【2次】漫画SS総合スレへようこそpart47【創作】

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358作者の都合により名無しです:2007/03/31(土) 09:04:47 ID:+tvmf0560
>ハロイさん
なんとなく最終回っぽい感じの回でしたが、セピアがいじらしいなあ。
レッドとの触れ合いは微笑ましい。でもハッピーエンドは物語的に難しいんだろうな・・

>ハルヒのちキョン作者さん
途中でタイトルが変わるのもネタのうちですかwこの作品のノリらしいw
でも最後なんとなくシリアスっぽくなりましたね。どんなラストになるんだろ?
359作者の都合により名無しです:2007/03/31(土) 09:20:50 ID:eHkMDL9x0
まとめサイトで見たんだけど、千堂武士VSドイルのあれ、続きはどうしたの?
360作者の都合により名無しです:2007/03/31(土) 11:14:19 ID:n9rn4H630
>ヴィクテムレッド
セピアとレッドは恋人同士みたいな兄妹みたいな感じで微笑ましいですな
ビジュアル的にはアリスみたいなのを想像しておりますが。
オリキャラの宿命上、多分舞台から去る時が来るんでしょうけど
レッドの性格がまた捻くれないよう祈っております。


>涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン (長いw)
うーむシュールな作品だ。原作は未読ですけど、キャラ小説みたいな感じで
雰囲気とノリが楽しいですな。でも最後の閉鎖空間の中で、
結構バトルとか展開されるのでしょうか?台詞回しとか好きな感じなので
次回で最終回は惜しいなあ。

あと一言。お帰りなさいしぇきさん。
最後の、「では、失礼・・・」で確信いたしました。
間違ってたらすみませんw
361作者の都合により名無しです:2007/03/31(土) 18:37:57 ID:fshuGiqs0
>>359
何それ?

>ハロイさん
相変わらずクオリティ高いっすね
話は終盤戦だと思いますがシュガーソウルともども期待してます

>名無しさん(しぇきさん?)
ハルヒとハレグゥですか
次は特撮物も入って最終回ですか。楽しいけど収拾つくのかなw
362シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/03/31(土) 22:57:35 ID:pLDfkaEx0
『初めての友達、そして転校生 B』

 遠野十和子の放った缶コーヒーが宙を舞っていた。
(見えている……? 『透明になったわたし』が……?)
 そのことに驚いていた静は空中で放物線を描くアルミ缶を受け取り損ねる。こつん、と頭に落ちた。
「ふぎゃ」
「なにやってんのよ、ドンくさいわね……」
 十和子は重そうに転がる缶を拾い、タブを開ける。お金は払っていないはずだった。
 彼女もその事実に気が付いたのか、首をすくめて言い訳した。
「慈善事業したんだから、こんくらいの報酬があってもいいでしょ」
 「ねえ?」とレジカウンターの向こうで縮こまっている店員に声を掛けると、「は、はいい!」を上擦った返事が戻ってくる。
 その答に満足したのか、十和子はにんまり笑うと缶に口を付け、一気に飲み干した。
 それは見ていて惚れ惚れするくらいの飲みっぷりで、こくこくこく、と白い喉が忙しげに上下する。
 ほんの五秒足らずで空き缶を一つ作り上げた十和子は、
「っはー。尊い労働の後の一杯は気持ちいいわー」
 と、やけにおっさん臭い感想を述べた。
 そして僅かに中身の残っている缶をちゃぷちゃぷ振り、舌を突き出して最後の一滴まで喉に流す。
「──で、あんたはいつまで隠れてるつもり?」
 再び投げられた缶は、今度は寸分違わず静の胸元にすとんと落ちていった。
 抱えていた赤ん坊から片手を離してそれを受け止めた静は、しぶしぶ『アクトン・ベイビー』の透明化を解く。
 その表情は少しだけ歪んでいた、と思う。
 正直、どんな顔をすればいいのか分からなかった。
 子供の頃のささやかないたずらが発覚したときの気分に似て、笑えばいいのか恥じればいいのか、
それとも申し訳なく思えばいいのか。そうしたない交ぜの感情が、静の表情筋を混乱の渦に陥れていたのだった。
 だが、静の胸にもっとも強く去来した感情は──
(なんでわたしが見えてるのよ……おかしいよ……)
 悔しさ、だった。
363シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/03/31(土) 23:00:20 ID:pLDfkaEx0
 そう、静・ジョースターは、はっきりと悔しかった。
 大富豪の娘として、それこそ「銀の匙をくわえて生まれてきた」ような扱いを受けてきた自分だったが、
(当たり前の話ではあるが)人生に於いて彼女の思い通りにならないことは山のようにあった。
 そのなかで、静のスタンド能力『アクトン・ベイビー』だけは──静自身、静が触れたもの、静の視界にあるもの、
それら全てを自在に透明化する能力──だけは、誰にも覆すことのできない絶対的な権力だった。
 別に大層な特権意識を抱いているわけではないが、それでも静にとっては自我を成す要素の一つだった。
 この能力を血肉として、今までやってきたのだから。
 それをいとも簡単に見破られたのだ。
 しかも、訳の分からないうちに、である。
 さっきの暴漢と違って、赤ん坊の声が十和子に位置を教えたわけではない。
 でも、じゃあ、なぜ……?
「『なんでわたしの姿が見えてるのよう』ってツラしてるわね」
 おどけた感じで十和子が言う。なんでもお見通しだ、とでも言いたげにウィンクまでしてみせた。
 ……なんか、腹が立った。
 腹いせに、えいっとばかりに空き缶を十和子目掛けて軽く投げた。
 それはほんの軽くだったし、軌道も受け取りやすい半円を描いていた。だが、
「あ、ねえねえ、ついでにアイスかなんかもらったらダメ?」
 十和子は余所見をしていた。缶コーヒーに味を占めた彼女は、レジカウンターの方に思い切り振り返って、
さらなる報酬を得ようと店員に強請りを掛けていたのだ。
「あ──」
 危ない、と静が言うより早く、十和子はそちらも見ずに顔面直撃コースの缶をしっかりキャッチした。
「ど、どうして……?」
 今度ははっきりと口に出していた。
 こんな奇妙な少女に出会ったのは生まれて初めてだった。
 見えぬはずのものを見、取れるはずのないものを取る、それはまるで、
364シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/03/31(土) 23:02:39 ID:pLDfkaEx0
「十和子。もしかして、あなたも──」
 その静の言葉は中断された。パトカーのサイレン音が聞こえたからだ。
 それはどんどん近づいてきている。コンビニの店内にまで届くということは、かなり近くまで来ているのだろう。
「やべ」
 いきなり、十和子がバネ仕掛けのようにぴんと背筋を伸ばした。
「逃げるわよ、静」
「え? な、なんで?」
 自分が篭城犯だというならまだしも、それを倒した側が泡を食ったように逃げ出すというのは理解に苦しむ。
「いいから!」
「あ、でも赤ちゃんが」
 いきなりの急展開に度を失っておろおろする静から赤ん坊を奪い取った十和子は、やはり急展開についていけず
店の片隅で目を瞬かせている二十台半ばの女性(おそらく出勤途中で事件に巻き込まれたのだろう)に赤ん坊を押し付けた。
「お姉さん、この子の面倒、よろしく。お巡りさんに引き渡してあげて」
 その有無を言わせぬ口調に、お姉さんは戸惑いながらも「え、ええ」と快諾した。
 それを見届けた十和子は店の裏口へ駆け出し、慌てて戻ってきて、
「早く来るのよ!」
 ぼさっと突っ立ってた静の手を引いて脱兎のごとく駆け出した。
「な、なななんで?」
「あたしは警察が嫌いなの!」

 コンビニエンスストア『オーソン』から猛ダッシュで脱出した二人は、とりあえず近くの緑地公園に辿り着いた。
 水飲み場で喉を潤す十和子の背後から、静は一つの疑問を口にする。
 それは、十和子に手を引かれて走らされている間中、考えていたことだった。
「ねえ、十和子」
「なに?」
「あなた……『スタンド使い』なの?」
365シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/03/31(土) 23:06:42 ID:pLDfkaEx0
「スタンド……使い……?」
 十和子は訝しげに唇を突き出し、やがて「ああ」と漏らす。
「いや、多分そんなんじゃないと思うわ、『これ』」
 『これ』、そう言った。
 それはつまり、静の『アクトン・ベイビー』に比類する『なにか』を持っていることを暗に認めているわけである。
 朝からなにか只者ではない言動に満ちていた十和子だったが、今こそ窺う余地は無かった。
それこそ、父の言葉を借りれば「コーラを飲んだ後にゲップが出るくらいに確実」なことである。
「でも、なにか──」
「でも、なにか……あるんでしょう? 他の人に無い才能、みたいなもの」
「かもね」
「この男の人を倒したのもそうなの?」
「あれはただの空手だよ。あたし、空手十三階段なの。嘘だけど」
 本当でなくて良かったと思う。リアクションに困るところだった。
「空き缶を見ないで取ったのは?」
「ありゃ、女のカンよ。あたしくらいいい女になると、そんくらいのカンが働かないと生きていけないのさ。これホント」
「『透明だったわたし』が見えたでしょう?」
「静ちゃんのいい匂いがしたんだよ。向日葵の匂いだったぜ」
「ま、真面目に答えてよ。人を食ったようなことばっかり言って」
 馬鹿にされているような気分がして、ちょっとムキになっていた静が身を乗り出したその眼前に、十和子が人差し指をびしっと突きつけた。
「そうそれ」
「……え?」
 意味を受け止め損ね、静はぽかんと口を開ける。
「だーかーらー、それよそれ。あたしは『人喰い』なの」
 と、彼女は人より伸びた犬歯が剥き出しになるまで口の端を広げ、笑った。
「意味が……良く、分からないんだけど」
 言いながら、静は思い出す。
 父が寝物語に語ってくれた、若き日の冒険のくさぐさを。
 人を喰う化物と死闘を演じ、ヨーロッパ中を駆け巡ったこと。
 祖父の代からの因縁に決着をつけるため、吸血鬼を倒しに世界中を旅したこと。
366シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/03/31(土) 23:09:53 ID:pLDfkaEx0
「分かんないかな? はっきり『がおー、食べちゃうぞー』って言われなきゃ分からない?
あたしは人間を専門に捕食する怪物なの。だから、色んな能力を持ってるわ。
『美味い人間と不味い人間を嗅ぎ分ける能力』、『人間の死角に滑り込む能力』、『人間を切り刻む能力』」
 父の話は半分以上が法螺話だと思っていた。
 だが、父はジョークは大好きだが法螺を吹くような人間ではなかった。
 ──きっと、あれは本当の話だったのだ。
「あたしが好きなのはね……柔らかそうで、でも身が締まっていて、処女丸出しの女の子なのよ」
 今や、十和子は笑っていなかった。
 切れ長の目をいっそう細め、値踏みするように静の身体を眺め回していた。
 嘘だ、と笑い飛ばしたかった。
 だが、彼女の全身から発散される凄惨な空気が、それを許さなかった。
 十和子の言っていることはまるで荒唐無稽だったが、疑いを挟むことを許さない響きがあった。
 まるで、嘘偽りない真実を語っているかのように。
「目を逸らすな。こっちを見なさい」
 いきなり命令され、静は怯える。背けていた顔が、自分の意志に反して十和子へと動いていた。
 だめだ、見たらだめだ。
 頭の中ではそんな声が最大ボリュームで鳴り響いているのに、身体はそれに逆らっていた。
「う、うう……」
 そして、ついに静は十和子の瞳を見る──。
「冗談よ」
 その瞳は、いたずらっぽく輝いていた。
「ふ、ふえ?」
「冗談だって。イッツアジョーク。あたしが人間なんてゲテモノ、食うわけないじゃーん。しっかし、あんたって本当にアレな子ね。
真に受けるかよフツー。百物語で泣き喚くタイプでしょ。クラスに一人はいるよね、場の空気読みすぎるやつ。
……ま、あんたも昨日、このあたしをペテンに掛けたんだからこれでおあいこってコトで」 
「え? じゃあ今の、全部嘘なの?」
367シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/03/31(土) 23:13:35 ID:pLDfkaEx0
 なにを当たり前のことを、と言ってから後悔した。十和子のペースに巻き込まれ、冷静な判断力すら麻痺していたらしい。
 そういう意味では、確かに、彼女には『人を喰う』才能があった。
 さっきまでの腹立ちは綺麗に消えていた。
 恐怖から安堵への感情の切り替えで、その過負荷に精神が耐えられず反射的な防衛反応が起こったのか、
無性におかしくなった静は思わず吹き出してしまった。抑えこもうとしても腹の底から笑いがこみ上げてきていた。
「──やっと笑った」
 静が「?」と疑問符を頭に浮かべるのへ、
「さっき、あたし無神経な質問しちゃったからさ、ずっと気になってたんだよ。
ほら──『なにをしにこの街に来たのか』って。もしかしたら言いたくないことだったかのも知れないのにね」
「あ、ううん、わたしこそ。留学だっていうのは嘘だったの。……ごめんね」
 そこで静は思い出す。
「あれ? っていうことは、最初からわたしの嘘を見抜いていたってこと? じゃあやっぱり『スタンド使い』?」
 十和子は鼻から息を漏らし、手馴れた仕草で肩をすくめた。どうやらこれが彼女の癖らしい。
「違うって。『スタンド使い』とやらじゃないってば。……でも、あながち全部嘘ってわけじゃあないのよ。
あたしね、人の心が読めるの。心を読む、ってのは正確じゃないな。その人の魂……というか本質を、匂いとして把握できる。
体臭とか現実の匂いの話じゃねーわよ、言っておくけど。例えば……そうね、さっき薬中」
 と、十和子は未だ気絶中の暴漢を爪先で軽く蹴った。
「こいつは鉄錆と枯葉の匂い、それからレモングラスの匂い。
どうしようもねーくらいに疲れきった匂いだけど、心の奥底ではまだ瑞々しい青春の残り香を大事に抱えている。
そんな匂いだったわ」
 なんか思いっきり適当なことを言ってるだけのような気もするが、言われてみればそんな感じがする風体ではあった。
「……それが、あなたの『能力』?」
「そゆこと。それを応用して、相手の匂いの鈍感な部分を突いたり、そいつが嫌いそうな匂いを演出して追い込んだり、とかが得意技。
お菓子作りみたいなモンよ。目分量ざっくりで相手をこね回して、『上手くできたかな?』って匂いで確かめながら修正を加えて。
それがあたしの『人を喰う能力』ってワケさ」
 分かるようで、よく分からなかった。
 そもそも彼女はスタンド使いではないのだろうか?
 静自身が出会ったスタンド使いなど片手で数えられるくらいで、スタンドのことについてさほどの理解は無いが、
そういう能力を持ったスタンドがいてもいいような気がする。
368シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/03/31(土) 23:16:55 ID:pLDfkaEx0
 自分のスタンドがヴィジョンを持ったスタンドだったら、それが見えるか見えないかで簡単に判別できるのだが、
あいにく『アクトン・ベイビー』はヴィジョンの無いスタンドだった。
 『消える』スタンドなのだから、それも当然かも知れないが。
 そんな着地点の見えない思考の果てに、静の脳裏にある一つの事柄が唐突に浮かび上がった。
 『それ』を今まで失念していたなんて、どうかしているとしか思えなかった。
「あ、あの!」
 いきなり大声を上げた静に、十和子が驚いて振り返る。
「な、なによ」
「あり、ありありありがとう」
「……なにが」
 本気で分かっていないようだった。
「いやだから、その、助けに来てくれて。『泥棒』とかとても酷いこと言ったのに」
「まあ事実泥棒だしね。……なに、それだけ? だったら、わざわざ礼を言うこっちゃねーわよ。好きでやったんだから。
あたし、馬鹿なのよ。あんたと同じで、ね」
 そう言う十和子は、それでも少し面映そうにしていた。
 初夏の朝の日差しは二人の頭上に降り注いでいた。
 静と十和子が現在時刻を思い出し、『遅刻』という揺るぎない現実を認識するのは、もう少し先のことだった。

 ──それはそれとして、静は思う。
 遠野十和子という奇妙な少女と、友達になりたいと。
 彼女に自分のことを知って欲しかった。『アクトン・ベイビー』のこと、本当の両親を探しにきたこと。
 そして、彼女の色々なことを、『魂の匂いを嗅ぐ』その奇妙な能力についても、深く知りたいと思った。

「ねえ十和子」
「なーに、静」
「あなたのその『能力』……名前はあるの?」
 ちょっとだけ間を置き、十和子は答える。

「──『カスタード・パイ』」
369ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/03/31(土) 23:29:12 ID:pLDfkaEx0
久々にこっち書いたらなんか新鮮でした。
今後登場人物が増えたら、簡単にキャラ紹介でもしようと思います(知名度に差がある作品を同居させてるので)。
オリキャラの紹介はいらねえかな?
とりあえず、遠野十和子はスタンド使いではなく、
まあMPLS(ブギーポップ世界での超能力者、進化しすぎた人間を指す用語)に当たるのでしょうか。
『カスタード・パイ』はレッド・ツェッペリンの曲名から取ってます。
意味するところは明白すぎてむしろ露骨ですが、ジョセフに対するシーザー、ジョニィに対するジャイロにあやかり、
静の相棒として十和子を位置づけていますよ、ということです。

今から感想書きます。
370作者の都合により名無しです:2007/03/31(土) 23:39:02 ID:qNgyt/Pq0
ハロイさん凄いわ。
よくこのペースでこのクオリティ保てるもんだ。
しかも違うタイプの作品なのに両方面白い。
371ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/03/31(土) 23:55:47 ID:pLDfkaEx0
>ハシ氏
とりあえず日頃からどんな栄養を取ってるか教えなさい。なに食ったらそんなかっこいい文が書けますか?
おどろおどろしい工程の果てに僕らの(つーか俺の)リップバーンが生まれたんですね。
吸血衝動を押さえ込む吸血鬼、というシチュは大好きです。ビリー龍とか。

>白書氏
読んだことないけど、すぐに分かる西尾キャラ哀川潤。
ドラキャラもつられてハードになってますね。
シグナムとヴィータが分からないのが残念です。

>さい氏
アンデルセンが神掛かりすぎだろ…常識的に考えて…
ただのバイヨネットで武装錬金とタメを張る戦闘力とか、凄すぎです。
さらに怒涛の展開の期待でワクテカしてますw

>涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン作者氏(長ぇよww)
あー、やっぱりグゥに振り回されるのか、キョンよ……。
キョン語りをSSに合わせてコンパクトに収める手腕は、原作に引けを取らないと思います。
特撮は宇宙刑事系ですかね?



えーと、↑の「シュガー&〜」ですが、校正不全で見苦しい箇所が散見されることをお詫びしておきます。
372作者の都合により名無しです:2007/04/01(日) 00:20:00 ID:AY1pvi+G0
ハロイさんおつかれさまです。
万引きの時は静の方が凄そうに感じましたが
今回は十和子の方がずっと格上に感じましたね。

優等生な感じの静と、とらえどころのない十和子。
魅力的なコンビですね。
これからきっと色んな事件に巻き込まれるんでしょうが
凄く楽しみです。
373作者の都合により名無しです:2007/04/01(日) 11:29:32 ID:F6sG3Fdc0
ハロイ氏乙!
ジョジョは好きなんで静のスタンドは想像がつくけど
十和子は能力といい性格といい頭脳といい規格外ですな。
どんな展開になるか想像がつかん。
374永遠の扉:2007/04/01(日) 23:43:27 ID:rXrWyfWB0
第014話 「バトンタッチ」

晦冥の廊下を銀影が詰めたとみるや、千歳は咄嗟に身を捻った。
千歳の真横を拳が通りすぎ、嵐のような風切り音が耳をたたく。
正中線はからくも外せた。あくまで、からくも。
冷汗に全身ぐっしょりと濡れそぼる千歳のすぐ横には防人──ただし何らかの効能により
ヘルメスドライブより出でた偽者──が依然として佇んでおり。
覆面の中で鋭く息を吐くと、回し蹴りを繰り出した。
ここは廊下。いささか狭い。だが千歳は背中を壁に叩きつけんばかりの勢いで飛びのいた。
転瞬。重機のような衝撃が千歳のいた空間をなぎ払い、廊下の壁を抉り取っていた。
例えば巨大な彫刻刀で石膏を削らばこうなるか。
コンクリート製の壁に刻まれた蹴りの軌跡に、千歳は戦慄する思いだ。
固い壁に背中を激突させたせいで軽い呼吸困難をきたしているが、直撃に比べればまだま
だ微細。
しかも今の攻撃は、防人にとってはただの通常攻撃なのである。
彼のまとう防護服・シルバースキンは防御一辺倒の武装錬金。
攻撃に対し瞬時に硬質化。仮に破損してもたちどころに修復する。
ミサイルの直撃ですら爆ぜず、ABC兵器(核、生物、科学物質の応用)もシャットアウト。
反面、直接的な攻撃力は皆無。防人はそれを鍛えぬいた超人的な身体能力で補っており。
結果、戦闘力については今の攻防の通り。
(寸分違わない)
壁と、その下で無残に破壊された手すりを見る千歳は、かすかな希望を砕かれる思いだ。
攻撃の正体は分からない。だが仮説はあった。
千歳が知悉した人間をヘルメスドライブ経由で再生、かつ攻撃させる特性。
(原因は恐らく──…)
鳩尾無銘と名乗る巨躯の黒装束の男の奇襲を受けた時。

──「忍六具(シノビロクグ)の武装錬金・無銘が弐。鉤縄」
──ヘルメスドライブの裏側で甲高い金属音が響くと、鉤縄が空に向かって大きく跳ね上がった。

受けた傷は筺体にまだかすかに残っている。砂嵐の画面の横で生生しく。
(この傷。あの時の武装錬金。ヘルメスドライブを狂わせる『何か』を仕組んだ筈)
375永遠の扉:2007/04/01(日) 23:44:44 ID:rXrWyfWB0
だとすれば、である。
武装錬金の特性である以上、必ずどこかに穴がある。
防人のシルバースキンが絶大な防御力と引き換えに、直接的な攻撃力を一切持たぬように。
そこで千歳が想起したのが、ザ・ブレーメンタウンミュージシャンズ。
総角主税操る認識票の武装錬金だ。
他者の武装錬金を扱えるが、創造者のDNAがなければ最高で80%ほどしか性能を引き出
せない。
(なら、同種同質のヘルメスドライブから現われる存在が、弱体化している事は……)
蹴りが振り切られた。
当りはしなかったが風圧で前髪が何本か切り取られた。額もうっすら斬られたようだ。
千歳は内心でかぶりを振る。推測はどうやら外れているらしい。
勝手な希望的観測がやはり違っていたともいえるが、そうならざるを得ないほど千歳は逼迫
しているのである。
目の前の破壊痕はひたすらに恐ろしい。
壁が抉られ、金属製の手すりすらバターか何かのようにすっぱり斬られている。
(……手すり? 壁に、一体どうして? いえ、でも確か──)
先ほどから覚えているこの場所への既視感が一段と明瞭になる。
果たしてここはどこなのか。
考える余裕などない。立ち止まる暇もない。
「ブラボー技(アーツ)13のうちの一つ!!」
すさまじい気迫が防人の肉体に充溢した。
今度は千歳の背後に壁はない。飛びのくのに支障はないが──
彼女は低く呻くとかがみこんだ。先ほど壁に打ちつけた背中が痛むのか。
だがそんな彼女に容赦なく、痛烈な攻撃が浴びせかけられる!!
「粉砕!! ブラボラッシュ!!」
防人はその拳に高速と重量を乗せ、絶え間なく撃ち貫く。
その速さはやがて残影を呼び残像を巻き起こし、百とも千とも取れる無数の拳と化した。
華奢な千歳がそれを受けてはひとたまりもない。もはやガトリングガンの前の野うさぎである。
にも関わらず彼女は涼しい顔を上げた。
「やると思ったわ」
床から何かを拾い上げると、防人の顔面めがけて放り投げた。
それは、真赤な筒。
376永遠の扉:2007/04/01(日) 23:45:39 ID:rXrWyfWB0
「このシルバースキンの防御力は無敵!! 何を仕掛けようと無駄! 無駄無駄無駄無駄」
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄……
無駄ァッ!!」
修羅のごとく咆哮しつつ拳を間断なく繰り出す防人は、投げられた物をいとも簡単に打ち砕き。
爆発の閃光に目を灼かれた。
防人登場の際に破壊された壁をくぐり抜け、千歳は一息ついた。
(さっき、久世屋……いえ、久世夜襲を倒すときに入れ替えたトイズフェスティバル。たまたま
近くに落ちていたから)
「ブラボー。俺の目を潰して逃げる時間を稼いだというワケか戦士・千歳。確かに、シルバー
スキンは閃光までは防げない。いささか油断していたようだ」
1人残された防人は銀の帽子を心持ち目深に被り直した。
まだら。ノイズ。暗雲。
まとう純銀のコートには黒曜の光が入り混じり、いかにも偽者臭い雰囲気を醸し出している。
やれやれと息を吐き、肩の1つでもすくめたい気分だ。
偽者とはいえ精神は防人衛と代わらない。
先ほど壊した壁も実をいうと直したい。日曜大工が趣味なのだ彼は。
左官よろしくコンクリートを塗りこめるコトに、前向きな意欲がいろいろと沸く。
「もっとも。現われた以上、俺はお前を倒すしかない。どれ。逃げた方向は」
肉体はおろか聴覚視覚も鍛えぬている防人である。
瞑目し、千歳の足音を捕捉するにはさほどの時間も要さない。
防人は駆けた。腰まで垂れた三角形の襟をはためかせ……

もとより超人的な身体能力を有する防人である。
千歳に追いつくコトは造作もない。

(この状況を切り抜ける方法は1つだけある)
背後でドアが吹き飛び、きりもみながら壁に激突した。
(彼の力を借りれば、恐らく)
黒いブーツがひしゃげたドアを踏む。
(ただ、合流できるかどうか……)
377永遠の扉:2007/04/01(日) 23:47:12 ID:rXrWyfWB0
「見つけたぞ!! 戦士・千歳!!」
防人が拳を下方に向かって爆発的に叩きつけると、床がドアごと割れた。
恐るべきコトにその衝撃は前方へと伝播した。
床を瓦礫と化しつつ千歳へ迫る衝撃波。
逃げざるを得ない。だが、疲労はいよいよ頂点に達しつつある。
夜襲から逃げ防人から逃げ、体力はほぼ空に近い。
息が乱れぬよう乱れぬよう腹部に空気をかきこむが、回復には時間がかかる。
ダメージも浅くない。ヘビの特攻を受け、背中を壁に叩きつけており。
今度は背後から肉迫した防人に膝裏を蹴られ、前のめりに転倒した。
「くっ」
短い苦鳴を上げつつ、どうにか床に顔面を叩きつけないよう努力したが無駄だった。
鼻にすさまじい衝撃が走る。鉄の匂いが鼻孔を満たす。
歯を折らなかったのが不幸中の幸いとはいえ、唇も無事ではない。
鋭い痛みが鼻の鈍痛と交じり合い、千歳の息は一時的に絶え絶えとなった。
そんな彼女を見下ろしながら、銀のコートはゆっくりと前に回りこみ、しゃがんだ。
「……うーむ。どうも性分には合わんが…………悪く思うな戦士・千歳」
艶やかなショートヘアーをむんずと掴んで引きずり起こすと、今度は顔面に掌打を叩き込む。
衝撃がブラウンの手袋から美しい顔を突き抜ける。
同時に千歳は白い顎を天に仰け反らせながら声もなく後ろに倒れた。
よく手入れされた髪はくしゃくしゃとなり、千歳は息をするのが精一杯。
激しい息に豊かな胸が波打つ。
無残にも鼻から血がとめどなく流れ、口からは血に塗れた歯が覗く。
息を口でしているせいだが、その口が。
声にならない叫びと共に大きく開き、滑らかな舌肉や磨きこまれた白蝶貝のような奥歯を
あらわにした。
何故そうなったかというと、みぞおちに正拳を叩き込まれていたからである。
更に拳をねじ込まれると、気道から名状しがたい呼吸音をほとばしらせ、千歳の長身が足
ごと丸まろうとした。
それを防人は髪を掴むコトで阻止し、無理に引き上げると頬に裏拳を叩きこんだ。
力なく横に倒れる千歳。
髪は乱れ、顔は床につっぷし、タイトなスカートから覗く白い足を力ない「くの字」に折り曲げ
腹部に至るまでのラインは、妙齢の女性らしく脂が乗りつつも、細く締まっている。
378永遠の扉:2007/04/01(日) 23:48:51 ID:fhl9EgzA0
艶かしいといえば艶かしいが。
「さて。そろそろ終わりにするか。すまないな戦士・千歳。俺自身の意志としてはしたくない
コトだが、逆らえないように出来ている。だからこれで終わりだ」
防人は手刀を頭の上に高々と掲げた。
繰り出されるのは両断・ブラボチョップ。
ホムンクルスですらその名の通り真っ二つにする魔技である。
「…………ところであなた」
顔を伏したままの千歳は、呻くように呟いた。
防人は一瞬動きを止めたが、すぐに振り下ろす体勢に入った。
「ここがどこか知っている?」
謎めいた、それでいて全く意味のない質問である。
仮にここがどこか分かろうとも、いま正に千歳へ迫る手刀を止める手段にはなりえない。
詭弁ともいえる質問なのである。
「私は知っている。いえ、ようやく気付いた。手すりを見て、ようやく……」
防人と千歳の中間点。
そこに1条の稲光が煌いた。
稲光はすぐさま数条数十条の稲妻と貸し、大きな影を排出した。
「な、何!?」
防人は愕然と中空を見やる。
そこにあったのは。
防人自身の右腕! いま、正に手刀を当てんとしていた右腕!!
「相変わらず貴殿は判じ難い」
薄暗い廊下に、白い布がたなびいた。
布? いや、マフラーである。
それは小柄な男性の首に巻きつき、再殺部隊の制服に彼らしいアクセントを与えている。
「頭が回るかと思えば、かような窮地に再び立たされている」
前髪で覆っていない方の目を無愛想に細めながら、彼は千歳の肩から手を離した。
「ごめんなさいね。でも私も組織と同じように、えてしてそういう物なの。違う?」
傷だらけの顔で、千歳は気取った笑いを浮かべて見せた。
例えば猛禽類が獲物を見つけたような、歓喜を含んだ一瞬の引きつりのような笑顔だ。
ひょっとしたら移ったのかも知れないと千歳は思う。
「ところでさっきの質問の答えだけど
379永遠の扉:2007/04/01(日) 23:50:03 ID:fhl9EgzA0
防人の腕が床に落ち、数度バウンドした。
「ここは聖サンジェルマン病院の地下。だから彼がいるの」
彼──根来忍は相変わらずムスっとした表情である。
一度入院を決意した以上、それは彼にとって達成すべき『任務』であるから、横槍を入れら
れるのはあまり面白くないのだろう。
「手すりがあったからピンと来たわ。アレは患者さんがリハビリの時に使うものなの。例えば
防人君だってこの前使っていたわ」
「そして先ほど病院の人間から私に依頼が来た。『地下で爆発音がし、監視カメラを確認し
たら防人戦士長と戦士・千歳が争っている。事情は分からないが止めに行け』と」
「なるほどな。ココが聖サンジェルマン病院であればそうなるだろう。お前が居て、怪我もそこ
そこ治りつつあれば…… まぁいい。御託は抜きだ。まずはお前から──」
「私から?」
根来の頬が影のように揺らめき、やがてひどく冷徹な笑みへと変貌した。
「違うな。既に終わっている。よって貴殿が私を相手取るコトなど到底不可」
どうっ! という鈍い音と共に、防人の顎から金色の刃が生えた。
背中から顎が刺し貫かれている。
防人は仰け反りながら、気付いた。
背中から顎へ向かって、忍者刀が刺し貫かれていると。
(さっきの腕の切断もそうだけど、シルバースキンの絶対防御が発動しない。というコトは……!)
「真・鶉……隠れ。確かにお前の性格ならそう……するだろうな。不意打ちとはいえブラボーだ。
ところで戦士・千歳」
細かい銀の粒子として拡散しながら、防人は襟をはだき、寂しそうに笑って見せた。
「すまなかったなぁ。だが……俺……は偽者。本物を責めないでやってくれ……」
「ええ。分かってるわ」
「ブラボー……だ」
防人は消えた。残ったのは銀の粒子のみ。
それがハエの群れのようにかまびすしくヘルメスドライブへ吸い込まれた。
「ひとまず終わりか」
「いえ、まだ。恐らく元を断たない限り」
ヘルメスドライブの画面が、三度怪しく明滅を始めた。
380スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/04/01(日) 23:52:16 ID:fhl9EgzA0
どうも。今回はちょっと忙しいので感想は後日。すみません。
情けなくも時間配分を誤ったのです。

ただしコレだけは。
アニメ武装錬金は蝶・サイコーな出来栄えだったと!!
381作者の都合により名無しです:2007/04/02(月) 00:22:31 ID:p6enHSJQ0
前作のヒロイン千歳が今回は魅せましたね
いたぶられる千歳は色っぽいなあw

>アニメ武装錬金は蝶・サイコーな出来栄えだったと
超同意。
でももう1クール欲しかったかな?
でも、あの詰め込みすぎ一歩手前の濃さだから
あのクオリティだったともいえるな・・
382シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/04/02(月) 06:35:03 ID:T8xxwTns0
『初めての友達、そして転校生 C』

 五十嵐初佳は養護教諭である。……ただし「不良」という冠詞がつく。
 「心の悩み」と称して主に下半身の悩みを打ち明けに来る男子学生どもを容赦なく蹴り飛ばすなどはほんの朝飯前で、
「今日は重い日だから気が乗らない」というカメハメハ大王みたいな理由で保健室に「本日休業」の札を掛けてみせたり、
純情な女子学生に過剰な性知識を吹き込んで面白がったり、他にもまあ色々。
 挙句の果てには一人の男子生徒に手を付けたともっぱらの評判で、要するに大人になりきれていない女だった。
 だが、そうした「学生気分の抜けなさ」が当の学生たちの間では大いにウケているようで、
妊娠とか家庭内虐待とかイジメとか、そこらの大人には言えないような悩みを初佳に持ち込んでくる生徒も決して少なくない。
 そんな変なかたちで生徒たちの信頼を得ているために教師連中も表立って彼女を攻撃できない。
 むしろ一部の教師などは、業務終了後に保健室を訪れて彼女の秘蔵の酒を頂戴することをささやかな楽しみとしている者さえいた。
 そんなわけで、不良養護教諭五十嵐初佳は、堂々と酒臭い息を吐きながら白衣を翻して校舎の廊下を闊歩している。
 その日も、三時限目の終了を告げるチャイムが鳴るころになってやっと出勤した初佳は、
自分の根城である保健室のパイプ椅子に腰掛けると早速、冷蔵庫から缶ビールを取り出した。
「五十嵐先生、重役出勤ですか?」
「……あれ、川尻先生。いらしたんですか」
「残念ながらいらしたんですよ。あなたがいない間、僕が代わりに二人の生徒の怪我の応急手当をして、
発熱を訴えにきた生徒を早退させ、ついでに不得手な恋の相談も、話だけは聞いておきました」
「ああ……それはご苦労様です」
383シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/04/02(月) 06:38:26 ID:T8xxwTns0
 話を聞くに、今日はどうやら朝から大繁盛の日だったようだ。
 自分に代わって労苦を背負ってくれた恩人の前でビールを飲むのはさすがに気が引けたが、
もったいないことにプルタブを開けてしまっている。
「川尻先生、飲みますか?」
「結構です。それより、遅刻の理由を聞かせてくれませんか」
「はあ、でも言っても信じないと思いますよ」
「それを判断するのは僕です。いいから仰ってください」
 そこまで言われたのなら仕方がない。せいぜい聞いて楽しむがいい、と初佳は悪魔的な微笑を浮かべ、一息に述べる。
「出勤途中にコンビニ強盗に遭遇してその現場で何故か赤ん坊の保護を押し付けられて、
警察の事情聴取と赤ん坊の引渡しに時間を取られたのが遅刻の理由です。
遅刻の連絡を入れるのは気が動転して忘れてました」
 さて、どう返す? と初佳は無責任な興味でもって川尻教師の反応を窺った。
 その反応次第では激しい叱責が彼女を待ちうけていることも十分に予想されていたが、それはそのときに考えればいいことである。
 少なくとも、初佳はそのように判断してわざと真実味に乏しい言い方を選んだ。
「遅刻の言い訳にする嘘としては最低ですね」
 それはこれ以上ないくらいにぴしゃりとした口調だった。
 その「言い訳」に腹を立てているようではないのだろう。かと言ってある種のユーモアとして解釈しているふうにも感じられない。
 ただ、初佳の言葉を真正面から受け止め率直な感想を述べた、そんな言い方だった。
 彼の生真面目さ、悪く言えば根の暗さが滲み出ている一言である。
 校内で人気者の初佳と違って、この川尻早人は堅物として大抵の学生からは恐怖と嫌悪の的として見られている。
 だが初佳は彼のことがそんなに嫌いではない。
 歳が近い親近感もあるが、その根暗さからは「確固たる意思」が見え隠れするし、それに、
384シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/04/02(月) 06:41:25 ID:T8xxwTns0
「ですが、お話は分かりました。次からはちゃんと連絡を入れてください。そうすればわざわざ問いただす手間が省けます」
「……自分で言うのも変ですけど、信じちゃったんですか、今の」
「遅刻の言い訳に、誰もそんな突飛な嘘をついたりはしないでしょう」
 それに──意外と融通の利くところのある青年だからだ。
 真面目でしかも柔軟というパーソナリティの持ち主には、普通に生きていてなかなか出会えるものではない。
 ほとんどの人間はどっちかに偏るものであり、その「どっちつかず」な感じもどこか親しみを覚える。
「じゃあ、僕はこれで。後はよろしくお願いしますよ」
 引き戸に手を掛けた川尻教師だったが、その動きが止まる。思い出したように振り返った。
「──そうそう、忘れるところでした。今朝の職員会議での連絡事項が一つあります。
身内の不幸で故国に帰られたカトゥー先生と、出産休暇を取られた山形先生の代任の先生方が、本日着任されました」
 初佳は口を付けかけていたビールを慌ててテーブルに置き、復唱した。
「あ、はいはい。カトゥー先生と山形先生の代任ですね。……って、え? 二人とも、今日ですか?」
「なかなか条件にあった方がいなかったので延ばしのばしになってたんですが、昨日、急に見つかったそうです」
 その時、からからと音を立ててて保健室のドアが開かれた。
 川尻教師は振り返り、初佳もその肩越しに入り口に立つ者を見ようとするが、彼の身体が邪魔で良く見えなかった。
「川尻せんせー、ちょっといいですかー?」
 それは朗らか、というかむしろ間の抜けたような声だった。
 そこにいるのはその一人だけではないらしく、別の声がする。そっちは非常にドスの効いた声だった。
「ったく、なんでオレまで……話を聞くくらいテメェ一人で出来るだろーが」
「ああ、二人ともちょうどいいところに。五十嵐先生、紹介します。彼らが新任の──」
385シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/04/02(月) 06:45:12 ID:T8xxwTns0

「ったくよー、数学が将来なんの役に立つんだっつーの」
 三時限目の英語の授業が終わり、次の授業の準備をしながら相馬航は苛立たしく息を吐いた。
 吐いた息は行き場を彷徨うようにただよい、そして消える。
 『今日の小テストのヤマってどこらへん?』『マジやっべーよ、ノート家に忘れた!』『腹減った……昼休みまだかなあ』
 周囲のざわめきを聞くともなく聞き流し、航はもう一度息を吐く。
「うっせえな、どいつもこいつも……」
 その声が誰かに届くことはない。
 航の机から二列向こうの席では女子が噂話に興じており、教壇近くに群がるグループは今さら宿題を片付けようと躍起になっており、
教室の中央辺りでは数人の男子が各々の斬魄刀(別名・箒)を振り回して限界ぎりぎりの真剣勝負を敢行していた。
 それらに含まれないクラスメイトたちも、それぞれがニ、三人で固まって思いおもいの休み時間を過ごしている。
 その混沌と雑多な声の響き渡る教室のなかで、航の席だけが、ぽっかりと空白地帯を形成していた。
 『男子うるさーい! 中学生にもなってチャンバラって馬鹿じゃないの!?』
 『黙れブス! 卍解するぞコラ!』『やってみなさいよ!』『な、なんだとう!』
 『どーしたのよほらほらほらぁ! 見ててあげるからバンカイしなさいよ! 漫画と現実の区別もつかないなんて、ほんっとガキ!』
 教室の片隅で男子と女子が口論を始めた。
 それを冷やかすもの、先生にチクリにいこうか迷っているもの、無関心におしゃべりを続けるもの、
一つの出来事で波紋のように乱れる人の輪に、航が加わることはなかった。
 この小さな世界から切り離されて、彼は一人ぼっちだった。
 思うに、席の配置が悪いのだ。
 航の教室には六列×七段の等間隔で机が並んでおり、窓際の列の最後尾が彼の席である。
 隣の席は無人だった。その席の主は一月も前に転校してしまったからだ。
 つまり航は物理的に教室全体から隔絶された環境にあり、理科の授業などで「隣の人と組んでなになにをしなさい」
という命令が教師から下されたときは必ず取り残される、そういう位置関係なのである。
 授業中は常にクラス全員から背を向けられており、手の届くところには誰もいない。
 そんな状況では、自分がクラスから孤立するのは当然のように思われた。
(ま、別に友達なんかいらねーけどさ……)
386シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/04/02(月) 06:48:57 ID:T8xxwTns0
 ──もちろん、それは欺瞞だった。
 背を向けられてるなら振り返らせればいいだけの話であり、手が届かないなら届くところまで歩いていけばいい。
 友達は欲しかった。毎日一人で体育館裏で弁当を食べるのには飽きあきしていた。
 だが、航にはそれが出来なかった。
 自分から「友達になってください」と言い出すのは、或いはそう受け取られる言動を取るのは物凄くカッコ悪いことだと思っていた。
 航はいつも自分に言い聞かせている。
 自分は孤高の人間で、クラスの馬鹿丸出しの男子やぎゃーぎゃーうるさい女子と馴れ合うのは性に合わないのだ、と。
 だから友達を作る努力をしなくてもいいのだと。
 心の底ではそうした正当化がそのまんま「酸っぱい葡萄」だということには気づいていたが、
彼のプライドと思春期特有の自意識過剰と視野狭窄がそれを断固として認めなかった。
 その異なる意識のせめぎ合いが余計に航を苛立たせ、いつしか彼の精神は変な方向に凝り固まっていた。
 『今度の日曜、映画見に行こうよ』『こないだ海岸でエロ本拾ったんだぜ!』『かーちゃんが勉強しろってうるさくてさー』
 『麻美、大学生の彼氏が出来たんだって』『いつまでも邦楽なんか聴いてるやつは小学生だろ』『川尻マジ殺してー』
(うるさいうるさいうるさい!)
 胸中で絶叫する航のことなど知らぬげに、クラスメイトはいつもの日常を繰り返す。
『ねえねえねえ、聞いた聞いた? 昨日、また出たんだって!』『出たって……なにが?』『だからぁ……“ブギーポップ”だよ!』
 相馬航の存在をよそに、今日も世界は平穏そうに回っている。
「あーあ、さっさと世界が終わらねぇかな……」
 それが、最近の航の口癖になっていた。
 ──四時限目の開始を告げるチャイムが鳴り、教室は徐々に沈黙へ向けて収束していった。
 脳を掻き毟るノイズの大幅減に気を良くした航は、その気楽さに任せてぼうっと窓の外を眺める。
 初老の教師の声が、膜の掛かったような曖昧さで彼の意識を通り過ぎていく。
「あー、授業の前に、突然だが転校生を紹介する。
本当は朝のホームルームにやるはずだったんだが、家の用事で学校に来るのが遅れてしまったそうだ。
──さ、二人とも入んなさい」
 空の彼方には、むくむく昇る厚い雲が層を成していた。今年始めて見る入道雲だった。
  ……『二人』?
387シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/04/02(月) 07:32:49 ID:AcVDpOP+0

「五十嵐先生、こちらが体育担当の──」
「黒鋼だ」
 そう言ったのは、眼光鋭い、ヤクザみたいな険の強い風体の大男だった。
 その横に、ひょろっとした雰囲気の、へらへらした笑いを顔に貼り付けた優男が進み出る。
「オレが英語担当のファイ・D・フローライトです──いやいや、こんな美人さんと知り合いになれて光栄ですー。ね、黒さま」
「誰が『黒さま』だっ!」
「いやーん、黒りんこわーい」
「テメェ! ブッ殺す!」
 ……なんかもうどうでもいい気分になって、初佳は気の抜けたビールを思い切り呷った。
 げふ、と適齢期の女性にしては恥じらいに欠けるおくびを漏らす。
「川尻先生? こいつら、大丈夫なの?」
 川尻教師は答えない。
 それは少年と少女だった。
 ぱりぱりの卸したてだと見て分かる、ぶどうヶ丘中等部の学ランとセーラー服をそれぞれ着ている。
 教師の声に促されて教壇に立った二人を見て、教室のほとんど全員が色めき立った。
 女子は、凛々しい顔立ちの少年のすっきりした立ち振る舞いや、そのきびきびした言葉遣いに。
「李小狼です。外国から来たのでこの国のことは不慣れですが、どうかよろしくお願いします」
 そして男子は、可憐な愛らしさを備えた少女の、つっかえながらも一生懸命自己紹介をする健気な姿に。
「あ、あの、木之本、桜といい、ます。出来る、だけ早く皆さんと仲良くなり、なりたいので、えと、色々教えてくだひゃい。……ください」
 相馬航は、その転校生二人を食い入るように見つめていた。
 それは他のやつらと同じレベルのガキっぽい行為であり、もっと淡白な態度で時期外れの闖入者を迎えるべきだと
彼の理性が告げていたが、どうしても視線を外すことが出来なかった。
「ええと……相馬の隣が空いているな。木之本さんはそこに座りなさい。李くんは……まあ、とりあえず窓際の最後尾でいいかな?
相馬。わたしは今から彼の分の机と椅子を取ってくるから、君は自分の席をもう少し前に詰めなさい。いいね?」
 クラス中の敵意と羨望の十字砲火が航を直撃した。それは彼が生まれて初めて衆目の関心を一身に浴びた瞬間だった。
 ──だが今や、そんなことはこれっぽちも問題ではなかった。
388シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/04/02(月) 07:33:49 ID:AcVDpOP+0
「五十嵐先生、こちらが体育担当の──」
「黒鋼だ」
 そう言ったのは、眼光鋭い、ヤクザみたいな険の強い風体の大男だった。
 その横に、ひょろっとした雰囲気の、へらへらした笑いを顔に貼り付けた優男が進み出る。
「オレが英語担当のファイ・D・フローライトです──いやいや、こんな美人さんと知り合いになれて光栄ですー。ね、黒さま」
「誰が『黒さま』だっ!」
「いやーん、黒りんこわーい」
「テメェ! ブッ殺す!」
 ……なんかもうどうでもいい気分になって、初佳は気の抜けたビールを思い切り呷った。
 げふ、と適齢期の女性にしては恥じらいに欠けるおくびを漏らす。
「川尻先生? こいつら、大丈夫なの?」
 川尻教師は答えない。

 ──それは少年と少女だった。
 ぱりぱりの卸したてだと見て分かる、ぶどうヶ丘中等部の学ランとセーラー服をそれぞれ着ている。
 教師の声に促されて教壇に立った二人を見て、教室のほとんど全員が色めき立った。
 女子は、凛々しい顔立ちの少年のすっきりした立ち振る舞いや、そのきびきびした言葉遣いに。
「李小狼です。外国から来たのでこの国のことは不慣れですが、どうかよろしくお願いします」
 そして男子は、可憐な愛らしさを備えた少女の、つっかえながらも一生懸命自己紹介をする健気な姿に。
「あ、あの、木之本、桜といい、ます。出来る、だけ早く皆さんと仲良くなり、なりたいので、えと、色々教えてくだひゃい。……ください」
 相馬航は、その転校生二人を食い入るように見つめていた。
 それは他のやつらと同じレベルのガキっぽい行為であり、もっと淡白な態度で時期外れの闖入者を迎えるべきだと
彼の理性が告げていたが、どうしても視線を外すことが出来なかった。
「ええと……相馬の隣が空いているな。木之本さんはそこに座りなさい。李くんは……まあ、とりあえず窓際の最後尾でいいかな?
相馬。わたしは今から彼の分の机と椅子を取ってくるから、君は自分の席をもう少し前に詰めなさい。いいね?」
 クラス中の敵意と羨望の十字砲火が航を直撃した。それは彼が生まれて初めて衆目の関心を一身に浴びた瞬間だった。
 ──だが今や、そんなことはこれっぽちも問題ではなかった。
389シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/04/02(月) 07:35:26 ID:AcVDpOP+0
 教壇から教室の片隅まで、その絶望的な距離を飛び越えて、二人の視線が航を捉えた。
 李小狼が軽く会釈をし、木之本桜が少しだけ首を傾けて微笑んだ。
 今、自分はどんな顔をしているのだろうか。

 ──このしばらく後、相馬航は『メタル・グゥルー』という名前のスタンド能力に目覚める。
 その能力で杜王町を、ひいてはこの世界を致命的な危機に陥れるのだが──。

「この席、でいいんですよね」
「あ、ああ。多分そう。あ、いや、間違いなくその席……だと思う」
「相馬さん、ですよね? わたし、サクラです。仲良くしてくださいね」
「よろしく、航くん」
「……こちらこそ、よ、よろしく」

 これは、そうした意味で致命的な、「必然」という無機質な機構が自動的な運動を開始する、その最初のトリガーとなる──、
 それはそういう出会いだった。
390ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/04/02(月) 07:37:18 ID:AcVDpOP+0
>>387は間違いです。なんか混ざってました。飛ばして読んでください。
391ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/04/02(月) 09:16:45 ID:AcVDpOP+0
あ、思い出した。
誤解や混乱を招かないように今のうちに書いておきますが、
このSS内での『李小狼』や『木之本桜』というのは、あくまで「ツバサ」の小狼やサクラが便宜的に用いている名前であり、
「カードキャプターさくら」の小狼やさくらがこのSSに登場している訳ではありません。

>スターダスト氏
臨場感たっぷりのバトル描写が相変わらず凄いです。
女性が痛めつけられるシチュとか大好きです。
偽者とは言え、よくもまあブラボー倒せたなあ、と千歳と根来に感心しきりでした。
武装錬金のアニメはヴィクターが出た辺りから観てないです。
なんとか時間を捻出して最後まで観たいものです。
392作者の都合により名無しです:2007/04/02(月) 10:07:46 ID:D+3hIBby0
>スターダストさん
偽ブラボーってほぼオリジナルのコピーなのによく千歳が倒せましたね
まあ、どんな作品でも偽者はあっけなく砕け散るものですが。
さすが前作で主役の一角を張っただけの事はある。でも千歳妙齢か・・

>ハロイさん
初佳ってあのねーさんだったのかwちゃんと全て考えているんですねえ。
コンビニではただの通行人と思ってた初佳も、こんなに魅力的なキャラとは。
新キャラも立ってて面白いな。
393作者の都合により名無しです:2007/04/02(月) 15:40:25 ID:hbdstK6W0
錬金アニメ、面白かったけど終わってしまって
寂しかったという気持ちの方が強いな。
スターダストさんにはアニメの分も頑張って欲しいな

ハロイさんは相変わらず絶好調ですな
魅力的なキャラも増えて、このメンツに静と十和子が加わると
どんな物語になるのか。スタンド使いも増えそうだし
394ふら〜り:2007/04/02(月) 21:43:52 ID:QVTkOtAb0
>>ハロイさん
>ヴィクティム〜
元気な妹から健気なサポート役を経て、荘厳な女神様に達しましたお姫様。けれど戦いが
終わってみれば何事も無かったように振り出しに戻ってる。いつもの二人が微笑ましい。
>シュガー〜
まあそもそも「現れ立つ」からスタンドなのであって、それ(映像)がないならスタンド能力者
というより素直に超能力者。にしてもサクラたちも含め、あまり強そうでない面々。どう戦う?

>>ハルヒさん(現役連載時、DIOの「世界」ってこういう能力では? と予想してました私)
突っ込んでるようで誰も突っ込んでおらず、むしろみんな積極的にノッてしまって、常識人
皆無のまま状況が変化(進展とは言い難い)していく……こういう書き方もあるのかと唸り
ました。書きようによっては充分ホラーにもなる事件なのにこの雰囲気、次はどう動くやら。

>>スターダストさん
待っっってましたぁぁ! この、事務的お姫様の危機に颯爽と駆けつける無愛想ナイトっ!
その「危機」が色気を通り越して少々エグかったのも、こうなってみればカタルシスの材料。
彼女は相変わらず、歓声も上げず気取った笑顔。でもその笑顔、向けるのはきっと彼だけ。
395テンプレ1:2007/04/02(月) 23:54:56 ID:MHlJpUku0
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart48【創作】

元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1173688295/
まとめサイト  (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm
WIKIまとめ (ゴート氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss

【作品を読んでいる皆様へ】

去年までの作品の保管はバレ氏のまとめサイトに(一部、今年1月6日まで) 
今年からの作品の保管はゴート氏のまとめサイトに保管されております。
396テンプレ2:2007/04/02(月) 23:55:46 ID:MHlJpUku0
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
聖少女風流記 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
鬼と人とのワルツ (鬼平氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (ハシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/hasi/03-01.htm
戦闘神話 (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/sento/1/01.htm
フルメタル・ウルフズ! (名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm
永遠の扉 (スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/eien/001/1.htm
WHEN THE MAN COMES AROUND (さい氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/105.html
『絶対、大丈夫』  (白書氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/85.html
397テンプレ3:2007/04/02(月) 23:57:18 ID:MHlJpUku0
上・ヴィクテム・レッド 下・シュガーハート&ヴァニラソウル  (ハロイ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/34.html
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/196.html
ドラえもん のび太の新説桃太郎伝(サマサ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/97.html
狂った世界で (proxy氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/181.html  
タイトル未定 (名無しさん)  ※空条 承太郎のペルソナ世界の物語
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/195.html
ドラえもん のび太と真夜中のバンパイア (店長氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/78.html
ブルーグラード外伝 (名無しさん)
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1173688295/237-241
涼宮ハルヒの正義 (名無しさん)
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1173688295/254-265
398テンプレ屋ハイデッカ:2007/04/02(月) 23:59:44 ID:MHlJpUku0
ついにバレさんがテンプレから外れる時が着たか・・
ほぼあってると思うが、間違ってたらよろしく。
あと、ゴートさんが更新されたら新アドにしてほしいな、スレ立てる人。
あと、聖少女に関しては3ヶ月とっくに過ぎてるけど、ちゃんと終わらすから。
仕事忙しくてさ…

ま、テンプレ屋が俺だというのは秘すつもりだったが
テンプレから外れるのも嫌なんで。

399項羽と劉邦:2007/04/03(火) 00:14:57 ID:Rz2CpUCs0
「のう、何かいい知恵はないものかのう」
漢軍のそうそうたる面子を前に劉邦が聞く。議題は「呂后との同衾をいかにして避けるか」である。
ああちなみに、呂后は史記の方の呂后ね。あの腐ったジャガイモみたいな顔の。
「一つよい術がございます」
韓信が一歩進み出て、拱手の礼をしながらこう説いた。
「漢王さまの××に毒を塗って出し入れするのです。さすればあの不細工は死にまする」
「おおそれは名案…待て、それではわしの××はどうなる」
「腐ってしまいやがて落ちますな」
劉邦の周りに例の集中線が走った。
「落ちますな、ではない! わしは戚(すごい美人)とだけ同衾したいのじゃ!
なのになぜ宦官になる危険を、あんな豚人間リョゴーごときのために冒さねばならぬのだ!」
「…呂后さまを殺す事に依存はございませんのか?」
蕭何が尋ねる。まぁ別にいいけどと思いながら。
「当たり前じゃ! ヤツが人質になった時、わしは項羽へ毎日毎日
『呂后さっさと殺せやこの冠かぶった猿め! 殺したらカイ通のハムやるぞ』と手紙を送って挑発していたのじゃぞ!
なのにあの范増めが『これは罠ですぞフガフガ』とか申して止めおった! そして返しおった!
項羽にわしの苦労が分かるか!? きゃつは花にまでなぞらえられる虞姫が正妻なのだぞ!
わしの正妻はなんじゃ? これじゃ!」

 ェ  ェ
   」
  )ヮ(

ぶくぶくに太った中年女の似顔絵を苛立たしげにパンパン叩きつつ、皆に見せた。
その醜さにまず張良がくすっと笑った。レキ食其は吐いた。
陳平と王陵は怒りをこらえ、周勃や夏候嬰が「おいたわしや」と涙を流し、呂后の妹を后に持つ樊噌は声を上げて泣いた。
劉邦はそれらの反応を満足げに確かめると、似顔絵をじっと見つめた。徐々に手が震え始め、やがて何かが弾けた。
「天はこの劉邦を地上に生まれさせておいて、なぜ呂后まで生まれさせたのだァ〜〜〜!!!!」
「漢王、それは周瑜のセリフです。うん? 周瑜と竜鳳という副題がありますが、それに掛けているのですか?」
「掛けるかアホ! つかそちの先ほどのセリフもホウ統ではないか!」
冷静な韓信の突っ込みを怒り任せに切り返すと、劉邦は似顔絵をびりびりに破り捨て泣き伏した。
400項羽と劉邦:2007/04/03(火) 00:16:28 ID:Rz2CpUCs0
韓信(かんしん)はその肩を優しく撫でながら諭す。
「漢王、そう気を落とさずに。勝敗は兵家の常と申します。
おおそう(王双)だ、泣くほどに嫌なれば同衾の際に絞め殺してみてはいかがでしょうか?」
「それはもうやった!! じゃが奴めは、トカゲの尻尾が再生するごとく生き返るのだ! 聞けば200年位生きてるらしい!」
「では戦国時代の頃から生きてるわけですな。正に妖怪」
灌嬰が言うと、劉邦はうむ、と頷き
「その妖怪を、あの腕力と美人妻だけが取り得の項羽なれば、牛裂きや油とかで殺してくれると信じていた! 
だが呂后(りょこう)は無事に返され、あまつさえ『やっぱりうちが一番ねブー』とか言いおった。オマエは旅行先から帰ってきた母さんか!!」
「呂后だけに旅行ですね?」
「黙れ韓信! とにかく呂后を殺した者には千金の褒美を遣わすぞ!」
「漢王、それよりまず七十余傷を負った曹参の治療費をぐわわ!」
蕭何(しょうか)が突っ込みかけたが、張良(ちょうりょう)に殴られ静かになった。
「やはり呂后は除くべきですな」
「それも今の内に。さもなくば私がハムになりまする」
英布と彭越(ほうえつ)が言った。
他の面子も続けて賛同した。
張良は蕭何にボディーブローを叩き込んだ。
「ふむう。皆の意見はまとまったものの、呂后を殺す手段は出ないのう」
悩む劉邦の前で、張良が蕭何を七節棍で打ち据え始めた。
「何かこう、爆発的な破壊力のある策はないものかのう張…げえっ! 何しとるんだ張良!!」
「つまらない横槍に怒り、暴れているのでしょうな。よし、アゴにいいのが入った」
「いや説客の張良がアゴにいいのを入れてどうする! つか韓信、そちは何ゆえ冷静なのじゃ!」
「大元帥ゆえに。ともかく張良どの、それ以上すると丞相が死んでしまいますぞ」
注意されると孔明顔は大人しくなった。
「時に張良、お主はどうして喋らんのじゃ? というか蕭何がピクリともせんが大丈夫なのか?」
張良はその問いかけのどちらにも驚いた顔をして、袂で目頭を抑えた。
「漢王、聞いていい事と悪い事があります。そして丞相は皆の心の中に生き続けておりまする」
韓信は拱手をしながら、ありし日の蕭何に思いを馳せ、泣いた。

「丞相…オオオ、オオー さて、呂后ですが閨で張良どのに惨殺していただきましょう。腹上
死で始末するのです。さすれば漢にはびこる呂氏一族はたちどころに滅ぶでしょう」
韓信はちょっと泣いてすぐ気持ちを切り替えた。
401項羽と劉邦:2007/04/03(火) 00:19:00 ID:Rz2CpUCs0
傍らの張良は半笑い。
斧、鉞、七節棍、輪、光線銃、毒虫の小瓶、呂后の似顔絵と言った諸々の凶器を並べるのに忙しい。
「使うのか。しかしのう……時代背景を色々無視していないか…?」
劉邦はほとほと困り果てた顔で問い掛けると、韓信は手を前を突き出し笑った。
有名な例のポーズである。が、目は笑ってない。
「はっはっはっは。時代背景とか描くのは私には無理ですよ。 張良どのの冠の名前すら知ら
ないし。 資料があればもっと本格的なSSにできますが、永遠の扉の方の資料集めが大変
なのでできませぬ」
まったく、精神と魂の違いとか装甲列車の詳細とかどこで分かるんだ。
ともかく、である。
妙に自信をはらみ韓信は答える。
一方の張良は蕭何の周りに燭台を立て、何やら祈り始めた。
「ま、待て、腹上死というコトは、わしはきゃつの下にいなければならないな?」
「もちろん」
「ならわしは下で血とか呂后汁とか呂后ビールスとか浴びる羽目に… 」
「なりますが我慢して下さい。閨で死にさえすれば腹上死で片付きますから。首を刎ねて四肢
を断ち、燃やして殴ってウラヌスの光子弾で消し炭にしても、腹上死ですから。 あと、呂后ビ
ールスに感染しても、ニンニクのエキスを打てば助かりますよ」
「ニンニクはともかく、わしが巻き添え食らいそうな殺し方ばかり選ぶな!
ああもうなんか敵に大事なリモコンを渡した気分じゃ…」
「不安なれば呂氏一族も後で腹上死させましょう。平和の為に呂産も呂禄も呂シュも呂馬通
もみんなみんな腹上死させましょう」
「たわけ! 呂馬通は楚にいたから呂后とは関係ないわ!」
「え、そうなんですか?」
韓信がきょとんとした時、張良の祈りが通じたのか蕭何は復活した。
「キャッホー! なんとか生き返ったわよあたしー! 生け花とバレエとケンカが大好きよー!」
「おお、蕭何が生き返っ…げぇ! 宦官より悪ぅなっとるー!!」
張良もげんなりした。予定では素晴らしき人にするつもりだったのだ。
「バンザイバンザーイ。さて話の…」
「もうええわ! 大体、説客の張良が暗殺などしてどうする!」
劉邦の怒声があたりに響き渡った。
402項羽と劉邦:2007/04/03(火) 00:20:11 ID:Rz2CpUCs0
この時の怒りが後に、韓信を殺す動機になったりならなかったりした。
韓信はいかにも心外といった顔をした。
「ふむう… 漢王は張良どのの腕前をご存知ないようで。
ならば少し見ていただきましょう。張良どの、アレを」
それだけで通じたようで、張良は木刀を手にすると 切っ先をすぅっと右斜めに下ろした。
「おお出たっ! 張良どのの霞切り!」
「霞切り?」
はつらつと叫ぶ蕭何に劉邦は眉を潜めた。オマエはそんなキャラだったか?
「そうよあれが張良どのの一番得意業の霞切りよ!」
答えになってない蕭何の叫び声が終わるやいなや、韓信が張良に突っ込んだ!
「デエエエエ」
刹那! 張良は猛然と走り、全体重と加速を込めた切っ先で韓信のノド笛を突き破った!
哀れ韓信は血を撒き散らしながら地に転がり、二、三回大きく痙攣すると、動かなくなった。
劉邦は唖然とした。身を張る意味が分からない。
「へへへ。決まったろう。な、な小手が見事に決まったろう?」
得意げな蕭何に「小手?」とか聞きたくもあったが、なんだか考えるのが面倒くさい。
「まず小手をとられ、瞬間的に面に入っているんです」
「わ!」
不意に耳元で囁かれ、劉邦はびっくりした。振り向けば、先ほど動かなくなった韓信がいた。
無事ではないらしい。鼻血がだらだらでているし、呼吸音もヒューヒューと不規則だ。
しかし意識はいやに明瞭らしく、「まぁ見てください」とばかりに、スっと右腕を差し出した。
「あざになっとるではないか。いや、それ以前に鼻血を拭け! 怖いぞ!」
「面に入るまえに打たれたところゲホっゲホっです。すごい男ですぞ張良どのはぶはぁ」
洪水のごとくドバドバ大量に吐血し始めた韓信に、張良はおろおろした。
「真剣ならばリンゴを四つに切れまする。ああもう限界のようです。あの蒼空極みはいずこで
あろうのう」
「わ、わかったから、張良に呂后を惨殺させる方向性でいくから、孔明のセリフをパクるなぁ!」
だが既に韓信は答えなかった。
人々は韓信の偉大な足跡を思い浮かべその死を惜しんで号泣した。
403スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/04/03(火) 00:21:14 ID:Rz2CpUCs0
「などとナレーションを入れてみたいのですがいかがでしょうか?」
血の海の中で韓信が聞いたが、しかし劉邦は無視した。そして決意した
「とりあえず呂后を殺す! このワケの分からない三つのしもべと協力して!」

あとがき。
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm10674

こういうのを作るほど横山作品が大好きな自分。
今回は項羽と劉邦をベースにしております。
といっても実はコレ新作ではなく、過去に投下したはいいけどスレが落ちて未完のままだった
作品。とりあえず、ちょくちょくアレンジしつつ投下できたらいいなぁと。
横山作品ではあばれ天童、バビル2世、あばれ天童、史記、項羽と劉邦がベスト5!

>>226さん
はっはっは。久々にバキスレ来れたので嬉しかったのですよ!
まひろの料理は、DVD特典とドラマCDで正反対です。後者は斗貴子すらビビる料理。食べてみたいかも。

>>227さん(ファイト!)
小札、香美vs剛太の行司とかやらしてパーっと実況炸裂させたかった……
手探り状態で親密になっていく「うぶ」な関係は想像するだに萌えます。ああ、春めいた感情っていい。

>>228さん
正にその状態。坂の上の雲やら幕末小説が好きなので、その場その場での主要人物を主役にするという。
オリキャラについては極力自分の恣意を抜き、好き勝手にやらしております。こうするといいセリフを喋ってくれるのでありがたい。
404スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/04/03(火) 00:22:30 ID:Rz2CpUCs0
ふら〜りさん(完結、おめでとうございますッッッ!!)
範馬を負かすワケにもいかず陸奥の不敗神話も崩すワケにもいかず。
考えれば両者の対決は故事成語の「矛盾」よろしくパラドックスを含んだものでありまして
ここを奇麗に整頓するコトはすなわち歴史との整合を取るのと同じくらい重要なワケで。
勇が女という設定は最後の最後で大儀を果たしましたなぁ。お見事。
鬼女だけに、鬼子母神の話とも掛かって(?)ますし。
本作をきっかけに修羅の刻を少し拝読。(武蔵、幕末、義経、西部を)
面白かったですw で、最後の年表にニマリと。この織り込み方こそ「修羅の刻」!
なお、義経たちの着ている鎧が「大鎧」でして、総角やら小札やら栴檀やら鳩尾やらがついております。

香美と剛太はどうも痴話喧嘩してますなw 性根はちょっと似たもの同士で同レベルなのかも。
そしてお待たせしました根来救援! プロットとにらめっこして、何とか退院前に登場させれました!

ハロイさん
>ヴィクティム・レッド
流されっぱなしだったレッドが面目躍如! でも妹に『脱げ』はマズイ。やっぱ朴念仁だ。
こう、原作にあるサイバーな雰囲気がいたるところに迸っておりますな。かなり羨ましい!
>シュガーハート&ヴァニラソウル
十和子はジョジョしてますね。捉えどころがないけど芯がある。荒木絵で脳内再生されま
した。そして静がいる以上、やっぱ外せませんよね早人。出てきただけでも嬉しいですw

>臨場感たっぷりのバトル描写が相変わらず凄いです。
ありがとうございます。あとはココに周囲の光景を織り交ぜつつ「ここでコレか!」というのを
追求していきたく。方法はきっとある筈なのです。
さいさん
>WHEN THE MAN COMES AROUND
うわああああああ! 神父だ! 神父が来たあああ!!
てっきり防人たちがIRAを倒してから順番にと思ってたのにまさかココで!
こりゃあ今後はジェットコースター的大変転の連続! ジュリアンも人間やめるかも!
405スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/04/03(火) 00:24:54 ID:Rz2CpUCs0
香美の「寝てなきゃ〜」は勢い任せに描いたら自分でもかなり萌える出来栄えに。うーん、可愛い。
馬鹿っぽいけど割りと素直に心配してるのが良い。って、自分で萌えちゃ手前味噌ですが。
でも猫はいいのです。ネコミミも。二次元めいた要素をババーっと入れたいところ!!

>>323さん
恐縮です。なるべく質のいい作品を短期間で提供したく……でもそれが難しいw

>>381さん
あの場面、いいのだろうかと思いつつ、筆は軽快に進んでおりました。ははは。
錬金アニメは3クールだったら原作完全再現+ムーンらの反乱劇も見れたわけで、そこが惜しい。

>>392さん
偽ブラボー、あっけなく退場させてしまったかも。でも根来なら割と不意打ちでやってしまう
ワケで……あぁでも、シークレットレイルの特性で絶対防御破った方が良かったのかも。

>>393さん
あのクオリティに及べるかどうかは分かりませんが、力は尽くします!
もうちょっと描き続けたら何かがつかめそうな気がするのです。劇的な輝かしい物が。

くは。感想長い! この土壇場で……!
しかしハイデッカさんがテンプレ屋さんだったとは。驚き。
406作者の都合により名無しです:2007/04/03(火) 00:57:29 ID:fnxRmlU50
お疲れ様ですスターダスト氏。
横山さんは名前しか知りませんが、偉大な漫画家と聞いております
項羽と劉邦って、三国志より前の時代でしたっけ?
歴史不慣れなもので・・
でも、なんとなく横山さんに興味が出てきました。

あとハイデッカ氏がテンプレ屋さんだったとは。
テンプレもいいですが、作品で復帰もお待ちしてます。

407作者の都合により名無しです
新スレたてておきました。
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1175563943/l50