【貴志祐介/及川徹】新世界より 神栖3町【別冊少年マガジン

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311作者
>>310
見てるに決まってるだろうが。見てないのはお前の方だろ。

バケネズミは非能力者の末裔であり、呪力持ちの神栖66町の連中に支配されてるんだろ?
312スクィーラの復讐:2014/07/02(水) 00:05:11.18 ID:6eYkG42h0
 黄金の化身を思わせる金色に輝く髪の毛、その場にいるだけでその男の周囲の全てが陳腐な装飾品とすら思えてくる存在感、
言動の端々から感じる重厚感、彼が目の前に存在しているだけで自然と地べたに額を擦り付けてひれ伏したくなる。

 何もかもが違いすぎるのだ。例えばこの男が自分に「死ね」と言えば何の躊躇もなく即座に命を捨てているだろう。

 本物の、正真正銘神の化身としか思えない玉座に座る黄金の男に救われたスクィーラ。

 そしてその男から『力』を授けられたスクィーラ。

 そう、その力を使って自分達の未来を切り開かねばならないのだ。

 この力は正確に言えば玉座の男の隣に佇む黒衣の影法師から贈られた物であるのだが。

 「スクィーラよ、私は卿がこの世界を作り変える光景が見たいのだ。わかり易く言えば卿の世界は牢獄のようなものだろう。
私は卿を見込んで、この世界に終止符を打つ大役を任せたいのだ。出来るか?」

 「元よりそのつもりです。貴方達から贈られたこの力、存分に使わせていただきます」

 下界に広がる神栖66町を見据えながら背後にいる黄金の男に言うスクィーラ。

 「獣殿、彼をこのグラズヘイムの一員としてお迎えにならないのですか?」

 「ああ、カール。私はこの者が歪んだ世界を壊す瞬間が見たくてな。我等がこれからしようとしていることと何の差がある? 我等と同じく牢獄に囚われている
者こそ、我等の持つ苦しみも理解できているというもの。この者がこの世界でシャンバラを築く姿も、目的を果たした我等の姿と重なるとは思わんか?」

 「その通り。真に惜しい人材ではありますが、獣殿がそう言うのであれば」

 「それでは行って参ります」

 「健闘を祈るぞスクィーラ」

 後方の神に別れを告げたスクィーラはグラズヘイムから飛び降りる。そしてそのまま町目掛けて凄まじいスピードで急降下していく。

 「町の人間共よ!! 我等バケネズミを苦しめてきた償いをしてもらうぞぉ!!!!」

 地上の町目掛けて落下しながら咆哮するスクィーラ。

 それは巨大な猛獣の轟吼を思わせる程の響きであり、確実に下の町にまで届いているに違いない。

 そしてついに町の中心部である広場に両足で着地するスクィーラ。

 着地時の衝撃により自分の周囲数メートルが陥没する。

 「な! 何だぁ!?」

 「こ、こいつはスクィーラだ! そんな馬鹿な!?」
313作者:2014/07/02(水) 00:06:14.86 ID:6eYkG42h0
 広場には数十名程の町の人間がいた。今の時間では自分が死んでから一年程の歳月が流れているらしい。

 バケネズミの反乱による打撃からようやく回復してきたという所だろうか?

 町の人間達も一年前のバケネズミの反乱時にバケネズミに対する恐怖を植えつけられたに違いない。

 自分達に従っていた家畜に手を噛まれたのだ。

 「お久しぶりです町の神様方。いや、最早貴方達は神などではない、神になった気でいるだけの無力な人間様ですね」

 スクィーラは周囲の人間達を見回しながらゆっくりと近づく。

 「バ! バケネズミめ!! 死ね!」

 案の定、恐怖に駆られた町の人間の一人がスクィーラを呪力で殺そうとしてくる。スクィーラも自分に呪力が降りかかってくるのを感じた。

 が、呪力でスクィーラを拘束することはできず、スクィーラは容易く呪力による『縛り』を引きちぎる。

 「そ! そんな馬鹿な!?」

 「ありえない! 呪力を振りほどくなんて!!」

 町の人間達の間で動揺が広がっている。

 無理もないだろう、呪力が通用しないバケネズミの相手などしたことはないのだから。

 「それでは私の番ですね」

 そう、町の人間達に絶対的かつ絶望的なまでの力の差を思い知らせる為にわざと呪力を受けたのだ。

 そして神より授かった力をスクィーラは解放する。

 スクィーラの口から呪いの響きを思わせる程のおぞましく、聞く者に恐怖を与える歌声が紡がれていく。
314スクィーラの復讐:2014/07/02(水) 00:07:02.27 ID:6eYkG42h0
『かつて何処かで そしてこれほど幸福だったことがあるだろうか
  Wo war ich schon einmal und war so selig

  あなたは素晴らしい 掛け値なしに素晴らしい しかしそれは誰も知らず また誰も気付かない
  Wie du warst! Wie du bist! Das weis niemand, das ahnt keiner!

  幼い私は まだあなたを知らなかった
  Ich war ein Bub', da hab' ich die noch nicht gekannt.

  いったい私は誰なのだろう いったいどうして 私はあなたの許に来たのだろう
  Wer bin denn ich? Wie komm'denn ich zu ihr? Wie kommt denn sie zu mir?

  もし私が騎士にあるまじき者ならば、このまま死んでしまいたい
  War' ich kein Mann, die Sinne mochten mir vergeh'n.

  何よりも幸福なこの瞬間――私は死しても 決して忘れはしないだろうから
  Das ist ein seliger Augenblick, den will ich nie vergessen bis an meinen Tod.

  ゆえに恋人よ 枯れ落ちろ
  Sophie, Welken Sie

  死骸を晒せ
  Show a Corpse

  何かが訪れ 何かが起こった 私はあなたに問いを投げたい
  Es ist was kommen und ist was g'schehn, Ich mocht Sie fragen

  本当にこれでよいのか 私は何か過ちを犯していないか
  Darf's denn sein? Ich mocht' sie fragen: warum zittert was in mir?

  恋人よ 私はあなただけを見 あなただけを感じよう
  Sophie, und seh' nur dich und spur' nur dich

  私の愛で朽ちるあなたを 私だけが知っているから
  Sophie, und weis von nichts als nur: dich hab' ich lieb

  ゆえに恋人よ 枯れ落ちろ
  Sophie, Welken Sie

  創造
  Briah―

  死森の薔薇騎士
  Der Rosenkavalier Schwarzwald』