あの作品のキャラがルイズに召喚されました part133
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?
そんなifを語るスレ。
前スレ
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part131(実質part132)
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1208700027/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ --------------------------------------------------------------------------------
__ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 `ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
--------------------------------------------------------------------------------
_ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
〃 ^ヽ ・クロス元が18禁作品であっても、SSの内容が非18禁である場合は
J{ ハ从{_, 本スレへの投下で問題ないわ。
ノルノー゚ノjし ・SSの内容が18禁な展開をする場合はクロス元に関わらず、
/く{ {丈} }つ 本スレではなく避難所への投下をお願いね?
l く/_jlム! | ・クロス元が型月作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
レ-ヘじフ〜l ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
--------------------------------------------------------------------------------
,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
● 「こっ、こっ、こっ、こっ、こっ、この…バカ犬っ!!!」
┠〜〜〜┐ちゃんとここにいてぇ、わたしのちかくでぇ
┃ ● ∫ ずっとわたしをい〜んつもい〜んつもみ〜んつめてなぁさぁ〜い
┠〜〜〜┘ よそみしてたでしょ、ほかのおんなのこぉ〜
┃ おしおきするのふぅ〜らりふぅ〜らりふぅ〜らちなやつうは
┃ (ん、ちゃちゃちゃちゃちゃちゃ)
┃ どんたーちきかないからねいーいーわ〜けは
┃ たちみーつ〜んかれたかぁ〜ら
┃ ね・え・かたをっかしてよっ
┃ す〜き〜よ〜ンなんてうそ〜よっ
┃ き〜ら〜い〜ンこれもうそだわん
┃ ないないないぃだめよかんちがいぃ〜〜〜〜〜っ
┃ だからすぅきぃよっなんていわない
┃ のんのんのんどっこかへいったら
┃ ぜえったいにっゆるさないからねぇ〜〜〜〜ん ・・・だぁって
┃ ほんと〜はだれ〜よ〜りそンばンにンいンたあ〜いの
┃ あ〜い〜の〜く〜さ〜り〜でっさんっぽっしましょ
敬礼 (`・ω・´)ゞ
このぐらいまで単純化できそうな気がする。
爆発召喚
キス契約
「ゼロ」の由来判明(教室で爆発)
使い魔の能力が明らかに(ギーシュ戦)
デルフ購入
フーケ戦
舞踏会
最近はその流れでいかに飽きない話を作るかに凝りがち
>>16 爆発
平民プゲラ
コルベール問答無用さっさと汁
キス契約
フライに唖然とする
説明はぁどこの田舎者?
何者であろうと今日からあんたは奴隷
二つの月にびっくり
洗濯シエスタと接触
キュロケフレイム顔見見せ
みすぼらしい食事厨房でマルトー
教室で爆発片付け
昼食シエスタの手伝い香水イベント
オスマンコルベール覗き見
ギーシュフルボッコ場合によって使い魔に弟子入り
キュルケセクロスの誘いしかし使い魔はインポテンツか童貞w
ルイズ寝取られの歴史を切々と語る
休日街でデルフ入手 キュルケタバサがついてくる
ルイズが爆破訓練宝物庫破壊フーケ侵入お宝げっと
この段階でフーケは絶対つかまらない
翌朝捜索隊保身に走る教師一同
教育者オスマン犯罪捜索を未熟な子供にマル投げ
小屋で破壊の杖ゲットフーケフルボッコしかし絶対死なない
オスマンから褒章 舞踏会 終わり
ルールじゃないけどマナー上しておく方が良い事・システム上の注意事項
投下時はタイトルをコテハンとする、トリップ推奨
予告でクロス元他必ず説明する(一発ネタ等でばらすと面白くないならその旨明示)
※過去「投下してもいい?・投下します」等の予告から
最低の荒らし投稿を強行した馬鹿者が居たため同類認定されるリスク極大
1時間に一定量超える投下は「さるさん」規制に遭うので注意
連投規制には有効な支援レスもこれには何の役にも立たない
文章量(kB)と分割予定数の事前申告をしておけば、規制に伴う代理投下をしてもらいやすい
投稿量カウントも規制も正時(00分)にリセットと言われている
他スレでの実験により規制ボーダーは8.5kBらしいという未確認情報あり
ルールじゃないけどマナー上しておく方が良い事・システム上の注意事項
投下時はタイトルをコテハンとする、トリップ推奨
予告でクロス元他必ず説明する(一発ネタ等でばらすと面白くないならその旨明示)
※過去「投下してもいい?・投下します」等の予告から
最低の荒らし投稿を強行した馬鹿者が居たため同類認定されるリスク極大
1時間に一定量超える投下は「さるさん」規制に遭うので注意
連投規制には有効な支援レスもこれには何の役にも立たない
文章量(kB)と分割予定数の事前申告をしておけば、規制に伴う代理投下をしてもらいやすい
投稿量カウントも規制も正時(00分)にリセットと言われている
他スレでの実験により規制ボーダーは8.5kBらしいという未確認情報あり
157 :削除申請:2008/02/14(木) 20:56:50 ID:kMFXiYvI
管理人様
以下自作品の削除をお願いします。
(本人証明として、自ブログの方も削除致しました)
長編:1編
「ゼロのgrandma」
短編:2編
「色鮮やかな空へ」
「四系統だけど」
色々とご迷惑をお掛けしました。以降、忘却願います。
夜天の使い魔 第一部
夜天の使い魔 第二部
http://rein4t.blog123.fc2.com/
>8
余計なもんまで貼るなヴォケ
>>10 このスレに居ついて、スレが立つごとに貼っている荒らしだ
12 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 05:55:03 ID:GX8aspG2
ふっふっふ、こんな早朝に誰もいるまい
GWも昼も夜もなく働く私以外、誰もいるまい
というわけで、第十九話を投下します
ただ、仕事の時間を有効利用して書いていたら、かなり長くなってしまいました
焦ってやっても規制にかかるし、前後編にわけてノンビリ投下しますね
13 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 05:56:29 ID:GX8aspG2
石造りの床と天井。5メイル四方を本棚に囲まれた、薄暗い部屋。
天井近くの壁には穴が数カ所。そこから流れ込む朝の冷たい空気が、部屋に籠もるカビ
臭さをゆっくりとかき回す。
コツ…コツ…
男は書棚に整然と並べられた本の背表紙を小さな懐中電灯で照らしながら、部屋をゆっ
くりと歩いている。
部屋の中央には小さいが頑丈そうな机と椅子。机の上に本が数冊積み上げられてる。
椅子には長剣が立てかけられている。
「え〜っと…『国富論』、『孫子』…なんだこれ?『ヴォロンテール』?」
書棚の中から古い本を取り出し、口にくわえた懐中電灯で照らしながらペラペラめくっ
ていく。
「ああ、なるほど。ヴォルテールの徒名がヴォロンテール(意地っぱり)なのか。『寛容
論』に『哲学辞典』と、それに『カンディード』とかを要約したんだな。うん、ちゃんと
『百科全書』も入ってる」
手の上に開かれたのは、紙を紐でまとめただけの粗末な冊子。だが中に記されているの
は、理性による思考の普遍性と不変性を主張する思想である『啓蒙思想』の代表者フラン
ソワ=マリー・アルエ (Francois-Marie Arouet、ヴォルテールはペンネーム)の著作をま
とめたもの。フランス革命の思想的背景の一つとされる。
始祖と王家が絶対とされるハルケギニアでは異端の思想と扱われるかもしれない。
「なんだか小難しそうな題名バッカだな」
デルフリンガーの口調は明らかに興味なさげだ。
第十九話 ある村の平和で静かな一日
彼は手にしている本から書棚へ目を戻す。
「なるほどね、ここは政治経済軍事関連をまとめた本の棚か。主に17~18世紀までの著
書を集めてあるな。こっちは重商主義と重農主義…」
「サヴァリッシュってヤツぁ、なんでそんなのまで書いたんだ?あんまり村では役に立た
ないと思うんだけどよぉ」
「いつか子供達が政治の舞台に出る時のため、かな?でもやっぱり本の量は少ないな」
その棚の本を見ると、ホコリが薄く積もっている。本自体も手あかやすり切れた跡が全
然無い。そもそも数が他に比べて少ない。
隣の本棚にある医学関連の本を一冊抜き取ってみた。それは産科、特に妊娠後期から新
生児期までの周産期医療についてを中心に記してる。何度も取り出され読み込まれたのだ
ろう。表紙はボロボロで、ところどころ破れた紙を無理矢理ひっつけたページもある。医
学関連の棚には全くホコリが積もっていない。
よく見ると、生殖器と受精に関連したページの破損が一番激しい。ヤンは思わず笑って
しまった。
「どこの世界も気になるのは同じか」
暖かい目と共に大人気の本を書棚に戻す。そして部屋をクルリと見渡してみる。
14 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 05:59:26 ID:GX8aspG2
扉を除いた壁の全面を書棚が覆っている。その中には一分の隙もなく書物が収められて
いる。一つ一つが荒く固くて分厚い紙を使い、薄暗いランプの明かりでも書けるよう大き
な紙に大きな文字で書かれている。とはいえ何百冊とあっては、全部読むのはさすがに一
苦労だろう。
見た所、やはり農耕と酒造関連が一番読まれている。次が医学だろうか。対して数学や
政治経済軍事関連は、村では役に立たないので人気がない。他にも製鉄・物理・化学・料
理に至るまで、様々な分野に及ぶ。いずれにせよ、どの本も破損と腐食が進んでいるのは
確かだ。
ワルキューレと同じく固定化の魔法はかけてあるだろう。部屋にカビ臭さが少ない所を
見ると、地下室ごと固定化をかけたかもしれない。が、長年使い込まれれば何でも限界が
来る。
ヤンは懐中電灯に取り付けられた小さなハンドルをクルクル回す。ついでに舌もクルク
ル回る。
「マチルダに固定化の掛け直しを頼もうかな…いや、ハルケギニア語に翻訳して新しく本
を書いた方が…でもこの本は、危ないな。何にせよ、ほとんどは簡単に要約してあるから
なぁ…これじゃ、分かりやすくても実用には…それに、どうやらこれらの本って…」
ブツブツと独り言を呟きながら部屋を歩き回っていると、長剣が不思議そうに尋ねてき
た。
「なぁおい、それ、何を回してんの?」
「ん?ああ、これ?」
手に持つ懐中電灯のハンドルを剣に示す。
「充電。これ、手回しで光るためのエネルギーを作るんだ」
「へぇ〜。魔法のランプ程には楽じゃねえんだな」
「まぁね。代わりに回し続ければ、壊れない限り永遠に使い続けれるんだ。非常用品の基
本だね。魔力すら不要、とも言えるよ。単純な造りであればあるほど部品も少なくて、壊
れないし修理しやすいから」
そんな話をしていると、地下室の小さな扉がノックされた。ヤンが手を伸ばせば届く高
さの天井に設けられた扉である、四角い石の蓋からコンコンと音がする。
「入ってまーす」
「知ってるわよ」
ゴパッと重苦しい音を立てて石の蓋が開けられ、ルイズが顔をピョコッと突っ込んだ。
ウェーブがかかったピンクの長い髪が室内に垂れ下がる。
「おいおい、この部屋に勝手にはいると、ワイズさんとか家の人に怒られるよ?」
「首だけならいいでしょ。地下室のことは知ってるし、本は読めないし、問題ないわよ。
ね、村長」
と言ってルイズが首を引っ込めて顔を上げる。蓋を持ち上げてる色黒で白髪混じりな初
老の村長の困ってる顔が想像出来る。
机の上に積んでいた本と懐中電灯を棚に戻したヤンは、長剣を背負って机に上がり、天
井の穴の淵に手をかける。
「それで、ワイズ村長。持ってきてくれましたか?」
白髪混じりのワイズ村長が這い上がるヤンに手を貸しつつ答える。
「ええ。隠していた遺品、全て家に集めましたよ。固定化の魔法もかけてあるので壊れて
いないはずです」
よっこらせっ!とヤンは穴を這い上がる。
そこはワイン樽を収めた薄暗い貯蔵庫。天井を支えるアーチ型の柱の間に詰まれた沢山
の樽。中では赤い液体が静かに熟成を重ねている。ちなみに貯蔵庫それ自体が地下に作ら
れており、外気温の変動から隔離され年中ひんやりとした空気を保っている。
地下二階にあたるサヴァリッシュの書庫入り口は、床の石畳に偽装されていた。
15 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 06:02:00 ID:GX8aspG2
ふとルイズを見ると、肩から下げたカゴに瓶を幾つも入れてる。
「ルイズ、そのワインって学院へのお土産かい?」
「バカ言ってンじゃないわよ!父さまのために最ッ高級ワインを選んだんだから!凄く高
いんだからね」
頬を膨らませるルイズを見る村長は、なんだか苦笑い。
「いやはや、秘蔵のヴィンテージを見られてしまいました。他の貴族の方々からも隠して
いたのですが…。やっぱり地下室の事を話したのは失敗でしたな」
サヴァリッシュの書庫である地下室は、村長であるサヴァリッシュ家ワイン倉庫一番奥
の床下に隠されている。ついでに長期熟成させたい最高級ワインも置いてあった。
酒好きのヤン、ついついカゴの中のワインを覗き込む。とたんにルイズにデコピンされ
た。
「こ・れ・は!父さまに持って行くんだから、飲んじゃダメだからね!」
「むぅ、それは、しょうがない…いや、でも、ちょっとくらい…」
物欲しそうにワインを見つめるヤンは、かなり大人げない。
「ダーメ!これくらい持って帰らないと、タルブで何を遊んでいたのか!と怒られちゃう
んだから」
諦めきれずチラチラとワインを見る彼の背中からカチカチという音とともに「おめーは
子供か」と呆れた声が飛んできた。
そんなやりとりに村長は頬を緩ませる。
「なあに、安心して下さい。家にはサヴァリッシュ家の最高傑作と自負している逸品を置
いてありますよ」
「え!?いやいや、そんな、私なんかにもったいないですよ!」
恥ずかしげに頭をポリポリかきながら頬を染めるヤンだが、セリフと裏腹に全く遠慮す
る気がないのはルイズにも村長にも長剣にもバレバレだった。
タルブ村は富農ぞろい。とはいえ、ブドウ畑と醸造所を持つワイナリーとして日々の仕
事は朝から忙しい。ましてや姫の婚儀が近いのだ。つい最近まで最高級ワインの買い付け
に村を訪れる貴族や商会の相手にてんてこ舞いだったことだろう。
だけどもさすがに、結婚式まで一週間くらいになってしまった今になって買い付けに来
るノンビリさんは少ないようだ。遠くのの貯蔵所に横付けする荷馬車が見えるくらいで、
訪れる者の少ない村には静かなそよ風がフワフワと漂っている。
シエスタの生家である村長宅からも、働ける者はほとんど出払っていた。残っているの
は子供とシエスタとロングビルだ。
シエスタは食堂で、机の上に広げた本を子供達と共に囲んでいた。ロングビルもメガネ
をかけ、髪をポニーにして子供達の後ろから本を覗き込んでいる。
「Ich bin Ingenieur(イッヒ ビン エンジェニェーア)。『私は技術者です』って意味よ。
さ、言ってみて」
シエスタの弟妹達が「いっひびんえんじえにえーあ!」と元気よく声を上げる。その後
ろでロングビルも小声で「い、いっひ…びん…えんじぇにーあ」と呟く。
それを聞いたシエスタはビシッと緑髪の美女を指さした。
「Ich bin Ingenieurです!さ、もう一度、大きな声で!」
指さされた美女は顔を真っ赤にし、唇を噛み締めてから「い…いっひ、びん、えんじぇ
にぇーあ!」とやけくそ気味に大声を張り上げた。
満足げに大きく頷くシエスタを見たロングビルは、ソバカス少女に見えないように拳を
隠してからプルプルと悔しさに振るわせた。もちろん少し引きつった笑顔で。
「精が出るねぇ。さっそく帝国公用語の勉強かい?」
見守っているぞw
そして、支援砲火!
17 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 06:04:09 ID:GX8aspG2
いつのまにやら村長宅に入って来ていたヤン達が、子供達と一緒に読み書きの勉強をし
ているロングビルに声をかけた。とたんに彼女は更に真っ赤になる。
「だ、だってさ、その…あ、あんたが帰ってくるまで暇だったからだよ!そ、そんだけだ
よ」
「あら!私は暇つぶしに付き合わされたのですか?失礼ですね、せっかくサヴァリッシュ
門外不出の知識を教えてあげてるのに。それじゃ、もう教えてあげませんよ?」
フフンッと鼻を鳴らしてそっぽを向くシエスタに、ロングビルは怒りを向けたりはしな
かった。
「フンッ。いいさね、後でヤンからゆっくり教えてもらうからさぁ」
と言うや、髪をほどきメガネを外してヤンの左腕にからみつく。もちろん柔らかな胸の
谷間に腕をキュッと挟み込む。
「あー!何してるんですか、ヤンさんから離れて下さい!」
今度はシエスタが右腕を捕まえた。負けじと右腕を胸に抱え込む。
「ちょっと、二人とも落ち着いてってってぇ!」
二人に引っ張られて振り回されるヤン。でも、なんとなく嬉しそう。
ポコポコドカッ!
ロングビルとシエスタに軽くゲンコツ、そしてヤンには渾身の蹴り。全員ルイズに無言
でツッコミを入れられた。
ヤンの背で長剣も呆れてる。
「おめーらよぉ、ンな事は後にして、例の遺品をさっさと調べよーや!」
デルフリンガーの常識的提案に、非常識な事をしてたヤン達は村長に連れられて執務室
へ向かうことにした。が、やっぱりルイズとロングビルは食堂で待ってて欲しいと村長に
拒まれた。不機嫌に腕組みしながらシエスタの帝国語講座を聴く二人を残し、デルフリン
ガーを背負ったヤンは村長と共に食堂を後にした。
ハルケギニアの本を収めた書棚が並ぶ執務室。
デスクの上には携帯情報端末、拳銃、スコープ付きライフル、銃のエネルギーパック数
個、サバイバルキット内に入っていただろう小型通信機、ナイフ、ロープ、鏡、時計、工
具…その他色々と並んでいた。
「父の遺品の中で、隠していたのはこれで全てです。あとは地下室の懐中電灯くらいです
ね」
「それじゃ、調べさせてもらって良いですか?」
「ええ、お願いします」
デルフリンガーを机に立てかけたヤンは真っ先に携帯情報端末の電源を入れてみる。だ
が、何の反応もしなかった。
「やっぱり、ダメか…まぁ、電源が入っても指紋やら生体データが合わないと動かせない
んですけど」
パネル上には指を置くためのセンサーが付いている。個人データや軍事情報の流出を防
ぐためのセキュリティがあるのは当然だ。
村長は、予想はしていたようだが、やはりガックリと肩を落としてしまった。
「やはりダメでしたか…一縷の望みだったんですが。父は懐中電灯の発電機を繋げられな
いかと頑張ったのですが、上手く行きませんでした」
「いやぁ、さすがに、それは無理でしょう。専用の工具や部品がないと」
「ええ。で、ワルキューレの処分前に中身を紙に写したわけです」
サバイバルキットは、救助が来るまでの短期間を生き延びるための品を詰め込んだパッ
ク。当然「異世界で永住する」なんてことは前提にしていない。帝国の軍事予算も無限で
はないのだから、余計な物をキットに入れたりしない。
18 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 06:06:17 ID:GX8aspG2
次に通信機を手にとって電源を入れてみるが、こちらも何の反応も無い。他にも時計な
ど、電気で動く品は尽く反応が無かった。予想通りの事とはいえ、ヤンも溜め息が漏れて
しまう。
メイジに魔法の使用を依頼するには、相応の金が要る。ハルケギニアに来て間もない頃
は不必要なものまで『固定化』の魔法なんかかける余裕はなかったことだろう。既に壊れ
た物もあると見るべきだ。特に通信機は通信する相手がいないのだから、ゴミ箱に捨てら
れても不思議はなかった。
ヤンの背中からデルフリンガーが鞘からヒョコッと飛び出した。
「よー、村長さんよ。その銃を俺にひっつけてみてくんねーか?」
頼まれた村長は怪訝な顔をしつつも、サヴァリッシュの銃とライフルを剣の柄にピタッ
とひっつける。長剣は「ほほぉ〜、お〜」と鍔を鳴らしながら感嘆の声を上げていた。
「どうしたんだい?デル君」
「いやー、ヤンよ。この銃二丁、ちゃーんと使えるぜ!」
嬉しそうな長剣の言葉に、ヤンは目を丸くした。
慌てて村長から銃を受け取ると、とたんに左手のルーンが光り銃の性能と使用法と現在
の状態が頭に流れ込んでくる。ライフルやスペアのエネルギーパックにも次々と触れる。
それら全てが、すぐにも使用出来る状態にあるのが手に取るように分かった。
「驚いたな…あと四百発くらい弾が残ってる。…て、どうしてデル君にはそれが分かった
んだい?」
「ああ!オレッちの能力さ。俺は一応『伝説』なんだぜ?ひっついてる武器の状態が分か
るのさ。ヤンが持ってる銃の状態だって分かるぜ」
ヤンは試しに胸の内ポケットに入れっぱなしの銃を柄にひっつけてみた。
「…おめ、ちゃんとメンテしろよ。このまんまじゃ使えなくなる所だったぞ。あ、他の二
丁もやっといた方が良いぜ」
「むぅ、そう言えば忘れてたっけ。村の二丁も一緒にやるとするよ。その後『固定化』を
かけてもらうか」
「そーしときな」
自分の銃を胸に戻し、サヴァリッシュの遺品を机に置いたヤンが村長を振り返った。
「失礼ですが、この銃二丁はスペアのエネルギーパックと合わせて、本来500発撃てる
はずです。百発くらい使用したのはオイゲンさんですか?」
「ええ。そして私や家の者達です。父はこの村に来たばかりの頃、食料は自分で狩りをし
て手に入れてましたから。その後、私達に銃の使い方を教えてくれた時の練習で使用して
います。
ただし『使用は最後の手段。遠くからライフルで偉そうなヤツを狙撃しろ。決して銃を
撃つ姿を見られるな』と教えられました。…ああ、これは盗賊や貴族が攻め入ってきた時
の事ですよ」
「いや、もちろん分かってますよ」
笑いながらもヤンの頭の中では思考が巡る。
いかなる魔法も、大砲の弾すらも届かない遠距離から司令官をスコープ越しにライフル
で狙撃。森の奥からでも撃てば姿を見られる事もない。ハルケギニアの常識から外れた遠
距離攻撃に、敵軍は何が起こったかすら分からず指揮が乱れ瓦解する。これがサヴァリッ
シュ一族による攻撃だと証明出来ない限り、タルブの村に責任を問う事はおろか疑いすら
かけられない。
銃の秘密を守り、一族から裏切り者さえ出なければ、村一つ襲うのに戦艦や竜騎士や万
の軍勢を動員されることもない。ほとんどの襲撃者はライフル一丁で十分だ。
「この銃の事は私の連れ達にも秘密にします。存在すら誰にも知られないようにしましょ
う。使い方を教える人は、一族の中でも限定すべきですね」
「そうですね。それでは私もあなたが持つ銃の事は誰にも言いません」
「それじゃ、全部まとめて今メンテをしようと思いますが、構いませんか?」
「ええ、是非お願いします」
19 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 06:09:07 ID:GX8aspG2
ヤンは机に座り、キットに付属する工具で自分の銃を簡単にメンテを加えながら話を続
ける。
「僕の身の振り方というか、立場についてなんですが…」
その話を口にしたとたんに村長が目を輝かせた。
「もちろん、昨日シエスタが言った通り、村はあなたを歓迎します。なにしろ父が死んで
時が経ち、遺された書物を詳しく教えてくれる人がいなくなってしまったので」
「あなた自身は?長年に渡り教えを受けたはずですが」
カチャカチャという音を立てながら銃を分解する音がする。
村長はしばらく恥ずかしそうに俯いて黙っていた。
「その、恥ずかしながら、理解しきれない所が多くて…例えば医学関連ですが、基本的な
外科的処置や、産婆の真似事くらいしか出来ません。『しんでんず』とか『かくじききょ
うめいがぞうほう』とか言う代物は見た事もありません。
治療薬なら完全にお手上げです。父自身が薬に関しては全くの専門外でしたから。せい
ぜい消毒用アルコールや創傷保護密封用ジェルを作るくらいですよ」
「うーん…僕も一介の軍人ですから、専門外なのは同じです…それに、そこまで必要な場
合は水のメイジに頼んだ方がいいかも」
「水魔法は高いです。平民には手が届きません。せめて『ぺにしりん』だけでも、と父も
私達も探したのですが、上手くいかなくて」
世界初の抗生物質ペニシリン(Penicillin)。アオカビ(Penicillium notatum)を液体培養し
た後、濾過した液体の状態で使用された。でもハルケギニアにアオカビがいるかどうかは
わからない。もしかしたら既に水の秘薬として使用されているかも知れないが、最悪、一
から抗生物質を生み出す生物を探す必要があるかもしれない。どうであれ、素人には難し
い研究だろう。
組み立て直したブラスター二丁とライフルをしげしげと眺める。デルフリンガーの柄に
ひっつけ、「おう、これで大丈夫だ」とお墨付きを得て、自分の銃を胸の内ポケットに戻
した。
よっこらしょっと椅子から立ち上がる。
「いずれにせよ、僕はルイズの執事をしているのです。残念ながら、この村に住むわけに
は…少なくとも、今のところは。ですが、協力は惜しみません」
この返答も予想していたのだろう。ワイズ村長は確かにガッカリしてはいたが、ワイン
畑での仕事で日に焼けた顔には気の良い笑顔を浮かべていた。
「分かりました。ですが、シエスタの事はよろしくお願いします。あの子は器量もよいで
すし、サヴァリッシュの知識を一通り身につけています。必ず、あなたの力となるでしょ
う」
シエスタの話が出たついでに、疑問を一つぶつけてみた。
「そういえば、シエスタさんなんですが…以前モット伯に買われそうになっていたことは
ご存じですか?」
「はい、手紙で伝えられてました」
何の問題もないかのように返答されて、ヤンは少し面食らった。
「失礼ながら、この村の豊かさなら、別にモット伯からの金はいらなかったのですから、
断れたのでは?」
「ええ、もちろん金は問題ありません。ですが、貴族の機嫌を損なうのが問題です。うっ
かり怒らせて荒くれ者でも送り込まれたら、それこそ銃を使わなければなったかもしれな
いでしょう」
「ああ、なるほどね」
言われてみれば当然と納得した。
「ヤンさんが支払われたお金については、いずれお返ししましょう。それまではシエスタ
がミス・ヴァリエールとヤンさんお二人に使えるということで、ご容赦を。村との連絡役
としても役に立つでしょう」
「いえ、お金は別にいいですよ」
とは言ったものの、村長は金の返却を固く約束し、深く頭を下げながら「孫をお願いし
ます」という言葉を繰り返した。
そんな仕事に忙しいあなたにホットパンチで支援します
21 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 06:12:00 ID:GX8aspG2
昼食時、農作業から帰ってきた村長宅は大騒ぎだ。
シエスタの兄弟姉妹8人、叔父やら叔母やら従兄弟達やら、一族が集結してのランチタ
イム。おしゃべり好きの奥方達に、食事そっちのけで走り回る子供達。力仕事で疲れた男
達の目の前からは、大きなテーブルに並んだパンやチーズや果物が、凄い勢いで消えてい
く。
汗を拭きながら男達がパンにかぶりつく。
「んでよ、アストン伯への出荷はさっき全部終わったぜ」
「ラ・ラメー伯の分も昼過ぎまでに終わるし、夕方には貴族連中は全部いなくなるな」
「ようやく一仕事が終わるなぁ。これでノンビリ出来るわ」
なんて仕事が終わる話をしつつも、口に食べ物を運ぶ仕事は終わらない。
奥様方は、食事そっちのけでおしゃべりに興じている。
「でね、『金の酒樽亭』んとこの若奥さんが、そろそろ臨月だからうちの村に世話になり
たいって言うのよ!村長に取り上げて欲しいってさ」
「んまー!何言ってンだろうねぇ、図々しい。男の産婆なんて汚らわしい!とか言ってた
の知ってんだから!タルブの村で妊婦や赤子がほとんど死なないのは邪教の技を使ってる
からだ、なんて噂まで広めたクセに」
「まぁまぁ、いいじゃないか。母親も子供も元気で出産出来れば目出度い事さ。それに、
帝王切開なんかしちまったら悪魔の技って噂が立つのもしょうがないだろ?誤解を解く良
い機会だと思うねえ。
ただ、あんまりこの村でお産が増えると、祖父さまの本にあった『さんじょくねつ』と
かいう感染症が不安だわね」
「アルコール消毒と煮沸消毒に加えて器具の使い捨て…で予防出来るって書いてあったけ
ど、一回使って捨てるのはもったいないわよ。
ところで、知ってるかい?どうやらそのお腹の子供、旦那の子じゃないんだってさ」
「えー!?ホントかね?」
「あ、あたしも聞いたよ。なんでも流れ者の没落貴族が…」
医学知識がどれだけあろうとも、やはりゴシップの方に興味が行くのは世の常だろう。
そんな騒がしい中で、ルイズとロングビルはヤンを左右から挟んで、先ほどの執務室で
の話などをする。
「…というわけで、結局使い物になる品は無かったよ」
もちろん銃に関しては口にしない。二人を信用していないわけではないが、敵を騙すに
は味方から、とも言うから。なにより、簡単に口にするにはあまりに危険すぎる、強力な
武器だ。
「そうかい、そりゃ残念だねぇ。ま、サヴァリッシュの書があればヤンも十分だろ?」
ロングビルの言葉に、ルイズはキラキラと輝く大きな瞳をヤンに向ける。
「そうよね!んじゃ、このルイズ様に帝国語とやらを教えなさいよね!」
ロングビルも知的な瞳を知的好奇心で満たしている。
「もちろん、あたしも教えてもらうよ。下手な財宝より遙かに価値がありそうな書物だし
ねぇ。是非とも読ませて欲しいんだ」
左右から頼まれたヤンは、困って頭をボリボリかきむしる。
「いや、そう言われても…あれはタルブの秘密だし、危険な知識も多いし。部外者の僕に
はどうとも…」
「何言ってンのよ!ヤンが一言言えば、タルブの人は文句言わないわよ」「そうだよ。こ
こは一つ、あたしらのために一肌脱いでおくれよ」
二人に挟まれて逃げられないヤンは、どうしたものかと困り果ててしまう。
そんなヤンの横に、ワインボトルを手にしたシエスタがやって来た。
「まぁまぁ、そういう難しい話はゆっくり考えた方が良いですよ。まずはサヴァリッシュ
家の最高傑作、ブリミル歴6226年のワインをどうぞ」
と言って黒髪少女はロングビルとヤンの間に割り込んで、ヤンのグラス2/5くらいまで
注いだ。
22 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 06:14:44 ID:GX8aspG2
最高傑作と言うだけあり、その赤い液体は透明度も、濃厚なフルーツの香りも、飲む前
から普段口にしているワインとの違いが分かる程だ。
思わず緩んでしまう口元へ即座に運んでしまったりせず、鼻腔一杯にグラスの中の空気
を貯めて、まず香りをゆっくりと楽しむ。その上で1/5を口の中に含み、口全体に広がる
濃厚な味わいに舌鼓をうつ。
そして一言。
「…うまい」
もったいぶって飲んだわりに芸のない感想。
至福の時を過ごすヤンとは裏腹に、シエスタの背中で視界を塞がれるロングビルは不愉
快な時を過ごしていた。
「ちょっと、シエスタ。私にも一杯頂けるかしら?」
声が冷たかった。ロングビルも、振り返るシエスタも。
「あら。気付きませんで、失礼しました」
ニコリと微笑み返しつつ、手に持つワインを注ごうとはしない。
「あらあら、どうしたのかしら?早く注いで下さいな」
ソバカスの少女を見上げる女の目は、笑顔なのに鋭い。
「いえ、これはタルブ秘蔵のワインですので、王族や、それに準じた方のみに飲む事が許
されるのですよ。ヤンさんは特別です」
見下ろすシエスタの視線も、刺すように鋭い。
二人はしばし笑顔で見つめ合う。でも目は笑ってない。
いきなり隣の気温が10度くらい下がったのに気付いたヤンは、冷や汗をたらしながら
「まぁまぁ…」と割って入った。
「シエスタ君、ここは一つ僕からのおごりにさせてくれないかな?」
「そうですね!ヤンさんが言われるのであれば、もちろん構いませんわ!」
突然シエスタ周囲の気温が20度くらい上がった気がする。
「それに、ロングビルには村のためにもなる事をお願いしようと思うんだ。だからそのワ
インを飲む資格はあると思うよ」
「ん?あたしにかい?」
話をふられたロングビル周囲の冷たい空気も和らぐ。
「うん、実は『固定化』をお願いしたいんだ。例のサヴァリッシュの書に」
「ああ、なんだ。それくらいならお安いご用さ」
それを聞いたルイズがシュバッと手を挙げた。
「あ!あたしも行くからね!ダメって言ってもついていくからね!」
そんなかしましい光景をヤンの背後から見ているのは、壁に立てかけられたデルフリン
ガー。
「あんなヒョロくて頼りなさそうなのの、どこがそんなにいいのかねぇ…」
と呟くのだった。
23 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 06:18:16 ID:GX8aspG2
ここで第十九話前半終了です
早朝からの支援、ありがとうございました
・・・仕事の合間、同僚や上司の目を盗んで書くのって、何か楽しいw
いや、仕事はちゃんとやってますから。嘘じゃないですから
耕一の人GJ、んで投下&スレ立て乙。
ヤンの人GJ&乙、お仕事頑張ってください。
両作品とも、主人公のとぼけたとこが好きです。次回を心待ちにしてます。
GJ!!まさかこんな早朝に投下されるとは・・・
26 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 06:52:32 ID:hJMxfI+z
さて、そろそろ規制が外れた頃かと思うので
後編投下します
27 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 06:53:52 ID:hJMxfI+z
そういうわけで午後。一行は村長とシエスタに連れられ、みんなでサヴァリッシュの書
庫へ。
ロングビルは書庫の本に、ついでにヤンの銃へも『固定化』を入念にかけていく。
村長は理解出来ず困っていた語句や理論について、ヤンの分かる範囲で講義を受ける。
ルイズとシエスタは書庫の上、ワイン樽に囲まれながら松明の光の下で帝国語の初歩を
講義。
書庫のテーブル上に置かれているデルフリンガーは、退屈しのぎに尋ねてみた。
「なあ、村長さんよ。ここの本って、ほとんどは表に出せないんだろ?」
「ええ、そうですね」
「実際、どんくらいスゲェ知識なんだ?」
「うーんと…どれくらい、と言われましても…」
村長は、どう答えたものかと頭を捻る。
代わりに答えたのはヤン。
「多分だけど、例えば…戦争の主役が貴族から平民に代わるくらい、かな」
その言葉に、『固定化』をかけ続けていたロングビルも耳がピクリと動く。
「詳しく説明するのは時間がかかるから省くけど、そこの製鉄と化学の2冊を使えばハル
ケギニアの銃を別物ってくらい強化出来るね。つまりハルケギニアのフリント・ロック銃
じゃなくて」
「あ、あの、ヤンさん。それ以上を軽々しく口にするのは危険ですので」
「おっと、そうですね。すいません」
「ちぇー、けちんぼ」
村長に止められ、ヤンは口を閉ざした。長剣だけでなく、ロングビルの後ろ姿も残念そ
うだ。
ヤンが口にしようとした銃は輪胴式弾倉、簡単に言うとリボルバー。もちろん弾はドン
グリ型で、銃身にはライフリング。
魔法の射程より遠くから、ルーンを唱えるより早く、絶対避けられない速度の鉛玉を、
弾倉の全弾連続で撃ちまくる。前線に立たされたメイジは真っ先に穴だらけにされるだろ
う。
戦争の主力はメイジの個人的魔力から銃を持った平民の集団に代わる。国の軍事力は貴
族の数ではなく平民含めた工業力で量られる。なにより、平民へ杖を振りかざそうとした
メイジは即あの世行き。
ほとんど貴族社会の終了を意味する。
ヤンは内心、ハルケギニアに平民の革命を起こすという誘惑に駆られそうになる。
「たしかに、この書庫の知識は凄いんだけど…影響が大きすぎるんだ。いきなりこれらの
書物を公表したりしたら、ハルケギニアが火の海になるよ。いや、その前にタルブが怒り
狂った没落メイジ達に滅ぼされる。
ホント、もったいないけど、慎重にいかないとね…ルイズも!他の人に言っちゃダメだ
から!公爵にもだよ!」
地下室入り口から覗いていたピンクと黒の髪が慌てて引っ込む。少しして「うぅ〜、分
かってるわよ」と渋々な声が聞こえた。
そして夕方。
農作業から帰ってきた村人が、それぞれの家路につく。
ワインなどの出荷は全て終わったようで、荷馬車は数台が空のままで村はずれに置かれ
ている。
あちこちの家からは夕食の香りが漂ってくる。
28 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 06:56:24 ID:hJMxfI+z
村の中心から村長の家へ、長い影を伸ばしたジュリアンが走っていた。
「じーちゃん!お客さんの貴族達、みんな帰ったよー。準備出来たって!」
と言って村長宅へ駆け込んできたが、当のワイズ村長が見あたらない。
あちこち家の中を走り回るが、それでも見つからない。
「まだ戻ってきてないのかな…?」
ジュリアンががサヴァリッシュの書庫へ足へ向けようとした時、村長とルイズ一行が書
庫から帰ってきた。少年が祖父の所へ駆けてくる。
「じーちゃん。宿が空いたよ。お風呂も使えるって」
「おお、そうか。ありがとよ」
お風呂、という言葉に村長の後ろに立つメイジ二人が目を輝かす。
クルリと村長は振り返り、二人にニッコリ微笑んだ。
「実はですな、この村には買い付けに来られた貴族の方々用に、粗末ではありますが宿を
用意してあるのです。ご婦人の貴族も来られますので、お風呂は良い物を備えてあるので
す。
もうお客の貴族達は全員帰られましたので、今は自由に使えるのです。どうでしょう、
準備はさせてあるので入られませんか?」
「もちろん入るわ!」
即答したのはルイズ。デルフリンガーを抱えてる。
「あたしも入るわね」
満面の笑みでロングビル。
「やっぱ女って風呂が好きなんだな」
と言うのはルイズに抱えられた長剣。
だがジュリアンはキョロキョロと辺りを見回す。
「じーちゃん。ヤンさんはどうしたの?」
書庫から戻ってきたルイズ達一行の中には、ヤンの姿が無かった。
「あの方は、何か一人で考え事をしたいと言ってな、一人で草原の方へ行かれたよ」
「そか。じゃ、呼んでこようか?」
「いや、シエスタにお願いしようかな。おい、シエスタよ…」
村長は振り返ってシエスタの名を呼んだ。
だが返事は無い。
ルイズもロングビルも周囲を見渡す。
朱く染まる夕暮れの村、ソバカスの少女はどこにも見えなかった。
果てしなく広がる草原。
夕焼けの中、金色に染まる草の海。その畔にヤンの姿はあった。
村から遠く離れた場所に腰をおろし、足をだらしなく投げ出して夕陽を眺めている。
そんな姿を、村から走ってきた黒髪の少女は遠くから見つけた。大きな声で呼ぼうと胸
一杯に息を吸う。
「ちょいとお待ちよ」
「!?ッッゴホッブフッ!」
いきなり後ろから声をかけられ、驚いたシエスタはむせ混んでしまった。
慌てて振り返ると、いつのまにやらロングビルが立っていた。全く音も気配も無かった
所をみると、『フライ』で飛んできたのだろう。
提督のお方、GJ!1週間ぶりに堪能させていただきました。
それにしても、読めば読むほどオイゲン=サヴァリッシュ氏という人物に興味が出て
きました。遠い異世界に飛ばされながらも、持ち前の勤勉と勤労・努力によってタルブ
の村を富ませ、自らも多くの子孫に囲まれる円満な家庭を築き上げたこと、ある意味で
人生の成功者と思います(羨ましいかも・・・)。
今後のサヴァリッシュ家とヤン一行との係わり合いがどうなるか楽しみです。
30 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 06:58:12 ID:hJMxfI+z
呼吸を整えたシエスタが、ロングビルへ向き直る。
「いきなりなんでしょうか?ミス・ロングビル」
「なぁに、ちょっと聞きたい事があってね…あなたは、何をしようとしてましたか?」
ニコリと笑って尋ねられ、シエスタもニコリと笑って答える。
「もちろん、お風呂に呼ぼうとしていました」
「そうですか、それはご苦労様ですね。でも、それは私がしますから、あなたは家に戻ら
れて良いですわ」
上品で、そして丁寧な口調。だが、それはどちらかというと慇懃無礼な類のものに聞こ
えた。そして、それに対するシエスタの答えも同じく慇懃無礼に聞こえた。
「いえいえ、そのような雑務は私達メイドの仕事ですわ。貴族のご婦人はお戻り下さい。
お風呂も準備してありますから、ゆっくりと入られるのがよろしいかと思います」
二人は微笑みを絶やしてはいない。なのに、どうみても二人がまとう空気は友愛や穏和
からは遠かった。
まるで凍り付いたかのように、二人の微笑みは顔に張り付いて変化しない。
「ちなみに、聞きたいのですけど…」
凍てつく空気に、先にヒビを入れたのはロングビル。
「ミスタ・ヤンをお風呂に呼んで、その後はどうするのかしら?」
シエスタは満面の笑みで、当たり前のように答えた。
「もちろんメイドとして、お背中を流して差し上げますわ」
ロングビルの微笑みにもヒビが入った。こめかみに浮き出た青筋によって。
「あらあら!殊勝な事ですわね。きっとあなたはメイドの鏡なのでしょうね」
「いえ、まだまだ修行中の身ですわ。だから精一杯、出来うる全てを尽くして主に仕える
事にします」
「そうですか!それは立派な事ですわね。頑張って下さいね!…でも、ミスタ・ヤンの背
中を流す必要はありませんわ」
「あら、どうしてでしょうか?」
ロングビルは満面の笑みで、当たり前のように答えた。
「ヤンは、私と一緒にお風呂に入るからですよ!もちろん、ヤンの背中は私が流しますの
で、あなたに流してもらう必要はありませんの!」
シエスタの微笑みにもヒビが入った。こめかみに浮き出た青筋によって。
二人の間に一陣の風が舞う。周囲の空気がドンドン冷えていくのは、だんだんと日が傾
いていくからというだけだとは思えない。
「…言っときますけど、あなたとヤンさんは、身分違いです」
少女から凍てつく微笑みは消えた。代わりに凍てつく無表情が張り付いた。
「違うね。あたしゃ貴族の名を無くした身だよ。だからあたいもヤンも、同じ平民さ」
女の顔にも凍てつく無表情が張り付いた。口調も荒く崩れていく。
「メイジなのは変わりません。不釣り合いです」
「ヤンはメイジかどうかなんて気にしちゃいないよ。あいつはそんな肝の小さなヤツじゃ
ないのさ」
二人は視線をぶつけ合う。その鋭い視線に触れた空気が焦げ付くかという程だ。
「じゃあ、こう言いましょう…ヤンさんは、普通の人です。平穏無事な生活が似合ってま
すし、あの人もそれを望んでいます。あなたの世界に引きずり込まないで下さい」
「あたしの世界…何の事だい?」
白磁のように白く透き通る美女の肌に、一筋の汗が流れる。
「サヴァリッシュ一族の知恵を見くびらないで欲しいです」
「だから、何の話さ」
31 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 07:01:09 ID:hJMxfI+z
ロングビルは、油断無く周囲の状況を観察する。
ヤンは遙か遠くに小さく見える。こちらに背を向け、二人に気付いていない。
他に人影は見えない。
「あの日、『破壊の壷』が盗まれた日、ヤンさんは大慌てであなたを捜していました。そ
の後ローラからヤンさんの伝言を告げられたら、あなたも慌てて学院を飛び出していった
そうですね?」
「ん…ああ、そうだったかねぇ?随分前だし、良く覚えてないね」
わざとらしく腕組みして首を傾げる。だが、その手は胸元の杖へと向かっている。
シエスタも同じように腕組みをする。
「その後、あなたはヤンさんに連れられて学院に戻ってきました。なぜか落ち込んだ様子
で。そして『破壊の壷』も『ダイヤの斧』も無事に帰ってきました。あまりにも不自然な
ほどあっさりと」
「ふーん、そんなこともあったねぇ…で、なにが言いたいんだい?」
「あなたが『土くれのフーケ』だと言いたいんです。
あなたはヤンさんに正体を見破られたんですよ。でも、ヤンさんはあなたに恩があった
から、盗品を返すのと引き替えに黙ってくれたんでしょう」
二人の間の空気が決定的に凍り付いた。ぶつかり合う二人の目は、睨みあっているとい
うに相応しい。
「で…あたしがフーケだという証拠は?」
「ありません。でも、これまでの犯行現場のほとんどで、あなたとそっくりの人物をみか
けたという証言が得られるでしょうね」
「ふぅ…ん、面白い推理だねぇ…」
ロングビルはゆっくりと移動する。金色に輝く草原の方へ、少しずつ。
よく見るとシエスタも、いつの間にか草むらの方へ移動していた。
「もし、その推理が正しいとして…だ。どうして誰にも言わなかったんだい?」
「証拠が無い、という事もあります。けど一番の理由は、タルブの村に火種を持ち込まな
いためです」
「なーんだ!それじゃ誰がフーケでも意味が無いじゃないか!」
あざ笑うように口の端を釣り上げるロングビルに、シエスタは変わらず平常を保ち続け
ている。そして、ゆっくりと話を続ける。
「でも、いつか他の誰かに見破られます。その時はヤンさんも共犯として捉えられてしま
います。ヤンさんのために、身を引くべきです」
「ハッ!脛に傷持つのはお互い様さ。あんたは教会や王家を、いつ敵にするか分からない
サヴァリッシュ家の者なんだからね」
二人は既に、草原の中に足を踏み込んでいる。
二人とも腕組みは崩していない。だがスタンスは肩幅に広げ、いつでも不測の事態に対
応出来るよう、油断無く足を構えている。
「私は、ヤンさんが好きです」
シエスタは何のためらいもなく口にした。
ロングビルの歯ぎしりが草むらに響く。
「あんたは、サヴァリッシュの教えとやらでヤンに優しくしていただけだろう?」
「最初はそうでした。でも、ヤンさんは本当に素敵な人でした。
優しくて、穏やかで、知的で…そして勇敢で、心の広い人でした。あんないい人、探し
ても見つかりません」
「同感だわ。あいつのためなら泥棒家業なんか足を洗うね」
「大金も手に入りますしね」
32 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 07:03:54 ID:hJMxfI+z
シエスタの痛烈な皮肉に、ロングビルは激怒したりはしなかった。
それどころか、少し哀しげに笑った。
「それもあるさ。あたしは故郷の村に家族がいるんだけどね…子供ばかりの、孤児院みた
いな村さ。あたしが盗んできた金で、どうにかみんな生き延びてこれたんだ。
ヤンは資金援助をしてくれるって、快く言ってくれたよ。
あの子達のためにも、何よりあたい自身のために、ヤンを離さないよ!」
その言葉に、シエスタも笑顔を返した。
「あたしだってヤンさんが必要です。そして村のためにも、譲れません!」
二人は、睨みあう。
まるで呼吸すら忘れたかのように動かない。
互いに相手の僅かな変化も見逃すまいと、全神経を集中する。
そして、一陣の風が吹いた時、二人は動いた。目にも止まらぬ速さで、胸元から抜きは
なった。
ロングビルは、杖を。
シエスタは、ブラスターを。
「やっぱり、持ってたね」
ヤンが持つ銃と同じ銃を向けられても、ロングビルは驚きはしなかった。
「当然ですよ。フーケ相手に丸腰なわけないじゃないですか」
ハルケギニアに名を轟かすフーケの杖を向けられても、シエスタは動じなかった。
「念のため、聞くけどさぁ…」
「…何ですか?」
杖と銃はそのままに、二人は言葉を投げ合う。
「大人しく引き下がる気はないかい?」
「それはこっちのセリフです」
杖はいつのまにやら魔力を帯びている。
銃は真っ直ぐフーケの心臓を狙っている。
「困ったねぇ…そうだ、良い事を教えてあげるから、それで勘弁してくれないかい?」
「良い事?」
「そう、良い事さ」
フーケは、悪魔のように醜く顔を歪めて笑った。
「ヤンが、あたしに幾つキスマークをつけたか」
瞬間、シエスタの顔が紅潮し、身体が強張る。
その一瞬をフーケは逃さない。杖から魔力を放とうと意識を集中する!
33 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 07:05:45 ID:hJMxfI+z
ヤーンッ!どこいったのー!ヤンってばーっ!!
草原にルイズの声が響いた。
反射的にフーケは草むらの中に伏せた。
我に返ったシエスタも慌てて伏せる。
村の方からルイズが駆けてきていた。二人の姿には気付いていないらしく、横を通り過
ぎていく。
おーい、ここだよー
ルイズの声に気付いたヤンが答えた。
二人は草むらの中でルイズとヤンから身を隠す。
ルイズはヤンの傍まで全速力で駆けてきた。
「はぁっはぁっ…まったく、主ほっぽって、こんなところで何してるのよ?」
「ん〜…ちょっと、夕陽を見てたんだ」
ヤンの前には、地平線の彼方へ沈もうとする夕陽がある。
ぼんやりと遠くを見つめるヤンの左に、ルイズもちょこんと腰をおろした。
「また、考え事?」
「うん…まあ、ね」
ヤンは曖昧にだけ答えて、夕陽を眺め続ける。
ルイズもそれ以上は尋ねようとしない。
二人並んで沈む夕陽を眺め続ける。
観念したかのように、ヤンは語り始めた。
「・・・きっとオイゲンも、こんな風に夕陽を眺めたんだろうね」
少女は座ったまま、夕陽を眺め続けている。
「あの人は、僕に『この世界で生きるのも悪くない』って言ってたよ。きっと、それは本
当なんだと思う」
彼の主は、何も答えない。
「正直、威張り散らす貴族達にはうんざりだよ。でも、君がいる。マチルダも、シエスタ
君も、デルフリンガーも…。この世界でも、どうにかやっていけるんだと思う」
鳶色の瞳がヤンを見上げた。
「ねぇ…」
「なんだい?」
「あたしを、恨んでる?」
恨んでるかと聞かれ、ヤンはビックリしてルイズを見た。
「恨むって、どうしてだい!?」
「だ、だって…その…」
少女は言いにくそうに身をよじらせる。
少し迷った後、意を決して語り出した。
34 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 07:08:16 ID:hJMxfI+z
「だって、あたしのせいでしょ?ハルケギニアに召喚されたのも、突然使い魔にされたの
も」
ヤンは目をパチクリさせて、そして笑い出した。
その様に、ルイズは頬を膨らませる。
「な、何よ!何がおかしいのよ!」
「あははは!はは、いや、だって、君がそんな、気にしてただなんて!」
「もう!あたしだって、悪いと思ってるのよ!」
顔を赤く染めたルイズはぷいっとそっぽを向く。
ようやく笑いが収まったヤンは、優しく語りかけた。
「確かに、僕は君に召喚されたよ。使い魔として、奴隷としてね。おかげでガンダールヴ
なんて訳の分からない物にされてしまった。
でもね、恨んでなんかいない。むしろ感謝してるんだよ」
ルイズの肩がピクンと跳ねる。でも振り向こうとはしない。
「なにしろ僕は、召喚されたから命が助かったんだ。襲われた時の状況から言って、召喚
されなかったら間違いなく死んでいた。君は僕の命の恩人だよ。その点は間違いない」
ルイズは動かない。黙ってヤンの話を聞いている。
「僕はね、ルイズ。多くの人を殺してきた。僕がなにか言うたびに、腕を振り下ろすたび
に、数え切れないほどの敵味方を殺してきたんだ。
その僕が誰に殺されたからって、やり残した事があるからって、文句のつけようはない
よ。だから、そんな僕をすら助けてくれた君には、無条件で感謝してる」
ルイズは、チラリと肩越しに視線を向ける。
「…ホント?」
「ああ、本当だよ」
ヤンは心からの笑顔を返す。
「そして、僕は奴隷になんかならなかった。それどころか、君は僕を執事として雇ってく
れた。怠け者で無能な僕を、ね!なんとも心の広いアルジサマじゃないか!」
鳶色の瞳が、じーっとヤンを見つめ続ける。
「ねぇ、だからさ…ルイズ。これからも、よろしくお願いして、いいかな?」
ヤンの目を見上げながら、ルイズは何も答えない。
代わりに動いた。
ヒョイッと小さなお尻をヤンの脚に乗せ、細い身体をヤンの胸に預けた。
「当然よ。メイジと使い魔は一心同体…あんたは、ずっと私の傍にいなさい」
薔薇の蕾のような小さく愛らしい口から、甘えるような声が漏れる。
右手がキュッとヤンの胸元を握りしめた。
「うん。正直、故郷の事を忘れるのは無理だ。でも、君と一緒に新しい人生を歩む事は出
来ると思う」
「ん…頑張りなさいよ…」
ルイズは目を閉じ、ヤンの胸に頭を埋める。
ヤンはピンクの髪を優しく撫でる。
夕陽がほとんど大地の彼方に沈んだ頃、冷たい風が草原を渡ってきた。
小さな口から、くちゅん!と可愛いくしゃみが漏れる。
「ご主人様、そろそろ帰りましょうか」
「そうね。そうそう、宿のお風呂が使えるんだって!すぐに入るわよ」
「へぇ、それはいいなぁ。暖まりそうだ」
35 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 07:10:45 ID:hJMxfI+z
二人は立ち上がり、身体に着いた草や土をはたき落とす。
そして、ルイズはヤンの手を握って歩き出した。
「んじゃ、急いで帰るわ。そうそう、あんた、あたしの背中を流しなさい」
「え…。前から聞きたかったんだけど、それって執事の仕事なのかい?」
「当然でしょ!今夜は頭もちゃんと念入りに洗うから、クシを忘れちゃダメだからね!」
「はぁ〜い。それじゃ、女性の髪を洗うのは初体験ですが、このヤン・ウェンリー、ご主
人様の髪を洗わせて頂きます」
「ええ、優しくしないと許さないんだから!」
夜へと移りゆく草原。
二人は手を繋いで村へと帰っていった。
で、草むらの中に残ったのはソバカスが可愛い美少女と緑の髪が艶やかな美女。
二人とも、あんぐりと口を開けっ放しのまま、微動だにしない。
杖とブラスターは、二人が隠れる草むらの地面に落ちていた。
「や…ヤン、さん…」
シエスタの声は震えている。
「あ、あれほど、甘やかすなって言ってるのに…」
フーケの肩は震えている。
「そんな、まさか、ミス・ヴァリエールとヤンさんが、二人が…そんな不潔な関係だった
なんて!」
少女は現実から目を背けるかのように顔を手で覆う。
「いや!まだだ。あの二人は恋だの愛だの、そんな事は意識してないよ。どちらかという
と、親子って感じだね」
とは言うものの、フーケの手は色を失うほど強く握りしめられている。
「でも、でもでも、このままじゃ、いつあの二人は異性って意識を持ち出すか…」
「って!あたしらこんなとこでボサッとしてる場合じゃないよ!」
と叫んで立ち上がった女は、強引に少女の腕を取って立たせる。
「あんた!二人を追いかけるんだよ!ルイズの背中を流すのはあたしの仕事ですって、早
く言ってくるんだ!」
「そ、そうですね!今ならまだ間に合います!」
「あたいはヤンを『甘やかすなー!』ってしばき倒す!急ぐよ!」
「はいっ!」
言い声の返事と共に、二人は村へ走り出した。
「ところでフーケさん!」
「ロングビルって呼びな!」
全力疾走しながらも、二人は口が止まらない。まるで胸中の不安と恐怖を会話で誤魔化
すかのように。
「それじゃロングビルさん!ルイズさんは、婚約者!いましたよね!?グリフォン隊の!
隊長さん!」
「その通り!意地でも、ルイズとワルドを!ひっつけてやる!!」
「協力しまーっす!」
二人は固い握手をかわしてから、村へ走っていった。
第十九話 ある村の平和で静かな一日 END
36 :
ゼロな提督19:2008/05/03(土) 07:15:14 ID:hJMxfI+z
以上で『第十九話 ある村の平和で静かな一日』、投下終了です
早朝から失礼しました
なお、新刊発行に合わせ、第二十話を書くのは間を空けます
おそらく6月以降になるかと思います
では、また
乙です
重工業が発展すれば、メイジは「普通の人よりも便利な事が出来る人」程度になってしまうわけで
そうなれば確かに市民革命が起き得るだけの状況が整いますね
WW2レベルの近代兵器が登場するようになれば、むしろメイジも銃で武装せざるを得なくなる
そうなれば、土メイジ以外の殆どのメイジと魔法は過去の遺物と化しますね
それはさておき、ルイズの甘えっぷりがどんどんエスカレートしているw
年頃の娘なのに、風呂で背中流せって…そりゃマチルダもシエスタも焦りますよねww
サイレントが地味に強くなるな。
提督乙!
>>37 まあ、近代化されても治療系の魔法の有用性とか
魔法で塹壕作ったりとか強風で弾道ずらすとかいろいろ使い道はありそうですな
そうかな?
普通人間って、生活さえ保障されていれば「責任ある自由」より「不自由な責任の無い生活」を選ぶんじゃない?
特に軍務関係は豊かな社会になればなるほど志願者は減っていくのは歴史が証明しているし。
むしろ、あの世界では革命より、ゲルマニアのように貴族の義務をお金など果たせるようになった(精力的な一部の)平民の台頭が、
起きるんじゃないかな?
そして、そういった元平民の貴族が、自分の基盤となる社会を変えようとするとは思えない。
べ、別に「ローマ人の物語」に嵌って、民主主義政体万歳なんて幻想だってって言ったら
社会科の先生に放課後呼び出されて説教くらったことを根に持っているんじゃないんだからね。
土メイジは塹壕掘りに大活躍
水メイジがいれば塹壕足の心配もなさそうだ
投下乙
女の修羅場コエエ
火メイジも市街戦や閉所空間では脅威じゃけぇ。
コッパゲの『爆炎』みたいな燃料気化爆弾モドキを
個人単位で運用されたら、たまったもんじゃねぇ。
うーん、こうして比較するとブリミルの魔法は本当に凄まじい。
文明の発達を6000年の間止め、メイジによる支配もその間磐石としたら、
共産主義よりはるかに悪質かも。
>>40 >べ、別に「ローマ人の物語」に嵌って、民主主義政体万歳なんて幻想だってって言ったら
>社会科の先生に放課後呼び出されて説教くらったことを根に持っているんじゃないんだからね。
これ何てオレ?
ローマ人の物語からというか…
ユリウス・カエサルを召喚したら、(いい意味の)とんでもない女たらしの物語になりそうだな
いつ頃のカエサルを呼び出すにもよるが…
投下乙でした。
しかしこのペースはすごい…。
制圧戦がやりにくくなるんじゃね?
ゲリラ化した民間人が何処から襲ってくるか分からない状況になる訳だし
正攻法でぶつかり合う戦線なら別として
テロとかゲリラとかに銃火器を持ったメイジ
これが恐ろしい。
コッパゲ先生あたりが科学と魔法を融合させて魔弾銃みたいなものを作りそう
>>49 もっと頑張れば3種の弾丸混ぜて召喚獣を射てる銃を作り出すかもw
投下乙でした
6月まで燃料がないというのも寂しい限りですがお待ちしております。
っつーか新刊って何かいてらっしゃるのでしょうw読みてえw
サヴァリッシュの遺産はパンドラの箱ですなあ…。
提督の人乙です。
6月まで寂しいですが我慢しますです
>>40 民主主義は貧乏人の政治だとプラトンも言ってたなぁ
新刊って、五月末のゼロ魔最新刊ってことでは?
しかし、科学技術はメイジも使えることを忘れてはいけないんじゃね?
いきなり平民が高度な科学技術を身につけるんならともかく、徐々に社会に浸透するなら
メイジは魔法に科学を応用する手段を開発するだろ
ハルケギニアの学術機関は王や貴族の管理下にあるわけだしな
>>38 たしかに強いな。
暗殺の場では銃声や悲鳴を消音できるし、他にもサイレントで詠唱を封じてる間に銃殺とかもできそう。
………アレ? 詠唱封じれるなら、サイレントってある意味最強の呪文じゃね?
まあ銃の間合いだったら、メイジも銃持ってしまえば力関係は変わらんだろう。
サイトが活躍できるのは魔法無効化+近接戦闘に持ち込む機動力があってのもんだ。
ある意味イカサマな気もするが。
重工業の発達→銃器の普及→革命だ!にはならないのでは?
重工業の発達→生活が豊かに→戦いで傷つくのは貴族と傭兵で十分、普通に暮らせて不満無し!
となるかもしれない。
市民革命じゃなく、規模の大きな一過性の叛乱で終わるだろうな
スパルタクスの乱みたいな
貴族も銃器を持てば確かに力関係は変わらないと思う。
しかし、射程が銃のほうが長い以上、お互いに銃器を持った場合、
魔法vs銃ではなく、銃(補助に魔法)vs銃となると思われる。
そうなると、貴族・メイジが人口の何%いるのか不明だが、
多くても数万だろうと思われるメイジに対し、数百・数千万の平民という差で、
平民に有利になるのではないだろうか。
>>55 サイレントはあくまで「自分が聞こえないようにする」
だから周りは魔法発動できると思われるが?
あれ? 違ったっけ?
銃火器類が発達すれば、平民でも十分な戦闘力が得られるようになって、戦時に厳しい徴兵が行なわれるかも。
貴族と傭兵じゃ数が少ないと思うし、「戦争は数だよ兄貴」って言うし。
62 :
狼と虚無の牙:2008/05/03(土) 12:37:34 ID:SIrtYnwK
ウルフウッドさん第五話を13:00から投下します。
>>55 スイフリー 「魔晶石使って達成値4倍掛けのサイレンス、これ最強。」
うきゃー!
>>54 確かに練金あたりとの相性は良さそうだな
純度の高い金属や特殊な合金は直接作れないけど原料はいくらでも作れるわけだし
>>55 あくまで音を遮断するだけで「沈黙」させる魔法じゃ無かったと思うんだが
>>61 工業技術が発達して平民でもメイジと互角以上に戦えるようになれば当然
戦争の主力は平民になって弱い立場の奴等はバシバシ徴兵されるだろうな。
人口の1割しかいないメイジが主力でやってた頃に比べて戦争の規模も
ガンガン拡大して近代的な総力戦殲滅戦に近付いてくだろうし。
そう考えると技術礼賛も一概に喜べない物がある。
>>66 むしろ魔法もあるせいで半端ない戦いになりそうだ…
ハルゲニア最後の日も近いなそうなると…
>>60 >>65 ああ、たしかに言われてみれば、描写的にサイレントは『音の遮断』ぽいね。
詠唱封じは無理か。
それでもサイレンサーがわりには使えそうだけど、それも効果範囲の広さ次第か。施術者を中心にして2〜3mくらいなら銃よりナイフのほうがいい気もする。
でも返り血とかの問題も…いや、血は錬金で土にでもすりゃ払い落とせるか。
やっぱサイレント使えねーわw
>>66 案外、それが理由でブリミルはハルケギニア中の高度な文明の産物を全部『エクスプロージョン』で破壊しちゃったとかだったりして。
月光蝶みたいに。
69 :
虚無と狼の牙:2008/05/03(土) 13:00:12 ID:SIrtYnwK
虚無と狼の牙 第五話
揺れる馬車の振動の中でフーケは目を覚ました。もう、随分と陽は傾き始めている。例の小屋にたどり着いたのが真昼だったから、自分は三時間くらい気を失っていたのか。
体をもぞもぞとうごかしてみた。両腕が縛られている。杖は近くにはないようだ。当たり前か。
「やられちゃったわねぇ……」
小さくひとり言を呟く。気が付いたことがばれたら色々とうっとおしそうなので、誰にも聞こえないような小さな声で。
これから自分はどうなるのだろうか。まぁ、よくても悪くても死刑には変わりはないだろうが。
それにしても、まさかメイジでもなんでもない男にやられてしまうとは思わなかった。
ゴーレムの動きから正確に自分の位置を見つけ出すとは。
フーケは職業柄そういった敵に回したらやばい人物に鼻が効くつもりだったのだが、今回だけは失敗した。
恐ろしい男だ。あいつが自分に向かって破壊の杖を構えた瞬間、両手が冷たくなったのを覚えている。
足が震えて動けなかった。これほどの殺気を放つ男なんて今まで見たことがない。けど――
「か、かつて、これほどまでに、死ぬ、思たことはなかった……恐ろしい、魔人以上……」
――なんで私を捕まえた張本人が私の横でうなされながら気絶しているわけ?
雑談はやめて支援。
sienn
72 :
虚無と狼の牙:2008/05/03(土) 13:01:24 ID:SIrtYnwK
フーケ討伐一行全員は学院に戻ってきた。秘書のロングビルがフーケの正体だったことに学院の人々は驚きを隠せない。
そんな人々をよそにウルフウッドは経過の報告をルイズたちに任せて部屋を出て行った。
彼にとってはこの一件の事後処理など興味もなかったし、フーケを捕らえること以外は自分の範疇外だと思っていたからだ。
部屋を出て行く自分にルイズが何か言いたそうな顔をしているのに気が付いたが、ウルフウッドはそれを無視して部屋を出た。
例の一件を怒っているわけではなく、ただ一人になりたかった。
ウルフウッドは夕暮れの学院の庭に佇んでいた。塔に背をもたれかけながら、落ちていく陽を見ていた。
今まで大して深くも考えなかったが、この世界へ来てこのまま自分はどうなるのだろうか。
そんな疑問をウルフウッドはぼんやりと思い浮かべる。
「ややっ、こんなところに居られましたか」
「おう、センセ」
コルベールがやって来てウルフウッドに声を掛けた。
「探しましたぞ、突然ふらっと出て行かれるので」
「ワイがおってもしゃあないやろ。事後処理はそっちに任せる」
「そんな他人事のように。ミスヴァリエールが食い下がっておりましたぞ。ウルフウッド君には何の褒章もないのか、と」
「かまへん。別にそんなもんはいらん。そっちはもう片付いたんか?」
「ええ。フーケは明日身柄を引き渡すことになりました。ミスヴァリエールたちにはシュヴァリエの称号を王家に申請することになりそうです」
「そらよかったな」
「浮かない表情をされておられますな」
コルベールがウルフウッドの隣に座った。
「何か思うところでもありましたかな?」
「……あかんな、ワイは」
ため息とともにウルフウッドは空を見上げた。
「どういう意味です?」
「牙のない狼は野垂れ死にするしかあらへん。それが今回ようわかったわ」
「けど、彼女たちの説明ではあなたがフーケを捕らえたと?」
「運がよかっただけや。ランチャーがなかったら手詰まりやったで」
コルベールはここで何かを悩むように少し頭を振った。そして、唾を飲み込むとウルフウッドの目を強く見据える。
73 :
虚無と狼の牙:2008/05/03(土) 13:02:28 ID:SIrtYnwK
「ウルフウッド君。あなたに前から訊きたかったのですが、あなたはどこから来られたのですか?」
「どうでもええやんか、そんなことは」
「ひょっとしたら、我々とは違う世界じゃないですか?」
「……なんでそう思うねん?」
「あなたのあの銃、パニッシャーですか? 早速ですが、私もあれをいろいろと調べさせていただきました。
あれは明らかに我々の世界の技術水準を超えています」
「かもしれへんな。ワイにはようわからんわ」
「……あなたのいた世界とはどんな世界でした? ここよりも素晴らしい世界でしたか?」
ウルフウッドはコルベールの問いを鼻で笑ってみせた。
「ゴミみたいな世界や。焼かれるだけの砂の惑星――
そこでぎょうさんの人が限られた資源にすがりながら、奪い合いながら明日をも知れぬ生活を暮らしとる。
そんな世界やで。そんなんと比べたらここは天国やな」
「帰りたいですか?」
「やるべきことはやった。向こうに思い残すことはないな」
「そう、ですか」
「ほんまクソみたいな世界やったで。けどな、そんな世界でも――みんな必死に生きとったわ」
ウルフウッドはぼんやりと日の沈む先を見つめていた。この先にあの世界はあるのだろうか。
「なぁ、センセ。時々不思議にならへんか? 自分は何で生きているんやろ、て?
ワイは思うで。自分は血と泥の水溜りをいつまで這い回るんやろうて。
生きている限りここから出られへんのちゃうかて」
「……記憶や過去というのは残酷ですね。どれだけ後悔しても、懺悔しても、変わることがない」
コルベールは自分の手を見つめる。この手は一体どれだけの人の血に染まっているのだろうか。
「これこれ、お前ら男同士でなにをしんみりとしとるのじゃ」
二人が佇む壁の傍に一人の老人の影が伸びてきた。
「誰や、このじーさん?」
「うちの学院長ですよ。ほら、フーケ討伐の前に会ったでしょ」
へんなものを見るような目をしているウルフウッドにコルベールが耳打ちする。
「んなこと言われたって、こんなじーさんの顔いちいち覚えてられへんて」
「こんなスケベでいいかげんで、それが原因で今回のフーケ事件の原因を作った学院長で、
私もいっぺん死んだほうがいいのではと思うくらいですけど、
それでも一応学院長なんですから、それなりの対応をしてください」
「……あの、丸聞こえなんじゃけど」
オールドオスマンは肩を落として立ち尽くす。
74 :
虚無と狼の牙:2008/05/03(土) 13:03:46 ID:SIrtYnwK
オスマンはウルフウッドに説明すべきことを説明した。つまりはガンダールヴとしての能力、そして破壊の杖の出自についてである。
「つまり、ワイはそのなんたらいう使い魔になったおかげで、全ての武器を使いこなせるっていうんか?」
「うむ、その通りじゃ。おぬしも実際に体感したのではないのかの?」
「まぁ、確かにな」
ウルフウッドは静かに自分の左手の甲に刻まれた文字を見つめる。あの感覚はこのルーンの能力だったのか。そう納得していた。
「ただ、その件については口外無用でお願いしたい」
「かまわへんけど、なんでや?」
「伝説とかいうものは得てして利用されがちじゃからな」
「ワイもこんなけったいなもん人に自慢する気もないから、安心してや」
「それで気になるのがその破壊の杖を持っていたという男ですな」
コルベールが顎に手を当てて、オスマンを見つめる。
「うむ。随分とぼろぼろの身なりじゃったが、あの服装は間違いなくみたことのないものじゃった。
彼はなくなる前に『自分は砂漠の星から水を求めて旅をしていた』と言うたな。
まさか、そのときは彼が別の世界から来たとは思わなかったのじゃが――」
「今となってはそう解釈するのが妥当やな」
ウルフウッドは立ち上がると、壁に背をもたれた。
自分以外にも、あの砂の星からこの世界にやって来た人間がいる、その事実をどう受け止めていいかわからない。
「その事実はつまりはウルフウッドくんの世界と我々の世界がどこかで繋がっていることを示唆しているわけですな。
ならばウルフウッドくん、君は可能ならば元いた世界に帰りたいと思いますか?」
そんなウルフウッドにコルベールは尋ねた。
「いや。むしろその逆や。もしも可能なら、ワイのいた世界の人をこっちに連れてきてやりたい。
ここなら水もある、草もある、土もある。
砂漠の星の片隅でいつ果てるともわからん限られたプラントを奪い合って生きていかんですむんや。
明日をも知れぬ生活に怯えんですむんや。
もしも、あの砂の星から抜け出せるんやったら、そしたらワイは――」
「これこれ、今日はもうそんな難しいことは考えなさるな」
ウルフウッドの肩をオスマンが叩いた。
「答えはそう焦らずともよいじゃろう。なに、まだ時間はある。ゆっくり考えるがよい。
今宵はブリッグの舞踏会じゃ。
ウルフウッドくんよ、我々は君にさしてなにもできはしないのは無念で仕方がないのじゃが、せめてブリッグの舞踏会くらいは楽しんでいってくれんかの。
ご馳走も酒も出るぞ」
オスマンの誘いにウルフウッドは小さく頷いた。
支援砲火
76 :
虚無と狼の牙:2008/05/03(土) 13:04:56 ID:SIrtYnwK
食堂のバルコニーの柵にウルフウッドはもたれかかっていた。
右手にはワインの入ったグラスと、その傍らにはデルフリンガーが立てかけてある。
「けっ、相棒もさみしーね。パーティーだっていうのに一人バルコニーで酒飲んで、挙句話し相手が俺とはなぁ」
「べつにええやないけ。お上品な舞踏会なんてワイのガラちゃうしな」
「ちげぇねえ」
デルフリンガーは鍔をカタカタと鳴らして笑った。
「いつぞやか、お前の言うた使い手いうのはひょっとしてこれのことやったんか?」
ウルフウッドは左手のルーンをデルフリンガーに見せる。とはいっても、この剣のどの辺りが目なのかはわからないが。
「あぁ、そうだった、ような気もするねえ」
「頼りない返事やな」
「何せ六千年も生きているからねぇ。いろいろと忘れちまっているんだよ」
ふぅん、とウルフウッドは鼻を鳴らした。頬杖を付きながら夜の学院の庭を眺める。煌々とした舞踏会の灯りが背中から降り注いでくる。
話し相手にコルベールでもいてくれればよかったのだが、コルベールは「いや、実はですな。お恥ずかしいことに私はふられてしまってですな」などとわけのわからないことを言って、この舞踏会には参加しなかった。
心なしか、少し落ち込んで見えた背中の上で、頭頂部の輝きが鈍くなっていた気がする。
仕方がないので、ウルフウッドは料理を皿に盛って失敬した後、こうしてワイン片手にバルコニーで一人飲んでいるのである。
「あんたこんなところで何をやっているのよ」
ウルフウッドは不意に声を掛けられた。ちらりと横を見ると、ドレスに着飾ったルイズが腰に手を当てて仏頂面でこちらを見ている。
「見たらわかるやろ。酒飲んどんねん」
はぁー、とルイズは大げさにため息を付いた。
「あんたねぇ。せっかくの舞踏会だっていうのに、なんで一人でこんなところでお酒なんか飲んでいるのよ」
とか文句を言いつつもルイズはウルフウッドのほうへ歩み寄ってくる。
「別にワイは貴族ちゃうからな。こういう場は苦手なんや」
ルイズはウルフウッドの隣に立つと、先ほどまでウルフウッドの視線の向いていた学院の庭を見つめた。
「食堂の中は明るくてきれいなのに、こうして外を見ると不思議ね。なんか、暗くて、何も見えなくて、この暗闇がずっと続いていそう」
「暗闇に底なんてないで。どこまでも深く、どこまでも堕ちるだけや」
「なんであんたはそんな暗闇をずっと見てるの?」
「……ちょっと中が眩しすぎただけや。ワイにはあの暗闇のほうが合うとる」
「あんたって自分のこと、あまり話さないわよね。あけっぴろげに見えて、誰も中に踏み込ませない」
「じょうちゃん、ちょっと酔いすぎやで」
「酔ってなんかいないもん」
ルイズは口を尖らせた。それから二人は会話を見失ったように、黙った。
「ねぇ」
「なんや」
ルイズが小さな声で呟くように沈黙を破る。
支援。
78 :
虚無と狼の牙:2008/05/03(土) 13:06:42 ID:SIrtYnwK
「あんたこんなところにいても暇でしょ」
「部屋に一人でいても暇やで」
ウルフウッドの対応にルイズはあきれ返るように顔をしかめた。相変わらずデリカシーのない男だ。
「わたしも暇なの。せっかくの舞踏会なのに、そ、その一緒に踊る相手がいなくて」
ウルフウッドはその言葉にルイズの顔を見つめる。
「べ、別に誰も誘ってくれなかったっていうわけじゃないのよ。
さ、誘いなんてほんと引く手あまただったんだけれども、わたしに見合う男の子がいなくて。
け、けどせっかくの舞踏会なのに、誰とも踊らないなんてもったいないから、
えっと、だから、そのあんたが暇で暇でしょうがなくってどうしても、っていうなら踊ってあげないこともないわよ」
ルイズはところどころしどろもどろになりながらも、ウルフウッドから顔を背けて一息にそう言い切った。
「いや、別にワイ踊りたいわけちゃうけど」
ルイズはバルコニーの欄干にごんっという音を立てて額をぶつけた。
あぁ、そうだった。忘れていたわ。このデリカシーゼロの鈍感馬鹿にこんなことを言っても無駄だったわ。
「だ、だから、今日のお詫びとお礼を兼ねて、わたしがあんたをダンスに誘ってあげているのよ! 結局、あの、勘違いだった、みたいだし……」
「あぁ、今日のアレか。アレはええ蹴りやった。じょうちゃん筋ええで。久々に死ぬか思た」
屈託なく笑ってみせるウルフウッド。
本人的にはルイズに「もう気にするな」と伝えたいのだろうが、如何せんウルフウッド自身に肝心なことが伝わっていない。
ルイズはもう一発蹴り飛ばしてやりたい衝動に駆られたが、ここはぐっと我慢した。
この男相手にこの程度のことでいちいち腹を立てていたらきりがない。
この馬鹿には回りくどいことを言っても無駄なのだ。言うならストレートに言うしかない。
「貴族の娘っ子、あんたも苦労するねぇ」
「うるさいわよ!」
茶々を入れたデルフリンガーをルイズは怒鳴りつけた。
仕方がない。ここは妥協に妥協を重ね、百歩どころか一万歩譲るしかない。
「ウルフウッド、ちゃんとわたしのほうを向きなさい」
「え? なんでやねん?」
「いいから!」
頭の上にハテナマークを浮かべたウルフウッドを強引に向き合わせる。ルイズは大きく深呼吸した。
「わたくしと一曲踊ってくださいませんこと。ジェントルマン」
ウルフウッドはしばらく状況をつかめないようにぼんやりとルイズを見つめていた。ルイズの顔がだんだん赤くなってくる。
仕方がないか。ウルフウッドはぽりぽりと頭を掻いた。
「ワイ、ダンスなんてやったことないで」
「わたしに合わせてくれればいいのよ」
ルイズはそういうだけ言うと、ウルフウッドの手を掴んで引っ張るように歩き出した。ルイズに引かれるままにウルフウッドはホールへと向かった。
ウルフウッドはぎこちないステップでルイズについていく。
普段、何事もひょうひょうとこなす彼が、珍しく額に汗の玉を浮かべて慎重にルイズの足元を見ている。
必死な目をして「おっ」とか「あっ」とか言いながら、不器用な足運びでダンスをするウルフウッドの姿をルイズは目を細めて見つめる。
小柄なルイズとウルフウッドでは、ルイズがヒールの高い靴を履いたとしても、ルイズの頭はウルフウッドの胸の辺りだ。
そんな二人が手を取り合ってダンスすると、ルイズがウルフウッドに包み込まれるように見えなくなる瞬間があった。
大きな背中――なのだ、彼の背中は。ルイズを全て包み込めるほどに。
遠くへ消えてしまうような気がしていたこの背中が、今自分のすぐ傍にある。ルイズはただそれだけで、無邪気にただ深く安心できた。
79 :
虚無と狼の牙:2008/05/03(土) 13:07:49 ID:SIrtYnwK
以上です。支援ありがとうございます。
これでフーケ編が終わってひと段落という感じでしょうか。
GJ
あっちが地獄ならこっちは天国みたいなものなんだろうなぁ。
お疲れ様ー
そうか、元の世界から移民を連れてくるという発想もありか
GJ
流石にガンホーの連中に比べたらメイジなんて少々手強い手品師くらいなモンだよな。
ヴァッシュやナイヴズの存在を知ってる砂の惑星の人間なら確実に天国だな。
ガンホーはスクウェアクラスでなんとか渡り合えるくらいじゃないか?
ナイブスはさすがに無理だろうけど
レガートは反則すぎる
ガンダムSEEDからキラ坊
「やめてよね、ギーシュが僕に勝てるわけないでしょ」
凄まじい身体能力とガンダールヴ補正でギーシュに接近してぼこぼこにするキラ
ミッドバレイならメイジを完全無力化出来る
ウルフウッドがフーケとサウスゴータの孤児院のことを知ったらどう動くだろう・・・
自分を重ね過ぎちまうかな?
多分マインくらいには勝てるだろ
つーかメイジってスタングレネード一発とロープだけで無力化できね?
実も蓋もないけどな
条件によるんじゃないかなぁ。
一対一の不意打ちならそうだろうけど、
手の内が知られていけばおのずと対応策もとられていくことになる。
メイジ側は血統が流出しない限り魔法の流出はない?のかもしれないけど、
普通の科学技術はそのうちメイジ側にも流出していくことになって、
メイジ側は魔法+科学技術という戦法を発展させていくことになるだろうし。
まあ何年かかるかは知らんけどなっ
ガンホーは能力以前にルックスがアレな連中は多いような
いきなりモネヴやマインとご対面して腰抜かさない自信ないぞ俺
量産出来ないと戦力にならんよ
製鉄技術が発達すればメイジなんか駆逐される
科学技術の発達が促される
精神力って何?
魔法を使うための「杖」を作る技術がロストテクノロジーになっちまったりして
そうか
ところで、量産できるだけの技術や設備や資源をより多く用意できるのは
貴族と平民のどっちだと思う?
サガフロ2みたいだな
貴族って保守派だろ?
わざわざアドバンテージを手放そうなんて奇特なメイジは
コルベール氏くらいだろ
遺伝子工学が発展すれば
メイジから魔法を使える因子を解析して
平民にそれを移植させ人工メイジを製造することも出来るかも…
強化人間みたいな…
うむっ緊急連絡だ!
6000年もあれば平民にだいぶ血が混じってるのではないだろうか。
貴族が6000年も濃い血を維持してるとしたら、かなりアレだな
いつからここはハルケギニアの貴族と平民が紛れ込むスレになったんだww
だれか逆召喚したか?
>>95 それは話の後先が違う。
国を富ますために量産技術を発展させ、結果として貴族と平民の差が縮まっていくんだろ。
非メイジへの偏見が薄いゲルマニアあたりなら普通にやりそうだし。
>>102 そして
「我がゲルマニアの科学力は世界一ィィィィィィィ」となるわけだな
メイジって要は魔法習って杖買う金持ってるだけで
身体的には平民も貴族も同じ一般ピープルじゃないん?
なんちゃらの特殊な血筋やら才能が必要なのは虚無系統だけなんだろ?
オーフェンの魔術師みたいにメイジと平民とで身体的な差ってなんかあったっけ?
>身体的な差
いいもの食ってるからピザが多い、とか?
GJです
トライガン全巻読み返してしまった
レガートやクリムゾンネイルに勝てるメイジが想像できない
>>104 虚無以外の系統魔法も血筋によるものだよ。
6000年経ってれば平民にもメイジの血が混ざってそうなモンではあるけど。
魔法が使えるのが貴族
から
金持ってるのが貴族に変わるだけかもしれんぞ
でも研究機関はメイジのものなんだから、魔法と組み合わせた技術が発達するのが自然じゃないのだろうか?
>>109 そこで、
メイジの地位を上げるための研究
vs
非メイジを含めた総合的な国力を上げるための研究
の相克が起きて、
前者を選んだガリア・トリスタニアを尻目に
後者を選んだゲルマニアが勃興したりするんじゃね?
>>108 ある意味正しくね?
金持ってて、古くから続いている家=貴族、それほど金持ちじゃない一般市民=平民
112 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/03(土) 18:23:18 ID:HHcaxzMS
一定以上の血の濃さが無いと魔術師として能力が発現しない
ってのは社会体制見てると無さそうだよな。
もう日本国憲法第14条とか召喚しちゃえよ
>>113 「概念」の召喚は新しいかも。
ハルケギニアの身分制はそのままに、地球の物理法則を召喚(=魔法無し)とか。
貴族が云々のくだりで
クロスボーンガンダム連想した
>>115 トビア召喚ですか?
彼も胸のない娘が好みだから丁度イイですね。
>>114 概念って言葉だけで終わクロ連想した俺ガイル
>>112 傭兵どころかそこらのスリにさえ貴族崩れのメイジが混じってるんだよなぁ。
それに血の濃さが能力に関わるようだと、
貴族は近親婚ばっかりになって逆に血筋の維持が難しくなるんじゃないかねぇ。
まあこれ以上は考察スレに行ったほうがいいかな。
あのさ、原作あんまり読んでないからみんなには的外れな質問かもしれないんだが
本当に平民は魔法使えないのかな?
案外ちゃんと魔法の勉強して杖持てばネギまみたいに使える気がするんだが…
>>119 使えるかもしれんがそんな金は無い
……てとこじゃねえかな多分
むしろ平民が下手に魔法を使ったら多分貴族側に刈られると思われ
貴族なら平民をさらおうが殺そうがお咎めなしなお国柄なもんだから
生意気な平民なんぞ速攻で抹殺対象だろう
>>119 そればっかりは
本編で平民出身のメイジが出てこないことには何とも。
>>120 でも元々貴族はほぼ必ずメイジだがメイジが貴族とか限らない世界じゃなかったっけ?
元貴族の子供とかも平民のメイジだろう
>>116 シエスタのじいさんの正体はグレイ・ストークで、タルブにはガンプがあるとゆー。
そんな創作妄想を半分本気で考えていた時期が俺にもありました。
>>123 太陽系外への移住、という点に限れば、ある意味成功してるな(w
憲法記念日なんだからこれだろ
かの日本国憲法9条様を召喚?したアンリエッタ
「これは素晴らしい概念だわ! ぜひとも国内外に広めましょう」(なんか洗脳された様子)
シエスタのじーさんとかひいじーさんって何種類いるんだ?
誰か一覧作ってくれ
そこで無防備マンですよ
「水の使い魔Splash☆Star」の第0話を投下したいのですが、よろしいでしょうか。
時間は19:10を予定しています。
バッチコーイ
「あ〜ぁ、ヒマよねぇ…」
ミズ・シタターレは退屈しきっていた。
『泉の郷』の生命を司る7つの泉、その6つまでを彼女たちは滅ぼし、奪った。
そして、アクダイカーンは彼女に『水の泉』を与え、そこを守るように命令した。
残った『太陽の泉』の場所は杳として知れない。
場所を知る『花の精霊』と『鳥の精霊』を追って、カレハーンが『緑の郷』に向かったが、なしのつぶて。
それから、どれくらいの時間が経ったのだろうか。
『水の泉』に生き残った精霊を全て滅ぼし、生命の痕跡を全て消した後は、やることも特にない。
空はどこまでも暗い灰色で、光が照らすことも風が吹くこともない…。
泉は干からび、木は全て枯れ果て、動くものも何一つない…。
「いくらアクダイカーン様の命令とはいえ、こんな所にずっといたら腐っちゃうわわね。
また、『緑の郷』にでも気晴らしに行ってみようかしら。」
彼女がそう呟いた時、変化が起きた。
目の前に、いきなり突然光る鏡のようなものが現れたのである。
彼女はそれをまじまじと見つめた。高さは2メートルほど、幅は1メートルほどの楕円形をしている。厚みはない。良く見ると、それは少し中に浮いていた。
「次元転移用のゲート?ダークフォールのとは違うみたいだけど…」
ミズ・シタターレは、にやっと笑うとゲートの中へと進んだ。
この先にあるものが、少しくらいは退屈を忘れさせてくれることを期待しながら。
ゲートを抜けた先は、彼女がはじめて見る世界だった。
黒いマントをつけた人間が大勢、彼女を物珍しそうに見ている。
周囲は緑豊かな平原が広がり、遠くには石造りの大きな城が見える。
「あんた誰よ?」
抜けるような青空をバックに、彼女の顔をまじまじと見つめる女の子が言った。
「わたくしは『水の泉』の支配者、ミズ・シタターレ。わたくしを呼んだのはあなたかしら?」
「なにそれ?訳わかんないわ…。」
目の前の女の子は、頭を振りながらそう呟いた。
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民呼び出してどうするの?」
誰かがそう言うと、彼女の顔を覗き込んでいる女の子以外の全員が笑った。
「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」
目の前の少女が、鈴のように通る声で怒鳴った。
「間違いって、ルイズはいつもそうじゃん。」
「さすがはゼロのルイズだ!」
誰かがそう言うと、人垣がどっと爆笑する。
「ミスタ・コルベール!もう1回召喚させてください!」
「それはダメだ、ミス・ヴァリエール。一度呼び出した『使い魔』は変更することができない。何故なら春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。好むと好まざるとに関わらず、彼女を『使い魔』にするしかない。」
「でも!平民を使い魔にするなんて聞いたことありません!」
ルイズがそういうと、再び周りがどっと笑う。ルイズはその人垣を睨みつける。それでも笑いは止まらない。
シタターレは、何が起きているのか今一理解できないまま、周囲を見ている。
「これは伝統なんだ、ミス・ヴァリエール。例外は認められない。それに…」
コルベールは、シタターレのほうを指差した。
「彼女はただの平民というわけでもなさそうだよ。私の『ディテクト・マジック』に彼女の何かが反応している。こんな反応は初めてだ…。」
「ど、どういうことなんですか?」
「詳しくはわからないな。何せ、こんな反応は初めてだから。それより、今は儀式を続けなさい。」
「えー、彼女とですか!」
「我が名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。5つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ。」
ルイズは朗々と呪文を唱えると、シタターレに唇を重ねた。
「い、いきなり何をするんですの!わたくしにそういう趣味はありませんわよ!」
「わ、わたしだってないわよっ!!」
ふたりがお互いに顔を背けて唇をぬぐっていると、ふいにシタターレの体が妙に熱くなった。
「あなた!わたくしになにをしたの!?」
「すぐ終わるわよ、『使い魔のルーン』が体に刻まれているだけだから。」
その言葉の通り、熱いのはほんの一瞬だった。すぐに体は平静を取り戻した。
「『サモン・サーヴァント』は何度も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』はきちんとできたね。」
そういって、コルベールはシタターレに近づき、その額に刻まれたルーンをまじまじと眺めた。
「ふむ、珍しいルーンだな。」
そういいながら、なにやらメモを取っている。
「さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ。」
ミスタ・コルベールがそう言うと、生徒達は次々と宙に浮かび、少し離れた石造りの城のような建物に向かって飛んでいった。
「ルイズ、お前は歩いてこいよ。」
「あいつ、『フライ』はおろか『レビテーション』もつかえないんだぜ。」
「その平民、あんたの使い魔にお似合いよ。」
口々にそういって笑いながら、生徒達は飛び去っていく。
ルイズはふたりっきりになると、ため息をついた。そして、シタターレに向かって怒鳴った。
「あんた、何なのよ!」
「そっちこそ、なんで私を呼んだわけ?おチビちゃん。」
「別にあんたなんか呼んでないわよ!何で私の使い魔がこんなおばさんなわけ…。
もっとカッコいいのがよかったのに。ドラゴンとか、グリフォンとか…。」
「あら、そうなの?」
シタターレは、改めてルイズをじっと見つめた。
(この子、何か力を感じるわね…。『滅びの力』とはちょっと違うみたいだけど…。
もしかしたら、私が呼ばれたのは偶然じゃないかもね。)
「ま、いいわ。どうせヒマだし、おチビちゃんに付き合ってあげるわ。」
「その『おチビちゃん』ってのは止めなさいよ!私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!」
「そんな長いの覚えられるわけないでしょ、おチビちゃんはおチビちゃんよ。」
「あんた、平民のクセに貴族にそんな口利いていいと思ってんの!」
「あーら、そちらが貴族なら、わたくしは『水の泉』の支配者ですわ。」
「あーー、もうっ!!」
まったく話が通じないので、ルイズは業を煮やして地団駄を踏んだ。
C・EN
「と、とりあえず急ぐわよ!次の授業がはじまっちゃう。」
コルベールや生徒達の姿はすでに見えない。おそらくもう着いているだろう。
ルイズは、遠くの石造りの城に向かって駆け出そうとした。
「あら、おチビちゃんは飛ばないの?」
「う、うるさいわね!そんなのどうでもいいから急ぐわよ。」
痛いところを突かれたのと焦っていたので、ルイズは気づかなかった。
シタターレの顔がニヤリと笑ったのを。
「あーら、そんなに急いでるんでしたら、わたくしが送り届けて差し上げますわ。」
「え?!」
振り返ったルイズが見たものは、巨大な水の塊だった。
その表面はブヨブヨと波打ち、ルイズにまとわりついた。
「な、なによこ…」
彼女が言い終わらないうちに、水の固まりはルイズを勢い良く弾き出した。
「れぇぇぇ〜〜〜っ!!!」
小柄な少女は、教室に向かって弾丸のように一直線に跳んでゆく。
「わぁぁぁ〜〜っ!!!」
風を切って突き進むルイズ、あっという間に魔法学院の建物が目の前にあった。
(すごい…ってか、どうやって止まるのよ!! こ、これで壁にぶつかったら絶対死んじゃう!!)
「はい、到着!」
教室にいる生徒達は、驚いていた。
いきなりカーテンがめくりあがり、何かがものすごい勢いで飛び込んできたのだ!
振り返った生徒達が見たものは、泣きそうな顔のルイズと、その首根っこを捕まえている使い魔だった。
シタターレは、ルイズを飛ばすのと同時に教室まで転移して、入ってきたルイズを捕まえたのである。
生徒たちで転移に気づいたものは誰もいない。
「な、なな、なにすんのよっ!!」
あまりのことに動転したルイズは、首根っこをつかまれたまま狂わんばかりにわめき散らした。
だが、すぐに教師や生徒達が自分に注目していることに気づいて、真っ赤になった。
「な、なに見てんのよ!!あんたも、早く降ろしなさいよ!!」
ルイズは必死に平静を装った。しかし、シタターレが手を離すとそのまま倒れこんだ。
腰が抜けてうまく力が入らなかったが、なんとか手近な席に座り込む。
(な、なんだったのよ今の…。何がおきたのよ…。あの使い魔は何者なわけ?)
その日の午後の授業の内容を、ルイズは全く覚えていなかった
「別の世界ですって!?」
その夜、ルイズは部屋で素っ頓狂な声を上げた。
「そ、わたくしは『ダークフォール』の戦士にして『水の泉』の支配者、ミズ・シタターレですわ。」
「嘘をつくなら、もうちょっとマシな話を考えなさいよ。
確かに、昼間のあれは凄かったけど…なにか『魔道具』(マジック・アイテム)を使ったんでしょう。
…でなきゃ、どこかに『杖』を隠し持ってるとか!」
「別に信じてくれなくても構わないわよ。それより、こっちの世界のことを教えてちょうだい。」
ため息をついてルイズは話し始めた。
ハルケギニアのこと、トリステイン魔法学院のこと、サモン・サーヴァントのこと…。
「その『使い魔』ってのが、イマイチわからないんだけど、結局なんなのそれ?」
「まず、使い魔は主人の目になり耳になる能力を与えられるわ。
その使い魔が見たものは主人も見ることができるのよ。
でも、これはダメね。私何にも見えないもん。」
「それで?」
「それから、使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ、例えば秘薬とか。」
「なにそれ?」
「特定の魔法を使うときに使う触媒よ。コケとか、硫黄とか…。」
「そんなの知らないわ。でも、水でできたものなら大抵作れるわよ。」
「水魔法の触媒もあるにはあるけど。それはどっちでもいいわ。
そして、使い魔の一番の役目は、主人を守る存在であること!
その能力で主人を敵から守るのが一番の役目よ!」
「あのさ、さっきから聞いてたら、『使い魔』って下僕みたいに聞こえるわね。」
「ちょっと違うけど、そう言い換えてもいいわ。」
「わたくしは、アクダイカーン様の忠実な下僕よ、おチビちゃんの下僕じゃないわ。」
「『コントラクト・サーヴァント』が成立した以上、あんたは私の使い魔なの!」
「ま、どうでもいいわ。どうせ『水の泉』に戻ったってヒマなだけだしね。
アクダイカーン様からお呼びがかかるまで、おチビちゃんにつきあってあげるわ。」
そういって、シタターレは部屋を見回した。
「さて、この世界を見てこようかしら。」
「何言ってんのよ、あんたは私の使い魔なんだから勝手なことしないでよ。」
「ここにいたって寝る場所もなさそうじゃない、ねぐらくらい自分で何とかするわよ。」
そういい残して、シタターレの姿は消えてしまった。
「消えた…。まさか、本当に…?まさかね…。」
部屋に一人残されたルイズは、そう呟いて、シタターレの消えた場所をずっと見つめていた。
ミズ・シタターレは、月明かりの中で学院の裏庭を歩いている。
時折吹き抜ける風が、草の匂いを運んでくる。その風を感じながら、彼女は空を見上げた。
「『赤い月』と『青い月』…、『空の泉』のふたりが見たらなんていうでしょうね。」
今回はここまでです。支援ありがとうございました。
前回にいただいた感想へのレスです。
#またルイズいぢりの上手そうなのが来ましたね。
それが一番の選定基準だったりしますw
#個人的にシェフィールドに嫌味を言われながらも、必死に働く ブンビーさんを見てみたかったりw
その場合、イザベラ様の使い魔って事になるんでしょうね。面白そうです。
今はこっちに集中していますけど、ネタを思いついたら書くかもしれません。
(避難所向きのネタになるんでしょうが。)
#あの最期なので、キントレスキーも来てたらいいなあとドキドキします。
時間軸的には今回がSplash☆Star第1話くらいの話です。
S☆S本編と時間軸をある程度合わせる予定ですので…。
うまく絡めそうなら登場するかもしれませんね。
#たまには出番を沢山もらってかつ涙目なデルフはみられないだろうか
結構、難しいですね…。
そもそもプリキュアの敵はほぼ全てオーバースペックの塊ですし、今回はミョズにしちゃいましたし…。
下手したらデルフの出番自体がないような気がw
>>137 投下お疲れ様です、そして感想への返答ありがとうございます。
感想への返答はあまりやると嫌われるので
あまりやらない方がいいですよ。
プリキュアの悪役キャラって、
「名は体をあらわす」を地で行くんだなw
wkwkしながら続き待ってますよ〜
プリキュア5から主人公5人組を召喚とか。
ルイズがドリーム、キュルケがルージュ、タバサがレモネード、
モンモランシーがアクアでギーシュがミント召喚。
んでもってミントに嫉妬するモンモン、ギーシュに嫉妬するマルコメ。
そして蝶人パピヨンもついてくるんですね
滴る投下乙でしたー
>>141 複数召喚の場合、5人召喚って結構多いよな。キリの良い数だからだろうか。
>>143 キャラ立てのバランスが良いって話なら聞いたことが。
言われてみればドラえもんの主要メンバーは5人だし、戦隊ものも5人組が多いし。
>>142 最近は天空宙心拳継承者までご一緒してるから困るw
前スレに残っているいくつかの小ネタはもうすぐ見れなくなるのですか?
携帯のみなもので…
メイジかどうか見分けるのが
杖持ってるかどうかなだけだから
杖を捨てた貴族が居るつー時点で
潜在的メイジの割合はかなり多いんじゃ無いの
&-<いいぞベイベー!
杖を持つのはメイジだ!
杖を持たないのはよく訓練されたメイジだ!
1868年から1912年までの日本の元号は明治だ!
ホント魔法の国は地獄だぜ!フゥハハハーハァー
「ナイトメア0」の感想をさせていただきたいと思います。
最初この作品を読んだ時、カワリーノさんがルイズの使い魔になるとは思いもしませんでした。
彼の事ですから、どうせまた非道の限りを尽くし、ルイズを利用するつもりなんじゃないかと…。
と思ったんですが、ハルケギニアに来てからと言うもの、彼は随分と変わりましたね。
そして、学ぶべきものを数多く学び、何故デスパライア様がプリキュアと打ち解けたのかも、やっと
理解できた様ですね。
闘技場でのあの時…ブラッディさんは、カワリーノさんに"チャンス"を与えたのではないでしょうか。
彼も気づかぬ内にそのチャンスを有効に活用し、気が付いた時には自分の守りたい存在が見つかっていたのです。
彼自身が黒い仮面を使ったのも、今までは用済みの部下を切り捨てる為に使っていましたが、それを渡された
社員達は、自らの為にそれを受け取っていましたよね。
ギリンマ君はナイトメアの忠誠心の為に、アラクネア君は自らの誇りと命を懸けてでもプリキュアと倒す為、
ガマオ君は昇進の為、ハデーニャさんは…論外ですね、アレは無理矢理でしたし。
そしてカワリーノさんは…自分自身の為でなく、大切な人を守る為に仮面を使いました。
そして、ナイトメアへの帰社では…カワリーノさんは自らの過ちと、デスパライア様の本心に気付く事が出来ましたね。
カワリーノさんとブラッディさんも、またゼロから新たな道へと進んでいく…。
楽しませて頂きました。
ところで…どうしてブラッディさんとカワリーノさんは、元の姿に戻れたんでしょう?
>>43 特殊兵装扱いでA-10にくくりつけられるコッパゲ想像して吹いた。
特殊型火炎魔法爆弾、通称「コッパゲ」を装備しますか?
ニア はい
いいえ
>>151 じゃあ俺はC-130からパラシュート付で落とされるコッパゲを(ry
だめだ、シュールすぎる
しかもアレ、元々爆弾というか工作機材的な目的で作られたんだよな
>>142 その場合はマリコルヌがパピヨン召喚な訳だな?
更にジョゼフがカワリーノ
ロマリア王がムーンフェイス
テファがカズキを召喚すれば
蝶・完璧だな
水の使い魔氏乙そしてGJでした
第一話時点からの召喚でしたか
名前間違えイベントがあるかないか今からワクワクしながら待ちます
>>154 カズキを召喚したら地球に残ったブチマケさんが濁った眼になるので危険です
まあカズキは胸よりおへそに目が行く男だがな
>>156 かぁずぅきぃ〜
ローゼンメイデンでも蒼い子なら当たりだな。他の姉妹だとキャラがアレ過ぎるw
電脳関係の方々を召喚するにはアニメ版のロックマンEXEの様に実体化するしかないかね。
EXEのナビならPET召喚とか
まぁ召喚された後役に立つかっていうと目覚まし時計代わりくらいにしかつかえないけど
基本的に連載初期のルイズ、
というかあの世界のメイジの価値観からすると人間以外が召喚されるほうが
アタリなんじゃないかと。
ローゼンメイデンあたりなら誰が召喚されてもアタリなんじゃないかと。
銀と緑辺りは説得にエライ手間がかかりそうだが。
>>160 常識的の蒼、頭の緩い雛と金辺りはまだいけそうだけど…
銀・紅・翠は一筋縄ではいかないし、雪だと危険過ぎるw
イザベラがブチマケさんこと斗貴子さんを召喚すれば何とかなるさ
後はブンビーさんが幸せになるのを祈るのみ・・・・
名護さん呼ぼうぜ
もういっそ武装錬金のキャラ全部召喚しよう。
…誰が召喚するんだ。という疑問はなしでお願いします。
ルイズがロボコップを召喚して、決闘後にギーシュが「警官暴行罪で逮捕する。」
とか言われてるの想像した
>>160 感覚共有さえできれば、平民は人間の道具も使えて言葉も通じてシエスタを見るに読み書きもできて
同じ人間ということで周りから危険視もされず、身分を隠して隠れることもできる……
平民の使い魔って実は一般メイジには大当たりなんじゃないだろうか
使い魔のルーンのおかげで絶対服従の感覚共有付き奴隷
衣・食・住さえ最低限与えれば給金も必要なし
GODHANDからジーン召喚
ジーン「このガキンチョより、まだあのビッチの方がマシだぜ」
>>167 単純な労働能力としての面もあるだろうが、使い魔は貴族としてのステータス的な要素があることを考えると
当たりと言えるかは微妙だろうな
>>165 フーケのゴーレムが段差でこけたり倒したら最後に足がピクピク動くわけですね、分かります。
ONE OUTSから、渡久地東亜を召還
どんな、戦い方するのか創造つかねえ
>>163 名護さんは扱いにくそうだから、イクサシステムだけを召喚。
名護「お、俺のイクサが消えた……」
渡久地を書ききるには書いてる人の頭が良くないとなあ。
涅マユリを召喚
ハルケギニア丸ごと実験材料
>>165 ルイズが葛飾区間内の交番勤務の某巡査部長を召喚して、
ギーシュがエレファントやらアパッチやらで追いかけられるのを想像してみた
なんかギーシュの眉毛が繋がってそうな気がした。
>>165 そういや、ムヒョを召喚したらどうなるんだろ?
召喚したルイズを禁魔法律家扱いして裁いてしまうんだろうか
普通に考えて『拉致』の実行犯だし
バッカーノのキャラって呼べないかなあ
ジャグジーがガンダールヴでパワーアップ、でもやっぱ泣き虫
きゅーんきゅーん きゅーんきゅーん
わたしの主はパイロット
と歌うシルフィードが見えた
>>176 自分から怪しい鏡にノコノコ入って『拉致』は無いわ
>>177
不死者とか召喚したら即効アカデミーの研究対象だな。
不老不死は権力者達の永遠の夢だもの。
>>180 自分からホイホイ車乗ったりしても拉致になることくらいわかるだろ?
>>178 おっぱいまな板ー と歌って怒られるんだな
>>182 自分からほいほい車に乗ってそのまま「乗った奴が」運転して逃げても拉致になるか?
>>186 そりゃ違うだろ
誰かが乗ったら自動操縦でどっか遠くへ運ぶように設定されてる車にホイホイ乗って運ばれたら
そんな設定したやつは拉致で罪になると思うよ
>>181 アカデミーでの研究の末できた「不死の酒」を勝手に持ち出し、カトレアに飲ませてしまうエレオノール姉さまですね
意図の問題じゃないか?
当初からその人物を拉致することを目的としていたら誘拐とかになりそうだし
動物を召喚する目的で誤ってヒトを連れてきてしまったら、事故的な扱いでは?
不法行為ではあるだろうから損害賠償に該当しても、刑事罰まで至るかどうか
その過程でケガをさせたりとかしたら、傷害罪にはなりそうだけど
その結果、姉妹スレの短編みたいな凄惨な展開になりそうだな
クレアが沸いたらやばいな、手が付けられん
タバサとシャーネはちょっとみてみたいが婚約者殿が怖すぎるw
>>193 JOJOキャラがルイズに〜のバオーネタだと思われ
195 :
ゼロの武侠:2008/05/04(日) 00:48:25 ID:yVmLBEoC
50分から投下します。
196 :
ゼロの武侠:2008/05/04(日) 00:51:18 ID:yVmLBEoC
「なにやら騒がしいですね」
塔の外壁に背を預け、周りの様子を窺うようにアンリエッタは呟いた。
恐らくは抜け出した自分を探しているのだろうか。
ぎゅっと胸元で手を組みながら心配する兵達に心中で謝罪する。
だが決して見つかる訳にはいかない。
使い魔品評会を見学に来たのは表向きの理由。
本当の理由は、彼女が最も信頼できる人物……ルイズに頼みたい事があったからに他ならない。
騒ぎが起きたこの時以外に、彼女と二人きりで面会する機会はないだろう。
顔を上げてアンリエッタは寮内へと踏み込む。
そこで何が待ち受けているかなど、この時は予想さえも出来なかったのだ。
「さてと、それじゃあコイツは頂いていくぜ」
指先で弾いた銀貨がキンと静かな音色を放つ。
梁師範とタバサの間に置かれた器。
本来ならば指先を洗う為のボールの中には3個の賽が入っていた。
既に梁師範の隣には数枚の銀貨が重ねられている。
それはタバサから得た勝利と同数。
3個の賽を振って出た目の合計で勝負を決するという簡単な遊戯。
何の駆け引きも必要なく運否天賦が勝敗を分ける。
それなのにタバサは一度として梁師範に勝てなかった。
理由は判っている。彼は自分の意思で賽の目を操れるのだ。
それはイカサマではなく技量の問題。
そのルールで勝負を受けた以上、今更文句は言えない。
積み込みという麻雀の技法がある。
牌を洗い山を作る作業に紛れて自分の有利なように牌を仕込む技だ。
そして梁師範が武術以外で最も得意とする物でもある。
しかし、ただ山を積むだけでは積み込みは成立しない。
誰に牌が回るかは賽の出目で変わってしまう。
だからこそ賽の目を自由に操るのは必須の技術。
梁師範にとってタバサが何を出そうとも同じ事。
いつでも最大の目を出せる彼に敗北は有り得ない。
タバサの出目を眺めながら梁師範は嘆息した。
いいかげん勝ち目がないのだから諦めれば良いものを。
ギャンブルの泥沼に嵌まってしまったのか、
それとも別の理由があるのか、どちらにせよ自分には分からない。
少しばかり小遣いを巻き上げてやれば退くという算段は崩れた。
ならば納得するまで付き合ってやるしかない。
払う物がなくなれば彼女も諦めが付くだろう。
タバサに続いて梁師範が器に賽を放り込んだ直後、
激しい地響きと共に寮塔が大きく揺れた。
「何だ…!?」
咄嗟に二人が窓へと駆け寄ると、そこには巨大な人影が暴れていた。
見れば、顔もなく指もなく人の形を模したゴーレムだとすぐに判明した。
その周りでは空を翔るグリフォンに跨った騎士達が次々と巨人に魔法を撃ち込んでいく。
王女の命を狙った犯行か、咄嗟に飛び出そうとするも梁師範は思い留まった。
今の自分は本調子ではない、ましてや魔法衛士隊にはワルドがいる。
拳を交えた梁師範だからこそ彼の実力を理解している。
決してそこらの敵に劣るような男ではない。
なら、ここで高みの見物でも決め込もうかとしていた梁師範に、
タバサがその小さな手の平を差し出す。
197 :
ゼロの武侠:2008/05/04(日) 00:53:11 ID:yVmLBEoC
「ん?」
「銀貨一枚」
不思議そうに見つめる梁師範に彼女は簡潔に要件を告げた。
差し示したのは器の中の賽の目。
先程の衝撃の所為だろうか、その出目はタバサの物よりも下。
初めて刻まれた敗北に顔を歪めながらも梁師範は彼女に銀貨を投げ渡す。
恐らく彼はこう思っていたのだろう、すぐに取り戻せると。
それこそがギャンブルの落とし穴だとも知らずに。
「慌てるな! 半分は姫殿下の捜索、もう半分は僕に続け!」
ワルドの指示に従い、当惑していた魔法衛士隊の面々も動き出す。
口笛で呼んだ自分のグリフォンに騎乗しワルドは空を舞う。
上空から見渡した限りでは操るメイジの姿は見当たらない。
塔の陰にでも隠れているのか、あるいは中にいるのか。
どちらにせよ降り注ぐ破片はその一欠片でさえ容易く人の命を奪う。
ましてやアンリエッタがどこにいるか分からない状況では最悪の事態さえも想定される。
あるいは、このゴーレムの操り手が姫殿下を誘拐したという可能性も捨てきれない。
引き絞った手綱を放し、ワルドはグリフォンをゴーレムへと向ける。
考えていても埒が明かない。ならばゴーレムの排除を優先するべきだと彼は判断した。
梁師範との戦闘で疲弊しているとはいえ、その精神力は余裕さえ残されている。
それに部下の魔法衛士隊もワルドに劣りこそすれ、並のメイジでは太刀打ちできない実力なのだ。
塔を破壊せぬように細心の注意を払いながら彼等は攻撃を開始した。
しかし、ゴーレムの強度は群を抜いていた。
次々と打ち寄せる魔法を物ともせず、たとえ打ち砕かれようとも瞬時に修復する。
かろうじて塔から引き離す事には成功したが仕留めるには至らない。
気付けば、ワルドの口から苦々しい舌打ちが漏れていた。
その攻防を眺めながらロングビル……否、フーケは笑みを浮かべた。
敵の大半はゴーレムに注意を引かれ、打ち砕かれた塔に目もくれやしない。
ましてや宝物庫に亀裂が走ったのを何人が気付けただろうか。
梁師範が塔に刻んだ傷跡、それを目にした瞬間、彼女は勝利を確信した。
今動けば魔法衛士隊を敵に回す可能性もあったが、連中の目的はあくまで姫殿下の護衛。
そちらに目を向けさせれば、自分の仕事の邪魔にはならないと彼女は踏んだ。
裏稼業を生きてきた人間にとって、お堅いだけの騎士など良いカモだ。
宝物庫を目指し、彼女は騒ぎの過ぎ去った塔へと足を踏み入れた。
賽を構える梁師範の顔からは完全に余裕が消え失せていた。
積み上げた銀貨の山は既になく、積み上げた数と同じだけの敗北を刻んでいた。
放り投げた賽が器の中で踊る、しかし賽の目が出る直前で起こる振動が出目を妨げる。
無論、原因は考えるまでもなく外の騒動に決まっている。
ぶちりと血管が千切れる音を鼓膜に感じながら、彼は窓へと駆け寄り叫んだ。
「ドタバタとさっきからうるせえぞ! 余所でやれ! 余所で!」
いかに声を張り上げようと届く筈がないのだが、
そんな事はお構い無しに彼は雄叫びを上げる。
資金が底を付いた梁師範がタバサに上着を投げつけた。
勿論、こんなものを貰っても嬉しくも何ともない。
そして次にはズボンも差出し、残すはイチゴのプリントが施されたトランクスのみ。
男の尊厳と流派の秘伝を秤に掛け、ようやく彼はタバサに全てを明かした。
198 :
ゼロの武侠:2008/05/04(日) 00:54:37 ID:yVmLBEoC
剄とは自身の内気を練り上げて生まれる力。
魔法を扱う精神力にも似ているが生命力と言った方が近い表現かもしれない。
剄を込めた一撃は容易く岩石をも打ち砕き、離れた敵さえも打ち倒す。
そして破壊するばかりではなく人を癒す力も備えている。
そこまで語った時、タバサの表情に初めて変化が見えた。
何か理由でもあるのかと問い質そうとした瞬間、窓の外から一際大きな音が響き渡った。
猛威を奮った巨人が轟音と共にも崩壊していく。
それはワルド達の勝利を意味すると同時に、梁師範の杞憂が消え去ったのに等しい。
歓喜に沸く梁師範が自分のトランクスに手を掛けながら宣言する。
「さあ勝負を続けようじゃねえか。嬢ちゃんも俺とお揃いの格好にしてやるぜ。
もっとも、そんな幼児体型にゃ興味はないけどな、だはははは!」
ひょいと賽を摘まんで梁師範は器に投げ入れた。
狙ったのは最高の目。これならタバサが何を出しても結果は一緒。
乗り気にならずに逃げられる公算が高いと踏んで梁師範は自分から勝負を仕掛けた。
もはや遮る物など何もない筈だった。しかし先程と同様に響く地鳴り。
有り得ぬ筈の地響きに不審を感じた梁師範が窓から外へと飛び出した。
梁師範の視界の先にいたのは一匹の青い竜。
それがタバサの部屋の近くの壁をごつんごつんと叩いている。
震動の元凶はゴーレムではなく、この風竜だったと気づいた時はもう遅い。
ぱたりと窓を閉じてタバサは梁師範の進入を完全に塞いだ。
シルフィードも責任を追求されるのを避けて夜空へと消えていく。
そこに残されたのは梁師範ただ一人……となる筈であった。
「きゃあああああ!!」
絹を切り裂くような少女の悲鳴が響き渡る。
振り返ると、そこにはどこかで見たような顔の少女。
それが昼間見た王女だったと思い出して梁師範は歩み寄って声を掛けた。
「おい、大丈夫か?」
「いやぁあああああ!!」
余程怖い目に合ったのか、再び上がった悲鳴は先程より遥かに大きい。
無理もない。目の前で自分の命を狙ってたかもしれない巨人が暴れていたのだ。
安心させようと梁師範が声を掛けるも逆効果にしかならない。
参ったなと頭を掻きながら、ふと梁師範は気付いた。
そういえば服はタバサの部屋に置き忘れたままであり、
自身の姿が世に言う変質者という者と同様であるという事実に。
199 :
ゼロの武侠:2008/05/04(日) 00:55:06 ID:yVmLBEoC
投下終了です。
O2です
>>194 サンキュー、読んできた。
……うーむ、なんかじわっときた
>>199 乙です。
やっぱり剥かれる梁師範。あの絵柄で股関を抑えて「いやん(はぁと)」とかやってるとこまで見えた。
古の昔
魔法こそが正義であり
鋼の教えとやみを司る魔の支配する時代があった・・・
>>202 いや、巡査長ではなく、以外とコスプレ好きな巡査部長をだな(ry
ベビーゴジラ召喚して聖地にあるかもしれない核弾頭を食べさせたら
>>204 「ギーシュのバカはどこにいった!」
「ギーシュの大バカはどこだ あのバカは!」
「ギーシュはどこへ行った!出てこい!」
「ギーシュの大ばか野郎はどこにいる!? でてこい!!!」
「ギーシュのゴミ野郎はどこだ 出てこい!!」
コ「ご実家に帰られたとか・・・」
>>206 たまに(見た目は)清楚で高貴なアン様にデレデレして
下心からギーシュの罠にかかるわけだなw
BlackHawkDownからゴードンとシュガートを降下させる直前のSuper62を召喚…
3名のデルタ隊員と4名のヘリ搭乗員、そして稼働可能なMH-60L…結構良いかもw
死ななくて済むとはいえ
仲間を助けに行く直前とか最悪だな
>>209 いっその事才人とデルタ・レンジャー隊員全員を召喚。
色々あった後に七万を足止めに行った才人を援護する為にゴードンとシュガートが志願。
才人「援軍は?」
ゴードン&シュガート「俺たちだ!」
ルイズが鋼鉄の咆哮から究極超兵器ヴォルケンクラッツァーを召喚。
暴走した究極超兵器が波動砲やレーザーや特殊弾頭やらブッ放しまくってハルケギニア崩壊!とか読んでみたい。
スレの空気ってものをだな…
相棒から杉下右京を召喚
始終小言言われて胃薬常備になるルイズw
>>212 ハルケギニアを崩壊させるなら、「誰も魔法を使えなくなる」だけで充分なんじゃ?
>>209 どうせならナイトストーカーズも召喚しちゃえよ
<<そちらの位置と敵の位置を確認。これより掃射を開始する>>
<<もう一度行くぞ。しっかり頭下げてろよ>>
<<C2、ミニガンの弾が無くなった。補給のため一度帰投する>>
薬莢と弾、無煙火薬の材質と作り方が分かれば、意外と弾も作れちゃうような気がするんだ
いや、「エデンの林檎」の人も書いたことがあったが、
ハルケ世界には無煙火薬の元となる硝酸とか塩酸があるとは考えにくい。
だからたとえ作り方がわかっても材料が手に入らないと無理じゃないかな?
…それとも「錬金」でどうにかなるのか?
無能王がそれも私だを召喚
>>217 才人のノートPCのバッテリーを復活させられたんだ。
そのくらいのことはできるような気がするんだ。
>>217 どうだろう?
塩酸、硫酸、硝酸は中世の錬金術師がすでに持っていたという話だから、
手に入れることができないということはないと思う。
具体的には、硫酸は明礬などを熱して作り出し、
それに食塩を加えて熱すれば塩酸が得られ、
硝石と硫酸からは硝酸が得られるらしい。
石が真鍮になったり、土から青銅作ったりするから、なんとかなるんじゃないか?
石炭からガソリンができるんだ。灯油だってJP-4だってJET-Aだってできるさ
というかコッパゲのスペック高すぎじゃね?
コッパゲがいれば量産はともかく補充くらいはなんとかなるということにできそうだ
224 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 12:35:28 ID:w32yZNNl
電池的なものを作れても、電流や電圧、抵抗を計るものがない。
単位も正確に定義しないといけないから気が遠くなる。
単純に発熱、発光程度なら手探りに錬金して試行錯誤したらなんとかなりそうだけど
何か不思議な力でパソコン回復ぐらいのほうが楽でいいとおもうよ
厳密にやると、魔法の物理法則への影響とかまで気になってくる。
携帯の電波程度で飛行機がどうこうとか言ってるのに…
sageそこねた
ごめん
>>212 どーせならヴァイセンベルガーごとキョウフノダイオウイカを召喚して、養殖産業で世界を征服なんてネタもいい。
フィンブルヴィンテルは呼んだ時点でハルケギニア滅亡だからやだ。
>>224 飛行機の携帯云々は、大部分は無線機への影響があるから。
実際に、ブラウン管のテレビを貨物として積んだだけでノイズが入るらしいし。
なのはStsのキャロ(保護前)を召喚とか考えてる。
ヴィンダールヴにしてヴォルテールで大暴れ・・・さすがにねぇか
物理定数が同じなのかどうかしらんが
パソコンとか携帯の重さで基準を作れる バッテリーにグラム表記してあるだろうし
それを元に水の体積と重さから長さを出せる
多少変化している筈だが、身長と体重もわかっている筈
時間はパソコンの時計を元にすればいい
んで長さと力の単位をなんとか割り出して
銅線を作ってもらって電流を流して働く力を計測すればいいだろ
ほら簡単でしょ
使い魔の仕事をほっぽり出して
コルベール先生に手伝ってもらえば
一週間もあれば出来るだろ
銅と鉄はあるんだから、ワインでもかっぱらってきて
ボルタの電池でも作ればいい
炭と果汁くらい用意出来るだろうし
モーターだって銅線に糸でも油紙でも巻きつけて絶縁してやればなんとかなる
風系統のメイジにライトニングクラウドを鉄の棒にでも落として貰えば磁石が出来上がる
ようはルイズの癇癪をスルー出来ればいいんだよ
つーかモーターなら零戦の中にあるんじゃね?
名目上は発電機だろうが。
つっこみ禁止なこともあるけどな
固定化で化学変化を止めたら電池はどうなるんだろうとか
>>231 まあ腐食しなくなるんだから動かなくなるはずだよなw
固定化のかけられたガソリンに気化による臭いがあったのはどうなんだろう?
固定化かけたメイジが手を抜いたとか?
たまには考察スレのことを思い出してあげてください
もうやめて!作者のライフはゼロよ!
今保管庫から来たんだが一日あたりのPVだいぶ減ったなぁ。今年の始め頃までは毎日4万たまに5万なんて日があったのに最近は3万後半。
ここもだんだん廃れてきちゃったのかなぁ・・・
>>232 654 名前: 名無しさん [sage] 投稿日: 2008/05/04(日) 13:55:11 W5ujNnHc
>>653 固定化が化学変化を抑えるものだとしたら
バッテリーと火薬は使えなくなるだろうが、ガソリンの揮発は化学変化ではなく物理変化なので起こるだろう
紺碧・旭日の艦隊より後世日本を召喚
暮らしがよくなる程度で実害は少ない・・・か?
> 固定化
化学変化がどうとかじゃなく、
用途に応じて「劣化しなくなる」魔法なんじゃね?
ワインに掛けておけば熟成は進んでも酸化はしないとか。
勝って勝って勝って勝ってただひたすら勝ちまくるっつー展開を
面白いと感じさせるのは並大抵でない力量が必要だろう
ぶっちゃけ荒巻にも無いけどね
>>228 ルイズ「コモン・サーヴァントは成功、ちっちゃいけど竜を召喚。」
キャロ「このこはわたしの竜です!」
ルイズ「なぜか女の子に抱かれてるけど気にしない」
ってな流れになりそうだな
コモンじゃなくてサモンじゃ?
>241
契約のキスをしようとした瞬間、反射的にブラストフレアをかますフリードを想像した。
>241
年齢一ケタで竜を使い魔にした天才メイジを拉致って流れにもなりかねんな。
245 :
241:2008/05/04(日) 17:46:57 ID:SS2gZwV5
>>242 誰がうまいこと言えと
といわれるような切り替えしを一時間考えたが・・・
いきなり目の前に顔(口)が来たら、かみ殺されるとか喰われるとか本能が判断して逃げたり攻撃してもおかしくない。
ルイズより、タバサやテファ辺りの方がウマが合いそうだよな>キャロ
ただまァ、波風立たずに話が進まなそうだが…………って二人ともレアな立ち位置だからそうでもないか。
>>717 確か原作者がインタビューで、リナの攻撃力は機甲師団三個分の火力にも勝るとか言ってたから
TNT換算にして……何トン分なんだろうな?w
龍破斬は魔法の術者から放たれる赤いレーザーみたいなものは導火線のようなもので赤い
レーザーの命中箇所の一部分を純エネルギー化させ解放するとかいう裏設定がある。
原作やアニメの描写からすると小型の戦術核並みの威力があるから、TNT換算にして五キロ
トン〜六キロトンかな…
誤爆スマソ
花粉少女が召還されました
「何この痴女」
18:25から、第2話を投下したいのですがよろしいでしょうか。
今回はギーシュ戦っぽいもの?です。
昼下がりの食堂は、大半の生徒が食事を終え、そこかしこで談笑していた。
その中に金髪の巻き髪に、フリルのついたシャツを着た気障なメイジがいた。薔薇をシャツのポケットに挿している。
周りの友人達と、彼が話していると、ルイズが使い魔を従えて入ってきた。
彼らは、ルイズの使い魔を見ながら何かを話している。
そのうちの一人が、胸の大きさを表すように、自分の胸の前で両手をお椀型に動かした。
金髪巻き髪のメイジは首を振り、それよりもう一回り大きい直径のお椀を描く。
仲間の一人が、うん、とばかりに首を縦に振った瞬間、金髪巻き髪のメイジはいきなり後ろから殴られた。
「ギーシュ!あなた、なにルイズの使い魔なんか見てるのよ!」
こちらも金髪で見事な巻き毛の女の子が、ギーシュと呼ばれたメイジの耳を引っ張って仲間の輪から連れ出した。
「モ、モンモランシー、僕はただ友人達と交流をしていただけで…」
「なんで、そこで『胸』の大きさが出てくるわけ!!」
ふたりは声を潜めて話しているつもりだが、周囲には丸聞こえである。
ミズ・シタターレは、ふたりの近くまで歩いていき、聞こえるように高笑いした。
「お〜ほっほっ、美しいものに目が行くのは殿方の本能ですわ。
あんた、その貧相な胸と一緒で、考え方も貧相ですこと!!」
「だ、誰が『貧相な胸』ですって!!あなたの主人よりマシよ!
そういえば、あなた昨日も『水の支配者』とかふざけたこと言ってたわね…」
「正確には『水の泉』の支配者ですわ。まぁ氷も水蒸気も泉の水も、わたくしに操れないものはありませんから
『水の支配者』でも間違いではありませんわね。」
「こ、この…『杖』も持たない平民が偉そうに!!
こっちは、代々『水の精霊』との交信を任されていた、ド・モンモランシ家の一員よ。
本当の『水の力』というのを教えてあげようじゃないの!」
「あ〜ら面白い。それじゃ、その『水の力』とやらを見せていただこうじゃありませんか。」
「その言葉、後悔するんじゃないわよ!!表に出なさい。」
シタターレはニヤニヤ笑いながら、モンモランシーの後をついて食堂を出て行った。
野次馬が、何人か後を追って食堂から出て行く。
「ねえ、あれ、いいの?」
赤髪のキュルケがルイズの肩をつついて尋ねた。
「むむむ胸がなんだっていうのよ。あんなのただの脂肪の塊じゃない。ていうか何であそこで私の名前が出てくるのよ。モンモランシーだって大して変わらないじゃないの…」
ルイズは全く反応せず、呪文のように低く呟くばかりである。
キュルケはルイズの前で軽く手を振ってみた。
「だいたいなんであいつはいつもいつもいつも主人を無視してややこしい話ばかり持ってくるのよ。ちょっとばかり胸が大きいからって胸が大きいからってむむ胸が…とにかく調子に乗ってるんじゃないわよ…」
「ダメね、聞こえてないわ…。」
キュルケは首を振って、野次馬達の群がる方へ歩いていった。
ふたりは、噴水がある広場で10メイルほどの距離を置いて対峙していた。
その周りを『決闘』と聞きつけた野次馬達が取り囲んでいる。
「我が名は、モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。謹んでお相手致しますわ。」
「そんなの、どうでもいいからさっさと『水の力』とやらを見せてちょうだい。」
「こ、この…!決闘の作法も知らないなんて、これだから平民は…。」
モンモランシーは、キッと相手を睨みつけると高らかに呪文を唱えた。
呪文が完成すると地面に大波が出現した。一気に押し流して、地面に這いつくばせるつもりだった。シタターレは身動きもせずに自分に襲い掛かる大波を見ている。
(なにあれ?何か対応するどころか、逃げようとすらしない。所詮は平民ね。怖気づいて動けないんだわ。)
モンモランシーが『もらった』と思った瞬間…、
シタターレは、目の前にあるものを取るような何気ない仕草で、手を前に出し空を掴んだ。
それを合図に、シタターレに襲い掛かっていた大波が、先ほど彼女が掴む仕草をした場所に凝縮していく。
周囲の野次馬が「えっ!」っと思った次の瞬間には、大波は次々と空に吸い込まれた。
そして、シタターレの前には、直径3サントほどの水の球が浮いているばかりになってしまった。
シタターレは水の球を手に取ると、呆然としているモンモランシーの方に歩いていき、にっこりと笑ってその球を彼女の手に載せた。
…と、その次の瞬間、水の球は溶けて元の大波に戻り、ドッと周囲に流れ出した。
「ケホッ、ケホッ…、な、何でこんな…。」
自分の呪文が作り出したはずの大波に襲われて、びしょ濡れになり、すっかり水を飲んでしまったモンモランシーは、地面に座り込み咳き込んでいた。杖はどこかに流されてしまい、自慢の巻き髪もすっかり乱れて服に貼りついている。
「どうしたの?まさか、もうおしまい。」
いつの間にか空中にいたミズ・シタターレは、濡れた地面に降りながら質問した。
モンモランシーは咳き込んでいて、答えにならない。
「つまんないの、それじゃ今度はわたくしの力を少しだけ見せてあげますわ。」
シタターレが指を鳴らすと、モンモランシーの体が中に浮き噴水の方に向かっていく。
「な、何するつもり!」
「はいはーい!危ないから皆さんもっと下がってね。もっともっと…はいそれくらい。」
シタターレに言われて、野次馬が10メイルほど下がったところで、彼女は噴水の方を見た。
「ちょっと、誰か助けてよ…。お願い!」
噴水の上でモンモランシーはなんとか逃げようと必死でもがくが宙に浮いているためにどうにもならない。
シタターレがもう一度指を鳴らすと、噴水は勢いよく吹き上がる。
「わわわあぁぁぁ〜〜っ!!」
モンモランシーは噴水と共に、一気に30メイルも吹き上がった。
それと同時に、噴水の水は凍り始めて、長い長い氷柱ができあがった。
いつの間にか、シタターレの額の文字が輝きを放っている。
「あら、今日は『奇跡の雫』の調子がいいわね。んじゃ!」
彼女がもう一度指を鳴らすと、氷柱がどんどん厚みを増してゆき、巨大な『氷の塔』が出来上がった。
「はい、完成!」
塔の頂上は直径5メイルほどあり、その中央でシタターレは胸をはって宣言した。
その隣にはすっかり腰を抜かしてしまったモンモランシーが座り込んでいる。
「あ、ああ、ありえない…ありえないわ…こんなのスクウェアだって無理よ…。」
「う〜ん、我ながら良い出来ね。丁度ねぐらを探してたところだし、折角だからここに住んじゃおうかしら。」
所変わって、ここは学院長室。
ミスタ・コルベールは、泡を飛ばしてオスマン氏に説明していた。
春の使い魔召喚の際に、ルイズが平民の女性を召喚してしまったこと。
その女性に、『ディテクト・マジック』をかけたところ、見たこともない反応を現したこと。
ルイズと使い魔に掃除を言いつけたら、ありえない速さで終わらせたこと。
そして、割れたはずの窓ガラスに『溶けない氷』が入っていたこと。
ルイズが、その女性と『契約』したときのルーン文字が気になったこと。
それらを調べていたら…
「始祖ブリミルの使い魔『ミョズニトニルン』に行き着いた、というわけだね。」
「そうです!あの女性の額に刻まれたルーンは、伝説の使い魔『ミョズニトニルン』に刻まれていたのと全く同じモノであります。」
「で、君の結論は…。」
「あの使い魔は『ミョズニトニルン』です!さらに、それだけではありません。
『契約』の前に私が使った『ディテクト・マジック』の反応は、『水の精霊』に対するものと非常に似ています。
あの者は、人間ですらないかもしれません!」
「ふむ、確かにルーンは同じじゃ。しかし、それだけで決め付けるのは早計かもしれんぞ。」
「それも、そうですな。」
ふたりが顔をつき合わせて、考えあぐねていると、ドアがノックされた。
「誰じゃ。」
扉の向こうから、ミス・ロングビルの声が聞こえた。
「広場で決闘している生徒がいるようです。大騒ぎになっています。」
「まったく、暇をもてあました貴族ほど、性質の悪いものはおらんわい。で、誰が暴れておるんじゃ。」
「ひとりは、モンモランシー・ド・モンモランシ。」
「ほう、大人しい生徒じゃと思っておったが、痴話げんかの類かの、相手は誰じゃ?」
「…それが、メイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔です。」
オスマン氏とコルベールは顔を見合わせた。
…と、ほぼ同時にオスマン氏の窓の外で、巨大な氷柱がそそり立った。
「な、なんですかあれは!」
「広場の方じゃな…、いかんな、これは放っておいたら大事になるぞ。コルベール君、頼めるかね。」
コルベールの行動は素早かった。
彼は、教師数人と連携して『フライ』で広場にできた『氷の塔』の前まで行き、集まった生徒を解散させた。
混乱が収まると、後始末は同僚達に任せシタターレとモンモランシーを学院長室まで連れて行った。
ずぶ濡れで、すっかり自信を失っているモンモランシーには軽い注意を与えると共に自室待機を命じた。
モンモランシーは肩を落として出て行き、学院長室にはシタターレとオスマン氏・コルベールだけが残された。
「別の世界…とな。」
「そう、わたくしは『ダークフォール』の戦士、おチビちゃんの『時空転移用ゲート』でこっちの世界に来たの。」
「『サモン・サーヴァント』はハルケギニアの魔法生物を呼び出すものです。まさか、そんな話が…。」
「じゃが、信じざるを得まい。彼女の『氷の塔』や『氷のガラス』を作る能力を見れば。」
「あら、気づいてらしたの。窓がないのはどうかと思って作ってみたんだけど。」
「実習室の床に敷いた、未知の油も『ダークフォール』とやらから持ち込んだものということですか。」
「あれは、『緑の郷』の掃除用ワックスよ。道具と一緒に借りてきたの。」
「その話し振りからすると、『ハルケギニア』と『緑の郷』を行き来できるように聞こえるのじゃが。」
「できるわよ。当然じゃない!」
「なんとまぁ…。」
オスマン氏とコルベールは、あまりにも常識を外れた話に頭を抱えている。
「学院長、あまりに話が大きすぎます。ここは王宮に連絡して指示を仰いだ方がいいかと…。」
「いや、それはまずい。王室のボンクラどもに『ミョズニトニルン』とその主人を渡すわけにはいくまい。
なにせ『伝説』の存在だ、そんなオモチャを渡してしまっては、またぞろ戦を引き起こすじゃろうて。
『始祖』の力となれば大義名分も立つ。そのうえ別世界の力すら持っているとくれば
宮廷で暇をもてあましている連中は何をするかわかったものではない。」
「学院長の深謀には、恐れ入ります。」
「ねぇ、もう帰っていい?わけわかんない話ばっかりされても困るんだけど。」
「いや、もう少し…そうだ、貴方に『ディテクト・マジック』をかけた時に『水の精霊』と似た反応が出ました。
貴女は『水の精霊』と何か繋がりでもありますか。」
「『精霊』?あんな弱っちいのと一緒にしないで欲しいわね。わたくしの力は『滅びの力』、世界最強の力よ!」
「はぁ、ですが…確かに…。」
コルベールが尚も問いかけようとするのをオスマン氏がさえぎった。
「どちらにしても、貴女の力はこの世界では強すぎるようじゃな。
今日のように大きな騒ぎを起こせば、誰もがその『力』の正体を知りたがる。
そうなれば、貴女も主人も、ここでは住みづらくなってしまいますぞ。」
「まぁ、それは困るわね。弱っちいのにまとわりつかれても面倒だし…。」
「そこでじゃ、皆が納得する理由をこちらで用意しよう。
例えば…はるか東の『ロバ・アル・カリイエ』に住む、我らが知らなかった魔法生物だということにする。
古には人に変化できる『韻竜』も存在したのじゃ、人と同じ姿をした魔法生物がいてもおかしくあるまい。
はるか東の『水の精霊』と契約して、その力を使えると説明しておこう。
ミス・ヴァリエールの使い魔であることだし、彼女の協力でこの学院で研究することにすれば、
王宮のぼんくらどもうかつに文句は言えまい。」
「どうでもいいわよ。適当に任せるわ…。」
シタターレは面倒そうに手を振った。すると、オスマン氏は真顔で彼女を見つめた。
「それに際して、ひとつだけ約束していただきたい。
学院の生徒に対しては、絶対に危害を加えないこと!
この約束を守れないようであれば、我々は王軍と協力して貴女と戦わなければなりませぬ。」
「いいわよ、今日みたいな弱いのを相手にしても全然面白くないもの。」
それだけ言って、部屋から出て行こうとするシタターレをコルベールが呼び止めた。
「すみません、例の『氷のガラス』と『氷の塔』を溶かしておいていただけませんか。」
「え?わたくし、あそこに住もうと思ってるのに。」
「あそこは、人通りも多く通行の邪魔になります。場所については、こちらで手配しておきましょう。」
「えーーっ!?せっかく『会心の出来』だったのに…」
「ワシはそれでも構わんぞ。」
何か言おうとするコルベールをオスマン氏がさえぎる。
「あれだけ透明な『氷の塔』じゃ、住んでるところを下から見上げればさぞかしいい眺m…」
オスマン氏の顔面にハイキックがとんだ!!
「み、水玉…」
鼻っ柱を潰されて、鼻血を流しながらオスマン氏は床に倒れこんだ。
「が、学院長っ!」
「今すぐ、あの塔をこの世から消してやりますわよ!!」
シタターレは真っ赤な顔で裾を押さえながら、そう叫んだ。
今回はここまでです。
(4/4)が長すぎて制限を喰らったので2分割しました(汗
>各位
感想ありがとうございました。
>>149 感想ありがとうございます。
(138さんにも指摘されましたが)長々とレスを続けてスレを私物化するのはいけないと反省しましたので、とりあえず避難所の感想スレのほうにレスを返しました。
これからもよろしくお願いします。
オールド・オスマンなにやってんすかw 支援
でも目的は果たしたんだな、いろんな意味でw
学院長、あんた最高だよw
さすがはオールド・オスマン。やってくれるぜw
蝶・支援しようじゃないか
水玉乙でしたw
>>244 部族から追放されてどうのこうのって生い立ちだから個人的にはありだな。
どっち道フェイトに保護されても戦いには係わるし。
ルイズ「使い魔は一生一緒にいないといけないのよ」
キャロ「…ずっと、一緒にいてもいいんですか?」
とかいう展開希望。
大獣神か大連王呼ぼうぜ
いま戦場の絆で「ガンダールヴ」ってパイロットネームの人とマッチングしたぜ
>>262 ギーシュごときはフリード(小)でも大丈夫そうだな
となると、ワルド戦でフリード(大)覚醒で、対7万戦でヴォルテール召喚か
巨大怪獣に蹂躙される歩兵・騎兵って大魔神?
水の使い魔氏乙そしてGJでした
まあほとんど水の精霊みたいなもんですからねえ
そりゃ、ラインのモンモンじゃ敵わないわな
ところで、自分はシタターレ姐さんは履いてない説を
あれ?何か外から筋肉の音がしt
水が操れるって事は体内の血も操れたりするのかな
>>268 「東京アンダーグラウンド」にそういう能力者いたけど、チートすぎたのか後半その能力を使わなかった
にらんだだけで相手殺すなんて無敵すぎw
奪還屋のDr.ジャッカルが初期だと人間の血中鉄分を操作してたけどやらなくなったようなもんか。
幽波紋のパクリだったような気もするけど。
メタリカがどうしたって?
ども、12話出来ました。三週間ぶり。
ルイズ台詞ありませんw
20分より投下します。
魔砲支援
メタリカはやばいな
待ってました。支援用意!
支援します。
>>269 発動までに時間がかかることが最後の方で発覚してたじゃないっすか
では、投下開始します。
第12話 事後
翌日の早朝、会議室にて臨時の職員会議が開かれた。
議題はもちろん昨夜の出来事である。
この場にいるのはオールドオスマンをはじめとする学院の教師一同、秘書や事務関連の上位者、そして昨日の事件に関わったものとして召喚されたルイズ達当事者一同である。
はっきり言ってルイズ達はこの騒ぎでろくに眠れなかったため不満たらたらだったが、さりとて無視して寝ているわけにも行かない。
眠い目をこすって、こうして多数の教師達の前に立つ羽目になっていた。
「それでは、事件の経過をまとめて説明いたします」
会議の口火を切ったのは、学院長秘書のミス・ロングビルだった。
夜の一部学生による自主練習、その際に起こった事故、それにタイミングを合わせたように起こった襲撃事件。
「この襲撃タイミングはあまりにもできすぎています。おそらくフーケは、恒常的に学院内に侵入、宝物庫付近を重点的に監視していたに違いありません。外部侵入なのか、内部の人間として潜り込んだのかは不明ですが。そういう意味では私も容疑者の一員となったでしょうね」
「うむ、確かに。直接対峙したなのは嬢の証言がなければ、間違いなく筆頭容疑者となったかも知れん」
そう、なのはの証言がなければ――ロングビルは、いや、フーケは、あのとき現場に起こったことを思い返していた。
それは偶然。
いつものように挨拶をしたとき、ルイズが慌てたように身をよじった。
何事? と思った瞬間、宝物庫の外壁で巨大な爆発が起こった。
千載一遇のチャンスだった。即座にフーケである自分は覚悟を決めた。
オールド・オスマンへの報告と称してその場を離れ、いつでも襲撃できるようにと、以前から用意してあった身支度と各種道具を、近くにある隠し場所から取り出す。
手早くそれらを身につけ、ゴーレム召喚の呪文を唱える。
数分の後、愛用とも言える巨大コーレムが出現した。
予想に違わず、分厚い壁はパンチ一発で崩壊し、あっさりと大穴が空いた。
今までの苦労が嘘のようだ。
中へ進入し、以前見学した時に確認した、破壊の杖のところへ行く。入り口の扉と違い、こちらにはたいした鍵は掛かっていない。アンロック一発で簡単に外れてしまう。
元々倒壊などを防ぐ程度の固定なのだ。
壁に向かって杖を一振り、いつもの署名を壁に刻む。
長居は無用、と、穴の方に向いたとき、それは起こった。
目も眩むような。強烈な桃色の輝き。
それが消えたとき、自分とゴーレムの間にあった『繋がり』が消えた。
同時に穴の外で崩れ落ちる大量の土砂。
不覚にも私は、せっかく奪った『破壊の杖』を取り落とした。
そして同時に穴の淵に降り立つ、白い影。
それはかつて一度見た、あの使い魔、タカマチナノハの姿だった。
つかつかとこちらに歩み寄ってくる彼女。
その気魄は自分のよく知るものとは違っていた。
警邏の者とも一線を画す気魄。それは歴戦の軍人くらいしか醸し出すことの出来ない、一級の気魄だった。
なのに彼女は。
「抵抗しないで。動いたら撃ちます」
そういう口調すら、どこか哀願するような響きを帯びていた。
それを聞いて私は思っていた。勝てない。少なくとも正面から対峙してしまったら。
私は即座にそのことを悟っていた。決闘の時に見ていたが、残念ながら私と彼女では呪文の起動速度が違いすぎる。私が最初のワンフレーズを発する前に、彼女の放つ光球は私を打ち倒しているだろう。
その上、この声だ。威圧ではなく、哀願。相手にゆとりがありすぎる。
甘いのだろう。彼女の声音は、はっきりと『撃ちたくない』と言っている。だがそれは同時に彼女が圧倒的強者である証だ。自分の命の危ない状況で、こんな声を出せる人間はいない。
もちろん、うぬぼれた馬鹿というケースもある。だが少なくとも彼女にそれは当てはまらない。目を見れば判る。
私は覚悟を決めた。
手を上げながら言う。
「はいはい、私の負けさ。土くれのフーケもここまでかね」
それを聞いて彼女の肩がぴくりと震えた。声だけでこちらの正体を察したのだろう。
「あなただったの、ミス・ロングビル……」
そして何故か彼女は、こちらに向けていた杖を下ろした。
「行って。でも、逃げないで」
???
意味がわからなかった。何を言っているのだ、こいつは。
「私がここで見たのは土くれのフーケでしょ。ミス・ロングビルじゃないわ。でも……」
そこで何故か不自然なまでに言葉が止まった。私すら目に入らない様子で、柱の一角に近づいていく。
そこには確か、『始祖の肖像画』という、ちょっと変わった絵が掛けられていたはずだ。
いずれにせよ、今を逃したら逃げ出すことは出来ない。
私はためらうことなく、壁の穴から飛び降りた。
驚いていたルイズ達を尻目に、私は無事森の中に姿を隠せた。相手はあの風竜に乗っていた。まともに逃げたって逃げ切れるわけがない。だが幸いにもルイズ達は私ではなく、ナノハの方を優先したようだった。
とりあえず盗賊道具を再び隠し場所へと隠したものの、さすがに今までの騒ぎで人が起き出してきたのはすぐに判った。まわりが騒がしい。
そのまま遁走することも不可能ではなかったが、ナノハの最後の一言が気になっていた。
あの言葉が意味するのは……フーケはロングビルではない、ということ。そうなのは一目瞭然なのに、何故?
そして、最後の、『でも』。
あたしの中で、言葉が繋がる。
行って、でも、逃げないで。
私はその言葉の意味がようやく理解できた。何を考えているのかは判らない。でも、その言葉が意味するものは。
私は元のロングビルの姿を整えると、人間サイズのゴーレムを作り出す。腕だけを少し長めに。
そして私は、そのゴーレムに自分の後頭部を殴らせた。
当然の如く衝撃で気絶する私。同時にゴーレムも私という術者の意識の断絶と共に崩壊した。
そして私は、『オールド・オスマンへの報告途中、フーケとおぼしき人物に襲われて気絶していた』という事になった。
私を発見し、救護室へと運んだのがこっパゲ……失礼、ミスタ・コルベールだったのはちょっと不満だったが。それはありがたいのだが、相手は気があるのにこちらはないという状況で、こちらからお礼をしなければならないというのは何とも。
少なくともこちらから食事に誘うぐらいはしないと失礼な状況じゃないか。
おまけに情報を得るためとはいえ、私はあれに気のあるようなそぶりをしているのよ……どうすりゃいいのさ。
色仕掛けというのも考えもんだね。
事件が起こったのが夜半だったと言うこともあり、簡単な調査と宝物庫内の復旧がすむと、オスマンは全員を帰した。翌朝緊急会議をすると通達して。
そして現在に至る。
「すみません、私が不覚を取らなければ捕らえられていたのですが」
「今更しかたあるまい……そんなにも衝撃的だったのですか? 始祖の肖像画が」
「はい」
なのはは悄然とした様子でオスマンの言葉に頷いていた。
ルイズも眠そうな目をこすりつつも、なのはのことを心配していた。
はっきり言ってあの状況下において、なのはが捕縛に失敗する理由は万が一もなかったである。
だが今回に限り、その万が一があった。それが始祖の肖像画。
なのはは語った。あの肖像画は、彼女の地元で『でじたるぷりんと』と呼ばれるもので、そちらではありふれたものだという。
道具さえあれば彼女にも作れるそうだ。
オスマンをはじめとする教師達は、彼女が『ぱそこん』に映し出した『写真』を見て仰天した。
ルイズ達も含めてだ。
ルイズ達は『写真』そのものの存在には驚かなかった。なにしろ系統魔法その他に対して、あれほど深い分析をする彼女だ。その程度で驚いていたらやってられない。
だが、問題だったのは、その『写真』に映し出されていた人物だった
そこには三人の女性が映し出されていた。その映像は、『絵』などというレベルではなく、現実の光景をそのまま保存しているとしか思えなかった。
それはさておき。そこに映し出されていたのは。
一人はなのはその人。ちょっと変わったデザインの、シンプルな服を着た彼女だ。平民の私服っぽいが、それにしてはカラフルだった。
その隣というか、もう一人の女性との間には少女が。金髪のオッドアイという変わった容姿だが、特になのはに対して愛情を持っていることが容易に悟れた。
そして少女を挟んで反対側に佇む人物。それが驚愕の源泉だった。
なのはと同じような服装。そして、金髪赤目。
服装はともかく、顔形は、あの『始祖の肖像画』に書かれていた人物と同一としか思えなかった。
「……これは、いったい……」
オールド・オスマンといえども。そう声を発するのが精一杯だった。
なのはは、落ち着いた声で答える。
「彼女はフェイト・T・ハラオウン。私の親友です」
結局、今回のことはすべて闇に葬られることとなった。
学園長の一存とも言える主張によって。
上に上げると問題のあることが多すぎたのだ。
おそらくトリステイン最強レベルの『固定化』を無効化してしまうルイズの失敗魔法。
三十メイルもあるゴーレムを瞬殺する『使い魔の魔法』。
遙か古より伝わる宝物と関係のありそうな彼女。
ルイズとその使い魔の問題は、下手に広まれば王家をはじめとする政治ゲームにうつつを抜かす上層部の注目を集めることは必死だ。そんなことになったら、下手をするとトリステイン王家とヴァリエール家の分裂という事態すら招きかねない。
という理屈で、オスマンは不満そうな教師達を黙らせた。
フーケの襲撃を隠すのは問題だろうが、幸いにもフーケは盗みそのものには失敗している。壁の署名を消してしまえば証拠は残らない。フーケにしても失敗した盗みを喧伝することはあるまいという判断だった。
そして結局のところそれで片付いた。よけいな詮索が来ることもなく、問題はなにも起きなかったのだ。
少なくともトリステイン国内では。
sien
ガリア王宮、ヴェルサルテイル宮殿、グラン・トロワ。
ジョゼフはこの一連の顛末を、なのはとフーケの間の秘密を除いてほぼ把握していた。
学院に放っている密使とタバサの報告が情報源である。
「ビダーシャル、ほぼ間違いないようだな」
「はい。天を貫かんばかりの光の砲。それに付随する魔方陣。間違いはまず無いかと」
「……会うのか」
「はい」
興味深くはあったが、今のジョゼフでもビダーシャルの決意を止めることは出来なかった。
それはエルフという種そのものの業であったが故に。
「だとすると……そうだな。確かラグドリアン湖の水位が上昇しているという話があったな。タバサをそこへ向かわせよう。何かと因縁も多いがあそこならやりやすい。それでよいか?」
「はっ。充分です」
「必要なら……そうだな、あれの母親あたりを使っても良い。拐かしたことにでもすれば、名目は立つであろう?」
「それはさすがに……ご配慮、感謝いたします。実際にはそこまでする必要はないかと」
そしてジョゼフは、再び姪に対する書類をしたためるのであった。
支援
「で、何であんたがここにいるわけ?」
「なにって、お話ししたかっただけだけど」
職員会議の影響で、ルイズ達は疲れていたため、いつもの練習はお休みすることにした。
ルイズもいつもより早くに寝床に入っている。
そしてその忠実な使い魔は……何故かミス・ロングビルの部屋の前にいた。
いつもより二割り増しの仕事を終えて帰ってきた彼女の疑問と不満を前にして。
「とりあえずこんなものも持ってきたけど」
見せるのはワインのボトル。ちょっとシエスタに無理を言って譲ってもらった、タルブ産の一級品だ。ちなみに代価は味噌と醤油を使った料理のレシピ。
それを見て、ロングビルも渋々と扉の鍵を開けた。
「まああんたには借りもあるわけだしね。入んな」
明らかに秘書としてのそれとは違った口調で、ロングビルは――いや、フーケはなのはを部屋に招き入れた。
勝手知ったるといった調子で、なのはは部屋のテーブルにワインと、一緒に持ってきたつまみを並べる。ついでにグラスまで。
「用意のいいこって」
「前回来たときに、何も無いのは見ましたから」
平然と答えるなのは。とりあえずワインをグラスに注ぎ、乾杯する二人。
ロングビルは一口飲んでその味に驚き、しばし堪能した後そっとグラスを置き、改めて口を開く。
ワインの効果でか、幾分その口調はなめらかだ。
「ずばり聞くけどさ――何で見逃した?」
ルイズの名誉などを考えるなら、あの場で自分を捕らえるべきだったはずだ。
軽く見てもルイズにシュバリエの称号くらいはもらえたはずだ。
「そうね、あなたがロングビルじゃなかったら、見逃す理由はなかったわ」
返ってきた答えも、また直球だった。
「それでも、もしあなたが抵抗していたり、あなたのことを知らなかったら、ためらわなかったと思う。でも」
なのははまっすぐロングビルの瞳を見つめる。強い瞳だった。
「あなたは悪人じゃない」
そして稀代の怪盗に対して、真っ向上段から言葉の刃を持って斬りつけてきた。
ロングビルはぽかんとなる。
「は――あたしが、悪人じゃない、だって? ははは、こりゃお笑いだ」
そこに浮かぶのは、むしろ怒り。
「あんたどこに目が付いてんだい? あたしはフーケ。土くれのフーケだよ。トリステインだけじゃない、世界のあちこちで、時には華麗、時には剛胆に、貴族どものお宝をしこたま奪い取ってきた怪盗だよ。それを捕まえて悪人じゃないとは、たいした物言いだね」
だがなのはは動じない。
「なら聞くけど、そうやって奪ったお宝はどこにあるの?」
「……」
詰まるロングビル。ちなみに盗んだものは依頼人に渡したり、裏市に流したりして現金化していた。裏市で買い取るのはたいてい盗まれた家だ。そういうときはこっそりそのためのルートを盗んだ家に渡るようにもしていたりする。
ちなみにこれは同情ではない。そうすれば確実に高価で売れ、裏市も潤うからだ。それがフーケの信用性を高めることになる。
「あなたが悪事を働いていたことを否定する気はないよ。でもね、あなたが悪人かと言われたら、私はそれを否定するよ」
「……言ってくれるね、甘ちゃんが」
「どういたしまして」
このときロングビルは、いやフーケは少し疑問に思った。
確かにこいつは反吐が出るほど甘い。だがその甘さに、何か一本芯が通っている気がしたのだ。それはなのはの実力と甘さの間にあった齟齬と違和感と行っても良かった。
なのはほど甘い人物が、その甘さを持ったままここまでの実力者になるなんて、フーケとしての彼女には信じられなかったのだ。
「ま、あんたがあたしのことをどう思おうと勝手だけど、こっちから聞いてもいいかい? 何であんた、あたしのことを信じられる」
「うーん、一つには、あなた、私の親友と似たところがあるからかな」
親友の言葉に、あの肖像画そっくりの金髪赤目の女性の姿が浮かぶ。
「あの、フェイトとか言う?」
「うん」
返ってきたのは肯定の言葉。
「似てるかねえ」
「見た目とかじゃないよ。何かのために頑張ってるところかとかな」
また言葉に詰まらされた。確かに自分は、大切なもののために頑張っている。
「それにね」
目の前の女はクスクスと笑う。
「私がフェイトちゃんと友達になったときはね」
その目にいたずらっぽい光が宿る。
「全力全開で一歩間違うと殺し合いに近い喧嘩したんだよ」
その一言で、ロングビルは悟った。
何という頑固者だ。こいつの我の通しっぷりは半端じゃない。
これは自分の意を押し通す事をためらわないタイプだ。気になったら引くことを知らない馬鹿だ。
納得ずくでなら引くこともあるだろう。だが、納得できなければ、あるいはそれ以前の段階で拒絶しようものなら。
無理を通して道理を蹴散らし、世界を敵に回してでも己の意を通す傲岸不遜。
とてつもないわがまま者がそこにいた。まさに「我が儘」だ。
幸いなのはこれも決して「悪人」ではないことだろう。世間の常識を遵守する程度の知性はある。だがそんなモノは建前だ。一歩向きがずれたら大魔王一直線だ、これは。
どえらいモノに見込まれた、そう思ったロングビルは、いやフーケは早々に白旗を揚げた。
支援
酒の勢いもあって、彼女は自分の本当の、そして捨てた名前を明かしていた。
マチルダ。マチルダ・オブ・サウスゴーダ。
大公家をかばってアルビオン王家に家を潰され、今でも主家の姫と子供達のために仕送りをしていること、等々、みんな話していた。
酔ったとかなのはを気に入ったからと言うより、「で?」と無言の迫力で問い掛けてくる彼女の圧力に屈したというのが一番正しい気がした。それが正解だろう。
そしてこの件に関して、彼女の取った立ち位置は、マチルダの味方だった。但し、王家の敵でもなかった。
「エルフって、そんなに忌み嫌われてるの? 子供が出来るくらい近い種族なのに」
「ああ、聖地奪還の宿敵だからね」
「そうなの……お話、してみたいな」
マチルダはこのとき、不覚にもエルフに同情していた。
やる、絶対やる。
それは確信だった。この馬鹿は絶対にエルフと『お話』するために殺し合うことを厭わない。
そしてそれにつきあわされるエルフの不幸を、思わず始祖に祈って……改めてエルフの神様に祈り直した。
「マチルダ、基本的にはあなたに味方してあげたいけど、そのためにはエルフと人間の間のことをもっと知らないと駄目かも、ごめんね」
「冗談はやめとくれ。そんなことされたらかえって日の当たるところを歩けなくなるよ」
お返しにと本来機密っぽい、なのは側の事情もいろいろ聞かせてもらった。
なのはの故郷はこのハルケギニアとは比べものにならないくらい発達した世界らしい。
まああの『ぱそこん』をみただけで判ろうと言うもんだが、と、マチルダは思う。
目の前で一緒に酒飲んでたこいつは、その世界でも有数の使い手らしい。にもかかわらず、事故以外で人を殺したことのない甘ちゃんで。
自慢できる訳じゃないが、私の手だってきれいな訳じゃない。この稼業、一人も殺さずに出来るものじゃない。
まあ、無駄に殺しはしていないし、出来るだけ殺さずに済ましては来たけどね。さすがに顔をもろに見られた相手を生かしておいたことはない。例外はこいつだけだ。
そんなことをマチルダは、酔いの回った頭でつらつらと考えていた。
「けどあんたも変わってるね、ほんとに」
「世の中に本当に悪い人なんて、そう滅多にいないよ」
彼女は心底からの言葉でそう言った。
「いない訳じゃないし、そう言う人には容赦できないけど、でも、ほとんどの人はちょっとしたことで行き違って、結果『悪人』になっちゃったんだって、私は思ってる」
彼女のワイングラスに湛えられたワインが、妙に眩しい。
「だから、まずはお話ししたいの。お話ししてみないと、大事なことが伝わらないって思うから」
その時ふと気がついた。こいつ、乾杯した後、全然呑んでねえ。
マチルダの意識は、そこで落ちた。
ふと気がつくともう朝で、自分がベッドに寝ていることに気がついた。
机の上はきれいに片付いており、書き置きらしき物が、誤字と珍妙な言葉遣いてんこ盛りで置いてあった。
何とか解読すると、要は自分が寝てしまったので、ベッドに運んでおきました。フーケのことは絶対他言しませんという内容だった。
「馬鹿かあいつは。この書き置きにあたしの正体もろに書いてあるじゃないのさ」
マチルダは――いや、フーケでもあるミス・ロングビルは、さっさと書き付けを燃やして証拠隠滅を図ると、出勤のための準備を始めた。
だがこの時点では気がついていなかった。
自分がなのはから『友人』と思われたことに。
そしてそれがどんな事態を引き起こすというか、巻き込まれることになるかと言うことに。
支援
支援
投下終了です。
前回、肖像画の正体について、いろいろ想像が飛び交っていましたけど、一つだけ言っておきます。
作中でも語っていますが、なのは救出艦隊はなのはの出現前には到着することは出来ません。
そこのところお間違えないように。
GJGJ! リアルタイムで読了したぜー。
うう、相変わらず面白いけど相変わらず続きが気になりすぎるw
GJ〜
フェイトではなけりゃやっぱ復活したアリシアなんかいねえ。
でもアリシアには魔法素質はないから普通はプレシアのはずだと思うんだがなあ。
魔砲の人、投下乙ですた
めちゃめちゃ乙です。待ってた甲斐がありました。
ただ一つ。確かジョゼフってタバサは本名で呼んでませんでしたか?
魔砲の人乙です。
私も他に予約がなければ、五分後に第十二話を投下したいと思います。
宜しいでしょうか?
上指摘乙。直しておきます。
後支援。
レナス支援
魔砲使いの方乙でした
原作に興味を持ってしまう・・・DVDレンタルしてみようかな
そしてワルキューレ支援
戦乙女支援。
魔砲の人へ。
>>279 巨大コーレム、と誤字になってる所が有ります
次の日、一日ゆっくり休んで体力を回復させたシエスタは、オスマンに呼ばれて学院長室に来ていた。
「……シエスタです。今日はどのようなご用件でしょうか」
学院長室に来るのは初めて学院に奉公しに来た日以来なので、シエスタは少し緊張気味だ。
しかも、オスマンだけかと思っていたらコルベールやルイズ、レナスまでいる。
「きょきょきょ今日はお日柄も良くご健勝のあまり……!」
慌てて挨拶しようとして、動揺のあまり意味不明な台詞を口走るシエスタに、オスマンは鷹揚に笑ってみせ、コルベールが困った顔になる。
「落ち着きなさいよ。そりゃ平民のあんたがいきなりこんな面子がいる部屋に呼ばれたら、驚くのも仕方ないとは思うけど」
苦笑したルイズがシエスタを宥めると、シエスタは顔を真っ赤にして恥ずかしさのあまり俯く。
レナスもいるのにあんな意味不明なことを言ってしまい、穴があったら入りたい気分になる。
どんよりと雲を背負うシエスタが立ち直るのを待ってから、オスマンが口を開く。
「今日、君を呼び出したのにはもちろん理由がある。ミス・シエスタにはミス・ヴァリエールの専属メイドになってもらいたいのじゃよ」
オスマンの用件を聞いたシエスタはきょとんとした。
何故ルイズの専属にならなければならないのか、シエスタには分からない。
目を白黒させるシエスタに、オスマンは説明する。
「昨日の決闘で君は貴族への不満をぶちまけたそうじゃな。わし等はそれを平民を代表する意見として、真摯に受け止めようと思っておる。
じゃが、残念なことに貴族の中にはそれを快く思わない者もおっての。君を害する輩がいるかもしれんのじゃ。
君は平民じゃから立場的に不利なのでのう、ミス・ヴァリエールを通じて、ヴァリエール家に君の身柄を保護してもらうことにした」
オスマンの言葉を、シエスタは突然のことで混乱しながらも必死に理解しようとする。
どうやら、昨日の決闘の影響でシエスタは学院中の貴族の注目を集めてしまったらしく、平民を軽視する一部の生徒の過剰な嫌がらせを受ける可能性があるらしい。
そのためにオスマンはヴァリエール家と連絡を取って何らかの交渉を行い、ルイズの専属メイドにさせる形でシエスタを守ろうとしているようだ。
つまり、シエスタに何かをすればルイズが黙っていないし、ルイズに何かすればヴァリエール家が黙っていないというわけである。
吃驚してルイズを見るシエスタに、ルイズはそれが当然であるかのような顔で言う。
「もちろんこの件については私も了承したわよ。平民を守るのは貴族としての義務だもの」
ルイズの言葉にシエスタは思わず目を瞬いた。
シエスタの知る貴族は平民を守ろうとするよりも、平気で虐げるような貴族の方が多かったから驚いたのだ。
嫌いな貴族に従うのは死んでもごめんだが、ルイズが本当に平民のことを思ってくれる貴族なら、シエスタは喜んで契約を結ぶ。
「ほ、本当にいいんですか? 私、きっといっぱい反抗しますよ?」
シエスタはまだルイズのことをよく知らないから、なりたい気持ちとなりたくない気持ちが半々だった。
「理不尽じゃない命令になら従うんでしょ? なら大丈夫よ。ヴァリエールの家名に誓ってそんな恥知らずな真似はしないから」
あっさりと家名まで持ち出したということは、ルイズが本当にそう思っているという証拠だ。
ならばシエスタに断る理由はなく、感謝の意を篭めてルイズに深く頭を下げる。
「ありがとうございます、ミス・ヴァリエール」
頭を上げたシエスタの目には涙が滲んでいた。
ルイズのような高潔な貴族がいたことが、本当に嬉しかった。
「べ、別に感謝しなくてもいいのよ。私は、アンタみたいに貴族に遠慮なく意見してくれる平民は貴重だと思って雇っただけなんだから」
照れて顔を赤くしたルイズが取り繕うように言うと、その様子を見ていたオスマンが朗らかに笑った。
「ふむ、上手く纏まったようじゃな。話の続きじゃが、ミス・シエスタには今日からミス・ヴァリエールの部屋で寝起きしてもらう。今日中に宿舎から荷物を移動させておくように。以上じゃ」
「わ、分かりました」
シエスタは心の中で吃驚しながらも腰を折ってお辞儀する。
傍で見ていたルイズは貴族式の礼をし、レナスも小さく黙礼する。
学院長室から退出すると、ルイズはシエスタに向き直った。
「それじゃあまずはアンタの部屋に行って荷物を運ぶわ。案内してくれる?」
「はい、こちらです」
ルイズに対する期待と不安を感じながら、シエスタはルイズとレナスを平民用の宿舎に案内する。
シエスタたち奉公人が寝起きしている宿舎は、ルイズたち貴族の生徒や教師たちの綺麗な寮とは違い、年季を感じさせる薄汚れた外観をしている。
入り口の前には物干し場があり、奉公人たちの洗濯物が干されている。
メイド服やコック服などの中に、貴族に比べれば粗末な作りの私服が混じっている。
学院の中に、こんなにみすぼらしい場所があるとは知らなかったルイズは、どこか鄙びた目の前の光景に唖然とする。
「ここがあんたたちの寮なの? 初めて来たけど、随分みすぼらしいわね」
貴族的思考のルイズの言葉に、シエスタはこの宿舎で寝起きしていたことが急に恥ずかしくなって俯く。
シエスタたち平民だって好きでこの宿舎に住んでいるわけではなく、学院内には他に住む場所がないから仕方なく住んでいるに過ぎない。
平民の身分では新しい宿舎を建ててくれなんて我侭は言えないし、綺麗にしようにも平民という立場のせいで出入りの業者に後回しにされてしまう。
仕方なく手が開いた時に自分たちで掃除しているが、魔法が使えないのでどうしても効率が上がらない。
失言だったことにようやく気付いたのか、ルイズはハッとして口を押さえ、気まずそうにシエスタに詫びる。
「ごめんなさい……。私が言っていいことじゃなかったわ」
ルイズは自分たち貴族が、シエスタのような平民を踏みつけて生活していることを実感した。
貴族の寮は華々しい外観で汚れなんて一つもなかったし、外観の掃除なんて業者に任せきりで一度もしたことがない。
部屋の掃除や衣服の洗濯すら、シエスタを代表とする平民のメイドに任せっきりだ。
気まずい雰囲気になったルイズとシエスタを、村娘のメリルとして観察していたレナスが口を開く。
「とりあえず中に入りましょう。ここに立ち尽くしていても何も始まりません」
「そ、そうですね、こちらです……」
俯いたまま案内を再開するシエスタの後ろを、ルイズもまた無言でついていく。
暗い雰囲気の二人にレナスもまた、呆れたようにため息を一つついて歩き出した。
シエスタは部屋につくと、まずルイズとレナスを中に通した。
部屋に入ったルイズは内装をしげしげと見て、ストレートに「汚いわね」と口に出しそうになった。
(随分雑多な部屋ね……平民の部屋ってみんなこうなの?)
メイド四人で使っている部屋の壁には、それぞれの仕事着であるメイド服の予備が、古い木のハンガーで掛けられている。
ベッドも貴族のベッドをメイキングしている割にはシーツに皺が多く、掛け布団も乱れたままになっている。
ベッドの横には小物を入れる引出しがついたサイドテーブルがあり、サイドテーブルの横に小さな衣装箱があるが、どれも古くて小さめで、質素なつくりだ。
貴族が使っている家具は華美で大きなものばかりだったので、ルイズはシエスタたち平民が使っている家具に驚いていた。
よく考えればシエスタは貴族ではないのだから当たり前なのだが、今はそこまで頭が回らなかった。
ベッドに大きな布を広げ、シエスタは衣装箱から衣類を取り出して包んでいく。
仕事着であるメイド服こそしっかりした作りだが、シエスタの私服や下着は皆ルイズの下着に比べ、何の装飾もないものが多く、全体的に質素だ。
驚いたルイズは思わず口走っていた。
「私のメイドになるなら、こんな格好してちゃだめだからね」
衣類を包むシエスタは、ルイズに振り返って困ったように苦笑する。
「そんなことを仰られても、私たちメイドの給金では日々の生活費や故郷への仕送りを差し引くと、あまり余裕がないんです」
再び失言だったことに気付いて慌てたルイズは、シエスタがすぐ傍にいることに気付いて平静を取り繕い、フォローする発言を捻り出す。
「じゃ、じゃあ今度の虚無の曜日に一緒に王都に行きましょ。お金は私が出すから、安心して好きなのを選んでいいわ」
さすがに今の言葉には驚いたのか、シエスタは動かしている手を止めてルイズに顔を向けた。
好意を受けたいけど受けられないと思っているような、曖昧な微笑を浮かべる。
「ミス・ヴァリエールにそんなことはさせられませんよ」
段々シエスタと接する場合の調子を掴めてきたのか、ルイズが元の勝気さを取り戻して言う。
「いいのよ。どうせレナスの服を買いに行くつもりだったから、手間は変わらないし」
横でやり取りを見ていたレナスが珍しく目を丸くした。
「……初耳なのですが」
驚いているレナスを見て気を良くしたルイズは、ふんぞり返るように胸を張ったが、着痩せする体型なのかあるいは本当に薄いのか、その凹凸は悲しくなるくらいなだらかだ。
それを見てシエスタの口が、まるでギーシュとの決闘の時のように考える前に爆発した。
「抉れ胸……はっ!?」
言ってからシエスタは真っ青になって慌てて口を押さえるが、言ってしまった事実は覆らない。
「だだ、だ、誰の胸が抉れ胸ですって……?」
こめかみにくっきりと青筋を浮かべ、ルイズがゆらりとした動きでシエスタに迫る。
「ごごごご、ごめんなさい」
慌ててペコペコと頭を下げるシエスタに、ルイズは憤懣やるかたない表情で、何とか怒りを押さえてこめかみを揉む。
「……まあ、今回は特別に多めに見てあげる。でも次はないと思いなさいよ」
ルイズは鷹揚な態度を示そうとするが、生憎ルイズの顔は笑いながらも引き攣っており、全然示せていなかった。
大きく深呼吸し、内心はどうあれ表面上は気を落ち着かせたルイズは再び部屋の様子の観察を再開した。
シエスタも、冷や汗をかきながら荷物を纏める作業に戻る。
部屋を見回していたルイズは、シエスタのベッドの下に何か金色の物体が鎮座しているのに気が付いた。
「ねえシエスタ。あれは何?」
問い掛けられてルイズに振り向いたシエスタは、ルイズが見ているモノを見て思わずレナスに顔を向ける。
シエスタはルイズのレナスへの態度から、レナスがルイズに己の正体を明かしていないことを知っている。
正直に説明して、誰から貰ったのか追求されたらどうしようかと迷ったのだ。
ルイズの後ろでレナスがシエスタを見て頷いたため、それを許可する意だと悟ったシエスタは、ルイズに安心して説明する。
「それは黄金の鶏という生きたアーティファクトというもので、ロバ・アル・カリイエから来た知人がこの前くださったんです」
レナスに気を使ったシエスタはレナスの名を出さなかったが、聞き逃せない話に、ルイズが驚いてシエスタに顔を向けたのでびくっとする。
「嘘! 東方からエルフの住む『砂漠』を越えて人が来たの!?」
「は、はい。その方はロバ・アル・カリイエのメイジだそうです」
シエスタはある程度の真実味を出そうと、咄嗟に思い浮かんだメルティーナを思い出して告げる。
「誰だか知らないけど、凄いわねその人……スクウェアクラスなのかしら?」
エルフの脅威をよく知っているルイズは、エルフをも退けるような実力のメイジを想像してため息をつく。
強敵であるエルフを退けるのなら、魔法の腕だけでなく、戦闘経験もかなりのものに違いない。
いや、魔法や戦闘経験があっても人間がエルフに敵うとは思えないから、戦闘そのものよりも生存能力に特化したメイジなのかもしれない。
「決闘で負った私の怪我を癒してくださいましたから、多分水のスクウェアメイジだと思いますよ」
その言葉を聞いたルイズは、しげしげとシエスタを眺めて感嘆する。
「そういえば、私も学院長室に急に呼び出されて緊張してたから今まで気付いてなかったけど、よく考えたらアンタってたった一日で動き回れるような状態じゃなかったのよね。
水の秘薬でも使って治してもらったの?」
ルイズの台詞を聞いて、ようやくシエスタは自分を学院長室に呼んだオスマンの行動が、自分の怪我が治っていることを前提に行われていたことに気が付いた。
衣装を詰め終わり、続けて小物類を詰めながらシエスタは思案する。
メルティーナに傷を癒してもらった時、部屋の中には確かにシエスタとレナス、メルティーナにアリューゼの四人しかいなかった。
うひひ、リロードを忘れてたぜ
それはそれとして支援
(何故学院長は知っていたんだろう)
シエスタは首を捻るが、学院長室に置いてあった大きな鏡が遠見の鏡というマジックアイテムだったことを知らないため、答えは出ない。
ちなみにルイズは知識があったのにも関わらず、学院長室に堂々と安置されていた鏡が遠見の鏡であることに気が付いていなかった。
二人の傍で作業の進行を見守っているレナスは、心の中で小さく舌打ちする。
マジックアイテムであろう魔力を帯びた鏡を学院長室で見たことを思い出し、その鏡で覗き見でもしていたのだろうと検討をつけたのだ。
よくよく感覚を働かせてみれば、今もオスマンに観察されているのが分かる。
(メルティーナとアリューゼの存在を知られたわね。にも関わらずあの場で何も言い出さないなんて、大した狸っぷりね、オールド・オスマン!)
シエスタが来る前にオスマンとコルベールの自己紹介を受けていたレナスは、感じる魔力越しにオスマンへと視線を叩きつけた。
312 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/04(日) 21:33:05 ID:TzqDu5qq
支援
以上、第十二話「決闘の後始末U」投下終了です。
支援ありがとうございました。
GJ
シエスタ、『ゼロ』ならともかく『エグレ』はいくらなんでも……
>>302 あー、A'sまでで止めといたほうがいいぞ(ストーリー的な意味で)。
無印マジおすすめ。
ゼロの提督を読んで、他に頭脳派のキャラはいないかと考えていたら
なぜかハンニバル・レクター博士が浮かんできた。
下手したら契約のキスをしようとして顎を噛み砕かれるな。
>>295 アリシアは魔法の才能がまったくないんでしたっけ?
フェイトほどではないけど持っていた気がするのですが……
うろ覚えだけど、A’sでフェイトが見た夢にアリシアが試験に云々という話もしていたきがするし
魔法が全く使えない奴は、ミッドチルダにはいないはず。
んでもって、アリシア自身の才能は凡人以下。
魔法の才能が全てで銃とかの質量兵器を持つ事が法律で禁止されているハルケギニアよりおっかない世界だもんな
>>315 たしかにStSの脚本はこのスレのSS職人さんよりひどいからな
しかも4期があるとかないとか
もういっそのこと魔砲使いをアニメ化したほうがw
天才である母ほどの資質は受け継いでいないというだけで、凡人以下とは書かれてなかったはず
いっそ、4期は今までのと線引きしちゃって原作をアニメ化すればいいよ、と叶わぬ夢を呟いてみる。
原作とアニメの脚本家が同一人物だという事実が信じられない。
>>321 しかし、凡人でも努力すればスターライトブレイカーうてるぐらいまでは成長できるんよ、あの世界。
>>322 2期で書きたいの書き終わったって話を聞いたことが…
3期やりたいって売り込んだのは確か都築のほうだぞ
つまり三期以降はロスタイムと言う事か。
>322
脚本者と監修者と原作者は全く別の役割なんだぜ
>323
いや、その凡人さんは実は天才だった、ということになったらしい
>>322 なんか原作のとらはを作った会社が潰れたっぽいからそれはないんじゃない?
少なくともHPにアクセスができない以上休業状態なのは間違いない。
カイザーナックルから最強の尖兵、ジェネラルを召喚。
見える! 何も出来ずにふるぼっこにされるワルドが見えるぞ!
>>315 二期と三期の間に手掛けた「わんことくらそう」は結構良かったんだけどなぁ。
まあ一期のファンブックで自分の首を絞めそうな設定がゴソっと出てきた時に嫌な予感はしてたんだよ。
>>316 レクター博士良い人だけど敵意と向ける人や失礼な奴には容赦が無いからね
ルイズと相性最悪、借りに契約出来ても精神的に追い込んで自殺させるだろうな
>>330 分からないぞ!ワルドが偏在を使って足払いハメでやっつけるかもしれないじゃないか!
>>331 ゲッターと同じパターン?
ゴウで一応の決着付けたんだけど、
担当に続きとか書いてないと部分で調子のいいこと軽く言ったのを
担当が本気にしちゃったんで広げる羽目になっちゃったらしいのだが。
三期といえばアニメゼロの使い魔二期は物凄い原作レイプだったのに何故三期を作る気になったんだ?
そこまで流行ってないから金にならないと思うのだが
てかノボルも二期があんな出来だったのに許可出すなよ
映画ドラえもんからリルル召喚。
そしてジョゼフがアンゴルモア召喚。
秦の秘伝書を召喚して契約したせいで、ルイズにナイトメア・ギースが憑依してルイズが悪のカリスマに
なんて妄想をした時期がオレにも(ry
『ギース・ハワード外伝』のギースはホントカリスマやでぇ……
>>336 映画ドラえもんから天上連邦を召喚。
トリスタニアが某富坂市状態に。
ハンタから新人潰しのトンパ
「まぁまぁそんなにカッカしないでこのジュースをどうぞ」
「気が利くな」
ぷしゅ ごくごくごく
「!っひー」
公衆の面前でウンコ漏らしたギーシュはこの後
モラシのギーシュとして有名になった
おわり
>>338 ルイズ「ち…力をよこせ、天龍…」
こうですか、わかりません
小ネタで、魔法そのものが滅ぼされる話を書いてみたのだが、投下して良いだろうか?
どーぞ
>>334 続編の設定が前作と矛盾してたりする事が多々ある人で
インタビューやサイトでその場のノリで答える事もある。
>>336 リルルって言うと、デアゴスティーニなロボが出てくるやつだっけw
>>344 ディアゴスティーニでカフェラテ吹いたwww
確かにその通りだwwwww
>>341 他にもクラウザーなジョゼフと闘ったり、記すことすらはばかられるような秦王龍とのラストバトルとかですね
>>343 それでは投下します。題して「ゼロと帝国」。なお、元ネタは「銀河英雄伝説」ですが、
かなり設定やストーリーをいじくっていますので、あらかじめご了承のほどを。
>>335 ティファニアを出すためにきまってるだろ
なによこれー!」
何度かの失敗の後、ひときわ大きな爆発と共に現れた物を見て、ルイズが、いや、その場にいた全員が目を見張った。大きさに
してゆうに二百メイルはあろうかと思われる、巨大な鉄の塊。押しつぶされて死ぬ者が出なかっただけでも奇跡だった。
その場にいた生徒の何人かが、理屈抜きの恐怖心からそれに攻撃魔法を放とうとする。が、呪文を唱えてもなぜか魔法が
発動しない。気を取り直したルイズが、その物体にコントラクト・サーヴァントを行おうとしても、やはり発動しない。
あまりの異常事態が二度続いて、生徒どころか教師までもがパニックに陥りかける。そこへ学院から他の教師全員と、
学院長であるオールド・オスマンが駆けつけた。しかし、彼らにしても出来ることなどあるはずもない。学院の全員が
途方に暮れる中、その物体はふいに宙に浮き上がると、そのまま彼方へと飛び去って行った。
それっきり何事も無かったため、数ヶ月もたてばこの事件は忘れ去られた。しかし、それから一年余り後、ハルケギニアに
ある変化が訪れる。『銀河帝国』と名乗る国の交易船───マストも帆も無い上、とんでもなく高速な船───が各地に現れ、
勝手に様々な、しかもおそろしく進歩した道具を売り始めたのである。
連発式で、しかも数百メイル先の的を正確に撃てる銃、鉄でも切れ、なおかつ絶対に刃こぼれしないナイフや斧、魔法を
使わずとも遠く離れた場所と話せる道具など、ハルケギニアには絶対に有り得ない物ばかりであった。それを平民でも買える
値で売るのだから、誰もが飛びつかない筈がなく、飛ぶように売れる。
そのことに気を良くした銀河帝国の商人たちは、王家や領主に伺いをたてることすらせず、勝手にハルケギニア中に現れ
ては、様々な進歩した道具を売りまくる。それを白い目で見る者も当然いたのだが、彼らは商売敵どころか、貴族や王家の
意向すら気にもとめなかった。
商売敵である商人や、勝手なまねをされて怒った領主が脅しても、銀河帝国の船は多数の武器を積んでいる上、屈強な男
たちが数多く乗り込んでおり、いかなる脅しも圧力も、実力ではねのけてしまう。無論その男たちは、商売の邪魔をする相手
以外には決して手を出さないのだが……。
業を煮やした現地の豪商が、メイジを雇って報復に出たこともあった。ところがそのメイジまでもが、返り討ちにあって
ズダボロにされてしまう。驚いて話を訊くと、銀河帝国側は、魔法の発動を不可能にする道具すら持っていたという。噂を
聞いて集まった者たちに、銀河帝国の商人は、その道具をすら商品として売り始めた。
それから半年もたたずして、ある意味予想されたことが起こる。貴族に恨みを持つ平民たちが、それらの道具を復讐の
ために使い始めたのだ。何百メイルも離れた場所から銃で撃たれて死ぬ貴族、魔法の発動を封じられてなぶり殺しにされる
貴族が何人か出て、ついにハルケギニアの国すべてで、銀河帝国の道具を買う事、使う事が禁じられる。しかしそれは、
結果的に見れば、平民たちの不満という火種を、ハルケギニアすべてを焼く大火に燃え上がらせただけであった。
銀河帝国側は、この機を逃さなかったのである。巧みに平民たちを扇動し、ハルケギニア全域で反乱を起こさせたのだ。
しかも辛辣なことに、あの道具のはるかに強力なものを使い、魔法の発動を、ハルケギニアすべてで完全に封じてしまった
のである。
魔法を失った貴族たちは、銀河帝国の武器を持った平民たちの敵ではなかった。しかも反乱軍には、銀河帝国の屈強な
男たちも加わっている。武器には武器で対抗しようにも、そもそも数が絶対的に違う。それから三ヶ月たたずして、ハルケ
ギニアすべての国で、貴族や王族はほぼ皆殺しにされた。
トリステイン魔法学院でも、生徒や教師はほぼすべて殺された。ギーシュもキュルケもマリコルヌも、オールド・オスマンも
ギトーもすべて死んだ。平民に対する差別意識を持たなかったコルベールは死を免れたが、魔法を失ってほとんど何の力も無い
役立たずに成り下がった。
王宮において、アンリエッタ王女は死を免れたが、貴族制度の廃止と、王族の身分を捨てる事を、ハルケギニアすべてに向け
宣言させられた。
貴族の中には、表向きおとなしく投降し、内心で、「この反乱が終われば、再び自分たちが必要とされるようになる」とほくそ
笑んでいた者もいた。しかしその思惑は、銀河帝国がさらに多くの道具を持ち込んだこと、その道具を作るための技術を教え始めた
ことで、水泡と帰す。
銀河帝国の道具は、それまで「魔法を使わねば出来なかったこと」のほぼすべてを可能とした。ハルケギニアに、もう魔法は必要
なかった。平民たちにとって、銀河帝国の道具があれば魔法とメイジはもう無用の長物、何の価値も無いガラクタだったのである。
やがて反乱という名の炎は、魔法学院を退学させられ、失意の内に故郷に引きこもっていたルイズの元へも迫る。
ラ・ヴァリエール公爵は、おのれの名誉にかけて必死に抵抗したが、それは所詮、巨大な岩を素手で殴りつけるようなもので
しかなかった。公爵自身は斧で真っ二つにされ、夫人は頭蓋を叩き潰され、長女エレオノーレは杭で串刺しにされた。皮肉にも
病弱だったカトレアと、元々魔法を使えなかったルイズだけが、お目こぼしにあずかることができたのだった。
しかし当然ながら屋敷も領地も財産も失い、カトレアとルイズに残されたのは、裕福な平民程度の家と財産にすぎなかった。
しかも家族の死と環境の激変で、カトレアの健康状態が急速に悪化し始める。治療しようにも、ハルケギニアに水の魔法はもう
存在しない。姉を死なせないため、ルイズは屈辱をこらえて、『銀河帝国』の人間に、水の魔法を復活させてくれるよう懇願
するしかなかった。
幸い頭目らしき男が、「魔法を復活させることはできないが、銀河帝国の医者による治療を受けさせる」と約束してくれた。
ハルケギニアより遙かに進歩しているらしい銀河帝国の医術でも、生まれつきの虚弱体質を治すことは出来なかったが、どうにか
死の危険からは救い出すことができた。
かろうじて───本当にかろうじて戻ってきた平穏な日々。その価値を痛感させられる中、ルイズは突然、あの頭目らしき
男に呼び出される。
いぶかしく思いつつ向かったその先には、ルイズの見知った顔が何人か集められていた。アンリエッタ元王女も、コルベールも、
オールド・オスマンの秘書だったミス・ロングビルもいる。その他にも魔法学院のコックとメイドだった者、反乱軍のリーダーの
一人である女戦士もいた。
あの頭目に話を訊いてみると、これから自分の上司に会ってほしいと言う。そこで初めて、ルイズたちは頭目の正体を聞かされる。
なんと彼は、銀河帝国正規軍の将校だというのだ。彼の上司が、ハルケギニアの住民の、生の声を聞きたがっているというのだ。
それを聞いたあの女戦士が、厳しい顔で進み出る。
「以前から疑っていたが、やはりあなたがたは、ただの商人などではなかったのだな? この反乱は、あなたがた銀河帝国が
仕組んだ謀略、ないしは軍事作戦だったのだな?」
「つまりアニエス殿は、我々があなたがたを利用して、ハルケギニアを支配下におさめようとしたのではないかと疑っているわけか。」
あまりにあからさまなその言葉に、一同が息を呑む。そんな彼らに、頭目は苦笑気味の笑いを見せた。
「当然だろうな。しかし、我々にそんな意図は無い。ハルケギニアなど支配したところで、銀河帝国にはまったく何のメリットも
無いのだ。そもそも、支配するつもりならこんな回りくどい手は使わん。直接攻め込んで征服している。」
「…信じられんな。第一、何の得にもならないのなら、なぜわざわざこんなことをした?」
「今すぐ理解しろと言っても無理だろうが……。ハルケギニアにおける社会の現状が、我々にとって、決して許せないものだったからだ。」
「……わけがわからん。どういう意味だ?」
「それは私の上司が説明してくれるだろう。」
そのまま船の一室に押し込まれ、海上を飛ぶこと一刻余り。いかなる陸地からも遠く離れた洋上で、巨大な船(らしきもの)が
十数隻空中に浮かんでいた。もちろんただの船ではあるまい。これは明らかに銀河帝国の艦隊であり、当然ながらすべて軍艦に
決まっている。
壁のスクリーン(彼ら自身は「開くことのできない舷窓」だと思っている)を通じ、感嘆の思いでそれを見つめる彼ら。ところが
その時、中の一隻に目を留めたルイズとコルベールが、揃って叫び声を上げた。
「あれは!」
それは二年前、彼女がサモン・サーヴァントで呼び出した、あの物体であった。その時は何なのかすら判らなかったが、銀河帝国の
軍艦だったのか───。新たな事実に二人が呆然とする中、彼らの乗る「小船」は、艦隊中でひときわ巨大な艦───全長にして千
メイル以上あるであろう。当然ながら旗艦に違いあるまい───に接舷する。
あの頭目───黒と銀の軍服に着替えている───に先導され、艦内の通路を進む彼ら。ある扉の前で威儀を正すと、頭目は声を張り上げた。
「シェーンコップです。お望みの者たちを連れて来ました。」
「ご苦労。入りたまえ。」
中から、驚くほど端正で魅力的な声が答える。それと共に扉が開き、一同は部屋へと通された。
正面で、巨大なデスクに一人の男が着いていた。背後に部下らしき男が何人か控え、両脇には、白い全身鎧をまとった兵士が警護に
ついている。この男が、頭目───シェーンコップ───の言っていた上司に違いあるまい。しかしそれにしては、拍子抜けするほど
「普通」の男であった。
年齢は三十代前半だろうか。中肉中背、黒髪に黒い目。顔立ちは端正な方だが、目立つほどの美男でもない。服装もごく普通の白い
ブラウスに黒のスラックスで、正直街のどこにでもいそうな平凡な男である。無論ルイズ達とて、人間を外見で測ることの愚かさは
百も承知している。が、見るからに「只者ではない」と思わせるシェーンコップの上司にしては、落胆させる人物と言うしかなかった。
「それで、彼らはいったいどういう人々なんだ?」
視線をシェーンコップに向け、その男が問いを発する。あの端正な声は、この男のものであった。それに対し、シェーンコップが
手短に彼らの素性を説明する。
「なるほど。元王女が一人、反乱軍のリーダー格が一人、元メイジだが平民に偏見の無い学者に、同じくメイジだが貴族嫌いな女性。
まったくの平民二人に、大貴族の娘だが魔法が使えなかった少女が一人か。少なくとも間違った人選ではないな。」
男がそう言いつつ机のどこかに触れると、隣室から人数分の椅子がその場に運び込まれる。一同をそれに座らせ、彼は改めて
ルイズ達に顔を向けた。
「わざわざ呼びつけてすまない。すでにシェーンコップから聞いていると思うが、私に、君たちの生の声を聞かせて貰いたいんだ。
もちろん君たちは、自分の思った通りのことを言ってくれてかまわないし、ここで何を言ったところで、咎め立てされることは無い。
私が聞きたいのは君たちの本音であって、建前やお世辞ではないんだからね。」
「その前に、教えていただきたいのですが。」
男を正面から見据え、アンリエッタが逆にそう問い返す。その顔には、露骨な疑惑の表情が浮かんでいた。
「何をだい?」
『シェーンコップの上司』は、穏やかな微笑を浮かべながらそれに相対する。
「あなたは、いったい何者なのです? ここに来るまでの兵士たちの態度から、シェーンコップ殿がかなりの上位者であることは
わかっています。その上司であるというあなたは、いったい何者なのですか? それに、『民衆の生の声を聞きたい』というのは、
最上位に立つ者の発想です。おそらくは、ハルケギニアに派遣された銀河帝国軍の総司令官、あるいはそれに準ずる立場の方と
見ましたが、違いますか?」
元王女の鋭い指摘に、ほとんどの者が息を呑む。その中で、一人冷静だったアニエスが後を続けた。
「私も訊きたい。シェーンコップ殿の話では、銀河帝国には地位はあっても身分は無く、貴族もすべて名前だけの存在だと言う。
その地位も実力と実績と人望のみで決まり、血筋や家柄はまったく考慮されないと言うことだ。加えてシェーンコップ殿は、私の
目から見ても極めて優れた戦士であり指揮官でもある。その上司であるあなたは、すなわちシェーンコップ殿以上の実力者という
ことになるが?」
それに対し、男の微笑が苦笑へと変わる。
「元王女の肩書きも、反乱軍リーダーの肩書きも、伊達ではないということだね───。しかし、それは買い被りだよ。と言うより
適材適所かな? 私は将ないし軍師としてはともかく、戦士としてはまったくの役立たずだ。」
「銀河帝国では、戦士として役立たずでも将や軍師になれるのか?」
「そうだよ。戦士の資質と将や軍師の資質は、まったく別のものだからね。」
「はぐらかすのはやめてください!」
ごまかすつもりだったのだろう男に、アンリエッタの鋭い声が飛ぶ。
「もう一度訊きます。あなたはいったい何者なのですか?」
「───やれやれ、自己紹介は後にしたかったのだが、やむを得ないな。」
『まいったね』と言うように頭をかきつつ、男は言葉の───とんでもない事実の爆弾を落とした。
「私の名はウェンリー・ヤン。銀河帝国の、一応、皇帝ということになる。」
「───な!!」
「後にしたかったわけが解っただろう? こんなことを明かせば、君たちが本音を言ってくれなくなるかもしれないからね。」
あまりの事実に一同が絶句する中、最初に我に返ったのはルイズであった。
「こ、皇帝ですってー!」
恨みに我を忘れ、『皇帝』に飛びかかろうとする彼女。しかし所詮は、非力な少女にすぎない。警護の兵に、あっという間に
取り押さえられてしまう。
「く───。」
床に押さえつけられ歯がみするルイズに、皇帝は悲しみのこもった眼を向けた。
「私が憎いかね?」
「当たり前でしょう! あなたのせいで父様も母様も、エレオノーレ姉様も!」
「そうだろうな。」
穏やかな口調で、しかしはっきりとそう断言する。これには、ルイズのほうが怪訝な顔になった。
「怒らないの?」
「恨まれて当然だからね。───実際、こんなことは過去何度もあった。かつて、戦場で倒した提督の息子に殺されかけたことも
ある。その子も君と同じ、まったくの子供だった。」
その言葉にルイズは、目の前の人物が才能も器量も備えていることを知った。が、中の一言が彼女の心にカチンとくる。
「子供じゃないわ! これでも十八よ!」
そう言われ、今度は皇帝のほうが怪訝な顔になる。かたわらの部下に顔を向け、小声で問うた。
「この星の一年は、我々のそれより短いのかい?」
「いえ、むしろ、わずかながら長いはずですが。」
ルイズは内心で地団駄を踏んだ。身長と体型のせいで幼く見られるのには、もう馴れている。だからといって、子供扱いされて
気分が良いはずはない───。そんな彼女に『皇帝』が、申しわけなさそうな顔を向けた。
「それは済まなかった。───しかし、君に言っておかねばならないことがある。かつて貴族に愛する者を奪われ、今の君と同じ
思いを味合わされた平民が、ハルケギニア全体でどれだけいたと思う?」
「う……。」
「彼らの気持ちがわからないとは言わせない。それとも、貴族と平民はまったく別の存在で、大切なのは貴族だけ。平民などは
どうでもよいと言うのかな? だとしたら、私もここにいる者たちも、君を許さない。」
「………。」
「それに、君の両親と姉上にも、生きのびる機会は与えられていた筈だが?」
「地位も身分も財産も、すべて捨てた上でのことでしょう! そんなこと、誇り高い貴族が受け入れるもんですか!」
「……誇りを持つのは結構なことだが、その対象が『貴族であること』というのは感心しないな。」
「どういう意味よ!」
「はっきり言おう。貴族であることに価値など無い。血筋や家柄など何の価値も無い。そんなものが、人間の価値を左右しては
ならない。人間の価値を決定づけるのは、1に人格2に能力で、他にあるとすれば、過去の実績だけだ。」
どうやら銀河帝国では、それが「国是」であり「正しい考え」であるらしい。価値観も考え方もハルケギニアのそれとは根本的に
違っていて、ハルケギニアの論理は通用しないということだ。だとすれば彼らを言い負かすのは不可能である。唇を噛むルイズだが、
すぐ逆襲のすべを見つけた。
「……何よ! 血筋や家柄に価値が無いなら、あなたは何なのよ! 皇帝なんでしょう! 血筋でその地位を得たんじゃないの?!」
それに対し『皇帝』が、初めてむっとした表情を見せる。だが、彼が口を開く前に、背後に控えていた中年の男が進み出た。
「陛下、ここは私におまかせを。」
そう言ってルイズに向き直る男。長身で痩せぎす、半分白くなった髪で、少しだけあの「マザリーニ枢機卿」を思わせる。が、
こちらの方がはるかに冷徹というか、冷酷そうな印象だ。
「ルイズといったな。本気でそう思っているとしたら、君は愚か者ということになる。」
「なぜよ?!」
「血筋によって皇帝の地位を得た者が、みずからその価値を否定すると思うかな?」
「なんですってえ?!」
「そうだ。ウェンリー陛下は、先帝陛下とはまったく血の繋がりは無い。」
「それじゃ──もしかして──あんた簒奪者?!」
皇帝に視線を向け叫ぶルイズ。それに答えたのは、中年男のほうであった。
「それも違う。ウェンリー陛下が現在皇帝の地位に着いているのは、先帝陛下によって指名されたからだ。」
「つまり、銀河帝国では、皇帝さえも血筋では決まらないって言うの!」
「そうだ、銀河帝国においては、皇帝も職務上の地位にすぎない。人格と能力のみで選ばれ、血筋など考慮されることもない。
───だから銀河帝国には、皇帝はいても王朝は存在せず、皇妃はいても皇子や皇女は存在しないのだ。」
「そんな………。」
「銀河帝国では、血筋や家柄に価値など無い───。だからこそ我々は、ハルケギニアの貴族たちが許せなかった。」
「その通りだ。特にトリステイン王国では、貴族がすべてを独占し、平民はほとんど人間あつかいすらされなかったと聞く。
そんな貴族たちの振る舞いこそ、我々には絶対に許せないものだった。」
「だから───だから貴族を滅ぼしたって言うの! 何の得にもならないのに!」
「───では訊こう。もし目の前で、決して許せない事を誰かがやっていたら、君はどうする? 自分自身の損得など度外視して、
やめさせようとするのではないかな?」
「く……。」
「ハルケギニアにおける貴族と平民との差別、魔法を使える者と使えない者との差別こそ、我々には許せないものだった。我々は、
それをやめさせたかった。そのためには、貴族を滅ぼし、魔法を滅ぼす以外に方法が無かった。───ま、君たちとの最初の接触で、
ある種の電磁波が魔法の発動を不可能にするとわかっていなかったら、もっと苦労しただろうが。」
ID:mxfBeNVyをNGワードに指定するんだ。
それで平和は保たれるぞ。
「……あれ? 待ってよ! 銀河帝国でも、能力の違いは認められているんでしょう! 貴族と平民との間には、魔法を使える
使えないという、れっきとした能力の違いがあるじゃない!」
「……もう一つ我々が許せなかったのは、ハルケギニアにおいては、魔法の才能が何より優先するとされていたことだった。」
「…どうしてよ! それのどこがいけないの!」
「国を治めるまつりごとの才能と、魔法の才能との間に、関係があると思うかい? 兵を指揮する将の才能、作戦を立てる軍師の
才能と、魔法の才能との間に関係があると思うかい?」
「………無いわ。確かに。」
「本来重視されるべき能力より魔法のそれが優先され、魔法が使えなければ、それ以外でどれだけ優れていても認めてもらえない───。
それもまた、我々には許せないことだったんだよ。」
「そのために───そのために魔法を滅ぼしたって言うの! 魔法の才能に価値を無くすために! そんなことのために!」
「───確か君は、大貴族の娘でありながら魔法が使えなかったんだろう? 魔法以外のことで認めてもらえたら、と思ったことは
無いのかい?」
「……有るわよ! それは認めるわよ! でも、魔法そのものがこの世に無かったら、なんて思ったことは一度も無いわ! 第一
そのせいで父様も母様も、エレオノーレ姉様も!」
「───魔法を使える者と使えない者との差別、それを無くすためには、少なくとも一度、魔法そのものを滅ぼすしか無かった。
そして魔法が滅びれば、貴族が滅びるのは必然だった。」
歯ぎしりするルイズだが、その言葉に秘められた裏の意味に気づく。
「……待って! 今言ったわよね! 『少なくとも一度、魔法を滅ぼす』と! つまり、いつかは魔法が復活すると言うの?!」
「ああ、いつかは復活する。しかしそれは、今から少なくとも三、四十年後───魔法も貴族も、完全に過去の遺物となってからの
ことだ。その頃には魔法は、『役には立つが不必要なもの』になっている。当然、魔法の才能も、大して価値の無いものになっている
だろう。」
「………。」
「いずれにせよ、ハルケギニアにもう魔法は存在しない。魔法の才能は、もう何の価値も無い。貴族と平民の区別ももう無い───。
魔法と貴族の時代は終わり、科学と民衆の時代が来る───。君もこのままで終わりたくないなら、魔法以外で認められるよう、
努力することだ。」
「そうですよ、ルイズさん。元々、魔法の実技以外では学院でもトップクラスだったじゃないですか。」
黙って聞いていたシエスタが、この時口を挟んだ───。
───結局、彼らが生きている間に、魔法が復活することは無かった。そしてウェンリー皇帝の言葉通り、復活した時には完全に過去の
遺物でしかなくなっていた。魔法とメイジが社会の主流を占めることは、二度と無かった。しかしアンリエッタ・ド・トリステインと、
ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの名は、ハルケギニアの一時代を支えた女流政治家の名として、歴史に刻まれている───。
−『銀河英雄伝説』より、帝国軍駆逐艦を召還。
これは・・・ゼロな提督の人ではないよなぁ
釣り・・・というのも違いそうだし
普通に、小ネタ?
銀英伝キャラの名前だけ使った...
ということですね
多分嫌がらせ
これは酷い
ヘイト、というもんではなかろうか
ほとんど読まずに飛ばしたけど
こういうのをヘイトって言うのか?
銀英伝のキャラの名前だけ使ったオリキャラ
まとめwikiにも載せられない毒物
以後はスルーで
↓
原作読んだこと無くてほとんどここでしか知らないからこその意見かもしれないけど、決して悪くは無いと思うけどな。
帝国軍駆逐艦って、地球教徒の暗殺者が乗った船か
・・・ヘイトじゃなくて、単に「銀英伝を良く知らない」のかと思う
>>365 原作をちょっとでも知っていると質の悪い冗談、それも悪意の籠もったもの以外の何者でもない。
普通に駄作
ゼロ魔を馬鹿にしてるし銀英伝を馬鹿にしてる
>>365 双方の原作を読む事を強くオススメする。
そしたらわかる筈。
終了宣言はどうした!
そうか…。
世間は、まだ大型連休の真っ最中だったんだなぁ。
さ〜て、明日も出勤だぜぇ。
<<There he is! Look at him! God damn... that son-of-a-bitch is throwing down!!>>
<<GET OFF!! GET OFF!! GET OFF!!>>
いくらなんでも両方の原作の設定を無視しすぎ
劣悪なアジに利用したつもりとしか思えん
じゃあまあ、スルーして雑談を続けようか
狙いはわかるんだが救いを入れないとヘイトと言われても仕方ないぞ
オッス、オラ極右(ごくう)思い出した。
ヒント:路上に巻き散らされた汚物
触っちゃいけないって分かるだろうJK……
銀英伝のクロスとしては、俺的にはヤンが皇帝になってる時点で問題外
ダイバダッタを召喚、ルイズがレインボーマンに
多少の設定改変なんぞ余裕で許容できる俺でも、これは無理だ。
設定が180度どころか、360度軽く越えて捩れまくってやがる。
どうも、フェイトとヘイトを聞き間違えてしまう
・・・・・・・・・あの、高町教導官!!わ、私はただ、率直な意見を述べただk(ジュ
ゼロの提督でシエスタの祖父は、宇宙海賊との戦闘中行方不明になったシュナイダー准将になるもんだとばかり思ってたんだけどな〜。
やっぱりおマチさんとイチャイチャしたりルイズに甘かったりするヤンさんがいいと思うんだ
>>381 そういうのを想定の斜め上高度33000ftを順調に飛行中、というんですよ
テッカマンレイピア召還というのはどうか
と思ったが、あんまり面白くなさそうだな
ブレードとの決着後の相羽シンヤの方がいいかも
アニメ3期も1クールなのかな?
>>383 聖地の爆発が起こり始めたのが2000年前からで〜〜
というセリフから考えて、銀英伝世界とハルケギニアの時間軸は、
ねじれたりはしていないようだと思ってたので、
当然60年前の人間だと思ったけど。
宇宙人ってあんまり呼ばれてないよな。ウルトラ系除くと。
>>387 しゅーまっはって昔チャンピオンで連載されてた伯林の漫画?
じゃあ俺はレイジン・ウィルス召喚で28日でハルケギニア滅亡SS
学院革命なんとかミツルギから会長
「うむ、というわけでわが学院も生徒が減り気味なので何かいいアイデアは無いか」
「何か特典を付けたらどうでしょうか?」
「いいね」
そして何もまとまらず
「はい、宝物庫は固定化の魔法が掛けられていますから」
っぱ
「口が臭い」
扉の隙間からぼそっと不穏な捨て台詞を残し去る会長
「え、?」
「だ、誰だ?くっ、誰も居ない まただ!」
「コルベール先生、気になさらなくても」
こ れ は ひ ど い
>>387 なんかリアルTAXiやらかした方を思い出した
ところで、30年くらい前にM72LAWを持った米兵が現れたされたということは、
ベトナムかどこかからハルケギニアに飛ばされた、ということになるよな。
一緒にM14かM16持ってなかったんだろうか。
時間軸のねじれのあるSSってありましたっけ。
あっ思い出した。
ガンダムキャラがルイズに召還されました @ ウィキ の 「ハルケギニアの蜻蛉」。
他は今はちょっと。
ミツルギと言えば魔人ハンターだろ
アニメ第2期の評判悪いようですが、その双月の騎士からゼロ魔に入ってきた俺は救われるんですか? 一応面白かったんですけど。
原作はとりあえず三巻まで買いました。
あとコミック版のほうの評価はどうなんですか?
>>389 何を持って宇宙人と称するのかはわからんが、
地球外生命体ならからなりの数呼ばれているぞ。
そもそも、物語の舞台が異世界だったりする話は多い。
逆に、SO2のクロードなんかは地球人だが、
物語の展開上宇宙人と称してもおかしくない立場ではあるぞ。
>>389 第二段階レンズマンでも召喚するか?
銀河文明の価値観だと、
・知的生命体のいる惑星はことごとく文明化し、銀河文明の一員とする
・しかしその惑星の住民に必要以上に劣等感を感じさせてはならない(文明の発達を阻害する)
だから、かなり抑えた話になると思う。
特に、ハルケギニア人は魔法という他種族にない能力があるから、下の条件はかなり重要だし。
>>398 完全に独立した、パラレルワールドのお話、という意味では面白んじゃないか、第2期。
問題は、原作の展開を知っている人からすると憤慨ものだという点であって。
>>395 あの頃はベトナムから撤退していた頃だから、撤退中にベトコンに追われて弾が切れた銃を放棄したとかじゃね?
それにM72って銃より軽かったし
>>390 シエスタ=彩ポジションみたいな感じでシエスタの祖父=彩のおじいちゃんでルイズにはとりあえずゆまさんを呼ぶとか
藤宮さん召喚も考えたがあの人呼んだら使い魔達を解剖天国になってしまう
404 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 00:08:05 ID:S9+Xt3EP
>>385 半年ぐらい前だったかな?スパロボのJかWで自爆イベントから再参戦までの間に召還して
水魔法で体を直してもらう、ってのを考えたことがあるな、確か
>>400 第二段階レンズマンは誰を呼ぶかに寄るんじゃないの。
東洋風ドラゴンのウォーゼル、触手の塊に足の生えたトレゴンシー、
そもそも交渉できるかどうかからして怪しいナドレック。
ここら辺はまず彼らが高等知的生命体かつ
高等文明種族であることから証明しなければならないし、
キニスン一族だとアリシア人が彼らを連れ戻しに来かねなし。
日本人による公式外伝、サムライレンズマンあたりから
第一段階レンズマンを連れてくる方が無難じゃないかな。
407 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 00:10:27 ID:S9+Xt3EP
>>375 救いはあるじゃん
政治家として成功してるし
>>405 なるほど、アンドバリの指輪で生き返り、クロムウェルの手駒にされるのか>レイピア
宇宙人……スターフォックスのネタもあったな
>>389 宇宙人……ふむう、ファーザーのことですな?
(なんかどっかから幻の7巻が出るという噂を聞いて動揺を隠せないわし)
第一段階ならまだそれほど攻撃的な能力は使えなかったっけ?
もう忘れたー。
ヤン・ウェンリーは政府首班になる事を最後まで嫌がってた男だからこれには違和感が
しかも民主主義者だから皇帝は名乗らんだろうし
シェーンコップが出てきたからリューネブルクがまだいた頃のローゼンリッターかと思ったけど
帝国の軍艦だと違うしなぁ
>>389 宇宙人と聞いて、カセイジン(プリンプリン物語)が出てくる自分って……
>>412 精神面だとテレパスが基本能力で、ある程度なら読心も、だったっけ
ただ、導師は各レンズマンに応じた能力を引き出すから、なんともいえない
クザクなんかは実に攻撃的
銀英伝の設定はかなり痛いけど、内容は俺はかなり好き。
貴族連中が精神的にも、肉体的にも痛い目にあってる話は読んでてにやけが止まらない。
>>415 全ての攻撃(敵意)をそのまま跳ね返す明鏡止水(みずかがみ)だっけ?
マフィアだかなんだかがクザクを取り囲んで銃をうつはずが全員自分に向けて撃つ結果になるという実にえぐい技だったような
>>414 ナイフ持ってたり生徒会書記だったり文芸部長だったりする俺よりはマシだ
>>415 そうかー。
キムは第二段階に進む前でも精神支配くらい軽くやってた気がするが、
まあメイジに抵抗力があるような設定にすりゃ無問題だな。
>>414 私は竹本泉が思い浮かぶ。
まあ、るーるー、るーの元ネタはプリンプリンだろうけど
>>413 ヤンってどこぞの虎連れた男と将来の夢は一緒で、
軍を適当なところで切り上げて、恩給で楽隠居が夢でしたっけ?
>>419 キムは色々と論外だから基準にしちゃダメだよ。
>>413 つまりこのヤンは偽者なんだよ。
ヤンの名を騙る別人。
現われてもおかしくないけどな、自称ヤン・ウェンリー。
>>423 つまり小さな物から大きな物まで動かす2人の片割れか
>>421 適当っていうか食うに困らないだけの年金が出るようになったら即やめて
本を読みつつ歴史家になるのが夢な男
虎連れた男って新城直衛?
>>414 カセイジンと聞いて、火星人刑事が出てくる自分って……
>>422 まあそりゃそうだあね。
ヒーローだもんね。
それならディーやゼルなんて名前のオリキャラも作らないとw
>>428 順当に考えてジョセフじゃね?
ガンダに負けず劣らず、ニョズとも相性よさそうだし。
それにしても帝国でヤンって酷すぐる。
これを真面目に書いたとしたら、痛いなあ。
万一、銀英伝読んだ上だったりしたらいっそ哀しいかも。
>>423 >>424 いえ、間違いなく本物ですよ。暗殺から間一髪で救われ、その翌年、ラインハルトが結婚しないまま
病気になってしまい、結局無理矢理、次の皇帝にさせられたという設定です。
時期的には、原作終了の5年後のつもりですが。
>>406 エッドア人全滅後の、キットたちがアリシア人から使命の引継ぎを受けた後の召喚なら大丈夫では
ハルケギニアが異世界ではなく、銀河系か第二銀河系の惑星とい捏造が必要だけど
>>422 キムと聞いて、チョン国の偽善格闘家が真っ先に浮かんだ俺は
>>436 俺は無責任艦長のオペレータを思い出した
>>437 タイラー召喚面白そうだな
俺には書けんが
>>436 パンチパーマ独裁者思い出した俺はどうすりゃいいんだ
>>439 パーマデブはないわw
キムはれっきとした英語圏の愛称だったと思う
>433
君がヤン・ウェンリーというキャラクターをまったく描けていないことを皮肉ってるんだと思うよ
>>438 あの話なら、ヤマモト君あたりが一番やりやすいかも。
次点でイサムとキサラかな?
>>432 同人誌やネット小説で、ヤンが銀河帝国の皇帝になる話は、いくつもありますけどね。
ストーリーの流れから言えば、可能性としては充分有り得たんですから。
それに、ラインハルトの価値観でもヤンの価値観でも、ハルケギニアの社会における差別は、
許せないものだと思いますが。
いつの間にそんなYOKOSHIMAみたいなYANが作られたんじゃよ?
そしてレンズマンとやらをぐぐってみたが超大作すぎてよくわからぬ
>>444 70年前のSFだからな
だからコンピューターもロボットも登場しない
相対性理論はすでにあったから、光速を出し抜く方法はちゃんとあるけど
そして俺たちはレンズマンの作者の恩恵を今も受けているんだぜ
ホットケーキミックスという形でな
タイラーで少し構想を練ってみたんだが、ニョズにヒラガーはやめておいた方が無難だろうか?
二次オリジナルのキャラ設定が何故原作のキャラ設定より優先するんだ?
>>446 出し抜くって言うか、今読んだらあんなんありかって思うだろうな>バーゲンホルム
>443
あったらどうだっての。ここで受け入れてもらえるとでも思ったのか?
>>443 それじゃ、二次創作物じゃなく三次創作物だよ
>>449 慣性を完全に中立化するとか
光速突破するのと同じぐらい難しそうだぜ
というか、政治家のラインハルトが倒れたからって軍師以外の功績がないヤンを引っ張り出す方がおかしいだろ
自分で魔法の才と政治の才と軍事の才に関係なんかないと書いてるくせにw
つーか異なる価値観を理由とした干渉戦争ってゴールデンバウム王朝とかわらんだろ
ファウンデーションの銀河帝国だってここまでひどくねーや
もう、アレについてはスルーだ、スルー
どちらの作品のファンとしても、本気で泣けてきた
皆、アホにかまい過ぎw
U-1という単語が脳裏を過ぎった
つーか他国の民衆に武器供与して内戦とかどこのソビエト連邦だ
>>452 ガジェットSFにそこまで求めるのは酷だろう。
まともに、「質量とは何か?」から始めて、「慣性の発生する理由とその中立化理論」を語って、
最終的に「光速を突破する理論」まで語っている話はないわけじゃないし、
俺個人はそういう話は大好物だが、おまえら聞きたいのか?
どうしても話してほしいというんなら、適当な話を探してみるけど。
>>454 価値観の違いで戦争なんて世界各地でやってきたし、今もしているし、これからもする。
肌の色が違うってだけで殺し合いをやってたんだぜ。まだまともじゃないか。
同人誌やSSでそんなのがあったからといってもそれを唐突に持ってこられても・・・・・
ヤンが皇帝になるというSSを書いたSS書きの人自身が
その設定を使って書いたならまだ何とかましでしょうけど・・・・・
アメリカもやってたぞ
ベトコンやムジャヒディンは元々アメリカが尖兵にしようと訓練した連中
制御しきれなくなって離反され、逆に手ひどく咬まれたわけだが
レンズマンに科学考証を求めてどうするんかな
メンターみたく精神存在が話の中心にいるからファンタジーとして読んだ方がいい
スタートレックと似たようなもんだしな
それにレンズマンのレンズのあり方がファンタジー
>>460 いや、俺は率直な感想言っただけ
別に否定しようとか何とかしろよとかそう言うつもりじゃなかったんだ
そう取れるような書き方だったのなら正直スマンかった
>>444 読んで欲しいなあ。ムッチャ面白いから。
スカイラークもイイ。
>>463 で、そのときに供与したスティンガーが、
アフガン戦争の時にも残ってるんジャマイカとガクブルしてたら実はそうでもなかったんだっけ
>>463 アフガニスタンのムジャヒディンはそうだけど、ベトコンもだっけ?
あそこは端からソ連が援助してたと思ったんだけど。
>>464 あのころのSFはファンタジーと変わらない
夢と希望の物語だったからな。
>>466 宇宙のスカイラークは入手が難しくなってるんだよな
宇宙大作戦(スタートレック)も高くてほとんど手に入らないのがくやしい
神田のある関東に住んでる人はいいなあ
>>463 アメリカが内戦に首を突っ込んだのは、ベトナム戦争と朝鮮戦争ぐらいだと思うが、
どちらもはアメリカは自分でもちゃんと戦ったぞ。
イラン=イラク戦争やアフガンの話は、内戦じゃないし。
あと、制御しきれなくなったのではなく、敵がいなくなったので矛先がアメリカを向いただけ。
ソ連が唐突に崩壊したことは、それくらい大きな出来事だったんだよ。
魔砲使い>>遅れ馳せながら、乙です
全編通してリアルタイムで観ましたけど、自分も一番のオススメは一期(無印)です
批判多いですけど、三期も好きですよ
ただ、設定好きなら三期はオススメですよ
DVDは、全シリーズ各巻に登場魔法、デバイスの解説付いてますし
アリシアは、才能が開花する前だったって話も
二次設定だったかな・・・・
戦乙女>>遅れ馳せながら、乙です
一点だけ、気になった点が
受肉しているとは言え神ですし、魔法使いであるメル、
野性のカンを持ったアリューゼ、この三人で干渉魔力に気付かないのは
考えにくいかと・・・・
>>470 知らんかった。
いま調べたら、Amazoneで1600とか、キツいね。
デュケーヌが好きだったな。なぜか。
474 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 01:38:20 ID:hAp1yjyn
>>443 古代ローマ皇帝は今のアメリカ大統領的な存在だったそうですし
五賢帝の時代は血筋にかかわらず優秀な人材に後を継がせたそうですから
「皇帝」もぎりぎり大丈夫では?
正直驚きましたが。
>>475 ならいっそ、やる夫がルイズに召喚されちゃいなYO!
___
/ \
/ノ \ u. \ ここはどこだお!?
/ (●) (●) \
| (__人__) u. |
\ u.` ⌒´ /
戦国の長島巨人軍召喚
志茂田景樹自重
>>476 7万に何だかんだで勝ってしまいそうだから困る
>>479 ゼロ魔のAAがどこまで用意できるかがまず問題だな。
なぎはらえー
で全部終わるw
>>475 航空アクションか…PICシリーズは結構好きだな。
パイロット・イン・コマンドとか機体消失とか。
作者もう亡くなったけどorz
こなたの仮想戦記を読みたくなったのは俺だけでいい
>>483 社長はどこいっても社長だなぁ
>>485 やる夫の航空アクションを読みたくなったのは俺だけでいい。
やるなら旅客機モノがいいな。
フライトシムとそれなりのアドオン手に入れておけば操縦関係の描写は結構いけるっしょ
なんかガンダー海馬(茶髪)VSミョズ海馬(緑髪)とかいう電波が頭をよぎった…
当然7万の時緑髪のほうは…
「お、俺の…7万の大軍が…ぜ…ぜん…めつ…めつめつ…」
>>487 デル君の正体はエグゾディアだったんだよ!!
という声がどこからか聞こえたような・・・・・・
いや、茶髪がオベリスクだしてソウルMAXエナジーでゴッドハンドクラッシャーだ
>>406 キムボール・キニスンの人生で召喚されてる暇は「レンズの子ら」で別次元の宇宙に飛ばされてる時
ぐらいしかないと思うんだ。
「やぁ、こんにちは、お嬢さん。ここはどこかな?」
「ぜ、ゼロのルイズが全裸のおっさんを召喚したー!」
赤毛はもういい、と公言したキムとしてはキュルケに迫られても食傷気味だろうな。
ところで、銀河パトロールはボスコニア系は徹底的に民主化するけど、ライレーン第2惑星みたい
に未開で独自な文化には知識を与えて自主的な成長・発展を促すだけにとどめるみたいだから、
ハルケギニアに対しても無理やり文明化することはないんだろうね。
別の作品だけど、スタートレックシリーズからの召喚になると艦隊の誓いがあるから可能な限り異世界人だと言う事を隠そうとするよね。
ヴァルカン人はエルフ、クリンゴン人はオーガ鬼の親戚、フェレンギ人はよくわからん亜人として認識されそうだな
レンズマンは主人公が無双する話だからクロスは難しいな。
突如召喚されても余裕なのに、食事に肉が出ないと知って激怒するキムとか
死んだ先で別の存在次元はハルケギニアだった、と衝撃をうけるメンターちゃん、みたいな小ネタしか浮かばない。
無双つーか、精神作用に対抗能力のない相手だと、心も記憶も読み放題、精神操作も精神攻撃も
かけ放題だからなぁ。全くピンチにならないどころか、話にならない。
495 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 10:32:07 ID:JdlyqOOW
レンズの担い手は1億人に一人位しかなれない超エリートだぜ。
そりゃ異星文明との架け橋になる能力を持ってるのだから、中世の魔法使いが相手になるわけがない。
497 :
パンくいてえ:2008/05/05(月) 10:47:30 ID:fkgzhXVx
焼きたて!!ジャぱんから諏訪原
「刀持ってるわよあの使い魔」
「うわあれは何人も人を殺している目だよ・・・恐ろしい」
「ちゅ」
「・・・」
「これは珍しいルーンですね、おやこの使い魔・・・・立ったまま気絶している」
「下郎」
ヴ ァ ン
「他人に責任を転嫁するその腐った根性、へどが出る!あまつさえ二股がばれればそいつのせいか!?恥を知れ!!」
昼休み
「あんた謝りなさいよ、今ならまだ間に合うわ」
「他人の心配をする余裕があるとは・・・いいご身分だな、ルイズ」
「スァーハラ!!」
「決闘はどうしたの」
「対戦相手がなぜか腹痛でな。不戦勝だ・・・フ・・・」
レンズマンといえば、支配被支配の関係で社会を作るのはエッドアの特徴。
始祖はエッドアの化身でハルキゲニアはエッドアの実験場みたいな。
文才が無いから作らないが。
499 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 11:30:02 ID:zcYLzdY6
ルイズが社長を召喚した話誰か持ってる?
>>499 社長の嫁が召喚される小ネタならまとめサイトにあるぞ。
>>499 お前は目が見えないのか?
すぐ上にあるだろ
「ゼロと帝国」グッジョブでした
こういう作品には一定の需要があるので
同じ方向性の作品もどしどし投稿して欲しいですね
自演荒し、NG対象ID:HBu5NvFG
504 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 12:11:32 ID:tfFT/3VG
魔法そのものが滅ぼされる話__と聞いて、日本版X−MEN小説とか。
“ミュータントの能力を消す「ホワイトゾーン」能力”でつぎつぎと貴族たちの魔法能力を消して行く使い魔。とか^^
“人間をミュータントに変える「ドラッグボイス」能力”で次々とミュータント能力に目覚める平民たち・・・;;
HXLの作品群から……ジエンドかネクロマン、それが駄目ならせめてギャラさんを召喚。
もしくはルイズの召喚によってオルタネイションバーストが発生するとかはどうだろう。
507 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 12:24:26 ID:tfFT/3VG
HXLの作品なら単行本出た『MEAN-ミィン-』がいいなぁ^^
日暮夏鳴の‘うじゃらもんがぁん♪’をぜひww
純粋に教育でメイジ遺伝子をもつ平民のメイジを量産するほうが貴族にはきつそうだな
血統を否定されるわけだから、本格的に社会体制が破壊されるんじゃね?
>>505 強いてフォローしてみるなら、クロス先が銀英伝でなく、
もっと別の何かだったらあるいは面白かったのかもしれないけどねぇ
あれはあらゆる意味で原作ファンをバカにしているだろ。
ゼロと帝國をまとめwikiに入れたのか…
個人的には闇に葬りたかったんだがorz
・・・なんでこんなのを登録してんの?
アフォなのか釣りの心算なのか・・・とにかく酷いな。
「ゼロと帝国」途中までは、まあたまにはこういうのもいいかって思ってたけど銀英伝クロスって気づいた瞬間こりゃダメだと思った。
別の作品とのクロスなら救いがなくてもそういう作品だって思えたんだけどなぁ。
宇宙人といえば仮面ライダーの大首領も宇宙人だった。
スーパー1のドグマ、ジンドグマも宇宙人だった。
ルイズにはキングダークっでも召喚して欲しいな。
そうか、ここはオリキャラを召喚させても良かったのか。
ある作品のキャラを召喚してその挙句ゼロ魔世界が滅茶苦茶になる作品というのは
やはり人によっては受け入れられないものだ
ましてクロス先のキャラが魔改造や改悪されていれば大抵拒絶される
>>512 自分は最初はフェザーンの連中かと思った
それでもあそこまでやらないだろうし、銀英伝でそういう事やりそうなのは地球教徒くらいだな
あれ、三次創作じゃないのか?
誰だよ、まとめwikiに登録した奴orz
つーか、あんなのが登録OKならスパシンとかすらOKになっちまうな。
実に嫌な話だ。
地位に興味なく戦争嫌いなヤンが皇帝になるわけないと思うんだけどなぁ。
本人も自分に政治力(というより興味)がないことは自覚してたはずだしな。
指名されてほいほいその地位につくなら、バーミリオン星域会戦が終わった後のラインハルトの誘いにのってるぞ?
つかバーミリオン星域会戦以降の話が破綻する
あと軍人と民間人の区別をはっきりさせて、民間人の犠牲者を出させないことを前提に動くのに平民の反乱なんて画策しないぞ?
やるなら皇帝は(ヤンじゃなく)ラインハルトのままで
「簒奪者?!」 に対して堂々言い返すところが見たかったな。
>>518 ほいほい他人の口車に乗せられるような馬鹿じゃねえしな。
銀英二次で創作する分には構わないが、
オリ設定加えてまでクロスすんじゃねぇよと。
とりあえず運営で削除の議論でもするか?
あとクロス先にありえないオリ設定を加えたクロスもなんとかしてほしい。
とりあえずアレはSSとして面白くないし説得力はないし論外だわ。
この際だからいっておくが、
wikiにある一話だけとかプロローグだけしかない奴は全部小ネタに入れてほしい
>>519 ラインハルトなら何て言うんだろ?
「無能な者に統治の権利は無い!
私より優れている者がいるなら皇帝の座をいつでも譲り渡そう。」とかかな
投下した本人は単純におつむのできが悪いだけだったかもしれないけど、
まとめに登録したのは明らかに荒らし目的だしね
議論するまでもなく削除されるんじゃないの?
改めてテンプレ見直したら三次禁止って書いてなかったぜ。
昔、運営で話し合ってた気がしたんで過去ログ調べたら、初代運営の604辺りから話し合っているけど形月の話で流れてた。
・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。とは、はっきり書かれているけどな。
改めてテンプレ作ろうぜ。
三次・オリキャラ禁止のさ。
他国の市民に武器供与して「革命」ってあなた…
どっかの赤地にツルハシとハンマーとか、赤地に黄色い星な国じゃないんだから
>>520 せめて、ああなるまでの過程というものを納得できる形で語ってくれたらねぇ。
ルイズに召喚されたとあるキャラがしばらくしてであったのは、変わり果てた元親友だった。
ジョセフに召喚された後、紆余曲折を経て変節してしまった親友と、(紆余曲折もちゃんと描く)
変わり果てた親友のことは受け入れられぬ主人公は、
互いのことを大切に思いながらも、今のお互いを認められずに剣を取りあう―――
という話は、結構おもしろそうだと思うんだが。
革命じゃなくて煽動だな
>>524 単純に「三次禁止」だと横山三国志なんかもNGになってしまうので
やるなら「同人三次禁止」が良いと思う。
銀英伝はヤンが頭いいんじゃなくて敵も味方もバカすぎだと思っているが、
十分に面白いしキャラも好きだったなー。
キルヒアイスがいっちゃん好きです。殺すなよなと。
つーか、自分で
「国を治めるまつりごとの才能と、魔法の才能との間に、関係があると思うかい?
兵を指揮する将の才能、作戦を立てる軍師の才能と、魔法の才能との間に関係があると思うかい?」
とか書いておいて、政治的手腕ゼロで軍才しかないと書かれてるヤンが皇帝になるのは正しい!とかもうねw
毎度毎度長々と続くカス雑談といい今回みたいなゴミSSといい珍英厨マジ死んでほしい
そう思ってても本スレに書き込むなよ
何の為に避難所に毒吐きがあると思ってるんだよ
本スレ汚しそうな事は毒吐きで吐き出せ
アンチの為のスレじゃねーんだぞ
なんつーか今の状況は思うツボだよね
535 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 13:25:39 ID:tfFT/3VG
“あの作品”のキャラが_ですから・・・。三次禁止って書かなくても^^
ちゃんと一般に出てる作品(横山版「三国志」とか)は有りでしょう。
銀英伝は知らないし、ゼロ魔に思い入れもない
そんな俺は普通に読めたけどね>銀英雄
>>536 しかし、age禁止もそろそろ旧弊じゃないかと思わないでもない。
ハルケギニアの「皇帝」には陛下ではなく「閣下」がつくという話を聞いたが、
大統領とか大元帥みたいな感じなのか?
いい加減この話も止めよう。続けても荒れるだけだ。
保管庫には削除依頼でも出して置けばいいさ。
>>540 削除依頼はもう出てるよ。Wikiに追加したヤツの編集禁止措置依頼と一緒に。
>>539 ゲルマニア皇帝は他と比べて格式が低いから「閣下」扱いなんだよ
他に比べると新興国家だし始祖の血を受け継いでないから
ロマリアは「聖下」でトリステインとガリア、アルビオンは「陛下」
そう言えば、ゼロ魔読んでて「聖下」て尊称を初めて目にしたな。
「猊下(げいか)」の間違いかと思ったら、「聖下」も普通にあったんで自分の浅学さを痛感した。
他に「聖下」の尊称を使っている作品とかあったりするのかな?
トリニティブラッドでローマ教皇を聖下と呼んでなかったっけ?
誤爆った^^;
以前のテッカマンブレードの召還話の雑談を見て
ルイズがペガス召還
テファがD・ボゥイを召還して介護生活→復活な電波をですね……
でもスパロボと漫画版とアニメ数話分しか見た事の無い俺には書けん……orz
Dさんは例によってミス・ヴァリエールをミユキと間違えるんですか?
お兄ちゃんと呼んでくれと要求して引かれるんですか?
ぶっ壊されたベガスがゲートをくぐる際再生、入った人を先着一名テッカマンにしちゃうというのもいいのでは(勿論生贄はミス・ヴァリエール)。
誰も気にしてないけど、科学で魔法を封印できるものなの?
銀英伝知らないけど、魔法存在しない世界なら封印する技術なんてないんじゃ?
未知のメカニズム調べるなら数百人単位で解剖や人体実験する必要ありそうだし、そんな大規模に誘拐してたら気付かれて完成前にハルケギニア対帝国の全面戦争始まりそうだけど
いっそ神様の力でとかなら納得できるけど、神様がわざわざ回りくどく扇動なんかしないかな
あ、魔王とかならありかも
民主化じゃなくて裏で操るのが目的になるだろうけど
>>549 御都合主義に突っ込むのは無粋ってもんだぜ。
>>549 と言うか、そこに辿りつく前に、突っ込みどころが満載なんだ…
やっぱりkos-mosはエロい
おっぱいがいい あの片側ガーターというのも劣情をそそる
モモは狙い過ぎてて駄目だね
>>547 テッカマンブレードから召喚するならDボゥイとアキはセットで召喚されて欲しい。
(ルイズが2人を召喚でもいいし、ルイズがDボゥイでキュルケかタバサかテファがアキ召喚でもいい)
単独召喚ならIIからユミ・フランソワを。ミドルネームがルイズと共通してるのもチャームポイント。
>>548 ペガスでも、ラダム樹にテッカマン化されとらん人間テックセットさせることはできんぞ。
むしろ、ラダム獣召喚した方が楽しいな。それも、ラダムマザー。カオス的な意味で。
フランソワと聞くと、オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ准将が浮かぶなあ
召喚されたら結核は治してもらえるんだろうか
同じ頃に怪我したアンドレ・グランディエはテファが召喚
それなら本家のぺガス召喚すればいい
虚無の使い手はテックセットシステムに適合できるとか
漫画版と違って、アニメ版に本家のペガスは存在しない!
つか、
>>554は
ルイズ、ラダムマザー召喚。体格差とかいろいろ乗り越え儀式敢行、主従関係成立。
化け物としての優れた性能で戦闘用の使い魔としては大活躍。
一方で、本能通りにポコポコラダム獣を出産、量産。陸に、空に、海に無敵の大軍団へ。
ルイズ、必勝の軍勢を獲得――と思いきや、ラダム獣を養う大規模エネルギープラントの
存在無しのため、ポコポコとラダム獣死亡。
運良く生き残ったり、運良く火のメイジあたりの魔法をエサに生き残った数匹が、原作通りの
イベントに随行。活躍。
かと思ったら、アルビオンに入り込んだ辺りで本能通りにラダム樹化。
動かなくなった役立たずに失望して、それでも原作通りっぽく任務達成、悲劇傍観。ルイズ帰還。
数ヶ月後、アルビオンに根付いたラダム樹が花を咲かせました。
みたいなカオスをネ、妄想したのよ。
>>557 いやブレードとは全く関係ないテッカマンの方のぺガス召喚すればいいんじゃね?
と言いたかったんだ
あっちの方が好きなのはこのスレではごく少数派だろうけど
>>559 あ、なるほど、これは失礼。
天地局長の作った方のペガスですたか。
私ゃてっきり、漫画版の方の、本家ラダム陣営のペガスのことかと。
そういや、無印テッカマンの方もブレードより後に全話LD借りて見た筈なんだが、
オチの辺りとかまるっきり記憶に残ってないんだよな。
ブレードはDVD-BOXまで買ったから、記憶完璧なんだが。
>>561 あれ、ただのキャラ別作品ポジション配役モノやん。
>>349 凄く良かったです
貴族達が滅びる様な話は余り見ないので
「ゼロと帝国」は銀英伝を知らない、かつ「ゼロ魔の貴族は鼻持ちなら無いクソ供ばかりだ」
とか考えてる人が見れば、それなりに楽しめるかもね。前者はともかく、後者はここにそうそう居ないと思うけど。
まあ、大抵の人には不快だろうけど。
……あれ、この話大分昔に終わった? スミマセン。
ゴールデンウィーク・エクスペリエンス・レクイエム!!
【全ての努力が無駄(ゼロ)になった】
何か空気が不穏ですが、小ネタを投下してもよろしいですか?
ちなみにちょこっとだけ声優ネタを入れています。
GO! かまわず突き進め!
568 :
使い魔は不良高校生:2008/05/05(月) 19:03:11 ID:CeMRSp2A BE:434095373-2BP(30)
目の前で私の使い魔が傷だらけになって倒れている。
さらに一発、もう一発と、六体もの青銅のゴーレムは容赦なく相手を殴り倒す。
決闘相手のギーシュはすでに勝ちを確信している笑みを浮かべている。
絶体絶命のピンチだ。
私とて自分の使い魔が半ばリンチ同然の目にあっているのはいい気分ではない。
悪いのはギーシュの方なのも知っている。
だが、それでも私は止めない。
なぜなら・・・・・・
「どうしたんだ平民君。もう終わりかい?」
「そうだ、とっとと降参しちまえ!」
「ただの平民の癖に生意気だぞ!」
やはり、誰一人ツッコむ人間はいない。
私はその瞬間をずっと待っているのだ。
この決闘の最中なら誰かしら気づくと思ったのだが・・・・・・
これで何度目になるか分からない心の叫びを私は再び繰り返した。
(あんたら本当にそいつがただの平民に見えるんですか!?)
そう、
私がどんな角度でどのように見ようと、我が使い魔『メカ沢新一』は人間には見えなかった。
始まりはサモン・サーヴァントの儀式の時だ。
私にとっては始めて成功した魔法だった。
その時の感動は、だがその召喚された使い魔を見たとき一気に引き下がった。
それは黒い布に包まれた銀色の円柱。
とりあえず誰しもがそういう感想を抱くであろう。
さらに言うのなら人を模した出来損ないの工作と言うべきか。
あの黄色い丸は目なのだろうだろうか?
左右と下部にくっついている変なパーツは手足のつもりか!?
と、頭が混乱しきっていた時、
569 :
使い魔は不良高校生:2008/05/05(月) 19:04:46 ID:CeMRSp2A BE:620136656-2BP(30)
は?
「おいおい、その辺の平民捕まえてきてインチキするんじゃねぇよwww」
へ??
「さすがゼロのルイズだ。ただの平民を召喚するなんて僕たちじゃとうてい真似できないな」
ナンデスッテ???
こいつらは今なんていった?
ただの平民?
これが?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いやいやいやいや!
どうみてもただの平民じゃない!!
というかそれ以前に人間にすら見えない!!!
こいつらの感性はどうなっているんだ・・・・・・
「ミスタ・コルベール! もう一度やり直しを! こんな・・・・・・こんなの!」
「ミス・ヴァリエール、残念ながらそれは出来ません。使い魔の召喚は神聖なものです。
あなたが召喚した以上はちゃんと契約しなければなりません。たとえそれが今までに例のない『平民』であっても変わりはありません」
あんたもか、このコッパゲ・・・・・・
唯一の希望を絶たれた私はしかたなくそれと契約する事になった。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え、我の使い魔と為せ」
どこが口なのかわからないので仕方なく目(?)の下辺りにキスをした。
「ぶるぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
突然それから叫び声が聞こえた。
とりあえずしゃべるって事は生き物なのだろう。
確信はないが・・・・・・
「おいおい、ここはどこだー?」
渋い声だ。
570 :
使い魔は不良高校生:2008/05/05(月) 19:07:17 ID:CeMRSp2A BE:744164249-2BP(30)
すみません、2つ目の最初の一行に
「おい、ルイズが平民を召喚したぞ!」
という一文を入れるのを忘れてました
こいつか
支援
572 :
使い魔は不良高校生:2008/05/05(月) 19:08:26 ID:CeMRSp2A BE:868191067-2BP(30)
「いやなー、俺の弟がしばらく前からダチの家で世話になっててよ。 迎えに行こうと出かけた途端、目の前に鏡が現れたんだ。
興味本位で触ったらその鏡に吸い込まれてここに来ちまったってわけよ」
と、そいつは語った。
名前はメカ沢新一という聞きなれないものだった。
ちなみに使い魔のルーンはこんな形→(⊂)の手に巻きつく様に描かれていた為、ミスタ・コルベールにもよく確認出来ず、
「スケッチはまた後日にしましょう」
という事になった。
とりあえず事の詳細を説明したら意外のにもあっさりと使い魔になる事を承諾してくれた。
説得にはてこずるかなと思ったのだが・・・・・・
「とりあえず帰る方法がねぇってんならしかたがねえ。グダグダと騒ぐつもりはねえよ。
それに、女を守るのは男の役目だろう?」
何かカッコイイ事言ってるし・・・・・・
とにかく、このメカ沢とかいう変なのが私の使い魔となったわけだが、私はこれがどうしてもただの平民とは思えなかった。
これはちゃんと確認する必要がある。
そこで、私はとある事を実行することにした。
すなわち、メカ沢の動向を気づかれない監視するのよ!
四六時中付いて回れば色んな人に出会う事になる。
その行動に不信な点があれば、いくらなんでもみんなあいつが人間ですらない事に気づくであろう。
これはあいつが変な事をしでかさない様に見守る意味も込められているので、決して悪質なストーキングではない。
繰り返して言うが、決して悪質なストーキングではない!
行動は明日の朝から始めるとしよう。
強力若本支援
574 :
使い魔は不良高校生:2008/05/05(月) 19:09:30 ID:CeMRSp2A BE:372082436-2BP(30)
そして翌朝。
意外と律儀なのか、命じておいた洗濯をちゃんとこなそうとしているではないか。
だが洗濯場がわからないようだ。
お? あそこに見えるのは我が校のメイドではないか。
なるほど、彼女に場所を聞こうというわけか。
ふふふ、これは好都合。
昨日の貴族共ならともかく、相手も平民ならとりあえずあいつがただの平民ではない事ぐらいは・・・・・・
「ちょっといいか」
「え? なんでしょうか?」
「この洗濯物を片付けてえんだけどよ、場所がわからなくて困ってるんだ。知ってたらちょっくら案内してくれねぇか?」
「あ、あなたもしかしてミス・ヴァリエールが召喚した・・・・・・」
「俺を知ってるのか?」
「はい、ミス・ヴァリエールが平民を使い魔として召喚したのは学園中で知れ渡っていますから。
あ、自己紹介がまだでしたね。私はシエスタといいます」
「メカ沢だ。よろしくな」
「はい。同じ平民同士、仲良くしましょうね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いや!
まだ諦めない。
私はさらに監視を続行した。
「すみません。私の分まで手伝ってもらって・・・・・・」
「なあに。ここまで案内しれくれた礼よ。
気にするな」
メイドと正体不明の生命体が仲良く洗濯をする姿は私が今までに見たあらゆる光景の中で最もシュールなものだった。
「あ、・・・あの、メカ沢さん。ちょっと言いたい事があるのですが」
「何だ?」
これはまさか!
「先ほど一目見たときから気になってずっと気になっていることがありまして・・・・・・」
ついにツッコむのか!?
「水くせえなー。何の話だ?」
「ただ、メカ沢さんが気づいているのかもしれないと思うと言いにくくて」
「俺はお前の事を家族(ファミリー)だと思ってる。何を言われてもきにしねえよ」
さっき会ったばかりの癖に家族って何よ!
「わかりました。では言わせていただきます」
頼む、ツッコんでくれ!!
575 :
使い魔は不良高校生:2008/05/05(月) 19:10:48 ID:CeMRSp2A BE:578793874-2BP(30)
「お召し物の第二ボタンが取れてますよ」
「あ、ホントだ」
そーじゃねーだろ!!
どうやら洗濯を終え、私の部屋に戻るようだ。
なんか見てるだけなのにやたらと疲れるわ。
と、その途中の道に二人の人物が現れる。
「あら、あなたは昨日ルイズが召喚した使い魔じゃない」
むむ、あいつは我が宿敵、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー!
そして一緒にいるのはあいつの友人のタバサだ。
「ルイズの洗濯を終えた帰り? あんたも無理矢理召喚されたのに随分と律儀なのねえ」
「まあ、一応あいつも責任は感じてるみてえだし、俺が元いた場所に帰るまでの間の面倒を見てくれるっつうんだ。
このくらいは当然よ」
ふ・・・ふん!
ちゃんと使い魔としての心得はちゃんと出来てるみたいじゃない。
これでせめて、平民でもいいから普通の人間だったらなあ・・・・・・
「あら、意外と殊勝なのね」
「・・・よせよ」
何か普通に会話してますが、現在進行形で頭部を開いて何かをさしたり巻いたりしているのは全力で無視ですか!?
ああそうですか!
「恩があれば返す、間違ったらワビいれる。それは当然の事だろう?
貴族だとか平民だとかそんな事は関係ねえ、同じ人間として!」
それはひょっとしてギャグで言ってるのか!?
「ふふ、気に入ったわ。ルイズの所が嫌になったらいつでもいらっしゃい。使用人として雇って・・・ってあら?」
キュルケが横にいる友人へと目線を移す。
おやおや、先ほどからタバサはメカ沢の事をじっと見つめているじゃなか。
「ふ〜ん。どうやらこの子、あなたを見たときからずっと言いたかった事があるみたいね」
「何だお前もかよ。頼むからとっとと言ってくれよ」
やっとツッコむのか!?
思えばこのタバサとかいう女の子、かなり無口だが質問にはちゃんと答えてくれるし常識はわきまえている。
何より博識だ。
なればこそ気がついたに違いない!
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
沈黙が流れ、タバサがすっと腕を上げてメカ沢を指差した。
さあツッコめ!
コッパゲ気づけよw支援
577 :
使い魔は不良高校生:2008/05/05(月) 19:13:54 ID:CeMRSp2A BE:496109546-2BP(30)
「・・・・・・顔がすごく大きい」
「―――そっか?」
おしいぃ〜〜〜〜〜〜〜〜けど違う!!
これまでの監視で私の精神力は極限まで疲れきっていた。
食事もマトモに喉を通らなかったし、授業中にマルコリヌに何を言われても言い返す気力すらなかった。
ぶっちゃけ何を言っていたのかもよく覚えていない。
おかげでミセス・シュヴルーズに錬金の指名をされずにすんだ。
こんな状態で錬金なんてやったら失敗して大爆発を起こすのは目に見えている(今までも成功した試しはないのだが)
それは昼食時でも同じだったが、さすがにこの時の騒ぎには駆けつけた。
その騒ぎの中心には私の使い魔がいたのだから。
周囲の話し声から大体の状況は掴めた。
つまりギーシュの落とした香水をメカ沢が拾って、それが原因でギーシュの二股がバレ、
それをメカ沢の責任にして、そこからは売り言葉に買い言葉になって二人が決闘する事になったと。
うん、どう考えても悪いのはギーシュだわ。
だがあいつがどれだけ強いのかは知らないが、ドットとはいえメイジたるギーシュが相手では分が悪すぎる。
すぐに止めようと思ったが、ここで私の頭にある考えが閃いた。
(ギーシュとメカ沢が決闘をする)
↓
(当然、沢山の人が集まる)
↓
(となると沢山の人がメカ沢の姿を見ることになる)
↓
(さすがにそれだけ人が見れば誰かしらあいつの姿かたちにツッコむ人間が現れる!)
というわけで、例によって今回も見守る事にした。
のだが・・・・・・
ここで最初の場面に戻る。
当然それまでにメカ沢にツッコんだ人間は一人もいない。
文中に「www」とかはあんまりよくないって聞いた
さっきからクロマティ仕様のルイズが浮かんで腹筋痛い支援
579 :
使い魔は不良高校生:2008/05/05(月) 19:16:40 ID:CeMRSp2A BE:310068353-2BP(30)
「その程度じゃ俺はくたばらねえ・・・」
「くっ! なんだと!!」
ああ、何だかここまで誰もツッコまないと自信が無くなってきた。
もしかしたら私が世間知らずなだけであいつは本当にただの平民なのかもしれない。
「いい加減にしたまえ! いくらボクでもいつまでも寛容ではいられないぞ!」
何かあんな人が本当にいるような気もしてきた・・・・・・
そうだ、きっと王都の裏路地にでも入れば二、三人くらいはああいう人間がいるのだろう。
「もう限界だ。これで決着を付けさせてもらう!」
ギーシュがさらにもう一体のゴーレムを作り出す。
がそれまでのと違い、今度のはその手に槍を携えている。
さすがにアレはまずい!
止めに入ろうとした時には遅かった。
その槍は無情にもメカ沢に突き刺され!
・・・・・・その槍がポッキリと折れたのだ。
メカ沢の体はいたって無傷だ。
前言撤回。
どう見ても人間じゃありません、本当にありがとうございました。
「ボクのワルキューレの槍が折れただと・・・・・・」
ギーシュは困惑の表情を浮かべている。
それはこの決闘を見学している全員(当然私も含まれる)も同じだった。
「ボクは今までこいつをただの平民と思っていたが、もしかしたら・・・・・・」
おお! ギーシュ、あなたは意外とマトモだったのね!
さあ、早くツッコんでくれ!!
580 :
使い魔は不良高校生:2008/05/05(月) 19:17:31 ID:CeMRSp2A BE:1302286379-2BP(30)
「体が異常に硬い平民なんじゃないか!?」
「なるほど、メチャクチャ体が硬い平民なのか!」
「つまりはすごく頑丈な平民なわけだな!?」
あんたらもうワザと言ってんでしょ!?
「フフ、お前は俺とサシで殴り合うくらいの度胸はねーのかよ?」
「くっ!平民風情が何を!!」
「今まで対等な条件でのケンカなんざやった事がねえんだろうなあ。ま、ザコにゃ無理な話か・・・」
相変わらずカッコイイ事言ってるし・・・・・・
「その者の言う通りじゃよ」
「オールド・オスマン!」
何と、この決闘騒ぎに我等が学園長がお出ましになるとは・・・
「確かに貴族と平民との間で決闘をしてはならんというルールはない。じゃがそれなりに通すべきスジというものはあるじゃろう?」
「しっ、しかし・・・・・・」
「お主には貴族としての誇りはないのかギーシュ・ド・グラモン? この者を見てみよ。お主よりもずっと貴族らしい・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「え・・・え″ええぇ〜〜〜〜〜!?」
オールド・オスマンがメカ沢の姿を見た途端に驚愕の叫び声を上げた。
これはまさか・・・今度こそは!
「こっ・・・これは一体・・・」
間違いない!
さすが学園長! この人ならツッコんでくれる!!
「こいつは・・・・・・こいつは!」
もう一息!
そいつは人間なんかじゃ・・・!!
神山と違って相方がいないルイズが気の毒だw支援
582 :
使い魔は不良高校生:2008/05/05(月) 19:18:36 ID:CeMRSp2A BE:310068735-2BP(30)
と、オールド・オスマンは懐から何かを取り出した。
それは・・・!
「ミス・ロングビルに踏み潰されてしまったモートソグニルの代わりに新しく召喚したワシの使い魔にそっくりじゃないかーーー!!」
「お・・・・・・お前は弟のメカ沢β!!!」
「メカラッタ」
えええぇぇぇぇぇーーーーーー!?
うっそおおおぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜!!!!!!!
終われ
頑張れルイズ支援
オスマーーン!!!
クロ高EDが脳内再生したww投下乙
586 :
使い魔は不良高校生:2008/05/05(月) 19:20:46 ID:CeMRSp2A BE:372081863-2BP(30)
というわけでここで終了です。
さすがに全部を元ネタのままには出来なかったので最後のオチだけ変えてみました。
最後で少しでも笑ってくれればいいかなと。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
投下乙。
脳内でそのままリアルに浮かんで、無茶苦茶笑ったw
頑張れルイズ、負けるなルイズ!
ブレンパワードからブレンを召喚
半生物みたいなもんだから整備問題も大丈夫
コッパゲに異常な興味を示されてすげえ嫌がるブレンが想像できるのが困るけど
べ……βーーー!!?
魁!トリステイン魔法学院乙でしたー
>>586 よし次は馬に乗ったフレディ(ウイン)かゴリラ(ミョズ)かマスク・ド・竹之内(憚られる)を召喚するんだ
これは素直に笑える良作w
スペクトラルフォースのリトルスノーが召還
召還された異世界から更に異世界に召還されてなんとなく自己嫌悪に陥る
戦闘能力とかいまいち分からんキャラだけどね
コミック版で戦闘力皆無みたいな感じだったし
>>590 他はともかく、ゴリラがミョズなのか?
まあゴリラのくせにパソコンとか自在に使いこなしてたが
>>592 スペクトラル大全には、真実と未来を全て見通す力と膨大な魔力を持つって
書いてあるな。
確か1000人位なら一発で吹っ飛ぶ魔法も使える。チートだろ常考。
メカ沢。原作を欠片しか知らないのに充分笑えた
良作とはこう言う物だとしみじみ実感
ゴリラとか動物が召喚されたならゼロ魔的に成功じゃね?w
メカ沢ぐっじょぶ。
作品自体に吹いて、次に物凄い速さでまとめwikiに載せられてて二度吹いたw。
良作な上にスレの空気を正常化した救世主だからなぁ
最低のクソの後だけに余計に輝いていた
>>594 GOCのキャラ真にもそう書いてあるな。
付け加えるなら不在から30年以上期間を待ち望まれてるあたり
かなりのカリスマ性がありそうだ。
>>596 増えるのが問題だw
素晴らしい!!
平民ネタの正しい活用法GJ!
笑い転げました。
クロマティ風なルイズが「それはひょっとしてギャグで言ってるのか!?」と言うのを脳内再生しますた
603 :
虚無と狼の牙:2008/05/05(月) 20:03:30 ID:9lRVYCt+
メカ沢さんGJっす。
20:15からウルフウッドを投下します。
604 :
虚無と狼の牙:2008/05/05(月) 20:15:01 ID:9lRVYCt+
虚無と狼の牙 第六話
ウルフウッドとルイズは部屋の中央でにらみ合っていた。お互い一歩も譲らない殺気を放っている。
「ほんま話の通じひんじょうちゃんやの……」
「あんたこそ、いい加減折れなさいよ……」
ウルフウッドはベッド代わりの藁の上で、ルイズは部屋の中央のベッドに座り込んだままぶつかり合った視線をお互い譲らない。
「やから、別に問題ないやろ? おじょうちゃんにとっても」
「何を言っているのかしら? あんた使い魔としての立場がわかっていないようね……」
にらみ合う視線に今にも火花が飛び散りそうだ。
「あーもう、やからもう藁の上で寝るのはこりごりや言うてるやないけー! 数日やったらかまわんけど、毎日やといい加減背中も痛いし、うんざりやて!」
「だ、だからって、勝手にこの部屋を出て行って、よ、よそで寝るなんて認められないわよ!」
「別にええやんか! 料理長のおっさんが給仕人の寮に空き部屋が出来たから、そこを使うたらええいう許可してくれてるんやし」
「だ、だから勝手に出て行ったらだめしょうが、そ、その使い魔なんだし」
「やったら、どないせい言うねん。ワイのベッドをここに持ち込むんか?」
「そんなことしたら部屋が狭くなっちゃうじゃない!」
「んなん言われたかて、ワイもずっと藁の上で寝るのはいややで。あかん。これやと堂々巡りやないけ」
「え、えっと、その、だ、だから……」
ルイズはベッドの上に座ったまま指をもじもじし始めた。
「し、仕方がないわね。特別に許可してあげるわ」
「許可て、何を?」
「ベッドをここに持ち込むわけにはいかないし、かといって使い魔であるあんたを放し飼いにするわけにもいかないから……」
「いかないから?」
「だ、妥協に妥協を重ねた結果、ほんっとーにしょうがないから、わ、わたしのベッドで一緒に寝てもいいわ」
ルイズはここまで言った後、顔を赤くしてそっぽを向いた。意外な提案にウルフウッドは唖然と口を開ける。
「ワイとじょうちゃんが一緒のベッドで寝るんか?」
ルイズはそっぽを向いたままこくこくと頷いた。
「けどなぁ、それやと間違いが起こったらどうすんねん」
「ま、間違い!」
その言葉にルイズは真っ赤な顔をウルフウッドに向ける。やはり間違いとは、そういうことなのだろうか。
男と女が同じベッドで一緒に寝るのだ。ということは、そういうことなのだろう。
そこまで想像してルイズは顔をより真っ赤にした。耳まで真紅に染まっている。
いくらなんでもそんなことは許されないし、許すつもりも毛頭はない。ただ、なんとなく、なんとなくだが、そこまで悪い気もしない。
今まで女扱いされていない気がしていたが、一応ウルフウッドも自分を女としてみていたのだと思うと、悪い気はしない。
「え、えっと……」
ルイズはなんとかこの混乱している自分の頭の中身を悟られないように、平静を装おうとする。しかし、言葉は出ない。
「じょうちゃん」
「な、なに?」
ウルフウッドの声にルイズは背筋をビクンと反応させる。この男は自分に何を言ってくるのだろうか。
「一緒に寝るのはかまわへんけど、寝小便とかは勘弁してや」
「……」
翌日の朝、ウルフウッドは顔に見事な足型をつけて藁の上で目を覚ました。
605 :
虚無と狼の牙:2008/05/05(月) 20:17:21 ID:9lRVYCt+
コルベールはノックの音を聞いて、研究室のドアを開けた。
「やや、ウルフウッドくん。おはよう」
「おはよう、センセ」
「……その顔のあざは一体何かね?」
「日々成長していく少女の蹴りを見守った後や。ってそんなんはどうでもええねん。センセ、アレが直ったってほんまか?」
「うむ」
コルベールは得意げに頷くとウルフウッドを室内に案内した。
「まぁ、見てくれたまえ」
そう言うコルベールの右手の先には白い布をかぶせられた巨大な物体がある。
「でも、ほんまにセンセが直してくれるとは思わへんかったな」
「む? それは技術的な意味ですかな? それとも?」
「両方やな」
ウルフウッドはそう感慨深げに呟く。
「私もずっと迷っていました。しかし、ミスヴァリエールから君が命がけで彼女を助けたことを伺いましてね」
「そんな言うとったんか、あの子。ワイの前では人のことぼろかすにしか言わへんくせに」
「素直じゃないんですよ」
コルベールは苦笑いをした。
「まぁ、とにかく。その話を聞いて私は君を信じてみることに決めました。確かに力は人を傷つけることが出来ます。
しかし、その人を傷つける力から人を守れるのもまた力なのですから」
そしてコルベールは少し何かを考え込むような仕草をしたが、直に顔を上げて目の前の物体に掛けられた白い布を剥がした。
「おぉ!」
ウルフウッドは思わず感嘆の声を上げた。無理もない。
あれだけひどい銃痕の後があったパニッシャーのボディがきれいに平らになっているのである。
そして、もっとも破損のひどかったマガジンの外殻もきれいに修理されている。
「まさか、ここまで完璧に直せるとはおもわへんかったで」
ここでコルベールが「コホン」と咳払いをした。
「確かにウルフウッドくん、君の危惧していた通り、現在の我々の技術でこの武器を作り出すことは出来ないのです。
その原因は二つあります。一つは今の錬金でこれほどの素材を均質につくりだせないこと。
そしてもう一つは精密さを要求される部品の加工が出来ないことです」
コルベールはどこか得意げにパニッシャーの周りを歩き始める。
「ですが、この場合は運がよかった。外殻の破損はひどかったですが、内部の精密さを要求される駆動部分は無傷でした。
そして、さらに運のいいことにこの武器は左右対称です。外殻の補強にはそれを利用させてもらいました」
「と、いうと?」
「錬金を応用して外殻を半分づつに分けて、それを破損している場所の補修に使用したのです。
幸い、外骨格はそんなに加工精度を必要とされませんでしたからね。
ちなみにこの武器についていた傷跡も錬金を応用すれば簡単に元通りに出来ました」
ウルフウッドは感心の声を上げた。こういった武器に最も求められるものは破壊力以前に信頼性である。
いくら性能がよくても簡単に壊れてしまったら元も子もない。その点において最強の個人武装といわれるパニッシャーは非常に優秀であった。
「まぁ、見た目はひどかったですけど、実際の破損はそこまでひどくはなかったということですよ」
「あぁ、ほんまありがとうな、センセ。けど、その修理方法やったら、外装の厚みは半分になってしまうんちゃうか?」
「ええ。残念ながら。しかし心配はご無用!
なにせ我々にもメイジとしての意地がありますからな。その武器の外殻には固定化の魔法を掛けさせていただきました」
「固定化?」
「ええーとですな。わかりやすく言うとこの間の宝物庫の壁にかかっていた魔法ですよ。物質の安定性を上げるのです。
一応四属性全ての固定化を行いましたから、ちょっとやそっとの魔法や衝撃じゃびくともしないわけです」
コルベールは大きく胸を張る。頼まれてもいないのに、こういう細かいところまで気の利いた作業をするのが彼の彼たる所以だった。
しえん
607 :
虚無と狼の牙:2008/05/05(月) 20:19:04 ID:9lRVYCt+
「なるほど、そりゃ心強いで!」
ウルフウッドは思わずコルベールの手を取り、それをぶんぶんと振り回す。最初は満面の笑みで応えていたコルベールであったが、やがて表情を少し曇らせた。
「しかしですな。そういう応急処置で本体を直すことは出来たのですが、肝心の弾丸の方が……」
「あっ……」
ここでウルフウッドもその手を止めた。
「現在の私たちの技術ではこの弾丸を作り出すことは出来ないのです。
それに今回は騙し騙し直しましたが、このパニッシャーという武器を一から作る技術もありませんし」
コルベールは大きく肩を落とした。
「我々の世界は如何せん魔法偏重でして、誰もこういった技術に目を向けようとしないのです」
「センセ……」
「ウルフウッドくん。肝心なところで力になれなくて申し訳ない。私ではこれが限界なのです」
うなだれるコルベールの肩にウルフウッドは手を置いた。
「そんなことないて。これを直してくれただけでも十分や。銃弾についてはワイ自身がなんとかがんばってみるわ。
それにまたセンセにはなんかあったときに力になってもわな」
「ウルフウッドくん」
そして見つめあう二人。
「……ところでウルフウッドくん。外から誰かが我々を見ている視線をひしひしと感じるのだが」
「……見たらあかん。目ぇ合わせたら終わりやで」
コルベールの小屋の窓に張り付く怪しい中年女性の人影が一つ。食い入るように室内の様子を見ている。
「『ワイは前からセンセイのことが好きやったんや。その太陽に光り輝くような頭、たまらへん』
そこでウルフウッドはコルベールの肩を力強く掴んだ。
『う、ウルフウッド君、いけないよ。私は先生で君は使い魔じゃないか』」
周囲にサイレントの魔法を掛けて、恍惚の表情でアテレコをしているそのお方の名はシュヴルーズ。
彼女こそはまさに貴腐人であった。
#
ウルフウッドは洗濯をしながら大きくため息を付いた。
せっかく直ったパニッシャーも銃弾がないのならただの鈍器だ。
中途半端にうまく目的を達成できたことが、より彼の徒労感を強くしていた。
「はぁー、んでやっているこというたら、じょうちゃんのパンツ洗いかい」
ぶつぶつと文句を言いながらも律儀にまだパンツを洗っているウルフウッド。
一応働かざるもの食うべからずの信念を持っているので、部屋に止めてもらっている手前とりあえず洗濯くらいはやっているのであった。
(腹立つからパンツのゴムでも切ったろか)
そんなことを思いながら洗濯の終わったパンツをカゴに投げ入れると、懐から弾丸を取り出した。それを太陽にすかすように目の上に掲げる。
これさえあれば。そんなに作り出すのはむつかしいものなのだろうか。
元いた世界では良くも悪くも銃社会であったので、弾薬の類に困ることはなかった。それこそパンやガソリンと同レベルで流通していたのである。
「あ、ウルフウッドさん」
「おう」
後ろから声を掛けられた。ウルフウッドが振り向くと、同じように洗濯物を抱えたシエスタが立っていた。
「おはようございます」
「おはようさん」
「あれ?」
シエスタがウルフウッドの手に持ってた弾丸に気が付いた。
「ウルフウッドさん、なんで竜の牙なんて持っているんですか?」
「え、竜の牙?」
「それです、竜の牙」
そう言ってシエスタはウルフウッドの手の中の弾丸を指差す。
608 :
虚無と狼の牙:2008/05/05(月) 20:20:08 ID:9lRVYCt+
「いや、これは竜の牙なんかやなくて――ってじょうちゃん、これを見たことあるんか!」
「え、ええ」
突然大声を出したウルフウッドをシエスタは不思議そうな目で見つめている。
「だって、それ私の故郷の村の特産品ですもの。ウルフウッドさんは私の故郷に行ったことがあるんですか?」
「いや、行ったことはない。なんちゅーか、これはもらいもんやねん。っちゅうか、これじょうちゃんとこの村で作られているんか?」
「ええ。そうです。うちのひいおじいちゃんが作っていたそうで。
なんでも銃の弾丸だって言って作っていたらしいんですけど、そんな弾を使う銃なんて見たことありませんよね?
で、結局ひいおじいちゃん、それをいっぱい作っちゃって。
私たち家族はそれの処分に困って、仕方がないのでそれを竜の牙と言ってお土産で売っているんですよ」
それから「あまり売れませんけど」と言ってシエスタは笑った。
「その話はほんまか!」
「え、えぇ。っていうか、あの、その……」
ウルフウッドはシエスタの両肩をわしづかみにしていた。
突然のウルフウッドの行動にシエスタの顔が見る見る赤くなっていく。
「じょうちゃん、じょうちゃんの家に行ったらそれがぎょうさんあるんやな?」
「え、あ、はい。その詳しい話なら父が知っているかと」
「じょうちゃんの家はどこにあるねん?」
「え、っと、私の故郷は、タルブという町です」
「じょうちゃん!」
「あ、は、はい!」
「じょうちゃんの実家に案内して親父さんに会わせてくれ!」
ウルフウッドはシエスタの顔に自分の顔を触れんばかりに近づけて、そう叫ぶようにお願いした。
609 :
虚無と狼の牙:2008/05/05(月) 20:21:13 ID:9lRVYCt+
$
授業を終えたコルベールが教室の外へ出ると、見慣れない人物が待っていた。
「よう、センセ」
「ウルフウッドくん。めずらしいですね、君がこんなところにいるなんて」
「そんなんはどうでもええねん。そんなことよりも見つけたで」
ウルフウッドは人差し指を立てて何かを企んでいる顔でコルベールに近づいてくる。
「見つけた、とは?」
「例の弾や。ほら、メイドのおじょうちゃんおるやろ? なんかあの子の実家で同じようなもんを作ってるらしいねん。
これは行ってみる価値があると思わへんか?」
「はぁ」
メイドのじょうちゃんと言われてもコルベールには誰のことかわからない。
そもそも、この学院で働いているメイドの名前など、貴族はほとんど知らないのだ。
「で、それはどこなのですか?」
「なんでもタルブいう町らしいで」
「タルブですか!」
その言葉にコルベールが食いついた。
「なんや、そこ有名なんか?」
「ええ、まぁ。そこには竜の伝説があるのですよ」
「竜の伝説?」
「ええ。なんでも今から百年くらい前に竜に乗った人物がその町に現れたという。
今でもその町にはその竜の亡骸が安置されているそうです」
「竜、ねえ」
興奮し始めたコルベールに対してウルフウッドは冷めていた。竜などと言われても彼には実感が湧かない。
「その竜はなんでも地を馬よりも速く走り、その力は馬の比ではなかったと聞きます。
ただ、その実際を見たというのが如何せん百年前の話ですからね。信憑性は薄いですが」
「へー」
ウルフウッドは気のなさそうな返事を返した。
現実主義者の彼にとってそういう伝説などの類は興味をそそられるものではないのだ。
「ただ。もしもの可能性でしかないのですが、それらの伝説が事実で、そして君の銃の弾丸がそこで作られていたとしたなら――
もしかしたら、それらは君のいた世界からもたらされたものかもしれません」
「なんやて?」
ここで俄然ウルフウッドの目が輝き始める。
「なかなかに面白そうなことになってきましたね。
私も近いうちにその竜の亡骸を見てみたいと思っておりましたところです。ぜひとも参りましょう!」
「よし。そうと決まればさっそく行くで!」
ウルフウッドとコルベールはハイタッチを交わした。
その姿がまたいらぬ誤解を助長したのだが、それはまた別の話である。
610 :
虚無と狼の牙:2008/05/05(月) 20:22:16 ID:9lRVYCt+
トリステイン魔法学院を出て馬車で三日。ウルフウッド、コルベール、シエスタの一行はタルブの村にたどり着いた。
コルベールはオスマンの権限により、ウルフウッドの手伝いであるといえば簡単に休暇を取ることが出来た。
また、シエスタに関しても同様であった。よって、彼らはその日のうちに出発したのである。
「これがタルブの村か」
ウルフウッドが感心した声を上げた。
「ええ、そうです。とてもきれいな場所でしょ」
とシエスタは微笑みながら言った。そして、隣のもう一人の男に目をやる。
「いやー、絶景ですなぁ」
ウルフウッドと二人きりだと思ってドキドキしていたのになんでこんなハゲがいるのだろうか。
空気を読め、と。絶景なのは光り輝く快晴の空の下のお前の頭だよ、と。
そんなシエスタの心の中を知ることもなく、コルベールはご機嫌であった。
「で、これからどうしましょうか? 私としてはまず竜の亡骸を見たいのですが」
何しきってんだ、このハゲ、とシエスタは思った。
「そやな。ワイも先にそれを見てみたいわ」
「ええ。わかりました。竜の亡骸は近くの寺院に置いてあります。早速案内しますわ」
シエスタは満面の笑みで応えた。
「なんちゅうこっちゃ」
シエスタに案内された竜の亡骸の前でウルフウッドは呆然としていた。
「変わった形をしていますな。しかし、この精巧な部品群は」
そう言ってコルベールはウルフウッドをちらりと見る。
「あぁ、間違いない。これはそうや」
ウルフウッドは竜の亡骸を調べるように撫でながら、息を吐くように答えた。
「あの、どうかしました?」
状況を飲み込めないシエスタが不思議そうな声を上げた。
「これは竜なんかやない。機械や」
「機械?」
ウルフウッドの言葉をシエスタは繰り返した。
「見たところ、大きな傷とかもない。たぶん動かへんのは燃料がないから。ガソリンさえ入れば動くはずやで」
「そのガソリンとは?」
コルベールがウルフウッドの言葉に突っ込んだ。
「こいつを動かすために必要な、可燃性の液体やな」
「ひょっとして、それは竜の血のことですか?」
「竜の血?」
「ええ。ちょっと待っていてくださいね」
コルベールは馬車に走り寄ると、自分の荷物から樽のようなものを持ち出してきた。
「これです」
ウルフウッドは渡された樽の中の液体の匂いを嗅いでみる。
「これは……ガソリンや」
「やはりそうでしたか!」
コルベールが嬉しそうな声を上げた。
「いやはやなんという。これで苦労した練成した甲斐があったというものですぞ。
ということは、この竜はこの竜の血、えーとがそりんですか? を入れると動きはじめるわけですな!」
「そやけど、ちょっと待ってくれ」
興奮し始めたコルベールをウルフウッドは制した。
「おじょうちゃん、これが一体どういった経緯で現れたんか、説明してくれへんか」
シエスタは彼らのやり取りには付いていけずにぽかんとしていたが、
「何でもうちのひいおじいちゃんはそれに乗ってやって来たとかいう話です。
えっと、あの詳しいことならうちの父が詳しいと思いますけど……」
「わかった。早速で悪いけど、その人らんとこに案内してくれ」
シエスタは不思議そうな顔をしたままではあったが、こくこくと頷いた。
ウルフウッドの両手は震えていた。もしかしたら、ここに砂の星とこの世界を繋ぐヒントがあるかもしれない、と。
611 :
虚無と狼の牙:2008/05/05(月) 20:23:34 ID:9lRVYCt+
唐突に帰ってきたシエスタとくっついてきたウルフウッドとコルベールにシエスタの家族は驚いたものの、快く彼らを迎えてくれた。
「これがうちにある竜の牙全部だね」
「なんと」
ウルフウッドは感心した声を上げた。例の銃弾が千発近く箱詰めにされてある。
「なんでもうちのおじいさんが必死に『銃が必要だ』って言って作ったらしいんだけどね。
けど、そんな弾丸を使う銃なんてないんだ」
シエスタの父はそう言って苦笑いをした。
「なんでも、例の竜に乗っているときにオーク鬼にでも襲われたらしくてね。
そのときに銃弾がなくなって、九死に一生を得るように、命からがらこの村に逃げ込んできたと話したそうだよ。
それで、そんなよくわからない銃弾みたいなものをいっぱい作ったらしいんだ。『自分はガンスミスだ』とか言ってね」
シエスタ父はそれから家の奥へ行くと、何かを手に持って戻って来た。
「それは!」
その手に持ったモノにウルフウッドが食いつく。
「これがその弾丸を打ち出す銃らしい。壊れちゃっているけどね。
うちのじーさんは自分で銃も作ろうとしたけれども、強度のある金属と満足な加工精度が得られなかったそうで、結局それは作れなかったそうだ」
ウルフウッドはその壊れた銃を手に取った。銃身が大きな力で曲げられている。
しかし、見間違うはずもない。これはあの砂の星のライフルだ。
「そのじーさんは他になんか言うてへんかったか?」
「他っていってもなぁ。
あぁ、そうだ。自分は砂漠の星をあの竜に乗って水を求めて旅をしていたらここにたどり着いたと言ったそうだ。
つくづく不思議なじいさんだったよ」
コルベールとウルフウッドは互いの顔を見合わせる。いたのだ、ウルフウッド以外にもこの世界へやって来た砂の星の住人が。
「あと、その銃弾を全部売ってくれへんか?」
「え?」
その言葉にシエスタの一家は目を丸くした。
今まで使い道がなかったから適当に竜の牙などと名づけて売ろうとしていたものである。
そんなものを千発全部買い取ろうとする奴がいるとは思わなかった。
「それにあの竜の亡骸。あれも欲しい。譲ってもらえへんやろか」
ウルフウッドの頼みにシエスタ父は目を輝かせた。ご先祖様が作ったよくわからない不良在庫を買い取ってくれるというのである。
この先こんなチャンスは二度と巡ってこないだろう。
「よし! 竜の亡骸はただであげよう」
「お、ほんまか!」
ウルフウッドとついでにコルベールの表情も輝く。
612 :
虚無と狼の牙:2008/05/05(月) 20:24:23 ID:9lRVYCt+
「お父さん」
シエスタがそんな父の袖を引っ張る。
「いいじゃないか。あんなものうちが持っていたところで埃をかぶるだけなんだし。かと言って捨てるに捨てられないし。
というわけでウルフウッド君、竜の亡骸はタダでいいのだが、この銃弾の代金としてこれはこれで四百エキュー頂こう」
「四百エキュー?」
「そ、そんな大金彼は持っていませんぞ!」
「お父さん!」
今度はシエスタが父をたしなめた。
「だって、ただというわけにはいかないだろう。一応これにだって元はかかっているんだから」
「確かにそうだけど……」
「大丈夫だ、娘よ」
「え?」
ここでシエスタ父はシエスタに耳打ちを始めた。
「この代金をお前が立て替えたということにして、お前が彼から代金を受け取ればいい。
どちらにしろあんなものを買い取ろうなんて物好きは金輪際現れるかどうかわからんのだ。
ここできっちり彼に買って貰う必要がある」
「けど、そんなお金どうするのよ」
「大丈夫、いい案がある」
コホンと咳払いをすると、シエスタ父はウルフウッドのほうを向いた。
「しかし、ウルフウッド君。そんなお金をいきなり工面しろと言われても難しいだろう。
だから、こちらから君に仕事を紹介しようと思う」
「仕事?」
「そうだ。ちょうどトリステインの城下町で親戚が居酒屋をやっている。
そこをしばらく手伝ってもらってお金を稼ぐというのはどうかね」
「はぁ」
ウルフウッドは内心変なことになってしまったと思ったが、どちらにしても銃弾が必要なのには変わりはない。
それに一千発の銃弾の代金くらいなら一ヶ月も働けば返せるだろう。
この世界の貨幣価値にまだ疎い彼は、元いた世界の価値観でそう甘い見通しを立てた。
「なんかようわからへんけど、じゃあそういうことで」
そしてウルフウッドはおのれのオカマ運の悪さを呪うことになる。
シエスタ黒いww
614 :
虚無と狼の牙:2008/05/05(月) 20:25:37 ID:9lRVYCt+
以上で投下終了です。
長文失礼しました。
GJGJ〜!
ギャグシーンがトライガンそのままで脳内再生されるw
オカマ運w
乙!&GJ!
シュヴルーズ何やってんのw
乙であります
投下乙です。
居酒屋に楽師で中谷さんのそっくりさんとか、いたら怖いw
乙。まさかこの世界にあの最強オカマは来てないだろうなw
>>619 変わりにクレオパトラ・ダンディが出ます(嘘
乙です
ガンスミスってヴァッシュの銃も整備できるあの人かな
ルイズの性格だと同じ体型で魔法が使える人とか、同じように魔法が使えなくて体型のいい人とかだとどうなるんだろう。
やっぱり相当ひがむのかwww
ロボこみの鈴木ロボ子もメカ沢みたいになるんでしょうか?
最終回で復活する前のマジシャイン召喚。最初は蛙ですが虚無の主がキスすると……。
契約を切るにはルイズを一人前の魔法使いにしなければならず、そうしないとトラベリオンでも帰れない(戻ってきちゃう)ので、主を魔法使いにする為家庭教師に。
>>622 タバサに対して特に含むところは無いようだが?
戦隊ものなら前年の青い犬署長もいいな
強くてモフモフという最高の存在
タバサはゼロ魔本編では当初キュルケ以外と人付き合いが皆無だし。
投下乙
シエスタの腹黒っぷりにワロタ
>>620 さあ、とっとと次世代エルフのスタンダードを確立する作業に戻るんだ
ヴィンランド・サガからアシェラッドを召喚。
帰れないとわかるとルイズを自分に相応しい主にするために
試練を与えてゆきそう。
>>622 同じ体型で魔法が使えるといえばリナくらいしか思い浮かばんw
魔法が使えないキャラだと…体格はどうかは忘れたがエルナだな。
>>625 しかし署長誘拐の罪でルイズに対してジャッジメントターイム。
扱い方によっては本当にデリート許可が下りたり下りなかったり。
>>592 皆無なわけがありません
やつはこっちにネバーランドにきてからすさまじい魔力と未来すら見通す力をもっております
召喚するならまだナイヅおじさんのほうがよさそうだ
出来損ないとして命奪われそうになったことあるし
ルイズに共感し支えてくれそうだ
>同じ体型で魔法が使えるといえば
エヴァンジェリン様を忘れたか
まあネギまとのクロスには興味無いけど
>>628 エルフはゼロ魔世界には呼びにくいよね。
スティンガー教官はマジックアイテムが無いと弱いからパワーバランス的には良い感じなんだけど。
>>633 アキラのままだとまずいよね
反発しまくりで手に負えないかも
>>636 アキラだと売り言葉買い言葉で険悪間違いないだろうな
だからこそ悟りでも開いたのかとも言われたブレイジング仕様のおじさんのつもりだったんだけどね
ただ彼の異界の魂とガンダ、デルフの相性がよすぎるんだよな
>>637 相性がいいっていうか天然のガンダールヴなんだよね
彼の異能力は
639 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/05(月) 23:25:39 ID:tfFT/3VG
>>630 魔法が使えないキャラだけど、エルナには大小封魔剣とミニスカ連続蹴りの「リミット技」があるしww
スノーがミョズ仕様でルイズに、ヒロとジャドウがキュルケとタバサに。
ジョゼフの所にはガンダ仕様のウェイブで、教皇の所にはヴィン仕様のシフォン。
んでテファの所には憚られるものとしてヘルガイアが・・・。
誰か書いてくんないかなぁ・・・。
>>640 . .... ..: : :: :: ::: :::::: ::::::::::: * 。+ ゚ + ・
∧ ∧. _::::。・._、_ ゚ ・ 君ががんばれば全て解決さ!!
/:彡ミ゛ヽ;)(m,_)‐-(<_,` )-、 *
/ :::/:: ヽ、ヽ、 ::iー-、 .i ゚ +
/ :::/;;: ヽ ヽ ::l ゝ ,n _i l
 ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ ̄ ̄E_ )__ノ ̄
ヒロとジャドウは呼ばれた時期によるがイキナリ殺し合い始めてもおかしくないな。
特にジャドウは精神的に不安定な状態だったら、小雪ちゃんがいないと手がつけられん。
ジャドウはリトルスノーとセットだろjk
>>630 いや、ビジュアル的にリナが勝ってるだろう・・・(-.-;)
>>631 ゼロ魔世界に逃亡潜伏した凶悪犯の探索のため自主的に召喚に応じたボスというのはどうか
実はタルブ村は宇宙警察の派出所で、地下に隠されているのはデカベースだったり
>>622 某未来人「ここ…どこですかぁ〜?何であたし連れてこられたんですかぁ?」
ルイズ「…特盛りっ!?」
とっさにこんなやりとりが脳裏に浮かんだ
『虚無と狼の牙』でコルベール先生が出るたびに脳内で内藤絵に変換されるから噴く。
なんだ、このかっこいいハゲ。
>>646 一瞬でその場の男全員の心を掴んでしまうだろうな。
あの世界では制服萌えが通用するみたいだからな。
ん? 制服萌えが通用する・・・・・・
何か新しいネタが出来そうな気がしてきた。
>>647 ハルヒから「常識」というストッパーが飛んで
ハルケギニアがえらいことになりそう。
>>647 平民平民呼ばれるのにぶち切れ始めて、夜な夜な学院を青い巨人が粉砕してたりして
>>644 乳平均がC〜Dの世界だからな!
Bで貧乳、Aで虚乳なのは仕方ないだろう。
ハルケギニアがハルヒゲニアになるんですね、解ります。
>>648 まあ、そうなるとカバー裏では凄い事になる訳だが。
頭が電球と化したり眼帯つけたりとかそんな感じで。
>>635 NWSSスレの方にも、スリンガーをスティンガーと書いてる奴がいたけど、ひょっとして同一人物?
エイリアンジェットに変形するメガトロン様召喚をですね…
駄目だ 事情説明されたら確実にブチ切れてバッドエンドだ
押忍闘え応援団で書こうとしたが挫折した
>>656 ディセプティコン氏がブリミルに召喚させて大惨事になってたな。
三人の使い魔が能力を使えなくなる程の重傷を負い、ブリミル自身も捨て身の封印を施す死闘だった。
ザンボット3からキングビアルと神ファミリー召喚
あのノリを再現すると凄惨に鬱過ぎて避難所行きになりそうだ
>>660 星形のあざができるのはシエスタあたり?
>>661 その気は無いと思うが
よほど上手くやらないと問答無用でヘイト扱いされて
叩かれまくると思う。
どーせジョゼフの相方はブッチャーだなんてオチだろ?
極楽大作戦より冥子ちゃん召喚、なんてのが頭に浮かんだ
ルーンは右手だろうか
五分後から投下開始します。オーケィ?
ポスタル・デュード召喚、とか思い浮かんだ。
クロード・スピードよりヤバそうだ。いろんな意味で。
オーケィ
支援
ベルセルク・ゼロさんの後に投下予約させてもらいます
獣の数字支援
支援。
支援
支援
時間はおよそ午前の10時。
昨夜体が鈍らぬよう剣を振った後、ルイズの部屋の壁に背を預け、朝日が顔を出す頃にようやく眠りについたガッツだったが、がさごそと部屋を漁る音に目を覚ました。
音のするほうに目を向けると、この時間には授業に出ているはずのルイズがタンスを漁っている。
「……何してんだ?」
ルイズの顔がぐりんとガッツのほうを向く。ルイズは一瞬、起こしてしまったかとバツの悪そうな顔をしたが、すぐに興奮した面持ちになった。
「姫殿下がこの魔法学院にいらっしゃるのよ!!」
ルイズはタンスの奥からパリッと折り畳まれた制服一式を取り出した。
どうやらいつも着ているものより質のいい、こういった機会用の余所行きらしい。
「姫殿下ってお姫様のこと?」
興味をそそられたらしいパックが口をはさんできた。
「そう、トリステインが誇る美貌の王女、アンリエッタ様がいらっしゃるの!!」
「アンリエッタってあのいかにも箱入りって感じのお嬢ちゃんか? へん、そんな騒ぐほどのもんかねえ?」
今度はガッツのすぐ横に立てかけられたデルフがカタカタと鞘を鳴らす。
「姫様の悪口は許さないわよさびさび! まあ、錆びた鉄くずには姫様の気品はわからなくてもしょうがないけどね!!」
「ああわからんね。なんたっておりゃ鉄くずだからね。目の前にいる娘さんも偉い貴族のご息女らしけど、ケツの青い小娘にしか見えないね」
「なんですってこのナマクラ!」
「加えてヒス持ち、もう目もあてれんね」
「こらこらケンカしないの」
パックが火花を散らすルイズとデルフの間に入り二人を、正確には一人と一本をなだめにかかった。
ふん、と鼻をならしてルイズは開きっぱなしだった引き出しに手をかける。
「あ……」
その時、リボンで飾り付けされた包みが目に入った。トリステインの城下町で購入したガッツへのプレゼントだ。
結局なんだか機会に恵まれず、今まで渡すことが出来ずにここに仕舞われたままになっていた。
ルイズは唇をぎゅっと結んだ。
何も特別なことはない。これは主人に貢献した使い魔への労いで、それ以上の意味なんて決して無い。無いったら無い。無いんだってば。
だから、何もこんな緊張することはない。いい機会、それは今。さっと渡してしまって、それで終わり。
何故かこみ上げてくる恥ずかしさをぐっと噛み殺して、ルイズは包みに手を伸ばした。
「ルイズ」
「ッ!! な、なな、な、何ッ!?」
反射的にバンッ!と音を立てて引き出しを閉める。
振り返るとガッツがドアノブに手を伸ばしていた。
「ど、どこいくの?」
「コルベールの所だ。前から一度話をしたいと言われててな。今日は授業ってのはねぇんだろ? いい機会だ。ちょっと行ってくる」
「へ、部屋わかるの?」
「一応道順は聞いた。何とかなるだろ」
「あ、ちょっと!」
バタン、とドアが音を立てて閉まる。ルイズは頬を膨らませた。
「もう!! 主人の許可も無しに勝手に動いて!! 使い魔としてなっちゃいないわ!!」
ルイズは顔を赤くして怒りながらブラウスに手をかけ、ボタンを外していく。
「ルイズぅ〜。あれ一体いつになったら渡すのさ」
「うるさいッ!!」
パックの言葉に噛み付かんばかりに反応して、ルイズは乱暴にブラウスを脱ぎ捨てた。
「包みを渡すだけのことが何で出来ないのかねぇ。今までも渡そうとするたんびに顔を赤くして、もじもじして、結局渡せてないんだもんな。まったく、人間の娘っ子が考えることは俺にゃわからんね。摩訶不思議だね」
「うるさい、うるさい、うるさ〜いッ!!!! 黙んなさいよこのオンボロ剣!!」
ルイズは壁に立てかけられたデルフを思い切り蹴り上げた。
「〜〜〜〜ッ!!」
「そりゃあ痛ぇだろ。オンボロったっておりゃ鉄の塊だからね」
「やれやれ……」
パックは涙目になって足を押さえてうずくまるルイズに飛びよって、その羽から光り輝くりん粉を振り撒くのであった。
「いやぁよく来てくださいました」
アポ無しで訪ねてきたガッツを、コルベールは快く部屋の中に招き入れた。
ガッツはルイズやキュルケの部屋とは随分趣が異なるその部屋に軽く目を走らせる。部屋中に何だかよくわからないガラクタが散らばっていて、机の上も書物や羊皮紙が乱雑に積み上げられている。
どうやらコルベールはあまり整理整頓に頓着しないタイプらしい。
机の上に開きっぱなしになった本のページに、ガッツの首筋に刻まれた『生贄の烙印』が描かれているのが目に入った。
「どうぞその椅子にお座りください」
勧められた椅子にガッツが腰掛けると、目の前のテーブルにティーカップが置かれた。
コルベールが所持していたというにはいささか意外な、薔薇の柄が刻まれた淑やかな雰囲気のカップだ。
「粗茶ですが」
ティーカップに紅茶が注がれる。十分に熱を持った琥珀色の液体から、芳しい香りと白い湯気が立ち昇る。
コルベールの一連の所作は、この部屋の住人には似つかわしくなく、優雅であった。ガッツはそんなコルベールに実に怪訝な目を向けると、ティーカップを手に取った。
一口口をつけ、
(趣味じゃねぇな)
と、あっさりカップを戻す。
「何か新しいことはわかったか?」
本題を切り出す。コルベールはオスマンの命により『烙印』が記載された古文書の解読に当たっているはずだった。
今のところ、帰るための手がかりを掴むには、このコルベールに頑張ってもらうしかない。
コルベールはぽりぽりと額を掻いた。
「お恥ずかしい話ですが、どうにも行き詰っておりまして。それで、私も少しは参考になればと、あなた自身からその刻印の話を伺いたいのです」
なるほど、確かに烙印の意味を知っているのといないのでは、解読の効率は天と地ほどの差があるだろう。烙印の意味さえ知っておけば、未知の言語とはいえ、単語の意味をある程度推測することが可能になるからだ。
ガッツはなるべく事細かに自分が烙印について知っていることをコルベールに伝えた。
烙印のことを語る上で、あまり触れたくない過去についても多少は語らなければならなかったが、背に腹はかえられない。
ガッツの話を聞き終えたコルベールは顎を押さえてうむむ、と呻った。
「ゴッドハンド…そして、使徒……? いやはや、俄かには信じられぬ話ですな。極めつけに……」
コルベールの目が鋭くガッツを捉える。
「君が異世界からの来訪者……とはね」
「嘘は言っちゃいねえぜ」
「いえ、疑ってはいませんよ。あなたの話が本当なら、この書物もおそらく異世界の書物。見たこともない文字で書かれていたのも納得いきますからね……ただ……」
コルベールはふるふると首を振るとため息をつき、苦笑いを浮かべた。
「異世界のものとなると、これは解読がさらに困難に思えてきましたね」
「すまねえな」
「いえいえ、お気になさらず。私自身、楽しんでおりますから」
そんなコルベールの言葉に、ガッツも笑みを浮かべた。
すっかり冷めてしまった紅茶を一息で飲み干して、立ち上がる。
「それじゃあまた何かわかったら教えてくれ」
「ええ。あ、ガッツ君」
コルベールはドアノブに手をかけたガッツを呼び止める。
「なんだ?」
「ディテクト・マジックという魔法がありましてね。対象としたものの魔力を感知する魔法なのですが……実は前に一度、その烙印にその魔法をかけています。その時はまったくの無反応だったのですが……死霊を呼び寄せるというその力…今は、どうなっています?」
「この世界に来てからは一度も出てきちゃいねえ」
再びコルベールは顎を押さえ、考え込んだ。
「既にその烙印は効力を失っているのか、ただこの世界では影響力を持たないだけなのか……願わくば前者であれと思います」
窓から差し込む光を背中に受けて、コルベールはガッツを真っ直ぐ見据え、優しげに目を細めた。
そんなコルベールに、ガッツはふっ、と笑みを浮かべた。
「ありがとよ」
短く言って、ドアノブに手をかけて、最後にもう一度振り返る。
「俺からもひとつ聞いていいか?」
「なんでしょう?」
ガッツの視線がコルベールの頭部に向けられる。
ガッツは呆れ気味に口を開いた。
「何なんだその頭は?」
ガッツの問いに首をかしげるコルベール。その頭で、馬鹿でかいカツラが揺れていた。
正午を過ぎた頃、魔法学院の正門にトリステイン魔法学院の全生徒、全職員が集結していた。予定ではあと三十分もしないうちに王女一行が到着することになっている。
コルベールを筆頭とする職員たちが熱心に生徒の列を整え、生徒たちも自分の服に乱れがないか、杖にゴミが付着していないかと入念にチェックをしていた。
だが、そんな周囲の状況を冷めた目で見ている者たちもいくらかいた。
他国の出身でアンリエッタにさほど興味を持たないキュルケ、タバサなどがその類である。
二人にとってはこんな式典などつまらないだけだ。こんな時でも本を手放さないタバサなど、時間の無駄だとすら思っていることだろう。
キュルケは自分の少し前で馬鹿みたいにはしゃぐギーシュを冷めた目で見つめた後、ため息をついた。
「ねえルイズ。ダーリンはどこに行っちゃったのよう」
あまりにも退屈なので、後ろにいるルイズに声をかける。
「うるさいわね! こっちが聞きたいわよ!!」
ルイズはそんなキュルケに向かって目を剥いて怒鳴った。
そう、今この場にガッツの姿は無い。もちろんルイズはガッツを連れてこようとしたのだが、ガッツは「興味がない」の一言でルイズの制止も聞かず、どこかへ行ってしまったのである。
湿布を貼った右足の向こう脛がずきずき痛むのもあって、ルイズは随分ご機嫌ナナメだった。
「やあねぇ、ちょっと尋ねただけで怒鳴るなんて。本当にトリステインの女って器量も胸もちっちゃいのね」
「なぁんですってぇ!! 淫乱不徳のゲルマニア女には言われたくないわよ!!」
「ほんとやだやだ。声と態度ばっかり大きくて。ヴァリエールの娘からしてこれじゃあ王女様ってのも底が知れるわね!」
「もう一度言ってみなさいタレ乳!!」
「言ったわねゼロ乳!!」
「ほらほらしゅーりょーしゅーりょー。ものっすごい見られてるよ二人とも」
ヒートアップする二人の間にひらひらとパックが舞い降りる。
パックの言葉の通り、周囲の視線がルイズとキュルケに集中していた。
遠くでは『風』属性の教師を務めているミスタ・ギトーが物凄い形相でこちらを睨みつけている。
キュルケもギトーを不機嫌そうに睨みつけて、ふん、と鼻を鳴らした。
「あのおっちゃんと何かあったの?」
「別に何も無いわよ」
パックの問いに、キュルケは何でもない様に手をひらつかせる。
ルイズが目を細めてキュルケを嘲るように肩をすくめた。
「何言ってんのよ。無様に吹っ飛ばされたくせに」
「何か言ったかしらルイズ?」
「いいえ別に?」
ガラガラピシャーン!!
再びキュルケとルイズの間に雷鳴が響き渡った。
「あーもーやめときなって! ほらもうめっちゃ見られてんじゃんかあ!!」
刺すような教師たちの視線にさらされて、パックはこれはたまらないと二人を止める。
普段ならおもしろがって煽るところだが、これが姫様来訪効果なのか、周囲の雰囲気の尖り様は凄まじく、とてもそんな気にならなかった。
支援
我関せずと本を読み続けていたタバサが、その手に持った本をぱたりと閉じる。
まるでそれを合図にしたかのように、そこにいる全ての者達は直立不動の姿勢をとった。
トリステイン魔法学院から城下町まで敷き詰められた石畳の上を通り、煌びやかに飾り付けられた馬車が正門に近づいてくる。馬車にはトリステイン王家の紋章が掛けられている。その馬車を曳く馬の額からは一本の角が生えている。伝説の幻獣ユニコーンだ。
馬車の周囲を勇壮な騎士団が取り囲み、馬車の上空を鷲の頭と獅子の体を持つ幻獣グリフォンに跨ったグリフォン隊が飛び回る。
トリステイン王女、アンリエッタのご到着であった。
馬車から姿を現したアンリエッタに生徒たちの歓声が飛ぶ。
当年とって御年17歳、すらりとした気品ある顔立ちに薄いブルーの瞳を輝かせる彼女は、成程、美貌の王女と称えられるにふさわしい少女であった。
そんな彼女が手を振ると、少年たちは熱狂し、壮年の教師たちですら頬を赤らめた。生徒の中には感激しすぎて腰砕けになる者もいる。
タバサがそちらに冷ややかな目を向けるとその生徒はギーシュだった。
そんなギーシュをさらに冷ややかな、絶対零度の瞳で見つめるモンモランシーの姿も見える。
「修羅場」
タバサはぽつりと呟いた。
「おぉ〜、確かに綺麗なお姫様だね」
パタパタと羽を振り、パックは感心したように声を漏らした。
「そお? あたしのほうが魅力的だわ」
キュルケは自信満々に己の赤髪をかきあげる。
「まあ確かに、色気はキュルケのほうがあるかもね」
「でしょう? 見る目あるわねパック」
(一歩間違えれば痴女だけど)
パックはそんなキュルケに苦笑いを返すとルイズの方に目を向けた。
あれだけ姫様姫様言っていたルイズが静かすぎるのが気になったのだ。
ルイズはぼんやりと何かを見つめている。その口はぽかんとだらしなく開けられていた。
「ルイズ? どしたの? 乙女にあるまじき顔になってるけど?」
パックの言葉にもルイズは反応しない。何事かとパックはルイズの視線を追った。
ルイズの目はアンリエッタを見てはおらず、その視線はもっと上を向いていた。
そこにいたのは一頭の勇壮なグリフォンと、それを駆る羽根帽子を被った精悍な顔つきの騎士だった。長い髪が風に流れて揺れていて、その姿はとても優美なものだった。
キュルケもその男の存在に気づく。男を見てキュルケはすぐにその頬を赤く染めた。
「あら……いい男」
男の名はワルド子爵。若くしてグリフォン隊の隊長を務める、ルイズの婚約者である。
支援
支援とか言いつつ
オマイラ読むのに夢中だな!?
日もとっぷりと暮れて、夜。
夕食を終えたルイズはぼんやりとベッドに座り込んでいた。
「何だか嬢ちゃんの様子がおかしいね。何かあったんかい?」
デルフがカタカタと鞘を鳴らす。そんなデルフの柄に座り込んだパックは肩をすくめた。
「よくわかんない。昼間のお姫様歓迎式典の途中からもうずっとこんななんだ。おーい、ルイズ〜〜」
ルイズの顔の前に飛びよってパックが手を振ってもルイズは何の反応も示さない。
「死んでんじゃないだろね?」
「息はしてるよ。ただ、ホントに心だけどっか行っちゃったみたい」
「今なら何されたって気づかないんじゃないか?」
「今なら何したって気づかないかもね」
パックは何の反応もないのをいいことにルイズの唇をひっぱったり鼻の下で髪の毛を結んだりとやりたい放題しだした。
パックがルイズ自身の髪を使ってルイズの鼻をくすぐりまくっていると部屋のドアが開いた。
「……何やってんだ?」
パックとルイズの様子を見てガッツは呆れたように言った。
パックはルイズの鼻をくすぐるのを止めずにガッツの方を向き直る。
「随分汗かいてるね。また剣振りにいってたの?」
「まぁな」
「そんな殺生な話はねえや相棒!! 俺も連れてってくれよう!!」
「おいルイズ。タオル貸してくれ」
「無視だもの!! ひでえや相棒!!!!」
ガッツが声をかけてもルイズはやっぱりぼんやりしたまま何の反応も返さなかった。
パックがふんっ、と気合いを入れてルイズの髪をその鼻に突っ込む。そこでさすがにルイズは反応した。
「ふあ…? んん…? …ふぁッ! な、何よこれぇ!!」
ようやく自分の顔の惨状に気づいたルイズは涙目で鼻から髪の毛を引っこ抜き、鼻の下で結ばれた髪を解きにかかった。
「あんたがやったの!? パック!!!!」
「違うよ、デルデルがやったんだよ」
「うおぉ!? なんてナチュラルに嘘つきやがるんだこの野郎!!」
自分の名前を出されてびっくりしたデルフは半ばまで鞘から飛び出した。
「剣が髪の毛を結んだり出来るわけないでしょ!! 乙女の髪を弄んで、覚悟は出来てるんでしょうね!!!!」
「だって、あんまりにもルイズが無反応だったからさ。ちょっと心配になってさ」
「それでなんでこんなことになんのよ!! あ、こら、逃げるな!!」
パックを捕まえようと手を伸ばすルイズだが、パックはひらりひらりと見事なまでにその手をかいくぐる。
「エルフ次元流・木の葉の舞。まだまだ未熟じゃのうルイズ」
「キィーーーッ!! ちょこまか動くなこの栗頭!!!!」
目の前で突如始まったいつ終わるとも知れない騒動に、ガッツはやれやれとため息をついた。
この分だと先程の自分の声はルイズには届いていないだろう。もう一度声をかける必要がありそうだ。
「おい、ルイズ」
「ぎゃぁぁあぁあああああ!!!!!!」
突然上げられた金切り声にガッツは思わず耳を押さえ、パックはちっさな脳みそを揺さぶられてぽとりと落ちた。
ガッツの姿に気づいたルイズは思いっ切り自分の顔を両手で押さえていた。
(い、いつから!? いつからいたの!?)
もしかしてさっきの自分の姿を見られたのだろうか。鼻の下で髪を結ばれ、その上鼻の穴に髪の毛を突っ込まれていた先程の自分の姿を!!
最悪、最悪、もう最悪!!
乱暴に枕を掴み、ぼふっと顔を埋める。
ルイズは恥ずかしくてガッツの顔を見ることが出来なかった。
「タオル借りてくぞ」
ガッツはルイズの返事を待たずタンスからタオルを数枚引っ張り出すと再びドアに手をかけた。
「どこ行くのガッツ?」
「水浴びだ」
その言葉を聞いてパックはルイズの方に顔を向ける。ルイズは枕に顔を埋めて突っ伏したままだ。
すっかりルイズがデレ期に入ってるなぁ
バタン、と音を立ててドアが閉まる。
シーンとした静寂が部屋を包む。が、すぐにデルフがその鞘を激しく鳴らし始めた。
「なにやってんだ娘っ子!! 今のはプレゼントを渡す最高のタイミングだったろ!!」
「そうだよルイズ!! 今じゃん! 今のタイミングじゃん!!」
がばっと体を起こしたルイズはそのままの勢いで手に握った枕で思いっ切りパックを叩き落とした。
「誰のせいだと思ってんだこらぁ!!」
「あ、あいむそ〜り〜」
床にのびてピクピク痙攣するパックの上をまたいでルイズはタンスに歩み寄るとその引き出しを開けた。
リボンで飾り付けられた、使い魔への単なる御褒美。なのに何故、渡すのにこんなに苦労しなくてはならないのだろう。
ルイズはその包みを手にとってじっと見つめた。
「ルイズ」
ガチャリと突然ドアが開いてガッツが顔を出した。
「うわぅ!!」
一瞬で包みを戻し、引き出しを叩きつけるように戻す。
(だから何で隠しちゃうのよわたしぃ〜〜!! 今渡しちゃえばよかったじゃないのぉ〜〜!!)
色々混乱しながらガッツの方に向き直る。そこでルイズはふと、おかしいなと思った。
水浴びに行くといった割には、帰ってくるのが早すぎるんじゃない?
そんな風に思いながら部屋に入ってくるガッツに目をやっていたルイズだったが、ガッツの後ろに人影があるのに気づいて目を丸くした。
その人物は真っ黒なフードを目深に被っており、真っ当な人間にはとても見えない。
しかし、フードの陰から覗く青色の瞳と目が合い、ルイズは目を見開いた。
「ま、まさか……」
フードの人物は人差し指をその瑞々しい唇に当てた。しゃべるな、ということらしい。
漆黒のマントの隙間から魔法の杖が姿を現した。フードの人物が短くルーンを唱える。
「ディテクト・マジック?」
フードの人物が頷く。どうやら部屋に盗聴や透視の類の魔術がかかっていないことを確認すると、その人物はフードをとった。
「あっ!」
パックは思わず声を上げていた。
ルイズは驚きの余り声も出ない。
「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ」
トリステインが誇る美貌の王女、アンリエッタがそこにいた。
「姫殿下!!」
ルイズは慌てて膝をつき、頭を垂れた。
ただ一人、事態を掴めていないガッツは突然部屋を訪ねてきた少女を見て首を傾げる。
そんなガッツの首筋で―――――ほんのわずかに烙印が輝きを放っていたことには誰も気づけなかった。
ベルセルク乙
……まさか使徒化ですかお姫様!?
以上、投下終了。
支援してくれた皆様、ありがとうございます。
では引き続き『ゼロと人形遣い』お楽しみください。
お?おおお!?
隠せ〜!!
倉庫にほっぽり込んだアレ隠せ〜!!
ベルセルク氏乙
乙
この場合は太后が使徒か?
なんという引き・・・
アンアンはかなり裏表ありそうな性格してるから、使徒化の引き金は多そうだ
ベルセルク・ゼロさん乙です
>>680 まさしくその通り
それでは25分くらいから投下開始したいと思います
そうか、アンアンがベヘリット所持してるってことはウェールズ死亡が引き金なのか
・・・捧げられるのルイズじゃねーよな?
トリスティン丸ごと捧げるとかヘタするとやらかしそうだもんなあアンアン
乙です
ゾンビ化ウェールズあたりでのアレっぷりを考えると、冗談抜きで「捧げる」と言いかねないよなアンアン
今日は早寝出来そうに無いな
それでは投下開始します
ゼロと人形遣い 10
マルトーの絶叫に反応して、厨房に居た使用人達が慌しく動き出した。
マルトーとリタに話を聞きに行く者。
食堂と繋がる扉から様子をうかがう者。
その誰の表情にも、不安と恐怖が浮かんでいる。
阿柴花と一緒に皿洗いをしていたソリスは、マルトーとリタの声を聞くと一目散に二人の所に走っていった。
すでに二人の周りには人だかりができている。
阿柴花は少し迷ってから、扉の方に歩いていく事にした。
こちらも、結構な人数が集まっている。
やや後ろから覗いてみるが、食堂が広いせいで状況がよくわからない。
金髪のガキが一人立って騒いでいる様だが、その内容までは聞き取ることが出来ない。
近くに、先程紹介されたばかりのコックがいたので話しかけてみた。
「あ〜、えっとウォーケンさん?」
「んっ、なんだアシハナかよ」
名前は間違っていなかったようだ。
「こりゃあ、何の騒ぎなんですかい?」
「なんのって・・・、シエスタが危ないんだよ!マルトーさんの話を聞いてなかったのか!」
「いや。それは聞いてたんですがね。こんなに慌てるような事なんですか?たかだかガキの一人を怒らしたくらいで」
「たかだかって・・、貴族を怒らしたんだぞ。殺されたって文句も言えないじゃないか」
「はぁ、そういうことですか・・・。まぁ、斬り捨て御免ってやつですかねぇ」
ウォーケンは胡散臭そうに阿柴花を見たが、すぐに食堂の方に視線を戻した。
阿柴花は、煙草に伸びかけた手を抑える。
無性に煙草を吸いたくてしょうがないが、なんとか我慢する事ができた。
行き場を無くした手を誤魔化す様に頭を掻いた。
少しの間、食堂のほうを見ていたがため息をひとつする。
いつまでも見ていてもしょうがないので、皿洗いに戻ることにした。
『シエスタには悪いですが、仕事の一環でしょうしね。最悪殺される可能性もあるんでしょうが、運が悪かっただけでしょうよ』
どんな結果になったとしても運しだいだろう。
我ながら外道だなと思いながら振り返った。
その時、計ったようなタイミングでソリスが寄って来た。
その顔には、明確な怒りが刻まれている。
「ソリス、どうでしたか?」
「聞いてくださいよアシハナさん!貴族ったら酷いんですよ!」
「はいはい、聞いてあげますから、もっと落ち着いてくださいよ。せっかくのベッピンさんが台無しじゃないですか」
「へっ!―――いや、ふざけてる場合じゃないんですよ!」
先程とは別の理由で顔を赤くしながらソリスは叫んだ。
支援
しえん
「ははっ、その方が似合ってますよ。それで、どうしたんですかね?」
「もうっ、からかわないでください」
別にからかっている訳でもない。
ソリスの年齢は16,7だろうか。
肩を少し超えるくらいに伸ばされた栗色の髪は、青色のリボンでひとつにまとめてあり、髪が動くたびに見え隠れするうなじはなかなか色っぽい。
顔は美少女と言うほどではないが、髪と同じ栗色のたれ目で愛嬌がある。
胸も平均並でBくらいだろう。
背は高くないが、全体的にバランスの取れた体型をしている。
まあ、阿柴花としてはある程度成熟した女が好みなので、可愛がりはしても手を出すことはない。
迫力のない表情で怒りながら、シエスタの責められている理由を話してくれた。
「へぇ、そんな理由で」
「そうなんですよ。信じられません!」
始めは、シエスタが些細なミスをして、それを責められているのだと思っていた。
だがソリスから聞いた所、シエスタは何のミスもしていないらしい。
それどころか、たんなる貴族の八つ当たりだった。
「くだらない理由ですねぇ」
率直な感想だった。
ただでさえ学校という限られた環境しかも全寮制、そんな状況で二股をしようなどとは呆れるほかない。
本来ならどうでもいい事だが、昨日から溜まっている鬱憤とシエスタへの恩義、この二つと今後展開を天秤に掛けてみようとした。
だが、そんなものは比べるまでも無い。
退屈は大嫌いだし、結局はなるようになれが自分の信条だ。
危なくなったら逃げればいいし、ルイズを盾にしてもかまわないだろう。
それになによりも、いい女は泣くべきではない。
いい女が泣いていいのは、別れの時とベッドの中でと決まっている。
「ありがとさん。まあ、シエスタが戻ってきたらしっかりと慰めてあげなせぇ」
「はい。そうしますね」
「そんじゃあ、アタシは用事ができたんでちょっと行ってきますよ」
「えっ?用事ですか」
不思議そうにしているソリスの頭を軽く撫でてから、
「なに、似合いもしない正義の味方ってやつですよ」
食堂へ扉に歩いていった。
シエスタはアルヴィーズの食堂の、二年生の集まる長テーブルで土下座をしていた。
きっかけは些細な間違いだった。
いや、間違えともいえない事が原因だった。
確かに、今日のシエスタは浮かれていた。
その理由は、一人の男性にあった。
見た目は少し怖いが、飄々としていて、自らの主人にも立ち向かえる。
そんな強さを持ちながら、話をしてみると優しげな感じのする、不思議な相手だった。
貴族であり公爵家ヴァリエールの令嬢ルイズの使い魔として召喚された阿柴花という男性。
一目惚れと言うほどではないが、一目見たときから気になっていた。
阿柴花の事を考えながら、いつも通り給仕の仕事をこなしていた。
すると、すぐそこに座っていた貴族ギーシュ・ド・グラモンのポケットから小瓶が落ちた。
それを失礼の無いように拾ってギーシュに返した。
しかし、ギーシュは自分の物ではないと言ってくる。
確かに落としたのを見たと言い返すと、そのやりとりに気付いた周りの貴族が騒ぎ出した。
その後の展開はよくわからない。
ギーシュの二股がばれ、その相手の貴族に振られ、気が付いたら自分が悪い事にされていた。
理不尽であるが、文句を言うとさらに酷い事をされるかもしれないし、最悪殺されてしまうかもしれない。
周りの貴族が助けてくれるはずが無いし、仲間の使用人たちは無力だ。
シエスタは、ただ嵐が過ぎ去るのを待つように土下座しながら身に覚えの無い謝罪を続けるしかなかった。
ギーシュの叱責の声が止んだ。
やっと終わったのか思った瞬間、急に体が持ち上げられた。
「ひぃ!」
まさか気が済まずに暴力を振るってくるかと思い目を硬く閉じた。
だが痛みはこない。
恐る恐る目を開けると、すぐ近くに阿紫花の顔があった。
「アッ、アシハナさん!」
「やあシエスタ。いつまでもつまんねえ奴の相手をする必要はありませんよ。このガキどもと違ってアンタにはまだ仕事があるでしょうに」
ウィンクをしながら言ってくる。
シエスタが混乱で何も言えないでいると、
「さっさっと仕事に戻りまやしょう。あ〜あっ、こんなに服を汚しちまって」
そう言いながら、軽くスカートはたいてくれた。
そのままその場を去ろうとするが、鋭い声がかかった。
「待ちたまえ!僕に許しも無く勝手に帰ろうとは、平民の癖にいい度胸だね」
阿柴花に無視されるような形になっていたギーシュが、二人を睨みつける。
「そりゃあ、すみませんでしたねぇ。まあ、貴族さまもあんだけ言えば満足したでしょう」
「ふんっ、まあいい。そっちのメイドは反省しただろうから、ここら辺で許してやるとしよう。次からは、気をつけたまえ」
大げさな身振りをしながら言ってきた。
「そりゃあ、ありがたいこって。シエスタ行きやしょう」
「はい・・・」
シエスタは、まだ混乱していたがなんとか返事だけはできた。
そのまま二人が厨房に戻ろうとしたが、
「だが!君は行かせないぞ。」
また大げさに身振りして阿柴花を指差した。
「へぇ、アタシになんか御用ですか」
「さっき聞き流しかけたが、僕たち貴族の事をつまらない奴とはどういうことだね?平民の分際で随分な口を利くじゃないか」
「そりゃあ、すみませんでしたねぇ。生憎と学の無い平民なもんで」
「ふんっ、自分の事をよくわかっているようだね」
「ええ、そうですよ。どうにも貴族様たちと違って嘘で取り繕うのが苦手でねぇ」
その言葉にギーシュの眉が動いた。
「ほう・・・、では君は貴族を侮辱したという事になるが、それでいいんだね?」
「侮辱?よしてくださいよ。アタシは侮辱なんてしませんよ」
「では、さっきの言葉はどういう事だい?」
額に青筋を浮かべながら質問してくる。
「いやねぇ。満足に女も笑わせてやれねぇガキが、あんまりにも惨めだったもんで。別に貴族を馬鹿にしてる訳じゃありませんよ」
いままで阿柴花を睨んでいた周りの貴族達は、その言葉を聞いて爆笑しだした。
自分が笑われる立場になったギーシュは、
「つまり君はこのギーシュ・ド・グラモンを侮辱しているということか!」
叫びながら、自分の杖であるバラの造花を突きつけた。
普通の平民だったならば、それだけで怯えていただろう。
だが阿柴花は気にした様子も無く、
「ギーシュ?アンタの名前はギーシュっていうんですか?」
見当違いなことに驚いているようだ。
その反応に、この平民はやっと自分がグラモン家の者だと気が付いたのだと、ギーシュは勘違いした。
「やっと自分の失態に気が付いたようだね。まあいい、今なら誠心誠意謝れば許してやらなくもない。平民らしく土下座でもして許しを乞うんだね」
この平民はむかつくが、さっさとこの場をお終いにしてモンモランシーとケティを追いかけたい。
内心は焦っていたので、妥協案を出してやる。
だが阿柴花は、
「ギ−シュ・・・ギーシュですか。クックックッ・・・聞けば聞くほど似てますねぇ」
「なに、僕の名前のなにが可笑しいんだ?」
あろう事か笑い始めた。
ギーシュは、自らの家名を笑われたと思い声を荒げた。
操り人形なしでどう切り抜けるのか・・・
期待
「いやなに、大した事じゃありませんよ」
「質問に答えろ!名誉あるグラモン家を笑うとはいい度胸だ!」
「ああっ、違いますよ。苗字のグラモンとかいうんじゃなくて、アンタの名前が知り合いに似てたもんで可笑しくてね」
「僕の名前が?・・・まあいい、気分は悪いがそういうこともあるだろう。だが、そいつも見下げた奴のようだね。君のような男に笑われているなんて」
なんとか矛先は収めた。
しかし、阿紫花ののらりくらりとした態度に我慢できず嫌味を言う。
「確かに尊敬できるような人ではありませんでしたがね。でも、少なくともアンタより勝っていた事がありましたよ」
「なんだと、この僕が平民風情に劣っていることがあることか!」
いまにも切れそうなのを抑えながら、怒りを押し殺して叫ぶ。
「とりあえず女の扱いだけは天と地の差ですよ」
もう限界だった。
食堂全体にギーシュの声が響き渡る。
「決闘だ!!!」
アシハナ性格悪ぃなー(褒め言葉)
ギィのことかwww支援
アシハナらしい性格の悪さが出てるなw支援。
半端な所ですが、今回は以上です
短くて申し訳無いです。あと無駄にオリジナルの平民キャラが多くて申し訳ない。
近い内に決闘編を投下しようと思います
確かにギイとは天地の差があるな
GJ!アシハナかっけえな
アシハナ乙
チンピラっぽいアシハナがいい。
GJ!ついにギーシュとの決闘イベントか!
人形なしでどう戦うのだろうか
人形遣い氏GJ!
アシハナの手元にあるのはマリオネット用の拳銃くらいか。
…充分すぎるな
杖を持ってる手をかすめるようにぶっ放せば一発で決闘終了だな。
もちろん脳天ぶち抜いちゃってもいいかもしれないが(決闘的な意味で)。
リボルバーだったらロシアンルーレットとしゃれこめそうだな
伝家の宝刀ヤクザキックで一撃ですね、わかります
黒架の人形遣いなら当然人形の自作もできるはずだが、阿紫花だからなあ。
何時になったら作る気になるやら。
黒賀だよ……。何書いてんだ俺。
懸糸傀儡の糸って特殊な物じゃなかったっけ?
それはそうとサハラ後の鳴海召喚はまだこないのか・・・・
あの糸は錬金術で作った凄い糸だって、なんかで見たような。
からくりサーカスから召喚なら、ジョージが面白そう。ヤムチャのくせにヤツの最期は熱かった。
>>719 ボラ・ミステリオサのジョージ・ラローシュか?
最近思ったが奴はテファのところに呼んだら丁度良さそうな気がする
子供沢山いるし。
ピアノは……あれ? ハルケギニアにピアノあったっけ?
……まあどうにか調達しよう
>>655 2秒でばれてるし。えーと。ガンドッグもよろしく。
>>719 人形はすっごい技術の塊だそうだ。
操作用の糸一本でも特許が幾つも取られてるとか
そらー、戦闘用二足歩行ロボを全部手動で動かしてるんだもん
お禿さまの錬金でも難しいだろ
だれかSDK召喚しろよ
SDKが貴族派に突っ込んでいってジェノサイドしてる光景が見えたよ
>>723 Standard Development Kit?
(馬鹿は的外れな略称を連想した)
>>725 ゲーム「SIREN」の主人公であり不死身のジェノサイダーである須田恭也のハンドルネームだよ
>>649 7万に対して平民貴族問わずCoDの赤軍よろしく
「For our Goddess!! VICTORY or DIE!! URAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
と突っ込んでいく光景が浮かんだ
つーかそもそも戦争なんて起こらないか。
SDKだったら7万じゃ相手にならないだろw
普通は一発使えば命を失う技を
命が無限だからって理由で乱射してくるんだぞwww
ただ不死者をも殺せるからね
>>723 『はばかられる〜』は堕辰子で、聖地の悪魔の門は異界に通じてるのか
>>634 同じ体型で魔法が使えるとしたら、赤ずきんチャチャのチャチャ、カードキャプターさくらの木之本桜、魔導物語(ぷよぷよ)のアルル・ナジャとウィッチ、魔法陣グルグルのククリあたりがいると思う
逆に魔法が使えないキャラにだめだルルーしか思い浮かばないwww
結局GW中追加どころかまとめWiki掲載分の修正すら出来なかった……。
ララァ、私を導いてくれ……。
>>726 解説ありがとうございます。
>>730 いくらなんでもそれはルイズを過小評価しているとしか思えない。
アルルはルイズを全身一回り大きくした感じだからルイズの心中やいかに
クランクラン萌え
ルイズはひんぬーなんじゃない
周りが化け物揃いなだけなんだ
>>730 チャチャやさくらはナイチチじゃなくて、単に女児なだけだと。
あ、チャチャは大きくなってもアレか。
赤ずきんチャチャのチャチャは原作版かアニメ版かによっても違うけど、まだ14歳だからな。
マンガ版ではだんだんと背が縮んでいたけど、第一話ではそれなりに胸はあったし、アニメ版では
マジカルプリンセスにホーリーアップしてしまえば、まぁ普乳くらいはある。
あと、チャチャがルイズに勝ってる点としては、リーヤ(人狼)という恋人と、しいねちゃん(そこそこ
使える魔法使い。ドット以上ライン未満?)という明白に好意を寄せてくれる男がいるってことか。
しかし、ギャグマンガ補正があるといっても、マンガ版の登場人物は全員ギーシュには楽勝っぽいよなぁ。
ギーシュに勝てそうなキャラ
しいねちゃん、リーヤ、お鈴ちゃん、やっこちゃん、マリン(やばくなったら海坊主を呼ぶので)
フーケに勝てそうなキャラ
海坊主、海坊子、ラスカル先生、ドロシー
セクハラ学院長に勝てそうなキャラ
園長先生
無敵
セラビー
>>686 遅レスですが投下乙
輝くだけで痛みはしないってことは、アンアンがベヘリットを持っているか
彼女の近くに使徒かもどきがいるってことかな
園長先生と聞いてクレしんのくみちょーが浮かんだ
>>739 俺も普通にドンキーコングだと思ってましたw
赤ずきんチャチャは最強スレだと割りと上のほうにある作品だから
普通に強い
>>732 初期のほうの設定のアルルだとルルーより劣ってる程度の体型なのでむちゃくちゃ体型がよかったりする。
>>743 あの作品SMAPの香取シンゴが出てるんだよな
一瞬思ったが、Mrファイヤーヘッドやバードン、ギャラクターとかを呼んでクロスしたら偉い事になりそうだな、技術や人的な意味で
299 通常の名無しさんの3倍 sage 2008/05/05(月) 18:58:00 ID:???
このスレなんのためにあるの?
300 通常の名無しさんの3倍 sage 2008/05/05(月) 20:25:42 ID:???
元々只のトレーズ様のネタスレ
短編SSがこっちに投下されたことに調子に乗った奴が新スレとして立てた
立てたけど元々SSが投下されてたスレとかあるからSSスレとしての存在意義は微妙
姉妹スレより。この間種の事訊きに来てた人居たけどこういう事情で訊きに来てたと思われ。
アルルはぷよぷよ通の設定だと16歳。158cm・53kg・B86・W60・H85とかなり素敵な数字なんだよなぁ…。
>>748 アルルは新しい作品になるにつれてちんちくりんに。
>158cm・53kg・B86・W60・H85とかなり素敵な数字なんだよなぁ…。
>B86・W60・H85
!?
751 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 13:11:57 ID:4rzOTEQt
>B86・W60・H85もだが。
>158cmだってぇ??
Wが60のあたりありえそうな数字だな。
それでもかなり素敵な数字だが。
アルルは基本の魔法だと魔導力を消費しない。
そして杖も必要ない。
ちなみに、日本人女性の平均身長&体重が158cm・54.3kgらしい。アルルはちょっとだけ軽い。
アルルはMSX2版とPC98版の魔導物語Uでは色気で魔物を騙し牢から脱出したりする。
あの体型でどうやったかは永遠の謎www
「水の使い魔Splash☆Star」の第3話が出来ましたので、13:40頃から投下したいのですがいいでしょうか
そりゃ、あの二等身絵で考えるからだろw
いいから、
>>748のカタログ・スペックで考える作業に戻るんだwwww
>>755 きっと魔物の趣味がカタカナ4文字のアレだったんだよ
「あづい〜〜…」
ルイズは、雲ひとつない青空を恨めしそうに見上げた。
「まだ春だってのに、何でこんなに暑いのよ…。」
木陰にでも入ろうと広場まで歩いていくと、そこには見慣れない派手な小屋があった。
波の絵の入った「のぼり」が立ち並び、見たこともない文字が書いてある。
「はいはーい、いらっしゃいませ、カキ氷『みずしたや』へようこそ〜!
おいしいおいしい『水の泉』のカキ氷はいかが〜!」
シタターレはアロハシャツに半パン、麦わら帽子という格好で周囲を歩く生徒たちに声をかけている。
ビーチパラソルの影に当たる席には、何人かが山盛りのカキ氷を珍しそうに食べている。
小屋にはメニューらしきものを書いた紙が張ってあるが、ルイズには何が書いているのか見当もつかない。
「あ、あんた!こんな所で何やってんのよっ!!」
「はい、いらっしゃませー…っておチビちゃんじゃないの。」
「今度は何をやらかすつもりなのよ?!」
「『やらかす』なんて人聞きの悪い。『緑の郷』ではね、暑い時はこういうものを食べるの。」
「ここはトリステインよ!…わけのわかんない文字書いたって読めるわけないじゃない!」
「そうなの?…道理で、お客さんが色々聞いてくると思った。
んじゃ、おチビちゃん、ちょっと書いてよ。」
そういって、シタターレはルイズに紙とサインペンを押し付ける。
「とりあえず、『スペシャルカキ氷・クリームのせ・銀貨10枚』ね。」
「10スゥ!高いじゃない!?」
「食べてるお客さんはそう思ってないみたいよ。は〜い、いらっしゃいませ!」
シタターレは店に来た客と話し始めた。
ルイズが周囲を見てみると、この小屋を遠巻きに眺めている生徒は結構いる。
先日の決闘騒ぎの後、ミズ・シタターレは「東の方に住んでいるらしい未知の魔法種族」として紹介された。
最近、何かと話題に上っている人物…人じゃないかもしれないけど…が、なにやら珍しいことを始めたのだ、興味を引かないわけがない。
ルイズはため息をつくと、サインペンを紙に当てた。
…が、まったく書けない。キャップを外していないので当たり前なのだが。
何回か試してみるが、書ける気配はない。
「馬鹿みたい、こんなので文字が書けるわけないじゃないの。」
ルイズは懐から携帯用の羽根ペンとインク(綿に染み込ませてある)を取り出すと、サラサラと書き上げた。
「出来た?ありがと。んじゃ、これは1杯だけサービスね。」
シタターレはルイズの目の前に大盛のカキ氷を置いた。
木でできた器の上には、雪のように細やかな氷に赤いシロップが染み込んで、練乳が所々アクセントのように白くかかっている。さらに、白いクリームが2つほど添えられている。
ルイズは、じっとそれを見ていたが、やがてスプーンで赤い氷をひとすくい取り、口に運んだ。
口の中に冷たい刺激が広がると同時に、すっ、と氷が溶けていく。
「冷たっ!それに甘い!!」
ルイズの汗がさっと引いていく。一さじ、また一さじと、夢中になって口に運ぶ。
こんなに甘いものを食べるのは、ルイズでさえはじめてかもしれない。クリームも冷たくて甘くてとろけそう。
はじめて嗅ぐバニラの風味に夢中になっていると、突然ルイズの頭に痛みが走った。
「なにこれ…痛っ!」
締め付けられるような痛みにこめかみを押さえたルイズの前にシタターレがお茶の入ったカップを置いた。
「がっついて食べるからよ。これで舌を休めながらゆっくり食べなさい。」
その日の夕方、シタターレは店の片づけをしていた。
「けっこう売れたわね。この調子なら3〜4日ってとこかしら…。」
そんなことを言いながら、器を片付けていると6メイルほどもある青い竜が近づいてきた。
「なに?あんた…もしかしてカキ氷が欲しいの?」
「きゅい〜」
「んじゃ、銀貨10枚!あんたが持ってないんなら主人に出してもらいなさい。」
竜は力なく首をプルプルと振った。どうやら主人にも断られたらしい。
「てか、あんた精霊の匂いがするわね…。喋れるんでしょ!」
竜はビクっと首をすくめると、全力で首を振った。
「人に物を頼む時は『頼み方』ってのがあるでしょ。きちんと、お願いできたら考えてあげるわよ。」
「きゅ〜…」
竜は首をかしげて、困ったように鳴いていたが、やがてトボトボと来たほうへ帰って行った。
「なにあれ?変な奴…」
シタターレはしばらく竜の後姿を見ていたが、やがて器を洗い始めた。
凄いロリ巨乳なアルル想像してしまったwww
>>733 ちゃんとクラン・クランて書け
次の日、午後の授業の間、シタターレは気分転換に散歩に出ていた。
「思ったより売れたわね〜。よしよし…」
そんなことを呟きながら裏山を歩いていると、ひょっこりと少女が顔を出した。5歳くらいの小さな女の子である。
「ねえ、おばちゃん…。」
「『おばちゃん』はやめなさい!わたくしはミズ・シタターレ。」
「この辺で竜さん見なかった?」
「『竜』さん…って青い奴?」
「うん。」
シタターレはトリステイン魔法学院の方を見た。
すると、空にその竜がはばたいている。どうやら背中には誰かを乗せているようだ。
「町の方に向かってるわね。ありゃ、しばらくは帰ってこないわよ。」
「え〜っ!」
女の子は空を見上げていたが、すぐにうつむいてしまった。
「どうしたってのよ。」
「あのね…。昨日、私が蛙苺を取りに来て籠を忘れちゃったの。それを竜さんが届けてくれたんだ。
そのお礼に、お魚取ってきたんだけど…、こんなに暑いんじゃお魚がダメになっちゃう…、うぅ…。」
見れば籠の中には草の葉でくるんだ魚が数匹入っている。
「ちょっと、そんな顔するんじゃないの!…仕方ないわねぇ、ついてきなさい。」
シタターレは、頭をかきながらそういって、少女を学院まで招きいれ小屋の裏に連れていった。
木箱を取り出し、その中にザラザラと氷を放り込む。
「この中に魚を入れて蓋をしとけば、夕方くらいまでは持つでしょ。あの竜が帰ってきたら渡しといてあげるわよ。」
「すごい!氷がこんなにいっぱい。おばちゃんメイジだったんだ!!」
「だから『おばちゃん』はやめなさいって。わたくしはミズ・シタターレ。」
「あのね、おばちゃん。もうひとつお願いがあるの。
神父さんに頼んで、竜さんにお手紙書いてもらったんだ。それも一緒に渡してくれる?」
「ああ、もうわかったわよ。その辺において飛ばないように重し載せときなさい。」
「うん!」
少女は、近くの石を拾ってきて手紙と一緒に木箱の近くの台の上に置いた。
「おばちゃん、あとね…これ!」
少女が籠から取り出したのは、素焼きの小さな器だった。葉で蓋をしている。
「まだあんの?」
「昨日竜さんが持ってきてくれた苺でジャムを作ったの。
本当は竜さんにあげようと思ったんだけど、お礼におばちゃんにあげる。」
「だから、わたくしは『おばちゃん』じゃないって…」
シタターレは器の蓋を取り、小指でジャムをすくってなめてみた。
「すっぱ…」
砂糖はトリステインでも出回ってはいるが、高価なものであり、平民の口にはめったに入らない。
蛙苺自体も熟するには早かったらしく酸味が強い。その分、ジャムにすると酸味と風味が凝縮されている。
「ふーん、でも、これは使えるかも…」
「それじゃ、おばちゃん、ありがとー」
頭を下げて帰ろうとする少女を、シタターレは呼び止めた。
「ちょっとお待ち、これは『おばちゃん』からのジャムのお礼よ。」
少女の前には、赤いシロップのかかったカキ氷がドデンと置かれている。
「で、でも、ここ貴族様のお屋敷…。私なんかがこんなの食べたら…。」
「ガキんちょが生意気言ってんじゃないの、早く食べないと溶けちゃうわよ。」
「うん!」
しえん
シエンン
少女は何度も頭を下げて、手を振りながら裏門から帰っていった。
シタターレも、いつの間にか顔を綻ばせて手を振っている。
「さて、授業が終わる前に、次の準備しないとね。」
彼女が、小屋に戻ると黒髪のメイドが声をかけてきた。
「シタターレさんって、お優しいんですね。」
「え?ま、まさか…見てたの」
「あの…まぁ、通りかかったら見慣れない女の子が入ってきたので…全部…見てました。」
「あっちゃ〜、見られちゃったか。」
シタターレは黒髪のメイドの前に、カキ氷を置いた。
「はい、口止め料。そのかわり、誰にも言うんじゃないわよ!」
「で、でも、私もこんなの食べてるところ誰かに見られたら…」
「んじゃ、小屋の裏にでも回って食べなさいよ。」
「は、はいっ!」
メイドはカキ氷を持って、そそくさと裏に回った。そして立ったままスプーンでカキ氷をすくい、口に運ぶ。
「おいしい!こんなのはじめて。」
「ま、『この世界』じゃそうそう食べられないわね。」
「実は、昨日、宿舎の皆と話してたんですよ。ここの氷を食べてみたいって。
貴族の皆様が、あんなに夢中になって食べるくらいだからきっとおいしんだろうって。
でも、銀貨10枚なんてとっても高いし、お給金が出たばかりだから、払えないことはないけど…
やっぱり貴族のための食べ物だろうし、どんな味なんだろうって、皆で想像してたんです。
まさか、本当に食べられるなんて思ってませんでした。」
そういいながら、次々とスプーンを口に運んでいる。
「ふぅん、そうなの…。ん?てことは、安くて簡単に食べられたらいいのよね。」
シタターレは、にんまり笑うと裏に回ってメイドに話しかけた。
「あんた、名前はなんていうんだっけ?」
「シエスタ、です。」
「んじゃ、シエスタ、今晩ちょっと手伝ってくんない。いい事思いついちゃった。」
それからしばらくして、シタターレは竜が帰ってきたのを見計らって、ヴェストリの広場に向かった。
そこの片隅は、使い魔達の溜まり場になっていて、様々な種族の使い魔たちが唸り声を上げている。
シタターレは、青い竜を見つけると、手を招いて小屋のほうへ連れて行った。
「あんた、昨日小さな女の子に苺を届けたんだって?
今日の昼ね、その子があんたにお礼ってこれを持ってきたのよ。」
シタターレは木箱を開けて、魚を取り出した。青い竜は目を丸くしている。
「それとね、あんたに手紙だって…
何かいてあるかさっぱりなんだけど、あんた読める?」
そう言いながら、手紙を広げて竜の目の前に突き出した。
『竜さんへ、昨日は怖がってごめんなさい。
竜さんは親切に私の籠を届けてくれたのに私は怖がってしまいました。
私が同じ事をされたら悲しいです。だから謝ります。ごめんなさい。
ママは竜さんを怖い生き物だって言ったけど、私は違うと思います。
このお魚は、籠を届けてくれたお礼です。このお手紙は神父さんに書いてもらいました。
また遊びに行ってもいいですか?ニナ』
「あ、ありがとなのね。」
竜は、嬉しいやら、驚いたやらで、目をキラキラさせ、羽根をバタバタさせた。
「なんだ、やっぱりあんた喋れるんじゃない!」
「あ…。シルフィは喋らないのね。お姉さまと約束してるのね。
い、今だけ特別なのね!」
シルフィードは、頭をブンブン振って必死に否定しようとしているが、どうみても泥沼だ。
「あそ、んじゃ、わたくしも特別。あの子の持ってきたジャムで特製シロップ作ってるんだけど、
あんたにも味見させてあげるわ。」
シルフィードは、嬉しさのあまり思わず飛び上がり、弾んだ声できゅいきゅいとわめいた。
今回はここまでです。
シタターレ姐さんを出す以上、カキ氷「みずしたや」は必須ですよね。
そういうわけで、カキ氷屋は次回に続きます。
それではでは、支援ありがとうございました。
>>757 確か魔道Tは幼稚園児、Uは確か小学生だぞ。
水の使い魔氏乙
>>757 公式の設定資料集にもどうやったかは謎と書かれている。
魔導物語の最初からある最大の謎www
>>768 Tは6歳のときで卒園試験の話、U、Vは16歳になって魔導学校移動途中での話だ。
ちなみに卒園試験受けれたのはアルルだけ。
>>767 投下乙です
プリキュアを見てない自分にはとてもこのシタターレ姐さんが悪の組織の幹部には見えません
普通にいい人じゃんw
コンパイルのもう一つの謎はあれだけいい絵師がいたのにつぶれたこと。
なんでだ?
>>773 社長の散財
ググれば本物の放漫経営というものがわかる。
これ以上はスレ違いなんで自重しよう。
絵師はいいのがいた
開発もまあまあのが揃ってた
ブランド名も育ってて固定客もついてた
経営者が無能でなきゃ最低でも維持はできるよな
ちょいと違うが
つ【ウエストケープコーポレーション】
無能王とチェスでやりあって勝てそうなキャラを呼ぶとしたら誰がいる?
バーン様
>>777 キラキラバックの警視さん
一度コンピューター相手に勝ってるぜ
両津なら…両津なら…
負けそうになったら「あぁー!?地震だ!!」とかやりそうな気がする
パタリロは三分くらいだがスーパーコンピューター並みの思考速度が出せるけど
長期戦になるとオーバーヒートするから微妙か
ルルーシュが思い浮かんだ。
勝てるかどうかは微妙だろうけどな。
>>777 チェスじゃないけど「ヒカルの碁」から佐為が召喚されてジョゼフに囲碁を布教とか。
>>777 カウボーイビバップのエド
彼女は伝説の世界チャンピオンにも勝ってるぞ
>>785 記憶違いで訂正
ほぼ互角で一週間ぶっ通しで続けて、最後に負けたんだった
でもそれ以外は負けなし
ハチワンダイバーの真剣師が浮かんだ。
けど実際、将棋の強い人はチェスも強いのかね?
>>788 弱い・・・らしい
羽生もチェスではそこそこらしいよ
棋士の強さの一つに千単位の棋譜の丸暗記というのがあるから
一朝一夕で乗り換えられるものではないな
いまさらだがゼロな提督に出ていた ら、らめええぇぇぇ!伯に噴いたw
ラ・ラメー伯は原作にも登場する由緒正しいキャラだw
>>777 HUNTER×HUNTER のメルエム(キメラアントの王)
最初はともかく成長速度がケタ外れ。
スレイヤーズのルーク召喚。
シャブラニグドゥになる前か後で話が変わってくるだろうけど
水の使い魔氏乙そしてGJでした
優しいシタターレ姐さんになごみます。カキ氷屋の光景が目に浮かぶようです
素直にコムギ召喚でよくね?
コムギは軍棋一転特化で、チェストかは弱そうな気がする。
チェスって人間よりコンピュータの方が強くなかったっけ?
世界チャンピオンがスパコン相手に最近負けが多くなってきた。
将棋もプロがコンピューターに負け始めたんで、協会の許可なしでコンピューターと
対戦するな、ってお達しが出たけどね。
アカギ、鷲巣あたりでどうだ
姉妹スレならダービー兄
鷲巣やダービー兄じゃジョゼフには勝てんでしょ
あの二人はジョゼフと違って破滅を恐れるまともな人間だし
アカギなら互角に戦えそうだが
>>799 プロ棋士は許可なくコンピュータと対戦することを許されない!
ってハートマン軍曹が言ってた
小麦といえば邪道魔法少女・・・
チェスネタで盛り上がってますが……。
富士見ファンタジア文庫『量産型はダテじゃない!』から、ナンブ(グロリアスつき、
本編終了後の設定)を召還というのはどうでしょう。
原作では旧式のポンコツでも、ハルケギニアに来ればものすごく強いはずです。
ギーシュのワルキューレくらい一刀両断だろうし、零戦に乗ってグロリアスのデュランダル
フォームを使えば、艦隊一つくらいあっさり壊滅だろうし……。
>>803 1話でモナーが出てきてさあ大変なあのアニメか
7万vs.古今東西のアスキーアート群。
やばい7万がマジ涙目になりそうだ
AAキャラといえばかな〜りの古典キャラで『レモナ』がいるな
生体兵器Lだし、擬人化したソレは亜人として認識されるのかねぇ
エーデルワイス号が召喚されました
>無能王とチェスでやりあって勝てそうなキャラを呼ぶとしたら誰がいる?
セイバーヘーゲンのバーサーカー
世界も滅ぶけど青ヒゲには望む所か
>>807 しかも盛岡運転所所属のキハ58のほうが。
>>805 勘違いしてるようだが、あれは「敵が繰り出してきたAAキャラ」と戦ってるのだ。
つまり、7万のAAキャラがこちらに向かって…
>>810 イヤァァァァァァァァァァ
ありもしないcal.50とか撃ちたくなったじゃないかwwww
って巨大モナーの電源引っこ抜けば元通りになるけどな
ブラックマラコプターから降下するマララーのチョークw
>>808 GA(ゲーム版)のタクトもやりあえそうだな。
奴なら普通に無能王と知力戦繰り広げそうだ。
あれ?今日も屑SSが投下されてないな
作者は武藤散歩売るで死んだの?w
GA(アニメ版)だと知力vs理不尽力の戦いになるな
旗から見たらジョゼフがハルケギニアを守っているように見える
GA(アニメ版)からならユーリ・ウォルコット少佐を。
エンジェル隊の上司なあの人なら、ルイズの相手も大丈夫だ!
あと、何気に強いし。
817 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 20:58:27 ID:GB3YJE1F
富士見ファンタジア文庫なら、ブラック・ブラッド・ブラザーズから
東の龍王セイと緋眼のゼルマンが召喚できるぜ。
こんばんわ。
9時10分ごろに投下してもよろしいでしょうか。
おいすー。支援
竹本泉「さよりなパラレル」から岡島さより召喚。
召喚(というか次元移転)され慣れてるから、
「今度はどういう世界なの?へー、魔法。ここはそういう世界なのねー」とか
ごく淡白に対応した挙句、そのうち、勝手に消える(別の世界に移転)
もうすぐか、支援
途中からシエスタが手伝ってくれたおかげで、昼食前に掃除を終わらす事ができた。
「それでは、私は昼食の支度がありますので、これで失礼します」
「あ……う、うん」
シエスタはそう言って教室から出ようとしたが、ルイズが何か言いたそうにしているのに気が付いた。
「ミス・ヴァリエール、どうかなさいましたか?」
「え!どどど、どうして?」
「いえ、何かおっしゃりたい事がおありのように見えましたので」
シエスタにそう言われて、ルイズはかなり動揺しているようだ。目線を上にしたり、下にしたりと落ち着きがない。
やがて後ろを向いて一つ深呼吸をすると、意を決したようにシエスタに向き直った。
「そ、その、あああ、ありがとう!」
「え?」
「か、勘違いしないでよね!こ、これは貴族が平民に対する最低限の礼儀なんだからね!」
ルイズはシエスタに感謝していたが、貴族のプライドと気恥ずかしさからこのような言い方になってしまった。
シエスタも感謝の言葉をかけられるとは思ってもいなかったので、少し驚いてしまう。
だが、すぐに笑顔を浮かべるとルイズに向かって頭を下げる。
「ありがとうございます。そう言っていただけると手伝った甲斐もあるというものです」
「そ、そう」
「ええ。後で食堂にもいらしてくださいね。今日はデザートにおいしいケーキを用意していますので」
「わかったわ」
「では、失礼します」
そう言うとシエスタは教室を出て行った。
ルイズはシエスタが出て行った後に改めて教室を見回してみる。自分が爆発を起こしたとは思えないほど、教室はきれいに片付いていた。
なんだか自分の心もすっきりしたように感じ、さっきまでとは違い晴れやかな気分になる。
しばらく教室を眺めていたが、お腹も減ってきたので食堂に向かうことにした。
食堂に入ると、すでに多くの生徒達で賑わっていた。
メイド達は昼食の世話で忙しそうに働いている。その中にはシエスタの姿も見えた。
邪魔をしては悪いと思い、特に声もかけずに席に着く。
ずっと掃除をして体を動かしていたせいか、昼食はいつもよりおいしく感じられた。
昼食が終わった後、デザートのケーキがメイド達から運ばれてくる。
「ミス・ヴァリエール。今日のケーキはコック長のマルトーさんの自信作だそうですよ」
そう言われてメイドの方を見ると、そこにはシエスタの姿があった。
「そ、そう。期待しておくわね」
「ええ。どうぞ」
そして、ルイズの前にケーキの入った皿が置かれる。
一口食べてみるが、コック長の自信作だけあって中々の味だ。甘くておいしいケーキに思わず顔がにやけてしまう。
「いかがですか?」
「ええ、おいしいわ」
「喜んでいただけてなによりです」
シエスタとそんな会話をしていると、後ろの席が妙に騒がしくなる。
どうやら、男子生徒達が色恋沙汰の話で盛り上がっているようだ。
その話の中心にいるのは、ギーシュ・ド・グラモンだ。彼は確かに二枚目で、女子生徒にも人気がある。
だが、ルイズには彼のきざったらしい仕草はとてもかっこいいとは思えなかった。そもそも、ルイズはこの学院の男子生徒にはまったく興味がない。
自分には許婚のワルド子爵がいる。
彼に比べたら、この学院の男子生徒など幼稚な子供にしか見えない。比べるのも失礼なくらいだ。
(子爵様。今頃どうしていらっしゃるのかしら……)
もう随分と会っていないワルド子爵の事を考えていると、不意にシエスタから声がかかった。
「ミス・ヴァリエール。今、ミスタ・グラモンのポケットから何か落ちたみたいなんですが」
「ん?……何かの液体が入った小瓶みたいね」
ギーシュのポケットから落ちた小瓶はルイズとシエスタのいる方に転がってきた。
それをシエスタが拾い上げる。
「気付いていらっしゃらないみたいなので、私が渡してきますね」
「あんたはまだケーキを配り終わってないでしょ。私が渡しておくから仕事に戻っていいわよ」
「え!でも……」
「いいから。あんたは気にしなくていいの」
「すいません。それではお願いします」
ルイズはシエスタから小瓶を受け取ると、ギーシュ達が話している方に向かった。
支援
(シエスタには教室の掃除を手伝ってもらったし。貴族として、平民の恩義には報いるのが礼儀よね)
本当は親切にしてくれたシエスタに恩返しがしたかっただけなのだが、プライドの高いルイズはそう考えて自分を納得させていた。
ルイズはギーシュ達の所までやってくると机の上に小瓶を置いた。
「ギーシュ。落し物よ」
「何を言っているんだいミス・ヴァリエール。これは僕の物じゃないよ」
「あんたが落としたのを見てた子がいるのよ。いいから受け取りなさいよ!」
「しつこいね君も……」
ルイズが小瓶を渡そうとしていると、ギーシュと話をしていた生徒達が騒ぎ出した。
「それはモンモランシーが作っている香水じゃないか!」
「ああ、間違いない!……ということはギーシュはモンモランシーと付き合っているのか!」
「ち、違う!いいかい……」
ギーシュが何か弁解をしようとした時、一人の女子生徒がこちらに向かってくるのが見えた。
マントの色から一年生だとわかる。
「ギーシュ様、やっぱり……」
「ケティ!これは……」
ギーシュが何かを言う前に、一年生の少女は泣きながら走り去ってしまった。
そして、すぐに別の少女がやってくる。次にやってきた少女はルイズにも見覚えがあった。
さっき男子生徒の会話の中にも出てきた縦ロールの金髪が特徴的なモンモランシーだ。
「やっぱり一年生の子に手を出してたのね!」
「誤解だよ、美しいモンモランシー。そんな怖い顔をしないでおくれ」
「誤魔化さないで!」
そう言うとモンモランシーは机に置いてあったワインをギーシュの頭にかける。
「最ッ低!」
ギーシュに止めのセリフを言い放ち、モンモランシーは去っていった。
いきなり茶番劇を見せ付けられ唖然としていたルイズだが、用事も済んだのでケーキを食べに戻ることにする。
が、立ち去ろうとしたルイズをギーシュが呼び止めた。
「待ちたまえ!ミス・ヴァリエール!」
「何よ、何か文句でもあるの。言っとくけど私は悪くないわよ、二股かけてたあんたが悪いんだからね!」
ルイズのこの言い方は、ギーシュの怒りに火を付けてしまう。
「ゼロの君に、話を合わせる機転を期待した僕が馬鹿だったよ!」
「な、なんですって!」
いきなり馬鹿にされたせいで、ルイズの頭に一瞬で血が上る。
「あんたなんて、私の許婚の子爵様に比べたら唯のお子様よ!振られて当然だわ!」
さっきまでワルド子爵の事を考えていたせいか、ルイズはつい言葉に出してしまう。
それを聞いたギーシュはにやりと笑うと、ある言葉を口にする。
だがそれは「ゼロのルイズ」よりも言ってはいけない言葉だった。
「ふん。ゼロである君の許婚なんて、どうせたいした事無い男に決まってる!」
支援
その言葉を聞いた瞬間、ルイズの視界が真っ赤に染まる。
かつてないほどの怒りと憎しみで、ルイズの心は張り裂けそうだった。
(この男は子爵様を侮辱した!私の子爵様を!!
この男だけは許せない!絶ッ対に許せない!!)
ルイズの左手のルーンが光を放つ。今までと違い、光っているのがはっきりとわかるほどだった。
そして、左の拳がギーシュの顔面に突き刺さる。
ルイズに殴られたギーシュは鼻血を出しながら、机の上まで吹き飛ばされる。鍛え抜かれた体を持つ男に殴られたような、鋭く重い一撃だった。
だが、そんな事はどうでもいい。ゼロであるルイズにここまでやられて黙っていられる訳が無い。
ギーシュは立ち上がるとルイズに向かって叫んだ。
「もう許さん!決闘だ!」
「……いいわ。どこでやるの?」
「ヴェストリ広場だ!準備が出来たら来たまえ!」
そう言うとギーシュは、鼻血を手で拭いながら食堂を出て行った。
近くで騒いでいた他の生徒達もヴェストリ広場に向かう様だ。
ギーシュを殴ったルイズだったが、この程度では怒りと憎しみは収まらない。
すぐにヴェストリ広場に向かおうとするが、自分の方に駆け寄ってくる人物に気付き足を止める。
「ミス・ヴァリエール!」
ルイズに駆け寄ってきたのはシエスタだった。
小瓶をルイズに渡した後、ケーキの配膳の仕事に戻っていたが、先ほどの騒ぎに気付き慌ててやってきたようだ。
「申し訳ありません!私のせいで大変な事に……」
ルイズに向かって謝ると、深く頭を下げる。
自分がギーシュの小瓶に気付いたせいで、ルイズが騒ぎに巻き込まれたのを気にしているようだ。
「あんたのせいじゃないわ。これは私とギーシュの問題よ」
「でも……」
「いいから!」
気持ちが高ぶっているせいか、つい言い方がきつくなってしまう。
シエスタも黙ってしまい、二人の間に気まずい空気が流れる。それを嫌ったルイズは、足早にヴェストリ広場に向かった。
シエスタはルイズの背中を見送る事しかできなかった。
支援
ヴェストリ広場に着くと、すでに多くの生徒が集まっているのがわかった。娯楽の少ない学院生活の中で、決闘という言葉は多くの生徒達の興味を集めたようだ。
広場の中央にギーシュの姿が見える。どうやら鼻血はもう止まっているようだ。
「ルイズ、逃げずによく来たね」
「あなた程度の相手に、何故私が逃げないといけないのかしら?」
「その減らず口をいつまで叩いていられるかな?いくぞ!」
ギーシュが薔薇の造花をあしらった杖を振る。
すると花びらが舞い、鎧を着た女性の人形が現れる。これこそ、ギーシュがワルキューレと呼ぶゴーレムであり、彼の得意とする魔法だった。
「魔法が使えない君と違って、僕はメイジだから魔法を使わせてもらうよ。文句はないだろうね?」
ギーシュは自分の勝利を確信していた。魔法が使えないルイズに自分が負ける訳が無い。
ワルキューレで少し脅かしてやれば、すぐに降参するだろうと思っていた。
だから彼は考えもしなかった。
今のルイズにとって、決闘という言葉がどういう意味を持つのかを……
「行け!ワルキューレ!」
ワルキューレをルイズに向かって突撃させる。
ルイズは固まって動けないか、逃げるだろうと思っていたギーシュは、後はどうルイズのプライドを傷付けて謝らせようか考えていた。
だが次の瞬間、彼は驚愕の表情を浮かべる。
ルイズがワルキューレに向かって、ものすごいスピードで突っ込んできたのだ。
そのままワルキューレに近づいたルイズは、左手で掌底をワルキューレの腹部に炸裂させる。
スピードが乗っている掌底を受けたワルキューレは、吹き飛ばされて地面に激突し動かなくなった。
今の技の名は「骨法鉄砲」。
夢の中で格闘家だったルイズが、遠くにいる相手によく使用していた技だった。
誰もが唖然としている中、ルイズはギーシュの方を見る。
まるで、次の獲物を見定めるように……
ワルキューレが倒された事でギーシュに動揺が広がる。
だが、ゼロのルイズに負ける訳にはいかない。すぐさま、次のワルキューレを繰り出す。
今度は一度に三体のワルキューレを作り出し、ルイズの周りを包囲する。
さっきの攻撃ではワルキューレは一体しか倒せない。三体同時で攻めかかれば、ルイズにはどうすることもできないと考えていた。
しかし、ルイズはいきなりワルキューレよりも高く飛び上がったかと思うと、一体のワルキューレの顔と胸の部分に二段蹴りを放つ。
そして、その反動を利用して他のワルキューレにも次々と蹴りを放っていく。
ルイズが着地すると同時に三体のワルキューレは崩れ落ちた。
この技の名は「デスズサイズ」。
まるで死神の鎌のように広範囲を攻撃する真空二段蹴りだ。
自慢のワルキューレを四体も倒され、ギーシュが怯んだ隙をルイズは見逃さなかった。
すぐさまギーシュの目の前まで近づくと、鳩尾の辺りに拳を放つ。ギーシュの表情が苦悶に歪み、あまりの苦しさに地面に蹲る。
その隙に、ルイズはギーシュの背中から腕を回し体を両腕で掴むと、そのまま上空に飛び上がる。
空中でギーシュの頭を下に向け、全体重をかけて脳天を地面に叩きつけた。
必殺技の「アクロDDO」。
夢の中で格闘家だったルイズは、この技で多くの対戦相手の命を絶ってきたのだ。
ヴェストリ広場は静まり返っていた。
ギーシュは白目を向いて痙攣している。辛うじて生きているようだが、かなり危険な状態だった。
ルイズはギーシュの方にゆっくりと歩み寄る。
ギーシュの近くまで来ると、いきなりギーシュの体を蹴り上げた。
その光景を見た瞬間、ヴェストリ広場に女子生徒の悲鳴が響き渡る。
ルイズはギーシュを殺す気なのだと誰が見てもわかった。
「よ、よせ!それ以上やったら本当に死んじまうぞ!」
「誰でもいいから!ルイズを止めなさいよー!」
「で、でも!どうやって!」
生徒達の叫びが飛び交い、ヴェストリ広場は騒然となる。
ルイズを止めるにしても、先ほどのギーシュとの戦いを見てしまえば、足が竦んでしまうのも無理はなかった。
その時、一人の少女がルイズの前に立ちはだかる。学院の生徒ではない、メイド服に身を包んだ黒髪の少女だ。
ルイズの前に立っていたのはシエスタだった。あの後、ルイズが心配でヴェストリ広場に来ていたのだ。
シエスタはルイズに向かって叫ぶ。
「もうやめてください!ミス・ヴァリエール!」
その声を聞き、ルイズの動きが止まる。
「退きなさいシエスタ。決闘で真の勝利を得るには、相手の命を絶たなければいけないのよ」
シエスタには信じられなかった。
ルイズとは少し話をした程度だったが、こんな事を言う人物ではなかったはずだ。まるで、ルイズの姿をした別人と話しているように感じた。
違和感を感じたシエスタだったが、今はルイズを止めなければならない。
「嫌です!ミス・ヴァリエールが今やろうとしている事は決闘じゃありません!ただの殺人です!」
その言葉を聞いた時、ルイズは不思議な感覚に襲われる。同じような言葉を以前にも聞いたような気がするのだ。
一体どこで聞いたのかルイズが思い出そうとすると、脳裏にある若者の姿が思い浮かぶ。
(てめえのやってる事は格闘技じゃない…… ただの殺戮だ!)
その言葉を思い出した瞬間、急速に頭が冷えてくる。そして同時に、左手のルーンも徐々に輝きを失っていった。
真の勝利の為に、相手の命を絶たなければいけないと考えていたのは自分じゃない。あれは夢の中の話だったはずだ。
だが自分は今、ギーシュの命を絶とうとしていた。
背中に嫌な汗が流れる。得体の知れない恐怖を感じ、ルイズは後ずさった。
「ミス・ヴァリエール?」
「ち、違う……。わ、私じゃない……」
「え?」
そう言うと、ルイズはその場から走って逃げ出してしまう。
シエスタは慌ててその後を追った。
ひたすら走り続けたルイズが辿り着いたのは、自分の使い魔を召喚した場所だった。そこには使い魔の石像が立っているだけで、他には誰もいない。
走り続けたせいで息が上がってしまい、呼吸を落ち着けていると、誰かがこっちに走ってくるのがわかった。
「はぁ…はぁ…。ミ、ミス・ヴァリエール!」
シエスタだ。息を切らしながらこっちにやってくる。
ルイズは後ずさりするが、使い魔の石像にぶつかってこれ以上下がれなくなる。
そうこうしている内に、シエスタがルイズの目の前までやってきた。
「や、やっと。追い着きました」
シエスタはルイズの前で息を整えている。
ルイズはどうしたらいいかわからくなっていた。だから、今自分が思っている事を素直に口に出す事しかできなかった。
「ち、違うの!あれは私じゃない!私じゃないの!!」
髪を振り乱し、目に涙を浮かべながら必死に叫ぶルイズ。
そんなルイズをシエスタは優しく抱きしめ、小さな子供を落ち着かせるように背中を軽く叩く。
抱きしめられたルイズは、シエスタの胸に顔を埋めて大声で泣き始めた。
シエスタはルイズに優しく言葉をかける。
「大丈夫ですよ。私は信じてますから」
今、自分が抱きしめているのは間違いなく本物のルイズだ。シエスタはそう思いながら、ルイズを抱きしめ続ける。
そんな二人の姿を見ていたのは、使い魔の石像だけであった……
以上で投下終了です。支援ありがとうございます。
ルイズが使った技は、LIVE A LIVE 現代編のラスボスであるオディ・オブライトの技です。
アクロDDOはプロレス技のDDTみたいな感じと思っていただければ幸いです。
心に大きな闇を持つ彼女がオルステッド→オディオとなってしまうのか、それとも……?
乙〜。
オディ・オブライトが出てきましたな。
フーケのやり取りではOD-10あたり、ワルドの裏切りでオルスが出るのかな?
EVILの人、乙でした。
ルイズ対ギーシュって新鮮ですね。
>>807 エーデルワイスというと、へちゃむくれゴーレムを作ってフーケの巨大ゴーレムと戦うんですね!?
乙。
>空中でギーシュの頭を下に向け、全体重をかけて脳天を地面に叩きつけた。
普通に死ぬだろと思ったけど
ワルドなんてゼロ戦の機銃食らって生きてるくらいだし
メイジだから普通人より頑丈でもおかしくないか
決闘だから1対1の格闘の現代編かー
状況ごとにどれが出てくるのか、人外ボスは見た目がどうなるのか楽しみだな
>>836 7.7mm弾喰らっても普通にしてるしなww
至近距離で20mm弾だったらどうなってたんだろう
>>836 原作は忘れたがアニメだと広場は石タイルではなく草むらだった
少なくとも地面が潰れたトマトにまではならないだろう
皆様58万…えーと、何時間ぶりでしたっけ?
にシリアスなお話しの後に頭の悪いSSを投下するのは心苦しく感じますが…
投下許可を頂きたい!
投下承認!
ZERO A DEVIL氏、投下乙です。
>>840 そして、君は誰だ!?
参られよ
>>842 あっれは〜デビル〜♪
嘘ですごめんなさい支援
>>842 うわーい名前入れ忘れたー。またドジこいたー
生きてるアンティークドールはお好きですか?
戦闘機の機銃掃射食らって生きてるのなんて江田島平八くらいなもんだ
銀さま銀さま!ふわふわ!もふもふ! 支援!!
ヨーグルトにヤクルトその他乳酸菌の用意を!
ルイズの夢から現実へと意識を覚醒させた水銀燈。寝床たる鞄を中からガチャリ開け、緩慢な動作で外に出た。
ぼーっとした表情で、焦点定まらぬ紅い瞳がゆらゆらと揺れている。まだ目が覚めきっていないのだろう。
もっとも、寝ていたとは言うがルイズの夢の中を一晩中奔走していた訳なのだから、それは仕方がないと言えるのかもしれないが。
彼女の頭が少しずつ働き始めたようだ。水銀燈はカーテンの隙間から漏れる朝の日差しを受け、小さくしていた翼を広げ大きく背伸びをする。
このお人形の1日はいつもこの動作から始まるのだ。習慣と言ったっていい。
「ん〜今日も変わり映えしない爽やかな朝だわぁ…」
カーテンを開けて窓から外を見上げると、雲一つない吸い込まれるような青空が広がっている。
(このままどこかに飛んで行けたらさぞかし気持ちがいい事でしょうにねぇ…)
まだの靄のかかる頭でそう考え、口元を隠して大きな欠伸を一つ。
そんな水銀燈の後ろ姿に何処からともなく声がかかった。
「お?姐さん起きたのか?」
「ん、おはよう。デルフ。貴方も珍しく早いじゃなぁい」
もう少しで覚めそうな眼をこすりつつ、黒い翼のお人形は傍らに立てかけた剣に返事をした。
「ああ、おはよう。なんか今日は早くに目が覚めちまってさ」
鞘から錆の浮いた刃を覗かせ、デルリンガーはガチャガチャと鍔を打ち鳴らして言葉を続ける。
「もっとも、そっちの御主人様は相変わらずのようだけどなぁ」
デルフの言うそっち。ようやく眠気の覚めた水銀燈が視線を向けた先には、
まだ浅い眠りの中で幸せそうな寝顔を浮かべる少女の姿があった。
無論この少女こそが、水銀燈がこの大空に翼を広げ飛んでいきたいけど、いけない理由なのは言うまでもない。
日頃からつり上がり気味のお人形の瞳が呆れたように細まる。
「夢からは覚めてる筈なのに…。まったくこの子ときたら……」
まるで仔猫のようにベッドの中で丸まっているルイズの様子は、確かに愛くるしい事この上ないのだが、
同時に平和ボケと言う印象を思い起こさせ、なんだか腹が立ってくる。
(夢から覚めたのならさっさと自分で起きなさいよぉ……)
毎回早起きして起こす方の身にもなって欲しいものね…
と、心中で付け加え、未だにすーすー寝息をたてている御主人の柔らかほっぺを指先でプニプニと突っついた。
おれ、この支援が終わったらりえりえ声のテファと一緒にチーズフォンデュを食べるんだ…… 支援。
「ルイズ〜朝よぉ。夢から覚めてるのはわかってるんだからぁ〜」
そのままほっぺたを突っつきつつ呼びかけてみる。
だがミーディアムは一向に起きる気配無し。刺激が弱いのかとその指先でぐりぐりしてみた。
愛くるしいのルイズの寝顔が、とたんにおマヌケに歪み出す。だがそれでもルイズは起きないのだ。
え?狸寝入り?新手の嫌がらせ?
いやいや。ルイズに意識があるならこんな事されて黙ってられる筈ありません。
「眠っててもこれとはなぁ。つくづく強情な娘っ子と来たもんだ」
「同感ねぇ…。ホント手のかかる子……」
あくまでグースカ惰眠を貪る少女を前に、剣とお人形はあきれ果てげんなりとしてしまった。
「仕方がないわぁ…」
「姐さんどうすんのさ?」「ちょっと前に聞いた、正しいこの子の起こし方って言うのを試してみましょ」
水銀燈は気だるげに一言呟いて、お休み中のルイズに馬乗りになる。俗にマウントポジションと言われるこの体勢。
そんな彼女の表情をよく見ると、やる気のなさそうな発言とは裏腹に顔をニヤニヤさせてルイズを見つめている。
何か良からぬ事を企んでいる表情。
腹が無い。…じゃなくて腹黒いと比喩される彼女の本領が発揮される予兆である。
「こうするのよ!」
とたんに水銀燈は自分の主のほっぺたをはたき出した!
「お、おい!?」
流石のデルフも、一応は主であるルイズに対する使い魔の仕打ちに驚きの声を上げた。
だが水銀燈はかまわず高速で平手を往復で運動させる。
どうやら言葉まんまに「叩き」起こすつもりらしい。
「ルイズ〜。寝たらだめよ〜寝たら死ぬわよ〜」
ここはどこの雪山ですか?と言うか、それはもはや寝てる相手を起こす言葉じゃ無いです。
ペチペチと乾いた音がリズミカルに続く中、デルフリンガーが後ろから聞いた。
「……なあ、その起こし方誰に教わったんだ?」
「え?キュルケよ」
(……よりによって娘っ子の天敵じゃねぇか)
んな奴に聞くなよ…と呆れはて言葉を失うデルフを後目に、水銀燈はノリノリでルイズのほっぺをはたき続ける。
「うーん……」
ここまでされては眠ってなど居られないのだろう。
ルイズは一つうめいて、不機嫌な表情でついに固く閉じた目を開いた。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢御起床!。
お久です&支援
「鈍痛鈍痛鈍痛鈍痛〜」
だが、それに気づかず水銀燈は尚も手を緩めない。それに、これはもはや激痛て言った方が正確である。
やめろ水銀燈!!ルイズの眠気はもうゼロだ!!
ほっぺたをぺちぺちされながら、ミーディアムの鳶色の瞳が憤りの光を帯びて使い魔を睨み付けている。
顔が真っ赤なのは、はたかれて頬が腫れ上がっているからなののか、はたまた怒りで紅潮しているからなのか…
「痛くないわ♪」
「痛いわよ!!」
てへっ、とお茶目にウインクする水銀燈に、ルイズが朝一番の大声を出してと跳ね起きた。
馬乗りになってた水銀燈はゴロゴロとベッドから地面に転げ落ちる。
そして打ち付けた頭をさすりながらルイズに非難がましい表情を向けた。
「突然飛び起きないでよぉ。乱暴な子ねぇ…」
「乱暴なのはどっちよ!御主人様の顔はたいて起こす使い魔が何処にいる訳!?」
声をキンキン響かせ、まくし立てるミーディアムに、使い魔は思わず両耳を押さえて顔をしかめる。
「ここにいるじゃねーか」
「あんたは黙ってなさい!」
黙ってりゃいいのに話に横槍入れる空気読めないデルフリンガー。お前は槍じゃなくて剣だろうが。
ルイズはつかつかとデルフに歩み寄りりガチン!と鞘に刃を引っ込める。
かなりご機嫌ナナメなご様子だ。まあ、あんな朝の目覚め方すればこうもなるだろう…。
「貴女が全然起きないからこんなことになったんじゃない。自業自得よ」
そんな横暴なルイズの態度に少々カチンと来たのか、さして悪びれもなく言う水銀燈の言葉。
ルイズの怒りのボルテージが更に引き上がった。
「あ、あんた!使い魔のクセして御主人様にこんな真似しといて、良心の叱責って物を感じないの!?」
朝っぱらから何でこんなにうだうだ言われなければならないのか?
こちらもまた苛立ちを覚え始めた使い魔は、おもいっきり皮肉を込めてそれに答えた。
「感じないわぁ。だって私お人形だもの」
そして、もうお手上げ。と言わんばかりに肩をすくめ、やれやれとやるせない表情を浮かべる。
反省の色全く無し。それどころか人を馬鹿にしたような仕草だ。
あのアニメ一期のラストを悔いた水銀燈の紅い妹も、思わずもう一回絆パンチかましてしまうであろうくらい腹立つ仕草だ。
銀さまに起こされるなんてなんてうらやましい……!換わってくれ! 支援
支援
そして、その様子はルイズのストレスを臨界点にまで引き上げるのに十分な物だった。
ルイズは眉をひくつかせ、震える手でクローゼットから何かを取り出す。
「こ、こ、こぉんな無礼を働く使い魔にはお仕置きが必要よね〜?」
それを良からぬ予兆と察した水銀燈は、窓際に背を向けルイズを注視しながら不敵に笑いかけた。
「あら、私何かお仕置きされるような事なんてしたかしらぁ?」
嘲りの表情を変えず、更にシラを切るように言って背後の窓の鍵を開け……
「夢での分も含めて鞭で百たたきよーーっ!!」
「謹んで辞退させてもらうわぁ!!」
ルイズが鞭を振り上げた瞬間に窓を開き、翼をバサッ!と打ち鳴らし窓辺から飛び立った!
「こらーっ!待ちなさーい!!」
「待つ訳ないでしょ!お馬鹿さぁん!」
ルイズは蒼空に躍り出て、もう手の届かぬ堕天使を見上げ地団駄を踏んで悔しがる。
「うう〜っ!覚えてなさいよ〜!帰ってきたら酷いんだからーっ!」
鞭をぶんぶん振り回しながら恨み言を言うミーディアムに、使い魔はべーっと舌を出すと何処かに飛んで行ってしまった。
さて、今回の騒動。「結局どっちが悪いのさ?」と聞かれれば少々困ってしまう。
言ってみればどっちも悪くないし、どっちだって悪い。
寝坊助なルイズにも困り物だが、睡眠は人間の生理現象。治すのは難しいし、
もしかしたら昨日の彼女は普段より疲れがたまっていたのかもしれない。
水銀燈もまた、なかなか起きないルイズを起こすために(一応は)仕方なく思いながらも、強行手段を用いてルイズの起床を促したのだ。
もっとも、これは彼女の使い魔と言う立場を考えればあまりに手荒な手段であったのだが……。
更にもう一つ。この二人、同じくらいに、非常に我が強いところが見受けられる。
仮にルイズが寝坊を、もしくは水銀燈が手荒な起こし方を省みて、どちらか一方が詫びの一つでも入れていればこんな喧嘩には発展しなかったかもしれない。
だがこのミーディアムと使い魔がとっても意地っ張りで気性が激しいのは周知の通り。
双方言い分はあるのだろうがどちらも自分が正しいと思ってる訳で、謝るなどと言う選択肢が出てくる筈もない。
何かに欠けると言うコンプレックスと、そこからくるプライドの高さ。
この二人はどこまでも似通っているのだ。
「あっはっはっは!それは災難だったわね!」
「笑い事じゃないわよキュルケ。貴女の所為で大変だったんだからぁ…」
廊下吹き抜けの手すりに腰掛けて朝の顛末を話した水銀燈が、それを聞いて腹抱えて笑っているキュルケに不満の声を上げた。
ちなみにその横でタバサも柱にもたれかかって黙々と本を読んでいるのだが、
せわしなくページが捲られるも目線はちらちらと水銀燈の背に目移りしており本の内容が頭に入ってるかはどうにも怪しい。
「ハァ…貴女の言う事真に受けた私がお馬鹿さんだったわ……」
「ごめんごめん!でも鞭持って追いかけられる程度で良かったじゃない。
あたしの時は寝惚けて杖持ったあの子に、爆殺されるところだったんだもの!危なかったわ〜」
「爆殺って…そんな危険な方法私に教えたの!?」
「だからごめんって言ってるじゃないの〜」
さも物騒な事を愉快そうに言うキュルケを前に、水銀燈は顔をしかめた。
このお人形もまたどちらかと言えば場を引っ掻き回す言わば愉快犯なタイプだが、キュルケはその一枚上を言ってるらしい。
(この子には適わないわねぇ……)
クスクスと笑いの余韻を残す赤髪のメイジに、黒翼のお人形は苦笑する。
「でも結構大変な問題かもね。これから毎朝それじゃ、きっとあなたの身も持たないわ」
「だから、貴女達にまた相談に来たんじゃなぁい」
そして困った顔で手すりに頬杖をつく水銀燈。
これから毎日こんな騒動が…それも一日の始まりからこうなるのかと思うと、気が重くなる。疲れたような表情がそれを物語っていた。
「さて、どうしたものかしらね。ほらほらタバサ、あなたも考えるの」
キュルケに諭されタバサはパタンと本を閉じ感情の読み取れぬ顔のままコクリと頷く。
人形一人とメイジが二人。三人揃って腕組し、気難しい顔付きでアイデアを捻り出そうとしている。
…いや、タバサはやっぱり相変わらずですが。
そんなうんうん唸っている一人と一体をよそに、タバサがおもむろに床に手を伸ばした。
「タバサ?どうかしたの?」
キュルケの疑問に、手に取ったそれを見せて答える。
「これを使うの」
「これって…私の羽?」
黒衣の天使の言う通り、タバサの手のひらに乗っていたのは水銀燈の背から抜け落ちた漆黒に染まる一枚の羽。
彼女の居る所に(その気は無くとも)撒き散らされる水銀燈のシンボルである。
ちなみに彼女の黒い翼、正直コルベール先生に匹敵するくらいの抜け毛の量なのだが、
日々深刻な砂漠化の進む氏の頭と違い少なくなるどころか、決して無くなる事も無い。
もしコルベールが創造者ローゼンに会ったら、
真っ先にに聞く事はローゼンメイデンについてではなく、無限に湧き出る彼女の羽の事になるだろう。
解明されれば育毛の革命になる事間違い無し。
おおーっ!水銀燈の久々の登場!待ってました!
支援
コッパゲったらもうw支援
寡黙なメイジは羽を一枚指に挟み、ずいっと黒い天使の真っ正面に向き直る。
「な、何するつもりよぉ?」
その無言の圧力の前にたじろぐ水銀燈。
タバサはちょっと引きぎみのお人形の眼前に羽を持って行くと、その鼻をこちょこちょと擽り始めた。
「こちょこちょ。こちょこちょ」
感情のこもらぬ小言ながら、タバサはブツブツ呟きながら堕天使の形のよい鼻を擽り続ける
「ちょっと、タバサ、や、め……」
「こちょこちょ。こちょこちょ」
「は…は…ふぁ……クシュン!!」
タバサの奇行に戸惑う水銀燈だが、むずむずとする鼻の何とも言えぬ感触に思わずくしゃみが出てしまった。
「やさしい起こし方」
タバサはちょっと下がった眼鏡を正して淡々と呟く。
成る程、中々効果はありそうな起こし方だ。別段痛そうでもないし、これならルイズも多少は気になるだろうが派手に怒る事も無いだろう。
流石はタバサ。かけてる眼鏡は伊達では無い。
それまでずっと傍観していたキュルケがまた笑い出す。
「ぷっ…流石は私の親友ね。そんな奇妙な方法考えるなんて。フフ…アハハハハハ!」
「確かに使えそうではあるけど私で試さないでよぉ……」
愚痴って見るも、タバサはキョトンとしていつも通りの眠たげな視線を投げ掛けてくるばかり。
(この二人、やっぱり苦手だわぁ……)
まだむずむずする鼻を押さえて、また本を開いたタバサと腹抱えて笑い続けるキュルケに水銀燈はしかめっ面を向けそう思う。
(ま、悪い子達じゃあないのだけれどね…)
だが、すぐに内心で呟いた。
この二人、なんだかんだいって水銀燈に親身になって考えてくれる友人なのだ。
ミーディアム以外に友と言える隣人を得る。
孤独を貫き、アリスゲームを独りで戦い続けていた昔の水銀燈では考えられない事と言えるだろう。
ハルケギニアに来るまでは彼女が心許せる者等、数える程しかいなかったのだ。
群れる事なんか弱者同士の馴れ合いにしか過ぎない。仲良しごっこなどくだらない。それが彼女の持論。
だがこうしたキュルケとタバサとの交流。水銀燈の言う所の、この馴れ合いと言うのを彼女は心地よく感じていた。
「……ま、こう言うのも悪い気はしないわね」
二人には聞こえないように小さく呟き、フッと口元に笑みを浮かべた。
「ん?何か言った?」
そんな水銀燈に首を傾げてキュルケが疑問の視線を投げ掛ける。
「いえ、大したことじゃないわ…二人ともありがと。早速明日試してみるわね」
お人形は二人のメイジに黒翼の生えた背を向け飛び去ろうとするのだが…
「――待って」
タバサに呼び止められまた振り返る。
「ま、まだ何かあるのぉ?」
水銀燈、何故だかよくわからないが……何かとてつもなく嫌な予感がした。
支援
タバサは軽くうつ向いて本から目を離さぬまま言葉を続ける。
「………お代を頂いておりません」
「くっ!?」
殺気とすら取れそうな底冷えする声に、ゾクリと水銀燈の背に悪寒が走った。
タバサらしからぬ丁寧な口調なのがさらにその恐怖心を煽る。
「あー、そうよね〜。タバサが考えたんだからアイデア料を払わなきゃね〜」
ニヤニヤとしながらキュルケが水銀燈の後ろに回り込んだ。
アイデア料……つまりはタバサが水銀燈に対して望む事。言わずもがな、本を閉じたタバサの視線の先に有るものに他ならない。
眼鏡の奥で鈍く輝く瞳に、二つ名たる雪風のような冷たい炎が灯る。その眼差しを受けた堕天使の翼がびくりと縮こまった。
「……ねぇ貴女達、ボランティアとか無償っていい言葉と思わなぁい?」
「……」
水銀燈の軽口にもタバサは答えない。かわりに音もたてずに一歩スッと歩み寄っただけである。
まるで暗殺者を思わせる不穏な空気を纏ったその挙動。今日のタバサは……やる気だ!
身構える水銀燈、ゆらりと近づいてくるタバサ、逃げ道を塞ぐキュルケ。
(まずい…!殺(モフ)られる!!)
(殺(モフ)…れる……!)
「殺られる」だの「殺れる」だの物騒な言葉だが何の事は無い。要は翼をモフモフしたいタバサとそれを阻止したい水銀燈の不毛でくだらないバトルである。
支援
ともあれ前門のタバサ、後門のキュルケと言ったこの状況。これを乗り切るのは相当困難と言えるだろう。
(そこで問題よぉ!この状況でモフモフハンター・タバサの攻撃をどうかわす!?)
※3択−−ひとつだけ選びなさい。(トリステイン魔法衛士隊入隊一次試験問題より引用)
1 アリスに最も近い少女水銀燈は突如反撃のアイデアが閃く。
2 仲間が来て助けてくれる。
3 かわせない。現実は非常である。
(私が○を付けたいのは2だけど……)
朝一番で喧嘩別れしたルイズが駆けつけてくれるとは考えにくい。
むしろこの状況見ても「好きにしなさいよ」と一言だけ言ってどっかに行ってしまう可能性の方が高い。
最悪、報復を考えたルイズも混ざって敵が増える。
シエスタはどうだろう?いやいや、平民の上に使用人という立場のシエスタに、メイジ二人を止めてほしいと言うのはあまりに酷である。
……ギーシュ?何それ。食えんの?
(やっぱりここで出す答えは3しかないようね!)
身構えた人形の紫紺の瞳が紅く輝き不敵に笑う!この限り無く絶望的な状況で水銀燈はまだ、
……ちょい待ち。今3って言ったか?銀様1じゃなく3て言いましたか?
「別に命を奪われる訳じゃないんだし、必要経費と割りきるわぁ」
……諦めるの早ッ!!そんなんでこの先に待ち受けるであろう、厳しい戦いを生き抜けると思ってるのだろうか。ポルポル君見習って下さい。
「この子の執念の……勝ちってとこねぇ……」
水銀燈は諦めの入った笑みを浮かべ、迫り来るタバサを見据えた。
いや、だからそう言う表情浮かべるのは、ちゃんと最後まで足掻いてからにしましょうよ。
だが打つ手が無いのも事実。このままタバサの勝利は揺るがないと思われた。
「こらこら君達、何を遊んでいるのだね。もうすぐ授業が始まるぞ?さあ、教室に戻るんだ」
だが思わぬ伏兵がそれを阻む。
「コルベール先生!!」
通りすがったコルベールが三人に声をかけたのだった。
予期せぬ助けに、水銀燈は思わず歓声をあげる。まさかの援軍が駆けつけて来たのだ。
答えは2番、「仲間が助けに来てくれる」でした。正解者に拍手!
流石のキュルケとタバサも学院の生徒である以上、教師には逆らえない。
「フフッ…運がいいわね。面白かったわ。それじゃ、またね!」
キュルケは水銀燈に手を降ってにこやかに去っていく。特にコルベールの介入に何も思ってないようだ。
要は場が面白ければ結果はどうでもいいらしい。
「……………」
だがタバサはそうはいかない。無言ながら憤りを隠せない様子である。千載一遇のチャンスを逃したのだから無理も無いだろう。
彼女にしては珍しく顔をしかめ、水銀燈とコルベールをジト目で見やると渋々踵を返して教室へ向かって行った。
「助かったわぁ。コルベール先生」
水銀燈は遠ざかるタバサの後ろ姿にホッと胸を撫で下ろした。
「やあ、ミス・水銀燈。なにかね?君はあの二人に苛められていたのかい?」
「そう言う訳じゃないけれど。……むしろ友好的すぎて、ねぇ?」
困り顔ながらも微笑んで水銀燈は言う。
それを見たコルベールは、この異邦のお人形がうまく、このハルケギニアに順応していると受け止め安堵した。
「安心したよ。どうやらここでの暮らしを楽しんでいるようだ」
「ええ。毎日退屈はしないわねぇ。ちょっと刺激的過ぎる気もするけど」
魔法使いとの決闘や巨大な土のゴーレムとの死闘。幻想的な舞踏会。
そして何より、魔法使いのミーディアムや友人を得た事。元の世界では絶対に体験出来ない事だ。
確かに貴重ながら、刺激的過ぎる経験と言えるだろう。
「すまないね。私もオスマン氏も、君を返す手段を探してはいるのだが……」
「……仕方ないわよ。私もそう簡単に帰れるとは思ってないわ」
申し訳なさそうなコルベールに水銀燈が一つため息をついて答えた。
「なにぶんこのようなケースは初めてなのだよ、ミス・水銀燈」
「私の事は呼び捨てで結構よ。何だか変な感じだもの」
「ああ、分かったよ。水銀燈」
「あと、帰る手立ては私も一応は調べるけど、正直アテにできる人間なんて貴方達しかいないの。…そこの所はよろしくお願いするわね」
「ふむ、善処しましょう」
「頼りにしてるわよ。それじゃ、ごきげんよう」
そしてその場から水銀燈は立ち去ろうとする。
「少々待ってくれないかね?」
だがコルベールが彼女を呼び止めた。
今日は実に待てと言われるのが多い日だ。
…そしてどれもがろくな用件じゃなかった。
「なぁによぉ?コルベール先生」
露骨に顔をしかめて振り向いた先には鼻息荒く興奮ぎみな髪の薄い中年教師の赤い顔。
なに?このオッサンそんな趣味があるのか?フィギュアフェチってレベルじゃないぞ?
「例の学院長室での君の世界についての話に、非常に興味があってね…」
幸いそっちの気は無さそうだが、流石の水銀燈もこの鬼気迫る表情には引いてしまった。
さっさとこの場から離れたいのだが、がっしり肩を掴まれそうも行かない。
「是非ともその世界の話を詳しく伺いたいのだよ!もしかしたら帰れる糸口が見つかるやもしれぬ。いや!きっと見つかる!!」
コルベール先生必死。自分の研究のために一直線!やはり彼も火系統のメイジ、燃える男と言ったところか。
「強引ねぇ…。ま、別に私は構わないけど」
その熱意に打たれたのかは知らないが、帰る手立てになるのならと水銀燈はあっさり承諾した。
尚、この後水銀燈は有ること無いこと適当にコルベールに話し、彼に自分の世界について多大な誤解を植え付ける事になるのだが、
それはまた別のお話し。
モフりてぇ……! 支援
一方、こちらは教室へと向かうキュルケとタバサ。自分の横でムスッとした顔のタバサを見てキュルケが思う。
(この子がこんなにも感情をおおっぴらにするなんて珍しいわね。おまけにいつになく饒舌だし)
頬を大きく膨らませて(貴重映像)何やら小さくブツブツ言っているタバサ。
聞き耳をたてると、「もう少しで…」だの「次こそは…」、「はげちゃびん…」だの彼女がいかにご立腹なのかがお分かりいただけるだろう。
(何事にも無関心な人形みたいな子が、人形との出会いで感情を露にするなんて……何だか不思議な話ね)
そうしてクスクスと含み笑いしていると、いつの間にか横のタバサが自分を見上げていた。
「……笑った」
「へっ?」
キュルケは突然怒りの矛先を向けられ驚きの声をあげる。
「い、いや。別に私はあなたの失敗に笑ってた訳じゃなくてね!」
「うるさい、うるさい、うるさい」
タバサはそんな言葉に聞く耳持たず、杖でポカポカキュルケを叩き出す。
「ちょっとタバサ!痛い!痛い!」
「モフモフ未遂の恨みー」
「私のせいじゃないわよ〜!」
八つ当たりながら感情を露にしてぶつけてくるタバサだが、実はキュルケはそんな親友の様子を嬉しく思っていた。
後ろをチラリと見やると膨れっ面で追いかけてくるタバサの姿。
「ありがとね。水銀燈!」そのきっかけとなった少女の名前を呟き、キュルケは教室に滑り込む。
「逃がさない…」
親友のキュルケが何を思ってるのかも露知らず、続いてタバサもまた教室に滑り込んだ。
支援
これは支援
――次の日の朝。
「ふぅ…やっぱり起きないわぁ」
「今日も起きねぇなぁ」
安らかな寝息を立てるルイズを前に、昨日と同じように水銀燈とデルフリンガーが呆れて言う。
「大丈夫よ。対策は既に立ててあるからぁ」
「…姐さん昨日も似たような事言って無かったか?」
「案ずる事は無いわ。今回はタバサの発案よぉ!」
(十分心配だっつーの)
デルフの不安はさておき、水銀燈は自信満々に翼を大きく広げ、そこからプツリと一枚羽を取った。
彼女は人差し指と中指でそれをはさみ、騎士が剣でも構えるかのように自分の顔の前に掲げる。
「目ー覚ーめーよー!」
そして昨日のタバサよろしく、こちょこちょルイズの鼻をくすぐり出した。
「……ん…」
早速反応が出た。鼻をヒクヒクさせながらルイズの寝顔が眉を潜めだす。
「手応えありね…!」
「お?こいつぁ、もしかたら」
思いの外、効果的な様子にデルフリンガーも期待の声をあげた。
気を良くした水銀燈が引き続きルイズの鼻を刺激し続けると、鼻のムズムズ具合がより一層顕著となった。
「ふぁ…ふぁ、ふぁっ…!」
「いけるぜ!姐さん!」
「さあルイズ!起きなさい!」
水銀燈の羽を持つ手にも力が入る。
ルイズの目覚めはもう間近だ!
「まいけるじゃくそん!!」
奇妙どころか異常な言葉で大きなくしゃみをしつつ飛び起きるルイズ。
作戦は成功し、少々のお小言はあるだろうが、このまま爽やかな朝を迎えられるかと思われた。
だが――
『ずぼっ』
「あっ、」
「アッー!」
水銀燈が驚きの声をあげ、ルイズが短く叫ぶ。
それに『ずぼっ』?何だこの音。
そんな今の彼女達の状況を見て見ると……。
ルイズの鼻の穴に水銀燈の細い二本の指が突っ込まれていた。
想像してみて欲しい。こめかみにヒクヒク血管浮かせて鼻に指突っ込まれたルイズと、口をあんぐり開けて唖然とした表情でミーディアムの鼻に指をいれる水銀と……
い、いや!想像しなくていいです!そんな酷い光景想像しなくて結構です!!
全国のルイズファンの皆様が大変お怒りなのは分かりますが、
今、筆者を殺ると物語が進まないのでバラすのはもう少し待って下さい……。
コホン…話を元に戻します。
実況中継を挟むなwww 支援
非常に重い沈黙が支配する中、ひらひらと舞う黒い羽が床に落ちた。水銀燈がルイズの鼻を刺激していた物だ。
それと同時に重々しく先に口を開いたのはルイズだった。
「……ふぇ、ふいひんほぅ」(ねえ、水銀燈)
「へっ!?」
鼻声な上に怒気のこもった声のプレッシャーに水銀燈が萎縮する。
「ほんほぅは、はえれはいほほふらんでるへひょ」(本当は、帰れない事恨んでるでしょ)
「べっ、別に恨んでなんかぁ!」
「ほにはふ、ゆひぬいへふへふ?」(とにかく、指抜いてくれる?)
「あ…?。…え、ええ!!」
慌てて指を抜く水銀燈。ルイズはゆらゆらと自分の机へと歩き、その上にのった何かを手に取る。
「やっぱり一度派手にしつけたほうが良いわよね〜?」
顔をピクピクさせて振り向いたルイズが持っていたのは魔法の杖だった。
「あ…ああ……!」
水銀燈の顔から、彼女には無縁な筈の血の気が引いて透き通るような白い顔がよりいっそう白くなる。
(あたしの時は寝惚けて杖持ったあの子に、爆殺されるところだったんだもの!危なかったわ〜)
あの時のキュルケの言葉が蘇った。
……いや、今のルイズはお目目ぱっちりで寝惚けている訳ではない。明確な怒りを水銀燈に向けているのだ。
状況はキュルケのケースより悪い、て言うか最悪。
(爆殺……!)
もう一度物騒な言葉を反芻した水銀燈は、それを見るやいな窓へと一目散に向かう。
吹いたwww
支援
「逃がさないわ!」
昨日と同じ轍は踏まない!と、ルイズは早口でルーンを刻み杖を水銀燈へと振った。
瞬間、水銀燈は窓ガラスにダイビングヘッドをかまし外に飛び出す。
納刀時ルイズに背を向け、ダッシュ中に×ボタン!今の彼女なら、これで飛竜の突進やブレスをも回避する事もできるだろう!!
「うおおおおおおおおおおおーーーーーーーーっ!!」
決死の脱出に水銀燈、絶叫。それは彼女には似つかわしくない、まことに男らしい雄叫びだった。
ガッシャーン!と言う窓を破る音が響くと同時に、彼女をとりまく時間の流れが遅くなる。
ゆっくりと宙を舞うガラスの破片、振り向けばルイズの杖が光を発し始めていた。
どこぞのマッチョな州知事を思わせる見事なハリウッドダイブ。
もしくは監督もこなすカンフーマンみたいな鮮やかな香港回避(NGで大怪我とかマジ勘弁)。
次の瞬間!!
『ドッカァァァァァーーーーン!!』
水銀燈が飛び出した直後。突き破った窓を跡形も無く吹っ飛ばす程の激しい爆炎が、ルイズの部屋から噴き上がった!!
まるでアクション映画のクライマックスのワンシーンだ。
粉々になった破片やら瓦礫が降り注ぐ中で、九死に一生を得た水銀燈は、はぁはぁ息を切らしてモクモクと白煙あがる部屋を見つめた。
(ジャ…、ジャンクにされるところだった……)
そして安堵すると同時に怒りを覚え始める。
「ああもう!わざとじゃないのに!不慮の事故だったのに!何で私がこんな目に会わなくちゃいけない訳ぇ!?」
大声でそう叫んで水銀燈は空の彼方へと翼をはためかせて飛び去っていった。
ルイズは自分の魔法により崩壊した部屋の中で、杖を降り下ろしたままたたずんでいた。
「ケホッ…」
一つ咳き込んではかれる白い煙。錬金の授業の時と同様ルイズは外傷こそ無いが、着ていたネグリジェは所々焼け焦げ、桃色の髪は寝癖がさらに悪化した上に煤だらけ。
まさに踏んだり蹴ったり。
「ああーっ!まーた逃げられたーー!!」
ルイズは廃墟となった部屋の中で、またも地団駄踏んで悔しがる。
「水銀燈!!私が帰ってくるまでにちゃーんと部屋元通りにしときなさ……はっ、はっ…まえだたいそん!!」
そして空の彼方の使い魔に向けて文句を言いつつ、もう一つ大きなくしゃみをした。
だから何なんだ、そのろくでなしみたいなくしゃみ。
(相変わらず無茶苦茶言う娘っ子だぜ……)
部屋の片隅にいたため爆発こそ最小限に抑えられた物の、瓦礫に埋もれたデルフリンガーが思う。
「ほんと、破天荒ぶりもいい勝負だよ。おめーさん達」
ハンカチ噛んで悔しがってるルイズと、お空の向こうに飛び去った水銀燈二人に、決して聞こえない声でデルフは呟いた。
キラーくいーん……! 支援
何て感情を表に出すタバサだ(w
支援
ちょwwww ろくでなしブルースwwww 支援
投下完了。
改めてお久しぶりです皆様。支援ありがとうございました!
ルイズのくしゃみの元ネタ…わかる人いるかなぁ
あまり内容の無い話ですが、後々生きてくる予定なので勘弁して下さい。
さあ!俺を殺せぇぇぇぇーーーー!
何つーくしゃみだよw支援
生きろ……
そなた(のSS)は美しい……(ギャグ方面へ)
ミーディアムGJ
ミーディアム氏投下乙そしてGJでした
モフモフしたがるタバサ可愛いよタバサ
ジョジョネタとくしゃみで盛大に噴きました
フフ、くしゃみのお蔭で『皇帝』の弾丸も偶然避けられるぜッ!ということかね?
おお…ブラボー!!
884 :
侍の人:2008/05/06(火) 22:21:15 ID:/8xdPDJT
ミーディアム氏GJです。
久しぶりに投下しても良いかな。駄目かな。
さっすが連休最終日どんどん投下がある!
侍の方カモーン!
いいとも いいとも いいところ〜
鼻に指を突っ込まれるとダンプに襲われる。
サムライサムライトレビヤーン
くしゃみが中の人つながりとは気が付かなかった。
890 :
侍の使い魔:2008/05/06(火) 22:31:40 ID:/8xdPDJT
坂田銀時の気分は最悪だった。
あの後朝までルイズとは時間無制限ルール無用の一本勝負をやることなり
結局眠れなかった。
その上二日酔いで未だに頭が痛い。
ルイズの機嫌は結局直らず銀時に鎖をつけようとする。
「だから言ってんじゃねえか、俺はロリコンじゃねえって。
てめえのその貧相な体に欲情するぐらいなら火トカゲに欲情したほうがまだましだっつーの」
「なんですってー、この馬鹿犬ー!!」
鞭を持ち出し銀時をしばくルイズ。
そんな光景が朝の教室で繰り広げられている。
−この凶暴女、神楽よりたち悪いだろ。
「全くルイズったら、ねえダーリン、あんな凶暴な御主人なんかやめて私の使い魔にならない」
「何言ってるのよ、銀時は私の使い魔なんだから!!」
キョルケとルイズはまた言い争いを始めた。
銀時の頭痛が二重の意味で痛くなった。
「ダーリンは私は馬鹿だと思う、胸の大きい私のこと馬鹿だと「うるせー!!!」
キュルケは銀時を自分の胸に誘いこもうとしたが銀時は大声を上げて拒絶した。
「てめら2人ともうるせーんだよ、こっちは二日酔いで頭痛がひどいんだ。
俺は寝る、もう寝る、絶対寝る、おこしたら殺すかんね」
そう言ってあいてるせきをベッド代わりにして銀時はいびきを立てて眠った。
ルイズは最初は他の生徒達と同じように唖然としていたが、銀時の態度に腹を立てて
おこそうとしたがちょうどその頃教室の窓が開きミスタ・ギトーが入ってきた。
支援
892 :
侍の使い魔:2008/05/06(火) 22:35:23 ID:/8xdPDJT
ミスタ・ギトー、冷たい雰囲気と自分の魔法の才能を鼻にかけるその態度から
学園でも1、2を争う不人気教師である。
「では、授業を始める、知ってのとおり私の2つ名は『疾風』のギトーだ」
教室はシーンとしてその様子を満足げに見たギトーはことばを続けようとしたが
「グー!!」
教室には銀時の大きないびきが響いた。
ギトーはこめかみを引きつらせながらゴホンとせきをして
「最強の系統は知ってるかね?ミス・ツ「ガー!!」
ついには銀時のいびきがギトーの言葉をさえぎった。
ルイズははらはらした目で銀時を見るが相変わらずよだれをたらして気持ちよさそうに眠っている。
ギトーはついに教壇からおり銀時の眠っている席まで来た。
「この男はミス・ヴェリエールの使い魔ではないかね。
ミス・ヴェリエール君は使い魔の躾もできないのか」
「も、申し訳ありません」
ルイズは青い顔をしながらあやまる。
「ふん、まあ『ゼロ』という二つ名をもつ君にはぴったりの使い魔ではあるがな」
今度はルイズの顔が赤くなった。
−くやしい
実際教師達がルイズを魔法も使えない無能なメイジだと思っているのは知っていたが
こうまで露骨に言われたのは初めてだ。
「全く主人も主人なら使い魔も使い魔だ、ほら、起きろこの平民」
体を揺らして銀時を起こそうとするギトー。
「ん、・・う・・うるせー!!」
「ごは!!」
起き上がった銀時はギトーに思いっきりヘッドバットをかけた。
893 :
侍の使い魔:2008/05/06(火) 22:36:36 ID:/8xdPDJT
後に吹っ飛び尻餅をついたギトーに銀時は『洞爺湖』を手に取り叩きつける。
「うるせーんだよ、おこしたら殺すって言ったじゃねえか、もう少しでパフェ食えるとこだったのに
食えなかったじゃねえか」
「おい、やめ、ゴフ!!痛い!!やめ」
杖を出す暇もなく銀時にぼこぼこにされたギトー。
ようやく落ち着いた銀時はギトーを見る。
「ん、誰だ、こいつ」
「教師のミスタ・ギトーよ」
キュルケが銀時に教えた。
「貴様、メイジに暴行ふるってただで済むと思ってるのか!!ミス・ヴェリエールとも
この学園から追い出してやる」
「ルイズ」
「な、何よ」
「穴掘っててくれねえか、人1人分入るくらいの・・」
その言葉に回りはざわざわする。
しかし、誰も止めようとする者はいない。
むしろ、巻き込まれたらたまらんと皆目線をギトーからはなし無視するようにする。
銀時は今度は『洞爺湖』ではなく立てかけていたデルフをギトーに突きつけた。
「チョ、待て・・」
ギトーはガタガタふるえ怯えだした。
「まあ、アニメ版や漫画版で存在ごとスルーされたキャラが一人いなくなっても
たいした影響はないよな」
銀時の言葉にギトーは泣きながら立ち上がった。
「ちくしょー!!どうせ俺なんか名前のあるだけのモブキャラだよ。
二次創作ではかませ犬キャラだよ」
泣きながら教室から出て行った。
「あ、自覚はしてたんだ」
銀時はとりあえず剣をおさめた。
「相棒、えげつねえな」
「ちょっと、なんて事してくれたのよ、私が退学になったら・・・」
「貴族のお嬢ちゃん、その心配はねえよ、もしあいつが嬢ちゃんを退学しようとしたら
自分が平民にぼこぼこにされたって周りにばらすようなものだ、そしたらあいつはメイジとして
死んだも同然、それを知った上で相棒はさらに脅して念には念を入れたのさ」
キュルケはデルフのその言葉に驚いた。
「じゃあ、さっきのは・・」
「嘘に決まってんだろ、たががこいつのために殺人犯になる気はねーっての」
894 :
侍の使い魔:2008/05/06(火) 22:38:14 ID:/8xdPDJT
また教室のドアが開いた。
「あのー、どうしましたか、さっき廊下で血まみれのミスタ・ギトーが
泣きながら走ってしましたが」
教室に入ってきたのは妙な仮装をしたコルベールだった。
「ああ、大したことないっすよ、コッパ、コルベールのおっさん」
「ちょっと今コッパゲって言おうとしなかった、ねえ」
「そんなことないっすよ、コル、コッパゲのおっさん」
「何でわざわざ言いなおすんだ!!コルベールで良いだろうが」
そんなこんなで授業は中止になり、トリスティンの姫が視察に来ることを知らされた。
窓際には生徒達が集まっている。
どうやらお姫様が到着したらしい。
「トリスティン王国王女、アンエリッタ姫殿下のおなーーりーー!!」
馬車から降りたアンエリッタに姫に生徒達は歓声を送る。
「あれがトリスティン王女、ふん?あたしのほうが美人じゃない」
キュルケはつまらなさそうに呟く。
「ねえ、ダーリンはどっちが綺麗だと思う?」
キュルケの問いに銀時はさらにつまならさそうにあくびをしながら答える。
「可愛いだけのガキに興味はねえよ、くだらねえ事聞くな」
そしてまた席をベッド代わりにして眠り始めた。
そんな銀時と同じように今回の姫の来訪に興味がない生徒が1人だけいた。
タバサは寝ている銀時の横で静かに本を読んでいた。
895 :
侍の使い魔:2008/05/06(火) 22:40:41 ID:/8xdPDJT
夜 ルイズの部屋
あの姫が来てからルイズの様子がおかしかった。
どことなく落ち着きがなく、上の空という感じだった。
銀時も変だとは思った。
いつもだったら銀時がやったことを散々叱り飛ばし、
部屋の隅を指で掬い埃を見せ、『掃除がなっちゃいないわ、使い魔失格ね』
とお前は姑かというようなことを言うはずなのに。
−考えてみたら実害がない分、今のほうがましか。
銀時はルイズをほっとくことにした。
ドアからノックする音が聞こえる。
妙に法則性のあるノックの仕方だった。
ルイズはそのノックの音にはっとするが
すでに銀時がドアを開けていた。
「どなたさんっすか、こんな夜遅く」
そこにいたのは真っ黒な頭巾をかぶった少女だった
少女は出てきた銀時に驚いたようで、
「え、どなたですか?」
「おーい、ルイズ、客みたいだぞ」
銀時は少女の問いに答えずルイズを呼んだ。
「あなたは・・・」
ルイズは少女を見て驚いたような声を上げた。
少女は杖を取り出すと、短くルーンをつぶやいた。
「・・ディティクトマジック?(探知魔法)」
ルイズの問いに少女はうなずく。
「どこに耳が目が光っているのかわかりませんからね」
少女はそういいながら頭巾を取った。
銀時はその少女の顔に見覚えがあった。
−ああ、アンなんとか姫じゃなかったけ。
「姫殿下!」
ルイズはその顔を見ると慌ててひざをついた。
「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ」
支援
む?どうなった支援
898 :
侍の使い魔:2008/05/06(火) 22:50:43 ID:/8xdPDJT
投下完了です。
長くほっといてすいません。
その割には短いし(汗)
サブタイトル絶賛募集中
投下乙でした〜
次回からアルビオン編?
銀さんですから「めんどい」の一言で同行しないかも?w
銀様&銀さん乙
>>898乙です
サブタイ案
「お姫さまだってほぼお前らと同じことやってんだよ」は?
う〜ん次のタイトルかな?
902 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 23:23:48 ID:MInZpUFm
GJ。
次回も銀さんの活躍楽しみにしてまーす。
ZERO A EVILのヒト 乙
なかなかワイルドなルイズでカッコイイかも
ブラック・ルイズなんだろうけど
救いがあるといいな
>>836 大丈夫。何処ぞの聖闘士は皆頭ッから垂直に地面に落下、
岩盤割る位の勢いで叩き付けられても生きてるから
>>904 急降下爆撃機に乗ってて対空砲に被弾して足が吹っ飛んでしまい、
後部機銃席の銃手に「足が無くなってしまったぞ!」と言ったら
「足無くなったらそんな普通に話せるわけがないだろ常考」
と突っ込みを入れられたパイロットだって実在するしな。
>904
吹き飛ばされた衝撃で数本の石の柱を砕いた上にそれだからなぁw
>>904 いや、それ比較対象からして既に根本的に間違えてるからw
ルーデル自重・・・してほしいようなしてほしくないような
事実はSSよりも奇なり
>>898 相変わらず銀魂節が最高です。
銀さんそりゃ禁句ー。人間本当の事はっきり言われる方がよっぽど頭くるもんだよなぁ。
サブタイは『原作で気に入ってるキャラがアニメ化ゲーム化で登場するとは限らない』なんてのは・・・まんま過ぎるか。
>>906 「あー、死ぬかと思った」と言って立ち上がって欲しいw
912 :
黒:2008/05/07(水) 00:41:35 ID:JhvK5XFT
ちょっと今から投下します。
数レスで終わるので。
警戒!
撤退
俺には見えた!
灰になったアタル兄さんがギーシュを受け止める姿が!
916 :
黒:2008/05/07(水) 00:44:16 ID:JhvK5XFT
第一話 受難
空は暗雲に覆い尽くされ、その暗雲からは雷鳴が地表に向けて放たれる。
空から落ちてくる無数の大粒の雨粒は男の全身を濡らして服に染みを作っていくが、
服以外の部分 ―ヘルメットなど― についたものは男の操縦するバイクの速さによって
振り落とされていく。
男の人生はある日を境に狂ってしまった。
その男、南光太郎は日食に日に生まれた。幼い時に両親を事故で亡くした光太郎は、
同じ日に生まれた父の友人・秋月総一郎教授の息子秋月信彦と兄弟同然に育てられた。
光太郎と信彦が19歳の誕生日を迎えた日、2人は暗黒結社ゴルゴムによって誘拐されてしまう。
ゴルゴムは2人を次期創世王候補とするため、光太郎の体内にキングストーン「太陽の石」を埋め込み世紀王ブラックサンに、
信彦の体内にキングストーン「月の石」を埋め込み世紀王シャドームーンに改造する。
しかし、息子達から人としての記憶だけは消させまいと乱入した秋月教授の手引きによって、脳改造を受ける寸前に脱出した光太郎は、
ゴルゴムが世紀王のために用意していたバイク形生命体・バトルホッパーを駆り、仮面ライダーBlackを名乗ってゴルゴムと戦った。
そしてゴルゴムは壊滅させられ、地球の、人類の未来は守られた。
だが、その代償として、光太郎は自分の親友だった信彦=シャド―ム―ンを救えなかった。
その悔恨の念を振り飛ばすかのように、光太郎の乗るバイクは走り続ける。
しばらく走ると道は曲がりくねった山道になった。
周りにはうっすらと木が生えていて、いつもなら木々の隙間から木漏れ日が道を明るく照らしているのだろうが、
今日はあいにくの天気のせいで道は暗く、土砂降りの雨の音と雷鳴だけが聴覚を支配していた。
いつのまにか山道は急な上り坂に入っていた。
山道の上り坂、特にカーブのところでは見通しが悪くなる。
彼の鋭敏な聴覚はすでに雨の音に支配されていて、あまり役に立ちそうになかった。
だから、彼が自分に向かって突っ込んでくる対向車のタイヤの音に気がつかなかったのも仕方なかった。
そして、彼は気がついたときには彼はバイクから振り飛ばされていて、だから、彼がその進行方向に光るゲートができていたことに気がつくはずはなかった。
917 :
黒:2008/05/07(水) 00:46:51 ID:JhvK5XFT
第2話
遭遇
木製の天井。
彼が目を開けてから最初に目にしたものだった。
次に自分の寝ているベッド。
病院のベッドにしてはやけに立派だ。
患者にダブルベッドを使わせる病院なんて聞いたことがない。
そしてピンク色の髪の少女。
誰だろう。学生服を着ているが、ピンク色の髪の学生の知り合いなんていないはずだ。
顔を横に向けて寝たままの状態で周りを見ていると、少女と目が合った。
「やっと気がついたのね。」
君は一体誰なんだ? そう訊こうとしたが、俺が口を開けるよりも早く少女が口を開いた。
「ここはトリステイン魔法学院よ。あなたは使い魔召喚の儀式で私に召喚されたの。わかる?つまり、あなたには今日から私の使い魔になってもらうわ。それで、」
「ちょっと待ってくれ。その、トリなんとか学院って、ここは病院じゃないのかい?」
「トリステイン・魔法学院。病院じゃないわよ。」
「学院ってことは、どこかの学校の中ってことだよなあ… でも、どうして俺が学校に?」
「だから、私に召喚されたからよ。」
「その召喚って一体… それに使い魔って……」
「ああもう、使い魔も知らないなんてあんたの故郷はどれだけ田舎なのよ!」
新学期の使い魔召喚の儀式の日。
魔法が使えないルイズは平民を呼びだした。
黒い髪に見慣れない変わった服。
年は20歳弱だろうか。
その上全身びしょ濡れで、体に怪我までしている。
使い魔召喚は伝統ある儀式で、一度召喚した生物と必ず契約しなければならない。
「どうして私が平民なんかと….」
918 :
黒:2008/05/07(水) 00:47:39 ID:JhvK5XFT
その日の夜。
ルイズと名乗った少女の部屋には彼女と、男がいた。
無論夜這いなどではなく、今日召喚した使い魔だ。
いつのまにか外は暗くなり、双月が太陽の光をうけて煌々と輝いている。
「やっぱり信じられないわ、月が一つしかない異世界から来たなんて。証拠でも見せてもらわなきゃ信じられないわ。」
「証拠っていったって…」
少女の疑念の眼差しが痛い。
「そうだ。これなら信じてくれるかい?」
そう言ってズボンのポケットを探り、財布を取り出す。
「故郷のお金さ。ここじゃこんなお金はないだろ。」
そう言って夏目漱石の描かれた紙幣を見せる。
「お金って、これ紙じゃない。……あんた、私を馬鹿にしてるの?」
「え、いや、本当にこれはお金だって。紙幣っていって、これに書いてあるだけの金と交換できるってちゃんと政府が保証してるんだよ。」
「紙をお金にするなんて、あんたのいた国はそうとう貧乏みたいね。」
「それで、もう夜だし、いい加減にもとの場所に返してほしいんだけど。」
「帰る方法なんてないわよ。」
サモン・サーヴァントは召喚するだけ。つまり片道切符だ。まして光太郎が本当に異世界から召喚されたのならそれをもとに戻す方法など、見当もつかない。
「召喚されたからには使い魔の仕事をきちんとやってもらうからね。まず・・・」
「ちょっとまってくれ!帰れないってどういうことだよ。」
「だから、言った通りよ。サモン・サーヴァントはランダムにハルケギニアから生き物を召喚するの。一度使い魔と契約したら、その使い魔が死ぬまで2度とサモン・サーヴァントはできないわ。」
目の前が真っ暗になる。
「一応言っとくけど、あんたは平民で、しかも使い魔。私は貴族。いい?平民が貴族と一緒の部屋に住めるなんて普通は絶対にあり得ないのよ。同じ部屋に住まわせてもらえるだけ感謝しなさい。それで・・・・・」
目の前の‘貴族’の少女は俺がいかに幸せで、感謝すべきかをくどくどと言ってくる。
―自分で勝手に連れてきておいたくせに―
その上平民の俺は犬だと言ってきた。何か栄誉なことでもしたらご褒美をくれると。
―俺はニンゲンだ―
考える前に、体が動いていた。
その場から無言で立ち、部屋のドアに歩み寄る。
「ちょっと、どこ行くのよ。まだ話してる途中よ。」
「ここを出ていく。短い間だったけど世話になったよ。じゃあね。」
光太郎は、無表情と怒り、それにかすかに侮蔑を織り交ぜた表情で言った。
919 :
黒:2008/05/07(水) 00:49:49 ID:JhvK5XFT
とりあえず投下終了。
仮面ライダーBrackから南光太郎を召喚。
とりあえず今日は書けたところまで。
支配したがるマジシャンは倒されちゃうぞ
キングストーンがストッキングに見えちまったorz
ブラックは好きなんで期待してるけど、書いてすぐ投稿ってのは後からあらが出るかもよ
RXにしなかったのはせめてもの情け?
923 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 01:18:33 ID:1Uu7gCJl
題名は「黒」 ・ ・ ・ なのか?
なんだかえらく駆け足だけど。
sageてね
sage
ブラック大好きだからRXじゃなくてもいいよ。RXも好きだけど。
仮面ライダーは良い。
誰か仮面ライダーになりたかった戦闘員からスカルライダーが召喚されるの書いてくれないかな。
三次創作禁止っぽい感じだから無理か。
RXの方も呼ばれてた記憶が。
ならいっそばんぺいくんRXを
929 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 03:28:19 ID:1Uu7gCJl
それならば ‘ダンポー’なんかどうだろ。
お金入れると目がピカーっとww そして知らないメイドが増えてたり^^
ブラックにRX……。
幼稚園児時代にはまっていたが、いまやさっぱり話覚えてないなあ。
DVDとかはでてないっけか……。
ともあれ今後に期待!
小ネタのDTCの、ルイズから見た日記を投下しても宜しいでしょうか?
ちなみに、DTCの作者とは別人ですが(^^;)
帰れ
そんじゃ、帰ります
続きじゃなくて、別のDTCを自分で書けばいいじゃない
そしてその日記ってことにすればいいじゃない
テンプレ通りの小ネタだし
DTC読んでなくてもわかる形にして。
続編じゃなく別のDMCクロスとしてなら問題ないんじゃない。
空の境界から橙子
なのはからフェイト
の二人を召喚するSSを昼休みに思いつきました。
家に帰って夜9時ごろに投下するので予約しときますね。
テンプレも読めない馬鹿は他所へ行きなさい
>>937 空の境界はタイプムーン関連作品だから
>>6にリンクがある姉妹スレにしとけ。
多重クロスなら避難所への投下が無難だぞ。
・クロス元が型月作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
お前ら釣られすぎだろ・・・
過剰に反応する人が居るから、止めておいた方が無難。
「あの作品のキャラがルイズに召喚されました」
「あの作品のキャラがシエスタのご先祖でした」
につづく新しいスタイル、
「あの作品のキャラが幼女ルイズの家庭教師になりました」
というのを思い付いた。
6歳ぐらいのルイズの家庭教師になって彼女を教え導く。
どんな家庭教師がいいと思う?
ゴージャス宝田先生の作品から……ゲフンゲフン
アバン先生の復帰を願いますか。
トリスティン絶体絶命教室とか?
トリスティン漂流教室だろJK
次スレ立ててくっかな。
地獄先生ぬーべー、稗田礼二郎、リボーン、キャプテンブラボー、間抜作、
桜木建二、木村先生、山田伝蔵、アレクサンド・アンデルセン神父のどれかだな
別に先生、教官キャラでなくても良いと思うよ。
むしろ、教職とは無縁なキャラの方が面白くないか。
そんなに沢山挙げられてるのにアティ先生がでないのは何故なんだぜ?
というわけで俺が復活望む。
955 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 14:53:35 ID:1Uu7gCJl
ちょうど読んでた「お・り・が・み」から伊織高瀬!!
2巻で新任教師やってるしぃ^^
さぞや幼いルイズを弄ってくれるだろうww
みんな、何を言ってるんだ!
幼女といえばクワトロ・バジーナ大尉に決まってるじゃないか
目をかけていた少女が成人したら捨てて逃げた最低男か。
板違いだな。
>>956 ルイズがトリステイン摂政となって実権を欲しいままにすると申したか
>>957 いや、成人するよりずっと前に逃げてたぞあの最低男
カブトより天道総司
吉と出るか凶とでるか危ういけど、間違いなくルイズは完璧超人へと成長するだろう。
>>945 それって妄想レベルならともかく、実際書くとなると相当難易度高いな。
何せ「何処の馬の骨とも知れない、トリステインにおける社会的信用がほぼ存在しない事が確定のキャラが、
如何にして大貴族であるヴァリエール家の令嬢の家庭教師に納まるか」と言うかなり厄介な問題点があるし。
どんな出会いをするにしても、最低限ヴァリエール公爵辺りの信頼を得ておく必要はある。
実際、本題である家庭教師になるまでの展開が結構長くなると思う。
まあ、書くとしたら本スレじゃなくて避難所だろうけどな。
じゃあ、教師といえば・・・・・・ラーメンマン先生召喚
>>960 それなら都庁にお住まいのメフィスト先生でどうだろう?
彼なら美しさだけで処々の問題は全部解決だ。
問題になるとすれば少年の日のワルド氏の貞操くらいのものだな。
>>959 妹みたいに毎回喜んで飯食ってるだけになるかもしれんぞw
カブトボーグで書きてぇ……
ところで小ネタの前編を投下したいんだがいいかな
召喚キャラはパタリロで場面はアルビオン
ストプラの尾杜。ルイズが危ない
>>965 拒否する理由は無い
存分に投下したまえ と・いふワケで支援しえーん
>>967 dクス、んじゃ
つぶれあんまんな使い魔 前編
アンリエッタからの密命を受けてようやくウェールズ王子と出会えたルイズ一行だが、
王党派の命運は既に風前の灯であった。
ルイズは問う。
「王党派に勝ち目はないのですか?」と。
ウェールズは返す。
「無いね。 我らに出来る事は逆賊達に勇敢な死に様を見せつけることだけさ。」と。
部屋の中には悲壮な空気が漂うが、そこに全く空気を読んでない笑い声が響いた。
「ほっほっほっほっ、ほ〜〜〜ほけきょ!」
ルイズはすかさずその笑い声の主の、肉に埋もれた首根っこを両手で思いっきり引っ掴んだ。
「……あんたって奴は〜、よくもこんな状況で笑っていられるわね!
しかもウェールズ様の前で!!
死ね!死になさい!私が引導を渡してあげるわ!!」
そのルイズの形相に驚いたワルドは少しの間硬直していたが急いでルイズを引き離そうとする。
「落ち着くんだ、ルイズ!
確かにその使い魔君は無礼極まりない事を言ったと思うがウェールズ王子の目の前だぞ。」
その言葉に我を取り戻したルイズは両手を離してウェールズに対して何度も頭を下げて謝罪をするが、
肝心の使い魔の少年は恐ろしいほど堂々としている。
「ま、まぁ良いさ。
それよりもこれから最後のパーティが始まる時間だ、君達も……」
気を取り直したウェールズがルイズ一行をパーティーに伴おうとすると、少年がウェールズに問う。
「何故、最後なんだ?
あの程度の戦艦相手なら軽く勝てそうだが。」
5秒ほど時が止まった。
硬直が解けたルイズが飛びかかろうとするのをすかさず抑えたワルドが少年を諌めようとする。
「いくらウェールズ王子が心が広いとはいえ暴言がすぎるのではないかね、使い魔君?」
「僕ならあの程度の戦艦はイチコロだぞ。」
全く動じずに言い返す少年に対して怒りを覚えるワルドだが、当の少年は既にウェールズに話しかけていた。
「道具を揃えてくれないか? トンカチとかでいいから。
あと材料だ。 鉄製の物が望ましいな。
そして人手も要る。 出来れば土系統のメイジを数人だ。
こういう細かい仕事にはギーシュやコッパゲ先生がいれば心強いが、いない以上仕方がない。」
自分の言いたい事だけを言うと、少年は事態についていけないウェールズを引っ張って部屋を出て行った。
ワルドは心配げにルイズに問う。
「……もしかして本当に何とかできるのかい、あの少年には?」
「そんな無理よ、そりゃギーシュとの決闘で七体のゴーレムを駒鳥音頭なんていう変なダンスで一緒に躍らせたり
フーケの正体をあっさりと見抜いたりしたけど、あれだけの戦艦を持っている相手に勝つだなんて……。」
ルイズは諦めの表情で答えるが、ワルドはもの凄く嫌な悪感を感じていた。
例えるなら後一歩でゴールという所でいきなりスタート地点に戻されて、考えるのをやめたくなるようなそんな感じを。
「と、とにかくルイズ、我々だけでもパーティーに出席しようじゃないか。
ウェールズ王子と使い魔君の事は僕から城の皆に話しておこう。」
「でも主賓であるウェールズ様がいない状態で……」
「大丈夫さ、さあ早く。」
するとワルドは大胆にもルイズをお姫様抱っこで抱きかかえてパーティー会場へと向かった。
ルイズは心中で『抱きかかえられたままお城の中を歩くなんて、頭がフットーしちゃうよぉっ!!』
とパニックになっている。
ワルドの方は『嫌な予感はするが、いくらあの少年が虚無の使い魔とはいえあれだけの戦艦と5万の兵相手では勝ち目はあるまい。
それよりルイズを僕のモノにするためには僕のカッコよさを彼女にアピールしなければならない。
逆に考えれば二人きりの今夜がチャンスなんだ!』とこちらも別の意味でパニックになっている。
こうしてアルビオンの夜は更けていった。
翌日の朝、ルイズとワルドはウェールズ王子が城の大広間で何かの準備をしていると聞きある目的の為に向かっていた。
使い魔の少年がいない間に見事ルイズの心を掴み取ったワルドは駄目押しとばかりにここで結婚式を、
さらにその司祭役をウェールズ王子に頼みに行くのだ。
これから死を覚悟した戦いに向かう王子にそのような事を頼みに行く事は非常識ではないかと躊躇うルイズを
何とか説得したワルド、その真の目的は王子の暗殺である。
『三つの目的の内二つは、ルイズを口説き落としたことで達成したも同然。
そしてウェールズの暗殺が成功すれば僕のレコン・キスタでの立場は磐石となる!』
とはいえワルドが昨日から感じている嫌な予感はだんだん強くなってきているのだが。
そして大広間に来た二人の目の前には見た事のない様な奇妙な光景が広がっていた。
そこには精根使い果たしてグッタリとしているメイジが数人。
前と後ろに車輪がついている人が乗るには頼りないような薄い乗り物が数台。
その乗り物からでている紐の様なものが繋がった奇妙な鉄製の砲台らしき物、しかし砲身が異常に細くて銃の弾丸すら撃てそうにない。
オマケにきみょうな紐がその細い砲身をグルグルと巻かれており、砲身の基部にはピカピカ光る小さな部品までついている。
それらの物体の真ん中に、自信満々で立っているスマートなウェールズ王子と同じく自信満々だがへちゃむくれで肥満児な少年がいた。
「しかしだらしないな。 あれくらいでバテるなんて鍛え方が足りん証拠だ!」
と偉そうに言う少年に対して、ウェールズは苦笑いしながらこう返した。
「そう言わないでやってほしいな。
何しろこんな前代未聞なものをつくるんじゃ魔力を使い果たしてもしょうがないさ。」
いつのまにか気が合っているのは、使い魔の少年も元の世界で一国の王をしていたからだろうか?
二人の間に流れる和やかな空気に割り込めずにいたルイズに代わってワルドが二人に問いかけた。
「……ウェールズ王子、これはいったい?」
その声に今気づいたとばかりにワルドとルイズの方を見たウェールズは笑顔で答える。
「この使い魔君こと、異世界の国であるマリネラの国王パタリロ・ド・マリネール8世が作った秘密兵器さ。」
最強の美少年国王キタコレ支援
投下終了っす
後編は見直して明日投下します
>『抱きかかえられたままお城の中を歩くなんて、頭がフットーしちゃうよぉっ!!』
これってエロ少女漫画ネタだっけか
そのとおりw
幻海師範召喚でルイズが霊光波動拳を習得
しかしステキ魔法で師範が若返ったりすると
桃色髪キャラ二人になってしまう
遅レスすまんが
>>952 防人先生か鵺野先生で。他のメンツだとルイズが肉体的にか精神的にか社会的にかさだかじゃないが死にかねん。
>>947 全然違うのに、真冬の豪雨でトリスタニアが水没しつつある中を
ルイズその他諸々が逃げまどう光景が浮かんだ。
マルトー「水道もガスもだ!どっちも止まって使い物にならん!」
ルイズ「(…そんなものいつの間に取り付けたのよ…)」
>>975 真性ロリとロリババアか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
イイネ!b(*´∀`*)d
埋めましょうかね( ´ー`)y-~~
では1000取りを開始します。
>>1000なら彼氏彼女の事情の宮沢雪野を召喚。
>>1000なら格ゲーキャラが家庭教師に。
ポニーテールで帽子かぶったルイズが「OK!」
足癖の悪いルイズが「悪はゆるさん」
鋭い手刀で真空波を飛ばすルイズが「go to hell」
1000ならBOF2のリンプー召喚
1000なら遊戯王5D'sの不動遊星召喚
1000なら内原富手夫を召喚
>>1000なら
蒼い炎を使うルイズが「そのまま死ね」とかいう物語がうpれる
1000なら桐山和雄召喚
1000なら雄山召喚
おまいら召喚する気ないだろw
1000なら2ちゃんねる召喚
991 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/07(水) 19:28:03 ID:+NfuQpFW
千なら俺が何か書く!
1000ならデュグラディグドゥ召喚
1000ならぐちゅこ召喚
1000ならガンドロワ召喚
1000ならリンク召喚
1000ならダークスター召喚
1000ならおキヌちゃん召喚
1000ならウルド召還
1000ならハセヲ召喚
1001 :
1001:
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。