【2次】漫画SS総合スレへようこそpart68【創作】
1 :
作者の都合により名無しです:
なれないことはするもんじゃない orz
テンプレ貼り付けミス申し訳ありません。
日付変わったあたりから前スレで掲載したハガレンの後半投下します。
あと前半で「約束の日」から1ヶ月後と2ヶ月後両方の標記が出てますが
1ヶ月後に脳内修正をお願い致します。
5 :
作者の都合により名無しです:2010/06/12(土) 22:59:24 ID:84VPIhB50
6 :
作者の都合により名無しです:2010/06/12(土) 22:59:32 ID:oYEZJb6C0
◆5TKag9u//kさん、スレ立て&新作、お疲れ様です。
ハガレンが今月で終わってしまい、寂しく思っていましたが
タイムリーな作品を読めてうれしく思います。
ハガレンの格キャラへの愛が溢れててニヤニヤ読んでました。
読み切りということで、次回かその次で終わりのようですが
もう少し読みたいなー、とも思います。
あとハイデッケさん、復活おめです。
本当に書いてくださいねw
>>1 言い忘れてすみません。乙&ありがとうございました。
>>7 スレ立ては別の方です。
「後夜祭」は先月〜今月の最終回を待つ間に
「こうなるんじゃないかなあ」というのを
せっせとこねくり回して書き上げた作品です。
感想いただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます。
9 :
作者の都合により名無しです:2010/06/12(土) 23:52:28 ID:oYEZJb6C0
◆5TKag9u//kさん
一応1です。スレ立て失敗して迷惑かけて申し訳ありません。
>>9 こちらこそせっかく立てて頂いたスレにコピペミスすみません。
では次から後半部分投下します。おつきあいください。
そして日曜日。
東方司令部の空を震わせ、火矢が鳴った。
練兵場観客スタンドは満員。客席の間にはジュースやビール、軽食売りも出ている。
会場南側に設置された貴賓席テントの中、
今は見事大総統秘書官に出世したレベッカ・カタリナ中尉が主賓の前に珈琲を置きながら言った。
「今日は北方軍の人間もかなり来てるみたいですね、っ!」
現大総統グラマンが立ち去ろうとする彼女の臀部をつるりと撫で、悲鳴を上げさせる。
何事かと緊張し駆け寄る護衛たちに「何事もないない」と合図して見せ、
下がらせてから音を立てて珈琲をすする。
胸元に抱えた銀盆を怒りに震わせながらレベッカは内心思っていたことを問いただした。
「いいんですか、こんな馬鹿騒ぎ」
「みんな『約束の日』の後は酷使されてるからねえ。息抜きにいいじゃないか」
はっはっは、と声を立てて笑い、グラマンは時間を確認する。
「ほら、そろそろ始まるようだよ」
「レディースっ、アーンド、ジェントルメーン!」
司会の任を仰せつかったデニー・ブロッシュ曹長が放送席の側で声を張り上げた。
「えー、本日は東方司令部練兵場へようこそ、お越しくださいましたっ。
それでは、早速ただいまより、本日のメインイベントを開催致しますー!」
観客から大きな拍手と口笛がわき起こる。
東と西の入場口が開き、人影が現れた。
「我らが東方&北方軍司令官、『氷の女王』オリヴィエ・ミラ・アームストロング大将!」
進み出る、長身の女性。濃紺の軍服の背中に垂らしたまっすぐな金髪がまばゆく光り輝く。
「対するはシン国の「仮面の乙女」ランファン!」
つきそいらしい白い服の女性と別れ、仮面をつけた小柄な黒装束の人物が歩み出る。
「オリヴィエ様ー!」
「負けないでー!!」
女性兵士の黄色い声援と
「どうせ応援するならー」
「女の子ー!」
男性兵士の野太い声援が入り交じり場内を震わせた。
場の中央で2メートルほどの間を取って向かい合い、
「若は返してもらうゾ、女将軍…!」
低く身構えて唸るランファンに応え、オリヴィエが無言で愛刀を抜き放つ。
一呼吸分の沈黙の後。
「始めー!」
ブロッシュ曹長の声が響き渡った。
「あ、賞品の紹介すっ飛ばされた」
「誰ガ賞品ダ」
貴賓席とは戦いの場を挟んで向かい側、地面に置かれた悪趣味な装飾付き檻の中で
あぐらをかいて座りこんだリンが唸る。
「だいたいエドワード君とは一緒にホムンクルスの腹の中から脱出した仲なんだシ、
ちょっとはこっちに味方してくれてもいいんじゃないかなア」
手でひらひらと自分を仰ぎながら、檻の制作者であるエドワードが白々しく答えた。
「だって僕『国家錬金術師』だしー。司令官様の命令には逆らえないしー」
こわいから。
「居心地の悪い場所で申し訳ないが、もうしばし我慢していただこうリン殿」
その隣で、今日もつやつやピカピカ朗らかな笑顔で
アレックス・ルイ・アームストロングが告げる。
「我がアームストロング家の未来のために、姉上が初めて興味を示された異性を
逃すわけにはいかんのでなあ」
「貴殿が当主位を取り返せば問題なかろウ」
「姉上はそんなにいかんか? まあ年上だし多少猛々しくあられるが文句なしの美人だぞ」
猛々しいのが一番いかんのだ、一番。
「そもそも名家ならば異国人の血が入るのは問題ではないのカ」
「優秀な血を積極的に取り入れてきたからこそ今のアームストロング家がある故、
それは特にたいした問題ではないな」
「あきらめたまえよシンの皇子殿」
一人パイプ椅子に腰掛け、リザ・ホークアイを背後に控えさせた
ロイ・マスタングが気障な笑顔を見せた。
「あの女王様に目を付けられたのが君の不運さ」
てめーはてめーでしっかり美人侍らせやがってこの野郎。
「ふン」
不機嫌に鼻を鳴らし、リンは戦いの場へ目を向けた。
最悪、この3人だけが相手なら少々傷を負おうとも脱出できないわけではないが、
この場には他にも軍人ばかりの大観衆の目がある。
とりあえずはおとなしく機をうかがうしかない。
皆が見つめる場の中央では、激しい戦いが繰り広げられていた。
地を蹴り、迫るランファン。
最小限の動きでかわしつつ斬りつけるオリヴィエ。
軍刀と機械鎧がぶつかり、火花を散らす。
早さは明らかにランファンの方が上だが、オリヴィエは長さのある軍刀を巧みに操り、
相手をその身に近寄せない。
最初は野次雑談混じりに見てい観客たちも、次第に二人の気迫に呑まれていく。
貴賓席からやや離れてアルフォンスのために用意された小さなテントの中、
メイはひそかに焦っていた。
ここについてからずっと、アルフォンスの古い知り合いであるらしい
マリア・ロス中尉がずっとそばにいるというのは予想外だった。
頃合を見計らって抜け出し行動を起こすという手配だったのに、これでは動けない。
じりじりと時間ばかりが経っていく。
正面を見据え、じっと戦いに見入っているようだったアルフォンスが口を開いた。
「ロス中尉、僕、観客席で売ってるあの袋入りのジュース飲んでみたいです」
「そう? じゃあ買ってくるわね。何味がいい?」
「オレンジ、ありますか?」
「多分大丈夫だと思うわ」
できるだけ早く戻ってくるわねと優しい笑顔を残し、
マリアが日よけのため周囲に張られた幕をくぐって出て行く。
「…ありがとうございましタ」
アルフォンスの意をくんだメイが静かに声をかけた。
車椅子の前にひざまずき、彼の手を取り額に押し当てる。
「アル様、…シンに戻りまス」
別れの言葉を。
「どうぞお健やかニ」
心からの祈りを込めて告げ、未練を振り切るように勢いよく立ち上がり、身を翻す。
走り去る足音。遠ざかる気配。
無人になったテントの中、アルフォンスは思わず手で口を押さえた。
…行ってしまった。
予想していたより激しく強い孤独感が胸を締め付ける。
肉体と魂の再融合を果たし戻ってきて数日間はそれこそ夢も見ずに眠れたものの、
それからは眠るたびに悪夢が待っていた。
扉に飲み込まれる感覚の再現。肉体に戻ってきたものの立ち上がることさえできず
ばらばらにちぎれ崩れる自分の肉体を別の視点からまざまざと見ることになったり、
誰も戻ってきた自分に気付かず結局死んだことにされてしまったり。
そんな悪夢にうなされ目を覚ますと、必ずメイがそこにいてくれた。
小さな温かい手でほおに額に手に触れ、
「大丈夫です、アルフォンス様はちゃんとここにいます」とささやいて、
また自分が眠りにつくまで他愛もない話をしたりシンの子守歌を歌ってくれて。
今夜から、眠れぬ夜を慰め、いたわり支えてくれた彼女の優しい手は、もう、ない。
ふと、心に影がよぎる。
今なら、誰かに言えば、メイの「計画」を止められるかもしれない。
そうすれば騒ぎは起きずこの場は混乱せず彼女は自分の側に戻って───
「…ダメだ」
頭を大きく横に振って黒い誘惑を振り払う。
そして考える。
メイが単に仲間と落ち合うためだけにわざわざ今この場所で自分と別れたということはないだろう。
そしてここで何が行われているかを考えれば、ねらいは何となく読めなくもない。
ならば周囲の目を自分に引きつけることは彼女の助けになっても邪魔にはならないはずだ。
テントに足音が近づいてくる。
「ごめんね、オレンジが売り切れてたから、レモンソーダで」
明るく言いながら袋を手にテントの後ろから幕をくぐったマリアは
車椅子の上で胸を押さえて体を折るアルフォンスの姿に悲鳴をあげた。
「アルフォンス君!?」
のぞき込んだ顔は蒼く、呼吸も荒い。
「ロス、大尉…兄さんを、呼」
ついさっきまで普通に観戦を楽しんでいたはずのアルフォンスが
何故急に体調を崩したのかは分からないけれどただごとではないと判断し、彼女は叫ぶ。
「誰か、誰かーっ! 鋼の錬金術師と医官を呼んで!」
ランファンとオリヴィエの戦いの向こう、アルフォンスがいるはずのテントに
あわただしく人が出入りし始めたのを見とがめたエドワードは
続いて走ってきた伝令の知らせに顔色を変えて怒鳴った。
「あの豆粒どチビ、何やってんだっ」
駆けつけたいが、自分に命じられているのはリンの見張り。
迷う彼の心を見透かしたようにロイが声をかける。
「君の代わりはリザにさせる。ここは大丈夫だ、行きなさい」
エドワードは答える間も惜しんで駆けだしていった。
ややあって丈の長い白い上着を羽織った女性が夫を伴いその場に現れる。
アレックスが盟友、シグ・カーティスの姿を認めて目を輝かせた。
「久しぶりだ」
「我が友…!」
おたがいの筋肉を誇る暑苦しい友情の儀式が行われる横でロイとイズミは握手を交わす。
「マスタング大尉、お久しぶり」
「イズミ・カーティス殿か。ダブリスにいらっしゃるはずのあなたがどうしてここに?」
「オリヴィエちゃんのお願いで、ちょっとね」
…「ちゃん」付け、だと…?
畏怖する軍人2人民間人1人を横に、イズミはリンを捕らえている檻に近づいた。
見上げる彼と目を合わせ、にっこりと笑う。
「貴方がランファンちゃんのご主人ね?」
その呼び方には少々語弊がある気がするが、と思いながらリンはうなずく。
「何の用ダ」
「やーねえ、そこから出してあげようと思って来たのに」
「それはならぬ」
檻とイズミの間に割って入ろうとするアレックスをシグが押しとどめる。
「我らが友情に免じてこの場は見逃してくれないか、我が友アレックス」
「…友の頼みならば仕方ないな…!」
おいおいそれでいいのか暑苦しい。
何はともあれ障害のひとつは解消されたのを見てとったイズミがロイの方に振り返る。
「と、言うわけなんだけどいいわよね? マスタング大尉」
「私はこのとおりの盲目ですから何も見えておりませんよ」
「あら感謝」
交渉成立。
拳で檻の鉄棒をコンコンとたたきながらイズミは改めて周囲を見回した。
「この悪趣味な檻はエド製ね。で、あの子は?」
「アルフォンス君のところだ。急に体調を崩したらしい」
「なんですって」
もう一人の息子の名と状態を聞いた彼女が顔色を変えたその時。
さらにもう一人、招かれざる客がその場に姿を現した。
褐色の肌、赤い瞳、額から目にかけて大きな傷。筋肉が盛り上がる両腕には錬成陣の入れ墨。
「スカー? 何故ここに?」
リザが呼んだ名にロイがはっと反応する。
無表情のままスカーは一歩踏み出す。
「我が友の願いにて、その男もらいうける…!」
闘気がゆらりとそのたくましい体を覆い、その場の全員を身構えさせた。
肩で息をつき、黒装束のあちこちを裂かれて白い肌をのぞかせるランファンに
オリヴィエは乱れたところ無く立ちはだかる。
…ふと、気付けばあちこちで妙な騒ぎが起きているようだ。
周囲に視線を流したオリヴィエにランファンがまなじりをつりあげた。
「よそ見をするナ!」
飛びかかる。
オリヴィエの軍刀がひらめき、飛びずさってかわしたランファンの服の胸元が大きく裂け、
さらしを巻いた胸元から引き締まった腹部までが一気にあらわになる。
女性兵士たちが思わず我が身に置き換えてあげた悲鳴を男どもの歓声がかき消した。わきあがるオリヴィエコール。
「無礼をわびるなら今のうちだぞ、小娘」
腕と闘志と根性は気に入った。他人のものながらいい部下だ。
「お前が私の足下にひざまずくならシンの皇子については考えてやろう」
「…誰ガ、おまえなどニ!」
上げた左腕で胸元を隠しながらもなおも闘志尽きぬ瞳のランファンからは
予想通りの答えが戻ってくる。
最初から全速力で飛ばしていた相手に比べこっちはまだ体力に余裕があるが、
そろそろ勝負をつける頃合いだろう。
オリヴィエは試合が始まって初めて自分から動いた。
一気に相手に迫り、鋭い突きを繰り出す。かわされればそのまま横に振るい、振り下ろし、斬り上げる。
それまでの防衛中心の剣技から一転、滑るような足裁きで縦横無尽に攻めていく。
ついに必殺の一撃がランファンの仮面を中心線で断ち割った。
だがランファンは止まらない。隙も作らない。
むしろ、弱点をとらえたと思いこんでいたオリヴィエの方に油断ができている。
一気に懐に飛び込んだランファンがとっさにかざされた刃を機械の左手でつかみ、
押さえながらオリヴィエのほおを思い切り右手で張り倒す。
「弱点が、いつまでもそうだと思うナ!」
水曜日の夕方、ホテルに「仮面のこと司令官に言っちまったすまん」と
わびを入れに来たエドワードをイズミと二人がかりで締めてからずっと
その克服に励んでいたのだ。
これで決まったか、と誰も思った次の瞬間、
オリヴィエが平手を張り返しランファンの腹に蹴りを入れ反動で体を引き離す。
「甘く見ていたのは私の方だとはな」
それまで余裕があった薄氷色の瞳に本気の殺気が宿った。
「だが、これ以上は許さん」
相手を圧してなおやまない怒気のすさまじさに、
いつのまにか場内を席巻していたランファンコールがぴたりと止まる。
「遅いぞ、スカー」
ロイの言葉にはい?とあっけにとられる他の4人をよそに彼は続ける。
「リザ、距離を」
名を呼ばれ、あらかじめ聞かされていた手順を思い出した彼女は
改めて上司に問い返した。
「…いいんですか」
「あの女に一泡吹かせてやれるチャンスなんてそうないだろう」
全くこのひとは仕方ない、とため息をつき、リザ・ホークアイは振り返り
場内を見据えた。
「左45度、15メートル」
「鷹の目」が目標地点を見定め、告げる。
ロイが静かに両手を合わせた途端に、はるか前方でにらみ合う
オリヴィエとランファンの中間地点が爆発した。
「右30度17メートル、そこから2メートル間隔で3回」
指示は続き、次々と爆発が起きる。土埃がもうもうと舞い上がり、
観客たちがざわめき混乱しはじめる様子がここまで伝わってくる。
「彼の目的は貴方と同じですよ、イズミさん」
ロイの言葉にうなずいたスカーが檻に近づき、右手であっさり「分解」する。
リンは弾かれたように立ち上がった。
「何だか分からんガ、助かっタ」
「来い、近くに車が待っている」
「しかし、ランファンガ」
土煙に覆われたままの場内を見やってためらうリンにロイが声をかけた。
「彼女なら他の者が手引きする手はずになっているよ」
「…分かっタ」
踵を返しかけてじろり、と見据えるスカーの視線に、
軍人&民間人一同は口々に白々しく答える。
「私は盲目なので、誰も見えてないよ」
「私は…不審者に真っ先に倒されましたので何も分かりません」
「私たちは元々ここにいるはずのない一般市民だから関係ないわね、あんた」
「我が輩は…見逃そう」
友情と姉とを秤にかけ、結局友情を取ったアレックスだった。
爆発の衝撃を身をかがめてやりすごし、オリヴィエは土煙の向こうに目をこらした。
神経をとぎすまして気配を探るが…土煙はともかく、
聴覚が多少おかしくなっているのが痛い。
「上に立つ者が敵を作りすぎるのはよくないでスよ、将軍さン」
どこからか、凛とした少女の声。
いつの間にか、足下を囲むように突き立つ5つの鏢。
その間を閃光が走り、衝撃がオリヴィエの体を灼いた。
容赦なく体力を奪う電撃に思わずひざをついた彼女の周りから
手早く鏢を回収したメイがランファンに駆け寄る。
「無様ですねランファン」
シン語。土煙を透かして見た姿にランファンは驚きの声を上げた。
「メイ・チャン!?」
「リン・ヤオはこちらで確保しました」
「何」
「話は後です。早く!」
オリヴィエとの勝負がついていないことには未練が残るものの、
確かにこの機を逃す訳にはいかない。
最後に一瞬だけ彼女がいるはずの方をにらみ据え、
ランファンはメイに手首をつかまれたまま土煙の中を走りだした。
混乱する練兵場の通路を一気に駆け抜け、
不幸にも出会った相手は的確に倒し、司令部を脱出した二人は
近くの路地に止めてあった「ハボック雑貨店」の大型トラックの荷台に転がり込む。
そこにはすでにリンとスカーが待っている。
「若…!」
別れたときと変わらぬ姿の彼を確認してランファンが安堵のあまり涙ぐむ。
メイが荷台の前方に走り、運転席との仕切窓をコンコンとたたいた。
「マルコーさん、揃いました。車出してくださイ」
エンジンが唸り、トラックが走り出す。
荷台の一同はそれぞれ壁にもたれて座り込み、しばし黙って呼吸を整えていた。
やがて暗がりに目が慣れ、おたがいの様子が見えてくる。
「ランファン」
リンが上着を脱ぎ、隣に座るランファンの肩にかけた。
「ずいぶん手ひどくやられたな」
腕、肩、胸元、腹、脚。今更ながら素肌のさらされっぷりに気付いて
赤面しながらランファンは襟元をかきよせる。
「はい。恐ろしい…相手でした」
正直もう二度と戦いたく…会いたくない。剣術もだが、あの気迫が何より恐ろしい。
「確かにな」
揃って身震いする主従に、反対側に座るメイが声をかけた。
「その恐ろしい相手から助けてあげたんですから、お礼を言っていただきたいところです」
リンに視線でうながされ、
「…感謝する」
ランファンは不承不承頭を下げた。
すまし顔で鷹揚にうなずいて返すメイの肩の上でシャオメイがガッツポーズを取る。
「第十七皇女メイ・チャン」
しばらく後、リンが静かに口を開いた。
「同国人のよしみだけで助けてくれたわけはないな」
「取引をしましょう、第十二皇子リン・ヤオ」
メイの、常には「愛らしい」と評される黒目がちの瞳がしたたかに光る。
「何が望みだ」
「貴方が帝位につくことです」
「…ずいぶん大きく出るな」
「昨日、信用できる筋から皇帝の容態悪化の情報が入りました。
一日二日の間にどうこうとまではいかないですが、予断はできないと」
その言葉の意味を悟ったリンが顔色を変える。
「急ぎシンへ戻り、この機に乗じて次の皇帝に」
「勝手なことを」
「一人でやれとは言いません。皇帝に取り入るための人員は確保しています」
マルコーにもそのことは打ち明け、承知してもらっている。
「私自身も今度のことでかなりの知識を得ましたし、
もしも皇帝が死ぬ前に会うことができればどうにか延命できるかもですよ」
「…で、お前への褒賞は?」
「我がチャン族に妥当な地位を」
そう、メイの望みは自分が皇帝になることではない。
一族の地位が今より引き上げられればそれでいいのだ。
だから後ろ盾になる勢力のない自分が一人で動くよりは、
50万人からなるヤオ族の勢力を持つリンに協力し恩を売り
見返りを得る方が確実だと判断しての…今回の救出作戦だ。
おたがいの地位と誇りをかけ、二人の皇族の視線が火花を散らす。
ややあって、口を開いたのはリンの方だった。
「承知」
「若…!」
「わざわざ後で裏切るために手間暇かけてお前まで助ける者もいないだろうよ」
実際、最初は従者の一人も持たなかったはずの彼女がマルコー、スカーを味方に付け
ロイ・マスタングに通じアメストリス国脱出のための車まで手配するとは
たいした手際だ。仲間にすれば心強い相手であることは間違いない。
「皇位につけと言うからには、血まみれの道。存分に働いてもらうぞ、メイ」
オリヴィエが体の自由を取り戻したときには、
当然すでに敵の姿も賞品の姿も消えていた。
やっと周囲が見える程度に土煙も晴れ、係員観客の混乱っぷりも見えてくる。
…情けない。
「アテンション!」
気迫のこもった大音声が練兵場を震わせる。
軍刀を手に背筋を伸ばし、皆の視線にもひるまず一人立つ女将軍。
その姿は厳しく、りりしく。
「ぐだぐだ騒ぐな。総員、即座に自分の部署に戻り配置に付け!!」
「イエス・マム!」
声を揃えて答えたのは、オリヴィエの叱責に慣れている北方司令部の人間たち。
その迫力に引きずられるように東方司令部の人間たちもわたわたと動き出す。
「東方司令部。全員、あとでじっくり性根をたたき直す…!」
低く唸り、逃亡したシン国人捕獲の指揮を執るために彼女は軍服の裾を翻した。
そして月曜日の早朝。
げっそりとやつれはてた顔で病室に現れたエドワードが、
起きたばかりのアルフォンスの脚の上にぱたりと倒れ込んだ。
「アールー」
「兄さん、重い」
「おまえさー…ほんっとにメイから昨日のこと何にも聞いてなかったんだよな…?」
アルフォンスは深々とため息を返す。
「聞いてたらいきなり『シンに戻ります』って出て行かれて
びっくりして具合悪くなったりしないって」
嘘じゃない。周囲の注意を引くための仮病の演技が結局本物の過呼吸を引き起こしてしまったのだから。
「じゃあ、結局メイたちはシンに帰れそうなのかな」
「今んとこ捕まってないってことは多分大丈夫だろ」
昨日、練兵場で急に起こった爆発の混乱が収まってすぐに
逃走したシン国人たちの追跡が司令官直々の指揮の下行われた。
しかし東方司令部必要最小限の人数をのぞいたほとんどが練兵場で観客と化していたため
街の警備はもののみごとに手薄になっており、
深夜になってやっと一行の構成と足取りが判明したときには、
彼らはすでに国境の大砂漠に入ってしまっていたのだ。
公的には単なる密入国者であるシン国人たちが、
自ら祖国へ帰還するというのをあえて追い捕らえようとする理由は私怨以外になく
…私欲で軍を動かすことを最も嫌うオリヴィエが、そうと分かっていて
必要以上の追跡を命じられるわけがない。
もちろん賞品の見張り役たちも厳しく尋問されたが、
ロイ・マスタング、リザ・ホークアイ、アレックス・ルイ・アームストロングの3名は
のらりくらりと言い逃れ、
エドワードだってリンやランファンと知り合いなうえに
真っ先にその場を離れたからあやしいと言われても何も知らない以上答えられることは何もなく。
…だというのに、怒気を隠そうともしないオリヴィエ直々に詰問され続けた夜明け前の3時間は、
無人島での1ヶ月および機械鎧をつけてからのリハビリ期間に勝るとも劣らぬ
苦難の時だったと断言する。
ちらりと思い返しただけで泥のような疲労がずしーんと全身にのしかかってくる。
もうダメだ、とりあえず仮眠させてくれーと
エドワードが一昨日までメイが使っていた付添用ベッドにもぐりこもうとした、
その時。入り口がノックされた。
「アルフォンス・エルリックの病室だな?」
廊下から聞こえた声にエドワードは音を立てる勢いで凍り付く。
「入るぞ」
地獄のドアが開く音が聞こえる…!
ゆーっくりと振り返ると、つい1時間前まで自分をしつこく厳しくしつこくしつこく尋問していた
その相手、オリヴィエ・ミラ・アームストロングがアルフォンスのベッドへ近づくところだった。
「しっ司令官、なななななな、何故ここにっ」
「司令部内で体調を崩した民間人のもとに
司令官の私が直々に見舞いに来て何が悪い」
心臓に悪いです。ボクの。
昨日の激闘および激務の疲れをちらりとものぞかせず、
しわひとつない軍服をきっちりと着こんだオリヴィエは持っていた花束をアルフォンスに差し出す。
まだ朝露も消えていない白薔薇からつみたての緑の香りを秘めた芳香が匂い立つ。
「君がアルフォンス・エルリック、…あの鎧の中身か」
「はい」
いきなりの訪問に内心激しく狼狽しつつも、
それを面に出すわけにはいかないと覚悟を決めアルフォンスは笑顔を作る。
「お久しぶりです、オリヴィエ・ミラ・アームストロング大将」
「兄とはあまり似ていないな」
「僕は母親似なんです」
はらはらと見守るエドワードをよそに二人の会話は続く。
「そうか。昨日は大変だったそうだな」
「大将の戦いを最後まで見られなくて残念でした」
「ほう。昨日、東方司令部で君が倒れてから何があったかは知っているな」
一応「民間人」相手だからかオリヴィエの口調は多少柔らかいが、質問は的確だ。
「逃げたシン国人のうちの一人は君のつきそいだったそうだな」
「はい」
「まさか、君が奴らの手引きをしたわけではないだろうな?」
ここが正念場。
気力を振り絞り、アルフォンスはオリヴィエの目をまっすぐに見つめ返した。
「僕は何も知りません」
簡潔に言い切る。
「そうか。朝早くからすまなかった」
呼吸5つ分の沈黙の後、オリヴィエはそう言って踵を返した。
アルフォンスよくがんばった、兄はおまえを誇りに思うぞ…! と
感激するエドワードにちらりと視線を投げて。
「エドワード・エルリック、お前にはまだ聞きたいことがある。
9時に司令室に来い。遅れるなよ」
言い残し、軍靴の足音を響かせ部屋を出て行く。
揃ってぐったりと脱力したエルリック兄弟を、
窓から差し込む朝日が明るく照らし出していた。
以上です。
おつきあいありがとうございました。
ちなみに作中の軍人さんたちはそれぞれ1〜2階級昇進してる設定です。
そのへんで変換ミスがあっても突っ込まないでやってください。
〜太陽の戦士・出陣〜
総勢32名の全選手入場を終え、選手達が一旦引き揚げてからも、闘技場を包む興奮は一向に収まる気配がない。
誰もがこれから始まる凄まじい激闘の予感に高揚し、酔い痴れる。
「いやあー。賑やかで、まるでお祭りみたいですね」
「幻想郷の奴らなんて皆、理由を付けては騒ぐのが大好きだからな。一種のお祭りみたいなもんだろ」
と、魔理沙。
「お祭りというより、これもある種の異変じゃないの?」
「そうね。これだけの連中が一同に介して闘うなんて、普通じゃないわ」
そう言ったのはアリスとパチュリーだ。
「でも、優勝は絶対レッドさんだよ」
「あーら、このガキったら何言ってんのかしら。勝つのは幽香に決まってるでしょ」
「ふーんだ、君はレッドさんの強さを知らないからそんな事言えるんだよ!」
「あんただって、幽香がどれだけヤバいか知らないでしょ!」
「何だい、へちゃむくれ!」
「何さ、間抜け面!」
そしてどんどん会話の知的レベルを下げていくコタロウとメディスン。
十人十色の面々を尻目にしながら、ヴァンプ様は不安げに呟く。
「それにしてもレッドさん…大丈夫でしょうか?」
「心配いりませんよ、ヴァンプ将軍」
ジローは全幅の信頼を置いて、頷く。
「彼の強さは本物だ。それは、あなたもよく分かっているでしょう?」
「あ、いえ。そういう心配じゃなくて」
手をヒラヒラさせるヴァンプ様である。
「明らかにレッドさん一人だけ、浮いちゃってるじゃないですか」
「え…」
「他の選手はみんな綺麗なお嬢さんばかりなのに、レッドさんだけムサ苦しい男って…正直、ないですよね」
「うわあ…それは言っちゃダメだよ、ヴァンプさん。みんな薄々気付いてるけど黙ってるのに」
「でもね、コタロウくん。魔界の神様とか何とか凄い肩書きばっかの中で、あの人ったらアレだよ?チンピラでヒモ
でヤカラのヒーローだよ?場違いというか、何というか…」
「むー、確かに」
「―――なあ。私はそのサンレッドだかレッドサンだかの事はよく知らないけどさ。アレだろ?さっきの入場で最後
に出てきた、あの赤いのだろ?」
「ええ、そうですよ。それがどうかしたんですか?」
「いや、あのさ…言いにくいんだけど」
魔理沙はそう前置きして、後方を指差す。
「さっきからその赤いのが、後ろにいるんだけど」
「え!?」
「え!?」
異口同音である。二人が恐る恐る振り向くと、そこにはいました、赤い奴。
その能面のような顔からは、如何なる感情も読み取れない(マスクなので当然だが)。
「あ、あの、レッドさん、ど、どうしてここに…」
「自分の出番が来るまでは控え室でも客席でもどこにいてもいいって言われたからよー。とりあえずお前らの様子
を見に来てみたら、お前らって奴は…」
「レ…レッドさん!悪いのは私なんです!コタロウくんは何も言ってません!」
「そ、そんな…違うよ、レッドさん!ヴァンプさんじゃない、ぼくが悪いんだよ!」
お互いを庇い合う悪の将軍と吸血鬼少年。美しい友情だった。
「うるせー!」
しかし、それで感動してくれるような相手ではないのが誤算であった。レッドさんのゲンコツを喰らい、大きなコブを
こさえた二人はうずくまって悶絶する。
それを見つめて、妖夢は真面目くさった顔で顎に手を当て重々しく呟いた。
「人を悪く言えば、それは己に返ってくる―――因果応報ということですね」
「そうですね。貴女にだけはそれを言われたくないものですが」
ジローが皮肉を返したその時。
「―――では、皆様。まずは日程から説明いたします!」
バイオレンスかつグダグダな空気を断ち切るように、幽々子の声が会場に響く。
「本日は二回戦まで行い、本戦出場者32名を更に8名にまで絞ります―――そして三日後、その8名によって決勝
トーナメントを行い、優勝者を決定します!」
「へえ。今日で全部終わらせちまうわけじゃないんだな」
「多分、三日の間に幕間劇とかいれてなるべく話数を稼ごうという大人の事情ですよ」
分かったような事を口にする妖夢である。
その間も幽々子による各種説明は続く。
「ルールは規則・反則一切なしのバーリ・トゥード方式!武器も道具もガンガン使用しちゃってOK!」
「ルール無用ですか…レッドさん有利ですよ、ねっ!」
「どういう意味だよ、ヴァンプ…」
しかめっ面のレッドさんだった。
「勝敗はギブアップか、もしくは審判である四季映姫・ヤマザナドゥの判定によって決まります!ちなみに、万一
相手を死に至らしめてしまった場合は失格となりますのでご注意願います!」
「ギブアップって…そんな簡単に負けを認めるような奴もいないだろうに」
「となると判定か、でなきゃ死か…いずれにしろ、血を見る事になりそうね」
「ちょ、そんな事言わないでくださいよ!怖いなあ、もう…」
物騒な事を口にする魔理沙とアリス。ヴァンプ様はおっかながって震えるばかりである。
「なお観客席には防御結界が張り巡らされています。ちょっとやそっとでは破れないので、どうか御安心を―――
しかし、選手の力がちょっとやそっとじゃなかったら破れるかもしれないのでその辺は御容赦を!」
「あ、フラグ立った」
と、パチュリー。ちなみに、破れるフラグである。
「―――では!早速ですが、開幕戦となる一回戦・第一試合の組み合わせを決めるとしましょうか!」
一際声を張り上げる幽々子。いつの間にやら、彼女の傍らには巨大な箱が置かれていた。
その背後には、32枠が用意されたトーナメント表。
『さあ、選手&観客の皆さん!ここからは私が説明しましょう!』
実況・射命丸文の声が会場を揺るがす。しかしこの鴉天狗、ノリノリである。
『もうお気付きの方も多いと存じ上げますが、あの箱の中には、選手の名が書かれた札が入っております!それを
今から、西行寺幽々子様が二枚引きます―――即ち、その二人が対戦相手!』
では、と文は幽々子を促す。
『幽々子様!それではよろしくお願いします!』
「はい!ではお待ちかね、最初の対戦カードは!?」
箱に手を突っ込み、勢いよく二枚のカードを引き抜き、天に翳す。
そこに記されていた名は。
「―――サンレッド!そして、星熊勇儀!」
『決定です!幻想郷最大トーナメント一回戦・第一試合は―――サンレッドVS星熊勇儀!』
おおー!と、会場中がどよめく。その中で、ヴァンプ様とコタロウはレッドさんの肩を掴んで揺する。
「ほら、レッドさん!いきなり出番ですよ!」
「頑張って、レッドさん!」
「何でお前らがはしゃぐんだよ、ったく…」
纏わりついてくる二人をあしらいつつ、レッドは思い出していた。
(星熊勇儀…あいつか)
予選終了後に、彼女とは少しばかり<挨拶>を交わしている―――その短い邂逅で、彼女は垣間見せた。
力。そして才気。
それも圧倒的容量を確信させる器。
「あらら…気の毒に。いきなり星熊勇儀とは相手が悪かったな、レッドサン」
「サンレッドだ、白黒」
茶化すような物言いの魔理沙に対し、レッドは肩を竦めてみせる。
「ま、ここの連中にいっちょ見せてやんよ…俺のケンカをな」
そう言い残し、レッドは悠然と去っていく。その背には確かに、壮絶な闘いへ向かう漢の頼もしさが滲み出ていた
のだった。
そんな彼の後ろ姿を見つめ、妖夢はポツリと呟いた。
「…これが私達が、彼と言葉を交わした最後の瞬間でした」
「そこ。不謹慎且つ不吉な発言は控えなさい」
―――選手には控え室として、一人ずつ個室が用意されている。
星熊勇儀は彼女に与えられた一室で、ソファに身を横たえていた。
その姿はさながら昼食後の睡魔にまどろむ虎のように獰猛で、野性的な美しさに満ちている。
視線の先には、会場の様子が映し出されたモニター。
西行寺幽々子の手に握られた二枚のカード。その名を呼ばれると同時に、勇儀は身を起こした。
「…へえ。奇縁だね、こりゃ」
こと戦闘において、鬼より優れた種族は幻想郷にも存在しない。ましてや彼女は、現時点で実在が確認されている
鬼の中でも、伊吹萃香と並ぶ二強と称されている。
その研ぎ澄まされた戦闘感覚が告げていた。天体戦士サンレッドの秘める、膨大な力量を。
「景気づけに、やるかね」
愛用の巨大な杯を右手に取り、瓢箪からなみなみと酒を注ぐ。人間ならば酒豪を称する者でも一口で昏倒する、鬼
特製の酒。勇儀はそれを軽々と飲み干し、旨そうに息をつく。
「さて、いくか」
その時、控え室のドアが遠慮がちにノックされた。
「ん…?何だい。あたしなら」
「次に貴女は<今から出るところだよ>と言います」
「今から出るところだよ…はっ!」
くすくすと、ドア越しに忍び笑いの気配。
「貴女のノリのいい性格、私は大好きですよ?」
「…入ってきなよ、古明地(こめいじ)」
「では、失礼して」
ドアが開かれ、<古明地>と呼ばれた訪問者の姿が露わになる。
幼いながらも端正な顔立ちは、氷の如く表情がない。やや癖っけのある、薄い紫色の短髪。淡い空色の部屋着の
胸元では、ギョロリとした第三の瞳が勇儀を値踏みするように見つめている。
彼女こそは古明地さとり。旧灼熱地獄跡に建造された地霊殿に棲む、地上を追われた妖怪達の総元締め。
<心を読む程度の能力>を持つ妖怪・覚(さとり)。
誰からも忌まれ、誰からも嫌われ、誰からも呪われた、この世で最もおぞましい妖怪として知られる存在である。
そんな彼女だが、星熊勇儀とは不思議と仲が良かった。
捻くれ者で繊細な所のあるさとりと、豪放磊落で単純一途・姉御肌の勇儀。
対極だからこそ、互いに惹かれるものがあったのかもしれない。
「<よくここまで入ってこれたな>ですって?こう見えても隠れ忍ぶのは得意技です。無意識を操る我が愚妹ほど
ではありませんが、ね…おっと<この不法侵入者め>ときましたか。そんな固いことを仰らないでください」
「言ってないよ、思っただけさ」
「それはその通り。おや<どうしてここに来たんだ。あんたの可愛いお燐とお空の応援かい?>まあ、そういう事
ですよ」
「あのさあ、古明地」
げんなりした様子で、勇儀は大げさに溜息をつく。
「ちょっとは言葉のキャッチボールを楽しもうじゃないの。そうポンポンと頭を覗かれちゃたまったもんじゃない」
「そう申しましても、私の能力は自動的ですので」
「前にも聞いたよ、それ…」
「確かホワイトデーの時でしたよね」
「そうだよ。バレンタインを犠牲にした、アレだ」
「アレですね。で、勇儀さん。貴女への用件はそれに関する事でして」
さとりはスカートのポケットから、小さな布切れを取り出す。
「ん?それは…」
布切れに見えたのは、御守りだった。どうやら手作りのようで、市販のものに比べると不格好な長方形だ。
御世辞にも丁寧とは言い難い刺繍で、糸が所々ほつれてしまっている。
「<彼女>が勇儀さんのためにと作ったんですよ」
「…………」
勇儀は御守りを受け取り、胸元に仕舞い込む。その顔は、何やら深く考え込んでいるようだった。
「ふむ…<何て可愛い事をしてくれるんだあいつはああもう可愛過ぎる今すぐ帰ってイチャイチャしたい>」
「読むんじゃねーよ」
「自動的です」
「ちぇっ…」
「…<嬉しいけど、本当はここに来て応援してほしかった>それはまだ、無理ですよ」
さとりは不意に、表情を曇らせる。
「彼女にかけられた<呪い>は―――まだまだ、解けてはいないのですから」
「…分かってるよ」
だったら、と勇儀は笑う。
彼女らしい、明け透けで、豪快で、裏表のない、地底さえも照らす太陽のような笑顔だった。
「優勝を手土産に、あたしの方からあいつに会いにいくさ」
「そして18禁レベルのイチャイチャを繰り広げるのですね。ああやだやだ。小五ロリで乙女の私にはそんな猥雑
な思考は心に毒です」
「うるさいね。お前、あたしより年上だろうが」
「…頑張ってくださいね、勇儀さん」
忌み嫌われし妖怪・覚は、その悪名に似つかわしくない、まるでただの少女のように微笑んだ。
「私も地底の仲間として、貴女を応援していますから」
―――星熊勇儀が去った後、さとりは<こちら側>に向き直った。
「…え?<さっきの会話がさっぱり意味分からん>ですって?ではハシさんが書かれたこちらのお話をどうぞ」
つ
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1112.html 「これを見れば星熊勇儀さんと私、そして<彼女>の事を理解していただけるかと。ではでは」
―――そして。
闘技場に今、両雄が降り立つ。
『さあ、まずは天体戦士サンレッドが東の入場門より姿を見せました!』
真っ赤なバトルスーツに身を包み、太陽の戦士が大地を踏み締める。
『外の世界より来たる正義のヒーロー…その実力は全くの未知数!トーナメントの台風の目となるか!?それとも
力及ばず果てるか!?答えはその鋼の拳に訊け!』
期せずして、大歓声が巻き起こる。闘技場の中央に立ったレッドは、それに応えるように両手を高々と上げる。
『おっと、続いて星熊勇儀が西の入場門から登場だぁっ!』
その姿、まさしく威風堂々。地に足を付けて歩む仕草が、ただそれだけで苛烈にして華麗だ。
『妖怪の頂点に君臨する戦闘種族―――即ち鬼!その中でも最強と名高い星熊勇儀!<語られる怪力乱神>と
異名を取る彼女の力には疑う余地なし!このトーナメントにおいても文句なしの優勝候補です!』
ポキポキと拳を鳴らしながら、勇儀はサンレッドへと向かう。
勇壮なる両者は、闘技場中央で睨み合った。
「―――あんたも理解しているだろう、サンレッド」
「あん?何をだよ」
「強い者を見ると力比べせずにいられない、我々の習性さ」
分かっているはずさ―――と、勇儀は繰り返す。
「同類のあんたなら、分かるはずだ…あんたも、強い奴との闘いを求めてる」
「…かもしれねえな」
「あたしはさあ、サンレッド。あんたを強い男と見込んで期待してるんだ…」
だから。
「落胆させんじゃないよ」
「誰に向かってくっちゃべってんだ、メスゴリラ」
レッドは中指を立て、不敵に言い返す。
「そっちこそ、一撃二撃で沈むんじゃねーぞ」
「―――さあ。二人とも、一度離れて」
審判の四季映姫・ヤマザナドゥが一触即発の二人を制して、距離を取らせる。
「それでは存分に、白黒はっきり付けなさい―――」
「幻想郷最大トーナメント一回戦・第一試合―――始め!」
投下完了。前回は前スレ324より。
鋼の錬金術師作者様の投稿後、間をおかずに失礼いたしました。
そして、
>>1さん乙であります。
>>ガモンさん
お帰りなさいませ!あなたのダイ大&ドラクエワールドをまた堪能させていただきます。
>>な、なんかいきなり喋り方変わりすぎじゃねえか?
ですよねーw僕がドラクエ5やった時も全く同じ事を突っ込みました。
マスタードラゴン、強い味方になってくれるか否か?
しかし、バラモスブロスとか懐かしすぎる…どんだけドラクエネタ仕込むつもりですか、あんたw
バラモスの弟(名前的には)という大物ポジションの割には、もう普通の雑魚的扱いですよね、彼…
それはそうと、僕もヴァンプ様の元で働きたいものです…。マジ理想の上司。
>>ふら〜りさん
ヴァンプ様、その辺は結構正統派の思考です。原作でもレッドさんの命を狙うフロシャイムとは別の
怪人が現れた時「レッドさんは私達の手で抹殺したいんです!」と助太刀を申し出たほどですし。
まあ結果は手助けするまでもなくいつも通りレッドさんがワンパンチ瞬殺でお終いでしたがw
>>332 我ながら、正直酷い出来ですわw
>>334 褒めてくれて、正直嬉しい…
>>鋼の錬金術師〜「後夜祭」〜作者様
期待の新人の登場にワクワク…これからも色々書いてくださればと思います。
鋼の錬金術師はチラ見くらいしかしたことがなかったけれど、登場人物たちが魅力的で楽しそうで、
原作もきっちり見てみようかな、と思わされました。
エドワードとアルフォンスの仲良し兄弟ぶりが、いい感じです。こういうネタに弱いのですよ…!
29 :
ふら〜り:2010/06/13(日) 09:57:56 ID:1p5atKK20
>>1さん&ハイデッカさん
おつ華麗さまです! 古参の復帰に新人さん来訪にと、久々に上向いてきたところでの
新スレ、縁起が良いなぁと。テンプレ増量に貢献したいと思いつつ、出だしだけ書いて
行き詰って捨ててるのが複数。えらく長いスランプだ……
>>ハガレン作者さん(おいでませっ!)
原作は全く全然知らないのですが、本作についてはランファン主役として見ると……余裕
たっぷりの敵の懐中で、主君の身を案じて健気な忠義心を燃やしてる武人だなあという印象。
こういう人は報われて欲しいと思う一方、主君を救って華々しく散るのも似合うなとか思います。
>>サマサさん
いきなりのレッド出陣! これはライタイの勇次郎を思い出す展開ですね。とりあえず負けは
しないでしょうが、どの程度の戦いになるのか、観客たちの評価がどうなるかが楽しみなところ。
で相手(敗北予定)側の事情説明は、お約束ながらバトル前のわくわくを盛り上げる必須要素!
>>最後にちょいとハイデッカさん
私にとって漫画の中のジャンヌ・ダルクといえば、以前は「ワールドヒーローズ2」一択
でしたが、最近になって「メビウスジャンパー」が加わりました。なかなか可愛くて凛々しくて
良いですぞ。……それはともかく、SSお待ちしてます!
乙一
最近のじゃないけど、安彦先生のジャンヌも中々
平野先生のジャンヌは色んな意味でハジけすぎw
さて、復活ブームにのれるかな
久々にふら〜りさんのレスが欲しいので
31 :
作者の都合により名無しです:2010/06/13(日) 14:30:55 ID:zZkrWaPa0
ハガレン作者さん、力作書いて下さって嬉しいですー。
原作終わってちょっと寂しかったんで、読んでて楽しかったです。
アルフォンスが中心にみんな原作通りに魅力的と書かれていますが
個人的には大佐と中尉がもう少し活躍してほしかったかな?
また、機会があればお願いできたら嬉しいです。
>鋼の錬金術師作者さん
最終回前を想像して書いたという事で、ほのぼのとした中にも
緊張感とどこか侘しさみたいなものが感じられますね。
だけどそれ以上に、エドとアルたちはじめとするみんなの
「希望」を感じられます。また、何か書いて下さいね。
>サマサさん
お祭りとはいえども、超絶の強者たちが集まったトーナメントだから
死人が出てもおかしくないような・・。闘技場大丈夫かな?
やはり主役が一番に出て盛り上げないと駄目ですよね!
ハガレン作者です。
皆様の暖かい感想、本当に嬉しいです。ありがとうございます。
自分のメモ帳とは別の形で掲載してから改めて読み返すと
いろいろとあらが見えてきて恥ずかしいものですね。
お祭り騒ぎ的オールスターな話のつもりだったのですが、
個人的なキャラクターのひいきが色濃く出ていることに気付いたり…
>>28 サマサ ◆2NA38J2XJMさん
仲良し兄弟がお好みでしたら是非、原作も一読ください。
「兄弟の絆」が柱の作品ですので。
>>29 ふら〜りさん
ランファンが主役というのは新鮮な見方ですね!
主君を救って華々しく散るのも…うん、似合うかもです。
>>31 大佐と中尉は登場予定はなかったのに書いてるうちに
いつのまにか動きだしていたキャラクターです。魅力的ですよね。
いつかこの二人がメインの話を思いつけたらいいなと思います。
>>32 「最終回が来たあともみんなこんな感じであってほしいな」という
希望を込めて書き上げた話です。
感じ取っていただけたことに感激です。
昨日から時間があるときに過去ログを読ませていただいています。
先輩方の愛のこもった文章にはただただ感心するばかりです。
一応この「後夜祭」を受け継いだ設定で
2〜3年後のシン国編の構想もありますので
もし書けたらまたスレを借りて公表させていただければと思います。
このたびは本当にありがとうございました。
ハガレン作者さん、好作をうぷして頂きありがとうございました。
私はハガレンをあまり知りませんが、「原作読んでみようかな」と
思わせる、良い出来のSSだったと思います。
続編楽しみにしてます。その時までには、原作も読んでおきます。
次のうぷの時には、名前を名乗っていただけると呼び易いかな、と。
>>30さん、どなたか存じませんが楽しみにしております。
ハイデッカさんも復活するし、ふらーりさんも書いてくれそうだし
久しぶりにスレが活気付くかなあ、と。
サマサさん、ハシさん、邪神さんたちに負担がかかり過ぎだからw
サマサさんは特に絶好調でいよいよトーナメントに突入ですね。
レッドが決勝まで進んでくれれば俺は満足です。
相手が人外(当たり前か)ばかりだけど、レッドさんもチンピラ超人だからw
35 :
作者の都合により名無しです:2010/06/15(火) 16:50:46 ID:hnheUzOx0
>5TKag9u//k氏(次は是非お名前を)
書き慣れている感じだから、以前どこかで書いていたんでしょうな。
みんな魅力的ですが、アルとランファンが作中では美味しいですね。
今回はどこかしみじみとした雰囲気を味わうSSでしたので、
次はバリバリのアクションも呼んで見たいかなー、と思います。
>サマサさん
東方はちょっとしか知らないけど、星熊勇儀というのは
東方キャラの中でどのくらいの強さを誇るキャラなのだろう?
レッドさんは作中最強ですが、周りはろくなのいないからなw
一回戦はレッドさんの強さが際立ってほしいな。
>30さん
誰ぞ?とにかく復帰宣言は嬉しいな。
でも名前を名乗らず復帰宣言する人って、復帰しないパターンを多いからなw
いや、超期待しております。
36 :
作者の都合により名無しです:2010/06/21(月) 13:33:53 ID:948UCWvn0
好スタートをきったと思ったのに・・
前スレ落ちちゃった?
〜天体戦士サンレッドVS星熊勇儀〜
「ああ〜…いよいよ始まっちゃいましたね」
ヴァンプ様は落ち着きなくそわそわしながら、闘技場に立つレッドを見つめる。
「ね、ね。大丈夫ですよね、レッドさん。ああ〜、あの人の強さを疑うわけじゃないけれど心配だなあ…もし殺られ
ちゃったりしたら大変だよ。抹殺すべきヒーローを他の人に倒されたなんてなったら、皆にどう言えばいいのか…
あ、そうなったらなったで世界征服に一歩近づくわけだし、ここはむしろあっちの星熊勇儀さんを応援すべきかも。
でも私達以外の誰かがレッドさんに勝っちゃうってのも複雑な気分だし…あ〜も〜、ホントどうしよう、私」
「…とりあえず、静かに観戦してはいかがでしょう」
「そ、そうですね、ジローさん!よーし、見るぞー!」
身を乗り出し、食い入るように闘技場を睨み付けるヴァンプ様である。
そんな彼を呆れ顔で見つめて、魔理沙はジローとコタロウに小声で問うた。
「なあ。このオッサン、ちゃんと世界征服できてるのか?」
「…ノーコメントとさせていただきます」
「…ま、毎日頑張ってるんだよ、ヴァンプさんは」
「そっか…」
それで全てを察した魔理沙は、静かに口を閉ざしたのだった…。
「それにしても、いきなり星熊勇儀とは…サンレッドも運がないわね」
「ふむ。それは聞き捨てなりませんね」
パチュリーのその言葉に、ジローは少々気分を害したように反論する。
「身内贔屓と誹られるかもしれませんが、私はレッドの戦闘力は幻想郷に在ってもそうそう並ぶ者はいないと見て
いますよ」
「そうですよ。レッドさん、おっそろしいくらい強いんですから!」
ヴァンプ様もジローに続くが、パチュリーは首を横に振った。
「別に、彼が弱いなんて誰も言ってないわ…レミィが気にかけているくらいだもの。相当の力の持ち主なのは確か
でしょうね。だけど<語られる怪力乱神>星熊勇儀が相手となれば、分が悪いと私は見るわ」
「その、星熊勇儀さんって…そこまで強いんですか?」
「まあ、口で説明したってピンと来ないでしょうけど―――」
「―――見りゃ分かるさ。嫌でもね」
答えたのは、幼い少女の声。一同が振り向けば、そこには長い二対の角を備えた小さな鬼。
彼女―――伊吹萃香は瓢箪に口を付け、酒を煽りながら語る。
「百聞は一見に如かず。千聞とてまた然り。いくら言葉を重ねようと、あいつの―――星熊勇儀の力を計り知る事
は出来ないさ。ま、それを知るのは…あの赤マスクが大地に沈む瞬間だろうけどね」
「あ、あの…」
ヴァンプ様は、遠慮がちに萃香に話しかける。
「確か、トーナメントに出ていらっしゃる…伊吹メロンさんでしたっけ?」
「…あん?」
ぴくりと、萃香は眉を持ち上げた。
「あんた…今、なんつった?」
「え?伊吹メロンさんじゃ…」
「違います…伊吹萃香ですよ、ヴァンプさん」
妖夢が、冷汗と共に訂正した。
星熊勇儀と並び称される伊吹萃香―――彼女がその気になれば、ここにいる全員が束になっても敵うまい。
この場において怒らせてはならない危険人物1は、間違いなく彼女である。
「す、すいません!人様の名前を間違えるだなんて、とんだ失礼を…<スイカ>と<メロン>を間違えるなんて…
ぷ、ぷぷ…ご、ごめんなさい…スイカとメロンって…ぷーっ!す、すいませんすいません!笑ったりして私ったら
ほんと…で、でも…ひーひひひ!すいません萃香さん!」
謝りつつ、自分の発言に大ウケするヴァンプ様。彼は今、自分がすごい勢いで地雷を踏み抜いている事に気づいて
いない。萃香はといえば、身体をぷるぷると震わせて今にも噴火寸前といった有様である。
誰もが血の海に倒れ込むヴァンプ様の無残な姿を思い浮かべたその時。
「ぎゃははははっははははっはははははははははっはっはははひぃぃーーーひひひひっひっひいひいいいい!」
当のメロン、もとい萃香は、腹を抱えて笑い転げた。
「い…い…<いぶきスイカ>だから<いぶきメロン>ってか…ぷ、ぷ…あはははは!ダメだぁ、可笑しすぎるぅ!
さてはあんた、私を笑い殺す気だね!?うわははははははは!は、腹がヤバい、捩れるぅ!スイカにメロンって…
これはイケる!今世紀一番の大ヒット!あははははは!よーし、後で勇儀や天子ちゃんにも教えてやろうっと!」
見てる方がドン引きするような勢いで大笑いする萃香。
どうやら震えていたのは怒っていたのではなく、バカ受けしていたからのようであった。
恐るべきは、鬼のギャグセンスである。
とにもかくにも、ヴァンプ様は生命の危機を乗り切ったのであった。めでたしめでたし。
「…まあ、こいつはほっとくとして。一回戦からヤバい相手に当たったって事だけは確かだぜ?」
「そうね。はるばる外の世界から参戦したっていうのに、気の毒に」
「大丈夫」
悲観的な意見を述べる魔理沙とアリスに対し、コタロウはにっこりと笑った。
「レッドさんだって、ムチャクチャ強いもの」
「―――そうだよね」
ヴァンプ様はコタロウを見つめ、しっかりと頷いた。
「相手が誰だって…レッドさんなら、きっと勝ってくれるよ!」
「私は心配など、これっぽっちもしていませんよ」
ジローは不安の欠片も見せず、牙を見せて不敵に言い放つ。
「我々が星熊勇儀の力を知らぬように、貴女方とてサンレッドの強さを知らない―――予告しましょう。彼はこの
闘いに必ずや勝利し、皆を驚かせると」
「ふーん…これも美しい友情ってやつかね」
意地悪く言いながらも、魔理沙はどこか優しげに顔を綻ばせた。
「ま、ここで知り合えたのも縁か。この試合、私もサンレッドを応援してやるよ」
「うん!バッチリ応援よろしくね、魔理沙ちゃん!」
コタロウがグイっと立てた親指に、魔理沙も笑って親指を立て返す。
それを横目に、アリスは呟いた。
「それにしても、長々と話し込んで大丈夫なの?試合はもう始まってるのに」
「そうよ!こんなバカ話してる間に見逃したなんてなったらいい笑い者だわ」
「アリス、そしてメディスン。それについては無問題ですよ」
やたら自信ありげに妖夢が言い放つ。
「漫画的時空の発生によりまして、我々がさっきまでだらだらとくっちゃべっていたのは現実時間にしてたったの
2〜3秒ということになっております」
「私達、すごい早口だったんだ…」
(※このセリフはメディスン・メランコリーのものですが、これも現実時間にして0.01秒の間に放たれました)
―――と、いうわけで。試合開始から数秒。
先に動いたのは、勇儀だ。
「ここは、先手必勝でいかせてもらうよ―――」
空に舞い上がり、抑えていた妖力を解き放つ。漏れ出した強大な気配は竜巻の如き圧力を伴い、勇儀を中心に
うねり、渦巻き、蹂躙する。この勢力圏内に迂闊に立ち入ろうものなら、それなりに力のある妖怪であっても瞬時
に灰と化すだろう。
だがレッドはそれを、微動だにする事なく受け止めていた。荒れ狂う大蛇を思わせる力の奔流をかわすのではなく、
むしろ真正面から迎え撃ち、己の闘気で逆に抑え込む。
ひゅう、と勇儀は口を鳴らした。
「そう来ないとね。これくらいの脅しで顔色を変えるようなら、興醒めしてたところだ」
「ガタガタ言ってんじゃねー。さっさと来いよ」
「ははは、急くな急くな。勝負はこれから、これから―――」
勇儀は指先に妖力を込め、宙に円を描くようにくるくると回す。
その軌跡は、光を纏う無数の円輪と化す。
「怪輪―――<地獄の苦輪>」
数十、数百の光輪が一斉にサンレッド目掛けて飛来する。レッドは一瞬でその動きを読み切った。
最小限の動きでかわし、掻い潜り、避けられぬなら自らの拳で粉砕する。
「いい動きだね―――なら、これはどうだ?」
「っ!」
見れば、レッドの周囲を取り囲むように光輪が集まっていた。それは次々に融け合い、混ざり合い、一つの巨大な
円環となる。
「枷符―――<咎人の外さぬ枷>」
勇儀が右拳を強く握り締めると同時に、光の円環が収縮し、レッドを締め上げ、身動きを封じる。
『おっと、サンレッド油断したか!これでは動けないぞ!』
「ちっ…!好き勝手言ってんじゃねー!」
忌々しげに実況席を睨み付けるが、相手はその間も待ってはくれない。
「続けていくよ…今度はちょっと、派手にね」
動けないレッドに向けて、その両掌を向ける。それはまるで、標的を捉えた砲門だった。
「力業―――<大江山嵐>」
掌から放たれた、無限に等しい妖力弾がレッドに叩きこまれる。
大地が抉られ、巻き上がる土砂が、レッドの姿を覆い隠した。
『こ…これは終わったか!?星熊勇儀、試合開始早々の怒涛の攻撃だ!サンレッド、果たして無事か!?第一
試合からいきなり死者が出てしまうのかっ!?』
実況アナ・射命丸文の解説にも力が入る。だが、次の瞬間。
「―――っらぁぁぁぁぁぁぁっ!」
土砂の中から飛び出す、赤い影。レッドは全身の力を込めて己を縛る枷を引き千切り、鬼へと迫る。
「しゃあっ!」
強烈なヒジ打ちが、勇儀の顎を捉えた。さしもの鬼も衝撃を殺せず、地に落ちる。
間髪入れず、太陽の戦士が追撃する。
「ダララララァッ!」
目にも止まらぬ左のハイキックの三連撃。
「かはっ…」
「おおおおおっ!」
渾身の力を以て、鳩尾に右のショートアッパー。たまらず膝を折り、体を折り曲げる。
その隙に、既にサンレッドは勇儀の目の前から消えていた。
垂直にジャンプし、太陽闘気(コロナ)を燃え上がらせる。
「―――コロナアタック!」
火花を散らして猛る大火球を、大地目掛けて投げつける。
破壊をもたらす光が激しく明滅し、世界は真紅に染まり、轟音が闘技場を揺さぶった。
跡には、隕石が激突したかのようなクレーター。星熊勇儀はその中心で倒れ伏し、指一本動かない。
『サンレッド、防戦から一転して凄まじいまでの猛攻!最強妖怪の一角・星熊勇儀がまさかの大苦戦だぁ!勝負
はここで決まるの』
かぁ!?と、言い切る事は出来なかった。倒れていた勇儀がバネ仕掛けの如く飛び起きたからだ。
首をコキコキと鳴らしながら、口に溜まった血をぺっと吐き出す。
全身に傷を負い、衣服は既に襤褸切れと化していたが、その覇気に満ちた横顔には一切の翳りがない。
「今のはちょっと、効いたよ。けど、これで終わりと思ってもらっちゃ困るね」
笑ってそう言ってのける。
その頑強さに観客達はどよめくが、闘技場に立つサンレッドには動揺は見えなかった。
「だろうな…アレで決まってたら、ガックリくるトコだ」
「そりゃあ杞憂というものさ」
肩を回しながら、美しき鬼は天体戦士の前に立つ。
瞬間、レッドの全身を貫くような悪寒が奔った。
「サンレッド…あんたは、確かに強い」
勇儀の全身から、暴風雨の如く鬼気が漏れ出していた。
それは永き時の中で熟成された、不動にして不滅の鬼気だ。
「久々だよ。あたしの全部を見せられる相手は…全力で闘える敵は―――!」
勇儀が放つ妖力が膨れ上がり、大地が揺れる。天には乱雲が渦巻き、雷鳴が轟く。
「とくと見よ…鬼族が四天王・星熊勇儀―――<怪力乱神を持つ程度の能力>を!」
<怪力乱神>
<怪>即ち、怪異にして超常たる存在。
<力>即ち、並ぶものなき剛力。
<乱>即ち、天地を乱すが如く。
<神>即ち、神妙不可思議なる全て。
総じて人智を、理解を、現実を超越せし概念。
古の賢人が語らざる物語。
その体現者にして語り部こそが星熊勇儀。
故に、彼女を知る者はこう謳う―――<語られる怪力乱神>!
獅子の鬣(たてがみ)の如く逆立つ金の髪。
大きく、長く伸びていく爪牙。
血のように紅く染まる瞳が、大きく見開かれた―――
「…ここまでだね」
観客席で、伊吹萃香はそう呟いた。
「勇儀がああなった以上、サンレッドにはもう、勝ち目はない」
「な、何を言ってるんです!まだ分かりませんよ!」
「そうだよ!レッドさんは負けないもん!」
「分かるさ」
ヴァンプとコタロウの抗議を遮り、短くそう答えた。
「あいつの<怪力乱神を持つ程度の能力>ってのは、妖力を使って説明のつかない、不可思議な現象を起こす
能力―――今の勇儀の姿は、それを純粋に戦闘能力の強化につぎ込んだ状態だ」
そして、続けた。
「あいつがこの世に生まれ落ちて数百年―――誰が相手だろうと、あれを使った勇儀が力勝負で負けた事なんざ
一度もないんだよ」
変貌した星熊勇儀の姿を目にしたサンレッドが次に視界に捉えたのは、迫り来る拳だった。
「くっ…!」
両腕を上げてガードするが、何の意味もなかった。
身体そのものが力任せに吹き飛ばされ、世界がぐらりと回る。
音を置き去りにする速度で弾き出されたレッドに、勇儀は一瞬で追い付いた。
「力業―――<大江山颪(おろし)>!」
妖力を全身に纏わせ、一撃で山をも砕く拳を、雨霰と降らせる。
散々に打ち据えられたレッドは耐え切れずに苦鳴を洩らす。
その首元を右手で掴まれ、宙吊りにされた。
不意に、その手が離され―――
「四天王奥義―――」
右の一撃が、サンレッドの脇腹を砕いた。
身悶える暇も与えてくれず、左の拳が側頭部(テンプル)を痛打。
そして、最後の三撃目。
地球の核をブチ抜くような踏み込みから放たれたのは、天を貫くような右のアッパーカット。
レッドはたっぷり十秒もの間、発射されるロケットの気分を味わい―――
同じ時間をかけて、飛び降り自殺者の気分を味わい―――
大地に、叩き付けられた。
「―――<三歩必殺>!」
破壊的にして圧倒的。
太陽は今、恐るべき力を持つ鬼の前に、砕かれた―――
誰もがそう思い、ある者は星熊勇儀に歓声を送り、またある者は必死にサンレッドの名を呼んだ。
文は興奮を隠しきれない様子で叫ぶ。
『星熊勇儀、恐るべし!その真の力の前にサンレッド、手も足も出ず!今度こそ勝負ありか!?』
「…いや。まだだな」
呟き、戦況を見守る審判・映姫に目をやった。
「決着が付いたなら、あんたが黙って見てやしないさ―――なあ、閻魔様」
「その通りです。まだ、白黒はっきり付いてはいない」
幻想郷の審判全てを司る存在は、答えた。
「彼にはまだ、闘う意志がある―――白か黒かは、まだ分かりません」
「どっちでもねえ。赤だよ、俺は」
そう言って。
サンレッドは、立ち上がった。
「一見かっこよさげですが、よく考えると何を言いたいのかよく分からないセリフですね」
「ほっとけよ。あんたと話してる暇はねー」
相当なダメージを被ったはずだが、その言葉に怯えの響きは一切ない。
絶望的なまでの力の差を見せつけられたにも関わらず―――まるで、心が折れていない。
眼光鋭く、星熊勇儀を睨み付けた。人差し指を、彼女に向けて力強く突き付ける。
「こちとら、あのバケモンを倒さなくちゃならねーんだからな」
『お…驚きました!サンレッド、まだやる気だ!しかし、彼我の力の差は歴然としている!何か策があるのか!?
それとも自棄になったのか!?彼の真意はどっちだ!』
「策なんざ、ねーよ」
レッドはそう吐き捨てる。
「へえ…けど、自棄になったって顔でもないね」
勇儀は、楽しげに口の端を吊り上げる。
「全力で、やるだけだ」
熱い風が、吹き抜ける。
「星熊勇儀―――俺はきっと、期待してた。テメーみたいな奴が現れるのを、待ってたんだ」
異常なまでの力を持て余す日々。
ヒーローとしてこれ以上なく恵まれた才能を持ちながら、それを発揮する機会もなかった。
強敵が欲しい―――
その思いは彼の中で、ずっと燻っていた。
そして、今。
「ありがとよ―――おかげでやっと…本気のブン殴り合いができるぜ!」
サンレッドの太陽闘気(コロナ)が、極限まで高まった。
より真紅(あか)く。
更に灼熱(あつ)く。
遥か頂点(たか)く。
何処までも強靭(つよ)く!
荒ぶる太陽神(ヒュペリオン)の名を受けて、今、紅き勇者は焔の戦神と化した!
「雄々しく激しく、正義が吼える―――!」
情熱が漲る。灼熱が溢れる。爆熱が荒ぶる。
日輪の煌きの中、サンレッドがその姿を変えていく。
両腕と両脚に、古代ギリシャ神殿の支柱を模した装甲。
胸部を覆う、頑強な鎧(アーマー)。
頭部には、無骨な兜を思わせるオーバーメットが装着された。
今まさに、天体戦士サンレッドがその真の力を解き放つ時が来たのだ!
「天体戦士サンレッド・剛力形態―――<ヒュペリオンフォーム>!」
投下完了。前回は
>>27より。
アクセス規制マジかんべん。そしてそれ以上に納得いかない今週のオリコンランキング。
ちくしょう…大人ってマジ汚ねえよ!
デイリー一位を三日連続で取ったのはサンホラなのに、土日でTOKIOが謎の界王拳で逆転一位って…!
なんだよあの疑惑の売り上げ!いくらキャンペーンしたからってあんなに伸びるわけねーだろうが!
くそっくそっくそっ!舐めてんのか人を!
…申し訳ありません。大人気ないと謗られようとも、これだけは本当に言いたかったもので。
まあそれはそうとSoundHorizon新曲「イドへ至る森へ至るイド」大好評発売中。
素晴らしいの一言です。
今回登場の「ヒュペリオンフォーム」原作では10巻で姿だけ出たフォームですが、作者ブログの裏設定では
「パワー重視のフォーム」とのことなので、勝手に剛力形態としました。
>>ふら〜りさん
通常レッドさんがついに負けました。うーん、作品間で強さの格差が酷すぎる気もします…。
作者の贔屓でキャラを優遇するって、ホントはやっちゃいけないんですが…うーん…。
>>30 復活、待っております。
>>32 まあ死人は出ないけど、闘技場は涙目です(笑)
>>ハガレン作者さん
では、漫喫に行った時などに読んでみます。
>>34 地上最強のチンピラパワー、レッドさんならば必ずや見せ付けてくれるはずです。
>>35 強さ的に上位に位置するのは間違いないかと…いや、レッドさんの周りにいる連中も弱かないんですよ!
お疲れ様ですー
アクセス禁止はもうどうにもならない所まで来てますね。
おかげで2chに来る回数も減った・・
パワー馬鹿のレッドさん以上の怪力を誇るんですか、勇儀は。
東方知らないけど、勇次郎みたいな感じなのかな?
通常フォームで太刀打ちできないから変身したようですが
まだ一回戦なのに結構ぎりぎりですね、いきなり。
決勝までなんとか頑張ってほしいです。
イドイドはママン無双で吹いた そしてマジ泣けた
次のアルバムがもう楽しみすぎる
勇儀VSサンレッドすげぇwww
初戦でこれって最終戦どうなるんだwww
ていうか、レッドさんのフォームって何種類あるんだっけ・・・
サンレッドはギャグ漫画だからある意味無敵
対して東方は萌えだけど、厨二設定がいっぱいある
互角だな
ところでサンホラって俺の大好きな
マーティフリードマンがゲストに参加したところだっけ?
47 :
ふら〜り:2010/06/23(水) 19:44:47 ID:W+Dnlb980
>>サマサさん
清々しいまでにタネも仕掛けもない、パワーとスピードどころかスピードさえない、本っっ当に
パワーだけのブン殴り合い、でレッドを圧してしまいましたね。恐るべし、しかしまだ一回戦。
先が心配=楽しみです。んでこの試合、試合後はタイマンはったらダチじゃ〜になりそうな。
>>予告
軽いものですが準備を進めております。次来る時には何とか。
48 :
作者の都合により名無しです:2010/06/25(金) 15:42:58 ID:NqE5d8aA0
サマサさんの以前の作品を読んでみたけど
文章力は格段に上がってるなあ
「描きたいけどネタが無い」という人に朗報(?)です
大まかな脚本を箇条書きにします。
どんな結末になるかは貴方次第。
クロスオーバーものです。
案1 空条承太郎(第三部終了直後)VS豪鬼(SFIV時点)
案2 ケンシロウ(初期)VS勇次郎(範馬刃牙時点)
「我こそは!」という人、よろしければお願いします。
しかし誰か復活してくれんものか
このままじゃ事実上サマサさんの単独スレになっちまうぞ
もうちょっと待ってて
長編は無理だが短編なら今月中になんとか…
〜一回戦第一試合・決着〜
天体戦士サンレッド・剛力形態<ヒュペリオンフォーム>。
それはサンレッドの太陽闘気(コロナ)が極限にまで達した時にのみ装着される戦闘形態の一つ。
古の太陽神の名を冠するこのフォームの主眼に置かれるのはただ一つ―――<パワー>。
純粋な肉弾戦に関しては究極形態すら凌駕するヒュペリオンフォームを纏ったサンレッドは、まさに真紅の破壊神
となりて、あらゆる敵を打ち砕くのだ!
「―――なんつー、どうでもいい解説は脇に置いて…」
サンレッドは、右足を大きく上げて。
「ラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!」
勢いよく大地を、踏み付けた。
その瞬間、闘技場が―――否。
世界そのものが、震えた。
ZUUUUUUUUNッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!
『お、おおっ!?ゆ、揺れる揺れるっ!』
「あ、兄者ぁ!」
「コ、コタロウくん!イ、イスの下に隠れないと!」
「ええい、落ち着きなさい二人とも!」
「ま、まさかこの闘技場、耐震強度偽装してやがんのか!?」
「責任者出て来ーい!」
「ち、ちがぁうっ!このにとりが設計した闘技場はテポ○ンの直撃にも耐えうるはずなんだぁっ!」
そんな諸々のどよめきを余所に、レッドと勇儀は再び対峙する。
言葉は何もない。
二人とも、知っているのだ。
この闘いを語るのは、唯一つ―――互いの拳だけだということを。
「おおおおおおおおおっ!」
その咆哮は、絡みつく鎖から解き放たれた獣。
その躍動は、狭い鳥籠から解き放たれた翼。
放たれた豪熱の拳は、勇儀の身体を枯葉の如くに撥ね飛ばす。そのまま壁に激突するかに見えた瞬間に身を翻し、
壁を蹴って弾丸の如くレッドに迫る。
だが、レッドの姿は瞬時に消える。
「こっちだボケっ!」
虚を突かれた勇儀の背後に現れたレッドが、その背を蹴り飛ばす。
吹き飛ばされる勇儀を追って即座に跳躍し、追撃。
「甘いよっ!」
蹴り足を掴まれた。そのままミキサーの如き勢いでレッドの身体がブン回される。
「ぐっ…らぁぁっ!」
身を捩じらせ、足を無理矢理に引っぺがす。着地と同時に四肢の全てを駆使してのラッシュ。
勇儀もそれに応える。防御は微塵も考えない。一意専心、ただひたすらに拳を繰り出す。
天体戦士サンレッド。そして星熊勇儀。
二人の一挙手一投足ごとに、闘技場は激しく揺れ動いていた―――
「―――って、このままじゃ私達の方が危ないですよぉっ!」
コタロウと共にイスの下に潜り込んだヴァンプ様はいきなり泣き言である。
「確かに…これじゃ、闘技場がもたないぜ!」
「ああもう、にとりの奴!もっと頑丈に造りなさいよ!」
魔理沙達は魔法によって空を飛ぶ事が出来るので、揺れそのものは脅威ではない。
しかし頭上にパラパラと降り注ぐ瓦礫は、闘技場大崩壊という最悪の想像を喚起させるに余りある。
皆が一様に顔色を失くす中で、しかしジローと萃香だけは身じろぎする事なく闘いを見守っていた。
「冷静じゃないか、吸血鬼のボーヤ」
「…私には、彼の闘いを見届ける義務がありますからね。目を逸らすわけにはいかない」
「へ、カッコつけちゃってさ…しかして」
萃香は、サンレッドを見つめていた。
その瞳の奥には隠しきれぬ戦慄と驚嘆が浮かんでいる。
「何者なんだ、あいつは…勇儀が殴り合いであそこまで苦戦するなんて、今までなかったぞ」
「私とて初めて見ますよ―――彼の、あんな姿は」
ジローの額を、冷たい汗が滴り落ちる。
眼前で繰り広げられる闘いは、彼の想像を遥かに超えていた。
「サンレッドの戦闘形態…話だけは聞いた事がありましたが、まさかこれほどとは…」
ジローとて、伊達に吸血鬼として百年を生きたわけではない。
それこそ怪物としか形容できない存在ならば、いくらでも見てきた―――
だが、彼をしたところで今のサンレッドに匹敵する程の力の持ち主となると、そうそう思い浮かばない。
<黒蛇>の異名を取る魔女がその魔力・知略・策謀の全てを駆使したとしても、もはやレッドには届くまい。
今は亡き<聖騎士>や世界の敵と成り果てた<舞踏戦士>ですらも、己の肉体一つでここまでの闘いは出来ない
だろう。
月下最凶の狂戦士<緋眼の虐殺者>だろうと、この闘争に割って入れるだろうか?
吸血鬼の原初にして原点なる<真祖混沌>の直系―――<東の龍王>や<北の黒姫>であっても、純粋に戦闘
能力というだけならば、レッドの後塵を拝する事になるやもしれない。
或いは<鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼>ハートアンダーブレードなら?
もしくはどんな二つ名を付けた所で形容など到底不可能な、ただただ驚異と畏敬を以てその名を語られる者―――
究極にして至高にして無比なる吸血鬼・アーカードは?
―――その誰であっても、レッドに勝てるかと問えば、即答はできない。
「間違いなく、言い切れますよ―――彼は…サンレッドは、私が知る限り最強の男だ」
「だったら…勇儀だって私の知る限り、最強の女さ」
萃香の声に、不思議と揺らぎはない。
ジローがレッドを信じるように、彼女もまた、勇儀を信じている。
親友(とも)の力を、誰よりも信じているのだ。
「あいつが…あの勇儀が、負けるかよ…!」
―――生まれた時から、あたしは力が強かった。
まだほんの小さな子供の頃から、既にあたしはそこいらの大人の鬼に負けないくらい強かった。
皆、褒めてくれた。
すごいって言ってくれた。
嬉しかった。誇らしかった。
だから、もっともっと強くなって、もっともっと褒めてもらいたかった。
そんなあたしが大人になる頃には―――誰一人、あたしに敵わなくなっていた。
ケンカなら勝ったり負けたりの萃香が相手でも、腕相撲ならあたしは一度も負けた事はない。
天下無双の怪力の持ち主<力の勇儀>。
いつしかあたしは、そう呼ばれるようになった。
相変わらず、皆はあたしを称えてくれる。
星熊勇儀は鬼の誇りだと、誰もが口々に語った。
嬉しかった。誇らしかった。
だけど―――少しだけ、寂しかった。
もう誰も―――あたしと真っ向から力勝負してくれる奴は、いなくなったからだ。
真正面から、拳と拳だけで語るようなケンカは、あたしとは出来なくなったからだ。
<力>という一面だけであっても頂点に登り詰めた気分は、悪いものじゃなかったけれど―――
だけど、退屈で。
少しだけ、寂しかった。
だけど―――今は退屈も寂しさも、何も感じない。
絶えて久しいはずの燃えるような高揚感が、あたしの全身全霊を支配している。
拳が目の前だ。
己の存在、その全てを乗せるような重い拳だ。
あたしもまた、己の全てを乗せて拳を振るう。
拳骨二つがぶつかった。知らない間に身体に埋め込まれた爆弾が一斉に起爆したような激しい衝撃が襲う。
けれど、痛みよりも強く感じるものがあった。
歓喜。
そして、感謝だ。
『大地が揺らぐ!天が震える!二人は今まさに闘う震源地と化したぁ〜〜〜〜っ!この人力大震災を生き残るのは
星熊勇儀か!?それともサンレッドか!?』
実況が何か言ってるけど、上手く聴き取れない。
そんな事より、今はこの闘いだ。
サンレッド―――あたしはあんたを、心の底から尊敬する。
そしてあんたに感謝する。
よくぞここまで―――拳一つで、あたしに付き合ってくれた。
馬鹿正直に、力と力だけで勝負をしてくれた。
真正面から、ぶつかってくれた―――
「でもさ…それはそうとして、勝ちを譲るつもりもないよ」
勇儀は両の脚でしっかりと地を踏み締め、両の拳を組み、突き出す。
組み合わさった拳に、全妖力を集中させていく。
「譲ってくれなんて言ってねーよ。ブン取ってやらあ」
レッドは左足を前に半身に構え、弓矢を引き絞るように右手を引く。
その右拳を中心に、太陽闘気を熱く、激しく燃焼させる。
地鳴りが止んだ。
嵐の前の、微かな静寂のように。
『ふ…二人の動きが止まりました!あの構えから、一体どんな技が繰り出されるのか!?二人の、そして闘技場の
運命や如何に!』
―――そして。
両雄、同時に動いた。
全身をバネに変えて疾駆し、己の全てを凝縮させて組み合わせた両拳を、真っ直ぐに撃ち込んだ。
「超力業―――<大江山崩(くずし)>!」
対して、サンレッドは左足を更に大きく踏み込ませて。
足の指先から足首、膝、股関節、腰、肩、肘、手首までの全細胞を総動員し。
渾身の力と闘気を込めた右拳を、勇儀の両拳に叩き付けた。
「太陽神拳―――<ヒュペリオン・クラッシャー>!」
どういう具合か、激突の瞬間には、予想されていたような地震は起きなかった。
ただ、輝いた。
二つの超級闘気のぶつかり合いは、日の落ちた世界を一瞬、太陽のように眩く煌かせた。
その光の中で。
「…っくっ…!」
勇儀の両拳が弾き返され、態勢を崩す―――
その時既に、サンレッドは追撃の準備を終えていた。
今度は先程と、完全に真逆の体勢―――
右足を前に半身に構え、弓矢を引き絞るように左手を引く。
「いくぜ、もう一発―――!」
白熱の閃光が、再び世界を照らした―――
―――光が消えた時、そこには勝者と敗者がいた。
爆心地と化した闘技場中央。
敗者は勝者の肩にもたれかかり、どこか満足げに息をついた。
「あー…負けちった。カッコわりー」
「…んなこたーねーよ」
「あんた、最高にカッコいいぜ―――星熊勇儀」
「はは…勝った奴が負けた奴を褒めるんじゃないよ。余計に惨めになるだろうが」
「何だよ、じゃあ思いっきり心を抉る悪口かましたろか、コラ」
「うわ、それはそれでやだな…」
ははは、と勇儀は、爽やかに笑ってのける。
「まあ…次からも頑張れよ、サンレッド。幻想郷は…あたし以外も、強い奴ばっかりだからさ…」
ぐらり―――と。その肢体がよろめいたかと思うと、勇儀は滑り落ちるように大地に倒れ込んだ。
(…ごめん、パルスィ。せっかく御守り作ってくれたのに…ダメだったわ…)
それは、誰にも聞こえる事のない、小さな独り言だった。
審判である四季映姫・ヤマザナドゥが即座に駆け寄り、そして、その手を高々と掲げた。
「白黒はっきり付きました―――勝者・サンレッド!!!」
大歓声が巻き起こった。
サンレッドの名を呼ぶ者がいた。
星熊勇儀を称える者もいた。
勝者にも敗者にも分け隔てなく、偉大な二人の戦士に対して、ただ心からの声援と拍手が送られたのだった。
―――天体戦士サンレッド・幻想郷最大トーナメント一回戦突破!
投下完了。前回は
>>42より。
レッドさん、堂々の二回戦進出。まあ、負けたら話が終わっちゃいますしw
ツイッターやりだしてから、ここに書くネタがなくなって困る…。
>>44 勇儀姐さんも基本パワーキャラなんで。パワーVSパワー、上手く書けたかな?
>>45 第七の地平線、マジ楽しみです。最終戦は、レッドさんの地球一周パンチが炸裂します(多分)
>>46 ギャグVS厨二病なら…うーん、どっちが強いんだろ?興味があるならサンホラも一度お試しあれ。
>>ふら〜りさん
>>タイマンはったらダチじゃ〜
流石に分かってらっしゃるw新作の準備もなされているようで、楽しみにしてます!
>>48 昔の作品は…ははは、正直、今読み返すと赤面ものです(苦笑)
>>50 <サマサがSSを書くスレ>…うん、ないな。
>>銀杏丸さん
新作、お待ちしてます!
噂をすればサマサさん乙!
やべぇ・・・・鬼の生き様マジかっこいい
「俺はずっとこんな風に俺を殴ってくれる奴を待ってたんだ!」ってことですね分かります
そして
>どういう具合か、激突の瞬間には、予想されていたような地震は起きなかった。
>ただ、輝いた。
ここでイチ○ーのレーザービームを想像してしまったのは俺だけでいい
纏めサイトに元ネタ別に見られるページが有ればいいのに
59 :
作者の都合により名無しです:2010/06/27(日) 22:32:22 ID:qkBEw2Zi0
お疲れ様です。
レッドさん一回戦突破おめでとう。
決勝までは残ってほしいな。
優勝はしなくてもいいけど。
レッドさんみたいなタイプは
特殊系というか、ハメ技タイプに弱そう。
頭悪いし。
東方知らないけど、そういう技使いいるかな?
まっすぐな力戦の熱闘でしたな
熱い鬼2匹を見られて満足です。
ところでサンレッドってフォームあといくつあるんだ?
ファイアバードフォームとプロミネンスフォームくらいしか
知らなかった。
しかし1ヶ月のうち書き込める日が2日くらいしかない・・
感想書くためにネカフェに行くってのは辛いなあ
最大トーナメントが終わって、加藤清澄は悩んでいた。
自分は、独歩以外なら誰であろうと負ける気はしなかった。刃牙も克巳もブッ倒してやる
つもりだった。
が、結果はどうだ。克巳には格の差を見せ付けられ、その克巳も烈に完敗、その烈は
刃牙に敗北。自分はと言うと、一回戦負け未満と言っていい惨めな負けっぷり。
聞くところによると、ミ昇も似たような悩みを抱えたらしい。で、そんな自分に
喝を入れるべく、まだ見ぬ達人に試合を申し込んだという。そしてその結果、
見事に立ち直って発奮し、今の自分は烈より強いと息巻いているとか。
ttp://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/733.html 「……」
光成の屋敷。加藤は、自分も光成から試合相手を紹介してもらおうと思ってやってきた。
そしてとりあえず、ミ昇と試合をしたという柔術家の資料を見せてもらったら、絶句した。
「……ミ昇のヤロウ……」
「羨ましい、とか思っておるか?」
加藤と向かい合っている光成は、資料を覗き込むようにしている加藤を、ニヤニヤして
見ている。
「刃牙から聞いたが、本物の彼女はその資料以上の人物だったとか。顔よしスタイルよし
物腰丁寧、見ての通りのメイドさん、しかもコスプレではなく本職」
「……(ごくり)」
「お前さんも、そんな人を紹介して欲しいというのか? まあ女性格闘家の資料
というのもなくはないが、流石にそう多くはないぞ。で、好みのタイプは?」
「そ、そうだな。やっぱり、ナヨナヨした奴よりは気が強い女がいいな。こう、キリッとした
顔立ちで目元鋭く、それでいて時々女の子らしさも見せ……って、ちがああぁぁうっ!」
加藤は、柔術家の資料を畳に叩き付けて吼えた。
「なんでそんな話になってんだ! 大体、アンタは本来そういう人じゃねえだろ!」
「いや、今、その資料を見てたお前さんの表情から察してじゃな。ワシとて、年がら年中
格闘家のことばかり考えておるわけではないから」
「だからって、他人のお見合いの仲立ちが最高の趣味だ、と断言するオバハンみたいな
ことホザいてんじゃねえっ!」
「さてさて。え〜、キリッとした顔立ちの、と」
「人の話を聞けええええぇぇぇぇ! ……よーしわかった、だったら女を紹介してもらおう!
但し、『刃牙みたいな女』だ! そんなのがいたら紹介しろ! してみやがれ!」
どーだムリだろへへんっ、と加藤が胸を張ったのも束の間、光成は分厚い資料ファイルの
中から、ひと束を選んで取り出した。
「あったあった。お前さんの注文通りの女の子。キリッとした顔立ちで目元鋭く、時々
女の子らしさを見せる」
「ジジイっ! だからそれは、」
「そしてこの子は、刃牙の得意技を刃牙以上の強さで使える。というか刃牙なんぞ
比較にならん。遥かに越えておる」
加藤の目が、点になった。
「……え?」
「無論、この技に関しては刃牙以下である独歩や克巳など論外じゃな。
二人が十年修行しても、この子の足元にも及ぶまい」
資料を見ながらスラスラと語る光成の言葉を、加藤は信じ難い思いで耳に入れていた。
「な、なあ。それ、料理の腕前とかそういうオチじゃねえだろうな?」
「もちろん。この技をもって、この子はとてつもない強さを振るっておる」
「刃牙以上の、か」
「遥かに越える、じゃ。それでもこの子は宿敵に勝てんということで、
現在は山にこもって修行しておるとか」
刃牙よりも強いのに。宿敵には勝てないから。山にこもって修行中?
……それだ!
「ジジイ! いや、あの、ご老公! その子を紹介してくれ! できれば
試合をしたい! おっと、今、その子についてこれ以上の詳しい説明はしないでくれ。
事前知識無し、情報のハンデなしでぶつかってみたい」
「連絡は取ってやってもいいが、お前さん理解しておるのか? 刃牙よりも、
克巳よりも独歩よりも強いんじゃぞ? まあ、総合力では逆転するかもしれんが、
この子の得意技に限って言えば、その三人が束になっても勝てん」
「そういう強さの、女の子なんだろ?」
加藤がニヤリと笑みを浮かべた。
刃牙よりも強い相手。そんな奴と試合をする。考えただけで、ほら、肩が腕が
足が震える。怖い。だが怖いだけではない。これは、武者震いも含めての震えだ。
「ヘタなプロレスラーなんざ腕相撲で負かせる刃牙。それを超える強さの女の子だ。
つまり腕力の差を完全に制することのできる、とんでもない技の使い手に違いない。
だったら勝てずとも、この身で味わうだけで、きっと何か掴めるさ」
「その結果、大ケガをしてもか」
「それぐらいの技でねえと、学ぶ価値もねえよ」
「ふむ、なるほど。それは道理じゃな」
光成がようやく、真面目な顔つきになった。
「よかろう、先方にはワシから連絡を入れておく。技を教わるのではなく、
試合の申し込みでいいんじゃな?」
「おうよ!」
数日後、とある山の奥深く。
加藤は、ひいひい言いながら暑い山道を登っていた。
だがその胸の中は、照りつける太陽以上に熱くなっている。
『待ってろよぉ〜!』
光成は件の女の子に連絡をしたのだが、試合の申し込みも技の教授も
断られたのだ。自分の修行が忙しいからと。そして加藤のことを説明したところ、
そんな相手では練習相手にすらならないから時間のムダ、と言い切られたとか。
そこまで言われて平気でいられる加藤ではない。だったらケンカを売りに行ってやる、
いや、そいつが俺にケンカを売ったんだ! ということで今、
山道を登っているわけである。
「ふうっ、だいぶ奥まで来たな。確かこの当たりのはずだが……んっ?」
木々の途切れた岩場に出てきた。正面には高いガケがあって、辺りには巨岩が
ゴロゴロしているも、それなりに平地もある。修行の場としてはうってつけだ。
が、異様だ。あっちこっちに転がっている岩が、どう考えても自然にこうはならない
だろうという砕け散り方をしている。
見上げれば、ガケの中腹が不自然に抉れていたりする。足元を見れば、
ところどころ溝のようなものが、これまた不自然に地面に刻まれている。
「ち、ちょっと待て。まさかこれ、修行の跡なのか?」
いくらなんでも、人間が素手でできることではない。
だが、光成の情報網に入っている以上、武器や兵器を使うはずはない。
ということは、素手でこんなことを? どんなバケモノだ? 一体どんな技だ?
というわけで、いやぁ清々しいまでに前作と同じ展開ですなわははは。……ご容赦を。
今回のヒロインも、例によってマイナー作品から引っ張ってきてます。いや、意図的に
狙ってるわけではないんですよ決して。たまたま私が好きになる作品はそういうのが多い
だけでして。ほんとに。なぜか。こうなるんです。
>>サマサさん
バトルの内容も、両者の胸中・性格も、バキではなくDBって感じで迫力&爽快でした! で、
>「間違いなく、言い切れますよ―――彼は…サンレッドは、私が知る限り最強の男だ」
>「だったら…勇儀だって私の知る限り、最強の女さ」
ここが何か、すごく気持ちいい。KOF94で龍虎チームVS餓狼チームを観戦してるユリと舞
のような。各々が知る最強者の、各々が見たことない苦戦。独特の緊迫感、そして連帯感。
>>60 規制のことでしたら、私も少し前から使い始めてますこれ↓
ttp://www.geocities.jp/shirangana_boushi/tips/p2/p2.html で回避できますよ〜。少しだけお金はかかりますが、ネカフェ代を払わず
家で好きなだけ読み書きできる、と思えば安いものです。
65 :
作者の都合により名無しです:2010/06/30(水) 22:48:57 ID:uozQ4lnh0
おおふらーりさん新作乙!
バキスレだもの、バキ物が無いのはおかしいですよね。
加藤の活躍楽しみです。
ただ、前作も確か結構早く終わったようなw
出来れば2スレくらい続いてほしいな。
ふら〜りさんが連載してくれると
バキスレは大丈夫な気がしてくるから不思議
ふら〜りさんの書く加藤はどことなくかわいらしいね
やっと規制が解けたが、またすぐ規制なんだろうなあ
ふら〜りさん新作お疲れです。
前作実は読んでないですけど、一度前のも読んでみます
原作ではお亡くなりになった加藤の活躍を楽しみにしてます。
>規制のことでしたら、私も少し前から使い始めてますこれ
正直、そこまでして2ちゃんやる気はないなあ・・
掲示板使うのに金を使うのはおかしい気がします
>>63 恐る恐る、砕けた岩や地面の溝を加藤が調べていると、
「誰?」
女の子の声がした。
顔を上げると前方に、予想外の……いや、ある意味バッチリ予想通りの女の子がいた。
つやつやした綺麗な髪を、可愛らしくツインテールにしている。それでも腰の辺りまで
届いている辺り、ほどいた時の長さはかなりのもののようだ。
キリッとした顔立ちに、いかにも意志の強そうな目つき。怒っていなくても、素の顔が
それっぽく見える、鋭くつり上がった目だ。可愛いというより、凛々しい。
服装は黒いミニのワンピースに、同じく黒いニーソックス。上も下も黒いので、いわゆる
絶対領域(ミニスカートの裾とニーソックスの間に見える太もも)の肌の白さが、
眩しく艶かしい。
と、まあこの辺りは別にいい。意外過ぎるのは年齢だ。
どう見てもこの子、十歳程度である。絶対に小学生だ。
「もしかして、徳川さんって人から連絡のあった、加藤さん?」
「お、おう」
ここで圧されるわけにはいかない。加藤は動揺を押さえ込んで、堂々とした態度を取った。
女の子は、ふうっと小さくため息をつく。
「わたしと戦いたいとか言ってるそうだけど、わざわざここまで来たってことは、
断ってもムリみたいね?」
「ああ、その通りだ。何だか随分と、俺のことをナメてくれてるみたいだからな。
その認識を、とりあえず改めてもらおうと思ってよ」
「はいはい解りました。だったら、相手してあげるわよ。で、さっさと山を降りて。
わたしは自分の修行で忙しいの」
言いながら女の子は、自分の長いツインテールを手櫛で梳いた。
「じゃ、こうしましょ。この髪でもいいし、服でもいいし、手足でも頭でもどこでもいい。
加藤さんが、指一本でも掠ったら、わたしの負けでいいわ」
「……はあ?」
思わず、ぽかぁんとマヌケに口を開けて。
たっぷり五秒ほど経ってから、加藤は叫んだ。
「ふ、ふ、ふ、ふ、ふざけんじゃねえっっ! バカにするのもいい加減にしろっ!」
叫びながら、足元にあった石に拳を振り下ろす。小気味いい音がして、石は
粉々に砕け散った。
手についた石の粉を、ふっと吹き散らして加藤は言う。
「ま、しかし、確かにな。こんな威力の拳を、女の子に叩き込むなんて俺にはできねぇ。
その可愛い顔に傷でもつけて、泣かれたりしたら面倒だ。という理由で、そのルールに
乗ってやるよ」
周りにある、砕け散った岩や地面の溝がこの子の仕業なら、こんな石を砕いて見せても、
鼻で笑われるだけだろう。だが、それは攻撃力比較だけの話だ。
いくらなんでも、体や顔が鋼鉄でできているわけではあるまい。この子がどんな技の
使い手でも、女の子の体を殴ったり蹴ったりというのは、流石に非常識だ。
と、加藤はそう考えたのだが。当の女の子は、予想通り鼻で笑った。
「ふん。もしかして、私のことを気遣ってるの? たとえあなたの攻撃力が、今見せた
石砕きの百倍あったとしても……」
女の子は、ワンピースの胸元にある小さなポケットから眼帯を取り出した。
何の装飾もない、ただ真っ黒でまん丸なそれを、左目にかける。
「当たらなければ、どうということはない」
その言葉と眼帯で、何かのスイッチが入ったのか。女の子の気迫が、一気に巨大化した。
これは、来る。加藤は腰を落として、構えをとった。
その加藤を見据えて女の子も、腰を深く落とす。と、
グオオオオオオオオォォォォ!
低く重い機械音がして、女の子の足元の砂が風に舞い散った。だが風なんか吹いていない。
足の裏(靴底)から、風が吹き出ている。そうとしか思えない。しかもその風は、
女の子の体を数センチ持ち上げて浮かせている。
加藤が目を見張り、驚きの声を上げようとした時にはもう、女の子は突進してきた。
足は全く動かさず、走っても歩いてもいない。まるで氷の上を滑るように、いや、
アイススケートのような動きもしていない。本当に全く全然、体は動いていないのだ。
両拳を握って、両膝を曲げたその姿勢のまま、足の裏からの風だけで浮かんで、
向かってくる。例えるならリニアモーターカーか、ホバークラフトのような。
『ん? なんだ、これってどこかで見たような……』
何かを思い出しかけた加藤に、女の子が肉薄した。右手を肩越しに背中に回して、
まるで背負った刀を抜くような、忍者のような動きをする。
そして抜いて、その刀で加藤を斬りにくる。もちろんその手には何も持っていないのだが、
「……何か、ヤバい!」
加藤は身をかわし、大きく間合いを取った。女の子の、目に見えない刀は空振りさせられて
地面に叩きつけられる。くどいようだが女の子の手には何もない、のだが。
ジュジュジュジュッ! と音がして地面が抉れた。竹刀の三倍ぐらいは太さのある棒で
抉ったように。それも、単純な力で抉ったのではない。今の音と、地面から立ち上る
湯気から察するに、熱だ。高温で抉ったのである。
何も持っていないのに。
「な、な、なんだああああぁぁ?!」
「隙ありっ!」
女の子は今度は、左手を前にして右手は顔の横、両手で何か長い棒を支え持つ
ようなポーズを取った。右手の人差し指の曲がり具合は、引き金にかけてるような
感じだ。するとライフル、いやバズーカか?
その加藤の予想は大当たりだった。今度は、
ドウッ!
重々しい音がして、見えないバズーカから砲弾が撃ち放たれた。かめはめ波とか波動拳とか
ではない、実体をもった砲弾だ。ご丁寧に、見えない砲口から煙まで上がっている。
あまりにも予想外だったその一撃を加藤はかわせず、直撃、爆発!
「うぐわああああぁぁぁぁっ!」
どこぞの黒い羽と黒い十字架を持つ空手家ではないので、加藤にはバズーカの砲弾を
素手で受け止めるなんて芸当は無理。咄嗟にガードはしたものの、あっけなく弾かれて、
爆炎で焼かれながら吹っ飛ばされた。
高く浮いてから岩場に叩き付けられ、慌てて転がって火を消して、息を荒げて立ち上がる。
「ふうん、まだ立てるの。言うだけあってタフね。けど、これで解ったでしょ?」
常人離れどころか、人間離れした技(?)で加藤をブッ飛ばした女の子は、ホバー上昇を
解いて地面に降り立ち、冷ややかに言った。
「わたしのこの技、この程度では、まだ『アイツ』に勝てないの。だからもっともっと、私は強く
ならなきゃいけない。その為に今、修行してるのよ。そんな私にとって普通の格闘家、
そこいらの柔道家だの空手家だの如きでは、練習相手にもならないってこと」
「……なる、ほどな……刃牙の得意技を、刃牙を遥かに越えて使えるってのは、
こういうことか……」
コゲコゲの体で、加藤がよろめきながら不敵に笑う。
「あいつの、リアルシャドーの上位版……妄想の現実化を、他人に対しての
直接攻撃に使える、ってか……ヘッ、オタクの中でもかなり強力な一派だとは聞いてたが、
噂以上だな。えぇおい?」
ぴくっ、と女の子の眉が揺れ動く。
「ホバー走行、背中に背負ったヒート・サーベル、360ミリ砲弾を撃ち出すジャイアント・バズ。
その眼帯はモノアイのつもりか。そうだろ? 俺もガキの頃見てたぜ」
「それは少し嬉しいけど、驚きはしないわよ。加藤さんぐらいの年代の男の人なら、
誰でも少しは知ってるわよね」
「ああ。俺もプラモ作ったりしたもんだ。お前の『それ』も作ったぜ。重MS、ドムをな」
加藤が口にしたその名を聞いて、女の子は相変わらず目つきだけは鋭いまま、
口元には微笑を浮かべた。
「そう、わたしはドム。そこまで解ってくれてるなら、もう説明の必要はないと思うけど」
「そうだな。生身の人間が、ドム相手にケンカ売るなんて正気じゃねえ。
勝ち目なんかあるわけねぇ。だが、」
加藤は、拳を突き出して言い放った。
「神心会空手は、敵に後ろを見せねえんだよ! たとえ相手がバケモノでも、猛獣でも、
そして黒い三連星でもだ!」
もう加藤は、本来の目的をキレイさっぱり忘れ去っていた。この以上この子と戦った
ところで、こんなインチキ技(そもそも技と言えるのか?)を学び取れるわけがない。
が、そんなものはどうでもいい。今、この子に神心会空手が見下されているのだ。
それはすなわち敬愛する師・愚地独歩が、そして加藤自身が見下されたのと同じこと。
ならば、一歩も退くわけにはいかない。
「……そう」
女の子が、口元の笑みを消した。
「私も、私の宿敵に勝つ為には、あなた程度の相手にてこずっていられないからね。
そっちがその気なら、こっちも本気で相手してあげるわ」
「望むところだ!」
重い音がして、再び女の子の体が数センチ浮いた。そして、滑るように向かってくる。
これは紛れもなく、『機動戦士ガンダム』の中に出てくる、ドムのホバー走行だ。
ここからヒート・サーベルとジャイアント・バズが来る。それに空手で対抗する……いや、
空手で勝つ!
コオオオオォォッと息吹を入れて気合を高めて、加藤は女の子を迎え撃つ。
「神心会空手三段、加藤清澄の実力を見せてやるぜっ!」
気迫充分の加藤に対し、臆した様子は微塵もなく、女の子も闘志を高める。
「兄さんの為に……兄さんの大好きな『ガンダム』の為に!
木槍保 留二亜(きやりほ るにあ)、いっきまーす!」
むう、私が続いてしまったか……なんの、これはきっと一時のこと!
『妹ガンダム』から、主人公を遥か置き去りにして一番人気の留二亜ちぁんです。
ドムな彼女が「いっきまーす」なのについては、後々触れますのでお待ちあれ。
ちなみにこの子、原作では一人称「わたし」以外ほぼ完璧に男言葉なんですけど、
なにしろ「同年代の女の子かつ打倒すべき敵」以外とはロクに会話してません。
なので、特に敵意のない大人の男性に対してもそんな言葉遣いなのか? と
悩んでこのような形になりました。
……そういえば、前に斗貴子を描いたときにも同じようなことで悩んだ私。
こういう子は好きなんですけど、描くのは難しいです。
>>65 すみません、前と同じくらいです……長編は、出だしを少々だけ書いて
行き詰ってるのはあるんですが……面目ない。
ガンダムエースのアレか!
凄いトコ突いてきましたね
ジャイアントバズといえばドムよりジョニー・ライデンの06R2が印象深いです
〜第一試合終了、そして〜
一回戦第一試合―――勝者・サンレッド。
『幻想郷最大トーナメント、第一試合から波乱の幕開け!天体戦士サンレッドが、幻想郷一の怪力を誇る星熊勇儀
を真っ向から撃ち破りましたぁっ!溝ノ口発の真っ赤なチンピラヒーローが、衝撃の幻想郷デビューを我々に見せ
付けた!この男は何処まで往くのか!?これから目が離せません!』
射命丸文の絶叫と化した実況と鳴り止まぬ歓声の中、彼は地に伏したままの勇儀に手を差し伸べた。
「立ちな。手を貸してやるよ」
「…心配すんな」
よ、っと声を上げて、勇儀が立ち上がる。
「おいおい、無理すんなよ?」
「なに。そこらの奴とは鍛え方が違うさ…ほら。勝ったんだから、観客に愛想良くしなよ」
勇儀はレッドの右腕を掴み、高々と持ち上げさせる。
歓声が、一際大きくなった。
「…ちっ。こういうガラじゃねーんだけどなー」
そう言いつつ、満更でもない様子で左手も高々と突き上げ、観客に向けて大きく手を振った。
「レッドさーん!カッコよかったよーっ!」
「感動しましたぁ!でも忘れないで下さいよ!あなたを抹殺するのは我々フロシャイムですからねーっ!」
―――とりわけ大声を張り上げるこの二人が誰なのか、言うまでもないだろう。
「…あのバカ共。後で殴ってやる…」
「ははは、照れちゃって。あんたはツンデレさんだなあ。ツンデレッドめ」
「そ、そんなんじゃねーよ!あいつらなんか、うっとーしいだけだからな!」
「まあ、そういう事にしといてやるか…ほら」
開けっ広げな仕草で、勇儀は握手を求めた。レッドはというと、胡乱な目である。
「そんなに嫌うなよ。もう握り砕こうとなんてしないさ」
「…へっ。どうだかな」
悪態をつきながらも、レッドはその手を握り返す。
『見てください、何という美しい光景でしょう!死闘を終えて、互いが健闘を称え合う!今や二人は強敵と書いて
<とも>と呼ぶ!さあ皆さん!彼等にもう一度、盛大な拍手を!』
文の音頭取りで、嵐のような拍手が巻き起こる。
二人はそれに向けて手を振りながら、ゆっくりと闘技場を後にしていくのだった。
―――拍手と歓声を背に退場し、通路に出た瞬間、勇儀は糸が切れたようにその場に膝から崩れ落ちた。
そのまま大の字に寝転がり、ぜーぜーと荒く息をつく。
「ったく。やっぱ無理してやがったのか」
「へへ…こんなみっともない姿、知り合い達にはちょっと見せたくないからね…」
「見栄っ張りな奴だな、テメーも」
しょーがねーな、とボヤきながらもレッドは勇儀を助け起こし、鍛え上げた肢体を背に負う。
「俺もちょっくら殴られたんで、一応医務室に行くからよ。ついでに連れてってやらあ」
「はっ。親切な振りして、あたしのおっぱいの感触を背中で楽しむのが目的なんじゃないのかい?」
「なっ…んなわけあるか!俺のたまにしか見せない善意を何だと思ってやがる!?」
「何、仕方ないさ。あたしもこれで乳にはちょいと自信がある。だからさっきのケンカの最中、あんたがパンチを撃つ
そのついでにあたしのおっぱいを触りまくっていた事実も、むしろ誇らしいというものさ」
「ありゃ不可効力だろうが!」
「エロいのは男の罪…それを許すのが女の器」
「じゃかましいわ!その口閉じねーとマジで発禁処分かかるレベルで揉みしだくぞテメー!」
「あはは、これは失礼した。冗談を言うなんて、あたしらしく…というか、鬼らしくないんだけどね」
「あん?何だ、そりゃ」
「鬼は、嘘を吐かないのさ―――だから、冗談もあまり言わない。広い意味じゃ、それも嘘だからね―――まあ、
今はそれが思わず口から出ちまうほど、気分がいいって事で」
そう言って、勇儀は屈託なく笑う。
「いいケンカだった。今のあたしは最高の気分さ、サンレッド」
「フン…褒めたって何も出ねーぞ」
レッドはちょっと照れた様子で鼻を鳴らす。
「こんな俺でも待っててくれる、出来た女がいるんでね。惚れたりすんなよ?」
「ふーん。あんたもスミに置けないもんだ。ま、確かに中々いい男だもんね」
「へ、そうだろ?」
「ああ。あたしがレズじゃなかったら確実に惚れてるレベルだね」
「…おい。それも冗談か?」
「いや、これはガチ」
「…………」
最後の最後で、嫌なカミングアウトを聞いてしまったレッドさんであった。
―――その頃、観客席では。
「やったぁ〜っ!兄者、レッドさんが勝ったよ!」
「ええ…やりましたね」
未だ興奮覚めやらぬコタロウに対し、ジローは感慨深げに微笑む。
「レッドも、星熊勇儀も…本当に、いい闘いでした」
「ふふ…確かに。中々愉快な暇潰しでしたよ。死すべき定めを背負うちっぽけな存在が必死にあがく有様は、実に
見物でした」
「…妖夢さん。傲慢系大ボス的な言動はやめてください。感動が台無しじゃないですか」
「てへっ☆ごめんちゃ〜い」
妖夢はウインクしながらペロっと舌を出して自分の頭をコツン☆と叩いた。
ジローさんの中に妖夢への殺意がふつふつと湧き上がったが、それを突き詰めてしまうとこのSSがヴァンプ将軍
の事件簿〜幻想郷・半人半霊殺人事件〜になってしまうので、彼は自制心を総動員して怒りを抑えた。
最終話で涙ながらに自分の身の上話をして<俺って可哀想アピール>なんてジローさんだってしたくないのだ。
どうでもいいけど、そろそろ<黒幕は地獄の傀儡子でした>パターンはやめた方がいいと思うの、私。
「しかし貴女、一体全体どんなキャラになろうとしてるんですか…」
「いや、何。私の場合はキャラと言動が一貫してブレまくりなのがウリでして。登場作品ごとに性格やしゃべり方
が違うとかザラなんですよ?まあ、私に限ったこっちゃありませんが」
「またしても各方面を敵に回しそうな発言ですね…」
「まあまあ、そんなに突っ掛からなくてもいいじゃないですかジローさん。いやー、それにしても感無量ですよ。
私がレッドさんに求めていたのは、ああいう闘いなんです。必殺技使ってフォームも使って…そういうヒーロー的
なバトルを、何だって我々が相手の時にはやってくれないんですかねー?」
ヴァンプ様の言葉に、誰も答える者はいなかった。
彼を傷つけることなくその場を誤魔化す、上手で優しい嘘がつける人材は、残念ながらいなかったのである。
「こほん。ともかく…確かにとんでもない強さだよな、あのサンレッドってのは。なあ、萃香。お前だって危ない
んじゃないか?星熊勇儀って、お前と同格なんだろ」
気を取り直すように魔理沙が咳払いし、萃香に話を振る。
しかし、返答はない。
「あれ?おーい、萃香?」
「…勇儀…」
魔理沙に応じる事なく、どこか放心したように、耐え難い何かを堪えるように、萃香は無二の友の名を呼ぶ。
「まさか…あんたが負けるなんてね…」
「あー…悪い。ショックだったんだ」
「え…ああ、こっちこそすまないね。ぼんやりしてたよ…ええと、そう。そうだね―――力なら、私より勇儀の方
が上さね。それは、疑いようがない」
「へえ。じゃあ、お前じゃサンレッドとやり合ったら勝てないって事?」
「そうは言わないよ」
萃香は、不敵に答える。その自信に満ちた顔立ちには、先程までの弱々しさはまるでない。
「闘いには相性もある。勇儀やサンレッドは、ジャンケンで言うなら間違いなくグーだ。グー同士でぶつかれば、
より強い方が勝つ―――けれど」
「どれだけ強いグーであろうと―――パーには勝てないさ」
よっ、と。
大きく背伸びをして、萃香は歩き出した。
「さーて…私の出番までは、勇儀の見舞いにでも行ってやるか」
<小さな百鬼夜行>伊吹萃香。
彼女は準々決勝にて、サンレッドの前に文字通りの巨大な存在として立ちはだかる事となる。
―――観客席の別の一角には、三人の少女の姿があった。
「へえ…あれがサンレッドねえ…」
興味があるのかないのか、テンション低く呟いたのは<楽園の素敵な巫女>博麗霊夢。
「あんたが目をかけてるだけあって、確かに相当なもんね―――紫」
「あら、分かるかしら?」
楽しげに笑うのは<境界の妖怪>八雲紫。
相も変わらず、本当に面白がっているのかどうかすら判然としない、胡散臭い笑顔だった。
「中々に楽しいヤツでしょう?見ていて飽きないわ」
「ふむ…私にはどうも、単なるチンピラにしか思えないのですが」
そう言ったのは、紫の傍に控えていた少女。
怜悧な知性を宿す切れ長の瞳が、見る者の印象に強く残る。
抜群のスタイルを誇る肢体を包むのは、東国の導師を思わせる、奇妙な紋様が施されたローブ。
その腰辺りからは、ふさふさとした毛に覆われた九本の尾が飛び出していた。
彼女は<スキマ妖怪の式>八雲藍(やくも・らん)。
正体は金色の九尾狐である藍の、これが人間に変化した姿だ。
「確かに、あの戦闘力は目を瞠るものがありますが…何というか、少々、品がなさすぎるかと」
「藍は真面目ねえ。ああいう野性的な男は嫌いかしら?」
「野性的というか、野蛮なだけではないかと存じ上げます」
「まあ、随分な言い草だこと。霊夢、貴女はどう思うかしら?」
「どうもこうも、特に」
霊夢は肩を竦める。
「ま―――勝ち上がっていけば、いずれ当たる相手でしょ。負けるつもりはないとだけ言っとくわ」
―――しかし、その対決が実現する事はなかった。
博麗霊夢は準々決勝において、レミリア・スカーレットとの激闘の果て、壮絶に散る事となる。
「―――って、負けるの確定なの!?しかもレミリアのカマセ!?うわ、急激にやる気がなくなってきたわ…」
「はいはい、地の文を読まないの」
「な…納得いかない…私、東方の主人公なのに…」
「哀れだな、博麗の巫女よ…」
「心底同情した目で言うなー!」
「ありきたりなツッコミだな…」
「更に同情を深めるなー!」
「二人とも、そんなコントをやってないで。ほら、次の試合の組み合わせが決まるわよ」
紫の言葉に振り向けば、闘技場には西行寺幽々子が立ち、第二試合対戦者のカードを引く所であった。
『さあ、開幕戦の余韻も静まらぬ中、西行寺幽々子様が第二試合のカードを引く!果たして次は、どんな悪鬼悪霊
が壮絶な闘いを繰り広げるのか!?さあ幽々子様、引いちゃってください!』
「えいっ!」
まずは、一枚。そこに記されていた名は。
「―――風見幽香!」
観客達がどよめく。幻想郷で、風見幽香の名前と恐ろしさを知らぬ者など皆無だ。
どのような残虐な闘いとなるのか、想像すらも憚られる。
「幽香だ!みんな、次は幽香が出るよ!」
そんな空気を読まずに、メディスンがはしゃぎ声を上げる。
魔理沙はメディスンを呆れたように見つめ、溜息をつく。
「お前、ホント幽香が好きだなー…私は正直、あいつの闘いは好かん」
「私も、あんまり見たくないかな」
「確かに…心臓に悪いわね」
アリスとパチュリーも、魔理沙と似たような態度だ。
「えー、何で?」
「何でって…お前だって知ってるだろうが」
不満げに口を尖らせるメディスンに、魔理沙は答える。
「―――えげつなすぎるんだよ、あいつの闘争は」
「もー。それがいいんじゃない!」
「お前、趣味がおかしいよ…」
魔理沙はまたもや、嘆息するのだった。
「さーて…お次は誰かな!?」
そして幽々子が引いた、二枚目のカードは。
「―――蓬莱山輝夜!」
―――大勢の客でごった返す売店。
「…ふう。どうやら、出番のようね」
藤原妹紅の焼鳥屋台で砂肝を食べていた蓬莱山輝夜は、備え付けのモニターから響く声を合図に、顔をパンパン
と叩いて席を立つ。
ちなみに彼女の隣では、上白沢慧音が真っ赤な顔で酔い潰れている。
半端に酔わせるとセクハラ攻撃を行うきもけーねと化すので、妹紅が速攻で一升瓶を口に突っ込んだのだ。
「しかし…風見幽香かよ。大丈夫なのか、輝夜。あのドSが相手じゃ、お前の不死性も逆効果だ。最悪、死ぬ事も
出来ずに試合とは名ばかりの凄惨な拷問を…」
「心配しないで、もこたん」
輝夜は、決意を秘めた眼差しで語る。
「私…この闘いが終わったら、必ずここに戻って来て、またもこたんの焼鳥を食べるわ」
「輝夜…そんな事言うなよ…」
「ふふ…思えばもこたんは、私にとって唯一の対等な友達だったのかもね…」
「おい…急にいい奴っぽくなるなよ…」
後は過去を語り始めたりしたら完璧だった。
「そうね、湿っぽい話はよくないわ。さて…あら?やだ、いけない。靴紐が切れたわ」
「もうよせぇぇぇぇぇっ!」
「もう、何よそんなに大声出して。じゃ、行ってくるわ」
「ああ…なあ、輝夜」
「なあに、もこたん」
妹紅は唇を噛み締め、言った。
「勝たなくてもいい…どうか、無事に戻ってきてくれ…!」
果たして輝夜は、月光のように美しく、儚く微笑み、死闘の場へと旅立っていったのだった。
その後姿を見送りながら、妹紅は思った。
さらば、我が宿敵―――蓬莱山輝夜…と…。
―――風見幽香VS蓬莱山輝夜。
幻想郷最大トーナメントで行われた全31試合の中でも屈指の名勝負として語り継がれる熱闘の始まりであった。
投下完了。前回は
>>55より。
次回、読者が怒り出すかもしれない。
西尾維新ファンなら「まあサマサさんだし仕方ないな」と生暖かい目で見てくれるかもしれない。
サマサはハシさんに酷い事をしたよね…
(ツイッターで操作を間違えてハシさんをブロックした男サマサ)
許してくださるというなら何でもしよう…指を詰めろと言われたなら詰める!クソを喰えというなら迷わず喰うぜ!
ここでもう一度陳謝させていただきます。申し訳ありませんでした orz(土下座)
>>57 高千穂先輩…も気になるけど、カマセ臭プンプンの都城先輩の明日が気になる。
>>59 ハメ技使いもたくさんいます。時を止める、狂気を操る、運命を操るetc…でもレッドさんなら腕力だけでも
闘えるはず!
>>60 現在作中で判明しているのはファイアーバード・プロミネンス・ヒュペリオンの三種類。でも、原作では
レッドさんが強すぎて実際に使う機会がない…。
>>ふら〜りさん
妹ガンダム…!僕は一巻を流し読みした程度ですが、確かに彼女らの妄想力はバキすら上回るかもしれませんね。
いくらバキでも巨大カマキリを実際に召喚して相手を攻撃できるわけじゃないですし(更に修行を積めば出来るか?)
果たして加藤の運命や如何に!次回、いきなりサンドバッグ詰めにされてない事を祈るばかりです(待て)
81 :
作者の都合により名無しです:2010/07/07(水) 12:59:07 ID:Sw3XBnH70
サマサさん、ふらーりさんお疲れ様です!
>ふらーりさん
また俺の知らないところからすごいキャラを絡ませるなあw
短編とは少し残念ですが、長編も考えているみたいで嬉しいです。
>サマサさん
全31試合って本当にバキ最大トーナメント波じゃないですかw
まあ、全部やったら連載5年かかると思うんでwサンレッドさんの
試合主体でしょうが、まずは幽香期待しております。
眠気にふら付く帰り道、次に店を訪れる日を心待ちにしながら歩いていた。
「ほらっ、早人! フラフラしないでちゃんと歩きなさい!」
「ハッハッハ、眠いのかな? よぉーし、またパパがおぶってやろう」
店に来たときと同じように、奴が僕の前に立ち背を向ける。
だがこの背にもたれ掛かることを恐れる日々も、きっと終わる。
希望を胸に、今度は震えることなく獣の背に身を任せる。
「フフフ、震えないのか? やはりそういうことか……『でかしたぞ』早人」
ドクン、僕の心臓が強く脈打つ。
『でかしたぞ』とは何に対していっているのだ?
『バイツァ・ダスト』は発動していない、時間は巻き戻っていない。
トニオさんが奴の正体を掴んだとは知られていない筈だ。
「私にも見えない『スタンド』だったのか、それともあの料理がスタンドの正体か?
お前が見破ったのか操られたのかは判らないが、お前の変化には気付いていたよ」
僕の変化? 料理を食べた後のあの異常に気付いていたのか?
いや、もしそうなら何が起こるか判らない料理など口に含むはずがない。
「サラダやパスタ、お前は必ず私たちに先に料理を食べさせていたな……親を毒見に使うとは悪い子だ。
だがトイレから帰ってきた時、お前の怯える様子は消えた………こう言ってしまうとお前が怯えてしまうかな?」
体に震えが戻ってくる、奴が怖いんじゃあない。
僕はまた同じ過ちを繰り返してしまったのではないだろうか。
僕の心を見透かしたように殺人鬼が口の端を吊り上げて笑う、奴の一言が不安を確信へと変えた。
「彼はもう始末されているよ……後片付けをしている筈だ、爆弾になった皿が磨かれているってことさ」
僕は殺人鬼の背から飛び降り、トニオさんの店へと駆け出した。
「ちょっと? 早人!?」
「どうやら忘れ物をしたようだ、私は早人と一緒に行くから先に帰ってくれ」
不思議そうにしながらも、しのぶは言われた通りに一人で帰る。
惜しい事をした、最高の料理を安価で気軽に楽しめる名店だった。
だが、私に仇なす者が存在することは許されない。
吉良吉影は『トラサルディー』に向かう道へ振り返り、早人を追うようにトニオの店へ向かった。
僕は忘れない、今日という日を。
僕のせいで罪のない人の命が、また奪われたこの日を。
強く握られた拳の中で、真っ白なコック帽がしわくちゃになっていた。
トニオ・トラサルディーはもう居ない、僕のせいで殺された。
「トニオさん……僕のせいだ………」
血の一滴も残さず、帽子だけがこの場に残っている。
奴が殺した証拠は何もない、完璧な殺人を可能にする能力。
この能力に抗える人は、後どのくらい居るのだろう。
生きていることが辛い、奴と戦うことの孤独に耐え切れない。
『バイツァ・ダスト』によって自殺もままならない僕はやり場のない怒りに掻き立てられる。
地面に這い蹲り、頭を床に叩きつけるべく振り下ろす。
額に強い衝撃が走る、目眩と痛みに視界が揺れるがそれどころではない。
奴の『バイツァ・ダスト』が僕を守っている筈。
この痛みはどういうことだろうか。
テーブルの上からフォークを取り、自分の腕に突き刺す。
カッターの先端を止めたあの力は現れない、真っ赤な血が流れる。
「『バイツァ・ダスト』はもう……居ない」
忌まわしい力から解放されたが、そこに喜びは無く虚しいだけだった。
彼が死んだのは僕のせいだ、『バイツァ・ダスト』は関係なかった。
自責の念に押しつぶされそうになる僕を腕から流れる血が支えてくれていた。
奴の企みを潰せることを、この血が証明してくれている。
恐怖は消えた……心に残るのは復讐の意志。
トニオさんの言っていた『ジョースター』という人物と連絡を取るべく家屋を調べる。
まずは厨房からだ、血を吐いていた筈の子犬が尻尾を振り息を荒げながらこちらを見ている。
彼の飼い主を思い浮かべ、再びこみ上げて来る涙を拭う。
主人を失った彼はこの先どうなるのか、行方不明として警察の捜査が入れば保健所行きだろう。
こうなった責任を取らねばならないが、家はペット禁止だ……にも関わらずママはネコを飼っているが。
取り合えず飼い主となってくれる人物を探すまでは何とかして自分で面倒を見なければならない。
彼の住まいと思わしき小さな檻に鍵をかけると、不安そうに辺りを見回している。
それはまるで、この世から去った主人を探しているようだった。
一通り店を探し終え冷静になった僕は時計を見て就寝時間が迫っている事に気づく。
表の表札を閉店にしておけばすぐに行方不明の届けが出る事は無いだろう。
ママを心配させないためにも一度、家へ帰ることにした。
店を出ようとドアノブに手をかける、扉を開くと反対側から押し返されるような圧力を感じた。
扉に物理的干渉を受けているわけではない、ドス黒い威圧感に押されているのだ。
初めて『バイツァ・ダスト』を取り憑けられた日と同じ、奴が扉の裏で僕を待ち構えていた。
「探し物は見つかったのか早人? まさか彼のペットを取りにここまで時間を掛けた訳じゃないだろう」
暗闇に、ピアニストを連想させる白い肌が光ると女性とは違った妖しい色気が奴から際立つ。
だがそれは獲物を引き寄せる撒き餌にすぎず、こいつの内面はこの世のどんな物より醜悪なのだ。
肌は薄明かりに照らされても、その漆黒に包まれた目に決して光は通らなかった。
「フフフ、そうか探し物はペットだったか……私はこっちだとばかり思っていたよ」
ポケットからノートのような物を取り出す、表紙にはこう書かれていた……『電話帳』と。
奴は知っている、奴を倒せる最後の希望が存在する事を。
一体、どこまで――「ジョセフ・ジョースター」――知って……。
奴の言葉が僕の思考を遮る、考えても無駄な事を悟ってしまった。
「死んだ億泰の父はジョセフや承太郎に敵対するディオという人物の手下だった。
私の父がこの世を去る前に調べておいてくれたよ……お前にとって残念な知らせだがジョセフの『能力』は戦闘用ではない。
更に言うと現在は79歳の老人、耳は遠くなり白内障を患い杖が無くては歩けないほど足腰は弱りおまけにボケているらしい」
電話帳が地面に投げ捨てられる、拾おうと手を伸ばすと目の前で粉々に砕け散った。
膝を突き地面に突っ伏すと冷えた大地に体が沈んでいくような感覚に囚われる。
内側からの衝撃で膨れ上がり、ひび割れてバラバラに弾け飛んだ最後の希望。
薄っぺらな紙の中に爆薬でも詰め込んだように吹き飛ばす、現実にありえない事を可能とする異能。
「諦めたか……それでいい、心配しなくても私はお前やしのぶに危害は加えないさ」
絶望の淵で奴の冷たい手が慰めるように僕の背をさすると、ゾッとする寒気と吐き気に襲われる。
静寂に包まれた闇の中、僕の頭には勝ち誇る奴の高笑いが響いていた。
ここまでだ、僕にできる事は何も無い……奴の気分が変わらないことを願うしかない。
「そうじゃな、アンタが諦めて檻に繋がれば彼や母親にも危害は及ばんじゃろう」
突然に響くしわがれ声、その隠者は足音一つなく現れた。
闇夜に目を凝らすと屈強な体つきの老人が発したようで、地味な服装に時代遅れのカウボーイの被るような汚い帽子。
帽子の下から輝きに満ちた瞳が覗く、その眼差しは月の光より強く……太陽の様に煌いていた。
輝かしい黄金が僕の暗闇を取り払っていく、この人が町の闇に立ち向かう最後の戦士。
「この服も、帽子も久々じゃわい……難聴で聞いててもサッパリだったビートルズの『ゲットバック』も久々に聞けたしの」
「貴様がジョセフ!? ありえん……DIOという吸血鬼を討伐した際、既に七十の老人だったのにその若さは!?」
「バカをいうな! 当時はまだ六十八だったわい!」
「た……大して変わらないんじゃ………」
助けに現れたと思われる聖戦士は僕の余計な一言に気分を害したのか冷たい視線を送る。
少しの沈黙が続くと気まずい空気を振り払うように咳払いして視線を殺人鬼へと向ける。
「ワシも妻と同じ時の流れに生きたかった……ストレイツォのように若さの充実に餓える事なく天命に身を委ねたかった。
もう二度と『波紋の呼吸』は使いたくなかったがこの町の人々、そして孫………更には息子までも殺した貴様だけは許さん」
彼の人物像がユーモラスな老人から一転、この世の邪悪に立ち向かう救世主へと変わる。
彼から感じ取れる怒りは復讐の怒りではあったがこの世に存在する白と黒の存在の中で彼は間違いなく『白』にいた。
「訳の分からんことをゴチャゴチャと言ってくれるが要するに復讐ということか。
念写しか取り柄のないスタンドで、どうやって私と戦う気なのかな?」
奴が余裕の笑みを浮かべている、僕に取り憑いていた『バイツァ・ダスト』は奴に戻っている。
直々に手を下す勝負で相手を侮るタイプではない……もしやと思い耳を済ませると謎の空気音が確かに聞こえた。
「ジョセフさん! 逃げてッッ! 奴の爆弾が飛んでくる!」
「もう遅い、着弾地点に到達した! 貴様のスタンドに仗助のようなパワーとスピードはないッ!」
隠者の目の前で爆発が起こる、颯爽と現れた希望はこんなにも脆いものだったのか?
辛うじて生き延びていても深刻なダメージを負っている筈だ、勝負は決してしまったのか?
「フハハハハハ! 最期の断末魔すら上げず吹っ飛んだぞ!」
「ほぉ〜ワシにはそんなの見えなかったが……誰が吹っ飛んだって?」
頭上から声が響く、隠者は一瞬にして屋根の上に乗っていた。
あの爆発を避けつつ一瞬で屋根まで飛べて、パワーのないスタンド?
僕は彼の能力の謎が全くわからなかったが、奴には何をしたのか見えていたのだろうか。
「バ、バカな……『ハーミット・パープル』を伸ばして跳躍することは可能だろうが爆破を回避するそのスピードは!?」
「フフフ……このジョセフ・ジョースター老いて益々健在というところか」
アンサイクロペディアのトニオさんが歪みすぎててワロタ。邪神です( 0w0)
ジョセフは三部当時の肉体まで若返り、実際老いてから波紋で若返れるかは不明ですけれど。
ちなみに二部までの若返りも母親を考えれば出来なくはないと思いますが、波紋を練る期間不足と余り若返るのは嫌ということで。
>>ふら〜りさん 平穏状態! の吉影さんに慌てるだとか焦るだとかの感情はなかろうなのだァ――!
食事を楽しみつつ早人のことに注意を払う、両方やらなきゃいけないのが殺人鬼の辛い所。
妹ガンダムは名前だけなら聞いたことが……こういう内容だったのか(;0w0)
みんな大好きジュアゾゴッジュの出番はあるのだろうか!
>>サマサさん >>某ピンク
ニコニコの某TAS(TAP)さんのせいでスラムピンクが真っ先に出てきた……アレはいいゲームだ。
レッドイヤーは地獄耳……なんだかデビルマンの替え歌っぽい響きで素敵ですね。
コタロウへの折檻は私もアニメの方でしか見てませんが確かにヒドイ、ヒモヒドイ。
スパイラル!
人 .ミ∩
( 0w0 ) ⊂⌒ |
| つ==☆|⊃ |つ
人 Y/ ミ( ) <ウワァァァァァァァ
し(__) ∨ ∨彡
この位ヒドかったですね、自分も機会があればBBB読んでみようと思います( 0w0)
そしてBBBでググったらトップにでてきたのは自転車でした。
>>ハガレンさん ついに新人きた!これでかつる!
心情映写の濃さが個人的にツボりました、単行本しか見てないんですがゴリさんたちは? もしや鬼籍に?
ハガレンといえば最近ウォッチマンの映画を見てシャッハさんに入れ込んでるので「豆」繋がりでこんなネタが。
「やぁ豆、ドアをブチ破ってついでに冷蔵庫の豆を失敬したよ」「誰が豆だよ上げ底野郎!」
この後エドワードの小指はシャッハさんが美味しく圧し折りました。
吉良とキャプテンに追われ披露する機会が未来永劫なさそうなのでこの場をお借りして失礼しました( 0w0)
>>前スレ266氏 残念ながらそうは行きませんでした……トニオさんには生きてて欲しかった。
非戦闘員だし杜王追放ぐらいにしたかったのですが、国外からの刺客に吉影さんが怯える日々を迎えてしまう。
このSSでは吉影さんにとっての危険人物は排除されてしまう『運命』にあるのです。
>>前スレ267氏 なぜラスボスがバレ……ってことはないです〔 0H0〕
スタンド使い同士は惹かれあうっていうし国を超えて来てもおかしくはなさそうな。
そうなると理由を付けやすいのは日本人の血を引いてるジョルノ………逃げて! 吉影さん逃げて!
レクイエム習得前なら勝機はありそうですが仗助と同じく『治す・生み出す』といったキラークイーンとは逆の能力。
うっかりカエルを爆弾にしようものなら………やはり相性は悪そうです(;0w0)
>>サマサさん
妖夢のキャラがどんどん酷くなっていくなあ、いや、いい意味でw
もっとやっちまってくれて構わない…しかしサマサさんはハシさんに土下座すべき。
全裸で。
>>邪神さん
トニオさん…よし、ちょっと葬式スレ立ててくる(号泣)
そして絶望からの救世主・ジョセフ参上!
頑張れ、世界最強(多分)のお爺ちゃん!
88 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 21:37:54 ID:Z3WePxeK0
・ふらーりさん
ふらーりさんは相変わらず常人には分からないところから持ってくるなあw
でもこういう女にかなわない加藤もらしくていいかなw
・サマサさん
博麗霊夢って確か主人公でしたっけ?東方の。結構早く消えちゃうのかあ。
しかし真の主人公のレッドさんがその分頑張ってくれると期待。
・邪神さん
トニオさんは性格は歪んでいるけど、情熱にあふれた良い料理人なんだけどw
確かに戦闘には使えない能力だから、戦えませんな。
トニオさんはDCSで身体を強化すれば問題なし
邪神さんもBBBに興味があるみたいだけど、ガチで超オススメだよ。
ちなみにコタロウ折檻ネタで一番酷いと思うのは短編集に収録されてる
「強い吸血鬼の育て方」という話だと思う。修行と称してコタロウを鍛えまくるという話で、
コンクリート詰めで遠泳・100kgのバーベルで素振り1万回・火の輪くぐり…
恐ろしいのはこれをジローさんは、全く虐待などと思っていない事だ。
>>72 砲弾が発射される爆音、着弾して地面が抉れる轟音。
爆音、轟音、爆音、轟音。
耳をつんざき大地を揺るがす大音響と、荒れ狂う熱風強風、そして舞い上がる土煙の中を、
加藤は駆けていた。その加藤の視線の先では、ホバー走行により地面、というか文字通り
「地上」を滑りながら、留二亜が撃ちまくっている。
見えないジャイアント・バズから撃ち出される、見える砲弾。既に加藤は一撃食らっているし、
今次々と地面を抉っていることからも、その破壊力は嫌になるほど解っている。
だから食らうわけにはいかないのだが、なにしろ炸裂砲弾だ。かわしても、地面に当たれば
爆発して、爆風が襲ってくる。それを近距離から受ければ当然、体勢が崩れる。
そうなれば走る速度が落ちるどころか、ほぼ停止してしまう。もちろんそんな状態では
ガードもできない。そこを狙い撃たれてしまえば……一撃受けて、飛ばされたところに
更に追い討ちも受けて……終わりだ。
だから、砲弾そのものをかわすだけではなく、かわした後に来る爆風の有効射程外
まで出なくてはならない。必然、「紙一重でかわす」どころではなく、思いっきり
大きな動きで逃げ回らねばならない。
そして留二亜の方は、どうやらホバー走行も砲弾撃ちも全くスタミナを消費しないらしく、
遠慮なく駆け回り、乱射してくる。
「くそっ、分が悪いな。逃げ回ってちゃジリ貧だ。こっちの体力がある内に、勝負を
かけるしかねえ!」
加藤は左右に大きく動いていたのを一変、留二亜に向かって一直線に走った。
その加藤を見て留二亜は、バズーカの構えを解く。
「来る? 望むところ。わたしは本気で相手する、と言ったよね加藤さん。だから、
見せてあげる。わたしの、ドムの必殺技を!」
バズーカを撃たなくなったので、加藤は何にも阻まれることなく走ることができた。
留二亜の方からも向かってくるので、あっという間に二人は肉薄する。
先手は留二亜だった。背中に手を回し、見えないヒート・サーベルを抜き放ち、振り下ろす。
なにしろ見えないので長さはわからないが、一直線の棒であることは間違いない。
留二亜の手の位置と角度からサーベルの軌道を読んで、加藤は振り下ろされてきた
その一撃を、真上に跳んでかわした……と思ったら、
「えっ!?」
その目の前に、留二亜がいた。サーベルを振り下ろした姿勢の留二亜の後ろで、
サーベルを振り下ろした姿勢の留二亜の肩越しに、もう一人の留二亜がバズーカを
構えている。
「え? なに? 二人? 残像……じゃない、本物が二人?」
混乱する加藤に向かって、二人目の留二亜がバズーカを撃つ。空中で不安定な
体勢ながらも、加藤はムリヤリに体をひねって、これも何とか回避した……と思ったら、
その加藤に、ふっと影がかかった。
「まさか三人目っっ!?」
驚いた加藤が視線を上に向けるよりも速く、第三の留二亜が、二人目留二亜の頭上を
跳び越えて襲ってきた。
今度はバズーカもサーベルもない。神に祈りを捧げるように組み合わせた両手を、
自らの頭上に大きく振りかぶり、そこから加藤の脳天へと振り下ろす!
「オルテガ・ハンマー!」
留二亜の、渾身のハンマーパンチが、まだ上を向いていなかった加藤の頭頂部に
叩き込まれた。バズーカでもサーベルでもない素手の攻撃だが、それでも
今の留二亜はドムなのである。これは、少女留二亜の打撃ではなく、
重MS・ドムの打撃なのだ。
「がっ……!」
加藤は、まず顎、そして胸、腹の順に地面に激突した。
辛うじて意識は失わなかったものの、頭の中がぐわんぐわんして、全身が
痺れる。まるで上から背中も手足も押さえつけられているみたいで、
とても立ち上がれそうにない。
懸命に首を捻って前方を見れば、小学生女児の靴が六つ、足が六本見える。
三人の留二亜が、そこにいるのだ。
「「「どう? 完璧なドムは」」」
と言った直後、足が二本になった。
歯を食いしばって胸と腹を地面から引き剥がし、両腕を踏ん張って上体を
持ち上げた加藤の目の前に立っているのは、留二亜が一人だけ。
「これがわたしの、ドムの必殺技よ」
見れば見るほど、確かに顔立ちが整った美少女ではあるが、何の変哲もない
10歳ぐらいの女の子だ。それがこの強さ。この力。この攻撃方法。
「ぶ……分身してのジェット・ストリーム・アタック……たった一人で、
黒い三連星を……完璧に再現しやがるとは……」
「当然。それが、わたしに求められたものなのだから」
留二亜は、(全くと言っていいほど膨らみのない)胸を張った。
「兄さんは、ガンダムが大好きでね。わたしが何度、遊んでほしいってお願い
しても、ガンダムごっこ以外は絶対ダメなの。そして兄さんはいつもガンダム役、
わたしはその相手としてドム役」
「ガ、ガンダムごっこ?」
「そう。ちゃんとホバー走行して、ジャイアント・バズやヒート・サーベルを使って、
ジェット・ストリーム・アタックもできるドムでないと、遊んであげないぞってね。
だったら、やるしかないでしょう? だから、やったの」
やった、とか軽く言われても加藤は困る。
しかし実際にやってる以上、否定のしようもなく。
「わたしのドムの強さは、兄さんが好きなガンダムの、ガンダムごっこの為の強さ。
わたしの、兄さんへの愛の強さ。『アイツ』もまた、わたしと方向性は違うけど、
『アイツ』の兄さんへの愛ゆえに強さを得ている。だから……」
留二亜は、ぐっと拳を握り締めた。
「アイツの、最終目的を阻む為だけではなくて。わたしの、愛の強さを
証明する為に。わたしは、アイツに勝たなきゃダメなの」
「……それだけか?」
「ええ、それだけよ。アイツに対して個人的な恨みはないし、兄さんが認めてくれる
以上の強さにも興味はない。わたしの全ては、兄さんへの愛だけ。でも、
それは何よりも大きく強い。それに対抗できるとしたら、わたしと同じ『兄さんへの愛』
で戦ってるアイツだけ。だから、加藤さんはわたしに勝てない」
「は、ははははっ。なるほど、な。そう言われちゃあ……」
加藤は、笑いながら眉を吊り上げながら、ぐぐぐぐっとリキを込めて片膝立ちになった。
「負けるわけにはいかねぇよ、俺は」
「ふうん? わたしの、兄さんへの愛よりも強い愛が、あなたにはあるとでもいうの?
そういえば、神心会空手がどうとか言ってたわね」
留二亜は考えた。
『空手道場か。もしかして、そこの先輩のことを愛してるとか? でも、
この人って彼女がいるようには見えないし。ということは……』
留二亜は、大きく後ずさって加藤を指差し、大声を上げた。
「変態! 不潔! 近寄らないでっ!」
「何をどう考えてそういう結論に至ったっ!? 多分、思いっきり誤解だ! が、」
まだ脳ミソが揺れてる感覚を引きずりながら、加藤は立ち上がった。
「お前の、兄貴への愛を上回ってみせるってのはその通りだぜ」
「……何ですって?」
「そうでなきゃ、お前には勝てないんだろ? だったら、上回ってやるよ」
留二亜の顔に、初めてはっきりと『怒り』が浮かんだ。
「あなたに、兄さんがいようが姉さんがいようが、あるいは恋人がいようが。
わたしの、兄さんへの愛は誰にも負けないっ!」
「そりゃそうだろうな。その一念で、一人ジェット・ストリーム・アタックまでできて
しまうんだから。でもな、それでもお前は『足りない』んだよ。そのことを今、
教えてやる。……来い!」
こんな留二亜ちぁんですが、原作の最終戦ではかなりマジメに苦戦し、痛めつけられ、流血し、
倒され、そして後の主人公の大逆転に貢献するという熱血ぶりを魅せてくれます。
カッコいいですよー。……そういえば最終話の扉絵はこの子一人でした。主人公の立場……
>>サマサさん
勇儀、言い回しこそガラッパチながら、ちゃんと艶っぽいことも言える=考えられる女ですな。
うむ、よろしい。意中の人がしっかり存在して、かつ子供でもないからかレッド側の反応が大人しめ
なのは少し寂しいところですが。今度はレッドが観客として、幻想勢同士の戦いに何を見るか?
>>邪神さん
吉良って、スタンドと性格こそ恐ろしいものの、承太郎やジョセフ的な意味で「有能」って印象は
ないんですが、本作の吉良は鋭いですね。狙った獲物は逃がさないどころか、掠った小石も
見逃さない。原作以上に絶望的なラスボスを前に、原作にはいなかった救世主が来たっっ!
>>74 うお、いきなりご存知の方にブチ当たるとは。私はガンダムもプロレスもサクラ大戦も
殆ど知りませんが、それでも徳光先生の一連のヲタ漫画は大好きです。元ネタ知らなくても
充分面白い!
96 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 18:29:03 ID:Yjb+kksA0
ふらーりさんはいったい何者だよw
ガンダムごっことか笑ったw
お久し振りです。さいです。
平野耕太先生作『ドリフターズ』一巻発売記念と、ある映画の公開記念に、少し短編的なのをひとつ。
アナザー『ドリフターズ』という感じなのですが、キャラも設定も原形留めてんのが与一くらいで……
それにしても与一はカワイイですよね。もうホントあのケツをガチ犯し以下略
もうあまりにも与一がカワイ過ぎて一巻92ページ目でオナ以下略
とっととOVA化で、声は白石涼子か真綾た以下略
あとアナルスタシアの声は能登以下略
じゃ、どーぞ
落ちる。
落ちる。
落ちる。
落ちる。
土方歳三は凄まじい落下感の中、目を覚ました。
落ちている。自分は落ちている。
何故?
どこから?
どこへ向かって?
眼前には青い空が広がっている。
首を捻って下を見れば、緑の森が絨毯のようだ。
何故?
疑問は雲霞の如く湧いて止まらないが、それよりも考えたのは「どうする」の一事。
このままでは死ぬ。死なぬにはどうする?
良い思案も浮かばぬまま、木々がずんずんと近づいてくる。
これまでか、と覚悟を決める間もあれば、身体を揺らす大きな衝撃と共に落ちる速度が緩んだ。
己の真上に白い大きな布が広がる。
これが為に勢いが緩まったか? そもこれは何か?
新たな疑問が湧くと同時に、土方は五体をしたたかに木々へと打ちつけ、意識を断ってしまった。
再び土方が覚醒した時。
どういう訳か、後頭部に柔らかな感触を感じていた。
手足を草の茂る地に投げ出し、仰臥していたが、頭だけが安楽な温かみに包まれている。
「気がつかれましたか?」
青年の声、否、童子と言っても良い程の明るさを含んだ声が土方に語りかけた。
眼を開けると、さっきまでの切迫した状況では感じられなかった眩しさが眼を刺す。
やがて、光に目が慣れると、自分に語りかけてきた声の主が網膜に映り始めた。
たっぷりの前髪を湛えた総髪。切れ長だが大きな眼。愛らしい曲線を描いた唇。
その顔貌が記憶の水面を波立たせる。
「総司……?」
呟いたが早いか、土方はハッと顔を、全身を強張らせ、今ある場所より飛び退いた。
彼が生きている筈が無いからだ。
そして、自分はどうやら、この沖田に似た若者に膝枕をされていたらしい。
「誰か」
「おやおや、存外にお元気なご様子。重畳重畳」
「誰かっ!」
何千と繰り返し、身に染みついた動作で和泉守兼定を半ばまで鞘走らせる。
「……?」
鞘走らせてから、土方は違和感を覚えた。
あまりにも慣れすぎていて気づかなかった事実に。
自分の今の姿格好。
不自然な自分の今の自然さ。
「俺は……」
しばし、目の前の怪しげな若者の事も忘れ、己の身体の方々に手を遣る。
髷を切り落として後ろへ撫でつけた頭髪、実戦主義を優先させた洋装、幾度の危難を斬り払った
和泉守兼定と堀川国広の大小。
何もかも、同じだ。何もかも、あの時のままだ。
蝦夷。榎本武揚。箱館戦争。官軍。一本木関門。我が身を貫いた銃弾。
今も痛みと熱さを錯覚させる腹部の辺りを、衣服の上から強く掴む。
「何故、俺は生きているのだ……」
そう、自分は死んだ筈だった。
北へ北へと喧嘩を続け、榎本や大鳥ら旧幕臣と共に築いた蝦夷共和国箱館政府。
押し寄せる官軍。敗北の色が濃くなりつつあった五稜郭。
籠城も降伏も否とし、長州薩摩の連中に己の屍をくれてやるつもりだった。
事実、自分は撃たれて死んだのだ。
愕然と立ち尽くす土方であったが、例の若者は微笑を崩さず、なだめるように言葉を掛ける。
「んん、そうでしょうなぁ。私も同じです。死んだ筈が、何故か生きて、不見不知(ミズシラズ)の
地に立っていました」
若者の言葉にも、土方は警戒を解かず、太刀の柄に手を掛けている。
そして、彼への第一声に二つ目、三つ目の問いを付け加えた。
「お前は誰か。ここはどこだ。何故、俺はここにいる」
「ここがどこで、何故あなたがここにおわすかは、私にはわかりませぬ。ただ、私が何者かは
お教え出来ますが」
「名乗れ」
「私は与一。那須資隆与一で御座います」
この名を聞いた土方はおかしみも不可思議も覚えず、ただ怒気だけを覚えた。
嘘にしては途方も無さ過ぎる嘘だ。騙す気すらも無く、嘲弄したいだけではないのか。
「なぶるか」
「いいえ、滅相も無い」
「俺は文字には明るくないが、源平の軍記くらいは知っている。七百年も昔に生きた那須与一が、
俺の眼の前に立っているものか」
与一を名乗る若者はまた笑う。困惑と同情の入り混じる呆れ気味の色で。
「左様に申されましても、私とてつい先程死に、つい先程眼を覚ましたところで御座いますれば」
土方は埒が明かぬ、とばかりに苦々しげに顔を歪ませた。
その時。
「きゃああああああああああ!!!!」
女のものと思しき悲鳴が響き渡った。
前後でも、左右でもなく、真上から。
二人が素早く空を見上げると、何者かが大きな白い布をなびかせ、樹木の枝々に身体を打ちつけながら
落ちてくるではないか。
落下地点が向かい合う土方と与一の間だったのは、運が良いと言う他は無い。
間も無く落下してきたその者は、二人の手によってしっかと受け止められた。
先刻の土方の如く、木々に身を打たれた衝撃で気絶している人物は、悲鳴から察した通り、女性である。
だが、ただの女性ではなかった。異人である。紅毛白皙の異人の女である。
年の頃はまだ娘と言っても良いのではないか。
それだけではなく、男と見紛うばかりの短髪に、全身を西洋甲冑で覆っている。
どこからどう見ても尋常の風体、人物ではない。
娘を挟んだ向こうの与一が、若干の興奮混じりに感心している。
「私達三人では終わらず、今度は異人の娘ですか。このままでは何人落ちてくるか、わかりませぬなぁ」
「待て」
危うく聞き流すところだった。
「今、“三人”と申したか?」
「ええ、あなたが……――」
ここまで言うと、与一は土方の顔を覗き込み、口を尖らせた。まだ名乗ってもらっていない、
と言いたいのであろう。
土方は閉口したように、早口で名乗る。
「京都守護職会津藩主松平容保中将様御預新選組副長、土方歳三」
どういう訳か、箱館政府陸軍奉行並、とは言いたくなかった。
与一はまた笑顔に戻り、皮肉を込めて土方の名前を音声高くし、話を続けた。
「歳三殿、があまりの剣幕だったので、つい申し遅れたのです。私は悪くありませぬぞ」
そう言いながら、土方の背後を指差す。
指し示す先、二人からしばらく離れた場所に、見慣れぬ武者鎧を着込んだ大男が草むらへどしりと
胡坐をかいていた。眼も口もむっつりと閉じられている。少なくとも顔形が異人には見えないのが救いか。
「私が眼を覚ました時には、もう既にあそこにおりました。それからずっとあのままです」
聞いているのか、いないのか、土方は娘を与一に預けると、男へと近づいた。
それにしても、異様なまでの巨漢だ。新選組十番隊組長の原田も巨漢ではあったが、目の前の
男に比べれば、童に等しい。
土方は大分、男の近くに来た。刀に手を掛けてはいないが、警戒していない訳ではない。少しでも
怪しげな動きをすれば、即座に抜き打ちに斬って捨てるつもりだ。
「その方、名を申せ」
男は土方の言葉に、横目を向けるだけ。口は閉じられたまま。
「私が話しかけても口を開きませんでした。もしかしたら日本人(ヒノモトビト)ではないのかもしれませぬ」
与一の助け舟に、うむ、と土方は頷くと、しゃがみ込んで土に、
“土方歳三”
と指で書いた。それから胸に手を当て、
「俺は土方歳三だ。その方の名は何と申す」
と再度問い掛けた。
男はしばらく土方を見つめた後、倣うように土へ名前らしき文字を書いた。
“呂布”
土方はいい加減、驚き疲れた。
那須与一と名乗る沖田に似た美少年。空から降ってきた南蛮異国の小娘。更に今度は呂布奉先と来た。
「おぬしが唐土(モロコシ)の武将、呂布だと?」
『三国志』は近藤勇も愛していた物語で、自分も小さい頃は年長者から聞かされ、長じては自ら
読んだものだ。
水関での猛将呂布と劉備三兄弟の戦いは、今でも諳んじられる。
その呂布が今、自分の目の前にいる。
土方は意識せず、僅かに後ずさった。これは悪い夢なのか。
「歳三殿……!」
甲冑を着込んだ娘を重そうに抱える“悪い夢”の一部が、後方から呼び掛ける。
「な、なんだ」
「何か聞こえませぬか?」
与一の注進に、気を取り直して耳を澄ますと、確かに何か声らしきものが聞こえる。
大分離れているのか、微かにしか聞こえないが、どうやら怒鳴り声のようだ。それもひとつではない。
「うむ、聞こえる。あちらの方に幾人かいるらしいな」
「行ってみましょう」
土方は与一の顔を見直した。
「ここに居たところで、何も始まりませぬ。誰かがいるのなら、行って話を聞けば、何かわかる事が
あるやもしれませぬ。それに――」
ここで初めて、与一の眼がギラリと、武将らしく光った。
「――害を成して来るのならば、討ち果たせば良いだけの事」
土方はしばらくの間、まじまじと与一の顔を見つめていたが、やがてフッと低く笑った。
「その通りだ、那須与一。いや、そうあるべきである」
急に肩が軽くなったようだ。単純で、わかりやすい。これまでの己の人生もそうであった。そして、
傍らにいるこの若者は“同類”だ。
「行くか、与一」
返事も待たず、薄笑みの土方は歩き出している。一体にこの男は決断が早く、しかも足が達者である。
弓矢と異人の娘を抱えた与一は慌てて歩き出したが、座り込む呂布にふと顔を向けて言った。
「あなたも一緒に行きませぬか? 座っているだけは退屈ですよ」
言葉が通じる筈も無いのだが、呂布は少し考えるように与一を見つめた後、のそりと立ち上がった。
立ち上がっただけではなく、与一が重そうに抱えていた娘を取り上げ、軽々と左脇に抱えた。
右の手に握り締めた方天画戟と思しき長大な戟は肩に担がれる。
「かたじけのう御座います」
身軽になった与一は呂布に礼を述べると、彼と並んで、土方の後を追った。
それにしても暑い。暑すぎる。
土方は袖で額の汗をぐいとひとつ拭うと、眉をしかめて中天の太陽を見上げた。
「暑くてかなわぬな」
生まれ育った武州多摩の夏や、斬り合いに明け暮れた京都の暑さなぞ比べ物にならない。
「まことに」
与一は同意しながら、周囲の草木へ珍しげに眼を遣る。
緑の森林そのものは珍しくもないのだが、そこに生える木も草も花も、これまでに見た事も無い
くらいの奇怪極まる姿形をしていた。
これには土方も同意見である。一方の呂布は黙して語らず、異人娘は気絶したまま。
しばらくの間、声の聞こえる方角へ歩を進めていたが、やがて繁る草木が途切れ、比較的見晴らしの
良い場所に出た。
そこには、六人の男達が、声の主達がいる。
「テメーみてーなオヤジがなんで“キッド”なんだよ! “キャプテン・キッド”とかフザケてん
じゃねーよ! いいトシして海賊ゴッコか!」
「俺の“キッド”は『William Kidd』でれっきとした名字だ! お前こそ“ビリー・ザ・キッド”って
芸名丸出しじゃねえか! 本名教えろ!」
「オレはこっちの名前の方が知られてるんですー! つか21人殺してマジ有名人なんですけど!」
「うるせえ! 鉄バケツぶつけんぞ! 略奪許可証舐めんな!」
「うっせえ! 死ね! クソオヤジ!」
「お前が死ね! 糞餓鬼!」
「バーカバーカ!」
「アホーアホー!」
年若い男と初老の男が掴み合い、やかましく罵り合っている。聞こえてきたのは、この二人の口喧嘩
だったようだ。
一人はカウボーイハットにウェスタンシャツ、ブーツ。腰には古めかしい回転式拳銃(リボルバー)が光る。
もう一人はゴワゴワとした厚手のジャケットに亜麻布のシャツ、帆布のズボン。こちらは腰に
海賊刀(カトラス)を下げている。
また、そこから少し離れた大木の根元に二人の人物が座っていた。こちらは中年男と老人だ。
「アウトローと海賊の誇大妄想か。馬鹿は悩みが少なそうで羨ましいわい。なあ、そう思わんか?」
老人は皺だらけの底意地の悪そうな顔を、更に歪めて吐き捨てる。カジュアルな格子縞(チェック)の
半袖シャツとスラックスは年相応に洒落ているが、この密林にはまったく似つかわしくない。
紺のツナギ服を着た中年男は、自分に向けられた言葉にオドオドと遠慮がちに笑うだけ。だらしの無い
ボサボサ頭と無精髭、それに大きな眼鏡が、その卑屈な態度を三割増しにさせる。
「お前さん、名前は何と言うんだね」
「あの、えっと、僕はジェフリーです。ジェフリー・ダーマー。ぼ、僕の事なんか、知りませんよね?」
「知らんな」
こちらを見向きもせず、興味無さげに答える老人。
しかし、ダーマーと名乗った男は少しホッとしているようにも見える。
「あ、あの、おじいさんのお名前は?」
「ヨーゼフ・メンゲレだ」
老人の名を聞いた瞬間、ダーマーは眼を剥き、彼の横顔を食い入るように見つめた。
「し、し、知ってる。ナ、ナチスの殺人医師(ドクター・デス)…… 死の天使……」
「ほう、私はなかなか有名なようだ。としたら、私が知らないだけで、いや知りようが無いだけで、
お前さんもなかなかの有名人かもしれんな。囚人君(ミスター・プリズナー)」
二人共、それきり口を開こうとしない。
更に、二人の殺人者が背を預ける大木の上。地上より7m程の枝に若い白人男性が一人。緊張に顔を
強張らせ、ライフルを両手に抱えている。
最後に、彼ら一団に背を向けるようにして、一人の騎士らしき男が力強く両腕を組んでいた。
全身を西洋甲冑と兜で覆い、赤いマントを羽織った威風堂々たる構えだ。
そして、彼ら六人の男達を呆然と眺めながら、土方と与一が立ち尽くす。
「全員、異人だな……」
「ええ……」
「話は聞けぬな……」
「ええ……」
[続]
出るのは武将かと思いきや、ナチス、90年代の食人鬼やらまで登場とはどんな展開になるのか楽しみだ。
というか、通訳いないのかwww
おお、さいさんマジでお久しぶり。
ブログも一年ぶりに更新してたんだ。知らなかった・・。
体になにかあったのかと心配しておりましたが良かったです。
原作は存じませんが土方、呂布、那須与一と大好きな人物が
そろってて楽しみです。こいつらがどうナチスを退治ていくのか。
ゆっくりとでも良いんで、続きを待っております。
しかしここだけでなく、お気に入りのスレが本当に人いなくなってるなw
2chも3年持つかなあ。
NBさん帰ってこないのかなぁ…
AABCの続き、いつまでも待ってます
107 :
作者の都合により名無しです:2010/07/18(日) 14:53:06 ID:btUKyzvi0
復帰おつですさいさん。あと、ご家族増えるみたいで本当におめ。
復帰、それも新連載ということで、2重に嬉しいです
さいさんの疾走感のある描写で、土方や呂不をかっこよく書いてください
前スレであった復活宣言ってさい氏の事だったのかな?
「ふらーりさんの感想もほしいし」ってあったやつ
やはりふらーりさんはバキスレの守り神なんだな
>>107 復活宣言は私ではありません。
私は基本、書き込む際は名乗りますし、そもそも不必要というか無意味な書き込みはしません。
>>94 後ずさった位置から、留二亜がホバー走行で向かってきた。
右手を肩越しに背中へ回した、ヒート・サーベルの構え。おそらくまた、
一人ジェット・ストリーム・アタックで来るだろう。三分身しての、ヒート・サーベルと
ジャイアント・バズとオルテガ・ハンマーの三連攻撃。
機動戦士のガンダムはこれを見事に破ってみせたが、ガンダムと違って5倍の
ゲインを持たず誰の援護もない加藤に、同じ破り方はできない。
加藤にあるのは神心会空手と、培われた実戦経験のみ。その二つで留二亜のドムを、
黒い三連星のジェット・ストリーム・アタックを破る!
「コオオオオオオオオォォォォッ!」
試合開始の時と同じく、息吹によって気合を高める。呼吸を整え、余分な力みを
なくし、身体能力を最大限引き出せるようにする。
準備はできた。後はやるだけだ。
「いくぞおおぉぉ!」
さっきは気付かなかったが、今、落ち着いて見ればわかる。この時点で既に
留二亜は三分身しており、縦一列に並んで突進してきているのだ。
ドムに、黒い三連星そのものになって。
まず一撃目、先頭の留二亜がヒート・サーベルを振り下ろす。これを加藤は、
先ほどと同じように真上に跳んでかわした。
留二亜の移動速度は加藤より明らかに速いので、横や後ろにかわすのはムリ。
また、それでは反撃ができない。なにしろ留二亜には強力な飛び道具がある。
だから加藤は、自分の攻撃圏内で一撃目を対処するしかない。しかしヒート・サーベルは
見えない上に高熱だから、真剣白刃取りや受け流しは不可能。となれば、
これ以外に手段はないのである。
「さっきと同じ? 芸がないわね!」
二人目の留二亜が、ジャイアント・バズを……
「そこだああああぁぁぁぁっ!」
空中で加藤が、見えないジャイアント・バズの砲口に右正拳を突っ込んだ。
「どうだ! 胸や腹ならともかく、この俺の鍛え上げた正拳ならば、砲弾の一発ぐらい
耐えるぜ! だがここで暴発したら、お前はどうかな!?」
「宙に浮いて、利き腕を封じられて、それでどうして勝ち誇れるのか理解できないわね!」
三人目の留二亜が、二人目を跳び越えた。そして組み合わせた両手による
ハンマーパンチ、オルテガ・ハンマーを繰り出す。
それに対し加藤は、今度はしっかりと上を向いて、思いっきり背中を逸らせてしならせて、
「キャオラアアアアァァァァッ!」
裂帛の気合と共に放った頭突きを、留二亜のオルテガ・ハンマーにぶつけた。
予想外の動きにヒットポイントをずらされたこと、また加藤の頭突きが想像以上の威力だった
こともあって、留二亜のオルテガ・ハンマーは完全に打ち返され、まるで映像の巻き戻し再生
のように戻っていく。いや、それでも勢い止まらず、まるで後ろから引き倒されるように、
後方へと倒れていった。
一人目・二人目の上にいた、つまり結構な高さから、三人目の留二亜は背中で着地する。
「あぐぅっ!」
投げ技で叩きつけられたわけではないが、なにしろ下は岩場。ドム化により多少は
耐久力が増しているとはいえ、鍛えているわけではない小学生の女の子。留二亜は
小さくないダメージを受け、分身が解けて一人に戻ってしまう。
そこに、着地した加藤が走ってくる。留二亜は両手を後ろについて体を起こそうとするも、
間に合わない。加藤が速い。
加藤の、人差し指と中指が、ぴんと伸ばされて矢のように突き出された!
『目潰し? だめ、かわせない!』
ピシッ!
「……っ」
固く目を閉じた留二亜が、こわごわ目を開けてみると。
目の前に、ニヤリと笑った加藤がいた。その手の人差し指と中指で、黒い眼帯を
摘んでいる。
留二亜が、左目にかけていたものだ。
「ジオンのMSたるもの、モノアイじゃないってのは、いけねぇよな?」
言いながら加藤は、眼帯を留二亜に返した。
留二亜はそれを受け取って、俯いた。もう左目にはかけない。
「わたしの……負けよ」
「いや、一回目のジェット・ストリーム・アタックで俺は完全にKOされてただろ。
だからまあ、一勝一敗の引き分けってとこだな」
ほら、と差し出された加藤の手を握って、留二亜は立ち上がった。
加藤はほりほりと頭をかいて、
「けど、流石にもうくたびれたから、三本目の決定戦はカンベンしてくれな。
それはまた機会があったらってことで……おい?」
留二亜は立ち上がってもまだ俯いていて、そして、
「……ひっ……く……っ……」
泣いていた。ぽろぽろぽろぽろ、小さな涙の雫が、つるんとした頬を伝って、
岩の地面に落ちていく。
「また、負けた……アイツにもまだ勝ててないのに……」
「まてまてまてまて! そこは今、納得いくように説明してやるから!
だから泣き止んでくれ! な? 頼むから!」
誰も見ていない山奥とはいえ、加藤は慌てまくった。ヤクザ生活をそこそこ送った
彼だが、流石に小学生の女の子を泣かせたことは一度もない。
加藤の慌てっぷりが大げさ過ぎたおかげか、留二亜は逆に、少し落ち着いた。
それでもまだ、涙はゆっくりと滲んできているが。
「納得……? 何が……? わたしの強さは、兄さんへの愛の強さって
言ったでしょ。それが敗れたのは、わたしの愛が弱かったせい……」
「違う! いいか留二亜、よく聞け。モノにはなんでも、質と量ってのがある。
お前の、兄貴への愛は確かに極上だ。質に問題はない。けど、量としては
『1』なんだよ。それに対して俺は、『2』」
加藤はまた、人差し指と中指を立てた。もちろん今度は目突きではなく、
Vサインのように立てて留二亜に見せている。
留二亜は、涙に潤んだ目でそれを見ている。
「まず、俺は神心会空手を愛している。師匠を尊敬し、同輩と磨き合い、
更に道場の外の奴らとも、神心会空手家として拳を交えている。その俺が
負けることは、神心会空手家が負けること。それは我慢できん。これが『1』」
「……」
「そして『2』だ。当たり前だが、俺だって生まれた時から空手家だったわけ
じゃねえ。強くなりたいから、始めたんだ。加藤清澄が強くなるため、その
道具として、神心会空手を選んだ」
「ちょっと待って! 加藤さん今、愛してるっていったでしょ? それを道具って」
「ああ。道具として愛してるぜ。一生をその為に捧げても惜しくないくらいにな」
淀みなく加藤に言い切られ、留二亜は言葉を返せない。
「だがな、道具は道具だ。俺は神心会空手家として誇りを持ってるが、
同時に『男一匹加藤清澄』でもあるからな。そいつが強くなれないようなら、
空手の練習なんて無意味だと断じる。これが、『2』ってことだ。で留二亜よ」
加藤は中指を曲げ、人差し指だけ立て、それで留二亜を指差した。
「お前はどうだ? 兄貴のことが大好きだってのはわかった。だがそれは
それとして、『女一匹木槍保留二亜』はどうなってる?」
「え、え?」
ちょっと意表を突かれて、留二亜は混乱する。
「お前、俺と戦い始めた時、『いっきまーす!』って言ったな。その出典は?」
「もちろん、『ガンダム』の主人公アムロ・レイのセリフよ。わたしは
兄さんとのガンダムごっこの為に、隅から隅まで勉強したんだから」
「そこで止まってるから、だ。お前のそこに、愛や誇りはあるか?」
「そこで……止まってる? 愛や誇り……」
そういえば。加藤は『自分』が強くなる道具として『空手』を選んだと言った。
『自分』と『空手』の両方に愛や誇りがある。だから『2』だと。
翻って自分は、『兄さんの愛』を得たいが為にガンダムを勉強し、『ドム』を……
「あっ!」
思わず、大声が出た。そうだ、確かに自分は『1』なのだ。
『兄さんの愛』以外のものがない。『ドム』はその為の道具だが、
加藤の空手のような、愛や誇りはない。
そして、そう、あの憎い宿敵たる『アイツ』はどうかというと。
「拳にガルマ様の御無念をお乗せして……ギレン閣下の
『ジーク・ジオン!』が聞こえてから……打つべし! ジーク・ジオン!」
「黒い三連星が二部隊いれば、オデッサ背後とレビルとを手分けして
攻撃できたのに……という思いが可能にした奥義! 黒い六連星っっ!」
「怖くなんかないよ。だって、ガトー大尉が大活躍してるんだよ!」
「アイツは、アイツも、兄さんへの想いを胸に戦ってる。でもそれだけじゃなく、
アイツ自身が、ジオンを深く熱く強く愛している……」
というか、連邦軍を憎んでいる。『アイツ』なら口が裂けても、
「いっきまーす!」なんて言わないだろう。絶対に。
「なるほどな。つまりそいつも、『2』ってことだ」
いつの間にか涙の止まった留二亜は、がっくりと肩を落とした。
自分の敗因に、納得しきってしまったからだ。
「確かに、わたしには『1』しかなかった。わたし自身が、
ドムやジオンを愛せるようにならないとダメなのね」
「ああ。そうすれば、お前のドムはもっと強くなるだろうな。
とはいえお前の目的は、もう達成できてるかもしれんが」
「?」
きょとん、と加藤を見上げる留二亜。
「だってそうだろ。自分が『ガンダム』を好きなわけでもないのに、
兄貴の為にっていう健気な思いだけで、ドムにまでなっちまってるんだぜ?
もし、俺がお前の兄貴だったら、」
ぽん、と加藤の手が留二亜の頭に置かれる。
「こんな可愛い妹にそこまで慕われて、悪い気するはずねえよ」
「……え……」
留二亜の小さな頭を、覆いつくさんばかりの、加藤の大きな手。
鍛え上げられた固いその手の温もりが、ゆっくりと伝わってくる。
その温かさが、留二亜を見つめる眼差しの優しさと重なって……
「っっっっ!」
ばっ! と留二亜はその手から離れ、顔を真っ赤にして後ずさった。
「ち、ち、ち、ち、違うっ! わた、わたしが好きなのは兄さんだけっ!
ほ、他の、他の男の人なんて、全然、その、あの、」
「いやあの、おーい? 俺だって流石に、小学生を相手にどうこうって気は」
加藤が何を言っても、頭から湯気の出ている留二亜には伝わりそうになくて。
「やれやれ。ま、いいや。また、縁があったら会おうぜ。そん時にはお前の
兄貴も交えて、三人でガンダム話をするのもいいかもな。じゃ、あばよ!」
軽く手を振って、加藤は留二亜に背を向けて、歩き出した。
それほど大柄ではないが、逞しさは充分なその背中を見送りながら、留二亜は思う。
『わたしは必ず、ドムを好きになってみせる。兄さんだって、わたしが本気で
ドムを好きになった方が、喜んでくれると思うしね。……ありがとう、加藤さん。
大切なことに気付かせてくれて』
留二亜が、兄以外の男性に対して、ここまで柔らかな表情を見せたのは、
後にも先にもこの時だけあった。
後に、留二亜は。
宿敵『アイツ』と手を組み、この世のものとも思えぬ強大な敵と対峙することとなる。
留二亜が力尽き、『アイツ』もまた窮地に陥った時、最後の最後で大逆転を
もたらしたのは、『ドム』であった。
「きっと、このドムが『留二亜ちゃんのドム』だから……だよ」
完結です! ご覧頂き、ありがとうございましたっ!
対象が恋人であれ家族であれ、こういう、ヒロインの「健気」とヒーローの「正義」がありゃあ
私は生きて行けそうな気がします。
>>さいさん(お帰りなさいませっっっっ!)
歴史人物大集合といえば、「ワールドヒーローズ2」を思い出します。本作の場合、誰が
どういう基準・目的でどこに集めたのかがまだ謎ですが……メンツを見る限り、なかなかに
キナ臭そうな。今のところ女の子は一人だけ(やはりジャンヌか)ですが、他には来るかな?
>>96 愛は奇跡を起こすということでひとつ。
>>106 俺、NBさんが連載再開されたら、「ブラックキャット」第一巻を買うんだ……と
フラグらしきものを立ててみる。
あと、私が「ネウロ」を知り全巻購入したのは電車魚さんの影響なので、
ご報告したいんですけどねぇ。
「武装錬金」はさいさんやスターダストさんやその他大勢、「殺し屋1」は外伝さんで、
「アカギ」はパオさんとVSさん……多分、まだ他にもあったかと。
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1147.html ちょっくら時間に余裕がないので、まとめの方に直接保管しました。
よろしければ見てくださいな。
前回
>>79からちょっと間が空いちゃったなあ…。
次はもっとスピードアップせねば!
>>81 全部は無理。今回みたいな形にしても、相当な量になるので、基本はキンクリ発動です。
>>邪神?さん
トニオさん…哀悼…
そして救世主・聖戦士ジョセフキターーーーー!
殺人鬼とおじいちゃん、勝つのはどっちだ!?
BBB、原作だと更に虐待が加速しています。特に短編集は酷い。
どう見てもジローさんはコタロウを殺す気だとしか思えません。
>>87 // , -─;┬:─‐- 、 )
. // / ヽ i r' \ ( ………
/ .,' , -─- 、 ヽ ) ハシさん……
/ / ヽ .ヽ (
|{: l l }| ) ………
E''ー-|{ { ,ィノl人トヽ、 トi }l-‐'''ヨ { マジ……
. E..三l| { l. (l'≧ ll ≦゙l) :| | n;|三..ヨ ) すんませんでしたっ…!
. |.! { |! ト∈ゞ'∋イ | :! 4!!: (
| | ' || |:::::`ー'´::::| |:::|. !:!: `フ'⌒`ー-‐
|. } { W::::::::::::::::::::W:::::} { |::
ヽ|. |/:::::::::::::::::::::::::\|. |ノ::://
. | |::::::::::::::::::::::::::::::::::l |//
! |::::::::::::::::::::::::::::::::::::!. //
| |:::::::::::::::::::::::::::::::::://!、 /
/, r- ヽ::::: ::::::::::::::::// 、、\ //
!L{」_厂ゝ): ::::::://:(.{⌒)_},},リ://
二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
ヽ \ ヽ ̄
>>88 最初はレッドさんと闘わせるつもりだったから出したけど…プロットの変更で…
霊夢は犠牲になったのだ…路線変更の犠牲にな…
>>90 あれは酷い…本当に酷すぎる。
>>ふら〜りさん
加藤、男前…!ドムなのに<いっきまーす!>なのは、そういう理由だったのね。
しかし<空手は道具にすぎないけれど、それを心から愛している>というのは心を打たれました。
SSにも繋がるものがあると思う。意味もなくネタを乱発してるだけのどこかの誰かに言ってやりたい。
(僕の事です)
妹ガンダム、ちょっと見てみようかなあ…。
>>さいさん
復活、おめでとうございます!
時代を越えて集められた英雄・豪傑…ワクワクするじゃないですか!しかしジェフリー、希代の殺人鬼の
くせにおどおどしすぎだろう…これからブチ切れていくんでしょうか?
一癖も二癖もある連中ですが、これからどうなっていくのかマジ期待です。
,,/'゙ ヽ'゙ ヽ| ゙ ヽ、
/,. !. '゙ ゙ヽ、ヽ、
///\ ゙ 、 ゙ヽ ヽ ヴォォォォッ!
. ////ヽヽ、 ゙ヽ、 )/、
. //////! 、゙ヽ、゙ヽ、. ,.ノノミミ、
////,'//彡i:.;:;:ヾ゙!、゙ヽ、 ゙''''゙゙ ,ノヾ、))!、.
/////,'/彡彡i;:.':i '゙、''ヽ、___,/..',!ヽ、//!iヾヽ-‐'''ツ-..,,
////l///////゙,';:;:/゙ヽ、 ゙''''゙ヾ゙゙ヽノヾ/ノ/ !,゙゙/゙゙ヽ,‐'゙/ヽ、.
////////// /.ヽ ゙ヽ、 i iノ゙゙゙゙゙゙/! !‐‐゙ヽ,./\/、.
//////,/..................,-‐'゙、_ヽ、.,_ )| |-‐'゙ヾ'゙ i゙゙ ヽ、 ヽ-'゙ヽー--ゝ
// /////‐'゙゙ ヽ......i ヾ゙゙'i::ヽ,,,,,,゙''ー-'ー--‐' // i ヾヽ,,,,,ヽ...ヾ、 ヽ,,_
./' // //'゙,,__/゙ ,,...'゙ ゙'''|ノ,__ | ,、 lノ_ /' ‐‐゚ |゙o'l. _,<,_ ,; \\'` ゙' ,/゙゙゙゙ヾヽ、_
/' ///),,,_/;::;/゙ ,' l,'゙ヾヾ)___|‐ 、 ll、、ヽ 、,,,,....l ゙ '<_ ,.)''‐-..,, ゙'v''゙ ,.'゙;:'゙ヾ...,,,__)
/' i.-/, _,(,,../ ヾl (,,.. _,.ノ-,:!ヽ| |||ヽヽ,_ ヾ'i''゙ ,.!'-‐)、゙''ー=ヾ、'゙''ー==ヾ==ヽ
プレデター
118 :
作者の都合により名無しです:2010/07/22(木) 13:17:37 ID:7ekzOxm60
ふらーりさん完結お疲れ様です。でももう終わっちゃうのか・・。
前回と最終回は本当にふらーりさんの作風だなあw余人は真似できん。
次スレに久しぶりにふらーりさんの作品名が載ると思ったのにw
サマサさんお疲れ様です。
レッドさん、次戦ではベストコンディションに近い状況で戦えるのかな?
それでも幽香は難敵ですな。実力ではハッキリレッドさんより上だし。
ある意味、「2回戦あたりでラスボス並の強敵とあたる」というのは
トーナメントを盛り上げの王道かも。
短かったけど久しぶりにふら〜りさんワールドが見れて楽しかった
また、なんか書いてください
それにしても東方の世界って強いんだね
レッドさんより普通に戦えば強いやつばかりかな
120 :
作者の都合により名無しです:2010/07/23(金) 01:10:18 ID:Nw8M33Sd0
ふらーりさんの連載が終わってしまったのは痛いけど
サマサさんもペース上げてくれるみたいだし、
さいさんも復活したしハイデッケさんも書くみたいだし
復帰宣言してる人もいるし、まだ持ちそうだねバキスレ
ふらーりさんお疲れ様。
短編だったけど、加藤も結構男らしくてよかった。
瑠二亜とかぜんぜんわからんけど…w
>幻想郷最強の一角―――風見幽香!
化け物揃いの中でも上位クラスだからな。
レッドも化け物だけど、化け物の度合いが違うからな。
ヴァンプと愉快な仲間たちと遊んでいるのとは訳が違う。
121 :
永遠の扉:2010/07/24(土) 05:21:32 ID:jLeyiEpW0
第094話 「斗貴子が防人に任務報告をする。そして迫る影……」
【報告書】
9月10日午後6時頃、銀成市北東山林部にてホムンクルス30体を確認。これを撃破。
人質となっていた開盟学園生徒(男性・17)は無事保護。
そう締めくくられた事務的文章満載のA4用紙から目を上げると、防人衛は深い溜息をついた。
「何か不備でもありましたか」
すかさず卓袱台の向こうで鋭い瞳が輝いた。津村斗貴子。後頭部から肩めがけ急降下するショートボブは切り揃えたと
いうより「長いと邪魔なので自ら背後から斬り捨てた」という方が適切だ。そういう物騒な形容が似合う一直線の髪が揺ら
めいたのは姿勢を正し、卓袱台の縁から防人を直視するためである。続く釈明。曰く、人質に怪我はない。曰く、錬金術に
ついての一切合切については口止め済み。湯呑をごとりと置いてからこっち、凛々しい唇は歌のように報告を口ずさむ。
「人質となった少年やその友人たちの住所も把握済みです。あとはいつも通り戦団に事後処理を──…」
「いや」
歯切れの悪い言葉を漏らすと、その裏に潜む言葉を彼女なりに想像したのだろう。凛々しくも美しい顔がフと微妙な不安
に曇った。同時に細く白い指──編み物でもやっている方がお似合いで、可憐な。とてもそれが常在戦場で目つぶし眼球
摘出なんでもござれの屈強赤手とは想像しがたい──が報告書に伸びた。貸して欲しい。そんな手つきだった。
「記入に不備があれば言って下さい。すぐに直します」
「いや。ブラボーだ。いつもどおり完璧なんだが」
防人は視線を彷徨わせながら「とりあえず」という手つきで報告書を卓袱台に置いた。
何といっていいか分からない。そんな任務の結果は本日2度目である。
(あの事件は仮面の戦士たち……ディケイドとディエンドだったか。別の世界の者たちの協力で解決したというが──…)
2時間ほど前に中村剛太から受けた「LXE残党+αによるメイドカフェ襲撃事件」も大概だったが、いま斗貴子から報告
を受けている事件もなかなか負けず劣らずの奇抜さを秘めている。率直にいえばそれが感想だった
言葉を探しながら時計を見る。寄宿舎はそろそろ老朽化の時期にあるのだろう。黒ずみと蜘蛛の巣が目立つ鴨居の上で
丸い時計が午後10時を指している。
9月10日。戦士に「ちょっとした騒ぎ」がよく降りかかった日だ。それもそろそろ終わりに近づいている。
とにかく、防人は言葉を探していた。生真面目な空手部主将がそのまま年を食ったような顔の彼は御世辞にも美形とは
言い難い。「いい男」との評もあるがそれは刻苦修練に耐えてきた男ゆえの精悍さゆえであろう。
無造作に切り詰めたギザギザ髪、太い眉毛。顎にはゴマのような無精ひげが生えている。
そんな顔が先ほどから小難しげに歪んだまま卓袱台を睨んでいるのは、やはり言葉を探しているせいだ。
戦士長なる役職にある以上感想以上の──厳然とした物。部下に聞かせても役職相応の権威が失墜しない、威厳の
ある言葉を吐き続けねば組織は持続しない。役職ある者が軽んじられるようになればいずれ役職とそれが帰属する組織
自体までもが軽く見られ、緩やかな瓦解へ向かう──感想以上の言葉を吐かねばならぬ。
決意と共に防人の眉根の肉が盛り上がる。引き締まった顔立ちが更に粛然と引き締まる。
「俺が聞きたいのはキミに協力したという者たちの事だ。その、だな」
とても20代とは思えぬ深みのある渋い声を若干震わせながら報告書の中腹を指で2度叩く。ツルツルと編み込まれた
繊維たちが小気味のよい音を立て、斗貴子もそれに誘われるように身を乗り出した。
「はい。殺し屋ですね」
指差された箇所を事務的に──どこか千歳に似ていると思った。女性はみな戦闘またはそれに準ずる任務をこなすうち
事務的感情ばかりを発達させるのだろうか──反復すると、斗貴子は不思議そうな表情を浮かべた。
「殺し屋たちについては私と協力してホムンクルスを斃した後、どこかへ去って行きました。しかし職業が職業です。私達
のコトを口外する心配はありません。……例え口外してもあんなフザけた連中のいうコトなんか誰が信じるか」
122 :
永遠の扉:2010/07/24(土) 05:23:03 ID:jLeyiEpW0
やや荒ぶった最後の言葉は斗貴子なりの心情吐露なのだろう。ふっと視線をやって斗貴子はお得意の不機嫌そうな半眼
で腰に手を当てていたが、防人に気付くと慌てて居住まいを正した。報告時にその態度は頂けないと思うがまだ若い戦士で
付き合いも長いので追及はしない。むしろ聴きたいのは……。
「えーとだな。戦士・斗貴子。話を整理しよう」
「はい」
「キミは今日、LXEの残党を探しているうち、銀成市に遊びに来た別の学校の生徒と知り合いになった」
「はい。先日『あの共同体』の副長が引き起こした時間促進事件。彼らはあれがもう一度起こらないか好奇心に駆られて
この街にきたようです」
「ウム。そこまでは報告書に書いてある通りだ」
「彼らは道が分からないとの事でした。そこで先日の舞台の1つとなった大交差点へ道案内した所」
「運がいいのか悪いのか。度重なる残党狩りに怯えた残党たちが最後の食事とばかり大交差点に繰り出してきていた」
「もちろん全部ブチ撒けてやりました。一般人の被害はゼロです。しかし」
「キミを恐れた残党がたまたま近くにいた他校の生徒を人質に取り、逃げた。アジトの場所を教えてな」
「はい。助けたくばこの街にいる戦士の持つ核鉄総てを持ってこい。それが要求でした。だが私の答えは一つ。『聞けるか。
貴様たちに核鉄を渡せばより多くの人たちが犠牲になる! ここは人質を何とか助けた上で全員ブチ撒ける!』です」
「アジトの場所をばらすのは幾らなんでもマズかったな。お前が相手なら尚更だ」
流れるような展開である。もっともその程度の事は戦士をやっていると珍しくもない。ただし。
「だがなぜ、そこで殺し屋が出てくるんだ?」
「さらわれた生徒の友人の友人が、殺し屋のサイトのオーナーだったからです」
事も投げにいう斗貴子に防人は言葉を失くした。いやに現実離れしている。いやそれをいうなら防人が平素使役する武装
錬金や戦う相手たるホムンクルスもとっくに現実離れしているが、いちおう「錬金術」というケミカルな術理の集合体としての
説明はつけられる。一方、「殺し屋」。戦闘に身を置く防人でさえ全くお目にかかった事のない代物だ。金品その他の対価
を受け取り人命を奪う職業。戦団の奇兵はおろかホムンクルスにさえいるかどうか。
「さらわれた生徒の名前は藤崎佑助。所属は私立開盟学園。学園生活支援部部長です」
「それは報告を受けている。あだ名はボッスン……だったな。そしてその友人が鬼塚一愛(ひめ)と」
「笛吹和義。所属は藤崎佑助と同じであだ名はスイッチ。重度のネットマニアです。弟の仇を殺す相手を求めネットサーフィ
ンをしている内、殺し屋のサイトを見つけたとか」
「ええと」
防人は頬にうっすらと汗をかいた。インターネットには詳しくないが、現代社会の病理を垣間見た気がした。
「そのサイトの名は『職業・殺し屋』。殺人依頼が集まる場所です。その依頼を殺し屋たちは逆オークションでどれだけ安く
請け負えるか……競うようです」
「そ、そこのオーナーと生徒・笛吹は知り合いだったのか」
つまらない反問だと防人は思った。だが口の中が心持ち渇いている。喋らなければ口腔粘膜が罅われそうな気がした。
「オーナーの名前は宮内啓だそうです。本名かどうかは知りませんし彼と知り合った笛吹和義が目的を遂げたかどうかも
知りません。重要なのはホムンクルスに攫われた人がいて、その人を助けるには手勢が必要だったという事です」
「戦士・剛太や桜花、秋水はその頃メイドカフェで別件を調査していたしな」
「ええまったく。人手がいるっていう時にたかが2体に手をかけ過ぎです」
「……すまん。俺の采配ミスだ」
「大丈夫です。戦士長の采配が悪いのは昔からです。私は大交差点で10体ばかり斃しましたから。一人で」
斗貴子は相当怒っているらしい。冷えた目でプイと顔を背けた。
「だからこの街をいつまでも苛み続けるホムンクルス。そして信奉者。奴らを全員ブチ撒けられるなら殺し屋の手を借りて
も構わない! というか剛太はあのクソ忙しい時に何やってたんだ! メイドカフェぇ!? 桜花に骨を抜かれ過ぎだ! 新
人ならもっとシャキっとしろ! シャキっと!!」
123 :
永遠の扉:2010/07/24(土) 05:24:16 ID:jLeyiEpW0
卓袱台が揺れた。斗貴子が立ち上がりがてら両手で叩いたのはいうまでもない。
ボルテージが上がりかけている。ここで油を注ぐと火渡以上の炎が燃えあがって手に負えなくなるのは重々承知の防人
だ。話題を変える事にした。
「逆オークション、という事はやってきた殺し屋は1人か2人なのか?」
「10人ぐらいです。オーナーの友人の友人を助けるため特別に招集されたとか」
「はあ」
斗貴子の目が冷えて行くのを防人は見逃さなかった。
「色々いました。紆余曲折を経てたどり着いた奴らのアジトでは30体ばかりの襲撃を受けました。しかしまず人質を取っ
ていたホムンクルスが攻撃を受けました。やったのは左目の周囲に蜘蛛の刺青をした男です。鞭のようにしなる剣がホム
ンクルスの目を打ちました。もちろん錬金術の産物じゃありませんからダメージはありません。しかし怯ますには十分でし
た。すかさず飛び込んできた青年……後で聴きましたが鎌倉時代から続く武術の継承者だそうですね。彼が人質を素早く
安全な場所へと運びました。ホムンクルスたちの運命はここで決定した……?。ええそうです。後はもう殺し屋たちのやりた
い放題でした。白状しますが私でもあれだけの殺戮はできません。私は信奉者以外の人間は殺しませんし、信奉者でさえ
殺すためだけに殺します。ですが彼らは違う。愉悦の為だけに相手の命を奪う。それは例え相手が人間をやめた存在でも、
錬金術以外の攻撃では決して斃せないとしても、です。『どうすれば殺せるか』。まずそれを考え、戦いの中で実行します。ひ
どい戦いでした。私が斬り飛ばしたホムンクルスの牙、爪、そして装甲。何か分かりますか? はい。彼らが争って奪い合った
物です。彼らは一瞬にして同じ結論に達しました。
”錬金術以外の攻撃で斃せないなら錬金術製の化け物の体を使えばいい”
戦士でもない人間に何ができる。当初こそ下卑た笑いを浮かべていた残党たちが悲鳴を上げ、逃げ始めるのにさほどの
時間は要しませんでした。それほど手口は鮮やかでした。殺したホムンクルスの体が消滅する事に気付いた者は敢えて
『武器』の持ち主を放置しました。生殺しです。口の中と両手足のド真ん中に自分の長い針を突き刺され、地面に張りつけ
られたハリセンボン型は結局仲間によって殺されましたね。お前のせいで相手が強くなっている、と。『ああ、自分が助かる
ために仲間を殺すとか、なんて卑しいんだ』……卑しい笑いを浮かべ踊ったのは銀髪の蜘蛛です。鎌に死骸の粉をまぶし
狂笑を浮かべる女の横でホムンクルスが次々と解体され、それは別の女の用意した鍋の中で煮込まれ異臭を上げました。
拳闘と古武術の使い手がホムンクルスの下顎……私が斬り飛ばした人間型の物です。それをメリケンサック代わりにし
てホムンクルスの頭蓋を割り、章印を貫く姿に人質の男子生徒は震えあがりました。信奉者も何人かいました。さっき戦
士長も死体写真で確認したと思いますが、いずれも報酬目当ての手引きの名手たちです。複数の共同体を渡り歩いて
は勤務先……学校や寮の構造などの情報を横流しし莫大な報酬を手にし続けてきた、それでいてホムンクルスへの格上
げは一切望まない奇妙な連中です。しかし彼らも殺し屋の手にかかり無残な死を遂げました。木の上から大きな石を投げ
落とされ頭を潰された奴もいれば何らかの手段で首を絞められた者もいました。やったのは2人だそうですが、気弱なサラ
リーマン風の男以外には誰も見当たりませんでした。顔を見られたくない、そんな殺し屋だそうです。戦闘も中盤に差し掛
かるとホムンクルスの体で作った即興のアーチェリーが私の周囲を飛び交い、それはしばしばバルキリースカートを傷つけ
ました。跳ね上がった矢は三重人格の殺し屋の手に渡り、それは決まって性別が明らかに男であるホムンクルスの……
その、臀部に突き立てられました。私でもやらない拷問です。私ならせいぜい爪の間にバルキリースカートを刺し、1時間
かけてゆっくり剥がすだけですから。3枚剥がす頃には必要な情報はほぼ総て手に入っています。それから鉄パイプで残
る信奉者を殴り続けている教師風の女もいました。あ、はい。数少ない生き残りの安藤と古畑です。様子はどうですか。
そうですか。脳に深刻な障害が。手足の麻痺は取れない……。そうですか。感情の方もおかしくなり、時おり希望の船がど
うとかカイジさんがどうとか叫んでいる……と。そうですか。人間を殺してホムンクルスになろうとした報いですね」
124 :
永遠の扉:2010/07/24(土) 05:26:01 ID:jLeyiEpW0
責められる方が可哀相だ。防人はつくづくそう思った。
斗貴子にとって残党などというものはつまり、上記のような10人分の観察をしながらでも殲滅できるほど大したものでも
ないらしい。実際、彼女は傷一つない。11対30(プラス信奉者数人)。そんな乱戦をくぐり抜けてなお無傷なのである。
「殺し方は様々でしたが、みな楽しそうに笑っていました」
「なあ、そのサイトはどこなんだ。一刻も早く警察に連絡した方がいいような……」
「無駄です。彼らは警視庁警備局公安課の課長とつながりがあります」
「…………」
「とにかく、です。ホムンクルスは全滅し、人質も無事解放されました。信奉者が何人か死んだのはカズキの言葉を考えると
簡単に切り捨てていいものではなかったとも思いますが、しかし彼らに償わせたところで殺された学生たちが戻ってくる訳
でもなし、自業自得です」
「それは……キミの本音なのか?」
「…………」
斗貴子は俯いた。ややトーンダウンした声が漏れた。
「彼らが殺すのはほとんど悪人だそうです。何故ならそうじゃないと漫画的に盛り上がらないからです」
「うーむ。確かに善人を殺すだけの漫画にブラボーな読後感はないだろうし、そもそも売れないだろうが……」
「そしてホムンクルスに進んで関わるのは悪人か狂人のどちらかだけ……。むしろそういう人間たちこそ信奉者やホムンクル
スになる前にいなくなる方がこの世界の為です」
防人は軽く呻き、両腕をねじり合わせた。正論ではあるが人間的ではない。
「もちろん、今回の一件で殺し屋たちがホムンクルスに憧れ、格上げを望むようになれば斃します」
継ぎ足すように漏れた声音は凛としつつも防人の表情を曲解したふうである。
(やはり戦士・カズキの不在のせいで心が渇いているようだ)
いやに斗貴子らしからぬ淡々とした報告の様子もおかしい。防人相手の敬語。報告用の事務的態度。2つ差し引いたと
してもまるで何かを無理に抑えているような調子に見える。
「どうしたものか」
報告はこれでよろしい。斗貴子を退室させた防人は顎に手を当てフムと考え込む仕草をした。
(今日のメイドカフェの騒ぎで鈴木震洋の保護観察処分は戦団での拘束に切り替わった。先日下水道処理場で秋水に斃さ
れなかったLXE残党もほぼ総てが殺し屋たちと戦士・斗貴子によって始末されたとみていい。となると彼女の心のケアをす
る余裕ぐらいは出てきたかも知れない)
どうしたものか。
(信奉者といえど同じ人間ではある。それが殺し屋に蹂躙されている姿を見て何の感情をも示さない……というのはなあ)
そこまで考えた防人の顔が何かに気付いた。やがて精悍な顔つきはこれまで全ての修練を台無しにするようなだらしの
ない笑みを頬一面にニンマリと広げた。ツナギのポケットに伸ばした手はやがて携帯電話を引き抜いた。
「あぁ、もしもし。俺だが。一つ、頼みがある」
125 :
永遠の扉:2010/07/24(土) 05:29:46 ID:jLeyiEpW0
「というコトで斗貴子さんは今日から演劇部員になったのでしたー!」
翌日。突如自室に来たまひろと彼女が撒く紙吹雪を交互に見比べながら斗貴子はとりあえず声を上げた。
「ちょっと待て!? 演劇部ぅ!? なんで私が入らなきゃいけないんだ! そりゃ確かにこの前、演劇部のドレス破いて核鉄
取りだしはしたが幾らなんでも唐突だ!」
「えー、いいじゃない。部活はいいよ。楽しいよ? おぉおぉ……熱く燃えたぎる情熱の炎! みんなで目指す栄光の頂点!
青春だよっ! 部活と言うのはつまり青春なんだよ斗貴子さん!」
豊かな胸の前で拳を固めて力説するまひろはいちいち妙な抑揚をつけたり可愛らしく叫んだりしている。つくづく天真爛漫
な少女だと斗貴子は思った。
「いい! 私はそういうのは苦手だ! だいたいこの学校にいるのはホムンクルスを斃すためだ! 部活なんかやって時間
が潰されるのは好ましくない! 結構だ!」
「んっふっふっふ」
叫びもつかの間、突如目を細めて笑いだしたまひろに斗貴子は唖然とした。
「何をいってももう逃げられないよ斗貴子さん! ネタはとっくに上がってるんだから!」
じゃーん! 片手持ちで突き出された一枚の藁ばんし。その内実を理解するのに1秒と掛からなかった。
「入部届ぇ!? ちょっと待て! 書いた覚えなんかないぞ!」
「でも実印付きだよ! ほらっ! ほら! 筆跡もぴったり!」
「うへへへ!?」
世にも情けない叫びとともに眺める入部届けには……確かに「書いた覚えのない」自分のサインがあった。サインというより
「何か報告書の氏名欄に書いた奴をスキャナか何かでパソコンに取り込んで印刷した」という感じだ。
(ふふふ。そういえば昨日戦士長に報告書を出した覚えがある。成程。犯人はだいぶ絞られてきた)
実印にも見憶えがある。斗貴子の記憶が確かなら、同じ物を防人が戦団の諸行動に必要だとかで預かっていた筈だ。
「ふ、ふふふ。誰が押してくれたかは知らないがよくもまあこんな仕打ちを……!!」
前髪の奥で片目が怪しい光を放つのを禁じ得なかった。
「ちなみに桜花先輩の許可も貰っているよ! 帰宅部所属もサボりも不可! っていってたよ!」
(あの生徒会長いつかブチ撒けてやる)
怒りに戦慄く拳を必死に抑える。
「でもだなまひろちゃん。私は本当、団体行動とかは苦手なんだ。だから──…」
「ほう。ヒマ潰しがてらからかいに来てやってみれば。貴様もあの演劇部に入るとはな」
嫌な声がした。例えるならヘドロとマグマをごった煮にしている声。決して晴れない何事かを抱えている者だけが発する嫌な
声だ。振り返る。窓の外に異様な物が浮遊していた。物と言うかそれは蝶々で、胸が大きく肌蹴たエレガントなスーツの背中
からドス黒い翅を2つ生やして浮いていた。顔にはおなじみ蝶々覆面。とくれば誰か言うまでもない。
「パピ──…」
「監督!」
斗貴子がずっこけたのは咄嗟にまひろを守ろうとしたからである。守ろうとしたのはパピヨンがホムンクルスだからで一方
まひろはそのエサたる人間だ。だから守ろうとしたのだが、しかしはてさて「監督」? どうやらまひろの広い交友範囲には
パピヨンも含まれているらしかった。
ドブ川が腐ったような目。かつてそう形容した瞳が蝶々覆面の奥でぎょろりとまひろを捉えた。
「フン。武藤の妹も一緒か。まあいい。貴様はあのボンクラ揃いの演劇部の中でまだ比較的筋がいい。多少のサボリは特別
に大目に見てやろう」
「ありがとう監督!」
「だが忘れるな! 日々の腹筋と発声練習! その2つの基本を怠る者に決して栄光のスポットライトは当たらない!」
「はい監督!」
「そして演ずる時は優雅に! そして華麗に! 誰もが目を見はらずにいられない蝶のように! 舞台と言う名の空を羽撃け!」
「はいっ! 監督!」
「じゃなくて、なんでキミたちが知り合いになってるんだ!」
「あー。それはだね。昨日突然監督が演劇部に来て、なんやかんやで監督になったんだよ」
(いまいちよく分からない)
「フン。最近研究室に引きこもりが1人、頼みもしないのに飛び込んできてね。俺の体調について口うるさくがなって来る。
もちろんあの研究室は俺の所有物だ。よって出ていくよう脅した。だが奴ときたらちっとも言う事を聴かん。ついに腹が立っ
た俺はあんな引きこもりの相手などやめ俺らしく空へ羽撃いた!」
「……相手が誰かは分からないが、要するに説教に不貞腐れてうろついてただけじゃないか」
「そして俺は格好のストレス解消の場所を見つけたという訳だ。あの演劇部……揃いも揃ってボンクラ揃いだがそれだけに
このパ・ピ・ヨ・ンの色に染めがいがある!」
「!! 貴様! まさか!?」
「そう、そのまさかだ! 俺はあの演劇部を支配する! ゆくゆくは全員に俺と同じ格好をさせてやろう! あの口うるさい
引きこもりが大事にしている演劇部を滅茶苦茶にしてやる!」
「え! 同じ格好! それはちょっと恥ずかしいかも……」
大きく胸が開いたパピヨンスーツを見るまひろに斗貴子は鋭く叫んだ。
「というか人間として最も恥ずべき行為だ!」
「ででででも頑張るよ。監督がやるべきだーっていうなら恥ずかしいのもガマンして一生懸命頑張るよ!」
「そう言う問題じゃない! そもそもだな……」
「フン。入部を辞退せんとする腰砕けの貴様には関係のない話だろう」
「何!?」
パピヨンときたらいつの間にか部屋に入り込み、机の上で足さえ組んでいる。嫌な男だ、斗貴子はそう思った。人が慌て
ふためく様子を楽しんでいる。だから余裕があるのだろう。
「部外者の貴様はせいぜい指を咥え外から演劇部が麗しきパピヨン祭りを催すのを観ているがいい!」
牙も露に嘲笑するパピヨンに向きなおった斗貴子は、やがて──…
「入部するって怒鳴っちゃった訳ですか」
「ああ。まひろちゃんはカズキの妹だ。パピヨンの格好なんかさせてたまるか」
ロッテリやのテーブルの向こう側で乾いた笑いが巻き起こる。剛太。後輩は「どうかなー」って思っているらしい。
「とにかくパピヨンの目論見は絶対に阻止だ! 逆らっていればその内飽きてどっか行くだろう」
「ま、戦いにならないのは平和な証ですね」
「まあな」
ガラス越しに外を見る。笑み。焦り。怒り。楽しさ。行き交う人達は思い思いの表情を浮かべ歩いている。
ビラを配っている女性看護師もいる。献血の誘いかと思ったが、どうやら新しくできた病院の宣伝らしい。運良くガラスの
傍を通る人がそのチラシを持っていたので内容が分かった。
「昨日の2つの騒動で残党は全滅したとみていい」
「キャプテンブラボーもそういってましたよ。後は何か変わったコトがあり次第、対応していけばいいって」
「……フン。私が演劇部に入るコトになったのが一番変わってるがな。どうもタイミングが良すぎる。パピヨンの監督就任を
見計らったように私が勧誘……どう考えてもおかしいだろ」
「まあ、キャプテンブラボーには何か考えがあるんでしょ。他はどうです。学校の付近に不審者が出たりとかは」
「そういったコトは特にない。強いて変わったコトを上げるなら──…」
「なら?」
「銀成学園の理事長が、最近交代した」
剛太は目を丸くした。
「それのどこが変わったコトなんですか先輩?」
「ねー秋水先輩」
「なんだ」
工作室で板を切りながら秋水は無愛想に答えた。入院中という事もあり激しい運動を禁じられている彼だが、根は剣客
である。動かぬと却って調子が悪い。だからヌっと病院を抜け出してはまひろ属する演劇部の大道具を作る手伝いをする
のが目下のところの日課である。
「新しい理事長さんって可愛いよねー。ちっちゃくて、でも何だかおばあちゃんみたいで」
「前の理事長の孫らしい」
「孫が理事長やってるんですか?」
ああ、と斗貴子は頷いた。
「後継者としていろいろ勉強させたいというコトらしいが、まだ子供の理事長なんて生徒にとっては迷惑だ。これだから権力者
の考えるコトは分からない」
斗貴子は(でたくもなかった)全校集会を思い出していた。
.
壇上に上がった少女はおどおどと生徒たちを見渡し、机の前でマイク片手にこう呟いた。
「おうおう。ヌシらとかく活きが良さそうで結構結構。わしがしばらく理事長を務めるコトと相成った木錫(きしゃく)というもの
じゃ。名字はじさまのと同じじゃよ。しばらく宜しく頼むぞえ」
いかにも特別にしつらえたという感じの女子制服を小さな体の周りでぶかつかせる彼女の姿に、斗貴子はなぜかちょっと
した嫌悪を覚えた。特別職にある者の勝手な人事に対する憤りだろうか? 分からない。
とはいえ目下のところこの髪を後ろで括ってフェレットのついたかんざしを差している新理事長の受けはいい。
男子生徒も女子生徒もこぞって世話を焼く始末だ。
「とにかく」
「パピヨンの事さえ除けばこの街はもう大丈夫だ」
斗貴子の呟きに剛太も頷いた。
とある市民は見た。
「ほーら。もう大丈夫でしてよ。歯の痛いの直ったでしょ?」
銅色の横髪をくるくると巻いた女医さんに頭をなでられた娘が嬉しそうに微笑んでいる。
不思議な病院だ。患者達がみな一様に首を傾げていたのが今ならよく分かる。
放置に放置を重ねたせいで悪化した虫歯。素人目でも抜くしかないほどボロボロだった歯。
それが、再生している。
「でも痛いのには懲りたでしょん? 病気は予防が大事ですの。だから歯磨きなさい。分かりました? そう。お分かり」
じゃあコレ上げる。娘にハシビロコウのぬいぐるみを与え、輝くような笑みを浮かべた女医さんには目が眩む思いだった。
「んふ。ウチは老若男女問わずでしてよ。泌尿器科でも肛門科でもアリアリ……何か困った事がおありでしたら夜でもどうぞ」
キツネ目の中で好色な炎が灯るのを見た時、とある市民は決意した。
また、来よう。
銀成市のビル街の中に新しくできたこの病院に……と。
「さーて。患者さんたちは全員帰りましたわね。出てきて結構ですわよ」
誰もいなくなった待合室にぽつぽつと黒い影が現れた。
雰囲気づくり。艶然と微笑む女医が消灯したのを合図に、影たちは思い思いに喋り出した。
「ぬぬ。そうですそうです、そのようです! しかし簡単に欠如が治るとかこの上なく妬ましいです!」
1人は長い髪を持つ女性のようだった。影の状態でも冴えない感じがにじみ出ているようだった。
「……行き違いだね。時間促進事件の最中撮られた写真を手掛かりにきたけど……光ちゃんは戦団に護送されてるみたい」
2人目に喋った影の声はひどく小さかった、暗闇の中で白く輝く髪は短く、ウェーブがかかっている。
「鐶光。妹の心配をするとか青っちは相変わらず優しいっ! イヨ! 惚れがいがあるってもんでさあ!」
いやに太鼓持ちの気配がある3人目の横で、いかにも人間離れした──先ほど女医が患者に与えたぬいぐるみそっくり
のフォルムだった──4人目が「憂鬱だあ憂鬱だあ」と身震いした。
「オイラはさっさと戦いを終えたいのにどうしてまだ本格的に戦わないんだあ。栴檀貴信どものような奴らはもうこりゴリだあ」
影たちを見回した女医は満足げにうなずいた。
「なかなか豪華な顔ぶれねん。盟主様の守護に当たっている『月』と『水星』『土星』、それから好き勝手動いてるご老人の『木
星』が居ればワタクシたち幹部が勢揃い……さーて『ディプレス』。いまの質問の答えだけどん、何事も前戯って奴が必要よん」
「し、下準備っていうべきなのよそこは! 卑猥なのは嫌だよ私」
「ふふん。サブマシンガンで文字書くの自重してくれてありがと『リバース』。おかげで新しい病院に弾痕できずに済むわん」
「要するに来るべき決戦の時のための下準備とか下調べが必要って訳で? いやー流石は『グレイズィング』女史。なかなか
マネできる考えじゃあありやせんね。へへ」
「あらん恐縮。でもワタクシは盟主様のご意思を伝えてるだけよ『ブレイク』。褒めるなら盟主様におし」
「ととととにかくっ! 私はこの上なく銀成市が周囲何kmか調べなくてはいかませんよね! よねっ?」
「そ。デカさだけが取り柄のあなたの武装錬金ならアレが可能よ。『クライマックス』
女医は……いや、グレイズィングは白い歯を見せてニンガリと頬をひきつらせた。
「さーて。いずれこの街を滅茶苦茶にしてやるための下準備。頑張りましょうかあ」
4つの影が掻き消え、待合室に狂笑と荒い息遣いが響いた。
以上ここまで
ふら〜りさん
その昔マガジンZで濃爆おたく大統領って奴がありまして。以来あの作者さんは好きなんですがその漫画のキャラが加藤と
絡むっつーのは「まさか!」って感じですがグッときたぜですよ。のみならずバキファンにはやや抵抗のある「空手は道具」
発言を上手く昇華しているのが流石の職人芸。で、それ使って留二亜の現状総て否定するんじゃあなく「だいたい正しい
けどここがちょっとだけ足りないよ」みたいなコーチするのがいい。差ですね。一人で妄想(リアルシャドー)してた留二亜と
みんなで空手やって切磋琢磨してきた加藤との。導かれた事があるから導けるっていう。個人的にはこの2人のコンビが
色々事件解決していくのもみたい。お兄ちゃんじゃない年上の男性に徐々に惹かれてくっつーのはロマンじゃないですか。
さいさん(復帰、おめでとうございます)
ああ! この土方! すっごい燃えよ剣の匂いがする! 「誰か」って警戒の仕方は下巻にありましたし「京都守護職〜」は
池田屋直前の近藤と一緒だし、あと陸軍奉行並って言いたがらないのは正に終盤、死の直前の心理だし! それでいて
キッド2人の言い争いは平野作品ですよねー。21人殺しとか略奪許可証のセリフは例の黒い文字(フキダシに入ってない
マジックで書いたようなアレ)で浮かびます。で、頭蓋骨に穴ぁ開けて塩酸流し込んでロボトミー! っつーなかなか素敵な
所業やらかしたダーマーくん。気弱っぽいけど多分一番外道でしょうね。メンゲレはメンゲレで多分めっちゃ渋い。ヘルシング
の円卓のじいさんみたいな。で、武力以外の部分でめっちゃ強い。そして渋い。脇役萌えの自分としてはメンゲレに期待。
130 :
作者の都合により名無しです:2010/07/24(土) 12:33:42 ID:yz7RkL/70
おお、スターダストさんお久しぶりです。
防人は鍛え抜かれた日本兵のような筋金入りで好きです。
これだけ長期連載だと、ちょっと作風変わってきたかな?
初期はボッスンとか職コロとか出てくるとは思わんかったw
131 :
作者の都合により名無しです:2010/07/24(土) 23:45:28 ID:KjR/5HW00
俺が投げ出し一番困るダストさんきたw
しばらく間が空いたのでちょっと内容忘れたけど
相変わらずパピヨンたちの会話が洒脱で良い感じだ
まひろと秋水はごく自然な距離になってるかな
新展開っぽいかな?もう一度ざっと読み直すか
スターダストさんの文体が好きだ。さらさらとして読みやすい。たまに表現がくどい時があるけど。
途中で入るうんちくみたいなのも好きだな。なんにせよバキスレまた盛り返してきそうでよかった。
133 :
作者の都合により名無しです:2010/07/27(火) 13:37:59 ID:VoV+2Hpd0
せっかくさいさんスターダストさんと復活してくれたのに
あとが続かないなあ
134 :
ふら〜り:2010/07/27(火) 18:45:17 ID:Ip9S4Qzq0
>>サマサさん
むう。BLならばむしろ好物の一つですが、流石に男の座薬では萌えはしませんな。代わりに
笑えましたけど。勇儀の忠告を素直に聞き入れて大人しくする辺り、勇儀個人のみならず、
「彼女ら」を認めたんでしょうね。まあもともと、パッと見ほどワガママな人でもないですが。
>>スターダストさん(大統領も先生もファン列伝も好き。「そこにワンダーはあるのかい」は至言!)
凄惨に楽しそうな殺し屋たち。あっさりとホム対策をやってのけてしまう辺り、ただ凄惨な
だけではなく武力も知力も超一流ってことですな。……そして! そしてそして来ましたね、
過去編の面々! 斗貴子やブラボーや剛太たちとの出会い、そして戦いが楽しみですっっ!
>>スターダストさんに連絡。
話数のナンバリング、どうしましょう……どこかズレてしまっているとか、何か忘れてるとか
あれば直しますんでご連絡orご自由に訂正を。
てす
猛暑と疲労と落胆に、流石の土方もそこへ腰を下ろさざるを得なかった。
与一はそれに倣い、呂布もまた異人娘を傍らへ下ろして胡坐を掻く。
彼らをここまで導いた口喧嘩の主であるビリーとウィリアムも、喧嘩に飽きたか疲れたか、それぞれ座り込み、
へたばっていた。
一方、木にもたれて座っていたメンゲレは新たに加わった四人を興味深げに眺めていた。
いや、眺めるというよりも“観察”に近い。四人を一人一人、代わる代わる。
やがて、立ち上がったメンゲレは一行の下に近づいてきた。
異人娘の近くにしゃがみ込み、長と見た土方に話し掛ける。もちろん、母国語であるドイツ語で。
「良かったら私が診よう(Werde ich sie untersuchen)」
土方は慌てた。ドイツ語は当たり前の事、英語すらもわからないのだ。箱館陸軍の頃はフランス軍人もいたが、
会話は日本語か通訳を介してのものだった。
思わず与一の方に顔を向ける。
「何と言っている」
「さあ。おそらく彼女の様子を見て下さるのでは?」
「そうか」
かたじけない、とメンゲレへ頭を下げる土方。
老医師は返事を聞くまでも無いとばかりに、“診察”を始めている。
異人娘の手足や頭部に手を遣りながら、詳細に状態を観察する。
一通りの診察が終わり、一段落したところで眼は“患者”に落としたまま、ボソリと呟いた。
「大きな外傷や骨折は無いようだ。それと…… 硬膜外血腫や頭蓋底出血の心配も無いな」
すると、異人娘に僅かな動きが現れた。
「ううん……」
うなされたようなか細い声を上げながら、うっすらと瞼を開ける。
しばらくの間、薄目でゆっくりと頭を揺らしていた異人娘だったが、突然にハッと眼を見開いた。
「いや! 熱い! 炎が、炎がァ!!(Non! J'ai chaud! Flamme,La flamme m'entoure!!)」
弾かれたように身体を起こし、金切り声のフランス語で喚き立てた。手足をバタつかせ、転がるとも這いずるとも
つかない動きで、その場を離れようとしている。
メンゲレはすぐに彼女を押さえつけ、フランス語で静かに諭す。
「落ち着きなさい。急に動いては身体に障る(Calmez-vous.Ne bougez pas soudainement)」
フランスはナチス・ドイツの占領国だった為か、やけに流暢だ。
異人娘はメンゲレの声をかき消さんばかりの大声で怒鳴る。
「うるさい! もうやめて! アンタのせいよ! アンタの言う事なんて聞くんじゃなかった!
おかげで私は火あぶりよ!」
ただ、奇妙な事に彼女はメンゲレから顔を背け、身を仰け反らせていた。
つまり誰もいない虚空に向かって話しているのである。
「落ち着きたまえ。自分の名前を言えるか? どうだ?」
尚も沈静させようとするメンゲレから離れ、異人娘は地面にうずくまり、ブツブツと名前らしき言葉を呟く。
「ジャ、ジャンヌ…… ジャンヌ……」
それが引き金になったのか、彼女は額で地面をコツコツとリズミカルに打ちながら、それに合わせて呟きを続けた。
「ジャンヌ、ジャンヌ…… ジャンヌ、ジャンヌ、ジャンヌ、ジャンヌ、ジャンヌ、ジャンヌ……」
メンゲレはしばらくジャンヌの奇行を観察し続けていたが、程無く立ち上がった。溜息交じりな諦めの表情で。
「主症状は解体思考、自我意識障害、認知障害、それに妄想と幻聴。専門医を連れてこなければな」
土方に向かって軽く首を振ると、メンゲレは元にいた場所へ戻って行った。
先程まで寄り掛かっていた大木まで来たメンゲレは、また座り込むでもなく、両手を腰に当てて緑の枝葉を
見上げていた。
日光と揺れる葉がなかなかの風景だが、残念な事に、そこに登っている白人男の自動小銃“M1カービン”が
美観を損ねている。
メンゲレはしばらく眩しげな眼つきで男を眺めると、開きたくもないと言いたげに、口を歪めて彼に話し掛けた。
「やあ、そこのターザン君。そろそろ名乗ってくれると有難いのだが」
「……チャールズ・ホイットマンだ。クソッ、頭が痛え」
男は片手で頭を押さえて、顔をしかめた。
そして、それとは正反対の歓喜の表情でダーマーが声を上げた。その眼はメンゲレの名を聞いた時と同様に
大きく剥かれている。
「し、知ってるぞ! 1966年のテキサス大学時計塔銃乱射事件! 16人を殺した……!」
「そう、そうだ。そりゃ俺の仕事だ。ヘヘッ……」
自慢げなホイットマンとはしゃぐダーマーに背を向け、苦りきるメンゲレ。
どいつもこいつも、といった気分なのだろう。
そんな気分の延長線上で、最後に残った鎧兜と赤マントの騎士を見ると、更にゲンナリとした胸糞悪さに襲われる。
やっかいな役回りだ、と半ば義務感で、老医師は騎士に話し掛けた。
「君は誰だ? 君の名は?(Who are you? What's your name?)」
自分を除いた九人中四人は英語圏の人間だった。まずは英語だ。
しかし、騎士は微動だにせず、腕を組んだ姿勢を崩さぬまま、遥か遠くを望んでいる。
予想はしていた。
メンゲレは言語を変える。
「君は誰なんだ(Wer sie sind) 何者か教えてくれないか?(Qui est-ce que vous êtes?)
なあ、教えてくれ(Ei,Que é o senhor)」
母国語のドイツ語、先程も使ったフランス語、終戦後の逃亡先であるブラジルのポルトガル語と、
様々な言語でアプローチする。
だが、反応は無し。
言葉が通じないか、話す気が無いか。もしかしたら両方かもしれない。
メンゲレはフウと溜息をひとつ吐き、肩をすくめて口を芝居がかったへの字に曲げた。
諦めもつき、気も楽になったのだろう。
その時――
「我が名はゲオルギウス。お主ら、少し静かにせぬか。ここはドラゴンの巣ぞ(meus nomen est georgius.
neut,exsisto quietis.hic locus draco nidus)」
――騎士が口を開いた。
耳に届いたのはメンゲレの予想を超えた言語だった。
それだけではなく、その言語は今の自分達が置かれた状況に不思議と符号するのではないか、という錯覚めいたもの
さえも感じさせた。
返事も出来ずに立ち尽くすメンゲレに、ウィリアム・キッドが声を掛ける。
「おい、奴は何て言ったんだ」
「名前は“ゲオルギウス”というらしい。あとは、ドラゴンがどうとかこうとか。古代ラテン語にはあまり造詣が
深くないものでね」
「ゲ、ゲオルギウス? 野郎がセント・ジョージだって!? あのドラゴン退治伝説の?」
「ああ、あのキリスト教の大聖人だそうだ。もう、うんざりだよ」
鬱陶しそうに頭を振るメンゲレは強制的に話を打ち切り、またダーマーの隣に座った。
取り残されたウィリアムは、それでも尚、その場に立ち、他の九人を見渡しながら考え込んでいた。
彼は決して思慮深い性格ではないが、このメンバーの中では56歳と比較的年かさであった。
その為か、この状況を少しでも整理したい、良い方向へ向かわせたいという無意識に近い思考を働かせていた。
「なあ、ちょっといいか?」
ウィリアムは意思の疎通が図れそうな一部のメンバーを見渡した。
「俺はロンドンで縛り首になった。大勢の前で公開処刑だぜ? 俺が死んだ瞬間はそこにいた全員が見ただろうし、
自分でも死の覚悟をしたまま意識を失った。なのに……――」
密林の木々を見上げ、目を細める。
未だに信じられない。自分の存在そのものが。
「――死んだ筈が何故か生きて、この森へ落とされた。こりゃ俺だけか? おい、糞餓鬼。お前はどうだ」
信じたいのだ。自分だけではない、という事実を。
ビリー・ザ・キッドは悪態に近い調子で答える。
「ああ。メシと女を調達しようとヤサの外に出たら、保安官(ギャレット)のクソ野郎に撃たれたんだ。チクショウ!
んで、気づいたらジャングルにいて、“キッド”を名乗るクソオヤジに出くわした」
ウィリアムとビリーが睨み合う中、ダーマーがおずおずと告白した。
「刑務所の中で同じ受刑者の黒人に、ベンチプレスのバーで頭を殴られた。ジーザスでも復活出来ないくらい、
こっぴどくね」
ホイットマンはライフルをきつく抱えたままだ。
「警官隊に射殺された、筈なんだ。憶えてるだけでも十発以上は喰らったと思う。生きてるなんて信じられない……」
メンゲレは皆から顔を背けている。
「ブラジルの海岸で泳いでいる最中に、心不全を起こし、誰にも助けられずに溺れたよ――」
彼もまた信じられない。受け容れたくもない。
「――これでも医者だからな。自分に起きた症状はよくわかっていた。あの強さの発作は、まず助からない。
ましてや海に沈んだのに、何故……」
徐々に情報が集まる。それと同時に、ウィリアムだけではなく、その場にいる者達もひとつの“仮定”に
近づきつつあった。
それを悟り始めたのか、悪童ビリーまでもが立ち上がり、積極的に輪に加わる。
「よう、クソオヤジ。あそこにいるチャイニーズ達はどうなんだ?」
土方達の事を言っているらしい。
中国人移民の多い西部開拓時代に生きたビリーには、日本人も中国人も見分けの付かない“東洋人”なのだろう。
話の本筋にしか興味が無いウィリアムには関係無いようだが。
「さあな、糞餓鬼。けど、俺達と同じようにここへ来た、と見るのが自然じゃねえか」
土方らに加えて、火刑に処されたジャンヌ・ダルク、異教徒に斬首されたゲオルギウス。
これである程度の仮定は導き出されたのかもしれない。
“この10人の男女は一度死んで甦り、どことも知れないジャングルに送られた”
突拍子も無い、あまりにも現実味の無い、なのに他に考えようの無い、無い無い尽くしの仮定である。
とても納得のいくものではない。
「フッ、ククククッ……」
不意にメンゲレが低く笑い出した。視線はビリーへと向けられている。
「おい、コラ。何がおかしいんだよ、じいさん」
いとも簡単に気分を害したビリーがメンゲレに絡む。
メンゲレは笑いを収めようとしない。別にビリーそのものが可笑しい訳ではないのだ。
「彼らは中国人じゃない。日本人だ。サムライだよ」
日本はナチス・ドイツ第三帝国の同盟国だった。米英の連中よりは余程理解が深い、と自分では思っている(呂布は
本物の中国人なのだが)。
しかし、メンゲレの笑いの真意はそこでもない。むしろ、その先だ。
彼は人差し指を伸ばし、他の九人を順番に指差す。
「そう、ニッポンからやって来た三人のサムライ――」
「ドラゴンを退治した大聖人、百年戦争を戦った聖女、ならず者の王(バンディット・キング)、七つの海を暴れた海賊――」
「凶悪な犯罪者が二人に――」
最後に立てた親指を自分に向けた。笑いにやや自嘲の色が混じる。
「数百のユダヤ人に生体解剖や人体実験を繰り返した元ナチス」
誰もが頭の片隅に浮かべ、そして必死に打ち消していた事実が突きつけられようとしている。
“一度死んで甦り”というひとつめの仮定よりも遥かに現実離れした、何よりもくだらない、くだらなさ過ぎる
それである。
「フフッ、時空を超えてあらゆる時代のあらゆる国から集められた厳選のメンバーだ。さあ、我々は何をしたらいい?
世界一豪華な殺し合いか? それともダンスパーティかな?」
「馬鹿馬鹿しい! SF小説の読み過ぎだぜ!」
耐え切れなくなったように、樹上のホイットマンが叫んだ。
メンゲレは既に笑いを収めている。
「ああ、同感だね」
憤懣に歪めた表情であっさりと吐き捨てた。その通り。まったくもって馬鹿馬鹿しい。
だが、ホイットマンは収まらない。ライフルを抱える両手にも力が入る。
「俺はわかったぞ!」
銃口を眼下の九人に向けて、彼の至った彼なりの結論を振りかざした。
「これは新しい死刑だ! さもなきゃテレビ・ショウか何かさ! 死刑判決になった囚人同士を戦わせるつもりなんだ!
最後の一人になるまで!」
ホイットマンの射撃体勢を受けて、ビリーは素早く腰のホルスターから回転式拳銃“コルトM1877
ライトニング”を抜いた。
気が立っていただけに反応も激しく、俊敏だ。
「テメ、誰に銃向けてんだ! とっとと降りて来いや! ブッ殺してやるからよ!」
アウトローの本性が剥きだしとなっている。
その横では、ウィリアムもまたベルトに挟んだフリントロックピストルを抜き、木の上の大量殺人犯へ向けている。
この場は“糞餓鬼”と手を組むのが最も適切と判断したのか。
ホイットマンは己に向けられた威嚇と二つの銃口を見るに至り、更に興奮の度合いを強めるしかなかった。
もう後戻り出来ない程に。
「うるせえ! 俺は死んでも降りねえぞ! ここにいれば俺は無敵なんだ! 絶対生き残ってやる!」
出番を今か今かと待つ、三丁の銃の引き金と撃鉄。
まさしく、一触即発だ。
大木の根元にいたダーマーとメンゲレは、慌ててその場所から離れていった。
その様子を見ていた土方は軽く腰を上げ、左手を大刀“和泉守兼定”に掛けた。
「不穏だな」
既に鯉口を切っている。
与一も、
「ええ」
と答えるが早いか、瞬時に一の矢をつがえていた。
高まる緊張感の中、“それ”にいち早く気づいたのは、海賊の視力を持つウィリアムだった。
最初は見間違いかと思い、数度眼をしばたかせていたが、そうではない。
「あれは……」
激昂しているホイットマンの胸の辺りにおかしなものが浮かんでいた。
赤い三つの点。それが小さな三角を描くように並んでいる。
図で表すならば、
∴
といったところか。
先程までは何も無かった筈なのに。
しかし、奇妙な現象はそれだけでは終わらない。増えたのだ。
腹と、更には額に。全部で三つ。
ここまで来て、ようやくホイットマンも異変に気づいた。
胸と腹に浮かんだ赤い点と、眼を刺す赤い光。
「な、何だコレ……?」
汚れを落とすように赤い点を手で払った、次の瞬間――
三方向から同時に、三つの青白い光弾が発射され、ホイットマンを襲った。
避ける間も無く、ホイットマンの頭部と胴体が爆発し、粉々に砕け散る。
原形を留めた両手足と、血肉臓物の雨が下にいる二人のキッドに降り注いだ。
「何だ! 何だってんだ!」
「見えたぞ! 砲弾だ! 大砲だ! 青く燃えてやがった!」
ビリーとウィリアムはすぐに背中を合わせ、自分達を囲むジャングルへ銃口を向ける。
土方も今は刀を抜き払い、与一は矢をつがえた弦をいっぱいにまで引き絞っていた。
呂布は猛然と立ち上がり、方天画戟を構えると、ダーマー、メンゲレ、ジャンヌの三人を己の後ろへと回した。
何者かが自分達を攻撃した。
だが、敵の姿は見えない。一体どこにいるのか。いかなるものを以ってして攻撃したのか。
[続]
こんにちは、さいです。暑いです。札幌に帰りたいです。でも寒いのは嫌です。
いやあ、ルイ・オザワはホント男前な俳優ですよね。もう大ファンです。追っかけます。
あと、TONY氏作画がモデルの初音ミクフィギュアが激しく欲しいのですが、ダメ出し喰らってショボーン。
http://blog-imgs-34-origin.fc2.com/n/e/w/news020/1020725.jpg うーむ、以前購入した回天堂の婦警が素晴らしいので贅沢は申しますまい。毎日、オパーイと太ももに二礼二拍一礼しております。
あえてパンツは覗かないのが私のジャスティス。
http://image.shopping.yahoo.co.jp/i/l/amiami_fig-moe-0874 >104さん
登場人物は私なりに厳選したのですよw やはり殺人鬼枠と医者枠とやられ役は外せないかなと。今回のコンセプト上。
通訳はね、いませんw かのタランティーノ監督がよくこだわっている“言語”に関しては、私もこだわらせて頂きたいのです。
>105さん
お久しぶりです。健康上は特に問題ありませんでしたよ。仕事と家庭が最優先だっただけですw
確かにいろんなスレから人がいなくなっている感はあるんですが、2ちゃんはなくなりませんよ。
徐々に徐々に99年から2000年代初頭の2ちゃんに還っていくんでしょう。それが一番とも思います。
>107さん
復帰と家族と、祝福の言葉をありがとうございます。増えなくていいんですけどもね〜。
分野として未知な感じなんで、かっこよく書けるかは微妙ですが、頑張ってみます。
>ふら〜りさん
むむ、『ワーヒー』とは懐かしや、ですな。私の持ちキャラはリョウコですた。ぼさつしょー。
でも、たぶん『ドリフターズ』ももうひとつの題材作品もふら〜りさんは観た事が無いのかも……?
オススメなんですよ、どちらも。マジで。
あと、女の子はもう来ませんですたw 今更こんな事を言うのも何ですが、私は女の子を書くのが超苦手なんですw
>サマサさん
私が贔屓のゆうかりんが活躍とはファッキン素晴らしい展開。出来ればそれを『悪魔のえじき ブルータル・デビル・プロジェクト』レベルや
『ネクロマンティック』レベルで描写してくれたら、もうサイコー。そんな私はてるもこ派ではなく、えーてる派なのでした。
あと、ダーマーは自分なりなキャラ付けをしていくつもりですが、上手くいくかどうか…… ゆうかりんに睾丸を蹴り上げられたいです。
>117さん
そのAAはちょっと……
>スターダストさん
今回の投下ではお世話になりました。どうもありがとうございます。
いやあ、やっぱ土方出すんなら『燃えよ剣』じゃなけりゃあねえw
つーか、スターダストさんの感想で、作品の今後やキャラに肉付けがされていく感が否めないwww
なんかメンゲレも最初の構想とキャラが変わってきちゃったしw ホント、インスピレーションを頂ける貴重な感想です。
そしてそして、おっと、なかなか珍しいまっぴーとパピヨンの絡み。つーよりも、俺的に久しぶりの絡み? 数年ぶりの絡み?
みたいな? ぐふw
では、御然らば。
猫草の『ストレイキャット』、街頭もなく店の窓から漏れる僅かな光では空気弾のサイズ・弾速共に絶望的だという事は分かる。
それを踏まえて着弾地点を予測し確かに到達した、だが奴にダメージはない。
致命傷という意味ではなくダメージそのものが『0(ゼロ)』だった。
「明らかに爆破を回避しているっ! 奴の無傷は手動爆破の誤差によるダメージ軽減なんてものじゃあない!」
「どうじゃ? 降参するなら今の内じゃよォーン?」
隠者はふざけた態度をとり余裕の表情で私を屋根から見下ろしている。
念写以外に隠された能力があるのだろうか、そんな筈は無い。
そんなものがあれば億泰の家を捜索し現在のプロフィールまで掴んでいた私の親父が見逃す訳がない。
だが実際目の前に居る筋骨隆々とした健康的な老人は……偽の情報を掴まされ一杯食わされたのだろうか。
様子を見るのだ……この吉良吉影、今まで一度だって切り抜けられなかったピンチは無い!
「フッフッフッ………」
や、やばかったわい……早人君が飛んでくる爆弾を教えてくれなかったらワシ吹っ飛んでたかも………。
だが今のスピード、『彼』はあの殺人鬼に勝つための素晴らしい武器を授けてくれたのやもしれん。
だが『彼』を生かすも殺すも、言葉通りワシ次第となる………気は抜けん。
まずは安全と情報を確保、それから戦闘開始といくか。
「くらえいっ! 『ハーミット・パープル!』」
屋根の上から四方八方にイバラを伸ばしていく、絡み付けて動きを封じるつもりか?
重清という高校生のスタンド同様あのイバラへの攻撃は奴へのダメージにはならないだろう。
次々と際限なく伸びてきている、だがイバラが本体へと続いているのが奴の弱点だ……イバラを通して奴を直接爆弾に出来る。
他の能力を考える必要は無くなった、奴のスタンドが私に触れることは無い。
一本の蔦が背後から忍び寄り私の足へ絡みつく、様子を見る必要などなかった…これで終わりだ。
『キラー・クイーンッ!』
振り返り『キラー・クイーン』で蔦を爆弾に変えバラバラに吹き飛ばす。
本体のジジイも粉々に吹き飛んだ筈、屋根を見ると老人の姿はなかった。
「フン! 口だけだったか……所詮は老いぼれ、この私の敵ではない」
爆破を回避されたりしてヒヤヒヤしたがなんてことはなかったな。
折角うまい料理を食べて穏やかな気持ちで明日を迎えられたのに下らないことで時間を潰してしまった。
早人を連れて帰るとし……居ない、早人が何処にも。
爆破した蔦を見る、燃えカスが僅かに残っている……『スタンド』ではない、物質だ。
奴はまだ生きている、早人を連れて消えた……一体、何を考えているのだ?
この人は何者なのだろうか、僕には見えない力の持ち主であることは分かる。
だがこの人の力は奴の話していた『能力』によるものなのか?
奴の言うパワーのない『能力』、本当にこれはこの人自身の力なのか?
僕は今、家屋の上を跳び越しそうな勢いで飛び跳ねていくジョセフ・ジョースターの背中に居る。
「あ、あなたは一体?」
「よくぞ聞いてくれました!」
僕の質問に興奮したような声が上がる、だが目の前の老人が発した声ではなかった。
あ、ありのまま今起こったことを話すと……喋っていたのは彼の『靴』だった。
何を言っているのか分からないと思うが僕も何が起こったのかわからなかった。
頭がどうにかなりそうだった……催眠術だとか腹話術だとかそんな常識の通用するものじゃない。
この飛んだり跳ねたりしている『能力』の片鱗なのだろうか?
「実は私、宇宙人なんです!」
ジョースターさんの革靴が柔らかいゴムのように独りでに動いていく。
僕の頭の中は真っ白になってそれを見つめるだけだった、靴から浮き上がった青年の顔を。
「早人君、さっきの飛んでくる爆弾はもう射程外になったかの?」
「あ……はい」
呆気にとられて靴から浮かび上がる顔について質問するのも忘れ、取り合えず返事をしてしまった。
ビルの壁を足のみで駆け上がっていき屋上にたどり着くと、僕を背から降ろして座り込んだ。
靴は本格的に人間の形を作り上げていき鼻にピアスをした学生の姿になった。
「フゥ……自己紹介が出来るくらいには逃げたかな? ワシはジョセフ・ジョースター、そしてミキタカ君じゃ」
「始めまして早人君、私は宇宙人のヌ・ミキタカゾ・ンシ。地球では支倉未起隆と名乗っています」
「……? …は、始めまして………え? ………???? ……んん??」
靴が人になってその人は宇宙人らしい、何を言ってるんだ僕は、いや彼は。
「あ……スマンのミキタカ君、彼と二人で話させてくれ」
アホみたいに口を開けて突っ立っている僕を見かねてか、ジョセフさんが僕の耳に顔を近づけ彼に聞こえないように喋りだした。
「いや、彼の事は気にしないでくれ……判らないんじゃよ、ホントに宇宙人かもしれんって話じゃ」
「……はぁ?」
「多分じゃが『スタンド』……ワシや殺人鬼の持つ『能力』とは違うかもしれないんじゃよ彼のは………。
でも仗助とも友達だったみたいだし味方なのは間違いないから安心しとくれ」
殺人鬼の言ってた通り、やっぱりボケてるんだろうか。
一見してそんな風には見えないが……何にしてもミキタカさんのことは今は気にしないことにした。
殺人鬼とはかなりの距離を置けたようだ、名前は知ってるようだし自己紹介は省いてまずはお礼を言わなくては。
「助けてもらってありがとうございます、ジョースターさん」
「いや、いいんじゃ……それよりあの店の店主は?」
「殺人鬼に『能力』、『スタンド』というのが知られて……僕が、奴に知らせてしまったんです………」
ミキタカさんは一瞬だけ驚いたような顔をすると、悲しみと怒りが混合したように複雑な表情を見せた。
ジョセフさんは帽子を深く被り、僕から視線を逸らした。
少しの間沈黙が続く、トニオさんの死への哀悼か僕への幻滅か……僕が迂闊でなければ彼は死なずにすんだのだから。
後者だとしても僕に言い返す資格は無い、奴を倒せるならどんな罰でも背負う。
「そうか……さっきの飛んでくる爆弾、アレの正体は分かるかね?」
「待ってください、『そうか』で済ませるんですか?」
ミキタカさんが突然、会話に割り込んでジョースターさんに話しかける。
口調からは若干の怒りが、表情からは深い悲しみが見て取れる。
「仗助さんや億泰さんの時みたいに、何にもしてない人が奴に殺されて……アナタはそれを『そうか』で済ませるんですか?」
「……そうじゃ、奴を倒す事が第一なんじゃ。彼等の死が無駄にならないように」
そうして彼は一枚の写真を取り出す、トニオさんの帽子を抱えて咽び泣く僕が写っていた。
やはり殺人鬼の言っていた通り彼は『念写』の『スタンド』を持っている。
ミキタカさんが武器ではなく、わざわざ靴になっていたのだからさっきの跳躍力はミキタカさんの『スタンド(?)』だろう
「ワシの貧弱な『スタンド』は『知る』ことしか、時としてそれすらもできん……かつての戦いでもそうじゃった。
朽ち行く仲間が教えてくれなければ『知る』ことも出来なかった、そして今も奴の『スタンド』を『知る』ことすら出来ん……。
残されたワシ等に出来ることをする、それが彼等への手向けになるんじゃ」
ジョセフさんが顔をあげると、帽子の下に隠していた瞳が浮かび上がる。
顔には出さないが眼には悲しみと怒りが映っていた……だが、そこにミキタカさんのような戸惑いはない。
復讐の意志、それは確かに存在するだろう。
だが彼を突き動かしているのが『黄金の精神』なら、彼の行いは『真の行動』として奴を倒してくれる。
あの邪悪を滅ぼしてくれるという希望が、彼の眼を見ていると沸き上がってくるのだ。
ミキタカさんもその眼に何か感じるところがあったのか、それ以上は何も言わなかった。
「早人君、しつこいと思うかもしれんがさっきの飛んでくる爆弾の正体や他にも知っている事があれば教えて欲しい」
僕を見る眼には神聖な輝きがあった、それに答えない訳がない。賭けよう……彼から感じる黄金の様な精神に。
周囲への警戒を怠らず、それでいて怪しまれない様にゆっくりと街頭の下を歩く。
どうせ自分の位置は奴の念写で知られている、ならば明かりがあった方が戦いやすい。
『トラサルディー』の近くで戦うのは目立つので、『バイツァ・ダスト』の宿り木に困らない様に住宅地に近く静かな所へ移動していた。
「クソッ! 早人は何処で何をしている……私の『バイツァ・ダスト』について知らされているのか?」
だが知られたところで問題はない、私を追い込めば『バイツァ・ダスト』は発動する。
何者も私を窮地に追い込むことは出来ない、私の能力は無敵なのだ。
墳上の時みたいに周囲は人気のない高速ではない、いざという時は他人の家に飛び込んで無理矢理にでも発動させる。
問題なのは奴が社会的に私を追い込む事だ……父の調べではスピードワゴン財団とも繋がりがあると聞く。
土地や仕事を追われて『平穏』な暮らしが出来なくなること………今の『家庭』が崩れてしまう。
……『家庭』? そんな物はどうだっていい筈だ、私は何を考えているのだ。
守るのは私の『平穏』であって『家庭』ではない、焦っているのか私は。
落ち着かなければ……多分だが私を社会的に抹殺した所で奴等の勝利にはならない。
見ず知らずの他人の命が尊いだとか、ネズミのクソにも劣る道徳を押し付けなければ気が済まない奴等。
愚かにもそんな事に命まで賭け、その結果として何の意味もない惨めな死を迎えていくのだ。
そんな奴等が金や権力に任せて私を追い出す事はしない筈だし『スタンド』による犯罪の証明は不可能……証拠も残していない。
私を刑務所だとかに閉じ込めることは万が一にもありえない、そして勝負が『スタンド』で決まるなら私は既に勝っている。
あの謎のスピードの正体、大体の察しはついている。
問題はどうやって攻撃してくるか……猫草の空気弾はこの暗がりでは即死させる威力はない。
そうなると格闘戦しかないのだが、奴の攻撃手段が判らない。
私の『第一、第二の爆弾』は由花子の時もそうだったが既に知られている、対策を講じているだろう。
早人が敵の手に渡った今、更に爆弾の能力を詳しく知られてしまったと考える。
それでも尚、あの貧弱なスタンドで私に触れずに戦う手段はあるのか。
姿を現したということはある筈だが皆目、検討もつかない。
ザクッ、という草を無遠慮に踏みにじる様な音が背後から響く。
振り向くと、そこには体半分を木の陰に隠しながらこちらを伺うジョセフ・ジョースターの姿があった。
「逃げたかと思ったが、違ったかな……」
「フフフ、このジョセフ・ジョースター。逃げも隠れもするが、未だかつて一度も戦いを途中で放棄したことは……ないッ!」
叫ぶと同時に思い切り右腕を振り上げる、まるで腕から伸びている『ハーミット・パープル』を引っ張り上げる様だった。
背後を振り返ると『ハーミット・パープル』によって引っ張られていた木の枝が元に戻ろうとする慣性で私に襲い掛かる。
「不意打ちか! この程度の小細工で私を仕留められると思うなッ!」
お久しぶりです邪神です、壊れたヘッドフォンを買い換えて『QUEEN』の曲がまた聴けるようになってご機嫌です。ヒャッハー!
山崎まさよしも聞けるしサイバーフォーミュラやデジモンのオープニングもいいなぁ〜(うっとり)
ところでサイバーフォーミュラのラジオドラマをニコニコで見かけたので聴いてみましたが新條がそのまんま中の人に……。
しかしアオイ社製の各種ブーストウィングの叫びを保管してくれるサービスも、どうせなら全種欲しかったが時間的に厳しいか。
とりあえずアスカよりチーフの方が上、でもラジオドラマに中の人の出番はなしという……(;0w0)
〜そういえば最近は解説してないコメ返し空間〜
>>ふら〜りさん >>承太郎やジョセフ的な意味で「有能」って印象はないんですが
焦ってハンバーグ頭の高校生を医者と見間違えたり、うっかり本名をイタリアを頭に乗せた高校生の前で言ったり。
ジョジョ界の中でも荒木さんに次いでドジっ子属性を極めてると言っても過言ではないですからね(;0w0)
猫草の利用とかシンデレラのスタンドを見抜くとか着眼点は鋭いんですけど………。
彼の目指す『平穏』という目標は戦いの中で『油断』にしか繋がらないのがマイナスとなったり。
>>サマサさん 緋想と天測しかやってませんが確か座薬使いはウドンゲインとかスーパーロボットみたいな名前の子で
名前とは裏腹にトリッキーキャラでドーピングコンソメドリンクを飲み続けると自爆という
ロマンキャラと見せかけたネタキャラでおまけに弱キャラでしたっけ?
唯一の東方ゲーですが対戦相手だった弟と対戦しなくなり、熱帯はポート開放がぷららと両親のせいで出来ず
詰みゲーと化しその哀しみから始めたパソリロも少し前からネット対戦画面でフリーズする謎の事態に……。
こんなに哀しいのなら…こんなに苦しいのなら…愛などいらぬ!
>>87氏 >>世界最強(多分)のお爺ちゃん!
世界最強のお爺ちゃん……渋川老や同じスタンド使いのケンゾーとかと戦ってみて圧勝するジョセフは浮かばない。
しかしながら一方的に負けるジョセフも浮かばない……この疑問の答えは誰かが地上最強爺トーナメントを開くことで!
残念ながら言いだしっぺの法則は現状の苦しさを考えると出来ないのが苦しいところ。
>>88氏 歪んでるのは性格というか料理に対する考えだと思います(;0w0)
厨房で犬を飼ったり、そのくせ素人が入ると包丁投げるし掃除もさせるし……。
料理にかける情熱と技術は本物なんですけどね( 0w0)
>>89氏 トニオさんなら麻薬の後遺症をスタンドの治療でカット、進化したDCSを完成させられるッッッ!
多分レシピを持ってったら包丁と石鹸でお出迎えされることでしょう( 0w0)
>>90氏 >>コンクリート詰めで遠泳
修行の成果により波紋を体得して『他人を不幸に巻き込んで道連れにする真の邪悪』な『吸血鬼』に立ち向かうんですね。
太陽も克服してるし変身能力を手に入れて究極生物に!
ところで『他人を不幸に巻き込む』って辺り『ヒモ』とかも『真の邪悪』になるんでしょうか。
ホワイトスネイク曰く、『敵意が無い、悪気が無い、誰にも迷惑なんかかけてない、自分は被害者』と思ってると最悪だとか。
あれ、これジローさん溶かされ……。
148 :
ふら〜り:2010/08/02(月) 20:29:05 ID:rL35EgBy0
「スターダストさん&さいさん」は私の中でコンビになってるんで、お二人が
並ばれるのは何だか楽しいです。
「サマサさん&NBさん」もまた並んでもらえると嬉しいのですが……
>>さいさん
うお、本当に通訳無しの意思疎通困難で進んでますね。この一点だけでも今後どうなるのか
予測し難いところですが、てっきり殺し合いかと思いきや一気に団結。全員、それぞれに
善悪はどうあれ一廉の人間ですから、こういう場合には素早く最善の行動をとれる、か。
>>邪神さん
社会的抹殺〜のくだりは「なるほど、そういう手もある!」と感心しかけましたが、確かに
吉良がホームレスになろうが身に覚えのない借金や冤罪を着せられようが、むしろキラー
クイーンの被害者は増えそう。財団の財力権力を使うなら、ゴルゴでも雇うのが最善か?
149 :
作者の都合により名無しです:2010/08/03(火) 11:58:42 ID:jpVIRhiu0
>さいさん
原作は知りませんが、歴史の登場人物と伝説の入り乱れる壮大な話になって参りましたね。
歴史と空想のコラボは大好きなので(ドラマのJINとか大好きだし)この不規則な一味が
どう暴れていくか非常に楽しみ。さいさんの更新ペースも上がってきたし嬉しいです。
>邪神さん
ジョセフの老練で狡猾な感じが原作から好きなので(ジョジョ一族の中で一番好き)
彼がお話の中心に居るのは嬉しいです。年寄りの底力を見せてほしいですw
宇宙人も原作と変わらずデンパ発してますね〜。会話が出来ても意思の疎通ができないw
さいさんの新作面白いな
歴史上の人物がてんこ盛りで贅沢な作品だ。
氏は後書きとかふざけてるけど、かなり教養深いですな。
邪神さんも健筆でなにより
ジョセフでは吉良には戦闘では適わないけど
社会的地位で軽く捻りつぶせる存在だなw
しかし邪神さんQUEEN好きですかあ。
フレディ・マーキュリーのですよね?
結構お年なのかな?w
まあ、23の俺でも知ってるから不思議じゃないか。
あとジャンヌとか呂布とか見て思い出したけど
やはりハイデッカ氏はまた書く書く詐欺かw
さいさんは復活すると一気に投稿頻度が多くなるタイプだから楽しみだな。
サナダムシさんもそのタイプだったけど、もう復活は無いかな・・
152 :
作者の都合により名無しです:2010/08/07(土) 20:44:02 ID:a103NBRl0
今週末は誰か来てくれないかな
サマサさん・邪神さん・スターダストさん・さいさん・ハシさん・ガモンさん
などおなじみの方々でもとても嬉しいけど、
かつての書き手の復活とか新人さんだったらさらに嬉しいな
自演前ふりはやめろw
誤爆すまねぇ
155 :
作者の都合により名無しです:2010/08/11(水) 20:18:55 ID:mH15WhId0
ハロイさんせめてヴィクテムレッドだけでもなんとかしてくれ
HPもなくなってたし、なんかあったのかな?
このスレ、今まで2人ご不幸起きたし・・
バーディの人のアレは胡散臭いと思ったけどほかに誰かいたっけ?
157 :
永遠の扉:2010/08/13(金) 04:34:04 ID:2NIeaGv9P
第093話 「パピヨンvsヴィクトリア&犬猫鶏驢馬その他2名帰参」(前編)
【9月6日】
闇の中に無数の根が這っていた。太いのもあれば細いのもある。それらは雑然と曲がりくねり、或いは絡まり合いながら
闇に向かって這っている。根は多いが辺り一面埋めつくしているというほどでもなく、1つ1つの隙間から白い地面が見えた。
厳密にいえば地面は何かの鉱物を切磋したものらしい。床。どこからか差し込む紫の光を淡く跳ね返しながら闇と根の間
をくぐり抜け、果てしなく広がっている。
根が生えているのは人口建造物の内部のようだった。
不思議なことに”根”の密集地帯の近くには必ずといっていいほど『機械』があった。巨大なラジエーター型の機械もあれ
ば机付きのパソコンもある。一番多いのはガラス張りの円筒とシリンダーとパイプを雑然と組み合わせた名称不明の機械
で、それは薄暗い部屋の中で時おり蒸気を吹いてもいる。丸太ほどある丸いガラスケースの中では色のついた液体──
赤、青、緑。いずれも強烈な色彩だ。闇の中でさえ際立つほどの──が静かに泡を立てている。
煮えたぎっているのか、或いは何かの気体を流し込まれているのか。とにかく機械によって色の違う液体たちは闇の中で
静かに”あぶく”を立てている。泡立つ響きは加熱音ともポンプ音とも取れる駆動音と混じり合い、暗い空間に嫋々(じょうじょう)
たる余韻を与えてもいる。地面を這う太い根をよく見ると透明で、中では色のついた液体がさらさらと流れている。どうやら各
種様々の機械にそれを提供しているらしい。
つまり”根”は、パイプだった。
そしてその中の一本──闇の中でひたすら曲がりくねるそれ──を追っていくと、もしくは床を淡く照らす光を追っていくと
ひときわ巨大なフラスコに行きあたった。
部屋の隅にあるそれは大人7人が横に全開した手と手を取ってようやく包囲できるほど巨大だった蕪や大蒜(にんにく)の
ように上が尖り下が太い。さらに到る所から”根”に似たパイプが生え(いや、むしろパイプたちが望んで接続しているのか
も知れなかった。茎が最終的に果実を育むように)、てっぺんには電球のソケットに似た重厚な接続端子さえついていた。更
に底からは紫ばんだ光が立ち上っている。どうやらライトアップ用らしい。闇に包まれた部屋の中でフラスコの周りだけが妖し
げなモーブの光にくっきりと炙り出されていた。。
しかし特筆すべきはその巨大なフラスコではない。中にいる人影である。
フラスコの外装は多分にもれずガラス系統の透明材質だが、そこから透けて見える人影は奇妙な状況に置かれていた。
椅子に腰掛け、足を組み、腰のあたりで本を広げている。それ自体は「フラスコの中で」という特殊性を差し引けば概ね
普通だ。
しかし。
フラスコ内部は、液体に満たされていた。人影はゆらゆらとたゆたい、泡沫と共にいた。
滾々(こんこん)と循環する──パイプがひっきりなしに送り込み、または排水しているらしい──液体の中で人影は悠然
と本を読んでいた。
にも関わらず人影にさほど苦しむ様子はない。死んでいるのか? ホルマリン漬けのごとく……。
いや、人影は確かに生きていた。恐ろしく濁った瞳。本に落ちるそれはゆっくりとだが確かに上下に動いている。
機械人形でない証拠に瞳の奥には確かな理性の光が灯り、時折ふと考え込むような仕草さえ取り、やがて得心がいった
という風に頷いては爪の長い指でページをめくっていく。
服も奇妙。中世のおとぎ話に出てくる貴族か王子が舞踏会に着ていくようなスーツ。
傍らには本を山積みにした小机さえ置いてあり、彼にとってこの異様な光景がいかに日常的一幕に過ぎないかを雄弁に
物語っていた。
人影は男らしかった。らしい、というのは素顔が見えないせいである。人影の顔には毒々しくも美しい蝶々の覆面が止まり、
その素顔をまったく永遠の謎の物としていた。ただし彼の細く引き締まった長身はまぎれもなく男性の物であった。少なくても
女性らしい丸みというのは健康的な筋肉もろともどこかへ削ぎ落ちてしまっているようだった。羸馬(るいば)がごとき窶れ
枯れ果てた病的な体を黒い情熱一つでようやく現世に留めている、そんな男だった。
158 :
永遠の扉:2010/08/13(金) 04:36:05 ID:2NIeaGv9P
彼の通称を、パピヨンという。
本名は蝶野攻爵。不治の病に冒され死から逃れるため錬金術──不老不死の法──に手を出した男である。
やがて彼は様々な経緯の末、人間をやめ、武藤カズキという少年に格段の経緯を払うようになった。
この点、元信奉者として剣を交え、その果てで敬意と罪悪を覚えるようになった秋水と似ていなくもない。
もっとも、良くも悪くも生真面目で実直な秋水とは真逆の道を行ってもいるが。
【9月6日】
発端は9月6日の夜というから、戦士一同のあれやこれやよりかなり前の話になる。
秋水が病室でまひろと空気の読み方を模索した(9月7日)よりも、剛太が桜花に呼ばれたメイドカフェで仮面の戦士たち
と共闘したり斗貴子が殺し屋一同と残党を殲滅した日(9月10日)よりも、前。
その日彼──パピヨンはいつものごとく塒(ねぐら)たる研究室で本を読んでいた。
読書は人間だった頃からの慣習である。かつて不治の病に冒され、自ら命を救うべく錬金術に手を出した頃から──自宅
の蔵で曾祖父の残した研究資料を見つけた時から──ヒマさえあれば本を読んでいる。
ちなみにパピヨンが入っているフラスコは「修復フラスコ」といい、ホムンクルス以上の存在を修復する何とも都合のいい
液体が満ちている。中にいるにも関わらず呼吸ができるのもまたこのテの液体の常であろう。
それはさておき、研究室の空気はひどく淀んでいた。
カビ臭く、埃が立ち込め、機械達が無遠慮にぶっ放す正体不明の蒸気が混じり込み、薬品の刺激臭さえ満ちている。
ラジエーターに似た機械もまた黒こげた微細な粒子を絶え間なく巻き上げており、目下研究室の空気は汚染の一途を辿っ
ているとしかいいようがない。とても深刻な状況だ。このままいけばフラスコ周りで埃に立つ無数の紫の帯がスモッグに転
嫁する日もそう遠くない。
これでパピヨンの読む本が「大気汚染改善法」ならばまだ救いもあるが、現実とは常に救いのない方へと傾くものだ。
「核鉄〜その起源と用法について〜」。邦訳すればそんなタイトルの本からパピヨンはまったく目を離さない。
そして研究室ではカビが増殖を続け埃が舞い、時折機械どもがぶっ放す有害そうな蒸気が苦い匂いの黒粒子と混じって
いく……。空気はそろそろ活火山付近並の有毒性を帯び始めていた。
そもそも部屋に換気装置というものはなかった。
ファンはおろか窓の一つさえ、この部屋には存在していない。もしかすると研究室は地下にあるのかも知れない。
とにかく。
パピヨンの周囲360度あらゆる先に窓はない。壁という壁が本棚に覆い隠され、その本棚ときたら隅々までぶ厚い古書
に埋め尽くされている。金箔で押された洒脱な題名がすっかり黒ずんでる奴もあれば緑の装丁にすっかりシミのういた奴
もある。ほぼほとんどの物にバーコードはなく、20〜21世紀の流通形態で仕入れた物でない事は明白だった。まるでそれ
を示すかのように羊皮紙を板で挟んだだけの物が本棚の所々を彩っていた。ひょっとしたら昭和どころか大正明治、或い
は幕末以前に海外から買い付けたのかも知れない。本の題名のほとんどは英語かドイツ語で、日本語で記された物は極
端に少なかった。これら3つ以外にも雑多さまざまの言語がひしめきあい、本棚は正に古今東西万国共通、載籍浩瀚(さい
せきこうかん)の様相を呈していた。
パピヨンが読んでいたぶ厚い本──表紙と裏表紙に銀箔付きの茨のレリーフが施された、なかなか豪華な──もその一
冊である。図書館顔負けの神経質で高さ厚さ巻数順中に揃えられた古書たちの中の一冊。それを「それなりに面白いじゃ
あないか。特別に覚えておいてやる」とでも言いたげな、集中力と好奇心充足と些かの上から目線が入り混じった満足度5
8/100位の表情で読むパピヨンは──…やがてぽつりと呟いた。
「御苦労」
フラスコ越しにくぐもった声が薄暗い部屋に木霊した。
誰にいっているか分からないが、例え誰が相手でも心底ねぎらうつもりはないらしい。「御苦労」。事務的で高慢な声を
一発漏らしたらきり彼は活字世界へ再没入した。
「あなた結局最後まで手伝わなかったわね」
ぼんやりとした人影がパピヨンの遥か向こうで肩を竦めた。もしかしたら部屋の空気のあまりの汚さに呆れているのかも
知れない。
「当然。肉体労働は昔からキライなんでね」
159 :
永遠の扉:2010/08/13(金) 04:38:26 ID:2NIeaGv9P
「ああそう」
これもまた事務的で高慢な声だ。いや、無愛想と棘棘しい怒りを孕んでいる分パピヨンよりひどい。耳をそばだてよく
聴けば少女らしい甘さと可憐さを秘めた愛らしい声なのだが、その良さは感情の引き攣りでだいぶ減免されているらしい。
パピヨンのはるか向こうで扉が閉じる音がした。続いてやや乱暴な足音が近づいてくる。黒い靴下に覆われた細い脚は
時おり床に広がるパイプに躓きかけ、その度いよいよ苛立ちを高めているようだった。「片付けなさいよ」。聴かせるため
に吐いている独り言──女性がよくやるアレだ。応じれば「何?」といよいよ喧嘩腰の応対が飛び出し、無視しつづければ
これまた「聴かせるため」の苛立たしい溜息が飛び出す──が足音とともに近付いてくるが、しかしパピヨンは取り立てて
気にする様子もない。ただひたすら本を読み続けている。心底どうでもいい。そんな様子だった。
ご多分に漏れず、溜息が洩れた。聴かせるための。「私の文句を無視する訳ね。アナタそれでも男なの?」そういう糾弾
の混じった溜息。しかし糾弾を以て男性諸氏の情けなさを抉りだす溜息。どこかに勝利宣言を帯びた(ただし物事の根本
的解決は何ら進んでいない、感情的なだけの)溜息である。
やがてフラスコの前についた影──座っているパピヨンとそう変わらない、小柄な──が棘のある声を漏らした。
「私は横浜からここまで必要な機材を運んで来たのよ」
「貴様の所有物だろ。貴様が持ってくるのは当然さ」
「1つだけじゃなかったのよ。どれだけあったと思うの?」
「フン。途中から”例の避難壕の応用で大分楽に運べるようになった”と楽しそうに報告していたのはどこの誰だ?」
「なっ……」
「確か床を一旦傾け、地下に滑らせた上で内装を上へとせり上げる……だったな。大発見じゃないか。貴様自身、らしくも
なく目を輝かせていたじゃないか」
「輝かせちゃ悪い」
人影の額に青筋が浮かんだ。怒りのオーラも巻き起こる。
「別に。だからやらせてやったのさ。そもそも100年来の引きこもりにはドロ臭い肉体労働がお似合いだ」
「…………」
戯画的な怒りのマークが1つ、人影の右即頭部に追加された。
「そもそもあの作業を楽しんでおきながらこの俺にまで手伝わさんとするのは傲慢も甚だしい」
大気が凍る音がした。同時に十字路に似た憤怒の烙印が人影の頭や顔のそこかしこに押されていく。音も烙印もパピヨ
ンが喋るたび増えていく。人影が彼の言葉に耐えがたい不快感を覚えているのは明らかだった。
「だいたい、貴様の母の手持ちの機材をこちらへと合流させ『例の研究』を進めたいと持ちかけたのは貴様の方だろ」
超特大の烙印が人影の背後いっぱいに押された。人影の両眉がビキリと跳ねあがり、右頬は激しい怒りのもたらす痙攣
に打ち震えているいるようだった。
「ならば貴様がこの俺のための身を砕くのは当然のコト。これからもせいぜい従え。俺の為だけに動け」
それきりパピヨンは会話を一方的に打ち切り、あらゆるリソースを本にのみ向け始めた。
(イヤな奴。道理でママが妙に冷たくあしらっていた訳ね)
修復フラスコの前で声の主──ヴィクトリア=パワード──はただでさえ冷たい瞳を更に冷たく細めた。
輝くような金髪の少女である。長い髪を緑のヘアバンチ(筒状のヘアアクセサリ)で幾房に分けているところはいかにも
人形のような愛らしさを振りまいているが、表情や仕草にいちいち刺々しさがあるのが珠に瑕である。日の光など知らない
ような白い肌。欧米人らしくすらりと通った鼻梁。113年以上の生涯をまるで伺わせぬ少女らしい細やかな肢体。どれ1つ
とっても銀成学園生徒の歓心を買うに十分である。(特に武藤まひろなどは積極的にスキンシップを図る)
そんなヴィクトリアの唇はやや血色が褪せてはいるが瑞々しく、今は柔らかげにきゅっと結ばれている。
不機嫌の兆候だ。
心にゆとりのある大人──たとえば寄宿舎管理人かつ戦士長の防人衛や、ザ・ブレーメンタウンミュージシャンズのリーダ
ーたる総角主税──が見れば「ああ、ぐずってるぐずってる」と苦笑混じりに見逃せるほど他愛もない怒りだが、本人(ヴィク
トリア)は子供が全力で駄々をこね始める1分前のように我慢ができないでいる。
ゆらいヴィクトリアは気難しく、短気で、そして狭量の気配がある。もっとも秋水やまひろの説得で寄宿舎へ戻った時から
頑なな心は少しずつ開放へと傾いているが、しかし100年の地下生活の鬱屈とそれが齎した屈折はそう簡単に治る物で
はない。
160 :
永遠の扉:2010/08/13(金) 04:41:41 ID:2NIeaGv9P
やっぱり、ホムンクルス(錬金術の産物)はキラい。
そんな思いがまず去来し、「ホムンクルスだからこの男は嫌な奴だ」というすり替えが頭の中にやってきた。
次に秋水やまひろといった連中の顔が浮かび、彼らとそれなりの関係を築けているのは彼らが人間(錬金術の産物では
ない)だからという考えも浮かんだ。
もっとも突き詰めればそれは自己弁護でもある。
考えてもみよ。そもそも秋水にしろまひろにしろ、ヴィクトリアの抱く第一印象は全くもって良くなかった。それが今日(こん
にち)、やや良好な協力関係を締結できているのは彼らと交流を持ち、ヴィクトリアが彼らを受け入れる決意をしたからであ
ろう。
理論的にいえば、である。「秋水たちにした”それ”」をやればパピヨンとも良好な関係を築けるかも知れない。にも関わら
ずそれを放棄しているのはパピヨンに対する腹立たしさを年上らしく、寛容に──ヴィクトリアはパピヨンより約1世紀長く
生きている──流せていないせいだ。
単に流したくないだけともいえる。
そして「パピヨンとは仲良くしたくない」という子供じみた怒りを「彼がホムンクルスだから仲良くする必要はない」という訳の
わからぬ感情論にすげ替え、秋水・まひろとの成功例を「彼らが人間だから上手くいった」という二重基準で棚上げ(本当は
誰が相手でも同じコトができるにも関わらず、”腹が立つからやりたくない”で放棄)している。
という自分の微細な感情の流れには薄々気付いてもいるヴィクトリアだが、ああしかしパピヨンという傲慢の塊と直接
交渉する事の腹立たしさ。初対面という訳ではない。かつてニュートンアップルという女学院の礼拝堂や地下で接触したコ
トもあるがその時は「押しかけてきた大勢の中の1人」として軽く応対したにすぎない。(話が佳境に入る前にヴィクトリアが
退室したというのもある)。
だがその時はまさかここまで腹の立つ男だとは思いも寄らなかった。
少なくても横浜から埼玉まで何往復もさせたくさんの重い機材を運ばせるような男だとは……。
(ちょっとオシャレだからって偉そうに)
無言で本を読むパピヨンの全身をねめつける。毒々しい色の蝶々覆面も袖にヒラヒラがついて胸がはだけた黒スーツも
まったくヴィクトリアにとっては可憐で麗しい格好だった。
初めて見た時思った。天使、だと。
それは母もまったく同じで、かつての女学院地下での質疑応答の後、母子二人して「オシャレだったわね」と頷き合って軽
く笑ったコトもある。(母は脳みそだけの存在だからよく分からないが雰囲気は笑っていた)。だが嫉妬憤怒の炎は相手に
圧倒的な美点があればあるほどそれを地上へ叩き落とさんと激しく燃えあがる物である。
「もういいわ。今日は疲れたの。もう帰る」
踵を返すが背後から声はかからない。それがまた、腹立たしい。
振り返りがてらまだ幼さの残る横眼できっと睨みつける。
(止めなさいよ)
自分は共同研究者なのだ。持ってきた機材の使い方だって自分の説明がなければ決して分からない。第一横浜から苦
労して運んできた機材たちはまだ部屋の外に置かれている。設置さえまだしていない。レイアウトの相談や地面をのたくる
鬱陶しいパイプどもとの兼ね合い(または接続の)打ち合わせもした覚えがない。
(やるべきコトはまだ山積みじゃない)
にも関わらずパピヨンときたら本に没頭し、大事なコトを何一つ話そうとしない。彼のやる気さえヴィクトリアは疑った。
だいたい引きとめられないのは屈辱だ。
”機材の使い方を知っている”
”母のもとでずっと研究に携わっていた”
”その研究はパピヨンの目的達成に不可欠”
ときたらつまりそれなりの価値が自分にはある……と思うのが普通だろう。にも関わらず「帰る」と告げて引きとめの一つさ
えない。密かに抱えた矜持みたいな物が崩されるようでパピヨンの無視は腹立たしい。もしかしたら説明なしで全ての機材
を使いこなし、レイアウトやパイプ接続をこなす自信が彼にはあるのだろうか。
「どうした。帰らないのか」
ここでようやくパピヨンは顔を上げた。その顔はくつくつと意地の悪い笑みを浮かべていた。「貴様の考えなどお見通しだ」
そう言いたげだった。
一方ヴィクトリアは「しまった」という顔で慌てて眼を逸らした。俯き、紫の光を帯びる床を始末が悪そうに眺める。
振り返ったのは露骨すぎた。何かを求めているようで……。失態を演じたという思いが白い顔をうっすら上気させている
のを痛感した。以前の自分ならまずそういう反応は出なかっただろうが、あいにく秋水・まひろと関わるうちおかしな影響を
受けてしまっているらしい。
以前の私の鉄面皮の方が良かった。絶対。そう後悔すると羞恥はますます加速するようだ。
とりあえず顔を上げる。大丈夫。紫の証明のせいで顔の赤さは分からない。そう言い聞かせる。
「明日は来るわよ。来なければ研究進まないでしょ」
繕いになっているのかどうか。仄かに赤い頬の上の瞳を務めて冷淡に細め、ヴィクトリアはパピヨンの横を指差した。
「私はパパを、アナタは武藤カズキを。それぞれ人間に戻したい。だから手を組んだんじゃない」
「フム」
パピヨンもヴィクトリアの指を横眼で追った。本が山積みになった小机の上には──…
黄色い核鉄も乗っていた。
もう1つの調整体。
かつてそれを求め、戦士たちとザ・ブレーメンタウンミュージシャンズという共同体が激突したのは記憶に新しい。
「そしてアナタが戦いの最後の最後で乱入し手に入れた。もう話したけどそれを使えば」
「白い核鉄の精製が可能、か。確かにご先祖様の研究資料とあののーみその研究資料を突き合わせればそうなるようだが」
「その”のーみそ”っていうのやめなさいよ。ママに失礼でしょ」
「粋がるなよ。所詮のーみそはのーみそに過ぎん。しかし──…」
ヴィクトリアがたじろいだのは明らかな蔑みを感じたからだ。蝶々覆面から覗くドス黒い瞳は確かにヴィクトリアを見下して
いた。顔が赤いの気付かれてたらどうしよう……ひどく少女らしい怯えに息を呑む。発見だった。らしくもない瑞々しさが蘇り
つつあるという発見だった。
「何よ」
「疲れたから帰る? フン、成功すれば貴様の父が人間に戻ると知りながら、たかだか横浜埼玉間を往復した疲れ程度で
貴様は研究を諦めるという訳だ。つまり貴様にとって父の再人間化などその程度の物!」
「何よ。1日ぐらい──…」
「怠け者は常々そういう」
パピヨンは立ち上がり、いささか芝居じみた仕草でヴィクトリアを指差した。本はすでに両手で畳まれ小机の上に放り出さ
れている。早業。ずっとパピヨンを凝視していたヴィクトリアでさえ気付けなかった。
……そして彼が嘲笑混じりに放った次の言葉が彼女に居残りを決意させた。
「そうやって1日ぐらい1日ぐらいと先延ばしを続けてきた結果、貴様は100年も地下で引き籠っていたんだろ?」
まったく、腹が立つ。
寄宿舎に戻ったヴィクトリアは寝てからなお夢の中で毒舌三千連発をパピヨンに浴びせるほど憤っていた。
友人たちとの何気ない談話の中でも怒りはどこかに覚えていて、まったく落ち着かない気分だった。
しかも。そういう時に限って。
「びっきーの髪ってたこに似てるよね」
などとまひろが言い放つからたまらない。
(たこ……)
頬が引き攣り一瞬叫びだしたくなった。内心不快に煮えたぎっている時に「たこ」はない。ヴィクトリアは本当もうこの天然
少女を頭からバックリやってやろうかと(食べはしないが。歯型の一つでもつけてやり「私はホムンクルスよ。アナタは格下」
とばかり生物的優位性がどちらにあるかはっきり思い知らせてやるべき)思った。……もっとも踏んでも踏んでもまひろは懲
りず、結局ヴィクトリアの惨敗に終わったのは091話のごとくである。
今回はここまで
お疲れ様ですスターダストさん。
パピヨンはやっぱり優雅なんだなあ、変態だけど。
そのライフスタイルも知的な感じがするし。
ただ、ヴィクトリアにはそれがどう写るのかな?
無軌道で思い通りにならない変態紳士が近くにいるのは
結構きついだろうな・・。
>>156 バキスレ最初期にいた外伝さんって人じゃないか?
ヴィクトリアはだんだんと普通の少女っぽくなって来たね
引きこもりから復活するとこんな感じだろうか
スケールが並の引きこもりとはケタが違うけどw
パピヨンの事は意外と気に入ってそうな感じ?
感情表現が下手糞だからツンデレになるだけで。
まひろの空気読めなさは異常
秋水も苦労するだろう
165 :
作者の都合により名無しです:2010/08/15(日) 11:28:09 ID:OxOw0mgf0
お盆中、スターダストさんだけかあ・・
まあ、皆さん忙しいだろうからね。
164でも書いたけど
まひろを彼女にするというのは幸福なことだろうか
ヴィクトリアよりも精神年齢低そうだし。
ルックス的には満点に近いだろうけど、色々振り回された挙句
キスひとつするのにも3年かかりそうだ
愛してなければ幸福じゃないし愛していればどんな人でもどれだけ振り回されても幸福でいられるだろ
キャバ嬢に40万貢いだ俺は勝ち組ということか
復活を信じてあげ
ただいまネットカフェ
書き込めたら投下する
>>118 原作でも二次創作でも最強クラスの扱いされてる大妖怪ですので、レッドさんも
苦戦は否めないかと。一回戦のダメージもあるので…。
>>119 純粋な肉弾戦闘ならば、それでもレッドさんなら何とかしてくれそうな…
>>120 何がすごいって<花を操る程度の能力>という、戦闘にはおよそ向かない(使わないだけ?)能力で、
それでも最強ランクの強さというところ。身体能力だけなら、ガチで幻想郷でもトップなんじゃなかろうか。
>>スターダストさん
パピヨンが登場しただけで、何という安心感…!やはり<主人公さえ食いかねない存在感のライバル>
って素敵ですよねー。
パピヨンが監督を務める演劇部って…見てみたいけど、入りたくねえ!(笑)
>>ふら〜りさん
むしろそれで萌えられたらどうしようかと(何)
レッドさん、あれで結構空気の読める人間(ヒーロー)ですし。むしろヴァンプ様の方が空気読めないかも…。
素晴らしい人物(怪人)なのは間違いないんですが。
>>さいさん
続々登場する歴史上の偉人達にドキドキ…しかし、大概の作品で<敬虔で、気高き聖女>として描かれる
ジャンヌ・ダルクがこの有様とは…そりゃあ火炙りにされてまで神様を信じられないか。
このまま蝶・豪華バトルロワイアルになるのか、協力して強大な敵を倒すのか?
ゆうかりんは二回戦でレッドさん相手にバリバリ活躍しますよー。流石にネクロマンティックレベルまではいきませんが…。
>>邪神?さん
ウドンゲインとデモンベインはよく似てる…しかしそんなことはどうでもよかった。
余裕に見せかけて実は心中いっぱいいっぱいなジョセフはじじいにして結構な萌えキャラだと思います(多分)
そしてここでヌ・ミキタカゾ・ンシ!実を言うと彼の存在を完全に忘れてたので、見事に不意打ち喰らいました。
このメンツで、殺人鬼を倒せるか?それとも、更なる絶望が待っているのか?
お疲れ様ですサマサさん。俺も規制でネカフェから書き込んでます…。
最近は規制がデフォで書き込める日の方が少ないですね…。
2回戦も始まりましたね、いつの間にかw
いくつか見てない試合がある気がするのは気のせいでしょうw
幽香に出逢ってしまったヴァンプは狼の前のあかずきん状態ですね。
レッドさんでも戦闘力では勝てない相手で、しかも策まで弄されては…w
174 :
作者の都合により名無しです:2010/08/22(日) 19:06:38 ID:uZgUb56g0
幽香相手だと書き辛いだろうな、サマサさんも。
前の試合は同タイプ相手だからまだしも
今回はレッド普通なら勝ち目ない相手だからなあ。
>秋静葉・穣子の姉妹対決という地味にも程がある試合
逆に見てみたかったw
175 :
ふら〜り:2010/08/23(月) 17:53:08 ID:aZgdhsIZ0
>>スターダストさん
一切の知識なしで今回分だけ読めば、「あぁこのパピヨンって奴はヴィクトリアって子のことを
好きで、からかって楽しんでるな」とも思えますが。パピヨンは言いようによっては裏表のない、
感情を素直に出す(=無遠慮な)人。指摘や見下し以外の意味も感情も無し、でしょうな。
>>サマサさん
レッドと同じ種類と言いつつ、何やら絡め手っぽいのを仕込んでいそうな……並の相手なら、
何をしてきても力ずくで踏みやぶるレッドでしょうが、並の相手じゃないですしね。とはいえ
ヴァンプ様に何をしても、聞き出せる弱点はないでしょうし、人質にもならんでしょうし。さて?
176 :
永遠の扉:2010/08/25(水) 23:02:22 ID:A4wtNZb4P
【9月11日】
「けーれども彼はこ・こ・でさよなら♪」
「「「「「「「「残念だったねェ!!」」」」」」」」
教室に響く合唱を津村斗貴子は「なんだコレ」とばかり聞き流した。平素凛々しく尖る瞳もいまや呆れの半眼に、頬にも汗
が一しずく。銀成市民と絡むたびよくやる表情だ。記憶こそないが故郷の赤銅島で和服を着ている時は絶対しなかっただろう。
ちなみに教室は前と後ろでガラリと様子が変わっていた。教卓のある方は20人以上の部員が思い思いの動作(演技・観
劇・打ち合わせなどなど)ができるほど広々としているが、その煽りで教室の後半分は机や椅子がギッシリと押し込められ
雑然としている。
斗貴子は教室の中ほど、窓際で先ほどから教室の様子を眺めていた。
(しかし、演目の意味不明さはともかく、日曜日なのによくやるなこのコたち)
演劇論を戦わせる女子たち。
セリフの確認をし合う男女たち。
仲間と連れ立ってストレッチをする男子たち。
教室の後ろに追いやられた机を見れば熱心に台本を読み込む若人たちがぽつぽつと。
広々とした教室の前半分はいかにも活気ある文科系部活の姿である。
顔見知りもいくらかいる。
「たか! とら! ばった! た・と・ば! たとばたっとば!」
楽しそうに「これはどうかな!」と部長らしき上級生にお伺いを立てているのはまひろで、ジャージ姿で座りこみ、柔軟体操
をしているのは沙織。「ぎゃあ、痛い痛い」と体の硬さに泣き笑い中だ。
机の群れの中には台本を熱心に読む千里。
鉛筆を忙しく動かしてはすぐ思案顔……という様子を見るにつけ、ひょっとしたら台本担当なのかも知れない。メガネをか
けたおかっぱ少女はいかにも文芸少女という感じで好ましい。
(しかし教卓前のアレは何だ? えーとだ。アレは、パピヨン……じゃないな)
額に手を当て俯く。
まず教卓の前に男が一人。金のカツラを被り、黒いスーツに銀色の仮面。紫色のマントも付けている。
彼から2mほど前には男女が計8人。横に整列する彼らはいかにも「中世北欧の村人」という質素な衣装だ。
そして彼らは教卓前の男がシャキっと振り向き叫ぶや同調する。
「けーれども彼はこ・こ・でさよなら♪」
「「「「「「「「残念だったねェ!!」」」」」」」」
(いったい何をやっているんだキミたちは)
新入部員たる斗貴子にはひどく理解しがたいが、彼らは彼らなりの決まりごとのために叫んでいるらしかった。
そして斗貴子の仇敵は先ほどから黙然と腕組みしたまま黒板の前に突っ立っていた。
毒々しい蝶々覆面は当たり前のようにそこにいて、しかも丸めた台本さえ握っている。よほど演劇に執心しているらしく、
「さよなら」「残念だったねェ」のコンボをひどく熱心な眼差しで眺めている。
(パピヨン!)
いつの間にかやってきて監督を務めているというパピヨンは、全く以て平和な演劇部に不要な存在だ。少なくても斗貴子
自身はそう思った。邪魔者。かどわかし。いやむしろガン。悪性新生物。死ね。いや死なす。ブチ撒ける。
(奴が人気のない場所に行った時がチャンスだ。まず助けを呼べないよう口を切り裂いてやる。そうだ。死ね。苦痛の中で
後悔すればいいんだ。なまじ章印がないばかりに楽には死ねない! フフフそうだ思い知れ思い知るがいいんだククククク)
精神が汚染されている。そんな実感もむべなるかな。
そもパピヨンのせいで入りたくもない演劇部に入る羽目になった斗貴子だ。
177 :
永遠の扉:2010/08/25(水) 23:06:13 ID:A4wtNZb4P
昨晩……
「戦士長。よくも私を演劇部に入れてくれましたね。アリガトウゴザイマス」
「ああ! キミも青春をたっぷり楽しんで来い!」
今朝……
「桜花! よくも私を演劇部に入れてくれたな!」
「ええ。津村さんも青春を謳歌してみたらどうかしら」
さっき……
「いいかまひろちゃん! 私はあのパピヨンを追い出したらすぐ辞めるからな!」
「ダメだよ斗貴子さん! 一度しかない青春なんだし卒業まで演劇やらなきゃもったいないよ!」
(くそう。どいつもこいつも勝手なコトを! パピヨンの道楽に付き合わされるこっちの身になれ!)
楽しみ謳歌すべき一度しかない青春は、無責任な連中のせいで確実に浪費されている。
唯一味方になりえそうな剛太も体験入学とか何とかで一応来てくれたが、斗貴子を見るや爽やかな笑顔で退室した。
「やっぱり、先輩は演劇部にいるべきです。影ながら応援してます。それじゃあ!」」
その時斗貴子は(まひろに無理やり)メイド服を着せられていたが、斗貴子自身はなぜ剛太が親指さえ立て満面の笑顔で
逃げて行ったかは分からない。
(よくも私を見捨ててくれたな剛太。後でたっぷりブチ撒けてやる!)
歯がみしている内、演目が終わったらしい。
「どうでしょうか監督!」
銀色仮面がひどく嬉しそうにパピヨンに呼びかけた。
「話にならんな」
ひどく堅い声を漏らしたきり、パピヨンは無言で銀色仮面に歩み寄った。そして2歩ほどの距離で止まり、丸めた台本を
銀色の仮面に突きつけた。即興品なのだろう。セロテープで接合された仮面の一部がハラリと取れ、だらしなくブラ下がる。
斗貴子は見た。蝶々の翅の奥にある瞳が歪み、濁った怒りを放つのを。
「今の演技のどこに貴様自身がある? 貴様はただ元の演者の動きを頭の中でなぞっているにすぎん」
暗いがひどく熱の籠った声音だ。銀色仮面は「その声音を浴びるぐらいなら怒声の方がマシ!」という風に息を呑み、ガ
タガタと震え始めた。他の演劇部員も同じだった。凍りついたように体を止め、視線だけをパピヨンたちに釘付けた。
「猿真似としても全く練習不足! 話にならん! まずは本家本元の動きを完璧に模写(トレース)しろ!」
「はい監督!」
「模写(トレース)した上で忘れろ! 全てをだ!」
「はい監督! ちなみに監督がこれをやればどうなりますか!?」
「フム。なかなかいい質問をするじゃあないか。ならば特別にこのパピヨンの演技を見せてやる」
やがてパピヨンはいやに爽やかな笑顔を浮かべ、クルクルとワルツを踊ったり片足を高々と持ち上げたりしながら最後に
極上の笑顔で手を広げ「残念だったな!」と叫び……あと、血を吐いた。
(うわあ……)
斗貴子は思わず目を背けた。これほどひどい演技は見たコトがない。
果たして演劇部一同からもざわめきが上がり始めた。
(いい気味だ。メッキが剥がれたなパピヨン。貴様の演技など受け入れられるはずも──…)
「すげえ! まさかこんな解釈があったなんて!」
「え?」
ガッツポーズする銀色仮面を斗貴子はまさしく「眼を点に」見た。
「ええ。ここでの華麗で流麗な動きは後に生きるわ!」
「この後に訪れる絶望がッ! 引き立つのよーっ!」
「僕は動き自体を評価したいね。新体操とダンスを組み合わせたまったく一分の無駄もない斬新な動き。これはまったく
演劇界に革新と旋風を巻き起こすよ。もちろん、演技力も特筆すべきだけどね」
(あの、ミナサン?)
口々に賞賛を送りだす演劇部員に斗貴子は愕然とした。分からない。何がそんなにいいのか分からない。
「最後に血を吐くのがまたスゲーぜ! 見る人に新たな解釈を与えるし何より吐血それ自体がインモラルでエロい!」
「実をいえば吐血自体はハプニングさ。失敗失敗。力むあまり血を吐いてしまった」
袖で口を拭うパピヨンに、得意気に笑うパピヨンに、部員達はますます興奮した。
「本物は違う!」
「力むだけで血が!」
「まさに迫真の演技!」
「もうダメだこの演劇部。私は帰る」
178 :
永遠の扉:2010/08/25(水) 23:07:19 ID:A4wtNZb4P
盛大な溜息をついて斗貴子はよろよろと歩き出した。ストレス性の頭痛と発熱と悪寒が全身を蝕んでいる。
(くそ。やっと例の音楽隊との決着がついたのに、いつまで私は銀成市に……ん?)
喧噪の中で足が止まる。
思考があらぬ方向へ飛んだのは、現実逃避のためかも知れない。パピヨンへの賞賛は未だ鳴りやまない。
(そういえばもう1週間か。この学校で『あの』虚ろな目をした鳥型ホムンクルスと戦ってから)
そのあと戦いが終わって、1週間。
(ブレミュ、だったな。大戦士長の誘拐事件について協力するという話だったが)
いまのところ防人から進展についての説明はない。
正直、演劇部入部に策謀を巡らせるぐらいならブレミュ勢の顛末や誘拐事件の進捗状況ぐらい話しても良さそうなもの
である。
そう思いかけた斗貴子は「仕方無い」という表情で首を振った。
(大戦士長の誘拐は戦団全体に関わる問題だ。となれば処理に当たるのは当然、本部やそこにいる火渡戦士長というコ
トになる。戦士長(防人。ブラボー)の手はすでに離れているだろう。もし、もう一線を退いている彼に連絡が来て、私達に
も伝えられるとするような状況があるのなら、それは──…)
「どうしたの斗貴子さん? 浮かない顔して……。ひょっとして部活、楽しくない……?」
思考を遮るようにまひろの声がかかった。はっと現実世界に目を向けると、つぶらな瞳の少女が眼前いっぱいに広がっ
ている。どうやら彼女なりに気遣っているらしい。太い眉毛が心配そうに潜まっているのがよく見えた。
「い、いや」
こういう雰囲気に慣れていないだけだ。嫌という訳ではない。半ば本音で半ば配慮に対する社交辞令をぎこちなく漏らすと
まひろも一応理解してくれたようだ。「それなら」と明るい表情を浮かべた。
「というかキミ、なんでそんな服なんだ?」
「俺に質問をするな……」
真赤なメッシュジャケットとメッシュパンツに身を包んだまひろは、ふふんと瞑目し腕組みをした。どうやらハードボイルドを
気取っているらしいが何かもう全体的に上滑っている感じだった。
「どう、似合う? 刑事さん! やる夫社長さんから聞いたけどね、別世界にはこんな刑事さんがいるんだって! で、青い
強化装甲身にまとっては連敗するのでした! あ、素早くなるんだったかな……。どっちだっけ斗貴子さん」
忙しい少女だ、斗貴子はそう思った。花開くように笑ったかと思えば両目をキラキラと輝かせ旧知を語り、小さな顎に指を
当てフと考え込む仕草をし、最後はまるで幼女のようなあどけない直視を送ってくる。
(やれやれ)
ただまひろが前に来て喋った。それだけなのに毒気がいささか抜けているのに気づき、斗貴子は微苦笑した。本当にもう
気楽で能天気で手に余る少女だが、そこにいるだけで周囲を和ますという点では他の誰よりも長けているらしかった。
そういえば黙りこんでいる斗貴子にわざわざ歩み寄って声を掛けたのは現状ではまひろ1人だけだ。
……とはいえ、他の何人かは斗貴子の様子に気付いていたらしい。まひろにつられる形で1人、また1人とぽつぽつ歩み
よってきた。
(い!?)
どうやら「気付いていたが初対面なので声を掛け辛かった」らしい。それがまひろの遠慮斟酌なき呼びかけで打破された
という訳だ。いうなれば斗貴子という城塞の門が攻城兵器まひろで破られたのを幸い、演劇部兵士諸君がわっとなだれ込
んできた格好になる。……1人、3人、5人すっとばして20人。いつしか斗貴子を取り囲むように演劇部員達は思い思いの
呼びかけを始めた。
「大丈夫ですか?」
「緊張しますよねやっぱり突然演劇なんて!」
「いや、違う! 私の抱えている問題はそういうのじゃなくて!」
面喰らったという顔で壁に背をつき両手を広げる。ざらっとした白い粉が掌を這う感触にぞっとする。デジャヴ。確か転校
初日もまひろのせいでクラスメイトからの質問攻めに遭った。
「じゃあ台本書くのはどうです斗貴子さん! お話を書くのは面白いですよ!
「いや、正直私は話作りの才能なんて……違う! というか若宮千里! なんでキミまで乗ってきている!」
どっからどう見ても制止役のおかっぱ少女までもが台本片手に勧誘を始めているのを見た時(心持ち、彼女の顔は桜色
に染まり、小さな鼻から興奮性の吐息をふんすかふんすか漏らしていた)、斗貴子はまったく思った。
(やっぱりこの学校はヘンだ!)
質問攻めが終了するまで10分を要した。
179 :
永遠の扉:2010/08/25(水) 23:09:45 ID:A4wtNZb4P
「チッ」
ファンを取られた。パピヨンだけは嫉妬の視線で斗貴子を眺め……
どこかへと消えていった。
車座に──厳密にいえば窓際の斗貴子を取り巻いていたので車座の半分だが──連なっていた演劇部員達が水を引く
ように去って行き、後はまひろだけが残された。
「ところでキミたちがやってる演目はなんなんだ?」
「何って、何が」
まひろは大きな瞳をハシハシと瞬かせてた。質問の意図がよく分かっていないらしい。演目に馴染みすぎているせいで
「みんな知ってて当然」とばかり思い込んでいるらしい。何かを修練/追及している者にありがちな齟齬。何も知らぬビギナー
への説明意識がカラッカラらしかった。
「その、さっきからずっと”さよなら”だの”残念だったね”だのばかりやってるような気がするんだが」
「あ、それ? それはねー」
「ガウンの貰い損」
聞き覚えのある冷淡な声に斗貴子は振り返る。
声は、教室の後ろの一角、不規則に並ぶ机の上から響いていた。
その声の主は、きゅうきゅうと詰まる机の隙間をものともせず、座っていた。
「ガウンの貰い損とはサウンドクリエイターれヴぉを中心とする日本の音楽ユニット。自らを「幻想楽団」と称し、物語性の高
い歌詞と組曲的な音楽形式による「物語音楽」を主な作風とする。ファンからの愛称はガンモラ」
まるでwikipediaか何かから拾った文章をそのまま読んでいるような影に斗貴子は見覚えがあった。
「六舛孝二……どうしてキミがここに」
「もうすぐ馬鹿が来るから先回りして止めに来た。あの様子じゃ大浜でも止められないだろうし」
「?」
それより、と六舛は眼鏡をくいと押し上げた。
髪の短い、ひどく希薄な印象の少年だ。顔立ちには特に特徴らしい特徴がない。もっとも特徴がないというのは際立った
欠点もないというコトになるから、どちらかといえば端正な顔立ちの少年だ。
斗貴子は首を傾げたが、この少年は常に何を考えているか伺い難いフシがある。もし武藤カズキの親友の1人でなけれ
ば生涯会話らしい会話をせずに終わっただろう。それほど斗貴子とは共通点が少ない。
「いまやってた演目はガンモラの中で一番有名な奴」
「あ、ああ。説明してくれたんだな。今の演目が何か」
「そ。簡単にいえば”さよなら”とか”残念だったね”は決めゼリフ。だからファンはみんなやる訳」
まったく抑揚も感情もない声だ。冷静そのもの。カズキたち4人の中で一番成績がいいというのも頷ける……斗貴子は
改めてそう思った。
「さすが六舛先輩! じゃあさじゃあさ、これは知ってる!」
斗貴子が振り向くとまひろは妙ないでたちをしていた。先ほどまではあまり刑事らしからぬ真紅の衣装だったのが、今度
は打って変わって騎士風の鎧と剣を持っている。そして右手の片手剣をまひろは悠然と突き上げた。
「彼方へ! 私の道を……切り開く!」
「ジェシカの彷徨と恍惚・傷だらけの乙女は何故西へ行ったのか・漂流編」
「正解!」
目を > < こんな形にしてきゃいきゃい騒ぐまひろと机の群れで淡々としている少年を斗貴子はげっそりとした眼差し
で見比べた。しなやかな体がこころなし猫背になっている。
(いや、何の話をしているんだ。分からない。今の若いコたちはこういうものが好きなのか?)
「ちなみにジェシカは7時間以上かかってなお未完の作品。ガンモラ最低の駄作の呼び声も高いが、その長さと未完結作品
ゆえにディープなファンたちの人気は高い。情報量をどれだけ短くまとめられるか競ったり、或いは欠落した部分を他の作品
からの引用で補完したりする。ちなみにこれが生まれたのは”フウト”ってところで別世界のこの街には仮面ライダーが居る。
091話最後で出てきた猫と老人はきっとその別世界から来た筈だ。あとテラードラゴンは分離すべきじゃなかったよね。あれ
頭に載せた状態のが強かったよね」
「何の話だ……」
もう嫌だ。かつて根来に忍法うんぬんを披露された時のようなゲンナリ感。目が眩む思いだ。
「私たちが今度発表する演目もジェシカだよ! みんなで知恵を出し合って一生懸命作ってるの!」
はしゃぐまひろだが斗貴子のテンションは上がらない。思わず肩を落とした。
「……よく分からないが人の作品を勝手にいじくっていいのか?」
180 :
永遠の扉:2010/08/25(水) 23:10:42 ID:A4wtNZb4P
「斗貴子氏は知らないだろうけど『二次創作』っていう立派なジャンル。結構あるけど? マンガとか小説とかのも。例えば
連載2年で打ち切られ単行本10巻しか出てない作品の二次創作を5年近くやってる物好きだっているし」
「本家本元より長く? 考えられない。何がそうさせているんだ……」
「愛だよ。愛! 愛だよ斗貴子さん!」
小説2冊ドラマCD4つサントラ1つゲーム1つ。いずれも絶賛発売中である。
「だいたいガンモラは二次創作に寛大だし。れヴぉっていう一番偉い人はお酒さえ飲めれば自分のキャラがどう使われよう
といいって宣言している。だからファンたちはいわゆる自分設定を作って楽しんで、それをインターネットで仲間たちに発信
して楽しんだり、同人誌とかも出してる。同人の中では最大手でグッズとかいっぱい出てる」
ディープな世界だ。そもそも斗貴子は同人が何か分からない。
「てゆーか六舛くん、その話、色々混じってない?」
おずおずとした声に斗貴子ははっとした。
高校生にしてはやたら恰幅のいい青年が、机をガゴガゴと広げながら近づいてきている。はちきれそうな学生服の上で
気弱な顔がひどい苦難に歪み、大息さえついている。それはやはり体形ゆえか。彼はやがて六舛の傍に寄り……
「やっぱり止められなかったか」
「ごめん。体当たりして先回りする時間稼ぐのが精いっぱい……」
とだけ謎めいたやりとりをした。
(六舛孝二に大浜真史……。カズキの友人が2人揃ったというコトは!)
ここで斗貴子もだいたいのあらましが想像できてきた。そしてそれは、当たっていた。
「ゴメン斗貴子氏。ちょっと説明中断するけどいい?」
「構わないが」
頷きながら六舛は立ち上がり、演劇部員をかき分けながら教室をナナメに縦断し始めた。どうやら教室の前のドアを目指
していた。斗貴子がそう知ったのは総てが決着した後である。
そして。
「聞いたぜ! 桜花先輩が演劇部に入るってな! だったらお相手役はこの俺しかいねぇだr」
「黙れ岡倉。お前に演劇の才能はない」
勢いよく開いたドアの向こうに彼は(淡々とした声で)手を差し込んだ。窓際に佇んでいた斗貴子だが、その角度上ことの
あらましは大体見れた。骨法。鮮やかな手つきで友人の首を一回転させ、滑らかに気絶させる六舛を。彼は武術にさえ通
じているのかも知れなかった。
一拍遅れて、骨の外れる小気味のよい音が響いた。演劇部員達はすわ何事かとドアを見たが──…
「なんだエロスか」
「本当だエロス先輩だ」
「エロスさんなら別にいいや」
みなチラ見しただけでそれまでの行動に戻った。
「チクショオオオオー! 俺ならいいってのかよォ!」
果たして一拍遅れの恨めしい叫びが教室を貫くころ、斗貴子はようやくだいたいの事情を察した。
だが、しかし、それは。
腰に手を当て厳しい目つきをする。実に馬鹿馬鹿しいという思いでいっぱいになる。
(あのやたらはしゃいでいた声。間違いない。岡倉英之。あのエロスか)
やがて見覚えのあるリーゼントが大浜の肩に乗り、六舛の「馬鹿が迷惑かけてすまない」という謝罪と共に退室するまで
斗貴子はしばし黙りこみ──…刮目。絹を裂くような叫びをあげた。
「というか桜花が入部ぅ!? なに考えてるんだあの生徒会長は!」
「秋水先輩もケガが治るまで仮入部するらしいよ!」
「んで監督がパピヨンか! なんでこうLXEの連中が急に多くなってきたんだこの部活!」
「えるえっくすいーというのは何じゃ?」
振り返った斗貴子がしばし虚空を眺め戸惑ったのは、相手の身長のせいである。
「下じゃ下じゃ。のう、のう。えるえっくすいーというのは何なんじゃ?」
促されるまま首の角度を急降下させると、ようやくながらに相手の顔が見えた。
(ちっさ!)
まず率直な感想が浮かんだ。斗貴子もかなり小柄な方だが、この相手はもっと背が低かった。
制服こそ銀成学園高校のそれだが、どう贔屓目に見ても小学校低学年でランドセルを背負っている方がお似合いだった。
(例の音楽隊(ブレミュ)の小札零ぐらいか……? いや、もっと小さいか)
いま相手にしているのは130cmあるかどうかという少女だった。後ろで括ったすみれ色の髪の根元にかんざしを挿して
いる。かんざしといっても古風なそれではなく、今風のアレンジが大いに加わっている。フェレットとマンゴー。可愛らしいデ
フォルメの聞いた人形がかんざしの上からプラプラと垂れ下がり、揺れている。
181 :
永遠の扉:2010/08/25(水) 23:14:43 ID:A4wtNZb4P
(確か……銀成学園の新しい理事長だったな。元理事長の孫の。年齢は……まだ7歳ぐらいか)
じっと凝視すると、好奇心たっぷりの笑みがすり寄ってきた。
「えるえっくすいーっというのは何なんじゃ? うまいのかの?」
いかにも楽しそうな声を弾ませながら、理事長はぴょこぴょこ跳ねる。
お姉さんお兄さんはみーんないい人で誰とでも仲よくできる。そう信じ切っている無邪気な瞳だ。春の湖面のように澄み渡
った大きな眼には物怖じした様子などカケラもなく、ただただ斗貴子の返事への期待感に満ちている。
低い鼻のてっぺんに桃色が差しているのは妙といえば妙だったが、その妙な部分が却って少女らしい愛らしさを引き立
てているようだった。
(しまった。どう説明すればいい? あんな共同体のコトな……なんだこの匂い?)
説明に難儀する斗貴子は目を瞬かせた。いい匂い。芳香剤とは違う。料理の匂い。誰か弁当でも食べているのか……
一瞬そう思った斗貴子が周囲を見渡すと、演劇部員たちの怪訝そうな眼差しが目に入った。彼らは、斗貴子を見ていた。
と思ったのは錯覚で、厳密にいえば彼らは斗貴子の方、彼女の前に佇む理事長を見ていた。
彼らの視線を追う。スっと視線を落とす。マンゴーたちが踊るかんざしの後ろに、妙な物があった。
幅だけでも教室の後ろにわだかまる机6つ(縦2つ横3つ)ぐらいはある。
成人男性1名程度なら苦もなく飲み干せる、そういう姿だった。
白かった。途轍もなく、大きかった。白磁の淡い輝きを滑らかな曲線に乗せ、その場所に鎮座していた。
形状だけ言えばそれはどこの家庭にでもあるものだった。
丼。
だった。
(なんだ丼か……。丼!?)
とてつもなく巨大な牛丼だった。
高さは斗貴子の身長と同じくらいである。見逃してしまっていたのが不思議なくらいの大きさだ。
ステーキ並にブ厚い牛肉の破片が盛り上がる白米を埋め尽くしている。肉だけで眼前の少女の体重分ぐらいはあるので
はないか。斗貴子は戦慄する思いで観察を続けた。
申し訳程度にまぶされた薄茶色の玉葱でさえ段ボール半分程度を消費したのは明白なのだから。
一瞬斗貴子は「演劇部全員の昼食を持ってきた」と推測したが、生憎それは外れていた。眼前の少女は斗貴子が答えぬ
のを見るとさっさと諦めたようで、丼にとっとと駆け寄っていった。そしてめいっぱい手を伸ばし、更に背伸びをして、牛丼の
化け物に挑み始めた。
素手である。手づかみである。演劇部員の間にどよめきが走った。しかし理事長が意に介す様子はない。
「うまいのううまいのう」
くっちゃくっちゃと品のない音を漏らしながら二度、三度とその少女は牛丼に手を伸ばす。窘めるものはいなかった。みな
この異様の光景に心を奪われているらしかった。斗貴子もそれは同じで、口周りに飯粒を付けながらニコニコと機嫌良く
食事する少女をただただ見守るしかなかった。
「喰うかいの!」
視線を曲解したのだろう。新理事長は手づかみの牛丼を斗貴子に差し出してきた。
「い、いや、そういうつもりでは。というかパピヨンがいない! どこへ……! 悪いが失礼する!」
半ば強引に会話を打ち切る。奇妙な──どうせヒマ潰しにでも演劇部へ来たのだろう。斗貴子はそう思った──理事長
との会話をしていても仕方ない。そういう思いが彼女を教室の外へと走らせた。
(とにかく! パピヨンの件はさっさと片付けて大戦士長誘拐について戦士長に聞かないと!)
そうだ、と斗貴子は顔を引き締めた。心の中で青い炎が燃え上がり、しなやかな四肢の隅々に活力を漲らせる。新たな
戦い。新たな脅威。それと戦い、取り除くコトこそ使命だ。斗貴子は常に、信じている。
(すでに一線を退いている戦士長に連絡が来るとすれば大戦士長が救出された後か、或いは!)
(大戦士長を誘拐した連中が、本部にいる火渡戦士長たちだけで手に負えないほど強大か!)
(そのどちらかの筈! 残党狩りが終わった今、私達が備えるべきは後者!)
「ひひっ。もったいないのう。空腹という奴は積極的に駆逐せねばいずれ魂さえ殺すというのに……」
去りゆく斗貴子を見ながら理事長は薄く笑い、大儀そうに肩を竦めた。
斗貴子もどんどん血生臭い日常から離れて
普通の女子高生に近付いていくんだなあ
理事長可愛いですね
キャラ立ってそうでいい。
まだまだ秘密が隠されていそうだけど・・
183 :
作者の都合により名無しです:2010/08/26(木) 21:44:36 ID:2TwfZpKe0
お疲れ様ですスターダストさん。
斗貴子さん、背は低いけど運動能力高いから
舞台の上で映える気がしますね。
ブレーメン一同も呼んでアクションコメディとか楽しそう。
桜花とかまひろとか美人も揃ってるし、劇団としてもレベル高そう。
スターダストさんの後書きがなくなったtのが気に掛かる…。
モチベーション大丈夫かな?
こういう日常の当たり前?の風景がバトルより好きなので投出しは簡便。
―――オストロル公国。
今も昔も続く農業国として栄え、何よりその肥沃で膨大な国土の農産力で莫大な外貨と兵糧を獲得し、強国の一つであり続ける国。
それだけに自然が豊富であり、かつては貴族達が己の資産力を誇示するため到る所に城を乱立していたが…多くの貴族がその権威や
財力を失墜した今となっては、取り残された古城の数々は観光名所兼買い手待ち物件程度でしかない。
その中でも、至高の権勢を誇った大ユーヴィック公が全盛期に作ったとされるハルドヴェルク城は、深い森の中に有る事と
巨大に過ぎる事でその華やかな作りながら誰も手を付けようとはしなかった。
しかし、今日は違う。
広大な駐車場に次々と停まるフルスモークの高級車。さながら貴人の宴でも開かれるのかと思いきやそうではない。
そこから降りる者、迎える者のどれもが剣呑な光を眼差しに秘め、誰の懐も一様に武器で膨らんでいる。
そして人種も年齢もばらばらだが、立ち居振る舞いや歩の進め方に明らかなまでの共有意識が彼らにはある。
そもそも彼らは、たった一つの目的の為に存在し、本日ここに集っている。
即ち―――――、「打倒クロノス」その一点の為に。
…豪奢、そして精緻の結晶の様な大食堂だった。
壁には金と七宝の縁取りに囲まれたフレスコの天使達が祝福のラッパを吹き、金銀を用いた調度品の華やかさは見る者の眼を
いやが上にも奪い取る。そして壁際には、鍛え上げられた身体を持つ黒服達が立って優雅さを無骨に邪魔していた。
「………で、あの若造は本当に来るのか? もう三十分は過ぎてるぞ」
伽藍の様に高い天井に、大卓の一席に座る男の不機嫌な声が響いた。
「それは判らん。なにぶん奴らは新しすぎる」
疑問に応える男も、荒事に馴れた声調だ。
此処に居る者に現在堅気は一人も居ない、並ぶ全てが殺人に始まるあらゆる罪を犯している。
それもその筈、彼らは反クロノス組織のそれぞれ長達だ。
「……来たぞ。もうすぐここに来る」
インカムで部下の報告を聞いたらしい男が、ぼそっと一同にその来訪を告げた。
「………うん、それで結構。良い仕事を有り難う。
ああそっちは心配要らない、こっちで何とかするから」
車の停車を感じながら、その男は携帯を切るついでにスモーク越しに車外で出迎える者達を眺めやる。
そのどれもが、出迎えと言うより『目を逸らさせてやる!』と言わんばかりの敵意に満ちていた。
「やれやれ、先輩から新参者に礼儀を教えてやる…と、言ったところかな?」
くすくすと楽しげに微笑みながら、男はノブの遊びを確かめつつ二人の護衛に振り向いた。
「くれぐれも、睨まれたくらいで何かしないでくれよ? 招かれたとはいえ、立場はこっちが下なんだから」
「…善処する」
「こちらからは何もしまセンよ。こちらからは=Aネ」
「結構。…ああそれと」
視線を少しだけ奥に向けると、其処には更に同席するもう一人と秘書風の美女。
「キミはもう少し静かに待っててくれないか。なに、ほんの少しだよ」
しかし言われてもその人物は、答えも身じろぎもしない。だがそれを見て満足げに頭を上下させると、ドアを開けた。
途端に駐車場に広がる突き刺さる様な緊張。そこに居る誰もが、今にも銃を抜きそうなほどの敵意で開くドアを睨み付けた―――が、
「あ…」
その男が車外に出るや、緊張が一気に別の物に変わる。
確かな危うさをそこに感じる……が、しかし、同時に惚けてしまう様な妖しさの様なものを感じて、彼らは銃と敵意の所在を
完全に無くした。
「諸君」
彼はただ一言、柔らかくそして優しく言葉を紡ぐ。だがそれだけで、全員に怯みの電流。
「出迎えご苦労。それで、どの部屋に行けばいいのかな?」
「……何と何と、まるで敵陣の様じゃないか?」
歩を勧める男は、廊下の要所要所に陣取る男達の手に銃が有るのを確かめつつ苦笑する。
「やれやれ、物々しい事デスね」
その後を追う黒衣の美青年が、呆れた様に呟いた。
「脅えているのが見え見えだ………つまらん限りだな」
異装の矮人が、覆面の向こうから鼻白む。
相手は三人しか居ない、そして地の利も武器も、人数もある。しかしそれでも男達は、彼らを射竦める事さえ出来ない。
そしてその怯えと怒り、あるいは呆然の入り混じった視線を難無く流しながら、彼らの代表は大食堂の扉を軽やかに開け放った。
「どうも遅れまして、御先輩方。星の使徒よりクリード=ディスケンス、罷り越しました」
うやうやしい一礼、そして手袋から靴に到るまで全て白で統一した燕尾服を着込んだその男は、まるで舞台から降りた貴公子
の様だった。
「―――なんだその格好は!? この会議を仮装パーティと勘違いしてるのか!!?」
早速彼に、筋肉の塊の様な男が席を立って食って掛かる。
「いえ、滅相も無い。
これは僕が新参者ですので、極力礼を尽くそうとしただけの事です。不快でしたら、謝ります」
これまた一分の隙も無い礼だ。これ以上の粗探しは最早言い掛かりでしかなく、止む無く男は怒りを飲み込んだ。
……実は、この場に居る多くの者がクリードに怒鳴り散らしたくて仕様が無かった。
入った一瞬で空気が変わり、ともすれば一気に場を支配しかねない優美に極まる華=B魅了する、と言う事は得てして、
心を無防備にすると言う事でもある。
この若造は―――闘争に明け暮れ、人を従え、そして幾多の死線をくぐった彼らが未だ持ち得ないものをこの若さで持っているのだ。
それが嫉ましさと危うさを同時に刺激し、やり場の無い怒りをむらむらと起こさせていた。
「まあまあ、諸君」
その張り詰めた怒りの空気を、柔らかな声がほぐした。
「彼は遅参を謝罪しているのだ、許してやりなさい」
そして一同が目を向ける先には、最も上座で優しい微笑を湛える老人が指を組んでいた。
「これはこれは。神の剣¢纒\、ノーマン=アリウス師ではありませんか。ご尊名はかねがね伺っております」
クリードが一際深く一礼したこの老人は、現行に於いて最もクロノスと闘争を重ねた反クロノス組織神の剣≠フ首魁を
長らく務めていた。然るに、その言葉は事実上満場一致の決定と言って良い。
「こちらこそ、君の参戦を心より感謝する。
古きに応じ、若きがこうして馳せ参じてくれるのは嬉しい限りだ。少なくとも我々の闘争が無駄でない事を教えてくれる」
周囲の殺気立つ面々とは対照的に、アリウス師は逆にクリードに友好的だ。
「掛けなさい。それでは、面子も揃った所で会議を始めようじゃないか」
………賓客が全て大食堂に入った時点で、室外で待機する者達の装備も配置も一変する。
駐車場入り口に埋設した対戦車地雷と対人地雷は電子ロックが解除され、城の外周ぐるりを囲む機関銃と対物ライフルを配備した
土嚢積みの銃座陣地が侵入者を常に見張り、内部にも随所に強化アクリル製シールドで築いたバリケードが敷設してある。
今までは内部で何かが起こる事を想定した陣形だったが、今回は対襲撃者用の陣形だ。不審者が居れば拘束或いは射殺を旨に、
皆武装のチェックを忘れない。
「…くそ、何なんだあいつらは」
三人一組の銃座陣地の一つで、先刻クリードに呑まれた一人がぼやきを零すのに、観測手の男が周辺を確かめながら応じる。
「俺は見てないが…どんな奴だった?」
「概ね噂通り、線の細い優男さ。変な格好したチビと黒尽くめの護衛を連れてたが、そいつらと一緒にどうも妙な感じだ」
腑に落ちないとばかりに、幾度もライフルのスコープを調整する。
「何て言うかな……獣とか、怪物とかみたいな感じのようで…ありゃ違う」
そう言う輩と対峙すれば、まず何より恐怖が刺激されるものだが、クリードにはそれが無い。
全く感じられない訳ではないが、それ以上に感じるものが逆に目を逸らさせなかった。
……真の魅力とは、性別を問わない。圧倒的なカリスマは物を判らぬ輩さえも容易く惹き付ける。
もし仕える主と身を捧ぐべき目標が無ければ、思わず心酔しかねないほど恐ろしいものだ。
「ウチのボスもかなり危ない人だが、あっちは何と言うか底が知れねえ。
あの若さでドデカい組織を作ったってのも、少し判る気がする」
ボルトの動きをチェックしたり、マガジンから抜いた弾を確かめたりするのは、不安を何とか振り払うためだ。
正直あれとは共闘したくない。これまでの自分がどうでも良くなってしまいそうな気がして。
「…?」
不意に、周囲を警戒していた観測手が、何を見つけたか電子双眼鏡の明度やモードをせわしなく変えていた。
「何だ、どうした?」
「……いや、何か今……森の奥で動いてたような…」
それを聞いて対物ライフルのスコープを覗くが、其処にはそう見受けられるものなど無い。
「リスか何かじゃないのか?」
「いや、確かに見えた。間違い無い、人くらいの大きさが有った」
とは言っても、梢も茂みも良く晴れた日差しに青々としているだけで、後はせいぜい小鳥のさえずり程度のものだ。
それに、示した方向は彼らの位置から見え辛く、とても何かを見出せる感じはしなかった。
「………じゃあ他の奴らにも調べさせるか。
ポイントJよりKへ。今こちらの観測手がそちらのポイントの十一時方向に何かを確認した模様、至急そちらからの確認を乞う。
繰り返す……」
無線機で一番近い方角の銃座陣地に通達する。それを見る二人は「これでようやく」と思いつつそれぞれの為すべきを再開した。
だが……
「ポイントK…? おい、応答しろ、おい!」
ようやくどころか、無言の応答が実は非常事態の渦中だと彼らに伝えた。
「ポイントL! I! 大変だ、Kに異常事態発せ…!」
通信機にがなった彼の声を―――――――、落雷の様に脳天に突き立った矢が永遠に閉ざす。
「え…あ、うわ…!」
アナクロな武器は原始的な恐怖を刺激する。それゆえか機関銃手がマシンガンを構えたまま土嚢の壁から立ち上がる。
「あ、おい馬鹿……!」
観測手の止める間も無く、心臓と喉にそれぞれ一本ずつの矢が立った。
そして森の奥から、熱遮断式ギリーシート(色や布切れで茂みや藪に偽装するための布)の一団が現れた。
「……一体どう言うつもりだ!? 我々に一言も無くフィブリオ市を襲撃するとは!」
「全く、若い奴はこれだから困る。その暴走が我々全員の足並みを乱す事を、弁えて貰いたいものだ」
「しかも勝手にクロノスと戦ったそうではないか! これは許し難いぞ!」
大食堂の中は、下座に座る星の使徒の若き指導者への叱咤に満ち溢れていた。
先のフィブリオ市襲撃事件によって、彼ら反クロノス勢力を一方的に叩く材料をクロノスに与えてしまった、と言う事なのだが、
彼らの痛罵は少々逸脱の態を見せている。
「そもそも何だ、破竹の快進撃とやらでいささか眼が曇ったのではないか?」
「これほどの組織を作り上げたのは立派だが、過信が過ぎるとは思わんのか!?」
「調子に乗りすぎだ、若造が!」
此処まで行くと鬱憤晴らしや言いがかりだが、それでもクリード以下二人に異論を持ち合わせる風は無い。して沈黙が続けば、
おのずと舌は悪い波に乗る。
「大体貴様、元はクロノスの一員だそうだな。もしや、奴らのスパイじゃあ無いだろうな?」
「…成る程、それは有り得る。我々を内側から崩す作戦ですな」
「違うと言うなら証を見せてみろ! 今此処で!!」
最早暴走と言っても差し支えない悪口雑言の中、アリウス師の拍手が響くや潮が引いた様に一同静かになる。
「まあまあ、許してやりなさい。彼らも充分反省しているだろう。
……だがクリード君、あの一件が有って我らの風当たりが少々思わしくなくなったのも事実なのだよ。
知っての通り我らの目的は、傲慢なるクロノスからの脱却と開放だ。そしてそれがどれだけ正しいのかを世界に知って貰わねばならん。
その為には、断じて足並みを乱さず一丸となる必要がある……判るね?」
一つ一つ押さえる様に、血気盛んな周囲をも宥める様にアリウス師は言い聞かせた。
事実クロノスの統制は確かに幸福を生む反面、その陰で暴利と搾取を生んでいる。それに善か悪かを語るのはそれぞれの
価値観次第だが、此処に集うのは一人残らず後者だ。然るに怨敵に付け入る隙を作ったのは、確かに腹立たしい事だ。
「悪いと思うが、少しばかり調べさせて貰った。道士、サイボーグ、潤沢な資金、一向に掴めぬ拠点、行動ルート……正直大したものだ。
とても急造の組織とは思えん完璧な構築に、我ら一同驚きを隠せんよ」
「お褒めに預かり光栄です」
素直な目礼に、アリウス師も満足げに頷いてみせる―――が、
「しかし、今回の様な事は迂闊と言う他無い。もしもう一度起これば、今度こそクロノスの追撃を免れぬやも知れん。そうならぬ為にも
共闘体制は不可欠なのだよ」
脇の水差しで喉を湿しながら、結論付ける様にコップの音が響く。
「君達には技術力が有り、我らには組織力が有る。もしこれが一つとなれば、必ずやあの悪鬼どもを下し世界に真の平穏をもたらす筈だ。
と言う訳でクリード君、この通りだ。是非君達の一臂を我らに貸して貰えないだろうか?」
何と立場が上であるにも拘らず、アリウス師は席を立つなり若輩に深々と頭を下げた。これは言わば、王が兵卒に傅くに等しい
行為であり、それを知る周囲の長達は慌てて師に頭を上げさせようとする。しかし、彼は手で皆を制した。
「我らは若き志士に意志を継がねばならん。いずれは彼らが此処に立ち、そうして後人に継がさねば未来は無い。
彼らは未来なのだ、我らが過ぎ去った後礎を支える者達なのだ。それに頭を下げるのが、何がおかしいのかね?」
反論の余地も無いただ未来を思う言葉が、長き闘争を生きた老兵から発せられる。先刻まで酷く喧しかった連中も、これには
しん、と黙りこくった。
………それが、四・五分ほども続いた頃だろうか。
「どうだ、星の使徒…」
筋骨隆々の男が、搾り出す様に零す。
「共闘か否か、是が非にも言って貰うぞ………さあ、言え!!」
アリウス師の礼はそのまま場の総意だ、皆の矜持をこの若造一人に投げ出したとも言える。
そして当のクリードだが、視線を浴びても硬い貌を一切崩さないまま口を開く。
「………老師、どうかお起きを。この未熟者には勿体無さ過ぎます」
言われるままに顔を上げると、それを合図に無表情が幾分和らいだ。
「共闘……ええ、確かにその通りです。フィブリオの件は、実は僕も少々性急のきらいが有ったと思っていまして……今更ながら
後悔しております。ご先輩方の仰る様に、今までが順調過ぎて浮かれていたのでしょうね。全くお恥ずかしい」
入室時とは打って変わっての低姿勢に、苛立つ者達も心の棘を少しずつ落としていく。
「ご歴々のお言葉に、僕もようやく眼が覚めました。どうかこれまでの非礼、お許し下さい」
先刻のアリウス師に倣う様に、彼もまた席を立ち頭を下げる。両脇の護衛も同様に。
「うむ、判れば良いのだ、判れば」
「その謝罪は受け取ろう。さ、君も顔を上げると良い」
「ならばわだかまりも無くなったと言う事で、会議に移ろうじゃないか」
非難した輩も思った以上の素直さに気を良くし、労わる様な声調でクリードへ着席を促した。それに応じ、彼もまた笑顔で席に付く。
「ええ、皆さんの仰りたい事が大変良く判りました。つまり…」
だが―――彼が続いて放った言葉で、場に極寒が吹きすさんだ。
「…つまり皆さんは、星の使徒を寄こせ、と言いたい訳ですね?」
……スイマセン皆さん、リア充じゃないので超遅れました、NBです。
まあ、強いて言うなら世の中が悪いと愚痴ります。
兎にも角にも、十四話『凶宴』開始です。
本当は此処から怒涛の展開になりたいところですが、かなり不定期になる事を事前に詫びさせて頂きます。マジ申し訳無い。
たまには別の話も載せようかとも思い、ちょこっとばかり書いてる次第ですので、間が持たなくなったそれも投稿しようと思います。
そちらもどうかご期待。
と言う訳で………今回はここまで、ではまた。
なんかNBさんが復活してる!
お久しぶりです。正直、もう投げ出しかと思ってました。すみません
気の許せない狡猾そうなご老体と、それ以上の底知れなさを
感じさせるクリード。嵐の前の静けさというか、これからの怒涛の展開を
感じさせるようなヒキですね。早く続き読みたいなあ。
しばらく不定期連載になるということですが、続けていただけるなら
多少開いてもかまいませんので、マイペースで頑張って下さい。
別の話というのも気になるなあ。短編新作ですかな?
193 :
作者の都合により名無しです:2010/08/28(土) 23:40:46 ID:vyDATOfP0
NBさんが帰ってきた。なんか安心するな。
黒猫の世界はあまり知らないけどNBさんの作風すきなんで完結させてください
お話のスケールが大きくなってきたので、出来れば連続して上げて頂きたいところだが、
復活されただけでも良き事か。以前、「復活するかな」のレスは氏だったか。
「神の剣」は氏のオリジナル設定かな?確か原作にはなかったですよね。
おそらく最終決戦に向けての戦力増強かな?トレインたちますます不利になりますね。
新作も書いてくれるという事で、本格復活嬉しいです。スレも活気付くと良いな。
AnotherAttraction BC以上に新作が読みたいな
196 :
ふら〜り:2010/08/29(日) 12:24:43 ID:0rqnRk8m0
>>スターダストさん
毎度ながら、バトルに劣らずこういう日常描写もお見事ですねぇ。眼鏡文芸少女や、エロスに
関して明るく積極的な男の子。どちらも実に好物ですぞ。学校、というか市民全体が光画部に
近いんですよねココは。だから学校でもハンバーガー屋でも、斗貴子のツッコミは変わらない。
>>NBさん(復ッッ活! 復ッッ活! お帰りなさいませ! 公約通りBC原作一巻、買います)
近年突然に言われ出した「カリスマ○○」ではない、古典的な意味での「カリスマ」ですね。特技
や能力とは全く別に、問答無用で魅了・畏怖させるもの。でもそれはやっぱり、実力があるから
こそ滲み出て来るもの。本人がそれを意識的に放出し、使いこなせば……ある種の魔法ですな。
スターダストさん、さいさん、NBさんと復活が続いて
ふら〜りさん嬉しそうだね
永遠の扉、番外編をブログでやっているんだね。
ふら〜りさんは読者の鑑だな
199 :
作者の都合により名無しです:2010/09/02(木) 10:27:27 ID:qCuIa8Ri0
NBさん新作期待上げ
200 :
作者の都合により名無しです:2010/09/05(日) 19:02:42 ID:ukROjFUG0
あげ
保守上げ
今月まだ一本も着てないのかw
tt
203 :
作者の都合により名無しです:2010/09/12(日) 19:41:26 ID:AddmvfI80
良くなったと思ったらまた不調か
204 :
天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 〜惑いて来たれ、遊惰の宴〜:2010/09/13(月) 20:19:27 ID:6rPOHaBO0
〜死闘開幕〜
サンレッドは予選の夜を―――正確には、風見幽香と初めて出会った瞬間を思い出そうとして―――
「…最悪だったな、ありゃ」
やめた。思い出すには、彼女の姿はえげつなすぎる。
美しい少女の姿でありながら―――どこまでも、怪物そのものを体現していた。
サンレッドといえど、認めなければならない。
あの時確かに、彼は恐怖していた―――それでも。
「それが、どーした」
逃げる気も、負ける気もない。
「どーするもこーするも…勝つしかねーだろ」
「さて…始まるわね」
風見幽香は少女のあどけなさを残す美貌に、どこか酷薄な笑顔を貼り付けたまま、入場門へ続く廊下を歩く。
そのしなやかな細腕に<何か>を抱えて。
「手間をかけた分ぐらいは、愉しませてほしいものね―――サンレッド」
ジロー達は、未だ戻らぬヴァンプ様とコタロウを待っている。
―――二回戦開始の声が響いてなお、二人は戻らない。
二回戦開始のアナウンスを、レミリア・スカーレットは十六夜咲夜、そして望月コタロウと共に聴いていた。
「―――あら。もうそんな時間?」
「ええ〜っ!?大変大変、早く戻らないと見逃しちゃうよ!」
「ですね…申し訳ありません。随分と時間を取らせてしまったようです」
「謝ることないよ。それより、急がないと試合が始まっちゃう!」
「はい―――咲夜、行くわよ…咲夜?」
―――吸血姫の従者・咲夜は、前回から引き続き、未だに鼻血を放出し続けていた。
「彼の前でだけは、いつになくしおらしいお嬢様…ああ、どういう事情なのだか知ったこっちゃありませんが―――
貴女という御方はどこまで萌えキャラなんですかぁ〜〜〜っ!」
「…行きましょう、コタロウ」
「…うん」
二人は、咲夜に一切目を向けようとせず、そっと立ち去る事にした。
「ね、ねえねえ、レミリアちゃん」
やるせない空気を打破しようと、コタロウはやや無理をした笑顔でレミリアに問う。
「レミリアちゃんは次の試合、どっちが勝つと思う?ねえ」
「…………戦闘力だけならほぼ互角。されど今、此処で闘えば風見幽香に分があるかと」
逡巡するように視線をわずかに泳がせて、レミリアは答えた。
「あなたの望む返答は当然<サンレッドの勝利>でしょうが…今のままでは、奴は負ける」
「え〜〜〜っ!?何でそんな事言うかなあ…」
「その理由は、まず一つ―――」
レミリアは、人差し指を立てる。
「第一試合でのダメージ…サンレッドは星熊勇儀との闘いで、勝利したものの相応の手傷を負った―――例え治療
を受けていても、ベストコンディションとはいえない。対して風見幽香は、無傷で切り抜けた―――この差は、かなり
厳しいものがあるでしょう」
「むー…」
正論すぎて、グウの音も出ないコタロウである。対してレミリアは、中指を立てる。
「二つ目の理由―――経験値。風見幽香はこの幻想郷にて、永き命の大半を闘争に明け暮れて過ごした怪物…相手
にしてきた連中も、いずれ劣らぬ化物揃い。それに対し、平和な川崎で、自分に比肩する敵もなく、ヒモ暮らしで毎日
だらだらと生きてきたサンレッドでは、潜ってきた修羅場の数も質も、余りにも違いすぎる」
そこまで語った所で、レミリアは締め括った。
「その差を覆すには―――相応のプラス・アルファが必要かと」
―――そして、入場門からサンレッドが姿を見せた瞬間、観客席から一斉に歓声が巻き起こった。
『さあ!東の入場門からやってきたのは真っ赤なアイツ!天体戦士サンレッドだぁぁぁっ!』
実況・文のボルテージも一気に上がる。
『幻想郷においては全くの無名!されど一回戦では星熊勇儀を相手に見事勝利を収めたダークホース!この二回戦
では果たしてどんな闘いを我々に見せてくれるのでしょうか!?―――おっとぉ!西の入場門から、あの女がやって
きたようです!』
闘技場に敷き詰められた砂利を踏み締めて、花々が化身したようなたおやかな少女が死地へと降り立つ。
『究極加虐生物・風見幽香!彼女の歩いた先には血塗られた道が出来る!一回戦では宇宙人・蓬莱山輝夜に対し
無傷で完勝!更なるルール無用の残虐ファイトに期待が高まり…ま…す…?』
文の声がどんどん小さくなる。気付いたのだ。
風見幽香が手にする<それ>を。
「て…テメエ…何のつもりだ、そりゃあ!」
レッドも驚愕を隠し切れず、怒鳴りつける。
「あら、怖い。か弱い女の子相手に、そんなに怒らないで」
幽香はそんなレッドとは対照的に、変わらぬ笑顔で答える。
「―――ちょっと試合を面白くするために、仕込みを入れさせてもらっただけよ」
彼女が手にしていたのは、巨大な十字架―――そして。
その先には、一人の男が手足を縛り付けられ、磔にされていた。
気絶しているのか、彼はぐったりとして動かない。
一体、何が起きたのか?
あの男は何者なのか?
場内がざわめく中、文は懐から手帳を取り出し、それに目を落としながらマイクに向けて叫ぶ。
『―――あの男性のデータがありました!彼の名はヴァンプ将軍…悪の組織フロシャイム・川崎支部リーダーであり、
サンレッドの宿敵にしてカリスマ主夫!得意なものは家事全般・特に料理の美味しさには定評があり、サンレッドも
しばしば馳走になっているとのこと!』
どうやって調べたのか。恐るべしは天狗の情報収集能力である。
『そんな彼を捕まえて、風見幽香は何をしようとしているのか!?第二試合開始前からいきなり血腥い暴力の気配が
濃厚に漂ってまいりました!』
「…人質のつもりか?コイツを助けたきゃ負けろってか!?つまらねー事しやがって!」
「ふふ…人質ですって?そんな下らない真似はしないわ」
幽香は笑う。
今まで張り付けていた花のような可憐な微笑みではなく、牙を剥き出しにした、肉食獣の笑みだ。
「むしろ逆よ、サンレッド。彼を助けたいなら、この私を倒してみなさい」
「あんだと?」
「誰かを守るための闘い―――ヒーローが最も力を発揮できるシチュエーションじゃなくて?」
幽香は言い放ち、轟然と胸を張る。
「宣言する―――あなたが私に負けた瞬間、ヴァンプ将軍はとてもとても、可哀想なことになるわ!」
どよどよと、会場中がざわめく。それにも構う事なく、幽香は続けた。
「サンレッド―――今のあなたが相手なら、三分もあれば倒せる。でもね、それじゃつまらないの…もっともっと、
強い敵と。もっともっと、危険な相手と…そうでないと、闘いに意味などない」
「何が言いてえんだ…!」
「全力すら越え、死力を振り絞るあなたと闘いたいのよ、サンレッド」
ドシャッ!と轟音と共に、十字架が大地に突き立てられた。
同時に大地が割れ、無数の蔦が怪物の触手の如くに蠢きながら湧き出し、十字架ごとヴァンプ様に絡みつく。
「うふ…これで、私を倒さないことには、彼を救えなくなったわね?」
すう―――と。
手にした日傘を持ち上げ、穂先をレッドに突き付ける。
「ボヤボヤしている暇はないわよ、サンレッド…あなたの肩には、彼の命がかかっているのだから」
『な…なんという非道!なんという外道!強い相手と闘いたい―――ただそれだけの為に善良なる悪の将軍を平然と
<可哀想な目>に合わすつもりのようです!まさしく幻想郷史上最低最悪最凶・最も卑劣なド腐れ妖怪!こんな悪い
奴がいたなんて!審判の四季映姫様、彼女の行為は閻魔的に赦されるのでしょうか!?』
「―――問題はありません。彼女の行為は<白>です」
厳かに、映姫は答えた。
「そもそも妖怪が人―――この場合は怪人ですが―――を襲うのは当然の事。此処、幻想郷にいる以上は、常にその
危険性を認識しておかねばなりません。そう…ヴァンプ将軍は、少しその自覚が足りな過ぎた」
『し、しかし…試合に関しては、反則ではないのでしょうか?』
「ヴァンプ将軍の命を盾に敗戦を迫る、というのならば反則ですが…むしろ彼女はサンレッドにハッパをかけるために、
このような行為に及んだ。ならば、反則とまでは言えません」
「よって―――風見幽香は白!」
「白でも黒でも、どっちでもいーよ」
驚くほどに抑揚のない声で。
「どっちでも変わらねー…その女が今から、俺にブチのめされるってー未来にはな!」
サンレッドが拳を、パキパキと鳴らす。
瞬時に、噎せ返るような熱気が周囲数キロに渡って放たれた。サンレッドの怒りに呼応し、彼の太陽闘気(コロナ)が
赤く、熱く燃え上がっているのだ。
「―――俺の拳がおかしくなるまでボコってやるよ、風見幽香!」
「―――私の頭がおかしくなるまで愉しませて頂戴な、サンレッド!」
試合開始の宣言を待つことなく、両者同時に地を蹴る。
その勢いのまま繰り出されたレッドのキックを、幽香は愛用の日傘を盾に防ぐ。
レッドは止まらない。猛獣の咆哮を上げて烈火の如く攻勢をかける。
その全てが紙一重で避けられ、或いは傘で受け止められた。
「乱暴ね。荒っぽいだけの男は嫌われるわよ?」
「ちっ…」
「女性との死闘(デート)はもっと優雅に―――ね!」
幽香の傘が舞い踊るように閃く。本能で危機を感じ取り、レッドは素早いバックステップで幽香から離れた。
「花葬―――<鏡花水月>」
視認すら不可能な、閃光の如き突きが放たれた。
本能で身を捩り、直撃は防いだものの左肩を切り裂かれ、鮮血が真っ赤なバトルスーツを更に紅く染める。
「よくかわしたわね。でなきゃ、心臓を貫いていた所よ―――続けていくわ」
「花葬―――<百花繚乱>」
複雑な軌道を描き、巻き起こる砂埃を断ち切って必殺の斬撃がレッドを襲う。
今度はかわさず、敢えて懐へと飛び込んだ。
全身が刻まれ、打ち据えられるのを無視して、渾身の当て身を喰らわせる。
―――だがそこに、既に幽香の姿はない。
攻撃をいなした幽香は宙に舞い、更に追い討ちをかける。
「花葬―――<落花狼藉>」
落下する勢いと共に、全身を回転させながら生み出した遠心力を加える。
傘を斧刀に見立てて、サンレッドの脳天目掛けて真っ直ぐに振り下ろした。
衝撃が大地を砕き、揺らす。
「ねえ…いつまで遊んでるつもり?」
退屈そうに傘をくるくると、狂々(クルクル)と廻しながら、幽香が挑発する。
「あの星熊勇儀をも倒したあなたの真の力…早く見せてくれないかしら?」
「慌てんなよ…せっかちな女は嫌われるぜ?」
割られた額から止め処無く流れる血を乱暴に拭い、レッドは荒れた呼吸を整える。
「言われなくてもやってやるよ…全力で…いや、死力でな!」
瞬時、サンレッドの全身が太陽の如き真紅の炎で包まれた。
「強火で直火で、正義が燃える―――!」
紅く煌く焔(ひかり)と、荒れ狂う灼熱の風の中、サンレッドが変化していく。
額には、太陽を象った冠(サークレット)。
背には、太陽の紅き炎を宿す外套(マント)。
バトルスーツを、更に強固な追加装甲が包み込む。
朝陽のようにキラキラ輝き。
夕陽のようにギラギラ燃えて。
その姿は正しく日輪の化身にして、紅蓮の闘神!
「天体戦士サンレッド・飛翔形態―――<プロミネンスフォーム>!」
サマサさんキター
投下完了。前回は
http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/1153.html 間がむっちゃ開いちまいました…
さて、VS風見幽香です。レッドさんは彼女を倒し<真・究極加虐生物>の二つ名を手にできるのか?
そしてヴァンプ様は可哀想な目に合わずに済むのか!?
彼女の使う技の元ネタ、分かる人はいるかな…西尾維新ファンの方なら多分…。
>>173 規制うぜーですよねー。え?見てない試合が?ははは、何をおっしゃる。
第十試合とか、命を振り絞るつもりで書いたんすよ、もうw
>>174 秋…今年は、来ないそうですよ…(汗)
しかし皆さん、ゆうかりんへの評価が高いなーw
>>ふら〜りさん
策略というよりは、レッドを発奮させる材料でした。ドSの戦闘狂ではあっても、卑怯者ではないので。
人質作戦はやらなかったわけですが…レッドさんはヴァンプ様と何だかんだでマブダチだから、意外と
効いたかもしれませんね。
>>スターダストさん
ツッコンだら負けだ…負けだ…しかしツッコもう!
ガウンの貰い損とか俺得すぎるでしょうがもう、チクショー!
この演劇部はもうダメだ…ダメすぎる!チクショー!
>>NBさん
我が同期生帰ってキターーー!お帰りなさいませー!
クロノスに敵対する老獪な面々、そして彼らを喰らう勢いのカリスマクリードさん…
原作に足りなかったのはこういう描写なんだよ!
こんなクリードさんなら、銃を鈍器と素で勘違いしてるような原作トレインには負けなかったろうに…はあ。
>>208 はいサマサが通りまーす。今サマサがここを通っていまーす。
(地獄のミサワ風に)
お疲れ様です
プロミネンスフォームってレッドの2番目くらいに強い形態でしたっけ?
それでも幽香に通じるかな? 相手は最強に近いレベルだからなあ
レッドさんの勝ち名乗りに期待しております
212 :
作者の都合により名無しです:2010/09/13(月) 23:41:08 ID:grNI8HxG0
NBさんとサマサさんってそういえば同期生だよね。
もう5年くらい経つのかな?
なんにせよNBさん復活・サマサさん健筆と良いことだ。
書かれなかった試合にも好試合が多そうだけど、
レッドさんがあくまで主役だから彼の活躍がこのSSの醍醐味。
でもフォーム変えても相手が相手だからなあw
幽香が自分から身を引くとかじゃない限りは厳しいかもね。
レッドさんは馬鹿なだけに無駄に頑丈だから
それだけが勝てる見込みかな
第五話 堕天使の暴走
阿久津の脳内にあるものは怒り、完全にキレている。
「テメェ〜、文部省公認の特別待遇児だっつったってよぉ〜、俺だって高校なんざあ教科書一つ教えない様な非義務教育のガッコーなんざ行かなくてもなぁ
大学入れるんだぜ〜。あ!? 聞いてんかオイ。ハーバード行けるぜ俺はよぉ」
「アンタ金無いからアメリカ行けないって前言ってたじゃない」
図星を刺され押し黙る阿久津。彼は別に文部省に認定された待遇児では無い。彼には受けられない理由があるのだ。
血管を浮かび上がらせて神埼に殴りかかる。
「オイオイ、小等部の頃からの付き合いじゃあねーかよ。そーいう人を小馬鹿にする態度は良くないなァ〜
いくらお前でもよぉ、ぶぶぶ、ぶち殺すぞ確実によぉ!?」
しかし阿久津の拳は神崎には届かない。彼の拳はもう一方の男の右手によって止められていた。
鬼塚である。
「ちぃ〜っとばかし暴れすぎだぜお前…」
その表情には怒りの色を見せながらも笑みを浮かべていた。
そして阿久津も鬼塚の顔を見て憤怒の表情を浮かべる。血管は更に額に浮き上がり、中から血が噴き出すぐらいに膨らんでいた。
教師と生徒の間柄で見せる表情とは到底思えないその顔。だが完全にキレている阿久津の眼は感情と共に熱くなっている訳ではない。
むしろどこか冷めている様に感じるその両の眼。嘗て鬼塚が幾度か体験した事のあるある種の『恐怖』と言える眼光。
殺し合いでもおっぱじめる様なその眼光を直視し、やがて鬼塚は思い出す。阿久津の醸し出すその『気』が、その鋭い眼光がどの様なものなのかを。
『そうだ! コイツの眼…』
「どうした鬼塚、かかって来ねえのかよ。それとも『教師だから校内暴力反対ですぅ』なんてこと今更言わねえだろう?」
鬼塚は阿久津に向かって攻撃をしないのではない。出来ないのだ。眼の前にいる品行の悪い中学生を殴る事が出来ない。
今、彼は一種の恐怖を感じている。それは今までに『二度』感じた恐怖。どちらかが死ぬかもしれない命のやりとりになったかもしれない男達の眼に酷似している。
特に『二度目』に対峙した男の眼光に。
だが眼前にいるこの男はその二人目の男とは関わりは無い筈、この男は嘗ての暴走天使二代目頭の阿久津淳也の弟というだけなのだから。
だが、阿久津の出す殺気は阿久津淳也とはまるで違う殺気。鬼塚が委縮した『二人目の男』に驚く程に似ている殺気を出す男。
阿久津薫は余りにも似すぎていた。初めての体験は、そう、『鬼爆』の爆の字、弾間竜ニと初めて会った時の、死さえ予感させた圧倒的な『恐怖』
この阿久津薫は、二度目に会った男に似ていた。そう、スティードを乗り回していた金髪の『あの男』に
ゴスッ。打撃音が響く。鬼塚は一瞬思考が停止する。
先程まで五月蠅い程に声を上げていた阿久津が打って変わって静かである。完全にキレているこの男は、頭から冷水をぶっかけられたかのように冷静であった。
冷静、という言葉は適切ではないかもしれない。その眼は冷徹、今入れた一撃で鬼塚がどれ程ダメージを受けたか観察する様な眼。
狩人の様な眼である。
「クソ、コイツはヤバイ…ぜ」
鬼塚がその鉄拳を阿久津にぶち込む。ねじり込む様に左拳を阿久津の右頬に叩きこみ、押し倒す。
「うわ〜! 何をしとるんだ鬼塚ァアア〜〜〜!!」
内山田教頭が乱闘を止める為に鬼塚に近付く。
「やめるんだ鬼塚君。キキキ君はなな何をしでかしてるのか分かっているのか? え?」
滝の様な汗を掻きながら鬼塚の制止に入った教頭だったが、まさか彼は後ろから生徒に殴られるとは思っていなかっただろう。
ゾク・・・・この全身の凍りつく感覚、総毛立つ程の戦慄、まるで『狩る側にいた者』が『狩られる側の者』に変わる程の衝撃。
教頭は何も知らぬまま裏拳を後頭部に受け、断末魔さえ上げる事無く卒倒する。完全に気を失うまでの間に教頭は走馬灯の様な映像を見ていた。
最近父親である自分に全く関心を示さず肌を黒く染めて少し不良学生の様になっていく愛娘、好子と、ゴキブリの様に娘の身体に近付く鬼塚の姿だった。
周りにいた3−4の生徒達は勿論、騒ぎを聞きつけて廊下に集まった袋田教諭や桜井教諭も驚愕していた。
阿久津薫、その男の真の恐ろしさに、彼等は触れてしまったのだ。そして鬼塚も焦りから冷や汗を流す。
この男は、自分の想像以上だった。まさか『あの男』にここまで酷似した者が生徒だとはこの現代医学を侮辱する様な生命力を持つ鬼塚も予想しなかった。
阿久津の至って冷静なその眼を見ると思い出す。スティードに乗っていたあの『金髪の男』を…
この眼は、そう、悪夢の中に迷い込んだ者を決して逃がさない眼である。逃げても逃げても追っかけてくる悪夢の中に棲むバケモノ。
追われる者と追う者の立場を逆転させる力を持った者。イギ―を追いかけた『ペットショップ』をイメージしてもらうと分かりやすい。
鬼塚は同じ過ちを繰り返していたのだ。嘗て湘南で犯した過ち、そして今回また犯してしまった。
予想だにしていなかった。鬼塚はまた、知らぬ間に、『死神』を追いかけていたのだ。
阿久津が、血管を浮かび上がらせながらも笑みを浮かべ、右頬を殴られたときに切った口から出た血を舌で舐める。
その背後には鎌を持った、『堕天使』が立っていた。これが唯一、『金髪の男』と阿久津の相違点。
だがこの眼は、『アメリカンドリーム』という言葉が好きだった、求め続けた友のあたたかい腕の中で最期を迎えた男
水樹・スミス・夏希。『ナツ』と同じ、恐ろしく、どこか悲しい眼をしていた。
とあるイタリアのギャングの『悪魔』の名を冠すボスが言っていた言葉がある。
『恐怖とはまさしく過去からやってくる』と。鬼塚にとってのこの七年前の恐怖、そして悲劇は生涯忘れる事の無い体験。
だが、鬼塚はこの恐怖を抱きながらも、退かなかった。恐怖に敗北する事は無かった。
つまり……
「阿久津、この程度かよ。ほおら、おんなじように俺にもその拳を叩きこんでみろやベイベー!」
「ああ、殺してやるよ。鬼塚」
便所で用を足し、流す時に出した便を見る様に鬼塚を見つめる阿久津。
不良学生は教師の事を『先公』などと呼び、誹謗中傷をしたりしているが、今の阿久津はその類いでは無い。
教師という者を、『対等な存在』として見ていない。自分以下の者。またまたとあるイタリアのギャングのボスの言葉を借りれば
『便所に吐き出されたタンカス』と同等。クズ以下の以下の以下。
よって特別この鬼塚に特別な感情が湧く事も無い。ただ、そのクズ以下の教師に対して、『憎悪』『復讐心』この二つが阿久津に教師を殺すよう促す。
「殺す。お前も、この学苑にいる全教員も、ふんぞり返ってやがる女理事長も」
次第に阿久津の表情が変わる。額に浮き上がった血管は消え、眼に光が無くなり、恍惚の笑みを浮かべ、
そう、満面の笑顔で鬼塚を殴る。蹴る。
「殺してやんぜてめぇええ!? おアァアッ!!」
鬼塚は気付いているのだろうか。今口にした言葉、そして右ストレートを阿久津に打つモーション。
それら全てが嘗てナツとの壮絶なタイマンをした時のシチュエーションと同じであった事を。
「見た事ねえよ、こんなタイマンはよぉ!」
村井が驚愕する。こんな喧嘩は彼にとって初めて見る体験であった。見ているだけで震えが止まらない。
だが、このまま傍観する訳にはいかない。全員身体を張ってでも止めなければ、
本当に死人が出る事態になってしまう。
「これ以上は本当に拙い! 本当に止めなきゃあヤバいぞ!!」
菊池が号令を掛けると、周りにいた、生徒、教師、関係無く全員が二人のタイマンを止めに入った。
幸い二人は得物を持っていない為、間違っても刺されるという事は無いが、それでもこの喧嘩を止める事は至難の業であった。
「マジで止めろって阿久津ゥウ!!」
村井、藤吉、草野の三人が阿久津を抑えつける。だが、それでも彼は止まらない。
右足を抑えていた草野を振り飛ばし藤吉を殴り付け、村井に頭突きする。
「ぐああ…」
村井に意識を取られていた阿久津は完全に虚を突かれ、鬼塚の拳が阿久津の顔面に直撃した。
ポタリポタリと廊下に鼻血を垂らす阿久津。だがその殺意はまるで衰えていなかった。
「この鬼塚英吉様がよ〜、チンポに毛が生えたばっかのガキによぉ、ぶっ殺されると思うかぁ?」
ここまで追い詰められながらも阿久津はバタフライナイフを使わなかった。
これは彼のプライドである。格下の雑魚をわざわざ刃物を使って刺し殺す事は、自分が刃物が無ければ格下相手に勝利する事が出来ないという事になる。
よってクズ以下の格下相手にナイフを使う事が阿久津の誇りを自動的に傷つける。阿久津はそれを本能的に分かっていた。
「くそ〜、この袋田はじめの言う事を聞けぇ〜!!」
先程までビビりまくっていた袋田教諭がその筋骨隆々の肉体の全身を使い、二人の間に入る。
つまり、彼は今二方向から鉄拳を受けてしまった形になる。
互いに殴り合いが激化し、鬼塚も、阿久津も、額から夥しい程の血液が流れ、『なんでコイツラ生きてんだよ』と言いたくなる様な状況であった。
二人とももう身体にガタが来ており、動きも鈍っていた。しかしそれでも止まろうとしない二人。だが、闘いは終了する事になる。
「もうやめて!! 鬼塚君!!!」
動きの鈍った鬼塚に冬月が半ば胴タックルを仕掛ける様な勢いで鬼塚を押し倒す。それほど必死だったのだろう。眼からは涙が溢れている。
「ふ…冬月ちゃん…」
一方男子生徒達の必死の抑えにより阿久津もようやく動きが止まった。こうして決着がつかぬまま鬼塚と阿久津の第二戦が終わる。
翌日、包帯を顔面にぐるぐる巻いて理事長室で正座している鬼塚の姿があった。
内山田教頭に怒鳴り散らされ、シデムシ、バクテリア、アメーバ、プレデタ―とおよそ人間に付けられるあだ名に相応しくないあだ名を呼びつけて罵倒したりされたが、
先に鬼畜クラブを使って鬼塚を攻撃したのが阿久津だという点を重視し、桜井理事長は鬼塚を減俸処分とした。
というよりも鬼塚に是非教師になってほしいと頼んできたのがあの理事長なのだから生半可な事では鬼塚のクビを切る事は無いだろう。
「な〜〜〜!! 理事長!! この学苑の癌を、エイズを、ここに留めさせておくつもりですかぁ! こ、これでは……
学苑が鬼塚シンドロームでパンデミックがぁ〜〜〜…」
と、ムンクの叫びの様な顔をして鬼塚に近付き、仕舞いには『よくも好子を〜〜〜』とワンダーフォーゲル部元主将の力を鬼塚相手に存分に発揮した。
一方校内での大きな事件を起こしてしまった阿久津は二週間の自宅謹慎を受けてしまった。
薄暗い部屋で、指を噛む。初めての屈辱。邪魔なカスに鬼塚の殺害を邪魔されたのだ。
阿久津は至って冷静であった。だがその表情が阿久津の真の怒りであった。
その夜、コンビニの前を通りがかっていた女性を何人かのバイクに乗ったチンピラが囲んだ。
「おねーさーん、今から俺らと遊ばなーい?」
「さすがタクさん。すんげー美人ゲット」
最初に女性に声を掛けた男がサングラスを外して自己紹介をする。
「俺渋井丸拓男。略してシブタク。へへ…付き合ってよおねーさん」
「タクそればっか」
「まー本名だし」
「こ…困ります…」
思いっきり失敗しているナンパを無理やり実行しようとしているシブタク達だったが突然の携帯の着メロで一時中断する。
「何だようるせーな。もしもし」
「おい、タクか……これからよ、『メンバー』集めてくれるか」
「ちょ…リーダー? なんすかいきなり!?」
シブタクが返答する間も無く電話は切れる。
「どうしたんだ? タク」
仲間がシブタクに問う。シブタクは非常に焦った状態で叫ぶ。
「急げ、リーダーから命令だ。『ヘルエンジェルズ』全員集めるぞ。じゃあねーと俺達リーダーに下手すりゃあ殺されるからよぉ!!」
シブタク達は女性をその場に残し、吉祥寺の闇夜に消えていった。
やっと規制が解けましたが今回は普段上げて無かった作品なので忘れられてたらすみません。
ふら〜りさんの書き込みを見ていたら吉良吉影も書きたくなったりします。
これから夜勤なので感想は明日付けます。『といってこの前は出来なかった(涙)』
219 :
ふら〜り:2010/09/19(日) 19:50:32 ID:DAOCxDzi0
>>サマサさん
なるほど、こういうことか。悟空というより九十九ですな。全力のアンタと勝負がしたい、と。
にしても、しばしば手料理をご馳走になって? その人が強敵に捕まって? その救出の為に、
流血しつつ滅多に見せない本気モード? これでヒロインじゃないとか言っても聞きませんよ私ぁ。
>>ガモンさん(ガモンさんの吉良か……これはまた独特の怖さがありそう)
>品行の悪い中学生を殴る事が出来ない。
いやあ完全に忘れてました。てっきり、ダブリ済みの高校生ぐらいのつもりでしたが、中学生
なんですね彼、及びその周辺。刃物を使わない理由の辺り、そういうプライドがあるのはまぁ
いいんですが、やはり恐ろしいことに変わりはなく。今度はまた、何か大きく仕掛けてきそう。
ガモンさんの久しぶり。
シブタクってデスノのあれだったっけ?変なところから持ってくるなあw
いまどきの中学生は危ないの多いから鬼塚も苦戦か。
221 :
作者の都合により名無しです:2010/09/19(日) 23:51:14 ID:/fA/KGkn0
ガモン氏は復活というほど間は空いてないか。
それでもちょっと空いたから嬉しいね。
GTO読んだ事がほとんど無いけどここのSSは全て目を通してるんで
なんとかガモンさん、この作品を完結してやってください。
222 :
杉本家の悲劇:2010/09/22(水) 00:39:38 ID:UBHMHk8r0
1984年のM県S市の杜王町に比較的に見て大きな家があった。その家は煙突が三本付いていた。
この杜王町はとても美しい町で、地元に住んでいる人間もまるでピクニックにでも来ている気分だという気持ちになる。
特に真夜中はとても静かな町であり、この晩も、満月が陰り無く見える。よく晴れた月夜だった。
この家の家主は『杉本』夫婦と一人娘、そしてペットの犬が一匹。どこにでもある平凡な家庭である。
今晩は近所付き合いで親しみ深いとある夫婦が急用であるらしく、家を抜けることになり、今晩はその夫婦の間に産まれた、
4歳になる幼子をこの杉本家で預かることになっていた。
家の一階では夫婦が、そして二階では娘の杉本鈴美、そして4歳の幼子が眠っていた。
ふと、幼子が眼を覚める。
「鈴美お姉ちゃん。」
そう言って眠っている鈴美を揺り起こす。この様な真夜中では4歳の子は一人で歩く事も出来ないのだろう。
「う〜ん……どうしたの露伴ちゃん?」
鈴美は多少寝ぼけた顔で露伴と名付けられた幼子を見る。
「おしっこ!」
露伴が鈴美の手を引っ張って叫ぶ。将来我を通し過ぎて人の話を聞かなそうな高慢な男になりそうな顔をしているが、
4歳であればまだあどけない、可愛い盛りの少年であった。
「しょうがないわね。お姉ちゃんが一緒に行ってあげる」
こうして鈴美は露伴の手を引いて、一階にあるトイレに向かった。
真夜中に家の中を歩いていると鈴美は『違和感』を感じた。
嫌に静かである。別に真夜中であれば外にある程度通っている車のエンジン音等を除けば静かである。
この時代、夜に働いている店等、都会まで行かなければそうは見つからない筈だし、こんな時間に売春婦もいないだろう。
こんな常識は誰もが知っている。4歳児も知っている。
だが、この違和感のある静けさは妙に気になっていた。
「鈴美お姉ちゃん? 顔色が悪いよ」
「だ、大丈夫よ露伴ちゃん。こんなに暗くても全然怖くないわ!」
鈴美は強がってみせた。だが、彼女達は知らない。
既にこの家に、殺人鬼が潜んでいる事に。
223 :
杉本家の悲劇:2010/09/22(水) 00:42:07 ID:UBHMHk8r0
「フフフ、このフック付きのロープでなんとか煙突から侵入する事が出来たな…」
家の一階、リビングに一人の男がいた。男の年は十七〜十八歳。高校生か大学生かといったところである。
少なくとも、この家の人間ではない事は確かである。
男は爪を見ている。早く爪を切れよと思うくらいに男の爪は伸びていた。
男が爪を切る事を長い間放っていた訳ではなく、ここ最近彼の爪の伸びがとても速いようだ。
そのおかげかどうかは知らないが、最近この男は妙に『ハイ』になっているらしく、誰にも止められないと自負出来る様な、
不思議な高揚感に包まれていた。
「フフ、勾当台を歩いていたら、偶然道端で見つけてしまった。美しい『手首』だ…是非、触ってみたい……」
男は微笑を浮かべて寝室へ行く。その下半身に奇妙な光景が見える。起っているのだ。
声を荒らげては言えない言葉だが、『勃起している』。彼は少し昔の事を思い返していた。
『あの時も手首の所だけ《切り取って》部屋に飾っていたなぁ……フフフフフ』
男は寝室に着く。そのベッドの上には三十〜四十歳の夫婦が眠っていた。これはこの男にとっては予想外のことであった。
「クッ当てが外れたか! あの娘はどこで寝ているんだ?」
一方、鈴美は露伴がトイレで用を足している間、扉の前でずっと待っていた。
早く出てこないかな等と考えていると両親の寝室の方からピチャリ ピチャリと液体が滴っている音が聞こえた。
普段ならそんな小さな音は聞こえにくいが今夜はとても静かで、二十メートル先で小石を蹴る様な音も聞こえる程に静寂な空気に包まれていた。
すると露伴がトイレから出て、一回あくびをし、見るからに『眠い』と訴える表情で鈴美を見る。
鈴美は近くの網戸を開けて、外を確認したが、雨は降っていない。変わらず、『星』のよく見える空だった。
「お姉ちゃん、眠い……」
寝惚けた顔で鈴美に近付く露伴。その鈴美は少々顔が青くなっていた。
224 :
杉本家の悲劇:2010/09/22(水) 00:44:22 ID:UBHMHk8r0
『なんだろう…この違和感…』
次第に不安にはなっていたが、網戸を開けっぱなしにした為、部屋に入ってきた飼い犬、アーノルドが鈴美に近付く。
「アーノルド! 勝手に入ってきたら駄目じゃない」
と、口ではそう言うも、鈴美はどことなく安心していた。
アーノルドが近くにいれば何も怖くは無いとすら思えた。大きな番犬である。暗闇でもベッドの下に手をやると、
『ククーン』と甘えて手を舐めることもある。
愛犬アーノルドがいれば安心だと彼女は思っていた。それぐらいに鈴美にとってアーノルドは頼もしい存在だった。
「露伴ちゃん。ちょっと私お父さんとお母さんの寝室を見てくるから、露伴ちゃんはトイレの中に隠れていて」
「へ!?」
露伴は何も分からないままに鈴美にトイレの中に入れさせられた。
「いい? お姉ちゃんが出て良いよって言うまで出ちゃあ駄目よ!」
そう言って鈴美は寝室に行こうとしたが、つい先程まで近くにいたアーノルドがいなくなっている事に気が付いた。
ピチャ! ピチャ!
心なしか落ちてくる水滴の量が多くなっている様に感じる。
怖くは無い。アーノルドがいるから全く怖くは無い。
しかし彼女の中にはひとかけらの不信感があった。例えるならば宿便が腸に溜まってしまったような感じである。
『なんでパパとママはあの音に気が付かないのだろう…』
そんな事を考えていると、時間は数十分は過ぎてしまっていた。
流石に不信感が募って来たので勇気を振り絞り、鈴美は両親の眠る寝室を見に行く事にした。
225 :
杉本家の悲劇:2010/09/22(水) 00:47:09 ID:UBHMHk8r0
階段近くにあったトイレのある廊下を歩いてリビングに辿り着き、その薄暗いリビングから寝室へ続く廊下に出た時、
彼女に初めて、疑いの無い『恐怖』が襲いかかって来た。
ピチャ! ピチャ!
寝室に向かえば向かう程その音は大きくなる。寝室に来た時、少女は悲鳴を上げることすら出来なかった。
寝室の壁のコート掛けに、先程まで鈴美の近くにいた愛犬アーノルドが、死んでいた。
首を斬られて、ぶら下がって死んでいた。色鮮やかな血が滴っていた。
ピチャピチャと液体を垂らしていた音は……
恐怖で顔面蒼白になる鈴美。声を上げることすら出来ない。ベッドを見ると両親がベッドから首だけが落ち、切れ目から血がピチャピチャと滴っていた。
極度のショックである。脳内にある物は『恐怖』そのものである。ああ、自分はこれから死ぬのね、という考えすら浮かばない恐怖。
すると突然ベッドの下から、『手』が出てきたのである。その手は鈴美の足を掴み、鈴美を転ばせた。
「いや〜〜〜!!!!」
生まれて初めて産声を上げる赤ん坊の様な声を発して鈴美は身体をのけ反らせようとする。
しかし『手』はより強く鈴美の足を引き、やがて、鈴美の左手を掴むまでに至った。
ドドドドドドドドドド
姿が見えないことの恐怖。加えてその男の発した言葉。
「おじょうちゃんの手ってスベスベしててカワイイね。クックックッーーン」
匂いを嗅いでいる。鈴美の手の匂いを嗅いでいるのだ。
ここまで来て鈴美はようやくその『手』の人間を知った。
年格好は十八ぐらいの学生。だが、その顔は到底普通の学生等が見せる表情では無かった。
「両親も既に殺したぞ」
あまりにもリアルに響くその言葉。夢では無い。自分はこれから殺されてしまうと。
226 :
杉本家の悲劇:2010/09/22(水) 00:51:30 ID:UBHMHk8r0
分かってしまったのだ。余りにもリアルで、絶望に包まれたこの空間で。
「きゃあぁ〜〜〜!!!」
求め続けた美少女の手を持ち、恍惚の笑みを浮かべる青年。
「君の名前は…杉本鈴美…だろう? さっき煙突から二階に入って一階に下りて、リビングで君の身分証明書を見たんだ。
フフゥ〜〜〜…気持ちが良い〜〜……こんなにも滑らかで…暖かいなんて、ホンモノは違うなぁ〜〜〜」
本当に気持ちよさそうに鈴美の手に頬を擦り合わせている。最早狂気の沙汰である。
「わたしはね…子供の頃レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナリザ』ってあるよね? その絵を画集で見た時に…下品なんだけど、
勃起……しちゃってね…フフフフフゥゥゥ〜〜〜〜〜……『手』の所だけ切り抜いて、しばらく………部屋に飾っていたんだ。
君の手も……切り抜きたい……」
男は鈴美の手をペロペロ舐め始めた。しかしそれは愛犬アーノルドにされる行為とはまるで別。
この男は、抑えきれないのだ。自分の中にある欲情と…殺人衝動が。
鈴美は掴まれていなかった右手を男の顔面に突き出す。運良く掌が男の眼に当たり、数秒程の時間稼ぎにはなった。
「うっ」
少々の痛みと衝撃で咄嗟に両手で眼を抑えてしまった青年。その隙に鈴美は逃げた。
リビングに出ると、そこには露伴がいた。
「ろ、露伴ちゃん! どうして出てきたの!!」
「だ、だって鈴美お姉ちゃんが叫んだから……」
居ても経ってもいられなくなり、彼はトイレから飛び出してしまった。
「露伴ちゃん。ここにいたら危ないわ! 逃げて!!」
そう叫んで鈴美は露伴の小さな体を持ち上げて、大切に抱き、裏口の窓を開けて露伴を家の外に出した。
そうした後で窓の鍵を内側から閉め、家に戻って来れない様にした。
「鈴美おねえちゃああん!!! 開けてエエエェェ!!!」
露伴は涙ながらに頼んだが、鈴美は窓を開けない。
「逃げて露伴ちゃん!! こっちに戻って来ちゃあ駄目ぇ!!」
露伴には鈴美の声が聞こえていたが、それでも窓を開けて欲しいと希う。4歳児の男子には、心を許せる人が必要なのだ。
しかし、鈴美の背後から忍び寄って来た人影。それを遠目に目撃した時、彼は、この4年間の人生で培ってきた物を全て無くさざるを得なかった。
四つん這いで鈴美に近付き、鈴美に馬乗りになり、彼女の腕を取る。
幸か不幸か。青年は鈴美に夢中で露伴には気が付かなかった。
「露伴ちゃん、逃げてー!」
搾り出す様に声を出す鈴美。その声を露伴は聞こえたのかどうかは今となっては分からないが、
この時、露伴は涙ながらに逃げた。4歳という幼さで、命の危険にさらされてしまったのだ。
露伴はただ本能だけで逃げた。言葉を失くした赤ん坊の様に泣き叫んで逃げた。
227 :
杉本家の悲劇:2010/09/22(水) 00:53:25 ID:UBHMHk8r0
「そう、これでいいの……これで、ろ…はん……ちゃ…」
彼女の言葉はそれ以上続かなかった。
ドドドドドドドドドド
彼女の背中には、惨たらしく、普通では考えられない程に深く抉れている様な傷、そして夥しい程の血を出し、彼女は死んでいた。
一方露伴は道路に出た直後に警察に保護された。その時、駆けつけた警官に彼は立った一言だけを繰り返して泣いていた。
『鈴美おねえちゃんが窓から逃がしてくれた』『鈴美おねえちゃんが窓から逃がしてくれた』
一方青年は手に持っていたナイフで、鈴美の手首を斬ろうとしていた。
「杉本鈴美ちゃん。わたしの…『吉良吉影』の家に…来てくれますね?」
人が見れば身震いするようなその笑顔。その顔は、天国を見たかのように高揚感に満ち溢れていた。
「フゥッ〜〜〜…」
何度も、何度も頬ずりをしたり、舐めまわしたりした後にいよいよ手首を斬ろうとしたその瞬間。
闇夜の静寂を破る。サイレンの音が鳴り響く。
今回、吉良吉影の犯行は『最初の犯行』であった。何も考えずに、女性の手首を持ちかえろうとした。(最低限指紋は残さない様に靴下と手袋は付けていたが)
手首を斬って現場から退散する前に手の味を知り、快感に浸ってしまったのが彼の失敗である。
彼はもう彼女の『手首』を斬っている暇は無くなってしまった。
ここで自分が犯人であると繋がってしまう禍根は全て断っておきたい。何故ならば彼は、この恐ろしい殺人衝動に駆られながらも、
『植物の様に平穏な人生』を望んでいるのだから、証拠を残していてはならないのだ。
吉良はリビングの食器棚を倒し、タンスを開けてから靴を裏口へ持ってきて、底から立ち去った。
その後駆けつけた警察は、現場の状況から見て物盗りの犯行の可能性が高いとし、捜査を進めていたが、結局その後十五年、手掛かりは見つからない事になる。
吉良は裏口から出た時に、ズボンに泥が掛かっていた事に気付く。
「ん? あの家は庭に水でも巻いていたのか?」
家に帰ってから吉良はまじまじとズボンに掛かった泥水を見た。
「まあ大丈夫だろう。こんなもの洗えばすぐに落ちるし、警察はこんなことからこのわたしを見つける事は出来ない」
と、余裕たっぷりに吉良は思った。
その後十五年が経ち……
当時四歳だった露伴はプロの漫画家となってまたこの杜王町に帰ってくる。幽波紋『ヘブンズ・ドアー』と呼ばれる超能力を習得して。
そして吉良吉影も幽波紋『キラークイーン』の能力により、この十五年で47人の女性及び自分に関わった者を男女問わず殺した。
杉本鈴美はその無念から自縛霊となってしまい、この杜王町で『生きている者』が勇気と誇りを持って、吉良吉影を追いつめてくれるのを待っている。
やがて、杉本鈴美と岸部露伴は再び出会うことになる。そして、彼女が長年待ち続けていた。吉良吉影を追う者も現れた。
その首筋に星形のアザを持つ血統の一族が…
十五年前のあの真夜中に、杉本鈴美は空を見た。吉良吉影はズボンに着いたある物を見た。
ある屋敷に二人の人間がそれぞれ別のものを見たとさ。
青年は泥を見た。少女は星を見た。(フレデリックラング・ブリッジ『不滅の詩』のパロディ)
という訳で吉良吉影で読み切りを書いてみました。
あまり吉良の個性や本性を書けなかった気もしますが……
機会があればディオ、カーズ、DIO、ディアボロも書いてみたいです。(六部、七部は未読)
前回からそうですが、トリップ付けてみました。
気付けば過去最高の文の量になったりしています。
一応原作に違わないように気を付けましたが、所々が間違っているかもしれません。
>>ふら〜りさん
ゾーマの性格は本編とは大分違うかなと思ってしまったんですが、まあこの様な大魔王もいても良いかなと思いまして。(オイオイ)
彼と吉良の相違点を上げるとすれば、ゾーマは観戦、或いは自らが好んで戦うのに対し吉良は自分が絶体絶命に追い込まれるまで、
決して戦わないところですね。
阿久津の場合、このまま刃物を使わせちゃうと格が下がるかなと思ったのでこうなりました。
>>サマサさん
宿敵であり、この作品の癒し系キャラ達の元締めの最高の主夫ヴァンプ様が人質に!?
そしてレッドさんもそれを見て怒りにも似た感情を見せ、風見幽香を相手に新フォーム炸裂
燃える展開になってまいりました。
しかし、ヴァンプ様はピーチ姫やローラ姫のポジションが心なしか似合ってます。
>>227 訂正します。
正しくは『フレデリック・ラングブリッジ』でした。
出来れば修正をお願いします。誠に申し訳ありませんでした。
ガモンさん好調になってきましたなー
吉良の変態性と異常性、鈴美のどこか凛とした悲しさが対照的で良かったですな
こういう原作の前後の風景を想像で書くSSは好きなのでまたお願いします
手首舐めちゃったら唾液でバレないかというツッコミは野暮だろうか
泥と星の奴はジョジョらしい対比で実にいいですな
232 :
永遠の扉:2010/09/24(金) 01:33:05 ID:25cJm8Gy0
【9月11日】
「ぎんせーい。ぎんせーい。ご乗車ぁ、ありがとうございましたー。お忘れもののないようお降りください。次はぁー……」
電車から吐き出された人混みがせわしなく動く。
ここは銀成駅だった。
「はい。ありがとうございます。ありがとうございます」
切符切太郎氏(38)はまったく名前からして鉄道関係者になるべく生まれてきたような男だ。
この日も彼は自動改札口の横に立ち、乗降客のめまぐるしい動きを監視していた。
日曜日ともあり利用状況はまずまずだ。友人と連れ立つ学生たち、家族連れ、または熟年女性の団体さん。さまざまな
人種が改札口に切符を食わしていく。消化不良もなければ食えぬ切符を使う者もない。いつも通りの、平和な駅だ。
跨線端の向こうで巨大な鉄箱が重苦しく走りだした。ホームから電車が消えた。電車が消えると乗り降りするお客も消える。
切符切太郎氏は伸びをしてから腕時計を見、脳内のダイヤと突き合せた。次に電車が来るまでまだ30分はある。
しばらくはヒマなので最近コリが激しい肩をぐるりと回す。
生あくび混じりに「休憩室で芋羊羹と玄米茶でも啜るかな」……と思った時。
やかましい足音と喧騒がホームの方からやってきた。
「つきましたよ皆さん。切符を改札口にお忘れなく」
(えーと)
切符切太郎氏は反応に困った。軽く腕を上げたまま、生あくびで口を半開きにしたまま、自動改札口を見た。
「失礼します」
まず通過したのはこども料金でも文句なしの小柄な人物だ。
それだけなら商売柄よく観るし反応に困る必要もないが……顔が良くない。なんと『ガスマスク』を被っていた。
「不審人物ですまない。フ。車掌が注意するたび俺も諌めたのだが聞かなくてな」
次に切符を入れたのは目も覚めるような『金髪の美青年』。胸には銀色の認識票。
「なんでも素顔をお見せするのが恥ずかしいとか! それはさておき車窓実況、楽しゅうございました!」
『シルクハット』を被った少女の後ろを『忍び装束』の少年が無愛想に進んだ。
「……我の周囲に浮いているのは風船だ。龕灯(がんどう)ではない。」
「はい……風船……です」
少年とともにふわふわ浮かぶ奇妙な形の風船(?)の後ろで『虚ろな眼の少女』がぽつりと呟き
「だあもう! またコレじゃん! なんでこんなほそっこい紙いちいち入れなあかんのじゃん!」
『それが規則だ! 頑張れ! 他の場所ではできただろう!』
どこか『ネコ』を思わせるしなやかな少女が出所不明の『大声』を浴びながら。
怒濤のごとくバタバタと通り過ぎた。
「なんだあのお客さんたち……?」
切符切太郎氏は首を傾げた。
233 :
永遠の扉:2010/09/24(金) 01:34:26 ID:25cJm8Gy0
.
同刻。銀成市南端。
砂埃の舞う広い道路を歩く2つの影があった。
「だからですねー、ディプレスさん? シズちゃんと臨也(いざや)なら断然前者が攻め攻めであるべきです! この上なくっ!」
「うっせえwwwwwww 道歩きながら腐女子談義すんなwwwwwww だからオタが嫌われるんだよwwwwwwwww」
蝶野屋敷やオバケ工場といった戦士に縁深い施設が決まって山あいや丘陵地にあるのを見ても分かるように、銀成市は
ひどく山や丘が多い。例えばかつて武藤カズキがパピヨン打倒後、津村斗貴子の膝枕を受けたのも「山が見える小高い丘」
である。
その銀成市の中で比較的山が少ないのが……市の南端である。
ただし人類の発達発展というのは決まって平野に何かを作るところから始まる。言いかえれば、「山少なく平野多ければ
まず開発」である。銀成市も例に漏れず、市の南端に広がる平野部はことごとくサツマイモ畑だ。これは近辺の川越市が
さつまいも料理や芋菓子に力を入れているせいである。つまり銀成の農民たちはサツマイモを作って川越に売るのである。
利益率は中々で、南部に会社や工場を持つ者は不景気がくるたび「最悪建物潰してサツマイモ作りゃ何とかなる!」と──
実際、会社や工場の跡地にすぐ畑を作れるかどうかは疑問だが──のんびり構えている。
文献によればサツマイモの生産はすでに寛政年間から始まっており、近年の研究によれば将軍徳川家治に献上された
川越芋のうち端っちょから3番目の泥のついた奴が銀成産のものだったという。
現代においても川越芋の種芋のうち12〜3%は銀成で生産され、冬の終わりごろ川越市の農家に送られるのである。
という訳で銀成市の南はひどくサツマイモ畑が多いのだが、それだけでは甚だ交通の便が悪い。畑潰して隣の市への
でっかい道路を、広い道路を! という声が持ち上がったのは昭和の交通戦争の頃で、その要求はすんなり通った。
そうしてできた広い──大型トレーラーが3台併走しても大丈夫なほどの──道路を。
両側にサツマイモ畑の広がる牧歌的な光景を。
不審な人影が歩いていた。
具体的かつ簡潔にいえば、彼らの全身は暗い緑のフードに覆われていた。
顔は当然見えない。三角に尖る布を目深にかぶる彼らの顔面は漆黒の闇に覆われ、その表情を伺い知るコトはできなかった。
ただ、右にいるフード姿はどことなく丸みを帯びた体型で、時おり少女のような甘え声をあげている。
「えー、でもいいじゃないですかあ。物静かだけど凶暴でー、意外と繊細なシズちゃんが、にっくき臨也をとうとう料理できる
んですよ! でも そ ー い う コ ト に は 慣 れ て い な い もんだから、色々失敗する。ヘタレ攻めですよっ」
「ちょwwwww30近い女が路上でディープな話題大声ですんなwww 同行してる俺マジ恥ずかしいwwwwwwwwwああ憂鬱ww」
「もおー。野球の話とかスキーの話なら大丈夫なのになんでアニメとか漫画だとダメなんですかあ?」
「さあwwww」
左の方は右より頭一つ分ほど背が高い。体型にはこれといった特徴がない。ごくごく普通の『人間の姿』。
「しかし久々の『人間形態』はやり辛いwww でもハシビロコウだと目立つからなあwwwwwwwwwwwww」
常に笑ってはいるが陽気な声とは言い難かった。口調の端々には嘲りと見下しと独りよがりな優越感の入り混じった暗い
感情が余すところ覗いている。常人なら決して会話相手に選ばぬタイプだろう。
「あwwwどうもおばちゃんwww埼玉県名物のサツマイモの生産乙っすwwwあざっすwwwwwwwww」
「ありがとうです。ただ欲を言えばですね、ここが池袋だったら聖地巡礼って感じでこの上なく良かったですッ!」
彼らは農家の人々とすれ違うたび気さくに声をかけ手を振っているが、あまり芳しい返答は得られていない。
農家の人たちは目を逸らし、手短に返事をしそそくさと行きすぎる。そんな調子である。
「ああしかし全身フード! この上なく素敵です! オタクのロマンですっ!!」
右にいる全身フード──ひどく透明感のある柔らかい声だ──祈るように手を組んだ。
「この正体不明感とか未知の敵とかいう感じがこの上なくいいですよねディプレスさん!
フードごと手をグッと突き上げ力説するクライマックスとは裏腹に、左のフードはやれやれと肩をすくめた。
234 :
永遠の扉:2010/09/24(金) 01:36:52 ID:25cJm8Gy0
「まあ大抵の全身フードは殺されるけどなwwwwww あと後で出てくる連中ほど扱いが微妙なのなwwwwwwwww」
「そうそう。フードこそ被っていませんでしたけど、ラスト6人辺りが相手の負け犬軍団さんともどもポッと出の強キャラにまと
めて瞬殺されたりとかー、10人いる幹部の1人が大した実力も人気もない子供キャラの竹刀攻撃一発で気絶したりとかー、
めっちゃ強い4番よりもっと格上な1〜3番目があまり強そうに見えなかったりとかー。無印の後の真(リアル)もアレでー」
指折り数えたクライマックスは「うん」ともう一回頷いた。
「12宮的にはラスイチなのに魚座ってば微妙でしたよね!」
「あいつと蟹座だけはガチで裏切ってただろwwwww あれが演技ならアカデミー賞ものだわwwwwwww」
「で、総じて振り返ってみると最初に出てきた人が一番強く見えたりしちゃうのです。何しろ一番手はインパクトありますから!」
「くそうwww 乗ったオイラが馬鹿だったwww こいつマジ止まらねえwww パねえwww 火のついたオタ、マジパねェwwwww」
「オタといえばなんでオタ話は良くないんですかあ!」
クライマックスは情けない叫びを上げた。ディプレスの話によれば最早30に近いらしいがとてもそういう落ち付きのある声
ではなかった。
「アニメやマンガ、特撮が子供のものだったのはもはや過去っ! いまは大人も楽しめる時代なのです!」
「鏡見なwwww 楽しんでる大人とやらの顔や性格がどんなのか痛感できるぜwwwwwwwwうわひでえってなwww」
「むきー!! そりゃあ二次元に逃げ込んで心癒してるフシもありますけど、何も残らないかも知れませんけどね、でも心の
ある生物だから常に何かを愛さないとダメなんですッ! 少なくても私は諸事情でどうしても人を愛せないから常に代替物
を求めているのです! 何もかもが壊れそうな不安抱いて明日に怯え明後日ばっか見てたって答えはでませんけど!!
仕方ないじゃないですか!」
「いやいやwww 長えしそういう感傷と公共の場でのTPOはまた別だからwwww」
「ぬ!?」
「萌えとか801とか人を選ぶ話題を公共の場で無遠慮にすんなってオイラは言いたいwwww タバコと一緒wwwwwww ニコ
チン取りこまねーと苦しいからって禁煙席で吸っていいわけねーよwwwww」
「つまり……一般人さんが嫌がる話題を大声でするなと!」
「別にしたきゃやりゃいいwwww でも見知らぬオタから何度も何度も何度も不快な思いさせられた一般人はいつか報復に
出るぜwwwwwwww 禁煙席が増えまくったように、不特定多数へなああwww 法律作って罰則作って、オタ話は厳禁って風
潮作って、囲い込みにくるぜ? 不快な思いさせ続けたらなwwwwww だからクライマックス、お前も自重しろよw」
「さっきからこの上なくヒドい物言いですねディプレスさん! あまり傷つけてくると私の『スーパーエクスプレス』で数の暴
力をお見舞いしますよ!!?」
「ハッwwwwwwwww オイラの『スピリットレス』舐めんなwwwww お前に完勝したリバース=イングラムさえ瀕死だぜ?ww」
フード姿の男女はまったく同時に核鉄を握った。そして相手を牽制するよう突き出したきり黙然と睨みあった。
頭巾の下にぼっかりと空いた漆黒から稲妻が散り、両者の間でスパークした。
そして。
静寂。
静寂。
静寂。
ふぁんふぁんふぁんふぁんふぁんふぁん……
「ぬぬっ? 最後のは甲高いサイレンの音! この上なく一体何がっ!?」
「wwwwwwwwww」
近づきつつある音に2人はゆっくりと振り返った。
「そこの2人! じっとしていなさい! ほら早くフードを脱いで手を上げなさい!」
白と黒に塗り分けられた威圧的な車両が猛スピードで接近してきている。
「パトカーですね。この上なく」
「だなwwww」
「農家の人たちが通報したんでしょうかね?」
「まあ漫画のような格好で歩いていたらこうなるわなwww だからお前もいい加減オタ趣味をやめなwwwwww」
「じゃあ次はシズちゃんの格好でもしますか!! バーテンですよバーテン! アレならこの上なく大丈夫です!」
「うわwwww 一見現実に迎合してるように見えてどこまでも迎合してねえ意見wwwwwwww オタ怖えwwwww」
喋る間にもパトカーは近づいてくる。しかもパトカーの後ろからもう1台同じ物が躍り出た。よほど勢いがついているのか
凄まじい急ブレーキ音がした。更に同じ現象が起こりもう1台パトカー追加。そしてさらにもう1台。さらに、さらに……。
235 :
永遠の扉:2010/09/24(金) 01:37:43 ID:25cJm8Gy0
「あwれw」
いつしか道は──大型トレーラーが3台併走できるほど広い道は──パトカーに埋め尽くされていた。
「重なってたのが展開して、ええと。ひいふぅ、みぃ」」
「15台の列がwwwwwwwwww 3つwwwwwwwwwwwwwwww」
「でん! ぱー、ぱー、ぱー! でん! ぱー、ぱー、ぱー! でけでけーでぇっれれっれ!!」
「西部警察かってのwwwwww西部警察かってのwwwwww たかが全身フード2人に必死すぎだろwwwwww
「で、どうしますディプレスさん? たかが45台のパトさんなら私一人でもぶっちめてやれますが!!」
「馬鹿www俺たちは調査中だろwww」
「あ、そうでしたね」
「そうwwwww」
「銀成市と隣の市の境目! そこがどうなっているかを調べなくてはなりません!!」
「ブヒヒwwww 一見ワケがわからない調査だが、これが後で活きてくるんだよなア〜 だからここで警察相手に戦う意味ぁ
まったくねえよwwwwwwwwww 騒ぎ起こして戦団の連中にこちらの動き気取られたら終わりだっぜwwwwwww」
「じゃあ逃げますか! どうせなら池袋まで退きませんか? いいお司屋さん知ってるんですよぉ」
「うっせ誘うなwwwww 『お前に好かれたら終わり』なんだよwwww とにかくズラかるぞwwwwwwwwww」
警察官たちは恐ろしい光景を見た。
時速100kmで飛ばすパトカーより
『更に速く』
逃げ去っていくフード姿達を。
全速力で運転しているにも関わらず、彼らは恐ろしい速度でぐんぐんと遠ざかっていく。
見失うまで30秒とかからなかった。
ふぁんふぁんふぁんふぁんふぁんふぁん……
「? パトカーの音がやけに多いな。何かあったのか?」
「それより斗貴子氏、いまの話、受けるの?」
机の向こう側で淡白なメガネ少年が返事を促した。斗貴子は渋々という顔で視線を右にズラした。
「考えてくれないだろうか」
早坂秋水がひどく真剣な面持ちでそこに存在している。ちなみに教室にいるのは斗貴子とメガネ少年──六舛孝二──
と秋水だけだ。しかも彼らは窓際一番後ろの席に集結している。この様子、密談以外の何であろう。
「どう、といっても」
斗貴子は顔をしかめた。艶やかな髪をわしゃわしゃと梳るが明確な返答は出そうにない。
「そのだな。もう一度言ってくれないか? 正直、予想外なんだが」
秋水は居住まいを正し、ひどく真剣に言葉を紡いだ。
「キミがパピヨンを演劇部から放逐したがっていると聞いた。俺もぜひ、協力したい」
先ほど、演劇部の練習が終わった。さて一旦寄宿舎に戻り防人にでも色々聞こうか……と斗貴子が思っていると六舛が
どこからかやってきてこの教室に案内した。
その時にはもう秋水がいまの場所に座っていて、面喰らったのを覚えている。
そして一言一句違わず、上記のセリフを吐いた。
ちょっと待て、と斗貴子は思った。もちろんパピヨン放逐に関し仲間は欲しいところである。だが、その協力者が秋水とい
うのは幾らなんでも予想外だ。
「そもそも剣道部だろキミは。いや、怪我が治るまで演劇部に仮入部するという話は聞いているが」
秋水は頷いた。銀色の刃のように澄み渡った表情は「だから俺にも協力する権利がある」そう言いたげだった。
「いいんじゃない斗貴子氏? だいたい斗貴子氏だって入部1日目だし」
236 :
永遠の扉:2010/09/24(金) 01:40:13 ID:25cJm8Gy0
「それをいうならキミは演劇部員ですらないだろう」
「今でも一応部員だけど? 去年は部長だったし。だから部外者に変えられるのは見たくないというか」
「ええええええええええええ?」
斗貴子は思わずどよめいた。凛々しい顔がポンチ絵のごとく崩れているのが分かった。
「成程。だから俺と津村の間を……」
「そ。取り持ってる訳」
「じゃあひょっとしてキミの特技の声帯模写。あれは演劇の成果なのか?」
「いや逆。声帯模写ができるから演劇を」
「そんな動機で……って。いや、一度しかない高校生活なんだから、もっとこう部活選びは真剣にしなさい」
「流石は斗貴子氏。含蓄がある」
同意したようなしてないような反応だ。瞳は白く曇ったメガネに隠れ、真意を伺い知るコトはできない。
「というか津村、彼はこの学校の部活全てに入っている。剣道は二段だ」
「絞れ! 一つに! 部活はもっと真剣に選べ!!」
叫び、机に拳を叩きつける斗貴子だが六舛はさほど怯えた様子もない。冷めた瞳で彼女を一瞥すると「それはともかく」と
話題を変えた。
「秋水先輩と手を結んだらどう斗貴子氏? いまのままじゃ勝ち目薄いし」
「う……」
口を噤んだまま斗貴子は回想する。いまの演劇部員のほとんどはパピヨンシンパだ。このまま手をこまねいていればい
ずれ部員の総ては蝶々覆面をかぶり全身タイツを着こなし、変態丸出しの馬鹿騒ぎを銀成学園に振りまくだろう。そもそも
銀成市民はアホばかりなのだ。
「確かに私だけでは孤立無援。味方は一人でも欲しいところだが」
ちらりと秋水を見る。戦闘絡みなら卓越した剣客たる彼は非常に重宝するだろうが、ことこう言う日常(?)の問題解決に
は甚だ不向きな男に見えた。
(むしろこういうのは桜花の方が向いてるんだが)
とにかく。
唯一の味方が秋水というのがまったく以て宜しくない。
そもそも斗貴子と秋水の仲は決して良好とは言い難いのだ。
かつて斗貴子が武藤カズキともども早坂姉弟と戦った時、秋水はカズキを背後から刺した。もし桜花が武装錬金の特性
でカズキの傷を引き受ければ、彼は間違いなく死んでいただろう。
もちろんその件に関する謝罪は、ザ・ブレーメンタウンミュージシャンズとの決着後に聞き及んでいる斗貴子だし、一時期
秋水に辛く当たっていたのは様々な辛さ苦しみの捌け口という意味もあった。そもそもカズキが刺されたのは斗貴子から早
坂姉弟を守ろうとしたためでもある。その過程で斗貴子自身、「まだ人間の先輩たちを守りたい」と真っ当な正義を主張する
カズキを──戦いの世界から遠ざけるためとはいえ──さんざん傷めつけた。
具体的には失明させようとしたり、四肢のどれか一本を機能不全に追い込もうと、した。
(あの時はやりすぎた……)
とにかくそういう経緯があるからカズキの件で秋水を恨むのはやめよう。そう思っている斗貴子だが、彼と仲良くしたいと
いう気持ちは目下のところ皆無である。
(だあもう考えていても仕方ない。こうしている間にも演劇部はパピヨンにどんどんどんどん侵食されてるぞ)
華奢な体を抱えるように斗貴子は身震いした。パピヨンという変態性の権化が少しずつ少しずつ銀成学園を侵食している
恐ろしさよ。もたもたしていると本当に取り返しがつかない。
(だいたい、カズキが月に消えたのになんであんなに平気そうなんだ。貴様にとってカズキはその程度の相手なのか)
秋水と協議する気になった理由の一つは、上記のごとき憤りかも知れない。カズキがいなくなってこっち、斗貴子は幾度と
なく辛い思いをした。それを晴らそうと秋水の過去をあげつらえばまひろに聞かれ、傷つけ、ますますどん底へと呑まれた
のだ。
にも関わらずパピヨンは平気な顔で演劇部に出入りしている。「本名を呼ばれて以来」、あれほどカズキに執心していた
というのにだ。
そういう怒り半分、顔見知りたる生徒たちを守りたいという使命感半分。
斗貴子はゆっくりと秋水の目を直視した。
「ひとつ聴きたい」
「なんだ?」
「どうしてキミはパピヨンを演劇部から放逐したいんだ? 過去をどうこう言う訳ではないが、キミの性格なら部活動のいざこ
ざに首を突っ込まない方が自然だ。それが何故、今回に限って口を出すんだ?」
237 :
永遠の扉:2010/09/24(金) 01:40:52 ID:25cJm8Gy0
謹直な表情が、ぽつりと言葉を吐いた。
「衣装の問題だ」
衣装? 斗貴子は首を傾げた。彼は何の話をしているのだろう。
「このままいけば、武藤の妹がパピヨンと同じ服を着る事になる。それは防ぎたい」
「あの服は……胸元が開き過ぎている」
寂然と窓の外を眺め始めた剣客に、斗貴子はほんの少しだけだが頬を緩めた。
「わかった。協力をお願いする」
「なるほど。斗貴子氏もまひろちゃんにあの服を着せたくないから先輩と協力する気になったと」
「違いないがあまりそういうのは口に出さないでくれ。何というか、困る」
少し困った目つきで釘を刺すが、やはり六舛にこれといった表情の変化はない。
「ていうか意外。秋水先輩がそういうコトいうなんて」
「だが、若い女性が素肌を気楽にさらけ出すのは良くない」
訥々とした呟きに斗貴子と六舛の口からため息が漏れた。枯れている、というより秋水自身が妙な気恥しさを抱えている
フシもある。もちろん一番大きいのは「恩人の妹におかしな格好をさせたくない」という節義であろうが。
「その辺りはともかく、お2人が協力してもパピヨンを放逐するのは難しいんじゃないか?」
くいっとメガネを掛け直す少年に低い──女性にしてはなかなか静かな迫力のある──反問が刺さった。
「何が言いたい」
「演技力の問題。いまパピヨンが演劇部で支持を受けているのは演技力のせいだし」
ふむ、と秋水は顎に手を当てた。
「確かに……。俺も一度見たが、彼の演技は良くも悪くも強烈だった」
「あんな奴の一挙一動を真剣に考えるな。ただの頭のおかしいド変態がいやらしく振る舞っているだけだ」
目も三角で吐き捨てるように斗貴子は呟いた。あんな物をあがめる銀成市民はDNAレベルでアホだとも言いたげだ。
「とにかくパピヨンに対抗しようと思ったら、演技で立ち向かわなきゃ意味がない。斗貴子氏たちもそれは分かってるよね?」
「まあ確かにな。私達が説教したところで部員は耳を貸さないだろう。彼以上のまっとうな演技を見せつけなければ」
「演劇部員の眼は覚めない、という訳か」
だが、と斗貴子は眉をひそめた。
「どうやってまっとうな演技を見せつける? いっておくが私も早坂秋水も演技についてはズブの素人だぞ? 今から練習
したところで手遅れだ。基礎が身に着く頃にはもう」
「演劇部はパピヨンに侵食されきっている」
そうだな、と六舛は頷いた。
「だからお2人には1日でパピヨンレベルの演技力を身に付けてもらう。具体的には修行。いい?」
「「はい?」」
斗貴子と秋水の疑問符が被った。
以上ここまで
>>236 誤 >もし桜花が武装錬金の特性でカズキの傷を引き受ければ、
正 >もし桜花が武装錬金の特性でカズキの傷を引き受けなければ、
保管時に修正します。
240 :
ふら〜り:2010/09/24(金) 11:44:07 ID:g+9s3gsq0
おぞましい猟奇的殺人鬼による流血殺害現場に引き続き、
犠牲者規模ではそれを遥かに上回る(スターダストさんHP
掲載の過去編参照)悪組織幹部の陽気的漫才。
こういう、偶然のコンビネーションもまた、バキスレの楽しみの一つです。
>>ガモンさん
怖さを期待していたら、予想以上のものがっっ! 内容以前に、まずこの題材チョイスが
良い! 原作では「語り」だったものを視覚化し、当時まだ殺人鬼として未熟だったから
スマートさがなく、それ故四部当時以上に不気味で残虐な吉良の恐ろしさ、よく出てました!
>>スターダストさん(すいません。つい習慣で保管しちゃいましたので、サブタイお願いします)
おぉ久々のブレミュ勢! いよいよ遂に待ちに待った、「かつての敵と手を組んで、更に強大な
敵と戦う」展開! バトルのみならず、前に少し出てた剛太と香美の絡みなんかにも期待!
>銀成市民はアホばかりなのだ
>銀成市民はDNAレベルでアホだ
カズキがいない今、斗貴子の殺伐さを和らげる役目をきっと彼らが果たし……て……るか?
>>おまけ。作品感想ではありませんが、ガモンさんに喜びの咆哮を届けたい。
>幽波紋『ヘブンズ・ドアー』と呼ばれる超能力を習得して
その通おおおおぉぉり! 荒木先生自身、「スタンドは超能力を目に見えるように描いたもの」
と言っておられる! 「超能力」が正しい! スタンドとは超能力であり、すなわち
スタンドバトルは「超能力バトル」。「能力もの」「異能バトル」は、ジョジョに関しては間違いである!
……ってのがまあ、私のコダワリでして。嬉しかったんで叫ばせて頂きました。
常人の「能力」を超えたものだから超・能力。これですよやっぱり。まず、超能力として
スタンドが存在し、その上でそれぞれ固有の「スタンドが持っている能力」の種類が……(以下略)
あれ?今回はスターダストさんなんか文体いつもと違うな
意図的に変えてるんでしょうが。
切符切太郎とか取って付けたような名前ワロタw
パピヨンとトキコは一戦もういちど交えて欲しいような
242 :
作者の都合により名無しです:2010/09/25(土) 01:33:04 ID:u2cfWQ6p0
パピヨンの変態性が世界中に侵食したらある意味パラダイスかなあ、とも思う
確かにブレーメン隊、随分久しぶりだなあw
243 :
作者の都合により名無しです:2010/09/25(土) 14:23:10 ID:RUiUU9M/0
>>241 ネゴロの頃からダストさんこういう文体結構やってなかったっけ?
244 :
永遠の扉:2010/09/26(日) 00:36:12 ID:ZlT+2Vuo0
「ががが、ががが、がおがおがー! ががが、がががが、がおがおがー!!」
ポニーテールにかんざしを差した小さな少女──銀成学園理事長──が1匹、廊下を走り抜けた。
彼女はひどく楽しそうにキラキラと笑い、両腕を横へめいっぱい伸ばし、走っていた。
ただそれだけです。別に本筋とは関係ありません。
「ねえ斗貴子さん。最近のジャンプって敵が出てくるたび修行するよね。ドラゴンボールもそうだったけど今のジャンプって
ラディッツ出てきたら修行、サイバイマン出てきたら修行って感じだよね。あと修行の内容がほとんど新技習得っていうのは
分かりやすくていいんだけど、でもホラさ、やっぱり新技っていうのは死闘の最後のギリギリな時、本当負けそうになりなが
ら自力で思いついて最後の決め手に……って感じが熱いしありがたみが出てくると思うんだ」(声色)
「知るか! カズキの声真似はよせ! というかココはどこだ! えらくこだわっているがキミは意外に漫画好きなのか!」
「一度に質問されてもね……とりあえず」
六舛は無表情で喉を叩いた。
「こだわってなんかないわよ! べ、別にジャンプなんてどうでもいいんだからねっ!」(声色)
「何でヴィクトリアの声……。ま、まあいい。話を本筋に戻そう。私達の演技力向上の件は──…」
「問題ない。お2人はこれからここで修行」
斗貴子は辺りを見回した。山にほどよく近いそこは一面森に覆われひどく欝蒼としている。
銀成市でも恐らく秘境の部類に属するだろう。
(途中までの道のりや進行方向から察するに、LXEの本部から北西に2〜3kmという所か。山を越えれば隣の市だ。しかし、な
ぜ彼はこんな所に……?)
道中はひどく難儀した。
途中までは砂利散らばる林道を歩けていたが、ラスト2時間はピラニアの泳ぐ川をイカダで下り崖を上り蒼く輝く氷の洞窟
さえ抜けた。林に張り巡らされたロープを滑車で下っている時、斗貴子はもう本当何もかもうっちゃって帰ろうかと思った。
下にはあぶく立つ紫色の沼があり、野牛のような頭蓋骨がそこかしこに浮かんでいた。硫黄のような匂いが立ち込めていた。
正に人外魔境の、ここは本当に日本の埼玉県かと疑いたくなるような光景の連続だった。
そして辿りついたのは何の変哲もないログハウスである。彼らは目下、その前で佇んでいるという有様だ。
「しかし……到着しても信じられないな。本当にいるのか? こんな所に。キミがいう、演技の神様? っていうのが」
「間違いない。いる。俺の師匠もこんな感じの場所に住んでいた」
「そ。お約束。達人っていうのは未開の土地にいる」
師匠? あ、ああ、秋水に剣を教えたという師匠のコトか。とりあえず手近な疑問から片付けた斗貴子はしかし、ゲンナリ
と肩を落とした。
秋水ときたら拳を固め、ここまでの道中の異常さと達人の連関性を生真面目に説き始めている。ふだん寡黙な彼にして
はいやに多弁だ。思わぬ大冒険とこの後の修行にちょっと興奮しているのかも知れない。
「近頃思っているが、キミ、ちょっとノリがおかしくないか? 大丈夫か最近。まひろちゃんからおかしな影響を受けているような……」
「大丈夫だ。心配はない。それよりも今の問題は演技の神様についてだ」
「だからいるのか」
「間違いな(ry」
「そ。お約(ry」
「それはさっき聞いた! 私が聞きたいのはどういう師匠かだ!」
斗貴子がバンと手近な木を叩く。怒声が山に木霊した。激昂。斗貴子あとはもうログハウスを指差し指差し怒鳴る一方である。
「いっておくがこんな場所に住んでいるような奴は決まって碌でもない輩だ!! どうせやたら気難しい老人がこの中に居て
私達に無理難題を押し付けるんだろ! この街にきて以来ヘンな連中に散々な目に遭わされ続けた私だから分かる!
見え見えだ、いい加減にしろ!」
「待て津村」
「なんだ」
「一見ただの無理難題でも実は最も効率的な特訓手段だ。現に俺の場合はそうだった」
「そ。先輩の言う通り。後で演技している途中で「こういう意味だったのか」って気付くさ。だから無駄じゃない」
「仮に無駄じゃないとしてもそういうのは最初にいえ! どんな目的で特訓するか説明しなきゃ教わる方は身が入らないし
真剣に取り組んでくれないんだぞ! イヤイヤ練習したせいでおかしなやり方編み出したり変な癖をつけたりしたらどうな
る! 教える側が身に付けて欲しかったフォームをまるで習得してくれなかったら修行の意味がないぞ!」
245 :
永遠の扉:2010/09/26(日) 00:39:09 ID:ZlT+2Vuo0
「斗貴子氏。それはいくらなんでも現実的すぎる。もっとロマンとか夢を持とうよ」
「現実的で結構! 私達が常に直面しているのは何だ! 現実だ! 夢やロマンじゃない!」
肩をいからせ叫ぶのは、ログハウスの中にいるであろう人間への恫喝か。
「というかこれだけ騒いでるのに出てこないとはな! まったく! なんであのテの気難しい老人連中はいやに勿体つけるんだ!」
「ひょっとして津村、君はいま帰りたいと思っているのか?」
「ああ。パピヨンの件さえなければとっととな」
「だがどの道、今からでは不可能だ」
「どういう意味だ?」
「沼の上のロープは俺が切断した。あそこを歩いて帰るのは不可能だ。君は5秒ともたず溶けるだろう」
「ああ何だそうかロープが……って待てェ! なんで切断した! キミはいまさらっとスゴいコトをいったな!! えええ?」
「1日で演技を極めパピヨンに勝つにはそれだけの覚悟が必要だ。いわば……背水の陣!」
「馬鹿か! あのロープがなかったら私達は帰れないんだぞ! 奴に勝つ勝たない以前に挑むコトさえできない!!」
「…………」
「しまったという顔で汗をかくなァ!! あああもうやっぱりキミはまひろちゃんの影響を受け過ぎだ! なんだあのコなんだ
あのコ! キミのような性格の者まで作り変えて! おかげでコレからどうすればいいか分からない!!!」」
「大丈夫。小屋の裏の坂を5分下ればバス停がある。銀成学園まではバスで7分、意外に近い」
「………………達人が未開の土地にいるといったのはどこの誰だ? もう嫌だこの街。いつか絶対出てやる」
衝撃的な六舛の告白に、激怒さえ勢いを失ったようだ。斗貴子はうなだれ軽く涙を流した。
「で、演技の神様というのは?」
「ズバリ。ガウンの貰い損の影の創始者」
「ガウンの……ああ、いま演劇部が手本にしてるグループのか。しかし何でまたキミはそんな人と知り合いなんだ?」
つくづく謎めいた少年である。六舛は「内緒」とだけ呟きドアに手を当てた。
「年に数回のバカンスしに銀成市へ来ているってメールがさっき来た。だからちょうどいいかなって」
「そもそも達人だの神様がメールを使うな。ありがたみがなさすぎる……」
華奢な少年が肩にくっと力を入れるだけで扉が開いた。どうやら鍵は掛っていないらしい。
「取りあえず入ってみる?」
斗貴子と秋水は一瞬顔を見合わせた。
(どうする津村?)
(玄関に上がれば気配を聞きつけてくるだろう。それも演技の神様とやらが中にいれば、だが。どの道このままじゃ埒があ
かない。いったん中に入ろう)
彼らは六舛に向き直り、渋々と頷いた。
「がおがおがー!!」
「がおがおがー!!」
銀成学園の廊下で少女が2匹、じゃれあっていた。
まひろがちょいちょいと右腕を出して牽制すると、かんざしを差した古風な少女が両手をあげて威嚇する。
それの繰り返しだ。
「がお」
「がお」
「「がー!!」」
両者は弱P連打で小突きあって時々伸びあがって威嚇をしあっている。
さきほどから千里と沙織が制止しているが、一向に効果はない。
(馬鹿丸出しねこの2人)
ヴィクトリアはため息をついた。
246 :
永遠の扉:2010/09/26(日) 00:42:11 ID:ZlT+2Vuo0
リビングの中で立ち竦む斗貴子と秋水をよそに、六舛はキッチンの方へ歩いて行く。
「木場空牙(くうが)。居る? 六舛だけど」
(木場空牙?)
(それが演技の神様の名前? なんか非常に偽名臭くないか?)
意外に広いログハウスだった。玄関から一直線に伸びる廊下はかなり長く、その壁面には斗貴子がぱっと見ただけでも
5つの扉がついていた。
そのうち玄関から数えて2つ目へ六舛が速攻入っていったのがログハウス侵入3秒後だ。
むろん不法侵入だ。斗貴子は慌てて彼を追い、秋水も後に続いた。
そして今に至る。彼らは、リビングに居た。
(隣の部屋はキッチンか)
斗貴子はぼんやりと六舛を眺めた。彼はとうとう冷蔵庫や三角コーナーさえ物色し始めている。
(まるでドロボウだな。いいのか?)
疑問が浮かぶもあまりに堂々とした六舛の態度に何もいえない斗貴子だ。ただ秋水と2人して立ちつくし、リビングを観察
がてら眺めている。
綺麗な部屋だった。年に数回使うだけにしては恐ろしく埃が少ない。もっとも調度品と言えば部屋の中央におかれた木製
の丸テーブルぐらいだから散らかり様とか汚れ様がないのだろう。必要な物はそれこそバス経由で坂の下から運んでくる
に違いなかった。
(にしてはCDが多いな……)
丸テーブルの上には正方形のCDケースが雑然と散っている。ヒットソングにはあまり興味のない斗貴子だが、漠然とそ
れらを眺めているうちいつしかテーブルの前へ座り込んでいるのに気付いた。
「どうした?」
「あ、いや……」
粛然と不思議がる秋水に半ば上の空という様子で答える。細い指はケースを持ち上げては戻し持ち上げては戻しの繰り
返しだ。やがて卓上のCD総てにそうした斗貴子は「やはり」とだけ呟いた。
「全部同じアーティストのCDだ。いや、それだけなら別段不思議でもないんだが、この名前に少し心当たりが」
「つまり……錬金術絡みの話か?」
「ああ」
秋水がキッチンに目をやったのは一般人(六舛)の存在を鑑みたからか。幸い彼は「別の部屋も見てくる」とだけ言い
残しどこかへ消えている。恐らくキッチンにも扉があって別の部屋へ行ったのだろう。
それで斗貴子も安心したのか。声のボリュームを微増させた。
「確か2年ぐらい前だな。キミは知らないかも知れないが、あるアイドルがシークレットライブ中、ホムンクルスの襲撃
を受けた。相当大規模な事件だったから覚えている。犠牲者はそのアイドルと彼のファンの合計129名」
「つまりここにあるCDは」
いつしか綺麗な正座の秋水に、斗貴子は頷いてみせた。
「そう。そのアイドルの物だ」
「…………」
ジャケットに必ず「Cougar」と銘打たれたCDを秋水は黙然と眺めた。何を考えているか斗貴子は直感し、次いで軽い驚き
に見舞われた。
彼の心情はおおむね自分と一致しているようだった。
247 :
永遠の扉:2010/09/26(日) 00:43:19 ID:ZlT+2Vuo0
戦士を長くやっていると必ず持ち得る感覚。
例えばすでに持ち主がいなくなった部屋でもいい。作りかけのプラモ。血が付いた銀色の腕時計。「8時には帰りまーす♪」
と親に送られた最後のメール。
或いは、戦団の書類の中で事務的に踊る犠牲者の名前。
それらを。
ホムンクルスが理不尽に命を奪った人間の痕跡を。
何かの拍子で目にした時に感じる激しい怒りと胸を突く悲しみ。やるせなさ。
それを秋水はひしひしと感じているようだった。
愁いに揺れる端正な瞳が、やがて静かに閉じられた。
死してなおファンに愛され、ログハウスの中にCDを並べられる。
そんなアイドルを──写真の中で凛々しい顔をしている彼を──秋水は悼んでいるようだった。
やれやれ、と斗貴子は嘆息した。
(元信奉者がよくもまあ……と毒づきたくもあるが)
(この変化は、キミが早坂秋水を守った結果かも知れないな。カズキ)
テーブルの前で静かに手を合わすと、秋水もそれに倣った。
(冥福を祈る。かつてのキミのように)
かつてカズキも同じコトをしていた。犠牲者の骨を埋葬し、手を合わせていた。
記憶は疼痛をもたらす針となり、心臓を狙っているようだった。
犠牲者の家族が味わっている痛み。
「深い深い痛み」。
それを斗貴子はひしひしと感じていた。
繕っていても、平然としているようでも、拭いがたい痛みが常に意識の中にある。
それは日常の馬鹿騒ぎに声を荒げた瞬間にだけ知覚を逃れるが、すぐに舞い戻ってくる。
何かが彼の代わりになって欠如を埋めるというようなコトは絶対にないのだと斗貴子は思う。
(やはり私はパピヨンのように割り切るコトはできない。どうしてアイツは平気な顔で演劇部に来れるんだ……)
「一通り見てみたけど、いないみたい。木場空牙」
「うへ!?」
頭上からの声に斗貴子は仰天した。感傷に浸るあまり背後の影に気付けなかった。
「……もしかして、俺、悪いコトした?」
見上げたカズキの友人は、若干ながら戸惑っているようだった。斗貴子も戸惑った。平素淡白な六舛だから、戸惑う顔は
予想外だった。もしかすると斗貴子のカズキに対する感傷が分かったのかも知れない。彼もまた、友人への感傷を抱えている
筈なのだ。
「あ、いや。その…………」
立ち上がりながら斗貴子は頬をかいた。気まずい。下手に言い繕えば日々堪えている何かが決壊し、ますます六舛を
気まずくしてしまいそうだった。それが嫌だった。
「ところで確認したいが、木場空牙という者が演技の神様なのか?」
秋水が憮然と呟いた。六舛と斗貴子はぎこちなくだが彼を見て、咳払いを一つ漏らした。
248 :
永遠の扉:2010/09/26(日) 00:45:02 ID:ZlT+2Vuo0
「まあね。話戻そうか斗貴子氏」
「そ、そうだな。今重要なのはそっちだからな」
両者の表情や声は硬いが……。
一見空気の読めぬ質問に救われた形だ。むしろ秋水は敢えて空気を読まなかったのかも知れない。
「木場空牙っていうのはHN。本名は誰もしらない」
「HN……ああ。字(あざな)とか号みたいなものか」
「そういえばキミはさっき言ったな」
──「ズバリ。ガウンの貰い損の影の創始者」
「影の創始者というのは、どういう──…」
「主催者のれヴぉ氏を見出して育てたから。あ、これはフィクションだから。モデルになった人とは無関係だから」
(誰にいっている)
「いわば木場空牙はプロデューサー。自分で演技をするより、才能を発掘して育てる方が好きだとか」
「ズブの素人である私達を育てるにはまさにうってつけの人材か。だが……肝心の彼がいないとなると」
「へへ。俺っちならすでにここにいやすよー」
「わわわ!?」
”それ”は何の前触れもなく斗貴子の肩に乗った。顔である。いつの間にか男が背後に居て、セーラー服越しに顔を乗せて
いる。不意の出来事。彼女の背筋は粟立った。
(だが同時に目つぶしと胸部への貫手を敢行したのは正に津村ならではの反応だ!)
(出たぜ津村氏のデスコンボォー!! こいつでカズキ数回、病院送りにしたのは有名な話だぜー!!(脳内声色モデル雑魚キャラ))
秋水と六舛はただ淡々と斗貴子の反応を眺めた。咄嗟に助けなかったのは無論彼女の戦闘力を信頼してのコトである。
(なんでキミたちそんなにノリノリなんだ! じゃない! しまった! つい、反撃を──!)
首捻じ曲げつつ反省する斗貴子の眼前で意外な出来事が起こった。背後の男が消えたのである。目つぶしと貫手は鮮
やかな残像を突き破り、空を切った。
(消えた? どこへ?)
きょろきょろと周囲を見渡す斗貴子に六舛と秋水は「前」とだけ呼びかけた。
それでようやく正面を見た斗貴子が思わず飛びのいたのは、胸の辺りに手が伸びてきていたためだ。
(っの! ヤブカラボウに変なコトをするな!! ブブブブチ撒けるぞ!!)
距離を置き、用心深く胸を覆いながら相手を見る。空を切った五指は未だに「何かを揉みこむように」わきわきと動いてた。
「へへ、すいやせんねえ。可愛い女のコを見るとついついスキンシップしたくなるもんで。へへ」
想像とは常に現実と乖離するものだ。斗貴子はつくづくそう実感した。
息を呑む。凛々しく尖る瞳を丸くし、その人物を見た。
「おお。そこに見えるは六っち。ひさぶー」
「ひさぶー。キバっち。ところでドコへ?」
「ここから徒歩2分のとこにある秘湯でさ。男湯と女湯隔てし壁にほどよい覗き穴がありやしてね。後は言わずもがな。へへ」
六舛と親しげに言葉を交わす”キバっち”こと演技の神様は……。
「ああ、ところでお姉さん、もしカレシがいやしたらご勘弁を」
想像図には。
老人には。
あと半世紀ばかり必要な男性だった。20代の中ごろといった所だが、防人よりは年下に見えた。
「ええ、ええ分かりやす。意中の方以外に触れられる、それは女性にとって問題でゲしょーし、カレシにとっても取られたよう
で落ち着かねー。俺っちもリバっち触られたら嫌でして。へえ」
ぺらぺらとよく喋る彼はひどく細長い体系だ。180cmほどの全身には贅肉もなければ厳つい筋肉もついていない。飾り
気のない黒の半袖Tシャツから覗く腕ときたらまったく女性のように頼りない。しかしそういうか細さが却ってスタイルをよく
見せている。プロデューサーというがモデルをやっても遜色ないほどの体型だ。
249 :
永遠の扉:2010/09/26(日) 00:46:55 ID:ZlT+2Vuo0
「罪なのはあなたの可愛いさでありやしょう。男は常に可愛いコに触れたくなるものどうか何卒ご容赦をば。へへへ。リバっ
ちはそういうとちょっぴり喜んでくれやすよ。それがまたかーわいいんでさ」
ウルフカットの下で端正な顔が人好きのする笑みを浮かべていた。エビス顔、というべきだろうか。ニッコニコと眦(まなじ
り)を緩めながら彼はしきりに揉み手をしている。
(この顔……?)
一瞬秋水は丸テーブルに散らばるCDへ目をやった。「似ている」。目の前の人物はかつてホムンクルスに喰い殺された
というアイドルにやや似ていた。
ただしすぐさまその思考は雲散霧消した。雰囲気はあまりに乖離していた。
CDジャケットの中にいるアイドルの凛々しい、人間離れした──かの総角主税さえ足元に及ぶかどうかの──顔つきと
眼前にいる青年のエビス顔はまったく違っていた。むしろ「似ている」と直感した方がおかしい……観察を終えた秋水はそう
思った。表情の違いを差し引いても顔の造形は全てにおいて微妙に違う。1ランクから2ランク下だ。共通点と言えばせい
ぜいウルフカットぐらいであろう。それもファンによくいる「髪型をマネしました」程度の共通だ。
(そういえば彼の号は木場空牙……。空牙。例のアイドルの名前「Cougar」のもじりか)
死後もCDを持っているのと総合し、秋水は──ただの熱心なファンなのだろう──と結論付けた。
「あ、リバっちってのは俺っちが片思い中の人でしてね。そりゃあ怒ると滅法怖いですよ? なにせ口の悪い仲間と大喧嘩
した時ぁ相手を1週間ばかり意識不明にしましたからねえ」
「……」
「……」
六舛と秋水は斗貴子を見た。
「……キミたち、何が言いたい?」
彼らの目は語っている。同族だ。同族がいた! と。
「あぁでも相討ちっすかね。リバっち、自分も瀕死になりやしたから」
「自らの身が滅ぼうとも敵を討つ、か」
「すごいね斗貴子氏。もしかしたら生き別れの姉妹かも」
「言いたいコトがあるならハッキリ言え! いい加減にしないとブチ撒けるぞ!」
「え? 姉妹? いやー、それは流石にないでしょ。だってリバっちの妹って……」
「?」
「あ、いや。普段は笑顔が可愛いコなんすよ。リバっち。おっぱいも大きいす。95す。ジーパン時のむっちりしたお尻のライ
ンもいいっすけどね、やっぱおっぱい! 俺っちはいつかあのロケットおっぱいを直に触りたいんす! もちろん合意の上で!」
「黙れ! エロスはほどほどにしろ!!」
「ほどほどにしまさあ! 見る触るだけならほどほどの範疇でさ姉御!!」
「誰が姉御だ! えええいもう! おかしなコトをいちいち叫ぶな! 叫ぶようなコトか!!!」
「もち! なぜなら俺っちリバっちラブ! ボイン大好きっす! 怒りっぽいところ含めて大好きっす!」
彼は聞かれもしないコトをまくしたてて、一人で勝手に照れて首を掻いたりしている。
決して造詣の悪い顔という訳でもなく、黙って、笑うのをやめ、それなりのメイクを施せば中堅どころのモデル雑誌の巻頭
ぐらいは飾れるだろう。
(これが演技の神様!? ただのエロスなダメ人間じゃないか! 本当に大丈夫なのかこんな人に師事して!!)
(しかし、さっきの動きは……。俺の目でさえ完全には捉えきれなかった)
秋水は慄然とした。
(間違いない。瞬発力だけなら俺はおろか音楽隊最速の栴檀香美より上だ。しかし)
人間の身でホムンクルスの香美を凌駕している「演技の神様」は何者なのであろう。
「で、何の御用で?」
「実は──…」
ややあって。
六舛から用件と秋水たちの経歴とを聞いた演技の神様はぴしゃりと額を叩いた。「くぅ!」と目を細めているのは、やられ
た、一本取られた。そんな顔である。
「難しぃっスねそりゃあ〜。まあ確かにお2人とも素材はいいですよ? 片や見ての通り超美形で去年の剣道全国大会ベスト4、
片や小柄ながらに女豹のごとき美少女さん! まっとうに訓練を積みゃあ、まあ、3か月でブレイクさせるコトはできますけどねー。
しかし1日ってのは、1日で演技力最高レベルってのはこれまた難題些か難儀の五里霧中。果たしてどこまでやれるやらで
ありましょう」
250 :
永遠の扉:2010/09/26(日) 00:51:31 ID:8y7Ez/VW0
えらく明るい神様だと秋水は思った。同時に彼のそんな表情や口調が『誰か』に似ているのに気付いた。
(顔の次は表情や口調か……。だが今度こそ確かに似ている。俺の身近にいる人間ではないが……)
斗貴子はいつものような無愛想な表情だ。もっとも無理は承知らしく
「不可能なのは最初から分かっている。ならばせめて基礎だけでも教えて貰えないか? もともと私達の問題、後は自力で
どうにかする」
とだけいった。
すると演技の神様は、
「いやいや姉御? 俺っちは難しいっつってるだけで不可能たぁいってませんよ。へへ」
といった。ニッコリと笑い、真っ白な歯を見せながらぱたぱたと手を振った。
「なにせ2人ともルックスのみならず体がいい感じに出来上がっていやすからねえ。えーと、あ、津村斗貴子さんでしたっけ?
演劇部に入るまでは何を? さっきの貫手はお見事でした。何をやってたか分かりやせんがね、体の動かし方ってのを余程
ご存じでねーとああは動けませんや。いやお見事お見事」
ぴょこぴょこと飛び跳ねながら彼は斗貴子の拳を取った。
「ど、どうも。(というかアレを避けれたあんたこそ何者だ。一朝一夕で身に着く動きじゃなかったぞ)」
「一方、早坂秋水さんの方は言わずと知れた剣道経験のモチヌシ……じゃあやりようはあるってもんで。へえ。お見受けした
ところ声の出し方も完璧っすから基礎練なしでいけやすよ」
「具体的には、何を?」
秋水の反問に神様はぱあっと瞳を輝かせ腕を上げた。
「俺っちは常々思っていやす。人というのは『枠』の生き物だと! 粋じゃねーすよ。わく。わ・く! 衣服! メイク! アク
セサリーに皮膚ーッ! そーいうのが枠となり、俺っちら個人を世界と各別してくれてるんじゃあないですか」
分かったような分からないような意見だ。アーティスティックな感性は斗貴子にとって理解しがたい。
「で、精神的な意味でも枠はあるんす。信念とか個人的特性とかそういうの。俺っちが役者さんや歌手をプロデュースする
時ァ、まずその枠をよく観察しやすね。へえ。この枠をどう使い、どう飾れば売れるのか? 或いはどー言いくるめればもっと
いい演技とか歌捻りだせるのかってね。で、需要って枠と役者さんたちの枠がズバリと嵌りこんだ時の快感って奴ぁ本当、
忘れられませんぜ!」
「そ、そうか」
「だから俺っちはプロデュース専門なんでさ。自分どうこうするより人間って奴の枠をうまく使う方がはるかに面白いす」
「で、秋水先輩や斗貴子氏の”枠”は」
「お2人とも生真面目な枠の持ち主ですから、いきなり自分とかけ離れた役はやれやせんね。自分に似た役でも、まあ一晩
の修行ですから? 細かい感情表現まではムリかと。厳密にいえば見てくれるお客様の心に訴えかける表現ができねー
というべきでしょうかね」
ですがね! と演技の神様はバンザイをして天井を見上げた。
「アクション! あらかじめ決めた手順を生真面目に守り最適速度で実行する演技力! そいつなら断然向いてやすよ。特撮
俳優みたくガッシガッシ打ち合ってる姿、今は想像だけですがきっと観客さんたちを沸かせられる確信がありやす! つか俺っち
自身そういうのがダンゼン見たい! ってえ話しでどでしょ? 六っち」
「だな。どうせパピヨンのような色っぽい演技はお2人には無理だし」
「いまキミはさりげなく物凄く失礼なコトをいわなかったか?」」
「どうするの? アクションならパピヨンの不得意分野だけど」
「確かにな。彼は激しい運動をするたびすぐに血を吐く。体術自体さほど得意ではないようだ」
「つまり、私達の得意分野で奴を超えるという訳だな。了解した」
「じゃあけってー! メインはハデハデな殺陣の練習。あとは俺っち特性の台本記憶術を伝授しまさ。徹夜になりますがいい
ですかね? 突貫でやりゃあ明日には演劇部の上位陣にはなれやすよ。うんうん」
演技の神様はぱちぱちと手を叩いた。
話は、まとまった。
後は細々とした打ち合わせや防人たちへの連絡といった雑事、それから練習という感じに落ち着いた。
(そういえば)
と秋水は気付いた。先ほどよぎった演技の神様への既視感。その正体が具体像を帯びた。
(彼は、音楽隊の小札零に似ている。たまたま似たような形質の持ち主というだけか? それとも──…)
以上ここまで
木場空牙ってなんかマーダーライセンスでも持ってそうな名前だw
いよいよ神様と合えましたな。やはり一筋縄ではいかなそうな人物で
トキコさえも老獪にあしらって。
まあトキコや秋水なら並のアクション俳優ではかなわないでしょうな。
観客の目が追いつかないかも知れんけどw
スターダストさんの更新頻度が全盛期に近くなってきて嬉しい。
でも後書きが全然なくなっちゃったのが心配。
スターダストさんのオリジナルキャラは一癖も二癖もありそうな
いい意味で胡散臭そうな連中が多くていいですね。
今度のプロヂューサーもまじめ過ぎる斗気子との対比が面白いし。
俺の好きな小札も活躍しそうだ
スターダストさん来週はお願いね
256 :
ふら〜り:2010/10/05(火) 09:59:08 ID:0uOymdlN0
>>スターダストさん
リバっちの妹と斗貴子。かつて壮絶な死闘を繰り広げた仲ですけど、性格的にはそりゃもう
似てないってレベルじゃないというか。あと生い立ちの悲惨さではリバっち妹の圧勝ですな。
で体力も運動神経もあるから二人とも殺陣はできそうですが、演技はどうなりますやら?
>>252 >木場空牙ってなんかマーダーライセンスでも持ってそうな
同じことを考えました。……しかし何ですな。幼き頃に憧れた、悪党をブッ倒す
ヒーローたちが、今じゃ風俗嬢のヒモだったりAV男優だったりで。うぅ。
>>254 おお同志。正座して待ちましょうぞ!
どうにか今週は投下したい…最近ペース落ち気味だ
今週旅行に行っちゃうんで
週末あたり着てると嬉しいな
〜天体戦士サンレッドVS風見幽香〜
天体戦士サンレッド・飛翔形態<プロミネンスフォーム>。
熱く輝く太陽の紅き炎を宿す、サンレッドの戦闘形態の一つ。
速度と機動性、そして飛行能力に特化したこのフォームを装着したサンレッドは、正しく大空の覇者。
炎を纏い空を駆けるその姿は、燃え滾る真紅の流星!
「その姿…どうやら空中戦を御望みのようね」
対して、風見幽香は不敵に唇を歪めた。
「いいでしょう、付き合ってあげる―――」
その背中から、服を突き破って一対の翼が広がった。
仄かに輝く、美しき純白の翼―――それだけ見れば、まるで天使のようだ。
そう―――云わば命を刈り取る、告死の天使。
「そして思い知るがいい。幻想郷の住人に対して、空で闘いを挑む愚かさを!」
紅き戦士と大妖怪が、同時に飛翔する。
両者は烈風を巻き起こしながら空中で幾度となくぶつかり合い、火花を散らした。
天は今、強大な力を有した二匹の獣によって荒らされ、乱され、震えていた。
其処に座すであろう神々でさえ、もはやこの闘いを止めることなどできない。
どちらかが、地に堕ちぬ限りは―――闘いは、終わらない。
「ああ〜…どうしましょう、紫ぃ〜〜〜…」
情けない声で、白玉楼の主・西行寺幽々子は隣で観戦していた八雲紫に縋り付く。
「このままじゃヴァンプさんが(ピー)されちゃうわ。いいえ、もしかしたら(プー)されるかも…」
「随分心配するのね…いつの間に、そんなに仲良くなったのかしら?」
「だって…だって!」
思い起こす。短いながらも濃密な、ヴァンプ将軍との思い出を。
―――初めて出会った夜に作ってくれた鍋から立ち昇る香りは、今でも鮮明に蘇る。
―――おやつにと用意してくれたサーターアンダギーの甘い味わい。
―――トーナメント予選前の特大のステーキとトンカツ。
―――派手さはないが確かな腕によって生み出される、ヴァンプ将軍の料理の数々。
「ヴァンプさんは…私の専属料理人になってくれるかもしれない怪人なのよ!」
盛大に涎を垂らしながら、幽々子は叫んだ。
ヴァンプ様というより、食事の心配をしているようである。
「どっかで聞いた様なセリフねえ…ま、あんまり深く考えないことよ」
紫は顔を上げて、空を―――正確には、空を舞うサンレッドを見つめる。
「ここは一つ、ヒーローの健闘に期待する事としましょう」
ガシィッ―――!
もはや何度目になるだろうか。サンレッドの繰り出す拳は、悉く幽香の掲げる日傘によって防がれていた。
ドゴォッ―――!
カウンター。レッドは吹っ飛ばされながらも素早く方向転換し、再び幽香へと向かい―――
焼き直しのように、先程と同じ攻防が繰り返された。
『ああーっこれはいけない!サンレッド、またしても返り討ちだぁーっ!どうしたヒーロー、このままではヴァンプ将軍
の命は風前の灯だぞぉーーーっ!巻き返しなるのか!?それともよい子も見ている中で18禁モノの残虐ショーが
始まってしまうのか!?』
果たしてヴァンプ様を心配しているのか、単に開き直って楽しんでいるのかよく分からない(恐らくは後者)実況が
響き渡る。
しかして観客席にいるジロー達は、実況を気にする余裕もない。
空中で火花を散らしながら繰り広げられる激戦を、固唾を呑んで見守るだけだ。
「―――しんどそうじゃない。あいつ」
と―――ジローの<頭上>から声がした。
「…………!」
「ごきげんよう、望月ジロー…今宵の宴は楽しんでるかしら?」
くすくすと。
真紅の吸血姫―――レミリア・スカーレットは笑う。
彼女は誰にも…ジロー本人にも気付かれることなく、いつの間にか彼の頭上で腕を組んで立っていた。
「あら、礼儀正しいあなたらしくもない。返事もしないなんて、紳士失格よ?」
「こ…これは失礼しました…いや、それよりも何故、私の頭の上に…」
「決まってるじゃない。このレミリア・スカーレットの強さをアピールするためよ」
「…………」
「このレミリア・スカーレット、いつ如何なる時もカリスマとしての振る舞いを考えているのよ」
こともなげに、レミリアはそう言った。
嘘だ。ジローは思った。
なら何故にかつてプリンを落とした際、あそこまで狂乱していたのか。
そんなジローの心情を知ってか知らずか、ようやくレミリアはジローから飛び降りた。
「おや、よく見ればお馴染みの顔が揃ってるじゃないの」
「何だ、レミィじゃない」
「パチェ。顔を見ないと思ったら、ここにいたのね」
「よお、お嬢様。今日は咲夜は一緒じゃないのか?」
「あの子は…死んだわ。ある意味」
「お久しぶりですね。あの夜は貴女が暴れ回ったおかげで、お庭の掃除が大変だったんですよ?」
「それはごめんあそばせ」
「また魔理沙に近づく女が…ブツブツ…」
「…もう目を覚ましなさい。色んな意味で」
皆と親しげに話すその様子は、何処にでもいそうな年頃の少女といっても差し支えない。
ジローは意外そうにレミリアを見つめた。
吸血鬼という種族は、排他的な者も数多い。それに加えて、数百年を生きた古血(オールド・ブラッド)ともなれば
感性を磨耗させて、殆ど無感情になってしまう者も少なくはないのだ。
しかし、今のレミリアからはそんな印象はまるで受けない。
「ん?どうしたのかしら、望月ジロー。私の横顔が魅力的なのは自覚してるけど、ジロジロ見るのは少々不躾じゃあ
なくて?」
「…申し訳ない。ただ…失礼ながら、随分と気が若くいらっしゃるようだと」
「ふふ…」
ジローの言いたい事を理解したのか、レミリアは薄く笑う。
「幻想郷は面白おかしい奴らの揃った楽しい所だからね…そうそう無感動になんてなってられないわ。あなたも此処
に住まえば解かると思うわよ。どう?あの方と―――コタロウと共に、移住してみないかしら?なんなら、紅魔館に
来てもいいのよ」
本気なのか、ただからかっているだけなのか分からない。ジローは苦笑する。
「…お誘い感謝します。そうですね、熟考しておきましょう」
「腐れた政治家みたいな事を言っちゃって…まあいいわ、この件についてはいずれまた、ね…そうそう。ここに来る
途中で、コタロウを見つけ
「レッドさーーーん、頑張れーーーっ!」
…たのだけれど」
コタロウは座席の上に立って手を振り上げ、大声を張り上げてレッドを応援していた。
レミリアがジローと話している隙にそそくさと席に戻っていたようである。
「…コタロウ」
「あ、兄者!何してるの、レッドさんとヴァンプさんがピンチだよ、しっかり応援しないと!」
「それよりもお前、何か言わなければならないことが…」
「そこだー、レッドさーん!目だ、耳だ、鼻!」
兄の言葉をガン無視し、謎の声援を張り上げる。
どうやら、すぐに客席に戻ってこなかった事に対する兄からの追求を、勢いでなかった事にしたいらしい。
「全く、こやつは…」
「そう怒りなさんな。教育方針に口出しするつもりはないけど、きつく叱るだけが躾じゃなくてよ」
それに、とレミリアは、空中戦を繰り広げるサンレッドと風見幽香を見上げる。
「今はあの二人の闘いがどうなるか、でしょう?」
「貴女はどう見るのです?ミス・レミリア」
「…コタロウにも同じような事を訊かれたわね。私はこう答えた―――風見幽香に分があると」
「…………」
「あなたも分かっているようね―――奴は、強い」
レミリアは一息ついて、続ける。
「幻想郷において強者と目される者には、大概はそれだけの理由がある」
例えば、境界を操るだとか。
例えば、あらゆるものを破壊するだとか。
「しかし、風見幽香にはそれすらない―――
このレミリア・スカーレットのように運命を操れるわけではない。
或いは八雲紫のように境界を操れるわけではない。
或いは西行寺幽々子のように死を操れるわけではない。
或いは星熊勇儀のように怪力乱心を持つわけではない。
その能力で出来る事といえば、精々が花を操る程度―――」
されど。
「それでも誰もが認めている…認めざるをえない。風見幽香の、絶大な力を」
「それでも勝ちますよ、レッドは」
ジローは言った。
「彼はあれでもヒーローです。ヒーローは…勝つべき時には必ず勝つ。そういうものですから」
「…そう。実を言うと、私もサンレッドに勝ってほしいと思ってるわ」
レミリアは、暗い笑みを浮かべる。
「あいつは我が手でその肉を引き裂き、我が牙でその血を啜ると決めているのだからね―――
ここで終わってもらっちゃ、私も困るのよ」
―――太陽の戦士の拳は、またしても届かない。
それは物質としては頑丈なだけの日傘であるが、風見幽香が持てば磐石の楯となる。
「はあっ!」
気合と共に日傘を振るい、サンレッドを身体ごと押し返した。
背の翼を震わせ、追撃する。日傘を両手で強く握り締めた。
それは物質としては頑丈なだけの日傘であるが、風見幽香が持てば無双の剣となる―――
「花葬―――<鏡花水月><花鳥風月><百花繚乱><柳緑花紅><飛花落葉><錦上添花><落花狼藉>」
一つ一つが一撃必殺の破壊力を秘めた絶技。
それを、瞬きの間に―――七つ。
「―――<七花八裂(しちかはちれつ)>!」
呻き声さえ上げられず、大地に落とされる。それでも歯を食い縛って立ち上がり、幽香を睨み付けた。
幽香はその視線を、値踏みするように見つめる―――そして。
「…それなりに楽しかったけど、ここまでかしら」
トン―――と、軽やかに地に降り立った。
「このまま同じ事を繰り返しても、つまらないわね―――終わらせるとしましょう」
日傘を墓標の如く突き立て、それを通じて大地に己の妖力を注ぎ込んでいく。
「―――月に叢雲 花に風―――」
涼やかにして毒に満ちた言霊が、大妖怪の唇から紡ぎ出される。
「花符―――<幻想郷の開花>!」
大地が割れ、亀裂から何かが飛び出す。
それは―――花。
向日葵、朝顔、紫陽花、桔梗、彼岸花、薔薇、金木犀、百合、鈴蘭、弟切草、杜若、菊、胡蝶蘭、石楠花―――
多種多様、数え切れない程の花が、一瞬にして視界を、世界を埋め尽くす、
その光景は例えようもなく美しく―――吐き気を催す程におぞましい。
咲き誇った花々は、奇怪な生物の触手のように蠢き、這いより、のたうち、サンレッドに絡みつく。
「ぐっ…!?」
ふぅ―――と、身体から精気が抜けていく感覚があった。
まるで、魂ごと吸い出されるような違和感。
何より恐ろしいのは、それは決して不快ではなく、むしろ安らかさすら覚えるものだということだ。
「こ…こいつら…俺の力を、吸ってやがるのか…!」
「うふ…その通りよ。特にあなたの精気は極上だわ。花にとって、太陽の光は何よりの御馳走だもの」
風見幽香は、凶笑を浮かべる。
「さあ。この子達の養分となり、干乾びるがいいわ―――」
更に無数の花が、サンレッドを完全に覆い隠した―――!
「以って五秒…それで、あなたは朽ち果てる」
『サ…サンレッド、大大大大大×10ピンチだぁぁーーーっ!太陽ですらこの究極加虐生物は止められないのか!?
僭越ながら私、射命丸文がカウントダウンをさせていただきましょう!』
1!
2!
3!
4!
「…?」
幽香は、異変に気付いた。宣言した五秒など、アナウンスの間にとっくに経過している。
それでもなお、花々による蹂躙は終わる気配さえ見せない。
この技ならば、並の敵なら一瞬で塵芥と化す。強敵であっても、数秒持てばいい方だ。
なのに、何故―――
『5!』
同時に―――全ての花が、砕け散った。粉々になった欠片は、地に落ちる前に焼け落ちて灰すら残らない。
その中心で、サンレッドは何事もなかったかのように、力強く立っていた。
「なん…ですって…!?」
愕然としながらも、幽香は一瞬で答えを導き出していた。
単純そのもの―――吸収可能なキャパシティを遥かに凌駕する勢いで、闘気を放出させた。
その結果、オーバーフローを起こし、爆発。
理屈はその通りだったが、実行に移すには半端ではない難易度だ。
何しろこれは、そこらの凡夫が繰り出した業ではない―――仮にも大妖・風見幽香が織り成した魔術だ。
それを力ずくで打ち破るなど、不可能と言ってよい。
可能だというならば、それは風見幽香に比肩しうる―――或いは超越する―――怪物のみ。
「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
紅き怪物が、咆哮と共に真っ直ぐ突き進む。
炎を纏い、閃光と化して駆け抜ける。
「紅炎拳―――<ブレイジング・ナックル>!」
打ち込まれた拳に、虚を突かれながらも幽香は殆ど本能だけで対処する。
先程までの攻防と同じく、日傘を楯の様に構え―――
「だらぁぁぁぁぁぁっ!」
中ほどから、日傘がへし折られた。それを突き破った勢いのまま、幽香の心臓の真上に拳を叩き付ける。
錐揉みしながら吹っ飛ばされ、背中から地に叩き付けられた。
窮地に追い込まれていたはずのサンレッドの逆襲劇に、場内から大歓声が上がる。
『サンレッド、怒涛の反撃!風見幽香、今大会初のダウンです!今度は彼女にターンが回るか!?それともこのまま
二回戦で散るのか!?』
「…立てよ。こんなモンでテメーが終わるわけねーだろ」
「そうね…まだまだ楽しめそうだもの」
立ち上がった幽香の顔には、未だに笑みが張り付いている―――否。
これまでよりも更に楽しそうで愉しそうな、狂気と凶気、そして狂喜に満ちた笑みだった。
手に握ったままの、半分になってしまった日傘を見つめる。
「…迂闊だったわ。闇雲に攻めてるように見せて、一点に攻撃を集中していたのね」
「へっ…これでも闘いに関しちゃ、頭は回る方でね」
ニヒルに笑ってみせる。
全くの偶然だった事はナイショである。
「ねえ、サンレッド。幻想郷に生きる者は、大抵は人様から化物と呼ばれるのよ」
唐突に、幽香は語り出した。
「冗談としか思えない身体能力、悪夢としか形容できない異能―――故に、化物」
「それがどーしたよ」
「そんな私の目から見ても…あなたは、おかしい。異常と言い切ってもいいわ」
戦闘能力において最強種族と称えられる鬼―――その中でも最強の一人と称される星熊勇儀と真っ向から殴り合い、
捻じ伏せた腕力。
そしてコメディ・コミックの登場人物だと言われれば信じてしまいそうな桁外れの体力と頑強さ。
「あなたも立派に化物よ、サンレッド」
「ありがとよ。一応、褒めてるんだと思っとくぜ」
「けれど…あなたの勝ちだなんて、まだ誰も言ってない」
スクラップと化した日傘を投げ捨て、幽香は凄絶な妖気を放った。
「この風見幽香―――今だ、全てを見せてはいない」
投下完了。前回は
>>207より。
難産だった…次回はもうちょい早く投下したい。
それはそうとスパロボLが楽しみ。
DSでの前作のKがアレな出来だったからこそ、寺田Pはリベンジに燃えてるはず!
…燃えてる…よね…?ね?今回は大丈夫だよね?
>>211 次回、決着…の予定。レッドさんの奮闘にご期待ください。
しかしこのSSも、いつの間にやら随分強さがインフレしてきましたw
>>212 バキスレデビューから既に6年(確か)年をとったよ、僕も…
全試合を描いた完全版も、いつか書くぜ…!(無理)
>>213 レッドさんはバカじゃないよ!ただちょっと働かなくて毎日かよ子さんちで
グータラしてるだけだよ…!
>>ふら〜りさん
ヴァンプ様はある意味かよ子さんも公認の、レッドさんの嫁ですからね(何
原作でもヒロインオーラ出しまくりですよ。
>>ガモンさん
シブタクってwおま、シブタクって!
しかし今回はやはり、吉良さん…!勃起すんじゃねえwやっぱヤベぇわ、この人…絶対関わりたくないわー…。
されど、この気持ちの悪さこそが彼の魅力でもあるかな、と。
…拙作、これだけ女の子がいて、どうして悪の将軍が囚われのヒロインポジションなんでしょうか(笑)
>>スターダストさん
なんつーオタクほいほいな会話wいいぞもっとやれw
なお、自分は十刃で一番強かったのはウルキを除けばノイトラさんだったんじゃないかと。
剣八隊長ファンとしては、彼をあそこまで追い詰めた事を評価したい。
あと、最近のジャンプ漫画は修行しすぎというのは同意。新技も出しすぎ…
ほとんど打舞流叛魔だけで押し通したあの方を見習ってほしいもんです。
265 :
1:2010/10/10(日) 07:23:45 ID:p9n01lJB0
お疲れ様ですサマサさん。
レッドは徐々に全てをさらけ出しつつあるけど
東方連中はいろいろとチーとぞろいだからなあw
幽香ねえさんに余裕も感じるw
プロミネンスフォームって原作に出てたっけ?
原作自体、戦う描写ないからな。
ヴァンプたちがお仕置きされてるだけで。
ヴァンプって言うほど料理上手くないような。
お料理好きのおばさんレベルでしょw
まあ、怪人の中では一番上手いだろうけど・・・
それ言い出したら二次創作なんてやってられんよ
原作の描写を多少拡大解釈する程度なら全然ありだろう
シコルだって原作じゃラストがアレなだけで普通に考えれば十分強いし、
ヤムチャとて並の連中とは完全に次元の違う強さだ
(プロミネンスフォームは9巻で出たはず)
269 :
作者の都合により名無しです:2010/10/11(月) 18:01:00 ID:C1at7uYd0
レッドさんは東方世界でも立派にやってけるな
チルノとおバカ対決とかも楽しそう
閑古鳥が鳴いてるなあ…
連載陣で実質サマサ氏とスターダスト氏くらいしか通常運行してないのが寂しいぜ
271 :
作者の都合により名無しです:2010/10/22(金) 08:29:53 ID:v5i9xjGh0
全盛期からは信じられないね
あの頃、1日5本来たときもあったのに
製作速報に移ってるんじゃない?
禁書SSが多いけど、武装錬金やらコナン、魔王(サンデーでやってた)のSSもあるし
273 :
作者の都合により名無しです:2010/10/25(月) 08:30:39 ID:uwbKIc8r0
復活を信じてあげ
274 :
カイカイ:2010/10/26(火) 17:57:15 ID:keyLWtDn0
のび太は、Tシャツにスペアポケットを『着けて』母校の裏山へ向かう。
上は高校の学ランだ。スペアポケットは、タイムテレビやパワー手袋の置き場へ通じている。
のび太がなぜ、学校以外の外出時にはスペアポケットを肌身離さず着けて行くようになっているのか?
今を遡ること1ヶ月前、のび太の家に泥棒が入った。
その連中は別の区の高校生グループで、いじめグループの死命を制する「佐伯文書」を奪いに入ったのだ。
「佐伯文書」とは、彼らが虐めていた女子生徒「佐伯幸子」がブログもメールも用いずに遺した書簡だ。
その書簡が、以前いじめグループをガスガンで『仲良く踊らせた』練馬区の雄・野比のび太に托されたという
贋情報を掴まされたのだ。その工作をしたのは、もちろん骨川スネ夫。
事件の真相を知る由も無いのび太は、泥棒の手に渡ることを避けるためスペアポケットを肌身離さない。
スペアポケットはタイムマシン発着の抽斗と違い、誰でも手に取ることができる。
だがのび太、あの日の顔ぶれで誰が最も特徴的だったかにまで頭が回らない。
スネ夫の天然パーマは、頭皮の裏の筋肉の奇形が原因でも不思議ではないほど、特徴的だ。
大きくなった今でこそ、同年代にもリーゼントの進化形などでああいう地毛をしている者も存在しうる。
野々宮が最初、何を手掛かりにのび太たちに二度目の関りを持てたのか考えておくべきだった。
275 :
カイカイ:2010/10/26(火) 17:58:34 ID:keyLWtDn0
かつての通学路を歩き、勝手知ったる裏山へ向かうのび太。
背後に、それも進行方向からジャスト6時の方角に違和感を感じ、左斜め前に飛び出る。
飛び出たときには、もう体の向きを180度転換している。
スネ夫が、ごつい傘を向けている。
見紛うはずもない髪形。
あるいは、勇次郎の背の「鬼」と同じく、スネ夫の前頭は三頭竜でも棲んでいるのだろうか。
「スネ・・・」と言いかけたのび太を民家の塀に追い詰める位置関係で、スネ夫の傘が∞の字を描き始める。
間合いの長短から、のび太は傘を自分の左外側に迎えて右手で掴もうと判断する。
しかし、誤算。スネ夫の傘は、外国製の護身用品で頑丈さが半端ではなかった。21世紀初頭の最新型だ。
スネ夫が軽く突いた前腕に、凄い局地的衝撃のようなものが充満する。
(これを胴体に喰らったらやばいぞ・・・!)
ヘタレだった頃の経験からか、のび太はダメージを冷静かつ瞬時に判断できてしまう。
そして、とにかく目先の禍をやり過ごすのが先決だと迷いも余分な緊張も無いマインド。
276 :
カイカイ:2010/10/26(火) 18:02:19 ID:keyLWtDn0
のび太は、左手に持っていた太極扇を片手だけで広げると、スネ夫の傘をフチで押した。
傘を持っている側の右足の運動靴でビターンッと路面を鳴らして、後退。こけなかった。
中学に上がったばかりの頃、思えばスネ夫とはそれ以来の再会だが、そのときスネ夫は
フェンシング・スクールに通い始めたとか言っていた。
のび太は、スネ夫の首か顔面を撃つ覚悟を決めた。
元より、その程度の攻撃は子どものときに何度もしたような未来道具での仕返しよりは、格段に酷い事ではない。
だが右前腕が上がり難い。とても、物を右だけで掴めるとは思えない。
痛いだけでは済まないダメージがあるのだ。
のび太が野々宮を仮想敵にした護身プラン、それは弓手の太極扇といつものガスガンが揃って成り立つ。
太極扇は22世紀の産物だ。太極拳の名手の技が『組み込んで』ある未来道具。
健康器具だから体への負担は極力軽くしてあるが、それでものび太には100秒も連続使用(つかって)られない。
外敵も居ない場所で匂い付き環境映像とBGMを嘗めつつ、決まった型だけをなぞるのが本来の用途なのだ。
外敵というか、安全管理と個人尊重が極まっていてちょっと不審なぐらいでは個性のうちとして共存できてしまう世界の道具だ。
今のスネ夫を撃破するのに120%の万全を期すのはもう、超人に非ざるのび太には電光石火丸の使用しか無い。
空を流れる雲は、そんなのび太に薄っすらと影を落とすぐらいしかしては行かない。
277 :
カイカイ:2010/10/26(火) 18:04:34 ID:keyLWtDn0
ドラえもんの道具は、未来の国の倉庫からそのつどリースして取り出している。
20回を超える大冒険の途上には幾度も、未来世界そのものの命運が懸ったことがあった。
それでも、古地図が組み込んであるはずの「どこでもドア」やその他の決定的な道具を使えず
敢えてタケコプターや徒歩、潜入など別の困難を伴う手段で冒険したのは一度や二度ではなかった。
未来道具をリース(未来デパートを通じて『買う』)ではなく、所有することは莫大なカネや強権を必要とした。
また、時空のつながりが不安定になると道具のリースそのものが困難にもなった。
四次元ポケットの使用は時間の操作も伴うし、決して全能でも無償でもない。
のび太は日常で、強力な道具をいくつも濫用することなどできなかったのだ。
ましてや、個人が過去の世界で防犯道具をいくつも装備して歩くなど『今の』ドラえもんでさえ考え付くことではなかった。
スペアポケットは、未来の世界で『いつまでも』のび太を待っているドラえもんと、つながってもいる。
あるいは、「ドラえも〜〜んッッッッッ!!!!!」と叫ぶのも有りだったろう。
だがのび太は、あろうことか勝負を運否天賦に任せてしまった。練馬の野比さんとしてもこんな早々に、なぜ?
相手がスネ夫なら、治らない怪我までには至らないという根拠の無い二段論法。逃げの手。
逃げのようであり、無計画な特攻でしかない選択。
278 :
カイカイ:2010/10/26(火) 18:06:24 ID:keyLWtDn0
のび太は、未来から現在へ続く因果律に助けられ、この勝負には勝つ。
商業上の機密ゆえドラえもんでも知らないことだが太極扇の実演者は、野比ノビスケ。
百歳を超えてから授かった末子、セワシの七五三を満喫したくて中国4104年の頂に昇った。
ノビスケの拳は、早抜きと手刀が練れていた。
『以前の』ノビスケはジャイアンが伯父に当たり、拳にも早くから悪い影響があった。
「柔に剛あれば強い」。24時間を臨戦態勢と謳い、また強くあるために最新の暗器や無力化兵器を重んじた。
「お前の物は俺の物」。幼年期から続く成功体験に支えられ、ザコマッチョ拳法家として完成してしまった。
長じてはQOLオタクとなり、工業大国となった中国本土で三流どころの海王から雑貨店の深夜店員を任されていた。
もちろんというか、それを任されたことが自慢で宇宙人の触手(斬っても反射をやめない)とかを街で自慢していた。
『今の』ノビスケは、違う。早抜きと手刀が練れていた。善の因果律、その循環。
のび太は、怪我をしている右腕の肘を支点にしてスネ夫の手首に手刀を見舞った。
重心をウンコ座りのように落として、傘とのび太の脇腹がすれ違う。
スネ夫の傘はそのとき、スネ夫が右手首の操作だけで左右を往復していた。
リーチで劣るのび太を確実に追い込むため、スネ夫は悠然かつ確実に歩を進めていた。
それが功を奏した。のび太の手刀が愚地克己みたいな角度で、キレイにスネ夫の関節を振動させた。
ブラックジャックやサップ等のフレイル状の武器で打たれた錯覚を覚え、スネ夫は傘も拾わず走り出した。
のび太に追う余裕は無い。そもそも、のび太にとって禍は過ぎたら、その禍はそれで終わりなのだ。
「やれやれ・・・・・・なんだったんだ?」
痛いのは、痛みが退くまでのこと。しかしこれ、のび太にとって始めての重傷なのだ。
まだそんな世界観から抜け出せないでいるのび太は、病院やお医者カバンという選択肢に
思い至らず、野々宮に会って誤解を解くため裏山へと歩き始めた。
279 :
作者の都合により名無しです:2010/10/27(水) 08:49:27 ID:/23P03l30
カイカイさん乙です!
相変わらずのび太の行動が予測不可能でw
初めての負傷ですか。ピンチの予感・・
ノビ太がバキ世界の住人みたいだ
ジャイアンはピクルレベルか
281 :
カイカイ:2010/10/27(水) 20:50:14 ID:TWbqZs6N0
そういえば、もうバキ世界の原住民としても通じるレベルになってますね。
でもそれ、のび太だけ。
今のところ、ジャイアンは年相応に強いだけのザコマッチョに過ぎない感じです。
おうカイカイさんお疲れ様。
のび太一族が巨凶のようになってますね。
カイカイさんの感性は一般人とかなり違うけど
俺と結構フィットして好き。
283 :
ふら〜り:2010/10/28(木) 21:52:06 ID:zA6bjbsy0
>>サマサさん
自分の攻撃は、一撃二撃通じなくてもそのまま正面突破。敵の攻撃は、防御もせずにただ
やらせて、敵側のパンクを誘う。攻防共に豪快な力押しで突き進むレッド、しかしそれだけで
勝ちきれるのか? 幽香の反撃に倒れたその時、あのヒロインの声援で奮起……したら笑おう。
>バキスレデビューから既に6年(確か)年をとったよ、
私の場合そこに更に上乗せがえーと……ふっ。考えるのはよそう。
>>カイカイさん
久方ぶりですが、相変わらず原作絵で想像できない世界……なので私の中では劇画調で
流れてます。超能力的な派手なことはしてないとはいえ結構なアクションしてるけど、擬音
とか気合とかがないから、重々しさがあるんですよね。のび太のくせに、迫力ある強さです。
284 :
作者の都合により名無しです:2010/10/29(金) 09:24:10 ID:2RCDHWi30
まあサマサさんとスターダストさんが終わり次第、バキスレも終了っぽいけど
(さいさんやハシさん、邪神さんも来なくなっちゃったし、ハイデッカさんは結局来ないし)
それでもふら〜りさんがいればまだ大丈夫な気もする
285 :
作者の都合により名無しです:2010/10/30(土) 09:29:00 ID:LO7pCo3h0
意外に広い都市公園で、うつぶせになって倒れてるオッサンの左手が微かに動いた。
色彩のおかしい右手が少し離れたところにある。
下顎も微細骨折を通り越した感じになっていて、まだ見ぬ発見者に叫ばれそうだ。
柳龍光との果し合いに応えるべきかどうか、渋川は迷っていた。
柳からの果たし状をOAバブル時代のコピー機で1枚複写し、園田にFAXした。
しかし園田からの返事は無かった。(機械モンは苦手じゃわい・・・・・)。
時刻が近づいてきたから、武道家の意地に流されるように支度をした。
途中、流体で言えば水門や滝に相当するようなハードルがたくさんあった。
そこを流されて流されて、着いたときなぜか勝負は既に終わっていた。
勇次郎との再戦に応えるべきかどうか、本部は迷っていた。
本部以蔵、「支部以蔵(渋いぞう)」の芸名で地元の催し物に出ようとしていた矢先。
銃刀法の観念が1960年代で止ってる本部の携帯電話は、勇次郎からのコールを受けた。
「練馬祭のチラシを見たぞ」「せっかくだし、鬼を斬ってみないか」「場所は・・・」。
本部は電車で二駅向こうの街へ、鬼の公園目指して道場を飛び出した。
286 :
作者の都合により名無しです:2010/10/30(土) 09:30:25 ID:LO7pCo3h0
バキの通う高校には、先月から第2学年に強烈な転校生が来ている。
日々野晴矢。世界的な大事件だった連続脱獄の余波で、転校してきた。
「ステュクス」での乱闘事件が、スペックの再逮捕の前に起きていたことで
捜査のメスが入った。晴矢も或る意味で、彼らと同じタイプの人間だ。
「下僕(ダチ)」のフォローもあり、この高校でやり直すことになったのだ。
晴矢は、本気で世界征服ができると信じている。
だが決して、誇大妄想狂でもないし猪突猛進型の馬鹿でもない。
ケンカの構想を練ったら、そのための相手を調べる。"武丸"程度ならそんな必要なかった。
しかし2年生になってから豪田との再戦や天野瑞希、御坊茶魔に辛勝したことから
晴矢は敵を知ることの重要性を知った。そして、範馬刃牙との戦いを避けている。
晴矢は最初、その人物に好感を持っていた。
資料が示す事実は、晴矢の夢が人間に不可能な事ではないのを証明していた。
その人物は朱沢鋭一○害事件(時効)の最重要参考人(次点はドリアン)だ。
傭兵としての武勇伝に、「ガイヤの頭をボコボコにしたのを見た」というものがある。
飛騨のUMAを狩り、それがどうやら素手によるものらしいこと(UMAの頭部は紛失)。
もう、「乗り場」(『範馬』の暗号)の実家どころじゃなかった。好感は畏怖に変わった。
晴矢には、バキに対し手加減して勝つほどの強さはない。克ち合えば、やるしか無いのだ。
策と速攻、それも最短の手数が成功しないなら自身の重篤を意味する。六分四分で晴矢だ。
そして、過去にバキの存在を脅かした事のある強者がどうなったのか・・・・・・。
287 :
作者の都合により名無しです:2010/10/30(土) 09:32:28 ID:LO7pCo3h0
「猿酒なんか、酒精で弱い雑菌を淘汰してあるから腹壊すぞ」。
ガイヤの相棒(バーディ)と山へ行ったとき、晴矢は負け惜しみを言ったことがある。
高校に上がって初めての負け惜しみだ。防衛大学校OB訪問から約3週間後の出来事。
本当は、樹上で発揮する野猿の身体能力は連れ合い(ガイヤの相棒)を上回ると聞いて
まだ見ぬ猿に対しびびったのだ。
高校では「大学進学を目指しているから」吹聴し、不良たちから絡まれないようにしている。
そうすることで、「こいつには勝って当たり前、ワンパンKOでもされたら青春終わり」と
思わせているのだ。バキとの戦いの芽を、除草剤(農薬)でも撒くかの如く摘んでいる。
柳の手にかかったら、どんな生物も大変なことになる。
その手が全摘出になった後でも、帰るフリをしてからの流れるようなコンビネーションで
確実に仕留める。そして、仲間たちに対しワケのわからん言い訳を繕う。
まさに、鬼。近くの民家で盗撮の番をし、満を持して出てきた鬼。柳を○す気だったとしか思えない。
意外に広い都市公園が薄明るい太陽を迎える頃、茶色い猫が鉄臭いシミを不審そうに嗅いでいた。
不審そうに、というのは人間(近くの高校の女生徒たち)の主観だ。本当のところはわからない。
持って帰って、「タマ」と名付けたいぐらい普通の茶色系の色をした猫だ。
陽が薄暗くなる時、晴矢は夕刊で柳龍光の貨客船ジャックを知った。
貨客船の出発時刻から考えて、凄い数の私服警邏が自分を狙ったものでないのを推定した。
「やめるか〜〜ァ、世界征服」。何げない独り言がデストラーデ高のノボルにインスピレーションを与えた。
288 :
作者の都合により名無しです:2010/10/30(土) 09:39:35 ID:LO7pCo3h0
非ヘタレの柳龍光を創ってみました。
スレは、いつまでも続けましょう。
せっかくなので、これものび太ランドに合流させようと思います。
合流のさせ方はアイデア募集中。
柳というか、日々野を使いたいところです。
289 :
作者の都合により名無しです:2010/10/30(土) 15:13:24 ID:/YRebsAZ0
晴矢もバキ世界では凡人だと思うけどw
柳は好きだから非へたれは歓迎。
でも、ガイヤじゃなくてガイアね。
290 :
作者の都合により名無しです:2010/10/30(土) 20:43:08 ID:ffYJXZqQ0
そういえばバキ、「グラップラー刃牙」第1巻でボクシング部の武勇伝と末堂との試合報道がありますよね。
バキは最初の頃、弱いフリをしてたような気がするけど弱いフリなんかできたんでしょうか。
別の日には、ボクシング部編で圧倒した高山を他校生の集団から救出もしてますし。
あと、幼年編での話は必ず人口に膾炙しますよね。中学の運動部5人衆の撃破と米軍基地内での出来事。
バキはひょっとすると、イメージ戦略や人間関係でも最強かもしれません。
ドイルや柳が来襲したときでも高校で正体を隠そうとしてましたが、それ以前にスペック来日の折の事件が
起きているしバキはどうやって普通人のフリをしてるのか謎です。
事件のヤンキーたちに口止めしたとしても、体力測定の件とか隠し切れない要素もちらほらあります。
体力検査のことに関してはジャックからステロイドを分けてもらい薬物汚染を装うことで
全てを穏便に流すことが可能ではあります。でも、毎回そんなことしてられないような気もします。
オリバ編が終わってから、漸く学校でもバキの正体が明るみになったようですが(復学も謎)、
それまでどうやって普通人を装って居られたのか不思議です。
弱いフリは強さの水増しと違い、ちょっとしたことでボロが出ます。皆より賢くて心も強くないとできない。
強弱に敏感な年頃の奴らの中で、ダークホースと見なされたら一般にバレるのとほぼイコールです。
板垣氏の仕事がインパクトに偏ってるからなんでしょうけど、バキの策謀能力は謎です。
291 :
作者の都合により名無しです:2010/10/30(土) 20:45:25 ID:ffYJXZqQ0
日々野に限らず、出身世界でダントツに強い、それでいて世界を壊したり変革したりする力が無いキャラクターを
バキ世界やもっと上の世界で存分にホタエさせてあげたい気持ちはあります。
いくらバキ世界でも、日々野なら凡才じゃないでしょうし。
ところで皆さん、中尊寺ゆつこ作の「プリンセス in Tokyo」は知名度どのぐらいあるでしょうか。
ここに収録の「1990 The・Tokyo World」の舞子(帰国子女ゆえの超天然)は、知名度どのぐらいでしょうか。
皆でイメージできる作品なら、この舞子のスピンオフを創りたいと思います。
コンセプトは「素手の格闘技なんかおままごと」。そのせいで、不良高校生のキャラクターたちと大戦が起きます。
いやいや頑張って欲しいけど
流石に作品レスより語りレスの方が量が多いのはどうかとw
中尊寺さんは知ってるけどその作品は知らないなあ。
ハレルヤやバキに比べるとかなりマイナーと思うけど、
結構メジャーな作品なの?
鬼衆の料理人ならバキ世界でもやっていける気がする。
あの切れ味は半端じゃない。
巨大鮫を輪切りにしてたし。
花山は巨大ホホジロの脳ミソ潰してたがw
公園本部とボブ爺さんは、どっちが強いのかな。
296 :
作者の都合により名無しです:2010/11/03(水) 10:42:34 ID:Kl6bYOG10
おっとすいません、カイカイです。
BOYは、百鬼衆も凄いですがミリオンが良い感じです。
柴千春レベルのヤツなら手も足も出ないでしょう。
297 :
永遠の扉:2010/11/04(木) 17:29:03 ID:qxaQj8O50
修行。
或いは、恩返し。
【9月6日】【9月7日】 どちらともとれる境界線上の夜。
──────パピヨンの研究室で──────
パピヨンが図面片手に指示を出し、ヴィクトリアが従う。
そんな光景がもう何時間か続いていた。
分厚い合金の板が山と積まれパイプの束が散乱し、大きな箱から零れんばかりに集積回路が覗いている。
そんな研究室の中で彼らは時おり諍いつつも作業を続けている。
彼らの前にある物体を一言で形容するなら、”金属で編まれた皿”
直径5mほどのそれはひどく平べったく、内外を行き来するヴィクトリアは事も無げにひょいひょい跨いでいる。
作られ始めて間もないのだろう。皿は骨組がよく目立った。そこを跨いだ少女が屈みこみ、粗笨(そほん)極まるスカスカ
空間へ曲った合金をはめ込んでいく。パズルの如く、組立作業をしていた。
皿の中心には、六角形の窪みがあった。
パピヨンの手元にある設計図によれば、いずれその窪みに同形の柱が立ち……。
真っ白な核鉄を収蔵するらしかった。
皿へ肉付けするヴィクトリアの動きがわずかだが乱れた。どうやら合金が嵌らぬらしい。
図面を見ていたパピヨンが舌打ちし、やや声を荒げた。骨組のやり方を見直せ、入れ方を見直せ……
口調はどこか、厳しい。
やがて何とか合金を嵌め込んだヴィクトリアは、せわしいパピヨンの様子にブスリと呟いた。
「悪かったわね。突貫作業なのに」
「無駄口を叩くぐらいならそこの合金の板でも運べ。グズグズするのは性に合わん」
濁り切った目を図面から離さぬままパピヨンは呟く。
どこか焦っているように見え、ヴィクトリアは首を傾げた。
協力を申し出た時の彼や、そのずっと以前、女学院の地下で出逢った時の彼は傲岸ながらに「余裕」という物をたっぷり
持っていた。
それが崩れている。ヴィクトリアは指示通り合金の板を運びながら、眉を顰めた。
(また……?)
298 :
永遠の扉:2010/11/04(木) 17:29:51 ID:qxaQj8O50
余裕が崩れ、苛立ち、黒く沈み込む。そんな状態がここ数日よく見られた。寄宿舎生活と学生生活の間隙を縫うようにして
通っているヴィクトリアでさえ「よく見られる」事だ。彼が一人きりの時を加えれば恐らく2時間に1度、発作的にこうなっている
のかも知れない。
もっとも10分も経てばすぐ元の彼に戻り、いつものような世界人類総てにとって憎らしい自信をその口からたっぷりと振りまく
のだが。
急ぐのは分かる。
(確かにパパや武藤カズキのコトなら時間制限つきよ? でも、それで片付けるには、何かが)
おかしい。パピヨンの奥底で何か黒々とした恐ろしい物が蠢いているようだった
ヴィクトリアの父、ヴィクター=パワードはおよそ1世紀ほどまえ怪物となった。
錬金術の世界に身を置くものの中には自ら人間をやめ、ホムンクルスの不老不死と弊害を大いに楽しむ者もいるが、ヴィ
クターの場合は違っていた。
人間を守るための戦いの中で。
瀕死の重傷を負い、意識不明の重体となり。
仲間と、妻の意思によって蘇生させられ。
その過程の中で、偶発的に。
怪物となった。
彼にとって不幸だったのは、その怪物が「ホムンクルスよりさらに上」の存在だったコトだ。
賢者の石を目指して作られた『黒い核鉄』。
それを移植されたヴィクターは……
周囲の者から強制的に生命力を巻き上げる、悪夢のような存在と化した。
エナジードレイン。
戦団はヴィクターの恐るべき生態をそう名付けた。
彼に近づいた人間は誰であろうと生命エネルギーを搾取される。ほんのわずか間近にいるだけでも全力疾走2〜3km分
の疲労を抱え込む。
ヴィクター自身の意思では止めようがなかった。
同じ建物にいた。それだけで殺してしまった戦士さえ数えきれない。
「悪魔」。そう罵るのは立ち寄った村の人々だ。彼らは昏倒する子や親をきっと抱きよせヴィクターを睨んだ。
森を行けば木々が枯れ、川を行けば魚が浮く。
悪夢だった。
完全に満たされた瞬間だけ望まぬ生命搾取がやみ、少し経つとまた始まる。
他の者なら、例えば私欲のためだけにホムンクルスとなり好んで人食いをするような者ならそれはむしろ僥倖だっただろう。
だがヴィクターは違う。
彼は戦士として錬金術の正しさを信じ、無辜の人々の笑顔と未来を願い戦ってきた。
彼に黒い核鉄を埋め込んだ妻や仲間もそれは同じだった。
にも関わらず、皮肉にも。
黒い核鉄を埋め込まれたヴィクターは、理想とは真逆の存在と化した。
人の近くにいるだけでその生命力を吸いつくし、死に追いやってしまうのだ。
自身の変質──後にヴィクター化と呼ばれる忌むべき現象──を理解した彼は。
逐電を、選んだ。
どこか人のいない、自分以外の生命の何一ついない場所を目指して。
誰一人としてエナジードレインなどという馬鹿げた生態で殺さぬよう、傷つけぬよう……。
だが戦団は彼の逐電を許さなかった。
存在(い)るだけで死を撒き散らす怪物(モンスター)。
彼の属していた組織は錬金戦団。
ホムンクルス討伐を生業とする戦団だ。
見逃す道理はないという訳である。
そして100年後。
299 :
永遠の扉:2010/11/04(木) 17:31:59 ID:qxaQj8O50
経緯こそ異なれど、ヴィクター同様「黒い核鉄」を埋め込まれた少年、武藤カズキもまた怪物として戦団に追われる身となり──…
いまに至る。
パピヨン。
そしてヴィクトリア。
出自も経歴も違う2人のホムンクルスが現在協力体制を敷いているのは、ひとえに「黒い核鉄」とそれのもたらす恐るべ
き生態のせいである。
望まずして怪物になったヴィクターと武藤カズキ。
錬金戦団は彼らを許さず、再殺を望み、追いたてた。
もっともそれは、武藤カズキが半ば抱き合い心中という形でヴィクターもろとも月へ『飛んで』──突撃槍の推進力で、衛星
打ち上げのように──以降、中断されてはいるが。
少なくてもヴィクトリアは父がこのまま見過ごされるとは思っていない。
ヴィクターが人間に戻らない限り、「再殺」という馬鹿げた行為は収まらない……錬金戦団の都合のみでホムンクルスに
”させられた”或いは、ヴィクター退治の切り札に”仕立て上げられた”ヴィクトリアだ。戦団への不信は当然といえた。
このままいけば月にさえ討伐部隊が差し向けられるかも知れない。
武藤カズキという少年についても同じコトがいえた。
「事情が事情だ。貴様は父親を人間に戻したい訳だ。戻しさえすれば少なくても再殺対象からは外れるからな」
数日前。
協力を打診したパピヨンは酷薄な笑みを浮かべた。
パピヨンもまた、武藤カズキを人間に戻したい人物だ。
もっともその動機は「殺されそうだから人間に戻したい」というヴィクトリアのそれとは少し違っているようだった。
巨大なフラスコの中で本を閉じ、不敵に微笑む蝶々覆面の男は、もっと殺伐とした、確固たる信念の元に武藤カズキを
人間に戻したい。表情や言葉に垣間見えるはそんな機微。
「とにかく。パパや武藤カズキを元に戻すためには白い核鉄が必要」
「言われずともその程度のコトは分かるさ。白い核鉄は黒い核鉄のカウンターデバイス……」
「黒い核鉄と重なるよう体内へ押し込めば、2人とも人間に戻るという訳」
「そして貴様はあののーみその元で長年白い核鉄の開発に携わっていた。アドバイザー程度なら勤まるだろう」
「ママを馬鹿にしないで。白い核鉄だってパパのヴィクター化がもう第三段階だったから、人間に戻せなかっただけよ」
「だから貴様はもう1つアレを作る必要があるという訳だ」
仇敵。または父親。
対象こそ違えどホムンクルス以上の怪物と化した「大事な存在」への気持ちは両者とも同じ。
「人間に戻したい」。
性格も立場も違うヴィクトリアとパピヨンが手を結んだのは自然な流れといえた。
そもそも戦士とザ・ブレーメンタウンミュージシャンズの戦いにおいて、パピヨンが一向に姿を見せなかったのには理由がある。
白い核鉄の精製を求める彼は、横浜にいる筈のヴィクトリアを探しまわっていたという。
だが折悪しくも彼女は秋水に誘われる形で銀成市に居た。
それをどうやって突き止めたのかはともかく、パピヨンが銀成市に戻って来た頃。
一連の戦いは正に最後の一幕。あわや乱入者ムーンフェイスの一人勝ちという局面だった。
そこへ彼が更なる乱入を加え、戦士と音楽隊双方の目的物……
「もう一つの調整体」
を掻っ攫う形になった。
300 :
永遠の扉:2010/11/04(木) 17:33:15 ID:qxaQj8O50
そして去り際彼が発した言葉
──「まず探すべきは──…」
──「この街に来たというヴィクターの娘だ!」
を秋水経由で(彼としては「近づくな」という警告で伝えたのだが、結果として逆効果となった)聞きつけ、ヴィクトリアはやって
きた。
そして手と手は結ばれた。
「「事情が事情だ。貴様は父親を人間に戻したい訳だ」
という一声は協力体制始動前に発せられた物である。
彼らの目的は一つ。白い核鉄の精製。
とはいえ、白い核鉄は黒い核鉄を基盤(ベース)にしなければ精製不可。
これまでの錬金術史に現れた黒い核鉄は3個。
1つはヴィクターに埋め込まれ。
1つは武藤カズキに埋め込まれ。
最後の1つは白い核鉄としてヴィクターの胸の中。
「本来基盤(ベース)となるべき黒い核鉄は失われているが」
「アナタのご先祖様が残した「もう一つの調整体」を使えば、可能性はあるようね」
ヴィクトリアはパピヨンの手に目をやった。
彼の手には黄色い核鉄が握られている。
「もう一つの調整体」
Dr.バタフライが密かに作成し、戦士と音楽隊の面々が熾烈に奪い合った謎の核鉄。
それを眺めるパピヨンの薄暗い瞳には確固たる確信の光が灯っている。
「選択肢なんてのは自ら作り出していくものだ。ご先祖様がどういうつもりでコレを作ったかは知らないが」
「せいぜい可能性を追わせて貰う……そんな顔ね」
しかしなぜ可能性があるのか? 説明は後段に譲るとして。
Dr.バタフライとDr.アレキサンドリアが残した研究資料。
それをパピヨンが総合し指針を作り出し、ヴィクトリアが従う。
という所で彼らは一致している。
錬金術師としてのキャリアは実のところパピヨンの方が長い。100年地下で母の助手をしていたヴィクトリアであるが、実
態は雑用という方がふさわしい。これは彼女が錬金術を嫌いぬき、系統だった学習を一切放棄していたためである。
唯一得意なのはクローン技術であるが、これはあくまで「母の脳細胞を増殖させるため」いやいや使っていたにすぎない。
つまり錬金術師ですらないのだ。ヴィクトリアは。
よって遥か年下のパピヨンに従う。
のだが。
301 :
永遠の扉:2010/11/04(木) 17:36:30 ID:qxaQj8O50
パピヨンの指示ときたらそれはもう突拍子もなく傲岸で、右往左往の連続だ。
彼は自称通りまぎれもない天才だが、天才だけに凡人との調和がまるでできない。
ついていけねば露骨に失意を見せ、または嘲る。
狭隘でねじくれたヴィクトリアの精神はまったくムカムカとなった。
彼女は錬金術が嫌いだ。産物は核鉄であれホムンクルスであれ好かない。
白い核鉄の精製という母の悲願をやるにしても嫌気はどこかに付きまとう。
それを引きずり出しますます顕在化させるのが、パピヨンの不遜な態度。
マニュアルを持って来い。無数の本の山の中に埋もれたそれを20分見つけられないだけで嘲りが来る。
マニュアルを読んでも用語だらけでちんぷんかんぷん。
まったく何もかもが分からないコトだらけで、しかもパピヨンはそれを教えるつもりがない。
いざ作業に移れば機械付属のぐにゃぐにゃしたコードの川に足を取られ軽く捻挫。
指示通り組み立てた筈の端末からは何度も何度もエラー音が響く。
焦燥と無力感。汗ばかりがセーラー服に沁み込む。絶望的だ。
「…………」
ヴィクトリアはきゅっと唇を噛んだ。自身の無為を悔いた。100年も錬金術への嫌悪に囚われやるべきコトもせず、何も
積み重ねなかったから、いま、ツケが回ってきている。
自嘲じみた実感が浮かんだ。
自分に対する嘲りが、ヴィクトリアに更なる災難を呼び込んだ。
「おい」
最初何が起こったか理解できなかった。ひどく低い声とともに背後へ引き戻された……とようやく認識する頃にはもう細い
体が床を転がっていた。血が舞い上がったのは、錬金術製のパイプが激しく掌を擦ったせいだ。
気づけばヴィクトリアは、罅割れたフラスコに背を預け……座り込んでいた。背中にチクリとした無数の痛みが走る。機材
でも錬金術製ならホムンクルスに害を与えるというコトをヴィクトリアは初めて知った。
もっともそれは後ほど「そういえば」程度で認識したコトで、この時のヴィクトリアはもっと直接的で簡明な危機感を催して
いた。
右肩の辺りで爆発音がした。そちら方面の視界は夕焼けを最前列で見たようにまばゆく橙に眩み、そのまま眼球が焼け
落ちる錯覚さえ覚えた。とてつもない熱量が右半身を襲い、荒れ狂う熱風は束の金髪を燻していた。余波、だろうか。割れ
た分厚いガラスがチャリチャリと床に落ちた。奇跡的に脇の下をすり抜けるだけで済んだ鋭利な破片を、翳む視界の片隅に
認めたヴィクトリアは……やっと事態の全容を掴んだ。
立っていた自分が後ろへ引き倒され、フラスコに衝突し、そこへ爆破の追い打ちを掛けられた。
やった相手が、近づいてくる。
濁り切った瞳で切歯した口で右手に無数の黒い蝶を従えて
ゆっくりと。
ヴィクトリアは寒気の中で悟った。失敗を揶揄し嘲笑を浮かべている彼はまだ良い方だと。
黒々とした熱と悪意を全身の隅々からブチ吐きながら近づいてくる彼は──…
1世紀前初めてみた、ホムンクルスの軍勢の誰よりも凄烈だった。
そして少女たるヴィクトリアにこういう狼藉を働くほど、パピヨンの中で何かが狂っているらしかった。
「時間がないんだ。貴様の下らん感傷で俺の手を止めるんじゃあない」
座りこむ彼の表情は凄まじく醜悪だ。
言葉の意味と怒りのワケをヴィクトリアはすぐさま直観した。”感傷”。ヴィクトリアのそれはパピヨンにとってまったくどうで
もいいコトなのだろう。それに囚われ、作業の手を止めた。武藤カズキの再人間化には時間的制約がある。月にまで戦団
の追っ手が及び再殺される恐れ。実際のところはともかくとして、ヴィクトリア同様パピヨンにとっては危惧の一つだし焦るの
も無理はない。
にもかかわらず個人的な感傷で作業を止めたのは……引き倒され爆撃を受けても仕方ない。
302 :
永遠の扉:2010/11/04(木) 17:38:17 ID:Tu8oeYxYP
希代の皮肉家にしては珍しくヴィクトリアは上記の道理に触れ、自らの非違を詫びた。パピヨンを恐れたという訳ではなく、
仮に自分が彼の立場で彼が自分のような所作をしたのなら──許せないと思ったからだ。
蝶々覆面の下で表情が醜悪に歪んだ。語気が荒れた。
「ヒキコモリ風情が知ったような口を聞くんじゃあない」
素直な謝罪が逆効果になる……細い首から空気を吐きつくす頃、ヴィクトリアはまったく暗澹たる憤怒に見舞われた。
爪の鋭い手が自分の首にかかり、激しい力を込めている。痩身の青年に見合わぬ力は無論ホムンクルスの恩恵で、おか
げでヴィクトリアの気道は軋む頸椎に密着した。呻き、反射的に剥がしにかかる。それにますます激昂したのだろう。パピヨン
は手にますます力を込めた。かふかふと咳き込み打ち震え、半開きの口から涎が一筋零れおちる。首からにゅっと延びる黒
い枝に染みができる頃、彼の空いた左手の上で蝶が激しく舞い始めた。よほど心中を言い当てられたのが腹立たしかった
のだろう。周期的だが意味不明の鬱屈に見舞われたところに、ヴィクトリアの不手際と勝手な感傷が重なり、激発。
そこへあの謝罪(してき)……プライドの塊のような男にとって、目下とみなす存在から図星を指されるのは屈辱なのだろう。
薄れゆく意識の中でヴィクトリアが気付いたのは、そんな絞首にいたる理由……ではなく。
その奥。パピヨンが時おり見せる鬱屈の原因だ。
薄れゆく意識の中で。彼の濁った、濁り切った瞳を見た。怒りと憎悪と遣る瀬無さを湛えた瞳。
彼がなぜ時おり激しい鬱屈に陥るのか。
ヴィクトリアだけが理解した。
(『そう』ね。そうだから、辛いわよね…………)
翳んだ瞳が哀切に細くなる。悲しみと……わずかな感銘が全身を駆け巡る。パピヨンの手にかけた両手はいつしかダラリ
と下がっていた。
パピヨンの表情がやや驚きに支配され──…
彼は何かを言う前に。
血を、吐いた。
吐くなどという生易しい形容ではなく、斗貴子風にいえば正に「ブチ撒ける」という感じだった。
これも後に知ったが、激昂したり激しい運動をすると決まってこうなるらしい。
あぶくの混じった飛沫が欧州少女の顔をぴしゃぴしゃと汚し。
地面に出来た血だまりの前で、パピヨンは身を丸め激しく咳き込んだ。
その拍子に彼の手がはがれたので、ヴィクトリアはようやく喋れるようになった。
「……? アナタ、ホムンクルスになったのに病気はそのまま……なの?」
「うるさい!!!」
数分後。パピヨンの姿はどこかへ消えていた。
痛む首をさすりながらヴィクトリアは激しい怒りとわずかの同情に顔をしかめていた。
作業の途中で手を止めたのは悪い。だがそれは謝った。にも関わらず首を絞めるとは……。
パピヨンの秘めた感情は少しだが理解した。
だがこの先、突然逆上して首を絞めてくるような不安定な男と上手くやっていけるかどうか。
ヴィクトリアは自分の性格を嫌というほど理解している。大抵の辛さには耐えるつもりだが、いざ巨大な不快と不条理に
見舞われれば逃げを選ぶ弱さも確かにある。100年地下に居たのはそのせいだし、寄宿舎に移ってからも一度人喰いの
衝動を恐れ、逃げを選んだ。
目を伏せる。瞳が少し潤むのが分かった。
(決めた筈なのに……馬鹿ね)
不慣れな作業。
不安定な男。
目的のためにはそれらと向き合わねばならない。それがどれほど困難で苦痛を伴うかが分かってしまう。
(やれるのかしら。私なんかに)
303 :
永遠の扉:2010/11/04(木) 17:41:27 ID:Tu8oeYxYP
割れたフラスコに背を預け、無言で俯いた。パピヨンの作った血だまりが見えた。黒く固まり始めているそれは自分の心境
と重なって見えた。
「あなたもうちょっとしっかりしなさいよ」
「ご、ごめんなさい。先輩」
見た事がある。
まひろが、演劇部の女先輩からとても厳しい演技指導を受けているのを。
ひどい演技指導だった。恐らく最近秋水(学園のアイドル!)と懇意だからやっかみ半分の厳しさだったのだろう。
にも関わらずまひろは演技指導が終わるやいなや、すぐ言われたとおり練習を始めていた。
「よくやるわね。さっきの指導はどうせやっかみ半分じゃない。あんな奴のいう通りにして悔しくないの?」
まひろはしばし考えた後、こう答えた。
「でも結構、「なるほど!」って部分もあったよ? それを試したら上手くなれるって分かってるのに諦めるのは勿体ない!」」
「単純ね。アナタを責めるためにもっともらしい理屈並べただけじゃない。だいたいあの人、人に説教できるぐらい上手いの
かしら? 見たとこ腹式呼吸さえできていないようだけど」
絶賛大根演技中の女先輩をくつくつと冷笑混じりにヴィクトリアは見た。
一方、まひろは小さな顎に手を当て「おや?」という顔をした。
「? もしかしてびっきー、私をかばってくれてたりとか?」
「……うるさいわね。別にあなたの為じゃないわよ。ああいう人間が気に入らないだけ」
ゆらい嫉妬を抱えた若い女性ほど始末に負えぬものはない。
正々堂々とそれを解消できないと悟りきっているから、蔭口や罵倒で気晴らしをする。
秋水という恩恵を受けているまひろの些細な粗に正論じみた説教を突っ込むのもその一例だろう。
屈折しきった精神を持つヴィクトリアは「そうに違いない」と思った。もちろん、ねじくれた人間ほど薄暗い解釈しかできぬ
自覚はない。上記の推測はある種合っているが一部は外れている、そんな考え。
一方、まひろはいつものように明るい声を張り上げた。豊かな胸をドンと叩いた。
「大丈夫! 私が頑張って演技上手くなったら、先輩だって私もガンバローって腹式呼吸できるようになるよ!!」
まったく論拠不明。ヴィクトリアはやれやれと肩を竦めた。
「頑張るのは、ついさっきアナタを責めた奴を上達させるため? アナタ馬鹿でしょ?」
「うーん。よく分からないけど、でもケンカしたり「もうダメー」ってやめたりするよりは私が頑張って上達して、みんなに「私も
頑張るぞー」って思って貰う方がいいんじゃないかな? それにね、私、まだ演技ヘタだし」
ヴィクトリアはちょっと目を丸くした後、不快気にぶすりと呟いた。
「私は悪い方ってコトかしら? 当てつけ? 私は「もうダメー」って気分で地下に100年居たわよ?」
まひろは慌てた。「そういうつもりじゃ」という意思表示をあたふた声でデコレーションの上、贈答してきた。
「冗談よ。アナタ皮肉をいえるほど賢くないでしょ? せっかく分かってあげてるのよ。安心しなさいよ」
「びっきー! ありがとー!」。そう抱きつくまひろに想う。
「悪口も分からないなんて本当に馬鹿ね」。でも、そういう奇妙だが懐の広い「馬鹿」だから付き合えているのかも知れない。
本気で嫌いならホヤホヤ嬉しげに抱擁中の少女など片手で引き剥がせる。壁か窓にでも叩きつけられるのだ。
(ああでも暑苦しい。鬱陶しい。いい加減離れなさいよ)
「とにかく! 私が頑張るコトで他のみんなも演技上手くなるならそれでいいじゃない? ね? そしたら劇を見てくれる人
だってもっと楽しんでくれる……って思うんだけど」
びっきーはどう思う?
いつの間にか寝ていたようだ。夢に出てきた気楽な顔に、ヴィクトリアは大きく溜息を吐いた。
首を左右に動かす。現状を確認する。パピヨンはいない。
ヴィクトリアはコードの川に足をうずめている。迂闊さを笑う。割れたフラスコに背を預け、眠るとは。幸いあれ以上深く刺さっ
てはいないようだが……。
(あのコを馬鹿にできないわね)
苦笑混じりに溜息をつく。慣れぬ作業の疲れと苛立ちに相当疲れているようだ。母提示のルーチンワークはいかに「娘が
やりやすく」手順を組んだかよく分かる。
304 :
永遠の扉:2010/11/04(木) 17:46:20 ID:UGOWvWGt0
立ち上がる。硬いガラスに押しつけていた背中にどんよりとした痛み。目の下にはむくみ。空腹感。抜け切れぬ疲労感。
それら総てを吐きだすように、ヴィクトリアは大きく溜息をついた。
「頑張る方がいい? 馬鹿にしてくる奴上達させる方がいい?」
ダブって見えた。
まひろを叱っていた女先輩が、パピヨンと。
演劇が、錬金術と。
嫌いな錬金術と苦労して向き合い、嫌いな奴を利したところでどうなる……という考えもあるにはあった。
理屈さえつければパピヨンとの協力関係など幾らでも解消できる。尽くしても見返りがくる保証はない。
ヴィクターが人間に戻れる保証など実はない。
自分が歯をくいしばって頑張ったとして、報われる保証は?
苦渋と理不尽に満ちた1世紀超の人生は、悪い想像ばかりかきたてる。
(…………)
ではなぜ、敢えて嫌いな錬金術に関わっているのだろう。
ヴィクトリアは静かな顔で自分に問う。
(きっかけは、あの時)
人喰いの衝動から逃れるように、寄宿舎から逃げたコトがある。
その時、秋水が追ってきた。どうやって所在を突き止めたかは分からないが。
むかしパピヨンが住んでいた屋敷の地下で。
秋水はヴィクトリアを説得し、彼女が寄宿舎に戻るきっかけを作った。
(その後よ)
地上に戻った秋水は「総角主税(あげまきちから)」という敵の手によって、地下へ落とされそうになった。
助けようとしたヴィクトリアに、彼はいった。
「寄宿舎に帰るんだ。皆、君の帰りを待っている。俺も帰還を望んでいる。だから戻れ」
澄んだ瞳が語っていた。ヴィクトリアには錬金術の闇と無関係でいて欲しいと。
──「でも、さっさと戻ってきなさいよ。このまま居なくなられたら、勝ち逃げされたみたいで不愉快だから」
──「分かっている。君を助ける約束も必ず果たす」
(何よ。人の都合に踏み入る癖に、自分の都合は守るなんて卑怯じゃない。私だって……)
その時の憤りが。
”私だって”
何もできない訳じゃないという、反論のような気持ちが。
ヴィクトリアの持つ彼女自身の可能性を気付かせた。
(…………もし、コレを実現できたら?)
長年母の助手として携わってきた「白い核鉄の精製」を、ヴィクトリアの手でできたら?
305 :
永遠の扉:2010/11/04(木) 17:47:06 ID:UGOWvWGt0
最初は小さな小さな灯火のような感情だった。
だが地下での戦いに身を投じる秋水を待ちわびるうち……というより待ちわびるしかできない自分への苛立ちが募るたび
気持ちはより強く強くなっていった。
何か、できるコトをしなくてはならない。
そして秋水は鐶光というホムンクルスに負けた……というのを戦士経由で聴き
──(これだから錬金の戦士は嫌いよ。約束……反故になったじゃない)
彼らと、鐶の戦いに思う所あって乱入し、期せずして勝因の一つとなり。
──「いまの生活は色々鬱陶しいけど悪くはないから、『やりたいコト』の準備が整うまではしばらく続けるつもり」
斗貴子にそう告げた。
やりたいコトは、白い核鉄の精製。
それは100年前からの母の悲願だし、彼女が死んだいま、その意志を継げるのは自分しかいないとヴィクトリアは思う。
母への手向け。父への救い。
白い核鉄の精製は自分に課せられた使命だと……ようやく気付いた。
そしてパピヨンが自分を探していると聞き、ここへ来た。
彼とは少しだが面識があったし、来歴もわずかだが知っている。
秋水からの説得前、蝶野屋敷を散策している時に。パピヨンの父の日記経由で。
だからやってきて、白い核鉄を作ろうとしている。
錬金術の総てをヴィクトリアは許した訳ではない。
戦団だって嫌いだ。ホムンクルスも。核鉄だって正直好きではない。
けれどそういう感情にだけ囚われていいか? と聞かれたら……ヴィクトリアは首を横に振りたい。
そうしてきた100年間から得られたものなど何もなかった。
そうしてきた100年間から引き上げてくれた者たちは、囚われていなかった。
けっして無傷ではない、或いはヴィクトリアより重い苦しみや悲しみを背負っているかも知れない彼らは。
それでも誰かを救おうと足掻いている。
(……そんな足掻きに乗った私も私ね)
ヴィクトリアはうっすらと笑いを浮かべた。
慣習上どうしても嘲りは抜けないが、どこか「仕方無いわね」という親しみが籠っている笑みを浮かべた。
そして嘆息して、思う。
とても簡単な疑問を。
簡単だが、嫌悪や凝り固まった観念の前では浮かべてしまうのがやや怖い……自分の根底を覆しそうな疑問を。
(錬金術が演劇みたいに人を喜ばす。そんなコト、あるのかしらね?)
306 :
永遠の扉:2010/11/04(木) 17:48:16 ID:UGOWvWGt0
黒い核鉄によって人外の、魔性の存在と化した者を元に戻すのには、白い核鉄が必要不可欠だ。
パピヨンは武藤カズキを、ヴィクトリアは父親(ヴィクター)を人間に戻したい。
だから、手を組んだ。
(武藤カズキ……)
父と同じような運命に踏み込んだ少年を思い出す。
初めて会ったのは女学院の地下。再人間化の手段を求めやってきた彼は……泥棒猫に見えた。
母の100年がかりの研究成果と父の1世紀ぶりの救済機会を横から奪う泥棒猫。
やっと見えた欠如の回復さえ世界は奪うのか……暗澹たる気分だった。
だから心なんて開くつもりなんてなかったし、辛辣な言葉だって何度も何度も投げかけた。
だが彼は。
白い核鉄を。母の100年がかりの研究成果を。
自分ではなく、父(ヴィクター)に使った。
今なら思える。
いや、彼を強く思う秋水とまひろが自分を救ってくれた時から気付いていたのかも知れない。
彼は自分が嫌っていたほど、悪い存在ではない。
と。
ヴィクトリアを闇から引き上げた秋水とまひろにとっても、武藤カズキは大切な存在らしい。
秋水もまひろも、目的こそ違えど彼との再会を望んでいる。
だが人外のままでは戦団がそれを許さないだろう。
蝶野邸で、秋水が地下に落ちたその時。
微かな考えが一瞬浮かび、すぐ消えた。
恩人の恩人。
或いは、恩人の兄。
307 :
永遠の扉:2010/11/04(木) 17:49:15 ID:UGOWvWGt0
彼を錬金術の力で人間に戻せる事ができたなら。
秋水やまひろの元へ帰し、彼らを喜ばせられるのなら。
心に溢れる彼らへの感謝を、そっくり返してあげられる。
……かも知れない。
「まったく。馬鹿が移ったわね。最初帰りかけてたのは誰だったかしら。そもそもパパのコト忘れちゃ意味ないじゃない」
「何の話だ」
いつしか戻ってきていたようだ。パピヨンが首をかしげた。
ヴィクトリアは一瞬息を呑んだ。青白い顔に血の気が薄く昇るのも感じた。
(落ちつきなさい。独り言は今の分だけじゃない。今の以外は、何も…………)
でももし声に出ていたらどうしようと思いつつ、さりげなくパピヨンを観察する。
颯爽とした立ち姿の病的な青年にこれといった嘲笑の気配はない。
大丈夫のようだ。鬱屈が終わったという意味でも。
何事もなかったように言葉を紡ぐ。
「なんでもないわよ。急ぐんでしょ? 早く指示出したらどう?」
自虐めいた、しかしどこか生気を取り戻した笑みをヴィクトリアは浮かべた。
嫌いなホムンクルスと協力し、嫌いな錬金術に挑むというのに。
彼女はなんだか、うきうきとしていた。
思った。
これは修行だ。やり抜いてやる。
「厳しい修行だった……」
「だが、確かにこれならパピヨンに対抗できる!!」
308 :
永遠の扉:2010/11/04(木) 17:50:17 ID:UGOWvWGt0
【9月12日】 朝
────銀成学園までバスで7分。山あいのログハウス前で────
「厳しい修行だった……」
「だが、確かにこれならパピヨンに対抗できる!!」
そこには。
秋水と斗貴子、そして六舛の姿があった。何があったのか。最初の2人は全身のいたるところに包帯や絆創膏が見られた。
徹夜でアクションの修行をする──昨晩の修行の苛烈さが伺えた。
「斗貴子さん! 最近のジャンプの修行って過程見せないコトが多いよね! でも何をどうやってどうパワーアップしたか分
からないまま急に強くなって敵さん倒してもいまいちカタルシスないよ!」
「今度はまひろちゃんの声音か! いい加減にしろ!」
斗貴子はがなるが──…
彼女と秋水の顔はどこか明るい。直立不動の秋水は「いい試合をした」という顔である。俯き加減で拳を眺める斗貴子の
瞳で確信の光が赤々と燃えているのを認めたのは六舛で、彼もほんのわずかだけ口元を綻ばさせた。
「相変わらず上々だな。ありがと木場空牙」
ログハウスの玄関前、斗貴子たちからは階段3段ほど上。そこにいる人物へ六舛は声をかけた。
木場空牙と呼ばれたにこやかな青年は「いやいや」と軽く手を振った。
「いやはやそれにしてもいい朝で! 空は灰色太陽も灰色! いつもの如くくすんだいい朝で!」
「いやなコトをいうな! 空は青いし太陽だって綺麗な……綺麗な山吹色だ!」
「おっと世間的にゃそーでしたね。いやいやこれは失礼」
彼は六舛曰く演技の神様だそうだ。
そして最近演劇部を席捲するパピヨンに対抗すべく修行したい斗貴子と秋水の面倒を見た、という訳である。
「とりあえず礼は例のアレでいい? 」
ワシントン条約とかにはちょっと引っかかるけど……六舛の言葉に斗貴子は「待て!」と声を荒げかけたが、それはどこ
か間のびした返事にかき消された。
「いやいやそれは六っちと俺っちの間柄、お礼はなしでいいってもんで」
それに第一、感動してるんでさ……と演技の神様、上膊部で両目を拭う真似をした。感涙を示すには大仰な仕草だが、
続く涙声もまたまったく大袈裟、ウソ大袈裟まぎらわしい、公共広告機構カンカンの小芝居だ。
「演技の神様などと呼ばれて幾星霜! にも関わらず俺っちの特訓メニューについてこれる人ってのはリバっち以外まったく
いなかったか訳でありやして。ほとんどの方という奴ぁそりゃあヒドい! 耐えれば限りなき上達が待ち受けていると申します
のに途中で根を上げ脱落し、自分の身の丈よりちょい下ぐらいのらくらくメニューを選ぶ始末聞いて下せえこの前などは」
愚痴は、5分ほど続いた。
開始後5秒で「どうでもいい長話に発展するなコレは」と判断した斗貴子は迷うコトなく聞き流した。
要するにかい摘まむに「みんな俺っちのコト神様神様って呼んでるのにいざ厳しい特訓つきつけたら妥協……。それって
どーなんですかい? 苦痛感じてまで慕情貫かねー訳で?」という些か自己愛に満ちた物であった。
いつもの斗貴子なら怒鳴ってさっさと中断させるが、一応彼は一晩とはいえ師匠だったので自重する。
「されどここにいるお二方は苦痛を超えて俺っちの指示に従ってくれやした! これがまあ感動というか? 認めてくれてる
んだありがとうって奴なんでさ! 奴なんでさ!」
「なぜ二度言う!?」
階段から飛び降りた「演技の神様」こと木場空牙は斗貴子と秋水の手を取りぴょこぴょこ振った。屈託ない笑いだ。斗貴
子はやや気押されながらもあまり悪い気分はしなかった。眼前の男は黙ってさえいればそこそこ端正な顔立ちだが、いちいち
毒のない、極論すれば好々爺のような笑みで造詣を台無しにしている。もっともそういう『虚飾』のなさあればこそ、当初文句
ばかりだった短気な斗貴子が一晩限定とはいえ師事できたのも明らかだ。
「ところで、少し質問したいが……」
一方の秋水は「どうしても最後に聞きたい」と粛然たる面持ちで呟いた。
「へえ。答えられる範囲でなら何でも。あ! リバっちのスリーサイズはダメっすからね! あらぁ俺っちだけが秘蔵秘匿の
限りを尽くし密かに楽しむものでして!」
ムンと身を乗り出し必死に口角泡を飛ばす神様に「いや、そうではなく」と秋水は(上体をななめ38度ぐらいの角度で後ろ
に追いやられながら)……質問した。
309 :
永遠の扉:2010/11/04(木) 17:54:31 ID:Tu8oeYxYP
「小札零、という少女を知っているだろうか? 小柄で、おさげ髪で、シルクハットとタキシードの」
「……」
「知らなかったらすまない。知り合いと喋り方がよく似ていて気になった。それだけだ」
「……」
演技の神様は笑顔のまま動きを止めた。悪意のない、笑みのままで。
違和感。斗貴子の聴覚からさっと音が消えた。直感が告げる。「何かがおかしい」。演技の神様の表情はまったく動いて
いない。笑ったまま、あらゆる疑問もリアクタンスも肯定も弾き出さないまま……ニコニコと。秋水を見ている。
表情は変わっていない。だが、「変わっていない」コト自体がひどくおぞましく思えた。
「性格がというよりは、たとえば……たとえばそう。同じ門下の噺家の調子が似通うように、君と彼女の語調は似ている」
「あー。それはっすねえ」
傍観者の斗貴子はおろか、正面切って話していた秋水でさえ咄嗟に反応はできなかった。
やや離れて淡々と彼らを観察していた六舛に至っては、総ての状況を成す術なく”押しつけられた”
演技の神様はひょいと右手を突き出した。
「こっからは秘密事項。500円くれたら教えやす。へへ」
とでも言いたげな軽やかな手つき。敵意も悪意もない、日常の所作。
戦闘に慣れ過ぎた斗貴子や秋水だからこそ、出遅れた。
演技の神様の掌には。
いつの間に出したのだろう。
『核鉄』が握られていた。
何が起こっている!? 愕然と固める戦士2人と一般人1人を「作り物のような笑顔」が一瞥し
「武装錬金!」
叫んだ。
転瞬、稲妻が槍のような武器から放たれ、3人に絡み付き。
森から無数の鳥が飛び立った。
それきり辺りは静かになった。
異常なほど。
異常なほど。
異常なほど可憐な少女を前に、防人はポンと手を叩いた。
310 :
永遠の扉:2010/11/04(木) 17:57:12 ID:Tu8oeYxYP
きっかけはよくあるコトだ。もし斗貴子に話せば「ベタですね」と無表情に答えるだろう。
防人は寄宿舎管理人だ。
そしてもうすぐ「6人」ほど新しい住民がやってくる。5体、という方が正しいが、とにかく新しい住民が来るのは間違いない。
お祭り騒ぎの好きな防人は歓迎会をやるべく──最近カレーパーティもやった。途中からそれはヴィクトリアの歓迎会に
もした──必要な物を調達すべく街をブラブラしていた。余談だが、ブラブラするのは彼の渾名の由来でもある。かつて任務
で潜入した津村家の住み込みの老人たちは、あちこち徘徊(もっともコレはジョギングや聞き込み調査のせいだったが)する
防人を「ブラブラ坊主」と揶揄した。そして……当時まだ10歳だった斗貴子が「ブラブラ坊主」を略して「ブラ坊」と呼んだ。
防人の渾名、キャプテンブラボーはここから来ているのである。
それはともかく。
知り合いから頼まれた用事もついでに片付けよう。そう歩いていると、路地裏から下卑た大声がした。行った。するとガラ
の悪い「いかにも」な男どもが少女を取り囲んで何やら言っているではないか。
後はまあ、こういう場合のお決まりを踏襲するだけだった。
声をかける。「何をやっている」 → 男たち激昂 → 軽く叩きのめす → 奴ら退散。
以上。
「怪我はないか?」
そういって少女を見た防人は、「ほう」と軽く息を呑んだ。
彼は別に女たらしではなく千歳一筋だが、そんな彼でさえ一瞬見とれるほど目の前の少女は綺麗だった。
ふわふわとウェーブの掛った髪を肩のあたりまで垂らした笑顔の少女。
とても大人しそうで、清楚な雰囲気だ。それでいて頭頂部から延びる長大な癖っ毛が愛嬌を醸し出している。
やや笑顔が引き攣っているのはやはり「いかにも」な連中に絡まれたせいだろう。防人はそう判断した。
服装も路地裏にはまったく相応しくない。飾り気のないジーンズにフード付きのゆったりとしたパーカー。注視するのも悪い
と思ったが、客観的な事実としてかなりスタイルも良かった。総合的にいえば桜花よりやや上かも知れないとさえ思った。
桜花の総合点を下げているのはもちろんあの腹黒さだが、要するに目の前の少女にはそれがないので、何か言いがかり
をつけられ引きずり込まれたに違いない。
一方、少女はしばらく防人を怪訝そうに見ていたが──…
『大丈夫です。ありがとうございます。助けてくれて。
........................』
足元から拾い上げたスケッチブックに、そう書いた。
(喋れないのか?)
それも気にはなったが、防人の意識を引いたのはスケッチブックの片隅にある黒い点だ。
確かにあった。ゴミがついただけかと一瞬思ったがそれは『やけに整然とならんでいた』
しかも少女は、防人の鍛え抜いた動体視力が「黒い点」の正体を見抜く前にページを捲った。
『ところでこの近くに、孤児院はありますか? 門の近くにひまわりの絵がある所なんですけど』
異常なほど可憐な少女を前に、防人はポンと手を叩いた。
「そういえばちょうどパピ……知り合いから言伝を頼まれていたな。もしキミが良かったら送っていこう。何しろ──…」
【外出の慣習上、シルバースキンを纏っていた】防人、力強く呼びかけた。
「さっきの不審な連中が来たら危ない!」
少女は軽く「う」と呻いた。心底困った、何か言いたげな表情だった。笑顔だがちょっと泣きたい。そんな表情だった。頭頂
部から伸びるアホ毛がみるみるとしおれた。
『はい……。お願いします……』
笑みに細めた瞳から滝のような涙を流し、彼女はよろよろとお辞儀をした。
頼むというより観念したという言葉こそふさわしい態度だった。
311 :
永遠の扉:2010/11/04(木) 17:59:46 ID:Tu8oeYxYP
「可哀相に……。よほど怖かったんだな」
防人はとても気の毒そうに呟いた。気の毒なのは彼の頭であろう。
だからか彼は、知らなかった。
『はい! お願いします!!』
の2ページ前。
『大丈夫です。ありがとうございます。助けてくれて.』
片端に打たれた点を拡大すると、こう書かれていたコトに。
『あの人たちを助けてくれて本当にありがとうございます』
「ぬぬっ。今日は東の端を調べに行こうとすれば。あれにこの上なく見えるはリバースさんじゃないですかディプレスさん!」
全身フード姿の女性が叫ぶと、ディプレスと呼ばれたフード姿が「ちょwww」と口をふさぎにかかった。
「静かにしろwww 横にいるのは防人衛wwww アイツ耳がいいからなあww 下手に叫べば気付かれる。ああ憂鬱」
彼らは、路地裏の遥か上にいた。路地裏を作る建物の屋上にいた。
「すいません。でもこの上なく妙です!! あの人はブレイク君と手分けしてですよ、ウィル君の武装錬金を『建てる』場所を
探している筈なのに、錬金戦団の戦士長と接触しちゃうなんて。裏切りデス! 裏切りの夕焼けデス!」
声を潜めて騒ぐフードの女性にディプレスは「まwwww 偶然だろうなwwww」と答えた。幸い防人たちが気付いた様子はなく
ゆっくりとだが遠ざかっていく。防人は何か話しかけているようだが、「リバース」と呼ばれた女性が決して答えないコトもディプ
レスたちは知っている。義理で彼らを裏切らず、家庭的な問題で裏切れないコトも。
「でも、私達みたくフード被ってないような。あ、違いました。服にフード付いてますねこの上なく。ぬぬ? いやそこは全身フード
で行きましょうよリバースさん!」
「あれか。普通の服のフード被ってたけど絡まれた時点で取れたようだなwww いいんじゃないのwww 防人に顔見られた
けど正体バレてないしwww 楯山千歳はしばらくイソゴばーさん追跡で忙しいから捕捉できないだろうしwww」
それに。
彼女は逆鱗に触れない限り、「ある一言」を言わない限りは大人しい少女のままだ。
ディプレスはそう呟いた。
「で、リバースが喋らない限り防人も地雷は踏まないwwww 踏みようがないwwww だからフードなくても大丈夫だろwwwww」
「それは些細な問題です!」
「え! 些細なの!?」
「私がいいたいのは未知の敵集団は全員全身フード! それです! 普通の服で妥協なんてまったく許されません!」
「そっち!?」
「そっちです!!」
黒フードの女性──クライマックス──は力強く頷いた。
「そりゃあ正体バレした敵集団が個別ばらばらな格好っていうのも素敵ですよ! でもだからこそ正体バレる前はみんなお
そろいの全身フードにしましょうよ!! ロックマンメガミックスだって第1話のラストで2のボスたち全身フードだったじゃな
いですか! それです! それこそ未知の敵集団って感じで素敵なのに!」
「でもなあwww リバースはヤンデレで肉食系で妹萌えでゲーム好きだけどオタじゃないしwwwwww」
「まったくリバースさん、自分が二次元臭いくせにライトなオタですね!! お約束は例え陳腐でも全力で守りましょうよ!
いまのジャンプの新人さんの漫画がほこほこ打ち切られるのはお約束とかテーマとか題材とか、「これ描きゃウケるだろう」っ
て選定の時点で妥協して! どうすれば面白くなるか全力で模索しないからじゃあないですかーっ!!」
「いやwww勝手に決め付けんなwwwそして俺の肩揺すんなwwww 仕事やろうぜ仕事www 無駄口はよくねーってwwww」
「そんな私のこの上ないお薦めは週刊少年チャンピオンのケルベロスですがっ!! とにかくリバースさんは一度私謹製の
エロゲで声優やるべきです! 元声優の私さえこの上なく感動するほど声綺麗ですし、ブレイク君の特訓で発声練習のつ
いで程度に演技のイロハ覚えたんですから! エロゲでショタやってガンガン喘いでこちら側に堕ちましょうよ!!」
「ショタかいwwwww」
こいつはアホだ。ディプレスはつくづくそう思った。(ちなみにクライマックス作のエロゲは毎年コミケで250本ほど売れる)
「しかし残念wwww リバースの奴がチンピラ蹴散らすの見たかったのになあwwww」
「この上なく余計な手助けでした! リバースさん、武装錬金なしでもあのこの上なく馬鹿強い妹さんに勝てるのに!」
「まwww あれは精神的な物もあwるwけwどwwwwww ちょっとした共同体なら素手で殲滅できるわなwwww」
だってアイツ怖いもんwwww ディプレスはそうあざけ笑い、相方と共にどこかへ消えた。
あとがき
HP移転しました。→
http://grandcrossdan.sa-suke.com/index.html 好きなデュラララは赤林です。漢検1級終わったのでヒマです。書ける漢字が1500文字ほど増えました。
今回は白い核鉄のアレです。ファイナル⇔ピリオド間の永遠の扉的補完です。
末文ながら野沢那智さんのご冥福をお祈りいたします。暮れなずむ幽鬼が、好きでした。
313 :
作者の都合により名無しです:2010/11/05(金) 11:08:26 ID:X7izLVz/0
お疲れ様ですスターダストさん!
前半が雰囲気が暗転した感じでちょっと心配しましたが
(最終章の始まりかと思ったw)
後半のディスプレスたちの雰囲気が180度違っててわらいましたw
ケルベロス好きですか。ちょうど昨日漫画喫茶で3巻まで読んだんでびっくりw
今はチャンピオンの方がジャンプより好きだなあ。
〜勝ち名乗り〜
「ふぅん…意外に食い下がってるわね」
と、観客席から闘いを見下ろすレミリアは鼻を鳴らした。
「風見幽香への怒り、そして憎悪…それが奴に力を与えている。そういう事かしら?」
「言い方が悪いよ、レミリアちゃん。せめて正義の怒りをぶつけているって言ってよ」
「どう言おうが、同じ事です」
コタロウは抗議するが、レミリアはすっぱりと切って返す。
「それに、その二つが悪いものだなどと、私は思っておりません」
「ええ〜…そうかなあ…」
不満顔で、コタロウは口を尖らせる。
「一番強いのは、愛と友情だと思うけど。漫画やアニメだと、大抵そうだもの」
「成程。そういうこともあるでしょうが、そうでないこともあるでしょう―――負の感情から生まれる力は時に其れ
を凌駕する。特に、怒りと憎しみは―――何よりも強い。憤怒とは、純粋なる人間の情念につきますれば」
まあ、あいつは人間じゃなくてヒーローですが。レミリアはそう締め括り、ジローに向き直った。
「分かるでしょう、あなたなら。かつて怒りと憎しみでその銀刀を振るった、あなたなら…ねえ、ジロー?」
「…貴女の仰る通りですよ、レミリア。それは疑う事なく真実です」
けれど、とジローは微笑んだ。
「ここは弟の説を採用して、愛と友情こそが最強だと言っておきましょう」
「おや、優しいお兄様だこと―――まあ、いいでしょう。こんな議論に意味はない」
「花が枯れるか陽が沈むか―――この闘いの結末は、その二つに一つ。その事実に、何も変わりはない」
深緑の大妖が空を舞う。
それを追い、真紅の太陽が空を駆ける。
単純な速度に関しては、プロミネンスフォームを発動させたサンレッドに比する者は幻想郷にもそうはいまい。
風見幽香といえども、その例外ではない。
「追いかけっこは、正直あまり得意じゃないのよね…」
幽香は、うんざりしたように呟き。
「けど、追いかけてくる相手を追い返すのは得意よ」
奇術師のような仕草で右手を握り込み、開けばその掌には血のように紅い薔薇。
その花びらが、一斉に弾けた。
「花符―――<薔薇吹雪>!」
薔薇の花びらが舞い散るその光景は、誰もが見惚れるほどに美しい。
だが幽香の妖力を宿したそれは、一枚一枚が、鉄をも易々と切り裂く鋭利な刃だ。
サンレッドは、避けない。己の身に太陽闘気を纏わせ、真正面から飛び込んだ。
太陽闘気に触れた花びらは炎上し、灰となる。しかし、全てを焼き尽くす事はできない。
焼け残った花びらに切り刻まれるのに構わず、幽香への最短距離を駆け抜けた。
その勢いのまま、肩から全身をぶつける。空中に弧を描きながら、己の肉体ごと大地へと叩き付けた。
衝突のショックで地鳴りが響き、巨大なクレーターが刻まれた。
その惨状は、隕石が激突したのと何ら変わりがない。
「ぐっ…は…!」
さしもの幽香も堪え切れず、口の端から血を吐く。レッドは、手を緩めない。
「ダラララララァァァァァァっ!」
馬乗りになり、両拳で流星群の如き乱打を放つ。その嵐のような攻撃に、実況も興奮気味に叫んだ。
『完全に流れが変わったか!?サンレッド、鬼神の如き攻勢だ!あの究極加虐生物・風見幽香がメッタ打ちィ!
これで勝負は決まるか!?幻想郷の血濡れの大輪・風見幽香がここで終わるのか!?』
(―――まだだ。この女がこれで終わるはずがねえ)
そう実感していたのは、サンレッド自身だ。
一方的に攻めていながら、勝利に近づいている気がまるでしない。
(まだ何かあるはずだ。こいつには、まだ何か―――)
―――視界の端に、人影を捉えた。
横手から激しい衝撃を受けて吹っ飛ばされたのは、それと同時。
予想外の一撃に、受身を取る事も出来ず地に転がる。
闘いに乱入し、横からレッドを蹴り飛ばした<彼女>は静かに口を開いた。
「女の子にそんな乱暴するなんて、紳士的じゃないわね」
「…!」
そこにいたのは。
緩くウェーブのかかった碧の髪をさっぱりとショートボブにして。
赤いチェック柄の上着とスカートを着て。
淑やかな美貌に穏やかな微笑を浮かべた。
風見幽香そのものだった。
突如現れたもう一人の幽香は、クレーターの中心に半ば程埋まった幽香を力任せに引きずり出す。
「双子…って、わけじゃねえか…」
「そう。私達は二人とも、風見幽香本人よ」
「分身といえば、分かりやすいかしら?」
はあー、と、立ちあがったレッドは嘆息する。
「今更だけど、ここの連中は何でもありだな…もう驚きもしねーよ」
埃を払い、再びファイティング・ポーズを取った。
「来やがれ。どこぞのテニス部員の物真似したくれーじゃ俺にゃ勝てねーって事を教えてやる」
「それじゃあ」
「ダブルスでいくわよ…なんてね!」
二人の幽香が迫る。
繰り出される拳と蹴り。単純に考えても、手数は先程までの二倍だ。
レッドも応戦するが、どう考えても分が悪い。
(まともに肉弾戦やってたら、ジリ貧になるのがオチか…!)
距離を取りつつ闘い、ヒットアンドアウェイを繰り返しての各個撃破。
ここは、それに活路を見い出すしかない。
攻撃を受け流しつつ、プロミネンスフォームの機動力を活かして彼女の勢力圏内から離脱する。
幽香はそれをまっすぐ追うことはしない。
円を描いてそれぞれ左右に展開し、レッドを両側から挟み込むように陣取る。
そして、二人ともに両手を腰だめに構えた。
その姿は、かの国民的ヒーローが必殺技を放つ際のポーズに見えなくもない。
幽香の全身から迸る魔力が、掌に集中していく。その余波がバチバチと火花を散らし、暴風を巻き起こす。
―――彼女が放とうとしているのは、幻想郷に伝わる魔法としては極々つまらない、単純なものだ。
己の魔力を砲弾とし、撃ち出す。ただそれだけの魔法。
習得も使用も特に難しくはない。破壊力も、魔法具の補助なしならば大して脅威というわけでもない。
しかし―――風見幽香のそれは、例外だ。
彼女の莫大な妖力と魔力は、平凡な魔法を戦略兵器のレベルにまで引き上げる―――!
「マスタァァァァァァァァ…!」
「スパァァァァァァァァクッ!」
突き出された両腕から放たれた、破壊と破滅の閃光。
或いはそれは、全てを呑み込み、押し流し、消し飛ばす濁流。
大口を開けた二匹の大蛇の如く、左右からレッドに襲い掛かった。
「―――!」
サンレッドといえど、ここは逃げるしかない。上空へ飛び上がる。
直後、二条の光は互いにぶつかり合い、激しい輝きを残して対消滅する。
「うおっまぶしっ…!」
一瞬、目が眩む。
その時、背中にそっと、誰かの手が当てられた。
優しいくらいに柔らかな手がもたらしたのは、全身が泡立つ様な悪寒だった。
振り向けば、そこにあったのは、今では鬼女としか思えない、その微笑―――!
「さ…三人目、だと…!」
「マスター…スパァァァァァァク!」
零距離から放たれた、万物を焼き尽くす業火。
炎や熱に対して高い耐性を持つレッドですら、骨まで燃えていくような圧倒的な熱量に悲鳴を上げる。
それでも全力で身を翻し、逃れる。
全身から黒煙を吹き出させながらも、態勢を崩す事なく着地した。
三人の幽香も、その前方10メートルの距離に勢揃いする。
「ちっ…聞いてねーぞ、三人に増えるなんざ」
「あら、やろうと思えば百人にだってなれるわよ」
「はん…テニス部員じゃなくて、忍者の方か。芸達者なこった」
レッドは吐き捨て、しかし、何かを確信したように言い放つ。
「けど、さっきの攻防で分かった…その技は欠陥品だ。次で、破ってやらあ」
その自信ありげな態度に、会場は逆転の予感で沸き立つ。対する幽香は、楽しげに唇を三日月の形に歪めた。
「単なる虚勢でもなさそうね…いいわ」
「破れるものなら」
「やってみなさい」
三人揃って、迷う事なく一直線に駆け抜ける。
接近戦でケリを付けるつもりなのは明白だった。
如何にレッドでも、それでは数の優位で押し切られるだろう。
しかして、レッドは退かない。
両の脚を踏ん張り、迎え討つ。
(俺の考えが正しいなら―――やれるはずだ!)
レッドの狙いは一つ。
一人だけ倒しても、二人残る。二人を倒しても、一人残る。
ならば―――三人まとめて迎撃するのみ!
そのためには、一呼吸で三回の攻撃を繰り出すしかない。
無理難題とも思えたが、彼には心当たりがあった。
(一つだけある…完全無欠な、一瞬での三連撃が!)
脳裏に、一回戦で闘った彼女の姿が蘇る。
イメージすべきは、それだ。
「星熊勇儀―――!あんたの技を借りるぜ!」
強烈な踏み込みと共に、一人目の幽香の脇腹を右拳で撃ち抜いた。
間髪入れず、二人目の幽香の側頭部(テンプル)を左拳で砕く。
同時に、右のアッパーカットで最後の幽香を殴り飛ばした。
その一連の動きは、まさしく一回戦で自らがその身に受けた、あの奥義の再現だ。
「見様見真似―――<俺式三歩必殺>!」
吹き飛ばされた三人の幽香は折り重なるように倒れ、一人に戻った。
深いダメージを受け、分身が解けたのだ。
「…確かに分身なんてスゲー技だけどよ…それにゃ、致命的な弱点があった」
倒れたまま動かない幽香にゆっくりと近寄りながら、レッドは語る。
「戦闘力まで、そのまま複製できるわけじゃねー…一つの力を、複数に分散しちまうんだ。分身の数を増やせば
増やすだけ、一人一人は弱くなっちまう。そうじゃなかったら、それこそ百人に分身してりゃいいだけだもんな」
幽香は大地に倒れ、目を閉じたまま身じろぎ一つしない。
そんな彼女まで、あと一歩の距離までレッドは歩み寄った。
「三人になった時点で、相当にパワーもスピードもタフさも落ちてたはずだ。そんな状態なら、ある程度以上の力
と速度さえあれば、一瞬で全員仕留める事はそれほど難しくねー。今、俺がやったみてーにな」
「分かっていたわよ、そんな弱点…」
幽香が、口を開いた。
「分かっていて、どうしてわざわざそんな技を使ったと思ってるの…?」
「…………」
「待っていたのよ、サンレッド…勝利を確信して、あなたが油断する、その瞬間を!」
バネ仕掛けのように跳ね起きて。
がら空きになったレッドの心臓に向けて、右の貫手を突き出す―――!
「だろうな、俺だって分かってたよ…お前がこのまま終わるタマじゃねーって事くれーな!」
―――幽香の手刀は、皮膚を貫く寸前で止められていた。
その細い手首は、レッドの手によってガッシリと掴まれている。
「ズアァァッ!」
全力の握撃。血管が潰され、肉が裂かれ、骨が砕ける。
悲鳴どころか、呻き声さえ上がらなかったのは流石の一言だった。
最後の策を見破られ、戦意を喪失するどころか、更に凶気を滾らせて幽香は吼えた。
左手に全てを込めて、殴りかかってくる。
みしり、と鈍い音がして、レッドの頭蓋が軋む。
更に踏み込み、小さな口を一杯に開いてその首筋に歯を突き立てた。
血飛沫が、端麗な少女の顔を紅く染めていく。
レッドの力が緩んだ隙に、手首を掴んでいたその腕を振り払う。
「これで、本当に最後よ…これに耐えれば、あなたの勝ち」
左手と、使い物にならなくなったはずの右手を合わせて、レッドに向けて砲門の如く突き出す。
残された全身全霊を、その一撃に込めて。
「マスタァァァァァァァァァァァァァァァァ!!スパァァァァァァァァァァァァァァァァクゥゥゥゥゥッ!!!」
咆哮と共に光が弾ける。
奔流はサンレッドを呑み込み、天へと向けて巨大な火柱を噴き上げた。
魂までも燃やし尽くすような爆熱の地獄で、しかし。
サンレッドは、全身を焼かれながらも立っていた。
炎を宿す眼光で、幽香を射抜く。
その瞬間―――風見幽香は、自覚した。
己の敗北を。
ググっと、レッドは弓を引き絞るように身体を後ろへ仰け反らせて。
幽香の額に、自らの額を渾身の力で打ち付けた。
グジャっ、と、トマトが潰れるような音が響く。
グラリと幽香の身体がよろめき、前のめりに倒れ込んだ。
審判・四季映姫がそれに駆け寄り、状態を冷静に見極める。
「風見幽香の戦闘不能を確認…」
長く激しい闘いに今、終止符が打たれた。
「白黒はっきり付きました―――勝者・サンレッド!」
「おおおおおおおおおおーーーーーーーーーっ!」
勝ち名乗りと共に、怒号のような大歓声が闘技場を埋め尽くす。
サンレッドが天を衝くように両手を掲げ、勝利の雄叫びを上げたのはそれと同時だった。
―――天体戦士サンレッド・幻想郷最大トーナメント二回戦突破!
投下完了。前回は
>>263より。
平日の真昼間からグータラ出来ると思えば土日は仕事で潰れるとか…規則正しい生活は何処に…。
いや、それよりもうちょっと投稿ペースを上げないと…。
今回で幽香戦は終了。
そして次回、囚われたヴァンプ様に関する衝撃のオチが明らかに(そんな大層なもんでもない)。
レミリアお嬢のセリフの元ネタにピンと来る人は、多分いまい…ハシさんなら確実に分かるだろうが。
それはそうとバキスレ諸君、来たるべき11月26日にこれをやってみるべきかとサマサ思うの…。
↓
ライアーソフト・紫影のソナーニル
http://www.liar.co.jp/28th_top.html (18禁注意!)
このメーカーさんの過去作<漆黒のシャルノス>やってみたらパネかったんで、最新作のこれにも
期待大…うむ。何故にバキスレでこんな宣伝してんのか、僕は(汗)
まあその前の11月25日発売・スパロボLも買ってくださいね!
>>266 最終的にはレッドさんが上回りましたが、うむ…ゆうかりんの強い所もちゃんと出せたかなあ?
>>267-268 二次創作は、その辺の匙加減が難しい。やりすぎると原作レイプもいいとこだし…ぬう。
>>269 レッドさんはおバカじゃないよ!ちょっと社会に適合できないダメなヒモってだけだよ!
>>270-272 >>284 あの頃のバキスレは、何もかもが煌いていた…。ふら〜りさんにはいつまでもバキスレを
見守っていただきたいものです。
>>ふら〜りさん
最後まで力ずくで押し通しちまいましたwヒロイン(笑)の声で奮起は、最終戦に、ということで…。
…僕より更に数年上乗せか…え、じゃあふら〜りさんの年齢は…ゲフンゲフン。
>>カイカイさん
晴矢!おお…懐かしい!個人的には彼はバキ世界でも上位海王クラスの力はあると思うので、活躍を期待。
しかし御坊茶魔に辛勝て…茶魔に一体何が!?w
<強いけど、一般人のフリをする>揉め事には一切関わらず、不良連中にも近づかなければ、後は体力測定
とかだけ乗り切れば可能かなあ?しかし、それだと漫画的には面白くない…うーん。
この問題に真っ向から取り組んだ漫画といえば少年チャンピオンの<ナンバMG5><ナンバデッドエンド>が
浮かびます。ただ、これは結局失敗しちゃって、主人公はヒドい事になってるんですよね…これからどうなるやら。
>>スターダストさん
シリアスな前半と、ネタ爆発の後半の落差がいい意味で酷くて面白かったですw
>>最近のジャンプの修行って過程見せないコトが多いよね
めだかBOXの事かー!BLEACHの事かー!それともアレかコレかー!
昔は修行編もきっちりやってたと思うんですけどねー…そこから新しいドラマも生まれたし。しかし、これが現在の
風潮なのか…。
るろ剣も今やってたら、剣心が天翔龍閃会得するシーンもばっさりカットされちゃったりするんでしょうか…やだなあ。
あそこは剣心が<生きる意志>の強さを知る重要なシーンだし。まあこんな仮定をしても意味ないですが。
>スターダストさん(漢検1級ですか。凄いな)
やはりヴィクトリアにスポットを当てるとちょっと暗くなりますね。
原作でも決して救われたわけではないし。まひろとは真逆の存在だもんなあ。
その分、後半はちょっとイラッっとするほど陽気でしたねw
>サマサさん
幽香って東方でもかなり上位キャラだったっけ?あまり詳しくないけど。
レッドさんはシリアスですねえ。この場にヴァンプさんと手下がいたら
全員一瞬で肉片になりそうだ・・w
キーキャラはビクトリアですか。まひろや秋水とは違った作中での重みを
感じさせる1人ですね。辛さや哀しさや背負ってる意味で。
原作は知らないけど、群像劇として中心になっていくのかな?
新しいHPをこれから覗きにいってきます。
・サマサさん
レッドさんはギリ勝ちなのか余裕勝ちなのかわからんな。
でも、究極のファイヤバードフォームをまだ隠し持ってるところを見ると
決勝戦用に取ってあるのだろう。優香もつよかったけど、主役が
途中敗退はダメですからなw
322 :
ふら〜り:2010/11/06(土) 22:08:46 ID:rSAAsP/H0
>>カイカイさん
『湘爆』よりも『ろくブル』よりも『BOY』は好きなんで、当然晴矢も大好きですが、バキワールド
行きですか。彼も大概、超高校生してますが、バキや柳たちと比べて一体どの程度やれるか?
はちと心配。なんなら渋川とか烈とかアライ辺りに挑戦→弟子入り……はしそうにないか。むう。
>>スターダストさん
いきなり遭遇! とりあえずシルバースキンなら、リバっち(この呼び方気に入りました)の
攻撃は防げるかと思いますが(連弾はどうかな……)、一般人や他の戦士が混ざると危険。
縁や宗次郎同様、やりようによっては精神面から崩壊させられる相手かとも思うんですけど。
>>サマサさん
き、気持ちいいくらい正面突破でしたね。相手の策を見破ったからといって、それを逆手に
取るようなことはしない(できない?)。破った相手の技を使うというのは熱くて良いです!
♪破れた友の魂が〜♪ もうレッドに勝つには、徹底的に技や術で絡め取るしかないか?
レミリア=Tシャツレッドさんに押され気味
勇儀・幽香=フォーム使ったレッドさんと相当いい勝負した
余裕ぶっこいてる場合じゃねえだろカリスマwでもお嬢様は東方上位勢の中では
圧倒的にヘタレなイメージあるからなんか分かるw
324 :
作者の都合により名無しです:2010/11/07(日) 18:01:33 ID:YSXC2ca+0
325 :
テンプレ:2010/11/08(月) 11:58:42 ID:otxRIMax0
326 :
テンプレ2:2010/11/08(月) 12:12:49 ID:otxRIMax0
327 :
作者の都合により名無しです:2010/11/08(月) 12:18:34 ID:otxRIMax0
このくらいのタイミングでよかったね、昔は。
一日に何本も着たから・・
329 :
作者の都合により名無しです:2010/11/23(火) 12:07:12 ID:tEzdLwux0
age
330 :
作者の都合により名無しです:2010/12/22(水) 17:40:15 ID:NfGCJKMc0
来年の今頃もこのスレあるのかな・・
バトルSS書こうと思ったけど自分の書く内容のワンパターンさに気づいて筆を折りました
あらすじだけ書きます
案1 草薙京@KOFVSリュウ@SF
草薙京が炎で分身を作りリュウの攻撃へのカウンター。直後にリュウも波動で分身を作りカウンター。結果相打ちに。
案2 空条承太郎@ジョジョ VS リュウ@SF
しょっぱならからリュウからブローを食らいよろめく承太郎。ジョセフから教わった「波紋」で体力回復。
スタープラチナのラッシュをリュウに叩き込む。
糞SSですよね あらすじだけで。
…なんで俺の書く文章は面白くないんだ って自分で自分を責めました。
でもいいんです。
自分には才能がありません。
もういい。もういいんだ。
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