当スレは「あなたの軍事SSを聞かせてください第2回」の次のスレです。
前スレでは「SS」と言うスレの題名で「ショートストーリー」とそうでない作品との「長さ」に
ついての曖昧さが指摘された為、スレの題名を改名しました。
前スレ「あなたの軍事SSを聞かせてください第2回」
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/army/1156949703/l50 当スレでは
・書き手の思いついた設定でストーリーを投下
・ストーリーは軍版なので軍に関係のあるもので
・基本的に何でも良し。ただしアニメやゲームのものを扱うものは駄目。
・ストーリーの長さも各人の自由です。
・ただし、投下した作者を叩くのはいけません。内容に不満があるのなら
「○○の所の▲▲は◇◇ではないでしょうか?」と言った指摘なら良し。ただ
「ツマラン」と言うのも無粋ですから。それに荒しはもちろんいけません。
ストーリーは
「 ミッドウェー海戦を逆転勝利 」でも
「1980年代にソ連が西欧を解放」とか
「タイムスリップした○○軍(自衛隊)が過去・未来に行く」
「エイリアンやモンスターと戦う○○軍(自衛隊)」など何でも良しです。
難しい事は気にせず、各位の好きな様にお話を展開してみましょう。
本スレは「 自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた」とは別のスレです。
また、本スレの様な創作系スレは前スレの時に削除議論板内の「軍事板 自治・削除議論」で
板違いでは無いと結論が出ました。
削除議論板内「軍事板 自治・削除議論」
http://qb5.2ch.net/test/read.cgi/sakud/1032455452/ 創作板の方が良いと言う意見も前スレではありましたが、「軍事のストーリー」であるから
こそ軍事板で立てるのが相応しいと考えた次第です。
軍事板の住民の皆様におかれましてはその所をよろしくお願いします。
そして職人様の投下をお待ちしています。
3 :
名無し三等兵:2006/10/04(水) 22:39:05 ID:???
ζ
,,.-‐''""""'''ー-.、
,ィ" \ やった波平が2ゲットじゃ!
/ `、 ボケどもが・・・わしの部屋に来なさい!!
,illlllllllllll i
r'-=ニ;'_ー-、___,,.ィ‐‐-,,_ _|
>>3いたずらばかりしおって!
| r,i ~`'ー-l;l : : : `l-r'"メ、
>>4本当にけしからん奴じゃ!
ヾ、 `ー‐'": i!_,l_ノ`
>>5お前も反省しなさい!
| ♂@ ,:(,..、 ;:|/
>>6今日という今日はかんべんな・ん!
1@ | ,,,..lllllll,/
>>7いい気になりおって!
/ `::;;. '"`ニ二ソ
>>8このままではろくな人間にならんぞ!
/7 ゙゙:`-、;:;:;;;:;:;:;;/
>>9バッカモーーーーン!
,,.ィ"`:、 "/;:`ー-:、.._
>>10さよう、母さんのいうとおりじゃ!
‐'":;:;:;:;:;:;:;:\ . : :;: . ;/;:;:;:;:;:;:;:;:;:~`'''ー--:、,,_
4 :
名無し三等兵:2006/10/04(水) 22:42:10 ID:v29CHy+x
中国が分裂したら、旧満州を舞台に石原莞爾のようなことがしたい。
5 :
名無し三等兵:2006/10/04(水) 23:29:15 ID:RslQ3j/D
6 :
名無し三等兵:2006/10/04(水) 23:51:32 ID:???
ソ連がアメリカにアラスカを売らずに冷戦になっていたらww3が起こっていたと思う
以上、長短編www
7 :
名無し三等兵:2006/10/05(木) 18:42:21 ID:???
エビチリ死ねよ
8 :
名無し三等兵:2006/10/05(木) 22:45:14 ID:???
>>7 シベリアで木でも数えてろ ここ荒らすよりやりがいがあるよ
9 :
名無し三等兵:2006/10/05(木) 23:18:05 ID:???
10 :
名無し三等兵:2006/10/06(金) 06:36:09 ID:???
エビチリ自演うざい
11 :
名無し三等兵:2006/10/06(金) 13:22:34 ID:???
>>9 勘違い無能で自演常習犯の屑である、エビチリこそ氏んでろ
12 :
名無し三等兵:2006/10/06(金) 16:49:01 ID:???
たかが数人から了承されたぐらいで板違いでないとは幼稚ですね>エビチリ
13 :
名無し三等兵:2006/10/06(金) 16:55:10 ID:???
>>12 お前こそ誰からも了承されないくせに
板違いと言い張るとは猿以下の知能ですか?
14 :
名無し三等兵:2006/10/06(金) 17:07:44 ID:???
エビチリ ◆NYKahXpmWk 氏ね
15 :
名無し三等兵:2006/10/06(金) 17:30:10 ID:???
エビチリは軍板のクズだな
16 :
名無し三等兵:2006/10/06(金) 18:51:03 ID:???
アゲ厨の自作自演もいい加減飽きた。
もっとマッタリできないものかね。
17 :
名無し三等兵:2006/10/06(金) 22:31:57 ID:???
つーか、誰もストーリーを投下しないね・・・。
18 :
エビチリ ◆NYKahXpmWk :2006/10/08(日) 16:40:17 ID:60e2MFSy
日本人たち1944 (13)
「皆は良くやってくれた」
桐井は戦闘団がソ連軍を撃退した事を聞くとこうしみじみと言った。
「向田、撤退の準備だ。我が戦闘団は第7装甲師団司令部と共に後退する」
桐井が命じると向田は承知した顔で了解した。
戦線が崩れている今、無闇にこの地を守るのは自滅を意味する。上級の司令部から命令が
無いのであれば尚更、意味が無い。
「結局は負けだな」
小野寺がぼやく。
戦闘団は撤退の準備を始めた。掘ったばかりの塹壕を出て装備を纏めて隊列を組む。
「でも、生き残れた。それで充分だ」
荒木が言った。それに小野寺は「それもそうだ」と答えた。
戦闘団はマイントイフェルの第7装甲師団司令部共に徒歩でファストフを脱出した。
その後、戦闘団はファストフ奪還に向かう第2SS装甲師団「ダス・ライヒ」と共に行動しする。
奮戦するもファストフ奪還はならず、ここで戦闘団は手痛い損害を被る。
その後、戦闘団は1944年1月にドイツ本土へ移動。そこで師団へと再編成された。
これが第40SS所属装甲擲弾兵師団「日本」の誕生となった。
桐井はSS少将に昇進して師団長に就任。向田はSS大佐に昇進したが、新たに編成中の
日本人SS隊員からなる第41SS所属擲弾兵師団「富士」の副官として異動した。代わりに
桐井の副官として沢城が来たのだった。
5月に再編成と訓練が終わった「日本」師団は当初はまた東部戦線に送られようしていたが
6月にノルマンディーに連合国軍が上陸するとフランスへと急行したのだった。
19 :
エビチリ ◆NYKahXpmWk :2006/10/08(日) 16:41:29 ID:60e2MFSy
日本人たち1944 (14)
毎読新聞の記者である尾上尚人はドーバー海峡にいた。
正確に言うなら、輸送船「高雄丸」の甲板にいるのだ。
「おっ、イギリスからの重爆編隊ですな」
尾上の隣にいる日本陸軍少尉の小林が空を見上げて言った。尾上も空を見上げると
雲霞の如くフランスへ向かう米軍のB17爆撃機に英軍のランカスターとハリファックス
爆撃機の編隊だ。しかもそれは1500機を越える編隊だ。
「凄い数だ」
尾上は初めて見る1000機単位の編隊へカメラを向けて撮影した。
「アメリカもイギリスも思い切った事をするな」
撮り終えて尾上がそう言う。
「だが、あれでどれだけドイツ軍に打撃を与えられるやら」
小林は皮肉めいた言い方で言った。
「ですね。艦砲射撃と爆撃で海岸を吹き飛ばしてもドイツ軍は生き残っていた」
ノルマンディー上陸作戦では爆撃と艦砲での事前攻撃の後に上陸作戦が行われたが、
ヒトラーが「大西洋の壁」と自負した海岸線の陣地のドイツ軍は頑強に抵抗し、オマハ
・ビーチでは4000名の死傷者、ジュノー・ビーチでは上陸第1波が50%の損害を連合国
軍は被った。
「苦戦は必至ですか?」
尾上はそれと無く小林に聞いてみた。
「でしょう。彼らは強いですから」
小林は遠い目で言った。
「ですが、負けはしませんよ。我が師団も強いですからね」
小林は強い口調で尾上に言った。小林は日本陸軍第1師団に所属している。彼は尾上や
他の記者の担当者であった。
「話は聞いていますよ。第1師団は北アフリカで奮戦されたそうでね」
20 :
エビチリ ◆NYKahXpmWk :2006/10/08(日) 16:42:44 ID:60e2MFSy
日本人たち1944 (15)
第2次世界大戦が勃発すると日本は英国救援の為に1940年に参戦した。
最初は艦艇を送って船団護衛の一翼を担っていたが、北アフリカ戦線の窮状に英国が日本
へ陸軍兵力の投入を要請。
日本は台湾に駐屯する高雄の第1師団と台北の第5師団からなるアフリカ派遣軍を編成。
1941年8月にエジプトに到着したアフリカ派遣軍はクルセーダー作戦を皮切りにガザラ・
エル・アラメイン・チュニジアで戦った。
「そうです。我が師団はドイツ軍と戦い慣れております。ですから最後には必ず勝ちますよ」
その小林の言葉には師団への誇りを感じ取れた。
「大発が出発するぞ〜。手空きは見送れ〜」
「高雄丸」に乗っている船舶工兵の曹長が大声で伝える。「高雄丸」の側には幾つもの大発
と呼ばれる上陸用舟艇がいて兵を満載してある。これらの兵は「高雄丸」で運ばれた第1師団の
兵達だ。船舶工兵の曹長は彼らを見送るべく手空きの者に見送りをさせた。
「お〜い頑張れよ〜」
と船舶工兵の兵士や軍属として「高雄丸」に乗り込んでいる者も手を振って見送る。それに大発
に乗っている将兵も手を振り、敬礼で返す。尾上はそれをカメラで撮影する。
今、この様な場面は「高雄丸」だけでは無く、第1師団を輸送した他の輸送船でも行われていた
暖かな場面だが、尾上はシャッターを押す事に気が重くなる。
(果たして今写った将兵で生き残るのはどのくらいだろうか?)
レンズに映りフィルムに焼き付けられる笑顔の将兵。彼らはこれからノルマンディーの戦場へ向
かうのだ。
(だが、俺も生き残るかは分からんな)
尾上も第1師団で取材をする為にノルマンディーへこの後向かう。第1師団の将兵同様にこの先
の生死は分からない。
21 :
名無し三等兵:2006/10/08(日) 17:50:39 ID:???
エビチリ、板荒らしをやめなさい
22 :
名無し三等兵:2006/10/08(日) 17:57:55 ID:???
いい加減にしろアゲ厨
お前こそ軍板全体のゴミなんだよ
自治スレでも電波飛ばしまくりだしな
23 :
名無し三等兵:2006/10/08(日) 18:07:45 ID:???
黙れ病人が
また埋め潰してやるぞ
24 :
前スレ519:2006/10/08(日) 18:14:27 ID:???
こんばんわ〜。ちょっとばかり投下してみます。
25 :
前スレ519:2006/10/08(日) 18:16:23 ID:???
森の夜闇の中、数人の集団が型で息をしつつ、任務達成の喜びを味わっていた。
「ふう〜、全く。こんな奴相手に半分もやられるとは。」
集団の中でリーダーらしき男がそう言った。彼らの目の前には、敵が倒れていた。
敵は女性だった。
腹と胸を血で染めて、仰向けに倒れている女は、金髪の長髪に整った顔に形の良い体、浅黒い艶のある肌。
それよりも特徴があるのは、一際長い耳である。そう、この女はダークエルフの者である。
彼らは8人で、この女性を仕留めにかかった。
これまで何度も修羅場を潜り抜けた彼らにとっては、女1人ぐらいすぐに片付けられると思った。
しかし、このダークエルフはかなりの手練であり、死ぬまでに4人の仲間が命を落としてしまった。
「とりあえず、この手紙を抑えれば、俺達の勝ちだ。さて、戻るぞ。」
リーダーの男は、冷静な口調でそう部下に命じた。だが、内心では勝った気がしなかった。
1人のダークエルフの女と引き換えに、これまで、互いを知り尽くしていた仲間4人を一気に失ったのだ。
目的を果たした代償は、とてつもなく大きい。
「そろそろ、棟梁が追いつく頃だな。」
リーダーの男がそう言った時、目の前の細道から、何かが走ってきた。
「棟梁のおでましだ。」
仲間の1人が安心したような口調で言う。
「この文書を棟梁に渡して、シホールアンル軍に持っていけば、ゆっくりと休めるぜ。」
「その前に、奴らの死を弔うのが先だよ。」
それぞれが勝手に話し始めたとき、髭面の棟梁がリーダーの男の前で止まった。
「この馬鹿野郎共が!!」
いきなりの罵声に、誰もが仰天した。
「と、棟梁。どうしたんですか?」
「それを貸せ!!」
質問に答えずに、棟梁はリーダーが持っていた文書をひったくった。
彼は怒りの形相で文書に目を通したあと、視線を彼らに向き直した。
26 :
前スレ519:2006/10/08(日) 18:19:37 ID:???
「てめえら、まんまと囮に騙されやがって。」
「はあ?ちょ、ちょっと待ってください。俺達が仕留めた女は、ミスリルア公国でも
影の分野では数少ない大物ですよ。その文書は」
「正真正銘の本物。そう言いたいんだろう?」
棟梁は彼の言葉を遮った。
「確かに本物だ。正真正銘の王家の文書だ!囮用のな!!!」
瞬間、リーダーと、その仲間たちは顔からサッと血の気が引いた。
「本物はどれだか知っているか?知らないだろうな。俺だって知った時にはやられたと思ったものだよ。
まさか、鷹を使って運んでいくとはな。」
棟梁の顔には、失望の色が深く混じっていた。
棟梁の表情に、彼らは何かが崩れ去る音が聞こえたような気がした。
「そんな・・・・・・古い手に・・・・・・」
「今頃、ミスリアルのエルフ共が書いた本当の文書は、バゼット半島から大きく離れている頃だな。
お前達、この失敗の代償は高いぞ。軍の奴らはおかんむりだ。」
棟梁は忌々しそうな表情でそう言った後、唾を地面に吐いた。
1942年 10月21日 午前7時 バルランド王国クアレリス
泊地内に太陽の陽光がうっすらと差し掛かかる。
それを待っていたかのように、喨々たるラッパの音色がクアレリスの土地に響き渡る。
アメリカ合衆国海軍の将兵なら誰もが知っている、錨を上げての音色が、泊地内の艨艟達を呼び起こした。
「いい朝だな、ブローニング。」
第16任務部隊司令官である、ウイリアム・ハルゼー中将は、いかつい顔に笑みを浮かべながら、右隣のブローニング大佐に語りかけた。
「その通りですな。気象班の予想では、今日は一日中晴れの予定です。」
「そいつはいい。決戦の前の出港にはピッタリだ。」
彼は微笑みながらそう言った。オレンジ色の陽光は、薄暗かったクアレリスの港を徐々に明るくしていく。
それと共に、黒い影しか見えなかった僚艦が、鮮明な姿を現し始めた。
「ハンマン、出港します!」
27 :
前スレ519:2006/10/08(日) 18:22:47 ID:???
見張りが僚艦の出港を告げてくる。
「フレッチャー、グリーブス、出港します。続いてアトランタも出港を開始しました。」
第16任務部隊護衛艦艇群は、港の出口より近いほうから出港しつつある。
「第17任務部隊も出港を開始しました。」
第16任務部隊より少し離れたとこで停泊していた、第17任務部隊も出港を開始している。
機動部隊の護衛艦艇が次々と出港していく中、ついに第16任務部隊旗艦である空母エンタープライズにも、出港の出番が迫ってきた。
「前進微速。」
「前進微速、アイアイサー」
艦長の号令が航海科、機関科に伝わり、兵員達がせわしなく働く。
エンタープライズの艦体は、ゆっくりと動き始めた。
「今日はヨークタウン3姉妹の総出撃だな。」
ハルゼーはブローニングに話しかけた。
「そうですなあ。ヨークタウンとビッグE、それにホーネットが顔を揃わせての出撃は、今日が初めてですな。」
「あいにく、一番姉貴であるヨークタウンは、TF17でレンジャーと一緒だが、確かに珍しいな。
参謀長、もしかしたらいい事が起きるかも知れんぞ。」
「いい事ですか?」
「そうだよ。いい事さ。とは言っても、どんな事が起きるかはさっぱりせんがね。」
そう言って、彼は肩をすくめた。
エンタープライズや護衛艦艇が出港していく中、地元の漁船が出港していく米艦艇に向けて、激励の挨拶を送ってくれた。
機動部隊の各艦も、手空き乗員がこの漁船群に手を振ったり、汽笛をならして答えた。
午前8時20分、第1艦隊に所属している第16、第17任務部隊は、輪形陣を組んで一路北北東に向かった。
米機動部隊がこのように出港していくには理由があった。
それは1週間前の10月21日。バルランド王国の前線基地に、1羽の鷹が瀕死の状態で飛んできた。
鷹は前線基地に着地した後、息絶えた。
それを見た兵士が、鷹の死体を捨てようとしたが、鷹の足には一通の文書が、糸で巻きつけられていた。
それを兵士は部隊長に見せてみた。
28 :
名無し三等兵:2006/10/08(日) 18:25:59 ID:???
>>23 基地外が荒らしに来てるだけじゃん┐´ー`┌
何が荒らしはやめろだよ、自分の事は棚に上げて何様のつもり?
さっさとアクセス規制されればいいのに
29 :
前スレ519:2006/10/08(日) 18:27:13 ID:???
このバルランド軍の前線基地は、2ヶ月前に突然音信普通となった、ミスリアル公国に向かう筈であった
バルランド軍部隊が築いたものである。
本来ならば、ミスリアルに向かうまで敵はいないはずであった。
しかし、ミスリアル王国があるバゼット半島まで、あと30キロに迫った時に、突然シホールアンル帝国軍
の防衛線に突き当たったのである。
2日間ほど、バルランドとシホールアンル側は戦ったが、双方は膠着状態に陥ってしまった。
バルランド側が進軍しようとすれば、シホールアンル側はそれを阻もうと全力で叩きに来る。
しかし、バルランドが元の線に戻れば、シホールアンルは全く手を出さないのである。
何かがおかしい・・・・・
バルランド王国がそう思い始めたとき、前線基地から驚愕すべき報告が入った。
なんと、バルランドの前進を阻むシホールアンル軍は、実はミスリアルを侵略中の軍であり、
2ヶ月前からバゼット半島でミスリアル公国と戦っていると言う。
ミスリアル公国とは、バゼット半島に国を構えるエルフ人達の国であり、人口は800万。
国土のほとんどは森に覆われている。
この国の特徴と言えば、魔法関連の研究開発や応用技術が、シホールアンルやバルランドのそれを抜いている事である。
しかし、小国故に、ミスリアルはこの魔法技術を外には決して漏らさなかった。
ミスリアルはバルランドと同盟を結んでいるが、2ヶ月前に、ミスリアルは音信が途絶。
バルランドにいるミスリアル大使も、魔法通信が全く出来ない事に戸惑っていた。
何も分からぬまま、状況調査のためにバルランド側は軍を2個師団交えてミスリアルに派遣しようとした。
そして突然、いるはずのないシホールアンル軍と対峙したのである。
鷹が運んできた文書の内容は驚くべきものであった。
2ヶ月前、突然として魔法通信が出来なくなったミスリアルは、シホールアンル軍の100万の大軍に攻め立てられた。
音信の取れなくなった原因は、シホールアンルの妨害魔法によって引き起こされたものであった。
混乱を起こしたミスリアルだったが、軍はよく健闘し、シホールアンル側の侵攻スピードをなんとか遅らせた。
だが、徐々に半島側に追い詰められ、ついには大陸側の領地を占領されてしまった。
30 :
前スレ519:2006/10/08(日) 18:29:54 ID:???
現在は大陸と半島の境目にある山岳地帯で、敵の侵攻を食い止めているが、シホールアンル側は海側から、
艦隊と増援部隊をバゼット半島に向かわせているとの情報が入った。
ただでさえ、陸側のシホールアンル軍で精一杯なのに、さらに海側から攻め立てられれば、
ミスリアルは崩壊し、その魔法技術はシホールアンルに取り込まれてしまう。
ミスリアルは最後の賭けに打って出た。その賭けは見事に当たり、文書は同盟軍であるバルランドの元に辿り着いた。
5日前には、バルランド派遣軍司令官のブラッドレー中将も交えて、ミスリアル救援部隊派遣について協議が行われた。
シホールアンルのバゼット半島上陸まで時間が無いと確信したバルランド側は、アメリカ側にシホールアンル増援部隊の阻止を願い出た。
南太平洋部隊司令官のニミッツ大将は、本国の命令を元に、10月20日、第1艦隊の機動部隊である第16、第17任務部隊に出撃命令を命じた。
ミスリアル救援部隊と命名された第16、第17任務部隊は、21日早朝に、クアレリスを出港したのである。
第16任務部隊、第17任務部隊は、それぞれ正規空母2隻ずつを基幹に編成されている。
第16任務部隊は、正規空母エンタープライズ、ホーネットを主力に据えている。
これを守るのは、
戦艦ノースカロライナ、重巡洋艦ノーザンプトン、サンフランシスコ、
軽巡洋艦ブルックリン、アトランタ、ジュノー。
駆逐艦ハンマン、フレッチャー、グリーブス、シムス、ウォーデン、
モナガン、エールウィン、フェルプス、バルチ、コニンガム、ベンハム。
合計16隻が2空母を取り囲んで、敵の空襲から守る。
第17任務部隊は、正規空母ヨークタウン、レンジャーが主力である。
護衛艦艇は戦艦ワシントン、重巡洋艦アストリア、ヴィンセンス、
軽巡洋艦サヴァンナ、サンディエゴ、サンファン。
駆逐艦エレット、マウリー、ヒューズ、アンダーソン、ラッセル、
オバノン、モーリス、グウィン、ショー、ノア、ハル。
合計で17隻と、第16任務部隊と似たような陣容である。
31 :
前スレ519:2006/10/08(日) 18:33:12 ID:???
機動部隊の艦載機は、TF16のエンタープライズ、ホーネットがそれぞれF4F36機、SBD36機、TBF28機。
TF17のヨークタウンがTF16の2艦と同じ。レンジャーがF4F32機、SBD28機、TBF24機の計84機を積んでいる。
合計で384機の艦載機が、敵艦隊との決戦に用意されたのである。
この救援部隊指揮官に任命されたのは、第16任務部隊を率いるハルゼー中将である。
ちなみに、第17任務部隊はフレッチャー中将が率いている。
救援部隊は、24日にはバゼット半島近海に到達する予定である。
「ブローニング、敵は出してくると思うか?」
「出すでしょう。」
ブローニング大佐は躊躇わずに言い放った。
「敵も空母を持っていますからな。」
「剣と魔法だけの軍隊と思ったら、海軍は空母を持っているとはな。全く、驚かされるものだ。」
「敵空母航空隊の実力もなかなかです。6月の海戦で、サラトガが大破させられたのは痛かったですな。」
「他に駆逐艦マクドノーが沈められ、ポーターが中破している。あの時は、サラトガの艦載機がなんとか
敵空母を1隻撃沈させて、1隻大破させたから、バルランド軍の撤退作戦はうまくいったが、
サラトガが沈められていたら、もっと損害は大きかったな。」
ハルゼーはいささか、顔を険しくさせた。
アメリカ海軍は、この異世界に召喚されてから、幾度もシホールアンル帝国の海軍と戦火を交えている。
回数は6回。6回とも全て勝利を収めてはいるが、被害が無かったと言うわけではない。
シホールアンル海軍は、剣と盾主体の陸軍とは違い、内容はほぼ、近代軍に近いものであった。
海軍の艦艇は、駆逐艦、巡洋艦、戦艦としっかり区別されている。
動力は油ではなく、魔法石である。シホールアンルの艦艇は、いずれも煙突がなく、全体的にすっきりとした印象である。
傍目では、スッキリしている分、やや貧相に見えたが、その貧相に見えた艦艇は、米海軍相手にかなりの奮闘をしている。
これまでに、米側は巡洋艦3隻と駆逐艦7隻を失い、空母2隻と戦艦3隻が大破し、1隻は修理を受けて復帰したか、今だにドッグで治療中である。
特に、米側をあっと驚かせた海戦は、6月に起きたグラスフリーゲル島沖海戦である。
32 :
名無し三等兵:2006/10/08(日) 18:41:09 ID:???
33 :
前スレ519:2006/10/08(日) 18:42:24 ID:???
この日、米海軍は空母サラトガを中心に、巡洋艦3隻、駆逐艦12隻の艦隊で、バルランド側の撤退作戦を援護していた。
午後1時、索敵に出ていたSBDが信じられないものを発見した。
それは、空母と思わしき艦艇を2隻従えたシホールアンルの艦隊であった。
この時、サラトガの指揮を取っていたのは、怪我で入院中のニュートン少将に代わって指揮を取らされたスプルーアンス少将であった。
彼は敵側の艦隊が200マイルの距離にいる事を知らされると、サラトガの艦載機のほとんどを敵艦隊攻撃に向かわせた。
スプルーアンスはこの時、消息を絶ったSBDが送ってきた、2隻の空母らしきものというものが、空母ではないでおくれと祈った。
だが、祈りは裏切られ、米機動部隊の上空に80機のワイバーンが現れた。
艦隊に残留した20機のF4Fはよく健闘したが、数に押し切られてしまった。
結局、サラトガは飛行甲板に500ポンド相当の爆弾を4発に、左舷に反跳爆撃2発を受けて発着不能に陥った。
他に駆逐艦マクドノーが撃沈され、ポーターが中破されたが、この2艦は輪形陣の外輪部に位置していたため、
対空防御を崩すための格好の的となったのだ。
サラトガ被弾炎上の報告は、進撃中の攻撃隊にも知らされた。
この事で攻撃隊搭乗員の闘志は爆発したのか、20機の喪失を出しながらも、敵空母1隻に爆弾6発、魚雷4本を浴びせて撃沈し、
1隻に爆弾3発と魚雷1本を浴びせた。
空母2隻(シホールアンル側では竜母と呼ぶらしい)を撃沈破されたシホールアンル側は、どうした事かいきなり逃げ出し始めた。
サラトガ隊の奮戦で、撤退作戦を邪魔するものはいなくなり、バルランド軍4万の部隊は、全員が無事に本国に帰っていった。
スプルーアンスはこの功績をバルランド国王に称えられて、バルランド正騎士の称号を与えられた。
ちなみに、スプルーアンス本人は、最初は拒否したものの、今後の事や、問題を考えて、仕方なく授与される事にした。
34 :
名無し三等兵:2006/10/08(日) 18:43:17 ID:???
面白くないからやめろよな
35 :
名無し三等兵:2006/10/08(日) 18:45:18 ID:???
投下=荒らし
36 :
名無し三等兵:2006/10/08(日) 18:45:44 ID:???
前スレ519死ね
37 :
前スレ519:2006/10/08(日) 18:46:54 ID:???
後々調べたところ、シホールアンル側には実に7隻もの空母がおり、1隻には最低でも40〜60のワイバーンが積めると言われている。
艦自体の大きさも、最低で12000トン、最大では23000トン相当のものまでおり、速度も最低で26ノットは出せると言う。
この事に、米海軍は驚愕した。
竜母の存在は、バルランド側から聞かされていたものの、あるとしてもせいぜい普通の船を竜母に仕立て上げた、ワイバーンの少数搭載艦と思っていた。
ところがどっこい、本物は普通の空母と似たようなものであった。これでは驚くなと言うほうが無理である。
ワイバーンにも2種類あり、1つは空中戦闘が主体のワイバーンで、速度は490キロ出せ、動きはかなりすばしっこい。
総合性能ではF4Fが勝るものの、格闘戦ではこのワイバーンにバックと取られて、撃墜されるF4Fが続出している。
もう1つは攻撃型のワイバーンで、戦闘用ワイバーンよりも少し形が大きい。
500ポンド相当の爆弾を1発積むことができる。速度は400キロと、前者よりやや遅い。
アメリカ海軍は、前者をライダー、後者をキャスターというコードネームをつけた。
航続距離は、どちらも1400キロを超えると言われており、米海軍は新たに出てきたこの敵空母とワイバーンに警戒の色を強めている。
「1隻はこっちが減らしたから、残りはあと6隻となるか。これらが一斉に出張ってくると、かなり厄介になるぞ。」
「確かに厄介ですな。」
「せめてワスプかレキシントンあたりを連れて来たかったが、ニュートンも担当地域が大変だからな。
強引に言えば、ワスプあたりは貰えたかもしれんがね。」
ハルゼーは苦笑を浮かべる。
「まあ、そうでしょうなあ。しかし、陸戦兵器は中世をやや上回る程度なのに、海戦兵器では米海軍に劣るとはいえ、
WW1と同等の艦艇を作るとは、シホールアンルはかなりアンバランスですな。」
38 :
前スレ519:2006/10/08(日) 18:50:19 ID:???
「シホールアンルの戦術は、主に制海権と制空権を握ることにあるそうだ。自国の艦艇で制海権を握り、
上陸部隊を侵攻させた後でも、艦砲の届く限りは陸上軍を支援し続けているそうだ。敵が怯んでいる隙に
陸上軍はどんどん敵側を押していく。シホールアンルはその戦術で大陸の北半分を制圧している。
空母だって、奴らは7年前に原型を作って投入しているらしい。」
「使い方としては、シホールアンルはどうなんでしょうか?」
ハルゼーは首を捻った。
「分からんな。しかし、シホールアンルはこれまで、ワイバーンを陸上支援に使っていたようだから、
支援任務は十二分にこなせるだろう。海戦となると俺でも見当が付かん。6月の海戦から見ていると、
対艦攻撃はできるようだが、本格的な空母決戦はあまりやってないからな。俺達も含めてだがね。」
「つまり、現時点では当たってみなければ分からん、と言う事ですな?」
「そう言うことだ。」
ハルゼーは大きく頷いた。
「まっ、敵の空母に総力出撃されたら、かなり苦しいだろう。しかし、俺は絶対に負ける戦いはしないようにする。
俺の目標は、敵の空母を全て叩き沈める事だ。1隻残らずな。」
ハルゼーは笑いながらそう言う。だが、彼の双眸は笑っていない。むしろ熱く燃えていた。
「空母の使い方はどちらがうまいか。それを教えてやろうじゃないか。」
1942年10月22日 午後7時 バゼット半島西北沖
「後方の輸送船団は順調に航海している?」
艦橋に凛とした声が響く。
「輸送船団は順調に航海を続けています。今のところ、以上は報告されていません。」
その言葉に、彼女は満足そうに頷いた。
顔は端麗で、どことなく粗野な雰囲気も混じっている。髪はショートに纏められている。
39 :
前スレ519:2006/10/08(日) 18:52:35 ID:???
彼女こそ、この艦隊を取り仕切る、リリスティ・モルンクレル中将である。
第24竜母機動艦隊は、竜母を2隻ずつに分けて航行している。
竜母という艦は、いつみても不思議である。真っ平の甲板に右舷側中央に少し纏まった艦橋。他の艦種より舷側が高い。
ただそれだけである。甲板の下には、62騎のワイバーンが収納されており、戦闘時には魔動式エレベーターで
飛行甲板に上げられて上空に飛び上がる。
第24竜母機動艦隊の司令官はリリスティ・モルンクレル中将である。
中将という階級の割には、モルンクレルは31歳とかなり若い。普通なら、50代か40代でこのような階級につく。
しかし、30代ではいいとこ准将までしか上がれない。
しかし、彼女は特別であった。モルンクレル家は、シホールアンルでも名門中の名門の貴族で、代々軍人を輩出している。
シホールアンルの皇族とも親類関係にあり、回りからは羨望と嫉妬も混じった目で見られている。
彼女は2年前にこの艦隊に配属されたが、数々の勲功を挙げ続け、とんとん拍子に階級は上がって行き、ついには中将にまで上り詰めた。
また、彼女自身、部下の面倒見がとても良く、艦隊の将兵からは姉さんとよばれて親しまれている。
その姉さんの顔が、やや暗い。
「アメリカ海軍は、自分たちと似たような軍艦を派遣してきたとありますが。」
「空母と呼ばれている艦ね。1隻の飛行機搭載量が80〜100機なんでしょう?歴戦のヘルクレンス部隊が撃退されたのも無理は無いわ。」
ヘルクレンス部隊とは、サラトガが対決した空母部隊の事で、6月のあの日、ヘルクレンス部隊はバルランドの撤収戦、及び護衛のアメリカ艦隊を殲滅するために出撃した。
ヘルクレンス部隊は、45騎のワイバーンが搭載できる、ゲルアレ級竜母2隻を率いていた。
偵察役のワイバーンが、サラトガを発見した時、ヘルクレンス少将は敵の竜母が1隻しかいないことから、楽に勝てると思った。
なぜそう思ったかというと、ヘルクレンス少将は最大でも60の飛行機しか積んでいないと思っていたからだ。
それに対し、こちらは90騎。全力で行けば勝てると思い、ヘルクレンスは10騎のワイバーンを残して出撃した。
しかし、敵は強かった。初めて対戦した飛行機は思いのほか早く、バックについても急加速や、急降下で逃げられてしまう場面があった。
40 :
前スレ519:2006/10/08(日) 18:56:04 ID:???
それに、対空砲火も激烈で、特に連装式の高射砲をなんと、10門以上も積んだ中型艦には相当の被害を受けさせられた。
敵大型空母を大破させ、小型艦1隻を沈めたが、80騎中、37騎が敵機と、対空砲火で失われてしまった。
ヘルクレンス部隊は、70機の米艦載機に襲撃され、旗艦チョルモールが撃沈され、ゲルアレも大破、残余部隊と共にほうほうの体で逃げていったのである。
あの屈辱的な敗北から4ヶ月が経った。
「このクァーラルドとモルクドで124、第2群のイリヤレンズとギルガメルで112。計236騎か。」
「対して、敵側は360機。こうも差がありますと、かなり不安ですな。」
「戦いとは、数だけでは決まらないものよ。それに、艦隊のワイバーンは全て歴戦の勇ばかりよ。
戦力を1つにまとめて、相手に叩きつければ、かなりの戦果が期待できるわ。」
「アレらは?」
「アレは今回、機を見るまで攻撃に出さない。とりあえずは、あたしの手持ち4隻だけで敵を叩くわ。
こっちもかなりの被害を受けるでしょうけど、最悪でも相打ちに持っていけば、敵はバゼットのミスリアルに
支援ができなくなり、こっちは船団の護衛任務を果たして、増援軍を送れる。勝算はこちらにあるわ。」
彼女は自信満々に答えた。
「とりあえず、あの人の部隊は、戦闘開始後もしばらくは待たせておく事よ。焦って接触でもされようなら目も当てられないね。」
「分かりました。」
副官はそう言って頷いた。
「しかし、そうなると、後から文句を言われそうですね。」
モルンクレル中将はおどけたような表情になる。
「うわ、確かに言われるかも。とは言っても、文句を言えばただ聞き流すだけだから、別に怖くもなんとも無いわね。」
そう言うと、2人は声を上げて笑った。
10月24日 午前2時 第17任務部隊旗艦 空母ヨークタウン
出港から3日が経とうとしていた。
救援部隊は、24ノットのスピードで北上している。
艦隊の右舷側遠くには、バゼット半島がある。
41 :
前スレ519:2006/10/08(日) 18:57:19 ID:???
「あの遠くの向こうには、今もエルフ達が苦しい戦いをしている。」
第17任務部隊司令官である、フランク・フレッチャー中将はそう呟いた。
彼は飛行甲板に上がって、夜の海面を見ている。
ヨークタウンの左舷前方800メートルには戦艦ワシントンがおり、左舷側にはレンジャー、
右舷側には軽巡洋艦のサンディエゴが布陣している。
だが、各艦とも灯火管制で火を落としているため、傍目では暗くて見えない。
じっくり見ていくと、ようやく僚艦のシルエットが見えてくる。
後ろで何かの音が聞こえてきた。それは、人の足音である。何人かが固まって歩いているようだ。
その足音が近くまで来た時、フレッチャーは振り向いた。
「し、司令官!」
足音の主達は、フレッチャーの顔を見るなり、敬礼をしてきた。
「まあ、そう固くならんでもいい。休め」
フレッチャーは手を上下に振って、敬礼を止めさせた。
「どうしたんだね、こんな時間に。君達は眠っているはずだが。」
彼らはパイロットのようであった。4人いるが、皆が士官か、下士官の階級章を軍服につけている。
「君達は何処の部隊だね?」
「VF−5です。」
「VF−5・・・・となると、ワイルドキャットのパイロットだな?」
「そうであります。」
「ふむ。どうだ、緊張しとるか?」
「いえ・・・・・」
パイロット達は、全員が顔をうつむけて曖昧な答えを出そうとする。
「なあに、本当のことをいいたまえ。私も緊張して眠れんのだ。だからこうやって、甲板の縁で海を眺めているのさ。」
「司令官も緊張しているのですか?」
「もちろんだ。明日は敵の空母部隊と切り結ぶかも知れんのだ。誰だって緊張するよ。」
「そうですか。実は、自分達も頭が冴えて、なかなか寝付けなかったのです。」
「そうなのです。眠ろうとして、目は閉じるんですが、自然に頭に血が上ったようになって、いまいち・・・・」
42 :
前スレ519:2006/10/08(日) 19:00:02 ID:???
4人のパイロットは、それぞれが同じような事を言った。
「まあ、仕方が無いだろう。明日は派手に戦い合うからな。だが、君達は戦闘機乗りだ。
ワイルドキャットは自分の身もだが、味方の艦爆や艦功も守らなければならない。
今、眠れないから起きよう。それではいかん。君達は機動部隊の盾でもある。
その盾が、睡眠不足で疲れて敵に落とされました、ではいかんだろう?」
フレッチャーの言葉に、誰もが頷く。
「眠れないでは済まされない。こういう時は無理してでも眠るべきだ。それに、眠る時間を削ってでも、
自分の任務をこなしている者もいる。格納甲板の整備兵達がそうだ。彼らは君達に思う存分暴れてもらいたいがために、
寝る間も惜しんで機体を大事に整備している。眠らないでは、整備兵達に申し訳ないだろう?」
「分かりました。司令官のおっしゃる通りです。彼らの熱意に応える為にも、
自分達は万全の態勢で飛ばなければなりませんね。では、睡眠を続けてきます。」
4人は改めて、フレッチャーに敬礼をする。今度は彼も答礼して、寝室に戻るパイロット達を見送った。
「私が注意しようと思っていたのですが、司令官に仕事を取られましたな。」
フレッチャーは後ろ振り返った。
「サッチ中佐か。」
「司令官も緊張しておられるのですね?」
「緊張するなと言うのがどだい無理だよ。」
そう言って、彼は右舷側に視線を向ける。
「敵側も、今度は本気でこちらを潰しにかかるだろう。前衛部隊の潜水艦からは、今のところ報告は無いが、
敵さんは6隻全てを投入していると言っていい。」
「艦載機の総数では、ほぼ互角ですな。敵空母は40〜70未満しか積めませんから。」
サッチ中佐は言う。
「ドーントレスも、新鋭のアベンジャーも、敵のキャスターとは段違いに高性能の艦載機です。
本番が来れば、こっちに軍配が上がるでしょう。」
43 :
名無し三等兵:2006/10/08(日) 19:00:43 ID:???
>>32ハァ?ニートだろうがエリートだろうがこっちには関係ないんだよ。
お前が高学歴常識人と言い張っても、
埋め荒らしなんぞやっている様ではたかが知れてる。
今すぐ本物の常識人の方々に土下座して謝れ
むしろお前の素性なんて誰も聞いて無いし
寧ろ今までの馬鹿丸出しの行動から真性の馬鹿かと思ってたよごめんね
プギャーm9(^Д^)
44 :
前スレ519:2006/10/08(日) 19:03:05 ID:???
「私もそうなりたいと思っているのだがな。」
フレッチャーはため息をついた。
「しかし、現実には前回の空母戦闘で、こっち側も少なからぬ損害を負っている。今回は、
新鋭戦艦や、新鋭軽巡を回してくれたが、もし敵航空部隊が襲ってきたら、完全に食い止められるかどうか。」
「うーん・・・・・確かに難しいです。経験はこっちも積んでいますが、あちら側も経験を積んでいる。
いや、実戦経験ではあちらさんが上かもしれません。なにせ、自分達がこの異世界に引っ張り出される前も、
ずっと戦争をしていますからね。」
「そうだな。」
フレッチャー中将は深く頷いた。
「サッチ中佐、敵のワイバーンはどうだ?」
「ライダーの事ですな?なかなか手強いですなあ。特に、格闘戦に持ち込まれたら、ワイルドキャットでは危ないですね。」
サッチ中佐はやや表情を暗くする。
「6月の海戦で、自分はサラトガでF4Fを飛ばしていましたが、ライダーには2度ほど、後ろから光弾と炎を吹きかけられましたね。
特に火を吐かれた時はこれで終わりかと思いました。なんとかかわして、返り討ちにしましたが。」
「総合性能では、F4Fが勝っていると聞くが、やはりあのワイバーンは苦手か?」
「苦手です。ですが、自分は少し妙案を思いついたのですよ。」
「妙案?それはなんだね?」
サッチ少佐は、その妙案をフレッチャーに話した。
午前5時50分 バゼット半島南西220マイル沖
空母エンタープライズの飛行甲板から、SBDドーントレスが索敵に発艦していく。
飛行甲板には、発艦していったドーントレスの他に、2機のアベンジャーが発艦を待っている。
「おはよう。」
艦橋にハルゼー中将が現れた。艦橋職員は彼に敬礼し、彼はそれに答礼する。
「おはようございます、司令官。」
「おう。いい朝だな。」
45 :
前スレ519:2006/10/08(日) 19:05:47 ID:???
ハルゼーはそう言いながら、艦橋の外を見渡した。
洋上は、水平線の一角がオレンジ色に染まっており、もうすぐで夜が明ける事を知らせている。
上空はまばらに雲があるだけで、天気は快晴に近かった。
「索敵隊は発艦を開始したようだな。」
ハルゼーの問いに、エンタープライズ艦長のアルベルト・マッカン大佐は頷いた。
「本艦からは、ドーントレス2機とアベンジャー3機が索敵に向かう予定です。」
「艦隊全体からは、20機の偵察機を出しています。偵察線は、西北から東北方面をカバーするように敷いております。
各機とも、320マイルまで進出する予定です。
20分後には、第2段索敵隊16機も発艦予定です。」
「よろしい。」
ハルゼーは大きく頷いた。
機動部隊は、午前2時30分から艦隊針路を東北方面に変針させて、バゼット半島に近づいているであろう、敵の空母部隊と、
輸送船団を捕まえようとしている。
もし、輸送船団と空母部隊を別々に発見した場合は、まずは空母を狙えと司令部からは命令されている。
しかし、輸送船団が、バゼット半島より100マイル以内にいる場合は、その輸送船団を優先に全力で叩けと言われていた。
艦隊の将兵は、5時には少々早い総員起床で起こされ、10分には朝食を取った。
5時30分には朝食を終え、全員が戦闘配置についた。
一方で、第24竜母機動艦隊も、遅ればせながら6時には、ワイバーンを索敵に出して、米機動部隊の捜索にあたっていた。
戦機は、徐々に熟しつつあった。
午前7時30分 バゼット半島北北東270マイル沖
空母ホーネットから発艦した索敵4番機は、発艦してから既に1時間40分飛行している。
時速は180マイル(288キロ)であり、行程の7割を消化している。
「何も見えないな。」
ドーントレスを操縦する、ベイリー・チャールストン少尉は、張りの無い口調で言った。
「トレーズ!そっちからは何も見えんか!?」
「いえ、敵らしい影は見てません!」
後部座席のトレーズ2等兵曹が言い返した。
エンジンと、風の吹き込む音でよく聞こえないから、自然に怒鳴りあう形になっている。
46 :
前スレ519:2006/10/08(日) 19:08:39 ID:???
「敵さんはどこにいるのかね。」
「シホールアンル野朗も、敵に後ろを向けるほど馬鹿じゃないはずなんですが、ていうか、バゼット半島付近にはいないんじゃないですか?」
「真北あたりがなんか臭そうだよな。」
彼はそう言った。パイロット連中の間では、シホールアンルの機動部隊は、こっちの空母を目の仇にしている。ワスプやサラトガを狙ったのも、
なるべくこっち側の空母を減らして有利になろうとしているからだ。だから、今度の海戦では真っ先に空母に殺到してくるだろう。
と噂している。
ワスプ襲撃事件は奇襲であり、敵が魔法使いを使って不意打ちを食らわせたから、パイロット連中は、シホールアンルを不意打ちが得意の腰抜け、
と言い合っていた。
しかし、敵が空母を持っている事や、6月の海戦でサラトガ等が大損害を負った事で、彼らはシホールアンルに対する評価をがらりと変えている。
今では、このライバルを討ち取ってやると息巻くパイロットが多く、ミスリアル遠征が決まった時は誰もが勇み上がったものである。
「北が確かに怪しいですが、北のエリアは確かエンタープライズが担当していましたね。」
「敵発見の手柄をエンプラの連中に取られるのは、ちょっと癪だね。」
「なあに、敵空母を攻撃する時に、ホーネット隊でエンプラの連中の分も沈めてしまえばいいんですよ。
そうすれば、やたらに先輩風を吹かさなくなりますよ。」
「ハハハ、ちげえねえ。」
チャールストン少尉は声を上げて笑った。
それから40分ほどが経ち、彼らのドーントレスは250マイル線に到達した。
「250マイル地点です。」
「反転まであと50マイルか。全く、偵察って言う任務は、俺らみたいに忍耐がある奴にはピッタリの任務だな。」
「忍耐があると言っても、最初はそうでもなかったんですけどね。まあ、場数をこなしたら慣れてしまいましたな。」
「人間って、自然に適応しちまうんだから、凄いよな。」
彼は苦笑しながらも、周りを見渡した。
(まっ、敵はいないだろうが、とりあえず確認はしておこうか。)
47 :
前スレ519:2006/10/08(日) 19:10:18 ID:???
最初は右側を見る。肉眼で30秒ほど凝視し、次いで双眼鏡を使う。
海だけで何も無し。
「まあ、お決まりのパターンだがね」
次に左側を見る。左は右よりも雲が多く、見えづらい。現在、高度は3000メートルである。
「少し見てから、高度を下げるか。」
そう呟きながら、肉眼で凝視する。
雲に覆われて、海の全体は見えないが、所々切れ間があり、そこを見る。
そして、双眼鏡で見る。
やっぱり何も無しか、と思った時、不意に何か黒いものが見えた。
「?」
双眼鏡から目を離し、首を捻った。
「雲の影かな?」
そう呟いてもう一度双眼鏡で除いて見る。さっき見えた黒いものは、雲に覆われて見えなかった。
「雲が多い。2000まで下げてもう一度見てみる。」
そう言って、チャールストン少尉は機首をやや下げ、高度を落としていく。
2000までに下がった後、いきなり、
「機長!9時の方向に何かがあります!!」
トレーズ2等兵曹の上ずった声が聞こえた。
(9時方向・・・・・さっき何か分からんものが、チラッて見えたところだ。)
48 :
前スレ519:2006/10/08(日) 19:10:58 ID:???
まさかと思いながら、彼は言われたとおり、9時方向に視線を移した。
水平線上に2つか3つの黒い影がある。双眼鏡で見てみたが、小さすぎて分からない。
だが、チャールストン少尉は、あそこに何かがあると確信した。
「あの黒い影がある方向に向かう!」
チャールストン少尉は機首をその方向に向けた。距離は目測で17か18マイルという所だ。
彼らのドーントレスは、その黒い影の方向に向かい、しばらくして、待望のものが、そこにはあった。
「いました!敵艦隊です!」
ドーントレスの右下方には、洋上を航行する輪形陣を組んだ艦群があった。
輪形陣の中央には、これまでに見慣れた母艦と、似たようなものがどっしりと腰を据えている。
姿形からして、紛れも無く空母であった。
「敵機動部隊です!」
「こいつはとんでもねえな。まさか、こんな所に居やがったとは。よし、トレーズ、艦隊に連絡だ!」
チャールストン少尉は心臓が張り裂けんばかりに興奮していた。
無理も無い、味方の戦局に左右するような手柄を立てたのだ。
眼下に、小さい姿のドーントレスが飛行している。
先ほどからずっと真上についているのだが、こちらに気付いた様子は無い。
騎手は、ニヤリと笑みを浮かべると、相棒をドーントレスに向けて突っ込ませた。
49 :
前スレ519:2006/10/08(日) 19:11:29 ID:???
投下終了です。
50 :
名無し三等兵:2006/10/08(日) 19:14:09 ID:???
>>49 文体、作品の厚みともに低レベルで面白くありませんでした。
もうこなくていいです
51 :
名無し三等兵:2006/10/08(日) 19:20:34 ID:???
>>50お前は2ちゃん全体に来なくていいよ
>>49スマンが正直つまらん
普通の仮想戦記が好きだから作風が合わんのかもしれんが
52 :
エビチリ ◆NYKahXpmWk :2006/10/08(日) 20:56:46 ID:gtgSei9A
前スレ519さん
米海軍とファンタジー世界の海軍による
空母同士の海戦とは珍しい展開ですね。
続きを期待してます。
53 :
名無し三等兵:2006/10/08(日) 20:58:00 ID:???
54 :
名無し三等兵:2006/10/08(日) 21:09:29 ID:???
55 :
名無し三等兵:2006/10/09(月) 09:40:06 ID:???
>>49 いまさらですけど乙です。
またよろしくお願いします。
56 :
名無し三等兵:2006/10/09(月) 11:45:39 ID:???
エビチリがいくら吠えようと創作系スレは板違いだろ
57 :
名無し三等兵:2006/10/09(月) 11:49:29 ID:???
海の人から認証もらって板違いじゃないとかアホかよw
エビチリさん、前スレ519様、おまたせ。
先を越されて、少し嬉しかったりです☆(^^
昭和18年・某所
「 高天原は、なぜ汝をつかわしたのか 」
「 使者にも、計りかねます 」
「 おそらく、あのままでは日の本が焼け野原になりますゆえ、かと 」
「 汝の指示に従えば、それは避けられることなのであるのか? 」
「 使者にも、計りかねます 」
「 ですが、南方で無為に死ぬはずだった者達が、その真の力を発揮します 」
「 東条らは無事であるか 」
「 万事、手抜かりはありませぬ 」
同年・某所
「 お上は・・ 」
「 ・・得心の御様子です 」
「 民の暮らし振りは・・ 」「 ・・御安心を。・・閣下の在職中のままに 」
「 そうか・・ 」
「 板垣や武藤らは? 」
「 御心配無きよう・・閣下の御暮し向き同様、何の御心配もありませぬ 」
同年・政府中枢
昭和18年末の非公式の連絡会議で今井は、
「 昭和17年度艦船建造補充航空兵力増勢計画第1期 」の、
約62億円を計上した空母18隻等建造の路線の中止ないし縮小を提案。
航空主兵派が主要地位についた新海軍は、
空母建造に未練を残したもの、艦艇建造費を前々回計画並の16億円まで縮小し、
余力総てを航空兵力と護衛戦力と潜水艦の充実に充てる方向へと向かった。
そして全国で燃え上がった前政権追討の「 昭和18年事件 」は、
治安部隊に化けた今井指揮下の戦国大隊や、アッツ他からの期間組が出動し、2週間以内で鎮圧を遂げた。
その結果、今井の暗躍による(1)戦争終結へ向けての不満の捌け口開放、と、
(2)市民動乱の際に出現するアジテーターら生粋の反政府暴動者の一斉検挙、と、そして
(3)動乱の際にも人としての理性を保つ稀有の人材の根こそぎ登用などなどは、
大成功のうちに幕を閉じた。
同年・東京某所
「 そもそも 」
流浪の平成人は、この国の現状を以下の様に切って捨てた。
「 兵達の腹をすかさせたまま、代えの服も無しに、戦場の泥濘に叩き込んで平然としている 」
「 そんな国が勝ち、繁栄する訳が無い 」
彼の台詞を聞いているのは、平成自衛隊のヘリによって救出されたアッツ守備隊、
そしてその潜水艦隊によって救出された細かな島嶼の各守備隊、
「 この世界の時間軸を遡ってきた 」戦艦大和以下に救出されたタワラほかの守備隊、
「 この時間軸の 」同じ友軍によって回収されたニューギニアほかの守備隊。
その幹部達であった。
そして「 昭和18年事件 」鎮圧の際に、牢獄から登用されてきた稀有の人材達。
「 我が国は滅びるのですか? 」「 あのままなら 」
「 今井殿の、策に乗れば? 」「 わかりません 」
静かな空間の中、今井の声だけが響いている。
その今井の「 わかりません 」という言葉があっても、反意の声が1つも無いのは、
誰よりも彼らこそが「 米 国 の 」強さを思い知っていたから。
そして、各地で空しく死ぬしかなかった彼らが、
なぜ愛する祖国に生きて帰り、立っていられるのかを知っていたから。
「 しかし 」
死ぬしかなかった彼らを、生きて本土へと帰還せしめた者が、再び口を開く。
「 千倍万倍の敵を受けて全滅する筈であった貴方たちは、生きて今、ここに 」
そのはるか東方で「 もう1つのスプルアンス艦隊 」は、
米国からの非公式の補給を受けながら日本本土への牽制と、
南方諸島への攻撃と、訓練と、無人島での休暇に明け暮れていた。
だが今や殆どの者が、この戦争に反対であった。
この世界は、彼らの世界を数年遡った世界であった。
そんな世界で、なぜ彼らが危険に晒さなければならないのだろう?
彼らは知っている。この先のマリアナ戦で、比島戦で、硫黄島戦で、誰が死んだのかを。
そして今度カミカゼを食らって地獄を見るのは・・誰?
そこまでして彼らに得られるものとは、いったい、何?
「 今度、ミイラになったり、芋虫になったりするのは、誰でしょうな 」
アッツ島救出作戦の時、スプルアンスの後ろで洩らていた今井の独り言。
・・戦争を止めなければ。
死んで(?)自由の立場になってこそ、思い至る。
この頃のスプルアンスは、ハッキリと、日米戦継続阻止の念に固まっていた。
ほんの少しではあるが、未来の兵器も見てしまった。
― 垂直に空を飛ぶ未来のガン・シップ ―
それはジャングルや山岳の局地戦では恐るべき力を発揮するだろう。
現にソレは、闇と濃霧の中のアッツ島救出作戦で、
米軍の重囲の中で全滅寸前だった日本軍を救出して見せる離れ業を演じて見せた。
その驚くべき光景は当時催眠状態だった彼の脳裏にも、しっかりと刻み込まれている。
そして更に驚くべきは「 あの兵器も、彼ら自衛隊の力のほんの1部に過ぎません 」という今井の証言。
おそらくソレは事実なのだろう。
彼らとの科学力の差は明らかであった。
もし“ マリアナの七面鳥撃ち ”が生起すれば、その時、哀れな七面鳥役を演じるのは、、。
今井は「 未来の日本軍は参戦しません 」と明言していた。
おそらく、嘘ではないだろう。
誰が他人のために、誰が異界の誰かの家族のために、
その命を危険に晒すと言うのだろう?
だが、今井が未来の日本軍に働きかけなくても、
彼らは異世界の事とはいえ同朋の危機を見過ごす事が出来るだろうか?
現に我々は米国側に立って戦っている。
たとえソレが伊藤整一の艦隊と八百長戦を演じるだけの役目だとしても。
スプルアンスは、
この年までの生涯を、海軍に捧げた人であった。
それゆえに自分の分身である海軍が痛めつけられる姿は見たくなかった。
そんなスプルアンスの視界の中で、今日も上陸作戦に備えた艦砲射撃が始まっている。
スプルアンス自慢の艦艇とスタッフ達。
その、今井も心から賞賛した優美な戦艦群が、自ら発する巨大な衝撃に奮えながら、
自分らが生まれてきた本懐を果たすべく日本軍の守備隊が篭る陣地へと、砲撃の雨を降らしている。
伊藤整一との八百長戦のため、しばらくはこの光景が続くだろう。
だからといって油断は出来ない。
しかし、これから先は否応無しの実戦が再開されるかもしれない。
スプルアンスの脳裏に、長男エドワードや、祖母アニ―らの顔がよぎった。
お昼の投下終了。
いやあそれにしても、難しくて放棄していたドイツ系SSをエビチリさんが、
同じく難しくて放棄していた実際の艦隊戦は 前スレ519 様が落としてくれて、
翡翠は嬉しい限りです。
老舗では統一世界設定による連環作品が投下されそうな流れですが、
ここでは種種雑多な短編が読めるようになるといいな、と思っています。
それではでは☆・∀・
65 :
前スレ519:2006/10/09(月) 22:36:49 ID:???
>>50氏
も、申し訳ありませんorz
なんとか試行錯誤を繰り返しながら、書いてはいるのですが・・・・・・
やっぱり難しい。もっと勉強せねば。
エビチリ氏 ありがとうございます。とりあえず、今日も続編を投下します。
翡翠氏 どうもであります。今回の投下分は、米軍がちょっと苦戦する話
なので、少しばかりイライラされるかもしれませんが、そこはご勘弁下さいm( __ __ )m
それでは投下いたします。
66 :
前スレ519:2006/10/09(月) 22:39:08 ID:???
午前7時50分 バゼット半島西方200マイル沖
「・・・・・索敵隊からの報告はまだかな。」
第16任務部隊の旗艦である、空母エンタープライズの艦橋上で、ハルゼー中将はイライラしながら報告を待っていた。
「発艦してから2時間以上経っている。もうそろそろ、敵発見の報告が届いてもいい頃なんだが。」
「司令官、まだ第2段索敵隊が200マイル線に到達したばかりです。300マイル線に到達した第1段索敵隊は、
どうやら敵との蝕接に失敗したようですな。ですが、まだ第2段索敵隊が偵察中なので、もうしばらく時間がかかるでしょう。」
「分かっているさ。」
ハルゼーはぶっきらぼうに呟く。
「ただ、敵も空母を持っている。当然、あのドラゴン共にこっちを探らせているはずだ。空母戦闘では、先に相手を見つけたほうが有利になるんだ。
それを、敵にやられたくはない。」
彼は早口でそうまくしたてた。どうやら、少々焦りも混じっているようだ。
こんな時に、下手な事でも口走ったら、ハルゼーの雷が落ちかねない。
長年、ハルゼーの参謀長を務めている彼としては、必要な時以外は喋らないようにしている。
その時、艦橋に取り付けられている受信機から、声が聞こえてきた。
「こちらホーネット5号機、敵艦隊を発見。艦隊の規模は空母2、戦艦1、巡洋艦3、駆逐艦7隻。
その艦隊の後方に、もう一群の機動部隊を伴う。」
ハルゼーとブローニングは顔を見合わせた。
「司令官!」
「ああ、敵を見つけたな。」
さらに、報告は続けられる。
「位置は艦隊より北北東292マイル地点にあり、時速24ノットで南進中。甲板上に発艦準備中の敵ワイバーン、うわっ、敵だ!!」
機械的な口調に、突然動揺の色が見えた。
その瞬間、受信機の向こう側で悲鳴が聞こえた。
「くそ、右主翼が無くなった!墜落する!メイデイ!メイデイ!」
それっきり、ホーネット5号機からは、連絡は途絶えた。
67 :
前スレ519:2006/10/09(月) 22:41:35 ID:???
「ホーネット5号機、通信途絶。」
CICから、オペレーターの声が聞こえてきた。
突然の味方機の散華に、艦橋に重苦しい雰囲気が漂い始める。
「諸君、ホーネット5号機は、不運な事に撃墜されてしまった。だが、彼らは敵艦隊の位置を知らせてくれた。
ホーネット5号機のためにも、恥じらいの無い戦いをやろうではないか。」
ハルゼーは、そんな雰囲気を吹き飛ばすかのように、命令を発した。
「攻撃隊を発進させろ。」
エンタープライズの飛行甲板に、翼を折り畳まれたワイルドキャットがあげられ、発艦位置まで、甲板要員に押されていく。
飛行甲板の中央部から後部まで、攻撃隊の艦載機で埋まっていた。
「第1次攻撃隊は、エンタープライズからF4F24機、SBD24機、TBF18機が出ます。
ヨークタウンとホーネットも同様です。レンジャーはF4F12機にSBD20機、TBF18機を発艦させる予定です。」
航空参謀のライカー中佐が、ハルゼーに説明する。そのハルゼーは艦橋から飛行甲板を眺めている。
「合計で、248機か。これなら、敵空母4隻を充分に叩けるな。」
飛行甲板に並べられた艦載機が暖機運転を開始した。整備兵が出撃前のチェックを行う。
一方で、艦内のブリーフィングルームでは、攻撃隊の搭乗員が攻撃目標の確認や時計の針を合わせたりして、来るべき決戦に備えていた。
機銃座には、機銃員や給弾員が待機して、敵の襲撃に備えている。
その時、
「レーダーに反応!北北東より未確認飛行物体接近!」
CICのレーダー員が、突然報告してきた。
「もしかすると、敵のワイバーンかもしれないぞ。」
ハルゼーはそう言ったが、彼の読みは当たっていた。
この時、第24竜母機動艦隊から発艦した、偵察用ワイバーンは、洋上を航行する第16任務部隊をハッキリ視認していた。
それから10分後、
「直衛機が敵ワイバーンを撃墜せり。」
と、レーダー員が報告してきたが、ハルゼーは首を横に振った。
「襲い!直衛のF4Fは何をやっていた。敵ワイバーンと鬼ごっこでもしていたのか!」
68 :
前スレ519:2006/10/09(月) 22:45:00 ID:???
彼は苛立ちまぎれにそう吐き捨てた。敵の偵察機は、なるべく早く落とさなければならない。
そうしなければ、位置を敵の機動部隊に知らされるからである。
偵察ワイバーンの撃墜は、3機のF4Fが行ったものであったが、ワイバーンは得意の機動で次々とF4Fを翻弄し、
その間に位置を本隊に報告していたのである。
魔法通信が送信し終えた後に、このワイバーンは竜騎士もろとも、12.7ミリに蜂の巣にされたが、
ホーネット5号機と同様に、立派に仕事をやってのけたのだ。
「敵に見つかったと考えていいな。」
「となると、敵空母も今頃は、ワイバーンを発艦させているでしょう。」
ハルゼーは頷く。
「それはともかく、こちらも発艦を急がせるんだ。さっさとせんと、敵がこっちに食らい付いて来るぞ。」
2分後に、攻撃隊のパイロット達が飛行甲板に飛び出してきた。各員がそれぞれ愛機に乗り込み、エンジンを始動する。
暖機運転で温まったエンジンは1発でかかり、再び飛行甲板上に、艦載機のエンジン音が木霊した。
艦長の指示のもと、エンタープライズの艦首が風上に向けられる。
24ノットから、28ノットのスピードに上がったエンタープライズは、風上に艦首を向けると、ついに命令を発した。
「発艦はじめぇ!」
その号令が甲板要員に伝わり、艦の揺れ具合を見た後、甲板要員は旗を振った。
F4Fが、グオオオー!と、力強くエンジンを唸らせ、飛行甲板をするすると滑っていく。
飛行甲板の先端を越えると、F4Fの機体は緩やかに、大空に舞い上がっていった。
「がんばれよー!」
「敵空母を残らず叩き沈めて来い!」
「帰ったらパーティーだ!必ず生き延びろよー!」
乗員が勝手な事を言い放ちながらも、次々と発艦していく艦載機を声援を送り、見送っていく。
艦載機のパイロットの中には、それらの応援に答えるかのように、拳を振り上げたり、親指を上げて帰還を約束する者も少なからずいる。
F4F,SBD,TBFの順に、艦載機は順序良く、そして確実に飛行甲板から発進し、上空に舞い上がる。
艦橋の張り出し通路で、発艦を見送るハルゼーら、第16任務部隊の幕僚も、出撃していく艦載機を見送り、攻撃成功を祈った。
69 :
前スレ519:2006/10/09(月) 22:47:04 ID:???
空母を発艦していった攻撃機は、母艦ごとに編隊を作ると、艦隊上空をフライパスして敵艦隊に向かっていった。
午前9時40分 バゼット半島北西、230マイル沖
第16任務部隊は、第17任務部隊と共に、北に針路を転じた。
艦載機を発艦させて1時間半が経った午前9時40分、エンタープライズのCMAXレーダーに、
夥しい数の機影が映った。
「レーダーに反応、北方80マイルより敵らしき編隊接近中!数は100機以上、大編隊です!」
「直衛戦闘機隊を向かわせろ。F4Fでなるべく数を減らさせろ!」
CICの中は、報告と、幾つもの命令が重なって、ほぼ全員が多忙を極めていた。
現在、艦隊上空で上がっている上空警戒機は、ヨークタウンとレンジャーのF4Fで、12機が艦隊上空で旋回している。
ホーネットとエンタープライズの艦上では、それぞれ4機のF4Fが補給のために降りている。
これに加えて、待機組のF4Fは50機。
合計で70機のF4Fが迎撃に投入できる。
第16、17任務部隊は、すぐさま補給中、待機組のF4Fを空に上げて、進撃してくる敵ワイバーン部隊にぶつけた。
30分後、70機のF4Fは、敵の護衛のワイバーンや、攻撃型ワイバーンに襲い掛かって、敵機の数を減らした。
しかし、護衛役のライダーは60機近くおり、攻撃型ワイバーンは80機中、19機しか落とせなかった。
ライダーは、F4Fが突破しようとすると、体当たりも辞さない捨て身の攻撃で攻撃ワイバーンを庇った。
思うように攻撃機に辿り着けないワイルドキャットは、気がつく頃にはほぼ全機が、ライダーとの戦闘に引きずりこまれていった。
「敵編隊、直衛隊の迎撃を突破。60機以上が機動部隊に向かう。」
直衛隊指揮官機からは、悔しげな口調でエンタープライズにそう報告されている。
午前10時10分、第16任務部隊の輪形陣に敵ワイバーン部隊が姿を現した。
「いよいよだぞ。」
エンタープライズの艦橋から、輪形陣右側に迫りつつある敵ワイバーン部隊の姿が認められる。
70 :
前スレ519:2006/10/09(月) 22:49:24 ID:???
艦橋の前部に取り付けられている28ミリ4連装機銃が、右舷側に向けられる。
ハルゼーは、次第に緊張の色が濃くなっていくのを感じた。
(ついに来やがったか。対空砲火でどれだけ減らせるかな)
内心でそう呟いた。今回、TF16、17には新鋭対空軽巡であるアトランタ級が、各2隻ずつ配備されている。
TF16にはアトランタとジュノー、TF17にはサンディエゴとサンファンが配備されている。
輪形陣の右側には、重巡洋艦のサンフラシスコ、軽巡洋艦のブルッックリンとジュノーが、駆逐艦部隊と空母部隊の間に配備されている。
駆逐艦部隊と、巡洋艦部隊の奮戦で、TF16の空母群の運命は決まる。
ワイバーン部隊の先頭が、輪形陣外輪部付近に到達しつつあった。
その小さな粒は、羽根の両側をしきりに上下させている。ハルゼーには、それが不気味に見えた。
その時、外輪部の駆逐艦部隊が5インチ両用砲を撃ち始めた。
ワイバーンは、二手に分かれる事も無く、20機ずつの梯団に分かれて進軍しつつある。
その先頭梯団の周りで、高角砲弾が炸裂し始めた。
最初は7か8つの黒い、小さな煙が湧き上がった。
直後、サンフランシスコ、ブルックリン、ジュノーも両用砲をぶっ放した。
竜母クァーラルドから発進したワイバーンを率いる、グロウス・ポールン少佐は、突然起こった激しい対空砲火に肝を冷やした。
「た、隊長!」
部下の上ずった声が聞こえてくる。ワイバーン部隊の竜騎士は、全員が通信魔法を会得している。
そのため、普段の作戦時には、必ず魔法通信でお互いに話し合う。
「ひるむな!」
ポールン少佐は一喝するように叫んだ。
「狙うは空母のみだ!雑魚には構うなよ!」
ポールン隊20騎は、既に2500メートルと、100メートルの距離に分かれている。
米艦隊の対空砲火は、この2隊に振り向けられている。
周りで高角砲弾が炸裂し、破片が物凄い勢いで飛び散ってくる。
魔法障壁にあたって、破片は吹き飛ばされるが、障壁も長くは作用してくれない。
71 :
前スレ519:2006/10/09(月) 22:51:38 ID:???
それに、直撃を受ければ、魔法障壁も糞も無い。あっという間にあの世である。
「3番騎がやられました!」
部下の悲鳴が聞こえる。
この時、ポールン少佐の右斜め後ろを飛んでいた部下のワイバーンが、至近距離で高角砲弾の破片をモロに受けてしまった。
魔法障壁はすぐに限界に達し、破片によってワイバーンの右の翼に大穴が開いてしまい、竜騎士も破片を受けてしまった。
竜騎士、ワイバーン双方が戦闘不能となり、真っ逆さまに落下していく。
低高度を進撃する反跳爆撃チームも、同様に激しい対空砲火に見舞われている。
早く爆弾を落として、さっさと帰りたいと思うが、彼はそれを打ち消して、ひたすら前進を続ける。
ドン!ドン!と、砲弾が間断なく炸裂する。
右横の部下のワイバーンが、間近で起きた黒煙に隠れたかと思うと、黒煙が晴れた頃にはその姿は消えていた。
敵艦隊は、時速28ノットほどのスピードで驀進している。
ポールン少佐の部隊は、駆逐艦の防御ラインを突破したが、高空組が2騎、低空組が3騎叩き落されている。
巡洋艦の対空砲火は、駆逐艦部隊のより激烈であった。機銃弾も加わった対空砲火に、周りの仲間が次々と食われつつある。
魔法障壁は既に消え去り、ワイバーンの体には、高角砲弾の破片が突き刺さって、所々血が流れ出している。
「頑張れ、もうすぐだ!」
ポールン少佐は相棒を励ます。巡洋艦の機銃弾が、最後尾のワイバーンに命中する。
機銃弾に臓腑を滅茶苦茶にされたワイバーンが急に苦しみだし、飛行を維持できなくなってまっしぐらに落ちていく。
気がつく頃には、高空組でわずか6騎しかワイバーンがいなかった。
低空組はさらに悲惨であり、10騎中、既に6騎が撃ち落されてしまった。
だが、苦難の末に、高空組はようやく、敵空母の右舷側上空に到達した。
「ようし、突っ込むぞ!!」
相棒が待ってましたとばかりに唸り、体を翻して急降下に移る。ポールン少佐は知らなかったが、その空母はホーネットであった。
ホーネットから猛烈に対空砲火を打ち上げてくる。
高度が2000を切ると、機銃弾のシャワーが、ポールン少佐を出迎えた。
高度が下がっていくにつれて、体にかなりの負担がかかってくる。
何度か急降下爆撃は経験しているものの、慣れるという事は無い。苦しいのはいつも変わらない。
72 :
前スレ519:2006/10/09(月) 22:54:23 ID:???
機銃弾に体をもろに抉られたのだろう、相棒が悲鳴じみた咆哮をあげる。
「諦めるな!頑張れ!!」
痛みに体を揺らすワイバーンに、ポールン少佐は励ましの言葉を送る。
それに答えたのか、ワイバーンは不必要な運動をせずに、まっしぐらに敵空母へ向けて降下していく。
敵空母は、右舷側に回頭して、ワイバーンの攻撃をかわそうとしている。
「逃がさんぞ!必ず爆弾をぶち込んでやる!」
獰猛な笑みを浮かべた彼は、必死に逃げようとするホーネットを睨み付けた。
目測で、1000メートルを切った。
「投下だ!!」
彼の叫び声と共に、ワイバーンが抱えてきた125リンル(1リンル=2キログラム)爆弾を落とした。
その直後、ワイバーンの体を28ミリ弾が貫き、ポールン少佐の胴体を断ち切った。
激痛に顔を歪めたが、体が敵空母の甲板に向いた時、甲板の前部に閃光が走ったのをしっかり確認した。
ドゴオーン!という轟音が辺り響き渡りし、衝撃がホーネットの艦体をわななかせた。
「なんという事だ!」
ホーネット艦長であるマーク・ミッチャー大佐は、普段から皺だらけの顔に、苦渋の色を現した。
キャスターが放った爆弾は、ホーネットの前部飛行甲板に命中してしまった。
爆弾は飛行甲板を貫通して格納甲板で炸裂。爆発の瞬間、格納甲板に直径4メートルの穴が開いてしまった。
格納甲板では、整備済みのTBF2機が爆風によって破壊された。
さらに、3機のワイバーンが急降下爆撃を仕掛けてきた。
「舵戻せ!」
ミッチャー大佐はすかさず指示する。右舷側に振られていたホーネットの艦首が、再び左舷の方向に戻っていく。
「敵機爆弾投下!」
キャスターの2番機が、獣特有の叫びを発しながら、ホーネットの左舷側に抜けていく。
まだ急降下の態勢にある右舷側のキャスターに、右舷側の機銃がありったけの機銃弾を叩き込む。
艦首前方の28ミリ4連装機銃は、4本の銃身が交互にスライドを繰り返して、銃弾を間断なく送る。
73 :
前スレ519:2006/10/09(月) 22:56:38 ID:???
28ミリ弾の白いカートリッジを詰める給弾員や、機銃を操作する射手も必死の形相で作業にあたる。
爆弾は、ホーネットの右舷側前部付近の海面に着弾すると、60メートル以上も水柱を跳ね上げた。
3番機の爆弾が投下してきた。
急降下から、避退に移ろうとしたその下手人に高角砲弾が直撃し、無数の肉片となって砕け散ってしまった。
3番機の爆弾は、危うくホーネットの右舷側に命中しそうになった。ミッチャーは、艦橋めがけて落下してくる爆弾を見て、
(わしも、ここで死ぬのか)
と思った。彼は最後まで目を閉じなかった。爆弾は、幸いにも艦橋には命中しなかった。
次の瞬間、ドーン!という轟音と共に、ホーネットの右舷側に水柱が立ち上がった。
乗員の誰もが、その衝撃の強さに直撃弾を受けたと思ったほど、強い揺れがホーネットを揺さぶった。
至近弾となった3番機の爆弾は、右舷側艦底部に若干の浸水と、機銃員を3人海に引き込んだ以外は、大した損害は与えなかった。
最後のキャスターは、投弾する前に機銃弾に叩き落されてしまい、くるくると錐揉み状態で、右舷側の海面に落下する。
低空侵入してきた3機のキャスターは、いきなりブルックリンに標的を変えていた。
ブルックリンは慌てて回避して、なんとか爆弾を避けたが、生き残った1機のキャスターが炎を吐いて、機銃員を殺傷した。
その間にも、第2梯団が侵入してきた。今度は全機が高高度を飛んでいる。
「今度は少し厄介そうだな。」
ミッチャーは不安げな表情でそう呟いた。
第2梯団は、途中で6機を撃墜されたものの、残りは次々と駆逐艦、巡洋艦の防御ラインを突破し、ホーネットに向けて急降下に入った。
「奴ら、まずは手負いから片付けるつもりだな。」
翼を翻すワイバーンを見ながら、ミッチャーはそう呟いた。
この第2梯団の編隊長も実際そう考えていた。
ホーネットは前部甲板から黒煙を噴き出しており、遠目には深手を負ったように見えている。
その光景が、編隊長の大物食らいの欲を一層高めたのである。
敵編隊は、先の第1梯団と同じようにホーネットの右舷側上空から突っ込み始めた。
74 :
前スレ519:2006/10/09(月) 22:59:23 ID:???
28ミリ4連装機銃や20ミリ機銃が激しく火箭を飛ばす。
無数の曳光弾が、火のシャワーのごとく、ワイバーンの群れに注がれていった。
先頭の隊長機らしきワイバーンの前面で、高角砲弾が炸裂した。黒煙の向こう側で、何かの破片が四方八方に飛び散った。
血煙の混じった黒煙を後続のワイバーンが突っ切ってきた。
高度2500メートルから降下してきたワイバーン部隊は、みるみる内にホーネットに向けて近づいてくる。
ホーネットを援護するアトランタやブルックリン、サンフランシスコは、右舷側のありったけの対空火器で
“戦友”を助けようと奮戦する。
時限信管であるから、なかなか高角砲弾が目標を捉えられない。
しかし、それでも濃密な銃砲火の前に、ワイバーンが1機、また1機と、続々と、大げさに言えばばたばたと叩き落されている。
28ミリ機銃や20ミリ機銃の射手は、血走った目でキャスターに照準を合わせて、引き金を引き続ける。
弾が切れると、射手は給弾手を急き立てて、素早く弾薬を機銃に補給する。
「面舵一杯!」
ミッチャーは号令を発した。彼の額には、玉のような汗が滲み、それが頬を伝う。
操舵員が力一杯舵輪を振り回し、一秒でも早く曲がれと祈りを込める。
ホーネットの艦体がやや遅れて、右舷に回頭し始めた。僚艦の何隻かがホーネットの動きにあわせ、上空に火の傘をかぶせ続けた。
キャスターは7機が叩き落された。
だが、ホーネットや他の僚艦の奮戦もここまでであった。
隊長機を失いつつも、残り7機となったキャスターが、高度500辺りまで突っ込み、爆弾を投下してきた。
本物の竜の雄叫びが艦上に木霊し、キャスターの小さな影がホーネットの艦体を右から左にへと過ぎ去っていく。
1発目がホーネットの左舷後部より50メートルの位置に着弾し、高々と水柱を立ち上げた。
2発目の爆弾が左舷側の艦首付近の海面に突っ込み、至近弾となって大量の海水を跳ね上げる。
跳ね上げられた海水の衝撃をもろに受けた左舷側の第1機銃群では、2人の兵が海に投げ出され、
機銃2丁が銃身を捻じ曲げられ、6人が負傷してしまった。
「クソ!弾着が馬鹿に近いな!」
ミッチャーが腹立たしげにそう言った次の瞬間、ダーン!という轟音が強い衝撃と共にやってきた。
75 :
前スレ519:2006/10/09(月) 23:01:31 ID:???
この時、3発目の爆弾はホーネットの飛行甲板中央部に突き刺さった。
飛行甲板をぶち抜いた爆弾は、格納甲板の鋼板に叩きつけられた瞬間、弾頭の火薬を炸裂させた。
爆発エネルギーの過半は、開かれていた開放部から逃げていった。
しかし、飛行甲板に直径3メートルの穴を穿ってしまった。
格納甲板では新たな火災も生じ、別の消化班が急行して火を消そうとする。
その努力を嘲笑うかのように、再び前部で爆弾が命中し、新たな大穴を飛行甲板に開けてしまった。
この2弾の命中から立ち直る暇も無く、3発目が無慈悲にホーネットに叩きつけられた。
3発目は左舷側後部に命中、飛行甲板をぶち抜き、あろうことか、格納甲板までも叩き割って第2甲板に侵入、そこで炸裂した。
パイロット達の自室で炸裂した爆発のパワーは、何もかも全て吹き飛ばしてしまった。
大事にしていた家族の写真、暇つぶしに読んでいた雑誌や新聞、遊び道具、寝具。
それらがひとしなみに粉砕され、そうであった残骸に変換される。
爆風は左舷側後部の3区画を叩き壊し、格納甲板にも吹き込む。
そして、最後には飛行甲板の傷も押し広げた。
最後のワイバーンに至っては、投下直後も急降下を続け、距離100メートルで炎を吐いてきた。
炎はホーネットの煙突の右横部分に当たって、迷彩模様を真っ黒に焦がし、レーダー機器をも損傷させた。
そのワイバーンは避退しようとした直前に機銃弾によって竜騎士もろとも引き裂かれたが、投下した爆弾は後部のエレベーターに命中した。
爆発の影響で、飛行甲板は盛り上がり、エレベーターは、前端と後端が甲板からやや飛び出した状態で叩きおられてしまった。
その時間、わずか10分足らず。
だが、ミッチャーとしては何倍以上もの長さに感じられた。
我に返った時、彼の眼下には、キャスターの爆弾によって酷く傷ついた飛行甲板があった。
76 :
前スレ519:2006/10/09(月) 23:03:05 ID:???
「エンタープライズも被弾したようです!」
CIC要員の緊迫した口調がスピーカから流れてきた。
ヨークタウンの艦橋の長官席に腰を下ろしているフレッチャー少将は、TF16の様子がますます気になってきた。
12分前に、ホーネット被弾炎上の報告が入ってきて以来、フレッチャーはTF16の2空母に沈まないでくれと祈っていた。
攻撃はTF16に集中している。
TF16の複数の艦に、ワイバーンは攻撃を仕掛けているようだが、中でもホーネットの被害は特に酷いようだ。
ホーネットには5、もしくは6発の爆弾が叩きつけられ、大火災が発生して速力も低下しているという。
敵はホーネットに攻撃を集中し続けると思われていたが、確実に1隻に集中して撃沈するよりは、
目に見える全空母の飛行甲板を叩いて、敵飛行機の帰る場所を奪おうと考えたのだろう。
残った敵部隊はエンタープライズに目標に定めて、攻撃を行った。
その望みは、もう少しで叶えられるとこまで来ている。
その苦闘を続けるTF16は、TF17の右舷30マイル離れた洋上にいる。
アメリカ海軍は、空母を1、又は2隻ずつに分け、それを主力に艦隊を編成している。
本来であれば、1箇所に4〜5隻の空母を纏めれば手間が省けるように思える。
確かにそうだ。それに航空打撃能力も、1、2隻の時よりはずっと高くなる。
しかし、複数に空母を纏めても、敵に見つかって大編隊を送り込まれれば、一網打尽にさえてしまう危険が大きい。
それよりかは、1、又は2隻ずつに分けて、分散して行動したほうが、一方が攻撃を受けても、もう一方は攻撃を続行できるのである。
「今は、ハルゼー部隊が攻撃を受け、私の部隊は依然、全艦が健在・・・・・か。」
フレッチャーとしては、ハルゼー部隊の奮戦を祈るしかなかった。
しかし、戦場とは何が起こるかわからない。
それは、どんなに有利でも、どんなに有利な状況でも変わりは無い。
予期せぬ出来事は、TF17に突然牙をむき出しにしてきた。
「レ、レーダーに敵大編隊!」
77 :
前スレ519:2006/10/09(月) 23:05:19 ID:???
レーダーオペレーターの上ずった声音が艦内に響く。
バックマスター艦長が電話を取って、CICに問いかける。
「大編隊だと?敵の新手か?」
「新手です。しかし、」
電話の向こう側は、かなり唖然としているのか、しばらく応答がない。
「どうした!?」
「はっ、申し訳ありません!」
苛立ったバックスマスターの声に、オペレーターが謝り、報告を続けた。
その報告を聞いたバックマスターは、一瞬目の前が真っ白になった。
バックマスター大佐の表情を見たフレッチャーは、瞬間的に敵がこのTF17に迫っていると確信したが、
その敵がどこから向かってくるか予想する。
敵は予想した方角とは、全く違う方向から、TF17に近づきつつあった。
午前10時20分
空母レンジャーは、僚艦ヨークタウンの左舷2000メートルを航行している。
レンジャーの左舷には、戦艦のワシントンと重巡ヴィンセンス、軽巡のサヴァンナとサンファンが、
レンジャーの前、中、後方上空をカバーできるように、レンジャーから1200メートル、縦900メートル間隔で布陣している。
そして最初に迎え撃つ駆逐艦群はそれよりも右1200メートルに布陣し、5インチ両用砲に仰角を上げて敵を待ち構えている。
現在、艦隊は左に回頭している。これは、敵に対して、守り難いとされる後方からの侵入を防ぐためである。
そう、敵は南西からやってきたのだ。
「敵さんは伏兵を潜ませていたんだ。それも、俺達の背後を突くような場所に。」
レンジャーの艦橋前に設置されている28ミリ4連装機銃の射手である、ポール・ロビンソン兵曹長は部下の兵曹にそう言った。
「F4Fは南西からやってくるキャスターやライダーを相手取れますかね?」
「いや、TF16の前面にみんな持って行かれちまっているから、南西のキャスターやライダー共は、ほぼフリーハンドでこっちに来るだろう。」
敵もうまいも事をやるものだ、と彼は思った。
南西から向かって来る未知の編隊は70余り。
78 :
前スレ519:2006/10/09(月) 23:07:36 ID:???
5分前には、潜水艦のノーチラスが、艦隊の後方270マイル付近に敵機動部隊発見の報告を、TF17、16に伝えている。
しかし、その報告が届いた時には、敵編隊はTF17より20マイルの位置に迫っていた。
この70機余りの敵編隊は、当初TF16の方向に向かっていたが、TF17から南西30マイル地点で急遽TF17のほうに針路を変えてきた。
その時、TF17のほうでも、艦隊最後尾の駆逐艦ラッセルが敵編隊視認の報を、旗艦ヨークタウンに送っている。
その時に限って、雲はあまり無く、敵編隊は遠くからTF17を視認出来たのだ。
F4Fは12機がTF17上空に急行していると言われているが、今や敵との距離は目と鼻の先と言っていいほどまで迫っている。
F4Fが間に合わない事は、誰の目にも明らかであった。
「来るなら来いってんだ。この28ミリでズタズタにしてやる。」
兵曹はそう言って、弾を機銃に装填する。
「準備できましたぜ。」
ロビンソン兵曹長は無言で頷いた。その時、輪形陣外輪部の駆逐艦部隊が、両用砲弾を発射した。
艦隊の左舷側には、すでに何十と言うワイバーンが迫っており、その内の一隊が突入を開始したのだ。
高角砲弾の黒煙が次々と上空に沸き立つ中、敵部隊は高空と低空の二手に分かれて、輪形陣の中央に向かってきた。
1機のワイバーンは高角砲弾の直撃を受けて、無残に飛び散る。
低空側の1機が、背後から駆逐艦の機銃弾をぶち込まれてバランスを崩し、次の瞬間、海面に叩きつけられてしまった。
都合、3機が叩き落された。
今度は巡洋艦群の機銃弾が、この第1挺団を歓迎した。
レンジャーも、両用砲のみではなく、左舷側の対空機銃も応戦を開始した。
この時、第1梯団のワイバーン群は新たに1機が撃墜されたが、その直後、高空のワイバーンが急に急降下を開始した。
低空側のワイバーンも、いきなり向きを変えてレンジャーとは別の方向に指向している。
ワイバーン群が狙った相手・・・・・それはサンファンであった。
79 :
前スレ519:2006/10/09(月) 23:10:06 ID:???
ワイバーン群の編隊長は、輪形陣に侵入した後は、ひたすら中央に向かう予定であったが、
この激しい対空砲火では、投弾前に仲間はかなりやられてしまう。
それよりかは、空母の前に居座る大型艦の内、どれかを撃ち沈めねば。
そう思った編隊長は、一際激しい対空砲火を放っている、サンファンに目をつけた。
残存16機が、全てサンファンに指向した時、サンファンは僚艦を守る戦いから、自身を守る戦いに移行せざるを得なかった。
「おい!キャスター共がサンファンに向かってやがる!!」
ゴマ粒のようなワイバーンが、わらわらと、サンファンに群がりつつある。
高空から7機のワイバーンが急降下を始めた。そのワイバーン群の先頭に、ロビンソン兵曹長は28ミリ機銃を向ける。
引き金を引いた瞬間、28ミリ機銃の4本の銃身から弾丸が叩き出され、それが先頭機に殺到していく。
他の対空機銃の火箭も、その先頭機に向かって行く。
機銃弾を集中された先頭機は、瞬時に切り裂かれ、海面に向けて死のダイブに移る。
ロビンソン兵曹長は2機目に照準を変えて、機銃弾を撃った。
ガンガンガンガン!という、28ミリ機銃特有の銃声が鼓膜を容赦なく苛め抜く。
曳光弾が敵機に向けて注がれていくが、敵は落ちる様子が無い。
わずかに後ろに逸れているのだ。
「第2梯団、駆逐艦の防御ラインを突破!」
敵の別部隊が、新たに輪形陣内に侵入しつつあるが、その報告も、カッとなった頭にはなかなか入らない。
「キャスターの野郎、生意気な!落ちろ!」
命中しない事に、ロビンソン兵曹長は罵りながら機銃を撃ち続ける。1番と3番機銃が弾切れになった。
給弾員が空のカートリッジを取り出し、すぐに弾の入った白いカートリッジを入れる。
サンファン自身も必死に対空砲火を撃ち上げる。立て続けに2機のキャスターが撃墜されるが、喜びに浸る暇はない。
生き残りのキャスターが高度600に達した時、腹から爆弾を投下した。
左舷に急回頭したサンファンの右舷側に水柱が吹き上がる。さらに2本目の水柱が立ち上がって、サンファンの姿が見えなくなる。
「サンファンが危ない!」
80 :
前スレ519:2006/10/09(月) 23:14:18 ID:???
誰もがそう思った時、水柱の隙間から、サンファンから黒煙が吹き上がったように見えた。
水柱が崩れ落ちた時には、サンファンは前部と中央部から黒煙を吹き上げていた。
機関部には損傷が無いのだろう、相変わらず28ノットのスピードで海上を驀進している。
爆弾はサンファンの前部第2両用砲と、左舷側中央部に命中した。
この被弾で、第2両用砲は破壊され、左舷側中央部にあった28ミリ4連装機銃座が粉砕され、艦内の兵員室にも火災が発生した。
しかし、機関部は健在であり、全速発揮は可能である。
そのサンファンに、低空からやってきたキャスター5機が襲い掛かってきた。
両用砲の砲身が水平の角度に倒され、低空の敵機に向けられ、放たれる。
左舷側に向けられるだけの砲火で、このワイバーン群に応戦する。
僚艦の援護もあって、2機のキャスターに海水浴を強要させたが、残る3機が爆弾を叩きつけてきた。
高度200から放たれた3発の爆弾が、サンファンに向かって来る。
「取り舵一杯!急げ!」
サンファン艦長は、声を枯らして命令を発する。
だが、それもすぐに無に帰した。
3発の爆弾の内、1発はサンファンを飛び越えて、海面に突き刺さる。
2発が、後部側のほぼ同じ箇所に命中した。爆弾は1発目が後部側の」第5両用砲の左側の甲板に突き刺さって内部で爆発。
爆発の瞬間、両用砲の台座は破壊され、砲は使用不能に陥ってしまった。
そこに2発目が、1発目と1メートルしか離れていない所に命中してしまった。
2発目は、最上甲板を叩き割って両用砲弾庫に達した。
運の悪い事に、爆弾の炸裂は第5砲塔の両用砲弾庫にあった、残存の5インチ砲弾までも誘爆させてしまった。
ロビンソン兵曹長は、いきなりサンファンの後部甲板が吹っ飛ぶのを見て仰天してしまった。
サンファンは後部甲板から火柱を吹き上げた後、急に速度を低下させて、艦隊から落伍していった。
後部甲板の状況は悲惨であり、第5両用砲は跡形も無く吹き飛び、第6、第4砲塔は台座から外され、中にいた砲員が全員戦死してしまった。
誘爆によって、缶室2個が破壊され、艦底部から浸水が始まり、サンファンは左舷に傾きながら、よろばうような速度でしか航行できなかった。
81 :
前スレ519:2006/10/09(月) 23:15:42 ID:???
サンファン大破炎上の戦果に気を良くした第2梯団は、一斉に機動部隊の本丸に襲い掛かってきた。
第2梯団は8機を叩き落されたものの、残った機は全てレンジャーに群がってきた。
今度は高空からではなく、低空飛行のワイバーンが先陣であった。
左舷側の20ミリ機銃が一斉に放たれ、迫り来るワイバーンに火のシャワーを浴びせかける。
ロビンソン兵曹長の28ミリ機銃座もこれを迎え撃つ。
4本の銃身が前後に動き、20ミリより一際太い火箭がワイバーンに向けられる。
ワイバーンの周りの海面は、高角砲弾が吹き上げる水柱や、機銃弾の弾着でしきりに泡立っている。
(こんな激しい弾幕の中に突っ込んでくるとは、敵ながら見上げたものだ。)
ロビンソン兵曹長はそう思った。28ミリ機銃の弾が切れて、一旦射撃が止んだ。
部下が素早い動作で弾を込めていく。普段の訓練の成果もあって、装填作業は短い時間で終わる。
(だが、こっちだって生きているんだ)
ロビンソンは再び機銃弾を放った。
(容赦はしない!)
旋回手がワイバーンに向けて照準を合わせ続け、機銃弾が注がれていく。
唐突に、ワイバーンの顔面に曳光弾が突き刺さった。その刹那、何かの破片が飛び散って、いきなり海面に突っ込んだ。
機銃弾は、ワイバーンの顔を粉砕して、抹殺したのである。
多量の曳光弾がワイバーンに注がれるが、ワイバーンは低高度飛んでいるため、なかなか命中しにくい。
「こいつら、かなりうまいな!」
ロビンソンが思わず感嘆したほど、ワイバーンの高度は低かった。
先のサンファンも、低高度から侵入したワイバーンにやられたが、あのワイバーンらは高度が200ほどあった。
しかし、目の前のワイバーンは10メートルあるかないかの高度で飛んでいる。
それでも、徐々に数を減らしつつあり、ワイバーンがレンジャーまで700メートルに迫った時は、わずか5機に減っていた。
給弾手に何度目かの装填作業を行わせた時、ワイバーンは500の距離で爆弾を投下した。
82 :
前スレ519:2006/10/09(月) 23:17:41 ID:???
爆弾は海面を飛び跳ねて、レンジャーに向かって来る。
20ミリ機銃群の指揮官が命じたのか、左舷側の20ミリ機銃がワイバーンから爆弾に向けて撃ちまくる。
だが、的が小さいため、なかなか当てづらい。
距離300で爆弾が爆発し、機銃座の将兵がやや安堵する。
しかし、2発目の爆弾を破壊する時はうまくいかなかった。
ワイバーンが、レンジャーを飛び去る際に機銃座に光弾を叩きつける。
「野郎!くたばりやがれ!!」
ロビンソン兵曹長は、調子に乗るワイバーンに機銃を向けさせる。
旋回手が勢いよくハンドルを回して、銃座がワイバーンの動きにあわせられる。
機銃が唸り、曳光弾が後ろを向けるワイバーンに注がれた。銃弾が、羽や胴体、尻尾に命中する。
尻尾をちぎり飛ばし、羽に風穴を幾つも開け、しまいには竜騎士自身が28ミリ弾に吹き飛ばされてしまった。
ワイバーンがぐらりと傾き、ロビンソンが撃墜を確信した瞬間、ドーン!という物凄い衝撃が艦を揺さぶった。
爆弾はレンジャーの左舷後部舷側に命中して艦内で炸裂した。
炸裂の際、後部の工作室で作業に当たっていた兵員5人が爆死し、10人が重軽傷を負ってしまった。
爆風は第3甲板の4分の1の区画に吹き荒れ、爆発現場では、周囲3個の部屋が完全に叩き壊された。
衝撃から立ち直る暇もなく、2発目が左舷の舷側に命中した。
爆弾がレンジャーの薄い装甲鋼板をあっさりと突き破って、艦底近くにある機関室の真上で爆発する。
爆発エネルギーは四方に放出され、当然、床もエネルギーに対し力負けしてしまう。
吹き込んだ爆発炎が缶室を焼き、働いていた8人が戦死してしまった。
最後の1発は左舷中央部舷側の高い位置に命中。
壁を破って格納甲板で爆発した。
爆発エネルギーは半分強が開放部から抜けたが、それでも4機のドーントレスが爆砕され、格納甲板に火災が生じてしまった。
「なんてこった!防御の薄いレンジャーではきつい打撃だぞ!」
ロビンソン兵曹長は思わずそう叫んだ。その時、
「敵機急降下ぁ!」
83 :
前スレ519:2006/10/09(月) 23:20:41 ID:???
の声が聞こえた。左舷上空から、6のゴマ粒が見えている。
「キャスターの畜生め、レンジャーを徹底的に痛めつけるつもりだな!」
ワイバーンが、頭を前にして、猛然と突っかかってくる。
狙いがこのレンジャーである事は明らかだ。
「ヨークタウンにも向かっています!」
部下が上ずった声でそう言ってきたが、ヨークタウンに視線を向ける余裕は無い。
28ミリ4連装機銃の仰角が上げられ、照準器にワイバーンの小さな姿が入る。
それが徐々に大きくなっている。
レンジャーが撃沈されるという事態はなんとしても避けたい。
ロビンソンのみならず、レンジャーの全乗員がそう思っている。
残った対空機銃が、一斉に撃ち出した。
先の被弾で、レンジャーは23ノットにスピードが下がっている。
しかし、艦隊は重傷を負ったレンジャーに速度を合わせ、僚艦が仲間を救うべく、火の傘をレンジャーの上空に差し掛ける。
先頭のワイバーンが、高角砲弾の炸裂で胴体を分断される。
高度が1400メートルのとこまで接近した時には、立て続けに2機が機銃弾によって八つ裂きにされる。
レンジャーも必死なら、ワイバーンも必死であった。
ワイバーンの最後尾の1機が蜂の巣にされて、悲鳴じみた叫びを発しながら墜落していく。
「キャスターさらに1機撃墜!」
戦果報告が耳に届く。だが、ロビンソンは直感的に、レンジャーの防御が失敗した事を悟っていた。
それを物語るかのように、生き残った3機のキャスターは次々と爆弾を投下した。
「伏せろ!」
ロビンソンは部下にそう命じ、自らも座席から床に伏せた。
次の瞬間、ズダアーン!という雷を耳にぶち込まれたような轟音が轟き、体がふわりと浮き上がって、床に叩きつけられた。
レンジャーが被弾の痛みに悶えている時に、容赦のない着弾が続く。
84 :
前スレ519:2006/10/09(月) 23:27:39 ID:???
ドーン!バゴォン!!という連続した爆発音が続き、レンジャーの艦体が激しく揺さぶられた。
ワイバーンが投下した爆弾のうち、3発が命中した。
1発はレンジャーの前部飛行甲板の右舷よりの位置に命中し、格納甲板を突き破ってダウ3甲板の前部兵員室で炸裂した。
爆発は兵員の寝具や私物を遠慮介錯無しに叩き潰し、部屋全体が紅蓮の炎に包まれた。
2発目は後部甲板に命中。格納甲板で炸裂して兵員26人を即死させた。
その際、アベンジャー2機が完膚なきまでにぶち壊され、スクラップとなった。
3発目は後部甲板に命中した。その箇所は、レンジャーの特徴である、左右舷側に3本ずつ取り付けられた煙突の、
ほぼ中間地点の飛行甲板に突き刺さった。
爆弾は格納甲板と、第3甲板のシャワー室の床を叩き割って機関制御室に達した。
爆発は機関制御室の兵員20人を皆殺しにし、隣の第2、第3缶室にまで及んで、缶を破損させてしまった。
そして軍艦にとって最悪の事態が起きた。
レンジャーは突如、缶室で水蒸気爆発を引き起こしてしまった。
これにより、機関系統は70%が失われ、レンジャーは這うような速力でしか走れなくなった。
応急消化班の1人であるマイク・クラーク2等兵は、格納甲板がもはや手の付けられない状態に
成っている事を確信して、途端に今やっている作業が空しく感じた。
「クラーク!何している!しっかりホースを持たないか!!」
班長のギルバート兵曹長が、煤けた顔に怒りを滲ませながら怒鳴る。
「班長・・・・・レンジャーは・・・・レンジャーは・・・・沈んでしまうんですか?」
クラーク2等兵は、悲しげな表情でギルバートに語りかけた。」
「俺たちが頑張れば、レンジャーは生き残る。だから、貴様もしっかり自分の役目を果たせ!」
ギルバートはそう励ます。クラークもそれに少し元気付けられ、再びホースを持って、消化剤を
撒き散らした。他の消化班も、自分達の家を守るべく、必死に火を消そうとする。
だが、消化班の奮闘も空しく、延焼は次第に広まりつつあり、火災は燃料庫の付近にまで迫りつつあった。
85 :
前スレ519:2006/10/09(月) 23:28:50 ID:???
気がついた頃には、戦闘は終わっていた。
ロビンソン兵曹長は、虚ろな目で、レンジャーを見渡す。
前部飛行甲板から火が上がり、別の仲間がそれに水を吹きかけている。
後部甲板はさらに酷い状況で、濛々たる黒煙が吹き上がっている。
艦は左舷側に傾いており、既に停止状態にある。
「この海戦、レンジャーにはきつい仕事だったのかなあ・・・・・」
ロビンソン兵曹長はそう呟いた。
「兵曹長、ヨークタウンも。」
部下の旋回手の1人が右舷の方向を指差す。
右舷前方を航行しているヨークタウンは、煙突とそのすぐ左脇の飛行甲板から黒煙を噴き出している。
ヨークタウンも爆弾を叩きつけられたのだ。
レンジャーよりは比較的ましであり、速度も25ノット以上は出ているように見える。
だが、飛行甲板に被弾したとなれば、攻撃隊を収容作業が出来なくなる可能性が高い。
(俺達、負けなければいいが・・・・・・)
ロビンソンはそう思った。
艦長の声が聞こえてきた。どうやら、総員退艦せよと言っているようだ。
86 :
前スレ519:2006/10/09(月) 23:30:11 ID:???
投下終了であります。次回は米艦載機が、レンジャーやホーネットの
仇を討つすべく、敵艦隊に挑みます。
88 :
名無し三等兵:2006/10/10(火) 22:29:37 ID:jWGn92yU
>>前スレ519さん
長期でやっているならそろそろトリップつけた方が・・・
89 :
名無し三等兵:2006/10/10(火) 22:32:07 ID:???
>>前スレ519
投下GJ!!
90 :
名無し三等兵:2006/10/11(水) 00:27:31 ID:???
>>65 >>50は気にしなくていいよ
荒らしのアゲ厨がいやがらせで書いてるだけだから。
91 :
名無し三等兵:2006/10/11(水) 16:37:24 ID:???
92 :
名無し三等兵:2006/10/11(水) 16:58:39 ID:???
>>91 ageたうえに荒らしレスがあるから荒らしだよハゲ
93 :
名無し三等兵:2006/10/11(水) 17:25:03 ID:???
バブルが崩壊し、平成不況という名のカオスが日本中を覆っていた当時、オレは中学生だった。
クラスには郡司という名の独裁者が存在していた、
こいつは病的なサディストであり、筋金入りのジャイアニスト
クラスに逆らうものはいなかった。
なぜなら郡司SSによる血の報復が恐ろしかったからだ。
ある昼下がり、オレは給食のカレーライスをこの独裁者に略奪され決意した。
クーデターしかない、と
94 :
名無し三等兵:2006/10/11(水) 23:29:14 ID:???
第 一 次 カ レ ー ラ イ ス 革 命 勃 発
翡翠氏、
>>88、
>>89氏 ありがとうございます。とりあえず、トリップつけてみました。
>>94 ハルゼー「カレーライス?それよりもアイスが好きだね。おい、そこの奴、列に割り込むな。
一番後ろに並べ!」
・・・と、空白のしおり を挟んでおいてっと。・・・
ここ、西方神権国家ミスナにおける連続爆破事件は、10月に入ると自衛隊の戦車すらも標的とするようになっていた。
10月5日の正午、王都クシャのテロリストに爆破された初めての90式戦車が、
先遣隊司令の西崎と民間の今井の目の前で紅蓮の炎を上げて燃え狂っていた。
「 くっそ! 」西方神権国家ミスナへの先遣部隊の指揮を任された西崎が、
自分の部下が危険な目に会った怒りを押さえきれず、その真新しい軍帽を地面に叩きつけた。
王都クシャの貧民街のど真ん中で起きた白昼堂々のテロルであった。
憤懣やるせないる西崎の側で黙って燃え盛る90式戦車を見つめていた元民間の今井は、
その叩きつけられた真新しい軍帽を拾い砂埃を綺麗に払ってから、持ち主の西崎の手に手渡した。
「 えー、クシャのテロリストは見境無いので、戦車の中の人も気をつけてください 」
10月4日の朝、そんな間の抜けな調子で淡々と王都クシャの状況を先遣部隊の面々に説明していた今井は、
説明の次の日には戦車1台を殺(と)られた事に、先行きの困難を改めて思い知らされ、閉口するしかなかった。
だが。
「( まあ、狙われたのが( 平成自衛隊の )90式戦車でよかった ) 」
部下を狙われた西崎と、度肝を抜かれた当の90式戦車小隊の面々には悪いが、狙われたのが平成自衛隊でよかった。
現に、殺られた戦車に搭乗していた面々は、
「 ニホンノヒト、ダイジョブカ? 」「 ダイジョーブ? 」
そんな片言をかけて再び集まってくる貧民街の者達に囲まれて、慰められることしきりであった。
彼ら地元民に人気急上昇中の平成自衛隊は、この日も朝から貧民街の者達に囲まれる事しきりであった。
これが地元民に不人気の超大国の戦車兵なら、貧民街の者達の心強い壁も無く、よって、
テロリストのファイヤ・ボールとサラマンダーの容赦無い連続攻撃を受けて消滅させられていただろう。
その日の夕方、超大国の1個小隊が大通りで襲撃されて全滅した。
テロの実行犯達は、クシャの人民の海の中に没した。
超大国はクシャの人民を片っ端から連行して弾圧を繰り返すだけでは、
怨みを買うだけで何の効力も無いと、見とめざるをえなかった。
連絡を受けて駆けつけた西崎らは、初めて見る焼殺死体に思わず顔を歪めてしまった。
ブスブスと今も燃える1個小隊の兵達のザックの中身は、既に略奪された後であった。
そして1個小隊の焼殺現場を取り囲んでいる群衆の眼は、何処までも冷たかった。
「 誰も助ける者はいなかったのか!!!! 」
哀れな1個小隊の末路に西崎が義憤に駆られて絶叫しようとした瞬間、
今井がわざとコケて西崎ともつれながら街路を転げてその口を封じるのだった。
「( あきまへん。彼らはここでは不倶戴天の敵。同情する訳が無いんですよ )」
今井は、西崎にもかすかにしか聞き取れない声で彼に囁くのであった。
そんな2人の背後から魔法学校の少女が2人出て、水筒の水を死体の上に流し始めた。
ややあって、2人は同時にこちらに振り向き、声を揃えて語るのであった。
「 1人残らず炎の精霊(サラマンダー)に燃やし尽くされています 」
彼女達の分析なら間違いないだろう。
つまり炎の精霊を自在に操る術者が側近くに居る訳だ。
そうだろうな、と呟いた今井が焼殺死体をよっこらせィと抱えて戸板の上に載せてゆく。
隣の斎藤隊員は馴れたもので、もう3人目を収容していたが。
超大国は戦車ですら現場に近づけなくなっていた。だから収容は我等の役目。
超大国は10月だけで9台の戦車が魔法の炎に焼かれて鉄屑になっていた。
中が黒焦げなのは、魔法でやられた何よりの証拠であった。
今井は今や東方ライン皇国の兵である戦国大隊を指揮し、クシャの人民に喜捨をするのを忘れない。
戦国大隊が行くところ人垣が出来て、その後に綺麗に道を空けてくれる。
そしてその中をモーゼの行進のように自衛隊の車両がしずしずと通りすぎてゆく。
四千年の古都・クシャの西の空に沈む巨大な夕日を背景にして。
っと、本当はまだ続くのですが、今はこれまで。
老舗の流れも見ながら。
つうか小官どのオマージュも描かないとなあ。
艦隊決戦はどーしましょ。
サイパンか比島で、
陸軍20万を率いる東条英機元首相って最高に萌えるのですが。
別の話になるのかあな。
でも日本艦隊も米国艦隊も無傷近くに終わらすなら・・ああ本末転倒。
翡翠殿、どうもであります。
現在、空母戦闘の後半戦を執筆中ですが、ちょっと難航気味です。本来ならば
今日投下しようと思っていのですが。
ちなみに、難航している原因が、水上砲戦を付け加えるか否かで、これを考え始めたら
筆が進まなくなり・・・・・・・・・
う〜ん、まだまだ勉強不足で面目ないですm( __ __ )m
というか、ファンタジースレに小官氏が。
リアルで凄いもの見ちまった (;´∀`)
とまあ誤爆を加えるアホが居るので翡翠氏にお出ましを、と願いたいが、巻き添え食いたく無いだろうしな? ウム。
うわっつ、本当に小官どのキター!
>前スレ519様
・w・)>ワクテカしてお待ちしていますですよっと、
私もちょいとFスレに戻ってみます
orz つか、弾磨きしている場合じゃ無かったのね・・トホホ。
でわわ2時間遅れですが参戦してきまっふ。
有難うございました。お忙しい中お付き合いさせて済みません…。
頻繁には来れませんが、また来た時にはヨロシク御願いします。
>小官どの
本当にお疲れ様でした・・・。m( )m 感謝しています。
またのお早目の御帰還を・・
翡翠=小官だよね?
こんばんわ。現行分をちょっと投下します。
午前9時40分 バゼット半島北北西260マイル沖
第16、17任務部隊から発艦した攻撃隊は、午前9時40分、艦隊から北東280マイル地点で敵竜母部隊を発見した。
「いました!あれです!」
攻撃隊指揮官であるマクラフスキー少佐は、後部座席の部下が指差す方向に目を向ける。
攻撃隊のほぼ左前方に、いくつもの艦群が、うっすらとだが見え隠れしている。
それを確認したマクラフスキーはゆっくりと頷く。
「こちら指揮官機、敵機動部隊を発見した。これより攻撃に移る。」
そう言って、彼はマイクを置いた。
その艦隊に向けて、攻撃隊は針路を変える。
5分後、今度は攻撃隊の右側方に別の機動部隊が出現した。
雲に隠れて分からなかったが、水平線上にいる敵艦隊も、今向かっている艦隊と同規模のものであった。
「敵機です!」
よく見ると、2つの艦隊の上空には、いくつもの飛行物体が旋回している。
おそらく、艦隊の上空援護部隊であろう。
「ライダーはワイルドキャットに片付けさせよう。」
護衛のF4F84機の内、64機が艦爆、艦功隊から離れ、二手に分かれて敵のワイバーンに向かって行く。
戦闘開始を告げるかのように、F4Fが一斉に増槽タンクを投下していく。
ワイバーン部隊は既に攻撃隊を発見しており、合計で70以上のワイバーンがこちらに向かいつつある。
「頼むぞ、戦闘機隊。」
そう呟きながら、マクラフスキーは各部隊に攻撃目標の割り当てを行った。
「これより敵艦隊に突入する。TF17は左側の機動部隊の空母1、2番艦。
TF16は右側の機動部隊の空母3、4番艦を狙え。全機攻撃開始!」
「敵編隊接近中。数は40。」
「OK。敵のライダーを艦爆、艦功に近づけさせるな。絶対に単独行動を取るな。2機1組で敵に当たれ!」
ヨークタウン戦闘機隊の指揮官であるジョン・サッチ中佐は部下に向けて命じる。
無線機から威勢の良い返事が聞こえてくる。
サッチ隊はVF−5とVF−8の1個中隊、合計36機で成っている。
速度を上げ、敵編隊との距離を詰めて行く。
「タイラー!右後方に付け!」
「了解!」
彼は2番機であるタイラー中尉の機を右後方付けさせる。
ワイバーンの先頭部隊が迫ってきた。
敵側も最高速力で、ワイルドキャットに向かっているのだろう、あっという間に距離が縮まってくる。
サッチは先頭に照準を合わせる。
距離が800メートルまで迫ったところで、サッチ中佐は狙いを付けた敵機に12.7ミリ機銃弾を撃った。
ダダダダ!という軽快な発射音が聞こえ、6丁の機銃が銃弾を弾き出す。ワイバーンも口から光弾を放ってきた。
互いに放ったモノが交錯し、それぞれに殺到していく。サッチの機銃弾は惜しくも先頭機の右脇を掠める。
「チッ、外したな。」
すぐに先頭機とすれ違う。
続けて、後続しているライダーに新たに照準を合わせ、機銃を撃ち込む。
タイラー中尉もサッチ中佐と同じ相手を狙ったのだろう、12本の火箭が投網をかけるようにして、敵の正面に注がれた。
顔面や胴体、翼に機銃弾が叩きこまれる。
防御障壁が作動するが、何十発と集中する高速弾には焼け石に水であった。
10発近い機銃弾が竜騎士やワイバーンの胴体に突き刺さった。
多量の血煙を噴き出しながら、ワイバーンはコントロールを失って落下していった。
敵編隊を飛び抜けたサッチ機とタイラー機は、反転上昇に移る。
高度を5300まで上げて、サッチ中佐は一通り周囲の確認を行う。
周りに敵機がいない事を確認して、眼下を見渡す。
既に味方の戦闘機隊と敵ワイバーン隊が戦闘を開始している。
その中で、1機のワイルドキャットがワイバーンを撃墜した。
撃墜したワイバーンの前には、別のワイルドキャットがいた。
「ほほう、早速効果を挙げたか。それでは、戦法を考えた本人も実際に確かめてみるとしよう。」
そう言って、彼はマイクを握った。
「タイラー。離れろ」
「了解!」
彼の指示と共に、タイラー中尉の機が、サッチ機のより後方にへと離れていく。
離れたのを確認したサッチ中佐は、機体を急降下させた。
機首を下にして、ワイルドキャットが急降下していく。
眼前には、戦闘を行うワイルドキャットとライダーが激しい戦いを繰り広げている。
サッチ中佐は、3機編隊で高速飛行しているワイバーンを見つけた。
「ようし、あれをやるぞ!」
そう言って、機首をその3機編隊に向ける。
速度計が限界速度ギリギリにまで迫り、機体がガタガタと振動する。
初心者ならば、機体が空中分解してしまうと思うが、ワイルドキャットはこれぐらいでは壊れたりしない。
ワイルドキャットは機体構造が頑丈であり、どんな無理な機動にも大方答えてくれる。
それに操縦性もいいから、不恰好な姿とは裏腹に、パイロットには好まれている機体だ。
照準を3機編隊の右斜めのワイバーンに向ける。
相手との距離が1200にまで迫った時、ワイバーンの3機編隊は散開し始めた。
目標のワイバーンは右旋回を行おうとしている。
「逃がさん!」
サッチ中佐はその敵ワイバーンの動きを追った。すぐに距離が縮まる。
サッチ中佐は、旋回するワイバーンの未来位置に照準をずらし、距離400で機銃弾を放った。
ワイバーンが機銃弾の弾幕に自ら突っ込んだ。
射撃は一瞬であり、すぐにワイバーンの下に飛びぬける。
飛びぬけた瞬間に、すかさず後ろを確認する。
「付いてきたか。」
一瞬だけだが、サッチ機を追ってくる敵ワイバーンの姿が見えた。
サッチは操縦桿を引き上げて、機体を急降下から水平に直そうとする。
後方に敵が迫っているから、真っ直ぐ飛ぶと言う事は出来ない。
旋回しながら降下角度を緩めていく。
バックミラーに、ワイバーンの姿が写っている。サッチは右に旋回をしてみる。
ワイバーンも彼を追うように右旋回してきた。
次に左旋回に移る。高速旋回であるから、旋回半径はかなり大きい。
Gが体にのしかかり、息が詰まるような感じがする。サッチはすぐに後ろを振り返る。
やはりワイバーンはついてきている。
「格闘戦ではこっちより強いからな。」
そう言いながら、サッチは蛇行を続ける。
後方のワイバーンが光弾を放ってきた。いくつかの光弾がコクピットを通り過ぎて行く。
ガン!と、機体後部から衝撃が伝わる。
「そろそろタイラーが来るはずだが」
そう言いながら、サッチはワイバーンの射線を巧みにかわすそうとする。
ワイバーンは距離600あたりまで迫っている。
炎の射程距離は700メートルである。
命中率は光弾より悪いが、食らったら頑丈なワイルドキャットでもひとたまりもない。
(タイラー!さっさと来い!囮役を務める奴の事も考えろ!)
内心でそう叫びつつも、ワイバーンの光弾をかわし続ける。その時、ワイバーンに無数の火箭が突き刺さった。
背中の竜騎士が射殺され、背面をズタズタに引き裂かれ、ワイバーンは呆気なく墜落して行った。
「やりました!隊長、大丈夫ですか!?」
その声はタイラー中尉のものであった。
タイラー中尉は、サッチ中佐の後方1000メートルの位置に待機し、彼とサッチ機の間に入り込んでくるワイバーンを待ち構えていた。
一撃離脱をかけた後、1機のワイバーンがサッチ機に追いすがった。
蛇行を繰り返すサッチ機に合わせるように、動き回るワイバーンに照準を定めてタイラーは機銃を撃った。
機銃弾は狙い通りにワイバーンに叩き込まれ、見事撃墜スコアを稼ぐ事に成功した。
「2,3発食らったが大丈夫だ。それにしても、もっと早く撃てなかったのかい?」
「ワイバーンの動きが少し早かったもので、手間取っちまいました。」
「まあいい。とりあえず、機織戦法が使える事は分かったな。」
サッチは満足そうに言い放つ。
サッチ中佐は、ワイルドキャットにやや劣る程度でしかないワイバーンを、
もっと落としやすく出来る方法は無いのかと考えた。
ワイルドキャットは確かにワイバーンに勝る。
しかし、速力も2、30キロしか変わらないし、格闘戦に引き込まれれば、落とされる危険性が高い。
単機同士の戦いでは、こちらが互角以上に戦えるが、敵にも上手い奴はいる。
それの手にかかれば、互角か、それ以上に持ち込まれる危険が高い。
さんざん悩んだ挙句、サッチはとある戦法を考えた。
まず、2機1組でチームを作る。
ワイバーンを発見したら後方の1機は前方機より離れる。
先頭機がワイバーンに一撃を加えて逃げ去る。
ワイバーンが先頭機を追ってくれば、先頭機は蛇行して敵側の射線を避け、ワイバーンに対して命中弾を与えないようにする。
ワイバーンが目の前の敵を仕留めようと躍起になっている隙に、後方、もしくは側方から後続機が突っかかって銃撃を浴びせる。
つまり、1機が囮役で、1機が援護という訳だ。
サッチ中佐はこの戦法を空戦に取り入れることにした。
サッチはこれを機織戦法と呼び、7月から訓練に取り入れている。
今日、その新戦法の成果はどうなるのかと、半ば不安だったが、
「よし!引っ掛かったぞ!ジェイク、今のうちだ!」
「撃墜!」
「こっちも撃墜したぞ!この戦法はなかなかイケる!」
部下達の活気のいい声音が、無線機から流れてきた。
戦闘機隊は、必ず2機1組で交互に蛇行しながら敵に攻撃を仕掛け、囮に食らいついたとこで攻撃を加える事に成功している。
だが、中には囮役が奮闘空しく撃墜されたり、囮役と攻撃役が、狙ったワイバーンに相次いで
撃墜されることも起きている。
竜母モルクドから発艦した戦闘ワイバーン隊の隊長であるクレンティ・レスルーニ大尉は、
最初、米戦闘機が向かって来る時に、
「敵は運動性能が酷く悪い。いつもの通り、格闘戦に引き込んで叩き落せ。」
と命令した。
だが、F4Fは猛スピードで突っ込んでいくと、格闘戦をやろうとはせずに、それぞれが上昇や下降して、ワイバーンから離れていった。
レスルーニ大尉は、逃げ去っていくF4Fの後ろに回り込もうとした。
だが、視界の端に何かが移っていた。
視線を前から左側面に向ける。
そこには、計ったかのように1機のF4Fがおり、レスルーニ大尉目がけて猛スピードで突っ込みつつあった。
前方の敵機は、そのまま逃亡しつつある。
今、光弾を撃てば、敵を傷つけられるだろう。
だが、その頃には後ろに敵機にワイバーンもろとも、切り刻まれてしまう。
敵も死ぬが、自分も間違いなく死ぬのだ。
「今はダメだ!」
そう叫んで、相棒に追うなと合図する。
ワイバーンがそれに従って、前方のF4Fに向きかけた体を、横転させて追撃を諦める。
ワイバーンの後ろを、射撃音と共に曳光弾の束がサーッと流れていく。
タイミングが遅ければ、あれに切り刻まれていた事は間違いなかった。
F4Fが悔しげにエンジンを唸らせて、そのまま通り過ぎていく。
レスニール大尉はワイバーンを上昇させて、高度を取ろうとする。
全体の戦況を見ると言う目的もあるが、隙を見て敵に挑むと言う狙いもある。
高度5000メートルほどまであがると、双方が戦っている様が見て取れた。
そして、レスルーニ大尉は息を呑んだ。
落ちていく粒があるが、姿形からして味方のワイバーンだ。
敵の姿もあるが、落ちていく数は味方のほうがかなり多い。
レスニール大尉は、辺りを見回して敵機がいない事を確かめると、下方の空戦域を見つめる。
そして、大尉は米軍機が、なぜ味方のワイバーンをばたばた叩き落しているのかが分かった。
1機の米軍機が、味方のワイバーンの下方から突っかかる、味方のワイバーンは巧みに避ける。
機銃弾を外したF4Fが今度は逃走にかかる。
それをワイバーンが追いすがっていく。
終われる側となったF4Fは、ワイバーンの射点をずらそうと、右に左にと蛇行する。
それに狙い外されて、味方のワイバーンはなかなかブレスや光弾を撃てない。
その後ろに、別の黒い機影が迫ってきた。
大尉はそのワイバーンに向けて、魔法通信で話しかけた。
「後ろに敵だ!逃げろ!!」
その直後、近距離に迫ったF4Fから火箭が飛び、それが次々にワイバーンに突き刺さる。
12.7ミリの高速弾をしこたま振るわれたワイバーンが、力なくバランスを崩して真っ逆さまに落ちていった。
「いい気になるなよ!」
彼は吐き捨てるようにそう呟くと、辺りを確認する。
自分を狙っている米軍機がいない事確認すると、たった今、味方を葬ったF4Fに向けて突進した。
最初は小さな粒であったF4Fが、次第に大きくなってくる。
敵機は味方のワイバーンを撃墜した事で気が抜けたのか、こちらに気が付いていない。
距離が800ほどになっても、敵機は気付く様子が無い。
2機はそれぞれ、ゆっくりと蛇行しながら別の獲物を探していた。
図らずも、大尉は太陽の方角から突っ込む形であった。
お陰で、敵側にこちらの発見を遅らせる事に成功したのだ。
その時、操縦席のパイロットがこちらに気が付いた。
「遅いぜ!!」
そう喚いて、相棒に合図する。口から光弾が吐き出され、F4Fに吸い込まれようとしている。
F4Fが左旋回に入ろうとしたが、時既に遅し。
光弾は、操縦席、胴体、エンジン部分に叩き込まれてしまった。風防ガラスが叩き割られ、機体の破片が飛び散る。
パイロットが体から血煙を噴き出して、のけ反るのが見える。そこまで確認して、F4Fの下方に飛び抜ける。
しばらくして、後ろを振り向く。
寮機を撃墜されたF4Fが、こちらに機首を向けてきたが、横合いから別の味方のワイバーンが突っかかり、
慌ててそのF4Fは大尉のワイバーンとは正反対の方角に逃げて行く。
彼としては、追ってくるであろうF4Fの追撃をどうかわすか考えていたが、
それは味方の乱入によって、しばらくは考える必要なくなった。
ワイバーンとF4Fは、相変わらず空中戦を繰り広げているが、追われているのはワイバーンのほうが多かった。
空戦開始からしばらくは、互いに大編隊を維持しつつ、あちらこちらで双方の被撃墜が相次いだ。
しかし、空戦開始から20分が起った時、38機いたワイバーンは23機に減少していた。
米側も無傷ではなく、6機が撃墜され、5機が損傷している。
だが、空戦の主導権は明らかにワイルドキャットが握っていた。
長い間、米軍が常用する事になる機織戦法、通称“サッチウィーブ”が、この時生まれたのである。
米戦闘機隊は奮戦していたが、それでも7機のワイバーンが攻撃隊に迫ってきた。
7機のワイバーンが、高度4000付近から急降下で、攻撃隊に迫ってきた。
「来るぞ!全機編隊を崩すな!」
ホーネットのVT−8指揮官であるポール・ウィント少佐はマイク向けて怒鳴った。
護衛のF4Fが迎撃に向かう。F4Fとワイバーンが撃ちあう。
ワイバーン側は1機が撃墜されたが、F4F側には被撃墜機はない。
しかし、それでもワイバーンは突っ込んでくる。
「5時方向からライダー!突っ込んでくる!」
ライダーはホーネットのアベンジャー隊に突っかかってきた。
アベンジャーの後部旋回機銃が一斉に撃ち出す。
曳光弾がワイバーンに注がれるが、敵はひらりとアベンジャー隊の銃撃をかわす。
距離が700を切ったところで、ワイバーンの口が開いた、
「野郎、光弾を放つつもりだな。」
と、ウィント少佐は思った。
普段、ワイバーンは威力の高いブレスをあまり使おうとはせず、機銃弾程度の威力がある光弾しか使わない。
だが、このワイバーンはブレスを吐いてきた。炎の固まりは、第2小隊の2番機に命中した。
次の瞬間、2番機が木っ端微塵にぶっ飛んでしまった。
「ああっ!2小隊2番機が被弾!脱出者なし!」
「・・・・・敵もやりやがる。」
機銃手の報告に、ウィント少佐は呻くように答えた。
その直後、今度はすぐ左隣のアベンジャーに無数の光の束が注がれた。
コクピットに赤い液体がベシャッと張り付き、中の様相を隠してしまった。
大穴が開いた右主翼からガソリンが噴き出し、すぐに引火した。
炎と黒煙に包まれたアベンジャーが、無念だと言わんばかりに、機首を力なく下げて墜落していく。
「3番機被弾!航法士、機銃手が脱出しました。」
操縦手脱出という報告は入っていない。そう、赤い液体が飛び散った場所は操縦席であった。
操縦手はおそらく、光弾に体をずたずたにされて死んだのだろう。
「畜生!ライダーの野郎!!」
ウィント少佐は歯噛みしながらワイバーンを罵った。
ワイバーンはさらに第1小隊2番機にも損傷を与えたが、2番機は致命傷を負わずに済み、攻撃隊に付いて来ている。
残った6機のワイバーンは、追いすがってきたF4Fと空中戦を戦わされ、3機が撃墜されたが、ワイバーンも1機のF4Fを叩き落した。
「隊長、敵の本陣です!」
空母エンタープライズの爆撃隊長でもあるマクラフスキー少佐のドーントレス隊は、敵艦隊まで目前に迫っていた。
「いやがる、空母が都合2隻か。」
マクラフスキーは獰猛な笑みを浮かべた。
眼前の艦隊は高射砲を打ち上げて、ドーントレス隊を落とそうとしている。
しかし、高度4000メートル付近で炸裂しているに対して、ドーントレス隊は5000メートルの高みから
敵艦隊を見下ろしている。
敵艦隊は輪形陣を組んでおり、真ん中に空母が2隻、縦に並んでいる。
その周囲を戦艦や巡洋艦と思わしきものが5隻、駆逐艦らしき軍艦が7隻取り囲んでいる。
戦艦、巡洋艦のシルエットは、どことなく米海軍の艦艇とも共通した箇所がある。
砲塔は完全防御の密閉式であり、連装砲を4基保有している。
駆逐艦はどことなくのっぺりしたような感じだが、それでも単装砲を4門に、舷側から小口径砲を生やしている。
それらが高射砲を撃っているのだが、ドーントレスに届いていない。
それよりも、心配なのは雷撃隊である。
前回の海戦で、サラトガの攻撃隊が少なからぬ被害を負っている。
その中でも、対空砲火の被撃墜数は8機、帰還後、使用不能と判断された機は4機に上っている。
調べによれば、シホールアンルの艦艇には、10〜20の魔道銃が積まれている事がわかった。
この魔道銃というのは、こちら側の機銃と同等の威力があり、性能のいいものでは、
頑丈な米軍機さえも一撃で叩き落してしまうものもあるという。
特徴としては、普通の機銃弾がオレンジ色の曳光弾を混ぜて撃っているに対して、
シホールアンル側の魔道銃は全てが青や赤、紫や緑といったカラフルな銃弾を撃ってくる事である。
サラトガ隊は、デヴァステーターとドーントレス、合わせて8機が敵艦隊上空で撃墜されているが、
そのうち、デヴァステーターは6機である。
速度の遅さが、デヴァステーターに犠牲を強いる結果と思われているが、別の要因として、敵の対空砲火の激しさも挙げられている。
最も、魔道銃は扱いが難しく、陸軍には役立たずとして配備されていないとの事だが、
シホールアンル海軍は、なんとかこの魔道銃を対空火器として使用している。
「ホーネット隊は敵艦隊の右舷側から急降下するようだな。」
マクラフスキーは、遠くの空を凝視する。
ホーネット隊の24機のドーントレスが、投下地点に向かっている。
その下方では、やはり高射砲弾の白煙が咲いている。
「引き起こしの際、こっちにぶつからんければいいですがね。」
後部機銃手が、ホーネット艦爆隊の隊員が聞いたら目を剥かんばかりの言葉を発するが、
「そんな事は無いさ。奴らだって、ヒヨッコじゃないんだ。」
マクラフスキー少佐は、そう言って機銃手の皮肉を打ち消した。
「さあ、降下地点に到達したぞ。俺のケツにしっかり付いて来いよ!」
彼は操縦桿を押し倒し、機首を下に向かせた。
視界に海が広がっていき、やがて航行する敵空母が見えてきた。我が海軍の空母と似たような、全通甲板の軍艦だ。
高度が4000を切ると、高射砲弾の爆風が機体を揺さぶり始める。
両翼のダイブブレーキが起き上がり、赤いフラップに開けられた多数の穴から、雄叫びのような音が響く。
「3700・・・・3500・・・・3300」
機銃手が高度計を読み上げる。機体が気流や高射砲弾の爆風に煽られ、ガタガタと振動する。
胸が押し付けられるような感覚がしてとてもきつい。
照準器の向こうの空母が、しきりにブレる。高射砲弾の破片が、時々機体を小突き回した。
2000を切ったところで、カラフルな光の弾が吹き上がってきた。
「アイスキャンデーだ!バルック兵曹、アイスキャンデーは好きか!?」
「好きですが、今見ているコレは大ッ嫌いです!!」
「俺もそうだ!」
マクラフスキーは機体が揺れすぎないように、操縦桿を握り締める。
手が汗でぬらつき、気持ち悪い。
「1800・・・・1600・・・・1400」
「高度800で爆弾をぶちかますぞ!!」
ガツン!と何かが当たる衝撃が伝わる。
「大丈夫、落ちない。落ちないといったら落ちないんだ。」
マクラフクスキーは念を押すように呟く。空母自身が放つ対空砲火も熾烈さを増してきた。
カラフルな光の弾が、物凄い勢いで飛び去っていく。
ガガン!と新たに命中弾が出るが、マクラフスキーは無視した。
今考える事は、敵空母に爆弾を落とす事のみだ。
「1000・・・・800!」
「よし、投下ぁ!」
彼は気合を入れるように叫び、同時に投下レバーを引いた。
胴体の1000ポンド爆弾がプロペラの旋回半径に誘導される。その仕事を終えた懸架装置は、爆弾を解き放った。
爆弾が機体から離れた瞬間、マクラフスキーは必死に操縦桿を引き上げる。
引き起こしの際にかかるGが、体をしめつけ、頭に締め付けるような痛みが走る。
気を失いそうになるのをなんとか耐え続け、操縦桿を引き起こす。
高度312メートルで水平飛行に移る。マクラフスキーのドーントレスめがけて、無数の光の弾丸や、高射砲弾が襲い掛かる。
「命中です!ど真ん中にぶち込みました!!」
後部座席のバルック兵曹が、喉も裂けよとばかりに大声で報告してきた。
空母ホーネットのアベンジャー隊は、8機ずつの編隊に別れ、輪形陣の左右から侵入しつつあった。
駆逐艦と思わしき小型艦の前方をフライパスする際に、光弾が後ろから追いかけてくる。
「シホールアンル野朗の対空砲火は派手だな。」
第2中隊の3番機の操縦手である、ジョージ・ゲイ中尉は引きつった顔をややほぐして、後ろに語りかける。
「カラフルですな。まるでキャンデーを撒き散らしてるみたいだ。」
電信員兼航法士のルオール・レインスベルン兵曹が答える。
「なるべく食らいたくないねぇ。」
ゲイ中尉はそう言って肩をすくめる。
敵艦の形が大きくなるにつれて、向かってくるアイスキャンデーは多くなってくる。
バシ!という振動が伝わる。アイスキャンデーがどこかに当たったのだろう。
「言ってる側からこれか。」
ゲイ中尉はそう呟くが、彼の視線は、巡洋艦に隠れている敵艦。主目標である敵空母に向けられている。
「ドーントレス隊、突っ込みます!」
高空から、同じホーネット隊のドーントレス艦爆が、翼を翻して急降下を始める。
ドーントレスは、4機ずつが順番に急降下していく。
敵空母の対空砲火がドーントレス隊に集中し、多量の光弾が注がれる。
3機目のドーントレスが、不意にバランスを崩し、錐揉み状態になって墜落していく。
3機に減ったドーントレスの小隊は、臆することなく急降下を続ける。
「エンタープライズ隊が先頭の空母に爆弾を投下!」
エンタープライズ隊が狙った敵空母先頭艦に、1000ポンドの黒い粒が向かっていった。
それが平たい甲板に吸い込まれたと思った瞬間、爆炎と破片が吹き上がった。
「敵先頭艦に爆弾命中!」
「ホーネット隊も投下したぞ!」
遅ればせながら、ホーネット隊の先頭小隊も爆弾を次々に投下する。
最初の1弾が、敵艦の左舷側に着弾して水柱を跳ね上げる。
2発目が敵艦の前部にぶち込まれ、火柱が上がった。
「VB−8もまずは1発か。」
ゲイ中尉はそう呟く。3発目は惜しくも敵艦の後部に外れた。
黒煙をふきながら、3番機が機首を下にして急激に高度を下げ、右舷側、敵空母と巡洋艦の間に墜落して水飛沫を吹き上げる。
この水飛沫によって、敵空母の姿が一部分だけ隠れる。
後続のドーントレスも次々と急降下爆撃を行い、敵艦に投弾していく。
何本もの水柱が、敵艦の周囲に立ち上がる。
敵空母は必死に回頭を繰り返し、魔道銃を放ってドーントレスから逃れようとする。
1機のドーントレスが、光弾の連射を食らって翼を叩き折られる。
バランスを失ったそのドーントレスは、敵空母の左舷側の海面に墜落してしまった。
その刹那、敵空母に新たな弾着が襲う。後部甲板付近に爆炎が吹き上がり、次いで黒煙がたなびき始める。
やられたドーントレスの仇だとばかりに、新たに2発が敵空母の中央部にぶち込まれる。
24機のドーントレスは、あっという間に投弾を終えて、避退運動に入ろうとしている。
その頃には、敵艦の弾幕を潜り抜けたアベンジャー隊が、高度70メートルで空母の両側に迫りつつある。
「合計で6発命中か。」
ゲイ中尉は、艦爆隊が命中させた爆弾の数を言う。24機中、6発。命中率25%だ。
悪くない数字である。
その時、右側から急に目も眩むような閃光が煌いた。
閃光は一瞬であり、直後、腹に応えるような爆発音が聞こえてきた。
しかし、ゲイ中尉は眼前の敵空母にしか興味を抱いていない。
先頭の第2中隊長機が、そろそろ敵空母の右舷1200メートルに達する頃である。
敵空母は艦上部から濛々たる黒煙をたなびかせ、速力も若干落ちていた。
それでも、24ノットほどのスピードで航行し、対空砲火も盛んに撃ってきている。
空母と後方の巡洋艦に挟み撃ちの形になっているため、早めに魚雷を投下して、この場から逃げ出したい気持ちに駆られる。
それを抑えて、彼は隊長機が魚雷を投下するのを待ち続ける。
「第2小隊長機被弾!」
後部座席の機銃手であるディールセン2等兵曹が叫ぶ。彼の目には、右主翼が紅蓮の炎に包まれた2小隊長機の姿が写っている。
そのアベンジャーがもんどりうって海面に叩きつけられ、機体がバラバラに砕け散る。
隊長機が、開かれた胴体内から魚雷を投下した。
「リリース!」
それを見たゲイ中尉は魚雷を投下する。思いMK13魚雷が胴体から落とされ、アベンジャーの機体がフワリと浮きかける。
アベンジャーは隊長機の動きに従い、敵空母の後方から避退しようとする。
敵空母が、魚雷を投下して逃げる不遜なアベンジャーに魔道銃を放ってくる。
後部座席から射撃音が聞こえた。ディールセンが旋回機銃を撃ち返しているのだろう。
ガーン!という強い衝撃が起こる。
一瞬、機体が砕け散ったと思われたほどであった。
この時、光弾が機体の右主翼の先端にぶち当たって吹き飛ばしたのだ。
「こんな時に!!」
ゲイ中尉は揺れる機体をなんとか抑えようとする。
衝撃のわりには、損傷は致命的ではなかったのだろう、アベンジャーはなんとか持ちこたえた。
ディールセンはこの時、敵空母の左舷側に2本の水柱が立ち上がるのを見た。
「第1中隊の放った魚雷が命中!」
「俺たちの放った魚雷はどうなった!?」
ゲイ中尉が叫び返す。
分かりませんと、ディールセンは言おうとしたが、黒煙の向こうにも3本の水柱が、1本ずつ立ち上がるのが確認できた。
「右舷側にも水柱確認!3本です!」
その報告を聞いたゲイ中尉は、内心で微笑んだ。
第2中隊は2機が撃墜され、6機で投雷したが、6本中3本が敵艦の艦腹を叩き割ったのだ。
自分の魚雷が命中したかは定かではない。
だが、チーム全体で敵艦の急所を深く傷つけたことは間違いない。
「よし!これより帰投するぞ!」
ゲイ中尉は弾んだ口調でそう言う。ふと、右側に視線を向ける。
先頭の空母が、艦首と艦尾を突き上げて、急速に沈んで行こうとしていた。
第24竜母機動艦隊の旗艦であるクァーラルドは、僚艦モルクドを後方に従え、13クラウル(27ノット)のスピードで航行している。
「来ました、敵です。」
主任参謀が言う。モルクンレル中将は無反応のまま、輪形陣の正面からやってくる米艦載機群を見つめている。
彼女は知らないが、この第1群を狙ってきたのは、レンジャーとヨークタウンの飛行隊である。
「第2群が戦闘を開始したようです!」
通信兵が艦橋に入ってくるなり、早口で報告してきた。
「どうも、味方のワイバーンは苦戦しているようね。」
「アメリカ軍の戦闘機とは、そこそこ渡り合えるはずなのですが。どうもおかしいですな。」
ワイバーン部隊は、78騎が迎撃に出て行ったが、アメリカ側の直衛戦闘機に攻撃を阻まれて、敵側の対艦攻撃機をあまり減らせなかった。
それどころか、ワイバーン隊は航空優勢を確保出来ず、逆に米戦闘機に対して苦戦を強いられている。
モルクンレルは、アメリカ側が何か新戦法を採用して、ワイバーンに対抗してきたのでは?と、頭の中で思った。
これまで、ワイバーンはアメリカの戦闘機と互角に近いか、時たま有利に立つときがある。
高速力で逃げられたり、速度を生かした攻撃に出られれば、追撃は難しいし、戦いは苦しくなるが、単機同士の格闘戦なら互角以上に戦える。
それが、今日に限っては味方の損害ばかりが増えていき、敵には予想を下回る損害しか与えていない。
「何か対策を立てたのかも。そうでなければ、味方のワイバーンが、あんな数の敵を侵入させるはずは無いわ。」
彼女は、米編隊を顎でしゃくって言う。
ヨークタウンエアグループと、レンジャーエアグループは、双方がSBD2機とTBF1機ずつを食われただけで、
残りは艦隊の輪形陣に近付きつつある。
外輪部の駆逐艦が高射砲を放った。高射砲は、3.5ネルリ(9センチ)口径で、射程距離は3ゼルド(9キロ)、
高度は1.5ゼルド(4000メートル)辺りまで届く。
だが、高空から進んでくる米艦載機の一群は、高射砲の射程高度より上空を飛んでいる。
米艦載機群の真下で、高射砲弾が空しく炸裂している。
「射程が低すぎる!」
モルクンレルは愕然とした。
ワイバーンは最高で1.5ゼルドあたりの高度から急降下爆撃を行うため、砲の射程距離もそれに合わせられている。
しかし、件のドーントレス艦爆は、それの上を行く高度5000メートルから、悠々と輪形陣外輪部を突破しつつある。
シホールアンルの高射砲は、精度も品質も良く、最高の兵器と言われていたが、
その売り言葉は瞬く間に過去の遺物となってしまった。
高空からの敵もいれば、低空から来ようとする敵もいた。
3ゼルド以上の高空から侵入する急行爆撃機に対して、低空の敵は、海面スレスレといった高さまで降下し、
二手に分かれると、横合いから輪形陣に突っかかろうとしている。
低空からの敵は、このクァーラルドを挟み撃ちにしようとするのだろう。
「奴ら、やけに手際がいい。」
クァーラルドの艦長であるモルヅ・ベオリース大佐が感嘆したような口調で言う。
低空の敵の機動に見とれている間に、高空からの敵は牙をむき出してきた。
「高空からの敵機が急降下を開始しました!!」
見張りの叫びが艦橋に響いてきた。
この時、レンジャー艦爆隊の1番機が、直卒の小隊を引き連れて、クァーラルドに突っ込もうとしていた。
「魔道銃、射撃用意!」
ベオリース艦長が鋭い声音で命じる。クァーラルド級には、10門の高射砲と、34丁の魔道銃が配備されている。
魔道銃は射程が約0.5ゼルド(1500メートル)で、弾は無い。
弾の変わりに、拳大ほどの緑の魔法石を使用する。
この魔法石1個で、1000発の光弾が使用可能である。発射速度は少し遅いが、頼りになる魔道銃である。
ドーントレスが高度4000メートル以下に降下してきた。
「高射砲撃ち方始め!」
頃合よしと、艦長が砲撃を命じる。高射砲が射撃を始めた。高射砲は普通に弾を込めて発砲される。
敵機の前面で、いくつもの黒い雲が沸き起こる。
すわ、撃墜かと思うが、敵機はその黒煙を突っ切って降下を続けてきた。
クァーラルドのみならず、護衛艦もクァーラルドを守ろうと、向けられるだけの高射砲を撃つ。
高度が3000メートル付近で、ドーントレスの3番機が高射砲弾の破片を至近に受ける。
次の瞬間、大爆発が起こってドーントレスが火の玉に早変わりした。
続いて2番機の右主翼が吹っ飛ばされた。このまま木の葉のようにくるくると回転しながら落ちていく、はずであったが、
右だけでは気がすまないとばかりに、新たな高射砲弾が左主翼に直撃し、翼を引きちぎった。
ドーントレスは砲弾のような格好になり、まっすぐ落下して行く。
4機中、2機が撃墜されたにもかかわらず、残る米艦爆は急降下を止めない。
ドーントレスから、甲高い音が発せられ、それが徐々に大きくなってくる。
「これが、凶鳥の叫びね。」
ドーントレスの雄叫びを始めて聞くモルクンレルは、納得したように頷く。
米艦爆は、主翼の付け根にダイブブレーキを設置しており、急降下の際にはこれが起き上がって、
スピードが付けすぎないように、速度を抑えてくれる。
ダイブブレーキには無数の穴が開いており、急降下の時にこの穴から甲高い音を発する。
この音が、下界の敵兵にとっては悪魔の叫びに似たようなものになるのだ。
実際、この音を発する機体が、自分達を殺す爆弾を叩きつけてくるのだから、
凶鳥よりかは悪魔と言っても過言ではないかもしれない。
高度がさらに下がった敵機に対して、ついに魔道銃が放たれた。
色鮮やかな光弾が、軌跡を残しながらドーントレスに注がれる。
「取り舵一杯!」
艦長が操舵室に向けて叫ぶ。クァーラルドの24200トンの艦体は重いため、すぐには曲がらない。
艦長が早く曲がれと、内心焦る。そんなのは無駄だと言うように、頭上の甲高い音はますます大きくなる。
クァーラルドの艦体が、ようやく左舷に回頭し始めた。
時速は最高の15クラウルまで引き上げられ、艦体が上下に揺さぶられる。
甲高い音が極大に達した、と思った時、別の音が同時に木霊し、甲高い音は徐々になりを潜めてくる。
「敵機爆弾投下!」
見張りが絶叫した。艦橋の前を、1機のドーントレスが通過していった。
その時、モルクンレルはドーントレスの後部乗員と目が会った。
アメリカ人と思わしきその乗員は、半ば血の気が失せ、顔が強張っていた。
ほんの一瞬の出来事である。瞬きをした直後には、ドーントレスは右舷方向に抜けていった。
ドーン!という爆発音が鳴り響き、左舷側の艦首側方で水柱が立ち上がった。
クァーラルドの艦体が、1000ポンド爆弾の水中爆発に叩かれ、揺さぶられる。
4番機も投弾をしたが、クァーラルドの急回頭に照準を合わせられなかったのか、
2発目の爆弾もクァーラルドの左舷側海面に落下、無為に水を跳ね上げ、撒き散らした。
休む暇も無く、新手の4機が突っ込んできた。魔道銃や高射砲がこれに目標を変える。
弾幕をものともせずに、米軍機は急降下を続けた。
鳴り止んでいた甲高い轟音が再び鳴り響いてきた。
「舵戻せ!」
艦長がすかさず指示を飛ばす。
いつまでも左回頭を続ければ、それに合わせた米艦爆の爆弾を浴びてしまう。
それを避けるために、ずっと同じ方向を回るわけには行かない。
操舵員が力一杯舵をぶん回す。やや間を置いて、クァーラルドは回頭をやめる。
しかし、その時には、米艦爆は投下高度に達していた。
再び甲高い音が鳴り止み、ドーントレスがエンジンを唸らせながらクァーラルドの上空を飛び抜けていった。
次の瞬間、ズダアーン!というこれまでにない衝撃が艦を揺さぶった。
「う、うわ!?」
衝撃に、モルクンレル中将は思わず転倒しそうになった。
その衝撃が止まぬうちに、艦橋の前方向が一瞬、ピカッと光った。
その直後、大音響が鳴り響き、艦橋のガラスが粉々に割られてしまった。
モルクンレルや、艦長を始めとする艦橋要員が、吹き込んだ爆風に吹っ飛ばされ、床を這わされる。
彼女は爆風に飛ばされたあと、後ろの壁に思いっきり背中をぶつけてしまった。
その前に、右目と腹に焼け付くような痛みを感じたが、それすらも、体全体が押し潰されたような圧迫感の前に消し飛んだ。
「あっ、ぐ!!」
呼吸が出来なくなり、一瞬、目の前の光景がゆっくりと動く感じになった。
それもすぐに収まり、モルンクレルは呼吸を整えようと奮闘する。
しばらくは、息が出来なくなったと思ったものの、深呼吸する内になんとか落ち着いた。
「司令官!ご無事です・・・・・・」
モルクンレルの無事を確認しようとした幕僚が、彼女を見た瞬間、表情を青ざめた。
彼女は、何かが足りないような気がした。
右目の辺りがやたらに痛く、視界が幾ばくか狭い。
それだけではなく、腹の所も無性に痛い。
彼女はそれだけで、自分が手傷を負ったと確信した。しかし、思ったほどの痛みではない。
「あたしの事はいい!それよりも」
モルクンレルは立ち上がろうとしたが、ダーン!という轟音が鳴り響いて、艦がまたもや揺さぶられた。
その衝撃に彼女は立つことが出来ず、床にへたり込んでしまった。
米艦爆隊の攻撃は容赦が無かった。
実に6発の爆弾が叩き込まれ、多数の至近弾を浴びて、クァーラルドはわずか10分足らずの間に、燃える箱と化してしまった。
最後のドーントレスがクァーラルドの上空を飛び抜けていく。
最後の6発目が中央部に命中し、格納庫で盛大に炸裂した。
この竜母は、本来の機能を喪失してしまった。
「モルクドも爆弾が命中したようです。」
見張りがそう告げる。2番艦のモルクドも、ヨークタウン隊の爆弾を飛行甲板に叩きつけられ、黒煙を吐いていた。
しかし、モルクドは旗艦クァーラルドよりも卓越した舵さばきを見せ、3発が被弾するまでに留めている。
しかし、命中位置がまずかった。被弾箇所は前部、中央部、後部と、まるで計ったかのように綺麗に穴を開けられており、
ワイバーンの居住区は3分の1以上がぶち壊され、火炎に包まれてしまった。
「機関部!応答しろ!」
ベオリース艦長が伝声管に向けて怒鳴る。
「こちら機関部です。今のところ、機関部には損傷ありません。」
「全力発揮は可能か?」
「可能です。敵弾は第4甲板までには到達していないようです。」
そう言って、ベオリース艦長はホッとした。
先の海戦で、米艦爆の投弾を受けた味方の竜母が、機関部に爆弾を直撃されて、動力が全滅したという報告があった。
(もしかしたら、この被弾で機関系統がやられたかもしれん)
最悪の事態を予想したベオリース大佐は、念の為に確かめてみたが、それは杞憂であった。
「いや、まだ敵の低空攻撃機がいる。」
後ろから凛とした声が聞こえた。振り向くと、司令官であるモルクンレル中将が艦長に語りかけていた。
「急降下爆撃を行った後に、低空攻撃機で止めを刺す。
敵は前回、このような戦法で味方の竜母を1隻沈め、1隻を撃破している。
今、急降下爆撃機がいなくなったからと言って、油断は禁物よ。」
「はっ、分かりました。」
ベオリース大佐はそう言って頷いたが、モルクンレル中将の姿を見て、内心で仰天していた。
彼女は血に染まった腹を押さえ、右目からは血を流していた。相当な重傷である。
だが、彼女はまだ諦めていない。モルクンレルの目はまだ燃え盛っている。
「例え、あたし達がやられようとも、敵空母を全て使用不能にすれば、増援部隊を送れる。諦めるのは、まだ早いわ!」
そうこうしている間にも、アベンジャー隊は輪形陣外輪部を突破し、巡洋艦の防御ラインに達していた。
左舷900メートルの位置にいる巡洋艦のゼルグレスが、狂ったように対空火器を撃ちまくる。
アベンジャー隊は海面スレスレの高度で、ゼルグレスの前側と後側を抜けつつある。
1機が、唐突に胴体から火を噴き、バランスを崩して海面に叩きつけられた。
しかし、ゼルグレスがあげた戦果はそれだけであった。
最終的に、クァーラルドの左舷には7機のアベンジャーが向かってきた。
クァーラルド自身も、ドーントレスの爆撃から生き残った対空火器を総動員して、アベンジャー隊を迎え撃つ。
「右舷にも敵です!」
右舷側の見張り員が報告してくる。
右舷側には、6機のアベンジャーが、護衛艦の対空砲火を突っ切ってクァーラルドに接近しつつあった。
「面舵一杯!」
ベオリース大佐がすかさず指示を飛ばす。
左回頭から直進に移っていたクァーラルドが、間を置いて再び艦首を振る。
クァーラルドが曲がり始めた時、左舷側のアベンジャー隊が次々と魚雷を投下した。
その1秒後に、右舷側のアベンジャー隊も魚雷を投下した。
「敵、水中推進爆弾投下!」
ベオリース艦長は、右舷と左舷を交互に見、そして愕然とした。
白い航跡は、クァーラルドを包み込むように、扇状に広がりつつあった。
横一列に展開した14機のアベンジャー群は、クァーラルドを見事に魚雷の網に捉えたのだ。
「司令官!」
絶望に表情を歪めた艦長が、モルクンレルを見る。
彼女は覚悟していたのか、いたって平静であったが、顔からはすっかり血の気が引いていた。
3発の魚雷が、クァーラルドの艦首や艦尾方向を外れて、反対側に遠ざかっていく。
4本目の魚雷も、クァーラルドの艦尾方向を走り去っていく。
しかし、5本目は、右舷中央部、つまり艦橋の横側に突っ込んできた。
割れたガラス窓から、白い航跡が隠れた時、彼女は痛む体を引き締めて、襲い来る衝撃に備える。
ガン!と何かが当たったその刹那、ズドーン!というこれまでとは違う衝撃がクァーラルドに襲い掛かった。
下から急激に突き上げられるような衝撃に、誰もが飛び上がる。
続いて、2本目の魚雷が左舷前部に突っ込み、ド派手な水柱を立ち上がらせて、
再び乗員を転げ回し、壁や天井にたたきつけた。
第4甲板の機関部で、魔力の出力制御を行っていた、魔道機関兵のオルクス・ポネルボ上等水兵は、
突然起こった衝撃に転倒してしまった。
転倒した際、右腕を手摺にぶつけた。
「いてぇ!?」
そのまま床に転げ、激痛に呻く。彼は第2機関部という部署で働いており、
6名の魔法使いと一般機関兵が彼と一緒に働いている。
その仲間達も、急な衝撃に揺さぶられ、転倒してしまった。
「今のはいった」
ズシーン!という突き上げるような衝撃が、彼の言葉を遮り、体が床を転げまわった。
衝撃がやや収まって、彼は立ち上がろうとした。顔を壁側から通路に向けた、その直後、
真っ白な閃光が彼の網膜に灼きつけられた。
ドガアーン!という物凄い爆発音が鳴り響き、爆炎が通路上から吹き込んできた。
仲間の2、3人がそれに巻き込まれたが、すぐに彼は、窪んだ床に体を隠した。
暴風のような音が頭上で鳴り響き、熱を含んだ風に、皮膚や頭が炙られそうになった。
(まるで、鳥の丸焼きにされている気分だ!)
ポネルポ上等水平はそう心で叫んだ。
爆風が鳴り止まない内に、2度、3度の衝撃が伝わり、その度にクァーラルドの艦体が激しく揺れた。
気が付くと、爆風は止んでいた。頭を上げ、彼は周りをぐるりと見渡した。
機関制御室は、先の衝撃が起きる前とはまるっきり様相が違っていた。
木製の棚に置かれていた薬品や工具、それに各種専門書などは全てが吹き飛ばされ、ただのボロクズと化している。
予備の作業服が置いてあった重い道具箱は、あっさりとひっくり返され、
ズタズタに千切れまくった作業服などが周辺に散乱している。
制御装置は全てが壊れており、正常値を刺していたゲージの針が、あらぬ方向を向いて止まっていた。
そして、共に働いていた仲間たちは、彼を除いて床に横たわっていた。
仲間のうち、通路で横たわっている仲間は、もはや人と呼べる状態には無い。
2つの体のうち、1体は首が無くなっており、右足が千切れかけている。
もう1人は腰から上が綺麗さっぱり無くなっている。
その上の部分は、通路側の曲がり角に貼り付けられていた。
そして、2つの体の最大の特徴は、どれもが真っ黒に焦げていた事であった。
他の仲間も、首が正反対に曲がったり、頭から致死量の出血をして死んでいたりと、どれもが酷い有様であった。
「う・・・・・うっ・・・・・・ぁ」
体中が恐怖で震え、足から力が抜け、立ち上がる事ができない。
叫びたい。泣きたい。
彼はそう思い、思いっきり叫び、思いっきり泣こうとした。
しかし、叫ぶ事も泣く事も出来ない。
体はどこも異常は無い。ただ右腕がかなり痛いだけだ。
なのに、思うように体が動かせない。
辺りには、浸水してきた海水が流れ出し、破壊された機関室を濡らしつつある。
彼は直感的に、
「自分も・・・・・ここで死ぬんだな」
と確信した。そう思うと、こみ上げてきた恐怖感は嘘のように引いて行った。
「おい!何やっているんだ!?」
肩を誰かが思いっきり揺さぶる。目の前には、いかつい顔をした男が彼の肩を掴んでいる。
「・・・・・・え?」
「え?じゃない!」
ごつい顔の男は彼が持っていたものを無理やり降ろして、顔を強引に、それに向かせる。
「死体を運んでどうしようというんだ?」
「死体?そんな・・・・まだ生きています。首は変な方向に曲がっていますが。ほら、ちゃんと体温もありますし」
その直後、ごつい男が顔面を殴ってきた。左頬を殴られ、口の中に痛みと、鉄の味が充満した。
「話すのは後だ!お前も連れて行くぞ。おい、手伝え!」
別の男2人が現れて、両脇を抱えられて、機関制御室から出されてしまった。
「大尉。この若いの、死体を抱えたまま、ずっと立ち尽くしていましたが。なぜすぐに逃げなかったんでしょうか。」
「詳しくは分からんが」
大尉と呼ばれた男は、指先で自分の頭をとんとん叩く。
「壊れちまったのさ。」
壊れちまった?ポネルボ上等水平は、その言葉を不思議に思ったが、すぐに理解できた。
(壊れたって事は、僕の精神が壊れたって事なんだな。よく見たら、クァーラルド自体動いていない)
クァーラルドは、両舷に3本ずつ飛雷し、動力系統が壊滅させられた。
推進能力を大幅に削がれた為、この竜母は完全に停止し、今や沈没を待つだけとなっている。
(クァーラルドが壊れた・・・・仲間達も壊れた・・・・そして、俺も壊れた・・・・
モノって、なんでも壊れるんだな)
妙に落ち着いた頭で、ポネルボ上等水平はそう思っていた。
午前10時50分
クァーラルドは、今や沈没寸前にあった。
アベンジャー隊が放った魚雷は、6本がこの竜母の艦体を叩き割った。
被雷箇所は中央部、後部に集中し、あっという間に動力系統を寸断された。
飛行甲板の火災も酷くなる一方で、もはや手の施しようが無かった。
モルクンレルはクァーラルドの放棄を決定し、生き残った乗員を全て、寮艦に移乗させた。
モルクンレルは、駆逐艦ヴェルザルイに移乗した後、急に倒れ込んでしまった。
彼女が負った傷は予想以上に深く、瀕死と言ってよい状態である。
軍服の腹の部分は血に染まっており、右目は完全に使えない。
口の端からは耐えず血を流していたが、彼女は最後まで指揮を取ろうとした。
気を失う間際に、モルクンレルは最後の命令を発していた。
「後方の輸送船団を、至急ミスリアルに向けなさい。アメリカの空母が全て傷ついた以上、
空の脅威は格段に減ったはず。後は、ヴォルレイ少将に任せるわ。」
そう言って、モルクンレル中将は気を失った。
第24竜母機動艦隊の主力は、ほぼ壊滅してしまった。
まず、第2群の竜母イリヤレンズとギルガメルは、共に多数の爆弾、魚雷を受けて撃沈された。
イリヤレンズは爆弾6発、魚雷5本を受けた。
被雷から15分後には、右舷に転覆し、それから10分後に沈没した。
ギルガメルに至っては、エンタープライズ隊の爆弾を14発も食らい、アベンジャーの魚雷を受ける前に
大爆発を起こし、わずか7分ほどで沈没していった。
向ける矛先を失ったエンタープライズのアベンジャー隊は、護衛艦を攻撃して、巡洋艦、駆逐艦各1を撃沈した。
そして、第1群はクァーラルドが爆弾6発、魚雷6本を受けて大破炎上、沈没は確実である。
悲惨そのものである。文面からして、まるで船の沈み方の見本市のようである。
唯一、モルクドに至っては、爆弾3発に魚雷1本の被害のみで、他の艦に比べて被害は軽微そうであった。
しかし、たった1発の被雷でも、モルクドは最高速力を発揮できなくなり、
今では10クラウの速力を発揮できるか、どうかである。
迎撃に出たワイバーン部隊は、47騎が撃墜され、12騎が傷を負っている。
それに対して、敵戦闘機17機、攻撃機8機を撃墜したのに留まっている。
米艦載機は、全体で60機以上を叩き落したと見積もられているが、これはあまり信用できない。
艦隊側でせいぜい12〜3機、迎撃側で20機ほどである。
一方、本隊と、米機動部隊の後背を突いた第3群の攻撃隊は、敵空母4隻、護衛艦3隻に命中弾を与え、
内1隻を撃沈し、3隻を大破させたと、魔法通信で報告されている。
これが、今回行われた戦いの、大まかな結果である。
「敵の空母1隻を撃沈するのに、我が方の竜母を3隻も失うとは。なんて割に合わんのだ」
主任参謀は頭を抱えたい気持ちになった。
まだ、第3群は健在で、残った残存機で攻撃は可能であろうが、敵機動部隊の対空砲火は熾烈を極め、
かなりのワイバーンを失ったと聞いている。
「それはともかく、敵にも無視しえぬ損害を与えたんだ。このまま、第3群の竜母が粘れば、増援部隊を無事に送り届けられる。」
勝算はまだ、こちらにもある。
主任参謀そうは思った。
午前11時30分 バゼット半島北西200マイル沖
「損害は、空母レンジャー、軽巡サンファン沈没、空母ホーネット大破、
エンタープライズ中破、ヨークタウン、軽巡ブルックリン小破。直衛のF4F18機喪失、
14機被弾。敵に与えた被害は71機を撃墜し、20機以上に損傷を与えました。
以上がTF16,17上空で行われた戦闘の結果であります。」
ブローニング大佐の結果報告を、ハルゼー中将はぶすりとした表情で聞き入っている。
ブローニングは続ける。
「続いて、敵機動部隊上空で行われた戦闘結果です。攻撃隊からの報告では、暫定ではありますが、敵空母3隻、
護衛艦4隻撃沈、敵空母1隻、護衛艦1隻を大破させ、敵機45機撃墜しました。
味方機の喪失は46機であります。」
「ちょっとばかし、被害が大きすぎたな。」
ハルゼーは長官席から立ち上がった。
「エンタープライズは使えそうか?」
ハルゼーはエンタープライズ艦長のアルベルト・マッカン大佐に顔を向ける。
「現在、飛行甲板の穴を塞いでは降りますが、さきほど消火が完了しましたが、修理作業は10分前から
始めていますので、まだ時間はかかります。」
「何時間だ?」
「ダメージコントロール班の報告では、短くても3時間はかかると言われています。
もちろん、順調に行けばですが。」
マッカン大佐は、やや暗そうな口調でそう言った。
「くそ、シホールアンル野朗め!!」
ハルゼーが忌々しげに叫んだ。
先の戦闘で、エンタープライズはワイバーンの爆弾を2発受けていた。
1発は右舷前部飛行甲板の端に命中し、機銃座と高角砲座を吹き飛ばした。
この被弾では飛行甲板の損傷は少なかった。
2発目が問題であった。
この爆弾は、後部甲板に命中していた。
まずい事に、命中箇所は飛行甲板の舷側などの端とかではない。
ほぼ真ん中の辺りにぶち込まれており、直径5メートルの大穴を穿たれている。
格納甲板のF4F2機とSBD2機もスクラップにされた。
この被弾で、エンタープライズは空母としての機能を失わざるを得なくなった。
ちなみに、TF−17のヨークタウンも、飛行甲板に爆弾1発を叩きつけられ、缶室を損傷したが、
あと1時間半ほどで飛行甲板の修理は完了すると言う。
現在、前部の被弾箇所の修理を一旦棚上げにして、この命中箇所に応急修理班を集中させている。
それでも、修理時間は短くて3時間・・・・・・・
「帰ってくる攻撃隊の乗員に、さらなる負担を強いる事になる。艦長、修理時間を1秒でも短くするようにしろ。」
ハルゼーはマッカン艦長にずいっと詰め寄る。
「あと2時間足らずで、攻撃隊は戻って来るんだ。そいつらに安心して戻れるようせねばならん。
きついだろうが、このエンタープライズが使えなければ、攻撃隊の大部分は機体を放棄せねばならん。」
レンジャーが沈み、ホーネットが飛行甲板をずたずたにされた今では、
残るは使えそうなエンタープライズとヨークタウンのみだ。
レンジャー、ホーネットがやられた今となっては、攻撃隊の多くの機体は海没するであろう。
しかし、使える空母がヨークタウン1隻となっては、海没機は更に拡大する。
それを防ぐためには、どうしてもエンタープライズの復活は欠かせない。
「分かりました。1分でも、いや、10分でも修理時間を短くするために、あらゆる努力を試みます。」
「頼んだぞ。」
マッカン艦長は決意した。彼はスピーカーを持つと、手空き乗組員に作業の協力を命じた。
「しっかし。敵の主力はコテンパンにぶちのめしたが、こっちはこっちで酷い手傷を負ってしまったな。」
ハルゼーはしかめっ面でブローニング大佐にそう言った。
「まさか、敵の空母がわが艦隊の後ろにいるとは思いませんでしたな。」
「てっきり、残りの2隻は輸送船団に付いていたと思ったが、敵もなかなかやりやがる。
危険な戦力分散を敢えて行うとは。敵将はどんな奴なんだろうな、実際に会ってみたいものだ。」
彼は右舷側を眺めた。右舷側には、エンタープライズの妹である空母ホーネットが航行しているが、
飛行甲板から未だに黒煙を吹き上げている。
ホーネットは、飛行甲板に6発の命中弾を受けており、火災が燃料庫に及んで大爆発を起こした。
しかし、レンジャーやワスプ級より頑丈な艦体を持つホーネットは見事に耐え切り、やっと鎮火のメドが立った。
しかし、飛行甲板は完全に破壊され、今現在も火災が続いている。
だが、格納甲板より下の被害は、外見上は大損害を負っているのに対して思いのほか少ない。
それに、機関部も健在で、30ノットの高速力を発揮できる。
空母としての機能は失ったが、船としてはまだまだ健在であった。
それに対して、TF17のレンジャーは5発の爆弾を受けながらも、軽防御であったのが災いし、
敵の爆弾が機関部や中枢に入り込んで炸裂。動力部の過半以上を失い、消火活動も満足に出来なかった。
防御力をほぼ無視し、搭載能力を向上させたたレンジャー。
防御に出来る限りの力を入れ、搭載能力も向上させたたヨークタウン級。
両級の生存性の違いは、このバゼット半島を巡る戦いで、冷酷に、そしてはっきりと表されたのである。
午後5時20分 バゼット半島北西190マイル沖
「おっ、英雄達のお帰りだぞ。」
TF17旗艦、ヨークタウンの艦橋から、司令官のフレッチャー中将は艦載機の姿を認めた。
「数が減っていますね。」
艦長のバックスマスター大佐が抑揚の無い口調で言う。
「敵さんも、空母が重要な事は知ってるからな。迎撃も自然と激しくなるさ。」
フレッチャーはぼそりと言い放つが、内心ではどこか寂しいものがあった。
午後1時に、第1次攻撃隊は帰ってきた。
攻撃隊は、出撃時と比べて、幾らか数を減らしていた。ヨークタウンは、自艦の艦載機と、
レンジャーの艦載機の幾らかを受け入れた。
結果、ヨークタウンは定数以上の121機の艦載機を持つ事になり、格納甲板は満杯になり、
飛行甲板にも20機ほどが係留された。
エンタープライズも、奇跡的に修理を終えることが出来、自艦のものと、ホーネット艦載機の幾らかを受け入れ、
124機を保有するまでになった。
だが、海没機は74機を数え、ミスリアル救援部隊の航空兵力は、出撃時の60%に落ち込んでしまった。
ハルゼーは、ノーチラスが発見した敵機動部隊を撃滅するために、第2次攻撃隊を編成させた。
午後2時には、ヨークタウンからF4F12機、SBD18機、TBF14機。
エンタープライズからF4F16機、SBD15機、TBF14機。合計89機が、
200マイル南西にいる別の機動部隊に向かった。
午後3時30分には敵機動部隊を捕捉できた。
これは、前回のサラトガとの戦いで、竜母2隻を率いたヘルクレンス少将率いる竜母部隊であり、
竜母2隻と巡洋艦1隻、駆逐艦6隻が進撃していた。
ヘルクレンス部隊は、第2次攻撃隊41騎を発進させて、そのままミスリアル救援部隊に向かって進軍していたが、
それが米第2次攻撃隊の会敵時間を早める結果となった。
ゲルアレとジルスギットと呼ばれる2隻の竜母は、ヨークタウン隊、エンタープライズ隊の艦載機の集中攻撃受け、
ジルスギットが爆弾7発、魚雷4本を受けて撃沈され、ゲルアレも爆弾3発、魚雷2本を受けて大破させられた。
さらに巡洋艦ボンクと駆逐艦1隻が沈められ、ヘルクレンス部隊はまたもや壊滅的な打撃を受けた。
第2次攻撃隊は、F4F6機とSBD12機、TBF7機を失った。
ヘルクレンス部隊の受難は、第2次攻撃隊が去った後も続いた。
第2次攻撃隊の猛攻撃が終わり、ゲルアレ艦上のヘルクレンス少将がホッと安堵した時、唐突に
ゲルアレの左舷に2本の水柱が立ち上がった。
火災が鎮火しかけていたゲルアレは、今度こそ致命傷を負い、被雷から20分後に転覆。
2度の米軍機の襲撃に生き残った強運を生かせぬまま、沈没していった。
ゲルアレに必殺の雷撃を仕掛けた張本人は、今まで監視に当たっていた潜水艦ノーチラスだった。
第2次攻撃隊の攻撃が終わって、ゲルアレの防備が薄くなった時、ノーチラスは6本の魚雷を
ゲルアレの左舷3000メートルから発射した。
その内、4本の魚雷がゲルアレに殺到したが、実際に起爆したのは2発のみであった。
米海軍の潜水艦魚雷は欠陥魚雷が多く混じっている事が広く知られている。
その無能魚雷の威力は、この大事な時にも欠陥ぶりを発揮したである。
だが、起爆した魚雷はしっかりとゲルアレに深手を負わすことに成功し、ヘルクレンス部隊は、
生き残った竜母を失い、機動部隊としての能力を抹殺された。
ちなみに、米機動部隊に向かったワイバーンは、TF17に迫ったものの、
50機のF4Fにたかられて、輪形陣に近付く前に大多数が撃墜された。
駆逐艦のオバノンに125リンル爆弾2発を命中させて大破させたが、最終的には1騎残らず叩き落された。
午後4時、敵残存艦隊と、輸送船団の索敵に当たっていた、エンタープライズのアベンジャーが、護衛艦艇に
率いられた数百隻以上の輸送船団を発見した。
輸送船団は東進しており、シホールアンル軍がミスリアル増援を諦めていない事を確認させられる事となった。
最後のアベンジャーが、最終アプローチに入る。
甲板士官が、両手にテニスラケットのようなものを持って、それを両側に広げている。
これは、着艦時に行う母艦側の着艦補正で、甲板士官が行う事になっている。
今は、甲板士官が綺麗な体制で、両手のラケットを水平にしているが、着艦する機体が、左、もしくは右に傾いている時、
甲板士官もどちらかのラケットを傾けて、相手に機体の姿勢がまずいと知らせる。
素直に従うパイロットもいるが、切羽詰った時や、経験の浅いパイロットは、
この指示を無視して、強引に着艦を強行するものもいる。
そのような者は、愛機を壊したり、前部甲板に溜まっている艦載機や、舷側の海面に突っ込んだりして酷い目に会う。
このアベンジャーは見事な体制で飛行甲板の後ろ端を飛び抜け、少し越えたところで着艦に成功した。
「第2次攻撃隊、収容完了しました。」
やや間を置いて、航空参謀が報告してきた。それに、フレッチャーは満足そうに頷く。
「第2次攻撃隊はよくやってくれたよ。敵空母1撃沈、1隻大破か。
これで、シホールアンル側も稼動空母を失ったわけだ。」
甲板上で行われている作業を見ながら、フレッチャーはそう呟いた。視線を左舷側海面に移す。
ヨークタウンの左舷に位置している軽巡のサヴァンナが、増速してヨークタウンを追い抜いていく。
サヴァンナだけではない。
重巡洋艦のアストリアやヴィンセンス、それに護衛の要である、戦艦のワシントンまでもが、
艦体速力の23ノットを上回るスピードで、輪形陣から抜けつつある。
右舷側では、駆逐艦のエレットとハル、モーリスが速力を上げながら、同じように輪形陣から離れていく。
「レンジャーやホーネットが使えれば、こんな手間をかけずに済みそうだったが」
フレッチャーは深くため息をついた。
「今日のような場合には、水上艦で決着をつける事も、やむを得ないな」
SS投下終了であります。
うーん!軍板で見ると、
前スレ519殿の更新量は超ド級でありますね!(゚∀゚)
老舗の物語氏ともども頼もしい限り!
と、いう訳で、私は4章目をたまに保守しています。
ここはエビチリ様や前スレ様たちにお願いいたしたく。
んで、とりあえず私もチョコット落としておきますね☆
真夜中のとある米艦。
入ったことがある者なら誰でも判る事だが、狭い鉄箱の中は、大変な世界であった。
狭い上に鉄の箱ともなると人間や船に付き物の様々な臭いに満ち溢れ、
それが暑い夏の夜ともなれば極め付けだった。
そんな暑苦しい艦内に居た者は、例外無く誰もが外気を求めて上甲板へと逃げ出していた。
そしてソコは、日本軍の奇襲の心配の無い、最高に安全な世界。
― なんて、快適な海なのだろう! ―
見れば、近くに浮かぶ日本の艦隊も、何やら賑やかな雰囲気であった。
そんな日本の艦隊方向から、朗々とした歌が響き渡ってくる。
田舎出身の者達どころか都会の者でも知る人ぞ知るであったが、
それは、日本海軍軍人が歌う、生の軍歌であった。
・・・最寄の艦影は、戦艦榛名と見定めたが、
榛名の側にいる駆逐艦らしき艦影は、最近、表敬訪問してきた朝霜なのかどうかまでは、
周りの世界が暗すぎて、遂に判らなかった・・・。
「 ・・・提督? 」
幕僚の怪訝そうな声に、思い出の世界からフと我に返ったスプルアンスは、
ああ、と答えただけで、また何時もの艦隊指揮に戻って行った。
同じ世界から次元ジャンプしてきた伊藤整一の日本艦隊と、綿密に打ち合わせた八百長合戦。
本来なら信じられないほどの汗と鉄量を費やして占領した島々をいとも容易く占領して行く、
そんな「 演習 」と行って差し支えない、安全な日々。
そして海兵隊はさっき占領したばかりの海浜で、その日も豪華な食事にパクついていた。
伊藤整一の艦隊に守られて撤収して行った日本兵がその食事風景を見てしまっていたら、
彼我の余りの国力差に、今までの苦労は何だったのだと泣いて悔しがるを通り越して、
自分の体から、あらゆる意思と力が抜け落ちて逝く、
そんな深刻な無力感と無常感に打ちひしがれ、どうにもならない状態になっていただろう。
輪切りのパインナップル。豆や肉やライスのスープやシチュー。
御菓子も、缶詰も、甘味料飲料水も、何でもあった。
そして念の為、逃げ遅れた日本兵の奇襲にそなえて、105ミリや75ミリの砲弾を派手に打ち鳴らし、
それからゆうゆうと始める南の島でのピクニック。
そして彼らが奥地で見るものは、
何時もの事ながら、綺麗に清掃されて何も残されていない、日本軍の陣地後。
現地住民に聞くと、持ち運べない分は総て住民にくれてしまったとの事。
そんな状態だったから、占領作戦を担当した連中は、
国の家族への土産品に使える戦利品の無さに不満の声を洩らすほどであった。
「 ジャップはなんて貧乏なんだ!持ちかえれる物が何一つ残っていねえよ! 」
そんな連中の威勢のいい言葉を聞いて、1945年の未来から飛ばされてきた者達、
― 今は、自分たちが血を流して占領してきた“そこ”の道案内人 ― らは、
この< 楽ばかりしている連中 >に喧嘩を売ってやりたい思いに震えていたのだが、
この< 楽ばかりしている連中 >と口を聞いただけでお偉方は銃殺するぞ!と厳命していたから、
自分以外には聞こえない位の小さな音で舌打ちをし、横を向いて唾を吐き捨てるだけでしかなかった。
だが、そんな45年の者達の魂の奥底からの(深刻な)不満を余所に、
「 こんな汚え陣地なんたらかんたら!ジャップを1人残らずなんたらかんたら! 」
と、43年の連中が、快活にして黒い米国冗談でシャーシャーと吹きまくっているを、ただ黙って耐えているのは、
45年までの世界を見てきた彼らにとっては本当に、本当に大変な事なのであった。
「( お前らなんぞバンザイ・アタックで1人残らず殺られちまえばいいんだ! )」
ある者は誰にも見られない様に、タワラで、ペリリューで、硫黄島で、死んだ仲間の遺品をグッと握り締める。
そしてある者は真昼にも襲い掛かってくるフラッシュバックにワッと行ってかがみ込むのだった。
タタタタタタタタタタ・・・と響いてくる日本の機銃音。
隣に居た仲間の顔が吹っ飛んでいるのに気が付いた。
そして顔を上げる事も出来ずに珊瑚礁の水の中に逃げ込んで。
真っ暗な闇の中、白刃を煌めかせて、裂帛の気合とともに駆け込んでくる死神達。
そして、見る見るうちに巨大なシルエットになってくる、カミカゼの、断末魔の、機影。
このころ、幕僚たちからは「 寝てばかりいるなあ 」と苦笑されていたスプルアンスは、
実のところはホワイトハウスのルーズベルト大統領とその補佐官たちに、
秘密にして必死の日米講和を陳情していたのだった。
最近彼が寝てばかりいるのは、演習同然の八百長戦の日々だから、ではなかった。
彼は24時間、ただただ日米講和の知らせを待っているだけだった、から。
最近は43年の首脳部の余りの理解の無さに、
「 私がこの日米戦に反対だったという記録を残して置いてくれませんか? 」
と、堪忍袋の緒を切らしかけるしまつ。
無論、ルーズベルト以下、特に、剃刀の様に切れるキングは、
このもう1人のスプルアンスの報告に注意を払わないでいる訳では無かったのだが、
「 真珠湾を忘れるな! 」とブッた当の大統領が在職中で、
しかも、ミッドウェー以来、急速に広がる占領地と毎日もたらされる連戦連勝の報告に、
流石の( 理詰めで鳴る )合衆国政府首脳部も、
何時しか、ミッドウェー以前の日本国のような「 驕り 」が生まれつつあったのは、
戦争の最中の必然であったのかもしれない。
そして、スプルアンスの、前述の言動が、43年の米国と45年の米軍との、
決定的な溝になって返ってくる、とは、
この時の彼らには、知る由も無い未来の事であったのだった。
投下終了です。
・▽・)ノ ではでは☆
よければ分家の171氏らもここで何か書いてみなされたら如何?
とお誘いしてみながら・・
F自スレが次スレもう立てないのは翡翠のせいらしいよ
151 :
名無し三等兵:2006/10/17(火) 17:07:06 ID:taCliOHm
↑
ウィルス注意
「 ・・・情けないものだな・・・ 」
四千年の歴史を誇った大地に吹く風が、この国に冬の訪れを告げていた。
見渡す限りの廃墟。
無人の荒野と化した西方神権国家ミスナの町や村。
風に吹かれてカランコロンと転がって行く水桶だけが、1人寂しく踊っていた。
「( 自衛隊と市民は無事なのであろうか )」
ミスナのテロリスト― 高位の魔術師も少なくない ― が、
進駐してきた外国勢力を排除するために、現代兵器に対して召還魔獣をもって対抗し続けた、報い。
度重なる召還によりほころび始めた次元の割れ目から、次々に現れる、大悪魔達。
ここミスナでも、最初の次元ジャンプを起こしたあの世界の様に、時空の崩壊が、始まっていた。
だが、平成自衛隊は、間一髪で、助かった。
少し前に居留区で巻き起こった市民の暴動。その慰撫の為の撤退。信じられない程の幸運であった。
そして平成自衛隊が去った直後に現れた破局。連合軍は雪崩れを打って壊走していった。
西方神権国家ミスナの南方を1週間で制圧した重戦車の群れも、残らず退却していった。
「( 今度ばかりは、あの我侭な連中に感謝しなければならないだろうな )」
心の中で、塞翁が馬を苦笑。
呆気無く崩壊した連合軍と、高度な市民国家( 日本 )のマイナス面を嘆きながら、
各地から計上されてきた被害状況への対策に、頭が痛い今井であった。
が、いずれにせよ、妖精族を多数抱える今井の軍は、余りグズグズしていられない。
愛馬に揺られながら、
猫の子が聞いたのなら確実に飛びかかってくる音を微かに立てながら、
各地から計上されてきた被害状況のリストをめくる。
「 羊皮紙とガチョウの羽ペン 」という、気合の入った世界でなくて本当によかった。
だが、書類の確認作業など、面倒臭い事には変わりが無い。
で、リストを信じるのなら、
自衛隊がミスナの治安維持活動で失ったのは、以下の通りであった。
90式戦車1台( テロリストのファイヤ・ボール )乗員は数日間の怪我( 焼け出されて )
74式戦車1台( テロリストの地の精霊設置地雷 )乗員は1週間の怪我( 穴の落差の分 )
各種装甲車4台( 巨人族の投石や精霊設置地雷等 )乗員に重軽傷者が出る騒ぎに発展。
各種車両類9台( 人為による崖崩れ、奇襲攻撃等 )新規採用の地元民に大きな被害( 工事用人員 )
で、東方ライン皇国軍が失ったのは、以下の通り。
戦国武者( 指揮官級 )2名
募集兵第1期・人間族兵 8名 ドワーフ族3名、エルフ族2名、ホビッド族2名、ケンタウロス族1名
西方神権国家ミスナ兵 45名 うち元国軍40名、貧民街での新規募集人員から5名。
戦国武者が2名死傷しているのは、
それぞれが任せられたミスナ国軍小隊を陣頭指揮中、退却中に転んだ部下を庇っての事だった。
そしてミスナ元国軍出身者の犠牲が突出しているのは、上記の小隊長の屍ないし重態を、彼らが全力で守り抜いた証であった。
国軍の第1中隊を率いる山中鹿介が愛馬にまたがり、悠然と近づいてくる。
「 これから我らは、どういたしましょうや 」「 まずは王都クシャへ 」
「 大休止は如何に 」「 山中殿はどう思われますや 」
「 ここから少し先に村がありもうす。そこでの大休止は如何にございましょうや 」
「 また、死体埋め作業に忙殺されそうですが、そうすることにしましょう 」
・・・その村には、昼前に全軍が入った。そして、村には、死体しか残されていなかった。
しかし・・・
家畜の被害は思った程ではないし、人の死体も思ったよりは少なかった。
元居た世界なら「 村人達が動乱から無事に逃げおおせた図 」なのだが・・・
そんな村の光景に、何か不吉な臭いを嗅いだ今井。
同様に各諸族も何らかの胡散臭い臭いを感じ取ったらしい。
何せ異世界。何せ異郷の大地。そして大悪魔出現の後の事ゆえ、油断出来ない。
臨時の協議の結果、軍の方針は、
「 この村や他の村村は捨て置いて、一刻も早く人口密集地帯か、最寄の妖精族の版図までの撤退を 」
という事になった・・のだが。
協議の結果を、無念そうに聞いていた男が1人。
山中鹿介は、黙って席を立ち、
道々の死者達に向かって手を合わせ目を閉じて、念仏や経を唱え始めていた・・。
・・・仕方が無い・・・
でも、考えてみれば、何も急ぐ必要は無いのかも知れない・・・。
「 山中殿 」
「 もう少しで、終わりもうす 」
「 判ったから、埋めよう 」
「 ・・・ 」
「 私が( 黄泉返ってこないように )切るよ 」
兵らには先に出発を命じ、その間、2人で1つの村の死体の片づけに移った。
ハーフエルフとホビッド達も何か言いたげであったが、
彼らは軍の大事な斥候と、大事な罠探知機でもあったから、ゆっくり、休んでもらわねば。
そういう訳で彼らには顔を下げ、左右に振って答えて、先を急いでもらうことにした。
だが、結局、途中から見ていられなくなったのか、ドワーフ達はやってきて、村人の墓穴を掘り始めだした。
そして。
「 俺と代わりな 」
「 斉藤さン 」
「 ・・・止めるな・・・ それと、斉藤、で、いい・・・ 」
自衛隊でも屈指の戦士であろう斉藤隊員が今井の手から戦斧を奪うと、
その鍛え上げられた肉体を駆使して、あっという間に、これらの作業を終わらせてしまった。
そして斉藤隊員がゾンビ防止で最後の死体を断裁し終わる頃には、彼に触発された少なくない者達が埋葬作業に参加していた。
「 おぬしら・・・気持ちは嬉しいが、軍法違反であるぞ・・・ 」
と、まあ、老舗への支援射撃終了。
もっとも、翡翠作品があると、物語氏作品へのレスもあやや状態になりますからの。
まあ乙も何も言えないのですが、、。
で、肝心のここのアレなんですが、
マリアナで日本軍が勝ってもいいのかなあ・・
はあ。
39年の平和な太平洋でF4F飛ばしたい。ではでは。
翡翠はマルチするなよ
翡翠氏投下乙であります。
では、自分も更新分を投下いたします。
10月24日 午後10時40分 ノーベンエル岬沖北70マイル沖
薄暗い海上に移る、無数の船。辺りを見回しても、見えるのは大小さまざまの船である。
「輸送船を集める時は、徴発された側の主はかなり困っていたようです。」
後ろから、参謀長がそう言ってきた。
艦橋から輸送船を見渡していた、ザイル・ヴォルソレイ少将は振り向く。
「確かに困るだろうな。たかが漁船といえど、生活を支える大切な道具だ。」
ヴォルソレイ少将は、伸びた顎鬚をさすりながら言う。
「本人達は苦しいだろう。しかし、彼らの協力のお陰で、ミスリアルが手に入るんだ。
国に尽くしているんだから、彼らだって光栄だろう。それに、船は返さんと言っている訳じゃないのだ。」
不遜げな表情で、彼はそう言う。口調はどこか穏やかであるが、貴族出身の彼は、一般住民を見下しているきらいがある。
「出港して1週間。もうすぐでミスリアルだ。明日の午後には、エルフ共に屈辱を与える事が出来る。」
「その通りです。しかし、」
参謀長の表情が一瞬歪む。
「アメリカ人共には、あと一歩という所で苦杯を嘗めさせられました。」
「思い出したくないものだね。こっちの竜母が、あっという間に皆やられるなんて。
6隻で4隻に挑んだのに、こっち側が全滅寸前の被害を受けるとはな。」
ヴォルソレイ少将は深くため息をついた。
シホールアンル海軍の竜母部隊は、正面と、後方に回した味方部隊とで、見事米機動部隊を挟撃する事が出来た。
報告によれば、レンジャー級(シホールアンル軍は、捕虜の米兵の証言を下に、米海軍の艦艇識別表を作らせており、
今では新鋭艦以外の全ての艦種が見分けられている)の正規空母1隻と、未知の新型巡洋艦1隻を撃沈し、3隻大破確実とあったが、
アメリカ側の空襲は、こちら側が送ったワイバーン部隊の空襲より、より激烈であった。
主力部隊の竜母4隻は、わずか40分の戦闘で、旗艦クァーラルドも含めた3隻が撃沈され、ただ1隻の生き残り竜母のモルクドも大破した。
また、ヘルクレンス部隊も、大破したはずの米空母艦載機にやられ、2隻とも打ち沈められた。
残る1隻の竜母モルクドは、損傷艦と共に後方に下がっていった。
「アメリカ側の攻撃はうまい。いや、うますぎると言ったほうがいいな。」
「高空からの急降下爆撃、低空からの水中爆弾攻撃、どれもこれも、鮮やかにこなしておりましたからなぁ」
2人は、大きく肩を落とした。
「全く、とんでもない国に喧嘩を売ってしまったものだ。」
ヴォルソレイ少将の声音は、やや力ないものであった。
「ですが、アメリカ側も無視しえぬ損害を負っています。敵の空母は全て傷ついておりますから、
これ以上の戦闘航海は、恐らく無理かもしれません。」
「アメリカ野朗は、主力艦はなんとしてでも無事に持ち帰ろうとするからな。2月の海戦がそうさ。
あの時も、アメリカの戦艦3隻が沈没寸前の被害を受けたが、奴らはそれでも、処分する事無く持って帰りやがった。
それに、作戦事態も常に慎重に行っているからな。まあ、攻撃があるとしても、明日の昼間あたりに、
軍艦を差し向けてくるだろう。その時、わが護衛艦隊がどれだけ食い止められるか。それで勝負は決まる」
ヴォルソレイ少将は、これまで戦われてきた海戦は昼間のみの海戦であったから、
今度も米側は、昼、もしくは早朝時に船団に軍艦を差し向けてくるだろうと考えていた。
事実、2月の海戦では、旧式戦艦のアリゾナ、ミシシッピー、カリフォルニア主体の艦隊をシホールアンル側の
重要拠点に突っ込ませ、拠点をめちゃめちゃしただけではなく、戦いを挑んできたシホーアンル側の戦艦2隻と
巡洋艦3隻、駆逐艦3隻をことごとく撃沈して、最終的には大破しながらも、強引に帰って行った。
「明日が勝負だぞ。俺たちが時間を稼いでいる間に、増援部隊の揚陸を成功させねばな。」
「勝てると思いますか?」
参謀長の問いに、ヴォルソレイ少将は、
「勝てるに決まっている。頼みの戦艦も4隻あるし、巡洋艦も他の護衛艦艇も、合わせて20隻はいる。アメリカ野朗に引けは取らんよ。」
米機動部隊の空襲を受け、竜母がモルクド1隻のみとなった後、第24竜母機動艦隊は、駆逐艦4隻とモルクドを後方に下げ、
残りは輸送船団と合流し、バゼット半島に向かっている。
現在、700隻の輸送船に、約13万のシホールアンル陸軍の部隊が乗せられている。
これを援護するのは、シホールアンル第7艦隊の各艦艇である。
第7艦隊は、戦艦オールクレイとポエイレクレイ、巡洋艦はセルアッズ、ポーイストラム、
ベルグデル、フェプアイ、駆逐艦14隻である。
これに、第24竜母機動艦隊の戦艦ヴェレとポイルグ、巡洋艦オーメイ、モドルン、ネスレイ、
ルオグレイ、駆逐艦10隻が加わり、総合戦力で戦艦4隻、巡洋艦9隻、駆逐艦24隻という大戦力である。
護衛艦艇の性能を詳しく説明すると、戦艦4隻は、いずれもオールクレイ級と呼ばれるもので、
全ての艦が27ノットの高速力が出せる高速艦である。
主砲は米側の単位で合わすと、14インチ口径の砲を前部に2基、後部に2基、計8門積んでおり、
これに高射砲8門と副砲12門が加わる。
射程は28000メートルまであり、かなり強力である。
しかし、速力が高い分、装甲はやや薄いものとなっているが、それでも頑丈である。
このクラスの軍艦は、2月のヴェルグレントス沖の海戦で、2隻の劣勢ながらも、米側の旧式戦艦とほぼ互角の戦いを演じている。
巡洋艦は2タイプあり、1タイプはオーメイ級とよばれるもので、全体的にほっそりとし、高速性能のみを追求した軍艦見える。
実際はそうであり、時速で31ノットのスピードが出せる。
その代わり、砲戦力はいささか弱く、7インチ口径の砲を6門のみ積んでいる。
第24竜母機動艦隊では、ネームシップのオーメイがこれに属し、第7艦隊の巡洋艦は全艦がオーメイ級である。
続いてあと1タイプはルオグレイ級と呼ばれる艦種で、速力、スピード、防御のバランスが取れている。
武装は7インチ口径砲8門に副砲12門、高射砲6門と、かなりの重武装で、基準排水量は9000トンほどである。
シホールアンル海軍の標準巡洋艦は、このルオグレイ級であり、このクラスが、最初に米艦と砲火を交えている。
過去6度の海戦のうち、ルオグレイ級は3度参加しており、アメリカ側の各艦艇と激しくやり合っている。
「わが護衛艦群の中には、アメリカ側の中型艦とやり合っている艦もあります。
ですから、いざ艦隊決戦となっても、彼らを上手く足止めできるかもしれません。」
参謀長は自身ありげに言う。最初こそは、米海軍相手に一方的に叩かれ続けたが、戦うに連れて、敵側にも沈没艦は増えつつある。
「いや、足止めできるどころか、敵戦艦の1隻や2隻は沈められるかも知れないな。」
ヴォルソレイ少将は、いくらか弾んだ口調で言う。
昼間の空母戦闘では負けたものの、明日の昼頃に襲って来る米艦隊に大打撃を与え、
バゼット半島の近海から叩き出せば、彼の功績は大なるものとなる。
(そうすれば、本国内でのわがヴォルソレイ家の発言権も高まり、最終的には皇族とも親しくなれるかもしれない)
彼の脳裏には、初めて米艦隊を敗北させた英雄として、自身が称えられる姿が写っていた。
自分達の艦隊が、遠くで米戦艦のレーダーに捉えられているとも知らずに・・・・・・
午後11時 バゼット半島 ノーベンエル岬沖北北西70マイル沖
戦艦ワシントンのCICで、戦況を眺めていたウイリス・A・リー少将は、レーダーに映る敵の行動を見て舌打ちをした。
「う〜む、やはりな。」
レーダーには、反転し、体系を整えつつあるシホールアンル側の艦艇が下り、そこからやや離れた海域には、無数の光点が移っている。
数え切れないほどの光点は、先程よりややスピードを上げて航行している。
まるで、何かから逃げるかのようだ。
その逃げられている側に立っているのが、リー少将率いる襲撃部隊である。
「流石は歴戦のシホールアンル海軍だ。はいっと、後ろからは撃たせてくれんな」
「敵にも、生命反応を探知できる魔道師がいます。」
傍らにいる、参謀長のジェームス・アインツベルン大佐が言ってきた。
「優秀な魔道師では、30キロほど先の海上にいる漂流者も探知できるようです。」
「30キロか。じゃあ、今逃げようとしているシホールアンルの船団にいる魔道師にの腕前は、
並み、と言うわけだね。」
リー少将は、はにかみながらそう言った。
現在、反転しつつあるシホールアンル艦隊とは14キロ、輸送船団からは20キロほど離れている。
「そうなるでしょうな。しかし、敵船団を叩く前に、あの敵と戦わなくてはなりませんな。」
「その事は既に予想済みだよ。」
リー少将は落ち着き払った口調で答える。
「戦艦クラス4隻に対して、こっちの戦艦は、ワシントンとノースカロライナのみ。
そして、今日が、期待の新鋭戦艦の初陣というわけか。」
戦闘処女も今日で終わりだ、ワシントン。自慢の16インチ砲の威力を味合わせやれ。
彼はそう思った。
ワシントンを旗艦とする襲撃部隊が、機動部隊から離れたのは午後5時30分の事である。
救援部隊司令官のハルゼー中将は、敵輸送船団がバゼット半島に急行し始めたとの報告を聞くと、
すぐさまこれらを砲戦で仕留める事に決めた。
既に時刻は夕方。
艦載機は明日の朝までは使えない。しかし、朝まで待つと、敵輸送船団はバゼット半島の近海に到達する。
そうなれば、敵増援部隊の上陸は必至となり、エルフの国は滅亡する。
それはなんとしても、防がねばならない。
そして、この戦いで敵に深刻な損害を与えれば、防戦一辺倒に立たされていたアメリカとバルランドは、
その態勢を覆す事が出来る。故に、襲撃部隊の派遣は絶対に必要であった。
今日の航空戦で、空母こそ、全艦に被害を受けたものの、護衛艦艇では軽巡のサンファンが
沈み、オバノンが大破したのみ。
他にブルックリンがブレスと爆弾1発を当てられ、小破程度の被害を受けたのみで、ほとんどが健在である。
リー少将は、襲撃部隊の編成を次のようにした。
まず、打撃力の要である戦艦は、ノースカロライナとワシントンを入れ、他に重巡洋艦ノーザンプトン、
サンフランシスコ、アストリア、ヴィンセンス、軽巡洋艦ブルックリン、サヴァンナを入れる。
駆逐艦はハンマン、フレッチャー、グリーブス、シムス、ウォーデン、モナガン、エレット、
マウリー、ヒューズ、アンダーソン、ラッセルの計11隻を編入した。
残りは別の場所に置いて来ている。
こうして、輸送船襲撃部隊は、25ノットのスピードで、敵艦隊の予想針路に向けて驀進した。
そして午後10時20分、リー艦隊は、ついに敵輸送船団を発見したのである。
「敵艦隊、陣形を整えつつあります。」
「敵さんも、本気で潰しに来るな。それにしても、水上レーダーの調子がいいな。」
リーは、レーダーの調子がいい事に安心していた。
米海軍には、SGレーダーとよばれる艦載水上レーダーが搭載されているが、このレーダーが以外に曲者であり、
演習中に故障を起こすわ、岸壁や暗礁を敵艦と誤認しやすいわで、配備当初はいささか散々な思いをしている。
7月には、この水上レーダーの性能の悪さを如実に現した事件が起きている。
ある日、重巡洋艦ウィチタを旗艦とする第76任務部隊の12隻の艦隊が、霧の中にある大艦隊の影を発見。
すぐさまシホールアンル側の艦隊と判断した。
敵側が気付いていない事に気を良くした、艦隊司令官のノーマン・スコット少将は全艦に命じて、一斉射撃を加えた。
砲戦開始から2時間がたって、影は完璧に消え去り、スコット少将は大勝利を確信した。
だが、現実には、この影は海の害獣とよばれるゼルグリードの群れを、敵艦隊と誤認したものであった。
この膨大なめくら撃ちによって、スコット部隊が与えた戦果はゼルグリード60匹抹殺意外は何にも無かった。
逆に各種砲弾、合計1万発以上を消費して、スコットは上層部から大目玉を食らう事になった。
後々、近くの漁民が感謝の意を表したが、それは別な話である。
このように、あまりいい事のない水上レーダーであるが、それでも、最近は改良型が出回るようになり、
調子がいい時には20マイル先も探知できるようになっている。
そして、期待の水上レーダーは、敵艦隊の姿を克明に現していた。
「このワシントンとノースカロライナが、どれだけ働いてくれるかに掛かっているな。」
リーはそう言いながら、CICのレーダースコープに映る敵艦隊をじっと見つめていた。
敵艦隊は4列の態勢になりつつあり、内、一番右側の巡洋艦列は、味方艦列から突出しつつあった。
「分かりました。敵巡洋艦は自分達が引き付けます。」
巡洋艦部隊を指揮する、アインスワース少将は、旗艦アストリア艦橋上でそう呟いた。
現在、アインスワース少将が指揮する巡洋艦6隻は、32ノットのスピードで航行している。
アストリアの水上レーダーには、前方から突出しつつある、9つの光点が映し出されている。
しばらくすると、アインスワース部隊の上空に、敵艦から撃ち出された照明弾が煌いた。
「敵艦、照明弾を発射!同時に、右舷に回頭しつつあります!」
「俺達を無視して、あくまでも戦艦を撃つつもりだな。だが、そうはさせんぞ。艦長!取り舵一杯!」
「取り舵一杯、アイアイサー!」
艦長がさらに部下に伝える。やや間を置き、アストリアの艦首が左に振られていく。
「敵艦隊との距離、約9マイル!」
CICから彼我の距離が報告される。
もうそろそろ発砲してもいい頃だが、アインスワース少将は全艦が回頭を終わるまで、発砲を控えた。
最後尾のサヴァンナが回頭を終えるまで、さほど時間はかからなかった。
「星弾発射!」
アストリアの5インチ砲から砲声がなり、しばらくして敵艦隊の上空で星弾が輝いた。
敵艦の艦影が、うっすらとだが現れた。
「敵1番艦はオーメイ級のようですな。」
「オーメイ級か。見た感じでは、敵艦隊の前部分がオーメイ、後ろ部分がルオグレイ級だな。」
アメリカ艦隊とシホールアンル艦隊は、互いに同航しながら、次第に距離を詰めつつある。
そして、距離が8・5マイルをきろうとした時、敵1番艦が発砲した。
「敵1番艦発砲!」
アインスワースはついに決断を下した。
「全艦、撃ち方始め!」
彼の号令と共に、既に照準を合わせていた8インチ砲が火を噴いた。
ドーン!という音と共に、各砲塔の1番砲が砲弾を放つ。
しばらくして、敵艦から発砲された砲弾が落下してきた。
シューッという音が艦を飛び越えた、と思うと、アストリアの左舷側の海面に水柱が吹き上がった。
「弾着!」
こちら側の砲弾も敵艦の付近に着弾する。アストリアが放った砲弾は、敵1番艦の左舷側手前に落下した。
距離は600ほどであったが、結局は外れ弾である。
そもそも、最初の射撃では命中しない場合がほとんどだ。
むしろ、第1射目は着弾観測の意味合いが高い。
この第1射のデータを元に、徐々に修正して、砲撃の精度を上げていくのだ。
「敵弾、本艦より左舷1000メートル付近に着弾。」
後続の寮艦も発砲を開始した。いずれも、最初は外れ弾で終わった。
10秒後に2番砲が咆哮した。砲弾が敵艦の周囲に殺到していく。第2射も外れ弾である。
敵1番艦の左舷側に水柱が立ち上がり、敵艦の姿を隠す。
弾着位置は、敵艦より左舷400メートルの地点だ。
「さすがはレーダー射撃だ。光学射撃と比べて弾着の位置がいいぞ。」
アインスワース少将は、砲撃の精度が思ったよりいいので、いくらか安心した表情を浮かべる。
敵艦の第2射が迫ってきたが、これは再びアストリアの上空を飛びぬけて、再び左舷側の海面に突き刺さった。
さらに10行が経ち、3番砲が放たれる。
今度の弾着は、第1、第2射とは対照的に、敵艦を飛び越えてしまった。
敵1番艦の右舷に3本の水柱が立ち上がる。
レーダーからの情報だと、敵より700メートル離れている。
さらに、第4、第5射が放たれたが、いずれも敵艦を飛び越えたり、手前で着弾し、空しく水を跳ね上げるだけだ。
「当たらんのは仕方ないとしても、いずれも1000メートル以内に収まっているな。あちらさんに比べれば、射撃の精度はいい。」
アイスワースはそう言ったが、隣の艦長は、
「何をやっとるか!しっかり狙え!!」
電話で砲術科を叱咤していた。
敵艦の着弾は、アストリアを飛び越えたり、手前で着弾したりして、アストリアの状況と似たようなものだが、
実際は周囲800メートル以内に落ちた弾は1発も無い。
逆に、アストリアは今放った第6射が、敵艦の左舷側至近に着弾し、敵1番艦の乗員を驚かせていた。
「ヴィンセンス、夾叉を得ました!」
見張り員がそう告げてくる。
ヴィンセンスは、第6射で敵艦の左舷側に2本、右舷側に1本の水柱を立ち上がらせた。
「旗艦も負けてられんぞ。あと2、3射のうちに夾叉を出せ!」
艦長がいささか悔しげな口調で叫んだ。
敵艦の着弾が、アストリアの右舷側600メートル付近に着弾し、4本の水柱が、しばし敵1番艦を隠す。
しばらくして、アストリアが第7射を叩き出した。
やや間を置き、艦長は希望が思ったよりも早く叶った事にやや嬉しかった。
「敵艦に夾叉弾を与えました!」
「ようし!」
思わず、アインスワース少将も拳を握って呻く。第8射が撃たれる。そして、待望の瞬間がやってきた。
敵1番艦の後部に、水柱とは明らかに異なる色。命中弾の閃光が光った。
「敵1番艦に命中弾1!」
その直後、艦橋職員の誰もが、互いに顔を合わせる。
「いいぞ。その調子だ!」
フォークナー艦長は、ようやく満足の表情を浮かべた。
この時、砲弾は敵1番艦の後部甲板に命中していた。
8インチ砲弾は最上甲板を叩き割ってすぐ下の第2甲板で炸裂し、無人の工作室をぶち壊した。
敵艦が怒ったかのように、いつもの全門斉射でアストリアを撃ってくる。
シュウウウー!という空気を切り裂く音が極大に達した時、アストリアの右舷200メートルに水柱が吹き上がる。
アストリアも負けずに打ち返す。
各砲塔の2番砲から発射された砲弾のうち、1発が中央部に命中し、火災を発生させた。
「頃合よしだな。」
フォークナー艦長は頷くと、次の段階に移った。
「一斉撃ち方!!」
彼は大声で号令すると、発砲を交互撃ち方から、一斉撃ち方に変えさせた。
砲撃戦の際、まず各砲塔の砲を、それぞれ1門ずつ撃ってから、弾道の修正を行い、
交互撃ち方で命中弾が出れば、自艦の照準はほぼ正確に、敵艦に向けられている。
そうなれば、ちまちまと撃つ必要はない。
後は、使える主砲を一気にぶっ放し、敵を叩きのめすのみだ。
一斉撃ち方に変えさせて20秒後、調整を終えた9門の主砲が、一気に火を噴いた。
交互撃ち方とは、何倍も違う衝撃に、アストリアの艦体は揺さぶられた。
その直後、敵艦の斉射弾が落下してきた。
6発の砲弾は、いずれもアストリアを飛び越えたが、左舷100〜50メートルと言う至近距離に落下し、
アストリアの艦体に海水を浴びせてきた。
「敵の照準もよくなってきたぞ。こっちに弾が当たる前に、敵さんの大砲を潰さないといかん。」
アインスワース少将は、やや口元を歪めながらそう呟いた。
その刹那、敵1番艦の周囲に幾つ水柱が吹き上がった。
その中に、2つの閃光が敵艦の艦影から放たれる。
発砲の閃光ではない、砲弾爆発の閃光である。
「敵1番艦にさらに2発命中!」
見張りが報告を送ってくる。1番艦の主砲は潰れたかな?と、
アインスワースは期待したものの、敵1番艦は艦上から発砲の閃光を発した。
光の量からして、斉射弾は敵艦の主砲は潰さなかったようだ。
砲弾の唸り声が聞こえてきた。今回の音は、かなり近い。
「夾叉されるかもしれんな。」
アインスワースはぼそりと呟いたが、その直後、ガガァーン!という猛烈な衝撃が、アストリアの艦体を揺さぶる。
艦橋の窓ガラスが、一部オレンジ色の光を反射して、すぐに消え去った。
「敵弾、右舷中央甲板に命中!5インチ砲1門全壊!」
その報告に、アインスワースはやや表情を歪め、逆に艦長は、より興奮したような表情になる。
「敵1番艦もやりますなあ。戦いはこうでなくちゃいきません。」
「しかし艦長、被弾は免れないにしても、やられすぎたらまずいぞ?」
さらに会話を重ねようとするが、アストリアの第2斉射が放たれ、その轟音で会話は途切れた。
アストリアは急斉射の状態に入った。
急斉射では、8インチ砲を、交互撃ち方と同様の、10秒に1斉射の割合で放てる。
この時、米巡洋艦部隊は、全ての艦が敵艦と激しく撃ち合っていた。
全艦は、既に一斉撃ち方で敵艦に砲撃しており、2番艦のヴィンセンスは第3斉射で敵艦の砲塔1つを使い物にならなくした。
3番艦のノーザンプトンは、敵3番艦の後部甲板に火災を発生させ、4番艦サンフランシスコは、自艦も右舷に4発を受けながらも、
敵4番艦の中央部と前部甲板に火災を起こさせ、照準を少しばかり狂わせていた。
5番艦のブルックリンと6番艦のサヴァンナは、他の4巡洋艦よりは威力の劣る6インチ砲(15.2センチ)
で砲撃しているものの、発射速度に関してはこの中でピカ一であった。
ブルックリンは、5番艦と6番艦、サヴァンナは7、8、9番艦と、それぞれ不利な状況で立ち向かっていた。
しかし、両艦が一斉撃ち方に切り替えると、ブルックリン、サヴァンナは、
敵艦の将兵が度肝を抜くような弾量を浴びせてきた。
ブルックリン、サヴァンナは急斉射時に6〜7秒の内に1斉射ができる。
それは1分間に約10斉射か、9斉射が出来る事になる。
この時、ブルックリン、サヴァンナは最初の斉射から既に3分が経っていた。
この間に撃ち込んだ6インチ砲弾の弾量は、なんと450発!
両艦合わせて900発近くという、とてつもない両である。
それに、両艦とも、砲弾類はごっそりと積み込んでいるため、弾切れの心配無しに撃ちまくっている。
そして、敵艦隊の艦列で悲劇が起き始めていた。
まず、5番艦のオーメイ級巡洋艦のネームシップであり、オーメイに第1斉射15発のうち、
3発がまとまって前部甲板に叩きつけられた。
この被弾では、大事な主砲が傷つけられる事は無かったが、続く第2斉射目で、4発の砲弾が、
前部、中央部、後部に満遍なく叩きつけられた。
この被弾で、前部の第1砲塔が損傷し、使い物にならなくなった。
第3斉射では、新たに4発が中央部の副砲を叩き壊し、後部甲板に穴を穿った。
第4斉射では再び、第1砲塔に1発が命中し、残骸を撒き散らすと、中央部に2発が命中、
内1発が艦内の兵員室に炸裂して、7人の人員を殺してしまった。
第5斉射は1発のみ命中したが、これは艦橋のすぐ横に命中して、航海科員の半数を死傷させた。
その間、オーメイが放った斉射は、2斉射のみ。
つまり、発射速度でオーメイ級は、ブルックリン級に負けていたのである。
自艦が1分間に3斉射ほど放つのに対して、ブルックリン級はバカスカと、下手な鉄砲数撃てば当たる、
と言った調子で撃ちまくるのである。
今まで、使い勝手が良く、傑作巡洋艦とまで言われたオーメイですらも、
ブルックリンの乱打にはたまったものではない。
「これでは話にならんぞ!」
オーメイの艦長が思わず絶叫したほど、ブルックリンの射撃は凄かった。
寮艦のサヴァンナも奮戦していた。
サヴァンナの相手は、オーメイとは数段進化した、ルオグレイ級巡洋艦のモドルンである。
ルオグエイ級は、8門の7インチ砲を1分間に4、または5斉射出来、シホールアンルの期待の新鋭標準巡洋艦である。
しかし、そのルオグレイ級すらも、サヴァンナに撃ち負けつつあった。
一斉射撃に入ってから、3分立つが、モドルンは14発の6インチ砲弾をぶち込まれ、後部と前部の砲塔1基ずつを叩き潰されてしまった。
辛うじて、ネスレイ、ルオグレイの援護射撃で、7発命中させている。
サヴァンナの後部の6インチ3連装砲1基と、中央部の5インチ砲座を全滅させたが、それでも、サヴァンナは射撃の手を緩めようとはしない。
それどころか、傷つけられた分の痛みを貴様にも味合わせてやるぞ、とばかりに、更なる斉射をモドルンにぶち込んでいた。
「敵1番艦に更に3発命中!」
こうしている間にも、アストリアの新たな斉射弾が、またもや敵1番艦の艦体を捉える。
中央部と前部から、命中の閃光が走り、次いで火災炎と共に破片のようなものが吹き上がった。
「敵艦、火災発生!」
見張りが弾んだ声で報告してくる。アストリアは、第4斉射でついに敵艦に火をつけることが出来た。
火災が起きた敵艦が、うっすらとだが、艦影を表している。
互いの距離は、既に7マイルを切りそうになるまで近付いている。敵1番艦も撃ってきた。
アストリアの周囲に7インチ口径砲弾がドカドカと落下し、異音と共に艦体が軋んだ。
「後部甲板に敵弾命中!火災発生!」
「いかん!すぐに火を消せ!!」
艦長はすかさず指示を下した。
敵弾は、後部甲板に命中して、28ミリ4連装機銃座と、2ミリ機銃2丁を叩き壊した。
そのあとに、ちろちろと、命中箇所が燃え始めた。
すぐに消し止められそうな小火災であったが、夜間の砲撃戦ではこのような小火災でも、敵の格好の目標となってしまう。
「夾叉ではなく、いきなり命中とはな。」
フォークナー艦長は、額の汗を拭いながら呟く。
アストリアが幾度目かの斉射を放った。
敵1番艦の周囲に水柱が立ち上がり、その中に命中弾の閃光が1つ煌く。
敵も斉射をぶっ放してきた。
砲弾の飛翔音が、最初は小さくなり、すぐに大きくなる。
アストリアに敵弾が落下した。
ガゴン!という衝撃に、思わず足元をすくわれそうになる。
この時、敵の砲弾はアストリアの右舷中央部に2発命中し、1発は28ミリ4連装機銃座のすぐ側に命中して、
機銃をスクラップに変えた。
2発目は2番煙突と、右舷側水上機用カタパルトの間に着弾した。
煙突の根元が、無数の断片で切り刻まれ、たちまちあばた状の醜い構造物に早変わりする。
カタパルトのほうも、爆風と破片をモロに受け、?ぎ止められていたボルトが力負けして外れてしまった。
しかし、主砲や艦内部には損傷を負っていないため、アストリアは10秒後に、新たな斉射弾を敵1番艦にぶち込んだ。
今度の斉射弾は、1発が敵の後部に命中した。
その時、命中箇所から、破片の中に、細くて大きな筒のようなものも混じっていた。
敵1番艦もこしゃくな、とばかりにぶっ放してきたが、発砲の閃光は前部のみであり、後部からは砲が火を噴くことは無い。
「よし!敵1番艦の主砲を潰した!」
フォークナー艦長は拳を振り上げて喝采を叫んだ。その次の瞬間、敵弾が落下してきて、アストリアにも命中弾を与えた。
先のものとは倍する衝撃に、艦橋職員が驚きの声を上げる。
「右舷中央部及び、後部甲板に被弾!右舷側カタパルトが海中に落下しました!」
アストリアは、敵艦の砲弾2発を艦体にぶち込まれた。1発は後部甲板の右舷側端に叩きつけられ、消火作業に当たっていた兵員を吹き飛ばした。
もう1発が、先の被弾で外れかけていた右舷側カタパルトを、真ん中から叩き折って炸裂、2つに割られ、空中に吹き上げられたカタパルトは、
アストリアの右舷側の海面に落下した。
お返しだ!とばかりに、アストリアも9発の8インチ砲弾を放った。
この斉射弾は、敵艦の前部甲板と、中央甲板に命中し、更なる火災炎を吹き上げた。
「敵もやりますな。」
「早く黙らさないと、こっちも酷い目に合うな。」
艦長の言葉に、アインスワース少将は戒めるように返事した。
今のところ、アストリアはカタパルト1つを吹き飛ばされ、右舷側の機銃や高角砲の半分近くをぶち壊された。
後部甲板に火災を背負っているが、肝心の主砲は全て健在だ。
問題の火災も、今のところ小規模に収まっているため、大事には至っていない。
それに対して、敵1番艦は前部、中央部、後部に無視しえぬ損害を被り、主砲の数も減少している。
アストリアと敵1番艦の砲撃戦は、今のところアストリアが優勢である。
しかし、敵1番艦の砲撃精度はかなり向上しており、いずれはアストリアも馬鹿にならぬ被害を受ける可能性がある。
そうならないためにも、手早く敵1番艦を黙らせねばならない。
アストリアの更なる斉射弾が放たれるが、それと同時に、敵1番艦も斉射を放つ。
互いの砲弾が、上空で交錯し、それぞれの目標に向けて殺到していく。
敵1番艦の艦橋手前と、後部艦橋に命中弾の閃光が煌いた時、アストリア自身も大きく揺さぶられた。
爆発音と破壊音が混ざり合って、乗員の気持ちを不快なものにする。
ガシャン!と、何かが倒れる音も聞こえてきた。
「艦長、何かが倒れるような音がしたぞ。」
「おそらくは」
フォークナー大佐は仮説を言おうとしたが、答えは艦長ではなく、見張りが言ってくれた。
「第2煙突、倒壊!火災発生!」
敵1番艦の砲弾は、第2煙突の根元に突き刺さって炸裂した。
爆風や破片は、鉄材や支柱を焼き切り、千切り飛ばしてしまう。
その破片が別の無傷の銃座や艦体を傷つける。
根元の大部分を叩き折られた第2煙突は、自重を支えきれなくなって、そのまま右舷側の甲板に倒れてしまった。
つまんね
折れた裂け目からは、火災煙と、煤煙が混じって、濛々たる黒煙がたなびき始めた。
「こちら第2缶室、敵弾の破片がボイラーを傷つけました!出力が下がっています!」
下層の缶室から、緊迫した声が流れてきた。
現在、艦体は29ノットの速力で、敵艦隊と同航しているが、出力が下がるとなると、
アストリアは速力を下げなければならない。
「現状では何ノットまで落ちる?」
「今の出力は、最大ではありませんから、恐らく27ノットまで落ちる可能性があります。
出力を最大にすれば、29ノットは維持できます。」
「そうか。」
フォークナー艦長は安堵する。が、
「ですが、それも長時間はできません。長時間やってしまうと、缶室は完全に壊れてしまいます。
長くて30分、短くて20分足らずでしか、最大出力は出せません。」
「それで充分だ!その間に、こっちも何とかしてみる!」
そう言って、フォークナー艦長は電話を切った。
アストリアが新たな斉射弾を叩き出す。
敵1番艦はそれに合わせるかのように、やはり砲をぶっ放してきた。
だが、前部から放たれた閃光は、先程より減少している。
「先の命中弾は、敵の砲塔を1つ潰していたようだな。」
アインスワース少将はそう確信した。その時、敵弾が、アストリアに落下してきた。
アストリアの砲弾が敵艦を撃ち抜く前に、アストリアがまたもや起こった被弾の衝撃に身悶えた。
敵の砲弾は、1発がアストリアの第3砲塔と、後部艦橋の間に着弾した。
砲弾は最上甲板を叩き割って第2甲板で炸裂。
そこの兵員待機室で作業に当たっていた、7人のダメージコントロール班を全てなぎ倒してしまった。
もう1発は、アストリアの第3砲塔の天蓋に命中し、その場で炸裂した。
この被弾で、天蓋がざっくりと裂け、爆風が砲塔内に暴れこんで、砲員4人を殺し、8人に怪我を負わせた。
また、砲塔自体も、旋回版損傷、発射機構大破という致命傷を負い、沈黙してしまった。
面白くない話だな
報告を聞いたフォークナー艦長は、表情を大きく歪めた。
「くそ、敵にも上手い奴がいる!」
感嘆と敵意の混ざった口調で、彼はそう呻いた。
敵1番艦の後部と、中央部に新たな命中弾の閃光が走る。
閃光の数は6つ。この命中弾が、敵1番艦の命運を決定付けた。
突如、後部砲塔あたりから火柱を上げた敵1番艦は、スピードを急激に落とし始めた。
「敵1番艦の後部甲板から大火災発生!続いて1番艦、面舵に変針します!」
後続の味方艦の邪魔にはならぬと決意したのか。1番艦はゆっくりと、隊列から離れ始める。
動きは緩慢で、もはや砲を放つ気配は無かった。
「あっ!ノーザンプトン大火災!」
敵1番艦大破確実の戦果に酔う暇も与えられず、今度は別の報告が届く。
ノーザンプトンは、当初、敵3番艦に対して優位に立っていたが、敵弾が艦橋に命中し、
艦長以下、多数を吹き飛ばしてからは、ノーザンプトンは見る見るうちに被弾が増え始めた。
そして、アストリアが敵1番艦を大破、落伍させた時には、19発の砲弾が叩きつけられていた。
既に第1、第3砲塔は潰されており、両用砲と2番砲塔で反撃するしか方法が無かった。
そして、敵艦が放った新たな斉射弾が、度重なる被弾で弱くなった最上甲板をぶち抜き、下層の機関室で炸裂した。
この被弾で、機関室の兵員の大部分が殺傷された。
さらに、別の砲弾は両用砲弾庫に直撃し、ノーザンプトンの右舷部分を火の海に変えてしまった。
小さな火災が、少し大きめの火災によって煽られ、次々と結びつく。
最終的には右舷側中央部分を、火災炎が半分ほど締めるまでになった。
速力の低下したノーザンプトンは、次第に艦列から遅れ始めた。
先頭のアストリアが敵1番艦を脱落させた後に、生き残った副長はついに離脱を決意。
よろばうようにして、艦列から離れようとした。
そこへ、敵3番艦の容赦のない斉射弾がまともに命中してしまった。
6発中、3発が後部まとまって命中した。
3発のうち、1発は後部甲板を抉り取って、更なる火災を発生させ、残る2発は舷側に命中し、
喫水線下に直径8メートルの大穴を開けてしまった。
これにより、ノーザンプトンはさらに速力を低下させられてしまった。
被害はそれだけではない。
ブルックリンとサヴァンナは善戦しつつあったが、サヴァンナの体力は、もはや限界に近付いていた。
サヴァンナは、モドルンの全主砲を叩き潰し、更に後部艦橋をくず鉄の塊に変換させた事で、
モドルンを撤退させ、そして8番艦のネスレイに6インチ砲弾13発を命中させていた。
次々と襲い来る6インチ砲弾の嵐に、ネスレイは後部第3砲塔を粉砕され、中央部の副砲を半数叩き潰されて、
火災を吹き上げていた。
このままの調子では、ネスレイも、7番艦モドルンと同様の運命をたどる事は明白と思われた。
しかし、いくら優秀なブルックリン級とはいえ、軍艦の数には敵わなかった。
ネスレイに13発目を命中させた時、サヴァンナはなんと、48発もの敵弾を受けていたのだ。
既に後部砲塔は2基とも破壊され、後部艦橋も見るも無残な姿に変わっていた。
中央部からは両用砲弾庫の誘爆によって大火災を生じており、速力も落ちつつあった。
肝心の主砲は、15門中6門にまで撃ち減らされており、サヴァンナの命は尽きようとしている。
だが、艦橋は無事であり、艦長は諦めないで指揮を取るつもりであった。
サヴァンナの残り少なくなった6インチ砲弾は、それでも6〜7秒に1斉射の割合で、猛射を敵艦に浴びせ続ける。
そして、サヴァンナが数え切れないほど放った斉射を、いつものように行った直後、後部甲板に敵弾が突き刺さった。
そして次の瞬間、主砲弾薬庫に飛び込んだ敵弾が炸裂し、主砲弾や装薬をも誘爆させた。
一瞬のうちに、目も眩むような大爆発が、サヴァンナの第5主砲で起こった。
誘爆によって、サヴァンナの竜骨は叩き割られ、パワーは更に外郭をもぶち破って、外界に踊りだす。
この致命的な誘爆によって、サヴァンナは第4砲塔から後ろの部分が完全に千切れ、破壊された区画から大浸水が起こった。
もはや、サヴァンナの息の根が止められたのは誰の目にも明らかであった。
しかし、彼女はタダでは死ななかった。最後の斉射は、ネスレイの前部に着弾している。
命中弾数は3発。内、2発が前部の第1砲塔叩き潰して使用不能に落としいれ、最後の1発が艦首舷側に突き刺さった。
この命中弾の破孔から海水が浸水し、ネスレイの行き足を次第に鈍らせ始めた。
乙! 待ってました。
なんか間に挟まっているタンカスは気にしないで。
米巡洋艦部隊は、他にもヴィンセンスとサンフランシスコが共に6発の敵弾を受け、
ヴィンセンスは中央部から火災を起こし、サンフランシスコはマストを叩き折られ、水上レーダーが使えなくなっている。
一方で、シホールアンル側も残る2、3、4番艦とも、無視できぬ被害を負っており、
巡洋艦同士の砲撃戦では、今のところ、互角の戦況であった。
巡洋艦群が壮絶な殴り合いを演じる少し前、戦艦ワシントンとノースカロライナは、敵戦艦部隊と反航戦の構えを取った。
「リー司令、距離はあと9マイル、いつでも射撃準備出来ます!」
艦長のドイル・キーナート大佐が、早く撃たせて下さいとばかりにリーに言ってきた。
リーはすぐに頷いた。
「よし、撃ち方始め。」
すぐに命令を発した。リーはCICの中にいるため、外の様子は見れないが、彼はここから出るつもりは無い。
むしろ、艦橋よりは、このCICの中で指揮を取ったほうが良いと考えている。
この時、前方を指向していた5インチ両用砲の1基が、星弾を放った。
敵艦隊の上空でぱあっと青白い光が煌き、敵戦艦群の艦影がぼんやりと移る。
その時、敵戦艦の1番艦が、前部の33.8センチ砲をぶっ放した。
「ファイヤー!」
キーナート艦長も号令を発する。直後、ワシントンの16インチ3連装砲2基が轟然と吼えた。
反航戦の場合は、互いに接近、離脱するから、射撃の機会が短い。
このような時に、交互撃ち方では効果は得られにくいため、必然的に斉射となる。
敵艦隊も、27ノットのスピードで米戦艦とすれ違う腹のようだ。見るからにスピードは速い。
「さて、この短い砲撃戦が終わった後は、どうすればいいか。」
航過を終えたら、同航戦に持ち込んで決着をつけるか?それとも、敵艦の後ろを取って一方的に撃ちまくるか?
リーはそのように考えをめぐらせる。
その時、ワシントン艦体がやや揺れた。敵戦艦の砲弾が、ワシントンに近い海域で落下したのだろう。
しかし、衝撃は思ったよりも強くは無い。
「弾着。我が艦の砲弾、敵戦艦より左舷後方500メートルに落下。」
艦橋からの報告がCICに入ってくる。
40秒が経過して、再びワシントンが前部6門の16インチ砲を放つ。
後続のノースカロライナも、敵1番艦めがけて6基の16インチ砲を放った。
第2斉射も、先ほどと似たような結果に終わる。
第3、第4斉射と、次々と、両軍の戦艦は撃ちまくるが、反航しているせいもあってか、なかなか当たらない。
それどころか、至近弾にもなりもしない。
「やはり、航過後は同航戦で決着をつけたほうがいいな。」
リーはそう決心した。
「敵戦艦群との距離、5マイル!」
互いに高速力で航行しているから、すぐに距離が縮まってくる。
敵戦艦の砲撃が、ワシントンの至近に落下してきた。
第1弾のものよりは、いささか振動は強いが、それでも直撃時の衝撃は無い。
「敵はこちらを捉えられないようですな。」
アインツベルン参謀長が言う。
「砲弾はどれもワシントンを飛び越えたり、手前に落ちてばかりです。」
「それは、我々も同様じゃないかね?」
リー少将はアインツベルン大佐に問いただす。
「我々の16インチ砲弾も、無為に海面を抉っているだけだ。せめて、この反航戦で、
敵艦の1隻は減らせればと思っておったが、こりゃ同航戦で勝負を決めにゃならんな。」
「は、はぁ・・・・」
リー少将の言葉に、アイツベルン大佐は答えに窮した。
その時には、ワシントンは照準を1番艦から2番艦に変えている。
2番艦に対して2斉射を放った時、
「敵2番艦を夾叉!」
という弾んだ声が上がった。そして、次の斉射では・・・・・
「敵2番艦に命中弾1!」
という結果がもたらされた。更に、
「ノースカロライナ、敵1番艦に1発命中させました!」
と言う報告が聞こえた。
相次ぐ空振りに、表情を固くしていたリー少将とアインツベルン大佐は、いくらか表情を緩める。
その後、敵3番艦と4番艦に、それぞれ5斉射ずつ叩き込んだが、ワシントンはこれらに対して
1発も命中弾を与えられなかった。
逆に、中央部に敵弾1発を浴びせられ、夾叉も3回受けた。
一方、ノースカロライナは、敵4番艦とすれ違いざまに、16インチ砲弾2発をぶち当てた。
航過した後は、互いに後部砲塔を打ち合いながら、約16マイルほど距離を開けた。
「取り舵一杯。」
リーは艦隊針路(といっても、ワシントンといってもノースカロライナのみだが)を変更させる。
「さて、誘いに乗ってくるかな。」
リーはそう思ったが、案の定、敵艦隊も取り舵を取って、ワシントンとノースカロライナに向かってきた。
一旦は16マイルまでに広がった距離が、今度は反航戦の時よりも、時間をかけて縮まってゆく。
距離が14マイルに達したが、敵艦隊は撃ってこない。
もう少し距離を積めてから砲を撃とうと考えているのだろう。
敵戦艦4隻の撃ち、2隻に16インチ砲弾をぶち込んではいるが、流石に1発や2発ではくたばる相手ではない。
4隻全艦が、時速27ノットのスピードで航行を続けている。
「参謀長、レーダー射撃の威力を見せてやろうじゃないか。さっきの反航戦は序の口だと言う事を思い知らせてやる。」
「ええ。」
2人は深く頷く。リー少将が、艦橋に繋がる電話を取り、艦長に指示した。
「艦長、砲撃を開始しろ。」
そう言って、彼は受話器を置いた。
シホールアンル艦隊旗艦の戦艦オールクレイの艦橋上で、
第24竜母機動艦隊の司令官であるヴォルソレイ少将は、先ほど受けた16インチ砲弾の衝撃を思い出していた。
「どう考えても、こっちの13ネルリ(約33.8センチ)よりはかなり威力があるな。」
あの時、先頭艦であったオールクレイは、敵2番艦の砲弾を1発食らっている。
砲弾は、オールクレイの左舷側の後部艦橋横に命中して、最上甲板と第2、第3甲板までも突き破り、第4甲板の便所で炸裂した。
炸裂の瞬間、今まで感じた事の無い猛烈な衝撃に、誰もが飛び上がった。命中弾はそれだけである。
後の報告では、主砲の各種操作には異常が無いと言われている。
しかし、これから敵艦と同航戦に入る事になっている現状では、あの衝撃を何度も食らわされる事になるかもしれない。
「とりあえず、24竜母機動艦隊所属の戦艦は敵1番艦、第7艦隊所属艦は敵2番艦を集中して叩くことになっている。
敵とは2対1の戦力差で戦うのだから、10発や20発近くぶち込めば、ガタガタになって大砲を撃つ事もままならんだろう。」
(現に、2月の海戦では、敵の鈍足戦艦を2隻ほど相討ちに近い状況にさせているからな。)
ヴォルソレイ少将は楽観した気持ちになっていた。
しかし、3番艦を占めている第7艦隊所属の戦艦ヴェレ艦上では、彼とは対照的な感情を抱いている者がいた。
第7艦隊の司令官を務める、ヴァグ・ゼノンス少将である。
指揮権はヴォルソレイ少将に移されているから、今は彼の指揮下で戦いっている。
「先ほど、反航しながら撃ってきた戦艦。あの形の戦艦は、識別表には載っていなかった。」
現在、識別表に載っている米戦艦は、アーカンソー級から、メリーランド級までのシルエットが載っている。
米戦艦は、いずれも三脚状か、籠状の艦橋を備えている。2月の米側の襲撃でも、その2タイプの戦艦が向かってきた。
「今回は、恐らく一番新しいほうのメリーランド級がやってくるだろう。手ごわいとは思うが、油断せず、心してかかれ。」
と、彼は第7艦隊指揮下の戦艦艦長にそう命じていた。しかし、今回現れた戦艦・・・・
三脚状でも、籠状の艦橋構造物も無い。
その代わりに、尖塔のようなすっきりした、ある程度優美な形に整えられた印象を持つ戦艦である。
(あのような形の戦艦は始めてみた。それに、スピードも速かった。)
ゼノンス少将は、とある仮定に達した。あの戦艦2隻は、空母部隊と共にやってきた。
空母はこっちの竜母と同等か、それ以上に早い高速性能を持っている。
既に対戦済みの米戦艦では、空母部隊に随伴出来るほど、スピードは持ち合わせていないと聞く。
「空母に随伴でき、かつ、こっちと同等の軍艦を持つとなると・・・・」
敵は新鋭戦艦を投入してきた事になる。彼は確信した。
今、自分達が本格的に戦おうとしている軍艦は、敵の新鋭艦なのだ!
「下手したら、半数は大破されるか、沈むかもしれんぞ。」
彼は、自分でも不吉と思う言葉を言い放つ。
無論、周りの艦橋職員には聞こえないように。
「あと少しで、再び砲撃開始だな。」
せめて、あと0.5ゼルドほど距離を縮めてから、
唐突に、考えは打ち切られた。なんと、暗闇の向こうから、閃光が発せられたのだ。
それが何であるのかは、誰にでも分かる。
そう、発砲の閃光だ!
「敵艦、発砲しました!」
「まだ9ゼルド以上あるぞ!」
ゼノンス少将は驚いた口調でそう叫んだ。
さっきの反航戦では、互いに4ゼルドほど距離を詰めてから撃ちあっている。
ちなみに、シホールアンル海軍の夜間の有効射撃範囲は、7ゼルドとなっている。
だが、アメリカの新鋭戦艦2隻は、それを上回る距離から主砲をぶっ放してきたのだ。
敵の砲弾が、唸りを上げて落下してきた。2番艦ポエイレクレイの右舷側に、3本の水柱が立ち上がった。
水柱は、あろうことか、いずれもポエイレクレイから500メートルも離れていない。
めくら撃ちとは思えぬ精度だ。
つまんなーい
なんだこのオナニースレは
それから15秒ほど経って、またもや発砲炎が、暗闇の向こうから光る。
「敵艦の姿が見えんな。」
ゼノンス少将は、内心でこれはまずいと思った。こちら側が見えるのは、発砲の閃光のみ。
それに対して、敵側はどうした事か、こっちの位置を把握している。
何かを使って、夜間でもこちら側の位置を読み取れるようにしているのでは?
そう思った瞬間、彼は敵にも魔道師が乗っていると思った。
アメリカ軍が救援に向かおうとしているミスリアルのエルフは、高い魔法技術を持っていることで知られている。
エルフの一部は、バルランド王国にも存在が確認されており、
そのエルフが、アメリカ戦艦のどれかに乗って、生命探知魔法を使ってこっちの位置を探り出しているに違いない。
しかし、真実は違う。
確かに、正確に探り出して、シホールアンル艦に砲撃を食らわせている米戦艦だが、エルフは乗っていない。
彼らを探り出しているのは、魔法ではなく、レーダーという新時代の兵器である。
その時、1番艦のオールクレイが砲を放った。
やや間を置いたところで、薄紫色の光が発せられた。
バイオレンスな光の下に、白波を蹴立てて驀進する米戦艦の姿が映し出された。
それらが、主砲を放つ。
「旗艦より魔法通信。発砲しつつ、敵艦との距離を縮めよ。」
旗艦オールクレイからの通信が入る。
どうやら、ヴォルソレイ少将は、敵艦隊と早く接近せねば、有効弾は与えられぬと判断したのだろう。
旗艦のオールクレイが、やや艦首を右舷に振り、アメリカの新鋭戦艦2隻と距離を縮めようとした時、第3射が降り注いできた。
第3射は、敵1番艦の砲弾がオールクレイの左舷200メートルのところで落下し、
2番艦の砲弾は、なんと、ポエイレクレイを夾叉してしまった。
「たった3回撃っただけで、すぐに夾叉を出すとは!」
ゼノンス少将は、米戦艦の射撃精度の良さに驚愕した。
恐らく、サポート役のエルフは、相当な腕前なのだろう。
「射撃準備完了しました!」
その報告に、ヴェレ艦長は頷き、次いでゼノンス少将を見る。
その時、旗艦オールクレイが射撃を開始した。
「艦長、いいぞ。」
彼はそう言って、射撃許可を出した。
「撃てぇ!」
号令一下、ヴェレの8門の13ネルリ主砲が轟然と放たれた。
一斉射撃の轟音が、ゼノンスや艦橋職員の体を揺らした。
ヴェレ、ポイルグの目標は、敵戦艦の2番艦である。彼らは知らなかったが、それはノースカロライナであった。
16発の砲弾が、ノースカロライナの左舷側海面に落下して、水柱を跳ね上げる。
「全て近弾です!」
「あと200延ばせ。」
「敵艦発砲!」
米戦艦も第4射を放ってきた。
敵艦の砲弾は、ヴェレ、ポイルグには落ちて来ず、オールクレイ、ポエイレクレイの周囲に落ちている。
まずは、先頭の2隻を潰してから、ヴェレ、ポイルグと戦うのだろう。
砲塔内部では、将兵が奮闘しながら、次の砲弾を砲身に入れ、次いで装薬を放り込んでから蓋を閉じ、準備終了の合図を送る。
砲術長が、各砲塔からの合図を受け取り、斉射が可能になった事を確かめ、号令を発する。
ズドォーン!という鼓膜を破らんばかりの轟音が鳴り響く。
発射速度は、40秒に1斉射というもので、シホールアンルがこれまで作った戦艦に比べると、
オールクレイ級のこの発射速度はピカ一である。
それに対して、敵戦艦は3発ずつの交互撃ち方を繰り返して、15秒おきにオールクレイ、
ポエイレクレイに16インチ砲弾を浴びせている。
「弾着!」
ノースカロライナの周囲に水柱が吹き上がった。何本かの水柱は、反対側にも上がっている。
「夾叉です!」
見張りが喜んでいるような口調で報告してきた。
ヴェレとポイルグの共同射撃ではあるが、早くも第2斉射で夾叉弾を得たのだ。
ゼノンス少将も嬉しい気持ちになる。
米戦艦も第7射を撃った。
それからやや間を置き、2番艦ポエイレクレイの左舷に水柱が1本立ち上がり、次いで艦体に2つの閃光が走った。
「あっ!」
艦橋上の誰もが驚いた。
ノースカロライナの射弾は、3発中、2発がポエイレクレイの艦体を叩いたのである。
1発は中央部に命中して最上甲板を貫き、第3甲板で炸裂した。
もう1発は、後部艦橋に命中して、そこで作業を行っていた副長や職員をほとんど殺してしまった。
一方、オールクレイ、ポエイレクレイが放った射弾は、ワシントンに夾叉すらしていない。
装填作業に入った15秒後に、米戦艦が第8射を放つ。
ポエイレクレイの艦体に、新たな直撃弾が襲い掛かり、32000トンの船体が激し揺さぶられた。
射弾は第1砲塔を真上から叩き潰して炸裂、砲塔は真っ二つに裂け、砲身が吹き飛んでしまった。
命中弾を受けたのは旗艦オールクレイもであった。
オールクレイも、夾叉を2回やられた後に、1発が後部甲板を叩いて、火災を発生させた。
40秒が経過した。こちら側の健在な主砲が、一斉に咆哮した。
間を置いて、敵艦の周囲に10本以上の水柱が乱立する。
水柱が崩れ落ちると、敵艦の艦体を砲弾が叩いたのであろうか、中央部から小さな火災を起こしていた。
この時、ノールカロライナの左舷には、3発の砲弾が命中しており、1発は第3砲塔の天蓋にぶち当たって弾き飛ばされ、
2発は中央部に直撃して、その場で炸裂。
28ミリ4連装機銃座2基と左舷第3両用砲を粉砕していた。
この小火災は、その第3両用砲座から発せられた火災炎である。
照明弾の光が消え、露になった米戦艦の姿が闇に隠れる。
しかし、敵戦艦2番艦だけは、火災炎があがっており、位置を掴むのは容易であった。
「あの炎を狙え!」
ゼノンス少将は叫んだ。分かりましたとばかりに、ヴェレが更なる斉射弾を送り出した。
ヴェレ、ポイルグの13ネルリ砲16門が轟然と鳴り響き、砲弾が赤い軌跡を描き、炎に殺到していく。
米艦隊の上空に、またもや照明弾が煌き、米戦艦の姿が闇夜からぬうっと現れた。
「変だな。敵艦が発砲を止めた。」
これまでなら、15秒おきに砲撃していた米艦だが、なぜか、今は砲を撃っていない。
どうしたものか?
疑念はすぐに氷解した。米艦が砲撃を再開したのだ。
発砲の閃光は、先のものとは比べ物にならぬほど、大きかった。
砲弾の飛翔音が聞こえ、少し間を置いて、オールクレイとポエイレクレイが水柱に囲まれた。
水柱が崩れ落ちると、ポエイレクレイは、先ほどと比べて、火災が酷くなっていた。
そして、1番艦のオールクレイもワシントンの砲弾2発を食らっていた。
負けじと、こちら側も撃ち返す。ゼノンスが率いる2隻の戦艦の標的、ノースカロライナの周囲に新たな着弾が起きる。
その中には、4つほどの閃光が混じっていた。それに、1番艦も2発食らっている。
「被害を受けているのは、敵も同じだな。」
ゼノンスはそう呟いた。
米戦艦の第2斉射が放たれた。
狙い過たず、先頭の2艦に16インチ砲弾が殺到し、一部の砲弾が艦体を抉り取り、耐久力を削いでいく。
旗艦とポエイレクレイの被害はうなぎ上りに増大しつつある。
旗艦のオールクレイは、第2斉射で中央部甲板と後部甲板に16インチ砲弾をぶち込まれた。
中央甲板からは派手に表面が吹き飛ばされ、新たな火災を引き起こす。
後部甲板に命中した砲弾は、衝撃で第4砲塔の旋回版を捻じ曲げ、主砲を役立たずの鉄塊に早変わりさせた。
ワシントンやノースカロライナも無事では済まない。
ワシントンは、右舷第2、第4両用砲座を潰れた空き缶の如くに変形させられ、左舷側の対空機銃の4割が、元の鉄材還元されていた。
ノースカロライナは、第3両用砲座で発生した火災をなかなか消し止める事が出来ず、さらに4発の敵弾を招き入れてしまった。
4発のうち、1発は前部の被装甲部分に命中し、別の火災炎を吹き上げる。
1発は第2砲塔に命中して炸裂したが、13ネルリ砲弾は、分厚い装甲版を抜けなかった。
砲塔の操作には異常は見られない。
2発は、再び中央甲板を叩いて、第2煙突の右舷側のクレーンをぶち壊す。
しかし、両艦とも、艦の内部には敵弾の貫通を許しておらず、主砲も全て健在であった。
新たな斉射弾が、ワシントン、ノースカロライナを叩き、さらに被害を拡大させたが、
それでも、両艦は屈する気配を見せない。
「なんて頑丈な軍艦なのだ!もう10発以上は命中しているぞ!」
ゼノンス少将は、米戦艦の頑丈さに舌を巻いた。
とにかく、叩いても叩いても、敵艦にダメージを与えた感触が沸かないのだ。
叩かれた分、逆に精度が増すのだろうか、オールクレイとポエイレクレイに対する命中弾は多くなりつつある。
第9斉射目を放った時には、オールクレイは主砲を4門に減らされ、ポエイクレイに至っては後部2門のみの
主砲しか、使えるものは無かった。
敵1番艦、2番艦も火災を発生しているが、ポエイクレイの火災が、松明と似たような状況を示しているに対して、
まるでロウソクを複数に灯したような火災だ。
「俺達は、とんでもない敵と相手しているかもしれんぞ。」
ゼノンス少将は言った。
2月の海戦では、オールクレイ級は敵戦艦の砲弾を20発以上受けても、まだ主砲を撃っていた。
現在、オールクレイには9発、ポエイクレイには13発の命中弾が確認されている。
数字から見れば、なんだ、まだまだじゃないか、と思えるのだが、先頭の2艦の状況はそう呼べるものではない。
10発前後の敵弾を受けただけで、既に大破、脱落寸前の様相を呈しているのだ。
米戦艦の艦長は、そんな2艦に対して不必要に遠慮はしない。
むしろ、傘にかかって16インチ砲をぶっ放してきた。
またもや、複数の水柱に囲まれたポエイレクレイの艦上に、閃光が走った。
水柱が、ゆっくりと崩れ落ち、ポエイレクレイの姿を現した。艦橋職員の誰もが、我が目を疑った。
なんと、ポエイレクレイは、艦尾が完全に千切れていたのだ!
16インチ砲弾は、4発命中した。そのうちの2弾が、20メートル間隔で、縦に艦尾に命中。
艦底部で炸裂した1発が、ポエイレクレイの運命を決めた。爆発パワーが四方八方に拡散され、周り中を“無”に還元。
そして、左右の舷側に致命的な亀裂を生じさせていた。
ポエイレクレイが、未だに27ノットの速力を保っていた事が災いし、亀裂は水圧に負けて拡大。
ついには第4砲塔から後方8メートルの部分は、完全に千切れてしまった。
度重なる被弾の影響がもたらした、最悪の結果であった。
「なんという事だ・・・・・・」
13ネルリ口径には、充分に耐え切れると思っていたオールクレイ級の一員が、今しも戦闘不能に陥ってしまった。
ほぼ同口径砲を持つと思われていた米の新鋭戦艦は、13ネルリよりもっと上の口径。
つまり・・・・・・・・・・
「敵艦は、20ネルリ相当の主砲を持っている!」
そう心中で呟くと、体の中が凍りついた。
そうであるなら、10発前後の命中弾でオールクレイを窮地に追いやり、
ポエイクレイをたたきのめした事も説明が付く。
「敵の新しい所は、速力と防御力のみならず、砲力もなのか。」
彼はそう確信した。しかし、引く事は出来ないだろう。
もし、ここで引けば、この2隻の米戦艦は船団に追いすがっていく。
今、船団は6ゼルドほど離れている。敵の数が思ったよりも少ないから、今こうして、
全力で押さえ込めているものの、火力、防御力共に有利なこの敵に決定的な、例えば主砲を全て叩き潰す等の積極策を取らねば、
船団に危険が及んでしまう。
「敵が本艦に弾をぶつける前に、出来るだけ当て続けるんだ!」
彼は叫ぶようにして命じた。
「主砲さえ潰せば、こっちの勝ちだぞ!」
「敵2番艦、速力低下。」
CICに報告が届く。
「流石は、レーダー射撃だ。砲戦開始15分で、早くも敵2番艦を脱落させた。」
リー少将は、満足したような口調で言った。
「敵1番艦も馬鹿にならぬ損害を受けています。あと、2、3斉射のうちに戦闘不能に陥るかもしれません。」
アイツベルン大佐も、最初とはうって変わった表情で相槌を打った。
519うざいよ
距離14マイルから放った第1射は、敵艦隊の機先を制す結果となり、4射目でまずノースカロライナが
敵2番艦に命中弾を与え、第5射目でワシントンも敵1番艦に砲弾を叩き込んだ。
その後、第9射を撃った後、9門全てを使った一斉撃ち方に移行してからは、戦況は思惑通りに動いた。
斉射弾は、次々に1、2番艦に命中していき、ノースカロライナの第9斉射目でついに、敵2番艦を戦列から叩きだすことに成功した。
1番艦から放たれた砲弾が、ワシントンの周囲にドカドカと落下してきた。
13ネルリ砲弾の衝撃に、ワシントンの35000トンの艦体が揺れ動く。
ガーン!という命中の衝撃が、CICにも伝わってきた。
「これで10発目ですな。」
「ああ、敵もなかなかやるね。」
2人は引きつった笑顔を見せて言い合う。
左舷側の被害は、いささか無視し難い状況になっており、5インチ両用砲座は5基あったうちの4基までが叩き潰され、
機銃座も大半が破壊されて、対空火力が激減している。
それに、後部甲板と中央部の火災も少しばかり拡大しており、これが敵艦の照準をやりやすくしている。
今のところ、ヴァイタルパートは撃ち抜かれていないものの、艦上構造物の被害は酷い物であった。
ワシントンも、16インチ砲9門を轟然と唸らせる。
「敵1番艦に2発命中!」
弾んだ声が聞こえてくる。
しかし、レーダーに映る敵艦の速度は、撃ち合い始めたものと変わらない。
「敵艦も粘りますな。」
「ああ。既に12発の16インチ砲弾を食らっているのに、まだ全速で動けるとはな。敵ながら、軍艦の作り方がわかっている。」
以外に頑強な敵艦に対して、リー少将は感心した。
敵戦艦の砲弾が落下してきた。至近弾の衝撃が、ワシントンの艦腹を小突き回して、ゆらゆらと振動させる。
次の瞬間、ドーン!というこれまでに無い激しい衝撃に、CIC職員の誰もが飛び上がった。
「な、何があった!?」
思わず、リー少将叫んだが、すぐに分かるはずも無い。
1分ほど間を置いて、報告が伝えられてきた。
「敵弾、第1、第2煙突の間に命中!」
13ネルリ砲弾が、第1、第2煙突の間に、計ったように着弾したのだ。
砲弾はその場で炸裂したが、2つの煙突は、根元部分か真っ黒く焼けただれ、外板をずたずたに引きちぎられてしまった。
機関部に損傷が及ばなかった事は幸いではあったが、生き残っていた第4両用砲に損傷が及び、
同両用砲は完全に使い物にならなくなり、ワシントンの左舷側の5インチ砲は全滅した。
「うーむ、厄介なものだ。」
リーがしかめっ面で呟く。ワシントンも斉射弾を放った。
第12斉射は3発が命中した。この命中の弾のうち、1発は唯一残っていた、前部の第2砲塔を真上から粉砕してしまった。
1発は艦橋を吹き飛ばして、ヴォルソレイ少将以下、艦橋職員を殺傷し、
3発目は中央部の最上甲板を叩き割り、第4甲板の機関部で炸裂。
機関部で働いていた14人の将兵は全員が粉砕され、動力の魔法石や計器類、
制御板は見るも無残に燃やされ、爆風に引きちぎられた。
機関室は2つあったが、そのうちの1つを完膚なきまでに粉砕されたオールクレイは、
ガクッとスピードを落とし、ワシントンやノースカロライナの後方に流れていった。
「敵1番艦落伍しました!」
「よし、目標変更!ワシントン、目標敵3番艦。ノースカロライナ、敵4番艦!」
敵艦隊の隊列には、残りに2隻となった敵戦艦が、ワシントンとノースカロライナと並ぶ。
その時、
「ノースカロライナ、第3砲塔使用不能。」
という報告が飛び込んできた。その報告に、リーは苦しげな表情浮かべた。
「3、4番艦の艦長も手強そうだな。」
ワシントン、ノースカロライナの16インチ砲が敵、3、4番艦に向けられ、発砲する。
ワシントンは各砲塔1門ずつ発砲の、交互撃ち方でまずは弾道調整を行うが、
「ノースカロライナ、斉射しました!」
既に使える砲が6門しか残っていないノースカロライナは、しょっぱなから斉射で対応した。
敵戦艦の砲弾が、ワシントンに降り注いできた。
ドカドカと落下して、ワシントンの艦体は大きく揺さぶれる。
ノースカロライナには、2発の砲弾が命中する。
3番艦は、標的をワシントンに変えたから、すぐに命中は望めないが、4番艦は砲戦開始から、
そのままノースカロライナに照準を合わせているから、弾を当てるのは容易であった。
だが、ノースカロライナもただやられているだけではない。
最初の斉射弾のうち、1発が命中したのだ。
命中箇所は、中央部の平たい甲板(燃料動力ではないシホールアンル艦は、煙突がない)であったが、
初めての初弾命中に、ノースカロライナの艦橋では喝采が起こった。
ワシントンが、15秒後に第2射を放った。
そして、この第2射目で夾叉を得る事が出来た。
「いいぞ。さっきよりも精度があがっている!」
リーが、思わず拳を握りしめる。敵戦艦の砲弾が、ワシントンの左舷側海面に着弾して、高々と水柱を跳ね上げる。
ノースカロライナの斉射弾が、敵艦の周囲を取り囲み、4番艦の姿が見えなくなる。
4番艦が水柱を割いて、現れたと同時に斉射の閃光が迸った。
新たに4発がノースカロライナの前部、中央部、後部に満遍なく叩きつけられた。
ワシントンも第3射を叩き出し、敵艦にまたもや夾叉弾を与えて、視界を遮った。
水柱が崩れ落ちた直後に、敵艦も斉射弾を送り出す。
この斉射で、ワシントンの後部艦橋のすぐ左側から火炎があがり、次いで黒煙と破片が吹き上がった。
「11発目。これ以上は食らいたくないな」
リーがぼそりと呟くと同時に、ワシントンが第4射を撃つ。
第4射、3発のうち、2発は敵艦を飛び越えて、左舷側に空しく水柱を飛び散らせたが、
1発が敵戦艦の後部砲塔のあたりを叩いた。
「そろそろだな。」
リー少将は確信したように呟く。2回も夾叉を得、この回で直撃弾を与えたのだから、照準は合っている。
と、すれば。次からは斉射で対応できる。
リーの考えは正しかった。艦長は一斉撃ち方を号令し、その30秒後、ワシントンの9門の16インチ砲が、轟然と放たれた。
敵3番艦が複数の水柱に囲まれ、姿を隠される。
水系の大魔法にでもかかったかのように、3番艦の姿は、しばらく“水中”にあった。
水中から、3番艦が抜け出てきた。
敵3番艦は、中央部から火災を生じており、うっすらと黒煙を引いている。
しかし、残った主砲は無事らしく、6門の13ネルリ砲をぶっ放してくる。
敵弾が飛来し、新たに2発がワシントンに命中した。
ズガーン!というとてつもない衝撃に、またもやCIC内部が大きく揺れる。
何かが割れる音がし、乗員が倒れたり、悲鳴を上げる声が聞こえる。ゆれはすぐに収まった。
「いい腕だね。我が海軍に欲しいぐらいだ」
リーは、唐突に苦笑を凍りつかせた。その原因となったものは、目の前の画面にあった。
「レーダーホワイトアウト!」
レーダーオペレーターが、悲鳴じみた声を上げた。
すぐに上官が来て、各種装置を試すが、ウンともスンとも言わない。
「司令、レーダーが使用不能になりました!」
「光学照準に切り替えろ!」
リーはすかさず指示する。
「敵艦の火災炎を狙え。それならば、光学照準でも大丈夫だ。」
艦長も解っていたのだろう、すぐに光学照準に切り替えられ、発砲は継続された。
この時、敵弾は艦橋の右側根元部分に命中して、ド派手に破片を撒き散らした。
その際、破片の一部が、マストの各種レーダー傷つけてしまった。
対空レーダー、水上レーダーとも、作動反応は無く、損傷は致命的と判断された。
ワシントンが怒り狂ったように、斉射弾を叩き込む。だが、
「全弾、敵艦の手前に着弾!」
命中精度は著しく低下していた。精度を上げるには、あと数斉射は必要である。
しかし、その間に、ワシントンが無事に砲撃を続けていられるかは、誰も保障は出来ぬ。
ワシントンは、7回も空振りを行った末、ようやく1弾が敵戦艦の後部甲板を捉え、
火炎とゴミのような破片を吹き上げた。
「ようし!弾道が正確になってきたぞ!」
艦長のキートナー大佐は、弾んだ口調でそう言う。その時、後方から眩い閃光が発した。
閃光は3秒ほど続いて、ようやく収まった。
「今のは!?」
キートナー大佐は、スリッドガラスのすぐ前まで歩み寄り、左舷の斜め後方見た。
敵4番艦が、中央部から大火災を生じ、右舷側に大きく傾いていた。
傾斜の度合いは、みるみるうちに増していき、炎上する4番艦に視線を止めて、わずか20秒足らずで、
敵4番艦は転覆した。
「ノースカロライナの奴、4番艦を撃沈しやがったか。マイヤーもなかなかやるね。」
彼は、ノースカロライナの艦長を務める親友を褒め称えた。しかし、ノースカロライナ自身も無傷ではなかった。
「ノールカロライナより通信。我、主砲塔全損傷及び、左舷中央、又は後部に大火災。これより戦線から離脱す。」
寮艦の敵艦撃沈に明るくなった艦橋雰囲気は、今度は一気に重苦しいものとなる。
ノースカロライナは、敵4番艦と相討ちに近い状況に持って行かれたのである。
報告の中では、大火災とあるから、艦内では壮絶な消火活動が繰り広げられているのだろう。
対応を一歩間違えれば、ノースカロライナ自身も海底に送られる可能性が高い。
「クソ!」
キートナー艦長は悔しげに呻いた。しかし、戦いはまだ終わっていない。
「ノースカロライナは退場することになったが、俺たちにはワシントンがあり、敵3番艦がまだ残っている。
これを討ち取るんだ!」
ワシントンが返事するかのように、16インチ砲9門が猛々しく唸った。
敵戦艦も、ほぼ同時に斉射弾を放った。
投下やめろって
斉射数を重ねるにつれて、ワシントンとヴェレの被害は増大していく。
しかし、殴り合いは止まない。
それどころか、互いを痛めつけあう事によって快感を得ているかのように、2隻の戦艦は撃ち続ける。
そして、互いに20斉射目が放たれ・・・・・・・・・
「・・・・・れい・・・・・・しれい・・・・・・・・・司令!」
聞き覚えのある声に彼は起き上がった。目を当たりに向けると、そこには、側壁がザックリと裂け、あたりには血の匂いが充満していた。
艦は心なしか、右舷に傾いている。
彼は聞こうとしたが、裂かれた側壁の向こうを見て、
「・・・・・終わったんだな。」
と、呟いた。側壁の向こう側には、中央部と前部甲板から火災炎を上げ、黒煙を吹き上げる戦艦がいた。
オレンジ色に染められた艦影は、被弾の損傷や、煤けでいささか損なわれた艦がある。
しかし、それでも、その軍艦の力強さは根強く残っていた。
その軍艦は、誇らしげに自艦の右舷を通り過ぎていく。
敵艦の後部マストには、敵のシンボルである、星条旗が勢いよくたなびいていた。
「さすがは新鋭戦艦だ。30発ほどぶち込んでも、まだ動けるとは。」
ゼノンス少将はそう呟いた。今や、ヴェレは完全に停止し、火災を消す事もままならぬ状況になっている。
前部の第1砲塔は、無傷で残っているものの、トリムの狂ったこのヴェレでは、撃っても敵に当てる事は出来ない。
「既に総員退避を発令しました。もはや本艦は絶望的です。」
艦長は悔しげな表情で言った。敵に撃ち負けたことが悔しいのだ。
だが、ゼノンス少将としては、どことなく満足していた。
「確かに負けたな。でも、砲力、防御力で上回る敵艦を、あれだけ痛めつけた事も確かだ。
しかし、もっと注意すべき所は、あの新鋭戦艦の砲撃精度が恐ろしく良好だった事だ。
今回のような砲撃戦が続けば、魔法防御を施したって、じきに打ち破られて、全部ボロクズにされてしまうだろう。」
「それでは、勝つ方法は無いのですか?」
「勝つ方法か・・・・・勝つとしたら、もっと数を揃えて叩くしか、方法はあるまい。
最も、祖国シホールアンルには、それだけの工業力もないが」
敵3番艦の奮戦は、本当に見事としか言い様が無かった。
なにせ、ワシントンの主砲を6門にまで減らし、舷側に砲弾を命中、浸水させて、
最高速力を23ノットにまで低下させたのだ。
「シホールアンルはますます侮れないな。」
リーは、ただその一言だけ呟いた。
その背後から、アインツベルン参謀長が、紙を持ってリー少将近付こうとしていた。
接戦を続けた巡洋艦部隊、戦艦部隊に対して、駆逐艦部隊は、比較的楽な戦闘で終わった。
駆逐艦部隊は、魚雷を惜しげもなく使い、敵駆逐艦に5インチ両用砲の猛射を浴びせた。
敵側も奮戦し、米駆逐艦3隻を撃沈し、2隻を大破、2隻を中破させた。
だが、魚雷攻撃によってまず4隻艦腹を抉られて沈没、もしくは大破し、2隻がその後の砲戦で爆沈。
そして、2回目の魚雷攻撃で新たに3隻をやられ、後の大砲の撃ち合いで撃ち負けて、6隻が大破、
ないし、中破して、生き残りは戦場から逃げ散ってしまった。
シホールアンル側は、20隻以上の駆逐艦で対応したにもかかわらず、
勇猛果敢な米水雷戦隊に押し切られてしまったのだ。
米駆逐艦の数は11隻と、シホールアンル側の半数以下だったが、3隻の犠牲と引き換えに、
6隻を沈め、5隻を大破漂流させて、5隻を傷物にした。
一方で、巡洋艦同士の砲撃戦では、米側がサヴァンナとノーザンプトンを撃沈され、
ブルックリンが大破、アストリア、ヴィンセンス、サンフランシスコが中破した。
しかし、敵巡洋艦9隻中4隻撃沈、3隻大破、2隻中破させて、戦線から追い払ったのである。
こうして、リー少将の“オトリ”部隊は、見事に任務を果たした。
長ったるい
午後11時 ノーベンエル岬沖北北東60マイル沖
700隻の輸送船団は、上陸予定地点にまっしぐらに進んでいた。
後方の海域では、護衛の艦隊が、米艦隊と激しい撃ち合いを展開しているのだろう、無数の閃光が煌いていた。
シホールアンル陸軍、ミスリアル増援軍司令官である、ミルフラ・ギーレル元帥は、
その閃光を、ただ見つめているだけである。
「軍司令官殿」
隣いる、いかつい顔に、騎士の服を着た副官が尋ねてきた。
「味方艦隊は敵を食い止められるでしょうか。」
「食い止めるさ」
ギーレル元帥は頷いた。
「ヴォルソレイ司令官も、必ず食い止めてみせると言っていた。確かに、アメリカ軍の軍艦は、
海軍のものと比べて性能は勝るであろうが、今回は味方も数を揃えているのだ。」
彼は、髭面を副官に向ける。
「むしろ、海軍は敵艦を全滅させる好機を手に入れたかもしれないぞ。」
「なるほど。今のところは、双方互角のようですな。」
海上の明滅は、未だに盛んである。
「今は、護衛艦隊の奮戦を信じよう。それよりも、明日の上陸作戦が気がかりだ。」
「ミスリアルの耳長人(エルフの蔑称)共は、ほとんどの戦力を山岳地帯の防備にあてていますから、
バゼット半島には、全体でも5万程度の軍勢しかいないと聞きます。」
「住民も刃向かってくる可能性もあるぞ。とは言っても、本格的に訓練された軍隊には、
住民共の抵抗など造作も無いがな。」
彼はフンと、鼻を鳴らした。
「こっちも少なくない犠牲が出るだろうが、それは致し方ないだろう。向かって来る奴は、
住人であろうと、敵兵だろうと、全て薙ぎ倒せばよい。今までもそうしてきたではないか」
元帥は、獰猛な笑みを浮かべた。彼が指揮するミスリアル増援軍は、元はグレーデンル軍団と呼ばれる精鋭軍であり、
別名、流血の軍団とも呼ばれている。
彼らはシホールアンルでも有数の精兵揃いで、これまでの領地拡大戦争では、常に多大な功績を収めてきた。
敵に対して、容赦のないやり方は問題になっているが、彼らの功績はそれを補って余りあるものである。
その精鋭軍が、窮地のミスリアルの背後を突こうとしているのだ。
「最低でも、1ヵ月後には、耳長人の居城でゆっくり休めるだろう。」
「ええ、早く上陸したいものですな。」
既に余裕綽綽である。
彼らの余裕は、前方の先頭集団が受けた、1条の光線によって打ち砕かれてしまった。
「?」
「あの光は?」
2人が顔を見合わせてそう言う。その刹那、砲声のようなものが聞こえてきた。
砲声は間断なく続き、先頭集団の輸送船群が、次々と火を噴き、木っ端微塵に砕け始めた。
「オープンファイアリング!」
号令一下、アトランタの5インチ両用砲が火を噴いた。
ドドーン!という砲声が海上に木霊し、探照灯に照らされた、1隻のガレオン船に曳光弾が、向かっていく。
無数の水柱が上がり、巨大なガレオン船の船体にも4つほどの閃光が煌く。
「砲術長、遠慮無しに撃ちまくれ!敵はうじゃうじゃ居やがる。当てずっぽうに撃っても当たるぞ!」
アトランタ艦長のレニー・シンクレア大佐が乱暴な口調で、電話の向こうへ叫んだ。
アトランタは、向けられるだけの5インチ両用砲を5秒に1発の割合で乱射する。
後続のジュノーと、駆逐艦4隻も5インチ砲弾の雨を、敵船団に降らせ続ける。
アトランタの射撃を1分間受け続けたガレオン船が、前部分を穴だらけにして、左舷側に傾き始めた。
その右側にいた中型の輸送船が、命中のたびに何かの破片を吹き散らし、炎上し始める。
遠慮介錯のない米艦6隻の射弾は、先頭集団の輸送船群を、1隻、また1隻と、炎に包んでいく。
「本当ならば、俺達じゃなくて、リー部隊がやると思っていたんだが、どうも勝手が違ったね。」
本物の襲撃部隊の指揮官である、ノーマン・スコット少将は、苦笑しながらそう言った。
なぜ、スコットが指揮する別働隊がここにいるのか?
理由はこうである。
本来は、スコット部隊が巡洋艦を3隻余分に入れて、敵艦隊と渡り合おうとしていたのだが、
敵艦隊は戦艦4隻のほかに、30隻以上の巡洋艦などの護衛艦艇がいるため、分散しても効果は上がりにくいと指摘された。
ハルゼーは、リー部隊にほとんどの戦力を与えて、スコット部隊には軽快なアトランタ級と駆逐艦4隻のみを与えて、
リー部隊のほうを、敵の護衛艦隊を吊り上げる餌として、大々的に突っ込ませようと考えたのである。
空母部隊の護衛は、軽巡洋艦のサンディエゴと駆逐艦3隻で行う事にして、残りを全て敵艦隊、
輸送船団攻撃に向かわせたのだ。
スコット部隊は、リー部隊の左側7マイルの海域を航行し続け、リー部隊が敵艦隊に発見された時に、
スコット部隊は、戦場海域を大きく迂回した。
アトランタの出し得る32ノットのスピードで、決戦海域を抜ける事に成功したスコット部隊は、
さらに輸送船団より17マイルの距離の間隔をあけて、14ノットで逃げようとする船団を追い抜いた。
そして午後11時、スコット部隊は敵輸送船団の左側方海域に抜けたのである。
軽巡洋艦アトランタは、元々対空戦専門の巡洋艦として建造されたが、6000トンの艦体に5インチ砲16門という
重火力は、航空機のみならず、水上目標に対しても有効である事が、今確認されつつあった。
アトランタの右舷魚雷発射管を担当する、ジョン・コンウェイ兵曹長は、敵の輸送船が、猛射を浴びて、
次々と松明化していく光景を、固唾を呑んで見守っていた。
「発射管長、こんなにパッ、パッと敵さんの船が燃えるようじゃ、この魚雷は撃たなくてもいいんじゃないですか?」
「そうですよ。船の腹を突き破って、そのまま抜けていくのがオチじゃないですか?」
「馬鹿野郎。木造船と言っても、強度の高い船はいくらでもいるだろう。例えば、あんなのとかな。」
彼は指差して、部下にあれを見せる。それは、周囲の小型船を押し潰して、逃げようとするガレオン船である。
図体からして、アトランタの5倍はあろうかという大型船だ。
形だけなら、戦艦のノースカロライナ級も上回ろうかと言う代物だ。
「ああいうでかい船には、結構強度があるもんだよ。その船になら、こいつもしっかり役に立つぜ。」
彼は、発射管をポンポン叩きながらニヤけた。その時、ブザーが鳴った。魚雷発射の準備をせよ、の合図である。
「おい!仕事だぞ!」
彼は魚雷発射管を海面に向けた。
「目標、右舷の逃走しつつある大型輸送船」
耳につけているレーシーバーから、水雷長の声が聞こえる。
彼はすぐに、あの輸送船だと気付いた。
輸送船は、アトランタの右舷6000メートルに位置している
「目標、右舷の逃走しつつある大型輸送船!準備急げ!」
発射管が、仲間を殺しつつ、自分だけ逃げ惑う輸送船に向けられる。輸送船に続行しようとしている船も何席かいる。
「右10度修正。」
「10度修正、アイサー!」
「左5度修正。」
「5度修正、アイサー!」
発射管要員とのやりとりがしばらく続き、魚雷の照準が正確に向けられる。
「照準よし!
彼はマイクに向けてそう言った。命令はすぐであった。
「ファイヤ!」
コンウェイ兵曹長は水雷長の言葉をそのまま告げた。
「ファイヤー!」
その言葉と共に、発射係りがレバーを引く。
4連装魚雷発射管から、魚雷が1本ずつ、海中に解き放たれた。
ツマンネ
4本の航跡は、逃げ惑うガレオン船に近付いていく。
発射管の右側に設置されている5インチ連装両用砲が、盛んに砲弾を放ち、輸送船に曳光弾が突き刺さっていく。
海面には、20以上の篝火があり、どれもが海上に停止している。沈みかけているものは半数以上に達している。
ガレオン船も、無数の5インチ砲弾に船体を抉られ、所々から火災が発生しつつある。
それでも、逃げるのを諦めない。
発射から数分が経った時、唐突にガレオン船から巨大な水柱が吹き上がった。
後部に1本目の魚雷が命中し、ガレオン船はガクッとスピード緩める。
ドーン!という腹に応えるような爆発音が聞こえた時、2本目がガレオン船の中央部に命中し、再び巨大な水柱が吹き上がった。
「命中!命中です!」
発射スイッチを押した、黒人の水兵が満面の笑みを浮かべてコンウェイに言ってきた。
「命中して当たり前だ!俺達はそうなるように訓練してきたのだからな。」
いささか、きつい口調で答えたコンウェイだが、顔は笑っていた。
その次の瞬間、
右舷側海面が真っ白な閃光に染まった、と思った瞬間、ドガァーン!というとてつもない大爆発音が鼓膜を打ち振るった。
すかさず皆が爆発の起こった海域に目を剥く。
先ほど、2本の魚雷を受けた巨大なガレオン船の船体が、半分になっていた。
後ろ半分は無くなり、前半分が激しく炎上しながら、倒壊しつつある。
アトランタが狙ったガレオン船は、実は弾薬をごっそりと積んだ船であった。
アトランタからの被雷によって、船倉の火薬が誘爆を起こし、一気に炸裂したのだ。
この大爆発で、一緒に乗っていた1個騎士大隊と、輸送船の乗員の半数以上が戦死した。
「こいつあすげえ・・・・・・独立記念日の花火以上だぜ。」
コンウェイは、引きつった表情でそう呟いた。
午前0時20分 ノーベンエル岬沖北北東63マイル沖
「地獄と言うものは、これを表している物なのかな。どう思う?」
戦艦ワシントンの艦橋上で、ウイリス・リー少将は隣の参謀長、アインツベルン大佐に問いかけた。
「敵からしたら、恐らくそうでしょう。なにせ、完全に阻止したはずの我が艦艇に襲撃され、
片っ端から沈められまくったのですから。」
海上には、無数の篝火が灯っていた。篝火は、大きなものもあれば、ロウソクのように小さなものもある。
数は無限大にある。その無数の篝火を作ったのは、他ならぬ、彼らだ。
スコット部隊に襲われた、シホールアンルの輸送船団は、一気に大混乱に陥った。
ノーマン・スコット少将指揮下の軽巡洋艦アトランタ、ジュノーと駆逐艦4隻は、しょっぱなから5インチ砲弾の雨を見舞った。
これだけで、敵の先頭集団は算を乱して逃走にかかった。
しかし、急な変針は、別の輸送船に激突したり、押し潰したりと言った悲劇を招き、何隻かは動けなくなった。
その逃げ惑う輸送船団に、スコット部隊は容赦なく魚雷を見舞った。
ガレオン船が木っ端微塵に吹き飛び、小型の輸送船がまとめて田楽刺しにされて、一気にバラバラになる。
別の輸送船は船腹に1発被雷し、じわりじわりと沈もうとする。
その内部では、乗客の騎士や歩兵、船の乗員が怒号や罵声を浴びせながら、
酷い場合には互いに斬り合いながら、地獄の船内から脱出しようとした。
そんな船にも、止めとばかりに5インチ砲弾が10発単位で浴びせられ、何もかも無に返してしまった。
スコット部隊が輸送船団を襲い始めて1時間経つ頃には、先頭集団200隻のうち、実に半数近くの船が沈み、生き残りの半分は大なり小なり傷を受けていた。
そこに、護衛艦隊を打ち破ったリー部隊の生き残りが駆けつけてきた。
リー部隊は、未だに健在である戦艦ワシントンと、重巡洋艦のヴィンセンス、サンフランシスコ、
駆逐艦3隻を引き連れて、逃げようとする輸送船団に容赦の無い砲撃を浴びせた。
ワシントンに至っては、敵船団の中に乗り込んで、数十隻単位の中型船、小型船をひき潰し、
ガレオン船を自慢の16インチ砲で打ち砕いた。
敵側も、わずかながら火砲で反撃を加えてきた。
スコット部隊では、アトランタ陸上用の大砲の砲弾7発を浴び、ジュノーも9発を受けた。
リー部隊では、ワシントン7発、重巡洋艦のヴィンセンスに6発、駆逐艦のフレッチャーとハンマンが共に3発ずつ受けた。
しかし、歴戦の精兵部隊が見せた反撃も、ここまでだった。
その反撃に対して、米艦はより多くの砲弾をぶち込んで沈黙させ、次々と海底に叩き込んでいった。
気がつく頃には、敵輸送船団の生き残りは、北の海域に逃れており、
現場海域には、沈没船と、大破し、炎上する船と、そのように振舞った米艦艇のみが残された。
「攻撃終了。」
リーは、いつもの怜悧な口調で呟いた。
「各艦、引き続き、味方艦の溺者救出に当たれ。」
そう命じると、リー少将は深いため息をついた。顔はどことなく暗い。
「これで、ようやく一安心ですな。」
「まあな。それにしても、任務とはいえ」
リーは、地獄さながらの海上を見渡す。
バゼット半島に上陸し、エルフ相手にやりたい放題やろうとした少なからぬシホールアンル兵が、
米艦艇のやりたい放題の襲撃に逆に撃ち沈められてしまった。
一体どれぐらいの生命が失われたか?
5000?それとも10000?
いや、それだけでは済まないはずだ。
全体で半数近い数の輸送船に魚雷を叩き込み、砲弾を撃ちまくった。
犠牲者の数が数万単位の大台に達するのは確実である。
「このような戦い方は、どことなく気が引けるものだな。」
1942年 11月28日 セイレルムーン沖40マイル
空母エンタープライズの飛行甲板に、地上攻撃から戻ってきたF4Fが着艦してきた。
ミスリアル救援部隊の司令官であるウイリアム・ハルゼー中将は、その光景を見守っている。
「この上空支援も、今日が最後ですな。」
ブローニング大佐はそう言う。表情はどこか晴れ晴れとしたものである。
「そうだなあ。シホールアンル野朗も、山岳地帯からトンズラして、
ミスリアル領から逃げつつあるからな。」
「ようやく、守る側から攻める側に移ってきたのですね。」
「そういう事だ。所で、セイレルムーンに停泊していた時に、エンタープライズに乗って来た
使者のエルフ、覚えているか?」
「勿論覚えておりますよ。なんにしても、若い上に美人でしたからな。
それなのに、40代後半というのには、流石に驚きましたが。」
「気に入らんのはやたらに露出の高い服を着とる事ぐらいかな。あれじゃ露出狂と変わらんな。
まあ、ステイツの中の女も、エルフのように年取っても若いままであればいいのだがね。
最も、わしはMyワイフで満足しているから、どうでもいいがね。」
そう言って、ハルゼーはイタズラ小僧のような笑みを浮かべた。
それに釣られて、ブローニングも笑ってしまった。
「それはいいとして。このエンタープライズもよくやってくれたな。あと、ヨークタウンもよく頑張ってくれたよ。」
10月24日に起きた2つの海戦の結果は、世界を衝撃の渦に巻き込んだ。
2つの海戦は、総じてバゼット半島沖海戦と呼ばれている。
そのうちの前半戦となる、バゼット半島西方沖海戦では、アメリカ、シホールアンル両軍による大規模な機動部隊決戦が行われた。
勝者は、レンジャーを沈められ、ホーネットを大破させられ、他の2空母にも損傷を受けつつも、
見事に6隻中5隻の敵空母を撃沈した、米海軍側に軍配が上がった。
続いて、夜中に行われた、アメリカ側襲撃部隊と、シホールアンル海軍が繰り広げた海戦、
通称ノーベンエル岬沖海戦では、劣勢のリー部隊がよく勇戦し、重巡洋艦ノーザンプトン、
軽巡洋艦サヴァンナと駆逐艦3隻を失い、戦艦ノースカロライナと重巡洋艦アストリア、軽巡サヴァンナに
駆逐艦2隻を大破させられた。
それと引き換えに得た戦果は戦艦3隻撃沈、1隻大破。
巡洋艦4隻撃沈、3隻大破、駆逐艦7隻撃沈6隻大破という、輝かしいものであった。
そして、別働のスコット部隊と共同して行われた敵輸送船団襲撃では、700隻中278隻を撃沈し、
128隻を大破、停止させ、敵兵、およそ48000人を、膨大な物資とともに打ち沈め、
シホールアンルの大規模な上陸作戦はここにして頓挫した。
増援部隊が壊滅、撃退されたの機に、山岳地帯側のシホールアンルの攻勢も勢いがなくなってきた。
海戦から3日後には、米空母エンタープライズ、ヨークタウンから発艦した戦爆連合320機が、
3波に分かれて山岳地帯のミスリアル軍を空から助けた。
米機動部隊は、損傷艦を下げて、空母2、巡洋艦1、駆逐艦5隻の小艦隊に成り下がっていたものの、
ミスリアルの支援に大活躍した。
常に、セイレルムーン沖40マイル地点に米機動部隊は駐留するため、この海域はヤンキーステーションと言われた。
ヤンキーステーションの支援は、昼は勿論、夜間に行われる事も幾度かあった。
11月10日、バルランド軍は、戦線の南部からシホールアンル軍を突き上げるようにして侵攻作戦を実施した。
これに呼応するかのように、ミスリアル軍の最後の予備軍団も、山岳地帯を駆け下りてシホールアンル軍に立ち向かった。
11日には、新たに配属された戦艦サウスダコタを始めとする砲撃部隊が、
海岸側のシホールアンル軍の陣地を叩き潰し、同軍を撤退させた。
シホールアンルのミスリアル侵攻軍は、上空支援を受けたミスリアル、バルランド両軍の前にじりじりと後退し、
18日、ついにバルランド軍の一部隊が、ミスリアル軍と握手を交わし、シホールアンルの包囲から解放された。
その後、依然として戦いは続いていたが、ミスリアルの国土は、大部分がバルランド軍と、
米機動部隊の支援によって取り返すことが出来た。
「これからはどうなるんでしょうか。わがミスリアル救援部隊が、この海域から出るとなると、
敵艦隊の出現に対応できないのでは?」
「それは心配ないぞ。」
ハルゼーは被りを振った。
「今度、ミスリアル国内に、我が合衆国の陸軍航空隊が進出するそうだ。
既に工事は大詰めを迎えていて、あと1週間ほどで航空隊は進出できるそうだ。」
「なるほど。」
ブローニングは納得して頷いた。
「それにしても、あの海戦で馬鹿にならん被害を受けたなあ。巡洋艦や駆逐艦を失った事も痛いが、
一番厄介なのは貴重な空母を沈めてしまった事だな。」
あの2艦の対空火力で、我々の空母はかなり助けられている。」
「ワシントンは1ヶ月、ノースカロライナは4ヶ月、ドッグ入りですからね。
現状の護衛戦艦が、サウスダコタ1隻のみ、というのは寂しい限りです。」
「失うものも大きかったが、その分、得る物はもっと大きかった。
機織戦法の有効性、それにアトランタ級が対艦戦闘に使える事、そして、
救いを達せられた時の、人達の気持ち・・・・」
ハルゼーは、1日だけミスリアル国内に上陸し、国王に謁見を許された事があった。
国王はハルゼーに、深い感謝の念を表し、彼を英雄とまで言っている。
しかし、もっと印象的なのは、エルフの子供達と触れ合った事である。
無邪気な子供達と触れ合う間、ハルゼーは、この命を救って良かったと思った。
「ブローニング」
ハルゼーは、懐から紙を取り出し、それを眺めながら言った。
「真の英雄は誰だと思う?」
「真の英雄・・・・・でありますか?」
ブローニングは、ハルゼーの言葉の意味がわからなく、しばし考えた。
「この戦いで、命を落とした将兵達、でしょうか?」
「まあ、近いな。確かに、このバゼット半島沖で命を散らした者は、間違いなく英雄だ。だが、他にも英雄はいる。」
そう言って、ハルゼーは紙を差し出した。
紙には、肩に1羽の鷹を乗せた、若く、美しい女性の肖像が描かれていた。
「俺達を呼び寄せた張本人さ。彼女は、皇族の身分でありながら、軍に志願し、
裏の汚い作戦に敢えて立ち向かっていった。そして、亡国寸前に陥った祖国を救うべく、
自ら立ち上がり、現状を俺たちに知らしめたんだ。」
「そうなんですか・・・・・・」
「真の英雄は、ベレイス本人だよ。彼女の行動が、破滅寸前の祖国を救ったんだ。」
ハルゼーは、ブローニングから紙を渡されると、それをポケットに入れた。
「俺は、勇気のある奴は大好きだね。どんな人種であろうが。」
最後のドーントレスが、鮮やかな態勢で着艦し、攻撃隊の収容が完了した事が告げられる。
エンタープライズは、寮艦ヨークタウンと護衛艦艇と共に針路を変え、本国への航海を始めた。
SS投下終了であります。
やべ!抜けていた部分がありました。
>>214と
>>215の間に入る言葉はこれです。
「レンジャーはもともと、耐久性に大きな問題を抱えていましたからね。
まあ、レンジャーにとっては、送り出した艦載機で敵空母1隻を沈めたことが救いでしたな。」
「ホーネットが大破したのも痛いね。あと2ヶ月は待たんと使えんというのが、
ちょっと困ったものだな。それにノースカロライナとワシントンもだ。
ご迷惑をおかけして本当に申し訳ございませんでした。
リアルタイムで見れて良かったー! \(T▽T)/ 実は3話目辺りから見てました!
なお、間に入って応援されていた方は、
翡翠以外の何方かですんで宜しくです!
翡翠的には、ここの部分が大好きです☆ ↓
>>161 「輸送船を集める時は、徴発された側の主はかなり困っていたようです。」
後ろから、参謀長がそう言ってきた。
艦橋から輸送船を見渡していた、ザイル・ヴォルソレイ少将は振り向く。
「確かに困るだろうな。たかが漁船といえど、生活を支える大切な道具だ。」
(・▽・)r
ここ3代目と老舗を睨みつつ(4代目も)翡翠も鋭意、作品整備を進めます。
(投下先は4代目の予定ですが、流れによれば3代目への投下にシフト)
ただ、翡翠本作品の方は、結局、45年の日米艦隊の死闘になるので、
本編は当分見合わせて(↓のコンセプトから大いに逸脱だし)
私も米艦が活躍する別話にシフトしようと考えています。
お疲れ様でしたです!
とは、言え、米艦の活躍も見たいぞゴルァア、と
誘い水をかけられた方は、前スレ519さんの作品登場で、
やっとこ見たい話が見れたトコかとも思いますので、
翡翠はやっぱり日本艦隊で行きますか。(米軍の資料、ホンと少ないですよ)
ではでは3代目がエビ殿や前スレ519さんら書き手さん天国になりますように・・
(4代目かぶりの責任もって翡翠はあっちを管理しないと駄目でしょうし☆)
翡翠氏、それから途中で応援して下さった方、本当にありがとうございます。
まあ、なんとか念願の機動部隊同士の決戦を書き上げる事が出来、本当に良かったと思います。
最後の失敗さえなければ、おおむね満足できたのですが、そこがかなり残念です。
最近は、F自スレの物語氏のSSが楽しみでたまりません。それに、小官氏の
久々の短編も見ることが出来、ちょっと嬉しい限りです。
翡翠氏、エビチリ氏、その他の職人様も頑張ってください!
では、今日はこれで。
223 :
名無し三等兵:2006/10/26(木) 22:32:44 ID:5zRi4ePw
保守です
前スレ519さんに質問です!
サッチ・ウェーブが通用しているということは、「零戦と同様にライダーの高速横転性能はかなり悪い」
と解釈しても良いですか?
・・・厨房でもそれなりにいろいろ考えて学習したいんで。
>>224氏 どうもであります。
そうですね。戦闘ワイバーン(米側のコードネームでライダーですが)は、零戦
と似たように、高速横転性能は悪いです。
しかし、零戦よりはわるくはありません。
作中で、サッチウィーブに引っ掛かってばたばた落とされたライダーですが、それでも、
2番機のF4Fをわざとオーバーシュートさせて、通過間際に撃墜したりなど、
意外な健闘も見せています。
とりあえずは、
>>224氏がおっしゃるように、高速横転性能は悪いと、解釈していいです。
しかし、翡翠氏はなかなか現れないですな。
やっぱバイト忙しいのかな?
うは☆今日も見れましたお☆前スレ様のひと♪
いえいえ。老舗の11月攻勢を睨みつつ、なのでっす。
それと、
^^)えび殿(独軍)補給殿(19世紀以前)陸戦隊殿(日本海兵隊)
艦隊殿(何処かで見たような)前すれ殿・・と、よいスレになりそうでしたので。
翡翠が初代スレ創設時に見たとおりの。(本来翡翠の人は裏方の人っす)
と・・承知しました。
3代目での展開も準備しますですね☆(ちょっと整備時間を下さいませませ
ですっす)
おお、結構な規模ですね。期待して待っています!
229 :
224:2006/10/28(土) 22:53:07 ID:???
>>225 レス本当にありがとうございました。
一応は、「ライダーの高速横転性能は零戦以上二式単戦以下」と覚えておく事とします。
昭和18年 日本某所
退役軍人・小西(仮名)飛曹長は、帰ってきた。
彼は無事・生きて、日本に帰ってきた。
彼は生きて南太平洋はブーゲンビルの戦場から、帰ってきた。
そして彼は、郷里で、彼の花嫁を力一杯抱きしめる事が、出来た。
2人の結婚式は、彼の写真と彼の妻とだけの、結婚式であった。
なぜなら彼、花嫁の夫、小西(仮名)飛曹長は、軍人であったから。
花嫁の夫、小西(仮名)飛曹長は、
軍人としての任務の為に、結婚式に出る事が出来なかったから。
そんな2人の再会を、遠くから見守っている者達がいた。
ある元帥と、昭和18年のあらゆる政変の黒幕、そして、その、護衛達であった。
2人の再会を見守る元帥の目から、涙が溢れて、止まらない。
その背後で、昭和18年のあらゆる政変の黒幕が、ぼそぼそと何事かをつぶやいていた。
「もう、無茶をなされては、駄目です」
元帥は、うんうん、と、頷く事も出来ずに泣いている。
小西(仮名)飛曹長は、ブーゲンビルの空で、元帥と共に死ぬ筈の男であった。
彼は、元帥、その時は、連合艦隊司令長官であった男が座した飛行機の、パイロットであった。
史実では米軍機のP38に撃墜され、元帥と共にブーゲンビルの空に散った男であった。
元帥と黒幕、その護衛たちの後ろで、
元帥と小西(仮名)飛曹長らを救出した自衛隊の面々も泣いていた。
そんな彼らの周りでは、風に呼ばれてやって来た夏の通り雨が、柔らかくキラキラと舞っていた。
そして本格的な夏の雨がやって来て、
泣いている彼らを、暖かな水滴の幕で優しく、静かに、包み隠していった。
昭和19年初頭 日本上空
昭和18年事件や鈴木貫太郎内閣の設立など、昭和18年に起きた様々な事件の黒幕であった今井は、
昭和18年の非公式の連絡会議で、国内の航空運輸の部門での女性パイロットの登用を提案。
そして昭和19年初頭、ついに日本上空にて、女性パイロットによる軍需物資の航空輸送隊が設立・運用された。
また、昭和19年といえば、「我に追いつく敵機なし」の伝説で名高い、
日本海軍新鋭偵察機「彩雲」の輝かしいデビュー年でもあった。
既述の建艦計画の大削減(今井の空母不用論)によって生まれた莫大な予算と物資は、
これら輸送機や偵察機の充実にも当てられ、可能な限りの大増産が発令されていた。
だが昭和18年代の政権・軍部の奪取では、
史実の大戦後半を彩(いろど)る新鋭機の充実配備など、夢の又夢であった。
史実より民間、特に女性の活用、史実より早めかつ合理的な軍備計画の発令、も、
昭和18年では後智恵を持ってしても、挽回の余地無し。
昭和18年〜19年の日米両軍が延々と消耗しあっている最中、
45年の両国艦隊が何処まで「史実の遊兵と喪失物資を回収」できるかが、勝負であった。
あうう、時間切れです・・。とりあえず今回はこんなところで〆
早くメインアクセスポイントの規制、解けないかな。
・▽・)ノではでは☆
翡翠氏お疲れ様です。
11月攻勢までもう間もなくですな。
ていうか、最近は月日が立つのが早い気がします。
20を過ぎると、どうも時間の流れが速くなりますね。
236 :
234翡翠:2006/11/01(水) 00:02:35 ID:???
分家の更新お疲れ様です!そして、11月なのです♪
翡翠はちょ〜〜〜っと様子見ていますね☆☆
・・本当は3箇所同時(00時00分)に投下したかったのですが、
援護射撃役に徹していますです。(・w・)>”♪
>20こえると
それ以上になると・・それはもう(笑^^
ではでは・・時間切れ落ち☆
(あれが織田信長か)
甲斐の国・天目山麓は、雪景色であった。
何もかもが凍りつく雪の空であった。
その空の下で、武田家の総帥、武田四郎勝頼は、仇敵の姿を遠望していた。
勝頼の視線の向こうでは、戦国の覇王・織田信長が、無言のまま、勝頼を見つめていた。
信長が勝頼を見つめる視線は、何処か酷く…悲しげであった。
見つめ合う両雄。
そして…その間に、両家の武者達が、静かに展開しつつあった。
武田家は、戦国きっての名家であった。
その、新羅三郎義光の血を引く名門の家、甲斐源氏武田家が、今まさに滅びようとしていた…。
238 :
天目山に降る雪の舞 神の鳥、飛ぶ 〜 平行世界の戦国 in 自衛隊 〜:2006/11/02(木) 16:35:32 ID:gd7jlc8f
……勝頼の意地、で、あった。
だが、そもそも勝頼は、父・信玄の生きている時から、意地を張り続けていたのかもしれない。
そして彼がその気になれば、武田家は、信長の配下として存続できたであろう。
だがそれは、勝頼には、歩めない道であった。
そんな勝頼の意地を知る信長は…
勝頼を目前にしながらも引導を渡せぬまま、彼を見つめ続けていた。
天目山麓に1陣の強い風が吹いた。
それは名家の最後を拒否するような、強く、悲しい風、であった。
その強い風の声が、合図だった。
武田家最後の戦士たちが、主の最後の名誉を守り通すべく、最後の戦いへの1歩を歩み出した。
そして信長の親衛隊は、彼らの思いにただ黙って答えようとしていた。
空から舞い落ちる雪が、悲しげに、美しく光っていた。
「…………」
その、今まさに切り結ぼうとしている彼らの間に、進み出る者が、いた。
その者は両軍の丁度真ん中に立ち、
そして静かに信長に照準を合わせて六四式小銃を構えていた。
長島一向一揆の民の惨状を見て以来、信長の敵に回った勇者、
陸上自衛隊普通科隊員・斎藤一(はじめ)であった……。
「鈴木(雑賀)孫市、また邪魔だてするか」
突然の乱入者であった。
しかし信長は、平然とその乱入者の顔を見つめていた。
それどころか魔王の顔から、悲しみの色が消えていた。
……不思議な、光景であった。
雪混じりの儚げな風の中で、三者三様の眼差しだけがあった。
時空の嵐、または魔神の召還により、戦国時代?に飛ばされた自衛隊は、
この世界を認識したその日から、彼らの知っていた歴史に従う事を決心。
途中までは、信長の政権確立に手を貸していた。
しかし、長島一向一揆の殲滅を目の当たりにしたころから、雲行きが変わった。
その頃、平成市民20万人と、自衛隊の本隊は、あいかわらず堺と尾張の国にあり、
その強大な武力は堺と尾張の国の海運の保持・育成に向けられ、
まさしく飛ぶ鳥を落とす勢いで繁栄の一途を辿っていた。
20万の市民は目隠しをされたままだったが、
潤沢な食事と暖かな家、綺麗な清水と、夜明けまで家々に燈る美しい明かり、
そして何より、
安全な浜辺と森と草原を余る程得て、ドワーフニーフ皇国以来の幸福を謳歌していた。
だが。
末端の隊員の中には、戦国の宗教戦争と悲惨な現実を見るにつき、
斎藤隊員の様に、まったくの民の側に立つ者もいたのであった。
そして中には福島隊長の部隊の様に、
気に食わない(平成人から見て非道な)勢力を、密かに叩き潰す部隊も出てきていたのである。
そして斎藤は、
何時の間にか「戦国の鉄砲名人・雑賀孫市」の役割を演じるようになっていた。
勿論、斎藤は、雑賀孫市なる人物なぞ、知りもしない。
歴史に興味の無い斎藤が、雑賀衆に協力している間に、
たまたま思いついた偽名が「雑賀(衆の)孫市」に被っていたのだった。
風が、悲しげに1声泣いた。
そして、冷たい風は止んだ。
そこには、もう、悲しみの世界だけ。
一瞬の夢の様な時間に、終りがやってきたのだ。
素面に帰った信長が「(こやつ等を)殺せ」と命じる瞬間であった。
「……もうそろそろ、いいでしょう」
信長の決断を悟り、彼の背後から、3人の間に割って入る者、あり。
「……商人は引っ込んでおれ」
「私は熱田神宮の神主ですが、何か?(大ウソ)」
「偽神主は引っ込んでおれ、と、言っている」
年老いた農耕馬に跨った神主姿の民間人・今井が、信長と斎藤の間に割って入ってきた。
「(宗久の出る幕ではない、下がれ)」
「(信長殿はツンデレだから困る)」
潔癖な信長の迷惑そうな顔と、今井の憮然とした顔が、交差した。
「(……素直にお前が欲しいとか言えないのかの)」
「(ま、言えない人だから、髑髏の金杯なんぞこしらえるのだがの……)」
当人に聞こえれば、一刀の元に切り捨てられる危ない言葉を聞こえないように呟きながら、
そのまま、がっぽ、がっぽと馬に揺られて武田の陣に歩み寄る、今井。
そして、北条家から勝頼に嫁いできた美しい姫にニコリと笑うと、
呆気に取られた武田武者を尻目に、
これまた盛大に呆気にとられている勝頼に向かって一言。
「勝頼殿に、引き合わせたい人物がござる」
それだけ言うと、また、がっぽ、かっぽと老いた農耕馬に揺られながら、
まだ形だけは睨み合っている信長と斎藤の間に、“さりげなく”割って入った。
と、同時に、
辺りを圧する爆音と狂風を撒き散らしながら、自衛隊のヘリが舞い降りてきた。
「斎藤!」
ヘリの騒音もかくやな怒声とともに、本多隊長が駆け下りてきた。
投下終了。
前スレ519殿が「スレの25%」を占めないように、翡翠も3代目重視で動きますね。
まあ続きはミスナ編にかぶるので、老舗と3代目のどっちかは流れ次第。
・▽・)ノではでは☆
安土城下に彼は居た
『家久さぁ(様)信長公は多忙につき拝見できんこってす』
『そげんか』
織田家と島津家の関わりは耳川の合戦以来である、耳川の合戦で大敗した大友宗麟は停戦の仲介を信長に頼んだ。対毛利戦を考えていた信長は両者に和睦して毛利氏の後背を攻めて欲しい、そう構想していたのだ。
『饗応は明智光秀どんがおこなうっそうで、茶ば用意しとると』
『おいは茶はわからん、白湯でよかと伝えちっくれい』
『はっ!!』
島津氏は本土最南端でありながら家久を始め、伊勢神宮を参る等の理由で上京経験がある者が多数いる、決して情報に疎いわけでは無い。むしろ近衛前久と繋がり、朝廷筋にはかなり取り入っていると思われる節がある
『じゃっどん・・・』
家久は公家達から伝え聞く安土城の事を思い出していた
『天子様の御所を自分より下に置くとは無礼極まり無いでおじゃる!』
とだ
『危なかな。大きくなった家は少なからずそげんあっが・・・こげん事ばしとったら』
裏切りもんがでっぞ・・・
『今は義弘(この時義珍、便宜上義弘)兄さぁが肥後ば攻めよっけん、大事はなか。じゃっどん、ちぃと急がにゃならんよう進言し申すか』
と、帰ってからの報告を考える家久だった。
『義弘兄さぁはいっとったなぁ・・・』
上京する前、守護代就任の際に敬愛する兄に会い、家久は聞いたのだ。もし、九州に覇を唱えることが出来たなら、おい達はどうするとか?と
『そいは、本州の実力者次第、今は信長公でごわすな。もし戦うっこっなったら、水軍ば動員して南蛮船の往来ば止むっな。金子で買い占めてんよか
硝黄石なかりせば鉄砲の矢玉は成り立ちもはん。後背を脅かされとぅない輝元公も船や銀ば貸してくるっやろう。そんあとは・・・』
『そんあとは・・・?』
『少しきを足れりとも知れ満ちぬれば』
『月もほどなく十六夜の空』
彼等の祖父、日新斎のいろは歌である、彼等兄弟はこれを全てそらんじていた
『己自身の力を求め続けっいけば、やがては転ぶとよ
こん鎮西の地はおい達、鎮西のもんで雌雄ば決するでごわすが。そい以上はそれが出来てからでありもそ。頭の上の蝿を追わずして他を考えるはうつけのすっ事ぞ、家久』
『あ、兄さぁ、すまんこっ』
平伏する弟に優しく義弘が声をかける
『よかよか、理を弁えつつ大きか事ば考えるんは心に余裕があっ事、そいに傾注しすぎてはなりもはんが、将として策を練るには必要な器でもありもす』
構想力といった物の事である
義弘兄さぁ・・・あん時の酒は旨うございました
『ならば、兄さぁ達のためにも見るもんを見て、情報を得なければなりもはんな!』
気合を入れ直し、家久は決意する。そして、この日の明智光秀との出会いが島津家にとって史実と違った流れを見せる分岐点になろうとは・・・誰も思わなかったのである
とまぁ思わせぶりに終了、家久上京、明智光秀の饗応は史実でもあります。信長には馬上で寝ているのを見たそうで。
ちなみに家康の方は耳川の合戦を知り、おそろしき謀り事と語ったとかあるそうで
ミスナ編とどういう繋がりがあるのかよくわかってないので宝石蜜柑箱さんの続きを見つつニタリとしときますね〜
うは!(^^);ちょ、美味しいトコでやめないで!
・・これだから軍板サイコー!
つか辞(ryの方の軍板テイスト九州戦国史、続けて欲しい!
@方言
方言は江戸幕府以降だと思うのですが、
方言あると途端にクオリティ鰻登りですの〜・・真剣たまりません☆
・▽・)気まぐれ投下でもお願いしますね♪
今日はもしかすっとラッキーな日なのかも
。 . .。 o .. 。 ゚ ゚ , 。. o 。* 。 . o. 。 . .
。 . 。 . .゚o 。 *. 。 .. ☆ . +. . .
。 . . . . . 。 ゚。, ☆ ゚. + 。 ゚ ,。 . 。 , .。
゚ 。 ゚ . +。 ゚ * 。. , 。゚ +. 。*。 ゚. . . . .
。 . . 。 。゚. 。* 。, ´。. ☆。。. ゚。+ 。 .。 . 。 .
. 。 ゚ ゚。 。, .。o ☆ + ,゚。 *。. 。 。 . 。 .
゚ .゚ ゚ 。゚ + 。. +。 * 。゚。゚., ,+ 。゚. 。 . . , , .
゚。゚+゚`, o。。.゚*。゚ 。.゚ 。 ☆+。。゚. ° 。 . , ゚ ゚
。, .゚。 + ☆。,゚. o。 。+ 。゚., . ゚ , 。 。 . .
゚. o * 。゚。゚.。゚。+゚ 。 。 ゚。 ゚ 。 ゚
゚` .゚ .゚. ゚. . ゚ . ゚ . , . . . 。 ゚ .
. . . , 。 . . , .
。 ゚ . 。
, . . , . .
。 ∧∧ ∧∧
( :;;;;;::)( :;;;;:: )
. . /:;;;;;:| | :;;;:.:ヽ
. (::;;;;;;:/..|:;;;;;;: ::)〜
‐''"´'''"""''"`''""`"""''''''"´'''"""''"`''""""'''"''''''"`"""''''``'‐
<定点観測中>ははっ☆
大本営殿も見れるとは今日は嬉しき日かな。
それは置き、これは真面目な議論なのですが、
戦国武将&将兵を持ってきたのは、まあ、翡翠の趣味という事で。(笑)
自衛隊と共に戦うといったら、やっぱ、
<絶対に裏切らない>←これ、これがほしい。
その点、主家の滅亡にあっても義を曲げない者達なら、
自衛隊も絶対に裏切らないし、その上、白兵突撃は本職じゃけ、かなり頼りになるかな〜と。
やっぱ、一緒に死ぬ相手は選びたい。裏切らないと判っている相手となら死ねるし。
自衛隊の面々が枕並べて討ち死にしても、説得力あるかなあ〜とか。
いや、まあ、戦国武将だと駄目な理由がよく判らないのですが、まあ、
ファンタジー感覚は人それぞれという事で。
人によってはバリアも有り。
人によっては中世人口重視。(石造りの寒い城とかどーすんだろう)
多様な世界が見れていいなあ、と思うのです。はい。
テスト
さてと。軍板避難所の整備にとりかかるべなっと。
んで、大本営どの
>私のレスも鼻につくかも知れないレスだけど。。。
つかない、つかない(´`)ノシ つかお帰り待っていましたですぞっと。
>翡翠がどうこう言う筋合いはなし。
そこ、ちゃいまんがな(笑^^)
同じ職人?としては、1人で場を支えるのは辛いだろうなって・・事ですよ・・
それは置き、大本営殿の龍の話、お待ちしていますですよ・・
っと、流石にここのアクセスポイントも時間切れ。
1、2週間ばかしアク禁だったポイントだったので、非常に助かっています。
運営の方々、ありがとうございます・・。m()m
これでここの整備にも取り掛かれますです。はい・・
では、また。
いま、確認してみたらミスっていましたですの。訂正をば・・
757翡翠(星砂) ◆djVD4M.9Gw の書き込みで
753氏宛のがありましたが、↓が正しい。
755氏 翡翠さんが書き込み自粛してくれたら一番
755氏 ん。了解しましたですよ。(・w・)>”
>>729-755 の諸氏、宜しくですよん。
じゃ、オチオチ。
あ”。間違っても小官どのは、今、老舗&分家に乗り込んではダメですお。
小官殿を100%愛している翡翠より。
翡翠さらしage
(w)ふふふふふふふふ
783め、1人で修羅場に降り立つ時点で「オマエモナー」
今、翡翠が見上げている満月と海を見せてやりたいわ。
まあ、つか、ここが2chじゃなくて、
テーブルトークRPGの場なら、それぞれキャラ立って面白いだろうに。
まあ、あれよ。朝早く、乙。
今スレか次のスレでの戦列復帰を期待する。
>>237-245 の続き
武田勢が初めて見る現代兵器「神の鳥(要は何時もの大型ヘリ)」であった。
ぽかん、と、ますます大きく口を開けて魂消ている勝頼と、
主を守ろうと、慌てて固まり出した武田武者達。
そして恐れおののき、泣き叫ぶ武田家の女房たち。
それを1人で守ろうとしている勝頼の長男、織田家の血も引く花の様な若武者・武田信勝。
で、慣れているとはいえ、流石にこの無茶苦茶な爆音と狂風には堪らず、
しかめっ面をして怒気を含みだした信長と、
仰天して逃げ出そうとする馬達を制御するのに必死な信長親衛隊。
「(図ったな)」
「(図りましたが、何か?)」
「(この腐れ神主が)」
「(五月蝿えツンデレ大将)」
「戦国の世を偵察してくる」とだけ伝えて行方を絶った斎藤隊員と、
その斎藤の点呼はバックレながらも、心配しきりであった本多隊長。
信長に六四式小銃を構えたままチラとも目をくれない斉藤隊員に、
部下への、否、親友への怒りの鉄拳をくれる本田隊長。
その憤怒の本田隊長の後ろから、勝頼に向かって駆け出してきた大勢の武者達。
信長の大軍の前に、呆気なく瓦解四散した大武田軍の中に在って、1軍だけ主家に殉じた悲劇の武者達。
悲しみの高遠城の面々……であった。
>>237-245 の続き
そんな彼らの再会の図に信長は、「フン……」と、鼻を鳴らして、
勝手にしろと言わんばかりに馬首を転じて、滝川一益らが控える後陣へと引き揚げて行った。
戦国最悪の暴君、または狂気の王ともいい、
第六天魔王とも呼ばれた彼の、優しげな一面を知る者は・・・少ない。
まして「この世界の信長」は、本当は、恐ろしく、情の深い男であった。
世の多く者が知らぬ、魔王の、真の姿・・・。
黒いマントをバタバタバタと言わせながら、
冷たい風と雪の舞いの向こうへと霞んでゆく、信長。
甲斐の国の山々と、白と灰色の景色の向こうへと、消えて行く魔王の後姿・・・。
その後姿を、何処までも見送っていた、今井・・・。
>>237-245 の続き
武力の信長と、宗教の顕如、そして経済の今井の戦争は、
この世界でもまた、信長の勝利となって終わろうとしている。
(自衛隊が味方についているのだから当然だ)
そして再会の喜びから、ぽかん、としている武田家の面々の前で、
本多隊長と斎藤隊員が、テッパチと呼ばれる六六式鉄帽で壮絶な殴り合いを演じていた。
斎藤隊員の行方を知っていたのは今井だけである。
この世界では「今井宗久」と言う名で呼ばれている今井は、
下手に彼らの注意を引いて、彼らの怒りの矛先が向かわないように、と、
そろそろと…勝頼の妻・北条の姫の背中に、隠れるのであった。
そしてそれを、北条の姫が不思議そうに顔を軽く傾けて…。
>>237-245 の続き
天目山の空に、自衛隊のヘリ群が舞った。
そして久しぶりに実戦出動した福島隊長の部隊が、ヘリの爆音もおどろに天目山に降り立った。
彼らは武蔵国・箱根ケ崎村(現・東京都西多摩郡瑞穂町)で北条勢から加藤丹後守の軍を救出していた。
北条家の当主も、歴代の親族・家臣たちも信長につき、勝頼は四面楚歌であった。
その勝頼が天目山まで逃げ延びれたのは、
北条の姫や彼らの献身なくしては在り得なかった。
彼らの死と全滅を賭した働きがあればこそ、彼らは・・・
>>237-245 の続き
1582年3月 甲斐源氏武田氏が滅びた。
しかし異界では、その最後の悲劇だけは回避された。
そして。
非業の死を遂げていたハズの北条の姫が、不思議そうに今井らを見て、微笑んでいる。
滅び行く武田勢の最後の郎党が、再会を抱き合って喜んでいる。
おそらくソレが、自衛隊が、この世界に飛ばされた、理由…。
神の鳥、飛ぶ 〜 平行世界の戦国 in 自衛隊 〜
天目山に降る雪の舞の章 終
翡翠氏投下お疲れ様です。
珍しく大量投下ですね。
ここ最近、自分も投下先で、新シリーズやろうかと悩んでいる最中ですが、
どうも、考えがまとまらないこのごろですorz
>>260-264 水を差すようで悪いが、レス使いすぎじゃねーか?
他のレスもそうだが、1レスの文章が短すぎる。
今回の話も、これならせいぜい3レスもあれば十分だぞ。
これからはもうちょっと考えて書いてくれや。
『(ないじゃ、こん男は)』
安土で饗応を受けたる家久は思った、こ奴は危うか
『御家は鎌倉以来の御家柄、そして薩摩隼人は朝廷の防人としても勇名を馳せなさっている、御家のご助力を得られるのは織田家としても重畳』
『助力、と言っても和平に賛同したのみでごわす、毛利攻めに助力など出来ぬ相談でありもす』
何故、ここで話題のためとはいえ、朝廷の話をする?朝廷派の人間であれば、この安土でその話をするは不愉快窮まりない事のはず・・・饗応役を勤める程の男ならばそれが解らぬはずがない、何らかの事で余裕がない、ということか
『あ、いや、この私にも毛利攻めに参加せよ、との事とあいなりましてな、島津の御家は戦上手と広く知れ渡っております。是非とも、戦さ場の話を存じたく候』
白湯を一飲み、そして光秀にも無言で勧める
『種子となる心の水にまかせずば、道より外に名も流れまじ』
日新公いろは歌の「た」、だ
『水の流れるっごと心の落ち着かぬこっでは、事にいたる道が外れぬ事はなか、さらには名も流れ落ちてしまうでごわす』
『・・・』
『戦さ場でもこれは慣要の事、夢々忘れる事なかこっよ』
『中書殿!(家久は中務大輔、その中国読み)聞いていただきたく!』
『鬼がおります』
『ないの事じゃ?』
あまりにも話が唐突だ
『時に永延の頃、大江の山の話にございます』
童の頃、昔の話によく聞く話だ
『酒呑童子のこっでごわすか?』
『酒呑童子は叡山より伝教大師、最澄により追い出され』
『源頼光によって大江の山で討たるっ事になる・・・っ!?』
酒呑童子は仏門最大の敵といわれている、その最大の仏敵とは・・・第六天の魔王!それを名乗っとるは・・・!!
『私の生まれは土岐氏であります』
土岐源氏は、源頼光の筋を持つ家柄、その血筋には光の字を持つ者が多かったと聞く・・・光、つまりは光秀!
『頼光殿にあやかりたく、存じますれば、次のいくさ、必ずや、必ずや!』
秘密を共有する人間が欲しかった、のでごわすな。主討ちという大業を背負うにあたって
『・・・おはんの心根は解りもした。しかしおいは外の人間でありもそ』
『貴殿は外の人間過ぎます故、その言は届きますまい』
『・・・』
『御見苦しい饗応となりまして』
光秀が平伏する
『次、お会いするときは、更なるものをば』
『解りもした、そいではおいはこれで、いとましもそ』
席を立つ。中央で事が起こる、島津がそれを当事者以外で初めて知った瞬間であった
今回はあけっちーですねープレッシャーちきーんですネ〜
のぶっちの柩見ながら書いたからなんとなく、そこはかーとなく、無理矢理感がorz
いや、そんな事どうでもよく、オレの大好きな柴田の権六こと、かっちゃんはどうしてなんにでもメインになれんのかー!!!(予告・・・?)
とりあえずどうなるかはさっぱーりにエンド
戦国キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!マジ軍板万歳!
>>265 前スレ519様
orz 当方もWW2ほか、・・・・はい・・・・orz
改めて、519様の工業力+米軍愛に脱帽っす orz
>>266 orz ん、気にしている・・。なんとかビシーッとしないと・・orz
>>269 辞様
(;^w^)519様の米軍愛も凄いですが、辞様の戦国愛も・・!
(2chやってて嬉しい瞬間です☆)
ワタスモ台詞だけでシビレサセタシ
と、分家も見てきました☆
うーん、これは信頼度A店まで行って、FDを突っ込んでこなきゃあ☆ですよ。
なるほど、合衆国全土ですか・・んー。
アチラには紳士同盟で書き込めませんが、翡翠も戦前日本本土召還で何か書ければいいのですが。
(※挑発なさっている方がいますが、もともと分家には職人氏擁護以外で書き込む気は無いので念のため。)
まあ老舗の方はあと200レス余裕ありますし、
しばらくは此処だけの事を考えきれますから、何かいい筋が浮かぶかしら。
と、老舗は置いて分家の方に。
>だってあいつ、常に思考が自己完結してるし、自分本位だもん。
あはは☆
だからこそ、他の方の作品(および書き込み)も愛せるのですよんっと☆
(FD持参出動へ。では☆)
信頼度A店到着+老舗にて物語氏の出動を確認。
翡翠は宣言中にて50代への書き込み不可。
よって此処で物語氏への支援射撃を開始。
+ 老舗先日投下分(あれは続きがあるのですよ☆)
ショート B1
民間の今井がファンタジー世界で寝ていると、
ある日、狐の赤子と卵が1つ、枕元に置いてあった。
そしてその傍で、何処から来たのかカラス天狗氏が「んがごご」と寝息を立てていた。
「何じゃこりゃ?」
珍しい事もあるもんだと、狐の赤子は頭にのせて、
今井がもう1つの卵の方を斉藤隊員に見せに行くと・・・
斉藤隊員の手のひらの中で、卵からドラゴンの子が孵ったではないか。
「ほう、可愛いなあ」
目を細める斉藤隊員の手のひらで、ゴツイ彼を母親と見たドラゴンの幼生が、
ミャーミャーと頭を(手の平に)擦り付けて愛嬌を振りまいていた。
ちなみにカラス天狗氏の方は、酔っ払っているのか起こしても起きなかったので、
そこらへんにほったらかしてある。
ショート B2
それから数年が立った。
ファンタジー世界では、この世界の住人の年月は飛ぶように過ぎていても、
異界からやってきた我々平成の世の連中はぜんぜん年を取らない。
そんな訳で、未だにパツンパツンの肌艶の斉藤隊員に、
数メートルのデカサに成長した2脚歩行可能のドラゴンが、
彼の差し出された手のひらをミャーと言いつつ、ベロンと舐めるのであった。
「ずいぶんと成長しましたね〜」
今井が人に慣れた(!)ドラゴンに感嘆の声を惜しむ事なく、その成長したドラゴンの子を見上げている。
「食わすのが大変だがな」
そういう斉藤隊員の頬をベロンと舐めるドラゴン君。
ショート B3
まあ物持ちのズバ抜けている+大概の新規隊員を育て上げてきた自衛隊の事だから、
ドラゴンの子を育て上げるのも可能だったのかもしれない。
「じゃ、行って来る」
そう言うと斉藤隊員は、成長したドラゴンの子の背にまたがって、
草原や森に潜む虎や熊、野生馬、野生牛を狩りに出かけていった。
で、今井の寝床にいた狐の赤子はと言うと、
今では立派な九尾の狐(赤子のくせに)の幼生に変身、
そのフサフサな白と金も毛で、戦闘後遺症に悩む女性隊員に大人気であった。
「キッ君可愛い〜!」
まるで女子高生時代に戻ったかの様に嬌声を上げる田中隊員たちは、
夜もこの子を奪い合って枕にしているらしい・・・。
ショート B4
そんな、女子高生・・もとい、女性隊員に大人気!の九尾の狐に、
心中深くやっかんだカラス天狗氏が今井の耳元で、
「アイツだけ女子に人気とは許せんでゴワス!」
とか言っていたが、カラス天狗氏は「可愛い!」というか「カッコいい!」だからなあ。
だが安易に女性隊員からの密かな人気(人気者なんですよ。意外に。)を教えると、
調子乗って神通力を無くしてしまうかも、だから、
「任務に精勤していれば人気も出るから早く池!」
と本多隊長の元へと叩き出す今井。
ヘリの燃料が切れて偵察にも事かいて久しい「この時の」自衛隊とって、
時の氏神の様に重宝がられているこのカラス天狗氏。
自分が意外に女性隊員に好かれている事も知らないまま、今日も空を飛んでいくのであった。
(ここまで老舗投下分+追記)
ショート B5
「折角、斉藤氏の養子になったんですから」
斉藤氏の頭の上でミャーミャーと鳴いている(猫かよ)ドラゴンの赤子。
だが、このまま成長すると、どんな食性に育つかわからん。
この子たちを連れてきたハズのカラス天狗氏が、彼らの出生については口をつぐむので、
仕方なく今井の提案で、人間の手(火)を通した料理しか食わせないことにしてみた。
(斉藤氏が目を細めているこの子が、憑かれた目をして犬や人を追いかける図とか、見たくないからなあ・・)
んで、数年がたったのだが、案外イケている所を見ると、このまま人類文明に取り込めるかもしれない。
最初のころは、呆れた事に脱脂粉乳のミルクでもOKだった。
で、現在は、斉藤氏のハンティングで捉えた熊のバーベキュー、もとい、サイコロステーキを食わしたりしている。
で、今のところ、この子が、生物を追っかけたりする事は、皆無。(ウソみたいなホントの話)
ショート B6
「最初はナイルワニや入り江ワニもどきの恩知らずじゃないかと冷や冷やしてましたが」
「逆に入り江ワニもどきから俺を救う事もあるよ」
クメール戦争のころまでは、今井からプレゼントされていた馬に乗って出かけていた斎藤隊員。
現在(ショートBの時代)は立派に成長したドラゴン君の背にまたがって、湿地帯の移動とか随分楽になったそう。
で、危険な所ばかりうろつく斉藤氏の相棒は今井の人と相場が決まっていたが、
(命がけの職務なのに、あえて任務以外で危険な事や余計な訓練等をする人とか滅多にいない)
国家統治者代理になっても、行こうと言われればホイホイついていく人とはいえ、所詮は帰宅部の民間人。
ヒルのいる森や湿地帯には金輪際近づかないし、犬の背より高い草が生えている場所にも絶対に近づかないので、
斉藤氏としては「いい相棒ができた」と言った所だろう。
そんな訳で斉藤氏は、途中で荷物を今井に預けて、今日もドラゴン君と湿地帯でワニ狩りだそーな。
えーっと、迷ったけど、今日はここまで☆
519様、辞さん、物語氏殿、それぞれ頂きました☆
んではおやすみなさい・・
翡翠糾弾age
>翡翠は別にスレを荒らしているわけではないですよ☆
ぶっちゃけ、荒らし並に悪質なんで
>2ちゃんでそんなこと気にしていたら創作なんで無理無理☆
これまで一部を除けば、みんな気にして(つか、気にするまでもなく遵守して)創作してきたんだがな
気にしなかった香具師は容赦なく排斥された。
『な、何ね、この面妖な空間は!』
まわりにはよくわからないへな絵ばっかりの空間が広がっている
『今まで出番の全くなかった主役の頴娃久虎どん』
『ひょ、兵庫頭(島津義弘)さぁ!?』
『この面白いんだか面白くないんだかわからない作品に遂に登場なのでごわすよ』
『こん仕内は、頴娃ん家がわたすの代になってからの、忠孝じゃっけん、外様扱いん為でごわすか!?』
『おはんが29で落馬なんかして死なせん為でごわす!その又四郎(義弘幼名)ん思いやりがわからんとか!』
『お、御屋形様(義久)!?』
『まぁ、その前で戦で死んじょっかもしれんが(ボソッ)』
『歳久兄さぁそいは酷かなぁ・・・』
『又七郎(家久幼名)おはんのエセ主人公も酷かけどな』
『あぅ!』
『ところで久虎は嫁じょをもろうとらんようじゃが・・・遠出すっとやし』
『おいは自分から半径五メートル以内のおなごがよかち思うぞ(義久談)』
『おいは年下の若かおなごがよかち思うが(八歳年下の嫁持ち子供好きの義弘談)』
『姉さん女房が・・・(14歳年上の嫁もち歳久談)』
『ら、乱暴なぐらいの荒かおなごが・・・(史実ではないがマゾに確定された家久談)』
『・・・こんな家いやじゃああああっ!!!』
『はぁっ・・・はぁっ・・・ゆ、夢か』
いつもの寝所だ、遠くから声が聞こえる、伝令か
『久虎さぁに御屋形さぁから至急、御登城願うっ下知んあっ、伝えっとくれぃ!』
『御屋形さぁが・・・?なんじゃろか』
なんか夢見が悪かった気がする・・・城に行かねば・・・
『おぼろげに覚えちょるんは・・・やめた』
御屋形さぁ達はそげん方達じゃなか!絶対に、確実に、間違いなく、たぶん・・・
ばこぉん!!!
『たぶんなんぞありえもはん!』
自分を自分で強く殴り、狩衣を着て城へと急ぐ、御屋形さぁの御下知じゃ、一刻を争わにゃ
終了
主人公キャラ変更ですた、と
orz
辞さまの新作キター!なのに読む時間も無いなんて。
(超過料金が大変なことになっています(w);)
ありがとうございました☆
次はFD用意して翡翠も落としに着ますね!(・▽・)>でわわん☆
286 :
名無し三等兵:2006/11/10(金) 23:36:08 ID:B7jEIslt
ここは翡翠隔離病棟の一つです
うわ、なんかかなり酷い状況ですな。
翡翠氏、僭越ですみませんが、ここしばらくは少しばかり、活動を控えめに
したほうがいいかもしれません。
翡翠氏を語る者も出始める可能性もありますから、ほとぼりが冷めるまでは
傍観がいいかも知れませんよ。
うわ・・やっぱり、きてしまいましたですか・・519どの・・;
え、ええ・・。
ほかの各位も、
「いまは翡翠に関わりませぬ様に。」m()mよろしくお願いいたします。
特に小官どは翡翠に関わりあいになりませぬように。
まあ、実は時間があればあるほど、SS整備も充実しますので・・
いちお、翡翠は4代目に引っ込んでいますので。(・∀・)>”
それと、申し送れました・・
新シ○アや分家更新は目を通しています。各位の更新を楽しみにしています。
ではでは☆
さまざまな御協力&レス、感謝していますです・・m()m
義を見てせざるは勇無きなり! 勇有る者は必ず仁有り!
不肖小官、軍板有志の一人として支援する! 軍板本流の
メインスレは死守し、飽くまで被害担当艦スレに攻撃を誘導せり!
被害担当艦スレとして51スレも…ここまで続くとは小官もビックリ。
好きでやってるが、度々来れないのがキツイのよね…ホント。
では、健闘を祈りつつ…オヤスミナサイ、良い夢を…。では、な。
いやああああああ!!!(引きつり泣きw)
しょ、しょうかんどの、き、きてる!
・・・え、ええ、肝潰しましたよ、ホント・・;
でも、まあ、良い手応えだったようで、安心でした。orz
お疲れ様です。
小官どのの言霊やクマラン閣下のユーモアには遠く及びませんが、
民間から見た・・という視点で、
両氏が復帰なされるまで、細々リリーフしています・・おやすみなさいませですm()m
519どの
orz 被弾しないように控えめ投下してます・・。
御心配の通りにゆかず、orz スミマセヌ・・;
( 神の鳥飛ぶ 〜 平行世界の戦国 in 自衛隊 〜 本能寺前夜の章 )
「今井宗久、大儀である」
1582年、毛利家領内、某所。
平成の民間人・今井は、
室町幕府第15代将軍・足利義昭公(元)に呼ばれて、
この地にやってきていた。
尾張の国の某海岸で、
20万の「平成の世の市民」を守っている、
自衛隊とともに。
戦国の世に飛ばされた平成自衛隊と市民20万は、
風雲急を告げる厳島合戦直前の毛利家領内に次元放出された縁(えん)で、
天正年間の現在も、
瀬戸内海をまるで我が家のように往来している。
もっとも、
余り中央思考でなかった毛利元就の性格を見込んで、
瀬戸内海の覇者は「史実通り毛利家になってもらおう」、と、
何時もの面子(主に今井)が画策した結果なのだが。
「余は、神の鳥の軍勢の助勢を期待している」
織田信長に将軍の座を追われたとはいえ、
足利将軍家の現当主である。
巷の講談では、
「不甲斐無き最後の将軍」「軽薄未練の陰謀将軍」と
描写される彼だが…。
目の前に居る男こそが、真実であった。
考えてみれば、
殆ど身1つで、魔王・織田信長と対峙していたのである。
そして、その対・信長包囲網は完璧であった。
兄・足利第13代将軍義輝公が、
抜き身の刀を幾本も床に突き立て、押し寄せる賊徒と対峙したように、
世が世なら、
もしかすると「足利幕府中興の名君」と呼ばれたであろう男であった。
だが、上杉・武田・浅井朝倉・一向一揆も滅びた今、
彼にはすでに、勝ち目無し。
細川幽斎や明智光秀がついていてもなお、
どうにもならなかったのだから。
「(まあ、聞けませんな)」
「(俺は信長がまた殺戮をするなら何時でも敵に回るがな)」
「(…………)」
今井としては、
このウンザリな戦国乱世を即座に終わらせる当世人物は信長しかいないから、と
信長の味方をしたのである。
(平成自衛隊は「20万の市民と平和と自給自足以外は求めていない」から、我関せず)
人間的好みで言うなら、三好長慶など幾らもいた。
しかし彼らでは殺戮は無理なのである。
(謙信も義侠に厚過ぎてアレだし)
そしてそれは今井その人にも、言えた。
(性格が余りにも甘すぎるのである)
また、強情な斎藤隊員はともかく、
自衛隊としては、
こんな戦国乱世に関わって、1人の隊員の死傷者も真っ平御免。
今井と斎藤が何やら画策して自給自足が出来る様になった今は、
これ以上戦国の世に関わる気は、全く無かった。
なるほど、
その気になれば、自衛隊の力を持ってすれば天下統一も容易い。
だが、
それが何だというのだ。
天下統一事業ともなれば、全国に兵力分散は免れない。
全く持って「下らない面子やらしがらみのもつれ」から、
全国各地で無意味なゲリラ戦にも巻き込まれる事も日常茶飯事になるだろう。
まして、
全国に兵力分散した時に、再び次元放出が発動したら・・?
厳島合戦から姿を消し、信長の地盤を固めたのは何の為。
九州・四国・中国の物産の「無血」海運流通を保障する毛利(瀬戸内水軍)の顔を立ててここまできたが、
戦乱の火種など捨て置いて一刻も早く帰りたい、
それが2人の御目付け役・本多隊長の本音であった。
ようするに、足利将軍など平和の邪魔でしか無かった。
「頼む」
ペコリ、と義昭が頭を下げた。・・・有り得ぬ事である。
「余を快く向かえた毛利家の存亡でもある」「このままでは、上杉家までも滅亡してしまう」
成る程、陰謀将軍とは言われているが、実際目にすれば単純明快な人であった。
これでは信長に隠密裏に事を運ぶなど不可能だっただろう。
本当の史実の義昭将軍はどうだったかなど、
永遠の謎だが、
少なくとも目の前に居る男は、
たしかに「室町幕府第15代将軍」その人であった。
このような人物では、
越前朝倉家で安穏とした日々を貪るなど、
とても出来る事ではなかっただろう。
頼られても困る。しかし毛利家の顔もある。
そしてある意味惜しい人物。
さて困ったな、と、今井が上の空で考え事をしていると、
斎藤隊員と本多隊長が、じっとこっちの顔を見ている。
「(面倒事は任した)」
「(でも、飲めませんからね)」
「(……………;;;;;;)」
「(余所の世の見も知らぬ他人の為に、これ以上の1発の弾も1滴の燃料も)」
「(……………り、りょ、りょうかいですよ)」
3人揃えば文殊の智恵。しかしここでは下駄を預けられてしまった。
まあ、何時でも最初からその気ではあるのだが。
・・・今井が見るに、義昭将軍は、「人物」であった。
ただ、時代は、もう、信長の時代で、
我々は余所の世界の人で、
戦国の民も平成人の我々も、他人のために血を流すなど、真っ平御免。
となると・・・
「義昭さま」
平成人がいきなり、ズズッズズズッと、義昭将軍の側へと膝を詰めてきた。
落ちたり、とはいえ、
日本国の征夷大将軍であった義昭に、ここまで膝を詰めてくる人物は、いない。
義昭将軍は思わず身を浮かせかけたが、そこは辛うじて踏みとどまった。
「義昭さま、思いを馳せてください」
「思い、とは?」
「かつて日の本を覆った足利家の軍勢は、今、何処(いずこ)にありますや」
最初から最後まで単身であった義昭は、平成人の直言に、扇子らしきものを、ぽたり、と落とした。
そして激情に駆られた義昭が何事か叫びかけた。
だがそれは、
義昭の面前に右の手の平を思いっきり広げてきた平成人に遮られてしまった。
そして平成人は言う。
「何処にもいないのなら、作れば良いのです」
「?」
( 神の鳥飛ぶ 〜 平行世界の戦国 in 自衛隊 〜 本能寺前夜の章 )
すいません・・翡翠の文才で、この期間だとこれがやっと。(滝汗)
某所某所の某某某などなど、見ています。
才ある方の作品を見るのはとても楽しく嬉しい事ですね・・
んでは、また、金土日あたりに・・ではではです・・m()m
退役時中尉(る手何)文句あるか?
キャピターンに 成りたかったな...る手何の粗末より
良スレage
上げるならID出して上げろ、アゲ厨
洞ヶ峠
待っても待っても筒井の軍勢は来ない
『何故細川も筒井も味方しないのだ!!!』
『・・・敵味方は常に表裏一体、詮なきこと』
『毛利は羽柴の後背を何故突かん!』
『・・・見限られた、それだけです』
光秀と斉藤利三の会話だ
『・・・お主は、裏切らんな。構わんぞ、習い、だからな』
『それがしは主君の傍に居ながら、謀反を唆した一番の悪人故に、もう行く所などありませぬよ、残った者は皆そうです』
『そうか』
『そうですとも』
お互い馬上で笑いあう
『はっはっは、お互いうつけよの』
『うつけ故、最後まで勝ちの目を探しましょうぞ』
使い番が駆けてくる
『羽柴の軍勢が山崎に達しましてにござる!!!』
『手勢はいかほどか?』
『信孝様らを含め36500!!!』
『ほう、我等は?』
『16000ほど、ですな。』
『二倍程度か、軽いな』『さようで』
くっくっくと利三と笑いあう
『時がない、出来得る備えを整えようぞ』
『はっ・・・!!!』
使い番と共に主従二人は駆け去っていった
そして場面は決戦の地、山崎へと移っていく。ここまでは史実とそう変わらない
山崎の戦いの当日は雨だったといわれている、それが晴れだした午後から合戦はたけなわとなる
『兵達の疲労は隠せんだぎゃあのう・・・』
やはり大返しの疲労もあって斉藤・伊勢隊に痛い目にあっている、が、大勢は変わらない
『官兵衛と秀長はようたたかっちょるだぎゃ、あそこが崩れれば仕舞いじゃ』
位置的に天王山を得た官兵衛・秀長勢は光秀勢右翼を押し続けている。
『翼がなけんりゃ鳥はとばん』
やがて裏崩れが起きた
『ようし決まりじゃ!陣押せェ!!!』
千成り瓢箪が振られる。総かかりの合図だ
勝ちが決まる、その瞬間に奴らはやってきた
山崎の合戦の際、雨が振ってそれが止んだ、という事は、現場は多少もやがかっていたに違いない
ウォオオオオー!!!
ときの声と言うウォークライと共に火縄銃の発砲音が鳴り響く
『どこのたわけだぎゃ、まだ寄せるにしても早すぎっぞ!』
『注進!注進!!織田信孝様の軍勢後方より伏勢!!!』
ありえない、京の連中は光秀につかなかった。これは確実だ。毛利もきちんと抑えてある、もしもを考え、長曽我部にも草を忍ばせてあった
『信孝様の隊、壊乱!そのままこちらへ!!!』
いかん、こっちも裏が崩れたがや!!
電池キレそうなので少し間開けます
信孝の軍事的才能など秀吉としてはまったく期待していなかったが、総大将としての役割は大きい、しかし既に総掛かりの陣ぶれを出してしまったので、即対応できるのは本隊の本陣、つまり自分達しか居ない
『陣を間一文字に突っ切ってきおるだぎゃ!!!市松!虎之助!本陣で支えっぞ!!!』
史実では七本槍と呼ばれることになる供廻りで陣形を入れ替える。流石に子飼いだけあって早い
『整えた陣に突っ込んでくる馬鹿はいにゃあだぎゃ』
居ても被害は出ようが供廻りが押し返してくれよう。相手が陣を整えたり、信孝を追うそぶりを見せたらこっちから横槍を入れてやるだぎゃ
・・・止まらない、いや、それ所では無い、途切れる事無く火縄銃を撃ちながら突っ込んでくる。せっかく陣を整え、突撃に対して槍を備えたというのにその槍隊が銃撃で崩れつつある
『ど、どうして奴らは鉄砲を撃ちながら突っ込んで来るんだ!?』
『矢弾が飛んでくる中、槍持って並んでられねぇよぅ!!』
『いかん、いかんだぎゃ!!!』
乱戦になれば数よりも勢いのある方が有利だ、しかもこの鉄砲付きの突進は予期していなかった
『虎之助ェ!今生の別れぞ!!』
『おおぅ!!市松、殿の殿の為共に駆けん!!』
山崎の合戦へ乱入した伏勢、つまりは島津、頴娃勢ではあるのだが、彼等は信孝を総大将だとは考えず、後備え程度にしか考えず、一番猛勢である秀吉本陣へと突っ込む事をその目的としていた
数は2400、頴娃久虎800、肝付兼護800、新納忠尭400、東郷重位400の陣備えであった。秀吉の考慮の外だった鉄砲付きの突撃は操り込めと言い、所謂、有名な三段射撃方があるがそれを前進しながら行うという者だ。
しかも織田勢がやったように統制射撃、面制圧の役割では無く、それぞれが内懐に入る為の乱射、ダイレクトサポートを行っていた。
そして内懐に入り、乱戦になれば主兵装は槍ですら無く、刀の出番となる、史実の刀狩りでも徴収が少なく、出せと急かされる程戦国では有名だった、薩摩の長刀の独壇場である、これは叩きつけて切るでなく、頭を割る。
まぁもっとも示現流の開祖(まだ出来ては居ないが素はあったと思われる)で、碁盤を一刀の元に割る東郷重位にいたっては当たる所全て壊すか両断していたが
『ヌゥオオオオー!!!』
『でぃやぁああああああっ!!!』
大将の陣の前で必死に暴れている者達が居る、よか敵じゃ・・・じゃがな
もう一つ、島津では伝来の早さから、将卒すら鉄砲を操る
突撃で、先頭に居なくとも、後ろから射撃は躊躇わず行う、ましてあのように目立っては・・・
獲物が槍だったのもあるが、味方撃ちしない程度の空間が出来ていた。もしも一騎打ちを言い出せばきちんと相手をしたことであろう
事実島津勢で筑紫攻めで将卒同士が一騎打ちをしている
だが、彼等はあくまで中央の武士でしかない
のちの加藤清正、福島正則となるべき人間へと銃口が向けられる
ダダダダダ!!
鎧が、槍が弾け飛ぶ
久虎は瞑目し、手をつかの間合わせる。よき士じゃった
『よか士ば取ったぞーっ!!!肝ば食えぇ!!!』
・・・忠尭どん!!?
当時の薩摩には一部では食人の習わしがあった、無論、勇敢な敵の肝を食べ、その魂をみずからの物とする呪術的なものだが。
敵陣へと突っ込む際中であるため肝といっても肉を適当にそぎとり口に含んでいる、といった風情だ。だが、これが完全に秀吉本陣の勢いを消してしまった、
『ひぃいいあああっ!!食われる!!食われちまう!!』
『やつらは鬼じゃ!!赤鬼(日に焼けて赤銅色の為らしい)じゃ!!』
・・・ええぃ、ああいうのは控えろというに
そう久虎が考えるように、勿論それがメジャーというわけでは無い、あしからず
背後からの軍勢は確かにスピードを落とした、二人の突進によって、だが、二人はあまりにも目立ち過ぎ、力があり過ぎた
『市松ぅ!!!虎之助ぇ!!!逃げやぁっー!!!』
銃口が二人を捉らえ、撃たれる瞬間を秀吉は見ていた、そして叫んだ。叫びを欠き消す銃声
『あぁ・・・』
そして食人による士気の瓦解
『退かにゃ・・・ならん・・・もうひと戦さじゃ』
二人の死は無駄にはせん。体勢を整え直してからなら数から言って必ず勝てる
『伝令!!!信孝様撤退の由!金ヶ崎を頼む、と!!』
あの、腰抜けが!!勝手に退却など!んでも大将の命は大将の命だぎゃ・・・
『黒田官兵衛殿、討ち死に!』
『か、かんぴょうぇ!!』
明智の陣が立て直しに成功しおった・・・平野に展開していた本陣と右翼の陣が動かないなら、明智の右翼を崩し、天王山から駆け降りた左翼は深入りとなる。
荒木村重説得の際に幽閉され、足を痛めて輿に乗るしか無い官兵衛は抵抗できないまま、輿から放りだされ、滅多刺しにされて討ち死にしたらしい・・・天下を取れると言ったお前が簡単に逝ってもうて、どぎゃあすっとか!!
『退けェ!退き太鼓じゃあ!姫路にかえるだぎゃあ!!』
今は・・・逃げるしか、にゃあ
疲労がたまって勢いしかない軍は崩れると脆いよね?ですた、どうやって、何故彼等がそこに現れたかはそのうち。
ありがとうございました。( TT)リアルタイムで読めました。
やっぱ、いいですねえ・・
辞さまのが面白いので、
ちょっとアタシはWW2な話に・・って、
WW2も新作WKTKな訳で・・ナポレオンでも・・いや、違うか・・
(・▽・)おつかれさまでした☆
>>310>>311 お前達の話はどう見ても戦国時代メインで、スレ違いじゃねーか。
翡翠の作品も自衛隊、殆ど出てきていないし。
これ以上書くなら戦国時代板にでも立てろ。
こちとら軍事板だ、現代史メインの話書かないでどうする。
それにまたアゲ厨みたいな奴につけこまれて、ルール違反だとか言って荒らされかねんぞ。
翡翠はWW2や現代戦とか口先だけで、書けないのだったらこんなスレ潰してしまえ!!
エビチリ氏や補給氏は来ないし、最近は全くスレの存在意義が無い。
保守
はいさい。恒例のお昼休み更新ですよ。(13時だが)
>>291-297の続きでふ ↓では開始↓
「貴様が何処で骨を折ったというのか」
しん、と静まり返った空間の中で、ガツン、ガツン、と、骨肉を殴打するおぞましい打撲音が響き渡っていた。
この突然の主君の凶行に滝川一益ら直臣はおろか同盟国国主ですら凍り付いて言葉も、無い。
この、にわかには信じられぬ信長の凶行を尾張国の平成自衛隊が耳にしたのは、
甲斐武田家救出が完了した天正十年の初夏の事であった。
(こりゃ本能寺がマジで起きるぜよ)
と、渋い顔をしている今井「宗久」の前で、
戦場の狂気から素面に戻って久しい信長が静かに目を閉じたまま、今井の煎れた茶をすすっている。
当時の日の本で最高の文化的ステータスであった「茶」
それを隠れ蓑にこうして密会を重ねる信長と今井「宗久」であった。
今井が目の前にいれば、信長の凶行を意地でも止めただろう。
(斎藤氏だったら、六四で「あっさり」射殺してしまったかもだが。)
「創作」と思っていた事を、この世界の信長が「あっさり」やってくれるとは。
史実の明智公より相当に美男であった近畿方面軍司令官明知光秀の顔が、
まるでヤキを入れられた旧軍新兵の様になってしまう、とは。
たしかに明智公は、信長によって惨めな浪人の身から、
近畿方面軍司令官・信長近衛軍司令官・信長政権官房長官の様な重職へと変身する事が出来た。
しかし、五十代の、1つの巨大な勢力の長が公衆の面前で、10代の旧軍新兵の様に・・?
デマだろ?今井はそう思っていた。しかし、明智公の顔は正しく重態であった。
だが、目の前の信長は何も語らず、今井「宗久」が差し出すままに茶をすすっている。
そして今井「宗久」は、
呆れた風に口をへの字に曲げたまま、腕組みを崩していない。
もっとも、問題の無茶事は、今に始まった事じゃあ無い・・。
信長は若い頃から領内の隅々までフィールドワークしまくっていたようだ。
卑しくも国や隣国を窺う戦国武将(織田信秀)の跡取息子が、である。
・・・暗殺や襲撃を恐れていないのか?
・・・そう。彼は暗殺や襲撃など、毛ほども恐れてはいない。
暗殺者達を「タダの一喝」で追い散らした事もあった。
そんな破格の無法者の一面が、信長にはあった。
他家の謹厳な使者に、
男の一物を見せつけた家臣を笑顔で愛でる様なバンカラな面は、言うまでも無い。
「(やっぱ殺すか)」「(・・・お前はすぐそれだ)」
・・・・茶室の外で、迷彩服を来たままの派手な男が2人、耳になにやら「物」をあてがっている。
斎藤隊員と本多隊長が茶室に機材を持ち込んで、現在、
茶室の外の某所で耳をダンボの様にして、中の様子に首ったけであった。
信長もそれは承知の上である。だからこそ、護衛の1人もつれていない。
そしてそれは、今井の「両者への心配り」であった。
今井は両者に会談事で隠し事などしない。
信長も、
斎藤隊員と本多隊長には「1から10まで」聞かれているのを承知で、茶をすすっている。
それは「双方の平和」の生命線であった。
イザとなれば、平成自衛隊は砲弾の1撃で、戦国の覇者を屠れるのだから。
それは置き・・現職の太政大臣近衛前久卿が、甲斐で信長に馬上から呼び捨てにされたとも言う。
その話も実のある話かどうかは妖しいが・・
西国最大の毛利家でさえ、国内統率に全力の細心を払っているのに、である。
ましてや、日の本最高位の貴族をつかまえて、呼び捨て・・。
・・・・その信長は、
今井の差し出す茶菓子を目を閉じたまま、もぐもぐさせている。
それを憮然とした顔で見ている今井「宗久」。
毛利家中には「君は船・臣は水」と言い放つ者もいたそうである。
「当家を良かれと思う者は、他国はもとより、自国内にも1人もいない」
と当主元就自ら家族を戒めるほどだったらしい。(心構えとして)
西日本最大の戦国大名に成長する毛利家ですら、こうであった。
その毛利家領内で単身、室町幕府の再興の念に燃える義昭公の顔がちらつく。
そう、かつて、日の本を支配した足利幕府将軍家がすら、こうなのである。。
「・・・美味いな。」
「もっと飲んで行くかね?」
フッと笑った信長。
そしてまた、「宗久」に差し出されるままに、ズズズズズズズッと飲み干している。
「・・・美味いな。何と言う名の茶なのであろう・・・」
今、「今井」が信長に飲ませているのは、ノン・カフェインのルイボス茶である。
珈琲は興奮系だから飲ませられないし、ハーブ系はなぜか逆に怖い物がある。
そんな赤い色のルイボスティーを飲み干した信長が、コトリ、と置いた茶碗。
信長が「また来る」と言って去った後、3人で確かめたが、それは信長の至宝中の至宝の1つであった。
(本能寺前夜の章 神の鳥、飛ぶ 〜 平行世界の戦国 in 自衛隊 〜)
>>312氏
御意見ありがとうございます。(いや、ホントでよ?)
たしかに最近はエビチリ氏や補給氏、来ませんね・・
んー。
両氏らが投下している時に、今みたいな平和な空間がありましたら、と、
残念でなりません・・。
>最近は全くスレの存在意義が無い。
保守保守。
なにせ軍板ですから。なにせ軍事スレッドですから。
↓中には50代60代の方もようけおるんですから。↓
>こちとら軍事板だ、現代史メインの話書かないでどうする。
軍板には古代ローマ好きな方や中世考察派の方もようけいますって。
現代史なら、翡翠の上の世代(朝鮮戦争・ベトナム戦争世代)の独壇場。
この方々の降臨をまちませう☆
>お前達の話はどう見ても戦国時代メインで、スレ違いじゃねーか。
巨大な軍事学の1つですよ☆(戦国時代)
>翡翠はWW2や現代戦とか口先だけで、書けないのだったら
WW2・現代戦は軍板古豪の方々が書くと凄いのが着そう、と思ってWKTKしてます☆
また、試しに>
>>312氏も書いてみません?
翡翠ときたら、F4F,F6F,と、96戦、隼、零戦、水偵、二式大艇とか、
ええ、もう、鼻血だらだらで、よう書けません☆
鼻血出さずに書ける方をお待ちしています☆
>翡翠の作品も自衛隊、殆ど出てきていないし。
いや、自衛隊は、孫子の言う「軍」そのものなのですよ。平和の礎。
自衛隊が居るだけで、
信長の暴走を最低限に食い止めている、大量破壊・殺戮の一端が免れている、
そして尾張や堺が戦国1の繁華街になっている、というお話ですね。(・▽・)
「今井」はお話の進行役兼自衛隊の完全無欠をエスコートする存在という事で。
自衛隊が率先して戦国統一とか「血生臭い&あんまリアルじゃない」のは、
翡翠の筆の進まない所でして。
存在するだけで信長の行動に枠を嵌める、巨大な「理法」という姿を描いています。はい。
また辞様作品ですが、よく読めば、戦場鉄則のオンパレード。
これぞ軍板短編でしょう。
そんな訳なのです。
もう少し、気長に待ってみましょう。
あと、御心配と御意見のレス、本当にありがとうございますです。(・▽・)
追記・ズデーデン進駐がらみの短編こないかの〜
とか呟いてみるテスト☆では☆
>>320一応時代を問わずとは書いてあるな・・・
ズデーデン進駐じゃマニアックすぎて書けんと思うぞ。
He112がDo510と空戦でもするのか?
>>323氏
いやあ、雑談&みんすスレとか見ていて、キター!とかな単語拾っただけで。
自分ですと水木先生のあのノリでしかお話を展開できません。
軍板はドイツ軍学派の本拠地みたいなトコですから、何方が書いてくださるかも、
とか期待して保守・・ですね。
まあ、たしかにズデーデン辺りですと、戦術より戦略政治外交な話重視になりますから、
流石に食いつきは悪いかもしれません。。
でも1号戦車とか、正直好きですからね。。
まあ、マターリ保守ってみて、降臨を待って見まふです。
ほーせき蜜柑の人さん乙
がしかし、but、こういう茶会はそのあとにもてなしの料理や酒が振る舞われることになるのであります。茶だけで帰るのはいろいろ細心の注意を払って用意したであろう今井さんがかわいそうな事に・・・(上井覚兼日記によると上に挙げたのを加え碁や将棋、風呂を伴うとか)
いや、私も家久上京が1575年だったのすっかり忘れてましたけどさ(主人公変更はこのため)
>>325 辞さん
いやあ、辞様のようなレスを頂けますと、戦国期の復習も楽しいですね!(・▽・)
>上井覚兼日記
少なくとも翡翠は初見資料のはずです。ありがとうございます。
>>325のようなレスを頂けますと、それだけ話の幅がグーンと増えて楽しいですね。
少なくとも翡翠は老舗ではそういう姿を求めていたり。
と。作品投下時の翡翠は、
「実は茶道は今井の人がチョメチョメ」とか、
信長との斬り合い場面とかな方向ばかり考えていましたので、
「また来る」の周辺背景は全く手抜かりだったり!wwwwww
@「中国大返しで疲弊した秀吉軍に襲い掛かる島津軍、福島と加藤を討ち取るの巻」
そこで福島正則と加藤清正を殺すなんて!(AA略w)とか、
仮想戦記な醍醐味を楽しませて貰いました。(私なら兵の壊滅まででお茶濁(ry)
関が原で勝利に沸く東軍をただの1軍で突っ切った薩摩兵なら、この展開も十分説得力あるのでは。
とかとか。
@1日遅れのレスで申し訳ないっす。では☆
327 :
星砂(翡翠) ◆djVD4M.9Gw :2006/11/20(月) 10:27:03 ID:F14Pj+DL
@上井覚兼と上井覚兼日記の概要につきましては
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などを参照の事
上井覚兼日記(うわいかくけんにっき)東京大学史料編纂所蔵。『大日本古記録』所収。
ある某所で辞さんらしき方の資料準備等々を拝見させて頂いていましたが、
こういう考察準備をなされている方がどんどん出てくれば、後に続く方たちも心強いでしょうね。^^
なお翡翠の今回の信長考察は主に秀吉の妻ねね殿への信長の暖かい御手紙が心臓だったりします。
という訳で保守ageです☆
328 :
名無し三等兵:2006/11/20(月) 14:22:22 ID:JSeaGf4F
>関が原で勝利に沸く東軍をただの1軍で突っ切った薩摩兵
お前は中学生かよ
「逃げた」はいいが案の定追撃を受け、甥を生き贄にする位なりふり構わず逃げ出したが
義久本人以外「ほぼ全滅」が史実
>>326>>328 義久じゃなくて義弘だな、関ヶ原に行ったのは。
先月の歴史群像に関ヶ原から薩摩までの行動が、詳しく載ってる。
330 :
名無し三等兵:2006/11/20(月) 17:53:39 ID:JSeaGf4F
あー義弘だったか
えっと、
>>328さんは追撃戦から逃げるだけで島津勢が何もしていなかったとお考えで?ステガマリなどの遅滞戦術、離脱する方向、数、士気の維持からして生き残る事自体困難ですぞ?
それを逃げた、だけ、ナンセンスですぞ、軍事的に見てそれは。ついでに御年66の義弘公の求心力も恐ろしいもんです、どこぞには輿から投げ出された方も居ますし
突進力に関してもまぁ二つに分断されて壊滅しかかりましたがこれを復帰、ステガマリに移行する事自体、容易ではありますまい。離脱戦として稀有な例と見た方が無難ですぞ
あと大阪までの落ち武者狩りや黒田勢との船戦もちゃんと考えてますよね?あ、それから生き残りは80名ではなく100名は越すようです(負傷者とそれを後送していた連中や、囮になって捕まり、弁明の交渉に当たった人間とか)
将卒が部隊を維持したまま逃げるのと落ちるのではエライ違いがありますぞ?
書いてるの私だし答えるの私で良かったよね?
332 :
名無し三等兵:2006/11/20(月) 20:38:14 ID:+K6unmhV
>>331 328は>関が原で勝利に沸く東軍をただの1軍で突っ切った薩摩兵
と言う一文でそう判断したんだろうな。
>義久本人以外「ほぼ全滅」が史実
と言う文だが、一般に
全滅=損耗3割
壊滅=損耗5割
殲滅=損耗10割=玉砕
と言われているらしいし、
>>328もほぼ全滅と言っても一人逃げたとは一言も書いていない。
>>328も僅かの生存者とかちゃんと念頭に入れているのではないかな?
そうでなければ
>>331は
関ヶ原において東軍の軍勢の中にただの一軍で
捨て身の退却戦を演じ、兵の大多数を失うも薩摩まで辿り付くと言う
精強な薩摩兵とか書けば良かったんじゃない?
333 :
名無し三等兵:2006/11/20(月) 20:39:54 ID:N+Ld2d3x
いやいや、お前は中学生かよのあと
>>案の定追撃されて
常識的に考えて追撃してこない訳がないし、この言動はおかしいですし
>>甥とかを生け贄にして
戦術としてはままあるし、しんがりたぁ大体そんなもんですから、必死であっても、これもまた言動がおかしい(実際ステガマリでも傷だらけになって楯板に寝かされて運が良ければまた会おうと置いてかれた人が生き延びて文書書いてますしね、ご存知でしょうが)
>>義弘本人達だけが
完全にダウトですし
という訳で
>>328さんはあまり知らない人なんだろうという判断でああいったレスさせていただきました
>>332さんの言うようだったらよろしいのですが・・・
まぁ島津勢単体であれば目的は遂行したので玉砕であろうが勝利には違いないと私は考えますね。いや、生き残らせられるなら生き残ってもらったほうが勝利でしょうが、あの状況であれ以上を望むのは・・・大阪で正室連中もちゃっかり奪還してますし
うーん
>>332さんの方が端的に纏まってるし、そういう風にレスすれば良かったかな・・・ともかくスマンです
ありゃ。私がいない間に楽しそうな。うーん、残念☆
いや、まあ、たかが1500に毛が生えた程度の軍勢で、
7万〜12万の軍勢の中を突っ切ったんですから。
(兵力数は諸説あります。さらに小早川ほかの降り兵を合計する)
なるほど、戦国最強を名乗ってもOKな武者振りでしょう。
「島津義弘&薩摩兵」こんなところで☆
ちなみに追撃戦の激しさは、戦国史上屈指。
っと、あちこち閲覧終了です。
>>333さま、貼り貼りありがとうございます。
技本研究発表会なのですか・・こういうの、
幼稚園や小学校の頃から、ぜひ見せてあげたいものですね・・。
337 :
名無し三等兵:2006/11/21(火) 01:43:58 ID:OEZf9RV5
何でわざわざ「」まで付けてほぼって入れたか理解出来ないわけ?
しかも、書き覚えがない文をどこから引用したか確認出来ないが、
>>>義弘本人達だけが
>完全にダウトですし
稀に見る豪快な捏造だな
あと、勝手に行って(何で寡兵だったか位わかるよな?)
潰走して兵を無駄死にさせて帰って来た奴のどこが勝ちなわけ?
俺の認識してる歴史だと勝ったのは内府と豊臣恩顧の武断派なんだが、義弘は誰に勝ったわけ?
石田宇喜田大谷の奮戦はよく聞くが、関ヶ原に何しに行って何を得たわけ?
それとも「参陣した時から退却するのが目的」だったから逃げ切った義弘の勝ちってこと?
どんだけ馬鹿なの?
なんでコピペすら出来ないの?
>>337 噛み付くなら翡翠にの☆
しかし、ちょと面白そうな御仁じゃ。1つ、何か書いてみません?^^
本能寺が、焼け落ちてゆく。
王の最後を、桔梗の紋の軍勢と、桜の紋の軍勢が見守っている。
「各々方!もう手を引かれよ!」
本多隊長の、喉も張り裂けよの絶叫が、本能寺の業火に、燃やし尽くされてゆく。
自衛隊のヘリの巻き起こす暴風と爆音が、本能寺の業火を天上へと舞い躍らせてゆく。
その狂乱の炎の下、迷彩服の男達と鎧武者達が、力の限りの押し合いへし合いをしていた。
ただ、もう、誰の目にも「信長の最後」は明らかであり、状況は、
戦国の覇王の最後を1目見んと殺到する群衆を押し戻している機動隊の図と化していた。
刃傷沙汰は、自衛隊のヘリが頭上に到着した時点で、ケリはついていた。
後はただ、この場のこれ以上の騒乱を静めるだけであった。
「1万3千の正規軍」対「僅か数十人の信長近習」
嬲り殺しにもならなかった。
文字通り鎧袖一触で、この世から消滅させられていた。
天下に美童の名高い森蘭丸ら三兄弟が、寺の境内の中で朱に塗(まみ)れて倒れていた。
信長近習の男衆は、様々な最後を遂げた。
だが、落ち延びてゆく女官たちは、自衛隊によって「濃姫以外の全員が保護」されていた。
「・・・・・・・・!」
普段、礼儀を逸する事の無い、謹厳、冷静沈着な本多隊長の目が、
炎の様な怒気を含んで、彼の側で立ち尽くしてる男を、視線で射殺さんばかりに見つめている。
その本多の側で、同じく、古来よりの式典作法と学問の守護者であった明智光秀が、大粒の涙をぽろぽろと流して、
今にも崩れ落ちそうな体を震えさせながら、本能寺の炎を見つめていた。
「・・・・・・・くっ」
(まさか、本当に主殺しをするとは!)
秩序を何よりも重んじる本多は、自分がこの職務で無ければ、今スグにでもこの男を殴り倒してやりたかった。
だが、流石にそれは、天性の礼儀正しさと職務への忠誠心が彼を理性の枠内に思い留まらしていた。
そして彼は、
その怒りの思いを無理矢理断ち切るかの様に勢いよく光秀に背を向けると、
最早、誰の手にも止められない本能寺の業火は捨て置き、
次の段階「この京都での、これ以上の騒動を禁じる」ために、駆け出してゆく。
そして、隊長の動きに従い、平成自衛隊の面々が手際良くバラバラバラ、と各所に散ってゆく。
その間、桔梗の紋の軍の将である明智光秀は、家臣達の前にも構わず、ただただ、泣いていた。
夜が、白白と明けてゆく。
そんな、何となく気の抜けた気配の頃に、
・・・がぽり、がぽり、、、と、今井「宗久」が、配下の武者達を引き連れて、ここ本能寺に着陣した。
この頃、光秀配下は信長の長男・信忠と、武装兵を有する京都所司代を殲滅するべく、
信忠と京都所司代は、信長亡き後の死出の1戦を敢行するべく、
平成自衛隊は、万が一にも京の民百姓に戦火が及ばぬように、と、
それぞれがそれぞれの思惑の下、各所で必死の展開の真最中であっただろう。
「・・・・・・」
がぽり、がぽり、と農耕馬に揺られてやってくる今井「宗久」の顔には、何の色も無かった。
そして彼の配下の武者達は、鎧兜や陣羽織は清潔であったが、何処と無く土まみれであった。
その、清潔なのに、何処か汚れている彼らの顔にも、何の色も見うけられない。
当然、光秀の軍勢と争う気は、無いのだろう。
それを、下から見上げるように、涙の目のままの光秀が見つめていた。
(織田信長と明智光秀が、世論の言う大悪党であってくれたなら!)
今井「宗久」が、深い溜息を吐いて、はらはらと涙に暮れる光秀の側で、
炎の本能寺に、抹香を壷ごとばさりと投げかけていた。
戦国屈指の退却劇・関ヶ原退却戦 〜 島津氏資料編 〜
04月27日
会津遠征を考えている五大老筆頭・徳川家康から、島津義弘、伏見城御留守番を命じらる。
だが義弘は即答を避け、国元へ軍勢の派兵を要請。
しかし、国元は動こうとしない。(朝鮮の役と庄内問題による疲弊と、天下の争いへの不介入方針か?)
06月05日、それでも島津豊久が国元から到着。
07月02日〜「惟新公関原御合戦記」では、
伏見城留守居・鳥居元忠に入城を要請するも拒否され、しかたなく西軍に与した、との記載。
そしてこの頃の義弘の手勢は二百人程度か。(無勢にて〜)
07月28日 国元から新納旅庵(長住)が到着。
07月29日 「手前無勢にて面目を失い候」(伏見城攻撃中の手紙)と、義弘、無念の手紙。
だがだが 「心有るべき人は、この時に候」との義弘の言葉に応え、士卒、続々と上京。
んで上方 毛利輝元、宇喜田秀家がも島津家に軍の派兵を求めるも、島津家国元は動かず。
08月20日 薩摩兵、この時、いまだ千人に届かず、か?(↑個々の将士の上京は止めず↑)
09月07日 の書状では関ヶ原直前の数日間にも三百人に近い将士が(自費で?)馳せ参じた様子。
(義弘の人徳+薩摩兵の心意気+国元の無言の承認の結果x朝鮮、庄内での疲弊+天下騒乱なぞ知ったことか)
09月11日 の書状では、伏見城攻めで島津勢が勇戦した事を伝える。(1人でも大切な刻に〜)
09月15日 関ヶ原の戦い
09月15日 関ヶ原の戦い
関ヶ原の島津勢
島津勢、自陣に近づく者は敵味方構わず攻撃。(陣近くの池は味方逃亡兵が多く溺れたとの事。)
島津勢、中央突破へ。進路の福島勢は島津勢をスルー。(福島勢からしてみれば余計なだけか。)
徳川の四天王が推参。(井伊・本多)井伊直政、島津勢の鉄砲に倒れる。(射手・川上が家臣、柏木)
※ここからは証言が混沌としてくるらしい。乱戦の戦場をからくも生き残った者達の談のより集めのため。
義弘の名を名乗る長寿院の隊は散り散りに。生還者は居るようだ→井上。(長寿院は戦死)
島津豊久(31歳)隊はどうやら全滅の模様。
燃える大垣城を義弘が見た頃の手勢は、五十名程度か。(千五百〜千?→手元残兵50?)
途中、長束正家から道案内の者を1人つけて貰えたとの事。
近江信楽では数百の落ち武者狩りか?に囲まれたと。
また、ここでは、逃避行にありがちな凶行もあった様だが、それは置く。
22日、運良く堺に入っていた御座船と出会い、それにのって大坂を出港。
26日、朝鮮の役の双璧、立花宗茂と安芸で再会。
28日、黒田如水の船に遭遇。ともの船は捕らえられた。(3隻)
29日、島津義弘、九州に生還。
ここから、島津家の領土安堵を賭けた必死の外交戦が始まるが、それはまた別の話。
関ヶ原の島津家の戦いの論評
関ヶ原戦勝後の東軍の全力が島津家に向かった訳では無いですが、
(石田、宇喜田、小西を追撃している部隊や、直接刃を交えた部隊の後方の暇人どもは省かれ。)
天下分け目の戦いに勝ち、
意気天を付く数十倍〜百倍以上?の戦力差の元での話ですから、
(下手をすると島津兵は1000。また撤退戦開始までにも死傷者は出ている。)
島津好きなら、「義弘+薩摩兵よくやった!」なのは、もう。
>>337様は国主の立場。
辞さまは現場指揮官の立場の感想という事で。
国主の立場なら、
ただただ兵卒を失っただけの関ヶ原を憎悪するのは当然。
ただ、現場の立場なら、
天下分け目の日和見できぬ極めて難しい推移の中で、
少なくとも東軍には伏見城で義理は尽くし、
西軍には東軍軍中突破で西軍諸軍の撤退を助けつつ(結果的にだが)、
東軍中央突破でさらに武名を高め、結果、
毛利家や長宗我部氏のような悲劇を回避する要因を作りせしめた結果には満足の路線かと。
(兵が五千人いれば!の絶叫は置くとして。)
こんなトコでしょうか。
ではでは次回は本能寺の続きでござい・・近代砲撃戦描けなくて、m()m
(南海で水偵飛ばしてうふふふふ☆だけな日常の1コマしか描けない悪寒)
345 :
エビチリ ◆NYKahXpmWk :2006/11/26(日) 23:54:04 ID:IaxrjIM8
お久しぶりです。
煮詰まった上に会社の残業や風邪を引いたりとして全然進まなかった
この頃です。
久々の投下ですが、今回は「父親達の星条旗」公開にちなんで書いて
みました。
346 :
エビチリ ◆NYKahXpmWk :2006/11/26(日) 23:54:53 ID:IaxrjIM8
祖父達の南軍旗(1)
15歳になるハリー・ベイスはサウスカロライナ州に住む祖父ジョージ・ベイスの家に
誕生日を祝うべく両親と来ていた。
ジョージは妻に先立たれた事もあり、息子と孫に会えて心から喜んだ。ハリーの母親
であるサラの手料理にも大いに満足していた。
「おっ、クリント・イーストウッドが映画作ったのか」
誕生日を祝うパーティが終わりハリーの父親がテレビを見ているとクリント・イーストウッド
が監督で制作した映画を特集している番組が始まった。
「おっ、クリント・イーストウッドじゃないか」
トイレから戻って来たジョージがハリーの隣に座りテレビに見入る。ハリーはいつもより多く
酒を飲んだジョージの酒臭さに顔を一瞬しかめた。テレビでは撮影現場でのクリントの映像
から映画のシーンがダイジェストで流れた。艦砲射撃する戦艦、上陸用舟艇で硫黄島の
海岸に迫る海兵隊、迎え撃つ日本軍。そして映像は摺針山の頂上に星条旗を打ち立てる
場面に。
「ふんっ」
一瞬、ジョージの鼻息が荒く吐き不機嫌そうな態度になる。
「ハリーよ。硫黄島の事は知っとるか?」
ジョージはハリーに酒臭い息を吐きながら聞いた。
祖父達の南軍旗(2)
「うん、知ってるよ。おじいちゃんが戦った所でしょ」
ハリーは父親から聞かされていたので知っていた。
「そうだ。俺はあの硫黄島で戦った。そしてあの摺針山に旗を立てた」
ジョージがそう言うとハリーは驚いた。
「えっ、おじいちゃんが星条旗を立てたの!?」
摺針山で星条旗を立てた写真は有名である。アメリカの戦死者が眠るアーリントン墓地に
あの写真をモデルにした大きな像があるくらいだ。
「違う!星条旗じゃ無い、南軍旗だ!」
「え?」
熱く否定するジョージにハリーは唖然とした。日本との戦争で何故に南軍旗が出てくるのかと。
このサウスカロライナ州は南北戦争では南のアメリカ連合側に属していた。またサウスカロライ
ナ州では2000年までに南軍旗が議会で翻っていた程、かつての南軍旗への親しみは残って
いる。だが、日本との戦争に持ち出したとはハリーには思いもよらなかった。
「信じられんようだから話してやろう」
ジョージはこう言うとハリーに向き直る。顔は息子と孫に会えて幸せそうな顔から真剣な顔に
変わっていた。
祖父達の南軍旗(3)
1945年2月。米軍はマリアナ諸島から日本本土空襲に向かうB29の緊急着陸と護衛戦闘機
の基地として硫黄島の攻略を開始した。
摺針山を除くとほとんど平地の硫黄島は5日で陥落出来ると米軍は考えたが、地下に陣地を築
いた日本軍守備隊は頑強に抵抗。5日間だけでは攻略出来ないと上陸した海兵隊将兵の誰も
が理解した。
「おい、ジョー。」
経験を積んだ海兵隊軍曹のジョージにハリマン・リッジ少尉が呼ぶ。
「はっ、少尉」
「俺とお前は奇しくもサウスカロライナの出だ」
「はっ、そうです」
「そこでだ。士気高揚の為にある作戦を俺の小隊で行う」
ハリマンがそう言うと持っていた折り畳まれた布の塊をジョージに渡す。
「これは?」
「広げてみろ」
ジョージはその赤い布の塊を広げた。
「おっ、これは!」
それは赤を基調に星のマークが入った紺色のX型の帯が描かれた旗。南軍旗だった。
「これをホット・ロック(摺針山)に立てる」
「光栄な作戦ですね」
ジョージは旗を持ちながら胸が高鳴るのを感じた。
祖父達の南軍旗(4)
ハリマンの小隊は見事に南北戦争で南軍側だった州の出身者が集まっていた。
だからハリマンがホット・ロックに南軍旗を立てると小隊の皆は歓喜し、今までに
無く士気が高くなった。
「ジョー。ちょいと耳貸せ」
「はっ」
ハリマンはジョージの耳に小さな声で言った。
「この作戦は俺の独断だ。他の隊にも気取られない様にしなければならん」
「え?」
「ジョー。いや、ベイス軍曹。南部の意地をジャップに見せるのだ。なっ」
ハリソンは無理矢理ジョージに言い聞かせた。複雑な思いをしながらジョージは
小隊の出撃準備を友軍に悟られない様に行った。
1945年2月22日午前5時。まだ暗い中をハリソン小隊は陣地を出て摺針山に
向けてこっそりと出撃した。
日本兵はもとより味方の海兵隊から隠れながら静かに進み。登る。
祖父達の南軍旗(5)
「ジャップは気づいていない様だな」
ハリソンは摺針山の斜面に伏せながらジョージに言った。
ハリソン小隊は伏せたり隠れたりを頻繁に繰り返してゆっくりと前進した。時間は
かかるが、お陰で敵味方両方から見つかっていない。
「ですが日の出がもうすぐです」
ジョージは明るくなり始めた空を見て言った。日が出ればハリソン小隊の姿は晒さ
れるだろう。
「頂上まであと3メートルか。坂だが、敵の意表を突いて一気に行けるな」
ハリソンは決断した。
「日の出と共に一気に山頂に突撃する」
これにジョージや小隊の兵士がいつでも駆ける構えをする。そして海岸線の向こう
からまばゆい光が漏れた。日の出の時だ。
「行くぞ!ディクシーを歌え!」
ハリソンが立ち上がり小隊の兵士も続く。
古き良き時代を忘れぬ綿花の国にこそ在りきたる者よ
仰ぎ見よ!仰ぎ見よ!仰ぎ見よ、大南部を!
ハリソン小隊の叫びにとも言える歌声が摺針山に響く。
霜降る朝に私は南部の国に生まれた
仰ぎ見よ!仰ぎ見よ!仰ぎ見よ、大南部を!
突然聞こえた英語の歌に摺針山に陣取る日本兵が気づく。「歌いながらとはふざけ
やがって」と毒づきながら日本兵は銃口をハリソン小隊に向ける。
祖父達の南軍旗(6)
南部の国にこそ在りたきものよ
万歳!万歳!南部の国にこそ我は立たん
乾いた銃声がハリソン小隊の四方から響き、銃弾が飛び交う。だがハリソン小隊の
面々は銃弾を無視しているか撃たれている事を自覚していないかの様にディクシー
を高らかに歌いながら駆け上がる。
この地にうまれ、そして死なん
遥か、遥か、遥かに深き南部よ!
ディクシーの1番を歌い終わる時にハリソン小隊は摺針山の頂上に足を踏み込んだ。
「よし、来たぞ!ぐっ!」
しかし先頭を進むハリソンは頂上に踏み込んだ瞬間、日本兵の放った三八式歩兵銃
の銃弾がハリソンの腹部を横から貫いた。
「少尉!」
頂上で兵達が周囲を警戒する中、ジョージがハリソンを看取る。
「旗はあるな?」
息も絶え絶えのハリソンが聞く。
「はい、あります」
ジョージは腹に巻き付けていた南軍の旗を見せた。
「掲げてくれ。この朝日で輝く・・・南軍旗を・・・」
「はい、少尉」
小隊の兵士は日本兵が雨水を集めるのに使うパイプを引っこ抜いて、それを旗竿代わ
りに南軍旗を掲げた。白く光る朝日に照らされながら赤と紺色の南軍旗は翻る。
「ありがとう・・・お前達…」
ハリソンは南軍旗を眺めて死んだ。これに部下だった小隊の皆が瞼に涙を浮かべた。
祖父達の南軍旗(7)
だが、彼らにゆっくりと上官の死を見つめる暇は無かった。
日本兵の銃火は激しくなり、現実的には頂上に孤立した小隊は危機に立たされた。
「撤退するぞ!旗を収めろ!」
ジョージは小隊を指揮した。南軍旗を降ろし、ハリソンの遺体から認識票を取ると小隊
は摺針山を下りた。降りる小隊を日本軍は意地でも捕まえようと銃弾を叩き込む。
下る中で2名の兵士が腕や肩に銃弾を受けたが彼らは意地でも下ろうと血を垂らしなが
ら駆ける。
「何で味方があそこにいるんだ!?」
海兵隊の陣地では銃声が響く摺針山を双眼鏡で見た将校が驚く。命令には無い行動
が目の前にあるからだ。
「取りあえず、あの連中を援護する。射撃用意だ。」
命令してすぐに機関銃と迫撃砲の発射音が轟く。原因はさて置き、「兄弟」たる戦友を
救うために摺針山に砲火を叩き込む。
この援護射撃でジョージ以下小隊の皆は陣地に帰り着いた。帰るなり略式で軍法会議
が開かれた。独断で行動した事を咎められたが、張本人のハリソンが戦死した為に小
隊は輸送船に硫黄島が陥落する3月まで収監される処置とされた。
「え?おじいちゃん。それは本当なの?」
ジョージの話を黙って聞いていたハリーが信じられないと言う表情で言った。
「本当さ。あの南軍旗が何よりの証拠さ」
ジョージは壁に掛けられた南軍旗を指差した。その南軍旗の端には1つの穴が空いて
いた。それはあたかも銃弾が貫いた様に。
「本当なんだねおじいちゃん」
と納得したハリーを置いてジョンソンは心地良い寝息を立てながら寝ていた。
「おじいちゃんは俺の誇りだよ」
ハリーはそうジョンソンに向かって優しく言った。
(終)
亀ながら投下GJ!
>>352 の訂正。
ジョンソンはジョージの間違い。何で間違ったんだろう
様子見しすぎて亀レスになりましたですが、投下お疲れ様です。>エビ殿。
と、四代目ですが、とりあえず流してみる心算です。
とりあえず三代目が無事流れましたら、
後後(のちのち)の新四代目は現三代目の手法で行きましょうです。
「あなたの軍事なストーリーを聞かせてください」
(ノ´ー`)ノ
なお、旧三代目に投下した翡翠作品は、保守必要時にパラパラ置いて置きますです。
ではでは☆^^
× とりあえず三代目が無事流れましたら
○ とりあえず現四代目が無事流れましたら
翡翠は自分専用スレで書いてろ。こっちに来るな!!
358 :
翡翠(星砂) ◆djVD4M.9Gw :2006/12/10(日) 05:34:26 ID:mTbpyOEK
信長という男の経営方針は、「この世界でも」言うまでも無く「能力主義」であった。
天正十年の織田家四大軍団の長で、
織田家歴代の重臣なのは、北陸軍・柴田勝家、ただ1人。
近畿軍・明智光秀、中国軍・羽柴秀吉、関東軍・滝川一益は、
何れも能力を買われて台頭した者であった。
戦国最悪の下克上人であった松永久秀公でですら、使えるのなら使う豪胆ぶりであった。
元亀二年の叡山焼き討ちにて天下を震撼させてから、僅か、11年。
今や日の本の中枢で信長に敵する者は無く、彼の覇権確立は、誰の目にも明らかであった。
そして信長の数奇な11年は、明智光秀の栄光と落日の歴史でもあった。
信長自ら「天下の面目」と家中第1位の覚えであった光秀。
しかし、戦国時代を11年で殲滅しつつある覇王に仕える11年の歳月は、
信長政権下のナンバー2の明智光秀をもってしても、苦痛の11年だったのかもしれない。
本能寺の前に、何度も「くじ」を引く光秀。
その、食事中に放心の態で飯をこぼす様から、森蘭丸に異常を悟られた光秀。
何でも無い連歌の席でも、思わず本音が漏れて胸中を歌にしてしまった光秀。
信長殺害後に、なんとも情けない手紙を細川親子に送った光秀。
大和1国をも譲った筒井順慶からすらも、味方してもらえなかった光秀。
後世、なんとも、理解に苦しむ織田家ナンバー2の姿である。
光秀の能力は、誰の目にも明らかである。
信長政権下で、最も枢要な京都周辺で34万石の大名であった事は、特筆に価する。
信長自身が数十人の近習のみで本能寺に宿泊したのも、光秀の手勢1万3千が至近に居たからである。
だがそんな男が、流浪の身から信長政権下のナンバー2にまで立身したこの男が、どうにも、冴えない顛末である。
魔王に仕えた終末11年で精神が崩壊し、「狂っていた」としか思えない。(光秀性善説+光秀名将説)
もっとも、殺戮魔王・リストラ大王・暴力大魔神の戦国狂狂(くるくる)三冠王に仕えていれば、誰でも狂うと思うが。
で、「平成自衛隊と市民20万人が飛ばされた世界の明智光秀」は、と、言うと・・・。
史書の伝える世論評価の「小利口な悪臣・野心家」ぶりにはほど遠い、なんとも御人好しな治世家であった。
青い目の史書の伝える世論ような「小利口な悪臣」なら、信長に毎回殴打されていても不思議ではない。
信長の性癖の強さは、乳母の乳首を噛み切りまくった赤子の頃からのお墨付きだ。
能力がズバ抜けているから使うもの、
見え見えの慇懃な忠勤ぶり(光秀性悪説)が、短気大王の信長の鼻がつかない訳が無い。
そして思わず完全な隙を見せてしまえば、やっぱり後先考えず、主の命を取りにやって来た、と。
しかし、「この世界の光秀」ときたら、後世の講談のごとく、何とも温和な道徳家で、
戦国の生き残りをかけて、
日々、迅速な処理に狂奔する信長とは「別の意味で水と油」であった。
叡山焼き討ちに反対しては拒絶させられて、
四国の雄、長宗我部氏の領国安堵に理解を示しては却下され、
平和裏の和平を求めて波多野氏に母を人質に入れれば違約され、
今回は領土を取り上げられて、一族郎党、路頭に迷う目に会わされるなどと、
反乱を起こさない方がどうかしている主従履歴であった。
「天主殿、天下の面前でござる!」
信長に足蹴にされ、森蘭丸に鉄扇で打たれ、血を流して昏倒する光秀。
慌てて今井「宗久」が庇い出てきた。
小説や講談のネタの話とばかり思っていた事を次々にやってのける「この世界の信長」。
(おい、何をやっている!)(やっぱ殺そう)(待て!お前はすぐソレだ!)
饗宴舞台で起きた「何時もの異変」に斎藤氏、またまたカチンときたらしい。
いきなりガシャガシャと物をいわせ、六四で信長の眉間に狙いを定めだした斎藤隊員を、
側に居た本多隊長が慌てて止めに入って、問答無用で斎藤氏からその愛銃を奪い取っていた。
その2人の詰めている安土城内の監視矢倉の視界のずっと向こうでは、
甲斐武田攻めにより駿河国を得、その御礼にやってきていた徳川家康以下、恐怖で誰も動けない。
信長から家康の接待役を命じられた光秀が、誠心誠意、東海の覇者をもてなした報いがコレだった。
(どうやら信長にとっては気に入らぬ段取りを彼か彼の部下がやってしまったらしい。)
「(この糞馬鹿!お前!!好い加減にしろ!!!)」
「(・・・・・フン。)」
「この世界の信長」のやる事は、得てして恐怖統制のための「単なるパフォーマンス」であった。
案の定、その場にいた全員が凍りついたら、先ほどまでの殺気は何処へやら。
・・・明智公が気の毒であった。ナンバー2だからこそ加えられる、容赦無い、打撃。
家臣団は、目の前で何度も、信長が手打ちにする光景を見てきている。だから本気で騙されている。
信長の折檻の凄まじさと各自の折檻「実体験」もあって、誰もが恐怖に、震えている。
だがその中にあって、信長の殺気に騙されず、その影響下にも無い現代人達。
騙されぬ者を相手にするほど暇では無い信長は、
今井「宗久」なんぞ見もしない。
高所の見張り矢倉から小銃で狙いをつけているだろう斎藤隊員の方にも振り返る事もない。
「日向守、面を上げイ」
平伏したままの光秀を睨みつけたまま、信長の言葉が続いていた。
倒れ伏し、そして平伏したままとはいえ、50歳代、織田政権ナンバー2、百戦錬磨の名将である。
(コレ以上庇うは、かえって公の面目に障る)今井が、つっと後ろに下がり、両者から離れる。
・・・ややあって、光秀がやっとの思いで面を上げると、
「家康の饗応役を免ずる。早々に坂本に帰り、中国出兵に備えよ。」と。
「禿げ鼠が援軍を求めてきおったわ。」
信長はそう宣言すると、光秀に背を向けて諸将に向かって別の宣言を発した。
「ゆえに余、直々に親征して毛利を叩き潰す。」
「その余直々の親征の先鋒は日向守に命じる。」
「そして家康への饗宴の失態の責として、日向守に与えた領土を全て召し上げる。」
「変わりに毛利を叩き潰した後は、そなたに山陰道を与えるものとする。」
「承知したのなら、下がれ。」
やや時間をかけて、平伏し直した光秀が、退去してゆく。
羽柴秀吉の中国攻めの仕上げに向けた信長の親征。
その先鋒という事は、
信長が光秀を我が身の様に信頼している証拠でもあった。
勝利の約束された親征の先鋒。
光秀が戦場での我が身の代理、毛利家討伐の最後の果実は光秀の手にも、と、
信長自身が天下に宣言しているに等しかった。
しかし、それゆえに光秀には、過酷な状況を叩きつけ続ける、信長。
波多野氏を潰すために光秀の母を殺した上に、今度は与えた国まで取り上げて見せる信長。
光秀を見本として、
母を殺されても、国を取り上げられても、「絶対の忠誠」を家中に求める信長。
なんと過酷な、主従。
そして、本能寺は起きた。
燃え盛る炎の元、信長は、死ぬために奥へ奥へと進んでいた。
そして、求める最後の部屋に辿りついた時、
自分(信長)に向けて六四式小銃の銃口を向けて、微動だにしない斎藤隊員を、見た。
「 雑賀(鈴木)孫一か。 」「・・・。」「 フン・・。」
火の周りが思ったよりも早い。信長の背後は、すでに炎の舌が迫っている。
「是非も無い。」とだけ信長は言い、斎藤と六四を無視、そのまま自分の座に進んで、どかりと座った。
煙が渦巻く炎の部屋の中で、2人は2人だけの世界で微動だにせぬまま、御互いだけを見つめていた。
やがて、「射て」と信長が笑みを浮かべながら言った。
だが、斎藤の六四が火を噴く事は無かった。
代わりに、がらりがらり、と彼方此方が開け放たれる音がし、
一心不乱に国宝級の茶器を抱えて走りまくる今井「宗久」と山中鹿介らが雪崩れ込んできた。
それを見て信長は一瞬・呆然とし、そして、自分(信長)六四を向けている斎藤を見て、
やがて、何事かを悟って、炎を背に、カラカラと大笑し始めた・・。
ルイス・フロイスの著書「日本史」によれば、
明智光秀は裏切りや密会を好み、残酷で独裁的であったという。
とは言え、それは、フロイスのいた世界の、フロイス報告の光秀像。
この世界の光秀は「要するに」この世界の信長とは合わぬ御人であった。
それはともかく、光秀退室後の安土城の一角のでは、
発生が殆ど確実となった「本能寺の変」への対策に、例の3人が頭を痛めていた。
「やっぱ殺そう。」「お前はすぐソレだ。」
斎藤、この世界では鈴木(雑賀)孫一に当たるこの男、
勿論、本気で信長殺害を発言している訳ではない。
ただ単に暴力大王の信長の振る舞いが気に入らないだけである。
そして当然、それを諌める親友の本多(隊長)の制止を期待しての発言であった。
「しかし、このままでは本当に本能寺が起きてしまいますが、さて、どうしたものか。」
「いっそ、俺達がこの国を治めるか?」「御前がこの手の冗談とか珍しいな。」
時空流転で「平行世界の戦国時代」にやってきた平成の世の自衛隊にとって、
異世界の戦国動乱の行く末や日々沸き起こるゴタゴタ等、知った事では無かった。
要は、自衛隊と共に飛ばされてしまった平成の世の市民・20万人の、
「 安全と生活さえ恒久的に守れていれば 」良い。
そのためには、「今はまだ」信長に死なれては、困る。
フロイス「日本史」によれば、
信長の死後の混乱は、やはり「おぞましい」限りの世界であった。
「 信長という秩序無き戦国時代とはそんなものだ 」
と言われればその通りなのだが、当事者ともなると、そうも言ってられぬ。
万が一、羽柴秀吉の中国大返しが失敗し、長期戦になった場合、
戦国動乱は何処まで拡大するか、予想ができぬ。
その場合、最悪、堺や尾張国が再び炎上し、
自衛隊は燃料も弾薬も枯渇するケースに陥った上に、
20万人の平成市民への食糧の供給も暗礁に乗り上げるかもしれない。
逆に信長に「本能寺の変」を教えて、
このまま無事彼が生き延びて戦国を制圧した場合、それはそれで怖い物がある。
史実に比べればこの世界の信長という男、ずっと話の通じる(判る)良い男なのだが、
彼が自分以上の存在(自衛隊)をこのまま黙認できるのかとなると、疑問符がつく。
「余所の世界のために隊員を危険に晒すとか・・馬鹿馬鹿しいですからの。」
「この世界の秀吉はこの世界の戦国の世を統一できるのか?」「俺に聞くな。」
「能力識見人望、ほぼ史書資料や講談小説の通りの彼(秀吉)なら、あるいは。」
「なら、近畿北陸中部東海西関東の民も信忠も柴田も死ぬ事になるな?」
「斎藤、酷い事を言うようだが、この世界のために俺達が手を汚し、死ぬ義理は、無い。」
「ん、じゃ、何時もの通り、平和維持活動とトンネル掘りで行きますか。」
「また、ヘリ(の燃料)を使うのですか?」
「本心は本多さんだって、人が死ぬの見たくないでしょう?」
「・・・。」「決まりだな。」「・・・・。」
「明智勢も自衛隊を敵に回す程、パニくりませんよ。どうせ、(本能寺は)鎧袖一触。」
「・・・・・。」
「まあ、穴掘りはウチの(武田の)金掘り人足にお任せを。」
などと言いつつ、実は随分前から、
御所の土木工事に紛れて穴掘りを進めている今井氏。
まあ、本音の所は、
小説・映画の「戦国自衛隊」の様に予想外の形での
擬似「本能寺」が勃発した場合に備えての抜け道作成であったが。
「信長の茶器はどうする?」
「問答無用で我らの火縄に化けて貰いましょう。」
「・・・・・・。」
「あの茶器は売れば幾らになるんだ?」
「値段も付けられない程の至宝ですよ。」
「それがみんな灰になったのか?」
「そうそう。だからここは1つ、信長を助ける代わりに、我らが坊主丸儲けで。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
陸自の斎藤隊員と民間の今井氏が、ああでもない、こーでもないと、
「本能寺の変」処理で発生する棚ボタ論議で白熱している間にて、
本多(隊長)は、迂闊な言動を洩らさない様に固く口を閉ざしている、が、
やはり、話題が話題だけに、本能では試算せずにはいられない。
最初の異界召還以来、何時もの様に自衛隊のダミーを買って出た民間の今井氏、
この世界では「今井宗久」を演じているこの男が、
自衛隊の絶大な武力を背景とした平和と秩序の元に、
年代を重ねて堺で買い集めた火縄銃が、今回の変で更に加算される(予想)と・・。
「まあ、戦国の世で火縄3000丁を撃つ自衛隊とか、ちとアレですがの。」
「なら、火縄3000丁を装備した常備兵を俺達が指揮をするか。無敵だな。」
「何せ現代の自衛隊が指揮するのですからのう。世界制覇も軽く狙えそう。」
「いや、英国式でいいだろ?半島と大陸はいらんよ。」
「おやまあ、陸のはじめっちが陸上覇権を放棄するとか、有り得なくね?」
「いや、俺も風土病は怖いよ。16世紀の世界じゃ戦う前に病気で壊滅しかねない。」
「ん。八重山諸島ですらマラリア怖いですからの。」
「・・・・・・・・・。」
そして、本能寺は起きた。
燃え盛る炎の中、信長は、
そんな動乱など知ったこっちゃないとばかりに、
一心不乱に茶器を穴へと運び出す今井「宗久」と山中鹿介らを見て呆然としていた。
そして、自分(信長)に向けて六四式小銃の照準を定めて、微動だにしない斎藤を見、
何事かを悟ったのか、やがて、カラカラと大笑をし始めた。
「 人間五十年、かくも面白き出来事を見れるなどと、思いもよらなかったわ。 」
「 是非も無い。今や何の悔いも無い。持ってゆけ。総てをくれてやろう。 」
と1人、カラカラと笑う信長の側を、
迷彩服を着込んだ男が、信長の正室である濃姫を背負って走り抜けてゆく。
こんな動乱の中でも笑い顔を崩さない化け物のクマラン二曹である。
「 笑っていないで、急ぎになられて! 」
猛火の中を逃げようともせずカラカラと大笑し続ける夫に頭に来たのか、
迷彩服の男に背負われた美濃の鬼姫が凄い顔をして怒っている。
その上腕部や足から流れる血は、自衛隊隊員に救出される時まで、
彼女が女だてらに夫を庇って、薙刀を振るい戦っていた為であろう。
そして駆け抜けてゆく同僚を見ながら、冗談はここまでだ、と斎藤が信長の袖を引っ張る。
「 孫一、いや、自衛隊・・大儀である。」
斎藤は知らない。平行世界ではあるが、この時、
遠い先祖の大叔父を、自分自身の手で、助け出していた事を。
( 本能寺の章 神の鳥、飛ぶ 〜 平行世界の戦国 in 自衛隊 〜 終了 )
保守投下終了。
>>371てめえ自分で立てたスレに書いてたくせに
今更こっちに来るんじゃねえ
保守なら他のヤシがちゃんとやるわ!!
>>373そこはお前専用スレじゃねーか。
わざわざ重複スレ残してお前が勝手に書いてるだけだろ!!
つーかお前が仕切るな。
しょーがネーべ・・
スルーで黙る相手ならスルーもしたのだが、
魔法少女スレの惨状見ていたら無理無理。
引き付けるだけ引き付けて、
荒らしも呆れる池沼のフリしなきゃ、あの病人は収まらなかった訳。
>つーかお前が仕切るな。
仕切らん仕切らん。仕切っているのは君だ。
つか、ここは考察するネタ(短編)聞かせてくださる職人氏は皆横一線だよ。
二代目を立て、新生三代目を立てたのがエビ氏なのを見ても判るように、
ここは翡翠他の職人氏らの協力の元に成り立っている。
翡翠はただの保守装置。
とりあえず、お互い黙ろう。他の職人氏の投下の妨げになるからの・・。
>>375 魔法少女スレなんて見ないから全然しらんが、
お前さんがこのスレに余計なコメント書きまくってるのはどうかと思うぞ。
>>376 うむ。通しで読むと
「翡翠コメ多杉」は、その通りだが(いわゆる馴れ合い?)
その時、その場では、そこそこ「妥当なレス」だったのだよ。
何せ、作品を落とす住人が集ってナンボのスレだし。
>>372-377 の問答も、
他の人、特にスレタイを見てやって来た人にはイラネんだけど、
当人同士は至極真っ当な話をしていたり、だ。
もし良ければ
>>376 が
どうかと思う翡翠レス+旧四代目は削除依頼しても構わない。
結果として削除されても構わない。
過去の翡翠レスは、もう、役目を終えたレスなのだからね。
書いてくれた人に届けば、もうアボーンで良い訳ね。
んじゃ、お互い次の作品投下を待ちましょう☆
保守
379 :
名無し三等兵:2006/12/28(木) 03:05:23 ID:CjYfBrqo
保守アゲ
乱立スレあげ
381 :
名無し三等兵:2007/01/12(金) 12:06:06 ID:a6XGIF58
保守
なにこの中二病スレ・・・・・・・・・・・・・
383 :
エビチリ ◆NYKahXpmWk :2007/01/16(火) 00:50:49 ID:WhjHbzDG
皆さん久しぶりです。長く放っておいてしまってすみません。
今週末には続きを投下します。
また、翡翠さんや前スレ519さん・辞(ryの人・名無し三等兵の皆さん
これまでこのスレを支えてくれてありがとうございます。
384 :
エビチリ ◆NYKahXpmWk :2007/01/21(日) 23:46:33 ID:LjBKUTwV
日本人たち1944 (16)
「ごほ…くっそう口の中に土が入ったぞ」
小野田は体中に被った土を払いながらぼやく。
「連中も本気だなこれは」
荒木も土を払いながら言った。
彼らの居る第40SS所属義勇装甲擲弾兵師団「日本」の戦区に連合国軍の爆撃機が来襲
激しい爆撃を受けた。荒木や小野寺のいる陣地の周囲は木が倒され、地面は掘り返されて
いた。死傷者も少なからず出て装備が破損しているものもあった。
「おう、成田大丈夫か?」
咳を繰り返す成田に小野田が心配する。成田は口や鼻に土が入っただけで無く気管にも少
し入った為に咳が止まらないでいる。
「慌てるな。落ち着いて吐き出せ」
荒木が成田の背中を叩いて介抱する。少しして成田は気管の土を吐き出して落ち着いた。
「ありがとうございます」
成田がまだ喉が詰まる様な声で荒木に感謝した。
「成田よ。どうだった?フランスの土の味は?」
小野田が笑いながら言うと成田も笑みを浮かべて「ロシアよりかは美味い」と答えて3人は
同時に笑った。
この時、英軍第11機甲師団が「グッドウッド作戦」の尖兵を担い前進を開始していた。
「蹄を蹴立てる雄牛」が師団標識のこの師団は持てる力で雄牛の如く突き進もうとしていたが、
味方砲兵の誤射に出鼻を挫かれ、ドイツ軍の高射砲や第21装甲師団所属の第200突撃砲
大隊の砲火に蹄を押さえられた。
だが、英軍は近衛機甲師団と第7機甲師団を投入して挫かれた機先を覆そうと躍起になった。
日本人たち1944 (17)
「日本」師団は左翼の第1SS装甲師団「アドルフ・ヒトラー」と右翼の第21装甲師団の間に
配置していた。
「日本」師団の前にあるカニーには第3高射砲軍団隷下の第64高射砲連隊第2大隊の8
8ミリ高射砲4門が据えられ、英軍第11機甲師団と新手の近衛機甲師団を食い止めていた。
しかし、4門だけではカニーを守りきる事は不可能である。
「カニーに部隊を送る」
桐井は決断した。英軍の攻勢を食い止める小さな防波堤であるカニーを強化すべく師団
から部隊を送る事を決断した。
第71SS装甲擲弾兵連隊第2大隊と駆逐戦車中隊がカニーへ移動を開始した。敵機を
警戒しつつボカージュに隠れながら進む。
「お天道様が出ている時に堂々と歩けないとは情けねえ」
小野田が皮肉めいたぼやきをした。
「仕方あるまい、ゲーリングが手抜きをするからだ」
荒木がボカージュの葉を払いながら言った。
「ヤーボ!!敵機だ!」
唐突に誰かが叫ぶ。それに皆が瞬時に反応してボカージュの影に身を縮める。
「…」
荒木は空を睨んだ。晴れ渡る空に4機の戦闘機が飛行していた。動きから見てこちらに気
づいていない様だ。しかし、それでも部隊は万が一を考えて隠れ続けている。
息が詰まる様な静かなこの場所に唸るエンジン音が遠く響き荒木の意識をどこか遠くへと誘う。
何故こんな所で日本人であるに関わらずドイツ軍人として戦争をしているのだろうかといつもは
考えもしない事がふと浮かんだりもした。
だが、そんな自分への問いかけは将校の「対空警戒解除。行軍再開」の号令で吹き飛んだ。
日本人たち1944 (18)
荒木と小野田・成田がいる第71SS装甲擲弾兵連隊第2大隊と駆逐戦車中隊がカニーに着
いたのは夕方近くであった。戦い続けた4門高射砲は後退前に爆破される直前だった。
駆逐戦車中隊第1小隊長の伊藤智彦SS少尉は指揮下のY号駆逐戦車を配置に就かせてい
た。
「ふう…取りあえずは一仕事終わったな」
伊藤はここまで小隊を移動し終えた事から一息ついた。胸ポケットから煙草を取り出して
一服しようとしたその時。伊藤の耳にヘッドフォンから中隊長からの命令が飛び込んで来た。
「2時方向より戦車を伴う敵が接近中。中隊戦闘用意」
伊藤は「了解」と返すと次いで小隊全車に戦闘用意を命じた。
「全く、一服する暇もねえ」
伊藤は小さく悪態をつきながらハッチより上半身を出した。そして首から提げた双眼鏡で
敵がいると言われた2時方向へ視線を向ける。
(こいつらか。俺の一服を邪魔した奴らは)
双眼鏡にはクロムウェル戦車とシャーマン戦車からなる大隊規模の敵が平原を進んでこちら
に向かっている。
(数で押し潰すつもりか。だが、通しはしないぞ)
伊藤は初めての対戦車戦闘の高揚感に満ちていたが今だ冷静でいる自分に少し驚いてい
た。
(これが軍人の精神か…)
そう感慨に浸っていた伊藤であった。そこに中隊長からの新たな命令が下る。
「まず、高射砲が攻撃する。敵が高射砲に集中している所に我が中隊で攻撃する」
伊藤はまた「了解」と答えた。
(少し面白いやり方じゃないか)
伊藤は作戦に満足だった。
日本人たち1944(19)
「弾が尽きるまで撃ちまくれ!」
4門の88ミリ高射砲は爆破処分を一時取りやめて最後の砲弾を使って戦う事となった。
88ミリ砲を操るドイツ兵達は長い連戦にも関わらず正確に砲弾を次々と命中させた。
「これで最後です!」
「よし仕上げだ!撃て!」
最後の一発がシャーマン戦車の砲塔を吹き飛ばして高射砲の仕事は終わった。そして
その成果は現れた。高射砲が沈黙したと判断した英軍が高射砲の陣取る所へ向けて進み
出した。
「鷹1(中隊長車)より全車。攻撃開始!」
そして訪れた駆逐戦車中隊の出番。Y号駆逐戦車の主砲である75ミリL48Pak39対戦車
砲が一斉に火を吹く。敵戦車集団は撃破された戦車から吹き出す爆発や外れた砲弾が掻き
出す土煙で包まれた。
「よし、その調子でどんどん行け!」
伊藤は不意打ちの成功に気を良くした。それに同調する様に小隊の各車は英軍戦車を仕留
め続ける。
(この場は勝てるな!)
伊藤が勝利を確信した。だが、それは中隊長からの無線で揺らいだ。
「新たな敵戦車が10時方向より接近!第1小隊はその敵に対応せよ!」
伊藤はハッチから顔だけを出してその方向に双眼鏡を向けた。
「俺達の方が囮に食い付いたのか…」
その方向には中隊規模のシャーマン戦車がこちらに向かっていた。英軍は2時方向から進撃
させた部隊を引き付ける囮に使い、10時方向からの部隊で挟み撃ちにする作戦のようだ。
「雀1より全車!10時方向に回頭せよ!」
伊藤はさっきまでの心地良い高揚感は消え失せて焦燥感に満ちていた。
388 :
名無し三等兵:2007/01/22(月) 23:05:37 ID:8HE2OMeN
>>383 乙、久々に楽しめた。
次も期待してるよ。
unko-
390 :
翡翠(星砂) ◆z.PL4xBfAU :2007/01/23(火) 12:38:28 ID:AG1m42U9
超遅ですが、明けましておめでとうございます。エビチリ殿。
ちょっとageておきますですね
WW2独ソ戦物、お待ちしていました。
>(数で押し潰すつもりか。だが、通しはしないぞ)
圧倒的な補給と物量で押し寄せてくる米英軍に対し、
88ミリ砲を操るドイツ兵と
「日本」師団のY号駆逐戦車のタッグ。期待しています。〆
貴様は引っ込んでろと言うのが分からないのか?
前々から貴様の無責任レスで荒れ始めるのだから、空気読め。
後、無駄にスレ上げるな。
さっき上がったばかりだろうが!!
↑の文は翡翠宛てね
519氏の戦記の続き入らないかなぁ・・・
このスレって纏めサイトあります?
まずないだろうな…
読みたい作品あるから、一応自分でスレ保管してるけど。
保守
保守あげ
>>394 どこぞの分家に行け。そうすれば分かる。
最も、ここのスレに投下したのは練習用のプロトタイプみたいだが・・・・
400 :
翡翠(星砂) ◆F1KoBsy57M :2007/02/21(水) 16:45:44 ID:rNfNFdoE
定期あげ
また懲りずに出てきたかおのれは!!
正直 軍事オタキモイ なに大日本帝国万歳とか妄想してんの
戦争して勝てると思ってんの まあお前ら加藤民族はガス抜き用の火葬戦記でもみてろってことだ
日本人はアメリカ様の奴隷なんでそこんとこよろしく
保守
unko