【2次】漫画SS総合スレへようこそpart48【創作】

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以上投稿終わり。
この前、4日か5日に投稿すると言ったが、…スマン、ありゃ嘘だった。

主人公の名前はペルソナ2の天道連から、天道。
アトラスを文字って、阿虎。

あと承太郎の声は三部ゲーの声。ここは譲れない。
391作者の都合により名無しです:2007/05/03(木) 01:13:11 ID:Yz01ZY6W0
お疲れ様です。
承太郎、最初からパーフェクト超人振りを発揮しててかっこいいですw
ペルソナ使い対スタンド使いか。
どんどんお話の間口が広がりそうな感じですね。
バトルになったらどんな感じになるんだろう?
承太郎以外にもスタンド使いは出るのか?
ディ・モールト楽しみだw
392作者の都合により名無しです:2007/05/03(木) 07:53:22 ID:lxJHpZWk0
お、再開楽しみにしてたんだ。
導入だけどすっげえ面白そう。ゆっくりでもいいんで定期的に続きお願いするよ。
393作者の都合により名無しです:2007/05/03(木) 10:43:36 ID:R0ycQfa20
おお、スタープラチナカッコええ!

しかし承太郎36,7歳なんですね、でも6部のイメージよりは3部外伝だけに3部の頃の姿の方がしっくりきます。
394作者の都合により名無しです:2007/05/03(木) 11:32:04 ID:OduGqX9r0
>キャプテン
ルーティとスタンのコンビは相変わらずいい感じですけど
ファッツがまたいい味を出してますね。
確かブルーはいろんな能力取り込んだり進化したりしたと思ったけど
サルーインに対しての切り札的存在になるんでしょうか?

>未来への意志
まずは本格連載開始おめでとう&ありがとうございます!
承太郎は数多い漫画の主役の中でも俺の理想的なヒーローなので
期待してしまいます。ちょっと年を重ねた承太郎シブいですね。
スタープラチナがペルソナ世界で炸裂するのが楽しみw
395作者の都合により名無しです:2007/05/03(木) 16:24:08 ID:uoYsxXa40
ああ、いいなあ。このSS本当に先が楽しみだ。

希望は三部の頃の承太郎ベースで行ってほしいな。
六部の頃の方がこのSSの承太郎に年齢が近いんだろうけど、
六部の承太郎は微妙に性格ヘタレたし、弱体化も激しかったし。
三部外伝だから、無敵の承太郎でいてほしい。

主役があまりにも強すぎると作者さんは話作り大変でしょうけどねw
ま、ジョジョオタの勝手な希望です。もちろんお好きに書いて下さい。
396作者の都合により名無しです:2007/05/03(木) 18:40:05 ID:kI1Ou2uT0
ジョジョ大好きなだけに楽しみだ>未来への意志
ペルソナ、やったことないけどやってみようかなあ。
397作者の都合により名無しです:2007/05/04(金) 00:17:59 ID:FBWjzA2i0
邪神さんのSS読んで久しぶりにテイルズがやりたくなった
ルーティ、好きだったなあ。
前回はhttp://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/227.html
ゴートさん、保管ありがとうございます。

この感覚は前に一度体験した事がある。

ハルヒがやたらと不機嫌だったあの日。
ベットの上で寝ていたはずなのに、何故か俺とハルヒしかいない世界へ連れて行かれたあの日。

まるで意識だけがそのまま何処かへ移動したかのような・・・、感覚。

決して俺は夢を見ていたわけではない。
でも・・・、もしかしたら夢かもしれない。

そんな事を一日中考えさせられた・・・、あの体験。
今度は見紛う事無く目の前の現実で起きている。

―――長門の言葉と同時にブラックアウトした意識。
あのときの感覚。あのときの体験が今再び。

「こ、ここは・・・。」
俺は取り戻した意識を確認しながら月並みな言葉を呟く。
全く見知らぬ風景―――いや、見知らぬ室内。
どうやら俺達は、ハルヒが創り出した閉鎖空間内に来ている様だ。

「あれは・・・、確か・・・。」
「銀色の鷹のエンブレムですね。そういえば、あれを見ると何か思い出すものが・・・・。」

しかも、その場所には見覚えがあった。
だからといって、そこが決して俺達の世界ではない事も分かっている。

そう、ここは最悪にして最強の秘密結社が住まう―――

「あのう〜、ここってどこでしょうか?」
「現在位置の情報を収集中。周辺の状況、目の前のエンブレムから・・・・。」
「まあまあ皆さん落ち着いて。何、ちょっとショッカー基地にやってきただけですよ。グウたちは。」

―――ショッカー基地なのだから。

「しょ、ショッカー基地!?
確かにあのエンブレムは『見た事があるな〜。』なんて思ったけど・・・。」
「グウちゃんの言っている事は嘘ではない。」
「長門・・・。って、グウちゃんって!」
「本人からそういう様に言われている。コミュニケーション上の問題は見受けられない。」
いやいや、お前の『〜ちゃん』付けは結構レアだと思うぞ。俺は・・・。
「まだ何か?」
「あ〜、もういい。」
とりあえず長門が否定しないところを見ると、ここがショッカー基地だという事実は確かなようだ。
ということは、『本物の怪人』もわんさか居るに違いない。
「あれ〜、この椅子って結構安物なんですね。」
「苦労しているんですね〜。」
そうなると長居は無用だ。さっさとこの場所から移動しなくては。
「みんな!ここは危険だ。早く何処かへ逃げよう。」
観光客のように騒いでいる皆に向かって、俺は一声かける。
当のハルヒが出てこないのも心配だが、今は安全な場所に隠れなければ。
「で、どこに隠れるのだ?」
「えっと・・・、それは安全な場所だよ。」
俺の言葉を聞いて真っ先に反応したのは、今日始めてあったばかりのグウという少女。
コイツのせいで状況が悪化したのは、まさしくブルータス並だ。
「ふむ。それならば、ここから移動した方がよっぽど危険だろう。
幸いこの場所にはグウ達以外は誰も居ない。
寧ろ誰か来るまで移動しない方が得策だと言えんか?」
「む、むう・・・。」
グウの言葉に俺は押し黙る。
確かにコイツの言う事は正しい。
しかし、ここはショッカー基地という、血も涙も無い怪人の巣窟なのだ。

もしも凶悪な怪人がこの部屋に来たら・・・。

「キョン吉よ、そう心配する事も無い。何といってもこの場には長門っちやグウも居る。
余程の事が無い限り大丈夫なはずだ。」
「あっ!そういえばそうだな。反則キャラが二人も・・・。」
本当に俺は何の心配をしていたんだか。
この二人の力を持ってすれば、ショッカー基地すらないことに出きるはず。
とりあえず俺達の身は安全なはずだ。

うむ、これで安全面については確保したと。
そうなると次は・・・。

(う〜ん、今度はこの世界をどうにかしなくてはならないのだが・・・。)

俺はそう考えながら、この場にいる面々を見回す。
やはりこういったことは彼女が適任だろう。
前に閉鎖空間が俺達のいた世界を飲み込もうとした時も、彼女が色々と助言をくれたんだしな。

「なあ長門。お前ならここから元の場所に帰れる方法を知っているよな?」
「分からない。」
「はっ?いや、お前とか・・・・、朝倉涼子もこういった場所を作れるんだろ?」
長門の言葉はいつも簡潔で語数も少ない。
だから聴いた瞬間は一瞬だが『理解』が遅れる。
ようは簡単すぎて理解が出来ない・・・、違うな。
今回の場合は理解したくないんだ。

都合が悪すぎる言葉に・・・。

「この閉鎖空間は確かに涼宮ハルヒの願望によって造られたもの。
閉鎖空間の発生理由として、今回は怪人キョン吉――――つまりアナタに気絶させられた時に
発生した『生理的嫌悪感』から生まれたモノだと彼女の性格から推測できる。
しかし、それが理由だと貴方からこの空間が生まれた説明がつかない。
これが『分からない』点。」

・・・何だ、長門の奴。
『分からない』と言った割には、空間の発生源までわかっているじゃないか。
創られた理由が分かっていれば、長門の言う『分からない』は解消しなくてもいいじゃないか?

例えば・・・そう、ハルヒを満足させればどうにかなるんだろ?
それなのに妙な箇所を『分からない』だなんて。

「では長門さん。涼宮さんは怪人を倒したという満足感を得られれば良いんですね?」
「分からない。」
物凄く的を得ているような古泉の言葉にも、長門は『分からない』の一言で斬って捨てる。
うーむ、一体何が違うんだ?

・・・いや、長門は『分からない』と言っている。
確かに俺や古泉の考察は、この状況とハルヒの能力―――思ったとおりの世界や事象を具現化する力――――
を考えれば普通に出てくることだ。
しかし、これに対する答えが全て『分からない』。
これは俺達の考察が間違っているのでもなく、『正解なのかが分からない』という事では。

それでは、こんな質問はどうだろうか。

「なあ、長門。」
「何。」
「ああ・・・、例えば古泉が言ったとおりハルヒが心底満足したら、俺らは元の世界に帰れるのか?」
ほんの僅かだが、長門の顔付きが変化する。
まるで『二度も三度も同じ答えの質問をするな!』と言わんばかりの顔付きだ。

やっぱりこの問いに対する答えも『分からない』のか?

「帰れない。」
「へっ?」
「全く〜、キョン吉もダメですな〜。」
「な、何がだよ。って、お前!そんな某戦闘員みたいな覆面はどこから。」
「そこのタンスにあったぞ。ほら、キョン吉もグウと一緒に戦闘員・・・、あっ!もう怪人か〜!
スマンスマン。グウったらうっかり者!てへっ!」
グウはそう言って自分の頭を軽く小突く。
いわゆる『うっかりちゃんポーズ』である。

はあ〜・・・、ここらではっきりと言っておくか。

「・・・・ここではっきりと言っておくが、お前がいくら可愛い仕草をしたって全く似合ってないからな。
後、この姿はお前のせいだろ!いい加減さっさと俺の姿を元の人間に戻して欲しいものだがな。」
俺は心底嫌味を込めながらグウに物を言う。

しかし・・・。ここはやはりと言うべきか。
グウの奴は俺の言葉を聞くどころか、古泉達の方を向いて・・・、

「さあさあ、皆さんもグウとご一緒に!『キキィ!キキィ!』」

はあ・・・。まったくコイツの思考回路は良く分からん。
話も噛み合わん。大体コイツは何者なんだ?
俺をツッコミ死させるために天が使わした死神か?

「じゃあ僕たちは帰れないんですか?長門さん。」

そうそう。また話しが脇道にそれてしまった。
早く長門から、『ハルヒを満足させても帰れない理由』を聞かねば。

「な、なあ長門。ハルヒを満足させれば帰れないって理由は・・・・、何でだ?」
「もしも仮に涼宮ハルヒの欲求を昇華させても、彼女がここに居たいという考えが増大すると予想される。
そのため彼女の欲求を迂闊に昇華させると私達のいた世界は消滅。
つまりここが新たな世界になる可能性がある。」
「あれ・・・?そういうことは確か前にも・・・。」
「そう、前と同じ。」

そうだ。そうだった。

前にハルヒが創りだした世界は、退屈を解消したいが為に生み出されたモノだった。
そして、神人という彼女の精神状態の異常から生み出される物体が、実際に彼女自身の目の前に現れ、
如何にも現実離れをしたその様が、彼女を―――ハルヒをその創りだした世界にいたいと思わせた。
その結果、俺らがいた世界は崩壊しかけたんだったな。

ハルヒが心底満足していた、あの時の様子が頭に過(よ)ぎる。
うむ・・・、確かに長門が言うことは最もだ。
この世界でハルヒが満足してしまえば、俺達のいた世界は彼女にとって不必要なワケだしな。

んっ・・、まてよ・・・?
じゃあ、一体どうしたら元の世界に・・・。

「しかし、帰れない可能性が無いわけでもない。」
「お、おい。それはどうやって・・・。」
「ああ、前みたいに・・・ですね。」
俺の言葉を掻き消すように、耳元に古泉のしたり声が響く。
だから俺の顔に自分の顔を近づけるなって・・・。

・・・はい?
『前みたいに』って・・・。

まさか、前にハルヒを元の世界に帰りたいと思わせた・・・・、

『俺はポニーテール萌なんだ。だからあの時の髪型は反則的に似合っていたぞ!』
『あ、あんた何を言って・・・、んぐ!!』

あれ・・・ですか?

「前みたいにって・・・・、お、俺はもうやらんぞ!!あんな事!!」
「何を動揺しているのですか?
でも、いざと言う時はあれくらいのことをして貰わないと・・・。」
「だから『あれ』はもう無理だって!」
俺は必死に両手を振りながら古泉の意見を拒否する。
いくら俺達のいた世界が消滅しようと、出来ない事は出来ないのだ。

―――朝比奈さんが居る前では尚更・・・。

「あのう〜、一体何の話ですか?キョンくんもやたら顔が赤いし・・・。」
「えっ・・!あ、朝比奈さん?」

あ〜、俺達の会話にパニックを起こさなかったのはいいが、まさかここで口を開くとは。
いやいや待て待て。
今はそんなことを考えている場合じゃないぞ。

兎も角!今は俺がハルヒにナニした・・・。
違う!それじゃあ俺が変なことをしたみたいに!

「キョンくん?またどうしたんですか。どんどん顔が赤くなっていますよ。」
「あっ・・・、いや・・・その・・・。違うんです!!俺は何も!!」
不思議そうな表情で覗き込んでくる朝比奈さんに対して、俺は慌てて体裁を取り繕う。
い、いや、別に悪い事はしてないのだがな。
「はあ・・・、そうですか・・・。分かりました。今はそれどころじゃないですもんね。」
これ以上の問答は不毛だと思ったのか、朝比奈さんは俺の言葉に満足しないながらも1歩後って身を引く。
それにしても・・・。そんなに俺の顔は真っ赤だったのか。
自分なりにポーカーフェイスを勤めていたのだが・・・。

ご、ゴホン!まあいい。
とりあえずこの状況を打破しなければ。

「じゃ、じゃあ長門。これからどうする?
やっぱりハルヒが『この世界にいたくない』ように思わせなくちゃいけないのか?」
俺は長門に、今考えられる最善の方法について聞いてみる。
やっぱり複数の視点から見た方が、解決策も見つかりやすいってもんだ。

しかし、そんな俺の考えに長門が返した答えは・・・・。

「考える必要は無い。」
「でも、このままじゃ・・・。」
長門の意外な発言に、俺は肝と一緒に緊張感も抜かれる。
流石に何も考えないという訳にはいかないだろう。
「お〜い。お〜い。」
そして、さらに追い討ちをかけるかのように、グウの奴がニヤケ顔でこちらへやって来た。

「状況を打破しちゃいましたぞ。」

不吉だ・・・。不吉過ぎる!
ったく、グウの奴・・・。今度は一体何をやらかしたんだ?
それよりも、俺の体を早く元に戻して欲しいもんだ。

「隣の部屋に行ったら、グウと同じカッコをした人達が一杯いましたから連れてきました。ちゃら〜ん!」

本当だよ。コイツのおかげで俺は人間じゃなくなくて、蜘蛛男なんかにされたんだからな。
見ろよ!今じゃ、六本も腕があるんだぞ!
これじゃあ目の前にいる戦闘員どもを統べる怪人じゃあ・・・。
「あ・・・、あれ・・・?」
「あ、あの全身タイツの人達は何なんですか〜?」
「未知の生体構造を持った個体が複数出現。観察、内部構造の解析を開始・・・。」
「いや〜、ここがショッカー基地ならばこの状況も至極当然。
うっかりしていましたね。はっはっはっは!」
「笑い事かーーー!!!!」
俺は古泉へのツッコミとは裏腹に、心底肝を冷やしていた。
―――甘く見ていた。
まさか実物の戦闘員が、ここまでの威圧感を兼ね備えているとは思わなかったからだ。
この様子を見ると、いくら長門やグウでも完勝という訳にもいかないだろう。

そうだ。今、俺達の目の前に居るのは、決して長門が創りだした『モドキ』では無く、
暴力でこの世を支配しようとする――――

「キキィ!!キキキィ!!」

本物の・・・・『悪』の軍団・・・・。

――――――――――涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン・3――――――――――
ハルヒの能力によって創り出された世界――――ショッカー基地にやって来た俺達は、
ショッカー軍団の中で一番有名な戦闘員に取り囲まれていた。
その数総勢十数人。
一人一人にまったく個性がなく、その目的の為に命を捨てるその姿は、ある種昔の日本兵を思わせる。

果たして本当に俺達は、コイツ等を相手取って闘えるのか?
さっきはグウの言葉に思わず納得してしまったが、いざ相対してみると威圧感や存在感が圧倒的ではないか。
これが悪の軍団――――ショッカーの末端員なのだから、いくら長門やグウといえど、
無事にここから帰れるとは・・・。

「キキ?キキィ!!」

ま、まあ、言葉だけ聞くと完全に猿であるが・・・。
い、今はそれどころではない。
とりあえず戦闘が行える三人にどうするか尋ねなければ。
「長門!グウ!古泉!どうするんだ。完全に囲まれたぞ。どうするんだ?
それと特にグウ!お前が連れてきたんだから、お前が何とかしろよ!
大丈夫なんだろ?」
「むう〜、まさかここまでとは・・・。グウにもさっぱり。」
おいおい、いきなりそんな台詞をはくなよ。
ここには闘う術を知らない俺や、朝比奈さんだっているんだぞ。
いや、俺は怪人になっているから少しは闘えるのか?
「てっきり戦闘員の声を聞からして、猿回し宜しく戦闘員回しが出来るかと思っていたんだが・・・。
残念無念。あっはっは。」
「めちゃくちゃ嘘っぽい口調で言うな!
それに戦闘員回しなんか出来るかそんなモン!!声繋がりなんて文章で一番分かりづらいわ!」

はっ!しまった。思わず大きな声でツッコんでしまった。
この声で戦闘員達が襲ってこなければいいが・・・。
「本当はこういう風に、火の輪を潜ってもらう予定だったんだが・・・。
いや〜、グウとした事が。失敗失敗〜。」
俺の心配を余所に、グウは自身がやりたかったと豪語する『戦闘員回し』を始める。

それにしても見事な回しっぷりだ。
グウの奴が火の輪をズボンから取り出すと、一目散に一列になって飛び込み始めるんだからな。

ほら〜、戦闘員が一匹〜。戦闘員が二匹〜。
―――って、本当にやってる〜!?

「キキキキィ!!キキィ!」
というか、台詞だけ見たら本物の猿まわしじゃないですかグウさん!!
おい!そこの戦闘員!!小さな声で『あちい・・・。』とか言うな!!

ちょっと!普通に覆面を取らない!

「あ〜、だる・・・。」
「そうだよな〜。時給650円だし。」
「おい、次はお前があの火の輪を潜る番だろ。ズルすんな!」
「え〜、だって『今日のグウさん』ちょっとSなんだもん。」

だるくねえ〜〜!!

あーーー!!
この瞬間、全国の子供の夢は壊れた〜。
ついでにショッカーの現状が垣間見れた〜。

「まあまあ、今日はこれで上がりだから!さあ!グウの出す輪を潜るのだ〜!」
「だからお前は何もんだーー!!それに『今日のグウさん』って何?
ちょっとSって、いつもはMか!!
それにあれか?お前はちょっとしたショッカーの偉い人か!?
微妙に最後まで死なない幹部とか、実は主人公の妹でした的存在か!!
そ・れ・と・も!真のラスボスは人間だ!とかいう、自称世界を救うためにやってました系かーー!!」
「キョンくん・・・。」
「ふええ〜、キョンくん・・・。」
「怪人キョン吉の血圧が200を突破。顔色は青以上の点から、30分以上の休憩を要請する。」
「ガッテム!!」

はあ・・・。はあ・・・。
ヤバイ、ヤバイぞこれは。
このままでは俺は『ツッコミ死』という危篤な死に方をしてしまう。

勿論、葬式では『昔から面倒見が良くて』・・・。
とか言ってくれるんだろうな?
谷口とか古泉は!

―――はあ・・・、はあ・・・・。
いや、それ以上に現状の方が大問題だ。

だいたい何だ!この戦闘員どもは!
覆面を取ったら全員が全員、職に溢れた普通のおっさんではないか。
俺等はハルヒの創った閉鎖空間に閉じ込められたはずだぞ。
アイツがこの世界で怪人を倒したいが故に、ショッカー軍団がいる世界を願ったのではないか?

だったら何でこんなおっさん達が・・・。
それとも・・・、やっぱりこれは夢か幻。

「なるほど。まったく涼宮さんも面白い方です。」
「ほえ、何がですか?」
「ええ、朝比奈さん。この世界は、確かに涼宮さんが怪人を倒したいが故に創られた世界ですが・・・。」
俺はその言葉を耳に入れた瞬間、普段のキャラも忘れて古泉に詰め寄った。
「古泉!!俺もその話が聞きたい!『ツッコミ死』する前に!!」
「はは・・・、分かりました。それじゃあ・・・。」
いつも笑顔を崩さない古泉が、珍しく俺の言葉で表情を変える。
そんなに俺の顔は酷かったか?
「いえいえ。決してキョンくんの顔が怖かったとか思っていませんよ。」
なあ古泉よ。


――――――――――涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン・4――――――――――
「・・・という事なんでしょう。まったく・・・、涼宮さんらしいというか何というか。」
「じゃ、じゃあ、ここにいる全身タイツの人達は、私達を襲わないんですね。」
「おそらく・・・ですが。まあ、例えそうでも僕や長門さんがいますから。安心してください。
それに怪人のままのキョンくんもいますから。」
「・・・・好きでなったわけじゃないけどな。」
グウが戦闘員どもと戯れている間、俺と朝比奈さんは古泉の『この世界に対する考察』のようなモノを聞いていた。
古泉が話した考察の具体的な内容を要約するとこうだ。

ハルヒは無意識のうちに自分の都合の良い世界が創れる。
しかも自分が望んでいる一般常識とはかけ離れた世界をだ。
しかし、彼女の中にどうしても現実とかけ離れた事を拒否する心がある。

この部分が、目の前にいる戦闘員達を現実の戦闘員―――つまり、テレビの撮影と知っている人間や、
ヒーローショーに出演している人達と置換しているという事らしい。

「キキィ!あちい!!」

・・・まあ、あの様子を見ればそれも信じれるな。

「やっべ、アイツのケツ焦げてね?油が滴ってるよな。」
「今日は強火か。気合を入れなくてはな。
だ・か・ら喋るなって。

・・・・もういい。

今はこの世界をどうにかしないと・・・。
というか、何でハルヒの奴は一向に姿を見せないんだ?
ここはアイツの望んだ世界なんだから、真っ先にこの場に現れて、
戦闘員達をとっちめてもおかしくないんだが・・・。

仕方ない。ここはもう一度長門に相談するか。

さっきは『考える必要は無い』と言われたが、やはり状況が何も変わらない以上は、
相談と論議で事を進めるしかないだろう。

「目標物の構造解析を終了。成分・・・。」
「何だ長門。まだそんなことをやっているのか?どうせ唯の人間だよ。」
俺は長門へ気軽に話しかける。
古泉の仮説を否定する必要が現状に無い以上、こいつらは普通の人間であろう。

だから長門の苦労も徒労に・・・。

「成分は不明。」
「へっ?」
長門の言葉は、俺に驚愕と焦りを感じさせ始める。
「成分って目の前のグウと火の輪潜りをしている戦闘員達の事だろ?」
「そう。」
確か古泉の言う事が正しければ、彼等は唯の人間でしかないはず。
それなのに、対有機生命体ヒューマノイドの長門が分からない物となると・・・。
「ほ、本物の戦闘員・・・。」
「違う。これは涼宮ハルヒが戦闘員という架空の人物を欲した時に、
通常の人間とは別の構造としたいと思った名残り。」
あ〜、俺はどうやってこの言葉を理解すればいいんだ?
本当にコイツの説明は訳が分からん。

だから一体何を言いたいんだ?
「要はアレですか。
さんざん妄想して理想の敵役を創った割には、その正体等は一切考えてなかった。
勿論、構造なんて論外です。
つまり彼女は仮面ライダーのことを大して詳しく無いんですよ。
きっとこの世界が出来たのも、唯単に怪人がいる世界で思いっきり闘いたかった。それだけでしょう。
それにこの場所や戦闘員の『あやふや』具合から見て、彼女が要している知識は僕達と同程度。
テレビで放映していた、番での記憶を頼りに構成されたとしか思えませんね。」
「・・・・そう。」
なるほど。たまに古泉は分かりやすい説明をしてくれる。
少々長たらしいのが玉に傷だが。
ふう〜、これが毎回だったら苦労はしないんだがな。

それにしてもハルヒの奴・・・。
何で仮面ライダーに詳しくないのに、こんな世界なんか望んだんだ?
長門の創った怪人にどんな不満があったんだか。

「でも、これで一歩前進しましたね。さすが長門さんです。」
またか・・・、古泉よ。
何故にお前や長門は、一つの事で十も百も理解できるんだ?
これじゃあ、まるで俺が心底馬鹿みたいじゃないか。

確かに成績では俺が一番下だが・・・。

「そう。これで涼宮ハルヒを呼び寄せる事が出来る。」
次はお前か長門よ。呼び寄せるって何を言っているんだ?
まるで、ちょっとしたランプの精を呼び出す的な言い方は。
「あのう〜、それはどういったことで・・・。」
朝比奈さん。
その役は確かに板についていますが、アイツを呼ぶことは貴方に不幸が降りかかる事とイコールなんですよ。
今は黙っておきましょう。
どうせすぐに分かるから。
「まあ、百聞は一見にしかず。やってみせましょう。さあ、朝比奈さん!
思いっきりセクシーな声で『助けて〜!仮面ライダーハルヒ〜!』と言ってみてください。」
「えっ!私が言うんですか?」
「ああー!なるほど。そういうことか。」
俺は朝比奈さんと古泉の会話を聞くことで、ようやく彼等が言いたい事を理解する。

つまりだ。
ハルヒの奴がさっきから姿を現さないのは、特撮物の王道をやりたいからなんだ。
その一例が怪人退治。
それに今思えば、アイツはキックでの攻撃しかしていない。
ライダーにだってパンチや投げ技があるというのに。

しかし、それも仕方が無いのだろう。
なんたってアイツには、仮面ライダーの知識などほとんどないのだから。
おそらく一般人と同程度の知識しか所有していない。
まあ、これは古泉がさっき言っていたが。

ともかく、アイツが無い知恵を絞って、自分を仮面ライダーとして演出しようとするならば、
やはり王道を進むしか道は無いのだ。
特撮ヒーローの18番ともいえる、朝比奈さんこと『ヒロインのピンチにヒーローが登場』を行うしか。
そして、この部屋には幸いにも蜘蛛男(俺)や戦闘員がいる。

全く・・・、これほどヒーローが出てきそうな状況もないだろう。

唯一つ分からないのは、ハルヒがそんな状況を心底『望んだ理由』だ。
『非日常』を好むアイツの挙動から想像すれば、『唯の気まぐれ』と片付けるのは簡単だが・・・。
「で、でも・・・、『セクシー』にって一体どうやったら・・・。」
古泉の言葉を上手く理解できないのか、朝比奈さんは少し困った顔で頬を赤らめる。
おそらく彼女の脳内では、自分のことをそれほどセクシーな人間だと思っていないのだろう。
しかしながら朝比奈さん。
貴方が悲鳴を一声でも挙げれば、例えロミオでもジュリエットを捨てて、こちらへやって来ますよ。

それくらいセクシーですよ。貴方様は。

「別にそんな気張らないでください。
本当にいつも通りでいいですよ。ほら、涼宮さんにスカートを掻き揚げられた時の様に!」
こ、古泉よ。
確かにその言葉は正しいが、それは酷というものでは。
「む、無理ですよ!!あれはワザと悲鳴をあげているわけではありませんし・・・。」
「そうですね・・・・、じゃあ、キョンくんにスカートを掻き揚げていただきましょう。」
「えっ!」
なっ!この俺が朝比奈さんのスカートをめくるなんて!
したい! いやいや、したくない!
大体そんなことをしなくたって、単純に大声で呼べば良いじゃないか!

「こ、古泉。確かにお前が言う事も一理あるが、それは流石に・・・。
そもそも単純に大声で叫べば来るだろ?」

よしよし。上手く心の内を隠せたぞ。
そうだ!決して、ハルヒを呼ぶために朝比奈さんのスカートをめくるなんて男として・・・。

「いえっ!何をおっしゃるのですか!!」
古泉は俺のまともな意見に対して、物凄い勢いで異論を入れる。
こ、コイツがこんなテンションなのは初めてだな。
「どこの世界のヒーローが本当の悲鳴と嘘の悲鳴が聞き分けられないのでしょうか!
きっと仮面ライダーハルヒも、本当の美少女の悲鳴を求めているはずです!」
「どこにいるんだよ。そんなヒーロー。
開始一話目にPTAの抗議で降板してしまえ。
それにヒーローを呼ぶんだったら、ヒロインのピンチで十分じゃないか。」
「な、なるほど。じゃあ、蜘蛛男姿のキョンくんが朝比奈さんを抱きしめてあんな事やこんな事・・・。」
「そんなことはダメに決まって・・・、ってお前!キャラはどうした!!一種の作画崩壊か!!」
全く・・・。何を考えているんだ古泉の奴。
そんなことを一瞬でもやってみろ!俺は変態ロードをまっしぐらだぞ!

はあ・・、早いこと朝比奈さんにハルヒを呼んで貰わなくては。

「朝比奈さん。とりあえず古泉は無視してハルヒの奴を呼んでみましょう。」
「そ、そうですね・・・。スカートはまた別の機会に・・・。」
雄としては大変嬉しい申し出ですが、そんな機会は二度と無いように祈っています。
勿論、人として。
「じゃあ、いきますね。」
朝比奈さんは大きく深呼吸を二回する。
そして次の瞬間、彼女はありったけの声でハルヒを――――仮面ライダーハルヒを呼んだ!!

「た、助けて〜〜!!仮面ライダーハルヒ〜〜〜!!!」

「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・。」

朝比奈さんなりに思いっきり叫んだのであろう。
しかしながら、か細く可愛らしいその声は、どう考えてもこの部屋の半分にも伝わらない大きさだ。
現に、俺達とは少し離れているグウの耳には聞こえていないようだし。

これじゃあ、とてもとてもハルヒの耳には・・・。

「みくるちゃん!呼んだ!?」
「天井裏!?っていうか、この部屋に居たのか!!」

俺は初めて見た。
ヒロインのピンチに、元からその部屋に居たヒーローを。
しかも天井裏って・・・。

「ふふ・・・。相手はさっきの蜘蛛男ね!!この恨み、一兆倍にして返してあげるわ!!」
「おい!ヒーローが私怨で闘うな!って、違う!
俺は蜘蛛男じゃなく・・・・。もう!!長門!どうする?」
「知らない。」
そんな!この場に来て無責任な。
・・・・そ、それにハルヒを呼んだからって、俺はどうすればいいんだ?
『この世界に居たくないと思わせる方法』も考えてないし・・・。

「俺・・・どうする?」
「さあ〜、知りませんな〜。」
「グウは黙ってろ!大体、いつの間にこっちへ来たんだ!!」
「無論徒歩ですよ。全くキョン吉は訳の分からない事を・・・。」

こうして、ハルヒと俺の闘いが始まるのだった。
やれやれ・・・。


――――――――――涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン・5――――――――――
ヒロインの悲鳴を聞きつけて、颯爽と現れた自称仮面ライダーこと涼宮ハルヒ。
勿論彼女が変身など出来るはずも無く、学校の制服のままで登場だ。

そして、彼女と闘うのは俺feat.蜘蛛の着ぐるみ。
しかしその正体は、グウにいつの間に改造された本物の怪人である。
当然、本物というだけあって、一般人一人なら簡単に葬れるくらい・・・。

「ぐはっ!!はあはあ・・・、やるわね蜘蛛男!!」
「は〜っはっはっは!どうだ、仮面ライダーハルヒ!
って、おい!!俺は何もしてないぞ!!」
一体何をやってんだコイツは?
いきなり天井裏から出てきたと思ったら、今度は一人で倒れるなんて。
「仕方ないでしょ!アンタがカメラ目線で独り言をずっと言ってんだもん!
だからアタシが状況を進めてやったのよ!
全く・・・、キョンみたいな事をするんだから。」
「だから俺はそのキョンだっつーの!!」
「はん!その手には乗らないわよ!『一見知り合いのような格好をして、こちらの油断を誘い攻撃する。』
こんな常套手に乗るアタシではないわ!!
そう!私は敵の策略に全く引っかからず、ただひたすら敵を撲殺するヒーローを目指しているのよ!
すごいでしょ!」

捨ててしまえ。そんな理想像。

大体、それなら別にピンチを演出しなくてもいいんじゃないのか?
例えば怪人が現れた瞬間に、自衛隊の全武力を総動員して射殺するとか。
もしくは予め決闘場を指定しておいて、地雷源に誘き寄せるとか。
ひたすら敵を倒すヒーローならそれくらい目指さないと。

「何よその目は!!どうせ『怪人が現れた瞬間に自衛隊の全武力を総動員して射殺する』とか、
『予め決闘場を指定しておいて実は地雷原だった』とか考えてるんでしょ!
ふう・・・。底が浅いわね。」
「な、なんだよ!!だったらお前はどうやってその目標を目指すんだよ!」
俺の急所を一気に貫くハルヒの言葉。
コイツ・・・、まさか俺の心を読んでいるんじゃないだろうな?
「ふふん!そうね〜、私だったらこうやってアンタをぶっ飛ばすわよ!へ〜んしん!!」
ハルヒは一声そう叫ぶと、胸から趣味の悪いサングラスを取り出して自分の顔にかける。
サングラス・・・?
ああ、ウルトラマンセブンが変身する時は、サングラスのような眼鏡をかけて・・・。

―――そうか!ハルヒの奴は巨大化をするのか!
確かに、今まで巨大化して怪人を踏み潰したライダーの話は聞いた事がない。
JとかZOとかが似たような事をしたかもしれないが、サングラスをかけて巨大化するのは彼女が始めてだ。
まさに新感覚ヒーローだ。二十一世紀に旋風を巻き起こすぞ!

しかもその最初の犠牲者が俺!
全くもって光栄な話。・・・って、冗談じゃない!!
ここは何としても巨大化を防がねば。

「待て!そのサングラスをかけてはいけない!それに巨大化はウルトラマンの特権だぞ!!
円谷プロに業界的圧力をかけられて、二期の製作が断念しても知らないぞ俺は!!」
「うっさいわね!今時巨大化しないヒーローなんて古いのよ!
今はこれよこれ!巨大化して小さな怪人を踏み潰す!
なんて効率のいい倒し方かしら〜。うおおっ!体が急に!!」
俺の言葉に全く耳を貸さないハルヒは、サングラスの効力によって急速に巨大化していく。
―――数秒後。
彼女はあっさりと天井を突き破る大きさまで巨大化した。
「うわっ!天井が崩れ始め・・・。」
俺は周囲の様子を確認しながら、崩れ始めた天井の破片を必死で避ける。
ったく!このままでは全員ショッカー基地に埋もれてしまう。

ともかく、今はみんなの安全を・・・。

「ふええ〜、キョンくん助けてくださ〜い!」
背後から聞こえる愛らしい声。
しかし、俺はその声を聴いた途端、悪寒が体中を駆け抜けた。
「ま、まさか・・・。」
そして嫌な予感と共に声の方へ振り向くと、そこには瓦礫に足を取られた朝比奈さんが!
「朝比奈さん!今助けます!」
俺は反射的に彼女の元へ駆け出す。
早く!早く助けなければ!!
「空間座標を固定・・・、物質の構成を解除。」
「あ・・・れ・・・?瓦礫が・・・。長門さん・・・?」
偶然にも彼女の近くにいた長門が、抑揚のない声で何かを高速で紡ぐと、
瓦礫は一瞬にしてこの場から消えうせる。

おおっ!長門。さすがだ!GJと書いてジージェーだ!
これで朝比奈さんは助かった!後はここから脱出を。

「キョンくん。残念なお知らせです。」
「今度はお前か古泉!用件は早くしろ!ハルヒが巨大化したせいで、この場所が崩れるぞ!」
俺は声を荒げて古泉の方へ振り向く。
如何せん急いでいるものだから、多少の言葉の強さにはご理解いただきたい。
「では完結に・・・。え〜と・・・、ここから出られないようです。」
「な、なにーーー!!本当か!古泉。」
「ええ。
きっと涼宮さんは、ショッカー基地の中でもテレビで放映されると決まって映る、
幹部たちが集うメインルームしか知らなかったのでしょう。
その証拠にキョンくん。
彼女が巨大化することによって開けられた、あの天井の穴を見てください。」
俺は古泉の言葉に従って、ハルヒが開けた天井の穴を見る。
すると中身が見えるはずの天井の内部は、まるで黒一色の混沌した空間に変化していた。
「ほら。彼女は天井裏に潜んでいたはずなのに、その天井の中身が見受けられません。
恐らくこの世界自体が『あやふや』なのでしょう。
そう、先程の戦闘員さんの構造と同じ理由です。
彼女は仮面ライダーのことを大して知らない。
その付け焼刃な知識で生まれた、いい加減な世界なんですよ。ここは。」
「付け焼刃って・・・、古泉!俺達は一体どうすればいいんだ!
このままじゃあ、逃げることも隠れる事も出来ないじゃないか!」
俺はこの事実を知ると同時に、自身が置かれてる状況の絶望さ加減を理解する。
確かに長門やグウが居る限り、俺以外の安全は保障されているかもしれない。
しかしだ。怪人と勘違いされている俺はどうなのだろう。

きっとアイツの事だ。巨大化し終わったら、真っ先に俺を踏み潰してくるはず。
でも、そのとき関係ない皆にまで被害が及んだら・・・。

ヤバイ。ヤバイぞ。
俺もどうにか巨大化して、ハルヒの意識をこっちに向けさせなければ。
って、どうやって巨大化すればいいんだ?

―――はあ・・・、全く・・。
これじゃあ状況の進展はおろか、益々危険な状況になっているじゃないか!

本当に俺達は元の世界に帰れるのだろうか?

「そんなに悩まないで。安心してくださいキョンくん。」
俺が一人で状況を打破しようと模索している時に、再度古泉が話しかけてくる。
「どうした!何か策でも・・・。」
「いえ、貴方はきっと長門さんの力で僕達は無事。
怪人姿の貴方は涼宮さんにやられる。それを変えようと悩んでいると思うんですが・・・。」
全く相変わらず前置きが長い奴だ。
「早く結論を言ってくれ!ハルヒの巨大化がそろそろ終わりそうだぞ。」
「分かりました。では・・・、ゴホン。キョンくんにはこの方を紹介しましょう。」
「なっ!お、お前は!!」
古泉の後ろから、一つのシュルエットが意気揚々と姿を現す。

そう、それは・・・・。

「ほっほっほ。怪人研究家のグウです。」
「まんまグウかよ!!普通はそこで変装とか何かするだろうが!!」
「ほう・・・、ではちょっと着替えを。」
「そんな暇は無い!!大体お前はいつもいつも状況を荒らして!!」
俺は息を荒立ててグウに怒鳴り散らす。
今はお前の遊びに付き合っている暇は無いんだ。

―――無視をさせてもらうぞ。

「いつもいつもって、お前に会ったのは今日が初めてだが。」
「ぬっ・・・、そんなことはどうでもいいんだよ!!
ともかく俺はこの状況をどうにかしなくちゃいけないんだよ!じゃあな!」
「たわけ!!」
俺がグウに見切りをつけて背中を向けた瞬間、本日二回目の水平チョップが俺の頭に炸裂する。
「つつっ・・・、いってえ〜な!!何すんだよグウ!!」
「ふむ、どうみてもハレに似ているなお前は。」
「だ、誰だよ。ハレって・・・。」
「グウの友達だ。」
気の毒な奴だな・・・、心の底から同情するぜ。
そのハレって奴には。

――――――――――――――――――――――――――――――――

「うっくしゅ!!」
「どうしたのハレ?」
「いや、なんか僕の噂をしているような・・・。」

――――――――――――――――――――――――――――――――

「何かまた変な回想が入ったぞ。」
「気にするな。ともかくお前はそいつに似ている。
何もかも自分で抱え込んで被害者面して騒ぐあたりがな。」
「ぐっ・・・。」
グウの指摘が俺の心を小さく抉(えぐ)る。

確かにハルヒと出会ってからの俺の日常は、間違いなく非日常となった。
彼女に翻弄。そして奔走させられる毎日は夢で無く現実。
しかし、それは辛いが楽しいと感じる事もあった。

まあ、確かに彼女の起こす騒動の後始末を、俺自身の手だけで解決しようとした事は何度もあったが・・・。

「もっとグウ達を信用しろ。キョン吉。」
「グウ・・・。」
「グウと長門っちでこの場をどうにかすればいいのだろう。」
「で、出来るのか!?」
俺はグウの言葉に光明を見た気がした。
本当にコイツはとんでもなく鬱陶しく、つかみ所の無い奴だが、妙な力は使える。
そもそも俺の姿を怪人にしたのはコイツだしな。

ならば・・・、期待できる!!

「当たり前だ。ハルハルが巨大化したのだから、グウ達も巨大化すればおあいこだ。
とりあえずは時間稼ぎが出来る。」
「た、確かに。」
「しかもあっちは一人で、こっちはグウを入れて・・・。」
グウはこの場にいる人数を数え始める。
一応明確にしておくが、この場にいるのは俺を入れて、朝比奈さん・長門・古泉・グウ・戦闘員十名。
計15人だ。
「人間が3人で後は未知の生物12匹だな。」
「嫌な言い方するな!!
それに人間の3人って俺と朝比奈さんと長門と古泉、そしてお前で五人だろうが!」
「ノンノン。長門っちは人間じゃないし、キョン吉は怪人だから数には入らないのですよ。
まったくもう〜。」
グウはそう言いながら、くたびれた様子で両腕と首を左右に振る。
いわゆる『しょうがない奴だな〜』といったポーズだ。

それにしても長門の正体を既に見抜いているとは・・・。
いや、そもそも長門に呼ばれてここに来たんだよな。

これなら尚更のこと期待できる!

「分かった分かった!分かったから早いとこ俺らを巨大化させてくれ!」
「えっ〜、本当に分かった〜?」
ぐっ・・・、しつこいヤツめ。
コイツは今の状況を本当に理解しているのか?
崩れ落ちてくる天井を、長門が食い止めていなければ今頃・・・・。
「分かったから早く!!」
「しょうがない。ではこのビックライトで・・・。」

グウはポケットから懐中電灯みたいのを取り出し・・・、

「っておい!!お前それはヤバイだろ!!せめて如意光にした方が・・・。」
「ふう〜、いちいち文句の多い奴だ。ならばこれはどうだ。
ほらっ!『幻覚の世界では大きくなる薬』〜!」
「何か露骨にヤバ〜イ!!や、やっぱりそのビックライト・・・、で良いです。」
「ふん・・・、まあいい。今はキョン吉をからかっている場合じゃないしな。
いくぞ!!まずはお望みどおりキョン吉、お前からだ。ビックライト〜!!」
やっぱり俺をからかっていたのか。
しかしもう腹も立たん。今はこのライトの効果で巨大化するのを・・・・。

ん・・・・?
何だか周りの風景が段々小さく・・・・。

「しまった。間違えてキョン吉にスモールライトの光をかけちゃった。テヘッ!」
『テヘッ!』じゃねえ〜〜!!
ていうか、みんなが滅茶苦茶でっかい・・・。
あ、朝比奈さんのパンツが丸見え。

しかし黒では・・・・。
「きゃああ〜〜!!キョンくんのエッチ!!」
小さくなった俺の視線に気づいたのか、朝比奈さんは顔を真っ赤にしながら足をジタバタさせる。
あ、朝比奈さん!!そんなに暴れたら俺が潰れる!!

そうだ!グウだ!
グウに元に戻してもらって・・・。

「グウ!!早くもとに戻して・・・・。」
「えっ?このままが良い?もう蟻のように小さくなって何も考えたくないって。
仕方が無い。キョン吉がそこまで言うならば、グウは最早何も言わん。
長門っちや戦闘員達がハルハルと闘ってくれるにように交渉してくる。」
「おい!そうじゃねえだろ!俺を元に戻せって!おい!聞いてるのか?グウ〜〜!!」
俺の言葉を無視して、グウは長門達の方へ歩みだす。
だいたい長門達が闘うって、ハルヒは元々俺を狙ってるんだぞ。
それに元の世界に戻す方法だってまだ・・・。

ま、まさか!?グウはこの世界を元に戻し方を思いついたのか?
そうだ。そうに違いない。

その案の中では、俺の存在が邪魔だってことだ。
それならば納得がいく。

いや、そうなってくれ!グウよ!頼んだぞ!!

「じゃあ、長門っちがゴーグルレッド。みくみくがゴーグルブルー。
で、そこのスマイリーがジパンでどうだ。」
「一人だけジャンルがちが〜う!!」

期待した俺が損した。
やっぱりグウの奴は唯単に遊んでいるだけなんだな。

はあ・・・、本当に神がこの世にいるならば、是非ともこれを夢にしていただきたいものだ。

「キョン吉よ。そう絶望するでない。これはほんの戯れ。
ちょっとした冗談だ。では行くぞ皆の衆。」
「は、はい!」
「いつでもどうぞ。」
「いい。」
グウの言葉に、皆が了解の旨を伝える。
ん・・・?そういえば、このままだと皆がハルヒと闘う事になるのか?
おいおい、それは流石にヤバイだろ。
長門や古泉はともかくとして、朝比奈さんはどう見てもアイツの餌食に・・・。
「これからグウのビックライトで巨大化した後、長門っちが今から作る強化スーツを着て、
仮面ライダーセブンハルハルとガチンコ対決だ!」
「おいグウ!!
朝比奈さん達にそんなことをさせて、怪我でもしたらどうするんだ!
巨大化させるのはいいが、絶対闘わせるなよ!いいな!!」
「ふう・・・。何だかハエが五月蝿いですな〜。ほ〜れ!」
グウは突然右足を宙に上げると、徐に俺の頭上で静止させる。
「ん・・・?」
そして、満面の笑顔でおもいっきり振り下ろした!!
「どすこ〜い!!」
ようは俺を潰しに来たのである。
「うわっ!!」
俺は寸前のところで転がるようにして避ける。
はっきり言って、この怪人の身体能力がなければ死んでいたところだ。

本当に・・・、まじで死んじゃう五秒前だったぞ。

ふう、それにしてもコイツ・・・、まさか俺を殺す気では。
・・・それとも、今のは唯の冗談。
いや、冗談でも笑えないんだが。

「ちっ・・。」
「今、『ちっ』って言ったよね!俺を踏む気だったよね!!
本気と書いてマジだったよね!?」
「じゃあ、ビックライトを照射するぞ〜!準備はいいか〜?」
くう〜〜!グウの奴はどこまで俺を無視する気なんだ?
それにいくらこの状況でも、ハルヒと闘うなんて皆がやろうとするはずが・・・、

「これしか方法がないんだったら・・・。私、やります!」
へっ?朝比奈さん?

「仕方ないですね。なんとか涼宮さんを大人しくさせて、元の世界に戻る方法を考えなくては。」
いやいや、その考えは半分正しくて、半分間違っていると思うぞ。古泉よ。

「了解・・・。」
それだけか長門よ!!
一体皆はどうしたんだ?
そんなに闘いたいのか、ハルヒの奴と!

「じゃあ、いくぞ〜!ビックライ・・・。」
「どうしたの!怪人キョン吉!姿を現しなさい!!」
正にグウがビックライトで皆を巨大化させようとした瞬間。
上空からハルヒの声が辺りを劈いた。
どうやら彼女の巨大化は無事完了。
つまり、仮面ライダーセブンハルヒが誕生したというワケだ。

これは一刻の猶予も・・・、ここはやはり怪人の力を得た俺が!!

「グウよ!!早く俺を巨大化してくれ!
そして皆は俺がハルヒと闘っている間に、この世界を元の世界に戻す方法を!!」
「む、悪が巨大化を完了したようだ!もう一度いくぞ皆の衆!!ビックライト〜。」
グウは俺の言葉を華麗に無視して、ビックライトのスイッチを躊躇無く押す。
――――ビックライトの先端から照射される光。
それは長門達を包み込むよう照らすと、彼女達の身長を物理法則など知らぬ存ぜぬな速度で増大させた。

「お、おっきくなってる・・・。」
「凄いですね〜。」
「身長の巨大化を確認。これより戦闘スーツを構成する。」

お〜、本当に皆が大きく・・・って!

皆が無事に大きくなったのは良いけれど、俺は一体どうなるんだ?
この小さいなりのままでは、崩れゆくショッカー基地と運命を共にしてまう。
肝心のグウは当てになるはずも無いし・・・。

「ほれ。キョン吉はグウと一緒にいろ。」
「ぐ、グウ!?」
グウは小さくなった俺の体を、自身が着ているマフラーの中に置く。

・・・まさか、グウが小さくなった俺を拾ってくれるとは。
いや、小さくなったのはグウのせいだが。

「ともかくここで見ていろ。グウが見事にお前達を元の世界に戻してやる。」
「グウ・・・。」

よかった・・・。
グウは元の世界に戻る方法が分かったんだな。
今まで変なツッコミばっかり入れてゴメン。

―――だからグウ。

「頑張ってくれよな。俺はここにいる事しか出来ないけど応援してるぞ!」
「任せておけキョン吉。お前がツッコミ死するくらいの世にも面白いものを見せてやる。
今まで見たことの無いような闘いに追加して、著作権を全く無視した放送コードぎりぎりの・・・。」

グウは半笑いの表情を作りながら、親指を誇らしげに立てる。
う〜む。やっぱり俺がどうにかしなくては。


――――――――――涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン・6――――――――――
あと残り半分あるのですが、どう考えても残りバイトが足りないので次スレで投稿します。
前回の返礼は、そのときにまとめて書きたいと思います。

では失礼・・・。
433作者の都合により名無しです:2007/05/04(金) 15:50:37 ID:gBH4SN/k0
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart48【創作】


元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1175563943/
まとめサイト  (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm
WIKIまとめ (ゴート氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss



【作品を読んでいる皆様へ】

去年までの作品の保管はバレ氏のまとめサイトに(一部、今年1月6日まで) 
今年からの作品の保管はゴート氏のまとめサイトに保管されております。
434作者の都合により名無しです:2007/05/04(金) 15:51:15 ID:gBH4SN/k0
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
聖少女風流記 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
上・鬼と人とのワルツ 下・仮面奈良ダー カブト (鬼平氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/258.html
Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (ハシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/hasi/03-01.htm
戦闘神話 (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/sento/1/01.htm
フルメタル・ウルフズ! (名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm
上・永遠の扉  下・項羽と劉邦(スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/eien/001/1.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/233.html
WHEN THE MAN COMES AROUND (さい氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/105.html
『絶対、大丈夫』  (白書氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/85.html
435作者の都合により名無しです:2007/05/04(金) 15:52:02 ID:gBH4SN/k0
上・ヴィクテム・レッド 下・シュガーハート&ヴァニラソウル (ハロイ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/34.html
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/196.html
ドラえもん のび太の新説桃太郎伝(サマサ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/97.html
狂った世界で (proxy氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/181.html  
ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志 (名無しさん)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/195.html
ドラえもん のび太と真夜中のバンパイア (店長氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/78.html
ブルーグラード外伝 (名無しさん)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/215.html
カシオスの冒険 (名無しさん)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/221.html
涼宮ハルヒの正義 (名無しさん)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/232.html
傷跡の記憶 (流花さん)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/246.html
その名はキャプテン・・・ (邪神?さん)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/captain/01.htm
436ハイデッカ:2007/05/04(金) 15:58:19 ID:gBH4SN/k0
大体、あってると思うけどちょっと時間が最近なくて推敲足りなかった。
氏がさんになってたりとか、些細なミスだけど。
流花さんは読み切りだと思うけど、短編で続くかも知れないから
入れておきました。連載もして欲しいしね。

しばらく忙しくてテンプレが遅くてすまん。
430KBあたりでやるべきだった。誰かスレ立てて下さい。立てられなかった。



しぇきさん、ハルヒ知らないけどしぇきさんの作風は昔から好きでした。
この作品は次で終わるみたいですが、またちょこちょこ書いて下さいね。
さいさんもハルヒ気に入ってるみたいだし、読んでみようかなあ。
437作者の都合により名無しです:2007/05/04(金) 17:12:17 ID:PJcKt63h0
新スレ立てておきました。
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1178266038/l50
438作者の都合により名無しです:2007/05/06(日) 00:14:03 ID:P8NX3e8/0
保守
439作者の都合により名無しです
保守