あの作品のキャラがルイズに召喚されました part127
もしもゼロの使い魔のルイズが召喚したのがサイトではなかったら?
そんなifを語るスレ。
(前スレ)
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part126
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1207007723/ まとめwiki
http://www35.atwiki.jp/anozero/ 避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9616/ --------------------------------------------------------------------------------
__ ■ 注意事項よ! ちゃんと聞きなさいよね! ■
〃 `ヽ . ・ここはあの作品の人物がゼロ魔の世界にやってくるifを語るスレッドよ!
l lf小从} l / ・雑談、SS、共に書き込む前のリロードは忘れないでよ!ただでさえ勢いが速いんだから!
ノハ{*゚ヮ゚ノハ/,. ・投下をする前には、必ず投下予告をしなさいよ!投下終了の宣言も忘れちゃだめなんだからね!
((/} )犬({つ' ちゃんと空気を読まないと、ひどいんだからね!
/ '"/_jl〉` j, ・ 投下してるの? し、支援してあげてもいいんだからね!
ヽ_/ィヘ_)〜′ ・興味のないSS? そんなもの、「スルー」の魔法を使えばいいじゃない!
・まとめの更新は気づいた人がやらなきゃダメなんだからね!
--------------------------------------------------------------------------------
_ ・議論や、荒らしへの反応は、避難所でやるの。約束よ?
〃 ^ヽ ・クロス元が18禁作品であっても、SSの内容が非18禁である場合は
J{ ハ从{_, 本スレへの投下で問題ないわ。
ノルノー゚ノjし ・SSの内容が18禁な展開をする場合はクロス元に関わらず、
/く{ {丈} }つ 本スレではなく避難所への投下をお願いね?
l く/_jlム! | ・クロス元が型月作品のSSは、本スレでも避難所でもルイズの『錬金』のように危険よ。やめておいてね。
レ-ヘじフ〜l ・作品を初投下する時は元ネタの記載も忘れずにね。wikiに登録されづらいわ。
・作者も読者も閲覧には専用ブラウザの使用を推奨するわ。負荷軽減に協力してね。
--------------------------------------------------------------------------------
,ィ =个=、 ・お互いを尊重して下さいね。クロスで一方的なのはダメです。
〈_/´ ̄ `ヽ ・1レスの限界最大文字数は、全角文字なら2048文字分(4096Bytes)。これ以上は投下出来ません。
{ {_jイ」/j」j〉 ・行数は最大60行で、一行につき全角で128文字までですって。
ヽl| ゚ヮ゚ノj| ・不要な荒れを防ぐために、sage進行でお願いしますね。
⊂j{不}lつ ・次スレは
>>950か480KBからお願いします。テンプレはwikiの左メニューを参照して下さい。
く7 {_}ハ> ・重複防止のため、次スレを立てる時は現行スレにその旨を宣言して下さいね。
‘ーrtァー’ ・クロス先に姉妹スレがある作品については、そちらへ投下して盛り上げてあげると喜ばれますよ。
姉妹スレについては、まとめwikiのリンクを見て下さいね。
・一行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えます。
SS文面の区切りが良いからと、最初に改行いれるとマズイです。
レイアウト上一行目に改行入れる時はスペースを入れて改行しましょう。
2 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 02:48:16 ID:GKg6eUti BE:744164249-2BP(30)
_,,....,,_ _人人人人人人人人人人人人人人人_
-''":::::::::::::`''> ゆっくりしていってね!!! <
ヽ::::::::::::::::::::: ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
|::::::;ノ´ ̄\:::::::::::\_,. -‐ァ __ _____ ______
|::::ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__ ,´ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、
_,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7 'r ´ ヽ、ン、
::::::rー''7コ-‐'"´ ; ', `ヽ/`7 ,'==─- -─==', i
r-'ァ'"´/ /! ハ ハ ! iヾ_ノ i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i |
!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ レリイi (ヒ_] ヒ_ン ).| .|、i .||
`! !/レi' (ヒ_] ヒ_ン レ'i ノ !Y!"" ,___, "" 「 !ノ i |
,' ノ !'" ,___, "' i .レ' L.',. ヽ _ン L」 ノ| .|
( ,ハ ヽ _ン 人! | ||ヽ、 ,イ| ||イ| /
,.ヘ,)、 )>,、 _____, ,.イ ハ レ ル` ー--─ ´ルレ レ´
.-"::::::::::::`::..、
>>1 ヽ:::::::::::::::::::::::::::`'::.、 かわいいぜ… _______
|::::::;ノ´ ̄\:::::::::::\_,. -‐ァ ,. -''"´ `' 、
|::::ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__ ,'´ ,. -‐ァ'" ̄`ヽー 、`ヽ
>>1 _,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7 // `ヽ`フ 乙だわね…
.:::::rー''7コ-‐'"´ ; ', `ヽ/`7 / .,' /! /! ! ハ ! ',
r-'ァ'"´/ /! ハ ハ ! iヾ_ノ ! ノ-!‐ノ ! ノ|/ー!、!ノ ,.ゝ
!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ ,ノレ' rr=-, r=;ァir /! ノ
`! !/レi' rr=-, r=;ァ レ'i ノ ノ ! /// ///"! ヘ(
,' ノ !' /// ///i .レ' ,.ハ ''" 'ー=-' "'! ',ヽ.
( ,ハ 'ー=-' 人! '! ト.、 ,.イ i .ノ
,.ヘ,)、 )>,、_____, .イ ハ ノヽ,! i`>r--‐ i´レヘ ノ
( )',.イ ヽ、__ノ 「ヽ.レ'ヽノ ヽ(へ レィr'7ア´ ̄`ヽ. )'
ノヽ/ ';::ヽ、/iヽノ::i Y ノ /イ Y
ri !:::::::`ー┘:::! i rくヽ/!ノ __ ,ゝ
./ヽー-,イ:::::::::::::::::::::!ンi /`/::メ:::`ヽ、_二、___イ
ルールじゃないけどマナー上しておく方が良い事・システム上の注意事項
投下時はタイトルをコテハンとする、トリップ推奨
予告でクロス元他必ず説明する(一発ネタ等でばらすと面白くないならその旨明示)
※過去「投下してもいい?・投下します」等の予告から
最低の荒らし投稿を強行した馬鹿者が居たため同類認定されるリスク極大
1時間に一定量超える投下は「さるさん」規制に遭うので注意
連投規制には有効な支援レスもこれには何の役にも立たない
文章量(kB)と分割予定数の事前申告をしておけば、規制に伴う代理投下をしてもらいやすい
投稿量カウントも規制も正時(00分)にリセットと言われている
他スレでの実験により規制ボーダーは8.5kBらしいという未確認情報あり
このぐらいまで単純化できそうな気がする。
爆発召喚
キス契約
「ゼロ」の由来判明(教室で爆発)
使い魔の能力が明らかに(ギーシュ戦)
デルフ購入
フーケ戦
舞踏会
最近はその流れでいかに飽きない話を作るかに凝りがち
>>16 爆発
平民プゲラ
コルベール問答無用さっさと汁
キス契約
フライに唖然とする
説明はぁどこの田舎者?
何者であろうと今日からあんたは奴隷
二つの月にびっくり
洗濯シエスタと接触
キュロケフレイム顔見見せ
みすぼらしい食事厨房でマルトー
教室で爆発片付け
昼食シエスタの手伝い香水イベント
オスマンコルベール覗き見
ギーシュフルボッコ場合によって使い魔に弟子入り
キュルケセクロスの誘いしかし使い魔はインポテンツか童貞w
ルイズ寝取られの歴史を切々と語る
休日街でデルフ入手 キュルケタバサがついてくる
ルイズが爆破訓練宝物庫破壊フーケ侵入お宝げっと
この段階でフーケは絶対つかまらない
翌朝捜索隊保身に走る教師一同
教育者オスマン犯罪捜索を未熟な子供にマル投げ
小屋で破壊の杖ゲットフーケフルボッコしかし絶対死なない
オスマンから褒章 舞踏会 終わり
● 「こっ、こっ、こっ、こっ、こっ、この…バカ犬っ!!!」
┠〜〜〜┐ちゃんとここにいてぇ、わたしのちかくでぇ
┃ ● ∫ ずっとわたしをい〜んつもい〜んつもみ〜んつめてなぁさぁ〜い
┠〜〜〜┘ よそみしてたでしょ、ほかのおんなのこぉ〜
┃ おしおきするのふぅ〜らりふぅ〜らりふぅ〜らちなやつうは
┃ (ん、ちゃちゃちゃちゃちゃちゃ)
┃ どんたーちきかないからねいーいーわ〜けは
┃ たちみーつ〜んかれたかぁ〜ら
┃ ね・え・かたをっかしてよっ
┃ す〜き〜よ〜ンなんてうそ〜よっ
┃ き〜ら〜い〜ンこれもうそだわん
┃ ないないないぃだめよかんちがいぃ〜〜〜〜〜っ
┃ だからすぅきぃよっなんていわない
┃ のんのんのんどっこかへいったら
┃ ぜえったいにっゆるさないからねぇ〜〜〜〜ん ・・・だぁって
┃ ほんと〜はだれ〜よ〜りそンばンにンいンたあ〜いの
┃ あ〜い〜の〜く〜さ〜り〜でっさんっぽっしましょ
敬礼 (`・ω・´)ゞ
だからなんで
>>10をテンプレに入れるんだよ。
これは作者たちを馬鹿にするためにだれかが作ったんだろ。
”おまえらこれの繰り返ししかやってない"って。
バカにされてるのに言いえて妙だと喜んでる本物のバカに何言っても無駄だ
つまりテンプレ展開をぶっちぎってる数少ない作者はすごいって事だな。
プロット作るのに便利だよ、テンプレ。
呼ぶキャラをとりあえず当てはめてみて、そのままやればいいところ
変えた方がいいところをそれから洗い出してみればいいし。
無意味にぶっちぎりすぎると、今度はゼロ魔キャラを使ったオリジナル
になっちゃうしね。
そこの兼ね合いが難しいな。
というかなんで>>7と
>>9で同じ物書き込んでんの?ミスったか?
テンプレをなぞるのではなく、オリジナルストーリーに
テンプレの一部を随時入れていく、というのではどうか?
ギーシュ決闘の理屈もSSオリジナルだしなぁ
決闘せんでいいだろって思うのが多々ある
予約なさそうなら15分ごろ投下したいと思いまする。
支援
しえーん。
もう一体の心まで悪魔になった人修羅も期待だけど、こっちの人間味を残す人修羅も期待ー。
ルイズの部屋では、人修羅が数冊の本を前にして頭を抱えていた。
ハルケギニアの言葉はなぜか理解できるが、文字の判らない人修羅は、ルイズに文字を教わっているのだ。
「じゃあ今日はここまでにしましょ」
そう言ってルイズが本を閉じる、その本は『イーヴァルティの勇者』という絵本で、ハルケギニアの人間なら誰もが知っていると言われるおとぎ話だった。
「不思議だな、すらすら頭に入ってくるよ。英語は赤点ばかりだったのに」
人修羅は両手を上に上げて背伸びのポーズをした、ううんと唸って背中を反らすと、深呼吸してだらんと腕を下げる。
「英語?」
「うん。俺がいた世界じゃ、国が違うと言葉が違うのが当たり前だったんだ。外国の言葉を学校で習うんだけど、物覚えが悪くてさ」
「とてもそうは思えないわ、見たこともない文字を、貴方三日で読めるようになったのよ」
「たぶん、ルーンの効果じゃないかな」
「…かもしれない。これも後でオールド・オスマンに報告した方が良いわね」
「そうした方が良さそうだね」
人修羅は椅子から立ち上がると、絵本を本棚にしまった。
ルイズは寝る準備をするのか、上着を脱いで椅子の上に置いていく。
召喚されたばかりの頃と違って、ルイズは人修羅に裸を見せなくなっていた、人修羅を一人の人間として意識したせいか、思い出すと顔が真っ赤になる。
「あ、そうだ。ルイズさんにちょっとお願いがあるんだけど」
「何?」
肌の透けにくいネグリジェに着替えたルイズが振り向くと、人修羅は服を着て外に出て行こうとしていた。
「この間言っていた…トリスタニアだっけ。そこにお店とか無いかな。よければシーツとか買いに行きたいんだけど」
シーツと言われて頭にクエスチョンマークを浮かべたルイズは、人修羅の現状を考えてみた。
人修羅に渡した寝具は毛布一枚、今まで文句を言わなかったので気付かなかったが、決して良い仕打ちとは言えない。
「あ、そうね。悪かったわ。ちゃんと寝床も準備するべきだったわね。大きいモノは困るけどベッドぐらいなら買ってあげるわよ」
「いや、シーツだけでいいんだ。干し草をクッションにするから」
「はあ?」
ルイズは間抜けな声を出して驚いてしまった、人修羅は召喚される前にどんな生活をしていたんだろうか。
洗濯は慣れないと言っておきながら、人修羅は細かいところにも気が利く、ルイズの寝るベッドは綺麗に整えられているし、掃除も行き届いている。
それなのに、干し草で寝床を作ると言い出す、人修羅の生活水準が想像できず、ルイズは頭を混乱させた。
「ほ、干し草なんて使わなくて良いわよ、第一散らかるじゃない。美観も損ねるわ」
「ああそれもそうか、確かに寝ていると潰れそうだし、散らかりそうだよな」
「とにかく、ちゃんとベッドは買ってあげるから。明日は虚無の曜日だから街に行きましょ、私も買い物に行きたいしちょうど良いわ」
「街かあ…そうしてくれるとありがたいよ。それじゃあお休み」
「ええ。おやすみ……」
ルイズがぱちんと指を鳴らすと、部屋のランプが消え、部屋の明かりは月明かりだけになる。
人修羅は毛布を被って寝ているが、手の甲と顔から微弱な光が出ており、座ったままの姿で寝ているのがよくわかってしまう。
ごそごそと寝返りを打ち、人修羅から目をそらす。
目を閉じたルイズは、召喚したいと思っていたドラゴンやマンティコアが召喚されたらどんな生活をしていたのかを想像した。
だが、どうしても途中から、実際に呼び出された人修羅との生活を思い浮かべてしまう。
人修羅は優しい、調子に乗って奇妙なことを言うが、なんだかんだ言って『ゼロのルイズ』を肯定してくれる。
口からドラゴン顔負けのブレスを吐き、いくつもの先住魔法を使えて、しかも体は金属のゴーレムより丈夫らしい。
なぜ、そこまで実力のある存在が、私の使い魔になってくれたのだろうか。
「う… う…っ」
人修羅はどんな夢を見ているのだろうか、突然、うなされるような声を上げた。
(手加減ができないんだ…だから、守りたい人まで巻き添えにするよ)
そう言っていた人修羅の瞳はとても悲しげだった、過去にどんなことがあったのだろうか、もしかしたらそのせいで悪夢を見ているのだろうか?
藁束で寝床を作るとか卑屈な態度を取るのは、人修羅の過去が関係しているのだろうか?
……と、そんなことを思いながら、ルイズは眠りに落ちていった。
ちなみに人修羅は、アルプスの山頂から干し草のベッドに包まれて転がり落ちる夢を見ていた。
■■■
二人は翌日の午前中に、馬で魔法学院を出発した。
正午には城下町に到着する予定だ。
「馬は初めてなの?」
「ああ、普通の馬なんて初めて乗ったよ、意外と大人しいんだなあ」
翌朝、ルイズ達は馬に乗って、トリスタニアを目指していた。
人修羅は最初、走って行くだけの体力はあるから大丈夫だと断ったが、ルイズは二人分の馬を借りたと言って強く騎乗を求める。
仕方なく馬に乗ることにしたが、ふつうの馬に乗るのは初めてなので、流石の人修羅も少し困惑を見せた。
ルイズの得意なものといえば、それは乗馬であった。
人修羅に少しでも主人らしさを見せつけたくて、二人分の馬を借りたのだ。
その意図を知ってか知らずか、人修羅は乗馬の心得などをルイズに質問する、おかげでルイズはいつになく上機嫌だった。
「初めて乗ったにしては、ちゃんとしているじゃない」
「そうかな?自転車と違うし、何より生き物だから、ちょっと怖いよ」
「情けないわねえ。ほら、もうちょっと速くするわよ」
「おっ、とっとっ…お手柔らかに頼むよー」
慣れぬ馬上でバランスをとる人修羅を見て、ルイズは唇の端をかわいらしく曲げて笑った。
■■■
一方その頃、キュルケは昼前になってようやく目を覚ました。
虚無の曜日なので授業はない、窓を眺めると、ガラスが破れていることに気がついた。
ベッドの下からはい出してきたフレイムが、ぐわぉ、と鳴いた。
「フレイム、おはよ。……ああ、そうだわ、気分じゃないって言って、断ったんだっけ」
昨晩、かねてからの約束の通り、窓からキュルケの部屋にお邪魔しようとした恋人たちは、哀れにも「気分じゃない」の一言で追い払われてしまった。
いい加減眠くなってきたので後のことをフレイムに任せて、キュルケは窓から落ちていく恋人達の悲鳴を聞きながらぐっすりと寝た。
フレイムが言うには、合計六人ほどが窓から入ろうとしたらしい。
しかしキュルケはそんなことを全く気にせず、起き上がって化粧を始めた、化粧を終えると部屋を出てルイズの部屋に行く。
コンコン、とノックをしつつ、今日はどうやってルイズをからかおうかと考えた。
魔法を使い、ドラゴン並のブレスを吐き、体術にも優れた人修羅に、抱きついてキスでもしてあげようか。
キュルケには人修羅に対する恐怖など無い、むしろ年下の男の子をからかうような、そんな気持ちで接することのできる数少ない人物なのだ。
それにルイズをからかって、悔しがらせることもできる、そう考えるとキュルケはますます心がウキウキしてくるのだった。
……しかしノックの返事は無い。
おかしいと思ったキュルケは、すぐさまドアを開けようとしたが開かない、鍵がかけられているのだ。
キュルケはすぐさま『アンロック』の魔法をかけた、校則では使用禁止になっているが、そんなことはお構いなしだ。
「相変わらず色気がない部屋ねえ……あら?」
部屋を見渡したキュルケが、あることに気がついた、ルイズの鞄が無い。
いつもならテーブルの上に置かれている鞄が、ベッドの上にも棚の上にも床にも無い。
今日は虚無の曜日なので、何処かに出かけたのだろうと考え、窓から外を見渡す、するとルイズと人修羅らしき二人組が、馬に乗って城下町の方向へ向かっているのが見えた。
「なによー、出かけるの?」
残念そうに呟くと、ちらりとルイズのベッドを見る。
部屋に入ったときから気になっていたが、この部屋にはベッドが一つしか無い、そこでキュルケは悪戯を思いついた子供のように、にやりと笑う。
キュルケがルイズの部屋を飛び出してから数分後、キュルケとタバサの二人はシルフィードの背に乗って、ルイズ達の後を追った。
■■■
ルイズと人修羅は、馬をトリステイン城下町門前の駅に預けると、トリステインの城下町へと足を踏み入れた。
人修羅にとってトリステインの町並みは、テレビで見た西洋の風景によく似ていた、違うのは魔法があることぐらいだろうか。
きょろきょろと辺りを見回して、生活の水準や、商売の種類などを目に焼き付けていく。
まるでおとぎ話の世界、しかしこれは紛れもない現実だった。
何よりも街行く人々は皆、何かしらの個性があって、質素でも色とりどりの服や喜怒哀楽の表情を浮かべている。
「マネカタじゃないんだな…」
東京とはまるで異なるハルケギニアの文化ではあったが、城下町のにぎやかさは人間の営みを実感させてくれた、それはもう戻ることのない、人間として生きていた東京を彷彿とさせ、人修羅の心に不思議な暖かみを灯していった。
「ここがブルドンネ街よ、トリステインで一番大きな通り、まっすぐ行くとトリステインの宮殿があるわ」
「大通り?これが……意外と狭いな」
「狭いって…どういうことよ」
ルイズが聞き返すと、人修羅は少し申し訳なさそうに答えた。
「ごめん。悪気はないんだけど、俺が居た国で大通りって言ったら、この五倍かそれ以上はあったんだ」
「この五倍も?」
ルイズが信じられない、と言いたげな表情をしていると、人修羅が更に言葉を続ける。
「うーんとね。石よりも木が豊富な土地だったんだ。だから昔は木の家が多かったんだけど、火事が起きるとすぐ燃え移っちゃう。だから道路を広くして燃え広がるのを防いだんだ。道が広いのはその名残らしいよ」
「ふぅん、それが貴方の国なの?でも木の家なんて脆そうね」
「その代わり増改築がし易いんだ。地震と台風の多い国だから、屋根は飛ばされない程度に重く、建物は崩れにくい程度に軽いのが求められた…」
「ジシン?タイフウ?」
「ああ、聞いたこと無いかな。地震は地面が揺れることで、台風は定期的にやってくる大きな嵐のことだよ」
「……そんな国で生まれたの?生きるのにも大変じゃない……そっか、だから人修羅は…」
なにやら人修羅の丈夫さについて、変な形で納得してしまったルイズ。
その隣には、小学生の頃に読んだ『漫画○○の歴史シリーズ』に感謝する人修羅の姿があった。
■■■
「ルイズさん、ちょっと聞きたいんだけど」
人修羅がルイズに顔を近づけ、小声で囁く。
「どうしたの」
ルイズが不思議そうに聞き返すと、人修羅は懐に入っている財布の感触を確かめつつ、こう答えた。
「この街スリが多い?」
「!」
ルイズが驚いて目を見開く。
「財布は無事だけど、なかなか油断のできないところだね」
「大丈夫なの?」
「まあ何とか」
「そう…気をつけてね」
ルイズはどこか申し訳なさそうに人修羅を見た、それがなんだかわからずに、人修羅はきょとんとする。
「貴族は全員がメイジだけど、中には貴族を追われて、盗賊や傭兵になるものがいるわ。念力でも使われたら一発ですられちゃうわよ」
「ああ、やっぱりさっきのは念力か」
「念力で盗られそうになったの!?」
「探られてるような感じだったよ、ポケットの中に入ってる財布だけに力をかけるなんて、器用な真似するね」
「でも、ほんとに大丈夫?」
「大丈夫、盗られやしないよ」
「違うわよ、こんな町中でブレスなんて吐かれたら困るもの」
「しないよ!」
まったく人のことをなんだと思っているんだ、と言いそうになったが、ふと自分がアクマなのを思い出した。
アイスブレスを使ったのは迂闊だったかなぁ…と思いながら、人修羅は苦笑いを浮かべていた。
■■■
ルイズと人修羅は、その後すぐ寝具屋を見つけ、中に入っていった。
その様子を物陰から見ている二人組のうち、背の高い赤毛の女性は、わぁおとわざとらしい声を上げた。
「ルイズったら、男性に寝具を送る意味わかってるのかしら? さ、いきましょ」
キュルケが物陰からでて寝具屋に向けて歩き出す、その後をタバサが続いた。
「出来ないことはありませんが、ちょっと値が張りますねえ」
「幾らぐらいになります?」
「そうですね、新金貨で…」
「え、そんなにするんですか」
人修羅は、常設用のベッドを断って、折りたたみ式のベッドを頼もうとしていた。
ルイズの部屋を圧迫しないように気を遣っているのだが、かえって値が張ってしまうようだ。
「ベッドの一つぐらい、大きすぎなければ大丈夫よ。そこまで気にしなくていいのに」
「そう言ってくれるのはありがたいけど……あれ?」
人修羅は店に入ってくる二人組の姿に気がついた、ルイズも数秒遅れて店の入り口を見ると、そこには笑顔で手を振るキュルケと、タバサの二人がいた。
「ツェルプストー?何でこんなとこに居るのよ」
「つれないわねえ、ダーリンと出かけるなら言ってくれればいいのに」
「ダーリンって…まさかあんた人修羅に手を出す気じゃないでしょうね!」
「あらヴァリエール、いたの?」
「ぐっ」
ルイズが悔しそうに歯噛みするが、キュルケはそれを意に介した様子もなく、人修羅に抱きついた。
「ダーリン♪ ベッドなら私のを使えばいいじゃない、ルイズと一緒に寝たって、あんな平坦なの、何のおもしろみもないでしょ?」
「なっ、なっ、なっ、なー!?」
キュルケの過激な発言に、ルイズは顔を真っ赤にして狼狽える。
「あら、今までまさか床で寝かせていた訳じゃないでしょう? ねえダーリン、こんな店じゃなくて、ゲルマニアから取り寄せた最高級のベッドで夜を過ごさない?」
キュルケが抱きついたまま囁く、だが人修羅はキュルケを片手で押しのけると、無言で店の外へと出て行った。
「ちょっと人修羅、どこ行くの!」
ルイズが慌てて店を出る、キュルケもきょとんとしていたが、タバサと顔を見合わせると、二人の後を追って店を出て行った。
「やれやれ、貴族様の痴話げんかか」
初老の店主は、そう呟くとため息をついて店の奥へと引っ込んでいった。
■■■
「ちょっと人修羅!もう、どうしたって言うのよ」
無言のまま歩き続けていた人修羅は、通りの一角にある広場を見つけると、そこの噴水前に腰掛けていた。
ルイズが人修羅の前に立ち、腰に手を当てて人修羅を見下ろしている。
キュルケとタバサの二人は、ルイズの後ろで同じように人修羅を見ていた。
「……その、人前で、あの会話は何というか、その」
「さっきの会話がどうかしたの?」
わからない、といった態度でルイズが問いかける、すると人修羅は顔を上げて深呼吸をし、小声で呟いた。
「はずかしかったんだ」
「「へ?」」
「だから、その…俺女の人に抱きつかれるとか、ちょっと照れちゃって…」
そういって人修羅は顔を覆った。いつものポーカーフェイスだが、視線はルイズたちからはずれている。
キュルケとルイズは、呆れてしまったのか口を半開きにしていたが、しばらくするとルイズは意外そうに、キュルケは可笑しそうな表情になっていった。
「人修羅、もしかして、恥ずかしくて…逃げたの?」
「だからそう言ったじゃないか」
ルイズの質問に、恥ずかしそうに答える人修羅を見て、キュルケはついに笑い出した。
「ぷっ…あははははっ、もう、ダーリンったらシャイなのねぇ、いやだもう、かわいいじゃない」
「かわいいとか言うなよ、ああもう。俺はどうせチェリーだよ。マジ焦った…」
頭を抱える人修羅を見て、キュルケが笑顔のまま顔を近づけて質問した。
「ねぇねぇ。ちょっと聞かせて。夜はルイズと一緒に寝てるの?」
「こっちじゃどうなのか知らないけど、俺は女の子と同じベッドで寝るような教育はされてないよ」
「あらあら、よかったじゃない。貧相なヴァリエールも女の子扱いしてくれてるわよ」
にやにやと笑うキュルケに、ルイズはいよいよ杖を取り出しそうになった。
こんな町中で魔法を爆発させるわけにはいかないので、杖に伸ばした手が、杖をつかむ手前で静止している。
「……あー、とにかく、いきなり店から出て行った事は謝るよ」
「分かったわよ。ツェルプストーが襲いかかってきたんだから、不問にしてあげるわ」
ルイズは無い胸を張って、偉そうな態度で人修羅を許した。
その様子がおかしくて、キュルケはまた笑い出した。
そんな三人の様子を見ていたタバサは、空き部屋を使うとか、使用人の部屋を使わせればいいのに…と考えていたが、あえて何も言わないことにしていた。
■■■
結局、寝具屋に戻った人修羅は、一通りの寝具を注文した。
首の後ろに生えている角に合わせて、穴の開いた枕を一つ。
それとベッドは大きすぎるので、貴族の軍人が野宿するときに使う、折りたたみ可能なクッションを買うことで落ち着いた。
これなら折りたたむか、丸めて立てかけるだけで片づけられる。
人修羅はいつかルイズに借りを返さなきゃなぁと思いつつ、照れ隠しに頭を掻いた。
寝具屋から出た人修羅は、ルイズに案内されながら大通りを歩いていた。
「水差しか、壜の形した看板があるけど」
「あれは酒場よ」
「バツ印は?」
「衛士の詰め所よ」
なるほど、と呟く人修羅にキュルケが話しかける。
「ねぇねぇダーリン、トリステインよりゲルマニアの方が活気があるわよ。もっと派手に看板を掲げているわ。見たら目移りするわよ、きっと」
「何よ、そういうのは慎みがないって言うのよ」
ルイズが不機嫌そうに呟く、人修羅はその間に挟まれて冷や汗をかいた。
ふと隣を歩くタバサに視線を移すと、一瞬だけ人修羅に視線を合わせてきた。
『助けて』
『無理』
二人のアイコンタクトは、この場に限り完璧に通じていた。
■■■
「ところでさ、武器とかって売ってるの?」
「武器?あるにはあるけど…人修羅にも武器なんて必要なの?」
ルイズが意外そうにしている、キュルケもルイズほどではないが、不思議そうな目で人修羅を見ていた。
「いや、オスマン先生がさ、ガン……武器を使った方がいいって言ってたし」
ガンダールヴ、と言いそうになって、人修羅がハッとする。
このルーンがガンダールヴかどうかは、まだ誰にも言ってはいけないと釘を刺されていたのだ、それはキュルケやタバサにしても同じであった。
「……そうね。武器で戦った方がかえって目立たない、って言ってたものね」
「そうそう、そういうこと」
ルイズは人修羅の言いたいことを察してくれたのか、適当に話を合わせてくれた。
コルベールは、ガンダールヴはあらゆる武器を使いこなしたと言われているのを知って、人修羅に武器を手にしてみるよう頼んでいた。
オールド・オスマンは、人修羅の強力すぎる力をそのまま発揮させるより、武器やマジックアイテムを使って多少ごまかした方がよいと考えていた。
そのためにも、武器を買ってくるようにと以前言われていたのだ。
一行が狭い路地裏に入っていくと、悪臭が鼻についた、ルイズなどは道ばたに捨てられたゴミや汚物を見て顔をしかめる。
「ここ、汚いからあまり来たくないんだけど」
いくつかの道が交差する場所で立ち止まると、ルイズは辺りをきょろきょろと見回し、剣が描かれた看板を見つけた。
「ピエモンの秘薬屋の近くだから、この店ね。さあ入るわよ」
一行は石段を上がり、羽扉を開けて中に入る、武器屋は魔法学院では見られなかった泥臭い雰囲気が漂っていた。
昼なのに薄暗く、ランプに明かりが灯されている。
壁や棚に所狭しと並べられた、剣や槍などの武器、そして甲冑などの防具類、どれも杖さえあれば事足りるメイジの世界とは違っていた。
「貴族の旦那、うちはまっとうな商売をしておりまさぁ。目をつけられるような事なんか、とてもとても」
店の奥から出てきた五十歳ほどの親父が、揉み手をしながらそう言ってきた。
パイプをくわえたまま器用に喋るその姿を見て、人修羅は『うわ本物のパイプだ』と思った。
「客よ」
ルイズが腕を組んで言うと、店主は驚いたように手を広げた。
「こりゃおったまげた。貴族が剣を! おったまげたー」
「どうして?」
「いえ、若奥さま。坊主は聖具をふる、兵隊は剣をふる、貴族は杖を振りなさる。そして陛下はバルコニーからお手をおふりになる、と相場は決まっておりますんで」
「使うのはわたしじゃないわよ。人修羅、良さそうなの、ある?」
「忘れておりました。昨今はヒトシュラも剣をふるようで……」
ヒトシュラって何?と頭にクエスチョンマークを浮かべた店主は、剣を見定めている男の姿に気がついた。
メイジの特徴であるマントを羽織った女性は三人、しかしこの顔に入れ墨を入れた男はどう見てもメイジではない。
「剣をお使いになるのは、この方で?」
人修羅を指さして店主が言うと、ルイズはこくりとうなずいた。
人修羅は店に並ぶ武器類を手にとっては、手になじむかどうかを確かめている。
「…?」
ナイフ、槍、弓などを次々に持ち替えていくと、人修羅は自分の体に伝わる違和感に気がついた。
武器を握った瞬間、体が軽くなる気がするのだ。
この感覚は、魔法で能力を強化した時に似ているが、まだ断言することはできない。
ナイフを買ってもらおうと思い、金属の質を確かめていると、店主が店の奥から長さ一メイルほどの、細身の剣を持ってきた。
見た目は華著で、柄は短く、手を覆うような形でハンドガードがついている。
それをルイズに見せると、主人は自慢げに呟いた。
「昨今は、土くれのフーケやらがずいぶんと城下を荒らし回っているようでございやす。そのせいか貴族の方々の間でも、下僕に剣を持たすのがはやっておりましてね。このレイピアはその際によくお選びになってらっしゃいます」
横から人修羅がのぞき込む、レイピアは煌びやかな模様で装飾されており、貴族に似合いの剣と言われれば納得してしまうような美しさだった。
「盗賊って?」
キュルケが質問すると、店主はへへぇと腰を低くして答えた。
「そうでさ。なんでも『土くれ』のブーケとかフーケとかいう、盗賊がおりまして、貴族のお宝を散埼盗みまくってるって噂でございやす。なんでもめっぽう腕の立つメイジの盗賊だそうで、貴族の方々はそれをおそれて下僕にまで剣を持たせる始末で」
ルイズは盗賊に興味はないので、ほとんど聞き流していた、差し出されたレイピアをじろじろと見ると、確かに綺麗だが頼りない、人修羅ならもっと巨大な剣でも使えるはずだ。
それこそ、体よりも大きいドラゴンを殺せる剣を軽々と振るだろう、と勝手に思いこんでいた。
「もっと大きくて太いのがいいわ」
「お言葉ですが、剣と人には相性ってもんがございます。男と女のように。見たところ、若奥さまの使い魔とやらには、この程度が無難なようで」
「大きくて太いのがいいと、言ったのよ」
ルイズが強く言い放つと、店主は頭を下げて店の奥に入っていった。
「…くくっ…」
「何よ、ツェルプストー」
「何でもないわよ…ぷぷっ」
キュルケは店主とルイズのやりとりを聞いて、何を連想したのか分からないが、とにかく可笑しかったらしい。
人修羅も気がついたのか、ルイズと目を合わさないよう顔をそらしていた。
「これなんか、いかがですかい?」
次に店主が持ってきたのは、先ほどよりさらに見事な装飾の施された、長さ1.5メイルはありそうな長い剣だった。
柄は両手で扱えるほど長く、ところどころに宝石がちりばめられている。
両刃の刀身は鏡のように美しく、力強さも備えていると思われた。
「店一番の業物でさぁ、貴族様のお供をさせるなら…」
店主は意気揚々と剣の説明をはじめる、人修羅はそれを聞きながら剣を手に取り、刀身を眺めて呟いた。
「だめだこれ」
「「「え?」」」
人修羅の言葉に、ルイズとキュルケ、そして店主が驚く。
「金属が不自然なぐらい柔らかい。変なムラがある…なんだろこれ、表面はメッキかな?」
「な、何を言われます、こりゃあ店一番の業物で、ゲルマニアのシュペー卿が鍛えたという代物でさぁ!魔法がかかっているから鉄だって一刀両断できますぜ!」
「魔法?…魔法ならさっき見た…えーと、その片刃の剣の方がよっぽど凄そうだけど」
「げっ」
人修羅が指さした剣を見て、店主が眉をひそめた。
その隙に人修羅は、じっと黙って武器類を見ていたタバサに目配せする。
『変な店主だな』
という意志を込めたはずだが、タバサはそれを別の意味で解釈した。
『この店主ナメやがってェ〜ッ!絶対許せんよなぁ〜ッ!』
こくりと、タバサは無言でうなずいた。
「試し切り」
「え?」
「試し切りすればいい」
タバサのつぶやきを聞いて、店主はますます顔を青くした。
ゲルマニアのシュペー卿が、魔法を付加した剣として仕入れたのは本当のことだ、しかしその魔法が触れ込みの通りに鉄でも切れるか自信はない。
「これ、幾らなの?」
すでに買う気になっていたルイズは、店主に値段を聞いた。
「へぇ…エキュー金貨で…その」
正直に設定値段を言っていいものかと困っていると、いつの間にかタバサが念力で剣の鞘を引き寄せていた。
キュルケが鞘をのぞき込むと、紐と紙がくくりつけられており、新金貨で3000と書かれていた。
「ふぅん、新金貨で3000ねぇ。エキュー金貨なら2000ね」
「立派な家と、森つきの庭が買えるじゃないの」
値段に驚いたのはルイズだった、いくら何でもそんな大金は持っていない。
店主はぎょっとして目を見開いた、わなわなと口を振るわせて、何とかごまかそうと言い訳を考える。
人修羅はその傍らで、やりとりを見ていた。
ちらりとタバサを見る、今度は『どーなってんの?』という意図を込めていた。
しかしタバサはそれを拡大解釈し『どーなってんだよこの親父、往生際が悪いなあ』と受け取った。
「……」
タバサがぶつぶつと何かを呟くと、店主の真横に、40サント四方の、綺麗な正四面体の氷が現れた。
「ひぃっ!?」
店主は突然の魔法に驚き、飛び上がる。
「鉄が切れるなら、氷ぐらい切れるはず」
タバサの無慈悲な言葉が、店主を絶体絶命のピンチに追い込んでいった。
「……」
タバサは人修羅に視線を移し、試し切りを促す。
「い、いや、試し切りなんて……別のものがあるじゃないか」
人修羅の呟きはつまり『別の剣を買えばいい』という事だった。
しかし店主は何を勘違いしたのか『別のもので試し切りすればいい』という意味で受け取ってしまった。
人修羅と、タバサの視線は、店主に集中している。
つまり、試し切りされるのは………
「あわわわわ…す、すいやせーん!もうしわけございやせーん!こ、殺さないでくださいー!試し切りはやめてくださいー!」
店主はその場に土下座した。
■■■
「あっはっは!さっきの店主、傑作だったわねえ。タバサったらやるじゃない」
キュルケが笑ってタバサの肩をたたく。
結局あの後、土下座して平謝りする店主から、ナイフ数本と『デルフリンガー』というインテリジェンスソードを無料で貰ってしまったのだ。
普段よく喋るというデルフリンガーが、人修羅の前ではあまり喋らなかったので、店主は怯えながらも、不思議そうに人修羅を見ていた。
デルフリンガーは『買われるならしょうがねえ』と一言呟いたっきり、何も喋ろうとしない。
一行は魔法学院に帰るため、城下町門前の駅を目指して、大通りを歩いていた。
「………」
人修羅がタバサを見る、どうしてあんな事をしたんだろうかと、質問しようと思ったが、根掘り葉掘り聞くのも悪い気がした。
しかしタバサは、何か不手際でもあったのかと思いこんでいた。
「…次はもっとうまくやる」
「あはは…」
人修羅は気まずそうに笑った。
「ねえ、でもほんとにそんな剣でいいの?」
ルイズが人修羅の背中を見つつ聞く、すると人修羅は背負った剣をチョンチョンと指先で触れつつ、答える。
「ん?これがいいんだよ、たぶんあの店の中じゃ一番丈夫じゃないかな」
『…って言うかよぉ、おめえ、ホントに俺が必要なの?』
人修羅が背負っている剣が、自信なさげに呟いた。
「まぁまぁ、そう言うなよ。それに俺、まだこの世界のこととかよく知らないしさ。頼りにしてるよデルフリンガー」
そういって人修羅が笑う、表情はほとんど変わっていないが、雰囲気がそれを感じさせてくれた。
『俺っちは話し相手じゃなくて、剣なんだけどなあ。まあいいか』
デルフリンガーも、ため息をつくような雰囲気を感じさせるあたり、体は剣でも雄弁さを備えているらしい。
■■■
夜。
人修羅は買ったばかりの剣、デルフリンガーで素振りをしていた。
場所は魔法学院本塔の、正面入り口脇、ここにはちょっとした花壇があり、腰をかけられるように石作りのベンチが作られている。
その傍らではルイズが、明滅するルーンを不思議そうに見ている。
「よっ、はっ……えいっ!」
剣を振り下ろして、ふぅとため息をつくと、人修羅は左手の甲についたルーンを見つめた。
振ったこともない剣の使い道、使い方が、自然に頭の中に入ってくる。
ナイフも同じだった、使ったこともないナイフの動かし方や、握り方、何よりも効率のよい力の出し方が頭に思い浮かび、しかもそれを体が勝手に実行する。
「ルーンの効果なのは間違いないよな」
「使い魔として契約すると、使い魔は特殊な能力を持つことがあるって聞いたことはあるけど、武器の使い方を知ったり、体が軽くなるなんて聞いたことも無いわ」
人修羅の動きを見ていたルイズが呟く。
先ほど、人修羅が武器を持たずに垂直跳びした時は、3メイルの高さまで跳躍した。
しかし何か武器を握ると、高さは10メイルまで伸びるのだ、それが不思議で仕方がない。
「不思議だなあ……あ、これなら60階から飛び降りても平気かな…」
人修羅の脳裏に浮かぶのは、赤いコートを着たスタイリッシュな男の姿。
高いところから飛び降りると瀕死になる人修羅と違い、スタイリッシュな男は平然としていた。
「不公平だよなあ…なんか裏技使ってるに違いない、ダンテのやつ」
人修羅はここにいない友人のことを思い出し、悪態をついた。
「…?」
ふと、背後に視線を感じる。
今日一日ずっと後をつけていた気配と、同じものだろう。
人修羅はルイズの隣に座ると、デルフリンガーをベンチに立てかけた。
「ところでさ、ルイズさん、今日はお客さんが一人いたの気づいてた?」
「一人?ツェルプストーとタバサじゃないの?」
「デルフリンガーは?」
『ああ、一人100メイルぐらい距離をとって、ずっと移動してるやつがいたな』
「え…?」
ルイズは困惑したのか、デルフリンガーと人修羅を交互に見た。
「たぶん、俺を見張ってたんじゃないかなぁ。生徒の安全のために見晴らせて貰うとか、オスマン先生が言っていたし……厨房の勝手口に隠れてないで、出てきたらどうですかー」
人修羅が呼びかけて数秒後、観念したのか、一人の女性が勝手口から姿を現した。
「ミス・ロングビル!」
ルイズが驚き、立ち上がった。
勝手口から姿を現したのは、学院長の秘書、ミス・ロングビルだった。
グリーンの頭髪が鮮やかな女性で、魔法学院内の教師や男子生徒からの人気は決して低くない。
「参りましたね、ずっと気づかれていたんですか?」
「消えすぎてる気配がずっと尾行していたんで、気になってたんですよ」
「消えすぎてる、とは?」
ロングビルが聞き返すと、人修羅は後頭部をぽりぽりと掻いて言った。
「人混みの中に誰もいないような、気配の空白がありました。それがずっと僕たちの後を追ってたので…俺を監視してるんじゃないかなぁと思ったんです」
ロングビルがくすりと笑みを漏らす。
「気づかれていたのでは仕方ありませんね。悪く思わないでください」
「いえ、どうせオスマン先生の差し金でしょう。その心配は当然だと思いますよ」
はははと笑う人修羅の腕を、ルイズが小突いた。
「気づいてたなら教えてくれてもいいじゃない」
「伝えるべきか迷ったんだけどね…せっかくお出かけしたんだから、野暮なことは言いたくなかったんだ」
人修羅がはにかむ、ルイズは仕方ないわねと呟いて腕を組んだ。
ルイズは大きくて太いのが好みなのか 支援
「先生方はずいぶんとミスタ・人修羅を気にしていらっしゃいますわ。何でもドラゴンを召還したに匹敵するか、それ以上だとか」
ドラゴンに匹敵すると言われたが、ルイズはうれしそうな顔をするどころか、どこか沈むような面持ちで呟いた。
「オールド・オスマンも同じ事を仰っていましたけど、それならどうして……タバサみたいに……」
ルイズは『なぜ祝福してくれないのか』、と言いたかったが、それを言うと自分が惨めになりそうなので、途中で言葉を切った。
ロングビルはそれを見て、こほん、と咳払いを市、ルイズに視線を合わせた。
「ミス・ヴァリエール。ミスタは遠国から召還されたというのですから、しばらくはいろいろな疑いの目で見られるのも仕方ありませんわ。言い換えればそれだけ強力な使い魔を呼び出したのですから、自信を持ってください」
うつむいたままのルイズに、人修羅が手を乗せた。
ルイズは突然頭をなでられて驚いたが、不思議と悪い気はしなかった。
「ミスタ、はいりませんよ。みんなと同じ呼び捨てにしてください。あんまり畏まられると…なんかむず痒いんですよ、慣れてなくて」
「本当に不思議ですね、とても凄い実力を持っていると言われているのに、気さくで。……それでは人修羅さん。一つ、お願いがあるのですが」
「はい?」
お願い、と聞いて人修羅がきょとんとする、ルイズも多少驚いてロングビルを見た。
「ディティクト・マジックを使ってみてもよろしいですか? 教師の皆さんがドラゴン以上だとか噂しているのですが、私、そういった力を見るのは初めてなんです。一度どんなものか確かめてみたくて…」
人修羅がルイズの顔を見る。
「でぃてぃくとまじっく、って何だっけ?」
「深知の魔法よ、簡単に言えば、あなたがどれだけの実力を持っているのか、それを計るの」
「なるほど。別にいいですよ、見られる感覚は何度かありましたし…たぶんもう何回かやられてるでしょう」
「そうですか、では…」
ロングビルは杖を向けて、ディティクトマジックの呪文を唱えた、その効果で周囲には光る粉が舞う。
ルイズは、少しだけ悔しそうにしていた、自分もディティクトマジックが使えたら、人修羅の凄さがすぐに分かったかもしれないのだ。
ふとルイズがロングビルの表情を伺う、ロングビルの顔は青ざめていた。
ロングビルの目に映ったのは、たくさんの瞳。
凶暴性を宿した赤い瞳、すべてを凍らせるような青い瞳、神々しく畏怖を感じさせる金色の瞳、すべてを殺し尽くすような黒い輝き。
見たこともない化け物が、それぞれが絶対的な力を秘めた化け物たちが、人修羅を中心にして渦巻いている。
そして彼らは、一斉に振り向き、ロングビルに注視した。
「あ、あ……」
ロングビルはがたがたと震えた、そして、糸が切れた人形のように、その場に崩れ落ちた。
「ミス・ロングビル!」
「ロングビルさん!?」
意識を失う前にロングビルが見たものは、心配そうな表情でこちらに駆け寄ってくる、人修羅とルイズの姿だった。
ーーーー
今回はここまでです。
仲魔たちににらまれたのか……そりゃ気絶もするぜ
お疲れ様でしたー。相変わらず和むなこの人修羅
おマチさんはゲームのタイトル画面みたいに人修羅の背後からガンつけられたわけだ。
しかもゲームクリア後の状態だから、どえらい高レベルが揃い踏みだものな
きっとその中にはマーラ様がいるに違いない
いや、いなくてもこれから出番があるに違いない
乙ー。
しかし3やってないから仲魔についてはよく分からん。
とりあえずメギドラオン持ちのピクシーがいたら人修羅は心まで人間をやめていると断定。
いや、やはり野良ピクシーをクリアまで仲魔にし続けた方がより………と思い直した。
レベル80ピクシーはいないのか?
かわいい仲魔がいるのなら、ルイズに貸してあげる、という名目でお目付け役につけてもよさそうだが―――
どこかにターボばあちゃんもいるかもな
小説版から呼ぶ猛者はいないだろうか
地母の晩餐使えて哲学かぶれのあの人修羅を
ついでにエレオノールの使い魔にトーキを
47 :
ゼロな提督13:2008/04/05(土) 12:45:20 ID:jqmczo6b
予約無いので、投下しようかと思います
しかし、腹が痛い…吐き気がする、悪寒もたまに走る
途中で力尽き投下が中断したら、地球教徒のせいだと思って下さい
48 :
ゼロな提督13:2008/04/05(土) 12:46:00 ID:jqmczo6b
トリステイン魔法学院図書館。
そこには始祖ブリミルがハルケギニアに新天地を築いて以来の歴史が詰め込まれている、
と言われている。本塔の大部分を占める図書館は、高さ30メイルの本棚が壁際にずらりと
並んでいる。その光景は壮観であるのだが、フライを使えないルイズとヤンには困り種でも
ある。
その本塔図書館の中でも教員にしか閲覧が許されない重要文書管理区画『フェニエのライ
ブラリー』。かつてコルベールは、この区画で発見した書物『始祖ブリミルの使い魔達』か
ら、ヤンのルーンがガンダールヴのそれと同一だとオスマンへ報告した。
だが、フェニエのライブラリー内をオスマン・コルベール・ロングビルが飛び回っても、
ルイズとヤンが上から渡された所蔵書籍をひっくり返してみても、今回はさしたる成果は上
がらなかった。
「う〜む、ダメじゃ。結局何もわからずじまいじゃな」
本の背表紙を眺めるオスマンの諦めの言葉に、コルベールも本を閉じる。
「ですなぁ・・・いくら調べても、虚無とその使い魔について、御伽噺程度のことしか書か
れていませんぞ」
ロングビルはパラパラとめくっていた本をポイっと投げ出した。
「結局、虚無がどんな魔法なのか、手がかりがどこにあるかすら分からずじまいですわね」
ヤンは床に寝っ転がってしまった。
「は〜…でも、ビダーシャルは『かつて何度も虚無が揃いそうになった』て言ってたから、
虚無の使い手はこの6千年の間、何度も存在したはずなんだ。そして、虚無の量と『門』の
活性度が比例するなら、この数十年かつてないレベルで活性化してるなら、数十年前から虚
無の使い手が存在するはずなんだよ。それも複数で。彼の言う事が全て正しいとするなら、
最大で4人だね」
ルイズはテーブルの上に広げた書物の山に、のへ〜っと体を投げ出してしまう。
「でも、結局『虚無は伝説です』ってことがわかっただけかぁ…ねぇ、あんたのルーンをも
う一度見せてよ」
「ん〜、これかい?」
めんどくさそうにヤンは手袋を取り、ルーン文字が書かれた手の甲をルイズに向けた。
「結局、一番の手掛かりは、それじゃない?」
本棚の上の方を飛んでいたオスマン達もふわりと舞い降り、寝っ転がったヤンが掲げる左
手をまじまじと見つめる。
「ガンダールヴ、かぁ・・・」
誰ともなく呟く。
第十三話 ときのかなた
ヤンは『門』を封じるため『虚無』を追う事にした。
聖地の召喚ゲート『悪魔の門』が『虚無』の力で開かれたものなら、同じく『虚無』の力
で封じれるはず、と睨んでの事だ。
さて、それでは『虚無』とは何なのか、というところから始めたのいだが…即座にヤンは
困った。彼には図書館の本棚の下の方しか手が届かない。ハシゴを持ってきても、せいぜい
数メイル。
その上、彼の図書館使用許可は学生閲覧可能範囲まで。『フェニエのライブラリー』には
入れない。
そんなわけで、ヤンはロングビルとオスマンに相談してみた。二人ともヤンが予想する
『大災厄』は想像も出来なかったが、ビダーシャルが告げた聖地の姿には漠然とした不安を
感じていた。また『始祖ブリミルの使い魔達』を発見したコルベールも、ロングビルに笑顔
でお願いされると、二つ返事でOKしてくれた。
そんなワケでヤンが『虚無』を追う決心をして三日目の放課後になったのだが、結局大し
たことは分からなかった。
49 :
ゼロな提督13:2008/04/05(土) 12:48:34 ID:jqmczo6b
――始祖ブリミル。
正式なフルネームは、「ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ」。
虚無の魔法を扱い、強力な使い魔達を従えていた。ハルケギニアでは神と並んで崇拝され
る伝説の偉人。その姿を描写する事は畏れ多い事とされており、大陸に多数存在する礼拝用
の始祖像は「両手を前に突き出した人型のシルエット」という曖昧な姿のみで再現が許され
ている。
聖地に降臨した、との伝承を信じるなら、6千年前に『門』を通過してヤンの世界から来
たことになる。もちろんヤンはそんな人物は知らない。知っていても、おとぎ話の類だった
ことだろう。もしかしたら、ハルケギニアとも古代地球とも異なる世界から来たかも知れな
いし、単に聖地周辺で生まれただけかもしれない。
現在ハルケギニアに存在する4王家、トリステイン・アルビオン・ロマリア・ガリア、
これらはその力を受け継いだ3人の子供と1人の弟子の子孫。ただし始祖が用いた虚無の
使い手は確認されていない。
ブリミルの使い魔の一人がガンダールヴ。その本来の役割は敵を倒すことでなく、虚無と
いう強大な力を発動させる為に長い詠唱を行う間、無防備になってしまう主を守ること。
あらゆる武器を自在に扱える使い魔、という記述から推測されるに、人間用の作り出す武器
を全て使いこなすことが出来るらしい――
なお、ヤンは現在に至るまで本格的な戦闘をした事がない。また、ルイズはじめハルケギ
ニアの誰も、ヤンが「首から下は要らない」とまで言われた人とは知らない。なので、彼は
常々「僕が銃を撃っても当たらないのさ!」と言ってはいるが、謙遜か、彼なりの冗談だと
思われている。いくら鈍くさそうな冴えない中年男でも、平民出の軍人が剣も銃も使えない
など、常識外れの極みだから。
ヤンもぼんやりと自分の左手を見上げている。
「ともかく、伝承が正しいなら、ガンダールヴというのは僕と同じ人間か、少なくとも体格
の似た亞人だったようだ。でないと弓とかナイフとか人間用の武器が使えないからね」
ぃよっこらしょ!と体を起こしながら彼は視線を左手の甲からルイズへ移した。
そしてその場の全員が、ルイズへ視線を集中させる。
「だとすると…じゃなぁ」「うん、そうですわよね…」「どうも、そう考えるのが自然ではあ
るのですぞ…」
ルイズは大人四人に見つめられながら、じっとり汗に濡れた手を握りしめた。
「それじゃ・・・ヤンを召喚した私の系統って、虚無になっちゃうんだけど・・・」
慌ててオスマンがしぃっと口に人差し指を当てる。ルイズも慌てて口を手で塞いだ。ロン
グビルやコルベールも周囲を見渡す。
夕方の図書館には誰もいない。本の虫のタバサも今日は来ていなかった。
虚無の再来。軽々しく口にするわけにはいかない一大事だ。
ヤンは頭髪の寂しい教師を見た。
「あのー、ミスタ・コルベール」
「何ですかな?」
実のところ、ヤンはあまりコルベールに良い印象を抱いていない。自分を使い魔にせよと
ルイズに命じた張本人。立場上しょうがないし、根は誠実な教師と分かっていても、納得は
中々難しかった。
だからといって、その事でコルベールを忌避するほどにはヤンも大人げなくは無い。
「魔法が全部爆発する原因とか、前例とかについては?」
尋ねられたコルベールは残念そうに首を振った。
「全くわからんのですよ…恥ずかしながら。まず前例がありませんし、調べても何故なのか
さっぱり…」
ヤンはオスマンを見るが、白髪の老人も首を横に振った。
「トリステインの歴史上、そのような魔法の失敗例は無いのじゃ。もしあれば、絶対に記録
なりなんなり残っとる。『家の恥』として、学院はおろか世間にも出さなかったなら、話は
別じゃが」
オスマンは、単に推測を語っただけだが、ルイズはやっぱり視線を落としてしまう。慌て
てオスマンはゥオッホンと誤魔化し、ヤンもさりげなくルイズの隣へ来る。
紅茶を飲みながら支援
51 :
ゼロな提督13:2008/04/05(土) 12:51:47 ID:jqmczo6b
次いでオスマンに尋ねたのはロングビル。
「では、虚無の可能性を考えませんでしたか?4系統に属さないなら、残るは『虚無』だけ
ですが」
学院長は、今度は肩をすくめた。代わりに答えたのはコルベール。
「無論、その可能性も彼女が入学した当初から考えました。ですが、それこそ全く分からん
のです!なにせ、この三日間調べた通りです。虚無がいかなる魔法なのか、呪文はどこに記
してあるのか、もはや時の彼方なのです。そして、軽々しく『虚無』を口に出すわけにはい
きませんでした。
なので、ミス・ヴァリエールが魔法を爆発させるのは失敗なのか系統のせいなのか、手掛
かりすら掴めませんでしたぞ」
ルイズはガックリして机の上にへばってしまった。
オスマンも、よいしょっと椅子に腰掛けながら学院長としての知識を披露する。
「トリステイン王家には、『始祖の祈祷書』というものが伝わっているそうじゃ。現物は見
た事はないが。
六千年前、始祖ブリミルが神に祈りを捧げた際に詠み上げた呪文が記されている、と伝承
には残っているものでの」
瞬時に体を起こしてパァッと明るくなるルイズへ、オスマンは手の平を向けた。
「まぁ、この手の伝説の品には、よくあることでのぉ。一冊しかないはずの、その祈祷書…
わしは各地で幾つも見た事があるんじゃ。
内容は、もっともらしいルーン文字を並べ立てただけで、どれもこれも紛い物じゃ。金持
ち貴族、地方の司祭、それぞれに自分の書が本物と主張しちゃおるが、一つとして内容が一
致せん。
その各地の『始祖の祈祷書』を全部集めれば、図書館が出来るほどじゃぞ」
オスマンの語る無慈悲な事実に、ルイズは再び本の山の中へヘナヘナと崩れていく。
「そんなぁ…それじゃ、失敗でも虚無の系統だとしても、どっちにしても私は相変わらず魔
法が使えないままじゃないのぉ〜」
まぁまぁ、とヤンがルイズの肩に手を置く。
「ところで、トリステイン王家の『始祖の祈祷書』ですが、どうにかして見る事は出来ませ
んか?」
ヤンの頼みに、オスマンはやっぱり首を横に振った。
「そりゃあ無理じゃ。真贋が不明とはいえ、あれは王家の秘宝じゃ。軽々しく見れる物じゃ
ないぞ。
それと、あれはトリステイン王族が婚姻の儀を執り行う際、立ち会う巫女が使用する物な
のじゃ。選ばれた巫女が書を手に持ち、式の詔を詠み上げる習わしでの」
それを聞いたロングビルが首を捻る。
「では、今回の姫殿下の婚儀では、誰が巫女を?」
今度はオスマンが首を捻る。
「ええと、確かモット伯がいってたんじゃが…クルデンホルフ大公国の…ああ、そうじゃ、
ベアトリス・イヴォンヌ・フォン・クルデンホルフとかいうたかの?その姫君が選ばれたそ
うじゃよ」
「あらやだ、ゲルマニア生まれの成金じゃないの」
顔をしかめたのはルイズ。
「ああ、なるほど…」
と頷いたのはコルベールとロングビル。
「?」
何を納得したのか分からなかったのはヤン。そんな彼にコルベールが教師らしく講釈をし
だす。
ロシアンティーはやっぱり蜂蜜に限ると思う支援
53 :
ゼロな提督13:2008/04/05(土) 12:53:15 ID:jqmczo6b
クルデンホルフ大公国。
初代大公が先代トリステイン王フィリップ三世より大公領を賜り、新興した国家。
軍事・外交ではトリステイン貴族として王政府に依存しているが、名目上とはいえ独立国
である。席次ではヴァリエール家にも引けを取らない。何より経済力が有名で、借金してい
るトリステイン貴族も少なくない。
クルデンホルフ大公国の大公家親衛隊として編成された竜騎士団、空中装甲騎士団(ル
フト・パンツァー・リッター)を有す。その強さはアルビオン竜騎士団に次ぐとされる。
「…名前からも分かるとおり、ゲルマニアとの縁も深い大公国ですので、今回の婚儀では巫
女として相応しいことでしょうぞ」
と説明されて、ヤンも「ふ〜ん」と納得した。
「いずれにせよ、じゃ…既に祈祷書は大公国へ送られているじゃろうが、虚無の呪文なんか
書かれていたら、婚儀の度に巫女に持たせるなんてせんじゃろ」
ごく当然なオスマンの言葉に、皆ウンウンと頷く。
5人が本の山に埋もれている所へ、入り口から司書の女性がやってきた。
「お取り込み中、失礼します。学院長、王宮よりモット伯が参られたそうです」
「はて、こんな時間に珍しいの。すぐ行くと伝えてくれ」
「分かりました。ですが、ミス・ヴァリエールとミスタ・ウェンリーとの面会も求めておい
でです」
ルイズとヤンは顔を見合わせた。
「僕をアルビオンへ!?」
学院長室の入り口に立つヤンは、目の前の怪しい雰囲気を持つモットの言葉に、敬語も忘
れて聞き返してしまった。
だが整いすぎたカールが特徴的な口ひげを生やした中年のメイジは、特にその事を気にす
るでもなく話を続けた。
「うむ。お主は先日枢機卿へ自分で進言したそうではないか、『急ぎ戦力の確認が必要』
と」
「え、ええと、はぁ、それは…確かに」
ヤンはモット伯の言葉に目を白黒させてしまう。確かにアルビオンの現戦力確認を勧めた
のは本当だが、それはあくまで意見を言っただけ。自分を派遣してくれなんて意味では決し
てない。
そんなヤンの困惑を知ってか知らずか、赤いマントに七三分けな貴族は話を続けた。
「無論、お主が先月トリステインに召喚されたばかりの異邦人であることは知っている。こ
の国ですら右も左も分からぬのに、いきなり遠い異国など…というところであろう?
実際、アルビオンへ行った所で、内戦前とどこがどう変わったか、など分かるはずもない
しな」
「え、ええ…まぁ」
ヘンな眉毛ともみあげにしては、意外と気の付く人だなぁ…いや見た目は関係ないか、な
んてどうでもいい所に気が行きつつも、黙ってモット伯の話を聞く事にした。
「だから、別に強制ではない。ミス・ヴァリエール」
「は、はい!」
ヤンの一歩右前に立つルイズは直立不動で返事をした。
「枢機卿からの言葉です。彼はあなたの使い魔であるゆえ、あなたの意思に反してまで派遣
することはない、とのこと。彼の意見も聞いた上で決めて欲しい、と。
ただ、私見ですが、ミス・ヴァリエールと彼の実力に期待しての人選と思います。先日の
枢機卿への進言、中々の深慮遠望ゆえ王宮でも同意する者が見受けられるとか。恐らくこれ
は、見識を深める機会として欲しい、という意味かと」
「はい!承知致しました!」
54 :
ゼロな提督13:2008/04/05(土) 12:55:14 ID:jqmczo6b
元気よく快諾するルイズに、モット伯は爽やかに笑った。
いや、爽やかな笑い声ではあるのだが、顔だってなかなかの美形だが…七三わけの頭に、
華麗にカールしすぎた眉尻・髯の先・もみあげが、全てを台無しにしている…ヤンには正直
ハルケギニアと美的感覚がずれているとか、流行廃りは世の常ということを差し引いても、
そうとしか思えなかった。
「いやはや、さすがヴァリエールの名に恥じぬ気迫ですな。ですが明日の昼に再び学院へ来
るゆえ、その時に返事を頂きたい。もしお受けして下さるなら、そのまま出立になるでしょ
う」
「はい!」
「では、私はまだ学院長との話があるので」
ルイズは勢いよく、ヤンは不承不承という感じで礼をして、二人は秘書用机につくロング
ビルの視線を受けながら学院長室を後にした。
「へぇ〜、それじゃアルビオンに行くのねぇ」
「ええ。良い機会なので、是非とも浮遊大陸を見ておこうと思うんです」
ルイズの部屋で学院長室での話を聞いているのはキュルケ。鏡台の前に座り、どうにか飲
めるレベルにまでなったヤンのお茶を飲んでいる。
壁に立てかけられたデルフリンガーも鍔を鳴らす。
「んでよ、命じられたのはヤンだろ?なんで娘ッコまで荷物まとめてんだ?」
服やらナイフ類やらを袋に詰め込んでいくヤンの横では、ルイズがクローゼットから下着
やら旅行用のコートやらを取り出していた。
「決まってるじゃないの!ヤンは道が全然分からないじゃないからよ。あたしは昔、姉さま
達と旅をした事があるから、地理は明るいわ」
しゃべっている間にもクシに手鏡に、どんどん荷物が増えていく。
「つっても…歩いて旅したわけでも、お前さんが馬車を操ってたわけじゃねぇだろ?」
「そうよねぇ。しかも、内戦終結したばっかで、相当危険だと思うんだけどねぇ」
そんなデルフリンガーとキュルケの疑問は、あーどーしよ!これもいるかな、あれもいる
かなぁ…と頭を悩ますルイズには届かなかった。
チラリとキュルケが視線をずらすと、ヤンが苦笑いする。
「大丈夫だよ。アルビオンの地理に詳しくて、腕利きの人に心当たりがあるんだ。少なくと
も、僕とルイズだけで行く事はないよ」
床にどんどん荷物が山積みされていくルイズの部屋に、コンコンとノックの音がした。
「はーい、どなたですか?」
と言ってヤンが扉を開けると、そこには暗い顔のシエスタと、彼女を連れてきたらしいロ
ングビルがいた。
次の日、お昼休みの学院長室ではモット伯がルイズ達の承諾の返事を聞いていた。
ついでに、シエスタをヴァリエール家が引き取る、との宣告も。
「と、言うわけで。シエスタはヴァリエール家三女ルイズと、その使い魔ヤン・ウェンリー
の専属メイドにさせて頂きますわ」
ぐぬぬ…と悔しさで呻くモット伯だったが、さすがにヴァリエール家の威光に逆らえるワ
ケも無し。そして、目の前の机の上にドンッと置かれる金貨の詰まった袋にも。
平民の若く美しい娘に目を着けると自分の屋敷に買い入れ、夜の相手込みのメイドとし
て雇っていると裏で評判なスケベ中年貴族モット伯。彼の野望と欲望は、自らが頼みとして
いた金と権力の前に敗れ去った。
しえん
支援
体調支援。
58 :
ゼロな提督13:2008/04/05(土) 12:57:43 ID:jqmczo6b
結構な大金を前にしつつ、モット伯は動揺を隠し威厳を保ち続けていた。
「やむを得ません…しかし、ヴァリエール家の姫殿下御自らが、このような大金をつぎ込む
ほどに入れ込まれるとは…果報者の娘ですな」
「あら、そのお金は私のではありませんわ。ヤンのポケットマネーですの」
ルイズの後ろで右手を胸に当て深々と礼をするヤンを指さされ、今度こそモット伯は動揺
が隠せなかった。
「う、うむ。そういえばお主は、ダイヤの斧で王宮より大金をせしめていたな?」
「はい。ですので今回のアルビオン行も自費で行こうかと思います。…ですが、私は本来こ
のような手段をとりたくはなかったのですが…郷に入りては、と思う事にします」
口の端が引きつるモット伯の軽い嫌味は、ヤンに軽く流されてしまった。同時にモット伯
は、ヤンの歯切れが悪い語尾を捉えたりはしなかった。
「そう、か。まぁ、よいとしよう。
ところでアルビオンまでの足だが、こちらで竜騎士を呼んでおいた。身分証明書とアルビ
オン政府への身元保全依頼書も、ここに準備してある。
だが平民一人で行くわけにもいくまい?よければアルビオンでの道案内と警護を兼ねて
人選を」
「いえ、私も参りますわ!」
と、話を遮り杖を掲げるルイズ。
モット伯はひっくり返らんばかりに仰天してしまった。
「お!お待ち下さい!!…ご存じでしょう?アルビオン内戦が終結したばかりなのです。そ
のような焦臭い場所に、あなたをいかせるなど」
「ご配慮痛み入ります。ですが、こちらでアルビオン出身の優秀なメイジを依頼しておきま
したの」
と言ってルイズが振り向いた先では、ロングビルがにこやかに微笑んでいた。
お昼の太陽が少し傾いた頃、学院正門には若い風竜を連れた、少年と言えるほど若い竜騎
士が待機している。
そして旅装束に着替えたルイズとロングビル、そして黒服に白手袋で背にデルフリンガー
を背負ったヤンがいる。それを見送るのはモット伯に、オスマンとコルベールとキュルケ、
そしていつの間にやら現れたタバサ。
そして更に彼等の横には、やっぱり旅装束のシエスタがいた。
シエスタは深々とルイズとヤンに礼をした。
「本当に、本当にありがとうございました!これからはミス・ヴァリエールとヤンさんに、
一生懸命仕えさせて頂きます!」
「当然よ。全身全霊をもって忠義を示しなさい」
「ハイッ!頑張ります!」
心からの感謝と共に頭を下げられて、ルイズも悪い気はしない。鼻高々で反っくり返って
いる。
そんなルイズへシエスタは控えめに、しかし熱い視線を向ける。
「ですので…その、お二人にお供して、私もアルビオンへ…」
そんなシエスタのお願いは、ヤンの横に振られる首に跳ね返された。
「ダメだよ、今のアルビオンは内戦が終わったばかりで、かなり危険だと思う。とても一般
人の女性を連れて行ける場所じゃないよ」
「あうう…」
ヤンの言葉にシエスタはがっくり。対してロングビルはニッコリ。
「そう言うわけですので、アルビオンでのお二人の事は、私にお任せ下さい。故郷の知人を
頼って行けば安全に旅が出来ますし、私も少々魔法が使えますから」
支援するよ
60 :
ゼロな提督13:2008/04/05(土) 12:59:35 ID:jqmczo6b
微笑みと共に言ってるハズのセリフ。なのに、ロングビルから微妙に冷たい気が立ち上っ
ているのを、その場の全員が感じていた。
そしてシエスタもニッコリ笑った。微妙に引きつった口元で。
「そうですね。ミス・ロングビルがいれば安心ですわよね」
「もちろんですわよ。ミス・ヴァリエールもヤンさんも、私が守って見せますわ」
シエスタの引きつった笑顔を向けられるロングビルは、笑顔が冷たい。
「でも、心配ですね。ヤンさんって素敵だから、どこかの悪い虫が狙ってくるんじゃないか
なって」
「大丈夫よ、そんな悪い虫も蹴散らしてあげますから。アルビオンへ言ってる間、あなたは
気兼ねなく故郷のタルブで休暇を取って下さいな」
学院のメイドからルイズ・ヤン専属メイドになったが、アルビオンへは危険なので連れて
行けない。丁度良いので、その間、休暇を出す事になったのだ。
「ですけど、その悪い虫が、トリステインから既に取り付いているんじゃないかと、もう心
配で心配で…」
「そーんな心配はしなくていいんですよ。ちゃーんと帰りには、タルブの村へ寄ってあげる
からねぇ」
「あらあら、お土産を楽しみにしていますね」
「あらあら、あんたにはアルビオン名物、魚のフライでも買ってきてあげようかしらねぇ、
たっぷりと」
「うわぁ、嬉しいです!あれ、不味くて体に悪いって評判なんですよね!」
「良く知ってるじゃないかぁ!あんたのために、たっくさん買ってきてあげるわ!」
「うふふふふ、期待して待ってますわ」
「おほほほほ、あんたなんか助けるんじゃなかったって思えてきたよ」
笑顔で殺気をぶつけ合う二人は、既に周囲の人々から見て見ぬふりをされていた。
オスマンにコルベール、キュルケとタバサが、ルイズとヤンに旅の無事と再会を誓う言葉
を掛けている。
「二人とも、無茶してはならんぞ。命あってのことじゃからな」「ミス・ヴァリエール、ミ
スタ・ヤンも、体には気をつけるのですぞ」「ルイズ、夜盗なんか来たら、あんたの失敗魔
法で吹っ飛ばしちゃいなさいよ!」。そして無言で杖を掲げるタバサ。
「安心なさい!このルイズ様の実力、アルビオンの逆賊共に見せつけて来るわ!」
「まぁ、危ない場所には行かないつもりだからね。何事もなく帰れるように気をつけるとす
るよ」
ヤンの言葉に、背中の長剣がかみつく。
「いや!安全な場所でぬくぬくしてたって敵情視察にはなんねーぜ!ちったーヤベェ場所に
も行けよな!そしたら俺を」
「ぜーったい使わないからね」
「使えー!」
門の外で彼等のやりとりをじーっと見ている若き竜騎士は、この人達ホントに大丈夫なん
だろうか、と一抹の不安を感じていた。
61 :
ゼロな提督13:2008/04/05(土) 13:01:06 ID:jqmczo6b
風竜へ乗ろうと踵を返したしたルイズを、モット伯が呼び止めた。
「念のために伺いますが、どうしても行かれるのですか?」
「もちろんですわ」
ルイズの目に迷いはない。
モット伯は、諦めの溜息とともに懐から封書を出した。
「分かりました。では、これをお持ち下さい。ヴァリエール公爵からのお手紙も入っており
ます」
「父さまの!?…もしかして、私が行くのを見越して…」
目を丸くするルイズに、怪しい姿の伯爵は優しく微笑んだ。
「ええ、もちろんです。この一件が講じられた時から、公爵はあなたがアルビオンへ行くと
言い出すであろう事は気付いておりました。もし勢いだけで無茶をするようなら止めて欲し
い、と依頼されていたのです。ですが、オスマン氏が推薦するアルビオン出身メイジがいる
なら、よしとしましょう。
お父上からの言伝です。『世界を見てきなさい、そして必ず無事に帰ってきなさい』との
ことです」
「父さま…」
ルイズは、ヴァリエール公爵からの封書を胸に抱きしめた。
ルイズとロングビルとヤンは、騎乗した風竜に学院上を何度か旋回してもらった後に、南
の空へ旅立った。シエスタもついでに、ということでラ・ロシェールまで同乗する事になっ
た。
キュルケとタバサは風竜が飛び去ったのを見送って戻っていく。モット伯も馬車で学院を
去っていった。
だがオスマンとコルベールは南の空を見上げたまま、なかなか動こうとはしない。
コルベールは、隣のオスマンに聞こえるかどうかという小声で呟いた。
「恐らくはハルケギニアの各王家に伝わっているであろう、虚無の手掛かり…まぁ、見つか
りはせんでしょう」
「じゃろうな。こんなあっさり見つかるくらいなら、6千年も伝説とされてはおらんじゃろ
て」
ルイズとヤンが今回のアルビオン行を引き受けた真の理由――アルビオン王家に伝わる
はずの虚無を追う。見つかる見込みはほとんど無いにしても、とりあえず行ってみたいとい
うのがルイズとヤンの希望。それにヤンにしてみれば、浮遊大陸なんてあり得ないモノを見
れる絶好の機会だ。
二人とも、これを逃す気は無かった。
だが、そんな理由とは関係なく、残った男と老人の顔は暗かった。
「・・・のう、コルベールよ」
「なんですかな?」
「今夜は、一杯付きあわんか」
「いいですね。飲み明かしましょう」
何故に二人とも表情が暗いのか、お互いに聞くまでも無い事。
「我らの女神に、乾杯!」「くたばれ、ヤン・ウェンリー!」
二人のやけくそな叫びが、夜遅くまで響いた。
若い竜騎士が操る風竜の上には、ルイズとヤンとロングビル。シエスタは、かなり渋って
いたが、予定通りラ・ロシェールでタルブ行きの駅馬車に乗った。
そして彼等はそのままアルビオンへ向かっている。
62 :
ゼロな提督13:2008/04/05(土) 13:02:20 ID:jqmczo6b
「うわああああ、本当に大陸が飛んでいるう・・・」
ヤンは開いた口が塞がらない。
「驚いた?」
ルイズがヤンに言った。
「うん…こんなの、見た事無いよ…
と、言うか…何故だ、どうしてなんだ!あり得ない!どこかに重力制御装置でも埋まって
るんじゃないのかー!?」
「何よそれ。とにかく、落ち着きなさいよ」
ルイズに肘で突かれたものの、ヤンは全く落ち着く様子はない。
例え彼がいた宇宙の、帝国と同盟の総力を結集したとしても、地球のイギリスに匹敵する
大陸を重力圏内、大気圏内で恒久的に浮遊させるなど、出来るはずがない。いや、やればで
きるかもしれないが、絶対にやらない。意味がない。
だが、彼の目の前では、それが起きていた。何の意味があってか知らないが、実行されて
いた。意味を考える事自体が無意味なのかも知れない。地震や台風と同じく自然現象の一つ
なのか、それとも精霊のきまぐれか。
とにもかくにも、アルビオンは浮いていた。
雲の切れ間から、黒々と大陸が覗いていた。大陸は、遙か視界の続く限り延びている。地
表には山がそびえ、川が流れていた。
ヤンは口をポカンと開けて、間抜けのように呆然としていた。
「おいおい、シャキッとしろよ!」
背中のデルフリンガーの言葉にも、何の反応もない。
普段よりさらにぼんやりしながら目の前の大パノラマに目を奪われるヤンに、ロングビル
が得意げに解説を始めた。
「驚いたようね。あれが『白の国』アルビオンよ。トリステインほどもある大陸が、主に大
洋の上を彷徨ってるの。大陸から落ちた水が霧になって大陸の下半分を覆うから、『白の
国』の別名が付けられた、と言われてるの」
そんな解説も右から左に流れるかのように、ヤンはアルビオンを凝視している。
大陸の下半分を覆う霧が雲となり、ハルケギニアを潤す雨となる…いつもなら脳裏に焼き
付けるはずの知識が、全然頭に入らない。
彼は、ルイズに思いっきりつねられるまで、アルビオンを眺め続けた。
第十三話 ときのかなた END
63 :
ゼロな提督13:2008/04/05(土) 13:04:13 ID:jqmczo6b
投下終了です
お腹が痛いです。寝ます
ああ、ヴァルハラから禿の黒狐や義眼の男に喚ばれている気がする・・・
おつー。
宇宙系のキャラからすれば、大気圏で物を浮かし続けるって論外だしねw
地下にいくか巨大建造物か、いっそ軌道上からケーブル降ろしてエレベーターとかだし。
投下乙です。
ええっと、まずはお身体を、どうかお大事に。
提督氏、乙!
今日は、ゆっくり休んでくれ。
提督の人GJです。
いつも思うんですが話の締めは【END】になってますが何かこだわりがあるんでしょうか?
自分としては【Ende】のほうが…
いや失礼、これからも楽しみにしてます。
乙です。
旅先とは言え、ヤンが死んだら不味い、とオスマンもコルベールもわかっている筈なのに…正に自棄酒。
投下乙。
そしてご自愛ください
提督のお方GJ!
そうですか・・・結局ヤンはアルビオンへ、それも「虚無」を追うために旅立ちました
か・・・
とりあえず、ヤン・ルイズ一行の旅の無事と、筆者様の体調快復を祈願して今夜は一杯
やります。Prosit!
>アルビオン名物、魚のフライ
フィッシュアンドチップスか…。ここでもこの国の料理は「雑」なのですね。
それはともかく提督の人GJ!お大事に。
提督の方GJだ!
そういやアルビオンってのはイギリスの古名だったな。
田中作品でイギリスと言うとつい創竜伝のあとがきを思い出してしまうw
戦艦アルビオン
床に転がってさりげなくマチルダさんを下から見てた提督に乙!
魔乳ハーフエルフの美少女との対面が楽しみです
>「うわああああ、本当におっぱいがぶっ飛んでいるううう・・・」
>? ヤンは開いた口が塞がらない。
>「驚いた?」
>ミス・ロングビルがヤンに言った。
>「うん…こんなの、見た事無いよ…
と、言うか…何故だ、どうしてなんだ!あり得ない!どこかに魔乳制御装置でも埋まって
>るんじゃないのかー!?」
『アルビオン料理の作り方』
1.鱈とジャガイモを茹でる。
2.1にケチャップをかけ、よく噛んで食う。
3.2を皿の上に勢いよく嘔吐する
アルビオン=イギリスの古名
アルビオン料理
他にも、牛の腿肉(その他密度の高い部位の肉)を、太目の糸で縛り上げて塩・湖沼その他香辛料や
ローズマリー他のハーブに漬け置きしたものを、3時間前後とろ火でじっくり焼いたものや、それ
への付け合せとして、小麦・鶏卵・水他を混ぜて蒸し焼きにしたプディングが名物だったりして。
アルビオン、元はドーバー海峡側からみて、白く見える事から、
アルバ=白と名付けられたんじゃなかったっけ。
やはり、ワインよりビールのお国柄だったりしてw
おおっ、提督の人が来ているではないか!
早速今から読ませていただきます。m(_ _)m
以前、知人がイギリス旅行をした
試しに食事の事を聞いてみたら、「美味い不味い以前に、間違ってる」だって
晩飯に、でっかいプディングが一個、デンッとテーブルに置かれたんだそうだ
それと、7巻P151-152の記述ではビールじゃなくて、正確にはエール(麦酒)だな
19世紀以前の製法で作られた、ビールの一種
ロンドンにしばらくいた事があるが、食い物は全て自炊だった
水がまずいせいか店の味付けがアレだったので
あとアルビオン住民が、フランス人の好む物をばかにする態度はデフォ
それでも若い世代は日本アニメに毒され始めてるから、ゼロ魔の国旗ネタが
通じたんだろうな
あと、蛇足だけど
イギリスに限らず、ヨーロッパとその植民地だった地域で食事に期待してはいけない
私は以前、メキシコに行った
もう二度と行きたくない、と思わせるほどに、不味かった
いや、不味いだけならまだ良い。野菜が全く無いから、胃もたれが凄い
肉ばっかだすんじゃねー!!
昔、シャーロック・ホームズ家の料理読本っての持ってたことあるんだ…19世紀末頃の家庭料理のレシピだったんだが…。
なんつーか、最早詳細は覚えてないが、印象ではわざわざ素材を不味くしようとする意図があるようにしか思えないレシピだったぜ…。
家庭料理と比べるのもおかしいけど、二千年前のローマ帝国の調理ノート(アピキウスの料理の超訳)に載ってた、古代ローマの宮廷料理がずっと美味そうだった。素材を活かしてて。
>>71 日本風に
生の新鮮な魚を
新鮮な油で
高温でカリッと揚げれば
美味しいんだぜ?
むこうのは
冷凍の油焼けした魚を凍ったまま
数年間替えていない油で
低温でじっくり揚げる
から不味いだけで…
>>83 それを真面目に料理のつもりでやってるのなら、もはやイギリスに行く気はなくなるな
つか、それが本当なら、犯罪すれすれじゃねーか!故意に食中毒起こさす気か
イギリス海軍が強いのは
どんな国のメシでも母国のメシよりはうまいから文句言わないからだなんて俗説があったなw
日本は世界一メシがうまい国ですよね
>>84 串カツのソースとか鰻のたれだと美味しくなるのに
油だと不味くなる不思議
加熱するから細菌性の食中毒の心配は少ないが
古くなった油の安全性が心配
多分油をすぐに捨てるようにすれば
平均寿命が1〜2年は延びそうです。
まあ最近は海外の料理店とか増えているので、ロンドンとかで外食する分には困らないとも聞いたけどね。
毎日外食する金が有ればの話だが。
>>84 どうやら君は紅茶が足りないようだね?一杯ご馳走しよう。
茶菓子に揚げマーズバーもつけるよ。
田中芳樹曰く、世界で2番めにまずいサンドイッチを食べたとの事だからな。
サンドイッチでどうしてそこまでまずくできるのやら(ちなみに2番目とは世界中探せば1個くらいはこれより上があるだろうという意味)
ふと思ったけどゼロの世界に人修羅とガチで戦える奴っているっけ?
ガチで戦える奴がいなさすぎだろ基本的にクロス物は
がちで戦わせようとすると同じ世界から同レベルのものを召喚するしかないかと。
多分ヨルムンガントですらメギド系は素通しだよ。
ちょいと小ネタが出来たんで25分頃に投下してもいいかな?
元ネタは最後に発表する
戦闘メインの話にしなきゃいいだろ。
人修羅と戦えるキャラ出したらそれこそルイズと人修羅の他は空気だ。
今のところ戦闘メインの話じゃないし、その方向でいくんじゃない?
しかしたいがいの相手にはエクスプロージョンは通じたりする。
96 :
熱き使い魔:2008/04/05(土) 16:26:28 ID:GKg6eUti BE:620136465-2BP(30)
「なぁ相棒。さっき言った事、本気なか?」
丘に一人、男が佇んでいた。
黒いコートと帽子に身を包んだ巨漢の剣士。
これから来る戦いに動じる事もなく、静かにその時を待っている。
「絶対無理だって、いくらお前ぇが強いからってそりゃ無理ってもんだ」
そう語るのは彼の背負っている一振りの剣。
意思を持つ剣、インテリジェンスソードのデルフリンガーだ。
「問題ない。我々のするべき事は敵の殲滅ではなく足止めだ。味方が艦に乗り、無事に脱出するまでの時間を稼げればいい。
それならば敵陣を混乱させるだけで十分効果が出る。我々だけでも可能だ」
「バカ! そっちじゃねぇよ!」
デルフリンガーは声を荒げた。
「お前ぇさっきあの嬢ちゃんと約束しただろ、絶対に生きて帰るって。そりゃお前ぇは強ぇさ。
素手でゴーレムを砕けるくらいにバカ力だし、体はドラゴンの皮膚みてぇに頑丈だし、オマケに空だって飛べちまう。
だがな、今回の相手は七万の軍勢だ。片っ端から指揮官を狙ってけば足止めくらいは可能だろうが、生きて帰るなんてのは絶対に無理だ」
そう、この男はこれから七万の敵アルビオン軍と対峙し、味方が逃げるまでの時間を稼がねばならない。
元々は彼の今の主人であるルイズの役目なのだが、彼がルイズを説得し、自らが戦場に立つ事を望んだのだ。
そして彼は約束した。
必ず生きて帰ると。
「6千年も生きてる俺が言うんだ、間違いねぇ。相棒はこの戦いで……」
「デルフ」
と、その男は区切り、静かに続けた
「男はいかなる困難においても希望の光を探すことを忘れてはならない」
97 :
熱き使い魔:2008/04/05(土) 16:27:47 ID:GKg6eUti BE:124027632-2BP(30)
連合軍の船内には次々と敗走する味方軍で溢れかえっていた。
この状態は明後日まで続くらしい。
そしてその船内の一室に膝を抱えてベッドに蹲っているルイズの姿があった。
「ジェイ……本当に生きて帰ってくるよね」
ルイズは自分の使い魔との会話を思い出していた。
それは自分が敵軍を抑える捨石となる事を宣告された時の事だ。
「私が行こう」
「え?……」
ルイズは一瞬、自分の使い魔が言った事をちゃんと理解できなかった。
だがすぐにわかった。
彼は『私が』行くと言った。
つまり、こう言っているのだ。
ルイズの変わりに自分が敵を足止めすると。
「ちょっと待ってよ!これはわたしが受けた役目よ! あなたはすぐにみんなと一緒に脱出しなさい」
「それは出来ない」
「どうしてよ!」
「今のルイズでは敵を足止めする事は出来ない。だが私なら可能だ。守るべき存在を危険に晒す事は出来ない」
ルイズは言葉を続けようとした。
『そんなことはない! 自分にだって出来る』と。
だが、その言葉はついに喉から出る事はなかった。
ジェイの言う事はいつだって正しかった。
ジェイは絶対に嘘を言わない。
そして、いつも全力でわたしを助けてくれた。
ならば、これも本当の事なのだろう。
「でも……でも……」
ルイズは泣き出した。
自分に虚無の力があるとわかって、やっと認めてもらえた自分の力を正しい事に使いたくて、
そしてアンリエッタの役に立ちたくてここまでやってきた。
それが、みんなを助けなきゃいけない一番大事なときに無力な自分が許せなかった。
「勇気と無謀を混同してはならない。可能性のない勇気を無謀と呼ぶ。ルイズ、今お前が行おうとしているのは勇気ではない」
「そんなのわかってる! わたしが足止めしたって大した役には立たないって事ぐらい! でも私は貴族なの!
たとえ死ぬとわかっていても、行かなきゃいけないの! 貴族の誇りにかけても!」
「死ぬ事は誇りではない。それは愛すべき人々を悲しませる罪だからだ。真に誇るべきは、愛すべき人々に自分の無事な姿を見せ、共に触合う事だ」
98 :
熱き使い魔:2008/04/05(土) 16:28:43 ID:GKg6eUti BE:868191067-2BP(30)
ルイズはその言葉にはっとして、自分の使い魔を見上げた。
ほとんど表情を変える事がない顔。
ただ、朝自分を起こしたあとにはいつも
「キュートだ、エンジェル」
という決まり文句と一緒に笑顔を向けてくれる。
ジェイが召喚されてからは、いつもその言葉を聞くのが楽しみになっていた。
説教臭くて、いつも少女はどうのとか男はどうのとか言ってご主人様である私にまで一々意見する。
でも今ならわかる。
それは全部自分の為を思って言ってくれた事なんだって。
誰よりも強く、誰よりも自分の事を理解してくれる、最高の使い魔。
彼は自分に召喚された事に文句を一切言わなかった。
そして幾度となく自分を助けてくれた。
いきなり違う世界から自分に召喚されてしまったというのに。
「どうして……どうしてそんなにわたしの為にしてくれるのよ!? わたしはあなたを無理矢理呼び出して使い魔にしたのよ!
そんなわたしにどうして……どうして……」
「男は一度口にした約束は守らねばならない」
「約束?」
「私はルイズの使い魔になると約束した。そして使い魔は主人を守らねばならない」
そう言うと彼は作戦場所である丘へと向かおうとした。
「待って!」
ルイズは叫んだ。
もう彼を止める事は出来ない。
どんな風に言っても彼は七万の軍勢と戦うだろう。
ならばせめて、自分に出来るのはこのくらいだ。
「どうしても行くのよね? わかった、もう止めないわ。でもこれだけは約束して! 必ず生きて帰ってくるって!」
「それは保障できない。今回の作戦で私が大破する事無く戻れる確立は……」
「いいから約束して!」
ルイズは目に涙を浮かべて訴えた。
「……わかった。約束しよう」
そう言うと、今度こそジェイは丘へと向かって歩き出した。
わかっている。
彼は自分を安心させる為に言ったのだ。
けど、それでも彼ならその約束すらも守って見せるだろう。
いままでジェイが約束を破った事など一度もないのだから。
だが、だが万が一、二度と戻ってこなかったら……
彼女は祈った。
始祖ブリミルに、そして彼自身に。
「お願い、無事に帰ってきて! わたしの……わたしだけの……」
あのナイスガイか支援
100 :
熱き使い魔:2008/04/05(土) 16:29:29 ID:GKg6eUti BE:330739744-2BP(30)
嵐が吹き荒れた。
アルビオン軍の者達にはそうとしか思えなかった。
突然空から落下してきた黒い塊。
それが降り立った場所から次々と悲鳴が沸き起こる。
それの存在を最初に確認した指揮官の男は、次の瞬間には激痛と共に意識を手放していた。
敵陣の中央降り立った次の瞬間にはジェイは動いていた。
その疾風の如き速度で一気に敵指揮官の一人の前に立ち、その拳を叩きつけて気絶させた。
さらに次、さらに次へと指揮官だけを正確に狙い、どんどんその数を減らしていく。
指揮官を失った部隊は統制を失い、混乱して一部では同士討ちが始まっていた。
無論、敵とてただやられているわけではない。
剣が、槍が、銃弾が、そして数々の魔法がジェイに襲い掛かる。
だが、それらは全てが効果がなかった。
剣はその体を斬る事が出来ず、槍はその身に突き刺さる前に折れ、銃弾は当たると同時に弾かれた。
そして魔法は全て、その正確無比な動きで全てデルフリンガーに吸収されていった。
アルビオン軍は恐怖した。
決して捉える事の出来ない圧倒的な速さ。
決して止める事の出来ない凄まじい力。
決して傷つける事の出来ない強靭な肉体。
まるで小さなドラゴンを相手に戦っているような気分であった。
そして恐怖は次々と感染していき、混乱は恐慌へと変化していった。
だが、その中で将軍たるホースキンだけが冷静に敵を打破する為の作戦を練っていた。
「相棒、奴が敵将だ。あいつをやればこの作戦、完璧に成功だぜ」
「確保する」
ホースキンの姿を確認したジェイはすでに走りだしていた。
これでホースキンを気絶させれば任務は達成される。
そのはずだった。
突如、ジェイの目の前に地面から競り上がった壁が現れた。
おそらく錬金による物だろう。
ジェイは構う事なく走り、その突進で壁を砕き割った。
が、ジェイの進行はそこで止まった。
ジェイの進行を阻んだのは壁ではない。
その壁の後ろに隠れていた数十体もの鋼鉄のゴーレムの体当たりだ。
いかにジェイの力が並外れているとはいえ、これだけのゴーレムをすぐに破壊する事は出来ない。
壁はジェイの視界を遮り、ジェイのスピードを落とす為の物だったのだ。
全てはホースキンの作戦だった。
ホースキンは事態を察知し、歴戦の将としての感で敵がどのような存在なのかを見極めた。
そしてすぐに最も有効的な策を導き出し、副官に土系統と火系統のメイジを後方に集めさるよう指示したのだ
「放て!!」
ホースキンの号令と共にスクウェア、トライアングルクラスの炎が次々と放たれる。
「相棒! あれはやべぇ、逃げろ!」
が、すでにゴーレムに囲まれ、全身を抑えられたジェイにゴーレムを破壊して逃げるだけの時間はなかった。、
次の瞬間、数十対のゴーレムと共にジェイは轟音と共にその炎に包まれた。
「相棒ぉぉぉぉぉぉおおおぉぉぉ!!!」
デルフリンガーの声が戦場に響いた。
101 :
熱き使い魔:2008/04/05(土) 16:30:23 ID:GKg6eUti BE:434095373-2BP(30)
「黒服の男が一人でアルビオン軍に向かっていった?」
「へぇ、部下の一人が剣を背負った奇妙な黒服と帽子の男が向かうのを見たと。おそらく一人で敵軍を止めに行ったんでしょう」
船の甲板で話しているのはド・ヴィヌイーユ大隊第二中隊長を勤めるギーシュと、中隊付軍曹のニコラだ。
その話を聞いたギーシュはすぐに一人の男を思い浮かべた。
奇妙な黒服を着てるなんて言われる人物は彼しか思いつかない。
いやそれ以前に、そんな事が出来そうな人間は他にはいないでだろう。
思えば彼との縁も奇妙なものだった。
出会いは最悪だった。
ジェイがギーシュの落としたモンモランシーの香水を拾って浮気がばれて、そのまま勢いで決闘を吹っかけた。
そしていざ決闘となると、ジェイはギーシュのワルキューレをその拳で次々と砕いていったのだ。
その姿に恐怖した。
次は自分があのワルキューレのように破壊されるんじゃないかと。
そして近づいてくるジェイのあまりの怖さに腰が抜けて逃げ出す事も出来なかった。
が、ジェイはギーシュの持っている薔薇の杖を取り上げただけだった。
そしてギーシュに向かってこう言った。
「男は目先の恐怖に怯んではならない」
その時にギーシュは鈍器で殴られたかのような衝撃を受けた。
「命を惜しむな、名を惜しめ」
このグラモン家の家訓を胸に今まで生きてきた。
だが、この時の自分は恐怖に飲まれ、あまつさえ自分から挑んだこの戦いから逃げたいと思ってしまった。
その事実に打ちのめされ、その場にひれ伏してしまった。
そんな自分に、
「男がいつまでも地面に這いつくばるものではない」
そう言って彼は自分に手を差し伸べてくれた。
この時から自分にとってジェイは無二の存在になった。
あれ以来、ギーシュは二度と浮気をすることはなかった。
今回の戦争でも恐怖は感じたが、その恐怖に飲まれて動けなくなることはなかった。
そして、決して最後まで諦める事もなかった。
全てジェイから学んだ事だ。
彼からは今まで多くのことを学んだ。
それは貴族とか平民とか、そんな枠組みを越えた、
そう、男としてあるべき姿を。
「勇敢な男がいたもんでさぁねぇ。でも一人で行って何ができるんだか」
「ふふ、どうかな」
「へ?」
彼が無意味な事などするはずがない。
ならば、彼にとってこれは可能なことなのだろう。
ギーシュは人生の師と仰いだその男の事を心から信じていた。
「ニコラ、彼が何と呼ばれているか知っているかい?」
「い、いえ」
「フッ、彼は……」
102 :
熱き使い魔:2008/04/05(土) 16:31:36 ID:GKg6eUti BE:496108883-2BP(30)
「我が軍の被害はどの程度だ?」
「はい、重軽傷者合わせて指揮官が約40人、その他各部隊の兵隊が約300人程です」
「死者は出ていないのか?」
「はい、奇跡としか言いようがありません」
勝利を確信したホースキンは副官から現状の確認をした。
そしてあれだけ暴れて全く死者が出ていないという事実に驚いた。
一体どれほどの実力があればそのような事が可能なのだろう。
戦慄を覚えると同時に、今ここで倒せた事に心底安心した。
「恐ろしい敵でしたな」
「ああ、だが同時に素晴らしい英雄でもあった。亡骸が残っていたら丁重に……」
プオオォォォォォォォォォォオオオオオオオォォォォォォォォォ
突如鳴り響いた甲高い音と共に、ジェイが包まれた炎の中から大量の蒸気が発生した。
そしてその炎が弱まり、中から現れたのは、
「何だあれは……」
赤く輝く双眸を持つ、黒と白で彩られた、人の形をした何かであった。
「へへ、何となくわかってはいたが相棒、やっぱりお前も人間じゃなかったんだな」
そう、彼は都市国家ジュドの都市安全管理局中によって作られたアンドロイド。
今の姿は人工皮膚で作られた外装が全て剥げた姿だ。
だがその外装はあくまでも一般人に紛れるための物。
戦闘に一切の支障はない。
「その格好も中々男前じゃねぇか」
「男が容姿について安易に語るものではない」
ヘイヘイとデルフリンガーは軽く相槌を打った。
が、そんな軽い調子のデルフリンガーとは違い、アルビオン軍はさらなる混乱に陥っていた。
硫黄が火の秘薬つーことでアルビオンに運ばれてうひゃーやったでー
ってなってたけど
火山から塊を掘り出してきているのと
コークスの副産物として出ているのでは
かなり意味合いが違うんだが
もしコークスを大量生産しているなら武器ももっとましな鉄を使って居る筈だし
「ゴっゴーレムだ!」
「いや、ガーゴイルだ!」
「バっバケモノ!」
アレだけの炎をその身に受け、それでもなお立ち上がる存在。
それはまさに人外の怪物以外の何者でもない。
アルビオン軍は自分達が相手をしているのがどれ程恐ろしい存在なのかを、この時始めて理解したのだ。
「まさか……アレは……」
ホースキンは一つの噂を思い出した。
先のトリステインへの奇襲作戦の際、数多の戦艦が一人の男によって墜とされた。
その男は蒸気に包まれながら戦い、一切血を流す事なく戦艦を無力化していったと。
その時は戦場に幾多流れる他愛もない虚報の一つだと聞き流していた。
が、目の前のソレを見て確証した。
コイツがそうだ。
それは誰が最初に呼んだのであろう。
その姿から男は敵からは畏怖の、味方からは畏敬の念を込めてこう呼ばれたという。
「あれが噂の……」
「「「ヒートガイ!!」」」
何か最後の最後で規制が掛かっちゃったみたいですみません。
元ネタはヒートガイジェイよりジェイです。
誰か「ヒートガイゼロ」のタイトルで長編書いてくれないかな……
支援の方、および代理の方には深く感謝いたします。
熱い漢キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
支援!
GJ!
元ネタを観てみたくなってくるなあ。GJ!
>>105 投下乙です。
未だにアニメ2のジェイスレに入り浸っている俺歓喜!
最後の台詞だけ見ると、1話でジェイのマッハパンチくらって木っ端微塵にされた敵のマシーンを思い出すw
この後、亜音速でカッ飛んできたジェイの拳でゴーレムフルボッコですね? わかります。
このスレ見てると不思議電波の存在を信じざるを得なくなってくる。
誰も「〇〇を召喚」とか言ってなく俺妄想で「召喚されたら面白いかも」とか思ったキャラが一週間位で作品として出てくる事がある。
どちらかと言えばマイナーなヒートガイジェイ。先週ブックオフでDVDセット見かけてふとそんな事考えたら今日来てるよ…。
買おうか迷ってたんだが買う事にした。
ハーメルンのバイオリン弾きのオル・ゴールをアルビオン側が…
>>110 そのかわり電波を受信するやつはことごとく駄作しか書けないやつだがな
実は作者はブックオフで
>>110の様子をうかがっていた店員
実写メガトロン様が召喚されたらさ、ギーシュをデコピンでのしたりとか
ゴーレムはフュージョンカノン砲で倒したりとか艦船をジェット形態で…
その前にルイズの言うこと聞きそうにないや
ジェイに感情ないって嘘だろそりゃ(笑
それにしてももうダイスケはジュドに帰ってる頃だなあ。
不死身のフジナミからロドリゲス藤波を召喚。
「つ、月が二つ、つき、つきつき……うき、ウキー!」(猿化)
その後、破壊の杖を拾って一時覚醒するもののすぐに元通り。
そろそろ3話投下します。
今回は短めに。
118 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 18:30:37 ID:zU60eIsv
最近憤慨よりも失望の声が大きいので
Wikiから本スレ見に行ったら…
なんじゃこりゃ?
雑談云々とかより投下されてる作品群の何れもが
キャラの把握不足とか、書きたいシーンに合わせた改変とか
二次二次ばっかりじゃないか。
「使い魔との親交を深めているようですなミス・ヴァリエール」
「これはミスタ・コルベール」
医務室に頭髪の薄い男が入って来た。
ルイズの反応からしてこの男は教師なのだろう、とラプターは判断した。
コルベールはラプターに視線を移した。
「ほう。あなたがミス・ヴァリエールの召還した使い魔ですな」
「今はそういうことになっている」
「それで、あなたの名前は?」
「ラプター、そう呼ばれている」
自分達からすれば異質であろうラプターにあっさり話を振ったコルベールに、ルイズは少し驚いた。
そして、コルベールが両手に何かを持っているのに気付いた。
「...それは俺のクローか」
「はい。少し調べさせて頂きました。実に高等な技術で作られ、材質もまったく未知の物です」
「そうか。こいつをどうする気だ?」
「あなたにお返ししますよ。平民とはいえ武器を取り上げる権利は、我々にはありませんので」
どうやら武器ということは解っているらしい。だが「コレ」の威力を知らないようだ。
特殊合金も易々と引裂き、恐竜の首をはねとばす威力を。
この世界での平民が持つ武器と同程度か、あるいはそれに毛が生えた程度と考えているのだろうか。
ならそう思わせておいてもいいだろう、そうラプターは考えていた。
「ちょっとラプター!主人の私を放っておいて勝手に話を進めないでよ!」
「ならお前から話に入れば良い」
「〜〜〜〜〜っ!!!」
割り込んで来たルイズを淡々と受け流すラプター。
コルベールはそれに苦笑しながら席を外した。
「部屋に戻るわよラプター」
「ああ」
「...あんたねえ!もっと愛想よくできないの!?」
「生憎そんな訓練は受けてないんでな」
「あーもういいわ!とにかく付いてなさい!!」
3話目終了。
なんかラプターがただの無愛想キャラになってないかどうか不安。
ちょっと待て。
いくら何でも短すぎるだろ。
ガンガンつながりで忍ペンまん丸からまん丸召喚。
喋るし可愛いし忍ペンギンだし、使い魔としてはかなりいいと思う。
なお英国飯についてはとある少女漫画家が
「私が適当に作って失敗したのよりマズい」
「一番美味かったのは変な日本料理屋のぐん伸びたソバだった」
とゆーよーなことを申しておりました。
sien
>>121 ここからの展開が思いつかなかったからです。
次回はシエスタとの顔合わせ〜授業あたりで。
恐竜惑星の作者さん、お疲れ様でした。
小ネタを1つ投下してもいいですか?
>>124 とりあえず乙と言っておく。
でも投下はそんなに急がなくて良いと思う。何事にもマイペースでいいですよ?
要はもう少し長くした方が良かったって事
提督の人乙です
アルビオンが浮く原理も解明してくれ〜
特に問題無いようなので小ネタをこれから投下しますのでよろしく。
僕は気の利くくまおくん。
私ツンデレルイズちゃん。
「あのね」
お腹が空いた? 僕が何でも作ってあげる。
「あのね」
暑くない? 僕が木陰を作ってあげる。
「あのね」
寒くない? 僕がマフラー作ってあげる。
「あのね」
眠れない? 僕がいっぱいお話してあげる。
「あのね」
僕が嫌いなの? だってルイズちゃんは何にも言わない。
それなら君の前からいなくなってあげる。
「あのね」
「あのね」
言えない言葉が溢れ出た。
「ずっと一緒に」
「ずっと一緒に」
ずっと言いたかった言葉。
「ずっと一緒にいなさいよ!」
何よりも僕が君のためにできる1番の事。当たり前すぎてわからなかったよ。
「ずっと一緒にいてあげる」
ツンデレルイズちゃん、溢れる思いが伝わった。
(「君のためにできるコト」から「くまお」召喚)
131 :
馬超:2008/04/05(土) 19:06:07 ID:G3QhonDC
一瞬、自称「変態という名の紳士」のクマかと思った
>>118 良作書いてた職人全員を馬鹿が追い出したから駄作しか残ってないのは当たり前
植物状態になった人を無理矢理動かしてるのと同じ
>>133 自分はここ2・3ヶ月程前からスレを見る様になったのだけど、そんなに酷かったのかな?
自分ルールの元で書き手を追い出し続けたら過疎るというのが判らないのだろうか…。
目の前の敵(と思い込んでいる)にばかり飛びついて全体を見ない視野狭窄人間が最近多いやね。
投下してもよろしいですか?
職人は自分の書きたいという意欲だけで書いてるんだからね。
読んでるほうは何も支払っていない。
それで偉そうなことを言う方の思考は、理解不能です、はい。
きっと道徳教育を減らしたゆとり世代でしょう。
支援砲撃、開始ッ
たまに勘違いしてる人いるけど
書き手>読み手でも読み手>書き手でもねえっつの。
書きたいから書く読みたいから読むレベルでいいわ。
そして支援する
いきなり現れた空賊の船により、ルイズ達の乗った船は行き足を弱めて停船した。
無抵抗の船員達はあっけなく捕らえられ、自分達のものだった船の曳航を手伝わされていた。
同じように捕らえられたルイズとワルド、ギーシュは船倉に閉じ込められ、杖を取り上げられた。
杖を取り上げられたメイジはただの人間であり、無力である。
元々魔法が不得意なルイズはあまり関係ないが。
部屋には酒樽やら穀物の詰まった袋、火薬樽が雑然と置かれており、重そうな砲弾が部屋の隅にうずたかく積まれている。
ワルドはそれらを見て回って脱出に使えそうな物がないか調べていた。
「いっそ玉砕覚悟で戦うか……いやもし死んだらモンモランシーと会えないし……」
ギーシュは床に座って何やらブツブツと呟いている。
「ユキムラ……大丈夫かしら」
「……ぬぉぉ賊は!!賊は何処だあぁぁー!?」
一方その頃、別の部屋で幸村は目を覚ました。
空賊が自分達の乗っている船に乗り移ろうとした時、幸村は真っ先に武器を抜いて立ち向かおうとしたのである。
だが、突如自分の周りに青白い雲が現れ、それに包まれた瞬間に強烈な眠気が襲い掛かってきた、
それが魔法の「眠りの雲」と知らなかった幸村は、そのまま眠ってしまったのである。
「気が付いたか真田幸村」
と、後ろから氏政が現れた。空賊に奪われたのか、大切な栄光槍は持っていなかった。
「いきなり斬りかかって行くとは……まったくとんだ無茶をするのぅ」
「しかし!賊にただ黙って従うなど武士のやる事では……!」
「ばかもんが!お主の主、武田信玄はそんな軽率な行動を取ったか!?」
書符『支援』
支援
氏政は大きな声でさらに言った。
「お主は見えんかったのか?あの連中、大砲をこちらに向けていたのじゃぞ?もし一斉に撃たれてでもみよ、わし等の乗っている船は木っ端微塵じゃったわい」
幸村は氏政の言葉に肩を落とした。
自分の軽はずみな突撃で、下手をすればルイズを危険に晒す事になったかもしれない。
「まったくお主という男は……」
氏政は皆の事を考えなかった幸村を叱咤したのだ。
「わしが死んだらどうするうぅっ!!」
……と思ったが、単に自分の命が危なくなったから怒っていただけのようだ。
その後、氏政は幸村に騒ぎを起こすな、と釘を刺した。
この男ならこれぐらいの扉、殴って壊せるかもしれない。
だが、氏政にはこの幸村という男が隠密に行動出来るとは到底思えなかった。
下手すれば「拙者はここにいるぞ!」などと叫ぶかもしれない。
そうなれば、連中がルイズ達を盾にして黙らせようとするのは容易に考えられた。
幸村も先の失態からか、氏政の言葉に従って床に座っていた。
(佐助がならば……上手くやるかもしれんが)
(はぁ〜……こんな時に風魔がおればのぉ……)
2人は声に出さず、それぞれ自分の忍の事を思い出していた。
しばらくすると、ドアが開いて痩せぎすの男が現れた。
「来い、頭がお呼びだ」
支援砲撃、第2斉射ッ!
狭い通路を通り、細い階段を上って連れて行かれた先は、立派な部屋だった。
後甲板の上に設けられたそこが船長室であるらしい。
扉を開けると、豪華なディナーテーブルの先に派手な格好をした男が座っている。
と、部屋に入った幸村はルイズ達3人の姿を見つけた。先にこの部屋に呼ばれていたようだ。
「おい、頭の前だ。挨拶をしろ」
後ろから幸村を連れて来た男が背中をつつく。だが、幸村はそれに応えず、頭を睨んだ。
「この幸村、悪党に下げる頭など持ってはおらぬ」
「これはこれは、大した口の利き方だな」
その言葉に頭はにやっと笑う。周りにいる空賊達もニヤニヤと嫌な笑い顔を浮かべた。
頭は水晶の付いた杖をいじりながら喋り始めた。
「俺達は貴族派の連中と商売しているんだがな、王党派に味方しようって奴を捕まえる密命を帯びている。その女が言うには、お前等は王党派の連中らしいじゃねぇか」
「なにぃっ!?むむ娘!お主喋ったのか!?」
氏政が驚いてルイズを見た。ルイズは「嘘なんかつけないもん!」と言って横を向いてしまった。
「阿保かお主は!ああもう駄目じゃ、わし死んだ!もう死んでしまうわい!!」
「もうこうなったら覚悟を決めるしかない!特攻だよ特こ……」
「少し黙っていてくれ」
喚き散らすギーシュと氏政をワルドが羽交い絞めにして静かにさせた。
「まぁ落ち着け。だが俺はお前等のその根性が気に入った。それでだ……」
そこで頭は杖をいじるのを止め、杖の先をコツンと床につける。
「お前達、貴族派につく気はないか?あいつ等は今メイジを欲しがっている。礼金も弾んでくれるだろうぜ」
そして次に幸村の方を見る。
「あんたもどうだ?腕が立つようだし、度胸もある。連中が雇ってくれると思うがね」
「死んでも嫌よ」
幸村が口を開くよりも早く、ルイズが申し出を断った。
だが見てみると、ルイズの体が震えている。
本当は怖いのだ。怖いのだが、それでも立ち向かっている。
幸村はそんな彼女の姿勢に改めて感心し、そして、震えているルイズの前に立って頭を真っ向から見据えた。
「ルイズ殿がこう言うのだ。拙者も遠慮させてもらおう。それでも無理矢理連れて行くというのならば……」
幸村は拳を強く握った。
「その時は、先ずこの幸村を倒してからにしてもらうぞ」
しえん
好きな奴だからもういっちょ!
第3斉、用意! …撃てッ!
「……本気か騎士さんよ。素手で俺達全員とやろうってか?」
「騎士ではない。拙者はルイズ殿の使い魔というものだ」
「使い魔?」
頭は大声で笑う。一頻り笑った後、ゆつくりと椅子から立ち上がった。
「いい度胸した野郎だ!いや流石、たった1人で抵抗しようとしただけはあるな」
と、突然周りの空賊達が一斉に直立した。
「失礼した。貴族達に名乗らせるなら、こちらから名乗らなくてはな」
頭は自分の髪の毛に手をかける。すると、髪が一気に剥ぎ取られた。
そこから現れたのは、凛々しい金髪の若者であった。
「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ。ようこそアルビオンへ」
最後が少し短いですが、これで投下終了です。
乙っ!褒美にオプーナの購入(ry
氏政はやれば出来る方と思ったらなんという保身…
お疲れ様です!
ラーメン 漬け麺 僕イケメン!
>>91-92 岩をも融かす熱量のブレスを吐く火竜とか、
単純スペックだけならハルケギニア生物も結構やばいんだけどな。
なまじリアルではないだけオーバースペック気味な怪物とかは多いな
それでもマスタードガス散布すればイチコロだろうが
幻獣の生理作用については何も分からないからねぇ。
化学兵器や生物兵器については試して見なけりゃ分からないだろう。
ところで、アイルランドの飯は美味いとわちふぃーるどが旅行記で書いてるぞ。
あと、イギリス人のC・W・ニコルさんの本に出てくる飯は美味そうだ。
猫ミートソーススパゲティは勘弁だが。
こんなやつらのためにこれ以上誰かの涙は見たくない!
涙も水の精霊も、核の熱で蒸発させてやる!
どう見てもハルケギニア終了ですね
黒金クウガでもまるで歯が立たなかった奴なんてどうしようもねえよ
BASARAの方投下乙そしてGJでした!
おじいちゃんがかっこいい……と思ったけど
やっぱりいつものおじいちゃんだったw
魔法先生ネギまからカモミール
ギーシュが召還してそこいらの女の子とパクティオーしまくりなのはどうだろうか
ゼロの独立愚連隊まだかな〜〜〜
>>130 だから元ネタの丸写しはやめろって
そういうのは子ネタじゃなくてパクリというの
しかしマジでアルビオン料理ってどういうのかな?というか原作小説でもアニメでも、
ゼロ魔シリーズは食物や食事の描写が意外に貧弱だからな(食いたいと思えるような
ものが描かれていない<ワイン類くらいか?読んでいると時々飲みたくなる)。
余談。弟が「アルビオン」旅行して、一番上手かったメシは、インド系移民が経営する
店のカレー料理だったと言っていた。
ヒートガイ乙。
このスレに来てから何度ブクオフに足を運んだか…。よし明日もだ。
あくま乙。
仲魔キターーーーーーーーーーー!!!!誰だ誰だ誰だ!
ダンテと会ってるってことは、魔人軍団もアリだが、金目はまさかミカ様か。
仲魔大好きなので、全力でワクテカさせていただく。
仲魔がいるなら、デル公は剣合体でもしないかぎり、空気にならざるを得ないなw
しかしなんて和む混沌王様だ…。
提督乙。
学長と禿、イキロ。
清々しいまでに戦わないガンダールグの活躍は、予想も出来なくて楽しくて仕方ない。
アメリカ旅行して一番うまかったのが店の料理じゃなくて
寮の食堂の赤米蒸してちょっと塩味つけただけのものだったよ。
あとはハンバーガーかな。あれの味はどこも変わらない。
アメリカって元イギリスの植民地だけあるなと思った。
『現代のイギリス料理』のレシピを見た瞬間、日本に生まれたことを感謝した自分がいたことを明記しておこう。
それはさておき、ゼロ魔世界は中世ヨーロッパをそれなりに取り込んでいるので、多分『雑でした』なものではないかと。
>>162 まあイギリスはイギリス料理以外はうまいって言われてるしな。
民族系ジョークでも「アルビオン」料理のまずさは常識クラスだからなww
アルビオンとブリトンとエンゲルラントは別物だろ?
ワンダーランド的に考えて。
ゼロ魔のアルビオンの食い物が不味いとか
考察スレでやるべきじゃね?
むしろ、アルビオンは食い物よりも
「どきっ 女だらけのガーター騎士団」の有無の方が重要じゃね?
ガーター騎士団は
男がガーターはめるから
ガーター騎士団
いや、ノボルなら「女だらけのガーター騎士団」をしてくれる
俺はそう信じている
民族衣装で男がスカートをはくトリステインとか
そしてそのスカートの下はフル○ンだな
まとめでゼロのガンパレード読んでたんだがギーシュカッコ良すぎだろ・・・後カステルモールの朴念仁さもすさまじいwww
お、男がガーター!?
>>175 ガーター勲章とは、正式な勲章が手元に無かったさる貴婦人がある騎士を賞するために
ガーターベルトを渡した事に由来するという。
>>176 そんでそのガーターベルトを履いちまうあたりが流石だな
>>175 ガーターぐらい普通さ。
九龍妖魔學園紀ってゲームで、普通に主人公が装備するし。
ナビがセクシーになるし。
ハボキは素でガンダールヴなんだよな
ひーちゃんはどうみても素手のほうが強そうだけどw
>>177 『天外魔境 風雲カブキ伝』でそれ元ネタにしたイベントがあったのを思い出した。
アルビオンと言えば、前スレでルルーシュが召喚されていたが、ルルーシュは
アルビオンの状況をどう思うんだろうか?
イコールではないにせよ、神聖ブリタニア帝国の前身に対応してるわけだし。
そういやグロンギにはゲゲルの条件としてリントの戦士(警察)だけを狙うガドル閣下がいたが仮にハルケギニアに来たらメイジ殺しの怪物の伝説開始?
でも進行役のバルバとか監督役のドルドがいないと駄目なんだったか
グロンギで使い魔できそうなのって誰かいる?
未確認生命体第3号
>>181 進行と監督がいなくても、暇つぶしに自分ルール作って勝手に始めるんじゃない?
「今日は横断歩道の白いところだけ踏んで歩こう」ぐらいの感覚で。
「今日は馬車に乗っているメイジを馬車から降ろさせずに殺そう」とか。
勝手に無差別殺人やっていいのはダグバだけだぞ
グロンギの殺人ゲームは結構厳密なルールがあるからな
>>178 「別区画に移動しました」
が
「あっちの区画も、いいわぁ(はぁと)」
になるあれねw
装備品として普通に強いから困る
なんか舌の肥えた現代っ子のサイトが不憫になってきた…
187 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/05(土) 23:13:25 ID:eHN9EJh6
現実のアルビオン→王制が大規模崩壊した事ないので、保守的な庶民の食は殆んど変わらず。
現実のガリア→数百年ごとに革命が何度か起こり、宮廷御抱えの料理人が庶民の間に流出したので、食のスタイルの変遷は何度もあった。
何故アルビオンの飯が不味いか。世界のジョーク集にはそうあった。
唐突だが、人修羅の仲魔に威霊アルビオンがいたら笑える
>>162 ニューカッスル城の最後の晩餐では豪華な食事が用意されていたというのがあったから、
少なくとも王宮で用意する食事はそれなりのものを作れたんじゃないかと思うな。
これが家庭料理となるとどうなるのかは判らないけど、もしイギリスみたいな食文化だったりしたら
その味で育ったおマチさんの手料理はマズかったりするのかもしれんw
>>190 愛は最高の調味料と崇高な愛を説く織天使も言っていた
つまりおマチさんが作ったなら炭でも食う(すでにまともな食い物ではないこと前提)
いや、アルビオンの宮廷料理人は、当然ガリア出身ですよ。
きっとハル世界じゃ
ゲルマニアの女を妻に持ち
ガリア料理を食べる
っていうのが成功者をあらわす言葉に違いないw
トリスティン?ロマリア?
シラネ
イポーニッツの飯はうまいんだがな
ジャンパーソン呼ぼうぜ
196 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/06(日) 00:06:59 ID:4oDBKXZd
織天使で思い出したんだが、アブデル様召喚とか面白いかも知れない
すまん、sage忘れてた…
>>184 ゲゲルの最終的な目的はダグバとの一騎打ちの権利を得ることだから、
ダグバ以外のグロンギが召喚された場合は結局好き勝手に殺しまくると思うけど。
本能的に人殺しが大好きな種族だし
>>198 よほど高位のメイジでなけりゃ余裕で殺しまわれるやつらだしな。
ただエルフ相手だとカブト虫閣下やダグバクラスでないとリフレクで死にそう。
>>198 ルーンに頑張ってもらうか
でも改変どころじゃねー程洗脳してもらってルイズの使い魔をやらせてももはやオリキャラだしな
ハルケギニア人類対グロンギも面白いかと思ったが長編が想像できない
エルフ達がシャイターンの門をくぐり抜けて来たグロンギ達と延々闘争を繰り広げていたところにルイズの呼んだクウガが加わってビダーシャルがポジション一条さんとか浮かんだ
五代に凹られて凍傷その他で半死半生、ルーンでギリギリ霊石にアクセスできるかどうかのダグバでいいんじゃね?
雪山恐怖症になってる感じのなら、なおよし。
五代…管理人さん呼ぼうぜ
一刻館丸ごと召喚でもええ
もしバダーが竜の羽衣に乗ってあのトゲみたいなの刺したら
バイクみたいにおどろおどろしいデザインのゼロ戦になるのかな…
133 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/04/05(土) 19:19:35 ID:A9eYyFak
>>118 良作書いてた職人全員を馬鹿が追い出したから駄作しか残ってないのは当たり前
植物状態になった人を無理矢理動かしてるのと同じ
早くにスレに来たってだけの書き手が、叩かれるでもなく単に飽きて投げ出しただけ。
そして挫折して毒吐き住人に堕ちた後は後進の書き手を叩いて憂さを晴らし、空気を澱ませてる。
まったく、日付かわったからって70も昔のレス穿り返すなよアナルマニアがw
>>203 なんか性能が現用機並みにアップしそうでおっかねぇw
プレデター呼んだルイズより悲惨な目にあいそうだな
□や△は優先的に刈られそうだから、キュルケもタバサもワルドも
カリンママンも死にそうだ
メカ物召喚だが、ガリアンの機甲兵ってゼロ魔でもいけるのでは?
共食い整備できない一品物なガリアンとか邪神兵とかどうやって維持してたんだろう。
>>204 追い出されたとか被害妄想ww
懐古厨曰く、初期の頃はスレの空気も良かった筈なのになあ。
>>206 さてはガリアンの原作を見てないな?
整備遺跡はあるしヒルムカがそれを使ってガリアンを強化改造した
OVA版は完全に別物
モンコレからイエルとかは・・・
・・・想像できんな。
>>202 ガンダールヴ付きの一ノ瀬さんと四谷さんなんてバランスブレイカーも良い所だ!
操兵を呼んだはいいが操兵鍛冶師がいなくて役立たずという流れか?
>>208 もういいからてめーは黙ってろアナルショップ
好きな作品の投下を待つ。
ただ伏して待つ。
ロボットロボット騒いでる奴は、まずパワーバランスの問題をなんとかしろ。
そんな巨大なもの、強力なもの、いったい誰を相手に使う気だ?
メンテや補給の問題なんて些事、まずは話の中にどうやって組み込むかから考えろ。
テッカマンブレードがロボットならゴーレムもロボットです
>>214 ホワイトドールで空気を読んで洗濯したり荷物運びをやる。
原作でも空気を読んで手加減してたし。
ボトムズは中の人が空気を読んだりしそうにないし強すぎる。
>>217 ホワイトドールは良かったなぁ。
ああいう使われ方されるというのがいいよね。
人型は人の幸せのためにあるんだぜ?
>>204 古参の書き手が後進の書き手を叩く、か…。
どこの界隈でも似た様な現象が起こってるんだな、人間のサガってやつかしらんが。
ドラマから呼び出されたのって仮面ライダーくらいだっけ
文才がありゃtrickから上田次郎呼びだしてみたいな
仮定を前提に話をするってのも凄いよね
パトレイバーも正しい使われ方だよなあ。
ロボットが普及してるっていう前提があるにしてもw
>>214 ロボじゃないけどタンでもない差があるテクノロジーによる
兵器の影響というのを提督さんが上手く組み込んでるな。
>>214 世の中には「スライムにイオナズンを叩き込むのが楽しくて仕方ない」という方々もいらっしゃいます。
ロボットだって良いと思うけど…まあ私は「スパロボで序盤から金あればフル改造」だけど
仕方無いから生身最強な「高槻父」や「日本一の私立探偵」召喚を考えてみるぜ
>>219 前にも来た”自称”元書き手だろ、ほっとけ
メンテ要らなくて済むロボかぁ・・・
ゲッターエンペ(r メンテナンスどころか、人間もクローニングして置いてあるぜぇ
呼び出した瞬間、ハルケギニア崩壊だなw
メンテいらずならレイアースとかもそうなんだけど、ゼロアースの人、帰ってきてくれないかなあ
ロボ召喚でも最強な主人公でも面白い作品が作れればいいんだけどな
主人公が無敵で苦戦しないなんて一次創作でも面白くするのが難しいし
それを二次創作で、しかもクロスSSでやるなんてほぼ100%踏み台クロスにしかならないだろ
>>220 避難所のKNIGHTーZERO
あれもロボ召喚の一種
>>201 あいつは殺すのも殺されるのも好きな、バトルジャンキーだと思うが。
死にかけてもトラウマなんて受けないだろう。
このスレ一通り読んでの感想。
なるほど、確かに召喚されて1ヶ月そこそこ、それもアルビオン行きは初めての「提督」には、
内戦前→内戦中→内戦後(ここが現時点)
を比較しての現状分析ができるわけはないわな(少なくとも、現時点でどうなっているかしか
分からない)。従って、以前との比較をどのように行うか(誰に聞くか、あるいは目前の状況
から以前のことを推理するか)が興味のあるところです。
>>232 > PL :「マスター、私対ジャイアントに+4のACボーナスがあるんですが。適用されますか?」
> DM :「待った、ロボに乗っているから身長は同じはずだ」
> PL :「ドワーフのこのボーナスは修練によるものです。サイズによるものではありません。
つまり、対ジャイアント戦のノウハウをこのキャラは知っているのです。
そしてそれはロボットに乗っていても適用できるのです。ロボットのサイズはどうあれ」
> DM :「……う、うむ。もっともだ。ならばボーナスを適用したまえ」
なんというシュールw
メンテいらずのロボならブレンがいけるな。本当はロボじゃないけど。
軽い損傷ならほっといても直るし、
燃料(食事?)も、ほかの生物から生体エネルギーを分けてもらうって形だからないようなものだし。
メンテは燃料が何とかなれば消耗部品に固定化かければ何とかなるんじゃねえの?
消耗部品の中には消耗するからこそ予定の性能を発揮できる、という部品もあったはず。
ハルケギニアの魔法技術ならガソリンとか駆動系エンジンの作り方を知れば割と簡単に作成できるのでは?
ブレンはな、こすってやると喜ぶんだぞ!>メンテナンスフリー
>>238 ゼロ戦のエンジンや弾丸は作れなかったぞ
>>214 > パワーバランスの問題
>>151-152あたりの話と絡むけど、
ハルケギニアの魔法や魔獣はスペックに結構揺らぎがあるので
ロボットを出すときにはそれに合わせて描写を強化してやれば
実はそれだけで足りるような気もする。
共通規格って概念がないから同じものを複数作る、ができないんじゃなかったっけか
一から作るのは出来ないけど分解と磨り合わせは出来たコルベールなら
ガソリンエンジンで機体も鉄臭いザブングルならメンテできそうだ
弾丸も搭載工具で「旋盤」を作ったってことにすれば何とかなるかも
あ、雷管の速燃火薬が作れないか、じゃあ搭載武器じゃなく肉弾戦専門で
ロボット込みでパイロット召喚するくらいなら、いっそ整備施設ごと召喚しちまえよ
召喚したルイズがペシャンコになるだろwww
メンテいらず、燃料の問題が無いとくればTFのラチェットだな
実写ならセクハラもこなせるぞ。
基地を偽装用の山とか海ごと召喚してみるとか
つまり大空魔竜召喚ですな。
べつにアイアン・ギアーでもいいけど。
>>247 >基地を偽装用の山とか海ごと召喚してみるとか
国際救助隊(サンダーバード)をトレーシー島ごと召喚するか?
アイアン・ギアは召喚じゃなくて、東の方からやって来たってのでも余り違和感が無いかも
11時から投下よろしいでしょうか?
支援だッ!
そこまで行くとルイズが逆召還みたいなもんだな。
いっそマクロスでも召還するか?
254 :
燃料:2008/04/06(日) 10:40:20 ID:kiMLBMH0
おとぎ奉りより四方を守る獣が呼ばれました
「お前の一番大事なものを奉れ」
「うーん、やはり髪の毛ってうわぁあああああ」
ぶちぶちぶちぶちぶち ぶっつり
朱雀がコルベールに残った毛を啄ばみどんどん丸裸にしていく
「うわぁああああああああああああああ」
※気を失ったので保健室に運ばれて夢の中での出来事
「!なんだ夢か・・・私も年か・・・さーて」
「コルベール先生、大変言いにくいんですが(汗」
コルベールがふと枕元を見るとごっそり髪の毛が抜けている
「なんと!」
ぺたぺた頭を触るが一本も残っていない
「フヌおおおおおおおおおおおおおおおおお、これは一大事ですぞ!これは一大事!きゅー」
シェフィールドがジョゼフを奉ってしまいガリアが分裂したり
ビットーリオが教皇が奉ってロマリアが権力闘争で国が割れたり
キュルケがおっぱいを奉ってルイズと同じ貧乳になったりする
どっとはらい
逆召喚というか対等クロス?
あの世界とあの世界が同じだったら、みたいな。
メンテナンスの要らなさそうなロボット…ゾンダー(ピザ宅配員入り)なんかはどうよ。
メンテナンスは要らないし、サイズもバイク程度でそんなにでかくない。
それに周りに材料(機械)がないならパワーインフレも起きにくい。
メンテナンスフリー
つ「アストロガンガー」
ええとなんか流れ早いけど投下していいんかな……
思ったより長くなったので二話に分けました。
連続投下予定なので途中で規制に引っかかったらよろしくお願いします。
『銀の左手 破壊の右手』
04『希望の西風』
ワルドは自分の行動が信じられなかった。
何もかもを巻き込んで虚無へと返す光を中途半端に駆動した右手で受け止めながら、ワルドは独り考える。
自分だけならば避ける必要さえなかった、大切なルイズを助けるだけならば即座に抱えて逃げれば間に合った。
ならば何故、自分はこのような不毛な行いを続けているのか?
「結局、俺は……」
ワルドはゴチると、残った力をすべて右手に注ぎこむ。
右腕と一体化した銀の剣の破片はワルドの命を代価に強力な力場を発生させ、空間を捲り返そうとする力と拮抗する。
僅かに視線を向けると、背後には驚いたアナスタシアとルイズの顔。それが堪らなく愉快だった。
「どうした? ルイズを巻き込みたくないと言うのは虚言か?」
その言葉にアナスタシアも我に返ったらしい、呆けた様子のルイズを手を引き安全な場所へと一目散に駆け出して行く。
「ワルド、なんで!? なんでっ!?」
叫ぶルイズの姿を黙殺し、唇を噛み締めながらアナスタシアは走る。
ワルドはその背中を見て僅かに微笑むと、残った力をすべて右手へと注ぎ込んだ。
「そうだ、それでいい……」
そう呟いてワルドは理解した。
とうの昔に、自分はルイズと共に生きることの出来ない体になっていたのだと。
そして思ったのだ、彼女なら何があろうとルイズを守りきるだろうと。
自分のように破滅に愛しいルイズを付き合わせることは絶対にしないだろうと。
ルイズの属性が虚無でないのなら、宮廷の暗愚どもとてルイズを毒牙にかけることはすまい。
そこで気づく、自分が何故これほどまでルイズにこだわったのか。
「ああ、なんだ。僕は……」
家族が欲しかっただけじゃないか。
こんな化け物になってしまった自分でも、隣に居てくれる人が居て欲しかっただけじゃなかったのか。
母に、帰ってきて欲しかっただけじゃないのか。
始めは確かに愛したものが薄汚く汚れていくことが許せなかったはずだが、いつしか手段と目的が逆になっていた。
何かを為すために欲した筈の力が、ただそれだけが目的となっていく。
ルイズを求めたのは、きっと彼女ならばそんな風に汚れ果てた自分でも受け入れてくれるから。
一緒に生きて、そして死んでくれるから。
「馬鹿だな、自分が何をしたいかすら見失うとは」
まったく度し難いとワルドは笑い、そして己の右腕を見た。
何もかもを破壊する葬世の剣にしては、ずいぶんと自分の意思を汲んでくれたものである。
だがそれももう保たない、限界を超えて使い続けた力は上限を超えて膨れ上がりやがてすべてをゼロにする。
既に己の一部になっているだけに、暴走の予兆はこれ以上ないほど簡単にワルドには見て取れた。
だがもういい、もう抗う必要はない。ワルドは意識を染め上げる白い光にすべてを委ねようとし……
「馬鹿なッ!?」
視界の端に映った人物を見て、慌ててこの世界に意識を繋ぎとめる。
そこには銀の光に体を裂かれながら、紺色の髪を翻し、ワルドに向かってまっすぐに向かってくる一人の女性の姿があった。
「何故戻ってきた!?」
「だって……」
全身を痙攣させながら問いかけるワルドに向かって、アナスタシアは叫び返す。
吹き荒れる風に負けまいとするように、どこまでも高く高く……
「貴方が死んだら、ルイズちゃんが悲しむじゃない!」
恐怖に震えながらそう告げる女の姿は、まるで聖女のようにワルドの瞳には映った。
シエーン
● ● ●
目が覚めた場所は学院のベットの上だった。
呆けた頭で周囲を見ると、紫の毛並みの狼がじっとこちらを見つめていた。
「ルシエド!?」
その姿から瞬時に何があったかを思い出し、ルイズは慌てて魔の狼へと駆け寄った。低い呻き、ルシエドは不満たらたらと言った様子でルイズのことを睨んでいる。
それも仕方ない、ルシエドからすれば戦友であるアナスタシアを放り出し、せっかくの戦いの機会をみすみす見逃すことになったのだから。
思い出す、ワルドを救うと半狂乱になった自分に剣の柄をめり込ませたアナスタシアの姿を。
意識が闇に飲まれる瞬間、わたしが行ってくるわと告げた彼女の言葉を。
「どうしよう、私、私……」
最悪の想像に、ルイズはこれ以上ないほどにうろたえた。
頭を抱えて震えるその姿は、とても貴族とは思えないほどに。
「死んじゃう、アナスタシアが死んじゃう」
大切な、ともすればもう一人の姉になってくれたかもしれない女性。
彼女が自分のせいで命を落とすかもしれないと言う想像は恐ろしく、ルイズは恐怖に心を縮ませる。
ルシエドがそんなルイズの鼻先に牙を突きつけたのは、震えるルイズの姿があまりにも無様だったからかもしれない。
「ひっ」
だらりと口の端から涎が垂れ、ルイズの顔を汚す。
まるでナイフのようにとがった牙がルイズの首に押し当てられる。
「――っ」
牙がルイズの首の皮を引き裂き、深紅の血が珠となって流れた。
あまりにも直接的な恐怖に失禁しかけたが、次の瞬間ルイズの心をそんなこと(恐怖)などどうでも良くなるほどの衝撃が襲う。
「何、これ……」
――それは燃え上がる焔の記憶だった。
燃え上がる炎は天高く空を焦がし、街を、人を、星の未来を焼き尽くす。
まさに災厄と呼ぶにふさわしい状況のなかを、ルイズは駆けていた。
その傍らには土煙を立てながら炎の大地を疾駆する巨大な鉄のゴーレムとそれを繰る金の少女の姿。
少女は炎が起こす熱風に肌を焦がしながら、その大きな朱い瞳に涙を浮かべ力の限り叫んでいた。
『アナスタシア!』
ルイズは泣き叫ぶ少女の服に牙を突き立て、走り出そうとするその体を無理やりに押さえつけていた。
そして気づく、これは記憶だ。ルシエドが共にアナスタシアと過ごしたファルガイアと言う世界の記憶なのだ。
『この、愚か者がーーーーー!』
ルシエドに組み伏せられながら少女は叫ぶ、荒野の果てに立つ炎の柱に向かって、そこにいるであろう親友に向かって。
『あれほど生きたいと言っておいて、死にたくないと言っておいて、この土壇場で何を考えておるのじゃ!』
少女の言葉は届いていた。
ルイズの瞳は、ルシエドの瞳は捉えていた。
銀と紫の大剣を掲げたアナスタシアが、その体を炎に焼かれながらアナスタシアに向かって微笑むのを。
『行くな、行くでない。わらわを一人にするな! アナスタシア――アナスタシアァァァァァァ!』
少女の声を振り切るが如く大剣が光を放ち、そして……
――唐突に記憶は終わりを告げた。
「ルシエド、これは……」
欲望の守護者である魔狼はただ何を期待するかのようにルイズのことを見ていた。
「ルシエド……」
ルイズは部屋の端に視界を移す。
そこにはアナスタシアと共に召喚した剣が、けして誰も引き抜くことの出来なかった剣が、静かに何かを待っている。
その剣の名はアガートラーム。
未来を司るガーディアンの喪われた銀の左腕。
● ● ●
アルビオンに起こったことを最初から最後まで極力客観的に把握している人物は言えば、それは無きアルビオンの王ウェールズ・テューダーであろう。
空賊に扮しレコンキスタへの妨害工作を行っていた若き王子は、輝く光と共に帰るべき場所が消え去ったこと知ったのだから。
そして途方に暮れた彼は王党派が立て篭もっていたニューカッスルの城に何があったのか調べようとした。
せめて一矢報いなければ死んで行った父や配下達に申し訳が立たなかった。
だからこそ王党派の最後の一隻であるベアー号は王党派消滅後もアルビオンの空を漂い、ウェールズはその甲板で物憂げなため息を着いていた。
「なっ、なんだあれはっ!?」
故に気づいた、アルビオンから空に向かって銀色をした膨大な光の粒子が伸びていくのを。
その光に向かって打ち込まれた別の白い光が穴の開いたチーズのように一瞬だけ抉れた空白を作ることを。
そしてアルビオンに向かって一匹の蒼い風竜が猛烈な勢いで飛んで行き、
それを追うように紫色の大狼がベアー号を踏み台に空を駆け抜けていくのを、
ウェールズだけがすべて見届けることが出来たのだ。
● ● ●
「畜生、畜生、なんでっなんでっ!」
才人は絶望のただなかに居た。
マチルダを傷つけた男が許せなかったが故に本能的に引いた引き金がすべての始まりだ。
不幸だったのは才人の手の中の『破壊の杖』が恐ろしいまでの威力を発揮したこと。
その力が少女を守ろうとする女性に向かって行ってしまったことだった。
だがまさしく破壊そのものと言った力は女性と彼女が守る少女を傷つけることは無かった。
才人が狙った相手が彼女たちを庇ったからだ。
そして才人は今こうして絶望している。
空に向かって立つ光の柱前で、感情だけで行動してしまった自らの愚かさを噛み締めている。
一目で分かるのは目の前の光がマチルダを傷つけたものと同じものであること。
そしてそれがなんの制御もなく暴走していること。
その引き金を自分が引いてしまったこと。
空に向かって放たれている力はウエストウッドを直撃した時の比ではない、アルビオンすら打ち落としかねない力を前にして才人はただ打ちひしがれていた。
「畜生、相棒!相棒ーーーー!」
その才人のすぐ傍に口の悪い魔剣が吹き飛んできたのは、意地の悪い始祖の悪戯か。
「おい、そこのお前。お前だ、お前、なんとかして俺をあの光のところへ……」
あまりにも口汚く罵られ、才人は操られるようにしてその魔剣を手に取った。
ぴたりと、魔剣の言葉がとまる。
「おでれーた! 小僧、お前『使い手』かっ!」
困惑する才人になおもデルフは言い募る。
「あれをなんとかしねぇと拙い、だからガンダールヴ! 伝説の神の盾! 俺に力を貸してくれ!」
「なんとか出来るのか? あれが……」
長い長い年月を生きた魔剣に導かれるようにして、才人はその右手に再び『破壊の杖』を握る。
左手のルーンが猛烈に輝きを放った。
● ● ●
「馬鹿だ、お前は大馬鹿だ!」
「ちょっと、馬鹿に馬鹿って言われたくないわよ」
「ええい、馬鹿に馬鹿と言って何が悪い! 此処で君まで野垂れ死んだら誰が僕のルイズを守るんだ!」
「うるさいわねっ、だいたい元はと言えば貴方がルイズちゃんを裏切ったのが悪いんじゃないの」
周囲がそんな風にシリアスな決意を決めているなか、聳え立つ光の柱のなかで二人はろくでもない痴話喧嘩に明け暮れていた。
疲労を色濃く浮いた顔で徹底的に互いを罵りあい、貶し合う。それはこれまでさんざん表面だけの付き合いをしてきた反動と言う側面もあるにはあったが、そうでもしないと気を保ち続けることが難しいからだ。
言うなれば雪山で遭難したパーティが互いに頬を張り合うのに似ている、それほどまでに二人は実に綱渡りなバランスで危うい均衡を保っていた。
本来なら周囲に際限なく破壊をばらまくガーディアンブレードの暴走、それをなんとか上空に向かっての放出に抑えているのは偏に二人の必死の努力に他ならない。
葬世のガーディアンブレードが他の品と同じように持ち主の意思を汲み取り力へと変換する精神感応兵器の一種である以上、強靭な意志力で制御に割り込むことが出来れば暴走状態でもある程度破壊力の指向性を変えることが可能だ。
勿論、それはワルドが必死に自らの意思を侵食されることに耐えることが前提であり、それが崩れればいかにアガートラームに選ばれるほど強大な“生きたい”と言う欲望の意志力を持つアナスタシアとてどうしようもない。
故に二人はどうしようもなく苛立っていた、もしどちらかの意識が途切れれば相手とアルビオンを巻き添えにガーディアンブレードの力が荒れ狂うのは明白だった。
「だいたい反則だろう!? 貴族を打ち倒すほどの剣士が召喚されれば誰だってガンダールヴだと思うさ! 思わせぶりに手袋なんてしてるし」
「手袋は友人からの貰い物よ! それにガーディアンブレードの欠片を召喚するほうがよっぽど非常識だわ!」
「はっ、非常識の塊に言われたくないなっ。右腕を介して伝わってきたぞ<剣の聖女>は覗きが趣味らしいな!」
「なんですって、このマザコンでロリコンのくせによく人のこと言えたものね、このド変態子爵!」
「なんだとっ」
「なによっ」
疲れているせいか、それともあまり悲観したくないせいか二人の喧嘩はだんだんと幼稚なものになっていく。
もし普段の二人を知るものなら頭を抱えただろう、例えば……
「僕ははじめから……ん?」
「わたしもあなたなんかはじめから……え?」
ふと心を通り過ぎた思念に二人は顔を見合わせた。
「――ひょっとして聞かれちゃった?」
「らしいな、不本意ながら」
届いたのはルイズからの――なにやってんのよ二人とも……と言う想い。
突然の不意打ちに顔を真っ赤にしながら二人揃って嘆息するその姿は、まるで仲の良い恋人のようだった。
「そう、抜いてしまったのね。ルイズちゃん……」
アナスタシアのこの世のすべてを憂えるかのような呟きさえなければ
● ● ●
キュルケは思う、一体どうしてしまったんだろう? と。
「ル、ルイズ一体その姿はどうしたのよ!?」
桃色がかったブロンドの髪は見る影もなく、まるで空のように蒼く染まり。
いつも身を包んでいた魔法学院の制服は、アナスタシアの着ていたような青と白と紫のハルケギニアでは珍しいデザインの服へ。
そしてアナスタシアと共に召喚された剣を軽々と担ぐその姿はどう見ても行きすぎのコスプレのようにしか見えない。
「あなたねぇ、いくらアナスタシアが好きだからって……」
「お願いがあるわキュルケ、キュルケ・フレデリカ・アンハルツ・フォン・ツェルプストー」
帰ってきた言葉はルイズが担いだ剣の刃もほども洒落がなかった。
キュルケは普段な放埓な顔ではなく、貴族としての覚悟をしてルイズに向かって問い返す。
「何? ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
「借りを作るのを承知で貴女に頼みたいわ、アナスタシアを救う為に私に力を貸して欲しい」
いつになく切羽詰まった様子のルイズの姿に、キュルケは唇を吊り上げる。
「嫌よ」
「――――っ!?」
ケタケタとキュルケは笑う、二つの家の怨念を叩きつけるようにルイズのことをあざ笑う。
なんて馬鹿な子、そんな風に言われたらこんな風に返したくなるじゃない。
「ツェルプストーが因縁深いヴァリエールに力を貸す筈ないでしょう?」
「――そう、分かったわ」
打ちひしがれた様子のルイズにさらに追い討ちを掛けるべく、キュルケはさらに言葉を紡ぐ。
「でも、まぁ……ただの“ルイズ”に友達として助けてって言われればただの“キュルケ”からしたら拒む理由はないわね」
「キュルケ!」
恥も外面もなくルイズが胸に飛び込んでくる、物凄い風切り音を立ててルイズが持っていた剣が顔の横を通り過ぎていく。
ずいぶんと肝を冷やしたが、こんなに可愛いルイズの姿を見れたならばチャラか。
事が終わった後どうやってからかってやろうかとほくそ笑みながら、キュルケはルイズの話を聞いていた。
それでまさか戦火の真っ只中のアルビオンに行くことになろうとは、そして親友のタバサまでルイズに協力すると言い出すとはさすがの彼女でも予想できなかったが。
――アルビオンの地でキュルケは信じられないものを見る。
ヘンリー・ボーウッドは信じられなかった。
ただ一人の死者もなくレコン・キスタが誇る軍勢が総崩れになっていると言うのである。
部下からは蒼い剣士と蒼い風竜が云々と訳の分からない報告しか届かないが、何がそれを為しているかは<レキシントン>の甲板に立つ彼にでも見て取ることが出来た。
一路サウスゴータへと向かっていく巨大な爆発の連続。
まるでレコンキスタを真っ二つにする断罪の剣の一振りの如く、一切の障害物を無視してまっすぐ進んでいくその力こそがレコンキスタを滅ぼすのだろう。
そしてその力の向かう先に立つ光の柱。
その二つが触れ合った時に何が起こるのか? ボーウッドは不安にその肉付きの良い身を震わせた。
「ル、ルル、ルイズーー!?」
「黙っててキュルケ、舌噛むわよ」
錬金で作った急ごしらえの橇で丘をもうスピードで滑り降りていく。
何故こんなことをやっているかと言えば、アルビオンまで無理に無理を押して限界まで早く飛んでくれたシルフォードを休ませる為だった。
故に上陸後は徒歩である、目的地は一発で分かった。なぜならアルビオンのどこからでも見ることの出来る光の柱がサウスゴータに立っているのだから。
布陣した貴族派の部隊をどうするのよ!? と聞いたキュルケにルイズはこう答えた。
――なぎ払って力づくで押し通る。
何を馬鹿なと呆れ果てるキュルケを前に、ルイズはその言葉通りの結果を示して見せた。
ルイズがアガートラームを振るうたびかつて失敗と断じた爆発の魔法が十重二十重と戦陣に刻まれる。
ドット以下の精神力で消費出来、強烈な威力を持ちつつも、けして人の命は殺傷しない。
こんな魔法が使えなければ、きっと自分は誰かを殺してしまっていただろうとルイズは思う。
だからルイズは、<ゼロ>と蔑まれた貴族の少女は生まれて初めて<ゼロ>である己に感謝した。
――爆風が切り開いたのは戦陣ばかりと言う訳ではない。
トリステインから吹いた荒っぽい風は、アルビオンに住む者たちの心から絶望と言う名の諦観を吹き払った。
誰もが諦めることをやめ、不安を胸に、己の意思で未来へ向かっての一歩を踏み出していく。
それこそが希望、絶望から踏み出そうとする者たちの背中を押す悪戯な西からの幸運の追い風。
希望の守護獣、ゼファーが司る。人が誰も持ちながら忘れてしまった奇跡の一つ。
sien
以上です、ぶつ切りのダイジョストにオリ設定てんこ盛りですいません。
最終話は規制にひっかかりそうなので推敲12時ごろから投下の予定です。
>>269 シルフ「ォ」ードとかダイジ「ョ」ストとか色々大丈夫かあんた
ともかく乙!
なんという燃える展開!
この怒濤の勢いに対して、細かなつっこみなぞは無粋の極みというもんでしょう
乙!!
んではそろそろ続き投下します。
『銀の左手 破壊の右手』
最終話『銀の左手 破壊の右手』
「行くぜガンダールヴ、気合入れろー!」
「おう、任せとけデルフ!」
一度制御を失敗したとはとても思えないほど『破壊の杖』は手に馴染む。
デルフリンガーが補助していると言えどまるで手の延長の如く馴染むその感覚は、才人の決意を『破壊の杖』が汲んでいるからだ。
ARMは精神感応兵器、人の精神を喰らって力と為す武器である。
ただの少女でしかなかったアナスタシアが人間すべてを絶望させたロードブレイザーと互角に渡り合うことが出来たのは、偏にアガートラームやアークスマッシャーの持つその性質にある。
アナスタシアの力の源は人ならば誰もが持つその欲望、『みんなと一緒に生きたい』と言う他の英雄としての死を求めるような軽薄な人間では到底比肩しえない強大な欲望の心をアガートラームが力としたからだ。
ならば今の才人の心は? ガンダールヴの力によって増幅されたその感情が『破壊の杖』に作用したとしても不思議ではない。
「心を研ぎ澄ませろ! 空間に作用するその力ならあの破壊の光相手でも押し負けることはねぇ」
その感情は『守る』だった。
「あとは照準だ! あの右手だけを的確に打ち抜け、お前ならそれが出来る筈だ!」
「分かった、やってみる」
自らの責任でこんなことになってしまったことに、自覚なく力を奮うことにあれほど嫌悪を抱いていた筈の自分があんなことをしてしまったことに。
少しでも償い、そして今度こそ守る。
それが才人を突き動かす理由、アークスマッシャーに注がれる力の正体。
「ただはずしたら全部諸共に木っ端微塵だけどな」
「ちょ、それを先に言えって!?」
「大丈夫だ相棒、お前なら出来る。このデルフリンガー様が保障してやるぜ」
「――分かった」
破壊の力が右手に宿る、目の前の絶望を打ち砕く為の破壊の力が想いを糧に駆動する。
其れはまさしく破壊の右手、誰かを守るため駆動する力、鋼の左手を持つ誰よりも優しい一人の青年の残した想いの形。
いつしか才人は『破壊の杖』の以前の使い手が使っていた構えを再現していた。
――ロックオン
極限の集中によってどんな小さな的だろうと確実に打ち抜く、ある渡り鳥が残した技。
ガンダールヴの力が『破壊の杖』を振るうに最適の形態を導いたのか、それとも『破壊の杖』に残された記憶を読み取ったのか、或いは……
いつしか才人の指の奮えは止まっていた。
「いけぇええええええええええええ」
才人はデルフの言葉に引き金を引き絞り。
「だめぇええええええええええええ」
アナスタシアを庇おうと飛び込んで来た少女の姿に、咄嗟に銃口の向きを逸らした。
才人が無力感に打ちひしがれている時間と、ルイズがアルビオンに向かう時間。
前者があまりにも長すぎた故に、後者があまりにも早すぎた故に起きたことだった。
● ● ●
ありとあらゆる障害を爆発で吹き飛ばして辿りついたあの場所で、ルイズは一人の少年と対峙していた。
言うまでもなく才人だ、彼の持つ『破壊の杖』がどれほど危険なものかルイズは身を以って知っていたが故に、ルイズは才人の決死の覚悟を力技で押しとどめた。
アナスタシアごとワルドを殺すつもりだと思ったのである。
ワルドはある意味自業自得と諦めることが出来る、だがアナスタシアは別だ。
彼女はルイズの為に命掛けでこの場に残ったのだから……
故に自分の命と引き換えででも助けると言う覚悟をルイズは決めていた。
アガートラームが認めたのはその心、誰かを助けたいと一心に願うその心こそが仮初とは言えアガートラームが自らを振るうに値すると認めたただ一つの理由だった。
だからこそ、二人のすれ違い悲劇そのものだ。
ほんの少し運命が違えば共に歩むかもしれなかった一人の少年と、一人の少女、二人は些細な誤解故に互いに殺しあっていた。
「やめてくれっ、あんたに銃を向けたくない」
そう言いつつも才人は光に向かって狙いをつけるのをやめはしない、それがルイズを激昂させる。
「殺させはしない、アナスタシアは私が守るんだからっ」
それは本当に些細な誤解だった。
才人はルイズが二人に些細な傷さえ付けず助けようとしているのだと思っていた。
ルイズは才人が二人を諸共に殺して破壊の光を止めようとしているのだと思っていた。
だから才人はルイズの隙を見てワルドの右腕だけを射抜こうとしていた。
だからルイズは才人を無力化してから命と引き換えに光の中へ飛び込みアナスタシアにアガートラームを手渡そうとしていた。
「やめろ嬢ちゃん! 相棒もいい加減に……」
二人が優しすぎるが故に起きた悲劇は、その名に恥じぬ悲劇的な結末に終わった。
才人は自らの体に生えた氷の矢を才人は呆然として顔で見つめていた。
趣味の悪いオブジェの如く飛び出した氷塊に手を掛け引き抜こうとしたところで遅れて感じる激痛。
まだ何もしてない……強烈な無念を残し才人はその場に崩れ落ちる。
「タバサ……」
いくらなんでもやりすぎだとルイズは言おうとしたが、その前に才人に突き立った矢と同じくらい鋭い一言がルイズを貫く。
「時間がない、急がないと間に合わなくなる」
ルイズは知らない。
タバサがアナスタシアのことをイーヴァルディの勇者の如く見ていることも。
タバサの母親がタバサを庇って毒に倒れて以来、氷のような決意を胸に抱いて生きてきたことも。
今度こそ喪わないと言う悲壮な覚悟と共に才人へ向かってウインディ・アイシクルを放ったことも。
そしてタバサも知らなかった。
才人がタバサに勝るとも劣らない覚悟でその銃把に手を掛けていたことも。
『破壊の杖』を通じて才人の心が音叉の如く同じ“力”を持つ者たちの間に響いたことも。
――助けたい。
周囲がその思念に気がついた時、胸から血を流しながら才人は今度こそ引き金を引き絞っていた。
『破壊の杖』から放たれた光がワルドの右腕だけを正確に打ち砕く。
極大の威力を極小に圧縮した光は破壊の力だけを虚無へと飲み込み、はじめから何もなかったように消え去った。
だが使い手が血を流し、意識が闇に落ちようとした状態ではいくら『破壊の杖』でもその力を発揮しきれなかったのか。
消しきれなかった破壊の光は制御を失って暴れ狂い、四方八方にその力を撒き散らす。
その破壊の力に向かって、ルイズはまっすぐに向かっていった。
その左手に銀の光を携えて。
――行け、ルイズ!
自分たちが傷つけたはずの少年の声援にその背を押されながら。
● ● ●
走る。
罪悪感と希望を胸に抱いて。
走る。
大切な人の元へと。
走る。
向かってくる光を斬り飛ばして。
まっすぐに光立つあの場所へ。
何処までも再現なく高鳴る胸。
白い粒子となった剣の欠片がスクリーンとなって見知らぬ光景を移す。
――行ってらっしゃい才人、あんたはどっか抜けてるから事故に会わないように気をつけるのよ。
見たこともない材質で出来た四角い塔が立ち並ぶ異界の街で平穏な毎日。
――隊長、本当にこのような卑劣な任務を上層部は命じたのでありましょうか!?
出世すればするほど痛いほどに実感してしまう愛する祖国の腐りきった恥部。
――アナスタシアと申したか、と、特別にファルガイアの支配者たるわらわの『友達』となることを許すぞ、べ、別に寂しい訳ではないんじゃぞ? お主だからこそ許すのじゃ、いいなっ、特別じゃからな!
本当に普通の女の子として生きたあまりにも短すぎるその一生。
銀の左手が伝える多くの思いを受け止めて、ルイズは白く染まる世界を走っていく。
これまで会った数多くの人とそれと同じ数の想い、これまで気づかなかったあまりにも広い世界。
――どんな時だって、わたしは一人じゃないってことに。
アナスタシアが来てくれたからこそ気づくことが出来た世界。
世界はこんなにも広くて、輝いていて、無限の可能性に満ちている。
守りたい、これから会うかもしれない人たち、見るかもしれない景色、掴むかもしれない未来を。
アナスタシアもこんな気持ちだったんだろう。
才人って男の子もこんな気持ちだったんだろうか?
走れ、走れ。
光を抜ければ、そこには……
以上です、エピローグは候補のなかから決めかねているので後日と言うことで。
ごめんなさい、もうちょっとだけお待ちください。
>270
すいません、がんばって推敲しているつもりなのですが誤字の絶対数が多いもので……
次回作あったら投下ペース落としてでもがんばって誤字潰しするのでどうか今回だけは見苦しくてもお許しを。
なにぶん、時間が……
投下乙です 次作も期待してます
ところで誰か宇宙戦艦ヤマトとか戦艦ナデシコなどの作中に補給シーンが余り無いのに活動出来て空飛べる戦艦物書いてくれないかなと期待してみる
>>279 >ところで誰か宇宙戦艦ヤマトとか戦艦ナデシコなどの作中に補給シーンが余り無いのに活動出来て空飛べる戦艦物
確かヤマトの場合は、宇宙空間航行中に取り入れた物質を変換して、エネルギーや必要物資
(装甲版や航空機部品、食料なども含む)にしていたと、ずっと以前に図鑑の設定史料で読
んだ記憶が・・・(その頃は小学生だったのでよく分からず、ずいぶん後になって意味が理
解できた)。それでもどうしても作れない物質に関しては、途中の星で補給する必要があった
とか(例:コスモナイトをタイタンから、生鮮野菜類をビーメラー星から)。
281 :
訂正:2008/04/06(日) 12:39:54 ID:tUFpv+cY
装甲版→装甲板
設定史料→設定資料
>>831 いっそ半死半生で記憶喪失になりまっ白な状態で召喚。
ルイズたちとの関わりで段々と良心が芽生え始めるけど戦争中に自分を思い出す。
殺戮自体はまた好きになったけど中途半端に生まれた良心で僅かに悩み始める…とか
しかしもし会話を全部グロンギ語で文章化できる人がいたとしたら神だな…
>>279 ナデシコの場合は補給の場面を描写しなかっただけじゃ?
どーでもいーけど、真田さんとハゲを競演させる気かえ?
>>284 そういうのが楽しいんだろ。
真田・ウリバタケ・コルベール「「「こんなこともあろうかとっ!」」」
ウリバタケ「くーっ、まさか元祖と一緒にこの台詞を言えるとは!」
みたいな。
いいなあ。「こんなこともあろうかと!」
ぜひSSの中で使ってみたい台詞だ。
そんなメタな台詞言わすのかw
>>243 マチルダ姉さんのゴーレムを
ジロン「ザブングルは男の子〜!」
とぶん投げて
潜伏中のオマチさん「何でこっちに落ちてくるの〜!」
となるんですね?判ります!
「こんなこともあろうかと!」
メタだからこそ使いにくい、だが、使ってみたい言葉だろうな。
「こんなこともあろうかと」
メタ発言じゃないでしょ
想定内つーだけだろ
こんなことも、じゃなくて元祖と一緒に、のほう>メタな台詞
まとめサイト見てて思ったけど
幸村って使い間として完璧だよな
顔良し・強い・異常な忠誠心
(ザザ…ザ…)
才人「あれ、通信機は外したはずじゃ…」
ルイズ「この小さな箱から声が聞こえるわよ」
(はーっはっはっは、こんなこともあろうかと! ほら、先生も一緒に!)
(こ、こんなこともあろうかと…)
((こんなこともあろうかと!))
才人「コルベール先生にウリバタケさん、いつの間に小型通信機なんて」
(御都合主義と笑わば笑え! こんなこともあろうかと!)
(サイトくん、説明は後だ。まずは心をよく落ち着けて、
“えんじん”の開度を司る棒のとなりに取りつけられた、レバーを引きたまえ)
もしウリバタケがサイトと一緒に召喚されたら、というifで第6巻p.200あたりのやりとり。
え、メンヌヴィルの襲撃? そんなのは知らないなぁ。
>>280 ヤマトは小ネタならもうあるね。
それはそれとして3以降は船内に「ヤマト農園」があるので野菜もOK。
ただ、ヤマト工場で作る肉は本物の肉より劣るようで、本物の肉は来客用に
取ってあった。
>>484 「こんなこともあろうかと」のせいで、科学技術マンセーなイメージのある人だけど、
実は科学技術者を目指した動機はコッパゲと真逆なんだよな、真田さん。
真田「機械が人間を殺す,そんなことが許されてよいものか!
科学は、人間の幸せのためにこそあり、人間は科学を超えたものだ。
そう考え、それを実際に確かめるために、オレは科学者になった。
科学はオレにとって、屈服させるべき“敵”なのだ!!」
>>294 >ヤマト工場で作る肉
何故かソイレント・グリーンを思い出した
某先生の「いいえ、私は遠慮しておきます」の場面が浮かぶ
>>296 >ソイレント・グリーン
知ってたんなら缶詰食う前に言って下さい、シタン先生。
を思い出した。
姉妹スレでもこのネタを出したら、皆に パーン⊂彡☆))Д´)されまくったなぁw
缶詰ネタ、他所でも出したのかよ
>>296 まあヤマト工場で作る肉は大豆などを原料にした奴だと思うが…多分
スタンドのグリーンディ→名前が似てるとカキコ→スレ住人がググる→パーン⊂彡☆))Д´) www
シタン先生テラ外道ww
誰かシタン先生召喚書いてくれないかな…そしてポンポコ風呂イベントを
>>304 >シタン先生テラ外道ww
コックピットを人間砲弾にして撃ち出すロボットやら、
国威発揚の名目で、合体ロボットやら作っちゃった
人だし。
召喚するにしてもルーンが問題だな
ガンダールヴで武力を強化するかミョズニトニルンで知力を強化するか
先生なら後者のほうが面白いか…
>>300 あのときのお前かパーン⊂彡☆))Д´)
やあ奇遇だねパーン⊂彡☆))Д´)
風の唄 散り逝く者の 鎮魂歌
>>306 >ミョズニトニルン
ジョゼフを塵閣下の様にパーン⊂彡☆))Д´)して更生する先生。
を想像したww
先生は武器もつと殺しすぎるからわざわざ素手で戦ってるような人だしな
デルフはしばらく使ってもらえんかも…
それどころかギーシュもおマチさんもうまいこと言いくるめられて戦わずに終わりそうw
○肉缶詰と聞いて原作シエスタのとある台詞を思い出した。
「オーク鬼の肉です!」
「うん……(モグモグ)これ、何の肉ですか」
「マリコルヌ」
(ブウッ)
※わかる人にしかわからない
ゼノギアス・・・
んん〜何の事かなぁ?
>>312 『賽の目繁盛記』のシンデンを思い出した。
>>311 シエスタの料理には○ぬの肉が使われています
古代ローマから誰か召喚されないかな。
>>317 ○の部分は『い』ですか?『て』ですか?
その肉は駄目だろwww
ゼノ好きだが、缶詰イベントを「だから何?」としか思わない俺は異端なんだなあ。
3週間遅れで推参します。
15分あたりから第9話投下よろしいでしょうか。
つまり
ハルパゴス「はい、大変おいしゅうございました」
だな
進路閉塞解除確認
しゅっぱぁーつ しんこーぉう
>317
ぞぬあげくんナツカシスw
>>311 WIZの4コマといえば、「オーク=豚肉」「ゴルゴン=牛肉」ってネタだったな。
これより投下開始します。よろしく。
支援
虚無の曜日、早朝。
普段は寝起きの悪いルイズも、今日は無事早めに目を覚ました。
なのははすでに着替えて控えている。今の服装は昨日ミス・ロングビルから借りてきた服だ。平民の服にしては上等だが、貴族好みのきらびやかさはない。どちらかというと裕福な平民、豪商などが着ているものに近い。
その辺の華美ではない上質さが、不思議となのはに似合っていた。
「おはよう、なのは。今日の日課はもうすんでるの?」
「はい、早めに切り上げてきましたから」
日課、というのはなのは曰く毎日の練習とのこと。召喚三日目に、ルイズはこの件についての許可を求められた。
早朝、自分の世界の魔法の練習に行っても良いかと。
もちろんルイズに異存はない。それでも一応もったいを付けて言った。
「いつもの仕事に影響しないならかまわないわよ」
現になのはは毎日、寝起きの悪いルイズをきちんと定時に起こしてくれている。
今度その練習を見てみたいな、とは思っているものの、どうも早起きする自信がないルイズだったりする。
朝食の後、ルイズとなのはは厩舎に向かった。が、意外なことにここでなのはが引いた。
ルイズは彼女に怖いものなどあるはずはないと思っていたのだが。
「う、馬に乗っていくんですか?」
何故か彼女は引き気味であった。
別になのはは馬が怖いわけではない。乗馬そのものにはむしろ興味があるといってもいいかもしれない。
なのはが引いたのは、これが『実用』であることだった。
乗馬などしたことないなのはは、牧場での体験乗馬ならともかく、実用として長時間馬の背に揺られて無事でいる自信はまるで無かった。
街までの距離を考えるなら、たぶん自力で飛んでいった方が早い。
たださすがにルイズを担いで長距離を飛ぶのは無理だと思っていた。
出来ないわけではない。怪我人を担いで数時間飛行した経験もある。
ただおそらくご主人様が持たないだろう、というのがなのはの見立てであった。
そしてルイズは、なのはが馬に尻込みしているのを見て。
「別段取って食われる訳じゃないわよ」
ささやかな優越感を感じていた。いい機会だから乗馬を教えるのもいいかな、などと思う。
ところがそのもくろみは、意外なルートから粉砕された。
「あら、あなたたちもお出かけ?」
「キュルケ、タバサ。あなたたちも?」
そこにやってきたのはキュルケとタバサのコンビ。
二人はルイズ達が厩舎にいるのに気がつくと、少し加速気味にやってきた。
「もう馬借りちゃったの?」
「ううん、まだよ。なのは、乗馬はしたこと無いみたいで」
「ああ、やっぱり」
珍しく口論にならずに会話が進む。
そしてここで、たとえ宿命のライバルからでも拒否しづらいような提案がルイズに成された。
「私たちも街に出ようと思ってたの。一緒に行かない? シルフィードが載せてくれるから馬の十倍速いわよ」
「う……い、いいわ、お願い」
もしシルフィードがキュルケの使い魔だったら意地を張り通したかも知れない。だがシルフィードはタバサの使い魔であって、ルイズから見ればタバサに敵対する理由は、「ツェルプストーと親しい人物」というものしかない。
ましてやここのところ、夜一緒にいろいろと練習をしている身である。ただでさえキュルケに対する嫌悪感すら薄れている位なのにいわんやタバサはである。
そして十分後、四人は機上ならぬ竜上の人になっていた。
「お話ししながら飛べるのね〜」
「わたしでよければ」
代価はシルフィードのおしゃべり攻撃であった。受けていたのはいろいろ聞きたいなのはだけだったが。
他の人にはうるさいシルフィードのおしゃべりも、なのはにとっては貴重な情報の宝庫だった。特に先住魔法についてわずかながらも聞き出せたのが後々大きく関わることになる。
もっともなのは自身もこの時点ではそうは思っていなかったが。
しえん
馬に比べるとほとんどあっという間にトリスタニアの街に一行は到着した。
「ふぇ〜っ、初めて乗せてもらったけど、竜って速いのね〜」
「まああれであるのは別としても、風竜は竜の中でも特に足が速いものね」
「ちょっと、なんでキュルケが自慢するのよ」
「別に自慢じゃないわ。事実を述べただけ」
などという一幕はあったものの、四人は市内へと入っていく。
「案外小さいんですね」
なのはの第一声に、ルイズが彼女をにらみつける。
「何よ、トリステインが田舎だって言いたいの?」
「いえ。でもここ、一国の首都なんですよね」
「首都? 王都のこと? ならそうよ」
「う〜ん、やっぱりちょっとせせこましい感じが……」
なのはの感覚ではそうならざるを得ない。何しろ大通りが五メイル幅程度、普通の対面通行可能な未知が四〜六メートルであることを考えると、どうしても地元の商店街のイメージがする。
「まったく、あなたの地元ってどんだけ大きいのよ。トリステインをせせこましいだなんて」
ルイズは当然の疑問を口にしたが、返ってきた答えは想像以上だった。
「そうですね。道幅だけでもこの三倍以上ありますし、街全体の規模は百倍くらいでしょうか」
ルイズだけでなく、キュルケとタバサもあっけにとられてしまった。
なんだ、その馬鹿でかい街は。
三人の心は、今ひとつになっていた。
「まあたぶん人口そのものが桁違いだと思いますし。あまり比較しても意味はないかも知れませんね。ガリアで千五百万でしたっけ?」
「そうよ。トリステインは正確な統計発表していないけどだいたい二百万弱だっていわれてるわ」
「私の生まれ故郷の国はだいたい一億二千万いましたし、今すんでいるところは全部合わせたら一千億くらい行くと思いますね」
「……な、なによそれ」
本気で桁が違っていた。
「でも、そう簡単に行き来できる訳じゃないですから、意味ないですし」
「それもそうよね」
その口調にどこかほっとしたものがあるのはとがめられまい。
「それより行きましょ。タバサのおかげでだいぶ時間は節約できたけど、それでもやることは多いわ」
「そういえばルイズ、あなたたちはどこに行くつもりなの?」
キュルケがルイズに聞いてくる。
「なのはの服をそろえるのが第一目的よ。身一つで召喚しちゃったから、いろいろそろえてあげないと。今着てるのだって、ミス・ロングビルからの借り物よ」
「ああ、確かにそうね。じゃあ、しばらくは別行動ね。私たちもいろいろ行くところがあるから、お昼に待ち合わせましょう」
「それがいい」
待ち合わせ場所を決めた後、ルイズとなのははキュルケ達と分かれた。
「じゃ、行きましょ、なのは」
そういってルイズが案内したのは、特にディスプレイもない、表通りから少し入ったところにある看板だけ出ている店であった。
中に入るとそこはブティックというより工房というイメージの強い場所であった。
特に目立つ形で服が展示してあるわけではなく、中では何人ものお針子が仕事にいそしんでいる。
「あ、これはこれはお嬢様。今日はいかようで」
ルイズをよく知るらしい、店長と思われる中年の女性が奥から出てきて挨拶をした。
「久しぶりね。今日は彼女の服を見立ててもらいに来たわ。下着も含めてね」
「はいはい。こちらのお嬢様ですね。まあ美人でスタイルもよろしいこと。腕の振るいがいがありそうですわね。ささ、みんな、仕事だよ」
「きゃあっ」
わらわらと出てきたお針子達にあちこちサイズを測られるなのは。あちこちさわられて、ちょっと危ない声が出たりもしたが、測定そのものはすぐに終わった。それを見た店長はてきぱきと指示を出し、当座の分ということでなのはのサイズにあった服と下着が出される。
「とりあえずはこのあたりですね。きちんとサイズにあったのは後ほどということで」
その辺の細かいことはなのははルイズ任せにし、ルイズも店長任せであった。もっともこの店はヴァリエール家と継続的な取引のある店舗であるため、いい加減な仕事をされる心配は皆無であった。
ついでにある『お願い』をするなのは。
「あの〜、これと同じものを作ってほしいんですけど。材質とかは違ってもかまいませんから。後、必要なら分解してもいいですよ」
なのはの手には、召喚時に着用していたブラがあった。
珍しい下着に、目がキュピーンという音を立てて光っていそうな店長。
「これは?」
「故郷ではありふれた下着で、こうやって……」
店内は女性だけということもあり、実際に着用してみせるなのは。それを見た店長はしきりに感心していた。
「こりゃまた……おもしろいこと考える職人もいたもんだねぇ。わかった、やってみるよ」
この店の職人は期待に違わぬ腕の持ち主であり、なのはは予備のブラを確保することに成功する。もっとも思った以上の値段になり、ルイズの目が丸くなることになるのだが、それは後の話である。
「さて、待ち合わせまでには時間があるし、どうする?」
「なら、あちこち見て回りたいです」
服飾店を出たルイズとなのはは、街のあちこちを見学することにした。
ちょっと高級な店から怪しげな店まで。なのははルイズが意外にちょっと危ない界隈まで足を伸ばしているのを知って少し驚いた。
「なんか危なそうですけど、こんなところに来る理由があるんですか?」
「普通ないし、私も滅多に来ないんだけど、秘薬の材料とかを売っている店がこの近くなのよ。水の秘薬ぐらいしか買ったこと無いけど」
なのはもそれには納得がいった。
「ここがその秘薬屋。見学してく?」
そういってルイズが足を止めたとき、なのはは何故かその隣のほうを注視していた。
「? 武器屋に何か用事あるの?」
その時なのはは、異質な魔力の流れを感知していた。はっきりとわかる、見覚えのない、しかし強大な魔力の発露。
それはかつて『ジュエルシード』や『レリック』から感じ取った力。
なのはは思わず、ルイズの存在も忘れてその店へと足を踏み入れていた。
「こらなのは、ちょっと待ちなさい!」
背後からルイズに文句を言われて、なのはははたと正気に返った。
「あ……申し訳ありませんでした」
自分が何をやったかに気がついて、頭を下げるなのは。
「ちょっと放っておけない『力』を感じまして……」
頭を下げついでに、そう小声でささやく。
「力?」
「はい。申し訳ないですけど、ちょっとよろしいですか?」
神妙にそういうなのはの頼みを、ルイズは断れなかった。
「ん? 貴族様が何の用ですか?」
二人が店内に入ると、厳つい風貌をした、五十くらいの店主が顔を出した。
「客よ」
短くルイズが言い切る。店主は意外そうに思いながらも、
「貴族様が武器とは、こりゃまたどういう風の吹き回しで。あれですかい? 盗賊への対抗とか」
だがルイズは店主の口上を無視してなのはに聞いた。
「で、どれ?」
「あれです」
間髪入れずに答えるなのは。その視線は、先ほどから一点に集中していた。
そこにあったのは雑多に積み上げられた剣の山であった。
戦場から拾ってきたような、長さも種類もばらばらの剣が、ろくに手入れもされていない状態で積み上がっている。その山をなのはは注目していた。
と、それに答えるかのような声が、どう聞いてもその山の中からした。
「ん? 誰だ、俺のこと見てる奴は」
「こっち、見えるの?」
なのはの答えがまた一本ずれていた。彼女は剣の山を少し崩して整理すると、中から一振りの剣を取りだして山の前に置いた。
「あなたね、しゃべっていたのは」
「おう、なんだ、良く見りゃ『使い手』じゃねーか。さすがと言うべきか、こりゃ」
「ちょっと、インテリジェンスソードじゃないの。そんなものがなんであんなところに?」
ルイズはいぶかしげに店主の方を見る。その、『目利きできないんじゃないの?』と言いたげな疑惑の視線に、店主は慌てて首を振りながら答える。
「いえ、ありゃ確かにそうですが、見たとおり錆だらけだわしゃべるといっても口が悪いわ、客に喧嘩までふっかけるんで、ああやって」
「でもなんか仲よさげね」
「ありゃ?」
店主も少し意外そうであった。なのはと剣は、なんというか仲良さそうに会話を続けていた。
「使い手って?」
「あ、気がついてねえのか。もっとも俺にもあんたが使い手だって言うのはわかるんだが、肝心の使い手がなんだったかがどうも思い出せねーんだな、これが」
「思い出せないって、それじゃあ、ひょっとして言い方悪いけど、年期はいってるの?」
「おお、かれこれ六千年くらい経ってんじゃねーか? 良く覚えてねえし、なんでわかるのかも俺にすらわからんけど」
「すごいじゃない。ひょっとして始祖の時代の剣なの?」
「始祖? ああ、ブリミルの嬢ちゃんか。別嬪だったなあ、ありゃ」
「なるほど。なんかちょっと危なそうな力を感じてきたんだけど、あなただったのね」
なんかいつの間にかずいぶん気安い仲になっていた。
と、なのはがルイズの視線に気がつき、慌てて居住まいを正した。
「ご主人様、出来ればこの剣を……」
「いくら」
いいにくそうななのはに対し、ルイズは即座に店主に対して値段を聞くことで答えた。
「新金貨で百ですかね」
「高くないの?」
「馬鹿いっちゃいけませんぜ。あの大きさの大剣なら相場で最低二百でさ。ただあいつは見たとおりで置いとくだけで商売の邪魔になりやすんでね。中古の値段でいいでさあ」
「買ったわ」
ルイズは財布を取り出すと、新金貨を百枚、店主の前に積み上げた。
支援です
さびた剣を手に、なのははずいぶんうれしそうにしているようにルイズには見えた。
「そんなに気に入ったの?」
そう聞くルイズに、なのはは力強く頷いた。
「はい。おそらくこの剣、始祖の時代に作られたものですよ」
「自称でしょ?」
端から信じていないルイズ。だがなのははそれを訂正するように言った。
「この剣、見た目はこれですけど、ものすごい魔力を持っていますよ。それに……」
剣を左手でもつなのは。そのとたん、刻まれたルーンが、はっきりと光を放つ。
「なんて言うか、ものすごく、手になじむんです。私、剣なんて使ったこと無いのに」
「そりゃ当然だ。おまえさん、使い手だからな」
「使い手?」
ルイズがその言葉に反応する。それに答えたのは、ちょっと意外な相手だった。
(“おそらくマスターに刻まれたそのルーン『ガンダールヴ』の事だと思われます”)
念話で割り込んできた相手、レイジングハートの言葉に、ルイズだけでなく、なのはも少し驚いた。
「誰だい今のは。なんか音じゃねえ声がしたが」
“念話も通じるのですね、あなたには”
今度は実際に声を最低に落として話すレイジングハート。
「おわっ、俺以外にもしゃべる器物ってあったのか」
“声を落としてください”
忠告するレイジングハート。
“あなたはともかく、私は注目を受けるのはまずいんです”
「わりい、さすがに俺もおでれーたんでな」
「どちらにしても往来でこういうことしているのは目立ちすぎるわ」
“確かに”
「そりゃそうかも」
ルイズの忠告に、首もないのに頷く二人。
ルイズとなのはは、待ち合わせの場所へと急いだ。
「おっと、名乗ってなかったな。俺はデルブリンガー。あんたは?」
“レイジングハートと申します”
支援
「お待たせ……あら何その錆びた剣」
ルイズ達が待ち合わせ場所に着いてすぐ、キュルケとタバサもやってきた。
で、見ればなのはがなにやら錆の浮いた大剣を手にしている。興味もわこうというものだ。
その答えは意外な相手から返ってくることになった。
「ん、友達かい?」
「そうよ、ご主人様のお友達。キュルケとタバサよ」
「お友達? せめてライバルと言いなさい」
なのはの言葉にルイズからはツッコミが入ったが、キュルケからは反応がない。
「インテリジェンスソード……」
むしろ反応したのはタバサだ。
当のキュルケは、一度ゴクリとつばを飲み込んでやっと意識が戻ってきたらしい。反動でか怒濤の如く言葉があふれ出した。
「な、なんでそんなものをルイズが持ってるのよ。確かものすごい値打ちものでしょ!」
「新金貨で百だったけど。錆びてる上にろくでもないことしか言わないっていうんでやっかい払いされたみたいよ」
「はあ。要するに口の悪い駄剣ってわけ」
キュルケが納得したように肩をすくめる。だが、何故かなのははそんな様子を見てもにこにこしたままだった。
「……? なのは、何かあるの?」
「はい。推測ですけど」
そう答えるなのはの目には、何かを確信しているか輝きがあった。
そして手の中のデルブリンガーに語りかける。
「ね、デルブリンガー、あなたが錆びてるのって、たぶんあなたがやってる偽装でしょ?」
しばし、その場に沈黙が訪れた。妖精が通り過ぎた後、最初に口を開いたのは当のデルブリンガーだった。
「……そういえばそうだったような気が。おでれーたな。俺自身もすっかりそんなこと忘れてたっていうのに、なんでわかった」
「「忘れてたんかい!」」
期せずしてルイズとキュルケから同時にツッコミが入る。見事なまでのシンクロぶりに、タバサが思わず吹き出すくらいだった。
ルイズとキュルケは、タバサが吹き出したのに一瞬見入り……次の瞬間互いに目をそらした。
「で、なんでわかったの?」
そう聞くルイズになのはは、
「これってたぶん、私があんまりこっちの魔法に先入観持ってないからだと思うんですけど」
そう答えた後、デルブリンガーを改めて握りしめた。
同時にルーンが光る。
そこから流れてくる何かを感じながら、なのはは言葉を続けた。
「ちょっと考えてください。魔法の剣に『固定化』が掛かってないことなんてあります?」
「普通無いわね」
キュルケが答える。
「ではクイズです。固定化の掛かっている鉄が錆びるには何年かかりますか?」
支援
「「「あ」」」
ルイズ、キュルケ、タバサ、三人の声がまた見事にハモる。
「いわれてみればそうよね」
キュルケが頷く。
「固定化の掛かっている鉄は錆びない」
タバサも改めてデルブリンガーを見る。
「ということは……あの武器屋の親父さん、それを知らなかった?」
「かと」
なのはも首を縦に振る。
「仮にも人語を解する魔剣に固定化をかけ忘れるなんていうことがあるとは思えません。だとすればこの錆はむしろデルブリンガー自身にそういう力があると考える方が理に適っています」
「でもなんで錆を浮かす力なんかが?」
そう問うルイズに、なのはは答える。
「一つは偽装でしょう。こういう剣ともなればたぶん名が知られてもおかしくないですから、偽装する力も必要かと。でも私は副産物だと思いますよ」
「副産物?」
「はい。これをみれば判るかと」
そういうとなのはは、傍らに置かれていた鞘を手に取った。店主曰く、鞘に収めればしゃべらなくなるとのことだった。
「ちょっとごめんね」
そうデルブリンガーに語りつつ、鞘に収めるなのは。その様子に、キュルケとタバサは少し違和感を覚えた。
「なのは、ずいぶん手慣れてるわね」
「剣を鞘にきちんと収めるのは意外に難しい」
二人の疑問に、なのはは左手の甲を見せた。
「これのせいだと思いますよ。レイジングハートがいうには、『ガンダールヴ』っていうルーンで、武器の取り扱いを上達させる力があるらしいです」
「ガンダールヴ? そういう名前なんだ、そのルーン。でもなんでレイジングハートが知ってたの?」
ルイズが頭をひねりつつ聞く。なのはの答えは、
「この間の決闘の時、レイジングハートと何か魔法的に共鳴したらしいです。ほら、あのとき私は『武器』としてレイジングハートを持っていましたから」
であった。それを聞いて納得する三人。
「つまり今のなのはは、別に剣に限らず、あらゆる武器の達人っていうわけ?」
ルイズが何か期待を込めた目でなのはを見る。それに対して少々困惑しながらもなのははそれを肯定した。
「た、達人とまでは行かないでしょうけど……」
「すごいわ! つまり今のなのはって、めちゃ強いメイジであると同時に、達人の剣士なのね!」
「自画自賛」
浮かれるルイズに、タバサからちょっと冷たいツッコミが入った。
いわれてルイズも少し顔が赤くなっていた。うれしいのは確かだが、こういう使い魔自慢は確かにいわれたとおりの側面も持つことになる。
「……わ、悪い?」
「自重」
それでも意地を張って返した言葉は、あっさり撃墜された。
「はいはい、二人ともそこまで。さっきから話がずれてるわよ」
流れを元に戻したのは、さすが年長者と言うべきか、キュルケであった。
「で、なのは。なんで鞘に収めることとデルブリンガーの偽装能力が関係あるの?」
それに対してなのははタバサにデルブリンガーを差し出した。そして一言。
「抜いてみて」
タバサはやや重そうにしながらもデルブリンガーを鞘から抜こうとする……が。
「抜けない」
タバサの手の長さでは、デルフほど長い剣を鞘から抜けなかった。
続いてなのははキュルケに渡して同じように抜いてみるようにいう。長身のキュルケでも、デルブリンガーを鞘から抜くのには手間取った。
「お判りですか? デルブリンガーくらいの大きい剣となると、抜くのが大変なんです。腰に差してたらまず抜けません」
「そうよねえ」
ルイズも納得する。
「ですからこういう剣はこうやって」
再びデルブリンガーを鞘に収め、刃を上にして右肩に担ぐ体勢を取るなのは。ちなみになのはは左利きなので右肩に背負っている。右手で抜く場合は左肩になる。
「抜くんですけど、デルブリンガーの場合、形の問題でこの体勢でも抜ききれないんです」
ちなみに今のは野太刀のような、反りのある大振りの日本刀を抜くときの体勢である。反りのため抜くためのラインが円弧状になり、長物でも抜ききれる。ただ直刀ではこれでも抜けない。
デルブリンガーは原作の挿絵等を見る限り反ってはいるがごつすぎてこれでも抜けないと思われる。
そしてなのはは、鞘に収めるとまともに抜けないということを皆に示した上で、改めてデルブリンガーを鞘から取り出し、左手で握って言った。
「デルブリンガー……デル君って縮めていいかな、言いにくいから」
「いいぜ、使い手の姉さんがそういうなら」
「ありがとう。で、デル君。出来るかな。錆を出せるんなら、鞘も出せない?」
ルイズ達があっと言う驚きを浮かべる。
「うーん、出来た気がするんだが……錆の落とし方を含めて、どうにも思い出せねーんだな、これが」
あまりにも間抜けな答えに、今度は体勢を崩すルイズ達。
ヘルプを入れたのはレイジングハートだった。
“マスター、試しにデルブリンガーに、魔力を通してみてください”
「魔力を?」
“はい。彼に関して、少々思うところがありまして”
「わかった。やってみるね」
疑問に思いながらも、デルブリンガーに対して、なのはは魔力を流し込んでみる。
驚いたことに、効果は抜群であった。
「うお、これは……姉さん、ずいぶん手慣れてやがるな! 普通これは、使い手といえどもよほど心を震わせないと出来ねえこったぜ!」
「心を、震わせる?」
疑問に思ったが、それに対するデルブリンガーの答えはない。だがこの一言は、この世界の謎を解く大きな意味を持っていた。
それはさておき。
魔力を通されたデルブリンガーは、その刺激でか、だいぶいろいろなことを思い出したらしかった。
刀身に張り付いていた錆が、淡雪の如く消えていく。寸刻の後現れたのは、研ぎ立てのように磨き上げられた、見るも眩しい、まさに名刀としか言いようのない見事な大剣であった。
「すごい……」
「見事」
「嘘みたい」
キュルケも、タバサも、ルイズも、ろくに言葉が出てこない。
なのはは、少し考えて、口語で言ってみる。
「納剣」
それで通じたのか、次の瞬間、デルブリンガーは見事なこしらえの鞘に収まっていた。しかもよく見ると、先端の方がやや大きいデサインのデルブリンガーにぴったりしすぎているため、どう考えてもそのまま抜けるわけがなかったりする。
「おでれーた。そういえば俺、こういうことできたっけ」
「あんたねえ、ぼけ過ぎよ。なんかまだ隠し球もってそうね」
ルイズが思わず突っ込んでいた。
「そういえば今のあなた、鞘に収まっててもしゃべれるのね」
「ああ、可動部分の邪魔にもならないし、本当に鞘に入っている訳じゃねえからな」
かちかちと金具を動かしつつしゃべるデルブリンガー。
「つまり本当に黙らせたいときは、そこを紐で縛ればいいってわけね」
「それだけは勘弁してください姉さん」
なのはの指摘に、慌てたように答えるデルブリンガー。
その時、なのはは何とも居心地の悪い視線を感じた。
ふと周りを見渡すと、自分を含めた全員が、まわり中の注目を集めていた。
思わず視線を合わせる四人+一本。
そこからの逃げっぷりは、後々までトリスティアの噂となったという。
支援
結局、予定していた昼食その他をすべてブッチしてルイズ達は早々に魔法学院へ逃げ帰ることになった。
「うかつだったわ……人前だって言うの忘れてた」
「しばらく顔出せないわね」
「同感」
しかも学園に帰ったら帰ったで、今日はマルトーさんも休みで、あらかじめ申請のあった分しか昼食の準備は出来てないという。
そのせいでルイズ達三人は、なのはが作った料理を食べるという珍しい体験をすることになった。
「ここの料理からすると庶民的で、賄いっぽいのは勘弁してね」
「ていうかあなた、料理も出来たのね。味はまあ並っぽいけど」
「でも意外といけるわね。マルトーさんには及ばないけど」
「……」
タバサは黙っておかわりの皿を差し出す。それを受け取りながら、なのははしみじみと言った。
「でも驚いたわ。まさか味噌と醤油が置いてあるなんて想像もしてなかった。これがなかったらとうていここまでの物は出来なかったと思う」
実際なのはにとっても意外だった。ここに来て賄い食とかは毎日食べていたが、味噌も醤油も使われていたためしがない。
「あ、それ、私の村でちょっとだけ使っている物なんです」
その疑問に答えたのはシエスタだった。食堂は虚無の曜日で休みであっても、メイド達の賄いは彼女たちが自分で作っている。なのは達はそこにお邪魔していたのであった。
実際、四人がここに押しかけたときメイド達は自分達ので良かったら、といってくれたのだったが、さすがにルイズ達もメイドの食事を取り上げるのは貴族として恥ずかしいと思ったのだ。
「うちの村の名物料理……ヨシェナヴェっていうシチューを作るときとか、ほかいくつかのお料理の時にだけ使うんです」
「寄せ鍋?」
思わずそう聞き返すなのは。知らず知らずのうちに、目つきが鋭くなっている。
そんななのはの眼光に押されたのか、少し声を震わせながら答えた。
「はい……あ、なんかおじいちゃんの発音に似てます、その言い方。うちの村……タルブの名物料理で、一番がヨシェナヴェなんです」
「ほかにあるの?」
さらに圧力の強まる声に、シエスタはなかば泣きながら答える。
「は、はい、ショーウとか使うのであまり外には出てませんけど、それを使って作った甘いソースを掛けるチキンソテーのテリ・ヤキとか……」
「味噌汁って知ってる?」
「ミソ・シル? あ、そういえばそういうのをひいおじいちゃんが飲んでたって……」
「なのは! どうしたのよ、いったい!」
さすがにルイズが見るに見かねて止めに入った。
「どうしたのいったい。あなたがメイドに脅しを掛けるなんて」
「あ……ごめんなさい」
言われて自分が何をしたのかに気がついて謝るなのは。
「いえ、いいですけど……どうしたんですか? ずいぶんうちの村のお料理が気に掛かっていたみたいですけど」
「それ、私の故郷の料理なの、全部」
「ええっ!」
さすがにルイズも驚いた。シエスタもだ。
「あなたの故郷って……よね」
別の世界、という部分を抜いて問い掛けるルイズ。なのはは頷いて肯定の意を示す。
「ね、シエスタ」
改めてシエスタの方に向き直るなのは。
「あなたのその黒髪黒目、この辺じゃ見かけないけど、誰に似てるの?」
先ほどまでの圧力が抜けたせいか、シエスタは気軽に答えた。
「ひいおじいちゃんです。うちの村では有名人ですよ。ヨシェナヴェとかも、ひいおじいちゃんが持ち込んだものですし」
「味噌と醤油もでしょ?」
「あ、はい。その通りです。ソイ豆から作るんですけど。もっとも村でもワイン作りの合間に少し作っているだけです」
「お願い、譲って。そんなにたくさんじゃなくていいから」
「なのは、また顔が怖くなってる」
二度目の指摘に、なのはの顔が赤くなった。
「……ごめんなさい」
頭を下げるなのはに、シエスタは笑いをこらえるのに必死になってしまった。
「よっぽど気になるんですね。なら次の休み当たりにうちの村に来ますか? ラ・ロシェールの少し向こうの、何もないところですけど」
なのはの目がタバサに向いていた。タバサは少し困った顔をして上を向き……問い掛けるように言った。
「ほかにもこういう珍しい料理知ってる?」
「もちろん! 醤油と味噌があるなら、レパートリーがぐんと広がるもの。伊達に一児の母はしていません」
その瞬間、ルイズをはじめとしてメイド一同に至るまでひっくり返った。
「ちょ、ちょっと待ったあ〜〜〜〜〜っ!」
「どうかしました?」
しれっとしているなのはに、ルイズは限界まで声を震わせながら言った。
「あんた子持ちだったの!」
そういう顔は蒼白だ。いくらルイズが傍若無人な性格であっても、彼女に子供がいるというのがどういうことを意味するか位は想像が付く。
なのはの歳を考えれば、自分は幼子から母親を奪い去ったと言うことになるのだ。
だがなのはは意外に淡泊そうに答えた。
「ええ、一応。いい子ですよ、ヴィヴィオは」
「あ、あ、あ、あんたねえっ!」
なのははそんなルイズの慌てっぷりを、不自然そうに眺めている。
「子供のこと心配じゃないの!」
「ああ、そういうことですか」
なのはも納得したように返事をする。
「もちろん心配ですよ。でも、放っておけない事態だったら、こうやってのんびりご主人様の使い魔をやっていると思いますか?」
「……そうよね」
ルイズも少し落ち着いて頷く。
「ちなみに子供と言っても養子で、今年7歳。それにちょうど相方がいるときだから、当座の世話は彼女が何とかしてくれると思いますし」
乳飲み子でないと知って、いくらかルイズ達もほっとした。いくら何でもその年だったらシャレにならないどころではない。
「相方?」
キュルケはそこに突っ込んでくる。
「うん、私の親友。同居人でもあるわ。お互い忙しい身だったから、どうしても長期間家を空けることも多かったの。ヴィヴィオを引き取ってからは出来るだけ家にいることにしてたんだけどね。そうも行かないことも多かったから」
「そうなの」
「だからご主人様」
そういうとなのははルイズに向き直った。
「あの子のこともあるので、いずれ私はここを去ると思います……向こうも突然召喚された私の行方を追っていると思いますし。ですがその時が来るまでは、私はあなたの使い魔ですから」
「判ったわ……その時まで改めてよろしくね」
さしものルイズも、引き留めることは出来なかった。
支援
ミッドチルダ、時空管理局。
「一人部隊」とも言われる八神はやては、己の持ちうるすべてのコネを動員して親友である高町なのはの行方を追っていた。
そんな彼女の努力は、ある一つの可能性にたどり着いていた。
「六次次元障壁?」
「ああ。まさかこんなところに繋がるとはな」
答えるのはクロノ・ハラオウン提督。
「はやては平行世界が何故「平行世界」と言われているのかは知っているかい? 並行世界とも言われるけどね」
その言い方に引っかかりを覚えるはやて。今クロノは、「平行」の部分を言葉だけではなく、ミッドチルダ語でもなく、あえて97管理外世界の漢字、つまりはやての母言語で、しかもわざわざ筆記して指摘した。
つまりはこの部分に重要な意味があるということだ。
「『平行』に重要な意味があるのは判ったけど、どないな意味があるん?」
「ああ。時空管理局が管理している多数の次元世界における、ある原則に関わってくる」
クロノはそこで言葉を切ると、平行線がいっぱい引かれた図を示した。
「この次元世界の特徴……それは『時間の同期』だ」
そういって平行線の一つを指さす。
「つまり、こちらで一日を過ごし、その後97管理外世界で一日を過ごし、またこちらに帰ってくるとする。その時、こちらの時間はちゃんと一日経っている。どの平行世界に行っても、時間がずれることはない」
「そやな」
はやてはその説明に頷く。
「この事実により、各次元世界は五次的障壁で区切られている、というのが基本的な学説だ」
そういってクロノは再び先ほどの平行線の図を示す。
「各世界を零次の点で表し、時間の経過を取ると、世界はこういう線で表される」
首を縦に振るはやて。
「この『世界線』は決して交わらない。これは絶対の定理だ。そして各線を移動しても時間がずれないことが、この世界障壁が五次的なものであることの証明となっていた」
「そういうっていうことは、そうでない場合があるっちゅうことやな」
「説明が早くて助かる。その通りだ」
クロノは姿勢を正すと、言葉を続けた。
「世界線が見たとおりの『平行』であるのは、絶対に交わらない世界線をより上位の視点から見た際、これ以外に置きようがないからだ。但し、これは世界線を仕切る次元が時間を含めた四次元の一次上……五次元であるときに限られる」
そういうとクロノは、空間投影で平行線の書かれた紙の少し上に直線を引いた。
「もしそれよりも高い、六次の障壁が存在するなら、このように各世界に対して『ねじれ』の位置を取る世界線を引ける可能性がある。この場合でも、この線を利用して過去に戻るような真似は出来ないけど、時間の流れを圧縮伸張することは可能になる」
そういうとクロノは、指で各線をなぞる。
「こちらをここから出発し、こちらで一年を過ごして、再びこちらの一日後に帰ってくることは理論上可能だ。逆もね。問題も多いが利益もあるんで、もし存在したとしたら管理局としても最大限の注意を払う事象になる」
「それが今回の件にひっかかったんやな」
さすがにはやてにもそれを察することが出来た。
「先ほど事件現場の遺物に対する調査が終わって、ロストロギア指定が解けたんで情報が上がってきたんだけど、そこになのはが召喚されたときの次元航跡が記録されていた。だがそれは……」
「今までの常識からはあり得ない、六次方向に向かっていた、ちゅう訳か」
「正解だ」
クロノは大きくため息をつく。
「元々六次障壁は、時間が同期している限り、存在しても他の五次障壁と区別することが不可能だったんだ」
先ほどの図の上に、図のラインと平行する形で線を引いてみせる。
「これをみて判るように、縦と横の違いはあっても、それは位置の差でしかない。こちらから見ればそれは同じ壁に過ぎず、五次と六次の差は感知できない」
「同じ壁にしか見えんっちゅうわけなんやな」
「そうだ。けど今回の事件において初めて『証明可能な六次障壁』の存在が確認されたんだ」
「そりゃ大事になりそうやなあ」
ため息をつくはやて。なのはの行方も気になるが、それ以上にその救出に赴くのが難しくなりそうなのが痛かった。
「今のままだと、それなりに時間が掛かる。当然対策チームが組まれるから、あと一ヶ月はかかるな」
「はあ。難儀やなあ」
「一歩間違えば次元遭難することになるからね。基幹に使う船も優秀で且つ万一に惜しくない物をということになる」
そしてそこでクロノは何故かにやりと笑った。
「さてはやて。僕はそのためのプロジェクトに対して責任者に任命されることになった。旗艦はなんと懐かしき『アースラ』だ。来るかい?」
「なにをいまさらや! 密航してでもついてくで!」
「そういうと思ったよ。それにはやて、今回の航行は時間が同期していない。逆に言えば、なのはがあちらに召喚された直後に追いつくことが可能だと言うことだ。データの都合上先回りは不可能だけどね」
「つまり、慌てる必要はない、と」
「ヴィヴィオの面倒を代わりに見ているフェイトのこととかもあるから、そう時間は掛けられないが、少なくとも僕らの知るなのはに会えないということはないはずだ」
この発見により、本来は付かなかったはずの予算も付いたという部分は秘密にするクロノ。
いくら何でもそれは無粋だ。
「データ解析に時間が掛かるから、まだまだ出発には時間が掛かる。だけど向こうの世界には出来るだけなのはの召喚直後を狙うぞ。召喚形式からして、向こうに知性体が存在している可能性はかなり高い」
「なのは、大丈夫やろか」
「生活環境が合わないと言うこともないと思うが、鏡像異性体問題みたいな事が無いとも限らないからな」
「要はこちらで少し遅れても、あちらの時間を合わせることが肝心なんやな」
「その通りだ」
ミッドチルダからのなのは救援部隊は、アースラを旗艦として未知の世界へと向かうことになる。
だが、彼らがなのはと再会するのは、もう少し先のこととなる。
天文学的現象の誤差という物は馬鹿に出来ない量になるからだ。
支援。
以上、投下終了です。
次は考察パート2、ハルケギニアとミッドチルダの魔法に関するロジックのすりあわせがメインテーマになるかと。
それが終わるといよいよフーケとの対峙を経て、第一の山に進むと思います。
話は明後日の方向へ!
隊長が許す限り2週間後くらいまでには何とかしたいと思います。ここんところ休みになると18時間睡眠が常態でして。
では、また。
しかし戦艦をもぶっとばすなのはで大丈夫なのかな?
ゲームバランスが崩れまくる・・・いや、そこが面白いのか。
タイトルが落ちてました。
第9話 休日 です。
おお、終わってた。
お疲れ様でした〜〜〜
投下乙〜
でもってミョズニルキ〜 ミ〜ルトン
乙!
>>351 でもただ人一人殺すだけの威力ということならライトニングクラウドで十分だ
ゼロ魔クロスで一番の苦労人はギーシュじゃなくてワルドだと思うw
ただでさえクロス元での出来事を突破してきた上にガンダールヴがプラスされたヤツを
相手に戦わなければならないわけで
しかもあっさり負けるわけにもいかないし
乙。やっぱこういう擦り合わせがあるのはクロスの醍醐味だな。
ところで、ルイズはマルチタスクの訓練してないの?
たとえ魔法が使えなくても、結構使いでがあるスキルだと思うけど。
なんせ某所では「人型戦艦」と呼ばれたお方だからな。>魔王様
さて、フーケ戦はどうなることやら。魔王様の力をもってすれば、学院でゴーレム振るってる
時点で決着がつきそうだが、その後、彼女を官憲に引き渡すか、それとも条件をつけて味方に
引き入れるかが興味のあるところだ(たいていこのどちらかのパターンだよな)。
おっと、「殴り倒してオトモダチ」というパターンを忘れてるぜ
359 :
T‐0:2008/04/06(日) 17:16:25 ID:RDmwAzG/
まぁ短めだが5分後投下予約。
ギーシュを庇ってまさかの敗北
361 :
大使い魔17:2008/04/06(日) 17:18:02 ID:M7Y6LxBI
投下予告するZE
今回ちょっとしたバクチをやらかしたが、深く考えないでくれ。
362 :
大使い魔17:2008/04/06(日) 17:19:04 ID:M7Y6LxBI
おっと、先約があったから見送らせてもらいやす
>>296 ソイレント・グリーン・・・
追悼、チャールトン=ヘストン。
なお、あの映画の内容自体は、かなり社会派というか政治的メッセージも強いものである。
「人間が人間を食う」「社会的弱者同士で共食いさせる」という、巨大資本に支配された
世界のおぞましさを描くアンチユートピア作品の様相が強い。
うお、二つ同時に投下予告が!
ちょっとだけ早いのでT−0さんのほうを支援
>>359カマンカマン!
支援ついでに魂斗羅チームvsレコンキスタ七万軍団と言ってみるw
366 :
T‐0:2008/04/06(日) 17:22:50 ID:RDmwAzG/
学院の近くにある林の中に、一軒の廃墟があった。
窓は割られ、屋根は朽ち果てて壁には雑草やツタが幅を利かせている。
先日、学院内での『仕事』を終えたロングビルこと土くれのフーケは、
朽ち果ててぎしぎし音を立てる椅子に座り、暇をもてあますため両足をぷらぷらさせて、
いずれくるだろう楽しみを待ちきれずにいた。
「いやーご機嫌だね女主人。男とでも待ち合わせてんのかい?」
鼻歌も交え始めたフーケに、別の椅子に立てかけた長剣がわざとらしく言った。
「まー男といゃあ男かもね……。ってそんなに怯えるな! おでれーた?
悪いのかい? わたしが男と待ち合わせしたら、何か悪いのかい!?
第一、心配しなくても待ち合わせてんのは依頼主だよ。金を持ってくる」
「金? 依頼主? ……なんでぇ、今回は頼まれてやったってのかい」
フーケは椅子から降りて、その辺を歩き始めた。雑草を踏みしめる音が静かに響き、
椅子がぎしぃっと音を立てて崩れ、抜けた天井からフーケに向かって光が落ちた。
「誰かに頼まれて仕事するってのは気に食わないけど、この依頼主とやらは
やたらと羽振りのいい奴でね。こちらの望む金を用意すると言ってきたんだよ」
「なるほど……道理で用心深いアンタがいつまでたっても仕事場から遠ざからないのか」
367 :
T‐0:2008/04/06(日) 17:24:10 ID:RDmwAzG/
そ。という短い返事とともに、フーケが何気なしに杖を振った。
すると、ついさっきばかし朽ち果てた椅子が少量の土と混ざり合って、元の形を取り戻した。
フーケがまた、その椅子に座る。
「信用してんのか? そんな実も知らずなやつ」
「まさか」
ふっと笑みをこぼし、呆れ加減に首を振る。
「信用? するわけないだろ第一やつは……」
そのとき、突如として聞こえてきた音にフーケは口を閉じた。
外れかけてがたがたな、腐りかけの扉。それが軋み声を上げながら、
ゆっくりと開く音がしたのだ。
「おや、ずいぶん遅かったみたいだね」
フーケの皮肉めいた口調にも、現れた男は動じない。
体は漆黒のマントで、その顔は無機質な仮面に覆われており、
人を見る目に長けた土くれのフーケと、長剣――デルフリンガー――ですら、
表情を伺うことはできなかった。
それから、わずか数日後、『土くれのフーケ』処刑の報が
トップニュースとしてハルケギニア中に広まり、人々を驚嘆させた。
T-0 18話
368 :
T‐0:2008/04/06(日) 17:25:33 ID:RDmwAzG/
フーケに宝物庫からお宝を盗まれてはや一週間が経過していた。
魔法学院は取り戻せない失態を犯したことを王室をはじめとするその取り巻きに攻め立てられ、
学院の長オールド・オスマンはその弁解と責任追及のため、この数日学院に姿がない。
仕方がないのでオスマン不在の間はコルベールが学院長の代わり役で、秘書であるロングビルと
ともにせっせと働いていた。
だが、もともと仕事の多くをロングビル一人でこなしていたために、
依然とは大して代わり映えのない生活が続いていた……
「あら、どうしたのかしら」
まだ授業の始まる前、キュルケは教室に入るなり机に突っ伏して
ピクリとも動かないルイズに話しかけた。すぐ背後にはターミネーターが
威圧的にたたずんでいるのだが、この数日で、キュルケはすっかりこの空気に
慣れてしまっていたために、まったく問題にしていなかった
キュルケの後ろに隠れるようにいるタバサは、最初からわれ関せずといつもどおりである。
「ねぇ、どうしたの? なにか言いなさいよ」
「うるさいわね……疲れてるんだから、後にして……」
めんどくさそうに顔を上げる、ルイズは少しやつれていた。
「昨日、城下町に行ってきたんじゃないの?」
キュルケの質問に、ルイズは首を振って否定した。
それも億劫なのか、やたらとけだるそうに。
「いってないわ……いけなかった……のよ」
「?」
キュルケはタバサと目を合わせ、首をかしげた。
ルイズはそのまま規則正しく寝息を立て始めたため、
それならばと使い魔にたずねてみたキュルケだったが、
ターミネーターはかたくなに口を閉ざしていた。
だが、ルイズが手を上に上げると、うってかわって彼は淡々と語り始めた。
369 :
T‐0:2008/04/06(日) 17:26:20 ID:RDmwAzG/
「俺と彼女は武器を買うために街に向かった。
だが、途中で馬が力尽きてたおれてしまい、結局引き返した」
無論、それはひとえにターミネーターの重さに馬が絶えられなかったことにある。
ルイズも、まさか馬一等を早々と(文字通り)潰してしまうほど彼の重さが
すさまじいと思ってなかった。
ターミネーター一人を残すわけには行かないので、帰りは一緒に馬に乗ったのだが、
当然のごとくこれも途中で潰れた。
ほんとうに仕方ないので、ルイズとターミネーターは学院まで結構長い距離を
歩いて帰ってきたわけなのだ。
「馬が潰れたなら、使い魔におぶってもらえばよかったじゃない」
バカね。とキュルケが感想を言うと、ルイズは今にも死(眠)にそうな声で
「それだけは……できるわけ……ないじゃない」と反論して、
こんどこそ本当の眠りに落ちた。
ウィキで読んでたら増えてた「ゼロと魔砲使い」。
お疲れ様です。
371 :
T‐0:2008/04/06(日) 17:28:41 ID:RDmwAzG/
「あらら、ほんとに寝ちゃったのね」
キュルケがルイズのほっぺたをつんつんしながら言った。
その顔には自然な笑みが浮かんでおり、実に楽しそうである。
ルイズが身じろぎをするとキュルケは手を引っ込め、ターミネーターに向き直った。
「あなた、武器が欲しいって言ってたわよね?」
ターミネーターは首を振り、黙って肯定する。
「剣か、棒状のものが好ましい。耐久性の優れたものならなおさら」
「大きさは?」
「最長で一メートル弱。最低でも60センチの長さ。
重量は問わない。人が扱えるものならば何でもいい」
「ふぅん……」
キュルケはすっとあごに手を当てた。
タバサが珍しく本を読む手を止め、今はキュルケを見ている。
ん、と小さくつぶやき。
何かを決断したのか、キュルケは口を開いた。
「ご注文に見合う武器、私が用意させてもらうわ」
タバサが、これまた珍しくわずかに目を見開いた。
キュルケが、今……何といった?
そんなことでも言いたげな瞳で、ただキュルケを見上げている。
「なぜだ?」
「あら、別に恩を感じる必要はなくてよ。
ただの気まぐれ、ゲルマニアの女は気まぐれで気分屋なのよ」
実際彼女はその中でもまた特にぶっ飛んだ存在なのだが。
ターミネーターは特にそこら辺の意味を理解せずに、頷いた。
「ただし!」
支援です
373 :
T‐0:2008/04/06(日) 17:29:09 ID:RDmwAzG/
キュルケは柔らかな、普段人前ではあまり見せることのない
やさしい微笑を浮かべ、言った。
「この子を、部屋まで運んであげて。
どの道こんな状態じゃ、授業出てても邪魔にしかならないわ」
もうすでに主人を運び始めた使い魔の背中を見送る。
言葉は刺々しいが、口調はとても緩やかだった。
直後、何かとあわただしいコルベールが駆け込んできて、授業が始まった。
支援支援
375 :
T‐0:2008/04/06(日) 17:31:02 ID:RDmwAzG/
投下終了。支援感謝。
そして大使い魔さんすみません。お先しました。
どうぞ
376 :
大使い魔17:2008/04/06(日) 17:33:49 ID:M7Y6LxBI
T‐0の方GJ!
それと、割り込みスンマセン。
時間をおいてから改めて予告するッス。
おつかれさまでした〜〜〜
人が人を食べるというと新井素子。
「大きな壁の中と外」とか「ひとめあなたに…」とか「二分割幽霊綺譚」(正確には違うけど)とか
亀だがなのはの人
なのはは、一応剣術道場の娘なんだから、
剣の手入れぐらい知識としては知ってるんじゃないか?
380 :
大使い魔17:2008/04/06(日) 18:07:08 ID:M7Y6LxBI
では改めて投下予告。
10分に投下します。
今回はちょっとしたお遊びを入れてます。
>>379 ……なのはは知らんと思うぞ。
と言うか触らせてもいない筈。
精々「見たことある」レベルだろう。
382 :
大使い魔17:2008/04/06(日) 18:10:23 ID:M7Y6LxBI
だがだん♪ だがだんだがだん♪
「大使い魔ー、ワーンセブーン!!」
オゥオオー オゥオオー 彼こそは〜
オゥオオー オゥオオー 大使い魔〜ワンセブ〜ン
燃える真っ赤な太陽
ギラリ輝く装甲
見よ! 右手の虚無のルーン
風の唸りか雄叫びか〜
イザベラ企画の大殺戮
立て! 要塞ワンセブン
防げる者は他になし
オゥオゥオゥ オゥオオー オゥオオー 彼こそは〜
オゥオオー オゥオオー 大使い魔〜ワンセブ〜ン
「魔銃争奪? シュヴァリエ? 月下のダンス!」
ワンセブンがルイズの使い魔(ロボターはあくまでも契約特典)になってから数週間が経過した。
2体の怪ゴーレム(実際はロボットだと知っているのはアカデミーや軍の上層部など極僅か)を倒したワンセブンはその巨体と、他の使い魔たちに何故か好かれていることも相まって自然と目立つようになった。
今日もオールド・オスマンが要塞ワンセブンの甲板で日向ぼっこをしていた。
「オスマンのじーさま、仕事サボりすぎだよー」
「ロボター、ワシは仕事をサボっておるのではない。今日の分の仕事をやり尽くして暇になっただけじゃ」
「ホントかよ〜」
「そこまで疑うんかい」
ロボター相手にオスマンが阿呆問答を繰り広げていると、何処からともなくロングビルが飛んできた。
「やはりココでしたか、オールド・オスマン」
「どうした? ロングビル」
「勅使の方が来られています。至急学院長室にお戻りを」
数十分後、勅使が帰ったので、戻ってきたオスマンは日向ぼっこを再開した。
「オスマンのじーさま、どんなお話をしてたの?」
「単なる注意喚起だったわい。『土くれ』に気をつけるように、程度のな」
「土くれ?」
「『土くれ』のフーケ。数年前からハルケギニア中を騒がしておる怪盗で、2年ほど前からこの国で活動し始めおった」
「でも、ココ学校でしょ? 怪盗とかが来る可能性は……」
「意外と高いんじゃよ。この学院には宝物庫があってな、おぬしとワンセブンが元いた世界から来た「場違いな工芸品」の一つで、「魔銃」という超危険物が保管されておるのじゃ」
「魔銃?」
ロボターの疑問に、オスマンは何かを懐かしむように答え始めた。
「元の所有者から個人的に預かった物での、その人の知り合いの形見じゃ。魔銃という名前は、その絶大な破壊力に目が眩んだ愚か者どもが持ち主であるワシから奪おうと醜く争い、ことごとく破滅したからつけられたのじゃ」
「そんなに凄いの?」
「エルフぐらいなら弾が掠っただけで弾き飛ばされ、深手を負うほどじゃ」
「うへぇ〜」
シエンハタダシイ・・・・シエンハタダシイ・・・・
384 :
大使い魔17:2008/04/06(日) 18:20:50 ID:M7Y6LxBI
一方、ワンセブンの内部サロン。
いつものように他の使い魔たちがたむろしている中、コルベールがアイスクリームを食べながら、ワンセブンと会話していた。
「ほかの使い魔たちが集まるとは……」
「私も心当たりがない」
「……ワンセブン君、ひょっとしたら君のルーンと関係があると思われますぞ」
「私のルーンと?」
コルベールは持ってきた本を開き、あるページを見せた。
「君が学院に現れた怪ロボットを倒したその日、改めて君のルーンを見たときに思い出して調べてみたのです」
「虚無の使い魔たち……」
「君のルーン、全く同じだったんですよ。『神の笛』こと、ヴィンダールヴのと」
「……神の笛、あらゆる獣を手足の如く容易に操る使い魔。私がそれになったというのか」
「虚無の使い魔は、過去に数回の出現が記録されています。君の前のヴィンダールヴは、ジュリオ・チェザーレというロマリアの神官でした。ワンセブン君、この件はしばらく他言しないでください。王宮やアカデミー知られると厄介ですから」
「わかった」
コルベールの表情はどこか固かった。
そんなシリアスな空気とは裏腹に、使い魔たちは……全員寝ていた。
夜、学院の宝物庫前。
一人の男が鍵を“引き千切った”。
「そろそろマチルダ様が動くころだな」
その男はそう呟いてから数十秒後、宝物庫が揺れた。
一方、宝物庫の外の広場。
40メイルはあるゴーレムを、一人の女が操っていた。
ゴーレムが殴ってもビクともしない外壁を見て、女は呟いた。
「流石に壊れないか……。奴さん待ちだね」
女が視線を変えた先から、ワンセブンが戦闘形態で駆けつけた。
「さあショー・タイムだ。後は頃合いを見てあいつを逃がすだけだ」
そう言って、女は宝物庫へと向かった。
宝物庫内。
「マチルダ様、お待ちしておりました」
「予定通りだね。で、目当ての奴は?」
「ここに」
男が箱を開け、中身を女に見せた。
ハルケギニアでは有り得ない、高度な技術で作られたその銃を見て女はほくそえんだ。
「これが魔銃か……、どこかで見たような。まあいい、お前はこれを持ってあの小屋まで逃げな。後は手はずどおりにするから」
「はっ」
男が去り、宝物庫内に残った女、『土くれ』のフーケは杖を振り、壁に文字を刻んだ。
魔銃、確かに領収いたしました 土くれのフーケ
フーケは何食わぬ顔でその場を去り、ミス・ロングビルに戻った。
そして魔法を解除し、ワンセブンと戦っていたゴーレムは土の塊に戻った。
385 :
大使い魔17:2008/04/06(日) 18:25:18 ID:M7Y6LxBI
翌日、学院長室に教師たちと、土くれの犯行を目撃した生徒たちが集まっていた。
生徒たちの構成は、ルイズ(ロボター付き)、キュルケ、タバサ、ギーシュ、モンモランシーであった。
「まさかゴーレムは囮だったとは……」
「これまでとは微妙にやり口が違うな……」
教師たちが口を開く中、当直だったシュヴルーズの口は重かった。
あの時(珍しく)真面目に当直をこなしていたシュヴルーズは、宝物庫に向かう途中でフーケのゴーレムと遭遇、その場に駆けつけたワンセブンの援護をしていたのだ。
しかし、自分とワンセブンが囮のゴーレムを迎撃している隙に、フーケに魔銃を奪われたのだ。
「ミセス・シュヴルーズ、土くれは今までとは違うやり方に出たんじゃ。おぬしらが気付かぬのも無理はない」
「しかし……」
「おぬしだけでなくワンセブン坊も悔しく思っておるのじゃよ。土くれに裏をかかれたことをの」
「……」
シュヴルーズを慰めるオスマンをよそに、教師たちは噛み付き始めた。
「しかしオールド・オスマン、ミセス・シュブルーズとミス・ヴァリエールの使い魔がフーケを捕らえ損ねたのは事実です」
「宝物庫の鍵を引き千切るという芸当を誰が予測できた? しかもわざわざゴーレムで壁を壊すと見せかけてから。ここにおる誰にも予測できんかったじゃろうて」
この一言で教師たちは黙り込んだ。
「やれやれ……。で、この子達か、現場を目撃したのは」
「はい」
コルベールが即答し、「ふむ」と少し唸ってからオスマンはルイズたちに尋ねた。
ルイズたちはその日たまたまサロン内に居合わせた挙句、いきなりワンセブンが動き出したので、戦闘が終わるまでサロン内に缶詰状態だった。
そのため、彼らの証言はシュヴルーズやワンセブンのそれと殆ど変わらなかった。
「手掛かりなしかいな……」
「オールド・オスマン、それなら私が調査いたします」
「……ロングビルちゃん、頼む。それでは捜索隊を編成するから、我こそはと思うものは杖を掲げよ」
教師たちに向けられたオスマンの呼びかけに答えたのは、シュヴルーズだけであった。
「待てコラ! ミセス・シュヴルーズだけに任せる気かい!」
「オスマンのじーさま」
「なんじゃい?」
「ルイズちゃんも杖を掲げているよ」
ロボターの一言に反応したオスマンが視線を移すと、本当にルイズが杖を掲げていた。
「ミス・ヴァリエール、頼むぞ」
「お、オールド・オスマン、正気ですか!?」
コルベールのツッコミを、オスマンは淡白に返した。
「だって、ミセス・シュヴルーズ一人に任せるわけにはいかねーじゃん」
ルイズが杖を掲げたのを見て、キュルケとタバサ、そしてギーシュも杖を掲げた。
「ルイズには負けられないわ」
「……」
「ミセス・シュヴルーズとルイズが勢い余って土くれを殺しかねないんで、目付けとして僕も同行させてもらいます」
モンモランシーは杖を掲げようとして途中で思い直したが、ロボターにいきなり手を掴まれ、無理矢理杖を掲げさせられた。
「な、何を……!!」
「ここまで来たら一蓮托生。別に三途の川を泳ぐわけじゃないんだからモンモンも一緒に行こうぜ〜」
「人の名前を略すな! ってゆーか何その理屈!?」
「他のみんなが杖を掲げたんだ、自分一人だけ不参加は許さないぞ〜」
「それが本音かー!!」
モンモランシーの抗議の叫びが学院長室に空しく響き渡った。
結局、モンモランシーも捜索隊に参加する事となった。
次の日の夕方、ロングビルの調査で、学院の近くにある村の住民から、森の廃屋に怪しい男が出入りしており二日前の夜には奇妙な箱を持っていた、との情報が手に入り、捜索隊は急遽出発する事となった。
重機動馬車に乗って廃屋へと向かった捜索隊を学院長室の窓越し見ていたオスマンは、室内にいる来客の方を向いた。、
「見ての通り、捜索隊が向かった」
「そうですか……」
「……貴殿は後を追うつもりかの?」
「当然です。あの銃はあいつの形見ですから」
白いヘルメットをかぶり、赤いギターを背負っていた来客は、そう言って姿を消した。
学院長室に一際強い風が吹き込んだのと同時に。
386 :
大使い魔17:2008/04/06(日) 18:28:28 ID:M7Y6LxBI
一方の捜索隊は重機動馬車で廃屋を目指していた。
キュルケがルイズを見て首をかしげていた。
「ルイズ、その兜は何?」
「これ? ワンエイトヘルっていって、ワンセブンが作ってくれたのよ」
自慢げに答えるルイズは、ワンセブンが作った特製ヘルメットをかぶっていた。
「ワンエイトヘル?」
「コレさえかぶっていれば、「ある程度は離れていても私との意思の疎通が可能だ」ってワンセブンが言っていたわ」
「便利な代物ね」
それを見たタバサが一言。
「欲しい……」
「だ〜め。これは私専用だから」
あっさり拒否。
「と言うわけで諦めてね、タバサちゃ〜ん」
ロボターが更に追い討ち。
「緊張感が無いわね……」
「モンモランシー、ガチガチに固まるほど緊張するよりはずっとマシだって」
そして、廃屋の近くに到着。
ルイズとシュヴルーズとロボターが廃屋内を調べる事となった。
「誰もいませんね」
「ええ……」
慎重に廃屋内に入った三人は、アッサリと魔銃が入った箱を見つけた。
シュヴルーズが箱を開け、中を確認する。
「間違いありません。魔銃です」
「これが魔銃……」
「どれどれ……、あれ?」
「ロボター、どうしたの?」
「この銃、どこかで見たことあるような……」
ロボターが答えた直後、廃屋のドアがいきなり開いた。
「そこのロボット、その銃のことを知っているようだな」
そこに立っていたのは、宝物この鍵を引きちぎった男だった。
男を見たロボターは、持参していたメイスを手にして戦闘態勢に入った。
「ルイズちゃん、コイツは「人間」でも「ワーウルフ」でもない!」
ロボターが叫んだ直後、今度は男の姿が変貌した。
金色の人狼ともいえる姿になった男は、ロボターに襲い掛かろうとして、ルイズの失敗魔法でドアごと吹き飛ばされた。
ドゴーン!
呆然とする二人の背を押しながら、ルイズは廃屋から脱出した。
魔銃が入った箱を持ったシュヴルーズが尋ねた。
「一体何者ですか、あのゴーレムは?」
「あれはボクやワンセブンと同じ「ロボット」だよ!」
「……にしては、貴方やワンセブン君とはかなり毛色が違いますが……」
「ロボットも十人十色。ゴーレムの外見や能力が、造ったメイジによってバラバラなのと一緒。それにあいつを造ったのは、ボクたちを造ったのとは別人だし」
三人は全速力でキュルケたちが待っている場所まで走った。
たどり着いた直後、今度はスマートな外観の50メイルはある巨大なゴーレムが出てきた。
「何でこの間よりデカくなってんのよー!?」
「こっちが知りてーYO!!」
ルイズとロボターの絶叫をよそに、重機動馬車を破壊したゴーレムはまっすぐルイズたちの方へ向かっていった。
ロボターはメイスでゴーレムの脚を殴り、シュヴルーズは錬金で、ルイズは失敗魔法でそれぞれロボターが殴った部分を攻撃した。
「オラー!!」
「「錬金!」」
三段攻撃によりゴーレムの脚は破壊されたが、すぐに再生した。
387 :
大使い魔17:2008/04/06(日) 18:29:31 ID:M7Y6LxBI
再生している間に急いで三人はその場を離れた。
「埒が明きませんわ!」
シュヴルーズが叫んだ直後、タバサたちを乗せたシルフィードが着陸した。
「三人とも早く」
タバサに促され、シュヴルーズとロボターは急いでシルフィードの背に乗ったが、ルイズだけは再びゴーレムに立ち向かおうとしてロボターに止められた。
「ルイズちゃん、危ないって!」
「止めないで! あのゴーレムを倒せば、誰も私を……」
『「ゼロのルイズ」と呼ばなくなる。そうだろう?』
ワンエイトヘルから聞こえるワンセブンの指摘に、ルイズは黙った。
「ワンセブン……」
『だけど、君があれに立ち向かうのは無謀だ。だから、君の使い魔である私があれを倒す!』
直後、飛行ワンセブンが飛来し、着陸、変形した。
ミヨンミヨンミヨン、ヨヨヨヨヨ、キュピーン! バギィィィィン!!
ゴーレムとワンセブンの戦闘が始まった直後、ギーシュがあることに気付いた。
「あれ、ミスロングビルは?」
ロングビルだけシルフィードに乗っていなかったのだ。
「そういえば一体どこに……?」
モンモランシーが呟く。
そして、ルイズに吹っ飛ばされたはずの狼ロボットが彼らの前に現れた。
「アオオォォォーン!!」
シルフィードの顔面目掛けて腕を振り下ろそうとしたが、寸前のところでシルフィードのブレスで吹き飛ばされ、さらにキュルケ、タバサ、ルイズの怒涛の魔法ラッシュを受け遂にダウンした。
それを木々に隠れて見ていたフーケは忌々しげに呟いた。
「あいつら、よくもアタシの使い魔を……!!」
怒ったフーケはゴーレムにルイズたちを攻撃させようとしたが、当のゴーレムはワンセブンに圧倒され、それどころではなかった。
ゴーレムの身体に徐々に亀裂が走り、遂に右腕が根元から折れた。
「ワンセブン、怪ロボットがいつ出てくるか分からないから、グラビトンは使っちゃダメよ」
グラビトンを使おうかと考えた直後にルイズに釘を刺されたワンセブンは、ジャンプしてからゴーレムの頭を両足で挟み、そのまま豪快に脳天逆さ落としを食らわせた。
「ギロチン落としぃっ!」
頭から地面に叩きつけられたゴーレムは粉々になり、そのまま土へと還っていった。
口々に感嘆の声を上げるみんなをよそに、ロングビルに戻ったフーケは何食わぬ顔で近づいた。
「ミス・ロングビル、一体どこに!?」
そう尋ねたシュヴルーズの手から箱をひったくり、ロングビルは中にあった魔銃を取り出して構えた。
「よりによってアタシの使い魔までのしちまうなんてね……。あんたたち、許さないよ!」
「ミス・ロングビル、貴方がフーケでしたのね」
「そうさ」
「……撃って御覧なさい。撃てるものなら」
「撃ってやろうじゃないか!」
シュヴルーズに挑発されて激昂したロングビルは引き金を引いたが、弾は出なかった。
「アレ?」
「ミス・ロングビル、弾は込めまして?」
今度はルイズが挑発するように尋ねた。
「あ……」
慌ててロングビルは弾を込めようとしたが、ルイズたちが自分に向けて杖を構えているの見て、諦めた。
その最中、どこからとも無くギターを引く音が響き渡った。
「ま、まさか、こ、この音色は……!!」
ロングビルの顔が真っ青になった。
「マチルダ、自分が何をやったのか分かっているのか?」
「……や、やっぱりー!!」
背後から聞こえた声に、ロングビルは悲鳴を上げた。
ロングビルの背後には、あの時オスマンの部屋にいた白いヘルメットの青年がいた。
青年はロングビルから魔銃と箱を取り上げ、ルイズに渡した。
「この銃を学院長に渡してくれ」
「…はい」
青年がその場を去ろうとした際、何故かルイズとタバサは同じ言葉を口にした。
「「あの、これからどこへ?」」
「国から国へ……。そうだな、今度はロマリアにでも行ってみるよ」
そう言って、青年はその場を去って行った。
388 :
大使い魔17:2008/04/06(日) 18:30:57 ID:M7Y6LxBI
学院長室。
フーケとその使い魔を王室衛士隊に引き渡したオスマンは、ルイズたちの報告を聞いた。
「ミス・ロングビルが……。居酒屋でウェイトレスやってたのを見て、尻をさわったんじゃが、その時のさわり心地が良くてのう。思わず秘書に採用しちゃった」
「そんな下らない理由で雇ったの?」
オスマンの言葉に、ロボターだけでなくその場にいた全員が呆れた。
「カーッ!!」
「逆ギレした振りして話を逸らすんじゃねー!!」
オスマンとロボターのやり取りを見ていたコルベールは、思わずこう言った。
「一回殺した方がいいかも知れませんなぁ……」
コルベールのこの言葉に、ルイズたちは口こそ開かなかったが、目と表情で賛同の意を示した。
「オホン、ところでミス・ヴァリエール、『殿下』はそれからどうした?」
「……「ロマリアにでも行ってみる」とだけ言ってその場からいなくなりました」
ルイズから回答を聞き、オスマンは顔を引き締めてこう言った。
「そうか……。何はともあれ、フーケは捕まり、魔銃も取り返した。一件落着じゃい。あ、そうそう、諸君らの『シュヴァリエ』の爵位申請をしておいたからの」
その言葉に、キュルケ、ギーシュ、モンモランシー、シュヴルーズの顔がぱあっと輝いた。
「あの、私は既に……」
「大丈夫、ミス・タバサは既に『シュヴァリエ』だから精霊勲章の方を申請しておいた」
タバサの顔もぱあっと輝いた。
ルイズだけは余り嬉しそうではなかった。
「オールド・オスマン、ワンセブンとロボターには?」
その言葉に、オスマンは非常に申し訳なさそうに答えた。
「あー……、ワンセブン坊とロボターの分も申請したんだけどね、『貴族じゃないから』って拒否られちゃった……」
「そんな……」
「まー、気を落とすな。今夜は『ブリッグの舞踏会』があるんじゃ。みんな着飾って楽しんで来なさい」
その言葉に少しは救われたのか、ルイズの表情は少しだけ明るくなった。
ルイズたちが退室し、学院長室にはオスマンとコルベールだけが残った。
支援支援
ミョズニルキ〜
390 :
大使い魔17:2008/04/06(日) 18:33:21 ID:M7Y6LxBI
フリッグの舞踏会が行われているホール。
ロボターは一人たたずんでいた。
「あの銃は、あいつの銃だった。でも何であの人が……」
そんな考え事をしていると、衛士が大声を上げた。
「ヴァリエール公爵家が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな〜り〜!」
ルイズが到着すると同時に、楽士たちは演奏を始めた。
そして、男たちが我先にとダンスを申し込んだが、彼らが日頃から自分を「ゼロのルイズ」と呼び嘲笑しているのを嫌と言うほど目にしていたルイズは、その全てを断ってバルコニーへと向かった。
「踊らないの?」
「……誰があんな奴らと」
ロボターの問いかけに答えたルイズは、ワンセブンとロボターの分の爵位申請が拒否された件でまだ不機嫌であった。
「ルイズちゃん、せっかくのパーティなんだ、少しは楽しまないと」
大地が揺れる音と共にやって来たワンセブンが、ルイズを諭した。
「ワンセブン……。それもそうね。それでは、わたくしと一緒に踊ってくれませんか?」
「私と?」
「私の相手に相応しい殿方は貴方しかいなのよ。この舞踏会ではね」
「踊ってあげなよ、ワンセブン」
「……それでは、謹んでお相手させてもらいます」
ロボターに後押しされ、意を決したワンセブンは包み込むようにルイズを両手の掌に乗せ、戦闘飛行形態に変形してそのまま垂直離陸し、高度1リーグ強の夜空で踊り始めた。
双月をバックに夜空で踊るワンセブンとルイズを、ロボターだけでなく、キュルケとタバサ、シュヴルーズ、そしてギーシュとモンモランシーも、二人が下りてくるまでずっと見続けていた。
ワンセブン オーオオ ワンセブン オーオオ
ワンセブン オーオオ ワンセブン オーオオ
ワンセブン オーオオ ワンセブン オーオオ
セブン セブン ワンセブン
九死に一生ワンセブン(ワンセブン)
ルイズといっしょにワンセブン(ワンセブン)
レコン・キスタは砕けて散った
ご〜ぜんいっぱつ〜 グラ〜ビト〜ン OH!
ワンセブン オーオオ ワンセブン オーオオ
ワンセブン オーオオ ワンセブン オーオオ
ワンセブン オーオオ ワンセブン オーオオ
セブン セブン ワンセブン
ハルケギニアでワンセブン(ワンセブン)
虚無(ゼロ)の使い魔ワンセブン(ワンセブン)
エルフの群れは砕けて消えた
ご〜ぜんいっぱつ〜 グラ〜ビト〜ン OH!
ワンセブン オーオオ ワンセブン オーオオ
ワンセブン オーオオ ワンセブン オーオオ
ワンセブン オーオオ ワンセブン オーオオ
セブン セブン ワンセブン
我らの甲冑ワンセブン(ワンセブン)
神の右手だワンセブン(ワンセブン)
悪党ジョゼフは炎と燃えた
ご〜ぜんいっぱつ〜 グラ〜ビト〜ン OH!
391 :
大使い魔17:2008/04/06(日) 18:35:55 ID:M7Y6LxBI
投下終了。
今回のお遊びは『使い魔くん』の外典を読んでふと思いついたものです。
お遊びというより、バクチって言った方がいいかな……
ターミネーターのヒト、久々の乙!
>>319 ベリサリウス(東ローマ帝国の名将)なんてどうだ?
生涯戦歴78戦77勝、しかもそのほとんどが敵よりも兵力的に劣っている状況をひっくり返しての勝利だったという神話にもそんな奴いねえよってほどの化け物。
そのあまりの強さに皇帝から嫉妬され、叛乱を恐れて寡兵しか与えられないという状況ばかりで戦い続けるが、
危難が去ると用済みとばかりに地位剥奪や財産没収を食らい、またピンチになると呼び寄せられるというのを何度繰り返されても忠誠を誓い続けたという凄い人。
なのに忠節を尽くした末は無実の罪を着せられ、乞食まで身を落とした末に憤死という報われることない最期だったけどな。
・・・まあ、本人は人格者でも碌でなしの嫁さんの口出しを許してたあたりで評価を下げてるわけだが。
>>381 そりゃ、道場の娘だからと言って、剣術を全く習っていない人に触らせることはあり得ない。
だから、経験はないと断言できる。
ですが、知識すら全くないというのも、逆に不自然なのではないかと思うわけで。
兄は姉が訓練しているところを見学するのは好きみたいだったし、
剣の手入れをしながら、簡単な説明ぐらいしてもらったことがあっても不思議じゃないと。
ああいう家庭に育った以上、小さいころに一度ぐらいは、
なのはにも剣術をやらせてみようと試みたと考えた方が自然だろ。
なのはが、そっち系に行かなかった理由は知らないが、
興味を引こうとしたことすらないというのは不自然じゃないか?
>>394 あそこが"ただの"剣術道場だったらな。
てか、原作でもそんな描写はなのはにはないよ。
パティシエ目指しても剣術に進もうとは思わないさね。
映画『メモリーズ』より
田中信男を召喚
兄や姉は両親共に代々殺人剣術を継いできた一族の出身だけど、なのはは母親が一般人だからなぁ
それに、原作設定ではなのはが生まれる前に父親が仕事で殉職してるし、母親も兄や姉が剣術やってるのを心配してるからなのはには薦めないと思う
スレイヤーズ!の変わり者魔族ラギアソーンを召喚
つまり、なのはは意図的に剣術から遠ざけて育てられていた、ということか?
それなら、修行しているところを見せるのはおかしいと思うがなぁ。
というか、意図的に剣術関係を教えないようにしていたという描写がない以上、
最低限の知識ぐらいは身につけていると思うんだが―――
とらハ3のほうはやったことないから、一般論だけで書くが、
「普通はそうである」以上、描写がないのであれば、「そうである」と考えてよいのでは?
「別のところ」でルイズに召喚されている魔王様の「相方」は、ハルケギニアの裏経済を支配する
と同時に、あの世界に技術革新と産業革命を起こす勢いの大物になりつつあるな(謎)。
魔砲使い>>乙です!
六次元の解説、後程じっくり読ませて頂きます
今は、頭が回って無いので・・・・・
というか、作中ではゲームやAV関係が趣味で狐の久遠と一緒に遊び回ってるのが楽しいっていう、ごく普通の子供だから>なのは
後日譚でレイジングハート拾ってはじめて魔法という非日常に関わったわけで
そっちの方でも「お兄ちゃんたちみたいに神速使えたらなぁ」なんて言ってないあたり、具体的にどういう流派かは知らないと思うぞ
なのはの設定考察ならなのはスレでやったらどうだ。
17さん、乙です。
10分後から投下させて頂いてヨロシおま?
ヨーソロー
.
全身の激痛で、風見志郎は目を覚ました。
瞼が重い。
いや、重いのは、瞼だけではない。全身の骨格も、筋肉も、皮膚も、内臓も、身体中が激痛にまみれている。――つまり、それは、ある一つの事実を結論づけている。
(まだ、死んではいないようだな……)
指は動く。腕も、脚も、頚も、腰も。痛みはあるが、一応全身の関節は問題なく稼動するようだ。
次は意識状態の確認だ。記憶の欠損はないか、思い返してみる。
……いや、欠損どころではない。
思い返すだけで、背筋が凝固したような戦慄が、全身を凍らせる。
自分は、撃ち落されたのだ。
貴族派の砲火でも、カメバズーカでもなく、V3の姿をした、もう一人の自分に。
まるで記録映像のように、脳裡にあのときの光景が焼き付いている。それは、彼の精神に与えられた衝撃の程を物語っていた。
風見の精神状態は、もはや瞑目する余裕を持たなかった。気が付けば、反射的に眼を開いている。
鬱蒼とした森の中、であった。
太陽が、直上に輝いている。どうやら現在時刻は、正午近くのようだ。
黒革の上下に包まれた全身を、心地良い風がなぶってゆく。激痛による熱い汗と驚愕による冷たい汗が、まとわりつくように、身体中をひたしていた。
もう一度、自分の全身をじっくり見直す。
四肢に欠損は無い。五官にも損傷は無いらしい。体のあちこちに手酷い外傷はあるが、それでも行動不能になるほどではない。
激痛に耐え、立ち上がろうとすると、喉元まで何かがが込み上げてくるのが分かった。
吐いてみる。
「〜〜〜〜っっ!!」
吐き始めると、腰から力が抜けそうになったが、なんとか傍らの樹にもたれかかり、崩れ落ちるのを防ぐ。いま倒れこんでしまえば、おそらく夜まで目が覚めないだろう。そう思って、懸命に意識の混濁をこらえる。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
吐裟物はかなり量があり、臭いもキツかったが、それほど血も混じってはいない。
臓器へのダメージも、さほどではなかったようだ。
おかしい。
あの時、風見を“撃墜”したのは、確かに風見自身――V3本人だった。
先輩の本郷猛から聞いた“ショッカーライダー”のような劣化コピーでも、後輩の神敬介から聞いた“カメレオンファントマ”のような変身怪人でもない。
なぜなら、奴が使った“逆ダブルタイフーン”は、彼と同タイプの変身ベルトを所有している者にして、初めて使用可能な絶技だからだ。
人間形態“風見志郎”から戦闘モード“仮面ライダーV3”への変身用に、ベルトには膨大な量のエネルギーが蓄積されている。それを指向性兵器として転用する“逆ダブルタイフーン”の破壊力は、V3『26の秘密』の中でも、他の追随を許さない。
逆に言えば、それほどの技を使う以上、あのとき彼が目撃したV3が、偽者であったというのは、どう考えても在り得ない話なのだ。
信じがたい。
だが、信じるしかないのかも知れない。
自分以外の“V3”が、この世界にいる! このハルケギニアのどこかに!!
信じがたいが……絶対に在り得ない話ではない。
現に自分も、日本から召喚されているではないか。自分の意思とは全く無関係に。
それから先の想像は、風見をさらに戦慄させる。
――ならば、この俺と同じく、召喚者の一方的な意思によってハルケギニアに引き込まれた、別の平行世界のV3が存在していたとしても、不思議は無いという事か!?
V3しえーん
と言いつつ、今までずっと頭の中では“風見志郎”が本郷猛なせがたさんしろうだったりする
OTZ すんませんです
.
しかし、矛盾もある。さっきから、彼が引っ掛っていた、小さからぬ疑問点。
前述のとおり、逆ダブルタイフーンは劣化コピーや変身怪人ごときに使える技ではない。
この技を使用できるのは、この世で仮面ライダーV3の『オリジナル』だけのはずなのだ。
それはいい。自分以外の自分の存在を認めるなど、考えるだに慄然とするような話だが、……気になるのは、そこから先だ。
自分の喰らった攻撃が、自分以外のオリジナル『逆ダブルタイフーン』だったとすれば、いくら何でも外傷が少なすぎる。普通に考えれば、それこそ足の一本くらい持っていかれても全く不思議は無い。いや、それくらいの破壊力が無ければ、理論上おかしいのだ。
なぜ……?
そう思った瞬間、目に入った。
風見は、呆然となった。
「おまえが……守ってくれたのか……この、俺を……」
そこには、ボディのあちこちから黒煙を吐き出し、もはや原形を止めぬまでに破壊された、一台のマシンが転がっていた。
ハリケーン。
『愛車』などという言葉では語りきれぬ相棒。文字通り、彼と死命をともにした、歴戦の戦友。
頭の中が急速に冷めていく。
氷水で顔を洗ったかのように、混濁していた意識がハッキリしていく。
新たな感情が、傷付いたはずの彼のボディにパワーを漲らせてゆく。
それは、――怒り。
かつてデストロンやバダンの怪人たちに家族を殺され、仲間を殺され、守るべき人々をむざむざと殺された時と、同じ怒り。
そんな真紅の怒りが、彼の体内を、血液のように駆け回る。
……ぎしり……!!
握り締めた風見の拳が、硬い音を立てた。
「いやぁぁぁぁああああっっっ!!」
その時だった。
森をつんざく、少女の悲鳴。
何時間、そうして立ち尽くしていたのだろう。しかし、大破したハリケーンの傍らに、凝然と佇んでいた風見の耳は、森林中に反響する絶叫の、正確な音源を聞き分けていた。
彼は、動いた。
現場は、それほどここから遠い場所ではない。南南西に300mといったところか。
全身を駆け巡る激痛をこらえながら、そのポイントへ急ぎ足で移動する。いや、凶暴な憤怒が分泌させたアドレナリンが、その激痛すらも軽く押さえ込む。
無論、ハリケーンをこのまま放置していくつもりはない。
悲鳴をあげる少女の始末がついたら、必ず、この場所に戻ってくる。
風見は、そう心に誓いつつ、依然として続く少女の悲鳴とともに、新たに聞こえて来た大型肉食獣の息遣いと、そいつが放つ怪鳥のような鳴き声を聞き分けていた。
「変身!! V3ァァッ」
ダブルタイフーンの『技』と『力』の二つの風車を回転させる。その途端、恐ろしい激痛が走ったが、風見は気にもしなかった。彼が大地を蹴る速度は、もはや颶風と呼んで差し支えないものになっていた。
.
そこにいたのは、その獰猛な気配と鳴き声に、寸分たがわぬイメージを所有した怪物であった。
――ワイバーン。
白亜紀の翼竜プテラノドンにそっくりな巨躯を持った、ドラゴンの一種。
そんな怪物に眼を付けられ、狙われてなお、生き延びていた少女は、確かに幸運に恵まれているといえるだろう。いや、彼女には悪いが、この場合は、そっちのワイバーンの不幸に同情する方が正しいかも知れない。
何せコイツは今から、焦げ付くような彼の怒りの、腹いせと憂さ晴らしの相手を勤めさせられるのだ。ただの人間ではない。仮面ライダーの憂さ晴らしだ。ただで済むはずが無い。済ませる気も無い。
だが、その瞬間、V3の身体は凍りついたように動きを止めた。
……憂さ晴らし、だと?
……腹いせ、だと?
……この俺が、仮面ライダーV3が、……その力を、衝動に任せて振るうだと……!?
「ぎゅいっ!! ぎゅいっ!!」
巨木すら貫き通すような彼の眼光を前に、ワイバーンは、流石にV3の実力を敏感に肌で感じ取ったのか、シルフィードを三倍ほど凶悪にした鳴き声を出し、怯えたように飛んでいった。
だがV3が、半ば愕然としながらも睨み付けていたのは、無論ワイバーンごときではない。自分自身の内部に燃え盛る、言い知れぬ暴力衝動であった。
そんな衝動が自分にあった事に驚くほど、彼は聖人君子ではない。だが、一瞬でも、そんな衝動に身を任せようとした自分に、――怒りよりも羞恥よりも先に、驚きを感じる。
それは、どう考えても『仮面ライダー』としてのプライドに反する行為だからだ。
だが、……彼が、自分の物思いに沈んでいられたのは、そこまでだった。
「V3ぃぃっ!!」
怯えるように飛び去ったワイバーンを、呆然と眺めていた少女が、――V3を視認した瞬間、まるで弾丸のような速度で、そのほっそりした全身を、彼にぶつけてきたからだ。
「やっぱり! やっぱり帰ってきてくれたのねV3! わたし信じてたっ!! 絶対V3は帰って来るって、死なずにニューカッスルから帰って来るって、わたし信じてたんだよぉっ!!」
そう言いながら、スレンダーな身体をこすりつけてくる少女は、冷静になって見ると、恐ろしいほどの美貌の所有者であった。
背まで伸びたさらさらのプラチナブロンドの髪。シルクの滑らかさとミルクの白さを持ち合わせた美肌。そして、細身の体格が持てる脂肪量限界を明らかに超えているサイズの、巨乳。
――違和感があるのは、ピンと伸びた耳だけであろうか。だが、その耳でさえ、彼女の美貌に添えられた、一点のアクセントに見えないことも無い。
ひっく、ひっく、ふぇぇぇん、と自分の胸ですすり泣く美少女を見て、V3はさっきまでの、ささくれた気持ちが、妙に落ち着いてくるのが分かった。
或いは無理もないかも知れない。
ハルケギニアに召喚されて以来、自分の異形の姿を見て、恐怖をあらわにしない者に、彼は初めて出会ったのだ。
無論、彼女の発言は、到底無視できるものではない。
だが、それでも今は、この少女に落ち着く時間を与えてやるべきだろう。そう思った。
そう思いながらもV3は、赤い仮面の下で苦笑している自分に、気付いていなかった。
胸革命支援
.
「どのような形であれ生きていて欲しい、か……」
ウェールズはルイズを振り返った。
「私が、自分の命を粗末にするような男に見えるかね、ラ・ヴァリエール嬢?」
「……」
ルイズは答えられなかった。だが、その沈黙は、とても雄弁だった。
彼女には、眼前の皇太子が、とても自分の命を惜しむような者には見えなかったからだ。
「そうか、……きみは嘘が付けない性格だったな、大使殿」
ウェールズは苦笑すると、ベッドの傍らにある机の引き出しを開き、宝石を散りばめた小箱を取り出した。椅子や机、ベッドといった全ての家具が簡素な室内で、その小箱だけが、『王子の私室』に相応しい豪華さの名残を保っていた。
「宝箱でね」
彼はネックレスの先に取り付けられた鍵で、小箱を開ける。蓋の内側にアンリエッタの肖像が描かれているのが、ルイズには見えた。王子の表情が、一瞬緩み、そして厳しくなる。
箱の中から彼は、一通の手紙を取り出し、封筒から便箋を抜き出した。
すでに何度も読み返されたであろう、その手紙は、もはやボロボロになっていた。彼は、アンリエッタの思い出を守るために、手紙に固定化さえ施していなかったらしい。
「殿下……」
何かを言おうとするルイズ。
だが、便箋をたたみ、封筒に詰め直し、それを彼女に差し出したウェールズの表情は、少女の言葉を封じ込めた。
「大使殿、これがトリステイン王国第一王女アンリエッタ・ド・トリステイン姫殿下が所望される御手紙です。このとおり確かに返却いたしました事を、ご確認ください」
「……ありがとうございます」
「最後に、先程きみが言った亡命の件だが」
「きみには悪いが、アンリエッタからの手紙には、一行たりとも、亡命に関しての言及は為されていなかった」
「殿下は……アンリエッタ姫殿下を、侮辱なさるおつもりなのですか……!?」
眼前の男の、あまりに白々しい言い草を聞き、ルイズの心中に、ふつふつと怒りが込み上げる。
だが、その怒りも、ウェールズの苦悶の表情を見た瞬間に、雲散霧消してしまう。
彼の表情は、明確に嘘をついていることを物語っている。この敗色濃厚な城塞から、自分ひとりだけ逃亡を図るなど、いまだ若すぎる彼には絶対に出来ない芸当なのだろう。
これはメンツや意地の話ではない。
ニューカッスルに立て篭もる300人の王党派たち。彼らを実質的に支えているのは、ウェールズ一人の存在なのだ。亡命を図るというのは、そんな部下たちを置き捨て、見捨ててしまうという事に他ならない。それは、とても出来る相談ではないのだ。
一軍の将帥にとって、部下の命以上に重いものなど存在しない。たとえ、その比較対象が、『愛』だったとしてもだ。
「今一度言う。アンリエッタの手紙には、亡命に関して一言たりとも触れていなかった」
ルイズには、もはや彼に返す言葉は無かった。
愛する者以上に大事なことがある。それを少女は認めたく無かった。だが、認めるしかなかった。ウェールズに逃亡を躊躇わせるもの……それは愛や名誉でさえ、『安い』と言い切れる程に重い、ウェールズの双肩にかかった『責任』なのだという事を。
.
ルイズは打ちのめされたように、肩を落とし、きびすを返した。
「お疲れのところ、長々と申し訳ありませんでした。――失礼します、殿下」
ルイズは、もはや一秒でも早く、この部屋を出たかった。
彼女は、恥かしかったのだ。……それこそ、とてつもなく。
『貴族とは、魔法を使える者を呼ぶのではありません。敵に後ろを見せない勇気を持った者を、貴族と呼ぶのですよ』
魔法が使えなくて、泣いてばかりいた幼き日のルイズに、いつも厳しい母が初めてかけてくれた優しい言葉。『ゼロ』と嘲笑され、軽蔑されても頑張れたのは、その一言があったからだ。
だが、いま自分が言った台詞は何だ?
事もあろうに、したり顔で『敵に後ろを見せる事』を勧めに行くなど……。それも、王子がその肩に背負ったものの重ささえ、思い量ることもなく、ぬけぬけと……!!
女として、愛する殿方に命永らえることを勧めるアンリエッタ。
将として、その愛よりも重い責任を、選ばざるを得なかったウェールズ。
その二人に比べて、今の自分は、なぜこうもブザマなのだ。まるで道化ではないか?
もう、何がなんだか分からない。何が正しくて、何が間違っているのか、もうルイズには判断できなくなっていた。
「サイト……」
そんなルイズが、王子の私室から退室した途端、呟いたのは、自分でも予想だにしない名だった。
だが、自分の言葉に驚く暇さえなかった。
その名を口にした瞬間、彼女を襲ったのは、堰を切ったような才人への懐かしさだったからだ。
(サイト……サイト……逢いたい……サイト……!!)
いつも喧嘩ばかりしていた、バカで間抜けで単純な、それでいて誰よりも安心できる、あの使い魔の横顔が、記憶をよぎる。魔法学院を出発してから、まだ何日も経っていないはずなのに、もう何年も彼と会っていないような気がする。
暗い廊下で、押し潰されそうな小さな肩を、懸命に自分で抱きしめるルイズ。
そんな少女の背中に、ドアが開く音と共に、皇太子の声がかかった。
「ああ、待ちたまえヴァリエール嬢」
反射的に、ルイズは顔を隠そうとするが、いくら何でも王族に声を掛けられて、そっぽを向いて対応する貴族はいない。彼女は懸命に涙を袖で拭きながら、ぎこちない笑顔を見せた。
「……なっ……なんでしょう、でんか……」
さすがに紳士なウェールズは、少女の涙に、妙な反応を返すような野暮はしなかった。
いまだ自分の感情を御しきれない、この優しい少女に、普段通りの声をかける。
「……伝えるのを忘れていたんだが、今朝がた、我が軍の使い魔が目撃したそうだ。青い風竜に乗った四人の少年たちが、貴族派のフネに攻撃され、一人の亜人が、それを身体を張って庇い、彼らを逃がした、と」
ルイズの思考は停止した。
「その亜人が、V3にそっくりだったとも聞いている。……この連中に、きみは思い当たるふしはあるかい? その使い魔の主だったメイジは、彼らが貴族派の警戒線から身を隠すようにしていたと言うから、あるいはきみ同様、王党派への使い――」
「殿下っっ!!」
ルイズは、ウェールズの胸倉を掴んでいた。無論、考えた上での行為ではない。
「わたくしもっ! わたくしもっ! 殿下にお伝え忘れていた重大な話がありますっ!! 是非とも、お耳に入れて頂きたい、重大な議でありますっ!!」
(サイトだっ! 間違いない!! サイトが、会いにきてくれたんだっ!!)
「お願いしますっ!! 無礼は承知の上で、なにとぞ殿下のお部屋への、入室をお許し下さいっ!!」
しえーん
支援変身!
支援
.
街道を、見事な甲冑を着たメイジが往復している。
それも二騎や三騎ではない。十騎・二十騎といった集団だ。
無論、うろついているのはメイジ達だけではない。
兵卒・傭兵といったガラの悪い連中から、オーク鬼やトロール鬼・オグル鬼などといった亜人部隊までが、街道沿いの村々を、肩で風を切って歩いている。
ニューカッスルを包囲する、貴族派の軍団である。
総勢五万を号しているが、実数的にも、おそらく四万は割っても、三万を下る事は無いだろう。
まさに、王党派の百倍以上の大部隊であった。
そんな中を、才人・ギーシュ・キュルケ・タバサ、そしてシルフィードを含めた五人(?)は、歩を進める。包囲軍の連中から、直線距離にして3mと離れてはいない。
もっとも、すぐ側といっても、敵軍の真っ只中を闊歩するわけではない。彼らから死角になっているのは当然のことだ。なぜなら、いま彼らは、ヴェルダンデが掘った地下通路を進んでいるからだ。
払暁に坑道に入って、そろそろ数時間が経過しているが、現在位置も現在時刻も、土中を進む彼らには、見当も付かないが、勿論それは、ほんの数m先の地上にいる、貴族軍の知るところではない。
「大丈夫かね、僕たちは……? 見つかったら、殺されるだけじゃ済まないんだろ……?」
ギーシュが怯えたように呟く。
まだ言ってやがるのか、もういい加減に腹を決めやがれ。そう思って、才人はギーシュの言葉に返事を返さなかった。もう何度目かになるかも知れない、ギーシュの繰言だった。
「うるさいわねアンタも。いい加減おしゃべりを止めないと、あたしもキレるよ」
無言の才人の代わりに、キュルケがイラついたように言う。
しかし、客観的に見れば、ギーシュが怯えるのも、まあ無理はない。
数万の軍勢が重囲するニューカッスルへ、こんな方法で接近を図っているのだ。見つかれば、どう言い訳しても王党派への裏切り者か、もしくは間諜にしか見えない。おそらくは処刑前に、想像を絶するほどの拷問に掛けられる事だろう。
しかし、もう才人の覚悟は決まっている。
たとえ、一歩でもニューカッスルに近付かなくてはならない。そこにルイズがいる以上、彼はどんな手を使ってでも、その王党派最後の拠点にへ行くつもりだった。
話は、まる四日ほど――彼らのアルビオン上陸の時点まで、さかのぼる。
風韻竜シルフィードの機動力と使い魔としての感覚共有能力を、タバサは過剰なまでに使い、偵察を繰り返した。幸い、アルビオンは幻獣の繁殖率が高く、主を持たぬ野良竜が、一匹でうろついている分には怪しまれないので、偵察行に危険は少なかったのだ。
シルフィードの観たもの、聞いた言葉、それらは全てリアルタイムでタバサの脳髄に送り込まれ、そこから現在のアルビオンの状況を可能な限り分析する。タバサは、当初一時間と言ったその作業に、実際丸一日ほど時間をかけた。
「きゅいきゅいっ、おねえさまっ!! シルフィもう疲れたのねっ!!」
駄々をこねるシルフィードを、才人はなだめ、なぐさめ、自分の食い扶持を削って肉を与え、調子に乗ったシルフィードをタバサが杖で殴り、とにかくそうやって、タバサは情報収集を続けていた。
そしてその間、キュルケ・ギーシュそして才人に与えられた任務は、『待機』の一言だった。ギーシュは、ほったらかしにされて流石に憤懣の声を上げたが、才人は文句一つ言わなかった。いや、言えなかった。
しえん
.
才人は、ショックを受けていたのだ。
彼は、このタバサとシルフィードの協同関係を見て、初めて思い知ったのだ。メイジと使い魔が、一丸となって事に当たれば、どれほどの事が可能かという事に。
おそらく、これこそが、メイジと使い魔本来の“あるべき正しき姿”なのだろう。
しかし、自分はどうだ?
シルフィードのように、主の目になる事も耳になる事もできない。
できる事は精々、剣を抜いて、主の身を守ってやる事くらいだ。あの、魔法の使えない、どうしようもなくワガママで愛すべき、あの少女を。
――だが、おれは今、ルイズの傍にはいない。
いないどころではない。何処にいるのか、生きているのか死んでいるのかすら分からない。
少年は、無力すぎる自分の現状に、密かに唇を噛んだ。
そんなルイズの行方が、突如判明したのが、三日前――上陸二日目の朝だった。
四度目の偵察行に出たシルフィードが、ニューカッスル城にはためく、とある旗を目撃したというのだ。驚くべき事に、その旗に描かれていたのは――。
「ヴァリエール公爵家の紋章、だってぇ……!!?」
ギーシュが、とても信じられないといった風に首を振る。
だが、タバサは冷静だった。彼女はシルフィードの目を通して、自分もその旗を見ているのだから。
「事実。――実際その旗に、レコン・キスタも戸惑っている」
「ウェールズ皇太子って、美形の割になかなか食えないって聞いていたけど、本当だったみたいね」
ニューカッスルで、篭城の指揮を実際に執っているのは、現国王たるジェームズ1世ではなく、その息子たるウェールズであるというのは有名な話だ。
「あたし、ゲルマニアの皇帝就任式で見たことがあるのよ、アルビオンの皇太子殿下を。噂に違わぬ美形っぷりだったけど……まさか、こういう状況で、こんな手を使うなんて……頭の切れも外見以上って噂、本当だったみたいね」
そう言ってキュルケは、けらけらと笑った。
しかし、彼女がそう言うのも無理はない。
内戦中に、他国の有力諸侯の旗を掲げるという、その行為の是非は問われるべきだが、それでも旗一本で、貴族派の包囲軍を惑わせ、動きを封じているのは事実だからだ。
レコン・キスタ首脳部としては、当然トリステイン行政府とヴァリエール公爵家に、事の次第を問い合わすだろう。
ニューカッスルに翻っているのが、トリステインの旗ならば、あるいはその回答に時間はかからないかも知れない。だが、その旗が、ヴァリエール家の旗ならば、話は別だ。
レコン・キスタからの問い合わせの結果、王家と公爵家の間で内紛が勃発しかねない騒ぎが持ち上がるだろうし、騒ぎの分、公爵家からの公式回答は遅れるはずだが、――それでも、その回答が得られるまでは、貴族派としても動けないはずだ。
状況如何によっては、この内乱に、トリステインが正式に軍を派遣してくる可能性を顧慮せねばならないからだ。いや――トリステインが来るならば、アンリエッタの婚儀に先立って発表された攻守同盟によって、ゲルマニアも黙ってはいまい。
つまり、その分だけ、王党派は時間を稼ぐ事が出来る。
いまレコン・キスタに、トリステイン軍を迎え撃てるだけの戦備が整っているかと問われれば、それは無理だというべきだろう。なにしろ貴族派の、ほぼ全軍がニューカッスルに集結している状態だ。他の海岸線はガラ空きと呼んでも差し支えはない。
急ぎ戦陣を再編し、“敵”の侵攻に備え、水際の守りを固めねばならない。
だが、その前に、肝心のニューカッスルをどうするか?
今のうちに一気に攻め落とすべし、とタカ派の貴族は主張するだろう。
攻め落とした城塞からヴァリエール家ゆかりの者の骸が出たら、トリステインとの全面戦争は、もはや回避できんぞ、とハト派の貴族は言い返すだろう。
配下が揉めれば、問われるのはリーダーの手腕だ。
貴族派の連中も、今でこそ利に釣られてレコン・キスタに従っているが、元来、貴族というものは独立独歩の風が強く、その連携はとても一枚岩とはいえない。
そして、レコン・キスタの指導者クロムウェルは僧職出身で、元はメイジでさえなかった男である。そんな男に、紛糾する貴族たちを取りまとめる事ができるだろうか?
王ならば、王権という絶対の切り札で、貴族どもを黙らせる事が出来るだろう。だが、クロムウェルは王ではない。貴族院という議会の長に過ぎないのだ。
……つまり、成り行き次第では、レコン・キスタの内部分裂すら期待できる。
確かにうまい手だ。タバサもそう思う。
.
だが、才人には分かっていた。
あれはルイズの仕業だ。
貴族派の牽制目的など、それこそ二の次、三の次に過ぎない。
あの旗が呼んでいるのは、トリステイン軍でも、ゲルマニア軍でも、公爵家の私兵隊でさえない。
才人だけが分かっていた。
ルイズが呼んでいるのは、このおれ――平賀才人ただ一人なのだということが。
「急ごうタバサ! ニューカッスルにはルイズがいる! 早く来いって、あの旗は――ルイズはそう言ってるんだよ!!」
「根拠は?」
タバサが冷気さえ窺わせる声で、そう訊き返す。
質問としては当然だろう。客観的に見て、旗一本をルイズ健在の根拠とするには、やや無理がある。ニューカッスルに居るのはルイズではなく、もしかしたらワルド子爵だけかも知れないからだ。
いや、むしろ敵だらけの陣中を越えてニューカッスルに到着したのなら、『ゼロ』のルイズがスクウェア・メイジのワルドの足手まといにならないわけが無い……。
だが、才人は叫んだ。
「根拠もクソもあるか! おれは、ルイズの使い魔だ! それ以上に必要な根拠があるもんか!!」
「きゅいきゅいっ! やっぱりサイトって、かっこいいのねっ!!」
「ちょっ……おい、よせってシルフィ」
風竜形態のシルフィードに甘噛みされる才人に、キュルケが囃し立てるように口笛を吹き、ギーシュは呆れたように肩をすくめたが、それでもタバサだけは表情を変えず……納得したように、静かに頷いた。
「わかった」
どうやら彼女は、ニューカッスル以外の拠点に潜んでいる“隠れ王党派”と連絡をつける算段だったらしいが、ひとまずニューカッスルへの直接侵入を決意したようだ。
「直接侵入って、それこそ不可能だろう!?」
うろたえるギーシュに、タバサはヴェルダンデを杖で指し示し、顎を捻った。ついてこい、という意味なのだろう。
「まさか……ここからニューカッスルまで、穴を掘って進むつもりかい……!?」
うめき声を上げたのは、ギーシュだけではない。キュルケもさすがに表情を変えた。
「いや、でも……さすがにそれは無理よタバサ。ここからニューカッスルまで、直線距離でも20リーグはある。そんな距離を、四人がかりで土を掘りながら進んだりしたら、いくら何でも窒息しちゃうわ!」
だがタバサは、顔色一つ変えない。
「ヴェルダンデが掘った穴を、あなたが“練金”で固め、坑道にする」
その杖の先はギーシュを指している。確かに『土』系のギーシュならば、その作業は難事ではない。
「ニューカッスルの手前まで坑道を掘り、一日置く。穴の隅まで空気が行き渡るように」
そして、最後に自分を指し、こともなげに言った。
「翌日、全員で坑道を進みながら、わたしが最後尾に立って風を通す。――それなら空気はなくならない」
それを聞いて、キュルケは蒼白になった。
20リーグにも及ぶ長距離トンネルを、風を操りながら進もうと言うのか……!
確かに、このタバサなら出来るかも知れないが、それにしても、あまりに危険だ。
.
「始める」
そう言うとタバサは、ギーシュを連れて、『上陸』のときに使用した坑道に、飛び降りた。
「ちょっ……待ちたまえタバサっ!! まだ、その、心の準備がっ!!」
もう姿は見えないが、いまだにギーシュはブツブツ言っているらしい。
「急ぐ」
「大体、ニューカッスルの方角は分かるのかね!? 闇雲に掘り進んでも……」
「方角はコンパスがあるから分かる。方位はシルフィが、上空から指示を出してくれる」
「でも、ちょっ、待ッ……、いやぁぁぁ〜〜〜!!」
そのギーシュの悲鳴を最後に、二人の声は土中から聞こえなくなった。それと前後して、シルフィードの姿が、残された才人とキュルケの眼前から見えなくなっていることも。
「なあ、キュルケ」
「なに、サイト」
「使い魔って、空の上から、地下の御主人様の位置特定をしたり、会話が可能だったりするの?」
「まあ、普通は無理だけど……でも、あの子の使い魔って、伝説の風韻竜だしね」
「少なくとも、おれにはできねえな……。同じ使い魔なのによ」
「うちのフレイムにだって無理でしょうね」
「だっておめえ、フレイムは風韻竜じゃないだろ?」
「あんただって、人間じゃないの」
「……そうだな」
「そうよね……」
そして、その会話から48時間後、彼らの姿は地中にある。
目的地は、ニューカッスル。
直線距離にして20kmの大トンネルを、彼らは進む。
目的地たるニューカッスルに、さらにとんでもない恐怖が待ち受けている事も知らず。
支援
今回はここまでです。
乙であります
乙ー
漢だって男なんだぞー
胸へ目がいくのは当然だぞー
乙です
ヴァリエール公爵家の紋章を持ち出すとは、今までありそうでなかった秘策だな
乙です!
いいですな!
「ゼロと魔砲使い」で「デルブリンガー」になってるのてわざとかいな?
本来「フ」だよな?みんなスルーしてるから気になるぜ
レイジングハートとデルフの会話ってありそうで無かったな、リリカルイズやなのはさん(小)召喚ものでも両者の会話シーンは無かったかと…
>>394-395 もし「御神流」のことを知っていたらAMF対策の中で話が出てるよな。
と言うか機動六課で兄を、無限書庫で姉を雇えよと放映時思ってた。
さて話を変えて、「月村 雫」召喚はルイズ的にどうだろうか?
通称、とらハ・リリなの人型最強生物。おそらく久遠より強い。
月島雫に見えた
>>431 それで、その月村雫をルイズが召喚したとしたらどんな話になりそうなんだ?
いつまでもなのはネタ引きづるんじゃねーよ。また荒れさせたいのか?
デルフの鞘ネタが出てたが、実際のああいう大剣の鞘って、
2つに分割したシースを留め具で縛ってカバーしてるだけじゃないのかな
実物の両手剣の鞘ってそんな感じだし
鞘から抜くっつーよりは留め具操作して鞘を外して抜剣
>>423 >「きゅいきゅいっ! やっぱりサイトって、かっこいいのねっ!!」
>「ちょっ……おい、よせってシルフィ」
>風竜形態のシルフィードに甘噛みされる才人
才人×シルフィードキタ-!?
なのはネタつうよりとらはネタだろう。月村雫…御神の剣士で吸血姫、おまけに電波使い…最強だな
ただセミオリキャラは理想狂に逝った砲が…
ただ耕介以外のとらはキャラがフツーにルイズに召喚は見たい
美沙斗さん召喚でシエスタは死んだはず亭主の……あれ?どっかで見たパターン?
サイト×シルフィードってのはあんまり無かったよな。
竜姦
V3・・・というか改造人間って性欲無いのかな?
ドラゴンハーフか
…卵か、卵なのか?
ハカイダー×シルフィード
とかどうだろう?
一応ブラックドラゴンに変身できるし
人間形態で受精してから産卵?
>>444 まあ、お魚さんみたいな形で受精ってこともなかろ
これ以上は避難所かねw
さあ、卵を産め。
ヌンサ召喚でルイズ涙目
シルフィ相手ならブレスオブファイアのリュウとか
原作では喋らないから難しそうだが
>>444 「さぁ、卵は産みましたからここになさってください」
長編を書けるって凄いなぁ
コネタしか出てこない上にどう考えてもアレなのが
才能の違いに打ちひしがれる
雑談中申し訳ありませんが、視界良好であれば、
五分後に第八話を投下したいと思います。
つーか、ここできゅいきゅいフラグ立ててる奴の多くが、人外どころか竜ですらない件。
学院長室でオスマンとコルベールが遠見の鏡を使い、レナスとルイズが部屋で話をしていた頃。
シエスタは生徒や教師たちに囲まれてできた、生贄を逃げ出させないための擬似的なリングの上に立っていた。
目の前で、ギーシュがキザに薔薇の造花を一本口に加えてポーズを取っている。
覚悟を決めたシエスタの心は、透徹しているかのように澄み渡っていた。
貴族に対しての恐怖はなくならないし、家族や親類縁者がこれからどうなるかという不安もある。
おそらくは待っているのであろう、痛みや苦しみ、あるいは最悪の結末である死への怯えも決して消えはしない。
平民である自分がギーシュに叶わないことくらい、シエスタにはよく分かっている。
だから、もしかしたらギーシュに勝てるかもしれないなどと、甘い期待を抱いてはいけない。
力を振り絞るべきことは、例えどんなことをされても、立ち上がる努力を続けることのみだ。
「諸君、決闘だ!」
ギーシュが造花を振り上げるのと同時に、周囲の貴族たちから喚声が沸きあがる。
本来止めるべき立場の教師までがそれに加わっているのを見ても、シエスタの心が揺るがない。
むしろシエスタはメイド服の点検に余念が無かった。
所詮すぐに血とか埃とか色々なもので汚れるだろうから必要ないかもしれないが、最初で最後になるかもしれない晴れ舞台なのだ。
汚い衣装では舞台に上がれない。
「さて、短い付き合いになるだろうが、改めて自己紹介しておこう。僕は『青銅』のギーシュ。メイドくん、決闘のルールは知っているね?」
メイド服に汚れも皺もついていないことを確認すると、シエスタはギーシュと同じように自己紹介をする。
「勿論知っています。それと、私の名前はシエスタです。メイドではありません。今後気をつけてくださいね、”ギーシュさん”」
敢えて皮肉をまぶし、自分とギーシュが同位であると暗に主張したシエスタに、観客達から物凄い数のブーイングが飛ぶ。
怖いことには変わりないが、あの食堂で反抗した時に抱いた恐怖に比べれば他愛無いものだ。
シエスタは自分が震えているのを感じながらも、どこか可笑しい気持ちになってぎこちなく笑みを浮かべた。
恐怖を感じる部分と、誇りを貫こうとする部分が心の中で別たれて存在している。
何処か遠い場所、遠い過去で、同じような気持ちで生きていたような気さえする。
それはきっと気のせいだろう。シエスタはメイドで、何の力も持たずに生まれた無力な平民で、ただの少女だ。
今までなら有り得ないこの場に立ったから、シエスタの心が平静を保とうと健気に処理してくれているのかもしれない。
他の生徒に釣られるように来てしまったキュルケとタバサは、最前列で居心地悪そうにしながら決闘後について話していた。
「あのシエスタってメイド、度胸あるわねぇ。もし決闘が終わってまだ生きてたら、止めなかったことを謝りにいくべきかしら。ねぇタバサ?」
「……分からない。でも、個人的に興味はある」
彼女達は他の生徒や教師とは違い、食堂での一件でシエスタに概ね好意的な気持ちになっている。
それは二人が学院内では珍しいトライアングルメイジであり、さらに加えて留学生という少々特殊な身分だからだ。
キュルケの故郷であるゲルマニアは、平民でも金の力で国の要職につくことができる。
貴族本意主義のトリステインよりもゲルマニアの貴族たちは平民に寛容で、あそこまで反抗の気概を見せたシエスタに対しても、キュルケは怒りよりも感心の方が先行する。
一方でタバサの方は、偽名で留学しているものの、ガリアの出身である。
ガリアはトリステインと同じくらい貴族の権威が強いが、タバサは家の事情とたった一人の親友の影響で、平民を見下す気持ちは少ない。
勿論トリステイン貴族でも、怒りや嫌悪、侮蔑といった負の感情以外の感情をシエスタに抱いた人間はいる。
この場にいればルイズが一番筆頭に上がっただろうが、生憎ルイズは部屋で自分の心情をレナスに暴露している最中なので、食堂での騒動を目撃してはいない。
ルイズの代わりにはらはらした気持ちでシエスタを見ているのは、ある意味この決闘の原因を作ったモンモランシーである。
彼女の場合は、ギーシュとシエスタの両方が心配だ。
あの場の感情に任せて絶交してしまったとはいえ、モンモランシーはまだギーシュのことを諦めきれていなかった。
それに、一時は絶交するほど腹が立ったギーシュに対してあそこまで反抗してみせたシエスタに、胸がすっとする思いを抱いていた。
多種多様の思惑を他所に、主役達の応酬は続く。
「相変わらず、自分の非を認める気はないらしいね。平民にしてはいい度胸だ」
「だって、実際に非がありませんから。私はビンを拾っただけで、悪いのは二股をかけていたギーシュさんでしょう」
「っ! どこまでも口の減らない平民だね。どうやら君のことは、か弱い女性として扱う必要はないらしい」
「ええ、ご自由にどうぞ。私もギーシュさんのことは貴族だなんて思っていませんから」
シエスタは言い返しながら、自分がハイになっていることを実感した。
普段なら思っても口にしようとは思わないことが、考える前に口から飛び出してくる。
相変わらず怖くて声が震えているし、身体だって震えが止まらない。
こうして決意をした後でも、貴族に逆らったことを後悔しないと言ったら嘘になる。
家族や親類のことを考えたら、誇りも何もかも投げ捨てて、今すぐ土下座したくなる。
でも、それを認めるわけにはいかないのだ。
平穏を捨てて貴族に立ち向かうと決意したのだから、どんなに辛くてもそれが決意を阻むものならば、平穏と一緒に捨てていかねばならない。
(……ごめんなさい、皆)
タルブ村の家族や王都にいる親類たちに謝っても、何の意味も無いことは分かっている。
それでも、シエスタには心の中で謝り続けることでしか償うことができなかった。
緊張で背中に汗が伝うのを感じながら、シエスタはギーシュを見据える。
魔法が使えない平民である以上、貴族に負けるのは仕方ないのかもしれないが、弱いなりに覚悟を見せつけることはできるはずだ。
もちろん油断は禁物だろう。貴族相手に油断なんて持ち様がないけれど、感情に任せて考え無しに思ったことを言うのは危険過ぎる。
決意を見せる前にギーシュを逆上させた挙句、物の弾みで殺されてしまっては意味がない。
いい気になっていると取り返しのつかないしっぺ返しを喰らうと思い、シエスタはこの辺りでいったん気を落ち着かせることにした。
一回、二回と、大きく深呼吸していると、ようやく体の震えも収まってくる。
しかし、シエスタにはこれからどう戦えばいいものか分からない。
貴族相手にそんなことを考えても意味がないかもしれないが、心構えをしているだけでも安心感がかなり違ってくる。
さすがにルイズの『ゼロ』くらいならシエスタも知っているが、生憎ギーシュの二つ名は生徒たちの間ならともかく、奉公人の間では有名な方ではない。
ギーシュがどんな手を使うのか、生徒ではないシエスタにはさっぱり予想できない。
二つ名を『青銅』と言っていたから、分かるのは青銅に関する魔法を使うということくらいだ。
「僕はメイジだから魔法を使う。依存は無いね? このワルキューレで相手をしよう!」
ギーシュがルーンを唱えて薔薇の造花を振ると、花びらがひらひらと一枚舞い落ちる。
地面に落ちた花びらは、<錬金>によって青銅で作られたゴーレムになる。
隅々まで完璧に彫り込まれた女性型のゴーレムなのに、ギーシュのファッションセンスが悪いためか何故か不恰好に見える。
彫刻自体は綺麗だから、きっと手そのものは器用なのだろう。
シエスタは魔法の特性なんて知らないが、イメージが重要そうなことくらいは、目の前のワルキューレを見れば分かる。
まず自分の手で彫ってみてイメージを固め、魔法で作り出したに違いない。
モデルになった女性が誰だか知らないが、本人が見れば噴飯ものだ。
「ヘンな形ですね」
考えるより早くシエスタの口が爆発した。
こんなことが無いように自分を戒めたばかりなのに、あっさりとヘマをしてしまった。
シエスタの顔からただでさえ引いていた血の気がさらに引いていく。
もしかしたらこの極限状態で、積もりに積もった貴族に対する不満が、自分でも気付かないうちにはけ口を探しているのかもしれない。
そんなに不満が溜まっていたのかと、シエスタは他人事のように思った。
目の前では、自分のゴーレムを貶されたギーシュが口元を引き攣らせていた。
「いい度胸だ。本当は少し痛めつけたら君が降参しなくても終わりにしようと思っていたが、始めは手荒にいこう。……いけっ、ワルキューレ!」
ギーシュの声と共に突っ込んできたワルキューレに、シエスタは反応できなかった。
ずん、と腹に重い衝撃が来て、視界一杯に広がった青銅に初めて自分が殴られたことを知る。
思わず身体を九の字に折り曲げた瞬間、側頭部の辺りで「ガツン!」という音がする。
何だろうと思った途端視界がぐるっと回り、気が付いたら何故か地面に倒れていた。
わけが分からないまま立ち上がろうとするが、頭がぐらぐらと揺れる上に、がくがくと足が震えてうまく立てない。
音がした側頭部に手をやると、僅かに赤いものがつく。
手についたのが血だと認識した途端、思い出したように、全ての痛みがシエスタに襲い掛かってきた。
腹はもう痛いというよりは熱くて気持ちが悪く、側頭部は早鐘を鳴らすように鋭い痛みを伝え、シエスタの心を掻き乱す。
「今、自分が何をされたのか分かるかい? 腹を殴られて、位置が下がった頭を蹴り飛ばされたんだ。
今の動きすら分からないようでは、悪いことは言わない。取り返しのつかない怪我を負う前に降参するんだ」
ギーシュの口上を聞きながら、シエスタは身体が伝えてくる激痛に翻弄されていた。
ただのメイドであるシエスタは、ワルキューレに敵うとは全く思っていなかったが、反応すらできないとは完全に予想外だった。
腹と側頭部は痛くて死にそうだし、身体は平衡を取り戻せずにふらふらしている。
次の一撃が放たれれば、シエスタは間違いなく意識ごとノックアウトされるだろう。
だが、幸運なことにギーシュはシエスタを舐めてかかり、余裕を見せて降参するのを待っているようだ。
今のシエスタには、その時間を使って回復に努める以外に手段が無かった。
動ける程度に痛みに慣れ、足を動かしてもふらつかなくなったのを確認すると、シエスタは一歩、二歩と前へ進む。
「大丈夫です。まだやれます」
なおもじりじりと前へ進もうとするシエスタを、後ろに回ったワルキューレが控えめにどついた。
べちゃり、という表現が相応しい転び方で、コントのようにシエスタが大の字になってすっ転ぶ。
「格好悪いぞ、平民!」
「平民は、地べたを這いずるのがお似合いだよ!」
「さっさと降参しろよ!」
シエスタとギーシュを囲む生徒達が、無様にこけたシエスタを嘲笑した。
「……けほっ」
転んだ拍子に口に入った砂埃や草を吐き出しながら、シエスタはよろよろと身を起こした。
今のは手加減されたのがシエスタ自身にも分かり、最初のコンビネーションほど痛くはなかった。
その代わり精神的に堪えて、シエスタは少し泣きたくなってきた。
遊ばれていると分かっていても、シエスタにはギーシュの手から薔薇の造花を落とすために前に進む以外、どうすることもできない。
外野の野次に構っている暇はない。そんな暇があるなら、今は少しでも立ち上がる努力をするべきだ。
悠長に倒れている余裕など、今のシエスタにはないのだから。
そう思っていたら、メイド服の裾をワルキューレに掴まれて放り投げられた。
地面に落ちた時にぶつけたか、右腕の肘がじんじんと痛んでいる。
怖くて触って確かめることができず、シエスタは地面に震える手をついてゆっくりと起き上がる。
投げられたことで、結果的にまたギーシュに近付けたのだけが幸いだ。
シエスタに罵声を浴びせる生徒達の中で、居心地の悪い思いを味わいながら、モンモランシーは心の中で盛大にギーシュを罵倒した。
(あの馬鹿! 仮にも相手は女の子なんだから、もっと優しく扱いなさいよ!)
ギーシュと釣り合っていた心の天秤は、とっくにシエスタへと傾いてしまった。
平民とはいえ、あそこまで頑張るシエスタをモンモランシーは素直に凄いと思っていた。
自分には絶対に真似できないとも感じ、ある種の尊敬の念すら覚えていた。
だからこそ、モンモランシーはシエスタを馬鹿にする回りの生徒に食って掛かりたくて、心の中で罵った。
(あんた達は、実際に同じ場面であの子みたいにあそこまで頑張れるの!?)
モンモランシーはとてもそうは思えない。彼らはきっと同じ状況に放り込まれれば、慌てふためいて許しを請うだろう。
貴族として普段誇りを口にする者ほど、助かりたい一心で無様に頭を下げるに違いない。
そもそもこれでは決闘ではなく、ただの私刑だ。貴族と平民では、勝負にならないことくらい最初から分かりきっている。
ギーシュとシエスタが心配でモンモランシ−はついてきてしまったが、何故他の生徒たちはついてきたのだろう。
(案外、皆それを期待してここにいるのかもね)
浮かんだ侮蔑の感情を、シエスタではなく自分を含めた見物している生徒たちと教師に向ける。
特に教師たちは、表面上は止めたがるような素振りを見せているが、何もせずにこの決闘を黙認しているのだ。
モンモランシ−自身ではこの決闘を止めることはできない。貴族にとって、決闘は他人が侵してはいけない神聖なものとされている。
もし止めてしまえば、それは決闘をおこなっているギーシュに対して最低の侮辱となってしまう。
シエスタのことを思えば、それでも何度も止めるべきだと思って声を張り上げようとするのだが、その度に何故かギーシュの顔が脳裏にちらついて声にならない。
いくらシエスタのことが心配でも、本来止めるべき立場の教師たちが傍観している以上、モンモランシ−に決闘を止める術はなかった。
>>437 甘咬みと言われて某ダンジョンゲームでの鰐思い出した。
・・・・ガッデム・・・・・
投下中なのに雑談しても良いのだろうかと思ったのだが
それもまた支援レスになるのだから良いのかも支援
サルさんかな支援
支援〜
(あんたらも、生徒を導く教師である前に汚らしい貴族だったってわけ?)
このまま見ていると、モンモランシーは自分もそうでありながら、貴族という生き物が嫌いになってしまいそうだった。
モンモランシーの憤慨を他所に、最前列ではキュルケが真剣な表情になってギーシュとシエスタの決闘を見ていた。
「この決闘、どっちが勝つかしら?」
よく見なければ分からないほど微かに眉を顰めているタバサは、ギーシュに一方的に遊ばれているシエスタをじっと見つめている。
そのまま、同じようにシエスタを注視したままのキュルケに答えを返す。
「普通なら間違いなくギーシュ。メイドが勝つ手段は一つしかない」
普段から本を肌身離さず持ち歩いているタバサは、今も本を持ってはいるものの、読もうとはせずに真剣な目で決闘を見つめている。
読んでいても、目の前でワルキューレに殴られているシエスタに、どうしても気がそぞろになってしまうのだ。
タバサの目には、敵わぬと分かっていてもなお立ち上がろうとするシエスタが、どこか自分の境遇と重なって見えていた。
砂埃に塗れてなお立ち上がろうとするシエスタの姿に、心から惹き付けられるものを感じていた。
親友の言葉に興味を煽られたキュルケはなおも尋ねる。
「メイドが勝つ手段が一つでもあるの? どうやって? あれでもギーシュは実技優秀、ドットだけど戦術の知識も豊富よ? しかもあと六体もワルキューレを作ることができるのに」
もっともな疑問に、タバサは核心とも言える一言を放った。
「でも、今は油断してる」
ギーシュヘイトか
最後に少し間が開いてしまいましたが、第八話終了です。
支援ありがとうございました。
油断した兵士と憤兵は勝てんよ。
支援。
ふ、間違いを通してギーシュはきっと大きくなるだろう!
投下乙です。
乙!
なにか、ドルアーガ見てたらジルとルイズってお似合いの思えてきたんだ。
いや、サイトとジルが妙に被って見えてw
__ _/ ヽゝ,
_ _,.r--、_r'´___iァ'___ |(__
)「 `>'::::::::::::::::::::::`ヽ、 \;`ヽ
ノi_/ ....::::::::::::::::::ヽ」(:::ハ
}y'::::::::::/:::::i:::::::i:::::::::i::::::ヽ、::::iヽ;:!
/:::::::::/:::i:::ハ:::::ハ:_,ニ_ハ:::::ハ::::| \
/:::/::::ハ/ェ:;! V'´{ ,ハ!、!:::|:::::ト、 ,.イ( ゆっくりしていってね
イ::::i::::::!Y'{ ハ `ー''´ 「_i:::::::i、_/(|
L.へレ:::i 'ー' . "" ト┤イ:::::´ハ
L.ヘ." - ,.イ|::7、:::|::::::::|::|
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'r ´ ヽ .ハ::i^ヽ、__ /、|:|::ハ::|
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i イ iゝ、イ人レ/_ルヽ,. '"-‐ ヽ `>'
レリイi (ヒ_] ヒ_ン )/ /!
!Y!"" ,___, / ヽ、ヽ ..::: ,'」
L.',. ヽ _ン ( ,ハ_ l i:ハ
| ||ヽ、 ヽ,__r ! /::::ヽ.
レ ル` ー--─ ´ル ` 、. /:::::!:::::ヽ、
>>450 上を見たらキリが無いw
大体フーケ戦まででテーマを決めてそれから流れを決めるといいよ
あと小手先としては、類義語辞典を使いながら似た言い回しを使わないように心がけるとか
>473
自覚の無い馬鹿が一番始末におえないよな
一番良いのは、ラストシーンを考えてからストーリーを捻る・・・かな?
乙ぅ。
できれば決闘終わるまで書こうぜぇw
前回あんなとこで切って、今回またこんなとこで切るかよ。
このいぢわるさんめっ
投下いいすか?
さっきクリアした吸血奇譚からエルシュラント・D・アノイアンス
ゼロ魔はジョジョのやつしか知りません
てゆか原作は読む気がしない
原作読んでない時点でお話になりません。
お帰りください。
えっテンプレ展開じゃないっすよ?
>>10あたりに張られてるなんのひねりもないつまんないのと違います。
首つって死んだらどうですかね。
>>478 そうだね
ルイズと使い魔が和解して絆が芽生えるのを書きたいから、その前に喧嘩させておくとか
まあ中にはノリと勢いでがんがん書いていく人もいるけどw
春ですな
ドラクリウスの婆メイド、ベルチェかよ
原作を読むのが嫌ならせめてアニメをみろ
ようつべにまだ一期二期があるだろ
ボクはこれでも忙しい身なんですよ
アニメなんかちんたら見てられません。
いいよもう他のとこに投下するから
あばよ
毒吐きですね わかります
もう来なくていいよ
原作を読まないで二次創作書こうって神経が理解できない
原作揃えるために働き始めて寮に入ったらド田舎で近くに本屋無くて泣いてるのに
こんなのが来るくらい酷いスレになってしまったのか…
最近の図書館はラノベの量が凄いですよ
>>492 春です 季節の変わり目はさ、ほら・・・体調崩すじゃないか
このスレも体調崩してるんだよ 出すもの出せばおとなしくなるさ
とりあえずアニメちょろっと見て書いてすぐ投下なんて無謀すぎる。
三日置いてみな。まず間違えなく orz なる事うけあいだ。
魔砲使いの人、デル「ブ」リンガーじゃなくてデル「フ」リンガーな。
そのぐらいの勘違い誰だってするだろ・・・俺なんてタバサをなぜかサバタと勘違いしてたんだぜwww
>>491 寮だと本を大量に置いておけなくて困らない?
>>491 三次創作がゴロゴロしてる作品もあるからなぁ…
所で、本屋がないならkonozamaやら楽天ブックスやらで通販すればいいじゃない。
>>497 それボクらの太陽じゃんww
懐かしいなオイ。
まあ三次創作の9割以上は元ネタを踏み台としか思ってない邪気眼精神溢れる「ぼくのかんがえたさいきょうしゅじんこう」物だけどな
最近ゼロ魔を知った俺は
ゼロ魔が流行ってた当時の「タバサは俺の嫁」云々の書き込みを見て
なんで今どきウォーザードのキャラが?確かにSNK vs CAPCOMにも出てたが…
とか思ってたもんだ…
あー恥ずかしい
あせを〜かいて〜なみだをながし〜くじけずにがんばってヒ〜ロ〜よ〜…懐かしいのを歌わせるな
>>497!またプレイしたくかなっただろうが!
「さっきクリアしました」でベルチェを書けると思ってる奴がいることに驚愕
藤崎節は再現がかなり難しい部類な上にドラクリは設定自体ややこしいのに
まあ単なる荒らしなんだろうけど
青空文庫版、携帯に落として通勤中に読んでます
タバサと言えば女神転生のタバサの像でした
コンクリートをまくメデューサはたまらなくシュールだ
>504
大丈夫、再現するつもりなんて毛頭ないから
というか原型止めないほどオリ設定満載にしてサイキョーに仕立て上げるのがデフォ
普通の日本人のはずなのに、何故か本当は魔界のプリンスで『力(その場に合わせて都合のいい能力がどんどん増える)』を使う時には銀髪ヘテロクロミアに変化して〜とか
>>488 とあるSS作者はSS書くために、ゼロ戦の構造まで詳細に記された書籍を買い求めたらしい
SS本編には軍ヲタ丸出しな艦隊戦のみならず、量子論・心疾患の知識まで書き連ねてあった
そこまでするのは余程の酔狂な変人か、もともとおっそろしく知性的な人の暇つぶしだったか、だ
少なくとも、お前さんよりはジョークの分かる大人であったことだろう
資料集めは基本中の基本だよな 話かくにしても絵かくにしても。
女性の着替えとかを書くために女物下着に関する本を買ったり調べたり。
これが他人に見られたら生きていけない
JOJOなんかじゃトイレの話がやたら詳細だった。何故だか知らないが
でも、こーゆーのが話にリアリティや厚みを生むんだよね
最初にベイダー卿を見つけ、
そして此処とJOJOクロスに来てゼロ魔に興味が湧き、
自分も書きたいという思いがどんどん強くなって原作全部そろえてしまった。
そしてアニメ放送時に1話で切ってしまった事を激しく後悔した○TZ
まあ、キャラの性格真っ向から無視して同名の別キャラの性格植えつけたり、小説ではすげえキャラ立ってる奴を敢えてほぼ無個性でやって
案の定ファンから見ればくそくだらねえ作品に仕上がってても
面白いって言われてる作品ここのまとめにあるし、面白けりゃいいのよ面白けりゃ
例としちゃイニシャルはSなリーダー気取り召喚とかイニシャルMの大帝に忠実な猟犬召喚とかな
>476
取りあえず、小ネタしかないからそれで出来る所まで考えてみるよ。
ありがと
しかしMary Sueはほぼ確実に原作ファンから嫌われる
オナニーで満足するのは本人のみ自分は見ても楽しめない
それが良いと言う人もいるのは確かだけど
普通なら人を楽しませ様とすれば色々と相手の事を考えて求められている物を察し提供するのが基本だと思うな
>>512 よぉ兄弟。
墜落し、地面を爆走する戦闘機、その中からベイダーが踊り出るシーン。
粉塵の中から赤い帯と黒い陰が飛び出てくるのをイメージして心が躍った。
文字は偉大だ。
まぁ、最近はドルアーガみたいなのもできてるくらいだからいいんじゃない?って思えてきた。
...あれは最悪だったorz ゼロ魔1巻読む方がまだマシなレベル。
戦闘のプロは攻撃を受けたらすぐに退却するものだ
>>512 実は自分もゼロ魔を知るキッカケになったのがまとめにある某作品のおかげだったりw
やっぱり二次創作をより楽しもうと思ったら最低限原作には目を通しておきたいよな。
大体はっきり言えばサイトとルイズの絡み以上に面白い話なんてない品
それでも主人公が異世界に召喚されるってシチュに想像を膨らませて
「じゃあこのキャラ組み込んだらどうだ?」って楽しんでみるわけだから
もともとのゼロ魔の世界に無知でその「異世界への召喚」が描けるはず無いと思うのよね
ところで思ったが、高高度に浮いているアルビオンの住民達は、いわゆる「高山病」になったり
しないのだろうか?あと沸点が低いため、高温での調理が出来ないとかいう障害とか、圧力鍋が
発達しているとか。
ニューカッスルでも普通に豪華な料理が並んでいたようだし、そのあたりの考察はどうなってい
るのだろう?(ひょっとして原作で読み落としている部分があるか?<私)
ノボルがそこまで考えてるわけない
なんか特殊なバリアーみたいなのがあって中の人平気!とか
以降は避難所でっ。
いや、まぁ、ネタ潰しっ言葉もあるし
そういや、乳エルフのパパンってメイジとしとのランク不明だよな?
「ゼロ」の可能性も捨て難いわけだし
………よし、イケる!
アルビオン上空だけ空気に厚みがあって宇宙にはみ出し(ry
っていうか常に高いトコにいるなら大丈夫なんじゃね?>高山病
観光客なんかは危ないかも知れんがw
普段からあのラピュタ大陸に住んでる人達なら高山病だって平気なんじゃないかと思うが、
魚はやっぱり淡水魚しか取れないんだろうなw
それとも大陸の端っこから超長い網を海まで垂らして漁業をしてるとか…
>>528 あの世界だ。
漁船が空飛んでたっておかしくもないだろうさ。
アルビオンの気象変化の描写無かったですかね?
まぁ川があるから雨降ってるんだろうけど
気圧関係が地球と同じなら高山病の心配ないかと
沸点はアルビオンの原作の描写から80℃前後と予想してみる
人いないかな?
またこんな時間ですが投下します
えらく短めな3話と、長めの4話。
532 :
黒蟻 3話:2008/04/07(月) 01:56:35 ID:DfnDFfw4
朝。
というにはいささか早い。まだ早朝というべき時間である。
普段は寝起きの悪いルイズが、そんな時間にすでに目を覚ましていた。
ただ、さわやかな覚醒とはいかないようである。
「……最悪」
げんなりとした顔で呟くルイズ。
背中が汗で湿っているのを感じる。腋の下にも嫌な汗をかいている。
不快だ。
こんな時間に目を覚ましてしまったのならそのまま二度寝に入るのが常だが、この状態では気持ち悪くて眠れそうにない。
いや、汗などは実際にはたいした問題ではない。
今は瞳を閉じるのが嫌なのだ。
そうしてしまうと、嫌でも先程見た、夢の中で見た光景が浮かんできてしまいそうだからだ。
ルイズは体を起こしベッドに腰掛けた状態で机に目をやる。
そこには手のひら大の板状の石、モッカニアの『本』が置いてある。
ベッドに腰掛けた状態のルイズからは見えないが、その表面にはルイズの使い魔であるという証のルーンが刻まれている。
『本』は魂の化石。その人間の人生の全てが詰まっている。生れ落ちたときから経験する全てのことが。
その中には、無論、生前に秘密にしていたことなども含まれる。モッカニアの世界には「秘密を墓まで持っていく」などという概念はないのだ。死後『本』が発掘されることで秘密は暴かれてしまう。
それだけではない。全ての中には、本来人に見せるべきではないものも含まれる。それは排泄行為や、情事の様子などのことだ。
それゆえに裏社会では美女の『本』が高値で取引されていたりする。特に女優など有名な者の『本』ともなれば、一般人では一生かかっても使い切れないほどの額で取引されている。
そういった『本』の売買を取り締まるのも武装司書の仕事だ。『本』は全てパンドーラ図書館に収められるのが慣わしであり、法である。
とにかくに、『本』を読むというのは何かと刺激的な体験なのである。
ましてや『本』というものの存在自体、昨日初めて知ったルイズである。その衝撃は言わずもがなである。それが夢に出てくるのも仕方のないことだろう。
モッカニアの『本』にも刺激的な場面はいくつもあったが、その中でも一、二を争う衝撃的な場面が夢に出てきて、その結果が今のルイズというわけだ。
モッカニアの人生において、刺激的・衝撃的という点で「一、二を争う」というのは実に当を得た言葉だ。二つの出来事がが大差をつけて三位以下を突き放して、甲乙つけがたい。
その二つについては、ルイズは昨夜一度読んだだけで、もう二度と読み返すまいと心に誓ったのだが……。誓いも虚しく、その直後に夢に出てきてしまったという次第だ。
一つはモッカニアが心を病む原因となった出来事。
そしてもう一つがたった今夢に出てきた場面。
モッカニアの死である。
キター
ルイズは不快な汗をふき取り制服に着替えると、寮を出た。
本来のルイズの起床時間よりも2時間近く早い。部屋にいてもすることがないので朝の散歩と洒落込もうというのだ。
(たまには早く起きて散歩なんてのも健康的よね)
そんなことを心の中で嘯くルイズ。
とはいえ、早寝早起きならともかく、昨晩は『本』を読むのに夢中でかなり夜更かししたため、睡眠時間も短く、あまり健康的とは言い難いのだが。
あたりを見渡すとメイドたちが忙しなく働いている。
当然といえば当然だが、普段、ルイズが起きて身支度を整えたらすぐ朝食を食べられるということは、その前に使用人たちが朝食の用意をしているということだ。
忙しなく動く彼女たち、その中には特に仕事道具のようなものを持っていない者もいるが、そういったメイドが一体何の仕事をしているのかはルイズには想像もつかない。
何がしか道具を持っていれば何の仕事に従事しているのかわかるのだが……。炊事、洗濯、掃除以外に早く起きてするような仕事があるのだろうか?
そんなことをとりとめもなく考えていたルイズだが、ふと、メイドたちがちらちらとこちらを窺っていることに気づいた。
「無礼だ」と注意しようかと思ったが、その前にこの場に貴族が自分しかいないということに気づいた。
(なるほどね。こんな時間に貴族がいるのが珍しいってわけね)
だからと言って無礼であることには変わりがないのだが、何となく気勢が削がれ、ルイズはその場を立ち去ることにした。
(夜に鳴く鳥もいれば、朝に鳴く鳥もいる。学院は貴族のためのものだけど、早朝だけはメイドたちのものなのかもね)
(メイドたちも貴族のいない早朝はお喋りでもしながらのんびり仕事しているのかも知れないわ。それこそ小鳥の囀りの様に)
(それにしても、貴族は私以外誰も起きてないのかしら?)
(お年寄りは朝が早いというし、オールド・オスマンあたりは起きてたりするのかしらね)
(ちょっとお腹空いてきたな……)
そんなことをつらつらと考えながら、ルイズは足の赴くままに歩を進める。
するといつの間にか広場に出たので、そこで少し休憩することにした。
一本の木のを選び、その根元に座ろうとしたとき、そこに蟻の行列ができていることにルイズは気づいた
「……あの時、」
ルイズは蟻の行列を見て、昨日、初めてモッカニアの『本』に触れたときの事を思い出した。
しゃがみ込んで何かを見ていた少年時代のモッカニア。
あの時は何を見ていたのか確認できなかったが、今は何を見ていたのかルイズには判っている。
それは『本』でその場面を読み返したというわけではない。
早死にしたとはいえ20年以上生きたモッカニアの人生。その人生においてトピックでもなんでもない少年時代の一場面を探し出すというのは相当な時間を費やす必要があるし、そんなことをしようとも思わない。
ただ、モッカニアがどういった人生を送ったかを知っている今となっては、あの時見ていたものとして何が最も相応しいのかが判るということだ。
当然、ただ偶然落ちていた硬貨を拾おうとしていただけかもしれない。相応しいからといって、他の可能性を否定できるわけではない。
それでもルイズは、あの時モッカニアが見ていたのは蟻の行列に違いないと思うのだ。
(モッカニア……)
蟻の行列を見ながらルイズは考える。
モッカニアの『本』を使い魔にするという事について。
すでに死んでしまっているモッカニアがルイズのために何かをしてくれるということはない。
ならば、ルイズがモッカニアの『本』を使い魔にすることで享受するのは、モッカニアの人生という情報のみ。
だが、これはモッカニアの本に触れさえすれば誰でも知ることができるのだ。
(先生に見せようかと思ったけど、それは駄目ね。少なくとも当面は)
あくまで自分の使い魔なのだ。
モッカニアを知ることができるのは、モッカニアと契約した自分だけでいい。
モッカニアの『本』を他人に触らせるということは、自分だけの使い魔であるモッカニアが、他の人間と共有する使い魔になってしまうのも同じだ。
情報という形でのみ享受する使い魔の恩恵。その情報を共有するというのはつまりはそういうことだ。
気がつくと、蟻の行列はいつの間にか最後尾になっていた。
「蟻の行列の最後尾なんてはじめて見たかも。早起きもしてみるものね」
そう言うとルイズは立ち上がった。
目覚めは最悪の気分だったが、今はそうでもない。むしろ今は少し清清しい気さえする。
ある種の開き直りといえばそれまでだが、モッカニアの『本』を使い魔にしたという現実を受け入れることにした。
まぁ、現実は現実であり、いくら嫌でも受け入れざるを得ないのだが、そこまで嫌々ではないということだ。
(そういえば……)
起きる直前は最悪だったモッカニアの夢だが、あの場面の前は、何か暖かい気持ちになれるような夢だった気がする。
どんな夢だったのかは、いくら思い出そうとしても思い出せない。
夢とはそんなものだ。
ただ、確かにモッカニアの夢で暖かい気持ちになれたのだ。
ならばモッカニアの『本』が使い魔だというのも悪いことばかりではないだろう。
ルイズはそう思った。
ここまで3話。実に短い。
次から4話
モッカニアの死に様はきつすぎます
537 :
4話:2008/04/07(月) 02:01:28 ID:DfnDFfw4
「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。
このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、様々な使い魔達を見るのがとても楽しみなのですよ」
使い魔召喚の儀の翌日。最初の授業の冒頭に教壇に立つ教師は、そう言った。
(あちゃー。言っちゃった)
キュルケは心の中でで舌打ちした。
シュヴルーズの浅慮に対してである。
この言葉は導火線に火を点けたようなものだ。まわりまわって昨日のルイズの召喚の結果を笑いものにするような流れになるだろう。
形としてはドミノ倒しの最初の一枚目を倒したと喩えるほうが相応しいのだろうが、繋がっている先が爆弾なのだから、やはり導火線だ。
(男子生徒。あの太った……なんて名前だっけ? まぁ、あのあたりね)
「おい。ゼロのルイズ。ちゃんとあの使い魔は連れてきたのか?」
キュルケの思ったとおり、マリコルヌがルイズを冷やかす。
(そしたら今度はギーシュあたりが合いの手入れて……)
「おいおいマリコルヌ。正確に言いたまえよ。『連れてくる』じゃなくて『持ってくる』だろう?」
やはりキュルケの思ったとおりに、ギーシュがマリコルヌにあわせる。
(ホント、男って単純。それでルイズが輪をかけて単純だから、あと二・三言、何か言われたところでドカン!ね。あの先生、どうもルイズの爆発に対して危機感が足りないんじゃないかしら。爆発する前に止めてくれればいいんだけど)
キュルケはそんなことを思いながら、何時でも机の中に潜れるように体勢を整える。
「そうだなギーシュ。だけど『持ってくる』よりもっと相応しい言葉があるよ」
(はい、カウントダウーン。さーん)
「ん? なんだい?」
(にーい)
「そこらへんに幾らでも落ちてるんだ。『拾ってくる』だろ?」
(いーち)
「「あはははは!!」」
(はいゼロ)
キュルケは急いで机の下に潜ろうとするが、そこでルイズの様子がいつもと違うことに気がついた。
普段だったら凄い剣幕で席を立ち上がり、ギャーギャー騒いだ上であの二人に杖を向けてるだろうに、今日のルイズは悔しさをかみ締めたような顔で席に座ったままだ。
(あの子、少し変わったのかしら? でも言われるままなんてのもつまらないじゃない)
爆発されたら迷惑だなどと思っておきながら、ルイズが怒りを堪えたら堪えたで不満に思うキュルケ。
自分は男子生徒のような品のない茶化し方はしないと思っていても、キュルケ自身もルイズを茶化してその反応を楽しむのが好きなのだ。
それがあの有様では張り合いがないではないか。
「あー、でもそこらへんの石じゃ駄目じゃないか、マリコルヌ。あの板状の石だからいいんだろ」
「え? ん? あぁ、そうか! あの平面がいいんだな! まっ平らなところが使い魔と主でおそろいなのか!」
だん!
ルイズが机をたたき立ち上がった。
「あ、あんた達覚悟はできてるんでしょうね」
ルイズは震える右手で杖を握り締め、怒りのあまり左のまぶたがぴくぴくと痙攣している。
(まぁ、そう簡単に人は変わらないわよね)
「あなた達! クラスメイトの悪口で盛り上がるとは何事ですか!」
ここでやっとシュヴルースがギーシュたちを諌める。
赤土を口に詰め込まれ苦しむギーシュとマリコルヌを見て、どうやらルイズの怒りは収まったらしい。
(まったく遅いわよ。普段だったら一つ前のタイミングでドカン!だったわ。ことなきを得たからいいけど、爆発物はもうちょっと気をつけて扱ってもらわないと)
やれやれといった感じでため息をつくキュルケ。そこに信じられない言葉が飛んでくる。
「ではミス・ヴァリエール。せっかく立ち上がっているのだし、前に出て錬金の実演をしてもらいましょうか」
キュルケは思わず隣に座る親友のタバサを見る。タバサはまさに机の下に潜ろうとするところだ。
「聞き間違いってわけじゃないのね」
コクリ。キュルケの言葉にうなずくタバサ。
あわててキュルケも机の下に潜り込む。
「百聞は一見にしかず」
タバサのぼそりと呟く。
「そうね。実際に一度目の前でルイズの爆発を見れば、あの先生もルイズの扱いを覚えるでし―――」
ドォン! と爆音が鳴り、キュルケの言葉は途中で遮られた。
キュルケは机から恐る恐る顔を出し、被害状況を確認すると立ち上がる。
「見るだけでは済まないわよね、あの位置じゃ。まぁ、解りきった一年の復習なんてつまらない授業がつぶれたんだから良し、ね」
教壇には煤にまみれたシュヴルースが転がっていた。
すかさず支援をするべし
「ひょっとしたらって思ったんだけどなぁ……」
ルイズは教室の片づけをしながら一人ごちた。
ルイズの爆発を受けたシュヴルースが、その意識を手放す前に、ルイズに爆発の後始末を命じたのだ。
破損した机などを運ぶのはルイズにはかなりの重労働であるが、片付けないことには授業への参加を許されない。
乗馬を得意とし、学院の女生徒の中では比較的体力のあるルイズではあるが、所詮は貴族の娘の中での話である。肉体労働には身体的にも精神的にも向いていない。
少し片付けては、休憩、愚痴の繰り返し。まだまだ先は長い。
(サモンサーヴァントはともかく、コントラクトサーヴァントは問題なく成功したのに……)
サモンサーヴァントはモッカニアの『本』を呼び出したとはいえ、爆発も同時に起こっていたので成功と言えるかは微妙だ。だが、コントラクトサーヴァントは爆発も起こらず、きちんとルーンが刻まれたのだ。
それならばと、今までとは違う結果になると期待して錬金に挑んだのだが……。
ただ、ルイズの心の中が楽観で占められていたというわけでもない。
事実、朝、幾ら時間があっても魔法を試そうとは思わなかった。本当に魔法が使えるようになったのか、確かめるのが不安だったのだ。
シュヴルースに命じられることで、やっと踏ん切りをつけたのに、その結果がこれである。
(でも! でも、もうゼロじゃないんだから! 確かに魔法を成功させたんだからゼロではないわ。これから一杯練習すればきっとほかの魔法だって成功するんだから)
何とかポジティブな思考にもっていくルイズ。
こればかりはモッカニア本人ではなく、モッカニアの『本』が召喚されてよっかったと思う。
系統魔法とは別物とはいえ、魔法の才に溢れたモッカニア本人の前で醜態を晒したら、こんな精神状態ではいられないだろう。
モッカニアがどういう反応を見せるのか、想像もしたくない。そして間違いなくモッカニアの才を妬む自分。考えたくもない。
そして何より、モッカニアの才に嫉妬する自分をモッカニアに見られるということが受け入れ難い。
嫉妬というのは醜いものだ。
本音を言えば、ルイズは大いに嫉妬している。
難なく魔法を使うクラスメイトに。
突出した魔法の才能を持つ家族に。
そして、モッカニアに。
だからルイズは虚勢を張る。
幾ら魔法が失敗しようとも卑屈にはならない。貴族の誇りを大切にし、そして己を誇る。
魔法が使えないルイズが誇りを重んじる姿を、中身の伴わないプライドと陰口をたたく者がいることも知っている。
そして、ルイズが魔法を使える者に嫉妬していると、きっと皆そう思っているだろうとも思う。
だからと言って醜い己を晒すことは良しとできない。
ただモッカニアだけは別だ。
物言わぬ『本』となったモッカニア。
ルイズの醜さを見ることはなく。そしてルイズの醜さに何を思うこともない。
「私はあなたが羨ましくてならないわ。あなたの才能を少しでも分けて欲しいと思ってるのよ」
誰もいない教室でルイズはモッカニアの本に語りかける。
生前のモッカニアは、それこそ多くの者からその才能を妬まれただろう。
何せ、世界最強の一角だ。
世界最強の称号、当時のバントーラ図書館館長代行、ハミュッツ=メセタと並び称される実力。
嫉妬しないほうがおかしい。
ハルケギニアに生まれ育ったルイズにはいまいち理解しがたいが、モッカニアの世界では魔法と同じぐらい体術も重要視される。
そんな中、魔術ならモッカニア、体術ならハミュッツとまで言われるのだ。
「でもいつかあなたの主として相応しいぐらいのメイジになって見せるんだから!」
ルイズはモッカニアに、そして己に宣言するように言う。
そして、
そして、決意も新たに教室の片付けに戻った。
(やっぱりめんどくさい……)
立派なメイジになるという決意は、教室の片付けにはこれっぽちも役に立たない。
少し片付けては休み、愚痴る。このサイクルでは終わらない。
ルイズは新たに片付けながら愚痴り、愚痴りながら休むというサイクルに変更する。
「何で、こんなこと、しなきゃ、なんないのよー!」
愚痴る。
「腰が……腰がぁ……」
愚痴る。
「こんなの平民の仕事でしょーにー!」
愚痴る。
「モッカニアの主に相応しいメイジになるって決意したそばから、何でこんなことしてるのかしら……」
愚痴る。
「モッカニアの主に相応しいのは片付け上手の女の子です……なんて……うふ、うふふふ」
少しやばいテンションで愚痴る。
「モッカニアの主に相応しいって。あれ?」
はたと何かに気づいたように手を止めるルイズ。
「普通……逆よね?」
なぜ使い魔召喚の儀式が行われるのは2年への昇級の直前なのか。
それは、召喚された使い魔によってそのメイジの属性を決め、それから各属性の専門的な授業を行うからである。
なぜ使い魔で属性が決まるのか。
それは「そのメイジに相応しい使い魔」が召喚されるからである。
今の今までそれを失念していた。
使い魔召喚の儀式は『属性を決めるための儀式』でもあるのだ。
そのメイジにどういった系統の才能があるのか。それを調べるための儀式なのだ。
満足に魔法の使えないルイズとモッカニアを実力で比すれば、主従として相応しいとはとてもいえない。
だがサモンサーヴァントで呼び出された以上、系統的には相応しい存在であるはずだ。
(モッカニアの系統が判れば、私の系統も判る! 系統が判れば、メイジとして一歩前進できるかもしれない!)
片付けの手を止め、ルイズはきれいな机のうえに腰掛ける。
そして巾着袋に入れて持ってきたモッカニアの『本』をひざの上に乗せ、真剣に考える。
ルイズの思考はすぐに壁にぶち当たる。
(私は一体何を召喚したのかしら?)
召喚されたのはモッカニアの『本』。
だが『モッカニア』を召喚したと考えるべきなのか、『本』を召喚したと考えるべきなのか。
『モッカニア』に注目するか、『本』に注目するか。それで話は随分変わってしまう。
(考え方としては3つね)
まず『モッカニア』という要素を無視して『本』にのみ注目して、ひざの上の『本』を見る。
『本』。それは人間の魂の化石だ。
(1つ目の考え方……私は『化石』を召喚した)
化石ならば土だろう、とルイズは思う。
ルイズには化石がどういって作られるかといった知識はないので、地面から出てくるのだから土系統といった認識である。
実際、ほとんどの化石は骨や殻などの組織が鉱物に置き換わったものである。
化石としてみるなら土系統というのは間違っていないだろう。
(次。2つ目。私は『人間の魂』、いや、『人間』を召喚した)
『人間そのもの』か、『魂』か。その違いを無視していいのか、少し悩んだが、『魂』も結局人間の一部なのだから、人間として考えることにする。
(……駄目。ボツ。人間の系統なんて判るわけないじゃない。せいぜい、風じゃなさそうってレベルしか解らない。風のメイジの使い魔は、基本的に空を飛べる生き物だものね。他の火・水・土はどれも生活の中で使うし、逆にこれってのもないわ)
(最後。3つ目。今度は今まで無視してきた『モッカニア』という要素。私は『モッカニア』を召喚した)
人間という種族ではなく、モッカニアという個人。モッカニアの個性から系統を割り出す。
それならば、モッカニアの魔法を踏まえるべきだろう。
聞いたこともない話だが、もしハルケギニアのメイジを召喚したとして、火系統のメイジを召喚したならやはり召喚者も火系統だろう。
(モッカニアの魔法……うーん、まぁ、土……かしらね? でも……)
モッカニアの魔法は系統魔法ではない。
それを系統魔法の才能と直接繋げてしまっていいのだろうか。
(だけど、それじゃぁモッカニアは系統魔法を使わないから、私も属性はなしとでも言うの?)
(そんなの認めないわ! それにモッカニアは系統魔法を知らないから使おうとしたこともないだけで、系統魔法の存在を知ってれば使える可能性だってあるわけよね)
(それこそ逆に、逆に私が……)
「私がモッカニアの世界の魔法を使える、ってのも……アリなのかしら?」
思わず思考が口から漏れる。
ひざの上のモッカニアの『本』を見る。
「アリ……なのかしら」
ルイズはモッカニアの『本』を机の上に置くと立ち上がり、落ち着きなくぐるぐると歩き出す。
「いや、うん。ない。いや! アリ。まぁ、うん」
ルイズの顔は変ににやけている。
「アリ。まぁ、アレよ。うん。とりあえず、試してみるのは……アリ、なんじゃないかしら。いや、別に期待しているわけじゃないんだからね、うん」
そういって一人何度も頷くと、机に戻りモッカニアの石に触れる。
モッカニアの司書養成所時代の部分を読み、モッカニアの世界の魔法についておさらいする。
モッカニアの世界の魔法、『魔法権利』などとも呼ばれるそれは、ハルケギニアの系統魔法とは根本的に異なる。
系統魔法の場合。
例えば風の系統のメイジでトライアングルのクラスだったら、使える魔法はエアカッター、エア・ニードル、エア・ハンマー、ジャベリンなどなど。多少の個人差はあれど、系統とクラスで使える魔法はある程度共通している。
自分の系統の、自分のクラスより下の魔法は大体使えるものだし、他の系統の魔法も初歩的なものだったら使えたりと、魔法を修めれば修めただけ多くの魔法が使えるようになる。
魔法権利と比較した場合、系統魔法の特徴は、『既存の魔法を、いろいろ使える』というところだろう。
魔法権利は反対だ。
幾つもの魔法を使えるような者はほとんどいない。
魔法についてはエリートとも言える武装司書にも、実用に耐えるレベルの魔法はせいぜい2つか3つといった者がほとんどだ。
そして、系統魔法と違い既存の魔法を学ぶのではなく、新しい魔法を作り出すことこそが魔法権利の本分だろう。
もちろん既存の魔法が完全に軽んじられているわけではない。
武装司書の場合、強くないと勤まらない仕事なので『肉体強化』という超人的な身体能力を手に入れるためのの魔法を身につけることが必須である。程度の差はあれ、武装司書ならほぼ全員習得している。
だが一流の戦士は、その上で自分だけの固有の魔法権利を習得するのだ。
モッカニアは魔法に関して、決して器用なほうとはいえない。
『思考共有』という人の意識に直接言葉を届ける魔法がある。肉体強化のように武装司書として必須といまではいかないが、ある程度実に着けているものの多い魔法権利といえる。
一定以上のレベルに達しないと自分から思考を送ることはできないが、多少の素養があれば送られてきた思考に返事を返すことはできる。
自分から思考を送れる者は少ないが、それに返信をする程度の修練を積んだ者は武装司書の中には多くいる。
だが、モッカニアの場合は、自分から思考を送るのはおろか、思考を返すこともできない。
しかし、モッカニア固有の魔法権利。そのあまりにも強大な力によって最強と呼ばれているのだ。
魔法権利は魔術審議と呼ばれるものによって習得する。
魔術審議は、神の定めた世界の公理を書き換える手続きだ。
世界の公理。物が上から下に落ちる。鳥は空を飛ぶ。魚は海を泳ぐ。そういった世界の常識、世界の秩序。
それを一部書き換える。
それが魔法権利だ。
どれだけ世界の常識を変えられるか。それが魔法の強さである。
そのため、魔術審議は大人になり常識に凝り固まってしまうと成功しない。逆に、幼すぎると混沌に近寄りすぎて命を落としてしまう場合すらある。
司書養成所では13歳から魔術審議を始める。二十歳過ぎぐらいで新たな魔法権利の獲得が困難になる。
現在ルイズは16歳。
魔術審議を行うにはちょうどいい年齢だ。
アリ使いルイズ 最強すぎますがな
ルイズは、椅子に楽な姿勢で座ると瞳を閉じ息を整える。
意識から外界を遮断し、己の内へ内へと意識を向ける。
今まで系統魔法を身に着けるために瞑想の類も幾度も試してみた経験からか。それともモッカニアの『本』で魔術審議をするモッカニアを己のことのように間近で見たからか。はたまた別の理由か。
意外にもすんなりとルイズの意識は奥へ奥へと向かっていく。
そしてモッカニアの『本』で覚えた魔術審議の文言を唱える。
(行くものは行かず、来るものは来ない。月は太陽。小鳥は魚。生者は骸。鋼鉄は朧。全ての現は夢にして、幻想は全ての現なり。あるものはなく、なきものはあり、万物を虚偽と定義して、これより、魔術審議を執り行う)
魔術審議が始まった。意識の最奥に分け入り、自らの意思で世界の公理を書き換える。
神の定めた世界の公理を侵食し、自らの望む形に作り変える。
(ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは黒蟻を生み出す)
(ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは黒蟻を生み出し操る)
(ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは黒蟻を生み出し意のままに操る)
ルイズは心の中で唱えながら、自分が蟻を操る姿を強く想像する。強く、より精密に想像する。
モッカニアの魔法権利。それは蟻を生み出し操るというもの。
モッカニアの『本』のみによって魔法権利を知ったルイズは、特に意識するわけでもなく、自然とその魔法を選んでいた。
魔術審議が終了した。
世界の公理が変わった、ような気がした。
ルイズは一つ深呼吸をすると、右手のひらを上に向け、瞳を閉じ、意識を集中する。
「出て来てっ!」
そう言うと、ゆっくりとまぶたを開く。
徐々に世界が開ける。手首から少しずつ視線を上げていく。
ルイズの手のひらには、一匹の蟻がいた。
「はぁ〜、そうよね。モッカニアを使い魔にしたからってそんな簡単にいかないわよね。なんというか、かめはめ波をまじめに練習する子供みたいだわ。あれ? 『かめはめ波』って何だったかしら。
まぁ、それに魔術審議って一年ぐらいかけてやっとできるようになるものみたいだし。まぁしかたないわよね……って、いるぅ!?」
ルイズにとって生まれて初めてのノリツッコミだった。
「え? うそ。ホント? ホントに? いる。確かにいるわ」
ルイズの手のひらには、通常の蟻と比べてはるかに大きな黒蟻がいる。その大きさはルイズの中指と同じぐらいだろうか。
「どど、ど、どーしよ、どーしよ。も、もう! 出てくるなら先に言ってって言ったじゃない! 私がハシバミ草嫌いだって知ってるのにご飯に入れるんだからー!」
ルイズは混乱のあまり意味のわからないことを口走っているが、自分が何を言っているのかすら解らず、右手に蟻を乗せたままうろうろと歩き回る。
「大体何よ、スバヤティって! そんなのあり痛ぁっ!!」
ルイズの奇行は突如手のひらに走った痛みによって止められた。
痛みに目を向けると黒蟻が噛み付いていた。
「痛っ! 放してっ! 放せ!」
するとルイズの言葉に反応したように、黒蟻は手のひらに噛み付いた顎を放す。そこから赤い血が溢れ出す。
痛みがルイズの頭を冷静にしていく。
ひとまず蟻を机の上に置き、ハンカチを傷口に押し当てる。
(でも、私の命令を聞いたわね。ほ、本当に魔法が成功したの? 落ち着くのよ、ルイズ。落ち着いて、もう一度確認よ。そうね……)
ルイズはあたりを見渡すと、一つの命令を念じてみる。
すると蟻は机の上から移動しはじめる。床に降り、さらにそこから移動する。そしてルイズの爆発で生まれた机の小さな破片、ルイズの小指のつめほどの破片を持ち上げ、運び出した。
「ちゃんと命令を聞いた……。本当に本当なんだ……。それなら……」
ルイズはもう一度目を閉じると、再度蟻を生み出そうと意識を集中する。
しかし、今度は出てこない。だが、ルイズにはもう少しで出そうという感覚はある。
(もっと魔術審議をしないと、いっぺんに何匹も出すのは無理みたいね)
一匹の蟻を生み出し操る。最強といわれるモッカニアの魔法は勿論そんなものではない。
モッカニア本人であれば、この教室を埋め尽くすほどの蟻を平然と生み出すだろう。
しかも平面的に埋め尽くすのではない。立体的に埋め尽くしてしまう。
それが、モッカニアが閉じられた空間であれば疑いようもなく最強だと言われる所以である。
億を超え、兆という数の蟻を操るモッカニアに対し、一匹の蟻しか操れないルイズ。
比較するのも馬鹿らしいほどの差がそこにはある。
(でも、ちゃんと実力もモッカニアの主に相応しいところまで成長してやるんだからっ)
そう改めて決意すると、初めて生み出した蟻を見る。
よたよたと破片を運ぶ蟻。
(まぁ、蟻は蟻よね。片付けの役には立たないわね……)
(…………)
(もうちょっと……)
(あと少しでゴールよ!)
何時の間にか蟻の応援に夢中になっていた。
(でも、あれよね。結局私が何系統なのかはわからなかったわね)
蟻を応援しながらも、ふとそんなことを考えるルイズ。
(魔法権利が使えるから系統魔法は駄目とか、そういうのは却下。系統魔法もちゃんと使えるようになってやるんだからっ!)
(両方使えれば最強よ! うん!)
(でも、始祖の作った系統魔法じゃない魔法を使うのって……ひょっとして異端になるのかしら)
(……あ、もうちょっとでゴールだ!)
「頑張って! もう少しよ!」
思わず声に出して応援してしまった、その時。
「随分時間がかかると思って見に来てみれば……」
ルイズの背後から声がかかった。
「ひゃぁああ! キュルケ!? いつからいたのよあんた!」
ルイズが驚き振り返ると、そこにいたのはキュルケだった。
「あら随分じゃない。あなた。もう昼休みだから、人が心配して見に来てあげたのに。こんなペースじゃ昼休み明けの授業も間に合わないわよ。
いざ見にきたらのんびり蟻さんの応援だなんて。まるっきり子供じゃない。魔法も使えないのに、授業も出ないじゃ今度こそ留年になるわよ」
キュルケの言葉に、ルイズはこの蟻が自分が魔法で生み出したものだと言おうとしたが、先程の異端扱いされるかもしれないという考えを思い出し、とどまった。
「う、うるさいわね! そこにいたら片づけができないから、どっか行きなさい!」
「片付けなんてしてなかったじゃない。『蟻さん頑張れ〜』って。……それにしても何この蟻。大きすぎない? 気持ち悪い」
「大きいほうがいいじゃない!」
「何でそんなところに噛み付くのよ。まぁ、大きくて黒いってのは確かにいいことだけど。でも、やっぱり気持ち悪い」
言うとキュルケはブラウスの胸元から杖を取り出し、蟻に向ける。
それを見てルイズは慌てて、
「何する気よ!」
言うとキュルケの腕にしがみついた。
「何をするって、潰すのも気持ち悪いから焼き殺すのよ」
ルイズがどうして蟻に過剰に反応するのか理解できないキュルケは、怪訝な顔をしながらそう言い放った。
「出て行って」
普段の言い争いのときとは違う、低く押し殺した声がルイズの口から発せられた。
そこに強い怒りを感じ取れないほど鈍いキュルケではないが、何がルイズをここまで怒らせているのかわからない。
「蟻一匹でなに怒ってんのよ。こんな蟻を見てるからいつまでも片付かないんじゃない」
「出て行ってって言ってるの!」
今度は怒鳴った。
「…………」
キュルケは何も言わず退散することにした。
後少しでも踏み込めば。いや、後少しでもあの場に留まれば。間違いなくルイズは爆発していただろう。
「訳が解らないわ……」
キュルケがいなくなった教室で、ルイズは一人片づけを続ける。
蟻は魔法を解除すると消えてしまった。
『本』を読んで分かっていたことだが、この魔法は蟻を出している間はずっと魔法を発動させ続ける必要がある。逆に、魔法を発動し続ける限り、屍骸になっても蟻は存在し続ける。
せっかく手に入れたこの魔法権利。より深く知り、より強力なものにする必要がある。
ルイズはそう思いながら右手のひらを見る。
先程噛まれた傷の上にハンカチを巻いておいた。血は止まったようだが、今もずきずきと痛む。
(でもちょっと痛いだけだものね。攻撃魔法としてはぜんぜん役に立たないわ。「イタッ、虫だっ、ぺしっ」で終わっちゃうもの)
結局、黒蟻の魔法が最強なのではなくモッカニアが最強だということだ。モッカニアの桁外れの魔力によってこの魔法を最強足らしめているのだ。
(まだ攻撃魔法にはならないわね。モッカニアは羽蟻を使って偵察とかにも使ってたけど……)
(攻撃手段としてこの魔法を使おうと思ったら……)
(10匹? いや、もっと?)
(そう簡単に振り落とせないような数……)
(何匹も……一斉……に……)
急にルイズはしゃがみ込む。
そして手で口を押さえ苦しそうな表情を浮かべた。
吐き気がこみ上げ、喉元まで来ているのを、必死に押し戻そうとしているのだ。
暫くの間そうしていたが、やがて吐き気はおさまったのか、真っ青な顔で深呼吸をしている。
ルイズの思考が呼び水となり、今朝の夢を思い出してしまったのだ。
モッカニアの死。
自身の魔法を用いた自殺。
ルイズは疲れた顔で床に座り、己の右手を見る。まだずきずきと痛むその右手。
モッカニアには違う結末を選ぶだけの力はあった。だがそれを良しとしなかった。
違う結末を選ぶために力を振るうことを良しとしなかった。
力を持ち、強くなればできることが増える。選べる選択肢が増える。力のないもの、弱い者に多くの選択肢は与えられない。
強い者に多くの選択肢があるのは、弱いものから選択肢を奪うからだ。
モッカニアは善良だった。
「私は……」
ルイズは呟く。
「それでも私は……力が欲しいわ」
投下終了です
支援ありがとうございました
どうしても一話あたりの分量にばらつきがでちゃう
ルイズが召喚もとの力を手に入れるってのはちょっと微妙かもなとも思ったのですが、この方向でやってきます
最初はモッカニア本人召喚で考えてたけど、バランスブレイクなとこをどうにかしようと考えてたらこの形に。
本人ではなく本から影響を受けるってのは1巻(戦う司書のほうの)っぽくていいかなと思ってたけど、書き始めると難しい。
乙ーーーー原作しらないけど楽しめるよー
たとえ少数であってもモッカニアの蟻は便利だからなあ
>>553 ルイズが強くなりすぎないようにってのは気をつけてこうと思います
ただ、屋外だったら、モッカニア本人クラスまで行かなければそんなに反則な能力でもないかなとも思う
水のメイジならウィンケニーさんになれるのかな?
あと、3巻の結末のモロバレがあるのを先に言っとくの忘れたorz
水メイジのウィンケニーさん化は……
出来たとしても「何の役に立つ」とスペルごと忘れられそうな
いや もしかして泥棒には最適? 原作でも服や眼鏡も含めてみたいだし
閉ざされた部屋に忍び込めるから
>>555 ウィルスバスターがブロックしてしまったorz
なんて融通が利かない…とりあえずありがとー!
おもしろそうだね、黒蟻
原作は知らないのだけど、普通はただの『本』なのかな?
使い魔として契約したために魂(『才能』?)を召還したという設定かな?
召還者限定の"DISC"みたいなもんかしら
夜中にマル(ryの部屋に大群けしかけて驚かせてパッと消すとかして仕返しする
ちょっとブラックなルイズを想像してしまった
>558
通常は『本』は「死者の記憶」を追体験できるだけのもの
通常は……
しかし主人公たまたまアルビオンのどっかの森で迷子→魔乳ハーフエルフの美少女に遭遇
のパターン多いな?アルビオン森林面積狭くない?
>>429 デルフリンガーの間違い指摘感謝。
いや、素でずっと(13巻発売してからも)デルブリンガーだと思ってたわ。
ファンタジーの世界では、○○ブリンガーっていう剣は定番ですので。
ちなみに意味は○○を持ち帰るもの、もたらすものというくらいの意味。
ストームブリンガーとかライトブリンガーとか。
訂正掛けておきます。
後大剣の鞘について指摘してくれた人。
もちろん本物がカバーみたいだというのは知っていました。
ただせっかく鞘に入れておけばというノボル神のお告げがあるのにネタにしないのは勿体ないじゃないですかw
デルがTheと同じ意味ならデルブリンガーは「とにかくお持ち帰り〜」という意味になるのかw
フラグ回収剣おそるべし。
なにその全住人が渇望する魔剣www
その魔剣デルフリンガーをサイトが手にしたら・・・ゴクリ
なんというフラグ剣……
黒蟻の人、乙でしたー。
こういう形で行くのか。
ルイズは力を使えるのか、それとも力に使われるのか。
原作ルイズだとまず「使われる」から、
モッカニアの生涯を追体験したことが彼女を変えたと信じたい。
余談:
>>522 「水圧はあっても気圧は無い」byM.K
とか。
>522
圧力鍋はさすがにないと思うからダッチオーブンとかで調理してたんじゃないかな。
水を沸かさずに美味しい料理か………
むしろ「アルビオン→イギリス→メシマズ」
あれは見た目だけ豪華なマズメシだったんだよ!
それにしても「魔法使い」 「タバサ」このふたつのキーワードから
サマンサの娘を思い出してしまう私は多分若くない
レヴェリーソード!
ァルヴィーズの食堂って貴族専用だったよな。
マチルダはどこで食べてたんだろう。
厨房で食べてたなんて描写はなかったと思うけど。
>>571 再放送やってるから若い奴でも知ってる
俺とか
>>573 職員専用の食堂とかあるんじゃないでしょうか
>>573 まあ仮にも学院最高権力者の秘書をやってるんだから食堂で食べても問題ないんじゃ?
召喚された岸和田博士が山野田F97を建造して7万を蹂躙。
・・・俺は疲れている。
>571
俺はウォーザードだった。(上で出てきてた気もするが)
オーキマイト召喚
七万人みねうちでたたきのめした挙げ句に勝手に世界移動して去って行きます
おいおい、岸和田博士なんか召喚されたら・・・・
召喚するのはジョゼフどんだよな?
582 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 16:11:53 ID:xmI9pxiA
せっかく月が二つもあることだし、「ムーンスペル」のクラウス(原作終了後)を呼び出せば原作以上に強力になるかと思ったが、
自作呪文の二つは使える事がばれたら魔法使いにとってはこれ以上ないほどやばい呪文だから殺されるかもしれないし、
どうやって活躍させていこうか?
ええい、ディバイテッドフロントとクロスさせようとは思わんのか!!
>>584 「口の動かない使い魔」か…。
うん、悪くない。
マイトといったらローンナイトだな
>>584、588
いつのまにコピーされたんだろう?
>>587 14巻はやっぱり鉄人軍団VS鉄の虎か?
それともサイトが地球に帰ってから聖地に再び降臨するとか
>>586 間違いなく召喚されて喜ぶ奴だな。その後ジレンマ。
このままなら借金忘れておk!でも帰れないとショボーン。
>>590 鉄人軍団と戦った後色々ハプニングがあってサイトとルイズが一緒に地球行きと予想
ダンバインから日本での異世界トリップファンタジーの地球逆トリップは伝統といっていい
おまけにクロス的にも妄想が広がりやすくなるw
>>592 > サイトとルイズが一緒に地球行き
二次創作ではたまに見るけど、やっぱり本家で読みたいねぇ。
地球行きは、むしろコッパゲのほうが気になります
コッパゲが地球行ったら、狂喜乱舞のあまり脳血管が何本か盛大に切れちゃいそうで怖いです。
召喚先の技術レベルがハルケギニアより上回っているか少なくとも同程度のクロスが多いけど、逆に大きく劣っているクロスはある?
例えば古代エジプトからの召喚とか。
ルイズと一緒に地球に行くのはいいが
ハルケギニアにもどれんぞ
コッパゲってこのまま行くとノーベルと同じ轍踏むんだろうと予想
虚無の王内でも指摘されてるけど
学院にいるより地球に行ってしまった方が双方にとって幸せかもしれない
実はコッパゲって一番困った君じゃないか?
昨日までGSSをやっていたので、こんなフレーズが浮かんだ
「あんた誰よ、変な恰好して。ピエロ?」
『わたぁしの名前を聞いたね 聞いたね! 聞いちゃったね!!』
『それじゃぁ教えてあげよう 教えなくちゃ! 教えねばなるまい!!』
『わたぁしの名前はゴア! ゴア!! ゴア・スクリーミング・ショウ!!』
そして学園は狂気の世界に染まる
>>599 でもゴア、主に対しては真摯で結構いいやつだからw
>>596 小ネタに蒼天航路からの召喚が。
三国志だから千数百年は技術レベルが違うぞ。
>>599 何故か真ゲのコーウェンとスティンガーを思い出した
そういえばこの二人召喚の続きマダー?
BLACK CYCの登場人物は結構良いのが多い
姫はまんま行けるし、自由だーって喜びそう
たろはそのまま犬?食事抜きも何のその
蟲君は一番使い魔らしい
小夜子だけは無理か
エロゲマそろそろ自重
何を?
呼んで面白くなりそうなキャラの話しをしてるだけじゃない
取りあえずここが全年齢板である事を認識した上で書き込む事を覚えた方がいい。
つーか、明らかに18歳未満は触れられない話題を振られてもその、何だ、困る。
だが内心食い付きたい変態紳士が沢山いるに違いない
じゃあ、ゼロのエルクゥ や イザベラ管理人 の話しはどこでするの
18禁じゃないか
投下はOKだが一切触れるなと言う事か、なら仕方が無い
ん、避難所ですれば良いのか
じゃあ続きがあったら避難所で、お騒がせ失礼しました
明確な線引きがないと物事を判断することができないってのは
あまりいい傾向ではないねって外国人が日本人に向かって言ってた
食いつきたいのを我慢して全年齢………
エドワード・ミト王子召喚とか?
テファにデューク・スケード、教皇にバロン・カークス。
うん、全年齢だ。
>>582 カグヤの奴位しか知らんけど月光が照らし出す間魔法及び魔法効果無効ってのはヤバイわな
エロゲはいいけどBLだけは流石に勘弁な
夢幻回廊のたろきゅんに俺が憑依して大活躍する中篇をここを見てインスパイアしたんだけどおk?
>>606 分からないネタはスルー。
つか、スレの性質からして自分の知らないネタの雑談なんていつものことじゃないか。
俺だってスレで繰り広げられてる雑談ネタの9割は知らないネタだ。
残り1割が話題になってるときは喜々として食いつくが。
>>615 分からないネタとかじゃなく18禁ネタは避難所でって話
エロゲがダメだなんて言ったらあれだ
ゼロ魔4巻の表紙絵はどうなる?
こんなドレス、エロゲでしか見れないぞ
・・・つか、前から気になってたんだが、このアンアンはどういうドレスを着てるんだ?
>>615 うーん、なんだ、その…
自分を押し付ける事よりも
人として、大人として、慎みや分別や常識を持つ事の方が生きていく上で大切なんだぞ?
スレに直接的な性描写を投下するのはそりゃ駄目さ。
でも、ただのエロゲネタってだけなら、数多ある「知らないネタの一つ」だろ。
スルーしろよ。
ここにいる住人はおガキさまだけだろ
元作品が18禁でも内容が一般ならここでOK、とあるのだから
元作品の話題も18禁に触れなきゃ良いんじゃね、と思うのだけどね
ここに18禁がクロス元のSSを投下することは許可されてるんだし
レス内容自体が18禁にならなければいいんじゃないか
ここは変な決め付けをする奴も多いから注意も必要かも
サレナ相転移エンジンの話しをした時、邪気やら大戦の厨と言われそうになった
さっぱり意味が分からんかったな
あの時気になって過去作品を漁って調べたんだが、98年頃の初期SSで既に相転移エンジン付きのSSがあった
どうやら元はハクションの様だ、流石オリ設定の元祖
ネウロからイミナことIさん召喚とか考えたが、ネウロのネウロらしさはネウロあってこそのものであり、ネウロ抜きじゃあ全然ネウロらしくならないんで挫折中。
と言うか、あの作品じゃ数少ない常識人だしなぁ。
たしかに登場人物のいっちゃってるところがネウロの魅力でもあるからなあ
まあ設定ではイミナも結構いっちゃってるけど
629 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 20:44:03 ID:d+arin9K
精霊使い(エレメンタラー)の覚羅を召喚なんてどうよ?
広範囲の精霊たちといっぺんに契約するは、敵の契約してる精霊奪うは
もう敵無しって感じw
ゼロ魔のエルフに対して無敵じゃね
>>626 ナデシコSS読みにはハクションで通じるから
>>630 「日本語でおk」の真意は往々にして「どういう文脈か分からない」だから。
それまでのやりとりのどこから
「変な決めつけ」やナデシコ二次三次創作の話に飛ぶのか分からないってことだろう。
>>586 マイトといえばマイトガイン
銀の翼に望みを乗せて 灯せ平和の青信号 勇者特急マイトガイン 定刻通りただいま到着
確かにあの時居た人じゃないと分からんな、せめて次スレ辺りで報告しないと
変な決め付けと言うより、変な思い込みをする人や押し付けをする人が時々沸くな
それと、ハクションってActionの事だろ
今は副管理人が改心したのでその蔑称で呼ぶ人は少ないぞ
>>632 銀で翼と言えば、銀様なかなか来ないなぁ…
作者さん忙しいのかな
>>629 エーテルの精霊使いなんて誰が覚えているよwwwwwww
>>632 ガイン無しでもマイトの性格だけで十分長編やれるかw
最近久しぶりに見たけど、お前は正義なのか?と聞かれて当たり前だ!と返せる主人公って中々いないよw
>>635 雑誌連載からの読者でコミックも小説も全巻初版持ちの、椎名へきるの声優デビューだったドラマCDまで買った俺に謝れ!
>>632 待て、舞人あるいはガインを召喚すると、ラスボスが「三次元人」になってしまいハルケギニア
の出来事もすべてはTRPGかコンピューターRPG・シミュレーションゲームの中の世界で、
登場人物たちはすべて「プレーヤーの駒」ということになってしまうぞ!(召喚元ネタバレ)
>>638 ヽ(・ω・)人(・ω・)人(・ω・)ノナカーマ
アレは本当に惜しかった・・・
作者の人今なにやってんだろ
ハボクックが召喚されました
>>639 SO2のクロードが召喚されてるからOK!
>>642 やめろぉぉぉ!その話はやめてくれぇぇぇ!!
>>638 悪かった。俺が悪かったよ!
最後がいい感じにハッピーエンドになったのはいいが、どうも少し駆け足だったように思えてならないんだよなぁ……
でも意外と召喚は面白いかもなw
>>643 やっぱSO3のあれ、受けたショック癒えてないんだなあ…
>>642 >>643 スターオーシャンの世界を作ったのはFD人じゃなくてオラクルルームに居た人たちということは1からの常識なんだぜ?
いや、マジ。マジだって! 俺を信じろ!
ファーストディバーチャーは駄目リメイク(ry
それよりもラジアータの方が(ry
なあ、エロゲからの召喚でも内容が18禁でなければOKなんだよな?
だったらランスを呼んでHシーンは全部朝チュンだったらOKなのかな?
トリステイン 年度残予算1920(万エキュー) 国土開発度 26%
軍事力 騎兵1個師団 治安安定度 87%
歩兵5個師団 貴族忠誠度 45%
艦艇21隻 平民忠誠度 72%
マザリーニ「姫殿下、今月のご命令を」
塊魂の王子を召喚する話を考えようとした。
どうしても30分足らずで世界が1つになってしまう。
どうしたものだか。
>>640 小説のイラスト描いてるよ。「イズミ幻戦記」とか。
>>644 つか、今押し入れの中の棚の「お」の列確認したら、コミックとか小説のほかにビデオまで有ったよ。
初回特典はカレンダー。こんなのに9800円も払った俺って・・・
そういえば前に烈火のキャラ召喚したら〜ってあったがよくよく考えたら烈火召喚されたらワルド涙目だよなwww
>>645 べつにこの世界がそうでないと言う保障もどこにもないから、かまわないと思っている。
ヤリマンのキュルケがいるから多少の事は大丈夫じゃね?
656 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 21:53:05 ID:h7QahqGd
>>649 ルイズ・エンカウントシステムを搭載するのはどうだろう?
遭遇すると威力ランダムな失敗魔法で塊がこわれる。
おろ〜、おろ〜!
薫の偽装死から復活して、一陣の風のように救出に向かう途中で召喚
>>649 何をトチ狂ったか、「銀魂」の王子と読み間違えてしまった俺、涙目。
空いてるようなら投下したいのですが、大丈夫でしょうか。
662 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 22:04:18 ID:TKYyAAq7
>>660 「留年でもいいからこの召喚無かったことにして下さい!」と涙目でコルベール先生に懇願するルイズが想像できた
>>661 どうぞ
では失礼します。
ルイズは夢を見ていた。ああ、夢だと納得してしまう、そんな夢だった。
夢の中のルイズは隠れていた。場所は自分の実家。魔法学院から馬を三日以上走らせてつく、遠い故郷。
その家の庭にある茂みの中、ルイズは隠れていた。
夢の中のルイズの姿は幼く、今よりもずっと小さかった。まだあどけないともいえるその顔に涙を浮かべ、恐怖の色をにじませていた。
本来ならば、いつも見る夢ならば魔法を使えないという事から母に怒られ、それから逃げている、という夢のはずだ。優秀な姉と母は魔法を使えるというのに、使えない自分。それを責められる夢。その筈だ。
そして使用人たちが自分を探しながらも、何故魔法が使えないのだろうかとぼやく姿があるはずだった。
しかし、今ルイズの見る夢の中では違っていた。
「あの化け物はどこにいった!」
「こっちにはいないわ」
「茂みの中も探せ! 隈なくだ! 見つけたらすぐに――」
それ以上の言葉は聞きたくなかった。両手で耳を塞ぎ走る。向かう場所は秘密の場所。中庭の池にある小船の中だ。
中庭はあまり人の来ない場所で、ルイズはいつもここで隠れていた。花々は季節ごとに表情を変え、池の色は空を映し、時にルイズの心をも写してくれた。
ルイズにとって、一人でそっと安心の出来る場所。家族の寄り付かない、ルイズだけの場所。哀しいときや、辛いときにいつもこの場所に来るのだが、今回は場合が違った。
聞き親しんだ人々の声で、ルイズは罵られていた。魔法が使えない、といった内容ではない。単純に化け物と、畏怖され、憎まれていたのだ。
何故? どうして?
夢の中のルイズは困惑する。どうして私がこんな目にあわなきゃいけないの? と、理不尽な状況に涙を浮かべていた。
だがそれを何処か遠い視点で見ているルイズがいた。故に、ああ、これは夢なのだと納得する。
どうして、私が――夢の中のルイズが嗚咽とともに声を漏らす。それと同時に彼女に影が差した。
怯えた瞳でルイズは視線を上げた。怯えに染まった瞳には、微かな期待が宿っていた。たまに見るこの夢の中で、いつも彼が出てきてくれるからだ。そして彼は自分をきっと、慰めてくれるからだ。
小さかった自分を守ってくれた、年上の彼。
ほんの少しの期待を込めた、その先には――自身の婚約者であり、憧れでもあるワルド子爵、ではなく。
片腕を失ったミス・ロングビル。土くれのフーケが立っていた。
「…………え?」
色という色が抜け落ちた表情でフーケをぼんやりと立っている。そうして、ルイズをじっと見つめているのだ。理解不能の状況に、困惑の色を浮かべながらルイズは彼女を見上げた。
そうしてから視線が高くなっているのに気づいた。立ち上がったからではない。ルイズの体が、現実の自分と同じ大きさになっていた。小さい頃の夢に、フーケの影が入ってきたのだ。
(どうして? 本当ならワルド子爵がやってきて、私を慰めてくれるはずなのに)
表情にはそんな言葉が浮かんで見えた。小さい頃と変わらず、表情に恐怖を貼り付けたまま、ルイズはフーケの視線を受けている。
だが、やはりこれは夢。それも飛びっきりの悪夢で、その夢を見ているルイズも泣きそうになっていた。
片腕のないフーケは何も言わず、ただ生気のない目で夢の中のルイズを見下ろす。物言わぬフーケに、彼女はただ恐怖していた。
(違う! 私じゃない、私じゃない!)
ルイズは叫んだ。同時に、もうやめてと大声で喚いた。
(どうして? ねぇ、助けてワルド様! お母様! 誰か、誰でもいいから、お願い!)
声は、届かない。ただフーケに見られているだけだというのに、ルイズの中の恐怖心はまるで湯水のように湧き出ていた。
フーケは何もしない。しかし過去の経験はルイズを追い詰める。
あの杖が振られれば自分はゴーレムに潰される。あの足が前に出れば自分は喉を蹴られ、倒れてしまう。きっと、きっと! フーケは私を殺すつもりなんだ!
故にルイズは今にも殺されそうな、必死の形相で叫んだ。
支援
どれだけそうしていただろうか。夢だと理解しているルイズも、顔を抑えてそれを見ないようにしていた。
その夢の内容を、ではなく、フーケを、でもない。正しくは彼女のなくなった腕を、ルイズは見ることはできなかった。
風が吹く。フーケの被っていたローブが揺れて、顔が晒された。
暗くてよく見えなかったフーケの表情は、やはり空虚だった。虚ろな瞳にはただルイズの姿が映っている。それだけだ。本当にフーケは自分を見ているのか、不安になる眼の色だった。
それが一番恐ろしかった。
不意に、片腕のみのフーケが、表情を変えぬままに口を開く。
きっとその口からは呪文が飛び出すに違いないと身を縮める。しかしそれは夢の中のルイズだけで、それを見ているルイズは顔がサッと青くなるのを理解した。
嫌だ、やめて。聞きたくないと、ルイズは耳を塞いだ。夢の中のルイズも、耳を塞いでいる。だというのに声は指の間をすり抜け、まるで頭の中に直接囁くように、ゆっくりと響いた。
「私の――――」
腕を返せと、彼女は言った。
そこで夢が醒めた。
・ ・
「ハッ――!」
飛び起きる。ベッドの上のシーツを跳ね除け、ルイズは目を覚ました。
額から汗が流れる。ネグリジェも、ぐっしょりと濡れていた。不快な汗がルイズの体を覆っていた。
自身の様子に、ルイズは首を横に振った。疲れたように――実際、体には気だるさが残っている――ぽつりと呟く。
「……また、あの、夢……」
そう、また、なのだ。
ルイズがこういった変則的な夢を見るのは初めてではなかった。
単純にあの夜の焼き直しを見る日もあれば、いつかの過去の中に割り込まれ、最悪の悪夢に仕立て上げられることもある。
あの夜から幾許かの日が過ぎていた。それでも悪夢はルイズを襲う。
少し前は、意味のわからぬ漠然とした恐怖と不快感だけがルイズに残っていた。しかし今、使い魔であるハヤトからある程度の話を聞いたルイズは、悪夢に対する覚悟ができていた。
いつか向き合わなければいけない出来事。自分が、真正面からぶつからないといけない事件。
それが悪夢の正体だ。
正直に言えば、気が滅入る。ついで、自身の罪を見せ付けられ、気分はとてつもなく落ち込んでしまう。責務と、恐怖。そして少しの優越感が、ルイズにはあった。
人を超えたオーヴァードという存在。レネゲイドウィルスという謎の生き物。そしてシンドロームという魔法のような力。
ルイズは微かに覚えている。あの日、羽を生やし空を飛んだことを。
今もじっと眼を凝らせば、物を大地に押し付ける光の粒子がちらちらと見える。これがルイズの力なのだ。彼女に与えられた、否、与えられてしまった力。
手をそっと動かしても、粒子は靡くことはない。あの日は願うだけでこの粒子を動かすことが出来たのに。
まだ詳しい話は聞いてない。だが、ルイズは少しだけ嬉しかった。
自分はゼロじゃないんだ。ハヤトと同じ、特別な存在なんだ。
初めて手にした異能力に、ルイズの心は不謹慎だと理解しながらも高揚していた。
この力に関して詳しい話が聞きたい。折角眼が覚めたのだし、ハヤトを起こそう。
そう思ってルイズは視線を巡らせる、が、部屋の中にハヤトの姿は見えない。
「……ご主人様をほっぽって、どこにいったのかしら」
と思ってから、すぐに思い出した。そういえば今ハヤトはオールド・オスマンに呼ばれているのであった。昨日、彼からもその話を聞いていたはずなのに、すっかり忘れてしまっていた。
ついで、彼女自身も起きたら授業に行かず学院長室に来るよう言われてるのだが、ルイズはそれをぽっきり忘れていた。
どうしようかしら、とルイズは少し考えた。
しえん
ファルコンブレード支援
ルイズはエンジェルハイロゥ/バロールでしたっけ
ハヤトからは「シンドロームの力は絶対に使うな」といわれている。だが、ルイズは好奇心を抑えきれずにいた。
(少しだけ、少しだけならいいじゃない。私にも何か、出来ることが増えるかもしれないのに……)
ルイズはどうしてもシンドロームという力を使ってみたかった。というより、シンドロームでなくともよかった。自分の中に目覚めたという力を振るいたかったのだ。
それに爆発魔法で失敗しても、酷い怪我じゃなければすぐ治るという。凄いと思う。第一、あんなふうに空を飛べるなら、魔法が使えなくたって――
興奮を隠せず、ルイズはいそいそと着替えを始めた。ハヤトが来るまではずっと一人でやってきたことだ。案外、手馴れた物である。
一応、と、杖を持ってルイズは早朝の中庭へと向かう。足は自然と早足になっていた。
確かに、フーケを傷つけた力だろう。でも、使いこなせればきっと違う。シンドロームは魔法と違って、爆発という結果だけしか出ないわけではない。
いつも通り、そう、魔法を練習するのと変わらないはずだ。
そう自分に言い聞かせて、ルイズはコクリと頷いた。ただ、どうしても頬は緩んでいたが。
――いかに彼女が誇り高く心優しい少女だったとしても、異能力というのはそれだけで人を魅了してしまう、蠱惑的な魅力を持っている。
ましてやルイズはゼロと蔑まれ、魔法を使えずに育ってきた。そこに魔法と同等の力が手に入ったとわかれば、彼女の行動は仕方がなかった、としか言いようがないだろう。
それが、例え間違いだったとしても。
ダブルクロス ゼロ 16
隼人は疲れていた。ぐったりとしていた。正直泣きたかった。
その疲れ果て、机につっぷす姿にさしもデルフリンガーも思わず、
「大丈夫かよオイ」
などと声をかけてしまう。それほどまでに隼人は死んでいた。
彼が一体何をしているのか、と問えば、答えは明白。この世界におけるオーヴァードやジャームに関する対応策を練っていたのである。とはいえ、主に練っていたのはオスマンとコルベールであるのだが。
オーヴァードという超常の力、ジャームという悲しき存在。
この世界には既にレネゲイドウィルスが蔓延している。それが隼人の出した一つの結論だった。故に、自分が来る前に覚醒したオーヴァード、もしくはジャームとなった人がいるはずなのだ。
その結論に至った理由は、まずオスマンの話がある。次にデルフリンガーの存在、最後に――オスマンやコルベールが調べた資料から発見された、異常な事件。この三つだ。
何処かのメイジの暴走と思われていた事件は、隼人から見ればオーヴァードの起こした事件だ。見たことのない化け物が出てきたなどという情報があったら、ジャームとしか思えない。
無論その中には単純にメイジが起こした事件もあるし、未発見であった魔物が現れた、というものもあるだろう。それを煮詰めるため、隼人は連日オスマンやコルベールとともに事件を洗っていたのだ。
デスクワークは苦手、しかも何処となく過去に反省文を書いていたということを思い出させる作業に、隼人は白旗を挙げた。
しかしそうもいってられないのが現状である。
戻るため、そして自分がいなくなったあとのアフターケア。そこまで考えなくてはならないのだ。
そう考えると、上層部にいた人間を尊敬せざるを得ない。
特に霧谷は、自分達の我侭を上手くこなしていたと実感してしまう。やることと考えることが多すぎるのだ。
「のぅ、ハヤト君や。もしオーヴァードとして覚醒していた場合、どう扱ったほうがいいのかの」
机に突っ伏していた隼人はオスマンの言葉にずりずりと表をあげた。
「あー……兎に角、暴走させないことが重要だと思う。
事実を話すなら訓練が必要だけど、話さないならその人を保護っつーか、普通に生活させることを監視させる人員が必要だな」
「ふむ、となると国を挙げてのことになるのぅ」
大事にはしたくないのだが、とオスマンは言った。確かに、このようなことが知れ渡れば面倒なことにしかならない。
オーヴァードの力は、下手を打てばメイジを凌駕する。扱いは確かに慣れるまで危険だが、使いこなせばそれこそメイジと同等だ。
望めば望むほどに力を与えるレネゲイド。しかし、その代償は重い。
「オーヴァードに覚醒して、自分は特殊な力を持っているんだと自覚がある奴は絶対に保護したほうがいい。そういう奴が起こす事件は、ちとまずい」
「ふむ、同感じゃの……と、現状ではこの程度で纏めるのが丁度いいか」
「おお、纏め終わったのか?」
オスマンの言葉にデルフリンガーが金属片を鳴らしながら問う。
うむ、と頷いてオスマンは両の手を上に上げぐっと背筋を伸ばした。同時にぱきぱきと骨の鳴る音がする。ずっと似たような体勢でいたのだから、それも当然か。
「とりあえずはのぅ。子飼いの人間を数人走らせて話を聞いてみるつもりじゃ。可能ならばこの場に来てもらっての」
「信用できるのか?」
「詳細は話さんよ。さて、あとはハヤト君の言うように、オーヴァード、ないしメイジによる鎮圧隊じゃな」
要するにUGNにおけるUGチルドレン、エージェントの事だ。
専門の知識、能力の使い方を知る人間がいれば、もし事件がおきたとしてもすぐさま対処に当たることができ、更には秘密裏の護衛などにも回すことが可能だろう。
そこまでいくと流石に国の許可を得ねばなるまい。それほどに強力な部隊を、私設としてオスマンが預かるには大きすぎる。
となれば、柔軟性に富み、理解があり、更に良識、そして責任感のある人間を筆頭にしなければなるまい。しかも、国の上層部以外には知れないような。
完全に影の部隊となるのは確定だろう。それを是とする、そのような人材がいるのだろうか。
「最悪の責任は私が持つしかあるまいな、やはり」
「そうしてくれると俺としても助かるんだが……」
隼人の中にある、ある程度理想の筆頭とは今まさに目の前にいる一人の老人、魔法学院の長でもあるオスマンだ。
オーヴァードの悲しみを知っており、更に権力もある。良識もあり知識も高い。何よりも事情を知っている、というのが最も大きい。
「わかっておるよ……やれやれ、この年になってまさ責務が増えるというのは、年長者の務めといっても過酷過ぎじゃないかの」
「ははは……」
そういわれると苦笑いしか出ない。だが隼人にとってはオスマン以外にはありえないのだ。少し頑張ってもらわないと困る。
「ある程度基盤が出来たら他の人材に任せるのも手じゃのぅ。私はここで生徒達の行く末を見るので十分じゃよ」
コルベール君なんてどうじゃのう、彼、責任感強いし。などとオスマンはぶちぶちと小言を呟く。その様子にもまた苦笑いをしつつ、隼人はふと今の時刻が気になった。というのも、腹が少々情けない音を立てたからである。
「しかし嬢ちゃんこねぇなぁ。そろそろ昼になるぜ?」
そう、今日は虚無の曜日。授業もないので隼人は朝から学院長室に詰めていたのだ。ルイズは覚醒済みでその自覚もある。彼女にオーヴァードの危険性と、その力の使い方を教えなくてはならない。
学院長室にきたら事件を一緒に洗い、その後で色々と隼人から話をする予定であった。ルイズにオーヴァードの話をしてから初めての休日。そろそろ一日を使ってでも話さないとまずい。
隼人がUGNで受けてきた訓練をそのまま教えるだけでも十分彼女の力の制御に役立つだろう。
(とはいえ、いきなり崖から突き落として「はーいリザレクトしてくださーい」って訓練方法は未だに間違ってるだろう、としかいえないんだけどな……)
頭の中に自身の教官である一人の少年が思い浮かぶ。あいつがこの世界にやってきていたら、もう少し上手くルイズたちを導くだろうという予測はあるのだが、その方向性が間違えそうで少しだけ背筋が冷たくなる。
しかしあのふざけた訓練は訓練で、自分の限界値というのがわかったのだから、実は無駄ではない。多少趣味が混じっていたのだろうが、その有用性には流石に舌を巻いた。
腐っても教官。腐ってもオーヴァード。そして何よりも、腐っても数百年を生きる、永遠の少年。
凄いものだと思うが、あまり認めたくないのも事実ではある。
(それ以外の点だけ見りゃ、いい奴だとは思うだけどな)
自身を導いたあの言葉。背を押してくれた、覚悟を決めさせてくれた応理の言葉。そう、彼は指導者としては、確かに一流だったのだろう。
さておいて、オスマンの資料まとめは終わったようだし、隼人も休憩できるはずだ。
慣れない文字を読み進め、慣れない資料整理を行う。それだけで隼人は酷く疲労していた。
ここでルイズに対する訓練の一つでもすれば、多少は体を動かす機会になるだろう。昼飯ついでに色々と話すのが定石か、とも思っていたのだが、ルイズが来ないのでどうしたものかと体を起こした。
本当に、どうしたものだろうか。
ルイズのシンドロームは光を操るエンジェルハイロゥに、重力を操るバロール。これは確定だ。
光の翼は支部長も使っていたイオノクラフトであり、彼女の周りを回っていた光球は魔眼。それも八つだ。
魔眼の数は能力の強力さに比例する。
八つ。しかも暴走した初期の状態でその数だ。使いこなせば、下手をすればその倍になるだろう。
隼人がこの世界に来て初めて覚醒したオーヴァード、ルイズ。その力は未知数だが、とんでもなく強力なのは確実だ。
まるで楠森のようだな――と思う。彼女の場合、その力の特異性故にであったが。
くしゃくしゃと振り払うように頭をかき、隼人は再び考える。
ルイズの力は、確実に自身とは違うものだ。隼人の場合はその体を強化し敵と肉薄して戦う類のものだが、ルイズの場合はその異能力を用いて遠距離から戦うタイプだろう。
そうなると自身の戦い方をそのまま薦めることは出来ない。ルイズにしか出来ない戦い方を考えるべきだ。
まずはレネゲイドの制御から教える。
これは隼人が得意な分野だ。というのも、自分のDロイスが生還者であるというのが理由なのだが。
更に彼が乗り越えた過去、ダインスレイフを制御しているという点から見ても、隼人のレネゲイドの制御は高等な技術とも言える。
兎に角その点を教えていけば、
「何とかなる、か」
と、呟いたところで威勢良く学院長室の扉が開いた。
遅かったじゃないかルイズ、と声をかけようとした隼人は、視線の先でキラリと光る頭を見た。
悲しいかなルイズの毛髪はそこまで磨耗していない。年甲斐もなく息を切らし、嬉しそうに笑う彼の名前はコルベールと言った。
「新しい資料を持ってきましたぞ!」
そういえばもう昼食時だというに、まだ何も口にしていないという事実を隼人はやっと思い出した。朝食すら食べずにいたのは、失策だった。
ちらりとオスマンを見れば、彼の表情にもまた呆れが浮かんでいる。
微妙にしらけた空気の中、コルベールは嬉々として両手一杯に抱えた資料を机の上に載せた。少々洒落にならない重量に机が揺れる。隼人も揺れた。主に涙腺が。
「さぁ! やりましょう!」
コルベールは資料をめくる。その表情に疲れはない。好奇心と責任感の入り混じった、正に暴走寸前のものであった。
隼人とオスマンは、どちらともなく同時にため息をついた。
(ルイズ、さっさときてくれ……頼むから)
心の中で涙を流しながら隼人は祈った。この世界に神はいるのか。神と等しいとなれば始祖ブリミルがいたか、と思いなおす。
そう、始祖ブリミル。これもよくわからない。
虚無の魔法使い。四人の使い魔を従えた最強のメイジ。
もし虚無がオーヴァードとしての力を指し、メイジの魔法体系で再現できない力を持っていたとしたら――その段階からこの世界にはレネゲイドウィルスが存在していたことになる。
もし炎や氷の魔法であるならサラマンダーの能力がある。それと間違えることもあるだろう。
風もハヌマーンが存在する。土は――やはりモルフェウスというべきだろうか。雷の魔法もブラックドック。癒しの魔法ならばソラリスと無駄はない。
更に一般人でもやけに頭の回転が早い人がいたら、それはノイマンだという可能性もなくはない。
(――そう。可能性としてこの世界にオーヴァードがいたとしたら、その能力の持ち主が多く、そしてメイジと名乗っていた、というのもありえなくはない、はずだ)
ならば虚無は――それ以外の能力を指すのではないか。例えばルイズのバロールやエンジェルハイロゥといった、既存の四種魔法にそぐわない力を。
エンジェルハイロゥ、バロール、キュマイラ、エグザイル、ブラム=ストーカー、オルクス……例えばこれのみの力しかもたないオーヴァードがこの世界にいたとしたら、それは虚無と呼べるのか。
しかしキュマイラとエグザイルは除外してもいいかもしれない。ブラム=ストーカーも吸血鬼として扱われる。オルクスも単体としてみると、炎、氷と魔法に当てることが出来る。
(となれば、虚無ってのは――光を操るエンジェルハイロゥ、そして重力を操るバロール)
ルイズは虚無だという。いや、確定ではないのだが、隼人自身がガンダールヴと呼ばれるのなら、やはりルイズは虚無なのだろう。そしてシンドロームも既存の魔法にあわないものだ。
疑問は頭に戻る。ブリミルはオーヴァードだったのか――?
そしてオーヴァードだったのならば、もしかしたら既にUGNやFHのような組織が出来ているのではないか?
そうは思うものの、オスマンの口ぶりからするとそういった部隊は存在しないという。以外にも事情通であるオスマンが知らないというのなら、それは事実だろう。
彼が知らない、としたらお手上げだ。しかしそれならば自分に接触してくる可能性もある。というのもフーケの件で大分無茶をしたからなのだが。
(……けど変な話だよな。そんな組織があるなら、なんでデルフリンガーに手を出さなかったんだ。EXレネゲイドであるデルフリンガーの存在を……まぁ俺も途中まで気づかなかったけどよ)
半ば現実逃避に似た心持で思考を這わせる隼人は、机の資料を見ないようにと窓の外へと視線をやった。
そして、
「………………うぇあ?」
丁度窓の外にて浮遊するルイズを見て、綺麗さっぱり頭の中の考えが吹き飛んでしまった。
・ ・
――凄い! 凄いわ! 私今、空を飛んでいる!
それだけなら感動も小さかったかもしれない。しかし今ルイズは何にも乗らず、何の道具も使わずに空を飛んでいたのだ。自分の力、それのみで。
速度はそこまで出ていない。しかしルイズは飛べたことにただ感動していた。
背中から光の粒子を集めた翼を広げ、体を押し付けようとする光の粒を押しのけてルイズは空を飛ぶ。
空を、飛翔する。
それだけでルイズは舞い上がってしまうほどに嬉しかった。頬は高潮し胸は高鳴る。風を切るその様が、マントがはためく音が、全てがルイズを刺激する。
確かにこの力は魔法ではないだろう。だが、それでもルイズが手にした、自分だけの力なのだ。
言いふらしたい。もうゼロじゃないのだと、大声で叫びたい。それを自制する程度の理性が、ルイズにはまだあった。
だが、空を飛び回るという欲求を抑えるほどのものは残っていなかったのだ。
背中にある翼はあの時出たものよりも小さい。恐らく自分がそれほどに制御できていないからだろう、しかし空を飛ぶという事に関しては問題はないようだ。
ふよふよと頼りげなく――それでもしっかりと空を飛べるという事実は、ルイズの中に大きな歓喜を震わせていた。
確かに制御は出来ていないのだろう。自身を大地に落ち着けようとする粒をかきわけるには労力がいるし、翼を羽ばたかせるのにも集中力が必要だ。だが、それが一体どうしたというのだろうか?
空を飛べるのならば、異能を扱えるのならば、その程度の労力などあってないに等しい。
隼人は能力を使うなと言った。
ふざけるな、と今のルイズなら言うだろう。危険など、何処にあるというのか。私はきちんと力を使えているではないか!
「全く、使い魔の分際で……」
ふんっ、と頬を紅潮させながらルイズは鼻息を荒く吐いた。心配してくれてるのはわかる。だが、多少は信用してくれてもいいのではないか。
もう、あの時のような失態はしない――ミス・ロングビル、いや、フーケと呼ぶべきだろう。彼女を殺しかけてしまったような失態などは――
「……うっ」
その光景を思い出してルイズは少しだけ青ざめた。
力を使ったことによる高揚で忘れていた感覚がルイズの中に蘇った。それと同時に体の中に何かがざわざわと蠢きだす。
彼女は知る由もないが、それこそがレネゲイドウィルスのざわめきであり、衝動だった。フーケとの一件を思い出したルイズの中に刻まれた傷は浅くはない。
覚醒のきっかけとなる事件というのは、そう簡単に割り切れるものではないのだ。
「――そう、あんな事、あっちゃいけないんだから」
だから、早く制御できるようにならないと。
その上で空を飛ぶというのは、きっと練習になるはずだ、うん、そうだ。そうに違いない。
ルイズは自分にそう言い聞かせ、更に光の翼を広げようと――
「何やってんだこの馬鹿主人ーー!!」
したところで聞きなれた男の声を聞き、ぐらりとバランスを崩してしまった。
「あっ! あっ!」
「ちょ、ば、馬鹿! 何でこれくらいで制御ばらつくんだよ!」
「煩いわね! いきなり話しかけるんじゃないわよってああああああ落ちる落ちる落ちちゃうーー!」
「ギャー! 翼消えてる! 消えかかってる! もっと落ち着け! 精神を集中させて――」
「ねぇハヤト、私ここから落ちたら、死んじゃうかしら」
「かもな」
「――」
ハヤトの存外に冷静な言葉を聞いて、ルイズはふっと意識を飛ばしかけた。
調子に乗って高いところを飛んでいたのだ。地面に落ちたらそれこそただでは済まない。
地面に落ちた自分を想像して――
「だーー! ルイズーーーー!」
そのままルイズは意識を手放した。
最後に誰かに抱えられたような気もしたが、とりあえず無事である事を祈りつつルイズの体は地面に落下していったのであった。
以上です。失礼しました。
大分遅れましたが遅々としつつ進行してみたり。
恒例ですが、次はもっとはやk(ry
お疲れ様ですー
何度注意してもうっかり使っちゃいそうで怖いなぁ、ルイズは
投下乙です
最近このスレ知って、
>>1のまとめwikiとか眺めてたんだけど、
何かエターナる作品多くね?
煮詰まっているのか、もう投げ出してしまったのか。
「大使い魔」ってキカイダーが混じってないかい?
>>674 DX0キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
お待ちしておりました、投下乙です!
やっぱりヒトっていうのは未知の力に多かれ少なかれ惹かれてしまうものなんですねえ。
ルイズ、暴走なんかしなければいいけど……。
そういえば、これは避難所でするべき話題かもしれないけど、ルイズの持ってるロイスってどんなのがあるんだろう?ちょっと気になった。
お疲れ様です。
ところで、自分もダブルクロスのPC召喚(アライブの面子)考えてて、
虚無相当のシンドロームも考えてたんだけど、
「水刃」(水属性)「大地の牙」「破砕の顎」(地属性)のエフェクトがあるから、
オルクスは虚無じゃないんじゃない?
まあ、このエフェクトを持ってなければ話は別だけど。
下手に使えばジャーム化……なんていっても、ルイズにゃ分からないんでしょうね。
そう言う常識とか、理解する基盤が無いから。
ジャームなんて言うから、一瞬オレンジ色のジャム召喚かと思ったじゃないかw
ジャームにしろなんにしろ、現物見なきゃ何が恐ろしいのか分からないもんだろう。
とまれ、お久しぶりでし!お待ちしております。
684 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/07(月) 23:30:34 ID:/PJDxsFX
範馬刃牙を召喚!
・・・ガンタールヴで裕次郎よりも強くなったりして駄目か・・・
>>684 むしろ、名を憚られし使い魔の正体が裕次郎。
石原裕次郎とな?
いいえ、カナン様です
そういえば、ダブルクロスの各シンドロームって解説されたことあるっけ?
>>689 時々覗いてるだけで住人ではないからよく知らないが今のスレタイのことか?
予約なかったら小ネタ投下してもいいですか?
いつものパクリなら不要
695 :
ゴムと虚無:2008/04/08(火) 00:16:33 ID:w+1gZJJT
現在、トリステイン・ゲルマニア連合軍は、アルビオン軍と戦争をしている。
勝利を続けていたトリステイン・ゲルマニア連合軍であったが、ただ今アルビオンの策略により敗走中である。
トリステイン・ゲルマニア連合軍は全力で全軍撤退中で、アルビオンの方は7万もの軍隊を率いて連合軍を追撃しているのだ。
そして今、追撃中の7万の軍隊を率いる歴戦の将軍、ホーキンスは、少し眉をひそめていた。
たった今、単騎でこの7万の軍隊に立ち向かっている者がいる、との報告があった。
時間稼ぎのつもりだろうが、1人で何ができるというのだろう、ホーキンスは最初はそう思っていた。
しかし3分後、次の部下の報告により、ホーキンスは驚愕した。
「将軍! 報告します!!」
「なんだ」
「目算ですが、400くらいかと」
「? 何の話だ」
「被害状況であります」
「なんだと!? そんなバカな事が!!!」
―――たった3分で、400の被害だと!? そんなことがあってたまるか!!!
しかし、そんなホーキンスの思いを次の報告が見事にブチ破る。
「な、何!?………す、すみません。訂正します」
「当たり前だ! 報告は正確にはっきりと言え!!」
「5……500以上だと」
今度はホーキンスが立ち上がった。
もはや報告をいくら疑っても無意味だ。 自分の目で見えたのだ。次々と倒れていく自軍の兵士達を。
今、被害は風の様な速度で広がっている。 それに比例して、軍も混乱していく。
「ものすごい敵です!! 弓も槍も魔法も全くかすりもしません!!!」
「不思議な技を使います!! 奴は怪物です!!!」
「たった今、被害状況は1000を超えたとの報告が入りました!!!!」
軍全体がほぼ混乱の極みに陥っており、進軍は完全に停止した。
ホーキンスは大量の冷や汗をかいていた。
―――わずかこれだけの時間で、ここまでするとは……! 一体何者なんだ……!?
過去に数多の戦いを経験したホーキンスも、こんなことは初めてだ。圧倒的な物量の差を物ともしない未知の敵に恐怖すら抱いた。
それでも、歴戦の戦士は必死に冷静を保った。
その時、兵の塊から1人の少年が飛び出した。 ホーキンスは思わずそれを目に捕らえた。
黒い髪に赤いそでなしの服、青いズボン、頬に傷のあるあまり見ない顔立ち、そして麦わら帽子。
ホーキンスはそれを視認し、杖を抜こうとして、
「”ゴムゴムの銃”!!!」
拳を顔面にまともにくらい、昏倒した。
696 :
ゴムと虚無:2008/04/08(火) 00:17:03 ID:w+1gZJJT
「うっし! 次々!! しっかし数が多いなァ〜〜〜!!」
モンキー・D・ルフィはアルビオン軍と戦っていた。
迫り来る7万もの軍隊をルイズ1人で足止めしろとの命令がきた時、ルフィはルイズの言葉を全く聞かずに、猛スピードで7万のアルビオン軍に突撃していった。
7万と聞いていたが、ルフィのいた”偉大なる航路”にいる海兵や海賊、政府の役人に海王類とかに比べると、身体能力や戦闘力が明らかに低いのだ。
魔法が使えることをいれても埋まらない程の差だ。(軍ではメイジの数は基本的に少ない)
しかも実際、魔法はかわすことも防ぐ事もできた、というよりも容易だった。 喰らっても大したダメージにはならなかったし。
さらに、この戦いはエニエス・ロビーとは違い、余計な障害物がほとんどない。 思いっきりやれる上、なぜか段々相手の兵士の足並みが揃わなくなっている。
しかしルフィはあまり考えなかった。
(ま、こいつらみんなブッ飛ばせばいいんだろ)
ルフィの行動目的はそれのみだった。 アルビオン軍の足止めなど、最初から頭にないのだ(ルフィは殿の意味をまったく知らない)。
「”ゴムゴムの銃乱打”!!!」
数十人――
「”ゴムゴムのムチ”!!!」
また数十人――
「”ゴムゴムの鎌”!!!」
また数十人――
「”ゴムゴムの暴風雨”!!!!」
また数百人――
次々とアルビオン軍を薙ぎ倒していく。
その頃、数リーグ離れた小高い丘の上で、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは1人でたたずんでいた。
春の使い魔召喚の時に、ルフィを呼び出してからずっと自分は振り回されっぱなしで、自分の言う事を全く聞かないのだ。
しかし、その戦闘力は常識を遥かに上回るものだった。
ギーシュのワルキューレ7体を一瞬で殴り飛ばした。
フーケのゴーレムを”ゴムゴムの斧”一発でコナゴナにした。
「閃光」のワルドを”ゴムゴムの回転弾”で一撃でブッ飛ばした。
レコンキスタの空飛ぶ艦隊は”ギア3”で巨大化して、一隻起残らず叩き落した。
最初はただの平民の少年だと思っていたが、どんな凄腕のメイジも全く歯が立たない強さをもった戦士だったのだ。
ルフィは、自分や学院のみんな、そしてアンリエッタまでも「仲間」と呼ぶ。
ルイズは初め「ご主人様」と」呼ばせようと努力したが、やめた。
フーケのゴーレムやワルドに殺されそうになった時、色々なピンチに陥った時、ルフィはいつもルイズを背にして、こう言うのだ。
『おれの仲間に手ェ出すな!!』
聞く度にいつも体中が熱くなる。
ルイズが受けた命令をルフィが知った途端、ルフィは自分の言葉を全く聞かず、
「あいつら全部ぶっ飛ばしたら、死ぬほどメシを食わせろ」
それだけを言い残してアルビオン軍に突撃していった。
今やルイズはルフィに対して全幅の信頼を寄せている。 現に7万の軍隊を物ともせずに撃退している。
「バカ……たっくさん食べさせてあげるから、早く帰ってきなさいよ……。 怪我でもしたら許さないんだから………」
697 :
ゴムと虚無:2008/04/08(火) 00:17:33 ID:w+1gZJJT
数時間後―――
「いやーーハラへった。 ルイズ、メシまだか?」
けろっとした様子でルフィは戻ってきた。 とてもさっきまで7万もの軍隊と戦っていたとは思えない様な口調で。
アルビオン軍はほぼ壊滅しており、白旗まで上がっていた。 兵のほとんどがぶっ倒れている。
一方ルフィはほとんど大した傷も見受けられず、いつも見せる底抜けの明るい笑顔だった。 この男の体力は無尽蔵なのか。
「バカ!! 何勝手に突っ込んでいってんのよ!! ……し、心配したんだからっ!!!」
「ははっいやー悪い悪い。 ところでメシはどこだ?」
「帰ってからに決まってるでしょ!! さぁ早く行くわよ!!」
「そっか。 じゃ、いくか!」
そう言ってルフィはルイズをひょいっと持ち上げた。 ルイズは思わず真っ赤になる。
「ちょ……!! ななな何すんのよルフィ!! 馬があるんだからそっちでいけばいいじゃない!!」
「こっちの方がはえぇ。 しっかりつかまってろよ!」
「そ、そんなこと言うんだったら!……もっと、優しく抱きなさいよ」
猛スピードで走るルフィにルイズはぎゅっとしがみついた。
その後、アンリエッタから何度も爵位や勲章を授与されたがルフィは全て断り、代わりに腹一杯メシを食わせてもらう様に言った。
ルイズは少し残念そうな表情をしていたが。
「……貴族になれば、お父様も認めてくれるかもしれなかったのに……」
「ん? なんか言ったか? ルイズ」
「!! な! ななななな何でもないわよ! べべべ別に変なことなんか考えてないんだから! 妙な勘違いしないでよね!!」
「??? まぁいっか」
追記
ルフィの左手にはガンダールヴのルーンが刻まれていることが判明したが、本人曰く武器を使うより素手の方が戦いやすいそうだ。
デルフ「オレの登場フラグは!?」
ONE PIECEよりモンキー・D・ルフィ召喚
虚無虚無の支援!
699 :
ゴムと虚無:2008/04/08(火) 00:18:28 ID:w+1gZJJT
以上です。
もっと長く書きたかったなぁ……
おつっす
ブルック呼ばれんかなぁ、まだ技とか性格とかわかりきってないから無理か
水場があまり出ないから悪魔の実能力者でも結構活躍できそうだなぁ。
個人的にはチョッパーとか見てみたい。
ウソップならパワーバランス的にいいかもしれない
魔法もダイアルで吸収できそうだし。
ゾロが呼ばれたらデルフが生きてくるな
またなんか一本刀折っちゃったとかで
はっちゃん呼べば6刀流のうちの一本に使ってくれるかもしれないぞ
最近の話でちょっと強くなってるかも知れないし
はっはっは、
ボンテージなサーペントを召喚しようとしたが、
ブレーキ役が居ないから断念したw
駄目だこいつら
>>684 彼は武器を使わな…
ロシアの人にバケツを使ったな…
でも烈海王呼んで ダブルツンデレをやった方が面白そうだ。
性格も良いし料理も出来るぞ烈海王!
>>706 >烈海王
過去スレで既出だが、ウェールズ王子を治療して、
「復活!ウェールズ・テューダー復活!」
連呼とか。
武器も使えるしな>ツンデレ海王
最近足食われたけど召喚された時に自動回復させてもいいし
砂糖水飲んだら新しい足生えてくるよ
>>709 すごいね人体(はぁと
で説明OKだなw
彼とルイズならどういう時にデレるんだろう
Aチーム召喚
ウェールズをぶん殴ってでも連れて行くコング
ふと思ったんだが、テニスの王子様のラケットとボール
あれって武器だよな
いや、テニプリキャラが召喚されたとして、ラケットやボールもったらガンダールヴのルーンが反応しそうw
いっそのこと海原雄山も召喚してトリプルツンデレにしたらどうだ。
714 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 01:28:04 ID:iBv6dwUx
>>611 遅スレですが・・・
全年齢……… エドワード・ミト王子召喚とか?
とあるので、「宇宙海賊ミトの大冒険」キャプテン・ミト(光国美都)を召喚!
もちろんメイルスーツ(着ぐるみ)付でw
見た目は小学生で宇宙海賊で一児の母wで女王様(元)
あまりの濃さにルイズ涙目^^
>>710 ルイズがインタビューにし来た女をその場でレイプしたら
その野生にひきつけられて夜這いに来るよ
で、ぐるぐるパンチして足食われるよ
>>711 まぁその前に、
「でも飛行機だけはカンベンな」
なコングをアルビオンに連れて行くのに一苦労なわけだが。
なんかの怪獣の卵を召喚
たとえばウルトラマン80からバルの卵を召喚
そして孵化したバルを食べにザギラ登場
ゴム虚無氏、投下乙。
なんか古き良きワンピースって感じがしてよかったな。
それにしても、ゼロ魔原作のタイトルも無駄がなくて秀逸だけど、クロス作品のタイトルも輪をかけて秀逸なのが多いよね。
>>703 そこは「野原流@クレしん」のごとく尻にデルフで四刀流にw
>>712 お前部長呼び出したらどんな天災を呼び起こすことかwww
それはそうとルイズの望み通りのドラゴンが呼び出されるSSって案外無いよな・・・まあ展開させにくいのもあるのだろうけれども
ペガッサ星人をアンリエッタが召喚すてペガッサ・シティとの衝突コースにあるアルビオンの軌道変更を要請するのは…
722 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 01:52:46 ID:9MC79NDk
バキキャラで武器使うのは・・・・・
結構いたわ、五大死刑囚は全員使ってるし。
ビジュアル的に良さげなのはドイルか?
個人的にはゲバルとドイルが見たいと思た。
>>722 バキキャラで剣士といえば…本部じゃないか!
sageんの忘れた・・・・orz
いや、ぺガッサシティって実際星くらいのサイズだとおもうからアルビオンの危機
よりハルケギニアの危機を心配したほうが・・・・
テファがギマイラを召喚してアルビオンの人間が全員テファの言うこときくようになる
アルビオンの霧(雲)→ギマイラの出す霧
>>688 賢者の選択のカナン王?
勘違いならスマン。
>>725 マーゴドン召喚
「あっ!フレイムもシルフィードも氷になった!」
>>720 モンハンのティガレックスを召喚する話は面白かったな
ルイズが「力こそパワー!」な方向に染まっちゃってるしw
>>708 そこは凶器になる金属製の義足で常時ガンダ発動。
ティガレックスだもんな〜。
ラージャンとかだったらもっとすごいことになりそうだが。
>>720 竜使いならいけるんじゃない
たとえば、なのはStSのキャロとか
>>730 未完のまま投げ出す事
確かツクールスレ擁護だった気がするが…
ルイズ、ゼットン召喚
敵が出た時に戦わせたいが、戦わせると1兆度の火球→ハルケギニア滅亡
なので、最強なのにいつも非戦闘員
>>732 最近ジョジョのホワイトスネイクみたいな黒化したルイズを見たいというのは内緒だw
>>735 竜使いならなんとか広げられそうだな。まあ暇と内容考えられたら銀レウスでも召喚させて暴れさせるかwww
>>728 君とは同じスレの住人のような気がしてならない。
もし同じスレの住人なら向こうでもよろしくな。
>>705 基本的な魔術使えなかったりするのに高等魔術をあっさり習得した人?
なんか偏在使って高笑いしながら爆走してるシーンが浮かぶのだが
>>740 多分同じスレw
まあこれ以上は該当スレで。
投下してもよかんべか。予約とかナイヨネ?
744 :
窓の外へ:2008/04/08(火) 03:27:02 ID:gKdnaJi1
まあこんな時間に予約なんぞあるわけないか。人いないしw
では投下。
コルベールには心配事がふたつあった。
ひとつはルイズのことである。医務室から彼女の使い魔を運び出すとき、彼女は謝罪の口にしたように聞こえた。聞き逃しかねないほどの小さな声であったが、間違いは無いはずだ。
では、彼女は何に対して謝ったのか。まず間違いなく彼女の使い魔に関することだろう。というか、状況的に見てそれ以外に考えられない。
使い魔本人に謝ったのか。何故?強制的に呼び出したことへの謝罪か?いや、いや。それはない筈だ。あの召喚の呪文には強制的に何かを引きずり込む効果なぞ無い。あくまでも呼びかけ、促すだけだ。
では自分のような存在が呼び出してしまったことへの謝罪か?いや、彼女は自分をそこまで卑下するような人間ではない、と思う。では……
やはり、答えは出ない。ともかく、彼女はあの亜人に何かしらの負い目を感じているようだ。それが何かはわからないし、それを本人に直接聞くほど無礼な人間でも無いコルベールは、しばらくの間この疑問を放置することに決めた。
もうひとつは、あの亜人に刻まれたルーンのことである。ルイズの部屋に例の亜人を運んでいるとき、そのルーンがちらりと、コルベールの目に入った。
しかしそのルーンは彼の教師生活の中で、一度も目にした事が無いものだったのだ。
使い魔が特殊な存在ゆえに特殊なルーンが刻まれたのだとしたら。そしてそのルーンが記録も残っていないほどに珍しいものであったなら。ルイズの魔法特性の判別にも支障をきたしてしまうかも知れない。
いや、逆に考えるんだコルベール。珍しいルーンであればあるほどその特性も限定されると、そう考えるんだ。
そうだ。それに、この学院の蔵書。凄まじい量を誇るそれを隅から隅まで調べればいくら珍しいルーンであっても、その情報が載っていないということなどあるはずが無いではないか。
そう考えると彼の気分はいくらか軽くなった。未だ彼女の謝罪の言葉が引っかかってはいたが、すぐにどうにかなるような問題でもないだろう。さて、まずは。
「ルーンの方を調べるとしますか…」
ぽつりと呟き、歩き出した。
745 :
窓の外へ:2008/04/08(火) 03:27:38 ID:gKdnaJi1
ルイズの学友である少女、キュルケはふたつの不満を抱えていた。
ひとつは、良い男がこの学園に居ないということ。生徒は揃いも揃ってロクでもない。多少はマシな者もいるにはいるが、恋の微熱を燃え上がらせるまでには至らない程度である。
ならば教師はどうかというと、陰険自慢中毒者、冴えない中年禿等等とこれまた選択肢に間違っても入りそうに無い者ばかり。こればっかりは運というものであるので、こちらは自身の運の無さに心中で呪詛の言葉を吐きつつ我慢する。
もうひとつは、上記の不満からくるストレスの解消相手であるルイズのことである。
古くからのライバル――というか、恋敵――の家系である相手が『ゼロ』では張り合いが無いので発破をかける意味合いも兼ねてキュルケは常々ルイズをからかっているのだが、そのルイズの反応が著しく悪いのだ。使い魔召喚の儀式の翌日から。
一体どうしたというのだろうか。以前は年端も行かぬ子供のように顔を真っ赤にし、地団太を踏んで自分を楽しませてくれたというのに。
召喚と契約には成功したはずだ。これは監督役の教師に聞いたのだから間違いない。
では召喚されたのがあまりにも期待外れなものだったからだろうか?いや、それはどうだろう。『ゼロ』である彼女にとって、召喚と契約の成功とは即ち始めての魔法の成功を意味する。
であれば、召喚された存在が多少期待外れなものであったからといって、からかいに反応しなくなるなどといった劇的な変化は起きるはずが無い。
では使い魔から何らかの影響を受けたのだろうか。…可能性は低い。
使い魔は主に似る。というよりは、主に似た存在が呼び出される。『この主と似た存在』というのは属性などの外面は勿論、内面も該当する。よって使い魔の影響で性格が変わったりするということはまずないであろう。
「あぁもう、スッキリしないわね…」
答えの出ない問い。忌々しげに呟く。おかげでお肌の調子も悪い。化粧のノリが良くない。何もかもがルイズの所為に思えてくる。
いや、待てよ。はたと。答えが出ないのならば。
「…本人に聞けばイイじゃない」
勿論からかいつつ。反応するかどうかはわからないが、使い魔自慢などはどうだろう?…ふさわしかろう。
うん。と、ひとつ頷き、己の使い魔を伴ってルイズの部屋を目指すのだった。
いるぜよ 支援
何か書き込めんwwwなんぞこれww
748 :
窓の外へ:2008/04/08(火) 03:32:25 ID:gKdnaJi1
コンコン、と。軽いノックの音に、豪奢なベッドに寝かせられた使い魔を撫でる手を止め、ルイズは顔を上げる。
誰であろうか、と。疑問に思う間も無く、豪快に扉が蹂躙される。そのことに顔を顰め、次いで入ってきた人物の姿を認め、苦笑し、
「部屋の主の許可無しに扉を開けるのはマナー違反じゃないかしら?」
「細かいこと気にしないの。それより、あなたの使い魔ってそれよね?」
キュルケが問うた。瞬間。
ルイズの顔が劇的に変化する。苦笑から憤怒へと。疑問に思ったキュルケがそのことを口に出すよりも早く、ルイズは腰に下げてあった杖を引き抜き、次いで突きつける。
呆気にとられているキュルケにルイズはひどく冷たい声で先の発言の訂正を要求する。ルイズの、威力だけは無駄にある失敗魔法の恐ろしさを知っているキュルケは、心中冷や汗をかきつつ問う。ナニを訂正すれば良いのか全く見当も付かなかったのだ。
「このコを『それ』呼ばわりしたことよ」
と。
慈しむ目で使い魔を見やり、その顔をひと撫でしつつ応えるルイズを見、キュルケは納得した。
つまるところこれはアレだ。ルイズは使い魔にすっかり参っちゃっているのだと。到底自分には理解のできないことではあるが。
750 :
窓の外へ:2008/04/08(火) 03:34:05 ID:gKdnaJi1
発言の訂正を受け、元の表情へと戻ったルイズに、ここ最近の行動を聞く。
なんでも、その、眠り続けている使い魔は、ルイズが離れるとひどくうなされるらしい。そのため寝るのも同じベッド。授業はサボり。勉強は専ら自習。食事もメイドに頼んでこの部屋に運ばせて。部屋を出るのはトイレや外せない用事のときだけという有様である。
道理で授業で見かけないワケだ、とキュルケは心中で呟く。アホらし、とも。使い魔が心配なのはわかりが、いくらなんでもやりすぎではないかと思う。
しかし、まあ自分が口を出すようなことでもなかろうと。そう考え、また部屋を訪れた当初の疑問も晴れたため、挨拶を適当に済ませ部屋を辞す。
なんというか。
「生まれたての子猫を守る母猫みたいなのよねー」
そうひとりごち、一足先に擬似母となった同級生を、もう今までのようにからかえないことに一抹の寂しさを覚えつつ、自らの部屋に戻ったのであった。
「あ。使い魔自慢するの忘れてた…」
「キュル…」
ルイズのショッキングな変化にのまれて、すっかり存在を忘れ去られていたフレイムが、悲しげにひとつ鳴いた。
>>749 把握。テンプレ読んだと思ったら見逃してた。
で、終了。
乙であります。
で、無知なわたくしに元ネタをご教授くださいませw
>>752 七夕の国 という漫画が元ネタであります。サー!
さっきまとめの方にwikiのURL張っておきましたのでそちらを参照plz
あと一応ネタバレ含むあらすじをwikiに書いておく予定であります。
754 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 04:29:44 ID:iBv6dwUx
おかえり七夕、また来てカササギ。 乙ですぅ〜^^
お前ら新参のしえでこのスレは腐ったんだ。最低でも半年このスレにいなかった奴は今すぐ消えろ。少なくとももう書き込むな。
460 :名無しさん:2008/04/07(月) 22:00:10 ID:hGzqnHRw
腐女子の意味じゃなくって、スレから死体のような腐臭がするってことなんでしょう
今のスレは動いているだけのゾンビ状態だと
464 :名無しさん:2008/04/07(月) 22:54:16 ID:6cFuN2mo
まあ、春と夏に臭うのは仕方あるまい
暇人が増えることによる運命だとでも思うしかないんじゃね?
466 :名無しさん:2008/04/07(月) 23:31:30 ID:sQbwj0sk
>>464 正直夏が住人の民度とかが一番よかったと思うんだが
まあ立ったばかりだから当たり前かもしれないけど
今の本スレは植物状態の人間を無理矢理頑丈な針金で吊り上げて舞台の上で動かしてるようなものだから
いい加減眠らせてあげたほうがいい気がする
468 :名無しさん:2008/04/07(月) 23:40:53 ID:ZrqoM9XM
>>466 >今の本スレは植物状態の人間を無理矢理頑丈な針金で吊り上げて舞台の上で動かしてるようなものだから
本スレの事をそう言っていられるのも今のうちかもしれんな…
避難所にも、徐々にその傾向が(汗
雑談がちょっと進んでるな、と思ってみてみれば、春到来も近いかもしれんと思ったよ。
471 :名無しさん:2008/04/08(火) 00:31:30 ID:mgv3JICI
今本スレに投下された小ネタ、正直これは無いだろと思った。
つーか、扱うキャラの根幹(この場合、海賊王を目指す事)をぶっ壊してると言うか碌に触れないままスルーなんてのは
二次創作としてある意味一番やっちゃならない改変だろうに。
472 :名無しさん:2008/04/08(火) 00:33:19 ID:yYkS3a/A
海洋冒険だからこそ”水”が弱点ってのが代償として意味を持つんだがなあw
473 :名無しさん:2008/04/08(火) 00:50:14 ID:sJNCTOeM
まあ、月曜で厨どもの春休みは終わったから、これからは良くなっていくよ。たぶん・・・
474 :名無しさん:2008/04/08(火) 01:34:17 ID:gDBVVJUY
タイトルはまぁ、正直良い意味で吹いたんだが、それだけだったな。
475 :名無しさん:2008/04/08(火) 01:41:28 ID:deJX6BDE
また面白くも無い7万小ネタか、と。
757 :
:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 08:15:57 ID:+TUQSFdj
>お前ら新参のしえで
しえで・・・・・ プッ
最近カレーばっか食ってるわ。
>>737 さぁ、まとめサイトを検索する作業に戻るんだ。
しえで……しえ……シエ!
北斗の拳のシエ様召喚ってのはどうだガニ?
しえで で、もうなに言ってもダメだろw
しえでのしえで説得力ナスw
なんと言う誤字釣り
⊂ヽ
(゚∀゚ )ノ しえー
| ⊃|
| |
⊂ノ
∪
おそ松くんが始まるザンス!まで読んだ。
>>766 「さあ、始まるザマスよ!」
「いくでガンス!」
「ふんがー」
「まともに始めなさいよ!」
と連想して怪物王女から姫とヒロ召喚しようと思い至った
DS用ゲームLUX−PAINより主人公の西条アツキを召喚。
肉体的な能力は一般人とさして変わらないが、相手が動揺した瞬間に精神攻撃が可能。
……いや、タバサママの心の治療に使えるかな、なんて思っただけですけどね。
>>768 なんとなくマインドアサシンを思い出した俺はおっさんw
ルーンはヴィンかな?
マルコメ以外の誤字をするやつって何なの?
マルコメの誤字だけ許すってなんなの?
何度か話にあがるものの、物語を成立させるのが難しそうな
「スレイヤーズからリナ=インバース召喚」
なら発想を変えて他の神坂作品キャラならどうなるだろう。
既出の話題かも知れないが。
サーペントのナーガを召喚、変質者扱いされるわけですね?
ナ−ガの召喚読みたいな。
召喚じゃなくてもいつの間にか迷いこんでたとかw
>>755 「やめてほしいと思っても、痛みはつづく」まで読んだ
コピーナーガが(格好は元ナーガのままで)召喚されて変質者扱いされてマジ泣きする、というのを幻視した。
コピーの方はセンスまともだったよな?
>>776 まともなコピーナーガ&コピーリナと、「あのまんま」なクローンナーガ(しかも量産されてる)
の二種類が存在します
>>767 その連想だったら最後は「うるさーい!」だろw
>>776 シャドウリフレクター製のコピーナーガは貞淑で知的。
ディオル爺さんの作ったのは動物的っていうか自我が薄かった気がする。
しかし、あの世界ナーガのコピーが10体くらいいるんだよな
原作後っていう設定(アニメ化前の古い作品なので矛盾はあるが)のSFC版ではリナのコピーも数体はいるみたいだし、恐ろしいw
うわ、「あのまんま」なクローンも存在してたのか…。本編終了してからすぺしゃる読んでないからなぁ…
それはともかく、まともな方のコピーナーガが召喚されたら…
「ああもう、何で人間なんか召喚されるのよ!ドラゴンとかマンティコアとかの方が良かったのに!」
「あ、じゃあ召喚しましょうか?」
「……は?」
「いえ、ですからドラゴン。召喚できますよ?魔王竜でいいですか?」
で、うっかり制御に失敗大惨事、という光景が浮かんできた。
ナーガは常識ないのに一流の技能をいくつも持ってるんだよなあ…
たとえばメイドとか
そういやナーガって王女だったよな
アンアンは同じ王女にも関わらず好き勝手やってるナーガを見て何を思うだろうかw
ゲーム盤のスレイヤーズは、自動行動にするとアレだったなあ。
リナが味方のナーガに攻撃かましたときはポカンとなった
あの人はギャグ要員なのに狂ったスキル持ってるからなあ…学習能力も(その気になれば)かなり高い筈だし
っ【ショゴスロード召喚】
俺の頭はCthulhuにやられているらしい…古の者かもしれんが
召喚した瞬間からSANチェック連打とか半端ねーよw
>>783 作中で自分より才能あるんじゃないかってリナに思わせるくらいだからな。
>>784 某二次創作で「天は彼女に二物を与えたが、その全てが無駄になるようにした」
って表現があったんだが、まんまナーガにも当てはまるな。
>>781 それっぽいことがそれっぽく示唆されてるだけで本当の所どうなのかは不明
鷹の爪団を召喚。
ルイズがいいツッコミをしてくれそうだ。博士もいるしコルベールも喜びそう
>>786 アレがセイルーンの王女なのは公式設定じゃなかったか
PSのゲーム中のクイズでそのことを知ったときは顎が外れそうになった
>>786 いや、確かどっかのコメントで言っていた気がする
ゼディガルス召喚して水の魔法であっさりキメラ化を直してもらったのはいいが、
戦闘スタイルがすっかり自分の頑丈さに頼りきっていたのでかなりのドジっこになってしまう、というネタなら挫折した
ゼルガディスじゃないんですか?
ゼガルディスだよ
グレイシア・ウル・ナーガ・セイルーンと名乗ったら、まんま貴族だな。
杖を持っていないのが残念だ。
昼日中から投下しようかと思います
予約はないようですし
神聖アルビオン共和国、スカボロー港
ラ・ロシェールはじめ、各国からの船で賑わう港町。桟橋には大小様々な木製の船が停
泊している。浮遊する大陸の移動に合わせ、それぞれの目的地に近付く日に出発する事だ
ろう。
港の中では山賊じみた荷役夫が声を張り上げ、樽やら木箱やらを運んでいる。港の隅で
は旅行者達が船の出発時間を待ちながら談笑している。港に倉庫を構える大商店には、せ
わしなく荷馬車やら行商人やらが出入りしている。店の奥には、大きな秤を前にペンを手
にした人物がいる。商品の重さを量って値段交渉をしているのだろう。
そして港の内外には、沢山の警備兵がいる。港を出る際の荷物への関税で、役人と商人
が一悶着が起こすなんていつものこと。血の気の多い荷役夫達のケンカに、禁制品の取り
調べ、密航にスパイの捜索。港を出入りする船・人・物への監視を続けている。
とは言っても、そこは内戦が10日ほど前に終わったばかりの新興国家。戦勝気分は既
に収まってはいるが、新たな支配階級となった貴族達の利権争いは続いており、その煽り
で軍の指揮系統はいささか混乱している。末端の一般兵士には規律のタガが十分行き渡っ
ていない。
というわけで、夕日と共に堂々と風竜でスカボロー港に降り立ったルイズ達一行は、兵
士達の厳しい取り調べを受けたりはしなかった。身分証明書とアルビオン政府への身元保
全依頼書、そして港湾使用料だの人頭税だのと行った名目と共に、コッソリ多めに手渡し
た新金貨のおかげで。
第十四話 白の国
「いいのかぁ?風竜で来てんだから、港に降り立つ理由は無かったと思うぜ」
そういって鍔をカチカチ鳴らすのは、ヤンの背の荷の上に載せられたデルフリンガー。
持ち主であるヤンは、背中と両手に大荷物を抱え、ヒーヒーいいながら歩いている。
小さな皮のリュックを背負ったルイズが振り返る。
「いいんじゃない?むしろ、下手に密入国なんかして、アルビオン政府の目を盗まなきゃ
ならない方が問題よ」
先頭を立つロングビルが、背中に担いだズタ袋を向けたまま声をかける。
「ま、私達は別に法に触れるような事をしに来たんじゃないんだし。敵情視察と言っても
スパイみたいな大層なモンじゃないし、『虚無』を追う事自体は教会に睨まれる様な事で
もないんだしね」
ヤンは、そうだねぇ…と答えはしたが、かなり小さな声だ。自分の荷物を入れたリュッ
クを背負った上に、ルイズの荷物が詰まったトランクも両手に持たされているのだから。
さすがにこの状況では、彼の脳に向かう血の量が普段より少ないことだろう。
それでも彼の目は、港を出て市街へ続く道を興味深げに観察していた。
内戦が終結し、(恐らくは偽装だろう、とヤン自身が枢機卿に進言したが)トリステイ
ン・ゲルマニアとの不可侵条約も結ばれるというのだ。平和になって再建の土音が響くア
ルビオンには、ハルケギニア全土から行商人・山師・親戚に会いに来た人、何より帰郷す
る難民達などが押し寄せている。
同時に、行方不明になった親族を捜す看板を掲げる人、手足を失い働けなくなり物乞い
に身をやつした元兵士や一般人、内戦終結に伴い仕事にあぶれた傭兵達…そんな明るい顔
をしていない人々ともすれ違う。
ヤンは、背中の荷物が一瞬軽くなったのを感じた。
と同時に、急にロングビルがヤンへ杖を振った。
とたんに荷物の重さが戻ってくる。
「危なかったわね。今、荷物に『念力』かけられてたわ。リュックの口から中身を抜き取
られることもあるから気をつけて」
「へぇ…メイジのスリってわけか」
呟くヤンがチラリと、ロングビルが横目で見ている方を見る。そこには、舌打ちするマ
ントの男が道ばたに立っていた。薄汚れた姿から察するに、内戦で儲け損なったまま職に
あぶれた傭兵のメイジだろう。
リナはまだ何とかなるんじゃね?
ナーガは無理だろうが
と言うか、爆発の煙の中から
ダンボール箱入りナーガ×10……
10秒で挫折したがな(遠目
「ちょっとー、しっかりしなさいよね!ただでさえ、あんたぼんやりしてて狙われやすい
んだからね!」
そんなルイズのゴチュウコクにも、ヤンは「ぅうぅ〜」と呻くくらいしか返事出来ない
有様だ。
代わりに答えたのは、デルフリンガー。
「あのよぉ、いっちゃーなんだけど、娘ッコの荷物が多すぎるせい…とは思わねーか?」
「あーら!これでもかなり減らしたんだからね。ヴァリエール家の者として、必要最小限
の荷物よ」
先頭で聞いているロングビルは、荷物を入れるのにトランク選んでる時点で失格だわ、
と呆れていた。トランクに荷物を入れたら、手が塞がる。重くて腕が疲れる。身体の左右
のバランスも崩れて歩きにくい。とはいえ、旅慣れていない貴族のルイズにそこまで言う
気もなかったが。
「ともかく、スカボローの街に入ったら、すぐに宿をとりましょ。そして情報収集と、小
さめの荷馬車も買うとしましょうか」
荷物の重さに潰されかけのヤンは、コクコクコクとせわしなく頷いた。
なんとか夜更け前にスカボローの街に入った一行は、すぐに宿探しに入った。
ロングビルは「安宿で良いじゃない」と眉をひそめたが、相変わらずルイズは「貴族と
して〜」と主張。ヤンは、「どこでもいいから…」と荷物を早く下ろしたい。デルフリン
ガーにはどこでも同じ。
ルイズもヤンも旅行資金は十分あるので、上の中くらいの宿で落ち着いた。
幸い、内戦終盤には戦闘はニューカッスル城周辺に移動していたし、港湾施設とその周
辺は交易のため最優先で保護・復興されたらしく、街にさしたる戦乱の後はなかった。 スカボローの街は、トリステインと似たような石と煉瓦と木で作られた町並みだ。もち
ろん美術様式とか流行が違うので、少々の差はある。だが言語はなまり程度の差しかなく
人種も同じなため、それ程の差はヤンには感じられなかった。治安も思いの外、悪くない。
宿も問題なく見つけることができた。
宿の名前はザ・グランド・アット・スカボロー・スクゥエア…とかどうとか言う、大層
な名前と豪勢な外観だが、大荷物を抱えたヤンの疲労しきった頭を素通りしてしまった。
ポーターらしき従業員に荷物を押しつけ、案内された部屋に入るや、目の前のベッドの上
に突っ伏してしまう。
二部屋に大きなフカフカのベッドがそれぞれ二つ。床は絨毯で、暖炉やリビングもつい
た、かなり豪華な部屋だ。
「では、ヤンはそっちの部屋で。私とミス・ヴァリエールはこっちの部屋使いますね」
と言ってロングビルはルイズを隣の部屋へ引っ張っていく。
「ちょっと待ってよ。私は寮塔でも、ずっとヤンと同じ部屋だったし」
「あら、ダメですよ。ここは学院ではないので、年頃の淑女が殿方と同じ部屋で寝たりす
ると、あらぬ噂が立ちますわよ」
ルイズはロングビルに隣の部屋へ引っ張って連れて行かれた。ちなみにヤンは、「ぁう
あ〜」と、返事なのか何なのか分からないうめき声で答えた。ヤンの部屋の荷物の上にポ
イッと置かれたままのデルフリンガーは「はぁ…情けねぇ」と呆れ顔だ…顔があるなら、
だが。
「さて、それでは今夜はゆっくり休むとして、明日から本格的に動くとしましょうか」
ルイズはさっそく荷物からクシやらネグリジェやらを取り出す。
ロングビルは二つあるベッドの一つにポスッと座り、ルイズをじっと見つめている。
メガネ越しの鋭い視線に、ルイズもようやく気が付いた。
「…えっと、何か用?」
「ええ、少し話をしませんか?というより、尋ねたい事があるのです」
「?、別にいいけど」
ルイズは、並んで置かれたベッドのもう一方、ロングビルの前にちょこんと座った。
>平和になって再建の土音が響く
その「つち」はハンマーの「鎚」
ロングビルは普段の知的な雰囲気はそのままに、少々鋭い空気を漂わせている。
「あのビダーシャルというエルフの話、どこまで信じてますか?」
「ああ、それね。う〜ん」
ルイズは腕組みして首を傾げる。
「とても信じがたいような話ではあったけど…ヤンの話も、オスマンの恩人のシュトラウ
スって人の手記も、全部一致してるのよね。
ヤンの言う大災厄とか、星の海で暮らしてたとかは、とても想像が付かないけど。少な
くとも虚無と聖地の話は本当と認めるしかないと思うわ」
「エルフの言う事を信じるのですか?『ハルケギニア中の貴族を敵に回しても、エルフだ
けは敵に回すな』と言われるほど、恐るべき宿敵ですが」
ロングビルの視線はルイズを突き刺さんばかりだ。学院での秘書の目というより、フー
ケとしての目だろうか。
その迫力に少々押されつつも、ルイズは言葉を続ける。
「まぁ、私も最初は怖かったんだけど、結構話の分かる連中みたい。確かに先住魔法は恐
ろしいけど、ビダーシャルは本当に戦う気が無かったわね。他のエルフはどうだか知らな
いけどね。とりあえず、聞いてたみたいに凶暴な連中じゃないようだわ。
それに、聖地の話が本当か否かにかかわらず、ハルケギニアの人はエルフの話をちゃん
と聞くべきだと思えてきたのよ。聖地奪還運動とかの戦じゃなくて」
「そうですか…私も同意見です」
フーケの目はそのままに、納得して頷くロングビル。
「それと、虚無の事なんですが…もし『虚無』の魔法が見つかったら、どうします?」
不自然なほど真剣な様子で尋ねてくるロングビルの姿に些かの疑念を抱きつつ、ルイズ
は天井を見上げる。
「う〜ん…『虚無』かぁ〜、見つかればいいけど、見つからないだろうなぁ…」
「ですから、見つかった時です」
ルイズは、更に頭を捻ってウンウン唸る。
「やっぱり〜、誰にも言えないわよね。お城や教会に見つかったら、あたし、どうされる
か分からないもの。
それに、あたし、それほど大きな事は望んでいないわ。そりゃ以前は、ヴァリエールの
名に恥じない、立派なメイジになれたらいいな、て思ってたわ。でも、そこまででなくて
もいいの。とりあえずは、まともな魔法が使えたらいいなって思うだけよ」
「あら、意外とささやかなのですね」
「だって、私の使い魔と来たら…魔法も使えないのに、剣すら振ってないのに、王宮によ
ばれちゃうわ、父さまだって頭を下げちゃうし。魔法が全てじゃないって思い知らされた
わ」
「そうですね。本当にヤンさんって凄い人ですよね」
ルイズの言葉にロングビルも微笑んで同意する。ヤンの名が出たとたん、さっきまでの
鋭い空気が溶けていった事にルイズも気付く。
小さな口の端が、にやぁ〜っと釣り上がってしまう。
「ヤンの事、好きなんでしょ?」
とたんにロングビルの頬が染まり、鋭くルイズに向けられていた視線が横へずれていっ
てしまった。
「…お、大人をからかうものでは、ありませんよ…」
頬を染めつつも否定せず、ルイズはちょっと拍子抜け。
「まーったく、あんなオッサンのどこがいいのかしらねぇ?確かに頭は切れるけど、全然
パッとしないわよ」
「あら!十分素敵ですよ。確かに見た目は…正直、ぼや〜っとしてて、態度はダラダラ、
猫背だし、やる気無いし、顔も別に良くはないし…」
天井を見上げながらヤンの特徴を並べだしたロングビルは、だんだん声が小さくなって
しまう。しまいには、誤魔化すように咳払いをしてしまった。
「ま、まぁ、その、大人の魅力があるという事ですよ」
「ふーん、まぁ、そう言う事にしておこっかなあ〜」
いつも毅然とした年上の秘書が見せる恋する乙女の姿に、ルイズもニヤニヤ笑いが止ま
らない。
「ま、あたしは別に構わないから。ヤンはあたしの奴隷じゃないんだし、幸せになる権利
はあるわよね」
「ええ、そうですよね」
ロングビルは裏表のない素直な笑顔で頷いた。
次の日の朝。珍しく早起きしたヤンは、日の出と共に宿の窓を開け放った。
遙か東の空の彼方にのぼり行く朝日を見て、カクッと頭が下がった。
「よー、珍しいじゃねえか。俺が起こすより早くお目覚めとはよ。おまけに、なにを残念
がってんだ?」
デルフリンガーに、ヤンは恥ずかしげな苦笑い。
「うーん…『イギリスと言えば霧』と期待してたんだけどなぁ。やっぱり産業革命も起き
てない世界じゃ無理があったか。第一ここはロンドンじゃないし」
ロンドンは霧が多いと有名だが、実際には霧ではない。産業革命によって石炭を大量使
用した結果のスモッグ。そしてハルケギニアのアルビオンにあるのはロンディニウム。
「えーっと、そりゃお前さんの国の話か?ワケ分からん」
もちろんハルケギニア産の長剣には何の話か分からない。
「あら、ヤンも起きてたの?随分早いじゃない」
と言って扉から顔を出したのはネグリジェ姿のルイズ。
「んじゃ、早速着替えて街を巡るわよ。時間は無駄にしてらんないからね!」
といってポイッと手渡されたのは魔法学院の制服に下着類。
「はーい…旅装束があれば良かったね」
「しょうがないわ。出発が急すぎたもん」
ルイズを着替えさせるヤンが着ているのも、いつもの黒服に白手袋。あとは防寒用にク
ローゼットの奥から引っ張り出したコートが壁にかかってるくらい。
ルイズが着替え終えた頃に、ヤンの部屋の扉がノックされた。入ってきたのは既に着替
えを終えたロングビル。
「あらあら、皆さん早いですわね…もしかして、今朝もヤンさんがミス・ヴァリエールの
着替えを?」
「そーよ」「う、うん。まぁね」
ルイズは当然のように、ヤンはちょっと恥ずかしげに答える。
「んじゃ、宿の人に朝食持ってこさせるわね」
と言ってルイズが出て行くのを確認したロングビルは、ヤンを肘でツンツン突いた。
「ちょっと、あんまり甘やかしたらダメよ」
「いやぁ、これも執事の仕事らしいから」
「ダメダメ!あの子はあんたに甘え過ぎだよ。ちったぁ自立ってもんを教えないとね」
ほどなくしてボーイ達がトレイに食事を乗せてやって来た。
並べられた皿の上には、トースト、スクランブルエッグ、ベーコンに豆の煮物。後ほど
茶をお持ちします、と言ってボーイ達は部屋を出て行った。
ヤンはドキドキしながら朝食を口にする。
「普通に美味しい…ね」
「そりゃ、そうでしょ」
ヤンの言葉にルイズはキョトンとする。横で二人の会話を聞いてるロングビルはクスク
スと笑ってしまう。
「そりゃあ、ミス・ヴァリエールは貴族向けの豪華な食事しか食べてないからですよ。こ
こはその中でも、他国から来た貴族がよく利用する宿なので、味付けも外国人向けになっ
ているのです。
まぁ、これからアルビオン料理をゆっくり堪能すれば良い事ですわ」
その言葉に、ルイズとヤンは思わずしかめっ面を見合わせてしまう。
ヤンの頭には「そんな所だけパラレルワールドしなくていいのに…」と期待と不安が入
り交じってしまう。他国からイギリスへ来た探偵が、食事について「期待する事は何もな
い」と言ったとかいう記憶があるが、果たしてそれがアルビオンで通じるかどうか…と。
その日は朝からアルビオン旅行の準備でお買い物。
ルイズが学院の図書館から拝借してきた地図は、トリステイン地理院発行のアルビオン
大陸全土図。もちろん高々度から撮影された写真を使っていない大陸地図なんか、大まか
でいい加減すぎ。早速、旅行者用の地図を買い求める事になった。
また、歩きで巡っていられるほどノンビリしていられないので荷馬車も要る。ヤン自身
が「姫の結婚式に出席する大使をのせた親善艦隊に警戒すべき」と進言した以上、その艦
隊に関する何らかの報告をしないと、格好がつかない。もちろん枢機卿はそこまでルイズ
とヤンに期待してない、と二人も分かってはいたが。
何より、ヤンにはルイズの荷物を担いでアルビオンを旅出来るほどの体力がなかった。
というわけで、地図やら小型の荷馬車やら携帯食料やらを買って回るついでに街の情報
収集。
さすがにアルビオン出身のロングビルは慣れたもの。あっちこっちの雑貨屋やら食料品
店で適度に値切りつつ必要なモノを買い揃えていく。そして値切り交渉ついでにレコン・
キスタの情報も集めていく。
そしてルイズとヤンも、アルビオン料理の真実について情報を集めていく。二人とも、
別にそんなグルメ情報を集めたくなかった。が、露店で買った魚のフライを一口食べた時
点で思い知らされた。出発前にシエスタが言ってた事が真実であった事を。
ルイズの頬が引きつる。
「な…何故なの…。魚のフライが、なんでこんなに不味くできるの!?」
ヤンの眉間に、思いっきりシワが走る。
「油が、臭い…おまけにギトギトだ。しかも、これに酢をかけるって、なんなんだ…」
庶民が食べる露店の料理。もちろん良い油なんか使ってないし、頻繁に交換もしない。
そしてワケも分からず露店の店主に、味付けにと多量の酢と磨り潰した緑の豆をかけられ
た。この豆が、何とも言えぬ意味不明な味を醸し出している。
聞いてるロングビルはニヤニヤが止まらない。
「それがアルビオン料理ですよ!ミス・ヴァリエール、少し世界が広まりましたわね」
「こんな世界、広まらなくて良いわよ…」
ヤンは諦めたように、脂ぎったフライと味があるのかないのか分からない豆のペースト
を食べていく。泣きそうになりながら。
そんな余談はそこそこに、夕方には宿に戻って収集した情報を整理していく。宿の外国
人向け料理である夕食に感謝しながら。
アルビオンは内戦終結直後のため、各地で領地紛争など混乱が見られる。
契約終了した傭兵達が盗賊へ早変わりしている。取り締まるべき貴族は、未だ利権争い
で忙しく、治安に手が回らない。
内戦で課せられた重税と荒れ果てた耕地のため、貴族連合に対する平民の支持は薄い。
また、内戦時にレコン・キスタが攻城兵として採用した北部高知地方出身のトロール鬼
兵等の亞仁が、未だに街中で我が物顔で歩き回り、住民達の頭痛の種になっている。
だが意外にも治安回復と統治体制の再構築は整然と進められ、早期に新政府による支配
が大陸の隅々に行き渡りそうだ。
もともと貴族連合は国民に好かれていなかったが、同時に王家からも既に民心が離反し
ていた…。
アルビオンの地図をテーブルに広げて頭を寄せ合う一同。ヤンは腕組みして考え込む。
「この、新政府の統治がスムーズに受け入れられつつある…というのが意外だなぁ。いき
なり支配者が変わって、ほとんど旧支配層との軋轢が生じていないなんて」
バンッとテーブルを叩いて立ち上がるルイズ。
「そーよ!そこが信じられないのよ!あいつら王家に弓引く逆賊なのよ!?なーんで誰も
彼も平気な顔していられるのよ!?」
凄い剣幕でまくし立てるルイズをヤンが、まぁまぁ…となだめる。
ルイズがとりあえず落ち着いたのを見て、ロングビルが語り出した。
「四年前のことです。アルビオン王家最後の王ジェームズ一世が、財務監督官だった王弟
たるモード大公を投獄したのですよ・・・」
王弟はエルフの女性を妾として屋敷に匿っていた。ジェームズ一世はこの事実を知り、
王弟にエルフの引き渡しを命じたが、拒絶された。結果、王弟は投獄されエルフは殺害さ
れた。
「・・・当然、これらの事実は一般には秘匿されました。ですが、王が弟を投獄した事は
隠しきれません。モード大公が治めていたサウスゴータを中心とした地域の人々は、王を
恨みました。また、『聖地奪還』を悲願とする王家の者が、こともあろうに『聖地』を始
祖から奪ったエルフを妾としていたなど…。
人の口に戸は立てられません。王家は、その権威を失墜させました」
ロングビルの説明に、ヤンは納得して頷いた。ルイズも、渋々という感じではあるが納
得したようだ。
最初に感想を述べたのはデルフリンガー。
「なーんでぇ。結局、ビダーシャルが語った真実とやらを知らないせいで起こったんじゃ
ねーか」
なんとも身も蓋もない言葉だが、確かに真実だ。『聖地の門』が現在では暴走中と言え
る状態にあり、『門』が生む災害から世界を守っているのがエルフだ、と皆が知っていれ
ば起きなかったのだ。
全ては無知と偏見が生んだ惨劇…ルイズも、そう認めざるを得なかった。
「う〜、でも…でもでも、アルビオンの人だって、ずっと王家の庇護の下で生きてきたん
じゃないの〜。それを、あっさりと…節操が無さ過ぎ!恩知らずよ!」
「ねぇ、ルイズ」
ヤンが、真っ直ぐにルイズを見つめる。
「僕が、トリステイン王家に忠誠を誓ってるとか、恩義を受けているとか、思うかい?」
「え?」
いきなりの質問に、ルイズは意図が分からず答えに詰まってしまった。
「えーっと…別に、そうは思わないわよ」
「それは、どうして?」
「どうしてって…あなた、異邦人じゃないの。トリステインは全然関係ないわよ。という
か、王家や始祖と無関係よね」
「そうだね。では、ゲルマニアの人々はどうだろう?」
「…へ?ゲルマニアに王はいないわよ。いるのは皇帝」
「そうだね。では…僕やゲルマニアの人々に、王家は必要かな?」
「なっ!?」
ルイズは、驚愕のあまり目を見開いてヤンを見返す。
何も答えないルイズの代わりに答えたのは錆びた長剣。
「いらねーなぁ。実際、王家と関係なく生活してきたんだから」
「な、な、なな…」
ルイズは、自分が信じてきた価値観を根本から否定する答えに、言葉を紡ぐ事が出来な
い。
代わりに、ロングビルが結論を口にした。
「つまり、こういう事ですね…『普通の人には王家も貴族連合も、どっちでもいい』と」
バンッ!
ピンクの髪を振り乱し、テーブルを力の限り叩く。
「バカ言わないでよ!そんな事!そんな事…あり得ない…忠義をなんだと」
「いや、あったし。このアルビオンで」
率直な長剣の反論に、ルイズは何も答えられない。
さらにヤンが論証を続ける。
「僕のような無力な平民から言わせてもらうなら、治安が第一だね。そして、税金が安け
ればありがたい。裁判が公平だったら、なおいいなぁ。
それを提供してくれるのなら、忠義を立てるのはアルブレヒト三世でもクロムウェルで
も、誰でもいいよ」
ルイズは、手を大きく振りかぶった。その手には杖が握られている。
だが、彼女の手首を握りしめたロングビルに止められた。
「は!離して!」
「ミス・ヴァリエール、落ち着きなさい」
「だって!こいつは、王家を侮辱して」
「そして、彼に逃げられるのですか?召喚した時と同じく」
「!!」
ルイズの腕からは徐々に力が抜けていく。
とすっと小さな音を立てて椅子に体を預ける。
ヤンが小さな主に尋ねた。
「ねぇ、ルイズ。君は、僕の主たりうるかい?」
「そ、それは…もちろんよ!そうあろうと、あたしは…」
「力に頼って驕り高ぶり、暴力で僕を支配しようと言うなら、全力で抵抗させてもらう。
君の手が届かない場所に逃げてもいい」
「う…」
「同じ事がハルケギニアの王侯貴族と平民達にも言えるよ。だからトリステインはゲルマ
ニアとの軍事同盟が必要になったんじゃないかな?」
ルイズは、口を閉ざしたままうなだれてしまった。
「ちょっと言い過ぎたかなぁ…」
「ま、あれくらいが丁度良いって。そんなに気にしなさんな!」
夜。
しょぼくれてしまったルイズをそっとしておくことにして、ヤンとロングビルは酒場に
繰り出した。もちろん情報収集というタイギメーブンで。
来たのは街の場末の安酒場。テーブルを囲んで祝杯を上げる兵士達。カウンターでチビ
チビ飲んでる貧乏貴族、再会を祝して乾杯する街の人などで賑わっている。
ヤンとロングビルはカウンターに並んで座っている。
ちなみに、ロングビルが飲んでいるのはアルビオン産ビールのエール(麦酒)。ヤンが
飲んでいるのは赤ワイン。ヤンには冷やされていないビールは、とてもではないが口に出
来なかった。
支援!支援!
「それに、この旅はあの娘に現実ってヤツを教えてやるのも目的の一つなんだろ?んじゃ、
王族が絶対じゃない世界ってのも教えなきゃね」
「うーん、それはそうだよ。でも、ちょっと早すぎたかなって思うんだよ」
「だーかーら!あんたはあの子に甘すぎだっての!」
そんな話をしていると、ウェイトレスがローストビーフを運んできた。ロングビルは代
金にチップ分にしては多すぎるコインを上乗せして手渡す。
「ねぇあんた。最近なにか面白い話とか耳にしてないかい?噂程度でいいんだけどさ」
ウェイトレスは手早くコインを胸元に隠すと、お盆で口元を隠してヒソヒソ話し出す。
どう見ても手慣れている仕草なのは、いつもの事なのだろうか
そしてウェイトレスの話に、二人とも目を見開いた。
戻ってきた二人から聞かされた噂話に、部屋でデルフリンガー相手に愚痴っていたルイ
ズも驚きを隠せなかった。
「ウェールズ皇太子が、生きてるぅ!?」
さっきまでの落ち込みもどこへやら。ルイズは目を輝かせて聞き入ってる。
ちょっと赤ら顔のヤンが話を続けた。
「うん、僕もビックリしたよ。クロムウェルと並んで歩く皇太子の姿を見たっていう噂な
んだ。それも、あちこちから同じ噂が立ってる」
しらふなままのロングビルも興奮気味だ。
「ニューカッスル城では王党派が全滅したって聞いてたんですけどね。本当なら、一大事
ですわ」
「そうだね。もし皇太子がレコン・キスタに恭順の姿勢を示したなら、王党派の残党やレ
コン・キスタに反感を抱いていた人々もレコン・キスタに取り込める。
新支配体制が速やかに整いつつあるのは、もしかしたらそれが理由かも知れないよ」
「そいつぁ、おでれーた!王族自身が王家を裏切ったッてことになっちまうぜ!」
デルフリンガーの言葉に、ルイズが絶句する。
「ま、ただの噂だよ。でも、これは追跡する価値はありそうだね」
ルイズは強く頷いた。
深夜。ルイズは「ぐぅ〜すぴぃ〜」とグッスリ寝ている。
隣のベッドで寝ていたロングビルがむくっと起き出す。そしてルイズの寝息を確認する
と、そろぉ〜りそろりと扉へ向かう。
音もなく扉を開けて隣の部屋へ、ヤンのベッドへと音もなく忍び寄っていく。酒場でワ
インを何杯も飲んだヤンも眠りの中にいた。
女の手が男の顔へと近付いていく。
そして、手が触れるか否かというとき、男の口から小さな声が漏れた。
「・・・フレデリカ・・・」
伸ばされた手が凍り付いた。
男の目にうっすらと涙が浮いているのにも気が付いてしまう。
女は、しばし男を眺める。
そして肩を落とし、再び忍び足で自分のベッドに戻っていった。
「男と女は、難しいわなぁ…」
荷の上に置かれたデルフリンガーのつぶやきは、誰にも聞かれなかった。
次の日、一行は朝のうちに宿を後にした。
のぼり行く朝日の中、荷馬車の中でルイズが地図を広げる。
「この方向は、サウスゴータよね」
隣のヤンが眠い目をこすりながら、手綱を操るロングビルに尋ねる。
「君が言う、会わせたい人っていうのはシティ・オブ・サウスゴータにいるのかい?」
じっと前を見るロングビルは、淡々と答える。
「いえ、そこからちょっと離れた、小さな村なんですけどね。そこにアルビオン王家と縁
のある人がいるのを思い出したんです」
「へ〜、どんな人?」
「それは…秘密、ですわ」
前を向いたままのロングビルは、会ってからのお楽しみ、と言う以上の事は言わなかっ
た。
アルビオン空軍基地ロサイスとロンディニウムを繋ぐ交通の要衝、サウスゴータ。
途中の風景はのどかで平和なものだ。森に覆われたなだらかな丘陵。牧草地帯の間を縫
うように続く風化しかけの低い城壁。かつては戦場であったかも知れない草原も、今は羊
たちの食堂になっている。ところどころには石組みの城、白い壁に茶色いタイルの屋根を
持つ民家、朽ちかけのあばら屋みたいな家畜小屋が見える。
そしてスカボローからサウスゴータへ向かう道では多くの人とすれ違った。
内乱を逃れて避難していた人々が嬉しげに故郷へ帰る。新たな戦乱を求めた傭兵が不景
気そうな顔で港へ向かう。田畑や家畜を失い家も焼け落ちたであろう難民らしき暗い顔の
人達も。赤子を抱いた母親が乞食をしている姿もある。
焦臭そうな雰囲気を漂わす一団が、若い女性二人を乗せた荷馬車に目がいく。が、ルイ
ズとロングビルがメイジの証であるマントを羽織っているのを見ると、舌打ちをして通り
過ぎていった。
「ルイズ、よく見ておくといいよ。正義や大義を振りかざして争う王侯貴族達の間で、平
民達がどれ程の迷惑をこうむるかを、ね」
ヤンの言葉に、荷馬車から街道を見渡すルイズは何も答えなかった。
ほぼ丸一日かけ、夕方に一行は目的地に到達した。
サウスゴータ地方の森の中、ロサイスから北東に50リーグほど離れた村には、丸太と
漆喰で作られた民家が寄り添っていた。街道から外れ、荷馬車を森の中に隠して歩き、森
を切り開いた空き地にあるこじんまりした集落。藁葺きの小さな家が10軒程あるだけ。
そして民家の周囲では、沢山の子供達が遊び回っていた。金髪・赤毛、瞳の色も様々。
薄汚れた服を着てはいるが、目はいきいきと輝いてる。
「あー!マチルダねーちゃんだ!」「わー!久しぶりー!」
子供達はロングビルの事をマチルダと呼んで駆け寄ってきた。
「マチルダって、ミス・ロングビルの名前?」
ルイズの問にロングビルは「まーね」とだけ答えた。
「みんな、元気そうだね!テファを呼んできてくれるかい?」
はーい!という元気な声を残して子供達は奥の民家へ駆けていく。そしてすぐに、一人
の少女を引っ張ってきた。
「マチルダ姉さん!帰ってきてたの!?」
少女はロングビルの顔を見るや、とたんに顔を輝かす。
「ああ。テファも元気そうだね。今日はお客を連れてきたんだ。
二人とも。この子が例の、モード大公とエルフとの間に生まれた娘さ。ティファニアっ
て言うんだ」
紹介されたエルフの少女が、怖々と頭を下げる。
それを見ていたルイズと、死にそうな重さの荷物を背負わされて小道を歩いてきたヤン
は、なにかこう、おかしな感じがしていた。
二人が最初に目を奪われたのは、少女の美しさ。少女はあまりにも美しかった。神々し
いまでの美貌を纏っていた。
長いブロンドの髪は波打つ金の海のごとく輝く。粗末で丈の短い草色のワンピースから
延びる四肢は細くしなやか。素朴な白いサンダルまでもが可憐に少女を彩っている。
次に気が付いたのは、少女の長い金髪からのぞく長い耳。ビダーシャルも長いブロンド
から長い耳をのぞかせていたのが思い出される。エルフだというのもすぐに分かった。
だが、こう、どういえばいいのか分からない妙な違和感が消えない。人間じゃないとか
どうとか以前に、なにかが間違ってるというか、ありえないというか・・・。
初対面の人を前にしながら、挨拶も自己紹介も忘れてエルフの少女を上から下までジロ
ジロ観察してしまう。
二人の視線が、見知らぬ人間に怯えた少女の体の中央に焦点を合わせた。
二人とも、疲れてるのかな?と目をこすってみた。
目が霞んでいるワケじゃないと確認したら、目の錯覚かと見直してみた。
目の錯覚でも無い事が分かった二人は、それの何がおかしいかを考えてみた。
ほっそりとした体つき。華奢な手足。清楚で可憐な空気をまとう少女。長いブロンドの
エルフ。
にも関わらず、胸だけが違う。何か違う。いや絶対違う。
「あ・・・」「あり・・・え・・・」
二人のつぶやきに、エルフの少女が少し首を傾げる。揺れる金髪が少女の胸の上を流れ
る。
ルイズの引きつる唇が、ゆっくりと開いた。
「ありえないぃっ!!」
「きゃぁっ!」
ルイズが叫ぶ。
少女が驚いて飛び上がる。
次いで少女の胸も飛び上がる。
少女が着地した。
一拍おいて少女の胸も、ぽんわわわん…と言う感じに上下左右に揺れた。
ヤンの目も少女の胸の頂点を追って上下左右に
「何見てんだよっ!!!」
バシィッ!
マチルダ姉さんのミドルキックがヤンの脇腹にクリーンヒット!
「い!いや!僕は、そんな!ただ、あまりの、その」
「あまりの、なんだー!」
哀れにもボコスカドコスカと、どつかれるヤン。「おいおい、その辺にしとけよ」とい
うデルフリンガーの声も虚しかった。
エルフの少女は、神々しいまでに清純な美しさを持っていた。
だが彼女の胸は、悪魔のごとき破壊力を持つ巨大さだった。
どうみても細い体躯とのバランスがあってない巨乳。あまりに人間の範疇から外れてい
た。なので、それをバストと認識する事が、二人の脳では時間がかかったのだ。
ぐわし!「ひうっ!」
ルイズの両手が、エルフの「ばかでかい」という言葉ですら収まらない胸を無言でつか
んだ。初対面の小さな少女による予想外の行動に、エルフの少女は驚いて身がすくみ、動
けない。
「なにこれ」
「む、胸・・・」
かろうじて、蚊の鳴くような声を押し出すエルフ。
「嘘」
「嘘じゃないわ。ほんとに胸・・・」
もう金髪の少女は、瞳に涙を浮かべている。
「どう考えてもおかしいわよ。身体と釣り合いが取れて無いじゃないの。程度があるじゃ
ない、程度って。私はこれ、胸って認めないから。ええ、断固、認めないから。『胸っぽ
いなにか』って定義する事にしたから」
「あう。あうあうあう。あうあう」
「あんた、あたしへのあてつけ!?恨みでもあるの??謝りなさいよッ!謝ってよ!私に
謝ってッ!」
「あんたもおちつけってのっ!!」
ボコッ!
ルイズもマチルダに頭をグーで殴られた。
第十四話 白の国 END
なんというwwwww
やはりティファニアの胸は胸囲であったか。
乙ですた〜。
以上、お仕事前に投下ー
なーんか、14話になってようやくゼロ魔らしい話をだせたような気がする
余談なんですが、ヨーロッパで売ってる炭酸水って、なんなんでしょうね?
味のない炭酸水が冷やされないままに売ってるんです。
もちろん、無茶苦茶不味かったです。
ペーストにした豆のソースも味が分からなかった
「海外ではマクドナルドが非常食になる」というのを散々体験してしまいましたよ・・・
投下乙です
とうとうルイズがダメな子からアホの子になっていくんですね
>>810 酒割ったりするのに使う炭酸じゃないですか?
日本でも売ってますけど。
日本人にはなじめないけど、ヨーロッパでは普通に飲みます
割るのとは別に
いえ、ヨーロッパでは基本的に生水は飲めたものじゃない(味もだけどそれ以上に危険)ので
いわば「蒸留水」として生ぬるい炭酸水を売ってる、と聞いた事があります
ラムネとかと違い味もついてない、本当にただの「炭酸が入った水」です
そうか、アンドバリの指輪の事をヤンは一切知らないし魔法が関わる事に関しては
全く無知、故にウェールズの正体を見抜けないのか
この先どうなるのやら、どきどきしちゃいます
トニック・ウォーターなんかも素で飲むしね。
最近は、味がなくて香りだけのフレーバー水(ヌーダとか)が一品はコンビニに置いてあるし、日本でも飲まれるようになるかな?
提督の人投下乙でした。そりゃルイズは胸にコンプレックスあるからな……うんうん。
>>神坂キャラ
スレイヤーズはやっぱり強いな……他の神坂作品の話があがらねぇw
ロスト・ユニバースのケインだったら「マントのこだわりでひと悶着」とか、
「サイ・ブレードの交換部品がないからデル購入」とか、色々出来そうな気がする。
乙ー。
とりあえずヤンに「BADEND:裏切りの愛の代償」フラグが一つ………
>>813-814 そうなんだ。
水はペットボトルのミネラルウォーター飲むのかと思ってたw
そういや映画なんかで普通に炭酸水頼んでたシーンがあったような。
>>816 O・P・ハンターを召喚したはいいが石油製品なくて失業とかw
一応日本刀使ってたんだっけ?
>>814 さすがに指輪の事を知ったら貴族派に反感抱くような気がする
>>814 「捕らえたウェールズを薬物とかで洗脳して操り人形にしてる」って発想くらいまではできるだろうけど、
ゾンビ化させたってのは流石にヤンの理解の範囲外だろうな
お、提督きてる
投下乙です!
投下乙です
男使い魔と他の女性との仲に嫉妬しないルイズというのもめずらしいか
アルビオンは高空にあるから水の沸点が地上界と違うのが微妙に料理の味付けに影響を与えていると言うのは…
>沸点
油もね。
だからフィッシュアンドチップスも極悪にまずくなっておろうて………
投下乙です。
アルビオン国民がレコン・キスタに恭順の意を示しているのは、ウェールズの存在が大きそうですね。
このままヤン達が正体を暴く流れになるのかはまだ分かりませんが、もし暴くことに成功した場合の反響は大きいでしょうね。
スレイヤーズでは少しマイナーだがラギアソーンとジョンをセットで召喚してみたり
提督の人乙でした。
予約はないようなので、自分も5分後に投下したいと思います。
乙です。
しかしテファの胸には激しく嫉妬するルイズ。
平民は貴族王族なぞ無くても生きられるけど貴族王族は平民無しには生きられない寄生虫に過ぎない
ルイズがこの事を理解する日が来るのだろか
それはともかくエルクゥの人よ、我が全力を持って支援させてもらうとしようか
「ヴェストリの広場で待つ! トリステインが武門、グラモン伯爵家が四男、このギーシュ・ド・グラモンに向かってあれだけの言葉を放ったのだ。逃げるなよ平民!」
ギーシュは言い放つと返事も聞かずにばさぁっとマントを翻し、大股で食堂を出ていった。
なんだなんだ、決闘、決闘だって? と周囲にざわめきが広がっていき、さっきまで耕一と同じようにぽかんと口を開けていた彼の友人連中は、一転わくわくした顔でギーシュについていく。
「……やれやれ。やりすぎたかな」
子供と大人の境目。人との関わりに興味はあるがまだ人を思いやれない年頃。遊ばせすぎても締めつけすぎても歪んでしまう時期。
大学では一応教職課程を取っているが、教師なんて絶対無理そうだ、と耕一は嘆息して、帰ったら取るのやめようと決心した。
「決闘、ねぇ……」
何をやるのかはわからないが、ま、たぶん子供のケンカと変わるまい。
さて面倒な事になった。
挑発した(つもりはないが、目下の者からの諌言など素直に受け入れない性質だとわかっていた上で淡々と事実を指摘するだけでも、その言葉は挑発として十分な効果を発揮するだろう)のは耕一自身だから、悔やんでもしょうがないのだが。
傍らでは、ギーシュの友人の一人が自分を見ている。どうやら逃げないように見張っているらしい。
「ちょ、ちょっとコーイチ! あんた、何やってんのよ!?」
面倒だしこのまま逃げてもいいけど……ともう一度ため息をついたところで、聞き覚えのある怒鳴り声。
見ると、ルイズが席を立ち、肩を震わせながらこっちに歩いてくるところだった。
「何、と言われてもね……ちょっと教育的指導をしたらケンカ売られた、としか」
「……まあ、見てたから知ってるし、私もあの二股は酷いと思うけど、そうじゃなくて!」
とぼけたような耕一の声に、ルイズが頭を抱える。
「どうすんのよ。勝てるの?」
「ま、子供相手に負ける気はないけどね」
「はぁ……ならいいけど。ご主人様に恥だけはかかせないでよね」
「努力するよ」
「……なんだか、大した自信ね」
ルイズと耕一のどこか余裕の態度に、ルイズの後ろについてきていたキュルケが、パチパチと瞳を瞬かせた。
「ギーシュはドットとは言えメイジ。戦争ならともかく、1対1だと平民じゃ逆立ちしても勝てないわよ? ルイズだって知ってるでしょう?」
「……そりゃ、知ってるわよ」
魔法が使えないルイズだからこそ、それは誰よりもわかっている。貴族を絶対上位たらしめている魔法というものの便利さと、恐ろしさを。
しかし彼は、エルクゥは、そんな世界の枠外も枠外の存在であった。
キュルケは、ルイズの態度に何かを感じとったのか、すぐに肩をすくめた。
「ま、あなたがいいならこれ以上は何も言わないけど」
「いいのよ。あの色ボケにもいい薬でしょう」
そう言うルイズも内心、耕一の妙な自信には半信半疑であったが、これで確かめてみればいい、と考えていた。
―――口ほどにもなく弱かったら……覚悟しなさいよ。
「さて、じゃあ、ヴェストリの広場に行きますか」
ルイズのおっかないシグナルを背に受けて、耕一達は食堂を出た。
ヴェストリの広場は、人でごった返していた。
中央にギーシュが立っており、その周囲を囲むように野次馬が盛り上がっている。
「諸君! 決闘だ!」
耕一の姿を見つけると、ギーシュが手に持っていた薔薇の花を、ばっ、と天にかざした。
次いで、周囲の野次馬から歓声が飛ぶ。
「ギーシュが決闘するぞ! 相手はルイズの使い魔の平民だ!」
言っている間にも、野次馬の生徒はどんどん増えていく。
アイドルのコンサートよろしくギーシュは手を振り、歓声に答えていた。
そして、ようやく存在を認めた、とでも言うように耕一に向き直る。
「とりあえず、逃げずにきた事は誉めてやろうじゃないか」
「……一つ、確認しておきたいんだが」
「なんだね、言ってみたまえ。謝罪なら受け付けないぞ」
勝ち誇ったように、ギーシュは薔薇を口元に当てる。
「勝っても負けてもお前に得はないんだが、わかってるのか?」
「貴族の名誉を土足で踏みにじった平民に対する罰だ。十分に意味はあるさ」
……冗談とか強がりじゃなくて、本気で言っているんだろうか、と耕一はちょっと心配になった。
現代日本の高校生が相手なら、耕一の感性も正しかったのかもしれない。しかし、彼は日本の高校生ではなく……名誉と誇りと形式と伝統を重んじる、トリステイン貴族の子だった。
「だからお前、もし勝ったら『二股がバレて弱い平民に八つ当たりした奴』になって、もし負けたら『そんな弱い平民にも負けた奴』になるんだぞ。どっちにしてもお前は女の子からモテなくなる。わかってるか? さっきの騒動、女の子達の視線はかなり冷たかったぞ」
つまりは、『平民にバカにされた』という形式的な名誉に気を取られて、本質の部分を忘れているのであった。
まあ、ただ単に頭に血が昇っただけとも言う。
「うぐっ!?」
耕一の言葉を聞いて、びしぃ! とギーシュが固まった。
そう、よく見れば、周囲を囲んでいる野次馬、大多数が血の気の多そうな男だった。
「俺を痛めつけた後に、さっきの二人に『君の名誉を汚した平民は僕が罰を与えておきました!』とか言って許してもらえると思ってるのか? 本気で思ってるなら、女心の前に人の心を勉強してこい。彼女達が何に怒ったのかもわからないんならな」
「う、うぐぐ」
「まあ、弱い奴を痛めつけただけでキャーキャー言ってくれるような尻の軽い女が好みというなら止めないが」
「だ、黙れ! それ以上喋るなっ!」
ギーシュは弾かれたように薔薇を振る。
その花弁がふわりと花を離れ、地面に舞い落ちると―――ぴかっと光を放ち、地面が軽く抉れると共に、忽然と人影が現れた。
女性のシルエットを模した、青緑色をした鎧騎士。
「行け、ワルキューレ! 奴にこれ以上囀らせるなっ!」
ギーシュが叫ぶと、鎧騎士―――ワルキューレは、猛然と耕一に向かって突進した。
人の肉体と違い、壊れる事をいとわないその動きは十分に速く、あっという間に距離を詰め、耕一の顔めがけて拳を振りかぶり、そのまま右ストレートを放ち―――耕一は、微動だにしないまま、それを顔にくらった。
ひっ、とどこからか息を呑む音がして―――ぐわぁぁん、という金属の打ちつけられた音と、ぐしゃあ、という金属の潰れた音が同時に響いた。
「―――へ」
ギーシュが、息の抜けるような間の抜けた声を上げた。
「こりゃ、金属の人形か。さすがに響くなあ」
その場に立ったままの耕一が、本当の本当に『目の前』でひしゃげた人形の腕を、手で払うようにどけた。
片腕を失ったワルキューレは、払われただけの手に突き飛ばされるようにして横に飛ぶ。
「ば、バカな。僕のワルキューレが!? 青銅のゴーレムの腕が!?」
「なるほど。青銅なのかこれ。よく出来てるなあ」
耕一の声はどこまでも平常で、ギーシュのみならず、目を伏せずに見ていた野次馬の大半が、言葉を失っていた。
昼下がりの学院長室。
秘書であるロングビルは席を外しており、その部屋ではオスマンだけがキセルをくゆらせていた。
「うむ。どれ」
オスマンが何かに頷いて、背の丈ほどある杖を振ると、机の上に置かれていた小さな手鏡が光り出した。
光が収まると、そこには……妙な場所が映し出されていた。
何かの陰なのか薄暗く、木目のある物体が見える。それは、どこか机の下から椅子を見上げている図だった。椅子の上に誰かが座ったら、その股間部がよく見えるに違いない。
「うむ、ベストポジションじゃモートソグニル。ようやった! ようやったぞ!」
オスマンが喜色満面に頷くと、無人の秘書机の下から、小さなハツカネズミが飛び出してくる。
得意げに胸を張るネズミにナッツを頬張らせてやるオスマン。
コンコン。
そんな平和な学院長室の日常は、ノック音により中断された。
「失礼します、オールド・オスマン」
「なんじゃ、ミス・ロングビルか。かしこまってどうしたんじゃ。ささ、早く机に座って仕事に戻りなさい」
「いえ、少しご報告が」
「ふむ。ま、いいから座りなさいミス・ロングビル」
「いいえ、まだ仕事は終わっていませんので……それでご報告ですが、ヴェストリの広場で決闘をしている生徒がいるようで、大きな騒ぎになっています。止めに入った教師もいましたが、集まった生徒の数が多すぎて止められないと」
オスマンは呆れたように肩をすくめた。
「まったく、ヒマを持て余した貴族ほど性質の悪い生き物はおらんな。まぁ座って話せばよかろう、ミス・ロングビル。それで、決闘なんぞしておるのはどこのどいつじゃ」
「いえ、すぐに出かけますので。一人は、ギーシュ・ド・グラモン。そして、もう一人が……生徒ではなく、ミス・ヴァリエールの使い魔の青年のようです」
ロングビルの言葉を聞いた瞬間、オスマンの表情が一転、引き締められた。
「教師達は、騒ぎを止めるため、『眠りの鐘』の使用許可を求めております」
オスマンは目を閉じ、暫しの間沈思黙考した後、さっと杖を掲げた。
壁に掛かっていた大きな姿見がぱあっと光り、そこにはヴェストリの広場―――ではなく、何かの物陰が映っていた。部屋の中なのか、壁と椅子のようなものが見える。椅子に誰かが座っていたら、その股間部がよく見えそうだった。
「おっと。間違えた」
再び杖を振ると、今度は人の集まる広場の風景が映し出される。
ちょうど、戦乙女を模したゴーレムが件の青年に殴りかかり……その腕が、自らの力によってひしゃげるところだった。
「…………」
「…………」
平然として立ったままの青年を見て、二人の顔が複雑な表情を描いた。
『呆気に取られる』と『戦慄を覚える』を同時に混ぜ合わせたような、そんな顔だ。
「ミス・ロングビル。『眠りの鐘』の使用を許可する。どちらかが血を流した瞬間に鐘を鳴らすよう言っておいてくれたまえ」
「そのように伝えておきます」
「うむ」
「ところでオールド・オスマン」
「なんじゃね? ミス・ロングビル」
「私の机の下に仕掛けた遠見の鏡、次までに撤去しておかなければ叩き割りますね。修理費は学院長のポケットマネーから出しておきますので」
「カーッ!」
学院長室は、今日も平和だった。
「―――で、これで終わりかい? こっちが話をしている時にいきなり襲うなんて、貴族の名誉ってのは随分と軽いんだな」
「くっ! それ以上の侮辱は許さんっ!」
ぶん、ぶん、とギーシュが薔薇を振り乱すと、次々と光が生まれ、ゴーレムが生み出されていく。
支援
「もう手加減はしない! 『青銅』のギーシュが奥義、七体のゴーレムによる同時攻撃を受けるがいい!」
素手だった最初の人形とは違い、剣や槍をそれぞれに持ったワルキューレ達が、ざっ、とギーシュの前に整列し、その武器を耕一に向けた。
耕一は、慌てる事もなく、ゆっくりと左手をあげ……覆うように、顔を隠した。
「力で他に言う事を聞かせる。それは自然の摂理なんだろうな」
だからエルクゥは生まれた。復讐の力の為に。
「い、今更命乞いかっ!?」
「だが、全てを力で解決するのならば、それは人である必要がない。事に当たり、知恵を、情を、言葉を尽くす者を人と呼び、人こそが鬼を従える」
だから、人でしか、鬼は飼えない。
「な、何を言っている!」
「お前は餓鬼だ。どうしようもない餓鬼。そして、餓鬼ならば鬼だ。ちっちゃな糞餓鬼とはいえ鬼ならば、力を振るう事に容赦はしない」
ぴぃん、と空気が張り詰め―――耕一の左手の甲に描かれた使い魔のルーンが淡く光を放ち始めたのを見る事が出来たのは、正面からそれを見つめていたギーシュと、最前列でじっと彼を見つめていたルイズだけだった。
「見せてやろう。我は鬼。人を狩る鬼。宵闇の狩猟者―――エルクゥ」
ギーシュには、手で顔を覆った耕一の眼が、赤く、鮮血のように赤く光ったように見えた。
「行くぞ。糞餓鬼」
微かに彼の足がブレた次の瞬間、耕一の姿は、整列するワルキューレの目の前にあった。
「ひぃっ!?」
「っ!?」
ギーシュだけでなく、耕一にも驚きの表情が走った。
―――体が軽すぎる。
だが、鈍いよりは問題ではなかった。思考を切り替え、そのまま右腕を真一文字に一閃させる。
しゅりぃぃん、と耳障りな金属音がして、7体の青銅人形は、例外なく真っ二つに切り裂かれた。
腰から上下に別たれた人形達が崩れ落ち、文字通り土に還っていき……腕を振り抜いた風圧で、真後ろにいたギーシュが弾き飛ばされるように吹き飛んだ。
「がふっ!」
したたかに背中を打ち付け、息が漏れる。その飾りシャツの胸元が、風圧によるものか、ぱっくりと真横に切り裂かれていた。
次の瞬間、どんっ、と鈍い音と共に、目の前に耕一の顔があった。
滲む目で彼の右腕を見ると、自らの顔の横の地面にそれが突き刺さっている。ありえない、とギーシュは身体中が震えるのを感じた。
「続けるかい」
ギーシュは言葉もなく、ぶるぶる、と首を横に振った。
耕一が地面から腕を抜き、立ち上がっても……ヴェストリの広場は、静寂に包まれたままだった。
「……『眠りの鐘』は、必要ありませんでしたわね」
「そうじゃな」
ロングビルが許可の旨を報告に出て行こうとした時には、既に決着はついてしまっていた。
「神の左手『ガンダールヴ』……あらゆる武器を使いこなす、との事でしたが」
「武器なぞ使わんかったな」
「さすが伝説、と言えばよろしいのでしょうか。それとも、伝説と違う、と言えばよろしいのでしょうか」
「今の時点でわかる人間がいたら、そいつは始祖の生まれ変わりじゃろうて」
オスマンは、どうでもいい、というように髭をしゃくった。
「『眠りの鐘』についてはもういいじゃろう。ミス・ロングビル、ミスタ・コルベールをここに呼んでくれたまえ」
「かしこまりました」
ロングビルは一礼して、学院長室を出て行った。
「さて、どうするかのう……」
オスマンは、思い詰めたようにため息をついた。
「……名残惜しいが、さすがにマジックアイテムを弁償するのは勘弁じゃしのう。はーあ」
そっちかよ! と肩の上にいたモートソグニルはツッコミを入れざるを得ず、少しだけ知能が上がったのだった。
以上です。支援ありがとうございました。楽しんでいただければ幸い。
乙。もしやオスマンは関西系?
>>829 某アフリカの国の惨状を思うにそうとも限らない
をや、ロングビルが使い魔を「伝説」とこの時点で認識する作品はあんがいレアかも
まあとにかくそんなワケで乙でした
投下お疲れ様です。
単純な強さなら耕一だとガンダールヴの付与なしで十分だし。
あとは梓とテファのどちらの乳が強いかの勝負くらいですかな
とりあえずテファあたりに「破壊のキノコ」を食べさせて見たい
>>839 今現在ハイパーインフレ絶好調の某国のことかーーーッ!!!
いやまああれは変革の段階を3・4段ほどすっぽかしたせいだと思うんだが
エルクゥの人乙!
楓は!楓はまだか!
>>829 それは現在の国全ての存在も否定してるんだぜ?
貴族を議員に置き換えてみるとわかりやすい
貴族、あるいは議員は国の統治には必須といって良い
まぁゼロ魔において貴族全般ダメ人間ってのは認める
現在の議員の皆々様については荒れるから黙秘
乙かれ様でした!
「続けるかい」
「もう……やめ…」
なんて会話が、ふっと頭を過ぎった!
元気イッパイだぜ…とは言えないだろうな、初期のギーシュじゃ。
>>829 ゼロ魔世界はちょっと違うんじゃない? 貴族の人間性はともかく、
ハルケギニアって、社会のインフラから大掛かりな工事なんかには、貴族の魔法が必須な社会構造だと思うんだが。
提督の人、乙です
カレーや中華料理、上等な紅茶葉をもたらしてくれるはずの
海外植民地を持たないイギリスの料理は考えただけでも恐ろしい
数少ない美味の魚料理の材料になる鮭や鱒、鰊が獲れる北海も無いし
ヤン達が食べたフィッシュ&チップス?は湖水魚かな
卵とベーコンと燻製魚、トーストやマフィンの簡素な英国朝食は美味いらしいです
仕事してたら話題に乗り遅れたorz
ソーダ水はうまかです
ペリエとか皆飲まないの?
エルクゥ乙ですー
もしも、鬼の力が制御不能な事態になったら・・・wktk
提督は、平民は貴族の所有物じゃないっていいたいんでは
気に入らない主や国なら、いつでも出て行けるんだぞ、と
平民に代わりがいくらでもあるように、国や支配者も代わりはいるってことで
実際、ヤンは「貴族」じゃなくて、ほとんど「王家」って言ってるし
>>846 だけど貴族が現場で汗水流して働いてる気配がないのはどういうわけだろう。
どっちみち強者が弱者を食い物にするのなら自然淘汰より無能貴族相手の方が
まだ自分が生き残る可能性が高いなと思う俺
>>844 議員は、「民」の代表だぞ。
貴族とは根本的に違う。
王権神授説が地球のような絶対王政を正当化するための方便ではなく、
まさしく始祖の意思として実在している世界だって点にも注意が必要だな。
ヤンは政治信条の話をしているつもりなのだろうが、
ルイズにとっては信仰の問題だったりするのかも知れない。
しょうがねえだろ、まだハルケギニアでは憲法も民主主義も発見されてないから
ピラミッド建設した文明しか代議制や普通選挙は導入できねえんだよ
アンアンの志向が勤労ならピラミッド狙っていけるかもしれんがな
>>859 もう殆どお飾りだよ。廃止の方向で進んでるし、実権も殆ど無い
というか、よく何千年も与太話信じ続けてられるよね、あの世界の人達
480kb超えましたので、新スレ立てます。
いいですか?
>859
「普通」じゃなくて「一部」だろ。
貴族=議員なんて公式が成立するほどなのか?
提督の人乙でした
ヤン視点だといろんな事が面白いな
というか、読者の代弁者として気持ちいいツッコミしてくれる
>>823 >アルビオンは高空にあるから水の沸点が地上界と違うのが微妙に料理の味付けに影響を与えている
面白い着眼点だな
スレ立て乙であります
なんで考察スレでやらないのかわからないであります
>>867 二次作品の感想ベースの考察だからついこちらに書いてしまうのです。多分。
>>865 乙です。
>>860 エルフと交流が始まったら影響受けるかもね。
確かエルフって、共和制で議会とか持ってるんでしょ?
さすがに普通選挙までは導入してないと思うけど。
>>859 >>844の言う「現在の国における議員」は「ごく一般的な代表民主制に基づいた議員」であることを
前提に話しをしているのに、なぜそこで貴族院(身分の特権を代表する議院)の議員の話が出るの?
現存するイギリスの貴族院(上院)のこと言ってるなら、あれは例外中の例外だし、そもそも実質的
な権能はほぼ下院に移行されている。
その上で、
>>856の論を引くけど、現在の議会制民主主義を採用している国々での「議員」は「国民」
の代表者であり、国民とは密接不可分の関係にあるわけで、
>>844の言ってることはてんで的外れ
もいいところな訳だが、そこでなぜ「貴族院とか、普通にあるよ」といきなり言い出したわけ?
提督の人GJ!
それにしても、脳内で富山敬さん(ヤン)と能登麻美子さん(テファ)の声が同時に再生
される作品を拝める日が来るとは・・・ある意味感無量です。
他の人も指摘してますが、やはりアルビオン料理の不味さに、一行も閉口しているようで
すね。これでルイズも世界を見る目が大きく広がれば、と思います。
最初から読んでないしこれから読む気もしないからわからないがそんなに考察したい内容のSSなのか?
読む気ないなら聞かなくていいんじゃない?
なんか脳のかわいそうなナマモノが多いな
>>873 >最初から読んでないしこれから読む気もしないからわからないが
この一文が余計と言わざるをえない
まあ新スレ立ってるんで埋め代わりに考察しても問題ないんじゃない?
>>671 遅レスで突っ込むが。
イオノクラフトはエンジェルハイロウじゃなくてブラックドッグのエフェクトだ。
>>824 不味いフィッシュアンドチップスには
冷凍の古い魚&古い油を使って低温で揚げる
と言う
素材&技巧
が必要
海の上にいる時に空飛ぶ漁船が漁をして魚を採る
↓
メイジが冷凍して倉庫に保存
↓
油焼けした古いものから順番に市場に出す
これで素材はOK
後は油が高価で使い捨てが出来ないとかの理由があれば完成
>>871 俺は貴族は国を統治するという役目を負っている以上、寄生虫とまでは言えないんじゃないかと言いたいだけなんだ
そのたとえとして議員を持ち出したのが悪かったな
スレ混乱させてしまってすまない(´・ω・`)
>>878 まさか、食用油ですら錬金魔法で造り出してるとか言わないでくれよ(^_^;)
>不味いフィッシュアンドチップス
ある意味、浜茶屋の不味いラーメンやイカ焼きの類ではないだろうな。
不味いけれど何故か食べてしまう、とか言うような。
聖地には当代最強の兵器が召還されるとの事なので
キューバ危機の辺りだと50メガトンの水爆が呼ばれる可能性がある
これが爆発すると聖地を中心とした数キロは爆発で吹っ飛び
数十年単位で深刻な放射能汚染が広がると思う
>>880 ギーシュ「アルビオン料理なんてゴミだよ」
山岡「可哀想に本当に上手いアルビオン料理を食ったことが無いんだな…」
ギーシュ「なんだと?貴様訂正しろ!」
山岡「本当に上手いアルビオン料理を食べさせてやる 不味かったら好きにしろ」
試食中
ルイズ「まあ!新鮮な魚と酢が口の中でしゃっきりポンと踊るわ!」
山岡「本当は新鮮な素材を使ってまともな油で高温で揚げれば美味しく仕上がるんだ
所が…」
以降「人工物いくない!自然物最高」「商業主義反対」な説教と歴史の時間
>>882 「天地を焼き尽くし、何百年も消えない毒を撒き散らす」
と言うんだ、格調高くな
>>882 ツァーリ・ボンバレベルじゃ本当に大変なことになるな
>>882 だからエルフはガリアの協力を求めに来たんだろうな
もはや聖地から湧き出す悪魔が手に負えなくなったから
それを思いっきり進めたらとんでもないことになってしまった・・・というのが提督の設定だな
>>883 >以降「人工物いくない!自然物最高」
コッパゲ先生涙目w
ところでずっと気になっていたが
どーして誰もおマチさんの夜這いに言及しないのか
エルフを狩るモノたちから
>>888 そんな野暮なこというやつはいないと思うぜ?
>>890 いやいや、単に住人の眼がすべてエルフっ娘(ハーフだけど)の胸にイってるからだろw
892 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/08(火) 22:13:02 ID:+7iXhQRu
>>882 てか50メガトンだと吹っ飛ぶのは数キロどころじゃ済まない気がするな、広島型でもキロ単位じゃなかったけ?
確か旧ソ連の核実験で衝撃波が地球を3週したのは、50メガトンのヤツだった気が・・・・・・
間違ってたらスマソ
>>860 宗教…何とか?
勤労は違う
組織も違う
帝国も違う
拡張も無い
組織も無い
金融も無い
攻撃は無い
防衛も無い
海洋も無い
カリスマも違う
創造も違う気がする
宗教志向一本で外交を頑張って国連勝利狙いかな?
CIV風に
「ウェールズは死んだ!何故だ!」
「坊やだからさ」
関係無い話かも知れないけど鼻がむずむずして
目がかゆくてイライラする
ハルゲキニアに花粉の呪いあれ!
我がエルフらの手には、始祖よりの歴史で封印された天を焼く剣がある。
この地で再び先端が開かれるのを防ぐために、この剣を抜く。
この地域にいる者は全て離れよ。
灼熱の火に焼かれ、瓦礫に押し潰されない為に!
先端→戦端だった。改変ですまんが、記憶違いだったら二重にすまん
>>883 新鮮な素材とまともな油が手に入らないからアルビオン料理ゴミだっつー話じゃないのかw
>>897 メイジなんかになぁ!聖地の奪還なんざ出来るわきゃねーだろぉぉぉぉぉ!
>>896 地球の最強兵器、花粉が聖地より流れ出てくるのか。
エルフたちが花粉症となって呪文を唱えられなくなるのだな。
>>818 コーラがどこでも売れるのはそれが生水より安全に飲める国が多いから、って聞いたことがあったな
「メイジの実力は使い魔の性能差で決まるものではない」
>>892 Civじゃなかったのか。
500Kbならコードギアスの枢木スザクを召喚。
スザクをどれだけウザく描けるかが最大のポイント。
レコンキスタ(というかアルビオン)空軍が世界最強と呼ばれて恐れられていた原因の一つは、
不味いメシでも平気で戦える兵士の我慢強さにあったような気がしてきた・・・
実際、昔のヨーロッパでは、軍が支給するメシが不味いという理由だけで脱走するような兵士
はザラだったらしいからな(無論、給与の遅配とか予定より減額なんてことだと一発<下手し
たら反乱を起こされたらしい)。
ネタが通じたとき、こんなに嬉しいことはない…
>>906 何か森鴎外が麦飯禁止してとんでも被害を出したことを思い出した。
>>907 ガンダムVSガンダムでロラン君が言うのを何度も聞いたんでw
御大将召喚はロボ無しでも面白そうな気もするなぁ。間違いなく凄まじいセンスを要求されるだろうけどw
昔は麦飯がまずかったらしいからなあ……
いわゆる刑務所の「くさい飯」
>>906 傭兵だしな>昔のヨーロッパの兵隊
フランス革命後に近代軍が出来るまでは傭兵が戦場の主役だったから、給料遅配で反乱とか、山賊化とかは割りと普通だったかと
対レコンキスタ戦争のとき、ギーシュの下についた兵隊は物凄くレアな存在だったと思うな
>>904 見せてもらおうか、虚無の使い魔の(ry
>>894 → 貴様の首は柱につるされるのがお似合いだ
いや、なんでもない
閣下、トリステインはレコンキスタに対して宣戦を布告しました
こっちに投下するのはさすがに無謀か
けど眠いしな
どうしよ
>>910 あれは年季が行き過ぎてツブシがきかなくなっちゃった連中だったしね
言ってみりゃムショ暮らしに慣れて社会復帰せずに犯罪犯す人の同類じゃないのかな
>>913 あと5kbしか残ってない。無謀というか無理だ
う〜〜、どうしよ
まあいいか
新スレに投下してみるよ
「おかしいですよマチルダさん!」
>>917 フーケ姐さんがオルテガハンマーの餌食にぃぃぃぃ
おっぱいだいすき
砂漠でパスタ茹でるようなアホ軍隊はハルケギニアにいるのだろうか
小池さぁぁぁぁぁぁぁん!
父さん、酸素が・・・
新スレで投下終了しましたので報告〜〜
500KBならベルセルクから「深淵の神」召喚っ!
ルイズ使途……見てみたい
ニャンピョウならガンダールヴにっぴったりじゃね
>>925 すまん。素でニャンチュウと読んでしまった…
500kbなら聖闘士星矢Gからアイオリア召喚
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part128
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1207653769/ なぎはらえー |:|\\:::::||.:.||::::://| /イ
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