞ
皆さんステキッス!
>>109 「たくさんいる」からゼール軍団かも・・・?
予告でそこまで想像していただけたら書いた当方はすごく光栄です^^。
18話頑張って今日で修正&掲示しますねー。
まちがた・・・19話。
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第19話軍団】
「・・・榊さーん・・・えへへー」
デッキを受け渡された一人でもある、かおりことかおりんは何か楽し
い夢でも見ているのか、とても幸せそうに眠っていた。そんなかおり
んの横で目覚し時計はひたすら時を知らせる為に鳴り続けていた。
「ジリリリリリリ!」
「もー・・・うるさーい!」
むくっと起き上がったかおりんは手を伸ばして目覚し時計のスイッチ
を切り、再び眠り始めた。それを見越していたかのように扉が開けら
れ、かおりんの母親が入ってきた。
「学校の時間よ!早く起きなさーい!」
「・・・学校?もう卒業したよ?」
「あんたねーそんなこといってると、遅刻するわよ!」
「え?・・・ん?あー!ちょっとお母さんなんで起こしてくれなかっ
たの!遅刻しちゃうー!!」
呆れ顔の母親を余所に急いで準備をして、かおりんは脱兎のごとく家
から飛び出した。
(もーこれじゃあ間に合わないよーうう。)
キィィィン・・・キィィィン・・・
(・・・何これ!?頭が痛い)
「だ、誰か助けてくれー!!」
かおりんは突然頭に共鳴してきた音と悲鳴に驚いて思わず立ち止まっ
た。周囲を見回すと昨夜の雨のせいで出来た水溜りから、出現した白
色のモンスター、ネガゼールが中年の男性をその中に引きずり込もう
としていた。
「ダメ!!」
ネガゼールに体当たりするかおりん。ミラーワールドに連れ込むこと
に失敗したネガゼールは悔しそうな声を残しながら急いで水溜りの中
へと姿を消した。
「大丈夫ですか・・・?」
「あ、ああ。」
「早く逃げてください!」
「君は・・・?」
「私は大丈夫です!」
かおりんの強い姿勢に圧倒されながらその男性は急いでその場から離
れていった。
(どうせ1時限目に間に合わないんだったら今のモンスターを追いか
けよう。それに・・・榊さんだったら絶対追いかけるし!えへへー)
水溜りへと足を近づけるかおりん。しかし何も起きなかった。
(モンスターは入れたのに何で?・・・あ、そうだ確かカードデッキ
を使うんだったわね。デッキデッキと。・・・あった!)
かおりんはカバンから渡されたカードデッキを取り出し、水溜りへと
反射させた。すると予想通り、デッキベルトが装着された。
(やっぱり!ってことは変身かぁー。少し恥ずかしいんだよねー。あれ)
「へ、変身!」
ライダースーツを身に纏い、かおりんが再び水溜りへと足を踏み入れ
た時、急速にどこかへと吸い込まれ、気がついたときは再び、現実の
世界を反転させた世界、ミラーワールドに辿り着いたのであった。
(あれ?戻ってる?それにあのモンスターはどこに行ったんだろ?)
そんな疑問を胸にきょろきょろと辺りを見回すかおりん。
(あ、いたいた!)
「こら!人を襲ったりしちゃダメでしょ!・・・げ、いっぱいいるんだ・・・」
思わず躊躇するかおりん。ネガゼールの後方にはネガゼールと似た姿
の様々な色彩をしているモンスターの集団、ゼール軍団がいたのだ。
「・・・榊さーん助けてー!」
思わずこの場にいない、己の憧れの女性、榊に助けを求めるかおりん。
しかし、助けが来る訳も無く、じりじりと四方八方を囲まれ、今にで
も襲い掛かってきそうなゼール軍団にかおりんは体をこわばらせた。
(どうしたらいいんだろ?そ、そうだ!カードカード。わわ。取れない)
デッキから何とかカードを1枚取り出すかおりん。そのカードは契約
のカードだった。途端に今までの勢いが嘘のように去り、かおりんは
ゼール軍団に何か異変が起きていることに気付いた。
「あ、あれ?・・・きゃ!」
その時ゼール軍団の中から一匹のゼールがかおりんの前に飛び出して
きた。その姿は他のゼール軍団と殆ど同じ姿をしていたが、唯一その
手に、鋏状の刃を持っていた。
(あなたもライダーなんですか・・・?)
そのかおりんの前に飛び出してきたモンスター、メガゼールから心へ
と直接問い掛けられ驚くかおりん。
「ひゃ、ひゃい。そうですよ?!」
かおりんの答えにしばし考えるメガゼール。そして次の瞬間かおりん
に驚くべき提案を出していた。
(・・・どうです?私達と契約しませんか?こう見えても私達は強い
ですからこれから先のライダーの戦いできっとお役に立ちますよ。)
「へ?契約?・・・どうやるんだっけ?」
(その手に持っているカードを私に接触させてください)
ゼール軍団に円状に囲まれながら、ネガゼールに恐る恐る近づくかお
りん。そしてネガゼールが差し出した手のひらにそっと契約のカード
を渡した。
(・・・契約完了。これから私、ネガゼールはあなたの契約モンスタ
ーです。マスター)
「マ、マスター?私が・・・えへへ何か照れちゃうなー。そーだ!か
おりんでいいよ」
(そうですか・・・それではかおりん、あなたは私のマスターであると
同時に私を通して後ろのゼール軍団に指示が出せます。契約は魂を定
期的に私に提供することで更新されます。・・・かおりんご命令を)
「命令?えーっと・・・」
(めがぜーる・・・ぶろばじぇるガ近ヅイテイル・・・)
かおりんが何を言おうか考えていた時、ゼール軍団の一員でもあるオメ
ガゼールがメガゼールに自身から淡い光を発光させているクラゲのモン
スター、ブロバジェルが近づいていることを知らせた。
(かおりん、モンスターが近づいています。)
「え?そ、そうなの?やっつけて欲しいなあ・・・」
(了解。かおりん、カードをカードバイザーに装填してください。)
「カードバイザー?」
(カードの効果を発動させるもので、あなたの足に取り付けてあるもの
です。)
「これのこと?」
かおりんは足に取り付けてあるガゼルバイザーに視線を向けた。
(そうです。かおりん、カードを通して私達に命令できます。さあ急いで!)
「うん」
《ファイナルベント》
ゼール軍団が地響きを起こしながらブロバジェルを取り囲み始めた。
「ギ!ギ!ギ!ギ!ギ!・・・」
ゼール達は跳躍しながらそれぞれの得意とする攻撃をブロバジェルに行い
少しずつダメージを蓄積させ始めた。
「すごーい!!」
(かおりん、あなたが最後のとどめを行ってください)
「え、そうなの?・・・でもどうやって?」
(波長を合わせて私達の声を心で聞いてください・・・)
「波長・・・?」
かおりんは目を閉じた。
(どらいぶでぃばいだー・・・)
かおりんの心にゼール軍団の動きと声、そして己のすべき動きのイメー
ジが浮かびあがった。
「え、えっと、ドライブディバイダー?」
それに気づいた時、かおりんの身体は自然に動いた。跳躍して一気にブ
ロバジェルに接近したかおりんはブロバジェルの前に着地すると、脚に
宿ったファイナルベントのエネルギーを飛び膝蹴りで一気に叩き込んだ。
「えい!」
「!!」
声にならない叫びを残し、ブロバジェルは爆発した。
「やったー!!」
かおりんは己の新たな力、インペラーの力にはしゃいだ。ゼール軍団は
そんなかおりんの喜びを感じとり、いつまでも跳ね回っていた。
【次回予告】
「変身!やー。」
「もーなんやっちゅうねん!」
「どーしたんだよ大阪?お腹でも痛いのか?」
「こらー!逃げるなー!」
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
>120
乙〜!
あうう、ゼール軍団が正解でしたね。
恐ろしい彼らも、率いるのがかおりんだと、なんだか可愛い奴らに見えてしまう。
さてと、ではぼちぼち第三章書き込ませていただきましょう
第三章
ミラーワールドに立つ一匹の、シマウマのようなモンスター
シマウマのような、といっても四足歩行ではなく、むしろその姿は人に近い
人間にシマウマの頭をかぶせ、体のその皮を貼り付け、さらに簡易的な鎧と武器を持たせた
らそんな姿になるだろう。
ただ、その視線は定まらず、警戒するように自分の左右を行ったり来たりしている
その不可解な行動の理由、それはそのモンスターを挟む形で立っている朱と緑、二人のライ
ダー
朱のライダーのほうはスーツ自体は黒だが、それによってその身に纏う朱の鎧がさらに映え
る形になっている。特徴としては辮髪と、そしてその左手のエイをかたどったバイザー。
バックル部分に付いたカードデッキに描かれた下向きのエイがその契約モンスターが何であ
るかをよりいっそう明確にしている
対し緑のライダーはスーツが緑で、同時に銀に輝くボディはその印象をメカニカルなものへ
と変化させている。その手にはもっているのは銃型のバイザー。しかし一見しただけでは何
をモチーフにしているのか分からない。
カードデッキに描かれているのは、角の付いた動物
さしずめ牛か、さもなくばバッファローといったところだろう
状況は朱のライダーがモンスターと向き合っていたときに新しく緑のライダーが現れたとい
う形である
相手を観察するように見つめる二人
互いに相手の存在に驚き、対面してからどちらともなく沈黙を守っていた
先にそれを破ったのは緑のライダー・ゾルダ
「あんたライダーだよなー?へぇ、やっぱ、わたし以外にも居たんだ。」
その言葉を受け朱のライダー、ライアも口を開く
「そうだな。わたしもあんたが自分以外で始めて見るライダーだよ、」
そこまで言ってライアはいったん口をつぐんだ
声から共にうら若い女性であることが分かる
ただし、その会話の中でも二人の意識は常にその真ん中にいるモンスターに向けられている
「気のせいかな、あんたの声、どっかで聞いたことがあるような気がするんだけど」
「あ、それわたしも思った」
相変わらずモンスターを間に挟んだ状態で再び沈黙が訪れる。しかし先のよりもそれが去っ
たのは早かった。
「その声、まさか、お前・・・智、か?」
「あ、ってことは、やっぱり神楽?」
「何でお前こんなところに・・・」
「神楽こそなんでこんなところにいるんだ?」
そう、二人の名は智と神楽
同じ高校を卒業、あまつさえ2年間は同じクラスであった二人
いや、それだけではない。
二人は、さらにそこに春日歩、俗称大阪を加え、ボンクラーズトリオと呼ばれていた。
高校時代にいろんな意味で親友とも言うべき仲だった二人が、ミラーワールドの中で再会し
たということになる
奇縁に戸惑う二人
それにより一瞬それた注意にどうやらチャンスと判断したらしく、シマウマモンスター、ゼ
ブラスカル・ブロンズは得物を手にして、智の変身したライダー、ゾルダへと躍りかかった
そしてその体は、ゾルダ=智に届くより早く何かが破裂するような乾いた音とともに地面へ
とたたきつけられる
「どうだ、神楽。わたしのこの銃の腕前。これなら不二子ちゃんも夢じゃないだろ?」
「はぁ?」
「あとは胸か・・・。くそー、いいよなー、最初から及第点のやつは。つくづく神様って不平等
だよなー」
「!、こっち向きながらそんなこと言うな!だいたい分かってるだろうな、智、まだ終わっ
てないんだぞ」
「はいはい、分かってるって」
その手に持つ銃、マグナバイザーの連射での撃墜
慌てることなしのその早業に続き、さらにゾルダ=智はデッキからカードを引き抜き、
そしてそのカードを手元の銃のグリップ部分に差し込んだ
<シュートベント>
その肩に圧し掛かる二門の巨砲、それは絶対的な破壊力の証
「てりゃぁー!」
智のなんともいえぬ掛け声と共に二発の砲撃が放たれた
驚くべきことにその威力を、体を引き伸ばすという手段でモンスターは分散させ受け止める
形勢不利と見たか、そのまま踵を返しモンスターは今度はライア=神楽のほうへと襲い掛か
った
しかし、ライア=神楽は余裕の表情で構えを取る
「こいつはその方法じゃ防げないだろ!」
すでにライア=神楽の手の中にはスウィングベント・エビルウィップが握られている
モンスターの大振りな攻撃を軽々避け、一度しなった鞭は破裂音を立てモンスターの体を打
ち据えた
今度は伸びて衝撃を吸収するというわけにも行かず、モンスターの口から悲鳴にも似た声が
漏れる
動いてからわずか数秒、再びモンスターは最初の定位置、二人のライダーの中間地点へと舞
い戻った
「ちまちまやるのは面倒くさいし、止めと行くかー」
「そうだな」
かなり楽しそうな智の言葉、それに神楽もうなずき返した。
ゾルダ=智がカードを入れ、そして続いてライア=神楽もカードを差し込む
<シュートベント>
<コピーベント>
その音とともに二人の手に、先ほどの二門の大砲とはまた違うゾルダのシュートベントがも
たらされた
「うわっ、なんだよそれ?」
「コピーって聞こえなかったか?」
それぞれの手に抱えられたまったく同じ巨大な長砲、二人は一息ずれてそのトリガーを引い
た
一撃目を喰らい、体が伸びきっているところに二撃目を受けたモンスターは、衝撃を吸収し
きれずに巨大な爆音を立ててはじけとんだ
「ふぅ」
「思ったよりたいしたことなかったな」
モンスター撃破に成功し、一息つく二人
長居は無用と踵を返しかけた瞬間、二人の聴覚は同時に奇妙な音を捉えた
まるでたくさんの人間が飛び跳ねているような音
むろんミラーワールドに人間などいようはずがない
それが何か確認しようとした次の瞬間、二人にレイヨウ型モンスター、ギガゼールの大群が
襲いかかった!
智と神楽がミラーワールドで再会したのとほぼ同時刻
榊は一人で鏡の前まで来ていた。
授業もない平日の午後を堪能しながら、愛猫のマヤーとすぐ近くの人気のない公園で戯れて
いたときに榊を襲ったミラーワールドからの奇音
いったんマヤーを家に帰し、榊はその音の発生源を探した
奇妙なことに移動するその音の発生源を追い、気がつけば周りに人のいないビルの陰だった
というわけだ
(これはつまり・・・)
「・・・誘い出された?」
思ったことを口に出してみて榊はその顔を引き締めた
モンスターがこのような行動をするとは考えにくい
ならば、今鏡の中にいるのは、あるいは、榊のいまだ知らぬライダーの一人!?
行動するのに躊躇はない
一応回りに誰も人がいないことを確認し、榊はポケットからカードデッキを取り出した
「・・・、変身!」
一瞬の閃光
黒き衣を身に纏った榊は、剣を手に鏡の中へと勢いよく跳び込んだ
ミラーワールドに入り、まず榊はあたりを見渡した
入るなり一跳躍でビルの上まで跳んだため、見晴らしは悪くない
しかし、その卓越した視力、聴力をもってしても、いるはずのライダーが見つけられない
あの音が気のせいではないのは分かっていたが、向こうが姿を見せる気がないのならば見つ
けらない可能性は十分にある
あるいは榊がライダーであることの確認や、こちらの変身するライダーがどんな物かを確認
するだけが目的なのかもしれない
できれば榊のほうも相手ライダーを確認しておきたかったが、深追いは危険
さらに、さっき途中で投げ出してきたマヤーとのスキンシップのこともある
少なくともモンスターではありえないのだから、このまま帰っても被害はないだろう
そう考え、身を翻し、帰ろうとした榊は付近に何かの気配を感じた
そしてそれと同時に体の周りに金色の羽が舞う
それを不審に思う間もなく
「わたしの名は仮面ライダーオーディン」
機械で作られたような中性的な声が榊の周りに響く
榊のいる場所は相変わらずビルの屋上。周りに誰かいたら分からないはずはない
しかし、気配はすれどもまったくその姿は分からない上、声もどこから響いてくるのかまっ
たく分からない
当然警戒の念を緩めない榊
しかしまるで人間ではない物、しかし、コンピューターともまた違う、例えばモンスターが
しゃべっているかのような声は滔々と、そして坦々と語る。
「固くなる必要はないでしょう、危害を加える気はありませんから」
榊は寡黙で通すが、とりあえず構えていた剣を下ろしたのを確認してか、声は続けた
「今から言うことを忘れないでください。
わたしを含めライダーは全部で12人。
しかしそれとは別にイレギュラーなライダーが1体存在します。
投げられた賽はもはや手元へは帰りません。一度ライダーになれば後戻りはできないんです。
でも戦うか否かは榊さん自身が決めてください。
わたしにそれを強いる権利はありません。何をすべきかは、己の心に正直になってください。
そして・・・・・・生き残ってください」
そういうと、榊が口を開くより早く、オーディンは再び金色の羽を撒き散らし、気配を消し
た。
そして、そこに榊はまたしてもそのライダーに、先日感じたのとまったく同じ既視感を感じ
るのだった
そして唐突に気がつく。
「・・・・・・ちよちゃん?」
先日聞いた物と同じような声、しゃべり方
しかし、榊はなぜかそう思った
自分でなぜそう思ったかすら分からない
(いや・・・・・・)
先日は、その姿を見たから、それがちよではありえないという先入観が、思いついたその考
えを言葉になる前に頭の中で一蹴したのだろう。
ライダーの謎の部分に見え隠れする行方不明のはずの美浜ちよの影
「一体どうなっているんだ・・・・・・」
そして、むろん彼女の漏らしたその言葉に答えるものは誰もいなかった
以上、第三章をお送りしました
さて、これからの予定としては、
一応折り返しとなる第七章までには全ライダーを登場させよう
と思っていますが・・・
さてどうなることやら
ただし、ほとんど名前しか出ないライダーもいます
>136
お疲れ様です。
ちよキタ〜!!何があったんだ、ちよちゃん!
カモン、ネクスト!スーン!!
こっちに移ってきてから名無士郎さんの書き込みがないのが気になる・・・
確かに。・・・年末で何かと忙しいんだろう。
ミネルバの梟さんオツ!です。名無士郎さんも早く帰ってきて欲しいな・・・
さて、では第四章書き込ませていただきます
第四章
『ソードベント』
その声と共に召喚された二振りの剣。
それを手にするライダーの正面には同じく武器を手にするライダーが二人立っている
剣による攻撃を警戒し、白と緑、それぞれ白鳥とカメレオンをモチーフにした二人のライダ
ーはカードを手に取った。
<ガードベント>
<クリアーベント>
幻惑効果を持つ白きライダー・ファムのガードベント
その姿を消すことができる緑のライダー・ベルデのクリアーベント
しかし・・・・・・・・・
「無駄です」
その容赦ない一言と共に二人の間を一筋の光が通り過ぎた
何かが割れる音に一瞬遅れて倒れる二人のライダー
「あなた達はライダーになるには早すぎました・・・・・・」
カードデッキを失い体から光の粒子を上げる二人を見下ろすライダーの持つ二本の剣は、光
を反射し、不気味に紅く輝いた。
「うーん、どっちの本買おうかな・・・、」
本屋で、買う本を一冊に決めあぐね頭を悩ます、かおり
大学に入りすでに一年。
一人暮らしにももうなれたが、それでも、いや、なおさらここで財布の紐を必要以上に緩め
るわけにはいかない
そしてそんなかおりにゆっくりと近づく影があった
「あ、かおりん・・・」
(え?)
考えるより早く、ほぼ反射に近い速度でかおりは声のしたほうに振り向いた
そしてそこにいた声の主は、
(やっぱりー♪)
かおりにとって最愛、もとい、憧憬のひとである榊であった
「え?さ、榊さん!?ど、どうしてこんなところに?」
自分でも分かるくらい悲しいほどその声は裏返っている
「いや、本を買いにきたんだけど・・・。かおりんも?」
「は、はいっ!あ、あの榊さん」
「なに?」
耳に透き通る榊の声
次の一句を言うのに、かおりは一生分の勇気を振り絞る必要があった
「これからなにか用事でもありますか!?」
「いや、特にないけど・・・」
(嗚呼、神様、ありがとうございます・・・・・・)
すでにこのとき、かおりの頭から本のことなどきれいさっぱり消え去っていたことは言うま
でもない
高校卒業からすでに二年、最後に会ってからでもすでに一年はたっているが、かおりにとっ
て榊が憧れの人であるという想いは微塵も変わっていない
幸い榊にたいした用事もないと聞き、かおりはしばらく榊と一緒に歩くことができた
一年ぶりにあった憧れの人としゃべりながら一緒に歩いていることに、外には出さないもの
の内心狂喜乱舞するかおり。
ただ、榊がたまになにかを言おうとして思いとどまっているような感覚を受けることだけが少し気になった
(なんだろう?でも、言いたくないのをこっちから訊くことないよね)
だがモンスターは二人きりの時間をゆっくり与えてくれない
川べりを歩いていたときに響き渡った不快な音
機嫌が悪くなるのは当然のことだが、放っておくわけには行かない
なにより万が一にも、憧れの人を危険に晒すにはいかない
「榊さん、ちょっとここで待っていてください!」
「あ、待って・・・」
ライダーになるために駆け出そうとしたかおりはその言葉で足を止めた
榊がポケットから取り出したもの、カードデッキを見て、驚いた表情でかおりも己のポケッ
トから自分のカードデッキを取り出す
間違いなく、榊の手にあるのは、榊自身のカードデッキのようだ。
・・・・・・ということは、
「榊さんもライダーなんですか!?」
うなずく榊 それを見て、かおりは欣喜雀躍する
たぶん周りに人がいなければ小躍りしていたに違いない
意外でなかったといえばうそになる
しかし、その驚きよりもうれしさのほうが勝っていた
榊がライダーでなければかおりは榊を守る形で戦うことになり、
榊がライダーであればかおりは榊と一緒に戦うことになる
まぁ、どちらにせよかおりにとっては至福のときなのだが、できるのならば後者のほうがう
れしいというものだ
「行こう・・・」
「はい!」
二人は互いにライダーであることを知って、近くにあった鏡で変身し同時にミラーワールド
の中へと入っていった
かおりの変身するライダーは黄色のライダー、シザース。その名の通りその契約モンスター
は蟹。左手についているバイザーも蟹のはさみを意識した形状になっている。
たいして榊の変身するライダーは黒い、蝙蝠をモチーフにしたライダーだという
そしてかおりの幸せなひと時を邪魔したモンスターは巨大な飛蝗形モンスター
今は再びその幸せなひと時ではあるが、それとこれとは話が別だ
高さ1メートル、全長5メートルと、一般的な飛蝗を100倍にしたかのような姿
元の大きさならかわいらしさもないではないが、ここまで大きいとやはり気持ち悪いを通り
越して禍々しささえ感じる
このような昆虫タイプのモンスターは榊は苦手としているらしい
(榊さんの足を引っ張らないようにがんばらなくちゃ)
かおりは早々にストライクベント・シザースピンチをその手に装着する。
ほぼ同時に榊もソードベントを手にしていた
(でも、こういうモンスターってどんな攻撃をしてくるんだろう?)
二対の瞳に見つめられたモンスター。しかし、突然その姿が掻き消えた
(え?)
えもいわれぬいやな予感、そしてそれと同時に体に走る衝撃。
地面に転がって初めてかおりは何がおきたのか理解した
飛蝗特有の強靭な足を使ったジャンプ。それを受けたのだ
驚くべきことはライダーの目にも映らぬほどのその速度、そしてライダーの鎧を通していて
すら体に響く激しい衝撃
《シュゥシュゥ》
不審な音に顔を回せば、先ほどいたところと二人を挟んだ向かい側に、平然とモンスターは
立っている
「大丈夫、かおりん?」
「は、はい」
先に立ち上がった榊に手をとられ立ち上がり、油断なく再びその目をモンスターへとやった。
いつもならうれしさのあまり固まっているところなのだが、さすがにかおりも感激するTP
Oはわきまえている
しかし少なくともそれだけの間をくれたということは、モンスターは何も考えていないか、
あるいは、連続して攻撃できないか・・・
「・・・あのモンスターの装甲はかなり固い。ウィングランサーを何とか当てたけど、傷つける
どころか、衝撃で弾き飛ばされた」
「榊さん、あれが見えたんですか!?」
心底驚き、そう問うたが、榊は首を横に振った。
「いや・・・、多分、そういう攻撃をしてくるかなと思ってたから・・・。でも、ソードベントが
だめならファイナルベントしかない、か」
「でも、あの速度じゃ当てるのも難しくないですか。あ、でも榊さんのファイナルベントど
んなのか知りませんけど、」
「いや、私のファイナルベントは直線の攻撃だから・・・かおりんのファイナルベントでも難し
い?」
その言葉でかおりは己のファイナルベント、シザースアタックを思い浮かべた。
契約モンスターによって跳ね上げられた体を回転させ、相手にぶつかる必殺技。
しかし、あの速度のモンスターに正確に当てられる自信は正直なところ、ない。
「はい・・・。すいません」
「あやまることじゃない。じゃあ、どちらかがモンスターの動きを止めて、撃つしかない
か・・・」
(やっぱりモンスターを倒すのはわたしより榊さんのほうがいいよね。
それに、榊さんのファイナルベントって言うのも見てみたいし)
「あ、動きを止めるほうはわたしに任せてください」
動きを止めてファイナルベントを撃つには絶妙なタイミングが必要とされる。
が、かおりの榊に対する信頼はエベレストより高く、マリアナ海峡より深い。
「じゃあ、まず・・・」
その言葉と共に榊がカードを手に取った瞬間、再びモンスターの姿がその場から消失する
<ガードベント>
それを先に予測していたのだろう、榊はそれより一瞬早くかおりの前に立つとガードベント
を召喚した
ナイトのガードベント、ウィングウォール越しにかかる衝撃
流石に弾き飛ばされることこそなかったが、衝撃までは殺しきれず二人は数歩分押し戻され
る
対してモンスターははじき返され姿勢を崩しはしたものの、反動を受けたようにすら見えな
い
しかし、それでも、そこにできた隙は大きい
(チャンス!)
榊の陰でかおりはバイザーへとカードを差し込んだ
<アドベント>
それとともにどこからともなくかおりの契約モンスター、二足歩行の巨大な黄色い蟹、
ボルキャンサーが姿を見せる
『状況は分かってる。ひっくり返せばいいのね?』
「私の考えてることがよく分かったわね。ボルキャンサー、お願い!」
『まかせて』
その言葉とともにボルキャンサーは上へ一跳躍した
一見鈍重そうなその身に似合わぬ身軽さで、飛蝗モンスターが動く間も無く、ボルキャンサ
ーはモンスターの脇まで移動した
そしてはさみを一回体の前で打ち鳴らし、そのままモンスターの体の下に差し入れ、一気に
その体をひっくり返す
かおりの思惑通り、その腹部の裏には、固い外骨格がない
榊のファイナルベントで撃ちぬけぬとも思えないが念には念を入れて損はないだろう
「榊さん!」
榊はうなずくと、すでにその手に持っているファイナルベントのカードをその手のバイザー
へと差し込んだ
そしてそれとともに、榊の背後に榊よりもなお大きい蝙蝠型モンスターが現れる
おそらくそれが契約モンスターなのだろう
榊が天高く跳び上がると同時にその背中にモンスターが覆いかぶさる
そしてそのまま、黒い螺子のような姿へと変化した
速度と鋭さを兼ね備えたそのファイナルベントは、モンスターの下の地面ごと、モンスター
の体に大穴を穿ち、モンスターの息の根を止めた
「すごかったです、榊さん」
「いや、かおりんがモンスターをうまくひっくり返してくれたから・・・」
勝利を確認し、現実世界に帰ろうとするかおりと榊
背後で突然響くファイナルベントの音
かおりが先にそれに気がつき、一瞬遅れて榊も振り向く
流星の如き紫の塊。狙いは、榊!
すでに距離が距離だけに避けられるタイミングではない
「危ない、榊さん!」
しかし、その間にかおりはとっさに割り込んだ
ガードベントも間に合わずかおりの体はその直撃を受けその場に倒れた
体からライダーの鎧が光となって消えていく
「無事でよかった、榊さん・・・・・・」
遠ざかる五感の中、それだけ言うとかおりはゆっくりと意識を闇の中へと沈めた
ファイナルベントを放ち終え、立ち上がる紫のライダー
それと一瞬視線を交わらせ、榊は何も言わずそのライダーに背を向けた。
腕の中の少女の体からはすでに金色の光が立ち上っている
一刻、いや一秒を争う。問答している暇はない
すぐさま現実世界に戻った榊。幸いにもかおりの消滅は免れたが意識は相変わらずない。
ミラーワールドで穿ったはずの穴が現実世界にはないことと、ミラーワールドで意識を失っ
た少女がこちらの世界でも変わらず腕の中で気を失っていることとが榊にはひどくアンバラ
ンスに感じた
病院に連れて行き、かおりは体力衰弱状態ながら幸い命に別状は無いことを知って胸をなで
おろす榊
その頭に聞いた言葉がよみがえる
「すでに戦うことを決意したライダーもいる」
確かに見た紫のライダー
「私がしっかりしてなかったから・・・」
榊はやるせない気持ちを胸に、昏々と眠るかおりを複雑な面持ちで見ると、病院をあとにした
と、言うわけで第四章です
できるだけいらぬところを省こうとしているのですが
あまり短くならなくて申し訳ないです
なお、ファム、ベルデの扱いが悪いことについては謝るしかないです
別にあの二人が嫌いなわけじゃない、というか、結構好きなほうなんですが・・・
ミネルバの梟さんおつ!かおりんが・・・T-T
当方もこんな風に細かい描写が出来るようになりたいな・・・
もっと頑張るぞー!
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第20話苦戦】
キィィィンキィィィン・・・
「いてて・・・」
「智ちゃんもかー。なんや、おそろいやなー」
高校卒業後の進路として智と大阪は進学を選んだ。2人とも一度
受験を失敗するという苦い体験をしたが、ちよや周囲の人に支え
られ、2度目の受験で何とか合格し、今では同じ大学で学んでい
た。今日も今日とて大学に通っていた智と大阪だったが、突然モ
ンスターの共鳴が頭に響き、互いの顔を見つめた。
「おそろいってわけでもないと思うぞ大阪。なるほど。共鳴する
ってことはモンスターがここら辺にいるってことか!」
「でもここ大学やでー?あ、モンスターも勉強したいんやなー」
「なわけないだろ大阪!さ、行くぞ!」
「智ちゃん待ってー」
「変身!」
「変身!やー。」
校舎の窓ガラスを利用して変身した二人はライダースーツを身に
纏うと吸い込まれるようにミラーワールドへと入っていった。
「・・・ところで大阪、そのやーって何だよ・・・」
「野菜のやー、や!」
「そ、そっか。じゃあ私はあっち探すからさ、大阪はそっち探し
て欲しいんだ」
「ええよー智ちゃん。見つけたらよぶからまかせといてやー」
智と大阪は分担してモンスターを探していたが一向に見つからなかった。
「・・・ったくどこにいるんだ?おーい大阪!いたかー?」
「こっちにはおらへんなー・・・あ、あれ?モンスターいないの
になんでやろう・・・?」
大阪は智へと返事をした時、突然背中への衝撃を感じ周囲を見渡
したが、それらしき影は無かった。
(気のせいかなー?・・・いたーい!)
「もーなんやっちゅうねん!」
今度は腹部に衝撃がきた大阪は困って再び周囲をじっと見つめた。
すると、ほんの少しだが、空間に歪みがあることに気付いた。
「あ、あれ?眼の錯覚かなー?・・・智ちゃーんちょっとこっち来てやー」
「どーしたんだよ大阪?お腹でも痛いのか?」
智は大阪の所へと向かおうとした。しかしその時、大空からまる
で、蝙蝠を巨大化したような姿をしている漆黒のモンスター、ダ
ークウィングが智へと体当たりしてきたのである。
「きゅいいいいい!!」
「・・・うわ!あぶねー!こら!なにすんだ!」
とっさに体を反らすことでかろうじて避けた智はダークウィング
に抗議したが、ダークウィングは気にせず再び急降下してきた。
「きゅいいいいい!!」
「こんにゃろ!やられっぱなしの智ちゃんじゃないぞー!」」
智は腰に携帯している細長くすらっとした長剣、ダークバイザー
を手にとると、ダークウィングが飛んでくる方向に向かってダー
クバイザーをがむしゃらに振り始めた。ダークウィングは攻撃を
諦め、大空へと急転換した。
「きゅいいい・・・」
「こらー!逃げるなー!」
一方その頃大阪は姿の見えないモンスターからの攻撃に混乱していた。
「あかん、あっちにいったら背中が痛くなるし、こっちにいたら
お腹が痛い・・・ほなら私はどこに行けばいいんやろー?」
「そんな時はだな大阪、カードを使うんだぜ!」
意外な、第三者からの声が聞こえ、大阪はその声のする方へと視線を向けた。
「その声は神楽ちゃん・・・?」
大阪が振り返った先には片手に龍の頭を象った武器、ドラグクローを
装着し、カードデッキに契約モンスターでもある龍が描かれている真
紅のライダー、龍騎が仁王立ちしていた。
【次回予告】
「大阪しゃがめ!そこだぁぁ!」
あまりの情けない契約シーンに神楽は頭が痛くなった。
大阪の言葉にバイオグリーザは呆れた。
「お前ちゃうでーー!!」
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
鷹さん乙!
大阪がベルデ、智がナイトですか!
私は第五章、今年中は無理かもしれませんです
うーん、3日間ほど誰も来てませんね
少々寂しいものがありますが気にしないことにしましょう。
では第五章です。
第五章
ここはミラーワールドの中
今わずかの間を空けて暦は紫のライダーと並んで立っている。
無論言うまでもないことだが、暦自身もライダーとして。
(モンスターは、やっぱりもう逃げたか・・・)
その視線を彷徨わせ、暦は心の中でつぶやいた
ミラーワールドにライダーとして入るたびに感じる違和感
メガネがなくても周りを見ることに不自由しないというのは何度経験しても慣れない。
メガネを掛け始めてすでに10年近い。
何度か変えてはいるものの、暦にとってメガネは顔の一部という感覚すらあるからだろう。
視覚、聴覚両者が告げている。
完全に周りにモンスターの気配はない。
「ま、逃げちゃったもんはしょうがないわ」
「そうですね」
横からの言葉に暦は相槌を打った。
聞き覚えのあるその声
といっても、先ほど鏡の前で聞く前に最後に聞いたのは、もう1年以上も昔になるだろうか。
横にいる紫のライダー。それに変身する人物は、暦にとって決して赤の他人ではない。
「それにしてもゆかり先生が、ライダーになっていたなんて。意外ですよ」
「あら、私は多分あんたもライダーになってるとは思ってたけどね」
約束した時間に遅れそうになり、待ち合わせ場所へと急いでいたときに届けられたミラーワ
ールドからの召集状。
それに案内され、たどり着いた鏡の前にいた先客
それは彼女のかつての恩師(むしろ反面教師?)、谷崎ゆかりであった。
再会に戸惑っている間に音は消え去ったが、ゆかりは、暦にライダーになってミラーワール
ドに行くことを促した。
―――そして今に至る
肩をすくめながら一回言葉を区切ると、紫のライダーは再びその口を開いた。
「ねぇ、ライダー全員を倒せば望みがかなうこと知ってるわよね」
何気なしのその問いに、暦も何気なしに答えた。
「ええ、そう聞きましたけど」
「じゃあ、やっぱり間違いないわね」
その言葉を言うが早いか振り下ろされた紫のライダーの杖状のバイザー。
それを間一髪で避け、暦はそちらに厳しい視線を投げかける
「あら、うまく避けたわね」
「なにを考えているんですか!」
「決まってるじゃない。勝負よ!悪いけど容赦せず倒させてもらうわ、水原、暦!」
攻撃してきたときからうすうす予想していたその言葉。
視線をそらさずに暦はすぐ動けるように体勢を整える
「このまま帰らせてもくれないらしいし、本気みたいですね・・・」
「あったりまえでしょ。何でも願いがかなうのよ」
二人が入ってきた鏡は紫のライダーの背後にある。すんなりと逃がしてくれそうにない。
昨日電話で話した内容がよみがえってくる。
―――榊の話によると、かおりんは榊をかばって紫のライダーにやられたらしいんだ。
「かおりんを倒したのはやっぱりゆかり先生だったんですね」
「あら、知ってたの?本当は榊を狙ったんだけどねー、」
罪悪感のかけらも感じられない口調
気づかぬうちに暦はこぶしを握り締めていた
「さっき感じたモンスターはゆかり先生の契約モンスターですか?」
「そーいうこと」
「・・・・・・最初っからわたしと戦うつもりだったんですね」
「当然でしょ。ま、そっちにやる気がないならじっくりといたぶってあげるわよ」
その言葉に自然と目つきが鋭くなる。胸の奥からわいてくる怒り。
それを察したのだろう。ゆかりの声は、やけに楽しそうに聞こえた。
「どう、戦う気になった?」
「・・・そう簡単に倒せると思ってるんですか?」
暦が変身する、サイをモチーフとしたライダー、ガイ。
銀色の体の中、左肩の赤い角のような突起が目立つ。
暦自身は知らないが、他のライダーと比べ、その外見はよりいっそう物々しい鎧を纏ってい
るかのような姿だ。
そして珍しいことにそのバイザーは手ではなく左の肩についている。
相対するは蛇をモチーフとしたライダー、王蛇。
紫の体を持ち、その手には蛇をかたどった杖を持っている
相手を幻惑するかのような、または威嚇するかのような奇妙な文様の入った鎧を身に纏って
いる。
そしてそれに変身するのは暦の高校時代三年間の担任教師である谷崎ゆかり。
二年前まで、教師と生徒の関係であった二人。
しかしかつての師弟関係はその場にはすでに無い。
そこの空気を支配するのはライダーとして戦う者の緊張と、殺気。
先に動いたのは王蛇=ゆかり。ソードベントを召喚し、まるでドリルのような剣、ベノサー
ベルを手に構える。
暦はいつでもカードを取れる状態ではあるが武器召喚に動かない。
「あんたは武器を出さないの?」
「じゃあお言葉に甘えて」
手に持った剣を弄びながらのゆかりの余裕そうな言葉。
しかし暦がカードを抜いた瞬間、王蛇=ゆかりはその剣を手に地を蹴った。
奇襲、しかし、それに慌てることなく暦は手に取ったカードを肩に付くメタルバイザーへと
差し込む。
<コンファインベント>
暦の用いたカードは武器召喚ではない。対ライダー専用の特殊カード、コンファインベント。
そしてその効果は一瞬で現れた
王蛇=ゆかりの持つソードベントが掻き消えたのだ
手の中の武器が急になくなったことに戸惑う王蛇=ゆかり
手早く今度はストライクベントを己の左肩に付いたバイザーに差し入れると、その手に契約
モンスター、メタルゲラスの頭部を借りたメタルホーンを装着し、空突進の勢いですでに
目の前にある王蛇=ゆかりの体をなぎ払う。
そのまま王蛇=ゆかりが体勢を整える暇を与えず、ガイ=暦は二度三度と切りつけた
飛び散る火花。十回あまりも切りつけ、いったん暦は手を止めた。ただし、その右手はスト
ライクベントをいつでも突きつけられるように力が込められている
「智とか大阪にならともかく、そんな姑息な戦略がわたしに通じると思っていたんですか?」
一歩分ほど離れ、一見すると満身創痍に見える王蛇=ゆかりに暦は嘆息とともに言葉を投げ
つけた
「・・・相手のカードを無効化するコンファインベント、それがあんたの切り札ってわけね。で、
何で止めを刺さないの?あんたにもかなえたい望みくらいあるんでしょ」
「友人や恩師の命を奪ってまでかなえたい望みなんかありませんよ」
「へぇ、面白いこというわね。どんな望みかは知らないけど、それは人に勝たずに達成でき
るもんなの?」
「それは・・・、話が別でしょう」
「同じよ、同じ。所詮他人を蹴落とさなくちゃかなえられないならね。
大体人間ってのは生きるために人を蹴落とさざるを得ないのよ。
あんただってやってるわよ。あんたが大学受かったから、誰かが落ちた。
もしそいつがそれで自殺したならあんたが間接的に殺したってことでしょ?
その可能性はないと言い切れる?」
「・・・・・・、詭弁です」
「はっ、それが違うって言うんなら、それは単なる偽善ね。
でもあんたは自分が直接それを実践するのはいやだ、と。
あんたねぇ、奇麗事だけじゃこれからの人生生きていけないわよ。
ま、これからの人生があったらの話だけど」
追い詰められているはずなのにゆかりの声にあせりは無い。年の功というやつだろうか。
「これ以上の議論は無意味です。降参・・・・・・はするわけ無いですね」
「あんたも分かってんじゃない、」
その言葉と共に、王蛇=ゆかりは一歩後退し、素早くいつの間にか手に取っていたカードを
バイザーへと差し込んだ
<ファイナルベント>
暦の不意をつく形で放たれた王蛇=ゆかりのファイナルベント。しかし、暦はあわてること
なく立て続けにもう一枚のコンファインベントをベントインした。
一抹の不安はあったが、コンファインベントの効力は無事ファイナルベントを打ち消した。
「チェックメイトですよ。安心してください、命までは奪いませんから」
己のファイナルベントを肩に付くバイザーに挿入しようとして暦は手を止めた。ゆかりの口
から笑いが漏れている
「詰めが甘いわね、暦。あんたお得意のコンファインベントももう品切れでしょ。わたしが
切り札を残してないと思ってた?」
そういうと王蛇=ゆかりはデッキから一枚のカードを裏側のまま取り出した。
それをすぐにはバイザーに入れずひらひら振ってみせる。
「ファイナルベントでしょ?さあ、さっさと撃ってきなさいよ」
「くっ・・・・・・」
余裕を含んだその言動に暦の手が止まる。
とっさに脳裏に浮かぶ悪い予想
(こっちのコンファインと同じようなカードか?それとももっとたちの悪い・・・)
そして生まれたその一瞬の隙に王蛇=ゆかりはカードをベノバイザーに差し込んだ。
<アドベント>
騙されたことを悟ったその瞬間、耳が衣擦れのような音を捉え、そして暦のその体が数メー
トル横に吹き飛んだ。
ゆかりが呼び出した契約モンスター、ベノスネーカーの体当たり
さらにその口からなにかが吐き出されたのを認識し、暦は体を転がしそれを避ける。
暦がいたところに命中したその液体は、一瞬にして地面に穴を穿った。
「とどめ、と行きたいところだけど、ま、今日のところは私が引いといてあげるわ」
その声と共に王蛇=ゆかりとベノスネーカーの気配が遠ざかる
そして暦が再び立ち上がったとき、すでに王蛇=ゆかりの姿は消えていた。
大量のレイヨウ型モンスターに襲われた神楽と智の二人。
さすがに大ダメージこそ免れなかったが、とっさに現実世界へと逃げたため、幸いにもカー
ドデッキ破壊には至らず、無事であった
カードデッキに同封されていた紙の、ミラーワールドでしか読めぬ部分に、カードデッキの
ことは誰にも話さないでほしいと書いてあったため、二人とも、そのことは誰にも話さず自
分の胸の中にしまっていた
それの送り主が美浜ちよであるという想いは二人とも漠然と持っていた
しかし、仮にかつての親友にカードデッキの事を訊けば、ミラーワールドのことやモンスタ
ーのことを話さずにおく自信がない。そして予想が外れ、もしその友がライダーになってい
ないのならば、真実を教えることによって与える恐怖は、大きすぎる。
仮に事実を知ったからといって、いたるところにある鏡やガラスから現れるモンスターを避
けるすべなどない。
そう、たとえば今、目の前にあるパソコンですら、ミラーワールドの扉になりうるのだから。
しかし二人はお互いがライダーであることを知り、確信に近い予感、そして覚悟と共に、ち
よを共通の親友とするかつてのクラスメイト達に連絡を取ったのであった。
選出基準は自分達が選ばれたのならば、選ばれてしかるべき面々。
確実な線として榊・大阪・暦。そして、やや微妙なところになるが、かおり。
結果だけ見ると、夏休みにちよの別荘に行ったことのある者四人ということになる。
そして、予想は完全に的中した
連絡がとれた三人、榊、大阪、暦は全員がカードデッキを受け取りライダーとなっていた。
さらに、それとは別に、連絡が取れなかったもう一人、かおりもライダーとなっていたこと
が分かった。
そして連絡が取れた者のうち一人、水原暦と二人は今席を同じくしている。
待ち合わせ場所は、全員の家からほぼ等距離にある公園のベンチ
智と神楽が来てから、約束した時間に五分ほど遅れて暦もやってきた。
そしてその五分間、何があったかを聞き、二人は顔を強ばらせた。
「ゆかり先生もライダーになっていたか・・・。
ってことはカードデッキを送ってきたのはちよちゃんでまず間違いないな」
「しっかしよみも災難だったよな。ここに来る途中でモンスターの気配を感じて駆けつけた
らそれがゆかりちゃんの仕組んだことだったんだろ」
「ああ、しかもゆかり先生がそこにいたことに驚いているうちにモンスターには逃げられる
し、ゆかり先生とは戦いになるし・・・」
明らかにモンスターは逃げた後だったのに、口車に乗って変身させられ、ミラーワールドに
入るなり戦いを挑まれた。
しかも、そのモンスターは恩師が操っていたもの。
まあ、人の被害がなかった点はましだが、慰めにもならない。
暦も、かおりを攻撃したライダーの特徴が紫だったとは聞いていたため、一応警戒し、不意打ちは免れたが、正直なところ信じたくなかった。しかし現実は・・・・・・
「ところで智と神楽を襲ったモンスター、あれはどうだったんだ?」
思い出したような暦のその言葉に二人は一瞬言葉に詰まった
「ライダー、だろうな、多分」
「やっぱ神楽もあれはライダーの仕業だと思うか?」
「ああ、アドベントってのが聞こえたような気がするんだ」
「ということは、ゆかり先生以外にもライダーを狙うライダーがいるってことか」
3人もすでに謎のライダーから、ライダーを刈るライダーがいることは聞いていた。そして
自分を除くすべてのライダーを倒したとき願いがかなえられるということも。
まあ今のところ3人にライダーを襲うプランは無いが
「今のところ確実に信頼できるのは大阪と榊だな。かおりんは紫のライダー、つまりゆかり
ちゃんにカードデッキを壊されたって榊が電話で言ってたし」
「ゆかり先生がライダーバトルに加担しているとはな・・・、まあうなずけなくもないけど」
「わたしと智と神楽を含めて今のところ誰か分かっているライダーが7人、正体不明が3人
か。ってことはまったく知らないのがあと3人いるわけだ」
「とりあえず、これ以上被害が出る前にゆかりちゃんだけでもどうにかしないとな」
「そう、だな。」
そして3人がそんな話をしているころ
その場にいない残りの二人、榊と大阪はちよ宅の前にいた。
というわけで第五章でした。
う、175でまたしても改行ミス・・・、学習能力ゼロですな
第六章はまた近いうちに・・・
ミネルバさんお正月からおつ!
当方もそろそろ書くかー!
179 :
メロン名無しさん:03/01/05 22:20 ID:IXpfWlY9
新作はまだかな〜
映画見てたら忘れてました。スマソ。
それでは第21話どぞー。
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第21話蜥蜴】
「神楽ちゃんのその姿かっこええなー・・・あれー?私は何で色が無いんやろー?」
「モンスターと契約してないからじゃねーの?」
神楽は喋りながら大阪の背後に見えないがモンスターの気配がすることに気がついた。
「大阪しゃがめ!そこだぁぁ!」
神楽はストライクベントで手に装着していたドラグクローを大阪の背後に出来た空間
の歪みに狙いを定めた。すると神楽が契約したと思われる神々しいまでに燃えるよう
な炎の色をした龍のモンスター、ドラグレッダーが神楽の背後に現れ、不意に仰け反
ったかと思うと、一気に小規模の炎の塊、ファイアーブレスを吹き付けた。
「あひゃー!」
「グ!」
慌ててしゃがむ大阪は何もいないはずの背後から誰かの悲鳴を聞いた。大阪が振り返
ったとき、そこには緑色のカメレオン型のモンスター、バイオグリーザが煙をあげな
がらのたうっていた。
「よっしゃ命中!今だ大阪!カードをあいつにくっつけるんだ!」
「カ、カードをくっつけるんやな?よーし・・・」
そう言うとデッキから取り出した契約カードをバイオグリーザに接触させる為に大阪
は走り出した。しかし、途中で小石につっかかり転んでしまう大阪。
「と、と、と・・・いたーい」
幸いなことに、手にしっかりと持っていた契約のカードがその拍子にバイオグリーザ
の足と接触した。モンスターとの契約はこれからの真の戦いも意味する。そんな重要
な意味が込められているはずの契約シーンがあまりにも大阪らしくて神楽は思わず苦
笑した。
(・・・ライダーか。)
「え?・・・あ、そうや!私は仮面ライダーやー」
契約したモンスターはその主人に話し掛ける。そんなことをまったく知らない大阪は
突然心に響いてきた言葉に驚いた。
「な、なんやねんこの声?」
(・・・バイオグリーザだ。すぐ目の前にいる。・・・まさかお前みたいなやつと契
約するとはな・・・)
バイオグリーザの態度に大阪はむっとした。
「なんやあんた!人をバカにすんのはあかんでーこれでも私は割り箸をきれいに割れ
るんやでー」
大阪の言葉にバイオグリーザは呆れた。
(それはよかったな・・・契約したから仕方ないか・・・あー、お前はこれから私バ
イオグリーザの主人となり・・・)
「こら!お前ちゃうでー!私にはちゃーんと立派な名前があるんや!春日歩という立
派な名前が!」
そんな大阪の真摯な態度をバイオグリーザは軽く受け流した。
(わかったわかった。・・・契約は成立した。お前は仮面ライダーベルデとなる。私
の力が必要な時はアドベントを使って呼ぶがいい。)
そう一方的に大阪に告げるとバイオグリーザはまたミラーワールドと己の体の色を合
わせて姿を消した。
「お前ちゃうでーー!!」
ミラーワールドに大阪の怒りの声が響いた。そんな大阪の様子を後ろから見ていた神
楽だけは、何だかんだ言いつつも、バイオグリーザが大阪に加護を与え、ライダース
ーツにバイオグリーザのシンボルカラーである緑の装飾を施したことに気がついた。
【次回予告】
「なー二人とも何か近づいてきてるでー」
《アドベント》
素直に感心する大阪。
「・・・智もあのモンスターと契約するんだ!」
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
鷹さん、乙です。
龍騎本編もそろそろ終わりそうだし、目標として龍騎最終回までには
私も最終章を書き上げたい今日この頃。
では第六章です。
第六章
「どうやろ、榊ちゃん。誰かいるかなー」
「・・・・・・できればいてほしい」
ちよ宅の門の前に立つ榊と大阪
二人も智たちから連絡を受け、クラスメイトの何人かが、ライダーになっていることをすで
に知っている。
今分かっているのが、二人+かおり、智、暦、神楽の六人
ちなみにこの二人はゆかりが紫のライダー、王蛇になっていることはこの時点ではまだ知ら
ない
この全員に共通するのは美浜ちよと親しい間柄であったこと
こうなると謎のまま放っておくわけには行かない
二人とも気になるのだ、ちよちゃんの影を感じるライダーの存在が。
そしてそれが、智や神楽の誘いを断ってまでここに来た理由であった。
かといって、大勢で押しかけるのは失礼かもしれないし、さらに在宅かどうかすら怪しいと
思い、二人だけでやってきたというわけだ
榊の思いは限りなく確信に近かったし、大阪もほぼ同じ思いだった。
あのライダーは絶対何かちよと係わり合いがある
ピンポーン
なんとも、緊張を緩めさせられるチャイムの音
二人ともちよの親と直接あったことはない
だからほとんど期待せずにチャイムを押した。
―――のだが・・・・・・
ッゥゥゥゥゥ
「「え?」」
眼前で小さな音を立てて門が開いたのを見て、二人は図らずその声をそろえた。
二人とも、ライダーになってから既にここには何度か足を運んでいる。
ライダーのことだけではない、いまだ行方不明のちよのことも、なにか情報がほしかったか
らである。
しかし、例外なく毎回文字通り門前払いを食らわされていた。
にもかかわらず、今、目の前には開いた門という紛う事なき現実がある。
面食らうなというほうが無理だ。
気になって確認してみたが、チャイムのところにある画面には何も映っていない
「おかしいなぁ、なんで誰もうつっとらへんのやろー?」
「ここじゃ何も分からない・・・入ろうか」
戸が開いてしまった時点ですでに選択肢はない。
少し、いやかなり不審に思いつつも二人はちよ宅の門から庭へと足を踏み入れた。
さらに鍵のかかっていない玄関から二人は家の中へと入っていく
「だれかいませんかー」
館に響く大阪の声に答える声は、ない。
人のいる気配のまったくないその家は、なんともいえぬ不気味な感じを醸し出している。
「どういうことやろー、だれもおらんみたいや」
大阪のその言葉に榊も無言で周りを見渡す
そしてさっきから感じている違和感の正体に唐突に気がついた。
人の気配がないだけではない
誰かが住んでいるならば絶対にあるはずの生活臭がなぜか感じられない
一瞬榊は過去ここに来たときのことを回想した。
そして確信する。
かつてきたときは、確かにそれは感じられた。
・・・・・では、何故今は感じられない?
「・・・まさか、」
またライダーにおびき出された?その考えが言葉となって口を出ることはなかった。
きィィィィィん
館内部に響くモンスター出現音
屋内における音の反射のせいで、すぐには音がどこから出ているか突き止められない。
それでも、わずか数秒で二人はその発信源である玄関の鏡の前にたどり着いた。
この奥で待っているのは蛇か鬼か、あるいは・・・・・・
しかし二人がカードデッキを取り出す間も無く、玄関扉にはめられた鏡が一瞬うねり、そこ
から人影が飛び出した。
「なんやー?」
「ライダーじゃない・・・モンスター?」
現れた物の予想がはずれ、二人は一瞬動きを止めた。
《ガゥルルルゥ》
うなり声を出す二足歩行のモンスター。
第一印象は、巨大。
身長は二メートル、いや、二メートル半ほどもあろうか。
他のモンスターと比べて格段大きいというわけでは決してないが、こうして間近で見上げる
と、その大きさがはっきりと分かる。
一瞬何の動物か分からなかったが、その顔からモチーフが虎であることを理解するのに時間
はかからなかった。
白と青基調の体。おそらくは白虎のモンスター。
その両の手に付いた鋭いつめが禍々しさを感じさせる
しかし、反面奇妙なことに、今まであったモンスターに共通する、鳥肌が立つような殺気は
そのモンスターからは感じられない
ただ、モンスターである以上、友好的であるとは考えられない。
手が止まっていたことに気づき、あわててカードデッキに手を伸ばす二人。
しかし、変身するよりも早く、そのモンスターは二人を捕らえると、ミラーワールドへと引
きずり込んだ。
「うわー、しもうた!」
「早く変身しないと・・・」
二人が虎モンスターの手の呪縛から解き放たれたのはミラーワールドの中のちよ宅の中。
なぜか、怪我ひとつなく、二人はすんなりと己の両の足で再び地面を踏みしめた。
ミラーワールドで変身しないことは即命取りになる
しかし、その虎型のモンスターはミラーワールドに入るなり二人のデッキをその手から奪い
取っていた。
「安心しなさい。ここは二匹のフェニックスによる特殊な結界に守られた場所。
一言で言うならば現実世界と同様の性質を持つ空間だ。
ライダーに変身しなくても君達が消滅することはない。」
突然響いたその声に二人はむきなおった。しかし、そこに人の姿は無い。
「ゆっくり話すために二人をここに招待させてもらった。
ただ、ライダーの姿ではゆっくり話もできないだろうからね。
デストワイルダー、二人にカードデッキを返してあげなさい」
姿なきその声、それに忠実に虎モンスター、デストワイルダーは二人の前の机に割れ物を扱
うかのようにカードデッキをそっと置いた
そしてその後、あわてるようにそそくさと部屋からでていく
それを見届けた後、二人ともそれを手に取り、一応手から光の粒子が出ていないことを確認
してからカードデッキをポケットの中へとしまいこんだ
「あの・・・その話というのは?」
「まってー、その前に、一体誰なん?」
「ああ、そういえば自己紹介がまだだったね」
そしてその声は己をちよの父と名乗った
あっけにとられ、声を出せない二人を置き去りにして、声はちよについて話した。
彼女はまだどこかで生きているはずである、と。
そして、ちよを信じてほしいと頼むちよ父にうなずく二人。
「ありがとう。ちよはいい友達を持って幸せ者だよ・・・」
「あの・・・、ミラーワールドについてなにか知っていることを教えて欲しいんですけど」
榊の言葉に、その姿なき声は一瞬の後返事を返した
「すまないが、教えることは出来ない。まだ、君達は真実を知るときではない」
真実とはなにか、それを問おうとした瞬間、榊の意識は遠のいた。
バランスを失い、体が傾く中で、榊は大阪が倒れた音を聞いた。
気がつくと二人はちよ宅玄関前に立っていた。
そして二人の手にはそれぞれのカードデッキがしっかと握られている。
玄関に入ってからのことがまったく思い出せない二人だが、不思議と同じ確信を覚えていた。
美浜ちよはまだ生きている
「ちよちゃんが生きていることも分かったし、今日は帰ろうか・・・」
「そやなー」
理由は分からなかったが、それ以上の詮索は無益と感じ、二人はちよ宅を後にした。
「これが、頼まれていたものだ」
「・・・・・・それがオルタナティブのデッキか。おや、二種類あるのかね?」
「ああ、それなら右からカードを取り出すのが左利き用、左から取り出すのが右利き用だ」
「なるほど。しかし本当に一月足らずで完成とは、相変わらずたいしたものだ」
「いや、すでに機能を失っているものとはいえ、オリジナルを借りていたからそれほど難し
いものじゃなかった。そうそう、それとオルタナティブにはサイコローグの力の一部を付加
させておいた。」
「ふむ、謙遜はいい。なぜ君ほどの人物が高校で国語などを教えているのかね?
いや、失言だったな、答えは知っている。言う必要はない」
「ところで、私にも手伝わせてくれないか?あの子達二人だけに任せるというのは・・・・・・」
「・・・・・・それは女子が好きだからとかいう理由か?それともかつての友を純粋に手助けした
いという理由か?」
「半々、だな。オリジナルに比べてオルタナティブが劣っているとは思わないが、モンスタ
ーの力を借りきれない分、攻撃能力という点では能力低下は否めない。
ソードベントとアクセルベントだけではね・・・・」
「それはしょうがないだろう。オルタナティブはライダーと違い戦闘用ではない。
だからリスク、そして戦闘能力および体にかかる負荷を減らし、そしてミラーワールドにい
られる時間を20分にまで延ばしたものだろう?
たしかにモンスターとの戦闘で決め手がないのはつらいかもしれないが、そのためのアクセ
ルベントだ。
いざとなれば逃げに徹することができる」
「ああ、もちろん私があの子達が望んだことに文句を言う立場ではないことは分かっている。
ただ、それを作る際のプロトタイプ、サイコローグの力を完全に付加してあるゼロのデッキ
があれば私も十分君の助けになれる」
「ありがたい申し入れだが・・・・・・、だめだ。
わたしと同じ妻子持ちの君にそれだけは絶対にさせられない。
君も分かっているはずだ。
ミラーワールドに行くだけならともかく、モンスターの力を借りることがどういうことか。
制御はできるかもしれないが、支配は決してできない。
ミラーワールドとはなにか、そしてちよが契約したモンスターがどんなものかは、話しただ
ろう。
娘は、ちよはわたしの手で救い出す。分かってくれ」
「・・・・・・そうか。君がそこまで言うのなら、自信があるんだろう。
でも、万が一にもあの子達に何かあったらその時は・・・」
「それは大丈夫だ。絶対に守ってみせる。しかし・・・、変わらないな、君は」
「それについては趣味だから、としか言いようがない。
よく言うだろう、三つ子の魂百まで、と」
「やれやれ。女子が好きだから、か。
その理由で君が突然高校の教師になったときは本当にびっくりさせられた。
さてと、ではそのオルタナティブのデッキ、ありがたく使わせてもらおう」
その言葉に、その頬のこけた男は頷くと無言で今まで話していた相手の手に三つのカードデ
ッキを渡し、その場を立ち去った。
「ちよ・・・」
そうつぶやく謎の生物の手の中にはトラをかたどったレリーフの彫られたカードデッキ。
そしてさらに、それとは別の、黒きカードデッキが二つ、その手には握られている。
「・・・ちよ、いや、仮面ライダーオーディン。いったいどこにいる・・・」
それは小さくそうつぶやいた。
というわけで第六章でした。
まず謝罪を。
一点目。某人物のしゃべり方が変なのについては見逃してやってください。
何度書き直してもそれらしくならないんです・・・
まず一人称から自信ないし。
二点目、ミラーワールドの設定自体かなりオリジナルが入っているのと同様、
オルタナティブの設定も一部変えてあります。
ミラーワールドにいられる時間とか、持っているカードとか。
そろそろ半分ですが、一応最終回をどんなのにするか程度は考えてあるので
伏線になっていない伏線くらいは張ってあります
といっても、所詮あとから読んだら分かるくらいのびみょーなもんですけどね。
なお、オルタナティブは次回、第七章で登場します。
ミネルバさんおつ!それはそれで!
龍騎の最終回までにまとめあげることを当方はとっくに諦めていますw。
いかんせん現在出来ているのが30話ちょい・・・遠い。
ミネルバさん、乙彼〜です。
皆様、新年あけましておめでとうございます。
>50、>59さん、ありがとうございます。
では、年末年始にちまちまと書き進めた第三話をアプさせていただきます。
その前に、お詫びを。
第二話を振り返ってみますと、やはり長すぎるようです。そこで、実は第三話も同じぐらいの分
量で書いていたのですが、これを二つに割って内容を修正し、第三話、第四話にしました。
なので、前回アプした予告は、第四話の内容を含んでいます。
まぁ、元々あてにならない予告ではありましたが、何卒ご容赦を。
『仮面ライダー 神楽』 第三話 <壱>
・・・・・・ややあって、いまだ煙と粉塵おさまらぬ空間にひとつ、黄色く光る球体が浮かんだ。
「いいぞ、マグナギガ」
そう言い残すと、ゾルダは屋上より飛び降り、一階玄関前に着地した。
許可の言葉を聞いた鋼鉄の牛は口を開き、もの凄い勢いで大気を吸引し始める。爆煙・粉塵・細
かい瓦礫まで巻き込んで、彼方にあった球体をたちまちその口内へと飲み込んだ。
半径ほぼ百メートル。ほんの数十秒前まで密集した住宅街だった場所に発生した更地――先ほど
のファイナル・ベントの威力で――へとゾルダは歩を進めた。
「モンスターがくたばったのは、まっ、当然だけど」
先ほどの球体はモンスターの魂とでもいうべきエネルギーの塊。それが出現したということは、
すなわち『死亡』を意味するのだ。
「もう一匹は、ああ見えてもライダーだからな。一応はね」
油断なくマグナバイザーを構えつつ、ゾルダは『眼』で周囲を丹念にスキャンした。遠距離から
の射撃を主要武器とする彼には、他のライダーより優れた視覚認識能力が備わっている。
・・・・・・たちまち目的のものは見つかった。
更地の辺縁、かろうじて建物が全壊せずに残っている境界線の瓦礫に、半ば埋もれるようにして
タイガは倒れていた。
「そこまで吹っ飛んだってわけか。どれ・・・・・・」
うつ伏せに倒れているタイガに向かって、ゾルダはためらいもなく撃った。一発、二発、三発。
しかし、その体には着弾の衝撃での揺れ以外、なんら反応は見られない。
「死んでるな・・・・・・まぁ、当然か。とはいえ、念には念をいれとくか・・・・・・」
近寄っては撃ち、近寄っては撃ちを繰り返しつつ距離を詰め、やがて両者の距離は数メートルに
なった。ここまで近づいて観察しても、タイガには命の灯火のかけらすら感じられなかった。
「よし、と。それじゃあ終わりにするか・・・・・・木っ端微塵にしてな」
ゾルダの手が、デッキから一枚のカードを引いた。
『シュート・ベント』
マグナバイザーはその認識音とともに彼の手から消え、替わって巨大な砲が現れた。ギガランチ
ャーと呼ばれるそれを両手持ちで構え、ゾルダは照準をタイガの頭へと合わせた。
引き金に指がかかる。
・・・・・・しかし、次の瞬間!
タイガ=神楽の体は、何の予備動作もなしに空中に跳ね上がったのだ!
「へへっ!死んだふり成功っと!」
「何ぃ!」
彼女はここまで吹き飛ばされたのではなかった。コンマ数秒で走りぬいたのだ。生命の危機に本
能が、そしてタイガの力が、反射的に行わせた緊急回避だった。さすがにエネルギーを使い果たし、
意識を失い倒れていたが、皮肉にもゾルダの銃撃が覚醒を促し、慎重な接近が回復のいとまを与えた。
後はひたすら耐えて、敵が至近距離に近寄るのを待っていたのだ。
「ち!」
ゾルダもすぐに反応し、砲身を上に向け、タイガを打ち落とそうとする。が、武器を大型のもの
に持ち替えたことがあだとなった。彼にとってもギガランチャーは重く、取り回しがきかない。と
っさに撃った一発も、下にそれてしまう。
「今度はこっちの番だな、てぃ!」 「うう!」
「すげぇ痛ぇの我慢した分、たっぷりお返しさせてもらうぜ!てやぁ!おりゃ!」
ランチャーを蹴り落としながら着地し、その勢いのまま肩から体当たりをかます。しかし、ゾル
ダはびくともしなかった。続いて顔や胸に放ったパンチにも、まったく動じない。彼の装甲はライ
ダー中でも一、二位を争うほど堅牢なのだ。
「フッ・・・・・・素手とはな。ほんと、わかってないようだな、ライダーの戦い方ってやつを」
「ふん、大きなお世話だ、よっと!」
「おご!」
・・・・・・どこを蹴られたのだろう?ゾルダは奇声をあげると、前かがみになって固まってしまった。
「へっ!ライダーの戦いはよく知らねぇが、『野郎』とのケンカなら慣れっこだぜ!」
「ぐ、ぐ、お前、女か?」
「何ぃぃ?見りゃわかるだろ、んなこたぁ!」
「み、見りゃあって・・・・・・」
神楽にはまだ自覚が乏しかった。自分が197センチの異形になっていることに。デッキ所有者
は変身後、それぞれのライダー固有の体格になってしまうのだ。さすがに防具のない腰から脚にか
けての部分は女性らしいラインを残しているのだが、この状況ではそんなところにまで観察してい
る暇などあるはずもない。
「よぉし、だったら使ってやるぜカードを!こうなりゃ、一番凄ぇヤツをな!」
タイガ=神楽の手が引き抜いたのは、デストクロー――彼女言うところの『爪』ではなく、デッ
キと同じ紋章――虎が描かれたものだった。知っていて選んだわけではない。『一番凄ぇヤツ』と
いう彼女の思念にデッキが勝手に反応したのだ。
「さっき見せてもらったぜ、カードの使い方!何か入れるもんがあるんだよな・・・・・・おわ!」
――カードを入れる。その動作を思い浮かべたとき、タイガの手に突如、大きな斧が現れた。木
を切るそれではなく、戦場で人を斬る為の『戦斧』だ。――何か入れるもん、こと、召喚機。その
名をデストバイザーという。
「これか!お、ここが開くな。よし、カードを入れて、セット完了!」
『ファイナル・ベント』
「お、斧がしゃべった?ファイナル?・・・・・・最終とか、そんな意味だっけ?うわ、なんだ!」
「うわ、なんだこいつは!うぐっ!」
タイガとゾルダ双方から、同時に叫び声が発せられた。
突如現れたモンスター――いわば銀地に青い縞の二足歩行の虎――がゾルダを仰向けに押し倒し、
左手で地面に押し付けるとそのままタイガ=神楽に向かって突進しだしたのだ。
物凄いパワーだ。ゾルダの背が大地との摩擦で火花を散らしている。
一瞬驚いた神楽だったが、それが敵ではないことは本能的にわかった。
あとは、体が勝手に動いた。腰を落とし、いつの間にか『爪』が装着された腕を、右を前、左を
後ろに引いて半身に構える。
全身を巡るエネルギーが、その左爪に集中してゆく。
(そして、あの虎がこちらに放り投げる獲物を貫いて、真上に差し上げる!よし!)
神楽は技のフィニッシュに向けて、意識を集中させた。迷いも躊躇も一切ない。――敵を倒す。
心にあるのは、ただ、それだけだった。
・・・・・・しかし、彼女は大きなミスを犯していた。ゾルダの手にはまだ、マグナバイザーが握られ
たままだったのだ。
「うぉぉぉぉっ!」
意識が飛びそうになるほどの激痛に耐え、彼は愛銃を虎のどてっ腹に連射した。至近距離の銃撃
の威力に、たまらず虎は手を放し、苦痛に転げまわる。
「ちぃぃぃぃ!スカったか。だったら、こいつでメッタ切りだ!」
すぐに気を取り直し、デストクローで攻撃しようとゾルダに駆け寄るタイガ。だが、その鉤爪か
ら、腕から、そして全身から霧のようなものが立ち上り始める。
「わわわ、これはあの時の!き、消えちまう。・・・・・・あれ、あいつも」
見れば、ふらふらと立ち上がりかけているゾルダにも同様の現象が。
「ち、あと少しで勝てるのに!うう、だめだ消えちまう!ああ〜!」
無念さに身もだえするタイガ=神楽。しかし、東條の消失を目の当たりにした恐怖はまだ彼女の
記憶に新しく、抗することはできない。
「お、覚えてろよ!」
なんだか悪役のような捨て台詞を残し、手近な鏡に飛び込むしかない神楽だった。
『仮面ライダー 神楽』 第三話 <弐>
緒戦をかろうじて生き延びた神楽。だが、大変なのはむしろその後だった。
現実世界に戻り変身を解いたとたん、体を激痛が襲ったのだ。変身中に回復できなかったダメー
ジは、かなりの部分、生身の体に持ち越されてしまうようだ。しばらく神楽は動くこともできず、
道端に座り込むはめとなった。幸い――そういう若者は最近多いので、通行人には怪しまれなかっ
たが。
横浜まで電車で戻り、帰り道、それこそ『気合』だけでMTBを走らせ、会社に戻った頃には精
神的にも肉体的にも限界に近かった。
ああ・・・・・・しかし、夜更けの編集部には大久保がひとり、怖い顔で待っていた。
「神楽〜、お前、定時(連絡)も入れずに何やってたんだ?こんな時間までよぉ」
「す、すみません、編集長。つい忙しくて・・・・・・」
「忙しくて?ほぉぉ〜、それじゃあ何かつかめたんだろうな、失踪事件がらみで」
「はい、あらかた・・・・・・」 「何ぃ!」
(・・・・・・しまった!)神楽はあせった。確かに、謎の事件の真相は、あらかたわかってしまった。
しかし、それをどう説明し、納得させるのだ。――できはしない。彼女自身ですら、今日の体験が
なかったら一笑に付してしまうような話だ。――ごまかすしかない。
「あらかた・・・・・・わかりませんでした!」
「はぁ!?お前なぁ、そんな日本語あるかぁぁぁぁ!!」
・・・・・・幸い、大久保は大らかな――というか、いい加減な性格だったので、丸めた雑誌で頭を数
発叩かれただけで解放された。
その大久保も十分ほどすると、戸締りと火の元確認を命じてのち、帰ってしまった。
神楽は、疲れ果てていた。とにかく眠りたかった。――だが、耐えた。次の戦いはいつ始まるか
わからない。備えなければならない。――窓のブラインドを閉めると、彼女はデッキを手にした。
・・・・・・神楽にとって、三度目のミラーワールド。それは全てが反転してはいたが、通い慣れた、
いや、住み慣れたOREジャーナルのオフィスだった。室内の鏡で変身したのだから、当然だが。
さすがにここで暴れるのは気が引ける。――タイガ=神楽は窓を開け、道路へと飛び降りた。
「さてと、やるか。まずは『爪』!」 『ストライク・ベント』
「よし、出たな。おお〜、なんだか両手に力がみなぎってくる感じだぜ。そりゃ!」
神楽はその威力を確かめるべく、デストクローで次々と周囲にある物を攻撃していった。電柱が、
車が、まるで発泡スチロールのようにやすやすと裂かれてゆく。
「す、凄ぇ〜!よし、次は・・・・・・なんだ、これは?氷?」
他にどんなカードがあるかは、脳内にイメージとして浮かんでくるのでわかった。その中の『氷
の塊』のような図柄のカードを選んで念じ、デッキから引き抜いた。
「これだよな。どんな効果があるんだ?ま、使ってみるか」 『フリーズ・ベント』
「な!凍っちまったぞ、凄ぇぞ、おいおい」
デストバイザーの認証音と同時に、目の前のトラックが白く凍りついてしまったのだ。試しにデ
ストクローで叩いてみると、ガラスが割れるような音をたてて砕け散ってしまった。
「へへへ、こいつは色んな使い方ができるな。よぉし、次は・・・・・・これはこの前使ったファイナ
ルなんとかだよな。必殺技ってことか。そういやぁ、あの時出てきた虎って一体・・・・・・あれ、こっ
ちのカードの絵、あいつじゃないか。どれどれ・・・・・・」
『アドベント』
虚空から突如、あの時の虎型モンスターが現れた。
タイガ=神楽の前に着地し、勇ましく雄叫びをあげる。
「グォォォォ〜ン」
「・・・・・・グォォンじゃねぇよ、こら!」
神楽は無造作に、虎の頭をデストクローで叩いた。体育会系のノリか?あるいは動物への躾か?
「ガガ!ガウ〜?」
「ちゃんと挨拶しろ!名前は!」
――デ、デストワイルダー
脳内に直接声が響いた。
「で、ですと・・・・・・まぁ、いいや。で、お前は一体何なんだ。私の味方か?」
後は脳内に現れるイメージによる伝達となった。言語体系が人間と違うので逐一翻訳するより手
っ取り早いのだ。
「・・・・・・なるほど。私と『契約』してるわけか。正確には、東條がやったんだろうけど。で、私
に力を供給するとともに、忠誠を誓う・・・・・・か。その報酬として、定期的に他のモンスターを倒し
てその魂を与えろ?・・・・・・何ぃ、駄目なときは代わりに人間を食う許可を?それすら守れないとき
は、私を食うだぁ!こら!!」
神楽はデストワイルダーの頭をバンバン叩き始めた。もちろん『爪』付きのままで。
「こらっ!人を食べちゃダメだ!ましてや、私を食うだとぉ!こらぁ!」
「ガォン、ガォォン、オオ〜ン・・・・・・」
「何ぃ、だったらちゃんとモンスターを倒せ?・・・・・・そりゃそうだな。よし、立てよ!」
神楽はそう言うと、すっかり怯えて――頭を抱えて丸くなっているデストワイルダーに手を差し
伸べた。虎は――恐る恐る、その手を取って立ち上がる。
「叩いて悪かったな。お前とはうまくやっていけそうだ。えっと・・・・・・何だったっけ、名前?」
――デストワイルダー!
「で、ですとら・・・・・・らーで?・・・・・・」
「ガウ〜・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
・・・・・・しばし無言での見つめ合いの後、神楽は破顔一笑、虎の背中をバンバン叩きながら言った。
「よぉし、今日からお前の名前は『トラ吉』だ!よろしく頼むぜ、ト・ラ・キ・チ!!」
「ガゥ?ガォォォォ〜ン!?」
「お、なんだ。うれしいのか?へっへっへっ、私もうれしいぜ!」
「ガォォォォ〜〜ン!?」
・・・・・・哀愁をおびた鳴き声が、ミラーワールドに木霊した。ああ、可哀想なデストワイルダー。
ちなみに『トラ吉』は、神楽が子供の頃、家で飼っていた猫の名である。
・・・・・・そんな有様を、隣接するビルの屋上から見つめる影があった。
黒を基調としたその体は、周囲の闇に溶け込んでしまっている。
しかし、タイガの超感覚――あの時、はるか彼方のゾルダの攻撃を察知した――にも存在が気づ
かれなかったのは、それが理由ではない。全く、敵意や殺気がなかったからだ。
ただ――ただ、ボーっと見ていただけなのだ。
やがて影は、タイガが時間切れでミラーワールドから退出するのを見届けると、漆黒の闇にも似
たマントを翻し、姿を消した。
(続く)
・・・・・・と、いうわけで第三話でした。
各キャラファンの方、毎度毎度、申し訳ありません。
神楽に○○蹴らせるわ、デストワイルダー飼い猫にするわ・・・・・・どうか、ご容赦を。
で、では第四話予告。いきます!
『仮面ライダー 神楽』
「ケガして入院したから見舞いに来てくれだって!ふざけるなってーの!」
「ああ?・・・・・・私の親父があんたに払った五千万のおかげだろ!このペテン師が!」
「私の目の届くところでは絶対殺らせねぇ〜!!」
『ストライク・ベント』「ファイナルでなくてあの威力かよ!」
「お、お前は誰だ!」
戦わなければ、生き残れない!
いらだとばる氏だ。乙!新年あけましておめでとうございます。
今年も頑張ってください。
では当方も朝からなんですが第22話を掲示しますね。
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第22話捕獲】
「あー気が済んだか大阪」
神楽は少し遠慮がちながらもそんな大阪に声をかけた。
「お前ちゃう・・・」
「おーい大阪ーしっかりしろー」
「神楽ちゃん・・・あ、そうや!智ちゃんはどこに行ったんや?」
「ん?あいつも一緒だったかのか大阪。ま、暇だしあのバカも探すかー。
・・・多分あいつはあっちだな。」
神楽は遥か大空でダークウィングが優雅に飛び回っているのを発見すると
そのまま走り出した。大阪はそんな神楽の後ろを慌てて追いかけた。やが
て2人は未だに大空から降りてこないダークウィングを待つ、智の姿が見
えてきた。
「智ちゃんやー。智ちゃーんどないしたんねん?」
「大阪大丈夫だったのか」
「うん。平気や。神楽ちゃんが助けてくれたんやー」
「お前も助けてやろうか?」
契約したライダーはモンスターの力を受け取ることで契約以前と比べ2倍
以上の実力になる。契約したライダーの余裕で神楽は未だに契約していな
い智に向かって得意げに胸をはった。しかし負けず嫌いな智はにべもなく
神楽の申し出を断った。
「いらねーよこの体育馬鹿!」
「何だと!本物の馬鹿のくせに!」
「うー・・・」
「何だやるのか!」
「なー。二人とも何か近づいてきてるでー」
「大体なあ、お前は高校の時からバカなんだよバカ!」
「そーいう神楽さんは一度でも榊さんに勝てましたっけー?・・・」
智と神楽はお互いに負けず嫌いであった。大阪は再び急降下しつつあるダ
ークウィングを発見したことを伝えたのに声も届かないほど二人が口げん
かに熱中しているのを見て焦った。
(困ったーどないしよう?・・・カードを使えばいいんやろうか?)
大阪はとりあえずデッキからカードを取り出した。すると脚部に装着され
ているバイオバイザーがするすると伸びてきたので大阪は何となくカード
を装填した。
《アドベント》
(呼んだか?)
大阪の背後にベルデの契約モンスターとなった、カメレオン型モンスター、
バイオグリーザが出現した。
「あのなーあの近づいているモンスターを何とかしてくれへんかー」
(そんなことでいいのか?わかった)
言うが早いがバイオグリーザはその粘着力のある舌を一気に伸ばして近づ
きつつあったダークウィングを絡めとり地面に叩きつけた。大阪はバイオ
グリーザに素直な感嘆の意を表した。
「舌や!すごいで!私にはそんなこととても出来へんで!」
(ま、まーな。で、このまま地面に叩きつけて弱らせるのか?)
そんな大阪に少し戸惑いながらもバイオグリーザは次の指示を聞いた。
「うーん・・・ちょっと待ってなー」
「なー智ちゃん神楽ちゃん。私あの飛んでたの捕まえたんだけど、どうし
たらええんや?」
「あーそうなんだー・・・って捕まえたってホントか!」
思わず智と神楽は振り返った。その目線の先にはダークウィングが先程ま
で優雅に飛んでいた様子が嘘のようにバイオグリーザの舌をほどこうとも
がきながら地面に横たわっている姿を発見した。
「ホントだ。・・・あーお前もあのモンスターと契約したらどうだ?」
「言われなくてもわかってるよーだ!」
智はバイオグリーザの舌に注意しながら地面でもがいているダークウィン
グにデッキから取り出した契約カードを接触させた。大阪と神楽は幾ばく
かの時間がたった後、智のライダースーツにもダークウィングのシンボル
カラーの青と黒で装飾が行われたのを見た。仮面ライダーナイトとなった
智は自身が契約したモンスター、ダークウィングの気持ちを感じとり、急
いで大阪に伝えた。
「おーい大阪!お前のモンスターの舌早くとってくれー」
「はーい。・・・バイオグリーザおつかれさんやー」
(ああ。私が必要な時はまた呼ぶがいい・・・またな)
契約した主人でもある大阪の指示を聞いたバイオグリーザは舌を戻すと再び
ミラーワールドと同化し、姿を消した。神楽はふーっと大きな息を吐いた。
「モンスターもいなくなったし、帰るぞ智、大阪」
「ほーい」
「そーいやさ神楽、出口はどこなんだ?」
「入って来たところが出口だからなー・・・どこだったかな?」
「やっと見つけましたー」
ファムにそのずば抜けた格闘センスと圧倒的な力を示したライダー、リュ
ウガはそんな彼女達の様子を背後から気配を消して見ていた。リュウガは
静かにカードを一枚取り出し自身のカードバイザー、ブラックドラグバイ
ザーにカードを装填した。
【次回予告】
「ばかにしやがってー!!」
「・・・あっちー!!」
「智ちゃんお帰りー」
「もっと私と遊んでいってくださいー」
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
いらだとばるさんも鷹さんも乙です!
では、私も昼間から第七章、書き込ませていただきます。
第七章
「どうだ、榊、やつがどこにいるか、わかるか?」
「・・・いや」
慎重そうに辺りを見回す朱と黒、二人のライダーは共にそれぞれの武器を手にしている。
朱のライダー、神楽が変身するライアは鞭、エビルウィップを。
黒のライダー、榊が変身するナイトは剣、ウィングランサーを。
しかし周りに肝心のモンスターの姿は見当たらない。
「透明になるなんて、卑怯だと思わない、かっ!?」
神楽の言葉が終わるより早くその体にモンスターの電撃が命中したため、最後の一句は神楽
の肺腑から搾り出された息が言葉にもならない音になったものである。
ナイト=榊とライア=神楽は、姿を透明にし、さらに手から電撃を放つクラゲ型モンスター
と先ほどから交戦中である。
―――のだが、交戦というより、ほとんど一方的に攻撃を食らっているに近い。
透明な姿で、しかも移動しながら電撃を放つため、こちらは攻撃を当てることすらままならない
のだ。
「くっそー、やっぱり卑怯だ、」
「そういうモンスターなんだからしょうがない」
「そりゃそうだけどさー、どうだ榊、何かいい方法ないか?」
「・・・・・・これを使えば何とかなる、かもしれない」
そう言ってナイト=榊が取り出したカードは榊自身も一度も使ったことのないカード。
ダークウィングの説明では超音波と言っていた記憶がある。
それならばモンスターが透明だろうと関係ないだろう。
<ナスティベント>
カードを持ったナイト=榊の右手が、左手に持つダークバイザーへと動き、ナスティベント
のカードがベントインされる。
そしてその音とともに上空から姿を現すダークウィング
アドベントやファイナルベントを使うとき榊はいつも思うのだが、一体どこで待機している
のだろうか。
空中でダークウィングは、ナイト=榊とライア=神楽のほうを一瞥すると、一言、
『無差別攻撃すると、対象を選べないから、巻き込まれないように注意して・・・』(榊の耳)
《キィ、キィ》(神楽の耳)
とだけ言うといったん口を閉じ、二人の上空で静止して再び口を開けた。
刹那の後、ナイト=榊とライア=神楽はあまりの衝撃に思わずマスクに手を伸ばした。
ナスティベント・ソニックブレイカーの正体、それはダークウィングの口から発する超音波。
上空から全方向、360度に放たれたそれは榊と神楽をも巻き込み、周りのものを振動させて
いく。
巻き込まれないようにも何も、避けようがない
「っ、おい、榊、これ以上はわたしたちがやばいんじゃないか!?」
「もう少し・・・・・・、」
必死であたりを見渡す二人の視線のうち、ナイト=榊の視線が止まった。
その先では、不自然なほど背景がゆれている
「見つけた、ダークウィング!」
『・・・人使いが荒い』(榊の耳)
《クィー》(神楽の耳)
ポツリと漏らしながら、ダークウィングはその場所へと急降下し、翼で体当たりをした。
一瞬、風切音とは違う、なにかを切り裂いたような音が響く。
そしてダークウィングはそのまま上空へとのぼり、現れたときと同じように消え去った。
「ふう、ほとんど自爆技だったな」
「だけど・・・、」
二人の視線の先にあるのは、透明から半透明になったくらげ型モンスターの姿。
半透明とはいえ姿かたちは人型で、顔の部分だけがくらげの形状であることで、不気味さが
はるかに増している。
しかしその体からは先ほどの攻撃で、体液が滴り落ちている。
「・・・もう透明にはなれない」
《ガァァゥ》
不気味なうめき声とともにその手から発せられた雷
ナイト=榊はライア=神楽の前に回りこむとそれをガードベントで弾き飛ばした。
「大丈夫?」
「ああ、サンキューな、榊」
透明になることもできなくなり、さらに得意の攻撃を防がれたことで弱気になったか、モン
スターは二人に背を向け、すぐそばの川の中へと飛び込んだ。
「あ・・・」
残念ながらモンスターに水の中に逃げられると、泳ぐのに適していないライダーになすすべ
はない。
そう、確かにライダー“自身”には。
「そうはさせるかっ!」
<アドベント>
神楽が左手のエビルバイザーに入れたカードは契約モンスター召喚のカード。
その音とともに川から上がる水柱。そこには先ほどまで戦っていたモンスターと、ライア=
神楽の契約モンスター、赤いエイの姿をしたエビルダイバーの姿がある。
「頼むぞ、エビルダイバー!」
『任せろ!』(神楽の耳)
《キイァー》(榊の耳)
神楽の呼び声に答えるようなその一句と共に尻尾の一撃を喰らい、モンスターは二人の目の
前の地面へと叩きつけられた
「へっ、だてに水の中に住むモンスターと契約してないんだぜ!」
<ファイナルベント>
追撃のファイナルベント。
逃げる間もなくライア=神楽のハイドベノンを受け、クラゲ型モンスターは爆発四散した。
「よっし!やったな、榊」
・・・・・・なぜか神楽の言葉に返事が来ない。
「榊?」
「・・・・・・、」
ライア=神楽のすぐ横にいるナイト=榊のその顔は、今倒したばかりのモンスターの方向で
はなく、あさっての方向に向けられている。
「どうした、浮かない顔して。どっか怪我でもしたのか?」
「・・・ここで、私は前モンスターと戦ったことがある・・・」
「? だからどうかしたのか?」
黙って水平に手を上げるナイト=榊。
その指先は地面のある一点、深くえぐれているところをさしている。
「・・・あれは私がファイナルベント、飛翔斬でモンスターを倒したときに付いた傷。
現実世界にはあんな傷はない。でもこの中には残っている」
「・・・それで?」
「・・・・・・私にも分からない。でも、何か、おかしい」
しかし、どこが変なのか、二人に答えを出す時間はなかった。
ふと周りにさっきまでなかった気配を感じ、振り向く二人、しかし時すでに遅し。
すでに二人は大量のレイヨウ型モンスターに囲まれていた
そしてその間を縫って現れる茶色のライダー。
二人とも始めてみるライダーである。
蜘蛛を思わせる顔に、茶色の鎧を纏っている。
おそらくその右膝についているのがバイザーなのだろう。
周りのモンスターがそのライダーに襲い掛からないことから判断して、
「気をつけろ、榊!こいつがこの前わたしと智を襲ったやつだ!!」
神楽の言葉とともに武器を構えなおす二人。
そんな二人の耳に飛び込んできたライダーの声、それは信じられぬ人の声だった。
「赤いほうが神楽ね。で、そっちの黒いほうが榊か」
名前を呼ばれ、一瞬で呼び覚まされる数々の記憶。
二人にとって忘れるはずもない、その声。
「その声、黒沢先生!?」
「そんな・・・」
眼前のライダーの正体、黒沢みなも。
英語と体育の差こそあれ、ゆかりと同じくかつて3年間世話になった師。
神楽にいたっては、彼女はクラブの顧問でもあり、さらに一年のときの担任ですらある。
ゆかりがライダーだと分かった時点で、彼女ももしかしたらライダーになっているかと思い
電話をしてみたが、連絡はつかなかった。
しかし、二人は彼女がライダーバトルに加担しているとは思っていなかった。
ましてや、智と神楽を襲ったゼール系軍団を束ねるライダーだとは・・・・・・
「どうして!?」
「・・・・・・叶えたい望みがある。叶える方法がある。それだけで十分じゃない?
それにね、引くわけには行かないのよ。やりなさい、ギガゼール!」
その一声と同時に二人に十匹あまりのギガゼールが襲い掛かった。
一匹一匹の強さはそれほどでもなくても、多勢に無勢。
「榊!」
「・・・分かってる」
不利を悟り、二人は囲まれるより先に数体を手持ちの武器で退けると、そのまま現実世界へと
その身を翻した。
「あー!」
「ん?」
同時刻、大学の講義中、大阪と智は己の大学付近でミラーワールドと現実世界がつながった
のに気がついた。
同じ大学に通う二人だが、専科が違うこともあり一年や二年の間はいくつかあった共通の講
義ももはやない。
というわけでまったく別の棟でまったく別の講義を受けていたわけだが、いつもはろくに聴
かず、熟睡している講義にもかかわらず、偶然にも二人ともそのときは、少なくとも寝ては
いなかった。
うつらうつら程度はしていなかったわけではないが、それでもミラーワールドからの音は眠
気をきれいさっぱりとる効果がある
理由は言わずもがなだろう。
席が後ろのほうだったことも幸いし、二人はそっと抜け出し、近くの鏡へと急いだ
「大阪!」
「あー、智ちゃんやー、」
ライダーに変身し、ミラーワールドの中で合流した二人
そして、大学の前で二人の前に立ちはだかったのは、仮面ライダー王蛇。
すなわち二人にとっては高校3年間の担任である、谷崎ゆかりが変身するライダー。
彼女がおそらくは二人が感じた音の主だろう
「ハロー。元気だった?」
「ゆかりちゃん!」
「なんなん?」
武器も持たず、平然と立っている王蛇=ゆかり
しかし、いままでの例があるため、流石の二人も積極的に近づいて行こうとはしない。
それを見て取ったのだろう、王蛇=ゆかりは肩をすくめると、言った。
「あー、別にたいした用事じゃないのよ、あんたらに会いたい人がいるって言うんで案内し
ただけだから」
「「え?」」
それが誰なのかまで言わずに、ゆかりは後ろを向くと逃げるように全速力で走り出す。
そして、土ぼこりをたて、あっという間にその姿は見えなくなった。
「何やったんやろ・・・、会いたい人?」
「ん?誰かいるのか?」
気配を感じた瞬間、二人の前に黒きライダーらしい影が二つ降り立った。
一見したところ二人ともほとんど同じ姿をしている。
ライダーのような姿だが、有機的という点で少し雰囲気が違う黒メインのそのボディ。
二人を見分ける数少ない違いの一つとしてそれぞれ右手と左手についている銀色のバイザー
らしき物がある。
顔から判断するにそのモチーフはバッタかなにかだろうか。
「あなた達が高校時代、ちよちゃんをいじめていた人たちですね?」
「・・・え?」
「?????」
開口一番のその言葉に点になる二人の目。
聞き覚えのある声ではないが、何よりも、その言葉の内容が二人をあっけに取らせた。
「とぼけても無駄です」
「ちゃんとちよちゃんの担任だった先生から話は聞きました!」
「えぇっと・・・」
「????」
困惑し、ええっと、の後の句が告げない智
事態についていけず頭の上に?マークをたくさんつけた大阪
わけの分からないのは二人とも同じだが、智のほうが思った疑問を口にしたのは早かった。
「あんたら、誰?」
その問いに即答する黒いライダーらしい者の一人。
「ちよちゃんの小学校のときの友達です!」
「小学校の時の友達ぃ?」
復唱する智に、答えたほうではないほうが冷たい視線を浴びせかける。
「みるちー、こんなやつに答えることないわ」
「あ、そういえばそうね」
≪ソードベント≫
「え?あれ?」
「???」
一人は右手、もう一人は左手だったが、カードを取り出したところまではその二人は智や大
阪の知っているライダーと同じようだった。
しかし、二人はカードをバイザーに入れず、バイザーのスリットに通した。
それだけではなく、さらに認識音まで、女性のような声になっている
二人の観察眼がもう少し鋭ければ、バックルの形や、その中央に位置するカードデッキに描
かれている紋章がモンスターを表したものではないことも分かっただろう。
「「覚悟!」」
一人は右、もう一人は左、それぞれのバイザーが付いているほうの手に大型の特殊な形の剣
を持った眼前の二人。
伝わってくる気迫からするに、放っておくと斬り殺されそうな雰囲気だ。
「・・・・・・よく分からんが、このまま黙っているわけにも行かないよな、大阪!」
「え?なんなん、智ちゃん?」
智に言われてやっと大阪も我に返ったらしい
智の手の中のカードを見てあわてて自分のデッキに手を伸ばす。
≪ガードベント≫
二重の音声が鳴り響き、龍騎=大阪とゾルダ=智の手に盾が握られる。
ゾルダのガードベント、ギガアーマー
龍騎のガードベント、ドラグシールド×2
その盾はそれぞれに攻撃してきた剣をはじき返した
さらに繰り出される連撃を、龍騎=大阪は二つの盾をつかいさばき、ゾルダ=智は盾の大き
さを活用し防ぎきる。
「どうする、ゆか?」
「アクセルベント、使えばいいんじゃない?」
アクセルベントというのがどういうものかは知らないが、語感的にいい予感だけはしない。
それに、誤解して攻撃してくる相手に本気で反撃するのは流石に気が引ける。
「ちょっと待てー、こっちの話も聞けって」
「誤解やー」
智と大阪の言葉に二人(会話からすると右手にバイザーの方の呼称は『みるちー』で、左手
にバイザーのほうの呼称は『ゆか』)は手を止め、顔を見合わせた。
「・・・あんなこといってるけど」
「そうだね、聞くだけ聞いてみようか。」
二人の言葉を信用している様子はまったくない。
あるいは悪人の最後の言い逃れを聞くような感覚なのかもしれない
「いっておくが、わたしたちとちよちゃんは親友だぞ!」
「いじめっ子って誰でもそういうのよね」
智の言葉に対し、まるで答えを予想していたかのように、一拍もおかず反論が帰ってくる。
いや、事実予想していたのかもしれない。
「嘘ちゃう。ほんまやねん」
「口だけじゃ・・・なにか証拠はあるんですか?」
「証拠・・・、なにかあらへんかなぁ」
「それじゃあ信じられませんよ」
このままでは延々と続く繰り返しになりかねない。
しかし証拠という言葉で智の頭に天啓が降りた。
「わたしたちがライダーであること自体が証拠にならないか?
あんたたちもちよちゃんの友達だったからライダーになったんだろ?」
「あー、さすが智ちゃん。やるなー」
「「・・・・・・・・・」」
その言葉に、二人は一回うなると、そのまま黙り込んだ。
結局、智のその言葉を契機に智と大阪は何とか二人を信用させることに成功した。
その後の二人の話から判断すると、ここに来る少し前、モンスターと戦う二人と遭遇したゆ
かりは、二人がちよの小学校時の友であることを知ると口先三寸で丸め込み、智と大阪を高
校時代ちよをいじめた悪人に仕立て上げた、ということらしい
「じゃあ、あの紫のライダーは、ライダーと戦う悪いライダーなんですか?」
「まぁ、そうなるかな」
智のその言葉に、二人は深々と頭を下げて無礼をわびた
「私達だまされていたんですね。すみません。そうとも知らずご迷惑をおかけしてしまっ
て・・・」
「気にすることあらへんでー」
「ところでそれって、本当にライダーなのか?なーんか違うような気がするんだよな」
「あー、わたしも気になっとったんや、それ」
大阪と智のその問いに、二人は首を横に振った。
「いえ、これはライダーじゃないんです」
「わたし達も良く知らないんで詳しくはいえませんが、オルタナティブって名前なんです。
なんでも擬似ライダーだとか」
二人とも、その名前の意味を一瞬考え・・・・・・諦めた。
「そうかー、おるなたてぃぶいうんかー」
「へぇ、そんなのもいたんだ」
「あの・・・オルタナティブですけど」
性格上、口止めされていることを無理にでも聞き出そうとした直後、ゾルダ=智は自分の手
から光の粒子が出始めていることに気がついた。どうやら押し問答で相当時間を食ってしま
ったらしい。
当然ながら隣に立っている龍騎=大阪も同様の状態だが、気がついていない
「いけねー。大阪、時間切れだ!」
「あー!ほんまやー!」
あわてて智と大阪は二人に別れを告げると、入ってきた鏡めざし全速力で走っていった。
途中、智が振り向いたときにはすでにそこに二人の姿は見当たらなかった。
以上、第七章です。
ここが一応折り返し地点。
このままの調子ならば、残り6章でなんとか完結できそうです。
二日に一回は書きこまにゃなりませんけど・・・・・・
なお、左利き、右利きって言うのはかなりてきとうです。
3組もキタ━━ヾ(゚д゚)人(゚д゚)人(゚д゚)人(゚д゚)人(゚д゚)人(゚д゚)ノ゛━━!!
ミネルバさん、乙彼〜です。
みるちー達を投入するとは・・・ナイスです。
黒沢先生のかなえたい願いが何かも気になる。
がんがってください!
おっと、レス順序が逆になっちゃった。スマソ〜
>209
鷹さん、あけましておめでとうございます&乙彼〜です。
今年もワクワクさせてください!
ここ数話の大阪がいい感じで、たまらなく萌えました〜♪
いらだとばる氏に誉めて頂き光栄なり♪当方朝が絶好調かも。
第23話どぞー。
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第23話黒龍】
《アドベント》
「ん?・・・智、大阪しゃがめぇ!!」
「神楽?何だよ急に・・・って何で押し倒すんだ!」
「どないしたんや神楽ちゃん・・・わー」
「ウォォォン・・・」
神楽は後方からライダーがカードを使用すると生じるバイザー音を聞き嫌な予感がした
神楽は、両腕を2人の肩に持っていくと地面に身を接触させた。神楽の予想は的中して
いた、先程までこの3人が立っていた場所をドラグブラッガーが咆哮しながら通り抜け
ていったのである。
「あっぶねー、危機一髪!・・・おい!お前!いきなり何するんだよ!」
「相変わらず智ちゃんはうるさいですねー」
「私がうるさいだとー!!」
「智黙ってろ!・・・お前何で智ってわかるんだ?ひょっとしてお前も高校
の時の誰かなのか?」
ミラーワールドへの出入りを可能とするライダースーツ。それを身に纏うとライダーは
モンスターとの戦いに不利にならないよう、背がある一定の高さに調節される。その為
ライダーを識別するにはその本人の声あるいは変身する直前を見なければ誰が誰という
ことは判断不可能であった。だからこそ姿だけで智と一瞬で判別したリュウガを神楽は
疑問に思った。
「神楽さんもその首を突っ込みたがる癖をなおさないと今に大火傷しますよー」
神楽は改めてその漆黒のライダーを見つめた。手に付属しているブラックドラグバイザ
ー、頭部にある龍の紋章、そしてデッキに描かれている龍の紋章。何故かはわからない
が、自身のライダースーツと酷似していることに気がついた。
(何だこいつ!私のライダースーツに似ている!?)
「お前一体誰だ!!」
「そんなことはどうでもいいじゃないですか・・・私と戦ってくれませんか?何なら3
人がかりでもかまいませんよー」
「ばかにしやがってー!どりゃああああ!!」
智はそのリュウガの言葉にカチンときてリュウガが後ろを向いた瞬間、突進した。
《ストライクベント》
「・・・そこ!」
「あっちー!!」
ブラックドラグクローを手に装着したリュウガは振り向きざまに突進しながら近づきつ
つある智にファイアーブレスを発射した。炎を直撃し、智は大阪と神楽の元へと吹き飛
ばされた。
「智ちゃんお帰りー」
「こーいう時はもっと何か違う言葉だと思うぞ大阪・・・」
弱々しいながらも大阪に反論する智。そんな3人にミラーワールドで活動できるタイム
リミットが訪れていることが、神楽はライダースーツの粒子の放出によって気がついた。
「智、大阪時間だ!早くこっちに来い!」
「え?なんだ神楽時間って?」
「ぐずぐずするな!」
「もっと私と遊んでいってくださいー」
「・・・!!そこの黒いの!覚えとけよ!」
「お前、それ悪役の負け台詞だぜ・・・と、あったあった!2人ともこの中に飛び込め!」
出口を発見した神楽は智と大阪を促がし現実へと帰還した。戻ると同時に3人は変身が
解け、無事に帰還出来たことにほっとして倒れこんだ。
「ふうー・・・何とか助かったな」
「ほんまやー。でもあの黒いライダーって誰なんやろ?・・・黒いからごきぶりかも」
「それは違うと思うぞ大阪。やっぱあいつはこの私の美貌を妬んでいるやつだろ。」
『大丈夫だったんですね。良かった・・・』
3人はちよの声が聞こえ、たった今飛び出してきた鏡を振り向いた。
「ちよちゃんやー」
「なぁちよちゃん、黒いライダーが襲ってきたんだけどさ、あれは一体誰なんだ?」
『・・・もう、現れたんですか・・・』
ちよは複雑な表情で一度口を閉ざした。
『・・・明日皆で私達の高校の正門前に来てください。待ってます・・・』
「お、おい!・・・消えちゃった」
「ちよちゃんも忙しいんやなー」
「お前なあー・・・」
「ま、そーいうことにしとこーぜ。そうだ智、大阪がモンスターと契約シーンした時、
すっげー情けなかったぜ!」
「え、なになにー?」
「そ、それは秘密やー!」
3人はミラーワールドでの出来事を話し合い始めた。楽しそうに話合う姿はかつての高
校時代からまったく変わっていなかった。夕日だけが静かに3人を照らしていた。
【次回予告】
「げげ!なんでにゃもん家に木村先生がいるの?ま、まさかにゃも、あんた木村と・・・」
「だ・か・ら私も知らないっていってるでしょ!気がついたら皆ここにいたの!!」
「はい!どうしてこんな場所に私達を呼んだのですかぁ!」
「言ったはずだ・・・コアミラーを守れ・・・」
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
おつかれサンダー!
ついついキムリンとまさかなコトになったにゃもを妄想してしまひまひた・・・
続き早く見タイガー!がぉぉぉ!
そこまで期待されるとちょと不安になりますが(w
とりあえず24話どぞー。
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第24話恩師】
「ふあー・・・ん?ちょっと、にゃも電気ぐらいつけなさいよー」
ミラーホールでロングヘアーの女性が眠たそうにあくびをしながら起き上がった。そんな
女性の様子を近くで座りながら見ていたと思われる女性がいかにも呆れた様子で答えた。
「ゆかりあんたほんっとお気楽でいいわね。・・・木村先生、ゆかりも気がつきました」
ゆかりと呼ばれた女性に一人の男性が近づいてきた。その男性は短髪でメガネをかけてお
り、何故か口を開けていた。
「気がつきましたか?ゆかり先生」
「げげ!なんでにゃもん家に木村先生がいるの?ま、まさかにゃも、あんた木村と・・・」
「あんた一体何言ってんの!ちょっとは周りを見るとかしなさいよ!」
「へ?」
古くからのゆかりの友人でもあり、同じ高校の教師でもある黒沢みなもは変な想像をした
ゆかりを一喝した。みなもの一言を受けてゆかりは周囲を見渡し初めてそこが先程まで訪
問して雑談していたみなもの自宅ではないことに気がついた。
「・・・にゃもここってどこ?」
「さあー?私もわからないわよ。木村先生は知りませんか?」
「残念ながら、私にもわかりませんね。しかし、不思議な空間ですよここは。これを見て
ください。鏡の壁ですよ。鏡の壁。」
「へー。・・・ねーねにゃも。私達って何でこんな所にいるんだっけ?」
「だ・か・ら私も知らないっていってるでしょ!気がついたら皆ここにいたの!!」
「ゆかり・・・みなも・・・木村・・・」
『?』
3人は呼ばれ、声のした方に振り返った。そこにはこの3人が知るはずもないであろう、
ミラーワールドにもっとも関わりの深い人物の一人、士郎が立っていた。
「んあ?あんた誰?」
「ちょっとゆかり!初対面の人に失礼よ!・・・あのーすみません。ここって一体どこな
んでしょうか?」
「ディメイションホール・・・お前達を呼んだのは俺だ・・・」
「はい!どうしてこんな場所に私達を呼んだのですかぁ!」
木村は榊、神楽、智、よみ、かおりん、ちよ、千尋等の生徒を教えていた時からまったく
変わっていない独特の雰囲気で士郎に核心を突いた。
「着いて来い・・・」
「ちょっとあんた!一体何様のつも・・・ふがふが」
「まーまーゆかり落ち着いて。・・・さっきから探してるけど出口が見つからないの。今
はあの男について行きましょう」
「えー!?」
ゆかりの抗議を無視して3人は歩き出し、それを見たゆかりも渋々追いかけた。果てしな
く続いていくディメイションホール。木村はみなもに己の疑問を投げかけた。
「黒沢先生、彼は一体私達をどこまで連れて行く気なんでしょうか?」
「さ、さあー?もしかしたら案外出口に連れて行ってくれているかもしれません。」
「にゃもんな訳ねーだろ・・・」
「ここだ・・・」
「!!」
突然周囲が明るくなった。ミラーワールドに辿り着いたのだ。そして彼らの正面には黒い
巨大な正方形の物体が宙に浮いていた。
「へーすごいわねー。一体どうやって浮かしているのかしら?」
「電気の力だと思いますよ、みなも先生。」
「で、あんたは何で私達をこんなところまで連れてきたわけ?」
「・・・取引だ。お前達が元の世界に戻りたいならライダーとなってコアミラーを守れ」
そう言うと士郎は3人にカードデッキを投げた。
「え?・・・きゃ!・・・これは?」
「何を言っているのですか?・・・っと何ですこれは?」
「はぁ?・・・なんじゃこりゃ!」
(へぇ・・・先生もライダーになるのか!これは面白そうですねー)
3人は飛んできたデッキを反射的に受け取った。そんな彼らを、興味心から気づかれない
ようについてきていた、リュウガがこっそり見守っていた。士郎は言葉を続けた。
「カードデッキだ・・・それを使って変身しろ・・・」
「変身?あんた何いってんの?」
「黒沢先生。大変です。あなたの身体から何か飛び散ってますよ!」
「え・・・?きゃあ!これは一体どうなってるの?それに木村先生、ゆかり、あんたも!」
「げげ!」
3人は突然自らの身に起きている現象に混乱した。ミラーワールドではライダースーツで
身体を保護しないとその本人を構築している情報の粒子が虚空に放出され、やがては消え
てしまうことを知らないからだ。士郎は3人を急かした。
「急げ・・・時間が無い・・・」
「急ぐったって、どうすりゃいいんだよ!」
「デッキを反射させろ・・・」
「えーっと、こ、こうかな・・・これは・・・ベルト?」
みなもは近くの鏡にデッキを反射させた。すると虚空から自身に装着されたライダーベル
トを不思議に思いながら見つめた。
「にゃもー私も同じのがついたよー」
「それで私達に一体どうしろと言うのですか?」
「変身と言いながらデッキをベルトに装着しろ・・・」
「誰がそんな恥ずかしいこと言うかい!」
ゆかりは士郎の言葉を無視してそのままデッキをライダーベルトに装着した。しかしライ
ダースーツを出現させる為にはパスワードである変身という言葉を声に出さなければ何も
起きるはずがなかった。
「無駄だ・・・」
「ゆかり先生やってみるしかありません」
「そーよゆかり。・・・でもちょっと抵抗あるなー変身かー」
「だー!わかったわよ!ほら、にゃも、木村いっせーのーで!」
「変身・・・」
「へ、変身」
「変身じゃー!」
「それでいい・・・」
3人はライダースーツが出現し装着された自らの姿に驚嘆した。ゆかりのライダーベルト
には蛇をモチーフにしたカードデッキであり、その姿は紫で装飾されていて手には牙召杖
ベノバイザーが握られていた。
「おや?どうやら飛び散っていたものが止まりましたね」
「助かったわ。でもホントに変身するんだ・・・何で?」
「にゃもは相変わらず堅いですなー私は身体が楽になったからどうでもいいや」
そんなゆかりにエイをモチーフにしたカードデッキを装着したみなもはため息をついた。
「あんたねー」
「ゆかり先生もみなも先生も落ち着いてください。」
そういう木村は灰色のライダーとなっていた。頭部と左肩に角があり、左肩の角が禍々し
く真紅の色を光らせていた。
鷹さん、おつかれさまです。
コアミラーを守る役割として教師陣を配置ですか。
今後の展開が気になるところ・・・
でわ、私も第八章です
第八章
「あら、逃げずに良くやってきたわね、神楽、暦。感心感心」
「逃げる?どうして逃げる必要があるんです?」
「だいたい、この前はわたし一人にも勝てなかったじゃないですか。」
現実世界、町外れの空き地、その場にそぐわぬ3人の女性が向き合っている
その面子は神楽、暦、そしてゆかり
ゆかりが電話で二人をここに呼び出したのだ
神楽も暦も、ゆかりに呼び出された時点で悪い予感を感じ、一応連絡しあったのだが、そこ
で返ってきた答えは驚くべきものだった。
「榊と大阪、それに智は黒沢先生が呼び出したそうじゃないですか。
同じ日の同じ時間に過不足ない待ち合わせ。当然、偶然じゃありませんよね?」
五人が、眼前のゆかりと今頃榊たちと対面しているはずのみなもによって綺麗に二組に分け
られたことになる。
待ち合わせ時間も同じ。ただし、待ち合わせ場所はかなり離れている。
しかし、それに対するゆかりの答えは「さあね〜〜」である。
「二人とも、一体何を考えているんですか?
いくら黒沢先生でもあの3人相手に戦うなんて、勝ち目があるとは思えません。
まあ、それはわたしと神楽を一緒に相手にしようとしているゆかり先生にも言えることです
けど。
それとも・・・まさか今までのことをあやまって、水に流してもらおうと考えてるわけじゃない
ですよね」
「はっ、まさか」
暦のその言葉をゆかりは鼻で笑い飛ばした
もっとも暦にしろ神楽にしろ、そうかもしれない、とすら微塵も思っていなかったが。
「ここに呼び出した用事なんてひとつしかないに決まってるでしょうが。ライダーバトルよ。
ラ・イ・ダ・ー・バ・ト・ル。あ、鏡はここね」
そう言いつつゆかりがバンバンと叩くのは、その横にある彼女の愛用車、むろんすでにべこ
べこで凄惨な状況の、である。おそらくはそれのサイドミラーを使おうというのだろう。
「・・・相変わらずめちゃくちゃな運転しているみたいだな。
えー、っと。なんていったっけ、愛車は乗り主に似る?」
「少し違うが…言いえて妙だな。ま、この場合乗り主の性格を映す、かな」
「何二人だけでごちゃごちゃ言ってんの!さ、やるの?やらないの?」
返事の代わりに二人はカードデッキをポケットから取り出し、見せ付けた。
神楽の赤い、エイの図柄の入ったライアのカードデッキ。
暦の黒い、サイの図柄が入ったガイのカードデッキ。
それを受け、ゆかりも笑みを浮かべながら己のポケットから紫の、コブラのような図柄が入
った王蛇のカードデッキを取り出し、まず最初にサイドミラーの前に立つ。
「いいわ。じゃ、一足先に行くわよ。変身!」
それとともにまばゆい光がゆかりを包む。
そして、変身したゆかりは己の身をミラーワールドへと投じた。
「どう思う?」
「ゆかり先生の事だからな、向こうでなんかやってくるかもしれないけど、まあこうしてい
る以上不意打ちは無理だろ。それにここまで来たんだ、やるしかない。」
「そうだな。・・・榊たちもそろそろ黒沢先生と一戦交えているころかな、」
「多分な。三対一で負けるわけないし、わたし達もここで勝っとかないとあとで智に何言わ
れるか分からんぞ、神楽」
「ははっ、違いないな」
「じゃ、行くか」
暦のその言葉で覚悟を決めたか、二人は車の左右につく鏡の前へと立った。
その手のカードデッキをサイドミラーに付きつけ、それぞれの変身ポーズをとる。
そして、
「「変身!」」
二人の声は綺麗に重なった。
それぞれの鏡に入り、ディメンションホールをライドシューターで抜け、二人はミラーワー
ルドへと移動した。
正直なところ予想していたライドシューターから降りると同時の奇襲もなく、二人は無事に
ミラーワールドの地に立った。
「遅いわよ。まったく」
ライドシューターを降りるなりかかってきたその言葉に、二人は黙って視線で返事を返した。
二人の目の前には、武器をまだ召喚していない王蛇=ゆかりの姿がある。
「さ、始めるわよ」
ゆかりが口火を切り、そして戦いの火蓋も切って落とされた。
<ソードベント>
<スウィングベント>
<ストライクベント>
王蛇=ゆかりの手にはベノサーベル、ライア=神楽の手にはエビルウィップ、ガイ=暦の手
にはメタルホーン。
戦闘開始の合図を告げるように三者三様の武器がそれぞれの手に握られる。
「じゃあ、分かってるな、神楽」
小さく呟いた暦に、神楽は一瞬考えてうなずいた。
「ああ、・・・少し気が引けるけど」
二人の事前の戦略は、王蛇=ゆかりの剣を片方があしらい、その隙に後ろからもう片方が攻
撃するという方法。
そして予定通りの二手に展開し、前後からの攻撃。
王蛇=ゆかりと相対するはガイ=暦、すなわち後方に回るのはライア=神楽。
しかし、王蛇=ゆかりはそれに対し、巧みに後ろからのライア=神楽による鞭の一撃を避け、
それでいてガイ=暦に的確な一撃をいれる。
それほど早いというわけではないが、その動きはまるで後ろが見えているかのように無駄と
隙がない。
その動きを警戒し、いったん王蛇=ゆかりから離れ、二人は顔を見合わせた。
「どうなってるんだ?」
「なんでもわたしに訊いたら答えが返ってくるとか思ってないだろうな?」
「・・・いや、別に」
「なんなんだ、その一瞬の間は!?」
そんな二人を見て、余裕そうにゆかりが口を開く。
「まさか二対一の勝負で私が何も考えずにたたかうと思ってんの?
大サービスよ。教えてあげるわ。よーく聞きなさい。
いい?今の私に死角はないと言っていいわ」
「どういう、ことですか?」
不可解な言葉に、謎を見極めるように睨み付ける二人。
その視線の中、王蛇=ゆかりは悠々と答えた。
「せっかく契約したんだから、モンスターは十分活用しなくちゃいけないってこと。ゴー!」
王蛇=ゆかりの言葉一字一句に集中していたため、その言葉に対する二人の反応は遅れた。
後ろから迫る殺気、振り向いた二人の眼前には王蛇の契約モンスター、ベノスネーカーの姿
があった。
《ジャァ》
その声と共に、口から吐き出される溶解液。
「ぐっ、」
初動作の遅れた二人は完全にそれを避けきれず、とっさに手の武器で受け止めた。
ジュゥといういやな音を立てて瞬く間に溶けて崩れるメタルホーンとエビルウィップ。
それを地面に放り投げたときには二人にもさきほどの動きのからくりがうすうす読めていた。
「・・・そうか、最初からベノスネーカーを召喚しておいて、こっちの攻撃を教えていたんです
ね」
「そゆこと」
うなずきながらそういうとゆかりは一歩踏み出した
「形勢逆転ね。さあ、どうする?」
「・・・、神楽、奥の手だ」
余裕綽々のゆかりの言葉に、ガイ=暦はポツリとつぶやいた。
それを聞くと同時にライア=神楽は手と足を動かした。
足は、ベノサーベルを構える王蛇=ゆかりのほうに。
そして手は自分の左手のエビルバイザーへと。
<コピーベント>
ライア=神楽が入れたカード、コピーベントの効果は、対象ライダーが最後に使ったカード
をコピーすること。
それによってライア=神楽のその手にベノサーベルが握られる
そしてそれと同時にもうひとつの音が響き渡る。
<コンファインベント>
コピーベントと同じく特殊カードのコンファインベント
効果は対象ライダーが最後に使ったカードを無効化すること。
すなわち、王蛇=ゆかりの持つベノサーベルの消去
結局の形として、王蛇=ゆかりは持っていた武器を問答無用でライア=神楽に奪われたこと
になる。
精神的な攻撃もかねた、ほとんど奇襲に近いこれを、王蛇=ゆかりはあわてずにその手の杖
型バイザーで受け止めた。
その杖が断ち切られる音と、王蛇=ゆかりが地を蹴る音が同時に鳴る。
ベノバイザーが折れた代わりに王蛇=ゆかり自身は無傷でその剣を回避した
バイザーも、差し込むところは無傷で残っているため、実質被害はゼロに近い。
しかし、それでも間違いないはずの再形勢逆転にもかかわらず、王蛇=ゆかりの不敵な態度
は変わらない。
「へぇ、やってくれるじゃない」
「もう騙されませんよ。今回は躊躇せずにカードデッキを破壊させてもらいます」
そういいながら、ライア=神楽から受け取ったベノサーベルを手に王蛇=ゆかりに一歩一歩
近づくガイ=暦。
その後ろで、いつ何が起こっても対処できるようライア=神楽も王蛇=ゆかりから注意をそ
らさない。
二人にとっては今の形勢は「詰め」に他ならない。
―――しかし二人は、ゆかりのその余裕がどこから来ているのかすぐに知ることになる。
「あ〜ら、本当の切り札って言うのは最後まで見せないもんよ。
それにしても惜しいわ。友情なんて甘っちょろいものさえ捨てられれば、あんた達なら結構
いい線いけたと思うんだけどねー。
あんたもそう思わない、にゃも?」
「「なっ!!」」
二人の耳に届く草を踏みしめる音
バトルに夢中で接近に気がつかなかったが、そこにいたのは紛れもなく、黒沢みなもこと、
仮面ライダーインペラー。
しかし、インペラー=みなもは今、大阪たちと戦っているはずなのだが・・・・・・
勝ったにせよ、負けたにせよ、いまこの場に現れることができるはずがない。
「ライダーとしての姿を見るのは神楽は3回目ね。
水原さんはライダーとしては始めてかしら」
声はそれが本人であることを告げている。そして、その声に疲労は見当たらない。
「そんな、どうして・・・」
「・・・そうか、これが手だったのか、」
困惑するライア=神楽に対し、ガイ=暦はすべてを悟り、地面に己のこぶしを打ちつけた。
「あら、水原さんは分かったみたいね」
「・・・わたし達を二組に分断して、どちらかは放って置いて、もう片方を撃破。それがそっち
の戦略だったんですね」
その言葉でやっと神楽も何が起こっているか理解した。
「・・・ってことはつまり、黒沢先生は元から榊たちと戦う気はなくて、最初っから二人でわた
したちと戦うつもりだったって事か?」
「そゆこと。今頃榊たちは待ちぼうけ食らってるでしょうね。
よしんば気がついたとしてもこっちに駆けつけてきたころにはもう遅いってわけ」
「卑怯だぞ、ゆかりちゃん!」
「あーら、これで2対2よ。さっきまでのあんた達のほうがよっぽど卑怯なんじゃないの?」
「「う・・・・・・」」
そういわれると返す言葉のない二人ではある。
確かにさっきまで、数を利用した戦いをしていたのだから。
「黒沢先生、どうしてゆかり先生と手を組んでいるんですか!?」
神楽の問いに、みなもは少し考えて、ポツリと答えた。
「・・・覚悟のため、かな。
まあ、ライダーが残り二人になるまでだけど」
「どうせ最後に勝つのは私だけどね」
「さぁ、それはどうかしら。」
最後の一句を言い終わるが早いか、みなもから感じる雰囲気が一変する。
緩いものから、鋭いものへと。
「さてと、じゃ改めて第二ラウンド開始といきますか。足引っ張んないでよ、ゆかり」
その言葉と同時に、滑るような動作でカードが右膝に付いているガゼルバイザーへと差し込
まれた。
<スピンベント>
その音とともにインペラー=みなもの手に巨大な二本のドリルのような武器、ガゼルスタッ
ブが握られる。
トン、という、地面を蹴る音。
それと同時に理解を超える速度で二人の目の前にインペラー=みなもは現れた。
驚異的な跳躍力で、一歩で間合いを詰めたのだ。
たとえ、それに驚愕しようとも、硬直するわけには行かない。
横振りの攻撃を紙一重で避け、二人は左右に分かれた。
こうなれば二人が固まっていることにメリットはない。
そしてインペラー=みなもが先に狙いを定めたのは、仮面ライダーガイ。すなわち、暦。
インペラーのその速度、跳躍力、さらに武器のリーチが合わされば、数メートルの間隔など
あって無きに等しい。
ライダーとしての跳躍力と、みなも自身の運動能力を生かした空中での連続蹴りを防御して
受け、ガイ=暦は後ろへと数歩後退する。
さらにスピンベントによる風を切りさくほどの鋭い突きを右手のベノサーベルでかろうじて
防ぎ、さらに一歩下がってガイ=暦は二枚目のコンファインベントを差し込んだ。
それと同時にインペラー=みなもの手に付いていたスピンベントが嘘のように掻き消える。
ライア=神楽が動く間もないほぼ一瞬の攻防劇。
そしてまるでそれを待っていたかのようなタイミングでインペラー=みなもが後退した。
「よけろ、よみー!」
(え?)
コンファインベントが無事決まったことに安堵する暇無く暦に届いた神楽のその声。
確認するために首をひねったのと、背中に途方もないほどの衝撃を受けたのはほぼ同時。
さらに続く数回の衝撃の後、掬い上げられるような形で下から蹴り上げられる。
かなりの重さを持つライダーの体が浮き上がり、そのまま空中へ数メートル投げ出された。
体がばらばらになるかのような感覚、そして、空中で暦は気を失った。
神楽が気がついたときには既に王蛇=ゆかりのファイナルベント・ベノクラッシュは発動し
ていた。
ガイ=暦がコンファインベントを入れるとき、どうしても一時的に体を止めざるをえないこ
とを利用したのだろう。
すでに救うのが間に合うタイミングではなく、神楽にできたのは叫ぶことだけだった。
王蛇=ゆかりの放ったベノクラッシュによりガイ=暦の体は軽々と数メートルの高さまで蹴
り上げられる。
そのまま落ちてくるその体を、地面に叩きつけられる前に神楽は必死で受け止めた。
「おい、よみ、おい!」
腕の中でぐったりとするその体からはゆっくりと光の粒子が上り始めている。
「おい!」
なんどもよびかける神楽。そしてそれが一瞬の判断を鈍らせた。
<ファイナルベント>
その音が何を意味するか、気がつき振り向いたときにはすでに回避するには遅すぎた。
インペラーのファイナルベント、ドライブディバイダー
どこからともなく現れ、瞬く間に近づいてくるゼール系モンスターの群れ。
通り過ぎていくそれらに蹂躙されながらも必死で倒れたガイ=暦をかばうライア=神楽。
しかし絶え間ない攻撃の中、神楽もまた、その意識を保てずに手放し、ゆっくりと地面に倒
れこんだ。
そしてそれに遅れること数十秒
図られたことを悟り、全速力でドラグレッダーの背中に乗った龍騎=大阪と、ダークウィン
グを背中につけたナイト=榊がその場に到着したとき、そこにはすでに二人の教師達の姿は
なかった。
最後の力を振り絞ったのか、あるいは教師達が運んだのか、気を失った状態で神楽と暦は空
き地で倒れていた。
そして、二人の手にそれぞれのカードデッキは残っていなかった。
二人とも幸いにも命に別状はなかった。
しかし、かおりんと同じく体力を衰弱し、気を失ったまま昏々と眠り続ける二人
そしてそんな親友達の姿に、智はかつての師二人と戦い、敵を討つことを決意する。
一回現実世界に帰った後、自分を狙うモンスターの気配を感じ、ゆかりは再びミラーワール
ドへと入った
そしてそこで遭遇してしまったのはあまり見たくない二つの顔。
「あら、あんたたち、生きてたの?」
「ぬけぬけと・・・よくも騙してくれましたね!」
「許しません!」
目の前に立ちはだかる二人の黒い擬似ライダー・オルタナティブにゆかりは小さくため息を
ついた。
せっかくけしかけたのに、まったく意味がなかった上、よりにもよって自分のほうに帰って
きてしまった
どうせ騙されたことに憤っているのだろう。
「はっ、甘いわね。騙されるほうが悪いのよ」
「「・・・・・・!」」
絶句したらしい
せっかく真実を告げてやったにもかかわらず、眼前の擬似ライダーたちはさらに怒りを増し
たようだ
二人がベルトへ手をやったのを見て、ゆかりもその手をベルトへと伸ばした。
≪ソードベント≫
<ソードベント>
目の前の二人が剣、スラッシュダガーを持つと同時にゆかりもその日二回目のベノサーベ
ルを手にする。
しかし、二人はゆっくりと斬りあう気はないらしい。
ゆかりが動くよりも早く、続けて二枚目をカードスラッシュする。
≪アクセルベント≫
聞きなれぬ名前のカード、アクセルベント?
(アクセル、ってことは加速?)
その思惑通り、次の瞬間二人はライダーの視力ですら捕らえきれぬ速度でゆかりの横を通り
過ぎた。
それももれなくスラッシュダガーの一太刀というおまけつきで、だ。
ただ、速度も合わさり多少のダメージはあったが、とても致命傷とはいいがたい。
「やるじゃない。でも、今の一撃で決められなかったのは失敗だったんじゃない?」
衝撃で倒れた体を起き上がらせ、ゆかりが呟いたその言葉に、黙って二人はデッキから二枚目の
アクセルベントのカードを引き抜いた。
そのままオルタナティブの二人に圧倒的優勢に勝負が運ばれ、瞬く間にゆかりは追い詰めら
れた。
なぜか二人はかなりの量のアクセルベントのカードを持っているらしく、底を付きそうにな
い。
今でたぶん・・・・・・5枚目くらいだろうか。
(・・・ちょっとまずいわね。二人いるんじゃ暦と同じ方法は無理だろうし)
楽観主義のゆかりがそんなことを考えざるを得ないくらいかなり絶体絶命の状態に陥ったそ
のとき、
《グルゥゥ》
《キァー》
咆哮を上げ突然二匹のモンスターがオルタナティブの背後から現れた。
ガイ=暦の契約モンスター、メタルゲラス
ライア=神楽の契約モンスター、エビルダイバー
おそらく、現実世界で感じたモンスターはこいつらだろう
驚くオルタナティブを押しのけ、おそらくはさっきの恨みとばかりに攻撃してきたモンスタ
ーたち。
それにひるむどころか、心の中で喝采を送りながら、ゆかりはデッキへと手を伸ばす。
二匹の攻撃の寸前、ゆかりはメタルゲラスとエビルダイバーに二枚のカードを突きつけた。
それぞれの絵が書かれたコントラクト・契約のカード
むろん先に戦った彼女の元教え子達の変身するライダーのものだ。
あの後、なぜか最後に膝蹴りの一撃を加えず(ゆかりはモンスター戦で一度ドライブディバ
イダーを見ている)、インペラー=みなもは気を失っている二人からカードデッキだけを抜き
取り、その体を現実世界へと戻した。
で、ゆかりはそのカードデッキを拝借したというわけだ。
ひるんだように動きを止めた二匹のモンスターを見て、さらにゆかりはアドベントで彼女自
身の契約モンスター、ベノスネーカーを呼び出す。
アドベントで召喚され、黒き擬似ライダーを前に彷徨をあげるベノスネーカー。
「一回これ使ってみたかったのよ、ねっ」
最後の一声とともに、ゆかりのベノバイザーに差し込まれるカード。
<ユナイトベント>
その音とともにゆっくりとベノスネーカー、エビルダイバー、メタルゲラスの三匹のモンス
ター達が重なる。
そして完全にその三つの影が一つになったとき現れる禍々しき獣帝の姿。
同時にゆかりの胸に、まるでモンスターの心が流れ込んできたかのように湧き上がる、今ま
で感じたこともない破壊衝動と高揚感。
「名前はジェノサイダー――虐殺者、か。」
直後、咆哮と悲鳴がミラーワールドに響き渡った。
というわけで、第八章でした。
・・・今週中にあと最低一章は書いときたいです。
ミネルバ氏だ。乙!連続投稿言われて終わる前に出勤してしまいますた(w。
最後の一節乗せますね。
>>244-248 「無事に変身できたか・・・」
「で?あんたは私達に何をやらせようってわけ?」
「言ったはずだ・・・コアミラーを守れ・・・」
「ふーん・・・ま、私は面白そうだから賛成」
「ゆかり、あんたそんな簡単に!」
「だってさー出口見つかんないんでしょにゃも。」
「う・・・あのーそのコアミラーを守ることを手伝ったら出口を教えてくれるの?」
「約束する・・・」
「はい!質問です!一体誰からこれを守るんですか?」
「詳しいことはリュウガに聞け・・・」
「え?」
「・・・ばれてたんですねー」
リュウガは渋々と後ろから出てきて彼らへと近づいていった。
「へ?・・・あんた誰?」
「・・・リュウガ、彼らと一緒にコアミラーを守れ・・・」
「ちょ、ちょっと!・・・消えちゃった。困ったわね」
「消えてしまいましたね。ところであなたのお名前は?」
「リュウガでいいですよー。(しかし士郎もめんどくさいこと頼みやがったな・・・)」
誰知れずこっそりため息をついたあと、リュウガは彼女達にこれからのことを話し始めた。
【次回予告】
『高校で待ってます・・・』
「へーモンスターも無口なのか?私のモンスターはちょっとトロそうな感じだな」
「くそー負けた!」
「・・・別にいいよ」
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
鷹さんてば、出勤前の朝時間にアプしてたんだ・・・・・・遅刻しないように
がんがれ〜!
今日は時間ないんでこぼれ話。ちょと遠いけど30話前後から。
仮面ライダーインペラー死亡。残されたライダーは―あと12人。
インペラー死亡・・・かおりん死亡決定!?
しかし出勤前とは、敬服です。
わたしゃぎりぎりまで寝てますゆえ。
では私も第九章です。
第九章
(ったく、ゆかりの奴)
心の中で文句を言いながら彼女、黒沢みなもは視線を前へと向けた。
そこには、こちらを睨んでいる二年前まで今彼女たちのいる高校の生徒だった滝野智の姿が
ある。
智は高校水泳部の顧問である彼女と、英語教師である谷崎ゆかりに会いに来たらしいのだが、
生憎ゆかりのほうはすでにもう学校から帰っている。
―――ちなみにまだ学校は終わってすらいない。
今年は担任するクラスがないからなのだが、それにしてもつくづく不真面目な教師だ。
なんでも会う予定の人物がいるかららしいのだが、約束をするにしても、学校が終わってか
らにすればいいだろうに。
・・・・・・まぁ、そんなのといつまでも縁が切れない自分も自分なのだが。
腐れ縁という奴はどこまでも断ち切るのが難しいものらしい。
(ま、私も恨まれてもしょうがない事したんだし、諦めるしかないか・・・)
確かに滝野智の親友である暦と神楽をゆかりと謀ってライダーバトルから脱落させたのは彼
女である。
命の危険にまでさらしたのだから謝ってすむことでもないだろう。
もっとも、もとより謝って済まそうなんて思ってはいないが。
どちらにせよ、ライダーとして戦いを挑まれた以上、逃げ出すわけには行かない。
二人の眼前にはすでに鏡があり――この場合、すでに鏡の眼前に二人がいると言うほうが正
しいか――どちらも経験上、特別授業でもなければそこにはほとんど誰も来ないことを知っ
ている
彼女はゆっくりとポケットに入れていた手を出した。
言うまでもないがその手には茶色のカードデッキが握られている。
同時に、智もその手の緑のカードデッキを前に掲げる。
「じゃ、いきましょうか」
「ああ」
(やれやれ、相当嫌われたわね)
その心中を顕著に表している智の口調に、彼女=みなもは心の中で苦笑すると、すでに変身
ポーズに入っている智を一瞥してから己自身も姿を異なるものへと変化させて、その身をミ
ラーワールドに投じた。
ミラーワールドに入ったのは校内だが、ライドシューターから降り、二人が立つのは校庭。
黒沢みなもの変身する茶のライダー、インペラー
滝野智の変身する緑のライダー、ゾルダ
二人は数メートルの間を空けて向かい合っている。
風のみが動かぬ二人の間を通り過ぎる。
張り詰めた緊張、その中で、二者は同時に動いた。
スピンベントを召喚するインペラー=みなもに対し、ゾルダ=智は立て続けに五枚のカード
をベントインする。
シュートベント二枚、ガードベント二枚、そしてストライクベント。
そして立て続けに空中からその手に渡った5つの武器、それらをすべてゾルダ=智は己の身
に装着した。
肩の上にはギガキャノン、左脇に抱えるはギガランチャー。その右甲にギガホーン
両肩につくギガテクター、さらにランチャーに付随するギガアーマー
一言で言うと―――――『完全武装』
通常ひとつしか装備しない武器を複数装備することは激しい体力の消耗につながる。
しかし、インペラー=みなもはそんな悠長なことを言っていられる相手ではないという判断
の上だ。
・・・・・・ただし、一回やってみたかったという気持ちも半分くらいはあったりする
「だぁー」
ゾルダ=智の威勢のいい掛け声とともに発射される三発同時のシュートベント
単発ならば、たやすくとは言わないまでも避けることが可能な攻撃だが、その連鎖攻撃に死
角はほとんど、いや、まったくない。
二撃を避けたものの、残りの一撃を腕に食らい、インペラー=みなもはその右膝につくガゼ
ルバイザーに更なるカードをベントインした。
<アドベント>
「ギガゼール、援護しなさい!」
インペラー=みなものその声とともに、20匹を超えるモンスター達が校庭へと現れる。
ギガゼールだけではない。
同じレイヨウ型モンスターで、ギガゼールより色の少し薄いメガゼール。
同様に白き体と曲がった角を持つネガゼール、
さらには緑と金色の体躯で、カールした角を持つマガゼールの姿もある。
そしてそれぞれがなにかしらの得物を手にしている。
「無駄だー!」
「さぁ、それはどうかしら、ギガゼール!」
再びインペラーに向けて放たれた3発のシュートベント
そしてそれと同時に、その軌跡上にギガゼールが飛び出した。
連鎖する三発の光弾すべての回避は不可能。
ただし、それは相手が一人であれば、の話である。
三発の内、一発をギガゼール達が盾となってわざと食らえば、残りの二発をインペラー自身
が避けることは不可能ではない。
無傷の回避に成功し、次弾を打つまでのその隙に近づこうとするインペラー=みなも。
しかしその胸に命中するレーザーとミサイルがそれを許さない。
「言わなかったっけ?わたしの武器はシュートベント二つだけじゃないんだぜー」
レーザーを発するストライクベント。
ホーミングミサイルを放つガードベント。
さらには威力は軽微ながらも速射、連射の利くマグナバイザー
ライダーの中でも、圧倒的な火力を有するゾルダ
そのデッキ構成は、遠距離戦ではほとんど無敵の強さを誇る。
ただし、それは同時に、近づかれると非常に弱いということを言っているに等しい。
逆に言うならば、遠距離攻撃能力を持っていないインペラーは、それだけ接近戦能力に優れ
ているということである。
すなわち、接近戦になれば、この戦況は確実に、覆る。
幾度となくその身体能力でゾルダ=智の放つシュートベントをかわし、あるいはギガゼール
達を囮に使い、インペラー=みなもはその手にスピンベントを持ち、ゾルダ=智へと接近を
試みる。
それに対し、ゾルダ=智はその能力、絶対的な火力と圧倒的な弾幕で決して寄せ付けようと
しない。
豊富な遠距離攻撃武器 対 反射神経と俊敏性+手数
無論、ゾルダの武器エネルギーは無限ではないが、同様にギガゼールやメガゼールたちも無
限にいるわけではない
いってみれば先に根を上げたほうが負けの我慢比べだろうか
そして、数分近くもその状態が続いたとき、今までほとんど動かなかったゾルダ=智が巨大
長砲を除いた武器を捨て、後退し始めた。
そして一瞬の隙を付き、校舎の中へと入り込む
(我慢比べは私の勝ちみたいね)
心の中でそう呟くと、みなもは指令を出すべく声を張り上げた。
「武器を捨ててゲリラ戦に切り替えたってことは相手の残りエネルギーは少ないわ。
一気に決めるわよ、オメガゼール、被害状況は?」
それに応えるのは彼女の命令で動くゼール系軍団を統率する最強のゼール系モンスターにし
て、真なるインペラーの契約モンスター、オメガゼール。
厳密に言うならば彼女、インペラーの契約モンスターはオメガゼール一匹で、他のゼール系
モンスターはオメガゼールに従っているに過ぎない。
まあ、それでも彼女の言うことは何でも聞くのだが。
唯一オメガゼールとだけは、マスクを通して会話ができるだけでなく、すぐそばにいなくて
もある程度近ければテレパシーに近い形で交信ができる。
司令塔的役割を果たすオメガゼールをいつも近くにおいておくことはできないので、非常に
ありがたいことだ。
もちろん他のゼール系モンスターたちとも一応会話はできるのだが、時間と手間の短縮のた
めに彼女との会話はオメガゼールが一括して行っている
『半分以上が負傷。とりあえず戦えるのは全体の6割といったところかしらね』
(思ったより被害は大きいか・・・、だけど、)
「たぶん向こうはもうすぐ弾切れするわ。念には念を入れて一応戦えるのを総動員して。
校舎の中で挟み撃ちする。少なくとも、地の利は私のほうにある」
『分かったわ。いいわね!』
そのオメガゼールの最後の言葉はインペラー=みなもではなく、ゼール軍団に向けられたも
の。
『『『リョウカイ』』』
その耳に届くギガゼールたちの忠実な返事。
満足そうにそれを聞くと、彼女も校舎の中へ足を踏み入れた。
さらに残ったゼール軍団もそれに続き、片っ端から校舎の中へと突入する。
ゾルダ=智のとるであろうゲリラ戦に対抗するために、みなもが取るのは数を武器にした人
海戦術。
ゾルダ=智にとっても三年間学んだ校舎だ。当然校舎の中は熟知しているだろう。
不意打ちを目的としているのならばすぐには見つからないか、と予想したのだが、ギガゼー
ルに放たれたシュートベントの音で、あっけないほどすぐに場所は分かった
すでにゾルダ=智のすぐ前にいるオメガゼールからの交信によれば、それほど離れた場所で
はないようだ。
何を考えているのか、三又、厳密にはT字路になった場所の交差地点でゾルダ=智は隠れる
様子もなく堂々とシュートベントを構えているという。
(どういうことかしら?まるで後ろからの攻撃を考えてないみたい・・・)
確かに後ろに回りこむためには相当のまわり道になるとはいえ、できないことではない。
ちなみに横のほうは、少し行ったところを曲がると行き止まりなので、そちらから回りこま
れることはないだろうが、それでも考えなしにやっているとしか思えない。
あるいは後ろの道は逃走経路のつもりなのだろうか。
「まあ、そのほうが好都合ね」
そう呟き、ゾルダ=智の背後から襲うようにモンスターに指示すると、自分もゾルダ=智の
ほうに向けて歩き出した。
そして再び今度も数メートルの間を空けて対面する二人
この距離ならば、インペラー=みなもには、一発のシュートベントならば、不意打ちでない
限り避ける自信がある
それが分かっているのだろう。ゾルダ=智も撃とうとはしない。
したら最後、次弾発射までの隙を突かれて接近されることは目に見えている。
「黒沢先生・・・」
「いい加減、観念したらどう?降参したら命まではとらないわよ」
「降参?本気で言ってるんですか?」
「・・・・・・交渉決裂ね。ギガゼール!」
彼女のその一言で、すでに後ろに回りこんでいたギガゼールがゾルダ=智に襲い掛かる。
その攻撃に、慌てふためいたように、ゾルダ=智は前と後ろを見渡し、手に持ったギガキャ
ノンを放り出して横の道へと入っていった。
今度こそあきれたようにみなもはつぶやく。
「まぁ、二年来てないんだから校舎の見取り図を忘れててもしょうがないか」
みなもは、智の曲がった角の先には絶対に逃げ道がないことを知っている。
マグナバイザーだけなら確実に数で圧倒できるだろう。
いや、彼女一人で十分かもしれない。
もし、そこで新たなカードを入れでもしたのならば音が聞こえるはずだが、その聴覚はそれ
を確認していない。
「・・・・・・命までとる気なんて最初からないけどね」
血の気の多いモンスターに最後を任せると万が一が起こりかねないため、みなもはオメガゼ
ールを後ろに控えさせて、ゆっくりとT字路を曲がった。
予想に反して攻撃は来ない。
姿が見えないことを考えると、さらに奥の曲がり角の向こうで息を潜めているのだろうか。
(やけにおとなしいわね、諦めたのかしら?)
そして己の勝利を確信しながらみなもが角を曲がったとき・・・
「え?」
目に飛び込んできた光景を頭が一瞬理解を拒否した。
一面に広がる緑。
そこにあったのは全砲門を開いた鋼の巨人・マグナギガの姿であった。
かちりというトリガーが引かれる音
目の前が真っ白に光り、みなもの意識は体と共に吹き飛ばされた。
「勝ったぞ、よみ・・・」
一度校舎の中に入ったとき、銃撃を行うまでに智はマグナギガをアドベントでそこに出して
おいたのだ。
ゾルダのファイナルベント、エンドオブワールドは出す前にかなり隙が大きい。
わざと後ろから相手の契約モンスターを回りこませて、そちらのほうへおびき寄せ、あらか
じめ用意していた不意打ちのファイナルベントでもって相手をしとめる。
智を知るものならば、彼女の性格に会わぬその頭脳プレーに首を傾げるかもしれない。
相手が大量のモンスターを所持していることを知っているからこそのこの作戦、実はインペ
ラーが黒沢先生であることを知って、暦が学校での戦闘用に提案した作戦だった。
智自身最初に聞いたときには一笑に付したその戦略を使ったのには、ライダーの戦いに散っ
た親友、暦に対する弔いのつもりだった。
―――なお、一応念のために付け加えておくと、暦は死んでない。
あの後、神楽は榊が、暦は智が看護してすでに二人とも元通りに近い状態になっている。
余談にはなるが、かおりも榊に看護してもらい、あの紫のライダーを恨むどころか感謝して
いるという噂も、ちらりほらり。
「黒沢先生、死んでないですよね〜?」
確認のためマグナギガの影から体を出したゾルダ=智
視界の中に入る、気を失っているらしいインペラー=みなもの姿。
そして、次の瞬間、ゾルダ=智は近づいてくる複数の気配を感じた。
恐る恐る振り向いた先にあった姿は、マガゼール、ネガゼールを始めとする10匹ほどのゼ
ール軍団。
その目は凶暴な色に光っている。
(あーー!ゼール軍団の残りのことをかんっぺきに忘れてた!)
インペラー=みなもとの戦闘の最初で武器はすべて使い切っているため、いまさら武器召喚
はできない。
校舎の中に入ってから暦の言っていたことを思い出したため、ファイナルベントの後のこと
まで考えていなかった。
己の失策を嘆くまもなく、ゾルダ=智は瞬く間に四方を完全に塞がれた。
そして容赦なくその身を打つ武器、武器、武器。
前述したとおり、ゾルダの接近戦のスキルは著しく低い。
防御面はともかくとして、攻撃面において、完全に対遠距離用にできているからだ。
ギガゼールたちの一撃一撃はたいしたことがなくても、衝撃を殺しきれるわけではない。
そしてネガゼールの頭への一撃を受け、ゾルダ=智は膝を折った。
さらに連続して頭部に加えられる衝撃。
遠のきかける意識の中、視界に入るのは止めとばかりに二又の剣を振りかぶるマガゼールの
姿。
回避しようにも体がまったく動かない。
そしてそれがゾルダ=智めがけ、振り下ろされる!
(やられたっ!)
次の瞬間に己の身に走る激痛を予想し、智は目をつぶった。
一秒、二秒・・・・・・
(あ・・・れ?)
恐る恐る目を開ける智。
そのすぐ目の前、そこで剣が静止している。
そして、その目は同時に、インペラー=みなもの覚醒を智に教えた。
そういえば、剣が振り下ろされる直前に制止の声が聞こえたような気がする。
どうやら既のところでインペラー=みなもは気を取り戻したらしい。
九死に一生を得たといったところか。
(けど、やばいことに変わりはないんだよな・・・)
《ギィ、ギィ》
「いいからやめなさい」
かろうじて意識は繋ぎとめているが、当然智はマガゼールがなんと言っているか分からない。
倒れた彼女の横にいるのは、同じく倒された契約モンスター、マグナギガの姿。
智は知っている。
―――彼女の契約モンスター、マグナギガは一回倒れたら、起き上がれないことを。
「・・・おい、マグナギガ。なんかこの状況を抜け出す方法はないのか?」
『無茶言うな!』
「ったく、情けねえなー。じゃあ、あのモンスターがなんて言ってるのか分かるか?」
『とーぜん』
「じゃ、通訳してくれ」
以下、モンスターの鳴き声省略。視点はインペラー
『マタカ?コレデヨンドメダゾ』
マガゼールが言っているのは、インペラー=みなもが関わったすべてのライダー戦のことだ
ろう。
一度目はライア・ゾルダ。次はライア・ナイト、そして三度目がライア・ガイ。
確かに、そのいずれも、確かに本気で倒すつもりなら倒せた戦いだった。
ただ・・・インペラー=みなもにはそれができなかった。
「だからなんだって言うの?私の命令が聞けないわけ?」
そういいながら、インペラー=みなもは立ち上がった。
とっさに回避行動をとったもののエンドオブワールドのダメージはやはり大きい。
そして倒れているゾルダ=智の横まで移動する。
『ソイツニハ、ワレラノナカマガハンブンチカクタオサレタ』
「悔しい気持ちは分かるわよ。でもやめなさいって言ってるでしょ。聞こえない?」
そしてみなものその言葉に対するマガゼールの答えは、
―――『アア、キコエナイナ』
「なっ!?」
予想していなかったその返事に声を上げるみなも。
『ワレラトテ、メノマエノエモノヲソウナンドモニガスモノカ』
「まさか私に逆らう気?」
『ソウダ。オマエハタシカニツヨイ。ダガ、イマノソノカラダデワレラニカテルノカナ?』
確かにその言葉の言うとおり、インペラー=みなもの体からはすでに金色の粒子が出始めて
いる。
先に受けたファイナルベントのダメージもあり、タイムリミットは近い。
「どうなってんのよ?あいつら、あんたの部下でしょ?」
みなものその言葉は、横に立つオメガゼールへのもの。
『私だってまさか裏切られるとは思わなかったわよ。・・・ヤキが回ったかしらね』
「説得は?」
『・・・無理でしょうね』
一瞬の逡巡の後、オメガゼールは首を振ってそう答えた。
『まったく、ライダーを倒すか倒さないか、あんたが優柔不断だからこうなったのよ』
「悪かったわね、でもしょうがないでしょ!?」
『・・・ま、確かに仮面ライダーインペラーとして契約した時点で選択肢なんてないしね』
仮面ライダーインペラーは使役するモンスターが多い分、大量のモンスターを倒さねばなら
ない。そして、なぜかライダーおよびその契約モンスターは、モンスターたちにとって非常
にいい餌だという。
むろん、願いがかなうというのも非常に魅力的ではあったが。
「まったく、わざわざゆかりと休戦してまで昔の教え子と戦ったって言うのに、分かったこ
とが、やっぱり私にはそういうことはできないってことだからね」
最初の二回はファイナルベントを十分撃てたにもかかわらず、みなもはファイナルベントの
カードをどうしても入れることができなかった。
三度目は、あえて同じライダーである腐れ縁の友、谷崎ゆかりと組んでかつての教え子達と
戦ったのだが、最後の最後、ファイナルベント、ドライブディバイダーは使ったものの、結
局最後の一撃を加えることができなかった。
『私はあんたが無理してまであいつらを手をかけなくって良かったと思ってるけど。
安心したわよ。』
「・・・あんたほんとにモンスターなの?なーんか、私そっくり」
最後に念を押すようにみなもは隣のパートナーに問いかける。
「あんたは私を裏切らないわよね」
『もちろん、最後までお供させてもらうわよ。たとえ行き着く先が地獄だろうとも』
「よく言った。・・・できればこの子は守ってあげたいけど、」
途中で切って、すぐ横で倒れているゾルダ=智に向けた視線を目の前に戻す。
迫り来るゼール軍団の壁。
「どっちにしても、できることをやるしかないか。
やっぱり私にはこういう役割のほうが性にあってるわ!」
『・・・わたしもそう思う』
そして、その言葉と共にゼール軍団は二人めがけ、襲い掛かった!
(くそっ、動け、動けよー!)
眼前で、自分を守るように戦うインペラー=みなもの姿に、智は己を叱責した。
せめて、手だけでも動けば、マグナバイザーは使える。
その目に映るインペラー=みなもを後ろから武器で殴ろうとしているギガゼールの姿。
インペラー=みなもはまだ気がついていない。
振りかぶられる武器。
このまま終わるわけには行かない。
このまま終わらすわけには行かない。
(動けーーーー!!!)
パーン
一回だけのはじけたような音、そしてインペラー=みなもの後ろで武器を構えていたギガゼ
ールがのけぞる。
たった一瞬、祈りは通じた。
そして―――それと共に智の体からすべての力が抜け去った。
その鼓膜を震わすマグナバイザーの発砲音。
「滝野さん!」
後ろに立つギガゼールを蹴り飛ばし、インペラー=みなもは倒れたゾルダ=智のほうへと駆
け寄った。
そして気づく。すでにゾルダのライダースーツからも光が上がりだしていることを。
「オメガゼール!」
『何よ?』
手に持った武器であっさりとギガゼール一匹を串刺しにしているオメガゼール。
そのギガゼールをほうり捨てて、オメガゼールはインペラーのほうに向き直った。
しかし、その体もすでに満身創痍、かなり傷ついている。
「この子をあの鏡のところまでお願い。私が囮になるわ」
『・・・!』
直後、返事の代わりにオメガゼールはインペラー=みなもの方へ跳び、その体を押し倒した。
みなもがそれを疑問に思うよりも早く、その眼前で巻き起こる大爆発。
幸いにして、二人のライダー、みなもも智も無事だが、かなりのゼールモンスターが巻き込
まれ、その一瞬で砕け散り、命を失った。
あるいはオメガゼールにかばわれなかったらインペラー=みなもも同じ運命をたどっていた
かもしれない。
そしてみなもの目は、その一瞬前にギガゼールたちを覆った青白い炎の塊のようなものを確
認していた。
「・・・また、新しいモンスターなの?」
『違う・・・』
オメガゼールの返事、そしてみなもの耳に響く足音。
だんだん近くなっているはずなのに、なぜかどんどん遠くに言っているように感じる。
ぼやける視界の中、みなもは、曲がり角から黒いライダーのようなものが現れたのを見て取
った。
そしてそれが周りのマガゼールやネガゼールたちを切り倒すのを見ながら、みなもは体の感
覚がだんだん失われていることに気がついた。
「・・・まだ、・・・」
その言葉を最後に、みなももまた、五感すべてを放棄し、意識を失った。
群がるゼール系モンスターたちをアクセルベントで一掃し、彼、オルタナティブ・ゼロは倒れ
た二人のライダーに目をやった。
「学校にモンスターが出たと思えばライダーだったんですか」
ミラーワールドに来たのは、生徒にかかりかねない火の粉を払うためだったのだが・・・
オルタナティブ・ゼロは、オルタナティブに比べ能力がアップしている――厳密にはオルタナ
ティブがオルタナティブ・ゼロよりもスペックダウンしているだけなのだが――代わりに、い
つサイコローグに裏切られて攻撃されるか分からない(インペラーにとってのゼール軍団同
様、契約関係ではないため)のだが、そんな小さなことを気にする彼ではない。
元来いい人である彼(自覚はないし、周りからもそう思われてはいないが)は肩に二人を担
ぐと現実世界へ戻るため、踵を返した。
ミラーワールド
ちよ宅への侵入モンスターを両手のデストクローで倒し、食事にいそしむデストワイルダー。
二匹のフェニックスの結界に守られているちよ宅の中ではデストワイルダーは短い時間しか
いられないため、もっぱら外で番犬ならぬ番虎をしているわけだ。
足音がして、その庭に誰かが入ってくる
すっと顔を上げ、確認の後デストワイルダーは再び食事に戻った
その足音の主、二人のオルタナティブは侵入者ではないことが分かっている。
と、突然その周りに金色の羽が散った。
再び顔を上げたデストワイルダーの前にいたのは、その姿を金色に輝かせるライダー。
しかし、見たことのないライダーであるにもかかわらず、敵愾心をむき出すといったことは
しない。
「仮面ライダー、オーディン」
その名を聞いて、金色のライダーが反応する。
家の中へと走って言ったオルタナティブが来訪者を知らせたのだろう。
ちよ宅の中からゆっくりと現れた謎の生物のすがたをした、その声の主であるちよ父。
その手は青色の、トラのレリーフの付いたカードデッキをかざしている。
「さがしたぞ、ちよ・・・」
そして、ついに二者が対峙した!
というわけで第九章です。
う〜む、7章と8章が読み直すとちょっと気に入らない
時間があるときに改良。できたらいいな・・・
13人目はミラーワールドのライダー
でもリュウガじゃない
そしてすでに登場はしています。
>299
乙!
『みなもVS智』戦、面白かったです。
あえて今は亡き(w 暦の作戦をつかう智、いいっす!
契約モンスターが契約者の分身みたいな所もナイスなアイデアですな。
301 :
メロン名無しさん:03/01/12 01:25 ID:e+2nKYQh
最後まで書き残るライターは誰だ!?
今日(いや、もう昨日か)はみんなお休みでしたね〜。
明日(いや、もう今日か)に期待して、眠ります。ぐっない!
最近名無し士郎さんやオーディソさんがいないな…
ミネルバ氏乙!フルアーマーゾルダ。なんちって(w
当方も第25話掲示しますかー!それにしても
名無し士郎氏とオーディソ氏どうしたのかなー?
カムバックキボンヌ。
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第25話変身】
キィィン・・・キィィン
『榊さん起きてください・・・榊さん』
自宅のソファーで寝ていた榊はまだ眠気のとれてない頭でぼーっと起き上がると、
声のする方へと身体を起こした。するとちよが洗面所の鏡の中に写っていた。
「ちよちゃんだ・・・」
『高校で待ってます・・・』
「え・・・?」
「榊さんどうしたの?」
ディスパイダーに襲われてこちらの世界に来てしまった優衣には、兄、神崎士郎以
外の知り合いもいなければ、安住の地もなかった。そんな優衣に
「ここで暮らしていいよ・・・」
と言ってくれた榊の言葉をありがたく思いながら、榊の家に住み着いている優衣は
ベットの上から榊に問い掛けた。
「ちよちゃんが来た・・・」
「ちよちゃんが?・・・ちよちゃんって確か榊さん達にカードデッキを渡した人だよね。」
「うん・・・」
「それで何て言ってたの?」
「高校に、来て欲しいって・・・」
「高校?」
「私達が通っていた高校だと思う・・・」
友人達との様々な思い出が残っている高校を榊は懐かしそうに思い出した。
「・・・決めた!なにかお兄ちゃんの手がかりがあるかも知れないから私も一緒に行くわ。」
「・・・わかった。」
榊は頷くと、急いで準備をした。車の免許を取得していた榊は優衣を乗せて高校前
へと着いた。休日のせいか、人通りも少なくとりあえず校門前で時間を潰していた
榊と優衣だが、やがて次々と高校に人が集まって来た。
「皆・・・」
「あ、榊さんおはようございます!榊さんもちよちゃんに呼ばれたんですか?」
「うん・・・」
「お、この前の人やーおはよー」
「お、おはよう」
「私春日歩と言いますーよろしくー」
「私は神崎優衣。よろしくね。」
「お、誰だ誰だ?もしかして昨日のライダーか?あーもう!思い出したら腹が立った!」
「いや落ち着けよ智・・・昨日のライダー?」
「よみ、それがさー、昨日いきなりライダーが襲ってきて大変だったんだ!」
「へぇ、どんなライダーだったんだ?」
和やかにそれぞれの体験談を話す一同を見て優衣は安心した。
(ここにいる皆がライダー・・・でもすごく仲がいいんだ。何だか少し羨ましいな・・・)
「あの、榊さん、榊さんのモンスターはどんな風に喋るんですか?」
「・・・普通かな」
「私のモンスターはとっても丁寧に喋るんですよ。」
「ほう、かおりんのモンスターは丁寧に喋るのか。私のモンスターは何だかトロそ
うな感じがする。」
(そういえばマグナギは走れるのか?・・・不安だ・・・)
「私のモンスターは生意気やー!」
そんな会話を聞いていた智はこっそりと神楽に胸の内を明かした。
「なあ神楽私のモンスターはきゅいきゅいってしか言わないんだけどモンスターっ
て喋るのか?」
「あ、当たり前だろ?」
「そっかーで、お前のモンスターは何て言うんだ?」
「が、がおーとか・・・」
「それ言葉じゃねーだろ」
『皆さん、お待たせしました。』
校門前に出来ていた、地面の水溜りからちよは皆に話しかけてきた。
「ちよちゃん遅いでー」
『すみません・・・みんな、来てくれてありがとう。今日はみんなでコアミラーを
探しに行きましょう!』
「よっしゃ!今日でコアミラーをぶっ壊すかー」
「そうだと思ったよ。」
「うわ!よみ冷めてる」
「ピクニックやー」
「ピクニックとはちょっと違うわよ歩さん。」
大阪に穏やかに突っ込む優衣をみてかおりんは感心した。
「優衣さんって大人ですねー」
(・・・でも榊さんには誰も勝てないけどね!)
「そ、そんなこと無いわよ。さ、行きましょう、ミラーワールドへ」
「・・・ああ」
榊が、神楽が、智が、よみが、大阪が、かおりんが、そして優衣が一斉にカードデ
ッキをちよのいる水溜りに反射させ、カードベルトを出現させた。互いに見つめあ
い、頷くとライダースーツを装着する為に身体がもっとも得意とする動きを行い身
体エネルギーを一気に集め、それぞれがカードベルトにカードデッキを装着した。
「・・・変身」
「変身だぜ!」
「変身だー!」
「変身だな」
「変身やー!」
「へ、変身!」
「変身」
よみが冷静に智に突っ込みながらミラーワールドに辿り着いた7人はちよを探し始めた。
「ちよちゃんどこやー?」
「おーいちよちゃーんどこだー!」
「・・・はい!お待たせしました。さあ、行きましょう!」
「おー!・・・でもそのコアミラーってやつどんな形なんだちよちゃん?」
「神楽さん、えーっとですね・・・黒い大きな箱みたいな形ですよー」
「よっしゃー!ドラグレッダーにも探してもらうか!」
ちよの言葉を聞き神楽はアドベントカードを取り出した。
「それはいいですね!みんなも契約したモンスターを使ってください」
「いいわよちよちゃん。」
「わかった」
「うん・・・」
《アドベント》
それぞれのカードバイザーからアドベントの声がミラーワールドに響いた。それぞ
れの契約モンスターが現れ、ミラーワールドは一気に賑やかとなった。
「私はデストワイルダーとこっちを探すよ・・・」
「私はあっちだー!行くぞダークウィング!おりゃー!(キュイイイイ!」
「なら私はあそこだ!!ドラグレッダー!智より先に見つけようぜ!(ウォォォン!)」
「ほなら私はあっちやー。えーっと・・・バオグリー?(バイオグリーザだ!」
「私はあそこに行ってみるよ・・・マグナギガやっぱり足も遅いのか・・・」
「私はあっちを探すね・・・ブランウイング乗せてくれるの?ありがと」
皆がそれぞれの方向へとモンスターと一緒に進みだした。そんな中一人かおりんは
もじもじと榊に話しかけてきた。
「あ、あの榊さん!」
「ん・・・?」
「榊さんと一緒に行ってもいいですか?」
「・・・別にいいよ」
「やったー!!ね、ネガゼール、皆を使ってコアミラーを探してといて!」
(承知!)
ネガゼールの咆哮がコアミラーに響いた。それと同時にミラーワールドを散歩して
いたゼール達がどこかへと跳躍しながら移動し始めた。
「・・・行こう」
「はい、榊さん!」
彼女達はそれぞれの道へと別れた。その頃、リュウガはゆかり、みなも、木村の3
人にこれからのことの説明を終えていた。
【次回予告】
「あー・・・つまりあれよあれ。戦え!」
「後は3人でやってください」
「・・・これを使え」
《ユナイトベント》
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
鷹さん乙です!
確かにオーディソさんと名無士郎さんの新作が最近ないのが寂しい
オーディソさんはこっちで書き込みがあるけど、名無士郎さんはそれすらないですし
2ができているのを知らない・・・ってのは流石にないか。
>2ができているのを知らない
ミネルバさんそれだったら当方泣くかも。・゚・(ノД`)・゚・。
埋め立てと保守を兼ねて「あずまんがー龍騎!」を書き込んでるけど、
やっぱりあずま士郎氏や名無し士郎氏、オーディソさんのSSがないと
寂しい今日この頃・・・
勿論いらだとばる氏とミネルバさんのSSも毎日楽しみにして待ってます(w
つまりあれかと。皆がんばろー。
鷹さん乙!
>榊の家に住み着いている優衣はベットの上から榊に問い掛けた。
一瞬、同じベッドで寝ていると勘違いしてハァハァした折れは逝ってよしですか〜?
榊はソファーで寝てるのね。
>312
きっと定期的にアプしないと契約モンスターに食べられちゃうんだよ・・・・・・
嘘です、スマソ(w
あ〜、彼らのアプが待ち遠しい。
今日の龍騎に凹んでいたのですけど、いつまでもその状態じゃいられないので
ビデオでエピソードファイナルを借りてきて見た本日。
第十章です
第十章
ミラーワールドで向き合う二人のライダー
その色は、片方は紫、そしてもう片方は―――紅。
紅きライダーは腕を組み、その手には何も持っていないが、
紫のライダー、王蛇の右手にはソードベント、ベノサーベルがある。
ライダーにとっては一秒足らずで間を詰められる距離。穏便な雰囲気では明らかに、ない。
「誰だか知らないけど、この前は何であの黒いオルタナティブとか言うのに止めをさすのを
邪魔したわけ?」
「で、それを知ってどうするんですか?」
紫のライダー、王蛇=ゆかりの問いに対する紅きライダーの返事はそっけない。
先ほどから王蛇=ゆかりが出している殺気を気に留めているようにすら見えない。
「ったく、とことんイライラさせてくれるわねぇ、あんた」
「・・・・・・・・・」
数日前のオルタナティブ戦、その最後、ジェノサイダーの誕生により怖気づいた擬似ライダ
ー達に攻撃する直前でゆかりは眼前のライダーにそれを邪魔されていた。
そしてその直後にゆかりがミラーワールドでのタイムリミットを迎えたため、ゆかりは捨て
台詞として、今日この時間にミラーワールドのこの場所で待っていると言い残し、ミラーワ
ールドを後にした。
というわけで、こうして学校を早退してミラーワールドに来ているわけだ。
―――早退の理由がほしかったわけでは決してない・・・だろう、多分。
その言葉に応じて来るかどうかはかなり疑問だったのだが、ゆかりが変身しミラーワールド
に入ったとき、すでにそこには紅きライダーの姿があった。
ゆかりがその紅きライダーに会ったのは数日前が初めてではない。
以前、ライダーになってすぐのころに王蛇=ゆかりはこの眼前にいるライダーに襲われ、あ
っさりと負けている。
その時は、その紅きライダーから情けを掛けてもらった上に、他のライダーをすべて倒せば
なんでも願いがかなうということを教えられた。
そして、どういうことかは知らないが、他のライダーにもそれを吹聴して回っているらしい。
「・・・・・・ま、過ぎたことはどうでもいいわ。
忘れてないわよ、あんたに負けたこと。
今日はリベンジということで戦ってもらうわ。
それに、願いをかなえるためにはあんたも倒さなくちゃいけないんでしょ?」
その言葉に、紅ライダーは頷いた。そして組んでいた腕を解く。
「そうですね。あなたが戦いたいというのなら、戦いましょう。
それにちょっと事態が急変しまして、ちょうどわたしもあなたと戦う必要ができたんです」
同時に生まれる、さきほどまでは微塵も感じられなかった紅きライダーの存在感。
一瞬二人の周りを渦巻く風が熱風へと変わる。
それを感じ、おもわずゆかりはマスクの下で口の端に笑みを浮かべた。
「やっぱりこうでなくっちゃね〜。さ、時間がもったいないわ。さっさと始めましょ」
「あ、大丈夫ですよ。長引くことはありませんから―――『ソードベント』『ガードベント』」
紅きライダーの武器召喚。前回合間見えたときは最初から武器を手にしていたため、ゆかりはそれを始めてみる。
「長引くことはありませんから」の一句にカチンと来たゆかりだったが、その光景を見せられ、
そんな小さなことは吹き飛んだ。
驚くべきことに、紅きライダーの発したその声とともにそのライダーの両の手から炎が巻き
上がり、一瞬の後それは左の手で剣に、右の手で盾へと姿を変えた。
もちろん、バイザーなど使うどころか手に持ってすらいない。
「なによ、それ。今なんかすごいことしなかった?」
ゆかりの言葉に、紅きライダーはこともなげに答えを返す。
「そうですか?ソードベントとガードベントはわたしカードなしで使えますから。
あ、サービスで一応教えてあげましょうか?
わたしの武器はこのガルトセイバーとガルトシールドだけですよ」
「ふーん。でもこの前はその剣と盾だけで負けたのよね。
・・・って言うか、だけですよー、って、私の武器ベノサーベル一つだったわよ?」
「で、でも王蛇にはベノクラッシュがあるじゃないですか。
ほら、わたしのファイナルベントはベノクラッシュみたいな攻撃技じゃないですから。
・・・あ、そういえば見せたことないですから分かりませんね」
「それは皮肉か?」
確かに、前回戦ったときは剣戟でも圧倒され、放ったファイナルベントはその盾で防がれて
いる。向こうがファイナルベントを出す状況にすらならなかった。
一瞬その屈辱的な戦いの内容を思い出し、ゆかりは頭を振ってそれを記憶の外に追い出した。
「まっ、その余裕そうな口たたいていられるのもそこまでよ。
あのときとは違うし、なにより今日の私には三枚もファイナルベントがあるんだから」
ゆかりが口にした三枚のファイナルベント、それが何を意味するか。
紅きライダーの返事に非難の色が加わる
「・・・・・・契約カードだけじゃなくて盗んだファイナルベントまで使う気ですか?」
「あら、盗んだなんて人聞きの悪いこと言わないでほしいわね。
あいつらにとっての無用の長物を拝借しただけよ」
「それを一般的に盗んだ、っていうんです。まったく、しょうがないですね。人の物をとる
のは犯罪ですよ」
呆れたように紅きライダーがその言葉を言い終わるが早いか、王蛇=ゆかりはカードを一枚
手に取り、ベノバイザーへと差し込んだ。
それは下を向いたエイの図柄が書かれた朱のカード。
その認証音がベノバイザーから響き渡る。
<ファイナルベント>
「悪いけど初っ端から全力で行くわよ!」
王蛇=ゆかりのその威勢のいい言葉とともに現れた、本来ならばライア=神楽の契約モンス
ターである赤きエイ。
その姿を見ても、紅きライダーに動じる気配はない。
「エビルダイバーですか。仮面ライダーライアの契約モンスターですね。
ということは、ファイナルベントはハイドベノン。
本当にやるんですか?無駄かもしれませんよ?」
その言葉を忠告ではなく挑発と取り、王蛇=ゆかりは一回肩をすくめエビルダイバーの上に
飛び乗った。ライアのファイナルベントは見たことがある。
ベノクラッシュならば、ファイナルベントの認証音とともに体が最適化された動きをするの
だが、ハイドベノンではそうも行かないらしい。おそらくは元来の契約モンスターではない
からなのだろうが。
「減らず口もこれを食らったらいえなくなるでしょ、行きなさい、エビルダイバー」
「・・・どうぞ来てください」
まるで、紅きライダーのその言葉に反応するかのように、エビルダイバーは背中に王蛇を乗
せ、加速し始める。
赤き残像が尾となるほどのその速度。
見る見るうちに縮まる二者の距離。
そして、すれ違う瞬間、紅きライダーは地を蹴り、そして王蛇=ゆかりは空を舞った。
エビルダイバーの突進に対し、紅きライダーはジャンプしながらエビルダイバーの上の王蛇
=ゆかりを地面に叩き落したのだ
ちなみにエビルダイバー上で、紅きライダーの攻撃に対してとっさに振られたベノサーベル
はガルトシールドで完全に防がれた。
王蛇=ゆかり自身にはダメージはないが、無論紅きライダーのほうにも被害はない。
「なかなかやるわね・・・・・・」
「もうやめませんか?」
哀れむような響きのその言葉に神経を逆なでされたか、王蛇=ゆかりは再びカードを手に取
った。
そのカードに書かれた図柄は―――サイ。
「うるさいわねー、とことんやってやるって言ったでしょ」
「あれ、いいましたっけ、そんなこと?」
「えーい、二枚目!」
<ファイナルベント>
そして現れるのは、重々しく銀にきらめく二足歩行のサイ。
本来ならば仮面ライダーガイ・暦の契約モンスター、メタルゲラス。
「今度は仮面ライダーガイのファイナルベント、ヘビープレッシャーですか?
無駄だと思いますけど」
「問答無用!」
「まぁ、いいですよ。来てください」
またも紅ライダーの声と共に、メタルゲラスは一回首を回し、王蛇=ゆかりを己と紅きライ
ダーの間に挟み、一直線に突撃する。
王蛇=ゆかりは軽く跳び、本来ならばメタルホーンがあるべきその手にベノサーベルを持ち、
モンスターにその身を託す。
さきほどのが赤き弾丸ならば今度のはさしずめ銀の戦車だろうか。
「今度はさっきの方法じゃ防げないわよ!」
その言葉に、紅ライダーは体の重心を気づかれないくらいゆっくりと横にずらした。
そして再び両者が接触した瞬間、
突撃してきた王蛇=ゆかりの体は横へはじき飛んだ。
回避方法は、重心を横にずらし、己の体に王蛇=ゆかりの体が触れる直前に、触れるであろ
う点を中心に体を90度回転。
そしてそれと同時に横殴りの掌底。
どんなに強力な突進も横からの攻撃には案外もろいものである。
それだけでなく、二つのファイナルベントをたやすく防げたのには、今のヘビープレッシャ
ーもさっきのハイドベノンも所詮は本物ではない紛い物であることも関係している。
本当の契約ライダーと契約モンスターが力を合わせなくては、ファイナルベントの真の威力
は発揮されない。
「二枚目も不発でしたね。だから言ったのに」
「ぐぅぅぅ、三枚目ー!」
弾き飛ばされ倒れた状態から起き上がると同時にゆかりがカードデッキから引いた三枚目の
カード。
紫のそのカードに描かれし図柄は、蛇。
<ファイナルベント>
三度目のファイナルベント
三度目の正直とでも言おうか、それと共についに姿を現す、正真正銘仮面ライダー王蛇・ゆか
りの契約モンスター、ベノスネーカー。
口から吐く液はいかなるものをも溶かすという、巨大な紫蛇。
「三枚目。最後はベノクラッシュですか。まあ、いいですよ。止めはしません。
でもそれが無駄っていうのはすでに一回身を持って経験してるはずですよね?」
「無駄かどうか、ためして見なくちゃ分かんないわよ。」
地を蹴り疾駆するその足。
十分な加速状態で跳び上がり、すでに己の真後ろに控えているベノスネーカーとその足を接
触させる。
地上での己自身の加速に加え、さらに空中でのベノスネーカーによる再加速で、すさまじい
スピードで紅きライダーへとせまる、数々のモンスターに加え、シザースとガイ、二人のラ
イダーをも葬り去った、王蛇のファイナルベント、ベノクラッシュ!
しかし、三度変わらず紅きライダーに避けようというそぶりはない。
その王蛇のバタ足のようなキックを一旦己の右手の盾、ガルトシールドで防ぐと、そのまま
有無を言わせず盾を振り、王蛇=ゆかりの体を地面に叩きつける。
それがかつて戦ったときに紅きライダーがベノクラッシュを破った方法。
そして、おそらくは何もしなければ今回もその結果は変わらない。
―――ならば、
「ベノスネーカー!」
ベノクラッシュの最後の瞬間、ゆかりのその言葉とともにベノスネーカーはその口から、盾
を構える紅きライダーへと溶解液を吐き出した。
王蛇=ゆかりが狙うは溶解液とベノクラッシュの同時二連撃。
溶解液が先ならば、それで盾を溶かせればよし、盾を溶かしきれずともベノクラッシュに耐
え切ることができなくなれば盾はその役を足さなくなる。
ベノクラッシュが先ならば、盾を振り払った瞬間紅きライダーは溶解液を浴びることになる。
しかし、紅きライダーはその攻撃に一瞬たりともあわてることなく、盾で先に到達した溶解
液を受け止めると、躊躇なくそれを迫る王蛇のほうへと投げ捨てた。
当然ながら、それに当たってもわずかに速度を減じただけで、王蛇=ゆかりのファイナルベ
ントは止まらない。
そして、そのわずかな減速の間に、紅きライダーはその右手に炎を生み出し、もう一本のガ
ルトセイバーを召喚した。
インパクトの瞬間響き渡る硬い音。
ベノクラッシュを受け止める、交差された二本の紅き刃!
強力無比な蹴撃と、剣による絶対防御。
一瞬の均衡の後、剣が折れる音と、そして王蛇=ゆかりが後ろへ弾き飛ばされる音が重なっ
た。
両者痛みわけ・・・ではない。
折れた剣で虚空を振り払う紅きライダー。
一瞬刀身と同じ色の紅き炎が剣を纏い、そして剣は・・・元通りに復活した。
まるで、不死鳥が炎の中から甦るが如く。
「まぁ、大体何を考えているかくらい予想はできます。
だけど、何でこういうことには妙に頭が回るんですか?」
「・・・・・・」
紅きライダーの言葉にゆかりは一歩退いた。
あせっているわけではない。
三連続ファイナルベントを防がれた今、それでもゆかりには最後の手段が残されている。
「わたしに戦いを挑むことの無益さが分かりましたか?
わたしはすべてのファイナルベントを知っています。
そして、あたらなければ、どんな強力な技も無意味です」
「すべてのファイナルベント?それはどうかしら」
その言葉に紅きライダーはその動きを止めた。
ゆかりの言葉の真意を測るかのようにその姿を見つめる。
「ふっ、私をここまで追い詰めるとはね・・・こうなったら、最後の手段よ。
ジェノサイダーのファイナルベント、あんたでためさせてもらうわ、良いわね?」
「あぁ、そういう意味ですか・・・それはあんまり良くないんで考え直してもらえませんか?」
言っている内容とは裏腹に、紅きライダーの口調にあせりは見受けられない。
むろんそんな言葉にはまったく耳を貸さず、王蛇=ゆかりは、まずユナイトベントではなく
ベノスネーカーのアドベントのカードを手にした。
当然ながらすぐにはベノバイザーに入れず、それを紅きライダーのほうへと見せ付ける。
「どう?これが私の奥の手、モンスターを合体させるユナイトベントよ。」
もし紅きライダーがベントインの邪魔をする動きを見せたならばゆかりはあえてそれを受け、
その上でユナイトベントを引きなおし、ベントインするつもりだったのだが、紅きライダー
に動く気配はない。
動く代わりに紅きライダーは言葉を口にする。
「ひとつ忠告しておきましょう。ユナイトベントはモンスターを融合させるものではありま
せんよ」
「?じゃあ何なのよ」
「・・・このカードのプロトタイプです」
そういいながら紅きライダーは始めてカードデッキから一枚のカードを取り出した。
それは[CONTRACT]、すなわち契約のカード
しかし、そこに書かれている絵は大きな丸がひとつだけ。
契約したモンスターの名前が書かれるはずの場所には「REDHP」の5文字が書かれてい
る。
「赤HP?再DHP?何そのモンスターの名前、なんて読むの?」
「さぁ。わたしにも分かりません。未完成ですから。」
「ふざけてんの?ま、ユナイトベントが何だって別にいいわ。
ジェノサイダーのファイナルベント、ドゥームズデイからは絶対に逃げられないわよ。
なんたってブラックホールなんだから」
その言葉と共にゆかりは再びカードデッキからカードを引きなおし、
ユナイトベントをベノバイザーに差し込んだ。
ベノバイザーから発せられた音とともに、ベノスネーカーを挟むようにメタルゲラスとエビ
ルダイバーが重なり、融合していく。
ライダーへ変身するときのような反射光が煌き、君臨する獣帝ジェノサイダー。
咆哮をあげるその姿は、ベノスネーカー時よりも何倍も禍々しく、荒々しい。
そして、やはり融合と同時にゆかりの心に満ちてくる破壊衝動。
「最初っからこれを出しとくべきだったかもね」
王蛇=ゆかりがファイナルベントのカードを手に取ったのを見て、紅きライダーは嘆息した。
「・・・、やむをえませんね。無理やり融合させられたままじゃ皆さんがかわいそうですし、」
その言葉とともに、いずこからともなく杖の形状の紅きバイザーが現れる。
それを手に取り、紅き不死鳥のライダーは始めてその己のバイザーにカードを差し込んだ。
<アドベント>
「なっ・・・」
気を失う前、最後に王蛇=ゆかりが聞いたのは、ガルトバイザーから響いたモンスター召喚
の声、そして眼前に現れた灼熱の不死鳥、ガルトフェニックスの咆哮だった。
対峙したちよ父と金色の鳳凰のライダー・オーディン
しかし、ちよ父は口をつぐんだままオーディンに背を向けた
ちよ父のついてこいといわんばかりの行動にオーディンは黙ってその後を歩く。
家の中、奥の奥の部屋
大きな鏡の目の前で二人の一旦歩みは止まった。
そして二人はその中へと入っていく。
ミラーワールドから現実世界へ。
その先に待っていたのは、光のほとんど差し込まれることのない薄暗い部屋、
そして、その部屋の中で大きなベッドに横たわる少女の姿だった。
死んではいない。浅いが息はちゃんとしている。
形容するなら、死んだように眠る少女、というのが最も適当だろう。
「良かった、わたしの体、無事だったんですね・・・」
それを見、小さくそう呟くとオーディンはゆっくりとその体に近づき、
そしてその手を少女に触れた。
その瞬間、光の珠がオーディンの体から飛び出す。
そして同時に少女の体からも光の珠が現れる
刹那、二つの珠が放つ光が空間を支配した
数秒の後、二つの光の珠は、それまでとは異なる主の体の中へと吸い込まれ、それとほぼ同
時にあたりを照らしていた光も消える。
そして、完全に光が収まったとき、それまでオーディンがいた場所にその姿はなくなってい
た。
その場に残っているのは鳳凰の描かれたカードデッキと数枚の金色の羽。
そしてちよ父とオーディンが先ほど通った鏡の中には金色の鳳凰、ゴルトフェニックスの姿
がある。
ベッドに横たわる少女の顔の色が徐々に明るく、生気を取り戻していく。
それを見、ちよ父は眦を少し下げると己も鏡の中へと戻っていった。
そして、少女はゆっくりと目を開けた。
ルルルルルル
ポケットに入れてある携帯電話がなっていることに気づき、大阪はそれを慌てて取り出した。
発信元を見ず、いつまでもなれぬ危なっかしい動作でそれを耳に当てる
買った直後は逆に持ったりしていたものだが、いい加減その間違いは(あまり)しない。
「もしもし・・・・・・えぇ?・・・今から?・・・家やなー?うん、すぐ行くわー」
大阪にだけではない。
榊、神楽、暦、かおり、ライダーとなったもの全員のところへかかってきた電話。
電話の向こうから聞こえる懐かしい声は、いまからちよ宅へ来てほしいと告げた。
ちよ宅の門の前。
榊と神楽が最初に、そしてわずかにそれに遅れて暦、かおり、そして大阪が。
電話を受けてから全員がそれぞれにとっての全速力でそこへ集まった。
ただ、そこには仮面ライダーゾルダこと智の姿はない。
そして五人が集まったと同時に開く門
「あ!」
智がいないという一抹の不安は、ちよ宅の玄関を見て吹き飛んだ。
そこに立っていたのは滝野智、黒沢みなも、そして、一年ぶりに姿を見る美浜ちよであった。
以上、第十章です。
いよいよオリジナルライダーの登場です。
それがどういう役目を果たすのか?
請うご期待(嘘です)
さてと、今日の龍騎、何が凹んだって、朝10時に起きてビデオ見たら
録画途中で ビ デ オ が 切 れ て ま し た
泣きたかったです(TT)
まあ、何とか知り合いで今日の龍騎をビデオにとってたのがいないか探しますけど。
ミネルバ氏キタ━━━━ヽ( ゜Θ゜)ノ━━━━!!!!
乙!オリジナルライダーに激しく期待。
ビデオ切れ・・・あう。マジで痛いですな・・・
今回は予告まで素晴らしいので是非見てくださいませ。
久しぶりの書き込みになりますが、続きを書いてきた訳でも、保管サイトを更新したわけでも無く
一応生存報告と言うか何と言うか(w
気づけば新スレも300超えて、保管がオッツカネ(´Д`;)
そろそろバリバリ保管していきたいところです、ハイ。
龍騎が終わる頃には続きを書けると思うので、
私を待っている方はもう少しそのままマターリでお待ち下さい。
余談
本家龍騎、展開凄すぎ(´Д`;)
>337
わぁ〜い、久々のオーディソさんだー!
>続きを書いてきた訳でも、保管サイトを更新したわけでも無く
ああ、消費税を10%にアプする謀略を練っていたのだな?
この腐れ官僚、早く続き書けぇぇぇ!
・・・・・・すみません。妄想です。告訴は堪忍してください(w
続きは気長に待たせてもらいます。
をぉぉぉぉぉ
オーディソさん、新作は今週の終わりかー、
龍騎の最終回も近いし・・・
わたしも早いとこ残りの3章+エピローグ書き上げてうpしなけらば
・・・その前に今週の龍騎がなんとしても見たいけど。
龍騎が見れる当てがやっとついたので歓喜しつつ、
それでは、次章です。
第十一章
ちよの視界の中、門は、開いた。
その向こうにある五つの姿。
「みなさ〜ん」
「ちよちゃん!」
「ちよちゃんや〜」
飛び跳ねながら手を振るちよ。
そして歓声とともに、門から駆けて入ってくる高校時代の親友達。
ちよも玄関からゆっくりと前へと歩を進めた。
ちよにとってほぼ一年ぶりに見る彼女達のその姿は、最後にあった時とほとんど変わって
いない。
みなが元気であることは知っていたが、こうして見ると、また安心感が押し寄せる。
―――そう、もう見ることもできないかと思っていただけに、より一層。
まず、大阪以外の四人、榊、神楽、暦、かおりがちよの前にほぼ同時に到着した。
着くなりちよの体を高く持ち上げる神楽。
ちよの顔のわずか下にある暦と榊の顔が、タッチの差で出遅れたことを悔しがっているよう
に見えるのは気のせいだろうか?
「うぉー、本物のちよちゃんだー」
「神楽、次はわたしな」
「良かった・・・、あ、わ、私も・・・」
「アメリカで行方不明って言うから心配したんだよー」
「ご心配をおかけしてすみませんでした、って、降ろしてください〜、あー、榊さんまで〜」
抗議の甲斐なくちよの体はしばらく空中を手から手へと行き来した。
そして、四人に遅れること約十秒。
ふらふらになった大阪がちよの元へとたどり着いた。
「ち、ちよちゃーん」
「大阪さん、ひさしぶりです。・・・あの、大丈夫ですか?」
今にも倒れかねない大阪に言葉をかけるちよ。
―――宙に浮きながらだが。
「た、たぶん。そやけどこんなに一生懸命走ったのはひさしぶりやー、」
体を折った状態で深呼吸を繰り返し、体を起こして大阪はちよのほうを凝視した。
「あれー、ちよちゃん、なんで飛んどるんやー?」
「え?なんで、ってわたしに言われても困りますけど」
「大阪もやるか?」
その言葉とともに、神楽の手を離れ大阪の前へとちよは着地した。
「よし、わたしも〜」
そういうと、大阪もちよのわきの下に手を入れ、力を込めて・・・
「「あ〜〜〜」」
―――そのまま二人とも後ろへ転倒。
「あはははは、しっぱいや〜、ほなら、もう一回」
「だめです!」
「そうか〜、ざんねんやなぁ、・・・あれ?」
少し後ろの玄関に立つ四人を見て、乱れた息を整えながら、大阪は腕を組む。
玄関に立つ四人、うち二人は大阪にとっても顔見知り。
その二人、滝野智と黒沢みなもはなにやらしゃべっているみたいだが。
かろうじてその会話がちよの耳に入ってくる。
「うーん、感動の再会だな〜、わたしはもうさっき済ませたけど」
「・・・・・・ちよちゃんに抱きついて押し倒すのが滝野さんにとっての感動の再会場面なの?
危うくちよちゃん窒息しかけてたわよ」
「そういう小さいことは、気・に・し・な・い」
後ろから聞こえる智の言葉に言いたいことはいろいろとあったが、ちよは言葉を飲み込んだ。
「智ちゃんに、黒沢先生、それと・・・」
四人のうち、残る二人は大阪にとって見覚えのない少女達。
まぁ、ミラーワールドの中では会っているのだが。
そして大阪の視線につられ、榊達もそちらのほうへと視線をやる。
「あれ?どこかで会ったことあったことがあるような気がするんだけどなぁ・・・」
確かに暦も彼女達に二年前に会ってはいるが、流石にそれを完全に記憶の引き出しから取り
出すのは難しいらしい。
再会がうれしくて、ちよは自分の役割である互いの紹介というのをすっかりと忘れていた。
「あ、紹介が遅れましたね、わたしの小学校時代の同級生のみるちーとゆかちゃんです。
みるちー、ゆかちゃん、さっき紹介した智ちゃんとここにいる五人が高校の時からのわたし
の親友だよ」
ちよのその言葉とともに、二人は五人のほうへ頭を下げながら声をそろえた。
「「はじめまして」」
「あ〜、聞いたことのある声や」
少し考えて、大阪はなにか思い出したように手を一回叩くと口を開いた。
「そうや!たしか、おる・・・なた・・・てぃぶ・・・やったっけ?」
「・・・オルタナティブです。その節はご迷惑をおかけしてしまって、」
一瞬顔を強ばらせ、律儀に髪の長いほうの少女(といってもすでに高校生だが)、すなわちゆ
かが訂正した。
・・・まぁ、大阪を良く知っているちよは心の中で、ムダかもしれないと思っていたが。
そのみちるとゆかのそれぞれの簡単な自己紹介の後、ちよは、みなの知りたいであろう話は
家の中ですると言い、全員を家の中に招き入れた。
皆を自分の部屋の中に招待し(それでもスペースはぜんぜん余裕がある)、ちよはまず頭を下
げた。
「みなさん、こんなことに巻き込んでしまってすみませんでした。
みなさんも予想はしていたかもしれませんが、ライダーを作ったのは、わたしなんです。
それで少しでもみなさんの気が晴れるのなら、どんな償いでもするつもりです」
それは偽りのない、ちよの正直な気持ちだった。
アメリカでの自分の研究が、友を巻き込むことになるなどとはさすがのちよも予想だにして
いなかった。
自分のつくったライダーという存在のためにみなを危険な目に合わせてしまったのだ。
帰ってくるのは罵詈雑言か、最悪絶交の言葉をちよは予想していた。
「まぁまぁ、別にちよちゃんがミラーワールドとモンスターを作ったってわけじゃないんだ
ろー?」
予想の範疇をはるかに超えた智のその答えに、伏せていた顔を思わず上げるちよ。
「それは、そうですけど、でもわたしはみなさんに恨まれても仕方がない事を・・・」
「そうか?少なくともわたしは別にちよちゃんを恨んでなんかいないぞ。
だいたいカードデッキがなけりゃ最初にモンスターに襲われた時点でアウトだったからな」
「そーいうこと。榊も大阪もよみもかおりんもそうだろ?」
「・・・ああ」
「あたりまえや〜」
「ま、そりゃそうだな」
「恨むわけないじゃない」
皆の言葉に再び顔を伏せるちよ。
熱くなる目頭からこぼれそうになる涙を必死で抑える。
「じゃあ、ちよちゃん、まずミラーワールドのことから詳しく話してくれないかしら」
その声の主に皆の、特に暦、神楽の厳しい視線がつきささった。
「そういえばなんであなたがここにいるんですか、黒沢先生?」
「え?気がついたら、この家の中で、滝野さんと一緒に寝てたんだけど・・・」
「そんなこと訊いてません!」
一拍の間をおき、みなもはうつむきながら、小さな声で謝った。
「・・・・・・反省してます」
「反省すればいいもんじゃ、」
「まあまあ、」
いきり立つ暦と神楽をなだめる智。
いったんそれでみなもに刺さる鋭い視線は抜けたが、代わりに智に、幾分鋭さを減じたそれ
が突き刺さる。
「何で智が黒沢先生をかばうんだ?
・・・そういえば智と黒沢先生が一緒に寝てたって、どういうことだ?」
「なんか変な誤解してないか、よみ?
にゃもちゃんとのライダーバトルでさー、ちょっと油断しちゃって、」
「にゃもちゃ・・・」
「ライダーバトル?油断?」
―――説明のため中略、詳しくは前々章―――
「なるほど、智は黒沢先生に助けられたわけか」
「そういうこと。にゃもちゃんに感謝しなきゃなー」
「滝野さん、そのにゃもちゃんって言うのはやめてくれない?
・・・でも、最後は誰が助けてくれたのかしら」
「さぁ、それはわたしにも分かりません」
ちよは、目覚めた直後ゴルトフェニックスに、二人が危機に面していることを告げられ、高
校に駆けつけた。
そしてちよがたどり着いたときには、すでに二人はミラーワールドからで、保健室に寝かさ
れていた。
誰の仕業かまでは分からなかったが、ちよは無理を言って二人を家まで運び込んだというわ
けだ。
なお、智より先に気がついたみなもから話を聞いて、ちよの父は「あれほど使うなと・・・」
と言って、どこかに出かけていった。
誰が助けたのか分かったのかもしれない。
そして、その直後に大阪たちに電話をかけて、集まってもらった。
結局智が起きたのは、大阪たちが門の前に集まる直前だった。
どちらにしろ、こうなると神楽や暦もみなもを一方的に責めるわけには行かなくなる。
降りた沈黙を幸いにと榊がかわりに口を開く。
「・・・ちよちゃん、続きを」
「ええっと、じゃあわたしの知っていることをお話します。
さっき黒沢先生にも訊かれましたけど、皆さんがそろってからのほうがいいと思ったので」
「ということです。」
「なるほど。・・・で、ライダーは、えーと、わたしによみ、神楽に榊に大阪にかおりん、ゆか
りちゃんとにゃもちゃん、じゃなかった、黒沢先生で8人だろ。あとは?」
指折り数えながら智はちよに訊いた。
その問いに、ちよはポケットから金色のカードデッキを取り出した。
その中央には鳥の図柄がかかれている。
金色の鳳凰の力を借りたライダーに変身するための彼女自身のカードデッキ。
「・・・わたしもライダーの一人、仮面ライダーオーディンです」
「やっぱりちよちゃんがおーでぃんやったんかー。なんでそう言ってくれへんたん?」
「えっと、それについては後で詳しく説明します」
「・・・…じゃあ、あの紅いライダーについては?」
「すいません。それも、後に回させてください」
両質問ともある程度は答えられないわけではないが、大阪に続き、榊の質問も後回し。
再び、ライダーの数を指折り数えて智が訊く
「じゃぁ、紅いのを入れて10人、っと。13人にはライダーが3人ほど足りなくないか?」
その言葉に、ちよは、この部屋にいる全員、すなわちみちるとゆかもライダーだと智に告げ
た。それによって皆の視線が少女達のほうを向く。
「えー?おるなたてぃぶもライダーなんー?」
「・・・いえ、二人もちゃんとしたライダーだったんです」
大阪の問いにちよは、周りから見たら何かを諦めたかのように見える表情の後、首を横に振
った。
そしてそのちよの言葉を受けて、ゆかとみちるもそれぞれ己の変身する、いや、変身してい
たライダーの名を告げた。
「わたしは白鳥モンスター・ブランウィングと契約したライダー、ファムです」
「で、わたしがカメレオンモンスター・バイオグリーザと契約したライダー、ベルデ・・・・・・、
だったんですけど、二人そろって、あの紅いライダーに倒されちゃいまして」
「それでおるなたてぃぶになっとったんか〜」
――――もはや誰も修正する気もないらしい。
「・・・これで、ええっと、ライダー全部で12人か。」
「これでここにいるのは全員だな。」
面子を見渡して、確認するように暦が言った言葉にちよは鷹揚にうなずいた。
「そうですね。あと、お父さんが仮面ライダータイガでしたからそれで全員がそろいます」
「ちょっと待ってくれ、ちよちゃん。
さっき契約カードは全部で11枚って言わなかったか?
それならライダーの数が13人じゃ数が合わないんじゃないか?」
至極当然の神楽の問い、なのだがちよがそれに答えようと口を開き「あ、それは、」と言った
ところで智の邪魔が入った。
「なにぃ、神楽、よくそんなところまで聞いてたな!わたしは気がつかなかったぞ!」
「まだまだ甘いわね、智」
ため息と共のかおりの言葉に智の声のボリュームがさらに跳ね上がる。
「なにー、じゃあかおりんも気づいていたというのか!?」
「当然。というか、多分この中で気がついてなかったの、智、あんただけよ」
え、そうなの?といいながら辺りを見回す智。
うなずくのは暦。答えず顔をそらす(肯定と同じ)榊、神楽、他多数。
否定の言葉は誰からも上がらない、と思いきや・・・・・・
「あ〜、わたしも気付かへんたで〜」
「大阪、誇らしげに言うな」
「おー、仲間よー」
「ちよちゃんの後ろで抱き合ってる馬鹿どもは放っておいてだ、ちよちゃん、」
冷たいような暦の言葉だがこの場面では適切かもしれない。
いや、むしろこの場合冷静な言葉というべきか。
「・・・ライダーの数ですか。それについてはわたしからも説明できますけど、
ただ、わたしもすべてを知っているわけじゃないんです。
いえ、どちらかというと、知りたいことのほうががたくさんあるんです。
例えば、なぜ皆さんがライダーとなり、ライダー同士の闘いを強要させられたか。
そして、あの紅いライダーは誰なのか。
すべてを・・・教えてくれますね?」
ちよは最後の一言を、ちよの背後で戯れている大阪と智に、
・・・・・・ではなくさらにその奥、壁にかかっている鏡に向かって発した。
そこにあるのはさきほどからこちらを見つめる視線。
そして、それが誰なのか、ちよは確信の思いを持っていた。
『そうですね』
鏡から聞こえてきた言葉にじゃれあっていた智と大阪も含め、皆がいっせいにそちらのほう
に向き直る。
ちよの予想通り、鏡の中に映るフェニックス、すなわち不死鳥、をモチーフとした紅きライ
ダーの姿。
13人のライダーの中で唯一のイレギュラーな存在、ミラーワールドのライダー。
そして、他のライダー達全員にライダーバトルをそそのかした正体不明のライダー。
奇妙なことに、その背景は、今彼女達がいる部屋ではない。
おそらくは、ちよ宅の庭。
しかし、奇妙なのはそれだけではない。
「どういうことだ、ミラーワールドがつながったのに気がつかなかったぞ!」
そう、確かにミラーワールドとこちらの世界がつながれば響くはずの音、そしてそこにいる
者達が聞き逃すはずのない音を捉えたものは誰もいない。
ちよも、視線を感じていたから気がついたのであって、音で気がついたわけではない。
しかし、その謎は次の一言であっさりと氷解した。
『別になにかしたってわけじゃないですよ。
そこは特殊な結界の中ですから、二つの世界がつながりやすいんです。
あ、わたしのいる場所なら気にすることないですよ。
少し空間をゆがめているだけですから』
後半のあまり洒落にならないことをさらっと流し、一拍おいてそのライダーは続ける
『いいでしょう。・・・ただしこちらの用件が先です』
「用件って何ですか?」
ちよの言葉に、紅きライダーはこともなげに答えた。
『仮面ライダー王蛇を預かっています』
その言葉とともに、鏡の向こう、空から不死鳥のモンスターが舞い降りる。
そして、その足にはぐったりとした紫のライダー、王蛇が入った、光る檻のような物が握ら
れている。
ちよも、そしてそこにいるほぼ全員が知っている。それが誰の変身するライダーなのか。
「「「ゆかり先生!」」」
その光景を鏡越しに見て、ちよを含めたいくつかの声がはもる。
『安心してください。命に別状はありません。
ただし、返してほしければ私と戦ってください。』
それを受け、榊と大阪、その場にいてカードデッキを所持している二人は黙ってポケットの
中ならカードデッキを取り出した。
その行動に迷いは見当たらない。
『あれ?戦うんですか?あなた達の中の幾人かを危険な目に合わせた張本人ですよ?』
その言葉はまるで答えが分かっているのにわざと訊いているように聞こえる。
そして鏡の中のライダーの言葉に二人は首を横に振った。
「たとえそうだったとしても、見殺しにはできない・・・」
「3年間教えてもらった先生やしなー」
その言葉を聞き、ちよはその手の中のカードデッキを掲げた。
友が師を賭けて戦うというのに、自分だけ見ているような性格ではない。
「そういうことならわたしも加勢します。」
しかし、その意志は紅きライダーの
「あ、申し訳ないんですけど、オーディンはだめです。加勢は認めません」
という言葉であっさりと切って捨てられた。
「!、そんな・・・」
抗議を言いかけたちよを榊と大阪はさえぎる。
「大丈夫・・・」
「あんな悪いライダーなんかには負けへん」
まっすぐ鏡を見つめる二組の真摯なその眼差し。
それは今の二人の心を示しているようにちよには感じられた。
他の八人が見守る中、変身をし、鏡の中へと足を踏み入れる赤と黒のライダー。
ミラーワールドの中、すでに謎の紅ライダーは二振りの紅き剣を両の手に携えている。
その手に輝くは、柔も剛もいかなるものをも切り裂く灼熱の剣、ガルトセイバー。
「武器をどうぞ。わたしは不意打ちをしたりはしませんから」
その言葉に、まず大阪が、続いて榊がカードを手にとって、それぞれのバイザーへと挿入す
る。
ソードベントという声が二重に響き、二人の手に使い慣れたそれぞれの剣が握られた。
火花を散らし交差する視線
「お二人とは一度戦ったことがありましたね?
あれからどれだけ強くなったか、楽しみです。
そうそう、あの檻に入っている限り、王蛇が消滅することはありませんので、その点は安心
してください。
もう一点、わたしは絶対に死にませんから本気で闘ってくださっても結構ですよ」
「今度は絶対勝つでー」
二人はその言葉とともに、剣を構え、同時に一歩を踏み出した。
「ではわたしも遠慮なく行かせてもらいます・・・」
そして紅きライダーも剣を手に地を蹴った。
ウィングランサーとダークバイザーの二刀流のナイト=榊
ドラグセイバーを危なげに振るう龍騎=大阪
そしてガルトセイバーを操る謎の紅きライダー=??
最初三人が立っていたところのほぼ中間地点で、三者の剣がまずぶつかった。
ほぼ同時に振り下ろされる龍騎=大阪とナイト=榊の剣。
しかし、十分に勢いがついているそれを、紅きライダーは左手のほうの剣のみで受け止める
と、さも当然のごとく撥ね上げる。尋常な膂力ではない。
続く左右からの攻撃、前後からの攻撃、そのどちらにおいても、紅きライダーは無駄のない
唯の一振りですべてを受け止める。
さらに数度切り結び、埒が明かないと判断して一回紅きライダーから離れる二人。
ゆったりとした大阪に比べ、榊の視線は厳しい。
榊はさきほどの戦いの中ある事実に気づいていた。
「・・・どうして右手を使わない?」
「えー、今まで右手つかっとらんかったんか〜」
そう、今の前哨戦、防御にも攻撃にも、左手と同様に剣を握り締めている右手の一撃は一度
も繰り出されることはなかった。
―――まるで二人の力を見極めようとしていたかのように。
「気づいてましたか」
紅きライダーは小さくうなずくと、右手の剣を一振りした。
その刀身が空気を切り裂き、鋭い音を立てる。
「それなら使わないのは失礼ですね。今からは使わせていただきましょう、」
小さくそう呟くと、紅きライダーは二本の剣を羽根のように構え、疾走した。
龍騎=大阪とナイト=榊まで、二条の紅き線を残し紅きライダーは駆ける。
鏡の外から見えたのは紅きライダーの元いた場所から伸びる同じ色の影。
反射的に剣を構えた二人の眼前で固いもの同士がぶつかる音が鳴り、二人の体は後ろへと吹
き飛んだ。
一拍おいて、紅き影が二人の前で再び人の姿をとる。
ライダーの目ですら捕らえきれぬ、まるで間の空間が縮んだと錯覚するようなその動き。
崩れた姿勢を立て直す二人。
紅きライダーの双剣は、一瞬でその眼前に現れ、鋭く、そして舞うように薙がれる。
ほぼ反射的に突き出された剣がかろうじてその攻撃を受け止める。
しかし繰り出される一太刀一太刀が重く、ライダーの力をして受けきるのがやっと。
そして、一刀を受けきったときにはすでにもう一刀が牙を剥き襲い掛かろうとしている。
二人に攻める間などありはしない。
以前剣を交えたときよりも、そしてさっきよりも、その速度も威力も確実に、上。
前回惨敗したのとほとんど同じ状況。
それでも、結果は同じ、ではない。
「なかなか、やるじゃないですか」
攻撃の手を休めない紅きライダーの言葉に二人から返事はない。
捌くので手一杯で答える暇もないというのが正しいか。
しかし、それでも二人はかろうじてながらその攻撃を受けきっている。
『いけー、榊、そこだ、大阪、あーー』
『榊さーん、がんばってー』
『榊さん、大阪さん、負けないでください・・・』
鏡を通し、直接闘えぬものたちの応援が二人の耳へと届く。
その声に背中を押され、否が応にも二人の精神力、集中力は高まっていく。
二刀で捌いている分、龍騎=大阪よりもやや余裕があるナイト=榊。
天賦の才に加え、ライダーとしての卓越した能力は、絶え間ない紅きライダーの攻撃に生ま
れた一瞬の緩みを見て取った。
「・・・絶対に負けるわけには、いかない!」
「あっ」
そのわずか一瞬の合間を縫った捨て身のダークバイザーの一突きが、紅きライダーの体を掠
めた。
ダメージどころか、その鎧に傷一つすらつかなかったがそれによって刹那紅きライダーの注
意がナイト=榊のほうへとそれる。
「いまやー」
そして、その隙をつき、大阪の持つドラグセイバーの切っ先が紅きライダーの体を削り、火
花を散らした。
無言のままいったん二人から間を取る紅きライダー。しかし、もちろんダメージは0。
「まずまず及第点ですね、でも、剣だけじゃ無理だと思いますよ」
余裕を含んだその声を受け、二人は同時にバックルへと手を伸ばした。
≪アドベント≫
カードを入れたタイミングも同じなら入れたカードの内容まで同じ。
そのことに少し驚き、互いの顔を見合す二人。
しかし、すぐにその表情は引き締まる。
空を切る音と共に現れる二匹のモンスター。
榊=ナイトと契約するモンスター、闇の翼ダークウィング
大阪=龍騎と契約するモンスター、無双龍ドラグレッダー
「ダークウィング、援護をお願い。」
『・・・分かった』
「頼むでー、どらぐれっだー」
『まかしときー』
<ストライクベント>
まず龍騎=大阪の手にドラグレッダーの顔部分、ドラグクローが装着される。
もう片方の手には相変わらずドラグセイバー。
「どらぐくろーふぁいやーや!」
『いくでー』
その声とともに、前へ突き出されたドラグクローから吐き出された炎と、さらにドラグレッ
ダーから吐き出された炎が重なり合い、一つの炎塊となって紅きライダーめがけて一直線に
突き進む。
「無駄ですよ」
攻撃を確認し、ベノクラッシュを受け止めたとき同様、刃を交差させる紅きライダー。
そして巨大な炎塊はガルトセイバーによって至極当然のように受け止められた。
しかし、それによって一旦紅きライダーの視界は防がれる。
そこに生まれた一瞬の隙をつき、ナイト=榊はカードをバイザーへと差し込んだ。
<ナスティベント>
ダークウィングから放たれる超音波は、紅きライダーのみを狙ったものではない。
初めて使ったときと同様、全方面への無差別攻撃。
二人も巻き込まれる代わりに、これなら紅きライダーに避ける術はない。
それを察しているのだろう。紅きライダーも一歩も動かない。
その隙に榊は大阪に耳打ちすると、さらなるカードをその手に取った。
<トリックベント>
ナスティベントが切れると同時に発動されるナイトのトリックベント。
それにより、ナイト=榊の体が八つに分かれる。
もちろん本物はただひとつ。
鏡の外で息を呑む声。
「トリックベントによる分身でわたしの周りを取り囲み、
その壁役のナイトの陰に隠れて龍騎が攻撃する。
そしてわたしがひるんだところを本物のナイトのファイナルベントというわけですね」
たしかに紅きライダーの視界に映るのは七人のナイトの姿だけで、あと一人のナイトと龍騎
の姿はない、のだが。
「それで隠れているつもりですか?
ナイトの後ろにドラグセイバーが見えていますよ、大阪さん」
そういうと、紅きライダーは左手の剣を一薙ぎし、すぐ眼前に迫るナイトの一人を切り裂い
た。
確かにその後ろには、ドラグセイバーの切っ先が見えている。
倒れるナイト、そしてその後ろから現れたのはドラグセイバーをその手に持った龍騎、
ではなく、ドラグセイバーを手にしたナイトの一人!
そして響き渡る二重の音声
≪ファイナルベント≫
既にモンスターを召喚済みゆえ、その認識音から、ファイナルベントが繰り出されるまでの
タイムロスは、ほとんどない。
単発のファイナルベントならば防がれる可能性があると判断し、紅きライダーを罠に掛け、
生まれた一瞬の隙で二人は同時にファイナルベントを発動させたのだ。
本物のナイト=榊と龍騎=大阪がいた場所はフェイクの龍騎がいた場所のちょうど後ろ側。
むろん、分身に見せかけて、ナイト=榊は紅きライダーを囲んでいた。
そしてそれは図らずとも紅きライダーが唯一警戒していた攻撃。
「しまっ・・・」
一瞬の間隙を開け、赤と黒、二筋の流星が紅きライダーへと突き刺さった。
「これならどうや〜、
―――え?」
「そんな・・・・・・」
言葉を失う大阪と榊。
不意を撃つ形で完全に決まった二人のダブルファイナルベント。
にもかかわらず、晴れた煙の中から何もなかったかのように再び現れる紅きライダー。
『ちょっと待てー、あれでもだめなのか?』
『そんなのに勝てるわけないぞ!』
『卑怯者ー』
外の世界からの言葉に紅きライダーは小さく肩をすくめた。
「隙をついたドラゴンライダーキックと飛翔斬の同時攻撃。
ファイナルベントは重ねることにより威力を相乗しますから、
もし受けたのがわたしじゃなかったら、確実に勝負は終わっていました。」
その言葉に再び二人は構えを取った。
勝ち目がゼロであることを重々承知の上で。
しかし、二人の、いや、鏡を通してそれを見ているものたちほぼ全員の思惑を他所に、紅き
ライダーはなおも言葉を続けた。
「いいでしょう。わたしの負けです」
思惑が外れた者達が唖然とする中、その言葉と共に、二人の前にゆっくりと紫のライダーが
降ろされる。
地面に触れると共に、その周りを被っていた檻は砕け散った。
「約束どおり、仮面ライダー王蛇はお返しします。」
無論、それに異論があるはずもなく、二人は気を失った王蛇=ゆかりを現実世界のちよの
家の中へと運び込んだ。
現実世界に戻され、気を失っていたゆかりは(暦たちに水を掛けられ)案外早く目を覚まし
た。
起こす前に念のためと、榊が手を押さえていたので特に暴れるようなこともなかった。
その状態のまま、さきほどちよが皆にした説明をゆかりにも伝える。
鏡の中と外。一見すると非常に奇妙な形で対話が続行される。
鏡の外には先のメンバーにゆかりを加えた十人あまりの顔ぶれが、
そして鏡の中には一人のライダーが。
「じゃあ、話してもらいましょう」
『そうですね。機は熟しました。話すべきですね、わたしが誰なのかを』
そこで一泊置き、紅きライダーが次に口にしたのは衝撃的な一言だった。
『まず初めに言っておきましょう。皆さんにカードデッキを送ったのはそこにいる美浜ちよ
ではありません、わたしです』
「なに馬鹿なこといってんだよ、さっきちよちゃんがいってただろーが、」
智の反論。しかし肝心のちよからの反論は、ない。
「・・・本当なのか、ちよちゃん?」
沈黙にたまりかねたような榊の言葉に、ちよは首を縦に振った。
「はい。さっきも言ったとおり、わたしは皆さんをモンスターから救うため、その用を足す
ものを送りました。
ですけど、わたしが皆さんに送ったのはカードデッキじゃありません。
[SEAL]、封印のカードです」
「じゃあ、どうしてわたし達に届いたのはカードデッキだったんだ?」
神楽の問い。わずかに逡巡してちよはポツリと答えた。
「おそらくは、途中ですりかえられたんでしょう」
『その通りです』
その答えを肯定する、鏡の中の紅きライダー
『やむをえない事情があって、私はそれをカードデッキにすり替えました。
そしてそのさいに手紙も一部書き換えさせてもらいました。
よく見れば気がついたと思いますけど、途中から筆跡が変わっていたはずです。』
「・・・何のためにそんなことを?」
紅きライダーは榊のその問いに即答した。
『すべては世界を乱す存在、オーディーンを封印するために』
「「オーディーン?」」
むろんそこにいる者たちにとって初めて聞く名前。例外はただ一人、ちよのみ。
「また新しい名前が出てきたな」
「あかん、覚えきれへん」
頭を抱え、おーでぃーん、おーでぃーんとつぶやく大阪。
それを横目で見ながら神楽はその紅きライダーへと問うた。
「名前といえば、そういえばまだあんたの名前聞いてなかったと思うけど」
即答するかと思いきや、紅きライダーはすぐには答えなかった。
勿体つけているふうではない。
―――本気で悩んでいる。
「どうした?」
『困りましたね・・・わたしはライダーとしての名前を持っていませんから・・・
そうですね、紅オーディンとでも呼んで下さい』
紅オーディン、なんともまあひねりのない名前だ。(ごめんなさい)
「えー、ちよちゃんが変身するのがオーディンだろ?」
とは智の台詞。
ただでさえ、ややこしい名前が出てきたばかりなのに、という文句は飲み込んだ。
「じゃあ、わたしの変身するのは金オーディンとでも呼んでください」
「金オーディン?」
「で、そこにさらにオーディーンってのが出てくるわけか・・・」
仮面ライダーオーディンを金オーディンにしても根本的な解決にはなっていないが、
とりあえず話を進めるためには納得せざるを得ないらしい。
『そういうことです。ライダーとして皆さんには知る権利、いえ、知る義務があります。
申し訳ありませんが、真実を知ることを断ることはできません』
てなわけで11章でした。
・・・長いですね、ムダに。
書いててこんなに長くなっているとは気がつきませんでした。
ま、まぁ残す2章はもっと短くなる予定ですから。
え?ミラーワールドのライダーの名前?
そういう小さい(?)ことは、気・に・し・な・い♪
・・・ごめんなさい、もうこんなことはしませんから許してください。
オーディソ氏キタ━━━━ヽ( ゜Θ゜)ノ━━━━!!
ミネルバ氏11章乙!
ライダーの契約モンスターはそのライダーと同じ口調なんですね。可愛いのう。
長いことはいいことだ!って言葉があるので気にしない気にしない。
むしろ当方もこれくらいナイスなSSを書けるようになりたいです^^。
あと2章・・・楽しみに待ってますねー。改めて乙!
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第26話獣帝】
「・・・という訳なんですよー」
リュウガの話が終わったとみて木村・みなも・ゆかりの3人はそれぞれ口を開いた。
「なるほど・・・つまりライダーはカードを使って戦うのですか」
「木村先生そうですー。カードには種類がありますが、基本的にはもっともその場に
適したものが選ばれるようになっていますよー」
「ちょっと待ってよ!だからどうして私達が、そのコアミラーってのを守らないとい
けないのよ!」
「あー・・・黒沢先生は真面目ですねー壊されると私と士郎さんが困るからですよー」
「んなことより早く戦わせろー!!」
「・・・!ゆかり、あんた自分の言っていることわかってるの!」
「あー・・・つまりあれでしょあれ。戦え!」
「ええゆかり先生。・・・そこです!」
「ギ!」
リュウガは手に持っていたブラックドラグセイバーを投げつけた。すると彼女達以外、
誰もいないはずの場所から悲鳴が聞こえた。そこにはメガゼールの指示を受けてコア
ミラーを探していたゼール軍団の一員、両腕に頑強なカッターを備えたモンスター、
マガゼールが彼女達の様子を窺っていたのだ。
「後は3人でやってください」
「私達で?」
「おらー!突撃ー!!」
「ちょ、ちょっと待ってよゆかり!」
「ギ!」
「いってー!こんにゃろ!えい!ん?えいえい!・・・あれ?」
「ギ!ギ!」
ゆかりはみなもの忠告を無視してマガゼールに突撃した。しかしいくらライダーにな
ったからといってモンスター相手に戦うには自身とライダースーツが馴染むほどの時
間が経過しておらず、マガゼール相手に両腕に備え付けられていたカッターで一方的
に斬りつけられていた。
「はー・・・もう!しょうがないわね。」
「谷崎先生〜カードを使うべきでは?」
「むむ!言われてみればそうですな!」
「私達も谷崎先生を援護しましょう」
「そうですね」
《《《アドベント》》》
ゆかりがベノバイザーにカードを装填するのを見てみなもはエビルバイザーに、木村
は肩に取り付けてあるメタルバイザーにカードを投げ入れた。アドベントの三重奏が
奏でられ、毒々しい紫色の大蛇の化身ベノスネーカー、エイの姿をしたエビルダイバ
ー、そして頑強な角を持つサイのモンスターメタルゲラスが出現し、マガゼールの周
囲を囲むと一斉に攻撃を始めた。
「いいぞー!そこだそこ!」
ベノスネーカーはマガゼールに対して隙あらば霧状の猛毒を辺りに撒き散らしていた。
「ゆかり、だから言ったでしょう」
「そんな昔のことなんかとっくに忘れましたー」
「あんたねぇ・・・」
そんなみなものエビルダイバーは空中から突撃してはまた空中に逃げるという軽やか
な戦法でマガゼールを翻弄していた。
「サイ・・・どうですか!にゃも?」
「へ?・・・別にどうもしません!」
そしてこの2匹をサポートするかの如くメタルゲラスはマガゼールと接近戦を行い、
その強固な装甲で全ての攻撃を受け流していた。
「・・・これを使え」
「ん?」
それぞれの契約モンスターの応援に熱中していた時、すっかり忘れ去られていた士郎
が唐突に現れ、ゆかりの握っているベノバイザーへと向かってカードを投げた。する
とベノバイザーが自動的にそのカードを装填(ベントイン)し効果を発動させた。
《ユナイトベント》
そのバイザーの発動音がミラーワールドに響き、マガゼールの攻撃を中止した3匹は
それぞれ内側から光を発しながら一箇所に集まった。爆発的な光がミラーワールドを
包み込み、次の瞬間獣帝ジェノサイダーが威風堂々と大地にそびえ立っていた。
「ちょっとゆかり、あんたまた何をやったの!」
「私知ーらないっと」
「はぁ・・・都合が悪くなるといつもそれなんだから」
「・・・全員でファイナルベントを使え・・・」
「ファイナルベントとはこれのことですか?」
木村はデッキからライダーの勝負を決める必殺のカード、ファイナルベントを取り出
し手に握っていた。士郎は木村のカードを確認するとゆっくり頷いた。
「・・・そうだ」
「私も出したわよ。ほらゆかり、あんたも出しなさい」
「へいへい。」
「・・・今だ」
《《《ファイナルベント》》》
「グゴォォォォ!」
ジェノサイダーは咆哮し、天空へとその首を向けた。すると時空が歪み、胸に小型の
ブラックホールが出現した。ジェノサイダーは胸のブラックホールに周囲の空気を吸
収し始めた。
「これは・・・大きな力を感じますね。」
「よっしゃあ!行くわよにゃも、木村!」
「ええ!」
3人のライダーはマガゼールへと駆け出し始め、マガゼールが気がついた時には、1
人1人がマガゼールを中心に60度の角度ごとにそびえ立つという、トライアングル
フォーメーションで囲んでいた。
「ギィ!?」
「えい!」
ライア=みなもは加速しながらマガゼールの背中にファイナルベントの効果で力が数
倍に増幅された正拳突きを入れガイへと吹き飛ばした。
「一等賞!!」
己に向かって飛ばされてきたマガゼールをガイ=木村はいつのまにやら装着していた
メタルホーンで再び空高く吹き飛ばした。
「どうりゃぁー!」
そしてすでに跳躍して空中でマガゼールを待ち構えていた王蛇=ゆかりが、マガゼー
ルの頭部を連続で殴りつけ、一気にジェノサイダーへと落下させた。
「ギィィイ・・・!!ギュァァ!」
ジェノサイダーとマガゼールが激突した瞬間、マガゼールはジェノサイダーの胸のブ
ラックホールへと吸い込まれた。一瞬ミラーワールドに真の静寂が訪れた。束の間の
静寂のあと、マガゼールを異空間へと移動させたエネルギーが周囲に大爆発を巻き起
こし、マガゼールの存在はミラーワールドからものの見事に消滅していた。
「へー。先生達も強いんですねー・・・つ・・・でもモンスターは大切にしないとい
けませんね・・・」
ファイナルベントを使いマガゼールを撃墜した3人を見ながらリュウガは一人ぽつり
と言った。そんなリュウガの身体からはタイムリミットが来たかの如く粒子が激しく
飛び散り、誰知れずミラーワールドの虚空へと消えていった。
【次回予告】
「中々見つかりませんねー榊さん」
「私と勝負だー!」
《トリックベント》
「にゃも残念賞!」
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
380 :
メロン名無しさん:03/01/15 20:52 ID:O8MibGTb
鯖が変わっただけだったのか・・・・・・、てっきり誰かがコアミラー壊してこのスレを
閉じたのかとビビってしまったYO!
>379
乙!ガイやライアを死なさずにユナイトベントを有効にする方法、グッドアイデア
や〜♪その手があったんやな〜
380ッス!
しまった・・・・・・あげてしまった。スマソ〜(泣)
鷹さん、乙でした。
さて、では私も第12章、書き込みます。
・・・の前にひとこと
ミラーワールドの設定には多分にオリジナルの点が含まれます。
ご了承ください。
第十二章
『ではまず昔話をしましょう』
「ちょっと待て、わたし達は別に、むぎゅ」
声を上げかけた智の口をちよが押さえる。
「続けてください」
小さく頷き言葉を繋ぐ紅オーディン。
『この世界とは別の世界、そこではこの世界と同じように人間達が存在し、この世界と同じ
ような日常の毎日を送っていました。
日々繰り返しの単調な、でも平和な生活。
そして、おそらく恒久的にその平穏は崩れ去ることは無いと、誰もが思っていました。
―――でも、そんな日常は唐突に、あっけなく崩れました
たった一匹のフェニックスのモンスター、オーディーンの出現によって。
最初にオーディーンがどこから現れたのか、わたしにも正確なところは分かりません。
でも、オーディーンはその存在だけで世界に歪みをもたらす存在でした。
オーディーンの存在を中心にして世界は人間たち、いえ、それまでその世界に生きていた物
たちすべてにとって住むことのできぬ空間へと変貌を遂げました。
さらにそれと同時に、オーディーンの持つ無限の力によって、そこに住んでいた人間達は全
員その世界にあった姿へ作り変えられました。
あるものは、蝙蝠の姿へ。あるものは龍の姿へ。また、ごくまれに人間の姿のまま、外観を
変化させないものもいました。
人間以外の物、モンスターに姿を変えた者は、ほとんど例外なく人間としての理性の大半を
失い、力を得て生き残るために互いに戦い、食らいあいました。
でも、理性がない分、あるいは人間の姿を保ったものよりもそちらのほうがどれほど楽だっ
たかもしれません。
人間の姿を保ったものは同時に理性も失いませんでした。
その代わり、そのほとんどのものは、非力さゆえに、真っ先にモンスターの餌となったんで
す。
そして、人間と同様姿を変化させた数種類の動物を除き、ほとんどの動物は、光の粒子とな
り虚空へ消えました』
しゃべるうちに、紅オーディンの口調からは悲しさのようなものが滲み出してくる。
モンスター、光の粒子。その二つの単語はみなにあるものを想像させた。
そこにいるものたち全員に関係深いもの。
「なぁ、まさかとは思うんだけど、それって・・・」
「・・・・・・ミラーワールドの話?」
神楽と榊の言葉に、鏡の中で紅オーディンは『そうです』とうなずいた。
『そもそも鏡の中の世界、ミラーワールドとは何か?
それはあなた達の住んでいる世界と限りなく近く、それでいて決定的に異なるパラレルワー
ルドです。
かつて、いえ、ほんの少し前までこちらの世界にも人間は存在していました。
それどころか、決して両世界は相容れない存在ではなかったんです。
榊さんは気がつきましたね?
こちらの世界を傷つけても、その傷が自然に治ることはありません。
しかし、もちろんそちらの世界にそんな傷はありません。
にもかかわらず、みなさんは鏡を挟んだ二つの世界の違いをほとんど見つけられなかったは
ずです。
では、こちらの世界の建造物は誰が作ったんでしょう?
―――もちろん、この世界の中に住んでいた人間です』
「・・・そうか、だから、何か違和感を感じたのか」
うなずく榊、その横で新たに大阪が問いかける。
「ところで、おー、おー、」
「オーディーンですか、大阪さん?」
「そう、そのおーでぃーんて言うのはなんなんやー?
名前の似とる仮面ライダーおーでぃんとなにか関係あるんかー?」
『はい、もちろんありますよ。
わたしと、そこにいる美浜ちよの契約モンスター、ゴルトフェニックスとガルトフェニック
スは、風と火をつかさどるフェニックスです。
そして、それとは別に、土と水をつかさどるフェニックスがいました。
その二匹が、なにかのきっかけで融合し、現出したもの、それがオーディーンです。
いえ、正確に言うと、四匹のフェニックスが融合したものが、完全なるオーディーンですか
ら不完全なオーディーンというべきでしょうか』
「うーん、難しいわね。話が見えてこないわ」
「しょうがないわよ。あんた体育教師だもん」
「なんですってー!あんたは分かってるの?」
「ぜーんぜん、さ、続きは?」
『えーと、不完全ながら、オーディーンは水と地の力を合わせた「無限」の力を持っていま
した。
完全なオーディーンは本来世界の安定のためにその力を使う、守護神のような存在です。
でも、誕生したオーディーンは不完全のため、その力に耐え切れず暴走を始め、それによっ
てこの事態が引き起こされたらしいんです。
王蛇のユナイトベントによって誕生したジェノサイダーがそれに近い、といっても分からな
いでしょうけど。
完全なオーディーンはもともと一つの世界に存在するものではなく、並行世界を行き来する
能力を持っています。
そして不完全ながら、誕生したオーディーンもその能力を持っていました。
もしオーディーンがこの世界だけでなくほかの世界、たとえばそちらの世界に行ったのなら
ば、こちらの世界とまったく同じことが起こることになります。
その事態にもはや一刻の猶予も無いと見た、炎と風、二匹のフェニックスは、これ以上は見
過ごすわけにも行かず、オーディーンとの強制的な融合を試みました。
しかし、それは成功せず、逆にオーディーンと戦いになり、結果として敗れ、力のほとんど
を失うことになりました。
そして、二匹のフェニックスは、こちらの世界に残っていた数少ない人間の一人と接触した
んです。
モンスターはオーディーンによって作られたため、モンスターは何人たりとも危害を加えら
れません。
もちろん二匹のフェニックスたちはその限りではありませんが、いかんせん力不足です。
二匹と接触した人間は力を求めました。
モンスターの姿になってしまった友たちに力を与えてくれれば、必ずオーディーンに一矢報
いて見せる、と。
そしてフェニックスたちは人間のその言葉を受け入れました』
長い話だが、ほぼ全員が黙って聞き、理解しようと努力している。
もっとも、ついていけているのはちよと榊、暦くらいのものだろうが。
すでに大阪は目を回しているし、神楽、智もそれに準ずる。
「・・・・・・じゃあ、ライダーって言うのは、そのオーディーンを倒すためのもの?」
『極論を言えば、そうなりますね』
「ミラーワールドの研究をしていたちよちゃんがライダースーツを作ったのを利用したって
ことか」
暦の言葉にちよは首を横に振った。
「違います。わたしがミラーワールドの研究に参加する前に、すでに鏡を通してこのライダ
ーさんから話は聞いていました。
ただ、聞いていた話の大筋は、
ミラーワールドにオーディーンと呼ばれる存在がいること、
オーディーンによってミラーワールドが変貌を遂げたこと。
そしてまもなくオーディーンがこちらの世界を侵略しようとしていることの三点についてだ
けでした。
もちろん皆さんがライダーになるものとして選ばれていたことも知りませんでした。
だからわたしはそこにいるライダーさんに頼まれて、ライダースーツを作るのを手伝ったん
です。
ずっと、どうしてわたしが選ばれたのか、どうしても分かりませんでした。
でも、やっと分かりました。
その理由も、そして・・・あなたが誰なのかも」
「どういうことだ?誰、って、こいつちよちゃんが知ってるやつなのか?」
智の言葉に答えようとしたちよを、紅オーディンがさえぎる
『わたしから説明しましょう。協力者として美浜ちよを選んだのは理由があります。
ひとつは、美浜ちよならば、確実に手を貸してくれることが分かっていたから。
そしてもうひとつ。実は、モンスターと同調し、二者の力を合わせたファイナルベントを撃
つことのできる完全なライダーになれるのはここに集まっている皆さんだけだったんです』
「どうしてなんやー?」
「ちょーっと待ったー!」
大阪の言葉に紅オーディンが答える前に、ゆかりの横槍が入った
『はい?』
「じゃぁ、ライダー全員倒したら願いがかなうってのは嘘か?」
『はい、嘘ですよ。
あ、それと、戦い続けなくては核の半分が契約モンスターに食べられるというのも嘘です。
まあ、核の半分を交換しているのと、契約モンスターが命を落とせば、しばらく立ち直れな
いほどの、本人にも理由不明の鬱状態になるは事実ですけどね』
「きしゃぁぁぁ」
「抑えて、抑えてください、ゆかりせんせい」
「・・・・・・気持ちは分かりますけど」
鏡につかみかからんとするゆかりをちよと榊が押さえつける
「あはははは、ゆかり先生、目ぇ、見開いて蛇見たいやー」
「でも、今のは聞き捨てならないわね。何のために私たちを戦わせたわけ?」
「戦ってたのは先生たちだけやけどなー」
「ごめんにゃさい・・・」
大阪の容赦ない(本人に自覚があるのかは知らないが)言葉で、小さくなるみなも。
「そういえば、黒沢先生の望みってなんだったんだ?」
「あ〜、それはね」
言いかけたゆかりの口はみなもの手によって封をされた。
「三万円」
みなもの耳に口を当て、ポツリとつぶやくゆかり。
「ひ、卑怯者!」
「ばらされたくなかったら三万円♪」
「・・・一万」
「あれ〜、いいの、言っちゃうわよ?」
「二万!」
「・・・しょうがない、それで手を打つか」
「そっちの隅で、二人とも何こそこそと話してるんですか?」
「え?あー、なんでもないのよ、終わったから、さ、それより続き、続き」
『・・・まあ、いいでしょう。
オーディーンとの戦いの前に、二匹のフェニックスとの約束でみなさんを試す必要があっ
たんです。
何を試したのか、完全にはわたしも知らされていませんが、おそらくはその心の強さと、ラ
イダーとしての適応度だと思います。
誘惑に負けるような心の弱いもの、ライダーとしての適応の弱いものは、オーディーンとの
戦いで足を引っ張るだけだという考えじゃないでしょうか』
「ってことは私はアウトか?」
ゆかりの言葉にそれ以外の全員が文句なしに頷く。
「間違いなくそうだな、」
「ゆかり先生のせいで何人死にかけたことか・・・、反省してる?」
「してるわよ。まったく、嘘だったなんて、骨折り損じゃない」
『まあ予想はしていましたが反省の色なしですね・・・。
ただ、王蛇の暴走は予想の範疇でしたが、インペラーのあの行動までは予想できませんでし
た。
もっとも、インペラーのほうは本気でライダー同士の戦いをしているわけじゃなかったみた
いですけど。
本当は、わたしとオーディンで、被害が無いようにうまく立ち回るつもりだったんですけど、
手が回りきらず、皆さんのうち、何人かはライダースーツを失うという結果になってしまい
ました。
それについては全面的に私に非があります』
「なぁ、ちょっと思ったんだけど・・・
ミラーワールドはこの世界と限りなく近いパラレルワールドって言ったよな?
じゃあ、その世界にはわたし達も、いたのか?」
『もちろん』
おずおずといった感じの暦の問いはあっさりと肯定された。
それはすなわち・・・
「なにー、ってことは、もしかしてわたし達も、モ、モ、」
「モンスターになったんかー?」
智の後を引き継ぐようにして問うた大阪にたいし、まったく躊躇無く、鏡の中のライダーは
首を縦に振る。
『そうですよ。皆さんもモンスターにその身を変えさせられました』
「で、どんなんなんだ?かっこいいモンスターか?強いモンスターだよな?」
「智、それは訊くところが違うと思うぞ」
その智の言葉に紅オーディンは苦笑したようだった。
『気がついていないだけで、皆さんすでに何回も見てますよ。』
「何回も?そんなモンスターいねぇって」
『いますよ。ライダーになるたび見ていると思いますけど』
しばし流れる沈黙の空気。
さらりと流すことのできないその一言。
「ライダーになるたび?何回も?まさか・・・」
「それって・・・」
神楽と暦の声が重なる。
それに答えるように、再び紅オーディンは頷いた。
『多分その想像通りでしょう。
皆さんの契約モンスター、それこそが、ミラーワールドで皆さんが変化した姿です』
その口からもたらされた驚愕の真実がその場を支配する。
それぞれがそれぞれのモンスターに思いをはせ、そして結論として、納得せざるを得なかっ
た。
「・・・確かに」
「だからどらぐれっだーが関西弁しゃべっとったんかー」
「なんとなく似てるな、とは思ってたけど・・・」
「・・・・・・なるほど。わたし達しか完全なライダーになれないってのはそういうことか・・・、
おい!じゃあ、もしかして、その二匹のフェニックスと接触した人間ってのは、」
もはや悲鳴に近い暦のその言葉とともにみなの視線を浴びた、紅オーディンはこくりとうな
ずいた。
『もう声を隠す必要もありませんね』
そして、次にその口から漏れた声は、それまでの無機質な声とは根本的に異なる、
彼女らの良く知った声だった。
『そうです。その人間の名前は美浜ちよ、つまり・・・わたしです』
「やっぱり・・・」
紅オーディンの言葉につぶやくちよ。
二者の声は、確かに聞き分けられないほどよく似ている、いや、まさに同一人物の物だった。
衝撃的な告白。
どうやら人間は驚きなれるということはないらしい。
ただ、その場にいたもののほぼ全員が、驚くと同時に何かしらの納得を覚えていた。
自分の契約モンスターがミラーワールドの自分自身というのを聞いた後だったからだろうか。
紅オーディン、いや、ミラーワールドのちよはその言葉を続ける。
『先ほどもいったとおり、二匹のフェニックス、すなわちゴルトフェニックス、ガルトフェ
ニックスは、11匹のモンスターに力を与えました。
通常、モンスターは互いに食らいあい、その力としますが、皆さんをオーディーンと戦うた
めに、その時点で残っていた非常に強いモンスターと互角以上の力を与えられました。
しかし、結局モンスターである限りオーディーンを倒すことはおろか闘うことさえままなり
ません。
そして私はこちらの世界の美浜ちよに干渉したんです。
それからわたし達のライダー計画が始まりました
本当のことを言ったら断られることは知っていますから、ある程度情報を隠した上で。
美浜ちよはすなわちわたし自身。どれほど情報を与えれば受け入れられ、どれほどならば断
られるか、心は手に取るように分かります
同じ核を持つとはいえ、そちらの世界のみなさんと、こちらの世界のみなさんを、わたしが
今しているように直接繋ぐのは、不可能ではありませんが不安定で危険が伴います。
―――あ、ちなみに、直接繋げば、今のわたしみたいに身長などは変身する者に拠りません。
だから、まず今のわたしの姿を元に、そちらの世界のわたしが纏う仮面ライダーオーディン
を作り、さらにそれを基に皆さんのライダースーツを作りました。
ただ、それによって、直接二者を繋げば可能な、声だけでモンスターの力を借りて武器を召
喚するということができなくなりました。
かなり力を失っていたフェニックスたちを召喚するためには、元からカードを使い、こちら
から働きかけて召喚を容易にする必要がありました。
だから、それを元に、ライダースーツを介して、それぞれが持つ能力を武器召喚のカードや
ファイナルベントのカードにする機能もわたし達二人が協力して作り上げました。
もちろんすべてが完成したら、わたしはそちらの世界の自分自身に本当のことを話すつもり
だったんです。
でも予想以上にオーディーンの侵略は早いものでした。
二匹のフェニックスとの戦いによって力を失った状態だったのがせめてもの救いでしょうか。
契約カードの完成によって開いた扉から研究所を襲われ、一時的にわたしはアメリカの研究
所とこちらの世界との扉を閉じました。
時間稼ぎ程度になれば良いと思ったんです。
けれどまさかそれが裏目に出るとは思いませんでした。
アメリカで扉を閉じたせいで、オーディーンの次なる矛先が日本に向いた時、当然ながらそ
ちらの世界のわたしは皆さんに襲われるのを防ぐため、契約カードと共に作った11枚のS
EALのカードを送りました。
カードデッキ自体は一応完成していたので、予定は狂う羽目になりましたが、わたしはそれ
を途中でカードデッキにすり替え、途中で手紙も書き加えました。
そして更なる悲劇が起こったんです』
「それが、ちよちゃんの研究所爆破、か?」
『そうです。
寸前でわたし、ゴルトフェニックス、それとその時アメリカに来ていたお父さんとが救った
ため、そちらの世界のわたしは命を失うことはありませんでした。
しかし、運悪くその際にオーディーンに見つかり、攻撃を受けたんです。
おそらくそれによる衝撃で、そちらの世界のわたしの核とゴルトフェニックスの核とが交換
されたんでしょう』
「核の交換?」
「確か、核って魂みたいなもの、って聞いたけど」
『その比喩でおおむね問題ないでしょう。
核が交換なんてされれば、体を動かすことすらできません。
ただ、なぜかそちらの世界のわたしは仮面ライダーオーディンとなって動けたみたいですけ
ど。
普通は核の交換なんてそんなこと絶対に起こらないはずなんですけど、なぜか起こってしま
ったんです。
そして、その時、その攻撃を庇ったために、お父さんの仮面ライダータイガのスーツは失わ
れました。
ただ、それによってオーディーンはわたし達を葬り去ったと判断したのでしょう。
幸いにもそれ以上の追撃はありませんでした
そして核が入れ替わったとは知らないお父さんの手によってそちらの世界のわたしの体が家
へと運ばれたわけです。』
鏡の中のちよの言葉に、鏡の外のちよが言葉を繋ぐ。
「そうですね。気がついたときわたしの姿は仮面ライダーオーディンでした。
それにいくらミラーワールドにいても消滅しませんでしたし。
だから、もう、わたしもオーディーンの影響でミラーワールドのモンスターみたいな存在に
なったものだと思ったんです。
だから、みなさんがライダーになっているのを見て、せめてものアドバイスを、と。
ただ、わたし自身、オーディンの姿で皆さんの前に現れるのは抵抗があったので・・・」
「なるほどなぁ〜、あ、そういえば、おるなた、」
ちよは大阪にみなまで言わせず先回りする。
「オルタナティブですか?
あれは、お父さんがある人に作ってもらった擬似ライダーらしいです。
だれかまでは教えてもらえませんでしたけど。
効果を失ったタイガのカードデッキを元につくって二人に渡したって言ってました。
目的はオーディン、つまりわたしを探してわたしの体のある家まで連れてくること、でした
よね?」
「「うん」」
ちよの言葉にうなずく二人。
「みるちーとゆかちゃん、二人がいなかったら多分わたしは今ここにいないと思います」
『他になにか知りたいことは?』
「あ、はーい、しつもーん。何でわたしたちは鏡の中のちよちゃんに倒されたの?」
『・・・実は、ライダーの状態で体にかかる負担が予想以上に大きいことが、皆さんがライダー
になってから分かったんです。
大丈夫だと思ったんですが、みるちーとゆかちゃんは他のみんなより5歳年下ですから。
大事を取ってカードデッキは回収させてもらいました。』
「なるほど・・・。これでほとんどの分からなかったことが分かった。でも、あと一つ」
『なんですか、榊さん』
「今それをわたし達に話した理由は?」
『オーディーンがそちらの世界に与える影響が予想より大きく、できるだけ迅速に倒す必要
があることが分かりました。ちょうど、そちらのわたしも目覚めたみたいだったので」
「影響?今すぐにオーディーンを倒さなかったらどうなるんだ?」
智の問いに鏡の中のちよはポツリと答えた。
『・・・数日中に両世界の境界はなくなり、二つの世界がつながります。』
「そんな!早過ぎます!」
悲鳴を上げるちよ。榊は鏡の中のちよの言葉を反芻し、できるだけゆっくりと問いを口にし
た。
「・・・オーディーンの場所は分かるのか?」
『今どこにいるかは分かりません。でも、今、どこに向かって移動しているかは分かります』
「ほなら、すぐにそこにいかなあかんのとちゃうんか〜?」
大阪のその言葉に首を振る鏡の中のちよ。
そして、その理由を聞く前に、唐突に鏡の向こう側が暗くなった。
厳しい目つきで空を見上げる紅オーディン=ちよ。
『予想より早かったですね。オーディーンの到着です』
以上、第12章でした。
説明章のため、ほとんどが会話文だったりします。
もう一度復唱 ミラーワールドの設定はオリジナルです。
さてと、最終章・エピソードファイナルは、できれば今日のうちに、と思ってはいるんですが。
まあ、どんなにおそくても明日の昼までには・・・
>401
乙!
契約モンスターが実はパラレルワールドの変わり果てた自分自身ってのはイイ!
分かれる時に涙のヨカーン!
ファイナル書いたら、また名無士郎氏設定の話も続き書いてキボンヌ
ミネルバ氏乙!ミラーワールドの設定イイ(・∀・)!
最終章楽しみに待ってます。
それじゃあ最終章、第十三章です!
第十三章――エピソードファイナル
「オーディーンの到着!?ってーことは、」
『たぶんここにいるゴルトフェニックスとガルトフェニックスに気がついたんでしょう。
さきほどからこちらに向かっているような気配がありましたから』
唐突な鏡の中のちよのその言葉に、真っ先に反応したのはちよ(現実世界)だった。
置いてあった金色のカードデッキをその手に握り締める。
そしておずおずといったように榊と大阪のほうに向き直った。
「あの・・・榊さん、大阪さん、手伝ってくれますか?」
「ああ、」
「あたりまえやー」
「・・・ありがとうございます」
目に涙を浮かべるちよの頭の上に手を載せ、ナイトのカードデッキを手にする榊。
いつもと変わらぬ笑みを浮かべ、当然のように龍騎のカードデッキを構える大阪。
そしてちよも、二人を泣き笑いのような顔で見ると、オーディンのカードデッキを鏡にかざ
した。
「「「変身」」」
ミラーワールドに並ぶ四人のライダー
真ん中はちよ二人、その横にナイト=榊と龍騎=大阪。
現実世界のちよの変身する仮面ライダーオーディン、仮称金オーディン
契約モンスターは金色の鳳凰ゴルトフェニックス。
ミラーワールドのちよの変身するライダー、仮称紅オーディン・本名未詳
契約モンスターは灼熱の不死鳥ガルトフェニックス。
瓜二つのフェニックスを契約モンスターとしているのだが、その姿のほとんどが色違いであ
るだけにもかかわらず、受ける印象はずいぶん違う。
それは二人が放つ光の本質がまるで正反対だからかもしれない。
現実世界ならば、いや、ミラーワールドにおいてもさきほどまで雲ひとつなかったはずの天
が、邪悪なる心を映すがごとく黒く曇り、近づく巨大な力に悲鳴を上げるかのごとく風が渦
を巻いている。
「榊さん、」
「大阪さん」
大気が震える中、二人のちよは同時に口を開いた。
「?」
「なんやー」
疑問符を浮かべる榊と大阪に、二人のちよはまるで鏡に映したかのように同時にベルトから
一枚ずつカードを引き、榊と大阪の前に差し出した。
ナイト=榊の前に差し出されたカードは、金色の鳥の右翼が描かれたカード
龍騎=大阪の前に差し出されたカードは、紅色の鳥の左翼が描かれたカード
共通して、「SURVIVE」の文字が入っている。
「どういう意味や〜?」
「・・・サバイブ、生き残れ?これは?」
「受け取ってください。使わなくてすむに越したことはないんですけど」
「このカードは、」
そこで句を切り紅オーディンは天を見上げた。
「どうやら、説明している時間はないみたいです」
その声と申し合わせたかのように黒雲が、引き裂かれたかのように割れる。
しかし、その合間から現れるのは日の光ではなく、巨大な影。
天高くから舞い降りる漆黒のフェニックス。
体長だけでも数メートル。
全幅は10メートルを軽く超えるだろう。
「オーディーン、わたし達の世界を死の世界に変えたモンスター・・・」
四人のライダーの視線の中、重さを感じさせない動きでその巨体がふわりと空中に静止した。
その姿は確かに先ほど見たガルトフェニックスによく似ている。
『こんなところに隠れていたか、ゴルトフェニックス、ガルトフェニックス』
オーディーンのその言葉はそこにいる四人のみならず鏡の前の者全員の頭の中にまで響き渡
った。
口を開けていないところから察するに、テレパシーのようなものだろう。
『人間などと手を組むとは、四聖凰も堕ちたものだな。
まさかそれで我を倒せると思っているわけではあるまい?』
『さあ、それはやってみないと分からないんじゃないか?』
その声も全員の頭へと響き渡る。
おそらくはゴルトかガルト、どちらかのフェニックスの言葉。
『やってみないと?笑止!』
そういうと四人を一瞥し、オーディーンは大きく口を開けた。
そしてその口から放たれる破壊的なまでの咆哮!
鼓膜を激しく揺さぶる威嚇的なオーディーンのその第一声、しかし皮肉にもそれは緊張で固
まっていた四人の体を突き動かした。
その咆哮と同時にオーディーンの周りに無数に現れた氷塊が四人めがけ放たれるより早く、
四人は同時に剣を手にし、前、すなわちオーディーンへと走り出した。
「オーディーンの再生能力は無限に近いです。一気に決めましょう!」
「無限・・・どうやって倒すの?」
「わたしたちのファイナルベント、エターナルカオスとエターナルデスを同時に使ってオー
ディーンの動きとその体に流れる時間を止めます。
多分止められるのは数秒が限度でしょうけど、その状態で榊さんと大阪さんのファイナルベ
ントを打ち込めばまったく同時に二つのファイナルベントを当てたことになりますから。
それなら回復の速度を無視して倒せるはずです。」
二人のちよの言葉に、榊は頷くと、大きく地を蹴った。
背中につくマントによって重力から解き放たれ、天を駆けるナイト=榊。
そしてその横には同様に背中から羽を生やしている二人のオーディン=ちよの姿。
「おりてこ〜い」
なお、飛べない龍騎=大阪は地上で一人、さびしく叫んでいる。
「う〜、なんとかしてとばなあかん」
空を飛びながらオーディーンと戦う三人を見、そして横に待機しているドラグレッダーを見、
大阪の頭の上に電球が灯った。
「まいりましたね、予想以上に強いです・・・」
紅オーディンの口から漏れるその言葉。
三対一とはいえ、力は明らかにオーディーンのほうが上。
速度も、どうしてもライダーを抱えている分、元来の速度を出せず遅れをとってしまう。
さらに、一声で無数の氷塊を作り出せる能力も厄介極まりない。
二人のオーディンは手から炎と衝撃波を出してそれに対抗し、ナイト=榊はトリックベント
によってそれを巧みに回避しているが、それによってさらに攻撃の幅が狭められている。
そして何より厳しいことに、ダメージを与えても、一瞬で回復してしまう、その無限の力。
「くっ・・・」
そしてついにオーディーンの放った氷の一撃を受け、ナイト=榊の動きが止まる。
その体に振り下ろされる、鋭い爪の一撃!
しかし、オーディーンに横からの炎が命中し、榊は辛くも難を逃れた。
そしてその炎とは・・・・・・
「ありがとう、春日さん」
「へへへへへ」
ドラグレッダーに龍騎士の如く跨って乗る龍騎=大阪。
さきほどの一撃はドラグクローファイヤーだ。
つまり、モンスターを背中につけて飛べないのならば乗ってしまえばいい。
大阪らしいコペルニクス的発想だが、欠点を挙げるとすると・・・
「大阪さん、危ない!」
響くちよの悲鳴。
「え?」
空中で身を翻すオーディーン。
新たなる獲物、ドラグレッダーに乗った龍騎=大阪に向けて矢のように突っ込んでいく。
モンスターに乗ることによって小回りが利かなくなっている大阪に回避のすべはない。
闇雲に撃つドラグクローファイヤーも避けられ、二者が・・・・接触する。
速度を緩めぬままドラグレッダーと龍騎=大阪のいた場所を通過するオーディーン。
そして、龍騎=大阪は・・・・・・
「榊ちゃん、ありがとーな」
「・・・いや」
激突の一瞬前、上空からナイト=榊が龍騎=大阪の体をさらっていた。
同時にドラグレッダーは下へと逃げたので、結果的には無傷。
龍騎=大阪はそのままふたたびドラグレッダーの上へと着地する。
それでも状況が好転したとは言いがたい。
「不完全体なんやろ〜、なんか弱点とかあらへんのか〜」
「弱点・・・そういえば、あるかもしれません!」
ほぼ苦し紛れに大阪のつぶやいた言葉に、二人のちよはそれぞれの剣を手に、速度を上げた。
『無駄だ!』
回避ではなく、真正面から二人にぶつかる形で加速するオーディーン。
そして、交錯の瞬間、三色の羽が宙を彩った。
オーディーンに弾き飛ばされ、羽を折られて落下するオーディン二人を、榊と大阪は空中で
キャッチする。
「ちよちゃん、一体何を?」
「あのオーディーンは不完全です。
そして、完全なオーディーンにおいて、翼はゴルトフェニックスとガルトフェニックスの二
匹の力をもっとも強く受ける場所でした。つまり、羽を一回断ち切れば・・・」
「―――その部分は回復しません」
そのままゆっくりと地に降り立った四人。
見上げる先には、両翼を根元から断ち切られゆっくりとバランスを崩すオーディーンの姿。
そのまま、ちよの言葉どおり、羽を失ったままで地へと堕ちゆくその巨体。
しかし空中でその体を黒き光が包み込んだ。
高度が低くなるにつれ、その光はだんだんと収縮していく。
そして、それが地に降り立ったとき、四人は目にすることになる。
夜よりもなお黒き、すべてを吸収する闇の色を持つ、二人のオーディンに似て非なる姿を。
「・・・あれは?」
「たぶんオーディーンのライダー体みたいなものだと思います。
でもまさか、そんな状態も取れるなんて・・・」
闇色の体の中で唯一闇の色ではなく藍色であるオーディーンの眼が四人を射抜く。
見たものすべてを凍りつかせるかのごときその冷たき眼光。
その姿に戦慄を覚えた二人のちよのガードベントの声が重なるのと、その体が後ろに吹き飛
ぶのはほぼ同時だった。
二人がさっきまでいたところにはいつの間に移動したのか、オーディーンの姿がある。
そして、その足元には元はガルトシールドとゴルトシールドだった物が粉々に砕け散った残
骸。
「気をつけてください、二人とも!」
起き上がった紅オーディンの言葉よりも早く、ガードベントの音が鳴り響き、二人にそれぞ
れの盾がもたらされる。
今まで数多くのモンスターの攻撃を防いできた、頼りになるその盾。
しかし、ドラグシールドもウイングウォールも、オーディーンの放つ一撃の前には紙切れも
同然だった。
一瞬で眼前へと現れるオーディーン。
そこから繰り出された掌底の一撃で盾を粉砕され、二人もちよたち同様後ろへと吹き飛ばさ
れる。
幸いにして盾が身代わりとなったとはいえ、四人ともそのダメージは著しい。
ライダーの回復能力をもってしてもおそらくしばらくは自由に動くことすらできない。
すなわち次の攻撃を防ぐすべは――――ない。
「ガードベントを一撃で砕くなんて・・・攻撃力が高すぎます。」
「・・・こうなったらこれを使うしか、」
二人のオーディンのカードデッキから取り出された二枚のカード。
それを確認するや否や疾駆する闇の体。
オーディーンはわずかに反応が遅れた二人とすれ違う。
「「あっ!」」
二人のちよの口からその悲鳴が漏れたときにはすべてが遅かった。
オーディーンが右手と左手に掴んでいるのは、鳥の意匠が描かれたカード。
すなわち――――奪い取った紅オーディンと金オーディンのファイナルベントのカード。
『時と空間を操られては厄介だからな。だが、これで―――終わりだ』
オーディーンのその言葉と共に、
左手に持つ紅きカードは一瞬蒼く凍りつき、ガラスが割れるように粉々に、
右手に持つ金のカードは一瞬黒い波が唸り、微小な塵となり崩れ去った。
「そんな・・・」
『勝負あったな』
切り札を失い硬直する四人めがけ止めを刺すべくオーディーンは地を蹴った。
もはや回避は間に合わない。
そして、そんな四人とオーディーンの間に割り込む影。
巨大な青と銀色のその体は・・・
「お父さん!」
仮面ライダータイガ=ちよ父の契約モンスターであるデストワイルダー。
しかしオーディーンの一撃を四人の代わりに受ければその強固な体でもひとたまりもない。
吹き飛ばされ、デストワイルダーは沈黙した。
そしてそのデストワイルダーの周りを、安否を気遣うように飛び回るエビルダイバー。
辺りを見渡せば、その場にいるのはすでにライダーとオーディーンだけではない。
オメガゼールやベノスネーカー、マグナギガたちの姿もある。
「みなさん・・・」
『数がそろってどうなるものでもない。どうせ我には攻撃できぬのだからな』
ギャラリーには無視を決め込むことにしたらしく、オーディーンの視線はライダー達のみに
向けられる。
『面倒だ、この一撃でまとめて葬り去ってやろう』
薄く笑みを浮かべると、オーディーンは手を一振りした。
そして現れる、無数の鋭い氷の刃。
『行け』
その言葉と共に、それらは盾を持たぬ四人へと襲い掛かる!
その範囲の広さから、今の四人の体では回避は不可能。
そして、その氷の刃は盾を持たぬライダーにとっては十分に致命的な威力。
上がる血飛沫、そしてライダー達の悲鳴。
血飛沫はライダー達のものではない。
それが上がったのは、動けぬ四人の前で己の身を盾にして氷の刃を受け止めたマグナギガ、
エビルダイバー、メタルゲラス、ボルキャンサー。
『我に攻撃できぬ代わりに盾となるつもりか。
そやつらの寿命をわずかに延ばすだけだというのに』
そして再び現れる無数の氷の刃。
今度はベノスネーカー、オメガゼール、ブランウィング、バイオグリーザが四人の前で盾と
なる。
再び上がる血飛沫から眼をそらさずに、榊は決心を言葉にした。
かろうじて体を動かすことはできる。
「・・・同時ファイナルベントを成功させる」
「そんな、無茶ですよ!」
「やってみんことにはわからへんで〜」
「でも、オーディーンの回復能力から判断して、許される誤差は百分の一秒以下ですよ!?」
ちよのその言葉、それにかぶさるようにして、オーディーンの哄笑が響き渡る。
『なかなかしぶといな、だが、次で終わりにしてやろう』
榊たち四人の前で、傷つきながらも立ち上がろうとする仲間達。
「みんなのやっていることを無駄にはできない」
その言葉にちよも頷いた。
「・・・分かりました。オーディーンの動きはわたしたちが何とかします」
≪ファイナルベント≫
二人のバイザーから響きわたるその音声。
そしてそれと同時に二人のオーディンはオーディーンの前へと躍り出た。
紅オーディンは空間を飛び越え、金オーディンは時間を一瞬止めることで、
傍目から見ると瞬間移動したようにしか見えない。
しかし、それを用いた奇襲をオーディーンはごくすんなりと回避する。
そして、さらに繰り出される一糸乱れぬ四本の剣の乱舞すら、完全に避けきっている。
――――いや・・・・・・
互いに数歩分移動したところで二人のちよは手を止めた
『その程度の攻撃、避けられぬと思っていたか?』
「もちろん思ってませんよ」
「これで、予定通りです」
その言葉と同時に、二人の体は数メートル後ろに瞬間移動した。
方法は前述の通り。
『なっ!?』
そして、それと同時に、待ち構えていたように二人のファイナルベントがオーディーンへと
突き刺さった。
一瞬遅れ、その威力によって小規模な爆発が巻き起こる。
榊と大阪はすでに一度同時にファイナルベントを撃っているため、同時命中のタイミングを見
極めること自体は不可能ではなかった。
むろん狙いを定める時間があり、そして標的が止まっていれば、の話だが。
そして、わざと避けられる程度の剣舞で二人のちよがオーディーンを決められた場所へと誘
い込むことによって両者の条件を満たしたというわけだ。
「どうや〜」
「・・・」
爆煙を見つめる榊と大阪。
二人はファイナルベントが成功したという確信を持っていた。
そして、それが確かに同時にオーディーンに突き刺さったという確信も。
「ばっちりですよー、成功です!」
ちよのうれしそうなその言葉、しかし、それによって二人が一瞬だけ気を抜いた瞬間、
二人の体は弾けとんだ。
爆煙を散らし、現れたオーディーンの掌底の一撃によって。
『タイミングは完璧だったな。確かに今のは効いた。
エネルギー密度の高いこの状態じゃなければ終わっていたかもな』
倒れる榊と大阪。駆け寄るちよたち。
「榊さん、大阪さん!」
「そんな・・・」
ただの一撃でライダースーツの前半分はすでに原形をとどめていない。
さらにダメージと時間の関係で二人の体からは金の粒子が上がり始めている。
「大丈夫ですか二人とも?」
ちよのその言葉に、かろうじて二人とも口から声を漏らす。
「くっ・・・」
「あ、あかん、ちよちゃんが二人に見えるわ〜」
「えぇ〜!?って、よく考えたら当然じゃないですか!
それより、二人ともさっき渡したカードを使ってください」
「さっき・・・、サバイブのカード?」
「そうです。あれはパワーアップと回復を同時にしてくれるカードです。」
「ぱ、ぱわーあっぷ?大きくなれるんか!?」
「え?えっと、とりあえず使ってください」
『そこで何を話しているのかは知らないが、これで最後だ!』
オーディーンの一声と共に、現れる氷の槍。
しかし、それに対し何かできる状況の四人ではない。
二人は倒れ、もう二人はその二人をかばっている。
『もはや盾もない。死ね!』
オーディーンの一言と共に放たれた氷の槍。
そしてそれは四人に届くことなく、その眼前で炎に包まれ、消滅した。
ちよ宅玄関の鏡から現れ、四人の前に立つ黒き擬似ライダー、オルタナティブ・ゼロ。
ちよ宅の玄関まで来たところで、繰り広げらている戦いに気がついたというわけだ。
「盾ならここにもう一つありますよ?」
『まだ鬱陶しいのがいたか。まあいい、最後の足掻きを見るのも悪くない』
際限なく生み出されては発射される氷の槍を黒き剣、スラッシュダガーではじき、あるいは
青白い炎で溶かしていくオルタナティブ・ゼロ。
しかし、それでも捌ききれぬ分の氷がその体へと命中し装甲が悲鳴を上げる。
それでも決して自分から退くことはない。
後ろにかつての教え子たちが倒れている以上は。
「くそー、ちよちゃんと榊と大阪がミラーワールドで戦っているってのに、」
「ここで手をこまねいてみてるしかないなんて」
「何かわたし達にできることはないのかよー!」
鏡の中の世界で繰り広げられる攻防を見て、地団太を踏む智や神楽。
他のみなも多かれ少なかれ心のうちは同じだろう。
それは、食い入るように鏡を見つめていることからも明らかだ。
「まだ、君達とミラーワールドの中にいる君達との絆が切れたわけではない」
背後から響いたその言葉。
そして、それと共に、皆の前にそれぞれと関係深いカードが投げ出される。
ミラーワールドでの己自身の姿が書かれた契約のカード。
「これは!」
「なんで?」
それぞれのカードを手にして振り向く八人。
そこにあったのは一枚のカードを鏡へと突きつけている影。
そのカードには白虎のモンスター、デストワイルダーの姿が描かれている。
「さきほどの話を聞いていなかったのかね。
契約カードによって、我々とミラーワールドの我々とは結びついている。
諦めるのは出来ることをすべてしてからでも遅くはない」
「よーし!」
「可能性があるんなら!」
まず、神楽、智、暦、かおりがそれぞれのカードを鏡へとかざす。
―――――何も起こらない。
「わたしたちも!」
ゆか、みちるもそれぞれのカードを鏡へとかざす。
―――――――やはり何か起こっているようには見えない
「もう後悔だけはしたくないからね」
そしてカードをつきつけるみなも。
――――――――相変わらず何も起きない。
「はっ、このままじゃ、終わらせないわよ」
最後にカードを突きつけるゆかり。
それによって九枚のカードが鏡へと映し出される。
―――――――――しかしそれ以外に変わったことは・・・・・・
「「「え?」」」
そろう声。そして鏡からあふれる光が九人を包み込んだ。
「あれは、オルタナティブ、いえ、オルタナティブ・ゼロ」
「誰が変身しているんでしょうか?」
「・・・急がないと、あの状態で攻撃を受け続けるのは無理だ」
「そやな〜。たしかサバイブのカードやったなー」
そして大阪と榊の手が同時にデッキからカードを引き抜く。
二人がカードを引き出した瞬間に巻き上がる炎と風。
姿を変えたドラグバイザーとダークバイザーへ、二人はゆっくりとそれを差し込んだ。
『『サバイブ』』
その声と共に脱皮するが如く、その姿を変える二人のライダー、そして契約モンスターたち。
穴が開いていたスーツも、失われていた体力もあっという間に蘇える。
龍騎サバイブ=大阪の周でとぐろを巻くミラーワールドの大阪。
『龍騎サバイブやー』
「お〜、おまえも立派になったなー、どらぐれっだー」
『ドラグレッダーちゃうねん、ドラグランザーや』
「え?どらぐらんざーいうんかー?」
「名前、変わるの?」
榊のその問いに、新しき姿となった、ミラーワールドの彼女自身は頷いた。
『今の私はダークレイダー、貴女はナイトサバイブ』
「ダーク、レイダー・・・、ナイト、サバイブ」
無数の氷の槍を受け、ついに膝を折るオルタナティブ・ゼロ。
それに近づくオーディーン、その体がバランスを崩した。
その側頭部をドラグランザーが吐き出した炎の塊が打ち据えたのだ。
生まれた一瞬の隙をつき、ダークレイダーがオルタナティブ・ゼロの体を地からさらい、四人の
前へと持ってくる。
「あとはまかせてや〜」
「ダークレイダー、その人を私たちの世界へ連れて行ってあげて」
その言葉に頷くと、ダークレイダーはオルタナティブ・ゼロをもち、蒼き疾風のごとき速度で
飛翔した。そしてそのままちよ宅玄関へと消える
突然ちよの部屋とつながっている鏡からもれる一条の光
それは徐々に五条、七条、八条、九条と増えて行く。
そしてそれに呼応するようにまばゆき光を放つ二人のオーディンのデッキ。
それと共にオーディーンの動きがまるで力を失ったように鈍くなる。
『その光は、一体・・・、ぐっ』
二人のオーディン=ちよのほうへと近づこうとするオーディーン。
それに突き当たる鋭き疾風の矢と豪快な烈火の塊。
振り向くオーディーンへと大阪と榊の新たなる力、メテオバレットとダークアローが絶え間
なく炸裂する。
ふたりのちよがデッキから取り出したのは輪が描かれた契約のカード。
そしてそれが眼も眩むほどの光を発している。
左手からオーディーンめがけダークアローを発しながら、榊は視線をほとんど移動させずに尋ねる。
「・・・それは?」
「これは未完成のカード、」
「どうして・・・、何度作り直しても二種類できて、両方不完全だったのに」
金オーディンが手に持つのは[CONTRACT] FINSIのカード
紅オーディンが手に持つのは[CONTRACT] REDHPのカード
互いの手のカードを確認し、同時に二人は光を放つ鏡を見つめた。
そしてどちらともなしに口が開かれる。
「大きな二つの輪、それにこの文字配列、ということは・・・」
「完成していたんですね、すべての力を集結させるカードは、すでに・・・」
鏡からあふれる九筋の光は一瞬その強さを増すとそれぞれのモンスターへと伸び、そこにラ
イダーの姿を描き出した。
そして、それと共にモンスターたちの負った傷が癒されていく。
オーディーンを囲む、11人のライダーと、その契約モンスター。
そして二人のちよの頭に響くフェニックスの声。
『どうやら汝の人選に間違いはなかったようだな、
契約のカードがあったとしても、一度でもライダーになったことを後悔したものはこうして
ミラーワールドに来ることはできない』
『最初から、だれもライダー同士の戦いをやらぬなどといった考えは持ち合わせていない。
我らが試したのは汝の言うとおり、ライダーの適応と心の強さ。
だが、心の強さとは戦わないかどうかではない。戦いの中で希望を持っていられるかだ。
そして汝の友はライダー同士の戦いの中で、誰一人として絶望しなかった。
たいしたものだ』
「「当たり前ですよ。わたしの友達ですから」」
微笑み、そして、二人のバイザーへ、ゆっくりと光り輝く二枚のカードが入れられる。
大円が示すは絆。二つの真円は横に組み合わさり∞を生み出す。
そして英語が意味するものは・・・・・・
『CONTRACT F R I E N D S H I P』
ライダーとモンスター、次元を超えすべてを集結させる、その力が場を支配する!
『今、この場ならば、ファイナルベントを出すのにカードは必要ない』
『むろん、カードが失われた我等とて、同じこと』
「「いきますよ!」」
声を重ねあう金オーディン=現実世界のちよと紅オーディン=ミラーワールドのちよ。
そして発動するそれぞれのファイナルベント、エターナルカオスとエターナルデス。
時間を操るゴルトフェニックスと空間を操るガルトフェニックスが天を舞い、
紅と金の羽が互いに干渉し、オーディーンの無限の力を封印していく。
「ブランウィング!」
『行くわよ、』
ファム=ゆかの声に応じるように白鳥モンスター、ブランウィングが羽ばたく。
その優雅な姿に似合わぬ衝撃が無限の力を失ったオーディーンの体を上空へと跳ね飛ばす。
そして空中ですれ違いざま一気にその体を切り裂くウィングスラッシャー。
華麗なるファムのファイナルベント・ミスティースラッシュ!
傷ついたオーディーンの体は容赦なく空中に跳ね飛ばされ、放物線を描き落下する。
ミスティースラッシュから、そのままオーディーンの体を地面につけるまもなく己の武器で
その体を挟み込むオメガゼール。
『さ、二番手は私達ね』
その言葉と共にオーディーンを思い切り前へと放り投げる。
その先にいるのは仮面ライダーインペラー=みなも。
「いくわよ、オメガゼール!」
インペラー=みなもはその声と共に飛んできたオーディーンを、その強力な膝蹴りによって
真上へと跳ね上げる。
そして跳ね上がり、それを空中にて再び迎え撃つオメガゼール。
インペラーのファイナルベント、真ドライブディバイダー。
オメガゼールのその武器を上から叩きつけられ、地面に撃墜する直前、オーディーンのその
体はインペラーの更なる強蹴で再度宙を舞う。
その体を巨躯に似合わぬ素早さで宙で捕まえると、そのまま地面に叩きつける白虎のモンス
ター、デストワイルダー!
そのまま、マッハ100にも迫らんとするスピードでオーディーンの体を引きずっていく。
地面と高速で接触し、火花を散らすオーディーンのその体。
その先に待ち受けるは、デストワイルダーと契約するライダー、タイガ。
仮面ライダータイガのファイナルベント、クリスタルブレイク。
オーディーンの体を上に持ち上げる代わりに、振りぬかれたそのデストクローを装着した右
手は、オーディーンの体を切り裂くと同時に斜め上へと放り投げる!
「行くよ、バイオグリーザ!」
『まかせて!』
タイガに放り投げられたオーディーンの体を、空中で逆さになりながらしっかりとつかむ緑
のライダー、ベルデ=みちる。
天翔ける羽の変わりに、その足首には契約モンスター、バイオグリーザの強靭な舌がある。
そのまま空中で勢いのついたブランコのように大きな弧を描くと、上空で数回転し、さらに
空中高くからオーディーンの頭を下にして、二人分の重量をかけたベルデのファイナルベン
ト、デスバニッシュを打ち放つ。
激しい勢いで地面にぶつかり、爆音が打ち鳴らされる。
「次はわたしたちだ、メタルゲラス!」
『ああ、しっかり決めるぞ』
メタルホーンをその手に持ち、契約モンスター、メタルゲラスの肩へとその足を乗せ
ガイ=暦はほとんど地面と平行となって、デスバニッシュを受けて地上に倒れるオーディー
ンへと突進する。
巨躯なるメタルゲラスとともにその身を突撃させるガイのファイナルベント、ヘビープレッ
シャー。
猪突猛進する銀の体に金の角。
重く煌めくその一撃はオーディーンの体を空中へと弾き飛ばす。
赤きエイのモンスター、エビルダイバー
その上に跳び乗るライア=神楽。
「行くぜ、エビルダイバー、しっかりやれよ」
『誰に向かって言ってるんだ?』
その言葉と共に、エビルダイバーとライアの体が加速上昇する。
目標はヘビープレッシャーを受け宙にあるオーディーンの体。
両者の心を一つに合わせ、赤き彗星となりて万物に破壊的ダメージを与えるファイナルベン
ト、ハイドベノン。
炸裂と同時に爆音を立てオーディーンの体を上へと押し上げる。
ハイドベノンの発動と同時に王蛇=ゆかりは天を仰ぎ見た。
その視界に捕らえられる、黒きオーディーンの姿。
「このイライラを発散するためにも、ちゃーんと一発決めとかなきゃね。
行くわよ、ベノスネーカー!」
『はっ、一発といわず何十発でも決めてきなさいよ』
己の地上での助走に加え、同様助走を十分につけたベノスネーカーの力を借りて、
上空たかくへと飛び上がる王蛇=ゆかり。
ミサイルがごときそのファイナルベント、ベノクラッシュは、オーディーンをさらに上へと
たたき上げる。
シザース=かおりの後ろに己の身を置く黄金の蟹、ボルキャンサー
「行くよ、ボルキャンサー、ちゃんと榊さんまでつなげなくちゃね」
『とーぜん』
その言葉と共にシザース=かおりは後ろへ小さく跳躍する。
両手のはさみをジャンプ台とし、シザース=かおりを上空へと勢いよく打ち上げるボルキャンサー。
仮面ライダーシザースのファイナルベント、シザースアタック!
上空で体を丸め、高速回転しながらベノクラッシュに連続しオーディーンを下から打ち据え
る。
ゾルダ=智の前に立つ、体前面をフルオープンしたマグナギガ。
そしてその背中にセットされるマグナバイザー。
シザース=かおりの一撃が命中したのを確認して、ゾルダ=智が引き金を引く。
「いくぞー、エンドオブワールド!」
『ファイヤー!!!』
楽しそうなその言葉と同時に、右手、左手、頭、胸、そして足と体のいたるところに装着さ
れたすべての武器がいっせいに火を吹く。
そのファイナルベント、エンドオブワールド。
その名に恥じない、限りない量の炎と弾が空中のオーディーンを蹂躙する。
空中で巻き起こるエンドオブワールドの花火。そしてそれを見る二対の眼差し。
「行こうか、ダークレイダー」
『・・・ああ』
「どらぐらんざー、わたし達が最後やで〜、どんなファイナルベントなんや?」
『え?そういえばわたしも知らへんな〜。まぁ、なるようになるやろー』
ドラグランザーとダークレイダーの上に飛び乗る龍騎サバイブ=大阪とナイトサバイブ=榊。
そしてそれと同時に、両者のモンスターの姿が変貌していく。
ダークレイダーは体を90度回転させて鋭き疾風の刃のごときバイクへと
ドラグランザーは体を折りたたみ、激しき烈火の流星のごときバイクへと
ナイトサバイブのファイナルベント、疾風断
龍騎サバイブのファイナルベント、ドラゴンファイヤーストーム
天高くから地へと堕つるオーディーンめがけ、二つの巨大なエネルギーが爆音を上げて炸裂する!
そして巻き起こる最大級の炎と風が織り成す爆発という名の嵐。
『グ、ググ、』
11連ファイナルベントを受けてすら立ち上がろうとする、オーディーン。
そして、それを見て二人のオーディンの体から二匹のフェニックスが飛び立った。
体から黒き粒子をあげているオーディーンの周りを二匹のフェニックスは光の粒子を撒き散
らしながら飛び回る
それと共に徐々にオーディーンの体から出る黒い粒子が消え、その体の色が薄くなっていく。
そして、その体がゆっくりと二つに分かれた。
そこにあるのは倒れる蒼きフェニックスと、灰色のフェニックス。
『封印完了』
そしてその言葉と共に二匹のフェニックスはもう二匹のフェニックスを包み込み、紅と金の
まだらの珠となり虚空へと消えた。
再序章
オーディーンの封印
それはミラーワールドと現実世界の閉鎖、すなわちもう一人の自分との別れを意味する。
「なあ、オーディーンは封印して、こっちの世界は無事になるけど、そっちの世界はどうな
るんだ?」
すでにちよをはじめとする全員がミラーワールドからは出て、鏡の前に集合している。
そして、鏡の中には、モンスターと分離し、元の姿へと戻った、もう一人の美浜ちよの姿が
ある。
『分かりません。たぶん元にも戻らず、オーディーンがいなくなっただけでこのまま現状維
持じゃないでしょうか』
「そんな、それじゃあ、何のために・・・」
『いいんです。少なくともあなたたちの世界は守られました。
それに、元気な皆さんの姿ももう一度見ることができましたし。』
その言葉を言い終わると同時に、鏡に映る少女の姿が揺れ始める。
『そろそろ時間みたいです。皆さんの未来に、幸運を!』
鏡の中の、笑顔とともに左手を突き出し親指をあげたポーズ。
そして、皆の目にそれの姿を焼きつかせ、鏡からの画像と音声は消えた。
数秒後、再び映った鏡にミラーワールドからの残滓は残っていなかった。
ミラーワールド
「さようなら・・・」
映らない鏡を見つめるちよはそう呟くと、上空に気配を感じ、上を見上げた。
「で、この世界の消滅まで、あとどれくらいですか?」
何もない虚空から響く声。
『知っていたのか。この世界の行く末が消滅であることを』
『それならば、何故・・・』
フェニックスたちのその言葉にちよは首を横に振った。
「いいんです。向こうの世界の皆さんに余分な悲しみを与えたくないですから。
向こうの世界のわたしは分かったかもしれませんけど、多分誰にも言わないでしょう」
『そうか・・・、この世界はオーディーンの力を失い、すでに消滅を始めている。
汝たちは消滅した後に、輪廻の掟に従い、並行次元の世界のどこかで再び生を受けることに
なるだろう。しかし汝は何故そんなに落ち着いていられるのだ?
消滅することが怖くないとでも言うのか?』
「怖くないわけないですよ。もし一人なら、泣き叫んでいるかもしれません。
――――でもわたしは一人じゃないですから。」
その言葉と共にちよは周りを見渡した。
そこにある、彼女の仲間達の姿。
『・・・・・・汝には感謝せねばならない。汝らの力がなくては、この世界だけでなくあちらの世
界も崩壊することになっていただろう』
『たしか、ライダーの戦いに勝ち残ればなんでも願いがかなうということになっていたな。
汝は冗談ととったようだが、何かかなえたい望みはないか?
我等にできることならいかなる願いでも叶えよう。
むろん今のことである必要はない、来世のことでもかまわぬ』
その問いに、ちよは一瞬考え、顔を上げゆっくりと口を開いた。
「なんでも、ですか?だったらお願いしたいことが一つ・・・」
『何でも言うがいい』
微笑みと共にちよは答えた。
「次に生まれてきたときも、皆さんと知り合い、友達になれる。
それがかなえば他には何もいりません」
『・・・汝には本当に敬服させられる』
『承知した。汝らの言う「神」の名にかけて、その願いは必ず叶えられるだろう。
ではさらばだ、人間よ』
そして、二匹のフェニックスの気配は去った。
その言葉の通り、すでにちよの体からもおびただしい量の光の粒子が出ている。
「これで本当にさよなら、です。
次の世界で皆さんに また会える のを楽し みにし てま す ょ ――――――
「閉じちゃいましたね、ミラーワールド」
「・・・ああ」
「けど、ミラーワールドにあんな秘密があったなんてな」
「向こうではちよちゃんは一人ぼっちか・・・」
「いいえ、姿は違いますけど皆さんがいますから、一人じゃありません。絶対に、そして、永遠に・・・・・・」
「そやー、龍になっても心が同じならわたしはわたしやー」
「おー、なんか大阪がいい事を言ったぞ」
「そういえばあっちの世界ではわたしはエイかー、エイも悪くないなー。」
「わたしはカニ・・・なんで?」
「・・・・・・てきとうじゃないのか?」
「けど榊は蝙蝠だろ、結構似合ってたぜ」
「榊はそうだな。だけど、わたしは大阪が龍ってのが納得いかないな」
「それはいえてる」
「えー、なんでやー?」
「何でって、胸に手を当てて聞いてみろよ」
「・・・・・・あかん、心臓の音しか聞こえへん」
「ま、大阪が龍なのはいいとしよう。それより今問題なのは、何でこいつがここにいるんだー!?」
「|(º口º)| ばんざーい、ばんざーい」
「気にするな、智。多分気にしたら負けだ・・・」
「あー、そういえば、ちよちゃんまたアメリカに行くんかー?」
「ずっと日本にはいられません。まだむこうでやりたいことはいろいろありますから」
「まあ、そうだろうなぁ・・・。なぁ、せっかくみんながこうして集まったんだ!」
「ん?なんだ、智。あぁ、お前のことだ、またマジカルランドにでも行こうって言うんだろ」
「ガキだとでも言いたいのかー!あれ、でも何で分かったんだ、よみ?以心伝心?」
「だいたいお前の言いたいことくらい分かる。何年付き合ってると思ってるんだ。」
「いいですね、マジカルランドですかー。卒業のとき以来ですねー、行きましょうか?」
「おー、だいさんせーやー。なあ、榊ちゃんもそう思うやろ?」
「うん・・・いい考えだと思う」
「で、このメンバー全員で行くんだろ?もちろんわたしも行くぜ!あんたたちも来るか?」
「仮面ライダーつながりっていうだけでわたしたちも行っていいの?」
「面倒くさいこと言うなって。ちよちゃんの友達ってことはわたし達にとっても友達みたいなもんだろ!」
「ライダーじゃないけど多いほうが楽しいしね。あ、もちろんわたしは(榊さんが行くなら)絶対行く〜」
「いょっしゃー。私も行くわよ。にゃももデートとかそういう用事ないでしょ?」
「だまれ!でも・・・このメンバーなら確かに楽しそうだし、私も行こうかな・・・」
「|(º口º)| ばんざーい、ばんざーぃぃ、ぁあれ?なぜ、私は引きずられているのかね?」
「りゆうは分かってると思うが、君はだめだ。それより、オルタナティブの件、あっちでゆっくり話をしようか。」
「ゆかりちゃんと黒沢先生も行く、と。じゃあ決まりだな」<部屋から某人物が引きずり出されてちょっと安心
「うーん、いつにしますか?」
「きょうはむりだけど、善は急げって言うし、あしたなんかどうだ?」
「 よーし、じゃあそこまで私が車を運転、 」
「「「「「「だめです!!!!」」」」」」
「ちなみに結論として、今日のマジカルランドへは電車で行くことになりました」(ちよ)
「ちよちゃん、だれにいっとるん?」(大阪)
「そういえば、まだ誰も免許とってないんだな」(神楽)
「ゆかり先生のあの運転のせいじゃない?」(かおり)
「あ、ゆかりちゃんだ、遅刻だぞー」(智)
「わたしが電話しなくちゃお前も絶対遅刻してただろうが」(暦)
「・・・・・・これで全員そろった」(榊)
「じゃあ、行きましょうか♪」(ちよ)
そしてそれから彼女達は、彼女達自身の生活へと戻った。
榊、神楽、歩、暦、智、かおりはそれぞれの大学生活、
みちる、ゆかは高校生活、
ゆかり、みなもは高校の教師
そしてちよは再びアメリカへと。
それは一見するとミラーワールドにかかわる前とさほど変わらぬ生活に見える。
しかし、もし彼女達の親しい知人に訊いたのならば、その者は語ることだろう。
彼女達が鏡を見つめる時間が前よりも長くなったと。
そして、その目はなにかを夢想しているように見えるとも・・・・・・
この物語はここで幕を閉じる。
もちろん彼女達自身の物語がこれで終わりを迎えるわけではない。
終わる物語があれば始まる物語もある。
しかし、それが語られるのは、この場ではない・・・・・・
以上、エピソードファイナル=第十三章とエピローグ=再序章と続けてお送りしました。
最後まで読んでくださった方々、ありがとうございます。
再序章はもうちょっとひねりたかったんですけど・・・
ミネルバさん、お疲れ〜!ここしばらくの、急ピッチのアップにもお疲れ〜!
ゴール一番乗りですね?おめでとうございます。
ラストバトルの盛り上がり、イイ!
モンスターとライダーの関係、イイ!
しかし、折れとしては、黒沢先生の願いがなんだったか小一時間ほど問い詰め
たい(w
また別のネタで書いてくれることを激しくキボンヌしております。では!
ファイナルベント連発のシーンで、某MADの如くRevolutionが脳内再生さ
れたよ。
本物の最終回ではスカッとする展開は望めそうに無いけど、こっちで味あわ
せてもらいました。
お疲れ!
447 :
メロン名無しさん:03/01/18 22:55 ID:fjKHxev7
>>447 誰に言ってるの?
このスレの1ですか?と聞いといて、答えを聞かないうちに断定するのはどうかと思うが。
そもそも、ギャルゲ好きとアニメ・特撮オタが重なるとも思えんし・・・
>>447 ざっと読んだ感じ、皆ノッてるみたいだけど・・・
その板の事は知らないが、迷惑してるようには全く見えない。
わざわざここのスレに苦情書いて荒らすよりも、
先にやる事があるんじゃないか?
そこのスレに苦情書くとかさ。順序が逆。
あと、下げろよバカ。
最終回迎えた後もこのスレは続くのかな?
個人的には続いて欲しいと思う。
あずま氏もまだ最後まで書いてないし、名無士郎氏も姿を見せてませんよね。
ていうか、私も何か一本ぐらい書いて見ようかなとか思ってみたり。
公式サイト以外で、用語の詳しい解説やってるサイトとかありませんかね?
あれだけ分かりやすい縦読みを一発で気づかなかった私って一体・・・
456 :
メロン名無しさん:03/01/21 15:33 ID:RIM6ehSR
静まってるな・・・・・・オーディソ氏の新作待ちか?
んじゃ、前座は若手ライターの私がひとつ・・・・・・
『仮面ライダー 神楽』 第四話 <壱>
――翌朝。
たった一日で激変した神楽の事情などお構いなしに――当たり前だが――OREジャーナルでは
通常業務が行われていた。
もちろん彼女自身も、眠気と痛みに耐えながら、たまった仕事を黙々とこなすしかなかった。
午前十時を過ぎた頃、向かいの席=令子のパソコンから軽やかなメロディーが流れてきた。メー
ルの着信音である。令子は内容を確認するや、はぁ〜と、ため息をついた。
「どうしたんですか、なんか悪いことでも?あ、また、嫌がらせのメールですか!」
「もっとタチが悪いわ・・・・・・あいつからよ。ケガして入院したから見舞いに来てくれだって!ふ
ざけるなってーの!」
「あいつ?ああ、あのセンセイですか?へっ、おーかた誰かに闇討ちされたんじゃないですか?」
「多分ね、いい気味だわ。だけど、ほっとくと後でうるさいからなぁ・・・・・・神楽ちゃん、悪いけ
どお使い頼める?」
「え〜!い、いえ・・・・・・わかりました」
えらい言われようのその人物の名は、北岡秀一。
法外な報酬と引き換えに、どんな黒でも白に変えてしまう――悪名高き天才弁護士。
と、ある取材がきっかけで関わるようになったのだが、なぜか令子に一目惚れしてしまい、何か
とアプローチしてくるのだ。
神楽にとってもイヤなタイプで、会いに行くのは正直、気詰まりだったが、尊敬する先輩の頼み
ではことわれない。代理で見舞いに行くことになってしまった。
小一時間後、虎ノ門界隈にある病院に神楽の姿があった。
その深層、VIP専用個室のひとつが北岡の部屋だ。
入り口の前に、若い男が一人いる――彼の忠実な秘書兼ボディガード、由良吾郎である。
神楽が近寄ると、その前に立ちふさがった。
「・・・・・・なんか用ッスか?」
「ちわ〜、吾郎さん。センセイいる?」
「だから・・・・・・なんの用ッスか?先生がご招待したのは令子さんッスけど」
「見舞いっす・・・・・・なんてね。令子さんの代理で。入るよ?」
「だめッス!」「なんで!」「令子さんだけッス!」「代理だって!」「だめッス!」
騒ぎが聞こえたのか、中から北岡の声がかかる。
「ゴロちゃん、どうしたの?誰?」
「すみません、先生。OREジャーナルの、小っちゃいのが」
「だ、誰が小さいってぇ!コラァ」「神楽ちゃんかぁ・・・・・・いいよ、入れて」
応じた部屋の主の声はどこか弱々しく、確かに病人のそれであった。
――入った室内は、さながら一流ホテルのようだった。それも一泊何十万もしそうな。
豪華なベッドに横たわったまま、北岡はだるそうに口を開いた。
「・・・・・・で、何?」 「だから、見舞いだって」
「はは、そんな無愛想な顔で見舞いっていわれてもね」
「令子さんに頼まれて仕方なく来てんだ。じゃなきゃ、あんたなんかの・・・・・・」
「おいおい、ご挨拶だなぁ。そうやって、娑婆を大手を振って歩けるの、誰のおかげ?」
「ああ?・・・・・・私の親父があんたに払った五千万のおかげだろ!このペテン師が!」
――神楽と北岡の因縁は、OREジャーナル以前から発生していたのだ。
神楽は高校時代、水泳部だった。運動神経に恵まれ、また彼女自身が真面目な努力家であったこ
ともあり、部内ではナンバー1だったが――所詮、進学校のヌルい部活動。校外での試合では関東
大会予選が限界だった。
しかし、体育大学へ進学してから状況は一変する。そこの水泳部が導入した最新のトレーニング
理論による指導がぴったりはまったのか、飛躍的に成績が伸びていったのだ。
・・・・・・だが、それは悲劇の始まりでもあった。
多くはスポーツ有名校出身の他部員にとって、無名校の新人に追い抜かれるのはプライドが許さ
ない。陰湿ないじめが始まる。――無視。ロッカー荒し。ドーピングの噂。神楽にとって、姑息で
ネチネチとしたそれらのやり口は、理解不能で耐え難いものだった。
そして、ついに決定的な事件が起こる。校内の代表選手を決める選考会で優秀な成績をマークし
た神楽は、直後の検査で違法な薬物を検出されてしまった。・・・・・・一服、盛られたのだ。
ここぞとばかりに囃したて、退部・退学を迫る部員たち。
神楽はついにキレて、主犯格の女子部キャプテンとその取り巻きを殴って殴って殴りまくった。
――泣きながら。
結果、キャプテン他二名は重傷。止めようとした連中も軽傷を負うはめになった。
神楽の父親は一本気な男だった。娘から一部始終を聞くと、咎めるどころか逆にいたわり、励ま
した。『よくやった、お前は何も悪くはないぞ!』と。
彼は娘の正義を証明するため、つてを頼んで優秀な弁護士を雇った。――それが北岡だったのだ。
幸運にも、あるいは不運にも。
結果、父は報酬として貯えの全てを差し出し、さらに借金まで背負うはめになった・・・・・・。
「おいおい・・・・・・重傷三名、うち一人は未だベッドの上だ。おまけに加害者には反省の色、一切
なし。それをさ、二十歳前の犯罪とはいえだよ、無罪だの不起訴どころじゃなく、事件そのものさ
え無かったコトにしちゃうなんてさ、俺じゃなきゃできないよ?例え五千万払ってもね」
「その代わり、私は大学辞めなきゃならなかったし、水泳の世界には二度と・・・・・・」
「それにしたってさ、表向きは自主退学。水泳辞めるのもお前の意思ってことになってる。一部
の関係者以外には漏れていない。完璧じゃない?」
「だけど、もともと悪いのはあいつらじゃねぇか!なのに・・・・・・」
「・・・・・・はいはい、そうだね。この話は、もう終わり。済んだことだからさ。で、代理っていう
からには、何か持ってきたの?令子さんからの愛のこもったお手紙とか?」
神楽も気を取り直し、ニカッと笑うとテーブルの上に何かを置いた。
「何これ?」
「桃缶一個さ、見てのとおり。・・・・・・これで十分、だってさ。んじゃ、お・大・事・に」
皮肉たっぷりの笑顔を残し、踵を返す神楽。
ジーンズに包まれた形の良いヒップが、歩みとともに自然に揺れる。
そこに、北岡の視線が釘付けになった。
――残念ながら、彼女の『女』としての魅力に気がついたわけではない。その尻ポケットからの
ぞく青いケースが目にとまったからだ。
北岡は、一瞬考え込んだ後、口を開いた。
「・・・・・・神楽ちゃん。ちょっと、そのポケットの青い奴、見せてもらえるかな?」
「ん、これ。ああ・・・・・・、おっと、だめだって!」
つい、気安く見せてしまいそうになった彼女だったが、あわてて思いとどまった。
「なんで?」
「あ〜、これはさ、女の、なんていうか、ぷ、プライバシー?ま、そーゆーことで。んじゃ」
自分でも何を言っているかわからないことをまくしたて、逃げるように神楽は立ち去った。
残された北岡は、あごに手をやって考え込む。
(・・・・・・な〜にが女のプライバシーだよ。ただの化粧コンパクト?ま、その可能性もある。あ
れでも女だし。だが、デッキだとしたら・・・・・・青色、この前の奴、タイガのと同じだ。奴も女だ
った。口調も似ている。もっとも仮面ごしだと、声自体は結構変わるからな。断定はできないが、
ま、要注意ってとこか)
北岡の大きな手が、枕の下から何かを取り出した。それは綺麗な緑色で、表に水牛の紋章の刻印
された――カードデッキ!彼こそが仮面ライダーゾルダ、その人だったのだ。
『仮面ライダー 神楽』 第四話 <弐>
「はぁぁ〜、終わった、終わった。・・・・・・さてと!」
病院を出ると、神楽はラジオ体操のごとく、腕を大きく回した。――北岡との会話で穿り返され
た、まだ癒えぬ傷。その疼きを振り払うように。
時刻は午前11時をとうに過ぎ、昼飯どきが近い。腹も減ってきていた。
「よし!ちょっと遠いけど花鶏にいってみるか!サテンでもランチぐらいやってるだろ」
神楽は携帯で令子に報告を済ますと、ひらりと愛車(?)MTBにまたがった。
・・・・・・健脚のおかげで小一時間後には到着できたのだが、遠くから見てもわかるほど店内は満員
だった。外にも数人のOLらしき女性が順番待ちしている。かなり繁盛しているようだ。
「おいおい、きのうはガラガラだったのになぁ。仕方ない、時間つぶして出直すか」
――ちなみに、昨日は臨時休業だったのだが。
神楽は、MTBを手押しして、辺りをぶらぶらすることにした。
・・・・・・とはいえ、足は自然と、昨日の惨劇の場所とは反対の方へと向いていた。
(・・・・・・あのオバさん。あんだけでかい買い物袋だ、独身でなく、きっと旦那も子供もいたんだ
ろうな。私がもう少し早ければ・・・・・・くそ、涙が出てきた。バカ、泣いてどうなる!生き返るわけ
じゃない。今の私にできることは・・・・・・うう、これは!来たか!)
――またしても、あの音が聞こえてきた。ミラーワールドの扉が開き、モンスターが襲来するこ
とを告げるあの音が!神楽は涙をぬぐい、走り出した。
(今の私にできることは、もう被害者を出さないことだけだ!全部は無理だけど、私の目の届く
ところでは絶対やらせねぇ〜!!)
疾駆する神楽の10メートルほど前を、サラリーマン風の男が歩いていた。ランチを終え、会社
に戻るところであろう。その脇の自販機のガラスに怪しい陰が見え隠れしている。
「危ねぇ、でやぁぁ!」 「え、うわわ・・・・・・おご!」
――間一髪!神楽が男性を突き飛ばすと、それまで彼の体があった場所に向けて怪物の手が伸び、
むなしく空を掴んでまた引っ込んでいった。
「ふぅぅ、あ、大丈夫ですか!・・・・・・あれ?」
男は、突き飛ばされたショックで失神してしまっていた。とはいえ御の字であろう。自分自身が
ランチにされてしまうのを免れたのだから。
「・・・・・・ま、良しとするか。変身!」
幸い周囲に人目は無い。神楽は自販機のガラスを使ってタイガへと変わり、ミラーワールドへと
身を躍らせた。
「・・・・・・どこに行きやがった。え?ぐわぁ〜!」
いきなり、タイガ=神楽は背中に一撃をくらってしまった。しかし、振り返ってもそこには敵の
姿は見当たらない。耳を澄ませ、気配を探りつつカードを引き、デストクローを装着する。
(・・・・・・飛び道具か?また、あのドンパチ野郎がいやがるのか?いや、今の痛み、銃じゃねぇ)
そこへ――風切る音!再び背後から!
今度は察知し、爪で弾いた。目でも捉えた。それは、全長1メートルほどの回転する物体だった。
(あれは、ブーメランかぁ!?面倒だな。ま、どっちみち突撃しかねぇ!いくぜ!)
猛然と、タイガ=神楽は回転刃の帰っていく方向へダッシュした。長射程の装備の無い彼女には、
今の状況ではそれしかない。
――だが、その脚は速い!
ブーメランを受け取ったモンスターに次を行う間も与えず、デストクローの一撃を叩き込む!
「ギギギ〜!!」 「どうだ!ん、こいつ・・・・・・カミキリかぁ?」
花の名前は知らねども――演歌の歌詞みたいだが――神楽は昆虫の名前はわりと詳しかった。子
供の頃、男の子に混じって虫取りをやりまくった成果だ。彼女の言葉どおり、そのモンスターは二
足歩行のカミキリムシとでもいうべき姿だった。
機を逃すまいと、左右の爪での連撃を開始するタイガ=神楽。対して、敵――ゼノバイダー――
はブーメランを長刀のように扱い、防御を試みる。・・・・・・かと思いきや!
「ギギ!」 「うわ!くそ、逃げるつもりか!」
至近距離からそれをタイガの顔面に投げつけ、ひるむ隙に一目散に逃げ出したのだ。
直ちに後を追って走り出すタイガ。しかし、敵は虫の分際で――いや、虫だからこそ、ちょこま
かと方角を変えて逃げ回り、なかなか厄介だ。
「待ちやがれ、この虫けら野郎!ピンで留めて標本にしてやる!」 「ギギ〜!」
しかし・・・・・・ゼノバイダーがタイガのタックルをかわし、路地から脇の家屋の屋根へ飛び上がっ
た時だった。――彼女の耳に、いまや聞きなれた認証音がかすかに届いたのは。
『ストライク・ベント』
「なんだ!私じゃない。すると他のライダーが、どこかに?うわ!」
「ギ、ギャ〜!!」
あれこれ考えるいとまはなかった。直後、見上げる屋根の上の敵は、飛来する火の玉の直撃を受
けて木っ端微塵に砕け散ってしまったのだ。
(・・・・・・たった一撃だとぉ!『ファイナル』って言わなかったよな。必殺技でなくて、あの威力
かよ!くそ!)
何者かが、屋根に飛び乗った気配がした。死角になっていて目視はできない。
すでにモンスターは死んだ。目的は達せられている。無駄な戦いをする意味は無い。おまけに相
手はたぶん――強い。
・・・・・・しかし、いや、だからこそ、神楽は自分を抑え切れなかった。――この目で見たい!
「ええぃ、いっちまえ!とぅ!」
短い掛け声とともに、タイガ=神楽は屋根へと跳んだ。
中央に、黄色く光る玉――死んだゼノバイダーの魂をはさみ、ちょうど反対側にそいつは立って
いた。赤を基調とした体。銀の仮面と胸当て。その左手には、龍の頭を模した手甲。そして、龍そ
のものが、背後の空に悠々と泳いでいる。
(・・・・・・こいつ、強ぇぇ!)
見ただけで、確信した。本能が――神楽の、そしてタイガの――教えてくれた。赤いライダーの
力量を。
怖気づく心をねじ伏せるように、大声で問いかける。
「お、お前は誰だ!」
(続く)
と、いうわけで第四話でした。拙文ご容赦。
毎回キャラの扱いに関してお詫びしてますが、今回は神楽を悪い子にしてしまいました。
スマソ・・・・・・
でも、神楽は神経太そうだけど時々えらく繊細な一面もみせるので、陰湿ないじめにあったら
こんな形で爆発するんじゃないかな・・・・・・と。
北岡についても「契約書も交わさないうちに大金を目の前に積む神楽・父の無知につけ込み、
うまいことやって金だけ巻き上げてしまおうと企んでいた。しかし、とある政財界の親睦会に
招かれた際、意外な大物――美浜グループの総帥に『娘の大切な友人の弁護を引受けてくださっ
たそうですね。私からもよろしくお願いしますよ』と声をかけられ、全力を尽くさなければなら
ないハメになった」なんて裏設定もあったりします(w
つーか、自分の力量考えず、設定を複雑にし過ぎですな折れ。
だからダラダラ長くなるんだ。もう少し、工夫いたします。
では、第五話のあてにならない予告、いきます。
『仮面ライダー 神楽』
「おっと、背を向けたのは、フェイントのつもりか!?へっ、甘ぇな!」
「キャァァァァァァ〜〜、お化けぇぇぇぇ!!」
(榊さん、早く戻ってきて!殺されちゃう〜)
「にゃも〜、いい加減にしなよ〜。酒、不味くなるぞ〜」
「・・・・・・先生もきっと悲しんでるだろうな」
戦わなければ、生き残れない!
いらだとばるさん、乙です
やっぱりうまいな〜 続き期待してますので
新しいライターも来そうだし、このスレもずっと継続してほしい・・・
470 :
山崎渉:03/01/23 15:31 ID:???
(^^)
鷹さんまで連休か。寂しい。
472 :
山崎渉:03/01/28 17:40 ID:???
(^^)
山崎渉が2度も出現したスレはここですか?(w
こそーりうpします。気付いた人から順にどぞー。
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第27話接戦】
ゆかり達がマガゼールを撃墜した頃、榊とかおりんはそれぞれの契約モンスターと一
緒にコアミラーを探してミラーワールドを探索していた。
「中々見つかりませんね榊さん」
「うん・・・」
(榊さんとお散歩よー!・・・これで二人っきりだったらなー)
そんなかおりんの隣を歩いていたメガゼールが突然動きを止めたかと思うと、かおり
んに異変を伝えた。
(・・・!かおりん、ゼールが一人やられました。こっちです!)
「へ・・・?あ、あの榊さん、私のモンスターがこっちって言ってます。」
「わかった。」
榊とかおりんは駆け出したメガゼールの後を追いかけ始めた。
(この先です)
メガゼールの言葉を聞き、かおりんは意識を視覚に集中させた。かおりんの目にやが
てうっすらと4人の影と、巨大な物体が見えてきた。
「榊さん、もしかしてあれがコアミラー・・・でしょうか?」
「・・・え?」
榊もかおりん同様、視覚に意識を集中した。巨大な黒い物体を中心に仁王立ちに立つ
4人が自分達と同じく、ミラーワールドでの長時間の活動を可能にするグランメイル
を装着していることに気がついた。
「誰・・・?」
いち早く榊達が近づいていることに気がついたのはリュウガだった。マガゼールを撃
墜してはしゃいでいる3人に向かってリュウガは使命を与えた。
「・・・皆さん出番ですよー」
「ええ、分かったわ・・・でも少し気がひけるわね。同じライダーを攻撃するなんて」
「大丈夫ですよ。話をすればきっとわかってくれます」
「よっしゃー!敵だ敵ーー!」
「ってゆかり、あんたちゃんと人の話を聞きなさい!!」
そんなみなもと木村の会話を無視してゆかりこと王蛇はべノバイザーにカードを装填
しながら榊達へと向かって走り出した。
《ソードベント》
べノスネ―カーの尻尾を武器として具現化した黄金の突撃剣、ベノサーベルを握ると
王蛇は両手を広げながら一気にかおりんことインペラーに向かって跳躍した。
「いやっほぅ!」
「・・・かおりん危ない!」
榊ことタイガはインペラーを抱きかかえながら横へと突っ走った。インペラーの居た
場所にべノサーベルが激突し、王蛇の体重を掛けた一撃の重さが周囲に響いた。
「ガキィィィン!」
「きゃ!・・・榊さんありがとう!(えへへ〜榊さんに助けてもらっちゃった〜)」
「何をする・・・」
「私と戦えー!!」
王蛇は手にしたべノサーベルをがむしゃらに振り回しながらどんどんタイガとインペ
ラーの間合いを詰めていく。メガゼールはそんな王蛇に対して手に持っている巨大な
鋏の形をした杖で応戦していた。倒れこんでいたインペラーは、王蛇の様子を見て、
脚部に付属しているガゼルバイザーにカードをセットした。
「いきなり何すんのよ!!」
《アドベント》
「この人を皆でやっつけて!」
(了解!)
メガゼールは手に持っていた巨大なハサミを使い王蛇を攻撃しながら、インペラーから
のカードにより与えられた力で次々とゼール軍団を虚空から出現させた。王蛇も負けじ
とばかりにべノサーベルと拳を使いながら周囲を囲んでいるゼール軍団と戦い始めた。
「かおりん急ごう!」
「はい!」
「ちょっと待ちなさいお前ら!・・・だー!あんた達も少しは落ち着きなさい!」
インペラーはタイガの声に頷くとゼール軍団に苦戦している王蛇をほったらかしてコ
アミラーを目指した。
(あれを壊せば全てが終わる・・・!)
《ストライクベント》
タイガは手にデストクローを装着すると、さらに加速してコアミラーとの距離を一気
に縮め始めた。近づいてくるタイガを見て木村とみなもはため息をついた。
「・・・来てしまいましたね。」
「仕方ありませんわ。木村先生、私達で時間を稼ぎましょう。」
《ストライクベント》
《スィングベント》
それぞれ自身の契約モンスターの一部でもある武器が出現した。木村ことガイの手に
はメタルゲラスの角でもあるメタルホーンが装着され、みなもことライアの手にはデ
ビルダイバーの尾びれでもあるエビルウィっプが握られた。
「邪魔を・・・するな!」
「そうよ!榊さんと私の邪魔をするやつは地獄に落ちるわよー!」
「ごめんね。でも私達そう頼まれているから・・・」
「大丈夫です。私達はあなた達を倒す気はありません。」
(え・・・?)
ライアとガイの話に戸惑いながらもコアミラーに必死に近づこうとするタイガとイン
ペラー。しかし近づけばガイのメタルホーンで吹き飛ばされ、跳躍して近づこうとす
るとライアのエビルウィップが地面に叩き落すので2人は一向にコアミラーに近づけ
なかった。
「私も一緒に混ざりたいですねー・・・」
そんな混戦を少し後ろから楽しそうに見ていたリュウガはコアミラーが振動し始めた
ことに気づいた。
(これならもう大丈夫ですね)
《トリックベント》
リュウガの契約モンスター、ドラグブラッカーが出現し、口から深淵の闇を放出した。
その途端、周囲は闇に包まれその場にいたライダーとモンスター達は突然の出来事に
困惑した。
「なんじゃこりゃ!こらモンスター!あんた達どこいったのよ!はっ!もしかして闇
討ちか?・・・卑怯よー!」
「ギ!?」
「・・・これは?」
「うー。榊さんどこですかー?」
「困りましたわね。どうしましょうか木村先生」
「にゃも残念賞!」
「にゃもって呼ばないでください!」
(・・・にゃも!?)
「さ、帰りましょー・・・榊さん、かおりん、また会いましょうね」
リュウガはそう言うとこの暗闇の中で自由に動きながら王蛇、ライア、ガイの3人に
近づき1つだけ淡く輝く鏡へと放り投げた。暗闇が消え辺りにはもはやタイガとイン
ペラーだけが取り残されてた。タイガは先程のライアとガイの会話に動揺した。
(木村先生、にゃも・・・するとあと一人はゆかり先生・・・?)
「榊さん困りましたね。どうしましょうかー?」
途方に暮れたにインペラーがタイガへ話しかけた。タイガはインペラーに先程のライ
ダー達の会話の内容を伝えた。
【次回予告】
「さて、榊さんはどうするんでしょうねー?」
「それは・・・」
「ダブルチョーップ!」
「無駄だ・・・」
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
>480
乙駆れ〜ッス!
かおりんが活躍する話、良いッス!しかし榊=虎、かおりん=インパラって取り合わせ
は、かおりんが食べられちゃいそうでドキドキ。でもかおりん本望かも?
次回の「ダブルチョーップ!」がどんなシーンか楽しみッス。では!
鷹さん 乙カレー
久しぶりだ〜〜〜
うぅ、一週間書き込みがなかったからどうしたのかと思いましたよぉ
おっと、トリップ間違えた
私も新作書こうかな・・・
>>482azU・・・そのトリップがうらやますぃ
いらだとばる氏乙!龍騎のメンバーと神楽は楽しそうでイイ!ね。
ミネルバ氏の新作もこんなY⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)感じで期待してます(w
長らくご無沙汰しております。
ちょっと仕事が尋常でないほどに忙しく、まだ暫く復帰出来そうに有りません。
このスレが続いていましたら、復帰後にまた書かせて頂こうと思いますが、
下手すると二月一杯無理かもです。
他のライターさんの中には既に完結までいかれた方も居られて、個人的には
結構焦っていたりします。
新しいライターさん参入の兆しもあって、個人的には非常に楽しんでいますが、
もう暫くは傍観者でいようと思います。すいません。
これからも白熱したライターバトル(笑)を見せて下さい。応援してます。
名無士郎氏、キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!! 嬉しいな♪
お仕事頑張ってください。そして早めの復帰を祈ってます。
名無士郎氏キタ━━ヽ( ゜Θ゜)ノ━━!!!!
お仕事ごくろうさまです。がんがる!
>下手すると二月一杯無理かもです。
ならば拙者も3月まで気合入れて書きます!
明日は家にいないからうp出来ないけど(w
それでは28話どぞー。
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第28話策略】
リュウガは約束通りゆかり、みなも、木村の3人を現実世界へと帰還させたあと、デ
ィメイションホールで士郎を探し歩いていたが、黒ちよの胸には先程のタイガ&イン
ペラーの戦いを鮮明に思い浮かべていた。
(インペラーのゼール軍団にタイガの反射神経と運動能力・・・今度襲った時、また
コンビで戦われたら厄介だな・・・そうだ!)
「士郎!ここにいないんですかー!」
「どうした・・・」
「うわ!いきなり後ろに出てくるなよ!・・・士郎さん、榊さんを皆から別離させま
せんか?」
「・・・無理だ。彼女達はお前の本体でもあるちよを中心にコアミラーを破壊する」
「まあまあそう言うなって。私に考えがある。・・・マヤーを使うんだ」
「マヤー?」
黒ちよは榊が高校時代、1匹のイリオモテヤマネコが母猫を亡くしてその少し前に優
しくしてもらった榊を慕い西表島から来たということ、その猫の名前がマヤーで現在
は榊の一人暮らししている部屋で一緒に暮らしていることを士郎に伝えた。
「・・・つまり士郎さんの持っているあのカードを使ってマヤーを・・・」
「・・・やってみる価値はあるな。」
「さて、榊さんはどうするんでしょうねー?」
士郎がその策略の為にディメイションホールから姿を消すのを確認した後、黒ちよは
口元にうっすらと笑みを浮かべた。その頃ミラーワールドでは7人のライダーとちよ
が再び集結していた。
「見当たらなかったよ」(よみ)
「私もやー」(大阪)
「ちよちゃんごめんね。見つけれなかった」(優衣)
「いえ、優衣さん謝らなくていいですよー」(ちよ)
「皆駄目だなー!」(智)
「何ー!そういう智はどうなんだよ!」(神楽)
「見つけれなかった!」(智)
「何で自慢気なんだよ・・・そうだ、榊はどうだったんだ?」(よみ)
「・・・」(榊)
「あのー見つけたんですけど消えちゃいました。」(かおりん)
「かおりん見つけたんかーでも消えたってどういうことや?・・・あ、わかったー私
のモンスターみたいに姿を消したんやな!」(大阪)
「えーっとですね・・・」(かおりん)
かおりんは一緒にコアミラーを発見した後から未だに考え込んでいる榊の代わりに答
え始めた。コアミラーを見つけたこと。新しいライダー4人に遭遇したこと。そして
妨害されている間にコアミラーが消えたこと等を話した。
「新しいライダーの妨害、か・・・」(よみ)
「黒いやつもいたのか!許せーん!」(智)
「へーでもそのライダー達って誰なんやろー」(大阪)
「もしかして・・・ゆかり先生達なのかな・・・」(榊)
「え?ここでは先生もライダー、なの?」(優衣)
「そうみたいです。榊さんが会話を聞いていたら木村先生っていうイヤ〜な人もライ
ダーになったみたいです」(かおりん)
「でも榊、何で先生が妨害したんだ?」(神楽)
「それは・・・」(榊)
「・・・士郎さんがデッキを渡したのだと思います。」(ちよ)
「お兄ちゃんが?でも何でそんなことをする必要があるの?だってコアミラーを破壊
したらミラーワールドを閉じることが出来るんだよ」(優衣)
優衣の疑問はもっともであった。コアミラーから出現するモンスターは人を襲う。一
刻も早くコアミラーを破壊する必要があると優衣はちよから聞いているだけになおさ
らである。
「それは・・・」
ちよが迷いながらも口を開こうとした時、ライダーがグランメイルを装着することで
ミラーワールドでの活動を可能にする時間が彼女達に迫っていることに気づいた。
「みなさんタイムリミットが来てるみたいです。・・・あっちの鏡からみんなは帰れ
ますよ。またミラーワールドで会いましょう。」
ちよはそう言うとミラーワールドのある一箇所を指差した。皆がその場所を振り返る
と、うっすらと白く光っており、そこだけが現実へと帰還するための扉であることが
わかる。
「先に行くぜ!うぉぉぉー!」(智)
「やれやれ。・・・ちよちゃん、またな」(よみ)
「また・・・」(榊)
「ちよちゃんおつかれさまです!」(かおりん)
「ちよちゃんばいばいやー」(大阪)
「ちよちゃん。じゃあな!」(神楽)
ライダー達はタイムリミットが近づいているミラーワールドから脱出するように、そ
の鏡の扉から現実世界へと次々と帰還していった。しかし、唯1人未だに残っている
ライダーがちよの隣で黙って立っていた。ファム(優衣)である。
「・・・優衣さん急いでください。タイムリミットが来たら、一生このミラーワール
ドから抜け出せなくなるんです。」
「・・・今の質問に答えて!どうしてお兄ちゃんはライダー達にコアミラーを守らし
ているの!どうしてここまでミラーワールドを守ろうとするの!?」
「優衣さん・・・コアミラーを破壊した時全てがわかります。士郎さんのミラーワー
ルドと優衣さんへの想い、私のこの姿も・・・だから今は聞かないでください。今
は・・・」
「ちよちゃん・・・じゃあ約束して。いつか必ずちよちゃんが知っていることを教えて。」
「はい。・・・優衣さん、幸運を!」
ちよはガッツポーズを残し姿を徐々に消していった。優衣はちよが気配を消しこの場
からいなくなったことを確認した後、黙って現実世界へ帰還した。鏡の扉に接触する
優衣。途端に鏡の砕ける音と共にグランメイルが解除され、元来た場所でもある、高
校前に立っていた。
「優衣ちゃん遅いぞー!」(智)
「ごめんね。ちょっと手間取ってたんだ」(優衣)
「あーあ。それにしてもまた振り出しに戻った気分だぜー」(神楽)
「まったくだ。」(よみ)
「よみはダイエットでこういうの慣れてるから平気だろ?ほら、リバウンドだっけ」(智)
「ダブルチョーップ!」(よみ)
「イター!何だよ!ホントのことだろー?」(智)
「智ちゃんとよみちゃんはいつも楽しそうやなー」(大阪)
(コアミラーを破壊した時全てがわかる・・・でもどうしてそれがちよちゃんのあの
姿にも関わっているんだろう・・・?)
じゃれあうメンバーをよそに優衣は今のちよの言葉を思い出していた。コアミラー、
ミラーワールド、士郎、そしてちよとライダー。まるでバラバラのジグソーパズルを
完成させるかのように優衣は考え始めた。今ではない時。優衣は真実を知ることにな
る。だがまだその時は優衣に訪れていなかった。
(・・・駄目。全然わからないわね。)
「優衣さん・・・優衣さんー?」(かおりん)
「え、ええ。どうしたの?」
「優衣さん、このあと皆で遊びに行くんですけど一緒に行きませんか?」(かおりん)
「私は・・・今日は・・・」(優衣)
「私も駄目だ・・・」(榊)
「そうですか・・・(あ〜あ。榊さんも駄目なんだ―。は〜)」(かおりん)
「何だ榊も優衣さんも帰るのか。」(神楽)
「榊、優衣ちゃんまったねー」(智)
智の声を余韻に榊と優衣は家へと向かい始めた。マヤーが待っているであろう、榊の家を。
「ギャウウウウ!」
「無駄だ・・・ソウルベント・・・」
「・・・ギャゥゥゥ・・・」
その頃榊の家では士郎とマヤーが対峙していた。士郎が虚空から取り出した何も描か
れていないカードと共にある効果を発動させた。部屋全体を光が包み込んだ。そして
マヤーの姿は消え、士郎の手には一枚のカードが握られていた。
【次回予告】
「大丈夫。マヤーと一緒に帰ってくるよ・・・」
「・・・お前にも選ばなければならない時が近づいている・・・」
「・・・これは?」
(私の・・・真実・・・)
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
乙!マヤーが、マヤーが・・・人質、いや猫質?
マヤーとかおりん、どっちのネコを選ぶのか、榊さん・・・って違うか。
誰もいない・・・こそーりうpするならいまのうち・・・
29話━━ヽ( ゜Θ゜)ノ━━ドゾ。
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第29話取引】
「ただいま・・・?」
ミラーワールドを閉じる為の闘い。そんな果てしなく困難なものに巻き込まれた榊にとっ
て、束の間の休息と知りつつも大学に進学した時から借りているマヤーが待つ部屋が見え
てくるにつれて少しほっとした。部屋の扉を開けた時、いつもなら真っ先に自分に向かっ
て飛んでくる、榊の大切な存在であるマヤーが飛んでこないことを不思議に思った。
(どうしたんだろう・・・?)
「榊さんどうしたの?・・・お兄ちゃん!」
優衣は榊が玄関先で止まり一向に部屋に入ろうとしないので足を止めると自分も部屋を覗
き、驚きのあまり夕食の材料が入った袋を玄関先で落とした。玄関に取り付けてある全身
鏡から兄、神崎士郎がこちらを見つめていたからだ。
「あなたが優衣さんの・・・?」
「榊、お前に話がある・・・」
士郎は手に持っていた1枚のカードを榊に見せた。途端に榊はさっと表情を変え、榊とし
ては珍しいくらい感情を込めてそのカードに描かれている姿の名前を叫んだ。
「マヤー!!」
「そうだ、このカードにはマヤーを封印してある」
「何故だ・・・」
「ミラーワールドに来い榊・・・」
「待って!お兄ちゃん!どうしてそんなことをするの?」
「お前には関係ない・・・」
「そんな・・・」
士郎の冷たい言葉に思わず言葉を失う優衣。アメリカに行ってから行方不明となった兄士
郎をずっと探し続けているという話をすでに優衣から聞いていた榊は士郎のあまりな態度
に再び士郎を睨みつけた。
「私も一緒に行く!」
「優衣、お前は駄目だ・・・榊1人で来い。」
「どうしてお兄ちゃん?私はずっとお兄ちゃんを探していたんだよ?やっと会えたのに」
優衣はその場で泣き崩れた。優衣が泣き崩れた時榊は気付いた。士郎の表情が苦悶で微か
に苦しんでいたことを。3人の間にしばしの時が流れた。やがて優衣が泣いていることに
耐えられなくなったのか士郎が2人に話し掛けてきた。
「優衣・・・俺を探すな。俺はもう昔の俺ではない。」
「え・・・お兄ちゃんそれはどういう意味なの?」
「・・・榊、ミラーワールドで会おう」
「待ってお兄ちゃん!」
優衣の声も聞こえないかのように再び士郎は現れた時と同じくすぐに姿をかき消した。士
郎を追いかける為榊は急いで士郎が現れた全身鏡に己のデッキ、タイガのデッキを反射さ
せた。出現するライダーベルト。榊の様子を見ながら優衣はぽつりと言葉を漏らした。
「お兄ちゃん・・・どうして」
「その、優衣さんを巻き込みたくないからあんなに冷たくしたんだと思う。」
「え・・・?」
「・・・」
優衣は榊が慰めようとしていることに気付いて榊を見つめた。榊の瞳は真っ直ぐに優衣を
見返した。
「そうなのかな?」
「優衣さんが泣いてた時、優衣さんのお兄さん苦しそうだった・・・」
「そっか。お兄ちゃんも何かあるんだ・・・榊さん気をつけてね。」
「うん・・・大丈夫。マヤーと一緒に帰ってくるから・・・変身」
榊は優衣の肩にそっと置いていた手でベルトにタイガのデッキを装填した。優しい言葉の
余韻を優衣に残して、榊は士郎を追いかけるためにミラーワールドへと進入していった。
「・・・どこだ」
「来たか・・・」
「マヤーを、元に戻せ・・・!!」
ミラーワールドの自宅を飛び出すと榊は叫んだ。すると歩道の一角から士郎が姿を現した。
榊は深く、静かに怒りを込めた瞳で士郎を睨みつけた。無理も無い。可愛いもの、特に猫
が大好きな榊に唯一なついた猫が、マヤーだけなのだから。
「あなたが優衣さんの兄でも・・・私はマヤーの為ならためらわない!」
「そうだ。ためらうな」
「・・・?」
「取引だ・・・お前もライダー同士で戦え・・・!」
「・・・断る。ライダーも人・・・私は人を、絶対に傷つけたくない・・・」
「ならば・・・マヤーは一生この中だ・・・」
士郎は再びマヤーの封印されているカードを榊に見えるよう手に握った。その瞬間だった。
「マヤーを・・・返せ!」
タイガとなった榊は100mを5秒で駆け抜ける。士郎との距離を一瞬で詰めると榊は士
郎からマヤーのカードを奪い取ろうとした。
「無駄だ・・・」
「・・・く」
だがそんな榊を見通していた士郎はすでにその場にはいなかった。歩道にあるカーブミラ
ーから再び榊に話を続ける士郎。
「・・・お前にも選ばなければならない時が近づいている・・・」
「何・・・?」
「全てを犠牲にしても大切なものを選ばなければならない時が・・・」
「・・・」
「答えが出たらこれを使え・・・」
士郎は1枚のカードを榊に投げつけた。それがマヤーかと思うと榊は受け取るざるを得な
かった。受け取った瞬間、榊の周囲で大きな力を感じさせる風が巻き起こった。
「・・・これは?」
「新たな力・・・サバイブ」
榊は士郎が投げたカードを見つめた。カードには自由の象徴である翼とその周囲を青い炎
が燃え盛っており、カードの名称部分にはSURVIVEと書かれていた。
「・・・戦え・・・戦え!」
「待て士郎ーーー!!」
榊は声だけを残して消えた士郎に大声で呼び止めたが無駄だった。後にはサバイブのカー
ドを握った榊がいるだけである。榊はしばらくの間ミラーワールドを探索していたが、や
がてタイムリミットを警告する、粒子の放出が始まっていることに気づき、仕方なくミラ
ーワールドから現実の世界へと帰還した。榊の部屋で榊の安否を心配しながら1人待って
いた優衣は急いで榊に話しかけた。
「榊さん大丈夫だった?」
「うん・・・大丈夫だから、その心配しないで・・・」
「・・・わかった。でも一人で何もかも抱え込まないでね。」
ミラーワールドから帰還するなりソファーに座り込む榊。優衣は榊を心配そうに見つめな
がらも榊が今は話をしたくないことに気付き、おやすみと言い残すとベットへと向かった。
『・・・お前にも選ばなければならない時が近づいている・・・全てを犠牲にしても大切
なものを選ばなければならない時が』
(・・・私は皆を傷つけるなんて出来ないよ・・・でも、そしたらマヤーは・・・!!)
榊は重すぎる苦悩を抱えたまま朝を迎えた。優衣はベットで身体を起こして榊の部屋を出
てソファーのある居間に行き榊が昨日のままの姿勢であることに気がついた。
「おはよう榊さん・・・もしかしてずっと起きてたの!?」
「・・・うん」
「少しは寝なきゃ。ほら、横になって。」
優衣に強く勧められ、ソファーに横になった榊はぽつりと優衣に聞いた。
「優衣さん・・・」
「どうしたの榊さん?」
「もし誰かを傷つけることが必要になったら・・・私は、どうしたらいいのかな・・・」
優衣はこちらの世界に来てからはずっと榊と一緒に暮らしているので、榊が無口ながらも
優しさに溢れているということや、榊が何よりも愛しく思っている存在がマヤーであるこ
ともわかっていた。
「・・・私の世界でも大切な人の為に傷つきながら戦っていたライダーがいたよ。」
「え・・・?」
「蓮って言うんだけどね。蓮は言ってた。その人の為なら命を投げ捨ててもいいって。」
「・・・」
「真実は1つ。でも角度が変わると違う意味を持つ・・・今思うと、ライダー同士の戦い
もそうだったのかも知れないわ。」
「ライダー同士の戦い・・・」
「・・・私達の世界のライダーは、モンスターと戦うようにお互いで戦ってた。」
「どうしてそんなことを・・・?」
「最後に残ったライダーは願いを叶えることが出来るんだって。だから皆自分の願いを叶
える為に闘ってた。ちよちゃんにデッキを渡された時、私は怖かったよ。だって私も人
を傷つけなきゃいけなくなるかも知れないから・・・」
「・・・」
「でも、気づいたの。コアミラーを壊さないと関係のない人達が犠牲になるって。だから
私はミラーワールドを閉じたい。そしてお兄ちゃんが何を考えているか知りたい。これ
が私の願いだよ。・・・この先榊さんがどんな道を選ぶか分からないけど、私は榊さん
の力になりたいと思う」
「優衣さん・・・ありがとう」
「さ、朝ごはん準備するね。榊さんは少し休んでていいよ。」
優衣は立ち上がるとキッチンへとむかい、手馴れた動きで朝食を作り始めた。
(私の・・・真実・・・)
榊は己の手を見つめながらまぶたをゆっくりと閉じていった。
【次回予告】
(かおりんおはようございます)
キィィン・・・キィィン・・・
「あのー、お話って何なんでしょうか?」
「ええ。そうですよー。今回はタイガと戦いたいと思います」
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
これ書き込んでいてふと思った。
神崎兄がライアと龍騎にサバイブを渡したのは一番弱そうに
見えたから彼らを生き残らす為に渡したんじゃないかなーって。
逆になったけどね(w
乙彼で〜す。マヤーの使い方、上手いですね。次回はかおりんがピンチのヨカーン!
ハァハァ・・・でなくて、ハラハラ、ドキドキ
パンツィラ大阪・・・また頑張るかー!(w
もう50話以内で終われないに3オーディン。無駄に長くてスマソ。
とりあえず30話どぞー。
※30話の補足。REALITY WOLRDについて。
MIRROR WOLRDの対を考えた結果こうなっちゃいました。
意味は現実の世界ってことにしといてください^^;。
【あずまんがー龍騎!作/鷹】
【第30話予感】
マヤーを人質にした士郎はディメイションホールで微動せず佇んでいた。そんな士郎
に近づいてくる者がいた。黒ちよである。
「士郎さん首尾はどうでしたか?」
士郎は手を掲げて虚空から一枚のカードを出現させるとそれを黒ちよに見せた。
「成功したんですね!・・・実はもう一押しあるんですよー」
「・・・言ってみろ」
「仮面ライダー王蛇を使うんです・・・」
(かおりん・・・かおりん)
「んもー・・・誰ー?一体何のようなのー?」
(メガゼールです。かおりんのご命令で起こしにきました)
「え?メガゼール!?」
普段は寝起きが悪いかおりんだったが、さすがにぎょっとして起き上がった。
「あー・・・おはよう」
(かおりんおはようございます)
(・・・私起こしにきてっていつ頼んだっけ・・・)
窓ガラスからメガゼールがかおりんにぺこりと頭を下げた。そんなメガゼールをしば
らくの間見つめながらかおりんはその時の記憶を思い出した。全員でコアミラーを探
索していた時のメガゼールとの会話である。
「ねーねーメガゼール」
(はい、かおりん)
「えっとね・・・私ってさ、あなたに命令出来るんだよね」
(ええ。私はあなたの契約モンスターですから)
それを聞くなり両手をぱん!と勢いよく合わせかおりんはメガゼールに頼んだ。
「ごめん!明日私を起こしにきてくれない?・・・ほら目覚まし時計じゃ起きれなく
てさぁ。それに遅刻で廊下に立たされるのはちょっとね・・・」
(わかりました。それでは明日起こしにいきます)
・・・
再び窓ガラスを見つめ、ベットの上からメガゼールと向き合うかおりん。しばしの間
ぼーっとした時間が流れたが、やがてかおりんはメガゼールにお礼を述べた。
「そ、そのありがとう」
(ご命令はこれだけですか?)
「は、はい。そうです!」
(それでは・・・)
思わずメガゼールに敬語を使うかおりん。その言葉を聞いてメガゼールはすうっと朝
の光に消えていった。
「お母さんおはよう!」
「あら。かおり、あんた今日は早いわね」
「えへへ!私もやる時はやるんだから!・・・行ってきまーす」
かおりんは元気いっぱいに専門学校へと向かった。高校卒業後の進路。それが自らの
運命を大きく決める意味もあり、かおりんはぎりぎりまで考えた末、専門学校を選ん
だ。高校時代より刺激の多い専門学校に満足はしていたが、何か満たされていなかっ
た。しかし、ミラーワールドと仮面ライダーという非日常なことに巻き込まれながら
榊やちよ達と再び関わることでかおりんの日々の生活は以前より充実していた。モン
スターの共鳴を聞いてミラーワールドに行けばかつての友人達に会えるのだから当然
かもしれないが。そんなかおりんに昨日のコアミラー探索の疲れが出たのだろう。机
に座った途端再び睡魔に襲われた。心地よい眠気を味わいながらかおりんは幸せそう
に榊とコアミラーを探索していた時の夢を見ていた。
「・・・かおり・・・かおりさん聞いてるの?」
「あ・・・す、すみません」
穏やかに授業も進み、後は帰るのみとなったのでかおりんは自宅へと向かった。そし
てショッピング街を通っている時、共鳴が始まった。
キィィン・・・キィィン・・・
(う・・・またモンスター?)
かおりんが周囲を見回したとき、ショーウィンドウのガラスから静かに神崎士郎がか
おりんを見つめていた。
「かおり・・・」
「え・・・あなたは誰ですか?」
「神崎士郎だ・・・ミラーワールドで待っている」
「ちょ、ちょっと・・・消えちゃった。もう!人の話くらい最後まで聞きなさいよ!」
(ま、暇だし行ってみようかな)
かおりんは改めて周囲を見回し人目を気にした。幸いなことにこの時間帯には珍しく
人がいなかった。急いでインペラーへと変身したかおりんはショーウィンドウの中に
飛び込んだ。ディメイションホールで士郎を発見したのはそのすぐ後であった。
「ここだ・・・」
「あのー、お話って何なんでしょうか?」
その頃リュウガは窓ガラスの中から自宅で爆睡しているゆかりに向かって話しかけていた。
「ゆかり先生起きてください。」
「ん〜?・・・またあんた?今日は何の用なの?私は眠いのよ〜後にしてくんない?」
「ライダー同士での戦いをお誘いにきましたー」
ゆかりは寝返りをうちながら気だるそうにリュウガに尋ねた。
「戦いって前みたいに楽しいわけ〜?」
「そうですよー。今回はタイガと戦ってもらいたいと思います」
「タイガって誰?」
「木村先生と黒沢先生が苦戦していたライダーですよー」
ゆかりはしばしの間布団の中で考え込んでいた。仮面ライダーとなって戦うこと。こ
れはゆかりの今までの人生の中で味わったことがないほどの刺激であった。またゆか
りは気がついていた。自分があの刺激を再び味わいたいと思っていることを。布団か
ら出るとゆかりはリュウガに振り向いた。気だるそうな雰囲気が消え、あるのは燃え
上がるほどの戦いへの渇望だけだった。
「・・・わかった。すぐ準備するわ!」
「はい!」
「・・・サーチベント」
士郎がかおりんの問いに答えないままあるカード名を読み終えたとき、ディメイションホ
ールの空中で驚くべき現象が起きた。空中に特定の法則で文字が浮かび上がってきたのだ。
RYUKI ・KAGURA:REALITY WOLRD
KNIGHT ・TOMO :REALITY WOLRD
ZOLDA ・KOYOMI:REALITY WOLRD
TIGER ・SAKAKI: MIRROR WOLRD
IMPERER ・KAORI : MIRROR WOLRD
VERDE ・AYUMU :REALITY WOLRD
FAM ・YUI :REALITY WOLRD
OUJA ・YUKARI: MIRROR WOLRD
RAIA ・MINAMO:REALITY WOLRD
GAI ・KIMURA:REALITY WOLRD
RYUGA ・CHIYO : MIRROR WOLRD
SCISSORS・------:-------------
ODIN ・ODIN : MIRROR WOLRD
「な、何よこれ!?」
「お前達ライダーの情報だ・・・」
「ゆかり先生やみなも先生、それにあの木村先生もライダーなの・・・」
「・・・榊はこれから王蛇とリュウガの二人を相手に戦うことになる」
「そんな!!」
「・・・お前も向かえ。そして・・・最後の1人になるまで戦え・・・戦え!」
インペラーは士郎の言葉が終わるのを待たずにライドシューターに乗り込むと一気にシ
ステムを起動させ、高速でミラーワールドへ向かった。己の大切な友人を守るために。
【次回予告】
「へぇ・・・あんた少しは骨があるじゃん!でも・・・まだまだぁ!」
《ファイナルベント》
(・・・駄目だ。速すぎる!)
「あんたまーまー面白かったわよ・・・じゃあね」
【生き残らなければ真実も見えない。ライダーよ、生き残るために戦え!】
>514
鷹さん乙〜♪
50話オーバー?グッドです。こうなりゃ100話も超えちゃってください!
ところでSCISSORSって何ですか?
蟹〜・・・もしかして綴り間違えてる?
517 :
メロン名無しさん:03/02/08 17:49 ID:rlf8QOMc
-― ̄ ̄ ` ―-- _
, ´ ......... . . , ~  ̄" ー _
_/...........::::::::::::::::: : : :/ ,r:::::::::::.:::::::::.:: :::.........` 、
, ´ : ::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ /:::::::::::::: : ,ヘ ::::::::::::::::::::::: : ヽ
,/:::;;;;;;;| : ::::::::::::::::::::::::::::::/ /::::::::::::::::::: ● ::::::::::::::::: : : :,/
と,-‐ ´ ̄: ::::::::::::::::::::::::::::::/ /:::::::::::r(:::::::::`'::::::::::::::::::::::く
(´__ : : :;;:::::::::::::::::::::::::::/ /:::::::::::`(::::::::: ,ヘ:::::::::::::::::::::: ヽ
 ̄ ̄`ヾ_::::::::::::::::::::::し ::::::::::::::::::::::: :●::::::::::::::::::::::: : : :_>
,_ \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: `' __:::::::::-‐ ´
(__  ̄~" __ , --‐一~ ̄
先生・・・次は・・・誰を・・・
こんばんわ〜、鷹さん乙かれッス!
では折れも第五話アプ、いっきま〜す。
『仮面ライダー 神楽』 第五話 <壱>
――龍騎!
答えは耳にではなく、直接脳に響いてきた。痛みを覚えるほどのボリュームで。
(・・・・・・ぐわ、あたま痛てぇ!龍騎だぁ?あの龍か、言ったのは?)
そう、かつてデストワイルダーが、神楽に名乗ったときの感覚と同じだった。すなわち、聴覚を
介しない会話だ。
(・・・・・・面白ぇ。で、だからどーしたってんだ、ええ?)
神楽は次を待ったが、それ以後、龍からの語りかけは無かった。龍騎とやらの反応も無い。ただ、
静かに立っているだけだ。
(・・・・・・なんで黙ってるんだ?そっか『誰だ』としか聞いてねぇからか、そりゃそうだ。よぉし、
こう見えても私だって記者の端くれだ!色々聞き出して、プロの取材の凄さを・・・・・・おっ?)
だが神楽が口を開く前に、龍騎は踵を返した。同時に、龍がこちらに向かって突進を始める。
「お、やるのか?よっしゃあ、大歓迎だ!背を向けたのはフェイントのつもりかぁ?甘ぇ!」
身構えるタイガ。しかし・・・・・・龍は漂うゼノバイダーの魂をその口に飲み込むと、そのまま天空
へと上昇し、消えてしまった。
あっけにとられている間に、龍騎も姿を消していた。
・・・・・・後にはぽつり、彼女だけが残された。まるで道化のように。
「何だってんだよ、ちくしょう!・・・・・・しかたない、帰るか。腹減ったし」
神楽が空腹を抱えて花鶏の前に戻ってきた頃には、一転して店内は空いていた。13時を過ぎて
昼休みも終わり、勤め人達は仕事場へ戻ってしまったからだ。
かおりや榊の姿は見えず、席につくと年配の女性が水を運んできた。
「いらっしゃい!ご注文は?」
「ランチ、大盛りで!」
「・・・・・・あ、ごめん!大盛りはできないのよぉ〜。サンドイッチとサラダだから」
「じゃあ、二人前!」
二組ほど残っていた他の客がクスクスと笑い声を漏らしたが、気にもとめない。
やがて出てきた『ランチ二人前』をまるで早食い競争のごとく食べつくすと、神楽はここへ来た
もうひとつの目的を思い出した。――先ほどの女に声をかける。
「すみません、かおりん、じゃなくて、かおりさんは?」
「え、あなた、かおりの知り合い?」
「はい、高校時代の友達です」
「あら〜、だったら早く言えばいいのに。今ね、奥で休憩してるから。そこから入っちゃっていい
わよ。入ってすぐを右ね」
そう言って女――この店の主人・沙奈子はカウンター脇のドアを指し示した。神楽が一礼をして中
へ入ってゆくのを見届けると、今の会話で中断した皿洗いを再開する。
(・・・・・・嬉しいねぇ、かおりにお客さんなんてさ。千尋ちゃんが地方の大学行っちゃってからこっ
ち、誰も訪ねてこなかったからねぇ)
ところが・・・・・・!
笑顔でナイロンたわしを手に取った、ほんの数秒後だった。――かおりの絶叫が轟いたのは。
「キャァァァァァァ〜〜、お化けぇぇぇぇ!!イヤァ、来ないでぇ、成仏してぇ〜」
あまりの大声に、沙奈子も客も大慌て。店内はパニック状態になってしまった。
・・・・・・ややあって、神崎家のダイニングキッチンには、沙奈子に叱られて小さくなっているかお
りの姿があった。
「まったく、あんたって子は!せっかく来てくれたお友達になんてこと言うの」
「・・・・・・ごめんなさい。叔母さん、でも」
「でもじゃない!ちゃんとあやまっときなさいよ、あたしはお店にもどるから。・・・・・・神楽ちゃ
んだっけ?ごめんなさいね、ランチはサービスにしとくから、ああ〜、いいから、いいから」
恐縮して代金を払おうとする神楽を手で制しつつ、沙奈子は部屋から出て行った。
かおりは、じりじりと後ずさりして、神楽からなるべく離れようとしている。
「お前なぁ、さっきから何びびってんだよ、ほら、足もちゃんとあるしさ、お化けじゃないって!」
「だって、戦ったんでしょ?モンスターと」
「ああ、他のライダーともな。へへっ、楽勝さ。泣いてあやまるから見逃してやったけどな。ああ
そうそう。カードの使い方だけどなぁ、間違ってたぜ!お前ぇ・・・・・・」
(・・・・・・来たぁ!やっぱりバレてる、怒ってる。榊さん、早く戻ってきて!殺されちゃう〜)
体の震えが止まらなかった。生死にかかわることに嘘を教えたのだ、シャレでは済まない。なの
に頼みの榊は外出中だ。――彼女を守るものはいない。
神楽の手がゆっくりと伸びてきて、肩を掴んだ。思わず首をすくめ、目を閉じるかおり。
・・・・・・だが、神楽はニカっと笑って言った。
「知ったかぶりすんなよ、まったく。いいカッコしたいからってさぁ。昔っから、お前そーゆう
とこあるよな。知らないのにテストのヤマ知ってるって、みんなの前で言ったり」
「へ?・・・・・・そ、それやったのは私じゃなくて智でしょ!」
「あ、そーだっけ?まぁいいや、ははは・・・・・・」
かおりはヘタヘタとその場に座り込んでしまった。
(・・・・・・はぁぁ、よかった、わかってない。よかった、神楽で)
「あ、適当なとこ座って。今、お茶淹れるから」
数回の深呼吸の後やっと落ち着きを取り戻し、かおりはティーポットを手にした。
なぜか自然と笑みが浮かび、鼻歌まで出てしまう。
(嬉しい?そう、嬉しいんだ、私。・・・・・・騙したのがバレなかったから?ううん、違う、それだ
けじゃない。神楽が無事だったからだ。・・・・・・ほんと身勝手だな、自分で罠かけといて)
――昨夜は自責の念に悶々として、一睡もできなかったことが思い出される。
(・・・・・・もう、止めよう。柄でもないことするのは。もっと教えてあげよう、知っていることを。
やっぱり神楽が死ぬなんて、ヤだもん・・・・・・)
・・・・・・小一時間後、神楽は戻ってきた榊と入れ替わるように神崎家を辞した。昨日の件もあって
榊といるのがちょっとだけ気まずかったし、第一、店員でもある彼女らの仕事の邪魔だ。
――ちなみに、自分も勤務中であることはすっかり忘れている。
(ライダーは13人いて、ブチ殺しあって最期に生き残った一人は、どんな願いもかなえてもらえ
るだとぉ?それであのドンパチ野郎、私を殺ろうとしたのか。でも龍騎ってのは何もせずに帰っち
まったしなぁ。わかんねぇな。・・・・・・しかも、それを仕切ってるのが、かおりんの兄さんだぁ?
あの時会った、人の話を聞かねぇ奴か?ああ〜、もうアタマん中、ごちゃごちゃだぜ!)
かおりの話を反芻しつつMTBを押してぶらぶら歩くうち、駅前の繁華街に出ていた。良い天気
だったので、道端では様々な露天商が店を出している。
――食べ物。アクセサリー。100円の古雑誌。音楽カセット&CD。そして占い。
(不景気の割には、色々出てるな・・・・・・って、おいおい何だ、あの出店は?コタツかぁ?)
それは明らかに小型のコタツだった。半畳ほどの敷物の上に置かれ、布団も入っている。
――台上に立てられた板には、子供が書いたような字で『うらない』とあった。でも、肝心の占い
師は・・・・・・
(居眠りしてるじゃねーか!ったく、のん気な奴だぜ。ははは)
ベール付きの被り物をしている上、天板に突っ伏して眠っているので顔はわからない。
神楽はたいして気にも留めず、その前を通り過ぎた。
『仮面ライダー 神楽』 第五話 <弐>
それから数週間後。まだ宵の内。
相次ぐ『謎の失踪事件』にもかかわらず、繁華街はそれなりの賑わいをみせている。――発生箇
所が一定しないのが幸いだった。おかげで、誰もが自分だけは大丈夫と無意識のうちに思い込み、
今このひと時を楽しむことができていた。
・・・・・・そんな夜の街の、とある居酒屋の一席。
「にゃも〜、いい加減にしろよ〜。ため息ばかりでさぁ。酒、不味くなるぞ〜」
「あんたの方が、どうかしてるのよ。生徒が消えちゃったのよ、例の事件で!」
「別にぃ〜、私のクラスじゃないし。あ、おねーさん、吟醸酒お代わりね!あとお刺身も」
口論している一組の女性客――にゃも、と呼ばれた方が黒沢みなも、呼んだ方は谷崎ゆかり――
彼女らは神楽や榊、かおりが卒業した高校の教師であった。
こんなものは、二人にとっては数え切れないほど繰り返されてきた光景なのだが、今宵のは少し
趣向が違う。いつもは宥め役の黒沢の方が荒れているのだ。
「まぁ、わからんでもないけど。水島って言ったっけ、そのコ?やる気も素質もあるって、部活
じゃあずいぶん目を掛けてたもんね。おまけに頭も良かったし。あんたのクラス、体育祭や定期テ
ストでのいいコマがなくなっちゃったわけね〜」
「生徒はコマじゃないわ!いい加減にしてよ!」
被害者の担任であり、所属部の顧問でもある黒沢にとって悲しみもひとしおなのだが、相方はそん
なこと全くおかまいなしである。
「あー面倒くさい!いいじゃん、あんなコ、いなくなったってさ」 「な、なんだとぉ〜!!」
一瞬、店内が静まり返るほどの大声が出てしまった。集まる注目にさすがに赤面し、黒沢は周囲の
客や店員に頭を下げて取りつくろった。
「あーあ、恥ずかしいニャ〜」
「もう、あんたが酷いこと言うからじゃない!いくらなんでも・・・・・・」
「やれやれ、じゃあ教えてあげる。あんたさぁ、最近、靴がなくなったり、ジャージが焼却炉に
放り込まれたりして悩んでたでしょ?それ、水島が犯人よ」
「な、言うにこと欠いてなんてことを!!なんであのコが!」
「ほらぁ、また大声。みんな見てるじゃない。・・・・・・あんたさぁ、シゴき過ぎたのよ。少々才能
があるからって、所詮、ウチみたいな進学校に来てるコよ?部活なんて履歴書のネタ作り、テキト
ーに楽しくやりたいんだって。逆恨みされちまったのよ」
谷崎はそう言い捨てると、吟醸酒のお代わりを注文した。彼女に『割り勘』という言葉は無い。
「そんな・・・・・・キツすぎるんだったら、そう言えばいいでしょ?」
「さぁ?担任に反抗したら内申が悪くなるって思い込んじゃったんでしょ、たぶん。でさ〜、悩
んだあげく、悪い子たちにそそのかされて、復讐に出たってわけ」
「くっ!そこまでわかってたんなら、なんで早く私に教えてくれなかったのよ!」
「ん〜、ごめん。元ネタは生徒との雑談からなんで、裏とるのに時間かかってさぁ。それにも〜
少し泳がせといて、背後の奴らも一気にシメようかと思ってね」 「・・・・・・・・・・・・」
黒沢の言葉が途切れる。生徒らと良好な関係を築けていると自負していたし、実際、多くの教え
子に慕われていた。――それだけに、ショックも大きい。
「でもさ〜、あんたそのへんの加減はできてたじゃない、前は。もしかして、あのバカのせい?」
「・・・・・・誰よ、あのバカって」
「神楽よ、去年卒業した。えらい頑張りようだったもんね、水泳。あんたも引き込まれるように熱
く熱〜く指導してたじゃない。あの快感が忘れられなかったわけ?夢よもう一度ってさ?」
「そ、そんな、こと、な・・・・・・い」
結局、その後もずっと黒沢はため息まじりの暗い酒。とうとう谷崎も音を上げて、生涯初めて彼女
のほうからお開きを宣言するハメになってしまった。
――翌朝。OREジャーナル編集部。
「・・・・・・で、今件に特異的なのは、同じ家屋内でその後も失踪が相次いでいることです。様子を
見に来た親戚、捜査に来た警察関係者まで。なので、近所では『呪われた家』と噂され始めていま
す。・・・・・・ちょっと神楽ちゃん、聞いてるの!」
「あ、はい!令子さん、すみません」
「失踪したのが母校の後輩で辛いのはわかるけど、仕事は仕事よ。いいわね?」
ただの後輩ではない。在学期間が重ならないので顔こそ知らないが、同じ水泳部の娘なのだ。
気持ちが現場に飛んでしまい、ミーティングに集中できない。
事件が発覚した昨日は居残りを命じられ、地団太を踏んだ。しかし・・・・・・
(連続?・・・・・・じゃあ、まだ今も現場にいるかも知れねぇじゃん、モンスター。だったら行くっ
きゃねー!畜生、八つ裂きにしてやるぜ!)
神楽には、わかる。――失踪ではない、その娘は喰われたのだ。しかも、自宅で家族ともども。
――その無念を、痛みを、奴らに思い知らせてやりたかった。今すぐに!
「よぉし、打ち合わせは以上だ。今後は・・・・・・」 「現場、行ってきます!!」
「って、おい、待て神楽・・・・・・あーあ、消えちまった。ったく鉄砲玉め」
ミーティングが終わるや否や、大久保が指示をだすより早く神楽は飛び出していた。
「・・・・・・水泳部の二年か。先生もきっとショックだろうな」
MTBにまたがる時、ふと恩師の懐かしい顔が脳裏に浮かんだ。――揶揄や形式的でなく、本当
の意味で『先生』と呼んでいた唯一人のひとの。
「ふ〜、まだ大学辞めたこと先生に報告してねーんだよなぁ。どーすっかなぁ、ああ、頭痛ぇ〜。
ま、いいや。後で考えよ!」
憂いを払うように、神楽はペダルを力いっぱい踏み込んだ。
被害者――水島真奈美の家はN野区の一角にあった。
玄関やら門やらは、警察の張った進入禁止のテープで封印されている。
昨日の今日なので、周囲はまだ報道関係者や野次馬でごった返していた。
辺りをぶらつきながら、神楽は耳を澄ませる。だが、脳の芯まで響くようなあの音は一向に聞こ
えてこない。
(・・・・・・ちっ、居ねぇのか。仕方ない、仕事だ、仕事)
有能な記者である令子を差し置いて飛び出してきたのだ、何も無かったでは済まない。
(・・・・・・とはいえ、めぼしいネタは昨日のうちに取材済みだろうしなぁ。どうするよ?)
「げぇ、でけ〜家。金持ちって奴ぅ?むかつくぅ、消えてよし!」
「でもよ〜、これでただの夜逃げだったら笑うよな〜」
へらへらとたむろしていた野次馬どもの台詞が耳に障り、神楽は思わず小声で毒づく。
「「はっ、そんなわけあるか!」」
――その声が、ハモった。
思わず、声の主を確認する。お互いに。
「え!か、神楽?」 「く、く、く、黒沢先生!?」
――期せずして師弟は再会してしまった。どちらも、やる瀬ない想いを抱えながら。
(続く)
と、いうわけで第五話でした。拙文ご容赦。「キャラ違うよ!」もご容赦(w
ほとんど戦闘シーンないッス。申し訳ありません。
あと、智が『知らないのにテストのヤマ知ってるって、みんなの前で言ったり』するエピソー
ドは一年の時なので、当時は組が違う神楽がなぜ知ってるのかですが・・・・・・まぁ、他のクラスに
も智の暴走ぶりは有名ってことで。
では、第六話のあてにならない予告、いきます。
『仮面ライダー 神楽』
「ふふふ、神楽ってほんと、黒沢先生が大好きなんだね」
「かぎゅらもなんら〜!人の顔みて逃げらしゅのか〜!」
(何やってんの!何回携帯かけても繋がんねーし!クソッ)
「いい気味〜、黒沢の奴、無断欠勤だって。そのまま居なくなんねぇかなぁ」
「ちぃぃぃ!間に合うか!?」
戦わなければ、生き残れない!
風邪も治り久しぶりに来て見れば新作が。
いらだとばるさんも鷹さんも乙です!!
名無士郎さんもきてくれたし、よかったよかった。
わたしもがんばろ〜 (期待しないでね)
新作を待ちながら、保守!
とりあえず一作書きこんでみます
この世界と鏡を隔てたところに存在する、だれもが知っているようでだれも知らないもう一つの世界
その世界にはこの世界に於けるピラミッドの頂点を自称する人間と呼ばれる生物は存在しない
そこに跋扈するのは我々の知る進化の理を無視するかのような姿を持ったモンスター達
彼らは時として己の世界からこちらの世界へと足を伸ばし人間達を餌とする
そして我々の世界にもモンスターの存在を知り彼らを狩る者がいる
彼らは仮面で個を覆い隠し、己のため、誰かのために戦う
常に死と隣り合いながら、たった一人生き残るまで
非情なる定めを持ったその戦士
彼らは己のことをこう呼ぶ
仮面ライダー、と
これは、仮面ライダー龍騎の物語のIFの世界である。
すなわち、繰り返されたパラレルワールドの中に存在したかもしれない一つの世界。
その終わりを知るものは、誰も、いない。
第?章
「なんで・・・・・・」
電気の消えた真っ暗な部屋の中に響く声。
悔しさと悲しさが入り混じったその声を肺腑から絞り出したその人影は、こぶしを机
に打ちつけ、座っていた椅子から勢いよく、バネがはじけるように立ち上がった。
「っ!」
声にならない声とともに手に込められる力。
その手には、先ほどまで机の上に乗っていた一枚の紙が破れんばかりの強さで握り
締められている。それは今日訪れた病院で医者から渡された、兄の診断書。
しかし、ちぎろうと思えば小学生でもできるはずのその紙は、破れることなく、震え
る手からその影の足元へと、すべり落ちた。
ひざが折れ、その紙を挟むように、両手が床に押し付けられる。
そして、それに続いて、その紙の上に滴り落ちる雫――影の目からこぼれる涙。
無言のまま、その影はベッドへとその体を投げ出した。
嗚咽と涙を押し殺すように枕に顔を押し付ける。
枯れるなら、枯れてしまえ。という想いと共に。
偶然知ってしまった真実。知りたくなどなかった。
その耳に生々しく蘇える医者の言った一言。
『酷なようですが、どんなことをしても・・・おそらくあと一年が精一杯でしょう』
「兄さんの命があと一年なんて、嘘だ!」
布団へと、怒鳴るように、胸の奥にとどめて置けない言葉を吐き出す。
己の願望でもいい、何かしゃべらないと、何かに押し潰されそうだから。
誰もいない部屋。だれも聞いていないはずのその言葉。
しかし―――唐突に返事は返ってきた。
『兄の命を救いたいか?』
「っ!?」
一瞬飛び跳ねる心臓。
顔に残る涙の残滓をぬぐい、無言で彼女は振り返った。
確かに背後から聞こえたその言葉。しかし、暗闇の中、声の主は確認できない。
ここは彼女の個室。
聞き覚えのないその声。
そして時刻はすでに深夜。
はっきり言って冗談ではない。
いつもの彼女なら、そのまま布団を被って寝たかもしれない。
しかし、彼女は視線を、触れれば斬れんばかりに鋭くするとそのまま立ち上がった。
今の彼女が味わっている喪失感と絶望感にとっては、この程度の恐怖感は恐怖感として感じることすらできないのかもしれない。
むしろ己の言葉を聞かれたという羞恥と怒りの思いのほうが強かった。
「誰か、いるのか?」
彼女はゆっくりと部屋の電気のスイッチのところまで移動すると、スイッチを入れた。
一瞬で電気がつき、煌々と狭い部屋、そして彼女を照らす。
しかし、部屋の中にいるのは彼女一人だけ。
先ほど彼女に声をかけたはずの人間は見当たらない。
「気のせい、じゃ、ないよな?」
小さくつぶやきながら部屋を見渡し、その眼が凍りついたように一点で動かなくなる。
その視線の先にある鏡に映る、彼女を見つめるありえざる白衣の男の姿。
鏡の中で、その男、神崎士郎は彼女に向けて坦々と、先ほどと同じ問いをもう一度繰
り返した。
『お前は兄の命を救いたいか?たとえ・・・・・・どんな手段を、使ってでも』
数メートルの幅を持つ大通りの真ん中で対峙する二つの影。
影だけならばその影の主は二者とも人のように見える。
しかし、凝視せずともそれが人でないことはすぐに分かるだろう。
もっとも、見ることができる第三者がいれば、の話だが。
片方は一言で言うとおとぎ話に出てくる鬼のような姿をしている。
鬼と大きく違うのは、二本の角が長く、そしてまっすぐ上につきあがっていること。
持っている武器が棍棒ではなくて、棒の先にU字型の螺子をつけたようなものであ
ること、くらいだろうか。
そしてもう片方の姿は、そう、緑色の人型ロボットとでも表せるだろうか。
緑色のスーツ、ところどころについている銀色に光る金属質のパーツ。
メカニカルな顔。その手に持つ、奇妙な形の銃。
そして、ベルトの中央に位置する、バッファローの顔が描かれたバックル。
唐突に訪れる沈黙の終わり。
唸り声とともに地を蹴る鬼のような[モンスター]メガゼール。
「まったく、ちょっとはこっちの都合ってもんが考えられないかねぇ?」
口から漏れる愚痴にも取れるその言葉、それと共に緑の戦士は手に持った、その体と
同じ色の銃のトリガーを引いた。
立て続けに発射された銃弾は、今まさに襲いかかろうと、跳躍したメガゼールを空中
で打ち据える。
跳びあがったメガゼールが、そのまま自分のところまで来ることなく地上に再び舞い
戻ったを確認し、緑の戦士は自分のベルトへと、銃を持っていないほうの手を伸ば
した。
そして、ベルトの真ん中の、牛の顔のようなものが書かれている部分からカードを一
枚引き抜く。
「悪いけど、ゆっくり戦ってる暇はないんだ。待たせてる人がいるんでね」
その言葉とともに、緑の戦士はその右手の銃のグリップの前の部分をスライドさせ、
そこへ先ほど手に取ったカードを差し込んだ。
そしてそのまま、左手でそれを押し込むようにして銃の中へと戻す。
一見何をしているのか分からない行動だが・・・
『SHOOTVENT』
響き渡る、カードを認識したことを示すその声、そしてそれに呼応するように何処か
らともなく緑の戦士の手へと、その身長の二倍はあろうかという巨大な砲身、ギガラ
ンチャーがもたらされる。
「終わり、だ」
直後放たれた砲はその言葉通りメガゼールを粉々に打ち砕いた。
真昼間にこれだけ派手に暴れまわったというのに、野次馬の気配一つない。
それもそうだろう。
理由は道路の脇にある店の看板が教えてくれる。
そこに書かれているのは鏡反転した文字。
そう、ここは[鏡の中の世界]、すなわちミラーワールド。
「おっと、こんなことしてる場合じゃないよな」
その言葉とともに、踵を返すと緑の戦士は鏡のほうへと駆け出した。
ぴーんぽーん と来客を示すベルが北岡弁護士事務所に響き渡る。
片方の眉を上げ、自称スーパー弁護士こと北岡秀一は外を向いていた椅子を机のほう
へと回転させた。その手には仕事のための本がある。
「また客?今日は予定外の客が多いね、吾郎ちゃん」
そう言いつつも客を自ら出迎えようという気は彼にはない。
彼、北岡秀一は「クロをシロにする弁護士」と呼ばれるほど優秀な弁護士だ。
(そして同時に「クロをアカにする弁護士」とも呼ばれるほど金をたくさん取る)
それゆえ、弁護関係で恨まれることも数多い。
現に彼は今朝、自分の弁護した事件の関係者に襲われたばかりである。
そいつらにはかなり手ひどくしっぺ返しを与えたが、事務所までそういう輩が来ない
という保証はどこにもないため、来た客すべてをうかつに中に招き入れるわけには行
かないのだ。
もちろん問答無用で追い返すなんてことはしないが、基本的に、客なら事前にアポく
らい取るのが普通であり、その点で雑にされても文句は言えまい。
そして、北岡のその言葉の先にいるのは、その言葉の示している通り、北岡の秘書兼
執事、ついでにボディーガードである由良吾郎。
今日の朝北岡が襲われたのを助けたのも彼である。
喧嘩も料理もできる、まさに口笛以外は万能という、まさに北岡の片腕で、北岡弁護
士事務所になくてはならない存在。
強いて言うなら少々顔が怖いのが難点か。
なお、この二人が北岡弁護士事務所の全メンバーである。
「先生も忙しいですし、追い返してきましょうか?」
「ま、確かに忙しいけどさ。それは相手によりけりだね。
どういうのなら問題ないか、吾郎ちゃんならわかるでょ?」
北岡のその言葉に小さく頷くと、吾郎はゆっくりとドアのほうへと歩いていった。
「だれッスか?」
目つきを鋭くしてドアから体を出す吾郎。そして、次の句を飲み込む。
そのドアの前に立っていたのは思いもよらぬ人物。
吾郎にとっても知らぬ相手ではない。
吾郎の尊敬するあの北岡とプライベートの方面で関係し、彼が心を許す数少ない人間
の一人。
「吾郎ちゃんがいるってことは兄さんもいるな、入っていい?」
問い掛けとも確認とも取れるその言葉に、「あ、どうぞ!」と吾郎が即答したのは言
うまでもなかった。
ドアの閉まった音に、北岡は読んでいた本から再び顔を上げた。
「吾郎ちゃん、誰だった、って暦、お前か!?」
吾郎の後ろから歩いてくる人物を見て彼は珍しく驚いたような声を上げる。
名前を呼ばれ、彼女、水原暦は小さく片手を上げた。
「ひさしぶり、兄さん」
北岡秀一と水原暦。確かに姓は違う。
二人は義兄と義妹、ではない。ちゃんと血のつながっている兄妹なのだ。
水原家から出て、母親方の旧姓を名乗っているゆえに彼は「北岡」秀一なのである。
「連絡もなしに、迷惑だった?」
暦の心配そうなその言葉に、彼は笑みを浮かべながら小さく肩をすくめた。
「まさか、あ、吾郎ちゃん、紅茶お願い」
「はい」
その言葉とともに、吾郎は机の上に乗っていた二つのティーカップを回収し、キッチ
ンへと歩いていく。
「あれ、さっきまで誰か来てたの?」
彼への暦の問い。ティーカップが二つ出ていたことから、そう判断したのだろう。
「あぁ、俺のこと取材したいっていう奴がね。暦が来るちょっと前に帰って行ったよ」
ジャーナリスト、確か名前は・・・城戸とかいっただろうか。
能天気と元気だけがとりえといった感じの、今どき珍しいタイプの人間だった。
そういうのは北岡の嫌いなタイプではない。おそらく自分と正反対だからだろう。
もっとも、取材を受けた本当の理由は城戸とか言うのと同じ会社に勤めている令子と
いう女性を少々気に入っているからだったりする。
むろんそんなこと口が裂けても暦にはいわないが。
「で、どうかしたのか、暦?」
確か、この前に会ったのは一週間前だな、と心の中で確認する。
間違いない。この間、彼が病院へと行った日、病院から帰る途中に後ろから呼び止め
られたのだから。
「別に、近くまで来たんでちょっと兄さんの顔が見たくなっただけ」
そう答える暦の顔を黙って見つめる北岡。
弁護士という職業柄、嘘をついているかどうかを見分けるのは彼にとって朝飯前だ。
(やれやれ・・・)
確実に暦は嘘をついている。そして、同時に、それを隠す気でいる。
あえて追求をするほどのことでもないだろうが。
吾郎の出した紅茶を飲み、最近のことについて話す二人。
言うまでもないが、先ほど城戸というのに出したのとは比べ物にならないほど高価な
ティーカップで、はるかに高級な紅茶の葉で数十倍の手間をかけて入れた紅茶である。
暦が法系のためだろう、いつの間にか話題はそっちのほうへと移っている。
「また司法試験受けるんだろ、暦?」
「受けるけど・・・、また落ちたら・・・」
彼の言葉にため息を漏らしながら俯く暦。
すでに二度落ちている暦はその話題はあまり楽しくないようだ。
昔から暦は本番に弱いことを彼は知っている。能力がないわけではないのだが。
弁護士としてその欠点は致命的なので、早いところ克服してほしいところだ。
「三度目の正直って言うだろ。大丈夫だよ、俺の妹なんだから」
「・・・ありがと、っ!」
素直に感謝の意を表した暦は、一瞬の後はっと何かに気がついたように顔を強ばらせ
た。
眼鏡の奥の両目が落ち着きをなくし、四方をぐるぐると見渡すようにうごめく。
そして程なくして、その眼は動きを止め、一つの方向を指し示した。
それとほぼ同時に閉じられていた暦の唇が少し開いた。
言葉は漏れなかったが、北岡はその唇が「あっちか、」という言葉を紡ぎだすような
形で動いたのを見て取った。
「ん、どうした?」
「あ、ちょ、ちょっと、すぐ戻ってくるから」
彼の問いに、慌てたようにそう答えると、暦は席を立ち、あわただしく北岡弁護士事
務所から駆けて出ていった。
その後姿を怪訝な顔で見送る北岡と吾郎。
足音から察するに、ドアから出た後に駆けていった方向は先ほど視線を向けたのと同
じ。
「どうしたんでしょう、暦さん」
「さぁ。ま、そんなに気にすることないでしょ。あ、吾郎ちゃん、紅茶、もう一杯お
願い」
「はい。」
北岡が吾郎が出した紅茶一杯を飲み終えたのと大体時を同じくして暦は帰ってきた。
肩で息をしているが、先ほどまでと変わったところは見当たらない。
何のために出て行ったのか、やはり皆目見当がつかない。
「一体何しに外にいったんだ?」
北岡の言葉に、暦は息を弾ませながら「、気にしない、気にしない」とだけ答えた。
よく見てみると、暦のポケットから緑色の何かがのぞいている。
さっきそれに彼が気づかなかったということは、先ほどまではなかったか、あるいは
先ほどからあったとしても少なくともその状態ではなかったということだ。
彼のその視線に気がついたのか、あわてたように暦はそれをポケットの中に押し込ん
だ。
(俺に見せたくないもんなら、持って来なけりゃよさそうなもんだけどな)
「そういえば、兄さん、弁護代、相変わらず法外な額取ってるって聞いたけど」
唐突な暦のその言葉に、その話題が来たか、と内心覚悟を決めつつ、「ああ。当然だ
ろ、なんたって俺は有罪も無罪に変えるスーパー弁護士だからな。」と笑う北岡。
ただし、とさらに心の中で付け加える。
(そのたった一つの例外が浅倉のヤツなんだよな)
つい最近彼が弁護した、浅倉威と言うちょっとヤバめの男。
イメージアップのために受けた弁護だが、罪を犯す理由がイライラするから、では流
石の彼でも無罪には出来なかった。
そもそも浅倉自信が罪を自覚していないというのがなんと言っても性質が悪い。
さらにその悪条件で懲役を10年にまで減らした彼に感謝するどころか無罪にできな
かったことを恨んでいるというおまけつきだ。
刑務所の中から恨まれてもどうということはないが。
それに加え、浅倉が出所したあとに北岡に会うことは理論的に不可能なのだ。
残念だが。北岡にとっても、浅倉にとっても。
しかし、そんなことよりも暦の次の言葉に北岡は目をむいた。
「ま、兄さんの好きなようにすればいいけどね」
今までなら、それが話題に上るたびに法外な弁護額についてうるさいほどとやかく言
われたのだが。
―――――おかしい。
ロダンの考える人のように頬杖をついて思案すると、北岡は暦の目をまっすぐ見つめ、
思ったことをとりあえず言ってみた。
「暦、なんかお前、変だぞ?何かあったのか」
「え?いや・・・別に」
視線をそらすという、この上なく分かりやすい嘘のつき方に北岡は再びため息をつい
た。
そういえばとっさの嘘を隠すのが下手というのも暦の欠点の一つだった。
「お前なぁ・・・」
「あ、こんな時間、いつの間に?」
腕時計に目をやる暦。めちゃくちゃ白々しいその態度。
(ま、いいか・・・。俺が世話見なくちゃいけない年でもないし)
昔はいろいろ世話を焼いたものだが、もう暦の兄離れも終わっている、はずだ。
いそいそとソファから立ち上がる暦を少し寂しさの入り混じった視線で追う北岡。
「じゃ、また来るよ」といいながら、暦はドアノブに手をかけた。
「司法試験の勉強がんばれよ。
それと、何やってるかは知らないけど俺の手を煩わせるようなことだけはするなよ。
妹の弁護なんてしたくないからな。」
背後から聞こえる励ましと忠告の入り混じった兄のその言葉にできる限り自然な笑
みで「分かってるって、」と答えると、暦はドアを開け、外へと出た。
そして笑顔を消し、肩の力を抜きドアの横の壁へともたれかかると、ゆっくりとポケ
ットから先ほどポケットの奥に押し込んだ緑色のケースを取り出す。
真ん中に水牛の顔が書かれた薄っぺらいカードケース。
―――――それは、仮面ライダー、ゾルダに変身するためのカードデッキ。
「分かってるって・・・兄さんに迷惑はかけないよ」
小さくそう呟くと、暦は再びそれをポケットの中へと押し込み、ゆっくりと歩き出し
た。
とりあえず書いてみました新作です。
なお、前みたいなペースは絶対無理です、あしからず。
ゆっくりと書いていく予定?まぁそんな感じで。
ミネルバさん、乙です。新作キタ〜〜〜!!
設定ナイスですね。兄思いの暦がいい感じっす。今後の展開が非常に楽しみ♪
547 :
メロン名無しさん:03/02/17 12:21 ID:xnqlNpRf
あずまんが555(ファイズ)もやって欲しいなぁ〜〜〜。
この調子で行くと次スレは「あずまんが大王で仮面ライダー」でしょうか?
すでに400KB超えてますし、一応考慮として・・・・・・
ミネルバさんの新作キタ─wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─ !!!
乙!暦と北岡が兄妹・・・とてもいい!まったり新作待ちますね!
>あずまんが555(ファイズ)もやって欲しいなぁ〜〜〜。
うまく両サイドのメインキャラとして割り振ったら楽しげな予感。今度考えてみまふ。
>この調子で行くと次スレは「あずまんが大王で仮面ライダー」でしょうか?
かと思われる。
人大杉で最近来れませんでした。とりあえず当方も近いうちに続きを
掲示しますね。期待しないでそのまままた〜りお待ちくだされ。
お久しぶりです。覚えてらっしゃいますでしょうか?(苦笑)
取り敢えず、続きを書こうと思ってた矢先録画していたテープが何とパーになってしまいました(涙)
おかげで、後半のビデオ発売待ちです。トホホ…
>続きを書こうと思ってた矢先録画していたテープが何とパーになってしまいました(涙)
強く生`
前スレで容量オーバーさせた当方はそろそろ次スレを立てて欲しぃです。
お願いしますm(_ _)m
じゃ、テンプレでも
あずまんが大王で仮面ライダー
みんな、ずっと、一緒…の筈だったのに、どうしてこんな事に!?
こんなの、酷すぎるよ…だが、それがお前達の運命だ
戦え、戦わなければ生き残れない……
果たして、彼女たちはどう戦い、どう生き残るのか!?
byあずま士郎(一部改竄)
555が入るだろうから、「ライダーは」、の部分を削らせていただきました。
次スレは大阪板に立ててもいいんではないかという意見を示唆してみる。一応。
新スレがどちらでも異存はないですが、まあとりあえず、あと一話くらい大丈夫でしょう。
てなわけで第二話です。
第九章
「ここか、浅倉威が拘留されているのは」
神崎士郎のつぶやく声。
鏡の中、それを聞きとがめるものは、誰もいない・・・・・・
――――――関東拘置所
それは罪を犯した凶悪な犯罪者達を閉じ込める独房。
何人たりとも自由に出入りできぬはずの、閉ざされた監獄。
絶対負の感情が渦巻く、地上に現出した地獄。
そこにあるのは絶望、怒号、怨嗟、破壊、破滅、そして、終焉。
いまだかつて、この地獄から抜け出した者はいなかった。
決定的な壁を隔てた二つの世界の狭間にいる者たちの中にそれを誇りに思う者はい
ても、慢心と油断を持っていた者はいなかった。
いつもと違う何かを見た者も、聞いた者もいない。
しかし、その日、ありえないはずの脱獄は、起こった。
「関東拘置所から脱走?」
「ああ、なんでも浅倉威っていう凶悪犯らしいぜ〜」
電話の向こうから聞こえてくる、小学校時代からの親友、滝野智の、心底楽しそうな
言葉に暦は眉をひそめた。
小学校から高校まで、12年にも及ぶ付き合いを持つ暦と智は、大学に入って別れて
からも頻繁に会ったりして、積極的な交友関係を続けていた。そして、それは大学入
学から四年たった今も変わっていない。高校時代のあのメンバーですら、一年に数回
会うくらいなのを考えると、あまり意識はしていないが暦にとって智はやはり別格な
のだろう。
で、今回はどうやら、どこからかそういうニュースを拾ってきたらしい。
なぜか、そういう情報の入手速度がやけに速いのがこの友の特徴だ。
どこが情報源なのか、知ろうとも思わないし、人より早く知ったとしてもあまりあり
がたいと思えるようなニュースも少ないが。
しかし、珍しいことに今回はそうでもない。
智の口にした脱獄犯、暦はその名前に聞き覚えがあった。
(あさくら、たけし・・・、たしか、兄さんの弁護記録にあったな・・・)
「あれ〜、急に黙り込んじゃって。怖がりですな、よみさんは〜」
「ばかいえ。別になんでもないよ。ちょっと調べ者があるから電話切るぞ」
「ん、分かった。じゃ、またな〜」
智のその言葉、そして電話から聞こえる音が、無機的な電子音へと変わる。
それを聞きながら暦は、この前の電話のとき智が、非常に面白い、スリル満点のゲー
ムをやりはじめたといっていたのを思い出した。
最近面白いゲームがなく、少し興味があったので次に電話したとき詳しく聞こうとし
て思っていたのを完全に忘れていた。
そしてその時の電話の内容に一瞬思いを馳せて暦はふと考え込んだ。
(・・・そういえば、あの時は黒沢先生のことについてなんか智としゃべったんだよな。
何の話したんだっけ・・・、おいおいまだぼけるには早いぞ・・・・・・)
「・・・まぁ、いいか」
別に、ゲームの件はあとでまた電話をすればいいし、その時の電話の内容も今急いで
思い出す必要もない。
小さく肩をすくめ、机に立てられた幾つものファイルのうち手元に引き寄せた一つか
ら、目当ての紙を見つけ出す暦。
そこに書かれていることをざっと読み直す。
(えっと、浅倉威、殺傷事件で捕まり関東拘置所へ入れられる。
北岡秀一の弁護により懲役10年となる。これが公式記録だな。
・・・・・・あさくら・・・・・・たけし・・・・・・ん?懲役10年・・・・・・
・・・・・・そうか、思い出した!)
クロをシロに、が謳い文句の兄、北岡秀一が唯一無罪にできなかった事例。
だから一度ならず暦も北岡の口から聞いた覚えがある。
浅倉は、無罪にできなかった北岡のことを無能弁護士と罵ったと。
さらに浅倉の性格は、かなりアブない、とも聞いている。
そんな浅倉が脱走したら、真っ先にどこに行くか・・・・・・、いやな予感がする。
(一応兄さんのところに行ってみるか)
そう心の中でつぶやくと、暦は愛用のコートと鞄を引っつかみ、無言で立ち上がった。
むろん、服の内ポケットに肌身離さない緑のカードデッキをしのばせて。
暦の家から北岡弁護士事務所までは徒歩で気軽にいけるほど近くはないが、電車で移
動するほどの距離でもない。あいにく視力の関係でまだ車の免許は持っていないので、
消去法的にそこまでの移動手段は自転車ということになる。バスという手段もないわ
けではないのだが融通性で自転車のほうがはるかに勝る。
(どうやらあいつの言ってたのはガセネタじゃなかったみたいだな・・・)
自転車に乗っていると、北岡法律事務所に近づくにつれて明らかに歩いている人が少
なくなっているのが分かる。遊んでいる子供を、電話片手にあわてて家の中に連れ込
んでいる親もたまに見かける。
どうやら凶悪犯脱獄の噂はそこそこ流れているらしい。
そして、こうして自転車に乗っている暦にも決して危険がないわけではない。
浅倉威がまっすぐ北岡法律事務所に向かうとは限らない。
それどころか、そこに行こうとしているかどうかすら分からない。
今浅倉がどこに潜んでいるか、暦に知るすべはないのだ。
メガネに冷たい風が当たり、眼球を刺激する。まだ大気は肌寒い。
すぐにでも引き返したくなる衝動的な、しかし非常に強い誘惑を撥ね退け、背中に流
れる、風よりも冷たい汗を感じながら、暦はよりいっそう強くペダルを踏みしめた。
相当急いだので、家を出て10分ほどで暦は目指す場所を視界に収められる位置に到
達した。ただし、メガネの先、その視野に入る光景には予想外の余計なオプションが
ついている。
ドアの前で何か言葉を交わしている男性二人・・・兄とその秘書、吾郎だ。
ドアの前でへたり込んでいるスーツを着た女性・・・誰だろう?
そして、明らかにそこから駆け出しているガラの悪そうな男。
続き、へたり込んでいた女性の上げたと思しき声が暦の鼓膜を揺らした。
「浅倉!!」
(あいつが、浅倉!?)
一瞬でめまぐるしく暦の頭が回転する。
わずか一秒にも満たぬ間、いくつもの考えが浮かんで消えた。
このままおとなしく兄の所へ行くべきだ、支配的なその考えを打ち消す何かを感じ、
暦は再びペダルを踏む足に力を込めた。
その目指す先は―――――――浅倉威!
「編集長ですか、浅倉を見つけました・・・・・・」
携帯電話片手にそういいながら浅倉の逃げていったほうへと駆けていく令子を「タフ
だねぇ」と半分呆れたようなため息をつきながら見守る北岡。
その肩を「先生ぇ・・・」と小さく叩く吾郎。
「どしたのよ、吾郎ちゃん?」
「今、令子さんを追い抜いていった自転車に、暦さんが乗っていたような気が・・・」
その言葉に無言でそちらへと首を伸ばす北岡。
吾郎もそれに付随するが、すでに浅倉も自転車も視界の範囲には見当たらない。
「追いかけますか?」
「なに言ってんのよ、吾郎ちゃん、暦がこんなところにいるわけないじゃない」
「・・・それもそうですね」
「あいつだって子供じゃないんだし、それくらいの分別はつくでしょ」
その言葉に心配そうな響きが混じっているのを見て取ると、吾郎は黙って事務所に止
められた自動車のほうへと歩を進めた。
(完全に見失ったか・・・)
少々の悔しさと多分の安堵がこめられた心の中のそのつぶやき。
自転車よりもさすがに徒歩のほうが小回りが聞くため、道なき道に入られ暦は浅倉を
見失った。
そこで冷静に自分のやっていることを判断し、暦は自分でも思いもよらなかった己の
無鉄砲な行動に反省しつつ、180度反転し、もと来た道を帰り始めた。
下手をすれば、いや、下手をしなくても十分危険な行動だったといえる。
今となっては自分が何をしたかったかも分からない。
浅倉を追って、どうしようというのだ、自分は・・・・・・・・・
(最近理知的な行動が減ってないか・・・・・・、これじゃ智みたいだ・・・)
別にそれがいけないと思っているわけではないが、あくまで自分のスタイルではない。
ため息と苦笑を同時に行い、近づいてくるパトカーのサイレンに心の中で声援を送る。
ああいうのはさっさと捕まえるのが世のため人のためだ。
そして、数十メートル戻ったところで暦の足は再び凍りついた。
なぜなら浅倉を見つけたから、ではもちろんない。そうなら即座に逃げ出している。
最悪か最高か、そのどちらともつきかねるタイミングでその頭に響いた、モンスター
の出現音に暦は足を止めざるを得なかった。
反射的にカードデッキがしまってある内ポケットの上から、カードデッキの存在を確
かめる。
その硬質な感触が今だけは頼もしく思える。
「っ、どこだ!?」
首を回し、一瞬の思考の後、自転車を押し、走り出す暦。
なぜか、カードデッキを持っている者だけに聞こえるその音は、一度聞けば音源の位
置が大体分かってしまう。どういう原理なのか知ったことではないが。
どのみち出現したモンスターを放っておくわけにはいかない。
(場所はここらへんだな、あとは人のいない路地にでも入って・・・・・・)
浅倉威脱走のため、人通りはいつになく少ない。皮肉を感じながらもそれに感謝しつ
つ、暦は目ざとく目的地を見つけ、その横の路地に滑り込んだ。
そして起こる再三の思考停止。
偶然か必然か、天使の所業か悪魔の所業か、その路地には浅倉威の姿があった。
しかし、浅倉は暦のほうを向かず、路地にあるガラスのほうを向いている。
そして、間断なく暦の頭に突き刺さる、ミラーワールドからの干渉音。
(音は間違いなくここのガラスからも出てる、さぁ、どうする・・・)
暦のライダーになった目的はモンスターを倒して人助けをすることではない。
凶悪犯が目の前にいる今、すぐにでも踵を返し逃げ出すのが一般的な常識かもしれな
い。そもそも、凶悪犯である浅倉を、自分がライダーになって助ける必要はないよう
な気がする。
暦の頭を駆け巡る一瞬の逡巡。しかし、どうするか、結論が出ることはなかった。
「ふん、これがモンスターか・・・」
「っ!」
浅倉の言葉に息を呑む暦。
たとえ凶悪犯であろうともライダーでない人間がモンスターの存在を知っているわ
けがないし、モンスターの気配を感じられるわけもない。
つまり、この男も、カードデッキを持つ、ライダー!
「ん、誰だ、お前は?」
やっと気づいたのか、浅倉が蛇のような鋭い目つきで暦を射抜く。
おそらく着ている服などは脱走してからどこから奪ったのだろう。
根本的な、拘置所からの脱走の手段など、ライダーになれるのなら、論ずるまでもない。
「ライダー・・・」
そのつぶやきと共に、内ポケットから取り出した己のカードデッキを示す暦。
一瞬面食らったように目じりを上げたものの、すぐににぃっと笑って、浅倉も紫のカ
ードデッキを懐から示した。
悲しいことに、予想に間違いはなかったらしい。
「お前もライダーか・・・面白い、俺を楽しませろ・・・」
(ライダーを倒す、兄さんに対する厄介物を消す。一石二鳥だな)
それに、と心の中の言葉にそっと付け加える。
この相手なら、戦っても心が痛むことはなさそうだ。
少し離れ、カードデッキが握り締められた二人の左手が同時にガラスへと突きつけられた。
「「変身!」」
狭い路地を照らし出す光と共に二人が鏡に消えた数秒後、けたたましくサイレンを鳴
らしたパトカーが、その路地の横を通り過ぎていった。
ミラーワールドの中、ライドシューターから降り、殺気を絡め向かい合う二人。
暦の変身する緑のライダー、ゾルダ。バイザーは、右手に持つ銃。
浅倉威の変身したライダーは、毒々しい紫のライダー、仮面ライダー王蛇。
その手には体と同じ色の、コブラをかたどったような杖が握られている。
(見た目どおり、蛇が契約モンスターってわけか・・・)
先に動いたのは王蛇。
「はぁぁ・・・・・・」、と首を回し、だるそうに息を吐くと、王蛇は手に持ったベノバイ
ザーへとカードを押し込んだ。
『SWORDVENT』
ソードベント、暦の手持ちにはないが、おそらくは剣を召喚するカードだろう。
一瞬後、光とともに王蛇の手に、ドリルのような剣、ベノサーベルが握られる。
「ゾクゾクする。これがライダーか・・・」
その声とともに、王蛇が一歩一歩暦のほうへ歩を進めてくる。
そして、瞬く間にそれは韋駄天のごとき駆け足へと変化する。
「まずは小手調べだ」
マグナバイザーから王蛇へと弾丸を連射する暦。
それを舞うような動きですべて剣ではじき落とす王蛇。
それでも途切れることのないその弾幕の勢いは王蛇の接近を易々とは許さない。
しかし、王蛇が剣を振り回すたびに両者の距離は徐々に狭まっていく。
「イライラするんだよ!」
その言葉とともに、無理やり弾幕を抜けた王蛇の剣がついに暦を吹き飛ばした。
体全体が堅強なグランメイルに守られているとはいえ、痛いものは痛い。
遠距離戦仕様のゾルダは、接近戦になると、モンスター相手ならともかく、ライダー
相手だと苦戦は必至となる。
「はぁぁっ!」
王蛇の剣の殴打、それを耐えながら、暦はさらに一枚のカードをマグナバイザーに差
し込んだ。暦とて先ほどから黙って王蛇が近づくのをただ待っていたわけではない。
『ADVENT』
その音にわずかに遅れ、ゴゴゴゴゴ、という地鳴り音と共に現れ、なおも暦に切りか
かろうとした王蛇を跳ね飛ばす、ゾルダ=暦の契約モンスター、鋼の巨人マグナギガ。
どっしりとした外見と裏腹に全身が武器で覆われている、爆弾のようなモンスターだ。
「それがお前のモンスターか・・・」
笑いながら紫の蛇が描かれたアドベントのカードをカードデッキから取り出す王蛇。
同時に暦は、自分のカードデッキの柄と同じ柄の書かれたファイナルベントのカード
を取り出した。
アドベントのカードは文字通り、契約モンスターを召喚するカード。
そして、ファイナルベントは、デッキに一枚限りの、必殺の切り札。
ファイナルベントは、相手がモンスターだろうがライダーだろうが、決まれば一撃で
致命傷を与えうる威力を持つ。
ガッ
「っ!?」
しかし、暦がそのカードをマグナバイザーに入れるより早く、その体は思ってもいな
かった横からの衝撃を受けよろめいた。
そしてそれは眼前の王蛇も同様のようだ。
「なんだぁ?」
「・・・・・・」
わずらわしそうにそちらをみる王蛇、そして暦。
『キィ、キィ』
『ギシシシシ』
青と赤、似ているが少し違う二匹のモンスターが、それぞれの体の色と同じ、一メー
トルほどの長さのブーメランと思しき武器を片手に、笑え声ともつかぬ奇声を上げて
いる。
大きな違いとして、赤いほうには巨大な牙があり、青いほうには巨大な触覚がある。
(あー、そういえば、モンスターがいたんだっけな・・・)
新しいライダー、王蛇のインパクトが強くていつの間にか完全に忘れていた。
暦の意志と共に、マスクを通し、視界にモンスターの名前が表示される。
(へぇ、青いほうがゼノバイター、赤いほうがテラバイターか)
どんなタイプのモンスターか、までは分からないが昆虫型モンスターであることは見
れば分かる。
「つまらん邪魔が入った、貴様と遊ぶのはまた今度だ!」
その言葉とともに赤いほうのモンスター、テラバイターに切りかかる王蛇
テラバイターもその手のブーメランでその剣を受け止めている。
そのまま一人と一匹は移動し、暦の視界から消えた。
余韻としてかすかに斬撃の音が聞こえるのみ。
「ってことはわたしの相手はお前か」
青いモンスター、ゼノバイター。
どれほどのものかは知らないが、少なくともあの王蛇よりは幾分やりやすいだろう。
マスクの下で笑みを浮かべ、暦は手に持ったファイナルベントのカードをデッキに戻
して新しく一枚のカードを引きなおした。
モンスター戦のあと王蛇ともう一度戦わなければならないかもしれないため、最後の
切り札であるファイナルベントはそう易々と使うわけにはいかない。
そして、ゼノバイターが攻撃してくるより早く、そのカードをマグナバイザーへと差
し入れる。
『SHOOTVENT』
召喚したのは彼女がモンスター戦で最も多用している巨大大砲、ギガランチャー(一
門砲)。暦の性格として、モンスターとだらだら戦うのは好みではない。
カードをバイザーに入れた場合、基本的にはモンスターから暦の手へとモンスターの
体の一部を模した武器が渡される。
この場合、すでに出現しているマグナギガの両手が光り、その光が暦の手へと渡れば
3メートルほどもあるギガランチャーと具現化する。
しかし、かなりの質量があるはずのその光状態のギガランチャーは、暦の手に渡る前
に空中で軌道を修正し、あさっての場所へと落下した。
原因は、暦のベントインと同時に投げられたゼノバイターの、ブーメラン。
巧みにも空中でギガランチャーへと当てたらしい。
『キィ、キキィ』
笑っているらしい、昆虫型モンスターの癖に。いや、昆虫型モンスターだからか。
「あぁ、くそ、なんか智の奴に笑われるより腹がたつな・・・・・・」
暦の呟きを知ってか知らずか、多分後者だと思うが、鋭く巨大なブーメランを投げる
のではなく剣として攻撃してくるゼノバイター。
その攻撃を体を転がして避ける暦。
鋭いその刃は、先ほどまで暦がいたところの空気を切り裂いた。
その一撃でグランメイルが切り裂かれるとは思わないが、正直あまり受けたくない攻
撃ではある。
「ま、所詮は虫だけどさ」
そのまま、再度攻撃してこようとしたゼノバイターの体をマグナバイザーのグリップ
で殴りつける暦。そして一瞬で来た隙に、ゼノバイターのどてっぱらにマグナバイザ
ー数発を打ち込み、ダウンさせる。野良モンスターごと気が相手なら接近戦でも遅れ
をとるつもりはない。
そして一回モンスターとその間合いを空け、暦は新たなカードを差し込んだ。
『SHOOTVENT』
先ほどと同様シュートベントだが、今度は、先ほどのギガランチャーより強力な二門
砲、ギガキャノン。
再び、今度はマグナギガの両足が光り、暦の手元へとその光が伸びる。
『キィキィィ』
「だから、虫なんだよ」
再びゼノバイターの手から離れたブーメラン、それを、こんどは暦が空中で、マグナ
バイザーで撃墜する。
ゾルダの顔面につくスコープ、フォトエレクトロンアイが補足するため、たとえ動い
ているものであれ、撃ち損じはない。
「奇襲が通用するのは、一回だけだ!」
そして、今度こそ暦の手に渡った二門砲、ギガキャノンは、一発二撃にしてゼノバイ
ターをものの見事、木っ端微塵に打ち砕いた。
一応出る前に気配を探ってみたが、王蛇がモンスターと戦っている様子はなかった。
鏡から出、路地から抜けたと同時に暦の横で高級そうな車が停車した。
それが誰の車か、分からぬ暦ではない。
ドアが開き、車の中から兄が出てくる。
「暦、何でこんなところにいるんだ?今、外が危険なのを知らないのか?」
おそらくは先ほど事務所の前で姿を見られたのだろう。
浅倉と一緒のところを見られなかったのは勿怪の幸いか。
「知ってから今から家に帰るんだよ。兄さんこそ早く事務所に帰ったら?
少なくともここからはすぐに離れたほうがいいよ」
「お、おい、暦」
後ろから聞こえる兄の声を、耳をふさいで意図的に無視する暦。
そして逃げるようにして、兄の自動車の横を抜け、自転車を駆り出す。
浅倉がすでにミラーワールドから出ているのかは知らないが、今にも浅倉が出てくる
かもしれない鏡の近くに長居は無用だ。
浅倉威。ライダーになれるのなら警察につかまることもないだろう。
(厄介なヤツがライダーになったな・・・、ったく、神崎士郎ももっとまともなやつを選べ
なかったのか)と心の中でつぶやくと暦は一路家へと自転車を駆り立てた。
以上、第二話です。お粗末さまでした。
わたしも555でそのうち書きたいけど、せめて夏くらいまで見てみないと・・・・・・
でわ。次の話までまた、一週間くらい空くかもしれんです。
ミネルバさん、乙〜!なにげに>555をゲトしてますな〜
朝倉と暦の関係がどう展開してゆくか、とても楽しみです。
・・・・・・このスレも、もう容量いっぱいですか?
では、もう書き上げてるけど、当方の続きは次スレにアプすることにしまふ。
で、次スレタイトルは決まったけど、誰がたてますか?
それじゃあ580をとった人、というところで。
ちなみにさっき立てようとしたら「このホストでは、しばらくスレッドが立てられません」
とか言われて当方はあっさりと弾かれました。どうやらわたしには無理っぽいです。
>>576 > ちなみにさっき立てようとしたら「このホストでは、しばらくスレッドが立てられません」
IEで?それとも他の2ch専用ブラウザで?
あと、立てる場所はこの板ってことで皆様OKなのでせうか?大阪板がいいって意見も
ありましたけど?私は知らないんですが、大阪板ってここより環境いいんですかね?
>>577どちらでも構いません。立った場所で頑張るだけです。
折れもどっちでもいいっす。自分なりに頑張ります。
「逆転ホームラン!!」
「全部ひとまとめにして――可愛いライダーたちの恐ろしいあずまんがみたいな
SSスレ」
「もうなに言ってんだかわかんねーよ」
・・・・・・失礼しました。ミネルバ氏のテンプレに従って、次スレ立てにチャレンジ
いたします。上手く立つよう、祈っていてください。
――いよいよ スレ立て
「IE・・・・・・立てれません」
「JANE・・・・・・立てれません」
「もうだめだ――」「お――」
・・・・・・とは言ってもいられないので、色々とがんがってみまふ
でも「折れ、立てれるけど・・・・・・」って方いらっしゃったら、替わりにお願いした
いのも確かです・・・・・・もう、ギブかい折れ。あう〜
ダイヤルアップでやったら、立てれました。ダメ元なんで、名前欄「名無しさん」
になってますが。どうもお騒がせしました。
あ、あれ?
あずまんが大王で仮面ライダー、消えてる?
dat落ちしたらしい。速過ぎる・・・
ガ━━(゚Д゚;)━━ン!
どうします?このまま終わるのもイヤだなぁ・・・・・・
もう私では、この板には立てれないでしょうから、どなたかお願いできたら
と思います。あるいはパチに移る?
大阪板に立ててみました
立ててみましたんですが・・・あれ?なんか変になってる?
>589
乙!あ〜、スレタイが無いですねぇ。
削除依頼出して、立て直すか?
あのままsageでスレ一覧の底部で使用して、秘密倶楽部の雰囲気を味わうか?
どうしましょうか〜他の皆様?
せっかくだから、もうどんどんアプしちゃえば?
めちゃ分かりづらいので、立て直した方がいいかと・・・・・・
大阪板に立て直してみました
>595
乙彼さまで〜す。助かりました。
とりあえず、デタ堕ちしちまったトコにアプした奴を再アプさせていただきます。
明日当たりに。
なんか早速手荒い洗礼受けてるけど、がんがっていきませう。 >ライターの皆様!
立ったばかりで書き込みペースの遅くない「あずまんが大王で仮面ライダー」が
すぐに消えて、長らく書き込みの無い「どれみサバイバー」スレが残ってるのは、
dat落ちでは無く、重複と見なされて削除されたのでは?と思い、削除依頼スレを
見てきましたが、依頼は出ていない模様です。
ということで、削除議論板・批判要望板を見てきましたが、
☆ ☆ dat落ち早過ぎるぞ ☆ ☆
http://qb.2ch.net/test/read.cgi/accuse/1039568380/ ちょうどこのスレでヒントのようなものを見つけました。
スレの即死判定では、最終書き込み時間の他に、サイズも判定に使われるそうです。
立てられたばかりでサイズが小さいときは、間を空けると危ないみたいです。
>598
お疲れ様です。そうか、そうだったのかと納得&勉強になりました。サンクス!
しかし、肝心の移転先がなんかトラブってて、長文がアプできないみたいですな。
今のうちに書き貯めしといて回復待ちすっかな・・・
現在大阪板は困った状態になってまふのでしばらくここでまた〜りお待ちくだされm(_ _)m
>>600 大阪板の他スレにも鷹さんっておるけど、同じひとなんやろか?
トリップから察するに多分同じ人だと思う。
新スレも無事たって良かった。
新作は一応できてますが、うpはもう少し落ち着いてから。
まあ、手荒い反応ですが、初代スレが受けた歓迎に比べたらたいした事もないですしね。
>>597おーがんがる!
>>603頼もしいです。
何と言うか申し訳ない。普段の大阪板はまた〜りしていますので
ライターの皆さん気にしないでくださいませ。とりあえず大阪板
が現在調子が悪いのでもう少しお待ちくださいです…
605 :
メロン名無しさん:03/03/07 23:51 ID:6SuTAwOq
新スレのほう、アドベントだけはしといたほうがいいかなぁ
どうでしょう?
ごふっ
sage忘れてた ごめんなさい・・・・・・
>605
なんかIEで見ると、消えとるよーにもみえるんやけど・・・・・・ガクガグブルブル
とりあえずうpしてきますた。
>>605むしろ大阪板の住人の反応を見るとageベントしなくても
良いかと思われます。
鷹さん、コテに名前入れるの止めたんですか?
>>610何となく…それより次スレがお祭りになっているから見に行くべし!
保守。避難所&ライター雑談場所として
613 :
メロン名無しさん:03/03/16 23:29 ID:bNF6XPxD
保守age
対イラク戦でのアメリカのファイナルベント「MOAB」――愛称:すべての爆弾の母、の威力
は何APだろうか?・・・・・・保守
死んだのが4人ぐらいだからな・・。
ベノクラッシュ並だろう。5000AP
616 :
メロン名無しさん:03/03/25 01:02 ID:F+kbPDzG
保守。
保守がてら
現在投稿 第1,2,3,7,8,9,15章 (3月28日)
現在確定事項 水原暦 ゾルダ
春日歩 ライア
神楽 ナイト
浅倉威 王蛇
響 歩 ゼロ
??? リュウガ
次回投稿予定 第四章
>>617 なんで壱から順に書いてくれへんの〜
内容は面白くて、ええSSやのに なんか読みづらいでぇ〜
時間軸に沿って順番に書くとキャラが交互に出てくることになるので、まず序盤はキャラごとに書いて、
それぞれの背景をはっきりさせようという試みのつもりデス。
第N章と付記している点についても、一応、どのイベントがどの順に起きたかも
書かないわけにはいかないかな、と。
つまり、現段階で過去にあったとされている部分の一部は、他の誰かの章で補足する、といった具合。
たとえば大阪さんの章で書かれていた高校の大規模失踪事件、これは大阪さん以外の誰かの章で扱う、というみたいに。
追記。章ごとに読んでも、投稿順に読んでもどちらでもまったく問題なく読めるようにはしてありますゆえ。
当然、まだ投稿していない章に書かれている重要な部分を、先に投稿した章で暗喩することはあっても
明確に書くことはないです。たとえば十五章でナイトを「彼女」と呼んでなかったり。(ゾルダは呼んでるけど)
140で彼女達、と暗に示してはいますけど。
れすさんくすや〜。気づかん私があほやった〜、ほなら〜
622 :
◆AEKINGs/9o :03/03/31 00:36 ID:DDKJ6vu5
保守
らんるちゃんは はっぱたいにも あえたのかな?
保守
625 :
623:03/04/04 19:50 ID:???
スマソ イマサラ ゴバクニ キヅイターヨ
>>625強く生`
ところでjuneで沈んでいるスレは見れないらしいけど、
誰か見れないで困っているのでしたらageて見えるよう
にしましょうか?>あずまんがで仮面ライダー
↑ まぁ、このスレのリンクから逝けるから一応は。
ageてもっと多くの人に見てもらって、新たなライター登場を望む気持ちも半分
ageたらまた荒れる恐れも半分
ちょとSSの掲示が遅れてるけどスマソ。でも気にすんな(・∀・)!!
そのまままたーりお待ちくださいです…
何か自分と同じ気分の
>>627に乾杯ヾ(`・ω・´)ノ
正に半々だねー。でもあのスレどこにあるか謎な場所にあるから
ageても良い気分になったらageキボンヌ>誰か
今ageると、某ケンちゃんがSSを書いてきそうなヨカーン♪
630 :
メロン名無しさん:03/04/06 09:15 ID:g2hN4y2P
一応あげ
あっちのほう、上がったっぽいですな
「いや 怒ってるわけじゃない 君がここから上にageられたなどうなる」
「荒らされます」
「荒される様なことを・・・・・・」
ゴゴゴゴ
「ホ ホントに怒ってないでつか?」
まぁ、頑張るしかないでしょう。 >ライターの中の人たち
誰より強く いのちの音を鳴らして♪
・・・・・・マターリ
ほしゅ
634 :
メロン名無しさん:03/04/13 01:24 ID:7CKj3zAg
保守しつつ上げ
思ったよりマターリやな、アプ後。
暇つぶしにオルフェノク達、555ネタSSへの抱負をアプすれ!
・きちんと終わらせる
・両方のイメージをバランスよく融合させる
当たり前のことかも知れませんが上の2つかなー
…ファイズは人選とストーリー構成が大変そうな予感(・A・)
いけませんねぇ、まだお目覚めのオルフェノクちゃんは一体だけですか〜
(Sレディ談)
638 :
山崎渉:03/04/20 00:14 ID:???
∧_∧
( ^^ )< ぬるぽ(^^)
555、全然先が読めねぇ〜!もう少し話が進まないと、SSは難しいかも?
中〜華ぁ、私の場合、今書いてる『仮面ライダー神楽』を555の最終回放映までに
ラストまで書き上げないと周回遅れになってしまふという罠。
がんがろ〜♪
『ガードベント』
・・・・・・保守
641 :
騎士の中の蝿達:03/04/28 23:58 ID:dMwXopxg
644 :
メロン名無しさん:03/05/05 22:46 ID:FLA6OMiX
保守
保守
保守
保守
戯言がてら
鷹氏
龍騎=神楽 ナイト=智 ゾルダ=暦
タイガ=榊 インペラー=かおりん ベルデ=大阪
ファム=優衣 王蛇=ゆかり ライア=みなも
ガイ=木村 リュウガ=黒ちよ オルタナティブ=ちよ
オーディン=不明 シザース=未確認
現在未確認 1人
いらだとばる氏
タイガ=神楽 ゾルダ=北岡 フ ァム、ベルデ=死亡
ナイト=不明 龍騎=不明 ガイ=みなも
現在未確認 6人
ミネルヴァ氏
ゾルダ=暦 タイガ=榊 ナイト=神楽
ライア=大阪 シザース=須藤 王蛇=浅倉
ベルデ=不明 リュウガ=不明 ゼロ=響歩
ガイ=芝浦?
現在未確認 3人
xPTaKino氏
アーク(青、鷹)=後藤 デューク(黒、豹)=大山
スコピオ(黄色、蠍)=ゆかり ハデス(土色)=木村
スレイダー(紅、=みなも
名称不明(紺色)=神楽 名称不明(白銀、蝙蝠)=榊
名称不明(緑)=不明 名称不明(緋色)=不明
現在未確認4人?
そろそろ新スレの季節かな?
>>648 お疲れさんでつた! 確かにもう、次スレの時期でつね。
652 :
山崎渉:03/05/28 10:08 ID:???
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
>>648 いいじゃん、これ!
各キャラ対戦成績リストもキボンヌ
↑ 大杉て、断念。疲労で目が痛え〜脳が痛え〜、あうあう・・・・・・
654
おっと、私は
>>648氏やあらへんよ〜、念のため。
見てて私がやったろーと思てな、挫折したんや。
誰かにバトンタッチやー
今日は5555はお休みなんやで〜。要注意や。
>>656 5多杉w
そーいやおまいらはファイズの中の人に募集しましたか?
いいえ〜。結花たんにゴーンゴーン睨まれる役なら応募したかも
>>658 ステキな役だなw
落ちたっぽい…(´・ω・`)ショボーン
スマートレディって、このまま出番なくなるのだろうか?
はーい、555のSSを書いてくれてる良いオルフェノクのみなさーん!
今日は特別におねーさんが、レスしてあげますよー!
>第02話 目覚めの夜
素敵なお話ですね。私も出てるしぃ・・・チヨノクソガキ,イツカブッコロス・・・続きが楽しみ
でーす。
でもぉ・・・うえーん、ちょっと残念。
>「ちよ様…」
>「ちよでいいですよー。…お仕事おつかれさまです。
そんなこと言われても、宮城さん困っちゃいまーす。ぐすんぐすん・・・
「じゃあお言葉に甘えて・・・・・・ちよ」と呼び捨てにするわけにもいきませー
ん。ヨクアサ,シタイデハケーンサレチャウ
これってドラマや小説ではよくある台詞の流れなんでしゅけど、例えば「総
帥」「社長」とかぁ「美浜様」とかぁ役職名やファミリーネームで呼ばれた
場合に、そんなに畏まらなくてもいいですよ、もう少しくだけた呼び方でも
許しますよという意味で「ちよでいいですよー」と応え、宮城さんは「は、
はい。ちよ様」と呼びなおす。というのが正しい使い方だと思いまーす。
キツいこと言っちゃたかな、グスン、ゴメンね☆
でもSSの続きは楽しみです。頑張ってね。おねえさんも応援してまーす!
ワーイスマートレディーのコメントだー(´ー`)
そこまで続きがあるとは…ビクーリΣ(゚Д゚)
当方、キャラが動いているのを必死で書きとめているのですが、いかんせん
まだ間に合いってませんな…もっとガンガリマス(`・ω・´)シャキーン!
ソレニシテモホカノSSライターハドコニイッタノカナ…サビスィナ…
えっと、これってどのSSに対するコメント?
該当するのが見つからないんですけど。
もしや、異次元に?
665 :
暦:03/06/18 13:49 ID:???
なんなんだ、ここは?一覧の最後尾にあるくせに、やけにレス数が多いじゃないか。
↑ なにげにダミアンをゲットしてる(w
>>667 ホントだw
よーしパパがんばってこのスレの913Getするぞー(`・ω・´)シャキーン!