あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part313

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1名無しさん@お腹いっぱい。
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。



(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part312
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1339702461/l50


まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/
避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/




     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!




     _       
     〃  ^ヽ      ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
    J{  ハ从{_,    ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
    ノルノー゚ノjし     内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
   /く{ {丈} }つ    ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
   l く/_jlム! |     ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
   レ-ヘじフ〜l      ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。





.   ,ィ =个=、      ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
   〈_/´ ̄ `ヽ      ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
    { {_jイ」/j」j〉     ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
    ヽl| ゚ヮ゚ノj|      ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
   ⊂j{不}lつ      ・次スレは>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
   く7 {_}ハ>      ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
    ‘ーrtァー’     ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
               姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
              ・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
              SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
              レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/08(日) 19:15:12.86 ID:MYmqj+Q/
即死回避
3名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/08(日) 19:57:53.17 ID:RwPiny95
>>1
今週はるろうに休みかな?
4名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/08(日) 20:01:28.60 ID:sbSIS/7i
>>1
乙!絶対に乙!それは何故か?新スレだからだ!
5名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/08(日) 20:45:24.02 ID:0yJa0Jgt
>>1乙ー

今後のSSの参考にならないかなって、今更アニメ四期見始めたけどジョゼフとの決着開始三話で終了かよw
6名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/08(日) 21:09:47.43 ID:k4PxkXVO
>>1

四期はもう新キャラのイメージ確認くらいの役にしか立たなかったよ。
7名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/08(日) 21:17:22.86 ID:0yJa0Jgt
>>6
いきなり元素の兄弟が出てきたのにもふいたけど
実際に動いてるジャネット見てたら例の黒い翼のお人形さんにそっくりで…
ミーディアムの人帰ってこないかな…銀様…
8使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/07/08(日) 21:30:07.00 ID:+IFZlcuZ
35分から投下予定
9使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/07/08(日) 21:36:13.52 ID:+IFZlcuZ
第12話『葛藤』

王女からの依頼を受けた夜。
早朝に出かけるべく、ルイズはシエスタにモーニングコールを頼む。
当初はアセルスに頼む事も考えたが、時間の感覚が曖昧だと言うので諦めた。

支度を終えて、眠りについた夜。
ルイズはまたも夢を見ていた──



アセルスが妖魔となって幾ばくか月日が流れる。
針の城では、日も射さない為に昼夜の流れがなくなっていた。

──ああ、だからアセルスは時間が曖昧なのかしら。
ぼんやり考えていると、アセルスが誰かと話しているのに気がつく。

「ねえ」
「は、はい」
アセルスの呼びかけに少女は熱に浮かされたように呆然としている。

「おかしな人だな」
つい呟いてしまった言葉に、アセルスと対話していた少女は明らかに落ち込んでいた。

「おかしな人なんて言ってゴメン。私はアセルス、貴女は?」
アセルスの表情に浮かぶのは少女のあどけなさそのものだ。
ルイズはアセルスの年齢を知らなかったが、夢での姿を見る限り同年代なのかと推測する。

「……ジーナです」
ジーナと呼ばれる少女は城下町のお針子だった。
一般的な平民と言った様子で、アセルスとの初対面には怯えていたようにも見えた。
アセルスの姿は血塗れだったので無理もないのだが。

二人は他愛もない会話を続けていた。
アセルスはかつてキュルケ達とルイズの会話を羨ましいと言っていた。
ジーナを思い出していたのかもしれない。

ルイズが傍観を続けていると、城へ戻ろうとするアセルスを呼び止める者がいた。
10使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/07/08(日) 21:40:32.57 ID:+IFZlcuZ
「ジーナをお城へ御連れになるのは勘弁してくださいませ」
仕立て屋の主人が頭を下げて懇願する。
アセルスには主人が何を話しているのか分かっていない様子だった。

ただ理解したのは、主人が恐れている事。
アセルスがオルロワージュと名乗る妖魔の血を受け継いで以来、向けられる視線。

嫉妬と羨望、畏怖と陰謀。
平穏を望んでいたアセルスには、妖魔の血も針の城での生活も無用なものでしかない。

アセルスが穏やかな表情を浮かべるのは、二人のみ。
一人はジーナ、もう一人はアセルスの教育係を任された妖魔の白薔薇。
妖魔ながら清廉な微笑を浮かべる彼女を見て、ルイズは次女の姉を重ねた。

ある日、アセルスは焼却炉が城から出口につながっていると教わる。
城からの脱走を計ったアセルスは白薔薇とともに、そのまま炎へ飛び込んだ。

「え!?」
ルイズが突然の出来事に悲鳴を上げるが、二人は一瞬で火に包まれる。
ただルイズがうろたえていると、辺りが雪一面に覆われた白銀に変わっていた。

「白薔薇……」
生まれたままの姿で不安げに呟くアセルス。

「何とか燃え尽きずに済みましたわ、肌や髪も再生いたしました」
アセルスの後ろから、白薔薇が現れる。
炎で服や装飾品は燃え尽きていたが、露になった素肌には火傷跡も残っていない。

「寒い……」
当然だろう、雪山にいるのだから。
そうルイズは思っていたが、どうやら白薔薇は違うようだった。

「それはアセルス様が人間の証拠ですわ、私は何も感じませんもの」
白薔薇とアセルスは、巨大な宮殿に向かう。

迷路のような宮殿にいたのは別の妖魔だった。
オルロワージュのように玉座に座っていることから、位の高い妖魔。
すなわち上級妖魔なのだろうと見ているルイズにも伺えた。

「私、オルロワージュ様に御仕え致しております白薔薇と申します。
こちらの方はオルロワージュ様の血を受けられたアセルス様でございます」
白薔薇が前に出て謁見する。
11使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/07/08(日) 21:45:44.34 ID:+IFZlcuZ
「ほー、そなたが噂の娘か!
オルロワージュも酔狂なことをする、よほど退屈と見える」
陰気な針の城に比べ、城の雰囲気も妖魔の口調にも陽気さが伝わる。
白薔薇が召し物の下賜を願うと、指輪の君と呼ばれた妖魔は頷いて答えた。

「やはりこの方が良いな。
人間どもなどは裸のほうを好むようだが、理解に苦しむ」
指輪の君が冗談混じりに告げると、アセルスや白薔薇の服が再現された。

「さて……事情を聞かせてもらおうか」
白薔薇がアセルスの身に起きた事を語ると、指輪の君は物珍しそうに語った。

「妖魔のときはゆっくり流れる。
アセルス殿の時は激流のように流れておる、中々楽しめそうだな」
「楽しくなんかない!」
「白薔薇姫、何か望みはあるか?」
アセルスが当然抗議の声を上げるも、指輪の君は無頓着に尋ねる。

「はい、どこか別のリージョンに送ってもらえたらと思います」
「よかろう、ではさらばだ」
白薔薇の望み通り、別の場所に送り届けたのだろう。
ルイズの眼前でアセルスと白薔薇の二人は姿を消した。

城に残されたのはルイズと城主である指輪の君のみ。
神妙な顔つきになると、一人呟いた。

「オルロワージュめ、己の血によって破滅するかも知れん……」
ルイズには指輪の君の言葉が理解できない。
考えようとしたが理解するより早く、意識が離れてしまった。



「う……ん……」
ルイズがベッドから身体を起こせば、外はまだ朝靄に包まれていた。
予定より早く起きたが、何より先に夢を反芻する。
12名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/08(日) 21:45:57.58 ID:RwPiny95
支援
13名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/08(日) 21:47:15.74 ID:jS2JcPYE
>>1乙しつつしえーん
14使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/07/08(日) 21:48:10.86 ID:+IFZlcuZ
永遠の命を持つ存在、妖魔。
ハルゲニアで妖魔と言えば吸血鬼が一般的だが、彼らとて不死という訳ではない。

だが、アセルス達は死なない。
死が存在しないのがどれほど異常な事か。

上級妖魔であるアセルスに死は存在するのか?
不老不死と言えば聞こえはいいが、それは永遠の孤独ではないのか?
だからこそ、アセルスは孤高でいられるのだろうか。

「でも、あの頃のアセルスは……」
妖魔となった絶望、周囲の悪意に傷つく姿。
理由は分からないが、今のアセルスと随分異なって見える。

何がアセルスを変えたのか?
いくら考えてもルイズには見当もつかない。
ルイズの思考を遮るように、部屋にノック音が響く。

「失礼しますルイズ様、お約束の時間になられたのでご連絡に参りました」
扉の前にいるのがシエスタだと気づく。
ルイズが扉を開けると、お日様のように明るい笑みを浮かべるシエスタが立っていた。

「おはようございます、ルイズ様。もう目覚めていらしたんですね」
「おはよう、シエスタ」
ルイズも釣られて笑顔で挨拶を返す。

「アセルス様もおはようございます」
「おはようシエスタ……エルザは?」
眠気を払う為にシエスタが用意した紅茶を手に取りながら尋ねる。

「エルザちゃんは今、馬の準備を整えています」
「悪いけど、後でエルザに剣を持ってくるように伝えておいて」
普段口うるさいだけの存在だが、武器を数用意するに越した事はない。
最も、デルフを放っといて来たのを今まで忘れていたのだが。

「ああ、いないと思ったら預けてたのね」
買った張本人も言われて、デルフの存在を思い出していた。
15名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/08(日) 21:54:23.73 ID:EhVoFnJ0
支援
16使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/07/08(日) 21:54:31.74 ID:+IFZlcuZ
「どこに行かれるかは存じませんが、御気をつけて」
王女からの密命である為に、ルイズは詳細を話していない。
また、シエスタも学院での仕事がある為に見送りもできない。

万が一の事に備えて、ルイズは手紙を残していた。
もし自分がひと月経っても戻らぬ場合は、机の引き出しを開けるようにと注釈付きで。

シエスタはルイズが危険な目に遭う可能性を察している。
ルイズもシエスタに心配かけるのは心苦しいが、隠し事はできずに正直に伝えた。

正直に告げられたからこそ、シエスタは止められない。
ルイズが誰より貴族らしくあろうとするのを知っていたから。

「くれぐれも無茶はしないでくださいね」
シエスタの不安。
ルイズが自分自身を犠牲に捧げてしまう予感がしていた。

「アセルス様もルイズ様を御願いします」
「うん」
深々とお願いをするシエスタにアセルスは短いながらも力強く答えた。

「さっ、それじゃ向かいましょう」
準備を整えた二人は馬車へ向かう。
遠のく後ろ姿を見ていたシエスタは祈る。

「始祖ブリミル様、どうかお二人が何事もなく帰ってこれますように」
もし神という者がいたら、底意地の悪い性格であろう。
純粋な少女の願いは叶う事なく、無惨にも引き裂かれるのだから。

-------

「やあ!待っていたよ」
馬車にたどり着く前に現れた一人の生徒。

「ギーシュ……?」
ルイズは唖然と名前を呼ぶしかできない。

決闘で重傷を負ったのは知っていた。
かろうじて一命を取り留めたと言う話も。
そんな彼がここにいる理由、ギーシュの言い分を端的に説明するとこうだ。

昨日姫殿下を廊下で見かけるも、ルイズの部屋に入っていった。
先日の決闘以来、顔を会わせづらかった為に窓の下から使い魔に様子を窺っていた。
(実際はアセルスが怖かったのだろうとルイズは推測していたが)

ルイズへの依頼を盗み聞きして、自分も任務に参加するべく二人の前に姿を現した。

「どうするの?」
「連れて行かないわよ」
呆れた様子のアセルスの問いにルイズが一言で切り捨てた。
アセルスも異論はないので、ギーシュを無視して馬車に乗り込もうとする。

「ぼ、僕はドットメイジとはいえグラモン元帥の息子だ!『ゼロ』の君より……」
ギーシュの迂闊な一言。
アセルスとルイズは同時に武器を首に突きつけた。
17名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/08(日) 21:54:52.45 ID:WK4WkvDP
支援
18名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/08(日) 22:01:00.59 ID:EhVoFnJ0
sienn
19使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/07/08(日) 22:01:24.87 ID:+IFZlcuZ
「今のは僕の失言だった、謝るよ」
ギーシュは冷や汗を流したまま、素直に詫びた。

「……分かった、条件次第で連れていってあげる」
ルイズは妥協案を出す。
このまま押し問答しても、時間の無駄にしかならない。

「本当かい!」
「いいの?」
喜ぶギーシュと疑問を投げかけるアセルス。

「エルザ、ちょっと来て……この娘と決闘して勝てたら、連れて行ってあげる」
エルザを呼ぶルイズ。
ギーシュを連れて行く気が全くないとアセルスは悟った。

「ハハハッ、いくらなんでも僕を馬鹿にし過ぎじゃないかい?
いや、本当はついて来て欲しいって意味かな」
この場でエルザの正体を知らないのはギーシュのみ。
木の枝を操るエルザに対して、樹木に背を向けた状態で薔薇の造花を構えてしまう。
余裕を見せながら引き受けた決闘は3秒で片付き、ギーシュは再び入院生活に戻った。



出発前に無駄な時間を過ごした。
胸中で愚痴を零しながら、ルイズは馬車に乗り込もうとする。

「ルイズ下がって」
アセルスによって馬に近づくのを制止される。
ルイズがアセルスの視線に釣られて空を見上げると、大型の獣のような影が見えた。


「グリフォン!?」
「おっと、驚かせてしまったようだね」
グリフォンにまたがる人影が、レビテーションの呪文を唱えて地面に降り立つ。

「ワルド様!?」
「久しぶりだね、僕のルイズ」
人影の正体にルイズは更に驚いた。
親同士が許婚としての約束を交わした相手なのだから。

「ど、どうしてこちらに!?」
「昨夜、姫様の指令で君達を護衛するように仰せつかったんだ」
動揺を隠し切れず、どもりながらの質問にワルドは答える。

「貴方は?」
「おっと、これは失礼。
魔法衛士グリフォン隊の隊長、そしてルイズの婚約者のジャン・ジャック・フランシス・ワルドだ」
ワルドは握手を求めるが、アセルスは応じない。

「私はアセルス。今はルイズの使い魔……かな」
アセルスはワルドがどうにも気に入らない。
ルイズとアセルスは似た境遇だったが、決定的な違いが一つある。

それは力の有無。
アセルスは強大な力を持つが故に、力を利用しようとする者も少なくない。

力を奪おうと画策したセアト。
アセルスを利用して、オルロワージュを討ち滅ぼさせたラスタバン。
自らの欲望の為に、人も妖魔も実験材料にしていた生物研究所の所長。
故に、アセルスは上辺だけを取り繕う者に対して否が応にも敏感になっていた。
20名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/08(日) 22:02:55.49 ID:jS2JcPYE
もう一発支援だ
21使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/07/08(日) 22:07:23.56 ID:+IFZlcuZ
腐臭を覆い隠す上辺だけの微笑み。
醜悪な雰囲気を、眼前の男から感じ取っていた。

「アセルス……?」
不穏な空気を察したルイズが呼びかけた。
体験もあり、アセルスは人間の悪意が世界で最も醜いものと思っている。

アセルスが愛した人間は過去、ジーナのみ。
ルイズに向けるのは、自身の境遇を重ねた共感。

しかし、アセルスも気付いていない。
その共感は誰かを信じたい心情の表れであることに。

「邪魔にならないなら、ついてきてもいいわ」
自らを受け入れてくれたルイズの前だから、彼女の知人らしき相手に拒絶はしなかった。
この判断を、後まで悔いる事になるとも知らずに。



馬車に乗るのはアセルスと従者のエルザのみ。
ルイズはワルドと共に、グリフォンで乗っているからである。

「追いつけそうにはない?」
「も、申し訳ありません。何分グリフォンは速いもので」
日よけにローブを被ったエルザが萎縮しながら答える。
グリフォンはハルケギニアにおいて、高速で飛行できる幻獣だ。
アセルスに生物的な知識は無かったが、グリフォンの速度だけは良く理解できた。

馬車に乗るアセルス達を置いて、点景になる程に進めているのだから。
同行を許可したものの、アセルスは婚約者という立場を誇示するワルドが気に入らない。

「ねえ、ワルド。
早すぎじゃないかしら、アセルス達がついて来れないわ」
ルイズは振り返りながらワルドに減速を頼む。

「今日までに港に到着しておきたいんだ。
悪いが、ついて来れないようなら置いて行く。」
先行のし過ぎを指摘されてもワルドは聞く耳を持たずにいた。

「置いて行くなんて駄目よ。
彼女は私の使い魔なの、置いて行くなんてメイジのする事じゃないわ」
「やけに彼女の肩を持つね。彼女は妖魔だと聞いていたが」
「ええ」
王族である事実は伏せるよう心に留めておきながら、肯定する。

「あまり思い入れしないほうがいい。
妖魔と人間は本来、相容れないものなんだ」
「……どういう意味?」
ワルドの言葉にルイズの表情が歪む。

「そんなに怖い顔しないでくれ。
人間と妖魔では寿命が違う、主人を失った使い魔が暴れるなんて話も良くあるのさ」
ルイズが思わず俯く。

永遠の命を持つアセルスと人間である自分。
ずっと傍にいるとを誓ったが、出来るはずが無いのだ。
使い魔の契約はどちらかが死ぬまでしか有効でないのだから。
22名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/08(日) 22:09:51.55 ID:EhVoFnJ0
しえーん
23使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/07/08(日) 22:11:36.18 ID:+IFZlcuZ
思案に意識を奪われていたルイズは、飛んでくる矢に気付かなかった。

「ルイズ!危ない!」
ワルドの忠告でようやく何者かに襲撃を受けたと気付く。

「大丈夫かい!」
ワルドが風の魔法で矢を防ぐと同時に、ルイズに呼びかける。

「敵!?」
懐から杖を構えて、ルイズは眼下を見る。
地上にいたアセルス達も崖の上にいる敵影に感づいていた。

軽く舌打ちする。
敵は単なる盗賊の類だろうが、あの男の前で力を披露するのは避けたい。

「エルザ、私が向かう先の敵に先住魔法を使うんだ。いいね?」
「はい、アセルス様」
エルザが頷いたのを確認すると同時に、馬車から飛び出す。

『おお、戦闘か!』
「黙って」
歓喜するデルフを一喝して黙らせる。
飛来する松明や矢を二本の剣で切り払いながら前進する。

突き出た岩を足場に軽々と崖を駆け上る。

「何だと!?」
追いはぎの格好をした一人が叫ぶ。
女性が跳躍で崖を飛び越える等と、誰が予想できるだろうか。

男が剣を構えるより早く、アセルスの剣が男の腕を斬り飛ばす。
別の男が弓を構えるが、腕が動かない。

「あ!?」
自分の腕を見ると、触手の様に伸びた木の枝が掴んでいる。
何が起きたのか理解したときには、男は首を跳ねられていた。

「せ、先住魔法だぁー!」
「妖魔がいるなんて聞いてねえぞ!?」
悲鳴をあげ、襲撃を仕掛けてきた賊は我先にと逃げ出していく。
だが、彼らの行く先を遮るように一匹の竜が降り立った。

「ファイアー・ボール!」
「ウインド・ブレイク」

竜に乗っていた二人が各々呪文を唱える。
風に煽られた火が一気に炎の壁となり賊の逃げ道を塞ぐ。
竜に乗っていた人物はルイズも良く知っている二人だった。
24使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/07/08(日) 22:16:51.73 ID:+IFZlcuZ
「キュルケ、それにタバサまで!?」
グリフォンの上から身を乗り出すルイズ。
地上にいた敵が一掃されたこともあり、ワルドはグリフォンを降下させた。

「お待たせ」
髪をかきあげながら風竜から降りるキュルケ。

「待ってないわよッ!何でここにいるの!?」
グリフォンから飛び降りたルイズがキュルケに詰め寄る。

「ギーシュが広場に倒れていたから、話を聞いたのよ。
貴方達がアルビオンに行くって言うし、面白そうだから急いで着いてきたのよ」
タバサはまだ寝ていた所を無理やり起こされたのだろう。
寝間着姿のまま眠そうに、風竜の上でうつらうつら舟を漕いでいた。

タバサには少しだけ同情しながらも、ルイズが怒鳴る。

「言っておくけど、これはお忍びの任務なのよ!物見遊山で来られちゃ困るわ!」
「あら?文句ならギーシュに言って頂戴。
彼はお忍びだなんて、言ってなかったわよ。」
ギーシュを口封じしておくべきだった。
ルイズの脳裏に物騒な考えも浮かんだが、既に手遅れである。

「どうして私達を襲ったの?」
口論を続けるルイズ達を放置し、アセルスは縛り上げた盗賊達に尋問する。

「ケッ、盗賊が金以外に襲う理由が他にあるかよ」
縛り上げられたまま盗賊が悪態をつく。

「ぎゃああああああああ!!!」
悪態をついた盗賊が痛みに悲鳴を上げた。
アセルスの手に握られたデルフからは血が滴っている。

切り捨てたのは盗賊の右耳。
縛られた盗賊は血を押さえることもできず、縛られたままでのた打ち回った。

「次は反対側を切り落とすわ。
それでも話さないなら指、手、腕、足の順で切り落とす」
淡々とこれからの行為だけを予告し、剣先を左耳に向ける。

「待て!言うよ、言うからやめてくれ!
金を出すから、この道を通る連中を襲えって依頼されて……」
「誰に?」
「顔は仮面で隠してたから分からねえ……」
アセルスは躊躇なく剣を右手に突き刺すと、盗賊が再びわめき声をあげる。

『うわぁ……相棒容赦ねえな』
デルフが呟くも、アセルスは当然聞き流す。
25使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/07/08(日) 22:21:36.44 ID:+IFZlcuZ
「わ、分からねえ……本当に分からねえんだ!
貴族や妖魔がいるなんて知ってたら、安請け合いしなかったよ!!」
失意の溜息とともに、アセルスは剣を仕舞った。

「ただの雇われのようだな、これ以上は無駄だろう」
後ろの女性陣に気を使ったワルドが切り上げる。

「……何?」
物言いたげなワルドの視線を察したアセルスが尋ねる。

「レディの前で拷問をやるとは、関心しないね」
アセルスの威圧に負けることなく、ワルドは皮肉混じりに答えた。
最も、アセルスは素知らぬ顔で馬車に戻る。

「盗賊とはいえ、死んだらどうするつもりだ!」
「どうもしないわ」
アセルスの背中越しに叫ぶワルド。
声には明らかな怒気がこめられていた。
アセルスは振り返る事すらなく、言葉を返すと共に馬車に戻った。



──道中、ハプニングはあったが港町が見えてきた。
夕闇が空を覆う中、ルイズはグリフォンの背中から風竜に乗るアセルスを眺める。

「ルイズ、分かっただろう?
妖魔というものは、人の命を虫けらのようにしか見ていない」
ワルドがグリフォンの手綱を握ったまま、忠告する。

「ええ……」
元気のないルイズの返事。
ワルドは肯定と受け取るが、実際は異なる。

ルイズは悩んでいた。
盗賊の襲撃前に考えていた使い魔の契約に関して。
つまり自分が死んだ後、アセルスはまた孤独になるのではないかと。

アセルスは言っていた。
大切な人を失い、後悔したと。
何時か、自分も同じ目に合わせてしまうのか。

それとも、アセルスは単に気紛れに付き合っているだけなのか?
ルイズは彼女が使い魔の契約を結んだ理由を話してくれた時を思い出していた。

『傍にいてくれるだけで良かった』
舞踏会で告げたアセルスの表情は遠く儚い印象を覚えた。

一緒にいて欲しいのはルイズとて同じだ。
妖魔であろうとアセルスに、ルイズは牽かれている。

魔法を使えた証明。
自分を守ってくれた存在。
初めて誰かと苦悩を分かりあえた。
何より思い描いていた、立派な貴族という理想像。
26名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/08(日) 22:24:13.09 ID:3NIcVMb7
支援
27使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/07/08(日) 22:28:19.10 ID:+IFZlcuZ
だが、人である自分は必ず先に死ぬ。
彼女が元々妖魔であるのなら、仕方ないと割り切れたかもしれない。

しかし、アセルスは半分は人間だ。
人は一人では生きられないとは誰の言葉だっただろうか。

「私は……どうするべきなのかしら」
誰にも聞こえないか細い声。

「ん、何か言ったかい?ルイズ?」
「ううん、何でもないわ」
ワルドが振り返るも、ルイズは心配かけないよう誤魔化す。

「いろいろあって疲れただろう。
もう町が見えてきたから、そこでゆっくり休むといい」
気がつけば月が昇り、港の点景に火が灯っている。
だが、ルイズは自問への答えをまだ出せそうになかった……



──同じ頃、灯りの僅かな暗闇に包まれた部屋。
二人の人影が存在した。

「首尾はどうかね?」
「上々です、港町までは予定通りに到着しました」
椅子に座る男の質問に仮面を付けた男が答える。

「しかし、『土くれ』の勧誘には失敗したと聞いているが」
「申し訳ありません」
仮面の男が詫びるものの、座ったままの男は一笑した。

「別に責任を追求しているわけではない。
知りたいのだ、どのように土くれが牢獄から脱走したのかを」
「それが…………まるで分からないのです。
見張っていたはずの衛兵達も、牢獄に誰も通らなかったと証言しております」
仮面の男が間を置いて説明する。
無理もない、彼にも如何に脱走したかが検討もつかないのだ。

「杖を隠し持ち、錬金で壁を崩して逃げたのでは?」
「いえ、牢獄は汚れや埃が積もったままでした。
錬金で脱走した後に壁や牢を戻したとしても、汚れや埃までは再現できません」
解けない難問に、座っていた男も首を捻る。

「それでは、私は任務に戻ります」
しばしの沈黙を破り、仮面の男が暗闇に消えるように姿を消した。

「一体どうやって……」
残された男はまだ考えていたが、答えは出そうにもない。
牢獄に白い花弁が落ちている事には、誰も気にも留めずにいたのだから……
28使い魔は妖魔か或いは人間か:2012/07/08(日) 22:30:44.46 ID:+IFZlcuZ
投下は以上です
私生活がちょっと多忙になってきて更新ペースかなり落ちそうですが、
エタらないよう少しずつ進める予定です
29名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/08(日) 23:39:57.97 ID:NhbTeJZz
アセルスのひと乙
まさかファシナトゥール脱出のボツネタを持ってくるとは思わなかった
30名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/08(日) 23:54:35.40 ID:jS2JcPYE
投下乙でござる
31名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 00:26:41.19 ID:2F4God7F
避難所にウルトラさんが来てたので代理
ついでに代理スレもちょうど1000まで埋まってたので立ててこようかと思うんだけど、勝手に立てちゃって大丈夫なのかな?
32ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理:2012/07/09(月) 00:27:36.12 ID:2F4God7F
 第九十二話
 光の再来
 
 ウルトラマンコスモス
 古代怪獣 ゴモラ
 地底エージェント ギロン人
 カオスリドリアス
 カオスゴルメデ
 高原竜 ヒドラ
 大蟻超獣 アリブンタ
 磁力怪獣 アントラー
 地獄超獣 マザリュース 登場!
 
 
 ヤプールの超獣軍団に襲われて、滅亡の危機に瀕しているエルフの国ネフテス。
 しかし、はるか六千年の昔と記録されるはるかな過去にも一度、この世界は滅亡の危機に瀕したことがあったという。
 それが忌まわしい名として語り継がれる『大厄災』。エルフの半数が死に絶え、全世界が焼き尽くされたという未曾有の戦争と、
わずかな資料は語り継いでいる。
 それが、いかなる理由で始まり、いかなる経緯を持って終息したのかを知る者はすでにない。だが、わずかな遺産は確かに
大厄災の過去を語り、人間の世界でもそれは始祖ブリミルの虚無の遺産の中に記憶が残されていた。その圧倒的な破壊の
光景をビジョンで見たとき、才人とルイズは戦慄し、決してこれを起こしてはいけないと誓った。
 それでも、歴史は繰り返す。人間とエルフのあいだに積もり積もった歪みが、今度はヤプールを引き金にして破滅の大厄災を
この世界に繰り返させようとしている。
 だが、かつての大厄災が何故全世界の滅亡を目前にして回避できたのか。そこに、エルフたちはひとりの聖者の存在を
提唱している。その名は聖者アヌビス、素性は不明で男性か女性かすらもわからず、アヌビスという呼び名も本名か通称で
あるのか、もしくは後世の者がつけた名なのかもさだかではない謎の人物であるが、彼の活躍によって悪魔は倒されて、
この世界はすんでのところで破滅を免れたという。
 ただ、わずかな確かな記録では、聖なる手を持って、心よき者を救い、悪しき心に堕ちた者をも救ったという。
 そんな、大厄災を生き延びたエルフたちによって、彼の記憶は地下深く残されて語り継がれてきた。石像に姿を写した姿は、
異世界でいう光の巨人とうりふたつ。彼がいずこから来た、何者であるかはいぜん不明でも、そのときの人々を守るために
戦ってくれていたのは間違いない。
 そして、すべてが終わった後で彼はどこに去ったのか? それは、あらゆる資料が沈黙している。しかし、そこには同時に、
彼が戦死したという記録は一切存在していない。もしも、戦いが終わった後で彼が宇宙へと帰ったのならば、もしかすれば……
光の国の戦士たちに限っても、一万五千歳のウルトラマンAでさえまだ若者の部類に入り、十六万歳のウルトラの父で
ようやく壮齢に入るというところである。
 ならば、六千年前の大昔だとしても、もしかしたら。この世界が再び危機に瀕している今、闇だけではなく光もまた蘇ってきたら。
33ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理:2012/07/09(月) 00:28:04.21 ID:2F4God7F
 都合のいい望みとわかっていても、光の戦士に大いなる希望を与えられてきた才人たちは、一縷の望みを胸のうちに灯す。
 
 
 しかし、その淡い希望も、圧倒的なヤプールの攻勢の前には潰え去ろうとしていた。
 
 
 ウルトラマンA倒れ、人間とエルフたちの懸命の努力にも関わらず、次々に卑劣な手段を繰り出してくるヤプール。配下を
捨て駒にし、怪獣たちの命はおろか心までももてあそぶ悪魔の手口の前には、折れそうな心を必死に奮い立たせて戦う人々の
意志も、折れないままに力で潰されようとしている。
 
 マイナスエネルギーを得てパワーアップしたアリブンタとアントラー、マイナスエネルギーの影響で凶暴化してしまった
リドリアスとゴルメデ。半亡霊のゾンビとして不死身に近い存在となったマザリュース。超獣軍団を指揮する、狡猾なギロン人。
 そして、怪獣界でもトップクラスのパワーを誇り、マイナスエネルギーの侵食で暴走するゴモラ。
 総勢、七体もの強力な怪獣超獣宇宙人の大軍団。しかも、アディール周辺はエネルギーフィールドで封印され、ウルトラ戦士に
とって必要な太陽エネルギーを完全に遮断してしまっている。
 まさに、ここはヤプールの用意したウルトラマンAの処刑場であった。エルフたちは、極論すればエースをおびきよせるための
エサに過ぎず、その目論見どおりエースは全エネルギーを使い果たし、倒れてしまった。懸命に戦っていた人間とエルフたちも、
すでに武器も魔法も使い尽くして、超獣軍団になすすべはない。
 絶体絶命、ほかに表現のしようがない絶望的な状況。エルフも人間も、あとはなぶり殺しにされるだけの哀れな獲物でしかない。
 
 それなのに……にも関わらず、ヤプールはいまだ勝者の笑いをあげることができずにいた。
 それは、これほどまでに追い詰めているのに、絶望から生まれるマイナスエネルギーが少なすぎることであった。ヤプールに
とってしてみれば、アディールのような街ひとつを壊滅させることなど造作もない。はじめからいるだけの超獣を投入すれば、
戦いはこれだけ長引くこともなく、東方号が到着する前にものの十数分で終わっていたに違いない。
 だが、それではだめなのだ。ただの力押しで侵略しては、ヤプールにとって最大の戦利品であるマイナスエネルギーが得られない。
マイナスエネルギーの集合体であるヤプールにとって、それは妥協できない勝利条件なのであった。
 
 もっとも憎むべきウルトラマンAは倒した。ならば、なにが人間とエルフどもを支えている?
 それを探し、ヤプールは人々に途切れることなく呼びかけ続ける少女に目をつけた。
「皆さん、まだ十分に乗れるスペースはあります。慌てずに、周りの人を助けながら乗り込んでください。がんばって、あきらめないでください」
 立ち止まるなと呼びかけ続けるティファニアの声が、常にエルフたちの上にあることが彼らの心に希望の灯火を燃やし続けていた。
 人の心とは、本人が思っているよりもずっともろい。どんなに普段悠然と構えていても、たとえば不時着して炎上しつつある
旅客機の中で、我先にと出口に殺到せずに整然と行動できる人間などほとんどいないだろう。
 けれども、人は闇の中では己を失い、簡単に絶望に落ちてしまうが、わずかでも光があれば、それを信じて前に進むことができる。
 昔、とある客船が沈没したときに、乗客を勇気付けようと沈み行く船上に残って演奏を続けた楽団があったという。
 不時着した旅客機の話にしても、客室乗務員が冷静に乗客に避難するよう呼びかけた機は、ひとりの犠牲者も出さなかった実例がある。
 人はひとりでは弱い。しかし、はげましてくれる誰か、希望になってくれる誰かがいれば、絶望などにたやすく負けはしない。
 しかし、希望の中心、それを見つけたヤプールの目が冷酷に輝く。希望を何よりも憎む闇の存在、ヤプールは目障りな光の残照を
消すために配下に命じた。
34ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理:2012/07/09(月) 00:28:31.52 ID:2F4God7F
「やはり、貴様が人間どもの要だったか! ええい、ゴミのような存在のくせに生意気な。マザリュースよ、雑魚どもの相手はもういい。
あの小娘を殺してしまえ!」
 その瞬間、空を覆う闇がうごめいた。そして東方号の真上に、不気味な姿の超獣の怨霊マザリュースが姿を現した。とたんに
響き渡る赤ん坊のようなけたたましい鳴き声。さらに、至近距離に現れたマザリュースの笑っているようなおぞましい姿が、見る者の
背筋を凍らせる。
 そして、マザリュースは立ち尽くすギーシュたちには目もくれず、そのぎょろりと丸い目でティファニアを睨むと、火炎弾を放ってきた。
「え……?」
「テファーッ!」
 わずか百メートルほどの距離で放たれた火炎弾は、狙いを違えることなく東方号の頂上に命中した。赤い炎に包まれた艦橋を見て、
ギーシュたちの顔が蒼白となる。
 だが、炎が引いた後で、ティファニアは無事な姿を見せた。ルクシャナがあの瞬間、ありったけの力を使ったカウンターで彼女を
守ったのだった。しかし、それも一度限り、精霊に呼びかける力を失ったエルフは、ただの人間と変わりない。
「まったく、わたしはひ弱な学者ふぜいなのに、無茶させてくれちゃって。ほんと、あんたは手間のかかる研究素材よねえ……
はは、もう精神力がカラだわ」
「ル、ルクシャナさん!」
「バカ、さっさと逃げなさい! あいつはあんたを狙ってる。あんたが死んだら、もうエルフにも人間にも希望はないのよ! 
ハルケギニアにも、私の故郷にも!」
 ルクシャナはティファニアをひきづるようにして艦橋から連れ出そうとした。だが、入り口の鉄の扉は火炎で焼けていて、
とても触れるようなものではなかった。逃げ場を失った二人に向かって、マザリュースはさらに火炎弾を放とうとしてくる。
今度は防ぐ手立てはない。
 マントを広げて、ルクシャナはティファニアをかばおうとした。砂漠の民の衣服はある程度の耐熱性はあるが、そんなものは
焼け石に水でしかない。それでも、万に一つの可能性に賭けていた。生まれ育った故郷を守るために。
「ルクシャナさん!」
「いい、火が行っちゃうまで息をするんじゃないわよ。のどが焼けて呼吸できなくなるからね。それと、アリィーには悪いけど
よろしく言っておいて。やっとわたしなんかと別れられてよかったね、早くいい子を見つけられるといいわねって」
 切れ長の瞳に優しい笑顔が、ティファニアにルクシャナの覚悟を教えてくれた。止めようとする言葉が、のどまで出掛かって
それ以上上がってこない。ここまでの覚悟を決めた相手を、どう言って止められるというのか。超獣は、今度こそ火炎弾を
外すまいと放ってきて、視界が赤く染まっていく。
 もう誰が急いで飛んできても間に合わない。ルクシャナの悲しい背中を見て、ティファニアは無駄だと知りつつ、願いを
託すように輝石を握り締めて祈った。
”誰か、誰でもいいからルクシャナさんを助けて、お願い!”
 自分にはやるべきことがある、けれどそのために誰かが傷つくのは嫌だ。その、矛盾して、都合のいいとさえいえる願いは
神も呆れてかなえるのをためらうかもしれない。しかし、どんなに崇高な理由があろうとも、犠牲になった命と、その人生が
返ってくることはないのだ。
 ただひたすら、純粋に願う心にあるのは優しさのみ。その心が届いたのか、冥界への門をくぐろうとしていたふたりは
今一度救われた。だが、それとても、重い代償を運命の女神は支払わせた。至近距離まで迫っていた火炎弾とティファニアとの
あいだに、突如カオスリドリアスが割り込んできたのだ。
「あ、ああっ!」
 ティファニアの眼前で火炎弾を背中に受けたカオスリドリアスは、煙をあげながら東方号の甲板に墜落した。主砲の上に
這い蹲るようにして倒れこみ、苦しげに首をあげて弱弱しく鳴く。その目は、元の優しかったリドリアスのものだった。
「最後の力で、正気を取り戻して助けてくれたんだね……そんなになってまで、わたしなんかのために、ごめんね、ごめんね」
 ぽろぽろと、ティファニアの瞳から涙が零れ落ちていった。すまなさと悲しさと、情けなさが心に満ちていく。自分たちと
なんの関係もない怪獣までが、必死にヤプールの呪縛にあらがって助けてくれたのに、自分はなにも返してやることができない。
35ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理:2012/07/09(月) 00:29:00.85 ID:2F4God7F
 苦しむリドリアスは、懸命に我が身を蝕むマイナスエネルギーと戦っていた。自分の心は自分だけのものだと主張するように、
悪の力そのものであるマイナスエネルギーを追い払おうと、翼を羽ばたかせて体をよじる。しかし、ヤプールの強烈な負のパワーは
リドリアスの肉体の奥底まで食い込んで、無駄な抵抗だとあざ笑うようにその瞳を狂気の赤に染めていく。
「愚かな奴め、怪獣は怪獣らしく破壊衝動にだけ身を任せていればいいものを。人間どもなぞの味方をするからこの様だ」
 ヤプールは、死に掛けのリドリアスを見下ろして冷酷に告げた。しかし、ティファニアは涙を流しながらも、空からあざ笑う
悪魔に向かって叫び返した。
「ヤプール! あなたに、あなたに生き物の価値を決める権利なんてない! 人間だって、エルフだって、怪獣だって、
みんな一生懸命に生きているだけなのに、みんな平和に生きたいだけなのに、あなたにみんなの幸せを奪う資格なんてないわ!」
「フハハハハ、弱い者は常にそうやってほざく。この宇宙は、より強いものが弱いものを支配する。星をひとつ滅ぼすたびに、
お前のような力を持たない負け犬が吼えるが、絶対的な力の前には何も変わりはしないのだ!」
 あざけるヤプールの笑い声が、歯を食いしばるティファニアを冷たく包み込む。彼女も、ずっと森の中で暮らしてきたとはいえ、
まったくの世間知らずというわけではない。襲ってくる野盗から子供たちを守るために杖をとったことも何度もある。しかし、
改心を信じて見逃してきた野盗と違い、絶対悪であるヤプールには雪山のような抗いがたい冷たさしか感じなかった。
「さあて、無駄話で時間稼ぎをするのもそのへんにしてもらおうか。役立たずのその鳥はあとで始末するとして、貴様は先に
死んでもらおうか」
「ヤプール……あなたは、あなたは……っ!」
 悪魔、と言いかけた言葉をティファニアは飲み込んだ。ののしる言葉を吐いてしまったら、それでこの悪魔に負けてしまう
ような気がしてならない。悪魔が悪魔たるゆえんは、なんでもない人々を悪の道に引きずりこんでしまうことだ。欲望、妄想、
怒り、悲しみ、憎悪、誰の心にでもある闇を増幅させ、ヤプールは己の手駒として利用してきた。
 そして、利用できないと見たものに対しては、悪魔は限りなく冷酷になる。マザリュースは怨念そのままの邪悪さで、
今度こそとどめを刺すべく焦点の合わない目を向けてきた。今度こそ、もう助からない。助かりようもない……それなのに、
誰もあきらめていない光景がティファニアの目に映ってくる。
 死が間近に迫る、静止画のような世界。無駄だと知りつつかばおうとしてくれるルクシャナ、間に合わないと知りつつ
駆けつけてこようとしている仲間たち……皆、自分のために……ティファニアは彼らの心の叫びを聞き、戦う姿を見て、
心の底から願った。
 
 
”もう誰にも、わたしのために傷ついてほしくない。わたしにも、わたしにも……みんなを守れる本当の強さがほしい!”
 
 
 その瞬間、ティファニアの思いに呼応するかのように、彼女の握り締めていた輝石がまばゆい輝きを放った。
「えっ? なっ、なに!」
 光は驚くティファニアとルクシャナの前で、矢のように天に立ち上った。そして、闇に染まった天空の一角が破られて、
太陽の光とともに青く輝く光の玉が舞い降りてきた。
36ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理:2012/07/09(月) 00:29:30.82 ID:2F4God7F
 あの色は、輝石の輝きと同じ!? 呆然と見守るティファニアの前で、青い光の玉は超獣マザリュースにぶつかると、
その輝きでマザリュースを包み込んだ。光の中で超獣の悪霊は断末魔をあげ、溶ける様に崩れていく。そして、
破られた闇の結界から降り注いできた太陽の光が差した瞬間、マザリュースは光の中に消滅した。
 
 
”あきらめるな、君たちにはまだ、守らなければならない未来がある”
 
 
 そのとき、ティファニアは心に呼びかけるような力強い声を聞いた。
 
”あなたは誰? わたしに話しかけてくるのあなたは?”
 
”私は、君の未来を信じる強い思いに導かれてやってきた。種族のかきねを超えて、すべての命をいつくしむ君の優しさと、
困難に立ち向かう強い意志が、私にこの星に迫る危機を教えてくれた。
 
”あなたは誰……? 神さま……?”
 
”私は神ではない。しかし、私は君を通して、今のこの星の人々の持つ大いなる可能性を知った。私も、今一度この星を守りたい”
 
”もしかしてあなたは……大昔にエルフたちを守ってくれた、聖者……”
 
 ティファニアが、あのバラーダの神殿で聞いた名を呼ぶと、光は彼女の心に映る光景に自分の姿を形にして投影して見せた。
 光の中にたたずむ、銀色の勇姿。それはまさしく、ティファニアが心に夢描いてきた希望そのものだった。
 
”あなたは……やっぱり!”
 
 心と心の会話は時を必要とせず、光の化身はティファニアの心と幻のように語り合って去っていった。
 後には、天空に輝く光が現実として残り、その輝きは闇に呑まれようとしていた街を新しい輝きで照らし出していった。
 
「マザリュース! な、なんだいったい!?」
 ヤプールも、突然の事態に驚き戸惑っていた。アディールを完全に封印していたはずのエネルギーフィールドを貫き、
舞い降りてきた光の玉はマザリュースを消し去り、東方号とティファニアの頭上に輝いている。その輝きはヤプールの
マイナスパワーのそれとはまったく違い、夜空の満月のように優しく穏やかな色をはなっている。
37ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理:2012/07/09(月) 00:29:49.66 ID:2F4God7F
 そして、夜の終わりを月が示すように、光の玉が開けたエネルギーフィールドの裂け目から闇の結界は雲が晴れるように
消滅していった。それに次いで現れる青空、太陽の輝きを見て人々は喜びの声を上げた。
「太陽が……太陽だわ!」
 闇の結界は崩れていき、アディールを再び白い太陽が照らし出していく。人間とエルフたちは、その美しい輝きに
見惚れて空をあおぎ、ヤプールと超獣たちは闇の結界の崩壊にうろたえる。
 そして、青い光は彗星のようにティファニアの真上を飛び去ると、光の雨をリドリアスに降らせていった。白くまばゆく輝く
美しい光のシャワーを浴びると、苦しんでいたリドリアスの表情が穏やかになり、その体から黒いもやのようなものが
抜け出していった。すると、変異していたリドリアスの肉体が逆再生を見るように元に戻ったではないか。
 治ったの! と、歓呼の声をあげるティファニアたち。そして、リドリアスが光の玉を見上げて、懐かしそうな声で鳴くと
光の玉は応えるように数回瞬き、まっすぐにアディールを目指して飛びたった。その目指す先にいるのは超獣軍団! 
光の砲弾のように青い光はアディールで暴れる怪獣、超獣のあいだをすり抜けていき、強烈な光を放ってエースを囲んでいた
アントラーやアリブンタをふっとばした。
「この……光は」
 エースも、倒れながらも空をあおぎ、その光に初めて見るとは思えない不思議な近親感を感じていた。
 この光の暖かさと穏やかさ、そして内から感じられる力強さは、まるで光の国の正義の炎と同じ。
 そして青い光の玉はゆっくりと倒れ伏しているヒドラのもとに舞い降りた。
 その光芒の中から具現化し、大地に降り立つのは新たな光の巨人。
 
「青い巨人……あの、ウルトラマンは!」
 
 彼らは、その巨人を見たことがあった。いや、忘れようもないほどすぐ前に、彼の姿は東方号の人間たちとエルフの脳裏に刻み込まれていた。
 初代ウルトラマンを彷彿とさせる銀色を基調としたスマートな肉体と、柔和さを感じさせる穏やかな眼差しを持つ顔は、まさに
あの神殿に奉られていた古代のウルトラマンとうりふたつ! そして、その身の銀色を包むのは、大海、大空、月光のごとき深い青。
 青い、ウルトラマン。あれが、かつて滅亡の危機に瀕したエルフたちを救ったという、伝説の巨人。あの伝説は、本当だったのか!
 真実を知る者も、知らない者も息を呑んで見守る中で、青いウルトラマンは虫の息で横たわっているヒドラのたもとにひざをつくと、
体の上に手のひらをかざした。すると、その手から輝く光の粒子がシャワーのようにヒドラに降りかかっていった。
『コスモフォース』
 光の粒子はヒドラの体に吸い込まれ、ヒドラの体中にあった傷がふさがっていき、苦しんでいた息も整ってきた。
 エネルギーを与え、傷を癒す蘇生の力。あれが、あのウルトラマンの力なのか……

 ヒドラの体を優しく横たえた青いウルトラマンは、手のひらを掲げる構えをとって立ち上がった。
「ムゥゥン、ヘヤァッ!」
 戦うというのか。しかし、相手はまだ五体以上もの大軍団。新しいウルトラマンがどれほどの力を持っているかは未知数だが、
いくらなんでも無謀だと誰もが思った。
 だが、想定外の事態にうろたえていたのはヤプールも同じだった。ウルトラ兄弟ではなく、今までこの世界で確認された
どのウルトラマンとも違う、ヤプールも見たこともない未知のウルトラマン。確かに戦力差では、まだ圧倒的に超獣軍団が
有利だ。しかしヤプールは直感によって、青いウルトラマンが非常に危険な存在だと感じ取った。
「おのれぇ、だが雑魚がいまさらひとり増えたところでなにができる! ひねりつぶしてくれるわぁ!」
38ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理:2012/07/09(月) 00:30:38.26 ID:2F4God7F
 ヤプールの敵意の命令を受けて、ギロン人が超獣軍団に攻撃を命じた。
 ゴモラ、アントラー、アリブンタ、カオスゴルメデ。マザリュースを欠いたとはいえ、四体もの怪獣・超獣が四方から青いウルトラマンに
襲い掛かっていく。
 はじめに対決することになったのはゴモラだった。突進力にものを言わせ、エースを追い詰めたときと同じように角を振り立てての
真正面からの突撃の威力は、いまさら語るまでもない。
 どうする? 同じ疑問を抱いてのまなざしが、善悪を問わずに青いウルトラマンに注がれる。避けるか、受け止めるか? だが、
青いウルトラマンは突進してくるゴモラの勢いに逆らうことなく、まるでダンスのステップを踏むように身をかわして、ゴモラをそのまま
すり抜けさせてしまった。
「かわした!」
 目標を見失ったゴモラは、何もない空間にパワーを浪費させて止まるしかなかった。青いウルトラマンにはかすり傷ひとつない。
 だがむろん、ゴモラがそれでおさまるはずはなく、再度突進を仕掛けてくる。また、ほかの怪獣、超獣たちも続々と迫ってくる。
 今度はどうする!? だが青いウルトラマンは臆することなく、そのすべての攻撃を俊敏な動作でさばいていった。
「シュワッ! ハッ、フッ! ヘヤァッ!」
 ゴモラの突進を闘牛士のように受け流し、アントラーのはさみこみの勢いを利用して回転投げをかけ、アリブンタが気づいたときには
後ろに回りこんで押し倒していた。怪獣たちはその間、青いウルトラマンに指一本触れられていない。まるで、宙に舞う木の葉のように
いくら棒切れを振り回してもするりするりとかわしてしまう。
 なんという無駄のない身のこなしなのか、怪獣たちのパワーが完全に翻弄されている。体術に覚えのある人間やエルフは、
青いウルトラマンの見たこともない技法、地球で言えば合気道のような、相手の力を逆に利用する方法で怪獣たちをいなす姿に
美しささえ覚えて嘆息した。
 が、避けるだけでは勝てない。怪獣たちはいなされても勢いを衰えさせず、最後に遅れてきたカオスゴルメデがゆっくりとした
足取りでつかみかかってくる。こいつは勢いを利用していなすことはできない。なら!? 青いウルトラマンは構えをとり、掌底を
胴に当てて押し返した。
「ハァッ!」
 押し返されたカオスゴルメデは後ずさり、青いウルトラマンは構えを取り直す。カオスゴルメデは怒って再度攻撃を狙ってくるが、
青いウルトラマンは腕や手のひらでその攻撃を受け止め、あるいは受け流してしまう。カオスゴルメデはさらに怒り、噛み付き、
尻尾攻撃などを次々と繰り出してくるが、そのすべてはかわされる。
「あの身のこなし、まるで踊っているようだ……」
 あるエルフの戦士はそうつぶやいた。怪獣がいくら攻撃をかけても、その攻撃はさばかれて、あらぬ方向へと力を空費させられてしまう。
 そう、まさに力が空回りさせられている。カオスゴルメデだけではない、ゴモラやアリブンタがいくら攻撃をかけようとしても、
青いウルトラマンは攻撃のすきまを縫い、力をいなし、相手の力を逆用し、気づいたときには死角から押されて、味方の怪獣と
衝突させられてしまったりしてフラフラだ。
「シゥワッ!」
 無駄がない動き、どころの話ではない。怪獣たちのむきになっての四方からの攻撃も、まるで風の妖精が捕まえようとする
人間の手のひらからすり抜けていくように、エネルギーを無駄にするだけでまるで当たらない。これではウルトラマンと怪獣との
戦いではなくて、怪獣たちが同士討ちをしているようなものにさえ見えた。
39ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理:2012/07/09(月) 00:31:25.01 ID:2F4God7F
 だが、人々は戦いを見守りつつも、青いウルトラマンの戦い方にひとつの特徴があるのに気がついた。それは、彼は戦いの
中でどんなに攻撃に有利な状況になっても、決して押し倒したり投げたりする以上の攻撃をかけないことだった。
 今だ、パンチだ! と思っても、掌底の一撃で押し返し、相手の腹ががらあきの状態でもキックをかけずに、わざと体の
強固な部分を選んで軽い蹴りを放ち、打撃を跳ね返すだけにとどめている。それは、相手の消耗を待って、自分の力を温存して
戦っているのかと最初は思われたが、そうする必要のない絶好の機会でも決して彼は怪獣たちを殴らない。いや、戦いが
始まってからこれまで、彼は掌底か手刀のみで戦い、一度たりとて拳を握ってはいない……彼はまさか、人々がそう思い始めたとき、
カオスゴルメデがヒドラを倒した必殺光線『強力怪光』を吐いて攻撃してきた。
 危ない! だが、青いウルトラマンは手をかざして青いバリアーを作り上げた。
『リバースパイク!』
 バリアーにさえぎられて、強力怪光はウルトラマンには当たらない。それでもカオスゴルメデは力づくでバリアーを突破しようと
強力怪光を吐き続けるが、青いウルトラマンはバリアーを張ったままカオスゴルメデに向かって飛ばしてぶつけた。
「フゥワッ!」
 強力怪光を押しのけながら飛んできたバリアーはカオスゴルメデに当たり、カオスゴルメデは全身がしびれたように体を震わせた。
バリアーの威力はショックを与える程度でダメージを与えるにはいたっていないが、それでも一時的に動きを止めるだけの働きはあった。
そして、青いウルトラマンは他の怪獣たちが自分と一定の距離を持っているのを確かめると、両の手のひらを胸元で上に掲げた。
その手にきらめく光の粒子が集まっていき、彼は手のひらを空に向かって上げた。
 あれは光線技の構えか。今なら確実に当てられるだろう、だがそうしたら操られているゴルメデもろとも……しかし、彼の
手に集う光はどこまでも優しく美しく、彼は集まった光をゆっくりと押し出すようにして右手のひらから放った。
 
『フルムーンレクト』
 
 光の粒子はカオスゴルメデの全身を包み込むように降り注いでいき、すると暴れ狂っていたカオスゴルメデの動きが静まった。
目の輝きに溢れていた狂気の色が消えていき、体から黒いもやのようなものが抜け出ていく。あれは、ヤプールの与えた
マイナスエネルギーの塊か……ゴルメデを蝕んでいた邪悪なパワーが消え去ったことで、カオス化していたゴルメデの肉体が
元に戻っていく。
 邪悪な力を消し去る浄化の力……あれが、あのウルトラマンの力なのか。相手の力を受け流す戦い方を続けていたのも、
怪獣たちを傷つけないようにするためだったのか。人々は、腑に落ちない戦い方を続けていたウルトラマンの目的が、怪獣の
撃破ではなく救命にあったことを知った。
 ゴルメデに宿ったマイナスエネルギーが完全に浄化されたことを見た青いウルトラマンは、よかったというふうに静かに
うなずいた。解放されたゴルメデはゆっくりと倒れこんだが、目を閉じて安らかな息を吐いている。その光景を見て、東方号の
甲板で火傷を負ったギーシュの腕を治療していたモンモランシーは微笑みながらつぶやいた。
「優しいのね……あのウルトラマン」
「ああ……あんな戦い方も、敵を守るための戦い方なんてものもあるんだな。すごいな……ほんとうにすごいよ」
 きざったらしい顔に真剣な眼差しでギーシュも感動していた。今まで自分は、戦いでは味方を守り、敵を傷つけるのが
当然だと思っていた。恐らく、ほかの大勢の人たちもそうだろう。そして、ヤプールに操られたあの怪獣たち、もしも自分ならば、
苦渋はしても最後は倒すことを選択していただろう。仮に浄化の手段を持っていたとしても、そのためにはかなりの割合で
ゴルメデを傷つけてしまったに違いない。しかし、あのウルトラマンは徹底して相手にダメージを与えない戦法を貫いて、
ほとんど無傷のままでゴルメデを救ってしまった。
40ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理:2012/07/09(月) 00:31:50.44 ID:2F4God7F
 すごいと思い、同時にまだまだ世の中には学ばなければならないことがあるのだと思う。
 敵を傷つけずに無力化し、救う戦い方。より敵を傷つける戦い方をばかり追及してきた自分たちには思いもよらなかった。
 
 だが、ゴルメデを救うために精神を集中した隙に、怪獣たちは次の行動をとっていた。
 突然、青いウルトラマンの足元の地面が崩れ、地中から出現したアントラーが背後から襲い掛かった!
「フワッ!? クォォッ!」
 間一髪、大アゴで挟み込まれるのだけは回避したものの、ふいを打たれたのでは攻撃をさばく暇もなかった。大アゴを
両腕でがっちりと掴んで押し返そうとするが、足場が崩されていては力が出せるわけがない。そして、彼に向かって、
今度こそといわんばかりにゴモラが助走をつけて、砂煙を巻き上げながら突撃してくる。
 危ない! エースに大ダメージを与えたあの攻撃。しかも、助走距離はさらに長いから威力も当然のごとく倍増している。
さらには振動波の破壊力も加われば、万全の状態からでも一撃で致命傷になりかねない。ゴモラはアントラーも巻き添えに
してもいいといわんばかりの勢いで突撃してくる。アントラーは青いウルトラマンが少しでも力を緩めたら、そのままはさみ切って
しまいそうなパワーを緩めない。
 やられるっ! 誰もがそう思ったとき、アントラーに銀色の弾丸が叩き込まれた。
 
「トォーッ!」
 
 誰も想定していなかった。傷ついて、今にも息絶えようとしていたかに見えていたウルトラマンAが駆け込んできて、
横合いからアントラーにジャンプキックをお見舞いしたのだ。
 力のベクトルを崩され、横殴りに吹っ飛ばされるアントラー。
 今だ! 青いウルトラマンはアントラーから解放され、蟻地獄から脱出を図ろうとする。すぐ後ろにはゴモラ、だが、
アントラーに一撃を決めたエースがそこで力尽き、蟻地獄に沈もうとしているのを見た彼はエースを抱えて飛び上がった。
「ショワッチッ!」
 間一髪! 飛翔した青いウルトラマンのすぐ下をゴモラが猛烈な勢いで通り過ぎていった。空振りし、勢いがつきすぎたままで
ゴモラはあさっての方向に街を破壊しながら突き進んでいく。アントラーは踏みつけにされ、アリブンタは地上での行動力の
鈍さからすぐには近づいてきそうにはない。
 青いウルトラマンは離れた場所に降り立ち、エースを降ろした。
 ほっとする人々。よかった、ウルトラマンはふたりとも無事だった。しかし、エースのカラータイマーは今にも消えそうで、
肩は苦しそうに上下している。さっきの一撃は、気力で体を無理矢理動かしての最後の力。それを使い切ってしまった今、
命の灯火が尽きかかっているのは誰の目にも明らかだった。
 その最後の力を使って、絶体絶命の危機を救ってくれた。青いウルトラマンは深くうなずくと、額に指を当てて精神を集中した。
「ハァァッ……」
 青いウルトラマンの額が光り、緑色の光が線のようにエースの額のウルトラスターに吸い込まれていった。
 
『ラミーサプレー』
 
 高エネルギーに満ちた回復光線がエースの全身を駆け巡り、尽きかけていたパワーがみるみる回復していった。
カラータイマーが危険信号を鳴らすのをやめ、再び美しい青色に返っていく。エースは、体を駆け巡る正しいエネルギーの
脈動に、彼の真実を知った。
41ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理:2012/07/09(月) 00:32:20.32 ID:2F4God7F
〔ありがとう、おかげで助かった〕
 どちらからともなく、ふたりのウルトラマンは互いに礼を言い合った。立ち上がり、差し伸べた手をとり握手をし合う。
ウルトラマンAと、人々はまだ名も知らない青いウルトラマン……彼らのその姿は、心を通わし相手を認め合うのには
難しいことはなにもいらないと、そう教えているようだった。
 そして、人々は青いウルトラマンの、ゴルメデを救った輝きにひとつの言い伝えをおぼろげに重ね合わせ始めていた。
【光る手を持って、あるときは青き月の光のごとき優しさで悪魔に憑りつかれたものを鎮めた……勇者】
 確証はない。口に出す者もいない。しかし、現実は今この瞬間に目の前にある。
 瞬きしている間にも、戦いは次なるステージへとその幕を進める。わずかな休息の時は去り、再び超獣と怪獣の凶暴な
叫びが街にこだました。
〔いこう〕
〔ああ!〕
 目を合わせて短くうなずきあい、ふたりのウルトラマンは構えを取る。互いのことを何も知り合っていなくても、ふたりとも
その目で見た相手の姿で意思を決めていた。
 そしてその心は最初からひとつ、ならばこれ以上の言葉はいらない。
 
「シュゥワッ!」
「ヘヤァッ」
 
 アディールに太陽が蘇り、ふたりの光の戦士が立ち上がった。だが、まだヤプールの軍団は強力で油断は出来ない。
「おぉのれぇぇ! いい気になるなあ! まだ勝負はこれからだ。ひねりつぶし、叩き潰し、皆殺しにしてくれる!」
 ギロン人、アリブンタ、アントラー、ゴモラ。いずれも強力無比な強敵たち、彼らのパワーにはいささかの衰えもなく、
戦いはまさにこれからが本番だ。
 激突の時は避けようもなく、刹那の未来に始まるだろう。ウルトラマンAと青いウルトラマンに、アディールの未来は託された。
 
 そんな中で、ティファニアは一心に祈りながら、ひとつの名前をつぶやいていた。
「お願い、みんなの未来を守って……コスモス」
「コスモス? それってもしかして、あのウルトラマンの……」
 尋ねるルクシャナに、ティファニアはうなずいた。
42ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理:2012/07/09(月) 00:32:46.75 ID:2F4God7F
 あのとき、最後に彼が言ったことが心の中に蘇ってくる。
 
”私は、君たちが生まれるよりずっと遠い昔から宇宙に生きる者たちを見守ってきた。その中には残念ながら、滅んでしまった
星や生き物たちも数多くある。だが、苦難に負けずに新しい未来を掴むことができた者たちは、皆どんなときでもあきらめずに、
希望を信じ続ける心を持っていた。君にもきっと、同じ強さがあるはずだ”
 
”わたしなんかに、そんな強さが……教えて! わたしにできることがあるなら、わたしは命にかえても果たしたいの”
 
”残念だが、その答えは君自身が見つけ出さなければ意味がない。だが、命あるものには必ずその可能性があることを、
私は以前にひとりの人間の友から教わった。時間はかかるかもしれないが、それまでは私が君たちの未来を守るために戦おう”
 
”わたしたちのために、戦ってくれるの? ウルトラマン”
 
”いいや、君たちだけではない。この星に生きる、すべての生命のために私も命をかけよう。だが君たちが正しい未来へ
たどり着けるかは、君たち自信ががんばらなければならないことを忘れてはいけない。そうでなければ、何度でも同じことが
繰り返される。いいね……”
 
”ま、待って! わたしはまだ、あなたに聞きたいことが! まだ名前も聞いてないのに”
 
”私はコスモス、ウルトラマンコスモス……あきらめるな、君の思いは、決して無駄ではないのだ”
 
 光との出会い、それはティファニアの心に強く刻み込まれた。
 人間もエルフも、やれることはやりつくした。あとは、あとは頼むぞウルトラマン!

「わたしは、わたしはあきらめてなんかない! でも、わたしには戦う力はないの! お願い、あなたがこの世界を
愛しているなら、力を貸して! ウルトラマンコスモス!」

 叫びはこだまとなり、力となって光の戦士に届く。
 光が勝つか、闇が勝つか。数多くの願いと祈りを受けて、戦いは決戦へとその幕を進める。
 
 
 続く
43ウルトラ5番目の使い魔 92話 代理:2012/07/09(月) 00:33:32.58 ID:2F4God7F
今週はここまでです。楽しみにしてくださっていた方、お待たせしてすみませんでした。
さて、今回は満を持してウルトラマンコスモス登場! この一言に限るでしょう。
いやあ、第一部の28話で最初の伏線を張ってからここまで、実に3年半をかけての回収となりました。
あのときはここまで長続きするとは我ながら思ってませんでした。お付き合いくださった皆様、ほんとうにありがとうございます。
筆者といたしましても、実のところコスモスは平成シリーズで一番好きなウルトラマンですので感無量です。
ですが、山場はまさにこれからです!
 
次回、Wウルトラマン対超獣軍団! たのむぞコスモス! 優しさから強さへ、モードチェンジだ!


代理投下ここまで
44名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 00:39:23.74 ID:BVGmn+g0
ウル魔乙。代理乙。
45名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 00:43:21.73 ID:2F4God7F
代理スレも立ててきました

【代理用】投下スレ【練習用】7
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9616/1341762157/
46名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 00:49:37.20 ID:2F4God7F
ちょっとコテハン記憶の設定が上手くいってないようなのでテストさせてください
47 忍法帖【Lv=18,xxxPT】 :2012/07/09(月) 11:52:53.38 ID:vC2Nd74W
サイヤの人、もう、くるよね!
48名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 15:18:52.62 ID:KSM80+sj
ティガの造形したマヅカ3Dワークスって大津のいじめ犯と関係あるらしいな
なんか幻滅した
49名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 15:56:14.47 ID:RbUIE1bf
>>48
だからどうした?
嫌特撮厨かウル魔にアンチしたいか知らんがスレチだ
50ゼロの使い魔BW:2012/07/09(月) 17:04:36.95 ID:AjUtxxZk
こんがんは。問題なければ17:10ごろから
ゼロの使い魔BWの二話を投下したいと思います
51ゼロの使い魔BW 1/6:2012/07/09(月) 17:11:15.28 ID:AjUtxxZk
 身体を揺さぶられて、目が覚めた。
 目を開いたら、見慣れぬ格好の少年がこちらを見下ろしていて、思わず叫んだ。
「だ、誰よあんた!」
「……ツカイマだよ、ゴシュジンサマ」
「ああ、使い魔ね。そうね、昨日召喚したんだっけ」
 窓から朝の日差しがさんさんと降り注いでいる。ルイズは寝台の上でうーんと伸びをすると、椅子にかけてあった服を指して命じた。
「取ってくれる?」
 使い魔の少年は無言で頷くと、服を取ってルイズに手渡した。
 寝起きのけだるさのままネグリジェに手をかける。途端にくるりと背を向ける辺り、この使い魔にも一応年頃の少年らしい部分もあるらしい。
「後、下着も――そこのクローゼットの一番下に入ってるから、取って」
 彼はクローゼットを開けると、ぎくしゃくとした動きで下着を取り出す。と、そこで完全に停止した。
 なにを考えて止まったのかが分かって、ルイズは呆れた。別に、使い魔に見られたところでどうということもないのだが、彼は動きそうにもない。
「……投げてくれていいわよ」
 飛んできた下着は、過たずルイズの手元に納まった。見えてるんじゃないかと思うようなコントロールである。むしろ見てるんじゃないかと思って使い魔に目をやるが、完璧に背を向けていた。
 服を着させるところまでやらせようと思っていたが、やめた。無駄に時間がかかるのは分かりきっている。下手をすれば、朝食を食べそこなうことにすらなりかねない。
 壁を向いて硬直している使い魔を横目に、ルイズはこれまでのように着替え始めた。


 身支度を済ませたルイズたちが廊下へ出ると、ちょうど近くの扉が開くところだった。
 中から出てきたのは、燃え上る炎のような赤い髪の女の子だ。
 ルイズよりも背が高く、スタイルも良い。彫りの深い美貌に、突き出た胸元、健康的な褐色の肌、と街を歩けば十人が十人振り返るような容姿だった。
 だが、その顔を見た途端、ルイズは不機嫌そうな顔になる。赤い髪の少女がにやりと笑った。
「おはよう、ルイズ」
「おはよう、キュルケ」
 むっつりとした表情のまま、ルイズは挨拶を返す。
「あなたの使い魔って、それ?」
「そうよ」
 寡黙に控えている少年を指さしての問いに、ルイズは短く答えた。
「あっはっは! 本当に人間なのね! さっすが、ゼロのルイズ」
「うっさいわね」
 無愛想に返答するルイズを横目に、キュルケは少年を観察する。
「中々可愛らしい顔してるじゃない。あなた、お名前は?」
「なに色惚けたこと言ってんのよ。あと、名前を聞いても無駄よ。そいつ、記憶喪失だから」
「それは残念。……だけど、記憶喪失、ねぇ。それは元から? それとも、ルイズのせいかしら?」
 その指摘に、目の前の勝気な少女が言葉に詰まったのを見て、キュルケは頷いた。
「なるほどねえ。――それじゃ、あたしも使い魔を紹介しようかしら。フレイムー」
 キュルケが呼ぶと、背後の扉の中から赤い巨大なトカゲが現れた。大型の獣並みの体躯に、真紅の鱗。尻尾の先は燃え盛る炎となっていて、口からもチロチロと赤い火が洩れている。
「……リザード?」
 熱気を物ともせずにそれに見入っていたルイズの使い魔が、ここで初めて声を上げた。
「りざーど? これは火トカゲよ」
「ヒトカゲ?」
 首を傾げて言ったルイズの使い魔に、キュルケは微笑みかける。
「なんか発音がおかしい気がするけど、そうよー。火トカゲよー? しかも見て、この大きくて鮮やかな炎の尻尾。間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ? 好事家に見せたら値段なんてつかないわ」
52ゼロの使い魔BW 2/6:2012/07/09(月) 17:13:03.65 ID:AjUtxxZk
「そりゃよかったわね」
 ルイズが無愛想に答えた。
「素敵でしょ? もう、あたしにぴったりよね」
「あんた、『火』属性だしね」
「そう。あたしは微熱のキュルケですもの。ささやかに燃える情熱は微熱。でも、男の子はそれでイチコロなのですわ。あなたと違ってね?」
 キュルケは得意げに、その男であれば視線を釘付けにされそうな胸を張った。
 ルイズも負けじと胸を張るが、残念ながらボリュームの違いは明白だった。それでもキュルケを睨みつける辺り、かなりの負けず嫌いらしい。
「あんたみたいにむやみやたらと色気を振りまくほど、暇じゃないだけよ」
 キュルケは余裕の笑みを浮かべて、その言葉を受け流す。そして颯爽とこの場を後にしようとして、使い魔のサラマンダーが居ないことに気づいた。
「あら? フレイムー?」
「わたしの使い魔も居ないわ。……まさか、あんたのサラマンダーに食べられちゃったんじゃ」
「失礼ね。あたしが命令しなきゃ、そんなことしないわ。……あ、居た」
 ルイズとキュルケが言い争っていた場所から少し離れたところに、二人の使い魔は揃っていた。二人が喧嘩している間に、使い魔は使い魔で親睦を深めていたらしい。
 少年は、慣れた手つきでサラマンダーを撫でてやっている。撫でられているほうも、妙に落ち着いた様子で彼の手のひらを受け入れていた。
 キュルケが目を丸くする。
「あらま。確かに、誰彼構わず襲うような子じゃないけど、誰彼構わず懐く子でもないのに」
「あんたのことを見習ったんじゃないの?」
「どういう意味よそれ。……まあ良いわ。それじゃ、お先に失礼。行くわよフレイムー」
 呼ばれて、サラマンダーが動き出す。図体に似合わないちょこちょことした足取りでキュルケの後を追うが、少し行った先で少年のほうを向くと、ぴこぴこと尻尾を振った。
 少年も微笑んで、手を振って返す。
 一連の流れを見ていたルイズが、少年の頬をつねりあげた。
「……いふぁい」
「いーい? あの女はフォン・ツェルプストー。わたしたちヴァリエール家にとっての、不倶戴天の敵なの。だから、ツェルプストーの使い魔なんかと仲良くしちゃダ、メ、よ?」
「ふぁい」
 一音ごとに頬をねじり上げるようにして確認され、少年は涙目で答えた。


 トリステイン魔法学院の食堂は、学園の敷地内で一番背の高い、真ん中の本塔の中にあった。食堂の中にはやたらと長いテーブルが三つ並んでいて、それぞれに少年少女が座っている。
 ルイズは、黒いマントをつけた生徒が並ぶ真ん中のテーブルへと向かった。
 ここに使い魔を連れてくるのには非常に苦労した。なんせ他の使い魔を見るたびに、吸い寄せられるようにそっちに行こうとするのである。首輪と縄が必要かしら、とルイズは思った。
 その使い魔は、豪華な食事が並べられたテーブルや、絢爛な食堂をきょろきょろと見回している。その顔に少なからぬ驚きを見て取って、ルイズは得意げに指を立てて言った。
「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ。昨日も説明した通り、メイジのほとんどは貴族。だから、『貴族は魔法をもってしてその精神となす』のモットーのもと、貴族たるべき教育を受けるの。この食堂も、その一環ね」
「すごいね」
 素直に驚きを示す使い魔に、椅子を引くように促す。本来なら「気が利かないわね」ぐらいは言ってやりたいところだが、記憶喪失では致し方ない。
 椅子についてから、ルイズは考えた。この使い魔がもう少し反抗的であれば、床ででも食べさせるつもりであったが、今のところは特にそういった気配はない。
 現在も自分が座るべき席ではないと理解しているためか、脇にじっと佇んだままである。
 しばらく逡巡した後、ルイズは近くに居た使用人の一人を呼びとめた。
「ちょっと、そこのあなた」
「はい、なんでしょうか。ミス・ヴァリエール」
 呼びとめられた黒髪のメイドに、脇の使い魔を指して見せる。
「こいつに、なにか食べさせてやって頂戴」
「分かりました。では、こちらにいらしてください」
「食べ終わったら戻ってくるように」
 ルイズの言葉にやはり頷くと、使い魔は促されるままにメイドについて行った。
53ゼロの使い魔BW 3/6:2012/07/09(月) 17:15:48.07 ID:AjUtxxZk
「もしかしてあなた、ミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう……」
 行きがてらにそう問われて、少年は頷いた。目下のところは、彼の唯一の身分である。
「知ってるの?」
「ええ。なんでも、召喚の魔法で平民を呼んでしまったって噂になっていますわ」
 にっこりと笑って、黒髪のメイドは答えた。屈託のない、野の花のような笑顔だ。
「君もメイジ?」
「いいえ。私はあなたと同じ平民ですわ。貴族の方々をお世話するために、ここで御奉公させていただいているんです」
 どうやら自分と同じような立場らしい。納得すると、彼は黙り込んでしまった。
 記憶がないというのは、話題がないというのに等しい。訊きたいことは山ほどあったが、彼女は仕事中だったようだし、あまり時間を取らせるわけにもいかないだろう。
 そんな考えからなる沈黙だったが、どうやらそれは少年を気難しく見せていたらしい。しばらくは静かだった黒髪のメイドが、いかにも恐る恐るといった様子で口を開いた。
「……えっと、私はシエスタです。あなたのお名前を訊いても良いですか?」
 少年はそれに黙ったまま首を振る。しかし、不味いことでも訊いてしまったのだろうかと狼狽するシエスタを見て、言葉を続けた。
「名前は分からないんだ。記憶喪失だから」
「キオクソウシツ……って、あの、記憶がなくなっちゃうあれですか?」
 頷くと、シエスタの視線が途端に同情的になった。少年を上から下まで眺めまわして、はう、とせつなげな溜息を洩らす。
「大変だったんですね……」
 そうだったんだろうか。そうだった気もするが、今のところは大したことがない気もする。だが少年がなにか答える前に、彼女はいきなり彼の手をギュッと掴むと、引っ張り始めた。

「なるほど、そいつは大変だ」
 コック長のマルトー親父は、シエスタの話(学園内で出回っている噂を少し盛った上で、記憶喪失であるという事実を付け加えたもの)を聞くとうんうんと頷いた。
「やっぱりそうですよね、マルトーさん!」
「記憶を失くした上に、あの高慢ちきな貴族どもの下働きだろ? しかも、こういう仕事を選んでやってる俺たちと違って、強制的にだって話じゃねえか。いやあ、災難だな、お前さん」
 二人で完全に盛り上がってしまっている。展開について行けず途方に暮れそうになったところで、少年のお腹がぐう、と鳴った。
「おっと、悪かったな。シエスタ、賄いのシチューを持ってきてやれ。俺は戻らにゃならん」
「はい、わかりました!」
 少年を厨房の片隅に置かれた椅子に座らせると、シエスタは小走りで厨房の奥へと消えた。
 マルトーもまた、背を向けて調理場へと向かう。が、ふと振り向くとニッと笑った。
「同じ平民のよしみだ、なにか困ったことがあったらいつでも相談してくれ」
「ありがとう。いざって時には頼りにさせてもらいます」
 少年が礼を言うと、マルトーは「良いってことよ」と大笑いして去って行く。
 入れ違うように、シエスタがシチューの入った皿を持って戻ってきた。目の前に置かれたそれをスプーンで掬って、口に運ぶ。思わず顔がほころんだ。
「おいしい」
「よかった。おかわりもありますから、ごゆっくり」
 思った以上に空腹だったことに気づく。丸一日ばかり食べていないような、そんな感じだ。
 夢中になって食べる少年を、シエスタはニコニコしながら見ている。
 仕事中だったのに大丈夫なんだろうか、なんて思うが、食堂には彼女のようなメイドが沢山いたし、一人ぐらい抜けても問題ないのかもしれない。
「ごちそうさま。おいしかったよ」
「ふふ。ぜひ、マルトーさんにも言ってあげてください。喜びますから」
 食べ終わって皿を返すと、シエスタは微笑んでそう言った。そして皿を片づけるために立ち上がりざま、そういえば、と彼の顔を見る。
「えっと、なにか分からなくて困ってることとかあります?」
「……それなら、洗濯物のことなんだけど」
 なるほど、とシエスタが頷く。
「ああ、そうですよね。水汲み場とか分かりませんよね」
「それもあるんだけど、ここでのやり方もイマイチ分からないから、教えてもらえると助かる」
 彼の常識は、洗濯物には洗濯機を使え、と言っている。使い方も分かる。しかし同時に、それがここにはないだろうということもなんとなく分かっている。
54ゼロの使い魔BW 4/6:2012/07/09(月) 17:17:19.25 ID:AjUtxxZk
 昨晩のルイズとの会話と、今日見て回った学内の様子から、自分の常識の欠落は記憶喪失から来るものではないことに、少年はうすうす感づいていた。
「洗濯のやり方なんて何処でも同じ気がしますけど、わかりました。今からご案内しても良いんですが、ミス・ヴァリエールに『戻ってくるように』って言われてましたよね」
 確かに、「食べ終わったら戻ってくるように」と言っていた。
「それじゃ、お昼もまたこちらで取られるでしょうし、その際にでも」
「よろしくお願いします」
 心からの感謝をこめてお辞儀をすると、シエスタはウインクして答える。
「マルトーさんも言ってましたけど、同じ平民のよしみ、です。いつでも頼ってくださいね」


 魔法学院の教室は、石造りのやはり巨大な部屋だった。生徒が座る席は階段状に配置されており、その中央最下段に教師が立つ教壇がある。
 二人が入ると、先に教室に来ていた生徒たちが一斉に振り向いた。そしてくすくすと笑い始める。
 だが、ルイズにそれを気にしている余裕はなかった。今日は学年最初の授業ということで、大抵の生徒が使い魔を連れている。そんな場所に少年を放りこんだらどうなるか。
 早くもふらふらと引き寄せられそうになった彼の襟元を、がっしと掴んで引きずりつつ、ルイズは席の一つへ向かった。本格的に、首輪と縄が必要かもしれない。
 席の近くの床に少年を座らせる。机があって窮屈なのは気にならないらしいが、周囲の使い魔を見てそわそわしている。
 ふと、少年が使い魔のうちの一体――浮かんだ巨大な目の玉を指さして言った。
「アンノーン?」
「違うわ。バグベアーよ」
「チョロネコ?」
「あれは単なる猫じゃない。チョロってなによ」
「アーボ?」
「あれは大ヘビ……一体、その名前は何処から出てきてるのよ」
 ルイズが呆れたように言ったところで、教室の扉が開いて一人の魔法使いが入ってきた。
 ふくよかな頬が優しげな雰囲気を漂わせている、中年の女性だ。紫色のローブに、帽子を被っている。
 彼女は教室を見回すと、満足そうに微笑んで言った。
「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
 ルイズは俯いた。
「おや? ミス・ヴァリエール、使い魔はどうしました?」
 床に座った少年は、教壇からはちょうど死角になっていて、彼女からは見えないらしい。
 シュヴルーズが問いかけると、ルイズの近くに座っていた少年が声を上げた。
「ゼロのルイズ! 召喚出来ずにその辺の平民連れてきたからって、恥ずかしがって隠すなよ!」
 その言葉に、教室中がどっと笑いに包まれた。
 ルイズは椅子を蹴って立ち上がった。長い髪を揺らし、可愛らしく澄んだ声で怒鳴る。
「違うわ。ちゃんと召喚したもの! こいつが来ちゃっただけよ!」
「嘘つくな! 『サモン・サーヴァント』に失敗したんだろう?」
 ゲラゲラと教室中が笑う。
「ミセス・シュヴルーズ! 侮辱されました! 『かぜっぴき』のマリコルヌが私を侮辱したわ!」
「かぜっぴきだと? 俺は『風上』のマリコルヌだ! 風邪なんか引いてないぞ!」
 同じく椅子を蹴って立ち上がったマリコルヌに向けて、ルイズが追撃を放つ。
「あんたのガラガラ声は、まるで風邪でも引いてるみたいなのよ!」
 次の瞬間、立ち上がった二人は揃って糸の切れた人形のようにすとんと席へ落ちた。
「ミス・ヴァリエール。ミスタ・マリコルヌ。みっともない口論はおやめなさい」
 席に座ったルイズは、先ほどの剣幕が嘘のようにしゅんとしてうなだれている。
「お友達をゼロだのかぜっぴきだのと呼んではいけません。わかりましたか?」
「ミセス・シュヴルーズ。僕の『かぜっぴき』は中傷ですが、ルイズの『ゼロ』は事実です」
 教室にくすくす笑いが広がった。
 シュヴルーズは厳しい顔をすると、ぐるりと教室を見回し一つ杖を振った。するとどこから現れたものか、笑っていた生徒の口元に赤土の粘度が貼り付いた。
「あなたたちは、その格好で授業を受けなさい」
 くすくす笑いがおさまった。
「それでは、授業を始めますよ」
55ゼロの使い魔BW 5/6:2012/07/09(月) 17:20:27.16 ID:AjUtxxZk
 少年は授業にはあまり興味がなかった。彼の注意はもっぱら他の使い魔に向けられていたが、属性の話が出た時は少しだけ耳をすませた。
 現在は失われた『虚無』の魔法を含めて、魔法の属性は五種類あるらしい。彼の感覚からすると、五つの属性――タイプというのは、酷く少なく思えた。
 もっとこう『はがね』だとか『エスパー』だとか『あく』だとかがあって良い気がする。もっとも、単に彼の感覚の方が細分化されている、というだけのことかもしれないが。
 そんなことを考えたり、周囲の使い魔を観察していたりすると――。
「それでは、この『錬金』を誰かにやってもらいましょう。そうですね……ミス・ヴァリエール」
 不意に指名されたルイズは、びくっと肩を跳ねさせると、シュヴルーズに問い返した。
「えっと、私……ですか?」
「そうです。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」
 そうやって教壇を指し示されても、ルイズは動かない。痺れを切らしたシュヴルーズが更に促そうとしたところで、キュルケが困った声で言った。
「先生」
「なんです?」
「やめといた方が良いと思いますけど……」
「どうしてですか?」
「危険です」
 キュルケが言い切った。ほとんどの生徒もそれに頷く。
「危険? 一体、なにがですか」
「先生は、ルイズを教えるのは初めてですよね?」
「ええ。ですが、彼女が努力家であるという事は聞いています。さぁ、ミス・ヴァリエール。気にしないでやってごらんなさい。失敗を恐れていては、なにもできませんよ?」
「ルイズ。やめて」
 キュルケが蒼白な顔で言う。しかし、ルイズは立ち上がった。
「やります」
 言って、若干硬い動きで教壇へと向かう。通路に乗り出すようにして、少年はその背中を見送った。
 教壇に上ったルイズに、シュヴルーズが隣に立って微笑みかけた。
「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を強く心に思い浮かべるのです」
 ルイズはこくりと可愛らしく頷く。そして緊張した面持ちで小石を睨みつけると、神経を集中した。
 同時に、少年は周囲の生徒たちが、彼と同じように机の影に隠れるのに気付いた。なんでだろうと思う間もなく、短いルーンと共に、ルイズが杖を振り下ろす。
 瞬間、小石は机もろとも爆発した。
 爆風をもろに受けて、ルイズとシュヴルーズは黒板に叩きつけられた。悲鳴が上がる。
 驚いた使い魔たちが暴れ始めた。
 眠りを妨げられたキュルケのサラマンダーが火を吹き、尻尾をあぶられたマンティコアが窓を突き破って外へ逃げ、その穴から巨大な蛇が顔を出して誰かのカラスを飲みこんだ。
 教室が阿鼻叫喚の大騒ぎになる。髪を乱したキュルケが、ルイズを指して叫んだ。
「だから言ったのよ! あいつにやらせるなって!」
「もう! ヴァリエールは退学にしてくれよ!」
「ラッキーが! 俺のラッキーがヘビに食われた!」
 黒板の前にシュヴルーズが倒れている。時々痙攣しているので、死んではいないようだ。
 煤で真っ黒になったルイズが起き上がった。服装は悲惨極まりない。上も下もところどころ破れていて、隙間から下着が覗いている。
 だが、ルイズは自身の惨状も教室の阿鼻叫喚も気にしない様子で、淡々とした声で言った。
「ちょっと失敗したみたいね」
 当然、他の生徒から猛然と反撃を喰らう。
「ちょっとじゃないだろ! ゼロのルイズ!」
「いつだって成功の確率、ほとんどゼロじゃないか!」
 爆風で吹き飛ばされた帽子を拾いつつ、少年は一人、すごい『だいばくはつ』だったなと頷いていた。
56ゼロの使い魔BW 6/6:2012/07/09(月) 17:25:03.37 ID:AjUtxxZk
「おふっ……ミス・ロ……ング、ビル……やめて、やめ……お、おち、る……」 
 ルイズが教壇を吹き飛ばし、それの罰として掃除を命じられている頃。
 この魔法学院の学園長であるオールド・オスマンは、秘書にいつもよりも酷いセクハラ行為
 ――尻を両手でじっくり三十秒ほど捏ねまわすように揉んだ――に及び、いつもよりも苛烈な報復を受けていた。
 首を絞められ、今にも気を失いそうなオールド・オスマンに対し、ミス・ロングビルは無表情でチョークスリーパーをかけ続けている。
 そんなちょっとした命の危険は、突然の闖入者によって破られた。
「オールド・オスマン!」
 荒っぽいノックに続いて、髪の薄い中年教師――コルベールが部屋に入ってくる。
 その時には既に、オールド・オスマンもロングビルも自分の席へと戻っていた。早業である。もっとも、オスマン氏は酸欠気味で、頭をふらふらと揺らしていたが。
「なん、じゃね?」
「たた、大変です! ここ、これを見てください!」
 ようやく脳に酸素が戻ってきたらしきオスマン氏は、コルベールの焦りに鼻を鳴らした。
「大変なことなどあるものか。全ては些事じゃ。……ふむ、これは『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。こんな古臭い文献など漁りおって。
そんなものを持ちだしている暇があったら、たるんだ貴族たちから学費を上手く徴収する術でも考えたまえ。ミスタ……なんじゃっけ?」
「コルベールです! お忘れですか!」
「おうおう、そんな名前じゃったな。君はどうも早口でいかん。……で、この書物がどうしたのかね?」
「これも見てください!」
 コルベールが取りだしたのは、少年の右手にあったルーンのスケッチであった。
 それを見た瞬間、オールド・オスマンの表情が一気に引き締まり、目が鋭い光を放つ。
「ミス・ロングビル。席を外しなさい」
 ロングビルが席を立ち、部屋を出ていく。それを見届けると、オスマン氏は口を開いた。
「詳しく説明するんじゃ。ミスタ・コルベール」


 ルイズが滅茶苦茶にした教室の掃除が終わったのは、昼休みの前だった。
 罰として魔法を使うことが禁じられていたため、時間がかかったのである。といってもルイズはほとんど魔法が使えないから、余り変わらなかったが。
 ミセス・シュヴルーズは二時間後に目を覚ましたが、その日一日錬金の授業を行わなかった。どうやらトラウマになってしまったらしい。
 片づけを終えたルイズと少年は、食堂に向かった。昼食を取るためである。
 道すがら、少年は先ほどの光景を思い返していた。何故か、『わるあがき』という言葉が浮かんで消える。
 次にちょっと間抜けな顔をした大きな魚が出てきて、最後に巨大な龍が脳裏をよぎった。
 その余りの脈絡のなさに、自然と苦笑が漏れる。それを見とがめたルイズが、少年を睨みつけた。
「……あんたも」
「?」
「あんたもわたしを馬鹿にしてるんでしょ!? 貴族だなんだと散々言っておいて、その実はなにも出来ない、『ゼロ』であるわたしを!」
 そんな叫びは、少年のきょとんとした表情によって迎えられた。作ったものではない。心の底から、なにを言われているか分からない、と思っている顔だ。
 それを見た瞬間、毒気も怒りも、全て雲散霧消してしまった。
 沈黙したルイズを見て、少年はしばらく考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。
「……使い手と『わざ』には相性がある」
「ふえ?」
「どれだけ強い力を持っていても、相性の悪い『わざ』は使えない。今のゴシュジンサマは、相性の良い『わざ』がない状態なんじゃないかと思う。
 だから、『わるあがき』しかできない。……けど、それでもあれだけの力があるんだから、適正のある『わざ』ならすごい威力になるんじゃないかな」
 突然饒舌になった使い魔に、ルイズはしばらくぽかんとしていたが、それが彼の不器用な慰めだと気づくと、くすりと笑った。
 それに、こいつの考え方は面白い。これまで失敗してきた『わざ』――魔法を使えるように努力するのではなく、相性の良い魔法を探す。
 今までも色々な魔法を試してはきたが、もっと色々と、それこそ普通は思いもしないようなものまでやってみるのも悪くないかもしれない。
 ただ、今は――。
「……『わるあがき』ってなによ」
「えっ? ええと、うんと……なんなんだろう」
「ご主人様にそういうこと言う使い魔は、お昼ご飯抜きにしちゃうわよ?」
 慌てる少年にルイズはくすくすと笑うと、先ほどより明らかに軽い足取りで、食堂へと向かった。
57ゼロの使い魔BW:2012/07/09(月) 17:27:57.75 ID:AjUtxxZk
これにて投下終了です

ご意見批判その他ありましたら言ってくだされば幸いです
58名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 18:37:31.65 ID:V6pFSvsm

ポケモン系は序盤でエターなる人多いから頑張って欲しい
59名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 18:55:23.79 ID:LZWGOci1
おつ
ポケモンといえばあのミイ召喚のやつは結局どういう展開する予定でああなってたのだろう
60名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 19:08:51.87 ID:ZPhosyLO
BWの人おつ
そういやギャラドスの人も序盤でエタったな
61名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 19:18:12.73 ID:cFsnjH78
というか、基本的に動物やら道具系を召喚したのが途中で止まってる事多いような?
62名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 20:18:59.93 ID:quL8IPYJ
冷静に考えよう
途中で止まらないもののほうが珍しい
63名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 20:21:49.67 ID:Q1QMJdij
>>61
しゃべれないから序盤はまだしも進むほど原作と同じ手法が通じなくなっていく。
才人がいない分をルイズひとりで台詞回しと展開考えなくちゃならんから、負担は倍増だろうて。
64名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 20:24:34.64 ID:dM64xHLS
てか他と違ってここの場合道具召喚ってシステム上有りえないからなぁ
使い魔以外での召喚パターンが使い魔召喚ではネーヨみたいな
65名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 20:35:26.16 ID:cFsnjH78
>>63
だよな
動物や道具は基本ルイズに使われるわけだから
ルイズが自分で判断して動かないと話が進まないし

…そうなると下手すると事態が本編より悪化する可能性あるなw
66名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 21:14:14.01 ID:Zr8g0MMU
意地になってゴーレムに無意味な特攻かます、アルビオン潜入もほぼ考え無しの行き当たりばったり、と初期は感情任せで行動だからな。
フォローしてくれる相手や、ツキが良くなければ最悪の結末なんてすぐだ。
67名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 21:22:30.67 ID:z/LqrWWB
徹底してルイズのフォローしている使い魔か・・・
召喚された連中ではだれがいたっけか
68名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 22:14:11.17 ID:Q1QMJdij
ヤンはなんやかんや言ってルイズの面倒見てたな。娘みたいだとも言ってたし
69名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 22:27:51.80 ID:+iD9gwHy
強大な力持った魔王でありながらもヤル気まんまんでルイズに尽力しようとしてんのに、
ルイズ本人から勘弁してくれ!って泣きを入れられるご立派な使い魔様がいてだな……
70名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 22:29:49.43 ID:vh6kpW4g
オーズの伊達さんとか
5103でもいいけど
71名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 22:35:07.72 ID:QRAobxTI
人修羅召喚はかなりルイズの面倒見てた、エタってるけど

あと >>69
アレに尽くされて、嬉しいか?自分は嫌だwww
72名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 22:35:56.46 ID:ytUE383W
野獣先輩を召喚したらいいのにな(他人任せ)
73名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 23:10:46.91 ID:Q1QMJdij
>>69
今さらだがエレオノールかカトレアが召喚してたら別なおもしろさが生まれてたかもしれない
74名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 23:19:23.02 ID:qUBgSQUc
メイドガイコガラシさんなら無問題かと
75名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/09(月) 23:40:22.23 ID:0wYXq2TB
こんばんは、投下ついでに45分くらいから前スレのほうより埋めようかと思います。

前スレが埋まり次第こっちのスレへ移行します。
76ゼロのドリフターズ-11:2012/07/09(月) 23:48:04.29 ID:0wYXq2TB
 しかし地下水の切先は、メンヌヴィルに吸い込まれることなく際どくはずれる軌道を描いた。
普段の練習とは状況が違い過ぎる。地下水を投げることなどないし、身体スペックも違う。
さらに飛び退いている状態で投げることなどない。投擲用の物ですらない。
そんな状態で命中させるほどの幸運に恵まれることはなかった。

 されどそんなことは地下水もデルフリンガーもわかっていた。
当たろうが当たるまいが関係ない。"シャルロットに危害が及ばない距離"ならば良いのだ。

 地下水がメンヌヴィルの直上を通過する刹那の間に、電撃が開放される。
ナイフから全方位無差別に、再度『雷撃』がメンヌヴィルを襲った。
デルフリンガーは魔力を帯びた雷撃を吸収した際に、エネルギーそのものを一時的に蓄えていた。

 シャルロットは慣性のままに地面に削られながら転がる。
無意識に受け身をとりながらも、破損した馬車にしたたかに体を打ち付けた。
壊れて尖った破片などが、取り返しのつかない急所に刺さらなかった点においては幸運に恵まれた。
投げた時の勢いの所為で左肩もはずれていた。両脚も内出血していて全身打撲、身体各所の骨も異常だらけだろう。
衝撃を堪えて失神することだけは何とか避けたシャルロットは・・・・・・薄っすらと目を開ける。

 掛けていた眼鏡は転がっている途中で落ちていたが、元々視力には問題ない。
見ればメンヌヴィルの炎蛇は――先刻まで自分がいた場所の――地面に衝突した。
二度目の『雷撃』がなければ、間違いなくこちらを追って確殺してきたに違いない。

 『白炎蛇』はその生命を散らすかのように、一瞬で燃え上がると爆音を残す。
震えた空間が静けさを取り戻す頃には、シャルロットは朦朧とした意識をしっかりと繋ぎ止めていた。
沸々と湧いて出てくる――麻痺していた――痛みに悶えながら・・・・・・悲鳴を上げる肉体に鞭打つ。

 起き上がることすらおぼつかず、剣を鞘ごとはずして杖代わりに・・・・・・。
薄い酸素を体中に浸透させるように取り込みながら、必死に立ち上がった。
己の肉体を引きずるように歩きながら、今度こそ全てが終わったことを理解する。
それでも今また同じ轍を踏むことだけはないよう、注意を払い続けた。
終わってみれば――ほんの一分にも満たぬ間の激闘。


 シャルロットは真っ先に、メンヌヴィルの傍に落ちていた短剣の元へ向かう。
支えにしていた剣が手から離れて音を立てて倒れ、シャルロットはその場でへたれ込むと、ゆっくりと短剣を拾い上げた。
肉体的にも精神的にも、意識的にも無意識的にも限界を感じていた。
大事な大事な短剣を胸に抱くと、いつの間にか幾筋もの滴が流れていた。
(ありがとう・・・・・・)
(気にするな相棒)
(ああ、あのままじゃ俺達も砕けるか溶けるかしてたかも知れないし)

 シャルロットが持つ武器には、物質を安定した状態に置く『固定化』と硬度を増加させる『硬化』。
二つの魔法が全てに掛けられているが、それすらも問題なく溶かし尽くす炎であった。
メンヌヴィルが放ったのが『白炎蛇』ではなく、最初の『極炎』であったなら、地下水も溶解していたかも知れない。
仮にそうでも二人はなんの躊躇いもなく、その身を呈して助けてくれたろうことは心でわかっている。
77ゼロのドリフターズ-11:2012/07/09(月) 23:48:36.07 ID:0wYXq2TB
「うぅっ・・・・・・くっ・・・・・・」
堰を切ったように嗚咽が漏れて、涙が止まらない。こんな姿は彼らにすら、今まで誰にも見せたことはない。
泣きたい時は抑えていたし、耐えられない時はいつだって独りきりで泣いていた。
こんなにも感情がコントロール出来ないのは、何年振りだろうか。
(おうおう、珍しいこともあるもんだね相棒)
(確かにシャルロットのこんな姿は初めてだな)

 死の際のメンヌヴィルは恐ろしかった――。命を晒したことが怖かった――。
泣くのが止まりそうなほどに体中が痛い――。いつもどこかで偉そうにしていて、ここぞって時に失敗した――。
家族と友達を悲しませることになりかねなかった――。頼れる二人にどうしようもなく助けられた――。
いや・・・・・・いつだって助けられているのだ。

(相棒もいつもこんなんなら可愛いもんだがね)
(確かにこれが普段の姿であれば男にもモテるだろうにな)
(っ――・・・・・・う、うるさい)
泣きながら心の中で言葉を交わす。今は二人の軽口がどうにもありがたかった。
他愛ないやり取りが凄く嬉しく感じてしまう。こんな会話がまた出来ることが楽しい。

 脳内物質の所為か、精神の安らぎのおかげか、痛みも心なしか和らいでいく。
(・・・・・・本当にありがとう、二人とも)
(むず痒いや)
(まっ主が死ねば――またデルフと二人、つまらん人生になっちまうしな)
(うるせいやい地下水)


 ――ひとしきり泣いた後、シャルロットは座ったまま念じて言う。
(・・・・・・秘密だから)
二人から返事はなかったが、心は伝わってきた。しばらくはこのことをネタにもされるだろう。
それもまた構わない。今更二人に隠すことなどないし、丁度いい戒めにもなる。

 またもぶり返し始めた痛みに顔を歪めながら、シャルロットはまずはずれた肩を強引に嵌め直す。
無理に戻した肩の損傷部も含めて、体を癒す水魔法『ヒーリング』を唱えた。
シャルロットの大出力魔法によって、肉体が徐々に回復していき、さしあたって傷に関しての問題はなくなった。
とはいえ全快とは到底言い難いし無理も出来ない。全身を覆う疲労までは癒しようがない。
泣き腫らした顔を拭いながら整えると、ゆっくりと剣を掴んで立ち上がる。

 シャルロットは治癒した体を慣らすように歩を進めていく。
足が止まると、眼下にメンヌヴィルを見つめた。もはや何の疑いもなく絶命している。
焼け焦げた人肉の匂いが鼻孔の奥を突っつき、思わず苦虫を噛み潰したような顔になる。
生理的嫌悪感を促す匂いと、死体に触れる嫌悪感を我慢しつつ、うつ伏せに倒れている"敵だったモノ"を仰向けにひっくり返した。

 最後は・・・・・・地下水とデルフリンガーが決めてくれた――それでも紛れもなく己が殺した人間の死に顔に相違ない。
その顔面色は心底嬉しそうでいて、凶悪さをも内包した表情。苦悶も後悔もない、最後まで"化物で在り続けた人間"の姿。
78ゼロのドリフターズ-11:2012/07/09(月) 23:49:25.94 ID:0wYXq2TB
 思ったよりも感慨はなかった。こんなにもあっさりしたものなのかと思うほど。
(まだ・・・・・・興奮しているのかな)
戦場の空気と高揚。死線を間近に味わい潜り抜けた。
感情が入り交じって、わけがわからない状態なのだろう。

 "死"と"死に様"を双眸と胸裏の奥深くにまで刻み付けて、シャルロットは前へと進む。
考えるのは・・・・・・また後でいい。
(――どうせ考えずにはいられなくなる)

 近くの土を掘り返して、メンヌヴィルが遺した紙を手に取る。
炎雷が暴れ回った戦場で、こうして問題なく残っていたのは奇跡だったかも知れない。
書かれているいくつかの名前に覚えはない。流石にアルビオン貴族の名前まで記憶しているシャルロットではなかった。
だがここから芋蔓式に判明することだろう。見せしめにすれば反抗する気も削げるやも知れない。

 皮紙をポケットにしまうと、シャルロットは一帯を眺める。
酷すぎる惨状だ。一体全体どんな天災が通ればこんな跡になるのかと思わせるような街道。
メンヌヴィルと共に、我ながらよくもまぁここまで滅茶苦茶に出来たものと感じる。

 未だに燃え続ける炎、上空へ立ち昇る黒煙、ドロドロに溶解する地面。
大炎と雷撃で原型を留めず、奇妙なモニュメントと化した土壁。溶かされ、砕かれ、無数に穿たれた穴という穴。
激闘の凄まじさはこれ以上ないほどに、この場が物語っている。

(・・・・・・このままじゃまずいかな)
そう考えるものの、結局手を付けずに放置を決め込むことにした。
街道が酷いければ酷いほどに、後の印象操作もし易くなるだろうと。
復旧の労力を増やしてしまうことになるだろうが致し方ない。

「ふゥ・・・・・・」
息を吐いてシャルロットは眼鏡の落ちている所まで歩いて行き、拾って状態を確認するとクイッと掛け直す。

 一段落した丁度その時、キッドが一人で馬に乗って戻って来たのだった――。
79ゼロのドリフターズ ◆IxJB3NtNzY :2012/07/09(月) 23:51:17.50 ID:0wYXq2TB
タイトル忘れてました。連投規制かかっても困るので、投下終了後に事後報告となりまして申し訳ないです。
前スレからの続きです。辿るのが面倒だったり、dat落ちした場合は、お手数ですがWikiの方でお願いします。
それではまた。
80ゼロの円卓の騎士団:2012/07/10(火) 00:32:38.01 ID:bGTXOM/o
ドリフターズの方乙です。
さて誰もいなければこのまますぐに投下しようかと思います。

後今更ですが、円卓の騎士の面々の性格は作者の勝手な妄想で書いています。
一応円卓の騎士のSFC版等はやっているのでそこらへんを参考にはしてますが
想像と違うと感じてもどうかご容赦を。
81ゼロの円卓の騎士団:2012/07/10(火) 00:33:38.30 ID:bGTXOM/o
では行きます。


 ルイズは焦っていた。

(ちょ、ちょっと待ってよ! 私のことはどうしたのよ!?)

 当事者としてオスマンの部屋に連れてこられたものの、今の今まで何も発言していない。それどころかルイズは蚊帳の外で、気がつけば話し合いは終わりそうになっている。
冗談ではなかった。
ルイズは使い魔の儀式を何よりも心待ちにしていたのだ。
なんとしてでも儀式を成功させ、自分につけられた不名誉な仇名を返上する。そのつもりでいたのに

(こんな、こんなわけの分からない連中を呼んじゃって、その上無視までされて……)

 このままじゃ使い魔も手に入れられず、下手すれば

(落第……!?)
不吉な言葉が脳裏をよぎった。
とたん、やり場の無い怒りがルイズの胸中に満ちていく。そして気がつけば、ルイズは叫んでいた。
 突然のことに、オスマンとコルベールの対応が遅れる。しかし、まずいと思ったときには手遅れだった。

「あ、あんたたちは私が使い魔として呼び出したのよ! それなのに私を無視する気!? 
本当にあるのかどうか知らないけど、いくらそのスダ・ドアカワールドっていうので偉くたってハルケギニアじゃなんの意味も無いじゃない!
それなのに私を無視して、勝手に帰る話まで進めるなんて……恥を知りなさいよ!」

一息に言い切る。未だに校庭で感じた重圧は後を引いていたが、それでも言うあたり、相当に追い詰められていたのだろう。
もっとも、

「こ、これミスヴァリエール! なんちゅうことを!!」
「仮にも相手は王族ですぞ! 貴方も貴族ならそれなりの敬意を払いなさい!」

 彼らの力を察していた二人からすれば、たまったものではない。慌ててルイズをとめる二人。
しかし二人の制止に一瞬は怯んだものの、それでもルイズは止まらない。

「し、知りませんそんなの! それにさっきもいったけど、ここはハルケギニアなんだから! メイジでもないのに王様だなんて言われたって……」
「……そこまでにしてもらおう」
82ゼロの円卓の騎士団:2012/07/10(火) 00:34:16.84 ID:bGTXOM/o
 静かな、しかしその裏には激しい怒りを感じさせる声がルイズをさえぎる。
 声を発したのは白金卿。金色の鎧を纏う、僧正ガンタンクRと共に古くから円卓に仕える騎士である。
王への忠誠もガンタンクR同様他の騎士以上に持ち合わせており、その彼の怒りの激しさを感じて勝気なルイズの口も閉じてしまう。

「これ以上我が王を愚弄するのは我慢ならん。例え異世界にきたとて、キング様は我らが王だ。しかも聞けば、此度の召喚は貴方が行ったものという。
 その上でこうまで言うとは、そちらの方こそ恥を知るがよい」

 ずい、と一歩前に出る白金卿。

「う……」

 同時にルイズが後ずさる。顔にははっきりと怯えの色が表れていた。

「悪意はないようだが、しかしガンタンク殿が言った通り、我らが臣民から王を引き離したのも事実。その責は、重いといわざるを得ぬ。
……女子供に上げる手は無い。だが、もしまだ愚弄の言葉を続けるというのなら、ここから出ていってもらおう」

更に一歩。ルイズはまた後ずさる……が、そこで

「う……うわあああああああああああああああああああん!!」
「!!??」

 ……オスマンとコルベール、いや、円卓の騎士までもが目をむいた。
烈火のごとく、ルイズが泣き出したのである。

「だ、だっでぇ……だっで、こごでじっばいしたら、あだ、あだじ、らくだ……うわああああああああああん!!
 おねえざまも、おどうざまも、あだじを見放しちゃ、う、うぐ、ぐす、うう……!」
「……」
 
 歴戦の円卓の騎士たちも、この展開は読めなかったのかしばしの間呆然としていた。だが、気を取り直すや否や、急いで全員が集まる。
83ゼロの円卓の騎士団:2012/07/10(火) 00:34:52.62 ID:bGTXOM/o
「ど、どうすんだよ白金卿のオッサン! あの子泣いちまったぞ!?」
「い、いや、しかしあそこまで言われて黙っている訳には……」
「それはそうかもしれないが、しかしやり方というものもあったのではないか? 仮にも相手は子供だぞ!」
「ちくしょう、悪気がねえ分めんどくせえ相手だな……悪党だったらさっさとぶちのめすのによ」
「でもどうするんだ。使い魔なんて流石に嫌だぞ、俺も」
「僕だって嫌だよ。でもなんとかしないとこの場はどうにもなんないっぽいし……」
「ふむ……」

 キングガンダムがあごに手をやる。
 と、そこで何かに気づいたように顔を上げ、そしてひとつ頷いた。その後で改めて
「ルイズ……といったかな、君は」と声をかける。

「ひっぐ、うぐ、あ、あによお……」
「確かに私はこの世界に置いては何の地位も持たぬ身だ。しかし、だからといってこの身がブリティスの王であることに変わりは無い。
君も悪気あって我らを呼んだわけではないことは分かっている。だが、民に対して責を持つ身の故、なんとしてもスダ・ドアカワールドに帰らねばならないのだ」
「……うう……」
「そのために君の儀式を台無しにしてしまったのはすまないと思っている。
だが、それとこれとは別の問題で、私たちにはスダ・ドアカワールドにおいてやらなければならない責務がある。申し訳ないが、な」

 真摯に応えるキングガンダムに、今度は別の意味で言葉をなくしてしまうルイズ。
彼女自身も貴族であり、そしてその身分に誇りを持っているため、尚更彼の言葉は効いた。
84ゼロの円卓の騎士団:2012/07/10(火) 00:35:31.80 ID:bGTXOM/o
「……ぐす、わ、分かったわよ……ふんだ。あぎらめればいいでじょ……どうぜ、わだじなんがぜろ……」
「だが、使い魔はともかく、騎士として君を助ける分にはやぶさかではない」
「……へ?」
「ちょうど志願する者もいたことだしな。……レッドウォーリア、前へ」
「ハッ!」

 返事と共に、流麗な動きで一人が前に出る。それは全身を赤く染めた騎士だった。
 彼は滑らかな動きでルイズの前まで歩き……薔薇を差し出した。

「……へ?」
「よろしく、小さなお嬢さん」
「あ、え、うん、よろしく……じゃないわよ! 何これどういうこと!?」

 我に返ったルイズがキングガンダムに詰め寄る。混乱しているせいか、既に声から涙は抜けていた。
 しかしキングガンダムは落ち着いたもので、冷静に解説する。

「スダ・ドアカワールドに戻るまでに幾分かの時間もあるだろう。その間、君の補佐を彼に勤めてもらう。
使い魔の代わり、というのでもないが、必ず君の助けとなるはずだ」
「な……ちょ……」

 逆にいきなりな話にルイズの方は益々混乱する。一方、ルイズ以外にも混乱して……というより興奮しているのがいた。

「お、おい! いいのかよテメェ!?」

 レッドウォーリアに詰め寄るのは重厚な鎧を纏った騎士、剛騎士ヘヴィガンダムである。

「使い魔だぞ!? いくらテメェが女に弱いからってそんなんでいいのか!?」
「……ほう、心配してくれているのか? これは意外だったな。君は私のことを嫌っていると思っていたのだが」
「な! バ、バカいうんじゃねえ! これはテメェが女にふ抜けると張り合いがなくなるからで……」
「ふむ、そうか。まあ私が種族問わず女性を好んでいるというのは事実だがね」

 そこでちらりと、ルイズを見るレッドウォーリア。続けて声を潜める。

「……実を言えば、可憐さ以外にも多少興味が沸いたのさ。いくら無礼とはいえ、キング様にあそこまで言えるとはなかなかに芯が強い……そう思わないか?」
「む!? ……そ、そういわれてみりゃあ確かに……そんな奴、ここ最近いやし無かったっけか……」
「だろう? ……まあ、白金卿と同じくああ言われたときは多少腹も立ったが、それを差し引いても見守る価値はあるというものさ」
「ぬぬぬ……だからってよ……」

 うんうんうなるヘヴィガンダム。そこにいたずらっぽく目を輝かせたのは勇騎士プラスだ。「へー……」と二人を眺めた後、
85ゼロの円卓の騎士団:2012/07/10(火) 00:36:18.52 ID:bGTXOM/o
「おーい、キング様! なんかヘヴィがレッドを心配してるぞー! この際だからこいつも行かせた方がいいんじゃねー?」
「んな!?」
「何!?」
「え!?」

 ヘヴィ、レッドウォーリア、ルイズが三者三様に驚く。
しかしキングガンダムもふむ、とプラスの言に頷き、彼のように悪戯っぽく笑ってから

「そうだな、心配ならば共に行くと良い、ヘヴィ。君とレッドウォーリアが揃えば、怖いものなど無いだろう」
「ちょ、待ってください! 俺は一言もこんな小娘についてく気なんて」
「誰が小娘よ、誰が!?」
「テメェ以外に誰がいる! というか話にまざんな!」
「キング様……流石にこのような仕打ちには文句の一言もあります。このような可憐なお嬢さんに、野卑なヘヴィなど合うわけが」
「んだとテメー!? つかなんだよ、さっきから突っかかりやがって!! 俺を馬鹿にしてんのか!?」
「馬鹿にも何も、事実だろう。今更何を言うのだか……」

 そこでついにブチ、という音がした。

「あったまきた! 心底あったまきた!! 今度という今度は許さん!! ここで決着つけたらあああああああああああ!!」
「フ……できるものならな!」
「ああもう、なによなんなのよなにがどうしたってのよこれはあああああああああああああ!!??」

 騒ぎが益々大きくなる。
アックスブレードが盛大な風切音を響かせ、薔薇吹雪が舞って部屋を赤く染め、挙句ルイズの失敗魔法が火を噴いた。
ケラケラとその惨状を楽しんでいるものもいれば、やれやれと首を振るもの、ついていけんとさっさと部屋を出るもの、様々であった。

……そして結局。

際限なく大きくなる騒ぎに、堪忍袋の緒が切れたガンタンクRがメガブラストをぶちかまして収拾をつけたのだった。
86ゼロの円卓の騎士団:2012/07/10(火) 00:36:51.12 ID:bGTXOM/o
夜遅く。
キングガンダムはあてがわれた部屋で一人、月を見ていた。
レッドウォーリアとヘヴィを除いた円卓の騎士たちには、それぞれ命を与えてある。
明日からでも彼らはハルケギニアの方々へ赴き、各々に与えた使命を果たすだろう。

(早く帰る手段が見つかればよいが……)

 心中でつぶやくキングガンダム。やはり国のことは心配ではある。
彼の治世は非常に安定しており、国もかつての豊かさを取り戻している。
基盤もしっかりと作ってあるし、それに賢者アントニオを初めとした優秀な人材も国には残っている。
自分たちがいないからといって、すぐにどうなるというものではないだろうが……実を言えば、彼には懸念している事柄があった。
 腕を宙にかざす。すると手の甲から色取り取りの光が漏れ出し、一つの形を成した。
 トランプカードのジャックのような紋章……ジャック・イン・ザ・ダイヤの称号である。
この紋章はスダ・ドアカワールドの守護者たる印だ。それが何かを伝えるかのように明滅している……

(この世界に何か、大きな災いがもたらされようとしているのか……)

 明滅している紋章に向かって問いかける。
しかし紋章は黙して応えず、授けた黄金の守護竜もまた、問いかけに応じることは無い。
夜は、更けていった……
87ゼロの円卓の騎士団:2012/07/10(火) 00:38:03.12 ID:bGTXOM/o
以上です。
ちょっと感覚が掴めず、無駄にレス消費してすみませんでした。
88名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 00:47:19.68 ID:CG6Exy2J
89名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 01:49:03.89 ID:dJjxa3It
乙、超級Gガンとか大好きだからガンダムものはとっつきやすい。
考えてみたら超級Gガンの1話は大隆起を人工的にやったようなもんだな。
90名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 03:35:19.68 ID:3y7JMJpH
爆熱か……
91名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 16:40:19.45 ID:Sji56UmT
どのシリーズか忘れたけど、地底に潜れるモビルスーツがあったよな。それ使えば風石掘り出して大隆起阻止できるんじゃあ?
92名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 17:02:41.45 ID:HbpAwG8/
ああ、水陸両用の試作型にドリルつきのがあったな(名前は忘れたけどw)
あれで地下からジャブローに潜入するつもりだったらしいが
93名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 17:08:52.03 ID:Iqsu2aPT
アッグさん大活躍ですね!(違
94名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 17:12:02.48 ID:h7Vt8JsI
>>91
少なくともドイツ、ベルギー、オランダ、フランス、イタリアの面積合わせたくらいの範囲に
埋まってるんだぞ? 一機二機程度のMSじゃ焼け石に水だろう。
95名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 17:16:49.36 ID:Iqsu2aPT
そんなに広く埋まってるんならコロニーで吹き飛ばして以下略
96名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 17:27:24.50 ID:Xn+oz//7
工機兵ギ・ゾーンならいっぱいいたと思うので、ギ・ゾーン総動員でOK!
97名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 17:29:12.02 ID:dJjxa3It
>>91
種死になかったっけか。オーブ襲ってるザフト軍にそんなMS
98名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 17:38:17.49 ID:3r49Fh8Q
乙です
>ジャック・イン・ザ・ダイヤ
ザって付いてましたっけ?
それはそうとシャッフル騎士って時間超越してませんでした?
いつの時代から来たんだろう
99名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 17:45:33.79 ID:HbpAwG8/
そういえば、ウルトラの人の話で
ベルダンデがウルトラQに出てくる特殊ビタミン剤飲んで巨大化する話があったが
あの状態ならなんとかなるんじゃね?
元々が地味にチートな能力持ってるしw
100名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 18:02:40.85 ID:h7Vt8JsI
>>97
ジオグーンだな。水中用のグーンを地底用にしたやつ。
振動する装甲で地盤を液状化して取り込み、ジェットで噴出して掘り進むんだったかな。

>>99
地底鮫ゲオザーク召喚(聖地経由で)した奴でも大隆起解決してたな。
才人が手に入れたゲオザークを参考に地底戦車量産して。
101名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 18:05:12.55 ID:Sji56UmT
>>100
>ジオグーン
ああ、それそれ思い出した。
102名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 18:06:46.36 ID:t785VQT5
いやあ、スパロボIMPACT第一面のゴッグは強敵でしたねえ…
103名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 18:23:22.13 ID:Qlpsy9Ck
>>97
たしかジオグーン
スケイルなんとかで機体周辺の土を液状化しながら地中に潜行できるとかいう設定
穴ほるわけじゃないから地底のものを掘り起こすのにはあんまり向いてない気もするが


動力源がバッテリー だから地中でバッテリー残量が怪しくなってくると生きた心地がしない機体だ(笑)

104名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 20:01:16.79 ID:u7DzORS/
アルティメットガンダムの触手で掘りまくる
105名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 20:02:24.58 ID:C0aEtYN2
地盤沈下よろしく
106名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 20:04:41.83 ID:13OcDZBZ
そんな時こそ地のディノディロスの出番


・・・なんか地属性って地味イメージが多いよね。地味って文字からして地が入ってるし
107名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 20:12:23.52 ID:YlLQ7O+V
誰も言わないから俺が言ってやる

そういう時はゲッター2の出番だろ
108名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 20:24:13.15 ID:oQ0EBJLh
バンカーバスターとかぶちこむとすごいことになるんだろうな
109名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 20:26:02.29 ID:IIko+Via
>>98
シャッフルになった時期分からんけどなったばっかなのかね
110名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 20:29:56.33 ID:Xn+oz//7
>>98
確かに「ザ」はいらない
「ザ」が入るのはクイーン・ザ・スペードだね

>>109
シャッフル騎士団の頃なら皇騎士も貫禄ついてんのもうなづける
円卓の騎士の頃はキングU世といってもまだ子供だったからな
111名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 20:41:34.66 ID:h7Vt8JsI
>>106
かえって大隆起誘発しそうじゃないですかー! やだー!!
112名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 20:47:53.75 ID:FvD114jN
ゲッター2ってスピード型だからか地属性のイメージが薄いのよね。
むしろゲッター3の方が地属性っぽい。
113名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 21:11:40.01 ID:8H7D70IF
大隆起か・・・
アルターの泉が噴出しそうだ
114名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 21:23:17.25 ID:SvOD8u+b
>>106
オロチ四天王筆頭たる「乾いた大地の社」ナメんなコラぁ!!
あれ?オロチ四天王のリーダーってゲーニッツだっけ
まあ無の体現たるオロチならルイズが召喚するのもちょっとはあり得……って地球意思がハルケギニアに行くのはアレか
115名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 21:39:54.81 ID:4hk5mc1b
ここまでグレンラガンの存在なし
116名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 22:07:43.41 ID:DkSgV2oW
お前らアーク2のリーザ忘れてね?
世にも珍しい地属性ヒロインだぜ
回復魔法持ちのナチュラルヴィンダールヴだし
117名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 22:25:19.89 ID:9S0phdQX
ルイズに召還されたら人間不信が一層増しそうな気が・・・
平民の田舎娘が魔法を使ってるのにプライドを刺激されて辛く当たったり
先住魔法扱いされたりぞろぞろ魔物を引き連れて魔女扱いされたり・・・原作からして鬱展開満載だからなぁ
118名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 22:30:03.84 ID:d7xYoSr0
>>116
また懐かしいキャラを・・w
119名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 22:40:31.65 ID:wxomDDi1
超大型回転衝角起動!
全速前進!クロガネ(風石に)突撃ィーーーーー!
120名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 22:41:03.02 ID:6rsCM0xw
>>117
アーク2エンディング後なら人間不信の面は問題あるまい、普通に強すぎるかもしれんが
それより問題は14歳にして82、56、80というエロボディとあの服装よ
121名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 23:36:05.52 ID:4zvjwAov
>>120
ルイズの二つ下なのに圧倒的じゃないか
122名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/10(火) 23:51:24.39 ID:6rsCM0xw
>>121
おまけに肩出しの上明らかにおっぱいで支えてるような服
ルイズのメンタルはボロボロ
123名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 00:35:16.15 ID:mSDq94NT
リーザって、そんなに幼かったのか。
結構落ち着いた性格だったから、もう少し上(16歳ぐらい)だと思っていた。
124名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 00:54:28.24 ID:mywqujDQ
ろりこんってなぁに?
125名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 01:10:45.45 ID:RyJXyiwc
紳士のたしなみのことだよ(ニコッ
126名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 03:50:30.38 ID:Q4zGTNNm
ラジアントヒストリアからストック(白示録持ち)召喚
何度も歴史を繰り返していいっていうのはチートだよなと思ったんだが
持っていた白示録で一人帰って終わりそうだ
127名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 03:58:23.54 ID:djR393L/
>>124
某旧神の事だよ
128名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 09:18:03.79 ID:pLBraIWx
>>123
落ち着いてるか?
モンスター図鑑のコメントやエルクに対して結構辛辣だったりで、
年相応って感じだけどな
129名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 13:50:01.36 ID:9iVix1Le
ルイズより年下でエロボディな女性キャラを召喚したらそれだけで惨事か
130名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 14:48:45.54 ID:3sds3y1V
子供以外でルイズ以下を探すほうが困難じゃないか
131名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 15:08:37.81 ID:MBKI98FF
ロリババァキャラ位しか居ない
132名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 15:36:42.71 ID:9iVix1Le
いまどきは中学生でも大人顔負けのスリーサイズ設定なんて当たり前だしな。くぎみーキャラはルイズと似たようなのばっかだけど
セラムン、プリキュアほか魔法少女系のヒロインはほとんどルイズより下
133名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 18:09:05.64 ID:531cIZhp
>>127
宇宙の中心で(邪)神様相手にロリコン(手を出したからペドとも)と叫んだ彼か…
134名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 19:04:28.95 ID:cQooE1cU
>>129
マリア兵器だもん!とかか?
135名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 19:09:33.06 ID:drX4UL4k
>>134
それ召喚したら学院もニューカッスルもグラン・トロワもみんな姉歯城になってしまうw
136名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 19:32:57.10 ID:vwXLCGOd
>>135
ルイズ「あんただr」

ズサーズサーズサーズサーズサーズサーズサー
「ムッ!」「ムッ!」「ムッ!」「ムッ!」「ホワムッ!」「ムッ!」「ムッ!」「ホァイ!」

ジョゼフ「なんだきさm」
「キシン流奥義!!」
ジョゼフ「ヴォー!」

(崩れるグラン・トロワを背に)
「NKT…」

デレデレデェェェン

NOBORUUUUUUUUUUUUUUUUU!!!!

137名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 20:06:36.88 ID:dlbPPhSP
年上でルイズ以下ならエスターでおk
138名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 20:20:14.58 ID:xMXppnLW
探すとこういうのもあるんだな
http://mangalifewin.takeshobo.co.jp/rensai/lolisen/item-13/002/
139名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/11(水) 20:52:30.79 ID:LTuZ3gLw
>>127
旧神()もすっかりリンボの存在になったなぁ・・・時の流れとは早いものだ
140名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/12(木) 01:50:15.21 ID:Fz8HaHw6
SS誰か書いてくれたらそれはとってもうれしいなって
エーベルージュを語るスレ 3年目
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/gal/1248267409/701-800
センチメンタルグラフティ2
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/gal/1338866433/1-100
Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
http://kilauea.bbspink.com/test/read.cgi/hgame2/1302172024/201-300
初恋ばれんたいん スペシャルを語るスレ
http://toro.2ch.net/test/read.cgi/gal/1331519453/1-100
ファーランド サーガ1、2
http://anago.2ch.net/test/read.cgi/game/1172644654/501-600
MinDeaD BlooD 4
http://kilauea.bbspink.com/test/read.cgi/hgame2/1206403697/801-900
【シヴァンシミター】WOG【クリムゾンクルセイド】
http://kohada.2ch.net/test/read.cgi/goverrpg/1331402981/1-100
141名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/12(木) 08:39:45.91 ID:mLZP6COe
ついにこっちにまで湧き出したか
142名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/12(木) 10:32:05.67 ID:vgBS3VdS
結晶鳳凰を呼び出して瑠威頭大将軍。
召喚したジークジオンに騎士シャアと同じ呪いで猫ルイズに。
巨人の魂の水晶を召喚。巨人と心通わせたルイズは巨人の安らかな眠りのため砂漠へ。

SDガンダムでぱっと思いついたネタ。
143名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/12(木) 13:39:29.23 ID:LPwX0Qs1
メトロン星人がハルケに来たら『狙われた世界』になるのか『狙われない世界』になるのか。
魔法に頼ったハルケと科学に頼った地球、メトロンには両者はどう映るのか。
エルフの世界も、まあ似たようなもんだろうな。
144名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/12(木) 16:10:17.71 ID:piMCOnmy
>143
破壊の杖がバトルナイザーだろう。
145名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/12(木) 18:47:33.67 ID:AoXjyRdR
>>136
(TAS勢は)アカン
血の輪廻リヒターから前のベルモンド呼ばないと戦闘もストーリーもあったもんじゃなくなるwwwww
おまけ勢ははっちゃけた性能だし主人公も主人公ではっちゃけた火力で敵なぎ倒すしwwwww
146名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/12(木) 18:58:06.47 ID:+8UqJtF2
>>142
結晶鳳凰は召喚されても元いた世界に帰りたくもさなそうだが
それにしても瑠威頭大?将軍って天宮にいても違和感ねえ字面w

巨人の水晶とついでに森の妖精さんも召喚したら、
森の妖精ジムスナイパーカスタム「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、随分長い名前だな」
ってことになるのかな
147名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/12(木) 20:58:49.48 ID:GDXn5MFV
鬼眼の狂とかが出てくると面白そう

あの懐かしの厨二セリフが久しぶりに聞いてみたいw
148名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/12(木) 21:43:42.79 ID:piMCOnmy
>146
コマンド系はどうなるんだ。ザク花田と婚約解消か。
149名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/12(木) 22:28:09.27 ID:+8UqJtF2
>>148
G-ARMS出てこないな、銃火器系は扱いにくいのかな?
あとガンドランダーも。
ペナルティキックオールディーズ召喚したらハルケギニアがメチャメチャになりそう
150名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/12(木) 23:08:45.53 ID:tDZCkJAD
>>146
女だと姫将軍らしいぞ
結晶鳳凰が天宮の守護獣だけど他二国の守護に獅子と龍が存在するけど影薄いよね
獅龍鳳で揃ったと思ったら天界行っちまったし
151名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 00:01:48.72 ID:xT920zqf
外伝中心にカードダス集めてたから、武者は記憶が薄いな
やっぱり、自分の中ではSDガンダムといえばスペリオルドラゴンだな
スペリオルドラゴンSRのプラモはピカピカしてカッコよかった
152名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 00:15:21.45 ID:M8sxTaz7
スペリオルさんが召喚されたら、ハルケギニアが余計なトラブルだらけに・・・
153名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 00:20:14.83 ID:y6qv3CnE
普通に神様だからなあ、スダドアカの>スペ様
でもあちこちで因縁があるやつがとんでもないからトラブルメーカーに…(暗黒卿とか古代神とか)
154名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 00:25:21.66 ID:xT920zqf
多分ハルケギニアに召喚される最中にまたナイトガンダムとサタンガンダムに分かれる展開だな
また融合して復活
んで、バロックガンが絡んでくる
んで、どこからともなくファイナルフォーミュラーも参戦。
ハルケギニア終〜了〜♪
155名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 00:30:19.31 ID:M8sxTaz7
ファイナルフォーミュラーは設定資料だと惑星どころか銀河すら余裕で吹き飛ばせるな
156名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 00:34:02.54 ID:omokOeIZ
ヘイロー4の発売もみえてきたころなんですが
マスターチーフが召喚された話の続編きましたかね?
157名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 00:41:27.81 ID:ldvVyU3s
自分の杖と梟の杖を構え、呪文を唱えるルイズ。
シルフィードに乗って龍の盾掲げるタバサ。
獅子の斧を振るうたびに揺れるキュルケの胸。
導きのハープを奏でるテファ。
158名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 00:42:29.96 ID:xT920zqf
ファイナルフォーミュラーには流石のバロックガンもダークロードもお手上げだろうな
多分スペリオルドラゴンお得意の突撃も効かなさそう
まして円卓の騎士団全員最強勇者の剣盾×2装備であっても倒せないだろう
159名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 00:50:41.16 ID:y6qv3CnE
ナイトガンダム召喚は考えなくも無かったが…
正直ナイトが善人すぎて、サイトみたいなトラブルが起きそうもないところがなあ。
それはそれでなにかしらあるんだろうけど、完璧原作ストーリーから外れるだろうし難しそう…
160名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 01:01:53.71 ID:xT920zqf
まあ歩く善意の塊みたいな御仁ですからなナイトガンダムは
少女一人救えないで騎士と言えますか
とかカッコよすぎ
アムロが憧れるのもわかる
161名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 01:42:26.25 ID:vHh9+Lcb
そこでコミックワールド版のドライで容赦なく卑怯なナイトガンダム
162名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 02:59:34.62 ID:ldvVyU3s
武者斉胡がつけられた洗脳マスクや闇の欠片、千力がつけられた洗脳マスクに騎士GP02の盾。
操る道具には困らないな。
ルイズ「あ、あんたなんかの言いなりなんかにならないんだからっ!」
???「洗脳マスク〜、耐えられるかなぁ」
ルイズ「そんなもので、んっぐぅ…、なんなりとご命令を」
163名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 10:36:14.91 ID:D0GlTkTO
エロいな
164名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 10:38:59.16 ID:8lCf7Y6l
カリーヌさんならDG細胞も逆支配してしまえそうな気がする
165名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 10:56:16.91 ID:TH0stff3
とりあえず今際の際に胸をはだけるのは見えた
166名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 16:53:30.80 ID:dMnczOkv
「おかあさまぁぁーっ!」
「こぉの、バカ娘がぁーっ!」
167名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 16:56:54.55 ID:tbJoDdWl
スーイカ割り♪スーイカ割りっ♪
168名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 18:46:47.53 ID:AfidK3+Z
カリーヌ「ルイズ、見なさい」
ルイズ「いやです、そんな夢も希望もない胸」
169名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 20:01:40.94 ID:uas6nmR7
またカッタートルネードで空中遊泳する羽目になるぞw
170名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 20:10:23.95 ID:cHF/cU4p
デビルコロニー
デビルアクシズ
デビルマスドライバー
デビルウルタリア

デビルアルビオンは一度は想像したネタだ

・・・規模は小さくなるが、デビルグラン・トロワもアリかな?
171名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 20:11:18.33 ID:hdUh+QKx
>>147
正宗か蛍か
172名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 21:04:01.09 ID:8ElsWpKG
胸を大きくすることができる使い魔が来れば
ルイズも可愛がることだろう
173名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 21:27:39.75 ID:xT920zqf
DBの神龍ならおkだな
174名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 21:37:52.11 ID:+BCvh4QQ
でかパイのルイズなんてバランス悪くてキモイだけだろ
175名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 21:56:43.94 ID:8lCf7Y6l
エンポリオ・イワンコフにホルホルの実の能力で豊胸してもらえばいいじゃない
もっとも周辺が大惨事になるのは目に見えてるが
176名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 22:00:47.52 ID:1XZGKQp7
>>174
身長も伸ばして健康でツリ目なカトレアになればいい。
177名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 22:01:33.15 ID:M8sxTaz7
>>175
最初にオカマにされるのがギーシュなところまで見えた
178名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 22:03:00.21 ID:xT920zqf
ギーシュ「だが断る!」
179名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 22:05:19.05 ID:TtBwZJkO
胸が大きくなる掃除機?召喚したのがあったようなw
180名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 23:11:36.03 ID:s6/BJPpN
>>168
夢も希望もでメリーと夢路やジョン召喚とか想像した
ただジョンがルイズに召喚されたら喋って弐足歩行する猫で大当り扱いになるからテファ当りだろうね
181名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 23:29:52.08 ID:cHF/cU4p
ティーダ「事態はどんどん悪くなってく。夢も希望もありません」

FF]のED〜FF]−2のEDの間を描く〜みたいな感じで
一本書いてみたいと思ったりするが
思うだけで書けない現状
182名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 23:50:31.64 ID:QTqL5TXI
つーか、ティーダがルイズとラブくなることなど許さん
183名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/13(金) 23:58:47.54 ID:JC+MPUMm
別に召喚されたからといってラブラブになる必要はない
そこは作者の力量次第
184名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 00:02:38.13 ID:Mny9EY2F
そうだよな
毎回誰でもトラブるしてたらルイズがビッチに見えちゃうよ
185るろうに使い魔:2012/07/14(土) 00:11:10.34 ID:gJvgiiex
皆さんお久しぶりです。先週は投稿できなくてすみませんでした。
今夜はちゃんと上げようと思います。
予約がなければ20分頃に始めます。
186るろうに使い魔:2012/07/14(土) 00:21:09.50 ID:gJvgiiex
では始めたいと思います。


 港町ラ・ロシェール。
 アルビオンの玄関と呼ばれるこの場所は、トリステインから馬で二日は要すると言われており、その為剣心達は馬で走らせっぱなしだった。
 しかし、幻獣グリフォンに乗るワルドは、それを気にする様子もなく先へ先へと突き進む。
 隣にいるルイズは、気が気でないように後ろを向いては、心配そうに剣心達の見た。
ギーシュは、既にへばった様子を見せていたが、剣心は相変わらず何でもなさそうにルイズに目を合わせる。
 しかし、馬とグリフォンではその差が埋められるはずも無く、どんどんとその姿は小さくなっていった。
「ねえ、ちょっとペースが速くない?」
「へばったなら、置いていけばいい」
そんな様子を見かねたルイズだったが、ワルドの答えは淡々としたものだった。確かに急を要する任務なのはそうだが、だからといって仲間や自分の使い魔を置いていくなんて、出来る訳がない。
「それは駄目よ。幾らなんでも…」
 ワルドは、そんなルイズの表情を見て、茶化すようにこう言った。

「やけに二人の肩を持つね。どちらかが君の恋人かい?」
「こ、恋人なんかじゃないわ!!」
「そりゃあ良かった。もし君に恋人なんていたら、ショックで死んでしまうからね!」
 ルイズは、そういって笑いかけるワルドの様子を見て、ふと思う。このまま結婚してもいいのかと…。
 ワルドは「こうありたい」と思う貴族の指標であり、理想であり、憧れの男性だ。そんな彼が好きって言ってくれるのも嬉しいし、自分だって、彼のことは嫌いなんかじゃない。それは確かだ。
 でも、だからといって婚約者と急に言われると、今でもすごく動揺してしまう。そんな約束自体、もうとっくに反故されたのだと思っていたし、十年前に別れてからは、殆ど会ったことすら無かった。
 今でも夢に出てくるほどの、強烈な印象こそあれど、いざそれが現実になると、何故か夢見心地になってしまうという、ヘンな気持ち。なんていうか……素直に喜べない。
 ふと、ルイズは、剣心の方を向いた。彼は…私とワルドとの結婚を、どう思っているのだろうかと。
 こっちを見る剣心の表情は、ルイズにも分からなかった。



     第十四話 『道中』



「どうなっているんだ? 君も、魔法衛士隊の連中も化物か?」
 馬と一緒に朧気な様子のギーシュが、自分と同じくらい過酷なはずなのに、平気な表情をする剣心と、グリフォンを見てそうぼやいた。
 馬で半日近く歩いているのに、剣心は出発の時と大差なさそうに思えた。それを見て、羨ましそうにギーシュが呟く。
「うむむ、やっぱり僕も飛天御剣流を―――」
「関係無いでござるよ、ただ体を鍛えれば良いだけでござる」
 あくまで教えるつもりはない。そう言い切るかのように剣心は、再びルイズの視線を感じて、ふとグリフォンの方を見やった。
 それを見て、ギーシュは何やら含みのある笑いをした。
「そんなに彼女が気になるのかい? 君も意外な面があるじゃないか」
「まあ、婚約者殿がいたのには、正直驚いたでござるよ」
 考えれば、剣心はあまりルイズの事を詳しくは知らなかった。あの性格だし、何より人に嬉々として語れるほど誇れるような人生を送っていないと思っているだろうから、
話したくても話せないのだろうと思っていた。
 剣心も、それを何となく把握していたから、無理に聞くことはしなかったが、それでもまさか婚約者がいたとは…しかし、それにしてはなんか変だ。
 普通、好きな人の前では、もっとそっちに注目するはずなのに、何故かルイズはさっきからこっちにしか視線を向けない。昔話に花を咲かせてもいいのに。
 それを聞いたギーシュが、剣心に詰め寄る。
「じゃあ、まさか……」
「…そうでござるな」
 沈黙の後、剣心がゆっくりと言った。
187るろうに使い魔:2012/07/14(土) 00:23:18.72 ID:gJvgiiex
「ルイズ殿は―――好きな人の前で、照れているのでござろう。だからワルド殿ではなく、こっちをよく見るのでござるよ」
「成程!! 勘がいいな。もしかしてモンモランシーもそうなのかな?」
「……それは違うと思うでござる」
 はっきりとした否定に、ギーシュはガクリと肩を落とす。そんな風に雑談していた剣心に、ふと不穏な気配を感じた。
 待ち伏せか……。剣心は悟られないように周囲を見渡す。いつの間にか、周りは崖で囲まれた道を通っていた。奇襲には絶好の場所だ。
 そして、感じていた気配が、ゆらりと殺気に変わった。――――来る。
「伏せろ!!」
 そう叫ぶと同時に、剣心は素早く馬から飛び降りると、一斉に飛んでくる矢を、腰から抜いた逆刃刀で叩き落とした。それに対し、何やら後ろの鞘から負のオーラが漂い始めるが、そんなことに構ってられない。
 ギーシュは、完全な不意打ちに呆気に取られてしまったようで、慌てて馬から降りる内に、こっちにも何本か矢が飛んできた。
 やられる―――そう思ったギーシュの視界に、突如竜巻が起こり、矢を吹き飛ばした。

「大丈夫か!」
「な、何とか…」
 上空からのワルドの声に、心底安堵したようにギーシュは腰を抜かした。
そういえば彼は? とさっきまで剣心のいた所を見回して…そして目を丸くした。
「うおおおおおおおおおおお!!!」
 何と、剣心は切り立った崖を登っている最中だった。
しかも足だけで、それも階段を駆け上がるかのような速さで。これにはワルドとルイズも呆然とした。
 だが、それ以上に驚いたのは傭兵達だろう。メイジでもない奴が、崖を走ってくるなんて前代未聞だからだ。
「ひ、ひぃ!!」
「な、何だぁ!? お前はぁ!!」
 震える声で剣心を見る傭兵達に対し、剣心は素早く構えを取る。しかし、傭兵達はただ驚くばかりで何もしてこない。
 そんなに驚愕することか? と思案していた剣心の耳に、バサバサと羽音の様なものが聞こえてきた。

成程、驚いてたのはこっちの方か。剣心は、音のする方へ向いて、納得した。
そこには、風龍シルフィードに跨る、タバサとキュルケがいた。
「お待たせ、ダーリン!!」
 キュルケの声かけと共に、攻撃が始まる―――といっても攻勢は終始一方的だったが。
メイジ相手に傭兵が真正面から敵うはずも無く、皆タバサの風とキュルケの炎で吹き飛ばされていった。

「あ、あんた達、一体なんで来たのよ!!」
「朝に貴方達がどっか行くのを見かけてね。面白そうだから付いてきただけよ」
 戦いも終わって、まだ意識のある兵に尋問してみると、どうやら物取りのようだった。
しかし剣心は首をかしげる。それにしては統制が取れすぎている。そしてあれは、明らかに殺す気だった。
 十中八九、アルビオンが雇った傭兵の類だろう。だがこれ以上有益な情報を持っているとは思えない。
 結局、そのまま付いていくことになったキュルケとタバサと共に、剣心達はラ・ロシェールの街へと行くこととなった。



 ラ・ロシェールにて、宿の一つ『女神の杵』に泊まることとなった剣心達は、そこで長旅の疲れを癒している最中、ワルドからの呼び掛けで集まった。
「アルビオンに渡る船は、明後日にならないと出ないそうだ」
 深刻な顔つきで、ワルドはそう言った。
どうにも、明日の夜は月が重なる『スヴェル』の月夜らしく(潮流の関係か何かかと、剣心は思った)、出港は無理とのことだった。
「急ぎの任務なのに…」
 そう歯噛みするルイズだったが、こればかりは仕方がない、とワルドが優しく肩に手を置いた。それから皆の方を向くと、それぞれの部屋の鍵を渡した。
「キュルケとタバサは相部屋だ。そしてギーシュとケンシンが相部屋」
 そこで、ルイズはハッとしてワルドの方を見やった。案の定、ワルドは優しそうな微笑みでルイズにこう言った。

「僕とルイズは同室だ。婚約者同士だし、いいだろう?」
「だ、ダメよ! まだ結婚すると決まったわけじゃ―――」
 慌てて首を振るルイズに対し、ワルドはキッパリと言った。
「大事な話があるんだ。二人きりで話したい」
 その言葉に、ルイズは反射的に剣心の方を見た。これからワルドと二人きりになるというのに、相変わらず、にこやかな顔をしていた。
188るろうに使い魔:2012/07/14(土) 00:26:59.06 ID:gJvgiiex
「まあ、これを機に結婚について、ちゃんと語らうのもいいでござろう」
 そう言うと、まるで邪魔してはいけないとばかりに、ギーシュを引っ張ってその場を後にした。キュルケとタバサも、剣心達に習って自室へ入る。
 気を使ってくれたのだろうけど、何か見捨てられたようで少しショックだったルイズは、そのままワルドに引かれて部屋へと入っていった。


「…いいのかい?」
「何がでござる?」
 自室で、長旅でグッタリとベットでくつろいでいたギーシュが、おもむろに口を開いた。
「今まで何人もの女性と付き合っていたから、彼女の瞳にはピーンと来んだ。彼女、止めて欲しかったんじゃないかな?」
 デルフを立て掛けながら、剣心はギーシュの言葉を聞いていた。

「そりゃあ、相手は彼のグリフォン隊の隊長で、全貴族の憧れでもある。相性は悪いのは確かだけどさ、このままおずおずと引き下がるのは――」
「決めるのはルイズ殿でござる」
 剣心が、遮るようにそう言った。
「本当に自分を任せられるなら、結婚を取り決めれば良いことでござるし、もしまだ考えがつかないようなら、先延ばしにして話し合うなりすれば良い。どちらにしろ、拙者の出る余地は無いでござろう」
 変わらずの笑顔でそう言う剣心の言葉には、含みも裏表もなかった。嫉妬もなければ強がりでもない。ただただ、ルイズの身を案じての発言だった。
 それを聞いて、ギーシュは今まで思っていた疑問をぶつけた。


「君は、ルイズの事、好きじゃないのかい?」


 それに、やや考える時間をおいて、剣心は口を開いた。
「ルイズ殿には、幸せになって欲しいと思うだけでござるよ。多分ワルド殿以外に、ルイズ殿を見てくれる人は余り居なかった。
気が強いから普段はあんな感じだけれども、本当は誰よりも自分を理解してくれる人を探しているのでござるよ」
「………」
 何とも、ギーシュにとっては耳が痛い話であった。いつも爆発して失敗ばかり。おまけに可愛げのない性格とも相まって、今まで劣等生呼ばわりしてきたが、
そう聞かされると、彼女の立場がどんなに辛く苦しいのか、何となく理解したからだ。
「突っ張ること以外に感情を表現できないから、あんな風になってしまっているけれど、それでも陰で誰よりも努力しては、それに報われずに誰よりも泣いている。
だから、ワルド殿との結婚が本当に、ルイズ殿にとって幸福であるのなら、それに越した事は無いでござろう?」
 この言葉に、ギーシュは何故、決闘の時あんなに剣心が怒っていたのかが分かった。
 会って間もない筈なのに、彼は自分よりルイズの事を理解している。最初はあんな非道い仕打ちをしていたにも関わらず、ちゃんとルイズの心を分かっていたのだ。それを知ってこそのあの反応だったのだろう。

 もう二度と、絶対にルイズは馬鹿にしない。そう誓って、ふとギーシュは再び疑問に思
った。
「最後に、差し支え無ければ聞いていいかな?」
「おろ?」
「……君、いくつだい?」
 ギーシュは剣心の見かけから判断するに、自分より三つ四つ上だろうと思っていた。
 だが、実際にこうして彼と会話していると、何ていうか余りにも達観し過ぎている。
 それで不思議に思って聞いたのだが、当の剣心は指を折って歳を数え始めると、やがて衝撃的な答えが飛び出した。

「確か、今年で二十九…だったかな?」
「にっ………!!」
「二十九だぁ!! 嘘だろ相棒!?」
 これには、ギーシュどころかデルフも声をだした。どう見積もっても精々二十前半だ。
もう三十路前には到底見えない。若返りの秘薬でも飲んだのか、と疑う位に年と外見が一致しなかった。
「一体、何が君をここまで変えたんだい……?」
「おでれーた……おでれーたぜ、ホントに」
 ポカンと口を開けて感想を漏らす二人(?)に、剣心はそんなに変かなぁ、首をかしげた。
189るろうに使い魔:2012/07/14(土) 00:30:32.01 ID:gJvgiiex
 所変わって、ルイズ達の部屋では―――。
「君も、腰掛けて一杯やらないか? ルイズ」
 この宿の一番良い部屋で、ソファにくつろぎながら、ワルドはコルクの蓋を開けていた。
 二つのグラスにワインが注がれ、それが満たされると、ワルドとルイズはそれを掲げた。
「―――二人に」
 グラスを合わせ、カチャリと音を立てた。

 ルイズは、ワインを飲みながら考えていた。ゲルマニアとの婚約を破棄するほどの重大な手紙とは何なのか。そして、新たにアンリエッタが添えた、手紙の一文。
 虚ろげな表情で書いた最後の行には、何て書かれていたのか…それはルイズにも何となく分かっていた。
 ワルドは、そんなルイズを見て、心配無用とばかりに胸を張った。
「大丈夫だよ。きっと上手くいく。何せ僕がついているんだから」
「そうね、貴方がいれば、きっと大丈夫よね――」
 そう言って、ルイズは俯いてた顔を上げる。その先にいたワルドは、懐かしむように昔を語り始めた。

 遠い昔の記憶。あの小舟で交わした約束。
 両親に怒られては、いつも泣いて、蹲って、そしてそんな時にいつも手を差し伸べてくれた彼の事。
 魔法の才能のことで何度もお叱りを受けるたび、ワルドがそんなことはない、と励ましてくれたあの頃。
 昔と変わらずそのことになると、ワルドは言葉に熱がこもる。
「ルイズ、君は失敗ばかりしていたけど、誰にもないオーラを放っていた。魅力といってもいい。それは君が、他人にはない特別な力を持っているからさ」
「そんな、まさか……」
「まさかじゃない。例えば君の使い魔のこともそうだ」
 ルイズはパッと、剣心の顔が思い浮かんだ。無意識に顔が赤くなる。

「ケンシンの、こと?」
「そうさ、彼の左手にあったルーンは、僕も調べたこともあったから知っている。あれは伝説の使い魔『ガンダールウ』の印さ。間違いない」
 そんなワルドの言葉に、ルイズは思った。確かに彼は強い。メイジをも圧倒するその実力は、ルイズだって何度も見てきている。
しかし、『ガンダールウ』かと言われるといまいちピンと来ない。
 そんな凄い使い魔を呼べるほど、自分には才能が無い。そう思い込んでいるからだった。

「この任務が終わったら、僕と結婚しよう。ルイズ」
「……え?」
 色々考え込むうちに、急にワルドが婚約のことをきりだした。尚更、頭の中がごっちゃになっていく。

「僕は魔法衛士隊の隊長で終わるつもりはない。いずれは…『あの方』の下でこのハルケギニアを動かすような貴族になりたいと思っている」

「で、でも…」
 ワルドの熱心なプロポーズに、ルイズはただ困惑するばかり。しかし、畳み掛けるようにワルドは続ける。
「君はもう、子供じゃない。自分のことは自分で決められるだろう。確かに十数年、放ったらかしだったのは謝るさ。けど僕には―――君が必要なんだ。ルイズ」
 説き伏せるように語る彼の言葉に、ルイズは首を振る。
何故だろう、憧れていたはずなのに…好きっていってくれているのに…心がどうしても受け入れてくれないのだ。
 ふと、優しく微笑むワルドを見て、剣心の姿が過ぎった。しかしどうしてか、いつもの彼の笑顔とワルドの表情は、何故か重ならない。
 何だろう、剣心の優しさと、ワルドの優しさは…根本的にどこか違う。しかしその理由が分からない。
190るろうに使い魔:2012/07/14(土) 00:32:45.83 ID:gJvgiiex
 じゃあ、剣心ならいいのか? と言われるとまた別だ。彼は使い魔だし、そういった気は無い……ような気はする。でも、ワルドと比べてどうかと言われると……。
 いずれにせよ、こんな気持ちで承諾なんかしても、ワルドに迷惑をかけるだけだ。そう思い、ルイズは言った。

「ワルド、わたしね…いつか皆が誉めてくれるような、立派な貴族になりたいって…そう子供の頃から思っていたの。わたしはまだ未熟だから……だからそれまで…」
「―――君の心の中には、誰かが住み始めたみたいだね」
「ち、違うわ! 決してそんなんじゃ…」
 慌てて首を振るルイズに、ワルドは苦笑しながらも応えた。
「いいさ、何も今返事をしてくれとは言わないよ。だけどこの旅が終われば、君の気持ちも僕に傾くさ」
 そう言って、もう寝る時間だと、ワルドはルイズの唇にキスをしようとした。
 ルイズは、一瞬受け入れようとして――何故か体が強ばってそれを拒否した。
 困惑した表情だったワルドは、それでも直ぐ優しく微笑んで、静かに灯りを消した。
「おやすみ」
「おやすみ……なさい」


 ルイズは、一人ベットの中で考えた。どうして拒絶してしまったのか…自分でも不思議だった。
 でも、やっぱり違う―――ルイズは、ワルドの表情を見て、そう思った。
 フーケに捕まった時……してくれた剣心の笑顔は、何というか…不安や恐れを吹き飛ばしてくれるような、心から安堵できる表情をしてくれる。
 対して、ワルドのそれは、どこか違う。嬉しいはずなのに、心の奥底はモヤモヤが渦巻くばかりなのだ。
 どうして…同じ笑顔のはずなのにあんなにも『違う』と思えるのだろう?
 剣心とワルドは、表面上は似ているけど…どこか似ていない。恐らくそれが、ワルドとの結婚を渋った原因だと思った。――――だけどそれが分からない。
 結局、モヤモヤの原因を突き止まられないまま、ルイズはそのまま睡魔に襲われて眠りに落ちていった。


今回はここまでです。明日も忘れずに投稿する予定です。
本日はどうもありがとうございました。
191名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 01:25:57.88 ID:IOWh6vAO
るろうに乙!
192名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 02:21:26.41 ID:8xigIPj6
乙でござる
193名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 02:22:06.20 ID:99n2VwWt
るろうに乙!

さんざん言われてるかもしれないけど、ゼロ魔に足りない、あるいは出番の少ない存在
古きはランバ・ラル、最近なら風鳴弦十郎のような「かっこいいオッサン」
すなわち、「大人(OTONA)」だ!

コルベールェ…
194名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 11:32:40.30 ID:oasi89nl
ヘルシングのおっさん勢「呼ばれた気がした」
195名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 11:35:39.92 ID:vquIeKdN
おっさんじゃないけど獣兵衛忍風帳の獣兵衛とかもかっこいい
196名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 11:54:21.81 ID:JsX6E6av
というか最近のアニメ全般だろう。頼りがいのある大人がいないから若者が暴走してひどい結果になるっての
沖田艦長は理想の上司です
197名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 13:03:13.32 ID:sqsPk4kp
生徒会の一存、日常、男子高校生の日常、生徒会役員共……のような、大人の影響がほとんど無い、半ば暴走気味の日常風景なんかも面白いですよね。ゼロ魔だと貴族なのでマリみてになりそうな気もしますが。
実はかつての魔法学園ではアークデーモン≒エレオノールという脅威が……
198名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 14:12:44.40 ID:hq+ckMYe
>>196
古代だって沖田艦長が居なくなったら暴走してたじゃない
まぁ酷い結果になるのは敵異星人の方だがヤマトVで勝手にボラー相手に戦争起こしたのは今でも語り草
199名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 14:13:17.12 ID:F8W3hrBW
格好良い大人と言ったらコブラしかいないだろ
デルフの出番は使う時「宮本武蔵は全巻読んだんだ」と言われ
思い切り敵にぶん投げて終了になりそうだけど
200名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 15:01:59.02 ID:NPHnU654
矢作省吾「ガキの頃は、”大人”って言葉に憧れてた
     けど、今の大人は・・・どいつもこいつもいい加減で
     私欲のために人を利用して、裏切り、時には殺す・・・!!
     薄汚ねぇエゴイストだ!!
     俺は・・・そんな大人にはなりたくない!!
     ・・・ガキの頃に、映画やテレビで憧れた、大人たちに会いたかったよ・・・」

フーケ追跡志願者を募るシーンに居合わせたら間違いなくそこでブチ切れるだろうな
201名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 15:07:57.89 ID:YQZPaZ88
>>199
リターンコブラみたいなシチュエーション書いてみたいな

ルイズには子供の頃に自分を助けてくれた恩人がいて
アルビオン討伐時に出会った腕っ節の強い謎の男を見てそれを思い出し、嫉妬する才人
そして7万の兵を一人で足止めするために残ろうとする才人に何故かついてくる謎の男

「おっさん、武器もなしでどうするつもりなんだよ?」
「そんなものは必要ないさ。」

「…サイコガン!? あ、あんたまさか!?」
「彼女の事が好きなんだろ。大事にしてやんな。」

そしてサイコガンで全滅させられる7万w
202名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 15:44:56.87 ID:JdDQ8V39
>>199
でもあの人、ヒロイン守れないから。
203名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 16:48:24.80 ID:JsX6E6av
じゃあ強くて頼りになって、かつ生存フラグを立てるのがうまい大人に来てもらおう
王大人「ルイズ・フランソワーズ、我、死亡確認せり」
204名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 17:08:36.43 ID:YQZPaZ88
そういや、あの人何気に
男塾の中では塾長に次ぐ実力者かもしれんと桃に言われてたな
205名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 18:39:08.43 ID:IH5YZi22
航空参謀「ルイズは死んだ!今から俺様がハルケギニアのニューリーダーだぞ!」
情報参謀「そのときである!」
??? 「あなたがニューリーダーですって、悪い冗談はやめなさい」
ルイズ生還。
206名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 19:02:51.25 ID:QR+vySOh
冒険野郎マクガイバーを召喚

夢の中とはいえアーサー王の時代まで言った男だ
ハルケでもなんてことはない
207名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 19:22:22.38 ID:CxSA+Iur
「人からもらった地位とつとめばっかりだったから、せめてつ、つとめくらいは、全うしなきゃならん、と思う、んだ」
208名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 19:50:37.47 ID:BQsFaN8w
>>206
それならむしろ同役者でオニールならもっと問題ないぜ
209名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 20:15:30.00 ID:IOWh6vAO
頼りになる格好良い大人召喚か。
通り掛かりのサラリーマンなんかいいな。
「なに、忍術を少々ね」
210名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 20:22:05.27 ID:PomLMz34
影技からスカーフェイスかエレの兄貴とか
メイジ瞬殺で無双過ぎちゃうけど

寺沢武一からだったらタケル召喚が面白そう
言霊使った戦いは是非読んでみたいわ
211The Legendary Dark Zero:2012/07/14(土) 20:35:46.42 ID:++Aymtei
人が多くなっているみたいですが、20:40頃から投下を開始したいと思います。
212The Legendary Dark Zero:2012/07/14(土) 20:41:43.63 ID:++Aymtei
Mission 31 <深淵の魔女> 前編


ある日を境に、トリスタニアのチクトンネ街ではほとんどの酒場が不況となっていた。
本来ならば夜の繁華街として賑わうはずであるというのに、この活気の失った状況はあまりにも空しい。
平日よりも客が多くなる虚無の曜日であっても、この閑古鳥と繁盛のなさは変わらない。
東方から輸入されてきたお茶≠提供するカフェという店の一群さえも今まで繁盛してきたのが嘘のようにまるで商売になっていない。
かろうじて助かったのは、純粋に宿に泊まることだけを目的とした客が足を運んでくれることだろう。
酒場と同時に宿も営んでいる店はそうした客を招くことで細々と店の経営を続けていた。
もっとも、これだけの不景気が続いては赤字になるだけであり、店がつぶれてしまうのでどうにも頭を悩ませているのである。
現に、スカロンが経営する魅惑の妖精亭も客足のほとんどが途絶えてしまっているこの有様に困り果てていた。
貴族の客は誰も来ておらず、平民の客は閉店までに十人程度という悲惨な状況である……。

十日前、アンリエッタ姫殿下の婚姻が発表されて本来ならばお祭り騒ぎとなり、いつも以上に繁盛するというのに。
そのため、本来は妖精亭の家宝でありチップレースという店員で行なわれるイベントの優勝者のみに一日着る権利がある魅惑の魔法のビスチェを
特例として娘のジェシカを含めた店員達が一日交代で着用することにもなってしまった。
そうすることでほんの僅かではあるが、客足が増えてくれたのは喜ばしいことだった。

どうしてこのようなことになってしまったのか。理由は一つ。
最近新しくできた妖艶の園≠ニかいう酒場に客を独占されてしまったからだ。
何でもその酒場で雇っているある女が男達の人気を集めており、その噂が伝わったため、その女を一目見ようと貴族の客さえも奪ってしまったのである。
話によればその女はこの世のものとは思えぬ美貌を備えた娼婦であり、単に美しいだけでなく神がかり的な誘惑で男達を魅了してしまうらしい。
それだけだったらただのいかがわしい女なのだが、その女の奏でるハープの演奏が見事な腕前らしくそれを聞くのが目的の客もいるそうだ。
それがスカロンにはどうにも悔しくて仕方がなく、口惜しさに涙ぐむ彼を店で働く女の子達が慰めていた。

同じ頃、チクトンネ街では謎の変死を遂げた者達が見つかるという事件が多発していた。
精力を根こそぎ奪われて衰弱死した男や、体中の血を吸い取られ血の気を失った女性が路地や宿の裏で見つかるというものである。
犠牲者達は揃って悦楽に堕ち、至福に満ち溢れた死に顔をさらしていたという。
今の所、被害が出ているのは平民だけであり貴族の人間は誰も犠牲者が出ていない。普段からあまり治安の良くない場所であるため、
平民が役人に被害の届けを出しても怠惰な役人はいつものことだとまともに取り合おうともせずに報告を握り潰して放置され、公にはされていないのだった。
213The Legendary Dark Zero:2012/07/14(土) 20:46:35.55 ID:++Aymtei
サン・レミ寺院の鐘が夕方六時を告げる音を鳴らしてから二時間が経ち日が没した頃、チクトンネ街の一角でその事件は起きていた。
「あらあら……そんな顔をして……。私が怖いのかしら?」
人気のない路地に不気味に響く妖艶な女の声。本来ならばスリや強盗などが襲ってきてもおかしくないこの場所にいるのは二人の女。
一人はどこにでもいる平民の若い女性であり、昼間はブルドンネ街の方で夫と共に店を営んでいる。
最近夜になると夫がこのチクトンネ街のある酒場に出入りするようになり、朝方になるまで帰ってこないために連れ戻すべくその店を目指していたのだが、
道中に突然現れたのが今、目の前にいるこの娼婦のような女だった。
赤毛の長髪を揺らし、その髪が露となっている形の整った胸を申し訳程度に隠している。
その身に纏うのは素材が全く分からない漆黒のショールとスカートだけで、ほとんど裸に近いあられのない格好であった。
だが、娼婦の肌はまるで死人のような生気の感じられない土気色であり、女は今まで味わったことのない恐怖をその身に感じていた。
(何て綺麗なの……)
しかし、同時に女は娼婦のこの世の物と思えぬ妖しい美貌にうっとりとしていた。
貴族の婦人などまるで歯が立たないであろうその妖艶な美貌は慎みからはかけ離れていたものの、同じ女である彼女さえも誘惑する魅力に満ち溢れている。
娼婦の姿を見ているうちに、自分がやろうとしていた目的など頭から消え失せてしまっていた。
「安心なさい。何も怖がることなんてないわ……。そのまま私に身も心も委ねなさい……」
娼婦の手がゆっくりと伸び、抱き寄せた女の頬を優しく撫でる。その赤い瞳は妖しい光を仄かに放っていた。
正気ではない恍惚とした表情を浮かべている女の顎を掴み、首元を露にさせると娼婦は女の首に自らの唇を近づけていく……。

――バァンッ!

突如、響き渡った一発の銃声。
今にも女の首に唇が触れようとしていた時、娼婦の眉間に一つの穴が穿たれ、鮮血が飛び散った。
その衝撃で上半身が後ろに反り返り、未だ正気を失っている女の体を離してしまう。
だがすぐに体を起こすと眉間に開けられた風穴を、まるでかすり傷を撫でるかのごとく手で触れていた。
人間ならば致命傷である傷を負っているにも関わらず、娼婦はまるで平然としている。
「食事を邪魔するだなんて、野暮ねぇ……」
脳天に風穴を開けられた娼婦がつまらなそうに呟くと、路地の入り口の方から近づいてきたのは一人の女であった。
短く切った金髪の下、澄み切った青い瞳は女とは思えぬ苛烈さで満ち、娼婦を睨みつけている。
女が背負う一振りの大剣は絶えず青白い雷光を細かく散らせていた。
「黙れ、悪魔め」
弾を装填した短銃を娼婦に突きつけ女戦士アニエスは冷徹な声で答え、容赦なく引き金を引いた。

――バァンッ!

再び銃口から放たれる一発の銃弾。
娼婦は余裕の動作で腕に纏うショールを振り上げると、あっさりと銃弾を弾く。
214The Legendary Dark Zero:2012/07/14(土) 20:51:06.10 ID:++Aymtei
「お痛はだめよ」
娼婦が肩を竦め、からかうように呟く。
「はああああぁぁっ!!」
アニエスは即座に背負っていた稲妻の魔剣アラストルを手にすると、倒れている平民の女を身を翻しながら飛び越え、娼婦に斬りかかる。
滑るように退いた娼婦は振り下ろされたアラストルの一撃をショールで受け止めていた。ガキンッ、と剣戟の音が路地に響き渡る。
「あら。人間がそれを手にするだなんて初耳だわ」
意外そうに声を上げる娼婦だったが、アニエスは聞く耳を持たずにアラストルを振るい続け、怒涛の連撃を仕掛けていった。
一振り、一突きをする度にアラストルに纏わりつく紫電が散り、娼婦は紙一重にかわしつつショールでいなし続けている。

「悪いけれど、あなたに付き合っている暇はないの。そろそろ開演の時間だから」
「何っ!」
一方的に娼婦を攻め続けていたアニエスだったが、突如としてその姿が漆黒の影へと変わりさらに無数のコウモリの渦となって舞い上がっていった。
……逃げられてしまったようだ。アニエスは忌々しそうに舌を小さく打つと、アラストルを背に戻す。
特注で作ってもらった専用の鞘に収められたアラストルから紫電が消え失せ、大人しくなった。
だが、奴の発していたあの気配は覚えた。元々、アニエスがここに現れたのもアラストルが反応して導いてくれたからだ。
まだそう遠くには行っていない。この街のどこかに潜んでいるはずだ。必ず見つけ出して、仕留めてやる。
最近、チクトンネ街で起きている怪事件。宮廷の役人達が握り潰して正式には公にされてはいないものの、デビルハンターでもあるアニエスの耳にはしっかりと話は届いていた。
傲慢な貴族達がやる気がないならば自分が出るまで。厄介事を押し付けられるまでもない。
「逃がしはしないぞ。悪魔め……」
獲物を狙う猛禽類のごとき鋭い表情を浮かべ、アニエスはあの悪魔の打倒を誓った。
石畳に倒れている危うく犠牲者になりかけた女を抱えると、そのまま路地を後にしていく。


その一時間前、日が没してから間もない頃。
「あ……」
ルイズは愕然とした様子で顔を引き攣らせていた。
ここはトリスタニアのチクトンネ街に存在する修道院。ここには今は亡きアルビオン王弟、モード大公の忘れ形見であるティファニアが預けられている。
修道院の一室でスパーダとルイズは彼女と面会していたのだが、ルイズは紺色の修道服に身を包んでいるティファニアの姿に目を奪われている。
いや、正確には修道服の上からでもはっきりと膨れ上がっている二つの山に。
清楚で可憐な空気を纏う華奢な体には全く釣り合わない、豊かな胸。
以前、アルビオンで初めて目にした時はマントを纏っていたせいかこれが分からなかった。
「ありえない……」
「は、はい?」
何故か恨みがこめられているように低く呟くルイズにティファニアは困惑する。
普通だったら決してありえないはずの光景を間近で目にしてしまったルイズは、己が抱えているコンプレックスが一気に膨れ上がっていった。

これは胸か?

こんなのが胸であるはずがない。あのキュルケだってここまで大きくない。

じゃあ、これは一体何なのだ?

ルイズは思わず、自分の胸と比べてみる。……目の前の熟れた果実のような物体に比べ、そこにあるのはまっ平らな平野だけ。

こんなの、胸なんかじゃない。

胸に化けた何かだ。
215The Legendary Dark Zero:2012/07/14(土) 20:56:59.25 ID:++Aymtei
「ありえないっ!」
「ひうっ!」
突然、吠えだしたルイズがティファニアの豊満な胸をぐわしと掴んだ。ティファニアはルイズが発する怒りのオーラに呑まれてしまい、身を竦ませる。
怒りに燃えるルイズはもはや彼女がモード大公の忘れ形見であることも忘れてしまっていた。
「一体何よ、これは!」
「む、胸……」
憎々しげな剣幕で迫るルイズにティファニアは怯えている。
「嘘……」
「嘘じゃないわ。ほんとに胸……」
「嘘おっしゃい! こんな胸が一体、この世のどこにあるっていうの!? あんた、調子に乗ってるんじゃないの!? 肩とか足とか手とか腰とかそんなに細いのに
どうしてここだけがこんなになってるのよ! こんなの胸じゃないわ! 胸っぽい何かよ! あたしは認めない! 認めないわ!」
大声でまくし立てながら獣のように吠え続けるルイズは乱暴にティファニアの胸を揉みしだいていた。
「そ、そんなこと言われても……」
「このあたしへの当て付け!? 恨みでもあるの!? 謝って! あたしに謝りなさいよ!」
「そこまでにしろ」
そこへ横に控えていたスパーダの手ががしりとルイズの腕を掴み、ティファニアから手を離させる。
「離して! 離してったら!」
「こんなことをするためにここへ来たのではないだろう」

先日、スパーダがロングビルと交わした約束。
ティファニアがスパーダと会いたがっているらしいために近々、訪問することになったのだがそのロングビルが何故かスパーダと顔を合わせようとすると逃げ出す上、
彼女の仕事が終わるとスパーダを誘わずに一人でトリスタニアへ行ってしまうために中々約束を果たせなかったのだ。
なのでスパーダが直接、この修道院を訪ねてティファニアと面会することになったのである。
ちなみにロングビルは二、三日に一回の割合でティファニアに会いに来ており、昨日がそうであったために今日は学院に残ったままだ。
ルイズが付いてきているのは、モード大公の忘れ形見であるティファニアがどういった人物なのかを会って確かめようとしていたわけなのだが……。
彼女のコンプレックスを刺激してしまったようだ。
「うう……分かったわよ……」
ようやく落ち着いたのか、ルイズは部屋に備えられたテーブルの椅子に腰掛ける。
だが、未だその恨めしい視線はティファニアの胸へと向けられ続けていた。
二人も同じように椅子に腰掛け、向かい合う。
「彼女はルイズ・ド・ラ・ヴァリエールという。前にも見知っているだろうが、魔法学院の生徒だ」
フルネームは長すぎるために一部省略してティファニアにルイズを紹介する。
「あ……はい。よろしくお願いします」
先ほどの剣幕がかなり堪えたのか、少しおどおどしながらルイズにぺこりと頭を下げるティファニア。
当のルイズは「ん〜……」などと唸って相槌を打ちながら、未だ恨めしそうにティファニアの胸を睨んでいる。
「その後はどうだ。こちらの生活には慣れたか」
「あ、はい。修道院の人はみんな良い人達ばかりですし、誰もわたしを怖がりませんから」
スパーダと話すティファニアはそれまでの怯えから一転し、心から安心しきった笑顔を浮かべていた。
妖精のように愛らしく清純な顔がより一層、美しさを増した。
今はその頭にベールを被っているためにエルフとしての耳は露になっていない。
「マチルダ姉さんもちゃんと会いに来てくれますし」
(ミス・ロングビルにあんな過去があっただなんて……驚きだったわ)
マチルダ・オブ・サウスゴータ。それが今は学院の秘書として働くロングビルの本当の名前。
アルビオンから戻ってきてから数日後、ルイズはスパーダからロングビルの素性などを聞きだしており、その過程で四年前にアルビオンで起きたという事件も聞くことになった。
さすがに他人のプライバシーに関わるので、ルイズにはティファニアがハーフエルフであることは伏せられているが。
216The Legendary Dark Zero:2012/07/14(土) 21:01:39.67 ID:++Aymtei
「それにしてもトリステインって賑やかな所なんですね。この間の休日にマチルダ姉さんと一緒に少し街を回ってみたんですけど、サウスゴータのウェストウッド村とは大違いです」
「外の世界に興味を持つのは悪くはない。だが、一人では決して出歩かないようにしておけ」
彼女がハーフエルフであることがバレてしまえばとんでもない大事になることだろう。この修道院の人間は院長を含めてそうしたしがらみなどは全く気にしていないのだが、その外となれば話は別だ。
「分かっています。ここにいる人達や、スパーダさんのような人だけがいるわけじゃないでしょうから……」
ティファニアの表情が少し曇りだす。外の世界にでてきたとはいえ、まだ本当の自由を手にしたわけではない。
「私は人間≠ナはないがな」
自嘲を込めてスパーダは苦笑した。
その言葉に反応したのはティファニアではなく、ルイズだった。
「またそんなこと言って。あなたは人間≠セって言っているじゃない。涙が流せないからどうだって言うのよ」
体を起こし、スパーダに食って掛かる。
ちらりとルイズを一瞥するスパーダは再びティファニアの方を見やった。
「ティファニア。君は泣いたことがあるか?」
「……はい」
四年前のあの日、母を、父を失った時、ティファニアは心を震わせ、涙を流した。その時のことは未だ彼女の心に刻まれ続けている。
「悪魔は決して涙は流さん。涙は心ある人間のかけがえのない宝物だ」
「この分からず屋……」
相変わらず頑なに認めようとしないスパーダにルイズは拗ねてしまう。
「マチルダ姉さんが言っていました。スパーダさんは、下手な人間なんかよりよっぽど信頼できるって。たとえ悪魔でも、誰かの役に立って信頼を得られるのは素晴らしいことのはずです」
スパーダがどこか憂いを窺わせているのをティファニアは察し、思わずそう答える。
「わたしなんて、涙は流せるけど誰の役にも立たないし誰にも信頼されることなんてないんですから。悪魔なのに人に信頼されるなんて、羨ましいですよ」
ティファニアはハーフエルフ。人間には忌むべき存在とされるエルフの血と、エルフもまた敵対している人間の血を宿す中途半端なできそこないなのだ。
純粋な悪魔であるスパーダは全く違う種族である人間のために役立っているのに、中途半端な自分が誰かの役に立つことなんてあるのだろうか?
「私のことなど、今はどうでも良いことだったな。それより、これからスカロンの店にでも行こうかと思うがどうする? 今日は私が付いていてやろう」
「あ、はい! スパーダさんと一緒だったら、わたしも安心です」
ティファニアは顔を輝かせたが、ルイズは腑に落ちない顔をしている。
「スカロンって誰よ?」
「知人だ。ここの修道院もその男の娘から紹介してもらった」


それからすぐにスパーダ達はティファニアを連れ、夜のチクトンネ街を歩き回っていた。
ティファニアはスパーダとこうして並んで歩いていると安心ができて、気分が良くなる。
スパーダは悪魔であるが、それを全く感じさせない大人としての貫禄があり、まるで頼もしい父親が傍にいてくれるみたいに思えていた。
「ここは夜になるとお店が開くんですね。マチルダ姉さんは、あまり安全じゃないって言ってましたけどそうは見えませんね」
以前、マチルダと共にブルドンネ街を回ったことのあるティファニアは初めて目にするチクトンネ街の夜の姿に感嘆としていた。
魔法の明かりを灯した街灯が彩りを添え、幻想的な、思わず楽しくなってしまいそうな雰囲気であった。
「裏道などはうろつかない方がいいがな」
「それにしても何だかいつもより寂れてるわね」
ルイズは開店している様々な酒場があまり繁盛していない様子に怪訝であった。いつもなら夜の繁華街として賑わうというのに、これはどうしたことだろう。
以前、ここを訪れたことのあるスパーダもあまりに変わり果ててしまっているチクトンネ街の姿に顔を顰めている。
だが、気にしていても仕方がないのでスパーダは目当ての店を目指して歩き続けていた。
217The Legendary Dark Zero:2012/07/14(土) 21:06:27.04 ID:++Aymtei
やがて、一行はスカロンが経営する酒場、魅惑の妖精亭へと辿り着いた。
「げ……」
羽扉を開け、中に入った途端、ルイズは唖然としていた。
「いらっしゃいませぇ〜〜!」
目の前に現れたのは背が高く逞しい体格をした中年の男だったのだが、何とも気持ち悪い格好をしており、ルイズには一目でオカマだと分かった。
強い香水の匂いが鼻を突き、ルイズは思わずむせ返りそうになる。おまけに体をクネクネと揺らすので吐き気がこみ上げる。
「あらぁ! スパーダ君じゃないの! それに妖精のお姫様まで! 今日は本当に素晴らしい日だわ!」
スカロンは客として訪れてくれたスパーダを歓迎してくれた。ルイズにも視線が向けられ、びくりと竦みあがった。
「こちらはお初ね? しかも貴族のお嬢さん! 何てトレビアンなのかしら! お店の子が霞んじゃうわ! わたしは店長のスカロン。今日はぜひとも楽しんでってくださいませ!」
体をさらにクネらせ一礼する。ルイズからして見れば気持ち悪いことこの上ない。
一行は適当に空いているテーブルに着くとスカロンの娘のジェシカがメニューを手に近づいてきた。
「ストロベリーサンデーを頼む」
「またそれ? シエスタが作ってあげたって聞いてるんだけど、飽きないのね。そちらの二人はどうするの?」
呆れながらもジェシカはルイズとティファニアにもオーダーを促す。
「えっと……」
「何でも構わんぞ」
困惑するティファニアにスパーダが一言添えた。
「あの……それじゃあスパーダさんと同じものを」
「このお店のお勧めをお願いするわ」
二人の少女はそれぞれ違うものを注文し、確認を終えたジェシカは厨房の奥へと消えていく。
「ねぇ、あの給仕の娘、シエスタとどういう関係よ。だいたい、何でこの店の子達、あんな格好してるのよ!」
「彼女はシエスタの従姉妹だ。この店はそういうサービスを」
小声で喋るルイズの問いに答えるスパーダは、店の中を見回していた。
……自分達以外に客はたったの二人。閑古鳥とはまさにこういうことである。他のチクトンネ街の酒場と同じだ。
ただでさえこの店は男達に人気があるというのに、これはどうしたことだろう。

「やけに景気が悪いな」
スパーダがスカロンに声をかけると、体をくねらせながら近づいてきたスカロンは悔しそうな表情を浮かべていた。
「そうなのよぉ。最近新しくできたお店にお客様をみんな取られちゃったの! もうっ! 口惜しいったらありゃしないわ!」
「それにしては、他の店も同じみたいだな」
「その新しいお店の看板の女が人気なんですって! あたし達も他のお店もこれじゃあ破産しちゃうわよ。だから今日はスパーダ君が来てくれて良かったわぁ。
貴族のお客様だって一人も来ないんだもの! きぃーっ! 悔しいわ!」
「泣かないで! ミ・マドモワゼル!」
給仕の女の子達が一斉にスカロンの元へ駆け寄り、慰める。
「そうね! 妖艶の園≠フ娼婦なんかに負けちゃあ、魅惑の妖精亭の名が泣いちゃうわ!」
「はい! ミ・マドモワゼル!」
218The Legendary Dark Zero:2012/07/14(土) 21:12:28.00 ID:++Aymtei
「大変なんですね。このお店の人達」
ティファニアがぽつりと呟く。
「どこも同じようなものだがな」
「でも、チクトンネ街の酒場ってたくさんあるのよ。客をほとんど独占しちゃうなんて、その娼婦ってどんな女なのよ……」
以前、キュルケが学院中の男子達を独占して女子達の反感を買ったという一件をルイズは思い出していた。
「さてな。よほどの魅力があるのか、魔法で惑わしているかのどちらかだ」
スパーダは思わず腐れ縁だった女悪魔、ネヴァンのことを思い出す。あの女だったら百人や二百人の男など軽く誘惑してしまうことだろう。
それにあの女は同姓さえも魅了することだってできる。よほど意志が強くなければ抗うことなどできない。

「おまちどお様!」
しばらくするとジェシカが盆に乗せたストロベリーサンデーを二つ持ってきて、スパーダとティファニアの前に置いた。
さらに他の給仕の女の子がルイズの頼んでいた料理を運んでくる。
「不況らしいから3枚ずつチップだ」
スパーダは懐から取り出したエキュー金貨を給仕達の数に合わせて盆の上に置いた。
あまりに太っ腹なスパーダに給仕の女の子達からわあっと歓声が上がった。ジェシカも思わずびっくりしてしまう。
「あらぁ! 良かったわね、妖精ちゃん達! ごめんなさいねぇ、スパーダ君。こんな不況じゃなかったら手間をかけさせなかったのに」
「気にするな」
軽く相槌を打ってスパーダはスプーンを手にし、ストロベリーサンデーを口にする。
ルイズは店のお勧め料理に満足した様子で、貴族の子女らしい仕草で食器を動かしていた。
ティファニア初めて目にする不思議なデザート、ストロベリーサンデーに目を丸くしながらじっと見つめていた。
「どうした。いらんなら私がもらうぞ」
「あっ……いえ! い、いただきます!」
慌ててティファニアはスプーンを掴み、ストロベリーサンデーを口にした。
途端、今まで味わったことのない甘みが口いっぱいに広がっていく。
「……甘い」
ウェストウッドの村では決して味わえなかったであろう甘さに、不思議と手が動いて食べ進んでしまう。
「そうか。私も気に入っているからな。喜んでくれて何よりだ」
喋りながらもスパーダは手と口を動かしてサンデーを食していく。
「スパーダが甘党だなんて意外ね」
悪魔が喜び勇んで好物を食す姿なんて、見ていると微笑ましい。


その時、入り口の羽扉が開けられ、新たな客が姿を現した。
「いらっしゃいま――」
スカロンが出迎えようとしたが、入ってきた客の姿に唖然とする。
(ん……?)
スパーダのストロベリーサンデーを食していた手がぴたりと止まる。
この覚えのある悪魔の気配は……。
「すまない。部屋を一つ貸してくれ」
そして、聞き覚えのある女の声。
肩越しに後ろを振り返ると、そこには見覚えのある一人の女がぐったりとしている平民の女を抱えて立っていたのだ。
何より、女が背負っている一振りの剣の柄が目に付いていた。
「何よ、あの女」
「どうしたんでしょうか」
ルイズとティファニアの手も止まり、いきなり現れた女戦士へと視線が注がれていた。
その時、女戦士の視線がスパーダ達のテーブルへと向けられる。
スパーダの姿を目にした途端、目を見開いて驚いていた。

「お前は……!」
「しばらくだな。アニエス」
盟友の化身を預けられた女剣士と、魔剣士は再び邂逅していた。


※今回はこれでおしまいです。
219名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 21:23:37.89 ID:wlQpii2N
パパーダ乙です。
220名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 22:00:23.02 ID:ubQTea84
乙です
221名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 23:01:18.21 ID:a9Iv2Ggh
やったパパーダの人きてる。そして乙
>>109
皆川作品の大人は強すぎだからなぁw
朧にサラリーマン辺りは、只の人間なのに船も七万人もエルフも王もふるぼっこにしそう
モズさんも乗り物=獣で、敵は涙目だわな
222名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/14(土) 23:02:39.42 ID:a9Iv2Ggh
間違えた>>209
223Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/07/15(日) 00:24:15.59 ID:WCDiXVh9
皆さんお久しぶりです
遅くなりましたが、他に予定の方が無ければ0:30ごろから投下させてください
224Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/07/15(日) 00:30:28.67 ID:WCDiXVh9
 
―――神話や宗教は滅多に歴史家に影響を与えないが、少数の例外はある。
ハルケギニアにおいては始祖・ブリミルにまつわる伝説などがそうであり、フェイルーンにおいてはいくつもの宗教で語られる創世神話などがそれに当たる。
 
フェイルーンの歴史は、神々にとっての神である超越神エイオーが、現在トーリルの世界がある宇宙を創造したときに始まったとされる。
 
宇宙の全ては最初、霧のかかった影の国であり、やがてその影の本質から、双子の女神が生まれた。
それが夜の闇の女神シャアと月の光の女神セルーネイであり、彼女らが協力してこの世界や他の多くの天体を創造し、命を吹き込んだのだ。
 
その過程で、現在のトーリルの世界を体現する大地の女神ショーンティアが生まれた。
ショーンティアは地上に生命を育むための暖かさを願ったが、それについて双子の女神の意見は分かれ、彼女らは自分たちが生み出したものの運命を掛けて戦いを始めた。
 
セルーネイは宇宙を突き抜けて火の元素界へ達し、純粋な炎を使用して天体の一つに火を着け、ショーンティアが暖まるようにした。
シャアはそれに激怒し、宇宙にあるすべての光と暖かさを消し始め、セルーネイを手酷く弱らせた。
 
彼女たちの抗争によって戦争、病気、殺人、死などを司る多くの恐ろしい神々と、そして最初の魔法の女神であるミストリルが生まれた。
2人の女神の魔法の本質から生まれたミストリルは光と闇双方の魔法から成る神であったが、彼女は最初の母であったセルーネイを好み、最終的には両母の争いを平定して停戦を成立させたという。
その創世時代の終焉がどれだけ昔の事なのか、現在のフェイルーン人は知らない。
少なく見積もっても幾万年か…、あるいはそれ以上昔の事とも言われている。
 
確かなことは、彼女らの争いは今もなお続いているということだ。
シャアは未だに孤独を心に抱いて闇の中に潜みながら復讐を誓っており、一方セルーネイは現在では光と共に満ち欠けしながらトーリルの回りを巡っている。
彼女は多くの子らに囲まれ、更には他の世界からやってきた“もぐり”の神々とも友好を結んでいるという。
 
そう、フェイルーンの空に昇る月は創造神である光の女神そのものであり、セルーネイと呼ばれている。
かの地の賢者たちが注意深い観察や忍耐強い占術によって調べたところでは、彼女自身が一つの世界と呼べるほどに大きいらしい。
地上からは腕を伸ばした先にある人間の掌くらいの大きさにしか見えないが、トーリルの回りを約2万マイルも離れて回っており、その直径は2千マイル以上あるという。
セルーネイはとても明るく、満月になると薄い影を落とすほどだ。
彼女は弧を描いて空に広がりながら月を追いかける美しい数多くの発光体を伴っており、それらはセルーネイの涙と呼ばれている……。
 


225Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/07/15(日) 00:31:34.83 ID:WCDiXVh9
 
――――窓の外に見える2つの月を眺めながら、ディーキンはフェイルーンの創世神話にぼんやりと思いを馳せていた。
ルイズは既にベッドの中でぐっすりと眠っている。
 
ここがフェイルーンではない事は間違いないと既に確信していたので、作業の準備をしていた時にふと窓から見えた見慣れぬ月にもさして驚きはしなかった。
そもそもディーキンはこれまでにもアンダーダークや影界、地獄など、空にセルーネイの月が登ることの無い世界に行った経験があるのだ。
とはいえ2色の月が夜空に登るという光景は新鮮で、しばし見入ってはいたが。
 
「ウーン、あの2つの月はどんな神様なのかな…。
もしかして仲のいい双子の兄妹とかだったら、いい詩の題材になりそうな気がするね」
 
空に輝く2つの月を見ても、ディーキンはまだここがトーリルではない別の物質界または次元界だろうと結論することはしていなかった。
勿論、距離が離れたくらいで1つの物が2つに見えたり、色や姿が変わってしまったりはしないというくらいはディーキンも理解しているのだが。
セルーネイは伝承の通り単なる物体ではなく神そのものであり、そういった常識が通じるものかどうかは怪しいだろう。
 
聞いた話では、カラ・トゥアやマズティカなどトーリルにあるフェイルーン以外の文化圏では、フェイルーンとは全く異なる神々のパンテオンが信仰されているらしい。
ならば、それらの地方にはセルーネイの月が登らず、その地方で信仰されている神の月が空に輝いていても、あるいは空に月が無くてもおかしくはあるまい。
ゆえにハルケギニアがトーリルの中にあって異なる神々のパンテオンを信奉する別の大陸である可能性もまだ残っていると踏み、ディーキンは結論を保留していた。
 
「…ンー、歴史や神話の本っぽいのも何冊か借りてきたし、読んでみればわかるかな。
そろそろ勉強を始めないといけないね―――」
 
ディーキンはいい加減に月を眺めるのを止めて、借りてきた文献を読む作業に取り掛かることにした。
なんにせよ、明るい月明かりが窓から差しているのは助かる。
ルイズが寝ているので明りは灯したくないが、完全な暗闇で暗視能力頼みだと視界が白黒になってしまうし、それだといろいろとやりにくい作業もあるだろう。
やむを得ない場合はそれでも我慢して作業をするが、少しでも明りがあってくれればそれに越したことはない。
ディーキンには完全な暗闇でも見える暗視に加えて低光量の視野を改善する夜目の能力もあるため、このくらいの月明かりがあれば昼間と大差なくよく見えるのだ。
 
まずは図書館で借り出してきた十数冊の本の表紙にざっと目を通す。
いずれも、タイトルが全く読めない。
どうやら召喚時に《言語会話》に似たような呪文の効果は付加されたが、読み書きまでは可能になっていないらしい。
226Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/07/15(日) 00:32:43.21 ID:WCDiXVh9
 
……が、勿論そんなことは図書館で本を選んでいた段階で既に分かっていたことだ。
ディーキンは構わず、それらの中から一冊を手に取った。
 
途端にそれまで読めなかった本のタイトルが頭の中で意味を成し、読解可能になる。
これは《魔法感知》と同様、以前にスクロールで永続化して定着させておいた《言語理解(コンプリヘンド・ランゲージズ)》の効果によるものだ。
各地を旅する冒険者、特にバードとしては必須の呪文であり、いちいちかけなおさなくて済むのはとてもありがたい。
なお《言語理解》では魔法の文字は読めるようにならないが、ディーキンは同様に《魔法読解(リード・マジック)》も永続化しているため問題はない。
 
ディーキンは順番に手に取って本のタイトルを確認し直しながら暫し思案した後、まずはハルケギニア語の辞書と簡単な語学の学習書を通読することに決めた。
歴史や神話、魔法学などの本にすぐに取り掛かりたいのは山々だが、まずはこちらの言葉の読み書きを魔法に頼らずできるようにしておきたい。
《言語理解》の効果は決して万能ではない。
この呪文では書かれた文面や相手の話を理解できるようにはなっても、こちらが書いたり話したりできるようにはならないのだ。
加えて理解したい書面やクリーチャーに接触しなくては効力が発揮されないし、読む速度も決まっていて、スムーズに読めるというにはやや遅い。
会話については《言語会話》に似た効果を既に貰っているので問題なさそうだが、文書を満足に読めないというのは不便だろう。
例えば道の看板ひとつ読むのにも、いちいちそこまで歩いて行って触れなければならないということなのだから。
なによりも、現地の言葉もまともに分かっていない、というのではバードとしての立場が無い。
 
……が、しかし。
ここの言語を学ぶにしても、分厚い辞書や学習書などを《言語理解》の効果に頼りながら地道に読んでいたのでは習得に一体幾日かかるかわかったものではあるまい。
 
無論それに関しても、ディーキンには既に計画があった。
目の前に並べた二冊の本を早速開いて読み始める…、のではなく。本はそのまま荷物袋をがさごそとかき回して、一本のワンドを取り出す。
 
ワンドはフェイルーンではごく一般的なマジックアイテムの一つであり、秘術・信仰の別を問わず多くの呪文使いが頻繁に使用しているものである。
外見は指揮棒のように細い杖で大抵木や骨で出来ており、4レベル以下の呪文を一種類、50発分内部に蓄えて作成される。
蓄えられた呪文はその呪文を習得し得るクラスの術者ならば誰でも、実際に習得しているかどうかに関わらずワンドから解放できるのだ。
フェイルーンの呪文使いの多くはこういったアイテムを用意することで、レパートリーの不足を補ったり手数を増やして非常時に備えているのである。
より上級のマジックアイテムであるスタッフや、一回使いきりのスクロールなどにも同じことがいえる。
 
「エケス・マジャク・イーリス―――」
 
ディーキンはワンドを左手に持つと、呪文開放のためのワードを唱えた。
途端に頭がすっと冴えわたるような爽快感を伴う魔力の流れが、ワンドからディーキンの全身に伝わる。
 
呪文に意識を集中したまますっと右手を伸ばし、辞書の表紙に触れる……。
突然凄まじい量の知識が渦を巻いて、書物からディーキンの頭に流れ込んでいった。
新たな知識を得て突然世界が明るく広がるような新鮮な歓びと、急激な知識の流入による微かな眩暈を感じながら、ディーキンは本から手を離す。
227Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/07/15(日) 00:34:23.20 ID:WCDiXVh9
 
今使用したワンドには、《学識者の接触(スカラーズ・タッチ)》という呪文が込められている。
これを使用すればどんなに分厚い本であろうと開くまでもなく、数秒接触しただけで内容をすべて通読したに等しい知識を得ることができるのだ。
これまでの冒険が辛い戦いの連続であったため、戦闘時に有用な呪文を主に選択してきたディーキンは自力では習得していないが、非常に便利な呪文といえる。
 
本来なら自分の目でゆっくり読む方が断然好きだし、ワンドを使えば金もかかる。
しかし、今は早くここがどんな場所なのか知りたいし、知識不足では十分な仕事ができずルイズにも迷惑が掛かってしまうだろう。
他にもルーンを調べたり色々とやりたいことがあるので、本をのんびり読んでいるわけにはいかないのだ。
一息つくと更にもう一度ワンドを使用し、続いて語学の学習書の方にも触れて内容を吸収する。
 
これで、とりあえずこちらで使われている単語の綴りと文法に関しては、入門書を一回通し熟読した程度の知識は得ることができたはずだ。
あとは《言語理解》の助けを借りたり、これらを見返したりしながら本を読んでいけば、まあ簡単な文書くらいはさほど時間もかからずに……。
 
「………ンン?」
 
そこまで考えて、ディーキンは妙な事に気が付いた。
自分は今、“読んだ”内容に関して詳しく思い返そうともしていないしもう本に触れてもいない。
なのに何故、目の前にある十数冊の本のタイトルが自然に読めているのだろう?
 
《学識者の接触》はあくまでも一回通し本を熟読したに相当する知識を与えてくれる魔法であり、完璧な記憶力や習得能力まで提供してくれるわけではない。
最近は竜の血に目覚めたせいか以前より妙に頭が冴えてきた気もするが、とはいえ天才的と言えるほどのレベルでない事は自身が一番よくわかっている。
辞書と学習書を一回通読した程度で未知の言語を母国語同然のレベルで習得できるような常識外れな知能など、自分にあるはずがないのだ。
 
「ウーン……、これももしかして、ゲートを潜った時の効果かな?
タンズの魔法みたいなものかと思ってたけど、勉強の役にも立つなんてスゴイや!
これならディーキンは言語学者にもなれるかもね……。
よーし、ボスのところに戻るまでに50ヶ国語くらい覚えてディーキン・ザ・スカラーって呼んでもらおうかな。イッヒッヒ!」
 
以前に砂漠に埋もれたアンドレンタイドの地下遺跡を冒険したとき、ディーキンは古代の偉大なミサルの魔力の幾許かを目の当たりにした。
それには都市部全体に掛けられた通訳の魔法も含まれていたのだ。
アンドレンタイドがまだ空中にあった頃には、千の国から人々が訪れたという。
そこではミサルの魔力によってすべての人々が相手の言葉を自分の母語として理解でき、取引や知識の交換を不自由なく行っていたらしい。
都市が墜ちて砂漠に埋もれた後でもその機能が生き残っており、自分達を捕えたアサビ族とも支障なく会話ができたことにディーキンは感心したものだったが…。
 
ミサルの魔力は都市すべてに作用する大規模なものだったが、しかし都市から出れば消え失せ、後に知識を残してくれるわけでもない。
アサビと意志を疎通したからと言って、彼らの言葉を習得できたわけではないのだ。
対してルイズの召喚によって付与されたこの力は、召喚された生物一体に対して働くだけだ。
だが、ほんのわずかに学んだだけで未知の言語を習得することさえ可能にするとは…。
部分的に見ればミサル以上かも知れないその効果に、ディーキンは特に感心し、すっかり舞い上がっていた。
228Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/07/15(日) 00:35:31.20 ID:WCDiXVh9
 
……なんだかディーキンの工夫とこの素晴らしすぎる効果とのコンボのせいで、どこぞの青い髪の少女とのイベントが潰れてしまったような気もするが……。
そんなことは当のディーキンには知る由もないし関係もないのである。いや多分。
 
それはさておき。
 
「♪〜………、ア、いけない」
 
舞い上がってはしゃいでいたディーキンは、思わずリュートを鳴らして……、同じ部屋でルイズが寝ていることを思い出して慌てて手を止める。
そう大きな音では無かったとは思うけど……、独り言を言ってはしゃいだり笑ったりしていたせいで起こしてしまってはいないだろうか?
ルイズの不機嫌な顔を想像してそうっと振り返ってみた……が、彼女はまるで何の変化もなくぐっすりと寝ていた。
……どうやら、彼女は随分と寝つきがいいらしい。
 
「ンー…、ルイズは冒険者には向いてないっぽいの」
 
アンダーマウンテンあたりでこんなのんきに寝ていたら、目が覚めたころには首と胴体が泣き別れになっていそうである。
ディーキンはほっとしてそうひとりごちると顔の向きを戻した。
 
予想外の速さで言語を習得できたのは嬉しいが、とはいえ普通に読書を愉しむのは後回しだ。
ワンドのチャージはまだ十分にあることだし、借り出した本を早いところすべて読破してしまおう。
ある程度状況の把握ができ次第今後の方針なども考えなければならないし。
加えてルーンの偽装もしなくてはならないし、興奮は収まらないがちゃんと眠って呪文の力も回復させておかなくてはならない。
翌朝になればルイズから頼まれた仕事もあるのだ。
 
ディーキンはワンドを左手に握りなおすと、早速残りの本に取り掛かった……。
 



 
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「……このイルククゥが許しても、大いなる意志がお前のちびさ加減を許さないのね。
その青い髪は何なのね、人間の髪の毛でそんな色聞いたことないのね。
っていうか風竜みたいな色は生意気なのね、お前はジャイアントモールみたいな茶色の毛でも生やしてればいいのね。
ところでおなかがすいたのね、召喚主として私の食事に責任を持つべきなのね〜……」
 
所はやや変わって、ここはルイズのクラスメイト・タバサの私室である。
先程からベッドで寝ている彼女に向かって窓の外から首を伸ばし、呪詛めいた言葉を吐きまくっているのは、彼女が召喚した風韻竜のイルククゥだ。
どうやら韻竜という偉大な種族として立派なメイジに召喚されていると思っていたのに、生意気でちびな少女が主だったことが気に入らないらしい。
 
その後、実は寝ていなかったタバサが唐突にベッドから起き上がってビビったり、
絶滅したはずの韻竜だとばれては面倒だから今後喋るなと命じられて抗議したり、
しかしタバサの迫力に負けて結局押し黙らされたりと一悶着あった。
229Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/07/15(日) 00:37:10.17 ID:WCDiXVh9
 
「……う〜〜、……あっ、そうなのね!
ほら、さっき召喚されてたちっちゃい子、あの子も喋ってたじゃない。
ちょっと騒ぎにはなってたけど誰も喋るなとはいわなかったわ、なのにイルククゥはダメなのね?
これは明らかに不公平なのね!」
 
タバサとの<威圧>合戦には負けたものの、このままずっと喋れないなんて冗談ではないイルククゥは、今度は先ほど召喚された別の使い魔を例に挙げて<交渉>を試みる。
一方その言葉を聞いたタバサは、表情こそ変わらないものの少し首を横に傾げた。
 
「………何のこと?」
「むっ、さてはとぼける気なのね?
ほら、さっきあんたと同じくらい変な桃色の髪の奴が呼び出してた子よ!
お前らみんなであれだけわいわい騒いでたのに、忘れたとは言わせないのね!」
 
……ああ、ヴァリエールの使い魔の事か。
突然予想外の話を持ち出した使い魔にタバサは内心で溜息を吐いた。
 
確かに亜人の、しかも未知の種類の使い魔となれば、非常に珍しいし危険だとみなされる恐れも高い。
だが、ヴァリエールはこのトリステインでは有数の名門貴族の娘だ。
その使い魔が珍しいとか危険だからと言って、奪い去ったり処分したりされることはまず考えられない。
一方自分は、何の後ろ盾もないどころか本国からの命令があれば逆らえない身分だ。
韻竜を使い魔にしたなどと知れたら、気まぐれな従姉妹や憎むべき叔父からどんな要求をされるか分かったものではない。
 
……しかし、それをこの子に委細余さず説明する必要は少なくとも今はないだろう。
ここは亜人と韻竜の差異にだけ言及して、要求を退けておこう。
 
「……状況が違う。あの子は亜人であなたは竜」
 
それを聞いたイルククゥはますますぷんすかして抗議を続ける。
 
「きゅいきゅ〜い! 違うのね、騙されないのね!
あの子は見たことないおかしなちびすけだけど、確かに竜なの。イルククゥがその匂いを間違うはずが無いのね。
……っていうか、イルククゥを一目で韻竜だって見抜いたお前がそれに気付いてないっていうの?
嘘くさいのね、誤魔化そうとしてもそうはいかないわ!」
 
…あの子ども(だと思う)の亜人が、竜?
 
「……本人はコボルドだと言っていた」
「お前は思ったよりおめでたいやつなのね、あんなコボルドがいるわけないのね!」
「あんな竜はもっといない」
 
確かに、あの亜人は本で読んだコボルドとはまったく姿が違っていた。
念のため部屋に戻ってから挿絵付きの図鑑を見返してみたが、姿も性格も明らかに異なるようだった。
しかしなんとなく犬っぽいところもあったし、未知の亜種とかかもしれない。
少なくともコボルドではないにせよ亜人だというほうが、ドラゴンの仲間だというよりは無理がない。
 
「火竜や水竜だって風竜族とは随分姿が違うし、魔法で姿を変えることもできるんだから見た目で判断しちゃいけないのね。
いい、コボルドってのは土臭くて犬臭くて淀んだ水みたいな奴なの。
あの子からは私たち竜の力強い匂いと、新鮮な葉っぱみたいないい香りがしてたのね。
イルククゥは自分の鼻を信じるのね!」
「……………」
230Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/07/15(日) 00:38:27.69 ID:WCDiXVh9
 
タバサはじっと押し黙って、今の話を検討する。
この様子からすると、喋れなくなるのが不満で無理に理屈をでっちあげてごねているだけではなさそうだ。
今日は本当に興味深い事が色々と起こる日だ。
絶滅したはずの韻竜が生きていて、自分の使い魔になったというだけでも随分驚かされた(表情は変えなかったがちゃんと驚いていたのだ)というのに。
あの使い魔が本当にドラゴンの一種なのだとすれば、それ以上に興味深く、知識欲が刺激される。
この子の言うように魔法で竜の姿を変えているとすれば、先住の風の使い手?
しかし風韻竜ではなさそうだし、あんな変わった亜人になって、コボルドだなどと名乗らなくても……。
 
「―――きゅいきゅい! ちょっと、聞いているのね!?」
 
……今は目の前できゅいきゅいと話を続ける煩い使い魔を黙らせるのが先か。
 
こんな風にいつまでも窓に張り付かれて騒がれていたのでは、既に夜とはいえいずれ誰かに見咎められ不審がられてしまうかもしれない。
それに今は一応、空気の流れを魔法で若干操作して声が漏れにくいようにしてはいるが、建物を伝わる音や振動は風の操作では遮断できないのだ。
暴れて窓枠に首をガンガンぶつけられでもしたら振動で近くの部屋の生徒に不審がられる恐れがあるし、第一壊れたら困る。
 
では、どうやって黙らせよう。
杖で殴るなり魔法をぶちかますなりするか?
もう一度無言で威圧してみるか?
……いや、納得させるのは難しいにせよ、一応は理屈を説いてからでなくては横暴に過ぎるか。
 
「……彼が竜かどうかは知らない。けど、要は他人からどう見られるか。
彼は亜人に見え、あなたは竜に見える。それが問題」
「きゅい!? つまり外見で差別するの!?
不公平なのね、失礼なのね、私みたいな美少竜を捕まえて『外見がダメ』なんて!
イルククゥは韻竜の誇りに掛けても断固抗議……」
 
 
―――――イッヒッヒ! ♪〜……
 
 
そんな風に両者が議論していると、下の部屋から突然犬がきゃんきゃんいうような笑い声と、リュートの音色が聞こえてきた。
別段大きな音でもなく普通の人間ならばほとんど聞こえもしなかっただろうが、優秀な風の使い手であるタバサとイルククゥの聴覚は鋭いのだ。
あの声が今丁度話題に上っていたヴァリエールの使い魔のものだということはしっかりと認識できていた。
 
「きゅい! あの子はちょうど真下の部屋にいるみたいね。
丁度いいの、同じ竜族としてご挨拶がてら私の扱いの不適切さについて話し合うのね」
 
そう言って下に向かおうとする使い魔を、タバサは無言で杖で殴った。
231Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/07/15(日) 00:39:45.88 ID:WCDiXVh9
 
「きゅい、痛い! なにするのね〜!」
「……もう遅いのに迷惑。
それに、彼があなたと同じ韻竜だとしても、あの部屋で話せばヴァリエールにもあなたの正体が漏れる」
「……うう〜〜」
「……明日になったら、私が折を見て話をしてみる。
彼が本当に竜なら、人のいないところであなたも一緒に話せばいい。
あなたの処遇についてもその時に考える、とにかくそれまでは話しちゃ駄目」
「きゅい、本当? ……わかったの、それなら今夜一晩は我慢してあげるのね!」
 
イルククゥはようやく納得した様子で口をつぐむと、眠るために適当な場所を探すために中庭へ向かって行く。
タバサはそれを見届けると、小さく溜息を吐いて明日の予定を考えながら、自分もベッドに潜り込んだ……。
 



 
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「……うう〜〜ん……」
 
ディーキンは、考えをまとめようと部屋の中でウンウン頭を捻っていた。
羊皮紙にメモを取ろうかと思ったが、考えがまとまってから書かないと紙がどんどんなくなってしまいそうだ。
傍には、チャージが半分ほどに減ったスカラーズ・タッチのワンドが転がっている。
借りてきた本は既にすべてワンドの力を借りて読破したが、それによって得られた情報は非常多く、かつディーキンにとっても予想外の事が多々あったのだ。
 
「ディーキンには考えることが多すぎるの。
ボスやナシーラでもいたら、きっとディーキンと一緒に考えてくれるのに」
 
一人で考えをまとめるのは、正直言って辛い。
以前のように自信が無くて誰かに依存したいというわけではないが、しかし己の知識には限りがあるのだ。
そうでなくても自分一人で考えていては、重要なことを見落としたり考えが偏ってしまう恐れがある。
誰かに意見を求められれば、知識や知恵を貸してもらえれば……。
 
ルイズは……無理だろう。
使い魔になったのだし隠し事をする気ないが、先程の話でさえ疑われていた様子だったのにいきなりこんな話を振っても取り合ってもらえるとは思えない。
オスマンやコルベールならどうだろうか。
役に立つかはわからないが、話を聞いて相談に乗るくらいはしてくれるかもしれない。
…しかし重要な問題として、ルイズは今寝ているし、オスマンもコルベールも今ここにはいない。
232Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/07/15(日) 00:41:14.12 ID:WCDiXVh9
 
誰か、今すぐ相談できる相手はいないものか。
それもできれば多くの知識を持つ、賢明で見識の深い相手がいい。
スクロールケースでも漁ればボスをはじめ仲間たちと通信ができるような品があったかも知れないが、こんな未知の場所で相談ひとつのために消費するのは当然却下だ。
となると……。
 
「………ア、あの人がいたの。
たしか、元はウィザードだったっていってたし、こういう時話すのにはいいかも。
いつも相談すると嫌がるけど……、他に相手もいないしね」
 
ディーキンは荷物袋の武器入れをごそごそと探ると、一本のダガーを抜き出した。
鞘も持ち手も、刃までもが黒い。
しかも、見るものにまがまがしさを感じさせる赤黒い仄かな輝きが刀身に宿っている。
 
しかしディーキンは気にした様子も無く、抜いたダガーに向かって話しかけた。
 
「こんばんは、久しぶりだね。
なんだか顔色が赤黒いよ、あんたは元気なの?
具合が悪いなら磨いてあげようか?」
「やあ、コボルド君。こんばんは。
手入れはいつでも歓迎です、使ってくれるならなお結構。
……おや、今日は君の“ボス”は一緒じゃないのですか?」
 
―――彼の名は『灰色の』エンセリック。
以前にアンダーマウンテンで手に入れた、魔術師の魂が宿った武器である。
 
233名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/15(日) 00:50:07.54 ID:oCQTCerZ
おぅ、新鮮なディーキンの投下だ!
支援するぜ。
234Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/07/15(日) 01:02:53.14 ID:WCDiXVh9
 
スカラーズ・タッチ
Scholar's touch /学識者の接触
系統:占術; 1レベル呪文
構成要素:音声、動作、物質(羊皮紙の断片と一つまみの火口)、焦点具(薄い円板状の水晶)
距離:自身
持続時間:精神集中の限り、最大で術者レベル毎に1ラウンド(途中解除可能)
 術者は本や巻物に僅かに接触するだけで、あたかも完全に読み通したかのようにそれに含まれる知識を吸収する。
含まれる情報量やページ数がどれだけ多いかに関係なく、一冊あたり1ラウンドのペースで読むことができる。
この呪文によって術者はその文面を実際に一回通し熟読したのに等しい知識を得ることができるが、完全な記憶力まで得られるというわけではない。
術者が読めない言語で書かれた文章や魔法の本に対しては効果が無く、この呪文によって魔法のスクロールを発動したり、呪文を準備したりすることはできない。
235Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia:2012/07/15(日) 01:05:34.85 ID:WCDiXVh9
やや短いですが、今回はこれで終わりです
ご支援ありがとうございます

スカラーズ・タッチなんかは現実にあったら超便利ですよねえ
一夜漬けしたい学生から論文読み漁りたい研究者まで
にしても未だに初日の夜が明けない……どうなってんだ
次回はシエスタに会うくらいまでは行けるかなあ
236名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/15(日) 02:27:23.22 ID:bczvvlIE
乙です
237名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/15(日) 04:35:42.89 ID:ruxR+ger
>>210
エレ姐は女だろが
238名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/15(日) 09:50:42.58 ID:aB9aRu8g
>>218
ネヴァンって女襲うっけ?
239名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/15(日) 11:56:50.68 ID:ZcEUfh0f
>>237
必ず戻ってくるブーメラン作った体がガタガタな兄貴がいるだろ?
240名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/15(日) 12:01:58.27 ID:18rmWjoj
ブーメランねえ。レッドキラーとケンドロスならどっちを出すべきだろう
241名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/15(日) 13:36:51.48 ID:v9koqbdQ
ハルケギニアに流れ着いたシエスタの曾祖父は、平行世界の流竜馬の一人で、タルブ村には両腕か吹き飛んだ真ゲッターが…とか。
242名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/15(日) 14:24:26.36 ID:ruxR+ger
>>239
ディアス兄さんか
死んだ後のレン・フウマ辺りで良いんじゃないか
ギーシュ殺されかねんが
243名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/15(日) 17:07:45.30 ID:0ainTbsu
実戦空手道とブーメランを組み合わせた全く新しい使い魔だとぉ!?
244名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/15(日) 19:27:10.56 ID:TUhBrbzQ
>>235
投下乙です。
245名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/15(日) 19:35:19.55 ID:Bx6uLKQf
セイラさんとかウーマンリブ的な女キャラ召喚して
「それでも貴族ですか、軟弱者!」とギーシュにビンタして欲しい
246名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/15(日) 21:06:49.02 ID:5pmkO05Z
ありそうでないのが「BOING」のボインマスターこと椿座丸の召喚。
まあアイツ呼んだら、
大隆起=ボインパワーで世界中(の男)がピンチ 
    or ハルケギニアの大地が「おっぱいの形に」隆起して世界滅亡
ルイズ=ボインパワーを封じる”虚無の胸”の持ち主
座丸=胸にルーンが刻まれる「記すもはばかられる」使い魔
オスマン=尻に浮気して救世主の資格を失った元ボインマスター候補
ワルド=(マザコンだから)座丸のライバル・万華竟ポジション

てな風になりそう。
  
247るろうに使い魔:2012/07/15(日) 22:21:23.82 ID:NPP/MseU
皆さんこんばんわです。
予約がなければ30分頃に投稿しようと思います
248名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/15(日) 22:24:38.28 ID:6GtFnU2Q
OK! Come on!
249るろうに使い魔:2012/07/15(日) 22:30:32.55 ID:NPP/MseU
それではどうぞ。


 ラ・ロシェールでの一夜が明け、朝日が昇る前の頃、剣心は目が覚めた。
 昔からの習慣なのか、どうにもベットは寝付けない。向かい側のギーシュはまだ熟睡中だった。
 明日まで足止めされるとはいえ、起きてしまった以上はしょうがない。とりあえず、あまり音を立てないように剣心は、普段の着物に着替え始めた。
 そんな折、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。こんな早朝に誰かと思い、ドアを開けるとそこには、爽やかな顔をしたワルドがいた。
「おはよう。使い魔くん」
「どうもおはようでござる。拙者に何か?」
 ただ挨拶をしに来たわけでは無いだろう。何か用でもあるのだろうか。
すると、ワルドは変わらぬ笑顔でこう言った。
「君は、伝説の使い魔『ガンダールウ』だそうだね?」
「―――おろ?」
 剣心は不思議そうな表情でワルドを見た。そのことを知っているのは、オスマンと自分くらいなものだ。このことは他言無用だったし、当の約束をつけたオスマンがそれを破るとは、とても考えられない。
「ああ、僕は歴史に興味があってね。フーケを尋問したときに、彼女が君の事について、随分と語ってくれたからね。僕自身も君のことを色々と調べた結果、『ガンダールウ』にたどり着いたワケさ」
 どこか言い訳がましい口調だったが、矛盾は取り敢えずない。フーケは元学院長の秘書を務めてた位だし、ガンダールウについても知ってておかしくは無いだろう。
 だがそれだと、隠す意味は無いんじゃないのか? と心の中でオスマンに問いかけながら、剣心はそんな事を言いにワルドが来たわけじゃないだろうと思った。

「それについて、拙者に聞きたいことでもあるでござるか?」
「いや、かの『土くれ』を捕まえたという、君の実力が知りたくてね。一つ手合わせ願いたい」
 そう言って、ワルドは好戦的な笑みを浮かべながら、杖を取り出した。
剣心は一瞬、面倒そうな顔をしたが、丁度手にもっていた逆刃刀をワルドの前に見せ、その刀身を晒した。
「力比べや見せ合いのために、振るう剣を持ってはござらんよ」
 それを聞いて、少し考え込むようにワルドは俯くと、次にこう言った。
250るろうに使い魔:2012/07/15(日) 22:32:04.14 ID:NPP/MseU
「君は、ルイズから聞いたのだが、何でも『異世界』から来たそうじゃないか。なら、この世界の戦い方も、君の見てきたものとは一味違う訳だ。ルイズを守る使い魔としても、きっと参考になると思うよ」
 ワルドの眼は既に、闘志でギラついていた。どうあっても闘いたいらしい。こういう手合いは納得するまで、しつこく付きまとわれるだろう。
 どうしたものか、と考えていると、いつの間にか起きていたギーシュも、好奇の目でこちらを見ていた。
「ケンシンと子爵が決闘? こりゃあ面白いな……どうなるんだ?」
「な、彼の期待に応えてあげるためにも、ここは一つ」
 剣心は、はぁ…とため息をついた。最早闘わなければいけないような雰囲気だ。逃げ場はない。仕方なく渋々といった感じで、剣心は承諾した。
「…場所はどこで?」
「この宿は昔、アルビオンからの侵略を防ぐための砦だったのさ。中庭に練兵場がある」
 そう言うと、ワルドは時間と正確な場所を告げ、その場を後にした。
 隣では、こうしちゃいられないとばかりに、ギーシュが服を着替え始め準備を整える。既に行く気満々だ。
 すると今度は、面白そうじゃねえかと、デルフの声が聞こえた。
「今度の決闘には、俺を使ってくれよ。相棒の期待に見事応えてやるぜ!!」
 立て掛けられたデルフの言葉に、剣心はもうどうにでもなれと半ば諦めた感じで呟いた。



     第十五幕 『仕合』



 時刻は過ぎ、場所は練兵場―――。
 練兵場とは名ばかりの、今やただの広い物置と化したこの地で、剣心とワルドは数十歩離れて向かい合った。
「昔…と言っても君には分からんだろうが、かのフィリップ三世の治下では、ここで良く貴族が決闘したものさ」
 懐かしむような口癖で、ワルドは言葉を続ける。
「古き良き時代、王がまだ力を持ち、貴族たちがそれに従った時代…貴族が貴族らしかった時代…名誉と、誇りをかけて僕たち貴族は魔法を唱えあった。
でも、実際は下らないことで杖を抜きあったものさ。―――そう、例えば女を取り合ったりね」
 最後の行に、剣心はピクリと反応する。彼が何故こうまでして、決闘を臨んだ理由が、何となく分かったからだ。
 そしてそれを肯定するかのように、パタパタとこちらに向かう足音が聞こえてくる。
剣心がそちらに目をやると、慌てた様子のルイズがいた。
「立ち会いには、それなりの作法というものがあってね、彼女には介添え人になってもらうように言っておいた」
「ちょっと…ワルドもケンシンも何やってんのよ!」
 驚いた口調でまくし立てるルイズの言葉に、ワルドは冷静に返す。
「彼の実力を、ちょっと試したくなってね」
「もう!! 今はそんなバカなことやっている時じゃないでしょう!」
「そうだね。でも貴族というヤツは厄介でね、強いか弱いか、それが気になるとどうにもならなくなるのさ」
 それを聞いたルイズは、今度は剣心の方を見て言った。
251るろうに使い魔:2012/07/15(日) 22:33:48.34 ID:NPP/MseU
「ケンシンも、こんな馬鹿げたことは止めなさいよ!!」
 剣心は、困ったように頭を掻いた。未だに本心はルイズの言うとおり、できればこんなことは御免被りたい。これが発端で変ないさかいができたら、後に面倒を生むかもしれない事を剣心はよく知っているからだ。
 だが、どうにもワルドは見逃してはくれない雰囲気を漂わせている。そうしてあれこれしているうちに、今度はギーシュが、キュルケとタバサを連れてやって来た。
「へぇ、子爵とダーリンが? 面白そうじゃない。応援したげるわ、ダーリン!!」
「興味ある」
「どっちが勝つか、賭けないかい?」
 完全にお遊び気分の三人に、ルイズは顰めっ面をつくる。これでもう、何が何でも決闘を受けなくてはいけないような空気になってしまった。

 そして、その様子を見たワルドが、毅然とした構えで杖を掲げた。
「これ以上、観客が来ないうちに、始めるとしようか」
「……仕方ないでござるな」
 剣心は、心の中でルイズに謝りつつ、腰の柄に手を掛け―――。
「オイ、相棒………」
 背中に背負っている鞘から、デルフの声が聞こえてきた。心無しか、刀身全体を揺らして訴えているようにも見える。
 剣心は、大きなため息を付きながら、逆刃刀ではなくデルフの柄を掴んで引き抜き、そして、両手持ちで剣先を真っすぐ突き立てる『正眼の構え』を取った。

「―――――――?」
 それを見て、ワルドやルイズ達は首をかしげる。構えはいい。ただ、剣の向きがおかしい。
何故か、剣心はデルフの刃の部分を自分に向け、峰の部分をワルドに向けているのだ。
「相棒、目が見えねえのか…? 刃をてめえに向けてどうするよ」
 デルフの呆れたような問いに、しかし剣心はそれを無視する。
 この構え、緋村剣心をよく知る人間であれば、これを見ても何の疑問も持たないことだろう。むしろ当然だと思うほどだ。
 しかし、会って間もないルイズ達、特に昨日今日知り合ったワルドからしてみれば、その構えは『舐められてる』以外に感想は出てこない。
 ピクリ、と眉を釣り上げてワルドは言った。
「それは一体どういうつもりだい? 僕を侮辱しているのかね?」
「拙者の剣は、手加減というものが効かぬ故、せめてもの予防策でござる」
 正直に剣心は話した。元より本気を出すつもりはないが、それでも事故は起こりうるものだ。あくまで「試合感覚」で挑んできている剣心からすれば、至極まともな言い分だ。
 しかし、これは試合でなく決闘。貴族の誇りがあるワルドは、やはり納得がいかない。

「まあいいさ、なら君の本気を引き出してやるまでだ」
 それを合図に、ワルドは一足飛びで剣心の間合いへと入った。
 常人には見えない動き、そしてそのまま素早く杖を突き出すが、剣心はそれを難なく受け流す。
 間髪入れずに二発目三発目が繰り出されるが、それを最低限の動きと剣戟であっさり回避した。
 暫く打ち合う二人を見て、おもむろにキュルケが口を開いた。
「ダーリンって、あんな感じだったけ?」
「やっぱり、君もそう思うかい?」
 キュルケの疑問に、ギーシュも反応した。会って間もないとはいえ、剣心の強さを間近で見てきた彼らにとって、今の剣心の動きには「凄さ」が感じられない。
 ギーシュ達の知る剣心の動きは…もっと速い、もっと飛ぶ。そして何をされたのかすら分からないような駿足の動きと、柱の如き腕を飛ばし風を薙ぐ強力な剣腕を持っている。
 しかし、それが今遺憾無く発揮しているとは言い難い。
 ギーシュ達は、それを持ってワルドと死闘を繰り広げるかと思っていたため、案外しょっぱい剣の打ち合いに拍子抜けしたのだ。

 だが、対するワルドも、まだ魔法の一つも唱えてはいない。恐らくは、お互い探り合いの小手調べの段階なのだろう。それなら、今の状況にもまだ納得が―――。
252るろうに使い魔:2012/07/15(日) 22:35:42.20 ID:NPP/MseU
「彼、まだ一度も反撃してない」
 先程から目を逸らさず見ていたタバサが、不意にそう言った。
 その意味が分かったキュルケが、ハッとした顔でタバサを見た。置いてけぼりを喰らったギーシュは、どういう意味? といった表情をした。

「それって……子爵が強いから反撃できないんじゃなくて……」
「逆」
 それだけで通じる二人の会話に、ギーシュの頭の上には?マークで一杯だった。
「ねえ、僕にも教えてくれよ、のけ者にしないでさ!!」
 ギーシュの悲痛な叫びに、キュルケはため息を付きながら、未だに打ち合う剣心とワル
ドの方へと指差した。
「あんたもさ、ダーリンとは一度決闘したでしょ?」
「うん、だから?」
「だったら、二人の顔をよく見なさいな」
 言われるがまま、ギーシュは表情を見やる。しかし、やっぱり良くわからない。
一刻ほどそうして固まっていたギーシュに、キュルケは呆れた顔をした。
「あんた、本当にグラモン家の息子? あたしですら気づいたのに鈍いわねぇ〜」
「う、うるさいな! 分からないものはしょうがないじゃないか!」
「子爵の表情、あの時の貴方と同じ顔してる」
 タバサの助言に、今度はギーシュもハッとした。そして改めて二人を見比べる。
 涼し気な顔で打ち合う剣心に対し、ワルドは苦い顔で杖を振るう。そう言えば、まだ峰の部分すらも変わってはいない。
 メイジは魔法が本分。だから呪文の一つも唱えていない今のワルドと、剣心との総合的な強さの比較にはならないが、
少なくとも剣術という点においては、ワルドより剣心の方が圧倒的に上だということが、これで露呈されたのだ。
 つまり…と恐る恐るギーシュは、キュルケ達の方を向いた。
「彼は…あの子爵を相手に…あしらっていると…?」
「そのようね……」
 レベルの違う攻防に、キュルケ達は唖然として見ていた。

 反撃しないのは、そもそもする必要が無いから。その気になれば、いつでも隙など作れ
る。そう思わせるような体捌きに、ワルドは顰めっ面をつくる。
 やがて、大きく剣と杖を弾き、二人は距離をとった。
「…成程、あくまでもその向きを、入れ替えるつもりはないようだね…」
「いや、拙者お主の技量には、正直に感服しているでござるよ」
 そう言う剣心の言葉に嘘偽りはなかった。彼は出来る。身のこなしや仕草から只者ではないことは知っていたが、実際に剣を交えるとよくわかる。
 魔法という力に頼らず、剣術の基礎をちゃんと修めた動き。体術や剣腕も申し分なし。並大抵の敵なら、まず寄せ付けることはないだろう強さを持っている。
 もし明治の世に生まれていたら、かつて「喧嘩屋」だった親友の斬左と同じくらい、その名を広めていた筈だ。
253るろうに使い魔:2012/07/15(日) 22:38:05.59 ID:NPP/MseU
 しかし、そんな剣心の評価も、今のワルドには届かない。杖を掲げ、改めてこう言った。
「では、こちらも少し本気を出すとしようか?」
 刹那、再び剣と杖が交わる。だが今度は少し違う。剣戟を入れながら、謳うようにワルドは呪文を唱え始めた。
「デル・イル・ソル・ラ・ウィンデ……」
「相棒、魔法がくるぜ!!」
 デルフの警告にも、特に反応せず剣心は切り結ぶ。やがて、呪文を唱えきったワルドが、ニヤリと薄ら笑いを浮かべると―――。
ボンッ!! と空気の塊が剣心に直撃した。 
突如起こった空気の流れに逆らわず、剣心の身体は宙を飛び、デルフとは離れ離れになり、そしてそのまま樽の山へと衝突した。
「終わりだな……」


 その、あまりの衝撃的な結末にギーシュ達はポカンと口を開けたままだった。
「あれ……負けちゃったよ…彼…」
「え、嘘でしょ…?」
 キュルケも、呆気にとられた様に剣心を見る。しかし、剣心は吹き飛ばされたままピクリとも動かない。
 本気で、剣心は敗けたの? と、信じられなさそうにキュルケは、隣にいるタバサを見て……彼女の様子が、尋常でないことに気付いた。
「違う、負けじゃない。引き分け」
 言葉を探るように告げるタバサは、ワルドの方をキュルケ達に指差した。よく見ると、ワルドも面食らった顔でただ突っ立っていた。――その手には、杖が無い。
 暫く周りを見渡して、ようやく杖があらぬ方向へと突き刺さっているのを見つけた。

「この勝負、引き分けということで良いでござるな?」
 ワルドが振り向けば、埃を払いながら立ち上がる剣心の姿があった。どうやら、最初からこういう風に持ち込むつもりだったのだろう。ワルドはそう考えた。
 まんまと嵌められた。だが、確かに勝敗は決した。これ以上は野暮というものだろう。ワルドは、苦笑いしながら飛んだ杖を手に取った。
「はっは、これを狙ってた訳か…まあ、今回は分けという事にしておこうじゃないか」
 と、勝手に自己解決する彼等を尻目に、キュルケ達は何が起こったのかすら全く分からなかった。
「ど、どういうこと…」
 再び、キュルケがタバサに聞くと、相変わらず一番驚いたような様子で、彼女は答えた。
「彼…吹き飛ばれる瞬間に、剣で杖を弾き飛ばした」

 その言葉に、えっ…と、キュルケとギーシュは顔を見合わせる。
「へえ、成程」
 ギーシュは、能天気にそれで納得したようだが、キュルケは…タバサの様子から尋常でないことが見て取れた。
 彼女が、こんなに驚く顔をするのは、滅多にないと言って良かったからだ。
「それで、他に何かあるの…?」
「………」
 キュルケの問いに、タバサは答えない。
 気づけば、タバサの横顔から冷や汗が出ていた。相手は最上級の『スクウェア』クラス。
それも護衛隊の隊長だ。幾らワルドが手加減しているとはいえ、あの一瞬で杖を弾き飛ばすなんて芸当、まず出来ない。
 彼は、あの呪文…というより、殆どの呪文に対して初見のようだった。対抗策や防衛に関しては無知だと言っていい。あっさり彼が吹き飛ばされたのも、それが一因だ。
なのに、呪文の発生と同時に、瞬時にどんな魔法かを予想して、即座に反撃に移った。コンマ数秒ともいえる戦いの中で…。
 これがどれだけ凄まじいか、普通のメイジでも分からないだろう。でも、タバサにはそれがはっきりと理解できた。
 有り得ない、あの速さは…。それも魔法も無しに…。
254るろうに使い魔:2012/07/15(日) 22:39:29.12 ID:NPP/MseU
(これが……飛天御剣流…)
 タバサは驚愕したのだ。常人には考えられない反射神経、鋭い勘、そして唱えきってからの呪文の発生『より』も速いその剣速に。
 そして、無意識に体を震わせた。これを自分も極められたら、あの憎き仇を…奪われた大切な人を…自分の目的を、果たすことができるのではないかと。


 さて、そんな事は露知らずの剣心は、無造作に刺さったデルフを戻そうと、その柄に手を取った。
 そんな中、ルイズが心配そうな顔でやって来た。しかし、その前にワルドに腕を掴まれた。
「な、何よ。ワルド」
「なに、彼は疲れているだろう。無理を言ったからね。暫く放っておけばいい」
「でも、そんなこと……」
 だが、ワルドは有無を言わさず、そのままルイズを連れていった。時折不安げな表情で剣心を見たが、特に抵抗することなくワルドの後を追った。
 剣心は、そんな彼女にどこか引っかかりを覚えながらも、今度は不平を漏らすデルフの声に耳を貸した。
「なあ相棒…なぜ本気でやらねえ…何で俺の時だけこんな調子なんだよ…贔屓だろ…」
「まあまあ」
「くそ…もういいさ…どうせ俺は逆刃刀になんざなれねえよ…チクショー…」
「まあまあ」
 ぼやくデルフを鞘に納めながら、剣心も練兵場を離れた。
255るろうに使い魔:2012/07/15(日) 22:41:10.38 ID:NPP/MseU
今回はここまでということで。
それでは来週また、この時間にお会いしましょう。
本日はどうもありがとうございました。
256名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/15(日) 22:47:06.22 ID:Zwn8GPAG
乙でござるよ
257名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/15(日) 22:50:57.23 ID:6GtFnU2Q
258名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/16(月) 01:37:43.84 ID:+TeZ59ll
乙でござる
259名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/16(月) 15:57:18.78 ID:LuyH5C5f
るろうに乙!
ワルドの評価が飯綱使い一派の糸目を髣髴とさせるw
260名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/16(月) 17:03:55.46 ID:IQEV0xKz
るろうにの人、乙です!
そういえば、「ガンダールウ」ではなく「ガンダールヴ」だと思うのですよ
261名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/16(月) 21:19:57.72 ID:CU8hg6XR
すごい剣士キャラなら「おもろうて、やがてダメージ」とかどうだ?
262名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/16(月) 22:34:11.83 ID:zKI8hgzy
>>261
チンコを強くしてくれ
263名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/16(月) 22:49:24.05 ID:duWtMdmI
るろうにの人乙
そういやデュープリズムの膣内(なか)の人見ないな
まだかな、まだかな?(´・ω・`)
264名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/16(月) 22:54:24.09 ID:HPVUDgrR
定期サイヤソイヤ!
265名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/16(月) 22:58:20.55 ID:8Di1RuXV
もっと恥ずかしく、もっと情けなく
266名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/16(月) 23:07:43.11 ID:3enT2xFc
>>261
召喚直後、煙の中あの正装のシルエットが浮かび上がるのが思い浮かんだw
267名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/16(月) 23:25:19.11 ID:zKI8hgzy
>>266
更にその格好で7万人突撃w
268名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/16(月) 23:25:53.19 ID:l8i7bV3u
>>263
前もどこかでその誤変換してなかったか?
269 忍法帖【Lv=19,xxxPT】 :2012/07/17(火) 02:33:22.10 ID:K3yZvewo
よく考えたら剣心ってとんでもない動きしてるよな
270名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 10:11:17.81 ID:xSIeh/Ka
ディーキンも剣心も乙乙ー
そういえばディーキンの元仲間のゼノス様がルイズとキャラ被ってると思い出した
→裕福な家庭の生まれだが若い頃に級友たちのからかいの的になっていたツンデレ魔法使い

もっともハーフオーク♂だけどな!
271名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 10:36:22.25 ID:in1UfVPq
るろ剣もディーキンも乙です。

ハーフオーク♂でウィザードかソーサラーってかなり差別と偏見受けてきたんだろうな。
シルフィードとタバサの威圧合戦面白かったですw
ディーキンとの絡みも見たいが喋り方似通ってるなあ……w
272名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 14:44:58.40 ID:5ArJwYEY
>>263
お前さん、某図鑑スレの住人かい?
273名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 15:09:15.45 ID:4MUuuH4R
>>272
あの人はふりがなついてなかったやろw
274名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 16:49:18.61 ID:PzGDmzzF
マジですごい剣客なら徳川吉宗公を召喚すればどう?
275名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 17:29:25.09 ID:eSZBcwwH
お供が居ないが誰が代行するんだ?
276名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 17:30:08.49 ID:DBMT9vGp
凄い剣客…剣聖カレル(ファイアーエムブレム)とかどうだろう
烈火だとハーケンに出番取られ気味だったが、封印だとチートくさいスペック叩き出してたし
277名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 17:33:26.62 ID:2sy47Sb6
SAMURAI7のキクチヨとか楽しそう
カツシロウもかっこいい
278名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 17:42:17.78 ID:PzGDmzzF
>>275
そこはまあ、最近は人外を相手でも戦えるお方ですから
279名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 17:56:35.39 ID:+Xona1i3
足利義輝…を名乗る何かな戦国妖狐のテルさんとか
280名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 19:08:36.08 ID:F5u4Mf/X
るろうに使い魔さん。
ガンダールヴがガンダールウになっていますよ。
281名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 19:28:21.93 ID:EMWIBgRj
>>271
ゼノス・メッサーモスはハーフオークのソーサラー/バーバリアン
……何だその意味不明な組み合わせは

SoUは奴以外の仲間キャラもドーナというローグ/クレリックのドワーフ女だし、
主人公の仲間で一等まともそうなミストラの綺麗な女性パラディンは同行しない留守番役という…
一体何どういう嫌がらせだ

これは2章から加入するコボルドのバード/ローグを使わせるための陰謀に違いない、と思ったな
そういえばSoUではディーキンはローグのレベルも取れたけど、作中ではどうなんだろうね?
282名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 20:10:58.38 ID:S+gNpgKM
ディーキン乙です。

シルフィードに竜語は通じるのだろうか?
まあ、トリルの世界観とクロスなら、ハルケギニアでイオ神の影響があってもおかしくないか。
283名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 21:24:41.30 ID:u6MiOO/w
>274-275
何だかんだでワルドが改心し、ルイズと上手くいっちゃうのが新さんクオリティ。
284名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 23:03:57.49 ID:yXKABVEj
そういや以前無い無いと言われてたアークザラッドのSSって既に某所チラ裏にあったんだな
ヴァルキリープロファイルはゼロ魔とも親和性高そうな気もするけど見掛けない><;
285名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/17(火) 23:59:39.81 ID:Ci7Jwnoc
るろうにの作者つながりでめだかからの召喚を考えてみたんだが……
メインキャラは超絶チートもいいところだから難しいな
特に完全院さんはゼロ魔のどの展開でも困る姿が浮かばない
286名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 01:06:54.18 ID:VklFWMnP
>>283
そこは改心したワルドがルイズを庇って死んでルイズが出家する展開だろ
287名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 01:12:23.79 ID:Kzbvm19c
剣客大バーゲンのからくり師蘭剣
問題なのはアンドヴァリの指輪を壊しかねんところか
288名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 01:22:04.79 ID:zdt3bWbN
シグルイの人、復活しないかなぁ
289名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 01:31:44.28 ID:wyLg1Eh4
便乗して、雪風の人戻ってこないかなあ…
290名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 01:34:18.97 ID:wyLg1Eh4
便乗して、雪風の人戻ってこないかなあ…
291名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 02:57:13.41 ID:KZgQqPOZ
便乗して、サイヤの人戻ってこないかなあ…
292名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 04:15:56.82 ID:HijVsv9W
当麻が召喚されたらいいのに
293名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 08:38:48.67 ID:V7kZiVqX
>>292
その幻想をぶち殺す
294名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 08:46:31.89 ID:xFkCfvk0
>>292
他の世界の魔法とかは別に解除できないから地獄のロードが待ってるだけだが構いませんねッ

と思ったがデルフゲットしたら大差無いな

と思ったがそれだとサイトと大差無いな
295名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 09:19:10.28 ID:n7JStRjM
>>288>>289>>290
なるほど…な
296名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 09:28:26.85 ID:NBF63UGO
既に召喚されてるやん上条さん。
うっかりデルフを登場と同時にそげぶして退場させたやん。
297名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 09:53:58.71 ID:MT4cdOn0
常識的に考えて召喚ゲートに触れた瞬間殺すよね
298名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 10:05:00.10 ID:KZgQqPOZ
左腕から入れば右腕まで到達した瞬間に解除されて右腕を失い異次元に飲み込まれ死亡
299名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 13:27:07.51 ID:UUB+3DUZ
ゲートの縁が魔法の本体で、実は鏡みたいなのは世界に穴を開けた時の物理法則に従ってるだけなんだよ
みたいな屁理屈
300名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 16:37:07.00 ID:fdzvcjBQ
剣士ってんならトランクスが思い浮かぶけど、呼ぶなら青年期より少年のころのほうがいいかな
301名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 18:12:50.19 ID:A6OoaBar
>>284
VPはメジャーなのに無いな
召喚されるのは最凶キャラのハムスター
たかだか7万ぽっちの雑兵ではハムスターは倒せんぞ
302名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 18:22:49.85 ID:UDr8SeHG
昔あったよ
消えたけど
303名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 18:59:27.60 ID:UUB+3DUZ
小動物無双というなら
ゼルダの伝説からリンク……ではなくニワトリを召喚とか
304名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 19:02:22.80 ID:A6OoaBar
そうなんだ
知らんかったわ
305名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 19:15:20.04 ID:bmrrbFIK
割と多くの作品にオスマンがコルベールの名前をわざと呼び間違える件があるけど
あれって、作者は面白いと思って書いてんの?
ハッキリ言って、あの件何も面白くないんだけど
凄く面白いSSでも、この件だけは別人が書いたかのように誰も面白くないし、冷める
この件一つで作品全体の質を落としてると言っても過言じゃない

何で多くの作者がこの件を入れたがるの?
306名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 19:17:27.49 ID:1ZN1y9Xs
>>303
ハイラル産の鶏は危険すぎる
ルイズ達が大変な事になってしまうw
せめて同じ鶏でも「人類は衰退しました」の鶏(加工済み食肉)にしといた方が
307名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 20:10:12.92 ID:xFkCfvk0
>>305
原作読んだことも無いスレチ批評厨は巣にお帰り下さい
308名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 20:22:16.20 ID:9XRkF556
>>305
だったらロムってろよ クズ
309名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 20:23:47.27 ID:AmBMjQ6A
>>305
なんでこのスレにいるの?
310名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 20:33:35.83 ID:PNtLlOuF
まあ自分は特につまらないとかは思わないが…
原作では別にオスマンはコルベールの名前を間違えたわけじゃないんだけどね
多分特にワザとでもなく単に度忘れかなんかで思い出せなかっただけで

ワザと名前間違えるネタって元祖はどのSSなんだろうね
311名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 20:53:37.94 ID:NoyxQsHp
>>305
これって、君は面白いと思って書いてんの?
ハッキリ言って、この感想何も面白くないんだけど
この感想一つでスレ全体の質を落としてると言っても過言じゃない
312名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 21:12:59.60 ID:PPL9pAU6
あからさまな煽りに触れちゃうほうもどうかと思うの
313名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 21:45:44.13 ID:N75YNnAD
どっかの魔王「(煽りコメなど)気にするな!」
314名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 21:56:49.88 ID:bmrrbFIK
何だ
あのつまんないやり取りは原作の描写なのか
原作だろうがつまんないものはオミットしろよ
つまんないもんつまんないまま描くのは原作愛でも何でもないぞ
315名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 22:05:14.34 ID:pRHASwcW
はいはい、毒吐きスレの存在すら知らないお子様は永遠にROMってろ
316名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 22:18:19.45 ID:ow5WaOA0
指摘されて恥ずかしいからって原作まで攻撃してきたなww
小学生か
317名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 22:21:59.92 ID:F2RNi7ds
久々にワロタw
なんで原作も見てないのにここ来てるんだよ
318名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 22:23:59.17 ID:q5h/rpnr
まあなんでもかんでもテンプレに沿うのはどうなのって気持ちはわからんでもない

本当に丸コピみたいなのあるからな
319名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 22:33:53.61 ID:wceIv/vJ
>>318
それはそもそも問題外だな
もっとも最初をまんまの展開にして(文章コピーではない)
徐々にまたは時期が来たら決定的に原作と剥離させる展開も有りだけど技量がいるな
320名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 23:07:04.44 ID:9f6YuFxb
原作と剥離でふと思い出したんだが
もう随分前のだけどSO2からクロード召喚のは展開がSO2に移っていくのかな…
って思ってちょっと楽しみだったんだが…エタったのが惜しいなあ
321名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 23:39:24.96 ID:XcemeLbn
別に嵐を擁護する訳じゃないが、昔はもっと荒れてたよなこのスレ
ひたすらAAはるやつやら、本気で毒はいてるやつら
なんか懐かしいな…てか五年以上も見てるんだなぁ俺このスレ
駄目だ酔ってて支離滅裂
322名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 23:57:55.18 ID:A6OoaBar
自分は1年ちょっとだが、5年以上ってキャリア長いですな
5年前は院生やってたな
毎日てっぺん越してたあの頃が懐かしい
323名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/18(水) 23:59:58.89 ID:IO8G8VMV
原作と違わない部分は出来る限り似せるようにしてたんだが不味かったのか

オスマンとコルベールのやりとりなんかは、召喚キャラの影響受けにくいから
変えることを意識してない限り、かなり原作に似ちゃうんじゃないかと思う
324名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 00:05:30.87 ID:+MQ6h3rQ
拙いのは文章コピペと、召喚キャラ変更による影響を免れないはず場面でも原作そのまんまの展開になっちゃうこと
325名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 00:10:20.06 ID:Bzo/Hn0v
原作と違わない部分なんかさらっと流せばいい
326名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 00:12:50.80 ID:MdByiGF1
台詞回しが洒落てたり、小ネタが面白いような作者さんの場合は
原作まんま、或いはそれに近いやり取りとかギャグを入れられると
違和感というか凄く残念な気にはなるな

ぶっちゃけ、原作のギャグって結構お寒いからね
そこで足引っ張られるのは凄く勿体無いと思う
327名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 00:15:33.07 ID:yiMzJcw0
作品を自分の好き嫌いの趣味に合わせて貰おうってのは感想の中では下の下
自分で理想のものでも書いてなさいってこった
328名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 00:19:23.15 ID:MdByiGF1
あと、作品の雰囲気もあるよね
シリアス調なのにキャラが原作コピペみたいな感じだと
これまた全然合わないし

割とシリアスめな作品の真面目キャラがゼロ魔の空気にあてられて
変なラブコメに走られたりすると凄く残念
329名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 00:19:42.61 ID:AQaCi2nT
あからさまなギャグは面白くない

レモンちゃんみたいなリビドーを解放したようなのは最高
330名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 00:23:52.93 ID:QPV3tCBY
>>328
それは凄くよく分かる
ラスボスだった使い魔とかはそれで個人的にダメだわ
キャラ崩壊とまでは言わないけど何か違うって感じる
331名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 00:36:23.26 ID:CvEY5bq5
まあ一般論で議論しても不毛じゃね
作品ごとに色々あるだろうしさ
332名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 00:39:49.64 ID:/HhVx/jd
あぼ〜んで見えない
まただれか暴れてるのか
333名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 05:34:25.58 ID:2ihrYcYK
333
334名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 07:51:13.60 ID:d9RJIFbg
NGアピールほど低能に見える行為はないな
335名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 12:23:40.19 ID:AGkIVztT
なんでもレッテル付けたいお年頃なんですか?
336名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 12:36:47.95 ID:1ASLzf8f
あぼ〜んなら黙ってればいいのにw

構ってちゃんかよw
337名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 15:04:45.56 ID:vtt46sDo
今年はオリンピックだし、こち亀からあの男が召喚されないかな
338名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 16:56:14.45 ID:p4BTsNVP
海パン刑事なんか呼んだらルイズが自殺するんじゃないか?
339三重の異界の使い魔たち:2012/07/19(木) 17:21:59.66 ID:b30W+YYF
 お久しぶりです、よろしければ、30分から投下開始します。
340三重の異界の使い魔たち:2012/07/19(木) 17:25:15.20 ID:b30W+YYF
〜第14話 新たなる出会い〜

「うーん……」
 ムジュラの仮面の言葉に従い、怪し気な黒装束を試着してみたものの、姿見に映った我が身の
有様に才人は呻いた。
「やっぱ、すげー悪役風だぞ、これ……」
 袖に手が隠れた腕を掲げながら、眉をしかめた自分の顔を見る。
「あら、悪くないと思うけど?」
「髪の色と合ってる」
 その一方で、キュルケとタバサが称賛の声を掛けてきた。褒められるのは悪くないが、こんな
物々しい服が似合うといわれても素直に喜べない。しかも、タバサは同じデザインの服を大量に
買いはじめた。つまり、他の着替えもこれらしい。
 ちなみに、最初に出された物体――あれを服と呼ぶ気にはなれなかった――はあれ自体の他に
ないらしかった。理由は聞いていないが、売れないものを幾つも作る必要がないからに相違あるまい。

「魔法の世界来て、魔法使いの使い魔になって、妖精と魔族の同僚ができて、悪者な衣装が普段着に
なる、か……わけわかんねーな」
 頭を掻きながらぼやくと、ムジュラの仮面が顔に覆い被さってくる。
「そうくさってばかりいるなよ、やはりオレは気に入ったぞ」
 ヒャハハ、と甲高く笑ったムジュラの仮面の裏で、才人は溜息をついた。
「まあ、お前もある種ワルモンだしな」
 苦笑いとともに、ムジュラの仮面を外す。そこで、さっきの店員がドレスの掛かったハンガー
ラックを運んできた。
「お嬢様方、お待たせいたしました」
 会釈する店員を一瞥すると、キュルケとタバサはハンガーラックに近づく。正確には、タバサの
方はキュルケに手を引かれていっただけだが。
「へえ、なかなかのものが揃ってるじゃない」
 早速ドレスに夢中になったキュルケが、夢見心地で言った。色とりどりの礼装を見比べながら、
満面の笑みを浮かべている。

「ほら、タバサもつったってないで、ちゃんと好みのドレスをお探しなさいな」
 そして、隣で退屈そうにしているタバサに気付き、叱責めいた声を掛けた。それに対し、タバサが
無表情で首を横に振る。
「私はいい」
「何言ってるのよ。来週のユルにはフリッグの舞踏会なのよ?」
「ドレスならもうある」
 無感動な調子でタバサが言えば、キュルケの方はやれやれとばかりに頭を振った。
「あのねえ、タバサ? もう着る服を決めていても、当日になるまで着るドレスを選び続けるのが
淑女としての正しい舞踏会までの過ごし方よ?」
 諭す様な口調ながら、傍で聞いていてかなり自分勝手な持論である。それから、赤毛の少女は
命令口調になって続けた。
「だから、タバサもちゃんとドレス選びに参加なさい。あ、これなんて貴女に似合いそうよ」
 それから、青いドレスと赤いドレスを1着ずつ選ぶと、キュルケはタバサを連れて試着室へと
行ってしまう。それを見ていたナビィが、呆れと愉快さが混ざった様な調子で言った。
「タバサ様、意思が強そうな雰囲気なのに」
「身内には流されやすいのかもな、逆らうのが面倒なだけかも知れんが」
「意外な一面だよな、キュルケも無駄に押しつえーし」
「きゅるきゅる」
 それにムジュラの仮面、才人、フレイムが続き、使い魔4名は笑い合う。
341三重の異界の使い魔たち:2012/07/19(木) 17:26:59.25 ID:b30W+YYF
 それから数分後、とりあえず試着室の傍まで来た才人たちが談笑していると、試着室のカーテンが
開かれた。
「おおっ!」
 そこから現れたキュルケの姿に、才人は驚嘆の声を上げる。その正直な反応にキュルケは
満足そうに笑うと、その豊かな髪を掻き上げて見せた。
「ふふ、驚いていないで、何か仰ってくださらない? ジェントルマン」
 冗談めかして、かつ妖艶な笑みでキュルケにいわれ、才人はどぎまぎする。
「う、うん。すげー似合ってる、綺麗だ」
 どぎまぎの結果、出てきたのはそんな言葉だった。月並みすぎる台詞に己がボキャブラリーの
乏しさが恨めしくなるが、しかし、それは才人の本心だ。それだけ、ドレスアップしたキュルケは
綺麗だった。

 デザインそのものはオーソドックスなホルターネックドレスだが、胸元を強調する様な形が
彼女のグラマラスな肢体を浮き彫りにしている。裾は、172センチある才人とほとんど変わらない
身長のキュルケが着ても床に着きそうな程長く、しかし、腰近くまで入れられたスリットから
すらりとした脚が覗き、胸元と相まって暴力的なまでの色香を醸(かも)し出していた。カラー
リングの方はワインレッド一色で飾り気がなく見えるものの、それがキュルケの褐色の肌と燃える
様な赤毛に調和し、見事に映えている。
 全体的に露出が多いながらも、それにセクシーながら不思議な気品を以って着こなすキュルケに、
才人は見たまま以外の言葉が見つけられなかった。
 一方、コメントを受けたキュルケはというと、何やらシニカルな笑みを返してくる。
「あら、ありがとう。でも、そんな感想しか出てこない様じゃ、男として未熟と言っている様な
ものですわよ?」
 その言葉と悪戯っぽい笑い方に、才人は顔が熱くなるのを感じた。自分の語彙(ごい)不足
を自覚したばかりな上に、異性に真正面から指摘されてはかなり口惜しい。

 胸の内で、悔しがっていると、やがてキュルケの隣の試着室に掛けられていたカーテンが開かれた。
「わあ、タバサ様素敵!」
 ナビィの嬉しそうな声から一拍遅れ、才人は試着室のタバサの方へ目を向ける。
 瞬間、時が止まったかのように思えた。
 ネイビーブルーを基調にした、ノースリーブのドレス。肩や首回りは露出され、胴部は胸元から
下を隠す様な筒型になっている。代わりに、水色をしたシースルーのショールがケープの様に
して肩周りに巻かれ、銀細工のブローチで留められていた。腕には肘まで覆うオープンフィンガー
タイプの白い手袋が嵌められ、タバサのほっそりと伸びた腕や指をよく引き立てている。スカート
部分は足許まで覆い隠し、チューリップの花冠の様に幾重にも重なり合っているようだった。
 愛らしく、それでいて大人びた印象も与える、可憐なドレス。それを纏ったタバサは、まるで
童話に出てくる様な姫君の様に見えた。あどけないながらも実は美しい顔立ちの彼女が着飾った
姿は、この上なく魅力的だった。
 主となった少女の新たに知った一面に、才人は目を奪われてしまう。

 しかし、一瞬の後に才人は慌てて自分の感想を否定しはじめた。
――お、落ち着け、俺! タバサにドキドキしたりしたら、もう人間として終わるぞ! っつーか、
捕まるぞ! 確かに、今のタバサすげー綺麗だけど……いやいや、だからそれじゃまずいだろ!
「また始まったか」
「何がきっかけではじまるんだろ、この首振り」
 必死になって頭(かぶり)を振り続ける才人に、ナビィとムジュラの仮面が呆れた風に呟く。
そんな同僚たちの言葉も耳に入らず、自らの思考を否定していると、不意に思い至った。
――いや、でも一昨日の朝だか起きた時、まだ寝てたタバサの顔見て、なんかクるもん感じて
なかったっけ……?
 そのことを思い出した瞬間、才人は膝から崩れ落ち、うなだれる。
342三重の異界の使い魔たち:2012/07/19(木) 17:28:46.31 ID:b30W+YYF
「なんだか知らんが、挫折したぞ」
「どうしたのかな?」
 顔を見合わせるナビィ達を他所に、才人は絶望していった。
――駄目だ、もう俺人間失格だよ、ホモ・サピエンスとして駄目だよ、ニッポニア・ロリコンに
改訂だよ……
「大丈夫、サイト?」
 一人どんどん陰を背負っていくと、ナビィが心配気に尋ねてくる。
「いや、大丈夫だよ……俺なんて所詮ニワトリだから、学名ニッポニア・ロリコンなやばい種類の
ニワトリだから……トキと違って絶滅の心配はまずありません……」
「何言ってんだ?」
 まるで意味不明な言葉を聞いたかのごとく尋ねてくるムジュラの仮面を見た瞬間、頭に一筋の
考えが閃いた。
「ムジュラ!」
 そして、才人は同僚の魔族へと掴み掛かる。
「いきなり復活したか、今度はなんだ?」
「俺を叱りつけてくれ! このロリコンどもめっつって、俺の正気繋ぎとめてくれ! お前、あの
バグベアーとかって目玉に似てるから、多分その台詞似合う!」
「相変わらず何言ってるんだか知らないが、とりあえずオレをあれと似た者扱いするなよ」
 呆れた風に言われながらも、才人はムジュラの仮面を揺さぶり続け、結果としてその場の全員から
呆れた顔をされたのだった。

 そして、キュルケとタバサはそれから何度か試着をしてから最初のドレスを購入し、一行は
服屋を後にした。
「結局、タバサにろくな感想言わなかったわね、サイトったら」
 再び大通りを進む中、心底失望した風なキュルケに睨まれ、才人は小さくなる。
「いや、ちょっと自分の学名を懸けた葛藤があって」
「学名?」
 横に並んだタバサに不思議な顔をされ、才人は思わず視線を逸らす。
「な、なんでもないよ」
「なんでもないことに、主への賛美を忘れるわけかお前は?」
 嘲りをたっぷり含んだムジュラの仮面の言葉に、才人は誤魔化す笑みを浮かべることしか
できなかった。
――今度タバサがあれ着た時は、ちゃんと感想言わないとな
 とりあえず、そう心に決めてはおく。
「それで、この後の予定はあるの?」
 そのキュルケの問いで、才人はタバサに視線を戻す。それに対し、タバサはいつもの無表情で
答えた。
「武器屋に行く」
「は? 武器屋?」
 予想していなかっただろう単語に、キュルケは不思議そうだ。
「ルーンの事を調べる」
「どういうこと?」
 続けられた言葉も合点がいくものではなかったらしく、キュルケの形のいい眉がひそめられる。
才人は1つ苦笑し、補足を入れた。
343三重の異界の使い魔たち:2012/07/19(木) 17:31:19.09 ID:b30W+YYF
「ほら、この間俺決闘したじゃん?」
「ああ、あのがむしゃらなやつね」
 はっきりと言われ、才人は少しグサリとくる。気を取り直して、才人はルーンの刻まれた左手を
掲げた。
「そ、その時にさ、剣持ったらなんかルーンがぼんやり光って、よく判んない力が湧いてきたんだ」
「ルーンが?」
 軽く驚いて、キュルケは考えるような顔をみせる。
「猫の使い魔とかがルーンの影響で喋るようになることがあるらしいけど、それと似た様なもの
かしら?」
「多分、そう」
 キュルケの考えを静かに肯定し、タバサが言葉を続けた。
「そもそも、彼は色々と前例のない使い魔の1人。何が起きても、おかしくない」
 平坦ながらも、その声は真剣さが滲んでいた。
「だから、ルーンと剣の関係をしっかり調べておくべき」
「そういうわけらしいから、武器屋に行ってみようってことになったんだ」
 やっと納得したらしく、キュルケが小さく頷く。

「聞いたことない話だけど、剣を持ったら強くなるなんて、随分高級な特典ね」
 感心してキュルケが言う一方で、タバサの表情は明るくない。
「プラスなだけとは限らない」
 言って、タバサが才人を見据えてくる。その碧い瞳が真っ直ぐ向けられ、才人は不覚にもまた
ドキリとしてしまった。
「恩恵が強力というのなら、その分マイナスも大きいかもしれない」
 しかし、続けられた言葉に、また振り出しそうになった首が止まる。
「まじ?」
「判らない、可能性があるというだけ」
 つまり、あるかもしれないし、ないかもしれないということだ。その不確かな状況に、才人は
冷や汗が浮かぶのを感じる。
「なんか、ただ使い魔やってりゃいいってわけじゃなさそうだなー」
 楽天家といわれることの多い才人であるが、体のこととなると流石に不安も湧く。ただの
使い魔の印というだけではすまないらしいものが自身に刻まれていることに、才人は溜息をついた。
「ルーンとやら以前に」
 そこで、ムジュラの仮面が話に入ってくる。
「1番の問題は、そもそもオレたちがなんでこの世界に召喚されたのかが今一つ解せないことじゃ
ないのか?」

 言われ、全員の視線がムジュラの仮面に集中する。
「本来、サモン・サーヴァントとやらはこの世界の生き物を呼び出す呪文なのだろう? そのルールを
曲げてまで、わざわざ3つもの異界からオレたちを連れてくる等、ただのイレギュラーで済ませて
いいものかな?」
「絶対にそうとは限らないんじゃないか? フレイムみたいな幻獣はともかく、鳥や犬猫なんかは
俺たちの世界のどれかから来てる奴もいるかもしれないぞ。ほら、単に主人たちが気付いてないって
だけでさ」
 才人が言うと、ナビィが体ごと首を横に振る。
「それはないと思う。ワタシ、他の使い魔の皆とも色々話してるけど、少なくとも学院の中には
別の世界から来たってヒトはいなそうだったよ」
「そっか。じゃあ、やっぱ俺たちが特別なんだな」
 才人が相槌を打てば、ナビィは話を続けた。
「でも、ムジュラの言う通りね」
 考えるように間をおき、再び言葉が発せられる。
「ただのイレギュラーにしては、ワタシたちの召喚は他の使い魔たちと違いすぎる。それなら、それ
相応の理由があるって考えた方が自然だわ」
「で? その理由とは?」
 ムジュラの仮面の質問を受け、ナビィは少し考えてみせる。
344名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 17:31:21.74 ID:Kl2nINfO
時にはロリコンもいいよね!
345三重の異界の使い魔たち:2012/07/19(木) 17:32:54.16 ID:b30W+YYF
「多分、この世界に働く何らかの意思が、何かをワタシたちに求めているんだと思う」
「ふうん? まあ、考え方としては判るが」
 ナビィの答えを聞いても、ムジュラの仮面が納得いかない風な眼を見せた。

「その何かとはなんだ? それがオレたちに関わりがあるというのか?」
「それは……」
「大体、オレたちである理由はなんだ? この世界にいない種族である魔族(オレ)や妖精(おまえ)は
まだしも」
 そこで、ムジュラの仮面の視線が才人に移る。
「人間(こいつ)をわざわざ異界から呼び寄せる意味などあるのか?」
 言われ、才人もおかしく思った。自分と同じ人間ならば、この世界にだって大勢いる。何故
わざわざ地球からこの世界へ召喚するのか、理由が見えない。
「判らないわ、今はまだ情報が少なすぎるし」
 ただ、と付け加えて、ナビィは続ける。
「少なくとも、才人にしかできない何かがここにあるかもしれないって、そうは思うよ」
 ナビィの推測を聞き、才人は改めて自分の左手に刻まれたルーンをみつめた。3つの文字の
様なものからなる、奇妙な文様。ナビィの羽にも、ムジュラの仮面の触手にも、3字と2字の
違いはあるがよく似たものが刻まれている。
 あの決闘で、このルーンは確かに自分に力を貸してくれた。しかし、それはナビィの言う通り、
このルーンが自分に、否、“自分たち”に何かを求めているからなのだろうか。自分たちを必要と
しているからこそ、このルーンは自分たちに力を貸し、そして何かをさせたがっているのだろうか。
 今はまだ何も判らない。ただ、自分が担うことになった“タバサの使い魔”という立場が、
決して安易なものでないということだけは、漠然とながら感じはじめていた。

 幅5メートルほどと大通りというには狭いブルドンネ街から、一行は裏通りに入る。汚物が
道端に打ち捨てられている汚さにうんざりしていると、剣の形をした銅製の看板を提げた建物が
見えてくる。先の服屋に比べると規模は小さく、普通の一軒屋より少し大きいといったところか。
「あれが武器屋?」
「そう」
「じゃあ、早速入りましょ」



 槍や戦斧等が立てられた籠や、剣やナイフ等が置かれた棚、服の代わりに甲冑が掛けられた
ハンガー等がそこかしこに置かれた店内で、武器屋の店主はパイプを吹かしていた。客の来訪を
待つとも待たずともいえる心持で、50代の中年の店主はカウンターに頬杖をついている。
 そこへ、店の入り口の羽扉が擦れるような音を立てたのが聞こえ、そちらに目をやった。まず
目に入ったのは、赤毛の美女だ。その次に、身の丈より長い杖を持った青い髪の少女が入って
くる。それに続くのは、怪しげな黒装束の少年と、ホタルらしき光る虫、宙に浮く不気味な仮面、
虎程もある大きな火トカゲだった。
 はっきりいって、意味不明な集団だ。しかし、店主は少女たち2人の羽織ったマントと、それを
留める五芒星が刻まれたピンを見て、少女たちが貴族であると判断した。
346三重の異界の使い魔たち:2012/07/19(木) 17:34:23.13 ID:b30W+YYF
「貴族のお嬢様方、うちは真っ当な商売をしてまさあ。お上の方々に面倒をお掛けする様な
ことは、これっぽっちもしちゃいませんぜ」
 面倒な心境で、店主は釈明する。この街には悪徳な徴税官がいるため、商売人たちの多くが
貴族の、というよりは役人の眼を警戒しているのだ。正直なところ、あこぎな真似は身に覚えが
ある自分は余計にしている方かもしれない。
 しかし、赤毛の少女はシニカルな笑みを浮かべるとあっさり言い放つ。
「客よ」
「客? こりゃおったまげた、貴族が剣をお振りになるんで?」
 素直に驚きを露にする。「魔法が王道、武器は邪道」と信じている貴族たちが、杖でなく武器を
買い求めるとは思えなかったのだ。
「勿論、使うのはあたしたちじゃないわ。そこの彼よ」
 言うなり、少女は黒装束の少年の方を向く。その少年はといえば、棚の上や壁に掛けられて
いる武具を、興味津々な眼差しで見回していた。
「そちらの方が、剣をお使いになるんで?」
 片眉を上げながら、店主は少年を見据える。格好はともかく、顔つきは平凡、そして平和そうな
少年だ。服の上からでは判り難いが、体もそれほど鍛えられているとは思えない。剣を与えると
いうからには護衛なのだろうと思うが、それにしては頼りなさ気に思えた。

 しかし、それは好都合ではないかという打算が働く。どう考えても、この集団は剣に関しては
素人のはず。刀剣の相場など知らないだろうし、精々高く売るのが得策だろう。
 この様な考えが必要以上に貴族を警戒する原因になっているのだが、商人たる者は常に利益を
生む行動を取らなければならない。
 愛想笑いを浮かべながら剣を一振り用意し、世間話を装って話し出す。
「そういえば、近頃貴族の方々は護衛に剣を持たせるのが流行っておりましたね」
「あら、どうして?」
 さり気なく言った言葉に、案の定赤毛の貴族は反応する。“流行り”という言葉は、気位の高い
貴族には見過ごせない単語のはずだからだ。
「近頃、“土くれのフーケ”とか言うメイジの盗賊がよく出没するそうでして、それで貴族の方々も
護衛を武装させてるそうなんですよ」
 事務的な、しかし愛想のいい調子で言いながらも、内心ではこの話が貴族のプライドをくすぐる
ことを期待する。他の貴族がやっていることをやっていないのいうことは、負けず嫌いな貴族に
とっては一種の屈辱に繋がるのだ。そして、上手くすれば他の貴族たちよりもいい剣を買おうと
して、大金で買い取ってくれるかもしれない。

「メイジの盗賊って、なんで貴族が泥棒なんてするんだ?」
 期待感を必死で抑えていると、少年が不可解そうに言う。顔を見れば、本気で疑問に思って
いるようだ。その世間知らずぶりに呆れながらも説明してやろうとするが、それよりも早く青い
髪の少女が口を開く。
「メイジが全て貴族というわけではない。実家から勘当されたり、家が没落したりで、貴族の
位を失ったメイジも大勢いる」
「なるほど、そういう連中が盗賊にまで身をやつすことがあるのか」
 そこで、新たに男とも女ともつかない声が聞こえてきた。そちらの方を見やると、どうやら
あの宙に浮く仮面の声らしい。仮面が喋ったことに一瞬目を見開くが、相手はメイジと一緒に
いる存在だ。浮いている時点でおかしいのだし、驚くこともないのだろう。それに、本来喋る
はずがない喋る物体なら、“身近にいる”ことだし。
347三重の異界の使い魔たち:2012/07/19(木) 17:35:33.05 ID:b30W+YYF
 気を取り直し、店主はカウンターに剣を置いて紹介する。
「その1番人気になっているのが、このレイピアです」
 細長い、刃渡り60サントの装飾的な剣を見せると、その傍に青い光のホタルが寄ってきた。
「うーん、これ完全な刺突剣だね」
 どうやら、このホタルも喋れるらしい。まさかと思い、赤毛の少女の傍で控えるサラマンダーに
目を向けるが、きゅるきゅると鳴いているところを見るとこいつは喋れないようだ。微妙に
残念なのは何故だろう。
「突くにはいいけど、斬ったり薙いだりとかの汎用性は低そう。それに、飾りが多くて実用的じゃ
ないよ」
 益体のないことを考えているうちに、そのホタルは出されたレイピアをそう評価する。それに
対し、内心で苦虫を噛み潰した気持ちになった。どうやら、このホタルは剣の常識を多少なり
理解しているようだ。それでは、期待していた儲けには至らないかもしれない。

 こっそりと落胆していると、黒装束の少年は笑顔でレイピアに手を伸ばす。
「まあ、いいじゃん。使える剣を買うのだけが目的じゃないんだし」
 その言葉に、怪訝とする。武器屋で武器を買う意外に、どんな目的があるというのか。疑問に
思っている間に少年が剣を握り、すると少年の左手が淡く光りだす。
「ん……やっぱり剣握ると反応するみたいだな」
「どんな感じ?」
 青い髪の少女の問いに、少年は誰もいない方へ剣を構えることで応える。その動きに、店主は
少し驚いた。一見無造作だが、隙なく堂に入った動きでレイピアが構えられる。商売上、様々な
剣士の試し振りを見てきたが、明らかに少年の構えはそれらの上位に食い込むものだ。
 素人とばかり思っていたが、どうやら評価を改めなければいけないらしい。
「前の時と同じで、力が湧いてくる。動き方も、どうするのが1番か自然に判る、っていうか
できるよ。まるでルーンに引っ張られてるみたいな感じだ」
「そう」
 しかし、少年が何を言っているのかが判らない。青い髪の少女の方も、少年の言葉を聞くなり
黙考をはじめてしまった。気にはなるが貴族の事情などに首を突っ込んでもろくなことはないため、
気にしないでおく。

「おでれーた! ただのひよっこかと思ったら、おめ、いい構え方するじゃねーか!」
「え? そうかな」
 そこへ、男の声で歓声が上がった。褒められたのが嬉しかったのか、少年が口許を緩めてその
第三者の方を向くが、店主の方は頭を抱えたくなってくる。
「あれ? 誰もいない」
 少年、そして少女たちが不思議そうにきょろきょろと見回していると、再度男の声が響いた。
「おめえの目は節穴か!」
 そこで、やっと少年たちは何が喋っているのかに気付いたらしい。彼らの視線の先には、棚に
置かれた一振りの大剣があった。
「剣が喋ってるのか?」
 喋る仮面と一緒にいるからか、あまり驚いた風もなく少年は剣に近づいていく。
「おうよ、デルフリンガー様だ! 覚えておきな!」
 歩み寄ってくる少年に対し、言葉を話すその大剣“デルフリンガー”は鍔元(つばもと)の金具を
カチャカチャと鳴らしながら高らかに名乗る。

「あれ、インテリジェンスソード?」
 その様子を見ながら、赤毛の少女が店主に問い掛けてくる。
「その通りでさ、意思を持つ魔剣、インテリジェンスソード。一体どこのメイジ様が始められ
たんでしょうかね、剣を喋らそうなんて。あいつはやたら口が悪いし、お客様に喧嘩は売るしで、
扱いに困ってるんでさ」
 ふーん、と赤毛の少女は相槌を打つ。
348三重の異界の使い魔たち:2012/07/19(木) 17:36:53.64 ID:b30W+YYF
「それにしても、立派な名前の割には酷い見た目ね」
「仰る通りで」
 貴族の少女の言葉に、店主は素直に同意する。デルフリンガーの外見は、全長150サントほどの、
比較的薄手で無骨な片刃の大剣だ。それだけならばまだしも、刀身にびっしりと錆(さび)が浮き、
ぼろぼろである。そんな見た目である上に、自分が気に入らない客は遠慮なく貶すため、これまで
一向に買い手がつかずに売れ残っているのである。

「デルフリンガーか、なんか格好いい名前だな!」
「おうよ! もっと褒めていいぜ!」
「お前、喋る以外なんかないのか? こう、特殊機能みたいなのとか」
「知らね、忘れた」
「なんだそりゃ、自分のことだろ?」
「おりゃあ、長く生きてるかんね。どうでもいいこた忘れちまうのさ」
 しかし、そんな売れ残りな剣を相手に、少年はあっさりと談笑を始めた。邪教の神官の様な
服装の少年と錆びまみれの大剣が会話している様子は、傍目にはかなり異様である。
 なんともいえない表情で店主がその2名を眺めていると、浮かぶ仮面が両者に近づいていった。
「ヒラガ、たかだか喋るだけの剣など相手にしているな。ルーンの事を調べるんだろう」
「あ、悪い」
 軽い謝罪とともに少年が踵を返そうとすると、デルフリンガーが険しい声を出す。
「なんだよテメエ」
 刺のあるどころではない声音に、その仮面もまた険悪な雰囲気を出した。
「銘はムジュラの仮面。この小僧の同僚だ、それがどうかしたか?」
 温度の低い声での返答に、デルフリンガーはやはり険しい態度を崩さない。
「テメエ、なんか気に喰わねえな」
 明らかな喧嘩腰に、聞いている店主は困惑する。確かにデルフリンガーはしょっちゅう客に
喧嘩を売りはするが、ここまでどすの利いた声を出すことはざらになかったためだ。一方、その声を
受けたムジュラの仮面というらしい仮面は、どこか納得したように言う。

「なるほど、精霊力を感じるが、どうやら妖精とはまた違った形で精霊の眷属にあたるらしいな」
 どうりでオレに突っ掛かってくるわけだ、とムジュラの仮面は苛立たし気に呟いた。
「まあ、動けぬ者が幾らわめいたところで滑稽なだけだがな」
「ふん、フラフラ飛び回って落ち着きのねえ奴が何言ってやがる。空飛びたがる奴は、空も逃げ場に
したい臆病者ってのが相場だぜ」
 その言葉に、ムジュラの仮面が激昂する。
「言ったな、錆まみれのナマクラ刀が!」
「言ったがどうした、刺付きのゲテモン面(づら)!」
 その叫びを皮切りに、両者は凄まじい勢いで互いを罵りはじめた。自然と、周囲はそれを微妙な
表情で見守ることになる。
「剣と仮面が口喧嘩……」
「どんな光景だ、おい……」
「両者劣らぬ益荒男(ますらお)ぶり」
「いや、ただの子どもの喧嘩でしょ、これ……」

「いいだろう、ならば我が力思い知らせてくれる!」
349三重の異界の使い魔たち:2012/07/19(木) 17:38:17.65 ID:b30W+YYF
 10分ばかりにもなる罵詈雑言の応酬の後、ムジュラの仮面が叫んだ。すると、ムジュラの
仮面の表面に雷電のようなものが瞬き始め、デルリンガーが夕焼け色の光に包まれていく。
「お、おいムジュラ! 何する気だよ!」
 少年が慌てた声を投げ掛けるが、ムジュラの仮面は取り合わない。
「やかましい! こんなナマクラ、バケツにでも変えて水汲みに使ってやるのがお似合いだ!」
 高らかな叫びが響いた瞬間、眩くも何処か暗い奇妙な閃光が店内で爆ぜた。突然の光に全員が
思わず目を覆い、光が収まるのを待つ。

 そして、光が収まった後には――

「一体、なんなんだよ」

 先程と変わらない様子で、悪態をついているデルフリンガーの姿があった。
「なっ、莫迦な!?」
 それにムジュラの仮面が驚きを露わにし、少年がムジュラの仮面に問い掛ける。
「ムジュラ、お前今こいつに魔法掛けたんだよな」
「あ、ああ、バケツになるよう呪いを掛けた……」
「いや、店の売り物勝手に呪うなよ」
「弁償しなきゃいけなくなっちゃうでしょ」
呆れたようにたしなめてくる少年とホタルを無視し、ムジュラの仮面は瞳を強く光らせてまた
デルフリンガーを怪しい光で包みこむ。
「ハッ!」
 気合の籠った叫びとともにまた閃光が瞬くが、やはりデルフリンガーに変化はなかった。
「おのれええぇぇっ!」
 そして、それがますます癪に障ったらしく、ムジュラの仮面は何度も同じ行動を繰り返す。
状況が理解できていない店主はそれを止めることもできず、とりあえず推移を見ていることしか
できなかった。

 そして、異形の仮面の挑戦が30回に達したところで、とうとう挑戦者は諦めたらしい。悪態を
つきながら、対戦相手に背を向ける。
「くっ、このオレの魔法が、あんなナマクラに通じぬとは……!」
「へっ、一昨日来やがれってんだ!」
 悔し気に呟くムジュラの仮面に、デルフリンガーは自信満々に勝利宣言をした。一方、それを
見ていた少年は感心したようにデルフリンガーを手に取る。
「ムジュラの魔法に耐えきるなんて、お前すごいな。なんか魔法に耐性とかあんのか?」
「んん? ちょっと待て……」
 少年からの質問に、デルフリンガーは何か考え込む。
「おお、そうだ! 確かに、おりゃあ魔法吸い込んだりする力あったんだよ、いやあ、ここ数十年、
下手すりゃあ何百年もやってなかったからな、すっかり忘れてたぜ!」

 その発言に、店主と貴族の少女2人、計3名が固まった。後者は自分たちの力たる魔法に対する
脅威を感じたため、そして前者は一応の所有者でありながらその事実を知らなかったためだ。
「ちょ、ちょっと待て、デル公! お前、そんなことできたのか!?」
 今まで店に置いていたが、そんなとんでもない機能が付いているとは初耳だった。それが
本当なら、この見た目がぼろぼろの剣はとんでもない大金で売れることになる。
「おうよ、おれも忘れちまってたんだがな。ま、その辺のつまらねえ奴に使わせてやる力じゃ
ねえがね」
 そう言って笑うデルフリンガーに、店主は肩を落とした。見た目もさることながら、この性格が
災いして売れ残っていた大剣である。どれだけ凄い力を持っていたとしても、やはり売れ残る運命に
あるのだろう。捨てるにしても、真の力を知った今となっては惜しすぎる。色々とがっくりきて
いる店主を余所に、デルフリンガーは言葉を続ける。
350名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 17:40:14.28 ID:Kl2nINfO
この時点でデルフの能力が分かるというのも珍しいな
351三重の異界の使い魔たち 代理:2012/07/19(木) 18:51:29.31 ID:IWqCgF1m
さるさんをくらったようなので、代理投下を…


「に、しても坊主、おめ、もしかして“使い手”か? ……にしちゃあ、なんか弱弱しいな?」
「使い手? なんだそれ?」
「何って、うーん、忘れた」
 恐らくこれから先も売れ残っていくだろう大剣とそれを手にしている少年の会話を、どうでも
いい気分で聞く。しかし、次にデルフリンガーが言った言葉に、目を丸くした。

「それより、おめ、おれを買え」
 本日何度目かの驚きだ。この無駄に偏屈な大剣が自分から「買え」などと言うとは。
「買った」
 そして、それに少年が答えるより早く、青い髪の少女が言い放つ。かと思えば、少年から
デルフリンガーをひったくると、店主へ差し出してきた。
「幾ら?」
「へ、へえ、こいつは……」
 そこまで言って、店主は言い淀む。本来なら厄介払いだと100エキューでいいところだが、
魔法を吸い込むなんて力がある以上それでは安い気がする。しかし、これから先このぼろぼろの
剣にそんな力があると宣伝しても眉唾としか受け取られないだろうし、下手に高い値を提示して
買う気を失わされたらもう2度と買い手はつかないだろう。
「200エキューでさ」
 なので、無難に100だけ値上げするに留めた。すると、少女は無言で財布を取り出し、大量の
金貨をカウンターへばら撒く。店主はそこから手早く200枚数え、残りを少女へと返した。
それから店主は一旦店の奥へ行き、鞘を持って戻ってくる。
「デル公のやつは、こいつに入れておけば喋らなくなりますんで」
 言いながら少女に鞘を手渡すと、さっそく少女は喋る大剣を鞘に収めた。そして、無表情に
デルフリンガーを少年に手渡す。
「サンキュー、タバサ」
 それに対し少年が礼を言うも、少女の表情はやはり動かなかった。心なしか、微かに頬が赤く
なっている気はしたが。
「でも、タバサ。随分あっさり決めたな? 衝動買いってわけじゃないだろ?」
 少年の言葉に、タバサと呼ばれた少女が頷く。
「魔法を吸収できる力、本当なら役立つ」
「そうだな」
 その言葉に少年が納得した顔を見せるが、尚も少女の言葉は続いた。
「それと、牽制用」
「牽制? 何の?」
 少女は言葉にする代わりに、杖の先をムジュラの仮面に向けることで答えた。それに対し、
少年は呆れた顔で言う。
「タバサ、実はムジュラのこと信用してないだろ……」

 そして、奇妙な買い物客たちは帰って行った。ここまで騒がしい客は、久しぶりだった。そのため、
去った後の静寂を嫌でも意識させられてしまう。
「デル公の奴も、行っちまったからな……」
 口に出すと、少し実感した。これまで商売の邪魔にしかならなかったが、同時に寂寥感の欠片も
与えなかった同居人が、いなくなったことを。
 それから、店主はまたパイプを吹かし、来るかどうか判らない次の客を待つ。その時飲んだ
煙の味は、何処かいつもより苦い気がした。



 こうして、才人は新たな武器を手にし、一行に新たな仲間が加わった。そして、この日片や
伝説の呪物、片や伝説の魔剣という物々しい肩書を持つ両者が最初の激突を果たしたのだが、
そのことを当人たちが知るのはもうしばらく後のことである。
352三重の異界の使い魔たち 代理:2012/07/19(木) 18:52:27.70 ID:IWqCgF1m
 ハルケギニア中東部、ガリア王国と帝政ゲルマニアという大国2つに挟まれたアルデラ地方。
ここに、両国から“黒い森”と呼び習わされるアルデンの森が広がっている。
 エギンハイム村は、その森から伐(き)り倒した木材で生計を立てる、人口200人程の小さな
村だ。国境沿いという土地柄、掲げるべき国旗はガリアとゲルマニアが交互に入れ替わるこの
村は、今現在怒りの念で満ちていた。
「あの、くそったれどもめ!」
 村人の1人が、憤怒も露わに叫ぶ。それに追随し、そこかしこで怒号が上がった。
「森に巣くったあの連中のせいで、木材の調達は大打撃だ!」
「あいつら、俺たちを干からびさせる気か!?」
 険しい表情で叫ぶ男たちは、それぞれ樵(きこり)らしい屈強な体つきをしている。それが、
今にも暴れ出さんばかりの表情をしているのだから、場の空気の険悪さは尋常でない。
「領主様は奴らを退治してくれる騎士を派遣してくれるって言うが、言うだけで全然来やしねえ」
「これ以上待って来なけりゃ、俺達でやるしかねえな」
 穏やかでないことを言い合いながら、男たちは銘々斧や鉈等の得物を振り回す素振りをする。

「み、皆、待ってくれよ!」
 そこへ、委縮気味の声が1つ上がった。すぐさま男たちの眼が声の主、線の細い少年へと向く。
「木が取り難くなったのは、翼人たちのせいじゃないよ!」
 声を張り上げ、痩せた少年は自分よりずっと大柄な男たちへ訴えた。
 翼人とは、ハルケギニアに何種か存在する人間以外の知恵ある種族、亜人の一種だ。姿形は
ほとんど人間と変わらないが、大きな相違点として背から鳥の様な羽を生やし、それで空を飛ぶ
ことができる。
「だから、翼人と争うような真似は止めてくれよ!」
 必死な様子で少年は言うが、しかし、男たちはその言葉にますます顔を険しくする。
「何莫迦言ってやがる!」
「そうだ! あいつらじゃなきゃ、誰が原因だってんだ!?」
 鋭い声で言い返され、少年は言葉に詰まった。そんな少年から男たちはつまらなそうに視線を
外すと、再び翼人に対する怒りを口にしはじめる。その様子を、少年は悔し気に見つめていた。

 一方、森の中でも喧々囂々(けんけんごうごう)とした議論が展開されている。太く育った
頑丈な樹木、ライカ欅(けやき)の頂上に建てられた建造物、翼人たちが“巣”と呼ぶ住居の中で、
数人の翼人たちがテーブルを挟んで話しあっていた。
「人間どもは、また我らに攻撃を仕掛けてくるつもりではないか?」
「地面を這うだけの虫どもが、調子に乗りおって!」
 1人の翼人が、人間に対する侮蔑と敵意を明け透けに叫ぶ。
「迎え撃つしかないのではないか?」
 他の翼人が鋭い声で言うと、1人の少女が立ち上がる。
「そんな乱暴な!」
 亜麻色の髪と翼を持つ美しい翼人の少女は、哀し気な瞳でその場の全員を見回す。
「争い合うなんて莫迦げてる! 彼らに危害を加えれば、その時はもっと強い戦士が私たちを
襲いにやってくるわ!」
 感情と理屈を半々に、少女は叫ぶ。その言葉にその場の面々は難しそうに顔を見合わせ合うが、
内1人が言葉を返した。
「それでは、奴らが攻めてきたらどうしろと仰るのですか?」
 そう言われれば、少女は押し黙ってしまう。結局、彼女も効果的な解決案があるわけではない
様だった。しばし沈黙が流れ、再び会議は再開される。重たい空気を纏ったまま。

 2つの勢力が、アルデンの森という舞台で敵対している。自分たちの生活のため、自らと違う
存在に対する拒絶感のため、互いに睨み合っている。
 そんな様子を無視するかの様に、あるいは嘲笑うかのように、“それ”は地の底を掘り続ける。

〜続く〜
353三重の異界の使い魔たち 代理:2012/07/19(木) 18:53:49.60 ID:IWqCgF1m
 以上、今回はここまでです。

 前回の投下からとても時間が空いてしまい、誠に申し訳ありません。

 それはおいておいて、伝説のアイテム同士の初戦はデルフに軍配が上がりました。
これでいいのか伝説どもよ(笑)。

 また、この作品でのオリジナル才人語録としてニッポニア・ロリコンなるものを
作ってみました。原点からしてレモンちゃんやら胸革命やら突き抜けた単語の多い
才人語録ですが、少しでもそれっぽさを感じていただければ幸いです。

 また、ちらっと翼人事件を匂わせるラストにしましたが、この話は原作とかなり
変わる予定です。

 支援してくださった方、ありがとうございました。次はもう少し早く投稿できる
ようにします。

 次回はタバサ視点からスタートです。


以上、代理投下終了。おつかれさまです。
次回も期待しています
354名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 18:56:39.67 ID:P4m/NFUj
三重の人おつ!
355名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 19:06:50.15 ID:Kl2nINfO
まあ仕方ないけどルイズときゅいきゅいの出番ないなw
このままあの王女が厄介な依頼持ち込んでくるまで出番ないんだろうか

……とすると、シルフィードに乗って直接アルビオンに出向く可能性あるから
才人達どころかワルドも置いてけぼりにされそうだw
356名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 19:40:05.35 ID:TaYFdroT
おお 久しぶり
357名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 19:58:00.51 ID:fDAPPVBu
乙でしたー
358名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 20:53:39.68 ID:QPV3tCBY
そういや多重クロスって、なかなか手を出す人がいないな
359名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 21:02:20.27 ID:yiMzJcw0
だって難易度高い上に大幅な原作改編しないと有りえないからな
360名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 21:31:56.31 ID:aZTxE22U
乙。といっても初めて読んだ作品だが。
タバサが虚無なのか?
ちょっとウィキ行ってくるか。
361The Legendary Dark Zero:2012/07/19(木) 23:04:59.74 ID:N9deg3Hb
三重の人、乙でございました。
夜分遅くになりますが、23:08頃から続きを投下したいと思います。
362The Legendary Dark Zero:2012/07/19(木) 23:09:57.36 ID:N9deg3Hb
Mission 31 <深淵の魔女> 中編


アニエスが抱えてきた女性は何の怪我もなく、意識を失っているだけだった。
魅惑の妖精亭へ立ち寄ったのは単なる偶然であり彼女を宿に預け次第、すぐにあの悪魔の行方を追うはずであったのだが、ここで思わぬ男と再会することになったのである。
女を部屋に寝かせて下りてきたアニエスはアラストルをテーブルに立て掛け、スパーダ達のテーブルに自分もつくことになった。一応、酒場なので酒でも注文しておく。
「スパーダ、誰なのよこの女は」
スパーダと共に席についている桃色の髪の貴族の子女……恐らくは魔法学院の生徒なのだろう。その少女はアニエスを訝しそうに見つめて声を上げる。
同じく席に付いている金髪の髪を覗かせている修道女は、きょとんとアニエスを見つめて呆けていた。
「仕事仲間と言った所だ。共に仕事をしたのはまだ一度だけだがな」
「仕事って何よ。あなた、あたしに隠れて何かやってるっていうの?」
スパーダが自分の知らないうちにこんな平民の女と知り合っていたのがどうにも納得ができず、食って掛かった。
「たまたま、共に悪魔退治をしたというだけだ」
ほとんど食べ尽くしたサンデーを食しつつスパーダは答える。
「アニエスと申すものだ。よろしく頼む」
軽く一礼したアニエスだったが、ルイズは相手が平民だということで侮り自分からは名乗ろうとしなかった。
「あ、あの……ティファニアと言います」
それに対し、ティファニアはアニエスが微かに発する気迫に少し怖じ気づきながらも挨拶を返していた。
「あの、アニエスさん? さっきの方はどうしたのですか? あんなにぐったりして……」
「そうだな。何かあったのか」
ティファニアとスパーダが尋ねると、アニエスは事のいきさつを話し始めた。

最近チクトンネ街で密かに発生しているという怪事件。それは人間によるものではなく悪魔によって引き起こされており、既に多数の犠牲者が出ているという。
宮廷の役人に届けは出されているものの、役人はまともに相手をしようとせずに揉み潰し、上への報告もされず公にもされていないそうだ。
アニエスは何日か前からこの事件のことは耳にしており、独自に調査をしているという。
そして、つい先ほどここに運んできた市民を襲おうとした悪魔を見つけたのだが、取り逃がしてしまったのだ。
「どういうことよ! 仕事を怠けて姫様にも伝えないなんて! 貴族の風上にも置けないわ!」
バンッ、とテーブルを叩いて立ち上がったルイズは腹立たしく大声を上げていた。
「一々、飼い慣らす家畜のことを気にかける暇はないのだろうな」
冷淡に鼻を鳴らし、スパーダは空になったストロベリーサンデーのグラスにスプーンを置く。
力を手にする者の多くは己より力を持たない、もしくは同じ力を持たない者を蔑む傾向にある。ましてやこの魔法至上主義の世界では魔法とそれを操るメイジこそが
絶対の存在だと認識されており、平民は飼い慣らす家畜も同然なのだろう。
以前、チュレンヌとかいう宮廷の醜い豚を叩きのめしたことがあったが、奴は良い例だ。
これがもしも貴族の人間の被害者が出たのであればすぐにでも上に報告し、調査が行なわれるのだろう。それまでに平民はどれだけの被害が出るかなど、想像もつかない。
クズに任せるくらいならば自分達で解決する。アニエスはそう考えた訳だ。
「スパーダ! あたし達でその悪魔を見つけてやっつけてやりましょうよ!」
「ル、ルイズさん!?」
唐突に意気込みだすルイズにティファニアは驚き、戸惑う。
「貴族は絶対に敵に後ろを見せちゃいけないのよ! たとえ相手が悪魔だろうとね! そんな自分の仕事も果たさないなんて貴族でも何でもないわ。
あたし達でその事件を解決してこそ、本当の貴族の役目なのよ!」
取り出した杖を構えて、ルイズはさらに発奮している。
スパーダの指導の元、新しい魔法として特訓を続けているバースト≠フちょうど良い練習相手にもなるのだ。どんな悪魔が相手だろうと、この魔法で吹き飛ばしてやるのである。
363The Legendary Dark Zero:2012/07/19(木) 23:13:58.76 ID:N9deg3Hb
そうして一人張り切るルイズを見て、アニエスが渋面を浮かべる。
「ルイズ殿と言ったな。相手は悪魔だぞ。あなたもメイジだろうが、生半可な実力で挑める相手ではない」
「うるさいわね。平民が生意気な口を聞くんじゃないの。第一、あんたその悪魔を逃がしたんでしょう? だったらここからはあたし達に任せなさいよ」
アニエスに杖を突きつけ、ルイズは尊大に言い返した。当の侮辱されたアニエスも顔を顰めたままルイズを睨み返す。
そんなルイズの姿と態度にスパーダは細く溜め息を吐く。
ルイズもまた、力を手に入れようとしているためか調子に乗って己より力なき者を蔑む人間になりかけている。
この数日、スパーダはルイズの魔法の特訓に付き合ってその腕を磨き上げたり、様々な応用法を編み出させたりしていたのだが、その都度ルイズは舞い上がっていたのだ。
本来、彼女はゼロのルイズ≠ニ呼ばれて蔑まれ、まともな魔法が使えないコンプレックスを抱いていたのだ。
力を求めていた彼女はその思いの分、自分だけの力を手に入れられたことに有頂天になってしまったのだろう。
「ミス・ヴァリエール。アニエスは確かに平民だが、腕は確かだ。それに悪魔との実戦経験は君より上だ」
「はいはい。とにかく、あたしはその悪魔を倒してみせるわ。スパーダもパートナーなんだからもちろん手伝うのよ」
スパーダとしては当然、アニエスに協力をするつもりであったのだがルイズのこの態度には眉を顰めていた。
「あ、あの……」
話に全く付いていけずにおどおどしていたティファニアが恐る恐る声を出す。
「ああ、あんたは良いのよ。大人しく修道院に戻っていて」
「そうですよね。……わたしじゃ足手まといになりますよね」
切なそうに俯くティファニアは膝の上で重ねた手を、嵌めてある指輪をぎゅっと握り締める。
亡くなった母は困っている人を見つけたら、必ず助けてあげなさい≠ニ言って、この指輪を託してくれた。
だからその遺言に従い、目の前に困っている人間が現れれば、どんな相手だろうと助けてあげようと誓ったのだ。
だが、今の自分は何の役にも立てない。ましてや、悪魔と戦うことなんてできやしない。中途半端な自分は誰の力にもなれない。その無力さに歯がゆさを感じていた。
「そういうことで、そうと決まったらすぐにその悪魔を捜しましょう!」
ルイズのあまりの危機感のなさにスパーダはもちろん、アニエスですら密かに溜め息を吐いていた。
こういう無駄に張り切る人間が一番、危なっかしく足手まといになるのだ。


「それじゃあ皆さん、どうか気をつけてください」
修道院へと送り届けたティファニアが三人……特にスパーダのことを心底心配した様子で無事を祈った。
「大丈夫よ。あんたも外に出ないで中で大人しくしてるのよ?」
張り切っているルイズは明らかに増長しているのが明らかだった。これではその悪魔の格好の餌食になりかねない。
ティファニアを送り届けた一行はチクトンネ街を歩き回り、アニエスが取り逃がしたという悪魔を捜すことになった。
彼女によるとその悪魔は女悪魔だそうで、対峙した時に口にした言葉からどこかの酒場に潜伏しているかもしれないという。
その悪魔は人間に化けているのだろうがスパーダは当然のこと、アニエスが持つアラストルは悪魔の気配を察知できるので酒場を適当に渡り歩いていれば見つけることができるだろう。
「ふぅん、悪魔にも女がいるんだ」
「女だからといって油断はするな」
むしろ女悪魔の方がより狡猾な連中が多いのだ。ルイズはまともに悪魔と相対したことがないから、その恐ろしさが分からないのだろう。
……スパーダは悪魔とはいえ、ルイズからしてみればその姿はもちろん行動ですら人間としてしか意識していないのだ。
「アニエスとか言ったわよね。あなた、魔法は使えないでしょうけど武器はちゃんと持っているんでしょうね」
ルイズのその言葉にアニエスは無言で一瞥していた。
平民である以上、魔法は使えないがそれに代わる力は手に入れ、磨き上げているのだ。
実力のあるメイジだったらまだしも、まともに実戦経験のないルイズから軽んじられて、さすがの彼女も気分を害していた。
364The Legendary Dark Zero:2012/07/19(木) 23:18:08.93 ID:N9deg3Hb
「そういえばどうだ。アラストルの調子は」
スパーダはアニエスが背負う盟友の化身を指しながら尋ねる。
「ああ。大事に使わせてもらっているさ。こいつは私とはとても相性が良いみたいでな。悪魔共との戦いではとても役に立っている」
アニエスは鞘に収められているアラストルの柄に軽く触れながら満足げに答えていた。
アラストルを手に入れてからのアニエスはこれまで以上の奮闘で悪魔達を相手に戦っており、過去には手こずっていた悪魔もかなり楽に倒せるようになったのだ。
それは単純にアラストルの力だけでなく、アニエス自身の能力にもある。
魔法が使えない平民である以上、それに代わる力として剣術を磨き上げてきたために今では腕の立つメイジを相手にしても引けをとらない実力を有するようになったのだ。
鍛錬によって積み重ねてきた力がアラストルを己の一部として使いこなす源となり、その力を認めたアラストルはアニエスを主として認め、力を与えてくれているのである。

盟友の化身が強者の手で有意義に使われていることに、スパーダ自身も満足してほくそ笑んだ。
だが、同時に懸念も抱いていた。
「しかし、それを使って取り逃がすとはな」
「ああ。不覚だった。奴は今まで私が相手をしてきたような雑魚とは違ったみたいでな。いつものようにすぐに片付けられなかった」
「ま、今回はあたし達に任せなさいよ。その悪魔もあたし達で倒してあげるから」
悔しそうに返すアニエスであったが、そこにルイズが溜め息混じりに馬鹿にした態度を取っていた。
直接アニエスの実力を目にしていないので仕方ないことであるが、本来ルイズは純粋な平民は貴族には絶対に勝てないという固定概念を抱いているのだ。
スパーダを認めているのは彼自身の力を飽きるほどに見せ付けられ、しかも人間ではなく悪魔という強大な存在であることを認識しているからである。
故に純粋な平民であるアニエスをこうも侮ってしまうのはある意味、普通の貴族としては当然と言えるだろう。
その傲慢な考えが、彼女を窮地に追いやることになりかねないのに。

約三十分、スパーダ達はチクトンネ街の様々な酒場の前を通りがかっていたがどこの酒場も悪魔の気配は感じられず、閑古鳥な様子を覗き見るだけであった。
「もうっ、まだ見つからないの? 本当にこの街に潜んでいるんでしょうね?」
ずっと歩き回っているのに未だ見つからないことにルイズは苛立ちを感じ、アニエスに食って掛かった。
「そう焦るな。まだ全てを回ったわけではない」
スパーダは短銃を一つ取り出しクルクルと手の中で回しながら代わりに答えるが、唐突に足を止めた。
「……何かしら?」
見ると、何人もの男達が次々と路地の中へと入っていく姿が窺えた。それも一人や二人ではない上、貴族の人間までもいる。
その後を追ってスパーダ達も路地へ入って進んでみると、その奥の袋小路には一軒の店があった。
それもどうやら酒場のようだ。他の酒場は閑古鳥だというのに、あそこだけ何故か客足が凄まじい。
看板には妖艶の園≠ニいう店名が記されている。
……スカロンが言っていた新しくできた酒場というのは、どうやらここらしい。
店は地下へと続く階段の奥にあるようで、中は相当繁盛しているのか賑やかな話し声がここまで届いてくる。
(ここだな)
そして、スパーダはこの店の中からはっきりと強い悪魔の気配を感じ取っていた。それも雑魚の下級悪魔ではない。
「どうやら、ここにいるようだな」
「うむ」
アニエスは背負っているアラストルが柄からパリパリと微かに紫電を散らしていることで、薄い笑みを浮かべた。
悪魔の気配を察知すると、こうしてアニエスにその存在を教えてくれるのだ。今度こそ逃がしはしない。
365名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/19(木) 23:18:10.58 ID:kxsLrsM5
支援
366The Legendary Dark Zero:2012/07/19(木) 23:23:06.15 ID:N9deg3Hb
「それじゃあ早速突っ込んで――」
「待て。ここは一応、店だ。一般人もいるだろう」
杖を取り出し、張り切って階段を下りようとしたルイズをスパーダが制した。
「ヴァリエール殿。下手に暴れれば無関係の人達も傷つけてしまいますぞ」
さらにアニエスも右肩に吊るしていたゲルマニアの職人・ペリ卿に作ってもらった砲銃に弾を装填しながら言う。
「そ、そんなの分かってるわよ」
平民に注意されてしまったことにいささか不愉快であったが、ルイズは拗ねるように澄ました態度をとっていた。

さて、これから突入をする訳だがスパーダはちらりと後ろを振り返ってみたりするものの、路地の入り口からは誰もやってこない。
(今日はやはり来てないな)
どうやら今日はタバサは後を付けてきていないようだ。もしいるのであれば魔力を感知して存在の確認ができるのだが。
悪魔絡みの仕事があれば一緒に連れて行って欲しいとは言っていたものの、珍しく今回は付けてきていない。
またガリア王国に呼び出しでも食らっているのだろうか。
「スパーダ。何してるのよ。とりあえず中に入るわよ」
ルイズが促してきたため、スパーダは二人と一緒に階段を下りていく。
およそ十メイルほど地下へと下りた先には扉があり、人間界の文字でWelcome to Garden of Bewitchery(ようこそ、妖艶の園へ)≠ネどと書かれている。
その扉の向こうからは、美しい旋律のハープの音色が聞こえてきていた。
同時に、強い悪魔の気配もだ。……しかも、この気配は以前に飽きるほど感じたことがある。
(これは……)
「何をしているのよ。早く中に入ってよ」
ノブを握って動きを止めていたスパーダをルイズが急かしていた。

「これはすごいわね……」
「酒場というより、一種の劇場だな」
店の中へ足を踏み入れた途端、ルイズとアニエスは中の様子を目の当たりにして嘆息を漏らした。
そこは面積にして広さはおよそ三十メイル四方、天井までは八メイルほどの高さという酒場としては広大な空間であった。
壁や天井は全て岩から削りだされて磨き上げられており、ラ・ロシェールまでとはいかないがかなり壮麗な造りとなっている。
岩の所々には小さな穴が開いており、その中には無数の蝋燭が立てられ、この地下の空間に淡い光をもたらしていた。
この薄暗い空間の中、ざっと百人は超える男の客達が備えられたテーブルについて酒を振舞われている。
中には空いている席がないのか、壁に寄りかかっている者もいた。

酒を運んでいるのは無数の小さなコウモリのようなもの。人間の従業員は一人もいない。
「何かしら。ガーゴイル?」
俗に魔法人形と呼ばれるガーゴイルなのかとルイズは踏んでいたが、スパーダはこのコウモリを目にした瞬間、相手の正体が全て分かってしまった。
(あいつまで来ているのか)
煩わしそうに顔を顰め、大きな溜め息を吐くと腰の閻魔刀に手をかける。今回はリベリオンを持ってきてはいない。
酒場の最奥、備えられている魔法の明かりによってかなり明るくなっている舞台上に視線をやると、そこには一人の女の姿があった。
いつもと違う色白の肌であったが、その赤毛の髪と妖しい美貌に満ちた顔はスパーダの記憶にはっきりと刻まれている。
367The Legendary Dark Zero:2012/07/19(木) 23:27:24.34 ID:N9deg3Hb
(なっ……何なのよ。あの女! 腹立つわ!)
ルイズは舞台の上で異様な形をした大きなハープを演奏している女の姿を見て、プルプルと震えながら今にも癇癪を上げてしまいそうに顔を顰めていた。
何せその女は貴婦人のような優雅な雰囲気を醸し出してはいるものの裸婦のような格好で、まるで慎みのかけらもない姿を晒しているのだ。
髪の色がキュルケと同じである上、雰囲気も非常にそっくりであったために見ているだけで苛々する。
しかもキュルケでさえ下着を身に着けているというのにあの娼婦は両腕にショールをかけ、下半身にはドレスと漆黒の衣を纏っており、上半身には何も身に着けていない。
形の整っている豊かな胸はキュルケまでとはいかない大きさだが髪が垂らされ、申し訳程度に隠されている。
それが余計にルイズの癪に障る。

むかつく……。

むかつく。

むかつく!

客の男達は明らかにあの娼婦のあられもない姿に見惚れてだらしない顔を浮かべている。おまけに貴族の客まで……。
(どいつもこいつも、胸が大きければ良いってもんじゃないわ!)
今にも杖を振るって男共もまとめて吹き飛ばしてやりたい衝動を、ルイズは必死に抑えこんでいた。
そうしてルイズが負の感情を渦巻かせているのをよそに、スパーダとアニエスは舞台上にいる娼婦を睨んでいた。
「……奴がそうだ」
アラストルの柄に手をかけたアニエスが呟く。人間の姿に化けているとはいっても変わっているのは肌の違いだけだ。
「……ああ。私も奴とは因縁があってな」
「何?」
閻魔刀を指で押し上げ、鞘から刃を僅かに覗かせるスパーダの言葉にアニエスが怪訝そうな顔を浮かべた。

忘れられるはずもない。かつては共に同じ魔帝の勢力に属していた同胞でもあった、切っても切れない関係だったのだから。
スパーダは舞台上の娼婦をじっと細い目付きで睨み続けながら、奏でられているハープの演奏を聴いていた。
あのハープは、奴の魂の一部を取り出して魔具として変えているものだ。本来、あれは鎌としての役割を果たしているのだが。

昔のことを色々と熟考していたが、その時スパーダは眉を僅かに顰めた。
演奏を続けている娼婦の視線が、ちらりとこちらを向いたのだ。
スパーダへ向けて、真っ直ぐと。
妖しい雰囲気と共に獣のように鋭い視線がスパーダを射抜いている。
「こちらに気付いているな。……やって良いぞ」
「ふっ、いいだろう」
不敵に笑み、砲銃を構えたアニエスは何の迷いも容赦もなく引き金を引いた。
368The Legendary Dark Zero:2012/07/19(木) 23:32:23.64 ID:N9deg3Hb
砲口から放たれた砲弾が一直線に娼婦のいる舞台目掛けて飛んでいき、演奏に聞き惚れていた客達は突然の飛来物にざわめいた瞬間――。

バウゥンッ!!

砲弾は娼婦に直撃し、舞台の上で爆発を巻き起こした。
「な、何だぁ!?」
突然の事態に客達はパニックを引き起こした。煙を噴き上げて炎上している舞台で優雅に演奏していたはずの娼婦が炎に包まれてしまったのだ。

ズダンッ!

何が起きたのか分からずに混乱する客達だったが、そこにアニエスが短銃を頭上に向けて発砲した。
閉鎖された空間である店内に鋭い銃声が響き渡る。
「静まれぇ!」
威圧する声を上げるアニエスであったが、振り向いた客達は今起きた惨状の原因が彼女であると即座に判断して青ざめる。
「な、何てことしやがる……」
「人を殺しやがった……」
「しかもあんなバラバラに……」
何の前触れもなく娼婦を殺害してしまったと思い込んでいる客達であったが、その中から貴族の客が数人歩み出てくると杖を引き抜きながら食って掛かってきた。
「女! 貴様、これはどういう真似だ!」
「我らの楽しみを邪魔するとはどういうわけだ!」
杖を突きつけ、威圧してくる貴族の男達であったがアニエスは臆することなく逆に彼らを睨み返していた。
「すぐにここを出てもらおう。今日はもう閉店だ。永久にな」
「な、何だと! 平民が!」
アニエスの態度に激昂した貴族が杖を振り上げた途端、突如彼らを無数の小さな爆風が包み込み、吹き飛ばしていた。
「これ以上、怪我をしたくなかったらさっさとここから出なさい! あたし達は忙しいの!」
杖を構えていたルイズが大きく声を荒げていた。
小娘とはいえ、同じ貴族までもが姿を現したことに平民の客ともども動揺する。

「本当に野暮なものね……。二度も邪魔をするだなんて」
その時、炎上が続いている舞台から妖しい響きのかかった女の気だるそうな声が上がった。
突然の事態に混乱し、戦慄していた客達はその声に反応し、舞台の方を振り向く。
スパーダはずっと舞台上を睨んだままであったが、後の二人は客達と同様に即座にそちらを見やった。
舞台上で燃え上がり、立ち昇る炎の中からゆっくりと人影が姿を現す。
客達に酒を運んでいたガーゴイルだと思っていたコウモリ達が次々と集まっていくと、人影の周囲に纏わりついていった。

炎の中から姿を現したのは、先ほどまで彼らを楽しませてくれていた娼婦だった。
だが、客達は誰も娼婦の無事に喜ぶことはない。むしろ、恐怖を湧き上がらせていた。貴族の客も同様である。
それまでの美しい色白であった娼婦の肌は、まるで死人のような土気色へと変貌していた。
纏っていたショールやドレスかと思われていたのは大量の小さなコウモリ達が密集することで出来上がっているものであった。
全身から発する色気と魅力こそ全く変わりはないが、その異様な姿と殺気は彼らの心臓を鷲掴みにしてしまうほどの恐怖を与えてしまう。
周囲を飛び交う無数のコウモリ達は娼婦に付き従うかのように侍らされていた。
369The Legendary Dark Zero:2012/07/19(木) 23:36:56.69 ID:N9deg3Hb
誰しもが戦慄する。この女は……人間じゃない。化け物だと。

それはもはや彼らを楽しませてくれた妖艶な娼婦ではない。血に飢えた、異形の魔女と呼ぶに相応しい。
「ば、化け物……」
「化け物だああぁぁぁっ!」
「魔女だ! 悪魔だぁ!」
一人が口にすれば、それに乗じて恐怖に満ちた声と叫びが次々に上がっていく。
平民も貴族の客も我先にと入り口に押し寄せ、一分と経たない内にあれだけ大勢の客がいた店内はすっかり閑古鳥となってしまった。
人が出払ったことで動きやすくなり、スパーダは閻魔刀に手をかけたまま舞台に佇んでいる魔女へと近づいていく。
アニエスは既に新たな弾を砲銃に装填しており、アラストルも鞘から抜き出していた。ルイズも杖を突きつけたまま身構えている。
(何よ。やっぱり平民に任せてられないわね)
魔女は傷一つ負っていないことに、ルイズはアニエスのことをさらに見くびっていた。
平民の武器と力ではやはり悪魔は倒せないのだと。

魔女は殺気を発しているアニエスやルイズと相対しても余裕の態度を崩さず、腰に手を当てていた。
それどころか今の爆発と炎で体に付いてしまったホコリや煤をパッパッ、と手で払っている。
「! 何だ?」
アニエスがアラストルで斬りかかるべく踏み出そうとした途端、スパーダが無言で肩を掴んで押しとどめてきた。
「何をやってるのよ、スパーダ! こいつが例の悪魔なんでしょ! ……なっ! 離してよ!」
ルイズも前に出て杖を振るおうとするが、スパーダに掴まれて止められてしまった。
せっかく人が出払って遠慮なく戦えるというのに、スパーダは何故か魔女に対して戦意を抱いていないことにアニエスもルイズも首を捻りそうになった。
スパーダならば相手がどんな悪魔だろうが、容赦なく手にする剣で斬り伏せるはずだというのに。どうして今回ばかりは?
(……因縁?)
ふとアニエスは先ほど、スパーダが呟いた言葉が頭をよぎっていた。この悪魔とスパーダは、顔見知りだと。
「ずいぶんと過激な女達と一緒なのね?」
魔女はその赤毛の髪と身に纏うショールを緩やかに揺らしながらずいぶんと親しげな態度でスパーダに語りかけてきた。
「お前もそう変わらんだろうが」
スパーダは舞台に一番近いテーブルの傍で転がっていた椅子を蹴り上げた。
クルクルと宙で二転、三転しながら床の上に立つと、堂々とその上に腰を下ろし膝を組んで魔女と向かい合った。
(なっ……どういうつもりよ?)
あまりの意外な行動にルイズとアニエスは呆気に取られてしまう。
魔女は自分の周りにコウモリ達を侍らせながら舞台から下りてくると、スパーダのいるテーブルの前に立つ。
スパーダは態度こそ戦意を露にしてはいないものの、その冷徹な瞳はまさに獲物を狙う狩人そのもので、刃のような鋭さを蓄えていた。
「あら? 私は違うわよ? 私はそこの女達みたいに野蛮じゃないし、せっかちでもないわ」
「だ、誰が野蛮ですってぇ!? この淫乱女ぁ!」
こんな淫魔そのものと言わんばかりの悪魔にいきなり野蛮と言われ、激昂したルイズは杖を振り上げようとした。
370The Legendary Dark Zero:2012/07/19(木) 23:47:04.56 ID:N9deg3Hb
「あっ!」
その途端、ヒュンッという空を切る音と共にルイズの体はスパーダに軽く突き飛ばされていた。
アニエスが咄嗟にアラストルを振るい、魔女の振るったショールを弾き返す。
「せっかくのダーリンとの再会に水を差さないでもらいたいわ」
床に倒れたルイズを睨みつける魔女の赤い瞳には、殺気が宿っていた。邪魔する者は許さない。そう語っている。
「……!」
魔女の発する悪魔としての威圧感にルイズは思わず息を呑む。
その殺気は長姉が自分を叱ったりする時よりも遥かに恐ろしいもので、身動きが取れないでいた。

「最近、この街で起きているという事件はお前の仕業だな」
テーブルにつくスパーダは目の前にいる魔女……妖雷婦<lヴァンに対して単刀直入に問いただしていた。
気を取り直したネヴァンは妖艶な笑みを浮かべ、スパーダの方を振り向く。
「あら。そんな噂は知らないわ。私はこのお店の準備前と閉店した後に食事をしていただけよ」
ネヴァンの食事は男の精を貪るか、女の生き血を啜るかのどちらかだ。
相変わらず、その嗜好は変わっていないらしい。
スパーダが僅かに眉を顰めると、ネヴァンは悩ましげな顔を浮かべてスパーダの頬に手を触れる。
「そんな顔をしないで……ハンサムな顔が台無しだわ……。せっかく久しぶりに再会できたんだから……楽しみましょう?」
顔を間近に近づけてきた途端、アニエスがスパーダの背後から短銃をネヴァンに突きつけてきた。
「黙れっ! この悪魔め! 貴様がスパーダとどんな因縁があろうと、この街の者達を害してきたのは明らかだ!」
「本当に無粋な女ね……。邪魔よ」
つまらなそうに鼻を鳴らしたネヴァンはアニエスに手を向けると、その指先から雷鳴と共に稲妻を発していた。
「ぐっ!」
咄嗟にアラストルを構えて盾にし、稲妻を天井へと逸らしていた。軌道を変えられた稲妻は天井で弾け散る。
「その辺にしておけ」
スパーダが一声を発するとようやく腰を上げ、閻魔刀に手をかけていた。
ネヴァンはスパーダの足元から頭まで、舐めるようにして見つめながらフフッ、と笑った。
「お前が退屈なら、私が相手をしてやる」
「また私に刺激を味あわせてもらえるかしら?」
その問いに、無言でスパーダは閻魔刀を指で押し上げ鞘から刃を覗かせる。
満足そうに唸るネヴァンは踵を返し、舞台に上がるとコウモリ達が彼女を守るようにして密集し始めた。
起き上がったルイズは杖を突きつけ、アニエスもまたアラストルを構えだす。
ネヴァンはその二人にも視線をやり、楽しげに笑った。血と刺激に飢えた獣のような瞳がきらりと光る。
「いいわよ。久しぶりに、楽しみましょう」


※今回はここまでです。
前後編にする予定だったのですが、長くなってしまったので三つに分けます。
あと、時代の都合上ネヴァンはギターではありません。
371名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/20(金) 04:08:41.54 ID:6KAWVFfo
パパーダの人も、伊勢海老県の人も乙です
372名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/20(金) 06:14:50.73 ID:BzZIiAGM
乙っす

ルイズは慢心が過ぎるね。痛い目(物理)に遭うだろうさ。
373名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/20(金) 07:49:28.41 ID:YvobO77q
パパーダ乙です。
374デュープリズムゼロの人:2012/07/20(金) 16:42:10.71 ID:TfLrUKS2
お久しぶりです。リアルが忙しかったのと話を綴るのに苦戦してました。
そんな訳でデュープリズムゼロ第二十九話五分後に投稿させてもらいます
375名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/20(金) 16:45:32.80 ID:TvkmIEXb
>>338
海パン刑事は特殊刑事課の中ではまともなほうだぞ
376デュープリズムゼロの人:2012/07/20(金) 16:46:48.50 ID:TfLrUKS2
第二十九話 『アンドバリの指輪』

「来るとしたらそろそろかしらね。」

ミント達が水の精霊の依頼を引き受け数刻、ラグドリアン湖には既に夜の蚊帳が降りていた…

そうして襲撃者を待ち、湖畔の森の茂みの影に一行が身を隠したまましばらくの時間が経過した所で精霊の情報通りローブを纏った怪しげな二人の人物が現れた。
一人は小柄な体格で身長を上回る大きな杖を持ち、もう一人は背の高めな女性。ローブを纏っていてもその女性らしい体型で女生と十分に判別できる。

「来たわね…さっきも説明したけどギーシュはワルキューレで陽動、襲撃者の注意を引いてる間にあたしが裏から攻めて一気にけりをつけるわ。」
「任せてくれたまえ、君の為ならば僕はど「それじゃあ、あたしはもう行くわよ。ルイズとモンモランシーはギーシュが役に立たなかったら片方を何とか引きつけて。」」

ミントはギーシュを完全に無視しながらそう言い残すと襲撃者の背後を取る為に音も立てず、軽やかな動きで森の中へと消える…
その場に残されたルイズに対しモンモランシーは不安げな様子で近寄るとルイズのマントをクイクイと引っ張った。
「ねぇ…本当に大丈夫なの?さっきの作戦もはっきり言って無茶苦茶適当じゃ無い?それに…」
モンモランシーはチラリと己の脇に立ち造花の薔薇を手にして格好いいポーズを取っているギーシュをジト目で見つめる。

「モンモランシー、あんたの言いたい事は分かるわ。でも…ま、ここはミントを信じましょう。」

ルイズは言ってぎこちなく笑う…

(そうよ…ミントはあのワルドだって倒したんだから…)


「さて、モンモランシー、ルイズ、ではそろそろ行こうか…我が忠誠と愛を示せ僕のワルキューレ!全てはミント様の為に!!」
ミントが回り込むだけの時間を十分に待ったとみて、立ち上がったギーシュが七体のワルキューレを練金するとワルキューレを二人組の襲撃者へと一気に突撃させる。
そのワルキューレ達の動きはまさに一斉突撃であり、それはギーシュのミントへ良い所を見せたいという非常にわかりやすい単純な思考故であった。
377デュープリズムゼロの人:2012/07/20(金) 16:50:38.94 ID:TfLrUKS2
それに素早く反応した二人組の襲撃者はほぼ同時に呪文を唱え、接近するワルキューレをそれぞれ火と風の魔法のコンビネーションで次々と迎え撃った…
積極的に前に出る火のメイジに対し風のメイジが確実な援護を行い、数分の攻防を経て既にワルキューレはその数を4体にまで減らす。

「さてと…そろそろ行こうかしら。」
「お?やっと俺様の出番かい相棒?」

その光景を草陰に隠れたまま、しばらく見守っていたミントはデルフリンガーを握りしめ軽く一声をかけると草陰から素早く飛び出した。
ミントの動きにいち早く気が付いたのは小柄な風のメイジ…風の流れや物音に対する持ち前の敏感さは流石と言えるか、躊躇う事も無く直ぐ様ミントに迎撃のエアハンマーが襲いかかる。
だがミントはそれをデルフリンガーの力で消し去るとより一層素早い踏み込みでローブを纏った風のメイジに肉薄し、デルフリンガーの峰を叩き付ける様に振るう。

「…っく!」

襲撃者の風のメイジから苦悶の声が漏れる…剣は魔法の刃を纏った杖と交錯し、ミントの一刀を辛うじて堪える形となった。
そのままミントが生来の物に加え、ガンダールブの効果による少女とは思えぬ怪力で風のメイジを力でねじ伏せようとする。

溜まらず片膝を付いた様に見せて、自らに掛かる負荷をいなしたメイジは余程実践馴れしているのか…そこから流れるような軽やかな身のこなしでミントの足下を蹴り払い、体勢を崩したミントから地面を転がるようにして距離を取ると体勢を素早く整えてた。

「ぅわっ…と!…結構やるわね…」

___

早鐘のように鳴る心臓の鼓動を沈める為に、咄嗟に雑木林に飛び込んだ風のメイジは何度か小さく息を吸っては吐く…
それは何もさっきの一瞬の攻防の緊張から故と言う訳では無かった。
さっきの一瞬の攻防でミントの視線は上から見下ろす形であった、それ故ローブのフードに隠されたメイジの顔は見えなかった…だが、逆にメイジはミントの顔をしっかりと見た。

(何で…ここに彼女が?)

水の精霊への襲撃者の正体、それは自らの家事情によってガリア王国から任務を受けたタバサとその親友を手伝おうとしているキュルケだったのだ。

378デュープリズムゼロの人:2012/07/20(金) 16:55:57.88 ID:TfLrUKS2
まさかそんな任務の最中に突然自分達に襲いかかってきた人間が学園の友人だとは思っていなかったタバサは内心で少なからず動揺した。ここで自分がフードを外し、ミントの名を呼べばお互い戦う必要は無い。
(だけど…)

タバサは又一歩ミントから距離を取って考える…
今、キュルケはワルキューレを相手にしているがドットとトライアングルの力差は明白、彼女の勝ちはもはや時間の問題だ。そしてそう間を置かずキュルケもミント達の正体に気づいてこの闘いは終わるだろう…

(ならば…)

タバサは思考を纏めて自分の導き出した結論に従って再び杖を構えて呪文を紡ぐ…

(私は本気で彼女と戦ってみたい…)

魔力で編まれた風が一度足下で円を描くとタバサは腰を落とす…握りしめられたその杖には今鋭い風の刃が付与されていた…

___
(…それにしてもあの動きと反応の良さ…何か引っかかるのよね〜?)

距離を取ったタバサに対してミントは何とも言えぬ違和感を感じつつ、あえて再び距離を詰める事を選んで前進をする。
メイジにとって最悪とも言えるデルフリンガーの吸収能力…普通のメイジならば何かの間違いだろうとそれを断じて再び魔法の迎撃を選ぶだろう。
しかしタバサは違う、実際にデルフリンガーの力を知っているし、仮に知らずともそんな楽観視からの手を打つ愚は犯さない。

「おりゃぁぁっ!!」

「っ…!」
風の刃を纏った杖が大剣となって再びミントの気合いの掛け声と共に振り下ろされたデルフリンガーと鍔競り合う。
力と技、そして早さもやはりミントが上である以上無理はせず、再び斬撃を受け流したタバサは間合いを放すと悟られぬよう小声で詠唱していたウィンディアイシクルを杖先から解放した。
「うわっと!来た来た!!」
379名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/20(金) 16:59:51.37 ID:7tfsnlQR
支援
380デュープリズムゼロの人:2012/07/20(金) 17:00:21.11 ID:TfLrUKS2
自分に襲いかかってくる氷柱に対し、ミントは落ち着いた様子でステップを交えながら、右片手持ちに切り替えたデルフリンガーを前に突き出す形で防御する。
と、同時に空いた左手でデュアルハーロウを纏めて掴むとデルフリンガーをその場に突き立てた。

「予測通りね。食らえっ!!」

ミントが言って、意地の悪い笑顔を浮かべる。刹那、最も発射までの時間が早い『バルカン』の光球が連発してデュアルハーロウから撃ち出された。

ミントは敵と再び競り合いになった場合、メイジである以上、敵は一度後退して魔法を撃ち込んで来るであろう事を予想して動いていた。そこをデルフで凌ぎ、魔法を唱え終えて最大の隙を晒して居るであろう敵を魔法で仕留める。
それがミントが描いた一連の立ち回り、ハルケギニアのメイジは魔法に絶対の自信を持っており、まさか剣で接近戦を挑んできた相手が魔法を使う等とはまず考えないだろう。その心理を完全に逆手に取った立ち回り。

しかし、それは一つの誤算で防がれる事になる。
それは敵対しているメイジが自分の手の内を知っているタバサだったと言う事だ。

ミントの放った魔弾を前に更に一手先を読んでいたタバサはウィンディアイシクルを放った直後から唱えていた魔法『ウォーターシールド』を解き放つ。

(間に合った!!)

次々と青銅をも容易く打ち抜く魔力の弾丸が分厚い水の障壁に着弾し、消滅するのを確認しタバサは内心安堵する。それと同時に、呪文の詠唱を行いながら水の壁の脇から飛び出した。

実際タバサにとってミントを魔法で狙えるのはデルフリンガーを手放している今しか無い。
夜の湖畔の暗さと、水の障壁の目隠し効果によってタバサが飛び出した事にミントが気が付いたのはその油断も相まってか、タバサが『ウインドブレイク』をミントに向かって唱えた直後だった。

「げっ…!!」

気づいた時にはもう遅い。雑木林の細い木々をへし折りながら強烈な風の鎚が軽いミントの身体をまるで紙細工のように大きく吹き飛ばす。
381デュープリズムゼロの人:2012/07/20(金) 17:04:55.52 ID:TfLrUKS2
咄嗟の事とはいえ、ミントはデュアルハーロウを交差させ身を守る体勢をとっていた為ダメージ自体は問題はさして無い。
「やばっ!!?」

それでもその衝撃は空を飛べないミントの軽い身体を森の外へと弾き飛ばすには十分過ぎた。そして湖畔の雑木林の外には一体何があるか?

答えは当然、ラグドリアン湖である…


「へぶっ!!がぼっ!!っ、…ぶはあぁぁっ!!!!」

タバサの放ったウィンドブレイクの勢いがついたまま、数度の水面への衝突の後、派手にラグドリアン湖の水面へと叩き付けられたミントはややあって水中から水面へと顔を飛び出させ、大きく息を吸う。
濡れた髪は頬へ張り付き、お気に入りの一張羅はビショビショで不快極まりない…

「あいつ…もう許せない…絶対ボコボコにしてやるわ。」
呪詛のように呟いて黒いオーラを纏った様なミントはフラフラと重い足取りでラグドリアン湖の浅瀬から岸を目指す。
しかしそのミントの怒りは思わぬ人物によって削がれる事となった。

「ミント〜、大丈夫〜?」

声の主はキュルケで彼女の隣にはルイズ、モンモランシー、ギーシュがそれぞれキュルケ同様ミントに声を送っている。

「キュルケ…何であんたがここに?」

ミントは思わず何故、今ここにキュルケが居るのかと目を丸くして四人の元へと浅瀬の中足を取られながらも駆け寄った。

「私達にも事情があるのよ。そっちの事情はルイズ達から聞いたわよ。あんたも災難ね。」

と、言ってキュルケが笑うと同時にさっきまで戦闘が行われていた雑木林の中からガサガサと音を立ててフードを外したタバサが現れる。その手には先程ミントが落としていたデルフリンガーが握られていた。

「いよ〜相棒、この娘っ子にしてやられたな〜!」

382デュープリズムゼロの人:2012/07/20(金) 17:10:03.97 ID:TfLrUKS2
「タバサ!!まさかさっきのメイジってあんただったの!?」

再び大きな驚きにミントは口元を手で隠す。それもつかの間、さっきの恨みを忘れようも無いミントは凄まじい剣幕でタバサへと詰め寄るとデュアルハーロウはタバサの鼻先にビシリと突きつけた。

「どういうつもりよタバサ!?あんたのせいであたしはビショビショよ!!」
「ごめんなさい、貴女だと気が付かなかった。暗闇な上こちらも必死だった。」

しれと言ってタバサはミントにデルフリンガーを返却して軽く頭を下げる。勿論タバサの言葉は嘘であるが。
タバサのその返答を聞いてミントは非常にふまんげな表情を浮かべた。敵が友人だったのならミントの沸き上がる怒りは誰にぶつけろというのだろうか…これが赤の他人ならば本気で地獄巡りだ…

「ったく…わかったわタバサ。この怒りは後でモンモランシーとギーシュにぶつけるから…でもその代わりあんた達の精霊への襲撃は止めさせてもらうわよ。」

それでもやはりじっと真っ直ぐに自分を見つめる小柄な少女をぶっ飛ばすのも気が引けるミントは妥協案として諸悪の根源へとその矛先を向ける事とした。ミントのその言葉にタバサも何処か満足そうに無言で頷いた。





「ほら、約束道理あんたを襲ってた奴らとは話付けたんだからさっさと秘薬の材料頂戴。」

「うむ、約束だ…我が肉体の一部を授けよう、受け取るが良いガンダールブ。」

再びモンモランシーが水の精霊を呼び出すと先程と同じくモンモランシーの姿を模した水の精霊の指先から虹色の大きな水滴がフワフワと移動してミントの持つ小瓶へと収まった。

「やったわ!!これで解毒薬が作れるわ!!」
「フム…これだけの量の高純度の精霊の涙…末端価格は凄まじい値が付くだろうね…」
「ハ〜…一時はどうなるかと思ったけど…何とかなったわね…」

そのハラハラとしたミントと水の精霊のやり取りが無事完了した事で一同に安堵の溜息が漏れる。
383デュープリズムゼロの人:2012/07/20(金) 17:14:24.82 ID:TfLrUKS2
これでミントの目的は達成出来た訳ではあるが、だがまだタバサとキュルケの方の問題が残っている。続けてミントは水の精霊にそもそも何故ラグドリアン湖の水かさを上げているのかを訪ねる事にした。

「あ、それとさ〜あんた何で湖の水かさなんて増やしてんの?この子の実家とか困ってるのよ…悪いんだけどやめてくんない?」
タバサを指さしたミントの言葉に反応し、水の精霊はしばらくフルフルと身体を震わせて何か考え込んでいるかのような印象を見せた。

「…ふむ…お前とその周りの単なる者たちに話して良いものか我は悩む。しかし、ガンダールブ、お前は我に力を示し、また我と交わした約束を果たした…ならばこそ信用して話しても良いことと我は判断する。」

「そりゃどーも…」

そこまで深刻な様子を見せられてもミントとしては正直困る。まぁ話してくれるならば特に問題はない…厄介事の予感はするが。
佇まいを正すかのように水の精霊はぐねぐねと形を変え、今度はミントの姿を模すと湖の水かさを増やし続ける理由を話し始めた。

「……数えるのも愚かしいほど月が交差する時の間、我が守りし秘宝を、お前たちの同胞が盗んだのだ」
「秘宝!?」

秘宝という言葉にミントの瞳が邪にギラついたのをルイズは見逃さず、そんなミントに半ば呆れつつ視線を向ける…そんな事を気にした様子も無く、水の精霊の語りは続く…

「そうだ。我が暮らす最も濃き水の底から、その秘宝が盗まれたのは、月が三十ほど交差する前の夜の事だ…我はただ、秘法を取り返したいと願い水を増やした。
ゆっくりと水が浸食すれば我が知覚はいずれ秘宝に届くだろう。水が全てを覆い尽くした時、秘宝は我の元に戻る…無論、その暁には水かさは元に戻そう。」

『…………………』

語り終えた水の精霊に対して六人の反応は正に絶句の一言だった。人間の時間の流れではあり得ない行為を精霊はさも当然の如く行おうとしているのだ…

「そういえば、私お父様から聞いた事があるわ、水の精霊が守り続けている秘宝。確か名前はアンドバリの指輪…強力な水の先住の力を秘めた指輪だと。」
384デュープリズムゼロの人:2012/07/20(金) 17:19:46.09 ID:TfLrUKS2
「そう、その通りだ。我が秘宝アンドバリの指輪は生命を操る…偽りの生命を死者に与え、心を操るその指輪を持ち出したのはそなた達の同胞たる三人のメイジ…一人はクロムウェルと呼ばれていた。」

続けられる精霊の言葉に一同は再び絶句する。
「クロムウェルって言ったら…アルビオンの…」

「たしか…新皇帝よね?でもタルブ開戦で捉えられてた筈よね?」
ルイズに続けてキュルケも自らの知りうる情報を口に出して整理する…

「そんなの何でも良いわよ!!とにかく、そんな危ない指輪がアルビオンにあるんでしょう?どうせ今回の戦争だって裏でその指輪が使われてるのは間違いないのよ!!」

「ミント…」
まるで自分の事のようにアルビオンの卑怯なやり方に怒りを露わにするミントにルイズは思わず胸を打たれる…

「指輪は絶対にあたしが取り戻すわ!!そんな凄いマジックアイテムがあれば世界征「水の精霊よ、指輪は私達が責任を持ってお返しします。」」

「ふむ…解った。我はそなた達に期待する。では湖の増水も止めるとしよう…」

グッと手を握ったミントの不穏な言葉をルイズは遮って、水の精霊との間に指輪の捜索と返却の約束が成立する。ミントはルイズを不満げに睨んだがルイズは更に険しい剣幕でミントを睨み付ける…

(ったく、折角の遺産級のお宝を…勿体ない…)
まぁミント自身、今現在、身を持って人の心を操る事の愚かさを味わっている以上、アンドバリの指輪は精霊の手の届く所に置いておく事に異論は無いのだが…

その後幾つかの細かい問答やミントの遺産関係の質問、タバサの湖に置ける誓いの伝承の疑問に答えた事で水の精霊はその姿を再び湖の中へと沈めていった…
こうしてようやくミントの惚れ薬問題とタバサの任務である湖の増水問題も全て解決したのであった…


「何にしても…」

ミントは美しい夜の湖畔をぼんやりと眺めると深く溜息をついた…
ギーシュとモンモランシーのせいでここまで来て、結果としてはそこそこに壮大な問題の解決に尽力した訳だが…ミントにとっても未だかつてこれ程馬鹿馬鹿しい理由の冒険は経験した事は無かった…

「…疲れたわ。」
385デュープリズムゼロの人:2012/07/20(金) 17:21:38.34 ID:TfLrUKS2
これで今回は終了です。
まだまだ忙しいので投稿ペースが落ちると思いますが何とか頑張ります。
386名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/20(金) 17:27:03.39 ID:oOckwB8U
デュープリズムの人おつ!
いつも楽しく読ませてもらってます!
387名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/20(金) 19:29:35.10 ID:MEYak0mh
何か投下されんのいつも同じ人ばかりやなあ
たまには誰か新作書いてくれや
俺は文才無いから書かんけど
388名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/20(金) 19:38:24.40 ID:99fgfu5b
デュープリ乙!待ってたよ
389名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/20(金) 20:34:45.65 ID:X9gyiw00
>>370
アラストルは同じ雷属性だからネヴァンに効かなさそう。
390名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/20(金) 20:40:44.00 ID:5Ev53DB5
>>385
乙でした
続きが読めるってのは素晴らしい。でも無理はしないで
391名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/20(金) 21:07:35.53 ID:MEYak0mh
デュープリズム飽きたわ
暫くはええわあ

スパーダとかももうええなあ
新作早く投下してくれや
392名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/20(金) 21:43:01.61 ID:jO0qKD/H
>>391
そういうセリフは自分で作品を上げてから言っていただきたい。
393名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/20(金) 21:57:28.57 ID:EuQnf91h
乞食発言で構ってもらおうって腹のかまってちゃんが沸いてるからスルー推奨
394名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/20(金) 22:15:33.16 ID:YE4vB5aX
本当、読んでやってると勘違いしてるクズ多すぎ
死ねよ
395名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 00:43:16.70 ID:goM7HUlk
あからさまな煽りに反応すんなっつーの
396名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 01:41:55.25 ID:57qHl+4A
そうやってチラっチラって読みたいものかいてよ
オーラ出してもだれも書きはせんぞ

それ以前にどこから流れてきたか容易に想像がつくもんだが
397名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 06:50:18.64 ID:GMzGpuZl
あの超人が召喚されたら……………



闘龍極意書は、武器なんだろうか?
398名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 06:53:14.98 ID:nlsQszdS
極意書ってヌンチャクになったりするから、武器扱いでいいんじゃね
399名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 07:09:55.65 ID:WFViW3O3
>>397
超人なら人気沸騰中の悪魔超人がいるじゃないか。
400名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 07:47:43.56 ID:Siu6eoy7
闘龍極意書を使うあの超人が召喚されたら、
ワルドがアルビオンで死んでも何の説明もなくタルブ戦で再登場したり、
遺恨なんてなかったとばかりに平然と仲間になってたりしてそうだw
401名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 09:49:10.00 ID:Qu4iSsUt
作家の皆さん乙です!


世間は夏休みということでこれから色んなのが沸いてくるんだろうなあ・・・
402名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 10:32:27.09 ID:+MAfvpAm
世間は夏休み
大学も夏休み
同期は海に行くらしい
でも僕は就職活動
涙が止まらないよ
403名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 12:42:28.36 ID:R3ZkZUYU
ならば就職活動やめれば凄く長い休みになるよ。
就職したら10連休あれば上等なんだし
404名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 13:27:49.69 ID:XXmw/buj
ん?蝶人を召喚とな
405名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 16:11:32.72 ID:iAx3sJQ1
正直10連休はもらえすぎだな
ウチは年末年始だろうが、せいぜい3連休(日曜含む)が上限
402の学部が何かわからんが、休み欲しけりゃ進学すればおkだよ
そうすりゃ社会人になるよりは休める
もう試験終わってるかもだけど
406るろうに使い魔:2012/07/21(土) 17:54:15.44 ID:Bd3CYtLY
皆さんお久しぶりです。こんな時間帯になりましたが、もし予約がなければ、
6時から投稿を始めようと思います。
407るろうに使い魔:2012/07/21(土) 18:00:10.90 ID:Bd3CYtLY
それでは、始めさせていただきます。


 その晩、ラ・ロシェール最後の見納めということで、ギーシュ達は酒場で大盛り上がりをしていた。明日はいよいよアルビオン。そこに乗り込む前祝いというわけだ。
 キュルケやギーシュは、美味しそうにその店一番の美酒を堪能しており、タバサはこれまた豪勢な料理と格闘中。
 剣心は、デルフの未だに続くボヤきを聞きながら、そんな様子を眺めていた。
「なあ相棒…俺は寂しいんだよ…艱難辛苦…手に取る奴ばっかが口だけ達者な馬鹿ばかりでよ…やっと相棒と巡り合えたかと思いきや…そいつはコブつきと来たもんだ…」
 酒を飲んでるわけではないのに、誰よりも酔っ払った様子で、デルフは言った。
 ギーシュやキュルケも、そんなデルフの話を。面白そうに聞いていた。
「へ〜え、あんたも苦労してんのねぇ」
「何ということだ! 君も一緒に乾杯しようじゃないか!」
 そうして意気投合する二人と一振りは、楽しそうに談笑する。それを横目に、剣心は見守っていると、ふと隣にタバサがやって来た。
「いい?」
「大丈夫でござるよ」
 相変わらずの仏頂面で、タバサはしばらく目の前の食事を平らげていると、ふと草の葉のようなサラダを、剣心の皿に盛り合わせた。
「食べてみて」
「…何でござる?」
「はしばみ」
 心無しか、自信あり気に目の奥を輝かせてそう言うタバサを見て、剣心はひと摘み、掴んでそれを口に入れて―――
 それに気付いたキュルケが、悲鳴に近い叫びを上げた。
「だっ…駄目よダーリン!! それは――」
 言い切る前に、剣心は既にはしばみを飲み込んでしまった。刹那、口の中が苦味で一杯になる。目が回る。吐き気がする。頭が朦朧とし始める。
 幼い頃に、一度ワライタケを食べて笑い死にしかけたことがあったが、今回はそれに通じる酷さだ。
 気がついたら、どこに地で足を立っているのかすら分からなくなり、大仰に倒れたまま、そして気絶した。慌てたキュルケ達の声を、遠くで聞きながら。



     第十六幕 『奇襲』



「大丈夫…?」
「酷い目に遭ったでござる…」
 気絶して数分後、ようやく立ち直った剣心だったが、まだ完全には抜けきっていないのか、目は回ったままだった。
 隣では、タバサが申し訳なさそうに顔を覗かせていた。
「御免なさい」
「へーき……でござるよ」
 務めて平静に、そう返す剣心だったが、まだ少し苦しそうだった。改めて、剣心は不思議そうにタバサを見た。
「良く食べられるでござるな…それ…」
「好物」
 一枚だけでもこの苦味なのに、タバサは相変わらず美味しそうに、何枚ものはしばみのサラダを口に運んでいる。
 薫の料理が恋しく思えるほどの酷さなのに、よく平然としていられるなあ、と剣心は思った。
 と、ここで今更気づいたかの様な感じで、キュルケが聞いた。

「そう言えば、ルイズはどうしたの? 子爵もさ」
 よくよく見れば、そこにルイズ達の姿がない。ギーシュも、言われて初めて気付いた。
「ワルド殿は、明日のアルビオン行きの船の予約確認に出ているでござる。ルイズ殿は…」
 そう言って、剣心は上を見る。何故か彼女は降りてこようとはしなかった。まるで自分を避けるかのように。
「部屋で、何か考え事をしているようでござる」
「ふーん、そ」
 特に興味が惹かれたわけでもなく、キュルケはワインを口に入れる。タバサははしばみの苦味を味わっている最中だ。
 そんな二人を見計らって、何やら悪い顔をしながら、ギーシュがこっそり耳打ちした。
「彼、二十九だってさ」
 ブッ!! とキュルケの口からワインが思い切り吹き飛ばされた。タバサも、口からはしばみの葉がこぼれ落ちる。ギーシュは、予想通りといった笑みをした。
 一変して卓上はワインとはしばみの葉まみれになったにも関わらず、二人はそれよりも驚いた顔で剣心を見た。
408るろうに使い魔:2012/07/21(土) 18:02:05.87 ID:Bd3CYtLY
え…二桁も違うの、あたしと?」
「……嘘…」
 あまりに驚愕している二人を見て、剣心はやはり首をかしげる。
「そんなに変でござるか…?」
「だってぇ、その顔で三十路前は詐欺でしょ?」
 タバサとギーシュ、あとデルフもウンウンと頷く。キュルケ達も、剣心は二十代前だとすっかり思っていた節があったのだ。
 ふと、師匠のことを剣心は思い出した。そう言えば、師匠も自分と同じくらいの顔作りで、確か……

「師匠も、四十三で拙者と同様だったから、そんなに疑問はなかったのでござるが…」
「し、四十三!!!」
 再び、キュルケ達の驚きの声で、辺りは包まれる。
「師って、もしかしてケンシンの師匠かい?」
「何、若作りの秘訣でも飛天御剣流にはあるの? あたしも習いたい!!」
「尚更興味ある」
 と、三者三様に反応を見せながら、剣心に詰め寄った。そんな風に楽しく会話する中で、剣心はふと上を見やる。――やはり、彼女は降りてこなかった。


 所変わって、その頃のルイズは―――。
自室に籠って、憂鬱げに空の月を窓から眺めていた。
ワルドと剣心が決闘した後から、ルイズの心境はかなり複雑だった。
(何で、ケンシンは引き分けにしたんだろう…?)
 ルイズだって、あれが剣心の強さの全てでは無いことを知っている。なのに、あんなあからさまとも言える手加減に、尚且つご丁寧にわざと魔法を喰らってまで引き分けに持ち込んだ。
それを見てから、ルイズの心は変に渦巻いていた。

(ケンシンは、あんなものじゃない…もっと…)
 ワルドも、「彼は中々の使い手だ」と褒めてくれたが、何でだろう…その感想を素直に受け取れなかった。
剣心は強い。ギーシュの時も、フーケの時も、それを教えてくれた。
でも、だからといってワルドがボコボコにされるのを見たいかというと、そうじゃない。
なんて言うんだろう――――。
409るろうに使い魔:2012/07/21(土) 18:03:06.35 ID:Bd3CYtLY
 剣心の実力は、あの程度だとワルドに思われたくない。もっと強いんだって言いたい。

(何でわたし、こんなことで悩んでるのよ……)
 そう思うと、急に怒りというかなんというか、そう言ったものが沸ふつと湧き上がってくる。
 元はといえば、決闘なんて引き受けた剣心が悪い。そしたらこんなに悩むことなんてなかったのに……。
 そして、悩んでいる私に声の一つぐらい掛けてもいいはずなのに、こういう時に限っていないんだから…っ。
 理不尽なのは分かってる。でも一旦火がつくともう止まらない。
「ああもう!! 馬鹿馬鹿しいわ! こんなことでウジウジしたってしょうがないってのに!!」
 一人大声を出しながらルイズは立ち上がる。
今は姫直々の任務を、手紙を受け取るという重要な任務の真っ最中だ。いつまでも私情にかまけている立場ではない。
 気持ちを切り替えて、私も下に降りよう。そうしようとした時―――。

 急に、窓の外が黒い影で覆われた。

 何だろうと、ふと振り向いてみて…ルイズは驚きに目を見張った。
そこには、あの巨大なゴーレムが、窓から自分をのぞき込んでいたのだ。そして、その肩にいるのは……。
「…フーケ!」
「感激だわ、覚えててくれたのね」
 口元を歪ませてフーケが嗤った。よく見るとその隣には、何やらもう一人誰かいる。
黒マントに、白い仮面を被った正体不明の人物だ。
「何で…あんたがこんなとこに…」
「親切な人がいてね。私みたいな美人はもっと世のために役立たなくてはいけないと言って、出してくれたのよ」
「それで…一体どうしてここに…?」
 ルイズの声が震える。もしかしてフーケが姫の言ってたアルビオンの刺客なのだろうか。
それとも別の目的が…?
 何にせよ、友好的な雰囲気ではないのだけは確かだった。
「決まってるじゃない」
 そう言ってフーケが杖を振り上げる。それを合図にゴーレムも腕を上げた。
「素敵なバカンスをありがとうって、お礼を言いに来たんじゃないの!!」
 そしてドゴンと、ルイズの目の前のテラスを粉々にした。



 その一刻ほど前。
 相変わらず呑気に酒を煽るギーシュ達だったが、ふと気付いたように剣心に質問した。
「そう言えば、子爵との決闘を見せてもらったけどさ、何であんな戦い方をしたんだい?」
 その疑問に、タバサとキュルケも剣心を見る。
剣心の実力だったら、あの程度の剣術しかしてこないワルドに一方的に勝つことだって出来たはずである。それを何故、引き分けにまで持ち込んだのか。

「婚約者のルイズ殿の手前、恥をかかせるのは余りにも酷でござろう」
 剣心は分かっていた。あの決闘は、ワルドがルイズに良いところを見せようとして企図したのを。その彼女の前で不本意に倒してしまっては、彼の面子は丸潰れもいいとこだ。
 だから、わざわざ引き分けに引っ張っていけるように挑発し、魔法の一つを喰らって終了と、闘う前からそう想定していた。
負けじゃなく引き分けにしたのは、「やる気がない」と思われて再戦されないようにするため、後そっちの方が後腐れが無いだろうと思って決めた事だった。
410るろうに使い魔:2012/07/21(土) 18:04:42.22 ID:Bd3CYtLY
 しかし、彼等の反応を見る限り、全くの逆効果になってしまったらしい。手加減も難しいな……と思いながら剣心はギーシュ達を見た。
「へぇ、ちゃんと子爵の事考えてたんだね」
「ふーん? あたしだったら面倒なこと考えずにちゃっちゃと倒すんだけどなあ」
 と、そんな風に話している中、剣心は不穏な気配を再び感じた。
 昼間の時と同様、大勢でこちらを取り囲んでいる。やはりあの時の連中はただの物取りではなかったようだ。
 何人かが、扉の前で構えている。いつでも突入出来ると言いたいように。
 剣心は、ゆっくりと席を立った。そして、奴等が扉を開ける瞬間―――。
「皆伏せろ!!!」
 そう叫んで、まるで閃光の様に刀を抜いた。
呆気にとられるギーシュ達をよそに、剣心は石で作られた卓の足を全て切断する。そして端をつかんで盾にするかのように傾けた。
 先程まであった料理は地面へと吸い込まれ、代わりに何本か矢が突き刺さった。

 ここに来てようやく状況を把握出来たギーシュ達は、何とか卓の後ろに隠れ、魔法で応戦を始めるが、今度の相手はかなり多い。メイジがいないとはいえ、かなり戦い慣れているようだった。
「い、一体何なんだい!!?」
 慌てた様子でギーシュが叫ぶ。ここで剣心は上を見る。―――まだルイズが取り残されている。
(――ルイズ殿!!)
 剣心は、矢がとまる隙を狙い、卓を抜け出し素早く二階への階段を目指した。キュルケやタバサは援護しようと杖を上げるが、その必要はない程の速さで――――。


「あ…ああ……」
 ルイズは、力なく腰を抜かす。
目の前には、陥没した床や壁。そしてそれを見下ろすかの様にゴーレムが佇んでいる。
一度、その拳で生死をさ迷いかけたルイズは、トラウマを呼び起こされて固まってしまったのだ。
そして今、無慈悲にもう一度ゴーレムの腕が上がる。
逃げなきゃ…そう思うけど足に力が入らない。そうしている内に、真上に上げた腕がピタリと止まる。その影は、完全に自分を射程距離に入れていた。
 やられる、そう思ったとき――――。

「ルイズ殿!!」
 奥から聞こえるその叫びに、自然と顔が安心で綻ぶ。気が付けばちゃんと足に力が入る。
拳が降り下ろされる前に、ルイズは思いっきり地を蹴った。頭から突っ込むような姿勢になってしまったが―――。
 その先にいた剣心が、それをちゃんと抱きとめてくれた。

「もう、今まで何してたのよ……怖かったんだからっ…」
 そう言って、ルイズは剣心の胸を小突く。お礼を言いたかったのに、何とも素直になりきれなかった。
 剣心は、そんなルイズに微笑み返しながら、見覚えのある石の巨人に目を向けた。
そして、ゴーレムと肩にいるフーケ達を一瞥すると、そのままルイズを抱えて下へと降りていった。
411るろうに使い魔:2012/07/21(土) 18:05:56.81 ID:Bd3CYtLY
 再び、一階の酒場に戻ってみると、卓の影で応戦しているギーシュ達の姿があった。
また、いつの間に来ていたのか、ワルドもその中にいた。
 飛んでくる矢を器用に回避しながら、剣心も素早く卓の後ろへと潜り込んだ。
「皆、無事なようだな」
 一通り揃ったようで、ワルドが確認する。
「いいか諸君、このような任務は、半数が目的地にたどり着けば成功だ。つまり――」
「囮…でござるな」
 ワルドの言葉を、剣心が引き継ぐ。その雰囲気には、先程までの飄々としたものが一切感じられない、歴戦の戦士の風格をしていた。
 卓の上で、敵の数を確認しながら、剣心は言った。
「あの程度なら、拙者一人で充分でござる」
「ちょ…ちょっと待ちなさいよ! そんな勝手な真似―――」
 慌てて止めるルイズを、ワルドが制止した。
「彼の実力なら、間違ってもあんな奴等に遅れは取らんさ」
「で、でも…」
 ルイズは心配だった。そりゃあ剣心は強いのは知っている。でも万が一ということもある。何せ、相手の中にはあのフーケもいるのだ…と。
「私も残る」
 そんな中、ふと隣でタバサが言った。それを聞いて皆キョトンとするが、それに構わず続ける。
「もし船を出ても、シルフィードで追いつける」
「ダーリンとタバサが残るなら、もうここは大丈夫ね」
 頼もしそうな目で二人を見ながら、キュルケが笑った。むしろ相手に同情をしてしまうくらいだろう。
 しかし、ルイズはまだ不安…というか不満げな表情をしている。私の使い魔なのに勝手に決めて…とそう思っていたからだ。
 私も残る、と言おうとした矢先、ワルドに先を越された。
「ではここは君たちに任せる。僕等は直ぐに船に向かってアルビオンへ行くつもりだ。追いつけるようなら、追ってきたまえ」
 そう言って、裏口のドアをワルドが指差した。そして剣心とタバサの二人を残して、ワルド達は素早く外に出る。
 ルイズは、名残惜しそうに、そして悔しそうに、そんな二人を見つめていた―――本当なら、彼の隣にはタバサではなく自分が居るはずなのに…と、
何だか剣心をタバサに取られたようで嫌だった。
 けど、これも任務のため…任務のため…と自分に言い聞かせて、その場を後にした。


「…んで、どうするよ相棒?」
間髪いれずに矢を打ち続ける傭兵たちを見据えていた剣心を見て、デルフが聞いた。
タバサも、お手並み拝見とばかりに剣心の顔を見つめている。
 やがて、逆刃刀を抜きながら、「やっぱ俺は使ってくれねえのか…」と泣き声を上げるデルフとタバサに向き直って言った。
「正面突破、でござるな」
 限りなく矢を飛ばしてくる傭兵達を見て、剣心は思った。どうやら彼等は、さっきから矢しか撃ってこない。何故突入してこないのだろうと。
 それについては、相手にメイジがいるという理由からそうしているのだろうと考えた。
接近戦じゃ分が悪いと見ているからこそ、精神力を削って消耗戦を誘っているのだ。
 ならば、その隙をついてこちらから奇襲をかけてやろうと、そう剣心は思案していた。
「……できるの?」
 それを聞いて、タバサが不安げな表情をする。これには根本的な問題として、「矢の雨をくぐり抜ける」という条件が絶対必須。無理なら即蜂の巣にされる。
メイジならともかく、人間にそれが可能なのかと。 
 しかし、剣心は相変わらずの口調でこう言った。
「これくらいの事、昔の頃に散々やってきたでござるよ」
 何の気がねもなく、そう剣心は微笑むと、卓の端に身を乗り出して―――次の瞬間、傭兵達目掛けて駆け抜けた。
 一瞬動揺が傭兵達の間を駆け巡ったが、血迷ったか、と直ぐに冷静になり、向かってくる男、剣心に矢を撃とうとして弓を引いた。
 だが―――。
412るろうに使い魔:2012/07/21(土) 18:06:30.97 ID:Bd3CYtLY
「ぎゃあああ!!!」
「な、何だコイツはぁ!!!」
「ひぃいいい、化物ォ!!!」
 卓の上から、そんな悲鳴が飛んでくるのをタバサは聞いていた。
 何が起こっているんだろう、と顔を上げようとしたが、丁度その横を矢が掠めたため、慌てて身を隠した。
 しばらく時間を置いて、もう大丈夫だろうと思い、改めてタバサが身を乗り出すと――。


「た、助けてぇぇ!!!」
「こ…こんな奴が居るなんて聞いてねえよぉぉ!!」
 傭兵の大半が打ち倒され、残りは慌ただしく逃げ出す兵の背中がその目に写った。
その中心…気絶した兵たちの真ん中に、剣心はいた。相変わらず、何でもないような風貌を漂わせながら。
 タバサは悔しそうに目を伏せた。彼の剣術を見れなかった。飛天御剣流の技の一つでも目に焼き付けたかったのに、これではそれも叶いそうもない。
結局彼が全て倒してしまったのだから。
「…大丈夫?」
 剣心に隣に近づいて、彼の表情を伺いながらタバサは尋ねた。
一応聞いては見たものの、別に傷なんてないし、それどころか息切れ一つしてないのだが。
「まあ、この程度なら」
 剣心はそう返して、デルフを担いで玄関を出る。まだ残党が残っているかと思い気を引き締めていたが、どうやらその必要はなく、全員恐れをなして逃げたようだった。
「何したの?」
 タバサはどうしても聞きたかった。あれほどの数の傭兵を、魔法も使わずに、ものの数秒でどうやって追い払ったのだろうかと。
「うーん、何したって言われてもなあ……」
 困った様子で言い淀む剣心だったが、ズシンと轟く音に、一旦その思考を中断する。
見れば待ってましたと言わんばかりに、石で造られし巨人と、その造り手フーケが見下ろしていた。
 剣心は、それを見て逆刃刀を構える。タバサも、今度は杖を持ち直して戦う仕草をとった。
 そしてそれを確認したフーケが、ニヤリと笑いかける。
「あの時は不覚にもやられちゃったけど、今度はそうはいかないわ…あんたら全員踏み潰してやる!!」
413るろうに使い魔:2012/07/21(土) 18:09:01.05 ID:Bd3CYtLY
今回はここまでとなります。
後ガンダールウじゃなくてガンダールヴでしたね。ご指摘どうもありがとうございます。
まとめにはちゃんと修正入れておきます。
それではまた明日、本日はどうもありがとうございました。
414名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 18:11:38.42 ID:iAx3sJQ1
るろうにの人乙でござる
415名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 18:19:41.67 ID:IvDStYPI
剣心の人、乙です!
そういえば剣心の不殺って、逆刃刀以外の刀の抜刀はNGだったような気がしたんですが……気のせいだったかな?
どっちにしてもデルフは早いトコ剣心の逆刃刀に宿らないと出番が薄れてっちゃいますね。
次回も楽しみにしてます!
416名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 19:18:21.28 ID:rytI98kj
投下前と後の挨拶って正直いらないと思うんだよね
○時○分に投下します、投下終了です。で、十分かと

たまに作者の近況とか話されたりするけど
そんな他人のプライベートなんか別に知りたくないし…
更新停止とかそういう話題以外はいらない
417名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 19:19:10.54 ID:Siu6eoy7
そんなのそれぞれの自由でいいじゃん
418名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 20:11:44.63 ID:rg4vsDkx
書いてる人の自由でいいだろ
419名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 20:16:42.91 ID:E6bFYX4a
>>416
いやいや、お前の意見の方がよっぽどどうでもいいよ
420名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 20:27:33.84 ID:rg4vsDkx
書いてる人の自由でいいだろ
421名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 20:46:05.42 ID:Av7WvcEa
個人的にそう思うのは自由だけどここに書く必要は無いな
422名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 20:46:07.41 ID:NCrI4Z+2
>>416
無駄に長すぎない限りはいいと思うけどね。お前、作者さんをSS書くだけの機械だとか思い上がってんの?
お前の意見の方がよっぽどいらなくね?
423名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 20:49:36.43 ID:1dGUQe5v
どうせ昨日の夜のアホだろうに
424名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 20:55:13.72 ID:rytI98kj
はっきり言って、住人に媚び売って馴れ合いに走る作者を見ていると
ただひたすらに寒いから止めて欲しい
友達でも作りたいのか?
425名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 20:57:04.77 ID:bWBnEj/y
無理に読まなくてもいいのよ?
426名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 21:08:45.52 ID:eY/5zMfV
はっきり言って、作者を書くだけの機械と思っている読者様()を見ていると
ただひたすらに鬱陶しいから止めて欲しい
友達いないから空気読めないのか?
427名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 21:10:53.34 ID:I6ufQWux
そこだけ飛ばせばいいじゃない
それでこの問題は万事解決するよ
428名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 21:11:45.00 ID:05u4umOJ
度が過ぎなければヨロシ
429名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 21:14:20.09 ID:q6nUdFwo
ここじゃ毒は毒吐きがルール、守れない奴は荒らし
だいたい誰ひとり味方してくれないので自分が孤立してるのがわからんか
430名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 21:24:45.76 ID:05u4umOJ
ふと思って確認したが、毒は毒吐きスレへ行けってテンプレはないんやな
ルールとは言うが、テンプレにないと新参わからなくね

行数も文字数も余裕あるんだしテンプレに記載しといたらどうよ
431名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 22:24:11.44 ID:rytI98kj
作者のプライベート情報とかいらん
そんなん書くくらいなら次の話を書いてもらった方がよっぽどいい
432名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 22:35:12.39 ID:HLQB6F3x
いいから、お前もう黙っとけ
433 忍法帖【Lv=21,xxxPT】 :2012/07/21(土) 22:48:28.41 ID:rGGENNv/
どうでもいい

それよりサイヤこいサイヤ
434名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 22:50:28.15 ID:eFU0HMxK
君、社会に出ても他人との会話中に相手が少し自分語りしたくらいで、
すぐそんなこと聞きたくないとか文句いう気なの?
悪い事は言わないから学生のうちに態度を改めておいた方がいいぞ
435名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 22:59:47.64 ID:sfLU7Gr6
るろうにの人乙です!
デルフの出番は対ゴーレムならあるかも(笑)
436名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 23:33:49.31 ID:2IINvij6
>>435
ちゃきっと逆刃かえして戦った後にデルフに使ってくれよと突っ込まれて「おろ、すまぬついうっかり」という未来が
437名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 23:42:12.25 ID:q6nUdFwo
>>433
サイヤ人では悟空よりバーダックのほうが好き
438名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/21(土) 23:58:40.95 ID:+MAfvpAm
るろうに乙

>>437
昔のバーダックならいいが最近のバーダックはダメだ
439名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 00:16:48.32 ID:VeE5J/HC
まあ、やけに馴れ馴れしい作者は確かにうざいな
個人のブログでやれやって思う
440名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 00:24:49.44 ID:Pj6OkCM4
他人を装う昨日の ID:rytI98kj
そっけなければそれはそれで罵倒するんだろうね。
441名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 00:26:32.09 ID:gVsj6KJo
>「え…二桁も違うの、あたしと?」
29から2ケタずれちゃうと、生まれてないことになりやすぜ
442名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 00:33:50.74 ID:8id8Hswy
るろうの人、乙です。

細かい粗さがしで悪いんですが、
>>408
二桁も→十歳以上も
三十路前→三十近く
二十代前→二十歳未満、もしくは二十代前半

のほうが良いのではないかと。
読んでてちょっと意味が捉えにくかったもので。
443名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 00:49:29.80 ID:YXhV8+rc
三十路前は原作だか単行本のどっかだかにある表現だったと思うが
二桁違うは意味取り損なうけど
444名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 01:00:59.92 ID:hM8OgcRO
しかし作者の余計なコメントいらねってだけで毒吐き行けとか
作者に対して過保護過ぎるだろ
そんなんだから調子に乗ってペラペラ余計なこと書き込む作者が増えるんだろうな
445名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 01:24:38.17 ID:A02mVohC
昨日から神聖のクズが居着いてしまったな
446名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 02:05:27.23 ID:J5AeZETJ
すげぇ、さすが夏休みだぜw
447名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 03:04:52.03 ID:dmky8do9
ああ、夏休みか…どおりで…
るろうにの人お疲れ様です
448名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 03:39:58.59 ID:H6yog3Va
変な奴が近況報告云々言ってるが、るろうにの人はそれしてたか?
るろうにの人は挨拶の後に投下宣言しただけだろ。
投下終了後も誤字修正宣言してサヨナラしただけ。
たかがそれだけで文句言ってる奴は真性だな。
449名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 06:36:08.66 ID:U3yrBGbb
>>442
他はともかく、三十路前を三十近くなんて良くないな。
原作でもあった表現だし、むしろ三十近くなんて書かれたら、そっちの方が違和感覚える。
450名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 10:56:50.35 ID:b63P1w5u
るろうに乙!
刃衛は、鵜堂刃衛はまだか!

二十代前は変だが、三十路前は普通だろうと思う。
451名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 11:17:04.99 ID:XTdYdkiS
「三十近く」のほうがよりオッサン臭く聞こえるな
452名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 11:22:39.78 ID:pZLxqg8S
小さい頃、学校帰りに傘で真似したのはアバンストラッシュと牙突だった
453名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 12:19:43.76 ID:nHiezpTw
パパーダ。デュープリ。三重。るろうに乙

牙突零式とブラッデァースクライドは区別がイマイチつかなかったな
454名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 12:38:24.55 ID:y2a1QByU
>>452
スゲーよくわかるわw
455名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 12:58:01.80 ID:Ja+CoRPy
流れを読まず竹ノ内豊召喚
456名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 12:59:58.85 ID:hM8OgcRO
作者コメントがうざい

これも立派な読者の意見であり善処して欲しいことなんだが
これが叩きに見えるとか頭おかしいだろ
SSの内容には一切ケチはつけていないのに
457名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 13:34:10.50 ID:L+qrWGNM
>>456
じゃあお前はその意見を言う前に、作者に「投下乙」の一言も言ったのか?
同じ話題でも「投下乙です、でも〜」とでも続ければかなり違って見えただろうよ
それ以前に多少雑談をした程度で咎められたら誰でもムッとすると思うが
自分がどれだけ礼儀知らずか理解してくれ

誰もお前が「叩きだ」っていってんじゃねえ
お前は批判の内容を欠片も理解してない、まともに他人のコメントを読め
458名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 13:43:13.22 ID:CfeDGBEf
雑談うぜえって言ってるの自分ひとりだけなんじゃないの?
どうせ本文じゃないんだしいやなら読み飛ばしとけよ
ってかここ投下ない間基本雑談じゃん
459名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 14:00:38.77 ID:2eOGn+HW
先日から疹性のクソが涌いてしまってますね
一体全体何がしたいんでしょうかね
他の方も挙げてるように作者コメが嫌なら飛ばせばいいだけのことでしょうに
460名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 14:16:24.23 ID:kY/XwtuO
雑談と言っても今日競馬で勝ったとかはどうでもいいけど
好きな者同士が集まって書いてるんだから
作者がゼロ魔や召喚作品について言うのは当たり前の事。

>>456
飲み会で自分の好きな話題だとペラペラしゃべるけど
話題が切り替わったら途端に不機嫌になったり喋らなくなるタイプだろ?
461名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 14:16:41.41 ID:2M4FgljA
>その顔で三十路前は詐欺でしょ?
原作にあった表現かどうか知らないけど、これだとまるで40過ぎた老け顔みたいだw
462名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 14:19:52.42 ID:DDfEXxCz
>>460
>話題が切り替わったら途端に不機嫌になったり喋らなくなるタイプだろ?
不機嫌になるならともかく、喋らなくなるような殊勝なタイプだったら、こんな空気読めない文句は垂れないだろw
463名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 14:20:41.75 ID:pZLxqg8S
まだ49歳なのにじいさん呼ばわりされる師匠はどうすんだよ
464名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 15:44:25.98 ID:qxYgR7ar
避難所のソーサリー・ゼロでテファ登場フラグが読者の選択によってへし折られていた
なんか最初からいなかった扱いになりそう
465名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 15:51:44.91 ID:gzXgBTuw
安価スレ形式だと仕方ない
466名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 16:07:33.63 ID:CfeDGBEf
あの時代49は爺さんだろ
467名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 16:10:16.99 ID:28QMPiGA
ググって見たら明治時代で平均寿命が四十代前半だった
468名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 16:18:18.31 ID:aFlr4nWb
「四十代でお爺さん」ってより「お爺さんになるまで生きる人は稀」だったんじゃなかろうか
469名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 16:29:53.31 ID:+D7BwnT1
生き残るだけでも大変だからお年寄りは敬えって時代ですな。
善人にしろ、悪人にしろ、生き残るだけの知識と経験則を身につけてるわけで。
つまり現代の老人は「ただ生きてるだけ」の人は敬う価値が無いんです
470名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 16:37:27.90 ID:L+qrWGNM
最後に品の無い発言を添えないと我慢できないのか?
471名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 17:44:26.50 ID:nHiezpTw
>>468
七十が古稀とか言われてるくらいだしな
472名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 20:48:34.64 ID:Q3ql+Nas
言っとくが、平均年齢を押し下げるのは乳幼児死亡率だからな?
江戸時代から年寄りはそれなりにいる。
アフリカの平均年齢が低い国も一緒。
473名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 20:51:03.59 ID:o8Hb1nvO
平安・鎌倉辺りでも享年80歳超とか結構いるしなあ
474名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 20:51:50.08 ID:buTPj0lp
レスが3時間も止まったよ。別の話題をするなら今のうち。
もしソードアートオンラインのキリトさんが召喚されたなら、
駄目だ劣化サイトに―――あれ? 
結構人死に敏感だから無茶しがちなルイズに過保護な扱いをしそうな気ががが
475:ウルトラ5番目の使い魔 93話 代理:2012/07/22(日) 20:59:59.57 ID:gHhqk0BY
 第九十三話
 地上の太陽
 
 友好巨鳥 リドリアス
 古代暴獣 ゴルメデ
 高原竜 ヒドラ
 古代怪獣 ゴモラ
 地底エージェント ギロン人
 宇宙同化獣 ガディバ
 大蟻超獣 アリブンタ
 磁力怪獣 アントラー 登場!
 
 
 人間とエルフ、対立するふたつの種族の融和の願って出発した新・東方号の旅は、その目的を果たせないまま終わろうとしていた。
 ふたつの種族の和睦を嫌い、ヤプールの起こしたアディール壊滅作戦。それは、手段を選ばないヤプールの勝利に終わるかと思われた。
 
 だが、あきらめない心は、はるか数百万光年の距離を超えて奇跡を起こし、光の巨人を呼び寄せた。
 マイナスエネルギーに囚われたリドリアスとゴルメデを救い、エースを復活させた、月の光のごとき慈愛の青き輝き。
 
 ヤプールの軍団は、ギロン人、アリブンタ、アントラー、そしてゴモラ。すでに送り込んだ怪獣・超獣・星人のうち、ゴーガ、バルキー星人、
サメクジラ、オイルドリンカー、ダロン、マザリュースは倒され、洗脳したリドリアスとゴルメデは解放されて、その戦力は三分の一にまで
減少してしまっている。本来ならば、残った四体でじゅうぶんにエースを倒せる算段だったのだが、新たなウルトラマンの参戦は
ヤプールにとっても完全に想定外であった。
「この世界に、まだウルトラマンがいおったとは! おのれ、どの世界でもわしの邪魔ばかりしおって……ならば、仕方がない。
宇宙警備隊との決戦に備えて温存しておきたかったが、超獣どもよ、新たなパワーを受けとれぇ!」
 この世界で溜め込んできたマイナスエネルギーの、さらなる波動が闇の雷のように超獣たちに降り注ぐ。ギロン人の目に
どす黒い光が宿り、アリブンタとアントラーはダメージが完全に回復してさらなるオーラに包まれている。
 そして、ゴモラは本来茶褐色の肉体が有り余りすぎるエネルギーのためか、赤く変色してしまっている。天をも震わすような
凶暴な叫び声をあげて、鋭い牙を鳴らしている。完全に理性は消滅し、破壊衝動のみに支配されてしまっているようだ。
ただでさえ強いゴモラが、さらに……
 だが、それにしても、あれだけの超獣軍団を繰り出して、あれだけのパワーを使ってなおこれだけの余力があったとはと、
才人やルイズはそら恐ろしいものを感じた。この世界は、確かに多くのゆがみを抱えた苦行の世界だが、それほどまでに
人々の心の底には巨大な闇が眠っていたのか。
〔わたしたちのやってきたことは、本当に正しかったの!? これほどの闇を内包してる世界……本当に救う価値がある、の?〕
 光を信じていても、この圧倒的な闇の力を目の当たりにしてはそう思ってしまう。特に、ルイズは小さい頃から魔法を使えないことで
いじめられてきた経験を持つので、なおのこと闇の力の強大さに恐れを抱いてしまった。
 だが、迷うルイズにエースは優しく諭した。
〔ルイズくん、君が疑うのは正しい。人は、その心の内に大きな闇も持ち合わせている生き物だ。悪の力は強大で、底知れない。
しかし、だからこそ人の心に宿る光は、この宇宙のなにより強く輝くことができるのだと私は思う。思い出してみるんだ。君も、
最初から今ここにいる君だったわけじゃない。私は見てきた。君は、君自身の中に宿る怒りや憎しみ、悲しみや葛藤をひとつずつ
乗り越えて、自分を強く鍛え上げてきた。悪と戦い、勝利することで人はより強い光になれるんだ!〕
〔わかったわ……アレは単なる敵じゃなくて、わたしたちが乗り越えるべき壁だってことね。いいわ、逆境上等じゃない! 
わたしがこれまで耐えてきた逆境に比べたら、闇の力ごとき束になってかかってきてもお釣りがくるわ!〕
476:ウルトラ5番目の使い魔 93話 代理:2012/07/22(日) 21:00:52.35 ID:gHhqk0BY
 立ち直ったルイズは気合を入れなおすように叫んだ。その後姿に才人は、ルイズほどではなくとも同じ疑問を抱いていた自分と、
今のルイズを比べて、正直にルイズはたいしたやつだと思った。どんな障害に足元をすくわれても必ず立ち上がり、前が見えなくとも
しゃにむに突き進んで道を切り開いてしまう。貴族としての気高さと、泥臭いしぶとさを併せ持っている。
〔人間は、いくらだって強くなれる。か〕
 人間、頭ではわかっていたつもりでも、それを心から理解するのは難しいらしい。ルイズの姿に、また教えられた気がした。
本当に、ルイズは少しのあいだにどんどん成長していく。成長することを恐れず、ひたむきなまでの前向きさがルイズの何よりの
強さの秘密なのだろう。毎日を漫然と学校の行き帰りに費やしていただけの才人には、それがとほうもなく大きく見えて、そして
うらやましかった。
 だが、このまま置いていかれて黙っていられるほど才人はおとなしい性格ではなかった。
〔ようし! じゃあもう一丁いってやるか。ヤプールをこの街から叩き出してやろうぜ!〕
〔気合を入れなさいよサイト! わたしより先に倒れたら一週間食事抜きだからね〕
 ルイズが前へ進み続けるなら、俺も走って追いかけよう。あいつはお姫様だっこされて男についていくような魂ではない。
二人三脚のひもが切れるほどに自分の足で走り続けていないと気がすまない暴れ馬だ。だが、だからこそ毛並みは美しく、
気高く大地を踏みしめる優美さに満ちている。
 才人は思う、ルイズとならいつまでだって走っていける。
 若者たちにとっては、生きることそのものが試練だ。しかし、その試練がときに重くなりすぎるとき、大人は道を指し示して
守ってやらなくてはならない。
 
 希望を失わない人々から希望を奪おうと、悪魔は怒声をあげる。
「叩き潰せ超獣どもよ! 街も人もウルトラマンどもも、形あるものはすべて破壊しつくしてしまえ!」
 これを迎え撃つは、我らのウルトラマンAと、新たな戦士ウルトラマンコスモス!
「これ以上、誰ひとりたりも傷つけさせない。ヤプール、お前の悪事もここまでだ!」
「平和を壊し、命をもてあそぶ権利は誰にもありはしない。戦いは望まないが、ここより先へは一歩も進ませない」
 今、決戦の幕は切って落とされた!
 
「シュワッ!」
「トォォッ!」
 
 二対四の圧倒的に不利な状況にも関わらず、ふたりのウルトラマンは憶さずに飛び込んでいった。
 ウルトラマンひとりに対して敵は二体ずつで迎え撃ってくる。エースにはゴモラとアントラー、コスモスにはギロン人とアリブンタが
それぞれ相対し、激闘の火蓋は切って落とされる。
「がんばれ、ウルトラマン!」
「まけるなーっ! ウルトラマーン!」
 今ではエルフの人々も、大きな信頼をウルトラマンに寄せるようになっていた。それはほかでもない、彼らの命をかけた戦いが
認められたということだ。整然と組み立てられた百の言葉よりも、目の前で起こされる一の行動のほうが大きく心を動かすのは
大昔から変わらない不変の原理のひとつだ。
「テェェーイッ!」
 エースの水平チョップがゴモラの首筋に叩き込まれ、続いてジャンプし胴体にキックをお見舞いする。
 もちろんゴモラもこんなものではまいらず、自慢の尻尾をふるって反撃してくるが、今のエースはエネルギーに満たされて
元気百倍! それに、二度も三度も同じ攻撃でやられるエースではない。尻尾を掴んで、逆にジャイアントスィングのように
思いっきり振り回してやった。
「トァァッ!」
 五回、六回、七回と、やんちゃが過ぎた子供へのおしおきのように振り回し、最後は遠心力のまかせるままに投げ捨てた。
落下地点にいるのは当然アントラー、磁力光線を使ってもこれはかわしようがなく、押し倒されて二匹は仲良くサンドイッチになった。

477:ウルトラ5番目の使い魔 93話 代理:2012/07/22(日) 21:01:35.76 ID:gHhqk0BY
「いいぞーっ! その調子だぁーっ!」
 むろん、東方号でもティファニアやギーシュたちをはじめ、いるだけのメンバーが集まって声を張り上げている。彼らもうれしいのだ。
自分たちはできるだけの努力をした。その努力に、ウルトラマンは応えてくれた! 自分たちがあきらめずに戦い抜いたからこそ、
ウルトラマンは来てくれた!
 甲板で戦っていた者たちだけではない。負傷して運ばれ、手当てを受けてまた上がってきた者たちも加わって手を振っている。
それだけではない。東方号の甲板や舷窓などには避難してきたエルフたちが詰めかけ、外の戦いを歓声をあげて応援していた。
「頑張れ! 負けるな!」
 絶望の中で希望を捨てずにいたからこそ、奇跡は起きた。ならば、その奇跡を絶対に逃すわけにはいかない。戦いはまだ
これから! 自らが戦うことができないならば、そめて心だけでも共にあろう。
 ウルトラマンは人を守るために戦う。だが、決してひとりではない。人々がウルトラマンを信じて応援する限り、その心は
ウルトラマンと常にあり、人々の応援を背にしたウルトラマンは何倍ものパワーを発揮することができるのだ。
「デャァァッ!」
 ゴモラとがっぷり四つに組んだまま、エースはゴモラの巨体を持ち上げた。本来なら、赤く変色した暴走ゴモラはエースが
手に負えないほどのパワーを発揮するのだろうが、今のエースには正しい心のエネルギーを与えてくれる人々が大勢いる。
何万というエルフの人々の思いを力に変えて、エースはウルトラリフターでゴモラを地面に叩きつけた。
「ヘヤッ!」
 よしっ! ゴモラは頭から地面に激突して、脳震盪を起こしたらしくふらついている。いくらパワーを上げたとて、脳までも
強化することはできなかったようだ。
 だが、アントラーがまたエースの背後から不意打ちをかけてきた。エースは反射的に振り向いてキックで押し返す。
アントラーもマイナスエネルギーでパワーアップし、自慢の大アゴの切れ味もぐんと増している。ギチギチと不快な音を
鳴らすあれに今度挟まれたら体を真っ二つにされてしまうかもしれない。
 それなのに、エースは真っ向から立ち向かっていった。武器は向こうのほうが強力で、光線技も通じない。だが、
エースには戦う手段はいくらでもある。彼と魂を共有する才人の得意とした剣のように、エネルギーをまとわせた手刀を振り上げた。
『フラッシュハンド!』
 一撃! 乾いた音を立てて、アントラーの右の大アゴが途中から叩き折られて宙を舞った。
 これでもう、大アゴは役に立たない。最大の武器を失ってうろたえるアントラーに、エースの攻撃がさらに続く。
 悪の力が強大でも、光はそれを乗り越えて先へ行く。それを証明するためエースは戦う!
 
 
 さらに、コスモスもギロン人とアリブンタを相手に立ち向かっていく。
「侵略者よ、この星から去れ。どんな理由があろうと、他者を傷つけ奪う権利は何者にもありはしないのだ」
「黙れぇ! 貴様さえ現れなければ、われらの勝利は完璧だったものを。生かして返しはせんぞ」
「わかっていないようだな。私がやってきたのは偶然ではない。お前たちが虐げた者たちの、生きようとする意志が私をこの星に
導いたのだ。お前たちはすでに、この星の生命に負けていたのだ」
「戯言を、その口永遠に閉じさせてくれる!」
 ギロン人の命令で、アリブンタが目を爛々と光らせながら向かってくる。コスモスは、可能な限り戦いは避けたいと思っていたが、
どうしても侵略をあきらめないというのであれば、邪悪な野望を通させるわけにはいかない。
 この地にお前たちはいるべきではない! 善なる者の盾となるよう、邪悪を食い止めるために身構えて相手取り、コスモスは
二匹の攻撃をさばき、間隙を縫って攻撃を当てていく。
「ハァッ!」
 パワーアップしたアリブンタの両腕のハサミ攻撃を、コスモスは手刀ではじき、掌底で押し返してさばいていく。
 力を受け流し、いなすコスモスの前には力任せの攻撃は無駄にエネルギーを浪費するだけで、いきり立てば立つほど当たらない。
 対してコスモスは蹴り技ルナ・キックで相手のバランスを崩させ、背負い投げに似たルナ・ホイッパーで転ばせてダメージを与えた。
体の重心の高いアリブンタは一度転ばされると容易には起き上がれずにもがいている。そして、コスモスは胸元から手を上げて
光を集め、浄化の光を手のひらから放った。
478:ウルトラ5番目の使い魔 93話 代理:2012/07/22(日) 21:02:06.53 ID:gHhqk0BY
『フルムーンレクト』
 ゴルメデを浄化して沈静化させた光のシャワーがアリブンタに降り注いでいく。コスモスは、たとえ怪獣とはいえ侵略者によって
操られているだけの存在であるなら、殺す必要はないと思っていた。
 光の粒子に包まれて、アリブンタの動きが止まる。やったのか、と……ゴルメデのときのようにおとなしくさせられたのかと、
人々は、コスモスは思った。
 だが、彼らはまだ超獣の恐ろしさをわかっていなかった。
 コスモスが歩み寄っていったとたんのことだった。突然、おとなしくなっていたと思われたアリブンタが頭を上げて、その口から
白煙のような蟻酸を吹きかけてきたのだ。
「イアァァーッ!」
 鉄でも一瞬で溶かす強酸の霧をまともに浴びせられてはコスモスでもたまらない。皮膚を溶かされることはなかったものの、
大きなダメージを受けてのけぞり苦しんだ。そこを狙ってアリブンタは体当たりを仕掛けてきた。
「ウワォォッ!」
 重量六万二千トンの激突を受けてコスモスが吹っ飛ばされる。蟻酸で受けたダメージは簡単にはぬぐえず、体をしびれさせている
コスモスをアリブンタは蹴り飛ばし、そこを狙ってギロン人が足蹴にしてきた。
「バカめ! アリブンタにそんなものが効くか。さんざん我らをコケにしてくれたぶん、その身で味わわせてくれるわ!」
「ウォォッ!」
 いままでほとんど戦闘に参加してこなかったぶん、ギロン人には余裕が大きくあった。アリブンタと組んで、マウントポジションから
連続でコスモスを殴打する。動けないところを二体がかりで殴られてはかなわない。
 そのとき、コスモスにエースからテレパシーでメッセージが届いた。
〔無理だ。そいつらに浄化は効かない! その怪獣は超獣、侵略のために合成されて作り出された生物兵器だ!〕
「ッ!?」
 その瞬間、コスモスの心に怒りが湧いた。破壊や侵略など、利己的な目的で命をもてあそぶ権利は誰にもない。それは家畜にも
劣る最低の奴隷ではないか! コスモスは渾身の力でギロン人とアリブンタを跳ね飛ばし、立ち上がって敵を見据えた。
〔邪悪な意思によって、間違った目的で生み出された命……本来、生けるものにはすべて生き続ける権利があるが……〕
 コスモスは意思を決めた。生命を、自らの生存目的を超えて奪う権利は誰にもない。しかし、その存在そのものが他者に
害を与え続けるようなものであったならば……
 立ち尽くすコスモスに向けて、アリブンタが両手の爪から火炎を放ってきた。ギロン人も、両手のハサミから黄色の破壊光線・
ギロン光線を放って攻撃してくる。爆発が巻き起こり、蟻酸に引火してコスモスの周囲を炎が包み込む。
 ああっ! 人々から悲鳴があがり、ヤプールとギロン人は哄笑する。だが、コスモスは微動だにしない。
 本来、命はいたずらに奪ってよいものではない。しかし、例えば人間の味を覚えてしまった熊が人里に入り込んだり、
生態系を一方的に破壊する外来生物が侵入してきた場合、これをそのままにしては壊滅的な被害が出てしまう場合がある。
そんなときは、誰かが駆除しなくてはならない。まして、侵略という絶対許されない行為を前にして、迷いはすでにない!
「ムウンッ!」
 炎の中でコスモスは左腕を引き、右腕を高く掲げた。その瞬間、コスモスの全身が太陽のコロナのような新円の赤い炎の
リングに包まれて真っ赤に輝いた。コスモスの体を包んでいた青いラインが、燃える炎のような赤に変わっていき、柔和な
表情を漂わせていた頭部も、鋭角で勇ましさをかもし出す兜のような猛々しい形に変化した。
479:ウルトラ5番目の使い魔 93話 代理:2012/07/22(日) 21:03:07.02 ID:gHhqk0BY
「あっ! あれは!」
 炎を吹き飛ばし、コスモスの新たな姿が現れる。太陽が人の形に化身したような、勇ましい戦いの赤き巨人、ここに降臨!
 
『ウルトラマンコスモス・コロナモード!』
 
 強く拳を握り、前に突き出すファイティングポーズをとり、コスモスは威圧するような強い声と共にギロン人とアリブンタを見据えた。
「ハアッ!」
 先ほどまでの青い姿とは打って変わった闘志をみなぎらせた威圧感が、ギロン人を圧迫した。あれはまさに、戦いに望む
戦士の姿。邪悪な者たちだけでなく、戦いを見守っている人々も息を呑んでコスモスを見つめた。
 しかし、ひるみはしたものの、ギロン人は引き下がることなく攻撃をアリブンタに命じる。あんなものはこけおどしだ、やってしまえと。
コスモスも前に出て迎え撃ち、必殺の一撃をアリブンタに見舞った!
「フゥアッ!」
 強烈な鉄拳、コロナ・パンチがアリブンタの胴を打ち、大きくのけぞらせた。さらに、次の瞬間垂直ジャンプしたコスモスの
猛スピードで放たれた回転コロナ・キックがアリブンタの頭を打って見事に吹っ飛ばした。
 轟音と地響き、動体視力の弱い者はなにが起こったのかすらわからないであろうはやわざを決めたコスモス。さらに、
ギロン人がはっと気づいたときにはコスモスはその眼前に現れていた。
「ハッ! イヤァ!」
 防御をとる暇さえない、至近距離の正拳打からのアッパーカットを受けてギロン人の視界が一瞬真っ白になる。
 馬鹿な! 速過ぎる! 全方位への視野を可能としているギロン人の複眼でも、コスモスの動きはまったく把握できなかった。
反撃の態勢をとろうとしたのもつかの間、側面に回りこんだコスモスによって片腕を掴まれて投げ飛ばされてしまった。
「そ、そんな……!?」
 さっきまでの青い奴とはまるで違う。ギロン人は、ウルトラ戦士の中にはメビウスのように姿を変化させることによって
パワーアップする者もいるというデータを持ってはいたが、このウルトラマンは変身前と後では戦闘スタイルからして違う。
「くそぉっ! アリブンタ、やれぇ!」
 一対一ではかなわないと見たギロン人は、アリブンタに援護を求めた。爪先からの高熱火炎が放たれ、コスモスを
焼き尽くそうと迫る。さらに自身も倒れこみながらもギロン光線を放つが、コスモスは金色に輝く光の盾を作り出してこれを防いだ!
『サンライト・バリア!』
 火炎も光線も跳ね返されて、向こう側のコスモスはノーダメージだ。二体はそれでも、バリアのエネルギーが切れるまで
攻撃を続行しようとしたが、コスモスはバリアーを張ったまま飛ばしてアリブンタにぶっつけた!
「ファァーッ!」
 自分とギロン人の光線も加算されたバリアーをぶつけられ、アリブンタは全身から火花を散らして倒れた。
 愕然とするギロン人。だが、コスモスはギロン人に次の命令を与える暇さえ与えなかった。砂煙をあげながら猛烈な勢いで
突進し、アリブンタの肩から生えている大きな突起を掴むと、コスモスは超パワーで持ち上げて振り回した。
『コロナ・スゥィング!』
 アリブンタの巨体が軽々と宙を舞い、見ている誰もが度肝を抜かれた。そして、コスモスが手を放した瞬間、アリブンタは
遠心力のおもむくままに空を舞い、体重とスピードによって生まれた衝突エネルギーのままに地面に叩きつけられた。
「ダアッ!」
 二対一というハンデをコスモスはものともしない。見守っている人々からは、なんて強さなんだと驚嘆の声が数多くあがった。
スピード、パワー、すべてにおいて青かったときを大きく上回っている。
 これが、コスモスのもうひとつの姿、コロナモードの力。コスモスは通常はルナモードと呼ばれる青い姿で、その持てる
戦闘能力の大半を封印しているが、ルナモードではどうしようもないくらい強力な怪獣と戦わねばならないときや、邪悪で
説得に応じない侵略者と対峙するときは、この姿に変身して敵を粉砕する。
 ルナモードを命を救い慈しむ、月の光のごとき優しき慈愛の巨人としたら、コロナモードは邪悪を焼き尽くす戦いの赤き巨人。
一線を越えてしまった侵略者に対して、コスモスは怒涛のごとき攻めを繰り出す。パンチ、キック、チョップ、動きの鈍重な
アリブンタは手も足も出ない。その強さは、コスモスの背中に守る人々を絶対に守り抜かんとする決意が表れているようであった。
 そして、コスモスの戦う姿に、人々は心に浮かんだ伝説の続きを思い返していた。
480:ウルトラ5番目の使い魔 93話 代理:2012/07/22(日) 21:03:48.68 ID:gHhqk0BY
「あるときは慈愛の姿、またあるときは、燃える太陽のごとき勇敢なる戦いで悪魔のしもべを粉砕した……あの巨人こそ、
六千年前に大厄災から我々を救ったという、伝説の!」
 遠い昔の、語り継がれてきた記憶の名を彼らは唱えた。しかし、それは彼の本当の名ではない。そのとき、戦う巨人へと
向かって、洋上の巨大戦艦から放たれた少女の声が大気の精霊を通じてエルフたちの耳へと届いた。
 
「がんばってーっ! ウルトラマンコスモスーっ!」
 
 コスモス、コスモス、それがあの巨人の名前なのか。エルフたちは口々につぶやき、そして自らも、眼前の優しさと
強さを併せ持つ、奇跡の巨人の名前を叫んだ。 
「がんばれーっ! ウルトラマンコスモスーっ!」
 幾千、幾万の応援がコスモスの背を押す。そうだ、戦っているのはウルトラマンだけではない。声を限りに叫び、
心の光を輝かせ続ける限り、ウルトラマンの力は無限大! 誰もが皆戦っている。この街にいるエルフたちみんなが
力を貸してくれる。負けるはずが、ない!
「テヤァァーッ!」
 コスモスの強力なチョップがギロン人の頭を打ち、緑色の複眼が不自然に点滅した。頭が重心を失ったように
フラフラと揺らめいて、目の前にいるコスモスに反撃する様子もない。頭部への激しい打撃によって意識を失いかけている。
コスモスはギロン人の真正面から、両手の拳を合わせて叩き込んだ。
「ムアァァッ!」
 無防備なところへ大打撃を受けて、ギロン人は吹っ飛ばされて失神した。
 だが、コスモスはギロン人にとどめをさすことはせずに、もう一度アリブンタに挑んでいった。理由はひとつ、自然にあっては
いけない歪んだ生命であることと、人の血をのみ食料とする凶悪な性質ゆえ。こいつだけはなんとしても逃がすわけにはいかない!
 コスモスの猛攻が再びアリブンタに炸裂する。またこの街で人々が平和に暮らせるように、命が正しい形で星に息づいていくために、
邪悪な侵略者の陰謀は、断固として打ち砕く。
 
 そのころ、エースもまた二大怪獣を相手に勝利を収めようとしていた。
「ヘヤァァッ!」
 アントラーを抱え上げたまま空中へ飛び上がり、垂直にエースは大回転した。天地がひっくり返り、重力が消滅して
どちらが上か下かわからない感覚がアントラーを襲う。平衡感覚もなにもかも麻痺して、完全に無抵抗となったところで
エースはアントラーを放り投げた。
『空中回転落とし!』
 地上に激突し、大ダメージを受けるアントラー。いかに外皮を頑強に覆おうとも、感覚器官までは強靭にしようがなかった。
いくら怪獣といえども、地上で生きる生物である以上は頭が上で足が下という生まれ持った感覚からは逃れようがない。
それを狂わされてはまともに立って歩くこともままならず、自慢の虹色磁力光線も狙いが定まらない。
 しかし、エースもまたアントラーへのとどめをこの場で刺そうとはしなかった。理由はコスモスとは真逆で、いまだに
暴走を続けているゴモラを止めるためであった。
〔エース、お願いだ。ゴモラを、なんとか助けてやってくれ〕
 才人はエースに懇願した。ゴモラには悪意はなく、ただ眠っていただけのところをヤプールに無理矢理起こされて
利用されているにすぎないのだ。このまま倒してしまってはあまりにも不憫……それに、才人はかつての初代ゴモラの
最期をよく知っていた。
 昭和四十二年初頭……万国博覧会への展示を目的に南太平洋ジョンスン島から連れてこられたゴモラは、その途中で
逃げ出して大阪の街で大暴れし、大阪城をも破壊するほど猛威を振るった。しかしそれはゴモラにとっては見知らぬ土地に
無理矢理連れてこられたがために自分を守ろうとして暴れたに過ぎない。すべての非は人間にあって、ゴモラにはなんの
落ち度もありはしない。本来、ゴモラは危険な怪獣ではないのだ。
〔わかった。やってみよう!〕
 エースも了承した。ウルトラ戦士の使命は怪獣を殺すことではない、宇宙の平和を守ることなのだ。怪獣とて命には変わりない、
悪意あって破壊を好むものであるならば容赦はしないが、殺さずに済ませられるなら迷わずにその方法を選ぶ。
 手段はひとつ、ゴモラを暴走させているヤプールのマイナスエネルギーを除去することだ。それさえなくなれば、ゴモラは
正気を取り戻してくれるはず。なら、多少荒療治だが、戦ってエネルギーを浪費させることで減らしていく。
481:ウルトラ5番目の使い魔 93話 代理:2012/07/22(日) 21:04:31.40 ID:gHhqk0BY
〔今、楽にしてやるぞ。もう少しだけ我慢してくれ〕
 エースはゴモラを傷つけないように気をつけながら戦った。戦いが長引いたおかげで、ゴモラの攻撃パターンのだいたいは
見切ることに成功している。これが知性の高い怪獣だったら、こちらの回避にあわせて攻撃パターンを変えてくるなり
するだろうが、正気を失って暴走している今はがむしゃらな攻撃をしてくるしかできない。
 冷静に、ゴモラの気迫に惑わされずに、行動を先読みしてかわす!
 散々苦しめられた突進や尻尾連打も、動きに慣れてしまえば大振りで単調な攻撃に過ぎない。エースはゴモラの攻撃に
あわせてチョップやキックを組み合わせて打撃を与えつつ、いわゆるヒットアンドウェイで戦い、じわじわと削っていった。
いかに強大なマイナスエネルギーといえども無尽蔵ではない。後先を考えずにフルパワーで発揮し続ければ、どれだけ
豊富にあろうとも短時間で底をつく。
 案の定、暴走を続けたゴモラのパワーはみるみる減少していき、赤色変化していた体色も元の土色に返った。
 ようし、あと一息だ。ゴモラには、もうエネルギーはたいして残っていない。
〔でもサイト、わかってるんでしょう? わたしたちの力じゃこれ以上は〕
 経過を見守っていたルイズが言った。彼女も、大きく口に出しこそはしないが才人と同じく救える命は救いたいと思っている。
しかし、頭の回転も人一倍速いルイズはじっと見守りながら確信していた。ウルトラマンAの力では、ゴモラに食いついた
マイナスエネルギーを弱めることはできても完全に除去することはできない。
 このままでは、ゴモラを救うことはできない。だが、才人にはルイズとは違う強さがある。それは、自分の弱さを知って認めていることだ。
自分には、そのための力はない。なら、それができる人に頼ればいいと、つまらないこだわりなどは持たず、できないことはできないと、
人を頼れる素直さだ。
〔ウルトラマンコスモス! 頼む、ゴモラを助けてやってくれ〕
 才人はエースのテレパシーを借りてコスモスに頼んだ。それを聞き届けたコスモスは、追い詰めていたアリブンタを投げ飛ばして
昏倒させると、エースとゴモラの戦いを振り返ってうなずいた。
 コスモスは意識を集中させ、浄化光線の構えをとる。しかし、弱ったとはいえゴモラはまだなお激しく暴れていた。このままでは
光線を当てることができない。ウルトラマンAは、暴れるゴモラを抑えるために、その後ろに向けてジャンプした。
「タァーッ!」
 空中一回転、太陽を背にして降りてきたエースは、見上げて目をくらませていたゴモラの背後に着地すると、背中からゴモラを
羽交い絞めにした。もちろん、ゴモラは抜け出そうと激しくもがく。さすがは怪獣界でも屈指のパワーファイターとして知られるゴモラ、
エースの力でも完全には押さえ切れずにあおりを受けて周囲の建物が倒壊する。
 
〔注射を嫌がる子供を押さえつける母親の気分だな〕
 こんな状況ながら、才人は妙なことで内心苦笑した。小学校低学年の学年予防接種のとき、嫌がる生徒を女先生がなだめるのに
ずいぶん苦労していたのが、うっすらと記憶に残っている。将来はルイズも似たようなことになるのだろうか? ルイズのことだから、
まあなだめるというよりは男のくせにだらしないわねと叱り飛ばす気がする。まあ、ハルケギニアに注射があったかは知らないが。
 戦いの最中にこんなことを考えるとは、自分も戦いに慣れてきたということであろうかと才人は思った。もっとも、ミシェル……
姉さんに言わせれば、たるんでるだけだと叱られるだろう。まったく、姫さまが無茶な戸籍を設定してくれたおかげで、なにかと
気を使ってしまって苦労する。もっと、あの人とはなにもなく付き合いたいのだが、戦いが終わったら、ゆっくりと話してみたい……
今もこの街のどこかで戦っているだろうが、無事でいてくれと才人は強く願った。
 
 戦いの中のつかの間の感慨。今は夢に過ぎないが、平和の中で、愛する人と過ごすこと以上の幸せがあるだろうか。
 しかし、世界の幸福なくては自分たちの幸せもない。救うべきものを救うため、才人は意識を戦いに戻した。
 
 エースに押さえつけられて動けないゴモラに向けて、コスモスは手のひらを掲げてカラータイマーにエネルギーを集中させた。
輝く光が集まっていき、コスモスは光を手のひらで押し出すようしてゴモラに向けて照射した。
482:ウルトラ5番目の使い魔 93話 代理:2012/07/22(日) 21:05:12.02 ID:gHhqk0BY
『コロナ・エキストラクト』
 ルナモードのときよりも強化された浄化光線がゴモラの体内に浸透していく。そのパワーは、取り付かれていたゴモラにも
少なからぬ負担を強いるほど強力なものであったが、ゴモラの生命力ならば耐えられた。細胞のひとつひとつにまで染み渡っていた
マイナスエネルギーは除去されていき、マイナスエネルギーの媒体として寄生していたガディバはついに体外へと追い出された。
〔やった!〕
 ゴモラの体から黒いもやが吹き出るようにはじき出されたガディバを見て、才人は歓声をあげた。
 ガディバの寄生から解放されたゴモラは、ため息をつくように弱く鳴くと倒れこんで目を閉じた。やはり、いかなゴモラとはいえ
相当な疲労が蓄積していたのだろう。
 ようやく悪の手から解き放たれて、元の姿に戻ったゴモラをエースはそっと横たえた。ガディバに寄生されて早いうちだったから、
なんとか助け出すことができた。長引けば、ゴモラはひたすら傷ついた体で暴走を繰り返す、生きた屍のようになっていたかもしれない。
 やはり、倒すべきはヤプール! 命をもてあそび、人々の悲しみを喜ぶ悪魔だけは絶対に許せない。
 エースはコスモスと目を合わせ、その意思を互いに確認した。この世界の人々の幸せを守るために、この悪魔たちの野望は打ち砕く!
 
 二大ウルトラマンは、復活してきたアントラーとアリブンタに最後の戦いを挑んでいった。
 
「フッ!」
「ヘヤァッ!」
 
 エースのチョップがアントラーの首を打ち、コスモスのキックがアリブンタの牙をへし折る。ゴモラを浄化して、ふたりとも少なからず
消耗しているとは思えない強さだ。負けるわけにはいかないという使命感、なによりも背中に守る大勢の人たちが彼らに力を
与えてくれている。
 東方号で勝利を祈るティファニア、ルクシャナ、水精霊騎士隊の少年たち。エレオノールも平静を装っているが頬は興奮で
紅潮しており、海から引き上げられたコルベールも医務室のベッドで勝利を願っている。
 海では、ミシェルたち銃士隊が溺れていたエルフたちをボートに引き上げて介抱しながら、ときおり横目でウルトラマンの
戦いを見ていた。任務に没頭する彼女たちの働きで、多くのエルフたちが命を救われている。声を発することはなくとも、
彼女たちも心の中では同じところに立って戦っていた。
 そして、いまやアディールのエルフたちは、その目で見た真実を受け入れて声をあげていた。
「ウルトラマン、がんばれ!」
 子供から大人まで、彼らの叫ぶ声は同じ。その濁りのない声のひとつひとつが、エースとコスモスに力を与えてくれる。
 
 さあ、とどめだ! エースは体を大きくひねり、アントラーに向けて腕をL字に組んだ。
 コスモスも、その両手に赤く光る宇宙エネルギーを集中させ、円を描いて増幅させる。狙うのはアリブンタ、悪しき命と魂を
持って生まれたものに、今度は正しい命として生まれ変わってくれることを願い、同じく腕をL字に組んで同時に必殺光線を放った。
 
『メタリウム光線!』
『ネイバスター光線!』
 
 三原色の光芒と赤色の光撃がアントラーとアリブンタを貫いた。そして、二匹はゆっくりと全身を発光させながら倒れこむと、
次の瞬間大爆発がその身を包み込み、紅蓮の炎と火花を残して吹き飛んだのである。
「やっ、たぁーっ!」
 街を、人間とエルフの割れんばかりの大歓声が包み込んだ。アディールを襲っていた、二匹の凶悪な怪獣は二大ウルトラマンの
前に敗れ去り、ここにヤプールの超獣軍団は壊滅した。
483名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 21:06:36.64 ID:gHhqk0BY
エースとコスモスはともにうなずきあい、互いの勝利を祝福する。見れば、東方号や海、街のいたるところでも手を振っている
人間やエルフの人々が見える。ふたりは彼らに、心の中でありがとうと感謝した。
 
 しかし、戦いはまだ終わっていない。超獣軍団は壊滅させたが、まだ指揮官が残っている。
 コスモスの一撃で気を失わされていたギロン人。そいつが意識を取り戻したときに見た光景は、敗北の二文字以外では
表現できないものであった。
「な、なんだとぉ……!?」
 緑色の複眼が動揺を隠し切れないというふうに不規則に点滅する。だが、いくら現実を否定しようとしたところで、
超獣軍団の全滅は変えようのない事実として目の前に存在していた。
 ふたりのウルトラマンを前に、二言目を発することのできないギロン人にコスモスが語りかける。
「この星から去れ。ここに、お前はいるべきではない」
 それは、コスモスからの最後通告であった。命まではとらないから去れ、さもなくば今度こそ容赦はしないという
断固とした意思表示である。エースも、戦意を喪失した相手に追い討ちはしないと、コスモスに同調して見守っている。
「くっ、くぅぅ……」
 しかし、ギロン人は退却はできなかった。逃げれば、役立たずとしてヤプールに粛清されるのは間違いない。かといって、
ふたりのウルトラマンを相手にしては万に一つも勝ち目はなく、玉砕にもならない自滅しか待っていない。
 引くも攻めるもならず、進退窮まったギロン人。残された道は特攻しかないかと、投げやりになりかけたそのときだった。
空に暗雲と雷鳴が轟き、ヤプールの怨念がこもった声がアディールに響き渡った。
 
「おのれウルトラマンどもめ。よくも、よくもわしの超獣軍団を全滅させてくれたな! 忌々しい、まったく忌々しいぞ!」
 
 空にヤプールの赤黒いのっぺらぼうの幻影が浮かび上がり、そのおぞましい姿に人々は震え上がった。しかし、エースは
怨念を跳ね返すように叫び返した。
「ヤプール、お前がいくら人々に絶望を与えようとも、彼らにはそれを乗り越えていける力がある。超獣どもは全滅した。
お前の負けだ、消えるがいい!」
「おのれウルトラマンA! もう勝ったつもりかぁぁ……よかろう、こうなったら最後の手段を見せてやる。我らヤプールの
生み出した暗黒の魂よ、ここに集まれ! 今一度、悪魔の力をこの世に示すのだ!」
 暗雲が渦巻き、膨大なマイナスエネルギーがあふれ出す。ヤプールの怨念の深さを示す、触れるものをすべて腐らせる
絶対的な暗黒のパワーが異次元世界からこの世界にやってこようとしていた。
「こ、これは!?」
 まだ、あれだけのエネルギーを隠し持っていたのかとエースは思わずたじろいだ。超獣軍団を相手に、あれほどの
エネルギーを使っておきながら、以前にも勝るとも劣らないこの膨大なエネルギー量は、かつての究極超獣にも匹敵する。
 この世界で集めたものではなく、ヤプール自身の怨念と復讐心から生まれたマイナスエネルギー。ウルトラ戦士と
人間たちに対する恨みが、連敗を重ねたことでついに臨界を超えた。ウルトラ戦士の光とは対極の、底なし沼のような
ドロドロしたどす黒い闇の感情エネルギー。
 これがヤプールの本当の力……これまでのものは前座に過ぎなかったとでもいうのか。戦慄するふたりのウルトラマンと、
何万もの人々の見守る前で、ヤプールは呪いの言葉をつむいでいった。
 
「戦場に散った暗黒の同胞よ! その怨念を晴らすべく再び蘇れ。ひとつとなって、新たなる命となるがいい!」
 
 怨念によって生まれた闇の引力が、戦場に散った悪魔の怨霊を呼び集めていく。
 廃墟からゴーガが、海底からダロンが、サメクジラが、オイルドリンカーが、バルキー星人が亡霊となって現れる。
 闇の中からはマザリュースが出現して、アディールの上空を不気味な声をあげながら旋回した。
484:ウルトラ5番目の使い魔 93話 代理:2012/07/22(日) 21:07:30.87 ID:gHhqk0BY
 そして、超獣たちの怨霊は結集すると、次々とギロン人の体へと飛び込んでいった。
「な、なんだお前たち! う、うがぁぁぁーっ!」
 ギロン人の口から苦悶の声が轟き、その体がどす黒い闇のオーラで覆われていく。
 なんだ! いったいなにが起ころうとしているのだ!? 愕然と見守るエースとコスモスの前で、ヤプールの闇の儀式は
最高潮を迎えつつあった。
「ハッハッハッハ! ギロン人よ。お前もそいつらが憎かろう。だからお前に、復讐を果たすための究極の力をくれてやる。
超獣軍団のすべてのエネルギーを結集して、我が最強のしもべとなって生まれ変われぇ!」
「グォォォ! 力が、力がみなぎってクルぞ。信じられないヨウな、すさまじい力だダダダダダダ!」
 常軌を逸した怨念の力がギロン人に人知を超えた変化をもたらしつつあった。無数の怨念のエネルギーが、パワーアップなどと
いうものとは次元の違う何かを起こそうとしている。
 闇の渦の中で、人型をしていたギロン人の肉体が溶ける様に輪郭を失っていく。有り余りすぎるマイナスパワーに、生身が
ついていけなくなっているのだ。このままでは、エネルギーの過負荷で自己崩壊するか爆発する! ヤプールはいったい
なにを考えているのだ!? エースはこのままではまずいと、ギロン人に向けて光線を放った。
『メタリウム光線!』
 エース必殺の一撃がギロン人を襲う。だが、ギロン人を覆う闇の渦はメタリウム光線を軽々とはじき返してしまった。
〔効かない!〕
 なんてパワーだ。エースの妨害がまったく通じないとは!
 さらに、闇の渦はアントラーとアリブンタの怨霊も取り込んで増大する。すでにエネルギー量は計測可能な値を超えていた。
だが、いくらエネルギーが余ろうとも、それを制御できなくてはなんの意味もない。ギロン人では到底無理だ。ヤプールも、
逆上して失敗したのかと思われた、そのときであった。
〔あれはガディバ! そうか、そういうことだったのか!〕
 ギロン人に、マイナスエネルギーとともにガディバが憑依したことで謎が解けた。ガディバには取り付いた怪獣の遺伝情報を
書き換えて、まったく別の怪獣に変えてしまう能力がある。それを利用すれば、ギロン人の肉体を作り変えることも可能。
そういえば、あのガディバはゴモラの遺伝情報を記憶していたはず……まさか!
 闇の中で、一度分解されたギロン人の肉体が再構築されていく。人型が、恐竜型の前傾姿勢になり、特徴的な三日月形の
角を持つ頭部が生まれ、鋭い爪が生えた太い腕と足が現れ、長大な尻尾が生えた。
 あのシルエットは! 才人は、最悪の予感が当たったことに戦慄した。だが、その最悪はまだ真の最悪ではなかった。
 闇の竜巻を振り払い、ギロン人から完全変貌したゴモラが現れる。しかし、その容姿は……
〔やっぱりゴモラ……いや! な、なんだよあれは!〕
 それは、才人の知っているゴモラではなかった。全身はまるで金属の鎧をまとっているかのように刺々しくなり、
手に生えた爪も大きく長く伸びている。頭部も同様で、瞳のない白目は悪鬼のように鈍く輝いていた。
 もはやゴモラとは思えないそいつは、単なるフェイク体とはとても思えなかった。いうなれば、『ゴモラにあってゴモラにあらず』
まさしく魔獣……すでにギロン人の意識は消え去ったのか、凶暴な叫び声をあげて、アディールのすべての人々に恐怖を植え付けた。
 
 遺伝子の奥に隠されていた、ゴモラ自身さえも知らなかった未知の姿。
 最強怪獣の降臨。ここに、アディールをめぐる二大ウルトラマンとヤプールの戦いは、ついに最終ラウンドを迎える。
 
 
 続く

485名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 21:11:57.29 ID:MXF8uthJ
以上、代理投下でした。
あとがきはさるさん食らって無理でした。誰かお願い。
486ウルトラ5番目の使い魔 93話 代理:2012/07/22(日) 21:21:53.92 ID:vM2gKcn1
良し、任せろ!


今週はここまでです。
最近暑くなってきましたね。まあ砂漠で戦っている才人たちに比べればましですが、ルクシャナの家は天国だろうなと思います。
さて、お待たせしましたウルトラマンコスモスの登場二幕。コスモスらしく書けているよう努力したつもりですが、楽しんでいただけたら幸いです。
資料のためにとコスモスのDVDを見てるうちに、ついついそのまま夢中になってしまうことが少々ありましたが、その分作品への愛は
込めているつもりです。パワードやネオスもDVD出ないかな。

そして、第二部のラスボスがついに登場しました。フェイクとはいえ、はたしてこの超怪獣に二大ウルトラマンは勝てるのか。
ウルトラマンとゼロ魔キャラとの絆が奇跡を起こすか。
とはいえ、こんな化け物どうやって倒すべきか……

では次回、アディール最終決戦! 最強怪獣を倒せ!! に、ご期待ください。


以上、代理の代理終了。先の代理の人お疲れ様です。
そしてウルトラの人もお疲れさまです。これからも期待していますので頑張ってください。
487名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 21:23:11.64 ID:AVDn8IL5
EXゴモラキター
488名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 21:25:31.60 ID:9PmTmKJ3
ウルトラ乙
代理も乙

相変わらず状況が動きまくるな
その内宇宙恐竜とか暴君怪獣とかも出てきそうで怖い

489名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 23:09:07.27 ID:dmky8do9
ウルトラの人、お疲れ様です! 代理の人ありがとう!
490名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/22(日) 23:44:25.48 ID:SE8GoLgr
さて、もう日も変わるしるろうにの方はそろそろかな…
491るろうに使い魔:2012/07/22(日) 23:56:55.42 ID:PAc1jLhE
ウルトラの人、代理の人、投下お疲れ様です。
さて、本日分の話なのですが、急遽予定が入り、投下が少し無理そうなため、
今回は見送る形になると思います。
急なことで、どうも申し訳ございません。来週は普通に投稿しようと思います。
492名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 00:02:44.06 ID:iU2R6bU2
いちいち謝らんでも自分の好きな時に投下すりゃいいよ
493名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 00:05:29.38 ID:UGJZ1cr/
ウルトラの人と代理乙
リバース的な意味でEXゴモラは軽いトラウマだ…
494名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 00:11:04.77 ID:kzRR9jps
>>467
乳幼児死亡率と病死率高かっただけだから年よりはそれなりの割合いたんだけどな
赤子から15歳までの死亡率除けば平均寿命かなり延びるよ

20まで生き残った人が何歳まで生きるかの平均とったら55〜60そこらは行くんじゃないか
495名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 00:12:09.86 ID:WBTwBTJm
というかよほど長期間にわたって定期的に投下してるならともかく、報告しなくても大丈夫
496名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 00:28:13.26 ID:67G4UfBi
まあ土曜の投下の時、「明日また」って言ってたからね
その予定が変わったのなら断りを入れてくれるのは、
必須ではないにせよ親切だろう

お気になさらず、また来週を楽しみにしております
497名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 00:34:18.28 ID:kyk02pB/
夏休みだなぁ……
それとも日本の文化を毛嫌いするあの国の学生か?
498名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 00:43:16.85 ID:67G4UfBi
また品の無い発言を
499名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 00:48:48.87 ID:+UJELlR+
るろうにの人遅くまでお疲れ様です、来週楽しみにしてます!


律儀だなあ…
500名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 00:50:32.47 ID:JZbZOy1I
>>497
イヤイヤ、全ての悪いこと気に食わないことをかの国の所為にするバカの仕業だろw
501名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 00:59:15.44 ID:lj1k4jNa
ウルトラ乙
タイラントかと思ったらEXゴモラか
502名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 02:59:20.80 ID:EhmAg2vR
タイラントと言えばジルの人は今どうしてるんだろう?
503名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 08:05:42.32 ID:d0//Pg6C
るろうにまあまあ
ウルトラつまんね
504名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 14:10:37.00 ID:QNx42DIt
やはりるろ剣もいいが武装錬金もいいな。
原作読み返したらぐっときた。
505名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 14:57:12.22 ID:f7E8D/cy
一粒300米召喚したらギーシュバラバラになっちゃう
506名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 15:17:19.85 ID:1vHzzM4i
毎度思うがギーシュとの決闘なんて別になくてもよくね?
507名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 15:23:41.68 ID:rTZrhA3W
キャラが戦える場合、戦闘能力見せる良い機会だし
むやみにギーシュ戦飛ばすとフーケ戦までまとめて吹っ飛ぶ可能性があるから外す理由がない
508名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 15:24:48.03 ID:+JyBXgYf
というか必要以上にゲスなセリフとか行動をギーシュに取らせて
決闘後は何事もなかったかのように原作通りのいい奴ポジションってのがたまにあって何かもやもやする
509名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 16:12:13.68 ID:ScvKRxaM
テンプラー多いから仕方ないでしょ
510名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 16:50:55.19 ID:wEaJ0Mpp
テンプレ使っても10話も持たずにエタるやつの多いこと。語るスレじゃ誰が呼ばれても同じことばっか繰り返してるって言われてるし
511名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 16:54:45.18 ID:DMWNR+XI
まあ良い悪いは置いといて、実際殆どが同じことの繰り返しが多いのは事実だしなあ
512名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 18:13:49.38 ID:NRYCYEok
ギーシュ以外で決闘イベントをやりそうで、ゲスでぶちのめされても文句のでない学院の生徒ならド・ロレーヌ?が居るじゃないか。
513名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 18:51:15.64 ID:ICzdQUkc
ヴィリエ辺りと決闘させれば
514名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 18:52:24.78 ID:ICzdQUkc
おおぅ、最後尾の場所間違えたすまん
515名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 19:42:58.36 ID:Ss5lAHPg
むしろ、その決闘でギーシュと意気投合させられるきっかけになるし、
召喚キャラがガチで強ければ、そのキャラに師事するという展開にもできる。
516名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 20:00:11.33 ID:1vHzzM4i
広義に決闘、すでに消して今はないのも合わせたらモンモン、マリコル、アニエス、シエスタなんかがバトったことがあるな
517名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 20:02:08.33 ID:2CBiPzLh
典型的なテンプレ誤用する子がまた沸いてきたのか
518名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 20:19:53.17 ID:x5gBGjy+
>>516
意外にキュルケが決闘した話って見たことないな
初期キュルケ相手だと、ルイズ並に沸点が低いなら決闘してもおかしくないと思ったが
そもそもそんなキャラだと最初に契約云々の話聞いた時点で大暴れしかねんかw
519名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 21:11:52.38 ID:lj1k4jNa
>>518
賢狼としたことがある
520名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 21:17:06.03 ID:x8v/4s6y
テンプレ通りの展開の方が話が作り易いし山場を簡単に用意出来るからな
それに予想外の行動を使い魔側が取る事は有ってもゼロ魔側が取る事はほぼ無い
これもゼロ魔側で予想外の行動を取らせると展開が難しくなるのとキャラ崩壊を招く為だな
最初から物分りの良いルイズとか妙に男気に溢れるギーシュとか書いても違和感しかない
途中からそういう方向に持っていくなら使い魔によって性格がそう変わったと取れるが
最初からそういう書き方をすると「原作無視かよ」なんて感想を持たれてもおかしくない
つまりだ、テンプレ通りの展開の方が話を作りやすいのと毒を吐かれ難いってのが事実だな
521名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 21:18:08.78 ID:vz0znQpx
アイディアは悪くないと思うが、理由付けが大変だな
挑戦者がいるなら俺は諸手を挙げて応援するわ
522名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 21:21:46.29 ID:vz0znQpx
>>519
っと、既に先駆者がいたのか
誰が呼ばれた話?ちょっくら読んでくるわ
523名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 21:26:15.50 ID:frKEVmcu
賢狼ホロじゃないかな
524名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 21:26:55.69 ID:x5gBGjy+
賢狼ってことはホロじゃね?
525名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 21:41:41.86 ID:vz0znQpx
おおサンクス
賢狼ってキャラいたっけ?と考えてたけど、そうかホロか

ホロを忘れるなんてどうかしてたわ
526名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 22:48:38.26 ID:5IzYA8kJ
>>525
ワルド「ウルッフッフッフ…狼と聞いちゃ黙っちゃいられねぇな……」

…中の人同じなんだよな
527名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 23:04:44.45 ID:LOnu8xlS
狼というとヴァンパイアシリーズのガロンが真先に浮かぶのは俺だけか
528名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 23:06:56.22 ID:5Z0tTyWQ
砂漠の
529名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 23:15:03.12 ID:DC3KWgDR
毛フェチで元警察犬の狼男探偵、キューティクル因幡洋を召喚だ!
毛から情報読み取ってマチルダもワルドもたくらみがばれる
そして本人顔やスタイルの美醜よりキューティクルの美しさにしか興味ない
レアな髪求めて奔走する姿が目に浮かぶwww
530名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/23(月) 23:35:35.21 ID:/eieyFk3
青やピンクの髪が普通に存在する世界に大感激してそうだ。
しかし、そうするとシエスタは男の娘に魔改造されてたりするのかな?
531名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 00:21:23.14 ID:6+G1WvqM
>>528
忠誠のケルベロスの話はやめろ
いいか、砂漠の狼軍団の話はやめろ
532名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 00:39:39.72 ID:jBkd/3Rp
テンプレ通りの展開は書く方は楽かも知れんが
読む方としては正直「またか…」って感じだな
まとめWikiに載ってる作品を何個か見れば分かると思うが
食傷気味というか、何と言うか…

特に“フーケに苦戦”“ワルドに苦戦”
この二点はどんなキャラ呼ぼうがテンプレ通りの作品の9割が同じ展開なんで
たまにはあっさり勝てよとか思ってしまう

ウルトラみたいなテンプレから外れた作品がもっと読みたいんだけどなあ
そういや、このスレや他スレで絶賛されてる作品もテンプレから外れた作品の方が多いね
533名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 00:43:09.23 ID:TJLHSwqQ
原作とテンプレの区別も付かずに批評紛い繰り返す阿呆は避難所でも行けよ
534名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 00:47:32.98 ID:jBkd/3Rp
テンプレートの意味も分かってない阿呆が噛み付いてきましたよっと
535名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 00:51:15.96 ID:jBkd/3Rp
template=雛形、鋳型
転じて、意訳的に原作っていう意味もあるんだけどね
要するに原作もテンプレも同じっちゃ同じなんだが
536名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 00:51:31.46 ID:GmrVB4NF
意味不明な負け惜しみはいいからスレルールも知らない子はちゃんと避難所使う基本から覚えろよ

あと原作はテンプレートでもなんでも無いぞ
537名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 00:54:00.59 ID:jBkd/3Rp
>>536
はいはい無知乙
そりゃ一般的には使わんけど、意味合いとして間違ってはいないわけでね
海外行きゃ通じる
538名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 00:56:47.54 ID:TJLHSwqQ
海外じゃ原作はオリジン、オリジナル
無理矢理近似誤用を独自解釈で振り回す必要は無い
スレルール守る事も知らない人間が他人を無知呼ばわりしても見苦しいだけだぞ
539名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 00:57:02.24 ID:d3DjKeht
外国だと白いソックスはホモ扱いされるんですよ!とか主張する馬鹿な学生思い出したわ
540名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 00:57:09.54 ID:fYKLH0WZ
つーかさあ、ちょっと否定的な意見挙げただけで
すぐに排除しようとすんの止めろよ
流石に排他的過ぎて気持ち悪いわ
541名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 00:58:55.35 ID:GmrVB4NF
>>540
ここではその手の事は専用のスレでするルール
嫌ならこのスレを使わずよそでやればいい
542名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 00:58:55.90 ID:jBkd/3Rp
>>538
原作はそうだが、“原作通り”はテンプレートでも通じるんだわな
一つタメになったね
543名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 00:59:03.52 ID:d3DjKeht
>>540
海外だと当たり前なんですよきっと
544名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:00:43.06 ID:GmrVB4NF
>>542
わかったから毒行け
海外海外連呼する前に当たり前の日本語読めないのかい
545名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:00:50.95 ID:jBkd/3Rp
へえ、ここは否定意見は絶対に出ないんだ
じゃあ、今から俺がクソみたいなSS投下しても叩かないんだね?
分かった、今から投下してあげるよ
546名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:01:43.29 ID:efsp4D3F
スルーされるだけだ
547名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:01:54.99 ID:d3DjKeht
>>544
毒で相手にされないからこっち来てんだろ
548名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:06:29.57 ID:jBkd/3Rp
                転生








 「ここはどこだ?」
俺は真っ白い空間にいた。たしか仕事上、酒屋で飲んでいたが・・・・・。
いきなり目の前に白髭の爺さんが現れた。
「わしは神じゃ。実はな・・おぬし・・・・・・手違いで・・・・・わしの手違いで死んだんじゃ!その代わり”ゼロの使い魔”の世界へ転生させてやるぞ。どこかの裕福な貴族でもOKじゃ」

キタ!!!!!!!!!!!!!!!転生だ!!!!!!!!1

「じゃあ!俺をゼロ魔の平賀才人に転生させてください!しかもチート付で!あの世界は死亡フラグ満載の世界だもんね」

・地球人でありながらサイヤ人の特性(大猿・尻尾不可)。制限時間なしのスーパーサイヤ人5
・ドラゴンボールの孫 悟空、べジータ、クリリン、ヤムチャの技(GT最終回時)、ネテロクラスの心源流念法、武侠世界の技(如来神掌、九陽神功、九陰神功、独孤九剣、一陽指、降龍十八掌)
・一方さんのベクトル操作・演算能力。ギルの黄金率・王の財宝。カキネの未元物質。冥土帰し(ヘブンキャンセラー)
・ナルトの影分身、輪廻眼りんねがん
・ルーン刻まれるときの洗脳効果無効
・無からありとあらゆるものが作れるクリエイト能力、アカシックレコード(宇宙の図書館)
・5歳から前世の記憶を復元させること。17歳ではなく23歳で召還
・地球とハルケギニアを行き来できる能力

「む・・・・いいじゃろう!あの世界のマギ族は滅ぶべき種族じゃ」

「アンチするからな」

「アンチでもヘイトでも好きにしろ」

俺は光に包まれた。

549名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:07:29.26 ID:jBkd/3Rp
                 鍛錬





 目が覚めたら5歳児である。来年は小学校1年生。
前世でのゼロ魔の原作やら二次作の内容を覚えている。しかも生まれて一歳からの出来事や平賀家の両親と妹も頭の片隅に記憶していた。

さてあと18年後の6月30日だ!

最初は、奴隷で寝床は床!食べ物は死人の食べ物。冗談じゃないぜ。挙句の果てには”功績”が認められて糞貴族の一員だと!こんなふざけた話あるか!!!!!!!!!!
さっさと鍛錬してハルケギニアの糞貴族らを殺害してやるぜ!


最大100Gまでの腕輪式人口重力装置をつくり5Gからの重力になれるようにした。

「く・・・!これはきつい・・・!」

幼稚園から帰宅してからは、近くの運動公園で走りこみ、自重筋トレ、立禅瞑想、あらゆる武術の型などをやり込んだ。
仙豆もクリエイトできるし、ドラゴンボールの人口重力装置付の宇宙船も作れた。

気のコントロール、念修行にも精を出していた。またハルケギニアへの転移できて地球との世界を往復できることを確かめていた。

「あ?!糞貴族を地球へ連れて行って、魔法を発動できるかを確かめなくては」

『お〜い!そんなことしなくてもこの地球世界じゃブリミルの魔法とエルフの魔法は発動できないように2000年前位に仕掛けといたぞ』

「マジで?!本当っすか?」

『他の世界じゃ”サイト”がルイズを地球へ連れ帰ったときにハルケギニアの魔法が発動しているのだが、
2000年前にこの地球世界の地球神連合評議会の決定ですべてのハルケギニアの魔法を中東の人間に転生したあるお方が日本の地で儀式を行いハルケギニアの魔法を無発動状態にしといたぞ』

「じゃあ糞貴族メイジを地球へ放置してもあいつらは”無力”なゴミで!」

『そうじゃ、マギ族の馬鹿ピンクの召還までに精々がんばれ』


それを聞いて安心した。やつらには殺すだけじゃ物足りない。本当の地獄を味わせることもアンチの心得だぜ。



人工重力装置10000Gを克服してスーパーサイヤ人5にまで覚醒したころには、高校卒業してアメリカの大学へ留学した。

一方さんの演算処理能力wwwIQってマジですげwwwwww。中学・高校ともに学年トップの成績だし、ギルの黄金率で金融投資なんか少額から始めたら億単位の資産をGETした。

糞ルイズに召還されるのはアメリカの大学卒業から1年後だ!

そして日本へ帰国後、サイトは金融投資で儲けた資本金をもとに日本初のオーバーテクノロジーの総合研究機関を立ち上げた。

運命の日、6月30日が訪れた。
550名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:08:16.52 ID:miJ5Phvk
原作通りがテンプレートで通じるなら
テンプレ通りは頭痛が痛い状態かwww
どのみち恥ずかしいな
否定意見は避難所のスレで行われてると言われてるのに、絶対に出ないとか言い出す奴はひと味違うな
なにもかもが独自すぎる
551名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:11:55.55 ID:jBkd/3Rp
                  召還

アメリカの大学を卒業して帰国後、金融投資した大金を元に筑波にて日本初のオーバーテクノロジーの総合研究機関を立ち上げた。ゆくゆくは、日本版テスラ・ライヒ研究所を目指すつもりだ。

集めた人材は、日本の学界から鼻つまみされている元教授・助教授・博士号を持つホームレスである。いわゆるマッド科学者たちだ!
サイトはアカシックレコードにアクセスして、フリーエネルギーや新素材のデータをコピーにして研究員に研究させた。
防衛省の幹部などと交流して、”スーパーロボット”を配備させようとしている。防衛省に伝がある議員さんとの”交流”も行っていた。

さあ、6月30日に運命の日が訪れた。
夕方、研究所の所長室では銀色の鏡が出現。サイトはそれに飛び込んだ。
すると・・・・・

「あんた、誰?」

目の前にいたのは、ピンク頭の幼女である。

「ミスタ・コルベール! もう一度召喚させてください!」

「それは駄目だ。ミス・ヴァリエール」

「どうしてですか!」

「決まりだよ。サモン・サーヴァントは神聖な儀式なんだ。それをやり直すなど、使徒ブリミルへの冒涜になる」
(ふっ!シナリオ通りだな・・)
「アンタ、感謝しなさいよね。こんな事絶対平民になんかしないんだから。」

 糞が!一体何に感謝しろというのだ。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

そしてキス。
原作通りに左手にルーンが刻まれた。こんなものは解析して能力をコピーしたら、王の財宝ゲートオブバビロンの中のルールブレイカーで消去してやる。
禿頭の男が、ルーンをスケッチさせてくれと言った。させてやった。この糞禿が!いつかぶっ殺してやるぜ。お惚け君みたいでマジでむかつくぜ!原作じゃ見て見ぬふりの典型的な駄目教師。教師の資格するない。
空を飛んでいった糞貴族もいずれぶっ殺してやる!

×××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××

このあとルイズの部屋に行った。

「ここがお前の部屋か」

「ご主人様でしょ」

サイトは、ルイズの後ろに一瞬で立ちより手刀で気絶させて倒れたルイズを布団へ寝かせた。

「うっ!」

「よし、邪魔ものはいない。さ〜てと」

杖を折って、小さい2本透明のガラスの針をクリエイトしてルイズの左右の肘関節へ挿しし込んだ。
ルイズが魔法を発動しようとしてもエネルギーが針を挿した経絡秘孔から出てしまうようにした。操作系念法で今後、ルイズは魔法を発動できないようにしていた。
いわば、ガソリン漏れで動かない車と同じである。

部屋を出て階段を下一回降りると薔薇を持ったキザ野郎が女生徒を口説いている場面に出くわした。向こうはサイトの姿なぞ無視だ。

また、女子寮の一階の噴水ではキュルケと男子生徒が戯れていた。アニメじゃこんな描写があったな。二人がサイトをチラッと見たが、興味ないようだった。

(アニメじゃルイズが追いかけて、糞ギーシュの念動力で捕縛されるが、今の俺は舞空術使えるし気・念のコントロールもできる)
552名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:14:06.81 ID:jBkd/3Rp
地球へ戻って、王の財宝内の魔術書、輪廻眼、宇宙図書館などを使い、”ガンダ”の解析と能力の取り込みを行った。

(よし・・・・・このルーンの術式を・・・・・チート特典の一つで洗脳効果はないな・・・・・・)

王の財宝からルールブレイカーを取り出して左手のルーンを消滅させた。その代わり今後サイトはガンダールヴの能力は”能力”として自由自在に引き出せることが可能である。


「さ〜て!何とか広場でアホギーシュやモブ貴族を殺していくぜ!カカカカカカカ」




トリステイン魔法学院  厨房


「モグモグモグ・・・・・・・。うめ〜・・・」

「ハハハハハ!食え食え食え。さっきの世界はすごいぞ」

昼飯時に学院厨房へと転移してマルトーを日本国・東京の街へと案内させた。お土産にスーパーで胡椒・醤油などの調味料と調理用具を買ってプレゼントした。

お礼として厨房で飯を食っている。


「マルトーさん、あの世界で料理とか学びながら”留学”しませんか?資金は俺が全部バックアップします」

腹一杯食べ終わったところでくつろいでいると、シエスタが真っ青になって厨房に駆け込んだ。
 

(シエスタ、糞ギーシュに絡まれて逃げてきたか!)

シエスタの話によるとシエスタが香水のビンを拾ったところ、ギーシュの二股が発覚してとばっちりを受けた。それを見かねたルイズがギーシュに注意をしようとしたところ決闘のお流れとなったらしい。

(あいつが死んでくれたらこのトリステインは内戦になって滅びるね)
553名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:14:57.17 ID:jBkd/3Rp
飯を食い終わって”気”がたくさん集まる広場へと足を運んだ。するとギーシュが造ったゴーレムにボコボコにされて踏みつけられているルイズの姿があった。

「どうしたゼロのルイズ、お得意の爆発が使えないんじゃお前は平民以下だな!ハハハハハ」

昨夜にサイトは当身を食らわせて気絶させたルイズの両肘の経絡秘孔に針を打ち込んで”念”にてエネルギーが放出するように細工を施した。そのおかげで魔法が発動しないのである。
ルイズの体内で練りあがった魔術エネルギーが杖を持つ手には行かずに肘先で放出しているのである。

今後、ルイズは召還しようとしてもできないのである。エネルギーが杖までにいかないので魔法が発動できない状態であり、部屋の魔法のランプに魔力素を飛ばすことができない。




ガン! という衝突音と共にギーシュのワルキューレが空高く舞い上がって爆発した。

「な・・・!?誰だ・・・・」

「もういいじゃねえか」

「あ、あんたは・・・・・・・どこへ行ったのよ!・・・」

王の財宝からルールブレイカーを取り出し、ルイズを一瞥して左手の甲を見せてこう言い放った。

「俺はもうこの糞ルイズの使い魔じゃねえ。俺はこのアイテムで契約を無効にした。どうだ今の気分は?もう俺はアホルイズの使い魔じゃありません。ハハハハハハハ」

左手の手の甲を見たルイズは唖然とした。まるで世界が終わったような顔だ。

「なんで・・なんでなのようwwwwwwwww」

顔を見ると歯が欠けてあざができ、制服がボロボロである。全身骨折の状態である。

「ハハハハハハハ!ゼロのルイズ。失敗の魔法が使えないばかりか使い魔まで逃げられておまけに契約を破棄された。まったく無能と言っていいほどだ」

「お前も魔法と権力だけのゴミ野郎だ!勝負だ!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………

サイトの周りの空気が一変、周りのギャラリーもこのサイトの異様な雰囲気に戦慄していた。



「僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。 従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手をするよ」

「俺は異世界人名はサイト、姓はヒラガ。平民にとっては救世主。貴族・神官にとっては悪魔だ!」

ギーシュが手に持った薔薇の造花を振るうと、零れ落ちた花弁から甲冑を纏った優美な女性型のゴーレムが生成された。

554名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:15:33.37 ID:jBkd/3Rp
ワルキューレがサイトに向かって突進するが、近くまで迫っていたゴーレムがバラバラと崩れ落ちていった。

「あれ・・・」

「おいおい!おめ〜何やってんだ?テッシュ・ド・ボケモン君」

「き、貴様!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

名前を間違って(?)呼ばれたギーシュは、7体のゴーレムを生成した。


7体のゴーレムがサイトに向かって布陣したが、一瞬で衝撃波と共に木っ端微塵になった。


「ひ、何なんだ!貴様・・・・」


                ぺチャ!


杖を念で破壊してギーシュの背後に回って足払いでこかし、顔面向けて正拳を叩き込んだ。頭部がトマトが潰れたみたいな状態でギーシュは死亡した。


                

周りのギャラリーはあまりの惨劇にシーンと通夜のように静まり返った。

「ふん!脆いぜ。お前らの弱さを見ると、お前ら貴族の闘った事のある相手や周囲に居た者達は『クズ』ばかりだ」

広場の周りを取り巻いていた貴族はそのあからさまな挑発を受け、激昂し各々が彼に向かって魔法を放った。
あるものは炎の球を飛ばし、あるものはゴーレムを向かわせ。あるものは風の槍を放ち。またあるものは氷のつぶてを放つ。


が、すべて”ベクトル操作”で自身へと返還されていった。
555名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:16:04.76 ID:jBkd/3Rp
自身の魔法で倒れている生徒を見回すと、様々な怪我を負い、倒れ意識がないものも、呻いている者もいるが軽症、重症の違いはあれど死者は誰一人いなかった。



「ほう、これが貴様らの屑貴族の返答か!上等だ!そうやって罪のない平民を殺してきたのか!てめえらの!てめえらの血は何色だ!!!!!!!!!!」


オーラを纏った拳足で魔法を放って怪我をしている貴族生徒の命を次々と刈り取っていった。また、気功波で爆砕したり。


手刀を振るうと真っ二つになったり、正拳で風穴を開けられたり、蹴りで内臓破裂で死亡したり・・・・・・

たまに魔法を撃ってくる貴族がいたが、三途の川を渡ってもらった。その中に二次作品で”悪役”のビリエもいた。
その間、数十秒である。




そうしていくうちに広場は死体と血の絨毯で埋め尽くされた。サイトが手にかけた貴族は、魔法を撃ってきた貴族生徒のみである。

ルイズはは血だまりの中でガクガクと震え上がり、失禁していた。

「じゃあな、ルイズ」

これ以上長居すると眠りの鐘を使われるので、地球へ転移した。
556名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:16:41.33 ID:TJLHSwqQ
よそからのコピペ盗作とか悪質な荒らしでしたと自白してるようなもんだな
557名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:17:44.60 ID:jBkd/3Rp
がろうでん先生のSS投下してやったけど
別に批判しないんだろ?
スルーってことはこのSSを認めてるのと同じってことだからな

また投下してあげるよ
SS投下するスレなんだし問題ないわけだ
そんでもって批判もされない
天国のような場所だねここは
558名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:19:54.98 ID:jBkd/3Rp
>>556
ああ?
てめえらがいきなり喧嘩腰で意見を否定するからだろうが
仕掛けてきたのは寧ろてめえらだろ?

避難所でやるべきことならそう誘導すりゃいいのに
それすらしねえでいきなり全否定たあ、そりゃ喧嘩売ってる以外の何物でもないよな?
ああん?
559名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:21:31.21 ID:TJLHSwqQ
>>558
最初から避難所と誘導してますが?
560名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:30:14.53 ID:YFnIdfFY
>>558
どうでもいいけど読む気全くないから
マウス一気にスクロールさせた。
561名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 01:39:05.02 ID:j/NI4hMo
反応するヤツいい加減にしろよ
投下でもないのに15回も書き込んでるのとかあからさまな地雷だろうが
562名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 02:38:27.25 ID:RvopJ+5e
流れをぶった切るが決闘相手でギーシュが持って来られ易い理由って原作の方でも
出てくる回数が多いからじゃないか?流石にいきなりキュルケやタバサとバトって
勝っちゃったらそれもそれで面白いかもしれんが元々ギーシュはかませ犬的と言うか
ガンダールヴとか貴族とは〜を召喚されたキャラに実体験させる為のキャラだろ?
563名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 02:51:31.09 ID:d3DjKeht
というかギーシュ以外を持ってくる必要性は薄い
原作でも初期は嫌な奴なんだから無理やり良い奴に仕立てて回避する方がおかしい
香水イベント回避自体は別にいいが
564名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 03:46:58.95 ID:RvopJ+5e
決闘相手がギーシュが鉄板な理由はこれで大方決まりだろう
まぁ偶には決闘以外で決着を見たい気持ちは無くはないな舌戦で勝つとか
素直に謝ってギーシュの溜飲が下がるとかさ、何か難癖付けてギーシュが
無理矢理決闘に持っていく話に為ってる物も有るくらいだしさ
565名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 04:45:03.27 ID:WuNzS7w7
これも夏休みの風物詩だよなぁw
566名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 08:34:48.89 ID:UKF/lSs0
でもギーシュって特に悪いこともしてないよな。
原作じゃサイトが一方的に絡んだだけだし、シエスタ香水拾ってないよね?
それにギーシュの言う通り貴族に直接仕える平民なら、それぐらいの機転利かしてくれないと社交の場じゃやっていけない。もっとでかい問題引き起こすかもしれんし。
複数の女に声かけるのも当然。将来のコネ作りにこういう場で出来るだけ多くの人間と関係持つのは貴族の子の務め。
恋愛が娯楽って時代もあるし、女性には声掛けなきゃ失礼って事もある。肉体関係じゃなきゃ複数の相手と関係持つの貴族的にはおかしくないんじゃないの?

つまり何が言いたいかって言うと、不公平だサイトもげろ
567名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 08:54:15.20 ID:WeWvRO0o
サイト(現代日本人)とギーシュ(中世+ファンタジーの人物)の価値観の違いって事でしょ
異なる2つの価値観の対立って異世界モノだと急増するし
568名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 09:56:12.02 ID:pqCyc7/E
>>566

それはさすがにギーシュびいきが過ぎると思うけどな。
サイトは現代人だからもちろんのこと、シエスタが拾うパターンも普通あそこまで被害が広がるとは思わんしな。
偶然ケティにモンモランシーの香水を見られて一悶着あったところでこれまた偶然モンモランシーに見られるとか運が悪いとしか思えん。
大体コネ作るためだからといって二人と付き合う理由にはならん。特にトリステインはそこら辺が厳しいんだから。キュルケにそこら辺は指摘されてるし。
それを考慮せずに下手こいたギーシュのおつむが足りないとしか。

つまり何が言いたいかというと、イケメンは爆ぜろ。
569名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 12:14:46.89 ID:PnKgMh14
間をとってマルコリヌと戦う展開か……
570名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 12:29:04.66 ID:zHYiSHT9
初期マルコリヌだってルイズをからかった位でそんな悪者じゃないだろ。
やっぱり口汚く罵倒したド・ロレーヌが制裁目的で決闘を仕掛ける展開の方が……
571名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 12:39:10.07 ID:k5MVC1tu
キュルケの元カレ(にもなってない奴ら)とか恨み買えそうな奴探して持ってくるのも面白そうだな…
ってギーシュ戦がないとキュルケ惚れてくんないか

嫌な奴なら、ギトーと一度決闘させて変罪見ておけばワルド戦でも「聖闘士に一度見た魔法など通じぬ!もはやこれは常識!!」って展開も出来そう
572名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 12:46:03.80 ID:a2yAlnFO
転生時に神に望む術のほとんどがわかってちょっと嬉しかったのに、なんだ転載かよ

しかもオリキャラはアウトだろ

そしてマルコリヌって?
573名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 13:23:19.12 ID:RvopJ+5e
>>572
名前の間違いくらいは許してやれよ、論点はソコじゃないんだからさ

しかしそうだな、最初に決闘する相手か…ここはあえてコルベール先生とかどうよ?
使い魔は生徒じゃないから戦う事を拒否はしないだろ、理由付けがすっごく手間取りそうだが
574名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 15:03:50.74 ID:QCxtOWvq
>>573
最初からキュルケがコルベールに惚れる展開とか面白そう
575名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 17:36:53.38 ID:4tR1OsaS
>>568
ギーシュはどちらかというと三枚目だろうよ
あの世界でイケメン認定されてるのはワルドやジュリオあたりか
学院で一番のハンサムは顔出た限りじゃレイナールじゃね。ギムリはキュルケにふられてるし
576名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 17:56:31.14 ID:M8SItERc
アニメ見てないからかもしれないけど
ギーシュは狩野英孝の出てきた当初、僕イケメンネタやってた頃のイメージが
577名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 18:05:04.94 ID:mumrKdya
お前等いくら顔が不自由だからってイケメンにからむなよ
578名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 18:09:45.32 ID:d3DjKeht
まぁ原作にジュリオっていパーフェクトギーシュがいるしな
579名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 19:01:27.48 ID:g5E2d/gh
ギーシュの元ネタは
ルナ〜シルバースターストーリー〜のナッシュだと何故か思い込んでたなぁ
580名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 19:43:57.38 ID:0/GFFjh6
P4Gをクリアした動画を今見終わったんだけど
こんなオリ主を召喚しようと思います。
本当はにじふぁんに投稿したかったのですけどね





鳴上崇
HP999999999/99999999
SP999999999/99999999
攻撃力9999
防御力9999
LV99 ジ・シティー
真名:たかし
階級:上級元帥
宝具:ちゅうおうぎんこう、英: Central bank(ゴッドイズデッド) 無尽蔵にお金を刷れる。
装備品 十握剣 神衣 紙粘土の腕輪 iPhone5
革のキーホルダー ふかふかマフラー シルバーバングル 手作り腕時計 ゴツめの指輪 手編みのミトン 高級ミニカー
物吸収 火反射 氷反射 雷反射 風反射 光吸収 闇吸収
力999 魔999 耐999 速999 運999
八艘跳び イノセントタック
マハラギダイン ラグナロク
マハブフダイン ニブルヘイム
マハジオダイン 真理の雷
マハガルダイン 万物流転
回転説法 神の審判
死んでくれる? 悪魔の審判
メギドラオン 明けの明星
メシアライザー アムリタ サマリカーム
コンセントレイト ヒートライザ ランダマイザ レボリューション チャージ
他のスキルも多数所持
581名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 19:46:34.38 ID:sMdiceOO
     _             ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
    〃 ` ヽ  .   ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
    l lf小从} l /    ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
   ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,.   ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
  ((/} )犬({つ'     ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
   / '"/_jl〉` j,    ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
   ヽ_/ィヘ_)〜′    ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
             ・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
582名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 19:53:54.44 ID:csjUv47p
NGID:jBkd/3Rp
NGID:0/GFFjh6
583名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 19:55:50.86 ID:EIPYcmiB
夏だなw

なろうと理想郷が消えたから半端ない難民が押し寄せてくるんだろうなあ
584名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 19:57:29.43 ID:sYQ3iCAx
理想郷は消えてないぞ。ただろくに繋がらないくらいクソ重いだけで
585名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 20:22:20.52 ID:orgZwHhq
女性キャラ召喚の場合はギーシュじゃなくてモンモンかケティでも良いと思うけどな
586名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 20:25:09.95 ID:LurQu4aD
>>585
虚無の血統でない人は呼べない
587名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 20:27:03.56 ID:BomCNpC/
>>586
主人公が絡む/絡まれる相手の話じゃね
588名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 20:28:15.75 ID:orgZwHhq
>>586
? ルイズが女性キャラを召喚した場合の決闘相手の話だぞ
589名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 20:30:05.10 ID:QCxtOWvq
>>586
決闘の相手じゃね

まあギャグものを始め割りと無視されるけどな、その設定
590名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 20:31:50.05 ID:vPuwGx/3
『使い魔は武器屋(120cm)』と称してクイーンズブレイドのカトレア&ラナの親子を召喚とか…

「ま、負けた…敗北っ…圧倒的敗北…」とカトレアママンの魔乳に打ち拉がれるキュルケとか「乳に目が行きがちじゃが尻も特級品じゃろ」と99cmの尻をガン見するオスマン。

そして宝物庫から破壊の杖(フニクラ様)を盗みだして悲劇に遭うおマチさん。
591名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 20:46:44.50 ID:3rVApYI2
>>583
小説家になろうから来た質の悪い信者がF5連打してるって噂もあったな
まあ、深夜帯も繋がり悪かったからそれはないと思うけど
592名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 20:51:59.81 ID:esZgPsny
虚無でなければ人間は呼べないって、原作のどこで出た設定だっけ?
まあタバサやイザベラが召喚した話がたくさんあるから、すでに突っ込むだけ野暮な設定だが
593名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 20:56:16.36 ID:re1J7mLv
>>590

おマチさんがフニクラ様にガチ調教されて正義のメイジになるんですねわかります。

何故か振動するビキニアーマーつけたシエスタが浮かんだw
594名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 21:21:00.12 ID:FCRvVZdi
>>590
始祖の祈祷書に虚無の情報+エクスプロージョンの呪文そして聖なるポーズの図解とか載ってそうだなw
「エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド・ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ・ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル…」

「エクスプロージョン!!(スカートたくし上げ)」

むしろアンリエッタ&ウェールズのヘクサゴンスペルをディスペルする時の方がダメージ大きそうだがw
595名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 21:56:37.23 ID:kQvL8YkC
>>591
手動でF5かよw
596名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 22:48:51.69 ID:43LwHgJq
ひまだなー
だれか投下しないかなー
チラッ
597名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 23:23:51.98 ID:k5MVC1tu
>>594
シェフィールド「よろしいですか?ジョゼフ様。『虚無』を使うにはまず、始祖ブリミルの像の前で、
パンを尻にはさんで右手の指を鼻の穴に入れて左手でボクシングをしながら)「いのちをだいじに!」…と叫ぶと」

ジョゼフ「フン!フン!」

シェフィールド「始祖がキレて豚の姿に変えられてしまいますので絶対になさらぬようお願いしm」

ジョゼフ「いのちをだいじに!!」
シェフィールド「あ゙ーーー!!!」
ジョゼフ「ブ〜。フゴッ!」
598名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/24(火) 23:59:43.69 ID:Uou377Cq
>>597
また懐かしいネタをwwww
十代前半は理解できんぞwwww
599名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 05:09:56.23 ID:dWuehhI6
ただし魔法は尻から出る
600名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 06:40:53.28 ID:cIDq+mQT
>>593
振動するビキニアーマーはタバサの方が似合うような気がする
シエスタだと色っぽすぎて可哀想だとは思えないしタバサだと必死に耐えようとする様見れるし
601名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 06:46:07.52 ID:PI8TbfLU
タバサの初期の扱いは一体どうしたらいいんだろうな
1巻でフーケ倒した後サイトに抱きついちゃってるし、初っ端からトラウマ利用していてこますのも不思議ではないのかな
602名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 07:54:14.79 ID:MbcCLQgu
>>600

お前天才だな
603名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 09:28:33.40 ID:yBb4MUTt
>>600
ふむ、興味深いね
604名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 13:18:44.93 ID:PNp//W4k
>>601
ギアスによる制約
モブにルルーシュが混ざってた、設定が消えた後半のことは
ギアスをかけたルルーシュが、なんかあの世界からいなくなったから、無効化されたってことで

なっとくできないだろうけど、強く思い込んだらそうなるからおk
605名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 13:21:27.14 ID:PI8TbfLU
>>604
え、お、おう・・・・納得できないけどそう思い込んどくわ・・・
606名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 13:25:16.56 ID:yBb4MUTt
初期タバサは逆行して来たんだよ
ついつい抱きついちゃった
その後シルフィードにあたまを齧られて記憶喪失になった
607名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 13:50:25.79 ID:d35XpolJ
>>606
お姉さまの記憶はそこそこ美味しかったのね! シルフィは美食家なのです、るーるるるー
608名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 15:33:30.96 ID:yBb4MUTt
サイトが羨ましい
ブラックだけど年収高くて成長できる仕事に何もせずに内定だもんな
609名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 15:45:14.99 ID:AJFXBoI+
>>608
その代わり大隆起をなんとかしないと数年後にはお空の藻屑よ
610名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 16:52:30.66 ID:1IGsf/Un
>>608
見合ってるのはブラック言わねえよ!
611名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 17:03:19.08 ID:CdioGijS
>>601
つまり才人はタバサの好みのタイプで、召喚された時点から一目惚れしてるという設定にして
序盤でルイズから才人を寝取る展開にしても問題ないという事ですね!

才人がルイズに好意を抱くポイントの、ギーシュ戦での負傷治療イベントとかで
タバサを割り込ませるとかそもそも負傷させずに済ませるとかw
612名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 17:11:29.58 ID:yBb4MUTt
それはクロスじゃなくてIFスレで書いてください
書いてください
613名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 18:03:11.62 ID:AJFXBoI+
>>610
ブラックでないというならRXのほうか
614名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 18:04:36.22 ID:dWxEuAlj
RXを召喚か…曲は知ってるが内容まったく知らないんだよな
615名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 18:26:20.63 ID:CdioGijS
>>612
大事な事なので二度言ったんですね、分かります

ネタならいくらでも思い浮かぶんだけどね、例えば惚れ薬イベント(アニメ準拠)で
才人が飲んでタバサの実家についてくるとかw
616名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 18:37:53.82 ID:UAfhHVgl
ワルドが偏在を使ったら不思議なことがおきて、
「俺は太陽の子!」
「怒りの王子!」
「悲しみの王子!」
「仮面ライダーブラァッ!!」
未来から援軍がやってくるのは間違いない
617名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 18:45:48.96 ID:yra5e7Jn
>>616
ワルドどころかエルフも真っ青だなwww
618名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 18:54:14.01 ID:Vwp5u/9I
>>616
…あれ、そういえばその時ってレコンキスタの攻撃控えてるんだよな…

レコンキスタ終了のお知らせ
619名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 18:58:06.87 ID:eyRfhbdV
敵の幹部にRXには勝てないがブラックには勝てるかも知れん と言わせる強豪ライダーだしな
620名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 19:54:14.84 ID:gZFsD30a
ギーシュ「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」
621名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 19:55:23.58 ID:vGBoahH0
RXはライダー史上例を見ないチートライダーだからなw
622デュープリズムゼロの人:2012/07/25(水) 20:18:23.31 ID:wUfjKck4
分後に第三十話投稿させてもらいます。
623デュープリズムゼロの人:2012/07/25(水) 20:19:36.28 ID:wUfjKck4
すいません10分後に投稿します
624名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 20:23:23.84 ID:O6Ff9LnZ
真・雀鬼の倉田てつをさんは渋かっこいい
シミケンの賽を止めたのは笑ったな
625デュープリズムゼロの人:2012/07/25(水) 20:31:54.53 ID:wUfjKck4
第三十話『愛に全てを』

「で…アンリエッタが消えてから直ぐにここに来たって訳ね…」

「はい、女王陛下からは何か有事の際にはあなた方を頼れと…城内の誰よりも、あなた方お二人は信ずるに値する唯一無二の親友であると私は聴いております…故に、恥を忍んでお願いしたい!どうか、女王陛下の捜索にご助力を!!」



惚れ薬の解毒も完了し、先日のラグドリアン湖での一件がようやく片付いたと思えば間を置かず現れた新たな面倒事にミントは露骨に肩を落として項垂れた…
双月が空を彩る頃、魔法学園のルイズの部屋にアンリエッタ消失の報を持って突然訪ねてきたのは女王近衛隊、通称『銃士隊』の隊長であるアニエス・シュバリエ・ド・ミランだった。
元平民にして先のタルブ開戦の武勲からシュバリエの称号を承けて、現在、メイジ延いては貴族不信に半ば陥っているアンリエッタの側近として徴用された女傑である。
既にアニエスとミント達は以前に城で面通しが行われていたので互いの事情は良く知っている…

「で…どうする、ルイズ?」
ミントは腰掛けた椅子の背もたれに寄りかかり、首をだらりと後方へと寝かせてベッドの上で寝間着から制服へと大慌てに着替えて身支度を調えるルイズに訪ねる。

「決まってるでしょ!?直ぐにお城に向かうわ!!」

「はい、はい…それじゃあ、あたしはタバサにシルフィード出して貰えるように頼んでくるわ。ここでこの間のタバサへの貸し一つチャラになるのは勿体無いけどそうも言ってられないしね…」

「えぇ、お願いねっ!!」

黒色のタイツにその細い足を通しながら、まるで食堂に食事にでも向かうかのようにいつもと変わらない足取りで部屋を出て行くミントをルイズは見送った…と、同時に慌てて着替えていた弊害か、タイツを穿いている姿勢でベッドへと倒れ込んだ…

「ミス・ヴァリエール、女王陛下の事何とぞお願い致します…」

「えぇ、任せて!!何があろうと陛下は私達が取り戻すわ!!」

626デュープリズムゼロの人:2012/07/25(水) 20:35:49.72 ID:wUfjKck4
畏まるアニエスにルイズは締まらない姿勢のまま力強く答えたのだった…





_____ トリステイン領 ラグドリアン湖周辺上空


あの後、タバサは二言返事でミント達にシルフィードの貸し出しと任務への協力を申し出た。同時に、その時偶然一緒に居たキュルケも共に行く事になったのだが…
国家の大事に外国からの留学生二人をも巻き込む事に難色を僅かに示したルイズだったがミントの身もふたも無い一言に納得せざるを得なくなる…
「ていうか、この四人でトリステインの人間あんただけじゃん、今更何言ってんの?」

そんな訳で、シルフィードの最高速度でトリステイン王城に辿り着いた一行は、ルイズの女王付き女官の特権から魔法衛士隊の隊長から捜査状況等の一切合切を聞きだした…

曰く、王女は賊に連れ去られ、又その賊に対してアンリエッタが抵抗した様子は見られず、直ぐに異変に気が付いた女中の報告でラグドリアン方面へと逃げた賊を追い、現状でのトリステイン最速のヒポグリフ隊が追撃を行い、逃亡する賊の足を止めているであろう事…


ラグドリアン湖方面への街道に沿って、四人を乗せたシルフィードは全速力で飛行し続け、また、タバサもシルフィードの疲労を和らげる為、魔法を使い続けていた…
一行に不安と焦りが見え隠れする中、一刻が経過した頃、街道の脇に数頭のヒポグリフと幾名かの魔法衛士隊の隊員が倒れている姿をシルフィードが発見した…


「酷い…」
ルイズは口元を覆いその凄惨な光景を見回す…余程激しい闘いになったのであろうか、街道は焼け、抉れ、また地に伏した隊員達は皆一様に深い致命傷を負って絶命していた…

「ぅ…う…」
そんな中でもたった一人だけ、辛うじて息がある隊員がいた…
「大丈夫っ!?何があったの??姫様は!?」

直ぐさまルイズ達はその隊員へ駆け寄り、応急処置を行いながら声をかける。すると、隊員は激痛に苛まれながらも辛うじて言葉を紡ごうと口を開き始めた…

627名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 20:40:51.79 ID:dRfWjHQ2
支援するよー
628デュープリズムゼロの人:2012/07/25(水) 20:40:54.47 ID:wUfjKck4
「確かに…首を落としたのに、うぅ…心臓だって…あいつ等はなんで死なないんだよ…」

まるで魘されるようにそう言い残すと隊員は気を失ってしまった…何にせよ周囲には馬の足跡が残っている以上、賊は引き続き王女を連れて逃亡をしている事が覗える…

(首を撥ねても死なない?…嫌な予感しかしないわね…)

隊員の言葉に全員が困惑を浮かべる中で、ミントはタバサを急かすようにいち早く、シルフィードの背に飛び乗ると未だ予断を許さないこの状況に対し、忌々しそうに唇を噛んだ…



それからしばらくシルフィードで賊を再び追っているとラグドリアン湖の湖畔近くで今度こそターゲットである賊の一行を全員の目が捉えた…
先日精霊を訪ねた場所とは大分離れた場所ではあり、これより先は木々も深く、捜索も追跡も難易度が格段に上がる事となる。ここで追いつく事が出来たのはミント達にとっての行幸だ。

「あんた達、止まりなさーい!!」

賊の進路を塞ぐように、先回りしたシルフィードの背からミントとキュルケはそれぞれ炎の魔法で馬を狙い、嘶きながら馬は火に囲まれた事によって目論見通りに足を止める。
そうしてようやく同じ大地に足を揃えて賊と相対してみれば、賊の先頭に立つフードで顔を隠したリーダーらしき男の乗る馬の背には確かに顔を伏せて震えるアンリエッタの姿があった…

「姫様!!お助けに参りました!!」
「どこの誰だか知らないけど舐めた真似してくれたわね。アンリエッタを返してもらうわよ!!」

「ルイズ…ミントさん…」
ミントとルイズの言葉にアンリエッタは一際大きく震え、顔を上げると二人の姿を確認した。しかし、アンリエッタはその事で安堵をしたと言うよりはますます憂いと困惑をその顔へと浮かび上がらせる…

そのアンリエッタの様子にミントは少々違和感を覚えたもののアンリエッタの奪還を行うと言う事に変わりは無い。ミントが戦闘態勢に移りデュアルハーロウを構えるとルイズ達も杖を抜いて賊の一行へと最大限の警戒へと移った。

629デュープリズムゼロの人:2012/07/25(水) 20:47:52.19 ID:wUfjKck4
それに会わせて誘拐犯達もリーダーを除き、馬から降りて杖を構える…その数は5名。普通に考えて魔法衛士隊の一個小隊を圧倒するには余りに戦力が少ない。

と、ここで続けてリーダーらしき人物もゆっくりと馬から下りる…

「久しぶりだね…ミント君、ミス・ヴァリエール…」

フードで顔を隠した男は言いながら両の足で地面を踏み締め、アンリエッタにも馬から下りる事を促すよう、紳士的に手を差し出した。
その手をアンリエッタは俯いたままおずおずとしながらも自らとって馬から下りる…

「フフフ…こうして僕が再びアンと出会えたのは君達がしっかりとアンを守ってくれていたお陰なのだろうね…」

「あんた…まさか…」

アンリエッタと並び立つ男の声と言いぐさにミントは覚えがあった…だからこそ解せないとばかりに表情は硬く強張る…
ミントのリアクションが期待した物だったのか男は不敵に笑いながら、ゆっくりと頭を覆っていた外套のフードを外しはじめた。

じっとりとした緊張感の最中、現れたのは鮮やかな金の髪、端正な顔立ち…見間違える事等あり得ない、それはあの日ワルドによってルイズの目の前で殺されたはずの紛う事無いウェールズ・テューダーその人の姿であった…


「ウェー…ルズ…皇太子」
驚愕に染まり、限界まで瞳を見開いたルイズが辛うじてその名を呼ぶ…

「ちょっと、どういう事よ?ウェールズ皇太子って死んだんでしょ?それが何で…」
キュルケが口にした疑問はこの場に居る誰もが思っている事であった。

「ウェールズ様、何故お亡くなりになった筈の貴方がこの様な事を!?」

「簡単な事だよミス・ヴァリエール。君達がアルビオンを発ってからあの後、私は偉大なクロムウェル皇帝の虚無によって再びこの世に生を受けた。残念ながら大恩ある皇帝は獄中死されてしまったらしいがね…
その恩に報いる為に、そして、神聖アルビオン帝国、延いてはハルケギニアの明日の為に、僕は愛するアンリエッタを迎えに来たんだよ。僕たち二人ならばそれが出来る。」

630デュープリズムゼロの人:2012/07/25(水) 20:53:12.56 ID:wUfjKck4
言ってウェールズはニヤリと笑みを溢すとその手でアンリエッタの肩を抱く。
アンリエッタも一度ビクリと身体を震わせるも、結局はウェールズへとその身体を委ねてしまい、まるでルイズ達に会わす顔が無いと言わんばかりに唯々その視線は足下を泳ぎ続ける…

「お願い、愚かなわたくしを許してルイズ…」
「そんな…姫様!」

アンリエッタの言葉にルイズの表情からは血の気が引いていく…
この状況、幾ら他国の人間とはいえ、キュルケとタバサにとっても余りに大きすぎる…場を絶望が覆おうとしていた…



だが、ルイズとアンリエッタがどれ程、苦しもうが悩もうがそんな物は一切関係の無い少女がこの場には居た…

「で?」

突如、何の前触れも警告も無く、ミントは『アロー』の魔法で誘拐犯の一人の胸部を貫いた。人の頭程の大きさの穴を胸に穿たれて生きている人間が居ようはずも無く、アローの直撃を受けたメイジの身体は地面に伏せる…

「そりゃああんたがあのウェールズでアンがそれを望むなら、このままどこへでも行けば良いけど、あんたはウェールズじゃないわ。『アンドバリの指輪』に操られてる唯の人形よ。
少なくとも、あたしが知ってるウェールズの中身はあんたじゃ無いし、アン、あんたもこのまま付いてけばどうなるか位想像つくでしょ?」
言ってミントは自信満々な態度を示すようにデュアルハーロウを手の中でクルリと遊ばせると再び構えをとって魔法の照準をウェールズへと向けた。

「ミントさん!!」
これに反応したアンリエッタは思わず反射的に水晶の杖を震える手でミントへと向ける…
アンリエッタにもミントが言った様に解っているのだ…この自分の目の前のウェールズがまやかしであるという事は。しかしそれでもアンリエッタはそのまやかしに縋り付かざるをえないのだ…

「良い覚悟ね、アン…こういう事になったのは残念だけど、あたしはウェールズの心とあんたを助ける為にも全力で行くわよ。精々壁でも作って自分とウェールズを守りなさい。」

631デュープリズムゼロの人:2012/07/25(水) 20:57:20.02 ID:wUfjKck4
「やれやれ仕方ないな…僕とアンの道を阻むならば、残念だが君達にはここで死んでもらうとしよう。」

ミントに対してウェールズも不敵な笑みを絶やす事無くアンリエッタを庇うように一歩前へと進み出ると杖を抜いて構える。続いてウェールズへと随行していた内、無事な4人のメイジもそれぞれ杖を傾けると呪文の詠唱を始めた…

だが次の瞬間、突然ミントの両脇をすり抜けるかのような軌道で、街道を走る強烈な熱を帯びた鎌鼬がウェールズとアンリエッタを避ける形でアルビオンのメイジ達を襲う!

「愛しあう王族二人の逃避行…この演劇、応援したいのは山々ですが、残念ながらわたくしが見たいのはハッピーエンドですの、アンリエッタ王女殿下。」
「…このままじゃ色々台無し。」

キュルケとタバサは再び杖を構えてミントの隣に並び立つ…と、先程の魔法によるダメージの少なかったメイジの一人がが立ち上がろうとした瞬間、その身体は突如爆発に包まれ後方へと吹き飛んだ…
ミントはその光景にニヤリと口元を緩める…

「…勝手に話を進めないでよね…陛下をお救いするのは私なんだから。」

「あんたが変に悩んでるからでしょうが。」

キュルケとミントの間からズイとルイズが歩み出る。その瞳には迷いも戸惑いも無い…
ミントもタバサもキュルケも知っている…こういう目をした時のルイズの心は本当に強いのだと言う事を…

「ルイズ…貴女までわたくしの邪魔をするの?わたくしはただウェールズ様と共に居たいだけなのに…」

「…はい、申し訳ありませんがこのまま女王陛下を行かせる訳には参りません。真の忠誠と友情を尽くす為に、このルイズ・フランソワーズ、今この時だけはこの杖を女王陛下へ向けさせて頂きます!!」
ルイズははっきりと言い切るとその杖の切っ先をウェールズとアンリエッタへと向けて又一歩を踏み出す…それに会わせてアンリエッタはルイズのその行動にショックを受けたのか口元を押さえて一歩ヨロヨロと下がる…

「アン…心配する事は無い。君は僕が必ず守るから…だから君は唯僕にその身を委ねてくれれば良いんだ。それにアルビオンの勇者達はあの程度では倒れないよ…絶対にね。」
632デュープリズムゼロの人:2012/07/25(水) 20:59:17.60 ID:wUfjKck4
アンリエッタの不安を拭うようにウェールズが言うと同時に後方でタバサ達の魔法の直撃を受けて倒れていたメイジ達が立ち上がる。
そればかりかミントの魔法で致命傷を受けていた一人までもが平然と立ち上がる…それだけでも十分異様だが、さらに不可思議な事に彼等全員は既に傷一つ無い健全な身体を取り戻していたのだった…

「嘘…」

「これがあの隊員さんが言ってた事なのね…」

「…………」

「フフフ…これが、クロムウェル皇帝の虚無の力さ…」

「アンドバリの指輪の力でしょう?」

ウェールズの含み笑いをミントは鼻で笑う。ウェールズが指輪の力を虚無の力だと本気で信じているのなら滑稽な話だ…
ミントはそんなウェールズと睨み合うとデュアルハーロウを構え直す…

アンリエッタの事をミントはバカだと思う…それでも…だからこそこの様な…死者を冒涜し、乙女の恋心を陵辱するような真似がミントには許せなかった…

そう、唯許せなかったのだ…

正義の味方でも愛の使者でも無いミントが戦う理由は唯一つ、レコンキスタのやり方が陰険で陰湿で腹が立つからなのだから…
633デュープリズムゼロの人:2012/07/25(水) 21:01:55.05 ID:wUfjKck4
以上で終わりです。まだしばらくは原作の大まかな流れを追う形になりますが
早い所話を進められるように頑張りたいです。
それでは、また。
634名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 21:09:44.02 ID:RtXE3IYh
ちょっと三点リーダ多いカモ?
ともあれ乙でした
635名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 21:59:28.89 ID:YsOT2wVC
>>619

幹部連中忘れてるかもしれないがBLACKの変身機能破壊して太陽に向かって宇宙に捨てた筈なのに
RXに進化して生身で大気圏突入して帰ってきたのが光太郎・・・・・・


未来から増援に来なくてもホントどうしようもないなおい
636名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 22:28:19.07 ID:cTjbEH+6
>>633
デュープリの人乙です
最近読んでるなかでこの辺まで話が進んだのもひさしぶりな希ガス
637名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 22:48:59.94 ID:re6AQioG
投下乙

RXがきたらエルフの毒もバイオライダーで血清が作れるな
RXも空は飛べないから空中戦なら勝ち目が・・・と思ったがバイオライダーになられたら攻撃当たらないな
638名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 22:58:28.99 ID:gQggCyeH
アトリームにもRXはいましたよ
639名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 23:21:32.32 ID:P9E7bIM/
地球のRXとは比較にならないほど強力なRXがね
640ゼロのドリフターズ ◆IxJB3NtNzY :2012/07/25(水) 23:33:36.81 ID:W/Y5xTEC
こんばんは、40分くらいから投下します。
641ゼロのドリフターズ-12:2012/07/25(水) 23:40:14.37 ID:W/Y5xTEC
「随分と派手にやったみたいだねえ」
キッドは見渡しながら軽く言った。姿は相当汚れてはいるものの、シャルロットに怪我はないように見受けられる。
とにかく大技をぶつけ合い、シャルロットが勝ったのだろうという程度の認識。
いつだったかのフーケ戦で披露した実力とあのインパクトたるや凄絶の一言。
よもやシャルロットが追い詰められたほどの死闘があったことは、露知るわけもなかった。

「はい・・・・・・まぁ」
シャルロットはなんとはないバツの悪さに返答を濁すも、キッドは特段気にした風を見せなかったのでそのまま続ける。
「ところでキッドさん、"スキルニル"の父様は?」
セレスタンと呼ばれた残党を捕えて、どこかに待たせてあるのだろうか。
一体どこで手に入れてきたのか、キッドだけが馬に乗って戻って来るなんて少し不自然ではあった。
「ああ、それがちょっと面倒なことになってね――」

 キッドがどこから説明しようかと迷っていると、シャルロットが長くなりそうな気配に話を止める。
「いえ・・・・・・とりあえず後にしましょう。街道沿いで今まさに誰かがやって来るとも限りません」
「ん、そうだな。それと、この馬借り物だから・・・・・・――」
――『フライ』で飛んで行くことは無理だということ伝える。
「わかりました、急ぎましょう」

 シャルロット一人で『飛行』することも考えるが、正直しんどかった。
長年溜めた精神力そのものに未だ余裕はあるものの、心労が別として蓄積されている。
残党の元へ案内される手前、空を飛びながら歩調を合わせるのはなおのこときつい。

 無事に残っている馬を探す途中で、シャルロットは散乱する死体に目を向けた。
本来であれば敵だったとはいえ、死ねばそれで終わりだ。敵も味方もない。
無惨な亡骸を埋めて形だけでも整えてやろうかとも思うものの、後々のことを考えればそういうわけにもいかない。
時間的にも惜しい。放置していくしか選択肢はなかった。

 シャルロットはあれほどの大激闘の中でも暴走せずに、かつ生き残った、優秀で屈強な軍馬を馬車の裏側に一頭見つける。
多少火傷を負っているようだったので、治癒魔法を掛けてやると馬の鞍に跨った。
その間にキッドは、散乱したガーゴイルは放置して"スキルニル"だけを回収していた。

 "スキルニル"。血液を基に容姿に人格、その能力までも再現するという脅威の魔道具。
古代の頃はそのスキルニルを使って、戦争ごっこに興じたという話もある。
今でこそ数は少ないが、スキルニルを使うことで今回の策は成り立ったと言って良かった。
旧ガリア王家の遺産。非常に希少なマジック・アイテム。
ウェールズと側近数名と、シャルルの血液を使って、スキルニルは魔法人形としてある種の"命"を保有した。
642ゼロのドリフターズ-12:2012/07/25(水) 23:40:52.03 ID:W/Y5xTEC
 『ミョズニトニルン』。魔道具を自由自在に操る能力。
それは当然魔道具が強力であればあるほどに、ミョズニトニルンが保有する戦力も強大なものとなる。
ガンダールヴは自身が地を駆け、眼前の敵を打ち倒す、一騎当千の猛者ならば――。
ミョズニトニルンは道具次第で、文字通り一個軍団を、自由に扱える将軍なのだ。

 首都からのパレード。傭兵部隊の撃退。貴族派の情報入手。敵の捕縛。
これら全てが実質的に、シャルロットとキッドのたった二人によって挙げられた大戦果である。
ミョズニトニルンとスキルニルが組み合わさったことで実現したこと。

(姉さんに感謝・・・・・・)
遠くトリステイン魔法学院にいるイザベラ。本来"スキルニル"は彼女の私物だ。
シャルロットの持つ"地下水"と"土のルビー"。ジョゼットの持つ元オルレアン家の由緒ある"長杖"と"始祖の香炉"。
それらと同様に、伯父ジョゼフへと分けられイザベラに継承されたのがスキルニル他魔道具類。
ミョズニトニルンの話を聞いたイザベラは「どうせ使わないから」と、全部よこしてくれた。
最初こそ悪いと断ったものの、今回のアルビオンへの極秘特使の折。
「一応・・・・・・」と借り受ける形で、改めて預かってきた物がこれ以上ないくらいに役に立った。

 スキルニルとガーゴイルの混成部隊。実際の人間は僅かに二人のみ。
本物のウェールズは安全を確保しつつ、かつコピーの方がパレードで国を沸かせ貴族派を抑える。
それはある意味国民を騙す行為であった。本物だと思っているのが人形なのだから――。
しかしスキルニルの精度は本物と遜色ないほどで、それもまた一つの命と言えるほどである。
ウェールズに扮したスキルニルの思考や態度は、本物のウェールズのそれとなんら変わらない。

 さらには偽物のウェールズは、それ自体が餌の役割を果たす意義もあった。
護衛の数も最低限にして、未だ明瞭としない貴族派を燻し出す試み。
それらがピタリと嵌まってくれた。ウェールズ人形が焼かれたのは想定外だったが、目的地は既に近く。誤魔化しはどうとでもなる。

 背に腹は代えられぬ――後顧の憂いを取り払う為にも、国と民の為にウェールズが決断したこと。
王党派はお世辞にも安定しているとは言えず、正直危うい状況であった。
言い方は悪いが、ウェールズはアンリエッタほど・・・・・・理想主義者でもなく甘くもない。
必要とあれば今回程度の措置は辞さないくらいの心持ちはあったのだった。


 シャルロットとキッドは用を終えるとすぐにその場を離れる。
相当な修羅場だった。派手なドンパチ、街道沿いである以上すぐに誰かしらがやって来る。
以降は問題ないだろう、皇太子一行が襲われたことは一目瞭然だ。
ウェールズの死体は影も形もない。真実を知る者は自分達しかいない。
メンヌヴィルの炎の所為で相当燃えて灰になったが、逆にそれがガーゴイルの多さなどを包み隠してくれる。
643ゼロのドリフターズ-12:2012/07/25(水) 23:41:49.60 ID:W/Y5xTEC
 後は襲われながらも無事ロサイスへと辿り着いたウェールズは、卑怯にも刺客を差し向けた貴族派を糾弾するようなシナリオになるだろう。
シャルロットが得た情報も役に立つし、残党の一人も尋問するか、スキルニルを使って記憶を引き出せばより明らかになる。
しかも『白炎』のメンヌヴィルは名の売れたメイジで、その部隊も精強で知られている。
そんな傭兵部隊を退け生き残ったウェールズは、強き英雄としてより一層の支持を得ることだろう。

 上手く行き過ぎていることに、シャルロットはなんとなく一抹の不安を感じた。
自分が死に掛けたものの――大局的・戦略的に見るならばあまりにも出来過ぎている。
(もし私が死んでいたとしても・・・・・・)
特に問題はなかった。メンヌヴィルはどの道、死を待つ状態だった。
現場検証を行えば、不自然に埋められた穴の中の紙にも気付くことだろう。
後はそこからどう推理するかであるが――その名がどういう意味を持つのか。
いずれにせよ書かれた貴族が槍玉にあげられるのは間違いない。

(神経過敏になっている、か)
一度は己の浅慮によって"己の死"を垣間見たのだ。何事も警戒するのも無理はない。
シャルロットは深呼吸をしつつ、馬上でようやくはっきりと気を抜いた。
新鮮な酸素が体の先々まで駆け巡り、頭の中がクリアになっていく。

 ――戦場が遠く眺めるくらいまで馬を走らせ、その後はゆっくりと並走ならぬ平歩になる。
そんな頃にはようやくもって落ち着いてきていて、僅かばかりの心の安寧にシャルロットは浸った。



「人質!?」
「あぁ、もちろん無事に済んだけどね。ただその時に――」
シャルルのスキルニルがやられたとキッドは説明する。

 セレスタンと言う名の残党はシャルルとキッドから逃げ切れぬと見るや、直近の森に入って撒こうとした。
森の中には村があり、しかもタイミング悪く住民らしい少女が人質にとられた。
脅えてうずくまる少女に残党は魔法の刃を突きつけた。

 キッドとしては別に見ず知らずの他人が死のうが構わなかった。
しかしシャルルとしてはそう割り切れるものでもなかった。ましてスキルニルであるから惜しむ命でもない。
性格まで反映されるスキルニルならではの人形の感情。
キッドはミョズニトニルンの力で無理やり"命令"を下すことも出来たが・・・・・・しなかった。
無関係な人間が死ぬのも仕方ないと思う反面、ウェールズへの心象は悪くなるだろうと。
どうせなら完璧に任務をこなした方が、何の負い目も気兼ねもなく報酬を要求出来る。

 シャルルは杖を捨て、素手の身を晒した。
当然残党は人質を解放する気などなく、杖に絡みつく刃でシャルルを貫いた。
刃を刺したことで止まった手を、キッドはクイックドロウで撃ち抜く。
さらにミョズニトニルンの効果で、機能を失いつつあるスキルニルを強引に動かした。
644名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 23:41:59.02 ID:dRfWjHQ2
支援するよー
645ゼロのドリフターズ-12:2012/07/25(水) 23:42:23.66 ID:W/Y5xTEC
 手が撃たれたことで杖を落とした残党を、シャルルは体術によって組み伏せる。
魔法の刃も解かれ、穴が空いたスキルニルはそのまま機能を停止し、キッドはすぐさま追い打ちをかけて気絶させた。
人質だった少女は無事救出され、セレスタンは縄で四肢を厳重に縛られた。
シャルルが既にいないのでキッドは迷った挙句、まずシャルロットと合流することにした。
残党はとりあえずそのまま捨て置き、村で馬を借りて戻って来た――というのが仔細であった。

「なるほど・・・・・・わかりました。最良の判断かと」
「連絡はどうする?」
キッドが懐から全く別の人形を取り出す。それもまたイザベラから預かった魔道具だった。

「ん・・・・・・そうですね、まずは残党を回収しましょう。伝達内容をまとめる必要もありますし」



 森に着くと、少し前までその身を置いていた戦場とはうってかわって、別空間であった。
木漏れ日が差し込み、木々の香りが漂う自然の音しか存在しない柔らかな森林。
どこかで荒みつつ震えていた心が、そこにいるだけで静けさを取り戻していく。
さらに進んでいくと、木々の合間に同化するように素朴な家がいくつか、寄り添うように建っていた。

「あ!!さっきのヒゲ!!」
「ヒゲだー」
「おひげ〜」
するとたちまち小さい広場にいた子供達がわらわらと集まってくる。
キッドは何人もの子供に囲まれて、馬の上からでもたじたじのようだ。

「ねーちゃんだれ〜?」
一人の好奇心旺盛な子供が寄ってきて、ピョンピョンッと飛び跳ねる。
両手を上へ万歳しながら、馬上のシャルロットに掴まろうとでもするように。
シャルロットはスタッと馬から降りると、子供の頭を撫でた。
「私はシャルロット、あなた達は?」
すると子供達は皆、素直に自己紹介していってくれる。純真な子供達であった。

 そしてもう一人、木の陰に隠れて様子を窺うように見ている人物に気付く。
「ティファニアお姉ちゃん」
「お姉ちゃん!!」
「テファお姉ちゃん何やってるの?」
シャルロットへと群がっていた子供達は、最後にそのティファニアと呼ばれた少女へと集まっていく
お姉ちゃんと呼んで忙しなく動き回る姿を、思わず微笑ましく眺める。
昔の頃を思い出す――ちっちゃい頃の妹はよく「おねーちゃんおねーちゃん」と後ろをついてきたものだった。
646ゼロのドリフターズ-12:2012/07/25(水) 23:42:57.09 ID:W/Y5xTEC
「すまない。馬を返しに来たよ」
キッドがそう言って馬から降りる。つまり馬の持ち主が少女ティファニアなのか。
流水のようにストレートな金髪が陽光に美しく輝く少女、帽子を深めに被っていて顔はよく見えない。
少女は何故か帽子を手で抑えながら、ペコリと控えめにおじぎをした。どこかよそよそしさが残る。

「お騒がせしてすみません。村長さん・・・・・・?は、いらっしゃいますか?」
「あっ・・・・・・一応わたしが代表者です」
透き通るようでいて、芯に嵌まるかのような声が耳まで伝わる。
「そうでしたか、人質にとられたのも・・・・・・?」
「彼女だね」
キッドが先に答える。それを聞いたシャルロットは少女へと頭を下げた。

「この度はこちらの不手際で危険な目に遭わせてしまい、大変申し訳ありませんでした」
シャルロットに倣うようにキッドも頭を下げる。
実際に人質をとられた失敗は、自分とシャルルにあった。
問題なく助けられたものの、シャルロットだけに頭を下げさせるのは憚られた。

「つきましては、何らかの形で追って慰謝料が支払われると思いますので――」
アルビオン王室に言えばそれくらいは出してくれるだろう。
こっちの落ち度でもあるので個人的に出しても良かった。

「そ・・・・・・そんな、困ります――」
少女は"とある理由"から断ろうとした。森の外から来られると色々と面倒なことになりかねない。
"その理由"は・・・・・・、少女が焦って顔を上げた時に帽子の端からふと見えてしまっていた。

 今までに実際に直接見たことはなかった。しかし知識としては、ハルケギニアの殆どが知っていることだろう。
取り巻く子供達とも違う――"特徴的な耳"が見えたのだった。
「エルフ・・・・・・!?」
意識せず言葉を漏らし、左手でナイフに指を掛けていた。
ティファニアは目を鋭く睨むシャルロットの態度に気付いて、帽子をまたギュッとかぶって俯く。


 ――エルフ。東の砂漠、サハラに住む亜人の一種。
始祖ブリミルが降誕してより6000年に及ぶ長い歴史の中。
互いが互いを理解せず、互いに仇敵。人類とエルフは種族同士で相争ってきた。
容姿は基本的に人間種族と同一だが、人の価値基準で見れば例外なく見目麗しい。
そして区別出来る身体的特徴というのが長く尖るような耳。ゆえに素のままであれば見分けるのはそう難しくない。
『先住魔法』という系統魔法とは違う魔法に長けていて、数は人間より少なくてもその力は強大である。
647ゼロのドリフターズ-12:2012/07/25(水) 23:43:38.24 ID:W/Y5xTEC
「・・・・・・どうした?」
不穏な空気に対して、わけがわからないキッドがぶち壊すように聞いてくる。
召喚されて最初の頃にある程度説明はしていただが、詰め込み気味であったので覚えていなくとも無理はない。
「なになに?」
「どうしたの?」
子供達も不意な態度の変化にざわつきだす。

 停滞した状況で、シャルロットの尖った感覚が徐々に丸みを帯びてくる。
先住魔法で既に罠に嵌められている・・・・・・――可能性はあっても、どうにも考えにくかった。
ティファニアという少女に毛ほどにも敵意が感じられなかったからだ。子供達も懐いている。
「ごっ、ごめんなさい!その・・・・・・わたし"混じりもの"で・・・・・・」
まるで小動物のような雰囲気にシャルロットも毒気を抜かれた。一人だけ糞真面目に対応している自分が馬鹿みたいに思うほどに。

 それに待ち伏せをするのであれば、耳は隠して然るべきだ。
先住魔法であればそれも容易いことをシャルロットは知っていた。
人間社会に溶け込み潜む吸血鬼と同様、エルフも紛れようと思えば顔ごと変えて隠れることが可能だ。
そうしなかったということは、つまるところその気がないということだ。
「純粋なエルフではない・・・・・・と?」
「はい、母がエルフなんです」
聞かれたティファニアはおずおずと帽子を脱ぎ取りながら答えた。

 見ればまるで名画の中から出てきたように完璧で、この世のものとは思えない妖精のような美しさ。
あどけなさを残しつつも、少女らしさと同時にどこか高貴な雰囲気まで備えている。
エルフはただでさえ綺麗所揃いと聞くが、その中でもさらに抜きん出ているような気がした。
「つまりハーフというこ・・・・・・と――」
シャルロットは言葉に詰まる。すらりと立った少女。"それ"が何なのか認識出来ずに目を疑った。
さっきまで俯いていてわかりづらかったものの、最初から"それ"はそこにあったのに気付けなかった。
エルフ特有の耳、妖精のような美しさ、そしてそんなものすら霞むほどの"巨大な胸"。

 いや胸と言っていいのかも疑問に思うほどに主張する大双子山。
到底人が持ち得るものではないと思わせ、神が創りたもうたと言われれば納得し頷いてしまえるほどの奇跡。
シャルロットよりも二回りは大きいキュルケですら、彼方に霞みゆく"おっぱい"。
女性としての魅力云々――勝ち負けすらどうでもよくなるほどの産物。
648ゼロのドリフターズ-12:2012/07/25(水) 23:44:19.41 ID:W/Y5xTEC
「やっぱり驚くよな」
釘付けになっていたシャルロットの視線を察して、キッドから発せられた言葉。
「・・・・・・セクハラですよ、キッドさん。それに失礼です」
シャルロットはジトっと冷ややかな目を向ける。
「いっ、いやいやまだ何とは言ってないだろう!?」
されどキッドは責められない。老若男女問わず驚愕しない人間がいる筈はない。
既存の常識をぶち壊される。エルフであることすら些末に感じるほど。

「・・・・・・コホンッ、まぁその・・・・・・ごめんなさい」
種族同士としての確執こそあれ、個人はまた別である。
謝辞を示すべき相手に対して払った無礼に、シャルロットは改めて謝る。
「いえ、わたしが変わってるのは知ってますから」
「そう言って頂けるとありがたいです。私の名前はシャルロット。ティファニアさんでよろしいですか?」
「はい、その・・・・・・よろしくおねがいします」
「これはご丁寧に」

 シャルロットは会釈し返す。一段落が着いたところでシャルロットはキッドへと頼む。
「キッドさん、捕えた残党を連れて来てもらえますか?」
「オーケー」
キッドはすぐに縛り上げてある傭兵を連れに、シャルロットが乗っていた軍馬と交換して置き場所へと行く。
「馬、ありがとうございました」
「はい」
シャルロットはややくたびれた馬を引いて手綱を渡す時に、ティファニアの指で光る物に気付く。

 少女のたおやかな指にある、二つの指輪の内――無色の宝石が嵌められた片一方。
透明な宝石そのものに覚えはないが、指輪そのものの意匠にはとても見覚えがあった。幼き頃から見てきたから見紛う筈もない。
それはルイズが嵌めていたものとも同じ。シャルロットの持つものとも同じ。
石の色が違うだけ。――ルイズのそれは鮮やかで全てを包み込むような青色。――シャルロットのそれは深く雄大な茶色。
「・・・・・・?」
動きが止まったシャルロットに疑問符を浮かべるティファニア。

 シャルロットは無言のままに、ガリア王国に伝わっていた"土のルビー"を取り出すと、指に着けて見せた。
一瞬呆気にとられたティファニアもすぐに察したようであった。
同時に思わずはっとして指輪をしている手を後ろに隠す。
「・・・・・・すみません。エルフのこと――込み入ったことかと思って聞かないようにと思っていました。
 しかし少々事情が代わりました。貴方の指にあるそれは・・・・・・"風のルビー"で間違いありませんね?」

 ルイズがアンリエッタ王女から賜ったのは、トリステイン王国に伝わる"水のルビー"。
ロマリア皇国に伝わる"火のルビー"は燃え盛る炎を閉じ込めたような紅色と聞く。
そしてアルビオン王国に伝わるのが、澄み切った透明色の"風のルビー"。

「あの・・・・・・わたしの家で、お話します」
ティファニアは観念したような――それとも逆に聞きたいことがあるのか――複雑な表情を浮かべていた。
649名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/25(水) 23:45:42.74 ID:W/Y5xTEC
以上です、支援どうもでした。
次回と次々回の半分ほどでティファニアフラグ消化したらほぼオリジナル路線に入っていきます。

それではまた。
650名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 01:41:15.71 ID:E3ZMjXhA
乙っしたー
651アクマがこんんちわ ◆wg35mxeotnaW :2012/07/26(木) 10:53:12.06 ID:h7IIqGb8
投下します。
652アクマがこんんちわ ◆wg35mxeotnaW :2012/07/26(木) 10:56:42.59 ID:h7IIqGb8
ルイズと人修羅の二人が、ロンディニウムを脱出してから丸一日。
遠くまで広がる草原と、牧草地を隔てる林という、のどかな景色を眺めつつ、轍のある街道を進んでいた。

街道は見渡す限り起伏のある草原が広がっており、見晴らしが良い。
時々、荷物を積んだ馬車や、兵士の駆る軍馬が通りすぎていくが、ぼろぼろの服を着て、革袋を背負った二人には目もくれない。
ルイズに背負わせた革袋は、藁を詰めて膨らませてあるので軽いが、慣れぬ長歩きに疲れはある。
夜になれば人修羅が背負って走るが、昼間は人目があるため、人一人を背負って馬よりも早く走るなど目立つ真似もできない。
「……ふうっ……」
時々、隣を歩くルイズが呻きとも取れる吐息を漏らす。
人修羅はそれを気にしてゆっくり歩こうとするが、それに気づいたルイズが持ち前の負けん気を発して頑張って足を速める。と、今度は人修羅がルイズに速度を合わせる。
しかしすぐにルイズも吐かれてしまい、元の速度に戻ってしまう。そんな風に歩いていた。


「今のところ、追手も、竜も見当たらないな。……野生の馬か竜でもいれば捕まえるんだが」
「捕まえてどうするの?」
「そりゃもちろん、乗せてもらう。馬なら移動にも楽だし、竜ならラ・ロシェールまで行けるだろうし」
「野生の竜なんかとても乗りこなせないわよ、それに、馬だって簡単には捕まえられないわよ」
「そうかな」
「そうよ。それに、ラ・ロシェールがどっちなのか解らないじゃない」
「そうだな…確かに方角も解らないよな。間違って逆方向に出たら大変だからなあ」
「私は海の真ん中で取り残されるなんて嫌よ」
「俺も嫌だなあ。この案は保留か」

疲れを感じながらも、ルイズにはお喋りをしながら歩く余裕はあった。
召喚されて間もない頃を思い出してみると、今のルイズは随分落ち着きがあるように見える。

名誉の死を享受すべく最後の晩餐を楽しんだアルビオン王党派の面々、目の前で殺されかけたウェールズ、ワルドの裏切り、それらを見つめて何か変わったのだろうか。
ニューカッスル城内では、普段の威勢はこれっぽっちも見られなかった、戦争を目の当たりにして口数も少なかった。
ワルドに裏切られて意識を失い、目を覚ましてからは何か心に一本芯が通った気がする。…気のせいでなければだが。

「ん、草の色が違う…麦か何かかな」
人修羅が何かに気づき、呟いた。
ルイズの目ではとても見えないが、人修羅には草原の向こうに耕作地が見えている。麦のような作物がびっしりと植えられ、風になびいている。更に向こうには建物も見えた。
「私には見えないけど」
「この感じだと10リーグ(10km)ぐらい先じゃないかな。寄ってみるか。道を教えて貰うか、食べ物でも分けてもらえればいいんだが」
「10リーグ…わ、わかったわよ、行きましょう」
「おっと、その前に一休みしよう。ちょうどいい所だからな」
そう言って指差した先には、幾本の木々が調度良い日陰を作っていた。
牛飼いか羊飼いかが一休みするのに使うのか、旅人が野宿したのか、よく見れば焚き火の跡も見られる。
ルイズはひとまず腰を下ろし、人修羅に寄りかかった。
「少しの休憩でも靴は脱ぐほうがいい、足の裏も揉めば、疲れが残りにくい」
「うん」

ボロボロになった靴の代わりに、人修羅がどこからか探してきた粗末な革靴は、ルイズの足には少し大きい。
紐を緩めて靴を脱ぐと、ホコリのせいでの裏が黒くなっていた。
ルイズは、自分の足が真っ黒になるなど子供の頃以来だと思いつつも、足の裏を揉んだ。
「うー…。やっぱり痛い」
「見せてみろ」
「えっ」
返事を待たずルイズの足を掴み、足の裏をマッサージする。
「こう、足の真ん中あたりから押していくんだ。ついでに膝近くのツボも押しておくと、多少違う。確か、これは三里って言ったか」
流れるようにルイズの足から膝へと手を移し、三里のツボを押していく。
「いたた…ねえ、ホントにこれで疲れが取れるの?」
「本当は出発前か睡眠前だといいんだが、何もしないよりは、調子いいはずだ。…なんかこう、重くなった足が軽くなる感じはないか」

左右の足で違いを感じるのか、ルイズは首を傾げながら足を振った。
「よくわからないけど、揉んだ方は軽くなった気がするわ」
「じゃあ続けるぞ」
「うん」
653アクマがこんんちわ ◆wg35mxeotnaW :2012/07/26(木) 10:58:15.46 ID:h7IIqGb8
(あ…この感じ、癖になるかも)
毎日やってもらおうかな…。と密かに考えるルイズだった。

休憩を終えると、二人はまた街道を歩き出した。
太陽の傾きから見て、午後三時頃といったところか。水分はなんとかなるが、食べ物は心もとない。
集落があれば食べ物を分けてもらえないだろうか、それとも動物を捕まえて食べようかと考えながら歩いていると、人修羅の目が何かを捉えた。
「…ルイズ、馬車が来る。少しうつむいて、前髪もフードで隠してくれ」
「うん」
人修羅の警告からしばらくして、一台の幌馬車とすれ違った。
馬二頭で引く大きなもので、詰めれば十人は乗れそうなものだ。ゴトゴト、ゴトゴトという音からして、それなりの人数か荷物を積んでいるらしい。
二人には目もくれずすれ違った馬車だが、人修羅がふと歩みを止め、今さっきすれ違った馬車を見据えた。

「ルイズ…。血の匂いがする」
「えっ」
「今の馬車だ。気のせいじゃなければ、女の子の声が聞こえたような…」
「それって、どんな声」
「嫌がるような声だ。考え過ぎかもしれないが」
「…じゃ、じゃあ」

ルイズは、もし誰かが助けを求めているなら、人修羅の力を使うべきだと考えた。
しかし目立つ事をすればレコン・キスタの耳に入るかもしれない。
それに人修羅は”考え過ぎかもしれない”と言っているのだから、このまま知らぬふりをするのが一番賢い選択だろう。
しかし…しかし見捨てられない、逃げられないというのが今のルイズだった。
王党派の貴族たちが名誉の死を選ぶ気持ちは到底理解できないが、もし自分に力があるのなら、やるべき事を後悔のないようにやるべきだと学んだような気がする。
だからルイズは、焦る気持ちとは裏腹に、何をすべきかを冷静に考えることができた。

「…人修羅、私はここで待つわ。だから確かめてきて。人修羅の足ならすぐでしょう…よね?」
「わかった。すぐ戻る。 …その前に身を守る魔法をかける、何かあったら逃げろ。”ラクカジャ”」
人修羅の魔法により、ルイズの体に不可視の力が漲る。ラクカジャは防御力を上昇させる魔法だ。

「デルフ、詳しい様子を頼む」
『あいよ』

ボロ布に包んでいたデルフリンガーを、鞘ごと抱き抱えるように胸の前で構えると、人修羅は風を切って走りだした。

人修羅は馬車を追いかけつつ、ひとつの嘘を心中で詫びた。血の匂いがしたというのは本当、嫌がるような声というのは嘘だ。
第六感もしくは心眼とも言うべき感覚が、弓矢で足を射抜かれ、頭を斧で割られながらも馬車にしがみつく男の姿を見させた。ボルテクス界で見かけた思念体にも似ているそれは、強烈な思念を発していた。

む す め を は な せ

人修羅の足が大地を蹴りった。

どっ、と砂煙の上がるような音がした。御者が音の鳴った左側を見る…と、馬車に並走している男がいた。
先ほどすれ違った二人のうち一人だと気づく前に、顔に施された刺青に驚く。
「なんだ、あんた」

「デルフ」
『女が一人だ。手足縛られて、転がされてる』
「そうか」

「おい、なんだよてめえ! ぶっ」
御者が声を荒げると同時に、人修羅が御者台に飛び乗り顎に一撃。すかさず手綱を握り馬を止める。
「どうどう、止まってくれ止まってくれ、よーし、いい子だ」
馬車を止めつつ、荷馬車部分の仕切りをめくろうと手を伸ばす…と、布を切り裂いて槍が飛び出した。
「おっと」難なく槍を掴む。
ぐぐぐ、と力を込めているのが分かるが、人修羅の敵ではない。
無造作に力を込めて捻り上げ槍を折り、下がっていた幌を持ち上げると、中では三人の男が武器を持っていた。
「女の人は…そのでかい箱か」
654アクマがこんんちわ ◆wg35mxeotnaW :2012/07/26(木) 11:04:05.45 ID:h7IIqGb8
「て、てめえっげぶ」
一人がナイフを構える、が、一瞬早く人修羅の指が喉に突き刺さる。
すかさず左手でデルフリンガーを振るい、残った二人を叩きのめした。

男四人を縛り上げ、馬車に乗せてルイズのもとに戻るまで、たいして時間はかからなかった。


■■■


「う…」
「…目が覚めた?」
「あ、ひっ」

目を覚ました女性が最初に発したのは、小さな悲鳴だった。

「落ち着いて、もう怖い人はいないわ」
ルイズができるだけ優しく接しようとするが、女性は自分を抱きしめて身を震わせるばかり。
女性は、手ひどく乱暴されたのではないか、そんな考えがルイズの頭をよぎった。
知識としては”そういう事もある”と知っているが、本当だとすれば、実際に見るばかりか接するのは初めてのことだ。
「あいつらは退治されたから、もう大丈夫だから」
どう接すべきか悩んだが、結局は優しく声を変える以外に選択肢はない。
そっと背中を撫でていると、女性は次第に自分の周りを見るようになった。狭い箱の中ではなく、大きな樹の下に寝かされていたのだと気づく。

「あ、え、あ、あう、ここは、あ、あなたは…」
「私はルイズ。従者が偶然あなたを見つけて、助けたの」
「あ…」
安堵のためか、体の力が抜ける感じがした。

気が落ち着いたところで、ルイズはこれまでの経緯を話した。

自分たちはロンディニウムからトリステインに帰る途中だということ、従者が盗賊の馬車を見つけ、それを退治したということ、盗賊は手足を縛って手も足も出ない…等々。

話を聞いた女性は、今度は自分のこと話しだした。
彼女の名はイルマ。街道から山へ向かうと小さな水源地があり、そこの管理を任されている一家だという。
普段は街で暮らしているが、戦火から逃れて水源地近くの別荘に移り住んだところ、盗賊の襲撃にあったらしい。
「あの…私、父がいるんです、その馬車は、うちの唯一の財産で、父も私を心配していると思います。ロンディニウムから南へ出たのなら、街道からも近いはずです。なんのお礼もできずに申し訳ありませんが、どうか、家に帰してもらえませんでしょうか」
「うーん。ちょっと待ってね」
立ち上がり、馬を撫でていた人修羅に近づいて、話をする。
「あの人、イルマって名前だそうよ。帰りたいって言ってるけど、どうしたらいいと思う?」
「あの人、女一人で馬車を引いて帰るつもりだろう」
「そうなるわよね」
「また襲われるかもしれないな」
「うん…私もそう思ったわ」
「ルイズ。気持ちはわかる。一度関わったら、用意には見捨てられない気持ちは、よく分かる。でも、いいのか?俺達が彼女について行ったらトリステインへの報告は、間違いなく一日遅れる」
「…そうだけど、でも…お願い人修羅、一日だけ、時間をちょうだい」
「分かった。ルイズの意に従おう」

イルマの元に戻ると、ルイズは膝をついて優しく語りかけた。
「あなた一人じゃ心配だから、私達もついていくわ。すぐ出発しましょう」
「ありがとうございます。あの…大変申し訳ありませんが、貴族様…ですよね」
「ええ。トリステインの貴族よ」
「知らなかったとは家申し訳ありません!あの、助けていただいた上、私はとても失礼なことを」
「気にしてはいけないわ。たまたま、あなたを助けられた、それだけだから」

地面に手をついて謝ろうとするイルマ、そしその手を取ろうとするルイズ。
人修羅はその光景を見て、ルイズの姉、カトレアの姿が重なる気がした。
(カトレアさん、何度もルイズを慰めたとか言ってたなあ。今のルイズ、カトレアさんそっくりだよ。 きっと優しくされた分、優しさを育んだろうなあ)
655アクマがこんんちわ ◆wg35mxeotnaW :2012/07/26(木) 11:04:49.33 ID:h7IIqGb8
ちらりと街道から草原を見る。周囲には誰の姿もない。
「念のためだ、なにか目印でも作っておくか」


■■■■


その頃…ニューカッスル城では、王党派の生き残りが居ないかが入念に調べられていた。
名城と謳われた城も、度重なる砲撃で城壁は瓦礫同然となり、焼けただれた死体が無数に転がっている。
もはやこの城には王党派の一人も生き残りはない。反乱軍と呼ばれたレコン・キスタが新たな城主であり、アルビオン新政府となっていた。

その新政府の尖兵となった傭兵たちは、ニューカッスル城内を我先にと荒らし、金目の物を瓦礫の下から漁ろうとしている。
先陣を切ったレコン・キスタの兵達も瓦礫に埋まっているが、そんなものを気にするような連中ではない。
盗賊まがいの傭兵たちにとって、死んだ奴は、運と知恵が足りなかっただけだ。

それにしても死体の数は多い。
ワルドの手引きで王党派に混乱が生じたものの、王党派は驚くほどの結束を見せた。
三百人に満たない王党派が、二千人の貴族派を道連れにして倒れていった。重軽傷者は更に二千人ほどいるだろう。

しかし、その被害も、貴族派にしてみれば朗報である。
ニューカッスル城は岬の突端にある、地上からは、正面突破をかける以外に攻めこむ方法はない。
貴族派の戦艦や竜騎兵が活躍すれば、損害を減らすことも出来たろうが…あえてその手は取らなかった。

ニューカッスル城に残った古参のメイジが、一矢報いんと何をしてくるかが怖かったのだ。
だから徹底的に傭兵を消耗させることにした。空からも攻撃していたが、あくまでも安全な距離をとって砲撃を繰り返すばかりであった。


そのような戦法を取る貴族派に、最後まで戦った王党派の勇士たちは何を思っただろうか……。




ワルドは、貴族派が前線基地として使っていたロンディニウム郊外の陣地にいた。
遠目に見えるニューカッスル城の瓦礫を眺め、ふとセンチな気持ちになっていると気づいた。
なるほど何かを徹底的に破壊すると、良くも悪くも影響を受けるものだな、と。

「失礼致します。ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵どの、総司令官閣下が貴殿を呼ぶようにと」
「わかった。案内していただこう」
「はっ、こちらです」


若い従卒に案内され、郊外には似つかわしくない石造りの砦に入ると、中には大きなテーブルが鎮座しており、その向こうには粗末な椅子に座った聖職者のような男がいた。

「おお、子爵! ワルド君! 君は素晴らしい働きをしてくれた!」
男は椅子から立ち上がると、ワルドを歓迎するかのように両手をささやかに広げた。
年の頃は三十半ば、マルイ帽子をかぶりローブとマントを付けているその男こそが、レコン・キスタの総司令官お、オリヴァー・クロムウェルである。
「件の手紙はまさしく、アンリエッタの花押だ。軍議でまさしく本物だと声が上がった時、君という味方がいて良かったと思った。見事な働きだ」
「もったいないお言葉でございます」
ワルドは跪くと、首を振って、クロムウェルに応えた。
 
「始祖ブリミルへの誓いを立てながらも、アンリエッタがゲルマニアの皇帝に嫁ぐというのは、まったく…いや嘆かわしい」
芝居がかった言葉に、ワルドが再度頷く。
「ところで子爵、ウェールズも討ち取ったと聞いたが」
「はっ」
「ふむ…しかし。ニューカッスル城を検分した者によると、瓦礫の下にも遺骸は見つからぬそうだ。火の魔法か油で焼かれた遺体もあったが、これはどう考えるかな」
「…ウェールズが生きているとでも」
「いや、君を疑っているわけではない。しかし考えてもみたまえ。死体だとしても、その場に無ければ『まだ生きている』と思うものも多いだろう。後々まで王党派の影響を残すために死体を隠したとすれば、厄介なことだ」
「…私の考えが浅かった為に起こったことです。閣下、私に罰をお与えください」
656アクマがこんんちわ ◆wg35mxeotnaW :2012/07/26(木) 11:05:16.58 ID:h7IIqGb8
「トリステインとゲルマニアの同盟を阻止するのは重要なことだが、今の我々に最も必要なものが他にもある…それが何か解るかね」
「閣下のお考えの深さは、私にははかりかねます」
頭を垂れてワルドが答えると、クロムウェルは目を見開き、両手を振り上げて、大げさな身振りの演説を始めた。
「『結束』だ、鉄の『結束』こそ必要なのだ!ハルケギニアは我々選ばれた貴族たちによって結束し、あの忌まわしきエルフどもから『聖地』を取り戻さねばならない!
そのためには我々は仲間を信用しなければならぬ。だからこそ子爵、君を罰するようなことはしない。」
ワルドは深々と頭を下げる、と、クロムウェルが肩に手を置いた。
「頭を上げたまえ子爵、そろそろ我々もニューカッスル城へと入ろう。そこで君にも、余が始祖ブリミルから賜った力の一端を見せたい」

笑みを浮かべるクロムウェルは、どこか、その力に酔っている気がした。


■■■■



「な、なあ、あれ火竜じゃないか?」
「ただの鳥よ。ギーシュ、ビクビクして間違ったことを言うのはやめてくれるかしら?ねえ未来の元帥さん」
「そうはいってもだね。こう暗くなっては、遠くにいるものまでハッキリとは…」
「タバサ、どう?」
「…見つからない」

夕方、タバサ達はシルフィードに乗って、アルビオンの沿岸を飛んでいた。
トリステイン側、すなわち首都ロンディニウムから南下するルートである。

タバサは、いつも読んでいる本も読まず、ひたすら大地を見下ろして人修羅たちの姿を探している。
読書以外で、こんなにも熱心なタバサの姿など、キュルケでも見たことはない。

「これだけ心配させてるんだから、ちゃんと生きてなさいよ。人修羅、ヴァリエール」




時間は少し戻り、ニューカッスル城からほど近い鍾乳洞。
その奥には、秘密港として使われていた桟橋があるばかりで、他にめぼしいものは一つとしてない。
たまに兵士が見に来るか、金目の物はないかと傭兵がやってくる。だが何もないと分かればすぐに引き返してしまう。
「ちぇ、なんもねえや」
「引き返すぞ、城の方がまだ物が残ってそうだ」
今も、何人かの傭兵が桟橋の周囲を漁っていたが、何もないと分かり愚痴をこぼしている。
「お、ちょっと待ってくれ。おっ…お、お〜」
「小便かよ」
「ほーら恵みの雨だ」
「ちげえねえ!はははは」

下品な笑い声を上げながら傭兵たちが去った後、桟橋の下から「ばっちい」と声がした。
声は、桟橋から30メイルほど下の横穴からだ。
横穴は穴というよりシェルターのような形をしており、中は大人でも十人は入ることができるだろう。
そこには、ラ・ロシェールで別れたキュルケ、タバサ、ギーシュ、そして使い魔のヴェルダンデがいた。

「まったく、あれがアルビオンの人間か!雨を何だと思っているんだ!」
「ギーシュ、静かにしないと放り出すわよ」
「そ、それだけはやめてくれ」
激昂したギーシュは、さすがに放り出されるのは嫌なのか、キュルケに従った。


「で、これからどうしましょうか。この上はアルビオンのお城みたいだけど」
キュルケがつぶやく、ギーシュは一刻もはやく帰ると言いたかったが、ここまで来る間にシルフィードの背でさんざん主張した。
なんとかするには…と考えれば、ギーシュは土系統らしい答えを出す。
「やはり、ヴェルダンデに穴を掘ってもらうしか無いんじゃないか。ミス・ヴァリエールの場所まで」
「でも、ヴァリエールの持ってた宝石の匂いは…ここで途切れてるんでしょう」
「正確に言えば、ここが一番強く、匂いが散らばってる。散らばってるということは…壊されたんじゃないかと」
657アクマがこんんちわ ◆wg35mxeotnaW :2012/07/26(木) 11:05:59.50 ID:h7IIqGb8
「……じゃあどうやって探すのよ。あんたの使い魔は、つい宝石を目指しちゃうんでしょうが」
「えっと、それは……」
三人の間に、思い沈黙が流れた。

「二人は死んでない」
沈黙を破るように、タバサが言った。
「人修羅は私達が来ることを知らない。でも、期待はしているはず。だとすればここから脱出して一番近い沿岸の、トリステインよりの岸を移動するはず」
「しかしだね、ミス、アルビオンには火竜が豊富な上、戦艦も多い、のこのこと出て行ったら僕達も捕まってしまう」
「一番大きい戦いが終わって間もない。今が唯一の機会だと思う…シルフィードで、一日だけ南側の岸にそって飛ぶ。それでダメなら…」
思いつめたような顔をして、珍しく自分の意見を言ったタバサに、ギーシュが驚く。
キュルケはタバサの態度に、どこか思いつめたようなものを感じた。
「タバサ…無茶を言うわね。でも、一番確実よね」
「正気かい?」
「もちろん正気よ。嫌ならここから一人で飛んで帰りなさいよ」
「そんな無茶な!」
「じゃあ賛成ね。出発は何時ごろ?」
「今すぐ」
「ギーシュ、その子を載せる準備しなさい」
「わかったよ。ああ、始祖ブリミルよ、どうかご加護を…」



時間は戻り、アルビオン上空。

空が暗くなり、月明かりが大地を照らすようになった頃、シルフィードが何かに気づいた。
「きゅい!」
「行って」
タバサが命令すると、シルフィードは草原に描かれた何かに向かってゆっくりと下降していく。
「何を見つけたの?」
キュルケの問に、タバサは無言で大地を指差した。
よく見れば草原に奇妙な模様が描かれている。平行な二本の線と、そこから枝分かれするように伸びる左右二本づつの線。

「あっこれ、人修羅の顔の模様ね!」
「多分そう」
それに気づいたキュルケが声を上げ、タバサが肯定した。
「ギーシュ。ヴェルダンデに匂いを嗅がせてみて」
「わかったよ。よしよし、頼んだよヴェルダンデ」
地面に降りたシルフィードの背からギーシュが降りると、シルフィードに掴まれていたヴェルダンデも地面に降りて、くんくんと匂いを嗅ぎ始めた。
「間違いないって言ってる、宝石の匂いがわずかに感じるそうだ」
「なら何処に向かったか分かる?」
「ヴェルダンデ、匂いを追ってくれないか。ちゃんと見つけたらミミズのご褒美をやるから」

ヴェルダンデがきゅう!と鳴いた。任せろ、と言っているようだ。
一行は、ヴェルダンデの鼻を頼りに、ルイズたちの匂いを追った。



■■■■■■■■■■■■



ガリア、プチ・トロワ。
イザベラの身辺を守る近衛兵のうち一人であり、花壇騎士団の一人でもあるハロルドは、イザベラの変化に驚いていた。

「ヒーホー」
ヒーホー、というのが口癖なのだろうか。
イザベラの使い魔、ヒーホーは思いがけぬところで見かける。
プチ・トロワはイザベラに与えられた離宮だが、監獄のようなものであった、イザベラは身の安全のため、なかなかそこを出ようとしないし、出る必要もない。
658アクマがこんんちわ ◆wg35mxeotnaW :2012/07/26(木) 11:06:52.45 ID:h7IIqGb8
王族が魔法の練習に用いる小さな運動場にすら、イザベラは出てこない。
父であるジョゼフ王は魔法の才能がない、それは周知の事実であるが、イザベラもまたその血を引いていた。
ドットの中でも、訓練を起こったら者らしい貧弱な精神力は、貧弱な魔法しか行使できない。イザベラはその典型だった。

実力もないのにプライドだけは高いイザベラにとって、宮殿は自分だけの王国であり、自分だけの監獄なのだろう。

しかし、そんな小さな王宮のそこかしこで、ヒーホーの姿を見かけるようになってからは、ヒーホーを探しに来たイザベラの姿も見られるようになった。
お気に入りのペットは自分で探さなければ気がすまないのだろう、というのがイザベラを見た者の共通認識だった。


だからこそ、運動場でイザベラを見かけたハロルドが、驚くのは無理もなかった。
「下から上にすくい上げて、捻りつつ引き戻して、つき出す瞬間に体を落として…」
「じょうずだホ〜」
身の丈より長い杖を持ったイザベラが、運動場で体を動かしている、傍らにはヒーホーがいてイザベラを応援していた。
「右手は添えて、杖を軸に、右、左、右…」

ゆっくりと踊るような動きに見えるため、何をやっているのか理解できないが、それが反復練習なのは間違いはない。

「こんにちわホ〜」
「ん?」
ハロルドに気づいたヒーホーが挨拶をして手を振ると、イザベラも気がついたのかハロルドを見る。

「これはこれは、汗をかく程熱心に何かをしておいでで、思わず見惚れてしまいました」
半分は世辞だが、半分は本当だ。ひたいに汗を浮かべて鍛錬するという行為は、どんな分野であろうと馬鹿には出来ぬものだからだ。
「世辞はいい。なんだ、何時から見てたんだい」
「今そこを通りかかった所です。身の丈より長い杖が見えたので、驚きました」
「ああ、この杖か…何かと便利だ」
「そろそろお休みするホ?かき氷作るホ?」
「この間ちょっと食べ過ぎたから…今日はいい」

そう言うとイザベラは、ハロルドに向き直った。
「なにか言いたいことがありそうだね?」
「…その、殿下はお変わりになられました。使い魔を召喚してからというもの、明るくなりましたな」
「そう見えるか」
「はい」
「ふぅん、まあいい。そう見えるならそうなんだろ。仕事に戻るといい」
「はっ…」
「ヒーホー、部屋に戻るよ」
「はいだホ〜」
イザベラは飛びついてきたヒーホーを抱えると、杖に座った。
そのまま地上1メイルを滑るように移動していく、レビテーションさえ使えれば出来る技だが、その動きに淀みがない。『フライ』程ではないが、速い。『レビテーション』ほど遅くないが、カドをほぼ直角に曲がるような動きは再現しにくい。

「いつの間にあれほど上達したのだ」
花壇騎士団員ハロルドは、自分の主…イザベラとは別の、ほんとうの主の姿を思い出し、きたるべき時が近づいたと感じた。




「イザベラちゃんは、キョーダイとか居ないホ?」
「ん?」
「ヒーホーにはたくさんキョーダイ居るホ」
「兄弟か…なんでそんなこと、聞くのさ」
「メイドさんが『キゾクは兄弟が多いとタイヘンだから一人のほうがいい』って言ってたホ。キョーダイたっくさんいたほうが楽しいと思うホー」
「ああ、それは…」
659アクマがこんんちわ ◆wg35mxeotnaW :2012/07/26(木) 11:07:16.18 ID:h7IIqGb8
イザベラはどう説明しようか、少し悩んだ。
兄弟が多いと大変だ…その言葉で思いつくのは、兄弟が殺しあい、知らない兄弟が命を狙いに来るという貴族の姿である。
身にしみて知っているが、それを説明する気にはなれない。
「ニンゲンのキョーダイって、仲が悪いホ?」
「ああ、そうだね。喧嘩ばっかりさ」
「そんなの嫌だホー…。イザベラちゃんにも仲の良いキョーダイがいたら、きっと楽しいホ」
「……仲が良くても、取り巻きがいたら何にもならない」
「ホ?」
「いや、なんでもないよ。さあ部屋についた、氷の椅子を作ってやるからちょっと待ってな」

窓から部屋に戻ると、イザベラは水球を作り出し、氷の椅子を作った。
「ほら、グラン・トロワの玉座そっくりだ。お前は使い魔の王様だよヒーホー」
「オウサマ?オウサマホ〜」
ヒーホー用に作られた椅子は小さいが、造形にこだわりがある。
イザベラの魔法の腕は、いつの間にかかなりの上達を見せていた、氷細工を作れるほどに集中力が増している。

「ね、ね、イザベラちゃん」
「んー?」
「いつかボクタチのオウサマにも会って欲しいんだホ」
「ヒーホーたちの王様? どんなでっかい雪だるまだい?」
「ニンゲンのカタチしてるんだホ。でも、ボクタチすべてのオウサマだホ〜」

*********************

今回はここまでです。
姉妹スレの仮面はもうちょっとおまちくさいい・・・
660名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 12:17:01.19 ID:gd6wz9en
乙っした!
661名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 12:28:12.66 ID:T2BQiYqg
乙です!
仮面も大好きなSSなので楽しみに待ってます
662名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 13:10:38.14 ID:OjGOFxSv
アクマさん乙!
でも名前間違えてるw
663名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 15:28:35.05 ID:MVdRee2B
メガテン繋がりで葛葉ライドウを召喚。
香水イベントでシエスタを叱ってるギーシュの肩を手近にあったワイン瓶でトーントンと叩く。
それを「後にしてくれたまえ」と適当に流して、シエスタを叱る方を優先するギーシュを、今度は後頭部をトーントンと…
流石にイラッときたギーシュが嫌々振り向くと、そこには凄く良い笑顔でワイン瓶を振り上げるライドウさんが…みたいな。
664名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 17:42:40.34 ID:8omwxqe2
メガテン系はアニメしか見たことないなあ
フェンリルとアバドンの漫才コンビが昔クラスの話題になってたっけ
665名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 20:11:18.53 ID:A5jBLWyu
>>659
投下乙! 
良かった……続きの投下があった
666名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 20:24:05.67 ID:A/okz3Xv
ラスボスのユーゼスみたいにルーンの洗脳≠ェ効かないキャラってやはり少ないよね。

ましてやガンダールヴの力さえも意味がない、キャラはもってのほか。
667名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 21:01:36.70 ID:u5mkzQFG
アクマの人、乙でした!! 待ってて良かった
ほかの職人さんたちも待っています
668名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 21:04:45.43 ID:dkzbOojz
こんなに好きな作品同士なのに今まで仮面さんと同一人物だとは気づかなかった俺はド低脳・・・orz
669名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 21:10:20.12 ID:cplf7NN9
待ってましたアクマ乙ー!!
イザベラちゃん&ヒーホー和むわぁ。
670名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 21:55:07.09 ID:8omwxqe2
>>666
洗脳といえるほど強力な効果だっけか。明文はされてなかったと思うが
才人はルイズに反抗してるし、ブリミルはサーシャに殺害されてるからあまり強くないんじゃない?
671名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 21:58:47.23 ID:+ZEYmMmh
乙、人修羅の続きが読めるとは…悪い夢…いや、良い夢…だった…
女神転生Wも楽しみだ
672名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 22:02:39.35 ID:5Bd7LVlP
主人が近くにいる時は思い出に浸ってホームシックになったりせず帰りたいという願望が薄くなる
虚無の詠唱を聞くと戦意高揚して恐怖感が欠如しどんな死地にでも躊躇なく飛び込める

くらいか
673名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 22:44:37.50 ID:hWn4wfIk
復活きたな
最近流行ってんの?
674名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 22:46:02.77 ID:hWn4wfIk
>>672
主人が好きなだけ
戦闘で脳内麻薬ドバドバ

てなだけじゃない?これが洗脳?
675名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 23:44:40.51 ID:cIfyL5Tn
洗脳よりはマインドコントロールに近いかもね
676名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/26(木) 23:52:28.57 ID:jC/qaymO
亀レスだがミント様も人修羅さんも乙です

ところでミント様、ヴィンダールヴの能力を得たルウ君
すなわち、ヴィンダールウ君の出番は来ないのですか?
677名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/27(金) 01:13:09.94 ID:RCsqKMzY
アクマの人待ってました!!!投下お疲れ様ですありがとうございます!
活気が戻ってきたみたいで嬉しいなあ
678名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/27(金) 01:31:09.10 ID:WGFEM3+m
就活終わったのか、いや中間テストか
679名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/27(金) 11:55:06.02 ID:f78Cz7hv
続きキタァー
人修羅の人乙乙乙ぅー!!!

しかも仮面ってあの仮面?
まさか同じ人だったとは
どっちも大好きです
次回更新楽しみに待ってます
680名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/27(金) 12:10:44.07 ID:yjcjNpf4
思うにサイトの場合はルーンによる洗脳ではなく、ストックホルム症候群では?
681The Legendary Dark Zero:2012/07/27(金) 12:17:13.00 ID:ZsNvgWUa
残りの容量が少し危なそうですが、12:21頃から続きを投下したいと思います。
682The Legendary Dark Zero:2012/07/27(金) 12:21:46.62 ID:ZsNvgWUa
Mission 31 <深淵の魔女> 後編


「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
夜のチクトンネ街の通りをティファニアは全力で駆けていた。
ウェストウッドの森の中で暮らしてきたとはいえ華奢な体である上に元々体力があるわけではないし、おまけにこの修道服では思うように走ることができない。
走っては止まり、走っては止まり、と何度も繰り返していた彼女の体力はもう限界に近づいていた。
喉の奥からは荒い呼吸が絶えず吐き出され続けている。胸を押さえればはっきりと心臓が激しく動いているのが分かるくらいだ。
だが、ここで足を止めるわけにはいかなかった。
(スパーダさん……)
自分は決して、彼の力にはなれないのだろう。
戦う力もない自分が悪魔を倒すことはおろか、まともに相手をすることすらできないのだろう。
それでも、せめてその戦いだけは見届けなければならなかった。

……だが、あの三人は一体どこにいるのだろう。
裏通りは危ないとスパーダやマチルダは言っていたために人が多い通りを走り続けているのだが、悪魔と争っているのであればどこかが騒然とした状態になっているはず……。
「悪魔だ!」
「魔女だ!」
「化け物だああぁっ!」
何度目か分からぬ小休止を行なっていた時、通りにいくつもの悲鳴が上がった。
何十人という男達が血相を変えて逃げ惑っている姿が道行く人はもちろん、ティファニアの目にも映っていた。
その騒ぎに酒場からは何事かと僅かな客が顔を出し、外の様子を窺いだす。
相当混乱しているのか、勢いあまって倒れてしまう者まで出る始末だ。
「邪魔だっ! どけぃ!」
その中には貴族の人間もおり、他の平民の男達を押し退けていた。
(悪魔……)
やがて、最後の一人と思われる男が足をもつれさせながら地べたを這うようにして逃げてくるのを見届けた。
ティファニアはまだ少し息を切らしてはいたものの、ゆっくりと歩いて前へ進むことにする。
どうやら彼らが逃げてきたお店に例の悪魔がいるらしい。彼らが逃げてきた跡にはうっかり靴や帽子などといった小物が落ちている。
胸元で重ねた手を、母の形見の指輪と共にぎゅっと握り締める。
未だ心臓は呼吸と共にいつもより強く高鳴っていた
683The Legendary Dark Zero:2012/07/27(金) 12:25:54.88 ID:ZsNvgWUa
妖雷婦<lヴァンはその二つ名の通り、強力な稲妻の力を操る上級悪魔である。
格の上では中の上といった所であり、同じ稲妻使いだったアラストルとは同等の地位と力を持っていた。
身に纏うドレスや従えているコウモリ達は彼女の魔力から生み出されているものであり、主にこのコウモリ達を介して自らの稲妻を相手にぶつけたり己を守る盾や鎧、
武器はおろか移動手段にも利用するという変幻自在な扱いができるのであった。
事実、今のネヴァンが纏うドレスはコウモリ達をさらに集めることによって三メイル近い高さにまで大きくなっており、
コウモリの群れによって運ばれて浮かんでいるネヴァンは酒場の中を素早く流れるように動き回っていた。
その軌跡を、アニエスの砲銃から放たれた砲弾が縫っていく。
「ちょこまかと!」
外れた砲弾は床に転がる椅子やテーブルを粉砕し吹き飛ばす。
アニエスは次の弾を込めようとせず、ネヴァンが腕を振るってコウモリ達と共に放ってきた無数の雷弾をかわしていった。

その稲妻の弾丸はアニエスだけでなく、舞台上にいるルイズ達にも向けられて放たれていた。
「How's this?(これはどうかしら?)」
さらにネヴァンがその美しい手を伸ばすと掌から轟音と共に稲妻の嵐が吹き荒れ、ルイズとスパーダに襲い掛かる。
ルイズの前に立つスパーダは正面で閻魔刀をクルクルと回転させてコウモリ達を弾き返し、ネヴァン自身が放った稲妻さえも受け止めていた。
背後ではルイズが杖を頭上に掲げたまま呪文を唱えている。
「――バーストっ!」
唱えたのはキュルケも使うライン・スペルのフレイム・ボールであったが、その呪文によって起こされた爆発はネヴァンをコウモリ達もろとも包み込んでいた。
爆風によってテーブルも椅子も豪快に吹き飛ばされ、四方に飛び散った残骸は三人に襲い掛かる。
スパーダはそのまま閻魔刀で防御を続け、アニエスはアラストルを振り回して叩き斬った。
煙が晴れると、そこにはあれだけネヴァンに従えられていたコウモリの群れはほとんどいなくなり、ドレスも小さくなっていつもの大きさに戻っていた。

(あの小娘……)
ネヴァンとしては攻防一体である己のしもべ達があんな小娘ごときに一瞬で全滅させられたことに驚いていた。
「はあああっ!」
そこにアニエスがアラストルを高く振り上げ、ルイズ達の方に注意が向いているネヴァンに斬りかかる。
まるで急襲を仕掛けた獣のごとき気迫と勢いであったものの、ネヴァンはアニエスの方を振り向こうともせずにショールを振り上げて弾き返し、
さらに振るった手を捻るようにして突き出すと、掌から雷光が迸った。
攻撃を弾かれたばかりのアニエスは咄嗟に態勢を立て直そうとするが、間に合わない。

――ブゥンッ。

不気味な唸りと共にアニエスとネヴァンを挟んだ空間が大きく歪み、ネヴァンの放った雷撃がその歪みの中で刻まれた無数の斬撃によって阻まれていた。
その斬撃にネヴァンは感嘆とし、ちらりと舞台上で閻魔刀による居合いの構えを取っているスパーダを見やった。
千年以上も昔にも目にした、冷徹な魔剣士としての面構え。普段から冷たい表情しか浮かべなかったスパーダであるが、戦いとなれば冷たさはさらに力を増すのである。
その瞳は彼が手にする剣のように研ぎ澄まされ、目の前に立ち塞がる者は全て斬り伏せると言わんばかりの信念がありありと感じられていた。
(変わってないわねぇ……)
思わずぞくりと背筋を震わせてしまったネヴァンは、斬りかかってくるアニエスの猛攻を余裕の動作で避け続けると黒い影と無数のコウモリへと姿を変えて離脱した。
684The Legendary Dark Zero:2012/07/27(金) 12:30:20.99 ID:ZsNvgWUa
「何よ。やっぱり平民じゃ駄目ね」
アニエスの後方に姿を現したネヴァンを見てルイズが溜め息を吐く。
あのアラストルとかいう剣は先刻のスパーダとの会話からして、どうやらマジックアイテムか何かのようだがあれを使ってもあんなザマとは。
ここはやはり、メイジである自分の力を持ってあの悪魔を倒してやるしかないだろう。
ルイズは初めて直接、悪魔と戦うことになるわけだがスパーダがいてくれるだけで、恐れを感じずとても安心することができていた。
スパーダが一緒にいてくれれば負ける要素など何もないように感じてしまうのである。
杖を振り上げたルイズが、再び呪文を詠唱しようとしたその時だった。

ネヴァンが両腕を広げ高笑いを響かせながら、その身に稲妻を収束させてきたのだ。
何をやろうとしているか知らないが、すぐにでも吹き飛ばしてやれば良いだけのことである。
「きゃあっ! ちょっと、何をするのよ!」
ルイズは構わずに集中して呪文を唱えていたがスパーダが咄嗟に体を抱え上げてきたため、詠唱を邪魔されたルイズはスパーダの胸を叩きながら文句を言った。
その直後、ネヴァンの頭上から凄まじい轟音と共に巨大な稲妻が降り注いできたのだ。
まるで巨大な鉄槌が叩き込まれたような一閃は一瞬にして床一面に広がり、地上に転がる全てのものを焼き焦がしていた。
テーブルも椅子も黒焦げにされ、客が飲み残していった酒などは一瞬で蒸発してしまった。
スパーダはルイズを抱えつつ宙に飛び上がっていたために問題はなかったが、アニエスは地上に足を付けたままであった。
「……ぐっ」
膝をつくアニエスの体には、それほど大きなダメージはなかった。
床に突き立てられたアラストルが稲妻の力を吸い取り、彼女へのダメージを和らげてくれたのである。
ネヴァンが技を繰り出す直前、アラストルがアニエスの頭に我を突き立てよ≠ニ語りかけてきたため、その言に従ったおかげで重傷を負うのは間逃れていた。
もっとも相手はアラストルと同格の上級悪魔であるため、それでも軽く火傷は負ってしまったのだが。
「まだ、まだだっ……!」
全身から僅かに煙を吹かせ、アニエスはよろめきつつも立ち上がっていた。

「ふぅん。平民にしては根性あるのね」
着地したスパーダに降ろされていたルイズは再びコウモリを纏ったネヴァンに斬りかかるアニエスを見て嘆息した。
ネヴァンが次々と放ってくる雷弾をアニエスはアラストルで叩き落しつつ一気に駆け寄り、ネヴァンを守るコウモリ達を斬り伏せていく。
女なのに男顔負けの気迫を発揮しながら繰り出す怒涛の猛攻はスパーダが愛剣のリベリオンを棒切れのように軽々と振り回すのに匹敵するほどの勢いであった。
一振りする度にコウモリ達は赤い血飛沫を散らせながら霧散し、徐々にネヴァンの防御を崩していく。
「お痛は駄目よ」
もちろん、ネヴァンも黙っているわけではなくその場でクルクルと回転すると、纏っているドレスの一部が巨大な刃となってアニエスを斬り刻もうとする。
アニエスは咄嗟に後ろに跳び退ってかわし、すぐにまたネヴァンへの攻撃を再開した。
ああして諦めずに戦い続けるのは賞賛すべきだろうが、やはり平民では悪魔を倒せないのだ。
685The Legendary Dark Zero:2012/07/27(金) 12:34:46.65 ID:ZsNvgWUa
メイジである自分と、頼れるパートナーにして伝説の悪魔であるスパーダに全てを任せておけばあんな淫乱な悪魔など一捻りである。
……というか、どうあっても自分の手で叩きのめしてやらないと気が済まない。スパーダとあんなに親しげにしていたのがそもそも気に入らない。
スパーダが悪魔である以上、色々な悪魔と出会っていたのだろうが……よりによってあんな淫乱女と知り合いだなんて!
「スパーダ! あいつのコウモリをひっぺがしてちょうだい!」
「いや、それは君の役目だ」
杖を振り上げ再び呪文を詠唱しようとしたルイズであったが、スパーダはこちらにも飛ばされてきた雷弾を閻魔刀を回転させて防御しながら言った。
アニエスから逃げ回るネヴァンはこちらとアニエスの両方に向けて次々と同時に攻撃を仕掛けてきている。
「奴の防御を崩すのは君の爆発の方が効率が良い。奴への直接攻撃はアニエスに任せろ」
そのスパーダの言葉に、ルイズは顔を顰めた。
スパーダは自分よりもアニエスにあの悪魔を倒させようとしている。それが気に入らない。
(何よ。何であんな平民の女なんか信頼するのよ!)
平民であるアニエスはあんなに苦戦していて倒せそうにないというのに、何故彼女に任せようというのか。
パートナーである自分に任せないなんて、どういうことなのだ。

「どうしたの? 前みたいに大胆に攻めてきてちょうだい」
ネヴァンが雷弾を放ちながらスパーダの方を見やってきた。
スパーダとしては自分が前に出るとルイズがネヴァンの攻撃の餌食になってしまうので、傍に付いて守ってやらねばならないのだ。
そのために攻撃をアニエスに任せ、ルイズにはそのための援護、スパーダはそのルイズを守るというポジションに付いているのである。
本来、使い魔という存在はこうした状況で主を守るとされているそうだが、今まさにそうした状況なのだ。
もっとも、ルイズが主でなかろがスパーダは彼女を守るのだが。
「そこの小娘が足手まといになってるのかしら?」
そのネヴァンの言葉に、苛ついていたルイズが溜めていた怒りが爆発する。
「な、何ですってぇ!? もう一度言ってごらんなさいよ!」
「何の因果でスパーダと一緒にいるのか知らないけど……スパーダが全然、攻めてこないんだもの。
私はスパーダと刺激を味わい合いたいのに……。そんなザマじゃ、小娘が足手まといになっているものだわ」
つまらなさそうに呟くネヴァンは攻撃の合間を縫って斬りかかってきたアニエスの斬撃をショールで弾いていた。
「相手にするな」
スパーダがルイズの怒りを静めようと語りかけるが、あんな淫乱女にここまで馬鹿にされて黙っていられるわけがなかった。

パートナーである自分が役立たず?

パートナーの足手まとい?

スパーダはメイジでパートナーの自分より平民のアニエスを信頼している?

……冗談じゃない。
自分は、役立たずなんかじゃない!
あんな平民なんかに舐められてたまるものか!
「……落ち着け、ミス・ヴァリエール」
プルプルと肩を震わせているルイズをスパーダが再度抑えようとしたが……。
「うるさい、うるさい、うるさい! うるさいぃっ!!」
「待て、前へ出るな」
けたたましい憤怒の叫びを上げたルイズはスパーダの制止も聞かずにずんずんと前へ出て舞台から下りていった。
「あたしはスパーダのパートナーよ! 足手まといなんかじゃ、役立たずなんかじゃないわっ!」
叫びながら杖を突きつけ、呪文を唱えようとするルイズ。
686The Legendary Dark Zero:2012/07/27(金) 12:39:41.40 ID:ZsNvgWUa
ネヴァンは横二メイルほどの長さをした帯状の稲妻を両端に二匹のコウモリ達を付けて飛ばし、ルイズに向けて飛ばしてきた。
縦に三つほど並べられた稲妻の帯は上から順に放たれる。

「伏せろ!」
同じように舞台から下りたスパーダが素早く駆け寄りルイズを抱えて共に床に倒れるように伏せ、稲妻の帯をかわした。
ネヴァンの稲妻はスパーダ達の頭上をすれすれで通り過ぎていった。
「離してよ! このままあんな悪魔に……平民なんかに舐められるわけにはいかないのよっ!」
完全に頭に血が昇り我を忘れてしまっているルイズはスパーダの腕を振り払って立ち上がり、アニエスと交戦しているネヴァンへ近づいた。
「待てっ、ミス・ヴァリエール。奴に近づくな!」
起き上がったスパーダが呼び止めるも、突如足元が光りだしたのを目にし、即座に横転を行なった。
ネヴァンがスパーダがいた場所に轟音と共に巨大な稲妻を落とし、床を砕いてきたのである。
しかも避けたスパーダの移動先にも落雷を発生させてくるため、中々ルイズの元へと行くことができなかった。

「平民っ! そこをどきなさいっ! そいつはあたしが仕留めるわ!」
ネヴァンを守るコウモリの群れはアニエスの猛攻によって大分剥がされている。これならば自分の爆発を直接叩き込むこともできるはずだ。
これまでスパーダの指導の下、自分の新しい魔法として特訓を続けてきたバースト(炸裂)≠ヘ、
唱える魔法の呪文の長さによって爆発の規模が変わるということが判明していた。
系統魔法は下から順にドット、ライン、トライアングル、スクウェアと分かれており、高位のランクほど呪文の詠唱が長くなる。
つまり高ランクの呪文ほど威力が増すので、今度はトライアングルクラスの魔法の呪文を唱えることにした。もちろん、その分精神力の消耗も大きくなってしまうが……。
「ヴァリエール殿! 待て! ……ちっ!」
アラストルの加護により身体能力が強化されていたアニエスはネヴァンの頭上を身を翻しながら飛び越えた。
当然、ネヴァンは頭上のアニエスに稲妻を放ってきたが、不安定な体勢であるにも関わらずアニエスは巧みにアラストルを振るって攻撃を逸らしていた。
反対側に着地したアニエスはルイズの前に立ち、スパーダの代わりに盾になろうとする。
「ヴァリエール殿。前に出ては危険だ」
「平民が貴族に命令するんじゃないわ! 黙ってなさい!」
だがルイズは貴族としてのプライドと意地を露にし、アニエスを威圧すると杖を振り上げ、呪文を詠唱しようとする。
「くっ! おのれっ……!」
アニエスはネヴァンが右手の掌から放ち続けている稲妻の嵐をアラストルで防御するので手一杯だった。
おまけにまるで獲物をいたぶるかのように徐々にその力を上げつつ一点に集中させてきており、先ほどのダメージで消耗していたのが祟って押されている。
ネヴァンは冷たいしたり顔を浮かべながら二人を見下ろしていた。
ちらりとスパーダの方を見ると、未だ落とし続けている落雷をかわしながらこちらへ向かってきている。
「ぐっ……ぬぬっ……くぅ……!」
吹き飛ばされぬように全身に力を込めるアニエスであったが、もはや限界だ。


「うあっ!」
「バース――」
ルイズが呪文の詠唱を終え、いざ爆発を叩き込もうと杖を振り下ろそうとした時、閃光と共に巨大な轟音が鳴り響いた。
喉からそれ以上の声が出ることはなく、漏れてきたのは呻きのみ。全身に、この世のものとも思えぬ激痛が駆け巡る。
ネヴァンがさらに力を上げて放った稲妻がアニエスの体を弾き飛ばし、盾が無くなったことでルイズにも襲い掛かったのだ。
風系統の魔法にも存在する電撃で相手を攻撃するライトニング・クラウドは直撃すれば人間の命を奪うことなど容易いものである。
だが、ネヴァンの放った稲妻の嵐はそれを遥かに超える威力であり、一瞬にしてルイズの全身に浸透し、その身を内側まで焼き焦がしていく。
稲妻に打たれたルイズは苦痛の悲鳴を上げることはおろか、自分の体が稲妻に焼かれていることすら認識できなかった。
やがて、その華奢な体がビシャンッ、という鋭い音と共に豪快に吹き飛ばされ、舞台の上に無残に叩きつけられ転げまわった。
アニエスはアラストルの加護により耐えることができた一撃が、何の加護も受けていない、平民となんら変わらない人間の肉体であるルイズが耐えられるはずもなかった。
仰向けに力なく横たわるルイズは服もマントも杖さえも焦がされ、それを握っていた右手は指先から腕までほとんどが炭化していた。
生気の失せた虚ろな目を開けたままのルイズの体は、弱々しくピクピクと痙攣している。
既にその小さな口からは、呼吸一つ漏れてはいなかった。
687The Legendary Dark Zero:2012/07/27(金) 12:45:10.62 ID:ZsNvgWUa
「This's the end.(これでおしまい)」
突き出していた手を下ろし、ネヴァンは呟いた。
生意気な小娘はこれで仕留めた。女剣士の方も生きてはいるが、あれではもう戦えまい。
吹き飛ばされたアニエスは崩れたテーブルと椅子の残骸に突っ込み、気絶している。手放されたアラストルは壁に突き刺さっていた。
「さあ、これで二人きり……っ!」
邪魔者を排除し、いざスパーダと刺激を味わい合おうと顔を向けた途端、ネヴァンは珍しく吃驚した。
いつの間にか目前に迫っていたスパーダが閻魔刀の柄頭をネヴァンの腹に打ち据えてきた。
「……!!」
ドコンッ、と音を立てて繰り出された一撃は上級悪魔であるネヴァンでさえ苦悶の呻きを漏らすほどに強烈だった。
以前はスパーダに剣で叩き斬られたり、貫いたりされたものだが、これも中々に堪える。
「……っ。ふふっ、その小娘は大事だったみたいね……」
後ろによろめき体を折りながらもネヴァンはスパーダの顔を見上げる。
千年以上も前のあの時、スパーダは何を思ったか人間達を守るために魔界を裏切り、剣を振るった。
その際、彼が浮かべていた時と同じ強い信念と戦意が込められている。

そして、今回はさらにもう一つの感情がその気迫ある冷徹な顔に刻まれていた。
……守るべきものを傷つけられた怒り≠ニいう感情を。

スパーダが瞬時にコートの中の背中腰に手を回し取り出してきた二丁の短銃。
ネヴァンに突きつけるなりスパーダの両腕には赤黒いオーラが湧き出て、握っている銃を包み込んでいった。

――バウンッ!

まるで大砲を撃ったような凄まじい銃声と共に、二つの銃口から通常より大きな魔力の弾丸が放たれた。
その反動と衝撃に耐えられず、スパーダの腕と共に跳ね上がった銃は粉々に砕け散ってしまう。
「はぐっ!!」
スパーダ魔力の全力を持って作られた弾丸は赤い光の尾を引きながらネヴァンの腹に直撃し、爆ぜた。
爆風に包まれるネヴァンはその強烈な一撃に耐えられず、床に倒れこんでしまう。
「……ああ、すごい。刺激的だわ……。前より力は衰えているはずなのに……」
その口から出てきた快感の呻きを漏らすネヴァンであったが、壊れた銃を投げ捨てるスパーダは静かに閻魔刀を鞘から抜き出し、歩み寄ってきていた。
ふと気付けば、朧げにスパーダの姿と共に彼本来の悪魔の姿が浮かび上がっている。
「っ……」
倒れこんでいるネヴァンの首を掴み上げ、無理矢理立たせたスパーダは閻魔刀を無造作に垂らしたまま冷たい目付きで睨みつけている。
何の感情も窺えない、だが見る者をゾッとさせる恐ろしさで満ちていた。
(ああ……素敵……)
思わず、ネヴァンは酔い痴れたように目付きをトロンとさせる。
『これ以上、他の人間達を傷つけてみろ。……三度は無い』
悪魔としての本性を露にした冷酷な声に、ネヴァンは更なる愉悦を感じていた。


ティファニアがある路地の近くまで来た時、凄まじい轟音が鳴り響いていた。
それは地の底から響いてくるような不気味な轟きであり思わず足を止めてしまったが、同時にそれが路地の奥から聞こえてくるものであることを察していた。
路地の奥で見つけた地下の扉を開け、恐る恐る中を覗き込んでみると、そこは地獄のような場所だった。
酒場とは思えない広さの空間には焼け焦げた椅子やテーブルが無残に転がっているのだから。
やはりこの中でスパーダ達は戦っていたことを確信するが、それにしてはとても静まり返っている。
(どうしたのかな……)
不安を感じ、そっと静かに扉を開けていく……。
そして、思わず目にしてしまった光景に絶句してしまった。
(ス、スパーダさん!?)
そこにいたのは紛れもなく、スパーダであった。
右手に持つ刀で土気色の肌をしている女の腹を容赦なく串刺しにしていたのだ。
688The Legendary Dark Zero:2012/07/27(金) 12:49:46.46 ID:ZsNvgWUa
ボタボタと刀からは体を仰け反らせている女の血が滴り落ちている。
(あれが、悪魔……なの……?)
悪魔というと、ティファニアも目にしたあのおぞましい姿ばかりなのかと思ったのに、今スパーダが貫いている悪魔は息を呑んでしまいそうに美しい姿をしていた。
その妖しい美貌を持つものであろうと、スパーダは容赦なくその身を手にする剣で貫いている。
悪魔を睨みつけるスパーダの表情は、一見するとどんな感情を抱いているのか窺うことができない。
だが、ティファニアは察していたスパーダは……怒っている。
あれだけ自分に優しく接して父性を見せてくれた人が、今まさに悪魔らしい冷酷な姿を見せていることにティファニアは思わず恐怖を感じてしまった。
(大丈夫……。スパーダさんは、悪魔なんかじゃない……)
緊張で高鳴る胸を押さえ、ティファニアは店内へと足を踏み入れていた。

「ふふ、ふっ……。やっぱり、スパーダはスパーダね……。何一つ変わってないわ……」
その身を閻魔刀で刺し貫かれているにも関わらず、ネヴァンは妖しく笑いながら呟いて体を起こしスパーダの背と首に手を回していた。
スパーダはネヴァンを抱こうとはせず、閻魔刀を握る手を離さない。
「いいわ……。また一緒に付き合ってあげる……。これからも刺激を味わい合いましょう……ダーリン」
そう呟き、ネヴァンはスパーダの首を擦るとその頬にそっと口付けをした。
ネヴァンの体は雷光と共に眩い光に包まれ、消え去った。
代わりにスパーダの腕に抱えられていたのは、一振りの装飾を施された大鎌だった。
およそ140サントほどの長さで、鎌というだけあってその先端には鋭く弧を描く刃は備えられている。

電刃ネヴァン

上級悪魔ネヴァンの魂が肉体と共に姿を変えた魔具の一つであった。
スパーダはネヴァンの大鎌をじっと見つめて細く溜め息を吐くと、その手の中で淡い光に包まれながら小さくなっていく。
小さな光球へと姿を変えたネヴァンはそのまま透けるようにして消え、スパーダの魔力の一部となっていた。

(スパーダさんの、知り合い……?)
ティファニアはずいぶんとスパーダと親しげにしていたあの悪魔が鎌に変わってしまった光景に呆気にとられていた。
「付いてきたのか。もう終わったがな」
「あ、あの……ごめんなさい」
閻魔刀を鞘に収めつつ振り向いてきたスパーダにティファニアは思わず謝ってしまう。
「構わん。気にするな」
特に責めることもせず、スパーダは急いで舞台の方へと駆けていった。
「……ルイズさん!」
ティファニアは舞台の上で倒れているルイズの姿を目の当たりにすると、自分も思わず舞台へと駆け上がって行った。
全身を焼き焦がされたルイズの凄惨な姿に、悲痛な顔を浮かべる。
スパーダはルイズの体を抱え上げ、その顔に耳を近づけ、胸に手を触れた。
(呼吸が止まっている……)
それどころか心臓さえも止まってしまっていることにスパーダは深刻そうに顔を顰めた。
バイタルスターは持ってきてはいるものの、これでは体の傷を治すことはできても助かる可能性は著しく低い。
肉体の外傷は治せても、蘇生させることはできないのだ。
「Damm it!(くそっ!)」
拳を床に思い切り叩き付け、スパーダは呻いた。

※今回はこれでおしまいです。
現地調達の銃が壊れたので、そろそろ光と闇を持たせようか……。
689名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/27(金) 13:52:46.60 ID:AlFsSiMO

ついでに次スレもよろしく
690名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/27(金) 14:03:28.11 ID:ZsNvgWUa
次のスレ立て完了。

(part314)
ttp://engawa.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1343365290/
691名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/27(金) 14:11:04.87 ID:i5UqaICU
乙乙です
692名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/27(金) 15:39:30.01 ID:NDs6xeUN
おつー
ルイズ死亡確認
693名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/27(金) 16:44:37.78 ID:m2MjSebU
>>692
王大人乙
694名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/27(金) 16:45:18.72 ID:RCsqKMzY
パパーダの人お疲れ様です
695名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/27(金) 19:28:47.71 ID:eHkMUq9d
案の定痛い目に有ったねパパーダ版ルイズ。
696名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/28(土) 07:55:22.56 ID:qdK1f0pg
コントラクト・サーヴァントって唇にしないと駄目なの?
ルイズがたまたまそうだっただけで、実は鼻先とか額でも良いなんてことはないの?
697名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/28(土) 08:03:36.01 ID:eVCAe6MQ
First Kissから始まる二人の恋のStoryなんだよ
698名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/28(土) 12:31:58.54 ID:zBv1U2G1
亀頭にキスさせたご立派最強
699名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/28(土) 16:58:39.59 ID:qdK1f0pg
書く人のさじ加減ってことでいいですかねキス
ジュリオとヴィットーリオの契約も唇だったとか考えたくない
700名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/28(土) 17:20:19.64 ID:GNNUrafC
バグベアーはゼロ魔では目玉の方だったとおもったけど、あれにも口あるんかな

ヤドクガエルみたいな触っただけでもヤバいような生物召喚したらキツいな(笑)
そういうのは召喚されないようになってるだろうけど
701名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/28(土) 17:47:09.70 ID:lvycvyGv
ヤドクガエルは火で炙る等の危険を感じないと毒を分泌しなかったり、
人工飼育下では毒を合成できなかったりする
702名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/28(土) 18:34:18.44 ID:wEdrR2q6
聖剣伝説3クロスの「夜刃の使い魔」じゃ、ホークアイが口の中に毒針仕込んでて、ルイズがバッドステータス状態になってたな
703名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/28(土) 21:55:25.34 ID:zBv1U2G1
埋め
704名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/28(土) 22:05:24.17 ID:w2YweLtf
梅梅
705名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/28(土) 22:56:49.22 ID:IYFSnDFl
どうせ埋まるなら他愛も無い雑談しようぜ

ルイズが召喚したら喜びそうな人間キャラってどう言うキャラになりそうなのかな?
人間ってだけで誰が召喚されても喜ばないか特定の条件が揃っていれば喜ぶかを
皆に聞きたい、発言に対しての喧嘩は勘弁って事で
706名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/28(土) 23:05:18.97 ID:WcVZ8Vok
>>705
人を召喚していきなり手放しで喜ぶなんて事はないだろうな普通に考えると
だが同じ時間を過ごすうちに次第に好感度が上がっていくということはあるだろうけど
707名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/28(土) 23:05:52.44 ID:lvycvyGv
「信念と余裕を持っていて、自分を尊重してくれる人間」は始めは喜ぶけれど
後から劣等感を抱くことに成ると思う
708名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/28(土) 23:13:06.08 ID:7IpZpy2X
イケメンならちょろいだろうなルイズはわりとメンクイだし
サイトいなければ即落ちだよ母親もあれだから遺伝だね
709名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/28(土) 23:55:17.08 ID:d0Qsjizp
>>708
Dは喜んでたな、ハーフだけど
せんべいやならちょろいだろ
710名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/28(土) 23:59:53.62 ID:QDM5u9YQ
>>709
そもそもその二人に抵抗できる女性が殆どいないという事実
711名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/29(日) 00:05:11.62 ID:fxlfZAOB
>>705
ルイズを尊重しなおかつ劣等感を刺激しない、と言うとハードルが山より高くなるからなぁ。
712名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/29(日) 00:06:17.89 ID:oX0d8SYu
煎餅屋は小ネタで喚ばれていた
713名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/29(日) 00:08:11.17 ID:Lyim/CZM
千兵衛?
714名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/29(日) 00:38:38.45 ID:XiHqt1BA
>>707
なんとなく三国無双シリーズの趙雲を想像しました…アイツなら子供の扱いも上手そうだしさ
魔法も使えないし主君と仰いでいるならまず侮蔑とかも言わないから劣等感もそこまで刺激しないでしょ
設定でも美男子だったらしいから顔も水準には達しているんじゃないかな?
715名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/29(日) 01:06:53.25 ID:5gAC41or
趙雲さんは二重あご、マジで
716名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/29(日) 01:48:09.96 ID:Z40OBwUe
ブランカとかなら人間と思わずに喜ぶんじゃね
717名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/29(日) 02:01:08.12 ID:MbUCeseP
ブロッケン伯爵が出てきた場合のリアクションはすごそうだ
718名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/29(日) 07:56:01.47 ID:blUllkNv
ギーシュやマリコルヌに頭をサッカーボールにされそうな気がするw>ブロッケン伯爵
719名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/29(日) 13:49:43.97 ID:fy08brni
ブロッケンと聞いたらワールドヒーローズのヤツを思い浮かべた。
ジャーマンエクスプロージョンを発動させたら後で色々面倒がおきそうだな。
720名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/29(日) 15:46:44.01 ID:PbsjKRCk
>>717
でも伯爵ドイツ人だから名前的に「ゲルマニア人!? この成り上がり!!」とか反発しそう。
721名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/29(日) 17:44:04.09 ID:dsfeu6GA
じゃぁ似たような奴ってことで
ハーメルンのベース(リュート)を呼んでこよう
722名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/29(日) 19:29:39.42 ID:0f1/zfNA
ベルリンの赤い雨ェ
723名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/29(日) 19:45:53.46 ID:mTVCaKKb
もっとジャンプ漫画クロスが読みたい
ゼロ魔と禁書以外に読むのってジャンプぐらいしかないから頼むは
724名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/29(日) 19:58:15.31 ID:YGQ/p6Mo
昔のジャンプでタイムウォーカー零から原作終了後の刹那零を召喚とか考えてるが
どう展開させたものか・・・
お約束の骨董品回収依頼のドタバタでテレポートしようとした矢先に召喚ゲート
これまたお約束な子供のお守
決闘イベントはシエスタがくれた滋養メニューのおかげで回復して影分身

大雑把な内容は考えてるが、ラストまでの展開どうまとめたもんか・・・
終わったら元の世界に帰したいけどそこまでの展開思いつかないしなぁ
725名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/30(月) 03:47:43.48 ID:Fg/A5K+r
あー・・・誰かメタルスラッグとのクロス書いてくんねーかなー(チラッチラッ
726名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/30(月) 09:47:44.15 ID:O3gIhsZz
っ[鏡]
727名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/30(月) 15:50:31.94 ID:sdF5cdr2
>>726
使い魔召喚がこんな所に!?
728名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/30(月) 16:10:05.61 ID:NunYWRHw
嬉々として飛び込んだ先にはチュレンヌ徴税官が…
ご愁傷様www
729名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/30(月) 21:05:26.70 ID:u30DOUdt
HEEEEYYYY!あァァァんまりだアァアァ!
730名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/31(火) 01:24:55.39 ID:s03AhZjd
何KBまでだっけ?
731名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/31(火) 07:47:28.46 ID:Ru/LNvxs
500KB
732名無しさん@お腹いっぱい。:2012/07/31(火) 10:18:54.65 ID:9YVumHhl
流行でインテリ筋肉のベインさん呼ぼうぜ
733名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/01(水) 00:34:14.26 ID:7nkLbxLt
キャプテン・ブラボーが喚ばれたらルイズたちを熱血に導いてくれそう
734名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/01(水) 18:09:16.17 ID:hGjGWZmW
「魔物娘図鑑」のデルエラ様が来たらルイズは巨乳にしてもらえるのだろうか?
シスター姿的にダークプリーストあたりが適役かな。
逆にロリペタのバフォメットにされたらサバトを率いて巨乳組をロリ魔女へ変えてゆく
巨乳撲滅委員会を立ち上げそうだ。
しかしロリになっても変わらないテファの革命おっぱいに憤死しそうw
735名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/01(水) 18:20:31.43 ID:nMAgSrqa
よしキャプテン・ファルコンを召喚しよう、ポルトガルのほうじゃないのを
736名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/02(木) 07:29:33.07 ID:z/sfbUqj
>>734
誰が呼ばれても学園を中心に魔界化していきそう。
737名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/02(木) 11:42:21.68 ID:rj0sgNr6
キャプテン・アトランティスなら…どうなるんだろ
738名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/02(木) 15:43:12.58 ID:IjBrN+fc
>>737
そいつやサモエド仮面とかの変態召喚って、意外と少なかったな
739名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/02(木) 16:12:08.30 ID:QbYkjMdt
>>737
まず確実に背景とBGMを奪って歌が始まる

キャプテーン!
740名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/03(金) 15:59:55.07 ID:2y4N4ufo
そしてランディ・リッグスは訳も分からずハルケに来ることになるのか
741名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/03(金) 19:33:11.89 ID:t0pYjA1Z
?? ワロタw
742名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/04(土) 20:02:33.42 ID:3lbf8ohJ
いい加減コッチを埋めようぜ。
743名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/04(土) 22:52:11.27 ID:AUGyzog0
うっめぇ〜〜
744名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/04(土) 23:06:55.82 ID:0qiMzM4v
オレはルイズではなく、アブソリュート・フェニックスと契約する
745名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/04(土) 23:24:53.82 ID:ksT9/MCO
フォーッフォフォフォ!
746名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/05(日) 00:27:02.33 ID:xH+sqvzP
出たなバルタン星人!
747名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/05(日) 01:45:09.55 ID:tRwBbm/e
埋め
748名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/05(日) 03:47:11.25 ID:zBWsa9Lz
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749名無しさん@お腹いっぱい。:2012/08/05(日) 03:47:52.63 ID:zBWsa9Lz
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