581 :
プロローグ:
ここに一つの雑誌がある。
長年続いてきた雑誌だ、その歴史は中々に深く、そして起伏に富んでいる。
例えば、世界全体を舞台にした物語。
例えば、有史全体を跨ぐ物語。
例えば、近所でも起きていそうな物語。
物語は個別に独立し、音符のように譜面である雑誌を彩る。
互いが交わることは決してないが、それを想像するのは容易だ。
ではその想像を具体化するとどうなるか?
破綻するのか?それとも最後の最後まで紡ぎきれるのか?
始まる前には、分からない。
それでもいいなら、始めよう。
582 :
プロローグ:2006/04/24(月) 13:55:21 ID:MDkJW/oq0
ここは何処だろう。
私はそう思って、視線を周りに這わせた。
色々な人がいる。本当に色々な人がいる。
普通のサラリーマンから、明らかに人じゃなさそうな(森光蘭ほどではないが)異形のモノまで。
色々いると言うかもう色物を集めましたって感じだ。
「・・・うーん、私はさっきまで何してたんだっけ?」
左手の親指と人差し指で顎を挟む探偵ポーズ(仮)をとり、考える私。小学生くらいの子供がこのポーズをとっているのが見えた。
「あ、思い出し「姫ェッ!」
いきなり耳を劈くような大声が聞こえたと思って振り向くと、予想通り、烈火君が走ってきていた。
そうそう、烈火君と一緒に公園で遊んでたんだった。
「もー、烈火君。『姫』じゃなくて『柳』でしょ」
なかなかその呼び名に慣れてくれない烈火君に、少し頬を膨らます。無論本当に怒ってるわけじゃないが。
「わりいわりい、柳。………ここ何処だ?」
こっちが聞きたい。
「あ、あの人、紅麗―――さんじゃない?」
視界に、仮面を付けた見覚えのある人を見つけた。あれ?でも紅麗さんは確か。
「あいつ………戦国に帰ったよな?まあいいや」
烈火君は紅麗さんに向かって走っていった。とりあえずついていこう。
583 :
プロローグ:2006/04/24(月) 13:56:05 ID:MDkJW/oq0
「おい、あに―――いや、えっと」
紅麗さんをなんと呼べばいいのか戸惑っている烈火君。………兄ちゃん、でいいと思うけど。
「あーまぁ、小金井は元気か?」
その言葉を聞いて、紅麗さんはゆっくりとこちらを向き、言った。
「―――馴れ馴れしいぞ」
次の瞬間、烈火君は紅麗さんの裏拳で数メートル吹っ飛ばされて、壁に激突した。辺りの人の視線がこちらに向く。
「がっ………な、何を………」
「小金井は今の今までジョーカーと闘っていただろう?何を言っている」
周囲の視線を全く意に介さず倒れた烈火君を蔑むように見据える紅麗さん。
(―――?)
何かがおかしい、と思って紅麗さんに声を掛けようとすると、紅麗さんが私を睨みつけてきた。
「治癒の少女―――」
「!」
紅麗さんが私に手を伸ばす。
「てめえっ!」
烈火君が空中に『崩』の文字を描くと、小さい火弾がいくつも紅麗さんに向かって飛んでいく―――?
烈火君も自分がやったことに驚いているようだ。何故なら。
【火影の力は全て無くなった】筈なのだから。
584 :
プロローグ:2006/04/24(月) 13:57:40 ID:MDkJW/oq0
「フン………」
崩を軽く避け、烈火君に向き合う紅麗さん。その時だった。
『―――静粛に』
空中に、怖いほどの美女が浮かんでいた。
『質問は許しません』
『皆さんには』
そこで一旦言葉を切り、笑みを浮かべ。
『皆さんには、殺し合いをしてもらいます』
585 :
プロローグ:2006/04/24(月) 13:58:37 ID:MDkJW/oq0
『まずは―――』
彼女が淡々と話し出したその時、人ごみの中から稲妻とレーザー(?)が飛び出し、彼女に向かっていった。
向かっていって、消えうせた。
「………………………!」
周りの人の息を飲む音が聞こえる。
『とらに―――キース・シルバーですか。人の話は最後まで聞きなさい』
学校で悪さをした生徒を嗜めるように言うと、彼女はまた口を開いた。
『まずは、ルール説明です。
あなたがたに殺し合いをしていただく舞台は、超巨大アトラクションパーク―――ディズニーランドです。
詳細は今から配られるデイパックに入っている地図を見ればわかるでしょう。
その他、デイパックには
「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランダムアイテム」
が入っています。
「ランダムアイテム」は各人によって違い、先程の彼等のように特異な能力を持つ者にも一般人が対処できるように考慮したものです。
まあ、当たり外れはありますが』
そこで一旦言葉を切って、彼女は私達を見回した。
誰も何も言わない。
『6時間ごとに死んだ者を放送で伝えます。ああ、24時間誰も死ななかった場合は全員が死にますのでご注意ください』
支援
もう一丁
奴らに気付かれ前に
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590 :
プロローグ:2006/04/24(月) 14:11:53 ID:MDkJW/oq0
「・・・あんたが出てきて全員殺して回るのか?」
義手をつけた精悍な顔つきの男の人が口を挟んだ。
美女は彼のほうを向き、質問に答える。
『いいえ。―――荷物をお配りするのを忘れていましたね、どうぞ』
荷物がふわふわと浮いて各人の下に飛んできた。よく見ると、尻尾の生えた目玉のようなのものが荷物を抱えている。
『彼等は貴方方の中にも既に潜り潜んでいます。
放送の際に指定される禁止エリアに這入りこんだり、無理矢理取り除こうとしたり、
先程言ったように24時間死者が出なければ、彼等は貴方方の全身を内部から抉り、殺すでしょう。
また、彼等はゲーム内を飛び回ることもありますが、なるべく殺したりはしないほうが良いです。死にたいなら話は別ですが』
『最後まで生き残った一人にだけ、元の世界に戻る権利を与えましょう。そして、望む褒美も』
締め括って、彼女は再度私達を見回した。その視線が、私の近くで止まる。
私は意を決して、彼女の眼を見て言葉を発した。
「な………なんで、こんなことを」
彼女は私に気付き、妖艶に微笑んだ。
『話す必要は有りません』
「でも!」
理不尽すぎる。いきなり殺しあえなんていわれても、納得できるわけがない。
591 :
プロローグ:2006/04/24(月) 14:18:19 ID:MDkJW/oq0
『・・・五月蝿いですね。仏の顔も三度までって諺知っていますか?』
彼女は先程の義手の男の人を指差し、私を指差し、もう一方の手でまた私を指差した。
ズルッ
(………?)
「あ、ああ………!?」
烈火君の声が聞こえた。
あれ?私、倒れてる?でも、足は地面に―――え?何で足が正面に―――逆さに―――痛い!
「うぁ、ああ………あ」
視線を上げる。そこには、私の腰から下の部分が、其処からひり出ているあの尻尾の生えた目玉が。
『皆さん、分かりましたね?貴方方もいつでも殺せると言うことが』
彼女は、地面に降り、私の元に歩いてくる。耳がおかしくなったのか、足音が変に聞こえる。
そして、彼女は私を一瞥すらせず、私のデイパックを漁った。
『おやおや―――これは』
何を取り出したかは分からなかった。もう眼が見えない。怖い、怖い。
『これでは、どっちにしろ同じことでしたね―――ふふふ』
私は最後に、クラッカーの音を聞いた。
『では、始めましょう………死の宴を』
【ゲームスタート】
【参加者がばらばらに舞台に配置されました】
【佐古下柳@烈火の炎 死亡確認】
【残り68名】