銀河系の遥か彼方、地球から6万光年の距離に惑星Ziと呼ばれる星がある。
そこはうち続く戦乱と、荒ぶる自然の世界。
人々は、この星に棲む巨大なメカ生体-ZOIDS-を戦闘機械獣に改造し、今日も戦場へと赴く。
この戦いに勝利することが、永遠なる平和を勝ち取るための唯一つの方法と信じて…。
空前の大戦争を記録する為に作られたゾイドバトルストーリー。
しかし、そこには語られる事のなかった多くの物語がある。
歴史の狭間に消えた物語達が本当にあった事なのか、確かめる術はないに等しい。
されど語り部達はただ語るのみ。
故に、真実か否かはこれを読む貴方が決める事である。
過去に埋没した物語達や、ルールは
>>2-5辺りに記される。
ルール
ゾイドに関係する物語であるならば、アニメ、漫画、バトストなど何を題材にしても可。
舞台となる場所、時間などには、特に制約はありません。
ゾイド板ならではの自由で柔軟な作品をお待ちしております。
ただし、例外として18禁描写はご遠慮下さい。
鯖負担になるので、【450〜460KB】で今後次スレを用意する事になりました。
よろしくお願いします。
投稿された物語の感想等も大歓迎です。
その頃、はるか上空では共和国空軍対帝国空軍の制空権を掛けた戦いが繰り広げられていた。
制空権を手に入れた方が陸での戦いに置いても有利になる。この戦いは両軍の命運もかかった
大切な一戦であった。共和国空軍はディメトロプテラやフェニックス等が主力。帝国空軍は
シュトルヒ・ロードゲイル・そして無人のフライシザース部隊を主力としている。空戦能力、
そして物量という意味では無人機であり、低コストで量産できるフラシザースを所有する帝国空軍の
方が遥かに優っている。しかし、実際の戦況は共和国空軍が圧倒的に有利であった。
その要因は共和国軍が空軍の新たな主力として配備したディメトロプテラにあった。
ディメトロプテラの翼はマグネッサーウィングであり、強力なレーダーでもある。この翼から
発せられる強力なジャミング波が帝国部隊の発射するミサイルなどの誘導兵器のロックを解除し、
その弾道を曲げてしまうのだ。シュトルヒの持つ破壊力、追尾性共に優秀なバードミサイルでさえも
例外ではなかった。しかし、それだけではない。帝国空軍の大多数をしめる、フライシザースなどの無人飛行キメラブロックスもディメトロプテラのジャミングにより、ロードゲイルやシュトルヒから
発せられるキメラコントロールウェーブを遮断され、次々に力を失って墜落していったのだった。
この空戦は共和国軍の圧倒的有利で進んだ。しかし、帝国軍は撤退せず、戦い続けた。
「お前達が笑っていられるのもここまでだ。セイスモサウルスのゼネバス砲で撃ち落とされてしまうがいい!!」
帝国空軍パイロットは誰もがそう考えていたのだ。セイスモサウルスの支援砲撃さえあれば、
この戦況は覆せる。されもがそう思い、戦い続けていたのだ。
しかし、セイスモサウルスの支援砲撃はいつまでたっても来ることはなかった…。
プテラノドンモードで空戦を行っている物とは別に、ディメトロドンモードになって陸上で
ジャミングを行っているディメトロプテラも存在し、そのジャミングによってセイスモサウルスの
遠距離砲撃を妨害し、さらにはそのセイスモサウルス部隊もマオらによって各個撃破されていたのだ。
そんな事も知らない帝国空軍は最後までセイスモサウルスの支援を信じ、最期まで戦い続けたのであった。
「いや〜…最初は出来ないと思った事も、実際やってみれば結構出来る物ね〜…。」
いつの間にかに全てのセイスモサウルス部隊を撃破した後、マオはバナナを食べ、一休みしながらそう言った。
「あの新型ブロックスも結構馬鹿に出来ませんね〜…。」
ラインもそう呟く。マオ達が酔狂かつ、無茶で絶望的なこの任務を成功できたのは何より、
ディメトロプテラのジャミングが帝国軍を攪乱してくれていたという点も大きかった。むしろ、これがなければ任務は絶対失敗していただろう。
「ほんじゃま〜、休憩はこれまで。いったんジャイアントトータスに帰還して補給した後、
本隊と合流して首都奪還戦に臨むわよ。ハッキリ言ってこれからが本番よ!!」
マオはそう叫びながらバナナの皮を地面に投げ捨て、開けていたカンウのコックピットハッチを閉め、
カンウを発進させた。
「了解!!」
ラインとサリーナもそう叫び、それぞれのゾイドを発進させ、カンウの後を追った。
3人と3機が立ち去った後、ライガーゼロイクスを中心とする帝国軍の幻影部隊が山岳地を
疾走していた。共和国軍の強力なジャミングにより、通信機器は役に立たない事に気付いた前線の
ある隊の隊長が幻影部隊に直接伝書を頼んだのだ。その伝書は前線の状況を明確に示した、
帝国軍の命運も左右する程の大切な物だった。責任は重大である。それ故に、強力な光学迷彩を
装備したライガーゼロイクスがその伝書役の白羽の矢が立ったのだ。光学迷彩で姿を消したまま、
幻影部隊は音もなく山岳地を疾走する。その時だった。彼らの走る先に1つのバナナの皮が
落ちていたのだ。それは、先ほどマオが地面に投げ捨てたバナナの皮であった。
そして、幻影部隊の先頭を走っていた一機のライガーゼロイクスの右前足がそのバナナの皮を
踏んづけてしまった。案の定、イクスはそのまま滑ってしまった。300キロ以上の速度で
疾走していたという事も災いし、イクスの体は宙を舞った。それだけではない。その後方を走る
他のゾイドも、その突然の異変に対処できず、ドミノ倒しの様にもの凄い速度で激突し、団子の様に
転がりながら、そのまま近くの崖から落下してしまったのだった。そして、崖の下で爆発音が響き渡った。
ゴミはゴミ箱へ
>>1さんお疲れさまです。
>>前スレの320番さん。
>既存のゾイド世界にとらわれないゾイドストーリーが読みたいなりと炊きつけてみる。
確かにそう言うのをやってみたいとも思わなくもないです。
自分も以前に主人公達が、別次元の惑星Zi(こちらの惑星Ziとは違う発達の仕方をした世界)
に飛ばされてしまうといういわゆる異世界物とかも考えたこともあったのですが・・・
そういえば、ワイツタイガーなどが伝説ゾイドという設定らしいので、それも結構いいネタになったり?
とか考えていたり・・・
【第一章】
砂塵吹き荒れる真夜中の荒野を、照明を槍の代わりにひたすら駆け抜けていく一団。
数十匹にも及ぶゾイドの群れ。
中核を為すのは鋼の鬣獣・シールドライガー。いずれも両脇腹に巨大な銃器を取り
付けた状態ながら、特に疲れた様子も見せず、叩き付ける嵐をものともせず勇壮に走
り続けている。そして彼らに取り囲まれながら、悠然と地表を滑走する巨大なゾイド
が一匹。長さは民家二軒分もあるシールドライガーの更に五倍程、高さは二倍半もあ
る。巨大な太鼓のようなものを背負い、四肢はなく、腹部の大半を地面に接地させな
がら…つまり腹這いのまま進む姿が何より特徴的なこのゾイド、蝸牛仙機ホバーカー
ゴという。
ホバーカーゴは砂塵を、自身の数倍もの高さにまで巻き上げて進んでいる。東方大
陸に伝わる秘術を表す「仙」の一字を徒名に冠しているのは、滑走の様子が太古より
伝わる飛行術を使っているかのように見えるからだ。
二本の触角が伸びるこのゾイドの頭部内には艦船のブリッジを彷佛とさせる操縦室
が広がっており、ヘリック共和国謹製の軍服を着た十名以上のスタッフが計器とモニ
ターを睨んでいる。中でも最も厳しい視線を注いでいたのがこの部屋中央の座席に着
いた年輩の男で、額に彫り込まれた皺の険しさは他のスタッフとは一線を隠すと言っ
て良い。
だがふと訪れた、彼の表情が心持ち緩んだかのように見えた一瞬。スタッフの一人
が告げたのだ。「隊長、目的地まで二百キロを切りました」…と。室内が多少どよめ
いたこの時、彼はおもむろに机上のマイクを手にとった。
「諸君、聞いての通りだ。この強風下では思い通りの速度は上げられないが、それで
も夜明け前には目的地に到着するだろう。
今回の我らが任務に対し、言われ無き非難の声が多数上がったのは事実だ。
だが、それが何だと言うのだ。我らには信念がある。きっと…きっと、我らが輸送
した物資は本来の用途のために活用される。
だから必ずやこの任務、成功させようではないか。全員生きて喜びを分かち合おう
ではないか」
その言葉に耳を傾けたスタッフそしてシールドライガーのパイロット達は、皆一様
に敬礼を返したのである。
しかしこの荘厳とも言って良い雰囲気は、ものの数分も長続きはしなかった。
オペレーターの一人が感知した、異変。
「隊長!十一時の方向より中型ゾイドが一匹、接近中です!ホーン系民間用ゾイドと
思われますが…な、なんなんだこいつは!?」
「どうした、狼狽えず正確な情報を伝えろ!」
「…推定時速300キロ!それに、ゾイドコアの異常過熱を確認!既に三千度を越え
ています!」
ややどよめいた室内だったが、隊長と呼ばれた男は一喝して動揺を打ち消す。
「総員、迎撃用意!
アルゴ3、減速。シールドライガー隊は後方へ陣形を展開。
このゾイドに対し、警告せよ」
慌ただしく対応するスタッフ。
シールドライガー隊は速やかに後方へ移動し、一斉に両脇腹の銃器を向ける。
「警告する、我々はヘリック共和国軍だ。貴機に対し、速やかな進路変更を求める。
応じない場合迎撃の用意がある。繰り返す、我々は…」
「ちょっと聞いてくれそうにないぜ、隊長!」
オペレーターの通信に割って入るような形で突如モニターに表示された映像。ヘル
メットで覆われたパイロットの険しい表情。
「どうした、シールドライガー隊!?」
「ゾイドの頭部に異常を確認した!」
切り替わる映像。シールドライガー隊の一機から送信されたもの。そこに映し出さ
れたのは疾走するホーン系民間用ゾイドの、グシャグシャに潰れた頭部の有り様だ。
「見ての通りだ。威嚇発砲は省略し、速やかに迎撃する必要がある。
…こいつは、特攻機だ!」
室内を走る緊張。だが、隊長の決断は速かった。
「銃撃を許可する。ゾイドコア変調・爆発の可能性がある、脚部を狙い歩行を止めよ」
「了解!シールドライガー隊、射撃用意!」
身構える鋼の鬣獣達。
特攻機と目されるこのゾイドが瞬く間に脚部を粉砕され横転すると、室内の誰もが
予想していた。
しかしこの直後に起こった、彼らの予想の範疇を遥かに越える出来事。
どこからともなく聞こえてきた鳴き声。…いや、これは歌声なのか。
ごく簡単なメロディを伴った高い、高い金属音。
「な、何だ…?」
恐らくは百戦錬磨であろうシールドライガー隊の隊員達でさえもが、この不思議な
鳴き声に思わず聞き入ってしまったことを責める意見はあるかもしれない。…だが、
彼らの名誉のために述べておこう。鳴き声を聞いた時点でこの後の惨劇を回避する術
はなくなっていたのだから!
シールドライガーが、崩れ落ちていく。一匹、又一匹と。
「う、うわぁっ!?」
慌てて姿勢を戻そうとするパイロット達であったが、彼らの相棒はいずれも激しく
痙攣し、のたうちまわるばかりだ。
「応答せよ、シールドライガー隊!?」
「こっ、こちらシールドライガー隊っ!…うっ、わっ、きゅ、急に、こいつら…!
な、鳴き声だ!あの妙な鳴き声の、主を!ぐっ、がはぁっ!」
映像はそこで途絶えた。
と同時に、室内の照明、モニター・各種計器類など、ありとあらゆる光源が輝きを
失っていく。
「な、何が起こっているというんだ…!?」
立て続けの異変に室内の誰もが疑問を差し挟もうとしたが、その機会は最後まで与
えられなかった。
痙攣を続けるシールドライガーのコクピット内はパイロットと重力が瞬く間にかき
混ぜられる、まさに地獄と言って良い状態だ。どうにか脱出できた者も見受けられた
が、これだけゾイドが密集し、暴れ狂う中をくぐり抜けるまでには至らず、一人、又
一人と鉄塊の下敷きとなっていく。
そんな中を、駆け抜けていくホーン系民間用ゾイド。真っ赤に焼けただれる表皮!
やがて鳴り響いた轟音は、吹き荒れる嵐でさえもかき消すことができなかった。
ゆっくりと、ホバーカーゴが倒れていく。…二度目の轟音は砂塵のみならず荒野を
も揺らし、続けてこのヘリック共和国が誇る輸送ゾイドが炎上する爆音へと繋がって
いく。
連鎖していく破滅の音。爆炎と煙が砂塵に煽られ追随する中、上空からゆっくりと
舞い降りてきたもの。…鳥だ。しかしこの鳥の姿は不自然だ。何故なら凡そこの惑星
Ziを生き抜く上では便利であろうはずがない、その全身は金色で彩られていたのだ。
恐るべきことにこの鳥は、爆炎の中を少しも怯むことなく優雅に飛び回ってみせる
とやがて火の手が上がる辺りに着地し、嘴で突つき、ホバーカーゴの身に纏う鋼鉄の
装甲を引き裂き始める。
程なくして顔を覗かせたもの。…大量の、余りに大量のコアブロック!一体これで
何匹のブロックスゾイドを組み立てることができるだろうか。
金色の鳥があの禍々しい程に高い金属音で歓喜の旋律を奏でる姿を、瀕死のシール
ドライガーの最後の一匹は救助信号を送ることもできぬまま、憎々しげに睨み続ける
より他なかったのである。自ら殺したに等しい主人を頭部コクピットに抱いたまま…。
『…昨夜未明、リゼリア山脈付近を運行中の共和国軍輸送部隊所属ホバーカーゴ「ア
ルゴ03号」が消息を断ちました。
アルゴ03号は共和国軍のバーメット復興活動支援のため、ゴジュラスギガ十匹分
に相当するコアブロックスを輸送中でした。スポークスマンによればゼネバスゲリラ
に襲撃を受けた可能性もあるとして、巡視ゾイドなどを派遣し捜索中とのことです。
輸送ゾイドの遭難事件は、襲撃と断定されたものも含めますとここ十日間で既に六
件発生しており、一刻も早い対策が待たれるところです…』
アスファルトで鋪装された広場に佇むビークルの機上、うんざりするラジオのニュ
ース放送をお茶請けにする男女。…ビークルの操縦席に乗った女性は、紺色の背広で
身を固め、長い足を組みながら両手で水筒のコップを口元に寄せている。肩にも届か
ぬ黒い短髪にやや面長で顔立ちが端正な彼女の表情は、残念ながらサングラスに隠さ
れ伺えない。一方ビークルの脇で背を向けて立った男性は、地味な深緑色の背広を意
外な程華麗に着こなしつつ、紙コップを片手に耳を傾けている。中肉中背、縁無し眼
鏡を掛け、髪の手入れも行き届いた中々の優男。
遠目に見た時少々お似合いとは言い難い妙な雰囲気が漂うこの男女の会話は。
「又ですか…。相変わらずですね…」
縁無し眼鏡の若い男性アルテ・ヤンバーはそう言って一飲みする。
「コアブロックは『灰色の支援物資』。標的にされても仕方ないわ」
男装の麗人エステルの返事は素っ気無い。
今の時代「共和国が紛争地域の復興支援のためにコアブロックを提供する」と言っ
た時、彼らの決断は一方では賞賛され、一方では確実に非難の的に晒されるだろう。
…そもそも完全人工の金属生命体「ブロックスゾイド」を組み立てる際、心臓部とな
るゾイドコアの代用品として作られたのがコアブロックだ。これを中心に各種パーツ
を接続すればブロックスゾイドは完成する。コアブロックは安価で大量生産されるた
め、ゾイド一匹を年月を掛けて育て上げるよりは遥かに安上がりだ。そしてこの仕様
故に、目的地にコアブロックと各パーツをバラで搬入すれば、所謂「生命体」では困
難な大量のゾイドを送り込むことが可能である。しかし一方、コアブロックは内部に
膨大なエネルギーを蓄積する。たった二個で大型ゾイド一匹を消滅させる程の熱量に
匹敵するため、これ自体を弾薬に転用する技術が生み出された。所謂「ゾイドコア砲」
だ。
つまり「紛争地域へのコアブロックの提供」とは、「武器弾薬の大量搬入」と同じ
意味合いを持ってしまうのである。…仮にコアブロックと同時に搬入されたパーツが
建築など明らかに復興支援に向けられたものであったとしても、だ。
「でも…ね、アルテさん」
「…?」
「一連の事件、全てがゼネバスゲリラの仕業と考えるのは早計かもね」
エステルはそう言って、水筒のコップを少しだけ傾ける。柔らかな日差しと、彼女
の美貌が映る水面。
「それは又、どうして?」
振り向くアルテ。こういう時に続く彼女の言葉は知的好奇心を大いにくすぐるもの
ばかりだ。
「今や惑星Ziは、歴史が始まって以来の安定ぶりよ。あっちではゴジュラスギガ十
匹分のコアブロックがうろうろ、こっちでは、ほら、何十匹ものゾイドがのほほんと
寛いでる」
彼女達二人の周囲には、ゾイドバトル用のゾイドが点在している。興奮し、いきり
立っているようなゾイドはほんの数匹程度、残り殆どはあくびをしたり午睡を楽しん
だりと、凡そ弱肉強食の世界の生き物とは思えない光景だ。
「でも時として、安定こそが歪みを作るわ。
この光景を見て、餌や宝物がそこら中に散らばっていると考える者は、きっといる。
人だろうとゾイドだろうと関係なく、ね」
『たった今入った情報によりますと、一連の輸送ゾイド遭難事件による復興活動の遅
れを挽回すべく、共和国軍は今日にも大々的な輸送ゾイド部隊を結成・出発させると
発表しました。
輸送ゾイド部隊はオルタ駐屯部隊を中心に構成され、十五時には同地を離れるとの
ことです。繰り返します…』
割り込んできた臨時ニュースを聞いた男女は目を丸くした。
「近いですよ、結構…!西へ百キロ行けばオルタです」
地球は日本の事例なのが誠に興醒めだが、東海道本線東京〜熱海間が104.6キ
ロあるという。普通列車で約110分掛かる、その程度の距離だ。
「それにしても、性急な話しね」
「た、確かに」
「アルテさん、誰でも成功が続けば大胆になるものよ?」
「え…」
水筒のコップに口をつけるエステル。やがて離し、見つめた先には。
民家二軒分程もあるゾイドがうつ伏せになり、のんびり午睡の真っ最中だ。異形の
翼二枚と胴体の上半分を覆い隠す程長い鶏冠六本を背負った二足竜。果実のように鮮
烈な赤い体色が印象的なこのゾイド、殺戮を意味する忌わしきジェノの称号を捨てた
我らが魔装竜・ブレイカーである。…そしてその首の辺りに背を預け、これ又相棒と
ともに午睡を楽しんでいる少年こそがギルガメスだ。パーカーを被り、その下には大
きめのTシャツと半ズボン、素足に運動靴とこれ又いつも通りの格好で固めている。
それにしても相棒の寝返りが怖いところだが、このコンビに限っては心配あるまい。
きっとこのゾイドは人間の心音が大好きなのだから。
ブレイカーの胸部・コクピット内。全方位スクリーンに囲まれる中、既にパーカー
を脱ぎ、臨戦体勢に入ったギル。本来なら古代ゾイド人のみが持つ額の「刻印」の輝
きも十分だ。
スクリーンの隅に小さく開かれたウインドウが、午後一時五十分の時報を知らせる。
確認したギルはレバーを握って相棒に起立を促す。
立ち上がった、深紅の竜。背筋を、首や尻尾・羽根や鶏冠をぐいっと伸ばして凝り
をほぐすと大きく息を吐いた。そのすぐ背後にはこのゾイドの数倍は高い城壁がそび
え立っている。一方左脇にはエステルとアルテの乗ったビークルが既に空中浮遊を始
めている。
「それにしても、対戦チーム『ガルカ』のゾイド名は『X』ですか。何とも芝居がか
ってますよね…」
助手席のアルテが右肩に引っ掛けた「端末付きカメラ」と言うべきものを弄りなが
ら話し掛ける。無論本来は隣のエステルを映すためのものだが、これ一つで撮影用小
型ゾイドへの簡単な指令や無線通信などもこなす優れものだ。
「ガルカはファーム『ライガーズ・デン』所属だから、ライガー系ゾイドで向かって
くるのは間違いないでしょう。…その上で、『X』の正体には期待してるわ」
既にサングラスからゴーグルに切り換えていたエステル。ギルには様々なゾイドと
戦い経験を積んでもらうことが大事だと確信している。
二時を回った時計の針。同時に背後で鳴り響くサイレン。
竜の咆哮。うなりを上げて高速回転する全身のリミッター。火花が吹き零れる中、
叫ぶ主人。
「ブレイカー、行くよ!マグネッサー!」
翼を、背の鶏冠を広げると背後に青白い炎が宿った。姿勢を屈め強く地面を蹴り込
むと、そのままスケートで氷上を滑るように、一歩一歩大きな歩幅で駆け抜けていく。
徐々に加わっていく速度。
「…わかってるわね、ギル?」
「相手ゾイドの姿を確認し次第そちらへ画像を転送…でしたよね?エステル先生!」
「ふふ、よくできました。…さあ、気合い入れて行きなさい!」
ルール上試合場中央へは立ち入りできないビークル(部外者と看做される)を尻目
に、ブレイカーはスタジアムの中央へ向かっていった。
『さあイワカナ・スタジアムの第四試合、チーム・ガルカ対チーム・ギルガメス戦が
始まりました!まずは試合前の両チームのやり取りからお伺いしましょう。チーム・
ギルガメス側リポーターのアルテさ〜ん!?』
「…はいっ、こちらアルテです!チーム・ギルガメスと言えばギル選手の『泣き虫』
ぶりが有名ですが、流石に試合前は何事もなく、リラックスした雰囲気のまま定刻を
迎えました。但し気になるのが相手チーム『ガルカ』の使用ゾイドで、エステル監督
との入念な打ち合わせを行なっています」
早速の仕事にマイクを握り占めながら大声で答えるアルテ。隣で聞いていたエステ
ルが思わず首を向ける。
「泣き虫って何よ…」
「最近、有名ですよ?『パイロットがあんなに泣き虫なのにこうも強いチームは珍し
い』って」
こんなやり取りがあったことなど露知らず、やがて試合場中央付近に到着したブレ
イカー。両足で地面に大きく弧を描き、砂塵を巻き上げつつ半身になって停止する。
…このゾイドは時速七百キロで疾駆するが不便な点も多い。いきなりこの速度に達す
るわけではないし、同様にいきなり停止するのも難しいため大きな予備動作が必要に
なる。
周囲を見渡すブレイカー。その様子が全方位スクリーン越しにギルにも伝わってく
る。…時折吹く風に視界を妨げられるのが気になるところ。耳をすまして気配を探る
コンビ。
…。……。
微かだが、聞き取れたのは遥か後方。…足音ではない、リミッターのうなり声だ!
このコンビが思わず振り向いた時、視界の奥に確認できたのはゾイドコア反応。但し
ライガー系ゾイドでは想像もできない高温だ。それがこれ又信じ難い速度で向かって
くる。
「こ、こいつ、ブレイカーより速い!?…まずい、伏せて!」
ギルの相棒は伏せると言うよりは転ぶ要領で地面に這いつくばった。…その上を通
り過ぎていく熱源。それは先程のブレイカー同様大きく弧を描きながら徐々に速度を
落とし…やがて停止した。
コンビの目に映ったのは、ところどころ葡萄酒色に染め上げられた不可思議なオブ
ジェだった。黒い鉄塊の先端には鬣状の巨大な兜が、上方にはカマキリかトンボのよ
うに透き通った編み目模様の羽根、そしてその下には長身・漆黒の銃器が二基、無造
作にくっついている。おまけに兜の先端には大理石色の剣、そして槍の穂先がついて
おり禍々しいことこの上ない。そんなわけのわからないものがふわりと宙に浮いてい
た。(そうだ、そう言えば今日の対戦相手はライガー系ゾイドに搭乗してくるんじゃ
なかったっけ?)…ギルは首を捻る。だが丁度そこに、割り込んできたアラーム。他
ならぬブレイカーからの催促だ。
「あ…ごめん、早く送らないとね。それにしても、一体何者…?」
ゆっくり横歩きしつつ睨み付けるブレイカー。相手の出方を伺うと共に、形状がよ
りわかり易い斜めから見た画像をエステルに伝える狙いだ。
「先生!画像、送ります」
狙い通りの構図を頂き、送信するギル。早速アドバイスを受ける…つもりだった。
ところが。
「……そ……は…………ジ……ガ…………」
映像の乱れがひどい。おかしい、先程まではごく普通に連絡できたというのに。高
々20キロほど離れた程度でこんなに映像が乱れるものだろうか?
「先生、どうしたんですか?先生!先生!?」
何度も怒鳴ってみるが、これが不注意だった。突如全方位スクリーンの真正面に広
がるそれは黒い稲妻か!?
ブレイカー、咄嗟の横転。だが稲妻は幾条も伸び、追撃、追撃。一回転、二回転と
深紅の竜もギリギリの間合いで躱しつつ、翼を前方に展開してようやく跳ね返す。
そこで初めて認識できた、黒い稲妻の正体。オブジェの兜の裏側から伸びた、何本
もの管。先端には牙ともかぎ爪とも形容できる鋭利な突起物を備え、カチカチと音を
立てつつ奇妙なうねりを見せるそれらは独立した生き物のようだ。
スクリーンの左上に展開されたウインドウには、蔑むような視線を送る若い金髪の
パイロットが映っていた。不敵な笑みを浮かべながらの彼の口上は如何に。
「名も無き竜とその使いよ。早速成敗してやる。
このガルカ様と、エナジーライガー『メドゥーサ』の手によってな!」
>>1 押忍、スレ立て御苦労さまです!
取り敢えず第一章を投下したのですが、今回予想以上に各章の文章量が多いことに気がつきました(いつも通り?)。
そこで四回に分けて投下します(それでも日曜日の深夜までには投下し終わらないといけない情勢。
月曜日は自分の仕事がかなり忙しくなりそう)。
皆様、どうかよろしくお願いします。
後続のトライフォートレス2機がベルフのトライフォートレスに合流する…。
砲撃はやはり効果が薄くビームやエネルギー弾系の兵器は軒並み翼や各部に存在する透過金属に接触するとそのエネルギーが吸収されていくのを確認できる。
そしてそれは吸収されるエネルギーラインから放出されるエネルギーラインへ流れて行くのも確認できた。
攻撃が少ないだけに初めて確認できた事で先の閃光の原因がこれだとすればエネルギー兵器は全く使用出来無い。
「全く…上手い事嫌な方に流れて行く。おっ!?あそこに居るのは…マイブラザー!元気かい?機体は辛そうだけどね。」
その視線の先には…不運にも?高エネルギー放射を逃れたファインのキメラゴジュラスが居た。
通信機から聞き覚えのあるうるさい声が聞こえてくる…その声に起こされた事で自分が気を失っていた事に気付き慌てて飛び起きるファイン。
「くぅ…気を失っていたみたいでありますね…。しかしそうそう騒がなくても聞こえるでありますよベルフ少佐。」何とか静かにしてもらいたいのだがそうはいかない様だ。
「ヘイブラザー!丁度良い!こいつを使ってくれ。プラズマ兵器普及委員会推薦!プラズマコートアロー!腕に着ければプラズマクローに、その他合計5段変形の優れ物だよ!」
「またでありますか?いい加減別の方に頼んだ方が…」「そう言わないブラザー!君以外戦場で手渡しした物を即使える奴はそうそう居ないんだから…ねっ?」と飼い主に甘える猫の様な声で言う。
これ以上ごねても話がややこしくなるだろう…。「おーい…俺も生きてるぞ…。」扇状に広がる閃光のため完全に照射範囲から外れていたレミントンが無事を誇示する。
更にややこしくなる事を恐れて渋々機体をトライフォートレスに隣接させるとその背中に無駄に装着されていたプラズマコートアローを受け取る。
「そう来なくちゃ!マイブラザー!僕の設計思想は万全だよ!」気分を良くしたかそう言うと気持ちをあっさり切り替えて効率的な砲撃を再開するのだった。
砲撃を再開したとは言え指揮スペースには機体の基本操作のみしか無く砲撃ポッドはレーダー監視と測量と砲撃を一人で行わなければならない。それが2つ有るのだから砲撃手は2人必要になっている。
「…それって分散した方が良いのではないでありますか?」明らかに複数人員のメリットが無いのでファインは前から言っているのだが今回はやけに命中率が高い。
「大丈夫!そんな事も有ろうかと…今度から4人乗りになってちゃんとレーダー手が居るよ!」 その言葉にトライフォートレスを見ると…スカウターポッドとレーダーレドームが追加されていた。
「今度からって…そう言う問題でありますか?」「そう言う問題さ!ブラザー!必要な物は後から付け足せばいいんだ。」 離解し難いベルフの後付け理論とは裏腹に効果は上々の様だった…。
「しかし…効果は薄いな。やっぱり。」幾ら効率的であろうと効果が有るとは限らない…。
「ブラザー!君の矢とレミントンの荷重衝撃砲ならダメージが有りそうだ。何とか地面に引きずり下ろしてくれ。」無茶な注文をベルフは言う。
「はぁ!?こっちにも砲撃は届かないぞ!?」レミントンは言う。「ブラザーの矢なら届くよ。結局矢と言っても撃ち方はリニアキャノンの機構を移植したものだから。」
「と言う事はやっぱり自分でありますか…。」左腕に装備したプラズマコートアローを構える。
「うっ…照準が狭いであります…。」基本的に一部の兵器を除き射撃兵器にはオートロックの機構が有るがこれの有効サイト範囲は非常に狭い。
相手は巨大ではあるがセイスモサウルスやウルトラザウルスの様に簡単に的になってくれる相手では無い。その上飛行している。
今度は獲物をどれにするか迷っている様だがじきに見付かるだろうがしかし見付かってからでは遅いのだ。
必死にサイトを合わせ狙いを定める…狙いは翼の付け根だ。しかしまた狙いが外れ急速にディープフィアーが離れて行く。
「やばいよブラザー!僕らの味方が到着した!予定より速いよ!?計算外だ。」痛い程にタイミングの悪い事だった。
「あらぁ〜とっても大きい方がこっちに向かってきてますねぇ〜。」はっきり言ってとても危ない状況だが至って冷静に?何時もの調子のルディアである。
「あの〜ルディア少佐?これって逃げた方がいいんじゃ無いですか…?」メイアは声を震わせて言う。
「そうですねぇ〜各自散開〜。その後は森に隠れてやり過ごしましょう〜。」その言葉に「無理ですっ!(だっ!)」と一同から突っ込みを受ける。
「あ〜…やっぱりやってるな。」レミントンはぼんやりとした声で言う。「そうでありますね。しかしこれはこれで…。」目標が遠ざかる事で逆に狙いが定まって行く。
「チャンスだねブラザー!」「そう言う事であります!」プラズマコートアローが輝きを増しプラズマと電気を帯びた矢が大した音も無く発射される…。
「これはぁ〜デッドエンドでしょうかぁ〜?」とクロームと正面で構えスタンブレードで斬り掛かろうとしていた所だったが突然相手の背中から光が通り抜けて行ったかと思うとバランスを崩して地表に激突していた。
「良かったぁ〜まだ無事な人が居たんだ。」メイアはほっとしながらミサイルポッドを解放してミサイルの雨をディープフィアーに振らせ始める。
ディープフィアーは必死に翼を動かすが右側の翼は付け根を撃ち抜かれ動かす事が出来無い。不完全な気流はミサイルを防ぐ壁になる事は無い。
激しい爆発音と共に爆炎の中に姿を消すディープフィアー。「メイアちゃんはぉ〜ミサイルがぁ〜大好きなんですねぇ〜。」ルディアの言葉に「はい!やっぱり武器と言ったらミサイル!これに決まりです!」と答える。
彼女のプロトYにはミサイルしか搭載されていなかった。
やがて炎が納まり始めたがやはりディープフィアーは大したダメージを負っていない様だった。
「なんだと!!?共和国軍がすぐそこまで来ているだと!?」
首都に設置された帝国軍司令部にて、旧共和国首都防衛部隊総司令官がそう叫んだ。
「山岳部に配置したセイスモサウルス部隊は何をやっていたのだ!!!」
「先ほどから通信を送っているのですが…応答が有りません!!」
「何だと…?」
オペレーターの言葉に司令官は唖然とした。彼らは知らなかった、共和国軍が配備した、
ディメトロプテラの強力なジャミングがセイスモサウルスの長距離砲撃を封じるだけでなく、
帝国軍の前線情報をも遮断していたのだ。その為、前線で何が起こっているかは元より、
共和国軍が目の鼻の先にまで接近するまで気付かなかったのだ。この事実に、司令部は大混乱であった。
「指令!!第9セイスモ部隊から応答がありました!!」
「何!!?」
オペレーターの1人の言葉に司令官自らが通信機器の前に走る。そして、その通信を聞いた。しかし、その通信の通信状況は思わしくなくザザザという音がほとんどで、その声はよく聞き取れなかった。
そして、唯一聞き取れた言葉はこうだった。
『…………ミド…リ…ア…クマ……。』
「ミド…リ…ア…クマ…?」
司令官は首をひねりながらそう呟いた。
「ミド…リ…ア…クマ…ミド…リ…ア…クマ…ミドリアクマ…。緑の悪魔!!!?」
「緑の悪魔ですと!!!?」
司令官やオペレーター。その場にいたほとんどの人間が青くなった。
「まさか…ヤツにやられたのか…。確かにヤツならやりかねん。」
「しかし、いくらヤツでも全てのセイスモ部隊を倒すなんてマネは出来るわけ有りません…。」
「ならこの状況はどう説明できるのだ!!?」
オペレーターの言葉に、司令官は叫んだ。その時、別のオペレーターが叫んだ。
「司令!!共和国軍が第4防衛線を突破!!首都に接近しつつあります!!」
「何だと…?」
司令官は青くなった。そして、間違いに気付いたのだ。セイスモサウルスの力を過信しすぎたという間違いに…。
「こうなったら…虎の子の主力部隊を出す…。これしかない!!」
司令官はそう決断した。もう共和国軍はすぐそこまで来ているのだ。もうなりふり構って入られないのである。
「ならば拙僧も出撃し申す。」
と、突然1人の男が司令官の背後に現れたのだ。その男はスキンヘッドで、目を硬く閉じた不思議な男であった。
「司令、誰でありますか?あの不気味な男は…。」
「アイツは本国から派遣されてきたギフ=シンライ曹長。何でも軍に入る前は何処かの寺の坊主だったそうだが…。」
司令官に近づきつつそう問いかける副官に、司令官はそう答えた。そして今度はギフと呼ばれる男に問いかけた。
「どうでもいいが貴様、目を開けたらどうだ?寝ていると思われるぞ!」
「拙僧の目は初めから見えておらぬ故、その心配は無用であり申す。」
「…………。」
司令官とその副官は唖然とした。
「貴様…目が見えなくてよく軍人になれたな…。」
「心配ご無用。心の目はしっかりと開いてあり申す。それを証拠に、拙僧の後ろにいるオペレーター。その者は今、右手で頬を軽くかいたであり申す。」
確かに彼の言った通り、彼の後ろにいたオペレーターは右手で頬を軽くかいていた。
「ま…まあいい…。戦力は少しでもあった方がいい。出撃したいのであるならば、出撃するがいい。」
唖然としながら、司令官はそうギフに言う。
「了解し申す。それでは、拙僧はこれにて…。」
ギフは司令官に敬礼を送り、そのまま司令室を後にした。
「本当に不気味な男ですね…。」
「ああ…。」
司令官と副官はそう言葉を漏らした。
「ロブ基地は奪還した…後は、あそこから中央大陸に乗り込む!!」
西方大陸駐在共和国軍は、ネオゼネバス帝国軍に奪われたロブ基地を取り返し、出航に向けての準備を進めていた。
出航――即ち、中央大陸を取り戻す為の戦い。
共和国軍の傭兵であるロイ=アーベル(15)は既に先遣隊に登録されていた。
彼は西方大陸の人間だ。にもかかわらずデルポイの戦いに赴くのには理由があった。
「ロイ、時間だ…船が出るぞ」
今や彼の戦友でもあるリッツ=ルンシュテッドがホバーカーゴから叫んだ。彼も傭兵としてロイと共に行く。
「ああ……フフ、何だか不思議な気分だ」
「何がだ?」
「いや、今更ながら俺は以前は一人だったんだな、と…アーサーが死んでから俺は、単独任務ばかり就いていて
誰かと関わる事を拒絶していたんだ……また、失うのが怖かったから」
ロイはホバーカーゴに乗り込んだ。直後、巨大な機体が浮上する。
「でも、失う事を恐れていては何も得る事はできない…何もしなくたって人は死ぬし、別れはいつか訪れる」
ホバーカーゴが港から遠ざかる。海面を滑る様に渡っていく。
「何処に居ても同じなら、俺はみんなと一緒に居るよ」
ロイの居る部隊は、アルティシア=フィールド大佐を隊長とする精鋭揃いだ。
そんな彼らだからこそ、先遣隊に選ばれた。何故なら任務の内容はこう言った物だったからだ。
「貴君らは敵陣に上陸し、海中及び海岸線の敵防衛陣を殲滅し主力部隊の上陸ルートを確保せよ」
>>1 遅れましたが乙〜。
新スレ始まって早々続編書き始めまつ(^^)
えーと…恒例で悪いのですが詳しくこれまでの説明とか入れてると膨大な文字数が掛かってしまうので
これまでのあらすじは保管庫と前スレの「英雄の帰還」「Ziの焔」を見て下さい
「さあ、作戦会議よ!!」
格納庫にホワイトボードを引っ張り出してきてブリーフィングを行うアルティシアは、何故か楽しそうに見える。
しかしロイはそうではない事を知っていた。
恐れを隠しているのだ。味方を不安にさせない様に。隊長たる自らの動向が如何に部下の精神を左右するかは
ロイも知っている。だから彼女はいつでも「頼れる上官」を演じている。
「まず第一に水中の防衛部隊から…ここには1個大隊が丸ごと配置されてるわ。
当然、私達だけで落すのは無理だから他の部隊も出てもらうけど、それでもこっちの戦力は3個中隊」
ロイと同じ傭兵として同行している科学者、イオ=マクスフェルがボードを見て愕然とした。
「馬鹿な…司令部は我々を殺す気か!?」
「さあね…しかも水中部隊は推定でウォディックが70機、量産型デススティンガーが15機ってとこらしいわよ?」
味方のゾイドはせいぜい40機ほどだろう。物量的にも戦力が違いすぎる。
しかし、リッツはボードの布陣を見て不敵な笑みを浮かべた。
「フッ…問題は無い。俺は元々集団戦の方がやりやすい」
確かに、ジェノブレイカーの連射可能な荷電粒子砲は相手の数が多いほど威力を発揮する。
しかし、水中の敵に荷電粒子砲が通用するのだろうか。
「リッツ、本当に大丈夫か?」
ロイ達はこの後もさらに防衛陣を突破していかなければならない。ここで戦力を欠く訳には行かない。
そして何より、解っていて友を失う事は耐えられない。
「で、実は…もうすぐ戦闘海域に入っちゃうんだよね〜…」
「何ィ!!?」
その時、ホバーカーゴが揺れた。
【第二章】
ギルガメスは驚きを隠せなかった。目前に迫る葡萄酒色のオブジェは、その主によ
れば正真正銘のライガー系ゾイド「エナジーライガー」なのだという。
「そ…そいつのどこがライガーなんだよ!?空、浮いてるじゃないか!前足も後ろ足
も…」
「いいからさっさと掛かって来い」
ギルの言葉を遮るように言い放つオブジェの主・ガルカ。スクリーンの向こう側で
一層蔑みの表情を強くしている。…十六才に満たぬ少年には相当な挑発だ。スクリー
ンを怒りの眼差しで睨み付けると早速相棒に指令するギル。
「ブレイカー、回り込んで彼奴の羽根、叩っ切ってやろう!」
呼応して大きく吠えると、右足を大きく踏み込んだ魔装竜。二歩、三歩と進む度マ
グネッサーの勢いを上乗せし、瞬く間に加速していく。
オブジェが被る赤い鬣の裏側から、一本、又一本と稲妻のように放たれる黒い管。
それらを避け、かいくぐり、すぐさま相手の左側面にまで回り込む。…だがどうした
ことか。相手は間合いを離すどころかこちらが迫り来る方角に視線を向けようとすら
しないではないか。腹立たしくて仕方がないギルは叫ぶ。
「翼のぉッ!刃よぉッ!」
跳躍!オブジェの数倍も高く。右の翼から刃を展開させ、振りかぶる。
しかしこの事態にあってさえ、鼻で笑ってみせるガルカ。
「メドゥーサ、やれ」
抑揚のない声で相棒に指示を出す。と同時に、更に二本放たれた黒い管。…先程ま
でとは違い、ブレイカーを左右に囲むようにして、だ。
ギルがその狙いを確認する時間は数秒も与えられなかった。何故なら黒い管の先端
にはいつの間にか元々オブジェの下部に取り付けられていた漆黒の銃器が握られてお
り、まさに電光石火の銃撃を開始したからだ。霹靂!霹靂!瞬く間にブレイカーの胸
部や腹部に咲き乱れる火花。宙に浮いたボールがバットで叩き返されるように、ギル
の相棒は遠くへ弾き飛ばされた。
ギルが悲鳴を上げる間もなく、三転、四転。…ようやく回転が止まった時、ブレイ
カーは仰向けだった。慌てて体勢を整えようとレバーを振り絞って立ち上がらせよう
とするギル。…だが、レバーを握ったのは彼だけではない。
ガルカの次の指令に応え、早速管を引っ込めたオブジェは地に舞い降りる。…と、
何やら蠢く鉄塊の下部。四対の爪が形となり、前足が、後ろ足が伸び、どっしりと大
地を踏み締める。だがそれとてものの数秒。直後には四肢が強く、素早く地面を蹴り
込んでいた。…紛れもない、ライガー系ゾイドの走り方だ!
よろめきながら立ち上がろうとするブレイカーの目前にまで急接近し、飛翔!右の
前足を振りかぶり、叩き込む。勢いに呑まれ、又しても仰向けに吹っ飛ばされるブレ
イカー。オブジェのようなライガーは間合いを一気に離してようやく方向を転換、目
下の敵を睨み付けると厳しく吠え立てたのである。
「どうだ、確かにライガーだろ?」
不敵に笑うガルカ。ギルはやっとの思いでブレイカーを立ち上がらせるが、その時
自身を駆け巡る痛みに気付いた。Tシャツの襟を恐る恐るめくってみる。…真っ赤に
腫れ上がった左肩!ブレイカーとのシンクロ(同調)はこのコンビに想像を超える力
を与えるが、反面、相棒がダメージを追えば同様の傷を主も負ってしまうという副作
用をもたらす。…全方位スクリーンを介して見て戦慄を覚えたギル。相棒の左肩は深
々と抉れているではないか!
ギルは堪え切れず、再度エステルの搭乗するビークルとの通信を試みる。…だが、
依然として映像は乱れたままだ。
「ええいっ、頼むから繋がってくれよ!今のままではヒントが無さ過ぎる!先生?エ
ステル先生!?」
一方のエナジーライガー「メドゥーサ」。鬣の内側から何本も管を伸ばし揺らめか
せ、威嚇とも挑発ともとれる態度を見せながら一歩一歩、近付いてくる。
「覚えておくがいい。エナジーライガーは無数のバイパー系ゾイドと共生し、あまつ
さえ攻防の要として自在に操ってみせる。それだけ莫大なエネルギーを秘めたゾイド
なのだ。
だが、明らかに非力なお前らに見せるのは勿体無いな」
ギルの通信を試みる手が止まった。
「…なん、ですって?」
「弱いと言っている」
その言葉に、スクリーンに展開されるウインドウを睨み返す。
「ブレイカーッ!『痛覚』は全部僕に回して!
きっとこれもエステル先生の『課題』さ!連続攻撃で彼奴らの隙を見つけ出す!」
主人の言葉にさしもの魔装竜も一瞬躊躇するが、意を決すると翼を再び広げる。
猪突猛進の、踏み込み。
ガルカは相変わらず鼻で笑ったままだ。
ブレイカー、猛然たる勢いでメドゥーサに急接近すると、すぐさま翼の刃で斬り付
ける。…だが、いとも軽やかに躱される。勢い余って隙だらけの背後を晒したかに見
えるこの深紅の竜だったが、右足をブレーキ代わりに大きく旋回。すぐさま残る左足
で地を蹴り、後方に回り込んだメドゥーサに向かって飛び掛かる。
ブレイカーが一太刀浴びせたかに見えたこの攻防は、却って両者の形勢を広げる結
果となった。…再びあの、銃器を握った管が今度はメドゥーサの前方に展開。滅多矢
鱈の銃撃、開始!
お手玉のように、たちまち押し戻されるブレイカー。地面に打ち付けられ、跳ね上
がること数度。ギルの全身を走る衝撃。コクピット内で背を反り返る。メドゥーサの
銃器はブレイカーの鋼の鎧を打ち砕きはしないが、圧力は段違いに強い。
「痛っ、くぅっ、…ええいっ、まだまだ!」
全身に痣や腫れが浮き始めるのを感じ取り、唇を噛み締めるギル。だがここで踏ん
張るのが主人の務めと、全方位スクリーンを今一度睨み付けるが。
黒い管が、地割れのごとくブレイカーに襲い掛かる。…それらはこのゾイドの足首
に群がり、噛み付き、思い切り引っ張った。又してもの転倒!
その光景を見て満足そうに頷くガルカ。メドゥーサは先程のように四肢を引っ込め
「飛行形態」とでも呼ぶべき形に姿を変える。
「かつて滅亡の危機にあったネオゼネバス帝国が、援助と引き換えにヘリック共和国
に献上したのがエナジーライガーだ。…その後改良に改良を加えられ、究極的には音
速に匹敵するヘリック最強のライガーに生まれ変わったのだ」
ガルカの発言には重大な問題があるが、歴史は常に勝者の手によって書き換えられ
ることを念頭の上で本稿をお楽しみ頂きたい。
「…音速の絞首刑、受けるがいい」
ふわりと宙を浮き始めたメドゥーサ。背中の透き通った羽根が小刻みに振動し始め
る。それと共に今度は首が引っ張られる感触。ブレイカーは慌てて噛み付いた管を振
りほどこうともがくが、牙の締め付けは強力だ。そして、そのまま…。
メドゥーサ、一気の加速。
「うわぁぁっっ!?」
地面に爪を立てるがそれすらも焼け石に水、首から引っ張られていく。未だ地方に
は残っているとされる私刑方法そのものだ。ギルは締め付けられる喉を掻きむしるよ
り他ない。
ギルガメスの、ブレイカーの「処刑ショー」が始まった。
エステルの顔色が冴えない。…ビークルの端末に映し出される映像も又、激しく乱
れたまま。だが古代ゾイド人特有の「刻印」を額に持ち、完璧に使いこなす彼女には
わかる。今や愛弟子が大変な危機に直面していることを。
「あ、あの…エステル、さん?やっぱり、スタジアムに戻った方が…」
隣に同乗しているアルテが見兼ねて声をかけるが。
「…今は私情を挟むべきでは、無いわ」
努めて平静を装い、ビークルのエンジンを吹かす。彼女に敢えて酷な判断をさせる
事態とは、一体如何なるものなのか。
話しは僅か十数分前に遡る。
先程までチーム・ギルガメスが滞在していたイワカナ・スタジアムのゾイド溜まり。
…万が一、ゾイドが暴走を始めたりした時でも被害が最小限で押さえられるよう、こ
こでは敷地の周囲を城壁で囲っている。暴君竜ゴジュラスの背丈の二倍程もある代物。
その隅の辺り。…おとなしそうに伏せる四足竜。我らがブレイカーよりも一回り大
きく、おまけに背中には何やら曰くありげな紋様を浮かべた無数の剣が生えている。
物々しい姿のこのゾイドの専門は、実は格闘ではなく森羅万象を占うこと。今では民
間で広く使役される彼を人は卜剣竜(ぼくけんりゅう)ゴルドスと呼ぶ。まさに背中
の剣の紋様を古代の占い道具・亀甲に見立てたのだ。
そのゴルドスの腹部に取り付けられたコンテナ。外側には「WZB(ワールドゾイ
ドバトル)」とある。内部を覗いてみれば通信機器がびっしりと並び、その狭い中、
二人がが忙しく端末を弄りつつ怒鳴り合っている。…このゴルドスはWZBが用意し
たテレビ中継用ゾイドだ。彼らは番組の制作スタッフである。
「本番五秒前!…3、2、1、はいっ!
『さあイワカナ・スタジアムの第四試合、チーム・ガルカ対チーム・ギルガメス戦が
始まりました!…』」
無事に試合が放送されたのを見届け、安堵の表情を見せる。
「アルテさん、嬉しそうですね…」
「全く、あんな怖ぇ女のどこがいいんだか。…おや?」
一人が手元のレーダーを見る。…電波障害の要因になると端末から警告が入った。
不機嫌そうに窓から外を眺めてみれば。
城壁の上。…鳥だ。それも実に奇妙な配色。紺色を基調としているが、所々、橙色
と、金色が混じる。悪趣味と言っていい。
翼を広げ、嘴を開いた紺色の鳥。
高い金属音が、メロディを伴って聞こえ始めた数秒後。
スタッフ達の視界が、突如ひっくり返った。
「じ、地震かっ!?」
狭い室内でもみくちゃにされながら窓の外を見直す二人。…推測が全く見当違いだ
ったのはすぐにわかった。箱の外でも又、ゾイドバトル用のありとあらゆるゾイドが
悶え、のたうちまわっている。
「まさかあの鳥型ゾイドの鳴き声が原因なのか!?」
「ま、まずいっすよ!このままじゃペシャンコだ!」
「ええい、仕方がない!コンテナを強制離脱する!歯ぁ食いしばれよ!」
端末の隅には離脱用のスイッチが誤作動防止用のガラスを被せられ、設置されてい
る。…思い切り、叩き割る!
地面を二度、三度跳ね、そして滑るコンテナ。扉を蹴り破って脱出する。
何とか逃げ出したスタッフ達だったが、目前の光景に慄然となる。そこではゴジュ
ラスが。そこではレッドホーンが。そこでは…。そこでは…。悶えながらやがて死に
至る、戦場さながらの光景。そしてその頭上を優雅に舞い飛んでみせる紺色の鳥。何
かを物色している様子。
「とにかくここから抜け出さないと…」
「あ、やば…」
「…どうした?」
「目、合っちゃいました…」
「何ーっ!」
一人がその方角を見た時、空中でぴたりと静止した鳥。…翼に幾つも並んだ銃器を
スタッフ達に突き付ける。
慌てて走り出す二人だったが、紺色の鳥の狡猾な銃撃に、簡単に退路を断たれた。
まずは彼らの足元を狙い、次は逃げ道を狙い撃つ。その次に狙ったのは…傍らで動か
なくなっていたゾイドのキャノピー!破片が、彼らに襲い掛かる!
最早これまでとうずくまる。…だが、周囲に異変が生じていることはすぐにわかっ
た。空中で静止したままの破片!遠くを見遣れば、さっきまで噂していたアルテと
「怖ぇ女」エステルがビークルに乗って戻ってきていた。
額の刻印を激しく明滅させるエステル。左手は操縦桿を握ったまま、右手をかざし、
今まさに彼女の念力によって破片の落下が防がれているところだ。
「さあ、早く!」
「…す、すまない!恩に切る!」
その場から走り去る二人。彼女が手を振りほどくと、破片がバラバラと地に落ちて
いく。…だがそこまでは確認せず、ことの発端となった「鳥」の方を睨み付ける。
「まさかショットイーグルがお出ましとはね…」
「え、ショット…何です?」
職業病丸出しで右肩に引っ掛けたカメラを回し続けるアルテは、聞き慣れないゾイ
ド名に瞼を何度も瞬かせるばかりだ。しかし禍々しい紺色の鳥と美貌の女教師の視殺
戦の前に、そんな言葉で割って入る余地などない。
だが眼光の応酬は、不意の出来事によって中断された。…アルテは気付いた。向こ
うで今や瀕死に近いゴジュラスがむくりと起き上がったことを。頭部のキャノピーは
砕け散ったまま、怒りと悲しみの咆哮を交えつつ、背に取り付けたやたらに長い大砲
を構える。
「…いけない!そこのゴジュラス、お逃げなさい!そいつに直接攻撃は…!」
エステルもこの勇敢なゾイドの奮起に驚き怒鳴ったが、既に仇討ちしか頭にない彼
に届くわけもない。両腕を交差させ、身を縮めながら砲撃!
しかしその時、鳥の歌声に微妙な変化が生じていたのである。…砲撃、炸裂!思わ
ず耳を押さえるエステル、アルテだったが爆煙の中からやがて浮かび上がってきたも
のを見て仰天する。
先程まで紺色だった鳥が、今や全身を金色に輝かせ、砲撃など何もなかったかのよ
うに優雅に羽ばたいているではないか。
「な、な、な、何ですかあれは!?」
「…共鳴装甲よ。暗黒大陸戦争時代のロスト・テクノロジー!」
様々な鉱物資源の眠る惑星Ziにおいて、ある種の鉱物に特定波長の振動を与える
と莫大なエネルギーを放出するものがある。これを応用したのが「共鳴装甲」だ。ゾ
イドのごく一部に取り付けておきさえすれば、必要な時にその振動を与えるだけで広
範囲に渡ってEシールドが張り巡らされる。大幅なコスト削減に繋がるのは言うまで
もない。元々ガイロス「帝国」産の技術だが、暗黒大陸戦争においてガイロス軍に手
を焼いたヘリック共和国軍も早々に技術の模倣に努めた結果、当時の両国軍のゾイド
は皆、一様に共鳴装甲特有の金色や銀色の禍々しい意匠が施されることになった。又、
そういう理由から当時の如何なるゾイドにも「特定波長の振動」を発生させるための
「口」が存在する。
だがこの禍々しい鳥が纏った金色の輝きは、一瞬で打ち消されたのである。…鳥の
嘴への、銃撃!エステルはビークル後方から対ゾイドライフルの銃身を引き伸ばして
いた。大人の身長を遥かに上回る長さと腿回り程の太さを備え、公にはブレイカーが
装備することになっている代物!
「この『口』さえ封じれば…!」
照準を合わせ、二発、三発とお見舞いする。正真正銘の悲鳴を上げる、鳥。その一
方で、渾身の一撃を防がれても怯まず、背中の大砲をかなぐり捨てて向かっていくゴ
ジュラス。挟撃の体勢は整ったかに見えた。
しかしこの鳥の実力は、エステルの常識ですら遥かに越えていた。彼女の鮮やかな
銃撃に差し挟まれる、僅かな間断。それを察知し、翼の銃器を乱れ撃つ。ビークルの
小刻みな動きで難なく避けられるが、鳥にはそれで十分だった。
この僅かな隙を利用し、遂には姿形まで瞬く間に変貌させていく、鳥!巨大な砲塔
にも例えられる、異形への変身。そして、眩しく輝く砲の先端。
危機を察知したエステル。すかさずビークルのアクセルを吹かす。隣に座るアルテ
までもが大きく揺れる。
砲塔と化した鳥が放ったのは、光の円盤。すんでのところでビークルはそれを躱す
が、円盤は後方に横たわるゾイド達の死骸に命中した。立て続けの誘爆!吹き飛ばさ
れるビークル。
返す刀で、砲塔と化した鳥は追い縋るゴジュラスに砲芯を向けた。半壊していた上
顎に、ものの見事に命中した光の円盤!炎上する頭部。上体を大きく揺らしながら尚
も向かっていこうとするが、炎が全身に回っていくにつれ、遂に動かなくなった。全
身に配置された細かなパーツは吹き飛び、只外骨格だけが火柱を上げて燃え盛ったの
である。
ひとまず難を避けた鳥。元の形に戻ると、やがてその周辺をゆったり舞い始める。
…何かを探しているようだ。
一方、ひっくり返ったビークルの体勢をどうにか立て直すエステル。隣席のアルテ
は目が回って呆然としているが、依然として宙を舞っている鳥を見てようやく我を取
り戻した。
険しい表情で鳥の様子を伺うエステル。…それにしても。
「奴の狙いは一体…」
「…『TFゾイド計画』って、御存じかしら?」
「へ?…いや、初めて聞きます」
「暗黒大陸戦争時代は物資が根本的に不足していた。そこで共和国軍が小型ゾイドを
中型・大型ゾイドの武装にするべく変形機能を搭載しようとしたのが『トランスファ
イターゾイド計画』通称『TFゾイド計画』よ。まあ、ゾイドコア砲の原型みたいな
ものね。その第一弾に選ばれたのがショットイーグルだったわ。
でも、『TFゾイド計画』は簡単に頓挫した」
「…な、何故?」
鳥がやがて舞い降りたのは、WZBのスタッフ達がテレビ中継に使っていたあのゴ
ルドスの真上だった。
「まずい!」
慌てて照準を合わせようとするエステルを余所に、再びあの光の円盤を放つ砲塔の
変形した鳥は、ゴルドスの真上にへばりついたのである。…メキメキと、金属の鎧を
引き裂く音が聞こえる。鳥の腹部で蠢いているのは嘴が四つも五つも円状に並んだも
の。まさか、この鳥本来の「口」だというのか。
しきりにライフルを連射し、二匹の接続部分を狙い撃つエステル。だが姿形を変え
てさえ、金色へ変貌するあの歌を唄ってみせる鳥の前には何の効果もない。
「選ばれた小型ゾイドは、接続された大型ゾイドの武装になるどころか、反対に大型
ゾイドのエネルギーを吸収し始めた。あまつさえ、思い通りに操った…!」
「そ、それって古代ゾイド人の伝承に伝わる『吸血鬼』って奴ですか!?」
力尽きた筈のゴルドスがむくりと起き上がる。まさに、エステルが語った通りの光
景だ。
ゴルドスの背中への「寄生」を完了した鳥。エステル達の方角にゆっくりと砲芯を
旋回させる。一閃!放たれる光の円盤。先程までとは桁違いに大きい!大きく動いて
これを凌ぐエステルのビークル捌きは、最早「躱す」というよりは「逃げる」という
形に近いもの。
それを見届けた鳥は、満足した様子で今度は先程までとは又違う波長の歌声を奏で
る。…寄生されたゴルドスが、それに合わせて首をゆっくりと傾けた。
その方角に見えるのは、スタジアムとこの広場を仕切る巨大な鋼鉄の城壁。ゴルド
スの首の方向に鳥の砲芯も傾けられ、そして再度の一閃!
飛び散る破片を躱すのが精一杯のビークルを尻目に、寄生されたゴルドスは歩を、
徐々に速めていったのである。
「うわぁぁっっ!?」
エナジーライガー「メドゥーサ」に首から引き摺られ、今まさに「処刑ショー」の
真っ最中のブレイカー=ギルガメス。首には絞められた痕がくっきりと浮かび上がっ
ている。…だが、彼とてキャリア数戦の素人ではない。相棒の右手の爪を首と締め付
ける牙との隙間にグイッ、グイッとねじ込むと、残る左手や翼の刃、それに踵を何度
も地面に打ち付ける。たちまち爪が内出血し、指が腫れ上がっていくが、その度歯を
食いしばり、零れそうな涙を堪えるのが相棒へのせめてもの礼儀だ。
メドゥーサの主人・ガルカはそれが気に入らない。
「弱者は弱者らしく、さっさと泣きわめけというのだ。…おや?」
はるか向こうにスタジアムとゾイド溜まりを仕切る城壁が見える。
「ならばいっそ、城壁まで投げ飛ばしてやるか。…メドゥーサ、やれ!」
ガルカの指令後僅か数秒でメドゥーサは大きく旋回し、その勢いと共にブレイカー
を拘束する牙を解く予定だった。…だがこの計画は寸前で回避された。
城壁が一瞬、朱に輝いたかのように見えたガルカ。彼が気にしたかどうかは本題で
はない。何故なら、朱に輝いてからものの十数秒もしない内に、今度は巨大な光の円
盤が飛んできたからだ!…二匹のゾイドの足元に落ちた円盤。たちまち広がる爆風!
何度も横転する二匹のゾイド。搭乗する二人もコクピット内でシェイクされ掛かり
ながら(両者ともコクピットは非常識なまでに頑丈な作りだ)どうにか我を取り戻す。
「だ、脱出、できた…?でも一体、何が…」
まずふらふらと立ち上がったのはブレイカー=ギル。だが目前に迫る物体に声を失
う。…真っ赤に焼けただれたゴルドス!…「WZB」のロゴが入ったそれは高速ゾイ
ド顔負けの勢いでこちらに向かってくる。すぐさま全方位スクリーンの左側に展開さ
れたウインドウ。はじき出されたデータは…!?
「時速…250キロ!表皮の温度…三千度だって!?いや、そんなことより…!」
避けるの、間に合わないじゃないか!…しかし、そんな情けない位の悲鳴を上げる
ギルと相棒に迫る危機を救った無数の銃弾。
左を向けば、そこには先程までブレイカーを引き摺り回したメドゥーサが銃器を前
方に展開させ乱れ撃っていた。たちまち風穴だらけになり、爆発・四散したゴルドス。
「命拾いしたな…」
この期に及んでもまだ蔑む態度を変えないガルカ。
「…ふん、どう致しましてっ!」
突っ慳貪に答えるギルだったが。
「銃撃のことではない。…部外者の長時間に渡る立ち入りにより、この勝負は無効試
合だ」
「え…?だって今あなたが倒したじゃあないですか…あ!?」
打ち破られた城壁の中から、ゆっくりと姿を表したその「無効試合の原因」。…あ
の禍々しい配色の鳥が、歓喜の歌声を奏でながら二匹のゾイドの近くにまで舞い近付
いてきた。
かたや、異形の翼を背負った竜。
かたや、異形の兜を被った鬣獣。
かたや、異形への変貌を遂げる鳥。
三匹の奇妙な邂逅はこうして遂げられたのである。
ディープフィアーのその体から一部ではあるが元に成っているゾイドの装甲が見えるが至って彼自身は元気一杯と言った所だった。
唯一付け根を撃ち抜かれた右側の翼は根元から落ち無くなっている。しかしその翼は地面に深々と突き刺さり巨大な剣を突き刺したかの様にそそり立っていた。
翼を失った事を知り怒りの咆哮を上げルディア達の合流した部隊に対して体中からエネルギースプレッド弾を乱射し始める。
結局増援には来たもののもぐら叩きのもぐらが増えただけにすぎなかった…。
「ミイラ取りがミイラになるとは正にこの事だな。」クロームは悪びれた様子も無く光学迷彩を使用しゆっくりと姿を消す。
それに習うかの様に全てのプロトYは姿をくらました。「でもぉ〜問題はぁ〜遠くに居る味方からの〜砲撃ですぅ〜。」そう言うが速いか早速メイアの機体の真横をプラズマコートアローが通り抜けてディープフィアーに着弾していた。
「…ファイン中尉?もしかして?私を狙ってる!?」そんな訳は無いのだが姿を消すリスクというのはこんなもので済むのが普通と言う訳では無い。
敵の近くで光学迷彩をしたヘルキャットが味方の砲撃で吹き飛ぶ事等は日常茶飯事でイクスになって始めて無理が利くようになったと言われている。
味方に撃ち抜かれるのはまっぴら御免と音も立てずに散り散りになってしまったのである。
「マイブラザー…それは酷いんじゃないの?」当然の言葉がベルフから漏れる。
「しょうがないでありますよ…。あんな近くで隠れられては撃ち抜いてくれと言わんばかりでありますし。」内心ほっとしながらだがファインはブツクサ言っている。
しかもその間も一行に砲撃を止めないのだから始末が悪い。「ストレスが溜まっているのか?そんな事しないで少し休んだら如何だ?危ないけど。」
レミントンからの提案だがそれを聞くと「そうでありますね。じゃあ待機しているであります。休憩休憩〜。」
「おい!」本当に寝ようとしているファインを止めに懸かる…そんなくだらない事をしている訳なのだからディープフィアーはそれを見付ける。
今までとはうって変わって物音をかき消してゆっくりと彼らに迫って行くのだった…。
ゆっくりと距離を詰めるディープフィアー…戦闘システムを体内に内包している為自然のゾイドでは出来無い奇襲が行えるのも寄生ゾイドの強みだが今回は相手が悪かった様だった。
目の前に辿り着いた時2体居る筈の図体のでかい方が居なくなっているのだ。「おかしい…?」そう思いながらも更にディープフィアーは距離を詰める。
後一息で獲物を狩る事が出来る!しかも獲物は自分の力を更に強大な物に出来る同族寄生種。狩らない手は無い!
キメラゴジュラスは目の前に居る。もう届く!獲物の無防備な姿を目の当たりにして戦闘システムから告げられる危険信号を受け取る事が出来無いのが不運だった。
次の瞬間獲物を狩り取ろうと腕を振り上げる。必殺の間合いだ…が突然痛みと共に視界から獲物が消えた!?
正確には彼自身の居た位置が大幅に軸ずれしたのである。太股、尻尾、横腹を長大な角が貫いている…トライフォートレスのトライホーンの一撃だった。
必死にディープフィアーはトライホーンを抜きその場を離れようとするがトライフォートレスは450tの重量を誇る。そう簡単に振り解けるわけは無い。
必死にトライホーンを抜こうとするディープフィアーをこれまた必死になってベルフは押さえ込む。今がチャンスだ。
そして今を逃せばディープフィアーを取り逃がす可能性が高い。「逃がさないよ!ここに留まってもらう。砲撃手!構わないから撃て!今を逃すと後が無い!」
砲撃ポッドから砲撃が開始される。至近距離なら炸裂弾の類は必要無い。複数のマシンガン、チェーンガン、ライフル、ショットガンがディープフィアーに炸裂する。
ディープフィアーもエネルギースプレッド弾を発射して抵抗し激しい撃ち合いが始まる。
意地と意地がぶつかる。一つは自らの最強を目指す思い。もう一つは仲間、味方を守るため。
しかし状況は彼等にとって全く好転してい無い事を帝国軍もディープフィアーも知る由はなかった…。
その状況を作り出す者にも解っていないと言う混沌とした状況に陥って行く事になるのだ。
あるえぇ〜?ショットガンって…炸裂弾じゃん。ショットシェルを使用していない事にすればいいんだけど。
やってもうた_| ̄|○illli
その頃、最前線での戦いは壮絶な物があった。
接近戦距離にまで接近され、凱龍輝の集光荷電粒子砲によって轟沈するセイスモサウルス。
ゼネバス砲を吸収しきれずに、内部爆発を起こす凱龍輝。
部隊単位で激突し合うスティルアーマーとディスペロウ。
量産され、大量に投入されたエナジーライガーも、セイスモサウルスに接近しようとする
ライガーゼロや凱龍輝を駆逐するなど、数々の目覚ましい戦果をあげたが、その稼働時間の短さが
ネックとなり、戦場のど真ん中でガス欠を起こし、そのまま共和国軍に一方的に袋叩きにされて
破壊されるという機体が続出し、戦況をくつがえすには到らなかった。
しかし、その戦場で戦っていたのは兵士達だけではなかった。
両軍の負傷した兵士達を敵味方構わずに救助して手当てを行うZi赤十字の皆様。
戦場の様子をお茶の間へと伝える民間放送局のレポーターとカメラマン。
そして稼ぎ時とばかりに戦場の各地に出没し、共和国帝国関係無しに兵士達に有料でラーメンを
振るまうラーメン屋台。砲撃の雨をかいくぐりながら屋台を引くおでん屋や焼き芋屋。
破壊されたゾイドの残骸を拾い集めるジャンク屋や、体1つで戦場を走り回り、兵士達に弁当を
売る弁当屋などなど、その戦場にはとても語り尽くせないほどの数々のドラマがあった。
戦況は共和国軍が若干優勢であった。制空権を手に入れたという点が大きいと言える。その間にも
ディメトロプテラのジャミングは続いており、セイスモサウルスも目視で見える範囲の目標にしか
ゼネバス砲による砲撃が出来ない。帝国軍の守り神であったセイスモサウルスの特性が封じられた今、
そのセイスモサウルスに頼り切っていた帝国軍の士気は見る見るうちに低下していった。
これは、セイスモサウルスがロールアウトした際、その遠距離砲撃によってゴジュラスギガの
格闘戦能力が封じられた時の共和国軍に似た感覚であった。
その時であった。一機のゴジュラスギガが、最後の防衛線として自らを壁にして共和国軍の前に
はばまっていたセイスモサウルスを踏みつぶしそのまま首都への入り口へと迫った。
「勝った!!」
共和国軍兵士達は誰もがそう思い、安心した。それと同時に絶望する帝国兵士達。
と、その時だった。何かが一閃すると同時に、そのゴジュラスギガが真っ二つになって崩れ落ちたのだった。
「…………………。」
その姿を見た兵士達は誰もが唖然とした。真っ二つになったゴジュラスギガの向こうから、
赤く巨大な何かが現れたのであった。その巨大な何かの右手には、これまた巨大な剣が握られていた。
それだけではない、背中や肩には巨大なブースターが装備され、多数のミサイル。大型のビームランチャーを装備するなど、禍々しいほどにまでの重武装が施されていた。
その怪物は旧中央大陸戦争時代、マイケル=ホバート技術少佐が作り上げた改造デスザウラー、
「デスファイター」とまったく同じ物であった。その時、そのデスファイターに一機の
マッドサンダーが突撃を掛けた。頭部のマグネーザーが高速で回転する。いかなるゾイドの装甲も
突き破る必殺の一撃である。しかし、その直後だった。デスファイターはその巨体からは想像も
付かぬほどの素早い動きで軽やかにマグネーザーの一撃をかわし、そのまま手に持つ巨大な電磁剣
「エクスカリバー」をマッドサンダーの首もと目がけて振り下ろし。そのまま首を切り落としたのだった。
マッドサンダーは力を失ってそのまま倒れ込んだ。そのデスファイターの戦闘力は旧大戦時に
登場したそれとは全くと言っていいほど別物であった。しかし、それだけではなかった。
デスファイターの背後には高機動ブースターを装備したデスザウラーがずらりと並んでいたのだった。
共和国兵士達から絶叫が上がった。
その頃、前線より遥か後方に待機していたジャイアントトータス内部にて、マオ達のゾイドの修理、整備、補給が行われていた。
「最前線の状況は?」
「帝国軍が主力部隊を投入。再び押されつつあります。」
「なら…急がなくちゃね…。」
マオは自分の手をグッと握りしめた。そして、整備、修理、補給活動を行っていた技術班にマオはこう言った。
「あ!そうそう背中の4連バスターキャノン。もう付けなくて良いよ!」
「え!!?コレ…外すんですか!?かなりの火力低下になりますよ?」
技術班の1人が戸惑いながらそう叫んだ。マオは言う。
「いいよ。このPMBユニットを使って戦ってた時に気付いたんだ。これはこういう武装だって。」
確かにPMBユニットの性能はマオの想像を遥かに超えて強力だった。そのマグネーザーは
超重装甲に身を包んだセイスモサウルスすらも苦もなく突き破り、その砲身から放たれる
超ハンデンシティビームバスターキャノンは共和国軍の持ついかなるビーム兵器をも上回る威力と
射程距離を持っていた。これならバスターキャノンを4門も背負わなくても良いのではないか?
マオはそう思い始めたのだ。それだけではない。PMBユニットを実際に装備した時に流れてきた
カンウの感情。これは今までどんな武装を装備した時にも経験した事の無い歓喜に満ちあふれた物
だった。あのレオマスター、アーサー=ボーグマンも愛機のブレードライガーが
アタックブースターを装備した時に、何かピンと来る物があったという話だが、マオとカンウの
感じた感情はそれに近い物があったのであろう。それだけではない。今思ってみれば、
バスターキャノンを4門も背負うようになった時、若干砲撃戦に偏りガチになっていたのでは?と、
思うところがあった。それ故に、原点に返るという事も良いのではないか?とそう思い始めていた。
しかし、これは論理的に考えても変な話ではない。4門のバスターキャノンを外せばその分機体は
軽くなり、機動性が上がる。火力という点ではPMBユニットの超ハンデンシティビームバスターキャノンが十分すぎる力を持っている。
格闘戦においてもマグネーザーとして猛威を振るうことが出来る。その上軽く、機体バランスを崩さない。ある意味無駄のない武装だと言える。
そして、カンウ、ジェネラル、ガイガイガーの修理、整備、補給が完了し、ついに出撃の時が来た。
「ほんじゃまあ!!行くわよ!!」
「了解!!」
マオの号令に合わせ、カンウは出撃し、その後をラインとジェネラル、サリーナとガイガイガーが続いた。
【第三章】
魔装竜ジェノブレイカー。一角鬣獣エナジーライガー。そして憑鷲機ショットイー
グル。そう簡単には見られそうにない組み合わせの巴戦は、邂逅後数秒もせずして開
始された。
「いい加減に、しろーーーーっ!」
最初に向かっていったのはブレイカーだ。さっきまでのダメージはどこへやら、強
く地を跳ね、憤怒の形相で向かっていく。…翼の刃を一振り、二振り、滅多矢鱈に斬
り掛かる。
「なんで入ってきたんだよっ!
こっちは生活が掛かってるんだ!」
ブレイカー=ギルの攻撃を最初はギリギリの間合いで躱す鳥だったが、幾度目かの
刃に好機を見出し、大きく下がる。…そして唄い出した、あの邪悪な金属質のメロデ
ィを!
「ぐぁぁぁぁっっ!?」
「ど、どうしたメドゥーサ!?」
魔装竜と一角鬣獣の動きが止まる。…ギルの鼓膜を異常な音階が這いずり回る!滅
多なことではレバーを離さないこの少年が、激痛の余り両耳を押さえる。この事態に
ブレイカーは思わず足を止め、胸元のコクピットを見遣る。
だが反対に、メドゥーサの方はのたうちまわったりは流石にしないものの、身を屈
め、苦しそうにうつ伏したまま動けない。…手足の、痙攣がひどい。一方パイロット
・ガルカの心身には特に異変はなく、ガチャガチャと何度もレバーを動かしながら相
棒の正常化を試みている。
「な、何だよこの差は…あ、そうか…!」
スクリーンに表示されたグラフを見て納得した。さっきの対メドゥーサ戦で、ブレ
イカーが感じる筈の痛みをギルが肩代わりするよう切り換えておいたではないか。だ
から、あの「邪悪な歌声」による痛みも本来ブレイカーが受ける筈だったが今はギル
が全て受け止めている。…グラフに表示されたシンクロ率とダメージの肩代わり率の
非常な高さがその証明だ。
肩代わり率を修正するか、とブレイカーはスクリーンを通じて尋ねてきた。
「…いや、今の方が寧ろ好都合さ!ブレイカー、いくよ!」
激痛を堪えて再度レバーを握り直す。瞳にも生気が宿る。相棒は鳥を睨み付けると
高らかに一吠え、機先を制して飛翔!翼の刃を振り降ろす。
ここに来て、鳥は初めて狼狽えた。何しろ必殺の旋律が表向きは全く効かない相手
に出くわしたのだ。…地面に叩き付けられる。慌てて羽ばたこうとするが深紅の竜の
追撃は凄まじい。力任せに三度四度と刃を振り降ろされ、これでは反撃の糸口がつか
めない。
一方ブレイカー=ギルの奮戦ぶりは、試合場内に戻ろうとしていたエステルの額に
輝く「刻印」を通じて伝わっていた。…右手の人差し指と中指で何度も刻印に触れ、
左手でビークルを操作する。傍らで見つめていたアルテは、魔女と恐れられる程の彼
女が一見平静を装いながらも口元だけは徐々に緩んできているのを見て、チーム・ギ
ルガメスの大手柄を確信しつつあった。
それとほぼ同時にギルは叫ぶ。
「よぉし今だ!ブレイカー、魔装剣!」
たちまち展開される頭上の鶏冠。鋭い短剣となったそれを首ごと勢いよく振り上げ
るブレイカー。…だがそれを知ったエステルは一転して青ざめた。
「だめよギル!今のそいつに魔装剣は…!」
試合が始まってから初めて彼女の声を聞いたギル(刻印を通じてではあったが)。
しかし一度弾みのついた勢いは止めたくても中々止められぬもの。
鳥の胴体に振り降ろされた魔装剣。
だが鳥は待っていた。この予想外の難敵がとどめの一撃を繰り出す瞬間を。素早く
砲塔の姿に変貌すると、腹部だった箇所を深紅の竜に向ける。…それは先程ゴルドス
に寄生する時、接合部分から伸ばしていたもう一つの「口」だ!
吸い込まれた魔装剣。その隙間から、莫大なエネルギーが放電現象となって飛び散
っていく。…慌てて引き抜こうとするブレイカーだったが、「口」はガッシリと魔装
剣を銜え込みびくともしない。
「…え、あ、あれ…?」
一気にぼやけるギルの視界。同時に、ガクリと腰から崩れ落ちる。レバーをつっか
え棒に何とか上体を持ち上げようとするが、スクリーンに映し出される鳥は何匹にも
分裂し、焦点が定まらない。…「ダメージの肩代わり」がここに来て裏目に出た。エ
ネルギーを吸い取られて受けたブレイカーのダメージがギルには「極度の貧血症状」
として反映されてしまったのだ。
十分にエネルギーを吸い込んだ鳥。目前の敵は足元がふらついている。…拘束をす
るりと抜け出し、大空に舞い上がった砲塔型の鳥はそのまま砲芯をブレイカーに突き
つけた。それでもどうにか横倒れになるブレイカー。…狙撃自体は失敗したが、その
場の地表を吹っ飛ばした。さしもの魔装竜も何度となくひっくり返る。
砲塔型の鳥はとどめの一撃を決めるべく再度照準を定めようとする。…だが、今度
は後方からの銃撃!顧みればエナジーライガー「メドゥーサ」が自慢の銃器を前方に
展開している。ブレイカーとの攻防中邪悪な歌声が途絶えたため、動けるようになっ
ていた。
「さっきは随分と味な真似をしてくれたな」
吐き捨てるようにガルカは言うとレバーを引く。メドゥーサの鬣の裏側から襲い掛
かる無数の黒い稲妻!鳥をがっちりと押さえ込む。そして銃器を鳥に近付けるとトリ
ガーを引いた。…二つの銃器、滅多矢鱈の連撃!
見る間に辺りが硝煙に包まれていく。勝利を確信するガルカ。
だが彼の確信も又、脆くも崩れ去る結果となった。怒濤の銃声の間を縫って、聞こ
えてくる歌声。銃声が止むと共に、それはよく聞こえるようになった。…硝煙の中か
ら現れたのは、金色に変貌した鳥の姿。共鳴装甲の力を発動している!
徐々に大きくなっていく歌声。と、同時に今まで鳥を拘束していたメドゥーサの触
手が一本、又一本と外れていく。
「き、貴様一体何者だ…!?」
砲塔型の鳥は敵の質問には答えず、元の姿に戻るとメドゥーサにゆっくり近付きな
がら、代わりに先程存分に唄ったメロディを独唱する。…邪悪な歌声の音源に徐々に
接近され、メドゥーサは遂に全身を痙攣しのたうちまわり始めた。
その背中に覆い被さった、鳥。
嘴でメドゥーサの頭部装甲をついばみ、コクピットを無理矢理こじ開ける。その中
には空を見上げ呆然とするパイロットスーツ姿のガルカの姿が…!
振り降ろされる嘴。数秒の後、ゆっくり顔を上げた鳥の口元は朱に染まっていた。
再び鳥は砲塔の形に変貌すると、今度はもう一つの口をこの主人を失ったゾイドの
背中に貫き入れる。しばらくは痙攣が収まらないメドゥーサだったが、やがておとな
しくなっていった。
新たな主人を半強制的に受け入れる羽目となったメドゥーサ。四肢を引っ込めると、
右へ左へと極端に蛇行しながらその場を去っていく。無理矢理の主人交替故、容易に
はなつきそうにない。だがそれでも行く先だけははっきり見据えられていた。
鳥と「さっきまでメドゥーサと呼ばれていたエナジーライガー」の視線は西の方角
に向けられていたのである。
「電波障害、すっかり止みましたよ」
「行ってしまったようね。全く、一声鳴くだけで電子兵装を相当無効化できるのだか
ら冗談じゃないわ」
「オルタの駐屯部隊にはここの様子、全く伝わっていないかもしれませんね…」
「そう思って良いでしょう。この星では電波障害なんて日常茶飯事だし。何より、事
件発生から結構な時間が経っているのに偵察隊すらよこさないのだから。
結局、あいつは私達が倒すしかないのよ」
ようやく駆けつけたビークル。着地するとエステルとアルテは早速降り立つ。…ア
ルテは肩の端末で何者かと連絡をとり始めた。エステルの向かう先は言うまでもある
まい。
ピィと甲高い鳴き声を上げ、すがるような視線を投げかけるブレイカー。うつ伏せ
になった満身創痍のこのゾイドは、到着した彼女の目前で胸のハッチを開いてみせる。
コクピットに着席していたギル。既に額の刻印は消え去り、傷だらけのまま全く動
こうとしない。顔面蒼白となったエステルはためらわずこの不肖の弟子の両頬を押さ
え、顔を近付けてみる。…微かな、吐息。胸を撫で下ろした彼女はひとまず手を離す
と、弟子の頬を右手で張った。パシン。気持ちよい音と共に目覚めたギル。
「…あ、え、エステル…先…っっ!?」
思わず体を持ち上げようとする。しかし頭が、割れるように痛む。溜まらず額を押
さえるギル。エステルは彼の両肩を押さえ、なだめるように座らせる。
「ごめんなさい、ずっと連絡できなくて…」
両肩を押さえたままうなだれる。
「い、いえ、そんなこと…!それより、あ、あいつは…!?」
「ショットイーグルのこと?…もうここにはいないわ。チーム・ガルカのエナジーラ
イガーもね」
「そう…そう、なんですか…う、うぅっ…」
顔を伏せ、途端に涙ぐむギル。あんなわけのわからない奴に試合を滅茶苦茶にされ
た挙げ句、敗れ去った。情けない!不甲斐無い!ブレイカーに、エステル先生に合わ
せる顔がない!爪がひび割れ、腫れ上がった手を握り締め震わせる。
だがエステルは、自責の念に駆られるギルの両頬を再び押さえ持ち上げ言い放った。
「ギル、私達は勝たねばならない」
元々鋭い目つきの彼女が今、視線を一層鋭く研ぎすませながら弟子に突きつける。
「エステルさーん!確認取れましたよー!」
横から割り込んできたアルテの声にハッとなる二人。女教師は今か今かと答えを待
ちかね、弟子は話しが全く見えないもののとにかく振り向く。
「さっきエステルさんが助けてくれた彼奴らに、本社へ問い合わせてもらったんです。
例の輸送ゾイド連続遭難事件なんですがね、今のところ事件現場が確認できたもの
に関しては幾つか共通点が見出されるんだそうです。
事件は皆、中型以上のゾイドに特攻されて発生。特攻したゾイドは、いずれも背中
に大きな穴を開けられ、異常な高熱で表皮が焼けただれた形跡がある…そうです。
それに、いずれも護衛部隊が殆ど無抵抗なまま壊滅してるらしいですね」
推測通りの答えに頷くエステル。改めて、ギルと向き合う。
「…あの鳥型ゾイド『ショットイーグル』は、餌を求めてこの地へ迷い込んできたも
の。餌を覆い隠す障壁には自ら寄生したゾイドを特攻させてこじ開けていたのね。
それが何度も成功すると、少しずつ大胆になっていった。…遂には、ここより西の
駐屯地・オルタでこれから搬出される大量のコアブロックを喰い尽しに向かっている」
「そ、それであの鳥はエナジーライガーを特攻用に寄生したって言うんですか?」
「そういうこと。…でも、火種に選ばれたエナジーライガーはその身に抱える莫大な
エネルギー故に『最強の特攻機』と徒名された程のゾイド。異常加熱させてコアブロ
ックの塊に突っ込ませたら、火に油を注ぐようにコアブロックは大量に誘爆するでし
ょうね。最悪、オルタの街一つが消え去ってしまうかも知れない。
だからギル、私達は勝たねばならない。
その手に力を持つ限り、責任を全うしなければいけない!」
しかしエステルの厳しい視線を前にして、ギルは辛そうに目を背ける。
「…ギル?」
「わからない。どうすれば…どうすればあんな奴に勝てるか…わっ!?」
目を背けたままボソボソ呟くギルの顔を、今一度真正面に引き付けるエステル。
「だから言ってるでしょう?『私達』って!」
水平に翼を広げ、地面を滑走するブレイカー。…その両腕に握られているのはエス
テル達の搭乗するビークルだ。…その端末からはコードが伸びており、ブレイカーの
胸元のハッチに繋がっている。ショットイーグルの邪悪な歌声がもたらす電波障害対
策である。
この深紅の竜、パイロット・ギルの負傷及び額の「刻印」の消滅もあって時速
700キロとまでは行かないが、それでも350キロは十分に出ているだろう。惑星
Ziの法定最高速度は地域差・ゾイドの体格差などはあるものの総じて地球よりは遥
かに甘く(依然陸地の大半が未開拓のため)、大体250〜300キロは出して良い
ことになってはいるが、それすら十分上回っている。今まさにそれを体感し、絶句し
ているのがアルテだ。…今日の彼の仕事には直接関係ないのだが、それでも何かの役
に立つと思い録画している。
一方、そんな高速の渦中にあっても決して動揺することのないエステル。銃身を構
え、調整に余念がない。
「エナジーライガーは走行時こそシールドライガーに毛が生えた程度の速度しか出せ
ない。けれど四肢を引っ込めての低空飛行中はブレイカーを遥かに凌ぐ速度で移動で
きる。…その能力の源は、背中の赤い羽根よ。だから羽根の機能を停止させれば良い。
大爆発に巻き込まれる危険があるから荷電粒子砲は使えないわ。…けれど、対ゾイ
ドライフルで正確に狙い撃ち、羽根にダメージを与えさえすれば十分に勝機は見出せ
る!」
ビークルの端末が両者の現在位置と、様々な情報を提供してくる。同様のものは、
ブレイカーの全方位スクリーンでも展開されていた。只、コクピット内のギルは座席
上で身体を完全固定されている。それどころか目は閉じられ、両手はレバーを握って
いない。…今現在、彼はブレイカーに「ゆりかご機能」で強制的に外傷や疲労を治癒
させられている。パイロットとのシンクロによりスペックを遥かに上回る能力を発揮
するオーガノイドシステム搭載ゾイドならではのものだ。
「…あちらは、時速300キロ?意外だなぁ、ブレイカーより遅いだなんて。でも、
あんなジグザグに進んでいるようでは仕方ないですかね?」
端末上のモニターを覗き込むアルテ。
「それは好都合。まだ寄生が完全に成功したわけではなさそうね。…でも、所詮は時
間の問題。一度馴染んでしまったら…」
エステルが語る最中にも、端末に表示されたエナジーライガーの速度が着々と増し
ていく。…310…320…330…!
「うわっ、何だ急に…!?」
「ほらね。全ては後の祭りになる。さあ、急ぎましょう」
一方、コクピット内に鳴り響くアラーム音。…ギルは慌てて目を見開きアラームの
鳴る方角を睨む。見え隠れする、砂塵の中を突っ切る赤い影。
「ブレイカー、エナジーライガーを視界に捉えました!…先生、一気に間合いを詰め
たいです!」
ギルの言葉に対し、一言目は頷いた彼女だったが、二言目に対しては難しい顔をし
たエステル。
「…まだよ。焦らないで。『刻印の発動』はギリギリまで我慢なさい」
今は疲労困憊のギルを少しでも回復させることが先だ。だからブレイカーには低速
度による余剰エネルギーを「ゆりかご機能」の使用に当てさせている。この優秀な相
棒は主人が早まるのを防ぐために敢えて身体を完全固定しているのだ。
「ブレイカー、そろそろあなたの『視力』、借りるわよ」
そう言って照準を覗き込む。…見えてきた。それもビークル備え付けの照準よりも
遥かに鮮明に。赤く透き通った翼を広げて飛行するエナジーライガー。その背中には
砲塔に変型し、へばりついたショットイーグルの姿もあった。
照準に映された様子は端末にも反映されている。
「やっこさん、まだ気がついていないんですかね…?」
その様子を右肩の端末付きカメラで撮影するアルテ。
「…静かに!」
エナジーライガーの背中で旋回する砲塔。先端が光が零れ出る…!
「アルテさん、しっかり掴まってなさいね!」
「え!?…うわぁっ、わっ!?」
ブレイカー、右足を大きく開いての踏み込み。ビークルの機上は大きく揺れる。…
ブレイカーの左側すれすれを抜けていく光の円盤。今度は、右!その次は左!
だが、ことごとく躱していくブレイカー。この程度でもアルテは既に頭がふらつい
ているが、エステルの方は全く以て平然だ。
「…奥の手、さっさと使ってきなさい。さあ!」
彼女の声が聞こえたのか、おもむろに二本の黒い管を引き伸ばすエナジーライガー。
…勿論、先端に握られているのはあの二丁の銃器だ!
連射に次ぐ連射。ブレイカーは身体を低く構え、右の膝を折り左の膝を左方に伸ば
してみせる。大きく右へそれていくブレイカー。だが銃器の追撃は留まるところを知
らない。空気抵抗どころか重力でさえも完全に無視しながら、左右に広がる黒い管。
銃撃を交差させにかかる!
「…ギル、ギル、聞こえて!?」
女教師の突如の呼び出しにハッと驚く生徒。スクリーンの真正面に映し出される、
額の刻印を輝かせたエステルの姿。
「戦いとは、単なるスペックのぶつけ合いではない。人と人、ゾイドとゾイドの知恵
と勇気のせめぎ合いよ!
…例え、その行く先が!」
刻印、発動の「詠唱」だ!追随してギルも叫ぶ。
「『いばらの道であっても、私は、戦う!』」
ギルの額の刻印も遂に、輝く。同時に解かれる拘束。
不完全な「刻印」を宿したZi人の少年・ギルガメスは、古代ゾイド人・エステル
の「詠唱」によって力を解放される。「刻印の力」を備えたギルは、魔装竜ブレイカ
ーと限り無く同調できるようになるのだ!
「どんな強敵に向かう時でも、常に一歩、前に出なさい!」
その声より速いか遅いか、二丁の銃器から放たれる火花。瞬間、スクリーンに映し
出された銃撃の交差地点。…ブレイカーの、掌中だ!
「先生!?ブレイカーッッ!」
相棒も顔負けの裂帛の気合いで吠え、レバーを一気に引き付ける。
低い姿勢を更に低くし、右足を大きく踏み込むブレイカー。抱えられた機上の二人
も大きく揺れるが。
背後では、銃撃が虚しく交差し抜けていく。
縦揺れが収まると、エステルはすかさず照準を合わせる。一発!…又一発!
発射音と共に、一本、又一本とひび割れるエナジーライガーの右の羽根。…もう一
発の銃声は、羽根が砕け散る音とほぼ同時だ。
途端にバランスを崩した異形のゾイドが、ゆっくり左にそれながら、地表へ滑り落
ちていく。吹っ飛んでくる羽根の欠片を防ぐべく相棒の翼を前面に展開し、ホッと胸
を撫で下ろすギル。
「…やれば、できるじゃない?」
女教師の至極余裕な表情。生徒は冷汗をかいた。…この人はわざと的になったんじ
ゃなかろうか?隣席のアルテも彼女の表情に真意を悟り、顔の引きつりが直らない。
「さあ、戦いはこれからよ!」
「は…はい!ブレイカー、行くよ!」
地表を削りながら一気に速度を落とし、やがて静止したエナジーライガー。ブレイ
カーはその進行方向に回り込み、両足でブレーキを掛けつつ半身になって歩を止める。
ブレイカーに接続したコードを外し、飛び立つビークル。一方、エナジーライガー
も又四肢を引き伸ばし、臨戦体勢に入る。
背後に街の蜃気楼を背負った魔装竜。
憑鷲機に寄生された一角鬣獣の背後には爆炎が。
決戦の火ぶたが切って落とされようとしていた。
>魔装竜シリーズ作者さん
なんかショットイーグルが凄い強敵に描かれていて凄いですね・・・
さらに、力の恐怖とは違うテクニカルな戦法で驚異を演出してますし・・・。
自分にはとても考えられないパターンです。
【第四章】
チーム・ギルガメス対エナジーライガー&寄生したショットイーグル。…と、形容
すればよいのだろうか。両者とも複雑な状況のまま迎えた最終決戦。
両者の間合いは100メートルもない。
「まずは『歩く火薬庫』のようなエナジーライガーを沈黙させるのが先ね。破れかぶ
れで暴走でもされたりしたら、大変なことになるから。
ショットイーグルはそれからよ。…ギル?」
悩む弟子は、今は大分腫れの引いた手のひらで胸を押さえていた。…鼓動の高鳴り
が、ひどい。目前の敵を攻略する手掛かりは師匠の捨て身のアドバイスで掴めたもの
の、同じことがもう一度できるだろうか?…突如鳴り響くアラーム。一瞬肩をすくめ
たが、右のウインドウに映し出されたエステルの表情はことのほか優しげだ。
「…だから、言ったでしょう?」
その言葉を聞きつけ、頷いたギルの表情にも自然と余裕ができた。
「先生、援護とアドバイス、よろしく。…さあ、ブレイカー!」
ゆっくりと、右方へ歩き始めたギルの相棒。一歩一歩、足場を確認するように。相
対するエナジーライガーも左方へ足を伸ばす。脇に回り込まれるわけにはいかない。
何歩目かを踏み締めようとしたその瞬間、レバーを強く押し込んだギル。一気の、
撃走!負けじと強く地を蹴り込むエナジーライガー。
「翼のぉッ!刃よぉッ!」
右の翼から展開された双剣が、敵の足を襲う。一方低く身を屈め、額の角に体重を
乗せたのはエナジーライガーだ。鉄塊がぶつかり合い、轟音と火花が飛び散る。…互
いの右肩に頭部を預け合った両者。翼の刃はエナジーライガーの左後ろ足に叩き込ま
れたが、角の方も又ブレイカーの右肩を深々と抉っている。ギルの右肩にもそれは反
映され、Tシャツに血が滲んできた。
だが、相討ちはそこまでだった。ブレイカーは首をコンパクトに捻り、エナジーラ
イガーの右脇腹を横殴りする。身をよじらせるエナジーライガー。間を置かず今度は
右の爪で顎を叩く。…溜まらず鬣の裏側から無数の触手を繰り出し、ブレイカーを押
し返すエナジーライガー。その上で一気に間合いを離そうと前足を蹴り込もうとする
が、又しても翼の刃が襲い掛かる。
「凄い…なんてしつこさだ!」
驚嘆するアルテ。エステルも一発決まる度、頷くのを繰り返している。
「ゾイド同士の戦いにおいて、様々な要因が攻防を左右するわ。
ギルは、少しでも前に出ようと決意している。パイロット不在のエナジーライガー
に敗れなどしない!」
一撃、二撃。何度も刃を足に叩き込まれ、ふらつき始めたエナジーライガー。溜ま
らず二本の触手が銃器を握り、左右に広がろうとする。ハッと驚くギル。
だがそれもほんの数秒の出来事だった。鳴り響く銃声、二発。…エステル、早速の
フォローは触手先端を華麗に狙撃し、銃器を弾き飛ばしたのである。
「動けないライガーの狙撃程簡単なものはないわね。さあ、ギル!」
「…!?あ、ありがとう先生!ブレイカー、魔装剣!」
額の鶏冠が前方に展開し、鋭い短剣に変貌する。
首ごと振りかざすとエナジーライガーの脇腹へ命中。たちまち零れ出る光。
「1っ、2っ、3っ、4っ、5っ、これでどうだ!」
短剣を引き抜く。それでも一歩、二歩とよろめくエナジーライガーだったが、やが
てもんどりうって倒れた。
「やった!?やりましたか!?」
「…第一段階は成功ね。でも、勝負はこれからよ」
身構えるギル=ブレイカー。魔装剣を収めると翼を水平に広げ、ゆっくり前方に重
心を掛ける。
足元には今彼らが沈黙させたエナジーライガー。そしてその背中に貼り付いたまま、
生きている筈のショットイーグルにこのコンビの視線は向けられる。
やがてベキベキと、聞こえてきた鉄骨を折るような音。…ぐらつき始めた、邪悪な
鳥。ブレイカーも翼の刃を展開し構え直す。
鬣獣から、鳥が、外れた。…仰向け。そこに見えた、幾つもの嘴が円状に並んだこ
のゾイド本来の口はだらしなく開かれている。
「…今だ!」
こんな好機を逃すわけにはいかない。刃を振り降ろすブレイカー!
…だがこの瞬間、形勢は三たび逆転した。
待ってましたとばかりに奏でられた、邪悪なメロディ。鳥がたちまち纏った金色の
鎧。よもやブレイカー渾身の一撃が弾き返されるとは!
よろめいた深紅の竜。そこへ鳥のいびつな口から怒濤の勢いで放たれる、無数の管、
管、管!刃をかいくぐったそれらはガッシリとブレイカーの首に巻き付いたかと思い
きや、一気に手繰り寄せて前傾姿勢のブレイカーを躓かせた。
管を頼りにブレイカーの翼を這い回り、たちまちその背中によじ登ったショットイ
ーグル。慌てたブレイカーはその身を大きく揺さぶり振りほどこうとするが、管の締
め付けは予想外に強い。
「…しまった!」
「え、エステルさんあれは一体!?」
「寄生したゾイドの内部に張り巡らす神経器官よ。…でも、あれ程強靱とは!ギル、
ギル、聞こえて!?」
だが返事の代わりに聞こえたのは凄まじい砂嵐の音。…ショットイーグルの鳴き声
がもたらす電波障害だ!
一方、女教師の無線通信の代わりにコクピット内にこだましたのはギル自身の絶叫
だった。…荷電粒子を吸入するブレイカーのもう一つの「口」に、容赦なく挿入され
ていく管!ギルの背中を、腰を、激痛が、邪な欲望が襲い、そのたび身をよじらせ、
背を反り返す。相棒も溜まらず巨体を横転させ揺さぶるが、まとわりついたショット
イーグルはそう簡単には拘束を解こうとはしない。
ギルの背後を襲う衝撃も又、止む気配は見えぬままだ。…いつしか痺れるような感
覚に変わっていく。これは痛みなのか、それとも快楽なのか。虚ろになり始めた少年
の瞳。
「しっかりしなさい、ギル!」
頭に鳴り響く一喝。一転、酔いが冷めたかのように刮目する。…エステルは額の
「刻印」を通じてギルに語りかけていた。
「え、エステル先生…?」
「ギル、跳ねなさい。…そして、背中から落ちなさい!」
「そ、そんなことしたらブレイカーの身にも…痛っっ!?」
「他に手はないでしょう!?寄生される前に、早く!」
刻印を通じて怒鳴るエステルの声は格好の酔い覚ましになった。依然痺れはひどい
が、辛うじてレバーを握り直す。
ギルの意を受け、潰されたカエルのように伏せ、平たくしゃがみ込んだブレイカー。
逆にショットイーグルの方は相手が観念したと悟ったのか、歓喜の歌声を奏で始める。
「ごめん、ブレイカー。…跳ぶよ!」
低過ぎる姿勢は、そのまま強靱なバネとなった。…大きく跳ねる。弧を描いて。し
なやかに、その身を反り返しながら。そして、大地に叩きつける、背中!
神経器官の挿入に優るとも劣らない激痛がギルの全身を駆け巡る。
だが、同時に拘束が解けていくのも感じ取った。一気に収まっていく電波障害もだ。
しかめっ面で、唇を噛み締めながら相棒を横転させる。
着地点を見れば、ショットイーグル本来の「口」から無数の神経器官が痙攣し、の
たうちまわっている。倒すなら今しか、ない!…だが、どこを狙えば良いか。
「エステルさん、あいつ、身体の構造はシンプルなのに、口元だけやけに複雑ですね…」
最早見入るより他なくなっていたアルテの率直な感想だったが、エステルに対し恰
好の閃きを与えた。
「そうか、あいつの口元は砲塔への変型時、旋回していた部分だわ。あの部分が最も
複雑、且つ手薄!
ギル、彼奴の口元を狙いなさい!」
「…は、はいっ!ブレイカー、魔装剣ッッ!」
再度の魔装剣、展開。痙攣するショットイーグルの真上になだれ込み、覆い被さる。
邪悪な鳥も再び奏でた鉄壁のメロディ。金色の鎧を纏うと共に、痙攣する神経器官
でブレイカーにしがみつき、背中へ向けて手繰っていくが。
振り降ろされたとどめの一撃。共鳴装甲の反発力と激しく押し合い、周囲が火花で
彩られる。…だが、遂に光の鎧は深々と抉られ、短剣は敵の口元へと突き刺さった。
「1ぃっ、2ぃっ、3んっ、4ぃっ、5ぉっ、これで、どうだぁっ!」
光となって零れ出るエネルギー。ブレイカーは両手を突いて、その身を持ち上げる。
だが目前の敵は、それでも尚歌声を奏でるのをやめない。それどころか神経器官を
伸ばしたまま変型を始めた。この期に及んでも勝負を諦めていない!…だが、中途半
端に変型したまま空へと舞い上がろうとするものの、遂に、落下に至った。
途絶えた、歌声。徐々に、収まる痙攣。全てが沈黙した時、チームギルガメスの勝
利は確定したのである。
うつ伏せになったブレイカーの上に、ヘリックゴーレムが、小暴君ゴドスがよじ登
っている。いずれもヘリック共和国軍の紋章をつけたものだ。…彼らの任務はブレイ
カーの背中の口に侵入したショットイーグルの神経器官を引き抜くこと。
一本、又一本と手繰り寄せられる度、ブレイカーは悲鳴をあげる。…中々、みっと
もない。
「ブレイカー、もう少し我慢してよ!僕だってギリギリまで肩代わりしてるんだから
ね!」
コクピット内のギルも又、辛そうに身をよじらせていた。
一方、目前では大量のゴドスが月相虫グスタフの引くトレーラーの上に、失神状態
にあるエナジーライガーとショットイーグルを引っ張り上げているところだ。…遅れ
ばせながらやってきたオルタ駐屯部隊が事件の後始末に負われていた。
傍らでは、アルテと馳せ参じてきた共和国軍の士官が何やら言い争っていた。…莫
大な補償と引き換えに、事件の一部始終を撮影したデータを没収するという。何しろ
気が付けばイワカナ・スタジアムの外で戦っていたため、本来なら「ゾイドバトル法」
に抵触すると言ってきたのだ。共和国軍としては大失態一歩手前の事件をうやむやに
したいところだが、そのため折角苦労して撮影したデータを根こそぎ奪われるようで
はアルテとしては冗談ではないところだ。
やがて全ての神経器官が吐き出されたブレイカー。ぐったりしてうつ伏せのまま手
足を伸ばす。胸のハッチから降りてきたギル。疲れ切った表情でゆっくり降りてくる
と、大の字に横たわった。
「ほら、しっかりなさい」
美貌の女教師が手を差し伸ばす。生徒はTシャツで脂汗をゴシゴシと拭き取ると、
彼女の助けに甘んじた。
水筒のコップを差し出される。注がれた水を一気に飲み干す。横でしゃがんだエス
テルはゆっくりと。
「エナジーライガーはファーム『ライガーズ・デン』に引き渡されるわ。…ショット
イーグルの方は、徹底的な調査の上安楽死させられるようね」
その言葉を聞いたギルは憂鬱だった。魔装剣は殺戮を象徴するジェノの称号を捨て
たブレイカーの意志の現れ。それが結局は無駄になってしまったと思うとやるせない。
「あいつ…」
「?」
「あいつ、ブレイカーの目を通して見た時、激しく怒り狂ってるようでした。何で、
あんなに…」
「ショットイーグルってね、公にはとっくの昔に絶滅したゾイドよ」
向こうを見つめながら答えるエステルの言葉に、ギルは驚き振り向く。
「この星では人が余りに勝手に振る舞うから、怒って蘇ったのかも…なんて言うのは
飛躍し過ぎかしら?」
答えに詰まったギル。古代ゾイド人である彼女は一体、どこまでわかっているのだ
ろうか。
「Zi人は時々勘違いする。ゾイドは奴隷になるために人をその身に招き入れるので
はない、自らの能力を一段と発揮させてくれるお返しに、人を守ろうとしているのに
過ぎない。…ゾイドと人は、契約関係にあるわ。
それを忘れてしまった時、今日のような事件は何度でも起こるでしょうね」
「ブ、ブレイカーは…!ブレイカーは、僕のことを…」
淡々と語られるエステルの言葉が太古の呪いのように聞こえてきた。不安が急激に
ギルを襲うが。
ブレイカーが、この若い主人の首に鼻先を押し付けた。…冷たい肌触りに思わず身
悶えする。
「…ひゃっ!?や、やめてよ、ブレイカーッ!」
「そうやってじゃれつかれてる内は大丈夫よ。…ね?」
エステルの言葉にピィと甲高い声で相槌を打つ。
喋っている内に、彼らの前にもグスタフは来た。今日はトレーラーに乗って帰れそ
うだ。たまにはそうやって羽根を伸ばすのもいい。
時刻は、とうの昔に三時を回っていたのである。 (了)
お、終わった、ようやく…。
のちほど、後書きという形で色々述べようかな、と。
今回の原稿、こちらの思惑通りには必ずしも伝わらないかもしれない部分がありますので、
その点も踏まえまして…(前スレ活用の予定。できれば二、三日中には)。
>>52 早速のレス、ありがとうございます!
>さらに、力の恐怖とは違うテクニカルな戦法で驚異を演出してますし・・・。
そう言って頂けると「我が意を得たり」と申しますか…。
今回、幾つもの「裏テーマ」がありまして、その一つが「強さのインフレの陥穽にはまらない方法の模索」です。
本稿はそのテストケースだったんですよ。
>>59 >「強さのインフレの陥穽にはまらない方法の模索」
確かにアイディアに工夫がなされていて凄い印象がありました。
貴方の作品にはあまり強そうにないゾイドでも、戦い方の工夫次第でかなりの強さになるという
ケースが多くて感心させられます。
◆.X9.4WzziA さんお疲れさまです。
憑鷲機って当方てっきりバスターイーグルだと思っていたら…イーグル違いでやられた!と言う感じでした。
しっかりディスクランチャーを使用している所も見逃せません。
そう言えば先にゾイドの姿に対してのコメントが有りましたがそれでやっと頭の中でぼやけていたブレイカーの姿がしっかりとイメージが持てるようになりました。
閻魔の策動作者さんへ
バナ〜ナ!Ziのバナナはそこまでの威力があるのか!?150t以上の大物を滑らすその威力たるやなんてこったい!と思いました。
あの人が食べていたバナナは特別な種類なのか?はたまた体内より出でる力がバナナに伝わっていたのか?
普通では考えられない大きさと重さを超越したネタ。笑わせてもらいました。
失われし者への鎮魂歌の作者さんへ
遂に始まった第三部。海面を揺らす何か…最初から難関の彼等は作戦をどう遂行するのか?
楽しみです。
今が旬?のネタ(独り善がり)がひらめいて話が少しあらぬ方向へ流れてしまいそうで…(汗
全然スレで”何が起こるか解らない”とは書いていましたがまさか…珍妙な者を思い付いてしまったんで。
内容的には従来のネタの間違った発展系ですが期待しないでその先をお読み下さい…お願いします!_| ̄|○
漆黒の夜空に白い光点が5つ輝く…それは無数の光を打ち出しながら近付いて来る。
無数の光はディープフィアーとそれと交戦状態のフリッケライドラグーンに情け容赦無く降り注ぐ。
「何っ!?」その異常な攻撃をいち早く気付いたメイアは「避けて下さい!無差別攻撃がきますっ!」
と機外広角連絡用マイクでそれを部隊全てに伝える。
「何だ!この熱量は!?くそっ!最後のチャンスかもしれないのに…トライホーンを抜いて誘導シールドを張る!他の機体もシールドをっ!」
ベルフは素早くトライホーンを引き抜き誘導シールドを張る。数秒後到達した光点からの攻撃は全てトライフォートレス3機のシールドに誘導されまた空へと消えて行った…。
「…ふっ我らに盾突くゼネバスの鼠共が。まあ良い。聞こえるか!ソニア、キリカ、フェニス、サーラ。」
光点の一つに乗る女性の言葉が他の光点に連絡を取る。「確り皆様に聞こえていますよ。ラフィーレお姉様。」ソニア=リュキウスからラフィーレ=アーヴェラーに通信が帰る。
「ソニア…ラフィーレお姉様は止めなさい。作戦行動中は”隊長”でいいわ。連絡が長引く程実戦では不利よ。」「了解しました”お姉様”言葉の数は同じですよ?」「解った…それでいいわ。」
彼女達の機体はゾイドと言うよりは地球の兵器”戦闘機”に近い姿をしているが頭部等を見ればそれがゾイドである事は一目瞭然だ。純白の機体に各々を示す色の彫刻が施されている。
その翼に成された部隊の紋章はヴァイスリヒト…白い光の意味を持つ。ガイロス帝国のピースメーカーに所属する高機動制圧部隊の特殊部隊だった。
「ピースメーカー!?あり得ない。なんでこんな所に?」メイアは混乱し自問自答している。しかしその答えは出る筈も無い。
「凄い方がぁ〜着ましたぁ〜。」一応ビックリしているルディア。「何だ!あの攻撃力は?推定120kmは先からの攻撃だぞ!」レミントンは着弾跡を見て驚愕する。
「ったく何で今更ピースメーカーが僕達を攻撃するの?共和国軍が救援でも要請したのか?」ベルフも困惑の色を隠せない。
更に関係のないディープフィアーはその白い光点をじっと見詰めている。クロームやカイエンも言葉を失って空を見上げている。
その中に一際緩んだ顔だが内心と目は全く緩んで居ないと言うより空から来る光点を睨むファイン…。
その他誰もが空からの招かれざる客を迎え撃つ手を持たなかったのだ。
やがてそれ等は華麗にその姿を替えながら大地へ降り立つ…。白い凶鳥は翼を畳み込み恐竜の足で大地を踏み締める。
地に降り立った恐竜型の機体は誇らしげに姿を彼等に見せつけた。
「我らヴァイスリヒト!セフィーナ=アーヴェラーの意思を現す者なり!」ラフィーレは声高々に宣言する。「馬鹿な!ピースメーカーが個人を優先する事など…」レミントンの言葉を遮りラフィーレは続ける。
「今宵故有ってこの場に降り立ったまでの事。流れ弾に当たる等我らには有ってはならぬ故先の行動を執った。非礼ならこの場でお詫びしよう…すまんな皆々方。」
高慢極まりない礼のつくし方。貴族階級の者や精鋭部隊に良くある態度だ。「何の〜御用ですかぁ〜ラフィーレちゃん?」どうやらルディアの知人だったらしい…。
「あら?ルディアじゃない?こんな所で頑張っていたの?」緑の意匠を持つ機体からフェニス=ファーランドが悪戯っぽく言う。
「止めなさいフェニス。今用が在るのは彼女じゃないわ。そこに居るのでしょう?ファイン=アセンブレイスいいえ…私の呪われし永遠のライバル”ツヴァイト=シュタインシルト”!」
「おい…お前の本名って随分やばくないか?ファイン?」レミントンがそっと語りかける「ええ…ツヴァイトはともかくシュタインシルトは言われたくないであります。」「逆だろっ!!!マイブラザー!!!」思いっ切りベルフに突っ込みを受ける。
「そこまでにして欲しいんですけど…インチキ3バカトリオの漫談はね!!!」小隊長クラスの人間は全て旧知の仲で有る為ラフィーレはその後を続けさせない様にばっさりと話を切る。「…」×3一気に黙り込んでしまう3人。
「その前に邪魔になりそうね…彼は。」ディープフィアーに向かって5機のゾイドは一斉に襲い掛かる。「見せて上げるわ!私が貴様を敵視する証!10歳にも満たない貴様が遊び半分で描いた絵と適当なシステム説明が実現したこの美しい姿を!」
その姿は中型ゾイド。アロザウラーを一回り大きくしたサイズの機体だがエネルギー反応が非常に高いコアが”二つ”存在するのが確認された。
「ツインドライブシステム!?ガキの謳った適当な与太話が…。」ファインは真っ青に成って目はそれに釘付けになる。
「与太話?フン!絵に描いた餅が本物になって驚いている様ね?でも甘いわねストームラプターの真価はこれからよ!」嬉しそうに言いながらストームラプターをディープフィアーに向かって飛翔させる。
ストームラプターはそのまま翼を広げ何の苦も無く飛び立つ。ブロックスでは無い機体が二つの特徴をリアルタイムに共有する事は今まであり得なかった事だ。
二つのコアが共振、共鳴し簡単にデスザウラー級のエネルギーを叩き出す。5機の純白の凶鳥はあっと言う間にディープフィアーに纏わり付き攻撃を始める。
その攻撃は華麗で無駄も無いその上機体毎に違った装備を駆使してディープフィアーを追い詰めていく。
ディープフィアーも必死になって反撃する。
彼等の攻撃を吸収し帝国軍を半壊状態にした閃光を放つがその閃光を見た後に回避できる瞬発力、一撃でその表皮を剥がす攻撃力、その上スペックに対しての超小型化。
かつて帝国武器開発局は至高の技術力を持つと持て囃されたがそれを軽々と頭一つ飛び抜けている。
ゼネバスと言う獅子身中の虫を吐き出した事によって技術力が向上したのだろうか?しかしそんな訳が無い。
兵器開発局に関しては能力重視で必死になって懐柔したと言う話が有る程名の通った技術者は軒並みネオゼネバス建国時にデルポイに渡って来ていた筈だ。
疑問や否定はともかく目の前では圧倒的な力で…そしてそれを難無く乗り熟す者の手で現実として見せ付けられているのである。
「そろそろ可哀想ね…止めを刺してあげる!フォーメーションS!受けなさい恐怖の亀裂!テラークラックアーティラリー!!!」
ストームラプターの胸部のカバーが腕に装着され胸部の機構が露になる。空中で陣形を取り胸部より高収束荷重衝撃砲が連射される。
ディープフィアーに到達すると激しく気味の悪い着弾音と衝撃波が弾ける勢いで体中に亀裂が走る…。それを数セット受けてディープフィアーは自らが飛び出した穴に落ちていった…。
「次は貴様の番よ!大人しく我々に拘束されるなら良し!そうで無いなら…」とそこまで言うと「力ずくで?でありますか?」その戦闘経過中に間に我に帰ったファインは言う。
「その通りだ!何故私の可愛い妹が貴様に固執するか解りたくも無いけど妹の…セフィーナの為よ。覚悟なさい!」そう言うが速いか両肩のパルスキャノンを発砲する。「問答無用!かっ!?」スイッチが入ったらしい。
パルスキャノンを避ける事無くマグネイズファングでエネルギーパルス弾を噛み砕く。「なっ野蛮な…いい?手出しは無しよ!」「了解しました。」ラフィーレの命令を聞きその他4機は始めに降り立った場所に戻って行く。
「こっちも手出しは無しで異存は無い。これは貴様等の問題だ。」何時の間にか戦場に近付いていた指令機からアービンの声が聞こえてくる。
「ちょっと!?いいんですか!?大佐!?」レミントンは異議を申し立てるが「無理を言うな!奴一人の為に全部隊を危険に晒す訳にはいかん!」その言葉にレミントンは何も言え無くなった…。
一方的な怨恨で行われようとしている私闘。相手にしたく無いのは当然だがこの戦力が味方に向けられば全滅は確定する。
要するに逃げ場無し!と言う事だ。「全く…面倒が次から次へと舞い込んで来る!」間合いは離れ…戦闘が開始される。
「ラプタースレイブ!」これまでの優雅さなど欠片も無く攻撃が開始される。逃げ場を奪う事が重要な包囲攻撃用スカウターポッド。
それが4つ空中に浮きキメラゴジュラスを包囲する。「サークルディジョネイター!」わざわざ相手に攻撃の瞬間を告げるのだからその命中率は非常に高いのだろう…。
しかし攻撃のタイミングを見計らって中心部を上下左右に分散させ攻撃を回避する。サークルディジョネイターの発動地点には高熱で木々が灰になっている。
「!」プラズマコートアローが放たれるがその機体サイズが功を奏しストームラプターは翼に衝撃波を受けて上昇し避ける事無く攻撃を流す。
「忌々しい!ブロックス等…ゾイテック等我らアーヴェラーファクトリーズの前には有象無象だと言う事を教えてあげるわ!」そう言うなりストームラプターは隼の翼をはためかせあっと言う間に視界から消える。
「受けなさいっバーニングトレイル!」サイズの大型化によりレブラプターを越える巨大な足の鉤爪が唸りを上げ風を巻き上げて超低空で迫る。
「貰った!」それを見透かした様にキメラゴジュラスはムーンサルトプレスを仕掛ける。この場合ムーンサルトプレスは相手を捕らえ易い他失敗しても着地は容易と至れり尽くせりの筈だが今回は目の前に相手が来る事は無かった。
突然キメラゴジュラスの視界に地面が見えたと思うと衝撃が走り地面に叩き付けられた事が解る。コンディションモニターには背部装甲の破損、武装破壊、マグネッサーの不調が表示される。
「ふふん♪情けないわね…甘っちょろい常識なんてこの機体には通用しないのよ!」実際の所減速が間に合っただけだがそれでも充分なインターバルを持つ事を誇示する事に成功したラフィーレだった…。
その頃、最前線の戦いはますます激しさを増していた。ついに動き出した、デスファイター、
高機動型デスザウラーを中心とした帝国軍旧共和国首都防衛部隊の主力部隊の戦闘力はすざましく、
快進撃を続けていた共和国軍の進軍が初めて止まった。それだけではない。絶望し掛けていた、
残存する帝国軍も主力部隊の活躍に勇気付けられ、士気を向上させて共和国軍に襲いかかったのだ。
対照的に共和国軍の士気はガタガタだった。しかし、このまま負けてしまえば、これまでの進撃も
全てが無駄になる。再び中央大陸の外に叩き出される可能性すらもある。そう考えると共和国軍兵士達は誰もが青ざめた。
守りに入っていた帝国軍が初めて攻めの為に進撃を開始した。目標は後方の共和国軍本陣である。
デスファイターを中心に、周りを高機動デスザウラーが固め、さらにその周辺にセイスモサウルス、
エナジーライガー、有人キメラブロックスを中心とする残存部隊が展開されるという陣形は、
共和国軍のいかなる防衛線も無意味だった。本陣がやられるのも時間の問題であった。
「司令!!戦況は我が軍が圧倒的優勢です!!」
「おお!!やれば出来るではないか!!しかし…こんな事なら初めからデスファイターらを
出撃させておくべきだった…。そうすれば…無駄な犠牲を払わずに済んだというのに…。」
オペレーターから、状況を聞かされた帝国司令官は嬉しい反面、悲しげな言葉で言った。
しかし、帝国軍の進撃は苛烈であった。ゴジュラスギガやマッドサンダーが突撃を掛けるも、
デスファイターのエクスカリバーで次々に切り倒された。デスファイターの戦闘力はデスザウラーの
それを遥かに凌ぐ物であり、そのパイロットもただ者ではなかった。なおも進撃を続ける帝国軍と
なすすべないまま蹂躙される共和国軍。共和国軍は密集陣形を貼って集中砲火を掛けるも、
デスファイター&高機動デスザウラー部隊の大口径荷電粒子砲の嵐によって消し飛んだ。
荷電粒子砲の多用は惑星Zi環境の悪化を招くと叫ぶ自然保護団体も消し飛ばされた。
ヤツらを止められる者はいないのか。誰もが絶望し、そう思った。そんな時だった。
進撃途中のデスザウラーの一機が突然崩れ落ちたのだ。突然の出来事に帝国軍の進撃が止まった。
しかし運悪くストームラプターの着地地点はトライフォートレスの誘導シールドで誘導しきれなかった着弾後のぐずぐずの地面に足を取られる。
「飛行ゾイドに乗っている割りにはお粗末だな。」プラズマコートアローは姿を変えプラズマクローになりストームラプターを襲う。
「このぉっ!」ラフィーレは無理矢理マグネッサーの出力を上げ飛び立つがタイミングが一拍遅れプラズマクローを自ら左の翼に受けてバランスを崩す。
そのまま左斜めに上昇しながら何とか姿勢を元に戻すストームラプター。「くっ!貴様この純白の翼を傷物にっ…腕の一本程度は覚悟してもらうわよ!」
あっと言う間に背後を取ると胸部カバーを素早く両腕で定位置に装着し攻撃態勢を取る。「砕けろっ偽りの命!死への誘い手!ギガソートブレイザー!!!」
今度は高収束衝撃波に粒子砲を同時発射し粒子が衝撃波に吸収される時に発生するざわめきの様な音と共にエネルギー粒子衝撃波がキメラゴジュラスの背に直撃する。
「くっ!カットオフ!」ファインは素早くカットオフ機構を使用しダメージを最小限に抑えるが強力なエネルギー粒子衝撃波は機体に信じられない程の長期振動を与える。
「何て威力だ…出力だけでなく複数の武装の相乗効果使用まで基礎設計に含まれている。本当にガイロス帝国製なのかっ!?」未だ振動が続いており再接続に時間が掛かっている。
「ふっ…便利なものだな。ダメージを受ける事を想定して分離。ダメージを逃がす…しかしダメージはダメージだ何時かは限界が来る。」
そう言うストームラプターは信じられない事に先程の翼の傷は緊急用と思われる金属ジェルで応急処置をされていたのだ。そしてもう乾き始めている。
「同じ人口ゾイドコアを使っている割りには…弱いわね。まあしょうがないかしら?一般兵を基準にした機体だし。」熟々嫌みと煽りを忘れない喋り方でラフィーレは笑う。
しかし次の瞬間ストームラプターは緊急退避行動プログラムに添って空に飛び上がる。「何故空に逃げる!何が有るというの!?」突然Gが懸かり不意を突かれたラフィーレは地上を見ると…。
キメラゴジュラスから緑色の輝きがコアブロックから漏れ始めていた。
そのデスザウラーには何かで体を深々とえぐられたような跡が残っていた。一体誰が…。
誰もがそう思ったときだった。今度はセイスモサウルスがやられた。このセイスモサウルスも
先ほどのデスザウラー同様、何かで体をえぐられた跡が残っていた。その直後だった。
またデスザウラーがやられた。セイスモサウルスが、エナジーライガーが、帝国ゾイドが次々に
何かに体をえぐられて倒れ込んでいく。目に見えず、得体の知れない恐怖に帝国軍兵士達は
とまどうばかりであった。そして、それを見ていた共和国兵士達も、ポカンと口を開けたまま唖然としていた。
「うわぁぁぁぁ!!!助けてくれぇぇぇ!!!」
目に見えぬ恐怖に耐えきれなくなった帝国兵士達の何人かが突然そう叫び、陣形を離れて逃げ出したのだった。
「こら!!陣形を乱すんじゃな…。」
陣形に残った帝国兵士の1人がそう叫ぼうとしたとき…その逃げ出した兵士達のゾイドも、
何かに体をえぐられて倒れ込んだ。その時だ。その体をえぐられ、倒れ込んだゾイドのすぐ隣の
地面が突然吹き飛んだのだ。まるで地面の下から強力な圧力が掛かったかのように。辺りに土が
まき散らされ、砂埃、土煙がまき起こった。そして、その砂埃、土煙が晴れた時、そこに現れたのは
一体のライガーゼロファルコンだった。この機体はジェネラルである。そして、その背中に
装備された2本のバスタークローがスパークを起こしながら超高速で回転していた。
「ま…まさか…あのドリルを使って地中から奇襲攻撃を仕掛けたというのか!!」
「しかし…タカがライガーゼロ!!新型アーマーを装備した程度で勝てると思うな!!」
エナジーライガーが3機、ジェネラルへ向けて跳んだ。速い。いかなる高速ゾイドですらも
回避不可能な程であった。エナジークローが、エナジーウィングが、グングニルホーンがきらめき、
ジェネラルに襲いかかった。どれもライガーゼロはおろか、重装甲ゾイドすらも一撃で倒せるほどの
超兵器である。勝負はコレでカタが付いた。そう思ったときだった。ジェネラルがかわしたのだ。
エナジーライガーの攻撃を。その速度はエナジーライガーパイロット達の想像を遥かに
超える物だった。最高速度も、旋回速度も彼らの知っているゼロを遥かに超える速度であり、
エナジーライガーにすらも匹敵できるレベルであった。
「そんな馬鹿な!!エナジーチャージャー無しにあんな速度が出せるというのか!!!?」
エナジーライガーパイロットの1人がそう叫んだ直後であった。ジェネラルのバスタークローが
エナジーライガーのエナジーチャージャーを切り裂き、残ったもう1機のエナジーライガーも、
ジェネラルの前足に装備されたザンスマッシャークローによって切り裂かれた。
スピードだけではない。その攻撃力もそれまでのゼロを遥かに超える物だった。
「むう…。」
その様子を見ていた帝国兵士の1人がそう呟いた。そして、さらに続けた。
「しかし…ヤツがバスタークローもどきで地面を掘って地中から奇襲を掛けたとしても、デスザウラーやセイスモサウルスがこうも簡単に倒される物なのか?」
「確かにそうだ…もしかしたら…もっと凄いのが別にいるのでは?」
「ご名答!!」
その時、突然地面の下からそのような声が聞こえてきたのだった。帝国兵士達は思わず驚いた。
「おのれ!!何処だ!!出てこい!!」
帝国兵士達がそう叫ぶと共に、デスザウラー達は一斉にその両腕の巨大な爪で地面をほじくり出し始めた。
「わかったわかった!!出てきてあげる!!!」
どう゛ぁぁぁぁぁぁぁん
突然巻き起こった爆発音にも似たその音は密集陣形を張る帝国軍のど真ん中から響き渡った。
土が辺りにまき散らされ、砂埃、土煙がまき起こる。しかし、先ほどジェネラルがやったソレと
根本的に違うのは、その勢いたるや、デスザウラーすらも数機まとめて吹き飛ばす程の威力が
あったという事であった。そして、周囲の帝国ゾイドを吹き飛ばしながら現れたのは、
メタリックグリーンのカラーリングの輝くゴジュラスギガ。カンウそのものだった。
「ぐ…グリーンデビル!!!!」
カンウからもっとも近くにいたデスザウラーのパイロットが思わずそう叫んだ。その直後だった。
そのデスザウラーの腹部にカンウの左爪がもの凄い速度で叩き込まれたのだった。400トンを
超える重量を誇るデスザウラーの巨体が宙に舞い、そのまま数機の帝国ゾイドを巻き添えにして
倒れ込んだ。それを見た誰もが青ざめた。いかにゴジュラスギガの格闘戦闘力がデスザウラーを
凌ぐとされていても、理論上はアレほどの極端な威力は無いはずである。そう…理論上は…。しかし、
逆を言えば、それはあくまで理論上の話に過ぎないという事にもなる。カンウがこれほどまでの力を
出せるのは、カンウ自身が、ゴジュラスギガの中でも特にずば抜けた力を持っている事と、
マオの操縦技術の高さ。さらに、そのマオの操縦技術に付いていかせるために、カンウ自身も強化が
施されており、なにより精神レベルでリンクする両者のつながりの強さがその要因であった。
もはや理論という2文字では推し量れぬ力が両者には存在するのである。
「うろたえるな!!攻撃しろ!!!」
1人の帝国兵士がそう叫ぶと同時に、カンウの周囲に展開するデスザウラーが一気に身構え、
カンウへ向けて飛びかかった。カンウは背中に装備していたPMBユニットを切り離し、両腕へ
再装備した。その直後、PMBユニットのマグネーザーが高速で回転しだした。
「神聖寺!!魔斗李駆素乱舞!!」
突然マオがそう叫んだ。それと同時にカンウが両腕に装備したPMBユニットを、両腕ごと大きく
左右に広げ、高速で一回転したのだ。しかし、それだけの動作で周囲から飛びかかった、数機の
デスザウラーが体を大きくえぐられて吹き飛んだのだ。そのえぐられ方はまさしく先ほどの物と同じ物だった。
「神聖寺魔斗李駆素乱舞」
西方大陸の中心部にそびえるオリンポス山に存在する西方大陸拳法界の総本山として知られる
神聖寺の奥義の1つであり、高速で回転することによって発生する風圧と拳圧によって周囲の敵を
吹き飛ばすという技である。なお、技の名前に関しては当時の技の開発者が地球人からもたらされた
ある映画のファンであり、そのタイトルを拝借させたもらったという逸話が残っている。
オリンポス書林刊「拳法のおもしろ逸話」より
>>恐怖の亀裂作者さんへ
オリジナルのゾイドや凄い技術などが色々出てきて凄いと思います。
戦闘の描写などもかなりリアルっぽいものになっていますし。
そのオリジナルゾイドにも最近はやりのゾイドコアの共振増幅を上手く使ってますし。
あと、バナナの件はそれほど深く考えなくてもいいです。
>>失われし者への鎮魂歌の作者さんへ
まだ始まったばかりですから何とも言えませんが、どういう風に歴史に影響を
与えかねない話になるのかが気になります。
>>72 閻魔の策動作者氏
素晴らしいです…旧大戦時にまともな活躍しなかったデスファイターの再登場に祝砲(煤賁゚ーン)
>>恐怖の亀裂作者氏
もう何か「凄い」の一言です。寄生体とか…そして名機ケンタウロスの活躍に祝h(ry
レーダーに機影が映る。
「熱量確認…ウォディック5機、デススティンガー2機!!」
ロイが居るのは第1中隊のホバーカーゴだ。第2中隊の艦から通信が入る。
「やばいぞ!!連中は対艦ミサイルまで持ち出してきやがった!!さっさと終わらせなければ…堕ちる!!」
ウォディック70機。単純計算で対艦ミサイルが140発。
「そりゃ、ホエールキングでもやばいって!!」
またも振動。格納庫のクルー達がよろめく。
「少なくともデススティンガーは、火器を使う為に海面に出なければならない…
だがウォディックは70機…艦載の魚雷だけでは、到底捌ききれないぞ!!」
「とにかく!!ハッチ開けろ、俺が出て何とかする!!」
ロイが凄いスピードでタラップを駆け上る。
「おいおい、お前のタイガーじゃ水中の敵は倒せないぞ!!」
「こんな時に中でじっとしてろってか!?どっちにしろここで沈んだら意味が無い!!」
ロイはディアブロタイガーの操縦桿を握った。
アルティシアがバランスを取りながらマイクに叫ぶ。
「ハイハイ、解ったから!!…ハッチ、開けてやりなさい!!」
ロイが甲板に飛び出すと同時に、アルティシアが笑った。
「さて、私も出ようかな…」
「何?このデータは…さっきの化け物と同じ反応!?如何言う事なの!?」検出されたエネルギー係数と周波数に表情が引き攣る。
キメラゴジュラスから漏れる緑の輝きがディープフィアーと同質の物で有る事に困惑する…それは彼女が初めて感じる未知への恐怖。
「私が恐れている…そんな馬鹿な!そんな筈は無い!!!」それを認めたく無い一心で攻撃を再開する。パルスキャノンを連射し辺りを土煙に包ませる。
「さあ…来なさい。その一撃で最後にしてあげるわ…。」ファルコンアームを構えると腕の内側よりエネルギーバイパスがファルコンクローに流れ込む。
土煙から何かが飛び出してくる…それは当ての外れた方向へ飛んで行くのを見てそれを無視して予測射撃を行うストームラプター。
エネルギーの波動が不規則な為キメラゴジュラスの位置が特定しきれないのが原因である。「やったか!?いや!違う!後方から接近する物体!?きゃあ!!!」
後方から激突した物はキメラゴジュラス肘下の腕部。地球製の戦闘メカアニメーション特有の武器〇ケットパンチやブースト〇ックルとか言われる兵器だ。
ブロックスに於いては熟練次第だがこの手の攻撃を任意に行う事が出来る。ジェノザウラー等の様に専用の機構を待たせる必要が無い為回収、整備も容易である。
しかしその反面操作は面倒極まりなく使用出来る者は僅かしか居ない他好んで使用する者も居ない。要するに幻の攻撃と言われる裏技中の裏技と言う事になるのだ。
当然奇襲に成る。ラフィーレが間違い無くエースである事を考えてもこの効果は偉大だと言って良い結果だった…。
「くぅっ!?何処に居る!」目標を特定できず辺りを必死に警戒するが腕は断続的にストームラプターに迫ってくる。
しかし避ける事しか出来ない。あの腕は捨てゴマに間違い無い。躍起になって破壊してももう片方の腕が飛んで来るだけだ。
土煙に隠れて次の行動の準備を行っている事だけが彼女に解る唯一の事である。しかし…土煙の中から飛び出した物は…もう一つの右腕だった。
「なっ…もう一つ右腕!?何時の間にパーツを掻き集めたと言うの?」ここに来てブロックスの長所がストームラプターを追い詰める。
無理も無い事だがつい先までここは大量のブロックスが犇めき合っていた場所だ皮肉な事にパルスキャノンは地面に今まで埋まっていた宝物をファインに与える結果に為ったのである。
その頃ファインはコミュニケーションモニターに表示された言葉に目が離せなかった…。
必死に飛ばした腕を操作し機体の位置を絶え間なく動かしながらもその言葉の主の次の言葉を待っていた。
「コレカラドウスル?」たったこれだけの言葉だがこの言葉の主はコアブロックに他ならない。機械から生れた物が明確な意志を持って伝えた初めての言葉だ。
寄生体が寄生した為でもある筈だが明確に意思を伝えると言う事はこれまでに無い事例だ。
精神的なリンクに寄る対話は良くある事例だが誰の目に見える状況でのコンタクトは無い。ファインはパネルを動かし次にしようとする行動を伝える。
すると「ワカッタ!マカセロ!」答えが帰ってくる。
キメラゴジュラスの背部の欠損ヶ所から寄生体の職種が力強く成長し伸び始める…。機体のエネルギーが回復、急上昇する。左腕のプラズマクローはプラズマシザースに姿を変え腕部に装着されている。
更に左腕に掘り出されたナイトワイズの翼をゴテゴテに付けて準備を完了する。
「いくぞ…無駄に付き合う必要は無い!」土煙を横に突き抜けストームラプターの背後に出る。
「そこか!消えろっ!」ファルコンクローを振り抜くと何時の間にかクローに収まっていた水平尾翼を投げ端つ。
「切り裂け!デストラクションブーメランッ!!!」光り輝く尾翼の刃が高速回転してキメラゴジュラスに迫る。
上昇を始めたキメラゴジュラスには逃げ場が無いと思われた…。
「そんな!?馬鹿な…ここに来てそんな…。」目の前の現実が理解出来無いラフィーレ。其れだけでは無く回りに居た誰もが目の前の状況を疑った。
デストラクションブーメランを躱せる程空中での行動力は持ち合わせていないキメラゴジュラスがその場から水平移動したのだ。胴体右側を二つの右腕が掴み押していたのだ。
そのまま左回りに上昇ストームラプターを捕らえプラズマシザースを振り抜く。攻撃は回避されるがその動きに切れは全く無かった。地上に降り立ち相手を睨み構えるキメラゴジュラス。
対照的に戦意を失い掛けて居るのを必死に繕う用に過剰な動きで構えを取るストームラプターは対照的に見えた。
職種×触手○ですね…自ら話の腰を折ってしまいかねない書き間違い。
何とか直したいものです_| ̄|○
失われし者への鎮魂歌の作者さんへ
喜んでもらえて幸いです。でも当初考えていた最大の脅威テイルデストロイヤー(仮名)を炸裂させ忘れてしまいました。
悔しい限りです…。
多分今がその時人名保管時だと思います。
【人名】
ベルフ=スクラワル:第4小隊フォースフォートレスの実働部隊の指揮を取る少佐で士官学校時レミントン、ファイン等と同期である他クラスが分かれる事も無かった
3人揃うとラフィーレ曰くインチキ3バカトリオを結成する事が出来る、その他プラズマ兵器運用推進委員会会長を務めている
ラフィーレ=アーヴェラー:アーヴェラー本家の長女でピースメーカーのヴァイスリヒトを指揮する、正式な軍人でないためヴァイスリヒトのメンバーには階級が存在しない
非常に思い込みが激しいタイプで妹でアーヴェラーファクトリーズ代表セフィーナの譫言を勘違いし施設周辺に飛来した、一方的にファインをライバル視しており彼に負けず劣らずのトラブルメーカーでもある
誰もが恐れ羨む操縦技術と天性の直感を持つが実戦経験が全く無くその隙を突かれ窮地に立たされている
セフィーナ=アーヴェラー:アーヴェラー本家の次女でアーヴェラーファクトリーズの総裁を務める若き経営者、姉に劣らず勘違いが多くかつてただ一度落し物を届けただけのファインを憧れもう一度遇いたいと願っている
経営者としての手腕は非常に高くピースメーカーにヴァイスリヒトをねじ込む等普通に考えれば無理な事をあっさりとやってのける
妄想多き人であり見るに堪え無い程常に譫言を口にしている、姉と二人揃えば何も無い所からトラブルの種を生み出すとんでもない存在である
ソニア=リュキウス:ヴァイスリヒト所属で副隊長を務める、名門のゾイド乗りの家系に生れごく当たり前の様にゾイドを乗り熟す
ストームラプターのパーソナルカラーは青、個別装備は小型テイルマグネーザーとバスターガン
キリカ=シュレン:同じくヴァイスリヒト所属、何処かの格闘技を修得している
パーソナルカラーは赤、個別装備はセンボンランチャーとスマッシュロッド
フェニス=ファーランド:同ヴァイスリヒト所属、ルディアと同期で相当の射撃の腕を持つ
パーソナルカラーは緑、個別装備はヴァリアブルスナイパーの超長距離ショットガンとEスナイパーライフル
サーラ=オヴェリス:上項全略で、ミズホを越える12歳でパイロットを務める
同じく全略はオレンジ、唯一量産型のロールアウト装備のままであるビームくないとそれに内蔵されているビーム手裏剣ランチャー
「ぬぅぅぅぅぅ!!!」
数機のデスザウラーがまとめて吹き飛ばされた光景を見た帝国兵士達は誰もが青ざめた。
「なめるなぁぁぁ!!!!」
ある1人の帝国兵士が叫んだ。デスザウラーが高機動ブースターを全開にして背後からカンウへと
突撃した。勇気ある攻撃。しかし、それは一歩間違えれば無謀な攻撃にもなりえた。
その直後、カンウの尾が火を噴いたのだ。故障ではない。この火はロケットブースターの火だった。
ロケットブースター加速式クラッシャーテイルの攻撃である。ロケットブースターで加速された
カンウの重金属の尾が超高速でデスザウラーの腹部を襲った。
ばぎゃん
重金属がちぎれる音と共に、そのデスザウラーは真っ二つになった。ますます青ざめる帝国兵士達。
いかにクラッシャーテイルが強力でもデスザウラーを真っ二つにする程の力は無いはずである。
しかし、それはあくまで理論上の話である。理論上では推し量れぬ力を持つマオとカンウには
通用しない。あえて説明するのであるならば、マオの持つ力「気功」という物も少なからず
作用している。クラッシャーテイル攻撃時に、凝縮した生命エネルギー「気」を尾へ集中させる
ことによってレーザーブレードに近い現象を起こし、それもデスザウラーを真っ二つにした要因
なのである。非理論的な話ではあるが。
「うわぁぁぁぁ!!化け物めぇぇぇぇぇ!!!」
今度は数機のデスザウラーの口が光った。大口径荷電粒子砲だ。その距離100メートルもない
近距離。当たった!!カンウの体は荷電粒子の光の渦の中に飲み込まれたのだった。
例えシールドを張ったとしても、数機束ねた荷電粒子砲には耐えられない。
それを見た誰もが安心した。勝った。思ったよりあっけなかった。が、荷電粒子の光が晴れたとき、
そこには、まるで立体映像のようにうっすらとその空間に存在する半透明のカンウの姿があった。
「へ?」
誰もが唖然とした。と、その時だった。先ほど荷電粒子砲を吐きかけたデスザウラーの背後に
カンウが現れたのだ。カンウはそのまま背中にPMBユニットを突き刺してデスザウラーを倒す。
「なんだと!!?」
この事実は帝国軍を混乱させた。倒したと思われた相手が何事もなかったかのように現れたのだ。
別のデスザウラーが右腕を振り上げ、カンウ目がけて爪を振り下ろした。しかし、その攻撃もまるで立体映像に斬りつけたかのようにすり抜けるだけだった。
「一体どうなってるんだ!!?」
デスザウラーのパイロットはワケが分からず唖然とした。しかし、そんな彼のデスザウラーも
一撃で倒された。その後も、間髪入れずに帝国軍はカンウへむけて攻撃するが、まるで立体映像を斬りつけているようにその攻撃はまったく当たらなかった。
「幻惑残像ギガスミラ――――――ジュ!!!」
カンウのコックピット内でマオは叫んだ。かつて、マオが修業時代において、中央大陸の
竜王流、西方大陸の神聖寺、東方大陸のカランの塔で修行した事がある。その3つの流派での
修行をした際のノウハウを生かし、マオは新たに自らのオリジナル技もいくつか開発していた。
そのウチの1つ。その名の通り、極瞬間的に、超高速で動くことによって残像を作り出し、
その残像によって敵を幻惑する技である。先ほどの立体映像のような物は紛れもなくマオの作り出した自らの残像なのである。
それでも、マオとカンウの活躍は目に余る物があった。なによりも本来突き刺す事が目的の
PMBユニットのマグネーザーでデスザウラーをぶった斬るなどという芸当すらもやってのけていた。
「くそぉぉぉ!!グリーンデビルめぇぇぇ!!!」
エナジーライガーがカンウへ向けてチャージャーガトリング&チャージャーキャノンを連射した。と、
その時だった。何かがエナジーライガーの間を縫って走り抜けたと思った直後、エナジーライガーが
次々に崩れ落ちたのだ。それはジェネラルであった。ジェネラルは高速で走り抜けながら、
そのバスタークローでエナジーライガーを切り裂いていく。
帝国軍は大混乱に陥った。その時だ、浮き足立つ小型、中型キメラ部隊を光の渦が飲み込んだのだ。
「実は私もいるのです…。」
そこにはカンウがPMBユニットで掘った穴から顔だけをヒョッコリと出したガイガイガーの姿があった。
突然の陣形内部からの奇襲攻撃によって帝国軍部隊は大混乱に陥った。さらには密集陣形を
敷いていた事が災いし、味方同士の接触や同士討ちが多発した。しかし、それだけではなかった。
「若い衆が頑張ってるんだ!!俺達だって!!」
共和国軍が再び進撃を開始したのだ。先ほどまで絶望し掛けていた共和国兵士達も、マオらの戦いを見て勇気付けられたのだ。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
共和国軍の反撃が始まった。ゴジュラスギガの牙が、マッドサンダーの角がデスザウラーを破壊し、
凱龍輝の集光荷電粒子砲が帝国ゾイドを飲み込んでいった。浮き足だった帝国軍部隊は崩壊寸前であった。
共和国軍の進撃が再び開始された。しかし、帝国軍は確かに浮き足立っていたがデスファイター
だけは例外だった。そのデスファイターがブースターを全開し、カンウ目がけて突撃してきたのだ。
「ウハハハハハハ!!!見つけたぞグリーンデビル!!貴様を倒してこの俺とデスファイターが紅き悪魔として戦場に君臨させてもらうぞウハハハハハ!!!」
少し切れかけた感じの下品な笑い声をあげながら、デスファイターパイロットは操縦桿をさらに
傾けた。デスファイターは握りしめている巨大電磁剣「エクスカリバー」を振り上げた。
ゴジュラスギガやマッドサンダーすらも切り裂く超兵器である。
「は〜…そのグリーンデビルって呼ばれ方嫌いなんだけどな〜…。」
その場の緊迫した状況とは対照的にマオはのんびりした口調でそう言った。しかし、口ではそう
言っていても、体はしっかりと構えられていた。避けるつもりはない。真っ向から受け止めるつもりであった。
「ウハハハハハ!!!真っ二つぅぅぅぅぅ!!!!」
がぎぃぃぃぃぃぃぃん
「な…何ぃぃぃぃぃぃ!!!?」
デスファイターのパイロットは愕然とした。デスファイターのエクスカリバーの攻撃を、PMBユニットを十時に交差して受け止めたのだ。
「そんな馬鹿な!!ギガやマッドサンダーも切り裂くエクスカリバーだぞ!!」
「気合いよ気合い!!気合いさえこもっていればそんな攻撃、木刀でも受け止められる!!!」
「それはひょっとしてギャグで言っているのか!!!!」
「…は?何言ってんですか、大佐!!艦の指揮全般はあなたが取って…」
「いや、別にあなた達だけでも充分だと思うけど?そんじゃ行ってきまーす♪」
アルティシアはあっと言う間に、ゴジュラスMk3のコックピットに滑り込んだ。
「ゴジュラスMk3、アルティシア=フィールド…出ますッ!!」
甲板に出たアルティシアは、ロイの機体を確認した。そして、絶句した。
ディアブロタイガーの周りに、量産型デススティンガーの残骸が2機。そして海面に
ウォディックの残骸が5機。
「…ど、どうやって…!?」
相手のパイロットも馬鹿ではない。水中から出なければ安全なのは解っている筈だ。
ならば、燻り出したと考えるのが妥当であろう。しかし、やはりどうやったのか?
アルティシアの胸に、直面する危険とは別の胸騒ぎが芽生えた――その時、レーダーに新たな機影が映し出された。
「もう絶対に…やらせない…!!」
サイバーメタルキャノンの砲口が、赤く焼け付いている。
ロイは海中にCMCを連射し、海水温度を一瞬で上昇させたのだ。それにより熱誘導の
対艦ミサイルは大きく軌道を外れてしまった。そしてビームによる攻撃を行おうと海面に出てきた
ウォディックはCMCの散弾で撃ち落し、艦上に上って来たデススティンガーは格闘で叩き潰した。
しかし、これをアルティシアが出てくるまでの数十秒で行ったのだから驚異的である。
ロイもレーダーの敵影に気付いた。本人こそ気付かないものの、その肩からは妙な殺気が滲み出ている。
如何に平静を装っていても、内心ロイは焦っていた。
機会を逸するのが怖かったのだ。目的を果たす機会を。
――“彼女”に会う機会を逃す事が―――
旧共和国首都、へリックシティ。
ここは「ゼネバスシティ」となる筈だったのだが、ヴォルフ=ムーロアが「語感が悪い」と言って
名前を変えさせなかった。その為、ネオゼネバスの首都でありながらへリックシティ。
旧共和国領の住人も一応通常の生活を送っていた。懸念されたような迫害が無かったのはやはり
指導者の気風が映し出されている様に思える。
そして、この町にも情報は入ってきた。西方大陸の共和国軍が上陸作戦を開始したと――
〔ごめん…こんな形でしか、君を守ってあげられない…〕
「駄目、止めて…!!」
〔ありがとう……さよなら〕
アイリス=ボーグマンはベッドから飛び起きた。
「また…この夢か…」
あの日から何度も同じ悪夢を見る。何もできずに、焔の中へ消えていく少年を見送る事しかできなかった自分。
あれから何年経っただろうか。
テレビを点けると、軍事ニュースが流れていた。
「本日、西方大陸に潜伏していた“旧”共和国軍がデルポイへの侵攻を開始しました。
しかし、我が軍の強固な防衛網を突破する事はできません。どうか、国民の皆さんはご安心を」
アイリスはぼんやりと寝巻きのままテレビを見ていた。過去の光景がまた脳裏に甦る。
「そっか、残ってる人達が居たもんね…どうしてるんだろう、みんな…」
ニュースの映像が軍事カメラマンによる生中継に切り替わる。
寝ぼけ眼で見ていたアイリスは、画面の隅に映る黒い機体に気付かなかった。
――かつてロイと共に乗り、エウロペの荒野を駆け抜けた機体に――
それは今から遥か未来の惑星Ziの話・・・地球からの移民者達が本格的にこの星に移り住み
半世紀が経とうとしていた。
町並みも昔とは見違える程変わった。あちこちで高層ビルが立ち並び、道路は舗装され
何処までも続く街頭の光が町を照らしている。
かつて大陸を闊歩させていた機械獣達の姿も、今ではその姿を化石に残すのみ。
そう・・・あの日が来るまでは・・・
みなさん初めまして。これからちょくちょく書いていこうと思うので
新参者ですが一つ宜しくお願いします。
>>84-85 いえいえこちらこそ。新作は歓迎ですよ。
見た所「斬新なストーリー」になりそうで期待…頑張って下さい。
(いきなり「エピローグ」と書いてあるのには突っ込むべきなのだろうか?)
斬新な人が新参のようですね。
まずはプロローグですか。
楽しみ。
肩で息をするラフィーレに対して数十分前のザクサルとの戦闘で上がっていた息を既に元に戻っていたファイン。
実際は休みが取れていない様に見えるがその戦闘に比べれば息をつく暇がある今までの戦闘は身体的にはかなり楽だった。
立ち止まる暇や物事を考える暇がその戦闘に比べれば圧倒的に多かったのである。
逆に実戦を全く経験していないラフィーレはペース配分、瞬間的な判断に甘い所が多々有り無駄な動きも機体性能から考えれば非常に多かった。
「はぁはぁ…」自分の失態を初めて感じ始めるラフィーレだがまだまだ勝敗の結果はこのまま進めば充分に彼女の物になる。大きく息を吸い呼吸を整える。
「よしっ!今度こそ…?機体異常!?コアの共振係数が限界数値にっ!?」彼女とストームラプターの受難は唐突に訪れた…。
ストームラプターに突然何かが襲い掛かっていた。今まで息を潜めて獲物を狙っていたそれは狙いが定まる場所に巨大なエネルギーを見付ける事で本能的に獲物を絡め取る存在。
地面の下に潜んでいた蔦状の寄生体がストームラプターに寄生しようと行動を開始したのだ。「しまった!人工ゾイドコアには外部からのアクセスを拒む機能は無い。片方は本物のクローンでも抵抗力が低すぎる!」
あっと言う間に蔦に絡め取られ身動きが取れ無くなる機体を何とか堪えさせ寄生を止めようとする…するとあっさり内部侵入を止めた寄生体は地下茎部分を地上に現した。
「そんな…こんな巨大な相手…引き剥がせない!」体格差が3倍以上有る存在を引き剥がすのにはストームラプターは小さ過ぎるのだ。
始めに作った侵入口から別の蔦が機体内に入り込む…二つのコアのエネルギーバイパスに侵入しコントロールを奪うと自らを引き上げさせ上空に移動する。
「なっ…センサーに全く反応が無かった!?その時が来るまで仮死状態になっていたのか!」指令機で臨時のレーダー手をしていたシュミットは大げさな声を上げる。
「…報告ご苦労だなシュミット。無理をしなくても良かったんだぞ。」呆れ顔でアービンは言う。「しかし厄介な事になった…全部隊可能な限り距離を取れ!更に可能な者はこの場から撤退せよ!」
「しかし大佐!?あそこにはマイブラザーと残りの第4小隊が…」ベルフの言葉を遮りアービンは「これは奴等の問題だ。自分の尻は自分で拭かせろ!以上だ!」その言葉に皆黙るしかなかった…。
蔦状の寄生体はストームラプターの胸部カバーを引き剥がすとそこに自らのコアを包む本体を胸部に添える…。
既にストームラプターのコントロールはラフィーレから離れておりギガソートブレイザーの発射準備が完了していた。
「此奴!勝手にギガソートブレイザーを…止めなさい!その収束率で発射したら…」無論寄生体は聞く耳など持っていない。
ギガソートブレイザーが本体を包むと本体は急激に成長しストームラプターを過剰に巨大化した鎧となり包み込む。
地下茎部分と必要無い蔦は自ら排除しその装甲の隙間からは葡萄の様な果実を実らせる。「植物型なんて…見た事も聞いた事もないわ!?」
何らかの要因により植物の特性を取り込んでいたのだろう…。
葡萄の実?が光り輝いてギガソートブレイザーを辺り構わず発射する。威力こそストームラプターのそれに比べれば少ないがいかんせん数が非常に多い。
音声マイクを広角モードにしたままなので中に居るラフィーレの無事は確認できる。他のヴァイスリヒトの隊員達が救助しようと向かうがなかなか近付けない。
「ぐすっラフィーレお姉ちゃんが…助けられ無いよぉ〜〜!」サーラ=オヴェリスは必死に取り付く事に成功したが葡萄の実がラプタースレイブと同様の能力を持っていた為少し攻撃した所で実に跳ね飛ばされる。
「はぁぁぁぁぁっ!」キリカ=シュレンは実をスマッシュロッドで叩き落とすが実はビリヤードの球の如く他の実にサポートされ威力を増した状態で彼女の機体を襲う。「まだまだぁぁぁぁ!!!」高エネルギー貫通弾センボンランチャーで実を粉々にする。
しかし数が多い上突然ギガソートブレイザーを放つため避けるのが精一杯と言った所だ。
「退きなさい!」フェニスの声でサーラとキリカはその場から離れるとヴァリアブルスナイパーを構える。「喰らえ!」超長距離ショットガンが実を大量に打ち砕く。そのまま銃身を一回転させ構え直しEスナイパーライフルで本体を狙撃する。
しかし実は8個で陣形を取りサークルディジョネイターを発動し高収束ビームを無効化する「サークルディジョネイターまで使うのか!?」そう言っている間にも実は本体から少しづつ実っていきその数はゆっくりと増えていく…。
「このままじゃお姉ちゃんが…」既に泣き出しているサーラを実が襲う。「きゃああああ!」上空から叩き落とされ地面に激突しようとしていた機体を支え変わりに地面に突き刺さった物があった。
キメラゴジュラスの2本の右腕を接続した物だった。「危ない危ない。少しそこで大人しくして居ればいい。無理をするな。」ファインは右腕を引き抜き接続し直す。
「ここまでの者が息を潜めているとは思いもしなかった…。」追い打ちを仕掛けようと迫っていた十数個の実を尾の一撃で叩き割る。「ぐすっ…すごい。」パイロットをするだけあって相手の力量を測る事が出来るサーラは驚きを隠せなかった。
「ありがとう。サーラが迷惑を掛けてご免なさい。でも協力は必要無いわ。」ソニアはそう言うと何時の間にか近付いていた地下茎と蔦をテイルマグネーザーで薙ぎ払いバスターガンで破壊する。
「これで貸し借りは無しね。サーラ。良いわね?あなたの力は後で必要になるからそれまで攻撃に参加は無しね。」しっかり借りを返す律儀なソニアだった。
なかなか排除出来ないストームラプターに業を煮やしたのか本体部分から高エネルギー収束が始まる。「焦りが判断を誤らせたようでありますね。」何時の間にか正常に戻って冷静に状況分析を始めているファイン。
「ねえ?お兄ちゃんは多重人格なの?」サーラの素直な突っ込みに「そうでありますよ。スイッチが入れば24人は居るでありますよ。」と答えると「ふ〜ん…48人なんだ。」何故か倍と返すサーラに「参りましたであります。」と平伏する。
「やったー勝ったぁ!」何故か和んでいる地上に容赦無く数倍の威力のギガソートブレイザーが発射されるが既にその場に2機は存在していなかった。
「訳の解らない事をしていた割りには用意周到に避けたわね…。」万策尽きたラフィーレは呟く。
今の自分はこの状況に全く関係していない。正確には敵に捕らわれて居るのだがそんな事はもう如何でもいい。
見ている事しか出来無いなら指を咥えて見ていれば良いと開き直った彼女は状況を確認する…生命維持の限界は30分程あるが少しづつ機体温度が上昇している。
限界の30分は体が生命維持を出来無くなる機体温度の事だが突然リミットが短くなる事も有る。
機体から脱出も試みたがバイパス用に突き刺された蔦はコクピット周りを周回していた為外に出れない状況だった。
それには流石にデスファイターパイロットも青ざめた。そもそも、マオが言った気合いと言うのは、
やはり「気功」が関係している。テレビでたまに気功師が体の一部に気を込め、その気を
込められた部分は刃物も通さぬほど丈夫になると言う物があるが、それを応用した物である。
「うぁぁぁぁぁぁ!!!なめるなぁぁぁぁ!!!」
デスファイターパイロットは叫ぶと同時にデスファイターに装備された全てのブースターが火を噴いた。
「わわわわわわわわわ!!!」
ブースターの推力に物を言わせ、デスファイターは強引にカンウを押していく。しかし、マオにもまだ策はあった。
「ええい!!あんま使いたくないけど…ギガスパワー!!!!」
マオが叫ぶと同時に、カンウの背中に装備された4つのゾイドコアブロックが作動した。そして、
その4つのゾイドコアブロックがカンウのゾイドコアを共振させ、カンウの出力ゲージが上がっていく。
「ぎゃお――――――――ん!!」
カンウが吠えると同時に目が光った。その直後、足を地面に付けて踏ん張り、ブースターで強引に
押すデスファイターを逆に押し返したのだった。
「なななな何ぃぃぃ!!?デスファイターが押し負けるだと!!?」
予想外の出来事にデスファイターとそのパイロットは共に驚いた。その時だった。怯んだ
デスファイターのスキを突き、エクスカリバーを握りしめていた右腕の手首をカンウは左腕に
装備したマグネーザーで突き砕き、さらに右腕のマグネーザーでデスファイターの腹部を
貫いたのだった。デスファイターは生命力を失って崩れ落ちた。共和国軍兵士から歓声が上がった。
ギガスパワーとは、フェニックスシステムを応用し、カンウにのみ装備されたオーバーブースト機構。
コアブロックスとゾイドコアを共振させることで出力を増幅させる仕組みである。しかし、
ゴジュラスギガのコアを共振させるには膨大な出力を要し、4つのコアブロックスを使用しても
短時間にしかその使用に耐えられない。当然マオは直ぐさまギガスパワーを解除した。
「勝てる!!勝てるぞぉぉぉぉ!!!」
共和国軍の士気はますます上がった。対照的に帝国軍の士気は下がった。今の帝国軍に共和国軍の進撃を止められる力はなかった。
「よっしゃあ行け行けぇぇぇぇ!!」
共和国軍は次々に首都へと進撃していく。勝者は共和国軍。だれの目にも明らかだった。
しかし、その時だった。首都へと進入しようとしていた共和国ゾイドが突然次々に崩れ落ちたのだ。
「な!!」
その光景を見た誰もが唖然とした。その崩れ落ちた共和国軍ゾイドは先ほどマオが帝国軍に
行った様に、何かに体をえぐられた跡が残されていた。
「一体誰が…。」
マオが呟いた。そんな時だった。突然カンウの足下の地面から何かが突き出てきたのだった。
「うわぁぁ!!」
それはマオがやった地中からの奇襲攻撃そのものだった。カンウは後方に跳んでどうにかかわすも、
それが出来たのはマオとカンウの反応速度と運動性能、そして奇跡的とも言える幸運があってこそであった。
「何…?今の攻撃は…全く気配を感じさせなかった…。」
マオは青ざめた。なにしろその攻撃は、先ほど彼女が言った通り、殺気や気配を全くと言って良い程
感じさせなかったのだ。普通なら、動いた時や攻撃するときなどに、気配や殺気という物が放たれる
はずである。マオはこの時の殺気を読んで攻撃の回避を行うことが出来るのであるが、そんな
相手の気配などを読んだり出来るマオも、相手が気配を感じさせなければその能力は意味がない。
ハッキリ言って、今は地中から直接攻撃が飛んでくるまで気付かなかったのだ。
「拙僧の攻撃をかわすとは…噂通りの達人であり申す…。」
その攻撃を仕掛けてきたのはギフ=シンライ曹長であった。そしてギフはマオに対して言った。
「お初にお目に掛かる。拙僧はギフ=シンライ曹長。そしてこれは愛機のアシュラゲイルであり申す。」
ギフの乗っていたゾイドはその名の通り、地球の神話に登場する闘神「阿修羅」を彷彿とさせる
6本の腕が存在し、その腕には一番上の二本の腕にはマグネイズスピアが、真ん中の2本には
エクスシザースが、一番下の腕にはシェルカーンのハンマーナックルが、それぞれ装備され、
また、一番上の両肩と左腕にスティルアーマーの装甲が装備されていた。
さらにその背中にはフライシザースの羽が4つも装備されており、特に前述の6本の腕は、
地球の神話に登場する闘神「阿修羅」を彷彿とさせる物だった。
「緑の悪魔・マオ=スタンティレル…。手合わせ願い申す…。」
アシュラゲイルが跳んだ。マグネイズスピアをきらめかせ、カンウ目がけて飛びかかったのだ。
「うわ!!思ったより速い!!!」
ギガスミラージュでどうにかかわすも、その速度はエナジーライガーのそれをも遥かに超える物だった。
「何だってのよ!!!」
素早くアシュラゲイルの背後に回り込んだカンウがその右腕のPMBユニットでアシュラゲイルを
突き刺そうとした。しかし、その攻撃は立体映像に攻撃しているかのようにすり抜けた。
「な!!ギガスミラージュ!!?」
マオは青ざめた。そのギフとアシュラゲイルがやったことはギガスミラージュそのものだったのだ。
「な!!どこよ!!!」
マオとカンウは辺りを見回した。相も変わらず相手の気配が感じられない。こうなると目に頼る
しかないのだ。そして、アシュラゲイルはフッとカンウの背後に現れた。
「超高速による残像で分身したように見せるだけであるならば、簡単であり申す…。」
「な…。」
ギフの言葉にマオは唖然とした。マオですら完全にマスターするのにかなり苦労したギガスミラージュをギフは簡単と言っていたのだ。恐怖以外の何者でもなかった。
「少尉危ない!!!」
ラインが叫び、ジェネラルがアシュラゲイル目がけて飛んだ。エナジーライガーすらも楽々捉え、
あっという間に倒した速攻である。しかし、それすらもアシュラゲイルは苦もなくかわしたのだった。
「な…なんだ…アイツ…つええ…。」
その様子を見ていた共和国兵士達も唖然としていた。
「あんた一体何者よ!!!」
マオはそう叫びながらPMBユニットを強引にアシュラゲイルに叩きつけようとする。しかし、ギフはその攻撃すらも楽々と回避し、こう言った。
「先ほども名乗ったように、拙僧はギフ=シンライ曹長。暗黒拳法の総本山。阿修羅寺にて阿修羅流格闘術の修行をした者であり申す。」
>地球惑星Zi作者さん
初めまして。未来ものという事でどのような話になるのか気になります。
自分も未来ものを書いたことありますがせいぜいが今から数十年後程度の事ですから。
楽しみにさせていただきます。
アイリスが目を覚ます数時間前。
早朝のネオゼネバス軍武器開発局本部で、誰も居ない筈の施設内に2人の男が居た。
「そうか…やはり、わざわざ来てもらった甲斐があった……良くやってくれた、リーデンベルト大佐」
白衣を着た男が言った。答えたのは紛れも無く、エンバー=リーデンベルトだった。
「フッ…偶然ではあったが…しかし、『あれ』がそんなに大事な物なのか?
とても大局を変えるに至る“兵器”であるとは思えんのだが…」
白衣の男は含み笑いを始めた。
「クックック…いや、いや、大佐殿には関係の無い事…どちらにしろ、君は報酬さえ貰えれば良いのだろう?」
「流石だな、博士…確かに私は貰える物が貰えればそれで良い。では、上層部によろしく」
立ち去りかけたエンバーを、「博士」が呼び止めた。
「待ちたまえ、君が軍に引き入れた金髪の小僧…奴とそのゾイドはどうした?」
「死んだよ。デア・リヒターと一緒に御陀仏だろうな」
博士の顔に明らかな落胆が窺えたので、エンバーは一言付け足した。
「安心しろ。ゾイド因子と内部のブラックボックスは回収済みだ」
博士の表情が一瞬で変わる。
「そうか!!…やはり君は優秀だよ。スパイでありながら共和国で中将にまでなったのだしな」
「だが、あのゾイドが何か特別なのか?強力なのは認めるが、あのブラックボックスも開封できんし…」
「案ずるな。私はその道の専門家でもある…確かにあのゾイドは特別なのだ。
君は『CDZ』…『Cyber Drive Zoids』という物を知っているかね?」
エンバーは首を振った。そして、腕時計をちらりと見ると踵を返した。
「そろそろ時間だ。また会おう、ケイン=アーベル博士…」
激しい海上戦は続いていた。
今度は8機ほどのデススティンガーが隊列を組んでホバーカーゴに迫る。だが、激しい砲撃に晒されて近づけない。
潜って進もうとすれば、水中には別の脅威があった。
海底に、ウォディックの残骸が積み重なっている。
水中で孤軍奮闘しているのは、第3中隊に配属されていたジャスティン=クライトンが駆るジェノハイドラだった。
「僕の機体には水中適性もあるんだ」
こう言って出撃し、いまやウォディックも十数機落しただろうか。
海底に足を踏ん張り、荷電粒子砲の発射体勢に入るジェノハイドラ。
どういう訳かこの機体は、水中でも荷電粒子砲を撃つ事ができた。
薄暗い海底に迸る閃光。瞬時に残骸と化すウォディック。
しかし、エネルギー残量もパイロットの体力も、限界に近付きつつあった。
簡易酸素ボンベも既に殆ど中身は空だ。ジャスティンの意識が薄れていく。
ギリギリの所で、ジェノハイドラは海上に引き上げられた。
機体に掛けられたクレーンの先から伸びるワイヤー。その上には一機のサラマンダーが居た。
「もう、無理しないで下さいって言ってるじゃないですか!!」
改造サラマンダー「マーキュリー」に乗るのは、第3中隊の隊長とされたラガート=ノーティスである。
ジャスティンはまだ眩暈がしていた。ひどい酸欠だ。
「ふふ…ゴメン……少し…休んで…来るよ…」
ジャスティンはシートに凭れ掛り、そのまま意識を失った。
ラガートは彼女をホバーカーゴに降ろすと、また機体を上昇させた。
「いくらなんでも…これは数が違いすぎではありませんか…?」
思わず、溜め息が出る。それほど戦力差が大きい事を実感させられる。
しかし、彼もロイたちも、大きな思い違いをしていた。
如何に司令部が彼らの実力を信じているからといって、不可能な作戦を課す筈は無かった。
地球惑星Zi作者さんへ
どうも初めまして。遠い未来の話になると色々なアプローチの仕方がありますのでどの様な未来に成るか?楽しみです。
どうも当方は未来を考えてみると…何処ぞかのゲームの様な物が浮かんでしまって如何しようも無い状態に成ってしまいます。
もう少し柔軟に考えないと駄目ですね…自分_| ̄|○
過去回想型でエピローグから始まるのも今まで無かった物なので如何なってしまうんでしょうか!?
取り敢えずなのだが状況確認を進める内ヴァイスリヒトの実戦経験の無さを痛感するファイン。本来なら敵なので嬉しい事なのだがこのケースで今の状況を打破出来るのは彼女達だ。
相手からすれば地を這う大物程度でしか無いキメラゴジュラスは寄生体にとってはさほど苦労する相手でも無いだろう…。もしゴジュラスギガなら多少は気を引くことが出来たかもしれないがそんな事考えて居てもしょうがない。
手近に何か無いかと辺りを見回すと…ケンタウロスの槍が地面に突き刺さっていたままだった。「これでありますね。」そそくさと戦闘空域から退場しようとするが葡萄の実は無差別攻撃をしているらしく周りを囲まれる。
「ウットウシイゾ!」今度はモニターに意思を表示するだけで無く自らの意思で尾を振り抜き実を破壊する。
「アレヲナニニツカウツモリダ?」その問いに「取り敢えず引き抜いてからでありますよ。」と言うと一緒になって槍を引き抜き始める。
「何をやっているんだろ?」攻撃を避けながら言い付けにより攻撃に参加を許されていないサーラは機体をそっと動かしキメラゴジュラスに近付く。
途中実に攻撃されるが全く当たらない。機動性云々では無く完全に予測回避を熟しているのだ。通常なら避ける事などあり得ないサークルディジョネイターの奇襲も発動位置を完全に見切っていた。
「ふふふっ…やっぱりサーラは凄いわね。無意識にあんな芸当をしているのだから…。」ソニアは近付く実をそつなく落しながら言う。
キメラゴジュラスは必死になって槍を抜いているが少々厄介な場所に刺さっていたらしくなかなか抜ける事は無かった。
上空を見ながらファインは思う「地面に叩き落としてしまえば簡単なのでありますがねぇ…。」「そぉなんだぁ〜っ!」「ひぃっ!?」何時の間にか近くに居るサーラにビックリしてキメラゴジュラスの姿勢を崩してしまう。
偶然にもそれが幸いし槍が抜ける。「ねえねえ?何をするの!?」余程詰まらないのだろう。サーラは目の前で何をしているのかが非常に気になる。横倒しにした槍を覗き込み非常に鬱陶しい。
「これをここから切るのでありますよ…このっ切れろ!切れろ!」槍の金属構造は相当の物らしく傷一つ付かない。
>>61 レスが遅れましてすみません…。月、火曜日は本当に忙しいもので。
>しっかりディスクランチャーを使用している所も見逃せません。
あの武装を何とか生かしたくて思いついたのが「寄生・吸血」というアイディアです。
逆転の発想なのですが、これが思いつかなかったら原稿自体が没になっていたかも…。
どうやら見所として機能したみたいなので正直、嬉しいです。
「阿修羅流!!!?」
「少尉…。知っているんすか?」
ギフの言葉に驚愕の声を上げたマオに対し、ラインがそう言った。
「阿修羅流…、竜王流と対をなす暗黒界の拳法総本山…。噂には聞いていたけど実在したなんて…。」
マオの額から一筋の汗が流れた。しかし、アシュラゲイルは再び戦闘態勢に移っていた。
「それでは…いくであり申す…。」
「ちょ―――――っと待った――――――!!!」
突然戦場内にそのような声が響き渡った。そして、地面を吹き飛ばし、一体の白銀に輝くデススティンガーが現れたのだ。
「やあやあ、マオちゃんお久しぶり。」
「そ…その声は…ハガネ!!!あんたまだスクラップにされてなかったの!!?」
白銀に輝く装甲を持ったそのデススティンガーに乗っていたのはマオの見知った相手だった。
彼女の名はハガネ。帝国軍の科学力が生み出した女性型人造人間。早い話がロボットである。
マオとはちょっとしたライバル関係というか腐れ縁というかそのような関係にある。
「あああ!!もう!!目の前のコイツ相手にすら苦戦しているってのにハガネにまで参戦されたら勝ち目無いようわぁぁぁぁぁん!!」
マオはそう言って泣き出してしまった。確かに彼女は強いが、同時にもの凄い泣き虫でもあるのだ。
「勘違いするな。私はお前と戦うために来たんじゃない!!帝国軍にある事を報告に来たんだ!!」
そう言うと、ハガネはこの戦いに参加した全ての帝国兵士達に通信を送った。
『みんなー!よく聞いて!ヴォーちゃんがねー、全軍撤退せよだって!分かった!!?』
「質問!!ヴォーちゃんって…。一体誰でありますか!!?」
そんなハガネに1人の帝国兵士が質問をした。ハガネは困った顔をした。
「ハア?あんた自分の国の皇帝陛下の名前も知らないの?」
帝国兵士達は一斉に青くなった。ハガネの言うヴォーちゃんとは、紛れもなくネオゼネバス帝国皇帝
ヴォルフ=ムーロアの事なのであった。
「しかし、首都はどうするのですか!!?」
さらに1人の帝国兵士が言う。
「ヴォーちゃんはこうも言ったよ。この戦いは共和国の勝利だ。これは潔く認めよう。
だから、全員帰ってこい。兵士達の命を無駄に犠牲にするワケには行かない。
都市はまた作ればいいが、兵士達の命はそうはいかいないから…とね。」
「全軍撤退せよ―――――――!!!!」
ハガネの言葉を聞いた帝国兵士達は感激し、帝国軍全軍が一斉に撤退を開始した。
「皇帝陛下の命令であるならば仕方がないであり申す…。では…、また次の機会に会い申そう。」
ギフもアシュラゲイルを反転させて、直ぐさま撤退していった。
「逃がすかよ!!」
その時だった、撤退していく帝国軍ゾイドを追撃する数体のライガーゼロシュナイダーが現れたのだ。
「そうはさせない。」
突然そのゼロシュナイダーの前にハガネとデススティンガーが立ちふさがった。
「じゃまするならぶった斬る!!」
ゼロシュナイダーはファイブレードストームでデススティンガー目がけて突撃を掛けた。
デススティンガーはおろか、デスザウラーの装甲すらも切り裂く強力な武器である。
が、その直後、ゼロシュナイダーのブレードがデススティンガーの装甲を斬るよりも遙かに速く、
デススティンガーが腕の一ふりでゼロシュナイダーを真っ二つにしていた。その強さは量産型デススティンガーを遥かに超える戦闘力であった。
「悪いけど、味方が撤退するまで足止めするようにとも言われているんだよね。」
ハガネはそう言う。確かにデススティンガーは撤退する帝国軍を攻撃しようとする共和国ゾイドを
攻撃する以外はほとんどその場から動こうとしなかった。
「ところでハガネ…。アンタ以前セイスモサウルスに乗ってたのに、何でこれまたデススティンガーになんか乗り換えたの?弱くなってどうするのよ。」
デススティンガーと面と向かって対峙するカンウの中で、マオはそう言った。
「確かにね…でも…遠距離からねらい撃ちするよりも、接近戦であんたに勝ちたかったんだよ私は。
でも、デスザウラーじゃ正直アンタのスピードに追いつけないし、エナジーライガーはパワー不足だ。
というか私は高速ゾイドにはあまり乗りたくない。ならばとパワーとスピードの両立できた
機体として白羽の矢が立ち、3代目のゼノンとなったのがこのデスススティンガーさ…。
もちろん、可能な限りの強化も施されているし、OSのレベルも最大限にまで高められている。
理論上は暴走事故を起こしたあの一号機にも勝る性能を持っているつもりだ。そんじょそこらの量産型とはケタが違うよ。」
ハガネはデススティンガー「ゼノン」のコックピットシートを優しくなでながら、とても
ロボットとは思えない人間くさいセリフをはくのだった。というより、下手な人間以上に人間くさいというのが彼女の特徴だった。
「OSのレベルが最大限に…って…。たしかガイロスの人から聞いた話によれば、その暴走事故を
起こしたデススティンガーのパイロットはその暴走したデススティンガーから発せられた強烈な
精神ストレスに耐えきれずに死亡しちゃったって…、大丈夫か…ロボットだし…。」
マオはそう呟いた。確かに、電子頭脳で思考しているハガネにとって精神ストレスとは無縁の存在で
あった。しかし、彼女の開発コンセプトは「人型インターフェース」であるため、ゾイドとのリンクもさり気なく出来てしまうのであった。
「よーし!みんな撤退したな!それじゃあマオちゃん!さようなら!!」
全軍撤退したことを確認するなり、ハガネはそう言ってゼノンと共に地の底へと消えた。
「………………。」
共和国軍は唖然としていた。そして、マオ自身にも、結果としては勝利したが、後味の悪い勝利であるように感じられ、あまりいい気持ちがしなかった。
確かにこの戦いで新兵器で強化されるなど、マオ達はさらに強くなった。しかし、それと同じくらい、
いや、それ以上に敵は強化されていたからだ。新たな力を得てさらに強くなったライバルハガネ。
そして、阿修羅流暗黒拳を使いこなし、マオすらも翻弄した未知の強豪ギフ=シンライ。
さらに、帝国の持つ本当の力はこんな物では無いはずである。そう思うとマオは恐怖を感じられずに
いられなかった。そして、その目からは一筋の涙がこぼれ落ち、その手は震えていた…。
そんな時だった。突然首都の中心部の辺りから2本の太い光の柱が天高く登っていくのが見えたのは…。
「あれは…、何…?」
共和国首都中心部にて、レオマスター・レイ=グレックの乗るライガーゼロファルコンと、
ネオゼネバス帝国皇帝ヴォルフ=ムーロアの乗る皇帝専用機である強化エナジーライガーが戦い、
ゼロファルコンのバスタークローによってコアを潰されたエナジーライガーが、
そのエナジーチャージャーを暴走させ、その膨大なエネルギーによって、かつてのヴァルハラの悲劇、
あの忌まわしい大爆発を引き起こし掛けていた。その事を知ったヴォルフは、被害を最小限に
食い止めるために、先ほどの全軍撤退命令を出した。ヴォルフは敵味方関係なく、多くの人命を
救うために自ら犠牲になる覚悟でいたのだ。しかし、レイの機転によって、ゼロファルコンに
装備されたジェットファルコンをエナジーチャージャーに連結され、その余剰エネルギーを
バスタークローの砲口からビーム砲として空中に逃がし、大爆発は未然に防がれた。
先ほどの2本の太い光の柱はその際に逃がしたエネルギーである。
と、そんな出来事が起こっていたことなど、マオ達をはじめとして、前線で戦っていた者達が知る由もなかった。
ハイ。ようやく序章編終了です。
全体的に見ればだいたい4分の1くらいが終わったかな?という感じです。
最近のこのスレのペースから考えれば次スレまで持ち越される可能性は大です。
実を言うと、レイとヴォルフが戦っている現場に主人公達が出くわしてしまうという話も考えていました。
それで、加勢しようかと言うと、レイがもの凄い形相で決着はオレだけの力で付けると
それあたりの事を言われて、ビビッた主人公達があわてて他の所に行くなんて考えていたのです。
しかし、ゼロファルコンのバトストでレイ対ヴォルフは首都の中心部で行われていたと書いてあったので、
結局今の形になりました・・・・。
物語としてはこれからが本番なのでこれからもよろしくお願いします。
「ノーティス“少佐”!!艦内に帰投せよ!!」
突然無線から響いた声。後方からの発信だ。
――まさか、本隊の到着?
ラガートの背中を任務失敗の予感が駆け抜ける。
だが、確か本隊は時間を置いて来るはずだった。何故こんなにも早く戦場に現れたのか?
機体を降下させたラガートは後方に広がる光景を見て言葉を失った。
ウルトラザウルスだ。現存しているのは大統領専用機一機のみだった幻の巨獣。
それが横一列に並んでいる。ラガートが数えると、全部で15機。
「な、ウルトラザウルス!?どうしてこんなに!!?」
ガイロスから受け取ったOSの技術による物であった。現存したウルトラから抜き取ったゾイド因子を
巨大な人工コアに移植、強制培養して完成させた機体である。
マーキュリーがホバーカーゴに降り立つや否や、並んだウルトラの360mmリニアキャノンが一斉に火を噴いた。
夢中で戦っていたロイも、脇を掠める閃光でウルトラ連隊に気付いた。
ハイマニューバーミサイルポッドやリニアキャノンの連射に為す術も無く沈んでゆく帝国機。
砲撃が止んだ時、ロイ達とウルトラの一隊以外に海上を動く者は居なかった。
「ハハ…俺達は味方にまで騙された訳か…」
苦笑しながらロイが操縦桿から手を離す。
最初から自分達が「囮(デコイ)」だと気付いても良かったのだ。流石にこんな無茶な作戦は有り得ない。
「…だが、何故俺は気付けなかった?」
そう問い掛けて初めて気付く。己の力を過信していた事に。
そしてそれが疑問だった。
「俺はどうして…こんな時にも『危機感』が無かったんだ…?」
「さてさて…味方にまで騙された訳ですが!!この作戦はまだ終わってないわよ!!」
アルティシアはどこか怒り気味だった。当然だ。隊長ともあろう者が何も知らされていないとは。
しかし、リッツの視線はボードに向いていた。
そこに書かれた図は書き間違いかと疑う様な物だった。海岸に敵陣がびっしりと敷き詰められている。
如何にウルトラザウルス15機を加えたとしても、普通に突破できる物ではない。
「…で、当然私はまともにやる気はないわ。まずウルトラの長距離射撃、マーキュリーの空爆で
敵陣の一箇所に穴を開ける。そこにホバーカーゴで突っ込んで防衛陣を突破、本隊との挟撃よ」
ロイの頭に一瞬「情けないな」と言う思いがよぎった。本隊が着く前に防衛陣を殲滅する筈だったのが結局本隊に頼るとは。
――司令部はこれも予定に入れていたのだろうか?
きっとそうに違いない。ロイはそう思う事にした。
説明を終えたアルティシアはさっさと自分の機体に乗り込む。「またか」とクルーが辟易している。
「とにかく、陸上戦なら得意分野だし…今回は何とかなるよな」
ロイは再びタラップを駆け上り、コックピットに収まった。
少し緩いシートベルト。奇妙にフィットするシート。奇形のモニター。
何も変わらないコックピット。それでも、ロイは座る度にある種の高揚感と不安を覚える。
―大丈夫、俺だって弱くは無いんだ。今までと何が違う?
例によって、ロイの不安は的中する事となる。
>>104 序章からなんか凄いですね…新兵器搭載、かつてのライバル再臨、強敵出現…
それにヴォルフとレイ…公式のバトストに出てるキャラってあんまり弄れないですよね。
…そう考えると自分、アーサー=ボーグマンのイメージぶち壊し_| ̄|○
「じゃあ代わりに切ってあげる!」サーラはストームラプターの手首からくないを取り出すと高密度のビーム粒子が刃に付加され傷一つ付かなかった槍はあっさりと切れるのだった。
「お見事でありますね。」それを手に取ると左腕のプラズマコートアローから弾倉を外し切り詰めた槍の柄の部分を差し込む。その状態から機構を変形させ即席のドリル?を作り出した。
「ドリル…?何をするつもりなの?」その状況を一部始終見ていたラフィーレだがそれが何の役に立つのか疑問にしか思えなかった。
「邪魔するなとは言われてもこのままでは共倒れも良い所でありましょう…と言う事で!」ドリルを回転させアッパースイングをする。
すると地面を砕き破片をナイトワイズの翼で上空に打ち上げる。攻めてに欠け実を各個撃破しか出来無い彼女達を嘲笑うかの様に破片は加速、部の付け根部分に接触し撓に実った実を付け根から叩き落とす。
「邪魔を…そうか!そこか!」やっとの事で実の出所破壊することに気付きヴァイスリヒトの面々はそれまでとは打って変わって攻撃に効果が出始めた。
残った実も相変わらず攻撃をしてくるが後続が減ってしまったためストームラプターに効果的な攻撃は出来無い。各個撃破と併せて実の数は激減し10秒程後には全ての実が破壊し尽くされた。
「残りはあの気味の悪い鎧だけよ!サーラ合流して!一気に引っ剥がすわよ。」「は〜い。今行くね〜。」4機のストームラプターが合流し寄生体を引き剥がしに懸かった時それは突然地の底より現れた。
「そうはさせん!それは私の獲物だ!」見た事も無い姿のゾイドが突然ヴァイスリヒトと寄生体の間に割って入ってくると瞬く間に寄生体のコアに取り付きコアを噛み砕いたのだ。
「何!?こいつ何物なの?」反射的にバスターガンを撃ちながらソニアは言う。「そんな事は関係ない!邪魔をするなら叩き落とすまで!」フェニスはパルスキャノンをそのゾイドに打ち込む…。
「ははは…ご馳走様と言った所か!」そのゾイドの表皮にパルスキャノンが接触すると掻き消えるようにエネルギーが消滅する。尚も寄生体を捕食するそのゾイドに他の者も攻撃を仕掛けるが射撃兵器は効き目が無く、格闘兵器は目の前で位相すら見える障壁に阻まれる。
そのゾイドは更に寄生体を食べようとしていたが突然跳ね飛ばされ地面に着地する…。
第1章:それぞれのその後
熾烈を極めた共和国首都奪還作戦に勝利し、晴れて凱旋してから1週間。今だ共和国首都は
お祭り騒ぎ状態であった。共和国軍兵士は元より、首都で生活していたヘリック系民間人も
大喜びであった。もう帝国から抑圧された生活をする必要はないのだから…。
共和国が首都を取り返した事実は、社会的にも大きな変革をもたらした。
首都中央部に存在する、国立自然公園の真ん中に建てられたヴォルフ=ムーロア像は直ぐに撤去され、
町中に張り巡らされていたネオゼネバスを称えるポスターやヴォルフやプロイツェンの肖像画なども
当然取り除かれた。また、商業面においても、ネオゼネバス帝国の圧力のために発禁にされていた
共和国関係の商品も当然普通に販売された。特におもちゃ業界では株式会社TONYから発売される、
ゾイドの72分の1サイズ組み立てキットにて、それまでネオゼネバス帝国の圧力のせいで、
帝国軍系ゾイドしか生産、発売ができなかったが、共和国軍が首都を取り戻したおかげで共和国系
ゾイドのキットも再生産、再発売されるようになった。この事実は、子供達が喜ぶだけでなく、
共和国全体の士気を高める結果にもなった。また、さらなる士気向上の為、ゴジュラスギガ、凱龍輝、
ブロックス系機体、などなど、ネオゼネバス帝国占領下の時期に開発されたゾイドも、軍や
ゾイテック社の協力の下、キット化の予定が組まれており、その発売が期待されていた。
「はあ〜…。」
そんな、共和国首都のお祭り騒ぎムードとはうわはらに、とある喫茶店の1つの席で、マオは暗い顔でそうため息を付いた。
「少尉…じゃなかった…中尉…何かあったんですか…?あの戦いからずっとそうじゃないですか…。」
マオの座っている席の反対側の席に座るラインがそう言った。共和国首都奪還を機に、二人は
マオは少尉から中尉へ、ラインは軍曹から曹長へと昇進していた。話を戻すが、ラインの言う通り、
この一週間、マオはずっと元気がなかった。共和国軍凱旋パレードに出席した時も、これまた
士気向上の為に催された、各エースパイロットを集めたサイン会の時も、彼女の元気は全くと
言っていい程無かった。別に病気というワケではないのだが、何というか、まるで無気力状態に近い状態という感じである。
「はあ〜…。」
「中尉!!元気出して下さいよー!!」
またもやため息を付くマオに、ラインが心配そうにそう言った。
「あのさ…ライン…。この戦いって…、まだまだ続くのかな…。」
「え?」
突然のマオの言葉にラインは一瞬固まった。そして、ラインは言った。
「そ…そりゃあ続くんじゃないですかね…。首都を防衛してた帝国軍はあくまで氷山の一角に
過ぎませんし…、何よりネオゼネバス本国の主力部隊は健在でしょうから…。」
「はあ〜…。」
マオはまたもやため息を付いた。
「私としてはさ…。このまま上手く和平交渉に持ち込んで、どうにか戦争を終わらせて欲しいと
思ってる…。けど…やっぱりダメなのかな…?だって考えても見てよ。旧ゼネバス帝国を作った
ゼネバスって人は、当時の共和国大統領のヘリック2世と兄弟なのよ。どうしてこう仲良く
出来ないかな…。もう西のネオゼネバス。東のヘリックって感じで共存できないのかな?」
「お言葉ですが…それは無理だと思います…。この戦いで両軍多くの人が死にましたからね…。
今更何を…って事にも何かねません…。何より、ネオゼネバスは共和国軍が留守の間に勝手に
人様の家に上がり込んでその家を乗っ取ったんですよ。その事実を共和国人民が許すはずが
無いでしょう…。確かにこのまま和平交渉に持ち込んで戦争終了という事に越したことはありません。
しかし…そう上手くいかないのが現実という物なのでしょう…。」
マオの言葉に、ラインがそう言う。その時のラインはいつになく真面目だった。
「はあ〜…やっぱりダメなのか…。」
「ダメでしょうね…。」
元気なく言うマオの言葉に、再びラインはそう返した。その後、再びマオは口を開いた。
「実はさ…。私…何か怖くなっちゃったのよ…。」
「え?」
「あの時に出てきたフギとか言うヤツ…。」
「キフですよ中尉…。」
マオの言葉に素早くラインのツッコミが入った。
「そのギフとか言っていた奴…。このまま戦いが続けば、またアイツと戦うことになると思う…。
けど…正直奴に勝てる気がしない…。だってあんなに強い奴は正直初めてだもの…。まあ…
ウチの姉ちゃんとか、無敵塾の人達とか、タラトタウンのバイキング料理店の店長とか民家の
おばさんとか、もっと強い人がいないワケでも無いんだけどさ…まあこの人達は別格と言うことで
無視して考えて…本当にあのギフとか言う奴はバケモンだよ…。」
「た…確かに…アイツ…、あのエナジーライガーだって簡単に倒せるようになったオレと
ジェネラルですら全く歯が立たなかった…。一見、手が6本、羽が4つあるだけのロードゲイルなのに…正直信じられねえ…。」
その言葉を言うラインの額から一筋の汗が流れていた。マオはさらに続ける。
「それにさ…あのアイツが言っていた阿修羅流拳法も正直得体が知れないのよ…。
竜王流で修行やってた時にほんの少し噂を耳にした程度の断片的な情報しか、私には無いけどさ…なんでも本当に化け物じみた技を使うらしいのよ…。」
マオのその言葉に、ラインの額からさらに汗が流れた。マオの言う竜王流も、常人から見れば、
真に常識はずれな冗談の様な身体能力と技のオンパレードなのであるが、その免許皆伝者である
マオですらそう言うその阿修羅流の驚異に驚いていたのだ。確かにギフ=シンライの実力は
想像を絶する物があった。攻撃時においても全くと言っていい程気配と殺気を感じさせず、
マオとカンウを翻弄するだけでなく、マオ自身が開発した、ギガスミラージュすらも、
一目見ただけで盗むほどの実力者である。しかも、アレですらも、まだ本気を出している
そぶりすら見せていないのである。本気になったときの実力は計り知れない。
そう思うとマオの手は震え、目からも涙を流すほどであった。
「怖い…私は怖いのよ…。フフ…笑ってよライン…。帝国から緑の悪魔なんてたいそうな異名で
恐れられている私も、その実体は単なる泣き虫なんだ…フフフフ…。」
マオはうずくまりながらそう言った。それだけギフの存在を驚異に感じていたのだ。
「笑うなんてとんでもないですよ中尉…。」
「!」
ラインの言葉はマオの意表を突く物だった。とても…優しい言葉…。そして、ラインはうずくまって泣きじゃくるマオの頭にゆっくりと手を置くのだった。
「誰だって怖いのは一緒ですよ…中尉…。それに…今までだって結構やばそうな戦いとかありましたけど…なんとか生き残って来れたじゃないですか…。」
ラインはそういってマオの頭を優しくなでる。いつもなら子供扱いするなと殴りかかっている所だが、
今のマオにはなぜかその気がわいてこなかった。むしろ、とても気持ちのいい感じさえした。その時、
マオは考えていた。確かにラインはマオの部下に過ぎない。しかし、それだけの事なのか?違う。
かつてマオがまだ弱く、いじめられっ子だった時、1人の少年がマオを助けてくれた事があった。
当時のマオの目には、少年は強く、とてもかっこよく感じられた。そして、それがマオ自身も
強くなろうと決意させる程の大切な出会いでもあった。そして時は流れ、その時の少年が自分の
部下として目の前にいる。まるで運命の巡り合わせのようでさえある。と、そう考えると、単なる上官と部下の関係とは何かが違うように思えた。
そして、ラインの言葉は続いていた。
「それに中尉…、相手が強いのなら、こちらも負けないように強くなればいいじゃないですか…。
まあ…口で言うほど簡単には行きませんが…人間希望を持って努力すればなんとかなりますよ。
いざとなれば…自分が中尉を守って見せます!!」
そう言ったラインは胸を張り、右手で自分の胸を強く叩いたのだった。と、その時だった。
「バーカ!!いつも私に守られてるのは誰よ!」
うずくまっていたマオが突然立ち上がってそう言ったのだ。その顔は少し怒っているようにすら感じられた。
「そうっすよね…、オレなんかが生意気な事言ってしまって…すんません…。」
ラインは申し訳なさそうにそう言い、マオに対しおじぎをしようとした。その時…
「そんなバカなライン…。私、嫌いじゃないよ…。」
「え?」
マオはラインをまっすぐに見つめて笑顔で微笑んでいた。意表を突かれてラインは拍子抜けしていた。
そして、マオ自身も、希望がわいてきたのであった。先ほどまであんなに気力が無く、悲しみ、
そして恐怖していた自分がバカらしく思えてくるほどである。ラインの言葉を聞いていると自然と希望がわいてきたのだった。
「ラインありがとう!!私、頑張ってみるよ!!そんじゃあ!!軽く特訓でもしてみようかな!!?体もなまってるところだし!!」
と、会計を済ませ、店の外に出たマオが突然走り出したのだった。
「うわ―――――!!待って下さい中尉―――――!!!」
もの凄い速度で走り去るマオのその後を、とまどい顔でラインが追いかけたのであった。
「いい話でしたね…。」
「ワシらの若い頃を思いだすわい。」
ちゃっかりマオとラインのやりとりをしっかりと見ていたと思われる、この喫茶店を経営している老夫婦がそんな言葉を漏らした。
「おいおい、何だよこの熱量は…彗星でも落ちてきたか?」
西方大陸駐在、ガイロス帝国軍遺跡調査隊は新たに見つかった遺跡の調査に訪れていた。
やけに巨大で、重厚な造りの遺跡だ。こんな遺跡は見た事が無い。
この構造は外敵の侵入を防ぐ為と考えるのが妥当だろう。調査隊は最深部へと足を踏み入れた。
「さっきからの異常熱源はここからか…」
先刻、広範囲熱源探知機に異常な熱反応が映し出された。デスザウラーの数百倍――理論上、ありえない数値である。
彼らはそれをレーダーの故障だと思った。それ以外に考えられなかったからだ。
だが、遺跡中央の巨大な空間に浮かぶ「それ」は確かに異常なエネルギーを秘めていた。
――銀色の、巨大な球体。
それが熱源の正体だった。調査隊のゲーターが近寄る。
その時、レブラプターの一機が遺跡に据付けられていた機械を蹴倒してしまった。
そして、悪夢はこうして始まった。
突然遺跡が振動し始め、調査隊のメンバーは何事かと訝った。
「崩落の危険がある。一時撤退し…」
隊長の言葉が切れた。
巨大な球体に亀裂が入り、中から何かが出ようとしている。
まるで卵から孵化する様に姿を現す「それ」を見て、調査隊のメンバーは真実に気付いた。
――この遺跡が重厚だったのは、侵入者を防ぐ為だけでなく――
球体が完全に砕けた。あまりにも巨大な影が天井に伸びる。
――コイツを外に出さない為の封印だった――
そして、この遺跡の構造もコイツの前では意味を為さない、と。
機体を反転させようとした隊員達の意識は、閃光と爆風が一瞬にして運び去った。
「流石にきついかッ!!」
得意の陸上戦とは言え、ネオゼネバスの圧倒的な数にはロイも苦戦を強いられた。
ウルトラ艦隊の長距離射撃で陣形が乱れているとは言え、敵もプロの軍人だ。
左方から高速で接近する敵機がレーダーに映る。速い。時速350kmで、サイズは中型。
「…ライジャーか!?」
旧大戦時に多大な戦果を齎した高速中型ゾイド、ライジャー。この機体まで戦線に復帰していたとは。
危ない所でライジャーの牙をかわし、サイバークローを叩き込む。
崩れ落ちる敵を尻目に、ロイは走った。
だが、味方が追いついて来ない。やはり敵の多さに苦しんでいる様だ。
「どうする…!?」
ロイだけが敵陣後方に回り込んでも意味が無い。
ロイの手が光学迷彩のボタンに掛かった――――
「気を付けろ!!何かが凄いスピードでこちらに…」
ウルトラザウルスからの通信だった。そして、海を振り仰いだロイは何かを見た。
水平線上に小さな点が見えた。ロイが目を凝らす間にそれはどんどん大きくなる。
――近付いてくる。途轍もないスピードだ。
ディアブロタイガーのコンピュータが対象の速度や大きさを割り出した。
「全長:約220m 全高:約140m 速度:M9.2」
ロイの呼吸が一瞬止まった。
「一体、あれは……何だって言うんだ…!!?」
ロイ達の頭上までやって来ると、「それ」は巨大な翼を広げ、ゆっくりと降下してきた。
>「全長:約220m 全高:約140m 速度:M9.2」
一体どんなバケモンが・・・・。続きが気になります。
一方、西のネオゼネバス帝国首都では、共和国軍のヘリック共和国首都奪還は大ニュースとして、
帝国市民達に大きなショックを与えていた。また、それまで帝国軍の絶対無敵の守り神として、
帝国国民全体の士気向上に大きく貢献したセイスモサウルスの持ち味であった超長距離砲撃を
封じる程のジャミング能力を、共和国軍は持っていたという事実も、その国民のショックに拍車を掛けた。
「このまま共和国が帝国首都まで乗り込んできたら…、セイスモサウルスの優位性が失われてしまった今、どうすればいいのだろうか…。」
と、帝国国民達は誰もがそう思っていた。しかし、国民の士気が下がり掛けていたそんな中にも、
その士気を再び向上させるほどの明るいニュースもあった。
「彗星のように現れたニューヒーロー!!ギフ=シンライ!!あのグリーンデビルを翻弄!!」
そうデカデカと新聞や雑誌などで報道されたその事実は帝国国民に新たな希望を与える結果となった。
共和国首都防衛戦において、また、それまでの戦いにおいても多数のデスザウラーやセイスモを
葬ったあの緑の悪魔すらも翻弄したギフ=シンライ&アシュラゲイルの存在に、帝国国民は
狂喜乱舞した。また、戦場カメラマンや、前線の兵士が撮影したと思われる、ギフ=シンライが
グリーンデビルとその部下のライガーゼロを翻弄する映像も公開され、それを見た帝国国民は
ますます狂喜乱舞し、新聞や雑誌などのメディアは連日彼を取り上げた特集記事を出し続けた。
また、軍の許可を取った上で、その時の事実を漫画にする漫画家も現れ、その漫画は発売されるなり、
各地で売り切れが続出するほどの大ベストセラーとなった。しかも、その漫画は当然と言って良い程
各所に脚色がなされており、何より主人公として描かれたギフ=シンライは婦女子をキャーキャー
言わせる程の美形、また冷静沈着な性格として描かれていた。また、面白いことに逆に緑の悪魔の
方はまるで山賊みたいな超ワイルドな顔で、がさつで大雑把で力押ししか能の無く、時には
味方すらも殺してしまうというような典型的な悪役として描かれ、さらに本編の内容にしても、
本人が見たら必ず激怒するほどの事がその本には書かれていたのであった。
まあ、味方から見た英雄も、敵から見れば極悪人そのものという事はどこにでもあることなのであるが…。
しかし、そんなギフ=シンライブームに沸く帝国首都に、ギフ=シンライの姿はなかった。
時を同じくして、中央山脈中央部にそびえ立つ、中央山脈において、その中央山脈を登る一体の
ゾイドの姿があった。白銀に輝く装甲を持つ巨大なサソリ型ゾイド。それはハガネの乗るデススティンガー「ゼノン」であった。
「キレイな風景だね〜…とても戦争中とは思えない。」
ゼノンのコックピット内部において、思考レベルでゼノンとシンクロしたハガネが辺りを
見回しながらそう呟いた。確かに中央山脈にそびえる自然は戦争中という事実を忘れさせるほどすばらしい物だった。
「さ〜て…現地の人の話では確かこの辺りだったよね〜…。」
そう言うと、ハガネはゼノンを止め、ゼノンから降りた。そこにはザーっという滝の流れる音が聞こえていた。近くに滝がある証拠である。
「ここからは私1人で行く。ゼノンはまここで待っててね。」
ハガネはゼノンの頭部装甲をやさしくなでながらそう言い、滝の音が聞こえる方へ歩き出した。
ゼノンも、とてもデススティンガーとは思えぬほど大人しくそこで機体を停止させていた。
「あ!いたいた!」
滝が直ぐ見える場所までやってきたハガネがそう言った。そこには、ドドドドと勢いよく流れ落ちる滝に打たれながら、座禅を組むギフの姿があった。
「水温摂氏1.23度…人間のクセによくこんな低い水温で平気だね〜…。」
滝の水に指をつけ、感心し、半ばあきれながらハガネはギフにそう言った。そこは中央山脈の
かなり高いところにある。気温も低く、かなり肌寒いはずである。さらにその場所の水温も当然
より冷たい物でった。しかし、ギフは全くと言っていいほど顔色を変えなかった。
「心頭滅却すれば火もまた涼しという言葉があるように、精神を集中させてさえいれば、この冷水も湯の様に暖かく感じる物であり申す…。」
「冷水を湯の様にって…あんたソレ、変人って事だよ。」
ギフの言葉にハガネは呆れながらそう言った。そして、ギフはゆっくりと滝の外に出た。
「お主…確かハガネとか言う機械人形であり申したな…。」
「そうだよ。目が見えないクセによくわかったね。」
「確かに拙僧の目は生来見えぬ。しかし、心の目はしっかりと開いている故、拙僧にとってはあまり関係の無い事であり申す…。」
「そ…そうなの…。軟弱で、脆くて弱い奴がいる一方で、マオちゃんやアンタみたいなワケのわかんない強い人間もいる。人間ってよくわかんないや…。」
ハガネは空を見上げながら呆れ顔でそう呟いた。
「で、その機械人形が何の用でござろう…。」
「あ!そうそう!アンタに辞令がおりたんだよ。」
ギフの言葉にハガネはそう言い、直ぐ様にポケットから一枚の手紙を取りだした。
「あ!そうだ!あんた目が見えないんだったね。なんならこの手紙私が読んであげようか?」
「その心配は必要有り申さぬ。先ほど申したように、心の目は開いておる故…。」
と、ギフは手紙を受け取り、それを読み始めるのであった。もちろん目をつむったまま。
その手紙の内容は、簡単に言えば、ギフの転属命令について標したものだった。
「なるほど…よくわかり申した。では、山を下りることにするであり申す。」
ギフはそう言うと、濡れた体を拭き、服を着ると、近くに停めてあったアシュラゲイルに乗り込んだ。そして、ゼノンに乗り込んだハガネと共に下山するのであった。
「所でさ、アンタ何でこんな所で滝なんかに打たれてたんだい?首都じゃあアンタのブームで大騒ぎだってのに…。」
下山途中、突然ハガネはギフにそう言った。ギフは口を開いた。
「あれは、心身共に鍛えるための修行であり申す。」
「へ?何で?今でも十分強いじゃないの!」
ギフの言葉にハガネはまた呆れ顔でそう言った。そして、またギフは口を開いた。
「あのグリーンデビル…。拙僧はアレが奴の本当の力とは思えぬ…。拙僧の見た所、まだあやつは
この拙僧すらもまだまだ計り知れない力を隠し持っていると見たであり申す。パイロットだけでは
なく、そのゾイド自身も…。さらには、その本人達ですらも気付いておらぬようであるが、
とても恐ろしい力を潜在させていると見ているであり申す。もしも…あやつがその力を全て出したら…。そう思うと拙僧は身震いするのであり申す…。」
「で、修行をしてたって事かな?」
ハガネの言葉にギフはゆっくりとうなずいた。そして、彼の額から一筋の汗が流れ落ち、その手は震えていた。
それから一時後、とある戦線で高速ゾイド同士の戦闘が起きていた。
ライガーゼロやブレードライガー、ケーニッヒウルフを中心とする共和国軍高速隊をたった1機の
エナジーライガーが孤軍奮闘し、また翻弄していた。そのエナジーライガーに乗っていたのは
クライト=クロウズ大尉。若干14歳にして大尉となり、天才の名をままにした程の天才少年である。
しかし…。
「だめです!!まだこんな事ではあの二人に勝てません!!!」
一体のライガーゼロを叩き倒しながらクライトはそう叫んだ。かつて、天才かつ負け知らずであり、
軍隊生活も順風満帆だった彼のプライドに傷を付けた二人組が存在したのであった。
「特にあのライン=バイスという男!!ヤツは共和国首都戦でいつの間にかにエナジーライガーを
数機まとめて倒す程にまで腕を上げたという話ではありませんか!!!」
今度はウィングスラッシュでケーニッヒウルフを切り裂きながらそう叫んだ。
そう、彼の無敗伝説を崩し壊したのは誰でもないマオとラインであった。その二人に敗北して以来、
クライトは変わった。その二人を、特にライン=バイスを倒すことに執着し、そして、必死になっていたのだった。
その時だった、一体の相手を倒したクライトのエナジーライガーの側面から、突然ブレードライガーが躍りかかったのだ。
「しまった!!」
思わずクライトは叫んだ。その時だった、一条の光がそのブレードライガーを貫き、吹き飛ばしたのだ。
「な…一体誰が…。」
クライトは光が飛んできた方向を向いた。
「は〜い!クライトちゃ〜ん!」
そこにはゼノンとアシュラゲイルの姿があった。
「で、人形とお坊さんのミスマッチな組み合わせの二人組が私に何の用ですか?」
戦闘終了後、エナジーライガーのコックピットから出てきたクライトはそう言った。そして、ハガネは例によって手紙を渡した。
「辞令…転属命令…ですか…?まあ良いでしょう…。」
クライトはその年齢からは想像もできないほどの冷静な口調でそう言った。
「成る程…ククク…こんな形で、私の研究が立証されようとはな…」
ケイン=アーベルがざらついたモニターを見ていた。そこに映っているのは、ロイ達が戦っている海岸の
中継映像だった。そして地上に降り立つ巨大な影も、そこに映っていた。
大き過ぎる。
「それ」はホエールキングに匹敵する巨躯であった。否、高さがある分ホエールキングよりも大きいかも知れない。
この巨体が、マッハ9.2で飛来したと言うのか。
帝国軍の兵達が浮き足立つ。が、一機のレッドホーンが「それ」にリニアキャノンを放った。
「クソッ!!共和国の新兵器だな!?」リニアキャノンが効果を及ぼした様子は無い。
巨大な「それ」の翼が解ける様に消え去った。と、同時に長大な4本の触手が現れた。
身体よりも遥かに長く伸びた触手の先端がレッドホーンに向けられた。
次の瞬間には、レッドホーンはパイロット諸共真っ二つに切り裂かれていた。
「う、うわあぁぁぁ!!!何を…何をした!!?」
別の帝国パイロットがアイアンコングで「それ」に突撃する。戦術ミサイルが放たれたが、ミサイルが突如
空中で消え去った。いや、厳密に言えば触手の先端が「分解」し、弾頭を「吸収」した――
「それ」の触手が今度はアイアンコングに向けられる。だが、今度は触手の先端に何かが現れ始めた。
――ミサイルだ。数秒前に吸収したミサイルが、触手の先端で再構築されていく。
自ら放った戦術級ミサイルによって、アイアンコングは砕け散った。
「―――ば…化物……」
ロイは光学迷彩を起動し、モニターで今の戦闘を再生した。
最初にレッドホーンが切断されるシーンで画像を止める。ロイは画面を凝視した。
「…これは…音波砲…?いや、違う…出力が桁違いだ…」
強いて近い物を挙げるとすれば、キングゴジュラスのスーパーサウンドブラスター。
だがあれは効果範囲内の物質全てを無に還す兵器だ。これはレッドホーンのみを綺麗に切断している。
「つまり…音波による『共振』を一点に集中している、と言う事か…?」
医療器具で「超音波メス」と言う物を聞いた事がある。あれはその数百倍、数千倍規模の物だと思っていい。
そんな兵器は共和国も帝国も発明していない。そもそも、「あれ」自体見た事が無い。
次にロイはアイアンコングのミサイルが吸収される場面で画像を停止した。
触手の先端、鋭い楔のような形状の部分が開いて鋏の様な形になり、ミサイルはその間で分解、吸収されている。
そして、触手がコングに向けられると、開いた部分の間に小さな塊が現れ始める。
見る間にそれは大きくなり、先程吸収したミサイルの形を取った。
「あの触手でミサイルの構築情報を一瞬で読み取り、原子レベル以下まで分解して再構築しただと…?」
こうなると完全に未知の存在だ。要するに敵の攻撃を吸収し、打ち返す事ができると言うのである。
コングが爆殺されるシーンでロイはモニターを元に戻した。画面を切り替えれば、両軍のゾイドが「あれ」に
虐殺されている所だった。超音波メスが閃く度にゾイドが寸断されていく。
「それ」自体は動いていない。4本の触手だけで充分だった。
正体も解らず破壊を続ける「それ」を見ながら、ロイはただ1つの事は理解していた。
――あれは、ゾイドじゃ無い―――
「…チッ!!貴重な戦力をこれ以上減らす訳には行かん!!」
ウルトラザウルスのリニアキャノンが、「あれ」に向けられる。
「360mmリニアキャノン、照準!!…放てェーッ!!!」
横一列に並んだ砲口が一斉に光った。ウルトラザウルスの化物じみた電力を以って加速された砲弾が飛んでいく。
ロイはウルトラ部隊の一斉射撃を見ていた。我に返り、通信機に叫んだ時にはもう遅かった。
「待て!!そいつに強力な武器を使うな!!!」
リニアキャノンの砲弾が全て触手の前で消失した。
4本の触手がウルトラ艦隊に向けられる。先端部が開き、再構築が始まる。
「に…逃げろォーッ!!」
無駄だと解っていても、ロイはそう叫んでいた。圧倒的な威圧感に動く事もできずに。
4本の触手から、嵐の様に60発分のリニアキャノンが放たれた。
自らの砲撃を返され、次々と轟沈するウルトラザウルス。ロイはただそれを見ている事しかできなかった。
「博士、『研究の立証』とは一体…?」
ネオゼネバス武器開発局でほくそ笑むケインが、ふとその不動の姿勢を解いた。
「私が解読を続けていた古代文明の碑石…まさに、奴の事が書かれていたよ」
研究員が驚いているのを、ケインは楽しそうに眺めていた。
「な…じゃあ、あれは何なんですか?」
ケインは椅子から腰を上げ、遠くを見つめるように呟いた。
「あれこそが…この星の超古代文明を滅ぼした死神、『リーパー』なのだよ…」
ええーと…途轍もない間違いが一箇所。
ネ オ ゼ ネ バ ス の 首 都 へ リ ッ ク シ テ ィ じ ゃ 無 い じ ゃ ん !!
ゾイダー仲間に「ネオゼネの首都何処だっけ?」と訊いたら「へリックシティそのままじゃね?」
などと返されたのでそのまま書きましたが…自分で調べればよかった。他力本願はNG_| ̄|○
>閻魔の策動作者氏
友人は理解してくれませんが自分は「機械化少女キャラ」に究極の萌えを見出しておりますw
しかも搭乗機がデスステ…個人的には新世代ゾイドで一番好きでして。
こちらは歴史を大きく塗り替える厨設定怪物覚醒から一気に話が加速します。
…「分解→再構築」はハ○レンのパクリではありません!モチーフはス○ライドです!!(吊
第2章:新たなる任務
「訓練に精が出てるねお二人さん!特に妹は元気になったようだし…。何か思うところがあったのかな?」
基地に戻って自主トレに励んでいたマオとラインの二人を、ミオがそう言ってからかった。
ちなみに、ミオも昇進しており、大佐から准将になっていた。と言っても、やること自体は
そんなに変わらず、相変わらずジャイアントトータスの艦長兼隊長なのであった。と言う以前に、
18歳で准将になれること自体が不思議なのであるが、全ては作者の無知無謀が悪いのである。
「突然の事で悪いんだが、実はお前達に新たな任務だ。」
「は…はあ…。」
突然のミオの言葉に二人はあっけにとられてしまった。
「ちなみに、これについては明朝、参加メンバーを集めた上で、私が直接説明する。以上だ。」
と、こうミオは言うと、そのまま何処かへ行った。
「任務って…一体どんな任務なんでしょうね…。」
「私たちに下されるワケだから…どうせロクでも無い任務なんじゃないの?」
と、二人はこう口をこぼすのであった。
「で…結局いつものメンバーじゃないの…。」
翌日の朝、ミオに新たな任務の参加メンバーとして呼び出された者達を見たマオがそう愚痴を
こぼした。何しろ、そのメンバーは、先日ミオに直接呼ばれたマオとラインはともかくとして、
サリーナ、ミルト、アイザック等々のいつものメンツがそろっていたのであった。
ちなみに、この3人も都合良く1階級ずつ昇進していた。
「えー…静粛に静粛に…。」
基地内のある部屋にてざわめく参加メンバー達を、ミオがそう裁判官みたいな言葉で静める。そして、彼女はこう言った。
「これより、私から直接今回の任務について説明させてもらう。ところで諸君らは、ポルトの町を知っておるかな?」
「ポルトと言いますと…あの昔から中立を保ち続けている自治都市の事ですか?」
「そうだ、実は今回の任務はそのポルトの町と関係があるのだ。」
ミルトの返答に、ミオがそう言った。
ポルトとは、旧中央大陸戦争の時代からずっと中立を保ち続けてきた自治都市である。また商業都市としても有名であるため、共和国、帝国共に重要視している。
「実はな、何でもそのポルト近辺に怪物が出るという話があってな…今回の任務はその怪物の討伐なんだよ。」
「怪物と言いますと…その怪物は山の様に馬鹿でかいゾイドじゃないですよね?」
任務の説明をするミオに、突然マオがそう口を挟んだ。
以前、マオはその山のように巨大な怪物ゾイドと戦ったことがあった。それは、南海の孤島、
ハードス島に残る巨獣伝説の元となった超巨大ゾイドを発掘し、その戦闘力に魅了され、
世界征服などという酔狂な野望に目覚めたとある科学者が、帝国と共和国両軍に戦線を布告した。
と、以前そのような事があったのだ。その時は帝国との共同戦線でどうにか撃退したが、
その科学者の遺体は発見されず、生存している可能性があった。まさかその科学者がまた変な考えを起こしたのでは…。とマオは考えたのだ。しかし…
「いや、その怪物がどんな奴かはこの私もよく知らん。だが、別に山の様に巨大とは全然言って
なかったから違うんじゃないかな?それに、相手がそんなに巨大なら、編成メンバーはもっと大規模になるはずだ。」
「そうですか…確かにそうですね…。」
ミオの返答にマオはそう言って肩の力を抜いた。確かに、今回の参加メンバーの数は精々が二個中隊
レベルであった。マオの言う山の様に巨大なゾイドが相手なら一個大隊以上の大規模な部隊が編成されるはずである。
「あ…そうそう、実はな、今回の怪物討伐の任務。帝国軍も部隊を派遣してくるらしいんだ。
と言っても、ポルト近辺は中立地帯。それに今回の任務はあくまで怪物の討伐だ。間違っても
攻撃しないように。まあ、あちらから攻撃してきたら話は別だが、あちらもそう言う事は理解しているはずだからそう言う事は無いだろうな。」
「理解しているって…何でそんな事が言えるんですか…?」
ミオの言葉にマオが疑惑的なまなざしでそう鋭い一言を入れた。
「それは…両国上層部同士の国家間のレベルの外交で決定したことだから…。」
「……………。」
ミオの言葉にマオ達は一斉に黙り込んだ。確かに帝国と共和国は戦争を続けるかたわら、
外交も続けてきた。外交も戦争の一種であるという言葉があるように、今回の任務もそういう両国間の外交によって決定された物なのであろう。
「しかしお前達!!決して安心するんじゃないぞ!!直接帝国との戦闘が無いと言っても、
戦闘は始まっているのだ。つまり、ポルトの連中にどれだけいい顔が出来るかで、今後の共和国の運命が左右されるのだ。」
確かに、ミオがそう言うとおり、この任務は帝国、共和国両国のある思惑もあった。確かにポルトは
中立の立場にあり、別に軍事力も高くないが、その商業力、財力は両国共に高く評価されている
物であり、今回の事で、ポルトに恩を売っておけば、いずれ困ったときに何かしらの支援をしてくれるかも知れない。と両国上層部は考えていたのだ。
「と言うわけで、今回の任務の大まかな説明はここまでだ。準備が出来次第、早速ホバーカーゴを
2隻使って現地へ行くぞ。ちなみに今回の任務は私も直接参加する。」
「准将!ジャイアントトータスは使わないんですか?」
突然1人の兵士が立ち上がり、そう言った。
「ジャイアントトータスは確かに強いが、今回の任務には大きすぎて不向きだ。何より、
今回の任務は二個中隊で行くのだぞ。何個師団も入る大きさのジャイアントトータスでは大きすぎる。」
ミオはそう言い残すと、部屋から出ていくのであった。と、そう思ったら、突然ミオが顔を半分くらい出してこう言った。
「ああそうそう!ちなみにおやつは例によって1人300ガネーまでだからね!あとバナナはおやつに入らないぞ!!」
ずげげげげげ
ミオを除く全員がすっ転んだ。
>失われし者への鎮魂歌作者さん
何か凄い怪物が・・・。自分はてっきりその巨体とそこから繰り出されると思われる超パワーと、
相反するような超スピードで押してくるような物を想像していたのですが・・・
いったいどうすれば勝てるねんて感じの凄い能力を持って登場してきましたね・・・・。
力には力で対抗する事しか考えられない自分がバカみたいに思えてきます。
>…「分解→再構築」はハ○レンのパクリではありません!モチーフはス○ライドです!!(吊
安心して下さい。両方とも見てませんw
失われし者への鎮魂歌の作者さんへ
〇の錬金術師と〇クライドですね。確かに…本能的と理知的の差みたいなものでしょうか?
例の方はシステムとして本能的?(どちらかと言うと自動的)にそれを執り行うことが出来ても、
ブロックスの合体やオーガノドシステム(TV版)のエヴォリューションコクーンは意志を持って執り行わないといけない。
見たいな差でしょうか?
今へばっています…そろそろ治りそうなので続きはその後に…_| ̄|○
基地の格納庫内では、今回の任務に使用されるホバーカーゴへの物資の搬入やゾイドの整備など、
その準備が進められていた。そして、その様子を見ていたマオがあるゾイドを指さして言った。
「あのさ…どうでもいいけどさ…まさかまたライオン作ったの?これ以上ライオン増やしてどうしようってのよ…。」
呆れ顔のマオの視線の先には一体のライオン型ゾイドの姿があった。そのゾイドの名はレオゲーター。
ディメトロプテラ同様に、TB8を使用し、ワニ型ライオン型の二形態に変形可能な
デュアルバトルブロックスゾイドである。共和国軍は人的資源の少なさを、こうやって一機で二機分の運用が出来るゾイドの開発に力を入れていたのだ。
「は〜…近頃はネコもチャクシも何でも高速高速…偉い人の考えることはよくわかんないわ〜…。」
と、愚痴を零していたマオに、またミオがやって来たのであった。
「妹よ、やることが無いのなら、コイツらを訓練してやってくれんか?な〜に、ほんの少しでいいんだ。」
そう言うミオの後ろには、新入隊員と思しき少年少女兵達の姿があった。
「まあ良いですけど…准将…。」
「よし決まり!!!とりあえず、訓練用のゾイドもいくつか用意している。必要なら使っても良いよ。」
あっけにとられた顔で返答したマオに、ミオはそう言って何処かへと立ち去った。
「え〜…とにかく私がマオ=スタンティレル中尉である…。」
「よろしくお願いします!!!!」
敬礼して自己紹介するマオに、その新入隊員達は思い切りそう叫んだ。若者によくある、新たな情熱に燃えている事が分かるような叫び方である。
「とにかく訓練を開始しよう。とりあえずみんなゾイドの操縦について基本的な事はマスターしているよね。」
「ハイ!!!!」
これまた新入隊員達は大声で叫んだ。ミオが訓練用に用意していたゾイドは、真っ白に塗装された
エフォルトのブロックスゾイド各種であった。また、それぞれの火器武装には弾丸の代わりに
ペイント弾が装填されている。そして、それぞれが好きな機体を選び、早速演習場へと
出るのであった。そして、各々がゾイドの動作試験や準備運度などを行った後、マオが全員にこう言った。
「これから、模擬実戦訓練を開始する。全員で一度に私に掛かってきなさい。私も一応手加減するから…。」
「い…、良いんですか…?」
新入隊員の1人がそう呟いた。彼らがディスペロウ格闘戦モードや、レオゲーターなどを中心に
選択しているのに対し、マオは最初期型のウネンラギアを選択するだけだった。
「いいからいいから!私だってゴジュラスギガの操縦だけが能じゃないって所を見せたいし…。
そうだ!!あんた達!!私に勝てたら今晩の夕飯おごってあげても良いよ!!」
「ええ!!本当ですか!!!?」
突然新入隊員達の目の色が変わったのであった。しかし、そんな中で、何人かの会話が聞こえた。
「しかし…勝てるかな…。マオ中尉は俺達とあんまり年変わんないように見えても、かなりのエースパイロットだぜ…。」
「な〜に、中尉は一度に全員でかかっても良いって言ってたじゃないか!それに、中尉が乗っているのはウネンラギア。勝てるよ!」
そんな会話を聞きながら、マオはゆっくりと微笑んだ。
「ほんじゃまー。訓練開始と行こうじゃないの!!」
マオがそう叫ぶと、新入隊員達は全員身構えた。しかし、マオの乗るウネンラギアはその場で静止しているままだった。
「では、中尉!!行きます!!」
1人が叫ぶと、一機のディスペロウが突撃した。しかし、マオのウネンラギアは相変わらずその場から動かない。
「やったあ!!今晩の夕飯いただき!!」
全員が勝利を確信し、そう叫んだ。が、普通ならとても回避不可能と思えるほどの超至近距離から
ウネンラギアが側面に跳んでかわしそのままディスペロウの足を引っかけてそのまま地面に倒すのであった。
「!!!!!!」
その様子を見た全員が唖然とした。
「こうなったら全員で掛かるんだ!!」
全機が一斉にウネンラギアへむけて突撃した。
「は〜…中尉強すぎです…。」
訓練を終え、くたくたになって倒れ込んでいた新入隊員の1人がそう言った。
あれから、誰1人としてマオのウネンラギアに触れることさえ出来なかった。それを証拠に、
新入隊員達が乗ったゾイドには至る所に傷が付き、また、ペイント弾によって白い機体が真っ赤に
染まっていたのに対し、マオのウネンラギアは傷一つ無く、キレイな真っ白であった。
「まあみんな、私はこれでもう行くけど、みんな頑張ってね。」
「は…ハイ!!!」
マオがそう言うと、倒れ込んでいた全員が一斉に立ち上がってそう叫んだ。そして、マオは立ち去る。
新入隊員達は、マオの力に驚きつつも、マオの様に強くなりたいと誰もが思っていた。そして、
彼らは自主トレを始めるのであった。その目は情熱にあふれていた。そんな彼らの姿を遠くから見ながら、マオは思った。
「あの子達…この戦争で一体何人が生き残れるのか…。」
その時のマオは寂しそうな顔をしていた。
それから数日、準備は完了し、いつでも出発可能という所まで来ていた。そして、ミオは部隊を
2隻のホバーカーゴの前に整列させ、説明を行っていた。
「これより、我々はポルトへ向かう。大まかな事は先日説明した通りだが、ポルトとその近辺は
中立地帯である。現地には帝国軍も部隊を派遣させているとの事だが、決して攻撃してはならぬぞ。
それと…おやつはちゃんと300ガネー以内ですませてきたかな?バナナはおやつに入らないぞ。」
ずげげげげげ
例によって全員がすっ転ぶのであった。と、そんな時だった。
「済みません、私もご一緒させてもらってもかまわないでしょうか…?」
突然現れたのは、ティル=ランゲージであった。
何の苦も無く地面に着地したゾイド。見た目は非常に不可解で戦闘用である事は間違い無い。
が…しかし不自然なのだ。加工の為されていないその体、そこから体の一部の様に張り出し装着されている火器。
そしてその姿にあり得ない虫の羽根と無数の触手。ヴァイスリヒトの面々には解らないが帝国軍にはその姿が最早馴染みのある系統の存在で有る事は一目瞭然であった。
「やもり…さん?」サーラはその見た目から如何してそれを選んだのであろうか。「ご名答。無駄な物が多いが概ねヤモリ型だ。」ガリスは答える。
「話の腰を追って申し訳ありませんでありますが…ガリス中尉。10日前の負け分の支払いまだでありますよ。」唐突に話に割って入ったファインの一言は上機嫌だったガリスの機嫌を損ねたようだ。
「貴様…認めんぞ!あんな結果!何処を如何すれば20万点差何て結果が出る!くそっ…後で払うから今は黙って居ろ。」「はいはい…了解であります。」明らかに期待していないと言う様な返事で通信を切られる。
その後訳の解らない講説を延々と寄生体を襲いながらするが論点を掻い摘んで聞くと自慢がしたいらしいと言う事だ。
”肉体構成の始めから戦闘用として成長させる”と言う理論と実践は見た目に充分に解るものだったのでサーラ以外は話半分にしか聞いている者は居なかった。
「何故ヤモリなんで有りましょうか?」必然性が無いこの姿に疑問を感じるファイン。調査隊から居なくなった隊員の一人であるガリス。
乗っていたデススティンガーは多分失っていたのであろうが何故2〜3週間の短い期間に今のそれに乗っていることが出来たか?それ以前にヤモリである必要性が無い事が気掛かりでならない。
結局”ヤモリ”が頭から離れなかったのでファインには重要である真相には行き付けなかったのである。
戦闘はガリスの乱入でより混沌を極めた状態に突入した。ラフィーレの目には各々の思惑が手に取る様に解る。
まず…深く考えて居ないサーラ。何かの隙を待っているファイン。自分を捕らえている者を狙うガリス。自分を救出しようと焦る残りの面々。
動きに滑らかさと柔軟性が無い味方を見て「焦るな!じっくりとチャンスを待て!無駄な事をする暇は無いはずよ!」
しかしガリスのゾイド以外は近接戦闘を仕掛けることが出来ない上ギガソートブレイザーを乱射する相手に手も足も出ない状況だった。
「貴女は…確かゾイテック社のティル=ランゲージさんですよね。」
「そう言う貴女はマオちゃんの双子のお姉さんのミオさんね。それにしても本当にそっくりですね。」
ミオとティルは互いにそう言い合う。
「今回の任務は危険がつきまといます。やはりやめた方がいいと思いますよ。」
「いえ!!その怪物という物に、個人的に興味があります。当然覚悟は出来ています。同行させて下さい!!!」
ティルの意志は固かった。その真っ直ぐな眼差しでミオの目を直視する。それはミオすらも気負わせる物だった。マオやその他の皆なら瞬殺出来る程の…。
「わかったよ…。ただ…本当に命の保証は出来ないよ。」
「ありがとうございます!!」
ミオからの許可を得たティルはそのままミオにおじぎをした。そうして、ティルも部隊に同行することになり、ホバーカーゴ2隻はポルトへと出発した。
「ライン君。ジェットファルコンの調子はどうかな?」
出発してまもなく、ホバーカーゴ2番艦の格納庫内に格納してあったジェネラルのコックピット内で
シミュレーションに精を出していたラインの前に突然ティルが現れ、そう言うのであった。
「ハイ…結構良いと思いますよ。ジェネラルのポテンシャルも120%以上に引き出されてますし、首都奪還戦ではエナジーとも互角以上の戦いが出来ました。」
「そうでしょそうでしょ!!我が社の製品ですもの!!」
ラインの返事にティルは力強くそう言うのであった。と、そんな時だった。
「ハイハ〜イ!どいてどいて〜!!」
突然二人の間にマオが割ってはいるのであった。
「あらあら、マオちゃん妬いてるの?でも安心してよ。私は人の彼氏を取っちゃう程悪な女じゃないから。」
「だからそんな関係じゃないって!!!!」
半分笑いながら言うティルの言葉にマオとラインは例によって叫んだ。
「フフフ、まあ一応そう言う事にしておいてあげる。と言うわけで、ジェットファルコンに付いての話の続きだけど…。」
と、ティルは話を切り替えて再びラインに話しかけるのであった。
「ったく…こんな事ならあの時暴漢に襲われてたティルさんを助けなきゃよかった…。」
マオは横目でティルを見ながらそう言うのであった。そんなマオを尻目に、ラインとティルの会話は続いていた。
「それにしても、ティルさんゾイテック社の社員とは言え、ジェットファルコンについて詳しいっすね。」
「そりゃもちろん、私もジェットファルコンの開発に関わってますもの。」
「あ、なるほど…。」
ドゴ!! ドン!! ゴガ!!
突然重い物と重い物がぶつかり合ったような大きな音が格納庫内に響き渡った。
思わずラインとティルが音のあった方向を向くとマオがいかにも怒っているような感じで
歩き去っていくのが見えた。しかも、周りの壁や床の所々が大きくへこんでいるのが見えた。
「……………。」
二人は思わず黙り込んだ。しかし、そんな歩き去るマオは怒っている反面、どこか悲しげだった。
それから、ポルトへと到着するまでの期間、ラインへのマオの訓練は一段と厳しかったりする。
「マオちゃん…やっぱり怒ってるのね…。あんまりおちょくるのはよそうかしら…。」
その様子を見ていたティルはそう呟くのであった。
それから数日後、一行はポルトの近辺までやって来た。
「あらら〜?あのやけに高くそそり立ってる棒みたいなのは何〜?」
防弾強化ガラス製の窓越しにマオがそう呟いた。丁度ポルトの町があると思われる地点に、やけに
高い何かが建っていた。塔というワケではない。そのてっぺんには、何かの頭のような円い物体、
そして昆虫のような羽。しいて言うならトンボの体を思わせるようなオブジェらしき物がくっついていた。それも、距離から考えてかなり巨大であろう。
「うわ!!何だあれ?でっけえ!!」
突然至る所から人が集まってきて誰もがそう言った。その巨大な何かは誰もが唖然とする程のインパクトがあったのだ。
「アレはポルトの町名物のウェディーヌって言うゾイドですよ。」
皆の後ろに現れたミルトがそう言う。
「あ…アレがゾイドでありますか…?」
「ハイ、あの羽みたいに見える所の中にプロペラが仕込まれていて、風力発電で電気を
起こしている発電ゾイドとの事です。ホラ、かすかにロープみたいなのがのびているのが見える
でしょ?、アレで町に電気を供給してるですよ。何でも相当昔からあったそうです。
で、あのゾイドの周りに自然と人が集まってポルトという町が出来た。と、そういう事らしいですよ。」
「にわかに信じがたいですが…実物を見たら本当かも…と思わせるところが凄いですね…。」
ミルトの説明に他の者が思わずそう言葉をもらした。
「フフフフフ…あの単なる風力発電で都市1つ分の電気を補えるウェンディーヌ…。研究サンプルとして是非とも欲しい…。せめてそのDNAだけでも…。」
「うわぁぁぁ!!ティルさん!!」
突然現れたティルが怪しい微笑みを浮かべながら不気味な口調でそう呟いた。その光景は近づきがたい物があり、誰もが思わず後ずさりした。
「ポルトへ到着したぞー!!どうやら帝国軍より先に着いたようだぞ。」
そして、一行はついにポルトへとたどり着いたのであった。ホエールキング級の艦船が数隻は
余裕ではいる程の巨大な港にホバーカーゴ2隻は入港した。
「アレがあの中立商業都市ポルト…ってアレ?」
ポルトの町を見たマオ達は唖然とした。そこは、相当な昔から中立を保ち続け、共和国、帝国共に
認め、共に重要視されている商業都市とはとても思えぬ程にまで、何かに破壊された様な後が
生々しく残っていた。それでも、どうにか都市として機能しており、人々も商いなどに精を出しており、人々の力強さが感じられた。
機内温度はあれから3℃程上昇している。ガリスの機体はギガソートブレイザーのダメージを触手と羽根のサイレンサー効果で消すと言う”荒技”をやってのけている。
知りうる限りギガソートブレイザーは衝撃波が直接のダメージを生む武器である事がそれを可能にしている事は解る。
その他エネルギーを機体に吸収、不必要なエネルギーを随時放出を繰り返している事でそれを完全な物にしているようだった。
「なかなか粘る。しかしこれをどう捌く!?」突然直立し腕部を前に突き出す。その腕部は手に偽装されていた頭部が存在していた。「アンフィスバエナ!お前の力を見せてやれ!」
三つの口から光が漏れる…。彼のコクピットではある提案がファインより提示されていた。「くくく…負け分帳消しの条件がそれなら充分だ。兵器試験にも丁度良い…。」
三つの口から各々発射方法の違う荷電粒子砲が放たれる。収束荷電粒子砲、拡散荷電粒子砲、荷電粒子バルカン。各々はストームラプターへの直撃を避けて寄生体に到達する。
「ふははは!反撃もできんか!?情けないな!この葡萄棚め消え去れ!」奇妙なまでに過激な攻撃が繰り返される…寄生体は所々を撃ち抜かれもがいている。
余りにも唐突な攻撃を不信に思うヴァイスリヒトの面々。しかしラフィーレは見下ろす様にその状況を見る事が出来る為そこに付け入る様にキメラゴジュラスが動いているのに気付く。
「何をする気?」この高さに到達する前に迎撃が来るのは確実だが…そこで気付く「まさか…?」その答えが現実の物となる。荷電粒子砲を打ち終え元の腹這い状態に戻ると触手や羽根から放熱を開始する。
攻撃が止んだ事で寄生体に自由が戻る…寄生体は一点にエネルギーを集中し始める。持てるエネルギーを注ぎ込みギガソートブレイザーを発射しようとしている。目に見える程の空間湾曲…この出力なら大抵の物を一方的に吹き飛ばすことが出来るだろう。
その少し離れた所でキメラゴジュラスは左腕の即興ドリルにエネルギーが集中しているが寄生体はそれに気付く様子は無い。ドリルの周りが帯電し空気と電子が弾ける音が次第に大きく成っている。
背部の破損装甲の間から生えている触手の動きも速くなり攻撃準備は整ったようだ。「見て見ぬふり〜。」サーラはそう呟く。ヴァイスリヒトの面々にも何を為ようとしているか大筋が理解できたようだった…。
「もう少し…もう少しであります。」エネルギーの集中がまだ不十分だ。後少しのエネルギーが必要なのだがエネルギーの生産が追い付かずじりじりと収束が続いている。
「よし!如何にか間に合ったみたいでありますね…。」寄生体がギガソートブレイザーを発射する前に準備が何とか間に合ったのでその時を待つ…。何故いつもこの様な時はぎりぎりのチャンスは一度きりなのだろう?
ここ数回の戦闘では決着が謀った様にこのパターンに落ち着いているのが気になるが多分気の所為だろうと考えるのを止める。戦闘は如何転ぶかは結果を見ないと解らない。
つまり計画云々はその通り進むかどうかであり結果的に何が在ろうと出たとこ勝負である事に今更気付くファインだった。
「来る!」ラフィーレは機体のシートに体を固定させ次に来る事態に備えた。
寄生体はアンフィスバエナにギガソートブレイザーを発射する…しかしそこに割って入ったのはそれを指示したファインのキメラゴジュラスだった。
ドリルを高速回転させ一直線にギガソートブレイザーの発射位置に迫る。しかしギガソートブレイザーを割って進んでいる為に速度は非常に遅い。
払いきれなかったエネルギー粒子衝撃波が機体の様々な所に接触。その高出力の為少しづつ蒸発していく…。
「本当に出来るのか!?まあ良い。俺には関係の無い事だ。」アンフィスバエナは寄生体の後方に回り込みそこから寄生体に襲い掛かる。
今度はギガソートブレイザーの照射中で抵抗する事は出来無い。その間にも少しづつではあるがキメラゴジュラスは確実に寄生体に迫る。
「頼むぞ!相棒!」気合いを込めてキメラゴジュラスを応援しながら操縦をするファイン。機体の破損状況は確実に活動限界に迫りつつあるが無差別攻撃をする存在を無視する訳にはいかない。
アービンの一言でこれから部隊に合流するまでは好きにして良いと言う意味合いも込められている。機体には残念だがブロックスの機構を持ち機体その物を捨てゴマに出来る機体はキメラゴジュラスしか居ない。
「悪いでありますね…折角馴染んだ所をこうなってしまって。」そう呟くと「キニスルナ!カラダナライツデモテニハイル!」力強い答えが返ってくるとその途端に出力が更に上昇する。
「おおおおおっ!!!いけぇぇぇぇ!!!」少しづつ確かな同調を感じる。突撃スピードは更に上昇し寄生体に迫っていった。
流石にあの触手も、膨大な砲弾の雨を全て吸収する事はできないらしい。ゴジュラスギガが放ったバスターキャノンが
リーパーの胸部を直撃し、呻く様な低い叫び声を上げる。
ロイの身体に感覚が戻ってきた。自分でも手が震えているのが解るが、やるしかない。
そそり立つ様な威容に向け、CMCを連射する。2発は吸収され、すぐにロイに戻ってくる。
「チィッ!!…残りの一発は!?」
CMC独特の爆発がリーパーの肩で炸裂した。右肩の巨大な突起物が吹き飛ぶ。
4つの触手がロイに向けられた。先端が光り始める。
ディアブロタイガーが横に飛んだ。―と同時に、一瞬前に居た大地が裂けた。
一発でも喰らえば、即死だ。
触手がなおもロイを追う。が、ロイはモニターを見て笑った。
「ハッ…遅えよ、リッツ」
がら空きになったリーパーの側面に、荷電粒子砲が直撃した。
「化物め…堕ちろッ!!」
エクスブレイカーを展開し、ジェノブレイカーがリーパーに突撃する。
しかしリーパーは腕に装備されたブレードの様な物を振るってリッツを弾き飛ばし、翼を広げた。
「逃げる気か!?」
リッツとロイが追い縋るが、関節から生体プラズマを噴射して飛び去るリーパーに追い付くのは不可能だった。
瞬く間に内陸側へと消えるリーパー。半ば放心状態でそれを見送ったロイは、皮肉な現実を知る。
帝国の防衛網が消え去っている。突如現れた化物に恐れを為して逃げたのか、それともあの虐殺で全滅したのか。
ロイが海を振り返ると、僅かに残ったウルトラザウルスの向こうから主力部隊がやって来るのが見えた。
ロイの身体に、緊張が戻ってくる。
「…そうだ、戦いはこれから始まるんじゃないか…」
ドリルの回転数も跳ね上がりギガソートブレイザーを切り裂きながら突撃する…。寄生体はそのまま動くことは出来ずアンフィスバエナに捕食を許した状態にある。
少しづつ蒸発していく機体を顧みずキメラゴジュラスはそのまま一直線にギガソートブレイザーの発射地点に到達する。「はあぁぁぁっ!!!」ドリルの頂点が到達しその回転で発射地点を傷つける。
その負荷は一瞬にしてキメラゴジュラスを巻き込んで発射地点をごっそり消失させると拘束を解かれたラフィーレのストームラプターは消失を免れる様にその場から脱出する。
ガリスのアンフィスバエナは消滅のエネルギーと捕食した器官を消化、放出して地に降り立つ。そこにキメラゴジュラスの姿は無く少し離れた場所にバラバラに為ったブロックスが山に為っていた…。
「あの馬鹿が!!!何処に行った!?」早速ラフィーレはファインの機体のコクピットを探す。
その目に入った光景は…ディープフィアーの落下した穴に消えて行くキメラゴジュラスの頭部とあれだけの事をして全く無傷のケンタウロスの槍の先端だった…。
「結局あの穴に入るしかないのか…くそっ!?まだ生きている!?」突然の攻撃を躱しラフィーレの睨み付ける先には巨体を捨て地に降り立った寄生体の本体が写っていた。
コア周辺と触手を巻き付けて体を作り今まで装甲にしていた部分の大半を複数の翼に変え残りを胴体に鎧の様に身に付ける。新しく体を統括するコアを包む様に雄山羊の頭骨。
その姿は昔話や地球の書物に記されていた”悪魔”その物だった。不釣り合いで地に届かんばかりの長大な角と巨大に捲き付き合い禍を象徴する様な尾となった蔦がそれを更に印象深い物にする。
「出来損ないの化け物がっ!今までの屈辱10倍返しで受け取って貰う!」損傷こそ在るが起動には問題無い。「ソニア、フェニス、援護を!キリカとサーラは付いて来なさい!」部隊は散開し近接戦闘を仕掛ける3機と援護をする2機。
「ふっ…やれば出来るでは無いか。」アンフィスバエナは口に咥えた寄生体の一部を引きずってその場から姿を消す。出番はここまでと言わんばかりの行動だった。
レーダーからまた一つ機影が消えるのを確認する間も無く戦闘が開始される。罅割れた翼で空中に飛び上がる寄生体。それを追うように5機のストームラプターが飛翔する。寄生体は空中戦を選んだようだった。
「…落ちているでありますねぇ。」高度計の数値がどんどん下がっていくのを見ながらファインは何気なく言葉を発する。
「イツモソンナフウダナ。コレデナンドメダ?」「100回は…いえ200回は越えていると思うでありますね。」余り覚えている筈も無く適当な数字を口にする。
「スクナクトモ1000カイハコエテイル!イッカイノセントウデ30カイチェンジマイズシタコトモアルダロウ?」「そう言えば…。」頭を抱えるファイン。相棒からの素早い突っ込みはそれだけ沈んで居る事の証明だった。
「やっぱりギガなんか相手にしなかった方が良かったんでありますかねえ?」激突寸前で減速すれば良い為ファインはぼーっとそんな事を考えていた…。
「喰らえ!」フェニスの機体から超長距離ショットガンが発射される…上空では先の戦闘のリベンジマッチが繰り広げられていた。
「お姉様?何で総掛かりなんですか?」バスターガンで牽制を行いながらソニアはラフィーレに言う。「残念だけど…観て居たでしょ。実践経験の差から来るあの情けない結果。」気を張り詰めては居るが肩から力が抜けた様な感じで答えるラフィーレ。
「どういう事?お姉ちゃん?」サーラも話に加わる。彼女は相手の攻撃を苦も無く回避しながらビームくないで切り付けその瞬間にくないに内蔵のビーム手裏剣ランチャーをゼロ距離で打ち込んでいる。
「私達は弱い!と言う事よ。機体性能の圧倒的な差が無かったら一騎討ちの時点で墜ちていたわ…認めたくは無いけど現実よ!」唇を噛みしめながら言うラフィーレの言葉は心底からの悔しさが篭っていた。
寄生体はストームラプターの攻撃を堅実に捌いている。受けても問題無い攻撃は受け止めて反撃。危険な物は大きく移動して回避と今までに無く戦略的な行動を取り始めていた。
長い蔦の尾の先端より高密度のエネルギーボールを発射して一撃必殺も狙ってくる。「はぁぁぁぁ!!!」エネルギーボールをスマッシュロッドで弾くキリカの機体。
お返しとばかりにセンボンランチャーが叩き込むが鋭さを重視した武器で有る為尾を構成している蔦をばらけさせるとその隙間を擦り抜けていってしまう。
「厄介だね!Eスナイパーライフルが罅の入った翼に打ち込まれるがあっさり貫通しそれだけだった。「貫通しているのに効果が無い!?」余り動じないフェニスだがこれには焦るしかなかった。
「私は共和国軍准将のミオ=スタンティレルです。」
「やーやー、遠い所ご苦労様ですじゃ。それにしてもこんな若さで准将とはお主もやるのう…それに結構美人だし、長生きはするものじゃ…。コホン!ワシがポルトの町長のジルドと申しますじゃ。」
ミオ一行の乗る2隻のホバーカーゴがポルトの港に入港した後、ミオとポルトの町長のジルドと
いう名の老人が互いに自己紹介をした。そんな時だった。
「コイツらが共和国軍ですか!!?ガキばっかりじゃないですか!!こんなんが役に立つんですか町長!!」
突然大柄な1人の男が二人の間に輪って入ってきて大声でそう言ったのだった。
「彼は?」
「このポルトの自警団長をやっている、ゴードンじゃ。」
と、ジルドはミオにゴードンの紹介をした。しかし、ゴードンはなおも言う。
「ったく!!共和国軍は何でこんなガキ共を送り込んできたんだよ!!もしかして舐められてるのか?ガキのケンカじゃないんだぞ!!」
「ゴードン!!言葉を慎むのじゃ!!」
「しかし町長…。」
と、町長とゴードンの言い争いが始まったそんな時、ミオは後ろにいた副官を呼びつけてこう言った。
「ホバーカーゴ2番艦のマオ中尉を今すぐに呼び出せ。」
「ハ!!」
副官は素早く敬礼をしてその場を立ち去った。その後、ミオはゴードンに近づいて言った。
「ゴードンさんと言ったね。あんた達の自警団の中で腕に自身がある奴を1人出しなよ。
それで、私達が出した代表と一試合やる。これでどうだい?私達を馬鹿にするのはそれからでもいいんじゃないかな?」
「フン…良いだろう。どうせ結果は見えているのだ。ノックを呼び出せ!!」
ゴードンがそう叫ぶと、彼の後ろにいた男が何処へと走り去り、1人の男を連れてきた。
「この男はノックと言ってな。このポルトの町の格闘技チャンピオンでもあるんだぜ。」
ゴードンが自慢ありげにそう言うと、ノックと呼ばれる男は突然構えたり空に突きをしたり、
蹴りをしたりしていた。どうやら格闘スタイルは地球の格闘技の1つ、ムエタイの様である。
「おい、ノック、これからお前、共和国軍の代表と格闘技の試合をしろ。なーに、お前なら楽勝だ。」
「了解ですぜ、ヘッヘッヘ…。」
ゴードンの言葉にノックはそう言って下品な笑い声をあげた。どうやら人間的にはイマイチの様である。
「マオ=スタンティレル中尉!ただ今到着しました!」
と、丁度ミオが呼んでいたマオもやって来たのであった。そして、ミオはマオの肩を叩き、ノックの方を指さして言った。
「おい妹よ!アイツとちょっと格闘技の試合やれ。」
「な…何ぃぃぃぃぃぃぃ!!!?あんなガキとやるだとぉぉぉぉぉ!!!!」
突然そう叫んだのはノックだった。
「オイオイ、そんないかにも弱そうな奴を出すなんてホントになめてんのか?」
「よ…弱そうって…。」
この事にゴードンも怒りを隠せないご様子である。さらに、自分が弱そうと言われてマオも少し
カチンと来ていた。と、突然ミオが笑い出した。
「ハッハッハッハッ!確かに妹は姉の私と違ってとんでもなく弱い!!それでも、ソイツよりは強いとは思うけどねえ。」
「うわ!!痛い!!」
ミオはそう言った後、マオの背中をバンと叩いた。その衝撃でマオの体が軽く宙に浮いた。
その様子を見ていたゴードンとノックは唖然としていた。
「どう見ても本当に弱そうとしか思えない…。しかしだ!!こうなったら思い切りやれよノック!!ガキの遊びじゃねえって所を見せてやれ!!」
「はいよ!!」
ノックは勢いよく飛び出して素早く身構えた。そして、マオを威圧するかのように、空に突きや蹴りの素振りをやっていた。
「あ〜あ〜…背中痛いよ〜…。」
マオは意気揚々と飛び出してきたノックとは対照的に、背中をさすりながら半泣き状態で前に出た。
「と…とりあえず…初め!!」
二人が位置に付いたとき、なぜかジルドが開始の合図をするのであった。そして、合図された直後、
ノックの正拳突きがマオの顔面を襲った。しかし、すれすれで止まる。いわゆる寸止めである。
ちなみにマオは何事もなかったかのようにそこから少しも動いてはいなかった。
「俺の突き…よく避けなかったな。それとも、避けられなかったのかな?ヘッヘッへ…。」
「いや、そのくらいのパンチなら当たっても対して痛くないと思ったから…。」
「な…。つ…強がりを…。」
自らの力を誇示するように自信ありげに言ったノックの言葉に対するマオの言葉は、流石のノックも怒らせる物だった。
「どうやらお前は俺の恐ろしさが分かってねえようだな…。町長…ちょっと時間を下せえ。」
そう言うと、ノックは近くにあったブロック塀に歩み寄り、ノックはそのブロック塀に突きを一発入れた。
「ほあたっ!!」
ぼきゃん!!
ノックの突きによってそのブロック塀は一撃で粉砕されるのであった。
「どうだ…これで降参する気になっただろう…?ヘッヘッヘ…。」
「ハッハッハー!!スゲエぞノック!!降参してさっさと帰るなら今のウチだぞ!!」
ブロック塀を粉砕し、自信ありげに言うノックに会わせ、ゴードンもそう叫んだ。しかし…
「じゃあ試合再開でいいのかな?」
「ええ!?お嬢ちゃん!!?無茶はやめなさい!!あんなパンチをくらったら死んでしまうよ!!」
「いや、別に心配しなくても良いですから…。」
ジルドは心配して降参を勧めるも、マオは普通にやる気であった。
「どうやら本気で死にたいようだな…。」
そう言った後、ノックは走った。そしてその右腕を大きく振りかぶった。
バチンッ!!
その時、誰もが唖然とした。ノックが腕を振りかぶり、今突きを繰り出そうとした時、マオは
それ以上のスピードでノックのひたいにデコビンを叩き込んでいたのだ。ノックの体は軽く宙を舞い、そのまま地面に倒れ込み、泡を吹いて気絶していた。
「さてと、上陸は成功した事だし…いよいよこれからが、本作戦よ」
アルティシアが気合を入れ直すように作戦説明を開始した。
今度は会議室のモニターにマップが映し出されている。共和国軍は青で、帝国軍は赤で表記されている。
「基本的に本隊は魚鱗の陣で敵防衛網を突破していく事になるけど、私達は戦闘で露払いに回されてるわね」
マップを見た限り、敵防衛網は5つの巨大な層に分かれている様だ。
「また最前線かよ…」
「大丈夫、最前線とは言っても、すぐ後ろに本隊が付いて来て援護射撃しまくるから。
問題は敵戦力の情報が混乱してる事なんだけど…」
「混乱って…どういう風に?」
アルティシアは腕を組んで考え込む様な動作を見せたが、すぐにロイ達に向き直った。
「いや、何かネオゼネバス軍内部で不穏な動きがね…しかも私達の得にはならない様な」
ロイなどの若い者には意味が解らなかったが、間を置いてアルティシアが再び説明した。
「要するに、帝国内部に新興勢力を起こそうとしている連中が居るみたいなのよ…
でも、共和国にも属する気は無いみたいだし、ガイロスにも取り入る様子は無い」
それを聞いたロイの思考は一歩先に飛んでいた。
〔新興勢力って…何処にそんな力があるんだよ…金も足りないだろうし、隠れてやるなんて無理じゃあ…〕
また、締め付ける様な不安感が押し寄せてきた。
「まあとにかく、部隊の前の敵をぶっ飛ばせば良いわけ。んじゃ解散!!」
寄生体の角にエネルギーが集中し電撃が放たれる。「やらせない!」キリカがスマッシュロッドを空中に放り投げ放電の拡散を阻止する。
頭部にコアがある為か放電までの所要時間も短い。センボンランチャーで帯電したスマッシュロッドから電気を逃がし握り直すとそれを回転させながら寄生体に殴り掛かる。
今度は腕の蔦をばらけさせスマッシュロッドを絡め取ろうとする。「それは駄目!」何時の間にか至近距離に近付いていたサーラの機体がビームくないで蔦を切り裂く。
サーラの援護でスマッシュロッドは胴体に直撃し寄生体を弾き飛ばすが大したダメージには結びついていない。罅の入った装甲はただの使い捨ての感覚が強いのだろうか?
平然とエネルギーボールを撃ってくる。
遠距離では寄生体のエネルギーボールとソニアのバスターガンが壮絶な撃ち合いをしフェニスのヴァリアブルスナイパーの攻撃を巧みに寄生体は回避する。
近距離ではキリカとサーラのコンビで寄生体に直接攻撃を仕掛ける。ラフィーレは中間距離でキリカ達を援護しながら必死になって相手の動きを観察、癖や付け入る隙を探す。
「デストラクションブーメランッ!!!」サーラの動きに被せる様に攻撃をする。寄生体はデストラクションブーメランに反応して反対方向に大きく回避行動を取る。
それを見たサーラはビーム手裏剣ランチャーを回避コースに合わせて発射するとその攻撃に反応できず攻撃を受けている。それに合わせ超長距離ショットガンとバスターガンが追い打ちを掛ける。
「!?おかしい!何で反応できない?そうか?そうなのかっ!?」ラフィーレは何かを掴みかけた様で今度はソニアのバスターガンを回避する寄生体の予測軌道コースにデストラクションブーメランを放つ。
答えが出る。寄生体はデストラクションブーメランを喰らい仰け反っていた…。
「キリカ、サーラ、右に回って!」直に指示通りに2人はストームラプターを寄生体の右側に回り込ませると寄生体は右に尾を振り追い払おうとする。
しかしそれがラフィーレの狙いだった。「サークルディジョネイター!」寄生体の左側に回り込んだラプタースレイブは左の翼を囲み込む様に配置され付け根から翼を焼き切った。
バランスを崩しながらも飛行を続ける寄生体だが翼を持つゾイド等と同様に翼のマグネッサーを依存している為安定性と機動性を略失っていた。
「……………。」
ジルドにゴードン、その他のポルトの人達は開いた口がふさがらなかった。
「あれ…アイツ全然弱そうなのに…あんなに強かったの?…って事は…そんなアイツすらも弱いって言ってたアイツはさらに強いっていうの…?」
と、そんな時だった、港にもう一隻の艦船が入港してきたのだった。それは、帝国軍のドラグーンネストだった。
「そろそろ来るとは思っていたが、ついに来たか…。」
港へ向けてどんどん近づいてくるドラグーンネストを見、腕を組みながらミオはそう言った。
そして、入港が完了したドラグーンネストから、数人の兵士を引き連れて、長身の1人の男が現れた。
その様相からしてかなり高い階級にある人物の様なのだが、ネオゼネバス帝国軍人とは思えない
白い軍服を着ており、髪は肩まで掛かるロン毛。ルックスも割と美形の領域であった。
「あれ…?アイツ何処かで見たことが…。」
その帝国軍人の姿を見たマオは首を傾げながらその様な事を言っていた。目の前の男とはどうやら
以前に何処かであった記憶がある様である。そして、その男はジルドの前へと歩み寄り、こう言うのであった。
「私はネオゼネバス帝国軍少将のルーガス=バッハードです。」
「それはそれは遠くからご苦労様ですじゃ。ワシはこの町の町長のジルドと申し…。」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!思い出したぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
突然港中に響き渡ったのはマオの叫び声だった。
「わぁぁぁ!!中尉!!どうしたんっすか!!?」
いつの間にかに現れたラインがマオにそう叫ぶ。そして、マオはラインの方を向きつつ、ルーガスと名乗る男を指さしてさらに叫んだ。
「だってだって!!アイツ以前敵軍の将のクセに私にナンパしかけてきたキモイ少将なんだよ!!」
「ええ!!?それって一体いつの話っすか!!?」
「セイスモサウルスが初めて私たちの前に現れた時だよ!!あの時の真っ赤な角付きセイスモ!!それにアイツが乗ってたんだよ!!」
「ああ!!何かそんな事があったような無かったような…。」
マオとラインは何故か高速で足踏みをし、焦った口調でそう大声で会話していた。
「おやおや、懐かしい声が聞こえると思ったら、君も来てたんだねマイハニー!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!気付かれたぁぁぁぁ!!キモイ―――!!っていうかマイハニーって何よ―――!!」
突然笑顔でマオの方へと近づいて来たルーガスにマオは思わずそう叫んだ。
この男は、前述の通りルーガス=バッハード少将。若くして少将にまでなった超天才であり、
スポーツや格闘技も万能、その上絶世の美男子で帝国軍の女性士官達の間において、
「抱かれたい男ナンバー1」の座を何年も連続でキープしている程の非の打ち所のない男である。
そして、そんな彼には以前、いかにすれば緑の悪魔、つまりマオとカンウを倒すことが出来るのか
という研究に没頭している時期があった。その上に、格闘技の超達人をスカウトしてぶつけてみたり、
諜報員にマオの事を色々と調べさせたりなど、色々な事をしていた。あのセイスモサウルスは
そんな彼の研究成果の1つでもあったりして…という逸話がごく一部の人間の間で存在する程である。
そして、そういう事をし続けていた末、どこをどう間違ったのか、マオへの愛に変わっており、
戦場で相対した時、ナンパまがいな事をして、ついでに帝国に引き込もうとしていたが、
結局ダメだったといういきさつである。しかし、そんな彼もゾイド乗りとしての実力も半端な物では無く、マオとカンウのコンビを1対1で破壊寸前にまで追い込んだ唯一の男でもある。
「いや〜実はね〜…。最近ようやく謹慎が解けてね〜…。こうやって復帰したワケなんだよ。
その復帰初日に君と再び会えるなんて…やっぱり私と君は運命の赤い糸で結ばれていたんだね〜…。」
「ヒィ――――――――!!コイツマジでヤバイよ――――――!!っていうかまだ諦めてなかったの!!?」
マオに歩み寄りつつ言うルーガスの言葉に、鳥肌を立てながらマオが叫んだ。ルーガスの言葉から
すると、どうやら彼は以前マオと戦った時の戦いで負けた責任で謹慎処分を受けていた様である。
と、そんな時、突然ルーガスが立ち止まり、ラインの方をにらみ付けた。それには思わずラインも後ずさりした。
「その男は何者だ…。まさか私という者がありながら彼氏というワケではないだろうな…。」
「だからそんなんじゃないって!!こ…コイツは私の部下のライン=バイス曹長よ…。」
「何だ…君の部下か…そうかそうか…。ライン曹長とか言ったね、最近物騒だから気を付けた方がいいかもね…。」
「あんた何か企んでない……ってうわぁぁぁぁ!!ドラグーンネストの窓からスナイパーが何か狙ってる―――!!」
マオの言う通り、ドラグーンネストの窓から思い切りスナイパーらしき人影がラインに向けて狙いを定めていた。
「ハッハッハッハッ、単なるちょっとしたジョークじゃないか…。」
ルーガスが笑いながら手をさっと上げ、何かしらのサインを送ると、そのスナイパーは素早く引っ込んだ。
「ったくも〜…あんたの冗談は冗談に聞こえないのよ…私なんか以前危うくゼネバス砲で消されそうになったし…。」
「まあそれはそうと、しばらく見ないウチにまた少し大きくなったかな?」
「ってコラ―――――!!どさくさに紛れて私の胸さわろうとするな――――――!!!」
マオが叫んだ直後、マオの突きがルーガスに飛んだ。歩兵用アタックゾイドの装甲すらもやすやすと
うち砕く程のとてつもなく速く、そして重い突きである。しかし…
パシンッ!!
「え…?」
「ハッハッハッハッ!いきなりパンチなんて手厳しいな〜…、まあ私はそんな君が好きなんだけどね。」
マオは唖然とした。このルーガス、マオの突きを楽々と片手で受け止めていたのだ。
「あの〜そろそろ本題に入りたいんですけどいいでしょうか…。とりあえず詳しい話はは私の家でと言うことで…。」
「ああ、済みません済みません。では、また今度会おう!マイハニー…。」
ジルドに呼ばれて、ルーガスはマオの手を離し、そのままジルドとミオの二人と共に立ち去った。
「博士!!ブラックボックスの暗号、解析終了しました!!」
ケイン=アーベルは研究員の声でモニターから目を離した。すぐにその場へと飛んでいく。
現れた文字列を一足早く読み進んでいた研究員が脱帽した。
「まさか…これが、古代文明の技術がこれほどの物だなんて…」
ケインが覗き込んだ画面には、あるシステムの設計図が映し出されていた。
「Zoidscore Overlord Sistem――ZOS」
「…博士?」
ケインの翳っていた顔に、不気味とも言える笑みが広がる。
「…諸君、良くやってくれた…今日はもう帰ってくれたまえ。後は私がやる」
「え?…は、はあ…それでは、また明日」
研究員達が居なくなり、静まり返った研究室でケインは高笑いした。
「クックック…ハァーッハッハッハ!!!…そうか、『ZOS』か!!これで謎が解けた…
ありえない石碑の謎も…その内容も……素晴らしい…Ziの歴史が…世界の常識が覆る…!!」
ケインはふらつきながら、再び自分の机のモニターに目をやった。
「…そろそろ、奴が事を起こす時間だな…上手くやってくれよ…」
2分割されたモニターには、進軍する共和国軍と3機のホエールキングが映っていた。
「全てはこの為に…偽りの内部情報まで流して時間を稼ぎ、この研究の完成を待っていた…」
「ホエールキングが3機!?いつの間に…一体どうやって!!」
先鋒のホバーカーゴに緊張が走った。何しろ、今まさに帝国軍の第一陣と戦闘に入ったところだったのだ。
「この反応は光学迷彩…だが、あれほど巨大な機体をすっぽり隠すほどの光学迷彩なんて…」
きっと、帝国防衛陣は今頃援軍に沸いているだろう。彼らはそう思った。
だが、ロイが通信機に耳を澄ますとどうもそうではないらしい。
〔聞いていないぞ!!援軍か!?〕
〔いや、待て!!識別コードが無いぞ!!〕
援軍である筈なのに、彼らは戸惑っている。ロイが頭上の3機を見上げた――その時だった。
ホエールキングのカタパルトから、一機のゾイドが飛び出した。
「紅い…ロードゲイル!!ロブ基地に居た奴か!!?」
イオが撃墜した筈であった。しかし、あの鮮やかな赤と通常の3倍近い速度は間違い無い。
ロイがその機体の驚異的な速度に目を奪われていると、通信機に不快な声と嫌な顔が映った。
「ようこそ、デルポイの地へ…また会ったな、小僧」
「き、貴様…エンバー=リーデンベルト!!」
帝国防衛陣がやっと沸き返る。
「あ、あれはエンバー大佐のロードゲイル!!やはり援軍だったんだ!!」
エンバーは通信機越しにニヤリと笑い、指を振った。
「チッ、チッ、チッ…残念ながら、その逆だよ。若き勇者達よ」
「え……?」
ホエールキングから、大量の中型ゾイドが投下された。4種類の武装形態があるようだが、どれも同じ形をしている。
そのゾイド達の背中から閃光が走り、次々と防衛陣のゾイド達が倒れていく。驚異的な貫通力。
ロイはそのゾイドを知っていた。たった一度だけ、敗北した敵。
空より降りてきたのは、サイクロプスの一個大隊だった。
「中尉…。」
「…………。」
マオは自分の右手を見つめながら唖然し、その場で固まっていた。と、そんな時だった。
「いや〜…ルーガス少将とグリーンデビルがお知り合いとは知りませんでしたね〜…。」
突然のその声に、マオとラインは一瞬固まった。
「その声は!!まさか!!ハ!!!!」
声のあった方向を見たマオとラインは唖然とした。そこにはただでさえテンション低い時に会いたくない奴らの姿があった。
それは、帝国軍の科学力が生み出した人造人間「SBHI−03ハガネ」。
次代の指導者の1人と目される若き天才「クライト=クロウズ」。
今だ謎の多い阿修羅流暗黒拳を極めた武僧「ギフ=シンライ」。
と言った、帝国軍が誇るエースパイロット。強敵ライバル3人衆がそろっていたのだった。
「は〜いマオちゃ〜ん。」
ここが中立地帯とはいえ、敵同士という事実を忘れているかのようにハガネが手を振りながらそう言った。
「うわ――――!!あんたらも来てたの!!?しかも何でガン首揃えてんのよ!!1人相手でも大変だってのに!!」
「そりゃ〜ルーちゃんの指揮下に入ってるからに決まってるじゃな〜い。」
浮き足立ちながら叫ぶマオにハガネは笑顔でそう言った。ちなみにルーちゃんとは普通にルーガスの
事を指す。そして、ハガネはさらに、マオに近づきつつこう言った。
「まあまあ、そんな肩っ苦しい事は別に良いのよ。それに見てよ、あの天まで届くかのように
高くそそり立ったあのウェンディーヌを。あれってもうこの町が出来る昔からあったって話じゃない。
それに、普通ならエネルギー効率の高くない風力発電でこの大きな町1つ分の電気をまかなう。
一体誰が、いつこんな物を作ったのか…。いいね〜このロマン!超常現象!オーパーツ!マオちゃんもそう思わな〜い?。」
「……………。」
ウェンディーヌを見上げながら、ハガネは嬉しそうにマオにそう語るのであった。マオの方は
唖然としているが、ハガネはある出来事をきっかけに、超常現象とか、そう言う事に興味を
持つようになったのだ。今でも暇さえあればそういう超常現象を探しに色々な所に行く程である。
と、今度はクライトがラインの方へと歩を進めた。
「やあ、ライン=バイスさん…。貴方の噂は聞いていますよ…あれからかなり腕を上げたようですねえ…。」
「ああ…、少なくとも機体性能の差はかなり縮まったと思うぜ。今ならお前にも1対1で勝てる自信がある。」
「それは楽しみです…。まあここは中立地帯ですから、今回は互いに戦うことはないと思いますが、次また会った時、その時が貴方の最期と考えていて下さいね…。」
「ソイツはお互い様にな…。」
クライトはラインとそう言葉を交わすと再び下がるのであった。しかし、そんな中でも、ギフは1人喋らず、なぜか瞑想に耽っていた。
「アイツだったよね…あの時のフギとか言う奴…。」
「中尉…フギじゃなくてギフですよ…。」
1人瞑想に耽るギフを見ながら言うマオとライン、そしてその手は互いに震えていた。静かに瞑想に
耽りながらも、彼から発せられる気に二人は押されていたのだ。と、その時、彼の口が開いた。
「今は互いに戦う時では無い故、心配は無用。次に会う時までより修行を積んでおくがよろしかろう…。」
「は…はい…そうしましゅ…。」
ギフの言葉に、マオとラインは半分ビビリながらもそう言って、素早く後ろへと下がるのであった。
「おい…あの坊さんみたいな帝国兵士…あんたら相当ビビッてたみたいだが…そんなに強いのか?」
ギフから割と距離を取ったその時、突然ゴードンが、マオとラインにそう話しかけてきた。
「いや、もう強いってもんじゃないわよ。以前戦った時なんか奴の機体に触れることすら出来なかった物!!」
「あ…あのノックを瞬殺したお前が言うんだ…滅茶苦茶強いのだろうな…・。」
相変わらず1人瞑想に耽るギフを見ながら、ゴードンがそう呟いた。その彼の額からは汗が流れていた。
「しかし…、もしも今度あいつら3人と戦う時が来たとき…私たちは勝てるのだろうか…。
私とハガネがほぼ互角、ラインとクライトとか言うのとがほぼ互角と考えても、あのギフという奴の
力は未知数だし、弱く見積もったとしても私やライン以上の実力を持つのは確か。か…勝てないかもしんない…。」
マオは内心そう考え…そしてビビっていた。
それから、共和国、帝国は共にゾイドや物資の積み卸し作業を行っていた。互いに様々なゾイドが
ホバーカーゴ、ドラグーンネストから、互いをにらみ付けるかのように出てくるのであった。
ポルトが中立地帯で、直接戦うことは無いと言っても、既に戦いは始まっていたのだ。
一見のどかに見えても、既に互いに緊張が走っている。と、そんな時だった。
「スッゲエ!!見たこともないゾイドがいっぱいだ!!」
突然1人の少年がそう叫んで、不敵にも両軍のすぐ近くまで近づき、共和国、帝国のゾイドを
じろじろと眺めていたのだ。この辺りに住む少年か?と思われるが、服装など、少し感じが違うようである。
「おい待てや!!こいつら軍隊やぞ!!あんまり近づかん方がええ!!」
と、今度はさらにもう1人、豚面で少し太めの少年がが現れて少年の肩を引っ張った。
「いいじゃないか。今まで見たこともないゾイドがあんなにあるんだぜ。ワクワクするじゃねーか!!」
「それでもダメやで!!相手は軍隊やぞ!!」
「うっわ〜…コイツの首なんか滅茶苦茶長いな〜…。」
「コラー!!いつの間にか登るな――!!迷惑掛かるやろうが!!」
少年は、いつの間にかにセイスモサウルスの頭の上にまで登っていた。それには思わず豚面で太めの少年も怒るのであった。
「なんか帝国軍の方が騒がしいな〜…。」
相変わらず積み卸し作業を続けている共和国兵士の1人がそう呟くのであった。
>失われし者への鎮魂歌作者さん
サイクロプスの一個大隊って・・・量産されたんですか?それとも同型の機体が多数発掘されたとか?
いずれにせよライディーンを量産するみたいな感じでかなり凄い事だと思います。
話は変わりますが、現在自分の話で舞台になっているポルトっていうのは、
ズバリあの上山氏の漫画版に出てきたあれです。そしてさらに・・・・。
「何で…」
ロイの腕から、力が抜けて行く。
「何で、あいつの機体が…サイクロプスがこんなに…!?」
エンバーが嘲るように笑った。
「残念だったな…あの小僧に渡す前にデータを取らせてもらったのさ。基本の武装形態に、新たに2種の形態を
追加して量産し、オリジナルに仕掛けた装置から送られた戦闘データをコンバットシステムにインストールした…
…あの復讐鬼気取りの小僧は完璧に働いてくれたさ。利用されている事にも気付かずになぁ!!」
思考が停止したロイの頭脳が、ゆっくりと事の全容を理解し始めた。
アルベルト=シュニッツァーにサイクロプスのオリジナルが渡されたのも、それを量産する為に必要な実戦データを
取る為――アルベルトは何も疑わずにそれを受け取ったのだろう。復讐の為に。
ロイが静かに口を開いた。
「…1つ聞かせろ…アルベルトの両親が死んだのは…本当に、共和国軍の侵攻による物だったか…!?」
エンバーは口が裂けんばかりにニヤリと笑う。そして、さも楽しい事の様に言った。
「ホゥ、随分と勘が良いな…お前の考えている通りさ。あのガキの両親は、
共和国兵に偽装した我が部下が抹殺したのだよ。奴の両親は共和国のスパイだった様なのでな…
それだけなら殺しはしなかったが、連中は『禁断の領域』に足を踏み入れた…」
エンバーは苦笑しながら続ける。
「…それが何なのかはまだ言えないが、とにかく奴らは最高機密に手を出した…だから殺したのさ。
そして私は気が付いた。奴らの息子が、類稀なるゾイド乗りの才能を有していた事にな!!
その後は話した通りだ。上手く奴を軍に引き入れ、サイクロプス初号機を与え、復讐鬼に仕立て上げた!」
ロイの目から涙が零れた。その涙は、猛烈な怒りによる物だった。
「ふざけるな…黙れ……貴様ァーーッ!!!」
ディアブロタイガーが飛んだ。
「そうだ、怒れ!!潜在能力を解き放て!!」
ケインの目はモニターに釘付けだった。
「感情の昂りこそが…『発動』の条件!!」
彼の目が追っていたのは味方である筈のエンバーではなく、それと戦う黒い機体だった。
「やはり良いねえ、この感じは!!」
飛び掛ってくるディアブロタイガー。エンバーは深紅の機体を横滑りさせ、その突進をかわす。
「怒りに駆られた若者…いい眼をしている。その瞳を暗く閉ざす事こそが楽しみだ!!」
一瞬で側面に回り込むと、マグネイズスピアでロイを狙う。
「貴様の様な奴に…負けて堪るかッ!!」
ロイも瞬時に機体を旋回させ、サイバークローで槍を弾く。そのまま2撃目を入れようとするが、
エンバーは攻撃が弾かれた時点で既に空へ飛んでいた。
「いくらそいつが『CDZ』で、チューンアップされていたとしても…私には及ばない」
「…『CDZ』…?一体、何を言ってる?」
エンバーがわざとらしく鼻を鳴らす。
「何だ、お前は自分の乗る機体の事もろくに知らんのか…『Cyver Drive Zoids』…
古代文明の遺跡より発見された、あるシステムを積んだゾイドがそう呼ばれる」
「ある…システム?」
「お前が知る必要など無いぞ。お前では使えないだろうし、どの道ここで死ぬ」
>>閻魔の策動作者氏
…とまあ、上に書いたとおりで。あらかじめ取っておいたオリジナルのデータで
サイクロプスを量産したって所です。
自分の妄想アイデアで既出の「サイクロプス零式」と新出の「サイクロプス参式」が
また出てきます。
それで、セイスモに上ってる少年はまさか塩の人でつか?
上山+塩…最強の予感…!!
一方、ミオとルーガスはジルドの家で、状況の説明などを聞いていた。
「この町の至る所が壊れているのは、怪物の仕業じゃ。奴らは突然現れて、町を破壊していくのじゃ。
今は自警団のみんなも頑張っておるが、その怪物は強くてのお…。どうも旗色が悪いのじゃ。」
「だからこそその怪物の討伐のために私たちが登場したまでです。」
弱気な言葉で言うジルドに、ミオが力強くそう言った。と、今度はルーガスが口を開く。
「しかし…その怪物というのは一体何者ですか…?」
「それについては実際に現物を見た方がよろしかろう…。またそろそろ来るじゃろうて…。」
ジルドがそう答えたとき、突然爆発音が響き渡った。
「ほれみろ。来おったぞ。」
「今の爆発音は何だ!!?」
「港の方だぞ!!」
ミオとルーガスは一斉にジルドの家を出、一斉に港に走り出した。そして、また爆発音。
町は逃げようとする人達で大騒ぎであった。帝国、共和国の両軍兵士は自警団と協力して民間人の避難誘導を行っていた。
「なんだってのよ!!」
突然の攻撃に、マオは思わずそう叫んだ。水平線の彼方から、今まで事も無いゾイドの群が空を
飛んでやって来ていたのだ。そのゾイドの群の形状はシェルカーンやフライシザースなど、初期型
キメラブロックスに酷似した形態を取っていたが、所々が違っていた。むしろ、その形状には
まがまがしさすらも感じられた。何よりも、シェルカーンモドキやデモンズヘッドモドキが、
特に飛行ウィングなどを装備しているわけでもないのに空を飛んでいるのだ。
一応ブロックスタイプである様なのだが…。
「なにあれ!!ブロックスだけどあんなの見たこと無いわ!!と言うより、ゾイテック社の許可取ってるの!!?」
一応ブロックスと思われる未確認ゾイドの姿を見たティルはそう叫んだ。仮にも彼女は
ゾイテック社員。共和国軍が使用しているブロックスも、帝国軍のキメラも、元を正せば
ゾイテック社の製品である。だが、それだけではない、ブロックスの特許はゾイテック社にある為、
ゾイテック社以外が新たにブロックスを開発する場合、ゾイテック社に特許料を支払う必要が
あるのだ。個人的使用に止めるだけならばその必要はないが、アレほどの規模ならば当然支払うべきである。
「あんなの俺が撃ち落としてやる!!」
久しぶりに出番のやって来たアイザックが叫んだ。そして、ボディを大型化させ、4門もの
バスターキャノンを装備した強化ディスペロウ「キャリング」の砲塔が火を噴いた。
相手は空中をかなりの速度で飛んでいくにも関わらず、命中率ほぼ100%という驚異的な命中率で次々に未確認ゾイドを撃ち落としていった。
「や…やるなあアイツ…。」
同じく未確認ゾイドの迎撃に当たっていた帝国兵士はその様子を見て思わずそう呟いた。
しかし、他の皆もかなりの成果を上げていた。セイスモサウルスのゼネバス砲や、凱龍輝の
集光荷電粒子砲が火を噴き、未確認ゾイドを次々に消していく。などなど、
帝国軍と共和国軍の協力により、未確認ゾイドの群は次々に撃ち落とされていった。
「すげえな…共和国も帝国もなかなかやるぜ…。俺達があんなに苦戦した怪物をいとも簡単に…。」
同じく迎撃に当たっていた自警団の皆もその実力に感心していた。
未確認ゾイドの群は次々に撃ち落とされていき、戦闘はこれにて終了…と、そう誰もが思った時だった。
「な!!何だあれは!!!」
共和国兵士の1人がそう叫んだ。なんと、破壊されたはずの未確認ゾイドの残骸が宙を浮き、その
宙を浮く沢山の残骸が1つに集まり、なんと一体の巨大なドラゴン型ゾイドとなったのだ。
丁度ブロックスのチェンジマイズ融合の様に見えるのだが、少し様子が違うようだった。なにしろ
違うパーツとパーツとが同化しているのだ。これはブロックスのチェンジマイズ融合でも不可能な事である。
そして、そのドラゴン型ゾイドはもの凄い速度で急降下し、港に着水し、帝国、共和国両軍の
ゾイドに襲いかかったのだ。そのドラゴン型ゾイドは巨大で、そして素早く、強力だった。
それは片腕の一振りでスティルアーマーやディスペロウを数機まとめて吹き飛ばす程であった。
「ここは私に任せてよ!!…ってでかい――――――!!」
相手が地上に降りてきたおかげで出番の回ってきたマオがカンウに乗った状態でそう叫んだ。
何しろ目の前のドラゴン型ゾイドの体はカンウの数倍の大きさがあったのだ。流石のマオもその
巨体にビビって半泣き状態に陥った。その時だ、ドラゴン型巨大ゾイドの右腕がカンウの向かって
振り下ろされた。まともに食らえば、ゴジュラスギガやデスザウラーはおろか、マッドサンダーでも
吹き飛ばされるのは目に見えているほどの強力かつ速い一撃であった。
「うわぁぁぁ!!怖い!!」
しかし、マオはそう叫びつつ、ギガスミラージュでその攻撃を回避、素早く後ろに下がった。
「中尉!!大丈夫っすか!!?」
ジェネラルに乗り込んで駆けつけてきたラインがマオに対しそう叫んだ。その時だった。
「コイツの相手はおいら達に任せてくれ!!!」
どこからか響いてきたその声は先ほどの少年の物だった。そして、声のあった方向から、
レオストライカー、エヴォフライヤー、カノンダイバー、バスターイーグルと、4機のブロックスが現れたのだ。
「何だあれは!!どこの所属だ!!?」
共和国兵士の1人が叫ぶ。しかし、その4機のゾイドは部隊を示すマークはおろか、共和国軍マークすらもマーキングされていなかったのだ。
「おい!!あんたらん所の機体か?」
「いや!!俺達も知らないよ!!」
帝国軍の1人が自警団員の1人に向かってそう叫ぶが、その自警団員は首を横に振ってそう叫んだ。どうやら自警団とも違う様子である。
「うぉぉぉぉ!!いっくぞぉぉぉぉ!!!」
少年が声を張り上げながら、その所属不明の4機はドラゴン型巨大ゾイドへむかって突撃した。
「ちょっと待てや!!あいつ滅茶苦茶でっかいで!!」
レオストライカーの後方を走っていたエォフライヤーからその様な声が聞こえた。その声は先ほどの豚面の少年の物だった。
「ここは距離を取って慎重に砲撃しよう!!」
今度はカノンダイバーから聞こえてきた。ちなみにその声は少年の物だが、初めて聞く声である。前述の二人の少年とは別の少年であろうか。
「砲撃戦なら私に任せてよ!!」
今度はバスターイーグルからだった。どうやら声から言って女の子が乗っている様子である。
「な…何…?あいつら…。」
「いや、俺に言われても困りますよ…。」
その4機の所属不明機と4人を見ていたマオとラインはそんな会話をしていた。
紅いロードゲイルが再び姿を消した。
光学迷彩など使っていない。ただ単純に、「速過ぎて見えなかった」だけである。
気配で察知し、ロイが機体を反転させる前に後ろからの一撃が決まっていた。
「クッ…強い…!!」
今までロイは、エンバーが実際に戦っている所を見た事は無かった。
部隊の後方で指揮を取るタイプだと思っていたのだ。
確かに彼は、事実指揮官としても優秀であった。だがこの男を両軍で大佐や准将と言った地位に
伸し上げた物は他ならぬゾイド乗りとしての腕である。
「ゾイドの性能も活かし切れないお前には、勝ち目など無い!!」
ロイは歯噛みした。力量差から来る絶望と、それに伴うやり場の無い怒りがこみ上げる。
「…どうしてだ…何故、こんなにも強いのに…卑怯な手まで使う必要があった…!?」
「愚問だな。なるべく自分の手は汚したくないと言うのが人間の本性ではないか」
ロイの怒りは再び頂点に達しようとしていた。
――こんな奴に、俺は負けるのか?こんな卑怯者に…!!
その時であった。
ディアブロタイガーのコックピットの上に付いている、用途不明だったゲージがMAXになっている。
モニターに「ZOS」と言う文字が点滅している。
「これは…一体…?」
今までゲージが80%程になった事はある。だが、100%に達したのは初めてだった。
「さあ…死ねぇーーー!!!」
眼前に紅い機体が迫ってくる。ロイは未知の力に賭ける事にした。
「ZOS…起動!!」
「これは…何だ!?」
何もかもが恐ろしいほどクリアに感じられた。迫ってくるロードゲイルの関節の動き、巻き上がる砂埃の
一粒一粒が見分けられる――まるで、自分以外の周囲の時間が遅くなった様だ。
スローモーションで近付いてくるロードゲイルを通常の速度で余裕を持ってかわし、楽々後ろに回りこむ。
そのまま、サイバーファングを叩き込んだ。
その時周りの者から見えたのは、絶体絶命の状態にあったロイの機体が突然消え去り、
一瞬にしてスクラップと化すロードゲイルの姿だった。
「な、何だ!!何が起こったというのだ!!!」
エンバーは辛うじてロイの機体が見えていた。だが、常軌を逸したスピードにかえって恐怖が増す。
パニックになりかけたエンバーの元へ、通信が入った。
「とうとう、ロイがZOSを使った様だな…」
エンバーは乱れたモニターに叫ぶ。
「ケイン!!どう言う事だ…奴はZOSを使えない筈では無かったのか!?」
ケインがわざとらしく首を振る。
「おや、言っていなかったかな…ZOSの発動条件は、パイロットの精神状態であると」
ロードゲイルのコックピットが炎に包まれる。
「ご苦労であった…おかげで、最後の実験が成功した…」
「ケェイィィィィィィィィーーン!!!!貴様ァァァァ!!!」
恨みを込めた叫びを最後に、エンバーは爆炎の中に消え去った。
ZOSが解けたロイは、奇妙な脱力感に襲われていた。
「何だったんだ、今の…?」
今度は、周囲の時間がとても速く感じる。僅か数秒でこれほど「酔ってしまう」とは。
周囲では、数の減ったサイクロプスが最後の抵抗を見せている。
流石にサイクロプスは個体ごとの戦闘力は驚異的な数値を示している。
だがやはり、アルベルトが乗った初号機の圧倒的な戦闘力には遠く及ばない。
パイロットの問題か――そう思い、通信回線を開いたロイは意味深な会話を聞いた。
「…コアの…拒絶反応が……やはり、不完全なシステムでは…」
後方でゴジュラスのバスターキャノンが一斉に火を噴き、通信は途切れた。
酷い有様だ。サイクロプスの乱入によって両軍に甚大な被害が出ている。
だがまたも皮肉な事に、彼らのお蔭で帝国防衛陣の一層目を突破する事ができたのである。
「おかしいわ…これはまるで…私達の進軍を手助けしているような…」
アルティシアの理性が警鐘を鳴らしている。だが、その根源にある物が解らない。
一個人の不安で、進軍を止める訳には行かない。第一彼女にそこまでの権限は無い。
不安を抱きつつも、彼女はロイ達に呼びかけた。
「…さあ、まだ先は長いわよ!!」
彼女は、まだ4層残っている防衛網をどう突破するかに考えを巡らせた。
――実際、その必要は無かったのだが。
「ええい!!」
バスターイーグルのバスターキャノンが火を噴いた。超高速で撃ち出された二つ高熱の砲弾は
ドラゴン型巨大ゾイドの背中に直撃し、ドラゴン型ゾイドの背中の外部装甲が吹き飛んだ。どうやら装甲その物はそう大した物では無い様子である。
「やったあ!!ってええ!!?」
バスターイーグルに乗っていた何者かは一瞬喜んだが、その直後に起こった異変に驚愕した。
なんと、そのドラゴン型ゾイドの破壊された背中が再生しているのだ。その再生速度は
再生ゾイドの代名詞と言われるゴジュラス・ジ・オーガもビックリする程のレベルだった。
「!!!!…あの再生…どこかで…。」
ゼノンのコックピットごしにその再生の様子を見ていたハガネがそう呟くのだった。
「やらば今度はおいらに任せろ!!」
「わ!!バカ!!無茶すんな!!」
レオストライカーの少年は、エヴォフライヤーに乗っていると思われる豚面の少年の制止も聞かずに
そのドラゴン型ゾイドに向かって突っ込んだ。レオストライカーはEシールドを張りつつ、
ストライクザンスマッシャーでドラゴン型ゾイドに斬り掛かる。が、なんとそのドラゴン型ゾイドは
そのレオストライカーの攻撃を受けると思われた部分だけがブロックスが分解するように、
バラバラになり、そうしてドラゴン型ゾイドの体に出来た穴によって、そのままレオストライカーは
反対側まで突き抜けてしまった。そのドラゴン型ゾイドは無人機とはとても思えぬほど賢く、そして狡猾だった。
「ええ!!?あれあれ!!?」
信じられない自体に少年も驚きを隠せない様子だった。しかし、それに驚いていたのは
その少年だけではない、その場にいた帝国兵士や共和国兵士も同様に驚いていたのだ。
今度はセイスモサウルスが慌ててゼネバス砲を発射した。細いが、強い光を放つ粒子の線は
そのドラゴン型ゾイドを苦もなく撃ち抜く。が、結局再生されるだけだった。
「このままじゃキリがない!!」
帝国兵士が叫んだ。その時だった、突然ギフの乗るアシュラゲイルが前に出たのだ。
「あれはロードゲイル!?いや…少し形が違うようだけど…帝国のマークがある…何で帝国軍がロードゲイルを…?」
所属不明機4機の中で一番陰が薄かったカノンダイバーに乗っていると思われる謎の少年がアシュラゲイルを見てそう言うのだった。
「あの物の怪を倒す方法は1つ。そのゾイドコアを全て破壊するのみであり申す。」
「だ…だが、奴の体の何処にゾイドコアがあるかわかるのか!!?シンライ曹長!!」
ギフの言葉に、1人の帝国兵士が焦った口調でそう返す。そして、ギフはこう答えた。
「分かり申す。あの物の怪の中で、強力な気を放つ場所。それがあの物の怪のゾイドコアであり申す。」
ギフがそう言った直後だった、ギフが操縦桿から手を離し、両手の平を合わせたのだ。丁度拝むように。
「緑の悪魔よ、お主に拙僧の手の内を少しだけ開かそう。」
「え?」
ギフがマオに向けてそう言った直後だった、ギフがなにやら怪しい呪文のような言葉を唱え始めたのだ。
「南無網…阿修羅観音仏…………渇!!!!」
その直後だった、突然アシュラゲイルが二つに分かれ、そしてその二つに分かれたアシュラゲイルが
さらに二つに分かれ、合計四つになったのだ。それはマオがよくやるような超高速で動くことに
よって発生する残像によって作り出す分身ではない。本当にアシュラゲイルが4機になっているのだ。
「これぞ阿修羅分身拳。」
「うっひゃ――――――――――!!まるで○身の拳だ――――――――――!!!!!」
4人のギフが声をハモらせながら技名を言った直後、マオが思わずそう叫んだ。
その直後だった、ドラゴン型ゾイドの両腕が4機のアシュラゲイルを襲った。手の平の大きさだけ
でもアシュラゲイルと同等の大きさを持つ巨大な腕である。まともに食らってしまえば
アシュラゲイルはおろかゴジュラスギガやセイスモサウルス、デスザウラーはもとより、
マッドサンダーでも一溜まりもない。が、4機のアシュラゲイルはその攻撃を軽るやかにかわし、
たちまちドラゴン型ゾイドの懐に飛び込んだのだ。
「ブロックスでこの物の怪の巨大な体を維持でき申すのは、全身にゾイドコアを数機分散させている
からであり申す。ならば、まずその各部に分散しているゾイドコアを潰し申す。」
ギフがそう言った直後だった、4機のアシュラゲイルの六本の腕のウチの、中段の両腕に装備した
エクスシザースをドラゴン型ゾイドの四股の付け根に思い切り突き刺したのだ。
「南無網阿修羅観音仏。」
ギフがそう唱えたその直後、そのドラゴン型ゾイドの体から、そのエクスシザースを引き抜いた。
そして、そのエクスシザースには数個のコアブロックスの塊が挟み込まれており、さらに、
そのコアブロックスの塊をアシュラゲイルの上段の両腕のマグネイズスピアで突き刺し、そのコアを破壊したのだった。
「ぎえええええっ!!!!」
ドラゴン型ゾイドはそう悲鳴のような声を上げながら力を失って倒れ込んだ。四股の動力としていた
コアブロックスを失ったからである。そして、その様子を確認したギフは再び元の1人に戻った。
「と…とりあえずこれで勝ったな…。」
「いや、まだ安心は出来申さん。この物の怪はまだ生きており申す。」
1人の自警団員が安心してそう呟いたとき、ギフはそう彼に言ったのだ。そして、彼の言うとおり、
そのドラゴン型ゾイドはまだ生きていた。と、その時だった。倒れ込んだドラゴン型ゾイドの
背中が裂け、中から小型のドラゴン型ゾイドが現れたのだ。しかし、小型とは言え、その大きさはデスザウラーにも匹敵する大きさだった。
「あの物の怪から巨大な気を感じる。あの物の怪が真の核であり申す。」
その小型ドラゴンを見たギフはそう言った。その時だった。その小型ドラゴン型ゾイドに向けて一機のゾイドが飛び出してきた。
「コイツは私に任せて!!」
それはマオとカンウだった、巨大ゾイドとはとても思えぬ程の驚異的な跳躍力でその小型ドラゴン型ゾイドへと一気に迫った。
「ぎええええ!!」
カンウの接近に気付いたその小型ドラゴン型ゾイドはその口から火炎を吐いて、カンウを迎撃した。
巨大かつ高熱の火炎がカンウの全身を襲う。が、その直後だった。その炎が、カンウの右腕に集まり、
カンウの右腕の爪を中心に1つの巨大な剣となったのだ。
素早さを失いながらもエネルギーボールを撃ちながら抵抗を続ける寄生体に詰め寄るキリカ。
スマッシュロッドの連激は電気を蓄えた長大な角を叩き割る「くっ!タイミングを合わせられた…。」過剰な電気の帯電でほんの一瞬システムがダウンする。
回復後に目の前に迫る寄生体をファルコンクローで思いきり引っ掻くと頭部に引っ掻き傷を残して寄生体は尾の一撃でキリカのストームラプターを引き離す。
「このぉ!!!今度こそ…。」また単機で格闘を仕掛けようとするキリカの機体をラフィーレの機体が押さえ込む。「邪魔しないで!後少しなの!」暴れて振り払おうとするキリカにラフィーレは鋭い目付きでこう言う。
「今のあなたは隙だらけよ。今度はあなたが成りたい?私みたいに?」「うぐっ…解ったから離して。」その言葉の後に歯ぎしりしているラフィーレの映像を見てキリカは追撃を諦めた。
「キリカ?今度はアレをやるわよ。」その言葉にキリカと残りのメンバーは驚く。「やるの?アレを?」目を白黒させてキリカは聞き返す。
「今はこれが最善の方法よ。多分あいつはストームラプター1機分しかエネルギーをやりくりできないわ。」その声にフェニスは反論する「正確なのか!?もし違えば全滅だけでは済まされないわよ?」
ラフィーレではなく今度はソニアがフォローに入る「全機拘束できるなら1機になるまで待たないはずよ?フェニス。空中に移動まで出来るあいつが始めに降り立った時姿を現さなかったのが証拠よ。」
「…そうだな多くても2機分と考えれば勝算は充分だな。」フェニスは頷くと「そう言う事みたいよ。サーラ?準備は良い?」その声に「こっちはオッケーだよっ!」
「そう!いくわよ!フォーメーションB!」ラフィーレの号令に「ラプターブレイクゥゥ〜ッ!!!」サーラが後に続くと5機は縦列陣形で寄生体に急速接近し寄生体にファルコンクローを連続して叩き込む。
通り抜けた順番に適当な方向へ1機ずつ散開しまた適当に突撃ファルコンクローの攻撃を繰り返す。適当で在るが為のランダムな攻撃は予想通り機体を取り込もうとしていた寄生体にとっては反応できない攻撃だった。
1機を追い掛けようとすると別の機体に襲われる。突入タイミングも毎回違うため外れる攻撃も在るがそれがフェイントの効果になり他の機体の攻撃にまた反応できない。数の暴力の象徴とも言える攻撃だった。
寄生体は機体を絡め取ろうと体の構成を半分蔦に戻していたため更に反応が遅れて行く…。
切り捨てとして装甲に使われた部位が少しずつ引き剥がされていく。翼も切り刻まれ更に機動力を奪われる。
頭部を守る雄山羊の頭蓋骨も罅割れ所々コア剥き出しになっている。なおも攻撃の手を緩める事無くヴァイスリヒトのコンビネーション攻撃は続く。
遂に雄山羊の頭蓋骨が砕け散り頭部のコアが剥き出しになる。「!!!」それを確認するやいなや突然バラバラだった動きが変わり一斉にコア目掛けて突撃を開始する。
寄生体はフェニスの機体を狙い蔦を最大限に展開して捕まえようとするが構う事無くフェニスは機体を突撃させる。
「何もかも遅いんだよ…。」右腕のファルコンクローで蔦の一つを掴みそのまま加速するとストームラプターに引っ張られる様に寄生体は他の4機の交差予想地点に移動する。
その地点を5つの光が交差すると風を切る音が辺りに響き渡り蔦をズタズタに引き裂いた…。
「外したっ!?」コアへの直撃を果たした機体は無くコアは急スピードで地面に落ちた蔦、切り離した地下茎の残り物、引き剥がされた装甲を再結集させ新たな姿に変わろうとしている。
「させん!」フェニスが超長距離ショットガンでパーツの一部を弾く。それを回収しようとしている寄生体にパルスキャノンが打ち込まれ動きを止められる。
その後キリカの機体の地表擦れ擦れの低空飛行からのスマッシュロッドに寄生体は空中に投げ出されるとそこには既にサーラの機体がカバーに入っていた。
「えいっ!」ビームくないの一撃が水平方向に寄生体を切り付けその勢いで横に吹っ飛んで行くと既に謀られた様にソニアのバスターガンとラフィーレのデストラクションブーメランが同時に直撃する。
それ等の攻撃をもってしても再構成の勢いは止まる様子は無い。しかし再構成までを予測していたヴァイスリヒトの攻撃は止まらない。
空中に復帰したキリカの機体からセンボンランチャーが発射され再構成中の寄生体の隙間に突き刺さり構築スピードを遅らせると収束率を限界まで緩めたフェニスのEスナイパーライフルが至近距離で炸裂し寄生体を発射方向に押し続ける。
それを正面からソニアのテイルマグネーザーが押し止め2方向から寄生体をその場に釘付けにした。
Eスナイパーライフルの照射が終わると同時に同じ方向からサーラのビームくないが突き刺さる。
そのままビーム手裏剣ランチャーをゼロ距離射撃を開始しテイルマグネーザーと同様にコアに迫る。
寄生体はエネルギーを吸収拡散させながら抵抗するが更にパルスキャノンとサークルディジョネイターがソニアとサーラの引き際に寄生体を襲う。
更にエネルギーの過負荷が掛かりコアは次第に罅割れて再構成が歪になる。過度の成長により中央部のコアが剥き出しになった所にキリカのスマッシュロッドが打ち込まれコアは砕けた…。
寄生体はコアから漏れ出したエネルギーの波動に飲み込まれ数秒後に融解、燃え出し地表に墜落。数十分程で燃え尽きた。
「何とか初陣は勝利と言った所かしら…私だけは黒星スタートだけど。」そう言って肩を落とすラフィーレ。彼女の機体は一部装甲欠損で被害は終わっていたらしい。
彼女の機体の最大の特徴である広範囲捜索、索敵能力は生きている。ラフィーレの機体は頭部にバイトファングが無く頭部下部口が有るはずの部分に半球体状レドームレーダーが装備されている。
それでもう一度辺りに何か無いか?敵は存在しないか?を確かめる。
反応はツインリヴァイアサンとディオスのキメラドラゴンの機体反応と人の反応のみで地下へは磁力の関係上正確な調査は出来無かった…。
「やっぱり地下に降りないと行けないみたいね…ふぅ…。」本来の目的を遂行する為には地下に降り立つしか無い。
「セフィーナは何であんな奴に固執するのかしら…?」理由が定かでは無い為直接連れていってみないと答えは解る筈も無く如何した物かとラフィーレは首を傾げた。
「そろそろでありますね…。」地下深くに落下しているキメラゴジュラスの頭部でブレーキのタイミングを予測しマグネッサーの浮游機能をファインは起動させる。
上ではどうやら戦闘が終わったらしく爆音等が既に聞こえなくなっていた。落下を防ぐのでは無く落下速度を落すための行為なので高度はぐんぐん下がって行く。
しかしセンサーの反応からすると後10秒程で底に到達する計算だったが横の崖にぶつかり回転しながら更に奥深くに落ちていく事になってしまったようである。
「目っ目が回るでありますぅ〜〜〜…。」その情けない声は誰の耳にも届く事は無く闇に掻き消えて行った…。
「えええええ!!!?俺達は夢を見てるの!!!?」
その様子を見ていた皆が驚愕の声を上げた。そして、同じく愕然とする小型ドラゴン型ゾイドに向けて、カンウの右腕が振り上げられた。
「ギガクラッシャー!!!ファイヤーブレード!!」
じゅばぁん!!!
マオのそういう叫び声が響き渡ったその直後、カンウの右腕に現れた炎の剣がそのまま
小型ドラゴン型ゾイドを縦に溶断したのだった。この技は本来は西方大陸拳法総本山の神聖寺の
奥義の1つである、生命エネルギーである気を一箇所に凝縮、集中させ、対象を切り裂くという、
「神聖寺気功爪斬拳」という技なのだが、マオはその技をベースに、自然界に存在する自然現象を
プラスして、さらに破壊力を高めるという技を開発したのだ。マオは以前にも、同様の方法で、
雷を右腕に集め、タキオンエネルギー全開で突っ込んできたエナジーライガーを真っ二つにしたことがあった。
「思った通り…かなりやるようであり申す。」
その様子を見ていたギフは一言そう言うのだった。
「あ…あの力…まさか…。」
として、同じくその様子を見ていたレオストライカーの少年はそう呟いていた。
「いきなり現れた一体君たちは何物なんだね!!」
戦闘は一時終了し、両軍共に残骸処理などを行っていたその時、それと同時に見事に帝国共和国、
そしてポルト自警団の皆様に捕まった謎の四人の少年少女達は取り調べを受けていた。
「あの四人って何者なんですか?」
残骸処理を終え、興味本位で取調室の近くまでやって来たマオが、取り調べを行っていた者の
1人にそう言った。そして、取り調べを行っていた者の1人がその質問に答えるのであった。
「ええと、とりあえず、あの変わった服を着た少年の名がクーゴ、豚面の少年がグウ、
メガネの少年がパッカー、そして女の子がメイというそうです。あと、何か東方大陸から来たとかも言っていました。」
と、そう言っていた時、別に取り調べをしていた者の声が聞こえてきた。
「第一君らは何で戦闘ゾイドを所有しているんだね!!?あれは子供のおもちゃじゃないんだぞ!!」
「そんな事言われても…私のバスターイーグルはお父さんにもらった物だし…。」
メイと呼ばれる少女は頭をしたに傾けつつも、目で取り調べをしている男の目を見ながらそう言う。
そして、今度はクーゴと呼ばれる少年が口を開いた。
「おいらのレオストライカーはオサンゾにじーちゃんが俺達に遺してくれた物なんだ!!」
「今なんと言いましたか!!!!!!?」
突然どこからとも無く現れてそう叫んだのはティルだった。殺伐とした不陰気の中でのいきなりの
出来事であり、ティル自信にしても、そのテンションの高さはその場の誰もがさっと退いてしまう
程の異様があった。そして、ティルは両手でクーゴの両肩を思い切り掴んで叫んだ。
「今オサンゾと言いましたね!!!?そのオサンゾとはもしかしてオサンゾ博士の事ですか!!?」
「ううううう苦じいいいいいい…。」
ティルはそう叫びながらクーゴの両肩を力一杯掴みしめた状態で超高速で振り続けた。その超高速振動によって、クーゴは今にも気絶しそうな程苦しんでいた。
「ゲホ!!ゲホ!!ゲホ!!」
「おい、大丈夫かクーゴ!しっかりせい!!」
「あ…あら…私としたことがゴメンナサイ…。」
ティルが手を離し謝るが、クーゴはまだ苦しんでいた。そして、大分楽になってきたと思われるクーゴがティルに向かって言った。
「は…博士かは知らねーけど、俺達にあのゾイドをくれたのはオサンゾのじーちゃんだ。というか、
おばさんオサンゾのじーちゃん知ってんのか?」
「お姉さんと呼びなさい!!!!」
「ご…ごめんなさい…お…お姉さん…。」
クーゴにおばさんと呼ばれた直後のティルの形相はその場の誰もが驚いてしまう程の物があった。当然クーゴは慌てて直ぐ様に訂正した。
「ティルさん…そのオサンなんとかって人…一体何者なんです?」
突然そう話に加わってきたのはマオだった。そして、ティルは口を開いた。
「オサンゾ博士はゾイテック社でブロックス理論を確立した科学者です。彼の作り出した基本理論が
無ければ、今のブロックスはありません。その博士が、数年前に突然行方不明になってしまって…。そして、これがその博士の写真です。」
ティルはそう言ってポケットから、1人の老人の姿を映しだした一枚の写真を出し、皆に見せたのだった。
「あああ!!確かにこれじーちゃんだ!!」
その写真を見たクーゴがそう叫んだ。と、その直後だった。
「ああああああああ!!!誰かと思えばあの時のセクハラオヤジ!!!!!」
そう叫んだのはマオだった。ティルは慌ててマオに問いかける。
「ええ!?貴女も知ってるの!?」
「そりゃそうよ!!東方大陸修業時代、盗賊に襲われてた所を助けてやったはいいけど、どうしょうもないセクハラオヤジでさー。もうまいっちゃったのよ。」
「……………。」
マオの言葉に一時沈黙が流れるのであった。そして、一時してティルがクーゴに言った。
「と…とりあえず…オサンゾ博士は一体今どうしてるの…?」
「じーちゃんは…死んじゃったよ…。そして、おいら達が乗っていたゾイドはじーちゃんが死んだ
後に、じーちゃんが遺してくれていたのを発見した物なんだ。それにしても、ブロックスを
作ってる企業があるなんて知らなかったな〜…。ブロックスを持ってるのはおいら達だけだと思ってたのに…。」
「そ…そうなの…。オサンゾ博士は…死んでしまったのね…。」
ティルは肩を落としてそう言った。その言葉は悲しげだった。そして、今度はマオがティルに話しかけた。
「よ…よっぽど尊敬していた人なの?」
「そうよ…私にゾイドの技術など色々教えてくれた先生でもありますから…。」
「ふ〜ん…私から見ればただのセクハラオヤジにしか見えないけど…そんな立派な人なんだ…。」
マオは腕組みし、頭を右に傾けてそう言うのだった。
「何だ…これは…?」
帝国の第2防衛陣が、全滅していた。
まるで1200mm砲でも受けたかのような惨状だが、そんな物は使っていない。
アルティシアの不安は完璧に、確信へと変わった。誰かが自分達を旧首都へと導いている。
生存者を探すロイの耳に、微かな信号音が聞こえた。
「――誰か、生きてる!!」
「なっ!?おい!!」
ロイは一瞬の信号音を頼りに、焼け野原を駆けた。そして――
「大丈夫か!?」
原形を留めぬ数機のゾイドのコックピットに、生存者が居た。
だが、それは数奇な運命を示すかのような「再会」だった。
「…まさか、ここであなた達に会うとは…思っても見ませんでしたよ…」
服が血に染まっているにも係らず、その人物は弱々しく微笑んだ。
「――!?あんた…シエル=バレンタイン!?」
時を置かずして、リッツ達が他の仲間も見つけ出した。皆重傷を負ってはいたが、
ロイが間髪を入れずにホバーカーゴに運びこんだので一命は取り留めた。
「すみません…大袈裟な事言って、結局こんな風に…何もできなくて…」
病室―といっても、アルティシアが士官室を空けてくれたのだが―のベッドに横たわる
シエルは、面目無い、と言った感じで俯いた。
ロイがしゃがみ込み、静かに訊く。
「…何が、あったんだ?」
シエルの身体が微かに震える。間を置いて、意を決したようにシエルは事の全容を話し出した。
「古代文明の技術の粋を結集した決戦兵器…ネオゼネバス技術部はとうとう、完成させてしまったんです。
――『アイアンコング・エヴィルツォーネ』を…」
>>閻魔の策動作者氏
あ、成る程!オサンゾがBLOX理論の立案者だったら塩ゾイドも少しは意味のある話になって来ますしね。
…クーゴ達の話って、戦争終結後の話では…
いや、何でもないっす。それで、タイトルの「閻魔」は文字通りエーm(核ミサイル
「…戦闘は終わったようだな。」アービンは乾いた声で言う。「中尉の機体の反応が地下に消えて行きました…大丈夫でしょうか?」
シュミットが心配そうに言うと「あいつは大丈夫だ。今回の作戦中に返って来れる可能性は低いがな…日時的には休暇の途中なのだから問題無い。」これまでの敗北記録と生還記録を照らし合わせれば十中八九生きているだろう。
アービンはその記録をシュミットにわざわざ紙で見せ付け納得させる。「ついでに新装備込だからな。自前の物だが見た感じあの甲殻皮膚はやつに係れば銃火器10種類以上の働きはするだろうし更には銃火器込みだ。心配は無い!」
そう言って捜索を要請しようとするシュミットを含む幾人かを制止した…。
帝国軍宿営地は散々な状況だった…。たった一機の機体相手に戦力は半壊。頼みの綱のフリッケライドラグーンも第1〜第4小隊までが全機小中破。
第5〜第8小隊はこの所1週間前の大雨でデルポイ東側からの到着は期待出来無い。ツインリヴァイアサンの墜落は残りの小隊の到着を絶望的にしていたのである。
「如何したものか…しかもこれも略欠番確定か。」そう言うアービンの目の前にはブロックを填める場所が在る大型機のフレームらしき物が1式組み上げられている最中である。
「如何するね?アービンの大将?」整備班長が尋ねると「このまま組んでくれ…100の力は出せなくても50〜60の力は出せるだろう。」シュミット観てそう呟くと彼は振り向きこう言う。
「無理ですよ!推定12個以上のコアブロックを問題無くコントロールできるのは中尉しか居ません!それ以上の人が他に居ますか?」そう言うシュミットに「大丈夫だ。誰も一人で動かせとは言っていない。カイエン少尉か調査隊のディオス大尉に頼むつもりだ。」
そう言って振り向くと整備班長にそっと言う「もう一つ組んで置いてくれ…間に合う可能性も在るからな。」
結局そのフレームにはシュミットとディオスが乗る事になる。「済まんなディオス大尉。今の所施設地下の制圧は最重要任務に据えられる事になった以上協力を要請する。」その言葉に「了解しました。少尉のサポートで良いのですね?」
「その通りだ。何か在った時何とか出来そうなのは君しか居ないからな…。」その他にも何か言いたそうなアービンの表情を観て納得するディオスだった。
少しづつフレームに装甲やブロックが組み込まれていくのをディオスは見詰めている。「嬢ちゃん何かリクエストでも在るかい?」整備班長に尋ねられるとこう答える。
「シュミット少尉に聞いた方が良いのでは?でも少しだけ希望が有ります。」そう言ってヒソヒソと話し始める。「よし解った!それで行こう!嬢ちゃんやるねぇ?流石にその歳で一般部隊の大尉をやるだけの事は有る!」
そう言うと整備班長はシュミットを見付け捕まえて何か話し込み始めた。
「えっ?この装備をディオス大尉が推しているって?」ブロックスのパーツを使用した武器は組み合わせにより一つの部位の装備で複数の攻撃を使用出来る物も有る。
シュミットの目の前に有るそれ等は離れては射撃近付けば格闘、果ては相手の攻撃をガードすら出来る物も並んでいる。「凄いですね…でも取り回しの難しい物も多いですよ。」それ等を観てため息を付くシュミット。
それを見ていたディオスは「大丈夫ですよシュミット少尉。こう見えても私は格闘戦が得意ですから。それに明日出撃前に少し練習してみましょう。少尉ならある程度までなら少し動かすだけで覚えられますよ。取り敢えずこれ等から2種類選んでください。」
その言葉に「え?如何言う事ですか?この機体のペイロードなら全種類装備してもお釣りが来るんじゃ…?」それ等の装備は小型化や軽量化も視野に入れて構築されているので全部をゴテゴテに装備するものだとばかり考えていたシュミットは目を白黒させている。
「それは無茶ですよ少尉…。良いですか?戦闘という物は…。」この後30分程ディオスの持論である合理性をじっくり聴く羽目になったシュミットだった…。
「え〜?装備変更ですかぁ〜?」ルディアは不満そうに言う。どうやらプロトYの外装をエナジーライガーのマスプロダクションタイプに変更するという事らしい。
「何かぁ〜キメラっぽいですねぇ〜?」エナジーライガーと同型の外装を装備しているプロトYを観て感想を言う。
確かにグングニルホーンとAZエクスブレードはそれが付いただけでライガータイプよりはキメラタイプ見えてしまうのだろう。そう言う物が昔話で有ったと言う記憶も有る。
通常配備される者との違いはエナジーチャージャーの出力調整に寄る6気筒V字型の為エナジーウイングが無い事と専用火器が無い事だった。
その後、再び怪ゾイドの攻撃に対応する為、両軍共に交代で警戒を行うことになった。そして、自由時間が取れたマオとラインはポルトの町見物に出るのだった。
「ついさっきまで攻撃されてたってのに、あっという間に営業再開しちゃってるわね。」
「それだけここの人達がたくましいって事じゃないっすかね?」
二人がそう言う通り、その町の人々は破壊された建物の修理や商店の営業などを行っていた。
そして、彼らの言葉や表情に苦しさなどは感じられない。そのたくましさはマオ達も感心するほどの物だった。
「のどが乾いたわね…どっかで何か飲みましょっか。」
「そうっすね。」
喫茶店へ行くことにした二人は手近な喫茶店を探すことにした。と、そんな時だった。路地裏から何か声が聞こえてきたのだ。
「ん?何この声…?」
「中尉?」
マオはその声が気になってその路地裏に入っていった。ラインも慌ててそれに付いていく。
「オイオイいいだろ?最近不景気でさ〜、俺達金無いんだよ〜。少し貸してくれないかな〜…?」
なんと、その路地裏で、数人のいかにも不良という感じの少年達が、1人の小さな子供をカツアゲしていたのだ。その子供はいかにも泣きそうな顔をしている。
「コラコラあんたら何やってんの。」
と、不良達の前に現れたのは誰でもないマオだった。不良達はマオの方を向き、思い切りにらみ付けた。
「ねーちゃん何言ってんだ!?見りゃ分かるだろうが!!カツアゲしてんだよ!!」
何という馬鹿正直な不良達であろうか。この態度にはかえってすがすがしい物が感じられた。
「正直でよろしい。でも、カツアゲはよくないな〜…。」
マオは殺気立つ不良達に笑顔でそう言う。そして、不良達は前に一歩踏み込んでさらにマオをにらみ付けた。
「あ〜ん?ねえちゃんやる気かオラ!!」
「キャア―――!!怖い!!」
不良ににらまれたマオはそう言って後ろに下がった。が、しかし…
「と、見せかけて先手必勝!!」
マオが突然目にも留まらぬ速度で不良達に飛びかかり、物の数秒で全員倒してしまった。
「う…ウソだろ…。」
首に手刀を軽く当てられた、1人の不良が気絶する直前にそう言って倒れ込むのだった。
「あ……………。」
その様子を見ていた子供は唖然とするだけだった。そして、再び口を開いた。
「お…お姉ちゃんありがとう…。」
その子供はそう言って慌ててマオにおじぎをした。マオはその子供を見て微笑んだ。
「次同じ事にならないように気を付けなさいよ。あ…そうだ!この近くに喫茶店とか無いかしら?」
「あ、喫茶店なら僕んちが喫茶店やってるよ。」
何という運命の巡り合わせ、その子供の家は喫茶店をやっていたのだ。早速二人はその子供に案内してもらうことになった。
「お母さん!お客さん連れてきたよ!」
その子供の家でもある喫茶店にたどり着いた時、その子供はその母親と思われる、店のカウンターの向こうにいた女性にそう言った。
「あらいらっしゃい!トゥランもお帰り。」
その母親と思しき女性は優しそうな声でそう言った。どうやらその言葉から子供の名前はトゥランと
言うらしい。とりあえず、マオとラインは手近にあった椅子に腰掛けることにした。そして、マオは
緑茶、ラインはコーヒーを注文し、それぞれの飲み物を飲んでいた。と、そんな時、トゥランの母親がマオの前にやってきた。
「息子から話は聞きましたよ。なんでも不良に絡まれていた所を助けてくれたんですって?本当にありがとうございます。」
「いやいや、別にいいのよ。こうやって喫茶店も見つけることが出来たんだし。」
マオに向かっておじぎをするトゥランの母親に、マオは慌てながら左手を左右に振ってそう言った。
と、その時だった。マオの目に、店の隅に置かれていた一枚の写真が飛び込んできたのだった。
「あれは…。」
その写真は、赤、青、黄色などのカラーリングで派手派手に塗られたセイバータイガーを背にして腕組みをして立っている1人の男が写し出されていた。
「あれは、死んだ主人の写真です…。実は…主人は傭兵業もやっていて…帝国軍に出稼ぎに出て
いたんです…。それが…ある日ボロボロになって帰ってきて…緑色のゴジュラスギガ…緑の悪魔が…
緑色のゴジュラスギガ…緑の悪魔が…ってうめき声を上げて苦しみながら、数日後に死んでしまいました…。」
「あ…ご…ごめんなさい!!いやな事を思い出させてしまって!!」
悲しげな顔、そして悲しげな声で言うトゥランの母親に、マオは慌ててそう謝った。しかし、母親はニッコリと微笑んだ。
「もういいんですよ…。もう過ぎたことですから…。」
母親はそう言って下がっていった。その姿は何処か悲しげだった。そして、マオはまだ気まずく思っていた。
「中尉…緑の悪魔ってまさか…。」
「う…うん…。た…確かにあのセイバータイガーは見覚えがある…。というか、あんな派手派手な
色してたら印象が濃すぎて忘れる方が大変だよ…。それに、あの人の旦那さんって、死ぬ前に
緑色のゴジュラスギガ…緑の悪魔…、緑色のゴジュラスギガ…緑の悪魔…、ってうめいてたんでしょ?
うっわ〜…どうしよう…。確かにあのセイバータイガーは私が撃破した記憶があるし…、私がやったと知ったら怒るだろうな〜…。」
二人は汗をだらだら流しながら慌て顔かつ小声でそう言っていた。と、そんな時だった。
「えい!!やあ!!とお!!」
なにやらそのような声と共に、何かを叩くような聞こえてきたのだ。その声はトゥランの物だった。
二人が会計を済ませてその音のあった方へと行くと、喫茶店兼トゥランの家の庭で、トゥランが
ロープでつるされたタイヤを木の棒で何度も叩いていた。
「何やってるの?」
「あ!お姉ちゃん!見ての通り強くなるための練習だよ。」
マオの言葉にトゥランはそう言ってさらにそのタイヤを叩いていていた。しかし、その振りは遅く、っそしてかなり下手だった。
「あ〜ダメダメ、ちょっと貸してごらん?」
マオはそう言って、トゥランが持っていた木の棒を借りた。
「いい?よく見ていて?このまま振り上げて真っ直ぐに…。」
マオはそう言って棒を振り上げ、そのまま振り下ろした。その振り下ろす速度はとてつもなく速く、タイヤが真っ二つになってしまった。
「あ!!ゴッメーン!!ついタイヤ真っ二つにしちゃった。」
「わー!!お姉ちゃん凄い!!僕もお姉ちゃんみたいに強くなりたいな。」
マオは慌てて謝るが、トゥランは怒るどころか逆に感激していた。そして、トゥランはマオに手をさしのべた。
「僕の名前はトゥラン。お姉ちゃんとお兄ちゃんの名前は?」
「私はマオ。」
「俺はラインだ。」
「マオお姉ちゃん、ラインお兄ちゃんよろしくね。」
>>失われし者への鎮魂歌作者さん
アイアンコングエヴォルツォーネって・・・まだ出てないゾイド・・・以前に
どんな特性があるかも分からないゾイド出して大丈夫ですか?
なんかもうワケの分からないことになりそうな気がします・・・
でもそれはそれで結構楽しみな自分・・・
と思ったらエヴィルツォーネって書いてるじゃあありませんか。
なるほど・・・・エヴォルとは名前が似てるだけの別物という事ですね。
>>恐怖の亀裂作者さん
12個以上のコアブロック・・・・何か凄い物になりそうな気が・・・。
ブロックスは構造強度の関係で大型以上のサイズは作りにくいと考えてる自分としては
あまり考えてなかっただけにどうなるのか・・・・。
>>182 その辺はもう得意の脳内設定&オリジナル武装などで埋めます。
名前が「エヴィルツォーネ」になっているのはただの間違いですた。スマソ。
…しかしむしろこの方が好都合かも試練…名前が微妙に違う別物として使わせて頂きましょう!(開き直り
ロイ達が来る数十分前。
シエル達は、帝国の防衛陣が燃えているのを発見し、状況を見に行った。
「何だ…!?酷え有様だぜ、こりゃあ…」
ゾイドの残骸が燃え盛る戦場。だが、共和国軍の姿は見当たらない。
その時、シエルの目が黒煙の向こうに何かを捉えた。
「あれは…ゾイド?」
折も折、仲間の一人、リオン=クリストファーが残存部隊を見つけた。
被害も大きい様だが、まだ多くの帝国ゾイドが残っている。
「何があった!?」
リオンが呼びかけるも、帝国兵達はパニック状態で叫ぶばかりだ。
「化物だ!!撃て、撃つんだァァーーッ!!」
その光景をレドラーMk2で空から見ていたジード=ウインチェスターは、帝国軍の射線が一点に集中している
事に気が付いた。そして、その中心には巨大なゾイドが一体――
「アイアンコング!?いや、大き過ぎる!!」
シエルはそのゾイドを見た途端顔色を変え、全周波放送で叫んだ。
「!?あれは…に、逃げてください!!」
コング系に似つかわしくない、凶悪に裂けた口に光の粒子が集まっていく。
「荷電粒子砲かッ!?」
「違います!!早く逃げ…」
コングの口腔内から、荷電粒子砲とは違う巨大なエネルギーが放たれた。
閻魔の策動の作者さんへ
超大型は組むのにかなり無茶なコツが要ります。組むのに数時間が経過して…
…目の前にはフレームにブロックが囲われ頭部も無いのにセイスモに追い付けとの勢いの全長に組んだ自分がポカーン。
既にマッドサンダーのマグネーザー無しに並んでいました。しかもがちがちに固めて荷重の分散にTB8を胴体下腹部の芯に二足歩行型が立っていてビックリ!?
大人買いの妙が遂に…設定をしっかりしないと多分誰も納得しそうも有りません_| ̄|○
流石に5時間程寝て起きたらへたりに寄って足が外れ床に落ちバラバラに成ってましたが…。
失われし者への鎮魂歌の作者さんへ
エヴォルツォーネキターーー!!!コロコロの漫画でもネタに使われたあの方が…。
今でも作られているのでしょうか?エナジーライガーを観るにモーター駆動の通常キットの方が良いと思うのですが?
それはさておき遂にサイバードライブゾイドの言葉が出て来ましたね。ZOSも出て来てヒートアップの兆しが見えます。
そろそろ更なるノリが命な展開に徐々になってきたので楽しみです。
「…寝てしまったようだ?随分と長く寝た気がするな。」第5層で味方に出逢え安心していたのだろう。
レクスはゆっくりと瞼を開ける。その天井や壁からは錆が出来始めた金属特有の匂いがする。何かほっとするような自分が可笑しかった。
「起きたか…こちらは終わっているぞ。」レクスが起きるのを確認してサーベラスは作業の終了を告げた…。
「これは…格好いい!!!」生来のミーハーな部分が前に出る程彼の愛機ゴジュラスギガはその姿を劇的に変えていたのである。
「済まんな。純正の共和国技術とは言えんがこの際如何でも良い。折角ガイロス帝国からの技術提供が有ったのだし試してみる価値はあったぞ。」
その背中にはバーサークフューラーの1,5倍は在ろう大型フレキシブルアームに特殊構造マグネーザーを装備して居る。「これは…いらいした物とは少し違う様な気がするのですが…?」
そのレクスの困惑した顔を見て笑いながらサーベラスは言う「君が依頼した物を纏めた物が運良く瓦礫の下から発見できてね。修理は済んでいるよ。」
嬉しそうにサーベラスは自慢げにこの装備の名を告げる「サイクロンドライバーβインパクトだ!マグネーザー、チャージショットキャノン、パイルバンカーの複合装備。マグネーザーの形もより効果的に使用出来るように再設計されている物だ!」
一目見て解るその形はバスタークローとも違う…と言うより観たままの感想はドリルだが一体型の螺旋機構では無い。
根元の回転軸を囲むようにロータリー構造で同方向に回転する4本のドリル。それが一体になっている外側を逆回転で2本のレーザーブレードが回る仕組みらしい…。
「メンテナンス性が悪そうですね?」正直に言うレクスに「大丈夫だ。中心部の4本は別の物でも良い仕組み成っている。それに見た目とは反比例して取り外しと取り付けが簡単だから非戦闘時にドリルの詰まりを掃除をするだけで充分だ。」
「凄い…ですね。でサイクロンは何処に?」「その由来は中心部のチャージショットキャノンを発射時に4本のドリルを伝う為にエネルギーが渦を巻いて発射されるからだ。インパクトは後ろを見ても解る通りこの装備自体がパイルバンカーになる。」
力説と余りにもそのままの外見に唖然とするレクス。止めの言葉は「歯車一つまで勿論古代チタニウム合金製だ。」1式しか無い事に納得出来る代物だった。
その他突撃時に間違って機体にサイクロンドライバー部分が接触しないように肩にホルダー付きの追加装甲も装備されている。
クラッシャーテイルの先端部は一回り大きい装甲を装備し内蔵火器として小型兵器掃討用バルカン砲2文を装備。
下腹部にも同様に小型ゾイド用にゴジュラスの物と同型の70mm2連装ヘビーマシンガンを装備している。
「背中の装備以外は大体が小型〜中型ゾイドの牽制、掃討用だ。脚部の追加装甲に内蔵の垂直発射型クラスターミサイルのみは大型ゾイドにもダメージを与えられそうだがな。」
更に「忘れてはいけないのがMTS(マグネッサートリートメントシステムの略)を実装版に取り替えて置いたからエネルギー効率も良くなって居る筈だ。速度も約1,8倍程になっている。」
これは略追撃モードと同様の速度を持つという事でこれもエネルギー節約に成るだろう…。
「大変です!また別の奴が現れました!今度はファイヤードレイクです!」突然兵士が部屋に飛び込んで来て報告する。
「またか?今日はお客さんが多い日だ。その内お二方は招かれざる客とは疲れる話だ…。」サーベラスは呆れたように天井を見詰める。
「なら俺が行こう。肩慣らしには丁度良い。」レクスはそう言うと部屋を飛び出しギガに飛び乗って迎撃に出る。早速機体の武器の威力を試す事が出来ると張りきっているレクスに連絡が来る。
「相手は2体だ!気を付けるんだ。」確かにサーベラスの言う通り2体の大型ブロックスが迫って来ていた。
「こいっ!俺が相手になる!」早速とばかりにサイクロンドライバーを起動して串刺しにせんとばかりに突撃するが左右に分かれて攻撃して来たために威力を試す事は出来無かった。
しかしチャージショットキャノンを撃ち足止めをする。螺旋状に展開するエネルギーの渦に直線的な筈の射撃にエネルギーを拡散すること無く広範囲を攻撃させるこの軌道は射程距離の低下を招く。
しかしそもそも行動範囲が限定される屋内での戦闘なら空間を多く占有した物が有利となる。それを示すかの様にファイヤードレイクは鼓動を制限され悔し紛れの射撃を行わざるを獲ない。
攻撃がギガに当たるもゼネバス砲に比べれば豆鉄砲も良い所でダメージは無い。左右にアームを展開しサイクロンドライバーを振るう。
それは飛び退いた彼等を嘲笑うかの様に更に前進し彼等を貫いた…。
あちゃ〜
×鼓動
○行動
ですね。読み直す前に送ってしまいました_| ̄|○
ついでに言わせてもらえば…4本のドリルは細いものです。太いと…大艦巨砲主義も真っ青のとんでも兵器に成ってしまいますので。
表現不足でした…。大きさのイメージ的には全体がマッドサンダーのマグネーザーを一回り太くしたような奴です。はい。
トゥランは笑顔でそう言って、二人と握手を交わした。その後、トゥランにマオは言った。
「少し聞くけど、トゥラン君はどうして強くなろうと思ってるの?」
「それは、死んだお父さんの敵を討つためだよ。お父さんは緑の悪魔って言う緑色のゴジュラスギガ
にやられたって言ってたんだけど、僕はその緑の悪魔っていう緑色のゴジュラスギガをやっつける
ために強くなりたいんだ。今はこの通りまだまだだけど、いつか緑の悪魔を本当に倒せるほど強くなるんだ!!」
「そ…そう…頑張ってね…。」
力強く言うトゥランに対し、マオは苦笑いしながらそう言った。
「あああああ!!言えない!!とても言えないよ!!その緑の悪魔が私だなんて!!!」
マオは心の中でそう叫ぶのだった。そして、トゥランはさらに言った。
「それにしてもお姉ちゃん強いよね。尊敬しちゃう。どうしてそんなに強いの?」
トゥランのその言葉に、マオは空を見上げ、ニッコリと微笑みながら言った。
「でも、私も昔は別に強くなかったよ。トゥラン君くらいの頃は、自分が言うのも何だけど、
どうしようもないくらい弱虫泣き虫で、周りからいじめられてばかりいたもの…。」
「え…。何かの冗談でしょ?」
トゥランは唖然としながらそう言った。そして、マオは首を横に振る。
「いいえ、それは本当の話。でも、私はそんな自分を変えたくて、必死に努力したの…。
その努力があったからこそ今の私がある…。だから、トゥラン君も一生懸命努力すればきっと強くなれるよ。」
「うん!!僕もお姉ちゃんみたいに頑張る!!」
マオの言葉に、トゥランは力強くそう言った。確かに、マオは今でこそ共和国軍のエースであり、
帝国軍から緑の悪魔と恐れられる程の輝かしい立場にあるが、小さい頃は決してそうでは無かった。
力も弱く、足も遅い、勉強もダメ、その上泣き虫と料理以外は何をやってもダメな少女だったのだ。
それが一体どんな努力すればそこまで強くなれるのか?という疑問はさておいて、とにかくマオは
努力によってそれを克服してきたのだ。しかし、そんなマオにとって気にくわないのは、
全く同じ遺伝子を持つはずの双子の姉、ミオは逆に運動も、勉強も何でも天才という天才の
デパート女だったという事である。ただ、料理はマオとは正反対に滅茶苦茶ダメだが。
一卵性で、同じ遺伝子を持つはずの二人がどうしてこうも違うのかは、現代最新科学を持ってしても今なお解明出来てはいない。
「見てよ見てよクーちゃん!!あれこそこの世の神秘!ウェンディーヌだよ!!」
「そんなの見れば分かりますよ。これだから人形は…。」
一方そのころ、帝国軍の方では、ハガネとクライトが町に出ていた。早速ハガネはクライトを連れてウェンディーヌの直ぐそこまで来ていた。
「いいねえ。一体誰が、いつ作ったかも謎で、その内部構造も謎。謎は謎だから面白い。うんうん。超常現象万歳。」
「はあ…こんな物のどこがおもしろいんですかね…。人形の考えることは分かりません…。」
高くそそり立つウェンディーヌの姿を見ながらハガネは感激するが、クライトはそのハガネの姿に半ば呆れていた。
「貴方には何でウェンディーヌのよさが分からないかな〜…。これもちゃんとしたゾイドなのよ。
その上、風力の力だけでこの町一帯の電気を供給出来る。これはある意味神秘とも言えなく無い?」
「そうそう!貴女の言う通り!是非とも研究すべきだわ!」
「え?」
クライトにウェンディーヌの素晴らしさを力説するハガネに突然誰かがそう言ってきた。
突然のその言葉にハガネも一瞬驚いた。と、そこにはウェンディーヌの直ぐ近くまで色々な機材を持ち込んで1人調査にふけるティルの姿があった。
「あ…あんた誰…。」
「ああ、私はゾイテック社のティル=ランゲージと申します。というワケで、調査の途中なので私はこれで…。」
ハガネの言葉にティルはそう言って再び調査を続けるのだった。そして、その姿に二人は唖然とするだけだった。
「まあアレは置いといて、本当に素晴らしいじゃない。ウェンディーヌ!」
「いやあ、私には全然分かりませんね…ん?」
再び力説を続けるハガネに、相変わらずクライトは上を向いて呆れてそう言った。と、そんな時、クライトの目にある物が飛び込んできた。
「な…なんですか…?あれは…。」
「何々?クーちゃん?」
ウェンディーヌの丁度頭の上に、何か人影のような物が見えていたのだった。しかし、
ウェンディーヌは相当に高く、それが一体何なのかよく分からない。早速ハガネは両目の
メインカメラをズームして、ウェンディーヌの頭の上を見ることにした。
「うわ!!ギッちゃんがあんな所で座禅組んでるよ!!」
「ええ!!?ギッちゃんって?まさかギフ曹長が!!?」
二人は思わず驚いた。ウェンディーヌの頭の上には、紛れもなく1人座禅を組んで精神を集中させているギフの姿があった。
「い…一体どうやって登ったんだろ…。」
ハガネは思わずそう呟いた。と、そんな時だった。突然ハガネに何かがぶつかってきたのだった。
「あ!?君?大丈夫?」
まあ、ハガネの体は、装甲に一般的に超重装甲に使用される物と同じ素材で作られているため、
結構小柄に見えてその辺の中型ゾイド以上に重装甲故に、何かがぶつかっても
平気なのであるため、むしろそのぶつかってきた相手を心配していた。
「…………………。」
そこには、小さな女の子の姿があった。しかし、その女の子は全くと言って良いほど無表情で、何も喋ろうとしなかった。
「す…済みません!!これについては私から謝らせて下さい!!」
突然、小さな女の子の後ろから1人のおじさんの姿が現れたのだった。
「あの…この子…普通と何か様子が違うように見えるんですが…。」
相変わらず無表情で、何も喋らないその女の子の姿を見ながら、クライトはそう言った。そして、そのおじさんは暗い顔をした。
「実は…この子…メリムは…ある事が原因で、心を失ってしまったのです…。」
「え?心を失った…?その原因って…?」
おじさんの言葉に、ハガネがそう問いかけた。おじさんはさらに続ける。
「メリムは元々共和国に住んでいました。その時の戦争で両親を目の前で失い、その時の
ショックで…。今は親戚の私が育てていますが、あれ以来ずっとこのままなんです…。」
ハガネは、そのメリムと呼ばれる女の子の顔を見た。メリムは相変わらず無口無表情で、その場にたたずんでいるだけだった。
「本当に心が無いんですか?」
「そうです…だからケガをしても全然痛がらないんです…。」
確かに、メリムの額は恐らく先ほどハガネにぶつかった時に出来たと思われる程、少し赤く
はれていた。それでも、メリムは全然無表情で痛がる不陰気すら無かった。
「このメリムちゃんって子…可愛そう…。よっぽど怖い思いをしたんだね…。この作り物の
冷たい体と冷たい脳を持った私でさえ普通に笑ったり泣いたり出来るのに…、この子は暖かい体と
暖かい脳を持っているのにも関わらず、泣いたり笑ったり出来ない…。それって本当に悲しいじゃない…。」
ハガネはメリムの頭をなでながら悲しげな言葉でそう言った。しかし、メリムは何の反応もしなかった。
「確かに…機械とかなら異常があったら修理すればいいですが、人間の体はそうは行きませんからね特に心の問題は…彼女自身に何とかしてもらうしか無いでしょう…。」
メリムの姿を見ながら、クライトもそう言うのだった。
てぇすと
ファイヤードレイクは力無く倒れると思われたが寄生された表皮を破り本体である寄生コアブロックが飛び出すとそれと同時に破損をしなかったパーツが飛び出す。
「こいつ!?ブロックスだったのか!?」見た目が完全に生物のそれと化していた為に昼間の相手と同様とたかを括っていた為のミスだった。
2体のファイヤードレイクは寄生コアを直列させる…。それを合図にチェンジマイズされた姿は2頭を持つ前肢が地を掴む長さの暴君竜だった。
寄生コアから各パーツを包み込む様に触手が絡みつき更にそれを金属質の表皮が覆う。直に再生再構成を終えたそれは両方の頭部から別々のガスを吹き出すと更に電撃を発しガスを化学反応の火球と化す。
大小様々な火球がギガを襲う。レクスはそれをギガに回避させる…冗談じゃないとレクスは考えていた。
折角新調した装備を早速壊す訳にはいかない。火球自体に大した被害は無いだろうがガスの成分が解らない。その上一部の急激な温度変化は装備に不都合を起こす可能性が非常に高い。
以前操縦練習で同一機との模擬戦闘をし際長期戦になった結果機体関節のパーツが熱で変形してどやされた経験上温度の変化での機械の異常は致命的な結果に為り得る事を学んだ。
その為かそう言った物を異常に意識しているレクス。それを知ってか知らずか火球の攻撃は一定間隔でギガを襲ってくる。
「舐めるな!」下腹部のヘビーマシンガンで火球を撃つ。すると火球は爆散し更に細かい火の玉になってギガを包む。それに乗じて二首のファイヤードレイクは更に火球を放ちギガを火だるまにする。
激しい炎に包まれ焼け落ちるかと思われたギガに止めを刺さんと跳躍して襲い掛かるファイヤードレイク。
「ふざけるな!この程度で沈むかよっ!」その声と共にサイクロンドライバーが急回転を始めるとギガを包む炎は二つの火柱と化しやがて二つの火炎旋風となりファイヤードレイクを天井に叩き付けた。
表皮がこんがりと焼け焦げ落下してくるファイヤードレイクにサイクロンドライバーが深々と突き刺さる…。
「インパクト!」掛け声と共にパイルバンカー機構を作動させ内部を貫通させると更にマグネーザーを起動させ完全にファイヤードレイクを内側から破壊した。
フレキシブルアームを畳み呟く。「これならデスザウラーでも一発だ…。」余りにも破滅的な威力にレクスは驚きを隠せなかった。
一方、マオとラインはどうしていたかと言うと、トゥランの喫茶店を出て、まだ時間に余裕があった為に再びポルトの町めぐりに繰り出していた。
「いや〜それにしてもやっぱり色々な店があるね〜…。」
そうマオが呟いた時だった。突然後ろから声が聞こえてきたのだった。
「あ!!いたいた!!」
「ちょっと待ってくれ!!そこの二人!!」
後ろから二人に向かって走ってきたのは、先ほど取り調べを受けていた変な服の少年、クーゴと豚面の少年、グウだった。
「あんた達だろ?あの時港で緑色の大きいゾイドに乗ってた人と、背中に何かでっかいの背負ってたゾイドに乗ってた人。」
「あのゴジュラスみたいなのと、ライガーゼロみたいなゾイドの事や!!あんた達やろ!!?」
二人は、いきなりマオとラインにそう言うのだった。
「た…確かにそうだけど…。何か用?」
「あんた達に聞きたいことがある。」
「まあ立ち話もなんだから、少し移動しましょうよ…。」
意外とマジな顔で迫ってくるクーゴに気負わされながらマオは、別の場所で本題に入る事にした。
「で、一体何の用なのよ。」
早速近くにあった公園のベンチに座った状態でマオが言った。そして、クーゴはその場に立っている状態で言った。
「あんたが先ほどの怪物を一刀両断した時のアレ…まさか…Ziソウルじゃないのか…?」
「ずぃいそうる?何だそれ!」
「ええ!?」
真面目な顔、真面目な声で言うクーゴの言葉に対するマオの拍子抜けした言葉に、同じくクーゴも
拍子抜けしてしまった。そして、再びクーゴはマオに言った。
「じゃあアンタが使ってたアレは何?」
「あれは気功法だよ。」
「気功法って何?」
「気功法はね…なんつーか…“気”って言う生命エネルギーを具現化して、攻撃に転用する技だよ。と、言うより、そのずぃいそうるって何よ。」
「Ziソウルだ!!その…Ziソウルはオサンゾのじーちゃんが言うには、ゾイドの心の解放。
ゾイドの心と同化することによってゾイドの力を引き出すって奴。」
「何だ、大層な名前の割に大したこと無いのね。」
「大したこと無いとは何だー!!」
マオに煽られてクーゴが切れかかっていた頃、グウはラインと何か話していた。
「で、俺に用か?豚面。」
「豚面言うな!!と…とにかくや…。あんたが乗ってるの…アーマーは違うようやけど、ライガーゼロやろ?」
「確かにそうだが?まあ、本体だけでもノーマル機の30%増しくらいに強化されてるがな。」
「ライガーゼロでは、あの怪物に…。キメラには勝てんで?」
「ハア?何で俺があんなザコにやられなきゃならんのだ?」
「何やて?」
「確かにヤツ群れて出てくるからそう言う点ではやっかいだが、別に実力的には大した事ないぜ。」
「ウソ言うな!!ワイのイクスは以前ヤツらに一撃で真っ二つにされてもーたんやぞ!!」
「何だそりゃ!!というか、何でお前がイクス持ってるんだよ。」
中央大陸の最前線で常に戦っていたラインと東方大陸の田舎からやって来たグウ。お互いのカルチャーギャップに話は全然かみ合っていなかった。
「まあ、お前がイクスを持っていたと認めるとしてだ。お前は一体何体のキメラにやられたんだ?」
「い…一体や…。」
「そりゃお前がカスだって事じゃねーか!!」
「カス言うな!!」
ラインに思い切りバカにされたグウはクーゴの服の襟首を掴んで思い切り引っ張った。
「もうええクーゴ!!こいつらキメラの恐ろしさがわかっとらん!!あんなヤツら死んでしまえばいいんや!!」
二人は去っていった。
「何だったんだろう…。」
「さあ…。」
まったくワケの分からない二人は唖然としながらそう呟くのだった。ただ言えることは、双方の
会話はカルチャーギャップがありすぎて、全然かみ合っていないという事であろうか。
それから、日も落ちた頃、ある一室でそれぞれの隊長であるミオとルーガスが対談し、今後の
予定などを話し合っていた。そして、その部屋のドアの向こう側の廊下では、武装した両軍の兵士が
にらみ合っていた。両軍共に殺気立つその様子はまさに一触即発。直接的には戦わないにしろ、
やはり戦いは始まっているのである。一方、部屋の中では今後の予定が決定されていた。
話がまとまったところで、ルーガスがミオに対して言った。
「ところで、ミオ准将はグリーンデビルの双子の姉だそうですね?」
「確かにそうですが、それがどうしたと言うのですかな?ルーガス少将。」
「そうですか…。」
ルーガスは思い切り深呼吸をした。
「妹さんを僕に下さい!!!!!」
「却下だ――――――!!!」
両者の叫び声が部屋中に響き渡った。
「何でですか〜?」
「何でって…お前は敵軍の将だろうが!!!」
まるで子供みたいに悲しげな顔で問いつめるルーガスにミオが怒り顔で叫ぶ。もうミオは儀礼的な言葉を使っていなかった。
「そ…そうですか…。ダメなんですか…。」
「そうだ。というか、妹も嫌だと思うがな。お前と妹とでどんな関係があるかは知らないが、
昼間のお前を見た時の妹の態度を見ていれば分かる。めっちゃ嫌がっとった。」
「でも、嫌よ嫌よも好きの内って言葉もあるし…。」
「ダメだ。」
「……………。」
何色とも判別しかねる光は無造作に、薙ぐ様に放たれた。
そして、全てが消え去った。
シエルの叫びを嘲笑うかのように、想像を絶するエネルギーが爆発する。
たった一発の砲撃で、残っていた帝国ゾイドは皆跡形も無く消え去るか、良くても戦闘不能に追い込まれた。
シエルもその仲間も、例外なく気を失ったのである。
「…そんな兵器…荷電粒子砲では無かったんだな?」
シエルが黙って頷くと、部屋の反対側にあるソファーで寝かされていたジードが代わって答えた。
「そう、間違いなく違う…恐らくあれも、古代文明の産物なのだろうが…」
その時、部屋にシエルの仲間の一人であるバーシアス=ソードが現れた。
「この件については、専門である私から説明させてもらおうか」
「?博士…専門って…?」
「アイアンコング・エヴィルツォーネは…昔、私が設計した」
後ろに居たリッツが、ひゅうっと息を吸い込んだ。
シエルが、彼女には珍しく瞳に怒りをこめてバーシアスを睨む。
「…どうしてですか、博士…どうして、」
「バーシアス、貴様!!」
シエルが最後まで言い終えぬ内に、イオがバーシアスの胸倉を掴んで壁に叩きつけた。
「貴様はそんな物を作る為に…私達を裏切ったと言うのか!?」
「裏切った…?」
周囲の動揺をよそに、イオはバーシアスを締め上げる。
「あの日…祖国の、ガイロスの為に戦おうと言った私に、お前は何と言ったか覚えているか!?
『自分の、科学者としての意思を貫き通す為に私はゼネバスへ行く』…そう言った!!
そうして私や、多くのガイロス人を裏切ってまで貫いた意志が『ゾイドによる虐殺』か!?」
バーシアスは顔を歪め、イオの手を振り払った。
「裏切ったなどと…イオ、お前こそ何か勘違いしていないか?知らぬ内はヴォルフ=ムーロアの人柄に
惹かれたといって鉄竜騎兵団に手を貸していたくせに、彼らの目的がゼネバスを復活する事と
解った途端お前は反旗を翻した!!裏切ったのはお前の方だ!!…それに、私だってな…」
イオは、嘗ての友の顔が暗く翳ったのを見た。
「私だって…あんな破壊兵器を作るつもりは無かった…たった一機で戦局を左右する様なゾイドなど…」
気まずい沈黙が流れ、イオは部屋から出て行った。
「あ、待てよ!」
ロイが後を追って廊下に出る。イオは突き当たりの壁に凭れ掛っていた。
「イオ…何かあったのは解ったけど、あのおっさんだって自分を吹っ飛ばす様なモン作ろうとは…」
「解っているさ。私だって…」
イオが遠い昔を偲ぶ人の様に、少し悲しげな笑みを浮かべた。
「アイツとは、十代の頃からの親友だった。同じ学校に通い、戦争でも同じ部隊で共に戦った…
まるで、兄弟の様だった。戦後は二人とも科学者となって、科学の為に尽くそうと、そう決めた。
そうする事によって、無駄な戦争を避ける事ができるかも知れないと…戦いで命を落した息子への、
せめてもの償いになればと…」
「結局足止めか…。」気にしていた高温での機体内のダメージは温度よりも混合ガスによる耐久性劣化の方が酷いようだった。
「アーマーイーターといいファイヤードレイクといい何故あんな変異を起こしたんだろうな?寄生体と言う奴はOSでも使っているのだろうか?」
サーベラスは機体ダメージの確認をしぶつぶつ思案し始めた「そうでしょうか?あれはブロックスに寄生したからでは無いでしょうか?」レクスもかしこまった口調で返しながらも考える。
「両方でありますよ…。」突然天井の上から声がしてきて二人は焦る。
「誰だね?階級と所属を言いたまえ!」サーベラスは天井に向かって言い放つと天井から冗談としか思えない程長い答えが返ってきた。
「自分はネオゼネバス帝国新兵器テスト部隊フリッケライドラグーン、第3小隊サードリローダー所属ファイン=アセンブレイス中尉であります。」
「ネオゼネバスだと!?」突然の敵軍の来訪に焦り銃を天井に向ける二人にファインはこう言う「無理でありますよ?見えない所からの射撃なんてそうそう当たる事なんてありません。」
「試してみるか?」レクスは引き金を引く…天井を突き破った弾丸は確かに声のした辺りに吸い込まれるが金属質の物に衝突した音を残すだけだった。
「っ!甲殻皮膚!」銃が効かないとなれば白兵戦が得意でない自身に勝ち目は無い。頼みの綱のギガは1区画先で修理中だ。
「貴様!何しに来た!?」サーベラスはあくまで毅然とファインに対応する…すると「ちょっとすいません…ここは…何処でありますか?」
「…?」×2何を言っているんだこいつは?と彼らが思うのは当然の事だ。ここは共和国がかつての3年間そしてつい最近になるまで場所をしられる事が無かった拠点だ。
ここに居るという事はこの施設の調査に来た筈に違いない…筈。
「おい?お前…本当に帝国軍か?証拠が在るなら見せて観ろっ!」ありったけの気合いを込めてレクスはたんかを切る。「何ですと!?証拠でありますか?それなら…。」
おずおずとドアを開けファインは恥ずかしそうに部屋に入ってくる…。「間違い無い…帝国兵だ。しかもやばそうな甲殻皮膚とそれに負けないぐらい怪態な武器持ってる…。」レクスは頭を抱える。
計算外の結果を悔やんでいるレクスをしり目に「何の御用でしょう?」とあっさり流して接客対応を取るサーベラスだった。
「中佐!何やっているんです!?」レクスは丁寧な接客対応に入ったサーベラスに当然の様に突っ込みを入れるが当然無視される。
「実はさっきまで外で化け物と戦闘していたのでありますが…目算を誤って特攻したら相打ちになってしまったみたいなんであります。」
「みたい?ちょっとおかしいですね?どうして仮定や予測の範囲から状況が脱せ無いのですか?」サーベラスに聞かれファインはこう答える。
「その時にコクピット付近と胴体が生き別れになってここに落ちてきたんでありますよ。お恥ずかしいであります。」
ぽんと手を叩いてから少し間が空いて「落ちて来たって…良く生きていたな貴様。」レクスは言う。「いやぁ〜実はそう思っているのでありますよ。3000mも落ちてきましたからね。」
戦力では勝っていても情報が欲しいファインと情報は持っていても何とか離さず切り抜けたいレクスとサーベラス。相手の思惑が解っている者同士気不味い空気の中あり得ない応対が始まる。
「中佐。お客さんにお茶でもお出ししましょうか?」「う、うんそうだな。中尉?何かのむかね?」「そうでありますねぇ…自白剤入りのコーヒー何てどうでありましょうか?」正気の沙汰とは思えない言葉だ。
「そっそうか。大尉、中尉にコーヒーを…。」「了解しました…。」「済まんが自白剤に持ち合わせが無くてね何か良い物でもあるかね?」持っている筈は無いだろうとサーベラスは尋ねる。
すると…「そうでありますね自白剤は無いでありますが昨日1層の衛生管理区画で睡眠薬なら調達して在りますが不眠症ならお使いになるでありますか?」別の物を所持しいた事に逆にサーベラスは閉口するしか無かった。
「すっ睡眠薬って眠った所を如何するのかね?」声を裏替えらせて聞くサーベラスに「いえ。別に何かする訳では無いでありますよ。」更にこう言う「いやあ実は背中の奴昨日今日成ったものでありますから成型と体力の回復には寝るのが一番だと。」
出されたコーヒーに睡眠薬を混ぜるファイン。それを見て2人は硬直する。「何を固まっているのでありますか?冷めるでありますよ?」そう言いながらコーヒーを飲み始める。
「馬鹿なっ!?敵の真っただ中で睡眠薬入りのコーヒーを涼しい顔して飲んでいるだとぉ〜っ!?」この空気に堪えられなくなったレクスは部屋を飛び出して行った…。
脱落者まずは一人。
レクスの声を聞きつけて共和国の人員が駆け寄ってくる。「おい!何があった?中佐は無事か!?」
その声に「…今の所は。しかし有る意味非常に危険だ!あれ以上部屋に居たら気が狂いそうだ。」レクスは答える。
「一体如何言う…何で中佐は帝国兵とコーヒーを飲んでいるんだ!?」「何だって!?遂に飲まされたのか?」レクスは焦る。
「コーヒー如きで何だよ…何!?睡眠薬?しかも一番効き目の強い奴だって?」整備兵は呆れ返る。
「なっ何呆れているんだ?中佐が!?」レクスは作業に戻ろうとする者を掴んで聞く。
「ああ…あれは中佐の遊びだよ。相手の方も知っていて勝負に乗ったみたいだしな。しかし中佐の勝ちは揺るがないだろう…。」
「如何言う意味だ…。答え如何ではただでは…。」レクスの目は座っている。「ひっだっだからゲームだよゲーム!ああやって睡眠薬を入れたコーヒーを飲み合うんだ。」
当然ルールが解らず回答に成っていない。「もっと教えろ!」
呆れた顔で整備兵は答える「全く…近頃の奴は遊びって物を知らない。いいか?あのコーヒーの中には睡眠薬と効果を抑制する薬が入っている。」
一度言葉を切り続きを始める「更にだ。中に何方を入れるかは本人次第だ。当然睡眠薬入りに更に睡眠薬を入れれば眠りやすくなる。これで大方の意味は分かるな?」
念を入れてレクスに言う。レクスは「要するにチキンレース見たいな物か…。」「そうだ。しかも相手に見られていなければ相手に薬を盛ることも出来る。」
それを聞きレクスは「実力次第では相手を一発で沈める事も出来るって訳か…。」「その通りだ。元々は諜報部の潜入調査員の訓練だったって話だ。今やゲームだがな。」
「ちょっと待て!じゃあ中佐は…?」その声に「ああ…ああ見えてもザクサル=ベイナードの影に隠れては居るが凄腕の諜報員だったんだよ。」
彼の言う通りに運びはしたが身体能力も勝敗を握るこのゲームはぎりぎりの所でまだ決着は着いていなかった。
「ファイン中尉…中々やるね。」参ったという顔でサーベラスは言う。外の会話の間に2人は5杯以上コーヒーを飲んでいる。
「ふあぁ。そちらこそ骨砕きのサーベラスの異名は伊達ではないようでありますね。」あくびをしながらファインも答える。
「!知っていたのか!?道理で…こんな真似をすると思ったら。」サーベラスの声はファインに届いていなかった。
数字入れ替えてなかった_| ̄|○
話の腰を折るのに失敗してもっと後に遭遇させようとした人達を遭せてしまいました…。しかもパクリ過剰の〇のゲームまででる始末。
閻魔の策動の作者さんへ
上手い事彼等が話に溶け込んでいますね。アニメ等の様に動画であったキャラ等だと上手く行かない事も有るのですが。
オサンゾの設定を有効に使えているのであのスーパーキメラ共を大した問題も無く登場させていてうわぁぁぁと思いました。
ミオのガードは予想外に堅く、それはルーガスも驚くほどの物であった。そして、ミオはさらに言った。
「第一…そんな事したら殺されるのは目に見えている。何か、帝国から滅茶苦茶恨み買ってるみたいだからな…妹は…。」
「だからそれをこの少将である私の力で何とかしようと…。」
「ダメだ。」
「……………。」
再び有無を言わせず却下されてしまった。
「じゃあ…直接会って話がしたいんだけど…それもダメかな?」
「それだけなら…まあいいだろう…。ただ…変なことするなよ!」
「ええ!!いいんですか!!?」
ミオの了解を得た時のルーガスは、普段のクールかつ冷静な顔とは打って代わって、いかにも
嬉しそうな顔をしていた。それだけマオの事が好きなのであろうか。
「少し待ってな。妹を呼んでくる。」
「ハイハイ待ちます!いくらでも待ってあげます!」
部屋から出る際に言った、ミオの言葉に対し、ルーガスはそう言う。その時のルーガス本当に嬉しそうな顔をしていた。
「ええ!!私が!!?嫌ですよ!!」
「嫌という気持ちはわかるが行ってくれないか。そうせんとアイツ何しでかすかわからんぞ。」
「で…でも…。」
ミオはマオにルーガスの所へ行くように言ったが、当然マオは嫌がるのであった。
「なら言うが妹よ、このままヤツの所へ行って話をするのと、このまま行かずにアイツを
トチ狂わせて、そのトチ狂ったアイツに夜這い掛けられるのと…どっちが良い?」
ミオがそう言った直後、マオは途端に青ざめた。
「い…行ってきます…。」
マオは急いでその部屋へと向かった。
「やあ!待っていたよマイハニー!」
「マイハニーはやめろ!!!!気持ち悪い!!!」
部屋に入室した直後に飛んできたルーガスのなれなれしい言葉にマオは腹が立ってそう叫んだ。
そして、マオはその部屋の真ん中に置かれていた、イスに、ルーガスと向かい合ってすわった。
「で、一体何の用なのよ。」
「いやね、私もそろそろ結婚しようと思ったりするわけだよ。」
「だからそれが私と何の関係が?」
ミオ相手の時とは打って代わっていつもの冷静な顔に戻ったルーガスは、不敵な笑顔を浮かべるが、マオは相変わらず怒った顔であった。
「君も鈍いねえ〜…この私の結婚相手として似合う女性と言ったら君しかいないじゃないか〜。」
「ふざけんな!!!第一あんたは敵軍の将でしょうが!!!というかアンタ何歳よ!!!」
「今年で35歳になる。」
「あんたね―――――!!!!言っておくけど私は18!!そう言うのを世間はロリコンって言うのよ!!」
ルーガスの不敵な言葉にマオは思いきり叫んだ。しかし、ルーガスは顔色1つ変えずに言葉を続ける。
まあとにかく、ルーガスはなおも顔色1つ変えずに言葉を続けた。
「あのヘリック二世も、80歳の時に自分より遥かに年下の女性と結婚してるんだよ。それに比べれば…。」
「良くない!!!というか年齢とか言う以前にアンタ自体が嫌い!!」
結局ルーガスに返ってくるマオの言葉はそれだった。確かに惑星Zi人の寿命は地球人に比べて長く、
当然老化の速度も遅い。ルーガスが35歳と言っても、外見上は地球人で言う20代前半と
そんなに変わらないし、あの80歳で結婚したヘリック二世も、数々の書籍を見る限りは、それほど歳を取っている様には見えなかったりする。
「そんなに怒りなさんな。美人が台無しだよマイハニー。」
「あんたのそう言う言い方がムカツクんだよ!!!!」
ルーガスの言葉に、マオはますます怒った。しかし、ルーガスは顔色1つ変えずに言う。
「別に良いじゃないか。この私と結婚して少将婦人になれば、今よりも遥かに良い生活が
出来るんだよ。それに、今まで帝国にしてきた仕打ちに関しても、この私の力で帳消しにするから。」
「まっぴらゴメン!!私はあんた何か嫌いだし!!興味もない!!それに、仲間を裏切るつもりなんて無いから!!」
「嫌よ嫌よも好きの内ってね。」
「ふざけんな――――――!!!!」
マオは思いきりルーガスのペースに乗せられていた。これがミオとの実力の違いか?そして、今度はマオが口を開いた。
「第一何であんたは私にこだわるワケよ!!他にいい女なら沢山いるでしょうが!!」
「フ…決まっているじゃないか…。君が唯一私の思い通りにならなかった女性だからだよ。」
「え?」
「私は、今まで全てを思い通りに出来てきた。地位も、権力も、金も、女も全てだ。生まれも育ちも
貧乏な平民でありながら、実力だけを武器に、この若さで少将になることも出来た。それだけでなく、
皆からの厚い信頼も得ているし、次代の後継者の1人とも目されている。当然なぜか生まれた頃から
女性にも持て続けている。それは数々の貴族の娘が私とのお見合いを申し込んでくるほどだ。
だが、そんな私の唯一思い通りにならない人間が現れた。それが君だ!それまで、ことごとく
作戦を成功させてきた私の戦術を、君はことごとく打ち破ってきた。今までどんな女性もイチコロ
だった私の誘いにも乗らなかった。ゾイド乗りとしても、唯一私を破った人間だった。
その上強く、美しく、優しい!!それに、諜報員の報告によれば君の料理の腕は超絶品という話で
はないか!!だからこそ君が欲しい!!君が欲しいんだよ!!!確かに、私は君の為に一度は
共和国への亡命も考えたほどだ。しかし、私は帝国の少将。そんな事をするわけにはいかない。
だからこそ、君に我が帝国に来て欲しい!!来てくれれば生活の保障もする!!なあ!!いいだろう!?」
「嫌。」
「……………。」
>>恐怖の亀裂作者さん
自分はやはり塩崎ゾイドの
「人工ゾイド(ブロックスなど)>ナチュラルゾイド(今勝手に名づけた。通常機や野生体機など。)」
という設定に気に食わなかった人間なので、こういう話はいずれやってみたかった物なのです。
塩崎ゾイドそのものが批判的な声が多いだけに多少いじくっても批判の声は無いだろうとも考えましたし。
「…しかし、アイツは私や他の研究員仲間も裏切ってムーロアの小僧に付いていった…
それがあいつ自身の意思であるならと、私はその時止めなかった。
…私があの時、無理矢理にでもあいつを止めていれば……!!」
これまであまり語られる事の無かったイオの過去を、ロイは初めて知った。
「こんな形で再会して、『久し振り』などと笑って言える筈は無い…あの運命の日に帰る事ができたら…
だが、それも過去の事…私は、もう戻れないんだ」
これまで老練な科学者と言うイメージが強かっただけに、こうして感情を見せたイオは
その姿に若き日の面影を被らせていた様にも見える。
もうとっくに日が落ち、夜の静かな廊下に沈黙が流れる。
やがて、ロイが静かに口を開いた。
「…嫌な事があれば、誰だってそう思う。だけど、大事な事は過去を悔やむ事じゃない。
言うほど簡単じゃないけど…今どうするべきか、だと思う」
幼稚な意見、と笑う者が居るかも知れない。だが、少なくとも今のイオにはこの言葉で充分だった。
「…済まない」
ぼそりと礼を言うと、イオは元来た廊下を走っていった。
「全く、世話が焼けるぜ」
沈んでしまった気分を戻そうとする様に、ロイは格納庫へ向かった。
愛機の前で足を止め、その機体を見上げる。
「エンバーが言っていた…『ZOS』…一体、お前は何処から来て、何処へ行くんだ?」
まだ隠された力があるのなら、それを引き出したい。ゾイドの力を最大限に活かしてやりたい。
奇しくも、数年前のアーサー=ボーグマンと同じ心境であった。
ロイの助けもあって、イオはバーシアスと和解した。
それは、長い時間と距離を隔てた親友の、本当の意味での再会でもあった。
「それで…あの化物に一体どんな秘密があるって言うんだ?」
「アイアンコング・エヴィルツォーネは…最強の装甲と究極の武装を与えられたゾイド。
そして今回使われた兵器が、遺跡のコンピュータに残ったデータから作られた兵器…
…私が作ったのだ。あの『陽電子砲』を…」
聞いた事の無い兵器に、戸惑う一同。
「陽電子砲は、-と+の電子が反応して発生させる膨大なエネルギーを利用した兵器…
破壊力に関して言うならば、荷電粒子砲の比ではない」
イオとシエルには何とか理解できたようだが、後の者達は揃って「さっぱりだ」と言った顔をしたので
バーシアスはそれ以上の説明を断念した。
「だが、私が軍から抜けた時にはあれは完成していなかった…誰か、私に代わる者が現れたとしか
考えられん。しかしそんな技術力を持つ者となると、そうは居ない筈だが…」
その頃、アルティシアが指揮を執っていた司令室で、突如味方と通信していたモニターにノイズが入った。
「何だ!?」
「ジャミングされています!!…で、電波干渉!?回線に何者かが…」
モニターに、見知らぬ男の顔が映し出された。
奇妙だ。歳は若い様に見えるが、その実結構な歳である事が解る。
<何を渋っている…せっかく私のエヴィルツォーネが道を開けてやったのだ、早く来い>
ピリピリと、風邪をひいた人のような声でその男が喋る。どうやら地声らしい。
「そんな事言ってもねぇ…あなたが誰で敵か味方かも解らないのに素直に行けると思う?」
アルティシアが慎重に応対する。男は笑い出した。
<クッフッフッフ…私にお前らを騙す意思など無い。ただ、『真実』を伝えたかっただけの事…>
>>閻魔の策動作者氏
塩ゾイドの異常設定をこうも簡単にストーリーに組み込むとは…流石ですね。
自分も似たようなモンで、陽電子砲は某アニメでただの粒子砲扱いだったのが
腑に落ちず本来の使用法を設定させて頂いたまで…
KGのSSBに匹敵する破壊力だと丁度良かったのですがね。無理ですかそうですか(落ち
ルーガスは、どれだけ自分がマオの事を愛しているかを力説するも、マオの一言で一発逆転されてしまった。
「まあいい、ならばこれを見てくれ。」
ルーガスは再起を掛けてある物を取りだした。
「今まで諜報員に取ってこさせた君の写真だ。」
「うあ!!」
何と、ルーガスの手には、マオを写した写真が山のように積み上げられていたのだ。そして、さらにルーガスは何かを出した。
「そして、これが私自らがCG技術をフルに活用して作った君のポスター。さらに…。」
「今度は何を取り出す気よ…。もう気味悪くて吐き気が来そうよ…。」
ルーガスが最後に取りだした物は、マオを唖然とさせる物だった。
「私が謹慎中にこの手で作った、君の6分の1フィギアだ。」
「…………………。」
その6分の1サイズのマオ=スタンティレルフィギアはよく出来ていたのだが、マオは開いた口が塞がらなかった。
「この通り!!私は君を愛しているんだ!!わかるかな!!?」
「わかんないわよ!!!第一あんたのやってる事って!!変態とかわんないわよ!!!!」
ルーガスがやったことはさらにマオを怒らせる結果となった。
「はっはっは!手厳しいな〜子猫ちゃん。ちなみに、君の名前のマオという言葉は、地球の中国という国の言葉では、“猫”という意味なんだよね。」
「それがどうした。」
逆転の逆転を狙い、顔色1つ変えずにルーガスは再び言うも、再びマオの一言で撃墜されてしまうのだった。
「ねえ…そんなに嫌かい?」
「嫌…。」
ルーガスがマオに何を言っても、マオの返答は嫌という言葉のみだった。マオは帝国に行く気など
さらさら無いのである。ルーガスがシュンと縮まろうとしたそんな時、彼ははっとなった。そして、再びマオに言った。
「これだけ言っても嫌嫌嫌…まさか君…好きな人がいるんじゃないだろうね…。」
「そ…そんなワケないでしょ!!私は1人よ!!」
抑揚もなく言うルーガスの言葉に、マオは慌ててそう言った。その時のマオの顔は赤くなっていた。
「怪しいな…顔が赤くなっているという点で怪しい…。まさか…そのお相手はあのラインという男じゃないだろうね…。」
「だからそんな関係じゃないって言ってるでしょ!!!」
「そんな反応するところを見るとますます怪しい…。あ〜あ〜いいのかな〜…殺し屋雇っちゃおうかな〜…。」
「お願いだからそれはやめて!!!!」
再び自分のペースに持ち込む事に成功したルーガスに対し、マオは思いきりそう叫んだ。その時のマオの表情は怒っている反面、どこか悲しげだった。
「君…あんな右目に縦傷入ってる男のどこがいいのかな?この私の方が遥かにいいのに…。」
ルーガスはそう言いながら、その場から突然立ち上がり、マオに迫ってきたのだった。
「な…何…何…?」
「あまりやりたくなかったけど…少し実力行使に入ってしまおうかな〜…。」
戸惑うマオを尻目に、ルーガスは怪しい微笑みを浮かべながら、なおもマオに近づいてくるのだった。
「フフフフフ…ハハハハハ…。」
「キャア!!気持ち悪い!!」
なおも怪しい笑顔を振りまいて近づいてくるルーガスに、思わずマオは突きを入れた。が…その突きは昼間同様片手で受け止められた。
「悪いけど…私を甘く見てもらっては困るね…。」
「わ…わ…何す…キャ―――――――――――――――――――!!!!!」
何と、ルーガスはそのままマオを押し倒してしまったのだった。
「キャ―――――!!キャ―――――!!嫌――――――!!変なところ触るな――――!!」
マオは必死に抵抗するがルーガスの力はマオの予想を遥かに上回って強く、全くと言っていい程歯が立たない。
「フッフッフ…もう抵抗するのはよすんだマイハニー…。この私の子供の母親になっておくれ…。」
「誰があんたなんかと!!!!嫌―――――!!」
そして、ルーガスは嫌がるマオを尻目に、ここではとても言えぬあんな事やこんな事を…。
…という物語が彼の脳内で展開されていた。ちなみに、現在は丁度マオがおねがいだからやめてと叫んだ所である。
「あんた何ヘラヘラ笑ってるのよ!!気持ち悪い!!もう私は行くからね!!!もう二度と私の前に現れないで!!!」
ルーガスに呆れたマオは怒って出ていってしまった。
「ああ!!待って…。マイハ…。」
まだ話したいことが沢山あったルーガスはマオが出ていったドアを見つめ、そのまま頭をガクっと下げ、そのまま固まるだけだった。
第3章:作戦開始
「あ〜…昨晩は大変な目にあったわ〜…。」
翌日、ホバーカーゴ2番艦の食堂で納豆ご飯を食べていたマオは思わずそう呟くのだった。
「中尉…昨日なんかあったんですか?」
「あんまり言いたくない…というか言う気力もないわね…。」
「そうっすか…。ならもう聞かないでおきます…。」
ラインは心配して何があったのかマオに話しかけるが、マオの返答から、もう聞かないで置くことにした。
それから一時後、共和国兵士全員はミオに呼び出され、ホバーカーゴに外に整列した。
「これから今日の予定を説明する!!」
18とはとても思えぬほどに威厳あふれるミオの言葉に全員が緊張した。
「これより、部隊を2つに分ける!!ホバーカーゴ1番艦はここで待機して正体不明機の攻撃に備え、
2番艦はここより南にあるオラップ島へと向かう。」
そう言った時、1人の兵士が手を挙げた。その事に気付いたミオは直ぐさまその兵士を指さす。そして兵士は言った。
「何故そのオラップ島という島へ行くのでありますか?」
「それについては、この町の自警団と話をした結果、正体不明機が飛んでくる方向に、丁度あの島がある事がわかった。故に調査の必要があるのだ。」
ミオがそう言った直後、兵士達は一斉に南の方向を見た。そこには一面に広大な海が広がり、
水平線の先を見ても島の影はなかったが、さらにその先にそのオラップ島という島がある事を考えると、思わず緊張するのであった。
「それでは!!2番艦は任せたぞ!!マオ中尉!!」
「ええ!!?私ですか!!!?」
思い切り白羽の矢を立てられたマオは思わずそう叫ぶのだった。
マオ率いるホバーカーゴ2番艦隊は、準備が完了した後、早速南のオラップ島へ行くことになった。
また、ホバーカーゴ2番艦には、道案内も兼ねて、この辺りの地理に詳しい自警団員が何人か同乗していた。
「うっわ〜…責任重大だよ〜…。」
ホバーカーゴを一隻任されてしまったマオは頭を抱えてそう呟いていた。確かにマオは戦士としては
優秀な部類にはいるが、指揮官としてはそれほどというレベルなのである。数人規模の小隊とかなら
まだしも、一個中隊レベルの規模の部隊の指揮を行うのはマオには荷が重い感じだった。
その頃、帝国軍はというと、同じようにルーガスが部隊を整列させていた。
「え〜…これより…部隊を…二つに…分けて…片方が町の護衛…もう片方が…南の…オラップ島…に…向かう…。」
兵士達に説明をするルーガスは気力が抜けたような感じだった。全身がプルプル震えていて今にも
倒れ込んでしまいそうな程であり、顔もゲッソリとしており、目の下にもクマが出来ていた。
「少将…元気ありませんね…。」
「そりゃそうさ…昨日思いっきりマオちゃんに振られちゃったからね。ルーちゃん。」
「ハア?」
ルーガスの姿を見ながら、クライトとハガネはそのようなことを小声で会話していた。
「じゃ…じゃあ…チーム分けは…好きにやって…。私の話は…以上…。」
ルーガスはそう言うと、ガクガクと今にも倒れ込んでしまいそうな程ぎこちない歩き方で、下がっていった。そして、部屋の外へと通じるドアを開け、そのドアの向こうへと出ていった。と、その直後だった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!マイハァァァニィィィィィィ!!!!」
ずげげげげげ!!!!
部屋の外から聞こえてきた地の底から響いてきそうなそのルーガスの叫び声に全員が思わずすっころぶのであった。
その後、帝国軍も部隊の半分をポルトへと残し、ハガネ、クライト、ギフ率いる残り半分が
ドラグーンネストでオラップ島を目指すのであった。
共和国軍と帝国軍が共に南下し始めていた頃、ポルトのはずれの森で野営していたクーゴ達4人もそのオラップ島を目指していた。
「今まで調べた情報によると、あの南にある島にオラップ島に“あいつ”がいるらしい。」
「ああ、だからおいら達がわざわざ海を渡って中央大陸までやってきたんだ。今度こそあいつの野望を打ち破ってみせるぜ!!!」
準備を終え、4人がそれぞれのゾイドに乗り込んだ後、カノンダイバーに乗る眼鏡の少年、パッカーの言葉にクーゴがそう叫んだ。
共和国軍。帝国軍。そして東方大陸からやって来た謎の少年少女4人のそれぞれ、3つの勢力が
オラップ島を目指していたのだが、それらを海中の深くから監視する怪しい影があった。
しかし、監視されている者達の中には、その怪しい影に気付く者は誰もいなかった。
「“やつら”はともかくとして…面白いおまけが2つ付いてきた物だな〜…。少し遊んでやるか…。」
その3勢力を監視していた何から、送られた映像を何処かから見つめる黒い影が、そう呟いた。
その黒い影に包まれた謎の男の後ろには、巨大な培養カプセルの様な物があり、何かがうごめいていた。
「それにしても平和だね〜…。」
ホバーカーゴ2番艦のブリッジに立っているマオが、青い空と海、そして空を飛ぶ野生鳥類型ゾイド、海を泳ぐ野生海洋生物型ゾイドを眺めながらそう呟いた。
「それにしてもティルさん、付いてきて大丈夫ですか?危ないかも知れませんよ。」
「心配しないで下さい!!覚悟は出来ていますから。というより、あの未確認ブロックスゾイドについて興味ありありです!!」
心配そうな表情で言うミルトに、ティル力強くそう言った。彼女の中では、恐怖よりも、今まで
見たこともないゾイドに対する研究意欲の方が遥かに強い物があった。
「あ!!あれです皆さん!!あれがオラップ島です!!」
道案内のためにホバーカーゴ2番艦に同乗していたポルト自警団員の1人が、ブリッジ正面を
指さしてそう叫んだ。確かに彼が指さす方向には、かすかに島のような物が見えた。
「近辺に何か反応は?」
「後方から帝国のドラグーンネストが進行していますが、他には何の反応もありません。」
マオの言葉に、レーダーを担当していた観測員がそう言った。
「んじゃあ、早速上陸の準備をしましょう!!あと、自警団員の人、道案内よろしくね。」
マオはそう言って、自警団員に優しくウィンクした。
そして、ホバーカーゴ2番艦は徐々にオラップ島へと接近していった。最初はかすかにしか
見えなかったオラップ島も、近づくにしたがって島の形などが鮮明に見えてきた。
その島の形は割と木々も少なく、砂漠や岩山などが多く見られるなど、本当に島か?と疑いたくなるような不思議な島だった。
「んじゃ!上陸開始しますかね。あの浜辺なんか上陸しやすくて良いと思うよ。」
マオがそう言い、早速ホバーカーゴ2番艦は近辺にあった浜辺から上陸した。
「それじゃあ調査開始と行きましょうか?」
上陸したホバーカーゴ2番艦から各ゾイドが出撃し、同じく出撃していたカンウの中でマオがそう言った。
そして、ここでさらに島を調査する部隊と、ホバーカーゴ2番艦を護衛する部隊の2つに分けた。
前者はマオとライン、そして他には、名も無き兵士達の乗るアロザウラー、ディスペロウ、
レオゲーター、ディメトロプテラ等や、道案内に付いてきたポルト自警団員の1人が乗るゴドス、
そして無理矢理付いてきたティルによって構成され、後者は残るメンバーで構成されることになった。
「それじゃあ行ってきます。ホバーカーゴの護衛よろしく!」
「頑張って下さいね。」
島の奥へと進んでいく調査部隊に対し、ホバーカーゴに残った他のメンバーは手を振って送った。
調査部隊は島の奥へ奥へと進んでいった。部隊の先頭にはカンウが、最後尾にはジェネラルが進み、
中心にはディメトロドンモードのディメトロプテラが策敵しながら進行し、同じく中心の中でも、
その前の方には、道案内を兼ねた自警団員の乗るゴドスがいた。そして、その周囲には
アロザウラーやディスペロウ、ライガーモードのレオゲーターがディメトロプテラを護衛するように歩いていた。
モニターに映った男の前に、何かのマップが映し出された。
<第2防衛線の後ろ、山岳地帯に地下通路がある…お前らだけで、来い。入り口は爆破する>
言っている事だけ聞けば、罠だ。逃げ道を塞ぐと言っているのだから。
だが、逆に言えばわざわざそんな事を敵に教える者は居ない。
「…その地下通路は、何処に繋がっている?」
アルティシアが推し量るような目でモニターの男を見つめるが、相手は一向に動じない。
<無論、旧首都だ…そこの、武器開発局地下に繋がっている。来ればいい物を見せてやるぞ…>
確かに、マップを見ればその通路は旧首都に続いている。だが、ホバーカーゴ一機で来いと言うのが解せない。
――一体、この男は自分達に何をさせたいのだろう――?
「その話、信ずる証拠は?我々がそうする意味があるのか?」
アルティシアの問い掛けに、画面の向こうの男は椅子から転げ落ちんばかりに擦れた声で笑った。
<証拠?意味?…笑わせるな、どの道お前達に選択肢など無い。もし要求を拒めば、私のエヴィルツォーネが
引き返してお前達を殲滅する。後ろの連中諸共な…>
「それならそうと、初めから言って欲しい物ね…」
溜め息をつくアルティシアに、操舵士が訊いた。
「…それで隊長、如何なさるつもりで?」
「選択肢が1つなら、それに従う他無いでしょう…そのエヴィル何とかが一機で共和国軍潰せるとは
思わないけど、できるだけ被害は出したくないしね…」
それはつまり、この男の要求を呑む――そう言う事だった。
<ククク…では、局で待っている…>
男の含み笑いを最後に通信が途絶え、味方との回線が回復した。
「しかし何でこいつはそんな事を知っていたのですか?」レクスは敵陣の中で気持ちよさそうに寝ている男を見ながら言う。
サーベラスは少し考えていたがやがて何かを思い出したようだ。
「そう言えば西方大陸での戦役で我が軍がニクシーに進撃していた頃デススティンガーの暴走事件が在ったろ?」
「はい。」レクスは答える。「その時に確か機体にも乗らずにレッドラストの南西部を歩いて居たボロボロのガイロス帝国兵を捕虜として保護したと言う話が有る。」
「じゃあ…こいつは…。」その男をもう一度見る「そうだ。確かに記録にある名を名乗ったし今データベースと照合したが間違い無いそうだ。」サーベラスは一息つく。
「しかし説明には成っていませんよ?」当たり前だ。「ここからは予測の域を出ないがこちらに搬送したと言う記録があるからその時に何処かで情報を手に入れたのだろう。」
不確定要素が拭いきれずレクスはそれが本当の事かどうかを判断しかねているのはしょうがない事だった。
レクスはその後の幾つかの予測に疑問を持つ。何故”両方”と断言したのか?ゾイドも無しに如何やってここに居るのか?落ちてきたとは言うがコクピットは何処にいったのか?
如何でも良い物も含めてはいるがとても気になる。起こそうにも起きないそれを見ながら考える。「済まんな。盛りすぎたようだ。」流石にそのまま死んでもらっても寝覚めが悪いと中和剤を注射しては見たが起きる気配は無い。
「そうだな…部屋を出よう。」サーベラスはレクスを連れ立って部屋を出る。「どうしてですか?そんな物を持って…。」その問いに「年甲斐も無くこう言う物には目がなくてな。」
その手はフレキシブルウェポンドライバーのグリップをしっかり握り肩に担ぎながら外に出て来たのだった。
「何だそりゃ?」物珍しそうにフレキシブルウェポンドライバーを見て整備兵が言う。「ああこれは彼の持ち物だ。しかし素晴らしい!このスペースに複数の火器を納めている。」
どうやら簡単に操作を出来る所は武器などを現地調達するのがセオリーの一つに成っている潜入作戦を行ってきただけはある。
「しかし…驚いたな。このサイズで対ゾイド用のミサイルとロケットまで在るとは…扱いが難しそうだが一般化すれば歩兵の戦力増強や生還率の向上にもなるな。」
取って置きの自走機能を見ての感想だった…。
良く見るとフレキシブルウェポンドライバーには傷が付いて居る。「どうやらここに来るまでに一発やらかしたみたいだな…何処でやりあったか解るか?」
まじめな顔でサーベラスは監視をしている人員に確認を急ぐ。「ちょっと待って下さい…第4エリアの53番カメラに映像があります!」「そうか!直に第4エリアを塞げ!人員用通路から奴等に入られたら危険だ!」
「了解しました!隣接エリアにスレイプニルVを配備します。」「宜しく頼むスレイプニルVのカメラの映像も記録しておいてくれ。」そう言うと53番カメラの映像を見る。
ー約30分前ー
クリフハンガーと戦闘をするファインの映像が写っていたがもう終了間際で布刃の一撃で最後のクリフハンガーの首を撥ねているところだった…。
ー約1時間前ー
クリフハンガーのみがその場を右往左往している。どうやらまだファインは居ないらしい。
ー約45分前ー
クリフハンガーの動きが慌ただしくなっている。どうやらここからが本番というところだったらしい。
戦闘は最初の内は手の内の読めないファインの劣勢だったが程無くしてクリフハンガーの特徴を理解したらしく排除にはいっている。
キャットウォークを利用し左右から挟み撃ちを仕掛けさせた所を順次蹴り落としたり腕を切り飛ばしたりしている。
「…弾を惜しんでの戦闘か。しかし一発も発砲しないとはな。通りで私達が気付かなかった訳だ。」あれだけの事をしてのける身のこなしなら部屋の上に音も無く忍び寄るのも可能だろう。
しかしその結果は面倒な事を起こした。と言う事である。銃声の一発でもあれば化け物の侵入を察知する事はできた筈である。
レクスは何時の間にか重火器を一杯担いで辺りをきょろきょろしている。「大尉!自ら瓦礫の山で生き埋めになるつもりか!」
瘤を作りながらもレクスはやはり白兵戦は怖い様で物音がする方に銃を構える事を止めない。「くっ来るなら来い…撃ち殺したる…。」声は震え目は泳いでいる。
「大尉は役に立ちそうもないな…如何やって兵員に慣れたのやら?」愛用のライフルを握りスレイプニルVの取り零しを撃たんと気を張る。
「中佐!右方向から3体来ます!腕は無い様ですが気を付けてください!」通信が入る。「了解した!君達は監視を続けるんだ!避難し遅れた者は居ないかも教えてくれ!」
程無くクリフハンガーが現れる。問題無くライフルで2体仕留める。残りの1体は運悪くレクスの視界に入ってしまい蜂の巣にされた。
「無駄遣いは止めようね…レクス大尉?」そのサーベラスの声はレクスの耳に届いていなかった。
「左300に逃げ遅れた整備兵が居ます!」距離が遠すぎる。「スレイプニルUを回せ!私が行く!」スレイプニルUに飛び乗りサーベラスは整備兵を救出に向かう。
必死に逃げてはいるがクリフハンガーとは歩幅の差が致命的でもう間に合わないかと言うところだった。「私の目の黒い内はやらせはせん!」スレイプニルUでクリフハンガーを撥ねる。
倒れた相手に止めを刺し元の場所に戻る。レクスは大量に在った弾薬の半分を使い切る大盤振る舞いで十数体を仕留めては居たがもうそろそろ限界だろう。
「大尉!彼を連れて避難するんだ!」「りょっ了解しました。しかし奴は放って置いて良いんですか?」先程まで居た部屋を指差す。
「大丈夫だ。ああ言って外に出てきたが奴は狸寝入りだろう。直に解る。」案の定部屋に飛び込んだクリフハンガーは次の瞬間真っ二つになって床に落ちてきた。
「お人が悪いでありますね。中和剤の量が違えばああなっていたのは此方でありますよ…。」蒼い顔をしてファインは呟く。「状況は如何在れ君の責任だ。付き合ってもらうよ。」サーベラスは笑う。
「終わった終わった…随分早く片付いたものだ。」悪臭が立ち込める中サーベラスは周りを見回す。その大半はライフルを持っていたサーベラスの物だが約1/8はファインの物である。
一番大きな固体にはライフルの弾の跡と火傷の跡、それに胴体を貫通している人の腕程の穴が有った。
右腕を過剰に振りクリフハンガーの体液を振り払っているファインにサーベラスは言う「”両方”とは如何言う事だね?」
その問いにこう答えるファイン「それは其方が知っている事では無いのでありますか!?」その声には驚きが込められたイントネーションだった。
「しかし驚いたものだ。右腕にそれが有るとは思いもしなかった。」ファインの右手に光るレンズに目を向けるサーベラス「ついでに言うなら火加減はウェルダンでやって欲しかったな。」
悪臭の原因は電圧不足でクリフハンガーに右手を打ち込んだ為である。生焼けに成ってしまったらしい…仕留めはしたが調理?には失敗してしまったようだった。
「見ての通りここは陸の孤島だ。しかも水没?までしている。」無茶な例えだが正にその状況だった。
「しかももう安全では無い。今日の一連の出来事で監視網は半壊。安全区域は調査しないと不明だ。」厳しい顔でサーベラスは言う。
「止めは君の来訪だ。誰か居るとは思いもしなかったのだろうが奴等の侵入に気付くのが遅れたのは言うまでも無い…。」そこまで言うと突然上目使いになる。
「そこで君の出番という事だ。機械にも詳しそうだから第5エリアの配電室に行って落ちてしまっている電源を入れて来て貰いたい。」
「なんで…断れなかったのでありましょうか?」
返してもらったフレキシブルウェポンドライバーを抱えてとぼとぼと歩いて居るファイン。どうやら上手い事言い包められてしまったようだ。
まあ2時間も休ませてもらった事でもあるしなけなしの弾薬まで受け取ってしまっている以上契約成立だ。途中何度かクリフハンガーと遭遇するが1体づつなら負ける筈も無い。
背中に有る甲殻皮膚は正に鉄壁の壁であり攻撃を受けてから反撃できる余裕は相手の力量の低さから面白い様に一撃必殺ができる。
しかし配電室に向かうにしたがって嫌な予感は略的中と行って良い物になる。
「これはまた…うねうねと一杯居るみたいでありますねぇ〜。」唖然として見上げる天井には渦虫方の化け物がうじゃうじゃ居たのである。
勿論彼を見付けたので一斉に落ちてくる。「ひいいいぃぃぃぃ〜〜〜。気持ち悪いでありますよぉ〜〜。」一目散に逃げ帰るファインだった…。
「何?火炎放射器は無いかだって!?」息も絶え絶えのファインの言葉にサーベラスは急いで火炎放射器を掻き集めるように命令する。
「渦虫の化け物が追ってくる?」ファインは一つ隣の道を必死に逃げるがそれを猛スピードで追う化け物の群れに監視していたものは吐き気を感じる程だった。
「奴にスレイプニルUを渡してやれ。流石にこの後の展開を考えると一生夢に出て来そうだ…。」ここまで気味の悪い光景を見せられその後の展開を考えると眠る事が出来無くなる可能性すら有る。
スレイプニルUに何とか乗り込み難を逃れるファインを見てサーベラスは命令する「一匹残らず灰にしてしまえ!一匹でも残ればまた増えるぞ!」
悪臭が更に立ち込める中全てを焼き尽くして電源を入れ直すのには30分の経過が必要になったのであった…。
情報が聞き出せないまま良い様にお使いをさせられているファイン。
その頃キメラゴジュラスの頭部周辺はある所に居た…。
目の前にはボロボロになったディープフィアーが息も絶え絶えな状況で必死になってキメラゴジュラスの頭部に向かってくる。
やがてその両腕で頭部を抱えると胸部付近に近付けるが捕食行為ではないようだ。ディープフィアーの胸部から配線状の触手が現れる。
それはキメラゴジュラスのコアブロックから生えている触手を掴みコアブロックを頭部から外す。
そして今度はディープフィアーの胸部が裂け胸部に移動したケンタウロスのコアが外に迫り出してくる…。
それを触手が連れてきたコアブロックに接触させるとケンタウロスのコアがキメラゴジュラスのコアブロックを包み込む。
これこそが寄生体に寄生されたゾイドに与えられた最大の特権コア同士の接触に寄る情報の提供とエネルギー譲渡に寄る譲渡された側の高速最適化。
今回の受け手はコアブロックで提供する側がケンタウロスのコアと言う事になる。
それによりディープフィアーの生命力は急激に失われていく…ここは中途半端に裂け目が通った場所でキメラゴジュラスの頭部落下の衝撃で頭の上は塞がってしまった状態だ。
ディープフィアーは尾を振り思い切り施設の壁が見える部分を叩き付ける。岩盤が砕け散り壁の構成素材が剥き出しになる。
更に尾を打ち付け続ける…少しづつ壁に歪みができ罅が入り始めるが生命力に乏しい今のディープフィアーにはそれ程時間は残されてはいない。
自らの死が迫っている事は明白である為その情報”意思”を託したものの為に必死になって尾を壁に叩き付ける。
もう少しというところで壁に変化が起きなくなる。力が足りなくなったのだ急速に失われつつある命は最早指一つ動かす事も出来無い状態になってしまっていた。
足は既に化石化すら始まっているそれは急速に全身に行き渡り残す所頭部と胸部だけになっている。
その時今まで声一つ上げていなかったディープフィアーの口から悔しそうな声が上がると胸部に合ったコアが激しく輝き出した…。
ちなみにティルはティル自身が持参したジーニアスウルフに乗り、中心部の中の後ろの方にいた。
ジーニアスウルフとは、その名の通り狼型のブロックスであるが、頭部以外はレオブレイズと
色以外は大して変わらない。が、頭部に使用されている狼型の頭部には高性能コンピューターが
使用され、索敵や情報分析処理などの面においてかなりの性能を持っていた。
「ほんと何も無い所ね〜…こんな所に未確認ゾイドなんているのかしら…。」
調査部隊の先頭に立って歩くカンウの中で、マオが周りの殺風景な風景を見ながらそう呟いた。
確かにその島は何も無かった。有るのは砂と岩だけである。ゾイドはおろか、生物の影すら見あたらない。
「ディメトロプテラ隊の皆さん、索敵結果をどうぞ。」
「今のところ、特に反応は有りません。」
「あっそ…。じゃあまあ気楽に索敵を続けて。」
マオは後ろを向き、ディメトロプテラ隊に言うが、その返答に対してそう言って前にむき直した。と、その時だった。
「部隊左側面に4つの反応があります!!!」
「わかってる!!確かに4つの気配がある!!」
ディメトロプテラ隊の内の1人が叫んだ後、直ぐさまにマオもそう叫んだ。
ディメトロプテラのマグネッサー3Dレーダーが正体不明の4機の反応を捉えると同時に、マオは“気配”でその4機の存在に気付いていた。
「そこだ!!!」
マオがそう叫んだ直後、カンウの背中に背負わされたPMBユニットの砲門から、気配のあった
岩山へ向けて2条の光が放たれた。超ハンデンシティビームバスター砲の超高密度ビームは
巨大な岩山ももろともせずに、それをたやすく撃ち破り、大爆発を起こした。
「あらら〜…やりすぎちゃったかしら〜…。」
その破壊力にマオ自信も唖然とするだけだった。と、そんな時だった。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」
どしゃ〜ん!!
何者かの声が、マオ達の遥か上から聞こえてきたと思ったら、突然マオ達の前に何かが落っこちてきたのだった。
「いきなり何するんや!!!死ぬとこやったやんけ!!!」
「ってまたアンタらかい!!こんな所で何やってるのよ!!ここは子供の遊び場じゃないのよ!!!」
突然落っこちてきたのは例のクーゴ達東方大陸少年少女4人組であった。そして、先ほどの4つの
反応も、彼らのゾイドの反応であり、マオが発射した超ハンデンシティビームバスター砲の大爆発で
まるでギャグ漫画の様に上空に吹き飛ばされた後に地面に落下したといういきさつであった。
「ホラホラ…とにかくあんた達は帰った帰った。ここは子供の遊び場じゃないんだからね。」
「なんだと!!おいら達もこの島に様があるんだ!!それにあんただって、おいらより少し
年上の様だけど、まだ子供じゃないか!!!」
「子供って…私は18よ!!ま…まあまだ成人式前だし、お酒は二十歳になってからって言葉もあるから子供と言えなくもないけど…。!!!」
と、マオとクーゴが言い争いをしていた時だったその時、マオがある違和感に気付いた。と、突然
マオ達いる場所の手前で爆発が起きたのはその時だった。その爆煙は周囲に大量の砂煙をばらまき、
視界を遮る。そして、砂煙が晴れた時、そこには一体のゾイドの姿があった。
「何あれ!!ダークスパイナー!?いや、細部がかなり違っている!!」
そのゾイドの姿を見た時、マオはそう叫んだ。確かに目の前にいるゾイドは、ダークスパイナーに
酷似していたが、各部の細かい部分がかなり違っていた。まるでロボットアニメに登場する
悪役ロボットのような、私は悪役ですと言っているような禍々しいデザインであった。
そして、そのダークスパイナーモドキはクーゴ達4人の方を向いた。
「ハーハッハッハッハッ!!やっと見つけたぞガキ共!!!」
ダークスパイナーモドキに乗っていると思われる何者かが、そのような下品な笑い声を発しながらそう叫んだ。
「お前誰?」
ずげげげげっ!!
と思ったら、クーゴの一言に、その場にすっ転んでしまった。
「アイツ何物?やっこさんはアンタの事知ってるみたいだけど…?」
「いや、おいら達も知らないよ。」
ずげげげげっ!!
マオの言葉に対するクーゴの返答は、なんとか起きあがろうとしていたダークスパイナーモドキを再びすっ転ばせるのであった。
「うわぁぁぁん!!忘れないでくれよ―!!俺達だよ―!!プラチ団だよ―!!」
「何だそれ。」
ずげげげげっ!!
ダークスパイナーモドキのカメラアイから涙を滝のように流しながら、必死に叫ぶも、これもクーゴの言葉によってそれはうち砕かれた。
「お〜い!何か私達にはさっぱりワケが分からないんだけど説明してくれないかな〜?」
マオは距離を置いて人事みたいにそう言うのだった。
「ええい!!ならば思い出させてやるぜ!!」
ダークスパイナーモドキに乗ると思われる男がそう叫ぶと、ダークスパイナーモドキの頭部の
キャノピーが開き、民族衣装の様な服装に身を包み、Pと書かれた帽子を被り、葉巻をくわえた1人の男が現れた。
「俺様が泣く子も黙る天下の大盗賊!!プラチ団団長のプラチ様だ――――――!!!」
「団って付く割には1人しかいないんだけど…。」
「おうおうそうだよ…以前は部下が二人いたんだけどさ、そこのガキ共にやられた後、その部下に逃げられちまってよ…って何言わすんじゃ!!!」
プラチと名乗るその男は、格好良く決めたと思ったら、マオのツッコミで、悲しい過去を話し出し、さらに突然逆ギレするのであった。
「………………。……プラチ…、ああ…何かいたな〜そう言うの…。」
ずげげげげっ!!
クーゴの冷ややかな反応に、プラチは乗っているダークスパイナーモドキごとまたすっ転ぶのだった。
そして、再びなんとか起きあがろうとした時、今度は久々にセリフの機会が回ってきたラインが口を開いた。
「あんた、天下の大盗賊って気取ってるけどさ、"プラチ"団なんて聞いたことねーぞ。」
痛い所を突かれたのか、その言葉を聞いたプラチは一瞬硬直した。
「ま…まあ…我がプラチ団の本来の活動フィールドは東方大陸。海を隔てたこの中央大陸では無名なのも仕方がない…。」
「私、東方大陸で1年近く過ごした事あるけど、"プラチ団"なんて聞いた事無いわよ。」
「私は生まれも育ちも東方大陸ですが、そんな私も"プラチ団"なんて聞くのは初めてです。」
マオとティルのツッコミは再びプラチを硬直させる物だった。
「えええッ!?どーすんですかそんな要求簡単に呑んじゃって!!」
アルティシアの艦に呼ばれたラガートが半ばパニック状態で叫ぶ。
「解ってる!!だから至近距離で叫ぶのはヤメロ!!」
とは言え、現在は屈指の名参謀でもあるラガートがこれ程慌てるのだ。やはり相手は只者ではないらしい。
「…それで大佐、何で私がこちらに?」
ラガートは自分が呼ばれた理由を明確に認識していなかった。ただ、以前より何かと関わりが―
―もはや因縁と言っても良いかもしれないが―上官に呼ばれたので来たまでだった。
しかし、ラガートは自分の甘さを改めて知る事となる。
「え?言ってなかったっけ…あなたにも付いて来てもらおうかと思ってね、少佐♪」
その時、ホバーカーゴが急加速を始めた。
「ええええええぇぇぇぇぇーーーッ!!?」
隊列を離脱していく艦に、味方からの呼びかけはあった。
<どうした、第2中隊!!応答しろ!!>
しかし、アルティシアはそれを笑っていなした。
「すいません、ワケありで急がせて頂きます!!」
そういうと、素早く通信を切って艦は目標の地点に向かう。
この時ラガートは思った物だ。
――この人、絶対軍に向いてないと思う――
命令違反を、楽しんでいるのだろうか?戦争中だというのに…
やがて例の男に指定されたポイントに到着すると、岩で巧妙にカモフラージュされたゲートがある。
「…入るわよ」
アルティシアが自ら操舵桿を握る。唸る様な声と共に、ホバーカーゴはゲートの奥の闇へと足を踏み入れた。
その途端、予告通り入り口が轟音と共に崩れ落ちた。
「…やっぱり、マジだったのね…」
ロイは正直驚愕していた。アルティシアから聞いてはいたがまさか本当にこんな長大な地下通路があるとは。
通路は暗く、ホバーカーゴ一機がやっと通れるぐらいだ。(充分広いが)
そして、奥のほうは暗く、見えない。それが不安とある種の恐怖を掻き立てる。
「…旧首都まではまだ400km以上あるわね…大分近いけど。時間かけてるとわざわざ来た意味ないし…飛ばすわよ」
了解、と言う代わりに操縦士がフットペダルを踏み込む。操縦桿を前に傾ける。
再び、ホバーカーゴは高速航行を始めた。
<ただ今より、この艦は新幹線並みの速度でぶっ飛ばします!!一応注意しといて!>
アルティシアの艦内アナウンスが流れる。皆、特には気にしなかった様だが、ロイはベッドに転がったまま思った。
「新幹線って……何?」
一方、彼らの与り知らぬ所でも変化は迫っていた。
ケインが帰還させていたエヴィルツォーネに、空から襲い掛かる者があったのだ。
モニター越しにその影を見たケインは、キーボードを割れるほどの力で叩いた。
「くそっ…リーパーめ!!」
エヴィルツォーネの巨体に、超音波メスが放たれる。理論上デスザウラーの装甲でも紙切れの如く切り裂く筈だが、
如何なる防御手段を弄したのか全く通用していない。
「ええい、このクソ忙しい時に!!…撃ち落とせ、エヴィルツォーネ!!」
エヴィルの口に、何色ともつかぬ光が集まる。そして、陽電子砲が空に放たれた。
とっさに触手を掲げて吸収を試みるリーパー。だが、エネルギー臨界を超えて触手の先端が吹き飛んだ。
甲高い叫びを上げ、リーパーは空の彼方へと逃げ去った。
>>225 プラチキタ―――(@∀@)―――!!!
「そ…そりゃあお前らが無知なだけなんだよ!!!世間にもっと目を向けやがれってんだぁ!!」
「でも、貴方がそんなに有名なら、多少の噂も流れますし、新聞などの報道機関も何かしら動くはずです。でも、それが全然無いんですよ。」
「……………。」
プラチは逆ギレするも、ティルのツッコミによって再び硬直するのだった。と、今度はマオが口を開いた。
「あ〜あ〜…とんだ大盗賊ね〜、あんたって。どうせあんたのやる事なんて力もない一般民衆相手の
恐喝まがいの強盗なんでしょ?大盗賊気取るなら、ル○ンとか見たいに、国家も手玉に取るような事をやってみなさいよ。」
マオのその言葉はさらにプラチを硬直させた。しかし、数秒間硬直した後、再びクーゴのいる方向を向いて叫びだした。
「うおぉぉぉ!!!もういいわ!!俺がわざわざ海を渡って中央大陸にやって来たのも、全てはお前らに復讐するためなんだよ!!」
「うわ!!開き直りやがった!!」
開き直って叫ぶプラチに対して、誰もがそう叫んだ。そして、今度はバスターイーグルに乗るメイが口を開いた。
「私には何がなんだかよく分かんないけど、たった1人でこれだけを相手にするのは無理だと思うよ。」
そう言って、バスターイーグルの背中に装備されたバスターキャノンをダークスパイナーモドキに向けた。
「ハーハッハッハッ!!!それが出来るんだよ!!!あのお方の持つキメラテクノロジーでパワーアップされたこのキマイラスパイナーならな!!!」
「あのお方?」
プラチがそう叫んだ後、マオがそう呟いた。しかし、プラチは既に戦闘態勢に移っていた。
「スーパージャミングブレードセット!!!そこの緑色のでっかいの!!お前を操ってあのガキ共を襲わせてやるぜ!!!」
プラチがそう叫んだ直後、ダークスパイナーモドキ=キマイラスパイナーの背中に装備される
背鰭=スーパージャミングブレードから、強烈な強電磁波がカンウに向けて放射された。
その頃、帝国軍のドラグーンネストは、オラップ島の共和国軍が上陸した場所とは違う場所に上陸していた。
「それじゃあこれより調査チームとドラグーンネストの護衛チームに分けます。」
部隊を整列させた後、クライトがそう言った。考えている事は共和国とは同じ様子である。
と言うより、この状況で他にどうすればいい?という事もある。
そんなワケで、調査チームはハガネ、クライト、ギフはもとより、その他は名も無い兵士の乗る
ディメトロドンやシザーストーム、レーザーストーム、スティルアーマーと言った
有人キメラブロックスが続いており、残るメンバーはドラグーンネストに残ってドラグーンネストの護衛に回っていた。
そして、ハガネのゼノンを先頭、クライトのエナジーライガーとギフのアシュラゲイルが最後尾に
配置され、その中心部分に有人キメラブロック部隊に護衛される形でディメトロドンが配置されていた。
「索敵組はレーダーに気を付けてね、反応があったと言っても直ぐに何か行動を起こさないこと!共和国軍の可能性もあるからね。」
ハガネはディメトロドンに乗る皆にそう言い聞かせていた。
その時、島の奥へ入っていく帝国軍調査組を監視する何者かが岩山の影に存在した。
「アレ?」
プラチは間抜けな表情でそう言って、拍子抜けしていた。確かにカンウはまともにスーパー
ジャミングブレードの強電磁波をあびていた。しかし、何も起こらなかった。そこに拍子抜けしていたのだ。
「何で?何で?故障かな?」
予想外の出来事に、プラチは唖然としながらそう呟いた。
「あ…あれがダークスパイナーのジャミングブレード以上の強さがあるというなら、相手が
どんなゾイドであっても操られる事は確実なのに…何で…?」
驚いていたのはプラチ自信だけではなく、少年少女4人も同様に驚いていた。
「あ、あんまり気にしないで!カンウだけじゃなく、全てのゴジュラスギガに、こういうジャミングウェーブ遮断処理がなされてるから。」
「な…なんだって―――――!!!!?」
ティルを除く東方大陸組5人がそう叫ぶのであった。
「コラコラ!!M○Rみたいなリアクションするな!!私も人のこと言えないけどさ…。」
それには、マオも思わずそう突っ込むのであった。
「ええい!!お前にスーパージャミングウェーブが効かないのなら、他のゾイドに発射して同士討ちさせてやる!!!」
再び開き直ったプラチはそう叫び、今度はカンウ以外の皆に向けてスーパージャミングウェーブを発射した。
「うわぁぁ!!来たぁぁぁ!!!」
クーゴ達は思わず叫んだ。しかし、共和国軍は全くと言っていい程動じなかった。
「アンチジャミングウェーブ放射開始!」
ディメトロプテラパイロット達がそう言うと同時に、ディメトロプテラの背中に装備された、
マグネッサー3Dレーダーから電磁波が放射され、スーパージャミングウェーブを相殺したのであった。
「………………。」
その光景に、プラチは鼻水を垂れ流しながら唖然としていた。
「どうよ!あんたら田舎者は知らないでしょうがね、共和国軍とゾイテックはジャミングウェーブに対する対応は出来てるのよ。」
「し…知らなかった…。」
得意げに言うマオの言葉に、ティルを除く東方大陸組み5人は唖然としながらそう呟くのだった。
「ええい!!こうなったら、直接戦ってやる!!言っておくが、この最凶キマイラスパイナーは
そこらのザコ、果てにはライガータイプでも相手にならねえ!!コイツを倒したきゃデスザウラーを連れてこいってんだ!!!」
「く!!!」
「私はデスザウラーなら今まで腐る程倒したことあるけど?」
「…………。」
得意げになってキマイラスパイナーの凄さをアピールする為に叫ぶプラチの言葉と、その自信に
戦闘態勢に入ったクーゴ達の間に起こった殺伐な不陰気をマオの一言が一撃で撃ち破るのであった。
>>失われし者への鎮魂歌作者さん
>「くそっ…リーパーめ!!」
最初リーパーって何だっけ?と思ってしまいましたすみません・・・
最初のあたりに出てきたなぞの怪物ですね。エヴィルツオーネのインパクトのあまり
その存在をすっかり忘れていました・・・。
話は変わりますが、ファンブックスレによりますとバトストがものすごい事になっているそうです。
まだコロコロは発売されたわけではなくネタの可能性がありますが、もし本当だったら
今後自分が書いていくであろう展開もだいぶ変わってきそうな気がします。
仮にファンブックスレにあった情報が本当ならば、今の共和国対帝国の話をやる一方で、
新シリーズ基準の物語をやっていこうかななどと思っていたりします。
…マジですか?ただでさえバトストから逸脱してる自分の作品がもはや取り返しの付かない事に…
しっかし、なんて速さだ…230レス越えたあたりでもう350KB超えてるなんて!!
改めてこのスレの偉大さを知る俺…
読者に忘れられてしまう、と言う事はインパクトが薄かったって事ですね。誤算でしたスマソ|○|
「でも、一体こんな通路何の為に…?」
「こんな時の為じゃねえの?例えば…戦争とか」
指令室のドアを開けながら、ロイが呟いた。どこかその口調には皮肉が感じられた。
奇妙だ。共和国が作った地下通路を、今度は自分たちが逆の立場で使っている。
「だけど、共和国軍だってこんな通路の事は知ってた筈じゃないの?お偉いさん方は一体何を…」
ラガートが近くのコンピューターに頭をぶつけた。
「…そりゃ、警戒しての事でしょう?こんな狭い所に共和国軍がなだれ込んで、
爆薬で崩されでもしたら堪ったモンじゃないですからね…」
走り始めてから2時間以上が経った。ロイは、胸の内の得体の知れぬ不安が強まってくるのを感じる。
ふとモニターを見ると、周囲の光景が先程までとは違う事に気付いた。
広い。途轍もなく広い空間が広がっている。だが、ただ広いだけではない。
果てしなく広い壁一面に、赤く輝く何かが取り付けられている。その赤い何かは天井からさらなる地下へ
せわしなく動くベルトコンベアにも運ばれている。
ロイの鋭い視覚は、モニター越しにでもその物の正体をはっきりと見て取った。
「これは全部……カプセル…?だが、一体何の…」
そう、この空間を埋め尽くすかのような赤い光は、全て培養カプセルの物だった。
その時、巨大な空間に聞き覚えのある声が流れた。
<そこで機体を止めたまえ。ここまでご苦労だったな…ようこそ、我が城へ>
風邪をひいているような男の声が、暗い空間に不気味に響き渡った。
共和国軍本隊も、常識では考えられない強行軍で大幅に予定を更新していた。
なにしろ、脅威である筈の防衛線が既に壊滅状態なのだから。
「またこれか…一体、何者なんだ?」
戦況報告を受けたロブ=ハーマンは思わず背筋が寒くなった。
――この状況は、まるで――
「…ヴァルハラに突入した時と…暗黒大陸の時と同じ…!?」
丁度、正体を隠した鉄竜騎兵団がガイロス帝国の防衛線を崩して共和国軍を誘導していた時の様に。
――今回の敵にも、同じ様な目的があるのではないか?何か重大な、秘密が―――
ハーマンは寒気を伴う既視感を、必死に押し隠した。
<驚いたかね…これらは皆、OSによる強制培養を進めているCDZだ…まあ、少し遅過ぎた様だがな>
耳障りな声が、ベルトコンベアの音を圧して広大な空間に響く。
<ホバーカーゴはそのまま前進して前方のゲートへ向かえ。ただし…一人を除いて>
アルティシアが疑わしげな表情を浮かべる。が、次の言葉を聞いた途端その顔が凍り付いた。
<…その艦に居るのだろう、ロイ?…お前は、左舷のエレベーターに乗るんだ…>
ロイ以外の全員が言葉を失う中、ロイ自身ははっきりと答えた。
「…解った。だが、皆に何かしたらぶっ殺す!!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!!流石にこれは見過ごせないわよ!!」
我に返ったアルティシアが、部屋を出ようとするロイの肩を掴む。
「大体なんであの男はアンタの名前とか知ってるのよ、怪しすぎるじゃない!!」
ロイはゆっくりとアルティシアを振り返る。その顔は微笑んでいたが、瞳の奥には強い決意が見える。
「何故か解らないけど、行かなければいけない気がするんだ…少し怖いけどな。
第一、『選択の余地は無い』状況だろ?俺が行けば全部済む事だし…」
「何を馬鹿な!!明らかに相手は何か企んでますよ!?艦長でも科学者でもなく、あなたを指名して
『来い』と言っているんです!…生きて帰ってこられるかすら…解らないんですよ…!?」
ラガートの声を振り切るように、ロイはドアを閉めようとした。
「大丈夫、きっと生きて帰ってくる」
司令室のドアが閉まり、ロイは一階の窓から外に飛び降りた。
「エレベーター…あれか…?」
ロイの目が、柱に付いた扉を捉える。あれのことだろう。
仲間達を心配する気持ちは強かったが、それ以上に自分がこうする事を望んでいる。
ロイを乗せたエレベーターが上昇していく。もどかしいほど長い時間の後、エレベーターが止まった。
そこはまた暗かったが、そんな事は感じなかった。狭く、奥行きのある部屋に2m程のカプセルが並んでいたからだ。
カプセルの陰から、白衣の男が現れた。奇妙な笑みを浮かべ、あのピリピリとした声で喋り出した。
「ようこそ、ロイ…見覚えはあるかな?ここがお前の……故郷だ…」
閻魔の策動の作者さん、失われし者への鎮魂歌の作者さんへ
どうやら100後にリセットのようです。合成跡は有りませんでした。
ブロックスを語れや教えて今月号@ゾイドのスレに関連情報があります。
でもその後ろに従来のゾイド(と言ってもスティルアーマーですけど)も居たので問題はさほど無いようです!?
ゾイテックとズィーアームズの企業間ゾイド開発戦争に伝説の虎型ゾイドの発見、開発、争奪戦がメインだそうです。
このパターンなら事件毎に区切る事が簡単なんでしょう…。水没とか無茶な展開にならなくて良かった気がします。
約100年間の空白は妄想し放題!?
>>237 あちゃー…これで自分の次回作案(早過ぎ)は完全に没ですね…
もう自分どうすればいいのやら。とりあえず恥ずかしながらコロコロは買ってます
>>238 いきなり百年後に飛ぶような×ソ公式無視していいのでは?
どうしても気になるならこれはワイツが出る前に構想したとか、この話はパラレルですとか
書く前に一言断っておけばそれで済む話だし。
「ううううウソやろ?あのデスザウラーを腐るほど倒すやなんて…。」
「そうだ!!ただのハッタリに決まっている!!」
グウとプラチが全身から汗をだらだら流し、体を振るわせながらそう言うのだった。
「なんなら証拠を見せたげるよ。」
マオがそう言った直後、カンウが跳んだ。その速度は巨大ゾイドはおろか高速ゾイドの常識でも
とても想像できぬ程の速度であり、キマイラスパイナーが回避行動に移ろうとするより早く、
その重装甲を左腕の爪の一撃でやすやすと切り裂いたのだった。
「う…うっそ―――――――――!!!!!」
これまたティルを除く5人の東方大陸組はそう叫んだ。そして、キマイラスパイナーは大爆発を起こした。
「お…覚えてろ――――――!!!」
爆発したキマイラスパイナーから、プラチがそう叫び、ギャグ漫画のように遥か彼方の空遠くへ飛んでいくのであった。
「それにしても…何だったんだろうね…。ワケ分かんない。」
「お…おいら達にとっては、あんたらの方がワケわかんないよ…。」
プラチが飛んでいった方向を見つめながら言うマオの言葉に、クーゴが唖然としながらそう突っ込むのであった。
「さーてと、ワケ分かんないのは去った所で、調査の続きと行きましょうかね。あと、あんた達は危ないから帰りなさい。」
「何でだよ!!おいら達もここに用があるって言っただろ!!?」
「そうそう。皆さんには1人たりとも帰ってもらっては困るな。」
「誰!!!?」
マオとクーゴの言い争いが始まろうとしていた時、突然何者かが、口を挟むのだった。と、
その時だった。岩山の上に、黒い布に身を包んだ何者かが現れたのだった。しかし、その何者かは
姿は見えども気配は無く、その姿も半透明状であった。恐らくホログラムの類なのであろう。
さらには、顔の部分が影に隠れる形となっており、どんな顔なのかよく見えない。
「誰だ!!」
共和国軍兵士の1人がそう叫んだとき、その何者かが答えた。
「お初にお目に掛かる。まあ私と会うのは初めてじゃない人もいるようだが…私はエーマと言う者だ。」
「やっぱりこの怪物騒ぎはお前の仕業か!!!エー…。」
「エーマって…まさか貴方はエーマ博士ですか!!!!?」
エーマと名乗る男の言葉に対し、クーゴがそう叫んだ時、さらに大きな声で叫んだのはティルだった。
「ティルさん!!あのワケわかんないの知ってるの!?」
「そうです!!エーマ博士はオサンゾ博士と同様にブロックス理論を打ち立てたゾイテック社の
科学者の1人です!!オサンゾ博士同様行方不明になっていたのに…こんな所で何やってるんですか!!?」
「ええ!!?エーマもそのゾイなんとかっつー会社の社員だったの!!?」
ティルの言葉に誰よりもクーゴがそう驚いていた。
「ほう…誰かと思えばお前はティル=ランゲージか…、あの時の新入社員が立派になったものだな…。
さよう!私は確かに元ゾイテック社でゾイドブロックスの開発に関わっていたエーマである。
しかし、それも昔の話だ。私はさらなる力を手に入れるためにこうしてゾイテック社を離れ、
新たなるゾイドの開発に取り組んでいるのだ。」
「それが…一連の怪物騒ぎの元凶ってワケね…。あと、さっきのダークスパイナーモドキはあんたがけしかけたんでしょ?」
「そうだ…。」
自信ありげに言うエーマに対するマオの言葉にエーマはそう答えた。そして、彼はさらに言葉を続けた。」
「正直君達共和国軍と帝国軍には感謝しているよ。何しろ自分達から来てくれたんだからな。わざわざ攻撃しに行く手間が省けた物だ。」
「エーマ!!!お前まさかまだ世界征服の野望を諦めていなかったのか!!!?」
エーマの言葉に、クーゴが思い切り叫びながらそう叫んだ。クーゴ達とエーマとは、かつて
東方大陸で刃を交えたことが度々あった。クーゴ達が中央大陸に来たのも、エーマが中央大陸へ
移動したという情報を得たからである。そして、エーマはクーゴに対して言った。
「そう…。以前にも言ったはずだ。私の野望は今まで誰も成し遂げられなかった世界征服にあると。
私がかつて作ったキメラ達もその世界征服の野望の為だ。そして、君たちが怪物と呼ぶ物も、私が作った物…。」
「ギャハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」
突然の笑い声がエーマの言葉を遮った。その笑い声はマオの物だった。マオはカンウのキャノピーを
開き、コックピットから身を乗り出して、腹を抱えながら大笑いした。
「キャハハハハハハ!!コイツバカだよ!!!!今時世界征服ですって!!!そんな馬鹿なこと漫画でもやらないよ!!ギャハハハハハ!!!」
マオの不敵なその言動に、クーゴ達は唖然としていたがエーマは顔色1つ変えていなかった。
「ふ…笑いたいなら笑うがいい。所詮馬鹿な愚民共に私の崇高なる野望は理解できぬのだ。」
「じゃあ何で、そんな崇高なる野望を持ってるクセに何でポルトの町相手の弱い物いじめしてるのさ!!」
エーマの言葉にマオは再びそう叫ぶが、エーマは相変わらず顔色1つ変えなかった。と言うより、
顔の部分が上手い具合に影に隠れていて、どんな顔をしているのか分からないのだが…。
「私がポルトの町を狙っていたのはウェンディーヌの為だ。」
「ウェンディーヌ?何で?」
「考えても見ろ、あの風力の力だけで町1つ分の電気をまかなえるあのゾイド。あれを我が手し、
我がゾイドプラントのエネルギー源として使えば、エネルギーの面で相当なコストダウンになるのだよ。」
「あんた意外とセコイのね。」
ウェンディーヌの必要性を力説するエーマにマオは再び突っ込むが、彼は相変わらず顔色1つ変えていなかった。
「まあいいや、所でそこの少年少女達よ。コイツの事知ってる見たいだけど、知り合い?」
「ああ、随分前から何度か戦ったことがある。」
突然マオは話を変えてクーゴ達にそう言いだしたのだ。この言動には空気読めと突っ込みたくなるくらいであるが、クーゴはバカ正直に答えたのだった。
「ふ〜ん…なるほどね。あんた達が帰ろうとしなかったのはアイツと戦うためだったのね…。でも、
それでも危ないから帰った方が良いよ。後は戦いのプロである私たちに任せなさい!!」
「そうはいかんな。」
自らの胸を叩きながら言ったマオの言葉に対しエーマが一言そう言った。と、その直後だった。
突然カンウとジェネラル、そしてクーゴ達4人のゾイドの足下の地面に円い穴がポッカリと開いたのだった。
普通にバトストが続くと思っていた自分は・・・という気分です。
次の話で普通にワイツタイガーに乗る新メンバーが・・・とか考えていたんですが、
思い切り裏切られてしまいました・・・。
しかしまあ100年後のアレも、逆に前々から作りたかった諸国放浪物を作りやすい様にも思えます。
自分が以前に書いた「可能性としての一つの未来」みたいな感じで。
とはいえ、細かいストーリーに関してはワイツウルフとサビンガのキット付属バトストを読むまで
保留でしょうね。もちろん現代バトスト的な話も平行して続けるつもりですが・・・。
「…ハァ?」
訳が解らない、と言った表情のロイにその男は名乗った。
「自己紹介がまだだったな…私の名はケイン=アーベル。お前の“父親”だ…」
ロイの思考が瞬間的に停止した。父親?
「…何を馬鹿な。俺にはちゃんと両親が居た…もう死んだが、その記憶は確かだ!!」
「クックック…では、その両親も偽りの存在であったとしたらどうかな?」
ケインは耳に付く様な含み笑いを始めた。
「…そう、お前の人格形成の為に私が手配した偽物の両親…帝国軍に殺される所まで、全ては
シナリオ通りだった…だが」
凍りついたように動かないロイの前で、ケインは意味深な笑みを浮かべる。
「あのレオマスター…アーサー=ボーグマンが私の計画を狂わせた!!憎しみに駆られ、真の力を
解き放とうとしていたお前を私の手の下から掠め取っていった…!!」
「待てよ」
ロイがようやく口を開く。
「いきなり話が飛びすぎだろうが…俺の両親が偽物?ふざけるなよ、証拠も何も――」
「証拠が欲しいと言うなら、こちらの方が早い」
ケインが壁についていたボタンを押すと、室内に並んだカプセルの光が弱まった。
ロイは幾つものカプセルの中に何かの影を見て取った。
人だ。カプセルの中に人間が――子供が、膝を抱える様にして入っている。
そして、どのカプセルも中身の少年達は全く同じ姿形をしていた。ロイの呼吸が止まる。
「どうかね、兄弟に会った感想は?――お前は……造られた存在だ」
カプセル内の少年達は、全員がロイと全く同じ外見だった。
コア同士がエネルギーや情報の譲渡をする現象は正確では無いが無性生殖式のゾイドは基本的に自らのクローンを新たなコアとして残す。
しかしクローニングの不備が遺伝子に発生するとその時捕食した他のゾイドの情報で補填、もしくは一時的に有性生殖をすると言う説がゾイドの進化を促したと語る者も居る。
しかしこの場合は少し状況が違う。寄生体ゾイドは施設最深部で発掘されたコアから切り離された情報が独立して新たなコアに変化したものだ。
この場合散り散りになってしまった彼等にとっての重要な情報を寄生した者の情報と共に入手しようとする行為のため異種間寄生ゾイドはお互いを捕食しようとする傾向が有る。
更にその行為で両者が致命的な損傷を受けた場合は損傷の軽い方を生かそうとする行為も見受けられる。
これはこの事件後の正確な情報分析の結果導き出されたもので今は彼等寄生種しか知らないものである…。
コアブロックを内包したコアがもう一度ディープフィアーの体内に仕舞い込まれる…。
その命の輝きは閉じかけた彼の生涯をもう少し引き伸ばす事に成功する。化石かされた部位が再活性し力が篭る。
地を足で力強く掴むとその長大な尾の一撃は想像を絶した威力で轟音を立てながら壁を粉砕した。
重金属で幾層にもなり対衝撃構造を兼ね備えた外壁を粉々にして尾が施設内に飛び込む。余りの威力に彼自身もバランスを崩し施設内に派手な音を立てて転がり込んだ。
その巨体はご丁寧に第5層に居たサーベラス、レクス、ファインの目の前にごろごろと転がってくる…。
逃げる手立ては無く上部に居たサーベラス等は難を逃れるが当然の如くファインはスレイプニルUでそれが止まるまで逃げる事になった。
「…たっ助かったでありますか!?ふぅ…。」後ろを振り向くと約4時間程前に戦闘していた存在がその巨体を横たえている。
しかし良く見るとその一連の戦闘で受けた傷は癒えその変わりに胸部に大きな亀裂とそこからコアが見えている。
「…」その光景に言葉を失って見入るファイン。何かに引き付けられる様な感覚はそうそう生まれるものではなくその答えを知りたくなったファインはそれに近付いて行く。
「あの馬鹿!何であんな事を…。」心配しなくても良い筈の敵の行動に混乱するレクス。
「気にするな大尉。あれは”呼び出し”だ。」サーベラスはそう言ってライフルを構えた。
横に逃げるの間違いでした。
逃げる手立ては無いの前に”横に”が入らないと???な文です。
時代の流れで武器が姿を変える事は有っても生き物であるゾイドが姿を変えるのは外見だけな気がします。
特に戦闘用の物は技術の向上に寄って外見が変わっても極端なディフォルメには限界が有ると言う事ですし。
コアボックスや大ゾイド典で見られた何たらファイルのゾイドの戦闘用への改造についての項。
この点を考えると100年経とうが1000年経とうがゾイド自体が変異しない限りそうそうゾイドの姿が変わるとは思えません。
つまりギガならギガのままと言う事ですし外見を変えるより技術の向上で中身の機構の手入れをした方がよっぽど効率的です。
100年後はギガVer.〇〇とか見たいに。
サーベラスが”呼び出し”と言った状況はゾイドが特定の人間を呼び寄せる行為や状況を指す言葉で他にも表現があるいわゆる相性最良?等を示す事にもなる。
この状況で目の前に居るゾイドに敵兵が呼び出しを貰うという状況は逆に言えばそれを阻止すれば味方にとって有益になる事でもある。サーベラスはファインに狙いを定めるがそこで気付く。
「甲殻皮膚が邪魔で致命傷になる場所が無い…。」歩く度に音は無いが派手に上下に揺れる甲殻皮膚は見た目より遥かに広い範囲をカバーしている。彼は多分此方の動向を見抜いているだろう。
「黙って指を咥えて観て居ろと言う事か…。」一撃のチャンスでファインの動きを止める事は不可能な為構えたライフルを下ろすサーベラス。
「黙って観て居て良いんですか!?」レクスはその行為を批判するが「なら試してみるか?大尉?一撃で彼を倒せるか?」状況を打破出来る唯一の方法をレクスに示してライフルを手渡す。
しかしサーベラスに劣る射撃の腕のレクスには如何することも出来無かった…。
「もしかしてあいつは…。」「そうだな。スナイパーとしての腕も確かなのだろう…。」事の成り行きに任せるしかない事に握った拳が震えている。
それを後目にファインはゆっくりとディープフィアーに向かって歩いて行く。少しすると目の前に胸部の裂け目が目の前に有る。その中には機械的なゾイドの体とその一枚上に寄生体が張った薄く堅い表皮場の幕が有る。
不思議な光景に夢中になって状態を確認しているファイン。更に素体が素体なだけに恥ずかしげも無くべったりと張り付いて映像記録を撮っている。「これはこれは…国など関係無く素晴らしい技術でありますね!」
「…よっぽど気に入ったみたいだなケンタウロスを。」「えっ!?ケンタウロス!?あれが?」レクスも目を白黒させる。
「あのサイズから考えられる寄生されたゾイドはケンタウロスしか居ない。脚部をゴジュラスの物に変えた拠点防衛用の格闘戦強化型だ。」こう見えてもサーベラスはこの施設において重要な地位に居たので情報なら異常事態前に限るが知らない事はまず無い。
情報仕官であり工作員をしていた彼だからこそかなりの生存者をここに避難させる事に成功したのだ。「手出しが出来無いならこの先の出来事をしっかり見ている事にしよう…。」
何かが起こる…それもとびきりの事態が起こるとサーベラスは考えた。
「これは…?」やっと胸部の奥にあるコアの異状に気付くファイン。まず周りと殆ど繋がっていないエネルギーライン。
そしてコアの形状。寄生されているとはいえどコアの形状が変わるという事はまず無い。しかも見覚えある角張がある。
「あ…そう言う事でありましたか。」呼んでいたのはコアの中に有る角ばった物…手を上げて声を掛ける「元気でありますか?」
惚けた事を言う言うふざけた相棒にコア周辺に有った触手から容赦のない突っ込みが入る。それを真面に横顔に貰い左に半回転して頭から床に頭から落ちるファイン。
「あれは…突っ込みだな。それも相当の威力だ。」サーベラスは面白そうに言う。「如何言う理由であんな目に…。」レクスは呆然と観て居る。
「何か有ったのだろう。如何見てもいい加減にしろと言っている様にしか見えん。」「あの動きで良くそこまで話が膨らみますね…。」レクスには離解の範疇を越えているのでさっぱりの様だ。
「その内解るだろう…ともかく彼は如何しようも無い掃き溜めの部隊に居る事だけは確かだが…何故あれだけの男がそんな所に居るのかが問題だ。」何時の間にか入手した情報で値踏みをしながら言う。
「掃き溜めって…二時間程の間でよくそれだけの情報を手に入れられましたね。」「それが私の仕事だ。」あっけらかんとして言うサーベラスだった。
「しかし大尉?君は戦場で彼に会っているぞ。屍竜使いを覚えているか?」「あの気味の悪いロードゲイルですか!?」まるっきり意味不明の行動を起こしては味方を混乱の渦に叩き落としていた者がアレとは到底思えないレクス。
「有る意味で意味不明ですが本当に奴があのネクロドラグーンなんですか?」「間違い無い。制圧圏内の増加で情報網に綻びが多い奴等からは有る意味情報を取り放題だ。真贋も解り易いしな。」笑いながら言う。
生きては居るが床の上でピクピク震えている男がかつて自分の相棒の足を切り飛ばした張本人だとは到底思えないが事実とすればとそこで考えるのを止める…無駄な事だ。遇うときはまた遇うのだろうしその時は借りを返すだけだ。
「全く冗談が通じないでありますね…。」首と甲殻皮膚で体を支えた状態で呟くファイン。今度は早く立てと言わんばかりに触手が足を掴み強引に立たせる。「…でありますか?」
そろそろ事が終わるらしい…逃げる算段を練り始めるファインだった。
「キャァァ!!!」
「な…何だぁ?」
「うわぁぁぁ!!!」
カンウらは中のマオ達ごとその穴に吸い込まれてしまった。そして、6機が全て完全に吸い込まれた後、その穴はふさがれ、元の普通の地面が現れるのであった。
「スタンティレル中尉とバイス曹長!!!一体どうする気だ!!」
共和国兵士の1人がそう叫んだ。しかし、エーマは相変わらず顔色1つ変えずに言った。
「フ…君らに私の作ったゾイドの真の恐ろしさを教えてあげようと考えてね。だからこの島の地下に
ある私の基地に招待してあげたのだよ。私の仕入れた情報よると、あのゴジュラスタイプと
ライガータイプは君ら共和国軍の中でもトップクラスのゾイドと言う話ではないか。
まあ私にとってはザコの部類だがね。私は君らにとって最強の機体であるそのゾイドを、私が
作り上げたゾイドが完膚無きまで叩きつぶし、その力を見せ付け、そしてその映像を世界中に
送信するのだ。そうすることによって君らは私の持つ圧倒的強さという物を思い知らされる。
そして、それだけの圧倒的な力を見せ付ければ、反抗するだけ無駄だと、私に対する反抗意識も薄れ、私は戦わずして世界征服が出来るのだよ。」
「じゃああの子供達まで落としたのはなぜだ!!」
「彼ら4人に関しては、個人的な因縁という物があってね…。それを断ち切る為だよ。」
エーマは抑揚のない声で、相も変わらず表情1つ変えずに言うのであった。
「もうやめて下さい!!!」
突然口を挟んだのはティルだった。
「いい加減にして下さいエーマ博士!!!何で世界征服なんて漫画みたいなくだらない事をするんですか!?」
「お前までくだらないと言うか…ティル=ランゲージ…。ならば所詮貴様も愚民だったという事か…。」
そんなティルの叫びにも、エーマは顔色1つ変えることなく、そう一蹴したのであった。そして、エーマはくるりと後ろを向いた。
「では、私はもう帰らせてもらう。帝国軍の方にも挨拶しなければならないのだからね。」
「ま、待て!!」
共和国兵士達の言葉も空しく、エーマのホログラムはそこでフッと消えた。そして、そこには名の無い共和国兵士とティルだけが残されたのであった。
「こ…これは大変だぞ…。」
「ああ…ここは調査を中止していったんホバーカーゴに戻った方が良いんじゃないか?」
突然の出来事と、指揮官を失ったと言う事が重なり、共和国兵士達は一瞬混乱したが、一時退却することになり、直ぐさまホバーカーゴ2番機へと帰還していった。
「エーマ博士…何で…。二人とも無事でいて下さいね…。」
共和国兵士達と共に帰還していくジーニアスウルフの中で、ティルはそう呟くのだった。
それから一時後、エーマは帝国軍の前に現れるのであった。
「君ら三人に来てもらうことにしよう…。」
「キャア!!!」
「何!!!?」
「む!!!」
ハガネ、クライト、ギフの3人とそのゾイドが同じように穴に落とされたるのはそれからまもなくの事であった。
第4章:怪物
「うわわわわ!!!」
穴に落とされ、下へ下へと落下していく中、マオは思わず泣きながらそう叫ぶのであった。
マオとカンウが落とされた穴はとてつもなく深く、奈落の底はおろか、そのまま地獄まで直通してるんじゃないかとすら思えるほどの物であった。
どっしゃぁぁぁん!!!
「あいったたたたた…。」
もの凄い音をたてて、やっと現れた底に叩きつけられたカンウの中で、マオは思わずそう呟いたのだった。
「それにしても何て深いのよここは…。ねえライ…、あれ?ラインがいない…。」
確かに、マオとカンウの周りにラインとジェネラルの姿は無かった。周りに有るのは金属製の床や壁、辛うじて視界を作っている明かりだけであり、そこにはマオとカンウ以外には影も形も無く、気配すらも感じられなかった。
「ラインどこ行ったの?と言うか誰かいないの!?こんな暗くて広い所に1人で放り込まれたら、怖くて寂しくて泣いちゃうよ〜うわぁぁぁん!!」
マオは思わず泣き出してしまった。元が泣き虫な性格であるが故、強くなってもこういう所だけはどうにもならなかったりするのであった。
「うわぁぁぁぁぁ…。」
「え?」
突然上から声が聞こえてきた謎の声に、マオは思わず上を向いた。と、その直後だった。
何かがマオとカンウ目がけて降って来るではないか。
「きゃぁぁぁぁ!!!!」
どっしゃぁぁぁぁん!!!
カンウはとっさに跳んで避けたが、その上から降ってきた何かは、カンウ同様床に思い切り叩きつけられたのであった。
「うわぁぁぁぁ!!上からオバケが降ってきたよぉぉぉぉ!!!怖いよぉぉぉぉ!!!」
マオは泣きながら思わずそう叫ぶのだった。その時のマオの泣き様はすざましく、飛び散った涙が
周りのモニターなどをぬらす程であった。と、その時、その落下してきた何者かが起き上がり、マオとカンウの方に近寄ってくるのであった。
「誰がオバケじゃぁ〜…。」
「きゃ――――!!!出た――――――!!悪霊退散悪霊退散!!!!」
ゲシゲシゲシゲシ!!!
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!やめろやめろ!!」
マオはさらに泣き叫びながら、カンウの足で思い切りその何者かを何度も蹴りつけたのだった。
カンウ…と言うよりゴジュラスギガの足は超重装甲もやすやす踏み抜いてしまう程強力である、
その何者かも、ダメージが大きいようでそちらも思い切り泣き叫んでいた。
「悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散!!!!!」
ゲシゲシゲシゲシ!!!
「やめろやめろやめろやめろ!!」
「や め ん か い ! !」
その何者かのその地面をも揺るがすほどの叫び声に、マオはビクッと硬直し、そしてカンウの蹴りも止まった。
「お前もっとよく見ろ。私だ。」
「あ、よく見ればハガネじゃない。こんな所で何やってるの?」
「それはこっちのセリフだ!!私とゼノンをオバケと勘違いして何度も蹴りやがって…。」
「ゴメンゴメン!!私ちょっと錯乱してたわ。」
マオが先ほどオバケと勘違いして蹴りつけていたのはハガネのゼノンであり、流石にカンウに何度も蹴りつけられたことに腹を立てていた。
「これまで、自分の能力に疑問を持った事は無かったか?常人離れした運動能力…
群を抜くシンクロ率の高さ…それもこれも、全て私が“設定”したものだ」
「嘘だ…父さんも…母さんも…俺に与えてくれた愛情は偽りじゃなかった筈だ!!」
ロイの理性が、必死に目の前の現実を否定する。これは夢だ、と。
だが、ケインは更に非情な現実をロイに突きつける。
「あのレオマスターのせいで危うくお前を失う所であったが、お前がゾイドを探しに行くと言うので
遺跡に先回りして大掛かりなセットまで組み、ディアブロタイガー初号機を仕掛けた…
計画通り、お前とあのレオマスターはそれを持ち帰った訳だが…」
呆然としていたロイの頭に、怒りが野火の様に広がっていく。
それは自分の人生すら騙し続けたケインと、不条理に生み出された自分自身への怒りだった。
「…まあ、ベースとしたのは私の遺伝子だがな。ゾイドとのシンクロ率は一般的には体内の金属細胞
の数で決まると言われているが……お前には生まれる前にある処置を施した事によって、」
「――オイ、そこのマッドサイエンティスト…」
ロイの脳はもはや考える事を停止し、そこには燃え立つ様な怒りだけが取り残されていた。
「俺が作られた存在であろうと、お前のようないかれた男が父親でも、そんな事はもうどうでもいい…
…答えろ。俺は………俺は、人間なのか」
ケインは少し驚いた様だったが、にやりと笑って言い放った。
「いいや、違うな…もはやお前は人間と言う存在から進化した新たなる種族なのだ」
ロイの中の、冷たい怒りが爆発した。一足飛びでケインに飛び掛る。拳を振り上げる。
だが、ケインはロイの顔面に催眠スプレーを吹き付けると、エレベーターの方へ歩き出した。
「ぐ…き……貴…様……!!」
「またすぐに会えよう。我が『息子』よ…」
カプセルのぼやけた光が歪み、ロイの視界は暗転して行った。
ロイが目を醒ました時、部屋の中は相変わらず暗く、カプセルの光が僅かな光源となっている。
その並んだカプセルの中にはまだロイと同じ姿の少年達が浮かんでおり、まるでこれが夢ではないとロイに
教えている様な――そんな威容を漂わせていた。
ひとしきり眠って目が覚めたからか、頭の中は不思議と落ち着いている。
だが、空っぽの脳内に最初に沸いてきた感情は――逃げようも無い、絶望。
ロイはふらふらとエレベーターに乗ると、「一階」と書かれたボタンを押した。
動き始めたエレベーターの中で、ケインの言葉を何とか理解しようとロイの頭脳がフル回転する。
だが、いくら考えようとしてもケインの声が響くばかりだった。
〔お前は、造られた人間だ〕
〔もはやお前は人間と言う存在から進化した新たなる種族なのだ〕
「俺の存在も…記憶も…全て、造られた物だとしたら……俺は、何の為に戦ってきた?」
エレベーターの扉が開く。――途端に、爆発音と熱風がロイを襲った。
エレベーターが出た場所は、旧大統領邸の近くだった。要するに、旧首都の中心部だ。
そして、そこで戦闘が発生していた。ロイが上を見上げると、道路を挟んで飛び交う砲弾やビームが見える。
共和国軍が、旧首都に突入したに違いない。ロイは一体何時間眠っていたと言うのか。
ロイはアルティシア達のホバーカーゴが見えはしないかと周囲を見回したが、影も形も無い。
ふと左の十字路に目をやると、ゼネバスのマークを付けたハンマーロックとガンスナイパーが
激しく撃ち合っている所だった。そして、ハンマーロックのすぐ脇に小さな姿が――民間人の少女が居る。
ロイはとっさに飛び出し、少女を抱える様にして再び飛んだ。直後、一瞬前まで少女のいた大地がハンマーロックの拳で抉られた。
難を逃れ、安堵したロイは少女の無事を確認しようとして視線を下げた。だが、肩を震わせて彼を見つめていたのは――
「―――あ…アイリス…?」
ベタ&重複気味なネタですみません…_| ̄|○
>>239 ええ、あなたのレスを読んだ当初はそうしようと思ったのですが…
今月の鉄魂読んで再び出鼻くじかれますた…ウトゥだ氏脳orz
…まあ、予備案もありますし、そちらから行こうかとも思っていますが。
「ったく…あのエーマとか言うヤツ…私をこんな所に落としやがって…おまけにマオちゃんに蹴られるし…今日はロクな事がない。」
「ええ?ハガネも!?エーマとか言うヤツに会ったの?」
「ああ…何かいきなり世界征服の野望ががどうとかバカ言っててさ、バカにしたらこうして
落とされた。あと、クーちゃんとギッちゃんも一緒に落とされたんだけど…どこ行ったのかな?」
「そう言えば…ラインとあの少年少女達は何処に行ったんだろう…。」
二人はそれぞれそう会話し、同じく落とされていた他の皆を探そうとしていたが、見つからなかった。
ハガネの持つ対人レーダーやセンサーを使っても、マオの気配探知を使っても、探知することは出来なかった。
「はあ〜何処に行っちゃったの〜?というよりもここ何処よ〜…。」
二人がそう言って途方に暮れていた。周りはだだっ広い空間と、金属製の壁と床、そして辛うじて
視界を作っている明かりがあるだけだった。一方その頃、別所では…、
「オイ!ここ何処だよ…。」
「さあ、私に聞かれても分かりませんね…。」
マオ&ハガネが落っこちた場所とはと別の場所では、ラインのジェネラル、そしてクライトのエナジーライガーがそれぞれ相まみえていた。
「ったくそれにしても大変なことになっちまったぞ、オイ!」
「そんな事は見れば分かりますよ。ここはどう見ても敵さんのお庭ですからね。気を付けた方がいいでしょうね。」
ラインとクライトは本来ならば敵同士という事を忘れて互いに周囲を警戒していた。
そして、さらにもう一方の場所では…、
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ドシャン!! ガシャン!! ドシャガシャン!!
「あいったたたたた…。」
例によってクーゴ達4人とそのゾイドも落っこちていた。ただ、メイの乗るバスターイーグルは
元から飛行可能なだけに、マグネッサーウィングで若干減速しつつ落下してきたので、普通に着地していた。
「いたたたた…、ここ何処だよ。」
4人は周囲を見渡すが、やはりそこは薄暗く、だだっ広い空間に、金属製の壁や床、あと辛うじて
視界を作っている明かりがあるだけであり、4人とそのゾイド以外には、気配すらも無かった。
と、その時だった。真上からさらにもう1体のゾイドが降下してきたのだ。そして、そのゾイドはしっかりと2本の足で上手く着地していた。
「まさか敵!!?」
突然の出来事に4人は思わず身構えた。しかし、そのゾイドを見たパッカーが口を開いた。
「いや、違う。これは昨日ポルトの港で見た帝国軍のロードゲイルだ。薄暗くてよく見えないけど帝国軍のマークがある。」
「否、これはアシュラゲイルと言い申す。所で、お主達は昨日の戦の時に乱入して来申した者達であり申すな?」
パッカーの言葉に、口を挟んだのはギフであり、そして、クーゴ達の目の前に現れたのは、
ギフの乗るアシュラゲイルであった。とりあえず敵では無いと分かったクーゴ達は体の力を抜いた。
「それにしても…ここは何処なんや?」
「恐らくここはあのエーマと名乗る者の基地なのであろう。」
グウの言葉に、ギフは冷静な言葉でそう言った。そして、ギフはさらに言った。
「こうなった以上何が起こるかは拙僧も分からない。ここはお互い協力するしかあり申さんな。」
「た…確かに…ここは協力した方がいいかもな。お…おいらはクーゴってんだ。そして、後ろにいるのがブーにパッカーにメイ。」
「ワイはブーやなくてグウや!!」
「拙僧はギフ=シンライと申す。」
ギフとクーゴ達4人の計5人は、そうして協力することになった。
「もうこうなった以上帝国だの共和国だの言ってられんね〜。ここから出る為に協力するしか無いでしょ?」
「右に同じ。ル○ン○世と銭○警部もたまに協力したりするしね。」
一方、マオ&カンウとハガネ&ゼノンも、そう言って協力する決意を固め、とりあえず周りを
歩き回って出口を探すことにした。しかし、そこは、通路の幅だけでも巨大ゾイドが10台以上横に
並べられる程広い上に、さながら迷路のようにやたらと入り組んでいた。
「うっわ〜…今どこを進んでいるのかすらわからん。これを作ったヤツの性格がにじみ出てるわん。」
何処に行けば良いか分からず、迷うマオは半ば呆れながらそう言うのだった。
「どうかね?ここの居心地は。」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!出たぁぁぁぁぁ!!!って何だ…ただのアイツのホログラムか…ってええ!?」
突然の何者かの声に幽霊か何かと勘違いしたマオは一瞬驚いたが、それは単なるエーマのホログラム
であった故に、冷静を取り戻したものの、エーマのホログラムという事に再び驚くというワケの
分からない事をしていが、確かにカンウとゼノンいる場所の正面に突然エーマのホログラムが現れたのだった。
「フ…この程度で驚くとは…大きな図体のゾイドに乗っておきながら、パイロットは弱気みたいだな。
その程度で最強クラスのゾイドの乗せてもらえるとは、共和国軍も高が知れるという物だ。」
マオが狼狽する様子を見ながら、エーマは、呆れ笑いをしながらそう言った。しかし、狼狽するマオとは対照的に、ハガネの反応は冷ややかだった。
「何だ…幽霊じゃないのか…面白く無い。」
以前にも書いたが、ハガネは超常現象について強い興味を持っており、オバケだの幽霊だのを怖がるマオと違って、むしろ会いたいという感情を持っていた。
「私が幽霊ではなくて残念だと言いたい所だが、私の用事は別の所にある…。」
「そんな事より!!他のみんなはどうしたのさ!!!」
エーマの言葉に、どうにか冷静さを取り戻したマオとハガネがそう叫んだ。しかし、エーマは顔色一つ変えずに答えた。
「フ…安心したまえ、他の皆はそれぞれ別の場所にいる。もちろん全員元気だよ。」
「ほ…本当でしょうね…。」
エーマの言葉に、マオは疑いの目を向けながらそう言うが、内心ほっとしており、胸をなで下ろしていた。そして、エーマはさらに言った。
「一安心した所でいいかな?私は、ちょっとしたゲームをしようと思っているのだよ。」
「ゲーム?」
「そう、ゲームだ。ルールは簡単。私が放ったザコキャラを倒しつつ、この通路を進み、最後に
待ち受けるボスキャラを倒す。これだけでOK。もちろん一度ゲームオーバーしてしまえば
コンティニューは出来ない。なぜなら君らの敗北は死だからだ。と、このような感じだが、いいかな?と、言っても君らに拒否権など無いがな…。」
エーマの言葉の後、どこからともなく、昨日ポルトを襲った怪ゾイドがカンウとゼノンの周囲に集まってきたのであった。
ファンブックスレによりますと、ワイツウルフのストーリーは、
正確にはジェットファルコンのストーリーから121年経っているとのことです。
ということはその21年がどうなっているのかなぞですね・・・。
多分その21年は戦争が続いてると思いますが、自分の話の場合、
こち亀やサザエさんやドラえもんの様に、「時代は進んでもキャラは年をとらない」現象が
続くと思います。少なくとも戦争が終わるまではキャラは年をとらずに進むでしょう。
「ろ…ロイ…!?」
アイリスは完全に状況が理解できなかった。当然だろう。
死んだと思っていた人間が目の前に現れるなど、ざらにある事ではない。
「あなた…生きてたの……?」
アイリスの声が震えている。困惑と、思いもかけぬ喜びが交錯する。
「――ごめん。君を危険な目に合わせたくなかったんだ…」
辛そうな顔をしながらも、穏やかな声で答えるロイ。
――何も変わっていない。正真正銘、自分の知っているロイだ。
「っ…馬鹿…!!……お父さんみたいに、また死んじゃったと…!!」
既に彼女の中で、ロイは「ただ一緒に居るだけ」の存在ではなくなっていた。だが、彼女がそれに気付いたのは
ロイが焔の中に消えた後だった。失って初めて気付いた想いに一層胸が詰まる思いもしてきた。
こんなに心配を掛けさせたのだから、顔の1つも張り飛ばしてやりたいとも思う。
だが、絶体絶命の危機にヒーローの如く現れて命を救ってくれたロイは、張り飛ばすにはあまりにもカッコ良過ぎた。
それだけ心配してきただけに、アイリスは以前との違いに気付いた。
「…どうしたの…?何で、そんなに悲しそうな顔してるの…?」
「いや…心配しなくていいよ」
自分が作られた存在であるなどと、彼女に言って何になるというのか。ロイは立ち上がった。
「…さあ、とりあえず戦闘地域は離脱しないと」
ロイがそう言った時、足下の大地が激しく振動した。
「地震かッ!?」
違った。旧大統領邸の敷地が真っ二つに割れ、口を開けた巨大な穴から何かがせり上がって来る。
「な、何…これ…!?」
姿を現したのは、視界に入り切らないほど巨大な――砲塔だった。
>>258 ギフが何故かカコイイ…
しかし、あれからまだ21年も戦争とは、両国一体どれほどの軍事予算が!?
(゚-゚)。○(エーマのヤヴァいロードゲイルは今回も見られるのだろうか?)
「分かったよ。けどね、そんなふざけたゲームを考えたあんたは後悔することになるよ。」
「だと良いな…。それでは、ゲームスタートだ。」
エーマがそう言い、ホログラムが消滅した直後、昨日ポルトを襲った物と同じタイプの怪ゾイドの群が四方八方からカンウとゼノン目がけて飛びかかってきたのだった。
「やぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「たぁぁぁぁぁぁ!!!!」
マオとハガネのそのような叫び声が響き渡った直後、怪ゾイドの群は一斉に鉄クズと化してあたりに
巻き散った。しかし、間髪入れず、第二波の攻撃がカンウとゼノンを襲ったのだった。
「うわぁぁぁぁめっちゃ怖えぇぇぇ!!!!」
「個人レベルでよくこれだけの物を作れたなー!!」
まるで津波のように押し寄せてきた怪ゾイドの大軍に、思わず二人はそう叫んでとっさに跳んで
かわしたのだった。目の前にいる怪ゾイドはキメラタイプであったが、所詮は小型機の部類であり、
性能的にはカンウとゼノンに比べて大した事は無いだろうが、いかんせん数が多すぎる。
いや、もう“多い”という言葉で表すのも安易過ぎる程の数なのであった。それ故に、二人は
自らの進行方向にいる機体のみの破壊に止め、ひたすら逃げるしかなかった。飛びかかってくる
相手も、振り払うだけに止め、目の前に現れた機体はひたすら踏みつぶしていくだけだった。
「うっわぁぁぁ何よこの数はも――――!!!うじゃうじゃうじゃうじゃ…中央大陸無双やってんじゃないのよ!!!」
自機の前後左右に展開し、次々に飛びかかってくる。怪ゾイドにビビリながら、半泣き状態のマオは
そう叫んだ。ちなみに、彼女の言った“中央大陸無双”とは、現在大ヒット中のテレビゲームの
タイトルであり、旧中央大陸戦争が舞台となり、プレイヤーがかつての英雄やエースパイロットを
操って群がる敵をなぎ倒しまくるというアクションゲームなのである。そして、今マオとハガネの
周囲に敵が群がる光景は、さながらそのゲームの1シーンのごとき異様であった。
「もう、中央大陸無双だってここまで苛烈じゃないわよ!!!ってうわ―――!!マオちゃん後ろみて―――――!!!」
「何――?後ろ―――?ってうわ―――――――!!!」
ハガネの言葉にマオが後ろを見た時、ある光景にマオは思わず悲鳴を上げた。なんと、本来小型機の
怪ゾイド群が、ブロックスのチェンジマイズの様に多数の機体と合体し、それぞれ中型や大型の
機体になっていったのだった。しかも、それがもの凄い数で迫ってくるのだから、悲鳴をあげて
しまうのも無理はなかった。しかも、必死なのはパイロットだけではない、ゾイド自身も必死だった。
自然界という名の戦場で数多くの修羅場を経験してきた完全野生体や、怖い物知らずの
真オーガノイドも、流石にこの状況は相当に怖い様子らしい。カンウとゼノンは必死になって
逃げ回った。とその時だった。追撃モードで逃げるカンウがある場所を踏みつけた時だった。
突然カチッという音と共に、その場所が若干下がったのだった。
「え?カチ?」
マオがそう言った直後だった、突然巨大な槍の様な物が、もの凄い速度で飛んできたのだった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
マオとハガネは思わず叫んだ。二人はどうにか回避出来たが、その後ろにいた怪ゾイドがその槍の直撃を受けて数機まとめて串刺しにされていた。
「うっわ〜…あんなの食らったらイチコロじゃん…。」
「まさか罠まで仕掛けてあったとは…。これを作ったのはよほどセコイ男と見える…。」
二人は思わず青ざめた。特にマオにとって、これはもの凄く怖い物であった。なぜなら、いわゆる
“仕掛け罠”と言う物は“殺気”など無いからである。ゾイドの武器であるならば、パイロット、
もしくはゾイドそのものから、“殺気”と言う物が発せられる為、それを感じ取る事の出来るマオは
事前に攻撃を察知して回避行動をとることが出来、彼女とカンウ自身の反応速度と運動性能も
相まってゼネバス砲の回避なども出来るわけだが、仕掛け罠という物は前述べた通り、殺気など
無いのだから、意外と回避が難しいのであった。まあ、彼女の反射神経なら殺気が無くとも、
見極める事が出来ないこともないが、四方八方から敵が襲って来るという極限状態がそれを妨害するのであった。
そんな妨害にもめげずに、二人は逃げ続けた。しかし、「入り組んだ迷路+もの凄い大軍+数々の
セコイ罠」というトリプルコンボは数々の修羅場を勝ち抜いてきた二人と二機をもってしてもたじたじさせる程の物だった。
「うっわ―――――!!ボスキャラって何処にいんのよ――――!!!ハガネ――!!あんたのコンピューターで何とかならないの―――!!?」
「無茶言うな!!!流石にこんな状況下は想定してなかったぞ!!!」
「この役立たず――――!!!お前なんか戦闘用ロボットやめてメイドロボットにでも転職して“はがねまてぃっく”とかなんとか言ってろ!!」
「何―――――!!!?気にしてる事言ったな―――――――!!!」
「そうかい!!何度でも言ってやるよ!!はがねまてぃっく!!!!はがねまてぃっく!!!!はが…。」
ゴイ――――――ン!!!
「うあ…。」
時と状況をわきまえずに仲間割れをしていた二人はうっかり罠を踏んでしまい、その罠から
飛んできた巨大なピコピコハンマーによって頭を強打され、そのままぶっ倒れたのであった。
そして、倒れ込んだカンウとゼノンに四方八方から怪ゾイドが飛びかかり、巨像に群がる蟻の様に
思い切りのし掛かってきたのだ。いかにゴジュラスギガ、デススティンガー(真)とてこのような
状況になっては一溜まりもない。かつてゴジュラスも、レブラプターの大軍にたかられてバラバラに
されたという事実もあるのだ。下手をすればこのままやられてしまうと言う事もあり得る。が…
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
二人の叫び声がシンクロし、その二人の闘争心とそれぞれリンクしたカンウとゼノンが雄叫びを
上げながら思い切り自らにたかった怪ゾイドを振り飛ばしたのだった。二機に取り付いていた
怪ゾイドの大軍はたちまち鉄クズと化して辺りにまき散らされた。
「ハア…ハア…こりゃもう仲間割れしている場合じゃないよ…。とにかくこの迷路を何とかしなきゃ…。」
「ハ!!そう言えば昔、迷路は片方の壁にそって進めば必ず出口にたどり着くという話を聞いたことがある…。」
「それだよ!!マオちゃん頭いい!!拳法と料理だけが能じゃないのね!!!」
「とにかく行くよ!!!」
マオとハガネがそう会話した後、カンウとゼノンは前進を再会した。そして、自身から左側の壁にそってひたすら進むのであった。
雑談スレその他によると、ワイツタイガー以外の2機の伝説虎が発表されたそうです。
今年のトミーは虎に力を入れるという文章に関しても萎えたりしたのですが、
逆に自分が暖めている新シリーズの創作意欲そのものは沸いてきました。
後はワイツウルフとサビンガのバトストを読んで、恐らくそれに載っていると思われる
100年後の世界観を理解すれば新シリーズの執筆に取りかかれるのですが、
ワイツ&サビンガの発売日っていつなんでしょうね?今月下旬という事は分かりますが。
>>失われし者への鎮魂歌作者さん
>(゚-゚)。○(エーマのヤヴァいロードゲイルは今回も見られるのだろうか?)
今はまだ秘密ですが、もっとヤヴァいのが登場します。
「…これは…一体…!?」
長大な砲身は、楽にに1000mを超える巨大さだ。それが火の手の上がる町に突然現れた。
まるで、場違いなオブジェの様に。
周囲で戦闘を続けていた両軍のゾイドが動きを止め、訝るように巨大な砲身に近付いていく。
だが、巨砲の土台と見られる部分から無数のゾイドが出てきた。殆どが同じ様な形をしている。
それはまたしても――以前とは比べ物にならない数だが――サイクロプスの大群だった。
一人の共和国兵が、シールドライガーで突撃する。中型ゾイドと甘く見たのだろう。
「まだいたか、ゼネバスの侵略者どもがぁーーッ!!」
しかし、先頭にいたサイクロプスの角が一閃すると、ライガーは縦に両断された。
民家の上に居たジェノザウラーが、荷電粒子砲を吐き掛ける。が、今度は弐式の角がそれを防ぐ。
そのまま、ジェノザウラーは爆裂鉄球砲に貫かれて絶命した。
「また…サイクロプスか…!!あの基地外科学者…!!!」
「あ、あのゾイドは何なの…?」
おずおずと尋ねるアイリスに、不謹慎と思いつつもロイは安堵した。
この状況では、しばらくあれからの事を根掘り葉掘り聞かれる事はあるまい。
「俺のディアブロタイガーと同じで、別の時代からやってきたゾイドだ。…さあ、尚更逃げなきゃな」
ロイはアイリスの細い手首を掴むと、西へ向かって走り出した。
少なくとも町の西部には、共和国軍が布陣している筈だ。
そういえば、とロイは愛機の事を思い出す。アルティシア達も一緒だ――無事なのだろうか?
夕陽の逆光で黒く聳える砲塔は、戦闘地域と化した旧首都に不吉な影を落していた。
一方その頃、ライン&クライト、ギフ&クーゴ達も同じようにエーマから無理矢理ゲームを押しつけられており、怪ゾイドの大軍や数々のセコイ罠に襲われながら、入り組んだ迷路をさまよっていた。
「ったく何だってんだこれは!!!」
「そのような事を私に言われても困りますね。」
雪崩のように押し寄せてくる怪ゾイドの大軍のわずかな隙間を縫うように超高速で走り抜く
ジェネラルとエナジーライガーの中でラインとクライトはそのような事を言っていた。
「うわあ!!」
「ギャア!!」
「死ぬぅ!!」
一方ギフ&クーゴ達チームの方では、そのような叫び声が響き渡っていた。ギフは冷静かつ軽やかに
怪ゾイドの猛攻や数々のセコイ罠をかわしていたが、クーゴ達はさながらギャグマンガのように、
どうにか突破しているという感が強かった。
「このままではいかぬな…拙僧は無事でもあの少年らはそうはいきまい…。」
そう内心そう思ったギフは、クーゴ達に向かって言った。
「皆拙僧の後ろに周りたまへ。」
「え?何で?」
「と…とにかくあの坊さんの言う通りにしよう。」
クーゴ達はワケが分からなかったが、藁をも掴む思いでギフのアシュラゲイルの後方に回った。
その時、正面から怪ゾイドの大軍が雪崩のように押し寄せていたのだ。
「き…来た――――――――!!!!」
クーゴ達は一斉に青ざめて思わずそう叫んだ。しかし、ギフは顔色一つ変えずに、両手を会わせ、何か呪文のような物を唱え始めたのだ。
「南無網阿修羅観音仏…渇!!!!」
ギフがそう叫んだその直後だった、突然怪ゾイドが同士討ちを始めたのだった。
「え?何が起こったの?」
「拙僧があの物の怪達に幻術をかけ申した。今の内に…。」
「ええ?幻術って…?あ!待って!!」
ギフいわく、“幻術”をかけられ、同士討ちを始めた怪ゾイドを尻目に立ち去るアシュラゲイルの
後を追って、ギフが一体何をしたのかワケの分からないクーゴ達4人のゾイドがとまどいながらもその後を追った。
「いやいや、思ったよりもみんなやるじゃないか…。」
どこかの部屋の中で、テレビモニターに写し出されていた、四苦八苦しながらもどうにか進んでいくマオ達の姿を見ながら、エーマはそう呟いていた。
「うわ――――――――!!!」
「ぎゃ――――――――!!!」
「ひぃ――――――――!!!」
「死ぬ――――――――!!!」
その後も、マオ達のそんな叫び声が迷路中に鳴り響き続け、しばらくの間鳴りやむことはなかったと言う。
怪ゾイドの方は人海戦術ならぬ、機海戦術というワンパターン戦法であり、迷路の方は片方の壁に
そっていけば大丈夫戦法のおかげで皆何とかなったが、それ以上に、数々のセコイ罠の方が
問題だった。なぜなら、そのセコイ罠のバリエーションはとてつもなくバラエティーに富んでおり、
レーザーや砲弾はおろか、槍や矢が飛んでくる仕掛け罠をはじめとして、落とし穴、いきなり床や
壁から飛び出てくる巨大ハンマーや巨大チェーンソー、いきなりどこからか転がってくる巨大な鉄球、
果てには紐でつるされたコンニャクなど、様々な罠が存在したのだった。
「あ!そう言えば、中央大陸無双でも、基地内戦とかでこういうの罠みたいなの無かった?」
「あ〜あったあった!落とし穴とか色々あったよね!この基地作った人もファンなのかな〜…。」
怪ゾイドを踏みつぶし、罠をかわしながら通路を進んでいくカンウとゼノンの中で、マオとハガネはそう会話していた。
「ックシュン!!!風邪か…?」
時を同じくして、エーマはくしゃみをしていた。それからしばらく後、通路をひたすら進んでいた
カンウとゼノンの中で、マオとハガネが遥か正面に何かが見えることに気付いた。そこには巨大な扉の様な物があった。
「あ…あれってもしかしていわゆるゴールってヤツ!!?」
「やった――――!!!これであとはボスキャラってのを倒せば私達の勝ちだ!!!」
バターン!!!!
二人は喜び勇んでその扉を思い切り開いた。と、そこにはさらにだだっ広い空間が広がっていた。
カンウとゼノンを普通の人間の大きさとするならば、その空間はそのへんの学校の体育館に相当する広さだった。
「うっわ〜よくこんなだだっ広い空間を地下に作ったもんだよ。」
「今さっきまで通ってきた通路もそうだけどね。」
二人がそのような事を言っていた時だった、その空間の向かい側正面に一体のゾイドがいる事に気付いたのだ。
「マオちゃん気をつけな!何かいる。」
「分かってる。」
二人は互いにそう言い、同じくその一体のゾイドの気配に気付いていたカンウとゼノンも身構えた。
そして、二人と二機の眼前にまで近づいてきたそのゾイドはウルトラザウルス程にもある巨大な
亀型のゾイドであった。しかし、その形状はマオとハガネが知っているゾイドとは違う物だった。
確かに亀型のゾイドではあるが、その形状、設計思想は共和国軍にも、帝国軍にも該当しない…、
という以前に機械であるのかすら怪しいほど生物的な体つきをしていたのだ。
「俺はエーマ様を護る三鬼衆の一機、心・技・体の内、“体”を司る“体鬼”。」
「!!!!?」
その言葉にマオとハガネは驚いた。先程の言葉を、その目の前の亀型ゾイド自身が喋っていたのだ。
何かの聞き間違いではなく、確かに先程の言葉を目の前の体鬼と名乗る亀型ゾイドが直接そう
言ったのだ。それを証拠に、その言葉を言っていた際に口も動いていた。普通にパイロットが
搭乗して、内部のコックピットからマイクを通じて喋っているのであるならば、若干の機械音等も
聞こえるはずであるが、それがまったくと言って良いほど聞こえなかった。
「あ…あんた…まさか喋れるの…?」
「そうだ。」
マオの言葉に、確かに体鬼と名乗る亀型ゾイドは頷きながらそう答えるのだった。人語を喋るゾイドとの対面という初めての経験に、マオは焦りを隠せなかった。
「ゾイドが喋るなんて事が、本当に出来るの…?ロボットだけど人間並の感情を持ってるハガネなんて言う例もあるけど、コイツの場合は存在自体がほとんどギャグだし…。」
「それはひょっとしてギャグで言っているのか。」
閻魔の策動の作者さんへ
”体鬼”が亀…まさか四神か四聖でしょうか?四神は玄武、白虎、青龍、朱雀。
四聖は名前が解らない者も有りますが…老亀、麒麟、応龍、鳳凰だった気が…。
うろ覚え駄目ですね。
まさか”「それはひょっとしてギャグで言っているのか。」”たまたまにているのネタが手元のあるのですが…。
偶然ですよね。やっぱり。
失われし者への鎮魂歌の作者さんへ
こう言う話には”きちがい科学者”は外せないものですよね。もしやロイは…?
マオの言葉にハガネは思わずそうツッコミを入れた。その直後、体鬼は再び言った。
「俺はエーマ様の命令で貴様ら二人の殺害と二機の破壊を命じられている。故にこれから戦うワケだが、これを見ろ。」
体鬼がそう言って頭を左側を向けた時、そこには巨大な何かが建てられていた。
「貴様等の墓だ。貴様等の遺体とそのゾイドの残骸は、あの墓の中に収められ、その魂は永遠の黄泉の国へと旅立つのだ。」
「それはどうも…。しかし…私たちは死なないよ。そんなご厚意も、無駄にしてあげる。」
「ほう…。貴様等ごときが面白い事を言う物だ…。」
マオの言葉に、体鬼はそう言って笑みを浮かべた。
一方その頃、同じくゴールに到達したライン&クライトの前にジェネラルとエナジーライガーよりも
一回り巨大な、一体の虎型のゾイドが立ち塞がっていた。そして、その虎型のゾイドも
共和国の物とも帝国の物とも異なる設計思想をしている以前に機械なのかすらも怪しい程生物的な体つきをしていた。
「我はエーマ様を護る三鬼衆の一機、心・技・体の内“技”を司る“技鬼”。」
「お…おい!!!こいつ喋ったぞ!!!」
「そんな事見れば分かります!それにしても…あのエーマとか言う男…。ただの変人かと思ったらなかなかどうしてかなりの技術を持ってるみたいですね…。」
ラインとクライトも、やはり技鬼と名乗るゾイドが喋る事に驚きを隠せ無いでいた。
「それでは…エーマ様の命令通り、我はお前達を殺させてもらう。」
技鬼はそう言いながら身構えた。それに反応してラインとクライト、ジェネラルとエナジーライガーもとっさに戦闘態勢に入った。
「気を付けて下さい!先程までのザコとは違う様子です。」
「ああ、確かにその様子だ。ヤツの気迫は半端じゃねえ。ジェネラルも緊張しているからな。」
「あれから、どれほどの腕を上げたのか…私は貴方の実力を期待しています。」
「ああ!俺だって、以前にお前が初めて俺の目の前に現れた時の、俺やみんなをたった1人で翻弄したあの時のお前の実力を期待するぜ。」
「来ますよ!!」
ラインとクライトがお互いにそう言い合った直後。技鬼はもの凄い速度で飛びかかってきた。
そして、ギフ&クーゴ達組も同じくゴールインしており、最後に待ち受けていた一体のゾイドと
対峙していた。そのゾイドはドラゴン型のゾイドであった。しかし、ドラゴン型と言っても、
マトリクスドラゴンやキメラドラゴンなどに代表される、いわゆる西洋的な竜ではなく、
ヘビの様な長い体を持つ、いわゆる東洋的な“龍”であり、やはり生物的な体つきをしていた。
「私はエーマ様を護る三鬼衆の一機、心・技・体の内、“心”を司る“心鬼”。」
「うわぁぁぁ!!こいつしゃべりおったぞ!!!」
心鬼も、やはり例によって喋るという事実は驚かれていた。
「うおおおお!!!!」
「うわ!!!凄いパワー!!!」
体鬼の体当たりがカンウを吹っ飛ばした。一見鈍重に見えた体鬼の動きは想像以上に素早く、そして
パワーも予想を遥かに上回る物だった。体鬼の体当たりで吹っ飛ばされたカンウは空中で回転して
数百メートル後方に着地、そのまま体勢を立て直そうとしたその時だった。
「まだまだぁ!!!!!」
体鬼が叫んだ直後、それまで4足歩行だったのが、突然2足歩行に立ち上がり、その2足歩行のまま
もの凄い速度と勢いで体当たりし、そのまま両前足でカンウの体を押さえつけつつさらに押しながら走り、壁に向かってカンウを思い切り打ち付けたのだった。
「ぐはぁぁ!!!」
もの凄い衝撃がマオとカンウを襲った。カンウの古代チタニウム合金のボディーがきしむ。
その一撃は並のゾイドなら、苦もなくたちまちペシャンコになる程のパワーであった。そして、マオの吐血がコックピット内のモニターに飛び散った。
「ハア…ハア…なんっつーパワーよ…。うああ!!!」
体鬼は一歩二歩後ろに下がり、壁に押しつけられたカンウに向かって再び体当たりをかけてきたのだった。マオが再び血を吐き、コックピット周辺に飛び散った。
「どうしたどうした!!!!俺が何で体鬼と呼ばれているか分かったか!!?この通りパワーに優れているからだよ!!!」
「ぐわ!!うわ!!」
間髪入れずに体鬼の両腕の張り手が連続でカンウの顔面を襲った。もの凄い破壊力。その力はデスザウラーの比ではなかった。
「マオちゃん!!!!」
ハガネがそう叫んだ直後、ゼノンは体鬼の側面に回り込み、両腕に装備された巨大なハサミ、
ストライクレーザーバイトシザースが、もの凄い速度で体鬼の背中の甲羅を襲った。速く、
そして重い、超重装甲をも切り裂く強力な一撃。直撃。が、しかし…
「な…。」
ハガネとゼノンは唖然としたゼノンの両腕のストライクレーザーバイトシザースの一撃が体鬼の
甲羅に直撃した直後、ガキンという音と共に、シザースが弾かれたのだった。
「これならどうだ!!!」
今度は、ゼノンの両腕に収納されたレーザーカッターを展開し、甲羅に斬りつけた。しかし、
これも弾かれた。信じがたい事であるが、体鬼の甲羅は、ハガネの想像を上回るほどの固さを持っていたのだった。
「邪魔をするな!!ふん!!」
「うわぁ!!!!」
体鬼が、片腕でゼノンをはらった。その無造作な一撃で、300トンの重量を誇るゼノンが宙を舞った。
「ハガネ!!!くっそ―――――!!これならどうだぁ!!!」
マオはそう叫び、ゼノンを攻撃する際に出来た体鬼のわずかなスキを狙って、機体を側面に移動させ、
そのまま右爪を振り下ろして体鬼の右腕に叩き込んだのだった。
ぶちゃあ!!
「え…?ぶちゃあ?」
カンウの右爪が体鬼の右腕に叩き込まれた直後、体鬼の右腕は苦もなく切り裂かれた。甲羅とは違い、
腕などはそう固い物では無かった様である。しかし、その時の手応えにマオは違和感を感じていた。
それは、“機械”を切り裂くと言うよりも、“生体“を切り裂くと言った感じの手応えであり、
さらに、オイルとは違う緑色の液体が飛び散ったのであった。
「何かキモイ…でもまあヤツの右腕は使い物にならなくなったんだ!!このまま攻撃を続ければ…。」
「勝てると良いな?」
マオの言葉に対し、体鬼がそう言った。体鬼は右腕が切り落とされたのにも関わらず、全然戸惑ってはいなかった。
「フッフッフッフ…。」
「何がおかしい!!!あんたの右腕はもう使い物にならないんだよ!!それともただの強がり…ってええええええ!!!!?」
不敵な笑い声をあげる体鬼に対し、体勢を立て直したハガネがそう叫んだ。なんと、体鬼の切り落とされた右腕があっという間に再生したのだった。
>>恐怖の亀裂作者さん
>”体鬼”が亀…まさか四神か四聖でしょうか
まあ意識はしていますが、それほど細かくは考えていませんでした。
現に三体しか出てきませんし。モチーフを何にするか考えてた時に
ふと頭に浮かんだのを使っただけですから。
町の郊外を振り返ったアイリスは、ビルの向こうに何かが動いているのが見えた。大きい。
建造物の隙間から見えた機体は、ウルトラザウルスだった。
「ロイ、あそこにウルトラザウルスが…」
「ん!?…おお、ひとまずあれに拾ってもらうとしよう」
ロイはポケットから短距離無線を取り出し、ウルトラザウルスのコックピットに呼びかけた。
「…こちら、本作戦特設師団第2中隊所属、ロイ=アーベル!機体を見失ったので収容を頼みたい!」
倫理的に考えて奇怪な光景である。十代半ばといった少年がプロの軍人の如く無線で会話している。
――実際に、一応プロの軍人ではあるのだが―――
相手方から応答があった。
<こちらは、強襲戦闘隊第8機甲師団―んな事はどうでも良い―…生憎だが、今正面に敵機を確認した!
30秒だけ止めてやるから、その間に上って来い!!>
ウルトラの機体が停止し、その巨体の上部、ビークルの発着口と見られる箇所から梯子が下ろされた。
「えっ…30秒であれを上れって言うの?」
呆気に取られるアイリスの前で、ロイがしゃがんでアイリスの前に出る。
「…俺の背中に?まっててくれ。多分俺のほうが速いから…」
「え、でも!」
「いいから!時間が無いんだ――ホラ、行くぞ!!」
戸惑うアイリスをひょいと背負い上げ、ロイは素早く梯子を上り始めた。
〔大丈夫だ、俺なら彼女を背負って梯子を上るくらいできる…何故なら俺は…〕
驚くべき速度で数十mの梯子を上り切り、「凄い」といった顔でロイを見ているアイリスを見つめ返しながら
ロイは自らを皮肉った。
〔何故なら俺は…そんな事も出来るように造られてるんだからな…〕
ウルトラザウルスが動き出した。ロイは身を乗り出し、「前方の敵機」を見定める。
サイクロプスだ。だが、ロイが戦ったことの無い武装形態。正面に一門の砲塔が装備されている。
それが3体、ウルトラザウルスに向かってくる。
ウルトラがミサイルポッドを撃ちまくる。一機のゾイドとは思えない火力だが、
サイクロプスの強固な装甲には降り注ぐミサイルの嵐も意味を為さない。
「くっ…360mmリニアキャノン照準!!――放て!!」
サイクロプスの砲と、ウルトラのリニアキャノンが同時に火を噴いた。
サイクロプスの重装甲も、ウルトラザウルスのコアが生み出す巨大なエネルギーによって加速された
リニアキャノンを受けては耐えられない。3機はいずれも頭部を吹き飛ばされ、崩れ落ちた。
だが、ウルトラザウルスのダメージは予想を超えて大きかった。
「両前脚、被弾!!ダメージレベル30%!8連ミサイルランチャー破損!」
「隔壁閉鎖!…クソッ、一機の中型ゾイドにこれ程の破壊力を持たせるとはッ…!!」
巨大な砲塔の下から次々と現れるサイクロプス。だが、懸命の集中砲火を浴びせる帝国軍を
嘲笑うかのように更に大量のサイクロプスが現れる。
「何て数だ…」
個体ごとのスペックも最新鋭機に劣らぬ性能を持つこの機体を、一体誰がどの様に量産したのか。
町の中心部から湧き出たサイクロプス達は、放射状に広がっていった。
その頃、旧首都を護る拠点、マウントアーサ要塞は壊滅状態にあった。
僅かに残った残存部隊が空を舞う「何か」に砲火を向ける。だが、全く当たらない。
空を舞う「何か」とは、荒野より飛来したリーパーであった。
セイスモサウルスがゼネバス砲での狙撃を試みる。だが、それはリーパーの直前で消失した。
――正確には、リーパーの触手がゼネバス砲を吸収していたのだが。
空からゼネバス砲が返って来る。それも、リーパーのエネルギーが追加されて。
薙ぐ様に一閃した荷電粒子は、マウントアーサの巨大な要塞を真っ二つに切り裂いた。
来てない内に400越えキタ―――(゚∀゚)――!!!
>>恐怖の亀裂作者氏 気が付いてみれば一作目にもいましたがね、マッド科学者。
サイクロプスが大量に出てくるシーンは、マトリックス・レボリューションズの
センティネルスが大量に現れるシーンを想像して頂くとイメージしやすいかと。
>>閻魔の策動作者氏 エーマがこんなに話のわかるヤツだったとは!
今更ながらはがねまてぃっく爆笑w
「よし…ストライクワイバーンを3体放て。装備は無しでだ。レーザーバルカンで充分だろう。」
サーベラスの命令により天井の一部が開き小型のターゲットドローンが3機射出される。それは器用に折り畳んだ翼を広げそこに隠された長い首と尾を伸ばす。
「良く聞きたまえ中尉!今そちらに操縦訓練用のターゲットドローンを3体向かわせている。そこで君の実力を知りたいと言う事だ。」
その言葉にファインは「うぐっ?そっそれは無いのではありませんか!?」と表情を曇らせる。しかしそれは他人の事情だ。自分に不備が有ろうと無かろうと相手はどうしても”実力”が見たいらしい。
それはターゲットドローンと戦えという意味だった…。
頭上から空気を割く羽根の音が聞こえてくる…よりにもよって射撃訓練用の飛行型と来たものだからたまったものでは無い。
尾にレーザーバルカンが2機着いているようでその場ではばたきながら攻撃を始める。「うわたたたたぁ〜〜〜。」
何故か役に立ったフレキシブルウェポンドライバー自走機能で難を逃れるが根本的な解決には成っていない。
このまま彼等の所に逃げ込もうかと思ったが先手は既に取られておりいっていの範囲以上動けないようにスレイプニルVが構えていた。
「逃げ場無しでありますかぁ〜?しょうがないでありますねぇ〜…ではっ!!!」フレキシブルウェポンドライバーを振り返りながら構え直した彼の表情は例の如く気合いが入り過ぎた濃い物に成っていた。
今回は修理中のパーツとは違いまた幾つかの形態が差し替えになっているらしくホバーボードに成っていた。
「ほう…私にも解らない形態が有ったか…。」サーベラスは満足そうに頷く。彼は既に勝敗が決まっている事が解ってなおどれだけの実力が有るかを知りたかったらしい。
案の定何処かで見たような事が有る攻撃で3体の内の1体を破壊している。ホバーボード形態なら多少の段差に乗り上げる事で空中に飛び立てる。
後は推力と背中から広げた甲殻皮膚で舵取りすれば多少の制御が出来る為行動パターンの単純な彼等に遅れを取る事は無い。残りの2機を同時に両手に握られたニードルガンで撃ち落とす。
床に降り立った彼は思いっ切り決めポーズを取る。しかしそのポーズは何処かのロックバンドが格好良いと勘違いしているようなポーズであった為周りに変な空気が漂っていた…。
遂にたまらなくなったのか誰かが笑い出すとそれに釣られて周囲の者も吹き出してしまった様だ…。
「やられたっ!?」そんな空気の中サーベラスだけは笑えなかった。完全なる”個人スタイル”の戦闘方法。
”個人スタイル”の戦法は非常に複雑怪奇で常識もへったくれも無いスタイルが非常に多い。その上一部似ていてもその癖やその後の行動も一貫性が無い。
要するに”相対した時に有効な戦法がまず無い”のである。しかも今回は奇異極まる兵装と相まって正確な行動パターンが取れないでいる状況だ。
この場合の相対した時に取れる方法は…ひたすら後手に回るか動く前に仕留めるの二つしかない。両方とも危険な賭になるので有効ではあるが有用な方法ではない。
更に間の悪い事に外部スピーカーの電源が入っていたらしく大音量で笑い声がこの区画全体を覆ってしまったのである。「不味い!直に避難を開始しろっ!他の奴等が来るぞ!」
取り立てて今の状況ではこの区画は重要では無い。その為状況は見過ごされたされたままで寄生体や生物兵器の類の排除は行われていないのは当然だった…。
「どうやらどさくさに紛れて…とは行かないみたいでありますね。」目の前に一番乗りだろう生体兵器が居る…不味い事に興味津々と言わんばかりにファインを見詰めているのだ。
「…っと言う訳で。」180度回転して何事も無かったかの如く歩き出すが生体兵器には何事か有った様だった。嬉しそうに甲殻皮膚を掴むと子供が蜥蜴の尻尾持ち振り回すようにぶんぶんと振り回される。
「ああ…気持ち悪いであります…。」そう思いながらも彼が飽きて振り回すのを止めるのを待つ事にしたファインだった。
レクスは先の騒ぎの為怖くなって愛機のコクピットで毛布に包まり丸くなっていた…。「ここが一番落ち着く…。」修理は略終了していたようだが肝心の起動用エネルギーが確保されていないらしく機体は動きもしなかった。
「このままやり過ごせますように…。」祈るような気持ちで体を動かさずにいた。しかしどうやら彼も誰かに見られていた様だった。キャノピーをこんこん軽く叩きながらこっちを向いてと言わんばかりに生体兵器がアピールをしている。
「死んだ振り死んだ振り…。」彼が目線を逸らしているのはファインを振り回している者と全く同じ種類の者だった…。
「う…ウソでしょ…?」
その体鬼の再生を目の当たりにしたマオは唖然としていた。その再生は、まさしく先日ポルトで戦った怪物ゾイドの再生とうり二つだったのだ。
「うっわぁぁぁぁ!!クソ強い上にこんな滅茶苦茶な再生能力持ってるなんてぇ!!どうすれば勝てるのよ―――――うわぁぁぁん!!!」
マオは頭を抱えて思わずそう叫んでいた。一方、同じように体鬼の再生を目の当たりにしたハガネも何か心当たりがある様子であった。
「やはりあの再生…どこかで見たことがある…どこかで…。」
ハガネは、先日のポルトでの戦い以前に、体鬼の再生と似たような物をを見た記憶があった。
しかし、現在は戦闘中であり、自らの脳内でそのような記憶を検索する余裕など無かった。
「うわ!!!速い!!!」
技鬼はその巨体からは想像も出来ないスピードで、ジェネラル=ライガーゼロファルコン&
エナジーライガーという、タッグを組んだ共和国・帝国両軍の最強高速ゾイドをたった一体で圧倒していた。
「これならどうだ!!!」
ラインがそう叫んだ直後、ジェネラルの背中のバスタークローが高速で回転し始めた。そして、
それにあわせるかのように、クライトもエナジライガーのエナイーウィングを展開した。
スパークを起こしながら高速回転するバスタークローと、タキオンの光を纏ったエナジーウィングが
同時に技鬼を襲った。共にまともに食らえば巨大ゾイドも一撃で倒すことが出来る強力な武器である。しかし…
「我には効かぬ…。」
技鬼がそうつぶやいた直後だった、技鬼の体が超高速で回転し、バスタークローとエナジーウィングをゾイドごと弾き飛ばしたのだった。
「な…なんだと…?」
「我がなぜ技鬼と呼ばれているのか教えてやろう…。それは我が多彩な技を持っているからである…。」
「な…なんてこった…。」
技鬼の言葉に、ラインは思わず唖然としながらそう言った。
「なかなかやり申す…。」
「お前もな…。」
他の二組と違い、ギフは心鬼と互角の勝負をしていた。心鬼の突進をアシュラゲイルが軽やかに
かわしつつ、マグネイズスピアで突き刺そうとするも、心鬼は体をくねらせてその攻撃をかわす。そのような互角の勝負が続いていたのだった。
「あの坊さん…なかなかやるで…。」
「ああ…これならおいら達が戦わなくても勝負が付いちゃうかもな。」
「何か僕たちの立場が無い気がするけど…。」
「でも、私たちに下がって見ているように言ったのはあのお坊さんよ!」
アシュラゲイルと心鬼の戦いを距離を置いたところから、他人事の様に眺めながらクーゴ達はそのような会話をしていた。
「ハア!!!!」
心鬼の口が開き、アシュラゲイルに向けて怪光線が放たれた。しかし、ギフの表情に戸惑いはなかった。
「南無網阿修羅観音仏…渇!!!」
ギフがそう唱えた直後、アシュラゲイルの正面に何か透明な壁のような物が現れ、その怪光線を防いだのだった。
「面白い物を持っているな…Eシールドでは無いな?」
「阿修羅流奥義の一つ、阿修羅結界であり申す…。」
感心する心鬼に対し、ギフはそう言った。そして、今度はアシュラゲイルが心鬼に向かって跳んだ、しかし…
「ハア!!!」
どぉぉん!!
「むう!!」
心鬼が気合いを入れてそう叫んだ直後、何か衝撃波の様な物がアシュラゲイルを吹き飛ばしたのだった。
「ああ!!!」
その様子を見ていたクーゴ達は思わずそう叫んだ。
「私がなぜ心鬼と呼ばれているか教えてやろう。私は心力に優れているからだ。研ぎ澄まされた心力によって、君らの言う超能力を使うことが出来る。」
心鬼は自信ありげに言うが、ギフとアシュラゲイルは何事もなかったかのように起きあがった。
「ならば拙僧も見せ申す。阿修羅流の奥義の数々を…。」
ギフはそう言って両手を合わせるのであった。
「おらあぁぁぁ!!!」
「うわぁぁぁ!!!!」
体鬼が片腕でたやすくカンウとゼノンをたやすく吹き飛ばした。しかし、どうにか二機は上手く着地してそのまま体鬼から離れ、距離を取った。
「なんっつーパワーよもう!!さらにはヤツの甲羅はクソ固い上に再生能力まで持ってるし…。」
「ヤツを倒すにはヤツのコアを砕くしかない。しかし、かと言ってヤツの甲羅を砕くのは至難の技。こうなったら力を一点に集中させるしかない。」
「おたくん所のセイスモサウルスがいつもやってる作戦ね。」
次の瞬間、カンウとゼノンは二手に分かれ、カンウは体鬼の左側面、ゼノンは右側面に回り込んだ。
「これでどうだぁぁぁぁ!!!!!!」
ゼノンが素早く体鬼の右側面に回り込んだ後、目を赤く光らせたハガネが叫び、それに呼応するかの
ように目から赤い光を放ったゼノンの尾から超高出力の荷電粒子砲が体鬼に向けて放たれた。
しかし、その一撃はまともに直撃したにも関わらず、体鬼の固い甲羅は苦もなく受け止めていた。
「な…なんてこったい…。」
体鬼の甲羅の底知れぬほどの強度にハガネとゼノンは共に唖然とした。
「ならばこれならどうだ!!!」
今度はカンウが体鬼の左側面から躍りかかった。次の瞬間、カンウの右足がかすかな光を放った。
「神聖寺!!気功爆砕脚ぅ!!!」
神聖寺気功爆砕脚とは、西方大陸拳法総本山“神聖寺”の奥義の一つ、生命エネルギー“気”を
足の先に集中させ、蹴りの威力を倍増させるという技なのである。ノーマルのゴジュラスギガの
普通の蹴りでも、超重装甲をやすやす破壊する力があるという事実を踏まえれば、野生体の状態でも
他のギガを圧倒する力を持ち、機械化された後も、ノーマル機よりも強化され、さらにマオの操縦と
精神リンクによりノーマル機の倍近いとか言う以前に、冗談のような強さを持つカンウが
さらにその技によって破壊力を倍増された蹴りは想像を絶する威力を持つ…が…
ごぃぃぃぃぃぃぃぃん!!
「固ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
鈍い金属音と共に、たちまち足がしびれ、カンウが右足を抱えながら左足でケンケンをし始めたのだった。
体鬼の甲羅はその一撃を持ってしても破れる物ではなかったのだ。
>>失われし者への鎮魂歌作者さん
>エーマがこんなに話のわかるヤツだったとは!
まあ塩漫画で、エーマが2対2のブロックスデスマッチなんて仕掛けたりしてるんで、
そう言うゲーム的な事は好きなんじゃないかななんて思ったり。
あと、本編を見れば分かりますが、それを出した理由も、自分の作ったゾイドの強さを見せ付けて
抵抗する意志をそがせるという目的もあるのです。
「なんて固さなのよコイツは…うわぁぁ!!!!」
半泣き状態でそう言うマオの一瞬のスキを付いて体鬼がカンウを左腕ではらい、さらには右足で
ゼノンを蹴り上げたのだった。その無造作な一撃で再びカンウとゼノンは宙を舞った。
そして再びなんとか着地するのであるが、今度は体鬼が攻撃を開始したのだった。体鬼は
頭部、両腕、両足、尾を甲羅の中に引っ込めると、そのまま自らの甲羅をコマの様に超高速で回転させ始めたのだ。
「うわぁぁ!!まるでガメ…。」
「冗談はよし子さんやで!!!」
高速回転する体鬼に対し、二人は思わずそう突っ込んだ。しかし、体鬼は容赦しなかった。
高速で回転したまま高速でカンウとゼノンに体当たりし、再びカンウとゼノンを吹き飛ばしたのだ。
「うわぁぁぁぁ!!!!!」
吹き飛ばされる際の勢いは先程の比ではなく、そのままカンウとゼノンは思い切り壁に叩きつけられてしまった。
「ハッハッハッ!!最強の完全野生体と最強のオーガノイドがタッグを組んでもこの通りだ。
所詮は自然物、そして単なる機械化しただけのサイボーグごときではそれが限界なのだよ!!」
回転を止め、頭部、両手足、尾を甲羅の外に出した体鬼はそう言いながら笑うのであった。
「くっそぉぉぉぉ!!!!甲羅も固い上に再生能力まで持ってる!!こんなのどうやって倒せばいいのようわぁぁぁぁん!!!」
マオはまたそう叫んで泣き出し、コックピットパネルを叩いたのだった。が…
「亀さん亀さん!もう一度さっきの技をかけてみなさいよ!」
「えええ!!!?」
意表を突いたハガネの言葉に、マオは思わずそう叫んだ。
「とにかく亀さん!早いところさっきの技カモン!!」
「ちょっとハガネ!!何考えてるの!!?まさかさっきの衝撃でAIがおかしくなったの!!」
相変わらず先程の体鬼の技を催促するハガネに対し、泣きながらマオは叫ぶのだった。
「まあ所詮帝国ごときが作ったおもちゃなんぞその程度だろうな〜。いいだろう今度は一撃で楽にしてやる!」
体鬼はそう言って再び体を甲羅の中に引っ込めたのだった。その時だった、
「その時を待っていたよバーカ!!!!」
ハガネはそう叫んだ直後、素早く操縦桿の荷電粒子砲発射ボタンを押した。ゼノンの尾から
荷電粒子砲が放たれ、その強い光を放つ一条の粒子の流れが、体鬼の甲羅の頭部を引っ込めた部分の
穴に吸い込まれ、そのまま尾を引っ込めた部分から突き抜けたのだった。甲羅は傷一つついては
いなかったが、その内部にいた体鬼は断末魔の悲鳴を上げる間も無くコアごと消滅したのであった。
「え…?あれ…?」
あまりにもあっけない幕引きにマオはあっけにとられ、拍子抜けしていた。
「ヤツの甲羅が破壊出来ず、さらに甲羅以外の部分を攻撃しても再生される。ならば再生する余裕も
ないほど一撃でコアを破壊するにはどうすればと考えていた時に、アイツがあの技を見せてくれた。
ヤツが甲羅を引っ込めめるという事は、甲羅の穴が向きだしになって逆に内部が無防備になるのと同じだからね。そこを攻撃したってわけだよ!マオちゃん!」
「あららら…。」
自信ありげに言うハガネの言葉に対し、マオは苦笑いするのであった。
「効かぬ効かぬ効かぬぅぅぅ!!!!!」
技鬼の俊敏かつ多彩な技はジェネラルとエナジーのダブル攻撃をことごとく弾き返していた。
「ならばこれはどうです!!!」
技鬼から距離を取り、クライトがそう叫ぶと同時にエナジーのエナジーチャージャーが光を放ち、
チャージャーガトリングと2連チャージャーキャノンが火を噴いた。そして、それに合わせるかの
ようにジェネラルもバスタークローの銃口からビーム砲を連射した。
「無駄だ!!我には効かぬ!!」
技鬼がそう叫ぶと同時に、技鬼の爪が光った。さながらレーザークローのごとき光を放った技鬼の
爪を高速で振り回し、ジェネラルとエナジーが放ったビーム攻撃を全て撃ち落としたのだった。
「じょ…冗談だろ?」
ラインが思わずそう呟いたその直後であった。技鬼は突然両後足を上げ、逆立ちを始めたのだ。
そして、そのまま両前足を器用に動かし、高速回転を始めたのだ。それは地球の格闘技、
“カポエラ”の様ですらあった。そして、高速回転をしたまま、残った後ろ足で、ジェネラルとエナジーを蹴り飛ばしたのだった。
「所詮は自然物をサイボーグ化しただけに過ぎぬうぬらのゾイドではその程度にすぎぬ。」
技鬼は表情一つ変えずにそう言うのだった。
「くそ!!ヤツにはスキがありません!!!どうすれば!!」
「スキが無い…?そうか!!その手があったか!!」
クライトが愚痴った直後、ラインが何か名案が浮かんだ。そして、クライトに対して言った。
「俺が何とかしてヤツのスキを作る!!その内にヤツを攻撃するんだ!!」
「え!?スキを作るって…?ええ?」
ワケが分からず戸惑うが、既にラインとジェネラルは技鬼に対し突撃をかけていた。
「行くぜトラ野郎!!!この攻撃は耐えられるかな!!!?」
「我はうぬらの動きは既に見切っている。いかなる技も通用せん。」
何か思うところがあったのか、そんな不敵な笑みを浮かべるラインの言葉に対し技鬼は相変わらず
顔色一つ変えなかった。そして、ラインは思い切り息を吸い込んだのだった。
「お前の母ちゃんデ―――――――――ベ――――――――――ソ!!!!!」
「えええ!!!!?」
突然のラインの叫び声は意表を突く物だった。クライトも思わず拍子抜けして目を丸くしてしまった。
ラインの名案とは、悪口の連撃で敵の冷静さを奪ってしまう。そう言う作戦だったのだ。
ラインの上官にして、いつも共に戦っているマオ自身、冷静沈着タイプと戦う際にわざとそう悪口を
連発して敵の冷静さを奪い、そのまま冷静さを欠き、熱くなった敵を葬る。そのような作戦を
割と多用するという、滅茶苦茶強いクセに、やけにセコイ所のある女だったのだが、ラインがやったのはそんなマオの戦法を真似ただけの物だった。
「貴様!!!!何で我の母上が出ベソだと分かった!!!」
「って貴方!!母上とかいるんですか!!!」
ラインの作戦に上手いように引っかかった技鬼の叫び声に対し、クライトも思わず驚きながらそう突っ込むのであった。
雑談スレその他によりますと、ワイツウルフ&サビンガは明日発売だそうで、
うまくいけば今日の夜あたりにはフラゲする人が出てくるかもしれませんね。
楽しみですね〜。ワイツウルフ&サビンガ。
これはもう女房を質に入れても買わなきゃなりませんな〜(w
何よりそれらに付属している思われるバトストの内容次第で今後、自分が作るであろう
マイバトストの展開が左右されるのでかなり大切だと思ってます。
それはそうと、これを書いている時点では427KBまで来ていたことに気づきました。
やはりそろそろ次スレについて考えておくべきでしょうか?
「マウントアーサ要塞、壊滅!」
「馬鹿な!!難攻不落と言われたあの砦が陥ちたと言うのか!?」
「旧共和国首都防衛隊、損害率40%!!」
次々と入る信じられないニュースに、ネオゼネバス帝国軍上部の将校は愕然とする。
「…あの、所属不明のゾイドは一体何なのだ」
「確か、武器開発局のケイン=アーベル博士が研究していたゾイドで…」
「クソッ!!少々思想が危険であっても、出来る男だから雇ってやったと言うのに!!」
共和国、帝国の両軍は、未知のゾイドに圧倒され始めていた。
「あーーーもう!!やっと出られた!!!」
アルティシア達が地下から出てきた場所は、既に町の郊外だった。
「あの男に、謀られましたね…目的は最初からロイさんだったんです」
苦々しげにラガートが呟く。
気付いても良かったのだ。明らかに不自然な要求に。その真意に…
だが、彼らが止めてもロイは「行く」と言った。何故か、確信を持った声で。
「どちらにせよ、我々には彼を止める事は出来ませんでしたがね…」
アルティシアは煙を上げる旧首都を見やった。
「もう共和国軍が攻撃を開始したみたいだから…とりあえず、味方を援護しつつロイを探します!」
ラガートはその命令を皮肉な思いで聴いていた。司令官たる物が、一人の少年を探す為だけに
艦を動かす訳には行かない。ロイの捜索は「ついで」なのだ――名目上は。
その時、格納庫から通信が入った。
「艦長!!いつの間にかハッチが開いてて…アーベル隊員のゾイドが居ません!!」
閻魔の策動の作者さんへ
遂に…遂にキターーーーーーー!伝説の悪口(負け惜しみ)親がいるとは思いませんでした…。
>これはもう女房を質に入れても〜〜
最近また始まりましたね…二世。でもネタは多い事に越したことは有りませんね。
最近ふと何たら合体ゴーダンナーを観て居たら…やってみたかったネタが見事に映像化されていてw
時事ネタだから早く書かないと流行に遅れる!?
ライフルを構えながらサーベラスはふとある事に気が付く。
今味方に襲い掛かっていると思われた生物兵器からはある種の殺気が全く無いのだ。
良く見ればどう見ても大型類人猿種のじゃれ合いと略同様の行動を執っている。ライフルを下ろし近付いて来る相手に対して思い切り走り出す。
数秒後サーベラスと生物兵器は相撲を執り始めていた…。
力と技のぶつかり合いは技に軍配があがったようだ。見事な上手投げで生物兵器を床に叩き付けると彼は動物などに良く見られる負けを示す行動をとる。
どうやら今ここに居る生物兵器のボスらしく立ち上がるとドラミングをしながら声を上げると周りの生物兵器は全てそれまでの行動を止め彼の下に集まってきた。
当然振り回されていた男は出で立ちの関係上紙飛行機のように10数m飛んで行ったのは言うまでも無い。
「しかし…見事に統率が取れているな。だがどうして攻撃して来ない?」生物兵器等はサーベラス達の隠れ家?に陣取る形で思い思いに動き回っている。
サーベラスはこれ程兵器向きの存在が何故打ち捨てられたかを考えている所だった…。目の前を見るとファインが何時の間にやら群れの中央に居て怪我をしている彼等の治療をしているのが見える。
「何で治療なんてしているんですか?」起動用の電源確保に時間が掛かると言う事でもう一度サーベラスの元に戻ったレクスは不思議そうに言う。
「解らんが…彼は答えを知っているのだろう。極々普通に知っている様にしか思えん。」部下の一人にファインに事情を説明しろと言伝を伝えるようにと向かわせる…。
程無くして答えが解る「この手の類人猿型ゾイドは非常に有効的でゴーレムに使用されていた者。」と言う事らしい。人と一緒に戦闘するゾイドとしては満点の存在だが単体で戦闘するのには全く不向きだと言う。
それを素体として作られた為人を襲わない…それが兵器としての落第の理由だと言う事だ。しかし更なる疑問がサーベラスには残る。何故ファインはほぼ無駄とも言える知識を持っていたのかを。
「ちょっといいかな?」その場を離れディープフィアーの元に居たファインの横にサーベラスは並びそれを見上げながら言う。「鯣のあぶり焼き以外は出ないでありますよ…。」無造作にそれをサーベラスに差し出す。
「済まんな。」それを受け取り無言で噛み始める一際異彩を放つ非戦闘状況の一幕だった。
「何故そんな事を知っているのだね?」それを食べ終わったサーベラスは言う。「それは今の部隊に就く前の間にヘリックシティの資料館兼図書館更に裏手にジャンク屋の両方で仕事をさせて貰っていたのでありますよ。」
「何っ!あそこか!?道理で知識が多い訳だな…。」妙に納得する。ある寂れた一角にその建物が有りある種の情報はそこを通らずに情報として流れないと言われる共和国情報仕官には当たり前の物として認識されていた場所だった。
「そんなに凄い場所だったのでありますか!?専門的な情報がやけに多いとは思っていたのでありますが…。」恥ずかしそうに頭を掻くファイン。
「知らなくて良かったな。もし知っていて務めていたなら今頃は墓の中だったからな。」何とも恐ろしい事をさらりと言うサーベラス。それを聞いて震え始めるファインを見てしてやったりの表情をするサーベラスだった。
「…しかしおかしいのでありますよ?あれだけの運動能力を持つ彼等を傷つけ得る存在はそうは居ないと思うのでありますが…?」「そうだな。警戒網は電源を全て君が入れてくれたから何かが在れば警戒網に引っ掛かる筈だ。」
とそう言った所で丁度良くない連絡が入る「大変です!やはり中佐の言う通り未確認の大型寄生体が接近中です!」「解った!直に行く!念の為隠し玉を用意してくれ!」
「たびたび済まんな…。」「こう言う事は成れているでありますから。」ホバーボード形態のフレキシブルウェポンドライバーにサーベラスを乗せて隠し玉の場所へ向かったファインは面白い物を見る。
「白いステルス装甲のブロックスでありますか…興味深いでありますねえ。」潜入等には使わないのであろう指揮官用の機体がそこにあった。
レオブレイスとウネンラギア。各々一部のパーツが別に機体の物になってはいるがダブルアームリザードの形態に成れる構成だった。
ウネンラギアにレオストライカーの装甲とカノンダイバーの武器。レオブレイスにはボルドガルドの装甲と武装が追加されている。どれも武装はクローム状に輝き装甲は艶消しの白フレームは黒とこだわりの配色になっていた。
「更についでだ。君はネクロドラグーンなんだろう?レオブレイスの方の操縦を頼む。今ここで死ぬ訳には行かないだろう?」サーベラスの問いに「お墨付きで共和国に機体に乗れるは嬉しい事でありますね。」妙に嬉しそうに答えた…。
「良いのでありますか?操縦の方を任せても…?」嬉しい反面罠っぽさも抜群なので聞き返すファインにサーベラスは「動かしてみれば解る。」の一点張りだった。
直にその理由が分かる。尾もザンブレイカーに交換されている。しかも出力が1機でロードゲイルに並ぶほどの物だったのだ。「ふふふ…相当のじゃじゃ馬成らぬじゃじゃ猫でありますね!」
嬉しそうにそれも簡単にレオブレイスを動かすファインを見て「これはこれは…こちらの方は良いデータが取れそうだ。」結局はデータ取りの為ではあるがここまで簡単に乗り熟されて逆に不安にも成る。
「しかしこれならダブルアームリザード状態も問題無いだろう…。」そう言うとサーベラスはウネンラギアを起動させた。
「時間稼ぎが目的だが潰せそうなら潰していく協力を頼む。」「了解であります。この状況は帝国とか共和国とか行っている場合じゃ無さそうでありますから…。」
目の前に迫り来る寄生体ゾイドは複数の種類が居るのである。流石に協力せざるをおえないだろう…。
近寄ってきた一体を擦れ違いざまにザンブレイカーで切り裂く。しかし全く手応えが無い所を見ると相棒同様ブロックスの属性を持つようだった。
分断されながらもレオブレイスに攻撃を仕掛けようとする寄生体をビームキャノンの光が貫く。「まずは一つ。」今のザンブレイカーの一閃だけで彼のコアのある場所を特定するサーベラスの実力にファインは驚いて言う。
「層が厚いのでありますね共和国の軍人さんは…。」この場合彼なら更に全てを切り刻んでいた所なので正直な差が見えている。「こう言うのは得意でね。」自慢げに言いながら別の寄生体の奇襲をあっさりと回避している。
「正面であります!」側面に装着されたブレイクスパイクで横に寄生体を真っ二つにする。今度は鋸状の刃が広範囲にダメージを与えたためコアを直撃できたようで寄生体はその動きを止める。不思議に思った事だが今回の寄生体は化石化の兆候が無いのだ。
疑問は残るが相手は待ってはくれない。直に2体ほどの寄生体が近付いて来る。「中佐!第2波、第3波来ます!」その報告にたまらなくなり「少し速いがチェンジマイズをする!タイミングを合わせてくれ!」
「了解であります!」2体を舜殺したサーベラスの合図でダブルアームリザードの形態にチェンジマイズをする。
やはりパーツの関係上一般的なタイプには成れないが機動性と安定性の要の脚部は後ろ足が長くがっしりしているため問題は無さそうだ。
カノンダイバーの武装が回転銃座状に使用できるタイプに成っているので砲撃がスムーズに出来そうではある。
しかしその反面機体操縦をするファインの方は速度の調節を間違える訳にはいかない。
だがその辺もガンナーをしているサーベラスの実力の関係と指揮能力で充分カバー出来る範囲だった…。
「290で頼む!」「了解であります。」第2波と第3波をも排除するがまだ終わりは見えない「貴殿の所の寝ぼけ格闘王はまだでありますか?」その問いに「う〜ん相当の寝坊助だった筈だからな…。」
情けない答えだ。ゾイド毎に個体差があるし装備の関係もあるが10分以上も起動しないゾイドも珍しいという話だ。「ついでに言えば臆病でなコア砲の起動実験も全て失敗している。」
その言葉にファインは「臆病では無いと思うのでありますが…多分心配性なのでありますよ。」「心配性とな?」ターゲットを破壊し続けながら会話が進む。
「多分それで自分が居なくなった後の事が心配なのでありますよ。もし狙いが外れたりしたらギガの居なくなった戦場で共和国軍が帝国軍に勝てる可能性は殆ど有りませんでありますからね…。」
何度も相手をして負け続けた因縁の相手だその格闘性能は痛い程解っているファインの評価はサーベラスにとって以外と言える内容だった。「そうか…そう考える方が前向きだな。」更に1体撃破しながらサーベラスは言う。
「しかしおかしいでありますね…何故躍起になってここに集中しているのでありましょうか?彼等は…?」今までこの区画には散発的な寄生体の来襲は有ったが今日はどうもおかしい…サーベラスも疑問に思っている事だった。
「前方!また来ます!?今度は後ろの寄生体から逃げている様にも見えます!」不安を更に深める報告が届く…。
「そうか!そうでありましたかっ!?彼等はもしかして…?」推論の域を出ない言葉ではあるがサーベラスも同じ事を考えていたらしい…。
「奴等はお互いを獲物として捕食、もしくは吸収融合している(であります)!」と同時に言うがその直後それを言わなければ良かったと二人は後悔する。
今、目の前で推論が立証されている真っ最中だったのである…。
「あ〜…。」それ以上の声は出ない…。余りにもグロテスクで生々しいそれのインパクト充分だった。
遂に逃げている1体が後方の寄生体に掴まると我先にと言わんばかりにその寄生体が殺到する。
サンゴを背負ったイカ型でコマンドゾイドサイズの寄生体は触手で中型の寄生体に巻き付き動きを封じると自らのコアを剥き出しそのまま巻き付いた寄生体にコアを押し込んだ。
それは十数体程の寄生体が行っておりその後中型の寄生体はぶるぶる震えているだけで主な動きは無いがイカ型の寄生体の体は体内に完全に侵入し表面から消える。
「アンコウもビックリでありますね…。」彼等もそこまではやらない。「レクス大尉が居なくて良かった…。」サーベラスは呟く。彼なら卒倒ものの壮絶な侵入劇は以外とあっさり目に幕を閉じた。
がその後も充分グロテスクだったのだ…。第2幕変身編の始まりである。
苦痛に叫び声を上げる寄生体。その声を皮切りにその姿が以前の姿とは異質な者に変異していく…体のサイズが膨張と言う表現が合う程急速に大きく成る。
肩を裂きサンゴ状の鰭型の甲羅が3層姿を現す。頭部に鶏冠の様にサンゴ状の鰭が生まれ背中にそって尾まで一連なりに伸びる。「させん!」サーベラスがビームキャノンを発射するがそれは変異の為のエネルギーに返還されてしまう。
変異の速度が上がり頭部の側面に鰓状の装甲が出来るとそれに隠れた首筋から二本のイカの触手が生えてくる。アンコウの言葉に答えるかの様に頭部に提灯状の触手が生まれる。
呆然と見守る事しか出来無い彼等を馬鹿にするように変異は続く。背中から背鰭を挟むように更に背鰭が生まれ前足は長くがっしりとして床を掴む。胴体から鰭が生え後ろ足が尾と一つに成る。
胸部に穴が複数開きそこからイカの触手が出たり入ったりしている。胴体の下腹部の鰭は胴体から尾が節状に変異したのに従い節毎に独立する…哺乳類系の特徴が完全に掻き消え魚類と爬虫類の中間の様な巨大な存在が目の前に産まれた。
「馬鹿なっ!?質量が総合計の5倍以上だとっ!」流石にサーベラスは測定結果を叫ぶ。「ケンタウロス以上の変異でありますね…如何しろと言うのでありましょうか?」機体性能が如何で有れ質量という力に太刀打ちするには限度が有る。
今の機体では太刀打ち出来無いのは確実だ変異の際の痛みが寄生体を更に凶暴にしている事は疑いようも無かった。
自分が今書いている時点で440KBいっているので本編の続きは次スレに持ち込む事にして、
変わりに個人的に書きたい事を色々と書かせてもらいます。
>>恐怖の亀裂作者さん
生物兵器とか、捕食吸収とか、自分がやろうと考えていた事がすでに使われてますね。
しかも自分が考えていたような物以上にグロイ演出までできてる・・。
でもまあ・・・別にいいですよね?
>>失われし者への鎮魂歌作者さん
何か破壊がどんどんエスカレートしているような気がします。このあとどこまで行くのか・・・。
あと、貴方の作品の主人公は作られた存在だったとの事ですが、もしかして他のクローンも
徒党を組んだ上で敵として立ちはだかるのでしょうか?
今後の自分の予定についてですが、とりあえず今書いている文の続きを終わらせた後で、
新シリーズ基準の話もやりたいと考えているわけですが、まだ明確にワイツウルフを買ってはいませんし、
この板全体でも明確に買った人がいないようで、ファンブックスレなどに書かれた
箱裏の文字だけという曖昧な情報しか無いのですが、今のうちは自分がやりたかった
「諸国漫遊物」を作りやすい世界観であると考えていたりします。
>>閻魔の策動作者氏
すんません…そういった展開は予定してなくて…でもまあ近い演出はありますね。
歴史変わってるどころか完全なパラレルになってしまってダメダコリャ(_ _)
自分もこの辺でドクターストップ掛けたいと思います。他の方はどうしますか?
閻魔の策動の作者さんへ
ネタの被りはこう言った物の宿命なので全く問題無いと思います!!!(断言!)
大本が一緒なので何時かは被る運命です。と言うより大まかなネタが余り被らなかったのが凄い事だと思います。
失われし者への鎮魂歌の作者さんへ
破滅の時ですね…正に…全く攻撃が通じない存在にはどんな者もやる気が失せます。
それに撃ち返しがもれなく付いて居るのでリーパーを破壊するのは至難の業に成るのでしょう…。
格闘戦以外で追い払ったエヴィルツォーネの陽電磁砲も凄い威力ですが…本体のエネルギー生産量が物凄い事に気付いてガクガクブルブル…。
次スレの時期になりましたか…また小ネタ及び感想や丁度良い事に未来の設定について考えてみても良いのかもしれません。
新しい話は転けてもこれまでのバトストに返りやすいので後はトミーが気付いてくれるかどうかだと思います。
順番通りに未来に行く…飛ばしすぎたから機体番号が先でも過去の機体が合ってもよいと思うのですが…?
スレ違いなのでここまでにします。
前スレもありますよ
>>297 痛い…心が…。でもスレの性質上1000取りは無理ですし容量限界の関係上書き続けるのも無理そうです。
ちょっと前かに1さんがあれをばらしてしまったスレの集中書き込みと見に来た人であっさり人大杉の状態になったので下手な動きは厳しいと思います。
あまり言いたいことでは無いのですが習慣として行われている1000取りや埋めはあらし行為に含まれる可能性が有ります。意味の無いものなら尚更です。
ちょっと思い付かないので何かよい方法は有りますか?更に申し訳難いことなのですが実際この板の容量限界は何kbなんでしょうか?
合わせて質問としてお返しいたします。
>>297さん特に容量限界のほうはご存じなら是非お願いします。
なんか貴方はいつも大袈裟だなw
容量限界は、以前にも話題になったけど500kbですよ
済まないです。今度こそ覚えます500kb_| ̄|○
で、どうするの?続けるの?次スレ立てるの?
まだ450にも達してないし、続けてはいかがかと。
「やっと起動した!」やっとの事で起動用の電源を確保したレクスのギガはゆっくりと目を覚ます…。
コア自体は停止などして居ないがエネルギーバイパスを伝い全てに電力を送る際は一度電源を落した場合外部からコアのエネルギーバイパスを開ける指令を電源として送る方法がとられる場合が有る。
今回は内部機構のショート等があった為起動状態での修理が出来無かった為この様な結果になったのだ。
「相手は?」「特大のが1体だ!たった今反応が現れた!ちょっと前まで中型とコマンドサイズ多数だったが中佐の話じゃ融合したって話だ!」
「融合!?如何言う事だ!」その声に「地下の機材搬入レールプレートに乗れ!正面からやっても時間の無駄だ大尉!」サーベラスの連絡が入る。
「地下って…充分ここも地下じゃないですか!」そう言う意味じゃない。「各階層は更に5層構造になっている!その最下層から目標の真下にいける!頃合いを見てぶち抜いてやれ!」
「了解しました!」レクスは地下のレールプレートにギガを載せるとレールプレートは勢い良く移動を開始した。
「おっと危ないでありますねぇ…。」触手の攻撃を避け更にそこからのエネルギー弾を避けながら留まるダブルアームリザード。これ以上下がるのはどうしても避けたいのだ。
「一々再生速度が速い奴だっ!」サーベラスの正確な射撃が触手を全て切断する…しかしその再生速度は凄まじく数秒ほどで再生を終えて攻撃を再開する。その上前足の強烈な一撃が事有る毎に踏み潰さんと振るわれる。
かなり無謀な状況だ。前足の一撃で機体は右前脚を踏み潰される。「いよいよ持って危ない状況になってきたであります!」冗談では無く出力の調整などことごとく強化されているこの機体の機動性はジェノ系列やゼロ系列に並ぶ程の物だ。
それが踏まれてしまうという事は良く言われるウドの大木という表現は融合体には当てはまらないのである。
動きの遅そうな相手だった為先程試しに後退してみたらあっと言う間に追い付かれたのが踏みとどまる必要が出来た原因である。しかしこのままでは突破されるのも時間の問題だろう…。
更に余計な事に少し離れた所に同型の者が出現したという報告も入っている。はっきり言って絶望的な状況になってきた。
寄生体の攻撃が迫る…その時「ツインツイスター!ショウタ〜イム!!!」床の建材を突き破りギガが姿を現した。
「ハッハッハー!!!お前の○○○なんか△△△!!!さらに×××なんぞ□□□――!!!」
さらにラインの悪口の連続攻撃が技鬼に叩き込まれた。もはや放送禁止用語など当たり前の状態で
ある。ライン自身もかつては暴走族リーダーであり、アウトロー業界では知らぬ者はいないと
言われ、なんかヤクザすらもビビって逃げ出すほどのワルだったらしく、その手の攻撃は大得意であった。それでもマオには逆立ちしても勝てないが…。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!ゆるさんんんんんん!!!!!」
技鬼が切れた。殺気を向きだしにしたまま、そのまま超高速でジェネラルに迫った。多彩な技を
持っていても、精神的にはまだまだのようである。そしてラインは笑みを浮かべた。
「へ!!その時を待っていたぜ!!!」
「殺す殺す殺す殺す殺すぅぅぅぅぅ!!!!!」
そして、ラインは操縦桿を傾け、ジェネラルを技鬼に向けて突撃させた。そして互いに高く跳び上がり、空中で正面衝突を起こすと思われたその時だった。
「今だ!!!!!バックパック分離!!!」
ジェネラルの背中に装備されたジェットファルコンの本体でもあるバックパックが、ジェネラルの
背中から分離されたのだった。そして、分離する際の勢いで、バックパックは上へ、ジェネラルは下へと落下した。
「なぁぁぁぁぁ!!!!」
予想外の展開に技鬼は思わず叫んだ。さらに冷静さを欠いた状態でもあるため、そのまま体勢を崩した。
「今だぁ!!やれぇ!!!!」
「ハ…ハイ!!」
ずぁん!!
バックパックと再合体した後、ラインが叫んだその直後、体勢を崩して落下する技鬼の腹部をエナジーライガーのエナジーウィングが薙いだのであった。
「ぐはぁぁぁ!!!」
腹部をそのゾイドコアごと真っ二つにされた技鬼は、血の様な体液をまき散らしながらそのまま床に落下し、絶命した。
「うわぁぁぁ!!!コイツ血みたいなの吐きやがった!!気持ち悪い!!!」
「え!!血…?と言うよりも、機械部品が見あたりません。それに先程。我々のゾイドを
サイボーグ化したとバカにしていましたから…、コイツは一体何者なのでしょうか…。」
技鬼の遺体を見ながら、ラインとクライトはそのような反応を示していた。確かに技鬼の体から
機械部品の類は見あたらなかった。ほとんど野生ゾイドに近い体つきをしていたのである。
しかし、それですら技鬼はジェネラルとエナジーライガーを圧倒したのである。ならばなぜ…
もしやコイツは我々の考える一般的な戦闘ゾイドとは違う概念で作られているのではないか?そうクライトは考えるのだった。
「阿修羅連撃拳!!」
アシュラゲイルの六本の腕から発せられる連続攻撃が心鬼の体に撃ち込まれ、心鬼の体を切り裂き貫いていく。しかし、あっという間に再生されていくのであった。
「無駄だ。そのような傷で私を倒すことは出来ない。」
心鬼がそう言った直後、心鬼の念力による衝撃波が再びアシュラゲイルを吹き飛ばしたのであった。
「ムウ…やはり中心核を潰さぬ限り倒せぬか…。」
ギフの額から一筋の汗が流れていた。
「うぉぉぉぉ!!!!!!」
その時だった、突然四方から、心鬼に向かってクーゴ達4人のゾイドが飛びかかったのであった。
「そのような玩具で私に勝てると思うな!お前達ごとき、私の心力を使うまでもない。」
心鬼がそう言った直後だった。レオストライカーとエヴォフライヤーを片手の一振りで吹き飛ばし、
カノンダイバーのビームランチャーやミサイルポッドの連続攻撃をもろともせずに、同じく
吹き飛ばし、後方に回り込んでバスターキャノンを発射するバスターイーグルの砲撃を体を器用に
くねらせる事でかわし、そのまま尾の一撃で吹き飛ばすのであった。
「お主達!ここは下がっているが良いと言い申したはず!」
「そんな事言ったって!!もうこれ以上黙って見過ごせるかよ!!!!」
ギフに対し、クーゴがそう叫び、再び体勢を立て直し、再び心鬼に攻撃を仕掛けたのだが、通用せず吹き飛ばされたのだった。
「フ…、エーマ様はお前達四人に目を付けているそうだが、それほど大した事は無いな…。ならば死ぬべし!!!!」
心鬼の口が大きく開かれ、その口腔内から強い光が放たれた。
「ぬう!!!」
ギフはとっさに阿修羅結界を張った。と、その時だった。
「おいら達をなめるなぁぁぁ!!!!!Ziソウル!!!!」
クーゴがそう叫んだその時、クーゴの体が白く光り輝き、そのままレオストライカー、
エヴォフライヤー、カノンダイバー、バスターイーグルの4機を包み込んだのだった。
「ぬう…竜王流でも阿修羅流でも無いあの力は一体…。」
「な…何だアレは…?まさかエーマ様が言っていたZiソウル!!?」
突然の出来事にギフと心鬼は戸惑いを隠せないでいた。そして、白い光を纏いながら、4機は
合体していった。バスターイーグルを中心とし、残り3機が外装などとして1体のゾイドとして再生していく。
「いくぜ!!!スーパーマトリクスドラゴン!!!!」
もの凄い爆発音と衝撃波と共に現れたのは一体のドラゴン型ゾイドであった。
「フ…、何をするかと思えばただ合体しただけか…少し合体した所で玩具ごときが勝てると思うな!!」
心鬼がそう叫びながらスーパーマトリクスドラゴンに向けて口から怪光線を放った。スーパーマトリクスドラゴンの体はたちまち怪光線の光の渦に巻き込まれた。
「フ…所詮は玩具の実力などこの程度よ。」
心鬼がかすかな笑みを浮かべてそう言ったその直後だった。彼は背後に気配を感じたのだった。
なんとそこにはスーパーマトリクスドラゴンが、何事もなかったかのように立っていたのだった。
「そんな馬鹿な!!まともに食らったはずだ!!」
「いや、とっさに避けたよ。オイラ!」
半ば戸惑いながら叫ぶ心鬼に対し、のんきな言葉でクーゴはそう言った。その直後心鬼は
スーパーマトリクスドラゴンに向けて攻撃を続けたが、ことごとく避けら、逆に吹っ飛ばされた。
スーパーマトリクスドラゴンのそのスピード、パワー、火力、全てに置いて合体前を大きく凌ぐ物だった。心鬼はたちまち劣勢となった。
「ほう…なかなかやり申す。緑の悪魔と同等、いやそれ以上か…。それにしてもあの者達は一体何者なのであろうか…。」
スーパーマトリクスドラゴンと心鬼の戦いを身ながらギフは冷静にそう呟いた。確かにクーゴが
見せたZiソウルと呼ぶ力は、ギフがそれまで見て、学んできた技や力のどれとも違う物だった。
先ほどは続きは次スレと書きましたが、ギリギリまで書かせてもらいますよ。
まさか…あの「光速の竜」再び?
ワイツウルフ…足のフレームが一パーツで有る事を利用すれば二足歩行させれそうです…。
485kbぐらいまで書いてみようかと…。
次スレのスレ立てが出来無かった場合は前のスレかこのスレに御連絡ください。
こちらで立ててみます。
ギガが床をサイクロンドライバーで突き破り融合寄生体の真下から姿を現す。
足元に突然開いた穴によりバランスを崩した寄生体を回転を止めたサイクロンドライバーで叩き飛ばす。
正に大型ゾイドの真骨頂と言わんばかりの非常にタイミングの良い登場だった。
「中佐!遅れました!これから迎撃に入ります!」「了解した!こちらは足をやられた!一度戻る!注意しろ…もう1体来るぞ!」
ダブルアームリザードは戦闘空域から離脱する。「ようし…やってやる!俺のギガは寝起きが悪いんだよ!」突然寄生体に頭突きをかまして更に後方に吹っ飛ばした。
起き上がった寄生体は素早い動きで触手を動かし収束させたエネルギーを薙ぎ払う様に発射する。しかし鏡の様に磨かれた肩の追加装甲に当たると屈折し運悪く自身の触手を焼き切ってしまう。
悲鳴を上げながらも攻撃の手を緩めない寄生体に回転を始めたサイクロンドライバーが突き刺さる…。
「まずは一つ…って!?何!?」先の使用時の威力から考えれば一撃で終わるだろうとレクスは考えていたが彼の中身が粘性の高いゲル状だとは知る由も無い。
少しづつ回転数が少なくなり遂にはサイクロンドライバーは回転を停止させられてしまう…良く見れば渦巻く様に体のゲルがサイクロンドライバーに巻き付いていた。
「離せっ!」パイルバンカーを起動させ無理矢理ねじ込んだ反動でサイクロンドライバーを引き抜くがゲルは絡みついたまま取れていない。
「ならばこれならどうだ。」もう片方のサイクロンドライバーを寄生体の目の前に突きだし外周のレーザーブレードが中心で頂点を合わせると内蔵のチャージショットキャノンのエネルギーが4本のドリルを伝いレーザーブレードの頂点に向かう。
頂点を回転しながら通り抜けたエネルギーは4本の渦が捻じり合わされたビームに成り寄生体を貫く。これは流石に受け止めきれずに寄生体を完全に貫通し強烈なダメージを与える。
のた打ち回る寄生体にこう言う「ディグブレイザーをしっかり味わったか?」レーザーブレードでエネルギーを誘導して4つの渦に拡散する時に一点に集中させる事で回転の幅を狭め射程距離を伸ばす射撃方法だ。
他にもドリルを扇状に広げ更に広範囲に攻撃する方法も有る。レクスはサイクロンドライバーβインパクトを確実に使い熟せる様だった。
「ぐわぁぁぁ!!!!」
「どうだぁこれがおいら達の力だ!!」
心鬼を吹っ飛ばし、もの凄い速度で壁に叩きつけた直後、クーゴは思い切りそう叫んだ。しかし、心鬼は何事もなかったかのように起きあがったのだった。
「何!!!?」
「フ…貴様に私は倒せんよ。貴様ごときの攻撃、私の無限の再生力が一瞬で回復させてしまうからな。
この私を倒したけれ…ぐごはぁ!!!!」
「拙僧の事を忘れてもらっては困り申す。お主の再生力を持ってしてもコアまでは再生できまい。」
心鬼の長い体の、人間で言う胸に当たる部分にアシュラゲイルのマグネイズスピアが深々と突き刺さっていたのであった。
「な…コイツの力を侮りすぎた…。」
「拙僧も少し遊びが過ぎたようだ…。それは謝り申そう…。」
心鬼はそう一言言い残し、絶命した。そして、アシュラゲイルは心鬼の胸に突き刺していたマグネイズスピアを素早く抜いた。
「な…今…何があったの…?」
「な…何も見えなかった…。」
クーゴ達は唖然としていた。心鬼を一撃で仕留めたギフとアシュラゲイルの攻撃は、一瞬の出来事とも言うべき程速い物であった。
「では、行き申そう。」
「あ!待って!」
心鬼を倒した事を確認すると、ギフは何事もなかったかのようにアシュラゲイルの歩を進め、その後を慌ててスーパーマトリクスドラゴンが追った。
「やっぱりあの坊さんはようわからん。」
久しぶりにセリフの機会の回ってきたグウがそう言うのであった。
「ほう…三鬼衆を倒したか…面白い事になったな…。」
エーマはそう呟き怪しい微笑みを浮かべた。
「ありゃりゃ?変な所に出ちゃったよ。」
体鬼を倒し、カンウとゼノンは新たに出来た通路を進んでいた。そんな矢先の事だった。
突然これまた広いフロアに入り込んでしまったのだった。しかし、同じ広いフロアと言っても
先程の場所とはいささか様子が違う物だった。あちらこちらに機械設備が並び、ガッチャンガッチャンと言う音が響き渡っているという何か工場の様な印象だった。
「あ!!マオちゃんあれ!!!」
ハガネの言葉にあわせるかのようにゼノンが指さした先には、ベルトコンベアーに乗せられて
次々に生産されて行く怪ゾイドの姿があった。また、その種類やバリエーションも豊富だった。
「あ!!ハガネ!!あれ!!!」
今度はマオが叫んだ。そしてマオの言葉にあわせてカンウが指さした先には巨大な窓があり、
その窓の向こうには、これまた広い部屋にならべられる数々の怪ゾイドの大軍があった。その数、
数百数千はおろか、数万もあるのではないかと思える程の数であった。
「まさかこれ程の物が…そりゃ世界征服も企みたくなるよ…。」
ならべられた大軍を呆然と眺め、唖然とした表情でハガネは呟いた。
「あ!!いたいた!!中尉〜!!」
「ええ!!?その声はライン!!!?」
突然聞こえてきたそれは間違いなくラインの声であった。そして、遠くからカンウとゼノンのいる場所へ向けて走ってくるジェネラルとエナジーの姿があった。
「よかったー!!生きてたのね!!」
「いやもー大変だったっすよ!!敵とかワラワラ出ましたし、最後に待ち受けていた敵は強かったですし…。」
「と…言うことは私たちと同じか…。エーマってのは何を考えているのか…。」
再会を果たしたマオとラインは互いにそう言っていた。
「わー!クーちゃん生きてたんだね!」
「そのクーちゃんという呼び方やめて下さい!!そちらこそお人形さんのクセによくも生き残ってましたね〜。」
「アンタやる気?」
一方、ハガネとクライトはそのような会話をするのであった。と、そんな時だった。
「お〜い!」
そう言って空中からマオ達の所へ飛んできたのだギフ&クーゴ達だった。
「あれ!そのゾイドは?」
「おいら達だよ!チェンジマイズ融合したんだ。」
スーパーマトリクスドラゴンの姿を見て思わず言ったマオの言葉に、クーゴはそう答えた。
「所で、ギッちゃん。あんた達もやっぱり変なゲームふっかけられたの?」
ハガネがギフに対してそう言った時、ギフはゆっくりと頷いた。と、今度はクライトがギフに言った。
「いや〜お互い大変でしたね〜シンライ曹長。」
「しかし、これも修行と考えれば苦しい物ではあり申しませぬ。」
「あ…そ…。」
それぞれが合流し、それまであった出来事を話し合った後、それぞれが周囲を見回した。
「それにしても凄い工場だな〜…。」
「しかし、それほどの物なのにも関わらず、人の気配があり申さん。」
「た…たしかに!!私達以外の気配が無い!!」
「不気味だ…幽霊なんかでそうな不陰気だぜ。」
その工場は広く、数多くの設備があり、そしてもの凄い音が響き渡るほどにぎやかであったが、なぜか人の姿はまったくと言って良いほど見あたらなかった。
と、その時だった。突然広い部屋に並べられていた怪ゾイドが起動し、マオ達に向かって襲いかかってきたのだった。
「うわ!!来やがった!!」
皆は怪ゾイドの群に向かって砲撃した。しかし、全く怯むことなく前進してくるのであった。
普通、人間が乗っているならばよっぽど防御力が高い機体ではない限り直撃時に怯む物であるが、
目の前の怪ゾイドの群は機体が損壊しているにも関わらず、ひたすら前進してくるのであった。
「うっわぁぁぁ!!!まるで以前映画で見たゾンビだよ!!」
マオが思わずそう叫んだ。怪ゾイドは攻撃しても攻撃しても前進をやめず、皆はじりじりと後退していくのだった。
「もうダメだぁ!!」
ラインが思わずそう叫んだ。その時だった。ギフが口を開いたのだった。
「落ち着き申す!拙僧らの使う無人キメラの様に、何処かにこやつらを操っている者がいるはず。そやつを叩けば…。」
「そうか!ギッちゃん頭良い!!」
「そうと決まれば再び分かれて司令塔を叩きましょう!!あと、ついでに工場の破壊もよろしく!!ただし、動力っぽい部分の破壊はつつしんでね。こっちまで爆発に巻き込まれるかも知れないから。」
再び希望を取り戻した皆は、先程と同じように3つにチームを分けて司令塔探索&工場設備破壊に
乗り出した。至る所から沸いて出てくる怪ゾイドの群をうまくかわしつつ、工場設備を破壊していく。
いたる場所で爆発音がひびき渡った。
「ん!!?ちょっとハガネ来て!!」
「何?マオちゃん!」
怪ゾイドを組み立てている産業ロボットやベルトコンベアーを破壊していた時、マオはある物に
気付き、共に行動していたハガネを呼んだ。フロアのスミに人間用と思しきの普通サイズのドアの様な物があったのだ。
流石にもう次スレ立てた方が良いですな?自分が書いている段階では459KBで、
さらに今書いた分を書き込めば460KBになりますからまだ何とかなると思うのですが・・・。
まあ流石に480とかになれば次スレを立てる必要がありますが。
ちなみにワイツウルフとサビンガはまだ買ってません。店には置いているし
買う金もあるのですが、やはり安く購入できるザラスで買おうと考えてますから。
では、行ってきます。
相手が動けない内にゲルに絡め取られたサイクロンドライバーをどうにかしようと動かしてみるがやはり回転してくれない。
このまま乾いた物を無理矢理砕いても良いが回転軸とそれに付随するギアの損耗を考えるとどうしても避けたい。
これから何時まで戦闘が続くか解らない為最終的な所で止まってしまったら目も当てられない。そんな事が頭をよぎる。
ふとサーベラスのメンテナンス説明を思い出す「そう言えば!逆回転させられる筈だった!」急いで逆回転をさせると今まで全く動きもしなかったサイクロンドライバーはゲルを溝から出し始める。
頃合いを見て回転数を急激に上げるとゲルは引き千切られ四散する。「取り敢えずは良し…格闘で駄目なら」両方サイクロンドライバー定位置に戻す。
起き上がり反撃をしようとする寄生体を掴むと空中に思い切り放り投げる。それと同時にサイクロンドライバーのドリルとレーザーブレードを扇状に開き回転させる。
「八渦螺旋光!」勿論適当に叫ぶ。正式な攻撃名称が長すぎるため適度な長さに納めたものだ。各ドリルを伝い8本のエネルギーがそれぞれ渦を巻き寄生体に襲い掛かる。
不規則に渦巻く8本のビームに貫かれ寄生体は…破裂した。
「やったか…?レーダーに多数の反応!?まさか!」そのまさかだった。
破裂した寄生体は各々が適当な大きさにダウンサイジングした姿でまた襲ってくる。「一体何匹居るんだ!?」レーダーが正確な数を伝えると途端にレクスは安心する。
「18!」この数は今の姿になる前の彼等の頭数と一致する。つまり強化された状態で元の数に戻ったのだ。
数が増えてもその力は推定でも元の2倍程度大きな誤差でも3倍程だろう…数で押してもその位ならギガ1機で充分相手が出来る。もう1体同じ様な奴が来ると連絡があったので素早く行動を開始する。
質量の関係上ゲルは絡む事無く寄生体達を貫いて行く。「あと12!」更に2体をハイパープレスマニュピレーターで握り潰す。以前までの巨体は素体を使った偽装だったらしい。その質量の殆どが粘性の高いゲルだったようだ。
今の奴もその大半がゲルなのだろうが全体を一撃で攻撃すれば問題は無い。更に3体ほど踏み潰した所で後続の寄生体がその姿を現した。
それに縋るように生き残った寄生体はまた融合する。「かさ増しした所で!」もう一度同じ事をしようとギガを突撃させる。
「えっ?乗り換えろ!?何に!?」明日の突入に備えてレミントンは機体の整備に立ち会って居る所での事だ。
「リディア少佐の方に回したいのでな。」アービンはそう言いながらプロトYを見上げる。
「しかし何が在るというのですか!?大佐?」やっと乗り熟した機体からいきなり降ろされて機嫌が悪くなっているのは明白だ。
「落ち着け…お前等は気が立つのが速いぞ全く。」そう言ってレミントンをある場所へ連れ出した。
目の前に在る機体には見覚えがある。「まさか…如何やってこいつを?廃棄されたものだとばかり思っていました。」
闇の中でも混じり合わず更に黒く輝くその機体にレミントンは歩み寄る。「ブラックオニキス!久しぶりだな…。」
それを聞いた黒いジェノブレイカーはレミントンにそっと近付く。OSは完全に人の手に降った訳ではない。
インターフェイスの技術で負担を肩代わり出来る様になり高性能な機体が普及され易くなっているが実際の所それを扱い熟せる者はそれほど居ない。
それに対して調整無しのOS搭載のゾイドはその本能のみに寄って自らを動かす事すらできる。彼がレミントンに近付くという事はそれだけ懐いていたと言う事だ。
それが優れているかどうかは別問題でもあるが…。
近付くに連れてだがレミントンは在る異変に気付く「ちょっと待てっ!!!お前何時の間にそんなに大きく成ったんだ!?」近付いてきたブラックオニキスはそのサイズが”二回り”大きく成っていた。
「私も驚いたよ。」アービンは言う。「こいつは西方大陸から海を渡ってきたんだ。しかも海上防衛軍は雨の様に砲撃をしたらしいがその殆どが回避されるわ甲板上からの荷電粒子砲は通用しないわと大騒ぎだったらしい。」
「その荷電粒子砲って?」「デススティンガー3体から撃たれたものだ。威力的には着弾点が一ヶ所に集中していたからデスザウラーの物を越えている筈だ。」アービンはため息を付く。
「資料ではファインの機体だったジェノサイザーミラージュの鏡面誘導装甲なら可能な物だが何故この機体がこれを持っていたのだ?」どうも納得がいかない話だが思い当たる節がある。
レミントンは聞く「お前…ミラージュと一緒なってに進化でもしたのか?」冗談としか思えない事を聞いているレミントンに対してブラックオニキスはその証拠を見せる…。
その大きく成ったフリーラウンドシールドのエクスブレイカーの間から巨大な剣が姿を現す。
「白銀の牙!?」ジェノサイザーミラージュの背中に装備された二振りの直刀型パルスレーザーキャノンがそこに在った。
「瓢箪から駒だな。中尉!君に彼の操縦を任せる!君に逢うためだけにこの地に来た彼を捨てるとは言わないだろうな?」レミントンは乗れるのかと困惑する。そのままサイズが大きく成ればコクピットに乗っても動かせる訳が無い。
「そうだ…中尉言い忘れた事だがついさっきここに着くまでの間何も知らずに攻撃を仕掛けた連中は尽く中破以上に成っている。」何があっても乗れと言わんばかりだ。
「りょっ了解しました…。」もう逃げ道は無い。諦めてブラックオニキスに近付いていくと胸部のコクピットブロックをブラックオニキス自ら開ける。
何重にもシールドされている様で6つ目のシールドが開いた時以前と変わらないままの操縦シートが在る。「ふう…良かった。」今日は何と心配する事が多い日だろうとレミントンは思った。
「よくもまあここまで大きく成ったものだ…。」成らしを始めるレミントン。懐かしい感触を楽しみながら機体を操縦していると全く運動性や機動性は失われていないようだった。
装甲は鏡面誘導装甲に変更されている為ビーム兵器のダメージを気にし無くて良いぶん戦闘では随分と楽になる事だろう。サイズの大型化も悪い方向に向かっていない為戦闘には支障は無い。
ただ…サイズの大型化に本人が慣れていない様だった。大きく足を踏み出して無人のテントを2つ3つ踏み潰してしまいレミントンは減俸処分を三ヶ月受ける羽目になってしまったのである。
「ぐあっ!?」ギガに激しい衝撃が伝わりレクスは呻く。
どうやら今回の相手は”堅い”らしい。しかも重いらしく床にギガが踏んでも歪まない床が重みで沈んでいた。
「堅いなら!」とサイクロンドライバー突き刺す。しかし前足で受け流されて鰭の一撃で大きくギガが後ずさる。「さっきとは違うと言う事か。」
ディグブレイザーを使用して肩を攻撃するとやはり肩は砕けるが中身は見た目にも解る見事な筋肉が付いて居た。
「マッスルボディ!?」ついでにその筋肉はディグブレイザーを弾いている。「久々に熱い格闘戦が出来そうだな…。」サイクロンドライバーの向きを変えギガクラッシャーファングが寄生体の肩を噛み千切った。
「おかしい…人っ子1人いないはずなのに何で…?」
「だから、それをこれから調べるのよ!!」
そう言った直後、マオはカンウの操縦系をマニュアルからオートに切り替えるとキャノピーを開き、飛び降りたのだった。
「カンウ!!後は好きに暴れて結構だよ!!」
「ああ!!、待ってマオちゃん!!」
一人ドアへ走っていくマオに対し、ハガネも慌ててゼノンから出て追いかけるのであった。
そして二人がドアを開いた時、そこには人間が普通に通る通路が続いていた。
「やはり怪しい!この通路の向こうに何かがいるはず。」
二人は通路を進んでいった。二人が入ったドアの向こう側から爆発音が響き渡るのだった。
「みんな頑張ってね…。」
マオがそう呟いたときだった。突然銃声と共に自らの足下に銃弾が数発連続で着弾したのだった。
「うわあああ!!ってやっぱりここにも何かいるよぉぉ!!!!」
そう言ってマオとハガネが後方に跳び下がった時だった。正面から何かが現れたのだった。
『シンニュウシャハッケン…コロス…』
「うあ…な…何あれ…。」
マオとハガネの目の前に現れた何かは、人でもゾイドでも無い、“怪物”と言う言葉が似合う程の
異形のものだった。身長は2〜3メートルはゆうにあり、全身は金属ともタンパク質とも付かぬ
グロテスクな物で構成され、まるで映画や漫画に登場するモンスターとかクリーチャーとか、
そういう類の物であり、さらには腕の部分に機関銃の様な物が埋め込まれている。まるで怪物のサイボーグであった。
「うげぇ!!気持ち悪い…吐きそう…。」
目の前に現れた怪物のそのグロテスクな外見を見たマオは青ざめて思わず吐きそうになった。
ロボットであるハガネはともかく、いくら強いと言っても18の女の子であるマオには刺激の強い物があった。
『シンニュウシャ…コロス…』
辛うじて知能を持っていると思われる怪物が片言でそう言った直後、腕に埋め込まれた機関銃を
マオとハガネに向け、機関銃を連射したのだった。お世辞にも広いとは言えない通路中に銃声が響き渡った。
「うわああああ!!!」
二人は慌ててその銃撃をかわした。しかし、怪物はそれぞれ二人を追うように腕を動かし、なおも銃撃を続けるのだった。
「うっわぁぁぁ!!蜂の巣はイヤ蜂の巣はイヤ蜂の巣はイヤァァァ!!!!」
マオは泣きながらもの凄い速度で走り回り、壁走りまでやってのける始末だった。
『コロスコロスコロス』
怪物はなおも片言でそう言いながら機関銃を連射した。
「ええい!!!うっとうしいんだよ!!!」
ハガネがそう叫んだ時、ハガネの右腕から手が引っ込み、ガトリング砲が飛びでてきたのだった。
「なめるんじゃないよぉ!!!!!」
ハガネは右腕のガトリング砲を怪物へと向け、もの凄い速度で連射した。通路中に銃声が響き渡った。
ハガネはゾイドに乗って戦う事が多いため忘れられがちであるが、ハガネはその体格からは想像も
出来ない程にまで全身に様々な武装が内蔵されており、その種類は消しゴムから核兵器(ええ?)に
まで多岐に渡る。そして、その中の武装の一つであるガトリング砲が火を噴き、怪物を蜂の巣に
したのだった。怪物は生命力を失ってたちまち倒れ込む。どうやら再生能力の方は持っていなかった様子である。
「どうよ。私が本気を出せばこんなもんよ。ねえマオちゃん。」
「うっげぇぇぇぇ〜…。」
ずげげげげげっ
マオは思いきり吐いていた。怪物の姿を見た時にそのグロテスクな外見に吐きそうになっていた上に、
ハガネがガトリング砲で怪物を蜂の巣にした際に飛び散った血や、怪物の内蔵などがさらに追い打ちをかけ、マオは我慢出来ずに吐いていたのだった。
「うっげっぇぇぇ〜ぎもぢわる〜…。」
マオは涙をボロボロと流し、本当に苦しそうな顔だった。そしてその口からは液体のような物が流れ出ていた。
「ヤレヤレ…これだから人間というヤツは…。」
ハガネはそう言って、いわゆる“ヤレヤレのポーズ”をしていた。と、その時だった。
「うわあ!!また来やがったぁ!!!」
通路の向こうから、また新たな怪物が現れ、二人に襲いかかったのだった。
「ええいうざったい!!!イオンブースターパーンチ!!」
ハガネがそう叫んだ直後、ハガネの左腕の肘から先が切り離され、そのままミサイルの様に飛びだし、
怪物の体を貫いたのだった。それは一般的にロケットパンチと呼ばれる武装そのものだった。
「どうよ!!」
「うげぇぇぇぇ〜…。」
ずげげげげっ
意気揚々とガッツポーズを取るハガネだが、再び吐き出してしまっていたマオに思わず再び
すっ転ぶのだった。と、やっていたら再び新たな怪物が現れたのだった。
「うわあ!!また出たぁ!!ニードルミサイル!!!」
「うげぇぇぇぇ!!!」
「また出たよ!!ビッグチェーンソー!!!」
「うげぇぇぇぇ!!!」
ハガネは自らの持つ武装で次々に怪物を蹴散らしていった。そして、その度にマオは吐くのだった。
「おねがいもうやめて!!!私死んじゃうよぉ!!!」
「うるさい!!あんたそれでも軍人かぁ!!!」
ハガネに泣きながら抱きつくマオは今にも倒れそうな程ゲッソリしていた。と、そんな時だった。
再び新たな敵の気配がしたのであるが、今度は怪物ではなく、歩兵用サイズのゾイドであった。
外見的にも、それまで戦ってきた生体なのか機械なのか分からない物ではなく、見たまま機械とわかる外見をしていた。
「やったあ!!!コイツは私にまかせてよ!!!」
突然水を得た魚のように元気になったマオがそのゾイドに向かって突撃した。ゾイドは機銃を連射するがマオは突撃しながら軽やかにかわしていく。
「たぁぁぁぁぁ!!!!」
ばっきぃぃぃぃん!!
次の瞬間ゾイドは真っ二つになった。マオの拳がゾイドの装甲を撃ち破るどころか、その体ごと敵ゾイドの体を突き破っていたのだった。
470KB越えしました。もういい加減次スレを立てますか?
いっそ、行けるところまで行ってみては…?
先に立てておくのに越した事はないと思います。
次スレを立てると誰か宣言してた人がいたんですよね。
使い切るなら、その上で。
今回ルールとかどうしますか?(次スレ立てるときの目安)
取り敢えずこのままでも良いならそのまま立ててきます。
「やったか!?」手ごたえを感じてそのまま通り抜けた後ろを振り返ると確かに肩口には何も無かった。
しかしその傷口は少しづつ塞がりつつある。「時間制限まで完備か!面倒な奴め!」今度はロケットブースターを点火させクラッシャーテイルを叩き込む。
大きく横薙にされ壁に激突する寄生体。鰭等の堅く薄い部分は割れ体の大部分の表面が砕ける。しかし内部には殆どダメージが無い。
「これならどうだ!!!」出力全開のMTSを起動し両足で床を蹴る。追撃モードに空中で移行しHEシールドを展開して寄生体に乗り掛かる。
境界面が発生する程のシールドが衝突の衝撃で砕けながら消滅する。流石にこれには寄生体もダメージを受ける。
本来エネルギーを受け流すための物だがそれを対象に打つけると偽りの形を与えられたエネルギー境界面は砕け散りその対象に熱量を持ったエネルギー粒子となって襲い掛かる。
普通のシールドならさほどのダメージは無いがHEシールドとなると相場が違う。粒子の密度とエネルギー絶対量が多い為反応時のダメージが桁違いになるの単なる足し算に電撃や化学反応の掛け算が加わる為である。
化学反応で受けたダメージ跡は火傷と溶解の2種類でそれ等の回復は通常の物に比べて回復が遅い。
外皮は直に再生が完了するが中から白い煙が漏れ出している。内部の絶対量が不足している今ならあの無理矢理な肉弾防御力は無いだろう。
「今度こそ決める!」サイクロンドライバーのアームを展開する。ギガクラッシャーファングで首を噛み飛ばしサイクロンドライバーを展開させて可能な限り広範囲に攻撃を掛ける。
今度はゲルの絡め取りも筋肉の壁も無い。辺り一面にドロドロになった寄生体の破片が飛び散っていく…。
「生体反応は…無しか。」レクスはほっとして辺りを見回し吐き気を覚える。「や…やらなきゃ良かった。」何と言うか何者かがこの一帯の表面全体を這ったようなぬめぬめ感たっぷりの惨状は早く逃げ出したい。
無意味にMTSを起動させレクスは穴を開けた地点に逃げ帰って行った。
少ししてその寄生体の体細胞は活動を再開する。ゆっくりと集まりその姿を作り直す。まだ動くには時間が掛かるがこれまでの反省点を活かす事が重要課題である。
本能的ではあるが良い者を見付ける寄生体。その先には何時の間にか繭状に成っていたファインの機体のキメラコアが在った…。
その頃…ザクサル=ベイナードはある事に気付いて愕然とする。
「私とした事が…レクスを血祭りに上げようとしていたのに新しい獲物に狂喜して完全に忘れていた…。」
「べっベイナード君?もしかして君は…?」グラハム=レンバートンは吹き出しそうになっている。「教授…笑っても良いですよ。」
それを聞き笑い出す。「教授。彼で挨拶をしてきます。許可を…。」それを聞きグラハムは「ひひひっんっん…解っているよ。慣らしを頼む。」
目の前には5つのコアの一つが兵器となって立っている。コクピットと火器以外は野生体同様の姿だがそのシルエットは動物等のそれでは無く人のそれに近い姿だった。
事件の発端…それは実験の失敗を装いグラハムは息子ライナスの蘇生を目論んでいた。OSを標本にされてしまった彼の心臓に使用。算段通り心臓は蘇生された。
しかしそれは彼の手を離れ逃走し今彼の居る場所で5つのコア元であるコアに寄生。それが全ての始まりであった。今や5つの姿に成長した愛しい息子にグラハムは語り掛ける。
「どうだ?ライナス。これでお前は生き返った!姿こそ違えどもお前達は私の息子である事は遺伝子的に証明されている!何か願いは無いか?」
無茶な要求をコアにした際に彼等から要求された物は全て与えた。そして今目の前に異形の息子が5人?居るのである。
「それでは教授。貴殿の息子を少しの間預かります。」その声に「頼むぞ!ベイナード君!」それを聞き終えるとその内の1人がその場から音も無く消えた。
ダブルアームリザードでパーツを取りに帰還するサーベラス達はディープフィアーの前で止まっていた。
「遂に凄い事に成ってきたな…。」サーベラスは繭になったコアとそれを守るように抱き抱えているディープフィアーに感心している。
「いっ何時の間にこんな事になったのでありましょうか?」戦闘の経過から降りても大丈夫だろうとファインは機体から降りて繭に近付く。
すると繭は彼を受け入れるかの様に彼の居る付近を開く。「呼んでいるようであります。」今更後ろから撃っても無駄と考えているサーベラスはこう言う。
「気を付けてな。今から協力関係は破棄だ。次に目の前に来たら容赦無く撃つ!」「了解であります中佐殿!」2人は敬礼をして戻るべき場所に戻って行った…。
繭の中に恐れも無く踏み込んでいくファインを見てサーベラスは呟く。「格好付けるんじゃなかったな…。」
実はファインもそう思っていたりするのである。「止めとけば良かったであります…。」
根本は相容れない存在であっても表面上や個人単位では仲良く出来たりする…。戦争や争い事はそう言う風に人を色別けしてしまう物だ。
悔やんでもどうしようも無い。しかし終わりさえすればそして生き残って居さえすればまた遇える可能性もある。
そう考えると今は生き残る事が重要と思い至りサーベラスはその場を去る。ファインは相棒が待つ繭の中に入っていった。
繭の中には何時の間にか取り寄せていたコクピットが在る。「ナイスでありますね!しかも今まで使っていたものであります。」飛び乗りハッチを閉めると繭の穴も塞がっていた。
機体状況を確認する…と言ってもコアしかないのですぐ確認が終わる。「確認良し。後は動ける様になるまで休憩でありますね。」そう言うとシートを水平にして寝転がる。
大型の甲殻皮膚とフレキシブルウェポンドライバーのスペース確保のためこのコクピットはかなり広いスペースが在る。何故繭状の物の中に包まれているかの理由が分からない以上は機体の保持に全力を尽くすのみだ。
しかし今の全力は周りを確認しながら一休みと緊急事態の兵員らしからぬ行動しか取れ無いファインだった。
レクスのギガは綺麗に掃除されサーベラスのダブルアームリザードも足を補充し終えている。その話を聞いたレクスは「何でそのまま連れてこなかったのですか?」と聞く。
「そうだな…あれの行く先が見たくてね。」サーベラスは繭を指さす。「少なくとも彼はコアを寄生された状態でキメラを自由に動かせるらしいからね。少しでもデータが欲しい。」
もっともな意見だが裏を返すとそこから予想外の敵が出現した際には手も足も出ない状態に為り得る。
今の時点では普通に考えて取り敢えず大抵の存在ならこの2機の連携でどうにかなるだろう…。しかし相手が未知の存在である寄生体では予測に限度が在る。
そう言った状況こそが不測の事態を引き起こす可能性が高いので監視を他の者に任せてサーベラスとレクスもコクピットで休息を取っている状態だった。
そして…状況は予測の斜め上の最悪のシナリオへと流れて行く。
ザクサル=ベイナード。死を呼ぶ紅き狂風と呼ばれた男の登場で…。
それは確実にある場所に向かっていた。大型エレベーターの無い穴を一気に飛び第5層に音も無く降り立つ。
人に近い何かにエイとカニを足した様な存在を被ったような姿。ザクサルの乗り付けてきた5人のライナスの1人…。
その名をレイバークラブと言う。グラハムのみはその前に息子の名前を付けて呼ぶ為彼等はライナスシリーズとそれ等を呼んでいた。
「くっくっくっくっ…遂に来たぞ!この時がぁっ!!!」レーダーにより直にレクスのギガの場所を探し当てる。そしてレイバークラブはまた音も無くその場から飛び立った。
「大変です!中佐!また来ました!今度は該当データがまた有りません!ん?ありました…これは!?」途中から声が震えている。
「どうしたんだ!?落ち着いて説明しろ。」サーベラスは落ち着くように促して報告を待つ。
「これはグラハム教授の息子さんの生体パターンがあります!間違いありません。地下深くに居たコアです!」「なんだって!?」流石にサーベラスは焦る。
この情報は彼等と袂を別けた時の物で一番の懸念要因だった物である。「大尉!起きるんだ!最悪の相手が現れた!」
「何だ…あれは?」音も無く空中を飛んでいるそれを見たレクスはサーベラス同様に焦りを覚える。
まるで水中を泳ぐかの様に素早く動くそれはその毒々しい配色も相まって原始的な恐怖心を煽る。その姿に合わない武装が彼の機体にその砲身を向ける。
「撃ってくる気か!」HEシールドを展開して防御態勢を取る。味方はまだ避難し終えていない。ゴリラ型の生物兵器が避難を手助けしていてくれているようだがまだ時間は掛かる。
「レクス=アームズ!この時を待っていたぞ…。」忘れたくても忘れられないザクサルの声「貴様!ザクサル=ベイナードかっ!」サイクロンドライバーから光が漏れ出す…。
「ん?仲間を守るというのか?それならその必要を無くしてやろう!」レイバークラブから強力な砲撃が雨の如く降り注ぐ。その場に居る者全てに分け隔て無く砲撃が降り注ぎ辺りが爆風に包まれる。
「やらせん!」避難している者に無慈悲に向けられたミサイルをサーベラスのダブルアームリザードが撃墜する。
「骨砕きのサーベラスか…貴様も居たか。丁度良い!命拾いしたな…貴様等を見逃してやる!だが猶予は5分だ!」
端から命を取る気の宣言だ。5分程度では避難の暇が無い事は判り切っている事だった。
「…全くあの人は必要の無い時にばかり現れる人でありますね。」そのやり取りは繭の中に居るファインにも聞こえていた。
状況確認をすると…ザクサルの声を聞いた辺りから機体に変化が現れており急速に何かの形を取り始めていた。
「如何言う事でありましょうか?」しかし機体が動ける様に為るのは願ったり叶ったりだ。その前に焼かれてしまう可能性もあるのだが…。
サイクロンドライバーからディグブレイザーが発射される…しかしレイバークラブが鋏を向けると何とそのエネルギーを鋏の間に閉じ込め鋏で叩き割ってしまったのである。
「何だ?その攻撃は…遊びのつもりか?」嫌みを目一杯含んだ声で挑発するザクサル。「くそっ!何故効かない!?」確かに様子見で撃った物だが非常識な方法で止められたのが気に入らない。
時間は少しづつ確実に過ぎて行く。あろう事か彼は目の前に写ったゴリラ型の生物兵器を一目見て今の時間を言い渡したのだ。間に合わないように…。
後ろに下がり避難を手伝おうとしているレクスのギガの足元に砲撃が加えられる。「何をしている?相手は私だぞ?」レイバークラブは急降下してギガを鋏で挟むと反対方向に投げる。
「ぐわっ!?貴様!!!」ヘビーマシンガンの変わりに装備された2連装ショックカノンを撃ち込むが甲羅が振動しただけで大したダメージは与えていない。「そうだ!もっと攻撃して来い!」
そう言うとレイバークラブは胸部辺りから上を自ら剥ぎ取ったのだ。
正確には剥ぎ取ったのではなく定位置に戻しただけだが更に異質な姿を曝け出す…。簡単に言えばやはり化け物。
体格は大型のロードゲイルと言った所だろう。ただ額部分から這えた巨大な刃は鼻先まで支えを必要とする大きさだ。
剥ぎ取られた様に見えた部分は尾でエイの姿で下部にカニの鋏と足を持った気味の悪い姿をしている。更に言えば鋏はノコギリガザミを連想させ足はタカアシガニを連想させるので更に始末が悪い。
体付きに似合わぬ太く長い足そこには水掻きがある。腕の在る筈の部分と胸に大きな胸鰭が有りそれは同時に巨大な剣に見える。
「知っているか?レクス?人の記憶は脳のみに在らずその他の臓器にも刻まれると言う話を知っているか?」「知るか!」相手のペースに乗る訳にはいかない。
その間もサーベラスの砲撃を見事に回避して余裕で構える姿は正に邪神と言わんばかりだった。
残り時間は3分をきっている。この化け物をザクサル込みで排除することはまず出来無いだろう…。
レクスには技量。サーベラスは機体性能。各々が彼とレイバークラブに劣っている。かといって乗り換えて如何にかできる差ではない。
こう言った物には完全な相性が在りこれも如何ともし難い問題である。
「もう3分もないぞ?如何する?くくく…。」正直彼の性癖は異常で性根もしっかり腐っているのも彼が全ての者から恐怖の対象として見られている理由である。
サーベラスは少し考える。彼の興味を別の物に摩り替えたら何とか出来る可能性が有るのかもしれない…。「済まんが生け贄になって貰おう…。」
ダブルキャノンのサーチライトを繭に向け帝国が使用する発光パターンで光らせる。「うっ嘘ぉぉぉぉ〜!?如何言う事でありますか!?」繭は内側から光が漏れて居るので当然外の光は内側にしっかり見える。
その行動に気付いてザクサルはその興味を繭に写した。「ほう…帝国の鼠があれの中に居るのか?サーベラス。」その問いに「知らんな。そんな事。」直にばれるようにしらを切るサーベラス。
「相当面白い物が有るらしいな…その策に乗ってやろう。」その声を聞いてファインは言い様の無い寒気を感じる。「どうしてこんな目に遭うのでありましょうか…?」繭の中で頭を抱えるファインだった。
レイバークラブが繭に近付く。このやり取りのお陰で避難は完了するが彼等は手が出せない状況にある。今の状況に持っていったのがサーベラスである為彼等2人はその場を動けずに居た。
繭の中では急速な各部の形成が行われている。元がブロックスで有る為に形を作っていく物もブロックスの基準に対応している。「…どうしてでありましょうか?」その言葉に「オレヲキジュンニシテイルカラダ」そうモニターに表示される。
「なるほど…そうでありますかって?んん!?」突然繭の外がぐにゃぐにゃ動いている。中からは手出しできないのでいざと成ったら緊急起動できるように構えるファイン。
その時繭の外は大変な騒ぎになっていた。「こいつ!何を為ようとしている!」ザクサルは繭に取り付く例の小型寄生体を必死に潰している所だった…。
再構成を終了させ共生出来そうなファインの機体に取り憑こうとしていたのだ。もぐら叩きの様相を見せるレイバークラブと寄生体。
観て居る者には遊んでいる様に見えた…。
保管庫の管理人氏はこのスレちゃんと保存しているかな