小説『OLやぐたんにせくはらするのだぴょーん』

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777L.O.D:01/12/20 18:43 ID:NjZ7enL7
その日の夜遅く
辻から来たメールに気付いて
市井はキーボードを叩く指を止めた。
「復帰しても、遊んでください、、か」
うつむきながら、『好き』とつぶやいた時の
姿を思い浮かべる。
その言葉が少し浮ついて
どれほどの重さか分からなくなる。
好きってどれぐらい好きなんだろうか。
辻の事だ。
もしかしたら、お友達としてなのかも知れない。
急に不安になる。
そうだとしたら、ぬか喜びだ。
「あぁっ・・・・・・」
メールで聞いてみたい。
どんな答えが返ってくるんだろう。
思い違いだったら恥ずかしい。
こんなに年の差があるし
しかも、女同士だし。
市井の中で色んな思いが駆け巡る。
「違ったら、嫌だなぁ」
小声でつぶやいて
少し力んでた身体から
力を抜いてみる。
手を伸ばして
CDを鳴らす。
ミディアムテンポの黒人女性シンガーのバラード。
スウィングするリズム。
心もそれと同じように
揺れ動いていた。
「はぁ・・・・・・」
大きな溜息。
自信なんてない。
なにせ、あの子はとんとにぶい子だから。
あの仕種は好きという事を恥じらっただけなのかも知れない。
こんな相談、誰にすればいいのか分からない。

その瞬間、手の中で携帯電話が鳴った。
778L.O.D:01/12/20 19:02 ID:NjZ7enL7
「後藤・・・・・・」
『あれ?いちーちゃん、暗いね?』
「いやぁ・・・・・・」
『喧嘩した?ってわけでもないよね?
 なっちとかも自慢してたし・・・・』
「辻がさぁ、、好きって言ってくれたんだけど」
『よかったねぇ』
「ほんとに私の事、好きなのかなぁ?」
『ハァ?』
「恋人として好きなのかなぁ?」
『あー、、、辻だもんね』
「な、心配だろ?」
『・・・・・・っていうか』
「?」
電話の向こうの後藤は少し不機嫌な声を出す。
『私も、いちーちゃん好きなんだけど』
「お前なぁ・・・・・・」
『でも、いちーちゃんは辻が好きなんだよね』
「あぁ・・・・・・」
『バイバイ』
「ちょ!ちょっと待て!!」
『なに?』
「なんだよ、そりゃ。勝手じゃん!」
『いちーちゃんの方が勝手じゃん!!
 ずっと好きだったのにさぁ!!』
「そんな事言ったって・・・・・・」
『応援してあげたいけど辛いんだもん!!』
電話は切れてしまう。
電源ごと切ってしまったのか
壁に叩き付けて壊したのか
その後、後藤の携帯はつながらなかった。
携帯を握りしめたまま
立ち尽くす。
779L.O.D:01/12/20 19:02 ID:NjZ7enL7
今、後藤に会いに行けば
抱き締めてしまいそうだ。
後藤だけじゃない
みんな好きだった。
それぞれに好きだった。
だけど、その中で辻は1人
心の底までやってきて
新しい冒険への扉を開けるための
鍵を一つ置いていってしまったのだ。
キュッと唇を噛み締める。
ダイヤル音が聞こえた。
つながったのは、保田。
『どうしたの?』
「お願いがあるんだ」
『なに?』
「後藤に会ってきて」
『なんかあったの?』
「怒らせちゃった」
『そ』
「お願い」
保田は黙ってる。
好敵手だと思いながら
親友だって信じてるから
その沈黙の意味を知ってる。
『あんたは?』
「辻に、、会いに行く』
『ねぇ』
「ん、、、?」
『今の紗耶香、すごくいい歌が歌えそうだね』
「そっか」
『いい恋してるじゃない』
「うん」
『まだ始まったばかりだけどね』
「うん」
『誰かいないかなぁ・・・・・・』
「いないね」
『なんでよ!!』
電話口で怒る保田の声を聞いて涙が出てきた。
涙を拭いたら、走り出そう。
まだ起きてるだろうから
タクシー掴まるかな。
そんなに手持ちないし
電車、まだあるな。
急いで行けば間に合うかな。
780トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/21 02:31 ID:SlMOlxp5
相変わらず会話の運び方がうまいなー
セリフ一つ一つがちゃんと娘。たちの声として聞こえてくるもんな…
781L.O.D:01/12/21 16:44 ID:nnBdiOYt
昼間はあんなに聞こえた蝉の鳴き声は静かで
辻は1人で公園のブランコを漕ぐ。
家の近く。
一回だけ市井が遊びに来た事があって
この公園の事を覚えてたらしく
ここで待ち合わせした。
慌てた様子で電話の向こうからしゃべる市井の
声は少し震えていて
何があったのかは分からなかったが
早く会いたかった。
一緒に遊ぶようになって
二ヶ月近くが経っていた。
すごく自分を可愛がってくれるし
電話で色々な事を話した。
今の娘。の事や、娘。になる前の事
いっぱい話して
好きになった。
一緒にいると楽しい。
これはきっと好きなんだと思う。

  キィ

ブランコを漕ぐのをやめて
空を見ると、星は見えないが
大きな月は見えた。
雲一つない空。
「辻っ」
入り口から駆け寄ってくる市井の呼吸は乱れていたのに
辻を見つけたら、真直やってきて
力一杯抱き締めた。
辻も優しく腕を回す。
「辻は私の事好きっ?」
「えと、、、はい、、、」
「それってさ!付き合っていいって事っ?」
「うん、、、、」
「私が辻に感じてるドキドキ
 辻も感じてる?」
782L.O.D:01/12/21 16:45 ID:nnBdiOYt
市井の胸の中で目をつぶる。
聞こえてくるのは胸の鼓動。
走ってきたからか
それとも、一緒にいるからか
高鳴っていた。
「うん、、、、」
「キス、、、していい?」
「、、、、、、」
近付いてくる市井の吐息を感じた。
それは加護とふざけてするキスとは別のキス。
辻の身体がビクッと震えた。
「あっ、、、」
「?」
「あの、、、、」
「ごめん・・・・・・」
市井が少し寂しそうな顔をした。
肩を抱いてた手が離れる。
なぜか突然、キスが怖くなった。
きっと市井は好きなんだけど
このキスは違う気がして
拒んでしまった。
なんかすごく悪い事をした気がして
落ち込む。
「ごめんなさい、、、、」
「いや、いいんだ。私が早まっただけだし」
「でも、市井さんは、、」
「・・・・・・」
2人はベンチに座って
少し黙ってる。
虫の音だけが聞こえてくる。
頃合を見計らったように
市井が言う。
「後藤と喧嘩しちゃってさ」
「え?」
「後藤が私もいちーちゃんが好きとか
 言い出しちゃってさ・・・・・・」
「ごっちんは?」
「携帯の電源切られちゃった。
 そしたら、なんか急に辻に
 会いたくなっちゃって、、、」
「ん」
「ごめんな、こんな時間に」
「いいんです。落ち着きましたか?」
「あーっと、つ、、、、」
市井が言葉に詰まる。
辻は不思議そうな顔で見た。
783L.O.D:01/12/21 16:45 ID:nnBdiOYt
「ののって呼んでいい?」
「いいですよぉ」
「私はなんて呼んでもらおっかな」
「んー・・・・・・」
「なにがいいだろ」
「さやりん」
「お、なんかくすぐったい感じ」
「さーやりん」
辻がふざけたように甘い声で
そう呼ぶと、市井は満面の笑みを浮かべる。
「それでいっかー?」
「私の事も呼んでくださいよぉー」
「敬語もダメー」
「えー、じゃぁー呼んでー」
「のの」
「へへぇ」
くだけたような笑顔、
2人は手をつないで帰る。
途中で寄ったコンビニエンスストア。
2人で棚を見る。
辻がシュークリームをじっと見てた。
「食べる?」
「あ、、ダイエット中だから、、、」
「今日は記念日。おごってあげるから」
市井はそれを二つ手にレジへ向かう。
華奢な身体。
その背中に、胸が痛む。
(これが恋なのかな、、、?)
「のの、行くよ」
ボーッとしてて、声をかけられるまで気付かなかった。
走っていって、手を握る。
784L.O.D:01/12/21 16:46 ID:nnBdiOYt
コンビニの前。
コンクリートの段差に座る。
市井は袋を捨て、シュークリームをくれる。
「いっただきまーす」
1人1個。
辻はひさしぶりの甘いものに
心がウキウキしてくる。
一口食べると、ちょうどいい生クリームと
カスタードクリームの甘味が広がっていく。
皮もいい感じに焼けてて、良い。
市井の顔を見ると、口の周りにクリームがついてる。
「さやりん、クリームついてる」
不意に顔を近付ける。
(今、キスしたらクリームの味がするのかな、、、)
そんな事をフと思ってると
市井は驚いたらしく、身体を強張らせてた。
シュークリームを持ってる手とは
反対の手を市井の身体に添えて
唇を奪う。
それは思い通り、クリームの味がした。

その後の帰り道、2人はなにもしゃべらず
ゆっくりとした足取りで歩く。
そんな時間も、ただ手をつなぐ事だけで
市井の温もりがそこから伝わってきて
嬉しくなってくる。
家の前。
お別れの時間。
「じゃ、またね」
「ばいばい、さやりん」
「じゃなー、のの」
道の角を曲がって、姿が見えなくなるまで
手を振った。
そんな夜。
785ねぇ、名乗って:01/12/21 17:06 ID:OKEwacci
おもしろすぎる。
ヤッスーの使い方が(・∀・)イイ !
786ねぇ、名乗って:01/12/22 00:39 ID:/PRQfG3R
hozem
787名無し娘。:01/12/22 03:28 ID:LFAt59fg
くすぐったいなぁ(w
788名無し募集中。。。:01/12/22 07:19 ID:4TGYcde+
もう、とろとろに溶けそうだよ・・・
789ねぇ、名乗って:01/12/22 07:25 ID:TNcE9Ftd
なんかしらんが萌え〜(w
790L.O.D:01/12/23 01:55 ID:5Lp2pqeC
吐きそうなほど、忙しい保全(藁
791ぼの ◆BONOl.Ok :01/12/23 02:03 ID:77I67jC8
旅行帰りsage
792L.O.D:01/12/23 10:13 ID:A0WOjqVp
タクシーに飛び乗った保田は
考えられる限りの後藤の行動をシュミレートする。
その中で得られた答えは
・・・・・・どれも確証のない物ばかりだった。
きっと自分の所にはやってこないだろう。
吉澤の所に行くだろうか。
保田は吉澤の気持ちも知っていた。
一つの願いを込めて
電話をしてみた。
『はい』
「あー、吉澤、保田だけど」
『分かってますよ』
明るい笑い声。
「あんさー、、、後藤がさ」
『?』
「紗耶香にフラれてさぁ・・・・」
『はぁ、、、』
「携帯つかながらないんだよね」
『えっ!?』
「探すの手伝ってくれる?」
『当たり前っすよ!』
「どこにいると思う?」
『地元の友達のとこですかねー?』
「とりあえず、今さ
 あいつの家の方行ってるから。
 吉澤も頼んだね」
『はい』
793L.O.D:01/12/23 10:14 ID:A0WOjqVp
闇を走る。
息が切れる。
辺りを見回す。
いない。
それの繰り返し。
家を飛び出した後
どこにもいない。
足が運ぶまま
探す。
バレーをやっててよかった。
基礎体力だけはある。
深夜の街を疾走する少女、吉澤。
立ち止まる。
静まった街には
車の発進する音しか聞こえない。
人の話声はない。
街灯と時折あるコンビニの光だけが
闇に埋もれそうな街を照らし
走る足下を照らし
沈みそうな気持ちを
救ってる気がして
後藤を思う気持ちはなお膨らんでいく。
好きだった。
いつからか覚えてもいない。
プッチモニになって
仲良くなって
その辺りだろうか
テレビじゃつまらない顔をしてるのに
一緒にいて
笑ってくれた時の笑顔がかわいくて
好きになってたのかもしれない。
「ったく、、、どこ行ったんだよ、、、」
794L.O.D:01/12/23 10:15 ID:A0WOjqVp
膝に手を置き、息を整える。
結構、遠くまで来ていた。
ビニール袋のガサガサという音が聞こえて
顔をあげると
後藤がアイスキャンディーをしゃぶりながら歩いてた。
吉澤に気付き、走り出そうとしていた。
「ごっちん!!」
「やっ・・・・・・」
空いてる手を捕まえて
こっちを向かせた。
泣き腫らした目。
頬についた幾筋もの跡。
「なにやってんのさ・・・・・・」
「・・・・・・」
「携帯つながらないし」
「・・・・・・」
「保田さんが心配して、電話くれたんだよ」
「・・・・・・」
隙あらば逃げ出しそうな勢いの後藤を見兼ねて
吉澤は力づくで抱き締める。
「くぅっ、、、」
「なんで私のところに来てくれないのさぁ、、、」
「・・・・・・」
「友達でしょ、、、」
「うん・・・・・・」
「なんで来てくれないのさ、、、、」
後藤を抱いてた腕に力が入らなくなって
吉澤は泣き出してしまう。
なぜだか悲しくなってきた。
後藤に選ばれなかった。
なんか悔しくて
自分の思いとは裏腹に
後藤は自分の事をあまり好きじゃないのかとか
考えてしまって
道の真中で泣き崩れる。
「よっすぃー・・・・・・」
「うぅっ、、、ひくっ、、、、」
「ごめん、、、」
「ひっく、、、、うぁっ、、、、、」
「ごめん、、、ごめんねっ」
泣き止まない吉澤につられて
また涙が溢れ出す後藤。
しゃがみ、何をするでもなく
ただ泣いていた。
手から滑り落ちたアイスキャンディーは
真夏の暑さに少しずつ
コンクリートの上で溶けていた。
2人の涙もそんな風に
混ざりあって溶けてしまえれば
どんなに楽だろう。
思う者と思われる者
だけど、気持ちはすれ違ったまま
ただ涙は流れていた。
795L.O.D:01/12/23 10:19 ID:A0WOjqVp
ひさしぶりに更新出来た・・・・・・
ちょっと休憩で紺野SPでも見よ。
796L.O.D:01/12/23 12:23 ID:A0WOjqVp
レコーディングスタジオ。
市井の復帰のためのアルバムは少しずつ出来ていた。
別な仕事を終えてやってきた中澤が
スタジオに入ってくる。
「おはようございまーす」
「おはよう」
荷物を市井の座るソファに置いて
隣に腰掛ける。
「おはようさん」
「うっす」
「で、どうなのよ」
「なにが?」
「辻」
中澤はペットボトルのお茶を飲みながら
市井を見ると
彼女は頬を染めていた。
(ちきしょう、かわいいや)
市井のファーストキスを奪ったのは自分。
あの時も恥ずかしくて、頬を染めてたこの子。
いつもは、ちょっと男言葉で粋がってるのに
そういう事は恥ずかしがり屋で
そのリアクションが好きで
何度もキスした。
その内、市井も慣れてきて
しようとすると受け入れるのだが
やっぱりその度に頬を赤くして
そんな純情さを忘れないでほしいと
いつも思ってた。
それは、中澤にとって恋愛ではなかったが
メンバー愛ともまた違うものだった。
まるで母親のような、姉のような気分。
やはり市井は少し特別な人だったかも知れない。
797L.O.D:01/12/23 12:23 ID:A0WOjqVp
「最近、会えてないし、電話もなかなか出来なくてさぁ」
「気つけやー、寂しくて、加護辺りとくんずほぐれつしてるかもよ」
「くんずほぐれつって、もー、、、」
「圭織も辻の事好きやしなぁーー」
「そうなの!?」
「あいつなぁ、抱いて寝ると気持ちいいねん」
「えっ!?寝たの!!?」
「ちょうどいい感じにフカフカしてな、、、
 なっちもよかったけど。
 でも、やっぱサイズ的に矢口が一番やな」
「・・・・・・裕ちゃん」
つっこむ気も失せて
市井は苦笑した。
中澤裕子とはそういう人だ。
大人の余裕というやつなのだろうか
メンバーにキスしまくって
酒に酔えば、甘え、
時には真面目に怒って
本気で抱き締めてくれた。
涙もろくて
感動屋で
かわいい人。
「ま、うちはさ、紗耶香を応援するよ」
「へへ」
「鮭も海へ旅に出て、生まれた川に戻ってくる言うしな。
 やっぱこう色々な恋愛を経験して、最後は、、、、」
市井のグロスのついた唇をそっと
艶やかな紫に彩られたネイルの指で
撫でていく。
「うちのところに来るんやで」
「なんでだよ」
「いやなん?」
「矢口いるだろぉ。浮気になっちゃうぞ」
「矢口はあれやねん。ぬいぐるみみたいなもんやねん」
「なんじゃそりゃ」
中澤は立ち上がり、背伸びした。
「中澤さん、行こっか」
「お願いしまーす」
ブースに入る前に振り返って、一言。
「紗耶香」
「ん?」
「がんばりや」
798L.O.D:01/12/23 12:51 ID:A0WOjqVp
仕事帰り。
静かなバー。
芸能人も結構来てるらしくて
娘。がいても騒ぐ人などいない。
安倍としては、どちらかというと
居酒屋みたいな雰囲気の方が
好きなのだが
誘ってくれた飯田の意向に合わせた。
まぁ、こんな雰囲気で飲むのも
たまにはいいかも知れないし
嫌いってわけでもない。
「で、話って?」
リーダーになってからの飯田は
いつも気を張ってて
頑張ってた。
「あのね、、、」
「うん」
「圭織、紗耶香好きだったのね」
「うん」
「ずっと」
「やめてからも?」
「うん」
「圭織、バンドの人とかと付き合ってたじゃん」
「でもね、どっかで紗耶香の事が好きだったの
 夢に出てきたりとかね」
「ふーん・・・・・・」
口には出さない。
安倍も本当はそうだった。
寝る前のほんのちょっとした瞬間
あの頃と同じように
隣に紗耶香がいて
ちょっと手を握ったりして
居てくれたら
幸せな一時だった。
「おかしいよね」
「おかしいかな?」
799L.O.D:01/12/23 12:52 ID:A0WOjqVp
互いの顔は見ないで
ブランデーの収まってる棚に映る
自分達を見てた。
「最近ね、ちょっと収まってきたの」
「そっか」
「でもね、たまに寂しくなっちゃうんだ」
「うん」
「もう忘れるべきだよね」
「ねぇ」
安倍はフと問いたくなった。
「辻ちゃんの事は好きだったの?」
「え」
「入ってきた時、すごくかわいがってたじゃん。」
「あー」
「最近、あんまり話してないし」
「だってさ」
と、つぶやいて
飯田は俯き
言葉を濁した。
安倍は次の言葉を催促する事なく
間を持たせるように
カクテルを飲む。
少し辛め。
そんな気分だった。
甘い酒で酔うより
こんな話の時は
こういう味がいい。
「辻は紗耶香の物だから」
楽屋で嬉しそうに
紗耶香の事を話す辻。
今日は口が滑って
さやりんなんて呼んでた。
石川と吉澤にそれを突っ込まれて
照れていた。
ただのお子様から恋をする女の子の顔になっていく。
自分達もそんな事があったのだ。
そして、今、ここにいる。
「そだね」
安倍は短く答えた。
800ねぇ、名乗って:01/12/23 23:42 ID:vPXAyV6C
やっぱりいいね。
801ねぇ、名乗って:01/12/23 23:43 ID:vPXAyV6C
すまない。sage
802ねえ、名乗って:01/12/24 22:06 ID:IJxWiZGi
下がるの早いきがする・・・
とりあえず保全
803ねぇ、名乗って:01/12/25 00:59 ID:aKeRWSQf
dat逝き阻止
804L.O.D:01/12/25 10:29 ID:cXMRbdjA
移転したのに気付かないで、あせったクリスマスの朝、sage
805ねぇ、名乗って:01/12/25 16:50 ID:fXTT8aY0
dat逝き阻止age
806L.O.D:01/12/25 18:19 ID:9uC5F2NF
移動中のバス。
辻はここぞとばかりに市井とメ−ルのやり取りをしてた。
向うの仕事も本格的に始まってきて
連絡すらつかない事もしばしばで
こんなリアルタイムでメールできるなんて
ひさしぶりの事だった。
周りはみんなMDを聴いたり
静かにしてる。
隣の加護も目をつぶって
黙っていた。
市井からの言葉は少し甘ったるい。
頬がゆるんで微笑んでしまう。
そうこうしてる内に
次の現場に到着して
メイクも済み
飯田のかけ声。
「はーい、みんな行くよー」
加護がまだ携帯を握る辻の袖を引っ張る。
「行こ、のの」
「あー、、、」
「みんな、行っちゃう」
「うん、、、、、」
途中まで打たれたメール。
液晶は辻がいなくなった後も
輝いて、後に消えた。
807L.O.D:01/12/25 18:20 ID:9uC5F2NF
「辻ー?」
「あい?」
「お腹空いたかー?」
無言でうなづく。
ハロモニの収録中。
中澤はおかしそうに笑っていた。
「話はちゃんと聞いててやー」
「・・・・・・」
中澤の言葉通り。
今、まったく聞いてなかった。
携帯が気になってた。
ばいばいって言えなかった。
心配してないだろうか
辻の顔が曇る。
「・・・・・・のの」
隣にいた石川はそっと手を握った。
辻は気付き、石川を見る。
そして、俯く。
本番中だから泣かない。
次に顔を上げた時は
少しだけ笑っている。
でも、石川は手を離さないでおいた。
808L.O.D:01/12/25 18:20 ID:9uC5F2NF
案の定、楽屋に帰ってから
飯田に呼ばれた。
「恋愛するのはね、すごい大事な事だとね
 圭織、思うの。恋愛は大事。」
「あい」
「だけどね」
何もしゃべらない空白の時間が怖い。
前はそんな事なかったのに
最近、悲しみが襲ってくる。
何もしないでいると
なにやら不安な心が押し迫ってきて
どうしようもなくなる。
そこから色々な事を考えてしまう
お仕事の事も市井の事も
色々・・・・・・
「やっぱりお仕事だからね」
「・・・・・・」
「のの?」
涙が出てきたのに、自分でも気付かず
ただ頬を流れていった。
「いいらさんっ!」
そのままでいると
真っ暗な海に1人投げ出されてしまうような
暗黒の闇が待っていて
なりふり構わず
今、自分が怒られてる状況であろうと
飯田に抱きついた。
それしか術がなかった。
飯田は優しく頭を撫でてくれる。
「圭織の言った事分かった?」
何度もうなづく。
本当はそんな事どうでもよかった。
「ごめんね、泣かせちゃって」
きっと中澤だったら、
『なに、泣いてんねん。
 泣いて済むとでも思ってるんか
 おい、こら、顔上げや』
とかって言われるところなのだが
飯田はそうはしない。
「どうして泣いちゃったの?」
「んっ、、、、悲しくて、、、、」
「なにが悲しいの?」
「わかんな、、、いけど、、、、」
「泣いていいよ」
そう言って、飯田はより強く
辻を抱き締めた。
809L.O.D:01/12/25 18:22 ID:9uC5F2NF
sageでもdat逝きは防げるわけで。
っていうか、下がるの早っ!!
810名無し娘。:01/12/25 22:53 ID:APwWJkUD
>>L.O.D

そろそろ新スレ立てたら?
811L.O.D:01/12/25 23:01 ID:9uC5F2NF
楽屋に戻ると
みんな帰る支度をしていた。
自分の携帯を手に取ると
市井からの返事は来ていなかった。
(怒ってるのかな)
しゅんとしていた気持ちがさらに弱まる。
(のの・・・・・・)
石川はそんな辻の様子を危惧していた。
この頃、特に食べるのも自制してるみたいだし
お仕事中にも時折、楽しくなさそう
というより、辛そうな顔をする事もしばしば。
気になっていた。
ちょうど近くに矢口がいた。
「矢口さん、矢口さん」
「なに?」
「あのぉ、御飯行きませんか?」
「石川のおごり?」
「なんで、矢口さんにおごらなきゃいけないんですかっ!」
「チェっ」
小さく舌打ちして、すねたような顔の矢口の耳元に
顔を近付けて囁く。
「ののが心配なんです」
「あー、、、」
「矢口さんも気になりません?」
「まぁね」
「ね、だから、ののも誘って」
「おぅ、分かった。私、タクシー捕まえるから」
「のの連れて、玄関行きますね」
「うん」
矢口がサングラスをかけ、荷物を手に楽屋から出ていく。
石川は頃合を見て
辻に声をかけた。
「のーの。」
「あい?」
「御飯食べに行くよ」
「え?」
812L.O.D:01/12/25 23:02 ID:9uC5F2NF
「矢口さんと焼肉行くんだけど
 ののも一緒にと思って」
「行くっ」
最近、外で食べたといえば
弁当ばかりで
お店に行くなんてしばらくぶりな気がする。
「じゃ、早く用意して」
「うん」
石川は嬉しそうに鞄に持ち物を詰める辻を見て、ちょっとだけ安心した。
片付け終わると、石川の腕に腕をからませる。
「市井さんに怒られるぞ」
「へへぇ」
どれだけ嬉しかったのだろう。
だけど、少しだけその気持ちが分かる。
仕事は日増しにきつくなってる。
ミニモニ。もやってる辻はきっと
自分より量としてはいっぱいしてるし
それだけストレスも溜まる。
辻にとって食事とは唯一の楽しみともいえる趣味であり
ストレスを吐き出すための行為だったのだろう。
それが半ば禁止される状況で
さらに市井に会えないとなれば
どんなに辛かったのか。
玄関に矢口が見えると
スキップして飛んでいき
身体ごとぶつかっていく。
「いったいなぁ」
「えへへ」
痛い痛いという矢口の顔は笑ってて
それを見て、辻もまた笑ってる。
矢口と石川の目は合う。
元気そうな辻の姿が2人とも嬉しかった。
813L.O.D:01/12/25 23:06 ID:9uC5F2NF
この小説終了→新スレ移行という流れで考えてたんだが
もうそろそろ移行した方がいいのだろうか?
814名無しさん:01/12/26 06:10 ID:Ax9Mi8Is
>>808
軽く泣きそうになっちゃいました。
新スレ立ててもいいんじゃない。
815アルマーニ濱口 ◆2ggkL5EU :01/12/26 06:22 ID:1g/VP5Cy
ここは感想スレにして、新しいスレたれましょ
816L.O.D:01/12/26 14:30 ID:8ffKt2p+
スレたてて更新までしておいて、
こっちに張るの忘れてた、、、


http://tv.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1009338054/l50
817:01/12/27 08:59 ID:e4aCmebG
新スレおめ(略
「ののちゃむ」このスレの残りでは足りないほど
長編ってこと?
読むほうとしては喜ばしい(w
818ねぇ、名乗って:01/12/27 10:52 ID:RPUu6rhW
819トロピカ〜ル名無して〜る:01/12/28 03:34 ID:lh2PPkTh
え?新スレたってんの?
820ねぇ、名乗って:01/12/29 23:57 ID:C8H/ydC9
たてたみたいですね
821ねえ、名乗って:01/12/30 01:50 ID:Qr/1Ic+7
保全したほうがいいの?
822名無し娘。:01/12/30 03:24 ID:UKSEhS8i
>>821

しなくて良いだろ。
823L.O.D:01/12/30 22:39 ID:WyUwPEhm
保全しても、何も出ないよ(藁)
このままdatに送ってあげちゃってください。
とかなんとか言いながら、更新しちゃってるし
824ねぇ、名乗って:01/12/31 12:50 ID:jE4kiZde
age
825旧♪:02/01/02 14:19 ID:EePtVRrD
「ののちゃむ」完結まで保全
826名無し募集中。。。
hozen