【とらドラ!】大河×竜児【モフモフ妄想】Vol12

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1名無しさん@お腹いっぱい。
ここは とらドラ! の主人公、逢坂大河と高須竜児のカップリングについて様々な妄想をするスレです。
どんなネタでも構いません。大河と竜児の二人のラブラブっぷりを勝手に想像して勝手に語って下さい。
自作のオリジナルストーリーを語るもよし、妄想シチュエーションで悶えるもよし、何でもOKです。
次スレは>>970が立ててください。 もしくは容量が480KBに近づいたら。
    / _         ヽ、
   /二 - ニ=-     ヽ`
  ′           、   ',
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まとめサイト
ttp://tigerxdragon.web.fc2.com/

前スレ
【とらドラ!】大河×竜児【ワクワク妄想】Vol11
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【とらドラ!】大河×竜児【ラブラブ妄想】(1スレ目)
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【とらドラ!】大河×竜児【ニヤニヤ妄想】(2スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1234443246/
【とらドラ!】大河×竜児【デレデレ妄想】(3スレ目)
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1236695653/
【とらドラ!】大河×竜児【イチャイチャ妄想】Vol4
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1237819701/
【とらドラ!】大河×竜児【ベタベタ妄想】Vol5
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【とらドラ!】大河×竜児【スキスキ妄想】Vol6
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1240317270/
【とらドラ!】大河×竜児【ドキドキ妄想】Vol7
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【とらドラ!】大河×竜児【アツアツ妄想】Vol8
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【とらドラ!】大河×竜児【フワフワ妄想】Vol9
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1243354181/
【とらドラ!】大河×竜児【クネクネ妄想】Vol10
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1244280781/
2名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 19:52:28 ID:NUezE//+
【※CAUTION※超重要事項!※CAUTION※】

非エロ(ギシアンレベルまで)はここに投下

ガチエロは避難所に投稿、ここへは告知誘導のみ

アク禁に巻き込まれたなど直接投下できなかった
非エロ作品の代理投稿は作者が望んだ場合に可

※避難所はまとめサイトにあります

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http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta/1241841788/
3名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 19:53:33 ID:NUezE//+
まとめサイトより

Q、1話の机が吹っ飛ぶシーンどういうこと?超能力?
A、ちがいます。ラブレターを鞄に入れてたら人が来たので、ロッカー隠れようとして凄い勢いで移動したんです。

Q、とらドラ!ってどんな作品なの?
A、とらドラ!は高校生特有の『思春期』という限られたひとときの中、
 友達と過ごしながら楽しいと感じたり、ある時は落ち込んだり、
 またある時は恋に悩んだりしながら、毎日を過ごしていくという作品です。
 (雑誌インタビューより)

Q、何クールですか?
A、2クール25話(DVD8巻構成)です。

Q、会長とあーみんの区別がつきません。
A、川嶋亜美(あーみん・ばかちー):前髪が朝倉風、ややたれ目、胸がおおきい、モデル
  http://www.tv-tokyo.co.jp/contents/toradora/images/chara/ami.gif
  狩野すみれ(会長・兄貴):前髪ストレート、ややつり目
  http://www1.atwiki.jp/toradora?cmd=upload&act=open&pageid=19&file=up49532.jpg

【一目でわかるとらドラ!一話】
@猛獣が襲い掛かってきた
Aお腹がすいていたのでご飯をあげた
B「気に入った。これからも飯つくってくれ、毛づくろいとかも頼むわ」
C襲われそうだし、ほっといたら死にそうなので、しぶしぶ飼うことに
Dご飯あげたら、ちょっと尻尾ふった ←今ここ
実際は竜児を犬扱いしている大河こそが
飼われている側っていうのが面白い

とらドラ! まとめwiki
http://www1.atwiki.jp/toradora/
とらドラ! AA保管庫(仮)
http://monabase.net/toradora

4名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 19:57:05 ID:NUezE//+
この板の設定

1レスあたり最大4096バイトで改行は60行まで可能
半角で4096文字・全角で2048文字です

Samba24規制は40秒です
一度書き込んだら40秒は書き込めません

バイバイさるさん規制は40秒以上開けて投稿しても
スレッドに同時に書き込む人数が少ないと発動します
ROMってる人は割り込みを遠慮せずむしろ支援する方向で

●を持っていると上記の規制は無効化されます
ただし調子に乗ってSamba24規制無視して連投しているとバーボンハウスに飛ばされます
たっぷり二時間は2ちゃんねる自体にアクセス出来なくなるので注意
5名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 19:57:21 ID:NUezE//+
            _, :‐-_、
          '"´ : : `: : :⌒ヽ、
        /: : : /: : : : : : : : :丶:\
      /: / : : {: : : : :ヽ: : \: : ヽ':、
      ,': /: {: : :ト、: : : : }: : : :}l :l: !
      |: l: : :|\:| ヽl\|\/l:| :l: |
      |: l : T≧心、_  ィ匕≦T: : :l: |
      |: l ヽ代i::ソ    弋i:ソ/ : /小
      |:人: :ゝ ー      ー 厶イ : | ヽ
       j: : :ヽ >  __⌒__ ,.イ : !: : : ト、:丶
.     /: : /: : :l:〃^く〈〉>`ヽ: : :|: : :│ 〉: 〉
     /: : /|: : : |i{ >┴rく }i : |: : : ∨: /
.    /: : / .|: : : |:∨   _|人/: :│: : : : :/
   〈: : 〈 /: : :.:|:/`ー≦ァー'{: : ∧ : : : 〈
.   \ ∨: : : 〃7\_/\∧: ': : \: : : \
    ∠:_:_:_: ノ└L,___」L斗ュヘ : : : /: : : /
      r‐': :_:_:/:::::/  ヽ:::::∨{:_:.〈⌒>: 〉
         //      | |
        // Λ_Λ | |
        | |( ´Д`)// <新すれ記念だ!大河ぶつけんぞ!
        \      |
          |   /
         /   /
     __  |   |  __
     \   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   \
     ||\            \
     ||\|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
     ||  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
        .||             . ||
6名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 19:57:28 ID:NUezE//+
新スレは前スレ埋まってから使いなさいよ!
 ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                        ______
                        \        \
     _, -、                  |,.\        \ <すいましぇ〜ん
.  〃´ ^⌒ヽ               /   \        \
.  i{ /{八人}i              /    ,. i \_______\
  八ハ#゚ 、゚ノハ  パンパン       |    /.| |\||_______||~
  ノノ ノ)iてと八    ..         | .|   | | |  ||          ||
 ( (く/_j」〉ノ )   .  _./⌒..───' | / | | .||          ||
     (_ハ_)     ..  __/⌒ 二二ニニ ノ  U ||        ||
7名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 20:03:55 ID:NUezE//+
新スレ乙って書くと大河の胸が永遠にAカップになるので注意!!
8名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 21:06:57 ID:N5EuSBXl
新スレ乙新スレ乙新スレ乙新スレ乙新スレ乙新スレ乙
これで永遠のAカップだな

新スレ乙新スレ乙新スレ乙新スレ乙新スレ乙新スレ乙
9名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 21:38:13 ID:RObWkuCb
>>1

>>5
やっぱこのAAのインパクトスゲーw

10名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/04(土) 23:08:24 ID:SY4lxQBT
>>1[新スレ 乙]
前スレで「メルト」ってカキコあったけど、動画で
あみ、みのりにそれぞれ「WIM」と「初恋オワタ」曲付PVがあったな
11名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/05(日) 04:12:40 ID:/Ie1Y7pz
      ある日>>8の靴箱に
       手紙が届きました・・・
          _____
         / ヽ____//
         /   /   /
        /   /   /
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       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


       | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
       |                    |
       |                    |
       /    ̄ ̄ ̄ ̄      /_____
       /              /ヽ__//
     /  夜道に気をつけろ  /  /   /
     /   2−C 高須    /  /   /
    /   ____     /  /   /
   /             /  /   /
 /             /    /   /
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/   /   /
12名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/05(日) 22:18:19 ID:DN+a/dE6
前スレ埋め職人乙
13名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/05(日) 22:29:18 ID:NbFxGGjB
前スレ、埋め立てなんていうにはMOTTAINA過ぎる。 激しく乙です。
糸とオーナメント? 落っこちるってとこ? いかん俺も竜児並みの鈍感か?
もいっかい7巻読んでくる
14名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/05(日) 22:46:05 ID:tI7yoW2G
面白かったぜぇ
15 ◆askgvpoGB. :2009/07/05(日) 23:08:30 ID:oOEeQZ1y

埋めネタ書いて頂いた方、本当に本当にありがとうございました。
アドバイス頂いた方もありがとうございます。

思えばGW頃にこのスレを知って居座るようになったのは、
あなたを始め他の素晴らしい作者様と暖かいスレの空気のおかげです。

それでは、次レスより投下させて頂きます。
16【 - た い が - 】 54 ◆askgvpoGB. :2009/07/05(日) 23:09:55 ID:oOEeQZ1y


「どうしたんだ? そんな突っ伏して……わざわざ布団から出るなんて、いよいよ分からないぞ?」
「なんでも……ないの…………何でもない……」

こちらを見る竜児の顔がまともに見れない。身動きが出来ない。
そんなに暗い顔しないでよ……お願いだから……自分勝手なお願いだけど……
それでも、お願いだから、そんな目で私を見ないで……怖いよ……

「何かあったのか? それとも、何か俺に言えない事でもあるのか?」
「………………」

言いたいのよっ! もうずっと言いたくてたまらないの! でも……怖いの……
だから……もっとちゃんと言いたいの。普通に話してる時に言いたいの。楽しく笑ってる時に言いたいの。
こんな、こんなふうに……問い詰められるようにして言いたくないの……

「大河……おまえ、本当にどうしたんだ?」

俯いてしまった私の顔をのぞき込むように、竜児が私のすぐ横に片膝を付いた。

「だから……何でも……ないって言ってんでしょっ!」
「いいや、うそだね。おまえと何年一緒にいると思ってんだ? すぐ分かるんだよ、そんなの」
「………………」
「ひょっとしたら、何か……病気だったりするのか?」
「ううん……そんなことない……」

「……だったら……俺の事が……嫌いになったとかか?」
「ちっ、違う! 全然、嫌いとかじゃなくって、だから………ええと………」
「大体おまえに、その……断られた事なんかねえし……何かずっとおかしいし……」
「だっ! だから……ね……そんな、そんなことじゃなくって……」
「何だよ? だったら何だよ? わけ分かんねえよ!」
「それ……は………………」

こんなつまらない事でこれ以上竜児を傷付けちゃいけない……そう思うのに……
でも、こんな……叱られてるみたいな体勢で……こんな怒鳴りあって……言いたくないよ。
17【 - た い が - 】 55 ◆askgvpoGB. :2009/07/05(日) 23:11:05 ID:oOEeQZ1y

「大河、お願いだ」

肩を掴まれて竜児の方に向かされる。
竜児の瞳に……その強い光に引き寄せられるように目が離せない。

「聞かせてくれ。頼むから。もし俺が嫌だっていうなら、直せるところは直すから」
「嫌じゃない……よ、竜児……」
「何か……心配事とか悩みがあるなら、俺に相談してくれよ」
「……で、でも……それは……だって…………」

言いたいの……言いたいのよ。でも……でも怖いの……怖いんだもん!

「……あるよな? 俺が帰ってきてから、お前はずっと何か言いたそうにしてたもんな?」
「そんなこと……ない……それは…………違う……」
「またおまえは自分だけで抱え込んで、苦しんでるんじゃないのか?」
「ち、違うよ……ちがう…………そんなの違う!!!」

「大河、俺たちは夫婦だろう? 誓っただろう!?」
「――っ!」

私の指を、竜児の指先がぎゅっと握り締めた。そして指に感じる硬い感触……

それは――――あの病院を出てから一度も気に留めなかった左手のくすり指。

あまりに自然で、指と同化してるようで、意識する事がなかった大切な……大切な指輪。

「そっ……それは…………誓った。……うん…………誓った……」
「ああ、俺も誓った。だからおまえが何を言おうとも、俺はちゃんと全力で応えるから。な?」

「ずるい……あの時の誓いを持ち出してくるなんて……ずるい……ずるい……」
「ずるくたって何だって、おまえが泣いてるよりはマシだ!」
「な、泣いてないもん! 全然泣いてなんかない!!」
「泣いてるのと一緒だ。そんな顔して、どの口が泣いてないなんて言うんだ?」
「だって、全然悲しいことなんか無いもん! 泣くわけないでしょっ!」

「だったら言ってくれよ! 俺を信じろ!」

――!?……信じろ…………うん。信じてる…………信じてる……

「だ…………だか……ら…………」

「大河!!!」
18【 - た い が - 】 56 ◆askgvpoGB. :2009/07/05(日) 23:12:07 ID:oOEeQZ1y



「だからっ! わたし赤ちゃんが出来たのっ!!!!!」



言ったぁっっ――――!!!
心臓がぎゅっと縮まって、まるで止まってしまったみたいに苦しい。
まぶたが震えて閉じそうになるのを必死で抑える。
怖くてたまらない……けど……それでも目を逸らさない。

「………………えっ?」

竜児は「驚」の文字がそのまま貼り付いてしまったみたいに固まってる。
さっきの勢いで、そうかよっ! とか言われたら死んじゃう。そんなのいやだ……いやだよ、竜児。

「……ほ、ほんとう…………なのか?」
「こんなこと冗談で言わないわよっ! ずっと、ずっとずっとずううううっと言いたかったの!」

叩き付けるように叫んだ声が反響して、消えて、そのまま時間が止まったみたいに感じる。
竜児の瞳だけが私を見つめたまま、表情も何もかも固まったまま……動かない。

なんで……何でこんなふうになっちゃうの……
もっと、普通に言いたかったのに……何で、何で私たちっていつもこうなんだろうね……
大事な事を、静かに……穏やかに……迎えられた事なんかほとんど無くってさ……

「…………………………」

あああ、怖い……怖いよ、竜児。
うそでもいいから笑って! 喜んで! お願い!
おめでとうって言ってくれるよね? 嬉しいぞって言ってくれるよね?

ねぇ、竜児…………りゅうじっ!!!
19【 - た い が - 】 57 ◆askgvpoGB. :2009/07/05(日) 23:13:43 ID:oOEeQZ1y



「うおおおおおおおぉぉ!」
「きゃあああっ!?」

――――次の瞬間、私は空にいた。
竜児が私の脇の下を持って、勢いよく……ぐわあっと立ち上がった。
あっという間に畳が遠のいて。照明がまぶしくて。……私は……高い高い……されてる?



「やっったああああああああああぁぁ!」 


――――え?

「たいがああぁ! やったなああああああぁぁ!」

釣りあがった目をまん丸にして……口もおっきく開いて……

「何だよ大河! 何だよ……もう! 心配させんじゃねえよ!」

「……だって…………だって、さ…………」
「すげえよ! すげえよ大河! すげえええええぇ!」

……こいつ……こんな顔で笑うんだ……
こんな……プレゼントをもらった小さな子供みたいに……笑うんだ……

「なに……よ。何かもっと……素敵な言葉とか言ってくれたっていいじゃないのよ……」
「ばっかおまえ! 言葉なんか出ねえよ!
 何かもうさ……全然すごくって何言ったらいいか分からねえよ!!!」


……やったーってバカじゃん……バカよ……何よそれ……
どんだけ嬉しいのよ、あんた…………どんだけ……喜ん……でる……のよ…………

「……っ! りゅ……う……じっ…………」

涙がどんどん溢れて来る。こらえようとしても……止まらない、止まらないよ……竜児……

「おう! すげえよ! すげえよ、大河! おうおう、やったな! やったなぁ!」

……何を心配してたんだろうね……こんなに……こんなに喜んでくれたじゃない。ホント、私ってバカだ。
溢れた涙は瞳から零れて、私の頬すら濡らさずにポロポロと下に落ちていく。

「おう? 何だよ! 泣くなよ!」
「だって……だってええぇぇ…………っく……りゅうじいいぃぃ――っっ!!!」

顔をぐしゃぐしゃにして……赤ん坊みたいに……泣き喚いてしまう。
こみ上げる感情に身を任せるしかなくて、両の瞳が壊れてしまったみたいに、止めどなく涙が零れる。
……竜児がこんなに喜んでくれてよかった。こんなに喜ばせられる私でよかった。心からそう思う。

「りゅうじっ! りゅうじぃぃっ! うわあああぁん!」
「嬉しいじゃねえか! 最高じゃねえかよ! だから泣くんじゃねえよ、大河!」

大きな涙も、小さな涙も、ポロポロポロポロ、零れ落ちていく。

それは……優しい雨のように竜児に降り注いで……竜児の顔を濡らしていく。
20【 - た い が - 】 58 ◆askgvpoGB. :2009/07/05(日) 23:14:37 ID:oOEeQZ1y


「泣くなって! な? 泣きやめって、大河! ほーら!」
「う、わあっ!? やだっ! 揺らさないでよ、竜児っ!」

腕を曲げたり伸ばしたりして、本当に高い高いされてるみたい。
しかも、たいがー! たーいーがー! なんて言いながらその場でゆっくり回り始める竜児。

「もう! 変な声ださないでよっ! きゃー危ないっての!」

ポロポロ、ポロポロ、涙がどんどん落ちる。
次から次へ溢れて、それでも止まらなくって、竜児に揺らされて零れて落ちる。

くるくる、くるくる、竜児が回る。いつかのクリスマスみたい。
私が天井の照明を遮ってるから、竜児の顔に光が差したり、影が落ちたり。
さっきの公園みたいだな、なんて思う。

「やだぁ! そんなに回っちゃ危ないよ! だから、お腹に赤ちゃんがいるって言ってんでしょ!」
「おう! そうだったな! 男の子か?」
「まだ分からないって!」
「じゃあ……女の子か!?」
「だからっ! まだまだ分からないよ、そんなのはっ!」
「うわー! 楽しみだなー! どっちだろうなー?」
「そう……だね。うん。楽しみだね…………竜児。あははっ」

そんなことを言いながら、がに股でヘンテコな踊りを踊ってるみたいな竜児。
私はそんな竜児を見ながら泣き笑いみたいなヘンテコな顔してる。

ホント……カッコ悪い……私たち。

ステージは6畳のリビングで、スポットライトの代わりは天井の照明で……
ドレスもタキシードも無くって、ただのパジャマで、そんでもって2人ともヘンテコで……
でも……でも、こんなに楽しいならいいよね、こんなに嬉しいならいいよね、竜児っ!



◇ ◇ ◇ ◇ ◇
21【 - た い が - 】 59 ◆askgvpoGB. :2009/07/05(日) 23:16:03 ID:oOEeQZ1y


「ねぇ……竜児」
「おう?」
「そろそろ……下ろしてよ……」

そう言って竜児に手を伸ばす。脇の下を支えられてるから竜児に届かない。
フラフラと宙を掴むように手を揺らしていると、ようやく、伸ばした腕を曲げていってくれる。

「おう、そうだな。ゆっくり下ろさないとな」

と言いながら、本当に本当にゆっくり腕を曲げていく竜児。

「そんなに……ゆっくりじゃなくても大丈夫だよ……」
「ダメだダメだ。ゆっくりに越したことはない」

梯子の上に乗った臆病な私を……怖がらせないように、大切に、ゆっくりゆっくり下ろしてくれてるみたい。
そうね……私は怖がりで……ずっと、ずっと一緒にいるのに……また心配かけちゃって……ごめんね。

何度、気付かされただろう……もう怖いことなんかない……おまえはもう1人じゃない。
――そう言って竜児は、何度もこの手を掴んでくれたよね。

私の伸ばした手が、指先がようやく竜児の頬に触れた。

「いっぱい、濡れちゃったね……」
「……そんなことは気にするな」

手の平で竜児の顔をいっぱいいっぱい撫でる。
そうしてる間にもどんどん竜児の顔が近付いてくる。
それでも、もどかしいくらいに、ゆっくりゆっくりと梯子を下ろしてく。

私はもっと早く下ろして欲しくて、
竜児にキスがしたくて、どうしてもしたくって、
イヤイヤをするように身体を動かして竜児を困らせた。

「ねぇ……ねぇ……りゅうじぃ…………りゅうじぃっ……」
「おう? 大河、たいがーたーいがー」
「ぷっ。何よ、変な呼び方しないでよっ」
「はははっ」

しがみ付くみたいに、竜児の首に手を回す。
おでことおでこがくっついた。
溢れてくる涙に思わず目を閉じる。

「ほら……竜児……幸せが降ってきたよ?」
「ああ、本当だな……本当に幸せだぞ、俺は」
「私も……幸せ……」



そうして、愛しい人の唇に、唇で触れた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇
22 ◆askgvpoGB. :2009/07/05(日) 23:16:49 ID:oOEeQZ1y

本日はここまで。ありがとうございました。

このスレに投下できてよかった。このスレの人達に読んでもらえてよかった。

心からそう思います…………が、ちょっと息切れ気味なので、次回は未定で数日中には。
23名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 00:08:47 ID:YLHEG76E
AT-X実況から帰って参りました

>>16-21
やっと言えたー!!良かったのであります

>>22
ゆっくり書いてってね!(AA略
24名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 00:16:53 ID:Gkw5llmW
ご苦労様です!
自分のペースを保って書いてくださいね。
楽しみに待ってますから。

25名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 01:50:22 ID:OwnbYFS0
>>22
泣いた! もらい泣きしましたよ!!
なんか幸せを分けてもらったような気分だなー ふふふん
26名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 05:44:49 ID:RwTPZCX3
GJだぜ……毎日このスレ覗くのが俺の今の楽しみだ
27名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 12:40:45 ID:zOhcBcHV
>>26
禿同
昼休みの楽しみだぜ
28名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 12:56:21 ID:/htscwhn
4時間に一度覗いてる僕はおかしいですか
29名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 14:06:47 ID:qrT6mZL4
2時間に一度の俺は(ry

実際に自分の時を想定しても、やった!
って言えるほど純粋に喜ぶってなかなか難しいよな。
せちがれぇ世の中だぜ、おい。

つーわけで、もっと竜虎の2828をくれ!
30名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 14:27:04 ID:gqdIdmaL
拙者は30分に一度でござる
31名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 17:13:53 ID:IXSJH9by
「竜児、野球拳をしよう!」
「また川嶋辺りに何か吹き込まれたのか?踊らされやすいやつだなお前…」
「そんなのどうでもいいから、するの?しないの?」
「おう、もちろんやるぜ。ルールはどうする?」
「そりゃもちろん裸になった方が負けよ。そして、今から着替える事は許さないわ!」
「だからそんな厚着してるのか、この暑い中ご苦労なこってすな」
「ふん、なんとでも言うがいいわ。後でほえ面かくのはあんたなんだから。あと、負けた方は勝者の言う事をなんでも一つ聞くこと! さぁ行くわよ!」
「「や〜きゅう〜す〜るならぁ〜こ〜ゆ〜具合にしやしゃんせぇ〜」」
「アウト!」「セーフ!」
「「よよいのよい!」」
「ぐぉぉ負けた!ではシャツから」
「やった! ね、勝ったほうが相手の何を脱がすか決めるってのはどう?」
「ふむ、それも面白みがあっていいな。何脱げばいい?」
「んじゃね、ハーフパンツから脱いで貰おうかしら」
「オーケーオーケー。…じゃ、行くぜ」
や〜きゅう〜ry
「おぉ勝った!」「く、犬のくせに結構やるわね…」「勝った!」「………チッ」「おぉっとまた勝っちまった、悪いな大河」「………」
「(こいつ…もしかして…。俺が出したやつに勝つやつを出してきてるのか…?)」
「竜児!あんたなんかズルしてるでしょ! 白状なさい!」
「…お前俺が出したやつに勝つやつを出してるからアイコか負けるんだぞ。同じの二回出すと思ってるのか?」
「…ハッ」
「まぁいい。こんだけ勝ってまだ俺より一枚多いんだ、続けるぞ」
「…コクッ」

……そんなこんなあって……

「はーっ、はーっ、はーっ」
「はぁはぁ…、次の一手で決めるわ!」
「俺もお前も下着のみ…次で勝負が決まる!行くぞぉぉ!」
「「や〜きゅう〜す〜るならぁ〜こ〜ゆ〜具合にしやしゃんせぇ〜」」
「アウト!」「セーフ!」
「「よよいのよい!」」
「…おぉ。おおお!勝った、俺は勝ったんだ、やったぞぉぉぉ!」
「何言ってんのかしらね、この妖怪赤面お化けは。私はまだ一枚あるわよ?」
「お前ブラとパンツしかねぇだろ、この勝負は俺の勝ちだと思うが?」
「だから、二枚あるじゃないの。さぁどっちを脱がせるか決めるがいいわ」
「…本気か…。じゃあ上で」
「…変体…」
「そう言いつつちゃんと脱ぐ所は尊敬に値する。ん?手で隠すのはダメなんじゃないかな大河さん?」
「……うぐ」
「さぁ手を退けるんだ、俺だって身に纏ってるのは下着一枚、別に隠してはいない。さぁ、さぁ!」
「…分かったわよ…」
「おう、随分と可愛いんでちゅねー。さぁ続きと行こうか?」
「…ふん…ばかいにゅ…」
や〜きゅう〜ry
「なん、だと…」
「やった、やったわ!1時間にも渡る死闘の末、私は勝つことが出来た!テテテテーレーテッテテー!」
「何か勘違いをしていないか?俺のバトルフェイズはまだ終了してないぜ、これを見よ!」
「…まさかの近藤さん…?そそそそれは衣類じゃないわ!反則よ!」
「あんだけ着て、靴下も片方ずつしか脱がなかったお前がよく言えたもんだな…」
「…わかったわよ! やりゃぁいいんでしょやりゃぁ!行くわよ!」「おう!」
や〜きゅう〜ry
「どうだ、これが力の差を言うものだ。いつも我侭を押し付けてきた分のつけが回ってきたんだろう」
「…はいはい。負けたわよ、私の完敗。これでいいんでしょ? さ、寛大で慈悲深い大河様が犬ッコロの言う事を何でも一つ聞いてやるわ。そちは何を願う?」
「…お前は真っ裸。俺も裸で近藤さん装備済み。あとは分かるな?」「…エロいにゅ…」


ギシギシアンアン
32名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 17:24:43 ID:RwTPZCX3
>>31
「どうだ大河、気持ちいいか?」
「ザ・ワールド!(カッ)」
「…あれ?突然めちゃくちゃ気持ちよくなったぞ……まるで近藤さんが無いみたいだ…」
「ほら竜児ちゃんと集中しなさいよ」
「お、おう……も、もうだめだ……うっ」
「ニヤリ」
33名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 17:41:03 ID:pXUEpM4P
これはひどいwww
いいぞもっとやれ
34名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 17:50:23 ID:IXSJH9by
ごめん>>31は最後ギシアンだけど
一応SSかシチュって事にしておいてくださいです。>まとめ人様
35名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 18:03:27 ID:hB2yDDUq
>>31
>まさかの近藤さん
つまり竜児は大河が野球拳を言い出す前から装着済みで、しかもその後ずっと臨戦体勢、と……

なに かんがえてんだ!>竜児
36さかるぜ:2009/07/06(月) 21:21:04 ID:oH4kMKdx
まだ一回も見たことないネタなんで早い者勝ちっつーことでやっておきます

竜児「盛るぜー!超盛るぜ〜!!」

大河「ちょっあんたやめなさいよ!!ってあふん」

ギシギシアンアン

<蛇足>
あーみん「こらバカ虎!人前だっつうの!マジ止めろって!」
みのりん「へへっあーみん、実は混ざりたいんじゃないかい?いやぁ、おいちゃん妬けちゃうねぇ〜」
あーみん「んなワケねーだろ!!(やだ、あんな太いの亜美ちゃんに入っちゃうわけ?マジでありえないから!!)」
みのりん「ニヤニヤ」
37名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 21:39:45 ID:qZqsfGdx
盛る @もる
   Aさかる
38名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 22:06:04 ID:/htscwhn
解説キボンヌとか言ってみる
39名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 22:56:26 ID:oH4kMKdx
>>38
ヒント:名前欄
40名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 23:04:55 ID:WjGJeXrt
>>34 ssなめんな
41名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 23:34:23 ID:qrT6mZL4
>>34
いや、これはギシアンにまとめてしまうのは惜しい。
つーか、まとめ人の事だ、素敵な名前を付けてくれるさw

あと、このスレを携帯で見る時にシーク通したい場合はどうしたらいいんでしょう?誰か教えて下さい。
42名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/06(月) 23:58:59 ID:gqdIdmaL
>>41
ファイルシーク通して使うと使いづらいだけなんだが

携帯用2chメニューはいろいろあるがな

べっかんこ
http://ula.cc/

c.2ch.net
http://c.2ch.net/

orz
http://orz.2ch.io/

クラシック
http://i.i2ch.net/

それともこのスレに張られたリンクをファイルシーク通して見たいということかね?
その場合はまず一番下に[設]というリンクがあるからそれを踏む
そしたらいろいろ項目あるので「ime.nu」というのにチェック
ついでに「デフォルトAAS」にもチェック入れとくと良いだろう
そしたらページの下の方にある「設」ってボタン押すと
c.2ch.netだと設定しましたってページに出るからそのページのclassicメニュってリンク踏んで開いたページのURLをブックマーク
そうしないといちいち設定することになって面倒臭いことになる
orzの場合は設定後はすぐスレッドなり板なりに飛ぶからそこをブックマークすればよい
こうすればリンク踏んだらime.nuに飛ぶようになり携帯用に変換するメニューをいろいろ選ぶページが出る

べっかんこの場合はデフォルトでime.nuに飛ぶようになっている
そしてスレッド閲覧履歴も見れるからそのページをブックマークすればよい

以上だ
蛇足だが携帯だけで2chやるのはあまりおすすめ出来ないので
PCでもやっておいて慣れておいた方が良いだろう
43名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 00:07:10 ID:qrT6mZL4
ありがとうありがとう、本当に感謝します!!
教えてもらった中から使いやすいの探してみます
44名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 03:16:28 ID:QpQ6jZgG
「ねぇ竜児。雨の色って何色だと思う?」

この天気で洗濯物はいつまで経って半乾き、乾燥機がない我が家ではアイロンで仕上げるしかない。

背中合わせでユラユラとアイロンの動きに合わせて揺れていた子虎が、夢見る少女みたいなことを言い始めた。

「う〜ん、そうだな…」

ここは現実的に答えるべきか、それとも幻想的に答えるべきか…

「やっぱり、雨ってのはその人の今によって感じ方は違うんじゃないか」

「例えば?」

「そうだな… 俺は一人っ子だから雨が降ると外で友達と遊べなかったから、子供の頃は灰色ってイメージだったな」

「わたしも。私も一人だったから雨は暗い色だった」

「でも、今は大河が居るからそんな事ないけどな」

「うん、そうだね。雨の色も昔みたいに暗いイメージじゃない」

ウゥッ… シクシク ヒッ シクシク…
「何だ?」

バン!
「ゴベンネ りゅうぢゃん」ウァァ〜ン

「やっちゃん!」

「ごめんね〜 やっちゃんがお父さんに置いてかれたから、竜ちゃんは一人ぼっちで」

「そんな事は気にしてないから!」

「えぇ〜 だって家族が二人きりで寂しかったでしょ?」

「そんな事は無かったから、それに今は大河も居るし」

「そうよ!寂しくなんかないよ、やっちゃん!」
「私が竜児と結婚して子供をポンポン産むから、これからは家族はドンドン増えるから!」

「……バトミントが出来るくらいに?」

「オイ!!そこは普通、野球とかに例えるだろ!」

「えぇ〜そんなに産んでくれるの!大河ちゃん?」

「いや、さすがに野球はちょっと…」
45名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 06:12:45 ID:jWSm2ZLX
昔何かの映画で「将来の夢は野球ができるくらいの数の赤ちゃんを生むことです」
って言った子供に「ゴキブリかお前」
って突っ込んだの思い出した。
大河の場合サファリパークが開けるな!
46名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 06:21:27 ID:S4i3+MtY
アイロン掛けしてる竜児に背中合わせで座ってる大河ですか?!w
何かいいなぁwそういうのw
47名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 08:39:36 ID:Oik9E+4S
>>44
こういうのいいなあ
梅雨にぴったりだ
48奥さまは虎女:2009/07/07(火) 13:05:25 ID:P+YRwNDi

 奥さまの名前は大河。そして、だんな様の名前は竜児。
 すごく微妙なふたりは、しごく異常な恋をし、ごく普通の結婚をしました。
 でも、ただひとつ違っていたのは、奥さまは虎女だったのです……なんて読むんだよ!?


「ただいまー。大河……大河ぁ?」
「わぁ……っ! おかえりなさぁい、竜児っ!」
 だだだだっどん!ごん!
「痛ぇ……っ! お、おまえさあ、抱きついてくれるのは嬉しいんだけど、突進してくんのやめねえか?
 後頭部の形、変わっちまうよ……」
「っ!? も、もう、愛は冷めたのね……?」
「いやだから、抱きつかれるのは嬉しいって言ってんだろ? 加減ってものをだなおまえ……」
「いやっ! 離婚しても私離れないから! ずっと一緒に暮らすんだから!」
「ひとの話聞けよ!? だいいち離婚の意味ねえだろそれ!?」
「うぐ……っ」
「わあ泣くな泣くなおまえ! 愛してるよ、大河!」
「っ! ほ、ほんとう?」
「ほ、ほんとだほんと。ちょー愛してる。冷めてねえ。激アツだ。特に後頭部のあたりが」
「ん……じゃあ、ただいまのちゅう、して?」
「おう……ただいまのちゅう……」
「そ。いつもみたいに、して?」
「……」
「……なに? なにあんた、きょろきょろしてるわけ」
「あ、いや、なんか今すごく、どこかから見られているような感じが……」
「はあ? なに言ってんの。やだもう竜児ったら、ネット中継でこれを見ているおまえの脳を
 逆にハックして北村くんの全裸画像まみれにすることも可能なんだぞスキャナーのこの俺には
 みたいな目してきょろきょろするんじゃないの! だいいち私は誰に見られたって平気よ!
 だって……竜児と、だもん……」
「おう……だが俺は嫌だぞ? そうしてるおまえすげえ可愛いから、誰にも見せたくはねえ」
「は、はう……」
「おうなんだ、まだおまえ震えるのか。慣れねえもんだな……」
「りゅ、竜児が悪いんでしょ! か、可愛いとか、言うから……」
「……ただいま、大河」
 ちゅ。
「っ! お、おかえりなさい、竜児……っ。えと……こ、これだけ……?」
「これだけ? ってなんだよ」
「ちゅ、ちゅう……これだけ?」
「っ! そ、そうだよ、今はこんだけ。これ以上はだめだ」
「ど、どうして……?」
「どうしてもこうしてもねえよ。が、我慢できなくなるだろ?」
「わ、私はべつに……いいけど。こ、ここでも……」
「うえぇっ!? た、大河……?」
「っち、違うの! べつにあのっ、いつもそのっ、帰ってきた竜児にいきなり玄関でとかっ、
 か、かかか考えたこともないから! そ、想像したりあああ憧れたりなんてしてないから!」
「……あ、いや、そこはつっこまねえ。あぶねえ。と、とにかくだ、大河。ここはだめだ。
 ここではすっごいまずいって俺のゴーストがささやいてる。な、大河、とにかく……そうだ!
 メシにしよう! な?」
49奥さまは虎女:2009/07/07(火) 13:05:29 ID:P+YRwNDi
「っあ、う、うん! そうね! ご飯ね! 腹が減っては夜の戦もなんだかだって、言うし!」
「そっから離れねえかな……まあいいや。さ、ご飯にしよう、大河」
「うん! で、どこ食べに行くの?」
「へ? どこに?」
「そう、どこ行くの? だってウチ、ご飯ないよ? お昼にあんた、夕飯の用意はいらないぜ大河
 竜にゃん愛でお腹がいっぱいだからはぁと、なんてメールくれたから」
「竜にゃん以降の記憶はねえが……まあそれでいいんだよ。ほら」
「あっ、エコバッグ! ……でも竜児、エコは食べ物じゃないよ? あと袋も」
「俺おまえのそういうとこほんっとに大好きだけど、概念も布も食わせる気はねえ。
 食材買ってきたんだよ。今夜は俺が作る」
「えぇ!? わーいっ! 竜児のごっはんーごっはんーっ♪ ……あ、でも、すっごく嬉しいけど……
 お仕事で、疲れてるでしょ……? 朝食だって、いつも竜児だし……」
「朝飯作るのはその方が目ぇ覚めるからだ。それに、たしか料理はそれ自体がストレス解消になる、
 って話も聞いたことがある。あと、あらかじめ言っとくが、俺はおまえが毎日4時間くらいかけて
 作ってくれてる夕飯が大好きだ。死ぬほど嬉しくて腹が下る時もあるが毎日楽しみにしてる。
 今夜もおまえの手料理を食べられないこと自体はまあ、残念なんだが、俺が作りたいんだから
 仕方がない。というわけだ、今夜は俺が作る」
「う、うん! えっと、あれ? きょ、今日、何の日だっけ……?」
「は? 何の日?」
「ご、ごめん竜児! 私、忘れちゃって……な、何の記念日だっけ?」
「おう……い、いやだな、大河。おまえと一緒にいれば、ま、毎日が記念日だよ」
「それは嘘!」
「早っ!」
「みえすいたご機嫌とりなんていいからさ。ね、竜児、何の日だっけ?」
「ご機嫌とりじゃねえんだけどな……今日はべつに、何の日でもねえぞ、大河」
「そ、そうなの? なんだ、よかった……」
「そうなの。よかったの。記念日でもねえけど、とにかく俺が作りたくなっただけなの。
 てか、大河。そろそろ抱きつくのやめねえか? いいかげん上がらせてくれよ、俺を」
「あらやだ。そうね。さ、どうぞどうぞ、お上がりになって? いやねえもう遠慮なんかしないで……」
「遠慮しねえよ俺たちの家なんだから……てか抱っこしたまま移動なのかよ!?」
「竜児ったら、エコバッグも私も抱えて大変ねえ?」
「わかってんじゃねえか……何の二人四脚だこれ……ドアあけるぞほら……おう、ナイス誘導だ大河、
 だいぶコツがつかめて……そっちベッドだろこの野郎!? ちっ、じゃねえよ、ちっ、じゃ……
 ソファでもいいとかじゃねえ!? キッチン行くのキッチン! この変態とか言うなおまえが!?
 料理しかしねえよ!?」
「ちっ」
「ち、じゃねえよだから……はー、ようやく着いた。すげえ疲れた」
「……」
「ん、どした?」
「……疲れた、だけ?」
「……そんなわけあるか。楽しいよ、大河……」
「竜児……」
「って、うちゅー、じゃねえよタコちゃんが。それは後。ぶーぶーじゃねえ。さ、メシ作るから。
 上だけ脱ぐわとりあえず……だからさ、大河……わかるだろ、な?……いいかげん腕ほどけって!?」
「やーだ」
「こらぁ、大河……いい子にしろよお願いだから」
「やーだ。私悪い子だもん」
「ったく……ほら、いい子にしてくれたらさ、後でたっくさん、可愛がってやるから」
「は……っ」
「よしふるふる来た。力抜けた。ほーら、抱っこおしまい」
「ひ、卑怯者……っ」
「おう、なんとでも言え。さ、エプロンとってくれ大河」
50奥さまは虎女:2009/07/07(火) 13:05:32 ID:P+YRwNDi
「もぅ……はい、竜児、エプロン」
「おう、サンキュ。……おー、落ち着くわ。で、一応聞こうか、大河。何が食べたい?」
「っ決まってるでしょうが! チャーハン!」
「おまえね……インプリンティングもたいがいにしろよ? チャーハン俺のベストメニューじゃねえんだぞ。
 おまえって奴は俺の潜在能力の1%も使わせちゃあくれねえ」
「だってしょうがないでしょ!? あ、あんたが私をチャーハン漬けにして手込めにしたんだから……」
「チャーハンやばい薬みたいに言うな!?」
「あんた薬混ぜてたの!? 最低!……でも、もう私、それでもいいの……」
「混ぜてねえよ!? あとなんか堕ちたけど幸せオチみたいな言い方やめろよ!? ……てかさ、
 どっちにしろ、買ってきた食材で制限されるんだよ、作れるものも」
「えーっ!? チャーハン作れないの?……なによ、ニヤニヤしちゃって。キモいよ、大好きだけど。
 他のひとに向けちゃだめ。特に女の子には、感じちゃうから」
「俺はバンコランか」
「ううん、性犯罪の気配を」
「やっぱそっち系か……作れるよ、作るよ、チャーハン」
「えっ!? 作れるの? 作ってくれるの? やたっ! ……てか、それならそうと最初から言いなさいよね、
 竜児の意地悪……」
「おまえの拗ねた顔が見たい程度にはな」
「っ!……」
「……よし、満足した。でもチャーハンだけで満腹はさせねえ。あと二三、作らせてもらう。
 ホイコーロー、卵とトマト炒め、ピータン豆腐サラダ、ワカメの中華風スープ、そんな感じでどうだ?」
「えっ!? そんなの作れるの?」
「作れるよ。3秒だよ。3秒は嘘か、まあ、10分でいける」
「わあ、竜児ってすごーいっ!」
「そうだよ。わりとすごいんだよ。だからたまに作らせろよ、な? 冷凍のご飯はあるよな。
 解凍頼むわ」
「はーい!」
「さて、キャベツとレタスから行くか……」
 ジャー、バタン、ガラガラ……、ジャッ、ジャッ!
「おお……ねぇ竜児、あと手伝うことある?」
「おう、解凍終わったら、レンジに豚バラかけてもらう。強で2分。また後で言う。それまでは、
 まあ、俺の後ろにいてくれ」
「うん、わかった!」
 トントントントン……
「……初めてだね、こうして竜児に夕食作ってもらうの」
「だろ?」
「うん……引っ越してきて、一緒に暮らすようになって、初めて」
「だろう? やっぱいいよな」
「うん……」
「これがやりたかったんだよ……ようやくここまで来たって感じ、するわ……」
「うん……」
「やっぱいいよ……俺が夕飯作ってて、おまえが後ろにいてくれて」
「うん……」
「俺たち、告白もしねえで、いきなり家族になったようなもんだったよな……」
「うん……」
「……ようやく、ここに、戻って、これ、た……」
「竜児……っ」
51奥さまは虎女:2009/07/07(火) 13:05:34 ID:P+YRwNDi
 トン、トン……カチャ
「ごめん、大河。10分も嘘だわ……おまえを、抱きしめさせてくれ……」
「竜児っ……竜児っ!」
 ぎゅう……っ
「大河……ああ、大河……長かったなあ……」
「うん……でも、あっという間だったよ……」
「そうだな……でも、めんどくさかったなあ……」
「うん……でも、簡単だったよ……」
「結婚なんて、くそくらえだよ。なあ、大河……」
「うん、うん……」
「結婚なんてしなくてもひとは幸せになれるって、俺たちは知ってる……」
「うん、うん……」
「結婚してても、ひとは幸せになれないことがあるのを、俺たちは知ってる……」
「うん、うん……」
「結婚なんざ、方便だ……俺たちのまわりに関係があるだけだ……ほんとはどうでもいい。
 俺はただ、おまえと一緒にいたいだけなんだ……大河、おまえさっき、いいこと言ってたよ。
 結婚なんざ、しようがしまいが、俺はずっとおまえの傍にいたい。一緒に暮らしたい。
 一緒に生きて行きたいんだよ……大河」
「竜児……っ」
「ただな、大河……そんな俺が結婚するとしたら、おまえしかありえねえ。ありえなかったよ」
「竜児っ、私も……っ」
 ピーッ!
「と、あらやだ、ご飯解凍できた……竜児、豚肉……ほら、うちゅーとか、してないでさ」
「え? えぇ……? キスくらい、いいじゃねえかよ……?」
「だめだめ。キスだけで済む流れじゃないでしょ? キッチンがエロくなるよ、油断大敵!」
「……敵はおまえだけどな、この場合……ま、いいや、豚肉な? 切るわ……なんだ?
 なんだよおまえ、エプロン引っ張るなよ。肩ひも伸び」
 ちゅ。
「っ!」
「……こんだけで、我慢してね?」
「お……おう……」
「あんまニヤつくんじゃないの。ほら、レンジ壊れるよ?」
「ねえよ……てか、おまえが笑ってるからつられたんだろうが……」
「っそうだ! ね、やっちゃん呼ぼうよ!」
「お、おう! そうだな、帰ってきてるかな。メシまだかな。おまえちょっと連絡して……
 てか、いいのか、大河?」
「もちろん! ……だって、あのころにようやく戻ったっていうなら、やっちゃんもいないと」
「おう……あ、いや、そりゃあそうなんだが。そうじゃなくて、つまりその、メシ食ったら、
 なんてかその、すぐに……ってわけには、いかなくなるぞ?」
「あらやだ。竜児ったらすっかり発情期。この新婚エロス犬!」
「どっちがだよ!? 理不尽きわまるわ……」
「……私は、いいよ。今夜はやっちゃんにいて欲しい。大事なことだもの……それも」
「大河……」
「あとね、竜児。私はね、べつにいいの……やっちゃんの目の前で、しても……」
「俺がよくねえよ!?」


***おしまい***
52名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 13:08:55 ID:jWSm2ZLX
「ねぇ大河、この間のいい線行ってた?」
「な、何言ってんのみのりん!私達がいくら付き合ってるからって一線を越えたなんてそんな!
…でも、竜児がしたいって言うなら…別に考えてあげない事も…」
「落ち着け大河!一線じゃなくていい線だ!テストの合計点…って、いいのか、大河?」


ギシギシアンアン
53名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 13:45:01 ID:jWSm2ZLX
ああ、代理投下に被らなくてよかった、気付かなかったw
GJ!!
54名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 13:52:26 ID:QupZ0XKq
かぶっても気にしない気にしない
55名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 17:26:32 ID:QpQ6jZgG
「せっかくの七夕なのに雨かぁ…」

「そうだねぇ〜 かめはめ波でも打ち込んで雲を払い退けたいね〜」

「…なるほど、かめはめ波か」ブン! ブン!

櫛枝の一言で大河は例の構えで腕をブンブン突き出す、不思議と大河だったら打てるのではと思ってしまう。

「なかなか様になってるじゃないか、本当に打てそうだ」

「でしょ!何か体中の気?みたいなものが手に集中してる!」

「オイオイ…」

「竜児離れて… 次は本気でやるから」

足を肩幅に広げ目をつぶる…… 良い感じに力が湧いて来る。

良し!今だ!!「か・め・は・めぇ〜」

大河は目を閉じたまま呟き始める、出せるのか?本当に出しちゃうのか?

「みんな〜 今日は七夕だ『波ァァー!』」

「ウボッ!!」

   『春田死亡』
56名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 17:58:51 ID:QupZ0XKq
大河ならかめはめ波どころか元気玉ぐらい使えそうだよ
57名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 18:05:35 ID:5+c1dolL
電車の中だったのに、不覚にも春田でフイタw
58名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 20:39:52 ID:E6hbQ+mg
大河「いいのよ」
59名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 20:58:48 ID:jWSm2ZLX
「織姫と彦星、ちゃんと会えたかしら…」

「会えたさ、きっとな」

「だとしたら今頃、え、えええっちとかしてるのかしら」

「…お前可愛いな」


ギシギシアンアン
60名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 21:13:19 ID:5+c1dolL
「織姫と彦星、ちゃんと会えたかしら…」

「会えたさ、きっとな」

「一年に一度だもんね、きっとすごく……その……あの……ももも盛り上がっちゃうのかな?」

「俺は一日に一度でも……すごく盛り上がるぞ?」

「わ、私も…………///」


ギシギシアンアン
61 ◆QHsKY7H.TY :2009/07/07(火) 21:35:17 ID:n7wAtR6q
お久しぶりです。
新スレ乙です。
まとめ人さんシュミレーションゲームのリンクありがとうございます。
以前調子扱いて予告なんぞやったやつをちょこちょこ書きためたので投下しようと思います。
全部投下後はまた亀更新になるかもしれませんが暖かく見守って頂けると嬉しいです。
今回はそんなに長くならない予定……のはず。
62【逢坂大河〜Remember竜児〜】 ◆QHsKY7H.TY :2009/07/07(火) 21:37:01 ID:n7wAtR6q
ゆっくりと瞼を開く。
「ん……」
まるで開くことが久しぶりだと感じるほどにその瞼は重い。
体を動かそうにも億劫になってしまっているし、一言で言って体が鈍っている。
そんな自分の体たらくさが許せなくて、むっくりと起きあがる。
周りは、見たことの無い部屋。
白いカーテンが天上にはぶら下がっていて、しかしそれだけ。
「……ん?ここは?あら?綺麗な娘……何だ、鏡ね。あれ?……じゃあこれ私?私は、……私は?」
今鏡に映ったのは自分。
長いふわりとした髪に、シャープな顎。
細い肩に小さい体。
起伏は……まぁ無いわけじゃない。
そんな自分の姿に、見覚えが全く無い。
いや、『全ての事に覚え』がない。
そして……気付く。
自分の名前すら、わからない。
「私……誰?」
コンコン。
自分に対して、部屋に対して、それぞれに疑問を抱いた所で部屋の戸がノックされる。
「大河……入る……大河!!気付いたんだな!?心配したぞ!!」
返事をする前に開かれた扉からは、見たことも無い男が入って来た。
恐らく、私が起きているとは思わなかったのだろう。
返事を聞かずに開いたドアを閉めるのも忘れて私に急ぎ足で近寄ってくる。
って何コイツ?
何でそんなに目がつり上がってるの?
「……なんだよその顔は?嫌がらせか?心配したってのに……」
そんな私の心情を察したのか、目の前の男は少し顔を曇らせながら愚痴る。
「……アンタ誰よ?」
まず最初に気になった事を聞く。
だいたい、心配したなどと言われても私には何のことかさっぱりわからない。
いや、今の私にわかることなんて殆ど無い。
「は?何言ってんだ大河?」
「だからアンタ誰なのよ?馴れ馴れしい」
ホント馴れ馴れしい。
こいつは私のなんなワケ?
「……おいおい、悪ふざけにしてもやりすぎじゃないか大河?」
「だから本当にわかんないって言ってるじゃない」
「え、そんな、まさか……」
どんどん目の前の男の表情が青ざめていく。
「ちょっと待っててくれ大河!!」
男は焦ったように部屋から出て行った。
そんな後ろ姿を見ながら思ったのは、
「大河……って私の事、よね……?」
自分のらしい「大河」という名前を覚えることだった。
63【逢坂大河〜Remember竜児〜】 ◆QHsKY7H.TY :2009/07/07(火) 21:38:29 ID:n7wAtR6q
***

「記憶喪失!?」
さっきの目つきの悪い男が医者を食い殺さんばかりの形相で睨み付ける。
うわぁ、医者が怖がってるわよ?気付いてないのかしら?
……まぁこの男にしたらアレよね、そんなつもりは無いんだろうけど。
医者が早口で説明して、逃げるように出て行った後、
「その、大丈夫か、大河?」
心配気げに尋ねてきた。
尋ねてくるのはいいが、その前にいくつか確認しておきたい事がある。
「待って、その大河ってのは私の名前で良いのね?」
「お、おぅそうだ。お前は逢坂大河、大橋高校の2年で俺と同じクラスだ」
「ふぅん、でアンタは?」
「俺は高須竜児、まぁ友達だな。知り合ったのは高校からだが、お前は俺の家と隣同士で、お前が一人暮らしなのもあって俺の家によく飯を食いに来てたんだ」
「友達、ねぇ。で、私は何で一人暮らしなワケ??」
「……それは……」
ここに来て高須竜児が口ごもる。
「何?言いずらいことなの?」
「……まぁその話はおいおい話すとして、体の方はもう大丈夫なのか?」
話を逸らされた。
まぁいいか、重要なことなら言うだろうし。
「体?何ともないけど私怪我でもしたの?」
「いや、お前はインフルエンザに感染して入院したんだ。ずっとうなされて寝てたんだが、今日ようやく目が覚めたと思ったら記憶喪失、というわけだ」
「ふぅん」
「ふぅんってお前……」
「だってしょうがないでしょう?覚えて無いんだから、今は出来る事をやるべきよ」
「おお、たまにはまともなことを言うじゃないか」
「何よ、私ってそんなにまともな事を言わない奴だったの?」
そう、私は私を知らないのだ。
「あ、いやそういうわけじゃねぇんだが……すまん」
「どうして謝るのよ?私はどっちかっていうとアンタに助けられてる側よ?」
「お、お前……」
「?何よ?」
「いや、本当に記憶をなくしてるんだな、って。お前が素直にお礼を言うなんて、そう考えられなかったから」
……私って一体どんな奴だったのよ。
「まぁいいや。お前体調がいいなら退院できるそうだが、どうする?不安ならもう少し入院していてもいいが……」
「退院する」
「おおぅ、即答か」
だって、こんな消毒液臭い場所にいるなんて気分悪い。
「まぁいいや、じゃあ手続きしてくっから」
そう言って高須竜児は部屋を後にした、と同時、入れ替わるように、
「大河ちゃぁん!!」
染めた髪の長い、自分のと見比べてその膨らみの神秘に思わずめ目眩を覚えるようなプロポーションをした女の人が入ってきた。
「えっと?」
「大河ちゃんやっと目が覚めたんだね?よかったぁ〜♪」
ちょっとお酒くさい。
「でもでも、やっちゃんとーっても心配したんだからね?」
「え、あ、うん……」
心配してくれたのはまぁ嬉しいんだけど、この人誰?
「大河ちゃんまだ辛かったら無理しなくても良いんだよ?ちゃんとやっちゃんが面倒見て上げるから」
面倒を見る?あ、まさか……。
「えっと、お母さん……?」
「?……うん、そうだよ?やっちゃんはスーパーお母さんなのだ!!」
その瞬間、私は歓喜に満ちあふれる。
なにせ、なにせ目の前の女性の胸は、例えるならメロンなのだ、ボブ・サップなのだ。
そんな人が母となれば私のこの起伏が感じられ……もとい無いワケじゃない胸も期待できるというものだ。
「ああ、お母さん!!」
私は目の前の母に抱きついた。
「ん〜?今日は大河ちゃん甘えんぼさんだね〜」
よしよしと頭を撫でられる。これが家族、親子の愛なんだと『初めて』感じた。
64【逢坂大河〜Remember竜児〜】 ◆QHsKY7H.TY :2009/07/07(火) 21:40:00 ID:n7wAtR6q
***

「……何やってんだ?」
目つきの悪い男、もといヤクザ……もとい高須竜児が戻って来て開口一番、呆れたように呟いた。
「見てわからない?親子の愛を感じてるのよ」
自信満々に告げてやる。
ああ、いつかこの胸が自分のものにもなると思うと楽しみでしょうがない。
「はぁ?お前何言ってんだ?頭大丈夫か?」
「大丈夫だったらここにいないし、自分のことだって覚えてるわよ」
「あ、そうか……」
高須竜児がガクンと肩を落とした。
何よコイツ。
そんなナリしていながら心はナイーブなの?
「あ、いっけない!!やっちゃんこれからお仕事なんだ、竜ちゃん、大河ちゃんお願いね」
「おぅ、ああ泰子、これ持って行け」
高須竜児はいつの間にか手にしていた紙袋からお弁当箱を取り出した。
「あ〜竜ちゃんいつもありがとう!!それじゃ行ってくるね!!大河ちゃん、お大事にね!!」
バッと駆け出すようにお母さんが出て行く。
さて、
「何アンタ?お母さんを名前で、しかも呼び捨てで呼んでるの?」
「お母さん?ああ、まぁお母さんだけど……何て言うか、昔っからだからなぁ」
コイツ、昔から人の母親を名前で呼んでるの?変なの。
「まぁいいわ。んじゃちゃっちゃっと帰りましょうか。もう退院出来るんでしょう?」
「おぅ」
これでようやく、私はこの消毒液臭い部屋とオサラバ出来る。

***

「これが……私の家?」
ボロい。
なんだここ。
「いや、ここは俺ん家だ。……そんな嫌そうな顔をするな」
「じゃあ私は隣のこのマンション?」
「ああ、丁度家の窓向かいの窓がお前の部屋なんだよ」
「げ……」
最悪。
そんなの、この極悪面になにされるかわかったもんじゃないじゃない。
「お前、何か失礼なこと考えてるな?」
「べ、別に?」
「嘘つけ、お前がそうやって吹けもしない口笛を吹く素振りで顔を逸らす時は大抵嘘だとわかってるんだ。ほらいい加減荷物も重くなってきたしお前の部屋に案内してやるよ」
「あ、うん……ありがとう……」
「いいって」
そんな、何でもないことのように言って、凶悪な面をさらにつり上げる。
普通の奴なら怖がる所なんだろうけど、
─────ドキン─────
胸が、何故か熱くなった。
何だろうこの気持ち。
忘れていたような、知っていたような。
体の奥底のほうから込み上げてくるコイツの優しさ。
今までにも、こんなことがあった気がする……。

***
65【逢坂大河〜Remember竜児〜】 ◆QHsKY7H.TY :2009/07/07(火) 21:42:42 ID:n7wAtR6q
「ここがお前の部屋だ」
「へぇ……」
一言で言って広い。
無駄に広くて、閑散としすぎていて、何処かもの悲しい。
急に、胸がきゅんと締め付けられそうになった。
「ちゃんと掃除はしておいてやったから綺麗なままだ、こっちが……大河?どうかしたか?」
「ううん、何でもない……」
覚えてはいないが、体が知っているのだろう。
ここは……独りの部屋だ。
「……大河、腹減っただろ?飯作ってやるよ」
「アンタに作れんの?」
「失礼な奴だな、少なくともお前よりは料理上手なつもりだぞ」
そう笑いながら高須竜児は私を連れて高須家へと向かう。
どうやら、気を使ってもらったみたいだ。
「まぁ、今日はあり合わせだな」
「食えるもん作りなさいよ」
「お前……本当に記憶が無いのか……?」
不思議そうに私の顔を見つめてくる。
何よ?私ってそういうことばっか言う奴だったの?
そんな私の内なる疑問を知ってか知らずか、高須竜児はキッチンに立って包丁を取り出す。
ニヤリとしたその口元は、まるでこれから「タマ取ったらぁ!!」とでも言わんばかりの顔だ。
しかし、そんな顔とは逆に、まな板の上を包丁は丁寧に行き来する。
ザクッザクッ、トントントン。
聞いたことのある音。
狭いキッチンをあっちへこっちへ移動するその後ろ姿は、懐かしさを醸し出していた。
ジュワァァ!!とフライパンの油の音がする。
あれはタマネギとカブだろうか、炒めて塩こしょう、次いでご飯を……炒飯か。
ぷぅんと漂う匂いが鼻腔をくすぐり、空腹のお腹が悲鳴をあげる。
「ぷっ!!まぁもうちょっとだから待ってろ大河」
私の腹の虫を聞いて、「やっぱ大河だなぁ」と小さく呟きながら嬉しそうにフライパンを持ちあげる。
「よっと!!」
何度かフライパンのご飯をかき混ぜては宙に浮かす定番をこなした後、皿に盛りつけられたそれが目の前に出された。
「ほれ、あり合わせの炒飯だが……ああ、少し冷やしてから食べろよ?」
「何で?」
「いいか?この手の料理は作ってすぐのホッカホカの時はほんの少し味が薄いんだ。冷めるまでとは言わないが少しだけ熱を逃がすことでよく味が回るんだよ」
「へぇ、アンタって無駄に知識多いわね」
コイツ、顔とは正反対な性格してるのね。
そんなどうでも良いことを考え、止めた。
目の前の炒飯から漂う『ただならぬ気配』とでも言える『食』への欲求に、体が早くと急かしてやまない。
「いただきます」
私はスプーンを手に取り、一口パクンと……!!
「美味しい……!!はむっ、んぐっ、あむっ!!」
「おい、落ち着いて食えよ、炒飯は逃げねぇから」
そんな私を諫めるような言葉も、今は耳に残らない。
美味しい、美味い……嬉しい、懐かしい。
「私、これを食べたことある……」
「おぅ、それは結構何回も作ってるし、お前が俺の料理で最初に食べた奴だからな」
途端、何かがフラッシュバック。
『これ、良かったら使って』
あれは封筒。
何か重要なものだった気がするけど、あの封筒が何だったのか……思い出せない。
それに私は何故か木刀を持っていて、
『じゃあね、竜児』って……。
りゅうじ。
りゅうじ。
りゅうじ。
「竜、児……」
気付けば、名前を口に出していた。
66【逢坂大河〜Remember竜児〜】 ◆QHsKY7H.TY :2009/07/07(火) 21:44:29 ID:n7wAtR6q
「ん?呼んだか?」
頬杖ついて私の食べっぷりを鑑賞していた竜児が私の呟きに反応してこちらを見つめる。
「……呼んでない」
私は、目の前の炒飯を食べる事に集中した。
集中せざるを得なかった。
「はむっ、もぐもぐ……」
この味を、この炒飯を忘れてしまったことが、何故か無性に悲しかった。

***

「しっかし、よく食うなぁ」
スプーンを置いたところで、ポツリと言われる。
「あ、ごめん。アンタの分は?」
「いや、気にすんな。泰子の夜食作るついでにでも作り直すよ」
「……アンタ、お母さんのまで作ってるの?」
「またお母さんって……間違っちゃいないが、いつもどおり『やっちゃん』って言われないと何か調子狂うな」
「?……私、お母さんのこと名前っていうか愛称、やっちゃんって呼んでたの?」
意外だ。
でも、仲の良い親子だったのかもしれない。
友達感覚?みたいな。
「けど、お前が俺の分の心配するなんて、明日は槍が降ったりしてな」
柔らかく笑うその目は、釣り上がっていてもどこか優しい。
「……ん?まーたお前は……、記憶がなくなってもこういう所は変わらないのな」
そう言って竜児は……そう、私はこいつを竜児と呼ぶことにしっくり来てる。
目が覚めて、違和感だらけの、何も知らない世界でただ一つ、色を持って存在しているのがこいつは『竜児』であるということ。
『高須』でも『高須竜児』でも、『男』でも『竜ちゃん』でもない。
こいつは私にとって『竜児』
それ以外の……!?
唐突に、口元に布を押し当てられる。
「○×▲□!?!?」
言葉にできない不思議な……何か。
恥ずかしいような、腹が立つような、嬉しいような、心苦しいような。
目が覚めてからこんなのばっかりだ。
知らないのに、勝手に心だけが反応する。
「お前、いっつそうやって米粒つけるんだから……大河?」
「じ、自分で出来るわよっ!!」
「おぅそうか、そいつは失礼」
言いながら竜児は立ち上がって洗い物に取りかかる。
「あ、手伝うわ」
何もしないなんて、何か悪いし。
「……は?」
だというのに、なんでこいつはこの世に天変地異でも起こって今にも世界崩壊しそうな顔してんのよ。
「今なんつった?」
「だから手伝うわよ、って。アンタにただ食べさせて貰うだけなんて悪いし」
「お前……この世に天変地異でも起こす気か?いや、それは言い過ぎだとしても俺のキッチンを崩壊に導くつもりなのか?」
「はぁ?」
何か、たかだか手伝いの名乗りを上げただけでこの態度ってのが、非常にムカツクんだけど。
67【逢坂大河〜Remember竜児〜】 ◆QHsKY7H.TY :2009/07/07(火) 21:47:46 ID:n7wAtR6q
「何?たかだか洗い物が私に出来ないとでも言うの?」
「いや……けどその、まぁ何だ、気持ちだけ受け取っておくよ」
竜児は口ごもりながらも手を動かす。
「何?ハッキリしないわね、私に出来ないと思ってるならハッキリそう言いなさい」
「……じゃあ言うが、お前は記憶をなくす前に洗い物をしたことがあった」
「当然ね」
「そりゃあ酷かった。手際が悪いし、水は流しっぱなしだし、飛ばすし」
「………………」
「小さい器の上に大きな器を乗せてアンバランスなことこの上なかったぞ」
ウンウンと竜児が頷く頃には、
キュッキュッ。
水は止まり、洗い物籠に全ての洗い物が綺麗に収納されていた。
竜児は手をエプロンで拭きながらこちらを向く。
確かに今の私に……聞くところによると以前の私でもここまでの手際を披露することは無理なようだ。
だが、それが無性に腹が立つ。
「何よ、記憶が無いと思って好き放題言ってくれちゃって!!そこまで言われては女が廃るわ!!何でも言ってみなさいよ!!私がやったげる!!」
「いや、廃るって言われても……」
もう終わったし、と。
だがそれでは私の気が収まらない。
「うるさいわね、何か考えなさいよ!!私が今のご飯の代金を体で払うって決めたのよ!!」
「お、おい……体ってお前……」
竜児が困惑したような顔になる。
「参考までに、どのへんまでならOKなんだ?」
竜児は妙に力が入りながらも、そわそわしてるような、不思議な雰囲気を醸しながら尋ねてきた。
参考?全くそんなのも想像がつかないの?これだから駄犬は……駄犬?あら、妙にフィットするわね。
とまぁそれはおいといて。
「そうねぇ、皿洗いとかが妥当だったんだけど、終わっちゃったし……」
うぅむと私も悩む。
考えてみると、そう多くは無いような……何よその目。
竜児は呆れ顔で私を見つめ、溜息を吐いてから、
「お前な、そういう時は『体で返す』って言わずに『働いて返す』って言ってくれ」
脱力したように言う。
何言ってるのコイツ?
「はぁ?」
「いや、わからんのならいい。いやわからんほうがいい。すまん、俺がどうかしていた。だからこの件は忘れてくれ。記憶の彼方から消去してくれ」
「う、うん」
「それよりもう随分遅い時間だし……っと、大河」
「え?何?あ……」
それは、よく見なければわからないほどの汚れ。
それを竜児はめざとく見つけ、拭いてくれる。
幸い汚れはすぐに取れた。
「よし、取れた。で、そろそろ帰ったほうが良いんじゃないか?」
「う、うん。そうする」
「送って行こうか?」
「ううん、大丈夫。竜児、今日は……ありがと」
私は今日初めて、きとんと面と向かってこいつの名前を呼んだ。
竜児は一拍おいてから、「あれ?」と意外そうな顔をする。
「じゃあね、竜児」
そんな竜児に、気付かないふりをしながら、私は記憶の片隅にある台詞とともに高須家を後にした。
布が被さった籠から聞こえ始めた不思議な鳴き声は、空耳だろうと決めつけた。
68【逢坂大河〜Remember竜児〜】 ◆QHsKY7H.TY :2009/07/07(火) 21:49:39 ID:n7wAtR6q
***

家に入って教えてもらった私のベッドにダイブ。
天蓋付のベッドは、大きくギシッと軋んだ。
今日はいろんなことがありすぎた。
記憶喪失になったからかもしれないが、今日の情報量が多すぎて全てを処理仕切れ無い。
「竜児、か」
今日知った、いや前から知ってはいたんだろうけど今の自分にとっては初めてになる知り合い。
アイツに今日はいろいろと助けられた。
退院手続きや夕食。
他にも身の回りのことなど、親切に教えてくれた。
そしてそれを不思議に思わない自分がいる。
そこにそうやってアイツがいることに違和感を覚えない。
ふと窓を見ると、隣の家の明かりはまだ点いている。
「私……アンタのこと、知ってる気がする」
自分以外誰もいない部屋で、隣の部屋に向かってポツリと呟く。
返事は返ってこない。
当然だ、聞こえるわけが無いんだだから。
ゆっくりと目を閉じる。
何かを忘れ、何かが胸で燻っている不思議な感覚に包まれながら、意識は深い闇へと誘われていった。

***

「で、何処に向かってるの?」
「ああ、お前の記憶を戻すためにも会ってもらいたい人がいるんだ」
朝早くに起こされ、寝顔を見られた事に対し顔面パンチをくらわせた後、何故かお母……やっちゃんが竜児の家で寝ていた事に首をかしげ、ブサイクで名前もおかしなインコとの睨み合いも早々に外に連れ出された。
「会ってもらいたい人?誰それ」
「お前の一番の友達、まぁ俺から見ても親友だと思う人物だ」
「ふぅん、で、名前は?」
「櫛枝実乃梨だ」
「櫛枝さんね」
「………………」
「何よ?何か変?」
「いや、お前はいつもは……」
私のいつも。
その言い方が何か勘に触った。
こいつは結局、こいつの知る私を見ていて、今の私をちっとも見ていない。
それが普通で当たり前で当然なことだと頭で理解していても、『今の私を見ていない』ことに無性に腹がたった。
「うるさい。わからないんだから仕方ないでしょ!!」
怒ったそぶりで無理矢理会話をぶった切る。
「……何怒ってるんだ?」
別に、怒ってるわけじゃない。
腹が立ってるだけ。
それは同じようで違う。
胸がムカムカする。
「……そんなことより、これからその櫛枝さんの家に行くの?」
「あ、いや違う。そもそも俺は家を知らねーし」
「はぁ!?じゃあどこに向かってるのよ」
「櫛枝のバイト先だ」
「ああ、成る程、でも今日ってバイト入ってるか確認してあるの?行くって言った?」
「いや、それは……」
「……?」
どうにも、竜児の歯切れが悪くなった。
まるで、触れられたくない部分でもあるかのように。

***
69【逢坂大河〜Remember竜児〜】 ◆QHsKY7H.TY :2009/07/07(火) 21:51:09 ID:n7wAtR6q
結局私はそれ以上の追求をせずについていった。
『ジョニーズ』
やがてそう書かれたファミレスに着き、中へと入る。
席に着くと、ウエイトレスが近寄って来た。
「はい、ご注文は?」
コトンと水を置き、元気な笑顔での接客。
印象の良い子だと思った。
「櫛枝、今日バイト終わってからでもいいから時間あるか?」
「……高須君、まだあの時のこと……」
うん?どうやらこの娘が櫛枝さんらしい。
ないやら笑顔が陰ったようだ。
「い、いや違う!!それはもう……今日は大河のことで来たんだ」
「大河?」
ふっと私を見られる。
「大河が私に用なの?携帯にでも電話くれればいいのに」
「えっと……貴方が櫛枝さん?」
「ほえ?何言ってんの大河?いつもみたいにみのりーん♪って呼んでおくれよ、そんな他人行儀な」
みのりん?ああ、実乃梨だからみのりんか。私そんなふうに呼んでたんだ。
「すまん櫛枝。今大河は記憶が無いらしいんだ」
「……へ?ええーーーーっ!?嘘?マジマジ?え?え?え?私のこと、わかんないの?」
驚いたように顔を近づけられながら聞かれる。
「えっと……ごめんなさい」
私の謝罪に、
「ガッデェェェムゥゥゥゥ!!!!!!認めねー!!大河が私を忘れるなんて認めねー!!」
櫛枝さんは頭を激しく振りながら叫び声をあげる。
「お、落ち着け櫛枝。お前今バイト中だろ」
「はっ?私としたことがつい取り乱して……」
ようやく櫛枝さんが正気を取り戻した所で、
「大河がインフルエンザで入院したってのは知ってるだろ?やっと目が覚めたと思ったら記憶がなくなってたんだ」
「そっか……大河、もう一回聞くけど私のことは覚えてないんだよね?」
「あ、そのごめんなさい。ここに来る途中で竜児から聞いた貴方の名前、貴方が櫛枝実乃梨さんっていうことくらいしか……」
「でも高須君のことは覚えてるの?」
「ううん、昨日目覚めてからよくしてくれてるだけ。竜児っていうのは名前を聞いた時になんかしっくり来たからそのまま呼んでる」
「そっか……で、高須君」
「おぅ、できれば櫛枝にも大河の記憶を取り戻すのに協力して欲しいんだ」
「う〜ん、そしたいんだけど今日明日とフルタイムでバイト入ってて、その次の日からおばあちゃんの家に家族で行く予定だったから……」
「そっか……」
「ごめんね、出来る限りのことはするよ、親友のためだもん。バイトは結構遅くまでやってるけど後でアルバムかなんか持って行くから」
「ああ、すまない」
竜児と櫛枝さんがトントン話を進めていく。
何処か、入って行きがたい雰囲気。
私は何故か胸がチクリと痛みながら水で喉を潤した。

***
70名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 21:56:53 ID:5+c1dolL
支援
いるかな?まー念のため
71【逢坂大河〜Remember竜児〜】 ◆QHsKY7H.TY :2009/07/07(火) 22:02:34 ID:n7wAtR6q
結局たいした収穫も得られないままジョニーズを後にする。
「大河、櫛枝のことは全く思い出せなかったか?」
「うん、サッパリ」
全くもって初対面のイメージしかなかった。
相手は自分を良く知ってるのに私は知らないなんて何か変な感じだ。
「まぁ、これでダメならあとはショック療法か……」
竜児は何か呟くと携帯から電話をかけ始める。
「あ、北村か?おぅ、実は頼みがあって……ああ、ああ。今会えるか?……河川敷?わかった、これから行く」
電話を切って、少しの間、竜児は私を見つめる。
「……何?河川敷に向かうの?」
「おぅ、そこにもう一人お前にとって重要な人物がいる」
「誰それ?」
「会えば、きっとわかるさ」
竜児はそう言って歩き出す。
その後ろ姿を見ながら、ふと思う。
このまま記憶が戻らなかったら、私はずっとこいつとこんなふうにして一緒にいられるのだろうか。
こんなことを考えていて、だったら戻らなくても……と思ってしまう。
こんなことじゃいけない、こんなんじゃ戻るものも戻らない。
「私……記憶がちゃんと戻るのかな」
つい、口にも出してしまう。
そんな私の小さな小さな呟きに、竜児は反応してくれた。
「お前は、何も心配するな」
俺が、何とかしてやるから。
そう言った竜児の背中が、なんだかとっても大きく見えた。
「……うん」
竜児なら、本当に何とかしてくれそうな安心感がある。
前にも、こんなふうに感じたことがあった気がする。
けど、何も思い出せないし、もどかしさで一杯になる。
記憶って、そんなに大事なんだろうか。

***
72 ◆QHsKY7H.TY :2009/07/07(火) 22:05:54 ID:n7wAtR6q
これでとりあえず書きためてた奴は投下完了です。

>>70支援感謝!

あと一つってとこで規制にひっかかって、
もどかしこの気持ち、ただあふれかえってく
って感じだった。
73名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 22:35:39 ID:jWSm2ZLX
おぉ、新連載だw
流れ的にはとらPかな?続き楽しみにしてまっす。
74名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 23:04:49 ID:5+c1dolL
>>72
乙です。大河セツナスで面白かったー
続きをwktkして待ってます!
75名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/07(火) 23:29:37 ID:v4tuvtnC
>>72
乙です。

とらP大河サイドにどんなエンドがあるだろうと想像して、竜児(誤認)逮捕エンドとか北村逮捕エンド(公然猥褻罪)を想像した俺は大河に襲われるべきだ。
76名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 00:36:12 ID:vaFiFqdW

Rememberをゆっくり読ませてもらう前に、先に投下されたものへの感想

>>44
GJ!
出だしから6行目ぐらいまでの雰囲気がすごくイイ!
なんか、パァっと情景が浮かびました。

>>51 虎女
なかなか下に降りない抱っこ大河萌えー
竜児のいきなりの攻勢っぷりがワロタ
(しかし攻殻成分はいってくるとわ…w)
77ツンデレの方向性を間違えてるような気がするツンとら!:2009/07/08(水) 00:55:44 ID:tM+724do
ガラッ

「大河〜ちょっといいか?」

「なによ、わざわざ人の教室まで来て。くだらない用事ならファイナルマスタースパークかますわよ」

「いや、あのな、ちょっと弁当作り過ぎちまってよ」

「作り過ぎた…って何これ!?アタッシュケースじゃない!」

「ファミリー用サイズだそうだ。安売りしてたからつい…」

「いくらなんでも限度があるわよ…」

「まあ中身を見てくれ。こいつをどう思う」

カチャ

「すごく…大きいです…って何この大容量!しかもお肉いっぱい!」

「ポイント倍増セールだったんでつい買い溜めしちまった」

「(ジュルリ)……はっ!? ここここれを私に食べて欲しいっていうの?」

「いや、出来れば俺も一緒に食べたいんだが。ほら、スープもあるんだぞ。ポットに入ってるから温かいままだ」

「ふ、ふん。べ、別に食べたいわけじゃないけど残すとMOTTAINAIし、私が食べてあげるから、あ、あんたも一緒に食べなさいよ!」
78名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 09:25:05 ID:a9dfGUYO
朝から2828
79名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 14:04:45 ID:keb23+g3
文化祭でプレパレード流して踊ってきたよ\(^o^)/
イケメンだろ?
80名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 16:58:09 ID:XAc7uy/8
ブレンパワードにしとけよ
81名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 17:00:58 ID:zUuH9Ut2
大河「りゅうじ……(くぱぁ)」
竜児「た、たいが!?」
82名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 17:21:10 ID:keb23+g3
大河「所で竜児、これをどう思う?」
83名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 17:56:54 ID:PUh+Gtt3
竜児「いいから口を閉じろ。お前は雛鳥か。てか飯はまだだ。」
84名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 18:15:53 ID:zMptNQ09
大河「えー、おなかすいたー。なんかおやつー」
85名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 18:18:09 ID:1jMjgrvy
竜児「別にどうも思わねえよ。さあメシ食った食った」
86名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 18:20:49 ID:JCqxbaev
大河「あーん」
87名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 20:18:31 ID:G79XTIqQ
大河「くぱぁ」
竜児「くぱぁ、って一体なにが言いたいんだよ」
88名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 20:33:30 ID:Rpow/U/k
大河「あのね・・・あーんだけじゃだめなの・・・」
竜児「どうしろって?」
大河「竜児のね・・・・・竜児の口から食べたいの」
89名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 20:53:06 ID:HN/7ihNI
90名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 20:59:21 ID:pbIdttS+
既存のSSの流れをベースにさらに別の話になっていくってのを頭の中で考えているんですが
作者さんに見てもらってよければ書いてもらうって方法はできないだろうか?
こうしたらどうだろうか? っていう案です
私が書いてしまったら作者さんに悪いし許されることじゃない
悩んでます
91名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:05:10 ID:HN/7ihNI
ここ、唯一神ゆゆこの書いた「とらドラ!」のSSだらけだぞ。
SS書きが「俺のSS書くな」なんて、どの口で言うと。

エログロとか茶化しじゃなければいいだろ。

つか、
>私が書いてしまったら作者さんに悪いし許されることじゃない
>悩んでます
ゆゆこはいいのかよ(w
92名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:14:30 ID:s+IcncW2
大河みてるとエッチなことしたくなる
93名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:16:24 ID:pbIdttS+
>>91
以前元のSSがある作品を元に書かれた作品が強く非難されていたケースが
あったもので・・・
94名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:18:34 ID:2sfNU9nH
そんなのあったっけ?
95名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:26:16 ID:pbIdttS+
既存SSの途中からスタートという作品があったと思います。
それが問題視されていたと思います。
96名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:27:31 ID:keb23+g3
kwsk
97名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:29:38 ID:zUuH9Ut2
全スレ見直してみたけどそういう事は無かったわ
他アニメのSSスレのを勘違いしたようだね
98名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:33:59 ID:s+IcncW2
他人の作ったSSの作者を騙って続き書いたなら問題だが
99名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:41:43 ID:tXqwDFO8
>>93
それエロパロ板での出来事だ

こっちでは特に無かったような気がするけど一応確認してくる
100名無しさん@お腹いっぱい。:2009/07/08(水) 21:48:07 ID:2sfNU9nH
これかw
今のエロパロ板を物語るレスだよな


770 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2009/06/24(水) 12:24:00 ID:E2deoAFQ
>>765
GJなかなか読みやすくてのめり込んだ。
だが一つだけ言わせてください。
職人にとって作品ってのは手間暇掛けて書いたもんだ。
なによりプロットというか他人の作品の設定を流用は…。
そして事後承諾で濁すはどうかな〜と思う。
もし書くなら事前に了解を取っておくべきかと。
一人の書き手としては複雑な気持ちだ。
空気読まずに長々とスマンかった。
このレスは荒しみたいなもんだからNGにしといてくれ。