あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part175
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました Part17
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1222527877/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ _ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 ` ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
_ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
〃 ^ヽ ・クロス元が18禁作品であっても、SSの内容が非18禁である場合は
J{ ハ从{_, 本スレへの投下で問題ないわ。
ノルノー゚ノjし ・SSの内容が18禁な展開をする場合はクロス元に関わらず、
/く{ {丈} }つ 本スレではなく避難所への投下をお願いね?
l く/_jlム! | ・クロス元がTYPE-MOON作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
レ-ヘじフ〜l ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
. ,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
このぐらいまで単純化できそうな気がする。
爆発召喚
キス契約
「ゼロ」の由来判明(教室で爆発)
使い魔の能力が明らかに(ギーシュ戦)
デルフ購入
フーケ戦
舞踏会
最近はその流れでいかに飽きない話を作るかに凝りがち
爆発
平民プゲラ
コルベール問答無用さっさと汁
キス契約
フライに唖然とする
説明はぁどこの田舎者?
何者であろうと今日からあんたは奴隷
二つの月にびっくり
洗濯シエスタと接触
キュロケフレイム顔見見せ
みすぼらしい食事厨房でマルトー
教室で爆発片付け
昼食シエスタの手伝い香水イベント
オスマンコルベール覗き見
ギーシュフルボッコ場合によって使い魔に弟子入り
キュルケセクロスの誘いしかし使い魔はインポテンツか童貞w
ルイズ寝取られの歴史を切々と語る
休日街でデルフ入手 キュルケタバサがついてくる
ルイズが爆破訓練宝物庫破壊フーケ侵入お宝げっと
この段階でフーケは絶対つかまらない
翌朝捜索隊保身に走る教師一同
教育者オスマン犯罪捜索を未熟な子供にマル投げ
小屋で破壊の杖ゲットフーケフルボッコしかし絶対死なない
オスマンから褒章 舞踏会 終わり
途中飛ばすけど、
対7万戦と再召喚(一度使い魔契約が切れ、まっさらな状態からルイズとの関係を再構築)
【書き手の方々ヘ】
・作品投下時はコテトリ推奨。トリップは「名前#任意の文字列」で付きます。
・レスは60行、1行につき全角128文字まで。
・一度に書き込めるのは4096Byts、全角だと2048文字分。
・先頭行が改行だけで22行を超えると、投下した文章がエラー無しに削除されます。空白だけでも入れて下さい。
・専用ブラウザなら文字数、行数表示機能付きです。推奨。
・専用ブラウザはこちらのリンクからどうぞ
・ギコナビ(フリーソフト)
http://gikonavi.sourceforge.jp/top.html ・Jane Style(フリーソフト)
http://janestyle.s11.xrea.com/ ・投下時以外のコテトリでの発言は自己責任で、当局は一切の関与を致しません 。
・投下の際には予約を確認してダブルブッキングなどの問題が無いかどうかを前もって確認する事。
・作品の投下は前の投下作品の感想レスが一通り終わった後にしてください。
前の作品投下終了から30分以上が目安です。
【読み手の方々ヘ】
・リアルタイム投下に遭遇したら、支援レスで援護しよう。
・投下直後以外の感想は応援スレ、もしくはまとめwikiのweb拍手へどうぞ。
・気に入らない作品・職人はスルーしよう。そのためのNG機能です。
・度を過ぎた展開予測・要望レスは控えましょう。
・過度の本編叩きはご法度なの。口で言って分からない人は悪魔らしいやり方で分かってもらうの。
【注意】
・運営に関する案が出た場合皆積極的に議論に参加しましょう。雑談で流すのはもってのほか。
議論が起こった際には必ず誘導があり、意見がまとまったらその旨の告知があるので、
皆さま是非ご参加ください。
・書き込みの際、とくにコテハンを付けての発言の際には、この場が衆目の前に在ることを自覚しましょう。
・youtubeやニコ動に代表される動画投稿サイトに嫌悪感を持つ方は多数いらっしゃいます。
著作権を侵害する動画もあり、スレが荒れる元になるのでリンクは止めましょう。
・盗作は卑劣な犯罪行為であり。物書きとして当然超えてはならぬ一線です。一切を固く禁じます。
いかなるソースからであっても、文章を無断でそのままコピーすることは盗作に当たります。
・盗作者は言わずもがな、盗作を助長・許容する類の発言もまた、断固としてこれを禁じます。
・盗作ではないかと証拠もなく無責任に疑う発言は、盗作と同じく罪深い行為です。
追及する際は必ず該当部分を併記して、誰もが納得する発言を心掛けてください。
>>1乙
つーか、前スレ投下中に500kbになってるじゃないか。
ハルケギニアの暦
→1年は12の月と4の週(1週間8日)で構成される384日
新年の始まり(日本の元旦)から10日間は始祖ブリミルの降臨祭という休暇となる(戦争も休戦とする習わし)
0.虚無の曜日 (1巻p.165) 休暇である虚無の曜日の夜に「破壊の杖」盗難
1.ユルの曜日 (1巻p.141) フリッグの舞踏会は「破壊の杖」盗難の翌日
2.
3.
4.ラーグの曜日(8巻p.221)
5.
6.
7.ダエグの曜日(9巻p.169) 翌日は虚無の曜日
順番不明 マンの曜日(6巻p.150)
イングの曜日(7巻p.125)
1.ヤラの月 (7巻p.164)
2.ハガルの月 (8巻p.221)
3.
4.フェオの月 (5巻p.130)
5.
6.
7.
8.
9.
10.
11.
12.ウィンの月 (6巻p.150)
順番不明 5? ウルの月 (5巻p.145, 12巻p.146)
6? ニューイの月 (3巻p.203) アンリエッタの結婚式
11? ケンの月 (6巻p.20) 夏休みが終わって二ヶ月
第一週 フレイヤの週
第二週 ヘイムダルの週 (5巻p.131)
第三週 エオローの週 (8巻p.20)
貨幣
→金貨 エキュー
銀貨 スゥ 100スゥ = 1エキュー
銅貨 ドニエ 10ドニエ = 1スゥ
新金貨 金貨の四分の三の価値 3/4エキュー(1新金貨で75スゥ)
デルフリンガー 新金貨100枚 = 75エキュー
官能小説 55スゥ
トリステインの生活費 1人1年120エキュー
シュヴァリエの年金 年500エキュー
ハルケギニアの衛星(月)
→大(青)小(赤)二つある。大きい方は地球の月の見た目で二倍ほどの大きさ。
小さい月の軌道は大きい月より内側にある。よって、小さい月の公転周期は大きい月よりも短い。
二つの月が重なる夜を「スヴェル」の月夜と呼ぶ(2巻p.119)。
サモン・サーヴァントの呪文
→原作(何度か失敗)
我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン!
我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ!
→アニメ版(一発で成功)
宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ
神聖で美しく強力な使い魔よ
私は心より求め訴えるわ
我が導きに答えなさい!
コントラクト・サーヴァントの呪文
→我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
五つの力を司るペンタゴン
この者に祝福を与え、我の使い魔となせ
コントラクト・サーヴァントの洗脳効果
→現状(11巻&タバサの冒険2)では情報は足りず、荒れるばかりで話題にするだけ無駄っぽい。
スレ住人のスルー力に期待。
長さの単位
1サントは約1センチ(1巻p.39 / 2巻口絵人物紹介)
1メイル=約1m
1リーグ=約1km
一日目
昼 :召喚される
夜 :使い魔とハルケギニアに関して話して、洗濯するよう下着を押しつけられる
二日目
早朝 :シエスタに洗濯場を教えてもらう(アニメ版)
朝 :ルイズを起こして着替えをしてるところにキュルケがからかいに来る
朝食 :アルヴィーズの食堂で貧しい朝食
授業 :ルイズがシュヴルーズの授業で錬金失敗、後かたづけ、渾名をからかってメシ抜き
昼食 :シエスタから賄いを貰う代わりに配膳手伝い、ギーシュが恥を掻き口論に(小説版ではここでシエスタ初登場)
決闘 :ワルキューレにボコられる、諦めないでいるとギーシュが剣を寄越してガンダールヴ発動、ワルキューレ七体をなで切りにして勝利
※同時刻、コルベールがオスマンの執務室にルーンのことで報告に来てロングビルが追い出され、王宮に報告するしないの口論の後、ロングビルが戻ってきて決闘事件を報告、決闘を静観してルーンはガンダールヴのものと断定
※ここから三日間負傷が元でルイズの部屋で寝たきり
四日目
朝 :目覚める、シエスタに事情説明を受け、ルイズに礼を言うとベッドから追い出される
使い魔生活一週間
うち三日間はパンツのゴムの件でルイズからメシ抜き(正式な食事は厨房で貰っている)
十一日目(“使い魔としての生活”が四日目からはじまったとして)
朝食 :厨房で食事しているとフレイムが姿を見せる
授業 :夢の件でルイズに折檻される、フレイムの視線を感じる
※同時刻、ロングビルがコルベールから宝物庫についての情報を聞き出している
夜 :キュルケの誘惑があるがルイズに邪魔され断念、キュルケの男から襲われるかもと思って武器を欲しがるついでにルーンの力について相談、ルイズは武器には快諾してルーンについては推測と忠告をする
十二日目 虚無の休日
昼前 :キュルケが目を覚まして出かけるルイズ達を発見、タバサに追跡を頼む
三時間後:トリスティンの武器屋でデルフリンガーを買い求める、ルイズ達がでたあとキュルケがシュペー卿の剣を買い叩く
夜 :フーケが宝物庫の下見、ルイズ達が決闘に来て壁にヒビを入れる、フーケがゴーレムを使って「破壊の杖」を盗む
十三日目
朝 :フーケ対策会議が開かれてその場にいたルイズ達が証言をする、ロングビルがフーケの情報をもって来る、ルイズ達だけが捜索隊に志願
昼 :情報のあった小屋に到着、破壊の杖を取り戻す、ゴーレムに襲われ破壊の杖を使って倒す、ロングビルが正体を現すが捕まる、帰ってオスマンに褒められる
夜 :フリッグの舞踏会
23日目
夜:サイトがルイズに夜這いをかける。ワルドがフーケを脱獄させる
24日目
朝:(授業):ギトーの授業
昼:アンリエッタが学院に来る
夜:アンリエッタがルイズの部屋にお忍び。ルイズがアンリエッタの手紙を取ってくることになる
25日目
朝:ルイズ、サイト、ギーシュ、ワルドがラ・ロシェールに向け出発。キュルケがタバサに頼んでルイズ等を追跡開始
昼:フーケがラ・ロシェール金の酒樽停にて傭兵を雇う
夜:ルイズ一行、ラ・ロシェールに到着、直前に地上のサイトとギーシュは傭兵に襲われるがキュルケ達に助けられ無事に到着、ルイズ一行にキュルケとタバサが参加
26日目 スヴェルの夜
朝:ワルドの発案で女神の杵停中庭にてサイトとワルドが決闘
夜:ルイズ一行、フーケ・傭兵達・仮面の男(ワルド)に襲われる
キュルケ・タバサ・ギーシュを囮に残し、ルイズ達は船を買い取ってアルビオンへ出航
キュルケ達は傭兵を追い散らすが精神力切れ、フーケも同じく、キュルケとフーケが殴り合い
27日目 アルビオン−ラ・ロシェールの最接近日
朝:空賊船に捕まるが、すぐに王党派の船であることが発覚し、ウェールズ皇太子に出会う
夜:手紙を返して貰う。戦前パーティーに参加
※キュルケ達はこの間、シルフィードに乗りアルビオンへ向かっている
28日目
朝:ワルドとルイズの結婚式だが、ルイズが断りワルドは本性を現す。ウェールズが殺されワルドはサイトに敗れる
昼:(正午):貴族派の総攻撃開始。キュルケ達が助けに来て、シルフィードに乗ってアルビオンから離脱、キス(二巻はここまで)
昼:(日中):アンリエッタに報告を済ませて学院に帰還
※攻撃開始からすぐニューカッスル城は落ちた
29日目
昼:(授業):コルベールが内燃機関を披露
夜:フーケがロンディニウムの酒場でワルドと合流
30日目
昼:(日中):ワルドとフーケが戦跡を検分、クロムウェルがウェールズを生き返らせる
31日目
アンリエッタとアブレヒト三世の婚約が公式に発表される。式は一ヶ月後を予定
※
それを受けゲルマニア首都ヴィンドボナにてトリスティン−ゲルマニア軍事同盟締結
その翌日アルビオン新政府樹立公布
すぐにトリスティン・ゲルマニアに不可侵条約の締結を打診し、両国は協議の結果これを受ける
約32日目
朝:オスマン経由でルイズに『始祖の祈祷書』が渡される
夜:サイト、シエスタにお茶を貰い、一緒に風呂につかりながら四方山話
約38日目
昼:(昼食後):ルイズ、ヒトデ型セーターを編む。サイト、シエスタを押し倒して(但し、ものの弾み)ルイズに追い出される。
約41日目
昼:ギーシュがテント生活をしているサイトを発見して、一緒に飲んだくれる
夜:キュルケの発案で、サイト・ギーシュ・タバサ・シエスタとその使い魔一行で宝探しに出発する。
約51日目
昼:(昼食前):宝探しでガラクタを発見する。昼食を取って次の目的地をタルブの村に決定
昼:(昼食後):タルブの村で零戦を発見
夜:(夕方):学院から伝書フクロウが来る
約52日目
サイト達、学院に帰還。持って帰った零戦の運賃をコルベールに肩代わりして貰う。
約55日目
コルベールがガソリンの精製に成功し、エンジンが少しだけ動く
約57日目
昼:(日中):ラ・ロシェール上空にて、アルビオン艦隊がトリスティン艦隊を奇襲。アルビオンはトリスティン艦隊に対し宣戦を布告
迎撃に向かったと思われるタルブ領主アストン伯戦死
アンリエッタを筆頭に、トリスティンは開戦を決意
同盟に基づきゲルマニアに援軍を要請。回答は、「先陣の到着は三週間後」
約58日目
朝:学院に宣戦布告の報。サイトと、勝手について来たルイズはゼロ戦でタルブへ。
昼:(日中):サイトが零戦で竜騎士とワルドを蹴散らし、ルイズは虚無の魔法『爆発』を発動させ、アルビオン艦隊を焼き墜落させる
約60日目 ニューイの月一日
アンリエッタの結婚式予定日
タバサの冒険1・2
全てタバサの春の使い魔召喚の儀式より後(ルイズと同時かは不明)
全てタバサ二年次のスレイプニィルの舞踏会まで
第●日目、はその話の中だけの時間、●日目、となっているのは本編と同期しています
朝でも夜でもない時間は全て昼です
『翼竜人』
第一日目
昼:指令を受ける、翼竜人と交戦、
夜:ヨシュアの懇願
第二日目
昼:暴走ガーゴイル作戦
第五日目
昼:結婚式
『吸血鬼』
サイトとギーシュの決闘以後
第一日目
昼:命令を受ける、村について調査開始
夜:エルザ襲撃される、屍鬼人を倒す
第二日目
昼:村人が占い師の老婆を殺す
夜:吸血鬼を殺す
第三日目
早朝:村長に置き手紙を残し帰還
『暗殺者』
サイトとギーシュの決闘以後
第一日目
昼:影武者開始
夜:宿場で一泊、地下水襲撃一回目
第二日目
昼:グルノープル・アトワール伯邸到着
夜:地下水二回目
第三日目
昼:イザベラ裸踊り
『魔法人形』
八日目
昼:スニキニル入手、学校に放り出したオリヴァンいじめられる
九日目
昼:オリヴァン実力詐称の片棒を担ぐ
十日目
昼:引き続き詐称
十一日目
昼:オリヴァンの決闘、元北花壇騎士団団員と交戦
十二日目
昼:虚無の休日だがキュルケに請われルイズ達を追いかける
『ギャンブラー』
十三日目
夜:フリッグの舞踏会中に伝令、プチ・トロワでイザベラから指令
十四日目
昼:賭場でいかさまを暴く
『ミノタウロス』
不明(他の任務の帰り道で、この事件は北花壇騎士団としてのものではない)
第一日目
昼:依頼を受ける
第二日目
昼:人さらい一味を退治しラスカルと会話
第三日目
昼:ラスカルを退治
『シルフィードの一日』
サイトのテントがある、サイトが洗濯をしている
『極楽鳥』
火竜の繁殖時期
第一日目
昼:イザベラから依頼を受ける
第二日目
昼:火竜山脈に到着、リュリュと出会う
第三日目
昼:囮作戦失敗
第四日目
昼:ニセ焼肉作戦失敗
夜:リュリュにハッパをかける
〜シルフィードは火竜に化ける特訓、リュリュは代用肉錬金のために絶食中
第七日目
昼:ニセ焼肉作戦成功
『軍港』
アルビオン侵攻開始(夏休みから二月)から一週間後、ウィンの月の半ば
髪の毛を追跡するアルヴィーを持っている
第一日目
昼:到着、リュシーと接触
第二日目
昼:調査、リュシーを疑いカマをかける、『グロワール』号爆破
第三日目
昼:『シャルル・オルレアン』囮作戦決行
夜:爆破阻止、リュシー自殺
1月:ヤラ(降臨祭)
2月:ハガル
3月:ティール
4月:フェオ(入学式/使い魔召喚の義)
5月:ウル(フリッグの舞踏会)
6月:ニューイ(夏休み)
7月:アンスール(夏休み)
8月:ニイド(夏休み)
9月:ラド
10月:ケン
11月:ギューフ
12月:ウィン
第一週:フレイヤ
第二週:ヘイムダル
第三週:エオロー
第四週:ティワズ
曜日
1:虚無(休日)
2:ユル
3:エオー
4:マン
5:ラーグ
6:イング
7:オセル
8:ダエグ
2巻P172にてアルビオンとトリスタニアは同じくらいの面積とある。
4巻P134にてオランダとベルギーを合わせたくらいとある。
4巻P134にて、北東のゲルマニア、南東のガリアはトリスタニアの10倍ほどの面積とある。
南の海に面した半島「郡」に「かつてのゲルマニアのような」都市国家「郡」があり、
ロマリアはその一つと記述されている。
ハルケギニアは「大洋に突き出た緩やかに弧を描く巨大な半島」とある。
未開の地、エルフの治めるサハラとは別物のように記述されている。
よって、現行の地図はあまり正確では無いものと考えられる。
(今後設定が変更されるかもしれませんが)
国土面積が約72054平方キロである場合、
正方形の国土だと1辺が268キロ程度、
三角形など、いびつな形である事が当然推測される(地図上からも)ので
45度-90度-45度の三角形の場合、
底辺が532キロ、高さが268キロ程度になる。
中心に首都があると仮定した場合、国境までは最短直線で134キロ。
これは1日32キロ歩けると仮定すると直線街道で3.5日程度。
道のくねりなどを考慮した場合、1.5倍なら5日強、倍なら7日程度。
タバサの冒険 P26 よりリュティスからアルデラ地方まで、馬で二日、徒歩で五日、シルフィードなら二時間。
よって、馬は徒歩の2.5倍。1日の移動時間を8時間とした場合、
シルフィードは徒歩の20倍。1日10時間移動なら徒歩の25倍。
時速4キロ×8時間なら1日の歩行距離は32キロ。
シルフィードは時速80キロ。
時速6キロ×10時間なら1日の歩行距離は60キロ。
シルフィードは時速150キロ。
3巻P203にて、3日後、ニューイの月の1日にゲルマニア首府、
ヴィンドボナにて結婚式がおこなわれる予定なのに、
3巻P211にて、アンリエッタは本縫いが終わったばかりウェディング衣装で、
結婚式のための出発におおわらわの王宮に居る。
王族の移動は馬車で行うのが慣例のようなので、トリスタニア−ヴィンドボナ間は
馬車で3日以内の距離と考えられる。
トリスティン魔法学院はヴィンドボナからアンリエッタが帰る時に寄った点から、
トリスタニア−ヴィンドボナ間にあると思われる。
ラ・ロシェール
学院から港町ラ・ロシェールまでは早馬で2日、代え馬を使い走り続けて
早朝−深夜なので、1日8時間程度の移動を基本として馬で十数時間程度、
馬で2日程度との記述と矛盾しない。
よって歩いて5日程度と考えられる。
4巻P228にて、トリスティンから街道を南下→ラ・ロシェール方面
夜明けまでに追いつかないと間に合わないらしい。
2巻P168 夜中に出発した船にて
「アルビオンにはいつ着く?」
「明日の昼過ぎには、スカボローの港に到着しまさあ」
ルイズ 16歳 / 身長153 / B76( -8.0%)-62(C) / W53(-8.8%) / H75( -9.2%) / BW比1.43 / HW比1.42
シエスタ 17歳 / 身長162 / B83( -5.1%)-69(C) / W60(-2.5%) / H85( -2.8%) / BW比1.38 / HW比1.42
タバサ 15歳 / 身長142 / B68(-11.3%)-57(A) / W49(-9.2%) / H67(-12.6%) / BW比1.39 / HW比1.37
キュルケ 18歳 / 身長171 / B94( 1.8%)-72(F) / W63(-3.0%) / H95( 2.9%) / BW比1.49 / HW比1.51
モンモランシー 16歳 / 身長166 / B80(-10.8%)-68(B) / W58(-8.1%) / H79(-11.9%) / BW比1.38 / HW比1.36
アンリエッタ 17歳 / 身長158 / B84( -1.5%)-67(D) / W59(-1.7%) / H85( -0.4%) / BW比1.42 / HW比1.44
ルイズ 16歳 / 身長153 / B76-65(A) / 体重42.4 / BMI 18.0
シエスタ 17歳 / 身長162 / B83-68(C) / 体重51.8 / BMI 19.5
タバサ 15歳 / 身長142 / B68-62(AA) / 体重36.2 / BMI 17.9
キュルケ 18歳 / 身長171 / B94-69(G) / 体重62.1 / BMI 20.5
モンモランシー 16歳 / 身長166 / B80-72(A) / 体重48.8 / BMI 17.6
アンリエッタ 17歳 / 身長158 / B84-65(E) / 体重51.6 / BMI 20.2
計算するとルイズはB〜Cカップ。なのに何故胸が小さいと言われるのか?
それは要するに純粋な胸の体積が小さいから。つまり、UBが細いからです。
そこで、胸の体積とカップ数の比較をしてみました。
平均身長時の平均UBからカップ数ごとの体積を算出し、実測体積が近いものを割り出せば、実際にはどの程度のカップ数に相当するかがわかるはずです。
大雑把に胸を半球状としてふたつ合わせて楕円体になると考え、半径の組み合わせを3通り用意して計算していきます。
これらの計算結果は以下の通りです。()内は市販ブラのサイズを示しています。
ルイズ 16歳 / 身長153 / B76-62.5(B65) / 実測体積893 / 体積比A〜B相当
シエスタ 17歳 / 身長162 / B83-65.5(D65) / 実測体積1274 / 体積比C〜D相当
タバサ 15歳 / 身長142 / B68-58.9(A60) / 実測体積501 / 体積比AA〜A相当
キュルケ 18歳 / 身長171 / B94-70.3(G70) / 実測体積1959 / 体積比F〜G相当
モンモランシー 16歳 / 身長166 / B80-68.2(B70) / 実測体積903 / 体積比A〜B相当
アンリエッタ 17歳 / 身長158 / B84-65.3(E65) / 実測体積1348 / 体積比C〜D相当
ハルケギニアにはブラがないし、見た目的にも揉みごたえ的にも体積比で比べた方が正確です。現実でもUBが細いとカップが大きくても小さいですし。
体積の小さい順に並べると、タバサ、ルイズ、モンモン、シエスタ、アンアン、キュルケになります。これは作中描写通り。
体積比だけであえて「○○は×カップ」と呼ぶとすれば、タバサAA、ルイズB、モンモンB、シエスタC、アンアンD、キュルケG。
実測値とくびれ具合(UB―W―Hのライン)も鑑みれば、タバサAA、ルイズA、モンモンB、シエスタD、アンアンE、キュルケHと呼ぶのが妥当なとこだと思います。
ちなみにくびれ具合は寸胴な順に、タバサ、モンモン、ルイズ、シエスタ、アンアン、キュルケでした。
一応これで終わりかな?
あと
>>1 の全スレ訂正
× 17 ○174
>>4 了解、今週中に市ぬ
>>1乙です。
前スレ
>>832 からの続きを投下したいのですがよろしいでしょうか?
では、続きを
まぁまってろよ、と。
ロックが鼻をひくつかせて屋台に駆け寄っていく。甘味が続いていたせいで、あの手の料理が恋しいのだろう。彼の足取りは軽い。
ちょっと! などと言うが、しかしここに残る訳にもいかず
「ああもう!」
地団太を踏み、ルイズはロックを追いかけた。
と、その時、不意にロックの体が横によろけた。彼の意識が急にぐらつく。
何事かと思った次の瞬間、鼻から赤い筋がたれてきて、激痛と鈍痛が同時に襲い掛かってくる。
(鼻が、殴られた!?)
次の瞬間、ロックの左わき腹を狙って拳が突き刺さる。
人ごみの中、深々と突き刺さったそれは、ロックの顔をしかめさせ、胃の内容物を一気に押し上げた。
(――ックショウ!?)
一体何が鈍っていたというのか。気が緩んでいるにしたって、大したパンチでもなかった筈だ。少なくとも、今まで受けた事のある“本物”に比べれば。
それがどうだ。
満腹感からか、それともトリステインの雰囲気に慣れすぎたのか。
はたまた――そう、この世界に誘っておきながら消えたあいつの言うとおり――
(本当の餓えを、忘れてるからか?)
だが、そんな事よりもまずは状況を確認すべきだ。
不意の一撃を貰い、こみ上げてきたものを押さえ、飲み込む。
ルイズは突如ロックの顔がしかめられた理由がわからず、きょとんとしているが、それをロックはかばい、後ろへと下がっていく。
下がれば、状況はすぐに判断できた。
明らかに場にそぐわない、人相の悪い男が三人もこちらを見ている。
一人は手にナイフを持っており、もう一人は杖らしきものを持っている。どちらもちらつかせる程度だが、十分に効果的と言えよう。
(ナイフが最初に来なかっただけ幸運かよ)
ロックが息を深々と吐き出す。
別にため息という訳ではない。
乱れた心身を整え、気を練りこんでいるのだ。
「金か命か……ってパターンか?」
ロックがそう呟くと、ルイズの顔がこわばった。
ようやくルイズにも状況が飲み込めたのだ。
そして、この場で不意に声を上げるべきでないというのが、力強くルイズの肩にまわされた手で判断出来る。
だが、男たちはそんな言葉に反応する必要はないとばかりに少しずつ距離を詰めてきている。
一人は距離をあけ、杖を前面に押し出す。
とはいえ、ロックは魔法に関しては楽観視をしていた。
こんな街中で使える魔法は限られてくるし、先日ギトーと戦った経験から、詠唱に関しては時間が少しかかるものと知っているからだ。
シャツの裾を引っ張り、鼻血をふき取る。
一瞬その腹筋とへそに、辺りの女性が目を開いたが、それを気にするロックではない。
ふっ、と鼻から鼻水混じりに鼻血を噴出し、呼吸を整える。
呼吸さえ整えてしまえば、チンピラの三人程度ならロックの敵ではない。
一人の男がナイフを腰の高さで突き刺そうと走り出す。
「甘ぇよ」
ロックが手を伸ばし、その腕を引き取る。
急激な腕の加速に男の重心がずれた。
そのまま腰を引っつかみ、気を用いたロックの筋力が増加する。
ギトーの時にもつかわれた真空投げ。
だが、ギトーだからこそ体勢を立て直す事が出来た一撃は、男では到底抗いようのないものであった。
まるで手品の様に、一瞬にして数メートルも宙を舞うチンピラの姿はひどく間が抜けて見えたかもしれない。
一度喰らって見なければ分からないが、真空投げで飛ばされて、まともに平衡感覚を保てる人間などそうはいないのだ。
「がっ!」
男が無様な声を出して空中から地面に叩きつけられる。
しかし本職ならではか、相手のコンビネーションは素晴らしいもので、最初にロックの顔面を殴り飛ばし、わき腹への攻撃を加えた男が飛び込んでくる。
真空投げは残心が必要となる。
それは倒れた相手への油断を消す意味合いも多いが、体中にめぐらせた気を一旦大地に還元させる為もあり、無理にそれをキャンセルすれば負担がかかるからだ。
最も、めぐらせた気を羅刹の様に放出させる事も可能だが、あれは加減を間違えれば怪我では済まない。今使うのは躊躇われた。
そんな風に意識の偏りの生じさせていたロックは、男の攻撃を再び喉元に喰らう事になった。
(ず――!)
喉元は人体の急所の一つである。
打ち所が悪ければそれで絶命する事もあるが、幸いロックの体には未だめぐらされた気が残っており、致命傷とはならなかった。
最も、こんな攻撃を喰らってしまう様ではロックにとってそれ自体が致命的とも言えたが。
「ッシ!」
お返しとばかりにロックが男の顔面を殴り飛ばす。無論、手加減は忘れていない。
だが、見れば男の体は筋骨隆々で、気の入らぬ拳では失神しそうにもなかった。今日は何もかもが裏目に出ている。
予想通りというか、手打ちの拳で顔面を殴られて少しだけよろけた男は、噴出した鼻血を意に介さずすぐに体を戻して、頭突きをロックにかましてきた。
そんなものをマトモに喰らっては居られないと、ロックが慌てて腕で顔面をガードする。――それを待っていたとばかりに、男が小刻みに震える血まみれの顔でにやついた。
頭突きをロックの腕にお見舞いした後、すぐさま膝蹴りを腹へと叩き込んできたのだ。
予想だにしない攻撃にロックの目が見開かれる。いや、元の自分であればこの程度の攻撃など容易に想像できる筈だった。
(くそったれ、ガキ以下じゃねぇか)
ガードがとけ、もう一度大振りの拳がロックの顔に叩き込まれ、後ろへとロックが転がった。
ルイズが驚き、駆け寄ろうかとも思うが、勢いで後ろに飛ばされたためにそれはならなかった。
幸い、親切な観客がルイズの体を抱きとめたため、こけるには至らずにすんだ。
「ッ! クソ!」
ずれている。
どうにも今の自分は闘いの空気になじめていない。そうロックは感じていた。思い通りに動いていない自分の身体に苛立ちが募る。
エンジンだけを新調したオンボロバイクに乗っている様な、そんな気分。意識の空回りが酷い。
そして、ロックが転倒した体を戻そうとして上を見上げると、巨大な影が飛び掛ってきた。
男がその巨体を、直接肘打ちで飛び上がって叩きつけようとしていた。
しかし、流石にこれは不用意だった。
大人しく何か物を投げつけるなり、殴りつけるなりしていれば、ロックはまたも攻撃を喰らう羽目になっていたかも知れないだろう。
――しかし、かつて伝説の狼とも呼ばれた男が使った技を、この若き狼は会得している。
「ライジングタックル!」
跳ね飛ぶように、ロックの体が上空へと舞い上がる。
拳、足。
そして錐揉みに回転を加えた打撃の渦が男の体を弾き飛ばしていく。
完全にカウンターで入ったそれは、男の急所を巻き込み、完全に意識を奪い取る事に成功した。少しばかりやり過ぎた気もするが、今更だ。
それを確認し、体勢を立て直そうと地上に降り立つロックだが――完全に失敗を犯した事を認識してしまう。
三人目、魔法使いの杖がロックを狙っていたのだ。咄嗟の気功で魔法を打ち消せるか……?
しくじったと舌打ちするロックだが――
「ファイアーボール!」
背後からの声と共に爆発がおき、魔法使いが沈黙した。
後ろを見れば、ルイズが杖を構え、少し引きつった顔でロックにニヤリと微笑んでいる。
ロックはため息をつき、顔を手で覆い、自嘲の言葉を呟いた。
「……チッ、だせぇな」
こんな所をテリーに見られでもしたら、間違いなく大笑いされちまうだろうな。
そんな風に感じてロックは手で顔を覆い、首を振った。
※
――気分を治すために、路地裏でなく、大通りの店で紅茶でも楽しもうかという話になった。
席に着き、前払いだという店で紅茶とケーキを頼み、代金を支払おうとすると、ルイズが妙に焦った顔をしている。
どうしたんだとロックが尋ねると、小声でサイフがないと話してきた。
ロックがしまった、と顔を顰める。
あの三人、結局何事かと思っていたら、案の定集団のスリだったのだ。
あそこまでのされるというのは予想外だったろうが、首尾よくルイズからサイフを抜き取る事に成功している。
仕方ないから肉体労働で俺が返すとロックが口を開こうとした時――
「……あんたらぬるいよ。ああいうときは懐をまず気にするもんさ」
不意に現れた女性が、ポンとルイズのサイフをテーブルの上に置いたのだ。
そのお陰で支払いを済ませる事が出来たルイズが、女性に礼を言う。それも、割と丁寧に。どことなく、言い方は乱暴だったが、品を感じたからだ。
「悪い。スラムで暮らしてた頃じゃよくあったんだが、暫く離れてたもんでな」
「気をつけなよ。あたしみたいなお節介が取り返してくれるなんて、普通にありえないんだから」
狼はくつろいでても牙を研ぐのは忘れちゃダメね、と女性が呟いて、手をひらひらとさせて去っていく。
ルイズは良い人でよかったわね、などと呟いているが、ロックにはズキリとしたトゲがささった。
(……ここで、狼の牙の話を聞くなんてな)
そして、ゆっくりと呟いたのだった。
「……ほんと、何てザマだよ。こんなんで宿命にケンカ売るだなんて、よく言えたもんだ」
「おいおい、マチルダ。俺は交渉事が苦手だって言ったろうに。どこ行ってたんだよ」
「ちょっと、見てて危なっかしい子供がいたんでね。お節介を焼いてたのさ」
「へぇ、そいつは殊勝だな」
「……その目は何さ」
「俺からしたら、おまえさんもまだ子供の部類に入っちまうな、と思ってさ」
「うるさいねぇ」
「すねるなよ。さぁ、金も入ったし、早い所村に帰ろうぜ。テファ達が待ってる」
「そうだね。さっさと馬の手配をして、ラ・ロシェールまで戻ろうか。すぐに出れば船のスケジュールにもかち合えるだろうし」
「途中で何事も無ければいいけどなぁ。っと、こいつは美味いな」
「ところであんた」
「なんだい?」
「その両手に抱えた食べ物、どうしたの?」
「ああ、店の親父が、結構色付けてくれたみたいでさ。屋台を巡ってきたんだ。これくらい買っても罰は当たらないだろ、ってな。こういうの好きなんだよ」
「はぁ……そんなもんばっかり食べてると太るわよ」
「……それ、ちょっと気にしてんだけどな」
「そんな繊細な心があんたにもあったんだ」
「ひどい言われ様だ。傷つくぜ」
「はいはい。あ、その串焼き一本ちょうだいよ」
「それ楽しみにとっといたのにな」
「けちくさい事言わない。しっかし……」
「ん?」
「もしかして、そういう上着って一部のマニアには流行ってるのかい?」
「俺が知るわけないだろう。ここいらの事情なんて」
「それもそうよね……」
「どうかしたのか?」
「別に、なんでもないよ」
以上です。容量確認を忘れていてすいませんでした。
乙ー
最後のは・・・テリーなんだろうなあ、これw
スレの容量がまだ有るのに
次スレ大丈夫?とか立てるよ、とか言ってる奴は
何時ものテンプレ荒らし、
>>1が改変されてないか一応みてから投稿したほうが良いよ
>>1は何時もの荒らしだし
>>26 そういう荒らしが居るのか・・・
テンプレ暗唱出来るようにしよう・・・
狂ってる奴は自分が狂っているのに気づかないなんて云われてるけど
俺はそんなつもり無いんだよね
いつもって、スレ立てはこれが初めてなんだけど・・・
なんか
>>1に変なところある?
今回はあの時点で次スレを立てるべきというのは正しい判断だったし
これから次スレは450KBからにしないか?
>>27 お前がいつもの荒らしかどうかは知らん、新参で知らないだけかもしれない。
とりあえず2-16までのはテンプレじゃない(はず、俺の留守中に変わってなければ)。
あと
>狂ってる奴は自分が狂っているのに気づかないなんて云われてるけど
>俺はそんなつもり無いんだよね
それはひょっとしてギャグで言ってるのか
はいはい、触らないでね
予約が無ければ0:20くらいから9話目投下しようと思います。
>>29 なんか勘違いしてんじゃね?ここの>>1は前スレで次スレ大丈夫?っていってた奴だ、荒しでもある。(同じパターンでこの荒らしがスレ建てしてる)
2-16とID一緒だろ、荒らしの建てたスレだから気をつけろって言ってるんだと思うんだけど。
フロウウェンの人早くて狂喜www支援だ!!
ギーシュはモンモランシーの部屋で、必死に彼女を口説いていた。
モンモランシーの容姿を薔薇に例え、水の精霊と並べ立て、およそ思いつく限りの美の表現で誉めちぎった。
トリステインの女貴族は外国人にしばしば高慢と自尊心の塊だと言われる。
モンモランシーもその多分に漏れず、おぺんちゃらは嫌いではないのだが、思わず逃げ出してきた図書館の顛末が引っかかっていて、折角のギーシュの口説き文句も右から左へ抜けていく状態であった。
そのモンモランシーの物憂げな表情を、誉め言葉が足りないのだと判断したのか、ギーシュは更に頭をひねる。
ギーシュが言葉を続けようとしたその時、勢い良く扉が開け放たれ、室内に桃色の旋風が飛び込んできた。
部屋の中を行ったり来たりしながら今まさに改心の口説き文句を述べようとしていたギーシュがそれに巻き込まれ、跳ね飛ばされて床に転がった。
「な、なんだ! きみはぁ!」
それは薄笑いを浮かべるルイズだった。表情は笑っていても目は据わっている。何故だか分厚い本を手にしていた。異様な迫力を感じたのか、ギーシュは二の句が継げなくなる。
モンモランシーは心当たりがありすぎて、引きつったような表情を浮かべていた。
「ルイズ。少し冷静になってここは穏便にだな」
フロウウェンが遅れて入ってくる。
決闘の時以来だったギーシュの顔は、いきなりの遭遇に少し青褪めた。
「モンモランシィィ?」
「なななな何かしら?」
ルイズに詰め寄られて必死に平静を装おうとするが、モンモランシーの声は上ずっていて、目は宙を泳いでいる。
「あなた、何かわたしとヒースに言うことがあるんじゃないの?」
そういって、ルイズは香水壜を突きつける。動かぬ証拠であった。
「やめたまえルイズ! 僕のモンモランシーが君に何をしたというんだ!」
「ギーシュは黙っていて」
「そうはいかな――」
と、そこまで言ってギーシュはモンモランシーの様子がおかしい事に気がついた。
唇を噛み締め、渋面を浮かべている。
「モンモランシー? なにかあったのかい?」
「あ、あれは事故よ! 不可抗力だわ! まさか丁度人が……ミス・ロングビルが下にいて、あんなことになるなんて、思わなかったの!」
耐え切れずにモンモランシーは叫んだ。そして、ギーシュに指を突きつけて言う。
「だいたいねえ! あんたが悪いのよ!」
「ぼ、僕がかい!?」
さっぱり訳の分からない内に矛先が向いてきてギーシュは狼狽した。
「あんたがいっつも浮気するから……!」
馬鹿をやったものだ、とモンモランシーは苦々しく思った。
元々、陳列棚に入れてコレクションとして眺めて楽しむだけの代物だったはずなのだ。
完成に浮かれて、持ち歩いたまま出歩いたこと。
自分でも大概馬鹿をやったとは思うが、元はといえば、ギーシュが浮気などしない誠実な男なら起こりえなかった事故だ。
「モンモランシー。これは惚れ薬ね?」
「ほれぐすりぃ!?」
ルイズの言葉にギーシュが頓狂な声を上げる。慌ててモンモランシーがその口を手で塞いだ。
「大きな声出さないで! ……禁制の品なんだから」
「ギーシュに使うつもりだったのね……」
厭きれたとばかりに、ルイズは溜息をついた。
「モンモランシー……そんなに僕のことを」
ギーシュはやや感動した面持ちで頬を染め、モンモランシーの手を取る。
「ち、違うわよ! 最初はただのコレクションのつもりで……! ああ、もう! ともかく浮気されるのがイヤなだけなの!」
「僕が浮気なんかするはずないじゃないか! 永久の奉仕者なんだから!」
などと、自分の先日の行動も忘れて口走るギーシュ。
「あとにしなさいっ!」
いちゃつく二人にルイズが割って入る。
「君も無粋だな、ルイズ」
「ともかく! すぐにでも解除薬を作ってもらうわ。出来るんでしょう?」
ギーシュを無視してルイズが詰問する。
「そ、それが、その……水の秘薬が必要なんだけど、ほ、ほら。わたしが買ったので、最後だったみたい」
しどろもどろに答えるモンモランシーに、ルイズの表情が曇る。
「水の秘薬? よりにもよって!?」
ルイズは頭を抱えた。自分も今朝方、最後の秘薬をマグに食べさせたばかりであった。
「何だ? それほど貴重なものなのか?」
「そう。ないのよ。水の秘薬。お金があっても無理」
「何故だ? この間まで買っていただろう」
事情を知らないフロウウェンが尋ねると、ルイズは言った。
「水の秘薬っていうのは、ラグドリアン湖の水の精霊からもらってるって話なの。けれど最近、その水の精霊と最近連絡が取れなくなっちゃったらしいの。つまり秘薬を手に入れることはできないわ」
「薬の効果が自然に切れるのは?」
フロウウェンが聞くと、モンモランシーは視線をあらぬ方向へ泳がせる。
「い、一ヶ月から一年ぐらいかしら」
フロウウェンは眩暈を覚えた。時間による解決は望むべくもない。あの状態のフーケを放置しておくのは色々な意味で致命的だ。
惚れ薬と聞いて、毒や体内の異常を中和するテクニックであるアンティを後で試して見ようと思ったが、多分効果が出ないだろうとも考えていた。
一ヶ月から一年という効果の長さを聞く限り、つまりそれだけ強力な薬だということだ。
応急治療としての意味合いが強いアンティでは、治せない公算が強い。事実、モンモランシーの作った惚れ薬は、科学的薬物というよりは精霊の力の宿る魔法薬の類であった。
「いいじゃないか。ミス・ロングビルのような美人に惚れられて困るようなことは……ああ、いや、うん。本人の意思を無視するのは良くないな。うん、良くない」
言いかけてルイズとフロウウェンに睨まれ、ギーシュはくるりと転身した。
「要するに……そのラグドリアン湖とやらにこちらから赴き、水の精霊と直接交渉すればいいのだろう」
「ええ!? 水の精霊は滅多に人前に姿を現さないし、とっても強いのよ! 怒らせたら大変よ!」
「ただ待っているわけにもいかないのでな」
「モンモランシー? 他人事だと思ってるようだけど、どう考えてもあなたの責任だし、あれは禁制の品なのよ? ミス・ロングビルがあのままでいて、もしバレたりしたら……」
ルイズの言葉にモンモランシーは顔を青くした。
「わかったわよ! わたしも行けばいいんでしょ! もう!」
「安心してくれモンモランシー。僕も行くよ。例え何があっても僕は君を守る!」
危険だと聞いて、ギーシュもモンモランシーに着いていくことにしたらしい。
「気休めにもならないわ。あなたよわっちいし」
それから四人は打ち合わせをした。
出発は早い方がいい。明日の早朝ということになった。フーケも放置すると何をするかわからないので一緒に連れて行くことにした。
「やれやれ……」
フロウウェンは大きく溜息をついた。ハルケギニアに来てからというもの、やけに女難……というか、そういう気苦労が絶えない気がする。
ルイズ一行は馬を使ってラグドリアン湖へと向かった。
先頭を行くのはギーシュとモンモランシー。それぞれ葦毛の立派な馬に跨っている。少し後ろをフロウウェンとフーケが横並びに。最後にルイズ、という形だ。
どうも先日の焼き直しのような形だ。キュルケの役回りがフーケと入れ替わった格好だが、フーケがフロウウェンに何事か楽しそうに話しかけるたびに、ルイズは顔色と表情がくるくると面白いほどに変化していた。
と言って、二人の間に割って入ろうとするとフーケは巨大ゴーレムでも作り出すような勢いで暴れそうになるのである。ギーシュとモンモランシーの目もあるので迂闊な事は出来ないというジレンマに陥っていた。
一方のフロウウェンはというと、適当に受け答えしながらフーケをあしらっていた。
と、その内に悲しそうな顔を浮かべたフーケが言う。
「ヒースは私の事を血も涙もない悪党だと思っていらっしゃるのね。だから私に冷たいんだわ」
「そういうわけではないが」
フーケ、というよりミス・ロングビルの口調で彼女は続ける。
所謂「営業用」なのだろうか、とフロウウェンは思いあぐねた。
支援します
オスマンもこれで口が軽くなったのかもしれない。なるほど、淑女のように振舞う彼女は盗賊とは思えない高貴さを漂わせていた。
フーケの捜索に出た時、馬車の上でキュルケと交わした会話では「貴族の名はなくした」と言っていた。
メイジである以上、元貴族という部分に偽りはないだろう。素の彼女の一部でもあるのかもしれない。寧ろ、盗賊の彼女こそが、後から身につけた仮面なのだろう。
それを裏付けるかのように、彼女は貴族への恨み言を口にした。
「私は貴族が嫌いなだけなの。アルビオンの王家が私達に何をしたか」
フロウウェンは話題の雲行きが怪しくなってきたので彼女の手首をそっと取って、それを制した。
「……もう止めておけ。オレに心の内を吐露したいと思うのは本心ではないだろう」
「でも」
「すまなかった。決して嫌っているわけではない」
なおも言い差そうとするフーケを引き寄せる。彼女はされるがままで上体をフロウウェンに預けた。
フーケの場合は恐らくだが、こうして身体を一時預けるよりも、己の心情を晒す方が辛いに違いあるまい。そして、自分はフーケに内心を明かしてもらえるような間柄ではないはずだ。
だから彼女と距離を取ることで、フーケが自分の事を理解してもらおうとして自分について踏み込んだ話をしてしまうより、こうすることで「今の彼女」が満足するなら、そちらの方がいい。
「あなたは……お父様に似ているわ……」
目を閉じてフーケは呟いた。
やがて一行は小高い丘陵に差し掛かる。それを越えると、ラグドリアン湖の青く輝く湖水が眼前に広がった。
「これが音に聞こえたラグドリアン湖か! いやあ! 噂以上の奇麗な湖だな! ここに水の精霊がいるのか! 感激だ! イヤッホォォォゥ!」
一人だけ旅行気分のギーシュが嬉しそうに馬の腹を蹴って丘を駆け下りていく。馬が水を嫌がって急に足を止め、ギーシュは馬上から投げ出されて湖に落ちる。派手な水しぶきが上がった。
「背が立たない! 背が! 溺れるうぅぅぅぅうう!」
必死の形相で助けを求めるギーシュに、思わずフロウウェンは小さく笑った。
そしてそれから、馬から降りてロープを投げてやる。
「やっぱりつきあいを考えた方がいいかしら」
「バカだしね」
「ええ。バカね」
ルイズとモンモランシーが頷きあう。
「ハァ、ハァ。た、助かったよミスタ・フロウウェン」
モンモランシーは濡れ鼠になったギーシュを無視して湖面を見やって言った。
「本当。確かに水位が上がってるわね。ラグドリアン湖の岸辺はずっと向こうだったのに」
モンモランシーが「ほら」と指を指した先には、波打ち際のすぐそば藁葺きの屋根の屋敷があった。湖底に沈んだ家屋も見て取れる。
それから馬を下りて波打ち際に手をかざす。
「水の精霊は怒ってるみたいね」
「ほう。それだけで解るのか」
「わたしは『水』の使い手。香水のモンモランシーよ。ラグドリアン湖の水の精霊と、トリステイン王家は旧い盟約で結ばれているの。その際の交渉役を、『水』のモンモランシ家は何代も務めてきたわ。
今は……色々あって他の貴族がその役なんだけれど……」
そこまで言った所で老いた農夫らしき男が木陰から姿を現した。
「もし、旦那さま。貴族の旦那さま」
農夫は話しかける事も恐れ多い、と言った様子だったが、それでもおずおずと前に出てくる。
「どうしたの?」
「旦那さま方は水の精霊と交渉に来られた方々で? いえね、早いところ、この水を何とかして欲しいもんで」
モンモランシーはルイズと顔を見合わせる。
「わたしたちは……その、湖を見に来ただけなの」
モンモランシーが当たり障りのない言葉で茶を濁した。
「さようですか……領主さまも女王さまも、こんな辺境の村など目に入らんのですかのう……」
農夫は深い溜息をついた。
「ラグドリアン湖に何があったの?」
ルイズが尋ねると、
「増水が始まったのは二年程前からでさ。ゆっくりと水は増え、船着場が沈み、寺院が沈み、畑が沈み……ごらんなせえ。次にはわしの家まで今にも水没しそうになっているという有様です。
領主さまはご領地の経営より宮廷でのお付き合いの方に夢中なようで、わしらの嘆願もなしのつぶてでして……」
と、農夫は泣き崩れた。
それからしばらくの間、愚痴をこぼし続ける。言いたいことを好きなだけ言うと満足したのか、農夫は自分の家へと戻っていった。
モンモランシーは農夫の後ろ姿を見送って小さく溜息をつくと、腰につるした袋から黄色い物体を取り出した。艶やかな黄色に、黒い斑点を散らした、それはカエルであった。
「えうあ」
カエルが苦手なのか、ルイズは奇妙な声を上げて後じさった。
「な、何よその毒々しい色のカエルは!」
「毒々しいなんて言わないで! わたしの大事な使い魔なんだから!」
モンモランシーは指を立てて、使い魔に命令をする。
「いいこと? ロビン。あなたたちの古いおともだちと、連絡が取りたいの」
ポケットから取り出した針で自分の指先を突く。その血を一滴カエルに垂らす。傷を魔法で塞ぐと、カエルに言った。
「これで相手はわたしのことがわかるわ。覚えていればの話だけど。じゃあ、ロビンお願いね。偉い精霊。旧き水の精霊を見つけて、盟約の持ち主の一人が話をしたいと告げてちょうだい」
カエルは頷くと、モンモランシーの手から跳ねて、湖面へ飛び込んだ。とぷん、と水面を叩く小気味のいい音だけ残して、ロビンは群青を湛える湖底へと消えた。
「モンモランシーは水の精霊と会ったことがあるのかい?」
シャツを抜いて扇いで乾かしていたギーシュが尋ねる。
「小さい頃に一度だけね。領地の干拓を行う時に水の精霊の協力を仰いだのよ。父上が機嫌を損ねて、干拓事業は失敗しちゃったけど……」
モンモランシーの水の精霊の話に一同が耳を傾けていると、水面が輝き始めた。
「来たわ」
岸辺から三十メイルほど離れた位置の水面が、生物的に蠢いた。それから、見えない力で上に引かれるように水面が盛り上がり、粘土でも捏ねるように様々に形を変える。陽光を反射して七色に輝いた。
ルイズも実際に見るのは初めてだったが、どうもあの悪夢を思い出してしまう。フロウウェンも微妙な表情を浮かべてそれを眺めていた。
湖からロビンが戻ってくる。モンモランシーはしゃがんで使い魔を迎えた。頭を撫でて手に乗せた使い魔の仕事を誉めると、
それから立ち上がって水の精霊へと向き直る。
「わたしはモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。水の使い手で、旧き盟約の一員の家系よ。カエルにつけた血に覚えがおありかしら。覚えていたらわたしたちにわかるやりかたと言葉で返事をしてちょうだい」
その言葉に水の精霊が更に形を変える。不規則に蠢いていたそれは段々と形を整えて、やがてモンモランシーそっくりの姿となって微笑みを浮かべ、また表情を変える。
人間の喜怒哀楽の表情を確かめているのだ。モンモランシーの言うところの「わかるやりかた」というのは自分の感情を人間の表情で伝える、ということなのだろう。
やがて一通りの“おさらい”が終わったのか、水の精霊の相貌は無表情で固定された。
人の姿をして、人と同じような表情を造っても、まるで異質だとフロウウェンは感じた。
異なる尺度。異なる時間。異なる価値観で生きる存在。目の前にいるのはそれだ。そういうモノに一度は取り込まれたフロウウェンだからこそその異質さが解った。
「覚えている。単なる者よ。貴様の身体を流れる液体を、我は覚えている。貴様に最後に会ってから、月が五十二回交差した」
「よかった。水の精霊よ。お願いがあるの。厚かましいとは思うけど、あなたの一部を分けて欲しいの」
水の精霊はにこっと笑うが口にした言葉は拒絶だった。
「断る。単なる者よ」
どうやらその笑みは、盟約を交わしたものへの社交辞令や礼儀の類だったらしい。
「そりゃそうよね。残念でした。さ、帰りましょう」
モンモランシーはあっさりと引き下がろうとするが、フロウウェンとしてはそうもいかない事情がある。
フロウウェンが一歩前に出て、恭しく跪いた。その一歩後ろにフーケが付き従う。
「お呼び立てした無礼をまずは謝りたい。水の精霊よ。我が名はヒースクリフ・フロウウェン」
水の精霊はフロウウェンの姿を認めると、ふるふると姿を変える。
「どうか我が願いを聞き届けていただきたい。『水の精霊の涙』を分けてはいただけないだろうか。その見返りとして、貴方が臨む願いを叶えることを誓おう」
水の精霊が再び人間の姿に戻った時、その貌に張り付いていた表情は“困惑”であった。
「連なる者よ。我は貴様に命じることなど叶わぬ。また、貴様がそう望むならば阻むこともできまい」
そうしてまた、水の精霊はぐるぐると形を変える。
「連なる者……?」
ルイズとモンモランシーが怪訝そうに眉を顰めた。
「……命令でなくば、今の貴方の悩みや願いを聞かせてもらうだけでもいい。オレはその解決をもって、その身を分けてもらうことへの見返りとしよう」
フロウウェンは一瞬表情を曇らせたが、その言葉への追究ではなく、精霊に話を合わせることを選んだ。それは、より対等な立場に立った言い回しだった。
「よかろう」
暫く不定形の姿で蠢いていたが、やがてモンモランシーの姿を取る。今度は、無表情だった。
「我は今、単なる者どもの同胞に襲撃を受けている。我は水位を増やすことに手一杯で、襲撃者への手が回らぬ」
「襲撃者? 彼らは何時、どこに現れる?」
「単なる者どもがガリアと呼ぶ土地より、夜更けに現れる。毎夜我が領分へと踏み込んで、我が体を削っていく」
「水の精霊の領分って?」
ギーシュの小声の問いに、モンモランシーが答えた。
「湖底の奥深くよ」
一行は水の精霊に教えられたガリア側の岸辺で襲撃者を待ち伏せることにした。
フロウウェンは折角なのでギーシュに体術や陣形の重要性を説いていた。ルイズやモンモランシーと話をしようとするとフーケの機嫌が悪くなるのだ。とりあえずギーシュと話をしている分には、寄り添っていられれば満足するらしい。
トレードオフでルイズの機嫌が悪くなるのだが、これは今しばらく我慢してもらう外にない。
「では、ミスタ・フロウウェン。貴方は僕に平民の武術や戦術を学べというのかい?」
「平民と侮ったものでもあるまい。ゴーレムにできることは白兵戦だ。ならば技術的にも応用が利くことは多い」
「なるほど……」
「操る者が体術に習熟すれば、相対した者が何をしたいのか、どう動きたいかという事にも察しがつく。
そうすれば読みも早くなる。恐れも疲れも痛みも知らず体術と陣形に明るい。しかも一つの統率された意思の元に動く一団。これはかなりの脅威だぞ」
「そ、そうか。僕って実はすごいのか! そうなんだな!」
景気付けなのか、ギーシュは持ってきたワインをがぼがぼと音を立てて呷った。かなりメートルが上がっているようだ。
フロウウェンにしてみると、これから戦地に赴く新兵を見ている気分だ。こうやって気を大きくしないと居ても立ってもいられないのだろう。
「でも、どうやって湖の底までいくのかしら。確か……水の精霊は、相手が水に触っただけで心を奪えるのよね?」
ルイズがモンモランシーに尋ねる。
「よく知ってるわねルイズ。ええ。その通りよ。……多分、風の使い手じゃないかしら。空気の球を作って、それで湖底まで行くのね」
「危ないわね。それで水の精霊と戦うなんて。少しでも集中が乱れたらお仕舞いじゃないの」
ルイズは眉根を寄せた。
「他に攻撃に回る者がいるのかもしれんな」
独りごちるように言うフロウウェン。
「水の精霊は体を削るって言ってたし……だとしたら炎の使い手が一緒にいるんじゃないかしら」
「相当な命知らずか、或いは腕に自信があるか。いずれにせよ油断できない相手だろう」
「わ、わたしやーよ。戦いなんて野蛮なこと」
「まだ戦いになると決まったわけではない」
「た、戦うんじゃないのかい?」
「理由があるだろう。考えられる所では水害に困った近隣の村の者がメイジの傭兵を雇った、とか」
「交渉次第では色々解決できそうね」
とルイズ。
「最初はオレ一人で前に出よう。皆は物陰に隠れていてくれ。交渉が決裂した時には、オレがこう、左手を上げる。合図をしたら『錬金』で動きを封じ、オレとワルキューレで突撃……と、こんなところか」
支援
それから一時間も経った頃だろうか。岸辺に人影が現れた。
人数は二人。漆黒のローブを纏い、目深にフードを被っているので男か女かも分からないが、片方の背丈はかなり小さいことが遠目にも伺える。
そのまま物陰から出方を見ていると、岸辺に立って、呪文の詠唱を始めた。どうやら間違いないらしい。
フロウウェンは姿を隠しもせず、剣も抜かずに正面から歩いて近付いていった。
「すまないが、そこの二人」
まるで世間話でもするかような気軽さで二人に話しかける。
「っ!」
二人は一瞬身構えるもフロウウェンの姿を確認すると
「え!? どうしてここに!?」
と、片方が頓狂な声を上げた。その声は皆がよく知る声であった。
二人組がフードを取り払う。そこには見知った顔があった。
「キュルケ! タバサ!」
相手が顔見知りと知って戦う必要が無くなったので、一行は焚き火を囲んでお互いの事情を伺うこととなった。
キュルケとタバサが肉を焼き、ギーシュが楽しそうにワインをかっ食らっている。
フロウウェンはフーケにしな垂れかかられて動けないので、事情の説明をルイズとモンモランシーに任せて、木立に寄りかかっていた。
キュルケはその光景を見て目を丸くする。
「どうしちゃったの? ミス・ロングビルは」
「それなのよ」
ルイズが渋面で答える。地の底から響いてくるような、不機嫌そうな声だった。
「モンモランシーが作った惚れ薬を、誤って飲んじゃったの。それでフロウウェンを最初に視界に入れて……」
「なんで惚れ薬なんか」
キュルケがモンモランシーに視線を送ると、ばつが悪そうにそっぽを向いた。
「つ、作って見たくなっただけよ」
「全く、自分に自信のない女って最悪ね」
「うっさいわね! ギーシュはこうでもしないと病気が治らないのよ!」
「うーむ。元はといえば僕のせいなのか」
腕組みをするギーシュ。
「で、水の秘薬が惚れ薬の解除に必要ってわけ。でもブルドンネでは品切れで、ラグドリアン湖まで来たの。
秘薬を貰う為に水の精霊を襲っている相手を撃退するって約束しちゃったんだけど……二人はどうして水の精霊を襲っていたの?」
「それは……その、タバサの実家に頼まれたのよ。水の精霊のせいで水かさが上がっているから退治してほしいって」
正確には依頼元はガリアの王宮だった。
タバサは本名をシャルロット・エレーヌ・オルレアンという。現ガリア王、ジョゼフ一世の弟、シャルルの娘。
つまりジョゼフの姪に当たり、本来なら王族だがその権利は剥奪されている。
ジョゼフが即位と共にタバサの父、シャルルを暗殺したからだ。
シャルロットの母もまた、娘の命を庇う為に自らジョゼフ王と娘の眼前で毒を呷り、心を病んだ状態で床に伏せた。
タバサと名付けられた人形をシャルロットと信じ込みながら、今でも夢と現の狭間でシャルロットを守ろうとしているのだ。
それ以降、シャルロットは己をタバサと名乗っている。
ジョゼフ派は後顧の憂いを無くしたいと思っていたが、シャルル派の反発もあってタバサを表立って処刑するわけにもいかない。
だが、暗殺の危険は付きまとう。タバサは己を守る為に『任務』に志願した。例えば、単身で吸血鬼を相手にするような、命を落とす危険度の高い仕事だ。
王宮はこれを喜んだ。死ねばそれでよし。死ななくとも雑事は解決する、というわけだ。
タバサはこれを見事こなし、王家への忠誠の証を立てた。王宮はそれを受けてタバサにシュヴァリエの称号を与え、トリステインへ留学させることで厄介払いをしながらも、
事あるごとに王宮からの汚れ仕事を与えてこき使っている、という状況である。
今回もタバサには、水の精霊を討伐し、ラグドリアン湖の水かさを元に戻す為の任務に就くよう命が下った。
タバサはラグドリアン湖の水かさが増していることを聞いて母のことが心配になり帰郷しただけなのだが、王宮はタバサの動向を知ると、ついでとばかりに命を下してきたというわけだ。
それらのことを、キュルケはタバサと共に赴いたオレルアンの屋敷で、使用人から聞かされて知ったのである。
そんな親友の境遇をぺらぺらと話すわけにもいかず、キュルケはできるだけ簡素に事情を説明したのだった。
「それは困ったわね。退治しなければタバサの立つ瀬は無いし」
「水の精霊ともう一度交渉するしかあるまいな。土地が元に戻れば良いのだろう」
タバサは頷いた。
朝靄煙るラグドリアン湖。
モンモランシーは昨日と同じようにロビンを使いに立てて水の精霊を呼び出した。
「水の精霊よ。もうあなたを襲う者はいなくなったわ。彼との約束通り、あなたの体の一部をちょうだい」
モンモランシーが言うと、不定形の水の精霊は細かく震えた。体の一部が弾け、水滴のような何かがこちらに飛んでくる。
「うわっととと!」
ギーシュが叫んで、それを壜に受けた。それを見届けると、水の精霊は湖底へ帰ろうとする。
「待って! 聞きたいことがあるの!」
キュルケがそれを呼び止めた。
水の精霊はぴくり、と動きを止め、再び盛り上がってモンモランシーの形を取る。
「なんだ、単なる者よ」
「あなたはどうして水かさを増やすの? できれば事情を説明して欲しいのだけれど。あたし達にできることなら、解決に当たるわ」
キュルケの言葉を受けて、水の精霊は様々に形を変えた。恐らくは、それが感情の表れなのだろう。迷っている、と一行には見えた。
「お前たちに任せてよいものか、我は悩む。しかし、お前たちは我の願いをかなえた。信用して話してもよいことと思う」
一行は黙って水の精霊の次の言葉を待つ。また幾度か形を変えた後、モンモランシーの姿に戻り、語り始めた。
「数えるのもおろかしいほど月が交差する時の間、我が守りし秘宝を、お前達の同胞が盗んだのだ」
「秘宝?」
「そうだ。我が暮らすもっとも濃き水の底から。その秘宝が盗まれたのは月が二十五ほど交差する前の晩のこと」
おおよそ二年前だ。水かさが増し始めた時期と一致する。
「じゃあ、人間に復讐する為に水かさを増やしてるってわけ?」
「復讐? 我はそのような目的はもたない。ただ、秘宝を取り返したいと願うだけだ。ゆっくりと水が浸食すれば、いずれ秘宝に届く。水が全てを覆う暁には、我が体がその在り処を知ろう」
一同はその言葉に呆気に取られた。気の長い話だ。
「我とお前たちでは、時に対する概念が違う」
「じゃあ、私達がその秘宝を取り返してくればいいのね? なんていう秘宝なの?」
「『アンドバリ』の指輪。我が共に、時を過ごした指輪」
「聞いたことがあるわね」
モンモランシーが考え込む。
「確か……『水』系統のマジックアイテムね。偽りの命を死者に与えるとか……」
「そのとおりだ。単なる者よ。死は我にない概念ゆえ理解できぬが、死を宿命とするお前たちには魅力と思えるのかもしれぬ。しかしながら、其は偽りの命。
旧き水の力に過ぎぬ。『アンドバリ』の指輪はお前たちの益にはならぬだろう」
「誰がそんなもの取っていったのかしら。名前とか分からないの?」
「個体の一人がこう呼ばれていた。『クロムウェル』と」
「……クロムウェル……って。確かアルビオンの……貴族派の首魁じゃなかったっけ」
キュルケが呟いた。
「あの、恥知らずの貴族派?」
ルイズが顔をしかめて敵意を露にした。
フロウウェンの腕に縋りついたフーケの手に込められた力が、少し強くなる。アルビオンの事情は、世間一般に流布している程度の話なら、シエスタとの世間話からフロウウェンも承知していた。
王党派に反旗を翻した貴族派が、打倒王家を掲げて内戦の只中なのだとか。
王党派は相次ぐ重鎮達の翻意で地盤を崩され、威厳は地に落ち、押されに押されて明日をも知れぬという状況だ。どうも……話がきな臭くなって来た。
「偽りの命を与えられると、その者はどうなる?」
「生前と同じ姿、同じ声、同じ記憶で指輪を使った者に従うようになる。個々に意思があるというのは不便なものだな」
「死者を動かすなんて趣味が悪いわね」
眉を顰めるキュルケ。
「……約束する。その指輪を取り返してくるから、水かさを増やすのをやめて」
言ったのはタバサだった。
「わかった。お前たちを信用しよう。指輪が戻るのなら水を増やす必要もない」
「いつまでに取り返してくればいいの?」
「お前たちの寿命が尽きるまでで構わぬ」
また気長なことだ、と顔を見合わせる一同。
「我にとっては明日も未来もあまり変わらぬ」
「待って」
言い残して去ろうとする水の精霊を呼び止めたのはタバサだった。
「水の精霊。あなたに一つ聞きたい」
「なんだ?」
「あなたはわたしたちの間で『誓約』の精霊と呼ばれている。その理由を聞きたい」
「単なる者よ。我とお前たちでは存在の根底が違う。我はお前たちが深く理解はできぬ。しかし我がお前たちの身から見て不変であるが故に、変わらぬ何かを祈りたくなるのであろう」
タバサは頷くと、跪いて目をつむり、水の精霊に祈りを捧げた。その祈りの意味を知るキュルケが、タバサを優しく見詰める。
「ねえギーシュ」
「なんだいモンモランシー」
「誓って?」
「何を?」
ギーシュは途方もなく鈍感だった。モンモランシーがその頭を思いきり殴りつけた。
「わたしへの愛に決まってるじゃないの!」
「あ、ああ。えーと。ギーシュ・ド・グラモンは誓います。これから先、モンモランシーを一番に愛す……」
そこまで言ってまたギーシュは殴られた。一番に、というのが気に入らなかったらしい。
「ヒースは私に愛を誓ってくださらないの?」
「なっ!」
そんな二人のやり取りを見ていたフーケが言う。フーケの言葉に、ルイズが目を白黒させた。
フロウウェンとルイズは親子より年齢が離れている。異性として意識しているわけではないが、自分の使い魔なのだ。
それが、フーケと仲良くするというのは精神衛生上よろしくない。
「お前はオレの為などではなく、他の大事な者の為に祈ると良い」
フロウウェンは目を細めて答える。
「うー」
「ルイズもな」
唸っているとフロウウェンに視線を向けられて、気恥ずかしそうにルイズは顔を背けた。それから、見上げるようにフロウウェンの顔を横目で伺う。
「じゃあ……ヒースは?」
「オレ? オレは……そうだな。望みはあるが、永遠に変わらず誓う、とは言えないな」
と、苦笑した。
「祈りが済んだら、先に行ってくれないか。オレは一人で水の精霊に聞きたいことがある」
「私も?」
フーケが悲しそうな顔で聞いてくる。。
「すまないな。用が済めば、すぐに馬で追いかけよう」
「そう……」
渋々といった様子でフーケはルイズ達の後を追った。後に残されたのは水の精霊とフロウウェンだけだ。
「何だ、連なる者よ」
「それが聞きたい。オレは何故、連なる者なんだ?」
ぐるぐると形を変えて、また人間の形になると水の精霊は言った。
「わからぬ。貴様の体は単なる者の血と肉を持ちながらも、我らに近しい力を感じる。だが同じではなく、違うものだ。つまり、我らではなく、我らに連なる者。
しかし、それとはまた別の力を更に感じる。それらを形容する言葉を、我は持ち合わせぬ」
「それらとは?」
「貴様に感じる力は四つ。我が形容しえぬは二つ」
「……そうか。礼を言う」
水の精霊はとぷんと、小さく沈む音だけを残して湖面へと消えた。後にはたた、静かな湖が広がっているばかりだ。
フロウウェンは暫し無言で湖底を見詰めていたが、やがて踵を返すと、ルイズ達の後を追ったのだった。
以上で9話終了です。
遅れましたが、MOWの人乙です。
若ギースが来てるww格ゲー好きなんで応援してます。
IDOLAのヒト乙!
前回書きためてたって言ってたから期待して待ってました
MOWの人、IDOLAの人乙です。
人の文章は自分にない魅力があって勉強になります。
5話が完成したので10分後くらいに予約がなければ投下します。
「きゃあああああああああああああああああ」
ルイズの悲鳴が学生寮中に広がった。
それもそうだろう、爆音とともに巨大なドラゴンが自分の部屋に出現し、あまつさえ窓を突き破り部屋の調度品もへし曲げた上に
床も抜けそうになっていれば悲鳴の一つもあげよう。
最も、そのドラゴン自身は、命令はまだかとただその体勢を維持し、ぴくりとも動かない。
そして、そのドラゴンを呼び出した張本人も、これまた自分の思考の世界に入ってしまっていた。
(ぬぅ、まさかとは思ったが「本当に」召喚されるとは…。
デュエルモンスターの世界でもデュエルディスクを通してカードからモンスターを召喚する事ができたが、この世界でもそれは同様ということか。
そうなると問題はこれがどういう『ルール』の上で召喚を可能にしているかを知っておかなければならないが…)
一通り考えた末、海馬は一言、こう呟いた。
「ふむ…やはりこうなったか。」
「なにがやはりこうなったかよ!この馬鹿−!!!」
間髪いれずにどこから取り出したのか鞭を手に持ち突っ込みを入れてくるルイズ。
「なに?それじゃあこうなるかもって予想していながらあんなドラゴンを呼び出したの!?
どうするのよ!部屋の中でこんなもの出しちゃって!っていうか、私の部屋がボロボロにー!!
窓なんか突き破ってるし!どうするのよ!?」
怒りと混乱とその他もろもろの感情の激流でパニックになっているルイズをよそに、当の海馬はといえばどこ吹く風。
サファイアドラゴンの尻尾をぺたぺた触ったりしている。
「ふむ、やはりこの世界ではモンスターを実体化させられるようだな。異世界に行った時にも起こった現象だが、
なるほど、この世界もまた俺の世界とデュエルモンスターズの世界、どちらかとの縁があるのだろう。」
「ふむじゃないでしょう!こんなの見られたらどうするのよ!ゼロのルイズがまたなんか起こしたって言われちゃうじゃない!」
「安心しろ、これでお前の使い魔はモンスターを召喚する事ができるというほかには無い特別な使い魔だと証明されたぞ。」
特別な…という響きに一瞬魅力を感じるものの、実際にこの部屋の被害状況を目にすると、どちらが問題かは一目瞭然であった。
「とにかく、早くそのドラゴンどっかにやって!こんな事している間に誰かが来たら…」
ドンドン
と、言っているそばからノック…というより扉を殴打する音が聞こえてきた。
「ちょっとルイズ!?あんた部屋で魔法使うのはやめろって前に言ったでしょう!って言うか何時だと思ってるの!ちょっとあけなさい!」
扉の向こうからキュルケの声がする。
夜にもかかわらず爆音と悲鳴とが響けばそりゃ誰でも目を醒ますだろう。
しかも扉の向こうからはがやがやと、一人ではない複数の声が聞こえてくる。
「ちょっ!ちょっと待って今開けちゃ駄目!絶対駄目!」
「何言ってるの!あんな爆音鳴り響かせて!どうせまた魔法を失敗したんでしょ!とにかく開けるわよ!」
社長ww、支援
ガチャガチャと外側から開けようとするキュルケと内側から開けさせまいとするルイズ。
「セッ…セト!早くソイツ何とかしなさい!出したなら戻し方もわかるでしょ!早く!」
自分達は召喚した使い魔を戻せないのにどうしてそんな発想ができるとも思ったものだが、海馬は少し考え…
「サファイアドラゴン!その窓をブチ破り外へ飛び出せ!」
などととんでもない命令をした。
「ちょっとセト!なにいってうわぁ!?」
ドラゴンが勢いよく飛び立ち窓を突き破って外に飛び出すのと、
キュルケがサラマンダーに体重をかけさせ強引に扉を開けたのと、
ルイズがその反動で吹っ飛ばされて転がったのはほぼ同時だった。
そしてサファイアドラゴンが空を飛び回りある程度の距離を取ったところで、海馬はデュエルディスクからカードを引き抜く。
同時にサファイアドラゴンは光の粒子になり消滅した。
「ちょっと…なんなのあのドラゴン?みたことないわよ?ルイズ、一体何があったわけ?」
キュルケは吹っ飛んでいたルイズに近寄り肩を揺さぶる。
だがルイズは転がった際にどこかぶつけたのか、「きゅ〜…」などといいながら目を回している。
「あのドラゴンがいきなりこの部屋に突っ込んできたのだ。そこの窓を突き破ってな。」
目を回しているルイズの代わりに、海馬が答えた。
もちろん嘘である。しかし、もともとは海馬の責任である。
ルイズに責が被らないように、正体不明のドラゴンの襲来という形にしたのである。
社長待ってました!
「何とか怪我はせずにすんだが、ルイズはあのありさまで、部屋もこんな形になってしまった。困ったものだ。」
アンタがな、と一部始終を見ていたものがいたなら即突込みを入れるであろう。
だが今その一部始終を見ていたルイズは気絶しているし、ドラゴン自体も姿を消した。
故に海馬の言葉を否定する材料は何も無い。
ましてや、ただの平民(と、思われる)このルイズの使い魔がドラゴンを召喚したなどとは誰も思わないだろう。
「部屋の修理は明日依頼するとして、とりあえずルイズを医務室に連れて行かなければな。外傷は見られないが、念のためだ。」
そう言うと海馬はキュルケを遮り、ルイズをかかえて部屋から出て行こうとする。
「と、言うわけだ。騒がせたな。ところで…できれば医務室の場所を教えて欲しいのだが?」
「あ…えっと、それなら私が」
なぜかボーっとしていたキュルケが急に我に返り、海馬とともに医務室へと向かっていく。
そして集まっていた生徒達は、海馬の説明に微妙に納得しない顔をしながらも、自分達の部屋へと帰っていった。
螺旋階段を下りながら、キュルケは考えていた。
(このトリステイン魔法学院にドラゴンが強襲?
ありえないわ…ましてあのドラゴンは今まで見たことも無いような姿だった。
そして、ドラゴンに何かを叫んでいたこの使い魔…。ちゃんと聞こえなかったけれどおそらくあのドラゴンに出て行くように命令したんだろう。
命令した。
つまり、あのドラゴンは彼の命令を聞いたとするなら、あのドラゴンは彼が…
馬鹿な!ただの平民(のはず)がドラゴンを召喚するなんて!
しかしそれならなぜルイズの部屋で?
あーもうわけわかんない!)
「で、この先はどっちだ?」
頭の中をごちゃごちゃにしながら考えていたため、海馬に声をかけられていたことに気づかなかった。
「え、あ、えーっと…」
「何か考え事をしていたようだが、今は道案内に集中して欲しいものだが。」
「あ、ええ、ごめんなさい、えっと…」
「海馬瀬人だ。名乗っていなかったな。」
「カイバセト…私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。
あなたのご主人様のクラスメイト。よろしく。」
「ツェルプストー…そういえばルイズが口にしていた名だ。
…そうか、貴様の事だったのか。ルイズに召喚されたとき、あの場にもいたな。」
「えぇ、驚いたわよ。使い魔召喚の儀式で人間が現れるなんてびっくり。」
「俺も驚いた側だ。気づいたら見知らぬ場所にいたのだからな。」
他愛の無い会話。だがキュルケからすれば少しの安堵が生まれた。
(なんだ、話してみればそんなに異常な男でもなかったか。
変に考えてこんでた自分が馬鹿みたい。それに…結構いい男)
「ねぇ、ルイズって私の事何か言ってたでしょう?」
「ふむ…悪口というわけではないが、貴様の事を例にだすことが幾度かあったような気がするな。」
「私はこのトリステインじゃなく、隣国のゲルマニアの人間なの。
そしてルイズの家の領地と私の家領地は国境を境にすぐ近くなのよ。で、先祖代々…まぁいろいろあって犬猿の仲なのよ。」
「ほう…それでルイズは貴様をライバル視しているというわけか。」
「そゆこと。さて、医務室についたわよ。」
事情を説明し、ルイズをベッドに寝かせて海馬とキュルケは医務室を後にした。
「では、俺はこれで。ここまでの案内、感謝するぞ。」
「って、あなたはどうするのよ?ルイズの部屋に戻る気?」
「いや、少し気になることがある。少し散策して、朝には戻る。」
「あら、そう?」
「ではな、ルイズが世話になった。」
話も聞かず学生寮から離れていく海馬。
「なんていうか、変わった使い魔を召喚したものね。ルイズは。」
よくもそんなにすらすらとw
初登場時の社長は一人称が僕だったんだぜ
05話完であります。
支援ありがとうございます。
1話辺りが少し短いかなぁ…?
もっと考える事いっぱいです。
>>57 乙
長さは書きたい事を書いてたら自然と長くなると思うよ
社長の人おつです。
支援間に合わなかったぜorz
前スレが要領オーバーになってたの気付かずに更新連打してたぜ
なんにしろ社長乙
奇遇だな俺もだよ
>>27 >>2はただの荒らし文の一部切り抜き、有意情報と思ってる段階で常識を疑われる
>>3は
「〜他スレでの実験により規制ボーダーは8.5kBらしいという未確認情報あり 」
までは未確認事項の多さからテンプレへの導入を見送られた一応覚えておくべき有意情報
後半は完全な荒らしコピペ
>>5は他所様のテンプレの一部、いかに内容的に有意であろうとコピペしてる段階で
その他所様とここへの侮辱行為でしかない
>>6-16は避難所からのコピペ
荒らしが悪意のカモフラにしてるだけの「読みたきゃ避難所池」で済まされる情報
判ったか?己の行いが荒らしの片棒担ぎだった事が
いつもの荒らしかと思って透明あぼんしたら
>>1まで消えてワロタ
いやどう見てもいつもの荒らしだろうが
取り合えず投下乙と言っておく!
バージルの兄貴早く帰ってきてくれー!
(いやリアルが忙しいのは分かっているけど)
このスレに足りないのはもう兄貴しかない・・・
左手の人とJupiterの人も早くカムバーック!
最近ヒーロー分が足りない。
イザベラ管理人の方、微熱の方、ピノキオの方、帰ってきてくれ〜〜〜
フロウ氏、社長氏乙。
フロウ氏のは錬り込まれた面白さがあり社長氏は社長独特勢いがあって共に続きが気になる。
餓狼オモロイな。イイ感じに要点抑えてる。
爆熱の人帰ってきてください。お待ちしてます。m(__)m
爆熱のひとは、俺も帰ってきてほしいとおもう。
分身殺法で某子爵がお株を奪われたうえに、ボコボコにされるのが楽しみだったんだがw
零狼伝説のルイズとの対決を見てみたいな・・・
四角い食パンはイギリス式だろ。
荒らしって複数名いるのか?
このスレ立てたID:zAy+lk/r(
>>1-3,
>>5,
>>7-17,
>>27)と、
もう一つのPart 175(/anichara/1222955025/)のID:gtt424eV(2-7,9-15)
ID:gtt424eVはこのスレの
>>19でもある
それともID:zAy+lk/rとID:gtt424eVは同一人物で
>>19は自演?
>前スレ789
アポカリモンが右手はかなり強いな。死んだデジモンの技全部使えるし。
真2・人修羅・ライドウ・if主人公・ペルソナシリーズの方々、かむば〜く!
あぼ〜んは専ブラで各自、アク禁は管理人って感じで
したらばで進行したら良いのにこのスレ
これなら管理人の手間も余りかからないし
したらばしたらば言う奴定期的に湧くけど運営議論スレ行けってのを聞いてない辺り荒らしと変わらんよね
スルー汁
ブラスレイター良い終わり方だったな・・・あれから誰か召喚されないだろうか
向こうで言っても無駄だって思ってるただの一人言だからなw
>>81 なら、こっちで言っても無駄だから、黙っててくれないかな。
>>専ブラで見てない人
面倒くさがらず導入してみれ。NGIDとかマジ快適だから
>>83 まぁこの手の、スキルの低い方に合わせろという類の我侭は
言った本人にスキルがないかあるいは学校のPCで書き込んでるんだろうね
>>86 テンプレ展開を回避に
>>2 投下時に
>>3が役立った
やる夫シリーズはSS書き
つか物書きなら読むべき
>>87 あんた”は”役に立ったんだね。
だけど、みんなにとっては荒らしにしか過ぎないから
無限ループって以下略
いい加減黙れよ
あと誰かが張ってくれたイチローのやつもおもしろかったな
なんか他にない?ここの提督以上におもろいSS
ロリカードの続きはやく出ないかな
> ID:dXCO9M84
いい加減みっともないよ
わざわざキ印に触れる奴も荒らし
遅かれながら社長 乙
最近の遊戯王だと、闇に染まったダークルイズやアンデット化した蘇りしルイズなんてのが浮かんだ。
とりあえず融合でシルフィードを素材にF.G.Dを召喚
ウェールズ様と英国旗とルイズを融合すると
アルビオンをなぎはらえー
乗っただけですね、分かります。
○________
なぎはらえー |:|\\:::::||.:.||::::://|
|:l\\\||.:.|l///|
__ ィ ,. -――- 、 |:|:二二二二二二二 !
/ L / \. |:l///||.:.|l\\\|
/ ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / f / / l l l lハ |:|//:::::||.:.||:::::\\|
ト、 ,.  ̄ ̄Τ 弋tァ― `ー / 从 |メ|_l l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ フ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ \__∠ -――く __ .Z¨¨\ N ヒj V ヒソ l .l ヽ\| / /
ヽ ∠____vvV____ヽ < ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ ./ /
. \\_____ivvvvvvvv| V. ( ( /Tえハフ{ V / /
\! | / 入_.V/| >-ヘ \:::∨::∧ / ∠ ____
__ |\ l/V _{_____/x| (_|::::__ノ }ィ介ーヘ ./ ,. ---―――
)-ヘ j ̄} /| /___/xx| _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___
{ V /`7. /___./xXハ ( |:::::::::::::::::ハ >' ____二二二
. \_ |/ /___l XX∧ __≧__::::::::/:∧/ `丶、
| ヽ /____|]]∧ __|__L.∠ ム' <`丶 、 `丶、
| ', { |]]]>' __ ∧ l\ \ 丶、 ` 、
ノ } l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/ V' \ ヽ `丶\/
>乗っただけ
竜騎士ガイアですね、わかります
むぅ、究極竜騎士・・・
お久し振りです。時間がかかってしまいましたが、ようやく次の完成しました。
ただ、今回で最終回にするつもりだったのですが、長くなりそうなので二つに分けることになりました。
今回の話が13話で、次回が最終回になります。
それでは9時10分ごろに13話を投下したいと思います。
ブラックマジシャン召喚
ってかパッと見で魔法使いだとわかるキャラ召喚されたら面白いそうだな
104 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/03(金) 21:07:29 ID:X+DuA8HS
グレートブリテン島も空を飛べてさぞ嬉しかろう
>>75 >荒らしって複数名いるのか?
今回居たのは「荒らしを荒らしと見抜けないで片棒担いだ真性」と「荒らし本人」の二人だろ
貴族派の総司令官である、オリヴァー・クロムウェルの元には次々と苦戦を知らせる伝令がやってくる。
すでに、旗艦レキシントン号を除いたすべての戦艦が撃沈。地上の兵力もかなりの数を失っていた。
これほどまでの被害を出した理由は、あのメイジの力がこちらの想像をはるかに超えたものだったからだ。
「まさか、こんなことが……」
報告によれば、鳥の顔をしたゴーレムの攻撃によって多くの被害が出ているとのことだった。
ゴーレムの攻撃は常識では考えられないほど奇妙なものであり、こんなことができるゴーレムなど聞いたことも見たこともない。
その中でも特に際立っているのは、ゴーレムが吐き出す液体に飲み込まれると体が溶かされてしまうというものだ。
さらに厄介なことに、この液体はまるで意志を持っているかのように動き出し、近くにいた兵士達を次々と飲み込んでいく。
これにより多くの兵士が命を落とし、あまりの恐怖に逃げ出す者も出始めていた。
メイジの方も厄介で、火の魔法と風の魔法を使い攻撃してくる。
長剣にしか見えない杖から放たれる竜の形をした炎と真空の刃は、戦艦を容赦なく焼き尽くし、竜騎兵を切り裂いていく。
また、メイジに向けて魔法を放っても命中する直前に消えてしまう。それはどんな魔法を唱えても同じだった。
接近戦で討ち取ろうにも、逆に返り討ちにされる有様だ。
報告を聞き終わったクロムウェルの表情には焦りの色が浮かんでいる。
相手のことを甘く見ていたつもりはないが、まさかたった一人のメイジにここまでいいようにやられるとは思ってもいなかった。
さらに恐ろしいことに、あのメイジは少しずつこの本陣に近づいてきている。自分の首が狙いだとわかった時、背筋には冷たいものが流れていた。
一方、ルイズもクロムウェルと同じように焦りを感じていた。
敵の攻撃の多くを防いでくれた隠呼大仏の体はすでにぼろぼろであり、所々にひびが入っている。
必殺技の「液体人間呪縛」で多くの敵を倒してくれたのだが、もう限界だろう。これ以上攻撃を受ければ、ばらばらになってしまう。
地上にはまだ多くの敵が残っているし、空の敵もすべて倒せたわけではない。まだ旗艦と思われる巨大な戦艦が残っている。
オルステッドの剣技「ドラゴンソウル」や「ソードビュー」で攻撃はしているが、致命的な損傷は与えられていないようだ。
もしここで隠呼大仏が倒れてしまえば、ルイズ一人で残りの敵の相手をしなければならなくなり、状況は厳しくなる。
また、ルイズにはそれ以外にも恐れていることがあった。隠呼大仏の中にいる液体人間達のことだ。
(あのロボットさえ飲み込もうとしたんだもの。下手をしたら、この辺り一体が全て飲み込まれてしまうわ)
隠呼大仏が倒されれば液体人間達の制御ができなくなる。液体人間達が暴走してしまえば、全てを飲み込んでしまうまで止まらないだろう。
そうなれば、ニューカッスル城にいるシエスタとフーケも無事では済まない。
その時、焦るルイズに追い討ちをかけるように、戦艦からの砲撃が隠呼大仏に直撃する。
直撃を受けた胸の部分には大きなひびが入り、今にも穴が開きそうになっていた。あと一発でも喰らえば、本当に大穴が開いてしまう。
「相棒! 鳥顔ゴーレムはもう限界だぜ!」
「わかってるわ!!」
ルイズはデルフリンガーに声を荒げてしまうほど追い込まれていた。
オルステッドが使っていた技で、この事態を打開できるものはないかと必死に探しているが、これだけの敵を一遍に倒せる剣技などあるわけがない。
万策尽きたかとルイズが諦めかけそうになった時、オルステッドが使っていたある技が脳裏に浮かび上がる。
魔王となったオルステッドが異世界の英雄達を苦した、あの技が……
(でも、あの技はオルステッドだからできたのよ)
あれは、愛していた女性に裏切られたオルステッドだからこそ使えた技だ。それにあの技には、女性のことをまだ忘れられないオルステッドの複雑な想いが伺える。
自分は夢でオルステッドと同じ体験をしただけにすぎない。そんな自分があの技を使えるわけがないし、使おうとしてもいけないのだ。
そう思い、あの技のことを忘れようとした時、一人の人物のことを思い出した。
(駄目よ、彼を殺してしまったのは私なんだから)
オルステッドと違い、彼に止めを刺してしまったのは自分だ。そんな自分にあの技を使えるとは思えない。
だが、オルステッドが彼女のことを愛していたように、自分も彼のことを心から愛していた。これから先、彼以外の男を好きになることは絶対にないだろう。
それに彼を殺してしまったことも後悔している。もし、自分にオルステッドと同じぐらいの想いがあるならば、あの技を使えるかもしれない。
ルイズは目をつぶって力を集中させる。思い浮かべるのは、ある一人の男の姿。
幼少の頃のルイズを救ってくれた恩人であり、ルイズが始祖ブリミルに愛を誓った男。
(ワルド様、力を貸してください!!)
ルイズの左手のルーンがこれまでで一番の輝きを放つ。
それは、ルイズの姿すら見えなくなってしまうほどの激しい光だった。
ゴーレムの肩の上にいるメイジが急に光りだしたことで、貴族派の兵士達の間には動揺が広がっていた。
相手のメイジはこれまで様々な攻撃を繰り出している。恐らく、また突拍子もないことを仕掛けてくるに違いない。
貴族派の誰もがそう思い、最大限の警戒をしている中、それは兵士達の目の前に突然現れた。
それを見た瞬間、誰もが言葉を失ってしまう。自分の目の前に現れたものが理解できなかったのだ。
そして、もう永遠に言葉を発することはできない。なぜなら、それを見た者はもう石になってしまっているのだから。
「一体、何事だ!」
「わ、わかりません。前線の兵達が一斉に石に……」
「そんな馬鹿なことがあるか!」
「ほ、本当なんです」
次の瞬間、彼らは前線の兵士達が見たものと同じものを目撃する。羽帽子を被り、凛々しい口髭をした男の顔が突然目の前に現れたのだ。
彼らが目の前に現れた男の顔に驚いていると、男は急に叫び声を上げ、顔が骸骨のように変化する。
この世のものとは思えない恐ろしい光景を目にした彼らは、前線の兵士達と同じように石になってしまうのだった。
「どうやらうまくいったようね」
「相棒、一体何をしたんだ? さっきからあの戦艦、何もしてこないぞ」
「もう何もできないわ。乗組員は全員、石になってるんだもの」
「石?」
ルイズが使った技は、オルステッドが英雄達を苦しめた「セントアリシア」とほぼ同じものだ。
オルステッドと違う所といえば、アリシアではなくワルドの姿をしていることぐらいであろう。
名付けるなら「セントワルド」といったところだろうか。
「行くわよみんな。この戦いを終わりにしましょう」
ルイズのその言葉に反応した隠呼大仏がゆっくりと前進する。もはやルイズ達の行く手を阻む者は誰もいない。
前方に見えるのは、石になってしまった哀れな兵士達の姿のみであった。
ジャンプショット支援
そのころ、貴族派の本陣では戦況の報告が一向にやってこないことにクロムウェルが苛立ちを募らせていた。
「戦況の報告はどうした!」
「それが、さっきから伝令が一人もやってこないんです。こちらから戦場に向かった者も帰ってきません」
「なんだと!?」
さっきから引っ切り無しにやってきていた伝令が急に来なくなり、こちらからの伝令も一人も戻ってこない。
これが何を意味しているのか、そう考えたクロムウェルの脳裏にある一つの答えが浮かび上がる。
だが、その答えを認めるわけにはいかない。たった一人のメイジに、五万もの大軍が全滅させられたなど、あってはならないことだ。
その時、クロムウェルのいる本陣を小さな揺れが襲う。そして、最初は小さかったその揺れは、徐々に大きくなっていく。
まるで、何か巨大な物がゆっくりとこちらに近づいているかのように……
「ま、まさか……」
「前方から巨大なゴーレムがこちらに向かってきます!」
「お、お前達、何をしている! 早くあのゴーレムを止めろ!」
クロムウェルのその言葉に反応した兵士達が動き始める。ゴーレムはすでにぼろぼろであり、あと一押しで倒せるような状態だ。
ここで手柄を立てておきたいと考えた者達がゴーレムに群がり、本陣にはクロムウェルだけが残される形になった。
だが、本陣に残ったクロムウェルは信じられない光景を目撃する。ゴーレムに向かった者達が一人残らず石になってしまったのだ。
あまりに現実離れした光景に言葉を失っていると、ゴーレムの手から黒いローブの人影が降りてくるのが目に映った。顔は見えないが、随分と小柄な人物のようだ。
だが、体は小柄でもカエルの化け物や奇妙なゴーレムを操り、五万の大軍を一人で全滅させた凄腕のメイジなのだ。
そう考えたところで、ある一つの疑問が浮かんできた。はたして、この人物は本当に人間のメイジなのだろうか。
もしかしたら、自分はとんでもないものに戦いを挑んでしまったのかもしれない。
しかし、クロムウェルがそれに気付いたところでもう手遅れだった。
黒いローブの人物はすでにクロムウェルの目の前まで迫っていたのだから。
「お、お前は一体何者なんだ……」
恐怖に震えるクロムウェルの問いかけに、黒いローブの人物は静かに答える。
「私の名は……魔王……オディオ……」
それがクロムウェルの聞いた最後の言葉だった。
この日、長く続いたアルビオンの動乱がようやく終わりを告げた。
勝ったのは王党派でも貴族派でもなく、突如現れたオディオと名乗る魔王。
この戦いの結果は、ハルケギニアの他の国々にも大きな衝撃を与え、人々はわずかに生き残った者から伝えられた魔王の力に恐怖した。
アルビオンが魔王の手に落ちてから、トリステインの王宮では毎日のように会議が行われている。
議題はもちろんアルビオンの魔王対策であり、会議では様々な意見が飛び交っていた。
「魔王は退治すべきです! トリステインが狙われてからでは遅いのですぞ!」
「いや、ここは魔王を刺激せず話し合いに持ち込むべきだ。話を聞く限り、我々の勝てる相手とは思えん」
「魔王が話し合いに応じてくれますかな?」
「応じるわけがない。魔王は五万の大軍を一人で壊滅させた化け物ですぞ」
「魔王の正体はエルフだという噂もある。ここは下手に手を出さない方がいい」
「ですが、現にアルビオンでは魔王との接触に成功した者もいるという話が……」
「そんなものは噂話にすぎん! 今は、一刻も早くゲルマニアとの同盟を成立させ、少しでも魔王に対抗できるようにするべきだ!」
結局、この日も会議はまとまらずに終わりを迎えた。
きっと明日も同じように、結論の出ない会議が行われるのであろう。
そのころ、アンリエッタは会議にも出席せず、自室のベッドの上で泣き続けていた。
アルビオンが魔王に占領されたという報告を受けてからは、ずっとこの調子である。
(ウェールズ様もルイズも魔王に殺されてしまった。もう、私には誰もいない……)
愛する人と親友を失い、アンリエッタの心は深い絶望に包まれていた。
それに、ルイズはアンリエッタがアルビオンに行かせたのだ。そのことが、自責の念となってアンリエッタを苦しめている。
(ルイズ、ごめんなさい……)
そして、再び涙が頬を濡らしていく。
アンリエッタが泣き疲れて眠ってしまうまで、涙が枯れることはなかった。
しばらく眠っていたアンリエッタだったが、バルコニーの外の物音で目を覚ました。辺りは真暗で、すでに夜になっている。
物音がした方に目を向けると、ずっと締めきっていたカーテンの向こう側に、人影が立っているのが目に映った。
「そこにいるのは誰です!」
「私です、姫様」
「ルイズ!?」
カーテンの向こう側にいるので姿は見えないが、声は間違いなくルイズのものだった。
「待ってて、今すぐそっちに……」
「そのままで聞いてください! 姫様に大事な話があります」
すぐに駆け寄ろうとしたアンリエッタだったが、ルイズの強い口調に歩みを止められてしまう。
アンリエッタが立ち止まったのを確認したルイズは、静かに語り始めた。
支援
「姫様、アルビオンの魔王には絶対に手を出さないでください。こちらから何もしなければ、魔王が攻めてくることはありません」
「でも、ウェールズ様は魔王に……」
「ウェールズ皇太子は反乱軍と勇敢に戦って戦死なさいました。魔王が現れたのは、王党派が壊滅してからです」
ウェールズが戦死したことを聞いたアンリエッタは辛そうな表情を見せる。
それに気付いたのか、ルイズはアンリエッタに向けて頭を下げると、謝罪の言葉を口にした。
「申し訳ありません。私は姫様の願いを叶えることができませんでした」
「ルイズ、もういいの! あなたが生きて帰ってきてくれただけで十分よ!」
「姫様……ありがとうございます。ですが、私はまだトリステインには戻れません」
「どうしてなの!」
「アルビオンでやらなければならないことが残っているからです」
アンリエッタには、ルイズがやろうとしていることがすぐに想像できた。アルビオンの現状を考えれば、魔王に関係することだろう。
だが、そんな危険なことをルイズにさせるわけにはいかない。
そう考えたアンリエッタは、ルイズを止めようとバルコニーに駆け寄り、カーテンをいきおいよく開け放つ。
「ルイズ!!」
しかし、そこにルイズの姿はなかった。
「そんな……」
ルイズが自分の前から消えてしまったことにショックを受けたアンリエッタは、その場にへたり込んでしまう。
すると、先程ルイズがいた場所に何かが落ちているのが目に入る。急いで拾い上げると、それはアンリエッタもよく知っている二つの指輪だった。
一つはルイズに渡した水のルビー、そしてもう一つは……
「これは、風のルビー!」
それは間違いなくアルビオン王家に伝わる風のルビーだった。
ルイズが置いていったこの指輪が、ウェールズの形見だとわかってしまったアンリエッタは、その場に泣き崩れてしまう。
もう二度と愛していた人には会えない。そう考えると涙があふれて止まらなかった。
その時、手に持っていた風のルビーと水のルビーが共鳴し、虹の光が作りだされる。その光の美しさは、泣いていたアンリエッタが思わず見とれてしまうほどだった。
「ウェールズ様、ルイズ……」
虹の光を見たアンリエッタは、目元を拭い必死に涙を止めようとする。このまま泣いてばかりでは二人に顔向けできないと思ったのだ。
涙も止まり、落ち着いたアンリエッタはこれからのことを考えることにした。ルイズがアルビオンで頑張っているのに、自分だけいつまでも部屋に閉じこもっているわけにはいかない。
(ルイズ、私も頑張ります。いつかあなたと再会した時に胸を張って会えるように……)
次の日、アンリエッタは会議の場に現れ、魔王とは戦わないことを宣言する。
これによりトリステインは、魔王とは争わない方向で話が進んでいくことになり、長く続いた会議はようやく終わりを迎えた。
以上で投下終了です。支援ありがとうございました。
なるべく早く最終回を投下できるようにがんばります。
乙でしたー
オディオの人乙
次回焦らずにお待ちしてます('(‘ω‘*∩ `ヽーっ
>>107の8行目
「魔王となったオルステッドが異世界の英雄達を苦した、あの技が……」の「苦した」は「苦しめた」では?
ピュアルイズキターッ!!
セントアリシアはエリアルシリーズ無いとマジで詰むから困る
裏切ってもなお愛されるワルドは初めて見るな
>>102 パッと見で、の常識がギニアでは違うわけだから
そう単純でもないだろ。
とりあえず杖もってマント姿だわな
中華な道士とかアラビアンな大魔王っぽいのとかだとまず魔法使い扱いされないだろ
ヴァリエール家が借金まみれって設定にするのはさすがに不味いよね?
代理依頼着てるんで50分からいくっす
オディオの人、乙でしたー。
所で私もこのスレに刺激されてSSを書いている者ですが、ちょっと質問があります。
召喚される側の方は別として、ゼロ魔の基本設定はアニメ版、マンガ版(&小説版)とありますけど
これらの設定を混ぜたりしても問題ないでしょうか? つまり・・・
<例> 使い魔召喚時の呪文の違い→マンガ版
契約前から会話できるか否か→アニメ版
ギーシュの香水を誰が拾うか→マンガ版
と、あくまで例えですけど、こんな感じにです。
あまり混ぜこぜにするつもりはありませんが、多少は混ぜるつもりであります。
他の作品を見てみますと、どちらかに偏っている作品もありましたので質問させて頂きました。
公爵家が借金まみれってのもすごいな
でもなんかまともそうな設定つければいいんじゃね
翌朝アトリが目を覚ますと、見慣れぬ部屋を朝日が照らしていた。
一瞬呆けてしまったが昨日の事を思い出しベッドの方向を見やる。
ご主人様である少女は、ベッドの中でかわいらしい寝息を立てている。
これからこの少女の使い魔というわけである。
しかし、使い魔の仕事等肝心な事を何も聞いていない。
よって朝起きてすればいい事等解らない故、無為な時間を過ごす事になってしまった。
左目の端末でルイズの寝顔を覗きこむ。
端末は円状のモニターをアトリの左目の前に発生させ、ルイズの異時空同位体を映し出す。
(――――――――!!)
赤藤色(ウィステリア・レッド)の瞳に驚愕の表情が掠めたが即座に持ち直す。
(ありえねぇ・・・)
フクロウ2度目の友情出演。
やれやれ・・・、という今は亡き同僚の声が聞こえてくるようである。
そしてまたその寝顔を眺める。
あどけない寝顔であった。
しゃべると煩い小娘に他ならないが、寝ている分には『絵本』に出てくる少女のようであった。
それだけでもアトリが穏やかな表情をその顔に湛えるのには充分な様にも思えるが、
その瞳にはどこか懐かしい物を眺める様な、どこか寂しい輝きを放っていた。
しかし、やはりご主人様であるルイズが寝ているとあっては、こうして寝顔を眺める他に何もする事が無い。
情報収集が急務である現状、外の探索にでても良かったのだが
昨日聞き忘れたことを聞いておきたかった。
よってアトリは『絵本』に出てくる少女を煩い小娘に戻す事にした。
「起きろよ」
「な、なによ!なにごと!」
毛布を剥がれたルイズは『絵本の中の少女』を完全に駆逐してしまったかの如く、
身震いしながら叫んだ。
「朝だぜ」
「はえ?そ、そう・・・・・・。って誰よあんた!」
「チッ・・・お前が召喚したんだろうがよ」
吐き捨てるように言うアトリだったが、自分も寝起きに同じ様な状況に陥った為強く物を言えなかった。
「ああ、使い魔ね。そうね、昨日召喚したんだっけ」
ルイズは起き上がると、あくびをしながらその小さな手足を思いきり伸ばす。
そして短く命じる。
「服」
「あ?」
「椅子にかかってる制服よ、取って!」
「チッ・・・」
アトリは舌打ちをしながらぶっきら棒に服を掴む。
アトリとしては自分は使い魔にはなったが、召使になった覚えはなかったのである。
そしてルイズに向かって放り投げると、昨夜から胸中に抱えている疑問をぶつける。
「俺は何をすればいいんだよ」
「そういえば説明がまだだったわね・・・。いいわ!教えてあげる!」
ルイズは得意気に指を立てて言った。
「まず、使い魔には主人と目となり、耳となる能力が与えられるわ」
「意味がわからねーぜ」
「使い魔の見た物が主人にも見えるようになるのよ。でもあんたじゃ無理みたいね!私何も見えないもの!」
「そうかよ」
アトリは内心安堵した。
自分が見聞きしたものすべてが伝わるなんて、そんな能力付加されたらたまった物ではない。
「それから、使い魔は主人の望む物を見つけてくるのよ。例えば秘薬とかね!・・・・でもまぁ、あんたはこの世界の人じゃないし無理か」
その声と表情に落胆の表情が混じりつつルイズは続ける。
「そして、これが一番なんだけど・・・、使い魔は、主人を守る存在でもあるのよ!主人を敵から守るのが一番の役目!」
「守る・・・か」
どこか遠くを見つめるような眼をしている使い魔を置いてルイズは続ける。
「あんたなんか色々凄そうだしそこは大丈夫そうね。それに元軍人なんでしょ?」
ルイズは唯一この使い魔でも可能でありそうな事なので、声を弾ませ問うが返事は無い。
我が使い魔は何かを思い出しているような、どこか寂しげな表情のままである。
何か思い当たる事でもあるのだろうが、無視されてる側としては面白くない。
ここは仕事を1つ追加でもしてやろう。とルイズが思うのも無理はないのかもしれない。
「後、主人の身の回りの世話も使い魔の仕事よ!洗濯、掃除、その他雑用!」
アトリの瞳に一瞬で表情が戻る。そして
「しらねぇよ」
と言ってそっぽを向く。
無視をしていたと思ったら、今度はそっぽを向かれてしまったとあってはますます面白くない。
ルイズは立ち上がりアトリに詰め寄る。
「何よその言い方!あんたは私の使い魔なんでしょ!?」
一応アトリを睨みつけているのだが、身長差のせいか上目使いになってしまい迫力に欠ける。
しかし怒っている事に変わりはない。
むううううううう・・・・・・・・・と腰に手をあて文句無しのご立腹である。
アトリはルイズを見下ろす様に睨んだ。
しかしその目線に怒気は無く、困惑の表情という方が正しいかもしれない。
ただし、それも一瞬でしかなくすぐにその表情を緩めた。
「俺には・・・できねぇんだよ。」
「へ?」
素っ頓狂な声でルイズは返す。
また召喚した時の様に怒気を孕んだ声で威嚇する物とばかり思っていたルイズには、
このような反応は甚だ意外だったのだ。
「俺はガキの頃から戦闘しかしてこなかった。俺がやっても返って邪魔になる」
そして、本当にすまなそうに言うアトリを叱り飛ばす程ルイズは鬼にはなれなかった。
「なんだそうなの?しょうがないわねぇ・・・、いいわ、メイドに頼むから」
洗濯くらい誰にでも練習すればできそうな物だが、その間にルイズの服の生地を何着もダメにしてくれるだろう。
それなら、メイドに頼んだ方が良い。
それに、欠点が1つくらいあったほうが親しみも湧くという物だ。
腰に手をあて、手をヒラヒラと振りながらルイズは続ける。
「その代り、わたしを守る仕事はちゃんとやるのよ?」
「そうだな」
小さな主人の心遣いを感じたアトリは穏やかな表情で応えた。
話していたら時間がなくなってしまったらしいルイズは急いで着替えている。
そして、アトリは着替え終わったルイズに連れられて部屋の外に出る。
すると、似たような木で出来たドアが3つ並んでいた。
その一つが開いて、中から燃える様な緋色の髪の少女、いや女性が出てきた。
ルイズより背が高く、女性らしい体付きをしている。
恐らくルイズより3つ4つ年上なのだろう。
褐色の肌をしたその女性はルイズを見ると、にやっと笑った。
「おはよう。ルイズ」
ルイズは顔を顰めると、露骨に嫌悪感をその声に滲ませ応える。
「おはよう。キュルケ」
恐らく二人は友人なのだろうがルイズが嫌そうにしているのは何故だろうか。
二人が話している姿を黙って見ていると、
キュルケと呼ばれた女性の背後から虎程もある巨大なトカゲが現れる。
その尻尾には火が煌々と耀い、廊下の影を照らす。
「おはよう使い魔さん、私はキュルケ。二つ名は『微熱』。『微熱』のキュルケ。そしてこの子が私の使い魔、フレイムよ。あなた、お名前は?」
「ア「アトリよ!」
とアトリの言葉を遮って代わりにルイズが応える。
アトリにはルイズがキュルケ心無しか何かを警戒している様に見えたが、
目の前の女性を警戒する理由をアトリには見つけられなかった為流す事にした。
「アトリね。へー、いいじゃないの。ゼロのルイズにはお似合いだと思うわ」
と言うキュルケの目には穏やかな嘲弄の波が揺れているのが見て取れた。
それに対して意外というべだろう、ルイズに悔しがる様子は全くない。
むしろにやにやとキュルケを見ているではないか。
キュルケも普段と違うルイズの反応に戸惑いを感じている様子だ。
「耳を貸して」
とルイズに言われたのでかがむと小声で食堂の場所を説明される。
その後ルイズはキュルケに向き直り
「アトリ、キュルケの相手なんかしていたら朝食に遅れちゃうわ!急いで連れてって!」
と余裕たっぷりに言い放つ。
(そういう事かよ・・・・)
少し呆れたがマントの中にルイズを抱き走り出す。
その速さは飛んでいる時程ではない物の、『凄まじい速さ』というべき速さであり
なんの障害物もなく大空飛んでいる昨日とは違い、
室内ゆえに、狭く それでいて直角のカーブ等も存在する中を高速で移動した為、
命じたルイズも肝が冷える思いをした。
そして一人廊下に残されたキュルケは、
視界から一瞬で走り消え去った二人を見て呆然と立ち尽くす他無いのだった。
今回はここまでです。
大筋はできあがっているのですが、文章にするのが難しいです。
今回は煮詰まっている時に昔から大好きな小説をよんで居た為
影響を受けた部分が多かった様に思います。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
以上線上までが本文です。
毎度毎度すみませんが、よろしくお願いします。
>>124 考えてるキャラがキャラなんで誰かしらが借金してて自殺手前ぐらいの人がいないと活躍できなくて
>>131 ギーシュに首が回らないくらいの借金を負ってもらおうか
借金苦の女の子である必要はないよな? ギーシュなら公式で貧乏貴族だったはずだし
作者さん、代理さん乙です
>>123 全く問題は無い。
ジル・ド・レなんか公爵で男爵で元帥だったのにバカやって借金だらけだったんだぞ
線より下は要らなかったんだろうか・・・?
ノエイン乙です、このアニメはどのキャラも魅力的だったなぁ
アトリ好きなので召喚だけで終わんないでよかった、続き期待してます。
>>132 ああ、グラモン家があったか
これなら問題なく夜逃げさせれるかな
アトリの人代理の人乙
>>131 借金まみれで原型とどめないルイズ
借金まみれでも性格がかわらないルイズ
理由が書いてあればおk
138 :
ゼロと工作員:2008/10/03(金) 22:10:23 ID:X4PIN6Hy
7話。22:20に投下します。
>>136 三文字で大体わかって吹いた
工作員支援
>>140 違う
ライジングサンといえば分かるかな
ジュンイチローか……
※現実の人物とはあまり関係がありません
作者の人、代理投下の人、乙であります。
>>133 ご回答ありがとうございました。
これで続きを書く事が出来ます。
できれば、今月中には書き上げた新作を引っ提げて戻ってくるつもりであります。
146 :
ゼロと工作員:2008/10/03(金) 22:21:10 ID:X4PIN6Hy
図書館で許可証と名簿を記入し、いつも奥の席に座っている、
顔なじみとなった青く見える黒髪を持つ少女、タバサに話しかける。
「こんにちわ」
「・・・うん」
フリーダはオスマン達から正式に異世界の人間であると認められ、この世界の教育を受けている。
講師となるのは『雪風』の二つ名を持つ、眼鏡をかけた十代の小さなメイジだ。
齢は14歳、背は140cmほどで、魔法学院2年。無言、無表情。
発育が遅れ、背が小さく大人しいために12歳ほどに見える。
生徒の中では特別優秀な存在らしく、<トライアングル>の称号を貰っていた。
フリーダはタバサの元へ通い詰め、文字や文章の読み方といった基本的なものや、
地理政治文化、歴史といったものまで、ハルケギニアについて様々な知識を学んでいる。
魔法や魔道具などの異世界の知識は、物語の中に居るようで彼女にとって面白かった。
映画や小説の設定資料や使われた道具を生で目にするようなものだ。
彼女は真綿に水を染み込ませるように知識を吸収していった。
「問題、正式名称は「王立魔法研究所」。トリステインの王都トリスタニアにあって…」
「通称アカデミーね」
「正解」
タバサは非常に無口なものの、聞けばちゃんと答えてくれる。
教えてもらう代わりに、フリーダはトリステインでは未発達と思われる自然科学や数学の知識を教えていた。
レベルの低い学院の授業に半ば飽きていたのでタバサにとっても有意義な時間であった。
「tanθ = sinθ / …」
「飲み込みが速いわね、なら…」
古風な紙媒体の本を使い、鉛筆で紙に書き取り、覚える。
脳に埋め込んだ<<記憶領域>>経由で覚えてきたフリーダにとって、
手で覚えるのは古臭く非効率極まりないことである。
それでも彼女は嫌いではなかった。
図書室の壁に掛けてある時計を見ると、とっくに夕食の時間は過ぎていた。
熱が入りすぎて夕食を抜かしてしまったようだ。
一段落したのでタバサと一緒に休んでいると、
いつものようにキュルケが林檎やサンドイッチの入ったバスケットを持ってきた。
タバサと図書館に夜遅くまで入り浸るようになって以来、毎晩彼女は差し入れを持って来てくれるのだ。
彼女はタバサの体調が心配だから持ってきているのだそうだ。
服や男はだらしないように見えて、実はマメで世話焼きなのかもしれない。
「それにしても、たった一週間でずいぶん懐いたわね。タバサ」
「・・・・たぶん、違う」
タバサの頬が微妙に動いた。
表情が乏しいので判りづらい、多分喜んでいるのかもしれない。
148 :
ゼロと工作員:2008/10/03(金) 22:22:15 ID:X4PIN6Hy
「林檎。食べる」
タバサがバスケットから林檎とナイフを取り出し皮を剥く。
危なっかしい手付きで皮ごと身を剥ぐ。
角ばった林檎が出来そうだったので。
「貸して」
不器用な姿にフリーダは見ていられなくなり、手を貸した。
慣れた手で林檎の皮を剥く。
「へえ、上手いわね」
皿の上には林檎の兎が乗っていた。
遊び心で、瞳や毛の細工を無駄に凝ってみた。
「刃物の扱い、慣れてるの?」
「ええ、昔レストランで働いてたから」
「・・・そう」
キュルケは林檎の兎を頭から食べた。シャクシャクと子気味よい音がする。
「・・・もったいない」
タバサは残念そうに兎を食べる。
無表情に見えて、可愛いもの好きなのかもしれない。
「・・・・・・」
タバサがじっとフリーダの顔を見ている。
視線は眼鏡に注がれている。
放っておいたら黙っていつまでも見つめていそうなので、問いかける。
「…掛けたいの?」
「うん」
フリーダは眼鏡を外し、渡した。
タバサは歪みのないレンズの向こうでどんな世界を見ているのだろうか。
付けた心の仮面が外れそうで、ぎこちない微笑みを返した。
「・・・度が入っていない」
「レンズを一枚通したら、世界が綺麗になって見える気がするの」
彼女はレンズと同じ、薄っぺらい『自分』に対して苦笑いする。
「今週の休み、みんなで一緒に街にいかない?」
「あたしとタバサとルイズつれてさ、買い物に行くの。案内したげるわよ」
「そうね。この国を知るいい機会かもね」
「・・・シェルフィード」
支援
失礼、支援
151 :
ゼロと工作員:2008/10/03(金) 22:23:40 ID:X4PIN6Hy
「どうして私がツェルプストーなんかと」
ビルの2階ほどの大きさがある羽を広げた蒼い竜の背で、
ルイズがぶつぶつ小声で文句を言っている。
三人はタバサの使い魔、シェルフィードの背に乗り、
ハルケゲニアの王都トリスタニアへ向かっていた。
タバサが魔法で風の障壁を張るおかげで、
高度にも関わらず生身で外に出ても快適である。
ルイズはフリーダとの付き合い方を考えていた。
朝はルイズが着替えるのを手伝った後、洗濯に行き、
ルイズの授業がある昼間は平民のシエスタと共に雑用、
食事も別で、授業後はタバサと勉強、忌々しいツェルプストーとも仲がいい。
其処まで考え、気付く。自分は存在感がゼロのルイズではないのかと。
会話する暇がないじゃない!
そういえば、まだ学校から貰ったフリーダの下着の替えや
制服以外の服は用意していなかったなと思い出した。
先日、ツェルプストーがフリーダと一緒に買い物に行こうと粉をかけていた。
先祖代々寝取られてきたツェルプストー家に使い魔まで取られては堪らない。
焦ったルイズは主人の懐の深さと、偉大さを示すため、
街で物でも買い与えようかと思っていた。
その矢先の出来事であった。
「壮観な光景ね」
上空のシルフィードから街を見下ろす。
街の中央に聳え立つ、白い石造りの尖塔。
王城を中心に整備がなされた街路は巨大な人口を抱える都市にも関わらず、
一様に入り組み細く狭い。
街を二部する巨大な河を隔て、街と城に分かれている。
どうして街路を広くとらないのか彼女は不思議に思った。
旅なれた彼女には一目で判る。
こうした不自然な景色は、たいてい設立初期に戦争があったためだ。
「トリステインの王都よ。ここらじゃ一番大きな町なんだから。特産品は…」
ルイズが誇らしげに説明している。
だが、フリーダの冷静な目に映るそれは、ただの街だ。
そして人殺しの専門家、暗殺者であるである彼女は、
無価値なものを美しく飾ろうとするすべてが嫌いだった。
トリスタニアの大通りを歩く。
休日の通りには露天が出展し、元々5mほどしかない道を更に狭くしていた。
「狭いわね。これでも大通りなの?」
ルイズが怪訝な顔をする。
「アンタどんなとこに住んでたのよ」
「私の住んでいた街はこれの3倍はあったわ」
「ゲルマニアでもそんなものないわよ」
「…そう」
152 :
ゼロと工作員:2008/10/03(金) 22:24:58 ID:X4PIN6Hy
トリステインの王都、トリスタニア。
街の中央には、王城を始め石造りの白い美しい建物が立ち並び、多くの貴族が暮らす。、
街一番のブルドンネ通りの路地には色とりどりの安物の衣服や帽子をずらりと並べた露店や、
手製の首飾りや指輪を売る立ち売りの商人や、タライや包丁フライパンを置いた金物屋、
箱売りしている果物やザルに無造作に詰まれた野菜を売る露天商、
試験管に入った妖しい色の秘薬を売る屋台が立ち並ぶ。
肉を焼く臭いや、店主と客の競り合う声が聞こえ市場は騒々しい。
商品を搬入する台車や、忙しそうな買出し業者、子供連れの夫婦や学生、
空には風竜やグリフォン、ヒポグリフなどの使い魔や風船が飛び交い、混雑を通り越し猥雑だ。
「ほら、そんなに物珍しげにしてると、スリに狙われるわよ!」
フリーダはルイズに注意されるも、街の姿に気もそぞろだった。
様々な星の、街を見てきた彼女であったが、
本の中でしかなかった街の光景が現実のものとなっているのだ。
本好きな彼女としては実に魅惑的だ。
「アンタの服を買いに来たんだからね!」
今日の予定は学院から出て、街へフリーダの服を買いに行くことになっていた。
召還時の服はボロボロで替えの服や下着がなかった為だ。
当初はキュルケがフリーダの服の金を出すといっていたのだが、
ルイズが使い魔の面倒を見るのは主人の務めと首を縦に振らなかったため
全額、ルイズ持ちとなっている。
「摺られて私に恥をかかせないでよ!」
財布は金貨が一杯に詰まっていて、重い。
スリが嫌なら私に財布を持たせるなとつきかえそうと思ったが、面倒なので止める。
ルイズの言葉に一々反応していたのでは日が暮れるから。
「いいじゃないの。楽しんでるんだから」
隣に歩いているキュルケがフォローを入れた。
「ルイズだって初めて街に来たとき同じだったでしょうが」
自分の身長ほどもある長い杖を抱え物静かに歩くタバサが首を縦に振った。
「あ、あれは子供のころの話しで」
ルイズがキュルケにからかわれている。いつもの通りだ。
そのうちルイズが一方的に興奮しだして杖を抜いて爆発させるだろう。
ほら、予想通り爆発させた。
それをキュルケが軽くあしらい、タバサが無言で被害が広がるのを抑える。
三人の日常風景だ。
服を大量に買いすぎたルイズがキュルケに
「シェルフィードじゃそんなに持ってけないわよ」
と諭されたり、ご主人様と使い魔の関係に気の大きくなったルイズが
アクセサリーを大人買いしようとしたのを
「・・・無謀」
とタバサに止められたり、彼女オススメのハシバミ味のアイスを食べて
「に、苦っ」
とルイズが悶絶したりと三人は買い物を楽しんでいる。
フリーダは目をそらし、眼鏡を直す。
はしゃぐ彼女達の中にいるのが、たまらなく場違いで、恥ずかしくなる。
支援
支援
155 :
ゼロと工作員:2008/10/03(金) 22:26:40 ID:X4PIN6Hy
「少し、辺りを見てきていいかしら?」
アイスを食べて一人を除き全員で悶絶した後、フリーダが切り出した。
「いいわよ。私達は店で待ってるから」
「待ってる」
「苦あいいい」
三人から離れ路地を歩く、中央通りから一本離れただけで街の本来の姿が見えた。
表通りとは反した整然と並んだ店舗は店主やその他の人々が数人、寒々と店番をしている。
客や騒々しい商品の搬入は少なく静かで活気のない市場。
早々と店仕舞いする店主や無人の店舗が所々に見える、
中には一区画丸ごと無人の地域もあった。
「…いろんなお店があるのね」
「どう?楽しかった」
ルイズは好物のクックベリーパイを口いっぱいに頬張っている。
「……………ええ」
「それにしてもフリーダって意外よね。何でも知ってるくせに何にも知らないもの」
タバサもキュルケに同意する。
「・・・アカデミーでも教えられる知識を持っているのに、普通のことで珍しがる」
からかわれているようだからフリーダは訓練して身に付けた不自然でない笑顔を作る。
「…………私の国ではこんな光景、なかったから」
「フリーダの国に私も行ってみたいわ」
ルイズの『フリーダの国』の言葉は彼女を不機嫌な現実へ引き戻す。
「無理をして外に出る必要もないわ。……ここは、平和だもの」
彼女は思う。少女達はこのトリステインという国が病んでいることを知らないのだろう。
同じ街で、同じ空気を吸いながら、彼女達は違う世界を生きている。
ここも、フリーダの居場所ではないのだ。
トリステインは彼女の故郷だ。
メイジと平民に見放され徐々に寂れつつあるけど、ルイズにとって守りたい場所である。
乱立する店の隙間から王宮の尖塔が見える。
その下には綺麗な白い石造りで出来た貴族達の屋敷と平民たちの街が広がっていた。
街は雑多で敷き詰まっていて、汚い。
それでも彼女は街が好きだった。
「落ち着いた街ね」
「もっと派手なのがいいわ。トリスタニアは地味すぎるわよ。」
ツェルプストーはゲルマニア生まれで派手好きだからトリステインの愚痴ばかりこぼす。
伝統と格式を守ってこその貴族なのに。
フリーダがじっと短剣を付けた平民の腰元を見ている。
完璧で、何事にも無関心に見えた外国の少女。
そんな彼女にも人間らしいところがあるのがわかって嬉しい。
「危うく忘れるとこだったわ」
「服も靴も下着もお菓子も買ったわよ」
まだ買うつもりかとツェルプストーが非難する。
いいじゃない。私だって久しぶりに街に来たんだから。
本当はまだまだ買いたかったが、シェルフィードが運べないのなら仕方がない。
「・・・武器」
タバサが店を指差した。
156 :
ゼロと工作員:2008/10/03(金) 22:28:04 ID:X4PIN6Hy
投下終了
非魔法世界人がルイズの世界に行ったら誰でも珍しがると思うんだ。
お町さんイベントはデルフを手に入れた後。
いずれ工作員が水辺で少女と戯れるのを書けたらいいな。
ラグドリアン湖でフリーダとタバサが杖と銃を向け合いながらキャッウフフとか。
工作員の方乙。
……ってその状況どう考えてもキャッウフフって展開じゃNEEEEEEEE!!
>>156 乙でした
さて、wikiで作品を読む作業に戻るか
シルフィード、な。
そんな「殺して あげる。好き だから」なキャッキャウフフは見たいので是非
サムラァイガンマン
ゲルマニア皇帝ブッシュか?
グゥグゥガンモゥ
覇王・愛人より黒龍召喚
ギーシュのゴーレムをカンフーっぽい何かでなぎたおす
全四回程度の短編なのですが、投下してもよろしいでしょうか
召喚されたキャラクターは今回の投下終了時に記したいと思っています
おk、支援
>>168 黒龍よりも世界一腕の立つ殺し屋に期待しちゃうぜ……w
172 :
無惨の宴:2008/10/03(金) 23:09:59 ID:K+QolU9f
それではいかせていただきます
――――――――――――――――
それは名を持たない。
大多数が無意識に忌避し、臆病者は回れ右で走り出し、攻撃的な人間であれば迫害を試
みる。誰も名付けようとはしない。それとの和合を考える一部の狂人でさえ、名を与えよ
うとはしなかった。
決まった姿かたちを持たず、形容することさえ困難な対象に、誰が名をつけられようか。
それは貪りつくす。
死骸、腐肉、塵芥から、鋭く尖った無数の針、産業廃棄物、天を駆ける流星まで。
時には己が産み落とした卵でさえも、区別例外なく一呑みで喰らう。
それは際限なく増える。
穢れと汚濁、目を背けたくなるものを床にして卵を孵す。
産まれた子は、親と寸分違わぬおぞましくも忌まわしい姿でせせら笑う。全てを貪り、
それは多くなり、大きくなり、はばかる事を知らず世に蔓延る。
それは死なない。
大地を溶かす超高温は涼風、巨鯨をも倒す猛毒は食後の葡萄酒に過ぎない。
鍛え抜かれた刀剣は、それを二つに引き裂くが、死を与えるに及ばない。二つに引き裂か
れたままで泰然自若にまどろむのみ。
人類の英知が生み出した悪魔の子である爆弾は、それを粉々に吹き飛ばすが、命を奪うに
いたらない。死神の鎌から逃れ、寄り集まっては元に戻る。
その姿は常にうつろう。
心臓が弱い人間であれば見ただけで命を奪われることさえある醜怪な肉体は、生来持った
流動性ゆえに他者の姿をとることを可能とする。つまり、ごく容易に人間社会へ紛れ込んで
しまう。
傍らで微笑む少女は本当に少女なのか? 将来を誓い合った青年は本当に青年なのか?
臥所をともにするその時まで、布一枚下に蠢く異形を知ることはできない。
知ってしまえばもう遅い。ただただ叫びが空を裂く。
173 :
無惨の宴:2008/10/03(金) 23:10:57 ID:K+QolU9f
ここ最近、城内の噂話はある一つのことに集中していた。ちょっとした雑談、無体な上
役への不平不満、仕事上の悩み事、馬鹿な笑い話、猥談、あるいはクーデターへの布石と
なる謀(はかりごと)まで、あらゆることが一つの話題に収束してしまうのだ。王女が召
喚した使い魔は摩訶不思議で前代未聞、耳目を集めないわけにはいかない変り種だった。
現王打倒の志を秘めたる騎士は「奴ばらめは我々の計画を邪魔するに違いない」と考え、
お抱えの学者は「まさにまさにあらゆる生命の体現と呼ぶに相応しい。わしに任せてくれ
れば不死の秘法を解き明かすことができように」と鼻息荒く意気込み、厨房勤めの好色漢
は「ありゃあきっと具合がよろしかろうぜ、ぜひとも一晩おつき合い願いてえもんだ」と
だらしなくやにさがり、生真面目な庭師は「あんな気色の悪い生き物、きっとこの世界の
ものじゃあないね。ちらっと見ただけでも吐き気がすらあ」と吐き捨てた。
そして数人の召使い達が、今日も今日とて井戸端会議に精を出す。
「けっこう可愛くないかな? ぷにぷにっとしてて」
「あんたの悪趣味にはほとほと呆れるわ……」
「まぁ矛先がこっちに向かなくなったのはありがたいことだけどね。いじめられるのはあ
いつのお仕事」
「使い魔ってのも骨よねぇ。私、生まれ変わっても使い魔にだけはなりたくない」
「でもでも、なんだかんだで殿下と仲良しよね」
「そう? ただいじめていじめられるだけの間柄でしょ」
「でもでもでも、話してみたらけっこういい人だったのよ」
「うげっ! あんたあれと口きいたわけ? やっぱり悪趣味だわ」
「……ふふ、実は仲良しどころじゃないのよねぇ」
「なによ。思わせぶりな口きくじゃない」
「あたしね、殿下がボソッとつぶやいてるの聞いちゃったのよね。『このままじゃ使い魔
に殺される』って」
「聞き間違いか何かでしょ。なんでメイジが使い魔に殺されなきゃいけないのよ」
「だいたいあの殿下が殺されたくらいで死ぬもんですか」
「アッハッハ、それいえてるわあ」
「わたしは仲良しだと思うんだけどなぁ……」
皆が皆、自分の意見を述べ、声高に論ずるも、けして結論が出ることはない。
それがどこから来たのか、誰も知らないからだ。分厚い生物図鑑、象牙の塔の学者達、
神話や伝承、代々の口伝、子供が好むおとぎ話や胡散臭い都市伝説まで、王女が召喚した
生物を特定できるものは何一つとして存在しなかった。
支援しとく
175 :
無惨の宴:2008/10/03(金) 23:11:53 ID:K+QolU9f
上空で二度旋回し、ようやく使い魔が言わんとしていたことを理解できた。クン、と鼻
を一度鳴らす。不快な臭気がタバサの鼻腔をつつく。
シルフィ曰く、臭いの元はリュティス郊外にそびえるヴェルサルテイル宮殿のほぼ全て
を占めるグラン・トロワ……ではなく、そのグラン・トロワに付き従うようにして建築さ
れた薄桃色の建物に他ならないそうだ。
「臭う」
「でしょう!? シルフィが言った通りなのね!」
なるほど、風竜の鼻なら二リーグ先から気がついていてもおかしくはない。宮殿を目指
すシルフィの速度が徐々にゆるみ、咳き込み、ごね、もだえ、さっさと進むよう命ずる主
に対して不満をもらしていた理由がここにあった。
ずばり、生ゴミの臭いが漂う。どこの田舎領主であろうと、城と名のつく場所に住んで
いれば、もう少し気をつかう。ましてやプチ・トロワを支配する傲慢で我侭な王女が許す
はずもない。
――何があった?
従姉が生きようと死のうとどうでもいいが、これから向かう先に異変があったとすれば
見過ごせない。空から見るかぎりでは街はいつも通りに機能していた。痩せた馬が白菜で
いっぱいの荷車を引き、露天商が声を張り上げ、髭を伸ばした強面の衛兵が闊歩する。
たしかに生ゴミの臭いが強いとはいえ、裏町や貧民窟とどっこいどっこいだ。風向きの
こともあるし、そうとうに鼻のきく人間であっても宮殿の異臭に気づくことはないだろう。
ただし街から臭いを嗅いだ場合の話だ。宮殿に住んでいればそうもいかない。プチ・ト
ロワだけではなく、グラン・トロワでもこの異臭に気づいているはずだ。
何が原因なのか。気づいていても取り除けないようなことなのか。
平常と変わらぬリュティスの有り様は、宮殿の異様さをより一層際立たせた。違和感と
切り捨てるには強すぎる異物感の残滓を感じる。
心配だ心配だと騒ぎ立てるシルフィを落ち着かせ――何かあればすぐに呼ぶ、と言って
おいた。タバサとしては、それがシルフィへの方便で終わってくれることを祈る――案内
の騎士に続いて廊下を歩く。
足元を何かが走り回っている。だが目をやると何もいない。
酷い焼け跡がある。小火以上大火事未満の火災があったようだが、あちらの絨毯が焦げ、
あちらの壁がただれ、あちらの窓枠が焼け、といった具合で火元が判然としない。
破片を飛び散らして粉々に砕けた壷がその身を横たえていた。誰も片付けないのだろう
か。ここの主を思えば、召使の首が――文字通り――飛んでもおかしくはないのに。
天井で動く気配を感じ、見上げるとシャンデリアが揺れている。小さな目が隙間からこ
ちらを見ていた。贅を凝らした時代物のシャンデリアに潜むは何者か。年端もいかぬ子供
でさえ狭すぎるであろうその隙間に、誰が身を隠せるというのか。
廊下の隅に巨大な蜘蛛が巣を作っている。にんまりと笑いかけたように見えたのは気の
せいだと思いたい。
人の気配が無い。生き物の気配はあるが、あきらかに人のものとは違う。
一つおかしなことを見つけると、全てがおかしなことに思えてくる。幽霊の正体見たり
云々という言葉を思い出し、幽霊の二文字を再認識したことで背筋に怖気が走った。
176 :
無惨の宴:2008/10/03(金) 23:12:25 ID:K+QolU9f
「べつに緊張することはないさ」
はっと前を見た。分厚い鎧に包まれた大きな背中がそこにある。
「呼び出された理由は知ってるんだろ?」
この場には二人の人間しかいない。そしてタバサは口を動かしていない。つまり、先導
する騎士が話しているということになる。
「イザベラの使い魔自慢にほんの少しの間つきあってくれればいいんだよ」
どの派閥に属していたとしても、タバサに対してここまで馴れ馴れしく話しかけてくる
騎士はいない。王女のことをイザベラと呼ぶ騎士もいない。きちんと敬称をつけるか、余
人の耳が無い場所で「簒奪者の娘」と憎々しげに吐き捨てるか、どちらかだ。
「あいつが召喚した使い魔ってのがまた傑作でさ」
この騎士が使い魔なのか?
だが、ただの人間を召喚してイザベラが自慢するとも思えない。タバサの使い魔が風竜
だと知っている以上、高位の魔獣でなければわざわざ呼びつけたりしないはずだ。騎士の
生まれではないことが、足の運びや受け答えといった細かな挙措からうかがえる。騎士で
ないとしたら、前を歩く人間は何者だろう。
「会えばきっとあんたも気に入るだろうしな……」
タバサはゆっくりと拳を握りなおした。元々敵地ともいえるこの場所で油断するつもり
はないが、向こうの意図が読めない以上、いつも以上に気を引き締める必要がある。
二階へ続く階段を昇り、三つの角を曲がったところで二人の侍女が立ち話をしていた。
到着以来、騎士をのぞいて初めて見る人間に、多少なりとも安堵を覚えなくはなかったが、
どうにも様子がおかしい。不躾にタバサを眺め、大声で噂話らしきものに興じている。
「野良犬と聞いていたが、それほど下卑ているわけじゃない」
「むしろイザベラよりか、よっぽどお品がいいじゃないか」
たしかにイザベラと言った。
前を行く騎士に輪をかけて態度が大きい。噂話というよりは、まるでタバサに聞かせよ
うとしているかのように声が高くなっていく。
「かといって狼ほど気高くはない」
「狐ほど賢くもないな。も少し賢ければ、ここまで来る前に踵を返していようさ」
顔に見覚えが無い。イザベラに仕える侍女たちは、もっと自信なさげにおどおどしてい
る。タバサに話しかけるときも申し訳無さそうにし、目を光らせる嗜虐的な主を意識して
びくついていた。この二人にはそれがない。
「とすると、ディンゴか」
「それともコヨーテか」
二人の侍女は態度も容姿も瓜二つだった。
衣装が共通しているのはもちろん、深い闇色をたたえた双眸、淡く光る銀色の髪、官能
性を隠そうともしない体つき、あらゆる部分が似通っている。双子というにも似すぎてい
た。まるで複製のような……。
「どちらにしても、あれだわな」
「そうだ、あれだ」
すれ違う直前、二人が顔を見合わせた。その口唇は頬の端まで押し広げられ、鮫の歯を
研ぎに出してもここまでは尖るまいといった皓歯をずらり並べて満面の笑みを浮かべた。
「叩き殺して食らえば美味い」
口を揃え、さも愉快そうにケラケラと笑った。
吸血鬼、ミノタウロス、怒り狂う火竜。どれも恐るべき敵だった。心の奥底から込み上
げてくる恐怖をなだめ、押さえつけ、前に進んでここまで来た。
それら明確な恐怖とは違った。真綿で首を絞めるという言い回しがピタリくる。正体、
相手の意図ともに見えてこない。それゆえ対策を講じることができず、ただ阿呆のように
従って、諾々と進むのみ。
気持ちが悪い。侍女二人の言う通り、踵を返してしまいたいが、それこそ軽挙妄動だ。
命令無視だのなんだのと咎められ、タバサだけでなく事は母にまで及ぶだろう。
冒頭見てBMかと思ったが違うか支援
178 :
無惨の宴:2008/10/03(金) 23:13:10 ID:K+QolU9f
足元にぐにゃりとした感触を覚え、チラと下に目をやると、絨毯に巨大な眼がはりつい
てこちらを見ていた。思わず足を止めて見詰め合うが、数秒たたずにすっと絨毯に溶け込
んで消えてしまう。ほどなくして、どこか――おそらくは近い――で若い女が怒鳴った。
大勢で走り回るような音がそれに続く。
「……今のは?」
「さあ?」
こちらを振り返る騎士はにやついていて、一部始終に収まりが悪く、落ち着かない。
空気はどこか重く、生ゴミの臭いはますます強くなる。
タバサは中指で眼鏡を押し上げた。品性を隠そうともせずにやつく騎士を、半ば以上睨
むようにして見返す。
「……」
「ククッ」
「……」
「……なるほどねぇ」
何がなるほどなのかは分からなかったが、騎士はそれで納得したらしく、再びタバサに
背を見せて歩きだした。
生暖かい風が首筋を撫で、獣臭さが生ゴミの臭気に混じり、ひそひそと話す声、せわし
なく歩き回る音、それら一つ一つに注意を重ね、消耗していく精神力を実感しながら王女
の居室に近づいていく。イザベラが何かを企んでいることはもはや明白だったが、ここで
逃げるわけにはいかない。じわり広がる恐怖心を理不尽な王女への怒りに変え、眉一つ動
かすことなくタバサは進んだ。
ほどなくして大扉に突き当たった。騎士は控えの間へと続く大扉に手をかけ、パーティ
ーでダンスを申し込む貴族のように、仰々しい動作で入室を促した。
「そう身構えるなよ。イザベラだってさ、本心じゃお前と仲良くしたいんだぜ?」
控えを通され、幾重にも垂れ下がったカーテンの間から顔を出す。
素早く目を走らせた。
中央には黒檀と思しき黒いテーブル。その上には香草サラダや水鳥の包み焼きといった
料理が並び、メインとなる大皿は染みのついた白布で覆い隠されていた。脇には無個性を
絵に描いた中年の召使いが五人、いつの間に追い越したのか、先ほど出会った二人の侍女
がそれに連なる。
よじれた杖に寄りかかる干からびかけた老メイジ、見覚えのある騎士……タバサの記憶
が正しければ、東花壇騎士団団長のカステルモール、扇情的な衣装に身を包んだ若く美し
い踊り子、長年の経験と押し出しの強さを感じさせる太鼓腹の行商人、鼻息で吹き飛んで
しまいそうにちっぽけな花売りの小娘、詐欺師特有の小ずるさを隠そうともしない猫背の
男、眠そうな目を限界ぎりぎりまでたるませた老婆、喪服姿特有の悲哀を一切感じさせな
い痩せこけた中年女。
イザベラがいない。
ある者はベッドの上に寝転び、またある者はスツールに腰掛け、所狭しとイザベラの居
室を占有し、皆一様に笑みをたたえてタバサの方へ顔を向けていた。
「やっときたねシャルロット」
「よくぞまいった」
「首を長くして待ってたんだよ」
歓迎の意を口々に繰り返す。歓待された側としてはあまりに寒々しく、暖炉が恋しくな
る季節でもないのに指先が震えて止まらなかった。
179 :
無惨の宴:2008/10/03(金) 23:13:42 ID:K+QolU9f
大皿の上にかけられた白布は赤い染みで汚れている。黒檀のテーブルが濡れているのも
その染みが原因だろう。絨毯にまでポタポタとだらしなく垂れていた。今まで何度も見て
きた、時に流し、時に流させた、赤い液体……血液だ。
部屋の中央には案山子がつきたてられていた。装飾過剰なドレスをまとい、ミスリル銀
製の大きな冠をかぶせられた藁人形が、いったい何を模しているのかは考えるまでもなく
分かる。この部屋の主以外の何者でもない。
半歩さがろうとし、ここまで案内してきた騎士の手が伸びる寸前横へ跳んだ。腰をさげ、
どこから何がこようとも対応できる体勢で集団へと向き直る。眼鏡がずれたが、直してい
る余裕はすでにない。
折れそうになる膝を伸ばし、右手で杖を掴もうとしたが空をかいた。シルフィの背に杖
を置いてきたことさえ忘れている。焦燥感が増していく。
この部屋に来るまではイザベラの悪ふざけという可能性もあった。
だが、悪ふざけのため自分に見立てた案山子を飾ったりするだろうか。あのイザベラが。
案山子といえば、お飾りの王、頭が空っぽの愚物を揶揄するために使われることもある
鳥追い人形。プライドの高いイザベラが、そのように屈辱的なことを許可するわけがない。
これを考え、実行した人間はイザベラ以外であり、当のイザベラがどうなったかは――タ
バサは血にまみれた大皿を見、すぐに目を逸らした――つまりこういうことなのだろう。
「どうしたねシャルロット」
老メイジが一歩前に出た。
「遊びにきたんだろ」
踊り子がそれに続く。
「イザベラだって楽しみにしてたんだ……ねえイザベラ」
タバサからは見えないよう白布を持ち上げ、皿に盛られた何かに向かって騎士団長が語
りかけた。
「我らが主の友なれば我らが友も同然」
「あたしたちと遊ぼうよ、シャルロットおねえちゃん」
「イザベラはオレらの相手しすぎて疲れちまったんだとさ。だらしねえこった」
「綺麗な髪……うらやましいわあ」
背後は壁。窓は右前方。抜け出るには充分な大きさだが、距離が遠い。駆けて四歩とは
いえ、障害物が多すぎる。主兵装である杖を持たない今、力押しは無謀が過ぎた。
「つるっつるの卵肌だ。まるで赤ん坊だね……ひっ、ひひひっ」
引きつり笑いには耳を貸さず、口元をマントで隠した。
「赤ん坊ってことは、つまりあれだ」
取り囲む連中には気づかれないよう小さく口笛を吹く。この距離なら聞こえるはずだ。
「そう、あれだわな」
廊下で出会った侍女と同じ表情だが、今度は人数が違う。揃いの笑顔、揃いの口調で
「叩き殺して食らえば美味い」
老メイジは仕込み杖の刃をあらわにし、騎士は剣を抜き放った。商人の棍棒には釘が打
ってあり、侍女のナイフは黒い液体で光っている。鋭く研いだ裁ちばさみ、庭師が使う植
木ばさみ、大振りの包丁、蛮刀、ハンマー、ノコギリ、手槍に草刈鎌。各人がバラバラの
得物を抜き放ち、歯を剥き出しにし下品に笑った。その間にも囲みは小さくなり、タバサ
との距離は三歩と半ほどもない。機があるとすれば今しかなかった。
180 :
無惨の宴:2008/10/03(金) 23:14:28 ID:K+QolU9f
口元を隠していたマントを跳ね上げ、右前方の視界を塞ぐ。体勢を低くしたまま前転
し、マントに気をとられた間抜けの足を払い、絨毯の上に転がした。一連の動作の中、
ルーン詠唱を始めることも忘れない。
押さえ込む間際、タバサが暴れることは予想できたはずだったが、部屋の中を占める
者は一人として対応できなかった。左から襲い掛かる踊り子の顔面にスツールを叩き込
み、壁を蹴って絨毯の上を転がった。その勢いで跳びあがるのと同時に窓ガラスが割れ、
タバサに向かって愛用の杖が投げ込まれる。
打ち合わせは全くなかったが、使い魔と主ならばタイミングを合わせる必要すらない。
騎士と老メイジの頭上を飛び越えた杖を見事に受け止め、風を切ってひゅんと半回転さ
せ、目の前に構えた。ほぼ同時に詠唱が完成する。
部屋の中に漂っていた見えない水分が、あるいは大皿から染み出していた赤い液体が、
鋭利な刃となって凝結した。乱入してきたシルフィに注意を奪われた無防備な背中を、
一すくいの情け容赦もなく氷のナイフが斬りさいなむ。
老メイジの額が割れ、騎士の装甲は鉄クズになり、花売りが壁に叩きつけられ、老婆
の腕が肘から切断された。ベッドが切り裂かれ、スツールが吹き飛び、天幕がズタズタ、
文机が砕け散り、タバサを除いた部屋の中の全てが打ち倒され、純粋な破壊のために編
み上げられた高度な技術は、結果をもって存分にその意義を示した。
「お姉さまってば遅いのね! もっと早くシルフィを呼んでくれれば……」
さらに不平をぶつけようとしたシルフィだったが、タバサの様子を見て思わず言葉に
詰まった。
タバサは立ち尽くしていた。
氷の嵐は収まっていたが、タバサの体を貫く吐き気を伴う悪寒は否定しがたいものに
なり、小さな体が小刻みに揺れ、両手で抱いても寒気はおさまってくれないだろう。強
く噛んだ唇からは鋭い痛みを感じるはずだが、それすら無かった。
タバサは知った。連中の攻撃に真剣味がなかった理由を。こちらの攻撃に対し、ろく
な対処をしなかった理由を。
連中は避ける必要がなかった。
打ち倒された老メイジと騎士が重なり、二人は一つに溶けた。服が、杖が、鎧が、肉
体を含めたあらゆる所持品が一つに混じる。切り飛ばされた老婆の腕が絨毯の上を這い
ずり、そこへ加わる。他の者も同様だ。形を失くしているが、動きを手放してはいない。
這い、震え、蠢き、壊れたスツールや天幕の残骸まで飲み込み、案山子にすがりつき、
その重量で寝台を押し潰し、チーク材の鳴く音がミシミシと響く。
名状しがたい肉色の混沌が部屋の中を満たそうとしていた。
この常識を揺るがし狂気を誘い出す光景を前に、理性よりも野生が先んじた。不定形
の何かがタバサの足元に達しようという動きを見せた刹那、タバサ本人よりも早くシル
フィの首が窓から突き入れられた。マントをくわえとると、強引に引き寄せ、自分の背
中へと投げ落とす。
「ボヤボヤしない! 一時退却!」
窓枠を蹴り、天に向かって飛び出した。幼生とはいえ、逃げの一手を選択した風韻竜
に追いつけるものなど存在しない。
はずだった。
181 :
無惨の宴:2008/10/03(金) 23:15:37 ID:K+QolU9f
「あ……ありえないのね!」
飛び始めてから五分に満たない間に、プチ・トロワはもちろん、リュティスでさえは
るか後方に置き去った。そんな高速度で飛ぶシルフィードに追いすがろうという物体が
ある。
鳥に似た翼は四対八枚。全体のサイズはシルフィードと同程度か。
人間から頭部を切り落とし、その頭部から毛という毛を全て取り去り、極端に戯画化
された手足をつければこのようになるだろう。想像力豊かな子供の悪夢といった風情だ
が、不幸なことに、これは悪夢ではなく、悪夢のような現実だった。
風を受け、バサバサとはためいていたマントが眼下の森へと吸い込まれていく。木々
の間を縫う低空飛行にもぴったりとついて離れない。水しぶきをあげて池を割ったが、
目くらましなどものともしない。
このままではほどなく追いつかれてしまう。
「あれなんなの!?」
「逃げて」
「逃げてるのね!」
「もっと速く」
「これ以上無理!」
後ろの『なにか』は表情こそにこやかだが、頭部にあたる部分をつるりとした鉄兜で
覆い、右の触手で巨大な棒杭を掴んで振り回していた。棒杭には、それに見合う大きさ
の板がくくりつけられ、呪文めいた文様が描かれている。何もかも理解しがたい。
その笑顔はこれから行われる歪んだ愉悦に期待しているだけのことで、人間のそれと
は全く性質が異なるのだろう。餓えた禽獣のヨダレに等しいものだ。間違っても騙され
てはいけない。固く拳を握り締め、二度三度と膝に叩きつけた。逃げることがかなわな
いなら、シルフィードと自分で迎撃しなければならない。ここで死ぬつもりはなかった。
まだやらなければならないことが残っている。恐怖にすくんで震えていることも、悲壮
感に酔い、英雄ぶって散ることも許されない。母のことを、父のことを忘れてはいけな
い。醜かろうとみっともなかろうと生きなければならないのだ。
タバサはシルフィードの首にしがみつきながら必死で考えた。
切り裂かれても血の一滴さえ流さず、人間並かそれ以上の知性を有し、騎士から絨毯
までその姿を自由自在に変化させ、風韻竜を凌駕する速度で空を飛ぶ未知の生物相手に、
どう立ち回るべきなのか。
うなじに感じる生臭い吐息は恐怖心からくる錯覚か。それとも……だが振り返る暇が
あるなら考えなければ。
時間はもうほとんど残されていない。
――――――――――――――――――――
ここまでで無惨の宴はとりあえず終了
ここから無惨の宴舞台裏となります
支援
支援
あれ?
今日はここで終わりで舞台裏は後日投下ってことか?
深夜はとうに過ぎ、これから朝方にさしかかろうとしている。
灯りを落とし暁闇が忍び寄る部屋の中、寝台に腰掛けた王女が一人考え事にふけって
いた。トレードマークともいうべき大きな冠を脇に置き、整った眉根にしわを寄せ、あ
ざやかな青色一色の髪をかきむしる。考えが全くまとまらない。
そもそも考えるという習慣を持たない王女である。面倒なことは人に任せ、任せた者
が失敗すれば厳しく叱責し、興がのればあざけり、笑い、時には鞭で打ち据える。失敗
がなくとも、虫の居所が悪ければ誰彼かまわず当り散らし、狩りに賭博にと飽くまで遊
び、世界各地の美味珍味に舌鼓、プチ・トロワの造りから家具小物類、召使いの服にい
たるまで趣味を押し通し、血税の上に胡坐をかく。周囲の評価はともかく、本人にとっ
ては当たり前のことで、反省も後悔も思い悩むこともなく、放恣放埓に生きてきた。数
日前に使い魔召喚の儀式を終えるまでは。
あいつをどうする。どうすればいい。
このままではまずい。すごくまずい。それは承知している。
かといって誰かに相談することはできない。恥を触れて回るようなものだ。
一人でどうにかしなければいけない。何をどうすればこの問題を解決できるのか。
役に立たないことが浮かんでは消えていく。何も思いつかないが、かといって眠くも
ならず意識が冴える一方、まぶたは軽く、気は重い。ワインをあおろうという気にもな
らない。ここ数日、まどろみは彼方に逐電していた。ああ、と呻いて頭を抱える。
深く考える習慣を持たずに生きてきたとはいえ、王女を責めるのは酷というものだろ
う。哲学者だろうと宗教家だろうと政治家だろうと科学者だろうと大魔法使いだろうと
ならず者だろうとペテン師だろうと、この悩みを解決できるとは思えなかった。
爪を噛み、膝を上下に揺する。寝台の上に転がり、寝返りを打つ。
もう一度ああ、と呻き……。
――ぺにょん
魂が身体に引き戻された。そんな気がした。
瞬時に脳が覚醒、身体を全力で機能させようとしたが追いつかず、足をもつれさせ、
転げまろびつ扉に張り付き、聞き耳を立てる。
聞こえた。聞き間違えようがない。あの気の抜ける忌まわしい音。
あいつだ。あいつの足音だ。あいつが来た。来るなと命じておいたはずなのに。
心音は早鐘、汗腺は湿原、王女の心は麻のように乱れ、針の落ちる音さえ聞き逃さな
いよう、全身全霊を聴覚に集中させている。
ぺにょん、ぺにょん、ぺにょん、ぺにょん、ぺにょん
来た。近づいている。
ぺにょん、ぺにょん、ぺにょん、ぺにょん、ぺにょん、ぺにょん、ぺにょん
音がどんどん近くなり、やがて止まる。王女の緊張は頂点に達した。ノックか、声を
かけるか、いきなり開けるか。どう出るつもりか。
扉から耳を離し、一歩退き、二歩退き、三歩退いたところで天井がミシリと軋んだ。
「フェイントォォォォオオオオオオオオ!」
「ぎゃぁぁぁァァァァアアアアアアアア!」
扉に集中していた王女は、それ以外への注意力を欠いていた。だが王女でなくとも同
じことだったかもしれない。誰が自分の枕に急襲される事態などを想定できるだろう。
「ハーッハッハッハ、びっくりしただろ? 退屈そうだから驚かせようと思ってさ、枕
のフリして待ってたんだ」
「あ、あ、あ、あ」
「イザベラってば全然気づいてくれないからさ、体切り離して足音だけ立ててみせたけ
ど……どうよ俺の驚かせテクニック」
「お、お、お、お」
「いいよね、悲鳴あげる女の子って。でもさ、できたら『ぎゃあ』より『きゃあ』の方
がいいな。俺の好みの問題だけど」
「お、ま、え、と、いうやつは……!」
肩を震わせ怒りをあらわにする主に対し、使い魔の方はいささかも動じていない。扉
から、化粧台から、寝台の下から、カーテンの隙間から、小さな、だが形は同じ使い魔
達がわらわらと現れ、イザベラにまとわりつく。
「なーなーイザベラー、遊ぼうぜ」
「わーいわーい」
「くすぐってやるぞ。こちょこちょ」
「らんらんらん」
「朝っぱらからみんな元気だなー」
「そういえばイザベラ、ちょっと悩んでるっぽかったぞ」
「マジで?」
「年頃の女の子だもんな」
「髪の毛いいにおいー」
「悩み事があるなら俺に打ち明けてみればいいじゃん」
「るんた、るんた」
「そうだよ、三人寄れば文殊の知恵って言うだろ」
「百人乗っても大丈夫とも言うよな」
「使い魔と主は一心同体」
「主の悩みは使い魔の悩みだ」
「俺の物は俺の物、お前の物も俺の物ってやつだな」
「GペンのGって何の略なんだ?」
「おでこぺちぺち」
「いい音するな。さすがはイザベラのおでこ」
「お前ら……!」
顔の色は憤怒の真紅に染まり、太い血管がドクドクと血液を送り続けていた。
「いい加減に……!」
肺いっぱいに空気を吸い込み、それに倍する勢いで吐き出し、あらん限りの力を込め
て怒鳴りつけてやろうとしたその時、再び天井がミシリと軋んだ。
「も一回フェイントォォォォオオオオオオオオ!」
「ごぶっ!」
天井板を破って降りかかる圧倒的質量に押し潰され、哀れな王女が倒れ伏す。やんや
と喝采で闖入者を出迎える使い魔の群れ。全身をぴくぴくと震わせ、絨毯の上に突っ伏
す主。彼女を心配できるだけの配慮を持った者はこの場にいない。
「天井なんかに隠れたもんだから微妙に出るタイミング逃しちゃってさー」
「いや、今のタイミングはナイスだったんじゃねえか?」
「イザベラもびっくりだ」
「本当だ。びっくりしすぎて寝ちゃったぞ」
「寝てるイザベラもかわいいなあ」
「おいおいイザベラは俺のご主人様だぜ? おかしなこと言わないでくれよ」
「違うぞ、イザベラはみんなのイザベラだ」
「そうだそうだー」
「おでこぺちぺち」
薄れゆく意識の中、イザベラは思った。やっぱりこのままじゃ殺される、と。
ぺにょん……とな 支援
世の中には人生を賭して召喚に臨むメイジもいるが、イザベラはもっと軽い気持ちで
杖を振るった。自分の実力にはうっすらと気づいていたが、気づいていないフリを決め
込んだ。
王族である自分が呼び出すものがつまらない犬猫小鳥などであるわけがない。きっと
竜、それも韻竜だろうから、人形娘に自慢してやろう。ただの竜しか召喚できない実力
不足を嘲笑し、韻竜をけしかけてチビな風竜を追い回してやる。
傲岸不遜で自信過剰な考えだったが、結果としてイザベラの願いが叶ったかどうかは
誰にも分からなかった。呼び出された使い魔が何であるか、強いか弱いか良いか悪いか
可か不可か甲か乙か判断できる人間がいなかったからだ。
主の腰までギリギリ届かない体長は不満だ。使い魔は竜のように大きなものがいい。
人間の言葉を話す点は素晴らしい。知性の高さは韻竜に通じる。
幾人か目を逸らすものがいたように、あまり見目麗しいとは言いがたい。イザベラは
感じなかったが、不定形生物が無理やり人間の頭部を模したようなその姿に生理的嫌悪
感をもよおす者もいるのだろう。
ディテクト・マジックで魔力が感じられないのも残念だった。先住魔法の一つや二つ
使ってくれてもかまわなかったのだが。
当たりと断言することはできないが、外れと言い捨ててしまうこともできない。その
辺はこれからじっくりと見極め、当たりなら大事にかわいがり、外れなら打ち捨ててお
けばいい。召使いが適当に世話をするだろう。
神聖な使い魔召喚の儀式など屁とも思わない不届きな王女は、「もう少し調べさせて
ほしい」と言い募る学者を捨て置き、キョロキョロと落ち着かない使い魔の腕――と思
しき箇所――を引っ張って自室へ連れ込んだ。
乗馬用の鞭を振るって質問――イザベラ以外はこれを詰問と称する――したところ、
いくつかのことが分かった。
魔法を知らない。杖の先からちょろちょろと水を出してやったら大いに感動していた。
自分が何であるのか知らない。生物であることは確かだが、それ以外不明とのこと。
死ぬ方法を知らない。死に方を探してさまよっていたらしい。
「ああん? 死ぬ? なんで死ぬんだい」
「みんなから嫌われるし、俺なんて生きてても意味ないし、なんだか疲れちゃったしさ。
そろそろ死にたいなーって」
「はん、くっだらないね」
ここまで何も知らない使い魔とは思わなかった。人語を解すからにはそれなりの知性
があるはずなのに、これでは白痴魯鈍もいいところではないか。
どうやら使い魔が外れだったらしいことが分かり、イザベラのいらつきが増す。その
矛先は目の前にいる使い魔へと向けられた。
「嫌われたからなんだってのさ。嫌われて死ぬなんて負け犬もいいとこじゃないか。わ
たしだったら嫌ってるやつを引き裂いてやらなきゃ死んでも死にきれないね」
「強いな……あんた」
「お前が弱すぎるんだよゴミクズ。死にたいところでお生憎様だけどね、使い魔っての
は主のためだけに生きることが許されるんだ。勝手に死ぬことなんて許されやしないか
らよおっく覚えときな」
大きな目のふちに涙をためている使い魔に指を突きつけ、イザベラは言い切った。相
手を思いやる気など毛の先ほども無いため、全く悪びれていない。使えない使い魔を憂
さ晴らしに使ってやっているのだから感謝してほしいくらいだとさえ考えていた。
「ああそれと。今度わたしのことをあんたなんて呼んだりしたら歯糞の詰まった口を鋼
線で縫いつけやるからそう思え。わたしはイザベラ様だ。これもよおっく覚えときな」
「……ありがとう」
「ああ?」
聞き間違いではない。感謝の言葉だ。なぜ?
不審げなイザベラに気づいているのかいないのか、使い魔は涙ながらに感謝した。
「ごめんな、泣いたりして。こんなふうに励ましてもらったの初めてでさ」
「いや、べつに励ましたわけじゃ」
「俺みたいなのってほとんどいなくて……ずっと一人ぼっちで寂しかったんだ」
「聞いてるのか」
「これが使い魔と主の絆ってやつか。俺もファーストキスを捧げたかいがあったよ」
「おいこらさらっと気持ち悪いこと言うな」
「そうだな。ファーストキスだけじゃ申し訳ないな。受け取ってくれ」
どこから取り出したのか、赤ん坊の拳ほどもある大粒の宝石を取り出した。どうやっ
て加工したのかその形はつるりとした球状で、見る角度を変えるたびに輝きの質を変化
させ、千変万化の美しさで見るものを魅了する。これだけ大きなものならば、城の一つ
や二つではすまないだろう。辺境の小国が買えてしまう。
「へぇ……悪くないじゃないか」
手にとって眺めてみる。悪くないどころではない。これほどの品、ガリアの王女でさ
え見たことがない。つまり、世界中どこを探しても無いということだ。
なるほど、この種の手合いだったかと内心頷いた。ちっぽけで愚かな使い魔だが、小
利口な処世術は心得ていたということだ。強いものへ貢ぎ、媚び、へつらって生きなが
らえようとはせせこましくもいじらしい。
「悪くはないが……これで終わりとは言わないだろうね」
「欲しいならもっと出すけど」
「出す?」
「ああ」
言うなり使い魔はテーブルの上にあったワインの空瓶を手に取ると、ものの一口で飲
み込んだ。数秒後、軽い音とともに美しい球体を生み出した。尻から。
「ほら、出てきただろ」
「お前、これ……」
「綺麗だろ。ウンコの専門家もこんな美しいウンコは認めないって言って……」
悲鳴と怒声を足して二で割らず、そこに発情した火竜をかけてからオーク鬼の咆哮を
絡めた叫びがプチ・トロワを貫いた。イザベラつきの侍女は後に語る。この世の終わり
を告げるかのように恐ろしい……でもどこか悲しい声だった、と。
「どうしたんだよ急に大きな声出して」
「き、貴様……貴様というやつは……」
「何かあったのか、イザベラ」
「このわたしに……よくも……下賤な……!」
「あ、ひょっとしてそんなに嬉しかった? ハッハッハ、照れるなあ」
「いかがなされましたイザベラ様!」
使い魔は笑い、主は怒る。絨毯の上には巨大過ぎる宝石が落ちていて、部屋の中は荒
れ放題に荒れている。駆けつけてきた騎士が見た光景は以上のものだった。変事を察し
て駆けつけたのだが、それにしても変事が過ぎたと言わざるをえない。
「これは……いったい……何事でございますか」
「いや……なんでもない。なんでもない……」
「ですが」
「いい。気にするな。それよりも」
口調こそ落ち着いているが、その表情は正視に耐えるものではない。王家に仕える騎士
として王女の癇癖を把握してはいたが、ここまで怒りに燃える王女は見たことがなかった。
「地下に出る。準備をしておきな」
「そ、それは……」
「おいたの過ぎた使い魔にはきっちりと教育してやるのが主の責務ってもんだろう?」
「……はっ」
地下。即ち拷問部屋。痛めつけるだけではけしてすむまい。確実に死者が出る。そして
それは、イザベラが怒る原因を作った者になるだろう。
光あるところ影あり。光が強ければ強いほど影の色は濃くなる。華やかなヴェルサルテ
イルの地下にある陰惨な拷問室は、あやふやな噂が立つことこそあれ、実際どうだったと
体験に基づいて語られることはまず無いと言っていい。行って帰ってくるものがいなけれ
ば、想像以上のことを語るわけにもいかないからだ。
使い魔を黒光りする鎖と見た目以上に重い鉄輪で縛りつけ、動きを封じる。地下である
というだけでは説明のつかない薄ら寒さが、ここで何が行われてきたかを如実に物語って
いた。
正式な拷問であれば、情け容赦を母親の腹の中に置いてきた熟練拷問吏の出番と相成る
が、これはあくまでも使い魔のしつけである。実際のところ、自分で打ち叩かなければ腹
の虫がおさまらない王女のわがままだったのだが、怒り狂うイザベラを止められる者がい
ようはずもなかった。
小さな燭台のみが照らす石造りの部屋の中、鞭がしなり、間を置かず肉を打ち据える。
これで聞こえる音がもう少し生々しければ随分と陰惨な光景になったことだろう。
「おい」
「なに?」
「なんだこれ。さっきから叩くたびに『ぽにょん』とか『ぷにゅん』とか気の抜ける音が
聞こえるんだけど」
「そう言われてもな」
「おまけにお前はなんか嬉しそうだし」
「そりゃ美少女のスパンキングサービスなんて嬉しくないわけないじゃん」
「……よし、やめよう」
「ええぇー! 途中でやめるなんてそりゃないよ。延長料金いくら?」
「お前もう口きくな」
全身を針で突き刺されて泣き叫ばない者はいなかった。今日までは。
「おお、なんか肩こりがとれた気がする」
「なんで眼球に針打たれて肩こりが治るんだよ大馬鹿! 次!」
体の端から寸刻みで削られていく。もはや拷問ではない。処刑だ。人間相手なら。
「……どうしよう、これ」
「どうしようって言われてもな。イザベラがやったんだから責任持てよ」
わらわらと散っていく使い魔を前に、王女は呆然と立ち尽くす。
「わーいわーい」
「あははー」
「こら逃げるなー」
「うっほほーい」
「おでこぺちぺち」
「集まれー」
「よいしょ、よいしょ」
切れば切っただけ数が増えるなどという非常識な生物のことまで考慮している拷問方
法があるわけがない。
「……とりあえずくっつけて元に戻すか」
猛獣をしつけるための器具で電気を流してみる。
「光ってる……意味が分からない」
「心が休まる明るさだろ?」
「そうかもしれないけど、お前の得意げな顔が腹立たしい」
「抱き締めてもいいんだぜ?」
「わたしに感電しろってのかい? よし、次!」
ガチガチに凍らせてやろうとすれば、
「もっさもっさだな。やたら長い毛だ」
「うーむ。実に不思議ですぞ」
「なんで喋り方まで変わるんだい」
酸で溶かそうとしても、
「クソ! 酸かよ! なんで酸なんだよ!」
「不機嫌になるだけでダメージ無しか……次だ」
石を抱かせてみたが、
「ぺらっぺらだな」
「昔のアニメとかであったろ、重いものに潰されてヒラヒラーっと宙に舞うの」
車輪で伸ばしてみる。
「二つに切れた……」
「あれ? 声が」
「遅れて聞こえるよ」
「遊ぶな」
水責め。
「膨らんだ……」
「夏場はいいウォーターベッドになるぞ」
三角木馬。
「なんだいその期待に満ちた表情は?」
「え? い、いや別に期待なんてしてないって。嫌だなー、次は三角木馬かー」
「そうかいそんなに嫌かい。それじゃやめとこう」
「そんな! ひどい! あんまりだ! 楽しみにしてたのに!」
「……やっぱりやめとこう」
いっそ魔法で洗脳すれば……。
「よし! 魔法! いいぞイザベラ! 俺のご主人様! すごい! エロかわいい!」
「テンション高っ! うざっ!」
餌をやらなければどうだろう。
「俺、空気からも栄養摂取するから。痩せはするけど死なないよ」
「くそが!」
今度はガスで窒息させる。
「もうちょっと自分というものを真面目に考えてだな」
「なんでお前に説教されなきゃならないんだい」
毒を飲ませる。
「おかわり!」
「ない!」
ガクリと肩を落とし、前のめりにくず折れた。息があがり、蓄積した疲労が身を苛む。
意味の無い努力、つまりは徒労。これほど人を疲れさせるものはない。
「なんなんだお前は! デタラメじゃないか! どうすりゃいいってんだい!」
「だから言っただろ。俺、自分がどうすれば死ぬのか知らないんだよ」
「死に方を知らない」とは知的レベルの低さからくる発言だと思っていた。まさかこ
こまで死ににくい生き物が存在しようとは。この生命力に比べれば、ミノタウロスやト
ロル鬼、サラマンダーやワイバーンでさえ柔弱のそしりを免れない。
冷静になって考えてみれば、不死に近い生物を召喚したのだからメイジの実力も相当
なものだと満足することもできたのだろうが、それで満足するにはイザベラの頭に血が
のぼり過ぎていた。
「残る手段は……火だな。あれで死なない生き物はいないはずだ」
「火ってボウボウ燃えるあれ?」
「火を使うなら地下でやるわけにゃいかないね。とりあえず表に戻るか」
「よーし行こう行こう」
目的が変わってしまっていることには主も使い魔も気づいていない。
とりあえず以上です
召喚者はイザベラ、呼ばれたのはB.B.jokerより生物です
すいません、途中でさるさんに咎められてました
もしかして・・・4コマのあれかな支援
>美しいウンコ
元ネタ知らんが爆笑したwww
支援しますよ!
B.B.jokerか
昔読んだことあったけど内容忘れた……
とりあえず面白かったよ乙
生物大好き。おもしろかったですGJ!
12時半くらいから投下しますね
ちょ、ホラーが一気にギャグにw
というかタバサはどうなったんだ?
>196
支援だ!
ベルセルクキタ。これで勝つる!
>>198 一応確認しとくけど、まとめの方で訂正できる範囲じゃないくらいの変化なんだよね?
まあそれはそれとして、
>>196で先に予約入ってるけど大丈夫?
30分以内に投下終わって、且つ感想とか入れる時間が短くてもいいなら投下してもいいんじゃないかな
>>199 違うよ、何か違うよw
>>196 ベルセルクさん!
俺タイミング悪杉
>>203 まとめられてないから大丈夫のはず
投下自体は速やかに終わらせる。
俺は死ぬはずだった
でも死ななかった
あいつの放った赤い光は 俺の乗っていたイーグルの
右翼をその光と同じ色で包んだ
あいつなりの手向けだったのかもな
痛む体を引きずってたどり着いた場所は
あの核の爆心地だったんだ
何も無い光景
それがなんだか
悲しくてしょうがなかった
でも そこで強く生きる人々がいた
俺は彼らに助けられたんだ
国境も関係なく助けてくれる人が、そこに居た
世界に境目なんて必要ないかもしれない
でも 無くすだけで変わるんだろうか
世界を変えるのは人を信じる力なんだろうな
信じ合えば憎悪は生まれない
俺は基地に帰り 恋人と結婚した
家もこうして構えた 国境の近くだ
確かめたいんだ あいつが、片羽があそこまで
執着していた国境の意味を
そしてそこで生きる人々の意志を
ここに答えなど無いのかもしれない
でも探したいんだ
そう 今はそう思う それでいいと思う
この映像はあいつらも見るのか?
会ったら伝えてくれ
まずはサイファー いや 鬼神に
「英雄、たまには連絡くれよ、妻がファンなんだ」
そして、片羽に
「なあ片羽 あんた どこに行っちまったんだ?」
ウスティオ空軍第6航空師団第4飛行小隊クロウ隊3番機
パトリック・ジェームズ・ベケット
Patrick James Beckett
オーシア連邦内テレビ局OBC報道ドキュメンタリー番組内インタビューより
『片羽の妖精』
本名ラリー・フォルク
ウスティオ空軍第6航空師団第66飛行隊 『ガルム隊』2番機
ガルム隊の2番機で、階級は少尉。ベルカ出身の28歳。TACネームは「ピクシー(妖精)」。
以前戦場で右翼を失いながらも帰還した経歴があり、それを誇るかのように右翼を赤くペイントした
F-15Cを操る。このエピソードから、「片羽の妖精(Solo Wing Pixy)」の名でベルカ・連合軍双方
の空軍に広く名を知られている
一番機、サイファーを「相棒」と呼び、ともに活躍するも、戦争の目的が「ウスティオ解放」から
「ベルカ侵攻」に変質していくことへの疑念を隠し切れなくなり、ベルカに7発の核が爆発したと同
時にガルム隊を去る。
その後、アントン・カプチェンコ、ジョシュア・ブリストーらのクーデター組織「国境無き世界」に加
入し、かつての相棒であった「円卓の鬼神」サイファーと雌雄を決する。アヴァロンダムにてガルム
隊の2番機となったPJを撃墜するが、その後に解析結果から機体のECM防御システムと、その弱点
が前部エアインテークと判明。V2再突入を巡ってのサイファーとの死闘の末、左エンジンに被弾を
受け戦闘不能となり、その後突然機体ごと消失する。それ以降
片羽の妖精と呼ばれた男、ラリー・フォルクの消息は途絶える。
後、事の一部始終を見ていたAWACS、「イーグルアイ」は、その様子をこう語っている
「まるで何かに吸い込まれるかのように、ADFX-02は、ピクシーは忽然と姿を消した」、と
俺は、空に居た。
厚い雲の下、ここを飛ぶ戦闘機は俺と、奴だけだ。
<<撃て 臆病者!>>
既に3発のミサイルを貰っていて、これで4発目になる。
ECMPによる機体の保護も、もう限界に近づいている。
はっきり言って、こちらが圧倒的に不利だ。
しかし、だからこそ、ここで諦める訳には行かなかった。
兵装表示を見、体が興奮に沸きあがるのが分かった。
通常ミサイルが、一発。
それが、当時世界最強の戦闘機であった、ADFX-02 の、最後にして、唯一の装備だった。
それは奴も、サイファーとて同じことだろう。
もう、多くを語る必要はない。後は、純粋に戦うのみ。
操縦桿を大きく動かす。インメルマンターンをし、「鷲」の名を冠する戦闘機と向かい合う。
サイファーとの距離を示す数字が、見る見る減っていく。
1700...1600...1500...
その間、沸き上がる体とは対照的に、頭は不思議と落ち着いて居られた。
死への恐怖はない。元よりその覚悟の上で傭兵になったのだ。
1200...1100...1000
勝負の時が確実に近づく。操縦桿のボタンに、指を当てる。そして
900...800
射程に入る。
<<撃て!>>叫ぶと同時に、思いっきりボタンを押す。
奴も同じ事を考えたらしい。奴の翼の下から白い筋が延び、機体内はアラート音に包まれる。
お互いにロール機動を取り、ミサイルを避けようとする。
正面から猛スピードで接近してきた両主翼を青に染めたF-15Cイーグルとすれ違う。
その瞬間、機体に衝撃が走り、俺は事を悟った。
これまで、だな。
唯一、ECMP防御システムが及んでいないエアインテークを撃ち抜かれたADFX-02は
あっという間に速度が低下、右エンジンの内部温度が異常値に達しており、どす黒い煙を吐いていた。
キャノピー越しに奴のほうを見る。所々機銃の跡があるが、俺の放ったミサイルが
着弾した痕跡は無い。
これで、よかったのかもな。
電気配線が焦げだしたのか、異様な匂いのするコクピット。
そのせいか、ベイルアウトしようにもキャノピーが飛ばない。
閉鎖されたこの空間で、俺は深くため息をついた。
しかし、ため息の大きさほど、俺は落ち込んでなかった。
むしろ、「宿敵」に完膚なきまでに叩き潰され、清々しい位だった。
アヴァロンダムから発射された核弾頭―V2はこの機体から発信されている信号が消滅すると自爆するよう
セットしてある。ちょうど大気圏外に達した頃だろうから、今自爆すれば地上に被害はない。
破損したエアインテークの破片が、内部の燃料パイプに穴を開ける。
其処から漏れ出す大量の燃料は、高温のジェットエンジンを火種に、どんどん燃え上がる。
もう、逃げられない。
「じゃあな、相棒」
自分を撃墜したF-15Cのパイロットに向けてそっと呟き、俺は目を閉じた。
そして、内部の燃料タンクに、直接火が燃え移ろうとした時―――
<<そんな馬鹿な…・・・>>
アヴァロンダムにて、ウスティオ、引いては連合軍を裏切った、そして世界の命運を握る男、「ラリー・『ピクシー』・フォルク」
の討伐を命じられたガルム隊。その支援のために来ていたAWACS「イーグルアイ」は自らの目を疑っていた。
サイファーとの一騎打ちに破れ、脆くも宙に散ろうとしていたPIXY。
そのピクシーが乗っていた機体が、突如消失したのだ。爆発することなく。
<<何が起きたんだ・・・・・・>>
今の状況を把握しようと、頭を必死で働かせる。
(あんな事、有り得ないはずだ。物理的に機体が消失するなど…)
ふと、空を見上げる。
管制システムでもあったADFX-02からの電波が途絶えたために、V2は
はるか上空10000mで自爆していた。
<<こちら地上のPJ!、イーグルアイ、状況はどうなった!?>>
ヘッドホンから聞こえる声に、正気を取り戻す。
<<事情は後で説明する。今ヘリボーン隊をそこへ向かわせた。しばらくの辛抱だ>>
そういって、PJとの通信を切る。そして、もう一人にも通信を入れる。
<<サイファー、任務完了だ。
・・・今は取り敢えず帰ろう。お前の帰りを待ってる奴らがいる>>
もう一人の男、円卓の鬼神と呼ばれた男は、静かに頷いた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン!
我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ! 」
古びた石造りの城のような場所で、一人の少女が叫ぶ。
何もそれは一回目の事ではない。既に何度も繰り返し、そして失敗する。
その結果起こる爆発。
証拠に、すでに彼女の周りにはいくつものクレーターが出来ている。
周りの人間は、既にその回数を数えることにも飽きたらしく、自分が呼び出した
使い魔とコミュニケーションをとっている。
彼女はその近くの先生と思わしき人物と掛け合い、なんとか最後のチャンスをもらう。
深呼吸をし、何とか心を落ち着け、もう一度呪文を唱える。
しかし、発した呪文は先ほどまでとは違うものだった。
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ、神聖で美しく強力な使い魔よ 、
私は心より求め訴えるわ。我が導きに答えなさい! 」
唱えている途中で、皆からその呪文に対して疑問の声が上がる。
あくまで途中のみで、その後にはその疑問は出なかった。
何故ならば
その時起きたのは、大柄である男子生徒を軽く10メイルは吹き飛ばすような、
強力な爆発であり、口を開ける暇など無かったからだ。
「ゲッホ、ゲッホ・・・」
何とか立ち上がり、煙を払う彼女。
長いピンク色の髪の毛は、少し煤けていた。
何人かはレビテーションの魔法でとっさに空中に逃げたり、
地面を盛り上げて盾にしたりしていたが、
それでも大多数の者は、その爆風に吹き飛ばされていた。
「いくらなんでも、おかしいじゃない……」
げんなりとした顔で、そう呟く彼女。
「ちょと、ヴァリエール!そんな感想漏らす前に一言言うことがあるでしょ!」
燃えるような赤い髪の女が、彼女に怒鳴り散らす。
「そう言っても仕方ないじゃない!私にどうしろって言うのよ!」
負けじと言い返す。
「どうしろもこうしろもないわよ!」
腕を組んで彼女を睨む赤髪の女。
「私はあんんたに謝れって言ってるの!」
彼女は一瞬罰が悪そうな顔をするが、直ぐに
「嫌よ、死んでもツェルプストーなんかに頭を下げるなんて!」
折れかけた気持ちを、一瞬で持ち直させる。
「もう・・・タバサ!タバサどこ!?」
赤髪の女―――キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー
がそう言うと、突如上から青い髪の小柄な女が落ちてくる。
いや、舞い降りると言った方が正しいのだろうか
「ここ」
ただ、一言そう告げる小柄な少女。
「お願い、タバサ。風系統の魔法で煙、晴らしてくれない?」
「解かった」
小柄な少女、タバサが自分の身の丈は有ろうかと言う杖を振るう。
すると、彼女を中心に、心地いい風が流れ、少しずつ煙が晴れていく。
「ありがとう、タバサ」
「いい」
短い言葉を交わして、お礼を言うキュルケ。そして、彼女に
「で、あんたもこれでチャンスを全部使い切った訳だし」
と言う。顔を一瞬で青くさせる。
「遂に落第…
「おい、煙の先に何かあるぞ」
誰かの言葉にキュルケの言葉が止まる。
少女がその声に反応して、未だ尚煙に包まれている向こう側を見てみる
彼女に対する文句が止み、徐々にざわめきが小さくなる。
薄く煙に移るのは、巨大な影。
「・・・・・・」
皆が、何が現れるのかを固唾を呑んで見守っている。
やがて、煙が晴れる。
そこには 白い体を持つ、両腕を広げたドラゴンが居た。
「成功・・・・・・?」
見てるほうも具合が悪くなりそうだった顔、一瞬元気を取り戻したような顔になる。
なぜ一瞬なのか?それは、
「やった!成功した!これで、・・・こ・・・?」
徐々に語尾が弱まる言葉。それほどまでにそのドラゴンの形状はおかしかったからだ。
その頭に当たるはずの部分は妙に細く、長く尖っており、両翼は薄く、空を飛べるとは思えない。
そしてその、こちら側に向けられた羽の片方は、赤く染まっていた。
「なに、これ・・・・・・?」
彼女が疑問譜を出す。いや、彼女だけではない。
「コルベール先生、これは……」
性格が軽そうな金髪の少年が、怖々とした顔でそこにいる大人、コルベールに質問する。
「いや、私にも、あれが何なのか……」
その人物、コルベールは言葉を濁す。今まで読んだどんな文献にも、あのような
竜は記載されていなかった。それどころか、あれが本当に竜なのかさえ疑わしい。
周りの人々は皆、異口同音にこんな言葉を出す。
「あれは一体何なんだ?」
その形状に、やがて皆にその疑問が伝播する。
最初は好奇心が勝っていたが、やがて、それは悪い想像へと変わっていく。
あれが大暴れするのではないか、突然爆発するのではないか。
何時もが何時もである為、中々信用されない。
「とにかく、」
咳払いが聞こえ、振り向く。
「ミス・ヴァリエール、サモン・サーヴァント成功おめでとう。とりあえず
コントラクト・サーヴァントを済ませてしまいなさい」
真っ黒な頭をしたコルベールが、少女に向かってそう言う。
「分かりました、コルベール先生」
深呼吸を一回、二回、とする。
―――よし。
出来るだけ心を落ち着けて、彼女は足を踏み出した。
一歩ずつ踏み出すにつれ、その物の異様さが伝わって来るようだった。
どんなに少なく見積もっても、20メイルは超えるであろうという大きさ、
車輪のようなものがついた足、そして胴体の中心に着けられている
巨大な大砲のようなもの。「ようなもの」という、いろんな既視感に襲われたのも
異様に感じる理由のひとつかも知れない。
そして、赤く染まる右羽以外は、完全なる左右対称。
両手両足で数えるような歩数で、その近くに来た。
恐る恐る、頭と思われるその物の先端に触れてみる。
―――冷たい。
この感じは、どこかで触ったことのある気がした。
・・・・・・そうだ、これは鉄だ。剣や鎧に使われる、あの硬い金属。
これは生き物ではないと、直感的に理解する。
「おい、これピクリとも動かないぞ」
ついてきた他の人々も、その物の様子がおかしいことに気づき始める。
「おいこれ、死んでるんじゃねーか?」
「まさか」
皆口々に感想を漏らす。
「さあ、コントラクト・サーヴァントを」
コルベールに進められるがままに、その儀式を始めるため、呪文を唱える彼女。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 、
五つの力を司るペンタゴン 、この者に祝ーーー「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
突然のことだった。
上から聞こえる声。驚いて上を見上げる。
そこには、奇妙な服を着た男が居た。
支援
目蓋の外が、眩しい。
そうか……俺は死ぬんだな……
状況を、何とか理解しようとするが、断念する。
これから死ぬってのに、そんなことをするのは野暮ってもんだ。
傭兵である以上、宗教など信仰してはいなかった。
天国や地獄など、そんなものを信じる暇も無かった。
死んだら、其処で終わり―――それが戦場でのルールだった。
だがもし、死後の世界があるとしたら、おれが逝くのは―――
地獄だろうな。心の中で苦笑する。
幾つもの命を奪い、仲間を裏切り、悪魔の兵器、核に手を出した男だ。
あんなことをして天国に逝けるのならば、もう400年は前に天国は満員だろう。
意識が少しずつ、遠くなるのが分かる。
少しの間ぐらい休んでも、今更罰は当たらないだろう。
そう思って、意識を手放した。
はずだった。やがて意識は遠くなるどころか、はっきりとしてくる。
ぼんやりとしていた視界も徐々に冴えて来る。
どうなっている……?俺は死ぬんじゃなかったのか?
それとも、もうあの世に着いたってのか?
それにしても様子がおかしい。今、俺は何かに座っている。
それは、パイロットシートだった。あのとき、電気系統がいかれたせいで
飛ばなかったシートだ。
そんなことはどうでもいい。問題は、なぜ爆発して木っ端微塵になったはずの
コクピットに座っているのか、だ。
いや、まだここがモルガンのコクピットであるという確証はない。
ここがどこか確認する為に、彼―――ラリー・フォルクことPIXYは
目を開き、愕然とした。
それはここがADFX-02モルガンのコクピットの中である事にではなく、
キャノピー越しに見える外の風景に対してだった。
どこなんだ、ここは
先ほどまで居た雪の降るアヴァロンダムでは無い事は確かだ。
綺麗な、見事なまでの、快晴。この短時間にこうなるのは有り得ないだろう。
さらに、俺が知る限り、あの付近にはこんな大きい石造りの建物は無かった筈だ。
もし異常気象が発生して、もしあったとしても、それは意味の無いことだ。空を見上げ
、軽く眩暈する感覚を覚える。
月が、二つある。
こればかりは、自分の中にあるどんな理屈を使っても、説明できなかった。
大きく、ため息をつき、とりあえず気持ちを落ち着ける。
まずは、状況確認だ。
まず、一つ、俺は生きているらしい。信じられないが。
次に、二つ、ここはさっきまで俺の居た世界ではないらしい。これも信じられないが。
最後に、三つ、前方、いや周囲には、黒ローブを着た人が沢山居る。皆、驚いた様子でこちらを見ている。
……OK、これが現状の全てか。
とりあえず、今警戒すべきはあの新興宗教のような集団だろう。
俺も、宗教じみた集団の思想に感銘を受けていたんだがな。
とりあえず、まずは外に出るべきだろう。
そんなことを考えながら、俺は武器を持つ。
ベルカ公国謹製、ワルサーP99を右ポケットに入れ、
ありったけのマガジンを服の下に入れる。
レーションも申し訳程度に持っておく。
ウスティオ製の方が美味いんだがな―――そんなことを考えながらふと、主翼を確認してみる。
日の光に当たり反射する、赤い羽。
・・・なに?
驚いて見直してみる。
傷一つ、付いていない。
そんな馬鹿な、あの時確かに感じていた。
スプリットSから背後を取られ、機銃の嵐がこちらに向かって吹き荒れ、
赤い片羽、すなわち右羽が蜂の巣となったのを。
もしやと思い、武装表示を見てみる。
――――――
GUN・・・800
MSSL・・・8
TLS・・・Full
MPBM・・・6
FUEL・・・Full
――――――
そこに表示された数値があらわす事。武装、燃料、全てが元に戻っている。
あの、決戦前の状態に。
全部使い切ったはずなのに、ご丁寧に完全復活ときた。
爆発していない時点で、気づくべき事象だったのだろうが。
・・・・・・・こいつは、迂闊に放置出来ないな。
懸念事項が、一つ増えた。
外を見ると、こちらを指差して何か話し合っている。
否、俺をというより、この機体を指しているようだ。
―――キャノピーに、気づいていない?
一般的な飛行機を知っている人ならば、どこかに人が乗っていることぐらい
分かるはずだ。だが、彼らは明らかに、ノーズコーンを指差して話している。
まるで、飛行機の存在を知らないかのように。
やがて、その中の一人が前に出て、ノーズコーンの前で何かを呟いている。
気味が悪いほど、鮮やかなピンクがかったブロンド、といった所だろうか。
そんな髪の色をした少女だ。
・・・・・・あれは、一体何をしているんだ?
とりあえず、こいつらに質問したいことが山ほどある。
俺はキャノピーを上げ、下にいる奇怪な髪の色をした少女に話しかける。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜―――「そこで何をしているんだ?」
乙
素直に契約までいけそうな雰囲気が感じられないが、無事終わるのかなw
とりあえず次を期待しておく
それじゃあ投下始めますね
険しい山道を進むと、峡谷にはさまれるように造られた町並みが目に入る。
月の光に照らされたそこはアルビオンへの『船』を出している港町ラ・ロシェールだ。
山道に月の光を浴びて影が伸びる。
ワルドとルイズが跨るグリフォンの影。それとギーシュと少女が跨る馬の影だ。
ギーシュの馬に跨っているのはグリズネフから救出したあの少女だ。
少女はメリッサと名乗った。
メリッサは亜麻色の髪を肩まで伸ばしていて、今はルイズの制服を身に纏っている。メリッサの身長はルイズより頭一つ大きいので、服の丈は足りず、ボタン回りもぱつんぱつんだ。
そのままではあまりに扇情的だったので、今はギーシュのマントを羽織っている。
町が見えたことで一同はほっと一息ついた。
学院を出発してからここまでほとんど休憩を取らずに駆け続けていたのだ。グリフォンに跨っていたルイズやワルドはともかく、激しく揺れる馬上にいたギーシュは疲労困憊だった。
それでも女の子に弱みは見せられないと、ギーシュは鼻から息を吐いて背筋を伸ばしている。
ワルドはそんなギーシュにちらりと目を向けると、ふぅと息をついた。
(今日は上等の宿に泊まることにしよう)
しっかりと疲れを取らなければ明日以降に影響が出る恐れもある。ワルドはそう考えた。実際、ワルドも昼間の思わぬ精神力の消費で少々疲れを感じていた。
町が見えたことで、自然と一同の足が速くなる。
その時だった。
突然、ギーシュが駆っていた馬の足元に矢が突き立った。
驚いた馬は慄き、立ち上がってしまう。
「うわわわ!!」
馬から振り落とされたギーシュは地面でしたたかに腰を打ち付けた。
一瞬遅れて少女・メリッサがさらにギーシュの上に落ちてくる。
「うぼふ…!!」
「ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか!!」
慌ててメリッサは飛びのいた。幸い、ギーシュがクッションになって彼女自身に怪我はない様だった。
「うがが……き、気にしなくて結構だ……! 怪我がないようで何より……!!」
涙目になりながらもギーシュは親指を突き立てる。
ワルドは油断無く周囲に目を光らせた。
空気を切り裂く音がして、次々と矢が飛来してくる。
ワルドが風を巻き起こし、それらの矢を蹴散らした。
矢は山道を挟む崖の上から放たれている。月の光に照らされて、崖の上で黒い影が蠢くのが見えた。
「何なのあいつら!!」
ルイズがヒステリックに叫ぶ。
「盗賊か夜盗の類か……? ぬぅ!」
崖の上だけでなく、岩陰からも影が飛び出した。
薄汚れた鎧を身に纏ったその出で立ちから、傭兵崩れの盗賊だとワルドは判断する。
盗賊たちは剣や斧、思い思いの武器を持ち、グリフォンに跨ったワルドたちに襲い掛かる。
そのうちの一刀がグリフォンの翼を掠めた。
「チィッ!!」
ワルドは思わず舌を鳴らした。
ルイズを抱え、バランスを崩したグリフォンから飛び降りる。
「ギーシュ君! 少女を連れてこっちへ!! 私から離れるな!!」
近くにいた盗賊を一人切り伏せてワルドは叫ぶ。
「ワルド! まずは上の奴らをなんとかしなきゃ!!」
「今飛び上がれば格好の的だ。心配しなくても上からの射撃はもうない。味方に当たるからだ」
ギーシュがメリッサの手を引き、ワルドの傍に駆け寄ってくる。
「ギーシュ君、その少女は君が守れ。ルイズは私が命をかけて守る」
ギーシュは不安そうなメリッサを一瞥すると、こくりと頷いた。
満足そうにワルドは微笑み、頷く。そんなワルドにルイズが食って掛かった。
「ワルド! 私戦えるわ!!」
ワルドは困ったように微笑み、ルイズの頭を撫でた。
「大丈夫だルイズ。僕に任せて」
雄たけびが聞こえる。斧を大きく振りかぶった男が間近に迫っていた。
―――杖を抜き、一閃。
男は喉から血を噴き出し、もんどりうって昏倒した。
ざっと見回して、敵の数はおよそ20。ワルドはしかし、その顔に余裕を浮かべていた。
メリッサを背中に庇い、ギーシュは胸元のポケットから薔薇の造花を抜いた。
あのグリズネフとの戦いを経て、精神力は既に空。体も、水の秘薬で治療したとはいえあちこちが痛む。
敵を鮮やかに切り倒すワルドの姿が目に入る。メリッサの震えを背中に感じる。
「ワルキューレ!!」
杖を振る。途端に意識が白濁する。唇をかみ締める。痛みで自分を引き止める。
そこに現れたのは彼の誇る勇壮な戦乙女とは似ても似つかぬ醜悪な青銅の塊。
ただ、腕があるだけ。ただ、足があるだけ。
かろうじて人の形を保っているだけの、のっぺらぼうの人形だった。
これが、からっぽの精神力で作り出せた限界。格好つけのギーシュには耐え難い無様だった。
しばし、ギーシュは己の錬成した人形を見て唖然とする。
だが、敵は待ってはくれない。鉄の刃を振りかぶって、ギーシュがかろうじて作り出したゴーレムへと切りかかる。
ギーシュの脳裏に、グリズネフの言葉がよぎった。
――――ゴーレムに立派な鎧も兜も必要ねえ。人を殺すにゃあ手と足があって、武器が持てりゃあ十分だ
「うわああああああああ!!!!!」
恥も外聞も無く、ギーシュは叫ぶ。
鎧も兜も持たぬ人形は目の前に迫った盗賊に向かって突進した。
ルイズは悔しくて、悔しくて、唇をかみ締めていた。
守られているだけの自分が悔しかった。求められない自分が悲しかった。
自分はあの土くれのフーケだって捕まえたんだ。
もう私は『ゼロ』のルイズなんかじゃない。なのに。
もうギーシュはぼろぼろだ。操っているゴーレムは普段の形とは異なる、とても単純化されたモデル。それは彼の精神力の限界を示している。
ワルド。彼もまた、口には出さないけれど疲労しているのだ。
その証拠に、魔法を使ったのは矢を払った最初の一回だけ。
それから彼はずっと杖を剣として扱い戦っている。
盗賊から救出した少女・メリッサはもともと戦う手段を持たない。
つまりは、今この中で五体満足に戦えるのは自分だけなのだ。
本来戦うのは自分であるはずなのだ。
そもそもこれは私が姫様から仰せつかった任務なのだ。
なのに―――こうやって、二人が戦っているのを後ろから見てるだけなんて、
「そんなの、許されるわけないじゃない!!」
ルイズは杖を手に取り、駆け出した。
「なっ!? ルイズ!!」
予想外の事態に、ワルドの動きが乱れる。
ワルドの射程圏内を外れたルイズに盗賊が迫る。
ルイズは一瞬恐怖に体が固まりながらも、呪文の詠唱を始めた。
「落ち着いて……出来る、私は出来る!!」
紡ぐ言霊は『錬金』の魔法。必ず失敗し、爆発を起こす魔法。
だが、それは発想を転換すれば必ず対象を爆発させる魔法と成りえる。
フーケとの戦いを経て、ルイズが必死に考えた『戦うための手段』だった。
問題はその射程の短さ。対象に確実に魔力を伝導させるために必要な距離はおよそ1メイル。
盗賊の持つ剣が振り上げられる。
しかし―――
(間に合う!!)
ギリギリで詠唱を終えたルイズが杖をふる―――その刹那。
ワルドがルイズの体を抱きかかえ、飛んだ。
盗賊の振る剣がワルドの羽織るマントを切り裂いた。
ルイズの制御を離れた魔力はあらぬところで爆発を起こし、四散した。
「…ッ! つぅ……!!」
ワルドの顔が歪む。剣が掠めたのだろう、ワルドの右肩に血が滲み出していた。
「ワルド!!」
ルイズはワルドの腕を離れようと身をよじらせる。
ワルドはどこまでも涼やかな微笑みを浮かべ、ルイズを強く抱きしめる。
「大丈夫だ、ルイズ……安心して。君は、ここでじっとしていればいいんだ」
「違うッ! ワルド、私は……!!」
「ルイズ、僕を信じて」
そう言い残すとワルドはルイズから離れ、再び盗賊たちと対峙した。
残されたルイズは、ふるふると力なく首を振る。
「信じているわ……ワルド……だけど………」
刃と刃が擦れ合う甲高い音が、どこか遠くで鳴っているような感覚に陥る。
「あなたは……私を信じてはくれないのね」
足元がおぼつかない。見ると、ルイズは池をたゆたう小船の上にいた。
霧に囲まれて対岸の様子はよく見えない。もちろんこれは錯覚だ。弱いルイズの心がこんな風景を見せている。
この場所は、幼いルイズが辛いことがあった時に逃げ出していた隠れ場所だ。
ぬ、さるさんかな?
(結局、私は―――)
変わったはずだった。
土くれのフーケを捕まえて、もうゼロだなんて呼ばせないように、戦う手段を頑張って探して。
もう私は『ゼロ』なんかじゃない。
そのつもりだった。
ルイズの脳裏に、別れの時に見たガッツの背中が思い浮かぶ。
――――お前、何か勘違いしてるんじゃねえか?
力が抜けて、ルイズはその場にしゃがみこんだ。
小さく膝を抱えるその姿は、行き場を見失った迷子のようだった。
結局、私はこの場所から一歩も動いていなかったんだ―――――
ぽろぽろと涙が零れる。
子供のようにうずくまり、嗚咽を漏らしながらルイズは泣いた。
「ルイズッ!!!!」
ワルドの声に、ルイズははっと顔を上げる。
一本の矢がルイズめがけて飛来していた。
岩陰から強襲した盗賊の中にも、弓を持つ者がいたのだ。
ワルドは呪文を紡ぐが間に合わない。既に空に近かった精神力は、新たに魔法を発動するのに致命的な時間を要した。
「馬鹿な……」
思わず、ワルドの口から声が漏れる。
「何故…何故貴様らはルイズを狙う!!」
半狂乱になりながらルイズの方へ手を伸ばす。
ルイズの目には、迫り来る矢の動きがやけに遅く見えた。
襲い来る激痛を予感して硬く目を閉じる。
ドン! と重い音がして地面が揺れた。
矢はいつまでたってもやってこない。
ルイズは恐る恐る目を開く。
たなびく黒いマント。いつかのように、広い背中をこちらに向けて。
―――黒い剣士がそこにいた。
ガッツ来た支援
ルイズに迫っていた矢は構えた大剣に弾かれ、地面に落ちている。
「ガッ…ツ……?」
幻ではない。目の前の黒い剣士は、確かな存在感を持ってそこにいる。
「どうして……?」
事態がうまく飲み込めない。ルイズは恐怖で座り込んだ姿勢のまま、ぼんやりと風に揺れる黒いマントを見つめていた。
「おい」
低く響くその声に、ルイズの肩がびくりと反応する。
体は前を向いたまま、ガッツが視線だけをこちらに向けてくる。
「何そんなとこでうずくまってやがる」
「え……?」
突然現れた黒い剣士の出で立ちに唖然としていた盗賊たちが我を取り戻す。
ルイズを囲むようにしていた3人の盗賊が、目線で示し合わせて同時に飛び掛ってきた。
バリリ……!
響いた音はガッツが歯をかみ締めた音。
「これは……てめえの戦だろうが!!」
ぎしり、と剣の柄を力強く握りしめ、凄まじい速度で振り切られた鉄塊は、一振りで三人の盗賊を吹き飛ばした。
駆け出すガッツの背中を、ルイズは呆然と見つめていた。
胸の中でガッツの言葉を反芻する。
何故だか―――何故だかはわからないが、胸が熱くなった。
涙が滲んで景色が歪む。
だがこれは先程までとは意味の異なる涙。
ぐし…と袖で目を拭う。
そうだ―――これは、私の戦いなんだ。
たとえ、私に戦う力が足りないのだとしても―――戦えないのだとしても!
「『戦わない』なんて選択肢、ありえないのよ!!!!」
杖を抜き、しっかりと立ち上がって駆け出す。
ルイズの目は、鮮烈な輝きを取り戻していた。
決着はあっという間だった。
盗賊の半数を切り倒したところで、残りの者は散り散りに逃げ出していった。
ガッツはその背にドラゴンころしを仕舞う。と、ギーシュが話しかけてきた。
「ガッツ、キミはどうやってここに?」
ガッツはその問いには答えず、空を見上げた。
「あっちも片付いたみてえだな」
「え?」
つられてギーシュも空を見上げる。
見覚えのある風竜が空を舞うのが見えた。
宿場『女神の杵』。ラ・ロシェールで一番上等の宿だ。
そこの一階に備え付けてある酒場で、一行はくつろいでいた。
よほど疲れたのか、机に突っ伏しているのはギーシュで、それを心配そうに見つめているのはメリッサだ。
死んだようなギーシュにパックがおもしろそうにちょっかいを出している。
ガッツはコップに注がれた酒を傾けていて、キュルケがそのすぐ隣で熱っぽい目をガッツに向けている。その隣には黙々と本を読み続けているタバサの姿があった。
ガッツとパックをここまで運んだのはタバサの使い魔である風竜シルフィードだったのだ。
ルイズとワルドの姿はここにはない。二人はアルビオンに向かう船の調達に向かっていた。
「それにしてもあんたぼろぼろねえ」
キュルケが膨れ上がったギーシュの頬をつつく。
「痛い痛い! 頼むから触らないでくれたまえ! 大体なんで君たちまでここにいるんだ! ガッツをここに連れてきたらもう用は無いんだろう!?」
「だぁっておもしろそうなんだもん」
「君なぁ……これは極秘の任務なんだぞ? 遊びじゃあないんだ!」
よろよろと体を起こしながらギーシュはビシッ、とキュルケを指差す。
「硬いこといわないの!」
芝居がかったその仕草に少しイラついたキュルケは強めにギーシュの後頭部をはたいた。
抵抗する力がこれっぽっちも残っていないギーシュは強かに額をテーブルに打ち付ける。
メリッサはそんな二人のやりとりを止めるに止めれずおろおろとしていた。
額から血を流し痙攣するギーシュの目の前にシュタッと栗頭の妖精が舞い降りる。
「極上の傷薬はいかがかね?」
まるで商談に使うような眼鏡をかけてパックはギーシュの眼前にずずいと詰め寄る。
「な、なんだきみは!」
「なんだチミはってか。何を隠そうこの私こそが『鉄の城』ガッツの家主であるパックだ」
「はあ!? ってちょっとおい何を!」
「見れば随分体を痛めているご様子…この『妖精の粉』を用いれば明日にはもう完全、完調、絶好調でございます。なぁにお代は後払いで結構でゲスよ」
いやらしい笑みを浮かべ、ギーシュの返事も聞かずパックはギーシュの体に己のりん粉を擦り付ける。
「な、なんだこれ。痛みがみるみる引いていく……!」
「どうでげす? いい具合でざんしょ?」
「す、凄い!! もっとやってくれ!!」
「お安い御用ざんす」
後に、ギーシュは法外な値段を請求され、パックの奴隷と化すことになる。
ワルドとルイズが戻ってきて、出発は明後日になることを告げた。
ワルド、ルイズとメリッサ、ギーシュとガッツ(とパック)、キュルケとタバサ、一行はそれぞれ割り当てられた部屋に戻る。
メリッサの今後など考えるべきことはあったが、それは全て明日に回して今日はとにかくしっかり休むことになった。
ギーシュ、奴隷になんて……(涙) 支援
月の光を浴びる丘に、一人の女が立っている。
女が見下ろす先にはルイズ達が泊まる『女神の杵』亭があった。
カツン―――と小石が転がる音がする。
気配を感じて女は後ろを振り返った。
そこには白い仮面を被った長身の男が立っていた。
男の手には血に濡れた杖がある。
しばしの無言。
月の光を浴びて、岩肌に二人の影が伸びている。
「どういうつもりだ」
先に口を開いたのは仮面の男だった。
「何がだい?」
「とぼける気か?」
男は血に濡れた杖を女に突きつけた。
「逃げた奴に聞いた。貴様が言ったらしいな。『桃色の髪の女を討ち取った者には倍の金を出す』と。俺は『ルイズにだけは手を出すな』と言ったはずだな?」
仮面の男から殺気が漏れる。
しかし、喉元に刃のように鋭い杖を突きつけられてなお、女はくつくつと笑った。
「少しあのお嬢ちゃんには怖い思いをしてもらおうと思っただけだよ。それくらいのお遊びは許されるだろう? 何しろあの子は私を捕まえた憎き相手なんだからさ。それに―――」
女は―――『土くれ』のフーケは目を細める。その瞳には嘲りの色が浮かんでいた。
「まさか、あの程度の連中にあの『閃光』のワルドが遅れをとるとは思わなかったんでね」
男の手がピクリと揺れる。対するフーケはあくまで余裕。
またしばし無言が続く。
仮面の下で、男は舌を鳴らした。
「二度目はないぞ」
そう言って、杖を引く。マントを翻し、フーケに背を向けた。
「次に勝手な真似をすれば、殺す」
「心得とくわ、ボス」
わざとらしくそう呼んで、フーケは笑った。
タバサはパジャマなのかな?
支援だ!
ちょっと短いですが投下終了
次のワルドのプロポーズ&決闘まで行くと長くなりすぎるんでここできりました
本スレや避難所で応援してくれた人ありがとう
おかげでまた書く意欲が出てきました
完結までストーリーはあらかた考えてるんですが、文にするのは難しい……
ではいずれまた近いうちに
ベルセルクのひと、乙です
拙作のほうも、1:00から投下させていただきます
1:00に投下します
と思ったら先客が。
今日は支援に回ります。
どうぞ
ベルセルクの方、乙でした!
久々に続きが読めて嬉しいぜ
次回も楽しみにしております!
この頃、学園の様子がおかしい。
シャーリーは、そう思った。
学園のあちこちで、自分の使い魔とコミュニケーションを取っている生徒たちを見かけるのだ。
それだけなら別に普通なのだが、その接し方がいつもと違う。
ある女子生徒はカエルにリボンをつけて難しい顔をしているし、小太りの男子生徒は昼間からフクロウを飛ばせて芸でも仕込んでいるみたいだ。
ギーシュとかいうキザな男子生徒はヴェルダンデと名付けている大きなモグラと、まるで恋人みたいに見つめあっている。
遠目から声は聞きとれないが、どうも甘い言葉でもささやいているようだった。
モグラに対して。
ハッキリ言って、すごく変だ。
キュルケはサラマンダーのフレイムに、ぼうぼうと炎を吐かせている。
全体的に、まるで怪しいサーカスの練習でも見ているようだった。
「はぁい、シャーリー」
と――シャーリーを見つけたキュルケはニコニコ笑いながら、手を振ってきた。
シャーリーは黙って、丁寧に一礼をした。
悪い人ではないとわかっているが、主人のルイズとは中が悪いし、お色気満点な雰囲気がちょっと苦手なのだ。
それに、
「きゅるきゅる……」
サラマンダーのフレイムが、その虎みたいに大きな体をシャーリーに摺り寄せてきた。
その態度は虎というより猫みたいだった。
シャーリーは大いに困る。
十三歳の乙女にしてみれば、犬や猫ならともかく、火を吐くお化けトカゲに懐かれても、あんまり嬉しくはない。
おとなしいのはおとなしいが、見かけが怖い。
いいかげんで慣れてはきたが、やっぱり苦手だ。
向こうに敵意や悪意が皆無なのだから、なお困りもの。
「一体何をやってるんだ、って顔ね?」
キュルケはニコリとしながら、周りの生徒たちを見る。
「いえ、その……」
シャーリーが口ごもると、
「これは、品評会に備えての特訓よ。みんないいとこ見せようって必死になってるのよねー」
「品評会、ですか?」
どういうものだろう?
シャーリーは?を浮かべた。
名前や、周囲の行動からして品評の対象となるのは、どうやら使い魔たちらしいが。
「そう、そういう毎年恒例の催しがあるのよ。生徒たちの召喚した使い魔を、学院中にお披露目するわけ。色んなゲストを招いたりしてね。うーん、ちょっとしたお祭りみたいものかも?」
ふーん、そんなことやるんだ……。
などと感心していたシャーリーだったが、キュルケが言った次の言葉で硬直する。
「ところで、あなたも何かやるの?」
「え?」
「だって、あなたルイズの使い魔でしょ? 二年生は全員参加するきまりだし」
「ああっ」
シャーリーはつい声をあげ、あわてて自分の口を押さえる。
忘れていた……。
シャーリーは自分の右手、使い魔の証であるルーンを見つめた。
今や完璧にルイズ専属のメイド、という認識しかなかったが、シャーリーはルイズの使い魔なのだ。
主もこれをほとんど失念してしまっているので、無理もないことなのだが。
「……」
シャーリーは呆然とする。
どうしよう、どうしよう……。
品評会といったって、何をすればいいのだ?
やっぱり何か芸でもしてみせないのとやばいのだろうか?
そういうものがないと、まずい……ひいてはルイズにとってマイナスになるのではないか。
自分の出来ることと言えば、家事くらいのものだ。
キュルケのフレイムみたいな、『芸』は持ってないし、できない。
シャーリーが硬直していることに気づいたキュルケは、ちょっとまずいと思ったのか、
「ま、まあそんなに深刻にならなくてもいいじゃない?」
とはフォローするものの、今更である。
シャーリーは深刻な顔のままだった。
(あっちゃあ……。やっちゃったわ。この子、真面目だからねえ……)
失敗したなあ、とキュルケは片手で頭を押さえる。
フレイムはいまだにすりすりしている。
いいかげんにしとけ、サラマンダー。
そんな時だった。
急に使い魔たちの様子がおかしくなった。
ぎゃあぎゃあと騒ぎ出し、落ちつきがなくなる。
「ちょっと、どうしたのロビン?!」
「おおい、クヴァーシルーー!?」
「な、何をあわてているんだい、ヴェルダンデ!?」
「ラッキー二世、逃げないでくれーー?!」
それはフレイムも同じで、脅えるようにして、シャーリーの後ろで身を小さくした。
「ああ、これは……」
キュルケは何か納得したような顔で、空を見上げる。
ばさり、ばさり、と大きな羽根音が響き、少し空が暗くなった。
巨大なワイバーンが自分の巣にでも戻るように、学院内に降りてきた。
いつ見ても大した威容である。
わあ、とシャーリーはワイバーンを見上げる。
(モード……。ミス・モリエール、帰ってこられたんだ)
雌のワイバーンが着陸すると、その背中から主である少女が身軽な動作で飛び降りた。
長い青髪がばさりとひるがえる。
イザベラ・ド・モリエールだ。
他の生徒たちはあわてて距離を置く。
中には使い魔と一緒に逃げ出した者もいた。
使い魔同様、主もまた恐れられているようだ。
「冗談じゃないよ、あのクソ親父、変な用事言いつけやがって……」
イザベラはブツブツ言いながら、ぱんぱんと衣服の埃を払った。
「はぁい♪ どうだった? おうちは」
キュルケは笑いながら、恐れ気なくイザベラに近づいていく。
「最悪だよ」
何があったのか、イザベラは吐き捨てるように言った。
気のせいか、その顔にはどこか照れがあるようにも見えた。
「お土産は?」
「どこのお子様だよ、お前は」
おどけた態度で両手を出すキュルケに、イザベラはふんと鼻を鳴らして言った。
「で、青い髪のご令嬢、品評会に間に合うように帰ってきたってとこかしら?」
「はあ? ひんぴょうかい?」
イザベラは一瞬何だ、それはという顔をした。
「あー、そんなのあったな……。面倒くさいね、あたしゃパスだ」
どうでもいいという風に頭を掻く。
「あら、せっかくこんなにも素敵な使い魔がいるのに、もったいないわ? モードのすごさをアピールするチャンスじゃない」
「こいつにゃ、品評会に出すようなお上品な芸当はできないよ。戦場だったら、そのへんのへっぽこドラゴンに負けない働きをするだろうがね」
そういうイザベラの脳裡には、きゅいきゅいとやかしましい風竜の幼生が映っていたが、キュルケにわかるわけもなかった。
「やりようはあると思うけど」
キュルケは微笑して、いかにも狂暴でございますという風貌のグレートワイバーンを見る。
それを感じてか、モードがぐるるとうなった。
「……品評会といえばあんたのフレイム……おい、何やってんだ、そいつ?」
イザベラはシャーリーの影に隠れているフレイムを見て、眉をひそめた。
いくら隠れようとしたところで、シャーリーの小さな体にフレイムが隠れきれるわけがなく、その姿はほとんど丸見えである。
隠れているのが、大きな岩ならともかく、自分よりも小さなメイドの少女なので、傍目からすると情けないことおびたただしい。
「……いつもはこんなことないんだけどね? シャーリーがいるから、甘えちゃってるのかしら? この子シャーリーによくなついてるし……」
キュルケは使い魔を軽く睨みつける。
「フレイム、いいかげんでこっちにきなさい。いくらなんでも、ちょっと情けないわよ?」
「ちょっとどころのレベルじゃないと思うがね――」
イザベラは冷たい目でフレイムを見た後、シャーリーの顔を見た。
「ん? お前はヴァリエールの使い魔」
「は、はい」
「ふーん」
イザベラは、ずいとシャーリーに近づいた。
「お前も出るのかい、品評会に」
「い、いえ、あの……。わかりません」
今日は投下が多いな支援
ベルセルクの方、乙でした
メイド支援
「ふん。そのへんはご主人様の聞かなくッちゃわからないか」
イザベラは軽く笑って、シャーリーの焦る顔をじっと見つめる。
「特技も何もないんで、そんなモンに出されたところで困る? どうしようって顔だねえ?」
「……」
図星を突かれ、シャーリーはうなだれた。
「ちょっと、あまりいじめちゃダメだよ? この子、ルイズとは違うんだから」
キュルケが助け舟を出した。
「別にいじめてるわけじゃないさ。それにヴァリエールをいじめてるのはむしろお前だろ」
イザベラはシャーリーの右手を取った。
「見たところ、お前は獣に好かれやすい特質があるみたいだ。もしも芸がないってんで困ってるのなら、鳥さん、動物さん、助けてとお祈りしてみな?」
「……?」
この人は何が言いたいのか?
シャーリーはイザベラの意図がつかめず、困惑するだけだった。
「そしたら、助けてくれるかもしれないよ? 色んな連中がさあ」
「そ、そうでしょうか……?」
いくらなんでも、そんな都合の良い話なんかあるものだろうか?
シャーリーはちょっとばかり腹が立った。
自分は、天使でも聖者でもないのに、祈ったくらいでそんなことできるわけがない。
「信じられないってのなら、今度試してみるんだね」
そう言うと、イザベラはモードに向かって、パチンと指を鳴らした。
すると、モードに積まれた荷物の一部がもこもこと動き出し、何かが飛び出してきた。
それは小さなグリフォンの姿をした人形……ガーゴイルだった。
ガーゴイルはまるで生き物みたいに空を飛び、イザベラに近づいてくる。
その前足には一本の酒瓶をつかんでいた。
イザベラは酒瓶を取ると、無造作にシャーリーに突き出した。
「ほら、ガリアの土産だ。とっときな」
にひひと笑い、押しつけるようにしてシャーリーに渡す。
シャーリーは驚いたが、それを押しいただき、馬鹿丁寧なお礼を言って、その場を辞した。
「あなたもけっこういいとこあるじゃない」
キュルケはにこりとして、イザベラの肩に手を置く。
「普段の私にいいとこがないみたいな言い草だね?」
「悪いところ上げるほうが早いのは確かね」
「うっせえ」
「ほら、まず三つ。口が悪い、下品。それに短気」
「ふん」
「ところで、あなたアレはシャーリーにあげたのよね?」
「あ? ああ」
「でも、本人はそう思ってないと思うけど」
「何でだよ?」
「だって、さっきお礼の時に、代わりましてお礼を……とか言ってたもの、きっとルイズへのお土産って受け取ったのよ」
それを聞いたイザベラは、しまった、と宙を見上げる。
「ああ、そうか……。いや、別にいいけどな」
「ところで、なんか疲れてない? あなた」
キュルケはイザベラの顔を横で見て言った。
「疲れてるよ。クソ親父の面倒ごとをやらされてね」
「……それって、あなたのお父さんよね?」
「ああ」
そう言ったきり、イザベラは口をつぐんだ。
キュルケは溜め息をつく。
この悪友は時折実家の愚痴をこぼすくせに具体的なことは何も言わない。
何かしらの理由があるのはわかるが、
(そろそろ話してくれてもいいと思うけどねえ……)
褐色の女は、秘密を隠す悪友を見て、微苦笑をもらした。
さて、シャーリーはいうと。
ルイズの部屋にワインを届けていた。
「は? イザベラが私に? どういう風の吹き回しかしら?」
シャーリーからイザベラのワインを見せられ、ルイズは首をかしげた。
今晩は豊作ですな
支援!
キュルケの予想通り、シャーリーはワインをルイズへの贈り物と受け取ったのだ。
イザベラが、
「あんたにやるよ」
と、きちんと名言していなかったせいもある。
「まあ、いいわ。棚にしまっておいて」
「はい」
シャーリーはワインをしまった後で、
「あの、ルイズ様……」
遠慮がちに、品評会について、訊ねてみた。
ルイズは最初のほうこそ、
「? 品評会?」
な、顔をしていたけれども……。
「――あっちゃああ……。すっかり忘れてたわ」
ルイズは乱暴に頭を振りながら、渋い顔になってしまう。
シャーリーは何だか悪いことでもしているような気分になって、少しおっかなびっくりにルイズを見た。
(品評会かあ……。何かするっていってもねえ……)
他の使い魔と違って、人間の少女であるシャーリーにはギャラリーにアピールできるものが……ない。
考えてはみたが、これだというものは思いつかなかった。
アピールできないということは、沽券にも関わる。
しかし、ルイズにしたって、今さらそんなことを言ったってどうにもならないことはわかっていた。
シャーリーのせいで良くも悪くも肩の力が抜け出した今のルイズは、
――使い魔のおひろめでヴァリエール家の三女にふさわしき晴れ姿を。
などという思考には行き難くなっていた。
まったくないということはないが、そこまで神経質になることはなかったのだ。
大体、そんなことをして何になるのかという思いもある。
使い魔はメイジの力をあらわすバロメーターみたいなものだが、その結果をどうこういっても仕方がない。
クジとは違う。
召喚するメイジの実力に見合ったものがやってくるわけだから、召喚した対象を怒ってもまったくもって無意味なのだ。
だから、何がこようと自分の実力を冷静かつ謙虚に受け止めねばならない。
『感情的』が服を着て歩いているようなルイズがこんな風に考えるのは、シャーリーの気性が大きい。
ある意味で、シャーリーはもはや単なる使い魔を超えて、ルイズにとって親友であり、妹のようなものだった。
この異境の地では、シャーリーはルイズ以外に頼れるあてがない。
彼女を召喚してしまったルイズには、シャーリーを色んな意味で守る義務がある。
貴き者、貴族は平民を守らねばならない。
自分に仕える従者という面もあるが、それ以上にその守ってあげなくてはならない存在だった。
護るべき存在というのは、人間を変えるのだ。
もしもいつか妄想に出てきた駄犬みたいな少年が使い魔だったら、悪感情はさらにヒートアップし、鞭を振り振りちーっぱっぱになっていたかもしれないけど。
「あの……」
シャーリーが話しかけようとすると、
「まあ、なんとかなるでしょ」
軽い口調でルイズは言った。
開き直ったのである。
「壇上で隠し芸するなんて決まりがあるわけじゃないし」
口調が妙にすっきりして、明るかった。
その笑顔に、シャーリーはホッと安堵の息を吐いた。
同時に、微笑が口もとに浮かんだ。
〜〜〜
投下完了でございます。支援のかた、ありがとうございました。
シャーリーもキタ。これで勝つる!
ところでいつアームロックが炸裂するんですか支援
メイドさんお疲れ様。
今晩は多いな。
い、一体幾つ投下予告が入っているんだ…
んじゃあ、投下してもいいのかな?
2時に予定。
ガッツきたぁぁぁ!
∧
| | |
| | |
| | |
∩
( ゚∀゚)彡 ドラゴン殺し!
<三三三三⊂彡 ドラゴン殺し!
ガッツの背中はかっこいいなー。惚れるぜ
ギーシュは不本意だがグリズネフの言葉で成長するか?
では、投下します。
コルベール研究塔前から飛び出して、エレオノールは脱兎の如く走る。その片手にはルイズの首根を掴んで。
ルイズに折檻していたエレオノールにギュスターヴが何とはなしに咎めると、エレオノールがビクッと震えて走り出したのである。
走って走って建物を駆け昇り、エレオノールはルイズの部屋に飛び込んだ。
「はっ、はっ、はっ……」
「きゅう〜」
投げ出されたルイズはベッドに倒れこんで目を回していたが、さもありなん。
そんな様で、ルイズとエレオノールが話を出来るようになって、ギュスターヴが部屋に戻ってくるまで、たっぷり10分は無駄に慌しく時間は流れたのであった。
(あぁ…あんな…傭兵のような荒々しい風情に磨き上げたエメラルドのような澄んだ佇まいの殿方がいるなんて…しかもそれがちびルイズの使い魔なんて!)
エレオノールは悶々と。
(頭がぐるぐるする…姉さまが走って…私は捕まって…ああ〜ぐるぐるするぅ…)
ルイズは昏倒して。
(あれがルイズの姉か…全寮制の学舎にやってくるんだから野暮用ではあるまい。ましてやルイズは大貴族の列席だというのだから…)
そしてギュスターヴは黙考して、ルイズの部屋で談話が始まる。
モフモフしたキャラを召喚させたいが言葉が喋れないとやはり味気ない。
モフモフしつつ言葉が喋れてカッコいいキャラ……BLEACHの狛村とかいいな。
もしくはドギー・クルーガーやテイルズオブリバースのユージーンも。
ルイズの部屋にギュスターヴが戻ってくると、四方山話の最中でエレオノールの視線がギュスターヴへ流れていく。ギュスターヴは静かにルイズの傍に立ち、
外を半目で眺めながら二人の会話を記憶に留めようとしていた。その様がエレオノールには静林のテラスで憂う紳士に見えた。
「あのぉ…姉さま、聞いてます?」
「へ?…ぁ、コホン。聞いてるわよ。ツェルプストーの小娘の一件はとりあえず、貴方の言い分を飲んでおくわ」
ルイズは実は先ほどから延々と「キュルケなど学友でもなんでもない。勝手に声をかけ、あまつさえ使い魔にちょっかいを出し…」と、言い訳なんだか
釈明なんだかわからない話を続けていたのだ。
(どう言い繕っても十分学友だと思うのだが…)
恐らく本気で宿怨の敵、などとキュルケの一族は思っちゃいないだろう。国内で鉄火を時に交えながら合従や分散をしているらしい帝政ゲルマニアなら
恋人を掠め取られたなんて仲は安いものだ。無論、隣り合う別国なら戦も構えただろうが、敵視してるなら留学などするまい。と、ギュスターヴは考えていた。
「でもルイズ。私は今日は遊びに来たんじゃないの。貴方宛てに殿下から預かり物があります」
「アンリエッタ殿下から?」
傾げるルイズの目に、エレオノールは鞄から旧い装丁の本を取り出した。木板と厚紙、さらに上から皮を張った丈夫な装丁の本。にもかかわらず、
厚い装丁は年月を経てくすんで、何人もの手を介したことが判る、飴色の光沢を持っていた。影に翳すと、箔押しの題字が薄らと水色に光る。
「勿体無くも貴方に婚儀で祝詞を詠う祝いの巫女役を命ぜられたわ」
「わ、私が?!」
王族の婚儀への参加、しかも特別の役を与えられて。
それがどういう意味か判らないイズではなかったし、傍らのギュスターヴも耳を欹てた。
「覚え目出度いことに二代続けてラ・ヴァリエール家の人間が婚儀の巫女をされたのよ。これがどういう意味か貴方も判っているでしょう」
「わ、私が…巫女役を…」
ルイズは見るからに諤々と震えていた。顔は凍土のように強張り、冷や汗が張り付いて青くなっている。
「エレオノール女史。一つ質問してもよろしいかな」
「は、はい?な、なんでしょう?」
エレオノールは目の前の固まりきったルイズがまるで居ないかのように肩が浮いてしまった。
「先ほど『二代続けて』と言っていたが、そのくだりを自分にも判る様にお教えして頂きたい」
「は、はぁ。…今より凡そ20数年前、現在女王として玉座におわしますマリアンヌ陛下がトリステインの王妃として、アルビオンから渡ってきた
亡きジェームズ一世の弟君と婚儀を交わした時。私とルイズの母親であるカリーヌ・デジレは、既にラ・ヴァリエール公夫人となっていたのですが、マリアンヌ様との
ご親交の篤さから巫女役を命ぜられた、という経緯があるのです」
ギュスターヴの与り知らぬ話であるが、カリーヌ・デジレという人物はトリステイン史に幾重にも名前を残す人物である。
今でも王宮官庁の重鎮らはカリーヌの名と功績に敬意を払っている。
歴年の重臣の一族。中央政治に名を残す女性の娘が、二代続けて役を拝命される…。
貴族足らんと常に自分に課しているルイズであっても、それは実に重くのしかかっているのだった。
「ルイズ」
振り向いて声をかけたエレオノール。その声でルイズの肩が跳ねた。
「貴方はこれから、この『始祖の祈祷書』を婚儀まで肌身離さず持ち歩きなさい。式では祈祷書にある祝福と祝祭の祝詞を諳んじる。それが巫女の仕事よ」
そういってエレオノールはルイズの両手に祈祷書を渡す。祈祷書はしっかりした装丁と、込められた重責でずっしりとしていた。
「これが『始祖の祈祷書』…」
「そんなに大事なものなのか」
ギュスターヴにとって名家の家宝といえば珍品名品のグヴェルしか知らないので、目の前の旧い本を珍しげに見ていた。
「始祖ブリミルが祈りを捧げた際に唱えた呪文や訓戒が記されている物よ。物なんだけど…」
言ってルイズは静かに祈祷書を開いた。古書特有の紙の匂いがほのかに、開かれた面は色褪せの感漂う白紙であった。
「…白紙じゃないか」
「…トリステイン王家の所有する『始祖の祈祷書』は、知られる限り世界で最も旧いものです。ですが、一字の文字も記されていないことで知られているのです」
エレオノールは少し苦しそうに話す。
世に『始祖の祈祷書』と名の付く品物は数多ある。贋物でも出自の知れたものは元より、真贋定かならぬものはそれこそ星の数ほどあるという。
歴代のロマリア教皇府が制定する始祖の教えは何処まで遡っても変化し続けており、歴代教皇の制定する祈祷書や、それの注釈書を並べるだけで
巨大な図書館が出来上がってしまうだろうという。
「というわけでルイズ。貴方はこれから婚儀で諳んずる詩を作りなさい」
「え、えぇー?!」
厳かな場で、失敗しては絶対いけない場所で、自作の詩を披露しろ。
いかなルイズとて、それは無理な要求だと言いたくなったが、エレオノールはそれを無視して鞄からまた、なにやら別の本を取り出した。
祈祷書がルイズの両手に余るほどならこちらは片手に収まるもので、同じデザインのされた2冊の本だった。
「参考になるように歴代の祝詞を編纂した詩集を置いていくから。あとオールド・オスマンにも話を通してあるから、相談にも乗るでしょう。
あの人はあれでもトリステイン有数の頭脳なのだから」
「は、はい…」
病人のように萎えはじめているルイズに、エレオノールは続けた。
「これはアンリエッタ王女殿下直々のご指名なのよ。光栄に思いなさい」
「殿下、直々…」
アンリエッタの名前がルイズの気骨を立てていく。恋人を失い、国と民のために一人孤独にたたずむアンリエッタの姿がルイズの脳裏によぎった。
アンリエッタはかけがえなき友人だ。例え望まぬものかもしれなくても、言祝ぎ、未来の希望を願うのが友人であり、臣下の義務であるべきだ。
ルイズの心にぐっと火が入っていく。
「判りました。…しっかりお勤めを果たして見せますわ。姉様」
「当然よ。…時間も時間だし、私はもう王都に帰るけど、学業をおろそかにしているようだとお母様に報告するから」
「は、はぃ…」
母を出されてルイズは再び青くなるのだった。
「そ、それと…」
盗み見るようにエレオノールはギュスターヴに視線を向けた。その様はきりっとした容貌とは裏腹に挙動不審である。
「あ、貴方」
「…自分が何か」
聖堂の大釣鐘のように響いている――と、エレオノールは感じていた――ギュスターヴの声に当てられそうになりながらも、ぐっとこらえたエレオノールは
胸を反らせて言った。
「お…王都に、用事があるようであれば、一声、かけなさい。…ほら、人の身で使い魔なんて苦労ばかりでしょう?
妹の使い魔がそれではラ・ヴァリエールの沽券に関わるし…」
言葉の先が霧消していくエレオノールを不思議そうに見ながら、ルイズはギュスターヴと王都のつながりを頭で追った。
「そうえいば、ギュスターヴ明日王都に行くのよね?」
「ああ」
「本当?!」
驚き立ち上がったエレオノールに驚くルイズとギュスターヴの視線が集まる。二人の目にエレオノールは…奇妙な事に『春先の野花』のようにパァ、とした笑顔だった。
わけもなくルイズは薄ら寒い、と感じる。
「え、えぇ。ねぇ、ギュスターヴ」
「ああ。出資している商店が開店するから顔を出せと言われている」
「そうなの…。あのっ、その…そのお店って何処にあるのかしら?」
「ブリトンネ街の×××‐×××の場所に」
「×××‐×××ね。わかったわ」
「興味有るんですか姉さま」
「えっ?!そ、そんなわけないじゃない!平民が出入りするお店なんてみだりに入るものじゃないでしょう」
そうは言うが肩がわずかに震えてそわそわした空気がエレオノールを包んでいる。明らかに動揺していた。
「じ、じゃあ、私はもう帰るわね」
「あ、はい。今日は有難うございました、姉さま。外まで見送りに…」
「だ、大丈夫よ!それよりほら、貴方は祈祷書と詩集でも広げて原稿でも作ってなさい!馬車も待たせてるから、もう行くわね」
ぴしゃりとルイズを机に向かわせて、エレオノールは一人ルイズの部屋を後にした。
部屋を出るとき、ふと振り返ってこちらをなんとも言いがたい目で一瞥して出て行ったのはなぜなのだろう。
突然の来客から、嵐のように過ぎ去った姉であった。
「変な姉さま…御領ではとっても厳しい人なのに。…王都で何かあったのかしら」
「さぁな……」
ギュスターヴは何も言えなかった。
二頭引きの馬車が街道を揺れる。5人は乗れる車内でひとり、暮れ始めた陽をカーテンで遮り、エレオノールはマントのすそを両手で引き寄せ、
少女のように浮かれあがっていた。
「明日…ブリトンネ街…かぁ…♪」
おそらく彼女を知るものは一人としてこのようなエレオノールは見たことが無いであろう。
親譲りの凛とした顔つきから緊張がすっぽり抜け、ぼんやりとあらぬ彼方に視線が飛んでいる。
勿論御者はそんなエレオノールなど露知らず、ぱっかぱっかとトリスタニアまで進むのだった。
その夜、トリスタニアにあるラ・ヴァリエール別邸では、謎の艶やかな呻き声が夜中に聞こえたとか聞こえなかったとか。
『歯車は外から回る?』
翌日。
周囲に漏らした通り、ギュスターヴはトリスタニアはブリトンネ街にやって来ていた。しかし、ただ一人ではない。
開店に際し協力してくれたシエスタが同伴していた。さらに言うと、冷やかしなのかキュルケとタバサがくっついていた。
「なんで二人も一緒に来たんだ?」
「興味有るもの。ねぇ?」
こくこくとタバサも頷いている。タバサはあの組み手以来、ロングダガーとタクトタイプの杖はベルトに収めて携帯するようになったらしい。
一人だけマントが剣の鞘にかからないようにたくし上げられている。
「どんな風になってるんでしょうね、お店」
「最後に見に行った時は改築中だったからな…」
一行は昼間のブリトンネ街を進む。人の流れを見ると、角の先の方へ集まっていくように見える。
「この角を曲がったところだ」
先導するギュスターヴとシエスタに連れられたタバサとキュルケは、角を曲がると目に周りの建物より一段立派な建物が目に飛び込んできた。
「あれだな」
「百貨店」店舗は元々小規模な貸し倉庫であった建物を上方向に建て増し、4階建てとしたものである。
一階――といっても、フロアの全体が地下に入っている――は石とレンガで出来たしっかりしたもので、そこには商人は入らず事務所が置かれている。
2階から上は木造で階段を軸に左右対称に仕切られた店舗スペースが置かれ、そこに契約した露天商達が店を構えているのだ。
露天商達は契約期間中はそこで商売をし、契約期間が切れれば仕入れのために店を開けるか、契約期間の更新を選択できる。
朝の6時から夕方の6時まで一階の扉は開かれていて、その間は一応事務所の目を通してではあるが、自由に出入りできる。
6時以降は扉が閉じられ、翌日まで特注の錠が掛けられるため、商人達は安心して商品を置いて家路につけるというわけである。
ギュスターヴ達が店に到着した時には、既に出入り口はさまざまな人が入って混雑していた。
「す、すごい繁盛ですね…」
「でもこれじゃ中に入れないわね」
大きく開けられた百貨店の出入り口。通りから短い下り階段になっていて、そこは人が行き交っているのだ。
おそらく大半の人々は物珍しさからやってくる一見客で、本当に買い物していく人はそれほどいないのだろう。
建物の脇でギュスターヴは路地に目をやった。
「裏から回ろう」
「裏?」
「やぁやぁギュスターヴさん、いや、ここは社長さん、オーナーさんというべきなのっかな?それっとシエスタもいらっしゃい。
面白い話に巻き込んでくれてありがとうね。それからそれから貴族のお嬢様方。むさ苦しい場所でございますが、どうか勘弁してくださいな」
裏手の出入り口から中に入れてもらうと、仕切り壁に格子窓の入った事務所では気さくな風情でジェシカが迎えてくれた。
その格好は『魅惑の妖精』亭で見た布地の少ない給仕メイド姿ではなく、茜で染めたややゆったりとした服だ。
腰帯とそこに指された鼈甲柄のナイフが商人らしさを出している。
「随分繁盛してるみたいだな」
「いやぁそれはもう。お父さんのお店でも宣伝してもらってたし、露天商の人たちも店がもらえるって頑張ってたからね。
でもさ、看板を上げたいんだけどなんて書きゃいいかわかんないから、白看板が残ってるんだよ」
事務所は概ね魔法学院の生徒寮並の広さがあり、棚には帳簿らしき紙の束が皮ひもで結ばれて置かれている。
机が三つあり、飾り気のないソファセットを囲むように配置されている。そしてジェシカの言うとおり、確かに事務所の脇には看板らしき板が白地のまま置かれていた。
「それなら決まったぞ。『百貨店』だ」
「それはまた、大きく出た名前だね。まぁいいや。早速書いちゃってよ」
「私にやらせてくれる?」
手を上げたのはキュルケだった。燃え立つような髪が揺れている。
「これでも字は得意なのよ」
言うと杖を抜いて短くルーンを唱える。白地看板の脇に置かれたペンキ壷と刷毛が動いて、看板に大胆な筆致で字が入ってゆく。
『百貨店 ギュス』
『筆 キュルケ・アウグスタ・フレデリカ』
「こんな感じでいいでしょ」
「うわっはぁ!お嬢さんお上手!」
最後に自分のサインを入れる辺りがキュルケらしい。
姉様ー!? 支援
ペンキが乾くまで事務所ではキュルケがジェシカに開店までの話を聞いたり、看板に書かれたキュルケの筆ぶりを話した。
八分ほど乾いてペンキが垂れなくなった頃、巧い具合に人の出入りが落ち着いてきたので一行は看板上げを手伝う事とした。
出入り口の真上に取り付けられた看板が、陽光に照らされている。
「これでいいかな」
「ばっちしばっちし。まぁオーナーさんは私にドーンと任せておけばいいよ。ばっちり売り上げ上げて見せるからさ。と言っても、実際に売るのは店の皆なんだけど」
そう自分で言ってジェシカは笑う。
「さーて。今から店内の見回りに行くんだけど、一緒に来る?」
「勿論」
建物の中心を貫くような螺旋階段は無骨な鉄製で、昇るたびに金属の音がする。
2階には織物と干し肉や干し魚を扱う店、3階には紙や冊子を売る店、地方の工芸品を売る店が入っていた。
特に紙屋の前ではタバサが浮遊霊のように吸い寄っていって離れるのに苦労するのだった。
「さ、次が4階だよ。香水の量り売りに散髪屋が入ってる。特に香水売りの人は一番高い所がいいってごねてさー」
「どうしてまた」
「何でも、見晴らしがいい方が綺麗なお客さんが集まるとか何とか」
到着した最上階は他の階より気持ち大きめに窓が取られ、前言の通り中々の見晴らしを持っていた。
やってきた客の一部は商品を見ないで外の景色を愉しんでいるようだった。
メイジならともかく平民にとって高い所から景色を見るということ自体が娯楽性を感じるのだろう。
「これはこれはジェシカさん、それにオーナーさん。いらっしゃいませ」
香水の置かれた店から壮年の男がやってくる。柄は違うが、服の構成がジェシカに近く、一目で商人だとわかる格好だ。
「こんにちわ香水屋のおじさん。どうだい客足は」
「おかげさまで結構な具合です。オーナー、そちらのお連れは…」
「魔法学院に在籍している貴族の令嬢と、ジェシカの親族だ。何か用立てるようだったら贔屓にしてやってくれ」
「貴族のお嬢様なんて!いやお恥ずかしい。私のような露天商上がりが買って頂けるような品などありませんよ」
「あら、そうでもないわよ?」
挨拶をしていた二人を置いてキュルケはサンプルのガラス瓶が並んだ棚から一つを選び取ってラベルを眺めていた。
「ふーん…貴方、なかなか悪くない趣味ね。ついでだしどれか頂こうかしら」
「ほ、本当ですか?!」
「嘘は言わないわよ。ついでにこの子に合いそうな物も用立ててくれると嬉しいんだけど」
そういってキュルケにくっついて猫のように棚を眺めていたタバサを指す。シエスタはおのぼりさんもいい所で、きょろきょろとしている。
「ありがとうございます!オーナーさん。このようなお客様を連れてきてくれるなんて、感謝しても足りませんよ」
「いやなに、喜んでもらえるなら越した事はない。頑張って商売してくれれば、それでいいよ」
「ええ、是非とも!ではお嬢様方、こちらへ…」
そういって香水屋は、キュルケとタバサに香水を調合する一角で接待するのに夢中になるのだった。
キュルケの香水の用立てが済み、タバサが渋々香水の代金を払うのを一同は待っている。シエスタは香水を見るだけで済ませるのだった。
「凄い感謝されてますね、ギュスターヴさん」
「みたいだな」
代金の引き換えに瓶を受け取るタバサにぺこぺこと香水屋は頭を下げているのが此処からでも見える。
「…それにしてもミスタ。貴方って前から思ってたけど、結構物怖じしないのね」
「うん?」
キュルケは手に収まる香水瓶を透かしていた視線を向ける。
「普通、ああやって頭下げられたら結構落ち着かないもの。貴族ならともかく…ね」
「ん…まぁ、俺も若くないし、色々と、な」
半目で濁すギュスターヴだった。
「とりあえず一月ごとに様子を見て、仕入れに出たいって人だけ店を畳んでもらって、空いたところには別の人が入れるようにしてみるよ」
店も一通り見た一行は螺旋階段を下りている。ジェシカは自分なりに考えた今後の展開についてギュスターヴに語っていた。
シエスタとそう変わらないはずの年で、ジェシカは世間慣れした一端の商人であった。『魅惑の妖精』亭でしか彼女を知らない人が見たら変貌振りに驚くかもしれない。
「とりあえず備品とかを置いておける倉庫か何か用立てるつもりでさ…あれ?」
「どうした…ん?」
ちょうどそこは3階。見えるは紙や冊子を売る店なのだが、不自然な人だかりできてなんだか騒がしくなっている。
「なんでしょう?」
「気になるからちょっと見てくるね」
足音高くジェシカは階段から走って人だかりに飛び込んでいった。
紙冊子売りの店先では、店主が冷や汗をダラダラと流しながら、金髪を揺らす女性に頭を下げていた。
「一体、どういうつもりなのかしらね?」
「いや、その、どうか許していただけないかと」
「貴族にこんなものを売りつけようなんて意地の悪い平民を許せるほど私は心が卑しくないのよ」
「そこをどうにか、どうにか…」
女性は凛とした顔筋にめがねを掛けている。その身には貴族の証であるマントと魔法の杖を持っている。
マントにはアカデミーのシンボルである『百合の葉と羽根ペン』といわれる刺繍が施されていた。
エレオノールである。彼女は今、憤怒に燃えている。
人ごみを掻き分けてジェシカが二人の間に立った。
「はいはいどいてどいてー。おやおや貴族のお嬢様、果たして一体何がご不満なんでしょうか」
「下がりなさい娘。お前に用はないわ」
「そうは言っても私は一応ここの管理を任されていますので、店先でこんな具合じゃ色々と困ってしまいますから」
「ああ〜ジェシカさ〜ん」
大の男は泣きながらジェシカにすがり付いてくる。ジェシカはぺしぺしと紙屋の頭をはたきながらあしらいつつ、仁王立ちのエレオノールに向かい直す。
「ほらほらいい男が泣くんじゃないの。で、お嬢様、なにが不満なんでしょうか」
「これよ!」
どん、とエレオノールが突き出したのは古ぼけた羊皮紙の束。つらつらと書き綴られた字は経年によって少し読み辛くなっている。
「そこの男に何か古い本や書き物は無いかって聞いたら、男は自信ありげにこれを私に出して売りつけようとしたのよ」
「なんなんですかこれは」
「ゲルマニアの女性メイジ『ドラングフォルド』が遺した魔法研究書の欠けた部分だっていうのよ、そこのは」
睨むエレオノールに紙屋はジェシカの影に隠れる。ジェシカ自身は古書に通じているわけでは無いので、答えようがない。
「はぁ」
「ところがこれ、私の見立てじゃ真っ赤な偽物。第一こんな場末の紙屋で伝説の書物の欠落部分を売っているはずなんて無いとは思ってたんだけど、
まさか偽物を売りつけられるとは思って無かったわ。こんな不届きな考えの商人に罰を下そうとしていたところよ」
「はぁ、なるほど。…で、紙屋さん。本当にあれ、偽物なの?」
「い、いいや。仕入れのときは確かに魔法書の欠落部分だって聞いて仕入れたのさ」
「はぁ?貴方、字が読めないのかしら?大メイジの本の欠落部分に、なんで杖を使わない戦闘方法や空想御伽噺が書いてあるのよ!」
バシッ、とエレオノールは床に紙束を叩きつける。すっかり紙屋は脅えきっててエレオノールの勢いと睨みで恐慌状態になっている。
「ひぃぃっ!」
「貴族を謀ろうとした罪は重くてよ」
「ちょっとお待ちくださいな。何とか許していただけないでしょうかね」
「駄目よ」
「そこを何とか!」
「絶対に駄目!」
「もう一声!」
「駄目ったら駄目って言ってるでしょう!あんまりつっかかるとギルドに言いつけるわよ!」
ジェシカがぽんぽんと言葉を積むのに比べてエレオノールはどんどんと声量が上がり、合せてどんどんと視野が狭くなっていく。
だから人だかりからギュスターヴがやってきてジェシカの後ろから声を掛けた時も、掛ける直前まで彼女は塵芥ほども気が付かなかったのである。
「随分とお怒りの様子で。エレオノール女史」
もう、今に振り上げた杖から魔法が飛び出そうだったエレオノールは、狭くなった視界の外から入ってきたギュスターヴに対して、まったく無防備だった。
具体的には振り上げた腕のまま、顔に浮かべた憤怒の表情が吹き飛んで呆然としていた。
「ギュ、ギュスターヴ…………さん」
無意識の語尾は小さくて恐らく誰にも聞こえなかっただろう。それはエレオノールにとって幸いだった。
「ああ、オーナーさーん!」
ジェシカにまとわり付いていた紙屋は今度はギュスターヴにすがりつく。ギュスターヴも困り顔でとりあえず紙屋を引き剥がした。
「おお、どうか泣かずに。…エレオノール女史。どうか一つ杖を納めてくれないだろうか」
ギュスターヴの目はすっと直刃のようにエレオノールを見ていた。
エレオノールは、その視線に耐えられなくて視線を逸らした。上がったままの腕がしおしおと下がっていく。
「えと…その…」
「弁償、というわけではないが、何か償うことはできないだろうか」
この場を収めるためのギュスターヴの施策で、ギュスターヴ本人は至極真面目に提示した案だった。だったのだが、提示されたエレオノールは、なぜか
……もじもじしている。
「そ、そうね…」
その空いた手は無意識にマントのすそを引き寄せている。視線を逸らしたエレオノールの先に、工芸屋が見える。
ロマリアやゲルマニアの辺境部、ガリアの工房などで作られたアクセサリーが所狭しと並べられていた。
「!そ、そうね。じゃあオーナー。私にあちらの店で一番高価な品を譲ってくれますかしら」
「は?」
エレオノールが人の輪の外側を指したことで、ギュスターヴも一瞬、集中が切れて間の抜けた声が出てしまう。
「ここの一番の責任者は貴方でしょう?なら貴方自身に罰を受けてもらうと思いますの」
「はぁ…」
生返事のまま、ギュスターヴは答えた。
結局、ギュスターヴは工芸品屋で「深海の秘石【ディープブルー】」と名札の付いた首飾りを購入して譲渡したことで、エレオノールは溜飲を下げた。
その価格、8エキューと50スゥ。
「あっ、ありがとうございます。大切にいたしますわ」
「それは、どうも」
代替案で本来なら渋々納得するはずなのに、エレオノールはなぜか凄く嬉しそうである。
「しかし、エレオノール女史はなぜここに?先日は来る気が無いと聞いたのですが」
「え?!いや、その、あの…」
当然の疑問なのであるが、エレオノールは目が泳いでいる。
「あっ!もうこんな時間じゃない。それではギュスターヴ殿。私はこれで失礼」
まくし立ててそれだけ言うと、エレオノールはさっさと階段を下りて百貨店から出て行ってしまう。ちなみに3階には何処にも時計に類するものは置かれては居ない。
「……なんだったのかしら、あの人」
人だかりの外側で、騒ぎを見物していたキュルケはため息混じりにつぶやいた。
脇に座り込んでいたタバサは、メガネをハンケチーフで拭きながら答えた。
「はた迷惑。妹に似てる」
「むしろ姉に似たんじゃない」
一方、外に出たエレオノールはブリトンネ街を全力疾走していた。
全速力でブリトンネの外、貴族の市街生活用の別邸が立てられている区域の境界を目指していた。
エレオノールは馬車でブリトンネに入らず、御者を境界に待たせて一人でやってきたのだった。
(言えないっ!お店に行けばギュスターヴさんに会えるかも、なんて思ってたなんてっ!)
「言える訳無いじゃないのよーッ!!」
叫び声は遠く町を駆け抜けるだけだった。
さて、なんとはなしに騒動が終わり、人だかりがなくなると紙屋はギュスターヴ一行に深深と頭を下げていた。
「助かりましたオーナーさん、ジェシカさん。どうにか商売を続けられそうです」
「散々だったねぇ紙屋さん。ま、これからもがんばりなよ!」
ぱしぱしとジェシカが背中を叩く。
「お礼に皆さんには商品の中からどれでも好きなものをお持ち帰りになってください」
「…大丈夫なのか?」
「ええ。さっきの文書以外は値段もそれほど高いものを持っておりませんから…」
「私達もいいの?」
キュルケとタバサが問うと、紙屋の主人は自信気に答えた。先ほどとは随分な違いである。
「ええ、どうぞどうぞ。本当は貴族様が買い物されると箔が付きますんで、さっきも頑張ったんですけど、あんな様になってしまいましたし…」
「この文書は幾らなんだ?」
エレオノールに地面に叩きつけられた『ドラングフォルドの魔法書』をギュスターヴは拾い集めた。
なるほど、経年で古くなっているせいか、書かれている文章が若干かすれている。
字体が旧いのか、字自体が綺麗じゃないのか、ギュスターヴには明瞭に読み取れなかった。
「50エキューと45スゥです」
「へぇ、こんな古い紙束がねぇ…」
「寺院の使う古い説法書や地方の領主が趣味で作った研究書なんかは大体これくらいの値段なんです」
キュルケはギュスターヴの手にある文書を一度眺めてから、店の中に入っていった。
「オーナーさん。これをお求めで?」
問われて気が付くと、タバサもキュルケもシエスタも、各々で店の棚を物色している。問われたギュスターヴは再び、手の中の古文書をまじまじと見た。
「ん…どうしようかな。高いんだろう?」
「いいえ。先ほども言いましたが、ただで結構ですよ。なに、此処を貸していただければ十分稼いで見せますから」
時間は3時も過ぎた頃、一行は百貨店を後にしてシルフィードの背中にいた。
結局、タバサは古い本棚から『イーヴァルティの勇者』の異説本、シエスタは冊子から小咄集を紙屋より貰っている。
「随分お土産もらっちゃいましたねぇ…」
ちょっとシエスタは気を咎めている。貧乏性ともいう。
「持ち主がいいと言ってるんだから、ここはありがたくもらっておこう」
ギュスターヴも他に之といったものに目がつけられず、『ドラングフォルドの魔法書』を貰ってきてしまっていた。
「ミス・ツェルプストーは何をもらったのですか?」
話を振られたキュルケは不敵に笑うと、しまい込んでいたものを取り出す。
「ふふふ。見なさい」
じゃらり、と見せたのは古い紙の束。それには、何やら抽象的な地図に印が付いている。
「古紙片の中に紐で纏めたままだったのをもらってきたのよ。これきっと宝の地図ね。お宝が見つかれば一財産築けるわ」
うきうきとしてキュルケの弾む声に対し、ギュスターヴは渋い顔をした。
「そういう眉唾なものはどうかと思うが…」
「あら、思ったより夢が無くてねミスタ」
そんなやり取りでブリトンネ街からの帰路は進んでいくのだった。
投下終了。あー、なんか妙に長くなってしまった(プロットの段階ではここまで長くなるはずは…)
なんかエレオノールさんぶっこわれてますが、ギュス様とフラグ立ちそうな面子があんまり思いつかず…(学院の面々は若すぎるしね)
ギュス様もなんかニブチンみたいですが、ギュス様は基本的に自分からアタックする人だろうと思うし、現状女性まで手が伸びるほど余裕がないのですよ、多分。
さて、次回は久しぶりの幕間に入ります。
ギーシュにも地獄を見てもらいましょう(前評判はよかったのです)
gj
エレオノール好きだからこの展開は嬉しい
激しく乙
おねーさん壊れすぎwwww
鋼の人投下乙!の、直後で悪いけど一番大好きな作品である黒い剣士乙ぅぅ!
首長くして待ってましたよ〜!
ガッツ活躍して嬉しいぜw
しかし、ギーシュがイシドロに近いポジションに治まりそうな予感がする。
あと、パックがいれば秘薬要らなそう。
それと次が書き上がってるっぽい雰囲気に期待!
……しかし、それにしても原作は……orz
新刊が今月出るという噂を信じるとしようか。
鋼のひと乙!ルイズ姉に萌えた。
ギュスは一途で純情な気がする俺。
レスリーが好きだけど、いざとなると、アニマの無い自分は彼女には相応しくない、とか考えてそうだな。
星の数ほどある隠し子疑惑が、覇王の定めか自業自得かは迷うところだけどw
ギュスの人乙
エレ姉さま妹を超えるツンデレの極致wwwこの展開大好きだ、幕間にも期待!
こんな時間ですが、予約等なければ4:05辺りから10話目投下したいと思います。
「できたわー! あー……やたら苦労したわねー!」
椅子にどかっと腰掛けて、モンモランシーは溜息をついた。テーブルの上の坩堝には調合したばかりの解除薬が入っている。
魔法学院に取って返した一行は早速モンモランシーに調合をしてもらい、解除薬が完成し次第フーケに処方することとなった。
「もう効果は出るのか?」
「ええ。飲ませればすぐ元に戻るわ」
「では、ミス・ロングビル」
と、フーケに突きつける。
フーケはその異臭に眉を顰めたが、フロウウェンが促すとそれを一息に呷った。
「あ。言い忘れてたけど、薬の効果は切れるけど、記憶はなくなるわけじゃないから」
「……そういうこともあるかと思っていたが……そうか……」
心底疲れたようなフロウウェンの声。
ふるふると頭を振ってフーケが目を開けた時、そこにあるのは、いつものミス・ロングビルの理知的な顔だった。
「ミス・モンモランシ……」
フーケの冷たい視線がモンモランシーに突き刺さる。
「は、はいぃっ!」
「次はありません」
フーケはにこり、と上品に笑う。満面の笑みが逆に怖かった。
「ごごごごごめんなさい!」
フーケにしてみても最大限の譲歩といえた。一応フロウウェンとの約束もあり、秘書を続ける以上、生徒であるモンモランシーを痛めつけるわけにも行かない。
「ミスタ・フロウウェン」
くるり、とフーケが振り返る。実ににこやかな表情だった。
「一緒に来てください」
有無を言わさずに手を取ると、フーケはフロウウェンを引っ張っていった。
「ハァァァァァ……最悪だ」
人気の無い場所までフロウウェンを引っ張ってくると、フーケは脱力したようにうなだれた。
「忘れろ。オレも忘れる」
「あー。そうしたいね。今日は浴びるほど酒をかっくらって寝る。その前にあのセクハラジジイへの言い訳考えなくっちゃなぁ」
「オールド・オスマンのことなら、出発前にミス・ロングビルは風邪を引いて寝込んだとルイズが連絡していた。捜索隊のよしみで仲が良くなったのだとでも、適当に口裏を合わせておくといい」
「あーそうかい。そりゃ手回しのいい事で」
忌々しげに頭をかいてフーケは投げやりに言った。
「ったく……まあ……あんたは余計な事を聞こうとしなかったから勘弁してやる。詮索もしないこった」
「ああ。分かっている」
フロウウェンは小さく笑った。
フロウウェンが部屋に戻ると、ルイズが難しい顔で唸っていた。
「どうした?」
「ちょっと考え事をしてたの。やっぱり、おかしいわ。うん」
言って、立ち上がる。
「水の精霊の話を覚えている?」
「ああ」
「あっさりアルビオン王家を裏切った貴族派の人達を恥知らずだと思ってたけど……『アンドバリ』の指輪の話を聞いてしまうと、誰も彼も本心からのものなのか、怪しく思えてくるわ」
「……そうだな」
それについてはフロウウェンも考えていた。ルイズなら当然気付くと思っていたが、やはり思い至っていたらしい。
「わたし、この事を王宮に報告して公表してもらおうかと思うの。フロウウェンはどう思う?」
「どう思う、とは?」
「この事を明らかにすれば、トリステインを戦火から守ることにも繋がるわ。アルビオンの王族も救えるかもしれないし」
ルイズは自分の考えを身振り手振りを交えながらフロウウェンに開帳していく。大発見をしたと少々興奮気味で、顔が紅潮していた。
「……確かにクロムウェルの求心力は落ちるだろうな。だが、王党派をそれだけで救えるとは思えない」
「どうして?」
「情報の確度の問題と、指輪の性質の問題だ。周囲の状況に流されている者もいる。『アンドバリ』の指輪の力に思い当たることがある者は貴族派の中にもいるだろう。
だが、それを口にしてクロムウェルを誹謗するには勇気がいる。殺されれば意のままに操られるならば尚更だ。『アンドバリ』の指輪は、人の命を著しく軽くする」
「そんな!」
ルイズのように言行一致を貫こうとする者の方が稀なのだ。
だが、貴族の誇りを信じているルイズにはそれが理解できない。許せない。
「この状況下なら指輪の力を知って、なお肯定する者も現れるに違いない。それから……軍人には粛々と命令に従うのが己の責務と思う者が多い。
指輪の事がトリステイン王家から公に誹謗されようと、しばらくは勢いに乗った貴族派の流れは変わらないだろうな」
「じゃあ、何もできないっていうの?」
「いや。トリステイン王家に知らせることは意味のあることだ。指輪の存在を知っているだけで、対策の立て方は随分と変わってくる。
ただ……『アンドバリ』の指輪の特性を考えるなら、それをどうやって、誰に知らせるかもまた考えておく必要がある。
貴族派がアルビオンの次に望んでいるのが、トリステインだということを忘れるな」
アルビオン王党派が既に死に体である以上、貴族派は当然その先を見据えて動いている。トリステインに間者や内通者を紛れさせている可能性は、非常に高いということだ。
或いは既に『アンドバリ』の指輪で動いている死者が混じっているかも知れない。
「そう……」
その事を言い含めると、ルイズは暫し黙考した後、口を開いた。
「姫殿下に直接……というのが良いと思うわ。姫殿下がゲルマニアからお戻り次第、王宮に行くことにする」
姫殿下というのは、トリステイン王家の先代の王の残した娘、王女アンリエッタのことだ。
トリステインの先王が亡くなり、トリステインの王族は二人。まずアンリエッタの母である大后マリアンヌ。女王に即位するでもなく、夫の喪に伏しているということで、政治に口を挟んでいない。
実質的にはアンリエッタの腹心である枢機卿マザリーニがトリステインの政治を動かしているということになる。この話を持ち込むのなら、アンリエッタかマザリーニのどちらか。或いは両方、というのが妥当な線だろう。
だが、両者とも今はトリステイン国内を留守にしている。ゲルマニアを訪問しているらしい。アルビオン貴族派の脅威を受け、トリステインとゲルマニアの利害は一致している。同盟の確約を取り付ける為の訪問だろう。
「では、オールド・オスマンに書状を認めてもらうのがよかろうな」
「そうね。ちょっと行ってくる」
言うなり、ルイズは早足で部屋を出て行った。
行動力があるのは良いことだと、フロウウェンはルイズの背中を静かに微笑んで見送った。
それから数日は何事もなく平穏な日々が過ぎた。
授業の合間でも『アンドバリ』の指輪のことが頭にあって気が急くのか、ルイズはあまり集中できていない様子だった。
放課後の座学でも、タバサへの指導の折を見てルイズに視線を移しても、物思いに耽っていることが多い。
生真面目であるが故に思考の切り替えが早くないというのは……まあルイズの年齢を考えれば致し方ないことだろう。
因みに、タバサの方はというと、フロウウェンに『フライ』と『レビテーション』を必要としない回避運動。つまりは純粋な体術を求めてきた。
魔法と体術を組み合わせた回避運動は重力や慣性に縛られず、かなりの機動力と対応力を持っている。これはタバサに目の前で実演してもらった。
その機動力にはフロウウェンも舌を巻いたほどだ。しかもそれを、ほとんど独学で研鑽したというから驚きである。
体格に恵まれない彼女は筋力で劣る。それ故、瞬発力も不足する。しかし、彼女は得た知識を以って、経験と実力を補える応用力を持っている。
それは驚くべき天賦の才と言えた。ただ、タバサの確立した戦術には一つだけ欠点があった。
事前の詠唱と精神力の消耗だ。
回避に専念することを念頭に置いて呪文を唱えなければならず、飛行中も他の呪文が唱えられない。その分攻撃にも回避にもラグが生まれるし、精神力の余力は減ることになる。
だからフロウウェンが見せた、魔法にも筋力にも頼らない体裁きの技術は攻撃と防御の両面を強化するという意味で、タバサのニーズに合ったのである。
裏を返せば、タバサは今の彼女でもまだ届かない目標を持っている、ということだ。紙一重の戦いに対応せんが為の向上心である。
年端もいかないタバサが、それほどまでして何を目指しているのか。それを想像すると、どうにも暗鬱な答えばかりが見えてきそうだった。
「病気や毒を治癒するテクニック」についても熱心な質問を受けたのだが、アンティは戦地における間に合わせという側面が強い。事実、フーケが誤飲した惚れ薬は中和できなかった。
それを聞かせると、タバサは表情にこそ出さねど、落胆した様子であった。
支援
ルイズにもカトレアという生まれつき身体の弱い姉がいるらしく、レスタやアンティやリバーサーについて根掘り葉掘り聞かれていたのだが、そうなるとタバサの身内にも病弱な者がいるのかもしれない。
それこそが動機に直結しているのかもしれない。フロウウェンは、講義に耳を傾けるタバサの後ろ姿を見やって溜息をついた。
「最強の系統は知っているかね? ミス・ツェルプストー」
教壇に立った教師が不遜な態度を隠さずに言った。
『疾風』のギトー。コルベールやシュヴルーズといった、比較的温和な教師が多いトリステイン魔法学院にあっては、かなり気難しい性格の教師といえた。
厳格という言葉は時に尊敬の意味を孕むものだが、ギトーの場合は多分に他者を見下す所がある。その為に生徒達には煙たがられているのである。
そんなギトーから指名されたキュルケは、臆することなく答える。
「『虚無』じゃないんですか?」
「伝説の話をしているわけではない。現実的な答えを聞いているんだ」
その受け答えに、キュルケは気分を害したようだった。恐らくギトーは『風』だと言わせたいのだろう。
だがキュルケはここで引くような性格をしていない。己が『火』の属性であることに誇りを持っているのだ。加えて、自信も実力も充分にある。
「『火』に決まってますわ。ミスタ・ギトー」
「ほほう。どうしてそう思うのかね?」
「すべてを燃やしつくせるのは炎と情熱。そうじゃございませんこと?」
「残念ながらそうではない。ためしにこの私に、『火』の魔法をぶつけてみたまえ」
腰に差した杖を手に、ギトーは言い放つ。キュルケは少し驚いた様子だったが、不敵な笑みを浮かべた。
「火傷じゃすみませんわよ?」
「かまわん。本気できたまえ。その有名なツェルプストーの赤毛に恥じぬようにね」
家名を出されたことでキュルケの顔から笑みが消える。
胸の谷間に差していた杖を抜き、口の中で魔法を詠唱する。
天に掲げた掌の上に真紅の球体が生まれる。そのまま詠唱を続ければ、火球は一メイルほどの大きさに膨れ上がった。
巻き込まれればただでは済まないと思ったのか、周囲の生徒達が慌てて机の下に隠れる。
手首のスナップを利かせてそれをギトーに向かって放る。その軌道に残光を残しながら、猛火は唸りを上げてギトーへと迫った。
対するギトーはそれにたじろぐ様子もなく、高らかに詠唱して杖を振るう。
瞬間、地面から巻き上がった旋風が火球を巻き上げ。一瞬にしてそれを吹き散らした後に、軌道上にいたキュルケも吹き飛ばした。
ふわり、とキュルケの体が宙に浮く。タバサの『レビテーション』であった。
「諸君、『風』が最強たる所以を教えよう。簡単だ。『風』はすべてを薙ぎ払う。『火』も『水』も『土』も、『風』の前では立つことすらかなわぬだろう」
ルイズの隣で一連の顛末を目にしていたフロウウェンだったが、その言葉を額面通りに肯定していいものか、と首を捻る。
確かに『風』は『火』を防御するのにはすこぶる相性がいい。火は酸素無しには存在し得ないからだ。
だが、フーケのような『土』が相手ならば、これは余程術者同士の力量が離れていなければ、『風』で打倒するのは難しいと思えた。
事実、フーケと同格のトライアングルであるタバサは、フーケのゴーレムに対して決定的な対抗手段を持たなかった。
対して、フロウウェンがギーシュやフーケのような土メイジを打ち破れたのは、互いの思惑と戦術が噛み合った事と、何より相性によるところが大きい。
剣の専門家たるフロウウェンに、近接戦や白兵戦で打ち勝つのは至難の技だ。人間がゴーレムになったところでそれは同じなのである。
ギーシュは術者が武術に秀でていなかったというのもあるし、フーケの巨大ゴーレムは動き自体が鈍く、これも攻撃を見切る事は容易かった。
特にフーケの場合はマグの力を見たいがばかりに、ゴーレムによる力押ししかしてこなかったというのも大きい。
もし、あの場で立ち会っていたのがキュルケやタバサだったら、或いは、初めからこちらを殺すつもりのフーケと対峙していたなら、もっと厳しい戦いを強いられただろう。
追加支援
近接戦では相手の反射行動を逆手に取ってフェイントを仕掛けたり、自分の望むように相手の動きを誘導したりするのだが、距離を置かれて視界内に全身を補足されていると、それらの技術も効力を半減させてしまう。
いくらフロウウェンの身のこなしや瞬発力が尋常ではなくとも、人間の反射神経を凌駕するような速度で動いているわけではないのだ。
であるから、フーケのゴーレムとの戦いでは瞬発力に加えて、経験からくる予測でゴーレムの攻撃を凌いでいた。
無論、フロウウェンもテクニックを使っての遠距離戦は行える。
しかし、今のキュルケの火球が彼女の本気のものであるというなら、トライアングルにして既に一端のフォースが使う火のテクニック、フォイエに匹敵する火力を秘めているようだ。
正面からの堂々と、使う魔法も放つタイミングも明白という、実戦とは程遠い約束事の中での流れとは言え、ギトーはあっさりとそれを防御し、あまつ反撃してみせた。
であるならテクニック主体の戦法でメイジを相手にするのは、これも中々厳しいものがある……と、結論するしかない。
『火』や『風』のメイジを相手に剣で渡り合おうとするならば、正面には立たぬようにすること。また離れた距離から戦闘に突入するような状況を作らないようにする必要があるだろう。
或いは被弾覚悟で防御を固めて戦闘に望む、という発想もあるのだが。
フロウウェンの文明には、瞬間的に発生する雷のテクニックや、空間の一点を指定して大爆発を起こさせる炎の上級テクニック、ラフォイエなどがある。これらは、回避すること自体が困難と言えた。
それに対抗する手段としては絶縁処理や耐熱処理などで「受ける被害を減らす」ことを前提とした装備で固めることが多い。
たが、このハルケギニアではそれら次善の策は望むべくも無い。だから、これは現実的な考えとは言えなかった。
教壇の上では尚もギトーが『風』の有用性を切々と語っている。何か実演してみせるつもりなのか、杖を立てて詠唱を始めたが、教室に飛び込んできた闖入者がいた為にその魔法は完成しなかった。
教室に入ってきたのはミスタ・コルベールだ。ロールした金髪のカツラを被り、ローブもマントも礼装用のなりだった。
「ミスタ?」
コルベールの装いを目にしたギトーが毒気をぬかれたような顔をする。
「あややや、ミスタ・ギトー。失礼しますぞ!」
「授業中です。ミスタ」
すぐに真顔に戻ってコルベールを睨むギトー。対するコルベールは咳払いを一つすると、重々しい口調で告げた。
「今日の授業はすべて中止であります!」
その言葉に生徒達から歓声があがる。それを押さえるかのように両手を広げ、もったいぶった様子でコルベールは口を開く。
「えー、皆さんにお知らせですぞ」
コルベールが仰け反った拍子に、金髪のカツラがずれて床に落ちた。生徒達の間からくすくすと笑い声が漏れる。
タバサがそれを指差してぽつりと呟く。
「滑りやすい」
教室中が爆笑の渦に包まれた。見ればギトーまでもが口元に手をやって肩を震わせている。
「ええい! 黙りなさいこわっぱどもが! 大口を開けて下品に笑うとは貴族にあるまじき行い! 貴族はおかしいときは下を向いてこっそりと笑うものです! これでは王室に教育の成果が疑われる!」
コルベールが怒鳴ると、それでどうにか教室が落ち着きを取り戻す。
再度咳払いをして、コルベールは言葉を続けた。
「今日はトリステイン魔法学院にとってよき日であります。始祖ブリミルの降臨祭に並ぶ、めでたき日であります。
恐れ多くも先の陛下の忘れ形見、我らがトリステインがハルケギニアに誇る可憐なる一輪の花、アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、この魔法学院に行幸なされます」
その報せに教室中にざわめきが広がる。ルイズは思わずフロウウェンの顔を見やっていた。
魔法学院へ続く街道を馬車が静かに進んでいた。
馬車の窓はレースのカーテンが引かれており、中の様子は伺えない。
車体には金と銀、白金で作られた緻密な細工のレリーフが施されている。水晶の杖と、角を持つ馬―――聖獣ユニコーンを模ったものだ。その馬車が王女のものであるということを示すものであった。
車体を引くのもまた、ユニコーンである。清らかな乙女のみに心を許すとされるその聖獣ならば、なるほど王女の馬車馬に相応しかろう。
その王女の馬車の後ろに続くのは、マザリーニ枢機卿の馬車である。王女のそれに負けず劣らずの風格と威容を見せ付け、トリステインの内政と外交を一手に引き受け、実権を握る彼に相応しいものであった。
周囲を固めるのは王室直属の近衛隊である魔法衛士隊だ。
名門貴族の子弟、しかもいずれも劣らぬ実力を備えたエリート中のエリートである。彼らの代名詞ともいえる漆黒のマントを身に纏い、幻獣に跨って、堂々たる威風を漂わせている。
街道には色とりどりの花々が咲き誇り、王女の行進をいっそう華やかに飾っていた。
そんな幻想的でありながらも荘厳な光景に当てられたのか、王女を一目見ようと街道に並んだ平民達が歓喜の声を上げる。
「トリステイン万歳! アンリエッタ姫殿下万歳!」
そんな平民の歓声に応えるように、馬車の窓のカーテンが開いて、そこに見目麗しい美貌が覗く。肩ほどまで伸ばした、艶やかな栗色の髪が小さく揺れた。
薄い青の双眸。定規で引いたように真っ直ぐで高い鼻。桜色に濡れた質感の唇。新雪のように透き通る白い肌の上に、奇跡的な均衡を保ってそれらが配置されていた。
その、美貌が―――優雅な笑みを投げかける。
花が零れるような笑みだった。喚声が一際高くなる。
そんな美貌を窺い見ることができた者は幸運だったに違いない。ほんの数分で、馬車のカーテンはまた閉じられてしまったからだ。
そうして、その馬車の主であるアンリエッタは小さく、ほう……とため息をついた。高級で繊細な美術品にも似た指先が、落ち着きなく水晶のついた杖を弄んでいる。
その表情は……それでも見るものを魅了してやまない魅力と気品に溢れていたが、どうにも浮かないものだった。王女は深い悩みの中にあったのである。
だが仕えるべき主がそんな調子では困るのが隣に座ったマザリーニ枢機卿である。
政治の話をする為に王女の馬車で移っていたのだが、どうもアンリエッタは他のことで頭がいっぱいで、自分の話にしかと耳を傾けているようには見えない。
「これで十三回目ですぞ。殿下」
「何がですの?」
「ため息です。王族たるもの、臣下の前で弱みなどお見せになさらぬように」
「王族ですって! まあ!」
アンリエッタは大仰に驚いて見せた。
「このトリステインの王さまはあなたでしょう? 枢機卿。今、街で流行っている小唄はご存知かしら?」
「存じませんな」
マザリーニは興味無さげに嘯いた。本当は知っているのだが、面白いものでもないからとぼけてみせたのだ。
「それなら聞かせてさしあげますわ。トリステインの王家には美貌はあっても杖が無い。杖を握るは枢機卿。灰色帽子の鳥の骨……」
王女の機嫌はかなり悪いようだ。自分の献じた策がどうにも気に入らないらしかった。理屈の上では納得していても、それに感情が追いついていない、というところか。
「街女が歌うような小唄など口にしてはなりませぬ」
自分がその不満の矢面に立つ程度で辛抱してくれるのなら安いものかとマザリーニは思ったものの、やはりそれはそれ。主の無作法を嗜めることにしたらしい。
「いいじゃないの。小唄ぐらい。わたくしはあなたの言いつけ通り、ゲルマニアの皇帝に嫁ぐのですから」
ゲルマニアはトリステインに比して歴史の新しい国だ。金と能力があれば平民でも貴族となれるその在り方は、他国の貴族からはしばしば野蛮だと揶揄される。
その国の皇帝アルブレヒト三世は四十代の男である。政敵をかなり乱暴なやり口で退けて王座に座ったという経緯もあり、アンリエッタの隣に並べるには如何にも不釣合いだろうと思えた。
だが、そんなゲルマニアの皇帝にアンリエッタが嫁がなければトリステインは立ち行かない。
そんな現実が、アンリエッタの自尊心と、彼女の持つトリステインという国そのものに対する矜持。その双方に浅からぬ傷をつけている。
だがそれらのことは今のアンリエッタにとっては二の次であった。
マザリーニも知らぬことではあるが、彼女には密かに恋焦がれる相手がいる。
彼の身の安否と、彼が所有する恋文がアンリエッタを最も思い悩ませている事案である。それを知ればマザリーニも己の献策が水泡に帰すかも知れぬと顔色を変えただろう。
が、知らない内はアンリエッタの苦悩に対しても、年頃の娘の我侭程度にしか思ってはいない。
「しかたがありませぬ。目下、ゲルマニアとの同盟こそトリステインにとっての急務なのですから」
マザリーニの言葉に、アンリエッタは柳眉を逆立てた。
アルビオン王家に反旗を翻した貴族派は、自らをレコン・キスタと名乗り、ハルケギニアの統一と、エルフ達からの聖地の奪還を謳っている。
飛ぶ鳥を落とす勢いの貴族派に対して、小国トリステインが独力で当たるのは得策ではない。例え退けられたとしてもどれだけ国を疲弊させるか分かったものではないのだ。
だからこそ、侵攻を事前に抑止し、更に言うならばアルビオン貴族派を打倒する為に、ゲルマニアやガリアとの軍事的な連携が必要だった。
だが、大国ガリアは利害は一致しているはずなのに、こちらの打診に対して腰を上げる気配を見せない。であるなら、アルビオン、トリステインの次に貴族派が矛を向けるであろうゲルマニアと結ぶ他は無いのである。
それらのことをマザリーニがアンリエッタに言い含めるが、それでも彼女はため息をつくばかりであった。
マザリーニは馬車のカーテンを開く。それを目ざとく見止めた精悍な顔つきの男が、自らの騎乗するグリフォンを馬車へと近付ける。
「お呼びでございますか。猊下」
―――ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵。『閃光』の二つ名を持つ『風』のスクウェアメイジだ。
栄えある魔法衛士隊の一翼を担うグリフォン隊の隊長でもあり、マザリーニも一目置いている。機知に富み、武勇に優れ、行く行くはトリステインを支えていってくれるであろう、将来有望な若者である。
「ワルド君。陛下のご機嫌がうるわしゅうない。何かお気晴らしになるものを見つけてきてくれないかね?」
「かしこまりました」
ワルドはすぐに目当てのものを見つけてきた。街道に咲いていた花がつむじ風で舞い上げられ、彼の手元に運ばれてくる。
それを枢機卿の手に渡そうとしたが、マザリーニは言う。
「おん手ずから殿下が受け取ってくださるそうだ」
「光栄でございます」
ワルドが馬車の反対側に回ると、するするとカーテンが開いて、アンリエッタが手を伸ばした。花を手渡すと、今度は左手が差し出される。 彼は感激した面持ちを浮かべるとその手を取って、口付けた。
アンリエッタが物憂げな声で問う。
「お名前は?」
「殿下をお守りする魔法衛士隊、グリフォン隊隊長ワルド子爵でございます」
恭しく頭を下げてワルドは答えた。
さらに支援
「あなたは貴族の鑑のように立派でございますわね」
「殿下のいやしきしもべに過ぎませぬ」
「最近はそのような物言いをする貴族も減りました。祖父が生きていた頃は……ああ! あの偉大なるフィリップ三世の治下には、貴族は押しなべてそのような態度を示したものですわ!」
「悲しい時代になったものです。殿下」
「あなたの忠誠には期待してよろしいのでしょうか? もしわたくしが困った時には……」
「そのような際には、戦の最中であろうが、空の上だろうが、何をおいても駆けつける所存でございます」
実に理想的な受け答えであった。それに満足したアンリエッタが頷くと、ワルドは馬車から離れていく。
「あの貴族は、使えるのですか?」
「ワルド子爵。二つ名は『閃光』。かのものに匹敵する者は、『白の国』アルビオンにもそうそうおりますまい」
「ワルド……聞いた事のある地名ですわ」
「確か、ラ・ヴァリエール公爵家の近くだったと存じます」
「ラ・ヴァリエール?」
ヴァリエール公爵家なら、アンリエッタも良く知っていた。ラ・ヴァリエールの領地に逗留したこともある。そうだ。トリステイン魔法学院にはその三女であるルイズが在籍していたはずだ。
彼女はアンリエッタが幼少の頃、自分の遊び相手を務めたこともある。
暫く会っていないがルイズはどんな淑女に育ったのだろうか。
「そうそう。申し遅れておりました。ヴァリエール家といえば、魔法学院に通う公爵家の令嬢が殿下へのお目通りを願っていると、先だって報告がありましたぞ」
「ルイズがわたくしに? 一体何の用で?」
「用件までは存じておりませぬ。オスマン師の書状が送られてきているとしか」
何だろう。ただ会って旧交を温めようというわけではあるまい。揺籃の友の用件とやらにアンリエッタはあれこれと思いを巡らせたが、皆目見当も付かなかった。
ただ……向こうが面会を望むというのなら、断る理由はあるまい。自分は、心許せる友が欲しかった。最近は思い悩むことや疲れることばかりだ。
魔法学院の門をくぐって王女の一行が現れると、整列した生徒達が一斉に杖を掲げる。示し合わせたかのような見事なタイミングで、衣擦れの音と、杖を掲げる小気味良い音が重なった。
普段の学院での彼らの様子はフロウウェンの目から見ても歳相応の子供らしさも目立つのだが、こういう時はさすがは名門貴族の子弟と思わせる。
正門をくぐった先の本塔で王女を迎えるのは学院長のオールド・オスマンだ。
馬車が止まると召使達がてきぱきと駆け寄ってきて、馬車の扉の前に絨毯を敷き詰める。
呼び出しの衛士の声も幾分か上擦っている。衛士の緊張の様子が手に取るようだ。
「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおなーーーーーりーーーーーーーーーー!」
しかし、扉が開いて現れたのは痩せぎすの白髪、白髭の男だった。
生徒達の間から小さく落胆の声が上がる。その中に、「何だ。鳥の骨かよ」というぼやきをフロウウェンは耳にした。
(では、あれが枢機卿マザリーニか)
まだ四十代という話だが、随分と磨耗している。そんな印象をフロウウェンに与えた。
鳥の骨という表現は正鵠を得ているとは思うが、あのやつれ方は長期に渡る激務と心労によるものだろう。ロマリア出身とあってトリステインでの評判はあまり芳しくないようだが、ああいった人物は経験上、信用していい者が多い。
彼を中傷する小唄が庶民の間で流行っている。それを許す程度には広い度量も持っていて、民の自由を許容していることになろう。
やつれるというのは、実質的にトリステインの最高権力者でありながら、私腹を肥やすでもなく真摯にまつりごとを行っているということの証明だ。
事実、トリステインは可もなく不可もなくといった調子で、国内の情勢は安定している。マザリーニが誠実かつ堅実な男だということだ。見上げた男ではないか、とフロウウェンは感心した。
そんな男が謗りを受けるというのは、半分以上は嫉みや妬みというものだ。余所者が王女や大后を差し置いて政治を動かすとは分を弁えておらぬ、と考える者もいるのだろう。
枢機卿に手を引かれて、王女がその姿を現すと、一際歓声が高くなる。年の頃は十六、七というところか。
確かに、評判通り見目麗しい王女であった。
その貴族達の上げる歓声からも、彼女のトリステイン貴族からの人気が高いことが伺い知れる。
フロウウェンの弟子のリコ・タイレルもトップクラスの実力を持つハンターでありながら、美貌を兼ね備えた少女であった。軍の英雄ヒースクリフ・フロウウェンの愛弟子ということも手伝って、レッドリング・リコなどと呼ばれて大層な人気があったものだ。
象徴的存在に容姿というものが伴っていれば、それはカリスマとなり得る。王族として得をしているとも言えるが、一方で諸刃の剣でもあるのだ。
リコの場合は一介のハンター稼業でありながら分不相応な扱いを受けることに、矜持を傷つけられるようであった。
また、総督府の高官コリン・タイレルの娘が民衆やハンターズ達の間でアイドル的扱いをされているということで、自分の意思とは無関係に、行動が政治的な利用をされてしまうということにも常々悩んでいた。
アンリエッタとて、若い身空で政治という舞台に投げ込まれている。あの華やかな笑顔の裏には生半ではない苦労もあるのだろう。
自分で選んだ道ならばそれでも良い。だが貴族、王族というのは否応も是非も無い。
それは幸か、不幸か。決められるのは本人だけだ。生きる事に不自由はしないのに、そう生まれついたというだけで、その道は他の誰よりも雁字搦めであることは確かだ。
ままならないものだなと、フロウウェンはマザリーニとアンリエッタを見ながら目を細めた。
王女は今晩、魔法学院に逗留するとのことだ。
ルイズにしてみれば願っても無い好機到来である。オスマンに話を付けてもらえば今日明日中にでもアンリエッタとの面会が叶うかもしれない。
自室でそんなことをフロウウェンと話していると、ドアがノックされた。長い間隔を空けて二回。短く三回。
ルイズが扉を開くと、真っ黒な頭巾を目深に被った人物が立っていた。
身体もすっぽりと漆黒のマントで覆っていて、その出で立ちは魔法学院襲撃の折のフーケを連想させるが、目の前の人物はフーケよりも一回り小柄で、そこから判断すればマントの中身は細身の少年か、或いは華奢な少女の体格だ。
「……あなたは?」
虚を突かれたような表情で、ルイズは首を傾げた。
口元に指を立てルイズに沈黙を促すと、辺りを窺いながら部屋の中へ身体を滑り込ませる。マントの隙間から杖を取り出し、短くルーンを唱えた。
「……ディティクトマジック?」
部屋に舞った光の粉を見て、ルイズが訝しむ。黒ローブは小さく頷いた。
「どこに、誰の耳や目が光っているか分かりませんからね」
それは涼やかな女の声だった。
ルイズの部屋に何ら魔法的な仕掛けがないことを確かめると、黒ローブはその頭巾を取った。
「姫殿下!?」
それは果たして昼間見たアンリエッタ王女、その人であった。ルイズが慌てて膝を付き、フロウウェンがそれに倣う。
「お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ」
オスマンの手引きだろうか、とルイズは逡巡するも、すぐに畏まった声で言った。
「姫殿下、いけません。このような下賎な場所へお越しになられるなんて」
「そんな堅苦しい行儀は止めてちょうだい。あなたとわたくしはおともだちじゃないの」
アンリエッタは跪いたルイズの肩をそっと抱く。
「もったいないお言葉でございます。姫殿下」
「ルイズ。ここには枢機卿も宮廷貴族もいないのですよ。昔馴染みのあなたにまでよそよそしい態度を取られたら、もうわたくしが心許せる者はいなくなってしまうわ」
「……姫殿下」
「幼い頃、一緒になって宮廷の中庭で蝶を追いかけたじゃないの。泥だらけになって」
その言葉にルイズははにかんだような笑みを浮かべる。記憶の底に沈んでいた思い出の数々が蘇ってくる。
あの頃はただ無邪気で、今にして思えば有り得ない、幼子でなければ許されない振る舞いをしていたものだ。
アンリエッタはもっとくだけて欲しいというが、一足飛びにあの頃と同じように、というわけにもいかない。
二人は暫し過ぎ去った日々の思い出話に花を咲かせ、それから、声を揃えて笑い合った。
公爵というのは王家にごく近しい親戚筋にのみ与えられる爵位だ。どうもルイズはその繋がりから、幼少の頃のアンリエッタ王女の遊び相手であったらしい。
ついでに……フロウウェンが思っていたよりも、二人ともお転婆だったようだ。
「感激です。姫さまがそんな昔のことを覚えてくださってるなんて……。わたしのことなど、とっくにお忘れになったかと思いました」
「忘れるわけないじゃない。あの頃は毎日が楽しかったわ。なんにも悩みがなくって」
アンリエッタはベッドに腰掛けると、小さくため息をつく。
「姫さま?」
「あなたが羨ましいわ。自由って素敵ね」
「何をおっしゃいます。あなたはお姫様じゃない」
「王国に生まれた姫なんて、籠の鳥同然。飼い主の機嫌一つであっちへ行ったり、こっちへ行ったり……」
悲しげな笑みを浮かべる。
「結婚するのよ、わたくし」
「それは……おめでとうございます」
ルイズは言葉とは裏腹に、沈んだ声で答えた。
大貴族の娘として生まれたルイズはすぐに察することができた。政略結婚という奴だ。
別段珍しい話ではない。自分とて、どこまで父や相手が本気かは判らないがれっきとした婚約者がいる。
ルイズの場合は、政略結婚などというような類のものではないし、婚約を露骨に嫌がるような相手ではない。
恋心を抱いているというわけではないが、幼さ故に物語の中の王子に憧れるような目で婚約者を見た時期が、確かにあった。
昼間の魔法衛士隊の中に件の婚約者の姿を認めたが、それはもう威風堂々とした出で立ちであった。ヴァリエールの婚約者として、申し分のない相手であろう。
ただ、長女のエレオノールがおらず、ヴァリエール家の力に翳りがあれば、家の為に見ず知らずの貴族に嫁がされる可能性もあったかもしれない。
そういう意味では、アンリエッタの悲しみは容易に想像がつくのだ。
……因みに、姉の結婚に暗雲が立ち込めているという事実を、現時点でのルイズが知る由もない。
アンリエッタは、ルイズの背後に控えるフロウウェンを一瞥する。
立派な白い口髭をたくわえた、威厳のある顔つきの老人だ。
使用人だろうか、とアンリエッタは思ったが、どうも見慣れない服装をしていた。貫禄のある姿は一角の人物にも見える。
「ルイズ。その方は?」
「彼はわたしの使い魔です」
「使い魔? 人にしか見えませんが」
「人です。姫さま」
「お初にお目にかかります。姫殿下。ヒースクリフ・フロウウェンと申します」
老人は名乗り一礼する。落ち着いた声であった。
「あなたって、昔から変わっていたけど、相変わらずね」
アンリエッタは小さく笑った。少し気恥ずかしそうに、ルイズは頬を赤らめる。
「ああ、懐かしさにかまけて忘れるところでした。聞けば、ルイズはわたくしとの面会を望んでいたとか」
「そうでした、姫さま。アルビオンの貴族派のことで、どうしても姫さまのお耳に入れたいことが」
「アルビオン……」
アンリエッタの表情が暗く沈む。道すがらの馬車の中で、散々アンリエッタの頭を悩ませてきた事案だった。
「姫さま。『アンドバリ』の指輪というマジックアイテムをご存知でしょうか?」
これで10話目投下終了です。
支援でござる!
お疲れ様そしておやすみなさい
>>95 亀だけど。
中の人は例の5人組(ペンギン、ガンダム、弁護士?裁判官、注射器、半魚人)ですか?
>>121 使い魔、佐藤大輔二佐が借金で首の回らなくなったメイジを集めて
トリステインの国益と国民保護のための非合法部隊を作るのか
社長読んでたときにふと、社長の目から見るとワルドはブルーサンダーか
ビックバイパー+オプションみたいなもんなんだろうなと思うとほんのりとワルドが哀れになってきた
本体が倒されると偏在もなくなるってあたりがそっくりだ
モルガンの通常味噌8か
散弾味噌あるから火力は圧倒的だけど補給出来ないのが痛いな
あとECMなんて何に使うんだ
ともかく乙
>>247 わんこ隊長は外見だけでも当たりだろうけど強すぎる
ゼロ魔世界で勝てるキャラはいるのだろうか
あ、ありのままに起こったことを話すぜ。
「朝起きたらものすごく投下されていた」
何をry
ベルセルク乙です
お待ちしておりました
m(__)m
哀れギーシュwパックの奴隷にwww
ガッツかっこいいよガッツ
次回にwktk
メイド乙
なんて平和な学院w
シャーリー可愛いよシャーリー(*´∀`*)ハァハァ
鋼乙
姉様可愛いよ姉様
続きに期待。
フロウウェンの人乙です。
おマチさん怖いよおマチさん
アルビオン編にwktkしつつ全裸待機してます。
ちとアンケートお願いします。
ストーリーの都合上、非常に重要な理由があって
12巻程度のエロシーンを入れたいのですが、ここではOKでしょうか?
それと、そこにタバサを入れるべきかどうかで悩んでいます。需要ありますか?
/ , \
/ / ,' ヽ :ヽ
,' / ,イ /|| :i ::`、
i ,' ,〃_〃 | || ::::| ::::l
| ! /_〃 `ゞ !:: ..::::ノ ::::::|
| {〈|{::::::}T |i::::rく| ::j:::i|
| ,': `、`、゚ー' ,ィ::ャ、jノ::::jj
レ ⌒ ヽ、ヽ ゞノ シ::::::::::|
,/ ヽ `、 rァ /:::::::::::::l そこに山があるからさ
/ Vハ , ィ〔∧ :::::::|
/ />ァァT〔 ノjノ ヽ ∧!
/ 、< \ |´ リ
. / , '´ ヽ}
/ , イ ト、
/ , '´ ! j. `、
! イ´ l / ! byジョージ・マロリー
. l ! | j
、 l j /
` l / } |
` ! / / |
`、 l | / |
ヽ l / l
`、 V j
、 `、 ,'
〉、 ヽ ' /
/ノ l ,' /
' { { { 八
{ ゝ ,r-ソ-、_ `、 f |/7ヽ
|/乙.ィノ` ‐- 、_ ̄`'-、ノ V/ }
レ'´ `''ーヽ`ィハゝン
i `{ /|
ヽ `r' !
シャーリー乙です
>護るべき存在というのは、人間を変えるのだ。
いい言葉だなー。使い魔を守る主人だと役割が逆転しちゃってるがw
OKです。超期待して全裸待機してます
(*´∀`*)ハァハァ
>>285 OK
12巻程度と聞いてラノベ換算で12冊に渡る超大なエロシーンを書くのかと勘違いした俺
>>285 エロと半裸で血+の宮城リクを思い出してしまった件
……32話でディーヴァに迫られた時点で召喚したら大活躍できるじゃん!!
食事は基本的にいらないし怪我はすぐ治るし日光平気だし(再生後は血を飲む必要があるけど飲まれても伝染らないし)。
幸か不幸か、いてもいなくても大して変わらんのだから(我ながらヒデェ……が、事実である)
ルイズに召喚された方が幸せになれるわこりゃ。子供は出来ないけども。
AAはると無駄にKb食うからやめておきましょう。
Dソードベガとデルフリンガーの二刀流か
銀河一刀流だからどっちかのみ?
あとデカベースがないとデカレンって変身出来ないんじゃなかったっけ
>>285 あなたが誰かによる……って言っちゃいけないんだろうな
>もふもふ
狂乱家族の帝架
>>285 エロシーンにタバサが乱入して3P突入ってのも凄いな……
イザベラとコースケか?
なんとなくだが
>>291 特キョウ以外は基地が必要だけど、その辺りはゲート通過時に魔法の力で解決できるかも?
>>285 その辺が気になるんだったら避難所へ。
それが一番後腐れないよ。
30分ごろから第六話の投下をしたいと思います。
よろしくお願いします。
>285
かまわないと思いますが、とりあえず投下する際は避難所の方にした方がよろしいかと
>297
支援だ!
ゲーッ!もふもふした使い魔!
さらにエロシーンになってしかもタバサが乱入して3P突入
そして児童福祉法違反でデカマスターに逮捕される支援
ケケッー、支援だ
では次から投下を始めます。
第六話 食堂の変
昼、掃除の終わったルイズとベルモンドは食堂へ来ていた。
しかし食事をするルイズとは別にベルモンドはふらふらと歩きまわり、その中に見知った顔を見つけていた。
「遊ぼ、遊ぼ」
「あの、ごめんなさい、ベルモンドさん。気持ちは嬉しいけど今お仕事中なの」
話しかけられたシエスタは配膳中のトレーを示してこたえる。
「うーん、じゃあボクも手伝うよ」
「え、そんな悪いですよ。朝も洗濯もの持っていただいたのに」
「でも今日の朝、シエスタは洗濯場の場所を教えてくれたし洗うのもやってくれたよね。
ボクはまだ一つしか返してないんだから気にしないでいいよ」
そう言われると断りにくい。
加えてこのクマちゃんと入れるということもあって、結局シエスタはベルモンドに手伝ってもらうことにした。
ロビン一門の演技力は異常
「キャー、かわいーー」
食堂に歓声が上がる。その中心にいるのはベルモンドだった。
ベルモンドは手伝いとして食後のデザートのケーキを配っていた。
ケーキを配るクマちゃん、その可愛らしい仕草が女生徒たちに受けていた。
授業の時とは違い、今回はルイズを馬鹿にするような声もないためひたすらベルモンドへの歓声のみが響いている。
それを快く思わないものもいた。
ギーシュである。
このクマが来てからというものすっかり自分は見向きもされなくなってしまった。
ケティもモンモランシーもほかの女の子たちもみんなあのクマ野郎を見ている。
ギーシュの(逆恨みな)怒りはどんどん膨れ上がっていった。
そして、
「あの、落されましたよ」
この一言が彼の怒りの引き金を引くことになった。
モンモランシーの香水の小瓶が見つかったことから二股がばれ、その結果少女たちに攻め立てられる。
だが、それだけではなかった。
「ギーシュ、あなたなんかよりルイズの使い魔のクマちゃんのほうがずっといいわ!」
そのあとにもいろいろ言われた揚句しまいにはぶたれてしまったがそんな中でもギーシュの脳裏にはその言葉が響いていた。
僕が、このグラモン家のこの僕があんな畜生以下……
ギーシュの中で何かが切れた。
そしてその怒りは一連の流れの引き金を引いたシエスタに向けられた。
「おい!そこのおまえ!お前のせいでレディが傷ついた揚句この僕が罵倒されたんだぞ!
たかが平民の分際で何様のつもりだ貴様!いったいどう責任を取るつもりなんだね!!」
怒りのあまり普段の気障な態度も消えものすごい剣幕でつかみかかり、
あまつさえ平民とはいえ女性に対して貴様、と言い放つ。
シエスタは哀れにも全身が震え涙を浮かべていた。
謝り許しを乞おうにもうまく口も回らない。
シエスタは今まさに、死の恐怖を感じていた。
だが、そうしてシエスタに絡むギーシュの肩をつかむ者がいた。
「ねえ、もうやめなよ。このことは君のほうが悪いよ」
ベルモンドである。
そうだ、こいつだ。そもそもこいつが僕から彼女たちの心を奪っていったんだ。
もともとの怒りのほこ先であるベルモンドが現れたことでギーシュはあっさりとシエスタから顔を離しベルモンドへとつかみ掛かった。
「ああ、なんだこのクマ野郎め、畜生の分際でこの僕に意見しようというのかい!?
さすがケダモノだけあってまともな脳みそも持ち合わせていないようだな!」
この暴言を聞いてまわりの女生徒から非難の声が上がる。
「何言ってるのよ、サイテー!」
「クマちゃんに謝って!」
だがそのような声もギーシュを止めることはなく逆にヒートアップさせていく。
スクリュードライバー支援!
「うるさい黙れ!大体こんな布と綿の塊の何がいいって言うんだ!
それにクマ野郎、あんな平民に何か言ったところで僕の何が悪いって言うんだ!
たかが平民だぞ!僕ら貴族の足元に群がるようなやつらに対して礼儀でも尽くせっていうのかい!?」
「……ええと、貴族とかそういうのは関係なしに偉い人っていうのは立派だから偉いと思うんだ。
いい事をしていけばそれでひとは偉いと認めてくれる。
すごい王様とか立派な侯爵とかみんなが話してくれるような本当に偉い人っていうのはそういう人だと思うんだ。
君は貴族っていうことで威張ってるだけだよ。
もっと、貴族の名にふさわしい生き方をしないと本当に立派な貴族にはなれないよ」
このときベルモンドの脳裏にはある一人の超人が浮かんでいた。
強く、勇敢で、友のために率先して前に出て戦った男。
弱きを助け強きをくじく、それを体現したもの。
アイドル超人軍のリーダー的存在。
自分に多くのものを与えてくれた師匠。
その立派な生きざまは正に仮面(ペルソナ)の貴公子、と称されるにふさわしい。
皆に尊敬される紳士超人。
彼を思うと、シエスタを守るだけでなく、
どうしてもギーシュに真の立派さについて語らずにはいられなかった。
……彼が時たま奇行に走り仮面(ペルソナ)の奇行子と化していたことは無視した。
奇行士w
だが、そんなベルモンドの言葉もヒートアップしたギーシュには届かなかった。
「なんだ、クマごときが貴族のなんたるかを語るなんて何様のつもりだい。
ああ、さすがゼロのルイズが召喚しただけあるなあ。
魔法も使えないゼロに畜生のクマ野郎、どっちも口だけはえらそうなとこが同じってわけか。
いいだろう、しょせんは低能なクマには言葉じゃなく体に分からせてやるしかないようだね!」
「どうしようっていうの?」
ベルモンドが問いかける。
それに対し、ギーシュは、
言ってはならないことを口にしてしまった。
「決闘だ!!」
「……くうーん?」
チッ! ウォーズマンのウスノロめ!
これで奴との師弟関係も御破算だ!
by超人オリンピック終了後の紳士超人
しえん
しえん!
ええと、どうしてそれで決闘になるの?」
「はは、きまってるダろう、言ってもわからない貴様に礼儀を教えて泣いて謝らせてやろうって言うのさ。
散々無礼な口をたたいたことを後悔させてやるよ。
ああ、もちろんいまサラ謝っても無駄だ。ボロ屑にしてやる」
「そんな、力ずくなんて立派な貴族のすることじゃないよ」
「なんだい、おじけずいたのかい?大体僕らは魔法が使える。
脳なしの平民の上に立つのは当然じゃないか!」
「……わかったよ、決闘を受けるよ。
でも約束してもらう、ボクが勝ったら君にシエスタ、絡まれたメイドの子と
君に馬鹿にされたルイズに謝るんだ。
それに君が二股をかけた女の子たちにも。
強いほうが偉いって言うのならかまわないよね」
「はははっ、大きく出たな!しょせんはクマか。いいだろう乗ってやるよ!
じゃあヴェストリの広場に来たまえ、そこで礼儀を教えてやるよ!」
そう言ってギーシュは去って行った。先に広場へ向かったのだろう。
支援
それと入れ替わりにルイズとシエスタがやってくる。
「あんた、なに勝手なことしてんのよ、自分が何したかわかってんの!?」
「そうです、貴族の方と決闘なんて殺されちゃいます!もともと悪いのは私なんですからそんなことしないでください」
「そんなことないよ、シエスタは悪くない。力をかさに着るなんて見過ごせないよ。
それにギーシュはルイズも馬鹿にした。あんなに頑張ってるルイズを馬鹿にするなんて許せない。
ボク、怒ってるんだ」
「え、私のため…で、でもだからって相手はメイジなのよ!
ぬいぐるみのあんたがどうこうできる相手じゃ!」
「大丈夫だよ、昨日も言ったけどボク、強いんだ」
そのままベルモンドは二人に背を向け、ギーシュの向かった方へと自分も向かっていったのだった。
次回、青銅の人形とクマちゃんが激突する!
第七話 ヘルズ・ベアー へと続く。
以上で投下を終了します。
次回いよいよ決闘です。つまり、そういうことです。
最近忙しいのでいつになるかわかりませんが、では。
絶対ギーシュトラウマになるぞw
出るかパロスペシャル
乙でした!
今はただオーバーボディが無くならない事を祈ります
熊といえばMtLの人の灰色熊
あれの再来かはてさて
そして文だけ追っていったら熊のぷーさんが浮かんできた
熊の爪の人、投下乙です
次回、中の人登場なるか!?w
ヤバい
ギーシュの命もだけど大多数の女子と可愛いもの好きな男子の心にトラウマが
……斬撃とかのやぶれそうなのは使うなよギーシュ。ワルキューレでぶん殴るだけでありますように……
脳みそえぐられるよかパロスペシャルのほうがずっとマシだが……
熊の爪の使い魔だからギーシュ植物人間化は避けられんか
クマちゃん状態でウォーズマンスマイル出せたっけ?
これはギーシュの側頭部に穴が4つほど空くフラグと見ていいんだろうか
>285
タバサも入れる?
むしろタバサメインで頼む!
熊の爪、さすがにギーシュを再起不能にはしないんじゃ?
したら謝らせることができないしね
先の展開にこんなにハラハラするSSは久しぶりだ。
いつガワが無くなるかと思うとw
熊の爪乙です。
ギーシュよ…悪いことは言わん刃物だけはよせ。死ぬぞw
次回にwktk
次回が別の意味でハラハラしそうだw
オーバーボディを脱ぎ去った中の人にルイズはどんな反応を示すのやら
ベッドで一夜を共にしているわけだし
>モフモフ
ドギーやユージーンはまだあれだが、狛村ワンコだけ突出しすぎているのが難しいな
しかしソウルソサエティの住人が見えるかどうかがまた問題な希ガス
タバサか。なんか俺も急にエロシーンを入れたくなったな。
構成上は…可能か。
作家ぶらなくていいから
>>328 宜しくお願いします。ただスンゴイのは避難所に宜しく。
どうせ書かないクセに…。
よしルイズがぼいんぼいんに爆乳化する話を
…夢落ちしか思いつかねぇ
>>332 小ネタであったぞ。まほろまてぃっくのヤツ
つもしもBOX
ドラえもんが必要なほどルイズの貧乳は世界の真理なのかYO!?
ルイズがもしもBOXつかうと、無乳こそが美の真理な世界に常識が書き変わってそうだなw
書き換わるも何も、無乳こそが美の真理だと思うのだが?
醜い肉塊ぶら下げて男からも相手にされないキュルケを嘲て貶めるルイズですね。
MtLの人は……アラーラの断片が発売されたから、今は忙しいのかな。
ルイズ並にロリロリになったキュルケをムチムチルイズが馬鹿にするのも中々いいと思う
>>336,340
どっちにしろ最大のライバルはタバサなわけか……
>>339 デッキ構築には時間かかるしなぁ
そういやげーむぎゃざももうないんだっけか
ナイスバディでも性格悪すぎて男が寄り付かない巨乳ルイズ
見た目犯罪臭いけど同意の上だから大丈夫!そっち趣味の男子に大人気(性的な意味で)のロリキュルケ
ほら問題ない
ロリ以外のツルペタてことで、あの場面からC.C.召喚
>>340 それ何てオニデレ?
あれからの召喚は無理っぽいなぁ…。
触手なルイズがバストサイズ変幻自在の術を使ってたじゃないか。あれって続きどうなってんの?
あれよりエロくなるならタバサでもデコでもなんでもこいw
まぁ江戸時代は巨乳=デブで貧乳マンセーだった様だから、江戸時代の人を召喚すれば面白いかも。
>344
ルイズにギアスはまずい
ルルーシュだと
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる」
だけどルイズだと
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが命じる」
になるんだぜ。
いつ舌を噛むかわからないという驚異的なリスクが生じる
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラ……」
「るいふゅ・ふらんそはーす・る・ふらん・ど・ら・ふぁりえーるがめいひる!」
なんて感じになるルイズを想像して萌えた
・・・ああ、災いのタバサの続きが読みたい
>>348 別に名前言わなきゃ発動しないわけでもないけど、そういうなら別の効果を持つギアスを渡すべきか
えーと、えーと、貧乳が魅力的に見えるギアs(ry
【結局乳から離れられない】
新刊読んだ
これはロマリアがタバサ砲で壊滅フラグってことでOK?
本当に犬(もしくは犬っぽいもの)召喚
つーか極端に小型じゃなければ動物ならルイズは満足しそうだ
しかしドラゴンやワイバーンなどのいかにも幻獣ってのを期待してたようだが
まぁ、どちらにしろ初めて魔法がまともに成功した事が嬉しくない訳がないだろうけど
犬っていうと犬と書いて自らを「人間」と呼ぶあの犬たちのことか?
ドギー・クルーガーは犬なのだろうか
亜人っぽいけど
大神とかいいんじゃない?
犬っぽいものか、ヤムチャさまだな。
>>354 動物か…ワイルドハーフからならガンダ付けてもいけそうだなー。あとネギま!からカモ君とか。
犬召喚なら既にジョジョの方でバオー犬が・・・
どうでもいいけどバオー犬ってばおーいぬって読むのか?ばおーけんって読むのか?
後者だと何だか史上最強の超能力者ウォーケンのパクリみたいな響きだなw
>>355 ドラゴンか、風間竜一だな。
ギーシュとの一対一を止めるルイズに、笑いながら「ゴチャゴチャうるせぇっ!邪魔するな!!」とか言うんだな。
ワイバーンはダイナソー竜崎一択だな。
大神の作者さんはいったいどこに
>>362 ダイナソー竜崎って……出番多い割には全戦全敗で、単細胞で卑屈な最低レベルのデュエリスト喚んでどうするの?
ワイバーンなら、今度真紅眼の飛竜の出る天上院吹雪さんを喚べば?
ギーシュが弟子入りしそうだが
>>361 わざわざ姉妹スレを紹介しなくても、このスレにも黒騎士という立派な犬召喚物があるじゃないか
亀だが、モフモフといえばザフィーラ…まあ、いまさらはやて以外の主など認めないだろうけど。
>>366 逆に考えるんだ
闇の書が召還されたと
守護騎士システム解放しちまえば4人だぜ?
魔力キャパもかなり高いんだから半身不随にはなるまいて
R●から、コボルトリーダーを召喚!
ゲームと同じ外見と能力なら大当たりかな?
コレでもし、若○ボイスで喋れるようななったら笑えるがw
>>367 実は闇の書の主だったブリミルですねわかります
そういやザフィーラの二つ名は「盾の守護獣」だっけか。ばっちりガンダールヴだな
>>364 いや……一応全国大会二位なんだけど……
モフモフ……八雲藍?
そういや既に使い魔とかそれに類するものになってるキャラが召喚されたら
被召喚者当人は当然契約を拒むとしても、ルイズ他魔法学院の連中はどういう対応するのかな
とりあえずルイズは小島よしおじゃね?
デュエリストなら十代でよくね?
ネオスも飛び出てくるし。
>>371 それが発覚すれば無理に契約させる事はしないんじゃない?
むしろ契約自体を厳重に禁止しそう。
あっちの世界の常識だと使い魔である時点で何処かの貴族の所有物と言う事になる訳で、
下手に契約とかを強行すれば最悪国際問題とかにも発展する可能性が生じるし。
ブラッディロアの誰か
>>371 紫様と橙がおまいを睨んでる件
特に橙が
>>369 ガンダ:シグナム
ヴィン:ザフィーラ
ミョズ:シャマル
憚られる:ヴィータ
という訳か
>>373 っキモイルカ
使ってるカード考えると十代よりヨハンの方がよさそうだけど
というか人間が呼ばれたにしろ、どこの誰かも分からないし
もしかしたら貴族かもしれないのに、いきなり契約させるとか結構凄いよな
常時杖やマント身につけてるとも限らないし、ゲルマニアなら平民だって貴族になれるってのに
平民だってどっかの領主もしくは国王の持ち物であるわけで
いくら神聖だからって何の確認もしないで契約すんのが凄いよ
誰かモンスターのヨハンを召喚してください。
平民だろうが人間って時点でイレギュラーなわけで上の指示
ここではオスマンに伝えるのが筋だと思うけどな
ってこれて原作のこと言ってるの?
>>380 ルイズのハルケギニア統一伝説ですね、分かります
モンスターなら黒龍の雛が良さそうだなと思った
レッドアイズに進化するし、そこからダークネスでもアンデッドでもおk
>>380 勇者王オブライエンとジムも呼ばないと・・・
てかDM界じゃなくてハルケに飛ばされた事にしちまえば
・・・覇王が生まれる要素がねぇ
>>384 雛なら呼ばれてる
>>386 雛という一文字だけで厄神様を思い浮かべてしまった俺
388 :
ゼロガー:2008/10/04(土) 19:44:14 ID:TaOuFgoE
「いやー帰ってきたって気がするわねー」
久方ぶりに魔法学院の門を通るルイズ達
ルイズがガリアに誘拐されそうになったり
タバサの母親を連れ去ったり
アルビオンで城を落としたりと
思い返すとかなり無茶苦茶なことをしてきたものだが
どれも王家的に表ざたになるとマズイ話でもあり
結局よくある国家元首同士の秘密会談で手打ちが行われ何事もなかったかのように
ルイズ達の日常は戻って来た
マザリーニは28キロほど痩せたそうだが
もちろん例外はいる
「何を呑気なことを!オシリスはまだ行方知れずのままなんだぞ!」
ギーシュである
「こうしている間にも“僕のオシリス”がどんな目に合わされているか!?!」
目を血走らせ口から泡を飛ばすギーシュ
ギーシュの脳内では
叔父の秘蔵本から仕入れた知識を総動員したエロティカルな拷問シーンが
総天然色シネマスコープで上映されている
「落ち着くのだギーシュ、耳から何か汁が出ておるぞ」
見かねたガーゴイルが照射したリラックス光線を浴びてようやく落ち着きを取り戻す
出迎えのギトーに案内され学院長室に通された一同を待っていたのは
「お早う諸君」
ジョセフとオシリスと和己だった
「オ、オシリス―――――ッ!無事だったのかー!!」
オシリスの胸に飛び込み深い谷間に顔を埋めるギーシュ
すかさず先端を高速回転させた触手がギーシュの顔面をえぐる
「ウギャ―――――ッ!キン肉マ――――――――――ンッ!!」
「か、和己!何故ここに!!」
ガーゴイルも驚きを隠せない
「紹介しよう、俺の使い魔ガンダールヴだ」
やたら爽やかなジョセフの台詞に驚愕する一同
「な、なんだって――――――――――!?!」(AA略)
「まずは君達に迷惑をかけたこと心からお詫びする」
深々と頭を下げるジョセフを見て驚愕のあまり放心状態になるタバサ以下ガリア関係者
どさくさ紛れにテキファニアの胸にタッチしようとしたオスマンにマチルダの手刀が打ち込まれる
錬金で全身の骨を鞭のようにしならせたマチルダの一撃がオスマンの鎖骨を砕く
389 :
ゼロガー:2008/10/04(土) 19:45:00 ID:TaOuFgoE
回復の魔法で瞬時に復活するオスマン
地味にハイレベルな戦いであった
「なんか話に聞いてた無能王とは随分キャラが違うと思うんだけど…」
オシリスにそっと耳打ちするキュルケ
『妾を捕えたうえ避難所行きになるような行為に及ぼうとしたのでな、隙を見て即興で調合した
毒を注入したら何がどうなったのかすっかり“いいひと”になってしまっての』
オシリスの答えもいまいち自信なさげだった
「ち、注入ってどうやったんだろうね?」
「それはやはり粘膜どうしの接触で…」
わざとらしくヒソヒソ話をするギーシュとケルプを腐食光線が襲う
ぶすぶすと燻りながら沈黙する一人と一体を尻目にすっかりリラックスして自らの波乱に満ちた
人生を講談調で話しはじめるジョセフ
「−そんな訳でシャルルを失って以来すっかり人生に絶望してな、虚無に目覚めたのを機に
エルフと原理主義者を煽って最終戦争を起こそうと画策していたのだよ」
ネットカフェに放火するニート並みの発想だがこの男、実際に世界大戦を引き起こすだけの
智謀の持ち主(戦国シュミレーションゲームにおける知力100)だから始末に負えない
「君には酷いことしちゃったね、憶えてないけどごめん」
和己はジョセフに命じられるままタバサに剣を向けたことがあるとオシリスに教えられている
ビダーシャル謹製の解毒剤を差し出し頭を下げる和己を見て面白いくらいに動揺するタバサ
よく見ると微かに頬を赤く染めていたりする
「和己よ、ガリア王に操られていた時の事は何も記憶しておらんのか?」
ガーゴイルの問いに苦笑する和己
「なんだか良く分からないけど思い出さないほうがいいような気がするんだ」
「そりゃー毎晩アナルショップ状態だった記憶なんてない方が…」
うっかり口を滑らせたデルブリンガーを和己の背負った鞘から引き抜いたオシリスは
抜き身の刀身を右手で掴む
オシリスの腕が紫色の光を放ち、イヤな臭いのする煙をあげて黒ずんでいくデルブリンガー
「やめてとめてやめてとめてやめてとめてやめてとめてやめてとめてやm…」
「ああそのくらいで勘弁してやってくれ、これでもブリミル神話に係わる伝説の魔剣なんだ一応」
オシリスから「いやあ…身体がジクジクするう……」と呻くデルブリンガーを受け取ったジョセフは
一同に向き直る
「まあ色々あったがこれからは心を入れ替えて世界平和のために尽力させてもらうつもりだ」
輝くような笑顔だった
紛うことなき綺麗なジョセフを目の当たりにして目眩を覚え
和己に凭れ掛かるタバサ
イザベラは顔から床に突っ伏し
390 :
ゼロガー:2008/10/04(土) 19:45:43 ID:TaOuFgoE
「有り得ない、ヴィンダールヴの丹下左膳以上に有り得ない…」
と呟いている
シルフィードはひたすら肉を食べている
「世界平和とはまた大仰ですな」
場を取り繕うようなオスマンの台詞に表情を引き締めるジョセフ
「言っておくがロマリアの坊主共は本気で聖戦を始める気だぞ、俺がシャルロットにルイズ嬢の
拉致を命じたのも連中より先に虚無の使い手を抑えて交渉のカードに使うためだ。それに教会に
送り込んだ密偵の報告ではすでに連中の手先がこの学園に潜り込んでいる」
「なにをおっしゃるウサギさん、この学院にそのような者がおるはずがない!」
断言するオスマン
「学院長が夜の街でスカウトしてきた身元が不確かな女性が少なくとも36人いますが」
すかさず突っ込むギトー
「犯るんだよ、秀吉を!」と言われた前田利家のようにダラダラ汗を流すオスマン
(死んだほうがいいのでは?)
その場にいた全員−オスマンを除く−の想いだった
と、そのとき
「真打登場ーっ!」
轟音とともに天井が吹っ飛び
半球形の頭部に刻まれたスリットからギラギラと輝くピンクの単眼(モノアイ)を覗かせた
全金属製の巨大ガーゴイルが現れる
その肩に乗っているのは
「たしか下働きの…」
「シエスタじゃな」
人目見てメイドの名前を言い当てるオスマン
“オスマンは学院内の胸の大きな女性の名前は全てチェックしている”
噂は事実だったのかとオスマンの好感度を更に下げるルイズだった
そんなことはおかまいなしにガーゴイルの肩でポーズを取るシエスタはノリノリであった
「ある時はメイドのシエスタ、そしてまたある時は法王庁のスパイ。しかしてその実態は…」
変装用のラバーマスクを脱ぎ捨てると理知的な美貌と額に刻まれたルーンが露わになる
「神の知恵、ミョズニトニルン!」
遂に姿を現した第三の使い魔
その素顔を見たガーゴイル以下の被召喚組は揃って驚きの叫びをあげた
「げえっ!高原イヨ!?!」
ジャーン ジャーン ジャーン
【続く】
ttp://roofcity.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upload/src/up0081.jpg
いきなり投下に驚愕した
いつまでジョセフなんだろう?
実はオリキャラか?
まーた始まった…
相変わらず予告もしないのな
初心者のミスならともかく、マナーも守れない人の作品は読む気にもなれない
ずいぶん間が空いてしまいましたが、予約がなければ21:15に投下します
では支援
うん?一時間後?
ああー20:15ですすいませんorz
>>387 鍵山さん召喚とな?
ルイズ「召喚したのはいいけどあれ以来みんな私に近づいてこないわ…。」
とりあえず支援
「フフフ、つまり私はあなたの使い魔ということですネ!」
「まだ何も言ってないわよ! あーもうっ!」
ルイズは本を読んでいたが、岩田の声に、いつもなら挟む栞を挟まずにドンッと閉じて盛大に悪態をついた。
本を閉じる音に合わせて岩田が踊る。真面目に考えているのが馬鹿らしくなってきて頬杖をつく。
「……えーと……あんた、イワタって言ってたわよね。変わってるけど、それが名前?」
岩田は机にルイズに向き合うと、しっかり360度回転してみせた。
それから身体全体をくねらせ、尖らせた口の前で長い人差し指を左右にひらひらさせる。
「ノンノンノン。私は岩田裕。ワタマンとお呼びを。いや、イワッチでもイィ! スゴクイィ!」
岩田は何が嬉しいのか、足を絡ませながらまた踊りだした。
その一挙動が癇に障る。無性に腹が立ったルイズは頭を掻いて席を立つと、ベッドに向かって大股で進み始め
た。あの平民の形をしたタコだか蛇だかなんだか分からないやつの名前について考える。
イワタヒロム、イワタが名前? でも違うって言ってたから、ヒロムの方かしら?
ワタマン、とイワッチは愛称か何かか、きっとそんなもんだろう。どちらにせよ平民に変わりない。
「まぁいいわ。平民、使い魔になったからには使い魔として働いてもらうわよ」
「イイでしょう。で、具体的には何をすれば?」
片足を肩の高さまで上げて回転する岩田を無視してベッドに腰掛ける。
「はぁ……まず、使い魔は主人の目となり耳となる能力が与えられる――らしいけど、何も見えないわね」
「のようデスね」
「ですねじゃないわよ……あと、主人の望むものを持ってくるの。例えば秘薬とか――聞いてる……?」
岩田は右手を突き上げたかと思うと、左手でその右手を掴んだ。身体を左右に揺らし、長い手足をくねらせる。
「フフフ、ハハハハ……ククク……イーッヒィーッヒッヒ! フフフ……アーッハッハッハ!」
高笑いに近い笑い声をあげ始めた。そして、ゆっくりとその右手をベッドに腰掛けているルイズに向けて、人
差し指で指す。
「その通り、私がこのゲームのラスボスです! さぁカモンカモンぅ!」
ルイズは無言で立ち上がると、俊足で岩田に駆け寄り鳩尾に正拳を叩き込んだ。
悶絶して倒れる岩田の頭を踏みつけながら、怒り心頭といった面持ちのルイズがゆっくりと口を開く。
「へっ、平民の使い魔がなーに私の部屋で騒いでるのかしら……!? 納得の行く説明が欲しいわ!」
「ククク……フフ、あなたの望むもの、それはすなわち心を震わせるようなスバラシィギャグです! ああイィ! スバラシィ!」
「ギャグはこりごりよ。それと使い魔は主人を守る役目があるけど、あんたには無理ね。掃除洗濯雑用よろしく」
「イイでしょう、ですので足を退けてもらえると嬉しいのですが」
「あら、悪かったわね」
最後にルイズは思い切り踵で岩田の頭を踏みつけると、ブラウスに手をかけた。
とっととボタンを外して下着姿になり、ネグリジェを頭から強引に被る。
行儀や品性の欠片も無かったが、岩田のせいで半ば自棄になっていたルイズは気にも留めない。
伸びている岩田にパンティを投げつける。
「それ、洗っときなさい。あと朝になったら私を起こしなさいよ。ちなみに寝床は床!」
ぴしゃりと言い放つと、ランプの灯りを消してそそくさと寝に入る。疲れていたのか、眠気はすぐにやって来た。
ランプの灯りが消えた部屋を、窓から差し込んだ二つの月の光が照らしている。
その光の中心に裕は居た。肩にかかったパンティを無視して目を閉じ、音もなく踊る。
小波のような、一定で規則正しい寝息を立てるルイズを起こさないように息を潜める。
音を立てずに窓に近づき、裕はゆっくりと目を開いた。
視線の先には、暗い夜空の中で赤と青の幻想的な二つの月が光り輝いている。
まるでおとぎ話に出てくる月のように、爛々と。
ふっと薄く笑ってから、次の瞬間には音もなくパンティを放り投げる。
それから軽く息を吸い込み、窓の外に軽く跳んだ。
手を伸ばして二つの月に少しだけ近づいた後、真っ逆さまに落下する。
顎を高くして地上に目を凝らす。口を開いた。
「重力に逆らえず落下する感覚はイィ! スバラシィィ!」
岩田は、見る人が見れば凍りつくような笑みを浮かべて地上に激突した。
ルイズが寝息を立て、岩田が笑みを浮かべて跳んで転がっていた頃。
頭頂部がお寒いと生徒たちに笑われているコルベールは、寝る間も惜しんで図書館の中の本を片っ端から読み
漁っていた。図書館と言っても、建物自体が図書館と言うわけではなく、魔法学院の複数ある塔の内の一つの塔
の内部に位置する。
とはいえ、三十メイル以上の本棚がずらりと並んでいるのだから、それはそれで壮観だ。
なお、図書館はいくつかの区画に別けられており、今彼がいるのは教職員専用の区画、フェニアのライブラリー。
区別するのにはいくらか理由があるのだが――それは置いておこう。
コルベールは対象を浮遊させるレビテーションを応用したフライを使って本の場所まで浮かんだ。
そしてある程度目星を付けていた本を何冊か抜き取り、その場でおずおずと読み始める。
表紙を開き、字面を追ってはページを捲り、字面を追ってはページを捲る。
既に数百、数千は繰り返しているであろうその作業を、彼は当たり前のようにこなす。
戦場で戦っていた彼にとってそれは苦ではない。
ましてやそれが、見たことも無い謎のルーンの研究のためならば。
寝る間を惜しむだけの価値はある。
時折聴こえる、ぷっくぷーという間の抜けた呼び出し音や、明日のギャグは転校生ネタで決まりですネ!など
という奇声にも似た声をBGMにコルベールの読み漁りはまだまだ続く。
青にして灰白の使い魔 第6回
朝、ルイズは身体を揺すられて目が覚め、自分を呼ぶ声を聞いてその身を起こした。
まだぼやける視界の中に、くねくね動く物体を捉える。
「……なによ、あんた」
「フフフ、それはギャグですね!? あなたの使い魔ですが」
ようやく焦点が合い始める。くねくね動く物体は、岩田だった。
昨日と同じ奇妙な白い服に、変な化粧を塗りたくった顔。タコのように長い手足。
ルイズはあからさまに嫌そうな顔をした。欠伸をしながら目を手で擦った。
「服」
「用意してあります」
岩田は一回転するとどこからか服を取り出した。
「……下着」
「三つほど用意してありますが、どれです?」
岩田は裾からルイズのパンティを取り出しながら言った。
「なんでそんなところにあるのよ……じゃあこれ! にしても、やけに手際がいいじゃない」
「これでも家来ですので……元、ですが。ククク、終わりましたよ。」
ベッドから立ったルイズに衣服を着せながら、岩田は昔を懐かしむように目を細め、自嘲気味に呟いた。
それを無視して、ルイズは背筋を伸ばして目を見開き、改めて自分の姿をよく見た。
普段自分で着るよりも上手に着せられている。明らかに慣れた者の仕業だ。
そのことを怪訝に思うも、まぁどんな馬鹿にも一つぐらい取り柄はあるものかと結論付ける。
結論付けてから、窓から差し込む明るい日の光を見て不機嫌になった。太陽に同情されているように思ったのだ。
木で作られたドアを開けて、まず最初に目に飛び込んできたのは……
「はぁい、おはようルイズ」
大きくて、大きくて大きい……胸胸胸――!
「あっ、朝からなんてものをー! そんなに私が憎いっていうのー!?」
「ちょっ、なによルイズ!?」
そこにいたのはキュルケだった。燃えるような赤い髪は、相当手入れしているのだろう。艶々して自発的に光
輝いているように見えなくもない。わざとらしくブラウスの一番二番ボタンを開けているので、まるで胸が飛び
出ているような画だ。
ルイズはキュルケのことが嫌いだった。嫌悪のそれとは違う、苦手というか、いや、そこまで嫌いじゃないか
も、でも好きじゃないしうーん……
少し考えて、髪を振ってそのことを忘れた。キュルケはキュルケで、私は私。大して変わりは無い。
キュルケの方から妙に熱気を感じるが、それを無視してキュルケと視線を交わした。
仕切り直しとばかりにキュルケが咳払いする。
「あら、今日はずいぶんと早いのね。それになんだか服装も良いじゃない? おはようルイズ」
「そうね、そうよ……おはよう、キュルケ」
元気が無いルイズを見てどう受け取ったのか、キュルケが心配そうな顔で首を傾げた。
「ちょっと、なによ元気ないわね……どうかし、た……あー、後ろの平民が原因ね」
「その通り、すべての事象は私が引き起こしたものです! 私が原因ー! すなわちラスボスでぇーす!」
岩田はクケーと奇声をあげた。
無視する。
「あー、それもあるけど、なんの用よ?」
ルイズの不機嫌な声を聞いて、キュルケは微笑といっていいような笑みを浮かべた。
キュルケはルイズの事が嫌いではなかった。それどころか、小さくて勤勉でからかいがいのあるルイズの事を
それなりに気に入っていた。同じ小さいでも、タバサと違ってからかいがいがあるというのは大きい。
「え? あー、こほん。べっつにぃ、平民を召喚するだなんて、流石ゼロのルイズよねぇー? 普通のメイジじゃ出来ないわよ?」
言葉を聞くや否やルイズの顔が見るからに歪んでいき、次第に紅くなる。
この子もこの喧嘩っ早さがなくなればモテると思うんだけどねぇ……
「悪かったわね! 召喚したくて召喚したんじゃ――」
その二人の間に、岩田が身体を天に反らしながら割って入ってきた。
「ストォーップゥー! 私の素晴らしいギャグを無視するとはなかなか笑えませんね!?」
「あんたのギャグよりは笑えるわ! 空気が汚れるから黙りなさい!」
岩田は壮絶に血を吐いて倒れた。動かなくなった……。
ルイズが頭を抱え、キュルケが冷や汗を流し、通りがかりのメイジが腰を抜かして這いずりながら去っていく。
窓もないのに風が吹いた。燃えるような長い髪が顔に張り付く。鬱陶しそうに髪をかきあげ、上を見て、左右
を見る。
遠くから見ても分かるほど肩を震わしながら、ルイズが頭を抱えて口を開いた。
「……お願いだからじっとしててちょーだい!」
操り人形のように妙に不自然な動きで岩田は立ち上がった。醒めた目でこちらを見ている。
「フゥ……あなたはどうやら私の嫌いな常識人ですねぇ? あーもう、常識人過ぎます。せっかくのファンタジーなのに損ですね!」
「黙りなさい!」
ぴしゃりと言い放ってから、ルイズまだなにか言っている岩田を無視して冷や汗流しまくって三歩退いている
キュルケに向き合った。
「気、気にしないで!」
「えっ? あ、ええ、うん、気にしないよう努力するわ、ええ、大丈夫、任せて、気にするわよ、あら? えっとー」
動揺しまくりのキュルケ。ハイテンションな男と会ったことが無いと言えば嘘になるが、それはそれ。
その素振りを見て何を思ったのか、ルイズはすまし顔で言った。
「落ち着きなさいよ、みっともない」
「……ずいぶんと慣れてるのね、ルイズ」
「どこが!?」
書符「支援」
しえん
今日は最悪な日だとルイズは思った。いや、この平民を召喚したのは昨日だから最悪な昨日か。
その平民はといえば、キュルケの後ろにいたやたら大きい火トカゲを興味津々といった目で見つめていた。
しかし……大きい。なるほど、先ほど感じた熱気の正体はこれか。尻尾の炎からして分かるが良質のサラマン
ダーだ。だとすれば、キュルケはこのサラマンダーを自慢しに来たのだろう。
「フフン、この大きな生き物は何ですか? 見たところ爬虫類系のようですが……」
「ああ、それは私の使い魔のフレイム。えっと……その、なんでもないわ」
岩田の疑問にキュルケが答え、更に何かを言おうとしたが――こちらを一瞥すると口をつぐんだ。
ああ、また同情されたと思った。ルイズはぎゅっと手を握り締める。
その様を横目で見ながら、岩田は難しい顔。
聞き覚えの無い言葉でフレイムに話しかける。
「……なによ、今の?」
「いえ……どうやら神族ではないようですね。まぁ、それもまたしかりというべきか……」
その言葉により一層欝になるルイズ。この使い魔がまともな時は、服を着せたときだけだった。
キュルケが冷や汗を拭いながらこちらに視線を向けてくる。
「えーと、今の何かしら? お芝居?」
「……どーせギャグでしょ!」
それを聞いて岩田は嬉しそうに笑った。自分の右手を押さえつけるようにして回転した後、顔を天に向ける。
微笑と言っても良いような笑いを浮かべ、明後日の方向を見つめた。
「はっ、電波受信! 笑いが私を呼んでいるぅー!」
高速スキップ。止める間もなく、顎を突き出して廊下を突っ切って行く。
居心地悪そうにしていたキュルケは、岩田が突っ切っていった方向を眺めながら呟く。
「……止めなくていいの?」
「私は関係ないし、どうでもいいわよあんな平民!」
一方その頃。
寝る間も惜しんでひたすら本を読み続けていたコルベールは、ついにダウンした。
集中力が途切れてフライの呪文が解けて真っ逆さまに落ちる。
はっとし、慌ててもう一度フライを唱える。なんとか間に合ったようで、かろうじて床と激突することは避け
られた。着地してからみっともなく床に腰を下ろす。それから同じ目線の高さにある本に目を向けた。
『始祖ブリミルの使い魔たち』
コルベールはその本を一度だけ目にしたことがあった。図書館の本をチェックしている時に一度だけ見かけた本だ。
あの時は時間が無かったので読めなかったが――ふむ。
幸か不幸か、集中力が途切れたことで再び出会えた。
即座に思考を切り替え、スケッチしたルーンのことなど忘れてその本を抜き取り読み始める。
一つの事に集中すると他の事に気が回らないのがコルベールの欠点だった。
――もっとも、今回はそのおかげで当初の目的に辿り着くのではあるが。
場面と時はまたも飛ぶ様に移る。
昨晩、メイドに岩田の分の硬いパン二つとスープを注いだ皿を床に置いておくよう指示したルイズは、岩田を
自由にしたことを後悔していた。このままにしておくわけにもいかないのだが、しかし貴族としての体面もある。
ただでさえ不機嫌なルイズはさらに不機嫌になって膝を揺する。腹が立つ。
とりあえず近くにいたメイドを手招きして呼んだ。
慌てて近づいてくるメイドは、ルイズより背丈が大きい。10サントは上だろう。
大人しそうで、少し怯えて見える。何かあったのか?
カチューシャで留めた髪の色は黒すぎて青く見えないことも……いや、やはりそんな風には見えない。ルイズ
は頭を何度か振った。
疲れているせいだ。
「はっ、はい、なんでしょうか」
「これ、片付けておきなさい」
メイドは困惑した様子で口を開いた。
「はっ、ですが、使い魔の分の食事では……?」
「……どうしてあんたがそれ知ってんのよ?」
「あっ、すっすいません! 昨日、同僚から聞きました……」
じろり。ルイズがメイドの姿を上から下まで舐めるように見る。メイドが若干涙を浮かべて肩を震わした。
「あんたには関係ないじゃない。ただのメイドの癖に。いいからこれ、片付けて頂戴!」
「わわ、分かりました! すいません、すいません!」
そう言うと、メイドは何度も頭を下げてから皿を抱えて走り去った。
少し悪いことをしたかな、とも思ったが、相手はメイド。メイドで平民。あのくねくねした使い魔と同じ。
そう考えれば少し気が晴れた。というか、どうでもいい。
周囲を見て、祈りの言葉を唱和する時間だと気がついたルイズは今のことを忘れて目を閉じた。
そのメイドは、皿を厨房に戻してから、今にも溢れ出そうな涙を手で拭った。
やっぱり貴族の人は怖いと考える。
だがそれよりも、メイドは下げた皿に乗っていた食事を与えられるであろう使い魔に思いを馳せた。
あの貴族の人は確かミス・ヴァリエール。周囲の人からゼロのルイズと馬鹿にされている――魔法の使えない貴族。
彼女が召喚したと噂になっている白いくねくねした平民は、今頃お腹を空かせているのではないだろうか。
そう考えると居ても立っても居られなくなってくる。どうしよう、どうしよう。
だけど仕事を休むわけにもいかないし……
「おーい、シエスタ、ちょっと来てくれー!」
コック長のマルトーにシエスタと呼ばれたメイドは、後ろ髪を引かれる思いでその場を後にした。
<続く>
えー、次は一週間後ぐらいには作れてればいいなぁと考えています。
では……
バカじゃないの!?(いい意味で)
絵がギリギリアウトセーフだよ!
具体的に言うと少年誌で言う銀魂みたいな位置。
うわ失礼した。
409はゼロガーさん宛です。
岩田さん乙です。
フレイムに話しかけるシーンは誰がやってもシュールだなあ。
シエスタがどうなるかも気になる。
イワッチ乙
鎖外した猛獣状態じゃないですか
飛ばしてるなあイワッチw
しかし、パンツを投げつけたのはちょっとした幸運だな
これが靴下だったら……
それはそうと、家令じゃなかったっけ?
あれは違うイワッチなんだっけ?
イワッチGJでしたー!
アリアンやら大家令やらイワッチは謎多い。リタガンも停まってて設定はっきりしてないし。
今週はついに社長がきたのか。待ってたぜ。社長のデッキに
ブラックマジシャンガールがないのがざんねんだ。
投下多いなー
>>412 神楽の家来は辞めたんじゃなかったか?
すいません。投下よろしいでしょうか。
予約入ってなかったら9時半辺りに投下したいと思います。
時間なので投下しますね。
11、死霊術師と姫と王
父上に言われたの。今のお前は優秀とは言えないが、
このクスリを飲めば、とっても優秀になれるんだって。
本当にそうだった。飲んだら眠くなって、
気が付いたら、とっても凄い魔法がたくさん使えるようになったの!
とても速く空が飛べるし、飛びながら魔法が使えるし、
それに炎も、氷も、風系統の「ライトニング・クラウド」まで使えちゃう!
それ意外にも、変わった呪文をたくさん教わったわ!
しかも先住魔法らしいから全部杖がいらないの!ゴーレムも創りたかったけどね。
全部父上が呼んだマニマルコから教えてもらったの。嬉しいなぁ。
これでもう誰も私を馬鹿にしない。これで誰も私を嘲ったりしない。
これでもう誰も私を能なしと言わない。これで誰も私に逆らわない。
これでもうシャルを嫌いにならない。これでシャルを好きになれる。
これでこれでこれでこれで――
え、なんですか父上?はい。分かりましたわ。
羽の亜人を殺してくればよろしいのですね?いってきまーす。
「お前はどうしようもないな。ジョゼフ」
自分の娘にあんな事をさせるのを許すのは、人間とは言えなかろう。
そう、王の対面で座っている、明らかに人の事が言えなさそうな女が言った。
かすかに死臭が漂っている。自身からではない。服からだ。
ニルンの地では、生まれた月の星座によって、皆何らかの特殊能力を宿す。
本来、黄昏月(11月)生まれの精霊座以外なら、
誰もが出来る能力、大気中の魔法力(マジカ)を吸収し、
それを自己の魔法力として使用する事が、この世界の連中は出来ない。
代わりに体内で代用の『精神力』なる物を生成し、使いすぎれば気絶する。
精霊座の生まれは、何らかの薬品を使うか、相手から魔法を掛けられて、
それを吸収するか以外回復の方法は無い。また、魔法力が切れて気絶等誰もしない。
そんな風に、全く違う魔法の術式とそれらの使用方法に、最初は少々とまどったが、
こちら側の技術で色々と体をいじれば、意外にこちら側の魔法が使える様になった。
体そのものは、どこかの神が我々を真似て創ったのだろう。女は今の所そう考えている。
「何を言うか余のミューズよ。お前が出来の良い素体が欲しい。そう言ったのだろうが?」
まるで散歩中、のんきに世間話でもしているかのように言う。
二人は飲み物を脇に置いてチェスをしていた。
すっかり自分の娘がどうなるか気になって、
ジョゼフは余所に置いた姪の事をあまり考えていなかった。
一応王家の血族だから、おそらくそこらのデクよりはマシかと思っていたが、
よもやこれほどの逸材になるなど、彼は思ってもみなかったのだ。
しかし、なったのだから本人の希望通りに役に立ってもらうべきだろう。そう考えていた。
「たしかに、素晴らしい。あそこまで良いのに何故こちら側で無能扱いなのか、
まるで分からん。しかし、これで念願の夢だった事の一つが叶った」
恍惚とした口調で女は言った。
即ち、死霊術師が目指す最終形態であるアンデッド、リッチ。
それに、人工的に古代エルフ族、アイレイド並の魔法力を持たせ、
しかも見た目が人間と変わらず死臭もしない物――の作成。
できれば、筋組織の増強と圧縮による、見た目の変わらぬまま筋力の増強も。
以前、自分自身にもこれらの術式を施したが、
少々頭の方までカバーできるかどうか不明だったので、色々と削った。
その結果、あの忌々しい『メイジギルド』の現会長、
(アークメイジ)ハンニバル・トレイブン。
あいつに、あいつのお気に入りに殺されてしまった。
まさか、こちらの死霊化の呪文の対抗策を練っているとはな。
もしもの時の為に新しい体を創っておいて良かった。そう、男だった女は思う。
ガレリオンの時もそうだが、連中は学習をしない。
これで真理の探究者を自称するのだから笑い話だ、とも。
「『あれ』は量産できるのか?」
ジョゼフが聞く。女は少し憂鬱そうに答える。
「素体の質次第だな。しかしあれと同じ物をまた創ろうとするには、
時間も手間も金もかかる。お前の娘をあの状態に持って行くのに、
1年かかったのだぞ。エルフの地にヒストが生えていて良かった。
あれのお陰でお前の娘は痛みを感じない」
他人を無自覚にリッチにしようとすると、どうしても拒絶反応が出てしまう。
故に、ヒストと呼ばれる主に麻薬等に使われる木の、特殊な成分の樹液を利用し、
彼女は本来とは違う器にある為に起こる、魂の痛みや体の痛みを感じなくなった。
しかし定期的に投入しないと、痛みどころか気分まで躁から鬱になる。困った物だ。
結果、少々頭の方がお花畑のようだが、言うことは良く聞くので問題ない。
「ふむ、アルビオンが落ちればある程度質は下がるが、どうにでもなる訳か」
死体の山が手に入るからな。そう言って、ジョゼフはあくびをしながらコマを進める。
チェックだった。久しぶりに、これとやるチェスはおもしろい。彼はそう思った。
「全く、俺がメイジの為に働くとはどういうことだろうな」
「ナメクジ人間よりはマシかと思うが?マニマルコよ」
そうかもしれないし、そうでないかもしれない。
虫の王マニマルコ。ガレリオンと同じ時期に、
サイジック会で魔法を学んだエルフであり、
禁忌とされていた死霊術を新しい学問として概念を創りだし、
初めてリッチとなった男。
その後、メイジギルド創設者ガレリオンがサイジック会を抜け、
山を震わせる程の魔法合戦の末にマニマルコを倒したが、
新しく創っておいた体によって彼は復活した。
その後、メイジ達や帝国の支配圏外のサラス諸島に住みついた彼は、
スロードと呼ばれる亜人達の下で死霊術の研究をしつつ、
シロディール地方のメイジギルドの動きを見ていた。
そして、ついにその時だと約4年前にシロディールに現れ、
奪われていた魔法具を取り戻そうとしたが失敗。
自身の力を増幅させていた魔法具が無いため、
実力が出せぬまま、現在のメイジギルドの腕利きに倒された男である。
だが、彼の目的は達成された。
それは、シロディール内での死霊術師達の掃討と、
サラスとタムリエルの関係悪化である。
そもそも、シロディール地方の死霊術は遅れている。
タムリエル東部地域のモロウウインド地方の様に、
ちゃんとした死霊術の研究機関が存在しないため、
独学でしか学ぶ事が出来ないのだ。故に未だに死霊術を、
ただの死体いじりと勘違いしているメイジが多い。
残念ながら、死霊術師内ですらいたずらに死体を切り刻んで遊ぶ者が、
かの地にはいるのだ。証拠に死霊術師が潜んでいる砦には、
ご丁寧にも人の切り刻まれた死体が吊されていることが多い。
その様なまがい物を「死霊術師」と呼ぶ訳にはいかないので、
マニマルコはサラスから誰も配下を連れずに、
はなからシロディールのまがい物を全て駆逐するつもりで、
メイジギルドの面々と戦いを始めたのだ。
残念ながら全てとは言えなかったが、
しかしある程度は消せたことに満足していた。
また、マニマルコはスロード達から、サラスの英雄とも呼ばれている。
と言うのも、サラスに住まうスロードはナメクジの亜人である。
故に、水辺以外の場で生活が出来なかったが、
死霊術によって生まれたアンデッドを利用することにより、
比較的水気の無いところでも、生活が出来るようになったのだ。
生活範囲を広げたマニマルコや死霊術は、
スロード達にとって無くてはならない存在である。
それを倒したとなると、タムリエル帝国とサラスの関係が悪化するのは、
明白な事である。メイジギルドは帝国の庇護下だから言い逃れは出来ない。
元々敵対関係だったが、これを期に一気に攻め入る予定なのだ。
ただでさえ、現在タムリエル帝国は末期状態なのだ。
現在、各地方とは緩やかな支配関係(モロウウインドのみ同盟関係)
が形成され、シロディールを中心とした帝国として成立していた。
しかし、それを利権拡大の為に中央シロディールが、
派兵による各地域の占領強化を行ったのである。
それにより起こる北方地方スカイリムの反乱。
オカートが、デイドラ達との決戦時に援軍を派遣できなかったのは、
これを鎮める為であった。利権確保も視野に入れていたが。
モロウウインドも反帝国の勢いが盛んになりつつあり、
南西のサマーセット諸島では、
シロディールの輸出商品の不買運動が始まっている。
貿易で利益を上げる中央からすれば相当な痛手であり、とてもまずい。
その他の地方も次々と、
今までの鬱憤やらなにやらを吹き出し始めようとしている。
マーティンは帝国を救ったが、
残念ながら、その以前から滅亡は秒読みだったのだ。
これらは、シロディール内では噂でしか広まっていない為、彼は知らなかった。
惜しむらくはマーティンの父上であるユリエル7世が、
もう少し武帝としてではなく、まともな治世を施すべきだったのかもしれないが、
しかし、もうどうしようにも無かったのかもしれない。
帝国は、戦争によって領地を増大させる方法でしか、
今の状態を維持できなくなっていたのだ。
そんな帝国に、マニマルコは自身が倒された時のことを想定し、
自分が死んだ件をトドメとして国ごと、
メイジギルドを潰そうとしたのだ。
少々時間はかかるが確実性のあるやり方であった。
まさか自身がシロディールに来たのと同じタイミングで、
オブリビオンの門がタムリエル全域に開くなんて想定外だったし、
それに死んで魂が別の体に入り込んで後、
こんな異世界に来るなどとは夢にも思っていない。
様々な想定外すぎる要素が絡み、
現在タムリエルがどうなっているか、
マニマルコには分からなかった。
壊滅している事を願っているのは違いないが。
「まぁ、お前の頭がスロードよりもマシである事を願うぞ?」
半分、負け惜しみだ。チェス如きで頭の良さなど分かる物か。
自分を否定するメイジ達が、この世で最も嫌いなマニマルコ。
この世を破壊して感情を震わせたい男と組むのに、
これ以上最高で、最悪の組み合わせはないだろう。
高笑いするジョゼフと、それを見てほくそ笑むマニマルコ。
その姿は、別の世界ではシェフィールドと呼ばれるだろうが、
たまたま創った時に、最高の素体がそれだっただけである。
彼にしてみれば、姿形等どうでもいいのだ。良い素体か、
または悪い素体か。それだけであり、たまたまその時に手に入り、
最も質の良かった体が人間の女なだけである。
ただ、彼女はジョゼフも嫌いである。無能王に協力する理由は、
メイジは権力者である、というこの世界の理が気にくわなかったのと、
スポンサーとして絶大なバックアップをしたからである。
今はその時ではない、いずれ必ず葬り去ろう。これも「メイジ」なのだから。
「では、イザベラが戻ってきたら、アルビオンの方へ戻ってくれ。戦果など、期待しなくても期待できるから、な。」
ジョゼフは、新しくおもちゃを買ってもらう子供のような笑顔を作り出す。
「ああ、待っていろ。すぐに終わらせてくる」
あのアンドバリの指輪は便利だ。あんな犬ですら死体が操れる。
それに水の精霊――言うことを聞かせる為に色々やったが、
あれはあれでおもしろい研究対象だ。デイドラらしいが少し違う。とマニマルコは思う。
彼に恐怖など、ない。自身の真理の探究の為なら何だってする。
例えそれの為に墓場から遺体を盗もうが、
人が死のうが、疫病で村が潰れようが関係ないのだ。
それで人が助かる研究をしたり、延命治療等に活かせるなら、
発展のちょっとした犠牲という奴になる。そういうものだ。
それを、良しとするかどうかは、その人次第と言うことだ。
良しならば、本来の意味での死霊術師に、無理ならば、メイジというわけである。
少なくても、タムリエルのシロディール地方では。
数時間経って、髪の毛や体が真っ赤に染まったイザベラが帰ってきた。
何らかの化け物と勘違いされて、亜人にも村人にも抵抗を受けたらしい。
面倒だから両方とも始末してきたそうだ。可哀想に。
体に着いた血を、何も言わなくなった侍女達に洗わせ綺麗にしてから、
マニマルコは、またアルビオンへイザベラと共に旅立つのだった。
テストは上々。ついでに村人までいなくなってしまったが。
まぁ、後で手の者が取りに行ってくれる、とジョゼフが約束してくれた。
まともなのがあると良いが。そう、思いながら。
行ってきます、父上。戦争なんて、すぐに勝って帰ってきますから――
もはや一歩間違えれば何が敵で、何が味方すら分からない狂戦士の様相を示して、
マニマルコと共に戦場へ赴き、全て壊しかねないイザベラだった。
これが、だいたいマーティンが来た辺りの、ガリア王国の状態である。
時と場所が戻る。オスマンからの話も終わり、自分がガンダールブだと知るマーティン。
どこかで聞いた事ある話だなぁ。と思いながら、
何か伝説の戦士みたいじゃないですか。と言う伝説的英雄行為をした彼に、
「いや、そうなんじゃよ。マーティン君。伝説っぽいのぅ」
とのほほんと答える、伝説の何かを持っていたオスマン。
そして、ああ、駄目だこいつら。と思う伝説の剣だった。
伝説ずくめである。大安売りすると価値が下がらないか心配になる。
先ほど、疾風のギトーに吹き飛ばされたり、
馬を代わりに引いたりして疲れたから、
マーティンは深いところまで考えたくなかったのだ。
後でそれについての本をもらえますか?とオスマンに尋ね、
ついでだからコルベール君に色々そっちの事教えておくれ。
君と話合いそうだから。と古そうな本の代わりに頼まれた。
ちなみに、フーケはおそらく死んだだろうと言うことになり、
ギトー教諭に、シュヴェリエの爵位が送られることとなった。
フーケ本人からしてみたら、棚ボタである。
表での死人ほど、仕事がしやすい者はいないのだ。この業界は。
衛兵にバレない様にやり口を変えれば、賞金首の取り消しになるから、
今後の仕事も精神的に楽になる。そんなわけでロングビルは辞表を提出。
本格的に泣きそうになるオスマンであった。
少し経って、フリッグの舞踏祭は現在終わりつつある。
ギーシュは二人とかわりがわりに踊り続け、幸せそうだったと言う。
マーティンも麗しいご主人様と踊って、場違いではないか、と心配になったようだ。
ギトー先生と踊りたがったキュルケだったが、未だに気絶しているようだ。
一日一回というのは伊達では無かったらしい。
ふと、オスマンが会場から離れる。そこには着飾った衣装のロングビルが居た。
「どうしても、行くのかね?」
寂しくなるのぅ。と言った。
「ええ、ついでですから、グレイ・フォックスも捕まえて見せますわ」
笑って言う。オスマンは気負いしないでかまわんよ。と言った。
「えーとフォックスと言えば、何じゃったか、し、ああ、しゃどーはいちゅーだったかの?」
何かそういうのが巷で流行っているらしいと聞いた。とオスマンは言う。
「へぇ、そうなのですか」
「うむ。綺麗な娘さんに教えてもらってのー。フード被ってたからどんなのかは分からんかったが。
しかし、あの、くぅ、今思い出してもたぎる物が――」
ゴーレムの腕がオスマンの背後の外壁から現れ、そのまま床にたたきつぶす。
妹をそんな風に見たのか、お前は。修羅の顔だった。
何故怒られたのか、よく分からないオスマンであった。
数日過ぎたある日の午後、んんん…とマーティンは悩んでいた。
主にアミュレットが何なのか、について。
左手の事はコルベールからも聞いたが、
どうにも情報が少ないのだ。
ベリナルの伝説も昔の話だから、
本当に光っていたのか知っている者はいない。
「それが、前着けていた『王者のアミュレット』?」
夢で見たのと形違うけど。とルイズは言った。こちらの方が小振りである。
「ああ、そうなんだが――しかし、オスマンさんは着けられなくて、私には着けられる」
ちょっと貸して、とルイズがマーティンから、
小さな赤い石が着けられたアミュレットをもらい、首に掛けた。
「着けられるじゃない」
「と、言うことは――ええと、確か、ルイズの家と言うのは」
「ヴァリエール家よ。トリステインの王家に連ねる名門公爵家なの」
なるほど。と言ってマーティンは続ける。
「すると――、そこは始祖ブリミルと血が繋がっているとか?」
「ええ、3つの王家、アルビオン・ガリア・トリステインは始祖から血がずっと続いているって話よ」
「おそらく、そのアミュレットは始祖ブリミル由来の物だろう。確信はないけど、君が着けられたんだ。着けておくと良い。」
少々私には似合わないしね。とマーティンは笑った。
ルイズは笑ってありがとう、と言った。贈り物をもらって嬉しくない女性はいない。
少なくともそれらがちゃんと好みに合っているのなら、だが。
「と、言うことは、それをアカトシュが創ったとして。ふーむ…」
普通、エセリウスの神々は、オブリビオンの事について口出しすることはあり得ない。
そう言う物だ。死ぬかもしれない神が、いちいち死なない神に文句を言うだろうか?
しかも、不死のデイドラ王達が、オブリビオン内に持つ自分たちの国、
通称『領域』と呼ばれる世界では基本的に、
領域の主が誰にも負けるはずの無い強さを得る。
ここがオブリビオンだとした場合、
このアミュレットがアカトシュ由来で無くなるから、
それだと私が着けられる理由が無い。ならばここは、ニルンと言う訳か。
マーティンはそう結論付けた。
最初の八人いたエイドラの一人、
創造を司るロルカーン(またはロークハン)
が創りだしたとも言われる、
何らかの神が創りし定命の世界、ニルン。
ある神話では、それを創った事で他の神から罰せられ、
ロルカーンは死んだと言う。
そして後に、人間から神になった二人を入れて、
現在それらは九大神と呼ばれる存在となった。
全く知られていない新しい大陸。
そう考えてみると、なかなか凄い発見である。
とりあえずはここの事を調べて、東方に行くとしよう。
そして、どこかでタムリエルの噂を聞くだろうから、
それからひょっこり戻って、皆を驚かせばいい――
ルイズが卒業してから、何をしようか着々と計画を進めるマーティンだった。
ちゃんとルイズには許可を取ってある。
というより、むしろ今からそうするべきだと勧められたのだ。
何度説明しても、未だにマーティンが死んでからここに来たと思ってくれない。
どうにかデイゴンを倒して、何かが起こってしまってこっちに来たと思っているのだ。
できれば、その時事情をちゃんと説明していただけるとありがたいのだけれど。
そう言ってしでかした事に縮こまるルイズは、
マーティンに笑みを浮かばれつつ、君は末代まで語られる聖女になれるよ、と言われ、
そんなこんなで、いつもの調子に戻るのであった。
彼女はまだ知らない。幼なじみが近々学院に来ることを。
投下終了。というわけで、始祖リッチマニマルコ死して尚ここにあり。です。
死体操るならこの人いないと始まりません。ガリアが死霊術師の巣窟になりました。
ウェールズさん生きているかな。後犬分補給。魔改造しすぎたでしょうか?だって姫好きだもの。
君は誰とキスをする?始祖リッチ。それとも姫リッチ。私は姫のデコに。
ちょいと帝国の黒い話出ました。結構事実です。帝国なんてどこもこんなもんです。グッディ。また次の投下まで。
>>334 もしもボックスは使った本人は変わらないんだ…
マーティンの人乙
イザベラキャラ変わり過ぎ。てゆーか怖っw
次回にwktk
乙だ市民よ。
マニマルコはやってることはともかく、帝国以外では英雄扱い。
個人的にはメイジギルドもメルコも気に食わないですがね
マイナーな所で『不死者あぎと』から柩あぎとを召喚とか考えたんだが……
間違いなく避難所向きというかキュルケやシエスタが食われる展開しか思いつかねぇ。
ギフト受け取って壊れるキャラも出てくるだろうし…うーむ。
『水夏』よりお嬢召喚…ってのを考えてみたが、
あの世界の死神ってもうすぐ死ぬ者か、近しい人や愛しい人が遠からず死ぬ者にしか見えないんだっけ。
…原作展開の場合、アンアンしか見えねーじゃん。
ルイズに見えたら、つまりちぃねえ様が死兆星を見えるってことか
23:30頃から第一話を投下したいのですが、よろしいでしょうか?
魔法陣グルグルより、ニケ&ククリ召喚です。
プロットを考えるのに手間取ってたら、本家が再開してしまった…
>>433 その通り。
つーかその場合、原作展開にならずヴァリエール家の家族物語になる可能性が極めて高い。
ちぃねえ様の死を看取る為、ルイズの側にいるお嬢。
ちぃねえ様を死の運命から救おうとし、ありとあらゆる手を尽くそうとするルイズ&ヴァリエール一家。
恐らくはそんな感じ。
>>432 お嬢が見える人達
アンアン、タバサ、イザベラ、リュシー、メンヌヴィル、エルザ、ジョゼフ、シェフィールド、クロムウェル、ウェールズ及びニューカッスル城のみなさん
学院の生徒で親兄弟が軍人の者達の幾人か
アドバーグ・エルドルクルー?
ベームベームのアレにルイズは耐えられるのだろうか
支援
1 新たな旅立ち
勇者とグルグル使いが魔王ギリを封印し、世界中の空に祝福の花びらが舞い踊った。
世界を覆っていたギリの魔力は消滅した。かつてギリの魔力により支配されていたモンスター達の多くは、今は魔境の住人たちのように平和に暮らしている。
しかし、モンスターの脅威が無くなったわけではなかった。
かつてギリの魔力が世界を覆っていた頃に、モンスターの個体数が大きく増加していた。
その中には、ギリとは関係なく人間を襲う者が少なからず存在し、いまだに各地で人々を苦しめていた。
さらに困ったことに、ギリの支配によるタガが外れたため、逆に活動を活発化させた者まで存在した。
闇魔法結社には、そんなモンスターを退治して欲しい、という依頼がしばしば届けられる。
それを聞いたニケとククリは依頼を横取りし、モンスター退治のために再び旅を始めた。
平和すぎるアナスタシアで刺激に飢えており、「いっしょに旅を続けたい」という願いをもつ二人にとっては、悪いモンスターの存在は好都合だったのだ。
〜〜〜
「あ〜、疲れた。それにしても、さっきのやつは強かったなあ」
「でもニケくん凄かった! 土の剣で真っ二つだもん」
「あれは、ククリが新しいグルグルで動きを止めてくれたからできたんだ。ククリのおかげだよ」
「ふふ、どういたしまして」
薄暗い森の中。
苦悶の表情を浮かべる風の精霊に先導されて、ニケとククリは、次の目的地までの道を歩いていた。
ククリの右手には、旅の途中で手に入れた新しい杖が握られている。
ククリ自身の魔力が向上したため杖の魔力に頼る必要はないが、適当な杖があったほうが魔法陣を描きやすいからだ。
アナスタシアのミグミグ族から貰った魔法陣の杖もあるけれど、もう一度冷静に見てみると、やっぱりあの杖のデザインはイヤだった。
「ねえギップルちゃん、次の町までどれくらい?」
「あと1時間ほど歩けば、この森を抜けられます。そしたらすぐですよ」
二人は手をつないで、森の中の道を進む。
以前なら、このような森ではしばしばモンスターに出くわしていたが、現在はエンカウント率が大幅に下がっている。
今回も、何事もなく歩き続けられていた。
しかし、もう少しで森を抜けようという時。突然目の前に大きな鏡が出現した。
横を向いてニケと話しながら歩いていたククリは、鏡に気づかず歩き続ける。
ニケはあわてて、ククリの手を強く引っ張った。
「きゃっ! な、なに!?」
「前見ろ、前!」
「え? ……なにこれ、鏡?」
「鏡、だな。でも、なんでいきなり出てきたんだ?
前に時々出てきてた、ガルニエの予言板とは違うし……。ククリ、わかるか?」
「ううん、さっぱり」
ククリが杖で鏡をつついた。杖の先端は抵抗なく鏡の中に沈み、二人のククリが長い杖の両端を持っているように見えた。
「ククリさん、気を付けてください。鏡の中から未知の魔力を感じます。うかつに触るのは危険です」
ギップルに警告されて杖を引っこめると、鏡も杖も何事も無かったかのように元に戻った。
鏡に近寄ったギップルがウネウネと触角をのばし、鏡を調べる。
「これは――どこかにつながってるようですね。恐らく、これを通じて遠くまで移動できるのでしょう」
「遠くまで移動……。
まさか、総裁たちがまた変なものをこっちに送ろうとしてんのか?」
「いえ、違います。これは闇魔法によるものではありません」
誰かがこちらに来ようとしているのかと思い、少し待ってみる。だが、何も変化はなかった。
「ねえ、もしかしたら、あたしたちに来て欲しいんじゃない? 入ってみようよ!」
「え〜? どっちにしろ関わると面倒そうだから、無視して先にいこうぜ。日が暮れるまでに町まで行ければ、宿に泊まれるし」
「そうね、そうしましょ」
「おや、そこにいるのは勇者殿にククリちゃんではないですか? お久しぶりですな!」
背後からの懐かしくもおぞましい声に、先を急ごうとして足を踏み出した二人は一時停止した。そして、恐る恐る振り向く。
アラハビカで見かけて逃げ出して以来、数ヶ月ぶりのキタキタオヤジがあらわれた。
「それでは再会のキタキタ踊りをとくと見てくだされ! わしの踊りもかなりレベルアップしましたぞ!」
ギリとの最終決戦の時、オヤジはギリの空間に進入し攻撃を受けていた。
そのためオヤジはパーティーの一員としてカウントされ、少なくない量の経験値が入っていたらしい。
踊りは以前よりもテンポが上がり、キモさが加速していた。手足が千手観音のような残像を残して高速動作するたびに、風が起こり土煙が舞いあがる。
腰みのだけで飾られた腰は、一般人の可動範囲を遥かに超えてクニクニとうねっている。BGMも豪華になっていた。
二人はオヤジから離れようと後ずさりした。目の前に広がる悪夢のような光景に怯え、鏡の存在も忘れて。
そして――
「うわああぁぁ!」「きゃああぁぁ!」
数歩下がったところで、鏡の中へ消えてしまった。次の瞬間には鏡も消え、オヤジとギップルだけが残った。
「おや、お二人とも消えてしまいましたぞ? ここからが見所なのですが」
「どちらに行かれたのでしょうか――あれ? どこにもいらっしゃらない!?」
ギップルの能力をもってすれば、風のつながる限り地球の裏側であろうと、勇者たちの存在を感知できる。しかし、鏡が消えた際に全く気配を感じなくなってしまった。
となれば、彼らが行った先は地面の奥深くか、異世界か、魔力が遮断された領域か。あるいは、移動先で完全に消滅してしまったのか。
「これは、大変なことになってしまいました……」
「うむ、そうですな。せっかくの特別なキタキタ踊りを、ほんの少ししか見れなかったのですから」
ギップルは姿を消し、闇魔法結社に急ぐ。
(ギリの残党の仕業でしょうか? それとも、まさかギリが復活を……?)
〜〜〜
学院の生徒達が冷ややかな目で見つめる中、ルイズはサモン・サーヴァントの呪文を詠唱した。
何回もの失敗のため、辺りにうっすらと黒煙がたちこめていたが、その煙をさらに濃くする結果となった。
しかし、強烈な爆発とともに、ルイズは今までの数多の失敗とは違う手ごたえを感じていた。
煙の中に、何かが見える。
(やった……ついに魔法が成功したわ!
まだよく見えないけど、このルイズが召喚したんだから、きっと強力な使い魔よね!)
ゆっくりと煙が晴れていく。そこには、金髪の少年が横たわり、いびきをかいていた。
頭に布を巻き、安っぽい服を着ている。腰には短剣を帯びている。
「あの格好、どう見ても平民……」
「ああ、平民だね。どこからどう見ても間違いなく。
おや? あそこにもう一人いるみたいだね」
「ホントだ。それにしてもひどい煙だよ、まったくゼロのルイズには困るなあ」
太った生徒が文句に続けて呪文を唱え、杖を振る。草原に風が吹き、完全に煙が晴れた。
そこに現れたもう一人は、三つ編みの少女だった。彼女も寝息をたてている。
二人とも、学院の生徒たちより少し年下に見えた。
「おい、女の子の方は、貴族じゃあないか?」
少女の着ている服は、黒地に白い線が入った妙な模様のローブだ。すぐそばには、長さ1メイルほどの杖も落ちている。
貴族とその従者を召喚してしまったのだろうと、ルイズを含めそこにいた人々は考えた。
「ミスタ・コルベール、もう一度召喚させてください! これは何かの間違いです!」
「それはだめだ、ミス・ヴァリエール。この儀式は神聖なものなのだ。やり直しは認められない」
「でも、人間を使い魔にするなんて、聞いたことありません! それに、この子は貴族じゃないですか!」
「確かに人間を、しかも二人も召喚するのは異例のことだな。しかし、使い魔召喚の儀式はあらゆるルールに優先する。
この二人の少なくとも一人に、使い魔になってもらわなくてはならないのだよ。」
「そんな……」
「その少女は貴族に見えるが、少年は平民のようだね。貴族を使い魔にしたくないのであれば、こちらの少年とコントラクト・サーヴァントを行えばよいだろう。
君が最後なのだから、早くしたまえ。次の授業が始まってしまう」
コルベールにせかされたルイズは、召喚された二人をもう一度眺め、そして考える。
(こんなデザインのローブ見た事ないし、外国の貴族かも。そんな貴族を使い魔にするのは、色々と面倒なことになりそうね。
そうすると、こっちの平民と契約するしかないのかしら……。
まあ、仕方ないか。せっかく初めて魔法が成功したのだから、これで手を打ちましょう。
貴族ならば儀式の重要性は理解してるはず。平民の一人ぐらい、事情を話せば手放してくれるわよね)
ルイズは、平民の少年を使い魔にすることを決心した。
以上、終了です。支援ありがとうございました。
442 :
魔法陣ゼロ:2008/10/04(土) 23:34:52 ID:jh6LmlIP
ああ、タイトル入れるの忘れてた…
申し訳ない。「魔法陣ゼロ」です。
ククリのニケの呼び方って勇者様じゃなかったっけ?
アニメ版しか見てないから違ったらスマン
そーいやカップル召喚ってネタは初めて見るかなあ
耕一と楓みたいに別々のメイジにそれぞれ召喚はあったけど
アニメ版のED後のさらに後日?
てかギップルいないと…………クサッ!
原作だと魔王封印後に「ニケ」に直したので間違っていない。
447 :
ゼロと双子の使い魔 1/3:2008/10/04(土) 23:44:39 ID:D8L5kwq6
本日トリステイン魔法学院では、使い魔召喚の儀式を行っていた。
毎年行われる伝統的な行事であり、ここで召還された使い魔とは一生を過ごす大事な行事である。
「見てみて、あれサラマンダーじゃないの?」
するとそこには、
人間の赤ちゃんよりも大きい大体5歳児くらいの大きさの尻尾には大きな火で真っ赤な体のトカゲ____
トカゲというにはあまりにも大きすぎる、生き物がいた
「やったわ!!まさにこの私にふさわしい使い魔ね!!」
とやや興奮気味に話している少女がいた
この少女も先ほどのサラマンダーに負けないくらい赤い髪をした褐色の少女でキュルケいう少女だ
「さて次は、ルイズ君の番だね」
と話すのは頭がだいぶ淋しいことになっている男性で名前をコルベールという
この中で彼だけ年齢が上であり、話しぶりからここの責任者だと思われる
「...はい」
そう答えたのはピンクの長い髪が特徴的な少女である
彼女はいつも呪文を失敗するため"ゼロ"の二つ名を持つ少女ルイズである
熊乙
ゼロガーはよくわからん
グルグル乙
「どうせまた失敗なんだろ?」
「頼むから誰もいない所でやってくれーーーーーーー!!」
周りのありとあらゆる罵声を一身に浴び唇を噛み締めながらルイズは思った
「絶対に...ぜぇぇったいにキュルケよりもすごい使い魔を召還してやるんだから...」
ルイズは深呼吸をして目を瞑り、意識を集中させ呪文を唱えた。
「宇宙の果てのどこかにいる,私の使い魔よ!私は心より訴えるわ、誰よりも美しく誰よりも強い使い魔よ、我が導きに答えなさい!」
どっかーーーーーーーーーーーん!!!!!!
大爆発を起こした
なるほど他の生徒たちはこれを恐れていたのか
ルイズは爆発により発生した土煙も見ながら肩を落とした
何度も見慣れた爆発風景である「ああ、また失敗してしまったのね」そう心の中で思ったときである
「なんか召還されたみたいだぞ!!」
グルグルの魔方陣は土メイジと相性悪いかなあ
ギーシュ、フーケ戦ならゴーレム出すより、ククリが地面に描く魔方陣を片っ端から土いじって消した方が早い?
それを聞いた瞬間にルイズはバッと顔を上げだんだんと収まりつつある土煙を見つめた
「何か...いる...」
しかし彼女はまたがっくし肩を落とした
正確には落とそうとしたがあまりのショックにそれすらもできなかったのである
「あれって人間...よね?」
先ほどまで土煙があったところには喪服のような真っ黒の服に身を包み銀色の髪に透き通るように肌の子供がいた
先ほど召還されたサラマンダーより2周りほど大きいがやはり子供だ
それも二人もいる
「ミスバリエール。さ、使い魔の契約を」
コルベールはルイズに使い魔の契約を促した
尤もこの儀式は召還をした使い魔と契約をして始めて意味をなす儀式だから当然といえば当然の事である
「ミスタ・コルベール!もう一度召喚させてください!人間をそれも二人も使い魔にするなんて聞いたことがありません!」
一気に現実に引き戻されたルイズはそう叫ぶしか思考能力が残っていないほどに混乱していたが
「それは出来ない」
「どうしてですか!?」
「なぜならこの儀式は神聖なもので、
好むとも好まざるにもかかわらず使い魔にするしかない」
「そんな…」
そんな当人たちとは一切関係ないところで召還された二人は
「―――ここはどこかしらね?兄様」
「うん、どこだろうね?姉様」
「ねえ姉様。僕たち死んでしまったのかな?」
「うふふ。兄様は面白いことを言うのね、私たちは死なないわ――決してね」
そう言い終わると二人はキスをし始めた
お互いがお互いを確認しあうように―――
ままままさかあああああの双子かぁぁぁぁぁ!?
つい書いてしまった...
BlackLagoonより双子を召還してみた
好評を頂ければ続きを書かせてもらいます
投下予告ぐらいしろ
まずは投下前に予告しなさい。話はそれからだ。
ブラクラのヘンゼルとグレーテルか!?
銃弾どうすんだろ・・・
あとデルフ涙目決定くせぇw
投下予告しない人が多いね、今日は
>>445 457
申し訳ない次回からは予告します
>>457 デルフは使おうかと思っているんだがそこは構想中
>>450 一応空中にも魔方陣はかけるから無問題だ
水夏登場キャラ召喚で、ゼロ魔原作とは変わった展開を求めるとしたらやっぱお嬢か白河さやかのどっちかかな…。
まぁさやかの場合、ルイズとかタバサとかエルザ辺りが、さやかの格好の遊び相手(いぢり相手ともいう)になりそうな気もするが。
30分から小ネタをひとつ投下OKでしょうか?
召喚キャラについては最後に、ということで
OK支援
その年は、ガリアという国にとって激動と混乱の年であった。
長らく病に臥せっていた王がついに崩御し、長兄のジョゼフが玉座を継いだ。
新たなる王が誕生したわけである。
しかしながら、それは平穏無事に運んだものではなかった。
何故ならば、戴冠のその前後には多くの血が流されたからだ。
その最大のものは、次男のシャルルの死。
まず間違いなく次の王となるだろうと考えられていた英才である。
王族の仲でも誉れ高い魔法の才能と、多くの人望を持つその英才は、毒矢によって命を奪われた。
暗殺であった。
誰がやったかは定かではない。
わかるのは、確実にジョゼフがそれに関わっているということだ。
証拠はないが、状況証拠というものはいくかあった。
何よりも、ジョゼフは母である王妃さえに暗愚と呼ばれる男だったこと。
長兄でありながら、玉座はもっとも遠い男だと嘯かれるほどの無能者だったからだ。
始祖ブリミルの流れを継ぐ王族に生まれながら、彼は魔法の才能がゼロだったからである。
ジョゼフの戴冠に際して、シャルル派への粛清が、血の雨となってガリア中に降り注いだ。
多くの者が排斥され、屍が重なっていく中で、暗愚の王子ジョゼフはガリアの王となった。
無能王の誕生である。
戴冠式が終わって間もなくことだった。
ジョゼフの娘、今や王女となったイザベラ・ド・ガリアは部屋の中でじっとしていた。
脱ぎ散らかした衣服がそこら中に散乱し、イザベラ自身も長く美しいはずの髪の毛がボサボサになり、まるで病人のようだった。
青い髪のプリンセスは、ベッドの上で膝を抱え、しきりに親指の爪を噛んでいる。
そして時折怪鳥のような悲鳴を上げるのだ。
死人のように血の気の失せた顔だった。
ガチガチと歯の鳴る音が部屋の中に響いていた。
抑え難い恐怖が、イザベラの心を蝕んでいた。
怖い。
どうしようもない恐怖だった。
何故、どうしてこんなことになっている。
王女という輝かしい立場にいるはずの自分が。
思えば、あの時に父に会ったせいだ。
イザベラは数日前の、戴冠式の日を思い出していた。
あの日、あの選択をしなければこんな恐怖を味あわなくて、すんだ。
少なくとも、知らずにすんだのだ。
何も知れずにいれば、そうすれば、これほど脅えることもなく、平穏に暮らせていたのだ。
でも、イザベラは知ってしまった。
戴冠式が始まる前、青いドレスに身を包んだイザベラはすっかりと準備を整えていた。
後は従者がお時間でございます、と知らせに来るのを待つばかりだった。
この時、イザベラは父の顔を思い出した。
ほとんど顔を合わすことのない親子だった。
こういった公式の場でしか、まず会うことがない。
もとから家族のコミュニケーションは希薄だったが、イザベラにとってそれはもう慣れっこになっていた。
母が死んでから、その傾向はさらに強くなっていた。
だが、それでもこの時のイザベラは王女といっても、十五にもならない少女にすぎなかった。
父の顔を見たいと思うのは、当然であった。
いくらかの逡巡をした後で、父に会っておこうと考えたのも、別に不思議ではない。
父も戴冠を前にして、色々思うこともあるのだろう。
二人だけで会って話すのも、たまには悪くはない。
もしかすれば、機嫌よく優しい言葉のひとつもかけてくれるかもしれないと思ったのだ。
だから、父のもとへと向かった。
しかし、すぐにイザベラはそれを後悔した。
とても痛烈に。
その時、彼女は触れてしまったのだ。
父の、ジョゼフという男に巣食った狂気を。
そして、理解してしまった。
父にとって、自分の存在は欠片ほどの価値もないのだということに。
あの淀んだ、闇の塊みたいな眼。
あれが本当に自分の父なのか? あの得体の知れないバケモノが!?
この日から、イザベラの心から安寧というものは消え去ってしまった。
部屋に閉じこもり、ほとんど人を寄せ付けなくなった。
夜も満足に眠れなかった。
眠れば確実に恐ろしい夢を見た。
父の狂気を知ったあの時からだ。
イザベラの中で何かが砕けてしまったかのように。
解けることのないおぞましい呪いをうけたかのように。
見るのは父が死ぬ夢だ。
ジョゼフが死に、ガリアは再び鳴動する。
そして、あの呪わしい、イザベラの持とうとしても持てない、あらゆる善いものを生まれながらにして与えられた従妹が、女王となる。
イザベラはどうなったのか。
ある時は、断頭台で首を落とされた。
首が切断され、血が噴き出す感触で眼を覚ました。
ある時は魔法で八つ裂きにされた。
ある時は野に放り出され、野犬に食い殺された。
悪夢は、夢の中だけではなかった。
イザベラは起きている時も悪夢は襲ってきた。
窓の外を、いくつもの人間が泳いでいくのを見た。
血まみれになって、その瞳に憎悪をみなぎらせた人間が。
ある時は臓腑をしたたらせ、ある時は窓に張り付き、イザベラを威嚇した。
戴冠式の前までは、こんなものは一度だって見ることはなかったのに――!!
地獄だった。
生き地獄だった。
頼れるものは何ひとつなかった。
父は化け物だ。
母はとうの昔に死んでいる。
家臣にしても、いざとなればイザベラを裏切るに決まっている。
誰に助けを求めればいい?
懊悩でやつれ果てたイザベラは、その時天啓ともいうべき考えに至った。
「そうだ…。使い魔だ、使い魔を召喚すればいい……」
ふらふらと、イザベラはベッドから立ち上がった。
イザベラの思い立ったもの。
それは、自らの使い魔を召喚するということだった。
溺れる者は藁をもすがる、という。
この時のイザベラは、自分の魔法の才能というものを、ほとんど忘却していた。
いや、無理やりに忘れ去っていた。
そんなことを考えれば、瞬間に絶望のために杖を振るうことさえできなくなるかもしれない。
イザベラはすぐに杖をとり、呪文を詠唱した。
「五つの力を司るペンタゴン、我の運命に従いし使い魔≠召喚せよ――」
必死の思いをこめて、呪文を唱え、杖を振り下ろす。
杖から放たれた魔力を迸りによって空間が歪み、何かがイザベラの前に出現した。
「やったの、か?」
イザベラは必死で眼を凝らす。
何か、黒い塊のようなものがイザベラの前にある。
それはぶるりと身震いをして、膨れ上がった。
不気味なスライム状の生き物が形を変えるみたいだった。
「ひぃ」
イザベラは声にもならない声をあげる。
それは、人間の男だった。
膨れ上がって見えたのは、うずくまっていたのを立ち上がっただけにすぎない。
見たこともない装束を身につけているが、マントをつけているところを見ると、メイジなのだろうか?
両手にはめた白手袋、その甲に刻まれた紋章がその推測を確信に近づける。
手袋には、五芒の星が不気味に黒く光って見えたからだ。
ペンタゴン。
それは魔法の象徴。
地火水風、そして失われた虚無を加えた五つの属性を表すものだ。
異形の男が、イザベラを見た。
不気味な男だった。
つんをとがった、長い顎をしている。
長身痩躯で、頬はこけ、落ち窪んだ眼窩の下には、灰色の眼が殺気を放っていた。
ぞっとするような、死の匂いを漂わせる男だった。
「――娘」
男が唇を開いた。
不思議な磁力を発する眼が、イザベラを見据える。
「俺をここへ呼び寄せたのは、貴様だな?」
圧倒されたイザベラは声を発することができない。
何度か小さくうなずくだけで精一杯だった。
「そうか」
男は薄い唇を吊り上げた。
それは笑みという言葉がまったく噛み合わぬ冷たいものだった。
人ではない。
地獄の魔物の表情だった。
「ここは、どこか?」
「あ、ああ……」
イザベラは必死でしゃべろうとするが、言葉が出ない。
「答えよ!」
男が低い声で返答を求める。
「が、ガリア…。リュティス……」
イザベラは辛うじてその二つの単語を口にする。
ただそれだけのことで、疲労がどっと噴き出した。
そのままへたりこんでしまいたくなるような、まったく未経験の疲労だった。
男は鋭い眼で部屋の中や窓の外を睨んだ。
やがて、微かに表情を変えて、
「ほう。面白い、俺が、異界に召喚をされるとはなぁ……。まるで地下世界にくだった甲賀三郎のようではないか」
言いながら、男はくっくっくと喉の奥を鳴らした。
獣がうなっているような笑い声だった。
「では、娘よ。何故俺を呼んだ? ただの遊びというわけではあるまい。何しろ、お前は――」
鬼≠呼んだのだからな、と男は冷笑した。
オニ。
オーク鬼やトロル鬼の鬼と、同じような言葉だったが、そこに込められた意味はまるで違っているのがわかった。
吐き気を催すほどの、底暗い響きのある言葉だった。
「うああ…………」
イザベラは震えたが、この時男の背後――すなわち窓の外を見てさらに青くなった。
また、幻が見えた。
獅子頭のような人間の首が窓に張り付いている。
首は黄色い歯をむき出し、舌を突き出して部屋を覗き込んでいた。
「こんなものまでいるとはな……。ところは変わっても、人は同じか。異界でも同じとはまったくもって面白い」
男は口角を吊り上げて、窓に向かってゆっくりと手の甲をかざした。
五芒星をかざされ、幻の首は転がるように消え去った。
「娘――貴様、死人が見えるらしいな?」
男はすぐにイザベラを振り返った。
「し、にん? あれは、まぼろし……」
糸の切れた人形のように、イザベラは男を見た。
「そうではない。常人の眼には見えぬが厳然たる真実だ。貴様が見たのは死人よ」
「じゃ、じゃあ、幽霊!?」
「そうとも言えるか。なるほど、死人を見る女だから、俺を呼んだということか」
男は納得したように腕を組み、イザベラを睨みつけた。
「不幸だな、死人が見えるのは不幸なことだ」
なぶるような視線だった。
イザベラは邪眼ともいうべき瞳に睨みつけられながら、奇妙な安心感を抱いていた。
あの、父に感じた恐怖がどんどんと薄らいでいく。
目の前に、本当の化け物がいるからだ。
この男の底知れぬ妖気に比べれば、父ジョゼフの狂気など……!!
男の凄まじい妖気が、父からの呪いを打ち砕き、かき消していくような気分だった。
「あ、あなたは、メイジ?」
平常時の高慢な表情を全て捨て去り、イザベラはすがるように男に問うた。
「メイジ? 魔法……妖術を使うという意味では、そうだ」
男は微かにうなずいた。
「そうだな、陰陽師といってもおそらく貴様らにわかるまい。ここでは、その言葉が適当なのかもしれぬ」
「やっぱり。ペンタゴンをつけてるし……マントだって」
「ペンタゴン? 違うな。これは俺の国で生まれたものだ。俺たちはドーマンセーマンと呼ぶ」
男は首を振った。
「どーま、せいまん?」
不思議な響きの言葉だった。
「古代の、二人の偉大な陰陽師の名前を組み合わせたものだ。芦屋道満と安倍晴明のな」
男は唇を歪める。
(おんみょうじ……)
この男の住んでいた土地では、メイジをそのように呼ぶのだろうか。
「話を戻そうか。ここはどこで、貴様は何者だ? 何故俺を呼んだのだ」
男に促され、イザベラはたどたどしくも事情を説明した。
自分の置かれている状況。
父のこと、この国のこと。
「ずいぶんと手前勝手な話だな?」
男は冷笑を強める。
「貴様、鬼≠呼び寄せておいて、無事に事が運ぶと思っているのか?」
「ひ……」
男に威圧され、イザベラは身を硬直させる。
まるで邪視を受けた哀れな生贄のように。
「だが、それもいい。俺はいずれ俺の国に帰るが……貴様の言うとおりならばすぐというわけにかいぬようだ」
イザベラはうなだれる。
「貴様ら、呪われた王族と、この国にも多少の興味がわいた。おい、小娘、イザベラとか言ったな?」
男の灰色の眼がイザベラをのぞきこんだ。
「一つ教えてやろう。貴様の見る夢は予知夢だ。遠い未来を、夢を通して見聞きしているのだ」
「え!?」
「父親が死ぬのも、貴様が処刑されるのもな……」
「嘘だ……」
「嘘ではない。貴様の持つ霊感がそれを見させているのだ。言っただろう、不幸なことだとな」
男の呪いのような言葉に、イザベラは声を失った。
絶望だった。
「――貴様、生きていく覚悟はあるか?」
イザベラを見据え、男は言った。
「そんなものないよ……!」
イザベラは小さく、悲鳴のような声をあげた。
「母上は死んだ。父上は狂っている。私は、私には誰もいない。一人ぼっちだ……!!」
「それでいい。死人が見えるのもいい。これは――運命だと思え」
「うん…めい」
イザベラの声に、そうだ、と男はうなずいた。
イザベラの瞳には、手袋の五芒星が映っていた。
☆
気配を感じて、イザベラはゆっくりと眼を開いた。
とても、懐かしい夢を見た。
あの男と出会った時の夢を。
自分にとっては、師であり――
あるいは父とも呼べる男の夢を。
船は、どうやら到着したらしい。
部屋を出て甲板まで上がると、リュティスが見えた。
喧騒が街を包んでいる。
「ふん」
イザベラは唇を歪めて、街を見下ろした。
その表情は、彼女が昔から異界から召喚した男と同じものだった。
下船したイザベラは、崩壊したグラン・トロワを横目に風のような速さで歩いていく。
王宮の主が、現在の仮宿舎としている迎賓館を目指して。
「父上!」
部屋に入ると、王は古ぼけたチェストを、寝ぼけたような目で見つめていた。
「この騒ぎは一体何事ですか? ロマリアといきなり開戦したかと思えば、リュティスはまるでゴミダメ。おまけに国の半分が寝返ったという話ではありませんか」
「それがどうした?」
ジョゼフはうるさそうに娘を見やった。
そこには愛情など欠片も見えない。
道端に転がる石ころでも見るような視線だった。
しかし、娘はそれに罵声で返した。
「それがどうした? のんきですこと。エルフと手を組むわ、ハルケギニア中を敵に回すわ、一体何をお考えかしら!」
「誰と手を組もうが俺の勝手だろうが」
「へええ! ええ、そうですわね。この国は父上のものですからッ」
「気に入らぬというなら、どこへでも出て行け」
「父上」
イザベラがさらに言葉を口にしようとしたが、
「さっさと失せろ。お前を見ていると自分を見ているようで嫌になる」
イザベラは何も言わなかった。
言われるままに、黙って父王のもとを辞した。
父に背中を見せた後ろで、イザベラの口元にゾッとするような嘲笑が浮かんでいたことに、ジョゼフは気づきもしなかったが。
「自分を見ているようで、だと?」
扉を閉めた後、イザベラはカラカラと軽蔑を込めて笑った。
「笑わせるなよ」
吐き捨てた後、裾の長いドレスを着ているとは思えない速度で、イザベラは歩き出した。
混乱する王宮内を駆けて、プチ・トロワの自分の部屋と向かう。
そこでドレスを脱ぎ捨てると、軽装に着替えて上からマントを羽織った。
最後に両手に手袋をはめる。
甲に五芒星を刻み込んだ白い手袋だった。
「ドーマンセーマン」
あの男は、この紋章をそう呼んでいた。
おそらく、イザベラもそう呼び続けるだろう。
イザベラは蹴破るようにしてドアを開き、廊下を歩き出した。
プチ・トロワを出てすぐに、イザベラは足を止めた。
ふところに右手を差し入れ、
「誰か」
冷たい声で言った。
物陰から、複数の男たちが現れた。
いずれも手に杖を持っており、目つきが尋常ではなかった。
「イザベラ様、お部屋にお戻り願いますよう」
慇懃な口調とは裏腹に、まるで命令でもするように男たちは言った。
「何故だ?」
イザベラは唇の端を吊り上げて男たちを見返した。
「今は非常時にございます。お部屋でおとなしくしていただきたい」
「ほおお。で、それはいつまでだ?」
イザベラは道化のように眼を見開き、男たちを嘗め回すように見た。
男たちの顔に、不快の念が浮かぶ。
それにイザベラは嘲笑をぶつけた。
「私の首を手土産にシャルロットに願えるつもりか? 今さらあまり意味はないと思うけれどね」
「おとなしく部屋に戻れ」
男たちはせっぱつまった表情で杖を突き出し、イザベラを威嚇する。
「嫌だね」
イザベラは舌を出し、にたりと笑った。
瞬転、男たちの杖から風と炎が飛んだ。
イザベラはふところから出したものを投げつける。
それらが宙でぶつかり合った時、炎と風は一瞬で消えうせた。
イザベラの放ったものは、数枚の白い紙だった。
真ん中に、黒字で五芒星が描かれている。
「犬どもが!!」
イザベラは歯をむき出して笑った。
「よりにもよって、私のところにくるとはな。ならば望みどおり地獄へ送ってやる!」
嘲笑と共に、五芒星の描かれた紙が宙に舞い上がった。
それは歪みながら膨張し、不気味な獣へと姿を変えた。
獣はあっという間に男たちに襲いかかり、その急所に喰らいついていった。
「ぎゃああ!」
「なんだ、これは!?」
絶叫が響き渡り、赤黒い血が周辺を染めていく。
「騒ぐな。私の式神がお前たちを喰い殺すだけのことだ」
男たちが絶命するまで、イザベラは冷たい眼でその光景を見ていた。
地獄で亡者が炎に焼かれるのを見る、鬼の目だった。
男たちが死ぬのを見届けると、イザベラはマントを翻して、風のように王宮から去っていった。
異形の獣たちも従順に主の後を追う。
王宮を後にしながら、イザベラは思い出していた。
自分にことの術を教え込んだあの鬼≠フことを。
陰陽道。
真言。
卜占。
風水。
式神。
護法童子。
不老長生の秘術。
召喚されてから数年間の間、男は密かにイザベラをプチ・トロワから連れ出し、数々の異界の魔法を教え込んだ。
男のことも、イザベラの密かな修行も、誰にも知られることはなかった。
何故なら、イザベラはあらゆる意味で何者の眼中にもなかったからだ。
父ジョゼフは気づかなかったのは、ある意味で当然だった。
彼は【自分に似ていると思い込んでいる娘】をあえて、見ようとはしなかったから。
「どうして私にこれを教えてくれるの?」
度々イザベラはそうたずねた。
「貴様が鬼だからだ。つまり、俺の同類だからだ」
そう答える男の言葉を、イザベラはすぐには理解できなかった。
その男は、カトー≠ニいう不思議な響きの名を持った男は、もうこの世界にいない。
自力で異界の扉を開く術を見つけ、去っていった。
だが今ならば理解できる。
ヤマトという国を永遠に呪い続けるあの男と同じく、イザベラはハルケギニアを――
ブリミルを始祖とするメイジたちの支配するこの大地を永久に呪うものとなった。
なぜならば――
……………。
☆
多くの祝いの言葉が飛び交う中、ガリアは歓喜に溢れていた。
無能王ジョゼフが滅び、亡きシャルル・オルレアンの遺児、シャルロットが冠をかぶる日がやってきたのだ。
新たなる決意と怒りを胸にシャルロットは式にのぞむ。
けれど。
どれだけの人が知っているのだろう。
狂王と呼ばれた男は、結局のところ臆病で傷つきやすい、大人になることのできない哀れな少年でしかなかった。
あるいは、シャルルも同じであったかもしれない。
ましてや、
何とも厄介な、本物の鬼≠ェ一匹、ハルケギニアの大地を闊歩し出したことを、誰も知らなかった……。
「みんな、壊してやる」
鬼≠フつぶやきに、ハルケギニアの精霊たちはぞっと身を震わせていた。
。。。
というわけで、「帝都物語」から加藤保憲を召喚でした
タイトルは特に意味はありません
GJ
原作にある部分は殆ど変えてない辺りが上手いと思ったよ
この先のイザベラ様はどこまでやっちゃうのか気になるなw
うん、面白かった
タイトルを見て、即座にプロジェクトXという単語が頭に浮かんだのは俺だけじゃないと信じている
あのアゴが凄いひとかw
か、加藤ォォォォォォォォォォォォ!!
GJ、面白かった。
呼び出されたものが召還者に技術を教えて帰ったのはヘルミーナ以来久しぶりかな。
とにかく面白かった。
出来ればもう少し続きが読みたいけど、乙!
加藤と同等の技量なら事実上不老・転生して不死化だしなあ
加藤にあった弱点も無いからもう誰も止められないぜ
それでも虚無なら、虚無なら何とかしてくれる……かもしれない
加藤って小豆に弱いんだよね
短篇投下乙です
このスレで知ってから元ネタを読もうと思える作品が多くて楽しみです。
06話完成したので10分後くらいに投下します。
「さて…ルイズを預けたは良いものの、寝床を確保せねばならないか。」
ルイズを医務室に預けた海馬は、学園をうろうろしていた。
とはいっても、勝手に建物の中をうろうろしているわけにも行かず、警備員がいる以上学院の外に出ることも駄目。
(ふむ、モンスター召喚のほか、これについて色々と調べておきたい事はあるが、ここでまたやたらに騒ぎを起こすわけにもいかん。
しかたがないが、それは後に回すとして…)
ドンッ
などと考えていると、後ろから何かにぶつかられた。
「あいたぁ…うわ、洗濯物がっ!」
「ぬぅ、人にぶつかっておいて先に洗濯物の心配とは…」
海馬が振り返ると、そこには凄い量の洗濯物が散乱し、それを拾っているメイド服の少女がいた。
少女は海馬の声を聞き、しまったという顔をしながら慌てて立ち上がり頭を下げた。
「もっ申し訳ございません、前がよく見えなくて。失礼しました、ミスタ…あれ?」
そこで少女は海馬のほうを見たが、少女にとって海馬は見覚えの無い相手だった。
だが、出で立ちや全身からあふれ出る威圧感。そして何よりその眼差しから、貴族に間違いないだろうと判断した。
見覚えの無い相手だろうと貴族は貴族。
平民である自分が貴族に不快な思いをさせた。
その事に恐怖した少女は必死に謝罪をした。
「申し訳ございません!平民風情が貴族の方にとんだ失礼を!どうかお許しください!」
目に涙をため海馬に許しを請う少女。
「何を勘違いしているかしらんが、俺は貴族などではない。確かに貴様の不注意ではあるが、そこまで気にするような事ではない。」
「貴族じゃない?え?だって…」
確かに良く見ると、羽織っているのはマントっぽくはあるが実際はコートである。
「それでも、すみませんでした。でも…あれ?おかしいなぁ、私、この学院の人の顔は大体覚えているのですが…。」
「知らなくても無理は無い。俺は昨日ここに呼びだされた、使い魔だからな。」
「使い魔!?え?だってあなたは人間で…」
と、少女が言い終わる前に、海馬は左腕のルーンを少女に見せた。
「あっ!もしかして。ミス・ヴァリエールが平民の使い魔を召喚したって言う噂をさっき耳にしたのですが、あなたが?」
「そうだ。俺の名は海馬瀬人。今はルイズの使い魔をしている。」
「あ、申し遅れました。私はシエスタ。この学院でメイドとして働かせて頂いてます。」
礼儀正しく頭を下げるシエスタ。
「ところで、瀬人さんはどうしてこんなところへ?もう時間も遅いですし、ミス・ヴァリエールのところに戻られたほうが…。
それに、さっきなんか凄い音がして、何でもドラゴンが学生寮につっこんだとかで、大騒ぎになっていましたよ。」
「ふむ…そのドラゴンが突っ込んだ部屋というのが、ルイズの、つまり俺もいた部屋でな。
ルイズは気絶してしまったので医務室に運んだは良いものの、あの半壊した部屋に戻るわけにも行かず、どうしたものかと思ってな。」
もっとも、部屋を壊したドラゴンを呼び出したのは他ならぬ海馬であるのだが、もちろん口にはしない。
「ええっ!?良くご無事でしたね?…あっ、そう言うことでしたら…少し待っていただけますか?」
そういうとシエスタは、ぱぱっと落ちている洗濯物を拾い上げ桶に詰めこみ、持ち上げた。
「よいしょっと…。瀬人さん、もしよろしければ、私の部屋にいらっしゃいませんか?
ちょっと狭いですけれど、外で寝るよりはましかと思うんですが?」
「ふむ…寝所を貸してもらえるのは願っても無いが、迷惑ではないか?」
「大丈夫ですっ。それに、困ったときはお互い様ですよ。それじゃあ、私はまずこれをおいてきますので、少し待ってていただけますか?」
そういってよたよたと重い洗濯物を持って行こうとするシエスタ。
流石に量が多すぎるのか、見るからに危なっかしい。
これでは先ほどのように誰かとまたぶつかりかねない。
海馬は無言でシエスタから桶を奪い取った。
「えっと、瀬人さん?何を…」
「困ったときはお互い様なのだろう?それで?これはどこへ運べば良いんだ?」
「そんなだめですっ!これは私の仕事ですし、貴族の使い魔さんにそんなことをさせるわけには…」
「勘違いするな。俺は早く寝床に就きたいだけだ。」
シエスタに目を合わせず、先へどんどん進もうとする海馬。
「あぁっ!そっちじゃないです。…すみません、じゃあお願いします。」
洗濯物を片付けた後、海馬はシエスタの部屋へと招かれた。
その後どちらがベットで寝るかで一悶着があったりするのだが、結局シエスタがベットで、海馬は毛布だけを受け取り床で寝ることになった。
翌朝、海馬は何かカチャカチャという音で目がさめた。
「ぬ…?朝か…?」
「あっ、起こしちゃいましたか?」
シエスタは朝食の用意をしていたようだ。
「瀬人さんの分もいっしょに作っちゃったので、よろしければ食べてください。」
小さな机の上には、二人ぶんの朝食が用意されていた。
海馬は椅子を引き腰掛ける。
その向かいにシエスタが座る。
「大した物じゃないですが…お口に合えば良いんですけど。」
「わざわざすまないな。頂くとしよう。…ほぉ、これは。」
そういえば、これが海馬がハルキゲニアに来て最初の食事となる。
一口口に入れただけで海馬は感嘆の声を上げる。
「あの…口に合いませんか?普段どおりのものしか作れなくて…」
「いや、なかなかの味だ。そんなに謙遜する事は無い。」
(食事の姿もなんていうか…あれ?こういう時どう表現するんだっけ?
整ってる…?ん〜なんか違うなぁ。あぁ!あれだ!)
「ふつくしぃ」
「?あまりじろじろ見られるのは、愉快ではないのだが…?」
「はえっ!?あっ、すみません。」
気づかないうちに、シエスタは海馬のことを見つめていたようである。
慌ててごまかすように朝食を取るシエスタ。
「うむ、なかなかの味だったぞ。礼を言う。」
「いえいえ、お粗末さまでした。」
そういって食器を片付けるシエスタ。
「しかし、起床の時間が早いのだな。まだ日が登ってそうたってなさそうだが?」
「私たちはまず、貴族の方々の朝食の時間までに、食堂でその準備などをしなくてはなりませんから。
ですから、普段からこのぐらいの時間に起きているんですよ。
…って、まっずーい!急がないとお仕事に遅刻しちゃいます!」
空模様を見て時間を察すると、シエスタは慌てだした。
「まだ時間はありますけれど、もう少ししたら貴族の方々の朝食の時間なんです。
」
「ふむ、そうか。仕事ならば邪魔してはまずいな。
それにルイズの様子も見ておかなければならないしな。
世話になった。この借りは必ず返させてもらう。」
「そんな、借りだなんて思わないで下さい。困った事があったら、いつでも言ってくださいね。」
「ならばシエスタ。貴様が困ったことがあれば、俺にも声をかけろ。
できる限り力になってやる。」
「はいっ、ありがとうございます。瀬人さん。」
シエスタの部屋を後にし、海馬はルイズが眠る医務室へと向かった。
医務室の扉をノックしてみたものの、中からは返事が無いため、勝手に入ることにした。
そのとき、廊下の向こうから見覚えのある顔がこちらに向かってきているのに気が付いた。
コルベールである。
コルベールは海馬の姿を確認すると、こちらへ駆け寄ってきた。
「瀬人君。ミス・ヴァリエールの容態はどうなんだい?」
「いや、俺も今ここに来たばかりだ。ノックをしたが返事がないのでな。」
「そうか。いや、ミス・ヴァリエールに部屋の修理ことについて連絡してくるようにと、オールド・オスマンに命じられてね。
しかし大変だったね。君は、怪我は無いのかい?」
「問題ない。とりあえずルイズの様子を見に行く。」
そう言うと医務室にずんずんと入っていく海馬。
ベットの上にはぶつぶつと寝言を言いながら寝ているルイズがいた。
「うにゅ〜…もう食べられない…」
「…みたところ重症というわけではなさそうだね。」
「そのようだな。」
そう言うと海馬は気持ちよさそうに寝ているルイズの頭をガシッ!っと鷲づかみにし、そのまま数度シェイクした。
「うぼあっ!?なっ!なにごと!?」
予期しない謎の攻撃に慌てて目を醒ますルイズ。
「目はさめたか?」
「ちょっ…瀬人君。元気そうに見えても一応怪我人なのだから、あまり無茶な起こし方は…」
「醒めるに決まってるでしょう!!!!ああああんたはご主人様を何だと思って…って、ミスタ・コルベール!?」
「おはようございます。ミス・ヴァリエール。」
怒りを海馬にぶつけようとしたとき、ルイズは海馬以外に意外な人物が部屋にいる事に気が付いた。
よく見るとここは自分の部屋ではない。
そうだ、医務室だ。なぜ自分はこんなところに?
などと考えているうちにコルベールから口を開いた。
「昨日のドラゴン騒ぎで気絶した君を、彼がここまで運んだんだそうだ。
しかし災難だったね。ドラゴンに部屋に突っ込まれるなんて。」
そうだ、昨日!
ルイズは昨日の惨劇(主にルイズの部屋が)の事を思い出した。
「なにぶん急なことでしたが、あなたの部屋の修理は今日中には終わるとのことです。
体調に問題がなければ安心して授業を受けなさい。それじゃ、お大事にね。」
用件を伝えるとコルベールは医務室から退室しようとする。
「あっ、ミスタ・コルベール!お聞きしたい事が…」
「うん?なんだい?」
「あのドラゴンは…その…」
「あぁ、確かに不思議な話だね。この付近にはドラゴンが生息しているような場所は無いのに、一体どこから現れたのか。
そもそも目撃者は君と君の使い魔である瀬人君。そして飛び出す瞬間に部屋に入ったというミス・ツェルプストーの3人だけだ。
もしかすると、いまだ発見されていない新種のドラゴンかもしれない!
そう考えたらわくわくしないかい?」
教師と言うより、未知の生物に心躍らせる少年のような笑顔の禿げたおっさんがそこにいた。
コルベールはドラゴンそのものに興味を抱いているようで、事件そのものの不審点には気がついていないようだった。
「それでは、ミス・ヴァリエール。お大事に。」
そういうとコルベールは医務室から去っていった。
「……なんかややこしい事になっちゃっているような気がするわ。」
「ふむ…それで、これからどうする?」
「とりあえず着替えて朝食に行くわ。制服の代えは大丈夫かしら…」
「そうではない。俺がどうすると聞いたのは、俺の力の事だ。」
的外れな解答を返すルイズに呆れながら、海馬は自分の左腕のデュエルディスクを指差しながら尋ねた。
「うん、そうね。正直このままでもいいような気がするわ。」
「と、言うと?」
「そのままの意味よ。結果的にばれなかった物を、わざわざ公表する事も無いでしょ?」
「ふむ…意外だな。珍しい力を持った使い魔として表沙汰にすれば、自分の評判につながるとでも言い出すかと思っていたのだが。」
「確かに、そうしたいって少しは思ったわ。でも、ものには限度がある。」
「強力すぎる力は、安易に晒すものではないと?」
「ええ。ミスタ・コルベールの話を聞いている間に少し考えたの。
あんたは無作為にあのドラゴンを召喚したわ。
そしてあの時あんたは言った。
『モンスター、魔法、罠の3種類のカードを組み合わせた40枚のカードのデッキを
これに装着し、知恵と勇気をもって戦う、それがデュエルだ!』
つまり、40枚のカードがそこにはセットされている。
40種類の、私たちには未知の『魔法』をあなたは使えるといって差し支えないはずよ。」
このルイズの洞察力に、そして何よりも、未知の事を自らの常識の殻で否定せず受け入れる柔軟な思考力に海馬は素直に感心した。
「ふむ、なかなかの洞察力だ。」
「あんたの力はまだ未知だけど、故に下手に知られればアカデミーなんかにつれていかれちゃう可能性だって否定できない。
だから今はこのまま。無理してばらさなくてもいいと思うの。」
「ふっ、なるほど。見た目などよりは意外とモノを考えられるようだな。」
微笑を浮かべて医務室を後にしようとする海馬。
心なしかその表情は満足げだ。
「ちょっと!見た目よりとは何よ!見た目よりとはーっ!」
「朝食の時間に遅刻するぞ、ルイズ。」
「話を変えるんじゃないわよ!」
廊下をにぎやかにしながら、珍しい使い魔とその主人は、医務室から去っていった。
全速☆前進☆支援!
以上です。
やっと初日が過ぎ2日目を迎えられます。
さくさく筆が進めばいいなぁ
続きができました
2時くらいに投下します
たった今召還された二人はキスをしていたのである
それも濃厚なデープキスである
「近親相姦」
少しはなれたところにいた青い髪をした少女がつぶやいたのを隣にいたキュルケは聞き逃さなかった
「ちょっとタバサ!!あんた何言い出すのよ」
「あれ」
「あれって言たって何があるっていうのよ?って、ええええええ!!!」
今まで押し問答をしていたルイズとコルベール、
そしてそれを見ていたキュルケをはじめとしたクラスメートたちは召還された二人を一斉に注目し始めたのである
「え?って何してるのよあなたたち!?」
"えっ何々?召還できたと思ったら人間でしかも二人?"
"その上いきなりキスをし始めた?ってよく見たらあの女の子杖を持ってるじゃないのまさかメイジ?"
そんな考えが頭の中でぐるぐる回っていたときである
「何ってキスをしているんだよ」
「そうよ。キスをしているのよ」
「まさかお姉さんはキスしたことないの?」
ッボン
目の前の子供に言われた内容にルイズの思考は一気に吹き飛んだのである
「ああああんた達には、かっかん関係ないでしょ!!それにあなた杖を持っているじゃないの?まさかメイジなの?」
「「めいじ?」」
「そうよ」
「姉様メイジって知ってる?」
「さぁ、知らないわ兄様」
「知らない?だってその布でくるまれたのは杖じゃないの?魔法は使えないの?」
二人が首を横に振ったのを見てルイズは少し冷静さを取り戻した
よくよく見れば珍しい服装ではあるがそこらへんの平民に比べればすごく上等な服である
万が一メイジとなれば外国貴族のかなり上位の位だと思ったからである
「まぁいいわあんた達を使い魔としなくちゃいけないのよ」
コルベールと話していても一向に埒があかないと判断したのかそう二人に切り出したのだ
尤もルイズもコントラクトサーヴァントが失敗してしまえば何とかこの二人を家に帰してすぐにでも新しい使い魔を呼ぶつもりなのだ
「まっ、平民の子供に説明しても無駄だと思うから勝手にやらせてもらうわ」
そういうと契約の呪文を唱え二人にキスをした
といっても先ほど二人がしていたような濃厚なキスではなく軽く唇が触れる程度のキスだったのである
よたよたと後ずさりながら
「こんな子供とのキスはノーカンよノーカン」
呪文のように繰り返すルイズを二人は真っ直ぐに見つめていたのである
「なっ何よ、文句あるわけ?あんたたちだってしていたから一回位いいじゃない!!」
「兄様以外の人に無理やりキスをされてしまったわ」
「そうだね姉様。許せないね」
そういって二人は笑った、確かに笑っているしかしどことなく恐怖を覚えるような恐ろしい笑みだった
「マカロニの後にメインディッシュのボルシチを食べる予定だったのに、仕方ないわ先にデザートを食べましょう」
「うん。そうだね姉様。ボルシチは食べれなかったからね」
「そうよ兄様。この人たちには天使を呼んであげなくちゃ」
gkbr支援
以上投下終了です
明日また来ます感想とか要望とかあったらカキコよろしくお願いします
一応双子は姉御に殺された後に召還されたものとしています
いや、いいと思うが短すぎる・・。
スーパー双子タイムをやってしまうのかしら
せめてこの10倍は書いてから投下してくれ
せっかく支援したのに、1レスSSとかマジ鬼畜すぎるw
デュエルモンスターのデッキって40枚までだっけ?
40枚以上だった気がするけどそのあたりどうなの?
>>486 スレの空気読んでください、これが要望です
>>493 現行のルールだと40〜60枚
以前は40枚以上だったけどルールが変わった
>>493 デッキは40〜60枚、エクストラデッキ(融合・シンクロモンスター)が最大15枚まで、これが現行のマスタールール。
社長現役時代のルールだと、デッキは40枚以上、融合デッキは枚数制限無しになるのかな。
サイドデッキと言う物もあるけど、アニメではマッチ戦が無かったはずだから、社長が組んでるかどうかはわからん。
だから、デッキの枚数は融合除けば40で合ってるはず。社長の場合、40枚以上で組むメリットが特に無いデッキのはずだし。
皆様お疲れ様です。
例によってこんな時間ですが、予約が無ければ
4:35から11話目の投下をしたいと思います。
「おお……始祖ブリミルよ……なんという……」
ルイズにラグドリアン湖での顛末を聞かされたアンリエッタは、青褪めた表情で言葉を失っていた。
『アンドバリ』の指輪の能力と、それを操る者。それらを繋ぎ合せれば、アルビオン貴族派の破竹の勢いの裏側にある物が見えてくる。
「―――以上です。指輪の能力故に、姫さまに直接お話するのが最良と判断しました」
「……よく話してくださいました。『アンドバリ』の指輪をクロムウェルが所有しているとなれば、これは……」
脅威以外の何物でもない。ただ、実際に対峙する前に知ることができた。これは大きなアドバンテージだ。
少なくとも、ゲルマニア皇帝とガリア王の耳には入れるべきだろう。
その上で善後策を練るべきだ。このことが明るみに出れば、クロムウェルの求心力は大幅に低下する。
「姫さま。わたしはこの事を何とか逆手にとって、アルビオン王家の人々を救えないものかと思案していました」
フロウウェンの言う通り、ここまで傾いた天秤を一朝一夕で覆すのは難しい。
「死して後、意に反して顎で使われるなど屈辱の極み。このことをアルビオン王家に知らせ、亡命を勧めてみるということも考えたのですが……」
アルビオン王族の死体ですら、貴族派……いや、クロムウェルに利用される可能性が高い。というよりも間違いなくそうするだろう。
「亡命……ですか」
アンリエッタは泥を吐くように言葉を紡いだ。ルイズもまた理解していた。アルビオン王家の者を匿ったとあらば、貴族派は大義名分を得てトリステインを次の標的と定め、意気揚々と乗り込んでくるだろう。
アンリエッタの決断一つで、ともすればトリステインを戦争に導くことになる。懐かしい旧友との思い出話から一転。とんでもない話になったものだ。
アルビオンの貴族派はハルケギニアの統一と聖地の奪還を謳っている。実際は戦うのが早いか遅いかの違いでしかないが、そこがトリステインの命運を別けるのだ。
各国と連携して迎え撃つにせよ、アルビオンに封じ込めるにせよ、準備の時間はどうしても必要だった。だからこそのゲルマニア皇帝との婚約なのだ。
ただ、アルビオンに封じ込めておくというのは、『アンドバリ』の指輪のことを考えると不安が残る。クロムウェルを打倒し、その手から指輪を奪わねばならないだろう。
「わたくしは……」
何のかんのと理屈を捏ね回しているが、自分の心の内は解っているのだ。王党派が敗れれば、皇太子ウェールズの亡骸と心は、指輪の力によって涜神されるだろう。そんなことをされても、自分は今しているように静観できるだろうか。
元より、指輪のことがなかったとしても、アルビオン王家……いや、皇太子ウェールズを助けたいというのが偽らざる本音なのである。
それは、国家の大事と己の恋心からくる執着を天秤にかけているということだ。それにもとっくに気が付いていた。
アンリエッタはそんな自分の矮小さを呪っていた。それでも尚、愚かしいと知ればこそ想いは強くなっていく。
自分は公平にも冷静にもなれないという理解も手伝ってか、アンリエッタには亡命を勧めることを諦めるでも決断するでもなく、ただ答えを出すことを留保してきたのである。
だが、追い詰められたアルビオン王家には時間そのものが無い。そして、時間が無くなったのは自分とトリステインも同じだ。
マザリーニの献策は客観的に見れば上策だろう。ただ、それには一つ障害になるものがあった。自分がウェールズに送った恋文だ。
だから―――
(だからわたくしは、自分の決断が齎す結果が怖くて、マザリーニに全てを任せてしまうというの? トリステイン王家には杖が無い? それは他ならないわたくしが、マザリーニに頼り切っているからではないの?)
アンリエッタは唇を噛む。
「……ルイズ。わたくしはゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったのです」
「ゲルマニア! あんな野蛮な成り上がりどもの国に!?」
「仕方が無いのです。アルビオンの貴族派からトリステインを護る為には、早急にゲルマニアと結ぶ必要があった。トリステインは単独で貴族派と戦うのは難しい情勢なのですから」
「そう、だったんですか……」
優しげな笑みを浮かべるアンリエッタだったが、それが余計にルイズの目には悲しそうに見えた。
「アルビオンの王家に亡命を勧めるのは、時間的な猶予をトリステインから奪い去ってしまう。ですから、彼らを見殺しにするしかないのかと諦めていました。けれど……」
アンリエッタの表情から笑みが消える。何かを決意したかのような表情だった。
「指輪のことを知っていると、あの恥知らずで卑怯者の司教に伝えてやりましょう。
彼個人への揺さぶりで、判断を遅らせ、幾らかの時を稼ぐことができると思います。恐らく、彼らの掲げる貴族議会すらもクロムウェルの傀儡でしょうから。その間に、各国にこれを知らせ、軍事連合を組みます」
「……姫さま。それでは、姫さまの御身に危険が」
ルイズの顔が青くなる。
それもルイズは手の一つとして考えてはいたのだ。確かに多少の時間は稼げるだろう。しかし、そうした時にクロムウェルがどういう手に出るだろうか。
クロムウェルも馬鹿ではない。こちらが何時指輪の情報を得ていたか判らない以上、まずは既に各国諸侯に知れ渡っているものという仮定するだろう。
だが実際は、噂という形ですら指輪のことが自分の耳に届いてこない。であるなら情報を入手したばかりで公表されていない段階と判断し、情報の拡散を防ぐ意味で早急にアンリエッタの暗殺か誘拐という手に出るはずだ。
何せ、暗殺の対象となるアンリエッタでさえ、殺しさえすれば火消しに利用できるのだ。『アンドバリ』の指輪はそんな後ろ暗い使い方をするのにも、非常に有用だった。
それはそのまま、誰であれ、おいそれと信用はできないということも意味する。生前のその者に二心は無くとも、死者になれば、もうその意思は関係が無い。
アンリエッタは暫し黙考した後に、言った。
「そうですね。わたくしの身辺警護には平民の者を用いることにしましょう」
「平民……ですか?」
目を瞬かせて、ルイズはアンリエッタの言葉を反芻する。
「そうです。平民にディティクトマジックをかければ、普通は何の反応も示さないでしょう。
しかし、指輪の力で動いているならば或いは……いえ、先住の力を感知できなかったとしても、いざと言う時は、このわたくしの身一つでも抵抗できるでしょうから」
「なるほど……」
ルイズは素直に感心した。
指輪の力で護衛そのものを刺客としたとしても、メイジであるアンリエッタには抵抗の手段が残されている。直接手を出しにくいという状況を作れる。
元より、近衛の護衛は時間をほんの少し稼げれば良いのだ。それだけで他の味方が駆けつけ、暗殺や誘拐の成功率は格段に下げることができる。
「後は、誰をアルビオン王家に亡命を勧告する大使として遣わすか、ですね……」
アンリエッタは独りごちた。
諸侯に指輪の存在をすんなりと信じさせる為にはアルビオン王党派の協力が必要であった。誰がどのように裏切りをしたか、その不自然さを説いてもらう必要がある。
その点から言えば、当事者たる王党派には心当たりがある。それ故、彼らに指輪の実在を信じさせるのは苦労しないであろう。
いずれにしても指輪の存在を大義名分として各国で反貴族派の軍事連合を組むならば、王党派の協力は不可欠と言えた。
つまりアンリエッタの策は、王党派の亡命と協力が前提となっている。
昼間会話をした、ワルドという貴族はどうだろう。すぐにでも命を下して動かすことができる。その力量はマザリーニも認めるところだ。
「ヒース……」
ルイズは困ったようにフロウウェンに視線をやる。
フロウウェンは静かに頷いた。彼女がそう言い出すであろうことは既に予想がついていたからだ。
「ルイズの思うようにするといい」
少し意外そうな顔で己の使い魔の顔を見返すも、やがてルイズも大きく頷き返した。そして、アンリエッタに向き直り、言う。
「姫さま。その役目は是非、このわたしに」
「何を言い出すのです! アルビオンは内戦の只中なのですよ!」
ルイズが実力者だというならアンリエッタも手放しで任せただろう。しかし、アンリエッタはルイズのメイジとしての力量を耳にしたことが無い。ルイズが自分から申し出るまで候補になどとは考えていなかった。
「危険は承知の上です。姫さま。『アンドバリ』の指輪がある以上、誰が敵と通じているとも分かりません」
「それは、確かにそうですが……」
その点で言うならルイズには確かに問題がない。
まず、脈絡なく『アンドバリ』の指輪などという突拍子のないマジックアイテムを持ち出して、ルイズが自分を騙す理由が無い。現実味の薄い話だからこそ、彼女の言っていることに偽りは無いと思えた。
となれば、その忠誠にも偽りが無いということだ。
そして指輪の話が真実であったとするなら、ルイズが操られている可能性は限りなく低い。そうであるなら「指輪をクロムウェルが所有している」という、貴族派最大の弱点を自分に明かす必要性がないからだ。
ともあれ、ルイズは腹芸の類を一切使っていない。
それは宮廷で育ち、必要とあらば自分も行使することを厭わないアンリエッタにしてみれば、俄かには信じられないことだ。
困難な任務ということを百も承知で、自分から志願するというのは驚きと共に尊敬と信頼に値するものだった。
そういえばそうだった。昔からこういう真っ直ぐな子だったはずだ。アンリエッタは眩しいものように、ルイズを見やる。
「……わかりました。あなたの忠誠を信じます。わたくしの為……いえ、トリステインとハルケギニアの安寧の為に、アルビオンに向かってくださいますか?」
「一命にかえても」
ルイズは再び恭しく跪いて答えた。
「失礼ながら、少々よろしいか」
その時、フロウウェンが静かな声で言った。
「何でしょうか?」
フロウウェンはアンリエッタの問いかけに答えず、そっと壁沿いに部屋の中を進むと、おもむろにドアノブに手をかけ、勢いよく内側へと開け放った。
「うわあっ!?」
身体の支えを失って、何者かが部屋に転がり込んで来る。
「……何かと縁があるな」
鍵穴から漏れる廊下の明かりが遮られていた。誰かが扉の前で聞き耳を立てていると判断したのだが、正解だったらしい。
しかし、その者を見るなりフロウウェンの緊張は解けて、苦笑いを浮かべていた。部屋の中に転がり込んできたのがギーシュ・ド・グラモンだったからだ。
「ギーシュ!? あんた今の話を立ち聞きしてたの!?」
「ふっ。薔薇のように見目麗しい姫殿下をお見かけしたが、共の者を連れていなかったから、これは大事があってはいけないと、陰からお守りしようとしていたのだ。いや、僕のことよりも……」
ギーシュは立ち上がると、芝居がかった口調と仕草で言う。
「姫殿下! その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけくださいますよう」
「え? あなたが?」
「姫殿下のお役に立ちたいのです」
またモンモランシーと揉め事の種になるだろうな、と、ルイズとフロウウェンは揃ってそう思った。だがギーシュは女にだらしないが信念には正直だ。そういう点では信頼していい人物と言える。
「グラモン? あのグラモン元帥の?」
「息子でございます。姫殿下」
「あなたも力になってくださるの?」
「任務の一員に加えてくださるなら、これはもう望外の幸せにございます」
ギーシュの言葉にアンリエッタは微笑んだ。
「ありがとう。お父様も立派で勇敢な貴族ですが、あなたもその血を受け継いでいるのね。ではお願いしますわ。ギーシュさん」
その言葉と笑みだけですっかりギーシュは舞い上がってしまったらしい。
「姫殿下が! 姫殿下が僕の名前を呼んでくださった! トリステインの可憐なる花が! 薔薇の微笑みの君が僕に! この僕に微笑んでくださった!」
そのままギーシュは後ろに倒れてしたたかに頭を打ち、幸せそうな顔を浮かべたまま失神した。
ルイズはギーシュの奇行も見慣れているのか、咳払いを一つすると真剣な声で言う。
「では明日の朝、アルビオンに向かって出発することにします」
「王室の方々はアルビオンのニューカッスル付近に陣を構えていると聞き及びます」
「了解しました。以前姉たちとアルビオンを旅したことがございますので、地理には明るいかと存じます」
「どうかくれぐれも気をつけて。アルビオンの貴族たちは、貴女方の目的を知ったらどんな手を使ってでも妨害しようとするでしょう」
アンリエッタは机に向かうと、ルイズの羽ペンと羊皮紙を使って手紙をしたためる。
そして手紙を巻くと、杖を振るった。たちまち封蝋がなされ、花押が押された。
その手紙は二通。片方をルイズに手渡し、言う。
「これをウェールズ皇太子に」
「プリンス・オブ・ウェールズ? あの凛々しき王子さまにですか?」
ジェームズ一世ではないのだろうかとルイズが首を傾げると、アンリエッタが答える。
「ウェールズ皇太子はわたくしが以前したためた手紙を所有しているのです。あの手紙はゲルマニアとの同盟の妨げになるもので、それも手元に取り返さねばなりません。ですから、この手紙はウェールズ皇太子に。
もう一通のこちらは、その件の手紙の代わりに、クロムウェルが見つけるであろう手紙ですわ」
悪戯っぽくアンリエッタは笑う。
「少しは卑怯者への意趣返しになるでしょうか。吉報のつもりで人の秘密を覗き見たつもりが、そこには自分の秘密が記されていた、なんて」
そういうことか、とルイズも笑みを浮かべた。
それからアンリエッタは右手の薬指から指輪を引き抜くと、それをルイズに手渡してきた。
「これはあなたに。母君からいただいた『水のルビー』。せめてものお守りです。お金が不安なら、売り払って旅の資金に充ててください」
ルイズは深々と頭を下げる。
「この任務にはトリステインとアルビオンの未来がかかっています。母君の指輪が、アルビオンに吹く猛き風から、あなたがたを守りますように」
アンリエッタはルイズの手を握り、それからフロウウェンを見やる。
「どうか、わたくしの友のことをよろしくお願いします。頼もしい使い魔さん」
「この老いぼれで良ければ全力を尽くしましょう」
フロウウェンは一礼すると、言った。
「姫殿下。一つ提案がございます」
「なんでしょうか」
「まずは……この指輪をご覧下さい。これは遥か東、ロバ・アル・カリイエに伝わる魔法の品。『アンドバリ』の指輪には遠く及びませんが、変わった力を持っています」
フロウウェンが手にしている指輪は、水の精霊の話を聞いて、彼が提案したものだった。『アンドバリ』の指輪の話からヒントを得たものだ。
必要に迫られてやむなくテクニックを使ってしまった時の「言い訳」として、この指輪の力でテクニックを行使したのだ、と主張する腹積もりでいるのだ。
因みにルイズもフロウウェンの薦めで、人前でグランツを使ってしまった時の為に同じような指輪を手に入れている。
実際はディティクトマジックを掛けられた時の為にわずかな魔力が込められているだけの、安物の指輪なのだが。
しかし、ここでそれを言い出すということは、テクニックを用いて何かするつもりなのだろうか。
「中庭までご足労願えますか。その力をお目にかけましょう」
「姫殿下!?」
自分の寝泊りする部屋へと戻る道すがら、アンリエッタはそんな声に呼び止められた。
周囲を見回して、大きな翼が羽ばたく音を聴き、上空に声の主を見つけた。
「あなたは……」
声の主は、グリフォンに跨ったワルド子爵であった。
「殿下。供の者はいかがなされました?」
「わたくしに所用があったのです。彼らに責はありません」
失敗した、とアンリエッタは内心で思った。フードを被り直すことも忘れていた。それほどに、さっき見せられたものが物珍しかったからだ。
とはいえフードを被っていたら、不審者として呼び止められ、詰問を受けていた所だ。
「承知しました。このワルド。今夜のことは決して他言は致しませぬ」
グリフォンから下りて、ワルドは恭しく膝をつく。
そんなワルドを見ている内に、先程はワルドに使者を任せようかと思っていたことを思い出す。
友を政情の不安定な内戦真っ只中のアルビオンに送り込もうというのだ。
大人数を都合することはできないが、布陣は可能な限り強力な方が良いに決まっている。そこで、ワルドが信頼に足るかどうか、少し探りを入れてみることにした。
「……あなたの領地はラ・ヴァリエール公爵領の近くだと聞き及びましたが」
「ラ・ヴァリエール公爵領は隣地です。殿下」
「そうだったのですか。では、公爵夫妻とも面識が?」
「よく存じております。私事ですが、父親同士の口約束でラ・ヴァリエールのご息女と婚約もしている身の上です」
ワルドは苦笑いを浮かべた。
「まあ! それは素敵なことですわね。お相手はカトレア様?」
「いえ。ルイズ嬢です。殿下」
「そうですか。ルイズの婚約者……なるほど」
アンリエッタの口元に笑みが浮かぶ。これならば行けるかもしれない。
「ワルド子爵。あなたの忠誠と腕前を見込んで、頼みたいことがあるのです」
「なんなりとお申し付け下さい。殿下」
「明日、あなたの婚約者のルイズと、白の国アルビオンに向かってはもらえませんか。道中のあらゆる危険から、彼女の身と、彼女に持たせた手紙を守って欲しいのです」
ワルドは一瞬驚いたような顔になるが、すぐに表情を戻すと恭しく応えた。
「はっ。仰せのままに」
忠臣を装い答えるが、内心は笑い転げたい気持ちでいっぱいだった。
レコン・キスタは、アンリエッタが密かにウェールズに送ったという恋文を探している。
どういう経緯を経てその情報を得たものかワルドは知らなかったが、オリヴァー・クロムウェルの、あの『虚無』の力であれば、アルビオンの忠臣からそれを聞き出すのも造作のないことだろう。
この時期に、アルビオンに向かえなどというのは余程の事情だ。アンリエッタがアルビオンに使者を遣わすのならば、理由は十中八九それだろう。
あのルイズを使者にしたのは解せないが―――と思い差して、ワルドは心の内で首を横に振った。
そう言えばトリステイン魔法学院の女生徒が『土くれ』のフーケを追い詰めて、その手から宝を取り戻したのだと噂になっていた。
その女生徒の中に、ワルドはルイズの名を聞いた。なかなかどうして彼女もやるものだ。恐らくはアンリエッタも、その噂を聞いてルイズに任せようと思ったのでは無いだろうか。
或いは幼馴染であるアンリエッタのことだ。自分のようにルイズの未知数の才能に目をつけていてもおかしくはない。
しかし両親に叱られて泣いてばかりいた、あの小さな少女が『土くれ』を追い詰めるほどに成長するとは、とワルドは笑う。
自分もフーケを探していたのだが、どうにも尻尾を掴ませなかったのである。
そう。レコン・キスタからは、近年トリステインを騒がしている、フーケと名乗る盗賊との接触を命じられていた。
何でも彼女の本名はマチルダ・オブ・サウスゴータという名で、アルビオンを追放された貴族なのだとか。アルビオン王家の罪業を象徴するような存在だ。レコン・キスタにとっては政治的な利用価値が高い、ということだろう。
つい先日、この魔法学院にも現れたらしい。惜しい所で本人には逃げられたということだ。どうせなら捕らえていてくれれば自分の仕事もやりやすくなっただろうに。
やりかけの仕事が残っているというのは残念だが、それよりもこれは重要な任務となるだろう。
レコン・キスタの走狗としてスパイを続けてきたが、風のスクウェアたる自分の武勇もレコン・キスタに見せ付ける、絶好の機会が訪れたという事だ。
しかも、婚約者のルイズと一緒に、と来たものだ。いや、アンリエッタがルイズを信頼して使者としたからこそ、その婚約者である自分も、今日昨日顔を覚えられたばかりのアンリエッタに信頼されたのだろう。
いよいよ自分にも運が向いてきたらしい。
お前はよくよく素晴らしい婚約者だよ、ルイズ―――。
アンリエッタに跪くワルドの口元には、三日月のような笑みが張り付いていた。
「……ヒースは止めるかと思ってたわ」
アンリエッタと別れて部屋の中に戻ると、ルイズが言った。
「行きたがっているのが傍目から見て分かったからな」
「う……」
理想を信じてひた走るのは若さ故だ。それを悪いことだとフロウウェンは思わない。己にもそんな時分があったのだし、誰かの為に何かを為したいという理想や情熱があったからこそ軍に身を置いたのだ。
そんな自分が、ルイズを止める理由などない。ルイズは戦いに赴くわけではないし、何より自分で考え、その上で決断したことだ。彼女の未熟は、自分の経験が補えれば良い。
「ルイズはトリステイン王家に仕える貴族。ならば臣下として務めたいというのを止めるわけにもいくまいよ」
「うん……」
自分の行動や考え方を肯定してくれているというのがルイズは嬉しかった。
嬉しいのだが、素直に喜べない。
タバサやキュルケのようにトライアングルだったら……いや、せめて自分がラインにでも達していたなら、無力なままで行動を起こそうとすることに引け目を感じなかったのだろうか。
グランツは使えるようになった。そこから四大魔法を使いこなす為に自分の力を制御する為の訓練を重ねているが、相変わらず系統魔法はからっきしで、依然メイジとしては『ゼロ』のままだ。
「一つだけ、約束してくれるか? フーケの時のような無茶は絶対にしないこと。勝手な行動は自分だけでなく、仲間を危険に晒すということを忘れるな」
「わかったわ」
唇を噛んで小さく頷くルイズに、フロウウェンも頷き返した。
朝靄の中、ルイズ達は馬に鞍を取り付けていた。フロウウェンの姿は人目を引かないように、ということで執事の格好である。デルフリンガーも布で包んでおり、傍目からは貴族に付き従う使用人の姿だった。
ルイズは何時もの制服姿に、乗馬用のブーツという出で立ちだ。かなりの距離を馬で移動するつもりらしかった。
マグも持ってきているが、それはフロウウェンに預けている。
「僕の使い魔を連れて行きたいんだけど」
旅の用意をしていると、ギーシュが言った。
「オレは構わないが」
「いいけど、どこにいるのよ」
「ここ」
二人の言葉に、ギーシュが地面を指差す。
「いないじゃない」
ルイズの言葉に、ギーシュはにやっと笑い、爪先で地面を叩く。すると、土が盛り上がり、茶色の大きな生き物が顔を出した。
「ヴェルダンデ! ああ! 僕の可愛いヴェルダンデ!」
それは小型のクマほどもある巨大なモグラだった。その生き物を抱き締めてギーシュが頬擦りする。
「あんたの使い魔ってジャイアントモールだったの?」
「そうだ。ああ、ヴェルダンデ。君はいつ見ても可愛いね。困ってしまうほどね。どばどばミミズはたくさん食べてきたかい?」
ヴェルダンデは嬉しそうに鼻をひくつかせてそれに答える。
「そうか! そりゃよかった!」
「ねえ、ギーシュ。その生き物、地面の中を進んでいくんでしょう?」
「そうだよ。ヴェルダンデはモグラだからね」
「わたしたち馬で行くのよ?」
「平気だよ。結構地面を掘って進むの早いんだぜ。なあ、ヴェルダンデ」
首を縦に振るヴェルダンデ。
「地面を掘り進んで馬に着いていけるのか。かなりのものだな」
呆れたようにフロウウェンは呟く。
「何言ってるの。アルビオンに行くのよ。地面を掘って進んでいく生き物なんて、ダメよ」
「……空に浮かんでいるのだったか。しかし、この使い魔は優秀だと思うが」
「いやあ、ミスタ・フロウウェンは話せる! そうだとも! ヴェルダンデは可愛いだけでなく、とても賢いんだよ!」
「優秀って……ちょ、ちょっと!? きゃあ!?」
ヴェルダンデは鼻をひくつかせると、いきなりルイズに圧し掛かった。
「や! ちょ、ちょっと! どこ触って! くすぐったいったら!! やめなさい!」
モグラの鼻で身体のあちこちを突付きまわされて、ルイズは堪らずに悶えて暴れた。
「これは……なんというか芸術的だね」
それを見て、感慨深そうに悠長なことを言うギーシュ。
「こらこら」
見かねたフロウウェンがヴェルダンデの前足を抑えると、やっとのことでルイズはヴェルダンデの下から這い出す。
「懐かれたんじゃないかい? ルイズ」
「嬉しくないわよっ!」
ヴェルダンデはそれでも名残惜しそうに、ルイズの身体を鼻で嗅ぎ回った。やがて、ルイズの右手に光るルビーを見つけると盛んにその指輪に鼻を摺り寄せようとする。
「え? こ、この指輪? ダメよ! これは姫さまに頂いたものなんだから!」
指輪を庇うようにルイズが右手を後ろにやると、ヴェルダンデもそれを追おうとする。
「なるほど。指輪か。ヴェルダンデは宝石が大好きだからね。いつも貴重な宝石や鉱物を僕の為に見つけてきてくれるんだよ」
ヴェルダンデを抑えながらギーシュの話を聞いていたフロウウェンだったが、ふと上空を見上げた。
「グリフォンじゃないか。誰の使い魔だい?」
フロウウェンの視線を追ったギーシュが言った。その幻獣の背には何者かが跨っている。その人物が、いきなり宙に飛んだ。
マントを風に翻しながら中空で一転すると、鮮やかに地面に降り立ってみせた。
羽帽子を被った、凛々しい顔つきの貴族だった。
「ワルドさま……!?」
ルイズが驚いたような声を上げた。
「久しぶりだな! ルイズ! 僕のルイズ!」
人懐っこい笑みを浮かべて、男はルイズに駆け寄ると、その身体を抱え上げた。
「お久しぶりでございます」
はにかんだような笑みを浮かべて、ルイズが答える。
「相変わらず軽いな、きみは! まるで羽のようだね!」
「……お恥ずかしいですわ」
ルイズを地面に降ろすと、ワルドはギーシュとフロウウェンに向き直る。
「姫殿下よりきみたちに同行することを命じられてね。お忍びの任務ゆえ、一部隊付けるわけにもいかない。そこで僕が指名されたってワケだ」
そうして、羽帽子を取って一礼する。
「女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵だ」
「魔法衛士隊! それは心強いね!」
魔法衛士隊はトリステイン貴族の憧れである。それはギーシュも例外ではないらしい。
「彼らを紹介してくれたまえ」
帽子を目深に被り直しながらワルドがルイズに問う。
「ギーシュ・ド・グラモンと、使い魔のヒース……ヒースクリフ・フロウウェンです」
二人はルイズからの紹介を受けて、ワルドに一礼した。
「ルイズの使い魔が人とは思わなかったな」
ワルドは気さくな笑みを浮かべて、フロウウェンに近付く。
「僕の婚約者がお世話になっているよ」
「こちらこそ。ルイズに婚約者がいたとは初耳だ」
「お互いの親同士の口約束だけれどね」
かなり鍛えられた体付きをしているのが、衣服の上からでも解る。グリフォン隊の隊長だと言っていたし、相当な腕利きをアンリエッタは助っ人に寄越した、ということだろう。
ルイズの婚約者という立場ならば、任された理由にも納得が行く。
ワルドが口笛を吹くと、空を旋回していたグリフォンが舞い降りてくる。ひらりとそれに跨ると、ルイズに手招きした。
「おいで、ルイズ」
ルイズは気恥ずかしいのか、暫くもじもじとしていたが、やがてワルドに抱きかかえられて、グリフォンに跨った。
ワルドは手綱を握り、杖を掲げると高らかに叫ぶ。
「では諸君! 出撃だ!」
グリフォンが駆け出す。雰囲気に良い易いギーシュが、感動した面持ちでそれに続く。フロウウェンも馬に跨ると一行に続いた。
……少しだけ、フロウウェンにはワルドの瞳が気にかかった。
鷹のように鋭い眼光を湛える瞳に、本心からの笑みを浮かぶことがなかったからだ。婚約者のルイズに向ける笑顔でさえ、その瞳は氷のようなままで、変わらなかった。
覇気に満ちている若者は嫌いではない。だが、それにしてもワルドのそれは野心的に過ぎた。
アンリエッタは出発する一行を学院長室の窓から見詰め、祈っていた。
「彼女たちに加護をお与えください。始祖ブリミルよ……」
隣ではオスマンが鼻毛を抜いている。
「見送らないのですか? オールド・オスマン」
「ほほ、姫、見ての通り、この老いぼれは鼻毛を抜いておりますでな」
おどけたオスマンの仕草に、アンリエッタは首を横に振った。
「トリステインの……いえ、ハルキゲニアの未来がかかっているのですよ? 何故そのような余裕の態度を……」
「すでに杖は振られたのです。我々にできることは待つことだけ。違いますかな」
「そうですが……」
「なあに。彼ならばやってくれるでしょう。姫さまも、ご覧になったのでしょう?」
「……ええ」
オスマンにも話を通していた。昨夜見た、指輪の力。
何とも不思議な老人だった。
「フーケから宝物を取り返したのも彼の力によるところが大きい。どこかの星から来たというだけに、姫が昨晩目にしたものを含めて、色々隠し玉があるのでしょうな」
「星? 彼は星から来たのですか?」
「……そう申しておりました。ま、よく知らんのですがの」
喋りすぎたことをオスマンは察した。王室に全てを話すのは時期尚早というものだ。
学院長室の扉がノックされる。オスマンが入室を促すと、フーケが書類の束を抱えて入ってきた。書類を机に置くと、窓際のアンリエッタに気付いて恭しく礼をする。アンリエッタはそれに応えると、再び物憂げな顔で窓の外を眺めた。
「ならば、わたくしは星に祈りましょう」
そうしてアンリエッタはまた祈り始めた。
フーケはアンリエッタの視線を追って、そこにルイズ達の姿を見る。アンリエッタの思いつめたような表情から、一流の盗賊の勘で何かあったと鋭敏に感じ取ったらしい。
(……あのグリフォン……魔法衛士隊か? それが揃ってお出かけとはね。あの男も一緒、か)
魔法衛士隊に命令を下せるのは大后マリアンヌ、王女アンリエッタ、枢機卿マザリーニぐらいのものだ。アンリエッタの切羽詰った表情から、単なるお使いなどではないことは容易に想像がつく。
いずれにせよ、自分には関係のないことだ。
ただ少しだけ、あの使い魔のことが頭をよぎった。
先日の惚れ薬で酔っ払っていた時の行動や言動は、何から何まで不本意だったが、一つだけ目を醒ました今でも変わらない印象がある。
あの男は自分の父親に似て、不器用なお人好しだ。
それが、あの男にとって災いにならなければいいのだが。
貴族は嫌いだが、あの男は貴族ではない。だから、無事に帰ってくることぐらいは、あの無垢な姫のように祈ってやってもいいか―――
フーケは一瞬思い差して、祈りなど自分の柄ではないと心の内で自分を嘲り笑う。そして学院長室を退出した。
それから、昔最後に無事を祈った相手は、父親その人だったのだと、フーケは忌々しそうに舌打ちをした。
以上で11話の投下終了です。
乙
投下の間隔が早くて嬉しいですが、無理の無いように頑張ってください
乙でした。
フロウウェンじーさんはいい人だな…
老練なフロウウェンがいつワルドのことに気づくか見物ですなー。
水夏かあ、懐かしいな
サーカスネタなら小ネタでさくら召喚があったが
「一年中咲く桜」召喚もええ
王子時代のジョゼフが召喚しテレパスになってまうとかどうだろう?
帝都物語乙です
タイトルとギャプが凄すぎます(^_^;)
この世界の加藤になったイザベラ様の魂に平穏あれ・・・
B.B.Jokerの生物といい、帝都物語の加藤といい、
自分が好きだが人があまり知らない奴がSSで出てくるというのは、なんか嬉しいな
誰もいないのかな?
幕間と「ライブラリ」が出来たので投下予告、10時15分から。
『続・ギーシュの災難』
目の前で妙齢の女性が取り乱したと思うと、目下の少女を掴んで何処かへ走り出してしまった…。
『恋路多しグラモン』としてはいささか気にもなりながらも、ギーシュは何も言わずに突っ立っている。
引きずられて行くルイズを、ぼんやりと眺めていたギーシュにタバサが声をかけた。
「今日はありがとう」
抑揚少なき、実にタバサらしい語調だった。
ギーシュは手を振って答える。
「いやいや、僕こそ感謝したいよ。いい勉強になったし…」
正直これほど自分の魔法の精錬に夢中になったのは殆ど久しぶりの事だった。図面を引いたり、部品を作ってみたり、それを組み上げて一から錬金【アルケミー】で作り出したり…。
ギーシュ・ド・グラモンの目は怠惰な放蕩貴族の目から卒業していた。
そんなギーシュに気も引かれないタバサは、ベルトラックに下げているポーチの中から、一つの小瓶を取り出してギーシュに手渡した。
「…これは?」
「今日のお礼。私がシュバリエの仕事の時に使う薬。使うと元気が出る」
ギーシュが普段、余り生気を満たしている風情でないことをタバサは知っていた。図書館で時間を過ごす時、疲れた姿でぼんやりとテーブルに突っ伏している姿を何度も見た事がある。
ギーシュの手に渡された小瓶の中の薬は薄い水色をしている。空の青さを水で溶かすとこんな具合になるかな、とギーシュは思った。
「へぇ、そりゃあいいや。ありがとう。何から何まで…」
タバサは首を振って、「いい」とだけ言った。
「…でも、そうか。元気が出る薬ね…」
つぶやくとギーシュは無造作に小瓶の蓋を開けて、中の液体を揺らした。秘薬独特のなんとも言えない匂いが鼻腔を突く。
「どれ、それじゃ早速一口…」
「あ…」
タバサが一瞬、何か言おうとするが、ギーシュは構わず小瓶の液体を一口飲み込んだ。
タバサの目にはギーシュの喉が確実に含んだ薬液を胃に送り込んだ事を教える。
「ふぅ。…んー、なんだかスースーして、力が湧いてくるような…」
「違う」
「へ?……ん…んん?…」
タバサがなんとなく、困ったような空気を漂わせているのに対して、ギーシュは薬の効果で徐々に疲労が弱くなっていくのを感じ満足していたが、それが段々と体の内側にふつふつと熱を感じるようになってくる。
「な…なんだか…身体が凄く熱いような…」
「使い方が違う」
「へ?」
「それは飲み薬じゃない。布に浸して匂いを嗅ぐだけでいい」
「えぇ?!そ、それは早く言って…うっ?!」
一瞬呻いたギーシュは胸をかきむしるようにして蹲ってしまう。タバサは覗き込もうかどうしようか、迷っているように見える。
そうしている間に、徐々にギーシュの呻き声が、どうやら大きくなってきていた。
「うぅ…熱い、熱い、熱い、熱いぃ〜!」
一際の叫び声を上げたギーシュに、キュルケとコルベールはようやく傍でなにやら変事が起きている事に気が付いた。
「何?」
「どうかしましたかな?」
「あーーーつーーーいーーー!」
「「?!」」
ギーシュが野獣のように吼える。火が出そうなほど目を光らせて立ち上がると、ギーシュはコルベール塔前から猛然と走り出す。
「おおおおおぉぉぉぉぉぉ〜!!!」
土煙を上げて走り去っていくギーシュ。コルベール塔前に呆然と見つめる三人が残された。
「ど、どうしたんでしょうなぁ、ミスタ・グラモンは…」
「さ、さぁ?なんでか判る?タバサ」
話を振られたタバサは暫く無言のままポーチをまさぐると、静かにポーチの留め金を閉める。
「……知らない。薬を渡したら走り出していった」
ふるふると首を振るタバサ。キュルケとコルベールは暫くの無言の後、
「そう、変なギーシュね」
「変ですなぁ…。…む、気が付けばミスタ・ギュスがおりませんぞ?」
「ルイズ追っかけてったのかしら?せっかく組み手の後で皆で飲もうと林檎水持ってきたのに。飲む?タバサ」
「飲む」
「ミスタ・コルベール、テーブルお借りしますわね」
「構いませんぞ…はて、しかしエレオノール君は何用だったのでしょう…?」
かくしてタバサの記憶からこの一件が封印された。
さて、コルベール塔前で一行が解散していた、ちょうど同じ頃。
「ハァ、ハァ、お姉様、私、もう限界ですぅ…」
そこは女子学生寮の一室。部屋主は【香水】のモンモランシーである。
貴族の令嬢らしい調度に薬品とガラス器具が目を引くモンモランシーの部屋の一角に、不釣合いな革のベルトが各所に取り付けられた、台のようなものが置かれており、なぜかそこに一年生ケティは四肢をベルトで封じられて貼り付けられていた。
「駄目よ?ケティ。『リリスの卵』の孵化までそのまま我慢しなさい」
「ああん、でもでもぉ、ハァ、女の子の大事なところがぁ、ギュンギュンしてぇ、どうにかなりそうなんですぅ…」
息絶え絶えのケティは甘ったるく呻き喘いでいる。心なしか太ももをもじもじと擦り合わせていた。
『リリスの卵』とは、モンモランシーが魔法書を見ながら作った風変わりな秘薬である。
アメーバ状の魔法生物の一種で、メイジの消化器系内に寄生し、血液を養分に成長する。その代わりに興奮剤の一種を宿主に与える性質がある。
そしてある程度まで成長すると、アメーバ体が分解されて腸内に拡散、宿主の消化機能を助ける効果があるのだ。
もっとも、今ではもっと副作用の少なく、薬効の高い薬方が確立され、使われなくなったものである。
ケティはモンモランシーが作った『リリスの卵』の臨床実験に付き合わされていたのだ。
もっとも、既にギーシュとケティとモンモランシーの三人には『口に出すにはばかるような濃厚な関係』を築き上げてしまっており、三者の形成する歪で形容不可能なヒエラルヒーにおいて、ケティはモンモランシーの言葉にいいえと言えない体にされてしまっている。
モンモランシーはケティの意思を大部分無視してこの人体実験を行っていた。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
ケティは既に『リリスの卵』の興奮剤効果で意識がかなり朦朧とし始めていた。今すぐ自分の体を戒めるものを総てかなぐり捨て、満月の森の中へ走り出したくなるような焦燥感や圧迫感に体を絡め取られている。
「ふふふ…そうやって磔にされて肌を赤らめて息を荒げているととっても素敵よケティ。しばらくギーシュも来てくれなかったし、お互い色々と溜ってくるものね…」
不穏な科白を吐きながら、モンモランシーは磔のケティが緩く肌蹴ているシャツに、手を差し入れる。
大の字に固定されたケティの体が跳ねる。
「あはぁっ!お姉様の手が、ひんやりしてぇ、きもちひぃ〜」
「肌がとっても熱くなってるのね…」
妹分で遊ぼうとモンモランシーの指先が、少女の胸元からシャツへ移動しようとしたその時。
バッタン!と扉が壊れんばかりに乱暴に開け放たれた。
「「?!」」
それに驚いた二人の視線が出入り口に集まる。そこには春先のオーグルのような険しい顔のギーシュが体から湯気を上げて仁王立ちしていた。
「「ギ、ギーシュ(様)?」」
問われたギーシュはゆらりゆらりと寄り添っている二人に向かって歩いていく。歩きながら自分の胸倉を引っつかむと、悪趣味なシャツを無造作にひっぱり脱ぎ捨てた。
二人の目の前にたどり着いた時、ギーシュはなよりとした体の線とは裏腹に、ビキビキと筋の浮く上半身から湯気を上げ、人食い鬼もかくやの形相で二人に微笑んでいた。
「やぁモンモランシー。そしてケティ。暫く顔を見せなかったけど元気にしてたかな」
何気ない挨拶だが、どこかギーシュは動物のような芳香を漂わせており、しばらくご無沙汰だったモンモランシーはもとより、薬で興奮状態のケティの正常な判断力を
根こそぎ奪っていた。
「ハァ〜、ギーシュしゃま〜」
口角の端から透明な液体が垂れ始めているケティだった。
「暫く見ない内に随分息苦しそうだねケティ。戒めを解いてやろう」
段々と口調が可笑しくなっているギーシュは杖を抜いてケティの拘束を解くと、そのまま担ぎ上げてモンモランシーのベッドに投げ付けた。
軽々と浮いたケティがベッドの上でバウンドする。
「あうっ」
「ちょ、ちょっとギーシュ」
一瞬我に返ったモンモランシーだがギーシュはそれを無視してベッドに歩み寄る。
「さぁケティ。息苦しそうな君を一目見て僕はどうしようか考えた。こうしよう。君を骨の髄までむしゃぶり尽くす」
「はふ、はふ、はふ…」
もうケティはベッドの上で四足をついて『おあずけ』を食らった犬になっている。
どこか満足気なギーシュはゆらぁりと振り返ってモンモランシーを見た。
「ああそうだモンモランシー…」
どろりとした目と動物臭のギーシュがモンモランシーを見る。
「今日はいろいろあってすこぶる調子がいいから、……『今日はお前が下だ』」
「は、はひっ?!」
そう言ってけらけらと笑ったギーシュは、杖を一振りして蹴破ったドアを修復し、窓という窓を閉め切っていく。
そして真っ暗になった部屋に混乱したままのモンモランシーが、ギーシュの浮遊【レビテイション】でベッドに引き寄せられていく。
「はーはははは!沢山沢山啼かせてあげるからねー」
「い、いやぁ〜!…………ぁ♪」
その日、モンモランシーの部屋からは、ギーシュの高笑いと少女二人の艶やかな悲鳴が朝日が昇るまで耐えなかったという……。
翌日。
ギーシュは久しぶりに快眠感を感じて目を覚ました。カーテンの隙間から朝日が漏れ入っている。
(なんだかすごく楽しい夢を見れたような気がするなぁ…)
寝起きのギーシュはぼんやりとそう思った。
さて、起きたからには身支度くらいはしようと部屋を見渡すと、おや、ここはどうやら自分の部屋ではないらしい。
「…あれ?」
かといって、見知らぬ部屋ではない。調度品からみて、どうやらモンモランシーの部屋、のようだ。
「う〜…」
どうやら自分はまた彼女達に捕まって不届きな一夜を過してしまったようだ…。
正直言って今のギーシュはモンモランシーとケティを持て余していたのだった。好意を持たれるのはまったくもって嬉しいが、
愛されるより愛したいのが人の流れという奴で、二人の振舞はギーシュとしては『フォアグラにされるガチョウ』になった気分だった。
(さて、静かに部屋に戻らないと…)
そう思ってベッドの毛布をはごうと手をかけたとき、毛布の下にうずくまっているモンモランシーかケティか知らないが、どちらかがギーシュに抱きついた。
「はう!」
ビクッとわななくギーシュ。驚いていると、さらにもう一方の誰かが毛布のしたから腕を伸ばしてギーシュに張り付く
「はう!」
さらにビクッとわななく。そして徐々に、毛布の下にいたケティとモンモランシーが顔を覗かせた。
「…や、やぁ」
大体こんな状況に慣れてきたとはいえ、ギーシュの甲斐性ではこんなものである。
いや、以前であればケティもモンモランシーも寝起きの頭でふにゃっと崩した顔で腕枕でもせがまれたりもするのだが、今日はどうやら、様子が違った…。
「…ど、どうか、したかな?」
ケティもモンモランシーも、薄らと笑っている。
そして何より、目がどんよりと濁っている。
「ね、ねぇ。何かって言ってくれないかな?『おはよう』とか」
おっかなびっくり話しかけたギーシュに、ケティとモンモランシーはへにゃ、と笑顔を作る。
「「おはようございますごしゅじんさま」」
ぴったりと声を揃えて返してきた時、ギーシュは石像のように硬直した。
そして次の瞬間に毛布を全部剥ぎ取ってベッドから飛び出し、毛布に包まって部屋の隅に逃げ込んだ。
「これは夢だ、現実じゃない、寝るんだ、寝て起きればいつもの朝だ…」
ぶつぶつと独り言の中に耽溺しようとしていた。
「ああ、ひどいわぎーしゅ。あんなにしてくれたのに」
「知らない!知らないぞ僕は!」
「つれないぎーしゅさま。きのうのことはわすれませんわ」
「忘れてくれー!っていうかこれは夢だ!夢だってことにしてくれー!!」
ギーシュ・ド・グラモンは、二度と以前のプレイボーイに戻れそうもなかった。夢と現実の中間の存在になり、永遠に二人の仲をさ迷うのだ。
そして、夢だと思っても目が覚めないので――そのうちギーシュは、考えるのをやめた。
なお、当日ギュスターヴと一緒に百貨店に行ってみる予定だったのだが、以上の理由によりギーシュは外出することはなかった。
投下終了。
…何故私は朝っぱらからこんな挑戦的な作品を投下しているのだろう?w
ぶっちゃけレーティングぎりっぎりが『幕間』には付きまといます。はい。
では、少し間を空けまして『ライブラリ』を投下します。
ライブラリは本編中に出てきた小道具を取り上げ、読者の皆様に作品理解を深める一助にしてもらおうとしたものです。
ですが基本的に読み飛ばしていただいても本編には差し支えません。そういう意味で『幕間』とスタンスとしては同じです。
少し半端ですが40分から投下します。
ちょっと2つ確認したいんだが
結構人物の会話よりも背景の描写が多くなってしまっているんだがこのままでもいいかい?
それとも会話メインの方がいい?
あと話ができたらすぐに投下する?それともしばらくためてから投下する?
>>468 同情するなら金を(ry
が召還されるのかと勘違いしてしまった
えー、投下していいのかな?
割と短めなのでざらっと投下させていただきます。
『1.ドラングフォルドの魔法書断片』
私は今、アングル地方という所に滞在している。
ここは固守的と思われるトリステインの中でも、比較的自由な空気を感じる事ができる。
というのも、ここは良質の海岸線を持っていて、海運が割と篤い。規模こそ小さいが、国を越えた物流があるらしく、ここに住む人々はそうやって周りの国々から考え方や新しい器機を得ているらしい。
滞在中、私の名前を聞いて町の顔役が挨拶に来た。
ゲルマニアで発掘プロジェクトに参加した事は情報に聡い人たちには知られているらしい。ここにやってくるまでにも、似たような経験をした。
顔役の一人はこの地区の寺院の管理を任されているのだという。私の研究に役立つかもしれない、と思い、私はその顔役の方の家に厄介になることにした。
(判読不明)
…どうやら彼は実践教義運動に対して好意的らしい。彼の書斎にはいくつかのそれらしい本が見つかった。…(判読不明)
滞在期間が長くなってきた。私は今、一つの教区の改革の変遷の中にいる。之を直に見ることは滅多にない。…(判読不明)…彼の奉仕活動の手伝いをする傍ら、寺院の中庭で遊ぶ子供達の世話を任された。
この地方は自由闊達な住民を疎んでいるらしい領主が討伐を怠るために、オークの数が馬鹿にならない。子供を外に出してやれないのだという。
小さな寺院の中庭で遊ぶ子供達は、体力が有り余っているのだろう、よく喧嘩を起こす。
親の仕事を手伝えず、遊びにも不満足を感じているらしい子供達は、よく私に話をしてくれとせがんでくる。
せがまれるたびに、私はいろいろな話をしたが、彼らは私の話す『魔法の使えなかった王様』の話をよく聞きたがった。…(判読不明)
525 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/05(日) 10:43:11 ID:/ALl1vDE
人のいい使い魔の人続き描いてくれないかなー
ジャンボにならないかなー
(判読不明)
…私も加わった自警団は過去のオークが出る範囲から当たりを付けた森に入った。
(以下判読不明箇所が続く)
〜…近くに松明が燃えているのを確認してから、私が火の魔法でオークを焼き払うと、伏せていたらしい何匹かのオークが飛び出してくる…(判読不明)……
投げつけた杖にひるんだオークに私の脛がめり込み、オークの口から泡が吹き出た。何とか自警団の皆が森から抜けるまでの時間を稼ぐ為に、
私は久しぶりに拳を握りこんでオークの中に飛び込んだ。…(判読不明)
後日、私は教区の人たちに体術を教える事になった。習いに来た人たちの反応は様々だった。
特筆すべきは、庭遊びに飽きていた子供達がとても熱心に習ってくれていることだ。…(判読不明)
…彼は先日の集会で、実践教義に関しては現状を維持するということで決めたという。私はここの住民ではない。かりそめに軒を借りているだけだ。
だから彼らの決定に何かを言ったりはしない。少なくとも、教区の代表としては推奨も非難もしないのだという。
(判読不明。しかしここにペンで書かれた素描画が入っている)
…体術を習いに来る人が徐々に増えている。一人では指導が追いつかないので、出来のいい人に指導方法を教えながら進めている。
(判読不明箇所が続く)
…近頃、肺と心臓の発作が増えつつある。薬と術でごまかしているが、いずれ抜本的な治療をしなければならないだろう。
しかし、今ある金子ではそれも心もとない。教区の皆の手を煩わせる気も、ない。
(判読不明)
ここ数日は養生をしつつ、之とは別に筆を取っている。教区の皆が私が去った後も体術の鍛錬をしてくれるかはわからないが、もし、する気があるのであれば、
これが役に立ってくれるだろう…。
(判読不明)
今、私はゲルマニアの中部に向かう船の上にいる。以前知己を得た貴族に手紙を送った所、治療の当てを見つけてくれたらしい。
教区の皆は僅かながらの金子を包んでくれて、感謝に堪えない。
彼らには私の書いたいくつかの教本を遺していった。大事にしてくれると嬉しい。
泣きべそで私を見送ってくれた子供達の顔が目に焼きついて離れない…。
(文書はここで途切れている……)
投下終了。
朝っぱらから連続投下で申し訳ありません。
支援
鋼乙
なんというギーシュ無双www
いいぞもっとやれwww
GJ
じゃぁ出来次第投下します
というわけで11時くらいにひとつ投下します
新作では加藤召喚が良かった。
双子は先が期待できる。
質問するってのはここの空気を理解してないからだと思うんだ・・・
「いかん!!はなれr...」
二人の異変を感じ取ったコルベールがルイズの肩を掴みを二人から引き離そうとしたのである
掴もうとした右腕は宙をきった
「「きゃあああああああああああ!!!」」
少しはなれた生徒の一段にいたモモランシーとその友人と思われる数人の女子生徒から発せられた悲鳴でルイズは振り向いた
「な!?」
コルベールの右腕が宙をきったのである、そう右腕だけが
「せ、先生の腕が〜!!」
コルベールから少し離れた地面に、人間の頭くらいの大きさの斧ここが戦場であれば"戦斧"と呼んでもいいくらいの代物が突き刺さっていたのである
一目瞭然誰が見てもこの二人の子供の男の子が投げた斧だ
悲鳴が上がるホンの一瞬目の前の男の子が身を屈めたまでしか見れなかったが直感的にそう感じたのだ
コルベールの右腕が地面に着地したあたりで自分自身に湧き上がる恐怖、今まで感じた事もない生命の危機を感じてルイズは腰を抜かしてしまったのである
泣き出しそうになった、もしくは気を失いそうになった
16歳の女の子じゃなくてもそれは、あまりのショッキングな光景だったからだ
しかし現実は非常であるルイズは背中に自分の背後にいる人物から自分に向けられる何かを感じ取ってしまったのである
振り返るとさっきまで自分より小さいはずだった子供たちは見上げるほど大きかった
尤もルイズが腰を抜かしてしまったから地面に倒れこむような格好になってしまったのが原因だがそんなことよりも目の前の子供たちだ
人一人の腕を吹き飛ばしたのにもかかわらず笑っている、それも満面の笑みだ
逆光の中でもわかるほどの笑み
これがどれだけの意味を成すのか、そして、目の前の男の子によって振り上げられた斧がどんな結果をもたらすのか
もう一切の判断力及び思考能力をルイズは失っていた―――――
「きゃあああああああああああ!!!」
ゴドンッ!!
二人は悲鳴とともに仰向けに倒れてしまった
先ほど振り上げられた斧はルイズのわき腹近くに落ちそのままルイズは気を失った
失いつつある意識の中ルイズはなんとも不思議な感覚になりこうつぶやいた
「きれいね、空」
後から聞いた話だがその後二人も多少苦しんだあとすぐに気を失ってしまったそうだ
以上投下終了
なかなか文章を書くというのは難しいと思った
>>532 すまなんだ
いつもまとめをろmっているだけだからスレの空気にまだなじんでない
まとめをろmってないで文をまとめて投稿しなさい。
>>534 だったら何もせずにスレの空気を学ぶところから始めれば良いだけじゃないか?
>>535 なるべくまとめてから投下するようにします
>>536 了解
スレの空気を学びます
しばらく投下は自重します
起承転結を考えて話を組み立てれば……ネタは悪くないと思うんだ
フロウ氏執筆再開待ってたよー
題材がPSOだけにもの悲しい結末を感じさせる。ルーンが胸にあるのも伏線かな?
続き期待してます。
>>537 待ってますので
後、モモランシーになってますね。
怪異いかさま博覧亭より博覧亭ごと召喚。
ルイズと貧乳同盟を結成する蓮花
シエスタと癒し空間を形成する蓬
妖怪を見る度タバサと仲良く気絶する八手を幻視した。
ただ榊の性格上話が思いっきり別方向に行きそうな悪寒(妖怪的な意味で)
ドラクエの最初の村の住人の
「ここは何々の村だよ。」
しか喋らない奴召喚したらカオスだな。
>>542 確か小ネタで『武器や防具は装備しないと意味が無いよ』の村人が召喚されてた気が。
ちゃんとガンダールヴやってたよ、それしか喋れないけども。
社長乙!
寝起きなのに頭が回ってるなルイズ。うぼあーとか言ったくせにw
蛇の人はどうなったんだ?
心臓バクバク言わせながら本スレ初投下行って見ます。
時間は20分くらいからで。
支援〜
肩肘張らずにレッツトライの勢いで。
支援しますので、がんばって下さい。
「うーん……」
太陽の光と、何か大きなモノでわき腹をつつかれたような衝撃を受けることで、その日マグナの意識は覚醒した。
ぼやける視界をそのままに、大きく伸びをして野宿による肩のこりをほぐす。
あくびをしようと口に手を当てたところで、再び背後から、今度は頭を小突かれた。
マグナはうるさいなあ、と思いながら視線を衝撃の元凶に向けた。
「きゅい」
……。
沈黙するマグナ。
ようやく鮮明になった彼は、何か、とてつもなくでっかい生き物とばっちり目が合っていた。
からみあう視線と視線。好奇の色を隠そうともしない、でっけえ生き物の瞳。
「……?」
「きゅい?」
首をかしげるマグナ。つられて首をかしげるでかいの。
目の前のそれは、立派な翼に堂々とした体躯をもち、見事なまでに青い鱗が鮮烈で、パッと見、トカゲのような顔だった。
ドラゴンである。
朝、目覚めたら目の前にドラゴンがいた。しかも目が合った。
悩むマグナ。寝ぼけているので、即座に状況が理解できなかった。
具体的には、ドラゴンの好奇の瞳が自分に対する食欲なんじゃないかなー、と想像するのに十秒ほどかかった。
「うわーっ!???」
「きゅいきゅいー!?」
きっかり十秒。ようやく音をたてて、「ずざざ」と後ずさるマグナ。
ドラゴンびっくり。
マグナは反射的に腰の剣に手を伸ばしたが、まくら代わりにしていた剣は、鞘に入ったままドラゴンの足元に転がっていた。
色々とダメである。
「きゅいきゅい」
「ははは……は、話し合おう!」
「きゅいきゅい」言いながらジリジリと迫ってくるドラゴンに、わりと本格的に生命の危機を感じて後ずさるマグナ。
その実、ドラゴンは突然の大声に文句を言っているだけなのだが、あいにくマグナはドラゴン語を解さなかった。
しかし、ついに壁にまで追い詰められたマグナが、話し合おうと言った瞬間、ドラゴンは前進を止め、なぜかキラキラと目を輝かせて三倍速で「きゅいきゅい」鳴き始めた。
もちろん、三倍速だろうが三分の一だろうがマグナには「きゅいきゅい」としか聞こえない。
なので、まだ朝も早く、野宿と言うこともあっていい加減に眠いマグナは、増大する睡眠欲に引っ張られた。
(危険は、なさそう、だよな……)
そう楽観的に判断し、マグナはゆっくり目を閉じて睡魔の甘美な誘惑に身を任せ……。
「きゅいっ!!」
「あぐっ!??」
そして、ドラゴンの強靭な顎で額を一撃され、問答無用に覚醒したのであった。当然、涙が出るほど痛い。
マグナが鼻の奥のきな臭さと、額部の鈍痛に目を白黒させていると、ドラゴンは機界ロレイラルの銃器「ガットリングガン」のような勢いで「きゅいきゅい」と鳴き始めた。
突然ドラゴン語が翻訳されるような都合の良い事はなかったが、話はちゃんと聞けと抗議していることは、マグナにも想像できた。
「ごめん、まだ眠くてさ」
「きゅい……」
よく居眠りを注意されていたことを思い出して、マグナが小さな言い訳をしつつ謝ると、ドラゴンはしょぼんと頭を下げてしまった。
「あ、落ち込むなって。……起きちゃったから付き合うよ、それと今度はちゃんと聞くから」
そう言いながら、マグナが鼻先をなでてやると、ドラゴンは再び目を輝かせて「きゅいきゅい」言い始めた。
やはりマグナには「きゅいきゅい」としか聞こえないのだが、今度は聞く姿勢をとったためか、感情のようなものを感じることができた。
その感情に応じてマグナが適当に相槌を打つと、ドラゴンの方も素直な反応を返してくれる。そうなると、少し楽しくなってきた。
頭いいなお前などと言いつつ、その奇妙な「会話」を続けるうちに、マグナは自分の周りの景色が変化していることに気が付く。
いつの間にか、複数の幻獣や大型動物の類が、うるさそうにしながらもマグナの周囲の地面でくつろいでいたのである。
どうやら、自分が彼らの住居に寝床を求めたらしいことをマグナが気付くのに、それほど時間は要らなかった。
「あ、あの」
「うん?」
マグナがドラゴンの相手をしていると、背後から控えめな声がかかった。
厩舎に入ったことをとがめられるかと、マグナが覚悟をして振り向くと、背後には一人の少女が立っていた。
黒髪とメイド服が特徴の、清楚な感じがする少女だった。少女は幻獣が怖いのか、マグナから十歩ほど離れた位置にいる。
「君は?」
「は、はい。 学院でご奉公をさせていただいております、シエスタと申します。そ、その、厩舎が騒がしかったので……」
「あ、ごめん! もしかして起こしたのかな?」
「い、いえっ! そんな、貴族の方にご心配をいただくほどのことではなく……あうあうあう」
早朝から騒ぎすぎたのかと思ってマグナが頭を下げると、おどおどしていたシエスタは、今度は怒涛の勢いで恐縮しはじめた。
彼女の言葉によって貴族と勘違いされたことを知って、マグナは自分の姿を確認する。
くたびれた着衣はわらまみれで、触れてみた髪には寝癖がついていた。
貴族とは間違えようがない格好だった。
「ええと、シエスタさん?」
「し、シエスタとお呼び下さい!」
「はあ、じゃあシエスタ。俺は貴族じゃないよ?」
「え?」
ポカンとした様子のシエスタを前にして、マグナはとりあえず立ち上がると、まずは衣服についたわらくずをポンポンと払った。
「そもそも、こんな朝早くからわらまみれでドラゴンと遊んでいる貴族なんて居るわけないって」
「は、はあ……でも、それならあなたは一体?」
「名前はマグナ。昨日召喚されたルイズ、様の使い魔ってことになると思う」
マグナがとってつけた「様」とともに主人の名を告げると、シエスタはようやく納得したように表情を和らげた。
ゼロのルイズが平民を召喚したことは、同じく平民であることも手伝って、使用人の間でも有名だったのである。
「ミス・ヴァリエールが平民の使い魔を呼び出されたことは聞いていましたけど、本当だったんですね」
「はは。呼び出された日の内に部屋からたたき出されて、ご覧の通りだけどね」
おかげでわらまみれ、と肩を落としたマグナの様子に、シエスタはくすくすと可愛く笑った。
きゅいきゅいと鳴き声が聞こえたので、「友達は出来たけど」と付け足すと、ドラゴンが嬉しそうに鳴いた。
「竜になつかれちゃうなんて、マグナさんは不思議な方ですね」
「うーん、同じ使い魔だからかな?」
一瞬、自分が召喚師だからかなと考えたマグナであったが、口には出さずに別のことを言った。
それは、マグナの中に召喚師を名乗ることへの抵抗感があったためなのかもしれない。
「ところでシエスタ。顔を洗いたいんだけど、水の使えるところを教えてもらえないかな?」
「はい、いいですよ。そのままでミス・ヴァリエールにお会いになったら、マグナさん怒られちゃいますから」
クスクスと笑うシエスタに、マグナは恥ずかしそうに頬を指でぽりぽりとかいた。
「こっちです」ときびすを返したシエスタを追って、マグナは目覚めたばかりの右足を前に出す。
背後から聞こえる、名残を惜しむようなドラゴンの声に手を振って返しながら、マグナは昇ったばかりの太陽を見上げて、一日の始まりを噛み締めた。
以上です。
専用ブラウザが使いこなせず変なところで切ってしまいましたorz
あまり長くないですが、このくらいの容量でちまちま上げていきます。
sienn
うわ、支援しそこねた。
乙でした、イイまぐなですね!
スミマセン、元ネタは何ですか?
サモナイ2のマグナ、らしい
まとめに何話かあるってことは、これまでは避難所連載だったのかな?
乙
原作版(小説)オーフェンで希望したくなった。
希望なんてウザイだけなんだから一々言うなよ
こんにちは、では私もこれから第16話投下開始したく思いますが、前方進路よろしいでしょうか。
許可がいただければ15:15より投下開始します。
今回はタバサの冒険形式でいきます。
おお、すばらすぃい、支援です!
第16話
間幕、タバサの冒険
第一回、タバサと火竜山脈 (前編)
毒ガス怪獣ケムラー 登場!
ここで物語の時系列はややさかのぼる。
才人がツルク星人が気がかりになり、深夜学院を飛び出したとき、走り去る馬の姿を見ていた者がいた。
「きゅい、こんな夜更けにわたし達以外に誰なのね。あ、あれはギーシュさまをやっつけた平民の男の子なのね。
でもあんなに急いでどうしたのかね?」
「知らない……それより目的地が違う」
奇妙に陽気な声と、つぶやくように静かな声は、才人の耳に届くことなく彼とは別の方向へと消えた。
その翌日、トリステインの南方の国、ガリアの首都リュティス
人口30万、ハルケギニア最大のこの都市の郊外に、巨大で壮麗なるヴィルサルテル宮殿がある。
この宮殿の、中心から離れた別荘といった感じの小宮殿『プチ・トロワ』に昨晩の学院の声の主はやってきていた。
「花壇騎士七号様、おなり!」
衛士の声に続いて、広間に姿を現したのは、水面のような青い髪と瞳を持った小柄な少女、タバサであった。
そして、一段高い壇上からタバサをもう一対の眼が見下ろしていた。その髪と瞳の色はタバサとまったく同じで、
ふたりに血縁関係があるのは容易に想像できる。ただし、その瞳に宿る光は澄んだ湖の湖畔を思わせる青さを
持ったタバサとは対照的に、荒れた曇天の海のような黒ずんだ青に見える。
対極の光を宿した二対の青い瞳は、時間にしておよそ瞬き5、6回分ほど視線を合わせていたが、沈黙を
破って空気を震わせたのは、上段にいる暗い目の少女のほうであった。
「ふんっ、ようやく来たかい。ったく、何十回見ても安物の絵画見てるみたいで変わりばえしないねえ。
いっそのこと同じ顔の仮面でもつけたらどうだい、そうすりゃあたしもつまらないもん見なくて済むんだけどねえ」
いきなりの暴言、とても宮廷内で吐かれる言葉とは思えないが、それを咎める者はいない。それは声の主が
この場でもっとも強い権威を持つということに他ならない。
彼女の名はイザベラ、この国の王ジョゼフの娘にしてプチ・トロワの主、タバサから見れば従姉妹に当たる。
だが、そうすると王族の血縁であるはずのタバサがなぜこうして下僕のように彼女にかしずかなければ
ならないのか、それはこの国の中にも巣食う欲望と怨念に満ちた政争ゲームの、その敗者の立場にタバサの
一門はいたからで、特にそうした者への勝者の一族からの感情は、時に残酷さえ超えて禍々しい。
そして、今タバサが置かれている立場は、国の公にできない難題を秘密裏に処理する暗部の騎士団、
その名も北花壇警護騎士団といい、その一員の騎士七号が彼女の肩書き、それはいつ死んでもおかしくない
危険な仕事であり、彼女にあからさまな嫌悪と敵意を抱く従姉妹姫は、常にもっとも危険で難解な任務を
与えるのだった。
「…………」
「ちっ、反論のひとつもしないんだから、人形どころか空気に話しかけてるみたいだよ。まあいい、今回の
お前の仕事だ、受け取りな」
無造作に放り出された書簡をタバサは拾い上げて一瞥した。
「了解した」
「……おい、お前それ本気で言ってるんだろうな。字が読めないわけじゃないだろ」
顔色一つ変えずにそう言ったタバサに、イザベラは歪めた口元をぴくぴくと震わせて言った。しかしタバサは
まるで今晩の食事のメニューを言うように、指令書の内容を復唱してみせた。
「火竜山脈周辺で、最近頻発している火竜の人里への襲来の増加の原因を調査し、これを解決させる。および、
降下してきた火竜の討伐」
「あんた、わかってるのかい。火竜はハルケギニアじゃエルフに次いで敵にすることが危険とされてるほど危険な
幻獣、その炎のブレスは優に炎のトライアングルクラスに匹敵する。飛翔能力は高く、さらに皮膚は鉄の硬度にも
達するという。火竜山脈にはそんなのが何百匹と巣くってるんだぞ」
イザベラの言葉は誇張でもなんでもない事実である。普通のメイジならトライアングルクラスでも5人で1匹を
どうにかできるかどうか、普通なら「死んでこい」と言われるに等しい内容であるのに、眉一つ動かさないタバサに、
てっきり恐怖におののくであろう姿を想像していたイザベラは、自身の下卑た想像を外されて歯噛みした。
「あーあー、もういい。さっさと行きな、言っとくけどこの時期火竜は産卵期で気性が荒くなってるから精々
気をつけることだね。健闘を祈ってるよ」
忍耐力の限界に来たイザベラはそう言ってタバサを追い出すと、ちっと舌打ちした。
しばらくして窓の外を見ると、タバサが数ヶ月前に召喚したという使い魔の風竜に乗って飛んでいくのが見える。
イザベラにとっては、それが忌々しく、なによりうらやましかった。
(なんであいつばっかり魔法の才が……)
彼女は王族であるが、若くしてトライアングルクラスに上り詰めたトリステインやアルビオンの後継者らと違い、
未だにドットクラス、最低限の魔法しか使いこなすことができず、それがタバサに対して強いコンプレックスと
なっていた。それがタバサへの執拗な嫌がらせの原動力となっていたのだが、どんな非道な言葉にも命令にも
黙々として従うタバサを相手に、その陰惨な欲求が満たされたことは一度として無かった。
イザベラは、メイドが運んできたロマリア産50年物の極上ワインのグラスを取り上げ、一口すすると、ぺっと吐き出した。
「まずい」
彼女は、どうせ火竜山脈に行かせるなら、ついでにそこに生息する極楽鳥の卵を採って来させればよかったと
思ったが、今更呼び戻すこともできず。風竜が見えなくなるまで窓の外を見ていた。
「使い魔か……サモン・サーヴァント、そういえばまだやったことはなかったな……」
火竜山脈はガリアの南西、隣国の宗教国家ロマリアとの国境線にそびえ立つ6千メイル級の壮大な山脈である。
しかし、そこは地球で言うアルプスのような白銀の雪に覆われた寒冷の地ではなく、火竜の名が現すとおりに、
絶え間なく噴出する溶岩と噴煙により黒々とした地肌を現す、活火山の灼熱地獄であった。
タバサはシルフィードを一昼夜飛ばし、翌日の昼間には山脈近辺の街までやってきていた。
そこで食糧調達と、情報収集をおこなったわけだが、なるほど火竜が頻繁に襲来するというのは本当のようだった。
街のあちこちに黒くすすけた家や、全焼して土台しか残っていない家がちらほら見え、屋上に立って山脈方向を
見張っている人間の数も5人や10人ではない。
だが肝心の火竜が降りてくる原因については有力な情報を得ることができなかった。
竜は幻獣の中では頭のいいほうに入り、人里に近づけば攻撃を受けることを知っている。人間の力では倒すことは
困難でも多数を持って目や口を狙い、撃退することはできる。餌場としては大変不適当なのに、わざわざ困難を
承知で降りてくるほどの何かが山脈に起きたのか。
けれど、その何かがわからない。こんなときに自分から火竜山脈に乗り込んでいこうなどという物好きはいない
からだ。ただ、ここ最近小さな地震が頻発しているということだけはわかった。
「火山活動が活発になり始めたから、地上に降りてきた……?」
タバサはそう推測したが、すぐにそれを打ち消した。多少火山活動が活発になったところで、熱さを好む
火竜にはむしろ望むところのはずだ。
タバサは、街で得られる情報に見切りをつけるとシルフィードに乗り、火竜山脈を目指して飛び立った。
やがて遠目でも火竜山脈の黒々と切り立った峰々と、その上を乱舞する火竜の群れの姿が見えてきた。
「火竜の縄張りの外側ぎりぎりを飛んで、空からできるだけ観察してみる」
シルフィードにそう命じると、タバサは街で買い求めた望遠鏡を取り出した。するとシルフィードはいやいやを
するように首を両方に振ってタバサに"言った"。
「もう、お姉さまも無茶言うのね! 火竜はすごく気が荒い上に貪欲なのね。うかつに近づいたりしたら、
それこそ何十匹もやってくるのね!」
なんと、竜のシルフィードがしゃべったではないか。
「でも、あなたよりは遅い……風韻竜はハルケギニアで最速の生き物」
「そ、そりゃそうだけどね! 怖いものは怖いのね、お姉さまも一度目を血走らせた火竜の群れに追われて
みなさいなのね。尻尾のとこまで炎のブレスの熱さがやってくるのを感じたら、そんなことは言えないのね、
わたしたち韻竜は知識は発達してるけど、戦う力はたいしてないのね!」
そう、シルフィードはただの風竜ではない。ハルケギニアではすでに絶滅したと言われている、人間並みの
知能を有する伝説の竜族、風韻竜だったのだ。
ただし、表向きはただの風竜ということにしてある。幻の絶滅種などということが世間に知れたら、周りに
何をされるか分かった物ではないからだ、ルイズ達の前では一切しゃべらなかったのはそのためだ。
ただし、その反動からか、もしくは生来のおしゃべり好きか、タバサとふたりきりのときは無口な主人の分も
合わせてよくしゃべる。
「もう、もう、お姉さまは本当に火竜の怖さがわかってないのね。そんなんだからあの馬鹿王女がつけあがって
無茶な命令ばかり言い出すのね。そのうち吸血鬼とかエルフとか、そんなのを相手にさせられたらどうする気なのね!!」
タバサはシルフィードの抗議を右から左に聞き流すと、望遠鏡をかまえて山脈の頂上付近を念入りに観察した。
噴火口あたりから噴煙が噴出していることを除けば、特に異常はない。ただし、もしタバサが以前にも
この火竜山脈を訪れていたことがあったとしたら、宙を乱舞する火竜の群れが噴火口を大きく避けて
飛んでいたのに気がついただろう。
次に山脈の中腹あたりに目をやったタバサは、そこの明らかな異変に気がついて目を細めた。
また、シルフィードもタバサのそんな様子に気づき、背中の主人に声をかけた。
「どうしたのね。お姉さま?」
「まだ初夏なのに、木々が全部枯れてる。調べてみる、あのあたりに下りて」
「はいはい、まったく韻竜使いが荒いご主人様なのねー」
シルフィードはぶつくさ文句を言いながら、火竜を刺激しないように低空を飛んで中腹へ向かった。
だが、下りてみると中腹の山林や草原の状況は想像以上にひどいものだった。
「ひどいのね。なにもかも死に絶えてるのね……」
草木は一本残らず茶色に変わり、地面にはあちこちに鳥や鹿、ネズミから昆虫にいたるまであらゆる動物の
死骸が横たわっていた。
タバサは、きゅいきゅいと落ち着き無く周りを見回しているシルフィードを置いておいて、無表情のまま
地面に横たわっている鹿の死骸を検分して、それがのどのあたりをなにかにこすりつけたあげく、血を吐いて
死んだことに気がついた。
「お姉さま、何かわかったのかね?」
「窒息死してる、呼吸器官を破壊されて息ができなくなったのね。周りもみんなそう、原因は……」
「な、なんなのね? もったいぶらずに早く言ってなのね!」
「恐らく、毒」
タバサは喉の奥から搾り出すようにその忌まわしい単語を口にした。『毒』、その言葉が脳裏をよぎる度に、
彼女の胸に熱い怒りの炎が湧いてくる。しかし、今はそんなことを気にしている場合ではない。問題に
するべきは、これだけの生き物を殺した毒の正体である。
シルフィードは、タバサに毒と言われてうろたえていたが、やがてどうにか落ち着くと、人間に劣らないという
韻竜の知識を総動員してタバサに聞いてみた。
「ふぃーびっくりしたのね。けど、ここは火山なのね、ときたま毒の煙が噴出すのはあることじゃないのかね」
「……」
タバサは即答しなかった。確かに火山は時としてふもとの街一つを全滅させるほどの火山ガスを噴出する
ことがある。常識で考えればシルフィードの言うとおりだろう。また、毒性ガスのせいで火竜が山脈にいられなくなり、
ふもとに降りてきたと説明もつく。けれども、どうにも釈然としなかった。
これといって、物的証拠があったわけではない。しかし、火山から吹き出す有毒ガスが致命的な毒性を見せるのは、
窪地などに空気より重いガスがたまって濃度が濃くなった場合などがほとんどで、風通しのよい山腹でこれほどの
生物を殺すとは、よほど濃度の濃いガスが一度に大量にやってきたとしか考えられない。そして、それだけの
ガスを発生させたにしては火山はおとなしすぎる。
タバサが、どうにも自分を納得させられずに、石像のように固まって考え込んでいると、元々こらえ性のない
シルフィードがしびれをきらしてわめいてきた。
「もー、お姉さまったら、これは自然のせいなんだから人間にはどうしようもないのね。いえ、人間どころか
精霊の力、人間の言う『先住の力』でもこればっかりは止められないのね。大地の怒りには何人も逆らえません、
お姉さまはシルフィより頭がいいけど、これだけは間違いないのね」
一気にまくしたてたシルフィードのご高説をタバサはやはり黙って聞いていたが、やがてどうしても納得の
いく答えを出せなかったらしく、短くため息をつくと、再びシルフィードの背に乗り込んだ。
「もう少し調べてみる。飛んでいける限り山頂に向かって」
「えーっ、ほんとお姉さまはあきらめが悪いのね。火竜に目をつけられたら大変な……のっ!?」
シルフィードはタバサへの抗議を中断せざるを得なくなった。突然、足元から突き上げるような衝撃が伝わって
きたかと思うと、彼女達の立っている山腹が激しく揺れ動き、立ち枯れた木々がメキメキと音を立てて倒れていく。
「地震!? 大きいのね!!」
「飛んで! 早く!」
慌ててシルフィードは揺れ動く地面を離れて宙へ飛び立った。その瞬間、槍のようにとがらせた枝を振りかざした
枯れ木が、今までシルフィードのいた地面に覆いかぶさってきた。一瞬遅かったらふたりとも串刺しになっていただろう。
崩壊していく山林を見ながら、ふたりはこれが並の地震ではないことを瞬時に悟った。
「ふぃー、危なかったのね。けどまさか、噴火なのかね!?」
「かもしれない。離れて」
二人は同時に火口を見上げた。異変に気がついた火竜や極楽鳥が次々飛び立っていくのが遠目でもはっきり見える。
普段なら恐ろしいものからはさっさと逃げ出すシルフィードであったが、今回は好奇心のほうが勝るようで、空中に
静止して噴火が始まるのかと息を呑んで山頂を見つめていた。
だがやがて山頂から吹き出していたのは、赤いマグマや黒い岩石ではなく、真っ白い霧のようなもやであった。
「あれは……水蒸気? いや、あれは!?」
そのときタバサは見た。もやの中を動く二つの光る点を。
さらに、もやの中から、まるでガマガエルの声を数倍野太くしたような唸り声が響き、次の瞬間、風が吹いて
もやを一気に吹き払ったとき、二人はそこに信じられないものを見た。
「か、か、か、か、かかか、怪獣なのねーーっ!!」
シルフィードの叫びは、それを極めて簡潔かつ具体的に表していた。
姿は、全身灰色で四足歩行、トカゲのように地面をはいずっているが、背中には頑丈そうな甲羅がついていて、
背面を完全にガードしている。頭はカエルをさらに扁平にしたようにつぶれていて、大きく裂けた口の上に
ぎょろりと目がついている。先程のもやの中に見えた光はこいつの目玉だったのだ。だが、何よりもそいつの全長は
少なく見積もっても30メイルを超え、火竜がまるで小鳥のように小さく見える。
もし、この場に才人がいたら、そいつを見て。
「ケムラーだ!!」
と、言ったに違いない。
地球では、怪獣頻出期の初期に大武山に出現し、初代ウルトラマンや科学特捜隊と激戦を繰り広げた怪獣。
先程の地震はこいつが地上に出てくるために引き起こしたものだったのだ。
ケムラーは、のそのそと火口から這い出ると、山肌をゆっくりと下り始めた。
だが、その様子は当然火竜たちの目に触れる。自分達の縄張りを荒らされた彼らは、翼を震わせ、喉から
うなり声を上げて怒りを露にし、住処を荒らす不貞な侵入者に向かって一斉に襲い掛かっていった。
「あわわ、火竜たち、怒ってるのね。あっけないけど、あの怪獣もう終わりなのね。百匹以上の火竜に
襲われたら、炭も残さず灰にされちゃうのね」
シルフィードは、火竜に取り囲まれるケムラーに同情するようにつぶやいた。だが、シルフィードは大事な
ことを忘れていた。ケムラーが出てきたのは火山の火口なのだということを。
支援
そして次の瞬間、火竜たちの口から一斉に炎のブレスが吐き出され、ケムラーの全身を影さえ見えなくなる
くらいに火炎が覆い尽くした。
「大トカゲの丸焼き、一丁あがりなのね」
のんきそうにつぶやくシルフィードの見ている前で、次第にケムラーを包んでいた火炎が収まっていく。
そしてそこには、先程までとまったく変わらない姿のケムラーが、平然と煮えたぎった岩石の上に居座っていた
のである。
「ななな、なんなのねあの怪獣、岩をも溶かす火竜の炎を浴びて無傷だなんて、信じられないのね」
「……生き物の常識を超えてる。まさに、怪獣」
シルフィードもタバサも、その怪獣のあまりにも生物の常識からかけ離れた光景に驚かずにはいられない。
生き物を超えた生き物、それこそが『怪獣』と呼ばれる生物なのだ。
だが、効く効かないは別として『攻撃を受けた』という事実は、ケムラーの防衛本能をしたたかに刺激していた。
突然、ケムラーの背中の甲羅が、昆虫の羽根のようにがばっと空へ向けて割れて跳ね上がり、ケムラーは
火竜の群れに向けて大きくうなり声を上げた。威嚇しているのだ。
けれど、空を舞う火竜にとって、いかに大きく頑丈であろうと、地を這いずるだけのトカゲを恐れる必要はない。
彼らは、生意気にも吼えてくる相手に向かって威嚇し返してやろうと、ケムラーの正面に集まった。
その驕りが、破滅をもたらすとも知らずに。
ケムラーは、火竜が集まったのを見ると、大きく口を開いて火竜たちに向けた。すると、口の中が一瞬稲光の
ように発光した直後に、煙幕のような真っ黒い煙が放たれて、瞬く間に群れのほとんどを包み込んでしまった。
「煙!?」
てっきり炎でも吐き出すのかと想像していたタバサやシルフィードは、いったい何が起こったのかすぐには
理解できなかったが、煙を浴びた火竜たちが撃たれたツバメのように力を失い、バタバタと地上に落下して
いくのを見ると、タバサは血の気を無くしてシルフィードに怒鳴った。
「逃げて!!」
「えっ、な、なんなの!?」
「逃げて、風上へ向けて、早く!!」
「わ、わかったのね!」
訳の分からぬままシルフィードは全速でその場から離脱して風上へ回った。風韻竜であるシルフィードに
とって、風向きを読むなど児戯に等しいが、普段からは考えられないタバサの慌てようにさすがに無関心
ではいられなかった。
「これでいいのね? でも、なんなのね?」
タバサは地上に墜落した火竜の群れを杖で指した。すでにほとんどが絶命しており、その惨状は目を
覆わんばかりだった。泡を吹いて倒れているもの、白目を向いて血を吹いているもの、なかにはまだピクピクと
痙攣しているものもいたが、やがてすべて動かなくなっていた。
「猛毒の煙……あれを浴びたらひとたまりも無い」
「毒!? ということは、森を枯らしたのも、動物たちを殺したのも!!」
「あいつの仕業……間違いない」
ふたりは憎憎しげに前進を再開したケムラーを睨みつけた。
ケムラーの別名は『毒ガス怪獣』、奴の口から吐き出される高濃度の亜硫酸ガスは生き物を殺し、大地を
腐らせ、空を濁らせる。その猛威は過去も、大武山周辺の生態系を壊滅させ、大武市を死の町にしかけたほどだ。
だが、このまま奴をふもとに降ろしたら近辺の街はおろかガリア全域が危険にさらされる。意を決したタバサは
杖を握り締めた。
「あいつに後ろから近づいて」
「えっ、お姉さま、もしかして……やる気なのかね?」
そんな冗談でしょうと聞き返したシルフィードに、タバサは思いっきり真顔でうなづいてみせた。
「じょじょじょ、冗談じゃないのーね!! 今火竜の大群が全滅させられたの見たでしょう!! どこをどうしたら
戦おうなんて考えがでてくるの!? もうこれは騎士の領分を越えてます、軍隊を呼ぶしかないでしょう!!」
「ガリア軍全軍が集まったとして、あれに勝てると思う?」
うっ、とシルフィードは言葉に詰まった。たった一匹の超獣相手にトリステイン軍全てが敗退したのは、
シルフィード本人も見てきている。ましてやあの毒ガスの威力、人間ごとき何十万集まろうと、呼吸をしなければ
ならない以上勝ち目はない。
「それに、わたしの任務は、どんな理由があろうと失敗は許されない」
さらに、タバサは強い意志のこもった声で言った。
タバサの北花壇騎士という立場は、国の暗部を担当するだけに、どんな仕事でもできませんとは言えない。
第一、王位継承戦に敗れ、暗部の仕事でかろうじて命脈を保っているタバサが、仮に一度でも失敗したら、
イザベラをはじめとする彼女に敵対する王宮の勢力は、それをたてにタバサからその生命を含む全てを
奪い去ることだろう。
だがそれとこれとは話が違う、シルフィードは悲しそうな声で、もう一度だけタバサに聞いた。
「じゃ、じゃあ、軍隊でも敵わないっていう、そんな相手にお姉さまは勝てると思ってるの?」
「それをこれから試してみようというの」
シルフィードは頭の上から氷の塊を落とされたような衝撃を感じた。
「あー、シルフィは目の前が真っ暗になってきたのね。きっとこれは夢なのね、今頃本当のシルフィはやわらかい
わらの中で気持ちよく寝てるのね。そして朝になったら、お日様におはようって言うのね……って、痛っ!!」
タバサは杖の先で思いっきりシルフィードの頭をこずいていた。
「大丈夫、起きてる起きてる……心配しなくても、後ろからなら毒煙は受けないし、あいつの首は後ろを向けない」
言外に「行け」と言っているタバサに、シルフィードは心底がっくりしたが、仕方無しにその指示に従うことにした。
「シルフィはときどき自分がハルケギニア一不幸な竜なんじゃないかと思うのね。でも、お姉さまはどうせシルフィが
いなくてもやる気なんでしょう。はいはい、そんなお姉さまをシルフィはほっておけません。こんなお人よしな韻竜を
使い魔にできたことを始祖とやらに感謝するがいいのね。じゃあ、いくのねーっ!!」
長い独白の後、シルフィードは急上昇すると、ケムラーの真後ろ、山頂方向から一気にケムラーに接近した。
たちまち、怪獣の巨体が眼前に迫ってくる。タバサは呪文の詠唱を始め、攻撃目標を定めた。
選択した攻撃呪文は『ジャベリン』、氷の槍を作り出し敵を串刺しにする魔法。先の火竜の攻撃で、怪獣の
皮膚が熱に対して極端なまでの防御力を持つことを把握したうえで、物理的に皮膚を打ち抜くのが狙い。
そして目標とすべきは、比較的皮膚が薄いと思われる尻尾の付け根。
目標の真上に出たとき、タバサは小さな目を見開き、渾身の力で完成させた全長5メイルにもなる巨大な
氷の槍を打ち下ろした。
だが、ジャベリンはケムラーの皮膚に1サントも刺さることなく、先端からぐしゃりとつぶれて、美しいがまったく
無価値な氷の破片へと姿を変えてしまった。
「!?」
タバサは一瞬自分の目を疑った。数十サントの鉄板も打ち抜けるほどのジャベリンがまったく通用しない。
怪獣の防御力を完全に見誤っていたことに彼女は遅かれながら気がついた。だがそれは彼女の責任では
ない。ケムラーは鈍重な外見に反して、ジェットビートルのミサイル攻撃はおろか、ウルトラマンのスペシウム光線
さえ跳ね返した恐るべき経歴を持つ怪獣なのだ。
ただ、タバサが自分を失っていたのは、時間にしてほんの刹那のあいだだけだった。
戦いにおいて予想に反したことが起こるのは珍しいことではない。彼女はすぐに、自分の攻撃がこの怪獣には
通じないことを悟って、シルフィードに離脱するように命じた。
しかし、効かなかったとはいえ攻撃を受けたことに気がついたケムラーは、尻尾を持ち上げると、二股に分かれている
その先端をシルフィードに向けた。
「避けて!!」
とっさにそれが攻撃を意味すると察したタバサは、シルフィードの右の翼の付け根を叩いて叫んだ。
瞬間、怪獣の尾の先端から白色の光線が放たれふたりを襲ったが、タバサのおかげでシルフィードは間一髪のところ
で、右旋回でそれをかわした。だが、外れた光線は山肌をえぐり、固い火山岩でできたそれをバラバラに粉砕してしまった。
「あ、危なかったのね……」
どうにか攻撃の届かない高空まで逃げ延びたシルフィードは、寿命が100年は縮んだと息を吐き出した。
タバサのほうは、いつもの無表情に戻っているが、杖を握り締めた手は力を込めたあまり真赤になっている。
怪獣の防御力だけでなく、攻撃力も読み誤っていたことに、自分の判断力の甘さを痛感したからだ。なにが後ろは
死角だ。あんな武器がある以上、どこにも安全な場所などありはしない。
現状では、この怪獣の前進を止める方法は何も無い。ケムラーは文字通り無人の野を行くがごとく、山肌を
悠々と降りていく。その進行方向に小さな村があった。
「か、怪獣だーっ!!」
「た、助けてくれっー!!」
村にいた山師達が慌てふためていて逃げていく。
ここは、山脈のふもとにいくつかある鉱山村のひとつで、火山から採れる硫黄や、近辺で採掘される砂鉄などを
石炭を使って精錬している10軒ほどの小規模集落だが、ケムラーはその中央に一軒だけある大きな工場に近づくと、
火を落とす間もなく、煤煙を噴き上げていた煙突にかぶりつき、煙をゴクゴクと飲み込み始めた。
「け、煙を飲み込んでるのね……!?」
唖然と見守るシルフィードの眼下で、ケムラーはしばらくのあいだうまそうに煙を飲んでいたが、やがて
満足したのか、煙突から離れると、集落の家々に向かってあの真っ黒な煙を吹きつけた。
するとどうだ、煙を浴びた家々が土台からふわりと宙に浮き上がったではないか。そして、浮き上がった家は
わずかに宙を舞っていたが、ドアや窓からガスが抜けると、次々地面に落下して瓦礫の山に変わった。
「い、家が空を飛ぶなんて、いったいなにがどうなっているのね?」
「風船と同じ、煙を中に吹き込んで、その力で宙に浮かせてるの。多分、あいつは排煙が好きで、吸い込んだ
煙を猛毒に変えて吐き出すことができる。恐らく、これまでは火竜山脈の煙で満足してたんだけど、火山が
活動を開始したから、中にいられなくなって煙の多い人里に下りようとしてる……」
「ちょちょ、煙って、この近辺だけでも鉱山村はごまんとあるし、工場や製鉄所も入れたら煙の出るところなんか
ガリア中にいくらでもあるのね!」
シルフィードは言いながら自身の言葉の恐ろしさを悟っていった。つまり、あの怪獣にとってガリア中、
いやハルケギニア中の町々が餌場ということになる。
なんとしても、ここでこいつを食い止める。タバサは任務とは関係無しに、ケムラーと戦う覚悟を決めた。
それは、愛国心や使命感といったものでは言い表せない。
父が、母が愛したこの国、そこに生きる人々を守る。愛する両親に教えられた"クニ"を守ろうとする心。
そしてもうひとつ、彼女はまだ気づいていないが、あの毒ガスによって苦しみながら死んでいった火竜の姿に、
キュルケやルイズ達の姿が重なって、絶対にこいつを進ませてはならないと、彼女にそれを命じていたのだ。
続く
では、前編はここまでです。
支援どうもありがとうございました。
今回はガリアでの話なのでルイズや才人の出番はなし。当然ウルトラマンAの登場もありませんでしたので、
どちらかといえばウルトラQのようになりました。
それでは、次回は本邦初の生身の人間対巨大怪獣の戦いになります。
うーん、なんかタバサとシルフィードが万丈目と一平に見えてきた。
投下乙です
そういえばケムラーは一応は科特隊がとどめをさしたんだっけ?
しかしそれもウルトラマンのフォローと科特隊の新兵器あってのことだし
どうやってたおすのか想像つかん
乙でした!
どうやって倒すのか、楽しみです!
今までに無い程wktkしてる俺がいるww
続きが待ち遠しい! 乙です!
>>556 本スレ怖いということで、しばらく避難所の練習(+代理)スレで連載してた
最近殺伐としてるからな
だがそれがいい
>>552 ところで前回までは表題を末尾に付けてたけど、今回からは無いのかな?
Wikiのメニューのページを修正しようとして気付いたのだけど
投下予約なければ、16:55くらいにSSを初投下しようと思います。
分量としては6レス程度。
召喚元は「マルドゥックベロシティ」のウフコックです。
まぁ投下する方はそちらへ…だな
現在488KB
なわけで支援などが入っても13KBに収まるネタならいいが
よくわからんなら次スレ投下でOK
残り12kBか
向こうに移っちゃってこっちは埋めちまったほうがいいかな
582 :
577:2008/10/05(日) 16:55:41 ID:Ggr6q+7O
あ、補足。6レスと書きましたが、今回投下するのが6レス程度だけ、
という意味で、全体から見たらプロローグ程度です。
>>578-581 あ、失礼しました。ではそちらに投下します。
はえーな、もうそんないったのか
投稿が多かったのも有るけど無駄にaa貼るから早く容量尽きちゃうんだよね
500KBなら超人日記からA児召喚(ジャム付)
600レスいってないのに次スレは早いな
今回やたらと雑談の割合が少なかったんだよな
まあいいや埋めちまおう
あと10kbか
どうせ埋めるなら作家への応援に使わないか?
グルグルの人GJ!
続き楽しみにしてます、けどできればオヤジやギップルもいっしょに見たいです
ならば、自分もマネしてっと
社長の人GJ!
この先、どんなデュエルと舌戦を繰り広げてくれるのか、楽しみにしてます
ギフトの続きが読みたいなあ
蛇の人はどこへ行ってしまったんだ・・・
>>590 話は出来てる見たいだし、近日中に来てくれるのを待ってようぜ。
たまにあることだが不注意の割り込み予約に先を譲られるとなぁ……
乳酸菌が不足してきた。銀様とルイズのキャッキャウフフをーミーディアムの人ー
ガリア情勢いじってる作品が結構好き
とくに原作最新刊を読むともう・・・
しかしガリア情勢いじると原作トレースがほぼ不可能なんだな
さっき某所の「ゼロの冥王」を読んで思い出したけど、「イクサー2」召喚ってどうだろ?
>>595 それで書いてくれたら良いか悪いか判断するぜ
あのOVAあんま長くないからほとんどオリキャラになりそうじゃね
イクサー1ならルイズと
「これがシンクロ!!」とか使えてよさそうだが
黒蟻さんはもうこないのかな
黒蟻はあれだけでも読めてよかったと思える作品だけどやっぱり戻ってきて欲しいよなー
イザベラ管理人の続きを……ッ!
俺は!
待ってますんで、どうかひとつ。
500kbなら黒蟻ほか休止中の作品が大量復帰
500KBならティファニアが桃鉄の司会者ももたろう召喚。
トリステイン、ゲルマニア、ガリア、ロマリアで桃鉄勝負をすることに。
500KBなららくだい魔女とか児童書から召喚
いきなりSBRになったw
607 :
ゼロのグルメ :2008/10/05(日) 20:33:07 ID:CvPX0Tf/
……とにかく腹が減っていた
俺は仕入れた輸入雑貨を置いておく倉庫で南千住に格安の物件があるというので
見に来たが予想を上回るボロさだった
その上隅田川が近いせいか品物に最悪の湿気が強くサビやカビがひどい
全くの無駄足だった
「あんた誰?」
おまけにどうやら俺はまたも路に迷ったらしい
目の前には見知らぬ学校の生徒達がいた
「ルイズったら『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してるわ」
「さすがはゼロのルイズだ!」
みんなマントに杖を持っているのはなぜだろう?
でもある種の美意識が感じられる…
「ミスタ・コルベール!」
「なんだね。ミス・ヴァリエール」
「あの!もう一回召喚させてください!」
「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」
「どうしてですか!」
「決まりだよ。二年生に進級する際、君たちは『使い魔』を召喚する。今、やってるとおりだ…」
目の前の生徒が先生らしき人物に注意を受けているがこっちはそれどころじゃない
とにかくどこか店をさがさないと……
「ちょっとあんたどこに行くのよ!?」
まいったな…いったいどこに迷い込んでしまったんだ?
さっきから見慣れない景色が広がっている
イヤ…焦るんじゃない、俺は腹が減っているだけなんだ
腹が減って死にそうなんだ
「見つけたわ!あんた儀式の途中で勝手に出歩かないでくれる!?」
くそっ、それにしても腹減ったなぁ
どこでもいいから“めし屋”はないのか?
「コラ!無視するな!!」
608 :
ゼロのグルメ :2008/10/05(日) 20:34:43 ID:CvPX0Tf/
しばらく歩いているとそれっぽい建物が見えてきたぞ
ええい!ここだ、入っちまえ
「どうされましたか?」
「何か腹に溜まる物を…」
「シチューしかないですけどいいですか?」
「じゃあそれで」
注文をしてしまうと少し気が楽になり店内を見回すゆとりが出てきた
しかし…さっきのウエイトレスの格好は凄かった
今流行りのメイドさんというヤツだろうか?
「はい、おまちどうさまです」
「ほー、うまそう……もぐ」
なんとも素朴な味のシチューだ
子供の頃、夏休みに田舎のおばあちゃんちで食べたお昼かな?
しばらく食事を楽しんでいるとさっきの生徒がやってきた
「まったくこんなところにいたのね、さっきから人の話を聞かずに勝手にうろちょろして!
さあ早く儀式を済ませるわよ!!」
生徒のあんまりな物言いに思わずカチンと来る
「人の食べてる前でそんなに怒鳴らなくたっていいでしょう
今日はもの凄くお腹が減っているはずなのに見てください!
これだけしか喉を通らなかった!!」
「ハァ?あんたそれ大方食べてるじゃない?」
「フン!」
「がああああ!痛っイイ、お…折れるう〜〜〜〜〜〜」
「それ以上いけない」
ウエイトレスの一言でふと我に返る
あーいかんなぁ…こんな…
いかん、いかん
「……お勘定」
「は、はい…えーと800円です」
「ごちそうさま」
「…ありがとうございます」
俺はゆったりと店をでる
腹ははち切れそうだ…食いすぎた
俺は数メートル歩いたところで店を振り返った
おそらく…俺はあの店には不釣り合いな客だったんだろうな…
ようやく明治通りに出た、タクシーが来れば乗ろう
来なければ歩いて地下鉄日比谷線の三ノ輪駅に出ればいい、そう思った
俺は得体の知れない奇妙な満足感を味わっていた
通貨が何故に円w
○________
なぎはらえー |:|\\:::::||.:.||::::://|
|:l\\\||.:.|l///|
__ ィ ,. -――- 、 |:|:二二二二二二二 !
/ L / \. |:l///||.:.|l\\\|
/ ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / f / / l l l lハ |:|//:::::||.:.||:::::\\|
ト、 ,.  ̄ ̄Τ 弋tァ― `ー / 从 |メ|_l l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ フ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ \__∠ -――く __ .Z¨¨\ N ヒj V ヒソ l .l ヽ\| / /
ヽ ∠____vvV____ヽ < ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ ./ /
. \\_____ivvvvvvvv| V. ( ( /Tえハフ{ V / /
\! | / 入_.V/| >-ヘ \:::∨::∧ / ∠ ____
__ |\ l/V _{_____/x| (_|::::__ノ }ィ介ーヘ ./ ,. ---―――
)-ヘ j ̄} /| /___/xx| _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___
{ V /`7. /___./xXハ ( |:::::::::::::::::ハ >' ____二二二
. \_ |/ /___l XX∧ __≧__::::::::/:∧/ `丶、
| ヽ /____|]]∧ __|__L.∠ ム' <`丶 、 `丶、
| ', { |]]]>' __ ∧ l\ \ 丶、 ` 、
ノ } l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/ V' \ ヽ `丶\/
/ ∧ { \ | .|>' / // :/ :/ : ', l \ ヽ ,.-――┬
入ノ. ヽ く ヽ______7 ー―∠__ 〃 l :/ :l l \V
`ー′ \ `< | { / | /〃 :|/ __V/ ̄| ̄ ̄{_
○________
なぎはらえー |:|\\:::::||.:.||::::://|
|:l\\\||.:.|l///|
__ ィ ,. -――- 、 |:|:二二二二二二二 !
/ L / \. |:l///||.:.|l\\\|
/ ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / f / / l l l lハ |:|//:::::||.:.||:::::\\|
ト、 ,.  ̄ ̄Τ 弋tァ― `ー / 从 |メ|_l l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ フ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ \__∠ -――く __ .Z¨¨\ N ヒj V ヒソ l .l ヽ\| / /
ヽ ∠____vvV____ヽ < ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ ./ /
. \\_____ivvvvvvvv| V. ( ( /Tえハフ{ V / /
\! | / 入_.V/| >-ヘ \:::∨::∧ / ∠ ____
__ |\ l/V _{_____/x| (_|::::__ノ }ィ介ーヘ ./ ,. ---―――
)-ヘ j ̄} /| /___/xx| _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___
{ V /`7. /___./xXハ ( |:::::::::::::::::ハ >' ____二二二
. \_ |/ /___l XX∧ __≧__::::::::/:∧/ `丶、
| ヽ /____|]]∧ __|__L.∠ ム' <`丶 、 `丶、
| ', { |]]]>' __ ∧ l\ \ 丶、 ` 、
ノ } l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/ V' \ ヽ `丶\/
/ ∧ { \ | .|>' / // :/ :/ : ', l \ ヽ ,.-――┬
入ノ. ヽ く ヽ______7 ー―∠__ 〃 l :/ :l l \V
`ー′ \ `< | { / | /〃 :|/ __V/ ̄| ̄ ̄{_
500kbなら俺に創作意欲がわきまくる
せっかく暇ができたのに筆がすすまねぇ…
○________
なぎはらえー |:|\\:::::||.:.||::::://|
|:l\\\||.:.|l///|
__ ィ ,. -――- 、 |:|:二二二二二二二 !
/ L / \. |:l///||.:.|l\\\|
/ ̄ ̄ ̄ ̄ 7 / / f / / l l l lハ |:|//:::::||.:.||:::::\\|
ト、 ,.  ̄ ̄Τ 弋tァ― `ー / 从 |メ|_l l_.l斗l |ヽ V |:| ̄ フ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ \__∠ -――く __ .Z¨¨\ N ヒj V ヒソ l .l ヽ\| / /
ヽ ∠____vvV____ヽ < ≧__/ ゝ、t‐┐ ノ .|┐ ./ /
. \\_____ivvvvvvvv| V. ( ( /Tえハフ{ V / /
\! | / 入_.V/| >-ヘ \:::∨::∧ / ∠ ____
__ |\ l/V _{_____/x| (_|::::__ノ }ィ介ーヘ ./ ,. ---―――
)-ヘ j ̄} /| /___/xx| _Σ___/| | |V::::ノ/ ∠___
{ V /`7. /___./xXハ ( |:::::::::::::::::ハ >' ____二二二
. \_ |/ /___l XX∧ __≧__::::::::/:∧/ `丶、
| ヽ /____|]]∧ __|__L.∠ ム' <`丶 、 `丶、
| ', { |]]]>' __ ∧ l\ \ 丶、 ` 、
ノ } l ̄ ̄ ̄.|] >' ,. '  ̄ / .// :/ V' \ ヽ `丶\/
/ ∧ { \ | .|>' / // :/ :/ : ', l \ ヽ ,.-――┬
入ノ. ヽ く ヽ______7 ー―∠__ 〃 l :/ :l l \V
`ー′ \ `< | { / | /〃 :|/ __V/ ̄| ̄ ̄{_