あの作品のキャラがルイズに召喚されました part270
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part269
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1267108706/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_
〃 ^ヽ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
J{ ハ从{_, ・クロス元が18禁作品でも、SSの内容が非18禁なら本スレでいいわよ、でも
ノルノー゚ノjし 内容が18禁ならエロパロ板ゼロ魔スレで投下してね?
/く{ {丈} }つ ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
l く/_jlム! | ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
レ-ヘじフ〜l ・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
>>1乙
今執筆中なんだけど、ジジイのシーンが終わらない・・・
外せないシーンだけど誰得だよorz
いいじゃないか。アンリエッタ姫の演説が原稿用紙換算で15枚に達しても
終わらなくて先に進めない私よりは、ね...
さて、どこを削ろうか...
長すぎて困るのなら、戦争の演説みたいに一話をそれだけに使って伝説になってしまえば良いじゃない
逆にハードル上がってるかw
>>1 乙
>>1乙
>>2.3
水を差してごめん。新人さんか既にいる人か知らないが、語りたいなら物を上げてからじゃないか?
出きてもない作品で愚痴ったり、苦労話は格好悪い
>>6 そうですね。評価はあくまで読者ですよね。
とりあえず、早く皆さんに読んでいただけるように頑張ります。
ご意見どうもです。
>>6 ですね。
こちらも失礼しました。なるべく早く読んでいただけるよう頑張ります。
前スレはまだ埋まってないけど、
投下はこっちで良いんだよね?
うん
>>10-11 じゃあ他に予約もないと思うので、早速投下させてもらって宜しいでしょうか。
じゃあ駄目
ってのは冗談だけど、そう言われたらどうすんだって感じだし、
不特定の誰かが許可を出すまで投下しないのなら、待ち続けるのかって感じだし、
「よろしいでしょうか」じゃなくて「投下します」でいいと思うよ。
14 :
ゼロの家庭教師:2010/03/13(土) 13:42:34 ID:fUwd+gu/
『先生の長い一日!!!』の巻 続き
扉の残骸を踏み越え、ルイズの後を追って隠された通路の奥へと進むアバン。
程なくして、暗闇の中を手探りで進む彼女に追いついた。
驚かせぬようそっと声をかけ、懐からたいまつを取り出して握らせると、
ゆれる灯りに照らされて、口をキッと結んだルイズの顔が見て取れる。
貴族の邸宅に忍び込み、閉ざされた隠し扉の先を進む……慎重に越したことはない。
緊張した面持ちで頷きあうと、ルイズとアバンは無言のまま移動を再開する。
突き当たりまで直進し、角を曲がると今度は下へと伸びる階段が続く。
2人は足元に十分な注意を払いつつ、足元の段差をゆっくりと下へ下へと降りていくのだった。
壁伝いに一段、また一段と降りていく内に、アバンは視界の端に『何か』を捉えた。
「ミエールの眼鏡」を通して見えた『何か』は、デコボコの壁に埋まった形で肉眼では判別し難く、
ましてこの暗がりの中では、まず見つけることはできないだろう代物である。
「……ルイズ!」
「わぁ!?」
すわ何かの罠なのか!?と思わず後ろから制止をかけたアバンの声に驚いて、
こちらも思わず体勢を崩して足を踏み外したルイズは、階段から転げ落ちるすんでのところで抱きとめられる。
そして振り上げられたルイズの足から勢いよく飛び出した小さな靴が、
まるで狙ったかのように壁に埋もれた『何か』に命中した。
「……………………………………」
「……………………………………」
低く重い唸り声をあげて作動する何某かの気配を感じつつ、
靴を拾って地下へと降りる2人、ついにたどり着いた秘密の地下室では、
槍を構えた二体の動く石像が、準備万端といった様子で待ち構えていた。
「ふぅ、やれやれだわ」
「全くですね、ええ、本当に」
15 :
ゼロの家庭教師:2010/03/13(土) 13:43:39 ID:fUwd+gu/
(もしかしたら、人物を認識して攻撃を止めるかもしれない)
現在モット伯に化けたままのアバンはそこにわずかばかりの期待をこめ、眼鏡を外して前に進み出てるも、
石像たちが声をかける間も無く槍を繰り出してくるのを見て、その期待を即座に捨てた。
もはや正面衝突は避けられない!
初撃に突き出された二本の槍を横っ飛びに左に避け、
追って出された二の槍も身を捻ってかわすと、その柄を両手で掴む。
そのまま渾身の力を込めて槍を握った相手ごと振り回すと、
振り飛ばされた石像がもう一体を巻き込み、二体揃って壁へ激突した。
アバンは逆手に握った槍を素早く構え直すと、敵の倒れる壁際に瞬時に詰め寄る。
石像が立ち上がり体勢を整えるより速く、追撃の槍を繰り出した。
『武芸百般』を自認する彼が、自身の体の僅かな違和感に気付くより早く、
流れるような動きの中から繰り出した、その槍の一撃が届くまさに直前、
ルイズの杖が彼らに高らかに突きつけられる。
「ラナ・デル・ウィンデ!」
その瞬間、二体の石像は大きな音を立ててコナゴナに弾けとんだ。
「冥土の土産に覚えておきなさい。これが『エア・カッター』よ!」
部屋中に立ち込める土煙を払うように、マントを翻してのたまうルイズ。
「そうですね、見事な『大爆発』でしたね、ええ」
爆風やら砕けた破片やらをもろに浴びて、床にひっくり返ったまま呟くアバン。
しかし、こちらを振り返ると同時に親指をグッと突き上げる、
ルイズの愛嬌に溢れる顔を眺めていると、なんだか自分まで嬉しくなってくる……
ルイズはそんな愛らしい笑顔の持ち主だった。
16 :
ゼロの家庭教師:2010/03/13(土) 13:44:40 ID:fUwd+gu/
ルイズの手を借りて身を起こしたアバンは、まずは改めてこの秘密の地下室を見渡した。
入り口から横に大きく広がる長方形の室内、
向かって左には棚や机、向かって右にはなにやら怪しげな四本足の置物?などが並ぶ。
石造りの壁には、紐状の武器などがたて掛けられ、壁と鎖で繋がれた鉄枷が四本伸びている。
鎖で繋がれた鉄枷は天井からも伸びていて、どうやら脇のレバーと連動して高さの調節ができるようだ。
「……………………………………」
先程の格闘(というより爆発)の影響で壁から落ちた鞭を拾いつつ、アバンは一転不快の念に包まれる。
モット伯は、どこまでも彼の性向には馴染まない人間だったようだ。
そんなアバンを尻目に早速机側の物色を開始したルイズは、引き出しを開けるために机を回り込み、
回り込んでからふと気が付いて、後ろの壁に埋め込まれたあるものを発見した。
「ねえ、これって金庫じゃない?」
石の壁の中にそこだけ黒い鉄の板が埋め込まれているのだ。これが金庫でなくて一体なんだろうか?
ルイズが板の表面を撫でるようにして調べると、すぐに取っ手が見つかった。が、引っ張っても開かない。
鍵が掛かっているようだが鍵穴も見当たらない……
そこまで調べたところで、ルイズの声を聞いたアバンが合流する。
ルイズは調査内容を手短に説明し、最後に自分の考えも付け加えた。
「フムフム、つまりこの金庫は魔法で施錠されている、と」
「鍵穴がないんだから、つまりはそういうことでしょ。
メイジ以外には開けられないようにしたのね。ウンウン」
そういって自ら目を瞑って頷くルイズの横で、アバンはさっと金庫に手をかざして一言呟いた。
「アバカム」
アバンの右手が僅かに光ったかと思うと、目の前で金庫の扉がひとりでに開かれる。
そのまま何事も無かったかのように物色を始めた彼の横、
ようやく目をあげたルイズは(アレ?なんで開いてるの?)と思いつつ、
とりあえず金庫の中身の確認に加わる。
この竜もどきと付き合っていると、もはやこの程度ではイチイチ驚いていられないのだ。
17 :
ゼロの家庭教師:2010/03/13(土) 13:45:55 ID:fUwd+gu/
金庫の中から出てきたのは、
何かがぎっしりと詰まった幾つもの皮袋、積み上げられた金の延べ棒、
鈍い光を放つ指輪やネックレス、古そうな手鏡、小ぶりの鐘、怪しい色をした薬品、薄汚れた人形、
そして大量の書類と手紙の束、等々だった。
アバンはまだまだ彼の手に余る、ハルケギニアの文章が書かれた紙の山をルイズに手渡すと、
残りの品々の鑑定を始めた。
まず皮袋の中身は大量の金貨だった。どの袋にも洩れなく金貨がびっしり。
試しにかじってみたが、粗悪品や偽者というわけでもなさそうである。
次に調べたのは指輪やネックレスの類、手にとってみると僅かに魔力を感じる。
どうやら装飾に使われている宝石部分に魔力が込められているようであり、
また同じく見るからに怪しげな薬品からも魔力を検出したが、
どれも実際に効果を試してみるにはリスクが高すぎるので、それ以上の調査は断念せざるを得なかった。
手鏡については覗き込んだ瞬間に効力が現れた。鏡に映った姿が本来の自分のものだったのである。
アッと思った次の瞬間には、アバンの『モシャス』の効果は消えてなくなっていた。
アバンはやれやれと苦笑しつつ、
(むしろ屋敷に進入した直後に変化を解かれずに済んで良かったというべきか)
などど考えていると、これまでそんな彼の様子など一切意に介してこなかったルイズが書類から顔を上げた。
「多分ビンゴね、これ。詳しいところまでは判らないけど、限りなくクロいと思うわ」
どうやらそれらの書類の束は、彼らがこの屋敷に乗り込んでから一貫して捜し求めている、
『モット伯の不正行為を示す証拠』となり得るものだったようだ。
「そうですか!ついに見つかりましたか……本当にご苦労さまでしたルイズ。
ではそろそろ仕上げに入りましょうか!!」
ルイズから手渡された書類を懐にしまうと、別途取り出した大きな袋の口を片手に握り
金庫から取り出した品々を片っ端からその中に突っ込んでいくアバン。
その様子にルイズは小首を傾げる。
「アレ?書類以外も持ち出すの?」
「ええ、私たちには必要ありませんが、『今回の犯人』には必要でしょうから。
こういった、『稀少なマジックアイテム』の類はネ」
悪戯っぽくウインクするアバンに、「ああそっか」と頷くルイズ。
最後に『どう見ても不気味なだけのただの人形』も念のために袋に突っ込むと、
袋の口を縛って肩に背負い、金庫の扉に以下の文章を記した紙を貼り付け、
2人は地下室を後にした。
『伯爵秘蔵の品々、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』
18 :
ゼロの家庭教師:2010/03/13(土) 13:46:58 ID:fUwd+gu/
地下室から件の通路を抜けて執務室まで出た2人は、
クローゼットの中のモット伯の様子を再度確認すると、そそくさと屋敷を抜け出した。
時刻は既に深夜遅く、もはや館内に残る人影も見かけない。
さて何事もなく敷地の門までたどり着いたはいいものの、
モット伯の屋敷から魔法学園まで、人間の足で帰るにはいささか遠い。
1時間やそこらはかかるのだ。
それまでのプレッシャーからの開放感を感じつつもその遠路を思えば、
(夜通し歩いて風邪を引いたりしないかしら?)
などと気が重い様子のルイズ。
それを見たアバンはその肩をそっと抱き寄せると、
キョトン、と見上げる彼女に微笑みかけ、空を見上げて呪文を唱えた。
――そういえば、眼鏡をかけてないじゃない。よく見れば、こんな顔をしてたのね。
2人は一筋の光となって暗い夜空を切り裂き、気が付けば学園に程近くの森の中に居た。
これはメイジの飛行どころではなく、それこそ竜に乗るより早いかもしれない。
『もはや生半可なことでは驚くまい』と思っていたが、
「直接学園に飛んで行くと誰かに見られる可能性もありますから、
ここから歩いて戻りましょう」
そういって彼女の手を引き歩くアバンの後ろ姿を眺めていると、
驚きを超えてなにやら夢の中に居るような、そんな不思議な気分になるルイズ。
さらに思い返してみれば、今夜の行動自体が全て、
以前の彼女なら考えられないようなもののオンパレードであり、
深く考えずとも、生まれてこの方こんな危険な橋を渡った試しはないが、
それを終えた今となってもまだ実感が湧かない。
なんだか急に全てが非現実的なものに思えてきて、
しかも、それが何故だか心地よかった。
興奮と驚き、開放感と安心感、それに眠気とが合わさった、軽いトリップ状態である。
手を引かれるままに歩いていたルイズは、高揚感に身を任せてアバンの背に飛びついてみた。
何も言わず首に手を回してぶら下がると、アバンもそっと足を抱えてルイズをおんぶする。
まるで遥か昔、幼い少女の頃に戻った気がした。あの大きな手に、背中に憧れた、あの頃に……
19 :
ゼロの家庭教師:2010/03/13(土) 13:48:06 ID:fUwd+gu/
背に負ったルイズの様子に笑みを漏らしたアバンは、今後の推移についてもう一度考えて見た。
まず今回のそもそもの動機であるシエスタの身の安全については、
伯爵家はしばらく未曾有の大混乱に見舞われるので、再び彼女に手を伸ばしてくる暇はないだろう。
各地に散った元使用人たちによって、伯爵の悪評はあることないこと国中に知れ渡ることになる。
そんな逆風の中、わざわざ自ら火に油を注ぐような行動も取るとも思えない。
また彼女には「伯爵からの使いが来て、件の話は延期になったと聞かされた」と証言するように言ってある。
落ち込む彼女に無理をいって午後も一日通常業務をこなしてもらったので、アリバイはバッチリ。
罪を着せられる心配も無い。
あとは『神出鬼没の大怪盗』に罪を被ってもらう算段だ。
フーケの犯行を完璧に再現できたわけではないので、厳密には疑いの余地はあるが、
伯爵にとっても、国中に広がるであろう『不正が発覚して王室の調査隊に立ち入り調査がどうの』
というような巷の疑惑を払拭するには、『巷でも悪名高いフーケに一杯食わされた』
という一種の汚名を甘受するのが一番の近道で、伯爵側も消極的にはそちらを望むだろう。
そもそも本当は『不正』が事実である上に、その証拠も他人の手に渡ったとあっては、
生きた心地はしないだろうし、勢い早まって演説の通りに『国外に逃亡』でもするかもしれない。
いずれにせよ、権威を笠にきた横暴なやり方は当分慎まねばならず、
伯爵には今回の事件を『高い授業料』だったと思って、
自らの態度を改める良い機会にしてもらいたいものだ。
……改められなかった場合には、『不正発覚』の『噂』を『事実』に変えてやることもあるだろう。
そんなようなことを考えている内に、トリステイン魔法学院の門にたどり着いていた。
「……着きましたよ、ルイズ?」
そっと背中に声をかけてみたが、スースーと寝息が返ってくるばかり。
なんの利益もないにも関わらず、口では文句を言いつつも、
実際には彼のために危険も冒し、親身に協力してくれたルイズ。
ルイズを負ぶったまま静かに部屋へと向かう際、
この小さなお姫様の誠意に心からの感謝の念を抱きつつ、
アバンは己の運命を想わずにはいられなかった。
(誰かのため、他人のために生きる……それが人間として生きる道であり、私の意思でもあります。
ダイ君の消息を求めて旅に出て、今ここでルイズと出会う。
はたして私は誰のために生きるべきなのか――ごめんなさい、フローラ。
私はまだまだ帰れそうにありません……)
以上、『長い一日』が本当に長い一日になってしまったけれど、無事書ききることができました。
>>13 久しぶりすぎて緊張し過ぎてしまいました。ありがとうございます。
おお、アバン先生か!
相変わらず笑顔で危ない橋を渡る人だなwww
アバン先生乙!
帰ってきてくれてマジ嬉しい
ほんと、フローラ女王といい、レオナといい、勇者ってのは女を泣かせるなぁ
ををっ おかえりなせーやしですアバン先生
>>20 GJ!
ずっと待っていたので続きが読めるなんてこんなにうれしいことはないよ!
投下乙です!
まさかこれの続きが読めるとは。今日はいい日だな。
良作だな。ペース上げてくれるともっと嬉しい。
最近色々と職人さんたちが帰ってきてくれて嬉しい。
春になって冬の間都会に出稼ぎに出てた父ちゃんが帰ってきた北国のひとの気持ちがわかったかもw
そろそろラスボスと下がる男がくるかな
これで日替わりの人も来てくれたら
ドラクエ系好きな俺的には感無量なんだが
そういやダイのキャラを呼ぶ奴は専用スレがあるんじゃなかったっけ
33 :
ゼロの戦闘妖精:2010/03/13(土) 20:34:26 ID:qHkAcqns
え〜、人気作品の投下を待ち望んでいる方々には申し訳ありませんが 誰も覚えていないかもしれない 空気作者です。
気がつけば 約三ヶ月ぶりとなりますが 五分後より投下させていただきます。
使い魔召喚の儀から一ヶ月強 爽やかな初夏の日差しの下、トリステイン魔法学院高等部二年生達は 自分の使い魔の調教に忙しかった。
間近に控えた『使い魔品評会』のためだ
これは、学院の年中行事の一つで、要するに『使い魔のお披露目』である。
ただ 学内だけでこじんまりとやるならともかく、生徒達の父兄(当然 貴族!)がこぞって参列する上、王宮からも来賓が訪れる事も多い。
特に今年は、『トリステイン王家 アンリエッタ妃殿下』が御見えになるとの知らせがあった。
そんな場でみっともない姿を晒すのは 末代までの恥!とばかりに皆 気合が入っている。
各自、小型の使い魔は 主に素早さ・賢さ・器用さ等を、大型種は強さを強調するような『芸』を考え それを完璧に演ずる特訓を続けていた。
ちなみに、この時期の二年生は 授業中の居眠りが通常の3〜5倍に増加する。
お披露目が『芸』である以上、その内容については当日まで秘密にしておきたいもの。しかし 芸の完成度を上げるには 練習は欠かせない。
必然的に 『深夜の秘密特訓』をすることとなり、授業を睡眠時間に当てる不心得な生徒が続出するが、一部の教師を除き「まぁ 仕方ない」と黙認されている。
そんな 特訓組の一人がキュルケだった。
「タバサ、ルイズ、感謝するわ。アナタ達のアイディアのおかげよ!
フレイムの火力 何倍にもなってる。
試しにギーシュのワルキューレを標的にしたんだけど、なんと一発でボーンだもの。驚いちゃった。
(ギーシュは泣いてたけど。)
なんとか連射も出来るようなったし、あとは命中率ね。」
サラマンダーは 火竜と同様に『炎のブレス』を吐くが、その威力は数段劣る。
そこで ルイズ達は、
・フレイムが 胸の中に炎を溜める。
・キュルケが その炎にファイアーボールの魔法をかけ 高圧縮した火球を作る。
・火球を発射。火柱の様な通常のブレスよりも 効率的に対象を破壊。
という改良を加えた。
あとは、それを如何にしてアピールするかだった。
一方タバサは・・・
本人が こういった学校行事に熱心でなく、ガリアからの留学生の為 トリステイン王宮から誰が来ようと気にも止めないので、
「練習・・・必要ない。」
とのこと。
出し物は、普段からイロイロと試している『高速飛行術』だけでも充分だろう。
ちなみに、ルイズはタバサに、『烈風式 超音速飛行術』について話してみたが、
「・・・無理。」
の一言で却下された。
「ルイズ、そう言えばアンタは何をするのよ?」
訓練を一休みしたキュルケが聞いた。
「私? 出ないわよ、品評会。」
「えぇ〜っっっつ!!!」
いつも、『貴族の誇り』等を熱く語り なによりお祭り好きなルイズが、品評会に出ないなど考えられない。
「ナニよそれ。ひょっとして、天変地異の前触れ?!」
「違うわよ。
そりゃ 私だって雪風を自慢したいのは山々なんだけど、隊長から 釘を刺されちゃったのよ。
『目立つような事はするな!』って。」
「なーるほど。一応アンタは『グリフォン隊の秘密兵器』だったわね。
いまさらって気もするけど。
まぁ、諦めなさい。軍隊に所属するって事は そういうのもアリなんだから。」
なぜか タバサもうなずいている。
「でも、さすがに『何もしない』ってのは寂しいから、コンペティションじゃなく開会式のアトラクションだけ 許可はもらったけどね。」
「やっぱり出るんじゃないの! で、何するのよ?」
「じゃあ ちょっとやって見るわね。」
そう言いながらルイズは 水の入った小さな容器をいくつも 地面に並べていった。
そして水の表面に『失敗魔法』をかけて、次々と微小な爆発を起こす。
立ち昇る水煙。強弱をつけ ランダムな容器から きわめて短い間隔で。
少し前 雪風を召喚するまでの『ノーコン剛速球』がウソのような、高度な制御能力だ。
「なんとなくスゴいのは判るけど、地味ねぇ。これを どう見せようって言うの?」
「…予測不能。」
「それはヒ・ミ・ツ。まぁ見てのお楽しみね。」
品評会当日、見事なまでに晴れ渡った空の下、校内に幾つかあるグラウンドの内 最大の校庭に特設された観客席は 二年生の父兄その他関係者で埋まっていた。
あとは 本日の主賓 を待つばかりだった。
そして 会場に至る道 その遠方から歓声が響いた。
先導と護衛の黒馬車に続いて現れる 豪奢な白馬車。扉に描かれた、トリステイン王家の紋章。
皇女 アンリエッタ姫殿下の御到着である。
学院までの道すがらでも、沿道に集まった多くの市民から アンリエッタ姫を称える声がかけられていた。
トリステイン王家への国民の支持は 比較的安定して良好である。
他国に比べ 租税が抜きん出て高いわけでもなく、物価が高いわけでもない。
貴族の 平民に対する差別的扱いは、どの国でも同じ事。
六千年の刷り込みにより 平民自身が俺を当然と思っている以上、問題視する者は無い。
アンリエッタ姫は その可憐な容姿で、平民からの好感度は高い。
では、貴族からは?
上級貴族 それも宮廷に近い者の殆どは『飾り物』としか見ていない。
それも 『母娘揃って』だ。
先王が亡くなられて早十年弱 以来 皇后が国家の頂となったが、女王として自ら即位する事も無く 皇女に婿をとって即位させる事も無かった。
それは 亡き夫への喪に服すという事なのだろうが、国の要たる『国王』を長期に渡り空位にするのは 本来やってはならぬことだ。
国家の箍が緩み、根本が歪む。進路に惑い 内部は腐る。外部からの悪意に食い荒らされ 弱体化の一途を辿る。
その表れが 先の見方だ。ある大臣など非公式な場では、「神輿は軽くて バカが良い」と言って憚らない。
それでもなお トリステインが、かろうじて国家の体制を保っているのは・・・
「殿下、そろそろ会場入り致します。
生徒や観客の為 窓より御手を振って頂けますかな。勿論、その様な仏頂面では無しに。」
王族専用の馬車に同乗し 静かな口調ながら失礼な事を平然と言ってのける、ブリミル教の法服を纏う人物。
『鳥の骨』とも揶揄される 痩せぎすの男。老けて見えるが まだ四十代後半。マザリーニ枢機卿。
彼こそが 現在 この国を取り仕切る、最高権力者と言ってよいだろう。だが、自身 それを望んだ事は一度も無かった。
「貴方などと こんな狭い所で顔を付き合わせていれば 誰だって機嫌が悪くなります!
あぁ 今日はこんなに天気が良く 風もこんなに穏やかなのに、何故無蓋の馬車を用意しなかったのです。
せめて 爽やかな風を感じられたら、少しは気分も晴れましょうものを。」
アンリエッタは、彼が自分の家庭教師だった頃からずっと マザリーニが嫌いであり苦手だった。
「それは許可出来ません。
アルビオンの内乱の影響で 我が国の治安も、幾分か悪化しております。
殿下の御輿入れの件と合わせまして、御身を傷付けんとする不埒者は 何処に潜んでおりますやら判りません。
その為に 今 魔法衛士隊3隊が、総出で警戒に当たっております。
どうか 御自重願います。」
如何に嫌っていても、マザリーニの言葉は 常に正論であった。アンリエッタの覚えている限りにおいて、彼を言い負かせた例は無かった。
待ってました支援
確かアバン先生はこのスレの初期からいるんだっけ?
その当時
>>32はまだなかったはず
馬車の窓を開けると 既にトリステイン魔法学院の敷地内だった。
会場に向かう道には 品評会に出ない一年生と三年生の生徒達が ずらりと並んで姫様の車両を出迎えていた。
アンリエッタは 自分と同じ年頃の 彼等に向けて手を振りながら思う。
(もし こうして皆と学校へ通えたならば、私にも沢山の『おともだち』が出来たのかしら・・・)
この魔法学院は、貴族の子女が魔法を学ぶ為の施設だが、流石に王子や皇女が入学する事は 想定されていない。
王族の子女は、専門分野毎に 一流の専属家庭教師が付くのが普通である。
当然のように教師達は 壮年又は老人であった。
また 御付のメイドすら、選抜されたベテランが配属される。
ごく稀に 臣下の者の子供が宮中に上がることもあったが、身分の壁は如何ともしがたく 畏まった対応しかされなかった。
どれほど多くのの人間が居ようとも、アンリエッタに『おともだち』は、誰も居なかった。たった一人を除いて。
今年の『使い魔品評会』への参列を 無理矢理スケジュールに組み込んだのは、その『おともだち』が召喚した使い魔の噂を耳にしたからだった。
父王がまだ健在だった頃、王は国家の運営で迷う事があると お忍びで ある大貴族の元を訪問していた。
その時 アンリエッタは、必ず連れて行ってもらうようにせがんだ。城の外へ出られるのが 嬉しかった。
大人達が何か難しい話をしている間、幼い姫は その貴族の三人娘に預けられていた。
怖いお姉さん、優しいお姉さん、そして 二つ年下の女の子。
王宮では無い『場所』、少女達だけの『時間』、暖かな家族の『雰囲気』が、アンリエッタを開放的にさせた。
この場 このひと時だけ、年齢相当の『女の子』でいる事が出来た。
そして 三姉妹の末っ子、二人の姉とは幾分歳の離れた少女は、アンリエッタが来訪するのを心待ちするようになった。
幼さゆえか、身分の壁など無いが如くに接してくれるこの娘が、アンリエッタにとっても かけがえの無い『おともだち』となっていった。
やがて 時は流れ、父が死に かの貴族邸へと出向く口実を失い、交流は途絶えた。だが 姫君は忘れなかった。忘れられる筈が無かった。
(あぁ ルイズ。貴女は今でも あの頃の事を覚えていてくれるのかしら?)
妃殿下が特別貴賓席に着かれたのを確認すると、学院長 オールド・オスマンが会場中央の舞台へ登場し、開会の辞を述べた。
エラい人の挨拶というのは、年齢に比例して長くなる傾向があるらしい。齢三百とも四百とも噂されるオスマン学院長も例外ではなく 観客達が飽き始めた頃、
「…この晴れ渡った空をご覧下さい。」
それは、予め決められていた合図だった。
使い魔達の控え所で合図を待っていたコルベールは、通話機のトークボタンを押した。
「スネークからゼロ、ミッションを開始せよ。」
「ゼロ、了解。ミッションを開始する。」
「健闘を祈る。オーヴァー。」
自らの手で完成させた『無線機』を実際に使える事が嬉しいのか、結構ノリノリである。
「さぁ 行くわよ、雪風!」
〈 R.D.Y 〉
上空待機中の雪風は、機体を急降下させた。
「…始祖ブリミルも 本日の式典を祝福して下さっているようではありませんか!」
オスマンの言葉に 空を見上げていた観客の何割かは、気付いた。
「まずは、皆様への歓迎の意を示すショーをもって 『使い魔品評会』を開始させていただきます。」
開会宣言終了とほぼ同時に 雪風が轟音と共に上空100メイルをフライパス。
観客席のあちらこちらで悲鳴が上がり、アンリエッタを護衛する衛士達が殺気立つ。
軽いパニック状態になりかけた会場を鎮めたのは、グリフォン隊のワルド隊長。
「観客の皆様及び各衛士にお知らせする。先ほどのアレも 今年の生徒が召喚した使い魔の一体。
危険な物ではございません!」
その後 言葉を繋いだのは、なんとアンリエッタ姫だった。
「そうです。皆様、御安心ください。
オスマン殿は仰いました。これは『ショー』だと。
ならは、これで終わりという事では ございませんのでしょう?」
「ほっほっほっ。申し訳ない。
少しばかり『さぷらいず』が過ぎましたかな。
もちろん、お楽しみは まだこれからでございます。引き続き 空に御注目を。」
会場上空を過ぎ 180度ターンした雪風は、ミサイルの代わりに装備していた物を投下する。
それは 雪風の全長とほぼ同じ長さの棒状の部品で、二つ折りになっている。投下されると展開し 30メイル程の一本の棒になった。
中央の部分にはワイヤがあって雪風の尾部に繋がれている。
この日の為に 馴染みの職人に作らせた特注品。雪風は 横一文字の棒を牽引しながら飛行していた。
会場上空まで戻ると 棒状の装置は、何やら白い物を噴出し始めた。ごくごく小さな 雲の塊だった。
雪風が飛び去った後には 無数の雲の点が並んでいた。青い空に白い雲で書かれた巨大な文字は こう読めた。
『使い魔品評会へ ようこそ。』
観客席から 驚嘆の声が上がった。
雪風が牽引している金属棒には 中に大量の水が詰っており、それが零れない程度の穴が 進行方向後方に向け多数開けられている。
ルイズは 穴の中の水に魔法をかけて爆発させ、霧状にして噴出させている。言わば、巨大な『魔法式 インクジェットプリンタ』。
雪風は 正確な図形を形作る為の爆発タイミングを指示している。まさに ルイズと雪風 このコンビでなければ不可能な技だ。
再度Uターンした雪風が次に描いたのは、パイプを燻らす『オールド・オスマンの似顔絵』。
その絶妙なデフォルメぶりに 来賓からは苦笑がもれ、生徒や教師は、隣に小さく描かれた『怒るミス ロングヒル』に大ウケしていた。
三度目、最後に描かれたのは 『アンリエッタ妃殿下の肖像』だった。
精密な描写。繊細なタッチ。先ほどの似顔絵とは比べ物にならない見事さだった。
どこまでも青い空に 白一色で描かれた姫君。それは幻想的なまでに美しかった。
観客席からは、うっとりとした溜息と 賞賛の拍手が鳴り響いた。
だが、肖像画の下にひっそりと添えられたメッセージに気付いたのは ごくわずかだった。
【幼き日の『ともだち』より】
(ルイズ、貴女なのね!)
それでも 伝えたかった人物には、判って貰えたようだ。
その後 雪風は、特製噴霧器を切り離し、パラシュート付きで投下した。
(召喚場の格納庫前に落ちるよう 風速風向は計算済み。)
で、学院に戻ることなく グリフォン隊舎へと向かった。
隊長が警備の為来校するのは事前に知っていたし、『目立つ事はするな!』と言われていた手前 このまま会ったら小言の一つも言われそうだったからだ。
品評会の結果は、キュルケとタバサのワンツーフィニッシュとなった。
風竜の常識を超える速度でのアクロバット飛行、ゴーレムを一撃で粉砕し 毎秒一発の連射が可能な爆裂火炎弾。
本来なら どちらも軍関係向けの 玄人受けするネタだったが、キュルケの方は演出が上手かった。
ギーシュを宥めすかして 本番でもワルキューレを標的として作らせた。
その際の注文が、『学院の教師 特に嫌われ者の先生をモデルにする事』。
当初 男性型ゴーレムを作ることに抵抗していたギーシュだったが、自身 大嫌いな某先生(型ワルキューレ)の断末魔を見てからノリ気になり、本番ではモデルの体つきや仕草 癖の一つ一つに至るまで、完璧に再現して見せた。
生徒は勿論、対象となった教師以外の学校関係者からバカ受けし、その様子から事情を理解した来賓達からも クスクスと笑いが漏れていた。
アンリエッタ姫は、隣のマザリーニ卿から顔を背けながら、
(次は是非とも この『鳥の骨』のゴーレムでやってもらいたいですわね。)
と 呟いたと噂されている。
会の最後 表彰式で、
「今年も 皆 素晴らしい使い魔を召還する事が出来たようです。
審査も困難を極め 惜しくも入賞を逃した生徒も多数いた事を申し上げておきます。
しかし、一位と二位については違います。
召喚された使い魔自体も最上級ですが、演舞に当たっての創意工夫とその為の訓練。
この品評会の何たるかを体現してくれた、ダントツの優勝・準優勝でした。」
との オスマン学院長の総評に対し、当人達が異議を唱えた。
「ありがとうございます。
でも、私達と彼女の名誉の為、これだけは言わせていただきます。」
「・・・『一番』は、別にいる。」
(本当は、あの『機関砲』を目指してたんだけど、まだまだよね。)
(『音速』・・・いつかは越えてみたい。)
それに対して 学院長は二人に近付き 声を潜めて、
「ほっほっほっ、言いたい事は判っとる。
じゃがな これも、『大人の事情』というヤツじゃ、あんまり突っつかんでくれんかのぅ。」
キュルケはニヤリと笑って、タバサは無言で了解した。
そして 式典終了後、学院長室をアンリエッタ姫が訪れて
「今年の品評会、どの使い魔も大変優秀でした。その中で入賞された方々は 勿論素晴らしかったのですが。
でも 私は、もう一人 個人的に演技を称えてあげたい方がいるのです。」
「そのお言葉だけでも、きっとその生徒は喜ぶでしょう。
で、お目に留まりましたのは どの演目の生徒ですかな?」
「はい。一番初めの・・・」
「おぅおぅ、あの『巨大モルフォ蝶の羽化』ですかな?」
「いいえ。
一番目の演技者の更に前、空に私の肖像画を描いてくださった方です。」
それを聞いて オールド・オスマンの顔が僅かに歪む。
学院側の意向としては、雪風に王宮が興味を持つのは望ましくなかった。
しかし、先日 ルイズ本人から、『グリフォン隊入隊』の届出があった。
幸い ワルド隊長からは、雪風は『秘匿戦力』と聞かされているが これ以上の情報拡散は避けたいところである。
「あの方も 今年使い魔を召喚された二年生なのでしょう?
確か 衛士隊の隊長が、そう言ってましたわね。」
(ワルド殿、あの時 場を静めてくださったのは感謝しますが、これはチョンボですな。)
「出来れば 直接お会いして 御礼を言いたいのですが、今 どちらに?」
「いや ちょっと都合がありましてな、学院にはおらんのです。」
「それでしたら その方と使い魔に、後日王城へ参るよう伝えていただけますか?
私も 久しぶりに『おともだち』に会えるのを 楽しみにしていると。
では、宜しくお願いしますね。」
そう言って 妃殿下は退出していった。
(そういえば アンリエッタ様とヴァリエール嬢は、旧知の仲じゃったか。
こりゃ 完っ璧にバレとるのぅ・・・)
学院長は 頭を抱えていた。
翌日の夕方、雪風は トリスタニアの王城に飛来した。
不審騎として攻撃される事の無い様 到着時間は分単位で連絡済である。
近衛隊の若い騎士に出迎えられるが、彼等も雪風が気になって仕方がないようだった。まぁ 気持ちは判らなくも無い。
謁見の間で待たされる事 数分、待ちかねたように現れるアンリエッタ妃殿下。
「ルイズ・フランソワーズ・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、お召しにより 参上仕りました。」
一応 型どおりに控えてみせるルイズ。ただし 衣装はドレスでなく学院の制服で、ポーズも貴婦人の礼ではなく 騎士のそれだったが。
「まぁルイズ、なんてことでしょう!貴女まで そんな畏まった物言いをするなんて。」
嘆くアンリエッタに、
「姫様。ここは王宮の表舞台、あのヴァリエール家の子供部屋と同じ様にはまいりません。」
軽く笑って答えるルイズ。
「それもそうですわね。では。」
やにわにルイズの手を取って 駆け出す姫君。慌てる近衛や侍従達に、
「私達はこれから 寝室で、懐かしい思い出話に花を咲かせます。私の恥ずかしい話も出てくると思われます。
よって、何人たりとも来てはいけません!王家の極秘事項です。良いと言うまで 誰も入ってはなりません。
入った者は 打ち首に処します!判りましたね!!」
そう言って 疾風の様に去っていってしまった。
支援
嵐の如く 自分の寝室の駆け込んだ姫君は、専属のメイドまで追い出した上に 何度も魔法探査を行って 盗聴の有無を確認した。
更に 部屋の壁全面に ごく薄い水の幕を形成し、室内の振動を完全に吸収するという 高度な防諜策まで実施した。
「さあ これで大丈夫ね!」
おもむろに ルイズと向かい合うアンリエッタ。そして・・・
「ルイズ、ルイズッ、あぁ ルイズッウゥ〜
どうして今迄 会いに来てくれなかったのぉぉぉ。
私 淋しかった淋しかった淋しかったぁぁ〜」
抱きついて、力一杯抱きしめて、年下の少女の胸で泣きじゃくる妃殿下。
「おわっ ちょっちょっと姫様!一体どうされたんですか?
泣いてちゃ判りませんヨォ。」
突然の事に 対応できないルイズ。
「イヤっ、そんな呼び方。
昔みたいに呼んで! いえ、呼んで欲しいの。」
すがるような視線、尋常ならざる精神状態、ルイズに『拒否』という選択肢は無かった。
「わっ、判りました。それじゃ 二人一緒に。」
「えぇ。」
手を取り合って、真っ直ぐにお互いの瞳を見つめあう。
「・・・あ、『アンねぇ』!」 「『ルーちゃん』!」
だが、耐え切れずに眼を逸らしてしまうルイズと 「プッ」っと吹き出してしまうアンリエッタ。
「だめぇー、やっぱりハズがしいわ〜!」
「だったら ヤラせないでくださいよ。
まったく、姫様こそ 全然変わってないじゃないですか!」
ちょっと はしたない位に大笑いする二人だった。
「…だから お父様が亡くなった後、ヴァリエール公爵の所へ行く理由もなくなってしまったし、私一人で出掛ける事もできなかったし。」
「私も あの頃から本格的に魔法の練習を始めて、結果がアレだったし…」
ベッドに並んで腰掛け 思い出を語り合う。
「そういえば、ルイズ 貴女魔法使えるようになったんでしょう? あんな立派な使い魔を召喚できたんだし。」
「それが、召喚だけが特別だったみたいで それ以外は相変わらず…」
「でも、昨日の『空の肖像画』は 使い魔の力じゃなく貴女の魔法なんでしょ。
あれは 雲を発生させて絵を描いていたんだから 風系統か水系統の魔法のはず。」
「いいえ。私に出来るのは、魔法を失敗させた爆発だけ。
それでも 使い方を工夫すれば、何かの役には立つんです。そして 雪風の手助けがあれば、あんな事も出来る。」
そして、『空のお絵かき』のタネあかしをすると、
「『使い魔が爆発の順番を教えてくれる』ですって? それも、『声では無い声』で!
なんて凄い『絆』なのかしら。サスガは『浪漫飛行』の雪風ね。」
それを聞いたルイズの表情が硬くなる。
「…姫様、その名前、一体何処で?」
『浪漫飛行』とは、学院の生徒達が付けた雪風の二つ名?だった。(他に『星空デート』『ナイトフライヤー』等も。)
一応 雪風に乗せる前には、他言無用 特に学生以外には絶対話さないよう誓約させているが・・・
支援します
「フフフ。ルイズ、貴女はミスを犯しているわ。」
犯人に向けて 事件の真相を語ろうとする名探偵の様に、アンリエッタは『ビシッ』っとルイズを指差して語る。
「雪風の搭乗料金を無茶苦茶な高額に設定したのは、殺到する搭乗希望者を制限するためよね。
でも それは誤算だった。
自分の小遣いでは足りない それでも乗ってみたい、そんな生徒達は 親から金を借りようとする。
当然 何に使うのかと親から聞かれるわよね。そうなれば 内緒になんて出来っこない。
魔法学院の生徒は 皆貴族の子女。宮廷関係者や議会重臣の子供だって いくらでも居るわ。
今のところ そんなに注目されていないけど、結構評判になってるわよ。」
(まぁ そんな事だろうとは思ってたけど…) ルイズは 深く溜息を吐いた。
「それと、学院のメイド達に口止めをしなかったのも失敗ね。
メイドって 別に世襲の職業って訳じゃないはずなのに、親子二代とか 姉妹揃ってとかのメイド一族は、かなり多いの。
中には、『母は王城勤務で 娘は魔法学院勤務』なんてことも。
そういう『メイド情報網』って 意外と侮れないものよ。」
アンリエッタ姫は、宮廷貴族達が言うほど『バカ』ではない。頭の回転は むしろ速い。
ただし 一般常識等に欠けるため、傍から見てヘンな発言や行動が多い。
原因は 彼女の父親にある。
国政の常識から逸脱しながらも 国と民を豊かにする奇策を立案し押し進めようとしていた先王の、娘に対する教育方針は、
『学は楽なり、学ぶを楽しめ』。
つまり、詰め込み・押し付けを廃し 個性を尊重・才能を伸ばす事に重点を置いたもの。
上手くいけば 天才児が出来上がるが、異世界の某国では それを実施した結果『ゆとり世代』が誕生している。
更に アンリエッタ姫の場合、先王が亡くなって以降 保守的な旧来型の教育方針に路線変更したため、『常識=ツマラナイ』との認識を強めてしまっていた。
「それでね、今晩 貴女に来てもらった本当の理由なんだけど・・・
ルイズ、お願い 私を雪風に乗せて!」
言われたルイズは にっこりと笑う。
「ええ お安い御用です。いつでもどうぞ。」
アンリエッタの話では、彼女は王宮で孤立しているらしい。
さびしい日々を過ごす『おともだち』に、少しでも力になってあげられる。それが嬉しかった。だが、
「じゃあ すぐ出発ね。行き先は アルビオンよ!」
「へっ?!?」
どうやら いつもの遊覧飛行というわけにはいかないようだ。
「ちょ ちょっと姫様!アルビオンは今 内乱が発生していて、王党派とレコンキスタが!
だめです、危険です、死んじゃいます!」
慌てて止めようとするルイズ。
「判っています。それでも私は往かねばなりません。
これは トリステインの将来にとって 非常に重要な問題なのです。」
支援
一転して 真顔の姫君。
「アルビオン王家の皇太子 ウェールズ様と私は、幼い頃からずっと 惹かれあっていました。王族の義務や責任など 何も知らない頃から。
でも いつか判ってしまうのです。王族の婚姻が 自らの意志だけでは決められないこと、極めて有効な 外交手段の一つである事を。」
「姫様…」
「ルイズ。私は間も無く 隣国ゲルマニアの皇帝陛下の元へ嫁ぎます。
はっきり言えば ゲルマニアの兵力を借りる為、レコンキスタからトリステインを守る為、この身を売り渡すのです。」
ルイズは知っていた。トリステインとゲルマニアの軍事同盟締結。その代償がアンリエッタの嫁入りであると。
『王族は、国の為 民の為に生き そして死ぬ』とは、ハルケギニア全ての王家に伝わる言葉ではある。
そんな事は建前に過ぎない。何処の誰が 他人の為に己が身を投げ出すというのだ?
だが アンリエッタはそうするだろう。
亡き父の教えだったから。敬愛すべき 唯一の大人から授けられた言葉だったから。
それは アンリエッタの中で、あるべき『貴族の理想像』と化していた。彼女は それに殉ずるだろう。
とは言え、
「それにしたってネェ〜
あんなエロオヤジと結婚だなんて!一体何歳差だと思ってるのよ!
『第四夫人』って、ナニよそれ!皇太子ですら私より年上って どうしろって言うのよ!」
押さえつけていた本音が出たのか、まくし立てるアンリエッタ。
「ハァハァ…
ちょっと興奮してしまいましたが、別に この結婚がイヤだというわけではありません。
私の身体に わが国を救う事のできる兵力と同等の価値があるというなら 王族の義務に従い 喜んで身を捧げましょう。
私は誇りを持って ゲルマニアに参ります。」
ここで一旦 言葉を切ったアンリエッタ姫。
「しかし アルビオンには、全てを御破算にしてしまう 危険なモノが残されているのです。」
「姫様、それは一体。」
「私の恋文です。」
「はぁ?」
ベッドに腰掛け 遠い目をして語るアンリエッタ。
「私のウェールズ様への思い。これはまったくの私心ではありましたが 嘘偽り無きもの。
それを証明せんが為、私は・・・私は、
文に『始祖ブリミルに誓って』 と書き記してしまったのです。」
ルイズも納得した。確かに それはチョッとマズイ。
ハルケギニアにおいて、『始祖ブリミル信仰』の信者は、貴族・平民の別無く 全人口の8割以上 いや9割近い。
それゆえに 始祖の名の下に記された文書は真実であり、逆に その名を記した書面で 虚偽を書くことは許されない。
ましてや 王族の書いたものとなれば、便所の落書きすら公文書化しかねない。
「この手紙は なんとしても回収 又は破棄してもらわねばなりません。
その為にアルビオンへ密使を送ろうにも、宮中には私に味方してくれる者は居ないのです。
母ですら 何も対応できずに、鳥の骨あたりに泣き付くのが関の山。
それに 密使を送るとなれば、ウェールズ様宛の親書を持たせねばなりませんが、それがまた何者かの手に落ちるような事があれば 本末転倒。
なればこそ、私自らが出向かねばならないのです。」
なるほど、一応の理屈ではあるが、実際のところ皇太后様や枢機卿等にバレて叱られるのがイヤなのだろう。
もしくは 愛しのウェールズ様に一目会いたいというのもあるかもしれない。
「品評会の時 貴女が飛んでいた高さって、大体100メイルで合っているかしら?
で、会場上空を通過する時間を計測して 速度を概算してみたんだけど、あれ 実は準優勝した風竜よりも速いでしょ。
それも かなり余裕みたいだったから、全力なら もう少し速く飛べるわよね!
だったら、今からアルビオンまで行っても 夜明け前には戻ってこられる…そうよね?」
実際 アンリエッタ姫は、頭の回転が速い。どちらかといえば 理系の思考だろうか。
しかし 常識に欠ける。根本的な所が間違っている。
篭城戦 しかも落城寸前の状況。少女二人だけで 敵兵の包囲陣を突破しようというのだ。
ベテラン諜報員ですら生還が危ぶまれる戦場。にもかかわらず、自分が死ぬという可能性を考えていない。
全く『非常識』なアイディアである。
だがそこに、『非常識な使い魔』が加わると…
ルイズは思う。
姫様が私を『おともだち』と思っていてくださったように、私にとっても姫様は 大切な『おともだち』です。
できることなら 何も知らずに幸せな『おひめさま』でいて欲しかったんですが、今のトリステインには そんな余裕は無いんですよね。
だから 連れて行きます、戦場の真ん中へ。敢えて 知ってもらいます、戦争の実態を。
利用させていただきます、この国を守る為に。
「はい、姫様。可能です。
ただし 準備の為、半刻程時間をいただけますか?」
(続く)
以上です。
多数の支援 ありがとうございました。
アンアンのキャラって 難しいです。
いまいち把握できません(泣)。
次回は 『アンリエッタ姫 アルビオンに行く』の巻(予定)。
雪風に乗っていくので、夜行日帰り弾丸ツアーです。
ギーシュ キュルケ タバサ ワルド、皆 置いてきぼり。
定員オーバーで乗れないし、他の騎獣じゃ追いつけないよなぁ。
ラ・ロシェールにも立ち寄りません。必要無いし。
このSSで ワルドを白ワルドに変更したのは、これが理由の一つだったりします。
原作におけるワルドの見せ場、ほぼ全部カットですから。
乙でした!
雪風の方投下乙そしてGJでした!
なんだか素敵なアンアンですね。可愛いです。
待ってたぜよ
乙でした
雪風来たー。
ここのワルドが鬼平過ぎて好きすぎる。
スーパーマン召喚
ワルキューレ達をコネコネして太陽に投げ捨て、
ニューカッスル城を引っこ抜いて転がし、レコンキスタを一網打尽
アルビオンを放り投げて艦隊にぶつけ、サクサク屠る
スーパーマンは精神操作系の攻撃が効き易く
ついでに致命的な事に全ての魔法攻撃に対して一切の抵抗力を持たないので
ワルキューレとかに一発殴られると瀕死なんだぜ
……そういえばそうだっけ。
ワルキューレは物理ダメージかもしれないけど、ルイズの爆発は間違いなく死ねる。
あいつは、時間も巻き戻せるし、結構無茶が利くはず。
デタラメな強さだけど弱点もでかいのよね
だからいつもバットマンとケンカすると地力では圧倒的に上なのに負けてる
それはバットマンが凄いのだと思うぜ?
こうかは ばつぐんだ
純粋なパワーやスピードは超サイヤ人より遥かに上なのにその辺りが極端なんだよな
まぁ、その辺りは完璧超人に魅力をあまり感じないのと同じ事だな。
俺は好きだぞネプチューンマン
>>60 バットマンってテレビドラマじゃ小太りのおっさんだったんだよな
イチバァーン!
クォーラルボンバー!
ナンバーワン!
萌え萌え大戦の人、そろそろ戻ってきてくれないかな。
ワルドはどこまでいってもワルドなのだ!そのひん曲がった根性は生涯まっすぐにはならねえ!
に見えた
マザコンはどこまでいってもマザコンなのだ!そのひん曲がった性癖は生涯まっすぐにはならねえ!
に見えた
うめーうめー
ジョワジョワ〜
キュルケ「だから!最強の超人はマンモスマンだと思うのよ!」
ルイズ「あんなの石喰ってウメーウメー言ってるだけじゃない!スーパーフェニックスよ!」
タバサ「……あくましょうぐん……」
キン肉マンのコミックス全巻(U世含む)を召喚したため
大ブームが巻き起こった学院でのとある日常の一コマ
貴族たるもの決着はリングの上でッ!
平民も貴族も不満はリングの上で解決したそうな、めでたしめでたし
ギーシュはサンシャイン先生か、アシュラマンだな。
平民達に大人気ブロッケンJrとジェロニモ
>>77 ギーシュは狂乱の貴公子ロビンの方に憧れそうな気がする。
テファにはウォーズマン
リングの上では色んな意味で負けなしのスカロン
そこでオカマラスに惚れられたスグルさんの出番ですよ
漫画召喚・・・しても読めないんじゃね?という突っ込みは野暮か
同じような方向性だとジョジョもかなり物議をかもすのだろうな
ザ・サンを仲間に引き込んでればDIO相手に楽勝だったんじゃね?
とか・・・ファミコンジャンプが懐かしい
アレは上条さんの右手にデルフくらいの反則だったわぁ・・・(しみじみ)
あとアイテム召喚系でふと思ったが
シュールストレミング召喚なんてもう既出だったっけ
屋外だから死ぬのはルイズだけだろうけど
もしくは先生
タバサ「ハシバミ草によく合う」
さて、そろそろあのお方が来られる頃か・・
皆さんこんにちは、また今週もやってくることができました。
今週分の投下をいきたいのですがよろしいでしょうか。
問題なければ15:50より開始いたします。
予言者か
お待ちしていました。
第91話
迷いと戸惑いと…
ウルトラの父
ゾフィー 登場
「地球に……帰れるのか……」
戦いから時が過ぎて、すっかり日も落ちた静かな夜の闇に才人のつぶやきが
流れて消えた。
ここは、ウェストウッド村のティファニアの家、さらにその隣にある小さな畑。
超獣サボテンダーに踏み潰されたあとに耕しなおされたが、作物は時期を
逃したために黒い土があらわになっている。けれども空を見るには村の中で
一番開けているその真ん中で、才人はズボンのポケットに手を突っ込んだまま、
かかしになったようにもう二時間もこうして空を見続けていた。
「サイト、もういいかげん中に入りなさい。スープが片付かなくて、テファが困ってるわよ」
背中からした声に振り向いてみると、そこには彼のご主人様が一人で立っていた。
「ルイズ、悪い、今メシを食う気にはなれないんだ」
「そう……でも、あれだけ動いたんだから、食べなきゃ体がもたないわよ……って、
ミス・ロングビルが言ってたわ」
「……サンキュー」
柄にも無く穏やかな口調で、ずっと戦いどおしだった才人の身を下手な照れ隠しを
しながら案じてくれているルイズに、今の才人は一言の礼を持ってしか答える
ことができなかった。
二大超獣との激闘から、もう六、七時間はゆうに過ぎた。あれから後で、
GUYSの面々といったん別れた才人とルイズたちは、避難していた
ロングビルやティファニアたちといっしょに、ウェストウッド村に帰ってきていた。
しかし、皆と再会しても才人は上の空で夕食にも参加せずに、こうしてずっと
一人でもの思いにふけっていたのだ。
「まだ、あのことを考えてたの?」
「ああ」
それ以上を言う気力は湧かずに短く答えた才人に、ルイズも無理に問いただそうとは
しなかった。いつものように強権的に口を開かせるには、その問題はあまりにも
重すぎたからである。
「あの空の上に、あなたの故郷があるのね」
「ああ……おれのふるさと、地球が……」
「チキュウ……」
ルイズは、感情の浮かんでいない言葉で、才人の故郷の名前を復唱した。今や、
手の届かない幻ではなくなった地球へとつながる亜空間ゲート、それがこの空の
はるか上に月の光に隠れて、確かに存在しているのだ。
「あの先に、日本が、東京が、アキバが、おれの学校も、友達も……母さんも、
父さんもいる」
「……」
きっと今、才人は故郷にいたころの思い出を一つ一つ呼び起こしているのだろう。
もう二度と帰れないと思っていた自分の家や、離れ離れになってしまった家族、
思い出は、その人間の過去から今へと続く大切な架け橋だ。悲しいものも、
うれしいものも、今の自分を形作るかけがえのないブロック、そしてルイズも
そんな彼の姿に、意図しなかったとはいえ才人にそんな苦しみを与えてしまった
ことに罪悪感を感じていたから、じっとその横顔を見つめていた。
だが、思い出に浸るだけでは未来には踏み出せない。
「サイト、まだ迷ってる?」
「わからない……というか、まだ心の整理がついてないのが正直なとこだ」
「そうね。たった一日で、あまりにも多くのことがありすぎたわ……」
才人とルイズは、満天の星空の下で二つの月を見上げながら、これまでの人生で
一番長かった今日の日の出来事を思い出した。
レコン・キスタと王党派・トリステイン連合軍の最終決戦、姿を現した超獣ブロッケンと
バキシムとの死闘と敗北、そして時空を超えて助けにきてくれたウルトラマンメビウスと
CREW GUYS、彼らはまさにハルケギニアの伝説にあるとおりの、奇跡となって
この星とエースの絶対絶命の危機を救った。
しかし、戦いに勝利して才人とルイズの前に現れた彼らとの出会いは、そのまま
才人にとって喜びとはならなかった。時空を超えてハルケギニアにやってきた
GUYSの存在は、この世界にとってイレギュラーな存在である才人に、ここは
地球ではなく、自らもまたこの世界には異質な存在であることを自覚させ、
そして地球人としてこのハルケギニアでどうするのかの、重要な決断を迫っていた。
「地球に、帰れる……」
リュウからその言葉を聞いたときに、才人の心を貫いたのは歓喜ではなく、
狼に育てられた少年が初めて人間を見たときの、そんな感情だったかもしれない。
地球、それは才人の故里、才人が生まれ、育ち、多くの人を愛し、そして
愛されてきた、忘れることのできない思い出の場所。しかし今、地球という言葉は
残酷なまでの鋭さをもって才人の胸に突き刺さっていた。
「地球に、本当に帰れるんですか?」
「ああ、そのためにガンスピーダーの座席を一つ空けてきたんだ。それに、
君は家族から捜索願いが出ている。ご両親も、大変心配しておられるようだ」
その言葉を聞いて、才人の心に強い衝撃が襲った。
「おれがここにいることを、母さんたちは」
「いや、まだご存じない。なにせ、時空を超えた場所にいるなんて、俺たちでさえ
半信半疑だったんだ」
「そう、ですよね」
才人の心に、忘れかけていた両親のことが蘇ってきた。勉強しなさいとばかり
言っていた母に、無口なサラリーマンだった父、あのころはそんな特別なものだとも、
貴重なものだとも思っていなかったが、離れてみたら、思い出してみたら喉の
奥から何かが湧いてきて、あふれそうになってくる。だがそれと同じくらいに、
思い出すと胸が締め付けられる人たちがこの世界にもいることに、才人は気づいた。
この世界で出会った人たち、ほんの半年に過ぎないが、いろんな人たちと
出会った。意地悪な奴、悪い奴もいた。でも優しくしてくれた人もたくさんいた。
才人の学院での生活を陰ながら支えてくれたオスマン。
キザでバカでアホだけど、けっこう気さくでいいところのあるギーシュ。
身分のかきねを越えて友達になれたギムリやレイナールたち。
優しくて可愛いメイドのシエスタに、すっかり頼りになる先生になったロングビル。
人間じゃないけど、たよりになる相棒のデルフリンガー。
綺麗で尊敬できるお姫様、アンリエッタ。
きびしいけれども、自分を認めて頼りにしてくれたアニエス。
自分自身の罪と向き合って、人間の弱さと強さを見せてくれたミシェル。
ふざけてばかりいるけど、いつでも明るくはげましてくれるキュルケ。
無口だけど、いつもいざというときには助けてくれるタバサ。
才人は地球に帰れるという現実を前にして、いつの間にかハルケギニアが
居心地良くなっていた自分が生まれていたことに気がついた。
そして、そばにいるだけで、胸が高鳴るご主人様。
高慢ちきで、生意気で乱暴だけど、たまに見せる優しさが、胸をどうにかするルイズ。
桃色のブロンドと、大粒のとび色の瞳を持った女の子……
誰一人として、大切でない人はいない。誰一人として、別れたい人はいない。
帰りたいのは事実だ。しかし、この人たちと別れていくのは、身を切られるように
苦しくてつらい。けれども、地球でもそうして自分のことを思ってくれているであろう
両親や、友達のことを考えると、同じくらい苦しくなった。
そして、それはもう一人にも、つらい現実を突きつけていた。
「……ねえサイト、今の話、よく聞こえてなかった。もう一回言ってくれる」
リュウが最初に才人にその言葉を言ってから、ずっと魂の抜けた幽霊のように
立ち続けていたルイズの、いつもでは考えられないほどに弱弱しい声でつぶやかれた
その言葉が、才人を夢想の世界から呼び戻した。
「ルイズ」
「ねえ、この人たちなんて言ったの? わたし、話の意味がよくわからなかったから」
「地球に、おれの故郷に帰れるんだってさ」
もしこのとき才人が落ち着いていれば、ルイズの言葉のその奥に込められている
思いを、断片だけでも読み取ることができたかもしれないが、今の彼にはその余裕も、
ましてや相手の気持ちを充分に汲み取ってやるだけの経験ももってはおらず、
残酷にも質問に対する回答をそっくりそのまま彼女に返してしまった。
”サイトが、帰る……?
ルイズはその言葉を聞いたとき、長い裁判の末に死刑判決を宣告された被告人の
ように、だらしなく口を開けて、両腕をだらりと垂れ下がらせて立ち尽くした。けれども、
ルイズの明晰な頭脳は痴呆に陥って逃避することを許さずに、その言葉の指し示す意味と、
それがもたらす結果を正確に読み取って、反射的に叫んでしまっていた。
「な、なによそれ! 使い魔は主人と一心同体ってのを忘れたの!? あんたは
死ぬまで、わたしの使い魔なん、だか、ら……」
いつものように怒鳴りつけようとしたルイズの言葉は、その中途で才人の
うつむいた横顔を見てしまったことで、失速して消えてしまった。
”サイト、泣いてるの……”
ルイズの目の前で、才人は涙を流さずに泣いていた。歯を食いしばり、こぶしを
強く握り締めて、涙を見せまいとして泣いていた。
使い魔だからといって引き止めることは簡単だ。しかし、両親に会いたいという
才人を引き止める権利が自分にあるのか? いや、そんなことは言い訳だ。
自分は恐れている。才人を失うことに、彼が隣からいなくなることに。
半年前、ルイズは一人ぼっちだった。魔法の才能がなく、学院の誰からも
見下げられ、ゼロのルイズとさげすまれて、誰にも頼らずに生きてきた。
それが変わったのは、あの使い魔召喚の儀式からだ。才人が来てから、
自分の周りは騒がしくなった。やたら騒ぎを起こし、トラブルを持ち込んでくる
あいつがいなければギーシュやタバサとは、今でも名前も知らないに違いない。
シエスタともティファニアとも知り合えず、一年のころと同じ孤独な学院生活を
送っていたに違いない。
”わたし、ずっとサイトを頼って生きてきたんだ”
ルイズはいつの間にか才人に大きく依存するようになってしまっていた自分に
気づいて愕然とした。才人がいなくなったら、また自分は一人ぼっちになってしまう?
それは今のルイズにとって、恐怖以外の何者でもなかったが、同時に決して
口に出すことのできないものでもあった。
一方、才人に地球に連れて帰れることを告げたリュウは善意のつもりで
言ったのに、なぜか暗い顔をしている才人に首を傾げていたが、その鈍さに
呆れたマリナが耳元でささやいた。
「このバカ! 考えてみなさいよ。前にインペライザーと戦ったときだって、
ウルトラの国に帰らなきゃいけなくなったミライくんがどれだけつらかったか」
「! そうか……悪かった」
失言に気づいてリュウが素直に謝ってくれるのも、才人にとっては余計に
心苦しいだけであった。
「いえ、皆さん方が来てくれなくても、いつかはこうなるはずだったんです」
前にフリッグの舞踏会のあとで、才人はルイズにヤプールの異次元空間を
逆用すれば地球へ帰ることができるかもしれないと語った。しかしそれは
おぼろげな可能性であったし、はるかな未来のことだと思っていた。
「おれはともかく、ウルトラマンAは絶対にいつかは元の世界に帰らなきゃ
ならなかったんだ。そうなることはわかりきっていたはずなのに」
そう、遅かれ早かれこんな機会が来ることはわかりきっていたはずなのに、
自分の中の臆病な部分が、そのことについて考えることをずっと先延ばしにしていた。
けれど、考えることを先延ばしにしていたのは才人だけではなかった。
「待ってよ、わたしとサイトの命はエースのおかげでつながってるのよ。サイトが
帰っちゃったら、いったいどうなるの!?」
悲鳴のように叫んだルイズの言葉に才人もはっとなった。そうだ、自分たち
二人がウルトラマンAに合体変身するようになったのも、二人がベロクロンに
殺されて、その命を助けるためだったではないか、ここで才人が地球に帰還して
エースと分離することになったら、その命は。
だがそれは、決断をしたくない、させたくないという二人の甘えが呼んだ一本の
藁であった。そして、心の中のエースに問いただしてみた答えは、そんな二人の
わずかな期待を簡単に打ち砕くものであった。
(君たち二人の負った傷は、もうほとんど治っている。才人くんから分離しても、
もう問題はないだろう)
「……」
明らかに肩を落とした様子の二人に、エースは罪悪感を覚えたが、ここはあえて
厳しく突き放したのだった。なぜなら、ここで治っていないと言って才人をとどまらせるのは
簡単だったが、それで惰性で戦い続けたとしても、そんな馴れ合いの関係では
いつか限界が来る。戦いは、何よりも強く心を持たなければ、悪辣なヤプールらの
ような侵略者の姦計とは戦えない。
才人はじっと、指にはめられたウルトラリングを見つめた。あの日、二人が
エースに救われて、その命を受け入れたときから、これは二人をつなぐ絆の
象徴だった。しかし、才人がエースと分離すれば、当然これは……
「でもそれじゃあ、ルイズ一人でヤプールと戦うことになります。そんな、こいつを
置いて帰るなんて」
そう、才人がいなくてもヤプールが滅んだわけではない以上、エースはこの世界に
残らなければならないだろう。そうなれば、今のところ新しい同調者もいないために
必然的にルイズが一人で変身することになる。しかし、ルイズは激しく侮辱を受けた
かのように口泡を飛ばして怒鳴り上げた。
「ば、馬鹿にしないでよね。あんた一人がいなくなって、あたしがおじけずくとでも
思ってるの? 貴族は、国のために命をかけるのが当たり前だって言ってるはずよ。
あんたなんていなくたって、わたしは誰とだって戦うわ」
「そんな、お前一人で戦うつもりかよ!」
「うるさいうるさい! そんな、同情なんか、安っぽい義務感なんかでいっしょに
いてほしくないわよ。帰りたいなら、帰ればいいわ! あんたずっと帰りたいって
言ってたじゃない」
「な、なんだよそれ、おれがどんなにお前のことを……」
だが、短気を起こしてルイズに怒鳴り返そうとした才人の肩をジョージがつかんで、
耳元で「レディが無理をしてるのに、男が怒っちゃいけないよ」とささやくと、
ルイズが震えながら歯を食いしばっているのが見えて、思慮の浅い自分を
恥じて怒りを静めた。しかしこれで、才人がハルケギニアに無理をしてでも
とどまらなければならない理由はなくなってしまった。後は、帰るか残るかを
決めるのは才人の感情、意思によってしかない。
しかし、考えをまとめるよりも早く、またやっかいなトラブルの種が空からやってきた。
「あっ、あそこよタバサ。おーい、サイトぉ、ルイズ!」
よく聞きなれた大きな声が上から響いてきて、上を見上げるとそこには思った
とおりにシルフィードに乗ったキュルケとタバサが、こちらに向かって降りて
くるところだった。
「あちゃーっ、なんてタイミングの悪い」
いつもなら歓迎すべきところなのだが、今回ばかりはタイミングが激悪だった。
「敵か!?」
「待ってください、あれは味方です!」
ドラゴンの姿を見て、反射的にトライガーショットを構えるリュウたちを才人は
大慌てで止めたが、銃を向けられたことで、才人たちが捕まっているのだと
誤解してしまったらしいキュルケたちはこちらに向かって杖を向けてきた。
へーちょ
ウィンダム! 支援だ!
「サイト、ルイズ、今助けるわ!」
「だーっ! 違ーう!」
大声で怒鳴ったときには、例によって炎と風が放たれた後で、迎え撃たれた
トライガーショットのバスターブレッドとぶつかって、相殺の爆発が宙を焦がす。
二人とも、もうたいした魔法を使うだけの精神力は残っていないはずだが、
生身の人間相手にはドットの低級魔法で威力は充分、また逆にGUYSの
トライガーショットも対怪獣用の銃なので、命中したらシルフィードくらいは
木っ端微塵にできる。
「待ってください! あれは敵じゃありません。おーいキュルケ、タバサ、
おれたちは無事だ、だからやめろ!」
才人は銃口の前に立ちふさがって、なんとかGUYSの面々には銃を下ろさせる
ことには成功したが、両手を振りながら大声で空の上のキュルケとタバサに
怒鳴ったものの、爆発を避けるために上空退避していた二人には届かずに、
またもファイヤーボールが降ってきた。
「聞こえないのか!? くそっ! やめろってのに」
「キュルケーっ! タバサーっ! ああもうっ! ツェルプストーの女は血の気が
多すぎるから嫌いなのよ!」
人間の叫び声くらいでは、爆風とシルフィードの羽音にかき消されて、
上空の二人には届かなかった。しかも、攻撃を加えられれば戦う気がなくても
GUYSも自己防衛のために、自分に向かってくる炎の弾を撃ち落さなくては
ならない。かといって、まさかガンフェニックスをこんなことのために飛ばすわけにも
いかずに、戦局は硬直状態に陥った。
「リュウさん、こうなったら僕が」
「待て、お前がウルトラマンだってのを、ばらすのはまずい」
才人とルイズは別格として、この星の人間にもメビウスの正体を知られるのは
好ましくない。しかしこのままではどちらかに必ず怪我人が出る。なんとか
止める手立てはないか、リュウたちや才人は必死になって考えた。
だが、さっきのショックが覚めやらないルイズの怒りは、吐き出すところを
求めた結果、もっとも単純明快な方向に落ち着いた。
「ああもう、うるさいうるさい、うるさーい!」
ついにキレたルイズの特大の爆発が全方位に無差別炸裂し、キュルケと
タバサやGUYSの面々はもちろんのこと、着陸しているガンフェニックスが
わずかに浮き上がったほどの爆風が通り過ぎていったあとで、地面の上に
立っている者は、当の本人以外は一人もいなかった。
「お、お前やりすぎだ……」
「なによ、これが一番てっとり早いでしょうが」
それは……確かにそうかもしれないが、荒っぽすぎるぞと、ツッコミを
入れたところで才人はバッタリと草の上に倒れこんだ。それは図らずも、
ハルケギニアの人間の持つ”魔法”という能力の強力さを、地球人が
初めて認識したときだった。
それから、ああだこうだと言い合いが続き、やっと話がまとまったのはゆうに
一時間が経過してからであった。
「じゃあ確認するけど、つまり、この人たちはサイトの国の人たちで、サイトを
探しにやってきたわけで、あれはあなた方の乗り物なわけね」
「まあな、GUYSガンフェニックス、こいつなら時空の壁を突破するくらい
わけないぜ。どうだ、かっこいいだろ」
「へー……サイトの国って、こんなのが飛び回ってるんだ。変わってるのね」
「そりゃあ、地球ではドラゴンなんていないからね。でも、ドラゴンに似た怪獣は
知ってるけど、本物のドラゴンを見るのははじめてだわ。うふ、けっこうかわいい
顔をしてるじゃない」
「怪獣マニアのテッペイや、かわいいものが好きなコノミに見せたら狂喜乱舞するな。
けれど、この国では君たちのようなレディたちまで戦いに駆り出されているのかい?」
「あら、ご丁寧にどうも。遠い異国にも、あなたのような紳士がいてうれしいですわ。
けれど、おびえ惑っているような臆病な男よりも百倍、わたくしのほうが強い
ですわよ。ああ、もちろんあなた方は違いますわ、わたしの炎を正確に撃ち落すなんて、
なかなかお見事な腕前でしたわ」
さっきまでの争いがうそのように、キュルケはGUYSの面々と打ち解けていた。
もちろん、GUYSの皆のほうもファントン星人やサイコキノ星人、メイツ星人らと
交流を重ねてきて、宇宙人を相手にして差別せずに交流する心を養ってきた
からというのもあるが、その社交性の高さはうらやましいくらいである。なお、
ほめられてまんざらでもない様子のシルフィードと、超獣を相手に獅子奮迅の
大活躍をしたガンフェニックスを間近で目にして興味をそそられ、じっとそばで
観察していたタバサは、ミライから詳しく解説を受けている。
「タバサはともかくキュルケには、人見知りというものがないのかな」
「ほんと、あの年中お気楽極楽ぶりは、ときたまうらやましくなるわ」
才人とルイズは、人の苦労も知らないでと明るくおしゃべりをしているキュルケに
驚くやら呆れるやらで、正直唖然としてしまっていた。けれども、重苦しく沈痛な
空気をかき回し、少しなりとて二人に笑顔を取り戻させてくれたのも事実だ。
本当に、得がたい友人、そのことを思うたびに地球に帰らなければならないという
事実が、重くのしかかってくる。
ただその前に、残っていた王党派がどうしたのかについて心配していたことは
キュルケの口からだいたい語られて二人を安堵させた。戦闘の混乱はもうだいぶ
おさまって、今はアンリエッタたちが中心になって後始末に走り回っている。
飛行兵力こそなくなって、伝令などはすべて馬か徒歩を使わなければならないので
時間はかかるだろうが、それは逆にいえばガンフェニックスが捜索される危険性が
なくなったということにもなって、これ以上余計なトラブルが起きることを恐れた
一同をほっとさせた。ともかく、もう戻ったとしても、姫さまもアニエスたちも会っては
くれないだろうが、これに関してはもう心配する必要はないだろう。
「姫さまたち、ご無事でよかった」
「ああ、これでこの国はもう安心だな」
二人は、エースの眼を通して確認したものの、あの激戦の中で最後まで
皆が無事でいてくれたことに安堵した。それに、アルビオンからヤプールの影が
一掃された以上、この大陸を覆っていた戦乱は急速に鎮まっていくだろう。
もちろん、まだ不平貴族や戦禍を受けた民衆と、職を失った傭兵が盗賊に
転職するなどの問題は山積みだが、それらはこれからウェールズたち、この国の
新しい統治者たちのすべきことで、少なくともこの件については、もう自分たちの
入っていく余地はない。ただ、アンリエッタの言っていた『始祖の祈祷書』とやらに
ついては、まだ当分待たなければならないだろう。それでも、この内戦が終われば、
今のところはハルケギニアに大きな戦乱の種はなく、しばらくは平和が続くと見て間違いはない。
「どういうことですか?」
「茶番劇が終わったってことだけですよ。やれやれ、苦労したかいがあったってもんだ」
事情を知らないミライにたずねられて、才人はこれに関しただけは満足げに
背伸びをしながら、ルイズたちと喜びを共用した。
それから、おまけのようについてきたことだが、ワルドが生きて見つかって
捕縛されたという知らせもあった。なんでも案の定、乗り移られていたときの
記憶は無くなっていて、本人はなにがなんだかわからないまま兵士たちに袋叩きに
されてお縄になったそうで、一発殴ってやる機会はなくなったがいい気味だった。
しかし、そんな喜ばしいこともそうでないことも、次のキュルケの放った一言によって、
全て二の次のことへと押し込められることになった。
「それでサイト、故郷に帰っちゃうの?」
なんの溜めも前置きもなく、簡潔に、間違えようもないくらいにキュルケに明確に
問いかけられた言葉に、才人はすぐに答えることはできなかった。
「そう、ルイズが心配なのね。わかるわ」
「ち、ちょっとキュルケ!」
「わたしは嘘を言ってないわよ。けど、わざわざ迎えが来るということは、サイトの国でも
サイトを待っている人がいるということでしょう。帰らないわけにはいかないんじゃない」
「うっ」
「それにルイズもよ、サイトが帰れるなら帰してあげたいって言って、図書館で調べもの
とかしてたんじゃない? いざそのときになって、怖くなったの?」
「う……」
キュルケは軽いように見えて、言うべきことは遠慮せずに厳しく言ってのける。
それが、時には残酷に見えることもあるが、彼女は、ごまかしや問題の先送りを好まない。
図星を射抜かれて、言葉に詰まる二人を順に見渡して、軽くため息をつくとタバサに
振り向いて言った。
「で、タバサ、あのガンフェニックスとかいう、ひこうきだっけ? あんたから見て、
あれはどんなもんだった?」
「……理解、できなかった。今まで見た、どんな文献にもあんなものは載っていない。
どうして飛べるのか、あの光の矢はなんなのか、どんな説明を受けてもわからなかった。
でも、強いて言うなら……」
「そう、やっぱりあなたも、あれと同じものを連想したのね……」
うつむいて、自信をなくしたようにぽつりぽつりとしゃべるタバサを見て、キュルケは
本当にこの見たこともない鉄の塊が、本当に遠く離れた異国から才人を迎えに
やってきた使いであると理解した。これならば、本当にハルケギニアの外から
やってくることができるかもしれない。そして、才人をあっという間に連れて帰る
こともできるだろう。けれども、それはルイズにとってはもちろんのこと、才人と
親しくなった者たち、もちろんキュルケやタバサにとって、悲しいことであるには違いなかった。
「ねえ、いったんサイトのふるさとに戻って、またこっちに来てもらうってのは
できないの? なんなら、夏休みも残ってることだしルイズも向こうに連れて行って
もらっちゃうって手もあるんじゃない」
キュルケの提案は、ある意味でとても魅力的に思えた。二つの世界が完全に
つながった以上、都合のいいときにどちらかの世界を行き来すれば、それは
理想的な状況といえるだろう。しかし、その虫のいい考えは、時空を超えてきた
テッペイの声によってあっけなく粉砕された。
「いいえ、それは無理です。亜空間ゲートの発見から、ディメンショナル・
ディゾルバーRの完成までに、あまりに時間がなさすぎました。日食のときには
まだゲートの位相の計算も、ディゾルバーRも不完全で、この作戦はなかば賭けに
近いものだったんです。亜空間ゲートを維持していられるのは標準時間で三日、
それを過ぎてしまえば、次のゲートを開けるのは最短で三ヶ月かかります。
しかも……確実に同時間軸のそちらにつながるかどうかの保障はできません」
その答えには、用語や単語の意味を半分も理解できなかったが、ルイズと
頭の回転の速さではひけをとらないキュルケも、また軽口を叩くことはできなかった。
要は、サモン・サーヴァントのゲートを自由な場所に永続的に開き続けるにも
等しい想像を絶する難題だったのだ。しかも、残されたリミットの短さは
例外なく彼と彼女たちを打ちのめした。
「三日……」
才人は自分自身に確認する意味でも、そのタイムリミットを噛み締めるように
口にした。それが、彼に残された決断のための猶予、すなわち、地球に帰るか、
もしくはこのハルケギニアに残るか、二つに一つ。しかし、まだ十七歳の
彼にとって、それはあまりにも困難な二者択一であった。
「……少し、時間をくれませんか?」
選択の重圧に耐え切れなくなった才人は、ぽつりとそれだけを口にした。
聞いていたGUYSクルーたちは、彼の気持ちが痛いほどわかるだけに
無言でこの場の指揮官であるリュウに視線を向けると、彼は才人の目線に
立って穏やかに、しかし甘えを許さない力強さを含めて言った。
「わかった。今日は俺たちは引き上げる。明日にまた来るが、ようく考えていてくれ。
俺たちは君だけに関わっていられるわけじゃあない。ただ、君がどういう判断を
しようと俺たちはそれを尊重する。誰でもない、君自身が考えて決めるんだ。
君も、もう自分の決断に責任が持てないほど子供じゃないはずだ。いいな」
「……はい」
「声が小さい!」
「はいっ!」
ウルトラ5つの誓いの一つ、他人の力を頼りにしないこと、才人にとってこれは
人生最大の壁だろう。それをどう越えるのか、それによって今後の才人の人生は
大きく分かれていくだろう。怪獣と戦うときよりはるかに重い、人生の分岐点に
今彼は立っていた。
「じゃあ、またな」
最後にリュウは、もう余計なこと言わずに、隊長らしく堂々と振り返らずに
ガンローダーに乗り込み、マリナとジョージも続き、セリザワも無言でリュウの
決断に従うようにガンローダーに乗り込み、そして彼らはガンフェニックスを駆って、
空のかなたにある地球へと帰っていった。
後には、こぶしを握り締めて重く沈んでいる才人と、そんな才人を無言で
見詰めているルイズが、しばらくのあいだ彫像と化したようにたたずんでいた。
回想を終えて、二人の前にはまた夏の夜空が広がった。空の月と星は微動
だにせず、時間はまるで凍り付いてしまっているかのように夜は静まり返っている。
永遠に夜が明けなければいいのに、才人はそう願ったが、時間は止まってなど
いないことを主張するかのように、二人の後ろから一人の声を響かせた。
「才人くん、ルイズさん」
「あ、ミライさん」
そこには、明日来るガンフェニックスがこちらの世界に迷わずに来れるように、
ナビゲートするために残ったウルトラマンメビウスことヒビノ・ミライ隊員が、
二人を心配したように立っていた。
「あまり夜風に当たっていると、風邪をひくよ」
この世界には不似合いなオレンジ色のGUYSの制服を月明かりに目立たせて、
微笑を浮かべながら歩いてくるミライに、才人は申し訳なさそうに頭を下げた。
「すみません。心配をかけてしまって」
「僕なんかよりも、その言葉はみんなに言ってあげるといいな。みんな、食事
しながらでも君のことばかり話してたよ」
すでに皆にも、才人が地球へと帰らなければならないことは話していた。
ロングビルは大人らしく、さびしくなるわねと一言だけ言ってくれたが、肩に
置いてくれた手には力がこもっていた。ティファニアは、せっかくできたお友達が
もういなくなってしまうのかと、とても悲しんでくれた。特にシエスタはミライに
向かって「サイトさんを連れていかないでください」と懇願したが、ロングビルに
「それはサイトくん自身が決めることよ。あなたももう子供じゃないんだから
聞き分けなさい」と諭されると、ぐっと涙を拭いてくれた。
「あんなに君のために一生懸命になってくれるなんて、みんな、いい友達だね」
「はい」
ミライは「まだ決心がつかないのかい」などと、才人を焦らせることを言ったりは
せずに、軽く肩を叩いていっしょに星空を見上げた。元々、裏表のない快活な
性格の持ち主なのでテファたちともすぐに打ち解けて、今ではキュルケや
タバサにせがまれて、向こうの世界のことなどをいろいろと話している。
そんな彼の姿は人間とどこも変わりなく、ルイズは本当に彼があのメビウスなのかと、
疑問に思った。
「ねえ、あんたもウルトラマンなのよね?」
「ええ、けど僕はあなたたちと違って、ウルトラマンの力で人間の姿を借りている
だけですけど」
「とてもそうは見えないわ。どこからどう見ても、人間そのものよ」
本当に、言われなければとても人間ではないなどとは思えなかった。その姿が
というだけでなく、空気というか、そばにいることにまるで違和感を感じない。
けれども、彼は間違いなくエースの弟であり地球の平和を守った栄光の
ウルトラマンの一人なのだ。
それから、才人とルイズはミライから、いくつかの話を聞かせてもらった。
人間、ヒビノ・ミライとして、宇宙人、ウルトラマンメビウスとして生きてきた彼の
話は二人にとってとても新鮮で、そして彼から伝わってくる穏やかな優しさは
緊張していた二人の心に、落ち着きを取り戻させてくれた。
「僕は、エース兄さんたち、伝説のウルトラ兄弟にあこがれて宇宙警備隊に
入ったんだ。タロウ教官の特訓は、厳しかったなあ。でも、なんとかテストに合格して、
地球に派遣されたときはうれしかったな。それで、地球でリュウさんやみんなと
出会って、はじめて戦ったのがディノゾールでした」
「あ、そのディノゾールとの戦い、おれ橋の上から見てました!」
「そうなんだ。でも、あのときは街の被害のことまで頭が回らないで、リュウさんに
「なんて下手な戦い方だ」って、怒られちゃいました」
「はぁ……あ、ごめんなさい」
「でも、それも今では懐かしい思い出です。隊長から教わったんだ。どんなことも、
時が経てばそれは思い出というものに変わる。それが、何よりも大切な宝物なんだって」
本当に、ミライには傲慢なところはかけらもなく、その無邪気な笑顔を見ているだけで、
彼がGUYSの中でも信頼されているのが聞かずともすぐにわかり、才人は
思い切って、ウルトラマンとして同じ選択をしたであろう彼に、質問をぶつけてみた。
「ミライさんは、光の国に帰らなければならなくなったとき、どんな気持ちでした?」
するとミライは懐かしそうに空を見上げて思い出を語り始めた。
「……悲しかったな。リュウさんや、みんなと別れ別れになるのはすごくつらかった。
けどね、僕は兄さんから教えてもらったんだ。たとえ離れていても、仲間たちと
心がつながっている限り、決して一人じゃあないんだって」
「心が、つながっているから……」
それは、誰あろう今ここにいるウルトラマンAこと、北斗星司から教えられた
ことであった。しかし、ミライと同じようにするためには、まだ才人がこの世界で
つちかってきたことは少なく、また、心が幼いのかもしれない。
「おれは、父さんや母さんが待ってる地球に帰らないといけない。それは
わかってます。けど、けど……」
「……」
ミライは、かつてインペライザーが地球に来襲したときにウルトラの国に帰還を
命じられたときの自分を、才人の中に見た。
「そうだね。やらなければいけないこと、最善の選択というものは決まっているのかも
しれない。けれど、君は君自身で、後になって後悔しない選択をすべきだと思うよ」
「後悔しない、選択?」
「そう、けれどそれが何かは君が見つけるんだ。それは、ルイズちゃん、君も同じかな」
「え? わたしも」
「そう、彼は君のパートナーなんだろう。だったら、君が彼のためになにをして
あげられるか、彼の決断を待つ以外にもあるんじゃないかな」
「わたしが……」
ルイズは、才人が故郷へ帰るのならば、それを引き止める権利はないと思っていたが、
才人のためになにをしてあげることができるのかということを考えていなかった自分に
はっとした。確かに、理不尽にこの世界に連れてきて、拘束し続けてきた自分に
何の言う資格があるだろう。けれど、傍観していればいいのかと言われれば、
それは違うと思った。
支援
「さあ、難しい話はそろそろ休憩にしよう。才人くんも、スープとか軽いものなら
大丈夫だろう。ウルトラ5つの誓い、はらぺこのまま学校に行かぬこと、おなかが
空いてちゃあいい考えは浮かんでこないよ」
「あっ、はいっ!」
すると急に胃袋の辺りから、ひもじいよと悲鳴が聞こえてきて、才人は今更ながら
テファやシエスタの料理が恋しくなった。ただ、その前に才人はミライに後一つだけ、
どうしても言っておかなければならないことが残っていた。
「ところでミライさん、実は明日行ってみたい。いいえ、皆さんに来てほしいところが
あるんですが」
「えっ? けれど、ゲートを開いていられるのはあさってまでだから、自由に
行動できるのは明日までだよ。それでもいいのかい?」
「はい、おれはともかく、皆さんには……いえ、そこで皆さんを待っている
人がいるんです」
「僕たちに、この世界で?」
才人は怪訝な顔をするミライに、今はそれ以上聞かないで、行けばすべて
わかりますとだけ答え、その才人の表情から真剣さを見て取ったルイズは、
ごく近い記憶の中から才人が考えていることを読み取った。
「サイト、もしかして」
「ああ……タルブ村だ」
時間がないのはわかっているが、CREW GUYSの人たちが来ているのならば、
どけて行くわけにはいかないだろう。それに、その中でなにかの答えが見つかるかも、
そんな気がした。
「わかった。みんなには僕から伝えておくよ。明日、そのタルブ村へ行けばいいんだね。
じゃあ、明日に備えて力をつけておかなくちゃ、食べる子は育つって言うだろ。さっ、
入った入った」
「いや、それ寝る子はじゃないの?」
が、ミライは笑いながら強引に二人の肩をつかんで、温められたシチューの香りのする
家の中へと連れて行った。
帰るか、とどまるか……どちらにせよ失うものは大きく、つらい決断となる。
けれど、逃げはしない。それが自分を支えてくれた人たちや、なによりもこれまで
積み重ねてきた自分自身に対する最低限のけじめだと、才人は思った。
タイムリミットはあと二日、魔法学院の夏休みはまだ半分しか過ぎていなかった。
一方そのころ、ヒカリからのウルトラサインを受け取った光の国では、
ウルトラの父やゾフィーらが、エースの無事を確認したというその報告に
安堵の色を浮かべていた。
「大隊長、報告はお聞きになりましたか?」
「もちろんだとも、息子の無事を聞き逃す親がどこにいる。エースよ、必ず
無事でいると信じていたぞ」
「ええ、本当によかったです」
二人は、エースの無事を我がこと以上に喜んでいた。
今頃は、ウルトラサインによって宇宙に散った兄弟や、ほかのウルトラ戦士たち
にも知らせが届いていることだろう。休まず宇宙を駆け回っていたウルトラマンも、
セブンも、ジャックも、レオ兄弟や80、捜索に加われずに歯がゆい思いを
していたタロウも、きっと喜んでいるのに違いない。
ウルトラの父と、ウルトラ兄弟のあいだには血縁関係はタロウ以外にはなく、
兄弟間でもレオとアストラを除いては血はつながっていない。しかし、兄弟たちと
ウルトラの父と母のあいだには、血のつながりよりも濃い絆があるのだ。
だが、同時に確認されたヤプールの復活は、この二人をしても慄然とさせる
のには充分だった。もし、メビウスの救援が一分でも遅れていたら間違いなく
エースは殺されていただろう。
「ヤプールめ、このわずかなあいだにそこまで力を増大させていたとは、
やはり恐ろしいやつだ」
また、宇宙の各地では怪獣の出現の報告が目に見えて増えている。
一例を挙げても、先日アストラが惑星フェラントで光熱怪獣キーラを発見し、
撃破したのを皮切りに、80が地球への進路をとっていた凶剣怪獣カネドラスを
太陽系に入る前に捕捉して撃滅している。ほかにもジャックやセブンも
パトロールのさなかに、何者かに監視されているような気配を感じたというし、
宇宙の異変はもはや気のせいでは済まされないレベルまで拡大しているようだ。
「それに、勇士司令部や宇宙保安庁の間でも、ここのところ不穏な動きを
する宇宙人や、正体不明の宇宙船の目撃報告が増加しています。恐らく、
ヤプールの動きに呼応しているものと思われますが」
「嵐の前の静けさというやつか……また、この宇宙に多くの血が流れる」
「ともかく、今はメビウスからの続報を待ちましょう。場合によっては、
宇宙警備隊始まって以来の戦いとなるかもしれません」
宇宙の平和をつかさどる光の国にも忍び寄るヤプールの暗雲、それが
どういう未来をもたらすのか、ウルトラマンさえまだ知らない。
しかしそのとき、タルブ村の近くの山では、すでに小さな事件が幕をあげていた。
山の中にうずもれた、小さな木作りのほこら。そこに草木を掻き分けて
やってきた二人組の男たち。
「おう、情報どおりだ。イカサマの宝の地図の中からマジものを見つけるには
苦労したが、わざわざこんな山奥まで来たかいがあったってもんだ」
「兄貴、この中にその、異国の旅人が残していったってご神像があるんですね?」
「ああ、大昔に暴れていた魔物を倒した旅人が、その霊を永遠に封じ込める
ために残したって代物がな。うまくすれば、高く売れるぜ」
「でも兄貴、その魔物っていったい?」
「どうせでかいオーク鬼かなんかの類をおおげさに言ってるだけさ、迷信だよ
迷信。さあて、それじゃご開帳といくかい」
この、二人組のこそ泥によって、ほこらに安置されていた四〇サントほどの
石作りの小さくて風変わりな像が盗み出された日の夜、タルブ村近辺の
山林のみを、震度十二以上の超巨大地震が襲い、地すべり山津波が
一帯を破壊しつくした。
そして、盗み出された石像にはハルケギニアのものではない文字で、こう書かれていた。
『魔封・錦田小十郎景竜』
続く
今週は以上です。支援ありがとうございました。
とうとう90話を突破、アルビオン編だけで40話も使ってしまいましたが、これで原作7巻
までのレコン・キスタからみの話は完全に消化できましたので、あとはそれ以降の
話を基にしたストーリーとなると思います。次はジョゼフのターンかと思いますが、
あの男の悪辣さはヤプールのような絶対悪とは違うので、頭を切り替えないといけませんね。
そしてこの場をお借りしまして、これまで支援をしてくださった方、wikiに登録してくださってる方、
そしてこのスレ、避難所、お絵かき掲示板、他所で応援してくださった方々に心からの
お礼を申し上げます。
さて今回は少々くどい話だったかもしれません。日食からガンフェニックスが飛び出してくる
シーンは、ヤマト新たなる旅立ちで全滅寸前のデスラー艦隊を救うために現れた
宇宙戦艦ヤマトとコスモタイガーというイメージで書いたのでサクサク行きましたが、
こういう葛藤を書くのは、難しいものですね。けれど才人のことにはきっちりとけじめを
つけなければならないと思うので、もう少し話数を使うのをお許しください。
なんとか、100話までにこの問題にはかたをつけようと思うのでもう少しお付き合いお願いします。
ウルトラの人、今週もありがとうございました。
才人とルイズの決断、宇宙の異変と新たな戦いの予感にwktkです。
そして次の敵・・・景竜のおっさんということは宿那鬼かな?
おつおつ
まだしばらく残って戦う事になりそうだね。
ウルトラ乙
ウルトラ乙
>錦田小十郎景竜
あれ?またこの人の仕掛けた封印が解かれちゃうのか
乙ー。
ルーンの精神影響って、同化してるエースは気付かんもんなのかね。
ウルトラの人乙です。初書きです。
ミライがただの天然不思議ちゃんじゃないことを再確認しました。
ウルトラ5番目の使い魔の作者さん、今回も面白かったです!
才人とルイズの葛藤が切ない……しかしコルベール先生はぶられてたな、
あんまし出番ないから(笑)。
久々登場の錦田さんの名前、今度はなにが封印されてるんでしょう?
そして、先輩隊員とかつての部下が数十年前に天寿を全うしていたことをしった
リュウとセリザワの反応は?
次回も楽しみです、頑張ってください。
ウルトラの人乙です!
まさか勇士司令部や宇宙保安庁まで出てくるとはこれはネオス組に期待せざるを得ない。
それに景竜の名前が出てくるとはティガとコスモスが好きの私としてはうれしいです。
しかし一部の人しか知らないようなドマイナー怪獣を出したりと本当にウルトラシリーズについて博識ですね。
さて、景竜ときたらやっぱり宿那鬼かな?像もでてるし。でも戀鬼の可能性もあるしなぁ…
ウルトラの人GJっす!
宿那鬼というと珍しく俳優として出た仮面の赤い人しか浮かばねぇwww
ウルトラ5番目の作者さん、ありがとうございます。
自分もウルトラマン大好きなので、楽しく読ませていただいています。
景竜といえば宿那鬼か戀鬼ですが、果たして・・・? また楽しみにしております。
さて、ご無沙汰しておりましたが、第四話・前編をお送りできるようになりましたので、
次のレスから投下させていただきたいと思います。
あらかじめ注意しておきますと、今回は右京さんとオスマン学院長の会話が続く誰得回なので、
気に入らない方は大きな心でスルーしていただけると幸いです。
それでは、参ります。
プロローグ
神戸尊は沈鬱な気分を抱えながら廊下を歩いていた。こちらからは右京に連絡がまったく取れない。
もしかしたら右京の行き先を知っているかもしれないと思い、小料理屋『花の里』の女将で右京の元妻である宮部たまきに事情を話して尋ねてみたが、返事は芳しくなかった。
「わかりました。ありがとうございました」尊はたまきに礼を述べて、電話を切った。
「たまきさんも駄目か…。くそっ、どこにいるんだよ…」
尊は、八方ふさがりになりつつある状況に苛立った。
右京が外出しようとしたときに行き先を聞けなかったことを、尊は今さらながらに悔やんでいた。
尊が右京の身を案じ、特命係の行く末に頭を悩ませているのは、彼が右京を慕っているというよりは、彼が特命係に配属された事情によるところが大きい。
尊は、表向きの階級は警部補であるが、実際は警察庁警備局に所属する警視である。
彼は警察庁上層部から、特命係と右京が警察にとって必要かどうかを判断するために、右京と身近に接して調査せよという「特命」を受けているのだ。
そのため、いわゆる「庁内エス(警察庁から警視庁に送られるスパイ)」として、二階級降格による左遷を口実に、特命係に半年の期限つきで潜入することになった
(右京には当然秘密にしており、警察庁時代からの知り合いである警視庁警務部人事第一課主任監察官の大河内春樹にも適当にごまかしていた。なお、調査の目的やなぜ尊がその役目に選ばれたのかは定かではない)。
その目的に加え、右京という人間に個人的にも興味を抱くようになった尊は、ことあるごとに右京と行動を共にするようにしていた。
だが、最近は特に右京が興味をそそられるような事件もなければ、回ってくる雑用も簡単なものばかりで、尊は正直なところ退屈で、少々気が抜けていた。
そこへ、右京が突然「少々、出かけてきます」と扉を開けながら言ってきたのである。意表をつかれて慌てた尊が「どちらへ?」と問うたときには、あの謎の鏡に右京が飛びこんでしまった後だった。
不測の事態とはいえ、右京が姿をくらませてしまったことは、尊にとって非常に都合が悪い。
警察庁の上役にこのことを包み隠さず正確に報告したところで、内村同様信じてはくれないだろう。むしろ、気の緩みから調査対象に逃げられたとして、自分の責任を追及されかねない。
さらに、こちらの事情を知らない内村によって、今日中に右京が見つからなければ特命係の解散と解雇を申し渡されてしまった。かねてから特命係の廃止を狙っていた内村にとっては、渡りに船だっただろう。
もし明日まで右京が行方不明のままだった場合、警視庁と警察庁との無用の混乱を避けるために内村の人事勧告が受理され、理不尽にも切り捨てられてしまう可能性もある。
冗談じゃない。こんなわけのわからないことでクビにされてたまるか。
こうなったら、無駄だとわかっていても右京が行きそうな場所をしらみつぶしに当たるしかない。尊は、黙って最後通告を待つつもりはなかった。
廊下の十字路に出たところで、尊は出くわした人物に声をかけられた。
「おお、これはこれは神戸警部補」
「米沢さん!」
それは、ふちの太いメガネをかけた、坊ちゃん刈りが特徴の警視庁刑事部鑑識課員、米沢守だった。
第四章
トリステイン魔法学院の学院長室は、本塔の最上階にある。その中で、重厚な作りのセコイアのテーブルに肘をついて気の抜けた顔で鼻毛を抜いている、いかにも暇をもてあました白く長い口ひげと髪をたくわえた老人が、学院長のオスマン氏であった。
そして、部屋の端に置かれた机に座って、オスマン氏とは対照的に真面目に書き物をしている、緑色の長髪が綺麗な女性が、学院長秘書のミス・ロングビルである。
オスマン氏は横目でミス・ロングビルを見やると、水ギセルを魔法で取り出し、口元に運んでいく。
しかし、オスマン氏がくわえる寸前に、水ギセルはミス・ロングビルの手元に収まってしまった。彼女が羽ペンで水ギセルを操ったのだ。
ミス・ロングビルが、呆れたような声でオスマン氏に注意した。
「オールド・オスマン。水ギセルはこれで十二本目ですよ。健康のためにもご自制ください」
「ふう…まだ若い君にはわからんだろうが、この歳になると、一日々々をいかに過ごすかが何より重要な問題になってくるのじゃよ」
オスマン氏は眉間に皺を作り、重々しく目を瞑りながら、机で書き物を続けるミス・ロングビルにさりげなく近づいていく。
「だからといって、たびたび私のお尻を撫でたり、ご自分の使い魔を悪用なさるのはおやめください」
ミス・ロングビルが、小さなハツカネズミを『レビテーション』で浮かせ、遠くに落とした。
目論見を見破られたオスマン氏が、自分の肩に乗ったハツカネズミにナッツをやりながら、いかにも哀愁漂う様子で話しかけた。
「おお、この年寄りの数少ない楽しみを奪うとは…老いぼれはさっさと死ねということか。わしが心許せる友達はもはやお前だけじゃ、モートソグニル。して、今日の色は?」
モートソグニルは、ちゅうちゅうと鳴いた。
「おお、そうか今日も白か。しかし、ミス・ロングビルは黒が最も映えると思わんかね?」
「オールド・オスマン」
ミス・ロングビルの、絶対零度を思わせる声がした。
「今度やったら、王室に報告します」
「カアッ! 王室が怖くて魔法学院学院長は務まらんわッ!」
オスマン氏が目を大きく見開いて怒鳴った。その迫力は、百歳とも、三百歳を超えているとも噂される老人のものとは思えなかった。
この気力と精神力の強さがオスマン氏のメイジとしての実力を物語っているといえるだろう。
「減るもんじゃなし、下着を覗かれたくらいでカッカしなさんな! そんなお堅いことだから婚期を逃すのじゃ!」
開き直った上にコンプレックスをついてくるセクハラジジイに、ミス・ロングビルの中で何かが切れた。
思い切り尻を蹴り上げてやろうと足を振りかけたとき、学院長室の扉が勢いよく開けられた。
「オールド・オスマン! 至急お耳に入れたいことが!」
息せき切らして入ってきたのは、コルベールだった。
「どうした?」
オスマン氏は、何事もなかったかのようにコルベールを迎え入れた。一方のミス・ロングビルも、机で書き物を続けていた。魔法にも勝る早業であった。
あと少しのところで色ボケジジイに私刑を与えられなかったミス・ロングビルが、その理知的な顔をわずかに歪ませて舌打ちしたことに気づいたものはいなかった。
「昨日、ミス・ヴァリエールが召喚した使い魔の平民のことで図書館で調べものをしていたところ、大変なことがわかりまして…」
「大変なことなどあるものか。すべては小事じゃ」
「まずはこれをご覧ください」
コルベールが、一冊の古い書物を手渡した。
「んん? 『始祖ブリミルの使い魔たち』とは、まーたずいぶんと古臭い文献を引っ張り出してきたのう。これがどうしたね、ミスタ…ええと…」
「コルベールです!」
「おお、そうじゃったそうじゃった。君はどうもせっかちでいかんよ、コルベールくん。で、いったい何がわかったのかね?」
「こちらをご覧ください」
コルベールは一枚の紙を示した。それは、右京の左手に刻まれたルーンをスケッチしたものだった。
開かれた書物のページとスケッチを見比べたオスマン氏の表情が変わった。目が光り、厳しい色になった。
「ミス・ロングビル。しばらく席を外しなさい」
「はい」ミス・ロングビルが立ち上がり、部屋を出て行った。
彼女の退室を見届けたオスマン氏は、静かに口を開いた。
「さて、詳しく説明してくれ。ミスタ・コルベール」
シュヴルーズを医務室に連れていったルイズと右京――医務室に勤めるメイジの治癒魔法に目を奪われていた右京をルイズが引きずって出てきた――を待っていたのは、教室の片づけであった。
普通であれば、授業を中止にしたことと教師に怪我を負わせた罰として、謹慎なり出席停止なりの処分が下されるのだが、彼女たちに与えられたのは、魔法の使用を禁じた教室掃除だけ
――ルイズは元から魔法をほとんど使えないから意味はなかったが――で済んだ。生徒たちの警告を無視して、ルイズに魔法を使わせたシュヴルーズにも一定の落ち度があるという理由からであった。
掃除を自分でやったことがほとんどないルイズでは、教室の修復は相当時間がかかるだろうと思われたが、意外にも昼食が始まる前には終わってしまった。
右京が休みなく、無駄のない動きで手際よく窓ガラスを運んで張替えたり、机を並べなおしたり、煤だらけの壁や床を雑巾で綺麗に磨いたりと、作業のほとんどを一人でこなしてしまったからであった。
ルイズがやったのは机を拭くことだけだった。それすらも、最後のほうは右京に手伝ってもらった。
二人は昼食をとるため、食堂へと歩いていた。
道中、二人はしばし無言だった。
「ねえ」先に口を開いたのはルイズだった。暗い声であった。
「はい?」
「あんたは、もうわかってたんでしょ?」
「何をでしょう?」
「だから……わたしがなんで“ゼロのルイズ”って呼ばれてるか、よ」
ルイズは言いにくそうにしていたが、自分から話を切り出した手前、絞り出すようにしてなんとか言い切った。
右京は、少し間を置いてから、ルイズに質した。
「ミス・ヴァリエール」
「え?」
「この世界では、メイジが魔法に失敗すると爆発が起きるのですか?」
今のルイズには、右京の言い方は皮肉にしか聞こえなかった。顔を歪めて、烈火のごとく吠えた。
「わたしだけよ! 普通は失敗したら何も起きないの! 悪かったわね、才能も成功率も“ゼロ”の落ちこぼれメイジで!」
ルイズの剣幕に怯むことなく、右京は確認する。
「では、あなただけが魔法を使おうとすると爆発するというわけですね?」
「そう言ってるでしょ! なによ、あんたまで馬鹿にするわけ!? 使い魔の分際で…」
「おかしいですねえ」
目に涙を滲ませて怒りを露にするルイズであったが、突然発された右京の違和感の表明に、矛を収めた。
「普通ならば魔法に失敗したら何も起きない。しかしミス・ヴァリエールだけが魔法を使おうとするとすべて爆発。単純に同じ『失敗』でくくるには、この二つの結果はあまりにもかけ離れているとは思いませんか?」
「だからなによ? 使いたい魔法が使えないんだから『失敗』なのは同じじゃない」
右京は、左手の指を立てて反論した。
「いいえ。大きな違いです。何もないところを爆発させたということは、何らかの力がそこを爆発させるように働いたことに他なりません。あなたが事前に爆弾ないしは火薬の類を仕掛けておき、
杖を振るタイミングに合わせてそれらを起爆させているというなら話は別ですが」
「そんなわけないでしょ! なんでわたしがそんなことしなくちゃならないのよ?」
答えながらルイズは首をかしげた。右京の説明は回りくどいので、何を言いたいのかが最後の結論を聞くまでわかりにくい。
「おっしゃるとおり。『魔法を使うと爆発する』ということは、すなわち『爆発の魔法を使った』と言い換えることができます。ですから、あの爆発は紛れもなく、ミス・ヴァリエール、あなたの魔法なのですよ」
ルイズははっとさせられた。右京はさらに続ける。
「周りの方々がおっしゃるように、本当に魔法の才能がないのなら、爆発させることさえできないでしょう。そもそも、昨日僕を召喚し、使い魔の契約を交わしたことで、あなたは少なくとも『サモン・サーヴァント』と『コントラクト・サーヴァント』の
二つの魔法を成功させているのですから、『才能も成功率も“ゼロ”』というあなたへの評価は、適当なものではありません」
「……!」ルイズは、右京の意図をようやっと悟った。
言葉が、出てこなかった。
「それどころか、前例がない『人間の召喚』を実現し、さらに契約を成功させたことを考慮すると、あなたには才能がないどころか、むしろ特別な才能を秘めていると見るべきだと僕は思うのですが、これは素人考えでしょうか?」
言い終えると、右京は穏やかな微笑を浮かべた。
ルイズは、一瞬時間が止まったような錯覚に陥った。
ヴァリエール家の末娘として将来を嘱望されていたにもかかわらず、幼少のころから魔法を使おうとすると爆発させる「失敗」しか起こせなかった。
父や母は失望を隠さず、長姉には厳しく叱られ、いつしか“ゼロのルイズ”と呼ばれるようになってしまった。自分を慰め、認めてくれたのは体の弱い次姉と、今は疎遠になってしまった歳の離れた婚約者だけだった。
学校で本格的に習えば魔法を扱えるようになるからと、両親に頼み込んで入った全寮制の魔法学院でもそれは変わらなかった。劣等感と無力感、そして“ゼロのルイズ”と呼んで侮蔑する者を増やしただけだった。
挙句の果てに、家族からは「家に帰って花嫁修業をしろ」といわれる始末だ。
そんな状況であったから、『サモン・サーヴァント』で人間を召喚してしまったことも、魔法の才能がない“ゼロのルイズ”ゆえの、いつもの「失敗」の一つとしか周囲は受けとめなかった。
自分でさえそう思っていた。まともな使い魔一匹すら召喚できないのかと。
だが、考えてみれば確かに右京の言うとおりだ。
わたしは、誰もやったことがないことをやってのけたんだ。
憐憫や慰めでも、叱咤激励でもなく、実例をあげて論理的な説明でもって自分の力が認められたのは、ルイズにとって初めてのことだった。
授業の前に言っていた「他の人にはない才能を秘めている」とは、そういう意味だったのか。
そこまで考えたとき、ルイズの胸中に熱いものがこみ上げた。
ぐっと唇をかみ締める。そうしないと、マグマのように噴き上がる感情が涙となってあふれてしまいそうだったからだ。
「ミス・ヴァリエール」
と、右京が突然声をかけてきた。
「…え?」
「僕は教室の修繕が完了したことを学院長に報告にまいりますので、先に食堂へ行っていただけますか?」
「なんで? ていうか、あんた学院長室の場所知ってるの?」
「ええ。昨日学内を出歩いたときに、部屋の配置を確認しておきましたので。では、失礼いたします」
そう言うと、右京は踵を返して歩いていってしまった。
「あっ、ちょっと! …もう、主人を差し置いて勝手なことばかりするんだから…」
だが、言葉とは裏腹に、ルイズは右京を強く引き止めようとはしなかった。
小さくなっていく右京の背中を見つめ、見えなくなったところで、誰にも聞こえないほど微かな声でこう呟いた。
「……ありがと……」
聞こえてはいないはずだが、口に出してしまったら無性に気恥ずかしくなって、ルイズは早足で食堂に向かった。いつの間にか熱い感情は凪ぎ、不意に涙がこぼれることはなくなっていた。
右京は、迷うことなく最上階にある学院長室に向かっていた。
ルイズには「修繕が終わったことを学院長に報告に行く」と言ったが、実際にはそのようなことは指示されてなどいない。学院長のオスマン氏に会うための口実だった。
彼の目的は、今朝キュルケが「元の世界に帰る方法を知っている人物」として教えてくれたオスマン氏からその情報を入手すること、そして自分とルイズを取り巻く状況について問い質すことだった。
右京が先ほどルイズにかけた言葉は、最初から彼女を励ますために出てきたわけではなかった。今まで得た情報をもとに、自分の身辺について思案を巡らせる中で出てきたものだった。右京の考えは、ルイズに言ったことのもっと先にあったのである。
それは、事と次第によっては、容易に元の世界に帰ることができなくなるかもしれないという危惧を右京に抱かせるほどのものだった。だから一刻も早く確認しなければならない。
ハルケギニアに強い好奇心と魅力を感じていた右京ではあったが、長居するつもりはなかったのである。
学院長室の前までやってきた右京に、緑色の髪を持つ知的な印象の女性が挨拶した。右京も挨拶を返す。
女性は、学院長秘書のミス・ロングビルと名乗った。
右京は、さっそくミス・ロングビルに尋ねた。
「オスマン学院長にお会いしたいのですが…」
「どういったご用件でしょう?」
「私と我が主人のことで、至急学院長にご相談したいことがございまして」
ミス・ロングビルは少し考えた。自分を退出させるときは大抵重要な話をしているときだから、そんな用事はまず後にしろといわれるに違いない。
しかし今回は、コルベールの言葉から推測するに、自分の目の前にいるこの男のことについて話しているようだ。ならば、一応オスマン氏に言っておくほうがいいだろう。
ミス・ロングビルは、右京の目を見すえて答えた。
「わかりました。ですが、オスマンはただいま重要なお話をされていますので、面会できるかどうかは保証しかねます。その点はあらかじめご了承ください」
「了解いたしました。よろしくお願いいたします」
ミス・ロングビルは、学院長室の扉に体を向けて、ノックした。
学院長室では、コルベールが口角泡を飛ばして、右京の左手に浮かんだルーンについて調べた結果たどり着いた自説を、オスマン氏に説明していた。
「ふむ…始祖ブリミルの使い魔『ガンダールヴ』か…」
「そうです。彼の左手に刻まれたルーンは、伝説の使い魔『ガンダールヴ』のものとまったく同じであります!」
オスマン氏は、コルベールのスケッチと書物のルーンをまじまじと見比べた。
コルベールがなおも興奮した様子でまくし立てる。
「すなわち、あの男性は『ガンダールヴ』ということです! これが大事でなくてなんなんですか! オールド・オスマン!」
「確かに、ルーンは同一のものじゃ。ルーンが同じならば、ただの平民であったその男が『ガンダールヴ』になった、という説も考えられぬ話ではないのう」
「どういたしましょうか?」
オスマン氏は、身を乗り出したコルベールを手で制した。
「まぁ、落ち着きたまえ。現時点では『可能性がある』というだけの話じゃ。それだけでそう決めつけるのは早計じゃろう」
そのとき、扉がノックされた。
「誰じゃ?」
「わたしです。オールド・オスマン」
扉の向こうから聞こえてきたのは、ミス・ロングビルの声だった。
「なんじゃ?」
「オールド・オスマンに、至急面会をしたいという方がいらしています」
「誰かね?」
「昨日、ミス・ヴァリエールが呼び出した使い魔の男性、スギシタウキョウさんです」
まさしく、今自分たちが話題にしている男の名前を聞いたコルベールが、慌てた様子でオスマン氏に伺いを立てた。
「オールド・オスマン!」
「これも、始祖ブリミルのお導きか…。わかった、入ってもらってくれ」
オスマン氏は渡りに船だと考えた。向こうのほうから面会を、しかも至急に求めているとは――いったいどのような話をするのか、興味がわいたのである。
オスマン氏の許可を受け、扉が開けられた。話題の使い魔が二人の前に姿を現した。
「ご多忙の中、お時間を割いていただき、まことにありがとうございます。私は、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔をしております、杉下右京と申します」
右京は、かしこまって挨拶をした。
「私は、トリステイン魔法学院の学院長、オスマンじゃ」
「私は、当学院で教職を仰せつかっております、コルベールです。二つ名は、『炎蛇』のコルベールです」
簡単に自己紹介してから、オスマン氏がしみじみとした調子で言った。
「そうか、君が…ミス・ヴァリエールが召喚した、人間の使い魔か。私に話したいことがおありのようじゃが、何用かな?」
「お聞きしたいことがいくつかございますが、まずは単刀直入に申し上げます。このハルケギニアと、別の世界をつなぐことができる方法をご存知ありませんでしょうか?」
右京の突拍子もない質問に、二人は驚いたようだった。
「『別の世界』とは……いったいどういうことかね?」
「僕は、この世界の人間ではありません。ミス・ヴァリエールによって召喚された、別の世界の人間なのです」
右京の言葉を聞いたときの二人の顔は違っていた。怪訝な顔をしたコルベールに対し、オスマン氏は厳しい目で右京を品定めするかのように見据えたのだった。
右京の話と、別の世界から来た人間である証拠として提示した携帯電話の月が一つしかない写真を見た二人の反応は、対照的だった。
コルベールは、目を輝かせて写真に見入り、続いて携帯電話をよく見せてほしいと頼んできた。そして、携帯電話にディテクト・マジックをかけたり、いろいろな方向から見たり、
いろいろなボタンを押して出てきた他の写真や動画、音楽などに「おお、これは素晴らしい!」などと、しきりに感動していた。
一方のオスマン氏は、机に肘をついて手を合わせ、目を閉じていた。何か考えごとをしているようであった。やがて目を開くと、興奮冷めやらぬコルベールに声をかけた。
「コルベールくん。しばらく席を外してくれ」
てっきり異世界の話を聞けると思って、わくわくした様子で待っていたコルベールは、しぶしぶ部屋を出て行った。
コルベールが出て行ったあと、オスマン氏は重々しくため息をついて、言葉を漏らした。
「これで二人目、か…」
「二人目? 僕以外にも、異世界からきた方がいるのですか?」
いささか興奮した右京をなだめると、オスマン氏はゆっくりと語りだした。
「今から三十年ほど前のことじゃ…森を散策していた私は、ワイバーンに襲われた。そのとき、ひとりの男が私を救ってくれた。彼は、見たことのない武器を二本持っていた。
その一本でワイバーンを吹き飛ばすと、その場に倒れてしまった。見ると、ひどい怪我を負っておった。私は彼を学院に運び込み、手厚く看護した」
「その方は、今どこに?」
「残念ながら、看護の甲斐なく、亡くなってしまった。私は、彼が使った一本を遺体とともに墓に埋めて、もう一本を『破壊の杖』と名づけ、宝物庫にしまいこんだ。命の恩人の形見としてな…」
オスマン氏は、遠い目をして続けた。
「死ぬ間際、彼はベッドの上でうわ言のように繰り返しておったよ。『ここはどこだ。元の世界に帰りたい』と。そのときは、怪我で錯乱しているのかと思っておったが…
今にして思えば、彼は君と同様、本当に違う世界から来たのかもしれんな」
「その方がどのようなお姿をしていたか、憶えていらっしゃいますか?」
右京の言葉を受け、オスマン氏は紙を取り出し、記憶を思い起こしながら絵を描いていった。完成した絵を右京に見せる。
右京は、我が目を疑った。
そこに描かれていたのは、第二次世界大戦期のアメリカ陸軍と思われる服装をした男性だった。その手には、二本の筒らしきものを持っている。これが『破壊の杖』だろう。形状や時期的に考えると、おそらく対戦車砲の類だろうか。
いずれにせよ、これで一つのことが明らかになった。
「この絵の人物は、国籍と時代こそ違いますが、僕と同じ世界からやってきた人間です。間違いありません」
右京は断言した。
彼は、オスマン氏にこれまでにない確かな手応えを感じていた。キュルケの紹介は間違っていなかった。あえてルイズと別れてオスマン氏に会ったのは無駄ではなかった。
オスマン氏はおそらく帰る方法を、少なくとも手がかりを持っているのではないか。
右京は、期待に胸を膨らませて、核心に入った。
「この方は、いったいどのようにしてこの世界へ来たのでしょうか? 僕のように、誰かがこの世界へ召喚したのでしょうか?」
右京の気持ちを察したのだろう、オスマン氏は再びため息をつき、申し訳なさそうに言った。
「わからん。ひどい怪我で、まともに話ができる状態ではなかったからのう。彼がどんな方法でこの世界へやってきたのかは、最後までわからなんだ」
「そうですか…」
声の調子こそ穏やかだったものの、さすがの右京も、オスマン氏の返答には落胆を隠しきれないようだった。色よい反応に期待を寄せていただけに、手がかりがあっという間に消えてしまったことへの失望もひとしおであったろう。
自分と同じ世界の人間が、何らかの方法でこのハルケギニアにやってきていたのだから、来た方法さえわかれば帰る方法も調べれば見つけられると思っていた。
だが、結局その米軍兵士は何も語ることなく世を去ってしまっていた。知る術は、いまや完全に失われてしまったのだ。
オスマン氏が何も知らないも同然の状態では、最初の質問で自分を疑わしい目で見ていたコルベールに聞いても無駄であろう。
「力になれんですまんの。魔法学院の学院長といっても所詮はこの程度。己の不見識を恥じるばかりじゃ…」
オスマン氏は力なく謝った。
「いいえ、とんでもございません。僕の話を信用していただけただけで十分です」
「ありがとう。君がどういう理屈でこの世界に来たのか、私のほうでも調べてみよう。だが、あまり期待はせんでくれよ」
「ありがとうございます」
「まぁ、見つからなかったとしても『住めば都』ということもある。なんなら、嫁さんも探してやろう」
右京は、その言葉には答えなかった。オスマン氏は場を明るくするつもりで言ったのだろうが、今の右京には笑うに笑えない冗談だった。
重い部屋の空気に、しくじりを悟ったオスマン氏が話題を変えようと目を動かすと、コルベールが持ってきたスケッチが目に入った。そして、さっきまで右京のルーンのことで話をしていたことを思い出した。
オスマン氏は、話すかどうか逡巡したが、どうせいつかは本人には話さなければならないことであるし、今までの言動からみるに、この男ならば冷静に受け止めるだろうと考え、話すことを決意した。
「君の左手のルーン…」
「ええ。これについてもぜひお聞きしたかったのです。コルベール先生がこれを『珍しい』とおっしゃっていたのが気になったので、僕なりにこのルーンがどういう意味を持っているのかを考えてみました」
「そうか…それで、君なりに考えて、何かわかったのかね?」
オスマン氏は、右京の言い方が気になって、尋ねた。
「はい。このルーンの字形は、ゲルマン共通ルーンのものとほぼ同じです。それを対応するラテン文字に変換すると、“Gandalf”――“ガンダルフ”と書かれていることまではわかりました」
右京は、懐からノートとペンを取り出すと、上に左手のルーン文字を、その下に対応させるようにラテン文字を書き、それをオスマン氏に見せた。
「なんと…! 君は、ルーンを読めるのか?」
オスマン氏は、魔法の知識など何もないはずの右京がルーンを読めるなどとは思いもしなかったので、驚愕した。
「ですが、僕が知っている“ガンダルフ”は、イギリスの作家J・R・R・トールキンの小説『ホビットの冒険』『指輪物語』に登場する魔法使いの基になった、北欧神話に登場する魔法を使う妖精の名前か、1970年代に人気を博したレザーブランドの名前くらいしかありません。
この世界での“ガンダルフ”には、どのような意味があるのでしょうか?」
オスマン氏は小さく唸った。
この男は、自分が考えていた以上に豊富な知識と、それらを的確に繋ぎ合わせる聡明さ、そして自身がおかれた異常な状況にも対処できる冷静さを持ち合わせているようだ。
見立ては正しかった。これならば『ガンダールヴ』のことを話しても問題はないだろう。
ややあって、オスマン氏は口を開いた。
「どうやら、君に隠し立てする意味はなさそうじゃな…。わかった、お教えしよう」
オスマン氏は静かに語り始めた。
「実は君が来る直前まで、わしはコルベールくんと君のルーンのことを話し合っておったのじゃ。君が考えているとおり、そのルーンは特別な使い魔のルーンじゃ」
「特別な使い魔…」
右京は、オスマン氏の言葉を繰り返しながらも口は挟まず、暗に続きを促した。
オスマン氏が、机から書物とコルベールのスケッチを出して続ける。
「これは、最も偉大なメイジである始祖ブリミルが使役した伝説の使い魔『ガンダールヴ』の印じゃ。始祖ブリミルは強力な魔法を持っていたが、その力ゆえに、呪文を唱える時間が長かった。詠唱時間中のメイジは無力じゃ。
そこで、詠唱中に自らの体を守るために用いたのが『ガンダールヴ』なのじゃ」
「なるほど。主の呪文詠唱の時間を守ることに特化した使い魔だったのですね」
右京の言葉に、オスマン氏が頷く。
「そのとおりじゃ。『ガンダールヴ』の姿かたちの記述はないが、伝えられるところによれば、あらゆる武器を使いこなし、並のメイジでは歯が立たぬほどの力を持ち、千人の軍隊を一人で壊滅せしめたそうじゃ」
オスマン氏はそこで言葉を切り、息をついた。右京の様子を見る。
右京は、視線を下に落としていた。頭の中で手に入れた情報を整理しているようだ。
やがて、「一つ、よろしいでしょうか」と、右京が指を立てて質問を求めた。
「始祖ブリミルとは、どういった存在なのでしょうか?」
オスマン氏によると、始祖ブリミルは本名を「ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ」といい、ハルケギニアでは神と並んで崇拝される伝説の偉人だという。ハルケギニアとは別の世界からやってきたともいわれ、失われた系統・虚無の魔法を扱い、
『ガンダールヴ』をはじめとする四人の使い魔を従えていた。
そして、死期が近づくと、その強大な力を三人の子どもと一人の弟子に、指輪と秘法という形で分け与えたとされる。現在ハルケギニアに存在する四つの国、トリステイン、アルビオン、ガリア、ロマリアそれぞれの王家は、始祖ブリミルの力を受け継いだ四人の子孫だという
(ちなみに、ゲルマニアは複数の都市国家が集まってできた国なので、始祖ブリミルとの関係はない。そのため、ゲルマニア皇帝は他国の王よりも格下に見られている)。
右京は、始祖ブリミルは自分の世界でいうところの釈尊やイエス・キリスト、ムハンマドのような存在と理解した。
「このルーンに、そのような意味があったとは…。どうやら、僕の懸念は正しかったようですね」
「懸念?」
右京の独白の意味をはかりかねて、オスマン氏が問うた。
「はい。僕が一刻も早くあなたにお会いしたかった理由は、たとえ帰る方法がわかったとしても帰れなくなってしまうという懸念を抱いたからです」
「どういうことかね?」
右京は、指を三本立てた。
「きっかけは、僕とミス・ヴァリエールの周りで起きた三つの特別な出来事です」
オスマン氏に促されて、今度は右京が語り聞かせる立場になった。
右京が、左手の人差し指を立てた。眼鏡の奥の目が鋭く光った。
「一つ目は、先ほども言いましたが、昨日コルベール先生が僕のルーンを見て『珍しい』とおっしゃって、スケッチをしておられたことです。他の生徒さんの使い魔にはそのようなことはしておられなかったようなので、気になりました。
現に、僕に刻まれたルーンは、この世界では伝説とされる『ガンダールヴ』のものでした」
そこまで言ってから、右京はオスマン氏に質問を投げかけた。
「オスマン先生。突然の質問で申し訳ないのですが、学院としては、ミス・ヴァリエールにどのような評価をしておられたのですか?」
「ミス・ヴァリエール? ふむ…座学は優秀じゃが、実技は、代々優秀なメイジを輩出した公爵家の出であることを差し引いても、可すらつけがたいというか……こう言ってはなんじゃが、無能というか…」
オスマン氏は非常に言いにくそうにしながらも、ルイズに対する評価を正直に答えた。
「級友の方々も同じ評価を彼女に下し、“ゼロのルイズ”と呼んでいました。その理由は、基本的な魔法すら成功させられず、爆発を起こしてしまうから。そうですね?」
「うむ。そのとおりじゃ…」
「僕が見た限りでも、ミス・ヴァリエールは校舎へ帰るときに『フライ』を使わずに徒歩であったり、部屋の施錠も鍵を使っていたりと、爆発を恐れて積極的に魔法を使おうとはしませんでした。そして今朝は、『錬金』の魔法を使おうとして爆発を起こしました」
本人がいないとはいえ、主に対して身も蓋もない言い方をする使い魔に、オスマン氏は面食らった。
右京はここで、指を二本立てた。
「二つ目は、その『失敗』と見なされている爆発です」
「と、いうと?」
「メイジが魔法に失敗すると爆発するのであれば、ミス・ヴァリエールへの評価にも納得できますが、それなら学院内に爆発の跡があったり、被害を抑える措置がなされていてもよさそうなものです。
ですが、そのようなものは見当たりませんでした。普通はメイジが魔法に失敗した場合は、なんの現象も起こらないそうですねえ」
「……!」
「にもかかわらず、なぜかミス・ヴァリエールだけは魔法を使おうとすると爆発させてしまう。この二つの結果には無視できない大きな落差があります。彼女の爆発現象を単純に『失敗』といってしまうことに、僕は違和感を覚えました」
「むう…そう言われれば…」
右京の説明を聞いたオスマン氏は、目から鱗が落ちる思いだった。自分たちは、ルイズがまともにコモン・マジックすら扱えないという欠点しか見えていなかったが、考えてみればそういう見方も確かに成り立つ。
右京が指を三本立てた。話はいよいよ佳境に入るようだ。
「そして三つ目。その『失敗』ばかりのミス・ヴァリエールが使い魔召喚の儀式で、前例のない人間を召喚し、契約に成功したことです」
オスマン氏は、右京が言わんとするところがわかってきたようだった。右京に確認するように口を挟んだ。
「つまり、君はこう言いたいのじゃな? 君の左手に刻まれた『ガンダールヴ』のルーン、ミス・ヴァリエールが起こす爆発、そして前代未聞の人間である君の召喚と契約…これらはすべて繋がっていると…」
「はい。我々…というよりミス・ヴァリエールの周りで、これだけ特別な出来事が起こっているのは、偶然とは思えません」
右京が、オスマン氏の指摘に肯んじた。
「じゃが、仮にそうだとしても、メイジとしては決して有能とはいえぬ彼女と契約したただの平民にすぎない君が、なぜ『ガンダールヴ』になったのか。それがわからん。君はそこをどう考えておるのかね?」
問われた右京は、「これはあくまで僕の推測ですが」と前置きして、話し始めた。
「ミス・ヴァリエールの起こす爆発は、彼女の極めて特殊な魔法の才能の片鱗なのではないでしょうか」
「特殊な才能?」
「先ほどお話いただいた『ガンダールヴ』の伝説の中で、あなたは『千人の軍隊を一人で壊滅せしめた』と、『ガンダールヴ』に『一人』という単位をお使いになっていました。姿かたちの記述はないとのことですが、
仮に『ガンダールヴ』が人間だったとしたら…」
「…! まさか…」
オスマン氏の表情がこわばった。
さすがは魔法学院の学院長というべきか、右京の思わせぶりな説明から結論を察したようだった。しかし、その結論はオスマン氏にとっては信じがたいものだった。
そんなオスマン氏を意に介することなく、右京は話を続ける。
「『ガンダールヴ』が、失われた系統・虚無の魔法を扱った始祖ブリミルの使い魔であったこと、そして四系統の魔法を扱えないミス・ヴァリエールが、人間の僕を『ガンダールヴ』にしたこと。
それらを考え合わせたとき、僕の中にある可能性が浮かびました」
「き、君は…ミス・ヴァリエールが……」
オスマン氏の体が震えていた。その両目は、今にも飛び出さんばかりに見開かれている。
動揺のあまり喉は渇き、声はかすれ、言葉がうまく出てこなかった。
右京は、オスマン氏の目を見すえて言った。
「ミス・ヴァリエールは、始祖ブリミルと同じ、虚無の系統を扱うメイジなのではないか――僕は、そう考えています」
右京の結論は、オスマン氏も話を聞く中で行き着いてはいたが、口にするにはあまりにもおそれ多いものであった。だから、右京の口からそれを聞かされたとき、オスマン氏は改めて衝撃を受けることになった。
思わず天井を仰ぐ。深い嘆息が漏れる。
いつも飄々としたオスマン氏しか知らないミス・ロングビルが見ていたなら、さぞかし驚いたであろう。
オスマン氏はしばらく黙りこくっていたが、やがて顔を下ろすと、右京に「失礼」と声をかけ、『ディテクト・マジック』を使った。この魔法は、対象が持つ、あるいはかけられている魔力を探知することができる。
結果は……右京はなんの魔力も持っていない、普通の人間であった。
「やはり、ただの平民か…」オスマン氏が声を漏らした。
……支援いたします。
オスマン氏がこのような行動に出たのは、右京の説明が、途中までコルベールがオスマン氏に力説していたこととほぼ同じだったからであった。だが、碩学として知られるコルベールも、ルイズが始祖ブリミルと同じ虚無の魔法を扱えるのではないか、
ということまでは言及していなかった。
それに加えて、右京がルーンを読めるということがオスマン氏をして、右京はメイジなのではないかという疑念を抱かせたのだった。
「どうされました?」気遣わしげな顔をする右京に、オスマン氏は静かに語りかけた。
「懸念…と最初に言っておったな。それは、どういうことかね?」
「ミス・ヴァリエールが伝説の再来ではないか――その推測が浮かんだとき、もしそれが正しかった場合、我々がどうなるかを考えました」
「それで?」
「もし本当に始祖ブリミルの再来であったとしたら、それをいつまでも隠し通しておくことは不可能です。遠からず公になる日がくるでしょう。そうなれば、王室が放っておくはずはありません。
国内の政争や国家間の外交上の切り札として祭り上げられ、利用されることは容易に予測できます。
そこまで行くと、たとえ帰る方法が見つかったとしても、帰るどころではなくなってしまうでしょう。ですから、そうなる前に、帰る方法を確保しておきたかったのです」
「確かに…。虚無のメイジと『ガンダールヴ』などという格好のオモチャが、宮廷で暇を持て余しているボンクラ貴族どもの手に渡れば、またぞろ戦を引き起こそうとか、ろくでもないことを考えるじゃろうな。
そうなれば、君たちに自由はなくなる」
「大きな力を手に入れれば、それを使わずにはいられない。どの世界でも、人間のそのような弱さは、変わらないものなのかも知れませんねえ」
右京が、わずかに憂いを帯びた声で、オスマン氏に同意した。
「君、このことはまだ誰にも…?」
「はい。お話ししたのは、学院長先生だけです」
「それならよかった。余計な混乱を招かぬためにも、決して口外はせんでくれ。君の主、ミス・ヴァリエールにもじゃ」
「わかっております。そう言われる可能性もあると思いましたので、ミス・ヴァリエールには先に食堂へ行っていただいて、一人で参りました」
言うまでもなかったか。本当に頭のいい男だ。
オスマン氏は、目の前の紳士の、ベテラン教師すら及ばない恐るべき洞察力と推理力に舌を巻くとともに、細かいところまで予測して行動する聡明さに感心した。
「スギシタウキョウくん」オスマン氏は立ち上がると、右京の手を握った。
「突然この世界に連れてこられ、帰る方法もわからない。さぞ困惑しておることじゃろう。さっきも言ったが、私も学院長として、君が帰還できる方法を調べるつもりじゃ。その代わりといってはなんじゃが…」
右京は黙ってオスマン氏の話を聞いていた。その表情は、柔和な笑みをたたえていた。
「どうか君には使い魔として、ミス・ヴァリエールを助けてやってほしい。あの娘は公爵家の名を背負った責任感からくる重圧と、魔法をまともに扱えぬ屈辱と劣等感との板ばさみで苦しんでおる。だがこればかりは教師でもどうにもできぬ。
彼女には、君のように積極的に肯定してくれる、頼れる人間が必要なのじゃ。君は信頼に値する人間じゃ。勝手なことを言っておるのは承知の上じゃが、よろしく頼む…!」
オスマン氏は、握った手を放さぬまま、右京に頭を下げた。
「わかりました。微力ながら、ミス・ヴァリエールの使い魔として、主を守るために全力を尽くすことをお約束します」
右京は穏やかな、しかし力強い声で承諾した。
「ありがとう…。私はいつでも君の味方じゃ。『ガンダールヴ』よ」
オスマン氏は、コルベールにも事情を話し、右京が帰れる方法を探す協力をさせることを約束してくれた。コルベールならば、嬉々として快諾してくれるに違いない。
「ありがとうございます。非常に助かります」と右京が感謝を述べたとき、扉がノックされる音が響いた。
「わたしです、オールド・オスマン。まもなく午後の授業が始まります。三年生への特別講義の時間ですが…」
ミス・ロングビルだった。オスマン氏がはっとなった。
「おお、もうそんな時間か! 君と話しこんでいて、すっかり時間を忘れてしまっておった。すまんのう。昼食を食べそびれてしまったな」
「いえ、心配はご無用です。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。では、失礼いたします」
丁寧に礼を述べ、右京は学院長室を退室した。外でずっと待っていたらしいミス・ロングビルとコルベールにお詫びと礼を述べると、右京は学院長室を後にした。
帰る方法は結局わからなかったが、学院長の協力を取り付けたという意味では、右京にとって十分な収穫があった。それを思えば、空腹感など安いものだ。
そんなことを思いながら廊下を歩いている右京に、声をかけたものがあった。
「あら…? ウキョウさん?」
右京に話しかけたのは、メイドの格好をした素朴な感じの少女だった。カチューシャでまとめた黒髪がかわいらしい。
「おや、シエスタさんでしたか」
右京がシエスタ微笑んだ。どうやら二人は互いを見知っているようだ。
「どうかなさいました?」
「いえ、大したことではありません。話に花を咲かせて、昼食の時間に遅れてしまっただけです」
「まあ。それじゃ、お腹が空いてるんじゃありませんか?」
「お気になさらず。好奇心がうずくと他のことを忘れてしまうのが、僕の悪い癖で…」
そう言い残して去ろうとする右京を、シエスタが引き止めた。
「私についてきてください」
シエスタの申し出を無下に断るのも失礼だと考え、右京はおとなしくシエスタの後についていくことにした。
以上で、前半戦終了でございます。
決闘イベントを避けようと考えたらこの結果だよ!
なにはともあれ、ようやくシエスタを出すことができました。
ギーシュ関連のイベントはプロットはだいたいできていますので、
形にするだけです。いつ形になるかはわかりませんが、
なるべく早くお届けできるよう頑張りたいと思います。
早くデルフを手に入れて右京さんの態勢を整えてあげないと
フーケに殺されてしまうので、うまくつなげられるように
先の展開を考えています。原作者のヤマグチ先生や他の作者さんの
構成力には本当に頭が下がります。
それでは、次にお会いできる日を楽しみにしております。
夜遅くにお目汚し失礼いたしました。
乙でした。最近は貴方の投下が楽しみですよ。
乙!
理論で話を進めていく右京が面白いww
後編が待ち遠しいですな。
乙でしたー
頭のいいキャラをメインに論理立てて話を書こうとするのは大変ですよね。
楽しみにしてますよ
135 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/15(月) 08:50:48 ID:ssGZeCGD
wikiもう少し自由に編集したい。
もしかしてこれ「誰得ジジイのシーン」wに悩まされてた人かな?
まさに乙です。
そして流石は右京さん、虚無に気付くのも早いw
>>135 まずsageてくれ
でもって、それは避難所で提案しよう
138 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/15(月) 16:12:31 ID:jv4HK2ww
小ネタで小野妹子を召喚する話を考えてみたが
法隆寺にあたる建造物が思いつかない…
どこの妹子さんだよw日和か?
コルベールの飛行船とかでいいんじゃね、
手抜き工事バージョンで。
コルベールの飛行船、タイガーよりこっちのほうがすげえだろと思わざるを得ない東方号のことね。
ゼロ戦元にしたって絶対無理だろ、コッパゲは天才を通り越して異常だよ異常。
で、異常といったらでめだかボックスより黒神めだかちゃんに来てもらったら、やっぱりみんな改心させようとするんだろうなあ。
「ガリア国王ジョゼフ、権力闘争のはてに弟殺しをしてしまったお前も、かつては国や家族を思う優しい王子だったに違いない!」
あながち外れてないし...
ゼロ魔の捻くれちゃったキャラってルイズを筆頭に
大抵過去のわけありが大多数だからなぁ
>>141 ゼロ魔に限らず、チョイ役でもない限り「大した理由もなく捻くれたやつ」って意外と少ない気がする。
パッと思いつくのはスネオぐらいだわ。
>142
平松伸二とか小池和夫とか石川賢なんかの漫画だと
「たいした理由は無くとも人は殺す」奴なら結構多いけどな。
九時から第二話投下します。
今回も話としてはあまり進みません。
ちゃっちゃとテンプラ消化してフーケまでこぎつけたいです。
テンプラ吹いた
第2夜
決闘よ!
学院に着いた時点で、ルイズがマルモについてわかったこと。
マルモは別の世界から来たということ。マルモの呪文と動くタマゴのクリオがその証拠。
マルモは『賢者』でありかつ『モンスターマスター』であるということ。使い魔の主従とはまた別のものらしい。
マルモはこちらのコモンマジックを使えるが、系統魔法は使えないということ。ただし召喚魔法と契約魔法は除く。
学院についた時点で、マルモがルイズについてわかったこと。
ルイズはこのトリステインで屈指の大貴族の三女であること。
ルイズは魔法の成功確率がほとんどゼロのため、『ゼロのルイズ』と呼ばれていること。
そして――使い魔は一生涯その主人に仕えるということ。
だが、マルモはそれでもいいと考えていた。冒険が終わって、帰れる場所があり、迎えてくれる人がいるというのは心地よい。
思わず微笑みがこぼれ出た。
「それにしても、四系統全部に通じているなんてすごいわね」
泣いてすっきりしたルイズは嫌み僻みなくマルモを尊敬した。主従関係など、今のルイズには二の次だ。
「系統魔法じゃない。私の使っているものはこっちの系統魔法とは別。それに土系統に該当する呪文は、私の知る限りない」
「ルーンじゃないものね。先住魔法も疑ったけど、あれは口語だし」
マルモはルイズにせがまれて、召喚を行った場所から学院に向かう途中で色んな呪文を披露してみせた。
ベギラマ、メラミ、バギマ、イオラ、スカラ、ピオリム、……などなど。
最上級魔呪文は使わなかった。魔法力の消費が激しく、また威力が高すぎるためである。
イオ、イオラを見たときのルイズは、マルモが同じ失敗をしたのではと驚いたが、マルモはそういう呪文なのだと教えた。
「イオは少し修行を積んだ魔法使いが使える攻撃呪文。イオラはさらに修行を積んだ一人前の魔法使いなら使える」
もっともマルモの場合は魔法の才能が並ならぬものだったので、幼いうちにどちらも覚えてしまった。
先の言葉は師匠賢者の数少ない受け売りの一つである。
「わたしも、マルモの魔法を覚えられるかな。わたしの魔法は全部爆発……何を唱えてもイオみたいになっちゃうから」
「多分無理。私はこっちの魔法……コモンマジックと系統魔法のうち、コモンマジックは使えたけれど系統魔法はダメだった。
おそらく生まれと魔法の体系が違うせい。だから、ルイズもだけど、こっちの魔法使いは私の使う魔法は扱えないと思う」
「はあ……光明を見出せたとおもったのになあ…………」
ルイズは溜息を吐きながら、校門をくぐった。
五本の塔や広場を案内して回った後、二人とタマゴは一際高い本塔の中に入った。
「ここがアルヴィーズの食堂よ。学院の生徒と先生は一日に三回、ここで食事を共にするの」
マルモは食堂を見回した。百人は優に坐れるであろう長いテーブルが三つ並び、奥の中二階にもテーブルが見える。
メイドが一人だけで清掃作業をしているところを見ると、もうほとんど終わりかけているらしかった。
「ちなみに『アルヴィーズ』っていうのはね、壁際にある小人の像のことよ」
気分はすっかり観光案内人のルイズである。
「こいつらは昼間は普通の彫像なんだけど……夜中になると踊るのよ。『アルヴィー』はガーゴイルの一種で、
与えられた命令の中では自律的な行動をとることができるの」
なおも続けるルイズであるが、マルモはそっと一体のアルヴィーに触れてみる。
すると、マルモの額のルーンがうっすらと輝き始め…………。
マルモは、アルヴィーを自在に使いこなせる気がした。
「踊って」
途端に食堂中のアルヴィーが踊りだす。
「ちょっ、一体何?!」
ルイズは俄かに踊りだしたアルヴィーにとまどいを隠せなかった。
「もういい」
すると、先ほどまでのダンスが嘘のように食堂が静まり返った。練度の高い軍隊並みの統制であった。
「き、き、今日は気分が違ったのかしら……?」
驚きが抜け切っていないルイズは、よろよろとマルモに倒れ込むように抱きついた。マルモはそれをしっかりと受け止める。
マルモはルイズを抱いたままもう一度食堂を見回すと……、先程のメイドが床に倒れていた。
とりあえずルイズを椅子に預け、床に倒れたメイドに駆け寄る。
「大丈夫?」
声をかけつつメイドを引っ張り起こした。見た目は少女のマルモであるが、経験値が莫大にあるので力は結構ある。
「あ、申し訳ありません! 私、とんだ粗相を……!」
と、メイドは頭を深く、深く下げた。切り揃えられた黒髪が床に向かって垂れ下がる。
「あの人形達が踊りだしたのは私のせい。だからあなたは悪くない、悪いのは私の方。私こそごめんなさい」
マルモも目の前のメイドと同じ低さまで頭を下げる。
「そ、そんな! こちらこそ貴族様にお手を煩わせてしまって……」
メイドはぶんぶんと手を振った。
「畏まる必要はない。私は貴族じゃないから」
「……お気を遣わせてしまって申し訳ありません」
黒髪のメイドは、マルモにどう接していいか計りかねていた。見た目はどう見ても貴族、しかし当人は貴族でないという。
本人が貴族扱いを望まなくとも、学院という公の場で、貴族と思しき少女に平民と同じように扱うのは不味い。
結局、当たり障りのないような言葉でその場を凌ぐことにした。
「マルモ」
ルイズが不機嫌そうに声をかけた。どうやら混乱から立ち直ったらしい。
「ご主人様を放っておくなんて、どういう料簡よ」
仁王立ちで構えるルイズ。眉間にはありありとしわが寄っている。
「私のせいでこの女の子が転んでしまったから……ごめんなさい」
素直に頭を下げるマルモにいらつきをぶつけられず、こちらも素直に話を合わせようとする。
「アルヴィーズが踊りだしたのは、マルモのせいじゃないわよ」
「……私が命じたから、アルヴィーズは踊りだした。それは間違いない」
「どういうことよ? マルモは今日初めてここの食堂に来たんでしょう? ガーゴイルの命令を上書きできるのは制作者だけよ」
「なぜだかはわからないけれど、実際に命令できる。見て」
と、マルモは近くのアルヴィーに手を伸ばした。再びマルモの額のルーンが淡く光り……。
「踊って」
今度は、そのアルヴィーだけが踊りだす。
ルイズは驚愕した。食堂のアルヴィーズは当然学院の物、すなわち教師達が魔法をかけたガーゴイルである。
たとえスクウェアクラスのメイジといえども、制作者でない者が勝手に操るのは至難の業。それをマルモはやってのけた。
「どういうこと?」
いくらマルモが強力なメイジとはいえ、易々と他人のアルヴィーを操れるはずがない。
「多分、この額のルーンが関係していると思う。アルヴィーに触れると、頭脳が活性化してきてアルヴィーの操作方法がわかる」
マルモは踊っていたアルヴィーを静かにさせた。ルーンが光を失い、ただの模様に戻る。
「そのルーンがガーゴイルの制御を奪うっていうの?」
鳶色の目が、マルモの額を覗き込む。
「確証はないけど、今のところはそう思う」
「うーん……使い魔のルーンは、特別な能力を与えたりするけど…………。さすがに特別すぎるわね」
「……そうなの?」
「ええ、そもそも使い魔がガーゴイルを操るなんてありえないもの」
「…………」
ルイズは考え込む。ガーゴイルはいわば自動的なゴーレムだ。ゆえに、まれに制作者の意図を離れて暴走することがある。
しかし、それはあくまで暴走であって、制御権が他者に奪われることはない。
一体どういうことだろう……と、ルイズが考えているところに、「ぐう」という音が響いた。
ルイズは反射的に顔を上げる
「何? 今の音」
「…………私」
呟いたのはマルモだった。
「マルモ、お腹空いたの?」
静かに頷くマルモに溜息を吐きながらも、その唇は微笑むルイズ。
「しょうがないわね。何かいただきましょう、昼食は済んだけど何かあるでしょ。ええと……そこのあなた」
「はっ、はい?!」
今まで口を挟まずにいたシエスタである。
「あなた、名前は?」
「シエスタと申します」
「そう。シエスタ、悪いんだけどこの娘に何か食べさせてもらえる?」
「はい、かしこまりました」
厨房に向かおうとするシエスタであったが、その手をマルモが掴んだ。
「……別にいい」
「何言ってるのよマルモ。主人たるもの、使い魔を養うのは当然のことだわ」
「でも」
「変に遠慮しないでちょうだい。どっちみちこの学院の食堂のお世話になるんだから。そしてこれはご主人様の命令よ
わかった?」
「……わかった」
マルモが頷くと、シエスタが厨房に入っていった。
しばらく経ってシエスタが盆に食器を載せて戻ってきた。
「賄い食ですが……パンとシチューです」
「ありがとう」
マルモは礼を告げると、早速食べ始める。そんな様子をルイズとシエスタは温かい目で見守った。
「ところでミス・ヴァリエール……その、失礼ですが、先程の『使い魔』というのは…………」
シエスタが好奇心を抑えきれないように言った。
「ああ、そのまんまよ。わたしが『サモン・サーヴァント』でマルモを召喚して契約したの」
「はあ、なるほど……」
学院で奉公し始めていくつか経ったシエスタであるが、人間――しかもメイジを使い魔にするなど聞いたことがなかった。
そのためにいまいち納得がいかないのであるが、貴族の子女にこれ以上余計な口を利くのはよくないと思って口を閉ざした。
やがてマルモが食べ終えると、立ち上がってシエスタに向かい頭を下げた。
「ごちそうさま」
「おかわりはなされますか?」
「もうお腹いっぱい。……おいしかった」
「ありがとうございます、ミス・マルモ」
「それじゃあ行くわよマルモ。仕事の手を止めて悪かったわね、シエスタ」
「とんでもございません!」
シエスタは、マルモとルイズに謝辞を言われて恐縮した。貴族が平民の名前を呼んで挨拶を言うことなど普通はない。
二人が食堂を出て行くのを確認してから、シエスタは大きく息を吐いた。
時と所が移り、夕食前のルイズの部屋。
夕日が地平に差し掛かり、二つの月が昇ろうと控えている時である。
ルイズとマルモはベッドに腰掛けて話に花咲かせていた。タマゴのクリオはマルモの膝の上で抱かれている。
内容は、始めマルモのルーンについてであったが、次第に昔のことに転換していって、今はルイズが話し手である。
「それでね、ちいねえさまが……」
ルイズがヴァリエール家の次女カトレアについて話すときは、微笑みが絶えない。
マルモは、ルイズが家族について話すときの温かみにまぶしさを感じた。自身には家族といえる存在はない。
仲間や友達といった関係の方が何よりも濃い。だが、別に卑屈に感じたり嫉妬しているわけでもない。
マルモがルイズに感じているのは、かつて共に修行した女の子と同じような愛しさ。それがマルモには快い。
実はルイズがこうして話すのはいままで学院において一度もなかったのだが、それをマルモが知る由もない。
「あ、そろそろ夕食の時間ね」
ルイズが部屋に差し込む夕日を見て言った。
「夕食を食べた後は、学院長……オールド・オスマンのところにいくんだっけ」
確認のように独り呟いて、ルイズは身だしなみを整えた。
「行きましょう、マルモ」
マルモは頷いて、二人そろって部屋を出た。その姿は主人と使い魔ではなく、仲睦まじい親友のようである。
二人は食堂に着いた。クリオは騒ぎになると面倒なので、ルイズの部屋で待機させてある。
入り口近くに坐っている二年生メイジがルイズとマルモに気付き、ひそひそと話をし始めた。
「見ろよ、ゼロのルイズと召喚された女の子だぜ」
「かわいそうに、ルイズなんかの使い魔にされちゃって……」
ルイズがマルモを使い魔にした話は、既に広まっているらしかった。
ルイズとマルモはそれらを無視して席に着こうとすると、マルモがルイズの為に椅子をひいた。
「マ、マルモ、別にそんなことしなくてもいいのよ」
「私は使い魔。主人を立てるのは当然の義務」
「それはまあ、そうだけど……」
メイジと使い魔の関係である以上は公私の区別をつけましょうとルイズは言ったが、
一日で心を通わせたマルモにそんなことをされると、どうにも悪い気がしてしまうのだ。
ルイズが席に着くのを確認してから、マルモはルイズに許可を貰ってルイズの隣の席に腰掛けた。
昼のうちにアルヴィーズの食堂を案内した後、マルモも席に着いて食べるように言ったのだ。
マルモは学院の生徒でないことと使い魔であることを理由に断ろうとしたが、ルイズが強く言ったので了承したのだった。
「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今夜もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします」
目の前の豪華な食事にルイズとマルモは手をつけていく。
しばらくすると、ワインを運んでいるメイドが二人に近付いてきた。カチューシャで纏めた黒髪とそばかすが可愛らしい。
空になったワインボトルを交換していると、ルイズとマルモがそのメイドに気付いた。
「あら、シエスタ」
「お食事のお手を止めて申し訳ありません、ミス・ヴァリエール、ミス・マルモ」
「そんなことないわよ」
「『ミス』はいらない。マルモでいい」
マルモは敬称をつけられた経験がこれまでになく、どうにも違和感を感じるのである。
「お昼はどうもありがとう」
「も、もったいないお言葉でございます。あれは本来平民の食べるもの、貴族様に召し上がっていただくのは……」
「いいのよ」
「私は貴族じゃない」
昼にもマルモは貴族ではないと説明したのだが、その見た目と雰囲気から貴族だと思い込んでいるらしかった。
「シエスタには感謝している。何かあれば力になる」
「あ……ありがたく存じ上げます」
深くお辞儀をして、シエスタは厨房へと引っ込んだ。
「さて、十分食べたし、いったんわたしの部屋に戻ってから学院長室に行くわよ」
マルモは頷いた。
ルイズとマルモが立ち上がったのを見計らったかのように、二人の人物が近付いてくる。
「ハ〜イ、ルイズ」
「……」
声をかけた方は燃えるような赤い髪のグラマラスな女の子、キュルケ。
無言のまま本から目を放さない方の青い髪の背の低い眼鏡をかけた少女は、タバサ。
ルイズは眉間にしわを寄せた。
「キュルケ、何の用よ」
「あなたなんかに用はないわよ、ルイズ」
「なんですってぇぇ! ツェルプストー!!」
「ルイズ、落ち着いて」
「……」
キュルケは髪をかき上げながらルイズの憤りを受け流していた。タバサはその横でページをめくっている。
「あたしが用があるのは、そっちの娘」
「マルモ?」
「へえ、マルモっていうんだ。かわいそうに、『サモン・サーヴァント』でルイズなんかに呼び出されちゃって」
「わたしなんかって何よ!」
再びルイズが怒り出すが、マルモが一歩前に出てキュルケの前に立つ。
「私は別にかまわない。ルイズと知り合えてよかったと思っている」
「あら、泣かせるじゃない。あたしはキュルケ・フォン・ツェルプストー。『微熱』のキュルケよ」
「……タバサ」
キュルケは含みを持って挨拶し、タバサは本から目を放さずに言った。
「で? 一体マルモに何の用なの?」
「大したことじゃないんだけどね。その娘の属性は?」
「……そんなこと訊いてどうするの?」
ルイズは怪訝な顔をする。
「あなたねえ……。その娘の属性がわかれば、あなたの属性もわかるかもしれないでしょ?
使い魔でメイジの属性を固定するんだから」
「あ」
そういえばそうだった。
正確には、メイジの属性に合った使い魔が召喚されるのだが、学院ではそれで系統ごとにカリキュラムを決めることになっている。
でも、マルモは土系統以外の三系統を難なく使いこなす。加えて四系統には分類できないような魔法も使える。
「ツ、ツェルプストーなんかに教える義理はないわ!」
「ケチくさいわね。それともその娘も『ゼロ』なのかしら?」
「マルモはあんたなんかよりずうぅっと優秀よ!!」
その言葉にキュルケは軽くルイズを睨みつけた。
「言ってくれるじゃない、ヴァリエール。なんなら決闘してみようかしら、その娘と」
「上等よ! ギッタンギッタンのグッチョグチョにしてやるわ!」
「ルイズ」
「……」
ルイズとキュルケがヒートアップする最中、蚊帳の外であったマルモはルイズを止めに入った。
タバサは我関せずを決め込んでいる。
「マルモ! あなた悔しくないの!」
「全然悔しくない。そんなことより、早く部屋に戻ろう」
「そんなことって何よ! いい?! ツェルプストーっていうのはね……」
と、ルイズがヴァリエール家とツェルプストー家の因縁を語ろうとしたところで、
「申し訳ありません!!」
と、大きな声がそれを阻んだ。
何事かと四人が声のした方を向くと、メイドが男子生徒に頭を下げていた。
「いいかい? メイド君。僕は君が香水の壜をテーブルに置いたとき、知らないフリをしたじゃないか。
話を合わせるぐらいの機転があってもよいだろう?」
「そ……そんな……」
男子生徒はフリルのついたシャツを着ており、その胸ポケットに薔薇を挿している。
金髪の巻き髪をいじりつつ難癖をつけているのは、ギーシュだ。
そのギーシュに頭を下げているのが、シエスタ。
「ちょっとギーシュ! あんた何してるのよ!!」
ギーシュに頭を下げているのがシエスタだと確認して、ルイズが割り込んできた。
「ルイズ、君には関係のないことだ。下がっていたまえ」
ギーシュとルイズの目線が火花を散らす。
「ギーシュ、二股かけてるお前が悪い!」
「やつあたりすんなよ!」
と、周りにいた男子生徒が囃し立てた。
「ルイズ、どうやらギーシュが二股かけたのがそこのメイドのせいでばれちゃったんだって」
と、周りの生徒から聞き出したキュルケが言った。
「つまりはギーシュ、あんたが悪いんじゃない」
そうだそうだ、と群集も乗ってくる。
「君には関係ない。いいから下がりたまえ」
「あんた、貴族として恥ずかしくないの?」
ルイズの言葉に、ギーシュは嘲笑した。
「おや、まさか『ゼロ』のルイズから貴族たるべしを教えられるとは思わなかった。このメイドを庇うのも、同族意識の現れかね?」
周りからも忍び笑いが漏れる。
「決闘よ! ギーシュ!! ラ・ヴァリエール公爵家が三女を侮辱した罪は重いわ!!」
「魔法を使えない君が公爵家を名乗る資格はないよ、『ゼロ』のルイズ」
そうだそうだ、と同じ連中が乗ってくる。
「それに、貴族同士の決闘は禁じられているはずだ」
「だったら、代わりに私がその決闘を申し込む」
その場にいた人間は、誰がそんなことを言い出したのか一瞬わからなかった。
「マ、マルモ?!」
ルイズの言葉に、ようやくそこに見慣れぬ少女がいることに気付いた。
「誰だね、君は」
「マルモ」
「マルモ? ……ああ、ゼロのルイズが召喚したメイジの使い魔か。君の出る幕じゃないよ」
と、意に介さぬように手を振った。
「決闘を受けなさい!!」
マルモが叫んだ。杖はまっすぐギーシュに向いている。
マルモ以外の人間は皆一様に驚いた。特にルイズは、マルモが怒鳴るなんて思いも寄らなかった。
「……そこまでいうのなら、受けて立ってやろう。ヴェストリの広場で決闘だ」
ギーシュは食堂を出ていった。
「うおーッ! ギーシュとルイズの使い魔が決闘だ!」
一気に食堂が騒がしくなる。当の本人であるマルモは、シエスタに駆け寄って慰めていた。
「大丈夫?」
「ミ、ミス・マルモ……私、とんでもないことを……」
「あなたのせいじゃない。私が勝手にやったこと。あと、『ミス』はいらない」
「し、しかし……」
「いいから、奥にいって休んで」
「そんな! 私が原因なのにそんなことできません! 私、マルモ様のご勝利をこの眼で確かめます!」
「シエスタ……」
と、いい雰囲気を展開しようとしている二人のところへルイズが割って入った。
「マルモ! これはわたしの決闘よ! わたしが出るわ!」
「私は貴族じゃない。だったら決闘をしてもいいはず」
「そういう問題じゃないわ!」
「私はシエスタに『力になる』と言った。それを果たすだけ。それに……」
「それに?」
「私はルイズの使い魔。主人を守るのが役目。だから、ルイズの戦いは私の戦い。ルイズには傷一つつけさせない」
真っ直ぐルイズの目を見て言った。思わずルイズは顔を赤らめて視線を外す。
何よそれ、とルイズは小さく呟いた。その呟きは誰にも届かなかった。
以上です。
次回ギーシュ哀れ。
乙。
このルイズの性格はいいね
テンプラ乙
テンプラ乙
テン・・・プラ?
テリーさん期待
「男なら拳一つで勝負せんかい!」
原作は知らんが楽しめますな
月を見るたび思い出せ!
そういや昨日はてんぷらだったな
ふきのとうが美味かった
美味しんぼから初期の山岡とか召喚されたらどうなっちゃうんだろうな
初期の山岡ね、初期の
テリーといってもパワーダンクでワルキューレを地面から地面までの高さに叩き潰す奴とか、
テキサスコンドルキックでワルキューレ2対の顔面をまとめてひしゃげさせる奴とか色々いるな
バスターウルフ!
テリーといっても、スッキリ!に出てるオッサンかもしれない
ワルキューレ(ナムコのゲーム版)召喚
もしくはサンドラ族のクリノ召喚
ギーシュはベコベコに負かされた後ゴーレムの名前を改名せざるを得ない
『逆境ナイン』から不屈闘志を召喚。
不屈に影響されて、レコン・キスタやジョゼフ、風石問題にも
「これが逆境だ!!」と奮い立つルイズ
なにそれよみたい
ミョズはサングラスの監督かwww
先代ガリア王存命の頃のジョゼフを主役にした、逆境ガリアってネタなら考えたことがある。
友情出演・炎尾燃&富士鷹ジュビロ
そういえば島本キャラって呼ばれてそうで呼ばれてないのかな?
呼ばれるとゼロ魔キャラが全部島本絵のイメージになるけどw
ゼロの使い魔を読む層と、島本作品を読む層ってのは重複しにくいと思うがww
Gガンも一応島本キャラに分類されるはず。
でも爆熱の使い魔の人は撤退しちゃったんだよなぁ…
>>175 島本はGガンにキャラクターイメージを提供しただけで、キャラデザを担当したわけではない。
無謀キャプテンの小さいヤツ→サイサイシーみたいな感じで。
爆熱っていつ引退したん?
マジかよ…すげぇショックだ……orz
『流れ星のジャッカル』からジャッカルを召喚。
かって獅子堂たちから受けた説教をそのままフラれたギーシュへ叩きつける。
華琳たん召喚したらルイズ殺されちゃう
>>173 ドーベルマン刑事とか?
無理やり契約されて奴隷扱いされたら「このド外道がぁぁああーッ!!!」とかやりそう
181 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 00:26:03 ID:TyoD4SDA
seedの人は、いつまた帰ってきてくれるんだろ・・・
>>177 正確には引退じゃない
昔有った騒動で付き合いきれないからでここを見限って余裕ができたら独自にやるとの事だった
スレから離れて独自でやるとツマらなくなる法則
KOFシリーズから日本チーム呼んだら
技的に京はキュルケが召喚になりそうだが
>>183 そんな法則は無い上に独自にやって上手く回ってる人が結構居る件
大軍を一人で足止めといったらランスの魔人健太郎の得意技
天然キャラもおいしい
でも健太郎だけハルケに拉致したらリトルプリンセスが覚醒してマジギレして殴りこんでくるんだろうなあ
そういや美樹も髪ピンクだったな
独自に離れて面白くなくなるのはスレに便乗した様なタイプだから
むしろスレに人を集めた立役者側の場合は場所関係ない
爆熱とかはスレ黎明期にここに人を集めた側だから関係ないだろうな
再開しないことにはそれ以前の話しなんだけどな
>>186 ディスペル食らったら無敵結界が永続的に無くなりそうだな
無くても凶悪な戦闘能力だけども
>>184 大丈夫、人間を召喚できるのは虚無だけだから
そんな設定あったけ?
SAMURAI7の侍なら誰を召喚しても凄いことになりそうかな、と思った。
ビームを反射したり、戦艦を斬れるなら、フーケのゴーレムも斬れるだろうか。
最後に勝ったのは農民たちであった
で終わるのは目に見えているな
ハルケギニアのこれまでの記録上で虚無以外に人間を召喚した例は皆無であり、
逆に今まで判明している虚無の使い手(ルイズ、ジョセフ等)はすべて人間を召喚しているからな
まあ、このスレの二次創作ではルイズが人間でないものを呼んだり、
ルイズ以外のタバサとかイザベラとかその他が妙なものを呼び出したりすることもあるけどな
虚無が厳重よんだり、無生物呼んだり、名状しがたい何かを呼んだりもしているな。
その辺スルーしてる作品もあるし、あんまり気にしてないな。突っ込んで幅を狭まるのもあれだし。
できたら作中で何かこじつけてくれればいいけど。
作中で虚無以外は絶対に人間召喚できないとか言われてたっけ?
明言はされてなかったかもしれないが、
少なくともハルケギニアの記録(ブリミル以来6000年らしい)の上で、
メイジが人間を召喚したという例は皆無だとされている
また、虚無のメイジも実在は確認されておらず、最近まで伝説上のものと考えられていた
このことから、虚無のみが人間を召喚すると考えるのが素直で無理のない解釈には違いなかろうよ
>>199 お前がそう思うんならそうなんだろう、お前ん中ではな
>>199 二次創作で、原作の設定を完全に順守しないといけない理由って何さ?
原作とは少し外れた「なにか」を書きたいから、二次創作を書くんだろ。
ま、二次創作に都合がいいように違う解釈をするのは、もちろん構わないと思うよ
あと強いて言うと、ブリミルの使い魔にはエルフが混ざってたみたいだから、
虚無でも人間でなくエルフが呼ばれるとかは少なくともあるのかも知れんね
あと、同じ虚無でも異世界から呼ばれたという例は確か、サイトとルイズの場合だけだったかな?
何を噛みついてるのかね
>>200 >>201 なんか誤解されてるのでは…
私は原作ではそういう扱いだといっただけで、別に二次創作でそうしなきゃならないとはいってないし思ってもいないよ?
虚無の召喚以外で異世界からヒトやモノがやってくる例がある(AK銃とか、破壊の杖と所持者とか、ゼロ戦とその乗組員とか)
ルイズ以外が呼ぶ二次創作はあるけど、そういう「召喚者なしで紛れ込んだ」タイプの二次創作は確かまだなかったかな?
何かあったっけ、そういうの
そっちは世界扉やらで兵器や武器に巻き込まれる形だから自由度高いよな
へたすりゃ基地ごとなんて無茶も気持ちしだいだし
スレ違いに該当するから避難所行きだけど
確かにスレチということもあるが、理想郷やなろうを含めても憑依や転生以外ではあんまりそういうのないかもね
バックトゥザフューチャーのドクとかは発明品に乗って来てもおかしくなさそうだが
>何かあったっけ、そういうの
アルカディアの英国海軍軍人が来たやつとか
ジョジョのホルホースもそうじゃなかったか
虚無ではなくても亜人くらいは召喚できてたと思う。確か一巻に下半身が蛸とかいたっけ。
ああいうのがありなら翼人みたいなの召喚しているのもいていいかもしれない。
このスレでも「三人」みたいに虚無とは関係なしに色んな使い魔を召喚したという前例はあるしねw
三人なんてかなり昔に少しだけ書いて放置されてる典型的な例えにもならない代物じゃねえか
なんで時々例えに引っ張るのが居るのかイミフ過ぎる
結論:面白さは正義
>>210 え? ちゃんと完結してんじゃん。
設定上の問題から最後駆け足のちょう展開だったけど。
例えに出されているのは好きな人がいるからだろう。俺も好きだし。
面白い云々は主観の問題ではあるが、あれはそんなに批難を受けているとは聞いたことがない。
どうでもよすぎて話にならないというのなら、そうかも知れんけど。
当時から注目度たいしてなかったのに
勘違いして何時までも引っ張るから突っ込まれる典型パターンだな
本人かw
原作ならまだしも二次SSの前例なんか参考になるのか?
216 :
:名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 13:51:35 ID:29cEcMoR
>>199 パラレル世界的な設定だけど、ゼロ魔のゲームでは1期のハルナや2期のクリスの師匠は
もしかしたら虚無以外の召喚なんでない?もしくは予備かも知れんけど。
ゲームやってないから分かんないが。
>>205 なろうのレンタルマギカとのクロスがそんな感じ。世界融合系で、イツキ達がサイトを探しにくる。
この形だと、GS美神とかでも使えそうだね。依頼と言う形なんで無理もないし、行く手段もありそう。
6000年の間に何度も虚無が復活しそうになったとビダが言ってるが、
それでも虚無の存在自体が眉唾とされてきたくらいだし
人間以外を召喚した実例も十分考えられるし、そこらへんは自由
戦う研究員……敷島さんかな
戦う研究者ならドクターマシリトを召喚!
しかしSSを書き上げても作者にボツ、ついでにノボルにもボーツ
ライダーマン・・・
>>209 スキュラは亜人じゃなくて幻獣って扱いなんじゃないか?
亜人と幻獣の区別がどーなってるのかまでは知らんが
たいていのファンタジーではマンティコア、スフィンクス、スキュラなんかは、
人間の体の一部を持ってるけど幻獣・魔獣の類って扱いのはず
もちろんハルケギニアでは違うかも知れないし確証はないんだけども
ハルケギニアにおける亜人とか幻獣とかの明確な定義が分からない(そもそも明確な定義があるのかも含めて)からねえ
設定云々には興味ないけど、
ちょっと褒めたら即本人とか言われちゃうんじゃ、
作者さんに申し訳なくて誰も名前挙げられなくなっちゃうだろ。
その作品が人気あろうがなかろうが、
本スレは気軽に話題にできる環境であって欲しいぜ。
>>216 >なろうのレンタルマギカとのクロス
すみません、タイトルを教えて下さい。検索かけたけれど見つからなかったorz
>>223 今まで含めて不自然なタイミングで引っ張りだされる事が多過ぎた
まあ当人かどうかは証明のしようもないしな。
自然なタイミングってのもどんなか知らんが、本人乙だの違うだのので空気悪くなっては申し訳ない。
好きだからというのもあって名前を出したが、過剰な反応を示す人がいるのもこのスレだった。
そういうわけで気軽に作品名だした自分が悪かったということにして、以下スルーな。
刀語クロスとかこないかな。
>>222 亜『人』っていうくらいだから、とりあえず人間っぽいフォルムで、四肢があって、ある程度の知識があることが条件じゃないかと思うけど。
あー、でもそうすると人間に変身したシルフィードとかはどうなるのかしら。
そろそろ設定・考察スレでやったほうがいいんじゃないの?
まあ亜人といえば、ブレオブXからアジーンを召喚したらルイズがドラゴナイズドフォームになるのかな?
すいません、ただのダシャレです。
戦う研究者・・・
シド(]U)とか宝条とかホランダーとか
ダンタリアンとか
レオンとかエルネストとかバッカスとか
ユキムラとかユーゼスとか・・・はどっちVerも呼ばれてたか
西博士も呼ばれたがウェスパシアヌスはまだ来てないか、ある意味バルマーのユーゼスより手に負えんが
アークVのアカデミーも研究者集団だな、実際に戦った研究者は一人くらいのもんだった気がするけど
亜人ならエンドレスフロンティアの人らが一話時点で沢山来ても問題ないな
ルイズが賞金稼ぎ、キュルケが髑髏マスク王、タバサが魔女っ娘、ギーシュが店長(キャットガイ)、マリコルヌが翼人
ジョゼフが魔理恩博士、デコ姫が船長
教皇がチョコバナナ
テファが他の揺れる人全員
当然のごとく聖地にはレジセイア
宝物庫にはコスモッスと初期型Wの棺桶がズラリ
銀の板に乗る高貴な魂を持つ銀色のおっさんを召喚
さすがに強すぎるか
ミノタウロスとかオーク鬼とかコボルトの扱いを見る限り
ゼロ魔世界では亜人の中でも獣人は基本的に人食い系種族扱いされるんだろうな
あんまり当たり扱いされない気がしてきた
キマリ(FF10)とかシエラ(聖剣伝説lom)とかユージーン(TOR)みたいな
性格がいい人系でも周りにドン引きされそうだ
まとめスレの北野くんやダイ大クロスのクロコダインみたいに
人間からはドン引きでも使い魔達からは慕われるんじゃね?
234 :
:名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 18:37:38 ID:29cEcMoR
>>225 検索かけてみたけど、たぶん削除されたっぽい。
「レンタルマギカ ?異世界の魔法使い?」で間違いないと思う。
ただこれは先述の「召喚者なしで紛れ込んだ」タイプではなく、「召喚なしで意図的に来訪」
したものだったけど。
まあ、たまたま巻き込まれたというよりはご都合主義といわれないだけの説得力がある設定
だと感心したのは覚えてる。
別にだからといっておれ自身は「召喚者なしで紛れ込んだ」タイプを否定してるわけじゃないけどね。
今まで読んだ名作を思い返しても作品の中で一貫性をとって原作から外れてるものの法が多いから。
235 :
:名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/16(火) 18:40:31 ID:29cEcMoR
234の「レンタルマギカ ?異世界の魔法使い?」は
「レンタルマギカ〜異世界の魔法使い〜」です。
コピペしたはずなんだけどおかしいな・・・
お客さん、sageてくれませんか?
つーかこことは全く関係の無い他所の話なんか持ち出すなよ。
ナムカプもしくは無限のフロンティアの小牟&零児を召喚
ルイズが零児に横柄な態度を取って小牟と共に尻を叩かれる展開に
小牟「地面を爆発させて『るいずまいん』っちゅうのはどうかのう?」
ルイズ「何ですって!?このバカ狐ー!」
零児「お前ら、食事中は静かにしないと尻を叩くぞ?」
>>168に触発されて、『逆境ナイン』小ネタを投下してみたいと思います。
次レスから投下させていただきます。
これはあえて支援しないという逆境に追い込んだ方が良いんだろうか
投下予告はされたのに、いつまでたっても投下されない……
これだ
これが逆境だ!!
時間を確認していなかったから気付かなかったw
既に逆境に突入していたんだな!
待て、
>>239の
「次レスから」
が、
「次スレから」
の打ち間違いだったとしたら?
「待ち続ける」「待つのをやめる」
二者択一!!
ネオ麦茶事件のころから2ちゃんねるを始めてそろそろ10年になるが、
あの頃と比べるとどれだけ釣られようが、煽られようが、荒らされようが怒ることがなくなった
それに比べるとこれくらいは笑って済ませられるな
247 :
逆境ゼロ:2010/03/16(火) 23:40:41 ID:pdzmoEsR
逆境とは!?――――
メイジの名門・トリステイン魔法学院の学院長室へ、緊張の面持ちで歩を進める一人の少女がいた。
少女は、学院長室のドアを見すえて、大きく息を吸うと、勢いよく扉を開けた。
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエール、入りますっ!!」
部屋の主、学院長のオスマン氏は、ルイズのほうに振り向くと、雷鳴のような第一声を放った。
「退学じゃっ!!」
オスマン氏の放った雷はルイズの全身を貫き、彼女は機関銃の乱射を全弾受けたかのごとく力なく
よろけて、思わず扉のそばまで後ずさっていた。
しかしオスマン氏は、そんな哀れなルイズの様子に動じることなく、厳しい目で見ているだけだった。
逆境とは!?
――思うようにならない境遇や不運な境遇のことをいう!!
「そっ、それは…決定ですか!?」
しばしの重苦しい沈黙ののち、ルイズは焦点の定まらぬ目で、弱弱しく震える声で、
絞り出すようにやっとそう言った。
オスマン氏は、静かに語り始めた。
「……この学院に入学してからこの一年、コモン・マジックすらまともに扱えず、爆発ばかり…。
そんな生徒と一緒の教室で学ばせることはできないと、圧力がかかってな……」
「じゃ、じゃあ……」
「じゃが!」
すがるようなルイズの声を、オスマン氏は語気鋭く断ち切った。
「由緒あるラ・ヴァリエール家の名を持つ者が、そんなみじめな目にあってまで
メイジにこだわって学業を続けることもあるまい!」
そしてもう一度ルイズをにらみつけ、雷鳴を轟かせた。
「ゆえに退学であるっ! わしの独断じゃ!!」
「りゅ、留年に……せめて留年にしてくださいっ!!」
「!! バカ者おっ!!」
なおも女々しくすがりついてくるルイズを、オスマン氏は『ウィンド・ブレイク』で吹き飛ばした。
ルイズは、壁に思い切り叩きつけられた。
「帰れ!! 君とはもう話したくない!!」
オスマン氏は、もうルイズに顔を向けることすらしなかった。
ルイズは、肩で息をしながら立ち上がろうとしたが、体が思うように動かず、膝をついた。
「2〜3日中に君の部屋に編入生が入る。それまでに部屋も空けておくように。以上だ!!」
オスマン氏は、有無を言わせぬ声で宣告した。
キター
このオスマンは新しい…………よね?
当て嵌めただk
たしかに、逆境ナインの冒頭まんまだが、妙にはまってるのが笑えるw
ひょっとして打ちながら投下してる?
続く……んだよね?
書きながらやってるっぽいな、こりゃ。
>>252 そんなわけねぇだろw
と逆境にってそんなわけないよね?
阿呆か
って、作者が逆境にあってどうすんだよwww
世紀の傑作を投下する為に自ら追い込んでるんだよ
259 :
逆境ゼロ:2010/03/17(水) 00:02:03 ID:/lazbsmx
「なぜ……編入生を…?」
「今度の編入生は非常に優秀じゃと聞いておる。優秀な生徒にしかわしは興味はない!!」
「わっ、わたしは座学は優秀ですよっ!?」
「普段の努力が足りないから結果が出ぬのじゃ。なまはんかな学業ならやらんほうがましじゃ!!」
オスマン氏は、なおも食い下がるルイズに止めをさすように咆哮した。
「ろくに魔法も使えん無能なメイジに、時間を費やすつもりはない!!」
「オールド・オスマン!!」
「くどいっ!!」
恥も貴族のプライドもかなぐり捨てたルイズは哀れみすら誘うほどだったが、オスマン氏にはとりつく島もなかった。
これだ!
これが逆境だ!!
自覚したとき、ルイズの中で何かが変わった。
フッと息がもれる。
「フッフッフッ…」
やがて、それが泣いているようにも聞こえる薄笑いに変わり、
「フハハハハハハハハッ!」
はっきりとした笑いとなり、
「ウワーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!」
力のみなぎった馬鹿笑いになった。
「!!」オスマン氏は体ごとルイズのほうへと向き、目を疑った。
ショックのあまりおかしくなってしまったか?
「オールド・オスマン!!」
ルイズは力強くオスマン氏に呼びかけた。
>>259 遠回しに『書きながら投下するな』って言われてるのが理解できないのか?
そういうのは迷惑だから、自分で立てた自分だけのスレでやってくれ
他の投下者の邪魔だからな
262 :
873:2010/03/17(水) 00:18:22 ID:jYRrTmej
何だか見てて、投降したくなるなぁ。
サモナイ2のヴァルゼルドとか似あいそうだな。
というか、穏やかな生活ぐらい味あわせてあげたいww
263 :
逆境ゼロ:2010/03/17(水) 00:20:21 ID:/lazbsmx
(ほう…目が生き返ったか!!)
火竜もかくやと思わせる、熱く燃え盛る炎を目に宿らせたルイズを、オスマン氏は見て取った。
「先ほどまでの負け犬の目とはうってかわって、狼の目になっておる……よろしい!!
話を聞こうじゃないか……」
そう言うと、オスマン氏は椅子に腰を下ろした。
「話してみろ!!」
ルイズの変化を明白に感じながらも、彼女を見る厳しい目を変えることはない。
「オールド・オスマン……」
話しながら、ルイズはオスマン氏に背を向けた。
「明日は、春の使い魔召喚儀式がありますね……」
ルイズの小さな体は、目に見えて震えていた。
次の一言を言おうか言うまいか、葛藤しているようだ。
いったい、なにを言おうとしているのか? オスマン氏は、静かにルイズの
言葉を待った。
張り詰めた緊張が場を支配する。
ややあって。
「わたしが!!」
突如自分に顔を向けて叫んだルイズに、オスマン氏は吃驚した。
「あ、いや……」
そう言ってルイズは再び顔を背けた。
オスマン氏も、いつのまにか肩で息をしていた。
264 :
873:2010/03/17(水) 00:20:34 ID:jYRrTmej
ゼルフィルドだ!ヴァルゼルドは杉田ヴォイスだ!;
265 :
逆境ゼロ:2010/03/17(水) 00:25:45 ID:/lazbsmx
>>260-261 申し訳ありません。
まとめて書いてからまた投下させていただきたいと思います。
スレの皆様に多大なご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。
お目汚し失礼いたしました。
>>265 それでは投下させていただきます。第3話
30分ごろに
「改行が多すぎます!」らしいので小出しでいきます。
第3夜
終わり?
マルモ達が『風』と『火』の塔の間にあるヴェストリの広場に着いた頃には、
食堂にいた生徒よりも多くの人だかりができていた。二つの月がちょうど地平を昇りきった頃だった。
「諸君! 決闘だ!」
ギーシュの言葉に観客が沸く。娯楽の少ない学院生活、生徒はこういった騒ぎが何よりの好物である。
キュルケは賭けの胴元をしていた。タバサは本を読んでいた。シエスタはマルモを見守っていた。
マルモはギーシュの前に立った。ルイズは仁王立ちにそれを見ていた。
「ふん、君もメイジなんだろうが、あのゼロのルイズに召喚されたんだ。どうせ魔法もろくなものじゃないだろう」
と、見下した態度だった。頭に血が上っていたこともそれに関係しているだろう。
マルモはギーシュの言葉を受け流して睨みつけた。
「謝って」
「は?」
「私が勝ったら、シエスタと、ルイズに謝って」
マルモは迫力のある声で言った。
「よかろう。万が一君が勝てたならの話だが」
ギーシュは余裕の態度を崩さなかった。若さゆえの、己の能力への過剰な自信である。
そして二人は十メイルほど離れ、決闘が始まった。
「僕の二つ名は『青銅』。『青銅』のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
そう言ってギーシュは薔薇の杖を振って、花びらを三枚宙に舞わした。
すると、三体の甲冑を着た女戦士の青銅人形が現れた。
「君は名乗らないのかね?」
「……私の名前はマルモ。『賢者』のマルモ」
「ハハハッ! まさか自分で賢者とはね! こいつは恐れ入ったよ!」
ギーシュは完全に油断していた。隙だらけだった。そして、ワルキューレをマルモにけしかけようとする直前、隙を突かれた。
「ギラ」
高熱がワルキューレ三体の上半身を融かした。
時刻を少し戻しての学院長室。
ミスタ・コルベールと学院長オールド・オスマンはルイズとマルモを待っていた。
「では、その召喚された娘を使い魔にしたのじゃな?」
「はい」
「んで、その娘の名前を聞き忘れたと」
「も、申し訳ありません」
「その娘がたとえばアルビオンやガリアの有力貴族の娘であったとしたら、君はどうするつもりかの」
「も、申し訳ありません! そこまで考え至りませんでした!!」
「のう、君は謝ってばかりじゃのう、ミスタ……」
「コルベールです」
「ふむ……ま、大丈夫じゃろ。いざとなったら何とかなるじゃろて」
ほっほっほ、と好々爺振りを演じる。
コルベールは頭に汗をかきながら、百歳とも三百歳ともいわれるオールド・オスマンが大人物なのか単なる楽天家なのか
わからなくなった。
そのとき、ドアがノックされた。
「誰じゃ?」
「私です。オールド・オスマン」
オスマン氏の秘書、ミス・ロングビルだった。
「何じゃ?」
「ヴェストリの広場で生徒が決闘をするそうです。大騒ぎになっています。止めに入った教師がいましたが、
生徒達に邪魔されて、止められないようです」
「まったく、暇をもてあました貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れとるんだね?」
「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」
「あの、グラモンとこのバカ息子か。オヤジも色の道では剛の者じゃったが、息子も輪をかけて女好きじゃ。
おおかた女の取り合いじゃろう。相手は誰じゃ?」
「……それが、生徒ではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の少女のようです」
オスマン氏とコルベールは顔を見合わせた。
「教師たちは、決闘を止めるために『眠りの鐘』の仕様許可を求めております」
「アホか。たかが子供のケンカを止めるのに、秘法を使ってどうするんじゃ。放っておきなさい」
「わかりました」
ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。
「オールド・オスマン」
「うむ」
オスマン氏は、杖を振った。壁にかかった大きな鏡に、ヴェストリ広場の様子が映し出された。
ギーシュは驚愕に包まれた。
自慢のワルキューレ三体が、一瞬にして融かされたからである。視界が明けて杖を構えるマルモが見えた。
「もう終わり?」
「くっ……なめるなあ!」
ギーシュは薔薇の杖を振り、四体のワルキューレを生成する。それらの手には剣や槍が握られ、
まさに攻撃寸前である様子だが……。
「ベギラマ」
マルモはワルキューレが動き出す前に呪文を展開した。燃え盛る炎がワルキューレを包み込み、四体全てを跡形もなく融かした。
「終わり?」
「ひっ」
マルモが一歩前に進むと、ギーシュは三歩後ろに下がった。歴戦の傭兵のごとき迫力がそうさせていた。
マルモが距離を詰めようと直進すると、ギーシュもまた後ろ退った。
その気迫たるや、あまりにも圧倒的。もはやギーシュは、ドラゴンに睨まれたドラキーだった。
「来るな! 来るなぁ!!」
やがて、ギーシュは壁際まで追い込まれた。杖を振るが、恐怖で心乱れた彼はうまく精神力を練れない。
マルモはギーシュの眼前に杖を突きつけた。後ろは壁、前は杖の詰みである。
「謝って」
「ご、ごめんなさい!! ごめんなさいぃぃぃ!!!」
「私にじゃなくて、シエスタとルイズに」
「わ、わかりました……」
ギーシュはふらふらとシエスタとルイズの前へ行き、平謝りした。
その後なぜか二人の女生徒にも土下座して謝った姿があったが、マルモにとってそれは重要ではない。
「マルモ様!!」
シエスタがマルモに飛びついた。
「マルモ様! 私信じておりました! もう、言葉では表せないほど感謝で胸がいっぱいです!!」
シエスタは額づきそうな勢いである。実際、地面に頭をつけようとしていた。
「そんなことしなくていい。私が勝手に決闘しただけ」
「そんなことないです!! マルモ様は、私の命の恩人です!!」
ギーシュは命まで取ろうなどとは毛頭思っていなかったが、シエスタは命を救われたと感じた。
「私、マルモ様に命をかけて仕えます! 何があろうと、私はマルモ様のご命令に従います!!」
「別にいい」
「はい! かしこまりました!」
「……」
扱いに困ったので、とりあえず食堂の方に帰した。
「マルモ」
呆れたようにルイズが声をかける。
「まさかマルモが負けるとは思わなかったけど、万が一を考えてね。まあでも、勝てたから別にいいわ」
やれやれ、と首を振る。
マルモは、ルイズに一歩近づいた。
「ルイズ」
「何?」
「ごめんなさい」
「え?」
「私、言うこと聞かずに勝手に決闘を奪って……使い魔なのに」
ルイズは目を白黒させた。
そりゃあまあ、勝手に決闘申し込んだり、メイドといちゃいちゃしたり、メイドを手なずけたりしたのには、
ちょーっとだけ怒ったりしたかもしれない。
でも、マルモは。私をご主人様として立ててくれてる。私のことを思って行動してくれてる。
そう思うと、何故か許してしまいそうな気持ちになる。
「こ、今回だけよ! 次からは私の許可なしに行動するなんて許さないんだから!! どんなことでも、
まずわたしに話しなさいよね!!」
「……わかった」
でもでも、やっぱり主従関係はきちんとつけておかなければいけない。そうじゃないと、大変なことになる。
……何が?
何が……何が……、そう、あのメイド! あのメイドが気安くマルモに近付くと大変だ。
マルモはわたしの使い魔、パートナーだ。あんな平民のメイドのものじゃない。
マルモは、わたしのものだ。
オスマン氏とコルベールは、『遠見の鏡』で一部始終を見終えると、顔を見合わせた。
「オールド・オスマン」
「うむ」
「あの少女が、勝ってしまいました」
「うむ」
「まさか、あそこまでの『火』の使い手とは……」
「うむ、あの威力じゃと、少なくともトライアングルじゃの。あの年ではなかなかないことじゃ」
メイジのレベルは『ドット』、『ライン』、『トライアングル』、『スクウェア』に分けられる。
後者になるほど強力なメイジだ。ちなみに『炎蛇』のコルベールは、火のトライアングルメイジである。
トライアングルメイジであるということは、魔法学院の教師並の魔法の使い手というわけだ。
「それより私が気になるのは、あの娘の使っていた魔法じゃ」
「魔法?」
「うむ。あの娘はルーンの詠唱なしにあれだけの魔法を繰り出しおった」
「そ、それじゃあ先住魔法ですか?!」
「慌てるでない。先住魔法は口語を用いて魔法を発現させるものじゃ。彼女が口語で火を操ったとは考えられん」
「では、一体……」
「ふうむ。彼女の持つ杖に火石でも仕込まれていたのか、それとも……」
まったく異なる、未知の魔法なのか。
「コルベール君」
「はい」
「ミス・ヴァリエールとその使い魔を学院長室まで連れてきなさい」
「はい。……あ、あと、学院長」
「何じゃ」
何かを思い出したように、コルベールが口を挟んだ。
「あの少女の額のルーン……それが彼女の魔法に関係しているかもしれません」
「どういうことじゃ」
「あの少女の額に浮かんだルーンは、見たことのないものでした。おそらく、それが彼女の魔法に影響を与えたのではないかと」
「うむ。かもしれんな。ミスタ・コルベール。明日からその娘の額のルーンについて調べるんじゃ」
「もとよりそのつもりです、オールド・オスマン」
「うむ。では、呼んできなさい」
「はい」
実は額のルーンとマルモの魔法はまったく関係ないのだが、このとき二人はまだ思い違いをしたままだった。
その頃のキュルケはというと、賭けでそれなりに儲けていた。一口買ったタバサもそれなりである。
「ルイズの使い魔にはいい思いをさせてもらったわ。今度お礼しなきゃね」
「…………」
「あら、どうしたの? タバサ」
そのタバサは、本に顔を向けてはいるが、読んではいない。それが何か考えているときの様子だとキュルケは気付いた。
「あの使い魔の娘がどうかしたの? そりゃあ、あの炎はあたしに匹敵しようかというものだったけど」
「……確かに彼女の魔法は強力。けれど……」
「けれど?」
「彼女が使ったのは系統魔法じゃない。かといって先住魔法でもない」
タバサは先住魔法をその身で体験している。先住魔法はその場のものを利用して発動する。木の枝が伸びたり、葉が刃となったり。
「どういうことよ」
「私は彼女の口元を観察していた。彼女はルーンも口語も唱えていなかった」
タバサはある程度の読唇術ならできる。読書による膨大な知識と豊富な実戦経験の賜物だ。
「彼女の魔法は全く未知のもの。要調査」
「なんだかよくわからないけど、あたしも付き合うわ」
「助かる。ありがとう」
キュルケは返事の代わりに抱きついてうりうりとタバサの頭を撫で回す。
体形も性格も正反対な二人だが、互いのことをよく理解している。どうすべきかは、言わずともわかっていた。
学院が決闘の興奮で覚めやらぬ夜、ルイズとマルモ、そしてクリオは学院長室にいた。
二人の少女と一つのタマゴの向かいには、学院長オスマンと、二人と一つを連れてきたコルベール。
ミス・ロングビルは席を外してある。もちろんオスマンに命じられたせいだ。
「さて……」
オスマンが、長いあごひげを撫でながら口を開いた。ルイズは緊張した面持ちであるが、マルモは普段どおりの顔である。
クリオはマルモの杖の上で静かに待機中だ。
「……決闘の一部始終は見させてもらった。なんともまあ、最後の方は圧巻じゃったのお」
ルイズはいよいよ顔が赤くなったが、マルモとクリオは相変わらず。
オスマンは二人に構わず言葉を続ける。
「グラモンがまだまだドットのひよっことはいえ、青銅のゴーレムを一瞬で!
いやはや、あそこまでの炎を、その齢で使いこなすとは……」
オスマンは興味深そうにマルモに目を向けるが、マルモは軽く見つめ返すだけである。
ルイズはどうしていいかわからず、コルベールに助けを求めた。気付いたコルベールが、オホン、と咳払いをして口を開く。
「学院長」
「なあに、わかっておるよ。本題は今夜の決闘についてではない。今回君らを呼んだのは、
今後その娘の処遇をどうするかということじゃ」
「どういうことでしょうか」
ルイズは一旦ほっとしたものの、オスマンの言葉が気になってすぐさま返した。マルモは自分の使い魔。それで解決だ。
「もし、そこの……名はなんと?」
「……マルモ」
マルモが、部屋に入って初めて言葉を発した。
「ではミス・マルモ。お主の生まれはどこかのう」
「憶えてない」
「ほお。それはどういうことかね」
「そのままの意味。私は――」
と、ルイズに語ったことと同じ内容をオスマンに話した。
自分の生みの親を憶えていないこと。別の親に貰われるも、追い出されてしまったこと。自分は異世界の人間であり、
旅の末、ここハルケギニアに着いたこと。
オスマンとコルベールは、黙って話に耳を傾けていた。
ルイズはというと、自分もよくこんな話を信じたなあ、と今更ながらに感じていた。
専ブラ使えよ
テンプレにも書いてあるが読んでないのかな?60行までだよ
「ふうむ。異世界か……」
「俄かには信じがたいですぞ」
オスマンとコルベールは難しい顔をする。あの世以外の異世界という概念を持たないハルケギニアの住人にとって、
マルモの話は与太話もいいところである。まだ没落貴族の娘であるという方が信じられるというものだ。
「失礼ですが……マルモのタマゴでは証拠になりませんか?」
「ピー」
「確かにのう、タマゴの殻に閉じこもったまま動き回る動物など聞いたこともないが……」
オスマンとコルベール、そしてルイズは、杖の上ですりこ木のように回っているクリオに目をやった。
「加えて、マルモの魔法は……系統魔法とは異なっているようです」
ルイズの言葉にオスマンの目が光る。先程コルベールと話題になった事柄だ。
「というと?」
「マルモの魔法は……ルーンの詠唱ではなく、呪文の名前を唱えることによって発動するようです。
また、四大系統という分類もなく――当然先住魔法でもありませんが、呪文の用途や呪文ごとの系統で分類しているようです」
「実に興味深いのお。ミス・マルモ、何か呪文を唱えてみてはくれんかね」
オスマンは、じっとマルモの口を見据えた。
「メラ」
マルモが呪文を唱えると、マルモの指先から『ファイヤーボール』程の炎球が現れる。
攻撃呪文の初歩の初歩の初歩、メラだ。
「……確かにルーンでも口語でもないのう」
「しかも杖からではなく手から出るとは…………」
「あ」
ルイズはそのことに今しがた気付いた。
「マルモ、あなた杖の媒介なしに魔法を使えるの?!」
「……それが普通」
「あー、マルモは知らないんだっけ。メイジは杖がなければ一切の魔法が使えないの。
杖がなくても魔法が使えるのは、ハルケギニア先住民……つまり先住魔法の使い手だけよ。
だから、人前で魔法を使うときは絶対に杖から出してね」
「どういう意味?」
「えっとね、もし先住魔法の使い手だと思われたら、色々面倒なの。最悪の場合、亜人と間違えられて殺されちゃうわ」
先住民の中には姿形が人間に近いものや、人間に化けられるものもいる。そしてそれらは人間とは相容れない存在である。
吸血鬼などが最たる例だ。
「ミス・ヴァリエールの言う通りじゃな。ミス・マルモ、くれぐれもそのことには注意してほしい」
コクリとマルモは頷く。
「さて、話がそれた。ミス・マルモの処遇についてじゃが…………使い魔とすることに問題はなかろう」
コルベールはほっと溜息を吐いた。状況によっては己の首が飛んでいたかもしれない。
「ミス・マルモは異存はないかね?」
「ない」
即答した。ルイズはその答えに満足げな笑みを浮かべる。断られる不安もわずかながらにあった。
オスマンはひげを撫でながら微笑んだ。小さな子供を見守るそれである。
「もし他人から出身を尋ねられたときは、東の世界=ロバ・アル・カリイエと答えなさい。
お主の魔法も、そこの魔法ということにしておけばおそらくは大丈夫じゃ」
マルモは再び頷いた。
「では、今夜はもう部屋に帰りなさい。今夜の決闘は不問に処すが、今回だけじゃぞ」
「ありがとうございます。失礼しました」
ルイズが頭を下げたのを見て、マルモもそれに倣う。
二人が出て行ったのを確認すると、オスマンとコルベールは口を開いた。
「やれやれ……我々はついていたのう、コルベール君」
「まさにそうですな」
肩の力を抜き、二人は自然体となる。しかし決してだらけているわけでもない。
「これでミス・マルモの魔法については解決しましたが……彼女の額のルーンについては、明日から調査を開始いたしますぞ」
「よろしく頼む。今日はもう寝る。疲れた」
「はは、私もですよ。では、失礼します」
野郎二人きりでずっと同じ部屋にこもるわけもなく、夜は更けていった。
>>272 60行に収めたつもりがオーバーしてたようです。すみません。
一方、部屋に戻ったルイズとマルモは、同じベッドに二人一緒に入っていた。
ルイズはいつもの習慣でネグリジェに。マルモは髪をほどき、下着姿となっている。上等な布団が肌に触れて心地よい。
色々あって疲れている二人だが、まだ眠らずにぽつぽつと会話をしている。ランプは既に消え、二つの月明かりのみが照らす。
「ねえマルモ。あなたのルーンのことだけど、明日から一緒に調べてみない?
明日の午後いっぱいは使い魔の交流にあてられているから、時間は充分あるわ。」
「うん。けれど、ルイズはそれでいいの?」
「何言ってるのよ、これも使い魔との立派な交流よ。ご主人様の言う通りになさい」
言葉だけを見ると偉ぶっているが、その声には思いやりが柔らかく包まれていた。
「わかった。ありがとう、ルイズ……おやすみなさい」
「ええ、おやすみなさい」
マルモはゆっくりまぶたを閉じた。その動作にルイズは不意に胸が高鳴った。
通りの良い髪と長いまつ毛が月明かりに透けて見え、白い雪肌が月明かりを受けてその肌理の細かさを見せ付ける。陰影も、
少女の白さを強調していた。
マルモの顔を間近で見詰めるルイズはのどが渇いていくのを感じた。なんだか、見ているだけでいけないことをしているような、
そんな気がする。
だからこそ、新雪に足跡をつけたくなるような衝動に駆られた。部屋にはルイズとマルモの二人きり。邪魔者はいない。
ルイズは恐る恐る布団の中でマルモの手を優しく握る。起きはしないだろうか、と思いながらも、マルモの体温を感じて
小さな達成感に浸る。
しかし、さらに求めてしまうのが人の性。杖を普段から持つマルモの手の平の皮は、見た目とは裏腹に固い。
ルイズはさらに柔らかな部分を求め、マルモの肩までかかる布団に目を向けた。
胸の部分が小さく上下し、首筋は細く柔らか。決闘のときは、その意志の強さ、その闘気の烈しさで強くしなやかに見えたが、
寝入って脱力した今、なんとかぐわしい乙女であることか。
「ちょっとぐらいなら、布団めくっても構わないわよね」
だがしかし、マルモが目覚めてしまったときのことを考えるととまどわれる。
「あれをめくれば桃源郷が……桃源郷が」
ルイズが悶々としていると、マルモが少し身体をよじらせた。びくっとして手を引っ込めるが、
マルモにかかる布団が少し開けて、鎖骨まで露わになっていた。
ふおおおおおおおおお、と叫びそうになるのをこらえ、ルイズは更なる葛藤にさいなまれ続ける。
結局、ルイズが寝るに至ったのはそれから一時間後のことだった。
以上です。ルイズどうしてこうなった。
次回はさらにルイズとマルモが原作のキャラから離れる危険性大。
乙
>>265 乙
投下スタイルに関してはテンプレにも書いて無いしドンマイ
乙ッ!
ルイズってやっぱり変態の素質があるよねー
278 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/17(水) 00:47:19 ID:lCrPNFFx
ここのSS見てるとギーシュがめちゃくちゃ弱く見えるんだけど実際はヒョードルとかセガール殺せるぐらい強いの?
>>278 ギーシュは成長するかませ犬。ギーシュが強くなると敵もまた強くなる。
>>278 ばっかおまえライバックさんディスってるとコキャってやられるぞ!
>>278 セガールなんて殺せる奴の方が少ないだろ
烈風カリンさまでやっと勝負になるくらいだな
ギーシュがラインになると周りのみんなもレベルがあがります
実際のとこギーシュはかなり優秀な方じゃない。
ワルキューレは言ってみれば一分隊を一瞬で生成し操る能力だしね。
戦闘経験を積んでしっかり指揮すれば相当強いと思う。
あとギーシュ自身柔軟な考えの持ち主だから相手が平民の兵士でも熟練者なら
その言うことを素直に聞いて自分の糧にできると思う。
なんだかんだで最後まで生き残るタイプだろうなあ。
>>278 大体ドラゴンボールにおける天津飯的立ち位置だと俺は判断している。
烈風カリンでようやく何合か組み合える程度の能力。
なまじ抗戦してしまったがために他の雑魚キャラよりも悲惨な末路になりそうだ。
てかゼロ魔の世界って土メイジ多数居れば野戦で無敵じゃね?
なぜか原作では風サイキョーみたいな流れだけどさ
多対多の戦闘自体があんまり……
スタンドアローンだと風は最強だと思う。
野戦で多人数いるのなら、やっぱり火じゃね?
土は、あらゆる状況で重宝しそうだし、工夫と発想次第で何でもできそうだけど、メインアタッカーにはなれない感じ。
>>287 連携すれば最強かもな
壁の土で囲んで上からトン単位の重りで攻撃
書いてみたのですが、
今、初投下しても良いですか?
近〜遠対応、風ゆえに視認しづらく、規模が広くて、偏在なんてチート技があって、
フライがお手の物で制空圏が取りやすく、空気や風はどこにでもあり、最強の名に恥じぬ万能な風系統。
基本は砲台な感じで、メンヌヴィルが鉄を一瞬で溶かしたりと単純火力が非常に高く、
人間相手にはオーバーキルだがゴーレムなんかを倒すのには向いてそうで、爆炎みたいな凶悪技もある火系統。
巨大なゴーレムであれば多少の魔法などものともせず、人間大ゴーレムであればたった一人で物量戦が可能。
強力な遠距離技は未確認で、あまり戦闘に向かない系統とも言われるが、元素の兄弟のジャックを見る限り極めると存外に強力な土系統。
水系統?回復のオンリーワンですよ。戦闘なんて雑兵がやりゃいいんです。
>>292 霧作ったり、浄化したりと、できる以上、毒性を持った霧も作れそう。
多分、極めるとものっそ嫌らしい系統だと思う。
>>293 このスレの人口層はどうなってんだwwww
投下ばっちこい
時間は夜。
場所は自分の部屋。
ルイズは、自分の膝の上に抱えた桶のようなものを見つめ、途方に暮れていた。
色は赤と銀色で。横には何か棒のようなものがついている。
そして、何故か棒の先端に印されているルーン文字。
これは一体何なのか。
桶の癖にそこが丸いので安定しない。使いにくいことこの上ない。もしかして、鍋だろうか。
だけどルーン文字は気になる。
そしてさらに気になるのは、この桶と一緒に召喚されたと思しきもの。
やっぱり赤と銀の二色で塗られたそれは、最初は手押し車だと思ったものだ。
だけどあるべき所に取っ手がない。荷台もない。
人の身体のようなものが横たわり、その下に二つの車輪。前と思しき方向には何故かゴーレムの頭のようなもの。因みに耳に当たる部分には刃物がついていてとっても危ない。
「なにこれ」
サモンサーヴァント終了後のルイズの第一声がそれだった。
とりあえず、人の形をしたものの上に乗っていた桶にコントラクトサーヴァント。
「本体はこっちなのですか?」
と、桶の横に浮かび上がったルーンをスケッチしているコルベール先生に聞かれたけれど、正直ただの勘である。
成功したような感覚はあったような気がするけれど、自信はない。
手押し車もどきは、何故か前の方についていた取っ手を持つと、車輪付きなので割合楽に運ぶことができた。
とは言っても重量はとんでもないので、一度転ばせてしまったときは焦ったものだった。
普段身体を鍛えていたので何とか引き起こすことはできたけれど、昔のままの自分であれば途方に暮れていただろう。
それにしても、これは一体なんだろう。
腹這いになった人が二つの車輪の上に乗っかっている。そう見えるこれは、ゴーレムの一種だろうか。ではセットで付いてきた桶は一体?
ルイズは考える。
アカデミーなら、エレ姉さまならわかるのかも知れない。だけど、こんな用事で呼びつけるわけにはいかない。そんなことをすればどれほど恐ろしい目に遭う事やら。
ルイズはまた一つ溜息をつくと窓の外を見て月の位置を確かめる。
「もうこんな時間?」
寝なければ、朝に差し支える時間である。
ルイズは素直にベッドに潜り込んだ。
使い魔の詳細はまた明日、である。
翌朝。
「おはようございます、ルイズ様」
「おはよう、シェスタ」
日課となった水場での挨拶を終えると、ルイズは自分の洗濯物をシェスタに渡す。とはいっても今日の所は下着とシャツだけだ。
「お願いね」
「はい。任せてください」
そのまま、ルイズはランニングを開始する。
ルイズは魔法が使えない。だから努力した。それでも使えなかった。
ではどうする。さらに努力を積み重ねるか。それとも諦めるか。
ルイズはどちらも選ばなかった。
微かに使えるものを、さらに使えるようにする道を選んだのだ。
ルイズにできるのは魔法失敗による爆発だけ。
魔法を失敗して爆発を起こすメイジなど他にはいない。しかし、失敗は失敗である。魔法が自由に使えないという事実に代わりはない。
なら、失敗を前提にして魔法を使えばどうなるだろう。
爆発しかできないならば、爆破を使えばいいではないか。
狙いが定まらない? 近距離で使えばいい。
近距離でもダメ? では、接触すればいい。
どうやって接触する? その肉体は何のためにある?
だから、ルイズは身体を鍛えていた。
学園で初めてランニングをした日に出会ったのが、朝早くから洗濯を始めていたシェスタだった。
毎朝合うたびに声をかけていると、いつの間にか交わす言葉が多くなり、気付くとシェスタはルイズに一番慣れているメイド、専属とまではいかないが好みや行動を一番把握しているメイドとなっていたのだ。
規定のランニングを終えると、シェスタが冷たい井戸水を準備している。
「どうぞ、ルイズ様」
「ありがとう」
「朝食の準備はできています」
ルイズの朝食は他の生徒たちとはちょっと違う。
他の生徒は食堂で、それこそ食べきれないほどの無駄に豪華な朝食なのだが。ルイズは違っていた。
自分の食べられる量だけ、それだけを用意してもらいたい。そう、厨房に伝えたのだ。
「まずくて食べられないものならまだしも、量が多すぎて食べられないなんて、馬鹿馬鹿しいでしょう?」
シェスタは頷き、料理長のマルトーはもっと大きく頷いたものだった。
マルトーに言わせればその通り、なのである。
贅沢な食事はいい。貴族が贅沢なものを食べることにはいちいち文句を付けていては始まらない。羨ましいとは思ってもさほど腹は立たない。
しかし、残すとは何事か。それも、食べるより残す方が多い者までいるのだ。
かといって、量を減らすと「見栄えが悪い」と苦情が出るのだ。
だったら残さず食え、とマルトーは心の底から思っている。
「じゃあ、行きましょうか」
そう言われ、そこでシェスタは気付いた。
洗濯物を入れていた桶。これは……
「あの、ルイズ様」
「なに?」
「その桶なんですけれど」
「あ、これ」
実のところ、なんとなくな行動なのだが、さすがに召喚したものに下着を入れてきたなどとは言えず、ルイズは少し考えて、
「変わった桶でしょ?」
とだけ答える。
「似たような物を見たことがあるような」
「え」
シェスタは記憶をたぐっていた。
そう。死んだお爺ちゃんが持っていた綺麗な絵。そこに似たようなモノがあったような気がする。
でも、あれは桶じゃない。
あれは……
「めっと、です」
「なに?」
「めっと、です」
「めっと……?」
「はい。お爺ちゃんの絵にそっくりなモノが書いてありました」
「お爺ちゃんの絵?」
シェスタの言葉を繰り返すだけのルイズ。それ以外の言葉がないのだ。
「はい」
「それで……」
ルイズはめっとをじっと見る。
「めっと、って何なの?」
「頭に被るものだそうです」
「頭に?」
言われてみれば。
ひっくり返せば兜のようなものに見えないこともない。いや、この堅さだ。本当に兜なのかも知れない。
「なるほどね」
ひっくり返して……
さっきまで自分の下着を入れていた、と考えると少し抵抗があるが。他人の下着ではないのだ。
ルイズはそれを被った。
(ヘルメット)
脳裏に浮かぶ名称。
そして、さらに脳裏に浮かぶ数々の情報。
「え、なに、なに、これ」
次々と浮かぶ情報は、実はルーンの仕業なのだがルイズにそれがわかるわけもない。
「ルイズ様?」
「ごめん、シェスタ。今は一人にして」
ルイズは脳に流し込まれる情報を必死で追っていた。
これは、ルイズだからこそ耐えられるのである。普通の生徒ならばとっくに気絶している。日頃の研鑽、そして持って生まれた優秀さ故の結果である。
同じ事をやって耐えられる同学年の者は、数人いるかいないかだろう。
シェスタはしばらく待ち、そして耐えきれずに人を喚びに行こうかと思ったところで、ルイズはヘルメットを脱いだ。
「ふぅ、終わったわ」
「ルイズ様?」
「ああ、御免ね、シェスタ」
ルイズはもう一度、メットを被る。
そして自信満々に、耳元の部分から伸びる棒に触れると、それを口元まで伸ばした。
「来なさい! ザボーガー!」
周りを見回すシェスタ。人の気配はない。
「誰をお呼びになったんですか?」
「私の使い魔よ」
「使い魔、ですか」
異様な音に気付き、シェスタは生徒寮の方を見た。
何かがやってくる。
シェスタは気付いた。
あれはもしかして、お爺ちゃんの絵の中にあった「おうとばい」というものでは?
似ている。二つの車輪で地面を走ってくるところは、話に聞いたそのままだ。
「あれが私の使い魔。ザボーガーよ」
「ざぼうがあ、ですか」
キュイン、とターンして止まるバイク。
「見てなさい、シェスタ」
不敵に笑うルイズ。
「チェンジ! ザボーガー!」
呆気にとられるシェスタの前で、一台のバイクが人型に変形していく。
立ち上がり、タイヤが収納され、入れ替わるように出てくる腕。
そして、完成するザボーガー。
「どう? 私のザボーガー」
「凄いです、ルイズ様」
固有名詞を間違えるのはさ〜原作読んでないのかなー?
「へえ、なかなか面白そうじゃない」
頭上からの聞き覚えのある声に、ルイズは仰ぎ見ると、そこには何故かキュルケが。
「何してんのよ、そんなところで!」
「それはこっちのセリフよ。昨日の様子だと、なんだかよくわからないものだったけど……」
着地し、ザボーガーをしげしげと眺めるキュルケ。
「面白いゴーレムね。馬のない馬車みたいに走って、今度は人型? ガリアにもこんなガーゴイルはないんじゃない?」
「人の使い魔が気になってこそこそ見に来たわけ?」
「こそこそって……」
キュルケは大きな仕草で肩を竦める。
「これ、アンタの部屋にあったのよね?」
「ええ」
「そこから走ってきたのよ? 朝っぱらからけたたましい音立てて」
しかも、寮内である。
「気付いてない奴がいたらそうとうの大馬鹿よ」
ぽかん、と口を開くルイズ。
言われてみれば、その通りだ。
「とにかく、安眠妨害。しかも朝方の一番気持ちいい時を邪魔したんだから、それなりの顰蹙は覚悟しなさいよ?」
「え、えーと」
「私は、まあ貴方のその怯えた顔で勘弁してあげるわ」
「しょ、しょうがないじゃない! 使い魔がこんな大きな声なんて知らなかったんだから!」
実際のところは、使い魔召喚のあと数日の珍騒動はそれほど珍しいものでもない、大なり小なり計算違いというものは誰にでもあるのだ。
例えば、韻竜を召喚できたはいいが幼稚だったことに気付いた者とか。
ルイズのこの騒動も、その一環だとすればそれほど恨みは買わないだろう。
だけど、キュルケはあえて大袈裟に言うのだ。
理由は簡単。「面白いから」である。
「そういうことは他の人たちへの言い訳にとっておきなさい。それじゃあシェスタ、朝食に行きましょうか。給仕をお願い」
「は、はい」
明確にルイズ専門メイドというわけではないシェスタには、当然拒否権はない。
どうしてミス・ツェルプストーが自分の名前を? という疑問がシェスタの頭に湧いたが、とにかく朝食の準備に慌てて向かう。
キュルケがシェスタの名前を知っていたのは、ルイズに一番近いメイドだからである。
ルイズのことはかなりしっかり見ているのだ。ルイズをライバルと決めている彼女としては。
だからキュルケは喜んでいた。
使い魔の召喚に成功したルイズは、決して自分がゼロではないと証明したのだ。
ゼロと呼ばれながらも決して諦めない彼女を、キュルケは心密かに尊敬していた。
しかも、失敗魔法のその失敗すら利用して自分の技にしようとしていると知ったときは、その念は余計に高まったのである。
魔法が使えることは、使えない者から見れば確かに凄いことだろう。ならば、魔法が使えないのに同じ土俵に立とうとする者はもっと凄いのではないか。
それも、名門ヴァリエール家に生まれながら魔法が使えず、それでも家名にもたれず、親に庇護を求めず、自分の持っているもので勝負しようとするルイズ。
これを立派と見なさず、何が立派なのか。そしてそれが理解できない者など、キュルケにとっては敵ではない、見下ろすべき対象、現実が理解できない愚か者だ。
シェスタは私の給仕をするのよ、と叫びつつ、ルイズはやや強引にシェスタの手を引いていってしまう。
それを笑って見送りながら、キュルケは、主に置き去りにされた使い魔を見た。
赤と銀色のゴーレム。
確か名前は……
「ザボーガー。貴方、いい主に巡り会えたわよ」
キュルケはそう言うと、ザボーガーの肩を撫でるのだった。
以上
固有名詞ミス。
ごめん。惚けてる。
シェスタは昼寝じゃないか………。
変換できたから油断した
シエスタだ。ホント御免。
ザボーガー乙
なんという体育会系のルイズ
>>292 戦場じゃぱっとせんけど決闘だと水分を遠隔操作出来る水系統が一番やばいような気がする。
人体の水分の割合的に考えて
ザボーガー乙
何と言うかバイクルとかガンドーベル思い出した
>>288 土メイジ数人がかりで巨大な円筒を数個創ってゴーレムで押せばローラー作戦を行えば
飛べない平民とかオーク鬼系とか他の魔法使ってるメイジを引き殺す"アドラステア"的な運用出来るんじゃね?
問題は竜騎士とか戦艦に乗ってる魔法使いとか土系のメイジだけどね
>>305 ゴーレムに力仕事させてる間に後方の無防備な土メイジが空中から竜騎士あたりに焼き殺されて終わりじゃね?
敵方の土メイジに壁を作られて防がれる可能性もあるし、
何よりフライやレビテーションで逃げられるメイジ相手にはまったく効かないのが痛い
メイジこそ真っ先に倒しておきたい相手で、平民とかを潰すのは二の次でしょ
でも、メイジの攻撃魔法射程外からロングボウとかは届くはずなんだよね
傭兵達が「メイジの射程外から攻撃する作戦」使ってたし
であれば平民の部隊もメイジに劣らぬ充分な脅威ではないかとも思えるが
>>304 人体内部の血液とかを操作したりはできないんじゃないですかね
できるとしてもスクウェアクラスでないと無理で射程も長くないとか、集中に時間かかるとか、制限がありそう
ンなことが楽にできるんだったら水メイジとはタイマンで喧嘩した時点で、
自分がトライアングルだろうがスクウェアだろうが無関係に終了確定みたいなもんだし
水メイジは治療ができるんだから戦いで強い必要はないんじゃないかな
それに、水メイジは媚薬とか反則かチートとしかいいようのない性能の薬を調合する能力も持ってるし
魔法を抜いてもその辺を準備しておいてうまく利用すれば充分強いような気が
みなさん、タバサの得意な「氷の矢」系の技は水×風ですぜ。
ライン以上の水メイジなら同様の技使えるんでない?
水メイジの攻撃魔法の話題で
ここまで一度も波濤のモットの名前が出てこないってどうよ?
>>308 治癒だって対象者の至近からやるもんだし
実践では役に立たないだろうけどゼロ距離ならもしかしたら出来るかも
水メイジは水を高速で発射したり水を圧縮して何でも切るカッターを作り出すことが
いや風メイジのエアカッターと大差ないし
ザボーガー乙。つか、作者はいったいいくつなんだ(^^; 40過ぎたおいらでもまともに見た記憶無いぞ...。
まあ、DVDも出てるし、リメイクするって噂だし、ねえ?
>>231 シルバーサーファー?
AVGNがぶち切れてたFC版なら強すぎるということはないが
とりあえず、強化と固定化しておけ<ザボーガー
怒りの電流があればデルフも大丈夫だろう。
取り合えず土系統は攻撃よりは防御が本領のような気もする。文字通り一夜城築けるんじゃねぇかなって。
水系統は、既に言われてるとおり毒の霧とかのいやらしい戦い方が出来そうだな。精神干渉系は禁忌指定が多いだろうし。
貴族らしくないとか言われそうだけど。
ザボーガーさん乙!
このルイズはなんかカッコいいなぁw
続きが楽しみ!
320 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/17(水) 12:04:09 ID:N/qI8n0x
ザボーガーで思い出したがズバットさん戻ってきてくれんモンだろか
まだ登場シーン新しいのが思いつかんのかな
>>320 sage忘れましたすんまそん あとザボーガーの人お疲れです
マルモの人のを読んでふと思い出したんだが、
エビルシドーやルーナ(ムーンブルク王女)は呪文を唱える時
詠唱をしていたと思うんだが、どうなんだろうか?
まありゅうおうやバズズが詠唱無しでイオナズンやべホイミ使ってたし、
呪文の強化や高位呪文じゃないかぎり、詠唱は必要ないのかもしれないけど。
ザボーガーの人乙、小さい頃よく見てました。
ドラクエ2の小説版にはカッコいい詠唱がついてたりしたね
すべての魔力は無に帰する、何時が言葉の一つ一つは、手械足枷となってその身を縛り付けよ
天界も精霊界も、何時の前には開かれるな 汝の舌は心に届かぬ マホトーン!
とか、そういった感じのが
まあ二次創作するうえで詠唱があるとしてもないとしてもOKだとは思う
ああ、小説版というよりはゲームブック版と言うべきだったかな? どうでもいいか
>>324 あと何時じゃなくて汝だわな、カッコよくないなw
あのゲームブック版のキャラも召喚したら面白そうだとは思うけどね
竜王のひ孫とか
呪文詠唱の有無か、だったら少しスレがずれるが、メラゾーマ5発同時発射のフィンガー・フレア・ボムズや
カイザーフェニックスの連射は、長々呪文が必要なメイジから見たら悪夢以外の何者でもないな。
異魔神の魔法は、もはや天変地異レベルだし・・・
>>327 ああいうのは物語的にも貴族・平民・エルフが垣根を越えて一致団結して立ち向かうような相手だからね。
個々人レベルで比べちゃいかん。
ゲームブック版ドラクエ2の魔法は口語で呪文を唱えてるし、
精霊ルビスの名を呼んで助力を求めたり、べギラマでは「ジン、イフリート、サラマンドラよ」などといってるあたり、
どうもハルケギニアの先住魔法(精霊魔法)と同じ系統にあたるっぽい
敵方の魔法使いはルビスでなくシドーの名を呼んでいたりする
避難所のほうに時の使い魔の方が来ていらっしゃったので、他に投下予定の方がおられなければ代理を開始します。
かもーン
決闘の後、授業が終わり夕食を済ませた後、ルイズと時の君は学園から少し離れた平原
に来ていた。
「さあ、まず何からやるの?」
時の君の術の力を目の当たりにし、これなら魔法を使う上でのアドバイスを受けられる
と思ったからである。
「そうだな、何でもいい。魔法を使ってみろ。」
「何でもいいって…爆発しか起こらないわよ…わかったわ。」
短く詠唱し、ファイヤーボールを唱える。自分が想像していた位置よりも少し反れた場
所に爆発が起き、地面を抉った。
「…もう一度だ。」
「これで何か判るのかしら?」
ブツブツと文句を言いながら、もう一度ファイヤーボールを唱えた。やはり爆発が起き、
大地に小規模なクレーターを作る。
「もう一度。」
「な、何なのよ…」
その後も魔力が尽きるまで何度も繰り返され、辺りはさながら戦場の様に荒れ果ててい
った。
「も、もう無理…限界だわ…何なのよ、もう…」
ルイズはその場にへたり込み、うつむきながら肩で息をしている。
「…この爆発は、燃焼や魔力の暴発と言う訳ではなさそうだ。まだ確証はないが、おそら
く御主人様の魔力が粒子を振動させる事によって爆発という結果になっているのだろう。」
「は?何?どういうこと?」
「推論が当たっていれば、制御さえできれば色々な事が出来そうだという事だ。」
「ほ、本当!?爆発するんじゃなくて。他のことも出来るの!?」
時の君の解答に一度に疲れが吹き飛ぶ。暗闇に一筋の光明が見えてきた気がする。
「物の根源を操れる可能性があるからな。…今日はここまでにしよう。帰るぞ。」
そう言うと、ルイズの体の下に手を差し込み、抱え上げた。
「な、何するのよ!?」
これは俗に言うお姫様だっこではないか、突然の時の君の行動に動揺し、ばたばた暴れ
た。
「暴れるな。疲れたんだろう?部屋まで運ぼうとしているだけだ。」
「そ、そう…し、しょうがないわね、部屋まで運ばせてあげるわ!」
今なら歩けと言われれば歩ける気もするが、せっかくの使い魔の申し出を無碍にするわ
けにもいかないので、時の君の腕に体を預け、頬を赤らめながら部屋へと戻っていった。
「水を持ってくる。明日も授業があるんだろう?飲んだら寝るんだな。」
「そ、そうね、お願いするわ。」
時の君は部屋に戻って来ると、ルイズをベットに下ろし、水差しを手に再び部屋より出
て行った。まだ召喚されてから二日目だが、予想以上に環境に適応出来ている気がする。
決闘騒ぎは起こしたが…
「あ、時の君!お怪我は…無いようですね、よかった…」
水を汲んでいると、偶然シエスタが現れた。おそらく昼の決闘の事を言っているのだろ
うが、そもそも触れられてもいないので怪我をするはずもない。
「大丈夫だ。」
「後から決闘の事を聞きました。貴族に勝っちゃうなんて、本当にお強かったんですね、
そうだ!今度、厨房までいらっしゃって下さい!マルトーさんも会ってみたいって言って
ました!」
「いいのか?妖魔は恐れられているんだろう?」
ギーシュや他の貴族はそこまで恐れている様には見えなかったが、やはり今朝のシエス
タの反応を見るに、特別な力を持たぬ平民には恐ろしい存在なのだろう。
「確かに、皆が大丈夫なわけじゃないんですけど、今朝、洗濯を手伝ってくれた事とか説
明したら、マルトーさんとか他の人も、面白い妖魔だ一度話してみたい、なんて言ってま
すよ。」
「そうか、では今度行くとしよう。」
時の君としても人間は襲う気はないので、今後の事を考えると、怖がられない程度には
関係を築いておかないと生活に差し障りがでるかもしれない。
「はい!ではお待ちしておりますね!」
シエスタは時の君へにこやかな笑顔を向け、一礼し去っていった。時の君もとっくに水
は汲み終わっていたので、部屋へと足を向ける。
階段を上りルイズの待つ部屋へと歩いていると、前方に割りと大きめのトカゲが道を塞
いでいた。
「邪魔だ、どけ。」
時の君の言葉に一瞬怯み後ずさるが、気を持ち直したのかマントの端を咥えどこかへ引
っ張っていこうとする。
「きゅるきゅる…」
「何だ?離せ。」
ここに唯のモンスターが出現はずもない。ということは誰かの使い魔であろう、ならば
下手に怪我を負わせて無理やり振り解くと、後にルイズがこのトカゲの主人と揉めるかも
しれない、そう考え、仕方なくこのトカゲについていくことにした。
「きゅるきゅる!」
不穏な空気を察知していたのか、明らかに安堵した様子のトカゲが、ルイズの部屋の一
歩手前で止まり、開いていた扉の中へと入っていった。部屋の中にはトカゲの尻尾の炎だ
けが光を灯している。
「何か用か?」
「扉を閉めて入っていらして?」
部屋の中の声の主がトカゲの主人であろう。部屋に入れと言っているが、部屋には入ら
ず言葉を続けた。
「時間が掛かるか?」
「え?フフ…そうね、今夜は長い夜になりそう…」
時の君の問いに甘い声をだす。
「そうか、では御主人様へ確認を取ってくる。」
「え!?ちょっ…」
時の君は外側から扉を閉め、ルイズの部屋へと戻っていった。
「遅かったじゃない?何かあったの?」
「隣の部屋で呼び止められてな、何か用事があるらしい。長くなるそうだが、行ってきて
もいいか?」
「隣の部屋って…キュルケじゃない!あ、あの万年発情猫…!!!駄目よ!ここに居なさ
い!!」
言い終わると同時に、ルイズは豪快に扉を開け放ち、部屋から飛び出して行った。隣の
部屋へ入って行ったのであろう大きな音がし、ギャンギャン言い争っている声がする。
「…という訳なんだから、ほいほいキュルケに着いて行っちゃ駄目よ!わかった!?」
子一時間言い争った後に戻ってきたルイズは、ヴァリエール家とツェルプストー家の歴
史を子一時間、時の君に説明した。
「判った。ところで、自由時間が欲しいんだが。」
「へ!?何突然?たまには休みをくれっていう事?」
脈絡のない申し出に変な声を出してしまった。
「夜は自由時間にして欲しい。ご主人様が寝てからでいいんだが…朝までには戻る。」
「ま、まままさかキュルケの所に…い、いいい言った事が伝わってなかったのかしら!?」
どうりで物分りがいいと思った、何も聞いていなかったらしい。これはお仕置きせねば
なるまい。
「違う。私は基本的には睡眠は取らない。ご主人様が寝ている間はどうしても暇なんだ、
部屋の中で術の研究をするわけにもいかないしな。だからこの辺り(ハルケギニア全体)を
見て回ろうかと思ってな。」
「そ、そうなの…ま、まぁいいんじゃない?使い魔の仕事を疎かにしなければかまわない
わ。」
勘違いだったらしい。だろうと思っていた、忠実なる使い魔である時の君がキュルケご
ときになびくはずはない。
「でも、どこにいくの?この辺(精々、街まで)のことなんて全然知らないでしょう?」
「知らないからこそ、色々見て回らないとな。」
「ふーん。でも、あんまり遠くに行き過ぎて迷子にならないでよね。」
「わかった。」
ルイズの寝息を確認した後、時の君は移動するべく精神を集中させ始めた。妖魔特有の
リージョン移動である。一度行った場所なら、リージョン内でもリージョン外でも思うが
ままに瞬間移動出来る。もしくは他の妖魔を索敵し、その妖魔の元へ移動するという方法
もある。前に聴いた話だが、この索敵能力のせいで、アセルスも随分苦労したらしい(追
っ手が間断なく攻めてきていた。)。
「さて、どこの妖魔の所へ行くか…」
どうせ知り合いもいないので、適当に妖魔を選んで移動することにした。直後、時の君
の姿は完全にルイズの部屋より消えていた。
―――ガリア サビエラ村付近―――
時の君が移動した場所は、村外れの紫のヨモギが密集した森の中だった。妖魔が、人間
の敵であるという認識がある以上、不用意にここに住む妖魔の目の前に現れる事は、自分
と同じように人間と共生いている場合、迷惑になる可能性があるという配慮の為、妖魔の
いる位置より少し離れた場所へ降り立った。
「…あっちか。」
時の君は、妖魔の気配のする方へ向けて歩き出していった。相手も妖魔である以上、時
の君の存在には気付いているだろう。自分より格下の妖魔の様だし、コンタクトを取って
きてもおかしくはない。
「これは、高貴なお方。このような辺境にどういったご用件でしょう?」
やはり、数分歩いた所で声を掛けられた。どうやらここに住む妖魔らしい。ルイズなど
よりもはるかに幼い容姿の少女が片膝をついていた。
「お前は、魔法は使えるか?人間が言う所の先住魔法について聴きたい。」
時の君は単刀直入に、用件を伝える。黙々とこなす術の研究に飽きてこの世界に来たよ
うなものだが、術とは体系の異なる魔法というものにかなりの興味を抱いていた。
「…はい、わかりました…多少は扱えますので私の知っている範囲でよろしければお答え
致します。」
明らかに格上である妖魔からとは思えない質問に、疑問を抱いている表情をしていたが、
淡々と話しはじめた。
「人間の使う魔法の様に理を曲げるのではなく、自然の理に沿う形で精霊の力を…」
話を聴くにどうやら、術はどちらかといえば人間の使う魔法に近いらしい。人間の使う
魔法と先住魔法とは全く違う物のようだ。
「…という訳ですが、これ以上のことならエルフなどでないと解らないと思います。」
「エルフ?」
「はい、人間の異種族で先住魔法の事では右に出る者はいません。…失礼ですが、貴方様
はどちらからいらっしゃったのでしょう?」
不審は解けなかったのであろう、妖魔は当然の疑問を口にした。
「この世界ではない遠くからだ。」
時の君は、人間の異種族なら、索敵で探し当てることも出来ないな…などと考えていた。
「はぁ…よく判りませんが、とりあえずお食事はお済でしょうか?近くに人間の村があり
ます。あまり上等なお食事とは参りませんが、ご案内致します。」
納得はしていないようだが、時の君がこの妖魔より上位に位置するのは間違いないので、
丁重に扱っている様だ。
「食事か…お前は人間と共生しているのか?だとしたら、こんな夜中の来客では不審に思
われるだろう。」
「大丈夫です。確かに人間の振りをして暮らしてはいますが、餌である人間にばれたとし
てもまた他の村へ移りますので。ささやかながら、おもてなしをさせて頂きます。」
「…そうか、ではよろしく頼む。」
二人の妖魔は村へと歩いていった。
村に着き、家の中へと案内する。
「ここでお待ちください。今、人間を間引いて来ますので。」
そう言い、外へ出ようとするが呼び止められた。
「待て、その必要は無い。私の餌はお前だ。」
冷たい物言いに、背筋に悪寒が走る。
「ど、どういうことでしょう?何か気に障るような事でも…」
「しいて言えば人間を餌にしている事だ。今は人間の味方でな。」
後退しようとするが、既に後ろは扉だ。恐怖で、扉を開けるという動作が出来ない。
「どうしたんじゃエルザ?何かあったのか?……だ、誰じゃ!?」
村長である白髪の老人が、他の部屋からつながっているドアを開け中に入ってきた。
「も、物取りか!?ま、まさか吸血鬼!!?エルザから離れるんじゃ!!」
老人は、手の近くにあった物を手当たり次第にこの妖魔に向けて投げつけている。
「やめろ、吸血鬼はこいつだろう。」
そう言われ指をさされたが、この老人とは一年近くの付き合いになる。どちらを信じる
かと言われれば明白だろう。もう少し時間を稼げば何とかなるかもしれない。
「た、助けておじいちゃん!」
「今、助けてやるからな!エルザ!」
言いながらも、もはや老人の手元には投げる物は無く、後は体当たりをする位しか残っ
ていなそうだが、どうやら間に合ったようだ。
「ど、どうしたんですか!?村長!大きな物音がしましたが!」
扉が開き、屈強な大男が部屋の中へと飛び入ってきた。
「おお!アレキサンドル!そいつじゃそいつが吸血鬼じゃ!」
妖魔の視線が村長とアレキサンドルの方へと向けられる。やるならば今しかない。
「枝よ。伸びし木の枝よ。彼の腕をつかみたまえ」
窓を割り外より伸びてきた枝がこの妖魔を拘束する。何故かこの妖魔からは逃げられる
気がしない。位の違いのせいだろうか?ここで確実に仕留めなければならない。
「屍人鬼!そいつを仕留めなさい!」
声を荒げ、元はアレキサンドルと言う名前だったグールに命令する。グールは雄たけびを
上げると、目の色を変え妖魔へと突進していった。
「エ、エルザ!?どういう事なんじゃ!?」
老人が視界の端で狼狽しているが、今、気にしている余裕は無い。
殴られながら観察していたが、どうやら、このアレキサンドルと呼ばれたこの男は死人
の様だ。助けられるものなら助けようと思っていたがどうしようもない。
「秘術《剣》」
三本の魔法剣が寸分違いなくグールの首を切り落とす。グールは腕を振りかぶったまま
床へ崩れ落ちた。
「な、何!?どこから剣が…」
魔法剣は、時の君へ絡みついた枝を切り払うと消滅した。
「逃げられない事は判るだろう?終わりだな。」
時の君がエルザと呼ばれた妖魔との距離を詰めると、エルザが口を開いた。
「なぜです!?私が人間を餌にする事と、人間が食べ物を口にする事は同じ事ではないで
すか!それに貴方は同族…」
「今は人間の使い魔でな。人間に仇名す存在なら消さねばなるまい。それに、私が妖魔を
餌にする事と、お前が人間を餌にする事は同じだろう?」
硬直し動けなくなっているエルザへ、いつの間にか握られていた剣を刺す。
「そ、そん、な…」
「人間と妖魔以外ならこの剣に憑依するが、妖魔であるお前は私の生命力になってもらう。」
剣へと向けてエルザが飲み込まれるように消えていき、後には何も残らなかった。
「エ、エルザが吸血鬼じゃったのか…そんな馬鹿な…わしは今までいったい何を…」
残された老人ががっくりと膝をつき、うな垂れている。
「さて、帰るか…」
「あ、あなたも吸血鬼?」
もし、吸血鬼なら、吸血鬼であるはずのエルザをものともしないこの男に勝てる道理な
ど、少なくともこの村には存在しないだろう。
「吸血鬼ではないが、妖魔だ。心配せずとも襲いはしない、用件も果たした事だし帰ると
する。」
言うが早いか、声をかけようとした時には影も形も無くなっていた。結局、何だったの
か…荒れ果てた部屋の中で、ただ老人は考えを纏めようとしていた。
―――――後日
「あのいじわる姫、お姉さまを吸血鬼と戦わせようなんていじわるにも程があるのね、き
ゅいきゅい!」
北花壇騎士七号であるタバサは、従姉妹であるイザベラから受けた命により吸血鬼退治
へと行くことになっていた。人間に比べて高い身体能力を持ち、先住の魔法を使い、血を
吸った相手を一人だけとはいえ屍人鬼として操る、人間とまったく見分けがつかない姿を
した妖魔。既に九人のメイジが犠牲になっている。確かに、シルフィードが憤慨している
様に今回の相手は最悪だ。
「お姉さま一人で吸血鬼に立ち向かうなんて無謀なのね、どうせならあの使い魔の妖魔に
も手伝ってもらえばよかったのね、きゅい。」
シルフィードには何の返答もしないが、確かにあの未知の魔法は吸血鬼を倒す上で魅力
的ではある。しかし、彼を連れ出すのは難しいだろう。出掛けにも見掛けたが、常にルイ
ズと一緒にいる。ルイズと離れて行動する事を由とするだろうか…それに既に、タバサは
サビエラ村へ向けシルフィードと共に空を駆けていた。
「まったく、本ばかり読んでないでシルフィの相手もしてほしいのね!」
相変わらず、シルフィードの意見はスルーし、本を読み続ける。何せ、今読んでいる本
は吸血鬼関連の本である。この本を読み込む一秒が明暗を分けるかもしれない、まだ死ぬ
訳にはいかない。
そうこうしている内に、サビエラ村へと到着した。タバサはシルフィードを村から少し
手前の場所へと降下させた。林の中へと降りると、タバサは鞄から衣類を取り出しシルフ
ィードへ向けた。
「これを着て。」
「変身しろっていうのね!?しかも布を体につけるなんていやいや!」
シルフィードはその長い首を左右に振るが、タバサは無言で睨みつけている。
「うぅ…終わったら何かご褒美が欲しいのね、きゅい…」
ぶつぶつと文句を言いながらも、詠唱を唱え、見る見るうちに変化していく。
「これを持って。」
そう言い、着替えが終わった所で、タバサはシルフィードに杖を渡すと、スタスタと村
へと歩き出した。
「お姉さま待って、二本足は歩きにくいのね。」
やがて村へ着き、まずは詳しい話を伺うべく、村長の家へと向かうが、何やら村民の反
応がおかしい…吸血鬼退治に来たメイジに希望を見出した様子ではなく、子供を連れて来
たメイジに落胆した様子でもなく、なにやら何故来たんだという様な、困惑したような表
情を一様に取っている。
「な、何なのね?何か様子がおかしいのね…」
遠巻きにしていた村民の中から白髪の老人が走りよって来た。
「こ、これはこれは、貴族様…ようこそいらっしゃいました。どうぞこちらへ。」
どうやら村長らしい。案内されるまま、近くの民家へと移動した。
「すみません、ただ今我が家は荒れていまして…」
「何で、村人の様子がおかしいの?何かあったのね?」
メイジの格好をしているシルフィードが、タバサの代わりに問いかける。
「どうやら入れ違いになってしまった様で…なにせここから首都リュティスは遠いのでご
容赦頂きたいのです。」
ふかぶかと礼をされるが、何の事を言っているのかまだ把握できない。
「どういうことなのね!?なんで謝るの?」
「いえ、もう吸血鬼は退治されましたので…」
思いもよらぬ返答に、タバサは思わず口を出した。
「誰に退治されたの?」
あの従姉妹がこんな手の込んだいたずらをするとは思えない。という事は、本当に入れ
違いになって誰かに倒されたということだろうか?
「それが…妖魔が現れまして…」
村長の言うところによると、突如現れた妖魔が、村長と共に暮らしていた吸血鬼とこの
家に住んでいた屍人鬼を一撃の元に倒し、また何処かへ消え去ったという。
「それで、この家に住むマゼンタというばあさんの事を、重い病気で部屋から出られない
ものですから、前から皆が疑っておりましてな…もし、あの妖魔が来なければ、無実のこ
のばあさんが吸血鬼に仕立て上げられていたかもしれませんのじゃ。息子は残念な事にな
りましたが…」
しかも、吸血鬼を倒すだけでなく、村人の命まで間接的に救っていったらしい。どこの
勇者だ。
「エルザが突然消えただけでは吸血鬼に攫われたのだと勘違いをしていたかもしれません、
それも計算していたんでしょうかのう…私の目の前でエルザを退治したのは…同じ妖魔で
も力の差は歴然でした。突然何も無い所から剣が出てきたのには驚きました。」
タバサは学園ヘ向けシルフィードの背に乗り、移動していた。
「おかしい。」
「何がおかしいのね?でも、吸血鬼と戦わなくてよかったのね!きゅいきゅい!」
もはやシルフィードの言葉は耳にも入っていない。…妖魔…突如現れる剣…この符号を
ただの偶然だといえるだろうか?しかし、村長の話を聴くに、妖魔が現れたのは三日前だ
という。三日前といえば、決闘騒ぎの日であり、そして次の日もちゃんと学園にいたはず
だ。
「やはり、興味深い。」
どう考えても、距離的におかしいので、確定したわけではないが、どうもあの使い魔な
ような気がする。学園に戻ったら確認してみようか…
タバサとシルフィードは月夜を移動していく。
「私たちはようやくのぼりはじめたばかり。このはてしなく遠い男坂を…」未完
以上です。
なんだか、文章が長くなっていっている割にはバタバタとしっぱなしです…
書いてるうちに上がっていくだろうと思っていた文章力も全く向上せず…
絶望した!自分の能力の限界に絶望した!
作者さん、乙でした。
アセルスの刺客イベント、私はアセルスの家に行く前に仲間集めて生命科学研究所でアホみたいにレベル上げして
刺客をなぶり殺しにしてやった懐かしい思い出があります。しかし、ほとんど天災にやられたようなもんだな、不幸なエルザに合掌。
帰宅するなり時の君きてたー支援
>>292 大軍なら敵の進行方向に水流して泥作るだけでかなり凶悪な気がするが
騎兵なら即壊滅コース…だけどゼロ魔世界だと騎兵出てきたっけ?
土系統と連携すると倍率ドン
ゴーレム作った後の穴に水流すだけで即席堀完成…そりゃ平民勝てねーよ
支援したら終わったでござるす
作者さんと代理さん乙
エルザも相手が悪かった
ふと、アニメ化決定の屍鬼から誰か召喚されたら・・・と思ったが
人狼じゃなきゃ即死か
>「私たちはようやくのぼりはじめたばかり。このはてしなく遠い男坂を…」未完
まっ、まさか!これで打ち切りではないでしょーねっ??
面白いので是非末永く続きを
その坂はのぼっちゃいかんでぇえええ
>>341 その手の話題は設定考察スレのほうでやってください。
>>341 敵を壊滅させるほど大量の水や、軍が使えるほど広範囲の堀を短時間に作るには、
それなり以上の腕の水や土属性のメイジが何十人何百人単位で要るのではないかと
そんな数が揃うかも問題だし、揃ったとしてそれらのメイジの力を全部つぎ込んでやって果たして効率がいいのかどうか…
それより、風石を使った飛行船(空中から砲撃ができる)や竜騎士のほうが凄く強くない?
何故タバサが「男」坂を上らねばならぬのか。乙女坂とか、せめて「漢」坂にすべきではないのか
などと場違いな疑問が浮かんでしまった
>>347 多分、この場合の男坂は横たわった才人なんだよ
>>346 そりゃ戦争なんだからそれなりに数いるの前提だね
とはいえ直接壊滅させるほどの量の水は必要ない
泥濘地作るだけで騎兵は死ぬし歩兵の足も鈍るわけで
後はそこに矢の雨降らせるなりなんなり…って平民に主役取られるような動かし方しにくそうだけど
火メイジにしても移動する砲兵として運用するよりは飛行する獣に乗せて物資焼きや補給路寸断に動くほうがずっといい気がする
平均ラインくらいとしてどれだけの数撃てるもんだろうか、と考えるとね
攻城戦に使うしても徹底的にやるつもりならともかく収支考えれば酷く使いにくそうだし
土は架橋に野戦築城、ゴーレムに戦車や丸太引かせてもいいし破城槌、投石器代わりも可能
超工作部隊としてすごい便利そうだぞ
ところで、ギーシュのジャイアントモールってかなりのチート生物、軍人にとっては超当たりだよな
>>348 横たわった才人、の分でAAの荒巻だっけ?みたいな顔で横たわる才人が想像できるゼ!
きっとタルブ村にも“ましんばっは”とかいうおうとばいがあって、破壊の杖が2本付いてるんだよ。
なぜか連発可能で弾切れなし。その場合シエスタの姓は松江になるのかw
ヘリキャットやマウスカーがルイズとリンクするとしたらなんか無敵じゃね?
シエスタとルイズがコンビを組んで、是非ストロングザボーガー練成まで行って欲しい。
問題は恐竜軍団をどのポジションで出すかだなw
とりあえず水メイジはあの間から高圧で水を押し出してカッターを作れればいいと思うよ
んじゃこれ以上の設定の話は避難所でな
>あの間から高圧で水を押し出してカッターを作れればいいと思うよ
ツェペリさんか
飛龍三段蹴りも欲しいがどうやって学ぶかだかなぁ・・・
なぞのみせ
レベルは不明
>>358 モンモンの潮吹きでギーシュの男の部分の危機か
メイジの属性ってバトルフィールドの兵種みたいだよな
水メイジのお仕事は治癒からトイレの水洗など多岐に渡る
モンモンって地味に出番ないよな。
逆に派手な出番ないってどういう状況やねん
投下したいのですが、今大丈夫でしょうか?
>>364 各巻よりセリフ抜粋・ワルド
1巻:未登場
2巻「僕は敵じゃない。姫殿下より、きみたちに同行することを命じられてね。きみたちだけではやはり心もとないらしい。しかし、お忍びの任務であるゆえ、一部隊つけるわけにもいかぬ。そこで僕が指名されたってワケだ」
3巻「ありませぬ。しかし、わたしに乗りこなせぬ幻獣はハルケギニアには存在しないと存じます」
4巻「くそ! 俺は……、俺は無能なのか? また『聖地』が遠ざかったではないか……」
5巻:出番なし
6巻「まあ有能は有能らしい。期待しようじゃないか」
7巻:出番なし
8巻:出番なし
9巻:出番なし
10巻:出番なし
11巻:出番なし
12巻:出番なし
13巻:出番なし
14巻:出番なし
15巻:出番なし
16巻:出番なし
17巻:出番なし
18巻「わかるだろ、マチルダ。俺にとって、聖地に向かうことは義務なんだ。そこに何があるのか、それはどうだっていいんだ。母の最期の願いだ。俺は、聖地に行かなくちゃいけないんだ」
>>365 いや〜、ちょ〜っと今はタイミングが悪いですねぇ
って言われたら投下しないの?
投下宣言なんて被らない為にやってるだけなんだから、「5分後に投下します」とかで良いんじゃね?
みたいなことを言ってる人がいて、なるほどな〜と思いました!
おわり
>>367 こういうののセオリーがよく分からなかったので、ちょっと確認した方がいいかな、と
あと行数制限とか調べてました。アドバイスありがとうございます
お礼書き込んだらなんだか満足してそのままレスしてました。ということで、今から投下します
367で挙げたのは
>>12-13だったわ、言い廻しが結構違うけれども。 支援
序幕『- Climax Phase - 英雄と竜』
「――――――――――――――――ッ!」
竜が吼える。咆吼する。山にも見える巨体を誇示するように、その強さを知らしめるように。
爪の一撃は数十の兵を引き裂き、尾を振るえば数百の兵が薙ぎ払われる。
鏖殺の吐息の輝きは触れるものの形さえ奪い、その翼は最速の船でさえ追いつくことは叶わない。
「――――――――――――――――ッ!」
竜が吼える。誘うように。謳うように。己を殺せる者はあるのかと、問いかけるように。
「くそったれえい!」
誰もが思っていることを、一人の兵士が口にした。
交戦開始時に二十隻あったはずの艦隊は、今や三隻を残すばかり。二万人いた兵士が今何人生き残っているのかすら誰にも分かりはしない。
「この際誰でも良いから英雄様があのドラゴンの首を切り落としてくれないものかね!」
兵士の後ろ、金髪の少年がそう叫ぶ。その言葉の間にも竜は空を舞い、巻き上げられた土塊が彼らの横をかすめていった。
彼らの受け持ちだった砲台はすでに瓦礫の中に埋もれ、竜を狙い撃つすべはどこにもない。
「そんな御伽噺はありゃしませんよ! イーヴァルディの勇者と一緒にどこかに行っちまったんだ!」
兵士が声を張り上げる。竜の翼の風切る音は、間近の二人の会話でさえも遮った。
吐き捨てるようなその言葉の裏には、自分たちはそうなれはしないという諦めがある。
少年もそれに気付いたが、それを口に出すことはない。……なにしろ、今の自分もまったく同じ心境だからだ。
少年はメイジだが、凄腕というわけでもない。相手が人間でさえあってくれれば得意の土系統でどうとでもなるが――いや。
半ば現実逃避気味に発展していた思考から抜け出して、少年は遮蔽から身を乗り出さないように気をつけながら、外へと目を向ける。
人影はない。誰もかもが息を潜めている。
どれだけの兵が竜を討つことを考えているのか、どれだけの兵がそれを諦めているのか。
よほど愚かな者でも無い限り竜を討てるとは思わないだろう。たとえその竜に救国の英雄がさらわれてしまっていても、だ。
「彼女は、大丈夫かな」
少年の口から零れた言葉に、兵士は一度唾を吐いてから応える。
「聖女様ですか? 自分より隊長の方があの方のことはご存知でしょう」
「ああ」
少年は頷く。見上げる空に舞う竜は、戦っているとは思えない優雅さだ。
「僕らで彼女を救えると思うかい?」
「さあ?」
兵士は手を開き、大仰に首を傾げてみせる。その唇に浮かぶ笑みには自嘲の色が濃い。
「少なくともそのつもりでしたがね、自分や、その他二万の兵士達は。自分らがあのクソ竜をぶっ飛ばして、勇者にでもなるんだってね」
「なれやしないんだろう?」
「その通りで」
二人して口を閉ざす。僅かながらの沈黙が、風を切る音すら聞こえないような沈黙が一瞬だけ落ちた。
上空から号砲が響く。
「畜生、また外れだ!」
兵士が唸る。空を見上げたその目に映るのは空を我が物顔に征く巨竜と、それに翻弄される艦隊のみ。
「あいつの喉元、あの光る鱗に一撃喰らわせさえすれば僕らの勝ちだというのに……!」
「よくご存知で、隊長殿」
兵士の言葉に、少年はふんと鼻を鳴らす。
「あいつ自身の言ってたことだから、どれほど信頼していいかは分からないけどね」
「問題は俺たちにゃ確かめようが無いってことですな」
言って、兵士は瓦礫の山に目を向ける。大砲と弾薬を掘り返すには時間が掛かるだろう。その間竜が上空を飛ぶのを辞めてくれる理由はない。
掘り出したとて、どんな砲術の名手があれだけの速度で空を征する化け物の、それも身体に比べて小さすぎる鱗を狙い撃ちできるだろう。
嵐の如き風が吹き荒れた。彼らの頭上近くを竜がなぶるように飛んでいた。
その遙か上から三度、砲撃が行われた。風の魔法によって加速された砲弾は、けれどただの一発も竜をかすめることすら出来ず大地に落ちるのみだ。
爆音がそう遠くないところで響いた。
「……もう帰りたい」
少年がぼやくように呟いた。
あまりに切実なその言葉に、兵士は苦笑を浮かべて首を振る。
「自分もですよ、隊長殿」
びゅごう、と再び竜の翼が真上を走る。
「帰り道がありゃね」
「まったくその通りだ!」
言葉通り、今の彼らに道はない。
この塹壕を失えば、竜の起こす風やそれに巻き込まれた瓦礫が彼らを襲うだろう。そうなればどうなるか、答えを見つけるのはそう難しくはない。
他の兵士にしてもそうだろう。時折ちらと姿が見えはしても、戦場に立つ影はひとつもない。少年は溜息を吐いた。当然か、と。
いや。
たったひとつだけ、誰かが戦場を駆けている。
「――――――――――――――――ッ!」
竜が吼える。咆吼する。山にも見える巨体を誇示するように、その強さを知らしめるように。
爪の一撃は数十の兵を引き裂き、尾を振るえば数百の兵が薙ぎ払われる。
鏖殺の吐息の輝きは触れるものの形さえ奪い、その翼は最速の船でさえ追いつくことは叶わない。
「――――――――――――――――ッ!」
竜が吼える。誘うように。謳うように。己を殺せる者はあるのかと、問いかけるように。
「間に合ったッ! ああ、けどッ、なんでッ、こんなッ、ことッ、しなきゃなんないんだ、よッ!」
ぼやく。嘆く。走りながら、戦場をただひたすらに走り抜けながら。
鎧兜も身につけず、魔法の護り一つとて無く、ただ一振りの剣を持って。
力も技も未熟であるとしか思えない、ただの一人の少年が。
「そいつァ」
彼と共に駆ける影は無く、けれども声が響く。
声はからかうような響きを持って彼に答える。
「英雄譚だから、だろうな。お前はヒーローなのさ、相棒」
冗談じゃない。
「オレはッ!」
彼が口を開けた瞬間に、暴風が荒れ狂う。
竜の翼の起こした風、取り立てて誰かを傷つけるために起こしたものではないと言うのに、あらゆる物が宙を舞う散弾となって彼を狙う。
「ッ!」
まともな声を出すこともできない。鉄兜を躱し/木片を払いのけ/飛礫を受け止め/迫り来る大木を飛び越え/降り注ぐ砲弾を切り捨てる。
「おお、すげえぜ!」
声が言う。楽しげなその声が、彼にはなんの救いにもならない。
「別にヒーローだからとかッ!」
荒く息を吐く。言葉を口に出すたびに肺が痛む。
「そんな理由じゃない、ってか?」
笑う。楽しげに、物語を特等席で見る観客の心持ちで。
声の放った言葉に、彼はこくこくと頷いた。
余計な言葉を返すような体力は元々無い。声と楽しい歓談とはいかない。
彼は周囲に視線を飛ばす。目標は呆れるほどの優雅さで空を泳いでいる。昇る手段はどこにもない。彼には。
彼には積み上げてきたものが何も無い。声の言うように英雄であれば得られてもおかしくは無い賢者からの助言も、魔女からの魔法の助けも。
「分かってる、分かってるよ相棒! お前さんがここへ来たのは、あの竜に挑むのは、あの嬢ちゃんのせいだ!」
からからと声が笑う。いい加減にしてくれという言葉を出す気力も無く、彼は声――剣へと苛立ち混じりの視線を向けた。
声は止まない。そうすることが、そうすることこそが声の仕事だからだ。
「一目で惚れっちまったんだ! そうだろ相棒! 『まるで運命みたいに』な!」
彼は答えない。違うと叫ぶ気もしない。そうだと肯定するつもりもない。彼にも分からない。自分が本当にそうであるかなど。考える余裕もない。
走る、地に満ちる竜の殺意無き殺意が僅かでも緩んでいるうちに。
塹壕に潜り、転げるように飛び出し、ひたすらに足場を探す。竜へと挑むための足場を。
こんなに速く走れたことはこれまでなかった。まるで羽の付いたサンダルでも履いているかのように。
あの竜が、一度でもその脚を地に付けたなら。それが機会だ。
「――惚れたかどうかすら分からない相手のために命をかける。そいつが英雄じゃなけりゃ、世の中に英雄なんざいないさ」
声の戯れ言に耳を貸している余裕すらない。
あの竜を地に引きずり落とし、剣を振るう。
そうしなければならない。
……そうしなければ。
彼=英雄は地に転がる石くれを手に取る。声が笑う。
「あいつに効くかね、相棒」
「あいつがオレに気付けばいい」
一つ、二つ、三つ。持てるだけを持ち、できるだけをポケットに詰め込んでいく。
何を馬鹿な、と英雄は笑った。無意味なことだ。そうとしか思えない。こんなものが、あの竜にいったいどれだけの意味を持つのか。
「あいつが頭を下げれば……」
言いながら、英雄は走り出す。
「無茶な話だよ、相棒。あいつの鱗に弾かれて、相棒の投げた石はころりと落ちておしまいさ」
けれどその声は嘲笑うわけでもなく、続きを求める子らの言葉に似ている。
無茶は無茶だ。けれどその無茶、必ずやり通すはずだと。
英雄は何も答えない。答えるべき言葉を探すのが馬鹿らしい。そんなことを考えるくらいなら、先、先に考えるべきことがある。
英雄は走る。その目は空を舞う竜に向けられている。
「は、知ってるかい、相棒?」
「なんだよ!」
「石ってな、人間が使った最も古い武器なんだぜ」
だからさ、やれるよ。
そんな言葉は聞こえなかった。けれども英雄は頷いた。
空飛ぶすまし顔の大蜥蜴め!
駆ける。走る。ひた走る。
竜の速度に追いつけなくとも。
気まぐれなその動きが、いつか英雄を追いつかせるだろう。
「――――――――――――――――ッ!」
竜が吼える。咆吼する。山にも見える巨体を誇示するように、その強さを知らしめるように。
爪の一撃は数十の兵を引き裂き、尾を振るえば数百の兵が薙ぎ払われる。
鏖殺の吐息の輝きは触れるものの形さえ奪い、その翼は最速の船でさえ追いつくことは叶わない。
「――――――――――――――――ッ!」
竜が吼える。誘うように。謳うように。己を討てる者はあるのかと、問いかけるように。
ああ。
今すぐに、ぶっ倒してやる。
走りながら構える。脚はひたすらに地面を蹴り、右手には剣を、左手になんの変哲もないただの石を。
狙う。竜を見据える。足を止めぬまま。
出来る。根拠はないがそう思うことができた。剣の声を信じている? そうなのかもしれない。
けれどそんなことはどうでもいい。
構える。弓を引き絞るかのように、腕をひく。大きく、大きく。
こんなことは一度だってやったことはない。あんな遠くの、しかもあんなに速い的を狙うなんて。
けれど、余計なことを考える必要はない。
的が見える。竜が。そしてその喉に青く光る鱗が。
見えるはずはない。見えるはずがない。
けれど見えた。その目に確かに。
引き絞った腕が、
振り抜かれた。
「――――――――――――――――ッ!」
竜が吼える。咆吼する。山にも見える巨体を誇示するように、その強さを知らしめるように。
爪の一撃は数十の兵を引き裂き、尾を振るえば数百の兵が薙ぎ払われる。
鏖殺の吐息の輝きは触れるものの形さえ奪い、その翼は最速の船でさえ追いつくことは叶わない。
「――――――――――――――――ッ!」
竜が吼える。誘うように。謳うように。己を殺せる者はあるのかと、問いかけるように。
――ああ、物語よ。
英雄を、連れてきたか。
言ってから投下するまで遅くなってすみません
60行のはずなのに60行丁度だと長すぎると言われて、どこで切るかしばらく迷っていました
投下乙
3レスなら支援はいらんかったですね
>>1のテンプレを読んだら幸せになれるかもしれませんぜ
もし既に読んでたら申し訳ない
>>375 ありがとうございます
行数もバイト数も大丈夫なつもりだったので、ちょっと混乱してしまっていました
とりあえず何とのクロスなのかをね…
>>377 ホントだ。何故か書いたつもりになってました
竜†恋という作品とのクロスです
>>378 次からは
>>1の「投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!」も頼むんだぜ!
>>379 す、すみません。
>>374で投下終了の宣言のつもりでいました。段取り悪くてごめんなさい
取りあえずアンタがどういう作家から影響を受けたのかは分かった。
投下乙です。
密かに目指していた一日二話投稿、なんとか間に合いました。
第4話投下します。
内容としては月刊の少女漫画三ヶ月分を一話に圧縮したようなものなので、少々強引なところがありますがご容赦ください。
第4夜
やります
翌朝。
着替えを済ませ、顔を洗い、二人は食堂に向かう。クリオは部屋に待機する。まだタマゴなので食事の必要はないのだ。
道中同じ方向へ歩く生徒からひそひとと話が漏れ聞こえてくる。
「ほら、昨日の……」とか「ぱねえっす」とか「太もも」とか「尻神様」とか聞こえてくる。
後の二つは置いといて、自分の使い魔が良い意味で噂になっているので、ルイズは鼻高々である。
「ゼロのルイズ、とうとう使い魔にも負けちゃったぜ……」
そんな声が聞こえてきたので、容赦なく当人を爆発させた。もちろん命までは取らない。
使おうとしたのは『ファイヤーボール』だが、結果はいつもの通りの爆発だった。
ルイズは一抹の黒い感情をくすぶかせながら、食堂に向かった。
「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします」
祈りの声が終わり、朝餐が始まる。黒いマントが並ぶ二年生のテーブルに、一つ浅葱色のマントが混じっている。
いわずもがなマルモだ。
マルモは美少女な見た目ではあるが、見た目以上に大食いである。数々の修行や冒険で小食でも実力を発揮できるように
なってはいるが、逆にそれらがマルモを大食いにさせていた。
マルモは次々にパンや肉を口に運んでいく。周りの生徒たちは呆気に取られていた。
そして、やや離れた所からそれを観察するのはタバサとキュルケ。タバサはマルモ以上に食事を進めている。
「あの娘、あなたほどじゃないけど結構食べるわね」
「負けられない」
今朝の食事はいつもより残飯が少なかったそうな。
朝食が済むと、生徒と使い魔は授業のため教室に移動する。その中にはマルモの姿もあった。
石造りの階段状の教室にルイズとマルモが現れると、先に教室にいた生徒たちが一斉に目を向けた。皆興味深そうな視線である。
一方のマルモは、生徒たちの使い魔に注目した。フクロウや猫などの魔に通じていない動物もいれば、
ダークアイのように浮遊する目玉の生物もいれば、ライオンヘッドのような獣もいる。人間の使い魔はマルモだけだった。
ルイズが席の一つに腰かけ、マルモはその隣に坐る。本来はメイジの席であり、使い魔は坐らないのだが、
食堂では坐るのに教室では坐らない理屈はないと判断して坐った。事実ルイズも注意はしなかった。
しばらくすると扉が開き、ふくよかで優しそうな中年の女性が入ってきた。帽子を被り、紫のローブに身を包んでいる。
彼女は教室を見回すと、満足そうに微笑んだ。
「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、
様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
すると、シュヴルーズの目がマルモに止まった。
「おやおや。変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」
とぼけたような声である。感情や魂の機微に敏感なマルモはその声に害意のないことはわかっているが、
周辺の生徒たちにとっては格好の切り口となり、教室中がどっと笑いに包まれた。
「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、メイジを雇って連れてくるなよ!」
太った少年が囃し立てる。ルイズが立ち上がろうとすると、マルモがそれを制して立ち上がった。
「五月蠅い」
その言葉は教室の隅々まで通り、教室中の笑い声が一瞬にして収まった。マルモの言霊が教室を支配した。
「注意してくれてありがとうございます。では、授業を始めますよ」
シュヴルーズは、こほんと重々しく咳をすると、杖を振った。机の上に、石ころがいくつか現れた。
「私の二つ名は『赤土』。赤土のシュヴルーズです。『土』系統の魔法を、これから一年、皆さんに講義します。
魔法の四大系統はご存知ですね? ミスタ・マリコルヌ」
さきほどルイズを馬鹿にした少年が当てられた。
「は、はい。ミセス・シュヴルーズ。『火』『水』『土』『風』の四つです」
シュヴルーズは頷いた。
「今は失われた系統魔法である『虚無』を合わせて、全部で五つの系統があることは、皆さんも知っての通りです。
その五つの系統の中で『土』は最も重要なポジションを占めると私は考えます。それは、私が『土』系統だから、
というわけではありませんよ。私の単なる身内びいきではありません」
シュヴルーズの話はなおも続く。
だがマルモは、シュヴルーズの話よりも、隣のルイズの方に気を配っていた。
さっきの嘲笑のせいで、ルイズが負の感情に支配されつつあるのをマルモは感じていた。
そのルイズの現在の心境は、劣等感が台頭しつつあった。今朝食堂にいく途中の生徒の言葉。そしてさっきの教室での出来事。
賛辞の言葉も、畏敬の念も、全てマルモへのもの。ギーシュとの決闘で、わたしはあんな鮮やかに勝てただろうか?
さっきの教室の騒ぎを、わたしの言葉で抑えられただろうか?
否。わたしはマルモに到底及ばない、敵わない。魔法の才能、実力、そして人としての強さ。どれもこれも劣っている。
優秀な姉と比較されたときとはまた別の劣等感が、嫉妬が、どうしようもない怒りが、次々と湧き出てくる。
そしてその矛先がマルモに向かおうとしたとき――ルイズは激しい自己嫌悪に襲われた。
自分はなんてことを、マルモは何も悪くない。悪いのは私の無能無力、ゼロの才能。使い魔にも劣るゼロのルイズ。
「ミス・ヴァリエール! 聞いていますか?」
「は、はい!?」
自分の世界に浸っていたルイズは、授業を聞いていなかった。
「ちゃんと授業に参加してもらわないと困りますわよ。では、あなたにやってもらいましょう。
ここにある石ころを『錬金』で望む金属に変えてごらんなさい」
「わ、わたしがですか?」
「そうですよ。他に誰がいるというのです」
しえん
ルイズがとまどっていると、キュルケが困った声を上げた。
「先生」
「なんです?」
「やめといた方がいいと思いますけど……」
「どうしてですか?」
「危険です」
教室のほとんど全員が頷いた。
「危険? どうしてですか?」
「ルイズを教えるのは初めてですよね?」
「ええ。でも彼女が努力家ということは聞いています。さあ、ミス・ヴァリエール。気にしないでやってごらんなさい。
失敗を恐れていては、何もできませんよ?」
「ルイズ。やめて」
キュルケが蒼白な顔で言った。
しかし、ルイズは立ち上がった。
「やります」
そして、緊張した顔で、つかつかと教室の前へと歩いていった。マルモはそんなルイズを心配して見詰める。
他の生徒たちは椅子の下に隠れたりしていた。
「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」
ルイズは魔法に意識を集中させる。ここで成功しなくては、貴族として、マルモのご主人様として。マルモに合わせる顔がない。
ルイズは目をつむり、短くルーンを唱え、杖を振り下ろす。
その瞬間、机ごと石ころは爆発した。
その爆風はルイズとシュヴルーズを黒板に叩きつけ、椅子の下に隠れた生徒にも被害が及び、血が流れる。
大小様々な使い魔が暴れだし、さらに被害が拡がっていく。
マルモは飛び出してルイズに駆け寄った。
ルイズとシュヴルーズは気絶しており、二人とも机の破片が当たったのか所々流血している。
近くの生徒も頭から血を流して朦朧とし、教室の後ろにいた使い魔も暴れて傷ついている。
マルモはとっさに呪文を唱える。光が教室中のあらゆる生物を包み込み、傷を癒していく。全体回復呪文ベホマラーの効果だ。
ルイズの傷がふさがったのを確認して、マルモはほっとした。覚醒呪文ザメハを唱えてルイズとシュヴルーズを眠りから覚ます。
「あ……れ、マルモ…………?」
ルイズは目の前のマルモに少々驚いたが、すぐに事態を察した。
「そっか、わたし失敗しちゃったんだ」
呆けたようにルイズは呟く。
目覚めたシュヴルーズは自習を言い渡して教室から出ていってしまった。ルイズは罰として魔法を使わずに教室を修理することを
命じられ、他の生徒と使い魔も教室を後にする。残ったのはルイズとマルモだけになった。
二人は黙々と作業に取りかかる。ルイズは爆発による煤を拭き取り、マルモは新しいガラスや机などを運んでいる。
並の戦士よりは力のあるマルモにとってこんなことは重労働ではないが、ルイズには罪悪感が積もっていく。
やがて大まかに終わったところで、ルイズが口を開いた。
「ごめんなさい」
「……ルイズ」
「わたし、やっぱり駄目だった、ゼロのままだった。こんなわたしじゃ、マルモのご主人様だなんて、おかしいよね」
「ルイズ」
「ごめんなさい、マルモ。わたしなんかの……」
「ルイズ!」
マルモの大声にルイズはびくっと身がすくむ。今のマルモには食堂でギーシュに決闘を挑んだときのような意志の強さがあった。
「私は、ルイズに謝られる筋はない。私は自分の意思でルイズの使い魔になった。ルイズが謝る必要ない」
「でも! わたしはマルモに釣り合うようなメイジじゃない! わたしは、わたしは……」
糸涙が頬を伝い、零となって床に落ちる。そしてルイズは脱兎のごとく教室から駆け出した。
「ルイズ!」
すぐさまマルモも後を追うが、地の利はルイズにあった。上手い具合にマルモの追跡をかわし、マルモを撒く。
やがてルイズを見失ったマルモは足を止めて、別の方法で探すことにした。いかにマルモが賢者とはいえ、
万事魔法で解決できるわけでもなく、人を探す魔法などマルモは使えないし知らない。
だが、マルモ独特の第六感ともいうべき能力がある。他の魂の存在を感じ取ることができるのだ。
会ったこともない者の魂は漠然としかわからないが、近しい者だったらおおよそ見分けることができる。
目をつむり、意識を広げる。すると、すぐにルイズは『見つかった』。その場所は――。
ルイズが走りに走り、辿り着いた先は火の塔の階段の踊り場であった。この時間帯は、ほとんどこの場所に寄る人間はいない。
二つある樽の一つにルイズは入って隠れた。
そして、嫌が応でもさっきの教室での出来事が思い浮かんでくる。
わかっている、マルモの言葉が正しくて、本当の気持ちだってことは。
でも、わたしの気持ちも本当の気持ちだ。マルモがわたしに忠実だから、マルモがわたしに好意があるから、
余計に心に刺が増えていく。マルモが素晴らしいほどに、わたしの嫌な所が見えてくる。
ああ、自分はなんて嫌な人間なんだろう。
「ルイズ」
びくっとルイズは身を振るわせた。樽の外から声が聞こえてくる。
マルモだ。
「ルイズ、話を聞いてほしい」
黙ったまま、ルイズはやり過ごそうとしている。マルモの声がルイズの胸を締め付ける。
「ルイズ」
とうとうルイズは耐え切れなくなって、樽の蓋を弾き飛ばして反射的に立ち上がった。
「ルイズルイズ五月蠅いわね! 何よ!」
ルイズはマルモの目を睨もうとしたが、代わりに床に目を向ける。今はマルモの目を見れそうにない。
「わかってるわよ!! マルモが正しくて、良い使い魔だってことは!! でもね、わたしの気持ちもどうしようもないくらい、
真実なのよ! わたしはね、ずぅっと魔法ができなくて、努力して努力して、それでもまだ使えないの! マルモみたいな人には、
わたしの気持ちは絶対わからないわよ!!」
一気にまくし立てたルイズは肩を上下させ、唾を飲み込む。
マルモはそんな様子のルイズに責任を感じていた。また再び自分のせいで大切な人を悲しませてしまった。
そのときの自分は、その人のもとから去ることで、解決したつもりになった。
しかし、果たして今回もそれで解決するのだろうか? 自分がルイズの目の前から消えれば、それでルイズは助かるのだろうか?
「ルイズ」
「……あによ」
「とりあえず樽から出よう」
言われてから、ルイズは自分が樽の中に立ったままであることに気付いて赤面した。
マルモとルイズは寮に戻り、部屋に鍵をかける。部屋にはマルモとルイズとクリオだけだ。
二人はベッドに腰かけ、横に並んだ状態になる。
「ルイズ、今から私は話をするけど、無視しても構わない。ここは元々ルイズの部屋だから、私を出ていかせてもいい」
「……わかったわよ」
そんなこと、できるわけないじゃない。
「私はルイズの悲しむ顔が見たくない。でも、私がいるせいでルイズが悲しむのなら、ルイズのもとを去ろうとも考えた」
「そんな! マルモがそんなことする必要ないわよ!」
悪いのは全部わたしだ。
「でも、それでルイズが悲しまなくなるかといえば、そうじゃない」
確かにわたしが魔法を使えないという事実は変わらない。
「だから、私は決めた。ルイズに修行をつける」
は?
「私の師匠も賢者だった。私も修行して賢者になった。だから、私もルイズに修行させて立派な魔法使いにする」
「……マルモ、わたしの話聞いてなかったの? それこそわたしも幼いころから訓練してきたのよ?
それにマルモは系統魔法を使えないじゃない」
「確かにその通り。だけど私は色んな所を旅して、色んな経験をしてきた。それを生かす」
「具体的にどうやって?」
「ルイズと一緒に冒険する」
「へ?」
「ルイズに足りないのは経験値と修行の質。修行の量だけはおそらく私と同じくらいだけど、手法に問題があるのかもしれない」
「…………」
事実ルイズはひたすら魔法を唱えることを繰り返してきた。もちろん読書で魔法について調べてもみたが、
失敗による爆発の記述がなかったので結果としてそうなってしまったのだ。
でも、『賢者』を自称するマルモなら、異世界からやってきたマルモなら、違った方法を示してくれるかもしれない。
「……わかったわ、マルモ。わたし、マルモの下で修行する」
「ありがとう、ルイズ」
「それじゃあ、具体的にはどうすればいいの?」
「まず、私がルイズの実力をよく知ることが大切。だから……」
マルモはルイズに杖先を向けた。
「えっ、えっ?! ちょっとマルモ?!」
ルイズは飛び退ろうとしたが、マルモの呪文の方が早かった。
「モシャス」
「いやーーーーーーっ!! てあれ?」
ルイズの身には何ともない。むしろマルモの方がぼわんと煙に包まれた。
そして煙が晴れると――ルイズの目の前に、ルイズがいた。
「わ、わたし?!」
「そう。今の私はルイズ」
「きゃっ」
ルイズの目の前のルイズが、ルイズと同じ声で返事をした。
「マルモ?」
コクリと目の前のルイズが頷く。
「これは変身呪文モシャス。姿形だけじゃなくて、能力もそのままになる。当然、魔法も」
「へえーー……マルモってそんな凄い呪文も使えたのね」
系統魔法にも『フェイス・チェンジ』という呪文があるが、顔を変えるだけで体形や声までは変えられず、能力など況やである。
目の前のルイズは、少し腕を振ったりしたり首を捻ったりしていた。
「……確かにルイズは呪文を使えないみたい」
「あう」
目の前の自分に言われると少しショックだ。
「でも、魔法力はとても多い」
「精神力のこと? それは多分、今まで魔法が使えなかったせいね。使わない精神力は溜まる一方だから」
「精神力? 使わないと誰でもこうなるの?」
「うーん……それはちょっと……。なにせ十六年も魔法を使わないメイジなんて今までいなかっただろうし」
「私はこの世界の魔法について詳しいことはわからない」
「それじゃあ、どうせ今日図書館にいくんだから、勉強してみる?」
「でも、私のルーンを調べる方が……」
「魔法についてわからないとルーンについてもわからないわよ。ほら、ちょうど昼食の時間だし、さっさと食べてさっさと勉強よ」
「わかった」
「わかればよろしい。……マルモ、ありがとうね」
「だって、私は……」
「ルイズの使い魔、だからでしょ?」
笑顔で答えるルイズに、頷きで答えるマルモ。
雨降って地固まった二人は食堂に向かった。
以上です。マルモの第六感云々のところは原作から発展させたオリジナル設定です。
>>385 支援していただいてありがとうございます。
主人公の鬱パートなんて長く書けるほど筆力も構想力もないので一話にまとめました。
これからもちょくちょくオリジナル設定は登場するかもしれません。
あー、あとモシャスについてですが。
ゲームではMPまでは反映されません。この作品での設定です。
たびたびすみません。
>>378 ゼロ魔と何の関係があるかもわからない序章書かれても……
竜†恋プレイ済みの俺でも情景がさっぱりわからん
>>391 とりあえず今読んでみたら、デルフとその使い手らしいのが登場しているのは解った。
しかし竜†恋プレイしてないから、よくわかんない…。
流し読みだけど、とりあえずデルフは出てるよね
>>373 乙でした。冲方丁だったかな、この文体。ちゃんと読んだことないから曖昧。
良くも悪くも厨2ぽいというか。序章だけだとさっぱりなので次に期待です。
>>388 乙でした。実に筆が早くて羨ましい。この場合の経験値ってのは実戦って意味なんだろうか
>>388 お疲れ様でした。
手元にゲームソフトがないので確認できませんが、実はDQMのモシャスは最大MPもコピーされた記憶があります。
MP500位のキャラに他国マスターのギガデイン持ちにモシャスしたらMP激減したというのがありまして…
396 :
逆境ゼロ:2010/03/18(木) 01:19:55 ID:SzcXtD2v
先日は私の勝手な行為で皆様に不愉快な思いをさせてしまい、
また、多大なご迷惑をおかけしてしまいました。
改めてお詫び申し上げます。
まことに、申し訳ございませんでした。
最後まで書き終わりましたので、今度こそ次レスから
投下させていただきたいと思います。
昨日の分の続きからになります。
もし、私のごとき愚かな作者の作品を読んでいただける
心の広い方がいらっしゃいましたら、
お読みいただけると幸いです。
397 :
逆境ゼロ:2010/03/18(木) 01:20:44 ID:SzcXtD2v
再び、場を窒息しそうなほどの緊張が支配した。
ルイズはオスマン氏には見えないように背を向けたまま、歯を食いしばって、拳を握った。
喉まで出かかっている言葉を必死に抑えつけているのだ。
ぐっと目をつぶった。視界が闇になった。
ルイズは今、大きな風呂敷を広げようとしていた!
だが、この風呂敷はあまりにも大きい…!!
無責任に、なんの根拠もなしに広げるわけにはいかないのだ!!
と、そのとき。
ルイズの目の前の闇に、一つの光が見えた。目を開けたわけではない。
光の正体は、ルイズの脳裏に浮かんだイメージだった。彼女が最も望むイメージ――
(いや、見えるわ! 神聖で、美しく、そして強力な使い魔を召喚しているイメージが見えるわっ!!)
ルイズは、自身が思い浮かべた未来の勝利と栄光に後押しされて、大風呂敷を広げる決意をした。
「オールド・オスマン!! 今まで見たこともないような、神聖で、美しく、そして強力な使い魔を見たいとは思いませんかっ!?」
398 :
逆境ゼロ:2010/03/18(木) 01:22:42 ID:SzcXtD2v
言った。言ってしまった。一度広げた風呂敷はもうたたむことは許されない。
今の状況が逆境である以上、下手な保身は身を滅ぼすだけだ。トリステイン貴族としてそれは許されない。
ならば……ルイズは、あえて自らを背水の陣に追い込むことを決めたのだった!
「ふっ、ふっふっふっふ…」
ルイズの言葉を聞いたオスマン氏が、不気味に笑った。
「今まで見たこともないような、神聖で、美しく、そして強力な使い魔ときたか。この大ボラ吹きめが……」
オスマン氏の刺すような鋭い視線にも、ルイズは(表向きは)もう動じない。
「だが、口先だけではわしは納得せんぞ」
「わかっています! あ、明日……その証拠をご覧にいれましょう……!」
(ふふふ、いいぞいいぞ。その目、その汗、その震え……。命を張ってしゃべっておるな、この娘…)
胸中で会心の笑みを浮かべたオスマン氏は、今までと同様厳しい言葉で激励した。
「言ったことに偽りがあったときは、死ぬ覚悟ぐらいありそうじゃな! わしはそれを待っておったのじゃよ!!」
オスマン氏は、くわっと目を見開いた。
「して、その証拠とは!?」
「明日の春の使い魔召喚儀式!!」
春の使い魔召喚儀式とは、トリステイン魔法学院創設以来、毎年二年生に進級する際に行われる神聖な儀式である。
この儀式で自分が召喚した使い魔の種類によって、自分のメイジの実力と属性を判定し、二年生で専門分野へと進んでいくことになる。
同時に、一年次の勉強の成果を見せる進級試験も兼ねており、もし使い魔召喚に失敗すれば留年、最悪退学もありうるほど重要な行事なのだ。
「それがなんじゃ!?」
「そこで、わたしの『サモン・サーヴァント』で、神聖で、美しく、そして強力な使い魔をみごと召喚してみせます!!」
ルイズは、拳を前に掲げて宣言した。
「召喚するぅ?」
「召喚します!!」
「今まで見たこともないような、神聖で、美しく、そして強力な使い魔…を?」
オスマン氏は一度ため息を吐くと、三度雷鳴を放った。
「できるものかっ!! 大馬鹿者が!!」
399 :
逆境ゼロ:2010/03/18(木) 01:24:35 ID:SzcXtD2v
オスマン氏の雷はルイズのみならず、天にも影響を与えたようだった。いつのまにか大雨が降っていた。
外にいた生徒たちが慌てふためいて中に避難している。
ルイズはオスマン氏の最後の言葉に言い返すことなく、踵を返した。
「待てっ、どこへ行くミス・ヴァリエール!! まだ話は済んでおらんぞ!?」
「……話はとっくに済んでいるじゃあありませんかっ!!」
立ち止まったルイズは、体を戦慄かせて、オスマン氏に向くことなく叫んだ。
「わたしは召喚魔法『サモン・サーヴァント』だけは絶対の自信があります!! その証明として明日――
オールド・オスマンが目を見張るような使い魔を召喚してみせます!!」
「本気かっ!? では、それができなかったときは……」
「それができなかったときは……」
額から汗を垂らしたオスマン氏の言葉をルイズが引き継いだ。だが、その先はなかなか出てこなかった。
今からできなかったときのことを考えてどうする? そんな負け犬根性を脱するために自らを逆境に追い込んだのではなかったのか!?
負けることなど考えるな! 目に見えた自分の勝利を信じろ!! ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール!!
「……いや、必ずできるっ!! 失礼します!!」
結局、オスマン氏の問いには答えぬまま、ルイズは退室した。学院長室には、嵐が過ぎ去った直後のような静けさが残った。
400 :
逆境ゼロ:2010/03/18(木) 01:26:27 ID:SzcXtD2v
夕方。
ルイズの部屋には、珍しく人が集まっていた。主のルイズを除けば、ルイズの級友であるキュルケ、タバサ、モンモランシー、
そして部屋の掃除をしにきたメイドのシエスタといった面々であった。
彼女たちは固まっていた。ルイズの口から、オスマン氏とあまりにも無謀な約束をしてきたことを知らされたからである。
しばらくして硬直から解放された少女たちの反応は図ったように同じだった。
「むっ、無理(です)よぉっ!!」
「ばっ……ばかなこと言わないでよ!! できるわっ!!」
「絶対にできないわよ!! できるわけないじゃないっ!!」
ルイズとキュルケたちの意見の平行線が交わる気配はまったくなかった。
「あんた、いったいどういう根拠があって、そんな条件を出してきたのよ!?」
キュルケが、どう考えても愚かな選択をしたとしか思えないルイズに容赦なくつっこんだ。それは、部屋にいた者全員の意見でもあった。
さすがのルイズも息を呑んだ。
(神聖で、美しく、そして強力な使い魔を召喚したイメージが見えたといっても――通じないわね……!)
「シエスタ!」
「は、はい!」突然指名されたシエスタが、驚きと緊張をない交ぜにした返事をした。
「外に音がもれないように部屋を閉めきってちょうだい……」
ルイズの命令の意味がわからず、シエスタは呆気に取られたが、ルイズの表情はどこまでも真剣であった。
「……かしこまりました」
そういうと、シエスタはドアを施錠し、窓もカーテンも完全に閉め切ってしまった。
もともと雨で暗かったこともあり、部屋はたちまち真っ暗になってしまった。
401 :
逆境ゼロ:2010/03/18(木) 01:27:47 ID:SzcXtD2v
「な、なにをする気なの、ルイズ…?」
「聞かれたくないなら『サイレント』を使えばいい…」
モンモランシーが不安を口にし、タバサは冷静につっこみをいれた。
「それじゃ聞こえなくなっちゃうでしょ! これから、みんなに反撃のチャンスをあげるわ…」
暗い部屋のなかから、ルイズの声がした。
「絶対にできないと思う人は遠慮しなくていいわよ! 絶対にできないと思う理由をここで、大声でわたしに洗いざらいぶちまけなさい!」
今度は、全員が呆気に取られた。部屋を閉めきったのは、暗い中で誰の発言かわからなくすることで、
遠慮なく意見を出してもらうためだったのだ。
「やって!! このわたしにも『絶対にできない』と思わせることができたら、あんたたちの勝ちよ!!」
ルイズの意図を理解した友人たちが、彼女の馬鹿げた行動をやめさせてやろうと目を光らせた。
口々に情け容赦ない言葉の雨をルイズに浴びせる。
「笑わせないでよね! ヴァリエール家の落ちこぼれの『ゼロのルイズ』のくせに!」
「この間も、『錬金』を使おうとして爆発させた」
「『ゼロのルイズ』が、どんな使い魔を召喚するつもり? 蛆虫だって怪しいもんだわ!」
それは、外で降る本物の雨すらも凌ぐかと思われた。
ルイズは、ただひたすら耐え続ける。
402 :
逆境ゼロ:2010/03/18(木) 01:29:52 ID:SzcXtD2v
どれだけの時間が経っただろうか。
いつしか雨はやみ、カーテンのわずかな隙間から光が差し込んできた。
ありったけの罵倒や否定的意見を出し尽くしたキュルケたちは、まるでフルマラソンを完走したごとく疲れきって、
へたりこんでいた。
ルイズもまた息を切らしていたが、決然とした表情は変わっていなかった。
どうした、もう終わりかとでも言いたげだった。
そんなルイズの様子を見たタバサが、根本的な疑問をぶつけた。
「ルイズ。あなたはその『神聖で、美しく、そして強力な使い魔』を、本当に召喚できると思っているの?」
ルイズがここで言葉につまった。痛いところをつかれたからか、苦虫を噛み潰したような顔になった。
他の者たちは、とうとうルイズが折れるのか、それともタバサにどのような反論をしてくるのか、
息を整えながら対峙する両者を見守っていた。
ルイズは決然たる表情を取り戻し、タバサに目を合わせた。
「できるかできないかの問題じゃないわ……」
一拍おいて、全員に聞こえるように雄雄しく吼えた。
「絶対に無理でも、召喚しなくちゃならないのよっ!!」
部屋が水を打ったように静まり返った。あれほど荒かった息遣いも聞こえなかった。
やがて、座り込んでいたキュルケとモンモランシーが立ち上がった。
最初に沈黙を破ったのは、憑き物が落ちたような顔をしたキュルケだった。
「そう……フフッ、言うこと言ったら、なんかすっきりしちゃったわ」
モンモランシーが、「わたしもよ」と同意する。キュルケと同じく、すっきりした顔だった。
タバサは無表情こそ崩さなかったものの、小さく頷いて二人に賛同の意思を示した。
そして、なんだか無性におかしくなって、みんなで笑いあった。貴族とは思えないほどの大笑いであった。
シエスタは、一人状況についていけないで困惑していたが、笑っているルイズたちを見て安堵し、顔をほころばせた。
「さあっ、行くわよぉ――っ!!」
言うが早いか、ほとばしる情熱を抑えきれないルイズが部屋を飛び出した。
「つきあってあげるわ! ヴァリエールをしごける機会なんて、そうはないからね!」
「しょうがないわね…乗りかかった船だわ!」
続いて飛び出したキュルケとモンモランシーに、タバサも歩いてついていく。
「え? あの、皆様どちらへ…?」
シエスタは再び置いてきぼりになり、わけもわからぬまま四人を追った。
403 :
逆境ゼロ:2010/03/18(木) 01:31:43 ID:SzcXtD2v
シエスタは、目の前の光景に顔を覆った。
少女たちは、外でルイズの魔法の特訓をしていた。
その特訓は壮絶をきわめた。いつもの三倍どころではない。十倍も、百倍も激しい練習がルイズに施されていた。
キュルケの火が、モンモランシーの水が、タバサの風がルイズに襲い掛かる。
防ぐ手立てのないルイズはしたたかに吹き飛ばされ、地面に転がされる。
だが、傷だらけで泥まみれの惨めな様になってもまったく気にすることなく、ルイズは呪文を唱えて杖を振るった。
その度に、見当違いな場所が爆発する。
「ミス・ヴァリエール!! もうおやめくださいっ!!」
シエスタが、倒れたルイズに駆け寄った。目に涙を溜めていた。
「もう夜ですよ!? いくら練習でも無茶ですわ!!」
「…無茶は承知の上よ」
ルイズはそう言うと、よろよろと立ち上がった。
「なぜ、貴族のあなた様がここまでなさるのですか…?」
シエスタの瞳から、一筋の涙がこぼれた。
「ええそうよ。わたしは貴族よ。でもねシエスタ、これだけは憶えておいて」
ルイズはシエスタの顔を見ながら、杖を握り締めた。
「魔法が使える者を貴族と呼ぶんじゃないわ。貴族の三つの条件を持つ者を貴族と呼ぶの
……それがわたしたちに無茶をさせているのよ!」
「貴族の、条件…?」
涙を拭って、シエスタが尋ねた。
ルイズは、朗々たる声で、力強く明快に答えた。
「一つ!! 貴族は、イザというときには、やらなければならない!!
二つ!! 今が、イザというときである!!
そして三つ!! わたしは……わたしたちは、貴族なのよッ!!」
404 :
逆境ゼロ:2010/03/18(木) 01:33:34 ID:SzcXtD2v
そして、運命の朝が来た。春の使い魔召喚儀式の日である。
昨日、夜遅くまでルイズに付き合ったにもかかわらず、キュルケも、タバサも、モンモランシーも、そして他の生徒たちも、
つつがなく使い魔を召喚することができた。
皆、さっそく使い魔と信頼を築こうと交流を深めている。
いよいよ、ルイズの番になった。
同級生の大半は、『ゼロのルイズ』がどんな大失敗をやらかすのか、はたまたどんな使い魔を呼び出すのか興味津々であった。
が、昨日のルイズの決意を知る者たちは違った。
特にキュルケは、《あれだけ練習につきあってやったんだから、あたしよりすごいのを召喚しなきゃ、ただじゃおかないわよ》と、
心の中で激励を送っていた。
そしてオスマン氏も儀式に立会い、ルイズを見守っている。
皆がわたしを見ている。わたしが逆境を跳ね返せるのか、注目している。
ルイズは、大きく深呼吸をすると、精神力を高めるために、昨日の勝利のイメージを思い浮かべ、呪文を唱えた。
「宇宙の果てのどこかにいる、わたしの僕よ! 神聖で、美しく、強力な使い魔よ! わたしは心より求め、訴えるわ! 我が導きに応えなさい!!」
自分の一年間、いや、人生のすべてをここにかける!
ルイズは、強い思いを杖にこめて、振るった。
405 :
逆境ゼロ:2010/03/18(木) 01:35:21 ID:SzcXtD2v
ルイズの思いに応えるかのように、今までにないほどの大爆発が起こった。
誰もが目を閉じ、身を伏せるなかで、オスマン氏だけは一部始終を見逃すまいと、身じろぎせずに爆発地点を凝視していた。
煙が引きはじめて、オスマン氏はそこに何かの影を確認し、心臓が高鳴った。
少なくとも、影は小動物のものではない。幻獣かとも考えたが、すぐには思い浮かばなかった。
生徒たちも影を見て、ルイズが『サモン・サーヴァント』に成功したことに驚き、ざわついていた。
やがて、煙が完全に引き、その場にいた全員に影の正体が明らかになった。
そこにいたのは……一人の若い男であった。短く切った黒髪で精悍な顔つきをしている。
服装は、泥でだいぶ汚れているが、白くて丈夫な生地でできた服を着ていた。胸のところには、
ルイズたちは読めなかったが「全力」と書いてある。
頭には、鍔の上に赤で「Z」のマークが入った黒い帽子をかぶっている。
男の体は、服の上からでも鍛えていることがわかるほど、たくましかった。
男は皮革で作られた奇妙な形の手袋を、なぜか右手にだけ着けていた。その手袋の中に、
片手で持てるサイズの白い球が入っていた。
「なんだ? あれ、人間じゃないか」
「しかも、平民だ」
「『ゼロのルイズ』! 使い魔に平民を呼んでどうするんだよ!」
同級生がはやしたて、やがて爆笑が起こった。
明らかに失敗の雰囲気であった。
「こ…これが、神聖で、美しく、強力な……?」
さすがのルイズも、まさか平民を呼び出してしまうとは思いもよらず、失敗したのかと落胆した。
逆境を跳ね返すことなど、自分には無理だったのか。
オスマン氏が、生徒たちを静めると、項垂れたルイズに近づいていく。そして、彼女の肩に手を置いた。
「これまでよくやったよ、ミス・ヴァリエール。努力は認めよう」
じゃが、と、オスマン氏は断腸の思いで、しかし約束である以上、言わねばならないことをルイズに伝える。
「残念ながら、あの青年は『神聖で、美しく、強力な使い魔』とはいえぬ。人間の召喚は前代未聞じゃが、
彼はなんの能力もない、ただの平民じゃ」
ルイズの肩から手を離すと、
「残念じゃったな」と言い残して、去ろうとした。
ん?ここで投下終了?
オスマンが鷲頭で再生された
まだか。じゃあ、
450 :逆境ゼロ:2010/03/18(木) 01:45:32 ID:ib7NvNBQ
ご迷惑をおかけしてもうしわけありません。
さるさんをくらってしまいましたので、以下の文章と
投下終了を代理投下していただけませんでしょうか?
よろしくおねがいいたします。
「あっはっはははははっはあ!!」
突如、背後から馬鹿笑いが聞こえた。
聞き間違えるはずもない。ルイズの声だ。
渋かったオスマン氏の顔が驚きに変わり、ルイズに振り向く。
「そうよ…今まで誰もやったことがない人間を、わたしは召喚した! 召喚することができた! わたしはゼロなんかじゃない!」
ルイズは、高らかに杖を掲げた。
「このルイズ・ド・ラ・ヴァリエールには、魔法の才能があるっ!!」
先ほどとはまったく違う、自信をたたえた顔でルイズは叫んだ。
(こ…っ、この娘はなんじゃ!?)
オスマン氏は、ルイズのある意味開き直りとも思えるその熱弁に、驚愕した。
(ここで普通ならば、「ミスタ・コルベール! もう一回召喚させてください!」などと言って、すがりついてくる場面なのに……
まだ勝算があるのかっ!?)
そしてルイズの、並み居る逆境をものともしない不屈の精神に、戦慄すら覚えた。
と、そのとき、今まで気絶していた男が、目を覚ました。
「どっ、どこだっ、ここは!? …ま、まさか、甲子園球場からここまでおれは、テレポートしてしまったのか!?」
男は、周りを盛んに見回してわけのわからないことを叫んでいた。
だが!!
もうおわかりであろう、この男こそ本編の主人公である、
キミたちの夢をかなえてくれる不屈の闘志を持つ男だ!!
それがこいつ、
その名も闘志!!
不屈闘志だっ!!
ルイズ「って、最後の最後で主役を取られた――――っ!?」
逆境とは、すべてが思い通りにいかない、不運な境遇のことをいう!!
まだまだ逆境は続く……!!
戦え不屈!!
がんばれ、逆境ゼロの使い魔よっ!!!
ルイズ「やっぱり取られた――――っ!! これが、これが逆境なのね…!」
終
451 :逆境ゼロ:2010/03/18(木) 01:47:48 ID:ib7NvNBQ
以上で、終了でございます。
たびたびご迷惑をおかけして、本当にもうしわけありません。
これを教訓として、今後ますます精進してまいりますので、
どうかよろしくお願い申し上げます。
それでは、深夜にお目汚し、失礼いたしました。
以上の文も、代理をお願いいたします。
以上、代理でした。
ちょっと遅れたけど時の君乙
エルザは作者によって死んだり殺されたり
吸われたり懐柔されたり懐いたりと扱いが違うのが面白いな
このケースでは自分が狩る側一辺倒だと思ってて、
より強力な者の存在を意識できなかったのがあるんだろうけど……
>>412 > このケースでは自分が狩る側一辺倒だと思ってて、
> より強力な者の存在を意識できなかったのがあるんだろうけど……
いや、そこ違うだろ。
自分の上位存在が人間の味方することが想像の範囲外だっただけさ。
>>413 史上最悪レベルの映画でちょっと真面目に印象深かったシーンを思い出した
「俺は人間を殺したんじゃねぇ〜食っただけだぁ〜!!」
黒き天使の続きお待ちしております
エルザは作者の見方によって善にも悪にもなれる素質を持ったキャラだから、
タバサの冒険のキャラの中でも登場率が群を抜いてるからなあ。
最近の作品の中では黒魔導師の人の、ガリア戦隊イザベラファイブのメンバーになってたのが面白かった。
石川賢か永井豪の漫画かよ
面倒だからエルザどころかタバ冒のほとんどをスルーしちゃってごめんなさい。
エルザの話を読んだ時は蟲師を思い出した。
どっちも生きてるだけで悪くない。でも俺達のが強いから、お前は種を残せず死ぬんだ〜って
まあよくあるパターンというか、問題だけど
エルザを仲間にしちゃってごめんなさい
エルザを出す予定はありませんごめんなさい
ロリババアは「〜じゃ」口調じゃないと僕は認めませんよ
ロリオスマンは全面的に認められませんよ
雄マンはロリじゃなくてショタだろ
すごい遅レスだけど逆境ゼロの人と代理の人乙。
ルイズの状況が逆境ナインに妙にはまってて面白かった。
投下時の色々な問題はどうかと思うけど、次のも面白くなってる事を期待してます。
>>395 モンスターズでは全ての能力が反映されるけど、Vじゃ反映されないのよ
ドラゴラムがモンスターズでは制御できるけどVじゃ制御できないみたいに、作品によって呪文の効果が変わるから厄介
では30分頃に第5話投下します。第6話までの繋ぎの回なので内容は短いです。
第5夜
弟子ぃ?
食堂のある本塔の図書館。教師のみが閲覧を許される一画『フェニアのライブラリー』の中で、
ミスタ・コルベールはマルモの額のルーンについて調べていた。学院長からの依頼もあるが、
コルベール個人の好奇心によるものも大きい。
謎のルーン、未知の魔法、そして異世界。コルベールは、自身の研究が
現在のハルケギニアから外れた存在であることを自覚している。なればこそ、異世界からの旅人には興味を持っている。
そしてついに彼の努力は報われた。その手には、始祖ブリミルが用いた使い魔たちについて記述された古書。
古書の一節と少女の額に現れたルーンのスケッチを見比べる。
コルベールは、本塔の最上階、すなわち学院長室へと急いだ。
その頃の学院長室では、退屈を持て余していた学院長が、秘書のミス・ロングビルにセクハラをしたせいでミス・ロングビルから
爆裂拳やら正拳突きやらを存分に食らっている真っ最中である。
「ごめん。やめて。痛い。もうしない。ほんとに」
オスマンの言葉を無視してなお飛び膝蹴りを繰り出そうとミス・ロングビルが構えるが、突然の闖入者によって未然に防がれた。
「オールド・オスマン!」
「なんじゃね?」
ミス・ロングビルは何事もなかったかのように机に坐っていた。オスマン氏は腕を後ろに組んで、重々しく闖入者を迎え入れた。
早業であった。
「たた、大変です!」
「……ひょっとして、例の件、かの?」
「その通りです!」
昨日の今日である。
「ミス・ロングビル。席を外しなさい」
ミス・ロングビルは立ち上がった。そして部屋を出ていく。彼女の退室を見届け、オスマン氏は口を開いた。
「詳しく説明するんじゃ、ミスタ・コルベール」
コルベールは一冊の書物をオスマンに手渡した。
「これは『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。……まさか?」
「ええ、その通りです。ミス・ヴァリエールの使い魔の少女の額に刻まれたルーンは……」
と、コルベールがスケッチしたルーンと書物のあるページをオスマンに示した。
「伝説の使い魔『ミョズニトニルン』に刻まれていたものと全く同じものでした」
「……マジ?」
「マジです」
「ふむ……。確かに、ルーンが同じじゃ。しかし、それだけで、そう決め付けるのは早計かもしれん」
「それもそうです。しかし、実際に魔道具を使わせてみることで判明するのでは?」
伝説の使い魔『ミョズニトニルン』。ありとあらゆる魔道具を使いこなしたと文献にはある。
「問題はそこじゃよ。もし仮にミス・マルモがミョズニトニルンであったとしよう。それで君はどうするのかね?」
「もちろん、早速王室に報告して、指示を仰がないことには……」
「それには及ばん」
オスマン氏は、重々しく頷いた。白いひげが、厳しく揺れた。
「どうしてですか? もしミス・マルモが現代に蘇った『ミョズニトニルン』ならば、世紀の大発見ですよ!」
「確かにその通り。じゃが、その『ミョズニトニルン』の主人は、一体誰なんじゃね?」
「ミス・ヴァリエールですが……」
「彼女は、優秀なメイジなのかね?」
「いえ、というか、むしろ無能というか……」
「なるほど、確かにワシも興味はある。伝説の使い魔と、その無能ともいえる主人に。じゃが、それらを王室のボンクラどもに
渡してしまっては、またぞろ戦でも引き起こすじゃろうて。宮廷で暇を持て余している連中は全く、戦が好きじゃからな」
「ははあ。学院長の深謀には恐れ入ります」
「ま、今はまだ仮定に過ぎんがのう。とりあえず、我々だけでも知っておく必要がある。果たして彼女がミョズニトニルンなのか」
「そうですね。今日の午後は使い魔との交流の時間ですので、そのときに彼女らを呼び出しましょう」
「うむ、そのように取り計らってくれ。この件は他言無用じゃ、ミスタ・コルベール」
「かしこまりました」
さて、ルイズとマルモが食堂で昼食を食べ終えた頃。
ルイズはやたらとマルモに接近してくるメイドを牽制し、食堂から出ようとしたときだった。
「お待ちください。ミス・マルモ」
二人の背後から声がかけられた。振り返ってみると、そこには昨晩マルモと決闘したギーシュがいた。
「マルモになんの用よ。あんたまさか、マルモにまで手を出そうっていうんじゃないでしょうね!」
今にも噛み付かんばかりのルイズではあるが、マルモがそれを制した。
「まさか、僕もそこまで落ちぶれてはいないよ」
「じゃあ一体なんだっていうのよ」
すると、ギーシュはマルモに向き合って頭を下げた。
「ミス・マルモ。どうか不肖ながらこのギーシュ・ド・グラモンを、貴女の弟子にしていただきたい」
「弟子ぃ?」
「…………」
ルイズはギーシュの言葉がすぐには信じられなかった。マルモは黙ったまま、ギーシュの言葉を待っていた。
「僕は、あのとき己の未熟さを思い知りました。そして、今のままでは貴族として、薔薇として、誰も守れぬと思ったのです」
「…………」
「お願いします! どうか、この僕を貴女の弟子に!」
「だめよ! そんなのだめ!」
ギーシュの言葉を聞いて、ルイズはやばいと思った。
そもそも先に弟子入りしたのは自分である。もしギーシュも弟子になってしまったら、自分に割く時間が減ってしまうではないか。
加えて、ギーシュは根が女好きだ。今はマルモを師と仰ぐだけかもしれないが、時が経つに連れちょっかいを出すに決まっている。
そんなことは許されない。
「とにかく、ギーシュ、あんたはだめよ!」
「ルイズ、君には関係ないだろう」
「わたしはマルモのご主人様よ! マルモのことはわたしが決めるの!」
「ルイズ」
「なによマルモ!」
「落ち着いて」
興奮するルイズをなだめ、マルモは言葉を続ける。
「確かに私はルイズの使い魔。だけど同時に、ルイズは私の弟子でもある」
「うっ……」
「私はこの世界の魔法を実際に知る必要がある。ルイズのためにも」
「で、でも!」
「それに、ギーシュが『誰かを守る』ために弟子になりたいというのなら、私は拒めない」
「でもね、マルモ。このギーシュは大の女好きなのよ。マルモを前に我慢できるわけないじゃない」
ルイズに指を差され、ギーシュはむっとした顔になる。
「失敬だね、君は。ミス・マルモは僕の尊敬する人物だ。師と仰ぐ人にそんな真似はしないよ」
「どうだか!」
「たとえそんなことをしてもだね、ミス・マルモならば杖の一振りで済む話なのではないのかね?」
「ぬぬぬ…………」
ギーシュがここまで食い下がるとは思っても見なかった。
「ルイズ」
「……もう、わかったわよ! ギーシュを弟子なりなんなりしても別にいいわよ! でも、それでわたしとの時間を減らすのは
許さないんだから!」
「わかった」
ルイズの要求はやや無茶なものであるが、マルモはあっさりと了承した。
「ありがとうございます、ミス・マルモ」
「私に『ミス』はいらない」
「我が師となられたからには、敬称を付けねば礼を失します」
「……」
マルモはシエスタのこともあり、半ば諦めたように頷いた。
「それでこれからどうするの?」
「今日の午後は使い魔との交流の時間のはず。ギーシュの修行は夕食の後」
「了解しました。それではまた放課後に」
と、ギーシュは礼儀正しく去っていった。
「やれやれ、まさかあのギーシュがねえ……」
「人は見かけによらない」
離れた所からさっきまでのやりとりを観察していたキュルケとタバサであった。
「でもこれであの娘の魔法が見やすくなったわね」
「…………」
ギーシュの言葉を聞いて、タバサも弟子入りしてマルモの魔法を探ろうとも考えた。
しかし、彼女には母国の騎士としての任務があって学院を空けることがままある。優先すべきは火を見るよりも明らかだ。
ちなみにキュルケは弟子入りする気など毛頭ない。
使い魔との交流の時間。
二年生の生徒の多くは広場の思い思いの場所で交流を楽しんでいたが、この時間に図書館にいるのはルイズとマルモだけである。
クリオも一緒だ。
「アー、ベー、セー」
ルイズはマルモに文字を教えていた。マルモがハルケギニアの文字が読めないと判明したためである。
一時間ほどもすると、簡単な文章なら読めるようになっていた。現在読んでいるのは系統魔法についての初学者向けの本である。
マルモは、系統魔法の応用性に感心していた。
マルモの使う魔法は、呪文の魔法力の消費量や効果の大きさは比較的安定している。しかもほとんどが戦闘向きだ。
『呪文』が魔法の全てではないが、それでも系統魔法ほど文化に根差してはいない。
その後もマルモたちはハルケギニアの幻獣や妖魔についての本を読んだりしていたが、目の前に現れた人物によって中断された。
「ここにいたのですか、ミス・ヴァリエール、ミス・マルモ」
「コルベール先生」
頭頂部が寂しいミスタ・コルベールであった。
「学院長がお呼びです。ミス・マルモのルーンについてわかりました」
「ほ、本当ですか?!」
そもそもこの図書館に来た目的がマルモのルーンについて調べることである。
「ええ。私も行きますので、二人とも付いてきてください」
三人と一つのタマゴは図書館を後にし、最上階の学院長室へと向かった。
「オールド・オスマン、コルベールです。二人を連れてきました」
「入りたまえ」
学院長室には学院長オスマンとコルベール、そしてルイズとマルモとクリオだけ。ミス・ロングビルは例によって退室してある。
まずはオスマンが口を開いた。
「さて、ミス・マルモ。突然ですまないが……」
と、懐から一つの指輪を取り出した。
「この指輪を、はめてみてはくれんかね」
ルイズは困惑した。マルモのルーンが判明したというのでやって来たのに、どういうことだろう。
「なに、害はない。ただその指輪をはめて、使ってみてはくれんかの」
コクリとマルモが頷くと、指輪を受け取って右手の人差し指にはめた。途端に、額のルーンが輝き始める。
突然、パンッと乾いた音が部屋に響いた。マルモが指輪をはめた手でオスマンの頬を叩いたのだ。
「マ、マルモ?!」
何がなんだかわからず、ルイズは当惑した。
「やれやれ……一発で使い方を見抜くとは。信じたくはなかったが、やはりかのう」
頬をさすりながらオスマンは呟いた。
「どういうことですか?」
「その指輪はマジックアイテムでのう。指にはめて人を叩くと、叩かれた者の正気を戻したり眠気を覚ましたりする指輪じゃ。
ワシが若い時分に作ったもので、使い方はワシとワシの知人しかおらん。
ミス・マルモ、どうしてそれの使い方がわかったのじゃね?」
「……勝手に使い方が頭に流れ込んできた」
ルイズはハッとした。以前にも似たようなことがあったのを思い出した。
「学院長! お話したいことが!」
「なんじゃね」
ルイズは、マルモの召喚初日にあった食堂での出来事を話した。すなわちマルモがアルヴィーをいとも簡単に操ったことだ。
ルイズが話し終えると、オスマンは押し黙ってしまった。
「…………」
セクハラ爺のオスマンではあるが、無言で真面目な顔になると威厳たっぷりになるのでる。よって、ルイズは口を挟めずにいた。
「……オールド・オスマン。二人に説明しますか?」
発言したのはミスタ・コルベールであった。
「さて、そうしなければこの部屋に呼んだ理由がないしのう。……ミス・ヴァリエール、ミス・マルモ。
これから言うことは決して他人に話してはならん。家族にも、王室にもじゃ」
「わ、わかりました」
「……」
コクリとマルモは頷いた。
「ミス・マルモの額に刻まれたルーン、それはミョズニトニルンの印じゃ。伝説の使い魔の印じゃよ」
「伝説の使い魔?」
「そうじゃ。その伝説の使い魔はありとあらゆる魔道具を使いこなしたそうじゃ。
『アルヴィーズ』を使えたのも、そのおかげじゃろう」
始祖に連なる家系の出身であり、勉強家でもあるルイズはミョズニトニルンという言葉に聞き覚えがあった。
それは、始祖ブリミルが用いたという使い魔だった。
ルイズは始め信じられなかったが、マルモなら何でもありかなと最近思い始めていたので、とりあえず信じることにした。
そのマルモはというと、特に何の感慨もなかった。異世界から来たマルモにとって、伝説といわれても今一ピンとこない。
「そういうわけじゃから、くれぐれも他言無用で頼むぞい。お主達のためでもあるからの」
「わかりました」
「……」
マルモが頷くと、オスマンは一息吐いた。
「では、話はこれで終いじゃ。使い魔との交流に戻ってよろしい」
マルモは指輪を返し、二人は礼をして学院長室を出ていった。
「ひとまず懸念事項はなくなったのう。まだ完全にではないが」
「そうですね。ところで、オールド・オスマン」
「なんぞい」
「どうしてあの指輪をミス・マルモに使わせたんですか? もっと他にも痛くなさそうなのがありそうですが」
「……いや、なに、ほら、あれじゃよ」
「……ひょっとして、ただ単に叩かれたかっただけですか?」
「……………………」
近頃の雨あられの暴力によって、痛みに悦びを見出しつつあるオスマンであった。
その犠牲は大きかったが。
ルイズとマルモはヴェストリの広場にいた。昨日ギーシュとの決闘を演じた場所である。広場には二人とクリオだけだ。
「それでマルモ、冒険ってどこでするの?」
「まずは、この辺りのモンスターのレベルを知りたい」
「えっ、いきなりそんなところからなの?!」
「これが一番早い」
「う〜ん……でも、この辺りはモンスターは多分出ないわよ。そんな所に学院なんて建てないもの」
「それじゃあ、別の所にいく」
「別の所?」
「異世界」
「異世界?! ……そういえば、マルモは異世界を旅してきたんだっけ。どうやるの?」
送還魔法や異世界と行き来する魔法なんて聞いたことがない。少なくとも系統魔法の中では。
「旅の扉」
「旅の扉?」
「別の場所にいくための魔法の渦。異世界にもいける」
旅の扉は、移動呪文ルーラや追放呪文バシルーラの応用である。つまりルーラ系の魔法を空間に固定できればいいのだ。
マルモは広場の隅に移動すると、魔法を展開した。ものの数秒で青白い渦がマルモの目の前に作られる。
「おいで、ルイズ」
「ピー」
渦の前でルイズをマルモとクリオが待っている。
「わ、わかったわよ、マルモ」
ここまできたらもう引き返せない。
ルイズは歩を進め、マルモと共に青白い渦の中に消えた。
そして、それを上空から竜に乗って眺めていた二人の少女は。
「……消えちゃったわ」
「…………」
「どう思う? タバサ」
「……おそらく移動する魔法」
「あたしもそうだと思うわ。それで、どうするの? あたしは追ってみたいけど」
キュルケは目を輝かせている。
「帰れる保証がない」
タバサの返答は、現実的なものだった。
「それもそうね。だけど、時には冒険も必要よ? それにルイズとその使い魔だって入ったんだし」
「……わかった」
「ありがとう! それじゃ早速いきましょう」
タバサは自身の使い魔である風竜のシルフィードを降下させ、キュルケは使い魔であるサラマンダーを呼んだ。
旅の扉のサイズはシルフィードより小さかったが、シルフィードが触れた途端に引きずり込まれるような格好になったので、
他の者たちも急いで入っていった。
そして新たに冒険者を飲み込んだ直後に旅の扉は消えた。魔法力を節約するため、長時間維持する気もなかった故である。
こうして四人の冒険は始まった。
以上です。
当初考えていた方向からだんだんとずれ始めています。
原作のタバサだと今回の話のような冒険はしませんが、作者の都合です。
432 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/18(木) 22:41:04 ID:hq7fWFhD
乙。
新進気鋭の人は勢いがあっていいなぁ。
乙です
花火とか流れ星みたいだな
一瞬だけど閃光のように…!
輝いた結果が今の私です
真赤に燃えろぉ!
なら燃え尽きろ…潔くな
誰か京とかKOF組召還しないかなー
君は見たか 愛が 真っ赤に燃えるのを
リアルタイムで見てました
時の人の続投をいつまでも待つぜ。いつまでもだ
ゼロの使い魔×魔界戦記ディスガイア
『魔界の使い魔達』
+
『炎帝族の使い魔』
「雑魚がああぁぁぁ!!」
ここはヴェルダイム…魔王ゼノンによりその美しさを奪われェ…
多くの魔物達が蠢く魔界へェと…生まれ変ってしまったァア哀れなァ世界…
そんなヴェルダイムにィ…魔王ゼノンを殺し…魔王神をォォ名乗るべくゥウ
別世界のォ魔王共が…押し寄せてきていたのでェあったァァア…
ッゥアァめでたしィィイめでたしィィイィ…
「何処が目出度いんだ!!」
魔王ゼノンは死んだ…筈であった しかし…
エトナの称号は変わらず ゼノンの呪いも解けず
状況には何の変化も見られないまま数日…
話の食い違いからあのゼノンは偽者だと判断し
彼等彼女等はゼノンを討つべくゼノン城へ…
「アデル!見えてきたぞ!」
「あれがゼノンの居る城か…」
「ようやくじゃのう…父上の偽者を倒すときが来たのじゃ…」
「思ったより、警備網は薄そうですねー これは楽できそうじゃーないですかー?」
彼等彼女等はそれぞれの思いを胸に秘め ゼノン城へ入っていくのだった…
「いつ敵が仕掛けてくるか判らんからな…用心しろよ?エトナ。フロン。」
「あーい わっかりましたー陛下ー」
「判りました!ラハール様!」
「見ての通りーまさに今三週目でーどこに敵が出て来るかなんてもう判っtグヘェァッ!!」
「少し黙っていろ…」
「…ん?っつ………そこだぁぁ!!」
ハンサムなラハール陛下は突如 敵の視線に気付いた!
「ヴゥウウォオオオオォォォォ!」
茜色の燃え上がる炎を身に纏った巨大な影がアデル達に襲い掛かってきた!
コマンド?
「イフリートか!?この城の守り手といった感じには見えんが…」
「じゃあ別世界の魔王ってとこでしょ…どっちみち叩き潰しゃあいいんですよ!陛下!」
「それもそうだな!消えろ!雑魚がああぁぁぁ!!」
「ラブパワァァァァ!!」
「…あれー?戦わないんですかー?姫様もアデルさんも。」
「…レベルが低いからな…」
「プレイヤーを恨むしかないのう…」
「出番はまだでござるか…」
「さぁね…」「姫様〜…」
さあて この続きは?
A魔界王子御一行が使い魔
B熱血主人公と嫁と蛙が使い魔
C忍者+弟妹が使い魔
D炎帝族の使い魔
うん ごめん
てかエトナのラハール様の呼び方は陛下じゃねぇ殿下だったぁぁOTL
本当 すみませんでした
>>421 ロリババア「あらあら、随分と変わった主義ですこと。そんな貴方に、くたばれ☆ 地獄で懺悔しろ♪」
妙齢の女性が子供っぽい格好や口調のほうがだね
なるほど、アンゼロット様は今年19、来年18におなり遊ばす事で有名だからな!
どんどんロリになる女性… マリオン(ガンバード)?
ガンバードといえば筋金入りのロリコン・アッシュ召喚
タバサやルイズには「さあ行こう、二人だけの愛の世界へ!」で、
キュルケには「俺は巨乳が大嫌いなんだ!」だな
>449
若返りしすぎると、ジョジョ第三部のあのスタンド使いの攻撃の様に……?
ガンバード2は未プレイですけど、マリオンのあの呪いは解けたんだろうか。
>>451 ガンバード2はイラストが中村博文さんじゃなくなったのが残念だったなあ……
呪いは…願いの内容をウサ公に任すと解けます
マリオンが自分で願いを言うと失敗します(エンディングのネタバレ)
天照様は若返るんじゃなくて成長がリセットされるらしいぞ
どっかのロリコン天使の情報だが
きらきら星の高等生物どのは、29歳まで生きたらあとは1歳ずつ若返っていくそうですけどね。
ポプランは白兵戦もイケるクチだけどやっぱりスパルタニアンがないとなあ
んじゃ衛星軌道上にイゼルローンとガイエスブルクを呼んで、ハルケギニアを月四つの世界にしてしまえばいい。
最強のロリっ娘といったらやっぱアラレちゃんかな。いや、あれは色気が皆無なだけか。
いつぞやの土屋博士が作ったバーチャルリアリティマシンの
トラブルで原寸大のソニックとマグナムごと星馬兄弟召喚とか
>>457 あちこちのロリで較べると最強とは程遠いかもしれんが
オルケストルアーミーで一番えげつないキュオンとか召喚したら無双確定
ロリ繋がりでまさかのブロリー召喚
ルイズ「お願いやめて!」
ワルド「貴族というヤツはやっかいでね。強いか弱いか、それが気になるともう、どうしようもならなくなるのさ」
デデーン
アルビオンから連れてこられたエルフどもか…いつかは故郷に帰りたいと空を眺めていたな…
いつかは帰れるといいなぁ…
\デデーン/
\デデーン/
ルイズー、キュルケー、ギーシュ。アウトー
「絶対に笑ってはいけないトリスティン魔法学園24時」
このスレはロリコンのすくつですね
\デデーン/
ゲェッ カンウッ
>>465 マテ、それの効果音はジャーンジャーンだろうw
カカカカー!
鉄鍋のルイズ
カカッ
アシュラマンだと思った
グララララ!
フォッフォッフォッフォッフォwww
>>445 エトナは小説版だと途中で陛下になってるから問題ない。
むしろ、フロンちゃんが「さん」じゃなくて「様」の方が…
>466
o ┣┯┫ジャーン!
(゙ヽ―◎┃ ジャーン!!
/> .┃ ┃ ジャーン!!!
モンスターメーカーから……誰を呼ぶのがいいかな
大好きな作品なので誰か呼びたいっ
メルクリウスプリティからホムンクルスを召喚………
………初期のルイズが育ててもろくな成長をしなさそーな気がする
ジョセフとかタバサとかが育てたらはたしてどーなることか
>>475 そりゃライアしかいないでしょう。
薄幸な彼女にせめてもの安らぎを...
プリンセスメーカー2から執事キューブを召喚
とりあえず家事は問題なし、
魔界の貴公子だとかで、少なくとも賞金首をぶっちめて娘を救出できる程度には強い
ついでにルイズを抱えて空も飛べる(タバサだと軽くて助かる、キュルケはもうちょっと痩せろ)
…わりと万能じゃね?
娘や父親の召喚も面白そうだな
どんな話の展開にするかは悩みどころだが
エレガントな美貌とファンタスティックな魔力を持った魔界の姫召喚
キューブは天帝とかいう神々の神以外には負けを知らなかった魔界のプリンスだぜ……
>>477 そうか、闇の竜騎士の続編が出なかったのはルイズが召喚しやがったせいだったのか
これだけ話題に上がってるんだから、当然誰か書いてくれるよな?
俺を倒せる者はあるか!
>>482 話題に上がった作品やキャラの数だけ作品があるんなら、今頃このスレはpart400くらい行っとるわ
テルマエ・ロマエを読んでルシウス召喚を考えたが、ハルケギニアの風呂では奴を満足させることはできんな
普通にサイトを召喚して五右衛門風呂にルシウスが来ればいいじゃないか
ルシウスが(勝手に)召喚されたとでもして
サイトとシエスタが五右衛門風呂で混浴してドッキドキの状態で二人の間からいきなりルシウスがザバァーーって出てくるんだな
その後を追うように、ギトー先生が粉砕バット片手にざばぁっと。
ゼロと電流 第二話 特になければ五分後から投下します
朝食を終えたばかりの食堂の裏。厨房に続く裏口のある側。
じっと立ちつくし、微動だにしないザボーガー。
その前に立っているのはルイズ。
さらに少し離れた位置から隠れて見ているのはキュルケとタバサ。
キュルケは自分から。そしてタバサはキュルケにつきあって。
「何をしているのかわかる?」
キュルケはタバサに尋ねてみた。
タバサは読んでいた本から顔を上げるとキュルケの顔を見て、そして興味なさげにルイズの方を見る。
「ゴーレム?」
「少なくとも、私たちの知っているゴーレムとは違うのよ」
「違う?」
「形が変わるの。あのゴーレムのお腹から車輪が出てきて、走り出すのよ。あと、名前はザボーガー。ルイズはそう呼んでるわ」
タバサは首を傾げる。その目はあからさまに不信の目だ。
確かに、あれは自分で見ないと信じられないだろう、とキュルケも思う。
なにしろ、二つの車輪を前後にしたゴーレムっぽいものが勝手に走り出すのだ。
そのうえ、人型に変形するのだ。一体これは何の冗談だ、とキュルケでなくても言いたくなるだろう。
一方、ルイズはそれどころではない。
朝食を終えて気付いたのは、ザボーガーを置いてきてしまったこと。
しかし慌てず騒がずメットを被り、
「ザボーガー、食堂前まで来なさい」
確かにザボーガーは食堂まで来た。正確には厨房の裏手まで。
ただし、オートバイ形態で。
再びルイズが命令すると人型になる。
人型の名前は電人ザボーガー。
でもそれだけなのだ。
人型になって動き出すかと期待したが、動く気配は全くない。
いくら命令しても動かない。手を挙げようともしない。
命令の仕方を間違えたかとも思ったが、バイクになれと言われればバイクになるのだ。人型になれと言われれば人型になるのだ。
ルイズは、ヘルメットを被ったまま考える。
ルーンが微かに輝くが、ルイズは気付かない。
最初は、ヘルメットを被っただけでザボーガーへの命令の仕方がわかったのだ。もっと他のことだってわかるかも知れない。
「動かしかた、さっさと教えなさいよ!」
“怒りの電流”
「え?」
新しい知識が頭に流れ込む。
それは、怒りの電流。
どうやら「怒りの電流」というものによってザボーガーは動き出すらしい。
が、しかし。
「電流って何?」
“怒り”はわかる。
具体的には、キュルケの胸を見ていると体奥から湧き出てくるものだ。というか、シエスタの胸でも。ミス・ロングビルも。ひどいときにはモンモランシーだって。
湧き出てこないのはタバサくらいだ。タバサは仲間。ルイズは信じてる。
というわけで、“怒り”はよくわかる。
それなら、“電流”とは一体?
ルイズはしばらく考えて、それは後回しにすることにした。図書室で調べればわかるかも知れない。
一旦、ザボーガーをバイク形態に戻す。
その直前からだ、タバサとキュルケが見ていたのは。
「今の見た?」
「見た」
初めて変形を見たタバサの視線が鋭い。
彼女の知っている最高品質のガーゴイルなら、命令に応じて行動することは特に難しいことではない。それくらいの能力はある。しかし、こんな変形をこなすガーゴイルなど彼女は知らない。彼女の想像しうるどんな技術でも不可能だろう。
そして、ガリアのカーゴイル以上のものをそう簡単に他の国が持っているとも思えない。ましてやこんなところにあるなんて。あるいは、まだ見ぬ東方で作られたゴーレムか。
「兜から命令している」
タバサは気付いていた。ルイズの命令は全て、兜の横についた棒のようなものを介していることに。
「……本当。よく気付いたわね、貴女」
見ていると、ルイズがザボーガーに跨った。スカートなのでかなりはしたない格好なのだが、本人は気にしていない様子だ。
そしてそのまま、走っていってしまう。
「え?」
「……」
「なに、今の」
呆然とするキュルケ。ザボーガーが走るのは知っていたけれど、まさかルイズを乗せていってしまうとは。
それとも、ルイズが自分を乗せるように命令したのだろうか。
「授業」
タバサは、キュルケの裾を引っ張ると、教室へと歩き始める。
今更追えないキュルケも、仕方なくタバサと共に教室へ向かう。
支援
なのに、ルイズは教室にいた。
どうやら、ザボーガーで教室の外まで先回りしたらしい。涼しい顔で座っている。
ちなみに、兜はそのまま被っている。
キュルケに監察されていることも知らず、ルイズは考えていた。
ザボーガーの使い方がわかったのは、使い魔と主の繋がりのためだろうと考える。どちらにしろ、他に説明はつかない。
ヘルメットから命令すると、ザボーガーは動く。
人型になるけれど、人型のまま動くには“怒りの電流”が必要。
他に何か無いのか。
頭の中でヘルメットに尋ねてみる。
“チェーンパンチ”
“ブーメランカッター”
“速射破壊銃”
“ヘリキャット”
“マウスカー”
“シーシャーク”
早速答えが返ってきた。
最初の三つにはやっぱり“怒りの電流”が必要らしい。
パンチはわかる。拳で殴るのだろう。チェーンは鎖。鎖パンチって何だ?
ブーメランもわかる。そんな玩具があった。投げたら帰ってくる玩具だ。そしてカッターはエアカッターみたいなものか。だったら、母の魔法で見たことがある。
待てよ? エアカッターが帰ってくるのか?
怖い。それはとても怖い。そんなのが帰ってきたら全力で逃げるしかない。
銃。聞いたことはある。平民が持つ武器の一つだが、魔法に比べると貧弱この上なく、さらに不便なものだったはず。そんなものが何の役に立つというのか。
もしかして、強さという意味ではザボーガーは外れかも知れない、とルイズは思った。 あとの三つは、すぐに使えるらしいので試してみようとも思う。とりあえず、授業が終わって時間ができ次第。
できれば人目のないところ。
人型変形のように、やってみたはいいがその後どうしていいかわからない、という無様な真似は見られたくないのだ。
というわけで、授業が終わると早速マシンザボーガーで出発。目的地は適当に人気のなそさうなところ、というわけでラ・ロシェールの森である。後が追えなかったキュルケが悔しがっていたが、ルイズの知ったことではない。
ちなみに、当然だがルイズがオートバイに乗るのは初めてである。
それでも、何故か乗りこなしている。ルイズ自身は特に不思議だとは思っていない。使い魔とはそういうものなのだろうと独り決めしている。
「ガンダールヴのルーンに間違いありません」
ルイズが森へと向かった頃、コルベールはオールドオスマンに力説していた。
片手には古い本。残った手にはルイズの召喚したヘルメットに印されたルーンを写したスケッチ。
「ガンダールヴと言えば、始祖ブリミルの従者じゃな? あらゆる武器を使いこなして敵と退治したという」
「はい」
「その、ミス・ヴァリエールの召喚した兜が?」
「考えてみたのですが」
「うむ」
「ガンダールヴの被っていた兜というのは考えられませんか?」
「ほう」
「被ると、ガンダールヴと同じ能力を手にするとか」
「そうすると、あのゴーレムはどう説明するのかね? 始祖ブリミルがゴーレムを操ったなぞ、聞いたことがないぞ?」
「そ、それは……」
「しかし、ルーンの形はまさにそっくりじゃのう」
オスマンはコルベールの観察を認めながらも、大事にはするなと念を押す。
大事にしたところで得をする者はいないのだ。
今のところは静観である。
「第一、王室のボンクラ共に、大切な生徒を玩具にされてたまるか」
「同感です」
「この件、他言は無用じゃぞ?」
「はい」
そしてその頃、ルイズは森に着いていた。
電人ザボーガー、GO! のかけ声と共に電人を起動する。ただし、動かない。
さて、と辺りを見回して。
「出なさい、ヘリキャット!」
ザボーガーの頭がぱっくり開くと、あまりのことにルイズの口もぱっくり開いた。
そして現れる超小型偵察用ヘリ、ヘリキャット。
「えーと……何か探してくるのよ? いいわね」
不明瞭な命令でも、それでも飛んでいくヘリキャット。
すぐにルイズは気付いた。
何かが見える。いや、目を開けているので見えるのは当たり前なのだけれど、自分の視界とは別に何かが見えるのだ。
目ではなく、直接映像が頭に中継されている感覚と言えばいいのか。
それは、使い魔との視覚共有である。
そう。ルイズはヘリキャットからの視覚情報を直接受けていたのだ。
空からの風景。レビテーションもフライも使えないルイズからすればとっても新鮮な光景である。
「あ」
呟くルイズ。ヘリキャットが眼下に捉えたのは見覚えのある服とマント。学院の制服である。
男の生徒と女の生徒。マントの色から判断すると男はルイズの同級生、女の方は下級生のようだ。
「……ギーシュ?」
よく見ると、男はギーシュ・ド・グラモンである。
女の方は知らない顔だ。
ふと気付いたルイズは、試しに耳に意識を集中する。
風切り音が聞こえる。ヘリキャットと聴覚も繋がってはいるが、ギーシュたちとは距離がありすぎて聞こえないのだ。
ルイズは少し考えて……
「お願い、マウスカー」
ザボーガーの両足から、縦二分割された小型の車が現れ、合体して一つの車になる。
超小型偵察車両、マウスカーである。
これなら、気付かれずに声の聞こえる位置まで近づける。
ヘリキャットから見える映像で、マウスカーが二人に近づいたのを確認すると、ルイズは目を閉じて耳に神経を集中する。
「ありがとうございます、ギーシュさま」
「いや、改まって礼を言われるほどのことでもないよ」
「だけど、お礼くらいは言わせてください。他にできることなんてありませんから」
「そうかな? 僕はこの、君の作ってくれたクッキーで充分だよ、うん、美味しい」
「ギーシュさま、本当に……」
「だから礼なんて要らないんだよ、ケティ」
ケティ。
一年生のケティ。
どんな子かは知らないが、なにやらギーシュに礼を言っている。
ギーシュは軍人としての名門、グラモン家の息子である。普段からそれなりに筋を通した行動を心がけている。数少ない、魔法が使えないルイズを……少なくとも表立っては……馬鹿にしない一人だ。
そのギーシュのことだから、何か頼まれ事でも叶えたのだろう、とルイズは推察する。
「ギーシュさま?」
「ん? おや?」
二人の口調が微妙に変わる。
マウスカーが見つかったっぽい。
「空にも」
「む」
ヘリキャットまで。
急いで二機に帰還を命じるルイズ。
そして戻ってくる二機。
マウスカーの後ろから現れるギーシュとケティ。
「ルイズ? 何をやっているのかね、君は」
「あ、ギーシュ」
「まさか、僕たちを尾行していたとも思えないが……」
「それはないわよ」
ルイズは素直に、ザボーガーの力を試していたのだと言う。
覗き見の意図はなかった、というより、二人がいることすらついさっき知ったのだ。
「使い魔の中にさらに使い魔が三つ。面白いな」
話を聞いてそう言うギーシュはゴーレム複数同時操作が得意なのだが、さすがに感覚の共有はできない。
「悪いが、このことは皆に内緒で頼む。誤解されても困るからね」
「誤解って、何してたのよ。つきあっている者同士の遠乗りにしか見えないけど」
「ケティがこの森へ来たがっていてね。一人だと不安だというのでご一緒しただけさ」
世間一般ではそれはデートではないだろうか、とルイズは思う。
「わかった、内緒ね。その代わり、私もちょっと手伝って欲しいことがあるの」
「なんだい?」
「貴女のワルキューレ相手に練習させたいのよ」
「君の使い魔がかい? 別に良いよ」
「“怒りの電流”が使えるようになったらお願いするわ」
「ああ、いいとも」
話し合いは成立した。かに見えた。
が、その翌日の昼食の席で……
「ルイズの使い魔って何ができるんだい?」
「走るしか能がないみたいだよ」
「なんだ、使い魔もゼロか」
「ゼロにはゼロが喚ばれるんだな」
ルイズに対して直接言われたのではない。そして話していた当人たちもルイズに聞かせるつもりではなかった。
しかし、聞こえた。
「私の使い魔はね、足と頭からそれぞれ別の使い魔を出せるのよ」
現場を目撃したのならまだしも、初めて聞く相手には意味不明である。
「は?」
そして、正面切って馬鹿にするつもりがなかった連中も、意味不明なことを正面から言われては別である。
「いや、わけわかんないよ」
「頭からって、どういうこと?」
「足から? 夢でも見たんだろ」
だったら現物を見せてやる、とザボーガーを呼ぼうとして、今日は結構な重さがあるヘルメットを部屋へと置いてきたことに気付く。
どうしたものかと見回すと、ギーシュの姿が。
「ギーシュ!」
ギーシュはいつものように周囲に問われていた。いったい誰とつきあっているのかと。
そしていつものように、薔薇の運命とは周囲の女性皆を喜ばせるものさ、と答える。
ギーシュにしては、半分本気の半分社交辞令のようなものである。実際の所、本命はいるのだ。
そこへルイズから声がかかる。
「貴方は見たわよね、ザボーガーの頭と足から出て来るのを」
見たよ、と証言しかけてハタとギーシュは気付く。
何処で見たかと聞かれれば、ラ・ロシェールの森と答える。それはいい。
問題は、何でそんなところにいたとかと尋ねられた場合だ。
ルイズと一緒にいた、はおかしい。かといって正直にケティと一緒と答えるのも……本命に聞かれると拙いような気がする。
アイコンタクトでギーシュは、ルイズに「黙れ」と伝える。
伝わらなかった。
「ギーシュ、聞こえてる? 貴方も見たでしょ? ほら、あのとき」
やめろ、ルイズ。それ以上追求するな。
ほら、ルイズ、あ、ほら、後ろ、後ろにモンモランシーが!
「どうしたのよ、ギーシュ。ほら、あの時、ラ・ロシェールよ」
ルイズストップ。それ以上行けない。
「ほら、ケティと一緒にいた時よ」
ルイズぅううううう!!!???
「あら、どういう事かしら、ギーシュ」
肩に置かれる冷たい手。
「も、モンモランシー?」
「ギーシュ、貴方、ケティと遠乗りに行ったの?」
「落ち着くんだ、モンモランシー」
ルイズがモンモランシーの様子に慌てて、間に入る。
「モンモランシー、違うわよ、勘違いよ」
そして向き直り、
「ごめんなさい、ギーシュ、口止めされてるの忘れてたわ」
それはトドメであった。
支援
以上、お粗末様でした
次回はフーケとデルフ出せるかな?
乙
ルイズがナチュラルに鬼だw
ルwイwズw
本編でもこんな感じだよなw
ザボーガー乙。素晴らしいw
あとはマウスカーからマッハバロンの腕が生えれば完璧だ。
(判りにくいかw)
乙です。
最後ふいたwwww
>>504が言っているのはア◯シマの合体四身プラモで、
>>506が言っているのはブルガンダーと見た!
ロストユニバースからケイン召喚
タルブ村でソードブレイカー発見
このスレががもし100人の村だったら
ルイズ派で10人前後
キュルケ派で10人くらい
タバサ派で10人ほど
アニエス派で(中略)
ニッチにモンモン派で3人
90にんは変態で、残りの10人は超変態だな。
我がキュルケ派に10人もいるだと!?
ルイズに次いで多いじゃないか!
主役のルイズでたった10か
テファ派が40人ぐらいで枠埋めてんのか?
515 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/20(土) 15:14:25 ID:lOATPZEm
シエスタ派は少なそう
ルイズ派
アンチルイズ派
クロスオーバー作品重視派
タバサ派
キュルケ派
アンアン派
ティファ派
アニエス派
モンモン派
ギーシュ応援団
ヘタレワルド愛好家
巨乳派
虚乳派
etcetc...
複数派閥に所属している奴らが多すぎて、そういう分類は意味がないと思う。
ルイズをヒロインと定義する派閥においても原作どおりのツンデレ派、二次創作補正による魔改造、ヤンデレ、他がある。細分化すればキリが無いからなぁ。
・・・つまり一人一派閥と言うことですね
100人の村にまとめる気ないだろ、お前ら。
村人だって、全員個性を持った別々の人なんだよ。
色々なくくりで区分できるけど、結局それは上辺だけの問題で、本質的にはみんなバラバラ。
でも、同じ村に住んでいる仲間同士、それなりに仲良くやっているんだ。
もしもスレが100人の村人だったら、アニエスを弄り倒したいのは30人は越えると予想しています。
そんな村人筆頭の黒魔です。毎度どうも。
新しい人が来てくれはるとうれしいものですね。気合いと嫉妬の炎がメラメラ燃えてやる気も出ます。
そんな感じで、投下したく存じます。16:45ごろより失礼をば。
支援等などできますればよろしくお願いいたします。
ビビのひとはしっとマスクだったのか……
投下開始でございます
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「あれれー?どーこにかくれちゃったのかなぁ〜?」
「かぁくれんぼとは懐かしいですネェ〜♪」
「もーいーかい?」
「まぁだっだよっ♪」
「もーいーかい?」
「まだですかぁ?」
ワルドの声が二人分、洞窟の中のように木霊する。
馬鹿にしたような声が、ぐわんぐわんと響く。
ワルドのぐっちゃぐちゃになった記憶は、次々に入れ替わる。
さっきまではアルビオンの教会、それからどこかの酒場。
額縁の中の絵が、紙芝居のように変わって、今はルイズおねえちゃんのお家の景色。
ピンクの月が照らす大きなお屋敷。
ボク達はその中庭の池の中……ボートの中に身をひそめていた。
障害物が多い記憶の景色で良かったと、ちょっとだけ感謝しながら。
「――ビビ、あのスピード、対抗できる?」
「……ちょっと……きびしそう、かな……」
一旦退いて、立て直したかった。
まっすぐ向かっていったんじゃ、風そのもの相手になんてできやしない。
……でも、どうすればいいかなんて、サッパリ思いつかないや……
「そうよね――デルフはどう?」
「――……」
「……さっきから、こんな感じ……」
おまけに、デルフはずっと黙りこくって反応しない。
自分の忘れたかった昔を思い出してしまったんだから、仕方ないと思う……
悲しいけれど、ボク達がどうにかできる問題じゃないんだ。
「あぁ……まぁ、しょうがないわよね……でも、やるしかないのよね……」
「うん……」
「できる、できないじゃなくて、やる、やる、やる――」
ルイズおねえちゃんが自分に言い聞かせているとおりだ。
やるしかない。
できる、できないじゃなくて、やるしかない。
「――やるって、何をぉ?」
冷たい水を背中に浴びたような、そんな感覚だったんだ。
「っ!?」
「ワルッ――」
歪んだ顔が、ボートの真上に張り付いていた。
口が裂けそうなくらい、不気味な笑顔を作りながら。
「やっぱりィ、ルイズはちっちゃいルイズだなぁ!まぁたお船の中に隠れていたよ♪」
「もーいーかい?」
「――もう、終わり……
ウヒャーハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
終わらせる、わけにはいかない。
できる、できないじゃなくて、やるしかない。
だから、やるんだ。ボク達は!!
ゼロの黒魔道士
〜七十一幕〜 妖星乱舞―Dancing Mad―
「せいっ!!」
ボートから撥ねるように飛び上がる。
ある意味、チャンスだった。
風のように素早いワルドだけど今は確実に目の前にいる。
思いっきり踏みこんで、思いっきり振りかざした。
「『フライ』ッ!『錬金』ッ!『レビテーション』ッ!」
ほぼ同時に、ルイズおねえちゃんの『失敗呪文』を早口で唱えるのが聞こえる。
よし、ルイズおねえちゃんも冷静だ。
ワルドを倒すチャンスがあることを、見失っていない。
「うおっ!?」
「ありゃりゃ、せっかちな子達だねぇ〜……」
案の定、『風の遍在』。
しかも、かすったと思ったら即座に消された。
ワルド本体が後ろで腕組みをして浮いている。
本人にダメージは一切与えられていない。
悔しい。
ワルドに攻撃が届かないことが、悔しい。
「ひどくなーい?酷いと思わないかい、ワルドさぁん?」
「そぉですねぇ、ワルドすぁん!こっちは1人なのにィ、2人がかり、だなーんてねぇ!」
「ヒーロー気取りって、いっつもこう!悪役は1人ぼっちでイジめられる……可哀想なぼくちん……」
「おいおい、泣くのはおよしよワルドすぁんっ!泣いてちゃダ・メ♪ダーメダメよぉ!」
再び出した自分の遍在に、気だるそうに話しかける。
ワルド記憶の中で、ワルドの声が重なって、ぐわんぐわんと響く。
気分が悪くなりそうだ。
でも、弱っているわけにはいかない。だって……
「お前が、何と言おうとも……」
「私達は、この先に行かねばならないの!」
フォルサテを倒さなきゃ、ハルケギニアが大変なことになってしまう。
それに、フォルサテを許すわけにはいかない。
だから、ボク達は、先に行かなきゃいけないんだ。
ワルドに構っている暇なんて、無い。
邪魔をするなら、倒してでも先に行くだけだ!
「――……あーあ、まぁだこーんなこと言っちゃってますよォ?」
「まったくもって鬱陶しいイイ子ぶりっ子達ですねぇ〜?」
そんなボク達を、呆れたようにケラケラ笑って見る二人のワルド。
いちいち、その仕草に腹が立つ。
「こういう相手は――」
「!?」
「またっ!?」
額縁が、まただ。
ワルドの記憶を切り取った額縁、それがまたボク達を飲み込もうとする。
だけど、今度は……額縁が、2つ?
「ズバリっ!バーラバラにしてぇ、バッラバランに壊すのが一番でしょぉ♪」
「び、ビビっ――」
「しまっ……」
慌てて手を伸ばそうとしたけど、もう遅い。
額縁が目の前を通り過ぎると、ルイズおねえちゃんはもういない。
ワルドも1体だけになって、ここは全然別の記憶の景色。
真っ白な帆が張られた船の上……
タルブ上空の景色だ。
「さてぇ?トンガリ帽子のボクちゃんはぁ、この俺様が相手してやるですよー♪」
「っ……くっ!!」
ルイズおねえちゃんと、離れ離れ。
デルフは、ずっと黙ったまま。
……でも、やるしかない。
ボクは、マストの上のワルド目がけて、走り出していた。
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ピコン
ATE 〜オルトロス・ブギー〜
「うひょひょひょー!八本足のテクニック、天国イかせたりまっせー!!」
ぬるりぬるりと、ご自慢の『八本足』が乱れ降る。
民家も屋根ごとぶっ潰し、タコ足風情が降り注ぐ。
トリスタニアは路地裏の陣、先手を取ったのは紫蛸野郎。
「ハァッ!!」
チェスと違い、後手が不利とならないのが実際の戦。
アニエスは冷静に1本1本の足をさばききる。
なるほど、のたうつような曲線の動きこそは物珍しいが、
所詮は変温生物、動きは鈍い。
縄跳びの縄となんら変わらない。
タイミングを見計らって、跳べばいいのだ。
そのお手本を見せてやるとばかりに、アニエスは地を蹴った。
「うひょ!?」
「甘いわっ!!」
丸太棒よりも太い足、その付け根を、捕えた。
閃かせるは鋼が一撃。
まずは一本、着実に攻撃力を奪う。
『心は熱くとも、頭は冷やして』。
アニエスは公言どおり、至って冷静な思考を保っていた。
このとき、までは。
「っ……!?」
「あぁん♪オルちゃん感じちゃいそ〜!」
感触で言えば、水。
それもべたつくような、重たい水だ。
力をこめて振り下ろされた一撃、相手が例え岩だろうと打ち砕いたであろう。
それが、通じない。
反発せず、柔らかく受け止められた剣はそれ以上進むこともなく、
ぶるるんと蛸肌を振るわせただけで止まってしまう。
「くっ……うりぃゃぁっ!!」
一撃では止められた。ならば、二撃、三撃はどうだ。
白銀の雨嵐を、怒声のままに撃ち付ける。
岩どころか鋼の鎧すらも断ち切るような激しい斬の降水。
だが、撃ち付けたその度に、波打つようにぶんよりとした蛸の身が揺れるだけで、
一向に切れる気配どころかダメージを与えた様子が見えない。
物理的な攻撃が効かないというのか。
そんな馬鹿な話が、あってたまるか。
否定の意志が、剣撃を加速させる。
狙いなど最早無い。まずはとっかかりを見つけなければ。
些かの焦燥が、芽吹き始めていた。
「ここでオルちゃん、吟じます!
果敢に挑みかかってくる女騎士のぉ〜おーおぉ〜♪」
「なめるなっ!!」
蛸介風情が、自分の剣撃に怯むこともなく涼しい顔をしてやがる。
あまつさえ詩吟などを始めていやがる。
どこまでも人という存在をなめきった態度を見て、
再び疲弊した筋肉に喝を入れる。
二度目の跳躍、今度の狙いは、卑猥に垂れ下がるその目。
崩された家屋の壁を蹴りあがり、宙へ。
改めて、でかい。
その目だけでアニエスの2、3倍はある。
狙いどころが増えて結構なことではないか。
アニエスの剣はそのど真ん中を捕えていた。
「その真剣なまなざしを見ていたら〜あ〜ぁ〜あ〜♪……」
「ぬっ!?」
ぎょろり、と眼球が動く。
寒気。謀られたという感覚。
瞬間、べっとりとした液体が体を覆う。
どこから放たれた?口か!
巨大なる相手の図体は、それ単体だけで包囲戦を成立させている。
自身の身体を死角を作る道具としたか、蛸の癖に味な真似を。
この粘液、ミシェルがかぶっていたものと同質?
いや、違う。より白濁していて、かなり塩っ気を含んでいる。
臭い。海産物特有の磯辺の腐った臭気がする。
「――めっちゃ興奮するぅぅううう♪ あるぅ思います!!」
「これが……どうしたと言うのだっ!!」
だが、効いてない。
これが攻撃というのなら、お笑い草だ。
粘液ごときに怯むと思うたか。
目くらましにすらならない。むしろ頭が冴えてきたような気すらする。
疲弊した筋肉は十分動く。
全身の感覚も申し分なく働く。
もう一度だ、先にその汚らしい牙を根こそぎ断ち切ってやろうと再度地を蹴ろうと……
「――って、言うじゃな〜い?でも……その攻撃、無駄ですからー!残念っ!」
「ふぁっ!?」
蛸足が当たったわけではない。
実際、ほんのちょっと茶目っ気混じりに横に動かされただけ。
オルトロスの動きはいたってスローで、当てる気すら見えなかった。
その動かした足により、舞い起こった風が、わずかに頬をなぜただけ。
本当に、ただのそれだけだ。
それが、燎原の火の火種となるなどと、アニエスに予想できたはずがない。
身体を貫いたのは、雷のごとき衝動。
それは体の表からではなく、内なるところから発される。
気付けば、白濁としていた粘液が透明に変わっている。
粘液はあくまでも溶媒、胆はこの白い成分であったかと気付いてももう遅い。
その効果は、湿布薬や熱さましの塗り薬に近い。
皮膚から浸透し、血管をかけめぐって全身へ。
それがアニエスの身体に異常をもたらした。
ありとあらゆる刺激が電流となってなだれ込む。
血流が毛細血管を押し広げて、皮膚のすぐ下を暴れまわる。
肌が紅色に上気し、呼吸が荒くなる。
身悶えの微震すら体の真を貫く状態。
アニエスの膝が、折れた。
「あれれぇ?真っ赤になっちゃってー?ゆでダコみたーい♪ ってタコちゃうわっ!?」
感応器官の異常は、肉体ではなく精神を直接蝕む。
風の一吹き、路上の小石、自身の鼓動ですら敏感に反応してしまう。
「きさ……まぁあ!!」
鎧はおろか、皮膚や骨肉すら素通りして訪れる電流の洪水に、
アニエスは、自分が丸裸にひん剥かれたにされたかのような感覚をおぼえる。
辱めだ。猥褻で淫靡な縛めだ。
気合いでその感覚を振りほどき、剣をひっつかむ。
精神は確かに蝕まれている。
だが、肉体は未だ動く。
ならば、立ち向かうまでだ。
単純な道理。
剣士としての矜持はまだ犯されてはいない。
「せやから、その攻撃無駄や言うてますやーん?何の意味も無いっ♪何の意味も無いっ♪」
「うぁっ!?」
手の甲を、弾かれる。
丁度親が、悪い事をした子供を叱りつけるかのような、ぺしっとした軽い動き。
ただそれしきの動きで、剣士の命である剣を取り落とす。
おまけに体を貫く電流だ。
手の甲から広がる衝撃が、大きな波となって全身を襲う。
過剰な感覚の洪水に反応した体から、汗、涙といった体液が噴き出てくる。
それすらも、さらなる刺激の呼び水となり、過反応が止まらない。
自分の感覚に溺れそうなほどだ。
「うひょひょ、えぇ格好やなぁ……ますます惚れてまうやろーっ!」
「う、うぁあああぁああ、や、やめ、ひぁぁああっ!?」
ぬるり、触手が一本が、全身を覆う。
そのぬるぬるとした感触が、その吸盤の凹凸が、
アニエスに触れる度に電流が走り、脳を貫く。
持ち上げられ、吊られる。
全身に広がる痺れとも震えともつかぬ感覚が、
アニエスの筋肉を弛緩させる。
力が入らない。為されるがまま。
逆さまの宙釣りになって、
アニエスは崩れ燃え広がる、トリスタニアの今を見た。
梁が剥き出しとなった家、
逃げる人々、
舞い襲う銀竜の群れ。
その中に、アニエスは違和感を覚える箇所を見つける。
自分が戦っていた場所と目と鼻の先、
路地を挟んで向こうの通りだ。
やたら鮮やかな色合いが、乱雑に並べられている。
見覚えのある制服。
ひらひらとした、悪趣味な、とある飲食店の制服。
『魅惑の妖精亭』、その制服に身を包んだ従業員が、地面に横たえられているではないか。
自分と同じように、滑りをおびて……
「……っ!?あれ……はっ!?」
「あ?気付いてもうた?気付いてもうた感じ?うん、オルちゃんのコレクション♪
君もしっかりくわえさせてもらうでー♪
うひょひょーひょひょひょ!!」
抵抗しなければ。
だが、自分の鋭敏すぎる感応器の挙動が、
筋肉への情報伝達を阻害している。
アニエスは、宙に吊られたまま、その辱めに耐え続けるしか無かった。
支援
なんとエロイ……
これでは避難所行きになってしまう!?
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ピコン
ATE 〜Unavoidable Battle〜
リュティス郊外、レイスウォール共同墓地。
墓土のこんもりと湿った臭いと、
モスフングスの焼けつくような胞子が、その場を満たしていた。
エルフと吸血鬼、ハルケギニアが恐れるはずの二種の異形どもは、
ありえないことに窮地に立っていた。
墓土から起き上がったばかりの死体達は、
目覚めの供物とすべく、次から次へと二人を襲う。
「木よ、守りたまえっ!」
幼き容をした吸血鬼が唱えるは、樹木を繰る先住魔法。
にょきにょきと伸びる木の根が、襲い来る者達と彼女の間に壁を作る。
「風よ、古き盟約に従いて、我に従えっ!」
長身のエルフが唱えるは、風を巻く先住魔法。
死体が二、三体がたまらず転び、再び土に還る。
それならば良い。一体一体はあくまでも雑魚、所詮はただの死体だ。
問題は。
「うげぇえ……増えるー、不味そうなのがどんどんどんどん増えちゃうー……」
エルザは皮肉なものだとため息をつく。
自分が襲って食い殺したような死体もあるだろうに、
立場がいつの間にか逆転してしまっているだろう、と。
もこり、もこりと墓土が幾度も盛り上がる。
新鮮な腐った出来たて屍兵どもの出来上がり。
ここはレイスウォール共同墓地。
代わりとなる屍ならば文字通り腐るほどある。
まったく、冗談ではない。
雑魚ばかりなのは結構だが、キリが無い。
おまけに、だ。
「く……」
ビダーシャルが呻き声をあげる。
睨む先は自分と同じ姿をした何体もの土くれ人形。
その中のどれか一つが、これを全て操っている。
単純な話、術者を倒せば全て終わる。
だが、どれが術者か分からない。
厄介なものだ。術者も土くれの偽者というのが効いてくる。
第一、自分と戦うのは誰だって嫌なものだ。
ビダーシャルは並ぶ自分の顔に吐き気を催した。
「我が写し身よ、何故に蛮族を守ろうとする」
「何?」
自分の顔が一つが語りかける。
自分の声が、ここまで寒々しいものだったかと驚かされる。
冷え切った、氷のような、冥府からの声。
まったく、やりきれない。
「お前も知っているだろう。奴らは家畜も同然。
神の加護を求め、泣き叫ぶだけの滑稽なる畜生共」
「何を……」
別の一体が言葉に、『何を言っているのだ』、と続けることができない。
思い出すのは、ロマリアの惨状。
光と影が分かりやすい様で線引かれた、腐った街。
富める者はぶくぶく肥え太り、貧者はさらに窮する、
忌まわしき蛮人達の許されざる光景。
「お前も気付いているのだろう。こやつら家畜に神などいない。
求めるだけの愚かなる蛮人どもを、導いてやるのが道理であろうと」
「馬鹿なことを……」
家畜以下、それはビダーシャルもうっすら感じてしまった事実だ。
事実だけに、言い返せない。
それは間違っていると、堂々と言い返せない。
「『我は思ったことすらない』、とでも?欺瞞はやめたらどうだ、我が写し身よ。
蛮人を食物とする吸血鬼と組んでいることこそ、何よりの論証ではないか」
「へ!?あたし!?」
「それは違うっ!!」
エルザと組んだのは偶々。利害と契約主が一致したためだけだ。
それと蛮人を卑しく思っているのとでは、話が別だ。
「矛盾した行い――それを許容したまま動くなど、我には解せぬ」
「戯言を!貴様の惑言には乗らんぞ!
第一、禁呪を用いている貴様が言えた言葉では無い!」
エルフの禁忌を侵しながら、言えた台詞か。
ビダーシャルは珍しく怒気を露わにし、勢いとともにその腕を真横にふった。
風を巻いて自分が写し身が一体を葬る。
禁呪でできあがった土くれ人形が、土へと還る。
だがそれは、全体として意味の無い行為。
「優先順位の問題。それだけだ」
「優先順位、だと?」
術者を仕留めねば意味が無い。
そうでなければ、墓土からまた新たなビダーシャルの偽者が生みだされるだけ。
背後からの声に改めてそう気付く。
「精霊の命に従いて、愚かなる蛮人を滅するべし。それが我が最大の使命。
精霊の御名において、我はいかなる禁忌をも犯そう――」
もこり、もこり。
墓土が持ち上がる音がするたびに、モスフングスの焦げ付く臭いが鼻腔に張り付く。
何体も何体も、屍と土くれ人形に取り囲まれ、前も後ろも逃げようが無い。
「そして、愚かなる家畜共に、正道を指し示してやろうぞ!」
歪んだ、選民思想。
精霊の力を多量に借り受けたことにより、その正気を奪われたとでもいうか。
「くっ……?」
ビダーシャルは目を背けた。
まるで自身の末路を見るのが耐えられなかった、とでもいうように。、
あるいは、自分の奥底に眠っていたそのおぞましき思考を直視できなかったのかもしれない。
蛮人を憐れみ、蛮人を家畜以下と思っていたと指摘され、ビダーシャルはたじろいでいた。
自分の中の内なる望みを指摘されたことで、動揺の色が隠せない。
まるでその欲望が、悪魔のそれであるような気がして、たじろいだ。
ビダーシャルの動きが、止まる。
「あーもうっ!ブッ飛んでる上に血が不味そうだし……最っ低の敵ぃっ!」
一人、エルザだけは真っ直ぐ戦況を判断していた。
欲望に忠実であり続けたゆえに、分かりやすく、単純に。
目の前にいるのは最低な敵、そして現状は最低な戦況。
血の補給もない上に、じわじわと追い詰めてくる敵。
おまけのおまけに、エルフのお兄ちゃんは精神的に追い詰められてるときたもんだ。
エルザは小さい体を震わせて、取り囲む不味そうな奴らを見渡した。
あぁ、最低だ!実にシンプルに、最低だ!
でも泣きつく相手すらもいない。
エルザは腹立たしげに地団太を踏んだ。
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ピコン
ATE 〜Passion〜
トリステイン魔法学院にて、その男の命は燃え尽きようとしていた。
対峙するのは、長い胴体をもった化け物。
もし一方的にやられている様を、対峙すると言っても良いのならばだが。
そいつは、蛇ではなかった。
龍でもなかった。
姿こそは近い。
だがその性質は、龍の神たる慈悲も、蛇の捕食者の誇りも持っていなかった。
「おーいおいおい?こんなもんか?がっかりだぞ、えぇ?」
「か……は……」
例えるならば、凶悪なる稚児の性。
腹が膨れた仔虎が、弱った野ネズミを弄ぶような様。
「レベル差ってーのかね、えぇ?満足感と同時に虚無感ってのが湧いてくるぞ、っとぉ!」
「がっ……」
腹を満たすわけでも、恨みがあるわけでもない。
満たしたいものは、ただひたすらの優越感。
「ぉーぉー……もう血反吐すら出ないってか?つまんねぇー。もっと俺に生きる実感をくれよ!隊長殿ぉ!」
自身の牙を、その力を、試したいという欲求。
自分こそが、あらゆる霊長を差し置いて、新たなる高みに達したのだと言う絶頂感。
コルベールは、薄れてしまいそうな意識の中、炎の龍となったメンヌヴィルの望みを理解した。
理解したころには、いつの間にか、抗うことを、辞めていた。
『贖罪』。
犯してしまった、咎を悔いる気持ち。
覚悟を決めていたとはいえ、コルベールはやはり後ろめたさを抱いていた。
いっそ死んでしまえば。
どこか、そう願っていた節があったのかもしれない。
何より、この戦力差だ。
抗って、どうなる?立ち上がって、どうなる?
皮膚は焦げ、肺臓すら爛れている。
指先がチリチリする。口の中はカラカラだ。目の奥が熱い。
ありとあらゆる感覚が鈍くなり、自分では無い誰かがダメージを受けているようだ。
炎そのもののように熱気を発する大蛇の身体に締め付けられ、
コルベールは腕すらあげることすらできない。
気も、策も、全てを焼き尽くされ、
最早これまで、いや、これでいいさと、コルベールは意識を手放そうとしていた。
「『ファイア・ボール』!!」
鮮烈な炎が、コルベールの意識を呼び起こす。
メンヌヴィルの顎元を捕えた、火球。
「――ほぅ?」
「ぐぁ……」
とぐろを巻いたメンヌヴィルが、対応するためにしゅるりと振り回される。
乱暴に、縛めから解き放たれ、コルベールの身体が宙を舞う。
それを受け止めたのは、柔らかなる人の温もり。
「大丈夫ですか、ミスタ!!」
「ミ……ス……?」
「この温度はぁ、さっきのナイスバディなお嬢ちゃんじゃないか、えぇ?」
彼女の名は、
キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。
コルベールの生徒が、一人。
先ほどまで、命をかけて守ろうとした、大事な教え子の、一人。
逃げろと言ったのに、何故帰ってきた。
確実なる死に、何故立ち向かうというのか。
「先生を……これ以上……」
「おーおー、慕われちまってるな。隊長殿、えぇ?
泣かせるじゃないか、えぇ?――クサくてそういうのは大嫌いだがな」
優しく、包むように師をその膝に抱え、彼女は愛おしげにその頭をなぜた。
散々馬鹿にされ続けた、禿げあがった頭を。
「ミス……な……ぜ……」
口にするは疑問符。
何故、戦える。
何故、心が折れてもなお、立ち向かえるというのだ。
何故、何故、何故。
「……女は、下がっていろと?戦うのは、男の役目だから……?
本当に、トリステインの殿方は御立派ですわ。私が思っていたよりも、ずっと……」
霞んだコルベールの視界に、慈母のごとき頬笑みが映る。
ゆるやかに孤を描いた唇が上を向き、コルベールに安らぎを与えた。
だが、
「ですが……」
その瞳は、頬笑みとは違うもの。
恐れ、不安、怯え。
負の感情の揺らぎは確かにある。
それでもなお、その瞳には、それらを押し込めて、
はるかに輝けるものがあった。
「私は、ゲルマニアの女ですのっ!!
勇ましい殿方に守られるだけの、ヤワな心は持ち合わせていませんことよっ!!」
焦げ付いたコルベールの脳裏に浮かんだのは、ある単語。
異文化に興味があったコルベールは、辞書も多く読んだ。
単語の意味や、語源にはるかなロマンを感じるのだ。
その彼が、最も好きな言葉がある。
元々の意味は『受難』や『困難』といった否定的な意味であった。
いつしか、幾度とない変遷を経て、その単語は元々の『受難』という意味の他に、
その苦難を乗り越えた者が持ち得るものを、
その困難に立ち向かう原動力となるものを意味するようになった。
すなわち、『Passion、情熱』と。
霞みゆく視界に映る女性。
彼女こそ、あらゆる苦難を越えてなお、胸の内にたぎる義の炎を絶やさぬ者。
真の『情熱』を持つ者だ。
コルベールが見るのは、太陽よりも暖かき灯。
母のごとき慈愛と、若き力に満ち溢れた、本物の温もりだ。
全てを焼き尽くされてもなお、自ら燃えあがろうとする、輝くばかりの力だ。
コルベールの灰となった意識に、小さな火種が燃え移った。
「――ダハハハハハハ!いい火力だぁ!火メイジはそうでなくっちゃなぁ、えぇ?」
「『フレイム・ボール 』!!」
正面から放たれた特大の炎球。
思うがままを吐き出した、まさに『情熱』そのもの。
あらゆる苦難をも退ける、小細工無用のエネルギー。
「だがよ、先生なんだろ、えぇ?隊長殿ぉ?こーゆーのは教えてらっしゃらないってか?」
だがなおも、メンヌヴィルは揺るがない。
異形となり果てたその顎門を、最大限に開け放ち、
フレイム・ボールが、まるで肉汁したたるミートボールであるかのように、
ガブリ、と一息に飲みこんだ。
「力量差の、『見極め』ってのをよ」
「あ……」
丸飲み。
自分の全てを賭けた炎が、飲み干される様。
コルベールは、自分の生徒の落胆を感じる。
情熱の炎が、キャンドルライトのように儚く消えたことを知る。
「良い熱だが……遠く及ばねぇな」
若き彼女の情熱を食らってもなお、飽くことのない胃袋を持った化け物が、
鎌首をぐぐっと持ち上げて、はるかなる頭上から師弟を見下ろした。
「今日のレッスン。『弱者は強者に食われる』!記憶したか、えぇ?」
「あ……あ……」
長く黒いシルエットが、本体よりも一足お先に2人を飲み込む。
万策、窮す。
蛇の前の蛙。
折れた膝と心は、容易には戻らない。
「そんじゃ、アバヨ!隊長殿ぉ!師弟共々消えなっ!」
「……くっ!」
「ミス……ツェルプ……」
残された最後の力を振り絞り、手を伸ばし互いを守ろうとする師弟。
そこに待つのは同じ終焉だというのに、何故に抗おうというのか。
コルベールは、その意味が、
『理由無き理由』の意味が、今になって分かった気がした。
それは、遅すぎた。あまりにも、遅すぎた。
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本日は以上です。
個人的に、「あいつは四天王の中でも最弱よ……」はやりたくないなーな感じで書いております。
ボスクラスの敵はタイプは違っても凶悪であってほしいなと思う次第です。
そんなこんなで、もう少しお付き合いを。
では、また。お目汚し失礼いたしました。
ミカドさんは一機育てといてもいいんじゃないの
乙でした。
オルトロス、ギルガメッシュあたりと組んでM-1グランプリにでも出てみたらどうだ。
てか、なんてうらやましい、いや、ひどいことをするんだ! アニメで見れないのが残念すぎる。
なお俺は100人の村人の中ではミシェル派です。
乙。
まさかオルトロスを応援する日が来るとは思っていなかった。
乙
兄sが相手だとオルトロスのゆでだこができないな
俺はイザベラ様派
村とか何いってんだ。
モンモン可愛いよモンモン。
誰かMARVELキャラを召喚するという荒業をやってのける人はいないのか?
黒い物体がいるじゃないか
>>543 映画スパイダーマン3からシンビオートが召喚されてるみたいですよ
544>>
545>>
ウルヴァリンとかキャプテンアメリカみたいな人として召喚されているネタがいないじゃないか
よし、マーベルゾンビーズで誰か頼むよ
>>543 トランスフォーマー(初代)も一応はマーベルキャラだぜ。
ウルヴァリン召喚は良いな 読んでみたい。
550 :
504:2010/03/21(日) 03:00:19 ID:cEVejkWZ
>>506,507
亀だがレス有難う。このネタ判るなんてあんたら一体いくつだ!?
いやでも嬉しいわw ゼロ魔は10代から〜50代に大ウケのようですw
DCキャラだがティーンタイタンズ(アニメ版)からテラ召喚ってのを考えたことがあったな
魔法が上手く扱えないルイズにかつての自分を重ね見て同情してしまうって感じの
ただ俺に文才が無いだけかも知れんが、アメコミとか特撮モノなんかはアクションシーン描くのがかなりキツい
やっぱ絵で魅せてこそのジャンルだと思うし
アメコミヴィランの代表格ジョーカーの場合
ルイズのハーレー・クィン化余裕でしょう
それはそれで面白いかも知れんが話が無茶苦茶になる
ルイズじゃなくてジョゼフがジョーカー召喚
ゼロ戦をクソ長い銃で撃墜するんですねわかります
つか、スキル卑怯持ちミョズジョーカーなんて誰も勝てねーよorz
ジョゼフが死んでミョズでなくなったとしてもむしろそれからが本領発揮のような気もするし
>>549 ローガンだとルイズはジュビリーみたいな扱いで恋愛には発展しないんだぜ
マーヴェルキャラだとヒューマン・トーチ(ジョニー)も面白いかも
ルイズに悪戯したり、キュルケやフーケを口説いたりして異世界ライフを満喫しそう
>554
ヒューマン・トーチまで読んでどっちの?と思った。
>>553 ルイズが失恋経験して人間的に成長しちゃえば良いじゃない
黒魔導師の人、乙でした。うむ、オルトロスめ、コスモミラクル光線を
プレゼントしてやりたい。メンヌヴィルに対してコルベールとキュルケが
共闘するというのはあまり見ないので、あの化け物相手にどう戦うのか
楽しみにしてます。
さて皆さんこんにちは、また今週もやってくることができました。
そんでもっての投下をいきたいのですがよろしいでしょうか。
問題なければ14:50より開始いたします。
第92話
受け継がれていた魂
えんま怪獣 エンマーゴ 登場!
長い一日の夜が明けて、またハルケギニアに朝がやってきた。
「ガンフェニックス、バーナーオン!」
ウェストウッド村の朝日を浴びて、ガンフェニックストライカーが空に舞い上がる。
そのコックピットには、昨日とは違ってガンウィンガーにリュウとセリザワ、
ガンブースターにはジョージと、マリナと入れ替わりにハルケギニアの調査分析の
ためにやってきたテッペイ、そしてガンブースターにはミライと、後部座席に
二人乗りでルイズと才人が乗っていた。目的地は、トリステインのタルブ村、
そこにGUYSの人たちを待っている人がいるという才人の言葉に従って、
彼らはまだその全容を知らない未知の星に、新たな一歩を踏み出そうとしていた。
「いってらっしゃい、気をつけてね!」
村からは、テファにロングビル、それに子供たちが手を振りながらこの巨大な
銀翼の不死鳥の飛び立ちを見送ってくれている。本当はロングビルにも来て
もらいたかったのだが、彼女たちのせっかくの家族水入らずを邪魔するのも
野暮と思って、今回は居残ってもらった。
そして、ガンフェニックスの後尾から伸びた、全長一〇〇メイルにも及ぶ、
長大な固定化をかけた綱の先には、キュルケ、タバサ、シエスタを乗せた
シルフィードが、ぎゅっと先っぽを掴んで飛んでいた。
「発進するぞ、準備はいいか?」
「準備オーケー、いつでもいいわよ」
渡された簡易無線機を通して、リュウとキュルケは合図をかわした。ここから
タルブ村まではシルフィードをぶっとおしで飛ばしたとしても一日以上はかかる。
それでは日帰りが間に合わないので、こうしてガンフェニックスに牽引してもらう
ことになったのだ。ただし、近すぎたらガンフェニックスのジェット噴射に焼かれて
しまうし、音速を軽く突破するガンフェニックスのスピードに生身の人間や
シルフィードは耐えられないので、こうして長い綱を使って、さらにタバサの
風魔法で空気の壁を作って風防代わりにしている。
「はじめはゆっくり行くけど、それでも速いようだったら速度を落とすから言ってくれ」
「大丈夫よ。あたしたちだって、空を飛ぶことには慣れてますから。遠慮なく
フルスピードでいっちゃってくださいな」
「そうか? なら少し飛ばすが、あとで泣いてもしらねえぞ」
「どうぞどうぞ、タバサの『エア・シールド』は強力ですから、どうぞ存分に
おいでなさってくださいな」
「……そうか、だったら遠慮はいらねえな」
ジェットコースターに初めて乗る子供のように、ガンフェニックスのパワーを
なめきったキュルケのセリフにカチンときたリュウが、やや据わった言葉で了解を
返したとき、才人はルイズをひざの上に乗せて座りながら、「おれ知ーらねえ」と、
細目でつぶやいていた。また、キュルケの後ろに座っているシエスタと、特にタバサは
嫌な予感がひしひしとしていたが、矢でも鉄砲でも持って来いとばかりに胸を張る
キュルケの前に結局言い出せず、そして……
「テファおねえちゃん、あのひこおき、びゅーんってすごかったね」
「ええ、流れ星みたいだったね」
ほんの数秒で視界から消えていったガンフェニックスの残していった飛行機雲を、
ティファニアと子供たちが指差しながら、いつまでも見つめていた。
それからおよそ一時間後、ガンフェニックスはタルブ村近郊の草原にその翼を休めていた。
「だからもう、言わないこっちゃないんだから」
夏の晴れ渡った日差しが差し込んで、蝉の声が四方八方から聞こえる中で、
整備点検をするジョージと、この星の調査分析のデータをまとめるテッペイから
少し離れた翼の下で日差しを避けて涼みながら、才人は呆れたようにつぶやいていた。
「自業自得よ。すぐ調子に乗るんだから、たまにはいい薬よ」
ルイズも、目の前のめったに見られるものではない光景に、いい気味だといわん
ばかりに、口元をゆがめていた。それはというと。
「うぇぇぇ……」
そう、飛行機酔い。超音速で飛ぶガンフェニックスの速度は、正しく彼女たちの
安い想像を超えていた。まず、発進から二秒でシルフィードの最高速を突破して、
四秒でゼロ戦の最高速を、一〇秒も経つころにはタルブ村の影も見えなくなり、
二〇秒後にはタバサがエア・シールドを維持できなくなるから止めてくれと悲鳴をあげて、
ようやくと速度をその半分に落とされたが、それからタルブ村へ着くまでの二十九分間、
シルフィードは力いっぱい引っ張りまわされる凧のようにあおられ続けて、その結果。
「はぁ、はぁ……そ、空が茶色く見える」
彼女の人生で、これほど自分の言動を後悔したことはなかったに違いない。
普通メイジは『フライ』の魔法によって空を飛ぶことには慣れているし、キュルケの
場合はシルフィードに何回も乗せてもらって、高速で飛ぶことにも慣れていた
はずだったのだが、あえて言うならポニーにしか乗ったことのない子供がいきなり
サラブレッドに乗って競馬に出たようなものである。ガンフェニックスを甘く見て
リュウを挑発したキュルケはしっかりとその代償を体で支払わされたのだった。
それと、そんなキュルケの不注意な言動の犠牲者がもう一人。
「うぇぇぇ……なの、ね」
いや、もう一頭。
「飛行機酔いするドラゴンなんて、はじめて見たぜ」
「ああ、多分もう一生見ることもないと思うよ」
ジョージとテッペイが作業の手を止めてまで見るような、地球では決してお目に
かかれない珍しい光景が、そこにあった。そう、自身の最高速度を軽く超えて
引きずり回されたシルフィードもまた、ものの見事に目を回して、その後、
着陸から三十分も経ったというのに、キュルケとシルフィードは仲良く草原の
片隅でうずくまっていまだにもだえていた。
「うぁぁ……ぎもぢわるい」
「あ、あんたのせいなの、よね」
美少女とドラゴンが並んでリバースしている姿はシュールとしか言いようがないが、
とりあえずもう数十分も風に当たっていれば治るだろう。幸い、シルフィードの
声もGUYSの面々には聞こえていないようであることだし、超聴力を持っている
マリナは今回来ていないし、ミライはここにはいない。
「ははは、ほんと、面白い連中だよな……」
だが、そうしてキュルケたちを見る才人の笑いに、苦いものが混じっているのを、
ルイズは肌で感じていた。才人にとって、目の前の光景はもうすぐ日常のものでは
なくなりつつある。
ルイズはなんとなく、魔法学院に入学して、家から出て行った日のことを
思い出した。あのときも、窮屈だったとはいえ慣れ親しんだ屋敷と家族に別れを
告げて一人で出て行くのは、口には出さなかったがひどく不安だった。しかも、
才人は一度帰ったら、もう二度とこちらに戻ってくることはできないかもしれないのだ。
支援とは、友の手を爪のさきほど支えると書く
支援
だからこそ、彼は残り少ない時間を使ってこの場所にGUYSの面々を
連れてきたのだろう。自分と同じ運命を背負って、自分と同じ選択肢を与えられ
なかった人のために。
ここにいるのは、才人とルイズ、ジョージとテッペイ、それからキュルケと
シルフィードをのぞけば、飛行機酔いなどにはびくともせずに、ガンウィンガーの
座席に座らせてもらって何事もなかったかのように本を読んでいるタバサのみで、
そのほかの面々はいない。いや、いる場所はわかっているが、そこに立ち入る
資格はこの場にいる人間にはないのだ。
ウェストウッド村を出発してから三十分後、タルブ村郊外の草原に着陸した
ガンフェニックスを待っていたのは、当然歓迎などではなかった。村人たちは、
突然やってきた巨大な戦闘機に恐れおののき、くわやすきを持って集まってきて、
場は一時騒然となりかけた。
だがその中で唯一恐れる様子もなく近づいてきたのは、シエスタの母である
レリアだった。
「シエスタ、お帰りなさい」
「た、ただいま、お母さん」
着陸した瞬間に伸びてしまったシルフィードの背中から、やっぱり酔っ払いの
ようになって降りてきたシエスタを、レリアはなんでもないことのように、抱きとめる
ようにして受け止めた。
「お、おいレリアさん! あれ? よく見たらシエスタちゃんじゃねえか」
唐突によく見知ったシエスタが現れたことで村人たちのあいだにざわめきが走ったが、
レリアは目を回している娘の肩を支えて立たせると、村人たちにもよく聞こえるように
穏やかに言った。
「あらあら、あなたときたら、貴族のお嬢ちゃんたちの次は、また珍しいお客を
連れてきたわね。おもてなしのお料理を作るのが大変じゃないの」
その警戒心などひとかけらもこもっていない優しい言葉に、村人たちの
敵意も急速にやわらいでいき、今がチャンスと才人は叫んだ。
「おばさん、お久しぶりです! 連絡もなしで突然押しかけてすいません!」
「あら、サイトくん。娘がお世話になってるわね。元気そうでなによりだわ」
シエスタの母は以前と同じように、娘より少ししわが入っているが、そっくりな
優しさを浮かべた顔で二人を迎えてくれた。
「どうも、すいませんがまたお世話になりたいんですが、よろしいですか?」
「ええ、シエスタのお友達ならいつでも大歓迎よ。何人でも、どんときなさい!」
その豪快に胸を叩いて陽気に笑う姿に、GUYSの面々はサーペント星人に
体を乗っ取られたが、家族への愛の強さで逆に星人の体を乗っ取り返して
しまった前代未聞のGUYSの食堂のおばちゃんを思い出した。
「シエスタのお母さん、相変わらずだな」
「うちのお母様では、考えられないことだけどね」
コクピットから降りた才人とルイズは、無礼な来訪などお構いなしといった様子で
よそ者である自分たちを迎え入れてくれたレリアに笑い返し、シルフィードからも
ヘロヘロになったキュルケがタバサに支えられて降りてきた。
「……大丈夫?」
「は、話しかけないで……うぇっぷ」
死神に取り付かれたとは、こういうことを言うのであろう青ざめた顔をしている
キュルケの顔色に、さすがにリュウも悪いことをしたなと思ったが、GUYSを
馬鹿にする奴は絶対に許せねえというのが彼の性分なのだから仕方ない。
また、村人たちも落ち着いてくると、彼らが前にコボルドの襲撃から村を守ってくれた
一団だと思い出してくれたようで、手に持っていた武器代わりの農具をようやく
下ろしてくれた。
「どうもすみません、お騒がせしちゃいまして」
他人に頭を下げるという習慣の無いルイズに代わって才人が村人たちに
頭を下げて、ゾンビと紙一重のキュルケを支えながらタバサも可愛らしくぺこりと
お辞儀をすると、村人たちにも安堵の色が流れた。
「なあんだ、人騒がせなあ」
「ってことは、これも貴族の新型のマジックアイテムかい。いやあ、最近は都会じゃ
すげえの作ってるんだなあ」
「それにしても、シエスタちゃんも帰ってくるたびに貴族のお知り合いを増やして
くるなあ。やっぱ、魔法学院に行った子は違うなあ。うちのバカ息子に、村一番の
出世頭を見習わせたいくらいだぜ」
納得して、村人たちは気が抜けたように仕事に戻っていき、ガンフェニックスを
珍しそうに見上げていた村人たちも、危険はないと説明すると、皆意外にもすんなり
納得して帰っていってくれた。
「やれやれ、ほっとしたぜ」
まさか何も知らない村人に銃を向けるわけにはいかないので、コクピットから
顔をのぞかせるだけだったリュウたちも、続々とガンフェニックスから降りてきた。
「うーん、空気がうまい!」
東京のスモッグ交じりの空気に慣れた地球の人間にとって、タルブ村の
まじりっけのない空気は新鮮そのものであった。思いっきり深呼吸して、
肺の奥底にまで吸いこんだ空気は、みずみずしく彼らの体内を癒していく。
だが、そうして降りてきたGUYSの面々の着ている制服のデザインを
間近で見て、レリアは古い思い出の中にある祖父の勇姿と、ひとつの約束を
はっきりと思い出していた。
「あの、なにか?」
リュウたちが着ているGUYSの制服をじっと見つめていたレリアは、あまりに
じろじろと見つめられているので不思議に思ったミライから尋ねられると、
覚悟を決めるかのように軽く息を吸い込み、そして才人たちはすでに知る、
この世界と地球の二つの血から生まれた言葉で言った。
「あなた方が来るのを、ずっとお待ちしていました。クルー・ガイズ・ジャパンの皆さん。
ようこそタルブ村へ」
「えっ!?」
リュウたちの顔から余裕が消えた。自分たちは、この村へ来るのは初めてのはずだ。
それなのになぜ、自分たちがGUYSであると知っているのだ。
「驚かれているようですね。ですがあなた方のことは祖父からよく聞かされてきました」
「祖父……おれたちや、才人くん以前にも地球人がここに来ていたのか!?」
「ええ、残念ながらすでに亡くなってしまいましたが。とにかく、歓迎いたしますわ。
シエスタ、皆さんをご案内して」
「は、はーい。じゃ、じゃあ皆さん、こちらでふう」
「こら、いいかげんしゃきっとしなさい。皆さんに失礼でしょう」
まだ飛行機酔いの覚めやらぬシエスタに、母の厳しくも優しい叱咤が飛び、
軽く両手でほおを叩いた手が、小さな乾いた音を立てて、夢と現実のはざまの
世界から娘を連れ戻した。
「はっ! あわわわ……し、失礼いたしました。じゃ、じゃあ皆さんこちらです!」
やっとこさ自分を取り戻したシエスタは、背筋をぴしっと伸ばし、皆の前に
立って案内しはじめた。が、やっぱり数歩あるいたら千鳥足になってしまって
失笑を買い、母に叱られてしまった。
けれども、狭くも無い道を踏み外しそうになりながら必死で歩くシエスタの、
本人に言っては悪いが愉快な姿は殺気だっていたリュウたちの心を
落ち着かせてくれた。ただ、そんな母娘の姿は、今の才人には残酷なほどに
まぶしく映って見え、ルイズが隣にいるというのに目頭を熱くさせた。
「サイト、どうかしたの?」
「いや……なんとなくお袋を思い出しちまってな」
「お母さんのこと?」
「ああ、なんでかな。前に来たときは、こんなに感じなかったんだが、変だな」
しかし、それがどうしてなのかは、ルイズにだって痛いくらいにわかった。
やっぱり、サイトは自分の家に帰りたいんだ……
深く考える必要も、誰に答え合わせをしてもらう必要もないくらいに明確すぎる
答えが、ルイズの心に深く突き刺さった。
それから、レリアとシエスタたち親子は才人たちも半月前に見た村はずれの
寺院へと、GUYSの人たちを連れて行った。そしてそこで……
「こい……つは!」
あのときと同じ姿で、静かに銀色の翼を休ませてGUYSガンクルセイダーは
そこで彼らを待っていた。
「これは、旧GUYSの!?」
「ああ、ディノゾール戦で全滅した……」
ミライやジョージも、想像もしていなかった地球の産物に、以前の才人と同じく
驚きを隠せずにいた。かつて、ディノゾール戦からこの世界に流れ着き、
吸血怪獣ギマイラ戦で一度だけ蘇った翼は、その両翼に描かれたGUYSの
シンボルを薄れさせながらも、主人の意思を受け継ぐように確かにそこに
あり続け、その傍らに立つ日本語で刻まれた石碑の文字は、六十年の時を
超えて、戦友たちを再会させてくれた。
「佐々木……」
「佐々木、先輩……」
佐々木隊員と同じ、旧GUYSの生き残りであるセリザワとリュウは、
死んだと思っていた戦友の名前をそこに見て、こみ上げてくる懐かしさと、
表現のしようもない感覚に襲われて、まなじりを熱くした。
そして、彼がこの世界に残したもう一つのものも……
「あんたが、佐々木先輩の……」
レリアが差し出した、佐々木隊員の使っていた古びたGUYSメモリー
ディスプレイには、怪獣調査用の写真撮影機能で写された、やや老けて
この世界の服を着た佐々木隊員が、今のシエスタによく似た若い女性と
並んで、生まれたばかりの赤ん坊を抱いている写真が映し出されていた。
「確かに、君たちには佐々木の面影がある」
普段寡黙なセリザワも、ぐっと何かをこらえているように親子の顔を
見比べて、そして懐から古びた写真を取り出してレリアに手渡した。
それは、ディノゾール戦前のセリザワが隊長を務めていたころの
旧GUYSクルーの集合写真、中央にセリザワ、その隣にリュウ、
周りにはあの日の戦いで戦死した旧GUYSクルーたち、その中に、
在りし日の佐々木隊員が誇らしげに立っていた。
「! 間違いありません。おじいさんです……」
「佐々木は、優秀なGUYSの隊員だった。もう怪獣など出ないと言われている
時代でも、暇さえあれば訓練に励み、ほこりの積もった過去の資料に
目を通しているようなな。おれは体力じゃあリュウのやつには敵わないけど、
だったらほかの全部であいつより上になってやる、後輩に負けるわけには
いかんですからねとよく言っていた。あいつが生きていればと、何度思ったが
知れんが……そうか、佐々木は最後まで立派なGUYS隊員だったのだな」
「はい、おじいさんは、生きているあいだずっとこの村や私たち家族を
守ってくれました。だから、私たちはおじいさんを、おじいさんの残してくれた
誰かのために生きるという強い意志を、この黒い髪を誇りに思っています」
そのときのリュウとセリザワの顔を、ジョージや才人たちは直視することは
できなかった。いや、見てはいけないと思ったのだろう。ただ、佐々木隊員の
孫娘と、ひ孫の声だけが静かに響いた。
「私はおじいさんが他界するまで、ずっとそばで育ててもらいました。
おじいさんは、ときどき妙なことを言って皆を不思議がらせる変わり者と
思われていましたが、とても優しい人でした。今でもよく覚えてるのは、
「おなかいっぱいパンを食べて、はだしで思いっきり外で遊んで来い。
ただし道で遊ぶときは馬に気をつけろ。たとえいじめられても誰かに
泣きつかずに、一度自分の力で思いっきりぶつかれ。あとそれから、
晴れた日には必ず布団を干すこと、これらを守っていたら、ウルトラマンみたいに
強くなれるんだぞ」と、口癖のように言い聞かされました。それで私が
「ウルトラマンって何?」と聞くと、「世界で一番強くてかっこいいヒーローさ」と、
笑いながら言っていました」
「それに、わたしもおじいちゃんやお父さんから聞かされたのですけれど、
ひいおじいちゃんはとても働き者で正義感が強くて、悪漢が襲ってきたら
先頭に立って戦って、飢饉が起きれば危険な狩りに出かけていって、
そして雨が降らずに、村の皆が高額の報酬を要求する水のメイジに財産を
差し出そうとすると、他人の力を頼りにするなと一喝して、とうとう井戸を
掘り当てたりしたそうです。わたしたちは、そうして村をかげから支えてきた
ひいおじいちゃんのようになれと、小さいころから教えられてきました」
それを聞いてミライは、「それってウルトラ5つの誓いのことじゃ!?」と叫ぶと、
レリアは黙ってうなづき、そしてガンクルセイダーを見上げた。
「祖父は死ぬ前に、もしもこの翼に描かれたマークと同じシンボルを持つ者が
この地を訪れたら、これを返してあげるようにと言い残していました。
俺はこの世界に骨をうずめるが、せめてこいつは鉄くずでもいいから、
地球の土に返してやってほしいと」
それは、自らと血肉を分けて戦った愛機に対する愛情だったのか、
それともハルケギニアの人間になってもなお、地球への思いを捨てきれなかった
佐々木隊員の望郷の念だったのかは、もはや死者の胸のうちにしかなかった。
「ですから、これはあなた方にお返しします。おじいさんの形見として、
ずっと私たちを見守ってくれましたが、私たちではこれを役立てることは
できません。あるべきところに返してあげたいのです」
親子四代にも渡って受け継がれてきた願いに、現GUYSの隊長である
リュウはブーツのかかとを合わせると、表情を引き締めた。
「これまで、我がCREW GUYSの魂をお守りいただき、どうもありがとう
ございました。佐々木隊員の志は、私が責任を持ってお引き受けいたします!」
するとレリアはほっとした表情を浮かべて、お願いしますと深々と会釈して、
それから寂しげにガンクルセイダーを見上げた。
「サイトくんがやってきたときから、なんとなく、近いうちにこんなことが起きる
んじゃないかと予感していて、飛んでくるあなたがたの飛行機を見たときに
確信しました。祖父の遺言を果たす日が来たんだと」
しばらく無言で、戦友の忘れ形見の顔を見つめていたリュウは、ジョージや
テッペイに背を向けたままで、ぽつりと言った。
「わりい、しばらく俺とセリザワ隊長と、この人たちだけにしてくれねえか?」
「……ガンフェニックスで待ってるぜ」
肩を小さく震わせながら言うリュウの頼みに、ジョージはテッペイと才人の
肩を軽く叩いて、寺院の外へと出て行った。
「シエスタ、あなたも先に帰っておもてなしの用意をしていなさい。作るものは、
あなたにまかせるわ……あ、いけない、ちょうど家の材料を切らしてたわ」
「じゃあ、倉庫に寄っていきます。サイトさんも……もう一度、タルブの味を
味わってから……いえ、なんでもないです」
「あ、力仕事なら僕も手伝います!」
シエスタは、なにかを思いつめたように外に飛び出していき、それをミライが
追いかけていって、最後に才人たちも扉を閉めて出ていって三人だけになると、
レリアは自分の祖父にして元GUYS隊員、佐々木武雄がこの世界のこの村で
送った人生を、一つ一つ語り始めた。
そして、草原に着陸したままのガンフェニックスに戻った一行は、それぞれが
この世界で一生を終えた一人の地球人のことに対して思いを寄せ、才人は
寺院での話に何か感じることがあったのか、ガンフェニックスの着陸脚に背を
預けて考え込んでしまった。
ただ、村人の中にも商魂たくましい人がけっこういるもので、安全だと
わかったら、相手は貴族であるからこの村の特産品であるぶどうや、それで
作ったジュースやワインなどの加工品などを、荷車に載せて何人かが売りにやってきた。
特に、まだ草原のすみで伸びている一人と一匹に酔い覚ましが売れたそうだが、
GUYSの面々がハルケギニアの通貨などを持っているはずはないので
ルイズの財布が少し軽くなることになった。
「毎度ありっと、お客さんいい買い物をしたねえ。今年のタルブの作物は国中の
どこに出しても一番をとりますぜ」
「だったら、ちょっとくらいまけてくれてもよかったじゃないのよ」
「ちっちっ、いくらシエスタちゃんのお友達でも、それはそれこれはこれってやつでさ。
けどまあ、こうして商売ができるのも平和が戻ったおかげでさあ。前にトリスタニアが
怪獣にやられて焼けちまったときなんか、まったく買い手がつかなくなったし、
国に送る復興資金を集めるとかで税金が高くなるってお触れが出たときは、
もう首を吊ろうかって思いましたよ」
「……大変だったのね」
「いやいや、でも最近はだいぶ落ち着いてきましたので大丈夫ですよ。税金の
ほうも本国のほうから、勝手に税率の変更を禁ずるという勅令が出まして、
取り立てられる寸前で助かりました。まったく、ウルトラマン様々、トリステイン
万歳ってとこです」
ルイズは愉快そうに笑う村人の顔を見て、自分たちの戦いが無駄では
なかったと胸を熱くした。だがだからこそ、エースはまだこの世界を去るわけには
いかないのだ。
村人からはほかにも、今年のぶどうの出来は最高だったとか、昨日の晩に
大地震が起こって南の山でひどい地滑りがおきたとか、どうでもいい情報もあったが、
驚いたことに早くもアルビオンの最終決戦に関する情報が手に入った。
それには、二大超獣や二人のウルトラマンやガンフェニックスのことなども当然
入っていて、噂千里を走るということをこちらの世界でも実感させた。
だが、ガンフェニックスのことが知れ渡って捜索の手が伸びてくるのでは
という心配は、ほかの情報で杞憂となった。いわく、「戦いのさなかに日食が起こり、
神の怒りが敵軍を壊滅させた」「伝説のフェニックスが降臨し、恐れおののいた
敵軍がいっせいに降伏した」「ウェールズとアンリエッタが婚約して、まもなく
両国のあいだで盛大なセレモニーが開かれるだろう」などと、伝わってくる最中に
尾ひれがついたのだと思われるものも多数含まれていて、一同を苦笑させた。
だが、これだけ情報が混乱していれば、その場にいた人間でもなければ
ガンフェニックスを見てもなんだかはわからないだろうから、少なくともこの数日は
確実に安全といえる。
ジョージとテッペイは、ルイズと村人たちのそんな会話を、自分たちの
仕事をしながら立ち聞きしていた。
「それにしても、こうして見ると本当に地球のどこにでもある農村だよなあ」
「はい、それに農作物もほとんど地球のものと同一種です。まさか異星でぶどうを
お目にかかれるとは思いませんでしたよ」
「まあな、しかしこれはうまい。いいワインが作れるだろうな」
植物などの採取分析をしていたテッペイと、ヨーロッパ生活の長いジョージが
タルブ村の風景を眺めてつぶやいていた。本当に、言われなければ異星の
風景だとはとても信じられない。
「なんか、佐々木隊員や、彼の気持ちもわかる気がするな」
「そうですね。それに、ウルトラマンレオもこんな気持ちだったんでしょうか」
二人は、もの憂いに考え込んでいる才人の姿に、以前ミライから聞いた話を
思い出した。ウルトラマンレオの故郷、L77星は凶悪なマグマ星人と双子
怪獣の猛威によって全滅させられ、地球を第二の故郷に決めて、その平和を
命を懸けて守り抜いてきた。地球へ帰る術を失った佐々木隊員や、才人も
この世界で生きているうちにそんな気持ちになっていったのかもしれない。
「あれから、どのくらい経った?」
「まだ、一〇分足らずですよ」
何の心の準備もできないままに、重い運命を背負わされてしまった少年の
背中は、歴戦の勇者である二人から見ても、不思議なほどに小さく見えた。
と、そのときテッペイのメモリーディスプレイに着信の合図が鳴り、開いた
ウィンドウにコノミの姿が映し出された。
「テッペイくん、どうそっちは?」
「いえ、まだです。もう少し、時間をあげてください」
「そう、つらいでしょうね。リュウさんとセリザワさん……」
この、かつて全滅した旧GUYSの生き残りがはるかな異世界に漂着して、
そこで生涯を終えていたということはすでにフェニックスネストの残留組や、
サコミズ総監方にも伝えられており、それは数々の怪事件を解決してきた
彼らにも、過去になかったほどの衝撃を与えていた。
「才人くんのほかにも、ほかの世界に飛ばされていた人がいたなんて、驚きよね」
「でも、この世界に来ても佐々木隊員は、人々のために戦い続けてきたんですね。
さすが、僕たちの先輩です。一度、お会いしてみたかったです」
ウルトラ支援
ディノゾール戦で、殉職扱いになっている佐々木隊員のことを、今のGUYS隊員の
ほとんどは知らない。けれども、旧GUYSからの勤務を続けており彼と面識があった
トリヤマ補佐官やマル秘書は、その報告を聞いた後で席を外していった。そのときの
いつもの三枚目じみた姿からは想像できない沈痛な表情は、しばらく忘れられそうも
なかった。
「ところで、なにか用事があったんじゃないのかい?」
「あっ、そうでした! そちらから送られた観測データの分析がすみましたから、
転送します」
「うん、わかった」
テッペイは、メモリーディスプレイに映し出されてきた、生物の遺伝情報や
地質のデータをざっと見渡したが、やはりどれもこのハルケギニアと呼ばれている
星が異常なほど地球に似た環境の惑星であるという証明にほかならなかった。
「生物は独自の進化を遂げているけど、惑星の環境の九十九パーセントは
地球とほぼ同質といってもいいのか……これは、惑星の環境が同じなら、
生物の進化も同じような経路をたどるということなのかな」
もしそうだとすれば、生物の進化のしくみを知る上でまたとない発見となる。
もしこの場に地球の科学者がいれば、よだれを垂らしてうらやましがったのが
目に見えるほど、これは宇宙生物学だけでなく、人類が今後宇宙に生存圏を
広げていく上で貴重な資料となるだろう。
「もしかしたら、これは地球人類史に残る大発見かもしれないぞ……いやいや、
今はそれどころじゃなかった」
科学者としての功名心にかられそうになったテッペイは、慌てて今おかれた
状況を自分に認識させた。かなり昔の話だが、東京都心に古代植物ジュランが
根を張ったときも、生物学的に貴重な資料だから攻撃を待ってくれという学者が
いたのだが、ジュランの危険性に気づいた彼は即座に炭酸ガス固定剤による
攻撃に切り替えて、その結果被害を最小限度に抑えることができている。
好奇心は、人間にとって大事なものだが、それも時と場合を考えなければならない。
「どうもありがとう。また、追加のデータがたまったら送信するよ」
「はい、あ、それからテッペイさん、そのあたりの地殻から、断層や火山帯の
ものとは違った異常振動が観測されています」
「異常振動……まさか、地底怪獣かい?」
「まだわかりません。杞憂ならいいんですが、念のため、気をつけてください」
通信を切って、テッペイは周囲の風景を見渡した。夏の日差しに照らされて、
平和な村と、青々と葉を茂らせた木に覆われた山が平和な風景を続けている。
このどこかの地底に、怪獣がいるかもしれない。なにか異常なことが起きれば、
すぐに怪獣を疑うのは職業病かもしれないが、万一に備えてガンローダーの
コックピットで、地底探知レーダーの準備を彼は進めていった。
それからまたいくらかの時間が緩慢に流れ、足元に射す影の長さが著しく
縮んだ時刻になって、リュウとセリザワが戻ってきた。
「変わりはねえか?」
「なにも」
村はずれの寺院に安置してあったガンクルセイダーと、佐々木隊員の墓を
目の前にした、旧GUYSの生き残りであるリュウとセリザワがなんと言ったのか、
途中で引き返してきた才人も、ジョージやテッペイももちろん知らない。また、
聞くのも野暮というものだ。
すると、こちらもタイミングよくお昼ごはんの用意ができましたよとシエスタが
呼びにやってきた。そうなると、一応弁当は用意してきたが、ファントン星人を
地球食でもてなしたり、サイコキノ星人とバーベキューをしたりしたGUYSの
面々のことであるし、この星の食材が地球人には問題がないとわかっているので
喜んで受けることにした。しかし……
「あの、ところでミライさんは?」
「いや、君といっしょじゃなかったのか」
「あれ、おかしいですね。先に皆さんを呼んでくるって……もしかして」
リュウたちの脳裏に浮かんだのは一様に『迷子』の一言であった。まさかとは
思うのだが、”天然”と”お人よし”という言葉が服を着て歩いているような
人なので、たとえば道端でおばあさんが困っていたりとかいう展開に
遭遇したとしたら、超著無く助けに行ってしまうだろう。リュウはメモリー
ディスプレイで呼びつけようかと思ったが、まだ深刻に考え込んでいる
才人を見ると、指を鳴らして。
「仕方ねえな……おい才人くん、悪いけど探しに行ってくれねえか?」
「あ、はいっ! じゃあちょっと行ってきます」
「あ、サイト……わたしも行くわ」
考えが堂々巡りに陥っていた才人は二つ返事で飛び出していって、
ルイズも後を追うように走って村のほうに駆けていった。
「あの子たちに気を配るなんて、ちっとは隊長らしくなったじゃねえか」
「ああ、なんのことだ?」
「とぼけるなよ。これが気分転換になればいいと思ったんだろ。うじうじ
考えるより、体を動かしたほうがいいからな。ま、お前らしいやり方だ。
これでもほめてるんだぜ」
「ふん」
リュウは照れくさそうにそっぽを向くと、フェニックスネストへの追加報告の
ためにメモリーディスプレイの通信をつないだ。
そして、半月ぶりにタルブ村を歩き回った才人とルイズは、前のときに
知り合った村人たちとあいさつをかわしながら、ミライを探し回っていたが、
これが意外にも難航していた。
思ったとおり、ミライはあちらこちらで人助けをしていたようだ。道端で
出会った子供のひざ小僧にカットバンが貼ってあったり、荷物を運んで
くれたというおばあさんに会ったり、荷車を引いてくれたというおじさんとか、
数え始めたら手の指だけでは足りないくらいだ。
「水戸黄門か、あの人は」
才人もルイズによくお人よしがすぎると言われるが、ミライはそれ以上だった。
「まさか、村中で人助けしてるんじゃないでしょうね」
ありえない、と言えないところが怖かった。とにかくあっちに言ったという
村人からの情報で、北へ西へと駆け回っているのだがなかなか見つからない。
「タ、タルブ村って、こんなに広かったかしら?」
「まるでロープレの無限回廊だぜ。いいかげん疲れてきた……」
ぜいぜいと息を切らしながら、二人は牧場の柵に腰を下ろして休んでいた。
そんなに広くない村のはずなのに、行くところ行くところで行き違いになっている。
おかげで鬱は吹き飛んだが、もうへとへとだ。
もひとつ支援
だが、もうあきらめて、向こうで待とうかなと思ったときだった。
”そこの二人、ちょいと手を貸せい”
「なによサイト、変な声出さないでよね」
「え? いや、おれじゃねえぞ」
突然耳元に響いた野太い声に、二人は思わず回りを見渡したが、あたりには
いるのは牛くらいで、村人の姿はなかった。しかし、「空耳かな?」と思ったとき。
”空耳ではない”
「! だ、誰だ!」
「何者! 出てきなさい!」
さすがに二回目ともなると、二人とも幻聴の線を廃してデルフリンガーと
杖を握って周りを警戒した。しかし、やはりいくら見渡しても誰もいない。
ただし、「透明宇宙人か?」と才人が言うと、”無礼者、拙者を愚弄するか!”
と反応が返ってきたので、姿は見えないがけっこうノリのいい相手のようだ。
「拙者とか愚弄するなとか、まるで侍みたいなこと言いやがるな。出て来い!」
「そうよ、顔も見せずにものを言うなんて、あんたのほうが無礼じゃない」
”ほう、なかなか物分りのよい小僧に小娘じゃ。じゃが悪いが、こうも明るくては
肉体を持たぬわしはお前たちに姿を見せられぬのじゃ。お主らは、どうやら
異能の力を持つらしいので、こうしてわしの声も聞こえるであろうが、普通の
人間では声すらも届かん。先の無礼は切に謝るので、今は何も言わずに
わしの頼みを聞いてほしい”
「頼み?」
”うむ、この道をもうすぐ二人組の盗人が追われて逃げてくる。そやつらを
捕らえて、盗まれたものをあるべき場所に返してほしい”
「盗人だって?」
「あっ、サイトあれ見て!」
すると道の向こうから、今言われたとおりに、二人組の男がなにやら包みを
抱えて走ってくる。そしてその後ろから追ってくるのは。
「ミライさん!」
「あっ、サイトくん、ルイズちゃん、その二人を捕まえて! 泥棒だ」
「なんですって!」
謎の声の言うとおりに、本当に盗人がやってきた。よく見ると、一人の背中には
なにやら白い包みにくるまれた大きなものが担がれている。あれが盗まれた
ものか、二人は謎の声の言うことに従うべきかと躊躇したが、ここは一本道、
ミライに追われて盗人は一直線にやってくる。おまけにその手にはナイフが
握られ、どけどけどかねえとぶっ殺すぞと、ぶっそうなことを言っている。
このままではルイズが危ないかもと思った才人は決断してデルフリンガーを
正眼に構えた。
「おお! やっと出番か! このまま一言もしゃべれねええまま相棒が
帰っちまうかと思ったぜ」
ワルド戦が途中でお流れになって、もう使われる機会がないものと思っていた
デルフがうれしそうにつばを鳴らして、喜びを表現した。なのだが、彼は自分で
自分の出番を削ってしまった。なぜなら、彼の台詞の後半の部分にルイズが
眉を動かして、それで。
「いらないこと思い出させんじゃないわよ、この駄剣がああっ!」
ナパーム手りゅう弾も真っ青の爆発が、おしゃべりな剣とその主人、
ついでに二人組の盗人もまとめてぶっ飛ばした。
「さ、才人くん、大丈夫かい!?」
「は、はひーっ」
半分ぼろ雑巾のようになった才人を、幸い爆発の影響圏からぎりぎり
逃れられていたミライが慌てて助け起こした。
「ルイズちゃん、ひどいじゃないか!」
「うっさいわね! 手間がはぶけたでしょうが、こいつが明日どうしようと、
それまではわたしの使い魔なんだから、わたしがどうしようと勝手でしょ!」
ルイズとミライのあいだに、険悪な空気が流れかけた。しかしミライは
冷たく才人を見下ろしているはずのルイズの目が、微細に潤んでいる
ことを見て、彼女が口と心を合反させていることに気がついた。
「ルイズちゃん、君は……」
「……」
”あーっ、取り込み中のところすまぬが、先にそやつらから盗まれたものを
取り返してくれぬかのう”
「あっ、はい!」
そこでようやく三人は、自分たちが何をしていたのかを思い出して、
才人を揺り起こすと、爆発に呑まれてしまった盗人二人組に駆け寄った。
なんでも、ミライもこの不思議な声に頼まれて、この二人を追ってきたのだそうで、
彼も最初は驚いたが、邪悪な気配は感じなかったというので、ほかの村人たちと
同じように頼みを聞いたのだという。
二人組は完璧に気絶していて、担いでいた包みは地面に転げ落ちている。
だが、その布の中から姿を見せている丸い頭をして、手を合わせた形の石像に、
才人は目を丸くした。
「変わった形の石像ね」
「いや、こりゃお地蔵様だ。おれたちの世界の神様の像だよ」
これはまた、なんでこんなものがハルケギニアに? だが、その地蔵を
持ち上げようとした時、突如彼らの立っている地面を像の大群が足踏み
したような激震が襲った。
「きゃあっ! じ、地震!?」
”どうやら、遅かったようじゃな”
そのとき、タルブ村の南の山奥では、常識ではありえないほどの地震が
起こり、林が陥没し、地下水が吹き上げ、山肌はことごとく森林ごと崩れ落ちた。
そして、無残に崩れ落ちた山肌を内側から貫いて現れた真っ黒な空洞から、
恐ろしげな叫び声とともに、真っ赤な目と、いっぱいに牙を生やし大きく裂けた
口を持つ魔人が現れた。
その手には鈍く鉄色に輝く巨大な剣と丸い盾を持ち、全身を金色に輝く
鎧で覆い、『王』と刻まれた冠を掲げるその姿は、まさに地獄のえんま大王
そのもの。
今、地獄からの使者、えんま怪獣エンマーゴの封印が解かれてしまったのだ。
続く
支援ありがとうございました、今週は以上です。
近頃とんと出番のなかったシエスタと、以前ギーシュたちに散々苦労させた
あの幽霊の再登場ができました。それにしても、才人やルイズの葛藤は
一応原作を参考に書いてますが、読み返すたびに原作のすごさをひしひしと
思い知る感じです。
それと最近は、執筆中にアニメ一期OPのFirst Kissを聞きながら書いてますが、
やっぱりこれは名曲ですね。ま、いっしょに聞いてる曲はモスラのうたや
宇宙戦艦ヤマトとかですからお気に入りリストの中でめちゃ浮いてますが。
次回は、本作ではアルビオンのタルブ上陸がありませんでしたので、
代わりにエンマーゴが大暴れします。
お疲れ様でした。
> そう、飛行機酔い。超音速で飛ぶガンフェニックスの速度は、正しく彼女たちの
>安い想像を超えていた。まず、発進から二秒でシルフィードの最高速を突破して、
>四秒でゼロ戦の最高速を、一〇秒も経つころにはタルブ村の影も見えなくなり、
>二〇秒後にはタバサがエア・シールドを維持できなくなるから止めてくれと悲鳴をあげて、
>ようやくと速度をその半分に落とされたが、それからタルブ村へ着くまでの二十九分間、
ウエストウッドから出発したんじゃねえのかと小一時間(ry
おつおつ。
エンマーゴってたしか、光線技はじく盾にタロウの首すっとばした剣もってなかったっけ?
お疲れ様でした。
>>577 すいません、そこのところ完全に間違えてました!
その部分を差し替えますと
そう、飛行機酔い。超音速で飛ぶガンフェニックスの速度は、正しく彼女たちの
安い想像を超えていた。まず、発進から二秒でシルフィードの最高速を突破して、
四秒でゼロ戦の最高速を、一〇秒も経つころにはウェストウッド村の影も見えなくなり、
二〇秒後にはタバサがエア・シールドを維持できなくなるから止めてくれと悲鳴をあげて、
ようやくと速度をその半分に落とされたが、それからタルブ村へ着くまでの二十九分間、
です。どうも申し訳ありませんでした。
ウルトラの人乙
読み返していて、自分も誤字に一つ気が付きました。
×超著 → ○躊躇
ウルトラの人さんの作品は超著ですけどね(^^)
>>582 すみませんの二乗です。推敲はちゃんとしてるんですけど、二つも間違いがあるとは…
情けない限りです。次回からはもっと気をつけます。
584 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/21(日) 15:53:07 ID:k9Un+urW
ウルトラの人乙でした。
エンマーゴって何気に強敵だと思うんですよね。
サブタイトルからして、タロウの首がすっとんだだったけ?
ウルトラの人乙です。
なるほど、エンマーゴを出してくるとはいい意味で裏切られましたw
来週も楽しみにしております。
ウルトラ5番目の使い魔の作者さん、乙でした。
やっぱりリュウ、セリザワとレリアの会話はしみじみしてじんときました。
次回はエンマーゴ戦か、そういえばレリアはエースの戦いをまだ見ていないんですね。
ダイナより頼りないと思われないよう、エースとメビウスには頑張ってもらいたい。
さて、誰もいないようですので、自分も18時35分ごろから投下させていただきます。
エンマーゴ懐かしいわ…
首チョンパよりお経みたいなのが画面いっぱいに流れてタロウの首が戻ってきた方が怖かった
〜第2話 見知らぬ蒼穹、月2つ〜
平賀才人、17歳。東京在住の高校生。
学業成績、運動神経、ともに並。趣味はインターネットで好物は照り焼きバーガー。
賞罰、特になし。彼女、いたことなし。
性格は好奇心が強く負けず嫌い、調子が良くて人も好く、楽天的でやや抜けているとは周囲の評。
彼、平賀才人のおおまかなプロフィールは、こんなところである。
そんな彼だが、現在混乱の極致にあった。つい先程までは修理に出していたノートパソコンを
秋葉原まで引き取りに行き、先日登録した出会い系サイトからメールが届いているか、
もしかすると彼女いない歴17年にピリオドが打てるか等と考えていたにも関わらず、だ。
付け加えておくと、才人も出会い系サイトというものの実態を理解していないわけではない。
そのほとんどが、実際には架空の人物になりすまし、それらしいことの書かれたメールを送って、
言葉巧みに利用者から料金を請求するものだということは、ニュース等で見聞きしていた。
しかし、才人はそれでも中にはインチキでない本物だってあるだろうと楽観視し、登録して
いたのである。恋人ができるかもしれないという望みと、知らない人とのメール通というちょっと
した刺激を求めて。
この時点で、楽天的だという彼に対する周囲の見方の正否は理解できることだろう。
しかし、彼はその帰り道の途中、奇妙な光景を目の当たりにした。
近道しようと入った人気のない路地に、銀色の鏡のようなものが浮かんでいたのである。
普通、こんな異常事態に人はどう反応するだろうか。大抵は警戒してかかわろうとしないか、
興味を持って調べてみるかのどちらかだろう。
そして、才人はその後者だった。謎の鏡に石を投げ込んでみたり、適当にペン先を出し入れ
したりして、どうなるか実験したりした。
すると、不思議なことに石もペンも鏡らしき存在の向こう側からは現れず、吸い込まれたように
消えてしまうのである。ちなみに、挿し込んだペン先は無事。
ますます興味を持った才人は、ついに好奇心に負け、その鏡をくぐってしまおうと考えた、
というよりも、考えてしまった。この不可思議現象への警戒心も流石に膨れ上がってきては
いたが、それにも勝る探究心が彼の体を動かした。
ぶっちゃけた話、後先考えないアホの所業である。
そして、その代償は安くはなかった。鏡のような存在に身をとび込ませたところ、得もいわれぬ
痛みが全身を苛むのである。視界が白一色に支配される中、誰かの声が聞こえるような気や、
どこかに引っ張られるような気がしたからと思ったら、今度は見知らぬ草原に立っていた。
しかも、傍には虫の羽を持った自称妖精の光る玉に、浮いて喋って変身する謎なお面という
おまけ付き。
それからその2名――2人というと語弊がありそうだ――と幾らか言葉を交わし、青い髪の
少女と髪が寂しい男性の会話を眺めたりしていたら――
「我が使い魔となせ」
――どういうわけか、少女に唇を奪われたのである。
そこまでのこともさることながら、彼女いない歴17年=実年齢である才人には、見ず知らずの
少女とファーストキッスというのはハードルが高すぎる。しかも、その少女が相当に年下らしく、
その上に映画から抜け出たような整った顔立ちをしていたのだから、尚更だ
――ってちょっと待て!! 俺、これでファーストキス喪失!? こんなわけわからん状況でか!?
初めてはやっぱり好きな子としたかったぞ!! いや、顔でいえばこの子は十分、というか俺的には
望んでも無理そうな最高レベルだけど……いやいや、こんな小さい子相手に俺犯罪じゃね!?
アウトじゃね!? あー、でも女の子の唇ってやーらけー……いやいやいや、俺はロリコンじゃない!!
人間として終わってない!!
感情の起伏が激しく、人一倍こんがらがり易い才人の脳内は、突然の事態に大パニック真っ盛り
である。
そして、キスの際は目を瞑るというどこかで聞いたエチケットを実行する間もなく、少女の顔が
離れていった。
瞬間、才人はその姿に見惚れてしまう。
身長は、140センチほどだろうか。ショートに切り揃えられた髪の毛は、細くて風に揺れて
さらさらと流れ、その深い蒼さ故に日の光の中サファイアのような輝きを見せる。
唇は小振りで、輪郭はあどけなくも形のいいラインを描き、鼻筋もきれいに通っていた。
肌はといえば、雪のように白く、瑞々しく、木目が細かいとはこういうものかと実感させられる。
何より目を惹くのは、彼女の瞳だった。赤いフレームの眼鏡の奥に覗けるその眼はやや吊り気味で、
幼い印象の顔立ちに怜悧な雰囲気を与えている。そして、その中心にある碧い瞳は、どこか空か
海を思わせた。清らかで、透明なようでいて、深く、遠く、底も果ても見通せない碧さ。
冷たく、それでいて温度が隠されているような、不思議な双眸。
けれど――その吸い込まれそうなほど美しい瞳を見ながら、才人は気付く。
――なんだ、この眼?
そこに浮かんでいた、どこか申し訳ないような、哀し気な色に――。
あどけなくも、美貌と呼ぶべきその顔立ちを無表情に覆いながら、微かに見え隠れする悲哀の
色に、才人は動きを忘れてしまった。一方的にとはいえ、口づけを交わしたためか、何故か
彼女から目が離せず、行為の理由を問うことさえできなかった。
一方、件の少女、タバサはといえば、自分の傍にいたナビィとムジュラの仮面にもキスをする。
才人にした時と、同じ言の葉を紡ぎながら。
まるで理解に頭が追いつかず、茫然とそれを見送っていた才人は、ふと左手のあたりに
違和感を覚えた。
「っ!? がっ!?」
かと思えば、それは瞬く間に膨れ上がり、強烈な痛みとなって全身を貫く。その突然な激痛に、
思わず草地に倒れ込んだ。
「グゥッ!?」
「あつっ、うぅ……!?」
ムジュラの仮面とナビィも同じ様で、ムジュラの仮面の方は地面に落ち、ナビィの方は浮いて
はいたが、苦悶の声を上げている。焼けつくような痛みが頭の中を掻きむしり、才人たちは悶え
苦しんだ。
「な、んだ……これっ!?」
たまらず、才人はきれぎれに声を絞り出す。これまではとりあえず危険という感じでは
なかったため慌てる程度ですんでいたが、今度はそうもいかない。
左手を中心に走る唐突な激痛に苛まされ、才人は自身の安全に焦りを浮かべていた。
「心配ない」
そこへ、タバサが抑揚のない、しかし微妙に申し訳なさ気な声で語りかけてくる。
「使い魔のルーンが刻まれているだけ」
「いやっんなことっいわれたって……!!」
「何故っそんなものっ、刻まれないといけないっ!?」
僅かながら辛そうにも聞こえるタバサの言葉に、しかし才人はムジュラの仮面と一緒に
反論した。
彼女の様子が気にならないではないが、使い魔のルーンという単語は意味不明だし、そんな
ものを勝手に刻まれて、その上こんな痛い目を見る等、幾らなんでも冗談じゃない。ナビィは
何も言わなかったが、やはり相当に痛がっていた。
1秒が数分にも感じられるほどの苦痛の時間、永遠に続くのではないかとさえ思えたそれも、
やがて終わりを迎える。
「っ……はぁ、はぁ……」
灼熱を伴った痛みが抜け落ち、才人は息をついた。息を整えながら、特に痛みがひどかった
左手を見やる。そこには、なにやら文字のような模様が浮かんでいた。同じ様に息の荒い
ナビィたちを見やれば、ナビィは左の上羽、ムジュラの仮面の左の触手の1本にも、似た
ような模様が浮かんでいる。
「なあ、なんだこれ?」
「俺に聞いてどうする、こっちだって聞きたいんだ」
とりあえず同じ痛みを味わったのだろう、ムジュラの仮面に尋ねるが、彼もまた自分の触手の
模様を見ながら首を――というか体を――傾げていた。それにしても、人語を解して自らの意思で
動いているらしい仮面と普通に会話しているとは、我ながら大した神経だと才人は苦笑する。
同じ苦しみを共有したらしいことで、親近感が湧いたのかもしれない。
「ふむ、君たちも珍しいルーンだね」
そこへ、先程タバサがミスタ・コルベールと呼んだ男性が、才人たちのルーンを覗き込んできた。
「ルーン? これがさっきあの子が言ってたやつですか?」
「ああ。使い魔のルーンの話を聞いたことがないのかね? まあともかく、ちょっとスケッチを
とらせてもらえるかい?」
「あ、はい」
よく理解できていないものの、年長の男性に頼まれてはとりあえず従ってしまう。そして
コルベールは才人たちのルーンとやらをスケッチし始めた。
その一方で、才人はコルベールの恰好に、段々と焦りのようなものを感じ始める。ローブと
いうのだろうか、なにやらゆったりした服に、大きな木製の杖という、いかにも魔法使いと
いった姿。
普段であれば、年甲斐のないコスプレおじさんとでも思うだろう。しかし、妖精だという
光る生き物に、仕掛けがあるわけではないらしい奇妙な仮面。そして、突然痛みと共に現れた、
この使い魔のルーン。
どれ1つを取っても、彼の普段とは程遠い代物だった。そして、それはある可能性を示唆している。
それに気付いた才人は、それを否定するべく頬をつねった。
「いててっ!!」
「? 何してるの?」
同じくコルベールにルーンをスケッチされていたナビィが、不思議そうな声で尋ねてくる。
「いや、これ夢かなあって」
「今の100回は目が覚めそうな痛みの後にそう思えるなら、流石に能天気じゃ済まないぞ」
呆れたように言うムジュラの仮面に、だよなあと答えた。答えたことで、才人の焦燥感は
更に募ったが。
「ん? ……これは……」
そこで、コルベールが何故か怪訝とした表情をする。そこへ、ムジュラの仮面が彼に問い掛けた。
「どうでもいいが、スケッチが終わったならもう戻っていいか? 図体のでかいままだと不便でな」
「ああ、構わないよ」
コルベールに確認を取ってから彼が元の姿に戻ると、タバサが再び才人たちに声を掛けてくる。
「他の生徒の邪魔になる、こっちに」
それだけ言うと、タバサは人垣ができている方とは離れた位置へ歩いて行った。その背中を
眺めながら、才人は両側の2名に聞いてみる。
「こっちにったって、どうする?」
「決まっているだろう。どうにも状況が判らんならば、ついていく他にない」
言いながら、ムジュラの仮面はタバサを追っていった。ナビィもそれに肯いて、後に続く。
「……なんだかなあ」
頭を掻きながら、才人は近くに落ちていた自分のノートパソコンを拾い上げ、タバサ達に
ついて行った。
そして、タバサが人の集まりから適当に距離を取った位置で足を止めると、赤毛の少女が
駆け寄ってくる。
「タバサ!」
少女がタバサの名前を呼べば、タバサも彼女に肯き返す。そこで、赤毛の少女は才人たちの
方に目を向けてきた。
「無事召喚できたみたいだけど、よく判らないことになってるみたいね」
「いや、よく判らないのはこっちこそなんだけど。てゆーか、よくを通り越してわけ
わかんないんだけど」
苦笑気味に言う少女に才人が言えば、ナビィとムジュラの仮面もうんうんと肯く。
「あら、そう? まあ、そうでしょうね」
すると、彼女は皮肉っぽい笑みで応えた。見れば、彼女もかなりの美貌の持ち主だ。
年齢は才人よりも1つか2つ上だろうか。ボリュームのある赤い髪は腰より長く、綺麗な
褐色の肌が健康的な印象を与える。
シニカルな笑みが浮かんだ表情は目鼻立ちが整い、蠱惑的な魅力を湛えていた。その上、
スタイルは大きな胸や、女性にしては高い身長を始めとてもグラマラスで、雑誌のグラビアモデルも
顔負けといった風情である。
人形のようなおとなしい雰囲気で美少女のタバサとは、また違ったベクトルの美少女といえた。
「とりあえず、自己紹介すべきかしら? 私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・
アンハルツ・ツェルプストー。こっちのタバサの友達よ。貴方達は?」
そこで、少女キュルケが己の名を明かした。長い上に覚えにくい名前だと少し思いながら、
才人たちもそれに応える。
「ああ、俺は平賀才人」
「コキリの森の妖精、ナビィよ」
「ムジュラの仮面だ」
キュルケは、何故かサイトとナビィの自己紹介に一瞬眉をひそめるが、すぐに笑みを取り
戻した。
「それで、貴方達は何処から来たの?」
そして、すぐさま次の質問を投げ掛けてくる。どうやら、タバサに代わってこちらの素性を
確かめようとしているらしい。
「何処って、俺はアキバ……東京の秋葉原から」
才人がそう答えれば、キュルケとタバサは顔を見合わせた。
「トウキョウやアキハバラというのは?」
僅かながら不思議そうな感じで聞き返すタバサ。その様子に、才人は不安になりながら答える。
「というのはって……ここ日本だろ? みんな日本語話してるし……」
言いながら、声が段々と小さくなっていくのが判った。才人にとって、現状での心を支えて
いたものが、揺らいでいくのが判った。
目の前の少女たちや周囲の人間は、明らかに日本人ではない。そして、今立っている風景も、
間違いなく東京近辺のそれではない。
それでも、彼らは自分と話が通じていた。つまり、日本語を話していた。外国人が皆流暢な
日本語で話している以上、ここは日本のはずである。
その考えが、この理解しがたい状況に対する、支柱となっていた。が、タバサとキュルケの
反応を前に、それさえも崩れそうになる。
「質問を変える」
不安がる才人を見ながら、タバサが僅かな思案の後に言った。
「貴方達のいた、国の名前を教えて」
ここが日本ではない――そう言われたに等しい言葉を聞きながら、才人たちは答えていく。
「……俺は、日本だ」
「ワタシはハイラル王国から」
「国じゃないが、タルミナ地方。なんという国に属するかは知らん」
人間、妖精、仮面の順に返答されながら、タバサはまた思案顔になる。
「ここはトリステイン王国」
聞き慣れない国名を言いながらタバサは才人たちを見比べていく。
「貴方達の言った国名と地名は、どれも聞いたことがない」
「あ、うん。正直、俺もどれも知らない」
才人がそう言えば、残りの2人も同じ答えを返した。
「まじで、どういうことだよ……」
茫然と呟きながら、才人は頭を抱える。彼女たちが嘘を言っているとは思えない。
というよりも、嘘で片付けるには説明不可能なことが多すぎる。
先程からちらついている懸念から逃れようと、才人はなんとなく天を仰いでみた。
刹那、その目を大きく見開くことになるとも知らずに。
「なっ!?」
本日何度目かの驚きの声を上げると、才人は目にしたままの事象を叫ぶ。
「月が……2つある!?」
「え……あぁ!?」
「ほう、確かに」
才人の言葉に反応して、ナビィとムジュラの仮面も空を見上げ、それぞれ違った反応を見せた。
しかし、才人は2人の反応に興味を示せなかった。月が2つ。幾らなんでも、これは
あり得ない。地球上に、こんな景色が存在するはずがない。
しかし、それでも頭上に浮かぶのは、赤と青の大小2つの月。その現実は、才人の頭に
浮かぶある考えを、はっきりと肯定していた。
「俺、魔法の世界に、迷い込んじまったのか……?」
小さく漏れたその言葉は、誰の耳にも拾われることはなかった。
一方、タバサとキュルケは、月に驚いている才人たちをきょとんとした顔で見つめている。
「月が2つって、それがどうかしたの?」
不思議そうな様子で尋ねてくるキュルケに、才人は猛然と言い返した。
「どうしたもなにも、月は普通1つだよ! どこの世界に2つあるんだよってここの世界なんだ
ろうけど! なんなの、ここ!? なんなの、あんたら!? 俺なんでここにいるわけ!? ここなんて
世界!? これファンタジー!? それともSF!? 地球何処よ、日本どっちよ!?」
とうとう疑問の許容量に限界がきた才人は、感情の赴くままに言葉をぶつけていく。
そんな才人に、ムジュラの仮面が呆れた声を掛けてきた。
「ヒラガといったな? 少し落ち着け。傍で聞いていて、意味判らんから」
「落ち着けって、落ち着けるかよ!」
ムジュラの仮面に怒鳴り返すと、今度はナビィが溜息交じりに言う。
「Listen! なら落ち着かなくていいから、そちらのお2人の顔を見てみて?」
「へ?」
言われて、キュルケとタバサに視線を戻す。2人の視線は、温度にこそ差があったが、ある
一点において全く同じ色をしていた。
即ち、可哀想なものを見る眼という点で。
――いや、ちょっと待て! なにそのイタい人見る眼!? 俺そういう認識か!?
それに気付いた才人は、さっきまでとは違った意味で慌てふためいた。年下だろう美少女と
年上と思わしき美人に、脳みそ的な意味で哀しそうな眼差しを送られるなど、切ないにも程が
ある。
「ちょっ、ちょっと待っててくれ!」
なので、とりあえず才人は自分が月が1つしかない場所から来たと証明することにした。
手早くノートパソコンを開き、電源スイッチを押す。
「……っ」
「へえ、なにこれ?」
モニターに起動画面が表示されていくのを見て、タバサとキュルケが驚いた反応を示すが、
才人は気にせず操作を続けた。サンプル画像から月夜の画像を選択し、デスクトップをそれに
変える。
「ほら、これ見て! 月1つだろ!」
画面を彼女たちに向けながら叫ぶ。
しかし、彼女たちの興味は、その画像に向いていないらしい。才人が怪訝としていると、
タバサが何事か呟きながら、手にしている大きな杖の先を、パソコンの上で振っていた。
「……マジック・アイテムじゃない」
「え?」
タバサの言葉に、キュルケが疑問の声を上げる。
「ディテクト・マジックに反応がない。少なくとも、系統魔法で動いてはいない」
「ちょっと待って。それじゃあ、こんなのが魔法を使わないで動いてるって言うの?」
幾らか驚いた風に言うキュルケ。自分の持ち物に思案するタバサを見ていて、なんとなく
気持ちが落ち着いてきた才人は、それに答えた。
「いや、そりゃ魔法じゃなくて、科学的っつーか工業的に作られてるから」
その言葉で、タバサとキュルケが顔を見合わせる。やはり程度に差はあれど、驚いていると
いう点では同じ表情だ。
「工業的、ということは、これは機械の類なの?」
「ああ、そうだけど」
タバサの疑問にそう答えると、彼女はまた何やら考え出す。数秒そうしたかと思えば、彼女は
ノートパソコンを指差した。
「貴方は、この絵のように月が1つの場所から来たの?」
「うん。だから、そう言ってるじゃん」
どうにか納得してもらえそうな流れになってきて、才人は安堵の息をついた。これで、
哀しい脳の人扱いは避けられそうだ。心配することが違う気がしないでもないが。
「タバサだったな。俺からも1ついいか?」
そこで、ムジュラの仮面が会話に加わってくる。才人のパソコンを興味ありげに見つめて
いたタバサが、それに答えた。
「なに?」
「あれのことだ」
言いながら、仮面の顎をしゃくって方向を示すムジュラの仮面。そちらの50メートルほど
先には、ぽっちゃりした体型の少年が杖を片手に声を上げていた。
「我が名はマリコルヌ・ド・グランドプレ! 5つの力を司るペンタゴン、我の運命に
従いし、“使い魔”を召喚せよ!」
言葉が終わった瞬間、才人は目を見開く。マリコルヌと名乗った少年の前に現れたのが、自分が
くぐった鏡のようなものとそっくり同じだったために。
驚き、それをまじまじと見ていたら、やがて鏡が消え、後には1羽のフクロウが残されていた。
「うおっ、フクロウが出てきたぞ!?」
「さっきは、金髪の娘がカエルを1匹出していたぞ」
才人が驚いていると、ムジュラの仮面が教えてくる。
「カエルって、この距離でよく判ったな」
「伊達にでかい目をしてはいない。それでタバサ」
ムジュラの仮面はタバサに向き直ると、質問を続けた。
「あの小僧、使い魔がどうとか言っていたが、お前も俺たちにそのルーンとやらを刻んだと
言っていたな?」
そこで、才人もはっとなってタバサを見つめる。
「もしや、俺達はああしてお前に呼ばれたのか?」
その質問に対し、タバサは肯いてみせる。
「マジですか……」
今現在の自分の状況を端的に、程があるほど端的につきつけられ、才人は開いた口が
塞がらなかった。
「時の神殿のせいじゃなかったのね……でも、なんでワタシたちを?」
よく判らない単語を交えつつ、ナビィもそこで声を発した。そして、才人もその言葉に同意する。
自分たちは、それぞれ全く別の場所から来たようだし、種類というか存在自体もまるで
異なる。何故こんな妙な選択肢で自分たちをこの異世界に招いたのか、理由が見えなかった。
自らが呼び出した3名の視線を浴びつつ、タバサはゆっくりと話し始める。
「使い魔の召喚、サモン・サーヴァントは、行うのは自分の意志でも、何を呼ぶかまでは
メイジの自由が利かない」
「メイジ?」
才人が聞き返せば、タバサは答えてくれた。
「私たち、魔法を使う者のこと」
魔法使いということかそういえば英語の辞書にそんな単語あったっけか、と才人は納得すると
ともに、やっぱここ魔法の世界かファンタジーな等とも考えていた。
そして、それをよそにタバサはナビィへの返答を続ける。どことなく、暗い声音で。
「今言ったように、私の方では何を召喚するかまでは選択できない。私も、貴方達が召喚
されるまで、何が現れるか判らなかった」
「マジですか……」
再び唖然のセリフを才人が呟いていると、タバサの方は、今度はムジュラの仮面の方に杖を
向けた。
「少し、ディテクト・マジックをかけてみていい?」
「ディテ……なんだって?」
その単語が判らないのだろうムジュラの仮面に、タバサは教えた。
「魔法が使われているかどうか、調べる呪文」
「ほう、別に構わないが」
許可をもらうと、早速タバサは呪文らしきものを呟きだす。それを聞きながら、才人はそれが
自分のパソコンに対して使っていたのと同じ言葉であることに気付いた。
シエンのお面
すると、タバサは微妙に眉をひそめ、ムジュラの仮面に問い掛ける。
「……貴方も機械なの?」
「? いや、俺は魔道の呪物だ。歯車仕掛けや電気仕掛けのような、無粋な代物ではない」
――電気仕掛けの概念なんてあるんか
呪物と名乗っている割に近代的な発言をするムジュラの仮面を、才人は奇妙な眼で見つめた。
彼が機械の獣を手下にしていたこと等、才人には知る由もない。
「どういうこと?」
「? どうしたの、タバサ」
何故か訝し気な声を出すタバサに、キュルケが問い掛ける。
「ディテクト・マジックに、反応がない」
「え、嘘!?」
ノートパソコンの時より明らかに驚いた表情で、キュルケはムジュラの仮面を見た。そして、
タバサのものより細く短い杖を取りだすと、タバサが唱えていたのと同じ呪文をムジュラの
仮面に向ける。
「本当……貴方、魔法を使わないで浮いてるの?」
「いや? この浮遊は魔力によるものだが」
何を言っているんだとばかりに答えるムジュラの仮面を、少女たちは不審気な眼差しを送る。
「魔法を使っているのに、ディテクトできない?」
「確かに、どういうことかしら?」
「少し、ワタシの考えを言っていいかしら?」
腑に落ちない様子の彼女たちにナビィが言うと、全員の視線が彼女に集まった。
「さっき、才人君が持っていた機械にタバサさんは系統魔法で動いていないって言ってた
わよね。今の呪文は、その系統魔法って種類の魔法に反応するものなの?」
「そう」
タバサが答えると、ナビィは推論を続けた。
「それなら、彼はそれと違う魔法を使っているってことじゃない?」
はっとした表情で、2人はムジュラの仮面に向き直る。ムジュラの仮面も、ナビィの考察に
肯いてみせた。
「それが妥当な考えだな。かけられて判ったが、確かに俺の魔法とは異なるらしい」
「貴方は先住の魔法を使うの?」
「なんだ、それは?」
タバサの疑問に、ムジュラの仮面は質問で返した。
「私も詳しくはないけれど、精霊の力を借りて行う魔法と聞いている」
そうタバサが言えば、何故かムジュラの仮面は笑い声で応える。
「ハハハ、ならばそれも違うな。俺は魔族、精霊とはむしろ敵対関係だ」
「あ、やっぱり魔物だったんだ」
ムジュラの仮面の言葉に、ナビィが反応した。
「まあな。やっぱりということは、見当はつけていたのか?」
「モンスターでもないのに生きている仮面なんてそうそうないし、物や道具が魔物化することはそう
珍しくないわ。石像のアモスとか、氷像のフリザドとか」
「……そうか、俺は連中と同系統なのか」
ムジュラの仮面は複雑そうに言うが、そんな2人に才人は問い掛けてみる。
「なんか話が合ってるけど、お前ら同じ様な所から来たのか?」
ナビィとムジュラの仮面は一瞬顔を見合わせるが、やがて互いに首を横に振った。
「違うと思うわ。タルミナって地名を聞いたことがないのもあるけど、なんていうか魂の質が
ハイラルの魔物と違ってる気がするもの」
「同感だ。お前も俺の知る妖精たちとは、羽音や輝きが異なって見える」
つまり、この2名は互いに似た世界ではあるが、やはり異世界の住人ということらしい。
それも、才人がいた地球とも、今彼らがいるこの世界ともどうやら違う世界からだ。
3名が3名とも違う世界から違う世界へやってくるとは、なんともスケールの大きな話だった。
「なんだかなあ……それで、呼ばれた俺たちはどうすりゃいいんだ?」
「それは……」
「では、全員使い魔を召喚できましたね」
才人の疑問に答えるタバサの声を、コルベールの声が遮る。才人たち5名の視線がそちらに
向けば、コルベールは手を叩いて周囲の者たちに指示を出していた。
「それでは、これにて春の使い魔召喚の儀式は終了とします。皆さん、教室に戻りますぞ」
言いながら、コルベールが杖を振って何事か呟くと、その体が宙に浮かび上がる。見れば、
周りの少年少女たちも同じ様に飛び上がり、桃色がかったブロンドの少女などは翼がある青い
ドラゴンにまたがったりしていた。
「マジでファンタジーなんだな、ここ……」
その非現実的な光景に、もはや精神がまいるどころか感心してしまう才人だった。そろそろ
感覚が麻痺してきたのかもしれない。才人の神経が元々図太いことも一因しているだろうが。
「ミスタ・コルベール」
そこで、同じく浮かび上がったタバサとキュルケが、コルベールの許へ飛んでいく。
「ミス・タバサにミス・ツェルプストー、どうしたのかね?」
「はい、私とタバサなのですが、次の授業を公欠させていただきたいのですが」
「公欠? 何故かね?」
首を傾げるコルベールに、キュルケは言葉を続けた。
「はい。彼女が召喚した使い魔たちですが、通常召喚される使い魔とは異なり、皆明確な
自意識を持っています。その上、彼らは使い魔の存在すら存じていないようです」
「なるほど、そういえば、使い魔のルーンのことも知らないようだったな」
「ええ、ですので、まずは彼らに状況を説明すことから始めた方がよろしいかと思いますの。
けれど、私の小さな友人は言葉が多くありませんから」
言いながら、キュルケはタバサを後ろから抱き締める。
「ですので、私がフォローしたいと思いまして」
「ふむ、君の言う通りだろうね。判った、公欠を認めよう。君たちは彼らとの交流に
努めたまえ」
「ありがとうございます、ミスタ・コルベール」
「ありがとうございます」
タバサとキュルケはコルベールに一礼すると、才人たちの許へ戻ってきた。
「待たせた」
「いや、いいんだけど」
短く言うタバサに答えると、続けて才人は質問する。
「さっき授業とか公欠とか言ってたみたいだけどさ、2人って学生なのか?」
「ええ。ほら、あそこに建物があるでしょ? あれがトリステイン魔法学院。で、私たちは
あそこの生徒ってわけ」
タバサの代わりにキュルケが答えると、才人、ナビィ、ムジュラの仮面は揃ってなんとも
いえない表情――というか雰囲気――になる。
「ということは、俺たちは学生の授業の一環で今ここにいるわけか」
「笑えねー……」
微妙な声を出すムジュラの仮面と才人に対し、タバサが俯きがちに言葉を発する。
「ごめんなさい」
「あ、いや、わざとじゃないんだろ? 仕方ないよ」
哀し気に言うタバサに対して、慌てて才人はフォローした。
仮面と才人、いいコンビだなw
「それよりさ、もう少し使い魔ってののこと説明してくれるか? まださっぱり判らない
からさ」
「ええ。だから公欠頼んだんだもの」
「とりあえず、学院に戻る」
言って、学院の方を向くキュルケとタバサ。才人もそちらを見やると、途端顔をしかめる。
「あそこまで歩いてくのかよ……」
最低でも1qは向こうに建つ城のような外観の建物を見て、ぼやきが漏れた。他の4名は
皆飛べるが、自分は徒歩で行くしかない。
憂鬱な気分で頭を掻いていると、ムジュラの仮面が声を掛けてくる。
「なら、俺の力を使うか?」
「え?」
聞き返す内に、ムジュラの仮面は裏側を才人の顔に向けた。
「俺を被ってみろ、俺の力を貸してやれる」
「お前の、力?」
その裏側を見ながら、才人は躊躇した。言葉をしゃべり、自らの意思で動き、裏側から
不気味な触手を生やしてうごめかす――そんな仮面を被るというのは、正直かなり遠慮したい。
しかし、同時に興味もあった。魔法の力を操る仮面、その力を貸してもらえる、それは
どんな感覚なのだろうか、自分は何を得られるのだろうか。
警戒と好奇心、2つの感情のせめぎ合いは、やがて決着を見た。即ち、好奇心の勝利で。
ちなみに逡巡の時間5秒ジャスト。好奇心のせいでこの状況にあるというのに、懲りない
男である。
才人はムジュラの仮面に手を伸ばすと、おもむろに自らの顔に押し付けた。
刹那、何かが変わっていった。自分が、それまでの自分とは違っていくことを感じた。
全身を熱いものが駆け巡っていく。血液の流れが、そのまま力の奔流へ変わったような
感覚に、心がどんどん昂っていく。
今なら、普通なら不可能といえることができる気がした。この力なら、様々なことを
なしえる気がした。
「どんな感じだ?」
経験したことのない高揚感に酔いしれていると、不意にムジュラの仮面が聞いてくる。
顔に直接つけたものから声を掛けられるのは、少し変な感覚だった。
「ああ、なんかすげえよ。今なら、色んなことができそうな気がする」
「色んなこと、か。なんでも、とはいかないか?」
言われてみて、才人は少し考えてみる。
「いや、そこまで自信は持てないな」
「そうか……どうやら想像以上にパワーダウンしているな」
やや沈んだ声でムジュラの仮面が言うが、すぐに気を取り直した声を上げた。
「だが、宙を舞うくらいならできるだろう」
「あ、うん。それくらいなら」
答えながら、空中へと浮かび上がる。今までの常識ではありえないはずのそれは、
とても自然に行えた。まるで、足を前に出すような感覚で。
「へえ、すごいじゃない」
キュルケが感心したように言うと、タバサが続く。
「それじゃあ、行く」
その言葉に全員が肯き、5名は魔法学院へと飛んでいくのだった。
「きゅるきゅる……」
最初から最後まで忘れられていた、サラマンダー1匹を置き去りにして。
〜続く〜
三重県から誰かを召還するのかと思った
投下乙です
フレイムカワイソスwww
一応左手にルーンってことはガンダなんだろうか?
にしてはタバサ普通に魔法使えるようだし
この辺どうなってるのか期待
俺も三重県かとオモタ
もうみえにしかみえない
>>602 五霊闘士か?
オーキ伝の主人公が確かあのあたりの人だったし
>>三重の人
乙です、ゼルダは夢を見る島以降触ってなかったが、少し興味が出てきました
以上、今回はここまでです。支援をしてくださった方々、どうもありがとうございます。
3体召喚されているので、それぞれの出番の関係上無駄に字数が多くなる……
我ながら構成力のなさを痛感しとります。
次回はやっとこ才人たちに使い魔とは何かを説明する段階、キュルケ視点から
スタートです。
三重の人って普通の人じゃねえかw
無表情な人だよ
ルイズがきゅいきゅい召喚したのか?
取り合えず、ルイズおめでとうと言っておこう。
しかしルイズとシルフィードって性格合いそうにない気がする。
少なくとも「お姉さま」とは呼ばないような……。
>>611 ルイズが調教するに決まってるだろ
サイトに電流の流れる拘束具を用意するほどだし
イルククゥは甘えん坊だし、ルイズは風韻竜召喚したことで舞い上がって溺愛するだろうから相性はいいよ。
そして名前がイルククゥのままの可能性大。
おい、おチビ。おなかがすいたからお肉を寄こすのね
ななな、チビって、いまチチチ、チビって言ったわね、このバカ竜!
的な
ハルケギニアを爆裂的に鎮火せよ!
>>613 なんかゼロ扱いされてたことの反動で、風韻竜召喚したってあっちこっちに自慢しまくりそうだなぁ。
ルイズなら最初の授業でも絶対教室にシルフィード連れてくるぞw
ルイズがわざわざキュルケのとこに自慢しにきそうだなw
619 :
」:2010/03/21(日) 23:05:37 ID:P34g+fAT
やっぱ、人間体型にならないと能力を発揮出来ないのかな?
シルフィードって、体術や剣術使えたっけ?
>>617 んで自信満々に練金やって爆発させて、シルフィードが内心で突っ込みを入れるんですね解ります。
>>620 「二本足だと歩きにくいから化けたくない」とか言ってたな。
ルイズは韻竜であること隠しやしないだろうが可愛がりはするだろうから
シルフィード的には隠さなくていいやたらふく飯は食べさせてもらえるはで案外、楽かも
そしてフーセンドラゴンみたいに丸く太り、飛べなくなると。
お久しぶりです
少し離れてる間に両者で進展がありましたが、特に問題ありませんでした
・・・さほど修正する必要もありませんでした(離れた理由は別ですが)
空いてるようなので50分頃から投下します
その夜、ルイズの部屋を訪れた柊は疲れきった表情でテーブルの傍に置かれた椅子に崩れ落ちていた。
天井を仰ぐように背もたれに体重をかけ、両の足を投げ出して小さく呻く。
「くそう……あのオッサンふざけやがって……」
宝物庫を後にしてすぐ、柊はすぐにコルベールに捕まって彼の研究室とやらに連行されたのだ。
薬品やら何やらのにおいが鼻の付くその部屋で、柊はコルベールにファー・ジ・アースの事を根掘り葉掘りうんざりするほどに質問された。
始めの内は一応節度を持って答えていたのだがいい加減億劫になってきて、手っ取り早く0-Phoneを見せたのだ。
これがまずかった。
コルベールは狂喜乱舞して0-Phoneとそのデータベースにある情報を漁り始めたのだ。
しかし柊達がハルケギニアの文字を知らなかったのと同様コルベールもファー・ジ・アースの文字を読めなかったし、放っておくと分解しかねない勢いだったので柊は結局その場を離れることができなかった。
おかげさまで柊は食事を取ることさえできずについ先程まで付き合わされる羽目になったのである。
ちなみに0-Phoneはちゃんと回収してある。
今頃コルベールはデータを書き取った分厚い紙束を見ながら研究にいそしんでいるだろう。
もっともデータベースに載っているのは所詮薄っぺらい知識でしかないので、技術体系も魔法体系も異なるハルケギニアで再現する事はできないだろうが……。
「そういやエリスはどうした?」
ふと部屋の中にエリスがいない事に気付いて柊は勉強机に陣取っているルイズを見やった。
「寝てるわ。部屋に戻って服の整理しようとしたら、あの子倒れちゃって」
「倒れたぁ?」
見れば確かに、大きなベッドが人型に膨らんでいた。
何があったのかと再びルイズに眼を戻したが、彼女にも理由がわからないらしくルイズは眉を潜めている。
「何が不満だったのかしら。やっぱりいくら安くっても千ぐらいじゃだめだったってこと……?」
「エリス……くっ」
どうやら本気で理由がわかっていないルイズを見て、柊はエリスに同情の涙を禁じえない。
ルイズに悪気がない、というのは柊にもエリスにもちゃんとわかっている。
一般人と金持ちの価値観の差が悲劇の元凶なのだ。
(つうかもしかしてここにいる貴族って皆こんな感じなのか……?)
今何気なく居座っているこの場所も何気なくとっている食事も、実は眼が飛び出るほどの高級な場所なのかもしれない。
そう考えると柊はこの学院にいるのが無性に恐ろしくなった。
もしここを出る時に滞在賃をまとめて請求されたら……帰る方法が見つかっても一生帰れないかもしれない。
「ところであんた、なんでここにいるの?」
柊が空恐ろしい未来予想図に思いを馳せていると、机に頬杖をついたルイズが半眼で柊をねめつけるように言った。
「ギーシュの所に居候してるんじゃないの? それとも、ゲボクの本分を思い出して戻ってきたの?」
「冗談だろ。ギーシュの事がなくてもここで寝泊りするつもりはねえよ」
ギーシュから決闘を申し込まれたのでこれ幸いと転がり込んだ柊だが、それがなくともルイズの部屋からは出て行くつもりだったのだ。
何しろこの部屋――というか、彼女の寝泊りしているこの宿舎は女子寮なのである。
ルイズの方は使い魔、いやゲボク扱いとして全く気にしていないが、他の女生徒は完全に割り切ることはできないらしくすれ違うたび微妙な視線を送られるのだ。
「部屋に戻ったらギーシュから言伝があってな。なんでもキュルケが呼んでるんでお前の部屋に来いって」
「……キュルケに?」
その名を聞いた途端、ルイズの眼が吊り上り剣呑な表情になった。
それに示し合わせたように部屋の扉がノックもなく開かれ、艶やかな焔色の髪の少女が部屋に乗り込んできた。
「ダーリン、来てくれたのね!」
「……ダーリン?」
喜色を称えて歩み寄ってくるキュルケに柊は怪訝そうな表情を浮かべる。
しかしキュルケはそんな彼の顔を委細気にする事なく、両の手を広げて柊に抱きついてきた。
「ちょっ……!?」
「な、何してんのよツェルプストーッ!!」
柊は泡を食ってキュルケを引き剥がし、ルイズは怒りも露に叫んだ。
キュルケはルイズの怒号を無視して柊の手を取り、うっとりした目線で彼を見つめたまま口を開く。
「あたしね、恋をしたの」
「……はあ」
「光を纏ってワルキューレをなぎ倒す貴方の姿、とても刺激的だったわ。見ていてどんどん胸の鼓動が高鳴って……貴方がギトーの杖を叩き切った時、あたしの心も一緒に切って落とされてしまったの」
「……はあ?」
ギーシュの決闘が終わった際には、キュルケはエリスの事を考えて躊躇はしていた。
が、その後のギトーとの一戦を見て彼女はそんな躊躇が完全に吹き飛んでしまった。
ギーシュ程度のメイジを倒せる人間なら、探せばそれなりにいるだろう。
しかしギトーは仮にもスクエアクラスのメイジなのだ。
これを真っ向から打ち倒せるような『メイジ殺し』――いや、杖だけを切って不殺ができるのならそれ以上だ――は国どころか世界レベルでも希少な存在といっていい。
そんなレアモノを前にして恋に恋する乙女の事情を慮ってあげることなど、できようもなかった。
「せっかくの虚無の曜日だから二人きりで過ごそうとしたのだけど、ダーリンったらルイズと出かけてしまうんだもの。寂しかったわ」
キュルケはもじもじとしながら柊の手を弄くる。
柊は手を離そうとしたが、がっちりと捕まえられて逃げられなかった。
「いつまで握ってんのよ! さっさと離しなさい!!」
ルイズが肩を怒らせて詰め寄り、強引にキュルケと柊を引き剥がした。
そんなルイズをちらりと見やった後、キュルケは悲しそうに柊を見つめた。
「なんでも剣を買ったんですって? しかも錆びだらけのボロ剣を。ダーリンほどの剣士にそんな得物しか与えないなんて、かわいそう」
「……ありゃお前"等"だったのか」
言いながら柊はちらりと目を扉の方に向けた。
扉の脇ではキュルケと共に入ってきたタバサが壁を背に預け、我関せずと本に眼を落としている。
武器屋でデルフリンガーを購入した後、妙な気配を感じたのだ。
敵意は感じなかったので放っておいたが、どうやらキュルケ達だったらしい。
セリフからすると、デルフが錆を払ったところは見ていないようだ。
「な……何言ってるのよ! わたしはちゃんとした剣を買おうとしたわ! それをコイツが――!!」
「そんなの謙遜に決まってるじゃない。そんな事もわからないなんて、ゼロのルイズは甲斐性までゼロなのね」
「なんですってぇ!?」
まさに怒髪天、といった様子で怒り狂うルイズをキュルケは鼻で笑い、柊から離れてタバサの方へ歩み寄った。
そして彼女はタバサから渡されたソレを、見せ付けるように掲げて見せた。
「ルイズの選んだボロ剣なんかより、ヒイラギにはこっちの方がずっと似合うわ!」
「それは……!?」「げえ……っ!?」
ソレを見てルイズが驚愕に呻き、柊がくぐもった悲鳴を上げた。
キュルケが手にしていたのは最初に店主から薦められたシュペー卿の大剣だった。
お値段二千エキュー。おそらく二千万円以上。
「どう、ヒイラギ? ルイズのボロ剣なんかよりこっちの方がいいわよね? あたしの想いは三千エキューなんかじゃ足りないけど、これだけでも受け取って欲しいの」
本当は値切りまくって新金貨千で手に入れたのだがそんな事はおくびにも出さず、キュルケはしなを作って柊に詰め寄った。
柊はその大剣とキュルケをしばし凝視した後、
「……いや、要らねえ……てか、それ、もういいから……」
げんなりとした表情で言った。
「……え?」
キュルケの表情が笑顔のまま凍りつく。ルイズもぽかんとして柊を見やっていた。
「もうデルフ……ルイズの買ってくれた剣があるから。悪ぃけど……」
「……」
キュルケは呆然としたまま柊を見やっていた。
今の状況が信じられなかったのだ。
容姿性格体形ありとあらゆる点においてルイズに劣る条件はなく、貢物でも遥かに上をいっているはずなのに拒否されたのだ。
生まれて初めて経験したこの事態に彼女は上手く対処することができなかった。
「――っふ。うふふふ……」
と、地の底から響くようなくぐもった笑い声が聞こえた。
柊とキュルケが眼をやると、そこには手を腰に当て、自信満々に胸を反らすルイズがいた。
「残念ねえツェルプストー。ヒイラギは『わたしが選んだ剣』の方がいいんですって。まあ当然よね、だってヒイラギは『わたしの使い魔』なんだから。
ちょっと媚を売ればすぐに尻尾を振るような奴等とはデキが違うのよ……大事なことだから二回言うけど、ヒイラギは『わ た し の 使 い 魔』なんだから!」
「……っ」
意気高々と言うルイズにキュルケはギリ、と歯を噛んだ。
何が気に入らないって、台詞云々よりも隠そうとして全然隠れていないにやけきった面が気に入らない。
しかし言い返す事ができなかった。
柊が自分の買った剣よりもルイズの買った剣を選んだ事実が覆らないからだ。
キュルケは大きく深呼吸すると胸の裡に渦巻く感情を押さえつけて、努めて平静を装って柊に笑顔を浮かべた。
「……残念だわ。でもせっかくだから受け取って下さる? どうせあたしは使わないものだし、お近付きの印に差し上げるわ」
「いや、けどよ……」
言いながら大剣を差し出すキュルケに柊はなお渋ったが、脇からルイズがそれをひったくって満面の笑みをキュルケに投げかける。
「あーらそーお? わざわざありがとうね、キュルケ。せっかくだから頂いておくわ。まあどうせ使わないけどね。なんせヒイラギはわ た し の 選 ん だ 剣 を使うんだから」
「……っっ」
笑顔を浮かべたままキュルケが再び歯を噛み締める。見ればこめかみに青筋が浮かんでいた。
彼女は仰々しく焔髪を掻きあげると、優雅に踵を返して柊から離れると、
「時間も時間だし今日はお暇するわ。今度は二人っきりでお話しましょうね、ダーリン?」
僅かに震える声でそういって、足早に部屋を後にした。
キュルケに続いてタバサも部屋を出る。
扉を閉める間際、タバサが何事かを呟いて杖を振った。
音もなく扉が閉じられた途端、
「 !!!!」
タバサの『サイレント』を持ってしても抑えきれない怒号らしき声が響き、次いで寮全体が揺れるような衝撃が襲ってきた。
テーブルがガタガタと揺れ動き、天井からぱらぱらと埃が零れおちる。
「ふぁっ!?」
その衝撃で眼が覚めたのか、ベッドで眠っていたエリスが慌てて身を起こして辺りを見回した。
「……お、エリス、起きたか……」
「ひ、柊先輩? どうしたんですか? 何かあったんですか?」
普段この部屋にいないはずの柊を見とめてエリスは僅かに頬を染めて髪を撫で付ける。
「いや、それがな。キュルケが――」
頭をかきながら柊が説明しようとすると、それを遮るように。
「――あっははははは!! ざまぁ見なさいツェルプストー!!」
今度はルイズが壊れたように馬鹿笑いを始めて手にしていた大剣を放り投げた。
慌ててそれを拾い上げる柊をよそに彼女は踊るようにくるくると回りながらベッドに向かい、ぽかんとしているエリスに飛び掛かる。
「きゃあっ!?」
避けようとするも間に合わず、エリスは飛び込んできたルイズに押し倒された。
ルイズはエリスをぎゅうぎゅうと抱きしめながら、感極まったように声を上げる。
「エリス! 見た? 見た!? 今のキュルケの顔!!」
「え? えぇ?」
「最高だわ!! 今日の事はラ・ヴァリエールの輝かしい歴史の一枚に加えるべきね!! あはははははは!!!」
「ル、ルイズさ……ひゃあっ!?」
笑いながらルイズはごろごろとベッドを転がりまわり、抱き潰された格好のエリスもそれに巻き込まれてもみくちゃにされる。
よほどキュルケに意趣返しができたのが嬉しかったのだろう、ルイズの奇行と笑い声が収まったのは実に十分ほども経ってからだった。
「……はあ、すっきりした」
長い間暴れまわったおかげで髪も服も乱れ息も上がっていたが、ルイズは満ち足りた表情を浮かばせている。
エリスはといえば何が何だかさっぱりわからなくてただただ憔悴するばかりだったが、目の前の彼女の顔を見てなんとなく安堵を感じた。
ルイズと出逢い共に生活を始めてから、『ゼロのルイズ』と揶揄されながら学院生活を送る彼女のこんな溌剌とした表情を見た事がなかったからだ。
……と、そこで。
エリスはふと自分達に向けられている視線に気付いた。
「はわぁ!!」
素っ頓狂な声を上げてエリスが顔を真っ赤に染めた。
柊が立派な大剣を手持ち無沙汰に弄くりながら、二人を眺めていたからだ。
「な、なに見てんのよ!」
ルイズもそれに気付いて顔を赤らめ、乱れた髪と服を直しながら叫ぶ。
すると柊は軽く頭をかきながら、小さく笑みを浮かべて言った。
「いや……お前、そういう顔もできるんだな」
「!?」
「いつもしかめっ面とか澄ました顔してたからよ……まあそっちの方が似合ってると思うけど」
「な……っ」
ルイズの顔が真っ赤に染まった。
隣でそれを聞いたエリスは――柊の意見には同感ではあったが、何故か心の中でもやっとした。
「な、何言ってるのよ。ゲボクのくせに生意気なこと言って……!」
「都合のいい時だけ使い魔扱いかよ……」
「うるさいわね! それよりその剣、使ったら承知しないわよ!」
顔を赤らめたまま、誤魔化すようにしてルイズは柊の持っている剣を指差した。
「あ? ああ、これか。使う気はねえよ。デルフがあるからな」
「そ、そうよ。わたしが買ってあげた剣があるんだから、キュルケの剣なんて必要ないんだから」
「当然だろ?」
支援
「えっ……」
さらりと返した柊にルイズは思わず言葉を詰まらせた。
柊は大剣を月衣に収納した後、まっすぐにルイズを見つめて口を開く。
「俺はお前の買った奴……デルフじゃなきゃダメなんだよ」
「ヒ、ヒイラギ……そこまで……」
「あ、あの……ルイズさん……」
ルイズよりは多少付き合いが長く、柊の性格を把握しているエリスがおずおずと口を挟んだ。
しかしルイズはそれに気付かず、どこか照れたような表情を浮かべてもじもじと両の手の指を絡めた。
「な、なによ。普段いけ好かない態度のくせして意外と忠誠心高いじゃない……ツンデレって奴なの?」
そんな彼女の様子に柊は小さく首を傾げた後、爽やかに笑いながら言った。
「……何しろもうデルフと契約済まして魔剣にしちまったからな!」
「…………………はい?」
ルイズの表情がぴしりと固まる。
しかし柊はそれに気付かず、したり顔で言葉を続けた。
「ほら、俺、魔剣使いって言ったろ? だから魔剣以外の剣を使ってもあんまり意味がねえんだよ。まあ契約変更できないことはねえけど、デルフもうるせえだろうし」
「ル、ルイズさん……」
「……それだけ?」
「いや、それだけじゃないぞ。ちゃんと性能の事も考えてる。錆がなくなったデルフなら能力が付加されてる分有利だしな!」
「…………………それだけ?」
「他に何かあるのか?」
「…………………」
「ル、ルイズさん落ち着いて……っ!」
小刻みに震えながら黙り込んでしまったルイズ、そして酷く慌てた様子で彼女に縋りつくエリスに柊は怪訝そうな表情を浮かべたが、
それよりも渡されてしまった大剣の処遇の方が彼にとっては重大事だった。
「しかし、あの剣はどうすっかな。この世界で返品ってきくのか? なあ――」
「用事が終わったんならさっさと帰んなさいよこのゲボクーッ!!」
「ごあっ!?」
ルイズから放たれた失敗魔法が炸裂し、直撃を受けた柊は吹き飛ばされて窓を突き破りながら退室していった。
「柊せんぱあぁい!?」
夜風にエリスの悲鳴が響き渡った。
※ ※ ※
――そして彼女は夢を見る。
そこは閉ざされた世界。そこは閉ざされた心の檻。
茨の鎖に繋がれているのは、行き場をなくした一人の少女。
静謐に沈んだその場所で、一体どれほど刻を過ごしたのだろうか。
思考する事さえ放棄した少女の裡に、ノイズが奔った。
ざくり、ざくりと茨を切り刻む音。
抉られるたびに痛みが走る。その片隅で、心が跳ねる。
辿り着いて欲しくないと思いながら、ココに来て欲しいと恋焦がれる。
やがて現れたのは、一人の青年。
魔剣を携えた彼は無遠慮に彼女の心を踏破して底に辿り着く。
顔を上げて彼の顔を見た瞬間、涙が零れそうになった。
それは悔やみの涙か、嬉しみの涙か。
青年はゆっくりとその魔剣を振り上げると――
―――――少女の胸を貫いた。
瞬間、意識が広がる。
海底のような蒼色から、天照すような金色に。
己が身を貫く魔剣を携えた彼は、少女が今まで見た事のない表情を浮かべていた。
それは敵意の目線。明らかな殺意。
彼は胸を貫く魔剣に力を込めて、何かを言った。
その言葉が終幕。
命が穿たれ消え果てる。存在が砕けて消え果てる。
その身が幾十幾百の『欠片』となって砕け散る――
※ ※ ※
「……」
エリスは夜闇に沈む部屋の中で、ゆっくりと身を起こした。
僅かに眉根を寄せて、小さく溜息をつく。
何か――夢を見ていたような気がする。
それがどんな内容だったのか、彼女はそれをほとんど憶えていない。
過去の体験だったような気もするし、まったく覚えのないキオクだったような気もする。
ルイズと契約をして以来、毎晩のように経験する夢だ。
知らず彼女は自らの胸に手を添えていた。
これもその夢を見た後に決まってする行為。
何故かよくわからないが、起きた後は胸に熱さを感じるのだ。
刻まれたルーンが熱を持っているのか、それともその奥に何かがわだかまっているのか。
要するに――エリスは何一つ理解できることがない。
「……ルイズさん?」
ふと部屋を見渡して見れば、隣で寝ていたはずのルイズがいないことに気付いた。
時計を見やればそろそろ日付が変わろうかという時刻。
彼女はベッドから降りると、肌を撫でるような冷気に僅かに身を震わせた。
春先とはいえ深夜に差しかかろうとする夜気はまだ少し冷たい。
まして今夜はルイズが破壊した窓がそのままで、外気がそのまま中に入ってきているのだ。
改めて部屋を見回してみてルイズが部屋にはいない事を確認すると、エリスはクローゼットから服を取り出し軽く羽織ってから部屋を後にする。
その途中、何気なくルイズの勉強机を見やる。
そこに置かれた数冊の本を見つめた後、エリスは小さく笑みを浮かべた。
本塔を臨む広場の片隅で、ルイズは一人座って夜空を見上げていた。
疲労で僅かに汗ばんだ身体をそのままに、彼女は夜闇に浮かぶ双月をただじっと見つめる。
特に何か意図があったという訳ではない。
強いて言えば地上に広がる惨状をあまり見たくない、というくらいだ。
休憩がてらに空を見上げて――そのまま見入ってしまっただけ。
当然ながら紅と蒼の月を見上げるのはこれが初めてではないのだが、何故か最近になって妙に心がざわめくのだ。
「……なんだろ」
思い入れなどないはずなのに何故か奇妙な懐かしさを感じて、ルイズは胸に手を添える。
それまであったはずのものがなくなっているような感覚。
いや、なくなったというよりは――
「ルイズさん?」
背後から響いた声にルイズは大きく身体を跳ねさせ、慌てて振り返った。
そこには夜着を羽織ったエリスがいた。
なんだ、と呟いてルイズは彼女から顔を逸らし、背を丸めて目の前の広場に眼を向けた。
隣にエリスが座っても、ルイズは眼前の光景から眼を離さない。
広場にはいたる所に大小の穴と焦げ跡、標的にでもしていたのかぼろぼろに朽ちた杭がいくつか散らばっている。
……なんのことはない、いつもの『魔法』の結果だった。
「……練習、してたんですか?」
「……」
エリスの問いにルイズは答えなかった。ただ、丸めていた背中を更に縮こませただけ。
エリスはそれ以上何も言わなかった。
夜闇の中に沈黙が降りる。
しばしの静寂の後、囁くように声を漏らしたのはルイズだった。
「約束、したでしょ」
「え?」
「貴方に認められるような、ちゃんとした主になるって」
「……はい」
「色々考えたんだけど、正直どうすればいいのかよくわかんなくって。だから……今まで通り、とりあえず普通に魔法が使えるようになろうって」
「……はい」
エリスには決して眼を合わせないまま、呟くように語るルイズを彼女はじっと見守っていた。
ルイズはそんな彼女の視線を受けながら、懐かしい感覚を覚える。
先ほどの双月とは違う、心当たりのある懐かしさだ。
「でも、やっぱりできなかったわ。召喚の儀式に成功して、使い魔もできて、何か変わるかと思ったのに……何も変わらない」
恐らく儀式を行ったあの日にエリスや柊に対して色々とぶちまけてしまったからだろう、ルイズは学院の誰にも言わないような台詞を紡ぐ。
実家にいた頃は姉にそうやって弱音や愚痴を漏らしていた。
そうすると、弱気な発言をしているはずなのに何故か心が軽くなっていくような気がするのだ。
「……一度も成功したことがないんですか?」
「何度も何度もやってると、ごく稀に成功する時もあるわ。でもそんなまぐれ当たりみたいなの、『成功』とは言わないでしょ? 成功した実感なんて何一つないもの」
得意な系統の魔法を唱えると自分の裡に何かが生まれ身体を巡っていく感覚がするのだという。
だが一度としてルイズはそれを感じたことはない。
ごく普通に、皆と同じようにしているのに何故か爆発して、何故か稀に成功する。
なんで爆発するのかわからない。なんで成功したのかもわからない。
使った回数、行った時間、魔法の系統、およそ考え付くことはこれまでにあらかた試してみた。
だが何の光明も見えはしなかった。
魔法を学び始めて十年余りかけて――何一つ進むことはなかった。
ルイズは自嘲めいた笑みを浮かべて、呟いた。
「……わたし、やっぱりゼロなのかしら」
「ゼロじゃないですよ」
間をおかずに返ってきたエリスの声にルイズは思わず顔を上げ、彼女を見やった。
エリスはルイズの視線を受け止めたまま少しだけ言葉を選ぶように間を開けると、優しく語り掛ける。
「魔法が使えなくったって、ルイズさんはルイズさんです。
私、今まで一緒に暮らしてきて、少しだけルイズさんの事を知りました。
授業を真面目に受けてて、勉強を頑張ってる事も知ってます。魔法を使えるようになるために練習してる事も、今知りました。
私と柊先輩がこの世界に来た時色々教えてくれたのも、服を買ってくれたのも……魔法のことはよくわかりませんけど、少なくともルイズさんのそういう部分は、ゼロじゃありません」
「……」
なんだか話をはぐらかされたような気もするが、さほどルイズは憤りも不満も感じなかった。
彼女が今まで生きてきた世界――貴族の世界では、その大前提に魔法がある。
ゆえにその大前提において『ゼロ』と呼ばれていたルイズは、その他の部分についてもほとんど認められることはなかった。
それは貴族同士だけでなく、貴族を見る平民からの視線も同じだった。
エリスの言った台詞自体は初めて耳にする類ではない。
だが、取り繕うでもなくおべっかでもない表情でそれを言われたのは、生まれて初めてだった。
「……そ、そう。ちゃんと見てるとこは見てくれ……っ、見てるのね」
なんとなく照れ臭くなってルイズは頬を染め、眉を寄せてそっぽを向いてしまう。
と、
「……あ、それともう一つ」
思い出したようにエリスが呟いた。
ルイズが目線だけを向けると、彼女はどこか意地悪そうに微笑んでから、言った。
「柊先輩のために異世界の事について調べてくれてるのも、ちゃんと知ってますから」
「っ!?」
思わず大仰に肩を揺らし、眼を見開いてエリスを見やるルイズ。
そんな彼女を見てエリスは可笑しそうに笑みを零した。
「なっ、なにっ、を、言ってるの? なんでわたしがそんな事……っ」
「ハルケギニアの文字、勉強しましたから。机においてある本、そういう関係のものですよね?」
「ち、違うわ! そんなんじゃないのよ! なんでわたしがわざわざ自分の部屋に持ち込んでまで……!」
「図書室で調べてたら、柊先輩と鉢合っちゃうかもしれませんしね」
「〜〜〜っ!」
ルイズの顔が羞恥に紅く染まり、せわしなく手をばたばたとさせて叫んだ。
「わ、わたしはね、貴族なのよ!? 人の上に立つ者としての威厳を保ってなきゃいけないの! 下の者に……特定個人のゲボクに対してあれこれとしてあげるなんて、そんな事しちゃダメなの!」
要するにゲボクとして扱うとしてしまった手前、引っ込みが付かなくなってしまったのだろう。
月光に照らされた薄桃の髪を揺らして弁明するルイズを見ながら、エリスはくすくすと笑いながら答えた。
「でも柊先輩もここの文字を勉強してますから、隠し続ける事なんてできませんよ?」
「だからそんなんじゃないってば! それだけじゃないもん!」
「……?」
ルイズの妙な言い回しにエリスは小首を傾げた。
ルイズも自分の失言に気付いたのか、はっとして視線をさまよわせ、今までとはうってかわって黙り込んでしまう。
「……それだけじゃ、ないのよ」
「ルイズさん?」
伺うようなエリスの声に、ルイズはそれ以上答えることができなかった。
ルイズが時間の合間を縫って異世界の事に関して調べていたのは事実だ。
柊とエリスにそのことを隠していた理由も、半分はその通り。
だが、理由はもう一つあるのだ。
ある意味当然の事ではあったが、それなりに調べて見ても異世界のことなど御伽噺もいいところの話だった。
なのでそこへ帰る――異世界に行く方法なども、夢物語のようなものだ。
しかし仮に……万が一それが見つかったとしたら。
(……貴女も帰っちゃうんじゃないの?)
エリスはルイズの使い魔になる事を了承してくれて、実際使い魔との契約をしてくれた。
だが、彼女は『元の世界には帰らない』とも『ルイズと共にこの世界で生きていく』とも言っていないのだ。
仮に口にはせずともエリスがそう思っていてくれたとしても、実際帰る道が開けたとしたらどうなるかわからない……いや、心変わりするような気がする。
少なくともルイズは、自身がエリスのと同じ境遇だったら心変わりしてしまうと思う。
何処とも知れぬ場所に召喚されて、そこで生きていく決心を固めたとしても、帰れるのなら帰りたい。
家族だって唐突にいなくなった自分を……少なくとも姉の一人は心配しているはずだろうから。
「……っ」
自分を重ねて想像してみて、ルイズは胸に刺すような痛みを感じた。
契約をした時にも気づいた事だが、柊があまりにも軽く流してしまったのでそのままうやむやになってしまっていたのだ。
それは――エリスにも元いた場所での生活がちゃんとあって、家族や友人がいるということ。
そして彼女をそれらから引き離してしまったこと。
「ごめんなさい」
「え?」
囁くように漏らしたルイズの声に、エリスは首を傾げた。
ルイズはエリスの顔を見るのが怖くて、俯いたまま口を開く。
「貴女をハルケギニアに召喚しちゃったこと……」
「そんな……普通にやってたのに私たちのところに繋がっただけじゃないですか。別にルイズさんが悪いって訳じゃ」
「それでも、召喚した責任はわたしにあるもの。仕方なかったとか、そんな事になるとは思わなかったとか、そんな風に誤魔化すなんてできないわ」
「……」
目線を合わせないまま、しかしはっきりと告げるルイズの横顔を見てエリスは眩しそうに眼を細めた。
「気にしないでください。柊先輩だって、深刻になる必要はないって言ってたじゃないですか」
「アイツは軽すぎるのよ。訳わかんないわ」
ルイズは吐き捨てるように言ってからはあと溜息をつく。
ちなみに柊が軽く流していたのは彼自身が色々波乱万丈すぎて異常事態への耐性が極めて高いからなのだが、ルイズがそれを知る由もなかった。
それはともかくとして、今ルイズの中では一つの葛藤が生まれていた。
つまりエリスにファー・ジ・アースへ帰ってもらうか、留まってもらうのか。
勿論ルイズとしては使い魔となった彼女にはパートナーとしてハルケギニアに留まっていて欲しい。
だが、彼女の元の居場所の事に思い至ってしまってはそれを無視することなどできるはずもない。
ルイズは夜気の肌寒さに身を丸めながら考えを巡らせ――
「そうだわ!」
「?」
天啓を得たかのように声を上げた。
頭に疑問符を浮かべているエリスをよそに、ルイズは喜び勇んだ顔で彼女に向き直り、その手を取った。
「あの、ルイズさん?」
「わたし、ちゃんと貴女とヒイラギを元の世界に戻す方法を見つける!」
「は、はい」
「それで……」
「それで……?」
「わたしもファー・ジ・アースに行く!」
「えぇーっ!?」
エリスは驚愕の声を上げるが、ルイズは気にすることもなくエリスの肩に手をやり詰め寄った。
「わたしもファー・ジ・アースに行って、貴女の御家族に会って話をするわ! 貴女をわたしの使い魔にしたい……って、もう使い魔にしちゃってるから事後承諾になっちゃうわね。
でもちゃんと説得して、納得してもらうわ! それなら大丈夫でしょ? 皆に納得してもらえば、貴女がここに残ってわたしと一緒にいても大丈夫よね?」
「……」
一気にまくしたてるルイズを、エリスはぽかんとした表情で見つめる事しかできなかった。
そんな彼女の様子を見て不安になったのか、ルイズは急に声のトーンを落としておずおずと声を上げる。
「……ダ、ダメ?」
「……だめなんかじゃないですよ」
思わず笑みを零してエリスはそう返す。
むしろルイズがそこまで言ってくれたことが、彼女には嬉しかった。
ルイズはエリスの微笑を見て安堵の息を漏らすと、意気込んだように頷いてから喋り始めた。
「それにファー・ジ・アースに行ければ、ちい姉様だって……」
「ちい姉様?」
「……ええ。わたしには姉様が二人いるんだけど、ちい姉様――カトレア姉様は病気なの。原因がよくわからなくって、いつも苦しんでて……その症状が今日話してたキョウカニンゲンだかってのに似てるみたいで。だから……」
「それであの時……」
エリスはオスマンの話を聞いていたときに唐突にルイズが食い付いたのを思い出しながら言った。
ルイズはそのカトレアの事を思い出しているのだろう、僅かに顔を俯けて唇を引き締めると、気を取り直したように頭を振って夜空を見上げた。
釣られるようにして、エリスも同じように夜空を仰ぐ。
「とにかく、そのためにも明日から本腰いれて調べる。柊に見つかったってどうだっていいわ。あいつはまあついでね、ついで。ファー・ジ・アースに行く方法さえ見つかれば――」
そこでようやく重要な事を思い出し、ルイズはぴたりと動きを止めた。
……ファー・ジ・アースに行く方法さえ見つかれば、総て上手くいく。
「……異世界に行く方法……?」
そもそもの話、前提条件自体が途方もないことだった。
多難すぎる前途にルイズはがっくりと肩を落とし、うな垂れた。
せめてアル・ロバ・カリイエなどならまだ地続きではあるので可能性はありそうなのだが、端的に言って何処とも繋がっていない異世界ではもはや笑い話のレベルだ。
だが実際にこうして異世界の人間――エリス達を前にした当事者としては笑えない。
さらに契約の日の事に加えて約束を重ねた以上悖ってしまうのはプライドが許さなかった。
「もう、何だって異世界なんかから喚びだしちゃったのかしら……」
それでも愚痴くらいは許されるだろうとルイズが憎憎しげに漏らすと、
「……それは貴女がそう望んだから」
何故か答えが返ってきた。
ルイズは顔を上げてその声の主を見やる。
隣に座っていたはずの少女はいつの間にか立ち上がり、夜空を見上げたまま、ゆらりと歩き出した。
「……エリス?」
ルイズは呆然として声をかける。
しかし、エリスは応えない。
そして『彼女』は、答えた。
「一人は守護を望んだ。一人は自ら選んだ。一人は何も望まなかった。そして……貴女は、力を望んだ。だから、『私』が喚ばれた」
『彼女』はルイズに背を向けたまま、ゆっくりと手を差し伸ばす。
天上に浮かぶ双月――紅き月と碧き月をかき抱くように、『彼女』は夜闇を仰ぐ。
「ね、ねえ……」
不安になってルイズは立ち上がり、声をかけた。
しかし『彼女』は語り聞かせるように言霊を紡ぐ。
「その身に宿りし力の『欠片』。その縁だけでは越えられなかった。だから"表"にいる私が喚ばれた。
私はマガイモノだけど、同じ存在には違いないから」
「……」
その言霊に、ルイズは知らず胸に手を当てた。
心臓の動悸が激しい。いや、それは心臓ではない。
身体の中心、身体の最奥、魂とでも言うべきもの……そこにあるナニカが歓喜に揺れている。
そのざわめきは波紋のように全身に広がり、循環していく。
今まで経験した事のないその感覚は――ひどく恐ろしかった。
恐怖とは少し違う、形容しがたい感情。
それを自分の裡と、目の前の少女に感じている。
「あ……あなた……だれ?」
掠れる声を絞り出して、ルイズは問うた。
『彼女』はゆっくりと振り返る。その双眸は紫の瞳と――ヒトならざる青の瞳。
『彼女』はゆっくりと笑みを浮かべる。普段の柔らかい表情はそこにはなく、怖気を感じさせるほどに酷薄で、妖艶な微笑み。
そして『彼女』は、天空の夜闇に聳える紅と碧の月を従えるように其処に佇み、静かに告げた。
『――"我"は破壊者にして、創世者なり』
今回は以上。
越えられない実データの壁。忠誠とか約束が許されるのは演出剣だけだよねー!
それはともかく、状況が整ったので本格的にシナリオを進めます
もうちょっと伏せて小出しにするのも考えましたが、投下が遅いのでやりすぎくらいで丁度いいかなーと
ナイトウィザードの原作設定を追っている人なら、今回ので本作のギミックやエリスとの繋がりも読めたのではないでしょうか(ギミックはもう一捻りしますが)
何がなんだかわからない人はありがちな伏線として明かされる時まで置いといて下さい
この手の世界観クロスは蹂躙と思われかねないので戦々恐々です
乙
ナイトウィザードはアニメしか知らんけど楽しみにしてます。
おつです
やっぱり柊はフラグクラッシャーだなww
乙
元の世界への帰還方法を探すルイズは結構いたけど、自分も行って承諾を取ろうとするルイズは初めてじゃなかろうか
下がる男きてたー、そして相変わらずの天然フラグクラッシャーwww
エリスは……、これはチョココロネ本体というより金髪幼女っぽいような?
テンプレの外し方といい、ちょっと予想がつきそうでつかないのが魅力ですね
643 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/22(月) 10:38:16 ID:GDUo/L1q
さあ、探せばあるんじゃない?
ここ以外で。
夜闇の人、乙です
柊がちい姉様の症状知ったら、年中血を吐きながら戦ってる並行存在の方を思い出しそうですな
はわー、お疲れ様だね、ルイズと夜闇の魔法使いさん。
今は体を休める事だけ考えてね。
あ、お茶飲んでねー。
オペレーションケイオス以降の設定入ってますね、これ。
アニメしか知らない人に説明するのは大変そうですが、頑張ってください。
無限光をるー様に取り戻されちゃったエリスちゃんの力は一体?
ウォッチメンのDr.マンハッタンを召喚したら、その御姿に学生一同が絶句しそうだよな。
一同(ま、まるだしだとっ!?)
というか能力的には虚無の使い手そのものだよなDr.マンハッタン
公式でなんでもできるおっさんだしな
対抗するならシルーバーサーファーでも呼んでくるしかないか
ついでにギャラ様までやってくるんですね
強すぎてもアレだから、ここはフラッシュ辺り(カートゥーンネットワークのジャスティスリーグ仕様)で手を打たないか?
けっこうの元は、当然月光仮面だが、さすがにこのスレの超絶的な年齢層の厚さを持ってしても白黒時代の作品を書ける人はいないな。
しかし月といえば、相当なメジャー作品なのにセーラームーン関係は小ネタのルナ以外は他所でもまったく見ないな。
ギーシュとかマリコルヌとか、シエスタであれだったんだからセーラースーツ見たらぶっ倒れる気がするが。
頼んだぜ、クロ!シロ!
シロ「マサキ、なんでこんなとこにいるニャ?」
クロ「まさか異世界まで迷子でいっちゃうとは思わなかったニャ」
タルブ村会戦、ルイズの精神力不足で艦隊を取りこぼし、大ピンチに追い込まれた
アンリエッタの元へ颯爽と現れるウェールズ。
「あのタキシードに身を包んだ騎士はどなたなのかしら?」
魔装機神のなかでもサイバスターだけは
ラ・ギアス(異世界)と地上を結ぶゲートを開く能力があるから
ハルケギニア(異世界)に迷い込んでも無理はない・・・はず
ローガンはけっこういい感じでないか?
ロリコン呼ばわりされるほど面倒見いいし戦闘力も防御力も天下一品
ただ反骨心があるというか命令されるの大嫌いだし放浪癖あるし
竜の衣は・・・・・・アダマンチウムの補充システムとか
キャップならあらゆる意味でそつのない展開なのだがそつがなさ過ぎるからなぁ
魔法アレルギーなトニーは面白い展開になりそうだ
最近元ネタしらんのばっか更新されて飢え死にしそうだわ
>>654 ドラゴンボールキャラより強いらしいですね
>>660 逆に考えるんだ
「SSで知った作品をチェックしてみよう」
「よし! 自分でSSを書いてみよう」
「ちょっくら読み返してみよう」
「応援スレで一日一話感想とかやって作者さんの燃料を補充してみよう」
と考えるんだ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9616/1268552023/ 報告:
設定・考察スレにて議論した結果、以下のことが判明しました。
作者諸氏には設定間違い・世界観の破綻といった突っ込み対策のため、
よく目を通してこれに従ってください。
ラインメイジ:大人のメイジのかなりを占める。数割程度。
少なくとも大人連中でドットが一人でもいたか?
トライアングル:大人のメイジのうち10人〜8人に一人くらいの割合でいる。
スクウェアメイジ:15人にひとりくらい。
・…学徒・新兵
―…正規兵
△…ベテラン
□…エース
上のような条件でトライアングルのフーケが魔法衛士隊(近衛)を蹴散らして
白昼堂々強盗をやったが、何もおかしくない。
巨大ゴーレムなんて明らかに攻城用魔法なんだから、土メイジが同程度のゴーレム作らない限り対抗しようがないからである。
風メイジは最強である。土よりも明らかに強い。
オストラント号で「熟練」のメイジ20人がタイガー戦車を運んだが、
その時に従事したのは全員トライアングルメイジが相当である。
烈風の騎士姫読み直したが、下手すると1カリンでタイガー戦車持ち上がるかもしれん。
マリコルヌがドットで雷魔法を使っている以上、メイジのLVそのものが当てにならない。
△と□の差は、習得できる魔法の差であって、魔法の威力には関係がない。
歴戦のラインメイジ傭兵がむっちゃ強いとか。
ルイズがメイジの人口は一割いない程度、1巻で言っているが、
人口に占めるメイジの割合自体そう大きいものでもない。
他にも色々あるけど、ま、続きは又今度
そういうのは三行ぐらいでたのむ。
そういえば、マサキ=アンドーとかショウ=ザマとかの召喚経験者を呼んだやつって何かあったっけ?
>>663 クラスが上がると掛け合わせる魔法の組み合わせが増える。
また、同程度の魔法を使うときの精神力の消費が減る。
ドットメイジでも精神力が多ければ、強力な単発魔法は打てる。ただし、ドットでは風×風とか風×水とかそういう魔法は使えない。
ういーっす
>>663 そんなオナニー妄想なんかで作者を縛んなクソが
いつから設定議論がここの共通ルールになるようになったんだ?
リトルボーイは駄目だ!
うーっす
>>663は勝手に設定・議論からコピペしてるだけの荒らし
>>1以外にテンプレを貼ろうとする荒らしと同じ類
>>665 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/22(月) 18:11:15 ID:f53zKkNx
>>そういえば、マサキ=アンドーとかショウ=ザマとかの召喚経験者を呼んだやつって何かあったっけ?
異世界に召喚され、苦労に苦労を重ねて、
怪物化の恐怖に怯えながら(男が長期間いると奇声蟲という人食いの化け物になるので元々は女しかいない世界)、
やっとの思いでその世界の戦乱を仲間たちと一緒に収めて地球に帰還したサイトが
帰 っ て き て す ぐ ル イ ズ に 召 喚 さ れ る
という血も涙も無い一発ネタがあったなw
機動兵器が存在する世界にもかかわらず、サイトは最後まで生身で戦わされてたらしいしw
>>663 いいから隔離スレ住人は出てくるな。
あそこは設定厨と論破厨を隔離するためのスレだ。
まともな論を出すやつをたたくために常駐しているような連中は消えろ
エスカフローネ
ヴァルシオーネ
ていうかナニこれ
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1268394355/663-675 663 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/22(月) 17:43:28 ID:6k4u/YV+
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/9616/1268552023/ 報告:
設定・考察スレにて議論した結果、以下のことが判明しました。
作者諸氏には設定間違い・世界観の破綻といった突っ込み対策のため、
よく目を通してこれに従ってください。
ラインメイジ:大人のメイジのかなりを占める。数割程度。
少なくとも大人連中でドットが一人でもいたか?
トライアングル:大人のメイジのうち10人〜8人に一人くらいの割合でいる。
スクウェアメイジ:15人にひとりくらい。
・…学徒・新兵
―…正規兵
△…ベテラン
□…エース
上のような条件でトライアングルのフーケが魔法衛士隊(近衛)を蹴散らして
白昼堂々強盗をやったが、何もおかしくない。
巨大ゴーレムなんて明らかに攻城用魔法なんだから、土メイジが同程度のゴーレム作らない限り対抗しようがないからである。
風メイジは最強である。土よりも明らかに強い。
オストラント号で「熟練」のメイジ20人がタイガー戦車を運んだが、
その時に従事したのは全員トライアングルメイジが相当である。
烈風の騎士姫読み直したが、下手すると1カリンでタイガー戦車持ち上がるかもしれん。
マリコルヌがドットで雷魔法を使っている以上、メイジのLVそのものが当てにならない。
△と□の差は、習得できる魔法の差であって、魔法の威力には関係がない。
歴戦のラインメイジ傭兵がむっちゃ強いとか。
ルイズがメイジの人口は一割いない程度、1巻で言っているが、
人口に占めるメイジの割合自体そう大きいものでもない。
他にも色々あるけど、ま、続きは又今度
666 :名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/22(月) 18:18:38 ID:S0VUBUJY
>>663 クラスが上がると掛け合わせる魔法の組み合わせが増える。
また、同程度の魔法を使うときの精神力の消費が減る。
ドットメイジでも精神力が多ければ、強力な単発魔法は打てる。ただし、ドットでは風×風とか風×水とかそういう魔法は使えない。
>>674 SAITO定番ネタの一つに、
一度ルイズに召喚されたサイトが、一巻の時のルイズに喚ばれる
ってのがあるな。
最近見てないけど、テイルズオブファンタジのキャラと一緒に召喚されたサイト
っていうのが
>>665にあてはまるキャラになるのかな。
すまん、思いっきり誤爆した
>>680 ボッコボコにルイプされて死亡ですかそうですか
容量480超えているんで次スレ立ててきます。
>>680 なるほど、異次元騎士シリーズ中断はカズマが召喚されてしまったせいか
魔装で思ったんだがヤンロンはテファに召喚されたら幸せかもね
護ってあげたくなるタイプの特にお姫様に弱いし
ただイザベラに召喚されてずっと説教してる姿しか想像出来ないのは何故だ
いやそれマジ止めて(泣
ジョリー・ロジャー最鬱シーン……
ちょうど(偽装だけど)海賊に拘束されるしなw
ルイズ「いいえ、ワルド様は綺麗なままよ」
アーッ!
ぼくはきれいなワルド
きれいなワルドはクウキ。だって、それなりに強いけどおつむがゆるいキャラだもの。かませ犬特性取られたら影が薄くなっちゃう。
>>366みたいに10巻以上出番がないのと、出番があっても空気なのと、どっちがワルドにとっての幸せなのかなぁ。
出番は一瞬!でも蚊取り線香のようにっ・・・・・・!!
人呼んで選考のワルド。
一方その頃、もはや舞台にすらならなくなった魔法学院では、
みんなにすっかり忘れられたマルトーさんが淡々と料理を作り続けていたのだった。
テの人「私も空気なのに、ワルドのせいでネタにもしてもらえないわ・・・姉さんも誑かされるし許せない!」
>>698 正直良い子ちゃん過ぎて
肥大した胸部装甲ぐらいしかネタに出来る個性が無いモンあんた。
驚きの白さなキャラより多少黒い方が動かしやすいもんな。
>>700 アン様の人気の秘密が分かった気がする。
つまり全キャラ、ドス黒い感情持ちにすれば大人気間違いなしだな
その点、惚れ薬のモンモンは扱いやすいキャラだよな。
逆にジェシカみたいなタイプは普通に笑顔でも怖い。
>>708 シャアにしたってネオより一回り年上ってことはないだろ。
……誤爆すまん。
驚きの白さ……
黄中とか、孔明とか?
昔だったら馬岱もだけどネタ元がアレすぎて扱いにくすぎる気がする。
シャアはいくつになってもロリコンです
ゼロ魔の世界で使ったら計略「鶏肋」ってなんかカッコイイよな
自分を犠牲にして回りの仲間を城に送る魔法だな
対七万に鬼神降臨……ゴクリ……
海底都市ラプチャーから、ギャラザーガーデンと大量のEVEを召喚ってのはどうかな?
プラスミドを使えて凄い超能力者になれるけど、使いすぎると……。
アンリエッタ王女がまだアンアン姫だった頃、アルビオンの南にレコン・キスタというという怪しい運動が流行っていた。
それを信じない者は、虚無の祟りに見舞われるという。
その正体は何か?
アンアンはレコン・キスタの秘密を探るため、魔法学院から幼馴染みを呼んだ。
その名は・・・・・「桃影参上!!」
>>711 ギャラザーじゃなくてギャザラーだよと突っ込んでおく。
スプライスしまくると美貌も壊れちゃうのがなぁ……あんまり想像したくないぜ。
>>712 某勇者の妻&母?
>桃影
あっちも悲しいぐらい真っ平らだったけど。
(ヒップはなかなかとか(ドラマCDより))
>710
敵が蒸発するw
vs7万で神医もおもしろそうじゃね?
>>716 神医は相手にかけられないからむしろ
「和が血の前には赤後に等しい」しちゃえばいいんじゃないか?
敵にかかっているの消せるぜ
>>699 ラスボスの人の黒テファの恐ろしさは半端じゃないけどな
719 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2010/03/24(水) 13:52:21 ID:LQTNjpgf
おマチさんは登場早いから白かったり黒かったり色んなのがいるけど
テファの場合はそもそもそこまでたどり着いた作者が少ないからなあ
アンアンに「アンッ!アンッ!気持ちいい!」とか言って欲しいね
あとチーズはアンリエッタ姫殿下の名前を連呼し過ぎ
オレはアン様に「わんわんっ、くぅ〜ん」って言って欲しい
パンチは?
アンリエッタ「アンアンアン。とっても大好き。どらえもん」
アンリエッタ「♪アンアンアン とっても大好き アルビオン」
アンリエッタ流暗黒暗殺拳
略してアンアンアン
一瞬素でアンパンマンだろと突っ込みそうになった
吉本の見過ぎだな
最近の劇場版ドラはアンアンアンじゃないから困る
最近のドラえもんってどうなの?
声が変わってから一度も見た事ねーわ
別物として見ればなんのこたぁない
>>728 映画の方は作画が凄まじいまでに書き込まれていて、ただただ圧倒される。
話の方は普通だけど、末期の旧ドラ映画のように
マンネリでグダグダになってた時よりはマシだと思う。
新キャスアンチでなければ普通に見れるんじゃないかな。
と、ルパンの風魔一族とかも普通に楽しめた俺が言ってみる。
昔のドラえもんの映画は武田鉄矢の歌が強く印象に残ってる
あれって親を狙ってたんだろうか
大長編ドラえもん のび太と虚無の使い手
ハルケギニアにバラバラに召喚されるのび太たち
ドラえもんはお約束で四次元ポケットが使えない
そしてジャイアンは頼れる男
グリーンワールドの生物召喚
尾のようにぶら下がった口に気づかず
ストライダやスピッターの口を必死で探すルイズ
ストライダー飛竜召喚とな?
>>734 グリーンワルドに見えた
ハルケギニアのエコ大使だなw
風系統って緑色っぽいよね
>>737 げんしんじん(笑)の事ですね、解ります
アカツキ電光戦記
アーイアーイアーイ
豚めが死んだぞ
予想外のカメラードの多さに吹いたw
吐け! 吐くんだ!
タルブ戦で、駆虎呑狼……
アカツキ召喚…いやなんでもない
メイジとやらの多機能ゆえの脆弱…、ギーシュとの決闘で既に見切った!
とワルドの偏在をエレゾル君たちのように蹴散らすのですね
しかし召喚して面白そうなのはむしろミュカレとかアドラーとか…
ハルゲ世界で電光機関による世界制服なんて出来ないだろ
平民を電光機関と電光被服でエレクトロゾルダート化
負傷兵、戦死者は電光戦車として再利用
ヨルムンガントもタイガー戦車の主砲が効くんだから電光戦車の光学兵器が効かないわけがない
まあ問題は電光機関や電光戦車を生産する技術だな
>>733 ごめん、「バラバラに召喚される」でミートくんを思い出した
4人の虚無の使い手のもとにばらばらに召喚されるミート君か
道化のバギーという可能性もあるな。
ハルケ中に散ったパーツを求めて小さなバギーの大冒険
ミュカレ、アドラー、不律などは電光機関を作る方法自体は知ってるだろう
問題はハルケの技術レベルで生産プラントが作れるかだが…
むしろ魔法の世界(いやミュカレとかあの世界でも魔法使ってるけど)に召喚されたのもテュールの加護ということで、
ハルケの魔法技術を取り入れた新電光兵器や新しい技術の開発に挑戦というのも
系統魔法、殊に虚無の使い手はアカツキ並みに電光機関への適合性が高いことが判明する、とか
んでガリアあたりで新ゲゼルシャフトの電光機関製造プラントが動き始める…
電光機関でなくても、忠実なメイジ兵をいくらでも量産可能なクローン技術も脅威だね
電光機関はメイジに組み込めばただでさえ平民より圧倒的に強いメイジの身体能力がエレゾル並みに上がり、
しかもドットメイジでも系統にも関係なくライトニングクラウド(みたいなもの)がだせるようになるという…
もちろん平民に組み込んでメイジに対抗するってのもアリだな
アンドヴァリの指輪や先住魔法の洗脳で欠陥を解消した電光戦車がハルケギニアを蹂躙する・・・!
というところまで考えた
電光超人グリッドマン召喚
に見えた
あれ?まだ埋まってない?
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めがねっ子でド近眼のルイズ
心配性なのにルイズに突っかかっては落ち込むキュルケ
教育熱心なオスマンに、軍人気質が抜けないコルベール
モブと化すくらいキャラの薄いフーケ、実はホラー的なものが怖いワルド
そこに召還される北野君、というのを妄想したことがあるが、原作破壊し過ぎてるため断念