「 被害者は29歳と8歳。死因はこれでしょうな 」
愛美の愛くるしい魅力に本多の部下達が、朝からメロメロにされていた頃。
医官の神埼氏が、股を朱に染めて死んでいる女性2人の、その股を指差して答える。
人間というのは、ほんの些細なショックであっけなく、死ぬ。
まして、男達から寄ってたかってとされれば、死ぬのも不思議ではない。
まだ子供な娘のほうの、破れた服の切れ端が風に流されて飛んでゆく。
名前は・・どうでもいい。
ほんの少し、居留区から外れて歩いただけで、これだ。
斎藤隊員が娘が握っていたぬいぐるみを握り締めて、無言のまま歩き出す。
市民の居留区から1Kmほど離れた小川のほとりで起きた事件だった。
「 警察犬とか(この世界に)来ているわけ無いですよね? 」
今井が警官の工藤氏に訪ねるが、工藤は残念そうに首を振るばかり・・。
「 警察犬に軍用犬、どっちも量産せんといかんなあ・・ 」
今井が見様見真似で警官の工藤と医官の神埼に敬礼して、斎藤の後を追う。
斎藤のカンなら母子を襲った連中の足跡も見つけ出して、生まれてきた事を後悔させてやる事だろうけれども、
その後を効率良く埋めて知らん顔するには相棒がいないとね。
「 案外、鬱屈の溜まった20万人のなかの、誰かかもしれんなあ 」
次元ジャンプに翻弄され、何年も異世界から異世界へと放浪を続ける20万の市民は、
海上や宇宙に放り出されていないというだけで、立場はまるっきり、
< スターリングラード >や< 大海原に遭難した船員達 >と同じなのだから。
犯罪の1つや2つ起こしても不思議ではなかった。上記のケースでは“人肉食らい”まで発生している。
現に居留区では安全のために居留区を封鎖している警官隊とどころか、切り札の自衛隊とまで小競り合いを起こしている。
それに業を煮やした自衛隊上層部が市民にもある程度の外出の自由を認めたみたら、このザマだった。
母子から流れる血は、まだ固まりきっていなかった。
母子を襲った連中が、まだ近くに居ることは確実であった。
このころ、最初の次元ジャンプ以来・今まで出番が無かった航空自衛隊は、
この世界の超大国に海上自衛隊とともに雇われ、その大国の起こした紛争の後始末に追われていた。
要するに彼らはその装備と練度を変われて、適時・傭兵として雇われている。
立場は対等ではなかった。というのも平成人の居留区を提供して貰っている側だったから。
その代償として、大国の食指の動かない小紛争地へ抑止力として派遣され、
大国の生産する爆薬や燃料を積んで、大国に潰された国の残党を「適当」にあしらう毎日。
その仕事の手際具合で、20万の市民の食をつないでいた。
しかし、後方から伝わるニュースはロクな物が無かった。
“また居留区で事件が起きたらしい”“今度は死者がでたらしい”
空爆から帰ってきてみれば、嫌なニュースのお出迎えの毎日だった。
20万の市民はその大国の提供する荒野で、
何時果てるとも判らない難民キャンプの様な生活に耐えている。
だから空自と海自が必死に命を張って食料を買い漁っている。
だのに、居留区の治安は悪化の一途を辿っている。
「 まさか俺の女房子供じゃないだろうな? 」
「 バカ、何のために陸を残してきているんだよ 」
長い流浪の管理閉塞された生活で、今では極度に沸点が下がってしまった市民達。
そんな彼らの暴動を恐れて、留守番の陸自が外周警戒よりも全自衛隊の家族の保護に回っている昨今。
それが、彼らの現実であった。
やっとの事で出番が出てきたというのにソレを歓喜で迎えてくれる国民は無く、
外国の帝国主義の走狗の身に甘んじ、縁もゆかりも無かった諸国民から恨まれ、
そうまでして守ろうとしている“何か”は壊れつつある。
その“何か”を現場で向き合い、守っている陸自の悩みも相当なモノだったが、
現実にミサイルが飛んでくる恐怖と戦いながら食を稼ぐ空・海の悩みも相当なモノであった。
今日の任務は終わった。
そして明日の任務が、また始まる。
「 イスラエルとかパレスチナみたいだな、俺達 」
「 いいから寝ろ 」
幼女が泣いている。
姉を救えない無力な自分に泣いている。
本能がこの場からの逃走を叫んでいても、
幼い彼女には、そのか細い腕を握り締めている手から逃れる力も、無い。
狂った目がこっちを見て笑っている。いや、無理して強がっているだけなのかもしれない。
男が姉に腰を押し付けている。
姉は痛みに耐えかねて背伸びし、地面の草を固く握り締めている。
姉の周りで、早く代われよ!と男達の怒声が飛び交っている。
姉を虐めている男が五月蝿え!と吼え、
そして今先まで荒荒しく動いていたのに、急にしおれて姉にもたれ掛かる。
その間にも、あぶれた男達が姉のあちこちを触ろうと手を這い回している。
その彼女らが救出されたのは、それから半時間後の事だった。
斎藤と今井が姉妹を連れて帰った後には、
壊れた人形のようなモノが幾つも転がっていた。
四肢全てを折られて、奇妙な方向に捻じ曲がっているソレは、2度と動くことは無かった。
埋めるのは放棄した。
それよりも姉妹を(性格には姉の方だけを)1時も早く保護したかった。
それから3日後。
市民居留区には、再び外出禁止例が敷かれたが、誰も反対する者は居なかった。
外出禁止例が解かれてたったの4日で20人の男女が人外に食われて死んだのだからたまらない。
市民は1人の例外も無く、本能の呼び起こす恐怖に震え上がった。
犯行が行われた次の日、
斎藤と今井は、最初の犠牲者である母子へ、花を手向けに現場に向かった。
そして。「 悪いやつはオジサンが懲らしめたからな 」と
心で念じているのか微動だにしない斉藤を今井が引っ張ってゆく。
斉藤が握り締めていた幼子のぬいぐるみは、母子の亡骸と燃やしたので、ここにはその灰だけを撒いた。
その後、姉妹を救出した現場に向かったのだが、現場は何者かによって綺麗に清掃されていた。
アレほど飛び散った、彼らの折れた歯までいったい何処へ?
「 まだこの地に、猛獣か人食いが残っているんでしょうな 」
今井がひとしきり呆れて、精液や血液まで舐め取られていた草地から数歩離れる。
「 む 」
と、1声発して斎藤が、見てみろとあごをしゃくる。
少し離れたところの露出した地面には、人型の足跡が乱雑に刻印されていた。
恐らく、夜行性のナイトストーカーか、グールの集団が近くに居るのだろう。
生臭い臭いと、何かが腐った臭いと、カビ臭い臭いの正体は、これか。
この別方向の発見は、色々な意味でありがたかった。
犯罪を理由に外出禁止例を敷くのは、どうにも弱い。
むしろ警察や自衛隊の管理能力に文句を言われそうだった。
だが、人外に食われる、という理由なら1発で言うことを聞くだろう。
ついでに犯罪も全部コイツラに押し付けてしまえば、市民の恐怖は倍化し、大分素直になるだろう。
そして市民の反応は、今井の読みどおりとなった。
この時ばかりはグール(食屍鬼)にありがとう、であった。
なにせ、埋めてやりたくも無い連中を綺麗さっぱり片付けてくれたのだから。
それからまた数日後。
「 はーい、いま、レモンティー、はいりまーす 」
本多体長の部隊のマスコット・愛里君は、今日も元気である。
「 彼女、可愛いっすねー 」
やれやれやれ・・工藤君、君ってば何であんな厄介な娘さんに惚れてしまったのかねえ?
そんな今井氏の苦笑も気にならないのか、
目を細めて「 可愛いっすねー 」を連発する工藤(警官)氏。
「 あんまり彼女を見ていると、陸自の人に嫌われ・・ 」
そんな非番の工藤氏を心配顔で諭しつつ、良く冷えた茶を飲み干す今井氏だが、
その近くで、「 お前ら早く消えろよ 」と、
いかにも恋敵を見るような目で邪険にする若い隊員達に、気が気でない。
やれやれやれ・・・どうして恋する男の子は、恋敵の嫉妬には鈍いんだろうねえ。
「 え、や、ちょ、ちょっと 」
今井氏は嫌がる工藤氏を無理矢理引きずって帰る事にする。
・・本音は、市民との最前線で苦労している工藤君を天国から連れて帰りたくは無いのだが。
すると途端に相好崩して、愛里君を目で追いかける隊員たち。
平和である。実に良い平和である。
こんな人間らしい環境は、何時の日ぶりなのであろう。
つい最近までは本多隊長がまでが壊れそうなほど、険悪な空気が渦巻いていたのに。
明るい娘さん(愛里君)が居る。いいね。本当に、いい。
もうしばらく、この平和が続きますように。
流浪の平成自衛隊と20万の市民 9月の短編 投下終了。
まあ、文法が滅茶苦茶とか 誤字脱字がヤバイのは翡翠の仕様なので、
脳内修正を宜しくお願いいたします。
なんとなく泣いている方がいたけど、
当たっていたら申し訳ないです。交戦物、今しばらく・・(了
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大和「うあーっ・・ 何か金剛さんが遊びに来てる・・」
陸奥「イギリス生まれかぁ・・付き合いにくいなぁ・・」
金剛「まぁまぁ そんなに付き合いにくいかね?」
武蔵「金剛さん、日本語は不自由無いみたいだけど・・英語覚えてますか?」
金剛「my name is kongou・ my from BrtEn・ your name?」
長門「・・だ・・大丈夫みたいですね・・」
大和「う・・うん・・」
陸奥「ところで金剛さん、脚が速い秘訣は?」
武蔵「陸奥さん・・いきなり何言い出すの・・新聞記者のまねしてるみたいに・・」
金剛「いいかい? 敵に勝つコツはねぇ、まず敵を見たら(ry 」
大和「うえ・・始まっちゃった」
武蔵「なるほど・・(真剣な顔でメモを取る)」
長門「こんなに性格が違う姉妹も珍しいかも・・」
陸奥「ぐあー・・」
出雲「あら、金剛さんじゃない」
磐手「本当、久しぶりね」
金剛「あっ、せっ先輩、こんにちは」
出雲「今度はどこに派遣になったの?」
金剛「今度はトラック島に行くことになりました」
磐手「ミッドウェーの次はトラック?良いわねどこでも引っ張りだこで」
出雲「私たちももう少し足が速ければね〜(ついでに…も)私達なんか
いつまでもシナ方面艦隊だし」
金剛「でも先輩達はこの間巡洋艦に格上げになったじゃないですか」
出雲「元に戻っただけよ、それも前の種別が違う役割になっただけ」
磐手「いつか潜水艦にやられても知らないから」
金剛「そっ、そんな」
磐手「冗談よ、戦艦がそんな簡単にやられるわけないじゃない、イギリス
出身同士がんばりましょう」
金剛「はい」
ほす
ま た 揚 げ 太 郎 か ! !
874 :
519:2006/10/02(月) 19:19:11 ID:???
機動部隊決戦SSをかいているものですが、先週、突然パソコンが壊れてしまい、続行不能になってしまいました 修理まで大分かかるかもしれないので、投下のほうはもうしばらくお待ちください スレ汚し失礼しましたm(__)m
いや投下の必要はないから。
久しぶりに投下します
>>845 楽しみに待っていますよ〜。
日本人たち1944 (10)
砲撃が止むと荒木はゆっくりと体を起こして周りの様子を見た。小野田も成田も無事だ。塹壕も
崩れてはいない。
耳には初めて体験した砲撃の残響が今も残り、全身には着弾で降り注いだ土が付いていた。
「敵襲!戦闘用意!」
半分聞こえない耳に香川の怒鳴るような命令が聞こえた。
皆はそれぞれの武器を持ち塹壕内で待ち構える。荒木もMP40短機関銃を構える。その先には
T34中戦車の群れがこちらに向かっているのが見えた。
「成田」
荒木が成田に聞く。
「はい」
「陣地が突破されたら俺から離れるなよ」
「はい!」
荒木の短い言葉に成田は強張った声で答えた。
「対戦車砲撃て!」
陣地からはまずソ連軍からの捕獲品である57ミリ対戦車砲が火を吹く。だが、初めて実戦の場で放たれた砲弾はT34の横に土煙を立てるばかりだ。
「下手くそ!」
誰かが対戦車砲の兵士に叫ぶ。これは罵倒の意味もあったが、少しでも対戦車砲で撃破して欲しいと言う願いがあったからだ。
「命中!」
「この調子で行け!」
ようやく1両のT34を撃破すると対戦車砲の陣地は初の戦果の余韻に浸らず、次の弾を込めて照準を別のT34へ定める。
「撃て!戦車と歩兵を離せ!」
機関銃と小銃が射撃を開始した。戦車の後を追うように駆けるソ連兵へMG34機関銃とKar98k小銃の銃弾を放つ。
ソ連兵は次々と銃弾に倒れるが突撃を止める力は無い。それはT34も同じだ。味方が幾ら撃破されようと方向を変えず前進を続ける。
「成田」
「はい」
荒木はまた成田を呼んだ。この時荒木の手は太い円形の物体、対戦車地雷を掴んでいた。
日本人たち1944 (11)
「成田。俺が出たら援護しろ」
「はい!」
成田には分かった。荒木は対戦車地雷でT34を撃破しようとしている。その為には随伴歩兵を牽制しなければならない。その役目を成田は与えられたのだ。
「地雷を埋められればば少しは楽な戦いができたのにな」
小野寺がKar98を撃ちながら言った。戦闘団は塹壕を掘っただけでソ連軍と戦う事になった。もしも時間があり、荒木達の場合は香川の演説が無ければ地雷原を構築してソ連軍を迎え撃つ事が出来たのだが。
「過ぎた事はどうでもいい」
荒木はこう言ったが内心は小野寺と同じだった。だが、口にしないのは今、目の前に迫るT34に意識を集中しているからだ。
(歩兵と戦車の間隔がかなり空いてるな。これならいける)
荒木は目の前のソ連軍の様子を見た。T34がまるでソ連軍歩兵を置いて行く様に進んでいる。それで両者の間には500mは無いが広い間隔がある。
「成田、小野寺。頼むぞ!」
荒木はこう言うと地雷一個を下げて塹壕を出て背を低くして小走りにT34へ向かう。成田と小野寺はKar98小銃で援護する。また、小隊のMG34機関銃も援護している。
(こいつだ。こいつをやるぞ)
荒木は目に留まったT34へ向かって進む。背を低く、中腰で進む。荒木の存在を確認したソ連兵が銃撃を加える。荒木の耳に切り裂く様な擦過音が次々と入ると地に伏せ匍匐で進む。
(もう少し・・・)
荒木は10m先にあるT34を見上げるように睨む。そこには履帯きしませ、エンジンを唸らせる無機質な怪物が居る。これを4kgの爆薬で吹き飛ばすのだ。
(行くぞ!)
荒木は心の中で叫びながら起き上がり、飛びかかる様にT34へ取り付く。
そこから荒木は対戦車地雷をT34の砲塔と車体の間に押し込み、地雷の側面に差し込んだ信管を抜く。そして荒木は瞬時にT34から離れて伏せた。これは一瞬の事だ。
地雷は爆発した。その力はT34の砲塔を車体から離し、内部に爆風と炎を吹き込み乗員を殺した。
操る者が力を失うと共にT34も煙を噴きながら沈黙した。
「やったぞ・・・」
荒木は横目で自分の戦果を見た。そこへソ連兵が復讐とばかりに銃撃をする。
「荒木!早く戻れ!」
小野寺が叫ぶ声が聞こえる。
日本人たち1944 (12)
荒木は背を低く中腰で走る。突撃するソ連兵と追いかけっこをしている状態だ。
目には段々と近づく味方の塹壕が見える。耳にはソ連兵が放つ銃弾がかすめる音が聞こえる。
「いっ!ぐう」
右頬と左腕を銃弾が擦る。頬は刀傷様に斬れて血が滴り落ちる。右腕は防寒着が破れた
だけで済んだ。
「もうすぐだ!頑張れ!」
小野寺の声がはっきり聞こえる。塹壕はもうすぐそこだ。また聞き慣れたMG34とKar98
の銃声も
高くはっきり聞こえる。
「おう!やったな荒木!」
荒木が飛び込むように塹壕に入ると小野寺が嬉々として迎える。
「大丈夫ですか?」
成田が荒木の所に来た。頬から血を流す荒木を心配しているようだ。
「頬をかすっただけだ。心配無い」
成田へそう言った荒木は置いていたMP40を取り戦場を見た。戦況は荒木が戦車狩り
をしている間に好転したようだ。荒木の他にも地雷で戦車狩りをした者がいてT34を仕
留めていた。対戦車砲の奮戦もあって突破される直前でT34を防いだ。残るT34と歩
兵は後退を始めていた。
「勝ったんだ」
成田が呆けた様に言う。
「取りあえずな」
小野寺が肩の力を抜いて言う。
(勝ったのか・・・・取りあえず)
荒木は全身に疲れを感じた。全力でT34に向かった時の疲れが緊張がほぐれたと同時にのし掛かった。
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