【リレー小説】えなりの奇妙な冒険〜冨樫の遺産編第26部

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1作者の都合により名無しです
これはえなり2世の数奇な運命を追った奇妙な冒険である。

前スレからの続き、行くぜ!!
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1113881040/

 ≪注≫この物語はフィクションです。実在の人物、地名などとは一切関係ありません。
      特に漫画家とか。

ルール! それはここに書き込む際の最低限のルールである!
・過去ログを見てストーリーの流れくらいは把握しておく事!
・漫画のキャラをあんまり出すな! ここのメインはあくまで漫画家だ!
・登場人物紹介文は、登場させた人が作ろう!展開が落ち着いたらでいいので整理スレに書こう!
・先人の意思をなるべく尊重しよう! 壊すにも壊すルールがあるのさ!
・雑談や感想は本スレで! アンカー付けての遅レスOK!
・展開相談は「したらば」オンリーで! 無論見ないのも自由! 無視されて当然!
・質問は本スレでよし! 先展開の牽制にならぬよう気を遣うのを忘れるな!
・細かい設定や言葉遣いでドジった書き手には極力優しく! 過失だ!決して悪意は無い!
・脊髄反射で罵倒レスをするな! 一呼吸置いて良い部分にも目を向けようぜ!
・わかりやすさは大切だ! 自分の投稿がどの続きなのかアンカーは必ず付けようぜ!
・割り込みはあるものとして考えろ! 即興でそのつど話を書いてるなら尚更だ!
・誤字脱字の訂正は必要最小限にとどめよう! 投稿前に内容確認!!

特殊ルール
・リアル故人の漫画家さんを当スレで扱うと様々な問題が発生する恐れがあります。
 今のところ明確なルールは無く、ケースバイケースなのですが
 誰某を出そうと思っている、若しくは、誰某が登場後にお亡くなりになられた、といった場合
 本スレにSSを貼る前に、したらばに一言お願いします。

↓展開相談、ネタバレ関係はここ「(旧)したらば」で
http://jbbs.livedoor.jp/comic/31/
その他リンクは>>2-5
2作者の都合により名無しです:2005/07/17(日) 04:25:32 ID:dSz3O5A10
過去ログとか
第1部 ttp://ebi.2ch.net/ymag/kako/1005/10056/1005603546.html
第2部 ttp://ebi.2ch.net/ymag/kako/1006/10062/1006290865.html
第3部 ttp://comic.2ch.net/ymag/kako/1008/10088/1008862285.html
第4部 ttp://comic2.2ch.net/ymag/kako/1022/10224/1022478173.html
第5部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1043128803/
第6部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1050213697/
第7部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1054732518/
第8部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1056214706/
第9部A ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1056986536/
第9部B ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1057574190/
第10部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1059402962/
第11部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1061047834/
第12部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1062766295/
第13部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1065342319/
第14部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1067586160/
第15部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1070374232/
第16部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1073532393/
第17部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1076777860/
第18部 ttp://comic3.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1078322116/
第19部 ttp://comic4.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1080831880/
第20部 ttp://comic4.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1084552706/
第21部 ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1087978323/
第22部 ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1092841463/
第23部 ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1099058199/
第24部 ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1105945845/
第25部 ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1113881040/
3作者の都合により名無しです:2005/07/17(日) 04:26:04 ID:dSz3O5A10
■えなり関連サイト■
〜ロマン・ホラー!真紅の秘伝説〜 (〜8部)
http://enari2nd.hp.infoseek.co.jp/
えなりん第2倉庫改装版
http://www.geocities.jp/enyarino/enarin/enari-house2.html
※「えなり」過去ログ保管サイト。最初期〜初期のストーリーも是非一読を。

えなり用語投稿フォーム【エナリダス】 〜Enari's Data Acquisition System〜
http://www.geocities.jp/enyarino/enyari/wardbook.htm
※第2倉庫・新装版用の企画ページ。作中に登場する用語の解説を募集中。(仮運営ver.)


 ■したらば・えなり関連スレ■
えなりの奇妙な冒険を語るスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1059562987/l100
※展開の相談、連絡等に。※ネタバレ要素を含みます。閲覧にあたっては自己責任で。

冨樫の遺産について語るスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1057506770/l100
※意見や批判等、ネガティブな話題はこちらでお願いします。

冨樫の遺産の登場人物について整理するスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1058562255/l100
※登場人物のテンプレを、現状に合わせて推敲したり追加したりするスレです。

えなりの奇妙な冒険 キャラ萌えスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1073916863/l100
※キャラ語りをしたい時はこちら。20部到達記念人気投票の結果が発表されています。
4作者の都合により名無しです:2005/07/17(日) 04:26:40 ID:dSz3O5A10
☆なんとなくそれっぽいあらすじ☆

 時は近未来。忘年会シーズンを迎えた2012年晩秋〜初冬。
漫画家を含めた≪クリエイター≫達が武力や異能力を持ち争いを続ける歴史世界。
冨樫義博の遺産ファイルがエジプトで発見されたのを始まりとして、
一見平凡な少年「えなり二世」はファイルを巡る争いに巻き込まれてしまう。
この時代の漫画業界を表に裏に支配する男・矢吹は兵力獲得のため、
賞金10億を賭けたバトルトーナメント大会を巨大戦艦内で開催する。
えなりは打倒・矢吹を誓い、同志とチームを結成し大会に参戦した。
 しかし歴史の裏には神の手先ゴッドハンド・闇の支配者妖魔王一派・
漫画界の秩序回復を図るも内部分裂が甚だしい評議会・
10年前に東京で大災害を起こした少年とゆかいな仲間たちKIYU・
さらにはゴッドハンドを実質支配する軍師横山のしもべたち十傑集+五虎大将・
軍師の姦計で矢吹の下を離れ結成された狂人軍団最後の大隊など、
フリーキャラ含めて右も左も敵だらけで、なんだかえなりはピンチです。

 予選ブロック決勝進出9チームの交流会≪温泉慰労会≫(鹿児島→別府)は、
漫画家達に新たなる因縁を、九州全土に王蟲の進軍による大破壊をもたらした。
避難民救出のため散開するゴッドハンド軍艦隊のひとつ・空母≪エリア88≫は、
鹿児島湾周辺の海域で、最後の大隊を始めとする混成軍に襲撃を受け壊滅の危機。
偶然居合わせた内藤たちが応戦する中、横山十傑集からの援軍・福地は、
<天地創造>でエリ8を変形させ新たな戦場の支配者となったが、
別府から漂着したゆで将軍に叩きのめされ、敵幹部の大暮と将軍撃破のために共闘開始。
 一方秋田書店が禁断の≪神復活計画≫を蘇らせたのを期に、神エネルギーの制御増幅装置?
【三種の神器】を巡る動きが活発化。妖魔王陣営は神器候補・ギャグ作家の集団拉致を敢行。
また矢吹も因縁の少年キユと再会したり、主人公の姉が秋田に狙われたりと周囲が騒がしい。

 そして本編・矢吹艦トーナメントは、決勝戦準決勝第一試合【サッカー】シリーズ。
B・ガンガンとD・えなりの対決。第二試合はA・バンチ対C・裏御伽の予定。
試合は169/180レス(※約85分)まで進み【ガンガン(+サンデー) 6-6 えなり】!
果たして勝利の栄冠はどちらの手に?そして第二試合はちゃんと選手が集まるのか?
とにかく働け主人公!ラスボスは出番が増えてるぞ!サッカー編佳境の第26部、試合開始。<了>
5王大人:2005/07/17(日) 04:27:23 ID:dSz3O5A10
それでは始めぃ!!
6作者の都合により名無しです:2005/07/17(日) 10:12:09 ID:/Fp36aUv0

        ,.v.,
      。, |_|_| 、。       ∧∧∧∧∧∧∧
     O/    ヽO     <新スレへようこそ>
    ○ノ     ヽ○     <ジュリエット!!>
  ('A`)ノ     ヽ('A`)    VVVVVVVVVVV
( ´∀` )ノ    \( ´∀` )
7作者の都合により名無しです:2005/07/17(日) 12:42:50 ID:UYWi33Oq0
>>1!!
8作者の都合により名無しです:2005/07/17(日) 21:11:11 ID:rdEKG7qF0
(゚∀゚ )ノへぃ!
新スレおめでとうだ( ゚∀゚)ノよぅ!
9魁!!餓狼伝 ―剣と拳―:2005/07/17(日) 22:55:31 ID:Ego542wy0
24部>82

広い間合いを保ったまま、二つの山が向き合っている。
夢枕獏は、両足を肩幅に開いて立ち、両腕を軽く下に落としていた。
それだけの無造作な姿勢であったが、身体全体に、凛と張りつめたものがある。
夢枕の瞳は、真っ直に、前方に向けられていた。
その夢枕の視線の先に、青く光を反射させている、鋭い金属光があった。
美しい反りを持った、刃渡り3メートルに達しようかという肉厚の金属――
“斬岩剣”であった。
逞しい上半身をはだけた宮下あきらが、その日本刀を両手に握り、正眼に構えて、そこに立っているのである。
拳と剣。
二つの凶器が鎬を削り合う、まさしく“真剣勝負”は、すでに始まっていた。
始まっているが、どちらもほとんど動かない。
どちらも、小さく足を運びながら、間合を計っている。
互いに、先に仕掛けようとはしない。
宮下側にしてみれば、このまま、不用意に、夢枕に斬りかかってゆくわけにはいかない。
全身全霊を込めた、渾身の一刀でなければ、夢枕を捉え、その艶やかな巨石のごとき肉を断ち切ることはかなわぬからだ。
そして、一刀を躱されたが最後、全てを砕く鉄拳の洗礼を受けることになる。
夢枕側にしてみれば、なおさら、動けなかった。
わずかでも隙を見せれば、その瞬間には、宮下の凶刃が、夢枕の頭頂から股間まで一直線に断ち割っているだろう。
互いに、一撃必殺の武器を持つがゆえの、膠着状態。
そのまま、長い一分が過ぎ、二分が過ぎた。
宮下の額からも、夢枕の額にも、細かい汗が浮きはじめていた。
たまらない緊張感が、空間内に張りつめていた。
宮下の僕であり、驚き役の馬場康誌も、その場に呑まれたように、声を発しようともしない。
三分。
四分。
五分が過ぎた。
六分。
10魁!!餓狼伝 ―剣と拳―:2005/07/17(日) 22:56:25 ID:Ego542wy0
宮下が、一歩、つめてきた。
夢枕が、一歩、後方に引いた。
また一歩。
夢枕が、一歩退がる。
汗が出ていた。
大量の汗であった。
額にも、身につけた服の下の素肌にも、宮下も夢枕も大量の汗をかいていた。
しかし、そのことにも、二人は気づいてない。
緊張感に耐えかねてか、馬場が自身でも気づかぬうちに後じさる。そのとき、瓦礫の一部を踏み砕く、小さな、しかし、妙に乾いた音が響いた。
それが、きっかけとなった。
宮下が動いた。
疾風の速さで、夢枕に向かって走った。
夢枕も疾った。
後方でも、前でもない。
横へであった。
刀を振り上げた宮下と、夢枕の間に、一本の石柱が建っていた。
夢枕が、宮下が間合を詰めるよりも先に、横手にあった石柱の陰にまわり込んだのである。
本来ならば、石柱が邪魔をし、夢枕を左右から切ってくる攻撃は失くなったことになる。
上から、石柱から見えている部分へ切りつけてくる攻撃があるだけだ。
それともなければ、その柱をまわり込んで、横から攻撃するかである。
しかし、宮下と同じ速さで夢枕が動けば、それもできない。どういう攻撃があるにしろ、剣は、柱の右側か左側かにいったん入り込むことになる。
その瞬間に、夢枕が、反対の側から疾り出て、宮下に攻撃を加えることができる。
宮下にしても、下手な攻撃ができなくなったことになる。
そう――少なくとも、馬場はそう思った。
しかし――――
11魁!!餓狼伝 ―剣と拳―:2005/07/17(日) 22:57:37 ID:Ego542wy0
「くふう――」
宮下が、大きく息を吐いた。
にいっと、微笑した。そして――
「けえええええっ!」
怪鳥のような気炎を吐きながら、宮下が斬岩剣を一閃した。
軌道は、真一文字。目の前に立つ、電柱の存在をまるで無視した、一刀。

    “轟―――!!”

凄絶な刃風が巻き起こった。
そして、一筋の稲光の如き、剣閃。
夢枕の眼前で、驚嘆すべき光景が展開された。
一抱えほどもある石の柱が、音もなく自らの胸あたりの高さで真一文字に両断され、浮き上がったのだ。

     “ど  ず  ん”

と、地響きをたてて、柱が深々と地面に横たわっていた。 
「こいつはまた、とんでもねえ斬れ味だねえ」
夢枕が混じりッ気なしに賞讃する。
あと数センチ、前に出ていたら、完全に身体を両断されていた。そう夢枕が思った、そのとき――
  
    “ぶ ば っ”

と、夢枕の胸から、血がしぶいた。
シャツが切り裂かれ、その下にのぞく分厚い胸板が、真一文字に浅く、しかし長く切り裂かれていた。
夢枕が、わずかに驚いたように、ぎょろりと目を剥いた。完全に躱したはずの、それも石柱を断ち切った斬撃が、さらに自らの身に傷を負わせたからである。
「この世に斬れぬものなしの斬岩剣。風圧だけで、その身を切り裂く」
宮下が、にやりと得意げな笑みを張りつかせながら、言った。
げに物凄まじき、まさしく天下無双の剣であった。


12魁!!餓狼伝 ―剣と拳―:2005/07/17(日) 22:59:11 ID:Ego542wy0
「へえ。そいつは、おっかねえな」
しかし夢枕も百戦錬磨の胆力。
おどけたような太い笑みを返す。

――殺られる。

そう思った。
逃げねばならなかった。
瞬時に背を向けて、全力で疾って逃げる。
そうするのが最善の方法であった。
しかし、夢枕は動けなかった。
半分、足がすくんでいるのはわかっている。
しかし、もう半分がわからない。
もしかしたら、それは、感動であるのかもしれなかった。
宮下は、ためらいなく、夢枕の肉体を両断してのけようとした。
太い石柱をほとんど無音で断ち割り、さらに剣風のみで身を切り裂く、その技の凄さもさることながら、宮下のそのためらいのなさに、感動しているのである。
感動――それはすなわち、恐怖であった。
怖い。
怖いから、はらわたをしぼりあげるような感覚が込みあげてくるのである。背をぞくぞくと疾るものがあるのである。
それは、吐き気にも似ていた。

――これだ。

と思う。

――これが凶器なのだ。

この宮下の持つ刃のような拳を持つことが、夢枕の望みであった。
その拳こそが、あの板垣の肉を、そして≪魔界医師≫の美を打ち抜くことができるのだ。
13魁!!餓狼伝 ―剣と拳―:2005/07/17(日) 23:00:11 ID:Ego542wy0
「ぬううううっ!」
幾度めか、眼を合わせた瞬間に、宮下は再び走り出していた。
宮下の肉体に、熱気に似た“気”が充満してゆく。
その“気”が、宮下の肉体よりも大きく育っている。
すでに、宮下の放つ、したたるような精気は、その狭い通路につかえそうなほどふくれあがっていた。
燃える火球が、夢枕へむかって、凄い勢いで転がってゆくようである。
「わしが男塾塾長 宮下あきらである!」
宮下は、炎の塊のような声で叫んだ。
宮下の肉体から放たれている精気が、爆発したように、その空間全体にふくれあがった。
普通であれば、その宮下の、あからさまな精気に触れて、相手は萎える。
魂を奪われる。
動けなくなる。
あるいは、怯えをその顔に現す。
しかし、夢枕獏はそうではなかった。
さながら、透明な大気のように、宮下の攻撃を受けた。
拳を握ったまま、宮下の“気”に押されたように、ふわりと後方に退がったのである。
業風のような“気”が、身体にぶつかってきたその瞬間、その“気”に押されるままに、夢枕の巨体が宙に浮いたように見えた。
宮下は、しかし、そこで足を止めない。
さらに踏み込んだ。
後方に逃げた夢枕に向かって、下から、斬岩剣を跳ねあげる。
その剣風に煽られたように、夢枕が宙に跳んでいた。
下から、宮下の斬岩剣が、夢枕を追う。
宮下の斬岩剣が、宙に浮いた夢枕の股間に入り込み、真下から、恥骨を断ち割ろうとした。
――と。
夢枕の両足の裏が、上に持ち上がってくる宮下の斬岩剣の両腹を、左右から挟んでいた。
夢枕の体重が、下から跳ねあがってきた宮下の斬岩剣の上に乗った。
おそるべき、平衡感覚である。
膝のバネと体重を使って、夢枕が、宮下の剣のスピードを殺す。
宮下は右腕一本で、夢枕の体重を乗せたまま、斬岩剣を振り切ろうとする。
まるで、真綿の塊りの中へ、剣を打ち込もうとするような感覚がある。

14魁!!餓狼伝 ―剣と拳―:2005/07/17(日) 23:11:46 ID:Ego542wy0

   “しゅっ”

と、音がした。
真上から、宮下の脳天目がけて、夢枕の右の手刀が打ち下ろされてきた。
宮下が頭を振り、頭部の左横を真下へ疾り抜けてきた手刀を、肩口で受ける。
その瞬間――
宮下が右手に握った剣の上から、夢枕の体重が消えていた。
夢枕が、宮下の剣の上から跳んだのである。
宮下の頭上を超え、手のバネで勢いをつけて、地面の上に降り立った。
そのとき、

   “びちっ”

と音がして、宮下の足元の地面の上に、何かが落ちて張りついた。
人の耳であった。
夢枕の手刀が、宮下の左耳を、頭部からこそぎ落としていたのである。
左耳が、急にぼわっとなって何か熱いものに塞がれたような状態になり、温かいものがこんこんとあふれて、宮下の顔半分を濡らしていく。
激痛に、宮下の顔がしかめられた。だが、斬岩剣からは、手を放さない。
「ぬうっ」
だが、激痛が、一瞬の刻を、宮下から奪っていた。
「吩!」
夢枕の鼻から、鋭い呼気が洩れていた。
懐に忍ばせていた刃を抜き放つように、夢枕の右拳が動いていた。
15魁!!餓狼伝 ―剣と拳―:2005/07/17(日) 23:12:31 ID:Ego542wy0
フック。
鉤打ち。
踵の回転。
膝の発条(ばね)。
腰の回転。
背骨の回転。
肩の回転。
肘の動き。
手首の動き。
あらゆる身体の部位の動きと回転力が、全て、右の拳に余すところなく乗っていた。
その拳が、斬岩剣という名の牙を剥く大蛇の鎌首――宮下の頭部に向かって、真横から疾ってゆく。
正確無比。
しかし――
夢枕の拳は、宮下の頭部に当らなかった。
宮下は、刀の持ち手から左手だけを離し、左腕を折り畳み、自分の頭部を庇ったのである。そのカバーしている左腕の肩の部分に、夢枕の拳が当たったのである。
「ぐぬうっ」
宮下が、激痛に呻いた。
肩は分厚い筋肉に被われており、骨も丈夫である。拳が当ったからといって、肩の骨が折れたりはしない。
そう――これが普通の拳なら。
しかし、これは夢枕獏の拳である。
当ればどこでもいい。
当れば、木だろうと岩だろうと、それを砕く。
そういう拳であった。
当る瞬間、氣功によって左腕を鋼と化し、なおかつ宮下の左肩にはくっきりと拳型の痣が刻印されていた。おそらく、左肩の骨に亀裂ぐらいは走っているだろう。
16魁!!餓狼伝 ―剣と拳―:2005/07/17(日) 23:13:20 ID:Ego542wy0
「ぬんっ」
激痛に歯を噛みながら、宮下が右手一本で、斬岩剣を振ってきた。
しかし、いかな宮下が剛力とはいえ、両手持ちに比べれば太刀ゆきの速度も、そこに込められた力も大きく鈍る。
宮下が剣を振り切ったときには、すでに夢枕は斬岩剣の殺傷圏外に出ている。
後方に退がった夢枕が、着地で止まることなく、その場から消失した。
夢枕がいたのは、頭上の、宙空であった。
岩のような巨体が、鳥のように舞った。
「しゃっ」
夢枕は、空中から、宮下の頭部に向かって、鋭い蹴りを放っていた。
「馬鹿め」
宮下は言って、宙に浮いた夢枕に向かって、腰に隠しもっていた匕首を突き出していた。
これは夢枕も予想外のことであった。
斬岩剣などという大層な得物を持ち出してきた以上、完全に一刀流であると思い込んでいたのだ。
匕首は、蹴りを放ってきた夢枕の、左足の靴底を貫いていた。
貫き、足の中へ突き抜けていた。
しかし、次の瞬間には、もうひとつの足が、宮下の頭部を捕えていた。
双龍脚――
夢枕は、その技を、宙で宮下にむかって放っていたのであった。
しかし、あたりは浅い。
宮下が、大きく、横へ飛んでいた。
飛びざまに右の斬岩剣を振るうが、夢枕もまた蹴りの反動を利用し、宮下と反対方向に飛んでいた。
夢枕は、地面の上に立った。
左足の中から突き出ている匕首をつかみ、引き抜いた。
そのときには、宮下もまた、体勢をたてなおしていた。
17魁!!餓狼伝 ―剣と拳―:2005/07/17(日) 23:16:23 ID:Ego542wy0
「一文字流は、いつから二刀流になったんでえ」
夢枕が、楽しそうに、太い唇を吊りあげた。
「わしは様々な流派を操りながら、そのどれに執着もしない。しょせんは切った張ったの喧嘩殺法よ。――その足はもう使えまい」
宮下も、また、野太く笑った。
「使えるか、使えないか、やってみようじゃねえかい――」
夢枕は、浅く腰を落とした。

ひゅうう……

血と獣の体臭をたっぷりと含んだ、生温い風が、二人の間を吹き抜けていった。
「鬼だねえ、あんた」 
「そうであろうよ」
微笑する、二頭の獣。
「しかし、なんとも凄まじい身のこなしよ。剣を振り回しては、とらえきれぬか」
斬岩剣の太刀筋は、すでに見切られつつある。
さらに左腕の怪我を考えれば、斬撃の速度はさらに落ちよう。
すると、宮下の構えが、変わっていた。
剣を持つ右腕を内側にねじり、口と同線上にもっていく。長さ七尺近くもある斬岩剣が、まるでフェンシングのサーベルのように構えられていた。
「梁山泊奥義 彊条剣殺!」
突き、であった。
瞬きする間に百を数えようかという、刺突の嵐。
厚重ねの人斬り包丁が、さながら機関銃の如き迅さで繰り出される。
夢枕の顔に、幾つもの掠り傷と血飛沫が飛んだ。
閃光の突きを躱し続ける、夢枕の反応速度も凄まじいが、次第にその身に帯びる傷の数が増していく。
躱そうとしても躱しきれぬ刃が、ついに夢枕の肉を貫くかに見えた、そのとき――
「吩!」
夢枕が、両手を自分の胸の前でぽん、と合わせ、腰を落としていた。
夢枕が、胸の前で合わせていた両掌に、分厚い斬岩剣の刃が挟まれていた。


18魁!!餓狼伝 ―剣と拳―:2005/07/17(日) 23:17:25 ID:Ego542wy0
真剣白刃取り――
武の世界において、伝説とされる秘技である。
迫りくる白刃を、素手でもって受ける。
タイミングが遅すぎても、速すぎても、失敗する。
失敗とは、すなわち死である。
正気の沙汰でできる技ではない。
演舞の型稽古のなかにしか存在し得ない技であった。
「実戦で使用されるのを初めて見たッッ」
この離れ技には、馬場はもう呆れるしかない。
そして、剣士にとって太刀を封じられることは、敗北に等しい。
なのに、当の宮下に、動揺はうかがえない。
むしろ、にやりと、たまらない笑みまで浮かべている。
「フッ、中国の古い諺に “一見は真ならず” とあるのを知っているか!?」
「なに……!?」
「ぬは――――っ!!」
宮下が太い呼気を吐き、斬岩剣を押し込む力をさらに強めた。
「ぬっ!!」
夢枕の両掌から胸に向かって伸びている刃が、少しずつ長さを増していく。
白刃取りにされている斬岩剣が、除々に、より深く押し込まれているのだ。
「フッ、わしの言った意味がわかったか。わしの剣を封じたつもりだろうが、どうやら立場は逆だったようだのう」
そう、宮下は、この体勢のから夢枕の胸を貫こうとしていた。
窮地にいるのは、宮下ではなく、夢枕であったのだ。
「いつまでもこらえきれるものではない。貴様の横からおさえる力と、わしの前から押す力、どちらが有利かはいわずともしれたこと………………!!」
この状態では、おさえている掌をといて離れるわけにもいかなかった。
この体勢から離れたり、足技をくりだしても、宮下の剣はそれより早く夢枕の胸を貫くだろう。
ここは、このまま力で押しかえすしかなかった。
「もらったぞ、この勝負………!!」
斬岩剣の刃先が、夢枕のTシャツの左胸にあてられた。
すっ、と、その厚い鋭い切先が、吸い込まれるように夢枕の胸の中に潜り込んだ。

19魁!!餓狼伝 ―剣と拳―:2005/07/17(日) 23:31:20 ID:Ego542wy0
鋭い痛みが、そこに跳ねる。
しかし、痛みは、一瞬であった。
冷たい金属が、分厚い肉の中にゆっくり潜り込んでくる感触があるだけだった。
Tシャツに、たちまち、赤い血の輪が広がってゆく。
夢枕の額に汗が浮いていた。
「ううっ!!」
「しぶとい奴よ、まだこらえおるか。しかしあと1cm。1cmもすれば、わしの斬岩剣は心臓を貫く――」
宮下が言った。
心臓まで、あとわずかであった。
鼓動する心臓がふくらんだ時に、その切先に触れそうであった。
そのとき――
夢枕は目を閉じて、リズムをとった。
すでに、肉体が極限近くまで緊張しているため、すぐにそのリズムを自分のものにする。
呼吸を整えて、小周天の法を行った。
呼気により、大気から“気”を取り入れて、気道の中を通して、それを丹田まで落とす。
ヨーガで言う、脾臓のチャクラ――スワディスターナまでである。
そこに溜めた“気”を、いったん根のチャクラ――ムーラダーラまで下げ、背骨に沿った気道を通して王冠のチャクラであるサハスラーラまで持ちあげてゆく。
それをまた下方に下ろし、また持ちあげながら、陽気を練りあげ、活性化させてゆくのが小周天の法だ。
夢枕の体内の、背骨に沿った七つの部位で、チャクラの花が回転し始めた。
数度の呼吸で、夢枕はそれを行ったのだ。
鮮やかな、大輪の花のイメージが見えている。
その大輪の花が、熱い炎の輪と化していた。
その輪の回転に合わせて、夢枕の肉体の下部から、一匹の火竜(サラマンドラ)が出現していた。
クンダリーニの蛇である。
人の肉体が、その裡に秘めている螺旋力の源であった。
20魁!!餓狼伝 ―剣と拳―:2005/07/17(日) 23:32:16 ID:Ego542wy0
「ひゅう」
と、夢枕が喉を鳴らした。
全身のあらゆる細胞の中に、その火竜が満ちた。満ちて、細胞を押し破り、ぶちぶちとはじけ飛んでゆく。
夢枕の全身が、熱く流動する溶岩と変貌したようであった。
夢枕の肉体が、強烈なパワーの塊りと化していた。
夢枕の肉体の輪郭に沿って、周囲の空間が押し曲げられているように見える。
夢枕の巨体が、倍近くにふくれあがったようにも見える。
「ぬうっ! き、貴様、どこにまだこれ程の力が…………っ!!」
宮下が、驚きの声を発する。
「吩!」
潜り込んでくる刃の動きが止まり、押し戻された。
斬岩剣の切先が、再び外気に触れた。どくりと、血が傷口から外に押し出されてゆく。
凄まじい力が、夢枕の肉にこもっているのがわかる。
そこの空気が、その熱で気化しそうなほどだ。
夢枕の両肩、腕、胸の筋肉がふくれあがっている。夢枕の巨躯から、熱気の塊に似た高圧のものがはじけていた。
「ぬううっ……! な、なんという力だ、う、動かせん!!」
いつの間にか、斬岩剣の刃が、夢枕の分厚い掌の中に、包み込まれるようにして握り込まれていた。
普通、このまま刃を引けば、それだけで指が落ちる。
しかし、それができない。
宮下は、握られた刃を1ミリたりとも動かすことができなかった。
「握力が100キロ以上もありゃ、こんな芸当もできるんだよ」
今度こそ、最大の武器を封じられた宮下は、冷や汗を流す。
その瞬間に、真下から跳ねあがってきたものに、巨大な顎を直撃された。
揚げ突き――アッパーである。
がくりと両膝が折れ、目が泳ぎ、顎から地面に落ちた。

     “ざきぃっ”

なかばまで頭から意識をはじきとばされ、俯せに倒れた宮下に、夢枕の足刀が追い撃ちをかけた。
無事だった右耳が、半分削ぎ落とされた。
21魁!!餓狼伝 ―剣と拳―:2005/07/17(日) 23:33:07 ID:Ego542wy0
「決めちまうぜ、こりゃあ……」
馬場が唸るように言った。
宮下が、両方の千切れた耳から血を溢れさせ、地面に突っ伏している。
次の瞬間、宮下が猫科の猛獣のごとく、跳ね起きて、夢枕にとびかかっていた。
斬岩剣を地面に置いたままの、奇襲。
しかし、夢枕は、その奇襲すらも、正拳突きで迎撃する。
腰の動き。
踏み込み。
正確に突き出された拳。
「……きれいな空手だな」
馬場はもう驚くことすらできず、夢枕の正統派空手の美しさにただ溜息をつくしかない。
丸い、優しささえ感じさせる拳が、刃に匹敵する凶器と化し、宮下の頬に突き刺さる。
宮下の口がだらしなく開かれ、大量の血が吐き出される。
顔面が弾けとんだところへ、待ち構えていたような、廻し蹴り。
鼻頭にめりこみ、宮下は目や鼻からも血を溢れさせて、天を仰ぐ。
宮下が、前のめりに倒れてゆく。
その、倒れそうになっていた宮下の身体が、途中で止まった。
宮下は斬岩剣を拾いあげ、杖のかわりのようにして、己の身体を支えていた。
斬岩剣を地面に突き立てたまま、宮下が地を蹴った。
斬岩剣を両手で掴んだまま、その上に倒立する。
さらに、その状態のまま、宮下が猛烈な回転を始めた。

「秘承鶴錘剣奥義 麟旋風!!」

すさまじい風が、巻き起こった。
宮下の姿が、ひとつの竜巻に見えるほどに回転が速くなり、それが巻き起こす風圧で、辺りは砂塵に包まれる。
宮下の姿が、砂塵の奥に消え、完全に見えなくなる。
「ぬう」
夢枕が短く唸った。
宮下の行方を、完璧に見失っていた。
22魁!!餓狼伝 ―剣と拳―:2005/07/17(日) 23:33:40 ID:Ego542wy0

――くう

夢枕は、跳んだ。
ありったけのバネを使った。
跳び上がるその背に、恐怖が疾った。
むず痒いような、痛いような、くすぐったいような恐怖――。
細い、鋭いもの。
冷たいものだ。
それが、背を疾った。

――やられる。

夢枕は、声にならない悲鳴を放った。
最初は、冷たいものであった。
右の肩口に、冷たいものが触れた。それが、すっ、と肉の中に潜り込んだ。
それが、さきほど疾り抜けた恐怖を、おそろしいほど正確になぞりながら、斜め下に下りてゆく。
それが、通り過ぎてゆくそばから、冷たいはずのものが、鋭く熱いものに変じてゆくのである。痛みのかわりにその温度があった。
左の尻のすぐ下で、それが、すっとどこかへ消えた。
「くわあっ」
夢枕は、自分の唇から、鳥のような声が洩れるのを聴いた。
振り返った。
宮下のぱっくり開いた、歯を全て失った口、そして、血涙を垂れ流す“鬼酒”に濁った眼が見えた。
左上から、光る金属が落ちてくるところであった。
夢枕は懸命に身を翻して、それを避けた――はずであった。

「一文字流奥義 烈風剣!!」
23魁!!餓狼伝 ―剣と拳―:2005/07/17(日) 23:37:30 ID:Ego542wy0
剛風が、吹き荒んだ。
それが宮下の巻き起こした剣風によるものだと、誰が信じよう?
見えない獣の突進を、まともに喰らったかのごとく、夢枕の身体が浮き上がった。
宙を飛び、数メートル離れた先の瓦礫に、強かに叩きつけられた。
瓦礫が衝撃で崩れ、わずかに遅れて夢枕が膝をついた。
かっ、と吐き出した唾のなかに、少なく無い量の血が混じっている。
夢枕は、構えた。
宮下と向き合っていた。
次の攻撃はなかった。
宮下もまた、夢枕の拳足をまともに喰らい、すぐに追撃をかけられる状態ではなかった。
「ふふふ」
宮下が、唇をむいて笑った。
嬉しそうであった。
夢枕も、つられて太く笑った。
背中が濡れていた。
それは、生あたたかく、ぬるぬるとしていた。
それは、背を伝わり、尻の割れ目の間を通って、下に滑り降りてゆく。ズボンの尻がずぶ濡れだった。
血の匂いが、夢枕の鼻をついた。
夢枕は、自分の背を濡らしているものが何であるのか、どうでもいいことだと思っていた。
ただ、宮下と睨みあっていた。
背が痛い。
痛くて、くすぐったい。
そのくすぐったいものが、尻から両足へと降りてゆく。
あとから、あとから、それは、背のどこからかあふれ、尻から脚を伝わって降りてゆくのである。
さらに穴の空いた左足からも、わきだすものがあった。
わずかに動くと、スニーカーの中で、泥水の中に入った時のような音がする。
刀傷による血で、そこがぐちゃぐちゃになっているのだ。

互いの剣(拳)が、互いに与えた傷は、ほぼ5分と5分。
もはや、互いに、あと一合ずつしか、撃ち合う力は、残されていなかった。
24作者の都合により名無しです:2005/07/17(日) 23:50:01 ID:rdEKG7qF0
耳削ぎー!
おチャクラー!!
どちらもピンチー!!!
新スレのっけからキタコレ
25作者の都合により名無しです:2005/07/18(月) 00:02:55 ID:Y7NYeytO0
実力が拮抗してるとここまで壮絶な戦いになんだなあ。
凄まじい限りだな。うはー、これ決着どうなんだろ!
26作者の都合により名無しです:2005/07/18(月) 20:41:28 ID:SWzAXmlk0
放置され続けた闘いがここまで熱いテンション保って再開されると嬉しいねえ。
……最近1〜2月ぐらいの閑散さが戻ってきてるし特に。
27作者の都合により名無しです:2005/07/19(火) 02:18:15 ID:GXSrfONk0
学生は期末試験やら前期試験やらで大変だったんじゃないか?
そろそろ人が戻ってくるでしょ。
28鳳凰(170/180):2005/07/20(水) 19:25:02 ID:GMagQJnO0
25部535より
「……まずいわ! このままではカウンターになる! 衛藤くん、戻りましょう!!」
「はっ、はい!!」
「ぬぐっ……ま、待て……」
何重に伏線を張ったシュートを止められ、井上に特大パントを打たれた留美子達。
即座に踵を返し、自陣に戻ろうとする二人を、井上は斬傷と火傷によるダメージのために止めることができなかった。
ゴールに背を向け、二人はわき目も振らずにボールが飛んでいく方向へ走る。
だが、やがて二人は壮絶にして異様な空間へと陥ることになる。
「……どうなっているの? もう数十時間も走っている気がするのに、いつまで経っても ハ ー フ ウ ェ イ ラ イ ン に た ど り 着 け な い !!」
「たしかに…だけどそれでいて、まだ数分しかたっていないような気もする……」
これは……罠だ。二人は、確信した。まるで次元の狭間に迷い込んだような感覚。
焦燥感を味わう二人の前に、さらなる光景が広がった。
「うっ!?」 「なにい、あれは――ッ!?」
驚き叫ぶ二人の前にあらわれたのは、空中に浮かぶ、無数のサッカーボール。
数えきれないほどのそれが、迫ってくる。
吹っ飛んでくる。
そう吹っ飛んでくる。
うなりをあげて突っ込んでくる。
数え切れない、白と黒。白と黒。白と黒。白と黒。白と黒。白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒
白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒白黒…………

 「 「 う わ あ あ あ ―――――― っ !! 」 」

絶叫をあげて、留美子達は目を覚ました。
二人は、元のサッカー場にいた。まだゴールから、ハーフウェイラインまでの、ちょうど半分くらいまでしか進んでいない。
「る…留美子先生……い、今のは一体…………」
常人なら、もうサッカーボールなど二度と見るのも嫌になるような、悪夢の映像。
それをたっぷりと見せ付けられた衛藤と留美子は、ともに滝のような汗をかきながら憔悴しきっていた。
29鳳凰(171/180):2005/07/20(水) 19:26:56 ID:GMagQJnO0
「攻撃を受けていたのよ、私たちは」
「い、いったい誰に……」
留美子は言う。
「時空とはるかな空間をねじまげて、敵の脳裏に直接攻撃をしかける……そんな恐ろしい力を持つ者は、えなりチームのなかでも、たった一人しかいない……」

      ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ 

そのとき、留美子たちは感じた。まるで炎の塊のごとき、恐ろしく戦闘的な気が、この場に立ち込めるのを――!!

「や……やはり……貴方だったのね………」

     ―――――   不  死  鳥  !!    車  田  正  美  !! ―――――

「ば…馬鹿な……あの爆発に巻き込まれて、生きてるなんて……」
ドドオオン、と重厚な効果音を響かせながら、空間の彼方より姿を現した、車田正美。
その威圧的な登場と生還に、衛藤はブルブルと震えていた。
「フ…フッ、貴方ほどの人があれしきで死ぬとは思えなかったけれど……こんなに早く復帰するとは思わなかったわ」
「フッ――時空の間のねじまがった、ひどく面倒な場所に落ちてしまっていたが……兄弟たちの熱き小宇宙が、俺を導いてくれたのだ」
黄金聖衣は破損だらけ、本人もかなりの手傷を負っているが、その身に秘めた小宇宙は衰えるどころかますます燃え盛っているようであった。
「私たちは勝利なければならない……たとえ、貴方が相手だろうとも……打ち倒すわ!!」
留美子が跳躍からの蹴りを、車田の顔面に叩きつける。さらに、聖衣の破損した部分に、機関銃のような拳の連打を畳み込む!! しかし――
「な…私の攻撃を全てまともに喰らって……まるで微動だにしないとは…!?」
留美子の電光石火の連続攻撃は、しかし車田に全くダメージを与えてはいなかった!!
むしろ、攻撃した留美子の手足の方が、砕け、血が噴き出している。
「――鳳凰幻魔拳!! もはやお前たちの体の全神経は、指の先までボロボロに引き裂かれたのだ!!」
最初に受けた、幻魔拳による精神攻撃。あのとき、すでに留美子達の戦闘能力は奪われていたのだった。
愕然とする二人に、車田は言い放つ。
「もはや勝負というものでもあるまい! 半死人のおまえらごとき、鳳凰のはばたきひとつで消し飛ぶわ!!」
そして、車田の背後に燃え盛る小宇宙が、フェニックスのオーラとなる!!

       「  鳳   翼   天   翔  ――――― ッ !! 」
30鳳凰(172/180):2005/07/20(水) 19:29:58 ID:GMagQJnO0
    「 「 う わ あ あ あ あ あ ――――――――――――― っ !! 」 」

星をも砕く鳳凰のはばたきが、留美子と衛藤を天空高く吹き飛ばし、二人はズタズタになって地面に激突した。
車田が、倒れた二人に背を向ける――だが、そのとき、背後で動く気配に、車田の足が止まる。
留美子が、ボロボロになりながらも、立ち上がっていた。
「……くっ…げほ……あなたを……行かせるわけには……」
「愚かな……そのまま大人しく寝ておれば、命まではとらぬものを。立ち上がったところで、今までの試合で精も根も使い果たし、すでに満身創痍の貴様に勝ち目はない」
「い…いや……勝ち目はある……私には、まだたったひとつだけ……」
「……面白い! ならば見せてもらおう!!」
小宇宙を燃焼させ、車田が凄まじい勢いで、猛攻をしかけてくる。
留美子は、ふらつきながらも、車田の拳をひたすらによける。かわしつづける。
その動きは、さながら螺旋のステップ。二人を中心に、闘気の渦が巻いている。そう、留美子の狙いは―――
「フッ―― 飛 竜 昇 天 破 か…」
「なっ――!?」
ギクリとする留美子。
「相手を熱くさせながら螺旋のステップに巻き込み、闘気の渦のなかで凍気を放ち、竜巻を起こす、貴様の秘奥義…」
「どうしてそれを…」
「忘れたか…かつて、青山剛昌にこの体を貸したとき、お前が一度、この技を見せていることを!」
はっ、と留美子は気づいた。かつて、自分が一度目の狂気に堕ちたとき(7部参照)のことを。
「聖闘士に一度見た技は二度も通じん。そうら、自分のしかけた技で自分が吹っ飛べ!!」
「うっ!!」
           ホ  ー  ロ  ド  ニ  ー        ス  メ  ル  チ
     「  K H O L O D N Y I  S M E R C H !! 」

        ド  ッ  オ  オ  オ  オ  ―――――  ン !!!!

「 あ あ あ あ あ あ――――!!」
車田が先に凍気を放ったことにより、飛竜昇天破は、留美子自身に炸裂した。
しかも、本来の数倍もの破壊力となって。竜は、天へ昇った。
31鳳凰(172/180):2005/07/20(水) 19:31:40 ID:GMagQJnO0
まるで、ドリルのようにえぐれた地表。
その中心部に、留美子の変わり果てた姿が死体のごとく横たわっていた。
それより少し離れた場所では、衛藤も昏倒している。
車田は、しばし瞑目するかのように目を閉じる。
そして、言った。
「これで後顧の憂いは断った……次は貴様の番だ」
くるりと向き直ると、そこには厳しい眼差しで、車田の前に立つひとりの男。
燃え立つような白銀の髪、秘めた闘気、どこか人を惹きつける、凛としたたたずまい。
藤原カムイであった。
32作者の都合により名無しです:2005/07/20(水) 23:33:01 ID:m3C4SG5m0
兄貴復活キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!!
大将対決キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!!
33作者の都合により名無しです:2005/07/21(木) 00:28:57 ID:qqQokT0J0
兄貴と留美子の因縁は長いのう
そしてカムイキャプテンキタキタ━━━(゚D゚≡(゚D゚≡゚D゚)≡゚D゚)━━━━!!!!!!!!!!
34作者の都合により名無しです:2005/07/21(木) 00:56:55 ID:xiIOXHyF0
まさかこんな昔の話が伏線になって留美子が秒殺されるとは思わんかったw
それにしてもホーロドニースメルチって半端な技だから、このスレじゃ絶対に出番ないと思ってたよ
35作者の都合により名無しです:2005/07/21(木) 01:15:17 ID:G+cUVYIZ0
まあ基本的な疲労度が途中出場の車田と留美子じゃ全然違うだろうし秒殺も納得。
カムイ対車田に期待大だが、果たしてカムイに車田に対抗する体力が残っているのか…次の展開に注目したい所だな。
36作者の都合により名無しです:2005/07/21(木) 01:26:18 ID:xiIOXHyF0
幻魔拳や魔皇拳を使われると大抵一気に敗北まで持っていかれてしまうからなあ
攻撃力の高さ以上に、搦手もかなり強力なものが揃ってるのが車田の怖さだな
37股間爆発(173/180):2005/07/21(木) 09:08:25 ID:5IDTAdJh0
>>32
留美子、そしてカムイは車田と対峙し、止めるものがいなくなったボール。
そのボールに一人の影が被さった。

「井上さんっ、あなたのパスは無駄にはしません!!」

そうえなりである。
にわのまことの体を借りながら今の今まで自殺点以外にまっっっったく活躍のなかったえなりが、今フリーで井上のパスを受け取った。

(主人公として、絶対にここで決める!!)

えなりのユニフォームが破ける。
猛々しく反り返ったえなりの股間がさらに巨大化し、ボールを収める。
全ての力を股間に集中し、かつてない威力の大砲としてボールを撃ち出すつもりなのだ。
だがえなりは忘れていた、このフィールドには"彼女"がいたことを。

「肉変ほ「乙女の前で何つうもんをさらしとんじゃ、このご法度野郎!!」

発射寸前にえなりへと影が飛びかかった。
次瞬、スタジアムを揺るがすほどの爆発音がえなりの股間から響いた。
そして衝撃が遅れて届く。
"えなり"チームのゴールネットが無残にも破れ、その後ろのフェンスに何かが減り込み、潰れていた。
その潰れているものは……
「た、担架ーー!!担架を早くっ!!えなりの股間がーーーーーー!?」
ボールを中に入れたまま柴田UMA子のご法度蹴により吹き飛ばされたえなりの股間であった。
38巨砲爆発(174/180):2005/07/21(木) 11:05:31 ID:pjyODgTQ0
 (おわぁー!ボクの身体がぁー!!いやぁぁこれ恥ずかしいー!!)
ちょっぴりシャイなにわのの精神が悶絶シャウトする中、
えなり本体はゴール前で泡吹いて気絶中。破られたゴールネット後ろの壁に肉片の花が咲く。
跳ねたボールはコロコロと転がりUMA子がゲット。不敵に笑いながら足下にセット、
もう一度えなりゴールを狙うため、丸太の如き足を大きく振りあげる。
 (ちょ、ちょっと起きて!えなりクン!一体何しに来たんだよ全く!!)
「金○の大冒険」をホーフツとさせる股間の惨状に、会場から男性客の鳴咽が洩れる。
が、火傷を引きずる井上がゴールを死守するため、ボロボロになりながらも立ち上がり、
ペナルティエリアに厳然と鉄の壁をおっ立て、会場は再び熱気を取り戻した。
いよいよ最終局面。フィールドの勇者達が、残り5分を切った戦場で益々輝きを増してゆく────

 『肉変砲が破れた・・・唯一の必殺技なのに。僕は今度こそ本当に駄目なのか?』
 (・・・えなりクン、最後まであきらめちゃダメだ。
 キミは何か大きな宿命を背負っている。だから今ここにいるんだ。そうだろ?)
 『そんな知った風な口を利いたって、どうしようもありませんって。
 こんなザマじゃ矢吹を倒すなんて夢の夢・・・(こーのおバカさんーーーっ!!
 ボクの大切な人たちはねぇ、オトナのクセに、死んでも諦めない奴らばかりなんだ。
 子供のキミが未来を捨ててどーするのさ!それに、勝つ相手は誰でもない・・・
  自 分 自 身 じ ゃ な い か っ !! さあ、立て!!立つんだ少年ーーーー!!!!)

 「・・・自分に勝(克)つ・・・克己(こっき)・・・
 そういや克己の字をちんこって読み間違えるネタがあったが関係ないや・・・
 いや、僕の最大武器ビッグマグナム・・・僕はこれでだけは負けてはいけない。
 僕は勝つ・・・僕の力で立ち上がる・・・よし、立て!!勃つんだマグナーーーーム!!」

瞬間、醜い肉片として分割していたえなりボディが集合・合体し強烈な光を放つ!!
 「ぬおおおうっ!?」眩しい中、勢いでシュートしたUMA子のボールは、なんと!
復活・再生しただけでなく超合金並に硬化したえなりの新・マグナムが受け止めたのだった!!

    BIGマグナムトルネード・えなり七星剣    爆   誕   !!

そして股間の聖剣に再びボールをセット!全ての想いを込め、えなりは再び敵陣へ走り出したッ!!
39作者の都合により名無しです:2005/07/21(木) 13:23:38 ID:Ee9hDAKk0
男の魂、充電完了!
しかし時間ねー!
ロスタイムが10レスくらいないと全部入らんだろこれ!
40作者の都合により名無しです:2005/07/21(木) 13:34:09 ID:pjyODgTQ0
そこで延長戦ですか!?
いやできればロスタイムだけで終わって欲しいですけんど
41怪物:2005/07/22(金) 00:31:01 ID:DB7/UCbi0
酷く緩慢な足取りで、森川ジョージは歩き出した。
口の端からは血が流れ、左腕は風が吹くたびに力なく揺らめいている。
しかし――赤く爛々と輝く両眼は、彼の戦意がまるで衰えていないことを如実に示している。
目指す先のヨクサルは、既に歩みを止めている。
体を斜に構え、深く腰を沈め両足を前後に大きく広げた体勢で、待つ。
両腕は緩く脇の辺りに垂れている。
左の手は、拳を握りしめ、手首を砕かれた右の手はぶらりと開かれている。
絶対の一撃を、見事に防がれ、深手を負っても尚ヨクサルの己が八極の拳への信頼は揺るがない。
呼吸を整え、全身の勁を充実させ、敵が間合いに入るその瞬間を、只待つ。

左腕の感触は戻ってきている。
まるで重しを付けられたかのような重量を感じるが、動く。
歩きながら、森川が全神経を集中していたのはそこだった。
左の拳と右の拳、どちらかひとつ欠けても、眼前の怪物を斃すには足りぬのだ。
先程までのような鋭いジャブを打つことはもう出来まいが、それでもいい。
森川は、足を止めた。
つ、と微かにヨクサルの体が身動ぎする。
止めた、その位置が間合いのぎりぎり手前であることを、その僅かな動作が如実に示す。
そこで、森川は両腕を上げ、構えを取った。
折り畳んだ両腕で上半身の急所を覆い隠し、体を深く沈めて、足は完全に踵を地から浮かせた爪先立ち。
ピーカブースタイル。
42怪物:2005/07/22(金) 00:33:29 ID:DB7/UCbi0
「―――」
その構えを見て、ヨクサルの顔に動揺が走った。
己の間合いの僅かに外。
そこは当然、森川の拳の間合いの外でもある。
だが、殺気が告げる。
その場所から跳躍して拳を放つ速度。
それが、待ちに徹するヨクサルの八極の打を放つそれを凌ぐという絶対の自信を。
この時点で両者すら気が付かぬほどの微妙な差が出来ている。
ヨクサルと森川は本来どちらも自分から前に出て行く闘いを得手とする。
待ちに徹し、一撃の力を蓄える。
その戦法自体は必ずしも誤りでは無かった。
しかし、彼我の実力差が拮抗したこの状況に置いて、
誤りで無いという程度の戦法を取る、というのは致命的ですらある。
彼の不幸は、彼自身この対峙した一瞬でその過ちに本能的に気が付いてしまったことである。
気が付いてしまった時点で迷いが生ずる。
僅かな綻び。
そこに、錐が突貫した。

動いた――認識した次の瞬間には森川の体は弾丸のような跳躍によりヨクサルの喉元に迫っていた。
左の拳。
右の拳。
顔面。
腹部。
相手の武器と狙うであろう箇所。
迷いから立ち直ったヨクサルが集中力を研ぎ澄まし、空気の流れを見て、その内の一つを予測する。
跳躍の勢いそのままに真下からアッパーが顔面を襲う。
予測通りに突き上げられたその拳を仰け反り皮一枚で回避。
しかし、インファイトの技術で遥かに勝る森川の攻撃はそれで終わらなかった。
返す刀で繰り出された左の拳が肝臓を抉った。
ごおっ、とヨクサルの口から空気が吐き出されると同時に連続して繰り出される左拳が顔面に迫る。
当たる寸前にその拳は中空で止まった。
ヨクサルが真上から振り下ろした掌低がそれより速く森川の右肩を直撃していたのだ。
43怪物:2005/07/22(金) 00:34:49 ID:DB7/UCbi0
負傷により鈍っているとはいえ、肋骨が折れた状態でまともに肝臓に打をぶち込まれてあっさり反撃するその理不尽こそが、ヨクサルの最大の武器と言っていい。
「がはあっ!」
激痛に叫ぶ森川の声を最早ヨクサルは聞いていない。
森川が発勁の一撃を食い、体勢を崩した森川に一撃をぶち込むことに全神経を集中しているのだ。
ヨクサルが鋭く息を吸った。
そして次の瞬間には、ヨクサルは背面から森川の懐に飛び込んでいた。
震脚。
大地が爆ぜるような衝撃を反動に、ヨクサルの身体が弾丸のように森川に迫る。
全身全霊を込めたヨクサルの勁の一撃。
破壊の音が鳴り響く。
紛れも無い粉砕音。

しかし、森川の身体は吹き飛ぶことなくしっかりと地面を踏みしめている。

激痛の呻き声を上げたのは、ヨクサルの方。




44怪物:2005/07/22(金) 00:35:37 ID:DB7/UCbi0
直撃の寸前。
身体と身体が激突する刹那の瞬間に、森川は身体のコントロールを取り戻した。
常人なら間に合うはずも無い一瞬、ほぼ本能的に、森川は左拳を迫り来る背中に向けて突き出していた。
ヨクサルの背中、丁度腎臓に拳が突き刺さった。
腎臓殴打(キドニー・ブロー)。
ボクシングにおいて禁止されている、危険極まりない反則打撃。
僅かな隙間にカウンターの形で捻じ込まれたその拳は、ヨクサルの腎臓を破壊するに十分な一撃であった。
森川が、身体を引いた。
同時に森川の左腕が半ばから糸の切れた人形のように真下にだらりと垂れ下がった。
左腕は確かに粉砕されいていた。
カウンターの打撃で威力を殺して尚この凄まじい破壊力。
直撃していれば間違いなく敗れたのは森川だっただろう。
支えを失い、そのまま倒れ伏すかと思われたヨクサルの両足が地を噛んだ。
虚ろな両目が、かっと見開いた。

轟ッッ!

と獣そのものの咆哮を上げて、ヨクサルの身体が跳ね上がった。
異常な速さでヨクサルが突っ込んでくる。
猛獣のように開かれた口が、森川の首筋に迫る。
しかし――森川の表情には驚きも恐れも無い。
反撃は、予測の範疇だった。
先程、身体を引いた何気ない動きは、単なる後退ではなく、バックステップ。
ヨクサルが地を蹴ったその時には、森川の残された右腕は発射台に乗せられていた。
45怪物:2005/07/22(金) 00:37:05 ID:DB7/UCbi0
「おおおおおおっ!」
雄叫びを上げ、ぎゅるっと音が聞こえそうなほど全身を捻らせる。
全身の捻りを全て収束させ一直線の軌道で突き出された拳が、ヨクサルの胸に直撃した。
その、たった一撃で、あれだけの打撃を受けて尚動き続けた怪物の動きが、嘘のように止まった。

心臓撃ち(ハート・ブレイク・ショット)。

捻りを加えた強打で心臓を打ち抜くピンポイント・ブロー。
パンチのスピード、角度、強度全てが伴うことによって、その一撃は名が示す通り、心臓の活動を一瞬止める。
まるで一人だけ時間が止まっているかのように無防備に立ち尽くすヨクサル。
森川は止まらない。
素早く右拳を引き戻し、もう一撃。
渾身の右ストレートで、がら空きのヨクサルの顔面を殴打した。
首が捻じ切れるほど後ろに跳ね上がり、反動を付けて前に戻ってくる。
咥内から、大量の鮮血が飛び散りシャワーのように森川の顔を塗らす。
そして――そのまま、前のめりに、柴田ヨクサルは崩れ落ちた。
視界を曇らす赤い液体を乱雑に右手で擦り、森川はヨクサルを凝視する。
己が倒した敵の姿を目蓋に焼付けるように長い時間を掛けて見据えた後――
森川ジョージは天を仰ぎ、勝利の雄叫びを上げた。

46作者の都合により名無しです:2005/07/22(金) 01:28:25 ID:hgIJRTis0
咆哮キタワァァァジョージの底力恐るべし!
47作者の都合により名無しです:2005/07/22(金) 02:04:33 ID:AxHSKxgZ0
ジョージ勝利!!
ボクシングだけという極めて限定された能力でここまで強いジョージは凄いな
48作者の都合により名無しです:2005/07/25(月) 15:48:08 ID:1wMNaLkN0
あぁ・・・十二使徒の一角が・・・
49作者の都合により名無しです:2005/07/25(月) 16:11:53 ID:mcxkdKdr0
亡くなられたね・・・
これで関係者三人目?ご冥福をお祈りします・・・
50作者の都合により名無しです:2005/07/25(月) 16:21:06 ID:MGgo4+2BO
誰かと思ったら杉浦先生か・・・・・・前スレで動かしたばかり・・・・・・ご冥福をお祈り致します。
51作者の都合により名無しです:2005/07/25(月) 23:36:24 ID:91CJWX/r0
この人の漫画読んだことないんだよなー
ネタのためにそのうち探そうとか思ってた矢先にこれか…合掌
ところでこの人の漫画って今でも普通に手に入りやすい?
52作者の都合により名無しです:2005/07/25(月) 23:53:28 ID:SvfjyTaA0
懐漫のスレ(立ったの2002年だよ・・・)見ると、最近はちょっと手に入りにくいみたい。
お江戸でござるで知名度上がってたからかな?
とてもいい作品を描くお方だったみたいで。惜しまれるなあ・・・
53午後の紅茶:2005/07/26(火) 02:26:39 ID:8oXRVi+g0
(前スレ433・566)


 「はは、あまり今の私に逆らおうとか思わぬ方がいいぞ、キユ。
 10年もの間、超級の危険物を、いくら寝かしつけてあるからと、
 そのままの状態で放置する間抜けがいるものか。
 君に細工をさせてもらったよ。何をどこにどうしたかは、企業秘密だがね」

 「その細工っていうのがぼくをどうにかするのと、
 人がいっぱい入ったビルが宇宙へ突き抜けるのと、どっちが先かなあ?」

              ** ** **

人間兵器KIYU――キユ少年と、彼を10年間束縛していた男・矢吹。
巨大戦艦・矢吹艦上空で対峙するふたりの、静かで苛烈な意識戦。
脅しは効かないとキユに返した矢吹に対する、次なるキユの一手は――――

              ** ** **

 「キユ君、ハーブティーおかわりたくさんありますよ☆
 ゆっくりしていってくださいね!矢吹様もくつろいでくださいね」
のんきな畑執事の声が、無傷で残った展望台ティールームにこだまする。
睨み合いから数分後、気がつけばこんな状況に。
丸テーブルを囲んで紅茶やらケーキ類やらの総攻撃を受けている矢吹とキユであった。
 
 「しかし、キユ君は矢吹様の“ご友人”だったんですね!
 ボク知らなくて・・・失礼な物言いしていましたら、ごめんなさい」
 「そんなんじゃないから、彼がそう思ってるだけだから」
お盆を胸に抱きながら平謝りする畑。心底困った顔で否定するキユ。


   「ねえ、とりあえずさ、矢吹。君が取り寄せたっていう、リンゴのタルトが食べたいな」
54午後の紅茶:2005/07/26(火) 02:27:49 ID:8oXRVi+g0
この一言で当座の“危機”を乗り越えたキユ。
おかげで展望台に出戻った現在は、すっかり元気になった畑の大歓迎を受けている。
その際矢吹のテキトーな説明で『矢吹の旧い友人』になってしまったキユは、
これからどうしたものかと、紅茶をかき混ぜながら思惑にふけっていた。

 (本当にぼくの身体のどこかにトラップが?ブラフか、
 それとも本当の余裕か。まずは様子を見るしかないか・・・めんどくさいなあ)

              ** ** **

 「紅茶・・・かき混ぜてばっかじゃ冷めちまうッスよ、ネエさん」
半分呆れたような久保の声で我に返る黒髪の娘―――えなり姉。
Cブロックのオープンカフェで、彼女は先ほど久保に言われた言葉を、
心の中で反芻していた。『普通の生活に戻れたら何をするか』という単純な質問。
だが彼女には、その答えは簡単に見つかりそうにはなかった。
久保も内心それを察しており、あまり深く追求はせず、ただ見守るのみ。
―――だが突然、2人のしんみりとした静寂を破る、けたたましい爆音が場を席巻した。
 「なんだぁ?」咄嗟にえなり姉の傍に回りガードの姿勢を取る久保。
騒音は雑踏の向こう側、どうやら車両立入禁止区域に、
数台の大型バイクと、一台の車が人波を掻き分けるように侵入したらしい。
人間の分厚い壁が彼らの席にまで迫ってきた時、久保は既に姉を抱え、
デザインビルの出っ張った窓の上に降り立ち、数階上からのんびり下界の様子を見ていた。
 「・・・ケッ、やっかいなヤローのお出ましか。何しに来たんだ?」

              ** ** **

 「ガッデム!駐車場が満杯だからここに停めさせろっつってんだろクソッタレ――!!」
駆けつけた警備員にフライパンを振り上げて脅す魔族っぽい雰囲気の男。
彼は暴走族と思しき軍団の中で唯一車――紫色のカウンタック――に乗っていた、
族長・・・もといKIYU特殊部隊CYCLOPSリーダー・梅澤春人。バイク組はもちろん彼の部下だ。
 「キユの気がこの辺りでハジけやがった!何がなんでも捜し出せ、オメーら!!」
遊歩道のど真ん中に車やバイクを置いて、CYCLOPSはキユ捜索のため周囲に散開した。
55作者の都合により名無しです:2005/07/26(火) 06:32:19 ID:b7RJqLr5O
梅さんKITA-
56作者の都合により名無しです:2005/07/26(火) 11:57:47 ID:z81fmklz0
第一試合終わった瞬間、あちこちで大荒れの悪寒
無事に第二試合とか始まるのかな
57作者の都合により名無しです:2005/07/26(火) 12:07:28 ID:ua5fL7Qu0
それ以前にバンチ連中出てKONEEEEE!!
ヨクサルは試合前にあんなんなっちゃったし大丈夫なの?
まさかの裏御伽決勝進出ですか(無理)
58作者の都合により名無しです:2005/07/27(水) 03:36:34 ID:s3tKDz010
ここはね、もうおわったんだよ





終わりたくないか・・・?なら・・・おれに力を貸せっ・・!!!
59見えないいのち:2005/07/30(土) 12:59:33 ID:UmwIIdV30
前スレ310辺り

 まともに歩けない。
 芦奈野は、《魔女》五十嵐大介の言葉を思いだしていた。『別府の惨劇と前後して、この近辺に何か
不可解な生物が増殖しているようだ』。それらは元々居たようだが、別府の惨劇以降激増したという。
 今、自分の歩行を邪魔しているのも、その類のモノなのか。芦奈野は足元を見た。何もいない。何も
いないのに。

「俺はもう行く」
 これ以上ここにいても自分が役立つ事は何もない。
「また歩きたくなったのか」
「まあ、そんなとこ」
「どこに行くんだ」
 五十嵐は芦奈野の目を見ていた。五十嵐の目は底がない感じがする。吸い込まれそうだと芦奈野は
思った。
「とりあえず……サッカー会場とやらに向かって、そこからさらに南へ」
「そうか。もしかしたら、途中で会うかもな」
「サッカー会場にいるっつう親父の関係者と?」
「それもあるが……あと『蟲』とな」
「蟲……?」
「蟲とは、目には見えないがこの世界に確実に存在する生命……この近辺にもそれは無数に存在して
いる」
「なんだそりゃ、初めて聞いたぜ」
「途中、漆原に会う事があったら訊いてみろ。あれは専門家だから俺より詳しい筈だ」
「漆原?」
「白髪の若い女だ。数時間後、親父の求める男と共にこちらへ向かってくる。鉢合わせするかもな」

 あいつはなんだって、そんな先の事まで見えるのかね。蟲に絡まれている今、芦奈野は心底感嘆して
いた。この、歩行を妨げているのも恐らくは蟲なのだろう。
「このままじゃ……全然前に進まねえぞ」
 そして、多分自分は漆原達と鉢合わせるんだろうなと、芦奈野は思った。
60作者の都合により名無しです:2005/07/30(土) 20:52:10 ID:5xtt08zH0
(芦奈野)きたか
61作者の都合により名無しです:2005/07/31(日) 02:43:09 ID:M+OGj87g0
なぜ()で囲んでいるのかは分からないが、来たよ。
62作者の都合により名無しです:2005/08/02(火) 00:46:11 ID:/fiDo2ru0
『おりゃおりゃおりゃ〜』
「やめて〜イクゥ!!!!」
ドピュ!!!!!!!!!!!

63作者の都合により名無しです:2005/08/02(火) 00:57:36 ID:/Rqywfbr0
何その1部〜3部
64作者の都合により名無しです:2005/08/02(火) 01:10:58 ID:jWhh252N0
つまりえなりでバキSAGAを書いて欲しいということだな。
65作者の都合により名無しです:2005/08/02(火) 02:19:33 ID:/Rqywfbr0
工エエェェ(´д`)ェェエエ工
66作者の都合により名無しです:2005/08/02(火) 14:08:54 ID:6qlwoVbk0
ホント寂れたな。

67作者の都合により名無しです:2005/08/02(火) 17:03:28 ID:L+MjKG/g0
まあ学生組が落ち着けば・・・
たぶんまた・・・
68炎のファイター:2005/08/03(水) 02:07:47 ID:pB/FWd380
(前スレ541 22部184)

超変形後のエリア88に吹きすさぶ新たなる戦場の烈風。
四角い聖地――――プロレスのリングが形成されたそこに、
ゆで将軍と若手凸凹即席コンビ・大暮と福地が、
対角線上のコーナーで睨み合っている。

レフェリーである覆面の血風連が、リング中央に陣取り両営を見渡す。
突然現れた永井豪の気まぐれで編成されたスペシャルマッチ。
果たしてこの勝負は混沌の地エリ8にどんな色の徒花を咲かせるのか。

 「グフフ、小僧ども。ルールをもう一度説明しよう。
 二対一のハンディキャップマッチ、3カウント、ロープブレイク有り―――
 ギブアップは無し。凶器は特別に認めてやってもいいので相談するがいい。
 負けた方はこの地を去る・・・生きておっても、死んでもな。
 そう、決着はどちらかの死か、3カウントのみだ!!理解したか?」

余裕たっぷりにコーナーポストに寄りかかりながら話すゆで将軍。
動きやすい恰好に着替えていた福地は、複雑な表情のまま横目で将軍を見やる。
そして上半身裸になった福地、改めて自陣の“パートナー”に、
心から申し訳なさそうな声をかけた。
 「大暮の兄さん・・・俺、なんて言ったらいいのか・・・」

 「なんか言う暇があったら奇策でも練ってろボケナス。
 それが売りなんじゃねーのか翼くぅん?もっとクールになりな」
声をかけた次の瞬間には福地の黒交じりの白髪が、
洗濯機の中身のようにぐしゃぐしゃに、大暮の手で掻き回されてしまった。
 「あう、そんな事言われてもプロレスは正直範囲外・・・
 それより凶器がどうとか言ってたっすけどー、どうするんすか兄さん」
 「くれるものはタダでもらっとけ。
 ただ・・・奴に凶器攻撃を認めさせるというのは、なんだろーな。
 鬼に金棒ってなアレか?ま、俺は武器有りでもどっちでもいいぜ。ぶちのめすだけだしな」
69炎のファイター:2005/08/03(水) 02:09:31 ID:pB/FWd380
 「えー有りにして後悔しても知らねーっすよ・・・ ・・・お?」

福地の苦笑いは、遥か遠くの海上からこちらへ近づく謎の爆音にかき消された。
鳥か?飛行機か?いや、“それ”を阻害する全てを切り裂くような――――
それは燃えるように赤い機体を持つモビルスーツ―――
深紅の羽を持つガンダム『レッドフレーム』――――

     ―――― A S T R A Y  R ―――― 

                 ――――――  戸 田 泰 成 !!


         キ ュ バ ア ア ア ア ア ア ア !!!


 「(最後の登場から約11ヶ月)放置――――なんと聞こえのいい言葉か―――――!!!!」

何やら憤る魂の咆哮を放ちながら、まるで火の玉のようなMSに乗った、
反逆者<トリーズナー>こと戸田泰成が、“赤い核実験場”チャンピオンREDより、
この地へ向かった敵連中(RED編参照)とのケンカを再開しにやって来たのだ!!
そしてどうやら大暮の姿をカメラで発見したらしい戸田が、
解き放たれた矢のように、リングのある区域へと後先考えず突っ込んでくる。
それを見て永井が、近くにあった漬物石大の割れた岩を拾い、
無言のまま、レッドフレームの真正面に丁度当たるように空中へぶん投げて・・・。
 
 「まずはひとり見つけたぜぇぇーーーブチのめしてやwせdrftgyふじこlp!!!!???」
  “ちゅどーん” ――――赤いMSは妙にショボイ音を響かせ、
エリ8から数キロ離れた地点の海に墜落した。海流の向きによっては、
このまま太平洋ひとりぼっち反逆旅に出るでしょう。ようやく復帰した戸田の運命やいかに。

 「なんでもいいから早く始めろ!凶器の査定は使った時に俺がしてやるよ」
永井の野次が飛び、もう1人の覆面血風連がゴングを載せた机の前に座り、木槌を手に取った。
70作者の都合により名無しです:2005/08/03(水) 02:56:41 ID:Yqwz/PEV0
ネタキャラ――なんと聞こえのいい言葉か――!!

戸田、扱い悪すぎ・・・w
71作者の都合により名無しです:2005/08/03(水) 09:46:17 ID:WRoc24PsO
さすが反逆の男w
72作者の都合により名無しです:2005/08/03(水) 11:58:50 ID:adcDWtEB0
懐かしいヤツキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!

と思ったら落ちタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
73作者の都合により名無しです:2005/08/04(木) 18:12:35 ID:ZazhtKOt0
熊倉ってドリルパクったままフェードアウトだったっけ?
あれどうにか本編に絡ませられないかな?
74作者の都合により名無しです:2005/08/04(木) 18:17:52 ID:r8OcJ6gv0
そういやそうだねw
真島関連は放置だらけだし好きに貪るといいよ
75作者の都合により名無しです:2005/08/04(木) 20:59:55 ID:v9/CcWbd0
ところで福地の片腕は復活したんだっけ?それとも落としたまま?
76作者の都合により名無しです:2005/08/04(木) 21:10:34 ID:r8OcJ6gv0
ちぎれた左腕に布をしばって応急処置+攻撃に使用してた
(15部477)どこまで腕が残ってるかは不明だけど、
フルネルソン食らってるし手首までは残ってるんでない?
または生えたとか。福地だし
77作者の都合により名無しです:2005/08/04(木) 21:11:18 ID:r8OcJ6gv0
25部だった・・・
15部の福地はバス移動で死んでる頃だっけ?
78二人の異形:2005/08/05(金) 00:12:09 ID:JysqpRvB0
 この上なく平凡な街のようであった。それは某国民的アニメに似た景観である。そんな
極々平和そうな町に、尋常ならざる姿をした者があった。
「…ここは、一体――」
「ここは、えふけんえふちょうえふばんちだよ」
 一言で言い表すなら『性犯罪者』とでもいうなりをした男が、不意の声に仰け反った。
「な、なんだい君は!? 君は一体……何者!?」
 男には、声の主と思われるそれが、ラッコかアザラシのような姿に見えた。しかし、ラ
ッコやアザラシが人の言葉を話すわけがない。皮を被った人間なのだろうと彼は思った。
しかし、それはかなり小型だった。これを被れるのは幼稚園児位のものではないのかとま
た思った。
「ぼくはいがらし。いがらしみきお」
「いがらし……」
 知っている名の気がした。
「…僕はイダタツヒコという。ここは――ここは、何なんだ? ここは現実なのか?」
「ここは『しごのせかい』だよ」
「死後の世界?」
「うん。しんだひとがいきつくせかい。このまちにはしんだひとたちがなんにんかいる
よ」
「この町には、って……他にも死者の棲む所があるのか?」
「ぼくはここしかしらないけどね。じぶんのめでみたわけじゃないのでかならずあるとは
いえないけれど、ここにいるだけではかずがあわないもの。ぼくがころしたひとでここに
いないひともいるしね」
「僕は死んだのか。覚えがない……いつ死んだんだ? そういう描写は一切なかった気が
するぞ」
「あるいちぶのれいがいをのぞいては、ここにはししゃしかこないよ」
「例外?」
「いまにわかるよ」
79二人の異形:2005/08/05(金) 00:12:47 ID:JysqpRvB0
 いがらしは、ここまで一切表情も声のトーンも変えずに言った。イダは、背筋が寒くな
るのを感じていた。
「ここにくると、うしなわれるものがいろいろとあるんだよ。ぼくもそうだし、きみもそ
うでしょ」
「確かに……というか、ここに来てから少し楽になった気がするぞ。何か憑き物が落ちた
ような気が――」
「きみはたまたまこのましいけっかになったんだね。ぼくはなにかじぶんにとってだいじ
なものをうしなったきがするよ。そして、さだもとくんも」
「貞本……」
「さだもとくんはかならずまたくる。うしなったものをとりかえしにくるんだ。ぼくはか
れをまっているんだ」
 いがらしの表情も声も依然変わってはいない。それなのに――ストーキングアーツをマ
スターしたイダには分かる。貞本の話をしだした途端にいがらしの中の様々な感情が昂り
始めたことが。
「さだもとくんのほしがってるものはぼくがもっている。ぼくがじぶんのなかにだいじに
まもっているんだ。せかいからぼくがとりあげたんだ。そうすればまたかれがぼくのとこ
ろにくるから」
「うっ……」
「いださんぼくはもうがまんできないよ。はやくさだもとくんにあいたい。このきもちは
かれにぶつけないとおさまらないことはわかっているんだ」
「ぶつける?」
「そうさぶつけるんだ。ほんらいぼくのしにかたではここにくることもできなかった。も
うたましいによりょくはなかったはずなんだ。それでもきえずにここにいるということ
はまだぼくのたましいがきえることをこばんでいるからだとおもうんだ。ぼくはそれをか
いしょうしなくちゃいけないんだ」
「解消したら……君は消えるのか?」
「わからない」
 それきりいがらしは黙りこくった。イダも同様だった。
 日の沈まない町に、二人の異形が佇んでいた。
80作者の都合により名無しです:2005/08/05(金) 12:26:42 ID:xCD429/10
25部落ちましたね。

いがらしってえなりスレ屈指の狂人だなと思う
怖すぎ
81作者の都合により名無しです:2005/08/05(金) 18:21:16 ID:Tr5bE4R/0
おお最近一部で話題のイダ君ではないですか
どう動くやら

>>80
同意
むしろ死んでからの方が得体の知れなさが加わって余計に怖い
82刻む獣:2005/08/06(土) 18:15:38 ID:5StxZoyn0
>>69、24部485)
久々の登場にも関わらず、愛機レッドフレームをしょーもない攻撃でいきなり撃墜されてしまった戸田。
気絶している戸田は、そのままでは太平洋に流されるところであった。

         ゴ   ン !

「・・・ん?なんか、当たったかな?」
そう呟いたのは、戸田を跳ね飛ばした、鋼鉄艦に乗るひとりの男だった。
素敵スーツと仮面に身を包んだ変体ルック。
誰あろう和月信宏である。
戦いにひとしきり満足したので帰るのであろう。
妖魔王陣営の他の面子に仲間意識を微塵も持っていない和月は、大暮や田口などのメンバーについては置いてけぼりであった。まあ、彼らなら自力で帰れるし、帰れなくても知ったことではないのだろう。
「いつの間にか、すっかり夏だなあ〜。ここはひとつ泳いで帰ってもいいな♪」
ごそごそと水着を探しながら、和月の艦『煉獄』は、血のように赤く染まる夕暮れの海を帰っていくのだった。


一方、戸田は流れにまかせながら、目を覚ましていた。
コクピット付近を貫通されてMSを撃墜され、さらに生身で鋼鉄艦に撥ねられたというのに、その体に損傷はほとんどなかった。
組み付かれて自爆されても胴体を対艦刀で貫かれてもセーフティーシャッターさえあれば死なない某スーパーコーディネーターばりに理不尽な生命力である。
しかし、肉体にダメージはなくとも、精神は傷ついていた。
久々の出番で、いきなりの屈辱。
見えざる神の手による酷すぎる扱いに反逆するかのように、戸田の精神は怒りでマグマのように煮えたぎり、やがてそのマグマが冷えたかのような殺意に全身を満たされていく。

「 刻 ん で や る 」

実に久しぶりに、戸田は、えなりスレ初期のテンションに立ち戻っていた。
まだ何も背負わず、熱い出会いもなく、ただ獰猛に荒れ狂っていた頃の、単なる暴力装置としての戸田に。
今の戸田は、目に映る全てを屠ることしか考えてない獣。
あらゆるものを砕く牙(拳)を持つ、禽獣を、海流はエリア88――そのなかでも最も混沌とした、そして最も生を渇望している者たちが集う戦場へ、運ぼうとしていた。
83作者の都合により名無しです:2005/08/06(土) 23:24:12 ID:iuXGwrRM0
わぁー
戸田先生怖いー(棒
ヤマト編の折り返し地点なヨカーン
84作者の都合により名無しです:2005/08/06(土) 23:43:30 ID:YSPV/g6I0
>組み付かれて自爆されても胴体を対艦刀で貫かれてもセーフティーシャッターさえあれば死なない某スーパーコーディネーターばりに理不尽な生命力である。

テラワロスw
あのヤロウは今週も主人公気取りで激しくムカついたぜッ!
85作者の都合により名無しです:2005/08/07(日) 00:36:04 ID:Ts4j12+X0
やたーとりーずなー復活だー-!!∩( ・ω・)∩バンジャーイ
某スーパーコーディネーターばりに理不尽な生命力ワロタwww
86作者の都合により名無しです:2005/08/07(日) 00:41:21 ID:+GENix0v0
誰の話?アニメ?
87傲りと誇り〜人竜闘舞〜:2005/08/07(日) 00:49:59 ID:J63xy7oW0
前スレ424

皆川の身体を、灼熱が包んだ。
炎が赤く爆ぜ、総身に不躾な舌を這わせて肌を焼く。
皆川は、宙に吹き飛ばされた体勢でありながら、それでも腕を交差し身体を丸め、被弾面積を減少させてダメージを殺ぐ。
痛覚諸々を調整されているため痛みも熱さも感じないが、逆に生理的な嫌悪感は増していた。
怒りに血走るその両目が、しかし腕の隙間から覗く光景を捉えたとき、皆川は慄然とする。
高屋の施術によって戦闘専門に限定化された思考が、大音量で危険を告げる。
瞳孔がかっと開き、表情は悪鬼のように歪む。砕けんばかりに歯を噛み締め、擂り潰すように軋らせた。
視線の向かう先は、先ほど自分が空けた巨大な壁の亀裂。
そこから更なる三発の火球が迫っていたのだ。
ただの一発だけでも、鋼を容易に融かす火球がだ。

「おおおおおっっ!!」

皆川が叫び、灼熱が唸った。
熱波が大気に漂う塵を焦がしながら――皆川に着弾、爆裂。
初弾が炸裂し、全身を襲う熱波と衝撃で後方に吹き飛び、皆川は壁に激突する。
続く二発目が命中、巻き起こる熱衝撃の炎渦!
背を預けた分厚い合金壁が皆川ごと融解し、先の亀裂に匹敵する大穴が空く。
とどめとばかりに三発目が着弾し、赤と橙の火光が乱舞、爆炎がカーテンとなって皆川の体躯を覆いつくした。衝撃に後押しされ、亀裂から部屋の内に沈み込む。
倒れる音は、遅れて響いた。

その一部始終を傍観する、高屋。

88傲りと誇り〜人竜闘舞〜:2005/08/07(日) 00:51:01 ID:J63xy7oW0
高屋が変化を察知したのはほんの数分前、皆川の砲撃で巣田が飛んだ直後。
微弱にしか認識できなかった巣田の力が、堤防が決壊するようにいきなり膨れ上がったのだ。
何事かと訝しんだが、その時はまだ皆川でも抑えられると踏んでいた。
案の定、部屋の中からはすぐに激突と破砕の二重奏が響きだす。
これではひとたまりもなかろう、と余裕の判断。
事実内部の騒音は少しの間だけだった。
超然と構え、巣田への絶望の宣告はどのようにしようか、などと考えていると――
燃えながら部屋から飛び出してくる皆川、加えて三発の火球。
高熱の連弾を叩き込まれた皆川は、そのまま炎の中に見えなくなった。
半ば惚けた様に、高屋は傍観していた。

89傲りと誇り〜人竜闘舞〜:2005/08/07(日) 00:51:36 ID:J63xy7oW0
そして今。
高屋は跳躍していた。
右足が着地すると同時に上体を捻り、運動慣性を左の回転に変える。
突き出した右肘、その延長線上に高周波ブレードが伸長、軌道上の物質悉くを切断する幅広の半月を描く。
左側の壁と、そして目の前の巣田の矮躯に生じる斜線。双方とも一拍の間をおいて、思い出したように二つに分かれていく。
が、高屋は止まらない。
軸とした右足が完全に反転し、180度回転して背中を無防備に晒す。
手応え。
突き出した左肘から伸びるブレード。
その切っ先が、もう一人の巣田を貫いていた。
初撃で斬った一人目は人竜の擬態、本命はその背後に隠れていると、高屋は予測していた。常套手だと読んでいたのだ。
肘を捻り、傷口を抉る。ブレードが唸り、高周波振動を巣田の内部に叩きこむ!
完全な致死の一手。巣田の治癒能力をもってしてもこれは回避できない。
後は紅い血肉の雫となって、ただ飛散するのみ。
しかし巣田の身体は無残な肉塊となって爆散せず、霞となって宙に溶けた。
「二体目までもが擬態だと……!?」
我知らず言葉がこぼれた。
同時に前方の壁を火炎が貫通、噴出。視界が赤一色に染まる。

「のみならず――」

90傲りと誇り〜人竜闘舞〜:2005/08/07(日) 00:52:42 ID:J63xy7oW0
不意に響く、鈴の音のように清冽な声。
地獄の縮図のような現状で、それははっきりと聞き取れた。
猛る火炎に煙り、赫々たる光と熱波にのみ占拠された世界の片隅に、風の如き黒い影。
その両手は全力で長棍を握り締め、上体を限界まで捻っていた。
打ち出されれば、空恐ろしい威力を示すことが見て取れる一撃。獣化兵の頭部程度ならば児戯より容易く飛行物体に変え、壁に叩きつけて砕き散らすほどの。
勿論、真っ向からもらってやる心算は高屋には皆無。迎撃に移る。
両膝を折り、撓めた撥条が解き放たれるように、渾身の脚力で床を蹴り付け水平跳躍、生じた力を肉体に乗せ、低空を駆ける弾丸となる。
更に豪腕を折り畳み、跳躍の勢いを載せて前方に振り抜く!
曲折点たる両肘の延長の先には限界まで伸長した刃が聳え、万物破断の牙と化していた。単に上腕を振るう場合より伸長した回転半径を有する斬撃が。
両腕が交差し、大気を震わす唸りを上げ、まさに猛禽の嘴のごとく閉じてゆく。

             ヂ    ッ   !

瞬間、両腕が停止した。加速中に突然動きを止められたため、その反動で一瞬つんのめる。
咄嗟に踵を叩きつけ、床板に突き刺す。深く穿った両足が、慣性をいなした。
(何ぃっ!)
驚愕しつつ脇を見ると、折り畳んだ両腕と、そして両肩が拘束されていた。縦横に交差し、網状に編まれた粘菌様の触手が絡みつき、その強靭無比な張力と弾性をもって高屋を呪縛していたのだ。
腕全体が押さえられ、ブレードが止まる。
高屋の動きを止められるだけの力が――それこそ桁外れの――が無ければ、とても成し得ないほどの芸当。力を失活したままの巣田ならば、到底不可能だったろう。
(――人竜の基本性能が爆発的に向上している!?)
巣田の本来の力、それが決して侮りがたいという事実を、高屋は苦さとともに味わう。
さらに、思い至ったことは。
(あの初撃は囮ではなく、むしろ囮を兼ねた――)
思考を中断。
眼前で、長棍が横薙ぎに大気を切り裂いていた。


「 “攻 撃”、ですよ 」


風を灼く音を伴侶に、一撃が高屋に炸裂、顎を打ち抜き宿る力を解放する。
痛いほどの静寂に、巣田の言葉が響いた。
91作者の都合により名無しです:2005/08/07(日) 01:37:26 ID:+GENix0v0
数スレに渡る因縁の対決に転機が!いよいよ反撃か
92限界を超えろ(175/180):2005/08/07(日) 15:13:15 ID:5gfjWrwT0
>>38
「貫けェェッ!! 必殺のォォッ、BIGマグナムトルネード・えなり七星剣ッッッ!!!」
超合金と化した新・肉変砲が放たれた。
えなりの全てを込めた一撃は、空気を突き破り、守備の間隙を縫い、一直線にガンサンゴールに向かって飛ぶ!
だが、これを迎え撃つ、ゴールキーパー金田一の行動が、この一瞬の明暗を分けた。
なんと、金田一は、えなりの新・肉変砲の一撃を、いつものあの大口を開けた防御によって待ち構えたのだ!
(こ…この攻防の構図は……ッ!)
ズォォ…と異空間への扉を開きながら、まるで死地に赴く兵士のような、あるいはどこか諦めの境地に至った女の表情をする金田一。
少年誌の表現として、ある意味、あまりにもヤバすぎる事態が起ころうとしていた。
「ダ…駄目だぁぁッッ!!」
あるいは、そのまま自分を信じ、放った一撃を最後まで貫き通せば……このゴールはなったかもしれなかった。
しかし、少年誌の限界を超える勇気……それを持てなかった、少年誌の枠をはみ出す事をよしとすることができなかった、えなりの心胆が。
――えなりの腰を引かせた。
それによって、一瞬、勢いがそがれた肉変砲を、策略の鞭がすでに絡めとっていた。
「マテリアルパズル 極 楽 連 鞭 !! 」

          バ  キ ィ ン !!

その瞬間、えなりは自らの中心部で、自らの尊厳そのもの、男としてかけがえの無いものが砕かれた音を聴いた。
魂を操るマテリアルパズル『極楽連鞭』――その能力が、えなりの“紳士の魂”を奪い、砕いた音であった。
「ぎゃ嗚呼ああああああああああああああああ!!!」
ほとばしる断末魔にも似た悲鳴。
「これでもう肉変砲は撃てない……!!」
土塚が放つ、無情の宣告。
股間を両手でおさえたまま悶絶するえなりを尻目に、土塚がボールを大きくクリアする。
(もう肉変砲が撃てない…?)
えなりの心を、かつてない絶望が満たすが。
(まだだ…!)

93限界を超えろ(176/180):2005/08/07(日) 15:14:06 ID:5gfjWrwT0
ほんのわずかだが残された紳士の魂の欠片を拾い集め、少なくなったなけなしの血液を、全て股間へと注ぎ込む。
(もう…二度と、肉変砲が撃てなくなってもいい……これが最後の……)
「生涯最後の肉変砲だああッッ!!」
それは、先ほど見せた輝きに比べれば、遥かに劣る一撃だった。
しかし、その一撃は、ひたすら真っ直ぐな軌道を描き。
土塚がクリアしたボールを、空中ではじき、そのパスコースを変えたのであった。
「なにッ!?」
これに、土塚が驚愕した。文字通り、魂を砕かれて、なおあり得ぬはずの一撃を放ったえなりに、初めての畏怖を覚える。
えなりの方をを見れば、そこにはすでに精魂使い果たして、倒れ伏し。
そして――
「「「しまったっ!!」」」
ボールが飛んだ方向には、高橋陽一が待ち構えていた。
落ちてくるボールに向かって、すでに右足を振りかぶっている陽一。
まさかのタイミング、まさかの位置。完全なるフリー。
えなりの最後の執念が、この絶好の機を作り出した。
(えなり君……君の勝利への執念……絶対に無駄にはしない!!)
村枝が、土塚が、シュートブロックに行こうとするが、とうてい間に合うタイミングではなかった。

「 い け ェ !! おれたちの夢をのせ、勝利の虹をえがけ、決勝のフライングドライブシュート!!」

陽一のフライングドライブシュートが、紺碧の大空を舞った。
そして、えなりチーム決勝進出へ向けて、大きく弧をえがく。
ガンサンゴール右隅を狙う、弾道。
キーパー、金田一も左へ懸命のダイブ。
だが、ボールはさらに遠ざかるようにななめに曲がり、ゴールの枠をもはみだす。
いや、このシュートは!
刹那、ななめに跳ねたボールがグラウンドにはね、逆方向に鋭くスピン。
そのままサイドネットに突き進んでいく。
後半開始直後、陽一が初得点をあげた、あのシュート。
奇跡の、まさにミラクルシュートが放たれたのであった。
94限界を超えろ(177/180):2005/08/07(日) 15:14:58 ID:5gfjWrwT0
村枝も、土塚も、そして金田一の裏をもかいた、陽一の奇跡のシュート。
不死鳥ははばたき、今度こそえなりチームの勝利をつげるのかと、誰もが思った、そのとき!

        ビ  シ  ィ  !!

シュートコースを切り裂くように、真横からすべりこんだ影が、陽一の決勝シュートを阻んだ。
間一髪の飛び出しで、ガンサン絶体絶命の危機を救ったのは――
「 樋 口 ! 」
ダイブした樋口は、そのまま受身もとれずに自らの体をゴールネットに飛び込ませてしまう。
そして、クリアーされたボールは、村枝へと渡った。
トップスピードにのったドリブルで、えなり陣営をごぼうぬき、一気にシュートへ。
「ス――――ッ、ハ――――――――ッ!!」
凄まじいドライブシュート。
それが、えなりゴール右スミへ、唸りをあげてとぶ。
「フン!」
針の穴を通すようなシュートを、井上がジャンプ一番『ハエたたき』ではじきかえした!
しかし、このシュートを防いだ井上はバランスがくずれ、いきおいあまってゴールポストに背中から激突!!
そのままグラウンドに、くずれおちた。
だが、ボールはまだ生きていた。
負傷と疲労で、体力の極限にまで達していた村枝だったが、目をひん剥き、咳き込むような息遣いの状態でなお、再びドライブシュートを放った。
無人のえなりゴールに飛ぶ、村枝のドライブシュート。
そこへ、ゴール前に戻ってきた陽一が、ゴールポストにとんだ。
(村枝くん……きみのドライブシュートを、おれの反動蹴速迅砲でうちかえす!!
 ドライブシュートを利用すれば、ここからでもガンサンゴールを狙えるはずだ―――)
村枝の精魂こめたドライブシュート。それを陽一、ゴールポストを利用してジャンプ。
刹那、えなりゴール前で、閃光がきらめく!!
「いけェ!!」
ドライブシュートの威力をも利用して放たれた必殺のカウンターシュートは、神の領域に突入し、フィールド上に巨大で荘厳な龍の姿を描き出していた。
95限界を超えろ(178/180):2005/08/07(日) 15:15:52 ID:5gfjWrwT0
約90メートルもの距離をも踏破するシュートを前に、勝敗は決まったかに見えた。
が、その瞬間、空中を旋回する、一陣の風!!
「V3――っ!! マッハ……キ イ イ イ イ ィ ―― ッ ク !! 」
あろうことか、ドライブシュートをうちかえされた村枝。
今度は、その陽一がうちかえした反動蹴速迅砲を、もう一度、V3マッハキックによって再度うちかえした。
(こ…これが最後のシュートだァ!!)
いなずまが、まさに閃光が、右に左に交差する!!
3つの必殺シュートの威力もかねあわせた虹色の光は、今度はえなりゴールへとはなたれた!!
しかし――
『あ〜〜〜〜っ、バ…バー!! これはゴールのバーにあたった!!』
克のアナウンス絶叫。
無情にもはねかえったボールは、フィールド中央付近を転々としている。
しかし、そこへ風のごとく走りよってきた者がいた。
「樋口くんか!!」
わずかに早くボールに追いつき、ドリブルを開始した樋口の前に、再び陽一が立ちふさがった。
(今度こそ――ぬいてみせる!!)
絶対に超えなければならない壁。無視できない偉大な目標。
たった一度でもいい。この男をぬかなければ、自分に先はないと、樋口は思った。
陽一の目に映る樋口の姿が朧にかすみ、そして消える。
だが、陽一には、最初の対戦と同じく、樋口の動きが見えていた。
(左――!!)
地に深く沈みこむ、サブマリンディフェンス。
大きく地をはらう足を樋口はまわりこんではかわせず、しかし、ジャンプも通じない。
完璧な陽一のディフェンスが、ボールを――
(よし! 止め――)
すでに反撃にうつろうとしていた陽一の思考が――
(た……)
いやに、ゆっくりと流れていた。
その瞬間、眼前で行われた一連のプレイを、ただ静止したときのなか、見つめていた。
96限界を超えろ(179/180):2005/08/07(日) 15:17:14 ID:5gfjWrwT0
ボールを止められたと同時、樋口は真正面のボールに向かって、ダイブしていた。
わずかに浮き上がったボールを、頭で強引に押し込んでいたのだ。
これには、さすがの陽一も反応できない。
完全に、陽一の予想を超えたプレイであった。

         バ   ア   ン  !!

ボールがネットを鳴らす音と、樋口が勢いあまってゴールポストにお尻を打ちつけた激しい音が重なった。
呆然とする陽一。そして、えなりチームの面々。
――7点目。
残り時間、ロスタイムを含めてもあと数分。
決勝点というしかない、あまりに決定的な場面でのゴール。
ガンサンサイドの観客席が、大きくどよめいた。一斉に歓呼が鳴り響く。
「いててて…やった…やった!」
あの高橋陽一を抜きさった上での、決勝打。
これ以上ない、完璧な勝利の構図に、樋口は抑えきれぬ喜びをあらわにしていた。


「も…もう駄目だ……勝てない……僕たちの……負け……」
村田が、がっくりと膝をつき、今にも泣き出しそうなほどに消沈していた。
嘆いているのは彼だけではない。濃厚な絶望のムードが、えなりチームをあまねく覆っていた。
だが――えなりチームには、彼らがいた。
「まだ試合終了のフエは鳴ってねえぜ」
決して、あきらめるという言葉を知らない奴らが。
「あきらめたら、そこで試合終了だぜ」
むしろ――このような絶体絶命の状況下でこそ、より熱く燃え上がる漢たちが。
「こ れ が   逆   境  だ な 」
戦いは――まだ終わってはいない。

【えなり 6 ― 7 ガンサン】
97作者の都合により名無しです:2005/08/07(日) 15:56:19 ID:emWU8CaD0
肉変砲で燃えたのなんざ初めてだよw
すげえ…村枝も樋口もYO−1も何もかもが燃え。
これで後1レス(+ロスタイム)かよ、マジどうなるんだろ?
98作者の都合により名無しです:2005/08/07(日) 20:14:36 ID:+GENix0v0
少年誌のGENKAITOPPAならず!
そして主人公チームに最大の逆境が訪れる!!
いいねぇぇ燃えますねぇぇぇぇ
99作者の都合により名無しです:2005/08/08(月) 01:05:30 ID:M4e7kb3G0
安西の方もどうなるんだろ。
100作者の都合により名無しです:2005/08/08(月) 13:42:14 ID:xEEwGyuc0
樋口がんばったよ樋口
101作者の都合により名無しです:2005/08/08(月) 18:06:36 ID:t1yBE+130
開き直って「ガンサン」するなら
えなりも「えなり+ジャンプスポーツ」で「えなりスポーツ」とでもしてやろうぜ
102作者の都合により名無しです:2005/08/08(月) 20:18:32 ID:SJzU5b3U0
あれ?あんどチームって改名したんじゃないのぉ(笑)
103作者の都合により名無しです:2005/08/08(月) 22:54:14 ID:l7BoVF870
いや、もうあんどいないしw
そういえば姿をさっぱり見ないが、いつの間にか今井あたりに消し飛ばされていても俺は驚かない
104作者の都合により名無しです:2005/08/08(月) 23:00:18 ID:SJzU5b3U0
1匹だけ残ってなかった?w
まあ消えても勝手に復活しそうだしなー
105作者の都合により名無しです:2005/08/09(火) 00:29:51 ID:dcf0tDZ6O
そういやあの変態と兄貴は消えたままか。サッカー中に戻ってはこなさそうかな?
106作者の都合により名無しです:2005/08/09(火) 00:45:33 ID:bYMIzAYZ0
車田兄貴は帰ってきたよ。変態は踏まれて死亡中。
仙人様は消えておらっしゃる
107作者の都合により名無しです:2005/08/09(火) 20:47:01 ID:/jO8jbeG0
謎の声「最後に入れたほうのチームに1億点とする。」
22人「何ー!!!!じゃあ今までのはは何だったんだよコノヤロー!!!」
108作者の都合により名無しです:2005/08/09(火) 21:13:24 ID:bYMIzAYZ0
22人も残ってねぇー!!
109お知らせ:2005/08/12(金) 00:07:42 ID:i3HNWjz70
えなりの奇妙な冒険を語るスレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1059562987/l25
現在サッカー編他トナメの展開について相談中です *参加歓迎*
110ジンギスさん:2005/08/14(日) 01:21:57 ID:xbM/tBLH0
(前スレ556 24部455 他)

柳田(いいぞ24号!今お前が手渡した名刺は特殊パルス発生装置なのだ!
 漫画家が装置の放つ周波を長時間浴びると、連中が普段気合で抑えておる、
 『漫画家をやめたくなる感情』が剥き出しになるのだ!くたばれ稿料泥棒ども!!)


試合も佳境に入ったサッカースタジアム・漫画家専用席。
牧野・岩村・まっつー・みずしな・
佐藤タカヒロ・くぼたまことと言った男性陣と、
天野こずえ・椿あす・漆原友紀の女性陣が、
ひとりの科学者の卑劣な罠によって戦闘力を少しずつ削がれている。
矢吹傘下・久米田研究所所属の科学研究者柳田理科雄と、
彼の開発した女性型「スーパーメカ24号」女木によって。

女木「・・・という事で北海道で本場のジンギスカンを食べましょう」
しな「北海道か〜ええな〜屋台のとうきび貪り食いたいわー」
佐藤「えらい夢のある話ですなー」
天野「水の都が大好きだけど、北の大地も憧れますね〜えへへ」
漆原「天野さん、よだれよだれ」
あす「あなた、『松椿』福岡凱旋の参考に北海道取材行きましょう」
まっつー「・・・ジンギスカン料理の研究?出すの?メニュー?」
牧野「おっしゃ燃えてきた!ジン・ギス・カン!ジン・ギス・カン!」
くぼた「ジン・ギス・カン!ジン・ギス・カン!ジン・ギス・カン!!」
岩村「ススキノでハートフルバーニングな男の一夜を過ごすッス!!」

柳田「(ククク・・・よし会場を出るぞ。そして秘密基地を作ろう。
 使えるヤツは洗脳して工作員に仕立ててくれる。
 使えないヤツは追っ手がかかった際の捨て駒にしてくれよう!)」

賑やかしい観客席でひとり冷たい眼を光らす柳田。
柳田「今だ!!」
111ジンギスさん:2005/08/14(日) 01:23:02 ID:xbM/tBLH0
女木の体内に仕込まれている最新型強制洗脳装置を起動し、
先の『やる気なくなる波動』と共振させ対象をオトすため、
柳田はリモコンスイッチを押す――――

だが、次の瞬間!
24号・女木恒音は謎の巨漢の影が脇をすり抜けたと同時、
身体中の関節部をバラバラに分解され、
ベンチ周辺にぐしゃりと散らばった―――!!

柳田「はああああっ!!?な、何者だ!!よくも24号を!!名を名乗れ!!」
??「―――あなたの町を支えます。よろしく『ピース電器店』!!』
柳田「コマーシャルするな!!すり抜けざまに何をし・・・な、なんと!!?」

謎の男が丸メガネを光らせながら、様々な先端のドライバーを振ると、
パズルのように細かく分かれた24号の部品を使って光線銃を作り出した!

??「神聖なるサッカー場で応援もせず観戦の邪魔をするとは言語道断!
  このワシ、能田達規を怒らせると明日のミカンは食べられんと思え!!」

神の業でドライバーを振るうこの男、
チャンピオン出身の漫画家・能田達規。
生活用ハイテクマシン開発のエリートであり無類のサッカー好きの、
丸顔丸ボディ丸メガネのオヤジ。
彼は電器屋の仕事をサボって試合を観に来ている。
その温厚そうなオヤジが怒り心頭で柳田一行に光線銃を突きつけた。
能田は顔に似合わずものすごーく怒っているのだ。

柳田「ほう、貴様の名は憶えたぞ能田!我が復讐リストに名を加えてくれる。
  まあ今回はその類稀なる技術に敬意を表して反撃はせん。ではさらばだ!!」
ピンチを察した柳田は至極あっさりと、仲間を引き連れて観客席を去った。
112ジンギスさん:2005/08/14(日) 01:24:46 ID:xbM/tBLH0
牧野「なんだったんだ今のは?ジンギスカーンはモンゴリュ?あわわわ」
“あっちょんぶりけ”をしながら混乱する牧野他被害者たち。
能田「騒音の原因は取り除いたぞ。あんた達も安心して観戦・・・」

しかし能田が言い終わる間もなく、
客席の脇から筒状の小型ロボが、スクラップ寸前のボロとなって、
何かを持って能田の許に駆け寄ってきた。

能田「む?これは店の留守番ロボではないか。どうした?
  野中ロボの修理は終わったのか・・・ん、これは野中君の部品!
  なんだと?店に知らない人が現れて客の漫画家が全員誘拐された!?
  残ったのはこの野中君のAI部分のみ?いったいワシの店で何が起こったんだ!!」
野中のパーツを持つ能田の手がわなわなと震える。
彼はさっそく先ほど解体した24号の部品を使って野中の修理を始めた。

岩村「おっさんの方でも誘拐ッス!これは尻で笑えるッス!プヒー」
佐藤「笑ってどうするんだぁ!しかし何だか物騒な話ですよねえ」
牧野「おい、あんまりウルサくすると、こっちまでとばっちり食うぞ」

男どもが肘を突き合う間に、能田ロボ+24号+光線銃+野中AIを使用した、
新品野中ボディ(変形+レーザー発射可能に)がスタジアム観客席に誕生していた。
野中「・・・とんだ目にあったぜ。へっ、俺も焼きが回ったな」
能田「店で何が起こったか説明はできるか?」
野中「記憶がぼんやりして詳しい事は思い出せねえ。だが、
  美人の姉ちゃんに誘惑されてゾロゾロ店を出る馬鹿どもは見たぜ。
  あの姉ちゃんはしきりに誰かの名を言っていた・・・確か<妖魔王>・・・」

天野「ようまおう?ちょっと恐そうな名前ですね漆原せんせ・・・あれぇ?」
眉をひそめた天野が語りかけた相手は、気がつくと忽然と姿を消していた。
しな「くぼたとかいうヤツもおらへんで」牧野「マジでか」岩村「便所ッス?」

少しずつ狂い始めた、平和な時間の歯車。サッカーの試合は後半ロスタイム寸前であった。
113作者の都合により名無しです:2005/08/14(日) 01:28:01 ID:welK1iMl0
ど、どこに消えたんだ漆原とくぼたは。
114最終局面(180/180):2005/08/14(日) 18:32:25 ID:TZXxE4cR0
前スレ581より
「 邪 王 炎 殺 剣 」
柄だけになった剣から、黒き魔炎が湧き出し、たちまちのうちに新たな刀身を形成した。
炎の剣。いや、ただの炎ではない。
自らの妖気を炎とドッキングさせ、どのような強固な物質であろうと切り裂けるだけの鋭さを備えている。
安西の炎の剣とは、発する力はそれとは比べ物にならないくらいに強い。
(……っ、この妖気は!)
安西の脳裏でけたたましい警戒シグナルが鳴り響く。
この深海の様な深く重い畏怖――確かに自分はかつて、この身に刻んだことがある。しかし、それを思い出すことができない。
剣を合わせた感覚から、自分と今井の剣技の差は3:7といったところか。
技量、剣の質、共に大きく上回る相手の攻撃を、いかに捌く!?
「じゃ――――行くよ♥」
いきなり来た。真っ直ぐに、正面から。先ほどの一撃よりも、なおも速い。

         ド     ン  !!

瞬間、巨大な炎の柱が、フィールド外縁に屹立した。
それは、両者の炎が激突し、気がはじけとんだ証。
「……大した成長だ♠」
今井が、口元に薄く笑みを浮かべる。その視線の先――左手に握られた炎殺剣の切っ先と安西の首の部分が重なっているように見えた。
しかし、その切っ先は、安西の首を切断してはいない。炎殺剣の黒き刃を止めていたのは――
「なるほど――『二刀』か♥」
安西の右側から、その首筋を切断しようとしていた炎殺剣――それを防いだのは、安西の両腕から伸びた、2本の刃!!
一本では防ぎきれぬと判断した安西は、もうひとつの炎刃を生み出すことで、炎殺剣の一撃を防いだのだ。
なぜ、首を護ったかといえば、これはもう今井が放つ太刀筋の中で、首への軌道が最も短かったというだけ――安西は、二つの刃を形成し、さらに太刀筋を予測するという、二つの賭けに勝ったのだった。そして、さらに――
「これで――終わりだ」「――♣」
そこで今井は気づいた。安西と自分の体、その中間の空間に浮かぶ、一個の炎玉。
――ガンサンチームの7点目の笛、そしてロスタイム突入を告げるアナウンスが鳴り響いたのと、炎玉がレーザーのごとき光の矢と化して今井の網膜を焼いたのは、同時だった。
115最終局面(ロスタイム):2005/08/14(日) 18:35:37 ID:TZXxE4cR0
それはまさに、刹那のタイミング。
ホイッスルが鳴り響いた瞬間、安西の集中がほんの刹那だが、それた。
その髪の先ほどの一瞬を、今井は見逃しはしなかった。
安西が持つ最強の炎――『虚空』による閃光が、刹那前まで今井の居た空間を焼き払った。
鍔迫り合いの力を利用し、旋回させた体を巧みに重心操作し、安西のすぐ頭上の空中に逃れる。
しかも、炎殺剣をあっさりと捨て、空いた手で、頭部のガードに使われていた左腕を掴む。

              ド    ウ  ッ  !!

掴まれた腕が、爆発した。
「――!!」
腕そのものが吹き飛んだわけではなかった。
しかし、表皮が跡形もなく焼け焦げ、一部筋肉がむき出しになって破損していた。
切断はまぬがれたが、これではとてもじゃないが使い物にならない。
「一握りの火薬(リトルフラワー)を食らって、腕が吹き飛ばないなんて――ホントに大したものだ」

               ギ   ャ   ッ   !!

今井の言葉を聞き取れないうちに、頭部を凄まじい衝撃が貫いた。
安西が観客席から、フィールドに向かって大きく蹴り飛ばされる。
「くっ!!」
安西が朦朧としながらも立ち上がったとき、すでに今井は背を向けて歩き出していた――フィールドの外へと。
「お名残惜しいけどね……時間切れだ♠」
その言葉で、安西が時計を見た。
すでに、後半45分は過ぎ去り、ロスタイムに突入している。しかも、点数は――6対7でガンサンリード。
「とりあえず、やられた分は返したし。キミの成長も確かめられた。
 残り数分では、とても決着がつく勝負じゃないことが分かったよ♣」
少し呆けている安西に、今井は言った。
「だからもう、キミとはここで戦わない♥」
116最終局面(ロスタイム):2005/08/14(日) 18:37:32 ID:TZXxE4cR0
「なに!?」
叫ぶ安西に、今井は背中越しに言う。
「どうやらどちらが勝つにせよ、ボクらの戦いはもうこの試合にとっては大して意味がないようだ。
 試合の彩りにはなっても、それは最早あってもなくてもどうでもいい戦い――それじゃつまらないだろ?」
少し真剣な表情になって、今井は続ける。

「次は、もっと大きな舞台――そう、本当に抜き差しならない状況で、いかにも宿命の戦いって雰囲気のシチュエーションで――戦ろう♠ 命をかけて♠」

そういい捨てて、今井は悠然とフィールドの外に出て、そして歩み去っていった。
遠ざかる背を見つめながら、安西は思う。
(遠い…)
おそらく……いや間違いなく、奴は本気を出していなかった。安西にも、それが分かる。だが、それでも……。
(けど、全然届かないわけじゃない!! もっと力を磨いて、アイツに負けない能力を身に着ける!!)
将来、あの男とは、確実に戦う事になる。それも、自分の運命を決するような、重大な局面で。
そして、それはおそらく、そう遠い日ではないだろう――。
今井が消えていった方角から視線を切ると、安西は仲間達の元へと歩き始めた。


赤い花が咲いていた。
ガンサンベンチで、人間が6体、跡形もなく爆発四散したのだ。
爆発したのは、ガンサンベンチにちょっかいをかけていた、あんど7のうちオリジナルを除く6体のクローン。
ビシャビシャと血潮が飛び散るなかで、水野英多と松沢はさすがに呆然としている。
「仲間がとんだ迷惑をかけたね♣」
仮にも人間を6人も惨殺しておきながら、今井……いや、そう呼ばれていた男の表情は涼しい。
「これはせめてもの迷惑料だ。受け取ってくれ♦」
そう言って水野に手渡されたのは、一枚の紙だった。そこには、4行詩がいくつか記されている。非常に抽象的で、意味が分からない。
「キミ達がこれから進むべき道を行くための、道しるべになる。餞別とでも思ってくれていいよ♥」
その言葉を最後に、今井の姿は、会場内から忽然と消え去っていた。
117作者の都合により名無しです:2005/08/14(日) 20:18:49 ID:EfJSSwbHO
あんど爆散キタコレ
いよいよロスタイム、最終決着近し!どちらも頑張れ!
118作者の都合により名無しです:2005/08/15(月) 07:03:26 ID:X40OruIK0
ベイリー乙。やっぱこうなったか・・・
119作者の都合により名無しです:2005/08/16(火) 13:01:44 ID:/+NgK6Pd0
こんとんじょのいこ
120作者の都合により名無しです:2005/08/16(火) 17:13:36 ID:Gu4jHi/P0
>>116
矢吹様が大喜びなさっているに違いないw
121殺戮のセッション:2005/08/20(土) 12:35:11 ID:ykwNGdu90
25部>529

戦場に響く、奇怪な歌声――。
いや、それは“歌”というよりも、単なる音の塊――不協和音の集合体だった。

         “ ホ  ゲ  エ  エ  エ  エ  エ  ッ ”

     パ  ツ  ン ッ
       
                    グ  チ  ャ  ッ

                                 ド  バ  ッ

兵器と化した音波が、『オメガ7』の兵士達を次々と破裂させていく。
たちまち兵士達は色めきたち、血飛沫の飛び交う中で戦闘体勢に移行していく。
音波兵器を発しているのは、彼らの視界の先に立つ、一体のモンスターであった。
下半身は深海魚を怪物化したような、そして上半身は本来頭部にあたるはずの部分にスピーカーが埋め込まれ、右の乳房にあたる部分から女の顔が生えているという、異形であった。

『どお?私、“ビチビチ=ビッチ”の魔法(アウトスキル)“人魚の歌声(セイレーン)”は!?
 ホホホホっ さあ頭が割れて脳みそが飛び散るまでたっぷりお聴き!』       
オメガの兵士達が一斉に機銃掃射するが、弾丸は全て破壊音波によって空中で破壊され、モンスターのところまで届かない。
そのとき、モンスターの歌に合わせるように、凶悪なデスメタルのサウンドが流れ始める。
それを流すのは、もう一体の奇怪なモンスター。左肩に大量のレコードがセットされているのが特徴だ。

『この“カニバル=コープス”のイカすスペシャルセレクトを聴きなッ!!』
122殺戮のセッション:2005/08/20(土) 12:35:52 ID:ykwNGdu90
『名盤セレクト まずは最速アルバム“テロライザー”の『ワールドダウンフォール』!!」

       バ  シ  ュ   

                 ド    カ  ッ

                            ゾ   ブ ッ

左肩のレコードが手裏剣のように放たれ、オメガの兵士達を切り刻んでいく。

『デスメタルの金字塔!“デス”の『スクリームブラッディゴア』!
 超グロジャケット“カーカス”の『シンフォニー・オブ・シックネス』!
 ピールセッション3連発!
 “ナパームデス” “ドゥーム” “エクストリーム・ノイズ・テラー”!!』

オメガの精鋭兵士たちが為す術もなく、頭を割られ、首を斬られ、手足をもがれ、内臓をブチ撒けられていく。
悲鳴と怒号が飛び交い、血と臓物と死の色に回廊が染め上げられる。
死山血河、酸鼻を極める地獄絵図が、一瞬にして空間を支配していた。

『みんな聴き惚れて拍手もできないのかしら?ではアンコールはいかが?』
『血の臭いと悲鳴のセッション DJ冥利につきるってもんだぜ!さあラストソングはどんな曲がいいかな!?』

我が者顔で、兵士達を蹂躙する醜悪なモンスター達に、荒川の顔に怒りの朱が差す。そのときだった。

「最後の曲が、俺がリクエストさせてもらおうか」

その場の視線が、全てその声の主に集中した。

「お前らの“断末魔の悲鳴”だ!!」

声の主――巨大バイオリンを構えた渡辺道明だった。
123殺戮のセッション:2005/08/20(土) 12:36:36 ID:ykwNGdu90
『何よ?追加公演?ライブ開始よ!!』

“ビチビチ=ビッチ”が“人魚の歌声”を放った。
対象物全てを破壊する魔性の音波だ。しかし……

               パ   ァ    ン

『“人魚の歌声”をバイオリンの演奏で相殺した!?』

必殺の音楽をあっさりと無効化され、モンスターが狼狽した。

「俺の… 演  奏 (ばん) だ!!」


「 ウ ェ バ ー 作  ≪ 魔 弾 の 射 手 ≫ !!」

         ザ  ア  ア  ア  ア  ア

               ズ ド ッ   ド  バ ッ   ド  カ ッ

『ホゲェッ!!』

“ビチビチ=ビッチ”が全身を蜂の巣にされ絶命、消滅した。
124殺戮のセッション:2005/08/20(土) 12:37:07 ID:ykwNGdu90
『ケッ まだまだあるぜ!珠玉の名盤コレクションは!!』

“カニバル=コープス”が、名盤コレクションによる攻撃をしかけるが。


「 ハ チ ャ ト リ ア ン 作  ≪ 剣  の  舞 ≫ !! 」       

飛んでくるレコードを、全て召喚した剣が弾き返し。


「 フ ァ リ ア 作  ≪ 火 祭 り の 踊 り ≫ !! 」


『 ラ ァ ァ イ ッ 』

業火に巻かれた“カニバル=コープス”は己の断末魔というラストソングを歌い、この世から消えた。


2体のモンスターを苦もなく撃破した渡辺が、周囲を警戒した厳しい視線を散らす。
瞬く間に、オメガの精鋭部隊を半壊させた手際は、ただものではなかった。
しかも、おそらくこのモンスター達は斥候にすぎない。
真に警戒すべきは、これらのモンスターを操っている者だ。

そして――そいつは現れた。

血臭がただよう回廊の彼方から、和装に身を包んだ狂眼の男が姿を見せる。

チャンピオンの“紺(あお)きドラグイーター”――山本賢治。
125作者の都合により名無しです:2005/08/20(土) 12:38:28 ID:ykwNGdu90
このルート、進む気配が一向に見えなかったんで勝手に繋げちゃいました
お目汚し、失礼
126作者の都合により名無しです:2005/08/20(土) 16:34:26 ID:tYXdSRkq0
モツ祭キタワァァ
ヤマケンノーマルバージョンだねい
127作者の都合により名無しです:2005/08/20(土) 23:45:13 ID:0k70dG3x0
おお…こう繋ぐか…
「歌」というからてっきり別人かと思ったがヤツはやはり相方とか。
128作者の都合により名無しです:2005/08/21(日) 13:43:13 ID:o3fikjVg0
その時、、、御堂筋。



『ここはおれにまかせろっ!!!お前はやはくにげるんだ!!!』

『ふざけんなっ!!おいてけっていうのかYO!?』

『ごめん!!』
ドスッ
『はうぅ。。』
129天と地のはじまり(ロスタイム):2005/08/21(日) 15:36:09 ID:G4n/uh8M0
>>31 >>116
安西「とうとうロスタイム……時間にして、後2〜3分か。だけど、こっちは半分以上の仲間が倒れてる……事態は完全に有利ってわけにはいかねーぜ」
自分の左腕に包帯を巻きつけながら、安西が仲間達のもとに走っていた。
ふと、その足が止まる。足元に転がっている物体に気づき、そして驚愕した。
安西「え、衛藤! 留美子さん!! そして……」
ほぼ全身が重度の凍傷に冒されて昏倒している二人の姿が安西の目に映し出されている。そして、さらに――
安西「……カムイッ!!」
安西が目にした、地面に倒れふした三人目の男……それが藤原カムイだった。
安西「カムイ……おまえほどの男がどうして……しっかりしろカムイッ!」
カムイに駆け寄ろうとした安西だが、そのとき背後に巨大なオーラを感じ、動けなくなる。
後ろを見ると、そこには仁王立ちしてカムイを睥睨する車田の姿があった。
安西「うっ……く、車田ッ!」
車田「ザコはどいてろ」

                  カ    ッ   !!!

ガシャッ、ドガッ!!
安西「がはあっ!」
車田の強烈なアッパーで、一撃のもとに叩き伏せられてしまう安西。
車田「心配せずともお前もすぐに葬ってやるわ。このカムイの首を落してからな」
安西「……う、うう…ま…まて…」
なんとか立ち上がり構える安西。
安西「む…むざむざと俺の仲間をやらせはしないぞ…」
車田「そんな傷だらけの状態で、俺をどうこうするつもりか…笑止な」
安西「何を、くらえ!!」
安西が車田に炎を放つが………

               パ ァ ァ ァ ァ ン !!

安西「な…なにィ――ッ!? バ…バカなパワーアップしたはずの俺の炎を片手で楽々とさえぎるとは……」
130天と地のはじまり(ロスタイム):2005/08/21(日) 15:37:23 ID:G4n/uh8M0
車田「フ…この程度のことで何を驚いている」
安西(な…なんて男だ……今井も強かったが……この男に限っては桁が違う……ッ)
車田「たかがザコといえども、これ以上チョロつかれるのも目障りだ。お前から先に葬ってやるか」
車田の圧力に押されるように後退する安西。そのとき、後ろから声がかかった。
カムイ「ま…まて……車田は俺の相手だ。あ…安西、おまえは手を出すな…」
安西「カムイッ!」
カムイが立ち上がっていた。それを見た車田が、「ほう…」と呟く。
カムイ「いくぞ、車田ッ!!」
拳、手刀、肘、回し蹴り……あらゆる打撃技を矢継ぎ早に繰り出す。
しかし、それらの猛攻は、全て車田にかすりもせず、すり抜けていく。
安西「カ…カムイの攻撃が全てすり抜けていく……これがウワサに伝え聞く、車田の『神技的ディフェンス』か!!」

バキイッ!
ドガアッ!!
グワッシャアッッ!!

カムイ「ぐはっ!!」
華麗なディフェンスから一転、車田の剛拳がカムイに次々とヒットし、再び地に這わされた。
安西「つ…強すぎる……あのカムイがこうまで一方的に………」
車田「惜しいな……お前に疲労の蓄積がなければ、もう少しいい勝負になったかもしれんが……」
しかし、カムイはボロボロになりながらも、また立ち上がった。
カムイ「ま…まだ勝負はこれからだ……俺は必ず……勝つッ!」
右の拳を撃つが、車田はこれを避け、そして言った。
車田「なるほど…さすがはガンガンの将。ならば俺も遠慮は無用。最高の礼をもってこたえよう!!」
そのとき、車田の小宇宙が爆発的に増加した!!

カムイ「うっ!」
安西「なっ!」

車田「 見 る が い い  天 と 地 の は じ ま り を !! 」
131天と地のはじまり(ロスタイム):2005/08/21(日) 15:40:10 ID:G4n/uh8M0
車田「  光  あ  れ  !!  」

                       バ   ア   ア   ア   ン  !!!

カムイ「うわああっ!!」

          ――― はじめ 天も地も すべてが形なく ただ闇が 大いなる深淵をなしていた ―――

          ――― 神は 光と闇を分けた 光を昼と名づけ 闇を夜と名づけたのだ ―――

         
              ド   シ  ャ  ア  ッ  !!


安西「な…なにい!? 防御も回避もする間もなく、なすすべもなくカムイが倒された!? なにが起こったんだ一体!?」

          ――― 夜となり 朝となった これが天と地のはじまりの 第一日である ―――

克『こ…これはッ! 車田選手の持つなかでも伝説と言われるスーパーブロー……』


                  N E O   B I B L E  !!!!


          
132天と地のはじまり(ロスタイム):2005/08/21(日) 15:42:19 ID:G4n/uh8M0

          ―――  神は言った  大空よ  水の間にあれ!  ―――

          ―――  そして 神は 大空を  天  と名づけた !  ―――


                  ド   シ  ャ  ア  ッ  !! 


          ――― 夜となり 朝となった…  これが第二日である  ―――


                  ―――  神はまた言った! ―――

           ―――  天の下の水は ひとつ所に集まり 渇いた所があらわれよ!  ―――

           ―――  神は 水の集まった所を海とよび 渇いた所を陸と呼ばれた  ―――

           ―――  夜となり 朝となった  これが第三日である  ―――


                  ―――  神はまた言った! ―――
                 
           ―――  天に光ありて それを印として 季節と日と年とをあらしめよ!  ―――

           ―――  神は 大きい光に昼を司らせ…  小さい光に夜を司らせた  ―――

           ―――  夜となり 朝となった  これが第四日である  ―――
133天と地のはじまり(ロスタイム):2005/08/21(日) 15:43:56 ID:G4n/uh8M0

                  ―――  神はさらに言った  ―――

           ―――  水は命あって 動く生き物の群れで満ちよ!  ―――

               ―――  鳥は地の上 天の大空を飛べ!!  ―――

           ―――  夜となり 朝となった  これが第五日である  ―――


                 ―――  神はまた言った  ―――

              ―――  我々にかたどって人を作ろう  ―――

              ―――  神は土のチリから人を作った…  ―――

         ―――  そして 夜となり 朝となった  第六日である…  ―――


    ―――  そして第七日には 神は すべての仕事を休み  その日を聖なる日としたのだ…  ―――


荘厳で神聖な聖句の朗読が終わり――

6つの衝撃音が、終末を告げる御使いのラッパのごとく美しい音階(スケール)を刻んだとき――

そこには、全身をズタボロにされたカムイが、自らの流した血の海に沈み、殉教者のごとく無残な姿をさらしているのみだった―――
134作者の都合により名無しです:2005/08/21(日) 21:00:47 ID:3YnJyjsr0
ネオバイブルって、あのガード不能コンボか
剣崎もキョウも、これ喰らった奴は軒並み心停止にまで追い込まれてるんだが、カムイは大丈夫か?
135作者の都合により名無しです:2005/08/21(日) 23:04:55 ID:bMdTZQSB0
えらい神々しい兄貴キター
カムイ死んじゃうの・・・?(´・ω・`)
136作者の都合により名無しです:2005/08/22(月) 01:54:44 ID:GMddiSccO
サッカーで死人は出ないのでは。(除くあんど)
137作者の都合により名無しです:2005/08/22(月) 03:19:46 ID:eEKInibN0
関係ないが忍空がUJで復活だってね。
138作者の都合により名無しです:2005/08/22(月) 09:43:33 ID:qDRWgxfY0
つかロスタイムは何レスまでだ?
もうロスタイムだけで7レスも使ってるんだが。
139作者の都合により名無しです:2005/08/22(月) 10:28:45 ID:tLkKpaH70
そういう舞台裏っぽいことが気になるならしたらばへどうぞ。
140試合終了:2005/08/25(木) 00:53:02 ID:OGCiVeK10
>>133
カムイはネオバイブルによって戦闘不能になった。
そしてそれと同時に試合終了を告げるホイッスルが鳴り響いた。

ピーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

「おおっと、ここで試合終了のホイッスルがなったぁ!!一点差でガンサンチームの勝利だー!!
車田選手の技にロスタイムが食いつぶされたか?何はともあれこれで試合は終了、勝者ガンサンチィィィィィィィム!!」
141放送席:2005/08/25(木) 01:09:02 ID:O51W1ZwW0
橋口「ほう、さすがは我がサンデーが与したチームだな。
   素直にコングラッチレーション(おめでとう)と言おう。だが!」
克 「ええ、この試合でお互いのチームが受けたダメージは、
   明らかにガンサンチームの方が絶望的に大きすぎます!!
   果たしてこの勝利が、イコール決勝進出となるのでしょうか?
   私はこのまま素直に試合が終わるとは思えません・・・」
橋口「ガンサンの決勝進出辞退もあり得ると言う事、か。
   または別の何か・・・か。ともかく試合場に中継を戻すぞ、きさまら!」
142カオスだもんね!:2005/08/25(木) 04:25:02 ID:O51W1ZwW0
(↑の続き兼>>54 >>116  24部503 22部143・595等)

 「ほう・・・はっはっは、見ろ!あんどがゴミのようだ!!っはははははは」

北斗神拳を食らったモヒカンの如く周囲に鮮血と肉片を撒き散らかした、
ぶちまけあんどクローン6体を見て大興奮の矢吹様。
その後ロスタイムに入りなんか神の光がフィールドに降り注いだり、
試合が終わったとか終わらないとかやってるのに全く感心なく、
矢吹様は美味しく淹れられた紅茶を片手に至極興奮しておられたのです。

 「矢吹様〜試合終わったら、キユ様も一緒にビデオでも見ませんか?
 僕の秘蔵コレクションをぜひキユ様に見ていただきたいんです。
 ロスト○ニバース第4話TV放映バージョンや、
 カウ○ーイビバップ幻の最終回(テレビ東京版)もありますよ。
 新ビック○マン全話・・・は長いので、よかったらお貸ししますねキユ様☆名作ですよ!」
 「だから様づけはやめてくれないかなあ・・・」
 「はっはっは何でも来いどんと来い。私のドラ○ンボールDVD全巻もつけるぞ」
 「・・・・・・」
あんど嫌いの矢吹様とにかく上機嫌。
オサレ属性のキユはさっきから引きまくりである。


 「あれ?このビデオ、中身が録画したのと違ってる。入れ間違えちゃった?」
ガサガサとビデオ棚を探りながら、記憶を辿り首をかしげる畑。
ビデオの箱にはあるアニメ映画のタイトルがあった・・・。


                ****

143カオスだもんね!:2005/08/25(木) 04:27:20 ID:O51W1ZwW0
午後も深まった冬の鹿児島沖。
エキセントリックな変形を遂げた空母エリア88の中で、
木葉・ザ・クリオダイバーを盾として爆発を防ぎ、
凶悪さを剥き出しにした刺客MEIMU―――仮面ライダー王蛇。
彼が時間切れのため戦場を去り、それでも闘う事をやめない戦闘狂・・・
<夜族の王>平野耕太と、彼と銃を交える<紅の流れ星>伊藤明弘。
彼らに嫌々付きあわされている<トライガン>内藤泰弘。

いわゆる『ただのドンパチ』―――だが彼らにとっては最高の『真剣なお遊び』。
福地仕様に変形しきった新たなる戦場を、
三人は愛銃と共に走り回っている・・・・
はずだったのだが。


 「いやだからね、矢吹んトコを抜ける(ケルベロス脱退)際に、
 こっそり奴の執事が持つお宝アニメビデオを盗ませたんだよ。
 だが箱はともかく本体には中身のタイトルが書かれてなくて、
 外身だけで持ってきたんだよ・・・いいじゃないか、
 いいじゃないかどうしても見たかったんだよ・・・矢吹の執事コレクション。
 『あの』ガン○レス初日公開版(未完成フィルム)・・・。
 だがしかしまさか、こんな事になるなんて、ねえ?」
 「う・・・ううう・・・うわぁぁ!節子ぉ、せっちゃーん!!(涙)」

なぜか戦闘中に近況報告を含めた趣味の雑談が始まりで。
平野が「いいビデオが入ったのだが」と内藤と伊藤を誘い一時休戦し、
特設テレビを床に置いて視聴開始・・・したらテープの中身が違ってたyo。
映画はもちろん<火垂るの墓>。なぜなら畑がテープを入れ間違えたからです。

 「節子〜節子ぉぉ〜〜」涙やらなんやらがダダ漏れな内藤。
伊藤は呆れたのか別の作業があるのか実は壁際から覗いてるのか、
テレビの傍にはいなかった。こうして昼前に始まった銃撃戦は、
ダラダラと続いて当分決着がつきそうになかった。
144カオスだもんね!:2005/08/25(木) 04:31:45 ID:O51W1ZwW0

余談。その平野に命を受け『ゆで将軍がバラした小畑健の身体のパーツ』
に関する情報等の入手や事後処理を任せられていた田島昭宇が、
熱海にある平野の別荘で手酷い目にあって気絶したのが午前中。
迷惑な連中が帰り、田島が気絶から醒めたのが昼下がり。
彼は見事に解体された別荘を一瞥すると状況を察し、
これは仕事で返すしかないなと決然と立ち上がり、別荘跡を後にした。
・・・小畑のパーツは今もって、7つ全部の所在は確認されていなかった・・・。

                ****

克 『えーさて、こちら放送席に今入った情報によりますと、
  先ほどの審判・山田主審のホイッスルは、試合終了のものではなく、
  どうやらロスタイム中に反則があったという事だそうです。
  未確認ですがガンサンチームの選手がボールを取り合った際、
  こっそり復活していた相手のえなり選手を故意に転倒させてしまったようで。
  先ほどのホイッスルはペナルティキックの笛だそうです。
  情報が混乱しており申し訳ありません!さあ今度こそ真の最終局面です!!』

橋口『わかりやすいと言えばわかりやすいな。
  PK・・・ペナルティキック。キーパーとの一対一だ。
  えなりが入れれば同点、外せば今度こそ本当に負けだ。
  いわゆるラストチャンスだ。 わ か っ て い る だ ろ う な 』
克 『まあまあ・・・と、とにかく!
  えなり君には頑張って欲しいですね。バズーカなんたらもありますし』

                ****

 「あれ〜このビデオも中が違ってる!おかしいなー。
 今ウルト○セブンの第12話捜してますからお待ちくださいね〜」
 「健二郎くん、もういいってば・・・」
眼下の混乱も遥かな地の惨劇もなんのその。矢吹艦の現在時刻は午後4時近くであった。
145作者の都合により名無しです:2005/08/25(木) 04:34:38 ID:O51W1ZwW0
なぜか戦闘中に近況報告 ×
なぜか戦闘中の近況報告 ○

PKヨロ
146作者の都合により名無しです:2005/08/25(木) 07:34:06 ID:P0PSphJv0
いよいよ最終局面か…
エリ8で泣いてる内藤が妙に生々しくてワロタ
147作者の都合により名無しです:2005/08/25(木) 09:42:25 ID:ND2FesgV0
なぜか戦闘中に〜雑談が始まりで。 ×
なぜか戦闘中に〜雑談が始まり。 ○

の方がいい気がしたYO
笛の誤審って実際の試合でもなかったっけ?
148作者の都合により名無しです:2005/08/25(木) 12:48:57 ID:B2Bf2FHC0
試合ももう締めの段階だが、
あんどチームの特訓って果たして役に立ったんだろうか?
149作者の都合により名無しです:2005/08/25(木) 13:35:22 ID:ND2FesgV0
そこで必殺シュートですよ
150 勝利への虹:2005/08/25(木) 16:52:44 ID:jKnjNhqA0
>>144
えなりチームのPK。
この1プレイで、全てが決まる。
試合続行か、終了か。
えなりスポーツチームの勝利か、ガンサンチームの勝利か。
「PKだって? いったいどういうことだ!?」
ゴールを遠巻きに見守る仲間達の輪に戻ってきた安西が問う。
「安西クン、カムイさんは!?」
しかし、樋口に逆に聞き返された。安西が臍を噛むように答える。
「応急処置はしたが、かなりの重傷だ。90分以上も戦い詰めのところへ、心臓停止モンのダメージをもらっちまったからな。
 だが、あいつは言ったよ。『俺に構うな、チームの戦いに専念しろ』ってな。
 心配ねえ、あいつはこれぐらいでくたばるようなタマじゃない。
 俺達の総大将だぜ? だから今はあいつの心配をしてる場合じゃない」
「……カムイさんらしいわね。分かったわ、今はこの試合に勝つ事だけを考えましょ」
「ああ、話を戻すぜ。それで、PKってのはどういうことなんだ?
 この試合はサッカーとはいえ、ハンド以外はナンデモアリだろ?
 今さら『故意に転倒させたから反則』も何もねえもんだ」
安西の指摘は、冷静に考えてみれば尤もなものであった。
「ふ…それについては、わしが説明するじゃけんのう!」
「おわっ!」
いきなり横合いから、ゴフーッ、と荒々しい鼻息と共に現れたUMA子に安西がたじろぐ。
「ふ…あの時、伏兵であったえなりがゴールを狙っていた事に気付いたわしは、咄嗟にボールに『生き字引の筆』で、“棒輪具球(ボーリングダマ)”と書いておいたべ」
「……で、それに引っかかったえなりクンが、右足を骨折して転倒しちゃったってワケ。
 要するに、“ボールに細工をした”という行為が、ハンドと同義の反則にとられちゃったのよ……」
途中から補足説明していた樋口の語尾は震えており、顳かみには血管がピクピクしている。
………相当、怒りをこらえきれぬらしい。

「………………」

安西は無言のまま、とりあえず『火群』付きパンチを20発ほどUMA子の顔面に叩き込んでおいた。
151 勝利への虹:2005/08/25(木) 16:54:09 ID:jKnjNhqA0
「陽一先生、すみません……」
右足にギブスを巻いた消沈のえなりが、陽一に頭を下げる。
「なぜ謝るんだ? むしろ、おれは君に感謝している。君の必死のプレイが、この最後にして最大のチャンスを生み出した。
 これは紛れもなく、君の功績だよ。何も活躍とは、得点をあげることだけじゃないんだ」
「そう言ってもらえると気持ちが楽です……。それで、キッカーは……」
えなりが言いよどんだ。
本心を言えば、えなりは自分で蹴りたかった。
しかし、利き足が折れ、さらに土塚の技によって『肉変砲』を封じられた以上、今のえなりに決定力はない。
そして今、ガンサンゴールを守っているのは、負傷した金田一に代わってキーパーになった、誰あろう土塚本人である。
ゴールキーパーとして“守護神”というより“大魔神”とも言うべき防御力を持つ土塚のゴールを割るのは、たとえ1対1の状況であっても容易ではない。
弩級の必殺シュートを持つ者でなくては、この局面でのキッカーはつとまらないのだ。
「うむ、彼が蹴ると言うんだが……」
ところが、ここでキッカーの大任を受けたのは、陽一でも、大和田でもなかった。
『X仮面』を名乗る、正体不明の仮面の男……正体は一部にバレバレという説もあるが、一応そう言う事にしておく……であった。
もっとも今はヒビだらけの仮面の替わりに、『?』のマークが大きく描かれた覆面をかぶっている。
これまで、あまり目立った活躍をしていなかった為に注目されていなかったが、この局面でこうもクローズアップされると、その怪しさは只事ではなかった。
「……本当に大丈夫なんでしょうか」
「分からん……が、あそこまで自信満々に出ていったところを見るに、勝算があるのだろう。
 …というか、無ければ困る。あいつが外せば、おれ達は一蓮托生だ」

そして今、『?』の男が、ゆっくりとシュート体勢に入る。
この瞬間、会場の全ての視線と意識が、白いボールという一点に注がれていた。
152 勝利への虹:2005/08/25(木) 16:55:57 ID:jKnjNhqA0

 ――― いけ… し…『?』仮面!!!


振りかぶられる右足…
舞う砂塵…
制止する時間…
そして……


    ルルルルルャギャギ グ ル ル ャ ギ  ル  ル  ル  ル  ル  ル  ル  ル  ッ
 
                                                      ┣¨  ウ  !!

            ダ  ッ   ドシュウウウウウウッッ!!



そのシュートは竜巻とも大渦とも呼べる、凄まじいカーブを描いた。
守る側の土塚は、その変化が信じられない。
そのシュートは明らかに蹴り損ないだった。
その一瞬、『?』の男は、明らかに違う所を狙っていた。
他ならぬキーパーである土塚には、それが分かるのだ。
しかし……
結果的にそのシュートは……
まさしく天翔る竜が蜷局を巻き、牙を剥きだすがごとく……

   
           ガ  ン  サ  ン  ゴ  ー  ル  に  突  き  刺  さ  っ  た  !!
153 勝利への虹:2005/08/25(木) 16:57:17 ID:jKnjNhqA0

『きっ、決まったあ! 一瞬、蹴りそこないかと思われたシュートが、ここ一番という状況で見事に炸裂したあっ!!』


    ワ  ア  ア  ア  ア  ア  ア  ア  ア  ア  ア  ―――――――― ッ  !!!


歓喜のえなりスポーツイレブン。
興奮の坩堝と化す、ここ特設スタジアム。
絶体絶命の逆境から、見事に同点ゴールとなる一点をもぎとった。

えなり「や…やったっ! すごい、すごいですよ!! あんな蹴りそこないが、ここ一番で決まるなんてっ!! まさに奇蹟!?」
 陽一「いや…彼のシュートは十分に狙って放たれたシュートだ」
えなり「えっ…? どういうことですか?」
 陽一「――彼の狙った方向には飛んではいかない…それほど彼のキック力は強力な回転をかけてしまうのだろう…
   だが結果的には、ボールは大きなカーヴを描いてゴールに突き刺さる…!」
大和田「それを蹴りそこない…などと命名してはいかんぞ、えなり…!」
えなり「で…では…? 大和田先生、あなたなら何と呼ぶんですか!?」
大和田「つかみ所のない…だが確かに存在し、大きなカーヴをうねり――
    大きな夢をもって魂につきささる…といえば!」
えなり「!!」


           虹     だ  !!  

                           男  の  虹  …

    男 と 男 の 心 に 夢 を か け ち ま う 虹 の 橋(レインボーブリッジ) だ !!!!
154 勝利への虹:2005/08/25(木) 16:58:49 ID:jKnjNhqA0

    ピ ィ イ イ イ ―――――――――――――――――――――――――ッッ!!!!


『そして、これは今度こそ、後半戦終了のフエ!
 
   7  対  7 

 えなりスポーツチーム対ガンサンチームの準決勝第一試合は、ゴールデンゴール方式(JリーグのVゴール方式)の延長戦へと突入します!!』


両チームの死闘は遂に、延長戦へと突入した。
どちらかが先に得点した時点で、雌雄が決する、このサドンデスルール。
しかし、最早どちらのチームも疲労困憊、満身創痍。
この期におよんでは、長期決戦はおろか、わずか一度きりの攻防しか行えないだろう。
正真正銘、最終局面へと、舞台は移行した。

そして、その状況下で、高橋陽一は高らかに叫んだ。


「勝つ…  
   
 勝    つ  !!

 絶  対  に  お  れ  た  ち  が  決  勝  に  進  む  ん  だ  !!!  」
155作者の都合により名無しです:2005/08/25(木) 18:19:59 ID:nnBdz8J30
なんだかよく分からんが流石だな!
156作者の都合により名無しです:2005/08/25(木) 20:31:25 ID:O51W1ZwW0
(;゚∀゚)=3 ハァハァ
157作者の都合により名無しです:2005/08/26(金) 10:30:56 ID:cVcKdsRz0
PKの理由付けに隙がないな
158作者の都合により名無しです:2005/08/27(土) 01:43:08 ID:Id6fuH0n0
いや、虹ときたかよ!
正直どうかな?って見てたけど
いいね!かっこいいよ!
159監視者:2005/08/28(日) 17:15:15 ID:kIJz8Otd0
>>116

    ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ ズ 

サッカーが行われている会場から少し離れた広場。
そこに設置されている巨大モニターに、今井は見入っていた。
その背後には、禍々しいオーラを発する、巨大な影がそびえている。
シルエットが判然としないが、見える者にとってはその禍々しさは並々ならぬものだ。
だが、今現在、広場にいる人間のなかに、そのオーラが見えているものはいなかった。
巨大な影からは、何本かの触手のようなものが伸び、今井の千切れた左腕や、その他の傷を修復している。
「結構やられたな・・・完璧に治すとなると2 3時間はかかるか♦」
それもいいか、と今井は思っている。
サッカーはもうすぐ終わるだろうが、まだ第二試合もある。暇つぶしには事かかないだろう。
そのとき、今井の脳に電波が届いた。
「ピピッ ピッ」というよりは、「とぉるるるるんるん」といった具合の電波だ。
「はい――――ああ、『N』じゃないか・・・どうしたんだい?
・・・・ああ、はいはい悪かったよ、さんざん一人で楽しんじゃってさ。
でもコレ、一応『ボス』の命令だったし・・・君は別府でさんざん楽しんだんだから、いいだろ?
ん・・?今、いる場所?
ああ、試合場近くの広場にいるよ。モニターで試合を見てる」
ぶつぶつと独り言をつぶやき続ける今井を不気味がり、周りに一般人は寄ってこない。
ただでさえ、傷だらけの道化師じみた風貌という特徴ある今井は、敬遠されがちだが。
「――――用件はそれだけかい?
 なら、そろそろ通信を終わるよ。もうすぐ、延長戦が始まるからね。
 見張りはこれからだし、純粋に観客としても楽しみたいからね」
心の中での会議を、今井が一方的に打ち切ろうとした、そのときだった。
脳内の別人格『N』から、思いもよらぬ台詞が飛び出したのであった。
160監視者:2005/08/28(日) 17:16:25 ID:kIJz8Otd0
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
『見張りはこれからだと?
 ・ ・ ・ ・
 違うぞッ!
 ・ ・ ・
 今井ッ!! 』

その台詞が脳内に響いた瞬間、今井の表情が一変した。

『よく見るんだ……だがゆっくりだ……
そのまま自然に……怪しい行動はとるな!
今、見張られようとしているのは…』


       ド   ド   ド   ド
         
              ド
          ド
                ド    
                     ド    ド ド


『 お ま え の 方 だ…  今  井 

  目 立 つ 動 き は す る な ッ ! 』
161監視者:2005/08/28(日) 17:17:45 ID:kIJz8Otd0

「!!」

そして、今井はようやく『その男』の存在に気がついた。
自分がいる広場を、そのすぐ近くに建つビルの屋上から睥睨する『男の存在』に!


     ┣¨  ┣¨  ┣¨  ┣¨   ┣¨  ┣¨  ┣¨  ┣¨  ┣¨

         ┣¨ ┣¨  ┣¨   ┣¨     ┣¨ ┣¨  ┣¨   ┣¨ ┣¨ ┣¨
       ┣¨  ┣¨   ┣¨  ┣¨ ┣¨


「あ…あれはッ!
 だ 誰だっけ?
 見た事あるぞ、あいつは!」

そして、『N』の言葉は、驚愕の事実を叩きつける!!


『  荒       木    だ  !!』

      『別府で王蟲の大群の中に消えて行方知れずになっていた、 荒 木 飛呂 彦 ッ !!』

         ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・
       『 ヤ  ツ  が  す  で  に  こ  こ  に  !! 』
162作者の都合により名無しです:2005/08/28(日) 18:56:47 ID:WZkpGRW60
うひゃあ!
どきどきもんだね!!
163作者の都合により名無しです:2005/08/28(日) 19:23:26 ID:ofKtwnY10
あの男が帰ってきた!?
164作者の都合により名無しです:2005/08/28(日) 23:55:43 ID:J8SkePb/0
なにィーっ!?
ここで荒木帰還ッ!!
つか、今井にとっては最悪のタイミングだなコレ
165作者の都合により名無しです:2005/08/28(日) 23:57:53 ID:6ZFkGE110
だがそれがいい
166作者の都合により名無しです:2005/08/29(月) 18:19:43 ID:4cmsEm580
OK、OK! 盛り上がってきたよー!
167そして延長へ・・・:2005/08/30(火) 01:23:30 ID:U5wgii+p0
>>154他)

劇的な展開が続くサッカー、ついに7対7の同点となり延長戦に突入した!
延長戦はゴールデンゴール方式・・・すなわち1点入れた方が勝ち。
追いついたえなりチームと、追いつかれたガンサンチーム。
戦力の内情も含めて、どちらに勢いがあるかは実に明白であった。

村枝「よし、休憩時間だ。1分1秒でも大事に使おう。
  留美子さんと衛藤君には医療スタッフが回っている。耐えろよ、安西」
安西「・・・クッ!酷い事しやがる!」
樋口「あ、リック君!身体は大丈夫!?」
雷句「スマヌ、試合中しばらく気絶していたようなのだ。
  少しばかり心の力も回復したが・・・全力には程遠い・・・のだ」
安西「そうか・・・だがそれでも最後まで・・・全力で。闘(や)るぜ、カムイ」

カムイはじめ今ここにいない仲間達に、握りしめた拳で誓いを捧げる安西。
悲壮感を出さぬように心がけているのか、安西の表情はひたむきなまでに真っ直ぐだった。

水野「城平さんは所用で席を外しています。私と松沢さんと、
  先ほどからいらしてる一本木先生は・・・いつでも、出られますから」
真摯な瞳を、司令塔・村枝に向ける水野。村枝は力強く頷いた。

安西「蓮。両腕と肋骨・・・やったんだろ。今のGKは土塚だし、もうベンチに下がれ」
金田一「どうってことない」
安西「ばぁか。女の子にそれ以上無茶させるほど俺はマヌケじゃねえ」
金田一「馬鹿にバカと言われたくないな」
安西「なんだとー!?」
金田一「ばーか」

―――じりじりと減る、ごく僅かな休憩時間。さらなる死闘の予感に選手たちの魂は震えた。
ちなみにえなりベンチではギプス姿のえなりが、脳内の人に泣きながら怒られていた。
もうすぐ試合があるのに骨折れちゃったやないかいとかナントカ以下割愛。
168作者の都合により名無しです:2005/08/30(火) 03:41:20 ID:hV6U+lhXO
安西と金田一の絡みがえらい懐かしく感じる。
169作者の都合により名無しです:2005/08/30(火) 11:31:45 ID:AsfX6RSK0
えなりスレ一のフラグ男も最近はチャーハン作ってばかりだったしなあ
170鷹の憂鬱:2005/08/30(火) 12:04:25 ID:HNzfi6St0
「――!」
首筋に針を突き立てられたような痛みを感じ、三浦の表情が強張った。
両手で持っていたプレステのコントローラーを置き、烙印から滴る血を指先で拭う。
ひとつ溜息をつくと、三浦はマントを翻しながら立ち上がり、部屋を後にした。
誰もいなくなった部屋では、電源が入ったままの二つのモニターが、それぞれの映像を映しだしていた。
ひとつは準決勝第一試合の中継映像であり、今は延長戦前の休憩中であるため、それまでのハイライト等が映しだされている。
そして、もうひとつの画面には、青いスーツに身をかためた金髪碧眼の二次元美女がバストアップで映っていた。
忙しい時間をやりくりし、ようやくゲーム2周目にしてお目当てのキャラとのデートまでこぎつけた矢先だっただけに、部屋を出ていく時の三浦は相当に不機嫌であった。

そして今、三浦は自分のいた部屋から離れた、通路を歩いている。
その行く手に、ひとりの男が、壁にもたれるようにして立っていた。
端正な顔立ちだが、中途半端に伸びたぼさぼさの黒髪と、鼻の先に引っかけた小さなサングラスが、やたらと胡散臭い雰囲気を醸し出している。
体格は平凡で、平均よりはやや長身で、肩幅も広いといった程度。
濃紺色に染めた外套を来ているが、あちこちがよれよれになっており、ただでさえ安物らしいのが余計にみすぼらしく見えた。
倦怠感というものを具現化したような男である。
しかし、三浦はその男の存在を知覚するや、ことさらに警戒を強めた。
なぜなら、三浦はよく知っているからだ。
この枯木のような男の深奥にひそむ、恐るべき怪物を。
そして、先刻、自分に殺気を叩きつけてきたのが、目の前の男であることを。
三浦は、5メートルほど離れた場所で足を止めると、その男に向かって言った。

「俺に何か、用か? 西川秀明……」

その男――西川秀明は、にへらとした愛想笑いを浮かべ、言った。

「どうも……お久しぶりです、三浦さん」
171鷹の憂鬱:2005/08/30(火) 12:05:14 ID:HNzfi6St0
西川秀明……この男の殺人者としての顔を知る者は、今の西川の姿に驚くかもしれない。
“蜘蛛”と呼ばれた、あの異常殺人快楽主義者の姿と、三浦の前にふらふらと立つ青年の姿とが、どうやっても一致しないからだ。
だが……三浦は、西川のこのような二面性をよく知っていた。
殺人を行わないとき、戦闘時以外の西川は、知り合いですら本来の姿を忘れてしまうほど茫洋とした青年なのである。
「挨拶なら……今朝、すましたばかりだろ」
朝の、『戦艦・無礼ド』内での戦闘のことである。
あのとき、無礼ドに捕えられていた西川は、救出にきた佐藤健悦と共に殺戮の限りを尽くしたのだ。
「あの時は……慌ただしくて、満足に話もできませんでしたから」
「こっちには、話す事なんて何もねえがな」
三浦の言い方はそっけない。
目の前の男に気を許していないからだが、ゲームを邪魔された恨みの方がどちらかといえば大きい。
「そう邪険にしないでください。そう長くはお手間をとらせませんよ。ただ、わずかな期間とはいえ、かつて“鷹”として戦ったよしみで少し確認に来ただけです」
「――確認?」
「ええ……」
鼻先のサングラスを指先でなおしながら、西川は言った。
「これからガンガンと小学館の漫画家を皆殺しにしようと考えているボクらの……あなたは敵なのか、味方なのか? 
 それとも、そのどちらでもないのか……確認したいことは、たったそれだけです」
口調に変化はないが、三浦を射る視線には硬質な刃がひそんでいた。
なにより、サングラスの頭を指で抑えている為に半分ほど隠れた顔の……手の隙間から覗く肌に、あの禍々しい蜘蛛の刺青が浮かびあがっていた。
172鷹の憂鬱:2005/08/30(火) 12:06:30 ID:HNzfi6St0
「…………」
「…………」
空間が歪曲するかのような、激しい視線のぶつかり合いであい。
やがて……片方が、視線を外した。
「知らねーな……てめェらのやる事になんざ興味はねェよ」
三浦はそう言って、踵を返す――


刹那、西川が蜘蛛のごとく跳躍した。
刹那、三浦が黒い竜巻に変じた。


振り返り様に大剣を疾らせた三浦の頬を、細い刃がかすめ。
空中から刃を突き出した西川の下方で、黒い死風が踊る。


お互い得物を抜き放った直後の体勢で制止したまま、二人の視線は再び交錯した。


「いい抜きっぷりじゃねえか」
三浦が裂かれた頬から滴る血を舌で舐め取りながら言った。
「あなたこそ、やっぱりさすがです」
西川が、半分ほど千切られたように壊れた自分の靴を見せて言った。
三浦の剣が、跳躍した際の西川の靴にかすっていたのだ。
「ま…戯れはこれぐらいにしときますか」
さりげなく滑らかに西川は刃を納めた。そのタイミングの絶妙さに、三浦も毒気を抜かれてしまう。
「(うまいことはずしやがった……)」
心中で呆れまじりに感心しながら、三浦もまた剣を背に納めた。
173鷹の憂鬱:2005/08/30(火) 12:09:00 ID:HNzfi6St0
「ま……結論はまたの機会でも結構ですよ。時を置けば考えが変化するのは珍しくないし」
ふらふらとした足どりで、西川は三浦の横をとおりすぎる。
すれ違う瞬間、三浦が西川の耳元で言った。
「俺達は……『鷹の団』は、誰の味方でもねえ。てめェらが誰を相手にハネまわろうが知ったこっちゃねえ」
「…………」
「だが……俺達の邪魔になると判断したときは、遠慮なく叩き潰すぜ」
「なんとも……シンプルであなたらしい答えだ。期待通りだな」
凄みのある三浦の声。
薄く微笑を浮かべながら、西川が離れていく。
途中で一度足をとめ、背中越しに三浦に向かって言った。
「そうそう……ボクの友達が近くの路地裏で暴れてるんですけど……なんでもその乱闘に柴田ヨクサル君も混じってるみたいだよ」
「なに!?」
思い掛けない西川の言葉に、三浦が語気を強めた。
「試合前にケガでもしちゃったらタイヘンですんで。一応、あなたには知らせておこうと思って……じゃあ、また」
そのとき、一陣の風が吹き、次の瞬間には西川の姿は何処にもなかった。

西川が消えた先をしばらく見つめていた三浦が、やがて面倒くさそうに頭をぼりぼりと掻き、つぶやいた。

「また厄介事が増えやがったか……がんじがらめもいいとこだぜ、ったく」

また当分の間、ゲームの続きができなくなった事を嘆きながら、三浦は路地の方向へと歩き出した。
174作者の都合により名無しです:2005/08/30(火) 12:23:16 ID:AsfX6RSK0
ヨクサル捜すのサボッてたのか〜
アニマルの狂気同士の邂逅は剣呑としてますな
175行末:2005/08/30(火) 22:48:50 ID:06cWXeRz0
赤松目掛けて放たれたデュランのエネルギー弾の光が、同時に佐藤の視界を焼く。
「―――」
光に遮られ見えぬその場所を佐藤は寂と見据えている。
やがて光が収まり、彼女の視界が回復する。
一直線に放たれた砲弾は裏路地を見事に焼き尽くしていた。
赤松の痕跡は、塵一つ残っていない。
口元に、満足げな笑みを浮かべ、彼女はデュランを消した。
その後ろから「おやおや、消していいのですかねえ」と嘲る様な声と共に、真後ろで殺気が膨れ上がった。
たたらを踏んで振り返るその先には、変らぬ黒い衣装を纏った魔術師の姿。
佐藤によって穿たれた爪痕は既に塞がっていた。
どこぞに隠していたのか、いつのまにか彼の左手にはこれまた悪趣味な黒いステッキが携えられ、その先端に右手が添えられている。
――仕込み!
ほぼ直感的に、そのステッキが凶器である事を察した佐藤が後ろに飛ぶ。
刹那、佐藤は鞘鳴りの音を聞いた。
ステッキに隠された刀身が薄暗闇に一筋のひかりを迸らせる。
「神鳴流奥義、斬空閃」
と赤松が静謐に呟いたその時には既に刀身はステッキに収められていた。
これらは全て、後ろに跳躍した佐藤の足が地に着くまでの間のことだった。
そして、彼女が地を踏みしめ、赤松を睨んだその時。
佐藤の長い黒髪が、半ばからばっさりと地に落ちた。
満足げにその様子を眺めた後、赤松が口を開いた。
176行末:2005/08/30(火) 22:49:22 ID:06cWXeRz0
「不意打ちからの最大火力、いやいや、卑劣極まりない上に容赦もない。師匠譲りで怖いお人だ。
 だが、残念なことに爪で刺された程度で動けなくなるほど私は脆くないのですよ」
こう見えても妖ですからね、と嫌味なほど丁寧な口調で彼は言った。
「貴様……!」
押し殺したような佐藤の声には、憎悪が篭っていた。
髪を斬られたからではない。
彼女の髪は、ちょうど首筋を境目に両断されていた。
対峙している佐藤にはわかる、この男がそれを狙って行なったことを。
髪を斬るのと同様に、首を両断することも十分に可能だったということを!
くつくつと、赤松が闇夜の梟のように鳴く。
全てを見透かす目で佐藤を嬲りながら。
怒りに身を焦がしながら、しかし、佐藤は見えない妖気に縛り付けられたかのように、その場から一歩も動けなかった。


そんな佐藤の様子を楽しんでいた赤松が、ふと視線を彼女の後ろにやった。
「おやおや、残念なことに、ここでしまいのようです」
「何!」
「怖い人が、戻ってきちゃいましたからねえ」
その言葉に、後ろを向いた佐藤の全身が強張った。
彼女が眼にしたのは、血に塗れた、一匹の、大きな魔物――森川ジョージ。
「見逃してあげますから、はやく行きなさい」
にこりと笑って赤松は言った。
「どうやら大変機嫌が良さそうですから、あっさり殺されてしまいますよ」
177行末:2005/08/30(火) 22:51:12 ID:06cWXeRz0
目の前から女が真上に飛び上がり、ビルの上に上っていくのをまるで気にした風もなく、森川ジョージは赤松の元に歩み寄った。
「勝ちましたか」
と、赤松が聞いてきた。
無言で肯く森川はしかし、自らの顔面に強烈な笑みが張り付いていることに気が付いていない。
「お前は、見逃したのか?」
「ええ、強く、卑劣で、そして何より伸びしろがある。この場で殺してしまうのは惜しい」
「相変わらず悪趣味な野郎だなテメエは」
「ははは、貴方も相変わらずきついですねえ」
と、いいながら赤松は肩に、ぼろ雑巾のように倒れていた山内を担ぎ上げた。
「いったんこの場から離れましょう。少々騒ぎすぎましたからねえ。大会側に嗅ぎ付けられても面倒ですし、貴方の治療もそこで」
「それはいいが、そいつはどうするんだ?」
「秋田と小学館が揉めてるようですからねえ、少々内情を探り出そうと思いまして」
「ほう―まあ、どうでもいいが、楽しくなりそうなら教えろ」
「はいはい、承知していますよ。では、行きましょう」
「ああ――いや、ちょっと待ってろ」
一方的に言い捨てて、森川は再び表路地に戻るべく歩き出した。
自分自身、何故そういう行動を取ろうと思ったのかわからない。
倒れているヨクサルの姿をもう一度見たいのか、ひょっとしたら再び立ち上がっているのではないかという疑惑にかられたのか――。
いずれにせよ、彼が自らの漠然とした心を晴らすことはできなかった。
表通り、森川ジョージと柴田ヨクサルが死闘を演じたその場所からは、柴田ヨクサルの体が消失していた。
怪訝な表情でヨクサルが倒れていた血溜まりに歩み寄った森川はふと立ち止まり鼻を引く付かせた。
咽返るような血の匂いに紛れて、微かに――艶めいた芳香がその場から匂い起っていた。

178行末:2005/08/30(火) 22:51:48 ID:06cWXeRz0
柴田ヨクサルが、目覚めて最初に見たのは地面だった。
「………」
視界が揺れている。
首を持ち上げてみると、そこはどうやら市街地であるらしかった。
「ほう、目覚めたか」
真後ろから、驚いたような声が聞えてきた。
首だけ動かして振り返ると、同じように首を後ろに傾けた男と目が合った。
そこでようやく、どうやら自分がその男の肩に後ろ向きに担がれて運ばれていることをヨクサルは認識した。
「負けたのか」
「うむ」
「そうか――」
禍根は無い。
全部を出し切った上で、完璧に敗れた。
しかし、心栄えが晴れやかということは無い。
身体の中に、鉛のように重いどろどろとした鬱屈が溜まっている。
それが何なのか、茫洋としたヨクサルの頭にはわからなかった。
「悔しいか、ヨクサル」
「悔しい――」
ヨクサルの胸中に、その言葉がすとんと入り込んだ。
「ああ、そうだな。多分、それだ」
「であろう」
と、男は無表情に肯いた。
「敗れるとはそういうことだ」
男――山口貴由はそういって、前を向いた。
179行末:2005/08/30(火) 22:52:47 ID:06cWXeRz0
――RED、不開間。
石渡洋司は、肩膝をついた体勢のまま、じっと動かず己の手を見ていた。
左手は、中指から鮮やかなまでに真っ二つに両断され、血が両の切断面から流れ落ちている。
そして右手は、手首から斬り落とされ、地面に転がり落ちている。
「石渡……」
背後の闇から突如としてかけられた声に、振り向かず彼は答えた。
「何のようだ、岡田」
後ろの空間から出現した十傑集岡田岳芽の顔に浮かぶは苦渋。
石渡が査定にかけられる主要因に為ったRED近辺での戦闘において、岡田が最初に失態を演じたため、石渡は孤立し、敗北の憂き目を見た。
そのことを、岡田は悔いていた。
「査定はどうなった」
言葉に詰まる岡田に、石渡が逆に問うた。
「お前の後に、せがわが指名され、それで会議自体終了したよ」
「せがわだけ、か」
短く言って、石渡は再び押し黙った。
その間も、彼の両腕からは血が流れ落ちている。
「その傷、一刻も早く治療を――」
「岡田」
石渡は首を横に振った。
「敗れたのだ」
そういって彼は立ち上がり、岡田の方を向いた。
「負い目等、持つ必要もなし。弱者は這いずり、強者が昇るが世の常だ」
左手で右手を掴み、石渡は、出口へ歩き出した。
「しかし――!」
「いずれ、必ず戻る」
低く、呟いたその言葉に、岡田は圧された。
両の手を破壊されて尚、石渡洋司の心は折れてはいない。
己を鍛え直し、再びその座に返り咲く決意を秘め、石渡はその場から去った。

十傑集査定試合――山口貴由勝利。
180作者の都合により名無しです:2005/08/30(火) 23:49:59 ID:U5wgii+p0
おお、前スレ辺りの色々が色々と色々に

石渡さん(´Д⊂
181作者の都合により名無しです:2005/08/31(水) 00:25:52 ID:MOBMS7WE0
山口よ、ヨクサル運んで何処へ行く?
182作者の都合により名無しです:2005/08/31(水) 02:04:37 ID:lxP24JjW0
せがわ…やっぱり…
183作者の都合により名無しです:2005/08/31(水) 09:01:19 ID:14/OHXHq0
アニマル勢が色々動きだしたな
ところで三浦のやってたギャルゲーって何だ?
184作者の都合により名無しです:2005/08/31(水) 09:08:59 ID:N5umgrHE0
またギャルゲーかよ、三浦wそのギャップが好きだwww

んで、山口は十傑衆入り決定?
185作者の都合により名無しです:2005/08/31(水) 09:53:01 ID:g/cOM0ts0
新人候補になったとか?
スカウト制度もあるし結構入れ替わり激しいよね
鈴木央が所属してた頃もあったはず(死んだけど)
186作者の都合により名無しです:2005/08/31(水) 12:50:36 ID:bNwLKlMK0
覚えてなくとも過去ログをちっと漁って頂ければわかることだが…そうか…俺の話はそんなに……
187作者の都合により名無しです:2005/08/31(水) 13:09:37 ID:g/cOM0ts0
どうした(゚Д゚)
ギャルゲの事?某メモリアルなんだろうけど
現物見た事ないからワカラナイヨ
188作者の都合により名無しです:2005/08/31(水) 15:07:00 ID:+Owo5m8K0
>>185
ちゃうって、定期的に査定試合やって、
前のメンバーが勝ったら残留、新人候補が勝ったら入れ替わるって書いてあったろ
最近の例でいうと、ハンターの旅団みたいなもん
若先生(山口)がどういうルートでその候補になったのかはさっぱりわからんが・・・

>>183
つ「サクラ大戦X」(たぶん)
2周目で攻略できる「青いスーツに身をかためた金髪碧眼の二次元美女」という特徴があてはまるギャルゲヒロインといったら
最近では同ゲームのラチェット・アルタイルしか思い浮かばない
ちょい前のコメントで三浦本人も「サクラ大戦の季節だ!」って書いてたし
189作者の都合により名無しです:2005/08/31(水) 16:03:41 ID:g/cOM0ts0
色々ありがとう。って三浦(゚Д゚)
貴由先生は既に時期十傑集の候補に挙がってたんだね。
査定試合は知ってたけどイコール入替戦とは露知らず。
本人はやる気あんのかな?
>>186正直すまんかった
190作者の都合により名無しです:2005/08/31(水) 18:07:46 ID:14/OHXHq0
>>188
サンクス、5はスルーしてたんで知らなかった
つか、ラチェット攻略できたのか・・・こりゃ買わないと
191傲りと誇り〜獣神解禁〜:2005/09/02(金) 17:42:11 ID:RGyIfiuR0
>>90

顎を打ち抜く渾身の棍撃に、高屋の体が大きく揺れた。
インパクトの瞬間、首を捻って衝撃を緩和させようとするも、全身を呪縛する人竜のお蔭で上手くいかない。
引き千切ろうと力を篭めるも、人体各部の可動部ごと絡め取られているため、思う様に動かせなかった。
さしもの強殖装甲も、身体構造それ自体の改変はしない。
本分はあくまで殖装者の強化と武装なのだ。
軽く揺さぶられた脳が、高屋の視界を明滅させる。
頭の内部から来る痺れにも似た感覚。或いは眠りの様だったかもしれない。
どちらにせよ問題ではなかった。
這い寄る感覚に抗い、仰け反った顔を正面に向ける。
瞬間、二撃目が跳ね上がった。
再び顎先を打ち抜かれ、上方へ仰け反る。
額から迸る一条の光が、天井に突き刺さった。
向き直ると同時のヘッドビームによる攻撃を、巣田が見越していたのだ。
「あまりこっちを向かないで下さい。私にとっては命の危機なんで」
巣田の声には侮蔑や嘲弄の一切が無い。これは彼女なりの宣言だった。
こちらに顔を向ければ、頭部兵装を使用するよりも速く頭を打ち据え、攻撃軌道を逸らす。
それは、巣田がそれほどの力を持っていることも明らかにしていた。
無論、高屋が大技を使えない現状だからこそ、なのだが。
192傲りと誇り〜獣神解禁〜:2005/09/02(金) 17:43:03 ID:RGyIfiuR0
「クッ、ククク」
言い終わって数拍、巣田に響いてきたのは静かな笑声だった。
それは嘲笑ではなく、愉快愉快といった感じの軽い響きだった。
巣田にしてみれば、これが嘲笑であろうとも何ら痛痒は無かったのだが。
今の優位の不安定さは、自分が一番熟知している。
先程の宣言も、実は単なる事実の述懐でしかない。
高屋にとっては四肢を封じられた程度、危機にも満たないだろう。脱出方法などは、それこそ山ほどあるだろう。
だからこそ、僅かでも侮りを引き出せれば、というのが偽らざる本音だった。
まあ、嘲笑されたらされたで多少なりとも癇の虫に障っただろうが。
そんな彼女の内面を知ってか知らずか、可笑しさを声音に滲ませて、高屋が口を開いた。
「いや――可愛い事を言う」
頭を仰け反らせたまま軽く笑って、更に続ける。
「しかし、今の二撃は流石に効いたよ。こんなものをまた叩き込まれては適わないな。
 とはいえ、頭を仰け反らせたままという訳にもいかない。そこで、折衷案として――」
高屋のとった行動は、警戒していた巣田にしても瞠目せざるを得なかった。
(――!)
「これならどうかな?」
高屋が尋ねる。
その身を洒脱なスーツに包み、人外の美貌を剥き出しにして。
そう、高屋は強殖装甲を解いたのだ。
殖装を解除された装甲が肉体から分離し、影のように異空間へと飲まれて消えていった。
後には全身を縛る人竜の鎖が残るのみ。しかし高屋の顔色は平時のそれ。
かなりの力を伴って縛り上げているというのに、この男にとっては顔色一つ変えるようなことではない。
驚愕の事実に、身体は冷や汗で反応する。構える棍は喉元を狙っていた。
193傲りと誇り〜獣神解禁〜:2005/09/02(金) 17:43:57 ID:RGyIfiuR0
「ほう、それが君の素顔か」
出し抜けに、高屋。巣田は一瞬虚を突かれた。
「……初めて、でしたっけ」
「ああ。今までは着ぐるみを着ているか、子供の姿だったからね。
 真の姿といっても、やはりその延長線程度の認識しか無かったよ。だから意外性も一層だ」
高屋の言はある意味では正鵠を射ていた。
彼の目の前には、魔境生物として覚醒した巣田がいる。
その姿には、着ぐるみ生物の面影など皆無であり、子供形態の名残として髪の色位しか残っていなかった。
150代後半に伸びた背丈を戦闘装束に包み、長い髪を後ろで束ねた娘盛りの少女がそこにいた。
片山愁が次元間を繋ぎ、一時的にクラウドゲートが魔境化しているからこそ顕現する姿。
「加えて、爆発的に跳ね上がる戦闘能力。いや、面白いね。研究のしがいが有りそうだ」
「それはどうも」 
答えながら、巣田の脳内では大議会が始まっている。議題は『この後どう凌ぐか』だった。
「互いの在り方が違っていたなら秘書にでもスカウトしていたかも知れないな。
 だが、君は少々業が深かったようだ。時期も悪かった。要は運が無かった」
「……」
巣田は答えず。
「だから、ここで死ぬ」
同時に、高屋の背後に蠢くもの。
それは壁に穿たれた大穴の縁を掴む、焼け爛れた左五指。
指に力が篭められ、壁が軋ませながら身体を引き寄せる。
続いて、今もなお残り火が盛んに燃え、黒焦げの右半分が蒸気を上げる頭部が姿を見せた。
その面貌は苦悶と憤怒に塗り潰されていた。見ているだけで肉の焦げる臭いが漂ってきそうな代物だった。
ナノマシンが傷を再生する傍らで炎が燃え、修復した傷を何度も焼くために再生効率が落ちているのだ。
あまりにも凄愴極まる、皆川亮二の鬼相がそこにあった。
「なんとも凄まじいことだね。まあ、あの程度で戦闘不能になるとは、君とて思っていなかったろう?」
暢気な調子で告げた男は、少女に向き直る。
 
「キマイラは、私の最高傑作なのだからな」
194傲りと誇り〜獣神解禁〜:2005/09/02(金) 17:45:43 ID:RGyIfiuR0
皆川に気圧された様だった巣田ではあったが、何とか言葉を搾り出すことは出来た。
「何を、したんです」
声音が多少震えてはいたが。
「皆川さんに、何をしたんですか、貴方は」
「極々簡単なことだよ。心的外傷(トラウマ)を深めただけだ」
対して、あっさりと返る答え。朗々と続く。
「皆川は実に理想的だったよ。
 生死を共にできる仲間を持ち、護るべきものの為に我が身すら省みない。
 戦闘に於いては比類なく、実によくARMSを使いこなし、そしてジャバウォックの成長にも貢献してくれた」
ここで言葉を一旦切る。
ケレン味溢れる言い方で、勿体つけるように間をあけ、二の句が続く。
「だが、仲間を失うことには非常に脆い。
 しかも黒星が続いていたから、精神的にも焦りが生じていた。
 そんな折、あの事件――別府地獄変だ。君も知っているだろう。 
 あそこで、皆川は山本に追い詰められた。古傷を抉られ、精神的にも肉体的にも苛まれた。
 結果ジャバウォックは暴走し――仲間と戦った。
 死者は出なかったが、まあ、無傷では済まない。大半が重傷を負った。その事実を使わせてもらった」
ここで、笑み。滴る悪意が、見て取れた。
「大切なものを、自分の手で壊してしまうことほど、辛いことは無いだろう?」
巣田の肩が、ぴくりと震えた。その内訳は、戦慄と激怒が半々だった。
「記憶を捏造したんですね。自分が仲間を殺したという記憶を」
「正解だ。記憶なんてものは下手に弄って改竄すれば必ず齟齬が生じる。
 それを最小限に抑えるには、元の流れを生かしたまま、その延長線を用意してやればいい。
 山本は実にいい仕事をしてくれた。私の注文以上に、仲間達の死を苛烈で劇的に演出してくれた。
 お陰で調整が面白い位に進んだよ。皆川がすぐに自棄になったからな。抜け殻を調整するのは楽でいい」
口調はあくまで軽い。人の脆さへの嘲りがそこにあった。
「ジャバウォックはVENOMで封殺されていたから、戦闘プログラムの上書きもスムーズだった。
 そして獣水晶(ゾア・クリスタル)を移植し、神将メンバーとして迎えた、という訳だ。
 我ながら手間を掛けたものだね」
そう言って、喉の奥で静かに笑う。
195傲りと誇り〜獣神解禁〜:2005/09/02(金) 17:46:35 ID:RGyIfiuR0
「貴方という人は――」
存外、それは静かな声だった。だが巣田とて何も感じていないわけではない。
その胸中には、焦熱の地獄が生まれていた。
自分は義憤で動ける人間ではない。
正義とは疎遠で、日和見節があるところも自覚している。
だが、それでも。
許せない物がある。目を逸らせない物がある。
目の前の男が、正にそれだった。
「そう、怒るな。弱者が強者に習うのは、世の摂理というものだ」
その言葉が決定的な引き金だった。
高屋が言い終わるか終わらないかのうちに、会話の間もチャージしていた最大出力の火炎を、反射的に解き放つ。


「紅竜ッ!!」
「殖装ッ!!」


怒りを乗せた巣田の火炎が空気を焼き、同時に響いた高屋の叫びが爆音に消える。
吹き荒れる灼熱の嵐と、白と赤と橙の爆光。真昼の太陽が降りてきたかのような膨大な光と熱が、相争い乱舞する。
やがて光が収まり、火精達の饗宴も沈静化した。
目を覆っていた腕を戻し、巣田は炎の去った後に目を向ける。
急速に熱せられた大気が歪んで陽炎を作って揺れていた。
巣田の背に怖気が走る。凄まじい殺気の波が大気を硬質化し、圧迫感に息が詰まりそうになる。
そこに在ったのは、戦慄の黒。
今まで喰い尽くしてきた業が残らず具現したような、闇色に滑光る鬼神の威容。
「そう逸るものではないよ、巣田君」
漆黒の魔王は、燻る残り火を装束代わりに、泰然自若と佇んでいる。

「ガイバーV……!」
196傲りと誇り〜獣神解禁〜:2005/09/02(金) 17:55:49 ID:RGyIfiuR0
二重の恐怖が巣田を貫いていた。
一つは、高屋が何の手傷も負っていないこと。
もう一つは、先刻まで高屋を縛り付けていた人竜の拘束が、一つ残らず引き裂かれていることだった。
拘束を破られることは多少予測していたとはいえ、しかし防御と両立されて、ここまで完全に破られるとは思っていなかった。
その回答は、ごく単純なものだった。
「殖装時、殖装者を保護するためにバリアが展開される。瞬間的には、岩盤を穿つほどの力でね」
解説するガイバーV。我知らず、巣田は半歩下がった。
「そう構えるなよ。
 私としても、君を縊り殺すのにはやぶさかではない。
 しかし、だ。キマイラに華が無いというのも些か考え物だと思ってね。
 そこで、君には彼の相手になってもらう。
 全ARMSを制限発動しての、限定空間戦における性能試験ということでね」
巣田の視線は、そこで初めて、やっと穴から這い出してきたばかりの皆川に向けられた。
声も高らかに高屋が叫ぶ。

「獣神変!!」

刹那、殺意の風が吹き抜けた。
高屋のものよりも激しく猛々しい暴風、生命全てを許さぬ破壊神の吐息だった。
その源泉は、皆川。
これが先程まで死に体であった人間かと思うほどだった。
その体表で、金属質のさざなみが蠢いていた。
同時に身体中の裂傷と火傷が、視認できるほどの速度で治癒していき、急速に塞がって行く。
更にその背丈が倍近い大きさまで膨れ上がり、頭髪は針山のようだ。
両肩はそれこそ異様なまでに突出し、それに比べて両脚は細く、妙な違和を作り出す。
口腔から漏れ出る吐息は地獄の炎。両の腕は世に遍く命を刈り取る死神の大鎌。
鬼神の顔が浮き彫られた腹部が、蜂の腹のように細く括れて見えるのが、実は異常に巨大な上半身との比較で生じた錯覚でしかないということを認識して、巣田の心が危機に凍える。
「身体はジャバウォックのものを使わせてもらったよ。素晴らしい迫力だろう?」
最悪の状況で、この男だけがどこまでもおどけた調子だった。
197作者の都合により名無しです:2005/09/02(金) 23:41:17 ID:VFHwmm0C0
ミナガー、イクとこまでイッちまってる!
巣田も含めて、誰か救援でもないと生還確率はてしなくゼロに近いな
198作者の都合により名無しです:2005/09/02(金) 23:41:31 ID:LXFpeunZ0
ミナガー(´・ω・`)カワイソス
今回もお高いスーツは無事だったか・・・
199作者の都合により名無しです:2005/09/03(土) 01:34:06 ID:soCqUbjl0
捏造された記憶で、死んだことにされちゃった人達は今何処に…
200燃えよ剣:2005/09/05(月) 22:56:12 ID:yCrMHRSN0
>23
再び、空気が固形物と化したような緊張が、二人を包んでいた。
宮下と夢枕、二つの巨体が小揺るぎもせず、まさしく山の様相を呈している。
しかれど、両者の間に流れる空気――これも動いてはいなかった。
すうっ、と――
嘘のように、夢枕から放たれていたあらゆる気配が消えていた。
間合いが、完全に見えなくなった。
いつ、どの瞬間に、どの方角から、夢枕の拳足が宮下の身体を襲ってもおかしくない。
一方、宮下の巨躯には、強い気が満ちていた。
夢枕が、気配を絶ったのとは逆に、宮下は、己の裸の気を、空気中にむき出しにした。
その気が、ぐいぐいと宮下の肉体の中に育ち、うねるようにしてふくれあがってくる。
「おう……」
夢枕が声をあげた。
見るまに、宮下の肉体は、燃え盛る火球のようになった。
軽く、それが顔に触れただけで、熱風に顔面をさらした時のように、声をあげて後方に跳び退いてしまうであろう。
しかし、夢枕は動かない。
まるで、微風を受けているかのように、静かにそこに立っている。
「ふっ――」
宮下が、小さく声をあげる。
「動かぬものなら、動かなくとも“斬る”術はある――」
宮下は、軽く腰を落とし、呼気を溜めて、ゆらりと剣先に“氣”を込めた。
その“氣”が、冴えざえと光る“斬岩剣”に満ちる。
大剣の刃が、それ自体が光を放つように、しらしらと、気の飛沫を跳ねあげはじめた。
いまや、はっきりと、常人の眼にも見えるほどの光芒を、斬岩剣は放っていた。

「 王 虎 寺 超 秘 奥 義 !  暹  氣  虎  魂 (しんきふうこん) !! 」

轟、と裂帛の気合いと共に、斬岩剣から青白い“氣”の塊が迸る。
それは青く燃え盛る、猛虎の姿を象り、夢枕に猛然と牙を剥いて踊りかかった。
201燃えよ剣:2005/09/05(月) 22:57:34 ID:yCrMHRSN0
暹氣龍(虎)魂――

中国拳法において、人体最後の神秘とされる「氣」エネルギーを利用した技は数あるが、中でも、その最高峰とされるのが、これである
この技の要諦は「氣」を刀身に集中し、龍(虎)の形をした衝撃波として繰り出すことにあり
その圧倒的な破壊力に比例して、消耗度も大きい為、短時間に連続して撃つことは不可能とされる
ちなみに、同等の実力をもつ者同士が闘う様を「龍虎相討つ」と表現するのは、これが源である

                     民明書房刊『中国秘拳満漢全席』より――――

大気中の燐を含み、青白く燃え上がる虎が、夢枕に飛びかかる。
力強く四肢が躍動し、刃のごとき爪牙で引き裂こうとする。
――しかし、閃光の迅さで疾駆する虎が、獲物をとらえることはなかった。
わずかに軌道を逸れた蒼の猛虎は、そのまま夢枕の背後の空間に向かって走り抜け、虚空へと溶け込むようにして消え去った。
荒々しい炎が去り、場に静寂が戻る。
「いやぁ〜…たしかに凄まじいばかりの威力だ。だが、はずしたんじゃ何の役にも立たねえなあ」
相当の深手を負っている上、長時間に渡って夢枕と死闘を続けてきた宮下。
この局面で、消耗の極めて激しい“暹氣虎魂”を使い、なおかつそれをはずしてしまった以上、もはや宮下に勝機があるとは思えなかった。
しかし、宮下は血まみれの顔を歪めて、不敵に笑う。
「ふっ――はずしてなどおらん。この時点で、勝敗は決した」「なんだと…………!?」
そのときであった。夢枕の背後で、なにかとてつもなく巨大で固いものが、割れる音がした。
振り向くや、夢枕は目を剥いて、仰天した。
背後にそびえていた廃ビルが、根元から折れ、圧倒的な質量と重量をともない、夢枕の頭上から落下してきたのだ。
宮下の“暹氣虎魂”ははずれたのではなく、夢枕の後ろのビルを破壊していたのだ!
「ひょおお!!」
呆れと驚愕の入り交じった表情で天を仰ぐ夢枕の身に、鉄槌と表現されるべき巨石が降り注いだ。
見る間に、崩れ落ちたビルの残骸は、うずたかい岩山となって、夢枕の肉体をその下に封じ込めた。
崩壊の大音響がこだまするなか、宮下は呟いた。

「 A perfect tombstone for you (それが貴様の墓石だ!) 」


202作者の都合により名無しです:2005/09/05(月) 23:01:17 ID:txppI/Au0
やりやがった!
でもなんで英語なんだーまあいいかー
203作者の都合により名無しです:2005/09/06(火) 00:31:50 ID:4wHWROwr0
誰もこれで終わり、とは思わないのがアレだが・・・w
どうなる?
204作者の都合により名無しです:2005/09/06(火) 11:22:57 ID:ysk0jbkZ0
>>202
男塾でJが言った決め台詞のひとつですよ。だから英語。
205ギャグ狩りへの反逆、その結末:2005/09/06(火) 18:41:38 ID:UcQ4Vil40
24部452から

画太郎の口から噴射された酒が火気を帯び、火炎放射となって高田を包み込む。
毒殺を見破られた直後の、不意打ち。二段構えの策を前に、高田には防御も回避の暇すら与えられない。
そう思う画太郎は、勝利をなかば確信していた。が――

  「 氷 鎧 覆 圓 舞 (ビンカイフーユエンユー) !! 」

吹雪の幕のようなものが、一瞬にして高田の肉体を覆い、迫りくる炎を刹那にしてかき消した。
高田が召喚した氷雪の防御幕の威力はそれに留まらず、本能的に危機を察知してとび退いた画太郎の片足を凍りつかせた。わずかでも反応が遅れていたら、一体の氷のオブジェが出来上がっていたはずである。
「ぐっ…あ 足が凍りついちまった……やろ〜〜」
自分の完璧な奇襲をあっさりと防いだことへの驚嘆と、反撃による痛手への怒りで、画太郎の顔がさらに酷く引き歪む。
「なるほどな……ギャグ漫画家は『間』の使い方が上手い。俺が瞬時に発動できる術を持っていなければ、今ので不覚をとっていたかもしれん」
高田は貯水タンクの上に立ち、画太郎を赤い目で見下ろしていた。
「寒い思いをさせた詫びに、今度は俺の炎で暖めてやろう」
高田の左手に何か強大な力が集まるのを感じ、画太郎の顔が緊張に引き攣る。

 「 高田祐三の名において命ずる……出でよ、『 炎   斗 (イエントウ) 』 !! 」   

高田が画太郎に向けて放ったものは、燃え盛る炎を纏った巨大な髑髏だった。
先程、画太郎が放ったものの、十数倍もの巨大な大渦となった火炎が、二人がいるビルの屋上を覆い尽くした。
206ギャグ狩りへの反逆、その結末:2005/09/06(火) 18:42:49 ID:UcQ4Vil40

   ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  オ  オ  オ  オ

「あっち〜!あちー、あち〜〜〜よ、こんちくしょーッッ!!」
どこにも逃げ場のない灼熱地獄のなかで、画太郎が両目を血走らせて叫ぶ。
その間にも、炎はさらに勢いを増し、火勢の中心で蠢く巨大髑髏が、その大顎を開いて画太郎に急迫する。

「てーつてつてつてーつてつてつ……『全身鋼鉄化呪文(ミナミコーテツ』〜〜〜!!!」

奇妙な呪文を唱えると、画太郎の全身が灰色になり、鋼鉄のような硬度へと変わる。
それによって、なんとか炎の海をやりすごす。しかし、このままでは、しょせん一時しのぎ。
この状況を打破するには、術者である高田を倒すしかない。
災い転じて福となすというべきか、この時点で、高田からは火勢のあまりの強さのために画太郎の状態を確認できなくなっていた。
画太郎が、全身の魔法力を右手に全集中する。ほとばしる魔力が、放電するように、紫色にバチバチと光っている。
炎にわずかに切れ目が入り、高田の姿を確認した瞬間、画太郎は起死回生の呪文を放った。

「死ね――――っ!!! 『対漫画家爆死地獄(ズガドーン)』〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

  
        ず が ど〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん  !!!!


画太郎の全魔力は、高田を中心に巨大な極彩色の爆炎を、空に描き出した。

207ギャグ狩りへの反逆、その結末:2005/09/06(火) 18:43:43 ID:UcQ4Vil40

        ズ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ  ゴ 
凄まじい爆風が、術者の画太郎すらも吹っ飛ばした。
画太郎の肥満体が衝撃に煽られ、すぐ隣のビルの屋上まで、軽々と吹っ飛ばす。
しがみつくようにして、隣のビルに踏み止まった画太郎は、自分の作り出した惨状を血走った目で凝視した。
高田の立っていた貯水タンクはおろか、屋上全体がほとんど破壊され、爆心地に当る部分は何階層かにわたって大きくえぐりとられるように跡形もなく吹き飛んでいる。
自らの持つ最強の呪文の威力に満足する画太郎だが、すぐに苦痛に呻きながら膝をついてしまう。
「うぐぐいたたた…ちくしょー、爆発(ドン)系の魔法を使うと関節が痛くなるのが欠点だな……」
全身の関節がギシギシと悲鳴をあげるほどの激痛に耐えかね、画太郎は鎮丹(ボーッとして気持ちよくなる薬)を取り出し、数錠服用した。
「 ハァ ハァ ハァ 」
ヨロヨロと体を起こして、破壊の跡地を見る。
大方の惨状は見てとれたが、肝心の高田の状況が、煙が晴れてもいまだに判然としないのを画太郎はいぶかしむ。
そして、その戸惑いは、わずか数秒後には、驚愕…そして恐怖へと変わった。
「な…なに〜〜〜〜〜〜!!?い…生きてやがる!!!」
そう。最も破壊の激しい爆心部分……その空間に、高田は傷ひとつつくこともなく、悠然と浮遊していたのだ。
「フフフ……少しばかり驚いたぞ。まさか、これほどの威力ある技を持っていようとはな」
『少しばかり驚いた』……高田の余裕のにじみでる言葉に、画太郎は目を剥き、口をあんぐりと開けて驚愕していた。
「そ…それだけか……『対漫画家爆死地獄(ズガドーン)』は俺の最強の魔法だってのに……それをくらって感想はそれだけなのか…」
ふと見ると、高田の周囲に、ピラミッドを描くように4体の奇妙な生物が浮かんでいるのが確認できた。
『四天聖精奉還(スティエンシヲンチンフヲンホアン)』……かつて、サガのギャラクシアン・エクスプロージョンの威力すら完璧に防ぎきった、極めて強力な防御結界。
この獣魔術の存在を、画太郎は知らなかった。
「し…しんじらんねー…手強いとは思っていたが、ここまで強力とは…アンビリーバボー、オーマイガー!!」
攻守にわたり強力でバランスが良く、そつがない能力。
自分の手には余りすぎる相手だと、画太郎は判断した。
208ギャグ狩りへの反逆、その結末:2005/09/06(火) 18:46:42 ID:UcQ4Vil40


「はっちゃけー、はっちゃけー」
万事に休した画太郎は腕組みしたまま目を瞑り、懸命に対策を考える。
そして、くわっと両目を見開き、

「やっぱり ト ン ズ ラ しかね―――――――――――!!!!!!」

と、心の中で叫んだ。
急いで逃走へと駆け出す画太郎。しかし。
「ククク…今さら逃がすか」
掌から、光術を撃ちだし、逃走を試みる画太郎の足場を破壊する。
「わひゃあああ〜〜〜〜〜!!」
爆発とともに再び空中に投げ出された画太郎を、瞬間移動した高田が素早く捕らえる。
腕と首ねっこを捕まえた瞬間、利き腕をヘシ折った。
「ぐあわあ〜〜!!」
「ふん、手間取らせおって。しかし、このまま連れていく途中で、またしても暴れられては面倒。したがって…」
画太郎の首を捕まえた手が、妖怪のものへと変わる。
数倍にはねあがった握力が、画太郎の頸骨をミシミシとしめあげる。
「ぐげげげげ〜〜〜」
「そのそっ首を引きちぎってくれる!!なに、ギャグ漫画家ならば、その程度では死ぬまい!!生きてさえおれば、それでいいと言われているしな」

       ぶ  っ  ち 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ん  !!!!!

「うぎゃあああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!!!!」
ついに画太郎の首は力任せにひっこぬかれ、残った胴体からは極太の血の噴水がほとばしり、雨となって夕暮れ時の街に降り注ぐ。
「ハーハッハッハッハッハッハッッ!!!」
闘争と殺戮の喜びに打ち震える、赤き目の龍皇の哄笑は、逢魔刻の空にけたたましく響き渡っていた。

【漫・画太郎】――――→首だけにされて捕獲

←TO BE CONTINUED
209作者の都合により名無しです:2005/09/06(火) 20:18:17 ID:Rmz1iHLO0
画太郎ちゃんイイ魔法持ってるじゃないの・・・・ってCHONPAキタ━━━━━━(ノ;゚∀゚)ノ━━━━━━!!!!!!
210作者の都合により名無しです:2005/09/07(水) 00:22:41 ID:SfGNGtMT0
高田の強さに納得いかないのは俺だけか・・・
実力者なのは認めるが、どうにも連載後期のグタグタぶりの印象が強くて
戦いでもグタグタになってくれないと「らしくない」よーな気がしてならん。w


> 殺戮の喜びに

いや、殺しちゃダメでしょ、殺しちゃ。どうせ死なないけど。
211作者の都合により名無しです:2005/09/07(水) 00:33:29 ID:nDBR5MJY0
『対漫画家爆死地獄(ズガドーン)』ってエライ懐かしいなw
あと久々にCHONPAって単語を目にしたwwww

どうでもいいけど画太郎って、まんまんさまモードになったら何気に最強な希ガス
212作者の都合により名無しです:2005/09/07(水) 05:09:16 ID:jRHTBO1c0
>高田の強さに納得いかないのは俺だけか
俺もまあ似たような感想だがこんくらいなら許容範囲
それよりズガドーンはいつか原作通りえなり(主人公)あたりにかまそうと思ってたんで
あの当て字の方が残念だ俺はw

あと画太郎の最強呪文はズガドーンじゃなくて禁呪のウロタ(ry
213魁!!餓狼伝 ―完全決着―:2005/09/07(水) 17:16:48 ID:SXGdr9df0
>201
「フッ…とてつもない使い手であったが……やはり勝利の女神はわしに微笑んだようじゃ」
いまだに白煙をたちのぼらせる瓦礫の山に背を向け、後方に待機している馬場康誌の元に歩み寄る。
「お…お疲れ様でした、殿! いい喧嘩でありました!!」
恭しく跪き、“鬼酒”のとっくりを差し出す。
宮下は、それを引ったくるようにして掴み、中身をぐびぐびと呷る。
「う〜〜む…、やはり薄味になってしもうたのう。夢枕の体を回収できなかった以上、急いであらたな贄を補充せねばなるまい」
宮下が言った、そのときであった。
夢枕が埋まった瓦礫の一角が、わずかに動いたような気がしたのだ。
宮下は最初、それを気のせいだろうと思った。
しかし、それは違った。
岩山を形成するなかで、一際大きな瓦礫が目に見えて揺れ始め、周囲の小石がぱらぱらと転がり落ちていく。
「ぬう、貴様!?」
宮下が鬼酒を放り捨て、体ごと振り向いた瞬間、山が内部からはじけとんだ。
「………………!!」
さしもの宮下も絶句するしかなかった。
なんと、瓦礫の山に押しつぶされたはずの夢枕が、自分の体よりも巨大な岩を頭上にさしあげるようにして持ち上げ、立っている。
「馬鹿な……! 信じられん……………!! 貴様の体は一体どうなっている………!!」
愕然としている宮下の前で、夢枕が持ち上げていた大岩を投げ捨てた。夢枕の身体が、ゆらりと向き直った。
「いいケンカだなあ」
夢枕獏が言った。
全身が、バケツ一杯の赤いペンキをかぶったように、血みどろであった。
だが、夢枕は戦意を喪失することなく、血のからんだ歯を見せている。
血みどろなのは、宮下も同じであった。
全身のいたるところの骨を折られ、器官を潰されている。
壮絶な闘いであった。
214魁!!餓狼伝 ―完全決着―:2005/09/07(水) 17:17:29 ID:SXGdr9df0
「いいんだな」
夢枕が言った。
何を言っているんだ。
何がいいんだとこの男は言っているんだ。
わしの知らないことが、何かおこっているのか。
夢枕は、太く微笑した。
強烈な笑みだった。
じわじわと、夢枕の顔の内部にあったものが、水が滲み出てくるように、夢枕の顔の表面に湧き出てきて、それが笑みのかたちになったようであった。
恐ろしい、まるで、鬼のような笑みであった。
夢枕の太い唇の内側で、白い歯が、牙のように光った。
その瞬間――
ぞくり、
と、太い蟲が背筋を這ったように、宮下の背骨を、恐怖が疾り抜けていた。
なんだ、これは!?
宮下は問うた。
己れで己れに問うた。
たった今、自分の背骨を、尻から首筋にかけて疾り抜けていったものについて。
なんだ、これは!?
冷たい汗が、背に張りついている。
背から首筋にかけて、うぶ毛が立ちあがっている。
無数の細かいイボのように、鳥肌が立っている。
動けなかった。
夢枕が、とてつもなく巨大に見えた。
今まで無敵無敗を誇った、この宮下あきらが、白刃を振りあげたまま一歩も動けなかった。
そして悟ったのだ。
これが、生まれて始めて感じる恐怖なのだと!!
自分は、とてつもない相手と闘っていたのだと!!
215魁!!餓狼伝 ―完全決着―:2005/09/07(水) 17:18:07 ID:SXGdr9df0
「かああああああああああああああああああ!」
吼えた。
吼えながら、仕掛けた。
右手に持った斬岩剣を、胴を薙ぐように疾らせる。
しかし、その速度は、宮下が自分で思っているそれよりも、遥かに遅かった。
これまでの閃光のごとき太刀筋にくらべれば、スローモーションもいいところであった。
「ほい」
夢枕獏が、無造作に、右の拳を振った。
その夢枕の拳が、宙を疾ってくる宮下の太刀――それを握る右拳に正面から当たった。
いやな音が響いた。
めりっ、
とも、
ぎちっ、
とも、その音は聴こえた。
宮下の右の拳の甲から、数本の白いものが突き出ていた。
骨であった。
夢枕のパンチを受けた衝撃で、甲の骨が折れ、肉を破って外に飛び出したのである。
「ぬぐうっ…」
宮下が、左手で、自分の右の手首を握って、腰を落とした。
ところが、その腰が一回転し、振り上がった右足が天をつき、踵落としに変化した。
その踵から、肉厚の刃が、飛び出している。
しかし、夢枕は構うことなく、突進する。
踵落としを躱し様、その膝に軽く手刀を落とした。
膝が伸び切ったところに一撃を入れられ、簡単に皿が割れ、関節が外れた。
さらに、夢枕は右手の親指を疾らせる。
目標は喉仏。
少林寺拳法で言うところの仏骨。
夢枕の容赦のない一撃が、親指の根元まで喉にめりこんでいる。
「けはぁッッ…………ッッ………ッッ」
これだけで十分に必殺の一撃。
宮下の口から、多量の吐瀉物がまき散らされる。
216魁!!餓狼伝 ―完全決着―:2005/09/07(水) 17:18:40 ID:SXGdr9df0
「強いな夢枕獏。感動的なほど」
虫の息をしぼりだすように、宮下は言った。
「弱気じゃねェか。小説一筋に生きちまったオイラによォ」
そこで、宮下が反撃に出た。
左拳で夢枕の顔面を狙いに行ったのである。
しかも、その左拳からは、人指し指と中指が立っていたのである。
宮下は、左手の指で、夢枕獏の眼を潰しに行ったのである。
ぐしっ!
という音が響いた。
顔面に向かって疾ってきた宮下の左拳を、夢枕獏の額が迎撃していた。
宮下の左手の人指し指と中指が折れ、二本の指にはさまれたその付け根が裂けていた。
「しゃっ!」
鋭い呼気が、夢枕獏の太い唇から洩れた。
夢枕の右肘が、宮下の顎を、真横から叩いていた。
がくん、と、宮下の首が、頚椎を支点にして、半回転した。
白眼になった。
しかし、白眼になったまま、宮下は、夢枕にしがみついてきた。
夢枕の両腕ごと、夢枕を抱え込んだ。
宮下の全身が、激しく痙攣していた。
しかし、宮下は、夢枕の身体を抱きしめ、その腕に力を込める。
めきめきと、夢枕の背骨が音をたてる。
熱い、岩を抱いたような感触を、宮下は感じていた。
信じられないことがおこった。
宮下の腕の中で、凄まじい力がふくれあがって、宮下の腕をはじいたのだ。
圧倒的なパワーの差であった。
ブルドーザーの動きを、素手で止めようとするようなものであった。
その瞬間に、熱した鉄を埋め込まれたような衝撃が、宮下の胸を貫いていた。
夢枕の左拳が、宮下の胸の中心部にめりこんでいたのである。
217魁!!餓狼伝 ―完全決着―:2005/09/07(水) 17:19:43 ID:SXGdr9df0
「あの人の正拳中段突きは特別製だ。ブ厚い筋肉に守られちゃいるが、胸骨は無事じゃすまねェ」
馬場の解説を裏付けるように、宮下の胸骨にはすでに蜘蛛の巣状の亀裂が走っている。
熱いパワーが、連続して、胸元に突き刺さってきた。
今度は、五段突きだ。
胸骨も肋骨も、崩壊していた。
宮下は骨折の激痛と、呼吸困難の苦しみに、両眼をひん剥き、口をだらしなく開けて身を折っている。
「どうでェ……闘う物語に全てを捧げた男のパンチは…?」
「………………………ッッ」
「おめェさんにゃ、できねェ芸当だ」
痙攣する宮下に、夢枕が言う。
「創作に全てを捧げるのではなく――――――
 創作が己に全てを捧げたとカン違いしている、おまえさんにゃ、とうていできねェ芸当だ」
低くなった宮下の頭部を、夢枕が両手で抱え、
「ちょい」
いっきに引き落としざま、右膝を撥ねあげた。
宮下の顔面、鼻頭に、夢枕の膝頭がめり込んだ。

ぐちっ!

鼻の軟骨が、音を立てて潰れていた。
夢枕の右膝が、宮下の顔を、真下から突きあげて、正面を向かせていた。
しっかりと腰を落とした騎馬立ちから夢枕が拳を放つ。
宮下の左膝から、嫌な音がした。
左膝が、破壊された音。
宮下が踊るようによろけ、座りこむように倒れた。
「創作の神様は、ケチでしみったれなんだ」
夢枕が唾を吐き捨てながら、言った。
「あれもこれもどれも全て――――差し出す者にしか本物はくれねェよ」
218魁!!餓狼伝 ―完全決着―:2005/09/07(水) 17:35:03 ID:SXGdr9df0
敗れるのか!?
わしが!?
宮下の鼻から、滝のように血が滴り落ちて、床を叩く。
「さて……とどめだ」
と、夢枕は、囁くように言った。
太く微笑した。
なんという優しい笑みを浮かべることができるのか。
優しい、怖い笑み。
宮下は、動けない。
すでに、両手両足の全てを破壊されている。
もう、どういう体力も残っていない。
一歩、夢枕が前に出てきた。
宮下は動けない。
泣きそうな顔をしている。
口を開けて、唇を歪めて、おこられるのを待っている子供のような顔をしている。
いけないことをしてしまった罰を受ける前の子供。
怖いおしおきを待っている子供。
たまらない恐怖。
逃げたくても足が動かない。
また、一歩、夢枕が近づいてくる。
さあ、おしおきの時間だよ……
体が震えている。
宮下の体だ。
小刻みに、小さく。
それが、だんだんと大きくなる。
誰だ。
誰が震えているのだ。
わしか。
わしの体が震えているのか。
がくがくと全身が震えた。
歯が、がちがちと鳴っている。
219魁!!餓狼伝 ―完全決着―:2005/09/07(水) 17:35:42 ID:SXGdr9df0
夢枕が、一歩、また近づいてきた。
宮下は、死を覚悟した。
夢枕が、拳を構えた。
それが、矢のように放たれた。
宮下の顔面に向かって、真直ぐに疾る。
しかし、その拳が、宮下の命を奪うことはなかった。
止まっていた。
夢枕の、ころりとした赤ん坊のような拳が、宮下の眼前、触れるか触れないかのところで止まっていた。
次の瞬間、宮下の顔面の皮膚を、凄まじい拳風が叩き、歪めた。
それだけであった。
「……?」
唖然とする宮下が上を向くと、夢枕の人懐っこい笑みが見下ろしていた。
「いい勝負だったぜい。いやあ、汗をかいた」
そう言って汗をぬぐい、脱いだ服を再び着始める。
「俺(おい)らはもう帰(けえ)るがよ」
宮下を振り返らずに、夢枕が言った。
「続ける続けねェは、おめえさんの自由だ。勝手に後ろから襲いかかるもよし。敗けたと思うなら放っとくもよし。決めるのはおめえさんだ」
とどめを刺さない?
ここまできて、勝敗を相手に委ねるというのか?
宮下は、愕然とした。
愕然として、そして思い知った。
勝てまい。
今の自分では、何万回向かっていったところで、この男にはかなうまい。
こうすれば良かったとか――――――――
あれを使用(つか)ったら勝てたとか――
一点の疑問の入る余地もなく――――――
曇りもない――――――真の敗北。
宮下は、それを受け容れた。

「わしの……敗けだ」
220魁!!餓狼伝 ―完全決着―:2005/09/07(水) 17:36:53 ID:SXGdr9df0
そこには何の打算もなく――
ましてや、それは策略でもありはしなかった。
一度たりとも敗北を知らなかった男、宮下あきら。
初めて受け容れる敗北。
心に去来したものは。

「俺らに勝ちたきゃ、まずは酒をぬくこった」
宮下のその様子を、首だけめぐらして見た夢枕は、言った。
「あと20年は現役でいてやるぜ。還ってこい、宮下」
「―――」
宮下はしばらく無言でいたが、やがて可笑しそうに笑いだすと、そのまま力尽きたように仰向けに地面に寝転んだ。
「フフフ、たいした男よ、“三闘神”夢枕獏…………。
 どうやら、この勝負、全てにおいてわしの完敗のようだわい」

憑き物が落ちたような、穏やかな宮下の顔。
血みどろでありながら、心から安らいだような表情。

心に去来したもの――――

それは意外にも解放という名の歓喜(よろこび)だった。
221作者の都合により名無しです:2005/09/08(木) 11:32:32 ID:u7wZbb3H0
決着記念age
あんだけ極悪非道展開だったのに最後えらい爽やかで良い
しかし酒が薄いって、もしや中の人たちは死んでるのか・・・
222サルガッ荘の長い日〜あの窓の向こうに:2005/09/09(金) 16:28:51 ID:tYVH/6xJ0
(25部551)

武井「最近井上のヤツ、特訓にさそってくれねーなあ・・・。
  車雑誌も全部読んじまったし、いよいよ何をすればいいんだ?
  あー、早く帰りたい。いつかまた家族で温泉に・・・はあ〜」


 閉じられた楽園・宇宙墓場サルガッ荘。
 夏も終わりに近づき、狭い星にも季節の変わり目が訪れていた。
 セミの音が消え、夜の帳と共に秋の虫たちのささやかな合唱が始まる。
 古ぼけた木造アパートが一層の侘しさを纏い始める・・・。


夜風が涼しくなり住人が寝やすくなった、ある曇り空の夜。
暇人の武井が寂しがるのをよそに、井上和郎は今夜も“相棒”岩明均と共に、
マンツーマンの特訓を木造アパートの裏庭で行っていた。
相変わらず周りと馴染めず浮いている武井は、
心のモヤモヤを持て余しながら、彼らを見下ろす位置の廊下の窓を開けた。

 「しかし井上はこの前から何の特訓をしてるんだ?
 あんま無理するとデコの血豆が治らんぞ。前に脳挫傷しかけたんだし」
狭い惑星の、闇に溶けた木々がカンテラの炎で輪郭を主張する中、
かすかに響く連続した“パァン”といった破裂音。
駄菓子屋で売っている小さな爆竹の玉を踏んでいるかのような軽い音は、
和郎が武井抜きで特訓をするようになってから頻繁に起こる。
 「なんかの魔法でも習ってんのかね。明日にでも聞いてみるかな・・・」
独り言を呟き、窓を閉めようとする武井に万乗が声をかけてきた。

 「あ、武井君!夜中で悪いけど、管理人さんが大事な話があるって。みんなも来るよ」
 「・・・へえーい。今行くわ」

武井は面倒臭そうに後頭部と腹を同時に掻きながら万乗の呼び出しに応じた。
223サルガッ荘の長い日〜あの窓の向こうに:2005/09/09(金) 16:30:20 ID:tYVH/6xJ0
岩明『違う。そうではない。目印に向かって放つのではなく、空中に・・・』
和郎「で、でも何もないところに集中するのは難しいよ。音が耳に響くし」


小雨が降ってきたので、荘の裏庭の地下倉庫に移って特訓を続ける和郎。
手には武器を持たず、気功のポーズっぽいけど珍妙な動きをしている。
やってる事はいわゆるチャクラ溜めの方面だ。それこそ武井が得意そうなのだが、
和郎にはいまいち似合わない。外から持ってきた旧式カンテラの炎が揺れる。

 「なあ岩明さん、本当にこんな地味な“超能力”が役に立つの?
 そもそもこの特訓は何のためにやっているんだい?」
首をひねる和郎に対し、岩明はやや突き放しながら答える。
 『今のそれは只の取っ掛かりだ。きちんと成功したら教える。
 カズロウ、お前には集中力が足りないのだ。“これ”にはコツがある』

2人の視線の先には、BB弾が埋もれたような、幾つもの小さな穴の開く地面。
先日和郎が転倒事故で生死の境をさ迷った際に岩明の細胞で負傷部分を補い、
結果細胞融合が進んで額に赤い玉が浮き、和郎は岩明の持つ不思議な能力に開眼したのだ。

 「って言われてもなあー。穴開けるだけってのはな〜。それに・・・」
困惑しきった表情で和郎は己の手の平をじっと見つめる。

地面の穴は、和郎が岩明に言われるまま、ハンドパワーを出す要領で、
必死に手の平に気合を送り込んだ結果生まれたものだ。
ごく小さな穴は土や石、木やノコギリ、雑誌やガラス瓶・・・材質を選ばず、
どこにでも遠慮なく開いてしまう。和郎は素直に感心したが、
どうやら本来はその破壊エネルギーは空中に“生み出す”ものらしく、
掴みに失敗し目印がないと穴空け能力が発揮できない和郎は、
ここ何日もずっと『宙になんか作る』特訓を延々させられていた。

 「僕は手の平からエネルギー弾とか撃てるタイプじゃないし、ピンと来ないぞ」
224サルガッ荘の長い日〜あの窓の向こうに:2005/09/09(金) 16:32:11 ID:tYVH/6xJ0
ぶつぶつ言いながらも、真面目に特訓を続ける生真面目な男。
目を瞑り深呼吸し、改めて両手を「見えない球体を掴む形」に揃えて精神集中した。
じりじりと時が流れる。と。

   “ふっ”

 『!』
ほんの一瞬だが、岩明は確かに見た。
石油ランプの炎に照らされた、小さなシャボン玉のような存在が、
和郎の両手の間に陽炎のように生まれて消えたのだ。

 「はあはあ・・・どうだった?」
 『いいぞ。今の要領だ』
 「えっ!?もしかして出たの?出たのか!やったー」

はしゃぐ和郎に優しく言い聞かせるように岩明が指示する。
今の手応えを確かなものにするために。
この<先>はさらに厳しいのだから。

 『そうだ。もう一度だ。イメージを今のように膨らますんだ。
 ・・・今浮かんだ何かを、指先で押さえる、掴まえる・・・といったような』
 「・・・やってみる」
小さく頷いて再度ポーズを取る和郎。
岩明の、どこかへ導くような声を聞きながら。
 『小指の外側・・・親指の対称位置に、もう一本親指があるように、
 イメージしてみろ。そして“12本の指”で一点を押さえるように・・・』

和郎の両手に包まれて、奇妙な虹色を帯びた透明な球体がぷくりと生まれる。
ピンポン玉ほどだったそれは和郎の集中力が高まるにつれ、
直径を伸ばし野球の硬球よりやや大きいほどまでに成長した。
これは一体なんなのだろう・・・?
225サルガッ荘の長い日〜あの窓の向こうに:2005/09/09(金) 16:33:19 ID:tYVH/6xJ0
 『カズロウ、少し後ろに下がって目を開けろ。手はそのままだ』

岩明の指示通りにした和郎の瞳が見たものは謎のシャボン玉。
 「わあ?なんだこりゃ・・・」
 『動くな、そいつに触れると身体ごと“持っていかれる”ぞ。
 集中を切らさず、それを地面に落として当てるように思念するんだ』
 「ひえぇ〜」
おっかなびっくり、謎のシャボン玉を徐々に地表に移動させる。
ふんわりと球体が倉庫の床土に触れた瞬間、化学反応を起こしたかのようにスパークした!


           “ パ ァ ァ ン ”

 「わわっ!!」
強烈な花火か炸裂弾が当たったような大音響と共に地面が光る。
刹那の閃光が消えた後に残る、すり鉢状に穿たれた土の跡。
直径20センチ以上の、一片のデコボコもなく美しい半円の断面。
 「・・・!これは・・・?」
思わず背後の壁にもたれた和郎の表情が僅かに強張った。

 『───そうだ。それが<窓の外>だ。
 窓の外は物質に当たると反応し、自分と同じ面積分の物質を、
 “窓の向こう側”に持ってゆく。直接触れた部分は物理法則を無視し切り取られる。
 既存の言葉で言えば『異次元と繋がる』のかもしれないが・・・
 窓の向こう側の事は、私にもわかりかねる。ただ窓に手が届くだけだ・・・』

それは岩明の特殊能力のひとつであり、
矢吹に身体細胞ごとパクられ<別府浮上作戦>時に使用されたもの。
シャボン玉のように異界への扉が開かれ、あらゆる存在を『持ってゆく』。
土でも金属でも。水でも空気でも。人の身体でも術者本人でさえも。
直接<窓>に触れた部分は、強烈な反応で切断されてしまう。
不安定で非常に危険な能力なので、岩明自身もあまり使用しないようだ・・・。
226サルガッ荘の長い日〜あの窓の向こうに:2005/09/09(金) 16:35:26 ID:tYVH/6xJ0
 「そんな・・・そんなわけのわからない能力、なんで使えるんだ?」
 『答えがあれば私も知りたいものだな。
 答えが見つからなかったので、昔は随分悩んだものだ』
 「悩んだ?あんたでも悩む事があるんだ・・・意外すぎる〜」
 『解答を得るには情報量が少なすぎたのだ』
 「あー照れてる照れてる」
 『心拍数は平常だ』
 「またまた〜」

不毛な会話を打ち切るように、岩明がそっけない態度で言い放つ。
 『答えは自身に見つけろ。お前の手は<窓の外>に届いた。
 素質があれば成長し、汎用性も高まる。板垣恵介の脳味噌を抉り取れるし、
 条件さえ整えば、窓の向こうに行ける事も・・・あるかもしれないな」

 「・・・僕に、そんなチカラが・・・?」  ──和郎の中で何かが目を覚ました。

           ***  ***  ***

 『疲れて寝てしまったか。夜明けも近いし無理もない』

あれから何時間も<窓の外>を形成していた和郎はついに力尽き、
膝をついて倒れた直後すやすやと眠ってしまった。右手に寄生する岩明は、
自分の身体を変形させて和郎を引っ張りあげ、引きずりながら階段を昇る。
すると地上では、荘の廊下や部屋の電気が煌々とついているではないか。
岩明が荘の正面玄関に回ると、雨混じりの風の中、
武井を始め荘の住人たちが、木の板や工具を持って忙しそうに走り回っている。
大量の麻袋にスコップで土を入れてる最中の技来に、岩明は事情を聞いてみた。

 「今日は台風が来るそうだ。管理人の情報入力がどうたらで強制的に訪れるらしい。
 最悪建物が吹っ飛ぶらしい。そうだ岩明、地下庫の入口に土嚢を積んで来てくれ」
 『それはまた災難だな。支度しよう。起きろカズロウ』
夏の終わり、こうして彼らの長い一日は始まった。       (つづく)
227作者の都合により名無しです:2005/09/09(金) 19:12:58 ID:Y3dB0P9z0
>板垣恵介の脳味噌を抉り取れるし、

ムチャムチャムチャムチャムチャムチャ

いやーしかしなごむわこのストーリー。
地道な特訓が微笑ましい。
228作者の都合により名無しです:2005/09/09(金) 23:19:03 ID:6k3HmF9/0
そういえば、森はまだ行方不明なのか?
229作者の都合により名無しです:2005/09/09(金) 23:38:27 ID:NjLdfEff0
そうだよ
元気だといいけどね
230深く暗い絶望:2005/09/10(土) 21:55:44 ID:vZp97S0l0
>>143

もう、どれだけの刻を戦ったのだろう。
ビデオを見終わった後、すぐに再開した銃撃戦は、いつ果てるともなく続いていた。
平野「楽しい・・・楽しいぞ!!内藤!伊藤!!」
伊藤「フフフ・・・・」
大好きな闘争に、喜悦の収まらない平野に伊藤。
内藤「はぁ・・はぁ・・はぁ・・・・・」
だが、内藤は一人、疲労の極致にあった。
銃弾は一つも喰らっていない。しかし、不死身の化け物である化け猫や吸血鬼に対し、ほとんど生身と変わらないプラントである彼は、全ての銃弾を防がねばならず、蓄積された疲労は内藤の肉体と精神を限界へと追い込んでいた。
平野「ハーッハッハッハ、どうした内藤!!動きが鈍っているぞ!」
内藤「クッ!!」
平野のジャッカルから放たれた規格外の凶弾を、エンジェルアームによってなんとか受け止める内藤。だがその彼を、伊藤の銃弾が、更に追い討ちを掛ける。
内藤「冗談!!」
放たれた幾十の鉛玉。
エンジェルアームはもう限界。
迫り来る死の凶弾に対し内藤は・・・・
伊藤「ほう・・・」
最強の個人兵装、巨大な十字の武器「パニッシャー」を盾にすることによって防いでいた。
平野「クックック、さすがは内藤。これくらいでは終わらんな・・・」
旧友の言葉に、薄い笑みで返す内藤。
伊藤「だが惜しいな・・・」
伊藤に対し右手のシルバーメタルの愛銃を、平野に対し左手でパニッシャーを構える内藤。
平野「その体はもう・・・」
両銃を構える内藤の体がグラリと揺れる。
平野&伊藤「「限界のようだな・・・」」
内藤は、全身から血を吹き出させ、倒れこんだ。
231暗く深い絶望:2005/09/10(土) 21:58:41 ID:vZp97S0l0
内藤は、村枝との戦いの傷がまだ完全には癒えていない。
その傷痕が、激しい戦いにより、再び開いてしまったのだ。
伊藤「もう終わりか、内藤。」
内藤「うっ・・・くっ!!」
パニッシャーを杖に、なんとか立ち上がろうとする内藤。
だが、体を動かすたびに、傷口から血が流れ出していた。
それでも内藤は、なんとか這い上がるように立ち上がった。
平野「どうした、ヒューマノイド・タイフーン」
内藤「ハア・・ハア・・・」
平野に対し、血だらけの顔を向ける内藤。
平野「調子はどうだ?満身創痍だな。血がなくなるぞ・・・」
死相すら浮かぶ内藤に、平野は余裕のある口調で話しかける。
平野「どうするんだ?お前は犬か?それとも漫画家か?」
内藤「それがどうした、吸血鬼」
全身血だらけになりながらも、大地をしっかりと踏み締め、内藤はパニッシャーと拳銃を胸の前で交差するように構えた。
内藤「少し、古傷が開いただけだ」
平野と伊藤を睨みつけ、内藤は気丈に言い放つ。
内藤「能書き垂れてないで来いよ。かかって来い!!ハリー!(早く!)ハリー(早く!)」
誇り高い内藤の姿に、平野は一瞬驚いた顔を見せる。
平野「素敵だ。やはり漫画家は素晴らしい・・・」
それは、伊東や内藤が初めて見る、この上もないくらい優しい平野の笑みであった。
平野「ならば来い、旧友よ!」
何故か、平野は一息に遥か後ろに飛び退いた。
内藤&伊藤「!?」
それと同時に、武装親衛隊の腕章を付けた数百の兵隊が、平野と二人の間を埋め尽くした。
最初に内藤に落とされたヴィアサクラの吸血鬼たちが、エリア88が変形した事によって乗り込むことが出来るようになり、平の元に駆けつけて来たのである。
平野「この、吸血鬼の河を越えてな!!」
内藤は苦渋に、伊藤は喜悦に、それぞれの顔が歪んだ。
232暗く深い絶望:2005/09/10(土) 22:02:59 ID:vZp97S0l0
狂った兵士と、狂った時間と、狂った戦いと、狂った銃弾と、狂った少佐と、狂った黒猫と、狂った吸血鬼の中で、内藤はただひとり人間でいた。
彼はいまだ、ひとりも殺していない。
兵士「シィィィィ・・・」
内藤「クッ!」
だが、急所を外す彼の銃弾は、吸血鬼相手では大した効果もなく、次第に追い詰められていった。
一方、伊藤は吸血鬼相手に思う存分殺戮を楽しんでいた。
両手の銃で牽制し、敵の群れの中に飛び込み、パソコンを取り出し即座に札を四方に飛ばし、消去(デリート)。
一度に幾十の兵士を葬っていた。
長期戦になれば、こちらの弾も尽き、大勢の兵士に集られ、嬲り殺しにされるだろう。
内藤の脳裏に一瞬、平野に連れて行かれ、矢吹のところで殺されたアシスタントたちの顔が思い浮かんだ。
内藤「うおおぉぉぉ!!」
その瞬間、内藤は平野に向かい一気に駆け出していた。
内藤「邪ァ魔ァアをぉおォォ!すゥるゥなああ!!」
前を遮る敵をパニッシャーで薙ぎ倒しつつ、平野に迫る内藤。
一瞬、平野までの視界が開く。
内藤「ひィらァのォォォォォ!!」
これ以上ないという喜悦をうかべる平野に、内藤はパニッシャーを裏返し、ロケットランチャーを放つ。
砲丸は、真っ直ぐに平野に迫り、そして・・・
ガ コ ン ! ! 
内藤「なっ!!」
突如現れた、紅いサイドカーの男によって、弾き返された。
返された砲弾が近くで爆発する中、内藤はその男の姿をしっかりと確認した。
その男の全身は、黒で埋め尽くされていた。
左目には十字架が埋め込まれ、両の手には平野のジャッカルすら上回る巨大な赤と黒の拳銃が握り締められていた。
「ケルベロス」かつての大隊の名を冠した二丁一対の銃である。
両の二の腕には鎖が巻きつけられ、それによって髑髏の印が付いた異形の棺桶が背中にぶら下げられていた。
233暗く深い絶望:2005/09/10(土) 22:05:47 ID:vZp97S0l0
内藤は、その銃を知っていた。
内藤は、その服を知っていた。
内藤は、その棺桶を知っていた。
内藤は、そのサイドカーを知っていた。
内藤は、その男の名を知っていた。
ここにいる誰よりも、その男のことを知っていた。

内藤「黒・・・・田・・・」

絶望が、内藤の精神を黒く染めた。

平野「なかなか面白い趣向だろう。フフ、彼はわたしの最高傑作だ!!」
自慢のおもちゃを見せびらかす子供のように、平野は語った。
内藤「平野・・・君なのか? また、君なのか!!」
激昂する内藤に、平野は笑顔で返した。
平野「死んでいた彼を蘇らせるには、これしかなかったんでね」
内藤「まさか、やったのか・・・ネクロライズを!!」
平野「そう、素晴らしい技術だよ。ハハ、死にぞこない(アンデット)を実践に投入しようと考えたのは、後にも先にも三つだけだな」
平野は内藤を、ゆっくりと指差した。
平野「ひとつは君ら」
そして、今度はその指で自分を指した。
平野「ひとつは私」
そして、最後にその指を内藤の後ろの方に向けた。
平野「ひとつは・・・・」
パララララ
その瞬間、平野の指差した方向からタイプライターを打つような音がすると共に、数十発の弾丸が内藤を襲った。
伊藤「俺ら」
弾丸をもろに喰らい、弾き飛ばされながら内藤が見たのは、周囲の吸血鬼を消去して悠々と立つ伊藤と、その後ろに幽鬼のように立つガクランを着て髪をオールバックにした青年の姿であった。
伊藤「俺の方からも紹介させてもらうよ。我が同胞で12使途のひとり、邪竜・雅之だ」

内藤の心に、何かが壊れる音が、はっきりと聞こえた・・・・
234まぶしく気高い希望:2005/09/10(土) 22:09:27 ID:vZp97S0l0
神様は本当にいるんだろう・・・・
罪を犯した自分に、こんなにも辛い罰を与えるのだから・・・・

全てが壊された。
いや、全部自分で壊したんだ。
(もう、だめだな・・・・)
立ち上がる体力も、戦う気力も、全ての力を失い内藤は横たわっていた。
止めを刺そうと迫り来る軍靴の音を、ぼんやりと聞きながら、彼は最期の刻を待っていた。
胸中にあるのは、無限の後悔と過去への哀愁。
(そういえば、まだちゃんと、ありがとうって言ってなかったな・・・)
暗く冷たい心の中で、ただひとつ自分を救ってくれた女性の姿だけが輝いていた。
(もう一度、あいたいな・・・・)

―――――――――――立ちなさい、この優男―――――――――――

唯ひとつ心に残った輝きが、彼女が自分を叱咤する幻聴を聞かせてくれた。
そう思った内藤は、僅かながら力を取り戻し、うっすらと瞳を開けた。
その瞳に映ったのは、狂気が支配する狂った吸血鬼の兵士と、敵となったかつての旧友と、
敵となったかつての仲間と・・・・・・

「ボサっと寝てんじゃないわよ、早く立ちなさい、内藤泰弘!!」

それらの前に雄々しく立ちはだかる、紅いコートを着た彼女の姿だった。
235飢えた蛇竜:2005/09/10(土) 22:14:00 ID:vZp97S0l0
チャンピオンの"紺(あお)きドラグイーター"――山本賢治
突如現れた最悪の敵に、荒川と渡辺は戦慄した。
2対一と言えども、あちらは複数のモンスターを召喚でき、こちらは気を失った怪我人がいる。
はっきり言うと、こちらが不利であった。
渡辺(先手必勝!!)
渡辺が、一気にケリを付けようと、バイオリンを構えた。
だが!!
ガキン!!
渡辺「クッ!」
山本が素早く放ったクナイにより、唯一の武器であるバイオリンを弾き飛ばされた。
山本「こう見えても、忍者漫画も描いててね。まあ、エロ漫画だけども」
状況は、更に最悪になっていた。
荒川(まずいわね・・・)
ただの能力漫画家なら、肉弾戦に持ち込めば勝機があった。
能力漫画というものは、戦闘描写において描写が大味な為、格闘漫画のようなに緻密な理論が少なく、格闘漫画家がその隙を付くのは容易であるからである。
そして荒川は、多少なりとも武術的な要素を漫画で描いていた。
だが、相手が忍者漫画家だと、緻密な戦闘描写だけでなく、容赦のなさ、冷酷さ、卑劣さが加わり、とても荒川が対抗できるだけのスキルを持ち合わせていなかった。
荒川(だけど、迷ってられないわね・・・)
時間がたてば、それだけ状況は悪くなる。
伊藤を人質に取られる前にケリを付けなければ。
荒川は素早く判断し、一先ず地面から槍を練成し、山本に対し構えた。
―――――――いや、構えようとした。
236飢えた邪竜:2005/09/10(土) 22:15:41 ID:vZp97S0l0
渡辺「荒川!!」
練成の瞬間、荒川の注意がそれた隙を突き、山本が一気に間合いを詰め、腰から引き抜いた忍刀を彼女の喉元に押し当てていた。
荒川「ひっ!」
驚愕と恐怖のあまり、思わず声にならぬ悲鳴を上げる荒川。
彼女は、死を覚悟した。
だが、山本はその刃で荒川の柔肌を切り裂くことなく、いきなり姿勢を下げ、屈みこんだ。
その意味を理解する間も無く、今度は山本が背を屈めた後ろから、黒い影のような女が巨大なハサミを振りかざし、荒川の鼻先三寸の空間を切り裂いた。
嘆き女バンジーである。
荒川「な!!」
はらりと、彼女の前髪が数本風に運ばれていった。
「弾きにくいバイオリンね・・・」
後ろから、最近聞き馴染んだばかりの声が聞こえると同時に、目の前の山本はかがんだ時の足のバネを利用して飛び上がり、最初の位置まで後退していた。
荒川「気が付いたの、伊藤・・・」
振り向かずに、荒川は背後に話しかけた。
伊藤「あれだけ騒げばね・・・」
以外に元気な回答が返ってきた。
荒川「危ないじゃないの、もう少しで私の首も飛ぶとこだったじゃないの!」
伊藤「ええ、大変惜しいことをしたわ・・・」
心底残念そうな口調に、荒川は本気で殺意を覚えた。
渡辺「それはそうと占い師の姉ちゃん、そろそろ俺のバイオリン返してくれないだろうか・・・」
渡辺の心底情けない口調に、荒川は本気で同情の念を覚えた。
237飢えた邪竜:2005/09/10(土) 22:19:54 ID:vZp97S0l0
山本「3対1・・・しょうがねえな・・・」
山本はそう呟くと、懐からカードデッキを取り出した。
―――――まずい!!
三人は同時に思うと、一斉に山本に対して動いた。
モンスターを召喚されると、情勢は簡単に逆転される。
だが、その一方、術者は召喚に一瞬の隙を生じる。
ピンチでもあるがチャンスでもある。
今を逃せば次はない。
そう思っての突撃である。
だが、それは山本の誘いであった。
怪我をして動きの鈍い伊藤。
後ろにいる上、伊藤からバイオリンを受け取る間のいる渡辺。
身軽な荒川。
自然に、荒川はひとり突出することになる。
気づいたときにはもう遅い、数瞬の間だが荒川は山本と接近戦でタイマンを張ることになった。
そして、山本の忍刀の一撃は、荒川の槍よりも数段早かった。
再び、山本の凶刃が荒川の喉元を狙い、そして・・・
ガキン!!
今度は横合いから割り込んだ剣によって、受け止められていた。
荒川「遅いわよ・・・」
銀色の長髪に丸いサングラス、何故かびしょ濡れの緑のコートを着た男。
荒川は、横目でその剣の主を確認すると、不機嫌そうに言った。
その男は、ただニヤリと笑って応えた。
山本「何者だ、あんた・・・」
荒川と割り込んできた男、両方に気を向けながらも、山本が問うた。

「ただの・・・冒険屋だ・・・」

剣の男、吉冨昭仁は、ただそれだけ答えた。
238飢えた邪竜:2005/09/10(土) 22:24:02 ID:vZp97S0l0
山本「4対1か・・・・」
今度こそ、召喚をしないといけないかと山本は考えていた。
吉冨「いや・・・」
だが、冒険屋と答えた男から、意外な答えが返ってきた。
吉冨「1対1だ・・・」
山本(この男、この俺とタイマンを張る気か?)
荒川「遅れてきて、なに格好着けてるのよ!!」
吉冨の勝手な物言いに、荒川が非難の声を上げる。
だが、吉冨の返答は意外なものであった。
吉冨「この先で、内藤が戦っている・・・」
荒川&伊藤「!?」
吉冨「速く行かないと・・・死ぬぞ・・・」
伊藤「そんな、内藤様が・・・」
山本「おっさん、人のことより自分の事を心配したほうがいいんじゃないのか?」
猛烈な殺気を、吉冨に向け山本が言う。
山本「よほど自信があるようだな、俺とタイマンで戦おうなんて」
殺気は膨れ上がり、見えない烈風となって吉冨を襲う。
吉冨「いや・・・・」
その殺気を、そよ風でも受け流すように吉冨は言った。
吉冨「こいつらは、内藤に用がある。俺は貴様に用がある。ただそれだけだ・・・・」
荒川「吉冨・・・」
吉富「早く行け、時間がないぞ・・・」
荒川は黙って頷くと、今だ、噛み合ったままピクリとも動かない二つの刃からそろりそろりと下がり、そして後ろの二人の元まで一気に飛び退いた。
伊藤「荒川!!」
荒川「行くわよ伊藤、それに渡辺先生!!」
渡辺「って、俺もかよ!」
微動だにしない吉冨と山本を横目に、荒川たち三人は足早にその場を立ち去った。
吉冨「さて・・・」
3人が完全に見えなくなった後、吉冨と山本はまるで申し合わせたかのように同時に飛び退いた。
山本「やるかね・・・」
239飢えた邪竜:2005/09/10(土) 22:25:46 ID:vZp97S0l0
山本「ソニックプラス!!」
山本は、カードから一体のモンスターを呼び出した。
呼び出された鳥竜は、山本の頭上で一声鳴いた。
一方、吉冨は手にしていた剣をバリバリと食べていた。
山本「ところでおっさん、俺に用って何だ?」
剣を食べ終わった吉冨は、ポケットからネジを取り出しながら答えた。
吉冨「ああ、ひとつ言いたいことがあってな。」
山本「なんだい?今なら出血大サービスで聞いちゃうよ」
吉冨「ああ・・・」
吉冨は、口にネジを咥えながら言った。
吉冨「おまえに・・・」
ネジを咀嚼し、飲み込む。
吉冨「BJを描く資格はない・・・」
サングラスをずらし、紅い瞳で山本を睨みつけ、ハッキリと言った。
山本「ああ・・・そうかよっ!!」
少し頭に血が上った山本は、ソニックプラスを吉冨にけしかける。
吉冨「完成・・・」
吉冨が、機械混じりの大剣を右手から出し、天に掲げた。
吉冨「エイボーン!!」
掛け声高く吉冨が叫ぶと、一匹の竜が横合いからソニックプラスに飛び掛り、そのままもつれるように空中で戦いを始めた。
吉冨「さて、こちらも始めるか・・・・」
吉冨は、サングラスを戻し、山本に対し静かに大剣を向けた。
240今そこにある希望:2005/09/10(土) 22:34:43 ID:vZp97S0l0
紅 い 花     「 ゼ ラ ニ ウ ム 」
花 言 葉 は   「   決   意   」

内藤が好きだった花。
黒田が好きだった花。
その花が今、目の前で咲いていた。
内藤「君は・・・・」
信じられないといった顔で、内藤は彼女の姿を見つめた。
荒川「あらためて自己紹介させてもらうわ。荒川弘、漫画家よ!」
自分の恩人の名を、内藤はその胸に刻んだ。
荒川「こらこら、ボサッと寝てるんじゃないわよ。後ろを見なさい!!」
言われて振り向いた先には、幾十の吸血鬼が迫りつつあった。
慌てて銃を構えるも、全身の傷が痛み、まともに体が動かないでいた。
内藤「やば・・・」
だが、敵との間に紅い槍を持った女性が割って入り、吸血鬼たちを易々と焼き裂いた。
「ラブ・アンド・ピースと叫んで撃てば、世の中はなんとか片付き申す」
伊藤真美・・・・
占い師の格好をした彼女は、目にいっぱいの涙を浮かべながら、満面の笑みで言った。
真美「そう教えてくださったのは、あなたですよ」
内藤「真美・・・・」
まだ、自分を慕ってくれる仲間がいた。その事実が、内藤に顔に笑顔を取り戻させた。
真美「おかえなさいませ、内藤様。やっと・・・やっと・・・・」
伊藤真美は、内藤の顔を見たとき、全てが元に戻ったことを知った。
あの、優しかった内藤が戻ってきたのだ。
真美「よかった・・・ほんとうによかった・・・」


荒川「よくない!!」
241名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/10(土) 22:36:28 ID:bs4Dks+W0
おお、大作キター!
微妙に時間軸が分かりづらいが、吉富の加勢で山賢から逃れた荒川が、内藤の窮地に駆け付けたってことでいんだよね?
しかし、内藤ボロボロだな・・・
242名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/10(土) 22:39:22 ID:bs4Dks+W0
おう・・・リロし忘れてた失礼
243今そこにある希望:2005/09/10(土) 22:41:42 ID:vZp97S0l0
周りは幾百の吸血鬼。その全てが敵。
しかも、後ろの方には、大物が4人も控えている。
とても楽観視できる状況じゃない。
それなのにこの女ときたら・・・
真美「うるさいわね、人がせっかく感動に心震わせてるときに・・・」
と、この調子である。
ここいらで、気を引き締めないと本当に死んでしまう。
荒川「感動している暇なんかないわよ、根性みせなさい、伊藤!!」
真美「ふん、GUN-HO-GUNSの手腕を見せてあげるわ」
二人は同時に動く。
荒川は練成した槍を、真美はアルファクロスを、それぞれ掲げて吸血鬼たちに切り込んでいった。
荒川の槍が敵を切り裂く。だが、吸血鬼相手では大したダメージはない。
しかし、彼女は敵が槍に斬られてひるんだ隙に、練成陣の描かれた手袋を嵌めた右手を突き出し、指を弾いて火花を散らせ、それによって爆炎を巻き起こし、吸血鬼どもを焼き尽くしていた。
一方伊藤真美は、思う存分アルファクロスで敵を焼き斬りつつ、ちらりと荒川の戦いぶりを見た後、おもむろに右手の手袋を外した。
真美「我が身に宿りし浄化の塩よ!」
手袋を外した右手から大量の塩が零れ落ちる。
真美「全燔祭(ホロコースト)の炎となれ!!」
彼女が叫ぶと、右手の塩が激しく燃え上り、正面の吸血鬼を焼き尽くした。
荒川「・・・・・・」
なにやら意味ありげな真美の戦い方に、とりあえず白い目を向ける荒川。
一方、やたら得意そうな真美であった。

内藤「下がれ、二人とも!!」
内藤が、突如叫んだ。
後ろで控えていた4人のうち、黒田と田口が動いたのである。
244今そこにある希望:2005/09/10(土) 22:48:12 ID:vZp97S0l0
真美「田口!!」
敵の中にかつての仲間を見つけ、一瞬躊躇する真美。
その隙に、一気に間合いを詰められ相手の射程に捕らえられてしまった。
しかも最悪なことに、その隙を付いて周りの吸血鬼共も、一斉に銃口を向けていた。
荒川「やばっ!!」
一斉に銃口が開く、その瞬間!!

モ ー ツ ァ ル ト 作   鎮 魂 歌 ( レ ク イ エ ム )

ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

吸血鬼達が一斉に苦しみだし、ボロボロと体が崩れだしていた。
クラシックの大天才児、モーツァルトが最後に残した、魂の鎮魂歌。
この曲の前では、邪悪な負の力によって仮初めの不死を得た吸血鬼など、一溜りもない。
田口や黒田ですら、その動きを鈍らせていた。
荒川「遅いじゃない、渡辺先生!!」
荒川たちの危機を救ったのは、当然のことながら巨大なバイオリンを持ち、空から落ちながら曲を弾いている渡辺道明その人である。
渡辺「すまなかったな、荒川。あいつなかなか見つからんでって、ぎょええぇぇぇ!!」
なにやら言っていたようだが、重たいバイオリンを弾いたまま落ちてきたため、重量の関係で頭から地面に激突していた。
情けない登場の仕方に、なんとなくデジャ・ヴを感じつつ、荒川は頼もしい仲間の登場に思わず笑みがこぼれた。
伊藤「で、みつかったの?あいつは・・・」
渡辺「なかなか難儀だったがな・・・」
顔を真横にして地面に片頬をつけつつも、手も付かずに器用に逆立ちしたまま渡辺は答えた。
245今そこにある希望:2005/09/10(土) 22:51:29 ID:vZp97S0l0
伊藤は安堵するも、左右から迫り来る二つの鬼・・・田口と黒田の姿を認めて、戦慄する。
彼らの目標は渡辺。
短時間のうちに、吸血鬼のおよそ半数を浄化せしめた渡辺を、最大の障害と捕らえて、即効で排除にかかろうとしたのだ。
荒川「渡辺先生、危ない!!」
荒川の声に、渡辺はバク転するように立ち上がり、巨大なバイオリンを黒田に向け構える。
しかし、敵は目前まで迫り、曲を弾く間などない。しかも後ろの田口に対しては背中がガラ空きである。
絶体絶命に見えたそのとき、渡辺の背後に空から黒い影が降り立つ。
そして・・・・

            ジ     ャ     キ     ン    !     ! 

大量の火器をバイオリンから剥き出させ、黒田の喉元を狙う渡辺と、
巨大な拳銃ケルベロスを、渡辺のこめかみに突きつける黒田と、
黒い魔銃を、田口の心臓に押し付ける片倉と、
2丁のマシンガンの照星を、片倉の頭に合わせる田口が、
そこだけ時間が停止たかのように、佇んでいた。



片倉「見つけたで、田口・ザ・ロワイアル」
田口「この中断、死よりも高くつくと思え・・・」
246一時休憩:2005/09/10(土) 22:54:57 ID:vZp97S0l0
>>241
そのとーりでーす。
ちょっと強引に繋げちゃったんで分かり難くなってしまった。
スンマセン・・・・


しかし続き、今日中にかけるかなあ・・・・、
247名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/10(土) 23:26:24 ID:nYP5mK690
凄いのキター!
応援しているので作者の皆さんは無理をせずがんばってくれ。
248名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/10(土) 23:39:02 ID:SBlquRlv0
おおおおおお!熱い!!!
渡辺カッコイイ!片倉ちゃん久しぶり!姐さんズスッテキーーーー!!!
内藤ボロボローーーw
しかも平野黒田田口山本も素敵に狂ってるし吉冨出番おいしいし!

くわああ、超大作だなあ。
続き早く読みたいけど、無理はせんで下され。
そのかわりきっちり決着お願いしますぜ。
249名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 00:10:32 ID:27ThgZmU0
> 吉冨「BJを描く資格はない・・・」

ッッ――シビレるぜっ!!
250名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 00:38:39 ID:sKJGpsl80
キタキタキタァァァ!!!
因縁メンバー大集合!!あとはあいつとあいつが来れば・・・
がんばれ!続きがんばれ!!
251最後の闘い(延長戦):2005/09/11(日) 15:56:04 ID:NLBLVnih0
>>167

まもなく延長戦開始の笛がなる。
えなりはそれを、ベンチで聞くことになった。
肉変砲を封じられ、片足も砕かれたえなりでは、チームの足手纏いにしかならないからだ。
理解はできても、納得はできない。
仮にも主人公が、この局面でベンチウォーマーはないだろう、と凹む。
「そう腐るな……陽一も言っていたが、土壇場で同点に追いつけたのは、おまえの手柄だ。あとは、俺たちに任せておけ」
えなりを励ました車田の左足には、厳重に包帯が巻かれていた。貞本爆発の際に、負傷したのが、カムイとの戦いで悪化したのである。
常人なら歩くこともできないはずの怪我だが、車田は、
「これぐらい傷ついた足でならば、ボールを全力で蹴っても破壊してしまうことはない。かえって好都合だ」
といって不敵に笑った。
たしかに負傷でキック力が大きく落ちた状態ならば、ボールは破壊しないかもしれないが、かわりに自分の足が壊れるということはまるっきり度外視していた。
自分の身をこれっぽちも省みず、勝利だけを見据える自分たちの大将の姿に、深く感じ入るえなりだった。

「……本当に、私たちはでなくていいんですか?」
「相手は7人。こっちも7人。最後の戦いにケチがつかなくて、ちょうどいい」
ガンサンベンチ。心配そうに尋ねる水野に、村枝はそう言って答えた。
えなりスポーツ側は、車田・陽一・井上・許斐・村田・大和田・?仮面。
ガンサン側は、村枝・樋口・土塚・UMA子・金田一・安西・雷句。
双方ともに、サッカーの試合が成立するギリギリの人数。負傷の量・戦力、どちらもほぼ似たりよったり。

笛が鳴った。

樋口はボールに触れず、脇目もふらずに最前線まで走った。
「お前は前線で待ってろ。俺がお前を飛ばせてやる」
開始直前に、村枝が言ったからだ。
「俺たちが必ず、お前のとこまで、つないでやるから」
だから、仲間を信じて、待つ。
252最後の闘い(延長戦):2005/09/11(日) 15:56:53 ID:NLBLVnih0
コイントスでボールをとったガンサンは、雷句によるドリブル突破をはかっていた。
なけなしの「心の力」を振り絞った「ラウザルク」による身体能力強化により、雷句の動きは紫電と化す。
「ヌォオオオオオオオオオ!!」
「おおおおおおおおおおお!!」
そこへ向かってくるのは、雷句と同じく満身創痍の男、大和田。
腹を貫かれ、全身の5割を火傷でおかされても、その戦意は衰えていなかった。
いや、スピードとそこから生み出されるだろう威力は、大和田の方が上だった。
「危ないッッ」
大和田の拳が雷句をとらえる寸前、誰かが雷句をかばって立ちふさがる。

      ど  お  ん  !!

「大丈夫、リッちゃん」
雷句をかばって大和田の拳をまともに喰らい、激しく吐血しながらも雷句をそう言って気遣ったのは。
「う…UMA子……お主!!」
己の欲望のままに行動する、むさ苦しいナマモノ。
そんな生物が、なぜ自分をかばってくれたのか、雷句は一瞬驚きに硬直する。
そんな雷句に、UMA子はなにやら妙に熱っぽい視線を送っているが、雷句は冷や汗流しながらも、そっちの方は無視することにした。
「いまだ、行け、雷句!!」
村枝の声に我に帰り、わきをすりぬけて先に行こうとする雷句。
「ぬううう、行かせるかああッッ」
「ぐぉおおおおおおおおおおおおおおッッ」
ガトリング弾のような拳の弾幕を浴びながら、UMA子は大和田の足止めに徹した。
そして、終いには、大和田の両拳に自身の胴体を貫かせ、分厚い筋肉でからめとり完全に動きを封じたまま、UMA子は仁王立ちしていた。

――――――― 我 が 乙 女 人 生 に 一 点 の 曇 り な し ! ―――――――

太く、ごついひげ面には、この上なく満足げな微笑が浮かんでいた。
253最後の闘い(延長戦):2005/09/11(日) 15:57:56 ID:NLBLVnih0
UMA子の屍を乗り越え、雷句は走る、駆ける。
そこへ吹っ飛んでくる、第二派。
「た・き・ざ・わ・キィ―――――ック!!」
豪速の蹴りをそなえてミサイルのごとく飛来する?仮面。
「ウヌァアアア!」
雷句は叫ぶと、わき腹の肉を少しもっていかれた犠牲を引き換えに、?仮面の片足を抱え込んだ。
ズガガガガガガガッッ!
その状態でもつれあって、殴りあう二人。そして、雷句が叫ぶ。
「今なのだ!信行、私ごとやれ!!!!」
背後からフォローのために来ていた安西が躊躇し、固まった。
「ばかな、そんなことしたらお前が…!!」
「UMA子も私のために捨石になったのだ!今度は私が捨石になる番なのだ!!」
「み…見事な覚悟!!」
相棒の意気を感じた安西は跳躍し、両手に残るありったけの火力を集中した。
?仮面は、自分の後輩たちが熱血少年漫画チックな自己犠牲を発揮しようとするのを見て、激昂した。
「バカモノォォォッッッ!!!!」
雷句ごしに飛んでくる巨大な炎弾を、?仮面が不利な体勢から拳で迎え撃った。
「雷鳴バルト三国ファンタジア!!!」
「うおらああああああああああ!!!」

        ズ  ズ  ン  ッ  !!!

三人を中心に、巨大な爆発が生じて、あたりを包み込んだ。


大気を震わす爆風が、樋口の髪や肌を嬲り。
大地を痺れさせる爆発が、彼女の臓腑を揺らす。
しかし、いかなる破壊や暴力を前にしても、もはやそれが樋口の心胆を怯ませることはない。
熱い風が、樋口の中を吹き抜けていく。
254負けられない!負けたくない!(延長戦):2005/09/11(日) 15:59:55 ID:NLBLVnih0
――――体の奥から「何か」が湧いてくる――――

爆発に飛ばされたボールのもとへ、村枝が走りこむ。
その背後から追ってくる村田をヒールリフトでかわして置き去りにし、さらに競りかけてくる許斐と鎬を削りあう。

――――その「何か」が、あたしを動かす――――

絶好のラストパスが、樋口に向かって放たれた。
だが、そこへ踊りこむ、隼のごとき影。

「村枝賢一!」
「高橋陽一!」

陽一が、パスカットこそ成功しなかったものの、そのパスの軌道を変えていた。
絶好のチャンスが、切り崩される危機。
樋口は、強烈に思った。

――――負けられない!――――

「うおぉぉ!!」
無我夢中で、体勢を崩しながらも、ボールに足を伸ばしていた。

――――負けたくない!!――――

次があるとはかぎらない。もう、これがラストチャンスかもしれない。

――――あきらめない――――

なんとか足がボールに届くが、ボールは上空に打ち上げられてしまう。

――――最後の  最後まで!――――
255風の中のすばる(延長戦):2005/09/11(日) 16:01:22 ID:NLBLVnih0
――――その瞬間――――

――――あたしの周りから音が消えた――――

前ト右カラツメテクル
アレ?
周リノ動キガ スローモーション 二見エル
ソレトモ アタシノ動キガ速イノカ
イケル…
ヘディングデ後ロニ流シテ
右ニ振リ返リザマ シュート…

――――高橋陽一がくる!――――

走りながら、陽一は考える。
彼女は、ヘディングで流して、振り返りざまシュートする気だと
させん!

――――読マレテル?――――

樋口の背後で、またも黄金の鷹が舞う。
コースは完璧に塞がれている。
自分だけでは、どうあっても、これを超えることは不可能…


    ――――  “  翔    べ  ! ” ――――


そのとき、一陣の疾風が吹く。
風が集まり、吹き抜けていく。
刹那、樋口は飛翔するがごとく、天を舞っていた。
256風の中のすばる(延長戦):2005/09/11(日) 16:41:07 ID:NLBLVnih0
樋口が跳躍した、その真下。
そこにスライディングしながら飛び込んできた者がいた。
村枝賢一だった。

――――“俺がお前を飛ばせてやる”――――

村枝は、確かにそう言った。
そして今、その誓いを果たすべく、まさしく疾風(かぜ)と化して吹きすさぶ。
村枝の足が、天を衝くように、真上に差し上げられた。
樋口は、空中から、「その足裏」に着地し、さらに高く飛び上がった。
「なにィ!」
叫ぶ陽一の壁を、樋口は走り高跳びの背面跳びの要領で、大きく跳び越した。
一度目とは違い、今度は仲間との協力によって、樋口はまたも陽一を凌ぐ動きを見せた。
まだ陽一が空中にいるうちに着地した樋口が、間髪入れず、おちてくるボールをダイレクトでシュートにいく。

――――光が見える…――――

最後の壁、井上雄彦が立ちふさがる。
一見、隙など全くないと思えるほど、極限まで研ぎ澄まされた井上の集中力。
だが、今の樋口には見えた。
風の通り道、自分たちの勝利へと繋がる、光の道筋が。
あとは、そこへ向かって、蹴りこむだけ…


――――――――――――   喝   ――――――――――――


深淵から這い上がるような声が、風の囁きを塗りつぶしたのは、そのときだった。
257風の中のすばる(延長戦):2005/09/11(日) 16:41:53 ID:NLBLVnih0
疾風が、急激に変化した。
勝利へと吹き抜けていくはずの風が、ただの一言を合図に、奇妙にねじくれ、歪な螺旋へと変じる。
同時に、樋口に見えていた光の道が、闇に閉ざされる。

ギュガガガガガガガガ!!

あらゆる感覚が、正常な世界へと戻っていた。
加速していた知覚が、不意の衝撃に急速に呼び戻される。
螺旋は、今しも樋口が蹴りこもうとした、そのボールを中心に発生していた。

――――何かが壊れる音がした――――

重力に束縛された肉体が、力なく地面に落ちる。
村枝が駆け寄ってくるが、すでに目が良く見えない。

――――あの一瞬 何かを掴めたんだ――――

視界が、どんどん狭く、暗くなっていく。
まだ夜には、あまりに早いというのに。
体の感覚もない。自分が地面に寝ていることすら、もう分からない。

――――…イヤダナ――――

歪む意識の崖っぷちで、樋口は空を見上げる。

――――  空  ガ  狭  イ  ――――

樋口の意識は、闇に飲まれた。
258執念の螺旋(延長戦):2005/09/11(日) 16:42:44 ID:NLBLVnih0
村枝が、血相を変えて樋口のもとに駆け寄っていた。
樋口は意識を失い、ゴール前の芝にその華奢な体を横たえている。
彼女の左足は、まるで雑巾でも絞ったかのように、グシャグシャに捩れ、砕け、あらぬ方向へと曲がっていた。
その尋常ならざる破壊をなしとげたのは、意思持たぬはずのボール。
まだ威力を伝える直前の、サッカーボール。
樋口の膝を破壊した瞬間、ボールは凄まじいまでの螺旋を描きだし、それが生じる力を炸裂させた。
そのからくりの正体は、ボールの内部に込められていた力。
えなりスポーツチーム最初のゴールキーパー、岸本斉史。
彼は、試合開始と同時に、ゴールキーパーというポジションを利用して、「ある仕掛け」をほどこしていた。
“螺旋丸”と呼ばれる技がある。
“千鳥”と並ぶ、岸本の持つ忍法のなかでもトップクラスの破壊力を誇る攻撃術。
その要諦は、チャクラを限定された空間に圧縮し、留めきる。
この極めて難解な力の操作を、岸本は、サッカーボールに込めていた。
ボールを内部から破壊しないよう、またあらぬベクトルに力を向けないよう、緻密に操作することで力をたくわえていた。
まるで、火花ひとつで燃え上がる火薬庫のように。
そして、その火薬庫は、岸本の意思ひとつで発火し、爆発する。
そう。たとえ、肉体が著しく損壊していようとも。たとえ、試合場から離れていても。
たとえ、わが身が倒されようとも、相手に一矢報いる仕掛けを施しておく。

―――― 忍 の 執 念 ――――

この最後の罠の起動を為したと同時、ベンチで床に伏していた岸本は、再び意識を失った。
敗れて、なお衰えぬ、岸本の最後の意思が、えなりスポーツ最後にして最大の窮地を救ったのであった。
259駆け抜ける閃光(延長戦):2005/09/11(日) 17:31:27 ID:NLBLVnih0
「全員、ソッコ――――ッッ!!」
誰も想像しえぬ出来事に、固まっていた空気を、大喝が切り裂いた。
井上が、ペナルティエリア内に転がっていたボールを拾い上げ、特大のパントを放つ。
動ける者全員が、かけあがる。
だが、そのなかで一際速いのは、やはり「光速の足を持つ男」村田だった。
まさに無人の野を行くがごとく、弾丸が走る。
ボールを蹴りながら、ひたすらに前へ。
しかし、村田の前に、彼女が立ちふさがった。
最初の対決で、デビルバットゴーストによって抜き去った、金田一蓮十郎。
それがフィールドプレーヤーとして、立ちふさがる。
異空間に連なる大口を開けて、待ち構える。
しかし、今の村田は、デビルバットゴーストをさらに進化させた、デビルバットハリケーンをも修得している。
普通に考えれば、負けるはずはない…はずだった。
村田の誤算は、これが「一対一」では、なかったことだった。
背後から、凄まじい速度で、村枝が駆け上がってくる。
一度は、デビルバットゴーストを破られている相手。
しかも、デビルバットハリケーンには、スピンをした分、わずかにタイムラグが発生するという欠点がある。
並の相手であればとるにたらぬ弱点も、村枝という超一流を前にしては、命取りになりかねない。
そんなわずかな逡巡が、金田一への警戒をほんの一瞬、失念させた。
それを村田は、激痛とともに思い知る。
村田の足に、刃物をびっしりと生え揃わせた、見るからに凶悪なフォルムの鞭がからみついていた。
それが、金田一が仕掛けたものだと知ったときには、鞭の刃は骨まで達し、村田の機動力を奪い去っていた。
「うわああああッッ」
足を封じられた村田に、さらに村枝が迫る。
今は、残るえなりスポーツチーム全員が、攻撃に参加し、敵陣地へ向けて攻めのぼっている。
ここでボールを奪われれば、全ては終わる…
絶体絶命の状況に、村田が悲嘆にくれかけた、そのとき。

「村田!」

自分の名を呼ばれた瞬間、村田は強烈なスライディングタックルを背後から受け、血しぶきとあげて宙を飛んでいた。
260駆け抜ける閃光(延長戦):2005/09/11(日) 17:32:20 ID:NLBLVnih0
負傷した村田に、ダメを押すような強烈なタックル。
しかし、これは敵からの攻撃ではなかった。
この苛烈なチャージをしかけたのは、なんと許斐であった。
度重なる慣れない即興必殺シュートを連発し、すでに限界が来ていた脚で、許斐は起死回生のプレイを見せた。
許斐は、金田一と村枝に挟まれた村田を救うため…正確にはボールを守るため、あえて見方である村田にチャージをかけたのである。

――すまん、村田。でも、ここを突破するには、これしかなかったんだ
――いえ、許斐さん。ぼく、ひとりの突破は無理だった。このボールが勝利へとつながるなら、この足の一本や二本…

ボールは、最後の守備網を突破した。
そこに駆け込むのは、やはりこの男。
不死鳥、高橋陽一。

――――これが…最後のシュートだ!!

右足を高々と振り上げる。しかし、そこへ。

「させるか!!」

最後の最後まで立ちふさがるのは、不屈の疾風、村枝賢一。
両者が、最後の激突を行おうとする、その寸前。
閃光が、走った。
閃光の名は、もうひとりの不死鳥。
鳳凰・車田正美。

――――いくぞ、陽一!
――――車田くん!!

最後の瞬間、二羽の不死鳥によるコラボレーションが実現した。
261駆け抜ける閃光(延長戦):2005/09/11(日) 17:33:29 ID:NLBLVnih0

「 い   … 」
「 …     け ェ ! ! 」

二羽の不死鳥による、最初で最後、そして最強のツインシュートが放たれた。
陽一の右足と、車田の左足。
負傷をおして、なお放った究極のコラボレーション・シュートは、瞬く閃光となって、ガンサンゴールに吸い込まれていく。
キーパーの土塚には、ただ光が揺れて飛んでくるようにしか見えない。

――――だが、ボールはひとつ! 止める!! この両腕が砕けようと、この体すべてを投げだし止めてみせる

グ   オ    ン   !!!

しかし、あろうことか閃光は、土塚の正面で、唐突に右へと軌道を変えた。
同時に、車田の左足に巻かれたはじけとび、噴水のように鮮血がほとばしった。
負傷していて、なお車田の方がシュート力が強かったためか、ボールは大きく右へ加速して曲がったのだ。

             ズ    バ   ァ  ッ  !!!

そして…あっという間に、ガンサンゴールサイドネットを突き破ったボールは……

            ド        ゴ     オ   ッ  !!!!

観客席のフェンスを砕いて、めりこみ、えなりチーム決勝進出へのゴールをあげた!!

『Vゴール!! 勝者 えなりスポーツチームだァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!』

実況・克の大絶叫が、場内に狂乱を呼び、試合終了を告げる鬨(とき)の声となって轟いた。
262名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 18:15:45 ID:Y//sRd700
陽一&車田、なにこのありえない合体技!

文句なしだ!
263名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 18:42:10 ID:UlQDFPPx0
死力を尽くした怒涛のような展開から、巨頭二人の渾身の合体攻撃。
激闘の幕切れに相応しい渾身の幕切れだな。
さて、後は荒木と今井がどうなることやら…
264名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 19:26:25 ID:jgVWFLxIO
ダークホースのガンガンチームも遂に散ったか・・・・・・
さて、後始末を考えよう。
265名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 20:30:59 ID:sKJGpsl80
キ…(-_-)キ(_- )キ!(-  )キッ!(   )キタ(.  ゚)キタ!( ゚∀)キタ!!(゚∀゚)キタ━━!!!!!!

ついに決着だぁ!!ベリー乙!ベリー乙!!どっちのチームも頑張った!!
266名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 20:45:08 ID:pI811skc0
ところでこれ、準決勝じゃなかったか?
こんなに満身創痍で、決勝、どうすんだ?
267名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 21:26:35 ID:UlQDFPPx0
野球ん時も島の三つ巴の時も皆ボロボロだったし、今更だろ。
別府のいざこざで期間が開いてるように錯覚してるのかもしれんが、間隔が一日なのは変わらんのよ。
268名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 21:33:37 ID:sKJGpsl80
そういや作中の「昨日の今頃」って、
鹿児島の温泉から別府に移動しようって時間帯か
なんかすごく遠く感じる・・・
269名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 21:53:19 ID:eBDS63MI0
陽一&車田の合わせ技、美事也!!!
いや、マジ鳥肌たったわ。昨日といい、何このテンションとクオリティの高さ。
270鬼が残したもの(前編):2005/09/11(日) 23:56:05 ID:Ja/c476L0
前スレ516

岡野「‥‥ん、あ〜、よく寝たなあ‥‥んん?」
真倉「ガー?」
激しい疲労による長い眠りから、岡野&真倉コンビは目を覚ました。
起きるなり、控え室の惨状に顔をしかめる。
部屋の中はカトリーナでも来襲したかのような荒れ模様であり、その中心部では佐渡川・空知・施川がそれぞれ顔を腫らして横たわっている。
周囲に花札がバラまかれているのを見るに、本宮が負けた腹いせに三人をボコったあげく、支払いを誤魔化してトンズラしたことは明白だった。いつもの事だ。
真倉「ガー(やれやれ…親父もしょーがねーなー。おーい、お前ら起きろー。生きてるかー)」
岡野「‥‥本当にしょうがねえ。いい加減、試合も近いっての‥に?」
いいかけて、岡野の顔が固まった。視線の先には、準決勝第一試合の様子を映すモニターが。

『Vゴール!! 勝者 えなりスポーツチームだァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!!』

ちょうどえなりチームの勝利を伝える、克の大絶叫が響きわたった瞬間だった。
岡野「‥‥どうやら決勝の相手は決まったみたいだな。まあ、順当といえば、順当だが」
真倉「ガー!!(お、いよいよ試合か! 待ちくたびれたぜ!!)」
岡野「真倉。本宮先生や、川原達を捜しに行くぞ」
真倉「ガー!!(よっしゃ!!)」
岡野&真倉は、いつものごとく二身一体となって、控え室を後にした。

澤井は、出てすぐのところの廊下で、簡単に見つかった。
松井は、いつの間にやら、姿を消していた。
澤井曰く、「神出鬼没がモットーの魔人だから、また気が向けば来るわよ」、とのことだった。

とりあえず、次の目的は、川原だった。
271鬼が残したもの(前編):2005/09/11(日) 23:57:01 ID:Ja/c476L0
しばらくの間、コロッセオをぐるぐると三人(見た目は二人)で歩き回った結果、コロッセオの屋上で昼寝する、川原と、病室を抜け出した岡村を同時に見つけることができた。
岡野「‥ったく、こいつらまで寝ているのか? しょうがないな」
真倉「ガー!!(おい、起きろ、てめえら!! もうすぐ試合だぞ!!)」
澤井「そうよ、起きないとどんな事しちゃおうかしら?」
三人が騒いだおかげで、岡村の方はすぐに目を覚ました。
なんとも不機嫌そうな顔で三人を見るが、試合が近いと聞いて気持ちを入れ替える。
ここで岡野たちは異変に気付いた。

川原が、いつまでたっても目を覚まさないのだ。

いや、この男の性格から、周囲でどれだけ騒いでも殺気が無い限りは起きないという事はいくらでもあった。
だが、このときの川原の様子は、尋常ではなかった。
ベンチに横たわった体は、四肢がだらりと垂れ下がり、あまりにも弛緩しすぎていた。
しかも、表情は微妙に苦しげで、流れる汗や顔色など、あきらかに健康な状態とは言いがたい。
眠っているというよりは、昏睡していると言った方が正しい。
岡野「川原!?」
岡野が叫ぶのが早いか、澤井が飛び出していた。
澤井「川原センセイ、ねえちょっと大丈夫なの!?」
岡村「無理に動かしちゃだめだ、澤井。岡野さん、ドクター‥‥真船さんを‥‥」
岡野「ああ」
川原の体をゆさゆさと揺する澤井を制止した岡村は、岡野にドクターへの連絡を頼む。
そうして、岡野が真船を呼びにいこうとすると‥‥

「医者はいらないよ」

寝ていた川原が、そう言って起き上がった。
272鬼が残したもの(前編):2005/09/11(日) 23:57:33 ID:Ja/c476L0
澤井「川原先生‥‥」
岡村「大丈夫なのか‥‥!?」
川原「ああ‥‥寝てただけだから。たく‥‥おまえらの前だと、おちおち寝てもいられないな」
そう言ってぼやくが、岡村達は明らかに不審がる。
本当に‥‥寝ていただけか?‥‥あれが
川原「それより、なにか飲み物ないかな岡野。のどがかわいちまった」
岡野「あ‥‥ああ、なにか買ってこよう」
そう言って、岡野&真倉は、屋上をいったん出ていく。
その間に、澤井の口から、えなりチームの決勝進出が決定したことが伝えられた。
その報告に、川原は黙って目を閉じて微笑を浮かべ、岡村は軽く表情を少し険しくする。
岡村「川原とあれだけやり合った後で板垣が試合に出られたとは思えねえ‥‥ってことは、あの化物抜きで勝ったってことか。やっぱ、えなりチームは強えか‥‥」
いかに陽一というサッカーの神とも言うべき存在が加わっていたとはいえ、先の野球で獅子奮迅・八面六臂の活躍をした荒木と板垣の二人を抜きで決勝に上がるとは、並々ならぬ層の厚さと言えよう。
これで最悪、決勝まで進めば、またあの怪物と闘わなくてはならなくなる‥‥
自身の裡に芽生えかけた恐れを振払うように、岡村は川原に言う。
岡村「おまえは、やっぱ嬉しいか? もう一度、あいつと闘えるかもしれないぜ」
それに対して、川原は静かに言った。
川原「俺が嫌なのは、弱い方が何かの手違いで勝ち上がって、俺の前に立つ事だけだよ。
   が‥‥心配はいらないさ。手違いが入り込むほど、この大会は甘くない」
曖昧な答えが気に入らなかったのか、岡村は軽く肩をすくめて呆れ顔をつくった。
そこへ、人数分の飲み物を買った岡野&真倉が帰ってきた。
273鬼が残したもの(前編):2005/09/11(日) 23:58:09 ID:Ja/c476L0
岡野「ポカリスエットでいいか、川原‥‥」
川原「ありがと‥‥」
岡野「投げるぞ」
岡野は、順番に飲み物を投げ渡していく。
それをなんでもないように、普通に受け取る澤井と岡村。
しかし‥‥‥

     “ どんっ ”

何かがぶつかるような音が響き、次いで、ポカリの缶が床に落ちた。
最初の音は、川原の胸元にポカリが当たった音だ。
しかも、川原は普通に缶をキャッチしようとしたのか、左手を突き出したまま呆然としている。
異様な光景に、場の空気が一気に不穏になった。
岡村「川原‥‥?」
岡野「おまえ今の‥‥」
岡村と岡野が、息を飲む。
岡村(とれない‥‥!?)
岡野(とりそこなったとか‥‥そんなことじゃない。今のは、あきらかに‥‥)
川原「まいったな‥‥まだねぼけてるらしいや‥‥」
誤魔化すように川原は缶を拾おうとするが。
岡村「岡野さん‥‥」
岡野「ドクターを呼んでくる‥‥」
そう言って、急いで屋上を出ていこうとする。すると‥‥。

川原「行くなっ」

いつになく強い口調で、川原が叫んだ。

274作者の都合により名無しです:2005/09/12(月) 00:24:00 ID:zDIAaxq30
久々の裏御伽メンバーで(;゚д゚)ハウァ
続きが超気になるお
本宮先生相変わらずだお
275作者の都合により名無しです:2005/09/12(月) 14:22:40 ID:/w2uVmqb0
(((;゚д゚))ハウァァァ
板垣戦勝利の代償は余りに大きすぎたのかぁぁ!?
276鬼が残したもの(後編):2005/09/12(月) 15:25:09 ID:pTrjI+2s0
岡野「川原‥‥しかし、今のはおまえ‥‥」
川原「呼ばなくていい‥‥俺は大丈夫だから、絶対に呼んじゃだめだ」
澤井「だ‥‥大丈夫ならドクターを呼んで診てもらっても‥‥」
見せることすらできないほどの‥‥それほど深いダメージが!?
川原の重苦しい無言が、事態の深刻さを岡村達に何よりも雄弁に語っていた。
岡村「板垣にやられた‥‥あの鼓膜破り‥‥‥のダメージか!?」
川原「ああ‥‥板垣は天才だよ。あのとき‥‥完全には喰らわなかったが、それでも何割かはダメージを受けている‥‥もっとも完全に喰らってたら、俺は今頃墓の中だけどね」
岡野「パンチドランカー症状がでているのか‥‥」
しゃべっている間にも、岡野達は嫌な汗が止まらない。
かつて、川原がここまで深刻な状況に追い込まれたことがあっただろうか。
しかし、川原はニッと笑うと、
川原「軽いやつだ。試合場にあがれば大丈夫だ‥‥」
そう言うが、岡村達は取り合わない。
岡村「岡野さん‥‥」
岡野「ああ‥‥大会役員に川原の棄権を伝えてくる‥‥」
ユラッ‥
川原が立ち上がる。
川原「岡野‥‥無駄だよ‥‥俺はでるから‥‥誰が何と言ってもな‥‥」
岡村「無茶を言うな‥‥そんな体で頭部に攻撃をうけたりすればどうなるか‥‥相手は優勝候補筆頭チームなんだぞ。
   ひとりとして容易い相手はいねえ‥‥下手すれば死ぬか‥‥よくて廃人だ‥‥」
死。
廃人。
物騒な言葉の持つ重みが、岡村達にのしかかってくる。
そこへ新たなアナウンスが、かかった。

『それでは、これより30分の休憩をはさみまして、引き続き、準決勝第二試合をおこないます‥‥』
277鬼が残したもの(後編):2005/09/12(月) 15:26:28 ID:pTrjI+2s0
川原「いこうか‥‥」
まるで話の深刻さを理解していないかのように、川原は微笑している。
岡村「川原‥‥」
岡野「‥‥」
川原「見せてやろうじゃないの‥‥奇蹟ってやつをね‥‥」
そして、屋上をあとにしようとする川原を‥‥

真倉「ガー(まて‥‥行かせるわけにはいかねえ‥‥)」

岡野が‥‥正確には、その肉体部分を担当している真倉が‥‥川原の行く手を遮った。
真倉「ガー!!(バカヤロウ! 勝っても負けても、戦いはこれで終わりじゃねえんだぞ!!)
   ガーガガー!!(認めたくはねえが、今やお前は、裏御伽の要なんだ!! そのお前に、こんなところで万が一の事があったら、どうすんだ!!)」
川原にはガーファンクル語の正確な意味は分からないが、それでも自分を心配しているらしいという文意は伝わってきた。
それを知って、川原は苦笑する。
そこへ、また新たな人物が現れた。
誰あろう、ぶらりといなくなっていた本宮である。
岡野「ガー!(親父‥‥)」
岡村「本宮さん」
本宮「ん‥‥?どうした‥‥」
仲間を捜してなにげなく立ち寄った屋上で、いきなりピリピリとした空気に遭遇してしまい、本宮は怪訝な顔をする。
澤井「パ、パパ。とめてよ‥‥川原センセイをとめて‥‥
   もう体はボロボロなのに‥‥パンチドランカーになりかかってるのに‥‥なのに試合にでようとするの‥‥!」
澤井の必死な訴えに、本宮の表情が変わる。
本宮「パンチ‥‥ドランカー!? 川原‥‥おまえ‥‥」
穏やかでない単語に、本宮はしばし言葉がでない。
一瞬、沈黙が降りた、そのとき。
川原は、おもむろに語りだした。
278鬼が残したもの(後編):2005/09/12(月) 15:27:53 ID:pTrjI+2s0
川原「澤井‥‥俺の道着になにがついている!?」
澤井「え‥‥?」
いきなり言われて面喰らった澤井は、あらためて川原の道着をまじまじと見る。
いたるところが赤く、または黒く染まった道着を‥‥
澤井「血だよ‥‥」
答えると、川原はうなずく。
川原「藤原芳秀の‥‥
   岡村賢二の‥‥
   真鍋譲治の‥‥
   そして板垣恵介の血だ‥‥」
自分の名を呼ばれた岡村を含め‥‥全員が息を飲んだ。
川原「俺とやるために藤原は仲間と袂を分かった‥‥
   真鍋譲治を倒すまでには多くの犠牲があった‥‥
   岡村賢二は、自身の誇りのために、ボロボロになりながら、なおもたちつづけた‥‥
   そして‥板垣恵介‥‥
   俺は、そんな男達と拳を交えて‥‥そして、なお準決勝に残って、ここにいる‥‥
   その俺が死ぬかもしれないからと‥‥今さら、逃げだすわけにはいかない‥‥」
   俺が、この血まみれの道着をきているかぎり‥‥道は前にしかひらいてないんだよ」
本宮たちは、粛として声もでない。
川原「それに‥‥門はとっくに、くぐっちまったんだ‥‥」
本宮「川原‥‥」
川原「おっさん‥‥門をあけた当人が‥‥とめたりはしないよね‥‥」
凄絶な笑みで、川原は本宮と対峙した。
本宮はその貌を見て、思い出す。
この川原と、あのとき出会ってから、二人の‥‥そして裏御伽の運命が動き出したことを‥‥
思い出して、にやりと笑う。
本宮「いくぜ‥‥なあに、死ぬときはお前だけじゃねえ‥‥裏御伽は全員、一蓮托生よ‥‥」
自分たちが頂く総大将の言葉を聞いて、岡野達の顔にも笑みが浮かぶ。
そう、死地に赴くのはひとりではない‥‥

裏御伽‥‥出陣!!
279鬼が残したもの(後編):2005/09/12(月) 15:29:11 ID:pTrjI+2s0
同刻‥‥
矢吹艦某所‥‥

黒服‥‥福本伸行の配下のひとり‥‥である彼は現在、未曽有の恐怖と対面していた。
鋼鉄の扉を何十層も重ねた、巨大シェルター‥‥その前に立つ黒服の顔には、明らかな恐怖の色があった。
たとえ、ロケット弾の一撃であろうと、傷ひとつつかぬであろう、堅牢な門。
そのような絶対とも言える壁を隔てて、なおこれほど黒服を恐れさせるとは、門の向こうに閉じ込められているのは、いかなる怪物なのか‥‥!?

               ――――  聞こえるかい  ボウヤ  ――――

人の声帯を通したとは思えぬ、巨獣の唸りのごとき声が響いた。
その声が耳朶を打った瞬間、黒服は電流を体内に流されたように直立不動の姿勢をとる。
黒服「は‥‥‥ッ ハイィィィッ、板垣恵介様ッ」
黒服が必死の表情で、声の主の名を叫ぶ。

                 ――――  扉を開けな‥‥‥‥‥  ――――

無茶な要求に、黒服の顔が泣き笑いのような複雑な表情に歪む。
この扉を監視することは、主である福本に厳命された、最重要命令である。
さらに、自らの手で、最悪の獣を再び放ってしまうことへの怖れがあった。

          ――――  俺を知っているなら この扉がなんの効力も持たぬことが理解(わか)るハズだ  ――――

しかし、板垣は黒服の逡巡を見透かすように、言葉を継ぐ。

               ――――  そうだな ボウヤ‥‥‥‥‥?  ――――

黒服「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」

                 ――――  そうだな‥‥‥‥‥?  ――――
280鬼が残したもの(後編):2005/09/12(月) 15:30:29 ID:pTrjI+2s0
黒服「ああ‥‥‥‥あ」


        沈黙。


                  ┣¨ ッ   ┣¨  ┣¨  ン  !!!!        


黒服「 ひ ィ ィ ィ ッ 」  

刹那、ミサイルが連続で炸裂したような衝撃が、扉を‥‥否、その場の空間そのものを激震させた。
鉄塊というべき扉が、まるで紙の扉を叩き潰すかのように、グシャグシャに曲げられ、破壊されていく。
黒服「開けますッ すぐに開けますッ 板垣様ァッッ」
だが、時すでに遅く、破壊はもう止まらない。
黒服「板垣様ァッッッ」
ついに衝撃に耐え切れなくなった扉が、木の葉を吹き散らすがごとく、軽く10メートルは吹っ飛び、重い音をたてて地面に落ちた。
そして、扉が破壊された後の穴から、鉄のような皮膚をした鬼人が、空間を闘気で歪めながら傲然と姿を見せる。
黒服「ひィィッ‥」
竦み上がっていた黒服は、板垣と目が合った瞬間、頭を抱えしゃがみこんだ。
屈強な黒服が、まるで子供のように涙と小便を流しながら、たったひとりの男にただただ怯えきっている。
死を覚悟した黒服が、涙でかすむ目を薄く開けると、
黒服「‥‥‥‥‥え?」
すでにそこには誰もいなかった。
廊下の先にも、もう姿は一切見えない。
自分が九死に一生を得たことにようやく気付き、黒服は深い安堵の溜息を吐きながら、床にへたりこんだ。

満身創痍の修羅が、死の潜む戦場に立とうとしていた頃。
悪鬼はすでに、新たな胎動を開始していた。
←TO BE CONTNUED
281作者の都合により名無しです:2005/09/12(月) 17:00:04 ID:/w2uVmqb0
>本宮「いくぜ‥‥なあに、死ぬときはお前だけじゃねえ‥‥裏御伽は全員、一蓮托生よ‥‥」
いいねえ裏御伽いいねえ。今回のヒロイン役は澤井かw
板垣は絶好調だねぃ
282虎神vs竜王:2005/09/14(水) 15:30:01 ID:bgmRn4Sd0
>>239
ソニックプラスに襲いかかるエイボーン。
岩のような皮膚と、稲光のような眼光を備えた巨竜を、しかし山賢は鼻で笑う。
「その貧弱な竜を供に、小生(私)と戦うというのでありますか……俗に言う“ちゃんちゃらおかしい”ってヤツでございますね」
いつの間にか、山賢の口調が丁寧――というよりは慇懃というべきか――なものに変化している。
これは、殺意の量が一定レベルを超えたときの、この男特有の癖であった。
それまで野方図に周囲にまき散らしていた狂気は、今は刃の切先のごとく研ぎ澄まされ、目の前に立つ吉富ただひとりを貫かんと尖鋭化していく。
山賢にとって“狂気”とは、喜怒哀楽と同じ、感情の流れのひとつに過ぎない。
冷徹な論理(ロジック)に基づいて、狂気の量を自在に制御する。
矛盾しているようにも思える極めて特異な精神構造を、この男は有していた。
くすり、と小さく笑みをこぼした山賢が、指で弄んでいた髪の中から、一枚のカードを取り出す。
それを見た吉富の反応は素早かった。
何も持たぬ方の手から銃を生み出し、ほとんどタイムラグを生じさせずに連射。
それ以上に速いのが、山賢の召喚速度だった。
山賢の顔が真っ二つに縦に割れ、観音開きになった異界の門から、光速に等しい速度でモンスターが出現する。
ギィィン!
「――!!――」
山賢と吉富を隔てるように、巨大な鉄扇が広がり、銃弾を全て弾き落とした。
鉄扇が閉じられると、そこには主人と同じ着流し姿の異形が立っている。
人型だが、その顔は鱗で覆われた爬虫類のそれである。耳はナイフのように尖り、後頭部からは蛇の尾のようなものが伸びている。
ボールギャグで封じられた口からはだらしなく涎が溢れ、縦に伸びた瞳孔が唸るような眼光をほとばしらせている。
「グォオオ――!!」
その異形が現れた瞬間、エイボーンが鳴いた。
吼えたのではない。声に込められたものは明らかに目の前のモンスターに対する怯え。
巨岩の竜の形につなぎ合わせたがごとき体躯を、目に見えるほどに震わせ、空中で一切の行動を止めた姿。
それは捕食者たる天敵に、餌という立場の動物が見せる類の――絶対的な恐怖に他ならなかった。
「――!? どうした、エイボーン?」
いぶかしむ吉富に、山賢が扇子を広げて口元を隠しながら言った。
「動けないのです。小生の“ロストーク=サーペント”は竜を主食にするモンスター。
 あなたの竜は、本能的に恐怖を感じているんですよ。
 俗に言う“ビビってる”ってヤツでございます。なんともお粗末で、ひ弱な竜をお使いで…クスクス」
283虎神vs竜王:2005/09/14(水) 15:32:36 ID:bgmRn4Sd0
「なるほど。“紺(あお)きドラグイーター(竜喰らい)”の異名――その由来がそれか……」
最早、威容は影も形もなくなり、怯えるだけの蜥蜴に等しい存在になったエイボーン。
そんな有り様を見て、吉富は苦々しく呟いた。
「退がれ、エイボーン。今のおまえではヤツの餌になるだけだ」
吉富がエイボーンを後退させるのに合わせて、山賢もソニックプラスを仕舞った。
次の瞬間、吉富とロストーク=サーペントが、同時に動いた。
吉富の大剣と、ロストーク=サーペントの鉄扇がぶつかりあって、火花を散らした。
人間を凌駕するモンスターの馬力に、吉富の体が吹っ飛び、叩きつけられた壁が粉砕される。
「くっ―!」
吉富が身を起こしたときには、すでに元いた位置に敵はいない。
頭上から、殺気。
高下駄から鋭利な刃を突き出した、ロストーク=サーペントの踏みつけがくる。
体ごと投げ出すようにして、かわした。
ロストーク=サーペントが立ち上がり際に、先端に刃のついたワイヤーを腰から飛ばし、左右の壁にそれぞれ打ち込んだ。
吉富が大剣の切先を向けた刹那、宙吊りになったロストーク=サーペントがワイヤーを軸に高速回転。

ザクッ!!

その回転から、ロストーク=サーペントの後頭部から伸びる蛇がしなり、先端の刃が音速に等しい迅さで一閃した。
かろうじてかわした――ように見えた。
だが、吉富が三たび、山賢に向かって剣先を向けた瞬間――――

ボトッ!

「……な…に?」
背後で壁が切り倒された音に、その音はかき消された。
ロストーク=サーペントの蛇鞭の穂先が、鈍い金属の光を放っている。
大剣を握っていた吉富の右腕――その二の腕から先が地面に落ちていた。
本来腕があった箇所にのっている断面は、模型標本のごとき鋭利さである。
気付いてから半拍――思い出したように血が噴き出し、灼熱のような激痛がはねた。
284虎神vs竜王:2005/09/14(水) 15:34:58 ID:bgmRn4Sd0
「ぐっ――?」
遅れて生じた痛みに、吉富が呻いた。
切断された箇所からは、壊れた蛇口のように血があふれている。
「つまりません。…もうおわりにしましょう。俗に言う“くたばりな”ですね」
山賢が失望をあらわに吐き捨てる。
「漫画家の戦いが腕の一本や二本で終わるとは……思わんことだ」
カリ…と吉富がネジを一本、かじる。
バネ仕掛けのように左腕が跳ね上がり、銃口をポイントする。
火を噴く寸前、その腕に無数のクナイが突き刺さった。ロストーク=サーペントが投擲したものだ。
銃が床に転がり、すべっていく。
左腕の出血と激痛にも、吉富は耐えた。
片足を軸に、体をコマのように旋回させる。
吉富は小型の竜巻と化し、傷ついた左拳を意に介さず、ロストーク=サーペントに叩きつける。
だが、ロストーク=サーペントは、横の回転から生じる遠心力を乗せた一撃を、縦回転することでかわし、さらに攻撃に転じた。

蛇鞭の刃が、吉富の左肩口から胸にかけてを深々と袈裟切りにした。

多量の噴血がほとばしり、吉富自身の体に降り注いだ。
吉富の体が支えを失い、俯せになって地面に力なく倒れた。
血の池が広がり、緑色のコートが赤く赤く染められていく……
「吉富昭仁……
 どんな漫画家かと思えば…つまりません。
 俗に言う“カスヤロー”って輩でしたね」
ゴミを見るような目で倒れた吉富を一瞥する山賢。
「…もっと、もっと強い漫画家はいないものですかねェ…ジャバ・ウォックのような強い漫画家は……」
つぶやきながら、踵を返す。
「さて…行きますか」
285虎神vs竜王:2005/09/14(水) 15:35:49 ID:bgmRn4Sd0
「…待て…」
動く者などいないはずの後方から声。
次いで、カリ…とネジをかじる音。
怪訝に思って山賢が振り返ると、そこには血だまりに座り込み、ネジをくわえる口に微笑とも呼べぬ笑みを浮かべる吉富の姿。
山賢がわずかに驚いた顔をする。
「その傷でまだ動けるとは……その珍妙な能力といい、やはり純粋な人間タイプの漫画家ではないようですね」
パチン、と扇子を閉じて、体ごと吉富の方へ向き直る。
「……ですが、その深手で、これ以上何をするおつもりで?
 今の貴方……俗に言う“死に損ない”ってヤツでございますよ」
山賢の嘲弄に吉富は応えず、また身じろぎもしない。
ただくわえたネジを咀嚼し、そして一言。

「――完成――」

その言葉にただならぬものを感じた山賢は表情を変え、後方に飛び退く。だが、遅い。
吉富がつながっている方の手を山賢に差し向ける。

ズリュウウオッ!!

とてつもなく巨大な何かが、掌から堰を切ったように溢れだした。
それは全て鉄の塊であり、山賢を直撃し、洪水のように押し流した。
「うおおおぉぉっ――――!?」
後から後から吉富の手を通して現れる質量に圧倒され、山賢は一気に数十メートルもの距離を吹っ飛ばされる。
そして、完全に再構築が終了し、その全貌が明らかになったとき、山賢は絶句した。
286虎神vs竜王:2005/09/14(水) 15:37:36 ID:bgmRn4Sd0
「―――原潜――だと!?」
吉富が再生したものの正体は、ゴッドハンド艦隊に配備されていた、原子力潜水艦の一隻だった。
エイボーンという飛竜を連れていながら、なぜ吉富が水びたしだったのか――その答えがこれだった。
原潜と壁に挟まれた山賢が血反吐を垂れ流しながら呻いていた。おそらく、肋骨関係はグシャグシャだろう。
そこへ、吉富のさらなる追撃がくわえられる。

「ハープーン――発射――」

「!? ――き、きさ…」
山賢の抗議じみた声は、原潜からのハープーンミサイル発射音に埋もれた。
垂直に撃ちだされたミサイル群が急激な弧を描いて、原潜もろとも身動きとれない山賢の付近に着弾する。

 ドッグアアアアアアッッ!!

原潜を巻き込んで、ミサイルの爆発が連続した。
とどまるところを知らぬ爆裂は、広範囲にわたって被害を拡大し、その周辺一帯を残らず灰燼と化しせしめた。
粉々になった欠片が、パラパラと水面に落ちる。
ほとんどが海になった、つい今まで自分達が戦っていた戦場を、吉富はボウ…とした顔で眺めている。
さすがに深手を負い過ぎたせいか……しばらくは動くことができそうになかった。
少し休むか……と意識を閉ざしかけたとき――目の前の海面が盛り上がった。
海中から現れたのは、巨大なイカのモンスターであった。
そして、その上に立つ人物の姿に、吉富は表情を険しくする。
至るところから出血。だが、致命傷とは呼べぬ程度の傷を負った、狂眼の男。
和装はほとんどが吹き飛び、その下に着ていた≪魔≫と大きくプリントされたノースリーブ姿になった山賢が、
“絶対防壁マニューバー=シールド”の電磁バリアを周囲に張り巡らしたまま、血のからんだ壮絶な笑みをつくっていた。

「次はどんな玩具が飛び出すのですか? ビックリ箱君――」
287作者の都合により名無しです:2005/09/14(水) 23:02:56 ID:quNzm6AQ0
ヤマケンは規格外のキャラだなあ。
どこまでイけるのであろうか
288プロレスマッチ開始!!:2005/09/16(金) 16:32:57 ID:abhXql8v0
>69

カァァァン!

鐘打(ゴング)は鳴った。
リング上に立つのは、ゆで将軍と大暮の二人。福地はとりあえずエプロンで待機。
狭いリングの中で向かい合うと、将軍と大暮の体格差はことさら顕著だった。
大暮が小柄なのではない。むしろ、身長は高く、格闘士として十分な筋肉量もそなえている。
それでも、将軍の2メートルを楽々と超える巨体を前にすると、子供と大人ほどの格差があった。
まして、二人の間に横たわる実力差は、それ以上かも知れない。
将軍の強さを嫌というほど思い知った福地は祈るような気持ちで、大暮の戦い振りを見守ろうとしていた。そのとき―――

リング中央で、将軍が片手を差し出した。

「え・・?」
五指を開き、掌を大暮に向けている。
“手四つ”――力較べをしようというのだ。
つまり、将軍は真っ当なプロレスをするつもりか――これには福地も驚いた。
プロレス好きの大暮は、得たりとばかりに不敵に笑って、迷うことなく将軍と手を握りあう。

 メキリッ・・・

大暮の顔色が変わったのはすぐだった。
涼しい顔をした将軍が、万力にかませたようなとてつもない力で大暮の手を握りしめている。ギシギシと骨が軋んで悲鳴をあげる。

「うぬう ナマ イキ なっ」

プライドを刺激された大暮が、もう一方の手もそえて両手で将軍の手を握った。
そのまま将軍の手を砕かんばかりの勢いで力を込める。

「出でよ フリッツ・フォン・エリック!!!」
289プロレスマッチ開始!!:2005/09/16(金) 16:33:35 ID:abhXql8v0
【グレ吉の一口プロレス講座】
「フリッツ・フォン・エリック」(故)
往年の名レスラー。
馬場の額を何度となく割った必殺技「鉄の爪(アイアンクロー)」はあまりにも有名。
息子達も5人がプロレスラーになったが次々と怪死していったことでも有名。


 ミシッ ミシッ・・

「・・・・・・フッ・・」
「・・・・ヘッ!!」

互いに笑みをかわしあう将軍と大暮。と――

   “ひょいっ”

大暮は手四つの体勢から、片手一本で将軍の頭上まで差し上げられていた。
あまりのパワーの差に愕然とする大暮。

「獣達の狩り場に迷い込んだゴミ漁りのカラスは場違いもはなはだしい。
 二人がかりなら、私に勝てる夢でも見たか?」

     ブ  ン ッ !

「!!」


         ド    ゴ  ッ  !!


リング外、すぐ側にある壁に大暮の体は激突させられた。
290プロレスマッチ開始!!:2005/09/16(金) 16:34:39 ID:abhXql8v0
「・・がっ」
「兄さんッ・・」

衝撃に吠える大暮に、福地が悲痛な声をあげる。

「?どうした?若いにしてはタフな漫画家だと聞いているが?」

からかうような将軍の声。
そして、再び大暮の景色が高速で吹っ飛んでいく。

 
          ガンッ!  ゴッ!  ゴキン!   ゴキ!

             ベキ! 
                  べキン!   ゴン!
                             ガ ガン !   ズン!


まるで扇風機にヒモで結び付けられたカマキリか何かのように、将軍は片手を振り回す。
鉄の壁や柱めがけて、人間大のものがキリキリ舞いする様は、ゾッとする光景だ。

「どうやら・・・・プロレス以前の問題だな」

観戦していた永井豪が、ぼそりとつぶやく。

「イキモノとしての基本的な戦闘能力(スペック)で、ハナから勝負になってねえ。
 素質はあるかもしれんが、今はまだ小烏と巨獣の戦い・・」
291プロレスマッチ開始!!:2005/09/16(金) 16:36:03 ID:abhXql8v0
しかも・・・・
と、永井は心の中で付け加える。

「(ゆで将軍の“力”の源は、あんな力まかせの「腕力」なんかじゃあ決してない・・
 かつて漫画における“不条理”が生み出した、最悪のコンビの片割れ・・・・)」

「ぶは――――――――っ!!」

永井よりもずっと近くで試合を見ていた福地が突然、盛大に吹き出した。

「!?」

将軍はそれを怪訝に思い、振り回す手を止めた。
そして、自分が握っているものを見て、呆気にとられる。

それは、大暮の姿を模しただけの、ただの岩の塊――――

              ゴ    キ  ン  ッ !!

「 ぶ  っ  ぐっお 」

あらぬ方向から飛んできた足裏が、将軍の鼻面にモロにブチ込まれた。

「らあっ!!」
「がっ」

飛び蹴りを叩きこんだ大暮が、空中で回転し、そのまま遠心力たっぷりの回し蹴りを同じ箇所に炸裂させる。
将軍の巨体が、大きく傾いだ。

「雑魚はテメーだっ!!」
292プロレスマッチ開始!!:2005/09/16(金) 16:37:07 ID:abhXql8v0
大暮は吼えながら、腰から伸ばした鎖で将軍の両腕を拘束し、土手っ腹をエア・トレックによる加速度を乗せた膝蹴りで突きあげる。
さらに浮き上がった将軍のテンプル(こめかみ)に、全体重を乗せた返しの膝―!!

            ゴ  ゴ  ン !!!

一呼吸で叩きこまれた2発の膝が、ものすごい打撃音を奏でる。
傾いていく将軍を尻目に、大暮は静かに着地し、勝ち誇るように言った。

「フッ!!かかったなオロカ者!!
 エア トレック
 A・T殺法 うつし身!!」

「いやA・T使ってねーし。なんかムリあるし」

福地がしっかりとツッコミを入れてやる。
だが、次の瞬間、福地はハッとした表情で大暮に叫ぶ。

「兄さん うしろに気をつけるっす!!」

反射的に振り向いた大暮は自分の眼を疑う。
そこには、顔面からボタボタと血を滴らせながら仁王立ちする将軍の姿―!

「(バ・・バカヤロウ・・・・俺のケリ、フルコースでもらって倒れねーだと!?)」


               ゴ     ゴ   ン  ッ  !!!!


次の瞬間、組み合わせられた将軍の両拳が、打ち下ろしとカチ上げの2連続で大暮の頭部に叩きつけられ、その首が千切れんばかりに盛大に揺さぶられた。
293プロレスマッチ開始!!:2005/09/16(金) 17:11:02 ID:abhXql8v0
「・・・・・・!!・・・が・・・」

想像を絶する衝撃に、大暮の意識が一瞬吹っ飛んで真っ白になった。
気がつくと、リングに片膝をつき、頭から出血している。
その様を見下ろしながら、将軍が言った。

「どうやら・・・・少しばかり貴様のことを見くびっていたようだな」
「ぬ・・・ぐっ・・・!!」

まだ体の芯が痺れている。かつて味わったことのないパワーだった。

「効いたぜ。さすがにマガジンを代表する蹴りだ。これなら、この先もいい戦いができそうだぜ」
「(――!!)」

将軍の意外なほど正々堂々とした物腰に、大暮は衝撃を受け――――そして楽しそうに笑った。

「――ったく、しょうがねえな。へへっ・・・・せいぜい付き合ってやんよ♥」
「さあ、来い!!」

再び、二人はリング中央で対峙した。
294プロレスマッチ開始!!:2005/09/16(金) 17:12:37 ID:abhXql8v0
一方、その戦いを見つめる福地は、将軍の意外な対応に驚いていた。
あんな騙し討ち同然の攻撃を喰らって流血したら、プライドを傷つけられて激怒するとばかり思っていたが――――

「どうやら、ゆで将軍は粗野で乱暴者じゃない、正統派のファイトが本来の持ち味みたいっすね」

そう認識をあらためる福地だった。



しかし――

「(ゆで将軍は怒りなどのパワーを借りなくとも、おまえたちを始末できる自信があるから激怒しないだけだ)」

ただ一人、永井豪だけは、ゆで将軍の真実を正確に看破していた。

「(しかし ひとたび なにかのはずみで怒りが爆発すると――――
  リ ン グ 上 は 地 獄 絵 図 と 化 す で あ ろ う )」

永井が、ふと空を見上げた。
空は、まるでこの試合の行く末を暗示するかのような―――

血のような紅に染まっていた。
295作者の都合により名無しです:2005/09/16(金) 23:21:05 ID:Qw2Gf+HI0
いよいよ始まったわぁぁぁ
グレ吉講座ワロタ
変則マッチの行方は如何に!?
296作者の都合により名無しです:2005/09/17(土) 00:32:32 ID:R4y1KgaH0
しかしいいコンビだなこいつらw
297作者の都合により名無しです:2005/09/17(土) 23:28:11 ID:M1R0SXBj0
エリ8編になってからグレ株が物凄い勢いで高騰してるな
それまでは典型的な噛ませキャラだったのに、いつの間にかギャグもシリアスもこなせるナイスガイに
298長き戦いの終わり:2005/09/18(日) 17:53:45 ID:BvORrA8I0
>>261
準決勝第一試合――――終了。
割れんばかりの大歓声のなか、今はっきりと勝者と敗者が分かたれた。
天に拳を突き上げ、勝利の凱歌を歌うのは、えなりスポーツチーム。
頭を項垂れ、敗北の無念に沈むのは、ガンガンサンデーチーム。
長き戦いを終え、それぞれの胸中は。

「負けたのか、俺たちは…」
グラウンドに大の字になった安西が天を仰ぎながらつぶやく。
安西は、頭から血を流したまま動けないでいた。
首だけを動かして、横を見る。
そこには、全身に大火傷を負って突っ伏している?仮面の姿。
あの一瞬――。
?仮面は、己が身ごと敵を倒そうとした雷句を、炎から身をていして咄嗟にかばったのだった。
それだけにとどまらず、最後の力で安西に拳を叩きこんでいた。
なぜ、この男はそんなことをしたのか――。
おそらくは、こんな試合で自らを犠牲にするような真似を後輩にさせたくなかったのだろう。
安西は感じていた。師匠・藤田と同じ――火のような熱さを持った拳。こんな拳を打てるのは――。
(いや…、もういい……)
安西は途中で考えるのをやめた。
(こいつの中身が何者であろうと…もう、いいんだ)
今回は期せずして敵同士という形になったが、深い意味はないのだろう。全ては成り行き。
それを言うなら、安西や雷句がガンガンと共に戦っているのも成り行きなのだ。
試合に負けはしたが、安西はどこか奇妙な清清しささえ感じていた。
299長き戦いの終わり:2005/09/18(日) 17:54:32 ID:BvORrA8I0
「しっかりするのだ、大輔」
雷句が、左足の折れた樋口をおぶっていた。
「負けちゃったね……あたし達」
消沈した、しかし後悔を感じさせない口調で、樋口はつぶやく。
「ウム、いい勝負だったのだ」
「そうだね…あたしも足が治ったら、もっと練習しなきゃ」
「ウム!!」

グラウンドに倒れていた選手が次々と起き上がり、それぞれのキャプテンのところに集まっていた。
現時点でキャプテンマークをつけているのは、陽一と村枝のふたりだ。
最後まで死力を尽くして戦った両チームイレブンが、一同に会する。
そして、陽一と村枝ふたりはさわやかに笑い、お互いのユニフォームを交換する。
一段と、声援が大きくなった。

『これは両チームキャプテン同士、その健闘をたたえあい、ユニフォームの交換です!!
 くいなき戦いをおえ、まことにさわやかな両チーム選手の笑顔です!!』

それぞれのチームの選手たちを歓呼する声がわきおこる。
互いの健闘をたたえあう選手たち。
こうして、準決勝第一試合は、スポーツ対決にふさわしい、爽やかな幕切れを迎えようとしていた。

      
       ――――――  そのはずであった  ――――――
300狩猟の時間:2005/09/18(日) 17:55:26 ID:BvORrA8I0

          ドシャン! ドシャン! ドダダダダ!!

     ビバボボボボボボボボボボボボボボボボボビッ!!

       ギ ュ オ オ オ オ オ ン !!

             !!   ン  ア ン  ア ュ  ギ  


場内の空気を一気に凍てつかせ、切り裂く、けたたましいロックミュージック。
怒涛のドラム。流麗なツイン・ギターが奏でる激しさと同居する哀愁。そして――。

「 同 人 ガ ン ガ ン  ぶ っ 壊 っ せ え っ 」

「 サ ン デ ー の 奴 ら を 皆 殺 せ ー え っ 」

ロブ・ハルフォードばりの切れたスーパーハイトーンボイス。
デスメタルや現代的ヘヴィネスじゃない、80年代メタル、まさにべビメタメタルゴッド!
スラッシュ系の音楽を狂ったように演奏し、歌いまくる、突如として出現した奇怪なロックバンド。
それが!

「 てめーらは試合に負けたあっ!! だから、殺すぜえ、てめーらあ!! 完璧全殺し、徹底的に “ 悪 滅 ” じゃん!!! 」

いつの間にか、グラウンドの周囲を巨大なスピーカーと、そして仮面をつけた夥しい数の集団がとりかこんでいた。
その正体は、ハードロック風のスタイルやら、あるいは和服やら、あるいはマントやら、あらゆる格好の余湖祐輝たち。
そう、ガンサンの戦いは、まだ終わってはいなかった。
301狩猟の時間:2005/09/18(日) 17:56:15 ID:BvORrA8I0
安西「こ、こいつら…! 秋田の……!!」
村枝「……!! もう仕掛けてきたかっ!!」
いろめきたつ場内。激変した空気に、観客たちは、一様に戸惑いを隠せない。
そのとき、ロイヤルボックスに、矢吹が姿を現す。

矢吹『観客の皆様は静粛に。これもセレモニーの一環だ』

村枝「矢吹っ!!」
朗々と響くアナウンスに、村枝が牙剥くように叫ぶ。

矢吹『私は先日、参加選手にあるルールを定めた。それは、【試合に敗北したガンガンチームを好きにしていい権利】――だ。
彼らは、他社の数多くの漫画家に恨みを買っている。よって、私はこのルールを定めた。
反論は何人も許されない。このトーナメントの主催者はこの矢吹健太郎であり、私こそがルールだからだ』

安西「や・ぶ・きぃぃぃっ!!」

矢吹『さあ、ガンガンとサンデーに恨みを抱く全ての者達よ。存分に、彼らを狩りつくすがいい!
   なお、念のために言っておくが、現時点でトーナメントに勝ち残っている選手が、“狩人達”の行動を妨げた場合、その者はただちに失格となり、大会参加資格を失うことを肝に命じておきたまえ』

車田「矢吹め……見下げ果てた下種が!!」
はき捨てる車田。本来、車田にはガンガンサンデーを助ける義理はない。
しかし、試合で精魂尽き果てた者達を、衆人観衆のなか一方的に嬲り殺すような真似は、車田の美意識からは受け入れがたいものだった。
だが――自分達がここで秋田との戦いに加入すれば、決勝には進めない。
そうなれば、矢吹を討つという目的は果たせなくなるのだ。
車田を始めとして、えなりチームの面々は、傍観者に徹する以外に選択肢を持ちえなかった。
302狩猟の時間:2005/09/18(日) 17:58:01 ID:BvORrA8I0
余湖「この試合場は観客席と隔離されてっから、どんなに暴れても観客に被害はでないじゃーん!!」

矢吹『さらに、準決勝第二試合はこことは別の闘場で行う! 心ゆくまで狩猟を楽しんでくれたまえ!!』

余湖「クククク、ご機嫌じゃん? それじゃあ派手にいくぜーっ!!」
ギター担当だった余湖が、そのギターを持ち替え、ボディの方の先をガンサンチームに向ける。

余湖「戦慄のギターッ!!  ア  ク  メ  ツ  ボ ン バ ー  !!!」

          ┣¨  ッ    ゴ   ッ   !!!!

ギター型ロケットランチャーが火を噴き、グラウンドの芝ごとガンサンメンバー達を爆風で吹っ飛ばした。

余湖「怒涛のベースッ!! ア ク メ ツ フ ァ イ ヤ ー !!!」

         ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッッ!!!!

今度はベースギター型マシンガンから、一気に大量の銃弾が発射され、ガンサンメンバーに機銃掃射を仕掛ける。
完全に周囲を包囲した余湖軍団は、各々が銃火器や、日本刀、斧などを手に、群れをなして襲い掛かってくる。
村枝「フッウウウウウウ!!」
巨大リボルバー”HATE SONG“をそれぞれ両手に構え、迎撃する村枝。
それに呼応して、ガンサンも反撃を開始する。
だが、満身創痍のガンサンに対して、会場を埋め尽くすほどの余湖軍団の物量は絶望的なまでに圧倒的だった。

303作者の都合により名無しです:2005/09/18(日) 21:55:50 ID:LogapL0Q0
>矢吹『私は先日、参加選手にあるルールを定めた。それは、【試合に敗北したガンガンチームを好きにしていい権利】――だ。

なんと憶えていたのかヤブキサマ!!
調べたら案が出たの19部の513だったよ!懐かしいぞ!!
どうなる?どうなる?
304作者の都合により名無しです:2005/09/18(日) 22:08:43 ID:mEdqtZz/0
最初は小学館対秋田書店だったんだよなあ、懐かしい
305絡まる蔓(かずら):2005/09/20(火) 12:34:25 ID:wkQw/cge0
>>302 前スレ225)

えなり「うわぁ〜、なんか僕の与り知らない所で勝手に話が進んd」
にわの『えなりクン、今さら今さら』

つい今まで美しき緑のフィールドだったそこは、
派手な大砲と共に凄惨な殺合場となってしまった!!
ルールに阻まれ、“好敵手”を助けられないえなりチームの面々。
もちろん積極的に死地に飛び込む物好きは少なかろうが。
ひとりベンチに残っていたえなりは、
ギプスの足で動く事もできず、脳内に住む宿主とふたりで困っていた。

 「しかし、この様子だと医務室の選手達も危ないよなあ。
 僕はどうすりゃいいんだ?選手が減れば出番が増えてありがたいとはいえ、
 わけのわからない虐殺ショーは見逃せないよ!!」
 『(うわぁ)うーん。えなりクン、その事なんだけど・・・』

現状が理解できかねるえなりに、
「岡村クンに聞いたんだけどね」と前置きして説明を始めるにわの。

昨日に行われた<温泉慰労会>会場のある別府市が、
多数の敵対勢力に襲われトーナメント再開が危ぶまれ、
混乱の打開策としてトナメ主催の矢吹が選手達に一計を講じた。
それが混乱の元とされている<ガンガンサンデー>メンバーの処分。
矢吹は『トナメがやれれば何でもいいや』と、
因縁の決着を別の場所──今回のアクメツ祭り──に持ち越したのである。

 「・・・混乱って、具体的には何があったんですか?」
 『それこそ複雑らしーんだけどね。仲間を殺されたとか、
 噂では秋田と小学館は会社同士の戦争中とか色々あるらしいよ。
 でもだからって、殺し合いは見世物じゃない。しかも見知った連中ばかりで。
 ボクはもう、そういうのは見たくないんだ・・・嫌だよ、もう』
306絡まる蔓(かずら):2005/09/20(火) 12:35:46 ID:wkQw/cge0
 「でも先生、僕らは助けに行く行かない以前の問題だし。
 あー、矢吹め!漫画家をただの金ヅル扱いしやがって!!
 というかそもそも慰労会なんか開かなきゃこんな事には」
 『アーアー聞こえないモーン(涙)』

慰労会幹事おなじみの嘆きはともかく、
歯がゆい思いを抑えるために何かないかと考えるえなり。
 「あ、そういえば先生携帯持ってますよね。
 誰か状況打開の助っ人になりそうな漫画家に召集かけられませんか?」
 『えーやだ何そのアイディア賞。待っててー』
肉体の主導権を一時戻したにわのがマイ携帯をめるめると動かす。
 『審判の松江名せんせーのお友達のケータイ番号聞いてるモン。
 せんせーケータイないから間接的に連絡ッスよ。今かけてみるデシ。
 あと他にも誰かいないかな・・・ボクのマル秘交遊録を〜』

ブツブツ言いながら携帯をいじるにわの。
えなりは胡散臭さを感じながらも見守るしかなかった。

 『・・・今のボクにできるのはこれだけだ。
 そろそろボクは次の試合場、隣のコロッセオに戻らなきゃならない。
 この足じゃあ・・・試合どこじゃないけど、それでも行かなくちゃ。
 裏御伽のみんなと、バンチのみんなが闘うんだ。
 じゃあ行くぞえなりクン!もんがっと変身、とうっ!!』
 「え?行くぞって〜〜僕もですかぁ〜〜〜!?」

突然肉体の主導権を取り戻し、第二形態もんがーに変身したにわの、
えなりの霊魂を連れて浮遊を始め、選手用通路へと飛んで消えた。

 『にわの先生、ごめんなさい。
 ドジ踏んで借り物の身体を悪くしてしまって』
 「ん?んーまーしょーがないわな〜。それよっか、
 幽霊のキミの今後については岡野君と相談しなくちゃねー」
307絡まる蔓(かずら):2005/09/20(火) 12:37:23 ID:wkQw/cge0
コロッセオは矢吹鑑地下中央区の中心部にあり、
地下部分には周辺の施設と共有で格納庫等を有している。
選手達の移動は地下施設内の専用トンネルで行い、
もんがーは現在トンネルの中を軽快にすっとばしている。

 『・・・先生、僕は色んな人に世話になりっぱなしだ。
 子供だから気にするなって言う人もいるかもしれない。
 でもやっぱり、漫画家の皆さんがあんなに頑張っているところに、
 実力の伴わない普通の人間が混じるって事は・・・』
 「つらい?やっぱり」
 『・・・覚悟が必要ですね。全てを失う覚悟が』
 「そーだねぇ」

漫画家は人ではない。そんなはずはないのに。
この世界この時代、たった一握りの存在に常に振り回されている。
渦の中心にいる者にはわからない感覚。

 「ところでえなりクン、この大会に、
 なんで何千人も参加を申し込んだのか考えた事ある?」
 『矢吹が10億なんて大金で煽ったからでしょ?
 あと矢吹に取り入ろうとする連中や、
 逆に矢吹を倒そうという(ボクらみたいな)連中が集った結果で』
 「そゆ事。プラス閉塞間もあるんだと思う。みんな矢吹君に踊らされ、
 殺し殺されアレですよ。シンプルといえばシンプルだけどね。
 師も弟子も、先輩後輩も、義理人情も関係なく、
 全てのしがらみを闘技場の中に置いてゆく。
 過去の因縁も、恨みつらみも、ぜーんぶ相手にぶつけちゃえばいい」
 『はあ』気のない返事をするえなり。

 「でもそれはとても悲しい事なんだよ。だって、
 闘ってもちっとも楽しくないじゃないか。楽しさを忘れた漫画家が、
 舞台の外に降りて再びペンを取っても、いい漫画が描けるとは思えねーもん」
308絡まる蔓(かずら):2005/09/20(火) 12:39:47 ID:wkQw/cge0
 『つまりはこの大会で漫画家がダメになる大会って事ですか?
 まあ言われれば、殴り合ってるヒマがあればペン握れよって感じですが。
 でもこれってすごく異端な考え方じゃないですか?
 漫画家は互いにツブしあって生きるプロの漫画描き集団なんでしょ?』
 「───この広い宇宙のどこかに、
 漫画家が漫画だけ描いて生きてる世界がある・・・はず。
 ボクはこの世界も、そう“なれる”と信じたい、んだ」
 『漫画家が・・・?』
 「そうさ。漫画家が漫画だけで闘う世界。剣の代わりにペンを振るう世界さ」

えなりは一瞬呆然としてしまった。コロッセオ屋上展望台でも思ったが、
この人の話は雲をつかむようで、まるで現実味がないと感じたのだ。

 『ははは、そんな夢物語、見る方がおかしいですよ。
 大体ペンだけでどうやって敵に立ち向かえばいいんですか?』
 「うー、だからそもそも敵ってのがいなくてさぁ」
 『敵がいない?何言ってるんですか。
 漫画家は己の作品を拳に代えて連載権を勝ち得るものなんじゃあ』
 「・・・もーいいっ!知らない!どーせボクはドリーマーですよ。
 部外者の君ならわかってくれるかもしれないと思ったのに!
 マトモに話を聞ーてくれるのはどっかのぐうたら先生ぐらいだよ!プンスカ!」

空中でもんがーが暴れ出し、へそを曲げてスネてしまう。
えなりは「危ない人に関わってしまったなあ」と嘆き、空知を恨んだ。
気まずい沈黙はしかし長くは続かない。
 「・・・矢吹君を倒したいらしいね、えなりクン。
 噂は聞いてるモン、矢吹に対抗する漫画家チームの頭、経歴不明の謎の少年。
 きっと君と矢吹君の間には、深い因縁のつる草があるんだろう。
 ところで君は矢吹君を倒したとして、その後はどうするの?」
 『え、その後?特に考えていませんよ。
 矢吹を倒せば、姉が帰ってきますし、腐敗した業界は解体されます。
 僕は一読者に戻るだけです。それが何か?』
309絡まる蔓(かずら):2005/09/20(火) 12:41:03 ID:wkQw/cge0
えなりの精神が徐々に息苦しさを感じるようになる。
真綿で首を絞められる感覚と言う奴か。この人は何を言いたいんだろう?

 「矢吹君を倒しても問題はなくならないよ。
 彼が支配者の立場になれる土壌が10年前に既に存在していたんだ。
 第二第三の矢吹健太朗が現れ、同じ事が繰り返されるだけさ。
 つーかなんで漫画家が漫画家に支配されなきゃならないんだ。
 天は人の上や下に人を造らなかったんだろー?
 漫画家は人じゃないからどーでもいいとか言わないでほしいよマジで。そもそも〜」
 『ストップ!ストーップ!!思想犯で矢吹軍に捕まりますよ!
 わかりましたから!矢吹を倒した後の責任も取れYo!!って話ですよね!?』
 「そゆこったい。ヨロシクたのんまっせ、少年!
 まあ殺し合いナシで矢吹政権崩壊するのがボク的ベターなんだけどね」

・・・なんて危険な思想の持ち主なのだろう。
世界の有りようの根本にまでツッコミを入れるなんて恐ろしい人だ、
とえなりは肝を冷やす思いであった。きっと宇宙人か何かに違いあるまい。ふと。
 『あ、もしかして、にわの先生は矢吹が憎くないんですか?』
 「・・・彼の師匠は、ボクの親友なんだ。小畑君、気にかけてたと思うよ。
 自分がもっとしっかり彼を見ていれば、こんな風にはならなかったろうってね」

漫画界のしがらみ。矢吹によって横の繋がりが寸断され、
残ったものは小さなコミュニティ同士の反発と競争。その頼りない世界の中で、
隙間を縫うように生きてきた者にしか見えないものがあるのだろう。
えなりは深くため息をつき、やがて彼らは通路を抜けコロッセオ一階・一般ロビーに到着した。

 「・・・バンチと当たるのは怖い。昔所属してたから特にね。
 でも行かなくちゃ。ボクにはこの先、やらなきゃならない事が2つもある。
 万が一の際には・・・片方は人に託さなくちゃいけない。
 それはもしかしたら君かもしれない。あの恐ろしい<< 蝕 >>から皆を助けたいんだ・・・!!」
 『しょく・・・?蝕って何ですか先生?』
えなりの小さな声は、隣からコロッセオに移動してきた観客の騒音にかき消された。
>>226


    ビ  ョ  ゴ オ オ オ オ オ オオオォォォオオオオォォォォォオオ オ オ  オ !! ! ! ! !


島袋「なんだぁぁぁ!!?どれだけ大型の台風が来てんだよぉーーーーーっ!!!」
小野「あー!?聞こえねえよ島袋ぉぉぉーーーー!!もっと大声出せやぁぁぁーーーー!!!」
島袋「なんですかー小野さぁーーーーん!!?ああーーー庭の木が折れるぅぅ〜〜〜〜!!!!」

美しい夜明けは暴風雨に呑まれ、いつ頃訪れたのかわからなかった。
<管理人>によって人工的に調整された、ここ宇宙墓場サルガッ荘の気候風土は、
外界を知らない管理人TAGROのために、この地に訪れた人間が口伝えに教えたものだ。

  「外の世界には人間がたくさん住む星があって、自然があって四季があって・・・」

これらを話したのは先客で、現在は地球に戻って怪我の療養中である長谷川裕一であり、
日本の風土を中心にした外界の情報からTAGROが、
『夏〜秋には台風なるすごい雨風がよく来る』と、
自身の記憶に刷り込んでしまい、結果がこの有り様である。
いっぺん憶えるとなかなか調整が効かないらしく、ここ数年この時期は、
サルガッ荘存亡の危機にしょっちゅう立たされる羽目になってしまった。
それが今回の惨劇に繋がるわけで。

素朴な木造アパートは猛烈な風に軋み、雨漏りが始まり地鳴りが起こる。
そこらの木板を張りまくった窓ガラスが、災害に向かって抗議の音を立てる。

島袋「ヤバイで す よ 小野さーーん!!アパ ー ト が 崩 壊しますぅぅ ぅ」
小野「だ か ら聞こえねーーー ・ ・  ・ ・ ーーーうお雨戸が吹っ飛ぶ ぞぉ ぉ ぉ !!」

バリバリバリと、壁板が剥がれる耳障りな音が響いた。
万乗が耳を座布団で塞ぎながら、廊下に突っ伏し怯えている。
最大瞬間風速は50kmを超えるかもしれない。
とてもじゃないがこのおんぼろアパートは台風通過(?)まで、
持ちこたえられそうになかった。それでも奇跡を信じて雨戸を押さえる住人たち。

そして彼らアパート防衛隊とは別の目的を持つ人たちが、
身体ごと惑星の外に飛ばされそうになりながら、暴風の発生をとても喜んでいた。

曽田「風力発電装置!ガラクタ置場の中から見つけて、
 みんなで直したものだ。これなら俺がペダルを転がさなくても、
 大量の電気を確保できる。しかし普段はそれほど風もない星、
 庭にぽつんと立てられ役に立たなかった。だが今日はこの風だ!
 あの電気食い“異次元ソナー”もフル稼動できる。
 行方不明の森も見つかるさ、絶対に!」

“技来チーム”技来・曽田・井上&岩明。3+1名の、
アパート地下の研究室生活二ヶ月弱の成果が今、再び試される。
総員アパート補強のための寝不足と疲労でフラフラ、
特に昨夜から特訓を続けていた井上和郎は意識も朦朧だ。
それでも気力を振り絞り、この台風に運命を賭けるため、
彼らは動き続ける。発電機とバッテリーと、全ての装置をコードで繋ぎ、
サルガッ荘裏庭のオブジェと化していた、
ポール一本の風車が活躍の時を迎えている。


武井「おいお前ら、庭のなんだよ、風車回ってるじゃんかよ。
 暴風の時は危ないから止めるもんじゃないのか?止めそこねか・・・ん?」
首にタオルを引っかけながら研究室に注意しにきた武井が、
部屋の異様な雰囲気に気づき思わず息を呑んだ。

光原「あら?あなた方は地下に避難ですか?
 小野先生たちも呼んだ方がいいかしらね・・・うふふ」
武井の後ろをひょっこり付いてきた光原が微笑んでいる。
部屋の緊迫感は長谷川始め先客たちが、
遺したらしい機械のひとつ・多次元間で生命反応を捜すソナーが、
技来に彼の親友が存在する次元と地点を大まかに特定したせいだ。
魚群探知機のようなシンプルな映像の中、
探索条件と一致した証明の力強い光点が電子音と共に反応している。

  “ピコーン ピコーン ピコーン”

技来「・・・いた。あいつは生きていた。おい森、
 そこはどこだ?どこなんだ!!どこかに書いてないか?」
岩明『数字は表示されているが皆目検討つかないな。ただやはり、
 この荘のある世界とは別のような気がする。もしかしたらあいつは案外、
 地球に残っているかもしれない。地球の外に、人間が長期で生存できる環境が、
 それほど多くあるとは私は思わない』
技来「フーム・・・なるほど。それならいいが。しかしこれで、
 次の段階に移れるな。すなわち───この宇宙墓場からの脱出手段を作る事、だ」

 ビュゴオオオオオォォォォォ・・・・。
 サルガッ荘に叩きつける猛風が、地下室にまで届き不気味な唸り声を上げた。

武井「光原、あんた時空超えられたよな。ただここからの脱出はできないんだっけ?」
光原「私の移動力よりこの地の吸引力が強ければ無理だわって話よ。
 やってみれば結果は違うかもね。でも力を振り切れたとして、
 全員連れて帰るのは難しいわ。せいぜい1人か2人ね」
武井「そんなに強力なのか」
光原「ブラックホールみたいなものだもの。それに武井先生、あなた選べる?
 たった一本、しかも頼りない蜘蛛の糸を・・・誰にたらすか。
 私は嫌よ。私はただの案内人、神様なんかじゃあないわ」
武井「・・・発電機を使って移動のパワーを増幅できないか?」
光原「さあ、わからないわ。変わった発想ね」
2人のささやき声は周囲には聞き咎められる事もなく、
技来たちは修理済みガラクタリストの再チェックを始めていた。
313Sting Girls:2005/09/21(水) 15:42:04 ID:dB+6ZYES0
>>220 >>306 25部401・514)

矢吹艦内ではぐれてしまった松江名俊と田辺イエロウが合流したのは、
艦内Aブロック住宅地区にある小さな銭湯の前であった。
身体も生ゴミ臭いし気分転換にと、田辺の危機を色々と救った西森博之(美少女体型)が、
彼女と共にお風呂に入っていたのだ。インモラル?まあ気にしない。
田辺「気にしなさい!」
西森「まーまー赤くなるなって」
松江名「2人とも無事で何よりだよ。すまない、つい戦場のにおいに釣られてしまってね」
西森の携帯を介して連絡を取り合った三名は、
警備が厳しくなった大通りを歩いてテレビモニターのあるビルに着いた。
準決勝第一試合がちょうど終わり、試合のハイライトが映されていた。

西森「あーあ、ガンガンサンデーの連中、負けちまったかあ。
  俺がいつでも助っ人に来てやったのによ。って無理か。
  しかし橋口の奴は解説かい・・・スプリガンの仕事なめてんのか?コラ」
画面向こうの同僚に愚痴る西森。彼女?は敵にも味方にも基本的に容赦がない。
一部の『苦手なタイプ』を除いて西森のスタンスは一定している。
そして隣に並び、膨れっ面の西森を硬質の瞳でちらりと見る田辺。
彼女は西森の事を、信頼も信用もしてるが、常に一定の距離を取っている。
これは田辺自身の性格であり、西森以外の人間に対しても同じ。
端から見ると“柄の悪い美少女と氷のような美少女”の2人組。
松江名クラスのオトナな男でないと、会話もまともに成り立たないだろう、
そんな2人はなんだかとってもいいコンビであった。

松江名「そうそう、田辺君。例の酒とっくりを回収したよ。
  西森君の言っていた地点に先に向かったのだが、既に戦闘は終わっていた。
  ただこのとっくりが、瓦礫の上に丁寧に置かれていたのだよ。
  恐らく必要がなくなったのだろう。軍隊が来る前に着けてよかった」
そう言って“鬼酒”が満たされた容器を田辺たちに見せる松江名。
ちゃぽんと液体のゆらめく音が響く。この中は酒と妖気に満たされており、
森田まさのり始め詰め込まれた漫画家の生命力を、今も吸い取り続けているのだ。
314Sting Girls:2005/09/21(水) 15:43:03 ID:dB+6ZYES0
事情を知らない西森は松江名からこの『強者のエキス』の簡単な説明を聞き、眉をひそめる。

西森「命を吸う酒?非科学的だなーしかし。まあ今更か。
  んで中の人間連中はどうやって追い出せばいいんだ。壊すのか?」
松江名「いや、下手に壊すと中の者の命は保証できないらしい。
  とっくりの注ぎ口が妖術で特殊空間になっているので、
  いわゆる呪いを解く魔法辺りでも効くかもしれないと術者の先生は言ってたよ」
西森「術者?そいつがこのけったいな酒を作ったのか?」
田辺「恐ろしい事をするものね。許せないわ」
松江名「はっはっ落ち着きなさい、彼はちゃんと反省しているから。
  呪いを解く術というとガンガンのカムイ先生かな。ねぎらいがてら伺おう・・・」

にこやかな松江名の表情が、しかしテレビ画面を見て一変する。
サッカー場にアクメツ軍団が襲撃、爆音と共に<ガンサン狩り>が始まったのだ!!
松江名「!? 何てことを!!」
三人の表情が強張る。矢吹の発表が挟まり、第二試合の案内が入り一旦CMが流れる。
田辺「これは・・・公開処刑?大変だわ、行かなくては!」
そんな折、西森の携帯に未登録の番号から電話が入り、舌打ちしながらボタンを押す。
西森「こんな緊急時にかけてくんじゃねー!死ね!」
???『キャーごめんなさいっ!ま、松江名せんせーにすぐサッカー場来てーとご連絡をばっ!』
西森「なんだ?あ、松江名ならここにいるぞ。おーいヒゲ」

電話の主は松江名に西森の携帯番号をもらっていたにわのであり、
えなりの案でガンサンに一番近しい漫画家に電話をかけたのである。
松江名「先生ですか、今見ましたよテレビ。はい、ええ、もちろん。そうだ、
  例のとっくり見つかりました。大丈夫です、こちらでなんとかしま──」
頷く松江名の携帯を西森がひったくると。
西森「テメーが術者か?死ね!ひゃっぺん死ね!コーモンにアリンコ入って死ね!じゃーな」
電話の向こうの男がヘコみまくるのを無視し電話を切った。

西森「ケッ、待ってろよガンサン連中。俺サマは無敵じゃ!!」
新たな戦場の風が、3人の心を沸き立たせる。彼女らは地下中央区へと走り出した。
315作者の都合により名無しです:2005/09/21(水) 19:57:24 ID:Ey4X09Sw0
えなりの話は、こういうパラレルワールドの話を舞台上の人間が語り出すのは好きじゃないので微妙。
電話の相手はやはり西森一行だったか、登場以来目立った活躍が無いという点で共通している方々なので頑張って欲しい。
西森のキャラは近来の新キャラの中では一番好きかもしれん。

サルガッ荘は相変わらず癒されるが、ついに終わりに向けて動き出したか…
こういう基盤のしっかりとしたサイドストーリーは誰かしらまたやって欲しいものだ。
つうか長谷川ここにいたのね…忘れてたなあ…
316作者の都合により名無しです:2005/09/21(水) 21:02:59 ID:v3V8Q5810
インモラルな乙女達ハァハァ(゚∀゚*)西森いいよねー
317なんでいるんだよ:2005/09/24(土) 13:16:06 ID:6AFaZJKc0
 熱狂のサッカー終了直後の暗転――観客たちはその光景を、ある者は目を背け、ある
者は叫び、そしてある者は嘔吐しながらも、不思議と受け入れていた。
「なんやなんやなんなんやァ!! 俺は聞いてへんぞ矢吹のアホバカ糞!」
 人情に厚いみずしなは勿論怒り狂う。
「殺し合いが始まるの……? 嫌、見たくない、もう、そんなの」
 優しき少女天野は、瞳にうっすらと涙を溜めて呻くように。
「なんで俺の行くところ行くところこうトラブルが……」
 佐藤はそう言って頭を抱えるがそれは自分のせいではないことも同時に認識していた。
「あ、ネタ浮かんだ」
「あなたこんな状況でネタだししないでよ!」
 松椿夫妻は別に変わらない。
「殺し合いは何も生まないッス! どうせなら掘り合いすればいいッス!」
 男同士も何も生まないだろう岩村。
「あーまたおもしろそうなことがはじまるねあははー」
「アホか! 人の生き死に懸かってるののどこがおもろいちゅうねん!」
「だいじょぶだってー。がんがんのひとらつよいひといっぱいだしー。もえるこもおおいしつ
きあげたいこもたくさんいるしー。だからぜったいしんだりしないよー」
「…この状況だと、お前の言葉が何故か頼もしく聞こえるんはなんでなんかな」
「貞本さんはやっぱり凄いです……うん。大丈夫ですよね。皆、殺されたりしませんよね!」
「貞本……でかい男だぜ」
「お前主人公にしたストーリー考えてもいい?」
「ちゃんと許可取る辺り大人ね、あなた」
「貞本君はさすが車田さんと互角にやりあっただけあるッス。掘らせて欲しいッス!」
 この状況で細かいことをツッコむのはよそう――
 みずしなも。
 天野も。
 佐藤も。
 夫妻も。
 岩村も。
 セリフはなかったが他の連中も。
 皆、この時だけ考えが一致していたのであった。
318本当の拳1/6:2005/09/24(土) 16:13:08 ID:HUje10Nx0
>>177 >>280
「どうしましたか森川先生、早くこの場を離れましょう。どうやら騒ぎがあったようです。慌ただしくなってきました」
「ああ、なんでもない。今行く―」
急かす赤松に、森川が生返事で応じた、そのときであった。

            ギ ッ  ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ

それはなんとも形容しがたい――

          ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ギ ・ ・ !!

まるで、何か強烈な力が、固い物体を削り取っていくような音であった。
二人がたまらず音の方を見た。
「「――!!」」
その漢(おとこ)は――――――
黒かった。
シャツも。
ズボンも。
靴も。
そして恐らくは――― 下着も。 
鉄の皮膚をもった男であった。
男は、路地裏の暗闇の一角にたたずんでいた。
その男の左手はズボンのポケットに突っ込まれ、右手は近くのビルの壁に触れている。
見れば、その壁には平行に並んだ5本の深い溝が刻まれ、いまだ煙を吹いている。
男の指に込められた、尋常ならざる力が、それを可能にしたのだと二人は即座に理解できた。
まさしく獣そのもの――いや、それ以上の爪牙を持つ、鬼であった。
鬼の名を、板垣恵介といった。

319本当の拳2/6:2005/09/24(土) 16:14:45 ID:HUje10Nx0
赤松が担いでいた山内の巨躯を地面に下ろす。
二人の警戒メーターが、一匹の格闘の魔人の出現を前にして、振り切れていた。
森川が殺気走った紅い眼で、板垣を睥睨する。
「くっくっく、こいつは懐かしい顔もあったもんだ」
森川の殺気を愉しむように、板垣が嘲笑う。
「オドロかねェんだな」
森川が言った。
「死んだはずの奴が生きてた…なんてこたァ、この世界じゃアタリマエのようにあるからな」
実際、森川も赤松も一度は本当に死んで、そこから転生を果たしたのであるが。
経緯はともかく、結果に大差はないということだろう。
「…で、『オーガ』ともあろうものが何用だ?ケンカの申し込み…ってんなら24時間、年中無休で受け付けてるぜ」
「――こちらの山内君は、アナタの高弟だと聞き及んでいますが…」
つい今しがた死闘を終えたばかりだというのに闘争意欲旺盛な森川の台詞にかぶせるように、赤松が割って入った。
「…もしかして、彼を取り戻しにきたのですかな?」
すでに無詠唱呪文を周囲にセットした状態の赤松が、警戒色を露骨に滲ませながら尋ねる。
もし、赤松の言った通りであるならば、交戦は避けられぬからだ。
そのような事態になった場合、二人がかりで負けることはないにせよ、相当な死闘を覚悟せねばならなかった。
だが、板垣は鉄の皮膚をゆがめて、意味ありげに笑うだけだった。
「誰が、誰を、助けに来ただと?生憎、俺の弟子に、他人の助けを借りるような軟弱者は一人もいねェんでな」

             ユ   ラ   リ

そのとき、赤松の背後で、空気が動いた。
振り返り見て、さしもの赤松も絶句し、森川が口笛を吹く。

自慢の拳を砕かれ――
顔面を、そして誇りを完膚無きまでに破壊された山内雪奈生が――立ち上がっていた。
320本当の拳3/6:2005/09/24(土) 16:16:42 ID:HUje10Nx0
立ち上がった山内の形相は一変していた。
いや、一変していたのは形相だけではない。
巨拳が向けられたのは、森川や赤松ではなかった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ」
言葉にならぬ怒号を吐き出しながら、一直線に突っかけた先には――板垣が立っていた。
全身を襲うあまりの激痛に、すでに錯乱しているのか。
狂った山内の拳が、板垣の鼻にアゴにボディに、容赦のない暴風のごとく吹き荒れる。
消化器を砕き西川の肋骨を損傷せしめた巨拳の乱撃を、板垣は無防備で受けて微動だにしない。
むしろ、薄らと笑みすら浮かべていた。
まるで、父親にじゃれつく幼子のようですらある。体格差は正反対なのが、なおさら現実離れしている。
打たれるままになっていた板垣が、ポケットからそろりと拳を抜いた。
周囲の空間ごと軋ませようとするかのごとく、板垣の拳が握られた。
体勢を立て直すでもなく、構えるでもなく、板垣が握りしめた拳を無造作に振った。
ラッシュの真っ最中だった山内の顔面に、まともにブチ当たった。
山内の巨体が、地面と水平に飛んでいた。
路地を凄まじい勢いで吹っ飛び、大通りまで滑空した。
そして、飛んでいく先には――ちょうど通りかかったトラックの真ん前。

         ガ  ッ  シ  ャ  ア ア ア ア ン ッ

山内がフロントガラスにブチ当たり、木っ端みじんにガラスが砕けた。
しかし、山内は砕けていなかった。凄まじいばかりのタフネス。
強引に着地した山内が、走行中のトラックを力ずくで押しとどめる。
巨漢の虜力が、その足腰を踏ん張らせ、あまつさえ押し返し――横転させた!!
森川と赤松の二人が、その光景に唖然としていた。
奇妙に静まり返った通りの真ん中で、山内は我に帰ったようにきょとんとしていた。
全身の激痛が、板垣の一撃で相殺されたのだろう。山内は、正気にかえっていた。
服がところどころ破れ、顔にはガラス片がいくつか刺さっているが、本人は気にとめてすらいない。
山内はしばし辺りを見回し、そして師匠の姿を発見した。
思わず目をしばたき、そしてつぶやく。
「組長――」
321本当の拳4/6:2005/09/24(土) 16:19:41 ID:HUje10Nx0
板垣が、山内に近づいていく。
森川達は、次の瞬間には板垣に捻りつぶされているだろう山内の無惨な姿を想像した。
しかし、予想に反し、板垣は、
「負けたみてえだな」
そう声をかけながら、山内の頭を軽くつかんだだけだった。
「押忍……」
と、山内は返事をした。
「言いわけは、何もねえよなあ」
「押忍」
「で、どうだい?」
優しい声で、板垣は言った。板垣がこんな声も出すというのが、森川達には驚きであった。
「何が勝った?」
「――――」
「何が負けたんだい?」
板垣が訊いた。
「サンデーが勝ったか……」
「――――」
「負けたのは格闘漫画かい、チャンピオンかい」
「押忍……」
苦痛に耐えるように、山内はその言葉を吐き出した。身体の痛みよりも、それは遥かに辛いものかもしれなかった。
「何が負けたんだい……」
問われて、
「自分です……」
山内は言った。

322本当の拳5/6:2005/09/24(土) 16:21:39 ID:HUje10Nx0
「山内雪奈生が負けたか」
「押忍」
「西森博之が勝ったか」
「押忍」
「くやしいよなあ」
「押忍」
何を言われても、何を問われても、答はただひとつ“押忍”のみである。
他の答はない。
全ての言葉や言いわけを腹の中に呑み込み、押さえ込んで、忍ぶ。
その答が、
“押忍”
である。
「山内よう……」
板垣が言った。
山内は、歯を噛んで、押忍と言う。
「忘れるんじゃねえぞ」
「押忍」
「今、おめえが腹の中に思っていること、考えていること、そいつを一生忘れるんじゃねえぞ」
「押忍」
「それを、一生忘れねえことが、てめえを強くする」
「押忍」
「忘れたら、その時が、お終めえの時だってえことだ」
「押忍」
「山内雪奈生は、その時に死ぬ」
山内は、ゆっくりと、板垣を見た。顔を伏せ、肩を振るわせている。
「よかったなあ、山内よ」
山内は、歯を噛んでいる。激しく火を噛んでいる。
「まだまだやらにゃならねえことが、たくさんあるってことだ。おまえさんは、まだ強くなることができるんだ。いいなあ。この板垣恵介までは、まだまだ遠いぜえ……」
323本当の拳6/6:2005/09/24(土) 16:41:08 ID:HUje10Nx0
どん、
と、板垣が、山内の腹に、右の拳をあてた。
「お…」
山内は、そこまで言いかけ、歯を喰いしばった。
「お、押忍……」
肩を振るわせながら、歯の間からその言葉を搾り出した。山内が顔を伏せた下の床に、ぽたぽたと水滴が染みを造った。
「押忍」
拳を握ったまま、山内は、自分の発することのできる唯一のその言葉を、噛んだ歯の間から吐き出した。
山内の巨躯が、軋み音をあげて哭いているようであった。

「本当に強い拳って……」
その光景を見ていた森川が、
「あんなに……優しいんだな……」
誰にともなくつぶやき、自分の拳を見た。
まだ新しい血にまみれた拳。その点は板垣も違いはないはずだが、それでも何かが違う。
死んで転生する前の自分は、その“何か”を持っていたような気がする。
しかし、それが分からない。その違いがどこからくるのか。
あるいはそれは怨恨から成る今の己の拳と、生の闘志のみに溢れた拳との違いからくるのかもしれなかった。
「さて…行くか」
いつの間にか、二人の方に向き直っていた板垣が声をかけた。
「行く…どこにですかな?」
赤松がいぶかしむように言う。
「ここは人目につく。長話をするにゃ不向きだ」
「長話?」
意味ありげに笑って、板垣は言った。
「そいつに代わって、俺が教えてやるよ。今の状況ってやつをな」
324妖精の歌は終わらない:2005/09/24(土) 20:13:45 ID:6QfbMmWX0
(24部145 22部107)

 『──当旅客機は間もなく矢吹艦C空港へと到着いたします。
 現在C空港は混雑のため大変ご迷惑をおかけしております。
 ご了承ください。繰り返します───』

午後4時前。東京某所で漫☆画太郎と離れてしまった猿渡哲也は、
早々に画太郎を放置し、予定通りKIYU事件調査のため、飛行機で矢吹艦に戻っていた。

 「東京では雪が降っておったが、九州はさすがにナンボか暖かいの。
 だが天気予報では、じきにでっかい寒波が全国を覆うって話やったけな。
 さすが年の瀬、観光客まで切羽詰った顔しとるわ」

艦内4ヵ所の空港の内、B空港はブロックごとほぼ閉鎖されており、
やっと一部復旧しA〜Cブロックへの行き来も緩和されたものの、
艦全体の混乱はなかなか解消されなかった。
余波を受けるC空港を、人の山に半分流されながらに猿渡は歩いてゆく。
一般人より頭二つ分ほど大きな体躯で、しかし気配は静かな川のよう。
沈みし島に怨念の多くを置き去りにした、彼の瞳は人ごみと違う場所を見ていた。

空港内の土産コーナー脇でクリスマスセールが行われていた。
目的地・Aブロックへの移動手段を捜していた猿渡がそれに気づく。
 「・・・そうか。年の瀬の前に、これがあったんや。
 すっかり忘れていたわ、あいつらの機嫌取りに何か買うて・・・」
はっとして口をつむぎ、旧いタイプの伊達眼鏡のズレを指で直す猿渡。
今、自分は何を口に出そうとしていたのか。

プレゼントを渡す相手は。最愛の妻と娘はもういないのに。
いなくなった<原因>を<究明>するため舞い戻ってきたのに。

 「・・・・・・」
猿渡はしばらく無言のまま、賑やかしいワゴンの前から動かなかった。
325妖精の歌は終わらない:2005/09/24(土) 20:15:06 ID:6QfbMmWX0

                 ****  ****  ****

 「倫タン──岡本倫。あなたはいつも夢でうなされるみたいですねえ。
 一体何を見ているのでしょうかね。まさかプール大の巨大プリンにダイブする夢ですか?」

<内藤奪還騒動>により研究施設の機能をほとんど失ってしまった、
KIYU秘密基地内某所。現存する“手持ちの材料”から敵に対抗できる兵器の復活を誓った、
科学者・木城ゆきとは首魁キユの親友・岡本倫に取り入り、
謎の新戦力<CHOMPA兵団>の開発を進めていた。岡本倫を実験機械に詰め込んで。

そしてデータを取られながら、倫は今日も夢を見る。
彼女を救いも殺しもしない、ただの記憶の波の寄せ返しを。
嘘か真実かもわからない、霧の向こうに映る凍った世界を。


    キユくん  おねがいがある……
          「ぼく」がもし  ───ようになったら  ───してほしい

 ( 自分の声が 聞こえないにゅ 私は今 何を言ってるにゅ? )

    ────  殺してほしい  自分じゃ 未練があって 死ねないから  ────

 ( だから 聞こえないよ…… キユには 聞こえてるの ねえ キユ? ねえってば…… )

 
                 ****  ****  ****

人や物でごった返しの空港から吐き出されるように出てきた、
猿渡の手に緑と赤の縞模様が入った紙袋があった。人波から離れ、
そっと紙袋を覗き込む。リボンに包まれた小さな熊のぬいぐるみが彼に微笑みかけた。
猿渡は人目を気にするように周囲を見渡すと、表情を消してバスターミナルへと向かった。
326作者の都合により名無しです:2005/09/25(日) 02:35:18 ID:CmqJl5rY0
倫タン久々だな…
327敵と仲間と銃弾と・・・:2005/09/25(日) 20:37:42 ID:1/lGkpcC0
>>245
片倉「奇妙なもんやで、ホンマ・・・」
田口と睨み合う片倉は、苦虫を噛み潰すような顔で呟いた。
その表情には、苦渋と自嘲と後悔が入り混じっていた。
片倉「仲間やった男と銃を突き付け合って、敵やった男に背中預けとる。ホンマ、おかしいで・・・」
片倉の独り言とも取れる問いに、田口は答えない。
ただ、氷のように冷たい視線を向けるだけであった。
片倉「それに後ろのあんた、たしかウチの大将のダチやった黒田さんとちゃうか?」
表情こそ見えないが、黒田も同じく答えない。
片倉(どいつもこいつも・・・あん人を裏切りよる。やりきれんでこれは・・・)
内藤の苦悩を思い、片倉は痛いほど奥歯を食い縛った。
渡辺「無駄口叩てる暇はないぞ、片倉。後ろの二人が動く前に、こいつらを何とかするぞ!」
田口や黒田の代わりに、背中の渡辺が答える。
冷静だが、微かな焦りが混じった声であった。
片倉「ああ、分かってるがな。せやけど・・・」
打つ手がない。
4人の睨みあいは、細い一本の糸の上に立つ天秤の如く、繊細な均衡の元に刻を止めていた。
渡辺(打つ手なし・・・)
片倉(だが・・・)
風の揺らめきや瞳の瞬き、心臓の鼓動ですら地震のごとく、その均衡を揺れ動かしていた。
いつ崩れてもおかしくない。
渡辺(この均衡が崩れたとき・・・)
片倉(そこに己が全てを賭ける・・・)
微かな要因が、鮮血のハリケーンを呼ぶ。
その変化が彼らにとって吉と出るか凶と出るか、それは分からない。
だが、今はそこに、唯一の活路があると信じるしかなかった。
だからこそ、今は耐えるしかない。
328敵と仲間と銃弾と・・・:2005/09/25(日) 20:41:07 ID:1/lGkpcC0
だからこそ、今は耐えるしかない。
身じろぎ一つ、瞬きひとつですら命取りになりかねない状態で、二人はただひたすら待った。
極限まで高められた緊張は、五感を限界まで研ぎ澄ましていた。
耳は相手の心臓の鼓動を捕らえ、肌は相手の体温の変化を感じ取り、鼻は相手の体臭を嗅ぎ、瞳は相手の瞳に写った自分自身を認識し、舌は風の味を知る。
人知を超えて研ぎ澄まされた五感が、二人に今を知らせる。
事態はまだ動かない。
だが、二人は時が立てば立つほど、焦りを感じていた。
渡辺(この状況・・・)
片倉(ワイらには、不利や・・・)
2対1対1
渡辺と片倉は一応仲間だが、田口と黒田は敵同士である。
これが今の状況だ。
一見、有利に思える条件だが、如何せん体勢が悪い。
もし事態が動き、片倉と田口が撃ち合ったとしたら、渡辺も田口の銃弾を浴びることになる。
避けでもしたら、渡辺の背中には風穴が開く。
逆もまた然りである。
下手に動けば、後ろの相棒が殺される。
二人は文字通り、仲間の死を背負っていた。
だからふたりは、身じろぎ一つ出来ぬこの状態で、最大限の行動を起こしていた。
背中越しに伝わる心臓の鼓動、吐き出される呼吸、全身を流れる血流、頭より発せられる脳波、それら全てを二人は整え、合わせ、同調させていった。
結果、二人はあたかも、二つの頭と、四つの目と、四つの手と、四つの足を持つ一つの固体と化していった。

やがて時は流れる。
329敵と仲間と銃弾と・・・:2005/09/25(日) 20:43:39 ID:1/lGkpcC0
静寂の時間も、激動の瞬間に全てを奪われる。
風に流れてきた一枚の布切れが、片倉と田口の視界を同時に塞いだ。
片倉の心臓が跳ね上がり、それによって渡辺も瞬時に状況を悟った。
刹那の時、片倉は銃を内側に向け、左下の地面を撃った。
弾丸による点の攻撃ではなく、発射の反動を利用して腕を素早く振るい、線の動きによって田口のマシンガンを弾き飛ばそうとしたのである。
同時に、一気に体を右に傾けていた。
背中の渡辺もそれに同調し、体を左に動かしていた。
黒田の銃弾を避ける為である。
片倉のこの選択は、まずは成功する。
片倉は首尾よく田口のマシンガンを弾き飛ばし、渡辺も何とか黒田の銃弾をかわす。
二手目、今度は渡辺が仕掛ける。
黒田の銃弾を避けれたのは、片倉の背中に釣られて無意識の内に動けたからである。
もし、意識をして動いていたなら、黒田に直ちに察知され、避けた方向に銃弾の雨を食らっていただろう。
銃撃戦において素人の渡辺は、銃においてこの男には決して勝てないことを良く分かっていた。
それゆえに、渡辺の取った行動は・・・
渡辺「どりゃああぁぁぁあぁぁ!!」
巨大なバイオリンの重量を生かした、ハンマーのごとき打撃であった。
至近距離で、黒田にこの質量を止める術はない。
・・・・かに思えた。
ドゴ!!
だが、巨大な熊すら一撃で絶命せしめるこの攻撃は、同等以上の質量を持った黒田の攻撃によって止められていた。
鎖によって両腕にぶら下げられ、背中に垂らされていた髑髏の刻まれた棺桶によってである。
330敵と仲間と銃弾と・・・:2005/09/25(日) 20:45:20 ID:1/lGkpcC0
本来なら、渡辺は即座にバイオリンを引き戻し、次の攻撃に備えるべきであっただろう。
渡辺「まだまだあぁぁぁぁぁ!!」
だが彼は、力任せに棺桶を弾き飛ばして、背後までバイオリンを振りぬいた。
バイオリンにはヒビが入り、体勢は大きく崩れ、頭も心臓もガラ空きとなっていた。
一方、棺桶を弾き飛ばされ多少体勢を崩されたとは言え、その崩れは渡辺ほどもない黒田は、余裕を持って銃を構え直した。
照星を合わせるのにコンマ一秒。
引き金を引くのにコンマ一秒。
合計コンマ2秒もあれば、ケリは付く。
一方渡辺は、バイオリンを戻すのにコンマ一秒、照星を合わせるのにコンマ一秒、引き金を引くのにコンマ一秒と、どうしてもコンマ3秒掛かる。
自分のバイオリンは棺桶などには負けてはならないという思いで意地を通したのか、はたまたもう少し黒田の体制を崩せると判断を見誤ったのか、ここに来て渡辺は致命的なミスを犯していた。
敗北は必至。
だが・・・
片倉「ワイらの!!」
渡辺「勝ちだ!!」
コンマ一秒!!
田口のマシンガンを弾き飛ばした片倉の魔法銃が、そのまま背後の黒田を撃ち、渡辺の振り抜かれたバイオリンに搭載されていたミサイルが、後ろの田口を撃った。
田口「!!」
黒田「!!」
派手な爆発音と共に弾き飛ぶ田口と黒田。
背中を合わせたまま、静かに佇む片倉と渡辺。

狙いは、背中を通して仲間が教えてくれた・・・・・
331作者の都合により名無しです:2005/09/25(日) 21:11:35 ID:cT1r9g3i0
なんだかお洒落なバトル来たわぁぁ
1×1は無限大なのねぇぇ
332作者の都合により名無しです:2005/09/25(日) 23:23:09 ID:SIbpbAi10
渡辺あの状態からよくぞここまで…(⊃Д`)
へたれて終わるかと思ってたのになあ。
333作者の都合により名無しです:2005/09/26(月) 17:54:45 ID:5FWPEiIp0
ウホッ
メチャカッコウィー
334愚連隊CYCLOPS:2005/09/28(水) 17:11:16 ID:+P83F5630
>>54 >>314

準決勝第一試合直後の乱闘で騒然としつつある地下中央区を、風のように走る三人。
髭を生やした書生風の男ひとりに、タイプは違うが洋服と和服の美少女がふたり。
西森・田辺・松江名であった。
ガンサンのピンチに駆けつけようとひた走る三人だったが、そのとき先頭を走っていた西森の足が突然ピタリと止まる。
田辺「・・・?どうしました・・・何か」
西森「止まれ。下手に動くな。・・・ウットーシー連中とカチ合っちまったみてーだぜ」
松江名「彼らは・・・・・・」
立ち止まった三人の行く手・・・前方には、十を軽く超える数の単車が群れをなしていた。
一見して暴走族と分かる違法改造車と、それにふさわしい容貌の男女たち。
むろん、西森が「厄介」と言うほどの存在。ただの暴走族であろうはずがない。
族車の集まりの中心には、紫色のカウンタックがただならぬ威圧感をともなって存在していた。


 梅澤「あ・・・?妙な三人組だ・・・?」
みさき「そうなんですよ。あいつら、確か全員サンデーの漫画家ですよ。俺のとこにも秋田書店経由で手配書回ってきましたから」
カウンタックの運転席に鎮座している男は、当然、梅澤春人。
そのすぐ側で梅澤に状況を説明しているレディース風の女は、CYCLOPSのひとり、みさき速(はやし)。
チャンピオン出身の作家である彼女のもとには、秋田書店がバラまいたガンサン関係者全員の手配書が回ってきている。
 梅澤「へぇー・・・だがよ、今の俺たちがやんなきゃならねーのは、あくまでキユの探索だぜ?それをうっちゃってまで、テメェはガンサン狩りに混ざりてーのか?」
みさき「い・・・いえ。そういうわけじゃ・・・」
梅澤がニラミをきかせて言うと、みさきはたちまち恐縮する。
他の者に対しては男勝りかつ冷酷残虐な、まさにCYCLOPSにふさわしいガッデムな作家である、みさきだが、心酔している梅澤相手だけには徹底して忠実、腰が低い。
自分の愛機XJRにまたがったまま、かしこまって小さくなる、みさき。そんな様をみて、梅澤は可笑しそうに笑い出す。
 梅澤「ブハハハハ、何マジになってんだよ、みさき。糞真面目なヤツだな、テメーは」
一転して笑い出した梅澤に、みさきはポカンとした表情を見せた。梅澤は、今度は怖い種類の笑みを浮かべ、言う。
 梅澤「どーせ近いうち、今の保守的な漫画家は誰だろーとぶっ倒なきゃならねーんだ。秋田の連中に協力するわけじゃねーけどよ。どーせ、行きがけの駄賃程度だ。たかだかサンデー作家三人ぐれー、大して時間もかかんねーだろーよ」
みさき「梅澤さん・・・」
 梅澤「それに、あの三人のなかに一人・・・面白そーなヤツがいるじゃねーか。オレもキョーミがわいてきたぜ」
そう言って、梅澤はカウンタックのドアを開けた。
335愚連隊CYCLOPS:2005/09/28(水) 17:47:18 ID:+P83F5630
プシィ――っとダンパーの音とともに、ゆっくりとゆっくりと開いていくランボルギーニ・カウンタックの扉を、西森は緊迫した表情で見つめている。
未来からやってきた宇宙船のようですらある、その車の中から出てきたのは、あるいは地球を侵略にきた宇宙人などよりも遥かに凶悪な存在だった。
スカルジャケット――骸骨のあばら骨がついている革ジャン――を身につけ、サングラスをかけたいかにもアブナなそーなオーラを全身から発散させる男。
それを見る西森のこめかみに、小さく汗が浮く。
 松江名「もしや、あれが梅澤春人か・・・!想像以上にキケンな男のようだ」
  田辺「・・・戦いを回避する方法はないんですか?」
  西森「そりゃ、あちらさんに聞いてくれよ。・・・もっとも、連中はヤル気満々みてーだけどナ?」
数名を引き連れた梅澤が、しゃべっているそばから近寄ってくる。
目の前の悪魔じみた風貌が、先に口を開いた。
 梅澤「てめーが、西森博之か?サンデーでも指折りって評判のヤツが、まさかこんな可愛いらしいお嬢ちゃんとはな」
後ろの部下達がゲラゲラと笑う。西森は、それを意に介せずに言い返した。
 西森「てめーが、梅澤“クン”かい・・・?随分とオレ様のネタ、好き勝手パクッってくれたみてーじゃねーの。まだ著作権料もらってねーぞ、倒錯したセンスの盗作クン!?」
途端に周囲の馬鹿笑いがピタリと止まり、かわって怒号が飛び交い始める。
特に、梅澤のすぐ側にいる、みさきに至っては今にも飛び掛ってきそうだ。
 田辺「ちょ・・・ちょっと、こっちから挑発して、どうすんの!?」
慌てて西森にツッコム田辺と、その横でやれやれ・・・と呆れる松江名。
梅澤は、昂ぶった部下達を手を軽くあげるだけで制し、面白そうにニヤッと笑う。
 梅澤「ウワサ通りのムカつくヤローみたいで、うれしいぜ」
 西森「てめーもな」
一気に臨戦態勢に、ふたりは突入した。こうなったら、もう誰にも止められない。
周囲の梅澤配下達もうごめきだす。
 梅澤「タイマンだ・・・てめーらは手を出すな。もっとも、残り二人と遊びてーヤツがいるなら、好きにしてかまわねーけどよ」
その言葉を最後に、梅澤はもう西森以外を意識から消し去った。
西森も同じだ。出会った時から、戦いナシで突破できない状況だった。
急いでガンサンの救援に向かうなら、ここを力ずくで突破する他なかった。
336愚連隊CYCLOPS:2005/09/28(水) 18:06:20 ID:+P83F5630
 西森「行くぞオラ―――!!!」
 梅澤「ぶち殺してやるァ〜〜〜!!」
二人が殺意を音声化しながら、同時に地を蹴った。
ブン、とものすごい音をたてて、西森の拳が空を裂く。
梅澤はそれをヘッドスリップしてかわすと、右腕をギロチンチョークの形にして西森の首をしめあげ、腹を膝で突き上げた。
 西森「がは!」
西森が空気の塊を吐き出した。
 梅澤「オラ――――!!!」
怒号をあげて、そのまま力まかせに後方に投げ捨てる。その方向にいた梅澤の部下達があわてて退避すると、そこの地面に西森が叩きつけられる。
 田辺「西森さん!!」
叫ぶ田辺。その声は、梅澤の部下達の嘲笑にかき消される。
 部下「ハッハーどうしたオラァ!!」
 部下「もーおしめーかァ!!?」
 部下「立てよコラ!」
得意げな梅澤が、近づいてくる。
 梅澤「フヘヘヘ、どーした西森。てめェ、オレをなめてんのか?
    あんな大振りの一発パンチなんざカスリもしねーぞ。ケンカのやり方忘れちまったんじゃねーのか、ハハハハハ・・・」
ピキ・・・
 梅澤「!?」
 西森「へへ・・・カスってんじゃねーかよバーカ」
サングラスの右のレンズが割れ、頬から血が伝っていた。
 梅澤「このやらァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 西森「勝負はこれからだ!!」
逆上した梅澤が、殴りかかってくる。
 西森(待ってろよ、てめーら)
 梅澤「死ねや、梅澤!!」
 西森(このヤローをぶっ倒して)

 西森(必ずかけつけるぜ!!)

西森の拳がカウンターで梅澤の顔面を吹っ飛ばした。
337作者の都合により名無しです:2005/09/28(水) 23:50:05 ID:oYplDkt30
DQN系作家対決キタワァァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
338作者の都合により名無しです:2005/09/30(金) 00:39:41 ID:d6I31EOE0
田代「させるかぁぁぁあああーーー!!」

カシャカシャカシャカシャッ
339微笑みの爆弾:2005/10/01(土) 16:55:23 ID:AGFqg+aX0
>>302

安西「でぇぇ!?何しやがる!!」  “ドパラタタタタタタ!!”
派手な機関銃の音に包まれる安西周辺。いよいよ始まった<ガンサン狩り>!
昨夜の激動の一夜・温泉慰労会にて修復不可能になった漫画家間の亀裂は、
小学館と秋田書店で開始された会社間戦争とあいまって一気にクレパスと化した!

安西「くそ、こいつら・・・数に物言わせやがって」
昨晩の大騒動は中途でリタイアしてしまった安西、
事の顛末は仲間たちから、なんやかやと聞かされていたが、
まさかここまで泥沼化していたとは。安西は歯ぎしりする思いだった。

安西(今度こそ、仲間たちを守り抜くまで闘う。それが俺の道だ!!)
複雑な感情で震える握り拳に小さなゲンコツが当てられる。
安西の視線の先で、彼の頼もしい相棒・雷句が力強く笑っていた。
雷句「行くぞ、安西。皆の笑顔のために」
2人の後ろで金田一が、雷句に託された樋口と手を繋ぎながら、
不思議なスマイルを浮かべていた。左足を酷く痛めている樋口は、
戦士達の背中を見つめる事しかできず無念の表情であった。

既に乱戦が始まってるところもある。水野と松沢ハリーがあっけに取られる中、
ようやく出番が来たと張り切る“女蛮”一本木蛮が、
大量の余湖軍団相手に満面の笑みで戦場を飛び回っていた。

蛮「ハン、どいつもいい悪党面(ツラ)してやがる。オイラがまとめて畳んでやんよ!」
小柄な彼女だが身体的ハンディをものともせず、
得意の『ただのケンカ』で余湖たちを水野らの周囲から追い払っている。
余湖「チッ、チョロチョロと鬱陶しい巨乳チビ子じゃん」
余湖軍団のひとりがモーニングスター(柄と鎖で繋がれた棘付き鉄球)
を振り回しながらブツブツ言っていると、柄を持つ彼の手に何か大きいものが当たった。
余湖「なんっ・・・す、水筒?」
意外な質量に驚き、柄を持つ手を思わず離してしまう余湖。
340微笑みの爆弾:2005/10/01(土) 16:56:19 ID:AGFqg+aX0
遠心力ですっぽ抜け宙を飛ぶモーニングスターをパシッと逆手で掴んだのは──
ケモノのようにファンキーな顔でほくそ笑む蛮姐さん。
水筒はサッカー時にあんどが持ち込んだ下剤入りの品である。
蛮「よーそろー、お宝ちゃんゲットだぜー♪」
水野が次に見た光景は、回転する鉄球から生まれる鮮血の百花繚乱と、
さらなる火線の熱風。蛮は鉄球一本で銃火と対等以上に渡り合っているのだ。

水野「・・・ちょっと離れた方がよさそうですねハリーさん。そういえば、
 敵の刺客の下剤で死にかけてたのに元気ですねー」
松沢「いやーはっはっそれがね水野ちゃん。今朝さ、
 ウチの戦艦無礼ドに大量のコケやキノコが生えたでしょ?
 なぜか怪我が回復する奴。あれ面白いなって思って、
 こっそりキノコ紅茶にして、ペットボトルに入れて持ってきたんだよー。
 飲んだら一発でスッキリ☆でももうあんまり残ってないんだ。
 もうちょっと作ればよかったなー、艦のキノコも殆ど廃棄しちゃったし・・・」
水野「え、まさか回復液ですか?すごいすごーい」

脳みそカレー男の意外な機転に素直に感心する水野。
しかし松沢が腰ミノの中央からほかほかの500mlペットを取り出した時、
上がっていた彼の好感度はマイナス近くまで減少した。
水野は隠し持っていた拳銃で軽く一発ハリーの脳天を撃ち抜いた。
松沢「OH〜紅茶はあと半分もないんだ、大事に扱ってくれよハニー」
水野「私はすこぶる健康ですので他の方に差し上げてください」


銃撃戦のドサクサに巻き込まれてしまった審判団。
彼らは覆面を被ったまま、小柄な主審──樋口に役割を押し付けられた山田秋太郎──
の周囲へ一塊に集まり、流れ弾に当たらないよう、
グラウンドから抜け出ようとしていた。ただひとりを除いて。
山田「離して!離してください!ガンサンの皆さんが!樋口さんがっ!!」
サッカーのルールブックを抱きしめた山田が、覆面たちに必死に引き止められている。
美しかった緑のフィールドは、血と硝煙と混沌に彩られてしまった。
341339:2005/10/02(日) 00:50:19 ID:a9DHte5m0
あれクレバスだっけ?クレパスだっけ・・・ アーウー
342作者の都合により名無しです:2005/10/02(日) 01:59:33 ID:r5vJfSIB0
クレパス=幼稚園児御用達の筆記用具。
343作者の都合により名無しです:2005/10/02(日) 03:03:47 ID:1/x4/+jA0
辞書ぐらい…いや、なんでもない
344作者の都合により名無しです:2005/10/02(日) 10:35:44 ID:a9DHte5m0
変換で出なかったんだよう
ごめんよう
345作者の都合により名無しです:2005/10/03(月) 01:25:46 ID:NwUlzM8I0
>>344
 言 葉 が 知 り た い か ?
 言 葉 が 知 り た け れ ば
 く れ て や る ! ! 

ttp://dictionary.goo.ne.jp/
346344:2005/10/03(月) 14:08:57 ID:OYWvlsoX0
(ノд`) アンガト
347鮮紅の狼:2005/10/04(火) 13:20:38 ID:DnxFy+Q60
>>340

試合の最後までピッチに立っていた十余名の選手たちの明暗が、
キビキビと動くトーナメントスタッフによって分けられようとしている。

係員「えなりチームの方達は隣接のコロッセオの、
 D控え室に移動してください。指示に従わない選手は、
 ガンサンチームへの荷担の意志ありとみなされ失格になります」
車田「強引な奴らめ・・・おい、姿の見えない仲間がいるが、あいつらは大丈夫なのか?
 ガンサン連中を襲う連中との抗争に巻き込まれてはいまいか」
係員「この場にいない選手の動向についてですが、
 大会委では把握しきれておりません。現在周辺に警備員を派遣しております」
許斐「・・・やれやれだね」
井上「医務室に運ばれたガンサンどもはどうなった?高橋留美子は!」
係員「わかりません」
村田「投げやりだなあ。それに岸本君を運ぶ担架ひとつ持ってこないんですか大会委は?」
係員「持ってこさせます。他の方々は徒歩で速やかに移動を」
村田「わかりましたよ(う、僕も足痛いんだけどな・・・)」

万事この調子なのでいいかげんえなりチームもげんなりしている。
行き当たりばったりなのはトップが矢吹だから仕方ないとしても、人間味に欠ける。
怒りと不満が嫌な感じで溜まってゆくのを選手達は感じていた。と。
井上「・・・おい、ナントカ仮面の姿が消えたぞ」
村田「あれ?そういえば・・・先に行ったんじゃないですか?
 陽一先生も見当たりませんし。それよりさっきからあの人は一体何を?」
アイシールドを装着したまま、村田が困ったように指した先には、
愛用の釘バットを鬼棍棒のように地面に突き立てながら仁王立ちし、
はらはらと緑の戦場を見つめて号泣する大和田秀樹がいた。

車田「 お、男泣き───!!? 」
348鮮紅の狼:2005/10/04(火) 13:26:57 ID:DnxFy+Q60
大和田のユニフォームこと全身の筋肉は、つい先程肉弾戦で死闘を繰り広げた、
柴田UMA子の血で真っ赤に染まっている。
その姿が村田には、『鬼ヶ島の赤鬼』に見えたという・・・。
果たして大和田の胸中やいかに。


そしてやはりアクメツ軍団の一部隊が、ガンサン選手が収容された、
スタジアム地下医務室に派遣されていた。そこには留美子や衛藤、
生死の淵をさまよっているらしいカムイと、今井にアレな事をされた椎名等がいた。
アクメツ部隊は彼らの抹殺のため、医務室近くの廊下に着いたが、
そこには白衣姿の精悍な男がひとり立ち塞がり、
彼らは先に進む事ができずにいた。男はトーナメント医師団の長であり、
別府温泉宿・松椿に於いて仲間の山田医師を守って重傷を負い、
それでも強き意志のもと、『患者の敵』の前に立ち塞がっている。
白衣の男は“K”こと───

真船「昨晩と同じような顔ぶれと構図のようだな。
 だがここにはまだ、崩れかけの建物の瓦礫は降ってこなさそうだ。
 さて、我々の仕事の邪魔をしないでもらおうか」

真船一雄の後ろには医務室の扉があり、中には彼の患者たちがいて、
真船をサポートする山田貴敏や、看護士たちが働いている。
闘う理由は、それだけで充分だった。

余湖「ああ、昨日はお祭りみてーなクソ騒ぎだったじゃん。今日もその続きだよ。
 秋田の宿敵矢吹をアクメツ、松島の仇のガンガンをアクメツ、
 小学館のモヤシどもをアクメツ!それを邪魔する奴らもまとめてよ!
 全員生首にして、回転寿司のレールに載せて運んでやろうかよォーーー!!」

10名以上の余湖たちが、ひとりの雄叫びを合図に戦闘態勢を取る。
真船の新調した白衣が、凶凶しき戦の庭に一際眩しく映えた。
349窮地の西森一行偏:2005/10/04(火) 19:40:09 ID:wSYy281P0
>>336

西森の顔面パンチをまともに喰らって吹っ飛んだ梅澤が、部下の単車に激突した。
しかし、梅澤は血の滴る口を舌なめずりでぬぐい、ゾクリとするような視線をぶつけてくる。
梅澤「フヘヘヘ……効くな〜〜テメェの拳はよ。どんなヤクよりも効いちまってるぜ…」
西森「ナニ、ヨユーくれてんだ、テメーはぁ!!」
右フック、アッパー、さらにハイキック。
華奢な身体からは想像もつかない強打が、梅澤の身体を振り子のように弾き飛ばす。
その動きはまるで舞うように華麗で、絹のようになめらか。
格闘の専門家である松江名の目から見ても、思わず見惚れるような鮮やかさだ。
 田辺「さすが西森先生……圧倒的ですね」
感嘆するようにつぶやく田辺だが、松江名の表情は険しい。
松江名「確かに西森先生は達人の域に達していると言っていい。並大抵の相手では太刀打ちできるものではないだろう。だが……」
二人が喋っている間にも、西森の拳が梅澤の横っ面にメリこむ。
だが、そのときに田辺もようやく気づいた。
 田辺「(あの男……あの西森先生の拳を“見て”いる!!)」
 梅澤「うるァ――ッ!!!」

バ キ イ ッ !!!

ラッシュの間隙をぬって、梅澤の凄まじいハイキックが西森を吹っ飛ばした。
西森の身体は、重力を無視したかのように地面から引き剥がされ、放物線を描いて道端に止まっていた自動車に激突し、その屋根をプレスしたように無残にへこませ破壊した。
 梅澤「な〜〜〜に調子に乗ってんだクソボケが! 立てオラ」
 西森「ぐ…」
たった一撃で完全に足にきていた。車体にメリこんだ体を強引に引き剥がすが、地面に降り立った途端、膝をついてしまう。
 田辺「なっ……西森さんが、一発で!?」
松江名「…彼女の相手は、“魔人”だ!!」
350窮地の西森一行偏:2005/10/04(火) 19:40:54 ID:wSYy281P0
 西森「ってーなコラァ―――!!」
サッカーボールキックにきた梅澤に、西森はしゃがんだ状態から飛び上がり、カウンターぎみに両膝を叩き込む。
 梅澤「うるァ―――ッ!!!」
だが、梅澤は全くひるまず、西森の亜麻色の髪を掴み、自らの鉄頭を眉間にぶつけた。
西森の秀でた額が割れ、美しい顔が無残に血に染まる。
 西森「くっ…」
 梅澤「なんだよ、大将こんなモンか? まだトビたりねーぞ、オレは?」
 西森「ナメンナコラ―――!!」
鳩尾にヤクザキック、さらに顔面に左右のフックを叩き込む。
しかし、梅澤は殴られながら、まるで痛みを感じていないかのように笑みさえ浮かべ…

  ゴ  ッ !!!

西森「(コイツは、強え…)」
梅澤の剛拳を喰らい、西森はダンプカーに跳ね飛ばされたかのように、さらに宙を舞った。


 田辺「西森先生…!!」
西森の予想外の劣勢に、田辺が思わず飛び出そうとする。そのとき。

 ??「劫火灰燼」

          直   火   判  !!!

人間を軽く押しつぶせるサイズのハンマーのようなものが、火柱を噴いて頭上から降ってきた!!
351窮地の西森一行偏:2005/10/04(火) 19:42:06 ID:wSYy281P0
 田辺「!?!」
咄嗟に結界を張り、打撃と火炎の双方を合わせもった攻撃を、かろうじて防ぐ。
 ??「へえ…“火判”の直接攻撃喰らって破壊できてないなんて……凄い結界ね」
田辺が結界ごしに頭上を振り仰ぐと、結界の上に覆いかぶさっているハンマーの、柄の部分に、黒ずくめの服にツインテールという風貌の女が典雅に腰掛けている。
 田辺「……貴女は!?」
 ??「 “CYCLOPS” の星野桂。暇そうだから、決闘の間、私が貴女のお相手をしてあげるわ」
きわどいミニスカートからスラリと伸びる足がなんとも艶かしい彼女は、左目の上に傷の走る顔に、眩しいとさえ言える笑みを浮かべていた。

松江名「来たか……」
そして、松江名は西森にも、田辺にも、気を配る余裕がない状況に直面していた。
先ほどから、松江名の皮膚を、吹きすさぶ風のような圧力が嬲っている。
彼にもすでに、刺客が迫っていたのだ。
 松江名「しかし…この…膨大な質量を有する殺気の渦はどうだ…
     これが本物の南風(はえ)というものか…これがたった一人の…」
そのとき、一陣の血腥い風と共に、黒いライダースーツを着た金髪の美青年が姿を現す。
 松江名「この美しい若者の魂から放たれているというのか…!」
戦慄が、松江名の魂に侵食の手を伸ばしてくる。それにかろうじて耐える松江名に、ライダースーツの男は言う。
  ??「知らせもしないのに出迎えとは、さすが達人。あなたが松江名俊ですね…」
 松江名「いかにも私が松江名俊だが…」
  ??「私は南王手八神流の伝承者…三好雄己です」
告げられた名前に、松江名は驚く。
 松江名「なに…!? かつてのサンデー作家が、KIYUに加担し、小学館に牙を剥くというのかね?」
  三好「私にそのような下らない馴れ合い意識はない…“七人の悪魔超人”だろうと、そしてKIYUだろうと…私は己の強さを存分に振るえる場所ならどこでもいいのです。
     とはいえKIYUには、同じ打ち切り作家の一人として正式に参加していますが…悪魔超人は“ついで”です。おっと…貴方には関係のない話でしたか」
“悪魔超人”という耳慣れない単語が気になったが、松江名にそのことを詮索する余裕はなかった。
西森一行は、三者三様の強敵を前にして、彼らもまたすでに死地にその足をとらわれてしまっていた。
352作者の都合により名無しです:2005/10/04(火) 20:36:34 ID:1tL6uQpf0
ついに松江名先生にも活躍の機会が!?



ちくしょうキリモミしながらぶっ飛ばされる絵しか浮かばねえ・・・
353作者の都合により名無しです:2005/10/04(火) 21:49:54 ID:ZooA2zUIO
サイクロプス+南風でてっきりヨネコこと米原先生かと思ったじぇ
354作者の都合により名無しです:2005/10/04(火) 22:05:32 ID:i5PMSjs50
☆野も出世したものだ
初登場時はまだ岡野と打ち切りレースを戦っていたというのに、今や…
355作者の都合により名無しです:2005/10/05(水) 12:11:41 ID:wIVL5ozt0
プチ懐かしい連中が続々動いてきたねー
第二試合はそろそろ?
356くめた100%:2005/10/10(月) 23:21:24 ID:46xLJm2W0
(前スレ89)


      −絶望文学集−  逝  国 (ゆきぐに)


    トンネルを抜けるとトンネルだった。

    そのトンネルを抜けるとまた、トンネルだった。

    そのまたトンネルを抜けるとまたまた、トンネルだった。

    どこまでもどこまでもトンネルトンネルずーっとトンネル、

    私の人生。

    トンネルを抜けるとトンネルだった。


水希「あたりまえじゃないですか課長、これ地下鉄なんですから」

タタンタタンと小さな音。闇を走るは銀色の車体。
ここは矢吹鑑ブロック間の全域にまたがる、地下鉄矢吹鑑環状線。

久米田「だからなんでお前はついて来るんだよ!?
 やっかいものめ、やっかいなのは私1人で充分なんだよ!」

桜舞う人工公園にて、桜以上に美しい女性河下水希になぜか気に入られ、
トラブルはごめんだとばかりに逃げ出した矢吹軍科学者・久米田康治。
地下中央区から他ブロックへと抜け出すために地下鉄に転がり込んだが、
やっぱり巻ききれませんでした。しかも河下嬢、
久米田を追う際に変装したらしく、混雑する車内で異様な雰囲気を醸し出している。
357くめた100%:2005/10/10(月) 23:24:12 ID:46xLJm2W0
駅近くで一旦見失った久米田を捜す道中彼女に絡んできた、
昼間から酔っ払ってるおっさん達から拝借したという変装衣装。
でかい胸を包んだ男性用のトレンチコートに度の強い眼鏡、
スポーツキャップに運動靴、しかも中の服はスカートの丈が超ミニで、
胸元あらわな薄い洋服しか着ておらず、
素足がコートからはみ出すステ仕様。
『裸にコート姿』としか見えない水希の怪しさは、
露出マニアの痴女として警察に通報されかねないクラス。

そんな女性が自分の座席の隣に座ってベタベタ絡んでくる。
久米田はますます絶望的な気分にさいなまれた。
どうしたら彼女を追い払えるものか。ふと。
ここは地下鉄。久米田は電車オタ。彼の頭上にピコンと電球がともった。

久米田「──お嬢さん知ってるかい?世界初の地下鉄が開業したのは1863年、
 イギリスの首都ロンドンなんだ。だが地下のレールを走っていたのはなんと、
 蒸気機関車だったのだ。当時は電気の利用が本格化する前だったからな。
 日本では同じ年に生麦事件が起きている。そうまだ江戸時代だったんだ。
 鉄道の歴史そのものは、少なくとも2000年前には原理的なものが生まれている。
 ローマ帝国やギリシャ等にな。馬車道上の切石を用いた軌道を車両が牽引される形だ。
 だが鉄道としての本格的な発達は18世紀末からの産業革命以降である(クメチク)」

ぺらぺらぺらと聞きもしない薀蓄を語りだす久米田。
以降は○○線のレールの本数がどうとか××線の傾斜がどうとか、
“鉄っちゃん”以外にはどうでもよさげな一人語りのオンパレード。
久米田(ククク、絶望しろ!この心まで黒煙にまみれた私にな!)

しかし世の中うまくはいかない。
水希「わあ課長博識!すっごーいソンケーしちゃう〜」
久米田「そ、そんな馬鹿な!私の完璧なドン引き大作戦が!」
動揺した久米田は思わず手荷物の紙袋をポロリと落としてしまい、
慌てて手を伸ばすも先に河下に拾われてしまう。
358くめた100%:2005/10/10(月) 23:26:25 ID:46xLJm2W0
水希「荷物落としましたよ課長!あれ?この中身は・・・」
久米田「うわあっ見るな!私のプライバシーを侵害するな!」

袋の中身は練炭・マッチ・ガムテープ・ロープ・睡眠薬・『エンヤ』のアルバム・遺書その他。
久米田が常日頃持ち歩いている<旅立ちパック>であった。
借金のため研究所から逃亡した際に持ち出したものだ。

水希「桃色課長・・・まさか・・・」
久米田「ふ、笑わば笑え」
水希「これはアウトドアグッズ(別名アウトローグッズ)ですね!まさに人生の達人だわ!」
久米田「・・・ああ、そんなネタもあったねえ・・・」

ガタンゴトン。路線は10数メートル上に地上が見える吹き抜け部分に差しかかる。
急に差し込む南国の太陽の爽やかさも、この混沌の車両には届かない。

久米田「お嬢さん、あんた何を企んでる?」
長椅子にちょっこりと座りながら、陰気そうに声を出す久米田。
水希「企むだなんて、そんな事・・・!
 私が課長を気に入っちゃっただけです!だからっ・・・キャ!」
河下が思わず席を立つのと、路線が急なカーブに差しかかったのは同時。
身体のバランスを崩した河下はとっさに吊り革を掴むが、
遠心力で振り回され輪を手放してしまい、
彼女は久米田の膝の上にちょこんと尻餅をついた。

久米田「ぶっ!お、降りなさい!今すぐ!告訴されても嫌なので!!」

顔面蒼白になりながら、太腿の上の重量物を押しのけようとする久米田だが、
上気してぽやっとなった表情の河下はそのまま動かない。
コートの裾が捲くり上がり、スカートの中の世界は露出寸前。
他の乗客はもはやこちらを見ようともしない。
柔らかくも弾力のある美少女の食べ頃果実が今、
久米田の目の前にお歳暮として置かれているのだ。
359くめた100%:2005/10/10(月) 23:27:26 ID:46xLJm2W0
久米田「これは罠だな・・・私から慰謝料をふんだくる気だろう。
 それなら無駄だ!私の後半生は大借金に彩られているのだ!
 ははは、わかったら無駄な行為はやめてそこを降りたまえ」

どこまでも疑い深い男久米田。
力ない高笑いまでして据え膳を引っくり返そうと頑張っている。
しかし無駄な努力、膝上の美少女は肩越しに振り向き、
カチカチに固まる久米田の表情をじいっと見つめて微笑むと。

水希「あたし重くてごめんね、課長。
 でも私、課長の困ってる顔も好きですよ☆」

頬を真っ赤に染めながら、嬉しそうにぺロッと可愛い舌を出した。

再び電車は地下鉄路線へのトンネルをくぐる。
窓の外が暗黒に包まれ、駅に到着し客が出降りし、また走り出す。
けれども顔だけ向かい合う久米田と河下の周辺の時は嫌にゆっくりしていた。
タタンタタン。軽快な車両の音。

久米田「・・・あんたは漫画家だったな。私を知っているのか?
 私は久米田康治。“奸雄”矢吹健太朗の右腕だ。離れろ」
水希「へー、課長の肩書きかっこいいなあ。
 でもなんで離れなくちゃいけないの?課長が偉い人だから?
 それとも命の危険があるような立場の人だから?」
久米田「どうとでも取るがいい。どけよ、次で降りる・・・」
目線をあさっての方向に向ける久米田は、
突然超至近距離まで近づいた河下の、魅惑の吐息に表情をなくす。
(この女・・・何をする気だ!?)久米田のアラート信号が最大音量になる。

水希「あたし、少しぐらい危険な人が好き・・・だよ・・・」
男と女の唇の、距離がセンチからミリ単位に変わる。
電車は次の駅へと向かう。時は無限を刻み出す。
360くめた100%:2005/10/10(月) 23:29:08 ID:46xLJm2W0

 間。

 『間もなくA7・ジェノスモール駅に到着いたします。お出口は右側です』

水希「・・・うーん、こういう時に限って揺れませんね、電車」

えへへと笑って久米田の膝から降りる河下。
当の久米田は死後硬直を起こしていた。生きてるけど。

水希「愛にはアクシデントがつきものなのになー。
 そうだ、ショッピングセンターに行きましょう。降りますよー」
アナウンス通り開いた車内右側の扉から、
河下は意識が涅槃にトんだ久米田の手を引っ張って駅構内に降りた。


久米田「(危険だ・・・危険すぎる。俺の全身全霊が警告音を鳴らしている。
 アラートだアラート!!早くこの超台風から逃れねば!!)」
ブツブツ言いながら、河下に手渡されたクレープを貪る久米田。
気づけばここはAブロックの一角。水希はコート類を脱いでニコニコ歩く。
矢吹鑑デートコースのひとつ、総合ショッピングセンターである。
もはや自分が何をしているのか、久米田はわからなくなっているようだ。
ふたりは屋上展望台に昇り、眼下に広がる人の波を眺める。
溜息の止まらない男が小さく呟く。
久米田「お嬢さん、そろそろ私は帰りたいのだが。仕事があるんだ」
水希「水希って呼んでほしいな・・・課長。
 それに私も実はあるんですよー仕事。早く帰らないと、
 上司に怒られるかもしれないけど、でも──」

彼女は鉄柵に腕を乗せながら、困ったように首をかしげる。
水希「ガードが固い誰かさんのお陰で、ちっとも術がかけられないよ〜」
クスクスと水希は楽しそうに笑い、久米田は聞こえないフリをした。
361作者の都合により名無しです:2005/10/11(火) 17:58:54 ID:wAnp1QDG0
椎名は妖魔王陣営には相性良さそうだが一人とんでもなく相性悪いのがいるな

ていうか久米田ある意味オットコマエだ
362作者の都合により名無しです:2005/10/12(水) 13:41:42 ID:qZfd0DwB0
ふと思ったが久米田って元小学館にして矢吹の側近
二重の意味で秋田の刺客に狙われそうな気が・・・大丈夫なのかこんな不用意にウロウロしてて
363作者の都合により名無しです:2005/10/12(水) 14:48:43 ID:PWgDWQpF0
えーなに久米田争奪戦でも起きるの
ヅラつけた途端春ですか彼(違う)

さすがクメタだ!
痴女に迫られてもなんともないぜ
364作者の都合により名無しです:2005/10/15(土) 02:41:49 ID:9NaNX1RA0
河下水希の美意識
「井沢(どんすけ)さんって実物はステキじゃないですか」
365仕置きという名の宴:2005/10/15(土) 12:17:06 ID:0luXSUcE0
>>339

「う おおおおおおおおおおっ!!」
吠え猛りながら、安西は業炎を纏って疾駆した。
炎の刃で切り裂き、炎球の大群で撃ち抜き、あるいは炎竜そのものを鞭のように振るって敵を薙ぎ払う。

「ゴウ・バウレン!!」「ガンズ・ゼガル!!」「ザオウ・ギルエルド!!」
安西の背後を守るように、雷句の小柄な体躯から凄まじい威力の術が次々と繰り出される。
二人の攻撃は余湖の銃撃や砲撃を蹴散らし、数に任せた余湖軍団を掃討していく。
窮鼠の見せた意外に頑強な抵抗に、余湖軍団は思わずたじろぐ。
「こ、こいつら強ェじゃん!?だけど怯まずに、押し包めェッ!!」
必死に鼓舞するが、突破口を開くことに身命を賭した二人を止めることは容易ではなかった。

(よし……このままなんとか血路を開ければ……)
<ティトオ>モードの土塚は『ホワイトホワイトフレア』で金田一達の回復を行いながら、そのガンガン1とも云われる頭脳で、突破の算段を立てていた。
自分達だけではなく、医務室に運ばれた仲間達も救出しなければならないのだ。
圧倒的に不利な戦況で、下手な動きは自殺行為であるがゆえに、土塚も頭脳をフル回転させる。
こめかみのあたりを指で何度も小突きながら、戦場のあらゆるデータを蓄積していく土塚。
だが、そのとき、彼の目には新たな不確定要素が飛び込んできた。
一筋の閃光にしか見えないそれは、真っ直ぐに安西達の戦場へと突っ込んでいく。

「オラァッ!!」
安西が腕を振るうと、炎弾が雨のように余湖軍団の頭上に降り注いだ。
「!!うおおお、退避ー!退避しろおっ!!」
焦って散り散りになる余湖達。
ここを突破すれば、血路が開ける――安西がそう思った、そのときだった。
黄金の閃光がはしり、全ての炎弾が弾き消された。
(!!『崩』をまとめて弾きやがった!?誰だ――?)
驚愕する安西の視線の先に、黄金の鎧で全身を覆った男が立っていた。
366?仕置きという名の宴:2005/10/15(土) 12:18:34 ID:0luXSUcE0
「――やるじゃないか、安西信行」
一見すれば、少女漫画から抜け出てきたような華奢な外見の美男子。
しかしその身を覆う黄金の鎧の持つ荘厳な威圧感、そしてなによりその奥からほとばしり出る闘気とあいまって、その男はさながら黄金の獅子を連想させる。
「――てめえはッ!!」
岡田芽武――先のDブロック決勝戦で、一点をもぎとる活躍を見せた男。
試合終了後はプッツリと姿を消していたが――
「おいおい、野球の時は敵。別府の時もいなかった奴が今更ノコノコ出てきて何のつもり――」
余湖の一人が乱入してきた岡田に文句をつけようとして――終いまで言えずに全身を片手ひとつで押しつぶされた。
「うるせえぞ、手ぇ前ぇら……雁首揃えて、負け犬共の首ひとつ取れない無能の癖に、分際を弁えろよ」
人間ひとりを圧殺した腕力と、身を切り裂くような凄絶な眼光。
バラの茎のような体格のこの男を前に、余湖軍団は一歩も動けないどころか呻きひとつたてられなかった。
「てめえ…仮にも自分の仲間を殺しやがったのか」
同じ社の作家を惨殺した岡田に、安西は怒りをあらわにする。
「仲間――?かつて敵と内通し、多くの同胞を裏切って死に至らしめた男の台詞とは思えないな」
しかし、岡田は逆に安西の過去の汚点をつき、一方的にせせら笑う。
「うるせぇよ……」
反駁する声には力がない。岡田はさらに畳み掛ける。
「仲間を血の海に沈めたお前が友情を語るのか?お前には、そんな資格はない」
「 うるぅ せえ よっ !!! 」
激昂した安西が、岡田につっかける――

「 お 前 が 黙 れ 」

           ズ    ド    ン  

岡田が掌を地面に叩きつけた瞬間、グラウンド全体を激震が走った。
367仕置きという名の宴:2005/10/15(土) 12:19:39 ID:0luXSUcE0
(なンだ!!これは!!!)

        ビキィッ  ビキィ  ビキィ ビキィ  ビキィ

(地面を振動が走って――)

        ビ ギン   ビキィ   ビキィ  バキッ

(体の中に響いて――中を壊す!!!!)

「  クルダ流交殺法陰流――『 崩  影 (クエイク) 』  」

           ボ   ッ    

         ド   ズ  ズ  ズ  ン  

目を疑う光景だった――
たった一人の男の一撃で、グラウンドはおろかコロシアムそのものが崩壊したのだ。
跡に残されたのは、穿たれた荒れ野と、瓦礫の山。そして、累々と折り重なった死体の山(ほとんどは余湖)であった。
選手や審判団の漫画家は全員退避していたが、場内に残っていたスタッフの何名かは巻き込まれている。
「『崩影』は強力な振動…全ての物質を内より砕く力だ」
動くもののなくなった荒野に、岡田はひとり立ち、辺りを睥睨する。
「余湖どもは死んだか……その中でまだ生きているのはさすがだよ、ガンサンの諸君」
岡田の視線の先には、樋口と金田一をかばい、血まみれになった土塚の姿。
「だが…もう立てないようだな――苦しむ姿を見ているのもいいが……
 命令は迅速にこなさねばならん。すまないが――この場で死んでくれ」
足を振り上げ、ギロチンの刃のように土塚達の頭上へと振り下ろそうとする。
だが、そこへ影が割り込み、岡田の蹴りを受け止めた。
368仕置きという名の宴:2005/10/15(土) 12:20:58 ID:0luXSUcE0
「ほう…まだ動けるとはな」
自分の蹴りを防いだ炎刃を見て、岡田がほくそ笑む。
「へっ…俺だけじゃねえぜ…」
にやっと安西が笑う。
「ザケルガぁッ!!」
さらにそこへ、裂帛の叫びとともに電撃がはしる。
「雷光?貴様…!!」
炎刃と電撃の同時攻撃を回避し、トンボを切って離れた場所に着地する岡田。
その見据える先には、鮮血をしたたらせた安西と雷句がいる。
「立ち上がったのは美事――だがしょせん、死がわずかに先延ばしになったに過ぎん」
「大層な口をきくじゃねえか……たった一人で俺達に勝てるつもりかよ」
「くだらん挑発だな。お前ら二人掛かりで死に損ないのゴミどもを守りながら俺と戦って、どちらに分があるか分かるだろうに」
岡田は余裕の表情を崩していない。
安西も雷句も、余湖軍団を相手どるより、この男たった一人を突破する方が遥かに困難であるとすでに承知していた。
しかし、岡田はさらに安西達を追いつめるように続けた。
「それに一つ間違っているな。俺は別に一人でも構わんのだが――あいにく、ここに来ているのは、俺だけではない」
「!!?」
そのときには、もう安西達は、『その男』の存在に気がついていた。

出現したのか。
始めからそこにいたのか。
まるで枯木である。
和服を着て、腰に二本を差した男が、そこに立っていた。
修羅場には似つかわしくない艶めいた芳香が、安西達の鼻をついた。
かつてチャンピオンREDの重鎮であり、今や横山十傑集のひとりとして君臨する男――山口貴由であった。

  仕 置 き という名の 宴 がはじまる
369作者の都合により名無しです:2005/10/15(土) 15:44:50 ID:H5Zcecnc0
なんか怖い人たちキタヨー
そういえば2人とも陣営は違えど野球参加組か、因果なものだなあ
370作者の都合により名無しです:2005/10/19(水) 01:12:29 ID:AXPCV6Gu0
ちょっと聞きたいんだが、貴由の左腕って今どうなってんの?
なんか22部155だと「復元した」って書いてあるんだけど、25部99ではまた隻腕に戻ってる
結局、どっちなんだ?
371作者の都合により名無しです:2005/10/19(水) 01:27:37 ID:UjmBxS490
南條先生に斬られたんでないかねえ
372たったそれだけの:2005/10/19(水) 16:10:27 ID:rjR52JqS0
>>278 >>309 >>367  4部67他)
地下中央区コロッセオ。
決勝戦組み合わせ抽選会に使われた会場はそのまま、準決勝第二試合会場となる。
溢れんばかりの観客たち。喧騒は漫画家たちの闘いへの期待の表れ。
隣のスタジアムではいわゆるガンサン狩りが続くが、
コロッセオの観客たちの気持ちは殆ど次の試合・バンチvs裏御伽戦へと向けられている。
果たして神聖なる闘技場で生き残るのはどちらの陣営か―――。

 「んで結局俺はまたバカ副将のお守りかよ。
 もうすぐ試合だってのにどこ消えたんだ?まさか・・・」

単独でC控え室周辺をうろつく岡村は、相変わらず放浪しまくりの男を捜して、
右往左往しているのだが、尋ね人の所在に心当たりがある事に気づく。
隣のスタジアムでの試合に正体を隠して乱入していたのだ。
 「おいおい、まさかあいつあの中か?いやに騒がしいが、
 試合は終わってるよな?暴動でも起きてんのか・・・」
頭を掻きながら通路の窓の外からスタジアムを眺める岡村の眼前で、それは起きた。

         ド   ズ  ズ  ズ  ン   ・・・ !!


 「な、なんだ!?空の艦で地震だとお!?」
グラグラとコロッセオの廊下が揺れ、咄嗟に窓から離れる岡村。
建物の軋む音が周囲に響き、強化ガラスに細かいヒビが入る。
振動は長くは続かなかったが、ふっと顔を上げた岡村は異変に気づき目を丸くする。
―――隣のスタジアムが崩壊し、膨大な瓦礫の山になっていたのだ。

 「ちくしょう、とんだボロサッカー場だな!!」
悪態をつきながら、入場者救助のために走り出そうとする岡村に、
背後からちょっと慌てた制止の声がかかる。
 「あーダメなのよ!勝ち残りチームの人は隣に関わると失格になるんだモン」
 「なんじゃそりゃ・・・ってお前は何様のつもりだ潰れあんまん」
373たったそれだけの:2005/10/19(水) 16:11:17 ID:rjR52JqS0
岡村が振り向いた先には“もんがー”が一匹佇んでいる。
不気味なナマモノはワタワタと両腕を振り回しながら状況の説明をした。


 「―――ガンサン狩り、か。昨晩の・・・あれな。
 仕方ねえか、そればっかりはよ。そうだ、その襲撃してきた連中の中に、
 鈴木ダイはいたか?奴らのチームリーダーは」
複雑な顔の岡村が問いかけ、もんがー(にわの)が記憶を辿りながら答える。
 「んーん、ボクが見たのは余湖センセばっかだったよ。どうかしたの?」
 「いや、なんでもねえ。なんでもな・・・」
岡村の表情に、さらに影が落ちる。
<地球防衛軍>の残滓が彼の脳裏をかすめた。

 「岡村クン・・・どうしても行きたかったら別にいいんだモン?
 ほら変装するとか。本宮せんせーにもらった学ラン変身バッジもあるしさ」
 「あれは恥ずかしいから二度とお断りだ(※抽選会時の衣装)。
 それに裏御伽の方針は基本【中立】だし、何よりこれは、
 ガンサン自身が解決しなきゃなんねえ問題だ。俺がでしゃばってどうするよ」

にわのの勧めに、ぶっきらぼうに断りを入れる岡村。
この大会の負の側面・同業者の横の関係悪化に対し苦虫を噛む思いだった。
それはともかく、岡村はふと、
目の前の異生物の存在が無性に気になった。
 「おいバカ。もんがーだかミミガーだか知らねえが変身解け。
 もうすぐ試合だってのにアホ面さらすなよ」
だがもんがーの方はフルフルと首を横に振るばかり。
本体は骨折その他でボロボロだなんて、言えやしないから。

 「しょ、諸事情によりお断り致すモーン」
 「何ー!?なんでお前はいちいち俺を困らせるんだ!
 趣味か、サド趣味か!いじめっ子か!そんなに俺はやられ役か、かませで悪かったな!!」
 「でー何それ〜ああ〜〜っ首を絞めないで〜〜ぇむぎゅー」
374たったそれだけの:2005/10/19(水) 16:13:28 ID:rjR52JqS0
しょうもない子供のケンカを止めたのは、静かに笑う小柄な男。
 「おまえらはいつも漫才やってるな。いっそ転職したらどうだ?」
 「川原せんせー!公園ぶりー!身体だいじょーぶ?試合できるの?」

廊下の曲がり角からひょっこり出てきた川原に駆け寄り、
肩をもんだり手を握るもんがー。川原は必要最小限の包帯を巻き、
外見上それほど怪我はなさそうに見えるが、あくまで外見のみ。
ベンチの破片で派手に切った、右まぶたの上に貼ったガーゼが少々目立つ。
思ったより深くざっくり切れ込んだのかもしれない。

 「おい川原、あんたはギリギリまで控え室で休んでろよ。
 さっきの地震は気にしちゃいけないらしいぜ、俺らは」
 「・・・・」
岡村が苦言を呈すが川原は小さく微笑んで受け流す。
 「え・・・せんせー、じつわヤバイ?ホントに大丈夫なの?」
もんがーが軽く青ざめてソワソワし出す。

 「大丈夫なワケねーだろこいつが。さっきも――」
渋い顔で指差してくる岡村の声を遮るように、川原。
 「俺が戦いの場に立つ時はいつもベストだ」
笑顔のまま目を伏せ、柔らかくも強剛な声ではっきり宣言した。

とても先ほどまで昏睡状態に陥っていた男と同じには見えない。
やはり修羅の血のなせる業か。
川原の脳の異常を知らない副将は、嬉しそうに胸を撫で下ろした。
 「よかったぁ。でももうあんなムチャはしないでね、せんせー」
副将の本気の安堵に、妙に可笑しそうな顔をする川原。
笑われた男が相手の笑顔に気づく前に、川原はさらりと返す。
 「お前もな。そろそろ元の姿に戻れよ」
 「え゛」
 「出てたらしいな、サッカー。楽しかったか?」
 「う〜〜〜」
375たったそれだけの:2005/10/19(水) 16:15:04 ID:rjR52JqS0
川原の、穏やかな中にも有無を言わさぬ威圧感を感じたか、
にわのは後ろめたそうな顔をしながら元の青年バージョンに戻る。
頭部には岡野から返してもらったモモマスク。そして右足にギプス。
 「あってめえ!足の骨折りやがったのか!
 試合どーすんだよ、バカ!てか川原の言う事は聞くのかよ!!ひでぇ!!」
岡村の怒りが一気に沸点に達するが、にわのの意外な台詞が続く。
 「じつわーこのマスクとサロンパスがあれば骨くっつくんだけれどさ」
 「 く っ つ く な よ !!(゚Д゚#) 」
 「でも試合には間に合わなさげなのよね。ごめんねごめんね」
 「知らん!犬用の骨でも食ってカルシウム摂ってろ!」
ふて腐れる岡村。そして彼らに割り込む声。

 「で、試合には出るんだよな」川原だ。
 「とーぜん」事も無げに、にわのは答えた。

 「ちょ・・・おま、つい今間に合わねえって・・・マジかよおい?」
いきなり置いてかれた感の岡村が慌てた声を出す。
 「ボク、川原せんせーと約束したんだ。
 “今晩俺と闘いたかったら、トーナメントも全力でやれ”って。だから」
 「よく憶えていたな、にわの」
 「せんせーこそ激闘後で忘れてなくて何よりですー」

言われて岡村は思い出す。にわのは川原と共に、
この大会が終わった後、何かしらの目的のために旅に出る事を。
そしてにわのの決意を量るため?彼らは今日の試合の後に、
果し合いをする予定だという事を。(22部)
――果し合いの裏には<からくり>があるが、それはにわのしか知らない。

 「すっかり忘れてたぜ・・・。しっかし、
 こいつら本当にやる気あんのかよ。ツッコむ俺がバカみてーじゃねえか」
ガシガシと長いクセ毛を掻き回す岡村。
友人が少ないせいか、相性の悪い相手との付き合いに慣れていないのだ。
376たったそれだけの:2005/10/19(水) 16:17:03 ID:rjR52JqS0
ムスッとした岡村の顔色を読み違えた、にわのが両手を合わせて謝る。
 「えと、心配かけてごめん。念を押すけど他の皆にはナイショね」
 「どうでもいいっつの。しかしなんで今夜?大会終わってからでもいいだろ」
 「それじゃ小畑・・・ううん、なんでもない。ごめんよ」
 「? まあいい、肩貸すから舞台前まで歩け。控え室に戻る時間ねえからよ」
 「えー変身させてくんないのー・・・」
返事の言葉を濁した事が気になるが仕方ない。
岡村はにわのを肩にかけ歩き出し、川原も後方からゆっくり続いた。

にわのは仇敵・真鍋の上司に当たる平野に、
にわのの親友・小畑健の<身体のパーツ>のひとつと引き換えに、
川原に対する『勝利』を得よと強要されている。タイムリミットは今夜12時。
──暗殺でも謀殺でもなく、ただ川原正敏に自身の『敗北』を認めさせるだけ。
たったそれだけ。<2つの懸念>のひとつ。
その「たったそれだけ」が、世界のあらゆる難題の中で、
解決が最も困難だと言う事を、にわのは他の誰よりも知っていた。
平野側も恐らく、川原の性格を見越して命令してきたのだろう。
それでもやらねばならない。
そして相手に悟られてはならない。
もし川原が陰謀に気づいてしまったら─── しまったら?

 (またボクのせいで川原せんせーの荷物が増えてしまう。
 それに、たとえ彼が気がついても・・・彼の拳は、
 1グラムも軽くならないよ。だったら言わない方がマシだ。
 実力で勝って、小畑君を取り返す。たった・・・それだけだ)

 「・・・ま、悩んでもしょーがないモン。バンチ戦がんばるぞー!
 因縁に決着をつけ、クローン原軍団に殺されたボンボンチームの無念を晴らすっ!!」
 「なんでいきなりボンボンなんだよ!」(チーン)
岡村のツッコミと同時に試合場へのエレベータの扉が開いた。
彼は副将がボンボンでも仕事している事を知らない。
間もなく休憩時間が終わろうとしていた。
377作者の都合により名無しです:2005/10/20(木) 12:41:04 ID:Onb091980
クローン原とか随分と懐かしいネタだw
にわののボンボン作品って、デルトラとかいう奴か・・・
種死の正当原作とフルカラー劇場目当てでボンボン立ち読んだついでに目を通したが、正直ウヘアな内容だったなあ
378作者の都合により名無しです:2005/10/20(木) 14:44:08 ID:c5XrPqg+0
アニメ種見てないからわからんのだけど、ボンボン種はえらい好評だねw
「海の大陸NOA」復活祭りが起きてるねー
379作者の都合により名無しです:2005/10/20(木) 17:36:58 ID:y+eCbb/d0
そういやあずまや藤異は何やってるんだろ?
やっぱここでも犬と遊んでたり人形買いあさってたりしてるんだろうか。
380作者の都合により名無しです:2005/10/20(木) 21:24:17 ID:80f3dN9w0
ボンボン繋がりで熊倉裕一は今どこだろうと検索したら、
別府で有賀タソの活躍を中継で平野さんに送ってた

・・・熊倉さん、有賀ヒトシ共々別府以降の消息不明ダターヨ>>73(つ∀`)ウヘァ
381作者の都合により名無しです:2005/10/20(木) 23:17:35 ID:d2ZeoamJ0
>>377
デルトラ最初見たとき、絵が似てる新人かと思った
子供向けにしようとしたのだろうが、壮絶に失敗してるとしか言えんレベル

>>378
つーか、アニメ種死はもはや伝説
今世紀中に、あれを下回る駄作はまず現れないだろう
他メディアと比較すると、

ボンボン版≧ガンダムA版>小説版>>(超えられない壁)>>マガZ版>>(亜空間の壁)>>アニメ
382作者の都合により名無しです:2005/10/20(木) 23:49:43 ID:80f3dN9w0
それは恐ろしい世界だ・・・
てか皆けっこうボンボン読んでるんだね。
最近まで横内(クロ)しか作家知らなかったよ
383作者の都合により名無しです:2005/10/21(金) 00:12:55 ID:XNfUF0hY0
ボンボンは大昔に読んでたクチだな
今はさすがに恥いから読みたいものだけ単行本で

種死はなー・・・
アレ見た後だと、サンライズを滅ぼしたゴッドハンドの行いが、まぎれもない正義だったとしか思えなくなるw
384サルガッ荘の長い日〜苦しい時の神頼み:2005/10/24(月) 15:32:59 ID:WWZpBt9r0
>>312

宇宙墓場サルガッ荘に延々吹き荒れる人工台風は、
何時間経っても止まる気配が無い。玄関の古い時計は昼近くになっていた。

万乗「い、いつになったら台風終わるの〜!?
 管理人さーん!管理人さんどこにいるんですかー!!」
なぜか枕を抱えて万乗は廊下をひた走る。
管理人室として使っているアパートの一室にいるはずの、
サルガッ荘管理人TAGRO(貧相なおっさん)に解決策を聞きに行ったのだ。
なにしろ台風は天候管理担当の彼が起こしているからで。


万乗「管理人さーん!なんとかして・・・わああああ!!?」
部屋に飛び込んだ万乗の叫び声が、
台風の轟音をも切り裂く。驚いた島袋が部屋に駆け込み、絶句した。
島袋「な、何やってるんだ管理人さん!?」

2人が見たものは、両腕を後ろ手に縛って土下座し、
畳に置いた水いっぱいのどんぶりに向かって、
地を這うように舌を伸ばすあられもない姿のTAGROだった。
TAG「ううーん・・・はあはあ、はっ!いやあ、見ないで、見ないでくださぁい」
万・島「「・・・・・・わかりました」」
2人は管理人の言うとおりスルーする事にした。
静かにパタンと閉じられる木の扉。
沈黙。
・・・。
・・・。
・・・。
島袋「 ───などと引き下がると思ったかこの変態オヤジぃぃぃぃ!!!!」(バターーーン)
TAG「ああっごめんなさい、ごめんなさいいい」
万乗「うわーん、僕もう管理人さんのごはん食べられないよー」
385サルガッ荘の長い日〜苦しい時の神頼み:2005/10/24(月) 15:34:12 ID:WWZpBt9r0
で。
どうやらTAGRO氏が行っているのは『台風祓い』のおまじないらしく、
漂流品の中にあった雑学本に書いてあったらしい。
しかしもしかしたら台風祓いでなく『台風呼び』だったかもしれず、
自信はないがとりあえずやってみたそうな。
島袋「ちゃんと項目調べてからやれよ!!
 それで本当に台風呼んでたらどうすんだよ!!」

お怒りの島袋、管理人室にある本の山から、
そのはた迷惑な雑学本をゴソゴソと探し出す。
島袋「記憶違いで台風悪化されたらたまんねーじゃんよ。
 この本だな?タメになる5000の知恵だかなんだか」
見つけた本を万乗と一緒に覗き込む島袋。
しおりが挟んであったページに例のポージングを指示する項目が。

島袋「何々?水を張ったどんぶりの中央に横向きに箸を置き、
 箸を越えてどんぶりの水を飲むと・・・」
万乗「へー、シャックリが治るんだー」
島袋「てめーは許してやんねー!!」

   ボ ボ ン チ ュ ウ !!

島袋パンチがどかーんとTAGROに炸裂し、
宇宙をバックにおっさんが遠くへ飛んで行った。

TAG「痛いー!私縛られてるのにひどいじゃないですか〜」
島袋「自分で縛ったんだろーが!!」
万乗「それより本当に台風止めてくださいよ」
TAG「じゃあ片っ端からまじないを試してみますか」
島袋「ああロウソクでも三角木馬でもやってやるさー!!」
万乗「ううっ嫌だなあ。ところで例年はどれだけ被害が出るの?」
TAG「それはですねー・・・」
386サルガッ荘の長い日〜苦しい時の神頼み:2005/10/24(月) 15:35:53 ID:WWZpBt9r0

今にも吹き飛びそうなトタン屋根の上。
釘を打ち付けたり石を載せたりと孤軍奮闘するのは、
合羽を着込んだ小野。工具を片手に、屋根の守り神と化している。
小野「だー!何時間この調子が続くんだ!さしもの俺でも凍え死んじまう」
全身ずぶ濡れで、雨が降り注ぐ空を恨めしそうに睨み付ける。

そこへ屋根にかかったハシゴから万乗が、
保冷バッグに入れた差し入れを持ってやって来た。
小野「うお、熱いお茶に握り飯かよ!ありがてえ」

雨に台無しにされないうちにと、全力で差し入れを頬張る小野。
小野「中の雨漏りは収まったか?万乗」
万乗「それが今度は光原先生の部屋まで広がっちゃって」
小野「キリがねえなーおい」
げんなりする小野。金づちを持つ手がかじかむ。
早く台風に去っていただき、地下の露天風呂に入りたかった。

万乗「それがね、こっからもどんどん台風来るって管理人さんが。
 3号4号と立て続けで、名前もついてるって」
小野「ケッ、いっそのこと建物全部吹っ飛べばいいんだ。
 そうしたら俺がコンクリ製の頑丈なアパート建ててやるよ」
万乗「小野さんそんな事できるの?」
小野「材料と設計図と設計図を読める奴と人手があればな」
万乗「期待してますよー」

苦笑した万乗がハシゴを降りようとするが、
アパートの裏庭の方がにわかに騒がしくなった事に気づき、
再び屋根の上に戻って様子を見る。雨の中、何名か庭に出て来たのだ。
万乗「なんだろ?技来君チームが何かやってるぞ」
小野は雨漏り修理を再開したため庭の様子に気づかない。
果たして技来たちは一体・・・?
387作者の都合により名無しです:2005/10/25(火) 23:48:06 ID:ti2X2NbQ0
サルガッ荘も佳境に入ってきたな・・・
TAGROの変態ぶりにワロタw
あと島袋、いつの間にか強くなったな、昔はヘリの操縦しかできなかったのにww
388作者の都合により名無しです:2005/10/26(水) 01:55:53 ID:ukwLNNs70
台風はマジ怖いから注意してね
ところで今現在の進行ルートや伏線って、


・トナメは準決勝第二試合開始直前
・スタジアムでガンサンvs余湖→岡田・山口(貴)
・同 地下医務室周辺で余湖軍団vs真船
・スタジアム外でサンデートリオvs梅澤軍団+三好

・エリア88でゆで将軍vs大暮&福地
・同 ヤマケンvs吉富
・同 伊藤(明)vs内藤vs平野+黒田
 ・荒川組は内藤のもとへ
 ・広江姐さん所在不明(24部〜)
 ・和月他数名は退場済みor死亡
 ・片倉と押井の対決結果は不明(22部〜)
 ・原潜やまと他の動向も不明

・妖魔王陣営のギャグ作家狩り編
・その他ルート(荘・板垣・高屋・キユ・えなり姉・旅景色・いがらし・福岡など)


大雑把にはこれくらい?
他にも抜けがあったら教えて欲しいです。
389作者の都合により名無しです:2005/10/26(水) 13:21:51 ID:JT3ybkFE0
荒木復活?とか
390作者の都合により名無しです:2005/10/28(金) 20:08:18 ID:ruNssLnN0
自作小説板設立推進スレッド
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1130497155/l50
ご協力をお願いします。
391作者の都合により名無しです:2005/10/28(金) 20:58:10 ID:vxWGhLVd0
これ以上過疎るのはイヤン
392作者の都合により名無しです:2005/10/28(金) 21:06:42 ID:ruNssLnN0
各板に点在するSSスレが集合する板と思っていただければいいかと。
このスレもスレごと転移するような状態で。
書く人書くのが好きな人、読むのが好きな人が集まってくるので人は集まると思いますよ。
393作者の都合により名無しです:2005/10/28(金) 21:59:47 ID:buFQ7XD60
前にもそういう動きあったけど、中々難しいと思うよ。
まあこのスレはどこに移転しようが既に…
394作者の都合により名無しです:2005/10/28(金) 22:00:29 ID:vxWGhLVd0
だね。書く人はともかく読む人が限られるのがアレかな・・・
漫画以外読まない層にも来て欲しいし。いや贅沢は言ってられないけどさ(><)
バキスレはマロンに専用議論スレがあるんだっけ?
395作者の都合により名無しです:2005/10/29(土) 00:54:17 ID:3RFYlFTD0
もしかして語ろうぜスレの事言ってんのか
あそこは各所SSスレをヲチするだけのスレだぞ、一時は荒らしの温床になっていた
バキスレは30スレかー、すげーな、いつの間にか抜かれちまったな

まあ俺も行政書士試験が終わったんで、久々になんか書くよ
396作者の都合により名無しです:2005/10/29(土) 01:18:45 ID:dHZLAVPV0
そうなのか>ヲチ
ちょっと怖いわあ〜
ウチも時間作ってなんか書くね。第二試合そろそろ来るかな
397作者の都合により名無しです:2005/10/29(土) 09:36:03 ID:Wyl3CKg00
久々にバキスレに広告貼って職人募集する?
バキスレがこっち来て以来あまり交流がないけど
398作者の都合により名無しです:2005/10/29(土) 11:16:46 ID:3RFYlFTD0
とりあえず今現在、何人がここを見てるか気になるわけだが
保管庫にカウンターを設置してみる?
399作者の都合により名無しです:2005/10/29(土) 12:03:35 ID:rPwsDe060
>>395
じゃあせっかくだからカバチタレの人を出すってのはどうか


え?これ以上新キャラ増やすな?
400作者の都合により名無しです:2005/10/29(土) 12:32:19 ID:Wyl3CKg00
最終日にだいぶ減るから増やしてもいいんじゃないのおおお
401作者の都合により名無しです:2005/10/29(土) 21:44:44 ID:dHZLAVPV0
       ハ_ハ  
     ('(゚∀゚∩  カウンターつけたよ!
      ヽ  〈 
       ヽヽ_)
              ごめんね倉庫停まっててごめんね
402作者の都合により名無しです:2005/10/29(土) 22:49:49 ID:3RFYlFTD0
>>401
乙!
よし、俺も気合い入れるぞ!
403作者の都合により名無しです:2005/10/30(日) 10:11:38 ID:JhAKH3ee0
>>401
いきなり7000超えててビビるw<カウンター
いつもありがとうですよ。乙!
404作者の都合により名無しです:2005/10/30(日) 11:06:18 ID:W9RkFdpV0
置いちゃったかカウンター……!
まあ、一定の(あくまで一定でしかないが)目安にはなるし、これで人がいることがわかれば書き手のやる気も少しは…
405倉庫人:2005/10/30(日) 13:26:27 ID:qt62CvW80
   ハ_ハ
 ('(゚∀゚∩ じゃあ様子見でとりあえず1ヶ月間置くよ!皆がんばろーね!
406異形戦士たち:2005/10/31(月) 22:48:51 ID:tI2rfJlD0
>>368

真剣、というものを見たことがあるだろうか。
本物の日本刀は、よく時代劇のチャンバラで見るような安っぽいギラギラとした輝きではなく、鈍く重く光を放ち、
その境目も見えないほどに薄く磨き上げられた刃先と、刀身の背の部分の鉄塊を思わせる重量感は、
軽く頭上から振り降ろせば、前に立つ一つの物を二つに変える力を容易に語ってくる。
一刀両断!!
まさに日本刀の為の言葉である。
安西達の眼前に立つ鋼鉄の剣鬼はまさしく“日本刀”そのもの。
全身これ刃。
五体全てが凶器である対手にどう立ち向かえばいいのか、安西には皆目見当もつかない。
安西の顔に死相が浮かび、全細胞が戦闘を拒否する。
そのときだった。

              「  変       身  」

まばゆい光が場内を満たし、一瞬視界が奪われる。
その隙をついて、紅い影が咆哮とともに飛び込んでくる。

 「 ゼ ク ロ ス キ ッ ク 」

赤いエネルギーを蹴り足から噴出させながら、山口めがけて突っ込んでいくのは仮面ライダーZX!!
超速の蹴撃に対応したのは、天魔の斬撃。
互いの牙が、空中と地上でそれぞれのけぞった両者の顎先をかすめていく。
異形の戦士と、異形の剣士が、離れた場所で対峙した。
407異形戦士たち:2005/10/31(月) 22:50:20 ID:tI2rfJlD0
「テメェの相手は俺だ、山口貴由!!」
真紅の戦士ZX――村枝が、赤心少林拳の構えをとる。
「左様(さよ)か」
山口が傍目から見れば沈痛とも呼べる無表情のまま呟き――

               「  瞬       着  」

武骨な鋼鉄製のカバンが砕け、そこから飛び出したものが山口の身体を覆っていく。


               「  完      覚



                  了      悟  」


強化外骨格を装着した、鋼の戦士へと変貌した。
瞬時にして、両者の間にほとばしる気が、発火しそうなほどに帯電しぶつかりあいを始める。
並び立つ異形のヒーロー、ふたり。
互いの修羅を血で染め合う、宿業の戦いが始まった。
408JINGI:2005/11/01(火) 00:22:46 ID:0lvS/nKr0
村枝賢一と山口貴由、二体の異形が新たな戦場を作り出す。
近代建築の墓場となったスタジアムに、さらなる狂風が吹きすさぶ───

樋口は破壊された足が痛むのも忘れ、呆然と芝の破片に座り込んでいる。
傍らには無表情の金田一と、彼女らを瓦礫から守り地に伏した土塚。
三人を挟むように立つのは、負傷した安西と雷句。
その安西たちと向かい合うのは黄金の鎧に身を包む岡田芽武。
やや離れた所では村枝と山口の死闘が既に始まっていた。

安西「あんた・・・俺らを“命令で殺しに来た”と言いやがったか?
 秋田の刺客は同族殺しも厭わねえってか。
 言えた義理じゃねえが、とんだイカレ出版社だな」
心の動揺を自身の声で濁しながら、新たなる敵に悪態をつく安西。しかし、
返って来た言葉は意外なものだった。
岡田「さて、誰も“秋田からの命令”とは、言っていないのだがな」
安西「あん?じゃあなんだよ!まさか矢吹か」
怒りの声を上げる安西に向かって、岡田は独り言のように呟いた。

岡田「『神に近い何か』が、海の上の戦場で生まれた。
 『3つの神の器』を必要としない男だ。さて、どちらが<本物>になれるだろうか?
 答えは───強い方だ。お前の選択肢はふたつ。神の一部になるか、
 仲間共々この瓦礫の一片と化すかだ」
安西「なんだそりゃ・・・わけがわからねえぞ!!」
ますますいきり立つ安西だが、そもそも説明になっていないので理解しようもない。


≪神≫のしもべたちゴッドハンドは、≪神≫の復活を目標としている。
その≪神≫とはかつてこの世に存在した偉大なる漫画の祖の事であり、
または祖が遺したエネルギー資源を示す言葉でもあるという。

ゴッドハンドと彼らに敵対する妖魔王軍、
莫大な遺産の一部を軍事利用した秋田書店などが求めている≪神≫は後者らしい。
409JINGI:2005/11/01(火) 00:24:14 ID:0lvS/nKr0
ただし推測の域を出ない部分も多く、誰の言葉も完全な答えではない・・・。

GH幹部2名の直属部下・七騎士と横山十傑集は≪神≫復活のために必要とされる存在、
<三種の神器>の在処を捜索する任を負っていた。
三種の神器とは、神の力の憑代(よりしろ)となるだろう、
漫画家三名の能力及び資質の事。(8部〜)
神の力はあまりに強大すぎて、とてもひとりでは抑えきれないという事だろうか。
そして七騎士のひとりが、別府の温泉地にまで潜り込み、
現在GH側で確認されている<神器>のひとりを、
今もってぴたりと追跡しているという。(23部)

その七騎士が追う者がイコール安西信行なのか、
まだ見ぬ第三の漫画家(もうひとりは荻野真だが、別府に来ていないので除外)なのかは、
未だ確認されていない。だがその七騎士から先刻ゴッドハンド側に通信が入り、
【<神器>安西信行の資質を見極めるため、彼と彼の新しい友人たちを殺してみよう】
との結論が即座に上層部から下され、岡田たちが派遣された。
そう、あまり時間が無いのだ。
秋田書店の長年の計画が成功し、鹿児島湾を始め全国でイレギュラーが生まれてしまったから。
ゴッドハンドの支配下に置かれないいわゆる≪神もどき≫が、
有象無象と大量発生を始めてしまったのだから。(※25部・久米田の情報網より)

嘘から出た真、ドサクサに≪神≫の莫大な遺産を危険思想の弱小出版社に根こそぎ奪われ、
彼らが間違って新世界の神なんぞを自称しかねない。
妖魔王陣営との拮抗した関係が一気に崩れてしまいかねない。

矢吹健太朗が10年前に台頭し、気がつけば彼を中心に世界が回っている。
妖魔王が無力化したのちは評議会との抗争にばかり目が行き、
漫画界は奇妙に混沌としてしまった。だがここに来て≪神と神もどき≫が蠢き出した。
膨らんだ風船はある時を境に破裂し収縮する。
その時が外的要因で急激に近づいたのだ。エリア88の紛争はその一端だろう。
そして異界からの侵略者・調停者と王蟲の<審判>は、
すぐそこに迫った未来図そのものだ。
410JINGI:2005/11/01(火) 00:25:57 ID:0lvS/nKr0
安西は闘わねばならない──彼を形成するもののどこかに≪神≫が存在するがゆえに。
だが今現在の彼には、そんな裏事情など及びもつかぬもの。彼に今理解できる事はひとつ───
岡田「簡潔に言えば、死にたくなければ闘え、という事だ」
安西「どうも親切にありがとよ!!」

安西の、<神器>としての資質を見抜いたのは妖魔王が先である。
その王との邂逅を経て、幾多の死闘を繰り返して成長した安西に、新たなる試練が訪れた。
別次元の観客席から騒動を見守る観客達はこれより、
昨晩別府の地で展開された出来事の再来を垣間見る。すなわち・・・死と破壊の饗宴。

対峙する安西たちと岡田。彼らの間には音一つ立たない。
自失から脱するも死の気配を感じ取り、指一本動かせず硬直する樋口。
傍らの安西たちの緊張が彼女に伝わり、心臓の鼓動が早くなる。息が苦しくなる。
何かのきっかけで・・・時は動き出すだろう・・・
蛮 「おうお前ら、何がどうなってん・・・」
安西「!!近づくなっ!!死ぬ──── 」          ひ    ゅ    う
瓦礫の脇から突然飛び出した一本木蛮。
青ざめた安西が声を荒げた頃には既に、彼女の身体を袈裟に刃光が通過していた。
蛮 「っつ・・・ぐはっ!!」
安西「・・・・・・!! おいあんた、大丈夫か!?」

そう、彼女もまた殺される側の者。だが蛮もかつてあらゆる戦場を渡り歩いた女。
岡田の“手刀”にざっくり切り裂かれながらも致命傷は避け、
空中バック転で後方に下がり、一定の間合いを取る。
蛮の纏う学ランは朱に染まり、サラシは半分用をなさなくなっていた。
岡田「男のような闘い方だな。観客どもに死体以外のものも晒す気か」
蛮 「ハッ、何を見せようがどうでもいいね。将臣に笑われるケンカさえしなけりゃな」
岡田「将臣・・・神崎将臣か。ははは、それはそれは」
蛮「あいつを知っているのか?・・・で、何がおかしいんだよ、胸糞悪ぃ」

彼女の質問には答えず、岡田は冷たい笑みを浮かべながら再び間合いを詰める。
鬼気が再度揺れ動いた時、死を呼ぶ黄金剣の切っ先は、新鮮な赤い血を身に纏っていた。
411作者の都合により名無しです:2005/11/01(火) 01:27:32 ID:YzQXJEh30
ところで・・・その海の上の戦場で生まれた彼は無事に連載再開できるのでしょーか
412作者の都合により名無しです:2005/11/01(火) 01:31:55 ID:0lvS/nKr0
そりゃ神器違いでんがなw
こちらはヤマケンの事です。秋田の神もどき作成計画は25部辺りを参照で。
そしてその神器違いの人は無事に連載再開でき・・・福地ー(;´Д∴. .: : : ::::::
413作者の都合により名無しです:2005/11/01(火) 16:11:39 ID:YIkG+zX30
村枝って何種類変身パターン持ってるんだろ?
活躍期待
414作者の都合により名無しです:2005/11/01(火) 16:30:26 ID:GLXzAaxb0
村枝vs山口キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
黄金剣は再び岡田のもとに?
ただでさえ強キャラなのに、聖剣装備なんてエライことだ
415作者の都合により名無しです:2005/11/01(火) 17:02:51 ID:YIkG+zX30
攻撃(手刀?)の比喩でない?どっちとも取れるけど
416作者の都合により名無しです:2005/11/01(火) 19:18:09 ID:0lvS/nKr0
か、解釈は次の方に一任を・・・

(゚∀゚ ;).。oO(前も一回やったなあ・・・梅○飛竜・・・)
417準決勝第二試合開始!!:2005/11/02(水) 13:19:58 ID:Ublymjf90
 セ ミ フ ァ イ ナ ル
< 準  決  勝   第 二 試 合   !!! >

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

試合場を揺るがす雄叫びが、あらゆる観客からほとばしる。
この試合の勝利チームが、明日に行われる決勝戦を、えなりチームと戦うのだ。
観客のボルテージは、ある意味、第一試合よりも上だと言えた。

< 白 虎 の 方 角 !! >

< 今大会優勝候補最右翼!!!  バ  ン  チ  チ  ー  ム の 入 場  で す !!!! >

ジャ ジャ ジャ――――――ン  !!

吼えるようなアナウンスと同時に、試合場に重厚なクラシックの音楽があふれだす。
ベートーベンの“運命”だ。
その旋律にのって、バンチチームのメンバーが白虎の門から、姿を現す。

<先頭を歩くのは、ゆで肉マンこと、ゆでたまご!!なんと、天使の翼を背に生やし、頭には満開の花を咲かせながら、空中を遊覧する華麗(?)な入場です!!>

ゆでの定番というべき珍妙なパフォーマンスに、バンチ側のファンは腹を抱えて大笑い。
一方、裏御伽側のファンは、「ふざけんな!」「やる気あんのか!」と罵声や空き缶などを投げつける。
白虎門の上方に立ち、ゆでの体を左右からワイヤーで吊っているのは、同じく天使の扮装をした巻来と三浦である。

巻来「…なんで俺たちまでこんなおかしな格好をしなければならないんだ?」
ゆで「バンチの三カ条は強く・激しく・楽しくの三つ!強く激しいだけの闘いでは観客は飽きてしまう。その中にはユーモアも必要なんだ!
   だからわたしは、観客が100人いたら99人は絶対に笑わせる!それが真の漫画家なんだと!!」
三浦「………………俺は強く激しいだけでいいと思うんだがな―――」
418準決勝第二試合開始!!:2005/11/02(水) 13:21:43 ID:Ublymjf90
実際は、場内の空気は賛否両論で甲乙つけがたい。
が、少なくとも、“最強チーム”の名が持つ威圧感が地に堕ちたことだけは確かだった。
重いため息を吐いた三浦が、後ろをふりかえる。
後に続くのは、ズボンのポケットに手をつっこんだまま虚ろな表情で歩くヨクサルと、そしてフードをかぶった謎の人物、ミステリアスパートナー。
北条・秋本・柳川がそれぞれ重傷だったり行方不明だったりして人数が足りないため、急遽用意された新メンバーだが、その正体が既出の漫画家なのか、それとも未知の強豪なのかは神のみぞ知る。

< 青 龍 の 方 角 ッッ !! >

< 対するは今大会の台風の目ッ!  裏  御  伽  チ  ー  ム ッッッッ !!!! >

今度は裏御伽入場を告げるアナウンス。
流れたのは、ダニエル・ブーンの“ビューティフル・サンデー”
その音曲に合わせて入場してきたのは、なんとリリーフカーに乗った本宮を始めとする裏御伽の面々だった。
「センター 本宮―」といった場違いなリリーフカーからのアナウンスといい、なぜだか野球をする気満々の面々といい、こっちもどこかおかしい。
観客の反応は、バンチチームの時と、陣営を入れ替えただけだった。

にわ「むう、さすがはゆでたまご先生。戦況は全くの五分五分といったところダスね」
岡村「てめーは、もっと別なところでやる気だせ、コラァッ!」
本宮「がっはっはっは、面白いからいいじゃねえか!!」
川原「(ニィ)」

なにやら闘志とは違う火花は、双方チーム間でぶつかりあっていた。

岡野「ところで澤井はどこに行ったんだ?向こうも原がいないが」

ド ゴ ー ン !!

岡野がいぶかしんだ瞬間、近くの壁が爆発し、その向こうから何か巨大なものに跨る影が現れた。
419準決勝第二試合開始!!:2005/11/02(水) 13:22:46 ID:Ublymjf90
澤井「着いたな… ゼ リ ー 馬 よ 」
ゼリー馬「ゼリヒヒーン」

岡野「変なキモいのに乗って来た――――――!!!」

一見、巨馬に見えたそれは、子供のゼリー細工で作ったような馬らしきナマモノだった。
乗っている澤井が、妙に凛々しい顔をしてるのが、これまたキモかった。


三浦「残るは旦那だけか……」
とっとと天使の格好を脱ぎ捨てた三浦が呟いたとき、白虎門から現れた、今度は正真正銘の巨馬。
像のような巨体を誇る馬の名は、“松風”である。
しかし、観客たちが見たのはそれだけではなかった。
気がつけば、白虎門の真上―――ちょうどさっきまで三浦達がゆでを吊っていた場所に、何者かがこちらに背を向けて立っている。
その堂々たる体躯といい、身にまとっているものの傾きぶりといい、まさしく原哲夫その人。
だがなにより目立つのは、羽織っているマント一面を占拠する五文字。


大ふへん者―――
マントに施した、この五文字を裏御伽の面々は“大武偏者”と読んだ!!
もともと、おのれの武勇にうぬぼれの強い戦国の漫画家たちに、おれこそが武勇の士であると原は宣言した。
これはイタズラにみせかけた裏御伽への喧嘩状といえた!!
420準決勝第二試合開始!!:2005/11/02(水) 13:24:09 ID:Ublymjf90
真倉「ガー!!(大武偏者だと〜〜〜!!なんと恐れを知らんたわけめが!!)」

原「フフ…これは“大ぶへん者”と読むんじゃない。“大ふべん者”と読むんだ」

不敵に笑った原がマントをひるがえし、大げさに見栄を切る。

原「 この原哲夫の相手になる奴がおらんで不便で不便でしかたがないってことよ!!わあははははは!!!」

あまりにも堂々と呵呵大笑する原の放つ気勢に、何人かが思わずたじろぐ。
巨体に似合わぬ身軽さで松風の背に飛び乗り、威風堂々とたたずむ姿は、さっきまで笑いと罵倒の対象であったバンチチームに、前評判通りの威圧を取り戻させるのに十分な効果をもたらした。

本宮「はっはっは、あれが“傾き者”って奴かあ!面白くなりそうじゃねえか、オイ!」
川原「(ニィ)」
澤井「つとめましょう……………貴殿の相手とやら……………」
岡村「(この澤井ウゼ―――)」


累々たる屍を踏み蹴散らし、ここに6対6、計12人の猛者たちが集う。
双方ともに待ったなし。

フ ァ イ ナ ル
 決  勝   へ進み出るのは、どちらのチームか――――――!?


←TO BE CONTINUED
421作者の都合により名無しです:2005/11/02(水) 14:03:56 ID:WWW4qDzL0
変人大集合キターーーーーーーーーー!!!!
岡村賢二のツッコミ見るだけで何故か幸せになれる自分ガイル

人数は幽霊ノーカンでバンチに援軍か。
マッキー久しぶりだよマッキー
422作者の都合により名無しです:2005/11/02(水) 20:37:58 ID:WQT9rM5n0
ヨクサルが無事合流していて安心した。
板垣倒したもの同士だし修羅との対決とか期待。
423作者の都合により名無しです:2005/11/02(水) 22:08:37 ID:gEYf8A9A0
大ぶへん者キタコレw
原がまともに戦うのって何年ぶりだろう?
424裏御伽チーム議事録:2005/11/02(水) 23:03:27 ID:v76zEZFN0
克 『こんにちわ。引き続き準決勝第二試合も担当の克・亜紀です。さあ始まりました!
 試合方法を何にするのか、総大将同士の話し合いとなります。なお同時司会の橋口先生は、
 現在スタジアムの方を担当しております。あちらの状況も気になりますねえ。
 おや裏御伽は円陣を組みました。作戦タイムのようです』

本宮「6対6かよ?タイマンだと引き分けのケースも出るぜ。
 勝ち抜き戦になる可能性もあるな。とりあえず原とナシつけてくるわ」
にわの「いってらっしゃーい(今日中に終わればなんでもいいモン)」
本宮「あ、そういやよ。もし総当たり戦になった場合、
 おめえら誰と当たってみてえか?今なら希望受け付けるぜ」
にわの「んー(誰も彼も手強いけれど、ゆで先生とだけは当たりたくないな〜別格だもの)」
川原「おっさん」
本宮「わかってらあ。お前は柴田ヨクサルだろ?影船で一緒にテレビで見たよな」
川原「(ニィ)」
岡村「なんだその以心伝心は・・・この野郎〜」
川原「悪いな」
澤井「ふふ・・・私はあのフード姿の助っ人との試合を所望します・・・。
 なぜならあの方もまた私と同じミステリアスパートナーだからです」
岡村「お前は赤マルチーム所属の頃から正体バレバレだったろーが!」
岡野「というか謎の助っ人仮面だったのは岡村、お前だ」
真倉「ガー(紛らわしくて存在抹消されてたがな)」
岡村「過去は忘れろ。俺はあの中だと三浦だな。“島”では世話になったらしいな・・・」
岡野「俺は巻来さんだな。どちらの霊力が強いか気になるところだ」
本宮「シメは総大将対決ってか。天下の“傾き者”も俺から見りゃ、まだまだヒヨッコよ」
にわの「えー!すんなり決まり!?ちょっとボクにも決めさせてよー!」
本宮「あ?お前は当然ゆでだろ?この中でプロレスやれるのはおめえだけじゃねえか」
にわの「げぇー!いやじゃんいやじゃん!スットライキー!」
本宮「決まりだな。じゃあ行って来るぜ」
複数「「 押忍!! 」」
にわの「(シクシクシク)」

克 『双方の総大将が今、コロッセオ中央に向かいます。果たして試合方法は何に決まるのかー!!』
425作者の都合により名無しです:2005/11/04(金) 13:34:37 ID:S4YMs2wQ0
6vs6で何かネタはないかと探していたら
ウォーゲームなる史上最狂のへっぽこ大会を思い出して鬱


ワゲーム:サイコロで人数を決める総当たり戦。
大将が負けたらそれまで全勝してても負け。安西発案
426作者の都合により名無しです:2005/11/04(金) 18:15:38 ID:t9nOkiy20
ある意味裏御伽向きの試合形式だな>うぉーげーむ

だって本宮以外でバンチといい勝負できそうなのって川原ぐら(ゲフンゲフン
427作者の都合により名無しです:2005/11/04(金) 19:14:26 ID:RYrUbAmHO
ヒデェw
だが悲しいかな事実ww
428作者の都合により名無しです:2005/11/04(金) 19:32:14 ID:8JzqNeMm0
へー、うぉーげーむってそういうルールだったんだ
ネタのために(「参考にならねーなー」と思いながら)、表面だけペラペラ読んでるだけだから知らんかった

>大将が負けたらそれまで全勝してても負け
バンチと裏御伽の個々の戦力差を考えると何かいい案に思えてくるな
つか、このルールってもっと有効に使えば、元ネタの方ももっと面白くできると思うんだが、どーしてああなるのやらw
429作者の都合により名無しです:2005/11/04(金) 20:21:15 ID:8tnKgULx0
元は長期戦での手駒の潰しあいなんよね>ヲゲ
AチームとBチームの戦力差が1:10だとしても、
AがBの10倍頑張れば勝ち上がれる(使いようによっては)面白い形式。
賽の目が偶数の場合の処置はあったかわからんが、
大将を出さなければ普通の総当たり戦だしね。でもなんで原作はあんなにつまr
430作者の都合により名無しです:2005/11/08(火) 01:52:21 ID:svWWNKFB0
1.二つのサイコロでフィールドと人数を決める
2.各チームで参加者を決める
 ※人数の条件さえ満たせば、キャプテンを出す必要はない
3.参加者が各チーム1人ずつ戦う(個人戦)
4.3を参加人数ぶん繰り返した後、「負け越したチーム」に所属して
  かつ「個人戦に敗れている者」は参加資格を失う
 ※個人戦に敗れていても、チームが勝っていれば引き続き参戦可能
5.1〜4を、キャプテンが敗北するまで繰り返す
 ※これまでの勝敗に関わらず、キャプテンが敗北した時点で終了

以上、マースレよりウォーゲームのルールを要約・抜粋+注釈。
漫画本編はグダグダだが、ルール自体は悪くない。
ただ、本来消耗戦向けのルールだけあって、やると長くなるぞ、これ。
431作者の都合により名無しです:2005/11/08(火) 02:02:30 ID:D5chcPlh0
一回こっきりのイベントには向かないんだよね。
この際だからあみだくじで対戦もいいかなとか思い始める始末よ
432作者の都合により名無しです:2005/11/08(火) 10:17:16 ID:O6eOBMpj0
戦力だけでなく戦略が勝敗を左右するのか
ガチバトル向けキャラが少ない裏御伽にはいいルールだね>ウォーゲーム
川原大海帥もいることだし

でもこのルールを有効活用するには
「うーん負けちゃったでも次はがんばるぞー」
ってバトルが成り立たないと駄目だよね
そこまで温くなくても「前の試合のダメージ(疲労)が残って云々」くらいのレベルでないと
ドラ殺でドーン修羅がバーン北斗神拳でヒデブってやっといて
次まともに戦える奴がいるのだろうか
433作者の都合により名無しです:2005/11/08(火) 11:02:25 ID:rB2EIv4g0
そこで不屈の鼻毛ですよ
こうなりゃえなり版ウォーゲームのルール作ってやっちまおうZe
434作者の都合により名無しです:2005/11/08(火) 11:57:24 ID:f1GblVqo0
ダイスをでかいもの(10か20面体)にするか小さく(4面体)するか、
もしくはくじ引きにするとか?
フィールドもボーナスステージ(回復できるなど)あれば派手にやっても大丈夫かな。
細かい所は語るスレいこう。
435作者の都合により名無しです:2005/11/08(火) 12:14:28 ID:rB2EIv4g0
ウィウィ
436鬼畜な天女:2005/11/13(日) 01:45:52 ID:CjHD2/by0
>>351
 (これが“サンデー”有数の戦士たち・・・口ほどにもない)
緑色の短髪、緑の特攻服にサラシ姿、チャンピオンの羅刹天女・みさき速。
彼女の眼前で、敬愛する梅澤春人は<因縁の敵>西森に容赦ない拳を食らわす。
華奢な美少女の美しい長髪が、鮮血の雨と共に空中に何度も舞い踊る。
西森の仲間たちはそれぞれ別の相手に捉まり、西森は孤立無援。

 (相手が女性だろうと敵ならば一分の憐憫も持たない。
 それでこそ我々CYCLOPSのヘッドに相応しい・・・さすがです、梅澤様)
うっとりしながら愛する男の残虐な雄姿を見守るみさき。
しかしここで予想外の邪魔者が入る。みさきは思わず眉をしかめた。
 「貴様ら!ここは矢吹様の敷地内だ、騒動を起こす奴らは拘束するぞ!」
それは警備を厳しくしていた矢吹軍の一般兵たちであった。
通行人からの通報でもあったのだろうか。
ずらりとみさきの周辺を包囲する10数名の武装した男たち。
囲まれた女はちらと肩越しに梅澤を見、軍人たちに振り返る。
その瞳には先ほどまであった陶然とした色彩は微塵も残っていなかった。

 「“拘束”・・・?誰をです?無粋な客は呼んでませんが・・・?」
みさきは氷の瞳のまま、おもむろに近くの道端にあった「のぼり」を握り、
重石のコンクリートをガリガリ引きずって通路に横一文字を書き上げた。
 「この道には素手戦(ステゴロ)の一対一(タイマン)で来い。
 この条件で俺に勝ったらこの線を越えていい。だが約束をたがえて、
 無遠慮に線を越えあの方の世界を邪魔する者は・・・死ぬといいよ?」
みさきは拳にハンカチを巻きながらにっこりと微笑んだ。
 「一対一?何を言っている。構わん!逮捕するぞ!」
上官が声を上げ、三名の兵士が警棒を持って一斉にみさきに襲い掛かった─――次の瞬間。

  ご 。 「こふぅ!?」鈍い音と共に兵士三人が、腹を押さえ血泡を吹きながらもんどりうった。

 「つまらないよ?あんたたち。もっと俺たちを“遊ばせて”下さいよ・・・?」
高速の蹴りが屈強な兵士を一瞬で葬ったのだ。もはや漫画家でない者に、力に抗う術はないのか・・・。
437シングルvsタッグ1:2005/11/13(日) 18:36:04 ID:NFu1dLea0
>294

将軍と対峙しながら、大暮は心意六合拳の構えをとったまま動かない。
ゆで将軍を相手に、迂闊な動きは死につながる。大暮の顔を汗がつたい、リングに落ちる。
「・・どうした、先ほどまでの威勢は?もう臆したのか」
「・・ちっ」
将軍の揶揄に、大暮は返事をかえす余裕はない。
「・・・・ならば、こっちから仕掛けてやろう」
眼前から、将軍の巨体が白昼夢のように掻き消えた。
ほとんどタイムラグを置かずに、大暮の腰を万力のような圧力が締め上げる。
「――――!!」
将軍が超スピードでバックをとり、クラッチしたのだと気づいたときには、大暮の視界は天空を高速で流れていた。

           ド     ゴ    ン  ッ

電光石火のジャーマンスープレックスが、大暮の後頭部をマットにめりこませる。
「(ヤ・・・・・・ヤベェ・・・・・・・・・ッ)」 「逃げるっすよ、兄さん!!」
揺さぶられた脳に、福地の声が響く。
「ウオ!!」
クラッチを外し、大暮が後転で逃れようとする。
それに対し、将軍は大暮の両足に自分の両足をからめ、大暮の体を海老のように折り畳みながら、自身は後方に沿ってブリッジの体勢をとる。
ジャパニーズ・レッグロール・クラッチの高等技だ。
「パワーもだが、技も切れるっす!!」 「ゆで将軍、要注意人物だな・・・・」
福地、そして永井さえもが思わず唸ってしまう。
将軍は、さらに大暮の体を抱えあげると、ジャンピング・パイルドライバ――――ッ!!

            ガ       シ     イ

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
大暮の目に映る景色は、すでにドロドロに歪んでいる。
438シングルvsタッグ1:2005/11/13(日) 18:37:06 ID:NFu1dLea0
「(コ・・・コイツ・・・!!このガタイで・・・なんつースピード・・・だ)」
将軍は追撃の手をゆるめず、大暮の両足をつかんで体を裏返し、サソリ固めを極めた。
「があっ!!」
とてつもない激痛に、大暮がわめいた。
「カラカラ、これはただのサソリ固めじゃないぜ〜〜〜〜っ。
 コンステレーションさそり座(アンタレス)!!」
将軍の顔面に、まるでさそり座のような配列の光の列が輝き、同時にすでに日が落ちた夜空にひときわでかく、冬にもかかわらず、さそり座が光る。
「スコーピオン・プリック――――ッ!!」
サソリ固めに大暮を締め上げる将軍の腰の部分から、不気味な尻尾のようなものが伸びていく。
「あ、危ないっす、兄さん〜〜〜っ」
「ぬ・・・・ぐうっ!!」
「カラカラカラ〜〜ッ、おまえの声は届いてないようだぜ〜〜〜〜〜っ」
そして、スコーピオン・プリック(サソリのトゲ)が、大暮の頬に突き刺さる――っ!!
「グギャアアーッ!」
「アンタレス・デスロック――ッ!!」
ゆで将軍、スコーピオン・プリックを引いてそのまま大暮の首も曲げにかかる。
「り・・・両脚がサソリ固めに極められると同時に首も極められてるっす。こ・・・これは脱出のしようがないっす・・・」
「カラカラカラ――――ッ、ギブアップした方が身のためだぜ〜〜〜っ」
「グ・・・グオラア〜〜〜ッ」
さらに背骨を締め上げられ、呻く大暮。懸命にロープに手を伸ばすが、リング中央で技をかけられているため、届かない。
早くも万事休す――かに見えた。
「確かに・・・"シングル・マッチ"なら脱出のしようがないっす・・・でも・・・」
福地が不敵に笑って、叫んだ。
「・・・こいつは"タッグ・マッチ"っすよ!!」
その瞬間、大暮の各部が光輝き、なんと五体が"バラバラに分解された"!!
「なにっ!?」
将軍が意表をつかれ、驚いたときには、すでに分解された大暮の腕がロープをつかんでいる。
439シングルvsタッグ1:2005/11/13(日) 18:38:18 ID:NFu1dLea0
「ロ・・・ロープ!!ロープ!!」
「ぬうっ!!?」
五体をバラバラにされたのに生きており、あまつさえ声を発した大暮に将軍が驚く。
「これが俺の職(ジョブ)能力・・・《"クリップ"に"分(バラ)"を加える能力》っす!!
 サソリ固めから逃れるために、一時的に兄さんの体を分解したっす!
 バラされた本人は痛くもかゆくもないし、むしろ肩コリとか治ってキモチいいってウワサっすよ」
「(いや、肩コリは治らんだろ・・・なんとなく・・・)」
得意げに能力の解説をする福地に、永井は脳内で密かにツッコミを入れておく。
「ちっ・・・・」
ふーとため息をつき、しぶしぶ技を外す将軍。
「いってぇーな、こんちくしょ!!」
「!!」
すかさず、そこへ大暮が体勢を立て直しながら将軍の顔面に蹴りを見舞い、起き上がる。
「ふうっ」
そのときにはすでに、腰だめに右拳が構えられていた。
震脚から発生したエネルギーが螺旋状に大暮の全身を駆け上がり、右拳から一気に放出される。
大暮の十八番――"鍛針功"。
「オラァ!!」

                   ド         ン   ッ 
 
溢れる力の塊が、ゆで将軍の胸元に突き刺さった――――!!
「な・・・・に・・・」
だが蒼白になったのは、技を極めた大暮の方で、将軍の方はニヤニヤと余裕の笑みを浮かべている。
大暮の拳は、将軍の胸元に、手首まで埋まっているというにもかかわらず・・・だ。
そして、大暮の拳はさらに将軍の肉体に奥深く突き刺さり、手首はおろか肘まで巻き込まれていく。
「ウギャアアアア――――――ッ!!」
大暮が絶叫した瞬間、将軍の胸元には、大暮の腕を巻き込むひき潰す、ローラーが出現していた。
440作者の都合により名無しです:2005/11/13(日) 22:52:07 ID:lm/p8r7f0
久々にプロレスの続きキター!
つか、クリーンなファイトと思いきやいきなり呪いのローラーとは飛ばし過ぎだ将軍w
441作者の都合により名無しです:2005/11/14(月) 00:28:11 ID:NTmw/Puk0
   ,-, -、-、ノ
  ノjii|lO-O》)``)  ブンブン
  iiid・ ヮ・ノノ `)⌒`)
   ノ|.―| 彡≡≡;;;⌒`)   ローラー!ローラー!
.    ~|~|~ ;;(((⌒;; (⌒⌒;;
442作者の都合により名無しです:2005/11/14(月) 23:28:24 ID:PeGh9X+q0
福地よー
こっちだけじゃなくて、早くリアルでも活躍を再開してくれー
443作者の都合により名無しです:2005/11/15(火) 13:13:26 ID:aEsrcyoK0
タッグ相手に呪いのローラーか・・・なんだか猛烈に悪い予感がするのう
444作者の都合により名無しです:2005/11/15(火) 16:15:45 ID:ce1rTVKe0
>>442
福地もそうだが、グレ吉もね
いつまで天天休載してんだよ
まあこっちはエアギアが忙しいからしゃあないのかもしれんが
445作者の都合により名無しです:2005/11/15(火) 16:24:08 ID:P1u/8h0T0
あれ?ゆでも休載って話を聞いてr

こいつら・・・
446作者の都合により名無しです:2005/11/15(火) 23:48:34 ID:Wd1aKIe8O
アラ(´A`)マー
447作者の都合により名無しです:2005/11/16(水) 00:05:00 ID:DhvvodqC0
そこシンクロしなくていいからw
448血と黄金と甘い罠:2005/11/17(木) 03:35:11 ID:bOwxvn4y0
>>410

黄金剣――――
車田正美が作り上げた10本の“聖剣”の中でも、1・2を争う強さを誇ると言われる。
<赤い核実験場>にてこれを岡田芽武より譲り受けた男、由利聡の魂は既に現世に無く、
彼と同じ車田の力を継ぐ者・・・岡田の手に再び聖剣は戻った。
実験場チャンピオンREDより回収され、岡田の手に戻りし伝説の剣。
そして今、黄金の輝きが崩壊した緑の戦場を鮮血に染めようとしている。

・・・車田が認めた正統の戦士が手にすると、まさに神と同等の力が発揮されると言う。
逆に正統でない者が手にしても、その十分の一も能力を発揮できず、
聖剣の能力に飲み込まれて自滅するのだ・・・。
果たして裏の顔をあらわにした岡田は本当に剣を我がものとできるのか?
使い手の感情がそのまま爆発力になる黄金剣は真の力を発揮させられるのか?
答えは現在、まだ出てはいなかった。

蛮 「ぐあああああっ!!」    ゴッ・・・! ミシミシミシッ・・・!!

一本木蛮の小柄で力強い肉体から流血と破壊の音が溢れ出す。
岡田が軽く凪いだ長刀の先には蛮の血と衣服の端が引っかかっている。
蛮 「ぐふっ・・・」
彼女は血を撒きながらもんどりうって瓦礫の山に崩れ落ちる。
今ので何本か骨をやられたかもしれない。蛮は倒れたまま動かかった。
雷句「し、しっかりするのだ、おぬし!!」
安西「てめえ!いきなり武器まで使いやが・・・  ・・・!!」
反射的に岡田に突っかかろうとした安西の足がぴたりと止まる。
身の危険を察したのだ。何に?あの剣に?スタジアムを壊した脅威の拳に?
違う。
安西「目だ。あの氷というかドライアイスみたいなあの瞳。
 まるで屠殺寸前の豚を見る肉屋のように慈悲がない。俺たちは道端の石ころ以下だと思ってやがる。
 なんでこんな奴が、あの車田と似たような黄金の聖衣を着ているんだ?・・・」
安西は今自分こそが葬られようとしている事実も忘れ、大きくつばを飲み込んだ。
449血と黄金と甘い罠:2005/11/17(木) 03:36:02 ID:bOwxvn4y0
――安西や村枝たちとやや離れたところに避難した樋口や金田一たち。
彼女らを守って倒れた土塚に、救援物資が合流した松沢から送られた。すなわち回復キノコ紅茶。
半分アニキラブモードの松沢が口移しで紅茶を与えようとして樋口に殺されかけたのは秘密だ。
土塚「助かりやがりました。ところでハリーさん、あれ持ってませんかねェ?あれ」
松沢「あー・・・あ!あれね。あれなら黒ビキニの中のおやつ袋にいっぱい――」
土塚「次同じ事やったらブッ殺しやす。いやマジで」


岡田「どうした。反撃はしないのか。
 言っておくがこの剣を振るうのは練習がてらだ。お前たちでも試し切りの藁にはなれよう」
雷句「ウヌウ!我らにだって振るう得物はあるぞ。安西!獣の槍を出すのだ」
安西「え?あいつはリックお前を助けるために俺から離れたぞ。持ってねえのかよ?」
雷句「そ、そういえば今日はまだ見かけておらぬのだ!おーい飛んでくるのだ槍ぃぃぃぃ!!」
安西「なんだそりゃあああ!!どこだ槍ぃぃぃぃぃ!!」
岡田「寸劇はそこまでだ。死ね!」
焦ってオロオロし出す若造二匹に向かい、岡田は遠慮なく剣の切っ先を伸ばす―――


    ズ ァ ド ッ !!  グ ア ッ !!  ガ ォ ン !!  ド  ン !!


突如岡田とその周辺が、ど派手な爆音と爆風に包まれた!
誰だ、と言おうと口を「あ」の形に開けた岡田の舌の上に、何か丸いものがポトリと落ちた。
ビー玉ぐらいの甘い固形物はピンポイントで彼の喉の奥に転がり入り胃に飲み込まれる。
予想外の出来事に一瞬自失する岡田を包む砂煙が晴れるとそこには、
ツインテール幼女の姿に<存在変換>した土塚が、松沢のおやつ袋を持って仁王立ちしていた。
土塚「あーーーーーーーーはっはっはっは!!おい、死ぬのはそっちだ色男!!」
岡田「新手か?先程まで存在しなかった魔力を感じる。今のは・・・飴玉か?」
食道に異物感を感じて眉をひそめる岡田。
土塚「は、素粒子レベルで分解してやるよ。マテリアル・パズル『スパイシードロップ』でな。
 飴は媒体、俺が合図をすればおまえは内側から“ボム”だ。嫌ならとっとと消えちまえ!」
片手で黄金剣を持ち片手で喉を撫でる岡田の、絶対零度の瞳から超冷凍の雷光がたばしった。
450道化と開拓者:2005/11/17(木) 19:34:50 ID:ntQqDy+i0
>>161
『いいか・・・今井。今・・・おまえは見張られている。今すぐその場から離脱することはできるか?』
「・・・無理だね。今のボクは戦闘できる状態じゃない。こんなコンディションじゃ彼の追跡を振り切ることは不可能だよ。いや・・・」
この期におよんでまだどこか状況を楽しむような笑みを浮かべ

「もう王手(チェックメイト)をかけられているみたいだ♦」

『!!』

     ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ 

「どんな気分だ?『今井』・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
いきなり真後ろから聴こえてきた声の方を、今井は振り向きもしない。
今井の背後では、重力下では不可能な体勢で立つ、帽子の男がたたずんでいる。
                       。 。。。 。
「動けねえのに背後から近づかれる気分ってのは たとえると・・・
 水の中に1分しか潜ってられない男が・・・限界1分目にやっと水面で呼吸しようとした瞬間!
     グ  イ  イ ッ
 ・・とさらに足をつかまえられて水中に引きずり込まれる気分に似てるってえのは・・・・どうかな?」
背後から帽子の男――――荒木が、今井の肩を強くつかんでいる。
まさしく絶体絶命の状況だが、今井は表情を変えないままつぶやく。
「ボクの占いにも、このことは出なかった」
「?」
「つまり、この状態は予言するほどのこともない。とるに足らない出来事というわけさ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ほう」
荒木の透徹な光を帯びた視線と、『今井』の光のこもらない爬虫類のような視線が、肩越しに結びあい、ぶつかりあった。
451道化と開拓者:2005/11/17(木) 19:36:08 ID:ntQqDy+i0
「・・・君が生きていてくれたのはウレシイけどね。まあ、あの状況でも君が生き延びる手段なんて、それこそ無数にありはするだろうけど。
 それはおいておいて、もう一度言ってあげようか?
 ボクにとって、この状態は昼下がりのコーヒーブレイクと何ら変わらない平穏なものだ」

    バ  キ  ッ  !!

「ぐ!!!」
荒木が残った右腕をつかみ、一気にヘシ折った。
「・・・ひどいな、腕を折るなんて・・・♠」
「いいや慈悲深いぜ、腕を切断しなかっただけな・・・」
ドンと体を突き放し、よろけた今井と、荒木が正面から対峙する。
「なるほど、おまえの表情には演技ではなく、本物の『度胸』と『覚悟』がある。
 いたって平常な心音・・・動揺はみじんもない・・・
 死の不安・恐怖・虚偽の不協和音、なにも一切がない。
 『死なない』と思っているのではない・・・この音は・・・死を受け入れている音・・・!!」
「・・・・・」
「死を毎日、側に在るものとして・・・享受している音だ」
「・・・」
「おまえは自分に「価値がない」と思っている。
 確かに、きっかけの一旦にはおまえが一枚噛んでいたかもしれんが、もう状況はおまえの手をはるか離れているし、そもそも最初から掌の上で転がすつもりもない。
 今更、おまえをここで殺しても、事態はなにひとつ変わらないし、戦力のないおまえを痛めつけても後味の悪い思いをするだけだからな・・・」
「おや・・・見逃してくれるっていうのかい?しかし、ボクを生かしておくと、また後々面倒な事態を引き起こすかもよ♣ 
 もしかしたら、君のお友達に大変な迷惑をかけるかも・・・♠」
ピタリと荒木の足がとまる。

「 本 当 に 殺 す か 」

今井が反応する間もなく、荒木のかたわらにスタンドが出現した。
452道化と開拓者:2005/11/17(木) 19:36:51 ID:ntQqDy+i0

「ドララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララ
ララララララララララララララララララララララララララララララララララララ!!!!!」

マシンガンも裸足で逃げ出すほどのラッシュが、今井の体に次々とブチこまれ、肉体を壊していく。

      バァ――――――――z______________________ン !!!!

全身から血をブチまけて、今井が近くの壁に叩きこまれた。
その惨事に、周囲で人が騒ぎ出すが、荒木は「やかましい!」と一蹴し、凄みで黙らせた。
――――と、やがてボロクズのようにブチのめされたはずの今井が、すくっと何事もなく起き上がった。
殴られた傷はおろか、先の試合で負わされた怪我までもがすっかり治っている。
「――――これは?」
「・・・・テメーのおかげで、俺がいない間のえなりチームは結構助かった。その『礼』がわりさ」
荒木は『クレイジー・ダイヤモンド』によって、今井の負傷を治癒したのだった。
「でも、ここまで念入りに殴らなくても良かった気がするけど♥」
「さんざんテメーに振り回されたからな・・・鬱憤晴らしさ」
「・・・ボクがこの先も生きてると、もっと振り回されるかも♠」
「ただでさえ、今の状況はあらゆる因縁や思惑が複雑にからみあって収集がつかない状態だ。
 そーいうのを無理矢理収めようとするから、さらに事態が混乱して、かえってまとめるのが面倒くさいことになる・・・別府のときみたいにな。
 だから逆に考えるのさ。
『もっと無茶苦茶になっちゃってもいいさ』と考えるんだ」
「なるほど・・・つまりボクはさらなる混乱の種として生かされたってことかな?」
「せいぜい引っ掻き回すことだな。混乱が深まれば、そのなかで動く『意思』の存在ははっきりしてくる。
 そいつを潰しちまったあとで、おまえとの決着は考えりゃそれでいい」

会話はここで終わりだった。
数分後、ふたりともその場から忽然と消え去り、あたりには平常な喧騒だけが残る。
道化は闇に消え去り、開拓者の精神をもつ不屈の男は、再び表舞台に舞い戻った。
←TO BE CONTINUED
453作者の都合により名無しです:2005/11/17(木) 21:04:38 ID:bOwxvn4y0
キタヨキタヨー
荒木さん元気そうでよかった
454作者の都合により名無しです:2005/11/17(木) 21:17:03 ID:gunoZINK0
>『もっと無茶苦茶になっちゃってもいいさ』と考えるんだ

いや、その理屈はおかしいw
まーともかく、これで決勝はベストメンバーで望めそうだな
455作者の都合により名無しです:2005/11/17(木) 23:17:00 ID:eax3LNNh0
せっかく出番がきたのに荒木がすぐ後じゃ影が薄いぜ!
それに岡田をやり込める姿も想像できないけど、がんばれ土塚
456作者の都合により名無しです:2005/11/18(金) 17:57:06 ID:Mkp2rUis0
カコ(゚∀゚)イイ!
457漆原の能力:2005/11/19(土) 10:50:01 ID:01J8VyKJ0
「旨い」
『魔女』――五十嵐大介が、そう呟いた。
「これは、久々に旨いものを食べさせてもらった」
「そうか」
 クッキング親父は、やんわりとした笑顔を作り答えた。
「…来客だ」
 五十嵐は、指をすっと横に動かし、遠くの戸を開けた。
 戸の先には、少し驚いた様子の漆原友紀の姿があった。
「何もしてないのに扉が……」
「やあ、漆原」
「五十嵐さん……それに、あなたはうえやまさん?」
「親父でいいよ。確か、昔一度何かのパーティーで会ったことがあるかな」
「あ、はい、その節はお世話になりました」
 親父に向かってぺこりと敬礼する漆原。
「まあ、入れ。もう数時間後にはもっと賑やかになるだろう」
「え、なんでそれを……あ、そうか、五十嵐さんは……」
 一瞬疑問に首を傾げた漆原だが、五十嵐が魔女であるということを思い出してすぐに納得した。
「俺はもっとつまみ作っておくよ」
「親父の料理は旨い。食べられるのは嬉しいことだ」
「あの、五十嵐さん……」
 漆原は、少しトーンを下げて言った。
「この近辺に蟲が急増したのは、五十嵐さんの力ですか?」
「…くぼた、という男を競技場に向かわせたか」
「はい、蟲達が『貞本という男を連れてこい』と言っていたので、申し訳ないんですが引き返してもらいました。
そして、蟲達にそれを言わせたのは多分……」
「漆原は優秀だからな。小さきモノ達の声も漏らさず聴ける繊細さがある。蟲を視る能力にかけて、お前の上
を行く者はいない」
「そんなこと……」
「しかし、なんだ。くぼたを顎で使う辺り、見かけによらずなかなか悪い女ではないか」
「…意地悪」
 笑う五十嵐とは対照的に、漆原は俯いて、そうこぼした。
458くぼたの憂鬱:2005/11/19(土) 10:51:22 ID:01J8VyKJ0
 親父が本日五つ目の品目を作り終えた頃、くぼたは競技場に到着していた。
「早く貞本氏を連れて行かねば、漆原氏の機嫌を損ねかねませんね。それは今後を考えれば由々しきことに
なりかねません。早急に早急に……」(注:この男は世界征服を企んでます)
 漫画家専用席に向けて階段を上るくぼた。
「早急に早急に早急に……ああ胃が痛い」(注:この男は世界征服をry)
 そうして漫画家専用席に辿り着いたくぼたは、雰囲気が明らかに変わっているのを肌で感じていた。
 血なまぐさい雰囲気。
「これは……死闘というやつですか? これは……なんと恐ろしいことでしょうか」(注:この男はry)
「くぼた、どこ行っとったんじゃ!?」
 いつの間にか背後に来ていたくぼたに気付いたみずしなが、そう怒鳴った。
「ひいっ! す、すみません……」(注:このry)
「非常事態やっちゅうに」
「かぶとのあごひげなんてむさいおっさんにはなんのせいてきこうふんもわかないやあはは」
「あっ、貴方は!」
 28歳児を見つけたくぼたは、嬉しさのあまり貞本の腕をがしっと掴んだ。
「来てください! 漆原氏から貴方を呼んでこいと仰せつかっているのです!」
「きてほしかったらじゅうさんさいくらいのひんにゅうしょうじょつれてきてよ。まだせいりきてないこ」
「……売春なんてそんな、人の道から外れた行為はちょっと……」(注:こry)
「漆原さんが、そう仰ってたんですか?」
 天野がくぼたに訊く。
「そうなんです。私にはよく分からないのですが、何やら貞本氏にとっても大事なことらしく……」
「詳細分かんないの? 俺だったら先に訊いとくけどなー。あんたちょっと要領悪いよ」
「はあ……申し訳ありません」(注:ry)
 まっつーからの厳しい指摘に小さくなるくぼた。
「でも、ま」
 みずしなが言った。
「行きましょうか?」
 天野も言った。
 自分達がここにいても、状況に関わることは出来ない。ただ見ているだけなら、果たしてそれに
意味はあるのだろうか――
 皆、似たような思いを抱いていた。
「皆で漆原のところに行こうや!」
459作者の都合により名無しです:2005/11/19(土) 13:13:07 ID:zdoHd16F0
おお、旅景色メンツが久々に移動を始めたぞ。
果たして彼らの運命は・・・ 貞本いつか逮捕されそうだねw
460作者の都合により名無しです:2005/11/19(土) 19:40:43 ID:XYliUgkMO
この世界の警察機関が正常に機能してるかどうか・・・・・・
でも島袋は捕まったかw
461作者の都合により名無しです:2005/11/19(土) 19:52:16 ID:FKaYCyvuO
そういや警察署爆破事件の重要参考人がパーティに混じっているぞw
大丈夫なのか旅景色軍団
462シングルvsタッグ2:2005/11/20(日) 18:12:00 ID:rz5iMRTl0
>439

「呪いのローラー!!」
「うわああ――――っ!」
右腕をローラーに引き込まれ、絶叫する大暮。
「なにしてるんすかー、兄さん!右腕を捨ててでも脱出するんすよー!!」
「うおお――――っ!!」
将軍の腹を蹴り、強引に腕を引き抜いて呪いのローラーから脱出した大暮。
しかし、大暮の右腕は肘から先が完全に潰れてしまっている。
「ファック!右腕が死んじまった・・・」
「ケッ・・・ただでさえ弱い漫画家が・・・右腕が使えなくなってよけいに弱くなったぜ!」
「ヘイ!兄さん、交代っすよ!!」
タッチ交代しようとする福地だが、それよりも早く将軍が大暮の左腕をとる。
巨体に似合わぬ敏捷さで跳躍から、跳び間接!
一瞬で、大暮に腕ひしぎ十字固めをかけてしまう。
「ぬうう!!」
「待つっす、ゆで将軍っ!俺が相手っすよ!!」
「もう――――・・・遅い」
そして、将軍が掴んだ腕を一気に伸ばし、ヘシ折ろうとした、そのとき――――

       ギ ュ ン    ギ  ュ ン ッ

「ゲェ――――ッ!!何ィィ・・・」
巨漢の将軍が、細身の大暮をそれ以上曲げることができず、ピクリとも動かせない。
あり得ない現象に、将軍が狼狽の声をあげた。
「う・・・おお!?(バカなっ・・・・・・私が 私がこんな細面の男に・・・パワーで負けているっ!!)」
「 ふ ん が あ っ !! 」

         ズ   ア ッ    ギ ュ ギュンッ

「(か・・・回転エネルギー!!鍛針功で生み出した膨大な回転エネルギーを放出せずに直接“力”に変えてるっすかっ!?あの技にこんな使い方が・・・!?)」
463シングルvsタッグ2:2005/11/20(日) 18:12:46 ID:rz5iMRTl0
寝た状態で接地した足裏から、大地のエネルギーを増幅し、回転させ、その力で大暮は将軍の巨体を片腕一本で持ち上げた!!
この離れ業に、福地は目をむいて感嘆する。持ち上げられた将軍の動揺は、さらに大きい。
「だあっ!!」
気合を込めて吼えながら、将軍の体をコーナーの鉄柱に叩きつける。
「ぐうっ・・」
尻餅をついた将軍。その首に、背後から腕が伸びてきて巻きつく。
「兄さんっ!」 「おうっ!」
スリーパーで将軍の動きを封じながら、福地が手ぬぐいを大暮に投げ渡す。
潰された右腕にその手ぬぐいを巻きつける大暮。
それを確認すると、福地がスリーパーを解いて将軍の後頭部に右肘を添えた。その腕にもまた手ぬぐいが巻きつけてある。
「《“手ぬぐい”を“鉄”に変える能力》レベル2!!」
大暮と福地の右腕に巻かれた手ぬぐいが超磁力を帯びた鋼鉄と化し、二人を激しくひきつけあう。
「「 掟 破 り の ク ロ ス ボ ン バ ――――――――ッ !!! 」」

           ガ      キ   ィ   !!!!

文字通りの鉄腕+超磁力+二人の力。
殺人的な爆発力が、ラリアートのはちあわせとなって将軍の首に炸裂した――――!!
「グホ!!」
さしものたまらず吐血し、片膝をつく。
「よっしゃ、大技行くぞ!」「うっす!!」
大暮が将軍の巨体をブレーンバスターに抱え上げ、福地がロープを使って跳躍する。
「「   う  っ  ら  あ  あ  !!  」」

           ド   ゴ  ン  !!!!        

旋回式垂直落下ブレーンバスターをかけられた将軍に、さらに福地が両足裏を重ねるようにして体重をかけ、威力を倍加する。
二人の即興コンビ技“TTD(サンダーデスドライバー)ツープラトン”が、凄まじい音をたてて将軍の脳天をマットに突き刺した。
「「しゃああっ!!」」
二人が掌を打ち合わせ、反撃への狼煙をあげた。
464シングルvsタッグ2:2005/11/20(日) 18:17:20 ID:rz5iMRTl0
訂正

×TTD
○TDD

全く別の技になっちゃうんで
465作者の都合により名無しです:2005/11/20(日) 20:10:55 ID:vRw2Uc2o0
うおっ即席タッグが活躍してるじゃないか。奇跡だ!
でもかなり痛そうやね右腕
466Searchin' For New World:2005/11/22(火) 18:30:42 ID:MdRxEHSA0
前スレ>>324 他

矢吹艦都市部。
にぎやかな街の中心からは少し外れた、人気まばらな裏通り。
昨晩の酒宴が名残り、すえたような匂い漂う飲食店の並びに、ちらほらと看板も輝きはじめる黄昏近く。
現れる、まるで周囲の風景にそぐわぬ、大仰な黒塗りのリムジンが
うらぶれた一軒の店の前で停まり、後部座席のドアが開かれる。
「…………」
無言で下りて来たのは、マントを纏った端正な顔立ちの男。
傍らの立て看板をちらと見て、背後でドアを恭しく開けている『黒服』に振り返り、訊く。
「ここか? 雀荘、みたいだが」
「は・・・・」
『黒服』が浅い角度で腰を折った。
溜息ひとつ吐き、静かに、目の前のドアを押す男―――城平京。
木目の上で、[貸切]のプレートが揺れる。
中は、閉店時のように薄暗かった。
そしてそのくせある、大勢の人の気配。目を眇め見渡すと、奥から声。
「こっちだ」
壁や通路を埋める『黒服』たちの間を通り抜け、ゆっくりと進んでゆく。
「ここだ」
見えてきた。
ただ1人、二人がけの小さなテーブルに腰掛けている、闇に浮かび上がるような白髪の男。
別府の宴会で、芸を披露しているのを見た。『福本伸行』本人。
「呼び付けてすまんな」
福本はそう言いつつも。ノートパソコンを繰り、書類を捲リ続ける。
「いえ」
手振りで薦められ、向かいに座る。
しばし、眼前に山積みされている、書類仕事が片付くのを、待つ。
「――――よし で だ」
ノーパソの電源を落とし、書類の束を『黒服』に手渡して。ようやく向き直った福本は、胸ポケットから二枚の写真を取り出した。
「こいつらに見覚えがあるな?」
「………ああ」
467Searchin' For New World:2005/11/22(火) 18:31:28 ID:MdRxEHSA0
当然である。
いつ撮ったものかは分からないが。一枚は、城平にとってはチームメイトである夜麻みゆきのもの、もう一枚は、その被保護者たる荻原一至のもの。
「断っておくが これは『別府前』に撮影されたトーナメント出場者名簿のものだ つまり今 兄さんの頭をよぎった『可能性』は外れってこと」
言われて、僅かに引き締まった表情を、緩める城平。
「……なるほど。確かにあんたには『動機』が無い」
「俺を?」
「まぁ……あんたは俺たちのような『知略』に偏る人間にとっては一つの『到達点』だからな。
 漫画界(こっち)に疎い俺でも、さすがに評判くらいは聞いてる」
「ふん・・・・」
「で、『誘拐犯』があんたじゃないとしたら用件は? まさか使いっ走りってこたないだろ」
優れた頭脳を持つもの同士特有の、周囲置いてけぼりの会話がはじまる。
交わす言葉に比して圧倒的な情報量が、二人の間を飛び交う。
「・・・・そう焦るな」
「と、言われてもな。俺も、伊達や酔狂であそこに居たわけじゃない」

――――『あれ』から一夜。

夜麻達の事をチームメイトの誰が忘れようと、自分だけはその事を忘れるわけにはいかなかった。
なんせ紛うかたなき自分の責任だ。表に見せる感情はともかく、ありったけの必死を振り絞り探し出さなければなるまい。
しかし、救助された怪我人達の中にも、別府に骸を晒した犠牲者達の中にも、彼、彼女等を見つけることは、ついに叶わなかったのだ。
水野にさせた、様々な方向からの確認作業から、おそらく死亡はしていないだろうと、それだけは救いだったが。
だがその『結果』は自然、一つの可能性をも浮かび上がらせる。
―――誘拐―――
そしてその場合、いずれ来るべきもの。
『犯行声明』なり『人質交渉』なり、そろそろ来て然るべき『それ』の窓口を『犯行グループ』にそれとなく示す。
所在不明の荒川や、試合中のスタメンとは別の場所、『ベンチ』で、ただ待つ意味。
実は苦手というわけでもない昼日中に、単に惰眠を貪っていたわけでは一応、無い。
とはいえ唯一それらしい形で接触してきた福本が『メッセンジャー』ですらないのなら、ここに居ても入れ違いの確率を増やすだけ。
いや、それならばまだいい。
念の為水野に指示は残してきたものの、下手に直情型のチームメイトになど接触されると、あるいは事が更に厄介になる可能性もある。
468Searchin' For New World:2005/11/22(火) 18:32:21 ID:MdRxEHSA0
「・・・・ああ 兄さんの考えてることはよく分かる」
「…………」
「だがまあそれは杞憂だな おそらくあんたらのところには誰も来ない」
――――あくまでも、無表情の下での沈思黙考。
なのに、どこまで読んでいるのか、どこまで知っているのか、全く計り知れぬ、福本の口ぶり。
だが理屈よりも先に、城平の直感も、そうだろうなと頷いていた。
そう、既に城平(じぶん)も、十中八九『営利誘拐』ではないと、薄々勘付いてはいたのだ。広義のそれではあろうが。
あらゆる可能性を捨てず、『営利誘拐の場合にも』備えていただけで
かつてカムイから聞いた話が事実なら――――簡単な、消去法だ――――
「・・・・『妖魔王』」
さらに思考の先を読まれて、城平の肩が、思わず知らずぴくりと動く。
目と目が合い。
やがて肩の力を抜いた城平は、お手上げのポーズをとる。
「やはりそうか。まいった」
椅子の背にもたれかかる城平のゆるい溜息に、福本の瞳が、興味深げに細まった。
「・・・・気付いて いたのか?」
「ああ、まあ、今ある情報ではそれしかないなと………むしろあんたは、何故?」
「少し縁があってな こちらもまあ“極めて可能性が高い”程度だが」
奥ゆかしさでなく、子供たちを守ろうと戦ったことを、口にしない福本。
流石にそこまでは察することも出来ない城平は
「そうか―――」
そう言って、もう一度深い溜息を吐くと、マントを率いて立ち上がった。
469Searchin' For New World:2005/11/22(火) 18:34:06 ID:MdRxEHSA0
「とりあえず、『確認』にはなりました。どういう風の吹き回しか知りませんが――――ありがとうございます」
一応の礼をし、去りかけて、
「まあ そう焦るなと言っている」
引き止める福本の声に、足を止め、まだ何かと振り返る。
対面の手には、薄茶色の書類入れが出現していて
「ここに こういうものがある」
その表面には

『 妖魔王軍本営“見えない学校”調査中間報告書 』と

「現世に点在するゲートポイントや こちらに分かる範囲での構成員データを網羅したスグレモノ―――」
城平が、目を見開く。
「――――ずいぶん、親切なんだな」
「片手間だ 気にする必要は無い」
そんな言葉を受けて、城平が、受け取ろうと手を伸ばす。
「――――と 最初は そのつもりだったんだが」
ひょい、と書類入れを掲げられ、城平の手が空を切った。
「?」
「兄さん なかなか面白い男だ どうだひとつ」
福本の纏う雰囲気が、前触れもなく、激変、した。

「こいつを賭けて ギ ャ ン ブ ル ってのは・・・・!!!」
470作者の都合により名無しです:2005/11/22(火) 18:46:24 ID:m+Q4CXUTO
うは(`∀´)なんだか楽しそうじゃあないの
471作者の都合により名無しです:2005/11/22(火) 20:38:56 ID:6V7cCc7u0
そういえば、城平は太陽を克服した吸血鬼であることが今月明らかになったんだよな
まあ、このスレにおいて太陽を克服した吸血鬼はあまり珍しい存在でもないから、大したアドバンテージにはならんだろうけどw
それはそうと、ギャンブル勝負なんて実に久しぶりだなあ
Aと福本のとき以来か
472作者の都合により名無しです:2005/11/22(火) 20:41:59 ID:KXZoHS2s0
でもえなり的に車は酔うんだろうな
473作者の都合により名無しです:2005/11/22(火) 20:53:39 ID:Frr7MA7A0
福本といえば黒沢ネタは書く人いるのかな?
474作者の都合により名無しです:2005/11/23(水) 02:08:44 ID:KfJnO5Ab0
黒沢ネタやると福本が可愛くなっちまうぜ?
475作者の都合により名無しです:2005/11/23(水) 02:32:09 ID:Xjk0Ivlf0
基本は銀と赤木を足して2で割った感じだけど、時たま黒沢入る。
つまり、つまりツンデレっぽいのはどうかなあと。
476作者の都合により名無しです:2005/11/23(水) 13:09:44 ID:kI33cN9r0
DQN系には強そうだな黒沢。
477作者の都合により名無しです:2005/11/23(水) 14:56:43 ID:QhX3VCQO0
うんこ投げまくりの福本はイヤだなあ…。
478シングルvsタッグ3:2005/11/27(日) 17:54:33 ID:UVVyDVIW0
>463

   フ  ン  ガ  ッ !!

バックワード  クロス  ライドフォール  アッパー  ファング  ツ イ ン カ ム
Backward  Cross  Ridefall  Upper  Fang  “TWINCAM”

福地が“電光石火(ライカ)”を履いた状態で疾走し、腕を組んだ大暮の加速度のついたアッパー気味のアクロバティックな蹴りが、立ち上がった直後の将軍の顔面を派手に跳ね上げた。

「オイオイオイオイッ 一応、聞いとくがな。
 こんな即席のタッグ技が効いてしまうとは・・やはりこれは俺が神クラスの天才だという証明だよな?」
「・・・・いや、それはありえねえっすけど。俺も・・・・・・・・驚いてるっす・・」
大暮も福地も、軽口を叩きあいながらも。
難攻不落の将軍に対して、優勢に闘いを進めている事実に我ながら驚いている状態だった。
先ほどに起死回生のクロスボンバーを決めて以降、一貫して勝負は大暮達のペースで進んでいた。
スーパーヘビー級の将軍に対し、二人は機動力を生かして自在にリング上を飛びまわり、ヒット&アウェイで翻弄し続けた。

「《“指輪”を“ロケット”に変える能力》!」

          ド   ゥ   ン !    ゴ      ッ  !!!

指輪を変化させたロケットで全身を覆い、空中から凄まじい加速をかけての体当たり!
将軍はまたしても、もんどり打ってロープ際に倒れこんだ。

「・・・・・・一方的な展開になるなコレは・・・・」
永井が、ぼそりとつぶやいている。

「このっ・・・・」
将軍が体を起こした瞬間、大暮の鋭い蹴りが将軍のこめかみを直撃した。
479シングルvsタッグ3:2005/11/27(日) 17:55:11 ID:UVVyDVIW0
空中魔術とも呼べる二人の連携攻撃に、将軍はリングから叩き落とされた。
にわかには信じられない光景である。
「よし福地。流れがこっちに来てる。一気にカタつけるぞ!!」
大暮がそう言った瞬間、カカカカカと耳障りな笑い声が響いた。
「わ・・・わたしを場外に叩き落とすとは・・・い・・いい度胸だ・・・」
リングロープに手をかけ、将軍の巨体がゆっくりと起き上がってくる。
「過去、幾多の漫画家を震撼させた、ゆで将軍の恐ろしさ・・・い・・・今から骨の髄まで・・・」

「・・・思い知らせてやる・・・」

冷酷な嘲笑を浮かべていた将軍が、場外に叩き落されて一転、その顔が不動明王を彷彿させるド迫力フェイスに変化した――――っ!

「阿修羅面“怒り”!!」
「・・・ただ顔の面が変わっただけじゃねえ。あの怒り面の醸し出す雰囲気はただならぬものがあるぜ」
「な・・・なんなんすか〜〜っ。この身の毛もよだつ恐ろしい空気は〜〜っ」
今までの優勢が嘘のように、二人は将軍の纏う空気に圧倒されていた。
その威容は、永井でさえ、思わず肉体が緊張を帯びるほどだ。

「そう・・・・一方的な展開になるのはこれからだ。
・・・・キツネならばワシに狩られることもあるだろう・・
・・・・しかしライオンを狩れるワシは、いない」

永井の言葉を裏付けるように、二人は後ずさりする。
しかし、ここはリング。相手を倒さぬ限り、どこにも逃げ場はなかった。

「う・・うおおお――――っ!!」
恐怖を振り払うように、大暮は急加速からの突きを放った。
それを、6本の腕を生やした“怒り面”将軍が迎え撃つ。
480シングルvsタッグ3:2005/11/27(日) 17:56:03 ID:UVVyDVIW0
「阿修羅・蓮華打ち〜〜っ!!」
「チッ!」
将軍の6本の腕が、次々と掌底を繰り出してくる。
正面から放たれた攻撃を、大暮が払うが――――
「ウガッタ〜〜〜ッ!!」
残りの腕がバックハンドブローに変化して、大暮の顔面とわき腹に叩きこまれる。
「ウゴカァ・・!!」
よろめいたところへ、間髪入れず殺人的な拳がダースで襲い掛かった。

バキッ  ドガッ  バシィ  ガシィ

「サラブレッド・フック!!」
ドガッ!
「サラブレッド・アッパー!!」
ガシィ!!
「グホヘ〜〜〜ッ!!」
将軍の怒濤の猛攻の前に、大暮がガックリとダウンした。
「カアア――――ッ!!」
将軍、そのまま軽快にロープをかけのぼり、体重の十分に乗ったニードロップを、ロープ最上段から仕掛けた。
「そうはいかんっす!!」
《“モップ”に“掴(ガチ)”を加える能力》で、福地の手にある伸びたモップ部分が大暮に巻きつき、引き寄せる。
一瞬前まで大暮がいたところに、派手に自爆する将軍。
だが、将軍は笑う。
「これがただの自爆だと思うか?」
その言葉に、福地はハッとした。
先に1対1で戦ったときも、将軍が同様の罠をしかけたことを思い出したからだ。
そう思ったときには、すでに将軍の膝が突き刺さった部分を境に、リングが割れ始めた――――っ!!
481シングルvsタッグ3:2005/11/27(日) 17:56:52 ID:UVVyDVIW0
リング上の亀裂はどんどん大きくなり、ついには完全に真っ二つになってしまう。

「ハハハ、これがわたしの狙いよ!」

そう笑う将軍は、場外に出ていた。
そして、脅威の腕力で、大暮と福地のいる二つに割れたリングをめくりあげた。

「 残 虐 技  キ  ャ  ン  バ  ス ・ プ  レ  ッ  サ  ―――― !!! 」

           グ   ワ  ッ   シ  ァ  !!!! 

めくれあがったキャンバスにドロップキックをぶつけて、キャンバス同士を激突させた――――っ!!
サンドイッチ状態になったキャンバスの隙間から、シャワーのように血が飛び散る。
永井ですら、これほどひどい残虐ファイトは見たことがなかった。

やがて、二つ折りのリングが元に戻り始めた。
二つ折りにされた中には、押しつぶされた大暮と福地の死体が・・・
そう思われていたが、開ききった血まみれのリングの中から、そのとき強烈な光が噴出した。

「こ・・これは――――っ!?」

    ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド  ド ド ド ド ド ド ド  ド 

そこには、倒れふす大暮の傍に、リングを支えながら仁王立ちし、その全身から燃え盛るような光を発している福地の姿があった。
482作者の都合により名無しです:2005/11/27(日) 20:31:02 ID:E0QPn8L30
ゲェーッ福地が精一杯の抵抗をしているぞーっ
気がつけば切れた腕完治(職能力が出せる)してるし抜け目のない奴め。
ところでゆで世界のリングはヨウカンのような構造しているのか
483作者の都合により名無しです:2005/11/27(日) 22:26:18 ID:QXMVW2lN0
相変わらず、いいコンビだw
直接戦闘タイプのグレと、策を弄するタイプの福地は相性抜群だな
これで相手が悪すぎさえしなければ、そうそう負けなさそうなんだが・・・

>>482
元ネタの王位争奪編、vsキン肉ゼブラ戦参照
あそこだけ、マジでヨウカンみたいな割れ方してるw
484作者の都合により名無しです:2005/11/29(火) 02:55:51 ID:+QIMkdBX0
唐突だがボンボンでロックマンX書いてた人ってでてたっけ?
485作者の都合により名無しです:2005/11/29(火) 09:44:49 ID:xC6tzaWr0
岩村さんと岩瀬さんは出てるけど岩本さんは出てないと思うッス
486作者の都合により名無しです:2005/11/29(火) 11:20:28 ID:b+TYHkJQ0
岩村のロックマンって、ロックマンが敵の尻を掘っていく話ッスか?
487作者の都合により名無しです:2005/11/29(火) 11:43:36 ID:xC6tzaWr0
掘らね───よッ!!ww
488作者の都合により名無しです:2005/11/29(火) 11:47:29 ID:xC6tzaWr0
ていうか描いてねぇー
ボンボンで描いてたのはガンダムだ
489作者の都合により名無しです:2005/11/29(火) 12:50:56 ID:ft3J/2Cy0
ロックマン繋がりだと有賀はいる。なんか吸血鬼だけど。
490作者の都合により名無しです:2005/11/29(火) 18:34:30 ID:/rkxDuMv0
岩本さんのXって戦闘中の顔にかなり凄みがあった覚えがある。
読んでた当時は気にもしなかったが、
今思うとあの凄みは子供向けの漫画とは思えんな。
491シングルvsタッグ4:2005/12/04(日) 16:48:39 ID:we2SuVbP0
>481

「ゲェエ――――っ!?ヤツの体が燃えてやがるっ!」
福地のパワーの源、“天界力” ――――この力を、福地は体内の気と共に体の中心、丹田に集中させ、爆発的な力を生み出したのだった。
「オオォオオオオオォォォ!!!」
「!!?」

            ド    ゴ  ッ  !!!

「おわっ!」
リング端に立っていた将軍が、体格で遥かに劣る福地の体当たり一発で、リングの反対側にまで吹っ飛ばされた。
「むん!」
リング外に弾き飛ばされる寸前、ロープをはっしと掴み、一回転して再びリングに着地。転落を免れた。
「ククク・・・下等漫画家にしては、なかなかのパワー。どうやら、私も少しは本気になれそうだぜ」
「オオォオオッ!!!」
「ハァアアアッ!!!」
互いにパワーを解放し、二人は二条の閃光となってリングを中央無尽に駆け巡り、打ち合った。
オーラをまとった拳が互いの体に打ち込まれる。ものすごい打撃音が間断なく響く。
数度、打ち合って、将軍は気づいた――――福地の攻撃が、あまりにも単純で雑であることに。時には、自分から鉄柱に頭をぶつけてしまっていたりもする有様。
「(福地〔こいつ〕・・・意識が飛んでいる!!?
  そうか・・・集めた力に、その器となる肉体が耐えられなかったのか。その影響が精神にも及んでしまったな!!!)」
「ならば、倒すのは簡単だ!!!」
意識を失い、本能だけで動いている福地は、単純に真正面から将軍に飛び掛っていく。
将軍はそれを闘牛士のようにヒラリとかわすと、福地は止まらずにそのままリングロープに激突し、はじき返される。
背中から跳ね返ってきた福地を、将軍が胸で受け止めた。その瞬間、将軍の胸板から伸びたトゲがグサリと福地の背中に突き刺さり、福地は身動きがとれなくなる。

「ダブル・レッグ・スープレックス!!」

将軍は、跳ね返ってきた福地の勢いをそのまま、両足を抱え上げて後方に投げ飛ばした!!
492シングルvsタッグ4:2005/12/04(日) 17:40:31 ID:we2SuVbP0

        ガ   ガ   ァ   ン  !!!

「グワァ!!!」
リングに強烈に叩きつけられた福地が、吐血してダウンする。
ゆで将軍にとっては、他の必殺技にいくための繋ぎ技でしかない“ダブル・レッグ・スープレックス”だが、他の漫画家にとっては充分な必殺技となりうる威力を持っている。
「ぐ・・・うぐぐ・・・ま、まだ終わってねえっす・・・・・・」
キャンバスに突っ伏したまま、福地が呻く。それを聞いた将軍は笑った。
「グフフフ、当然だ。この程度でオネンネされちゃ、張り合いがない!」
福地の首根っこをつかんで引き起こすと、続けざまに固め技に移行する。

「喧嘩(クォーラル)スペシャル!!」

「ウゴアア〜〜〜ッ!!」
福地の肩をまたいだ足で、片足と腰を極め、さらに両手でもう片方の腕をひねり上げる。
全身を万力で絞り上げられるような激痛に、福地が絶叫する。
そのまま極め続ければ、福地のギブアップは時間の問題だった。

「まだ終わっちゃいねえぜ――――っ!」

そのとき、息を吹き返した大暮が、福地を救うべくカットにいった。
エア・トレックを最大まで加速させ、超高速のとび蹴りを放つ。
しかし、将軍は技を極めたまま、ニヤニヤと嘲り笑いを浮かべて、大暮の乱入を待ち構えている。
「グフフフ、まだ理解してないようだな。
 “世界五大恐怖(ファイブ・フィア)”が、戦争・大災・疫病・飢餓
 そして、悪衆・ゆで将軍だということを〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

「コンステレーションふたご座(ジェミナス)!!」

ゆで将軍の顔面に、今度はふたご座の配列の光が瞬き、同時に夜空にふたご座がきらめく。
493シングルvsタッグ4:2005/12/04(日) 18:03:33 ID:we2SuVbP0
「なっ!?」
その瞬間、大暮は驚愕する。
蹴りが当たる直前、ゆで将軍の体が双子のように瓜二つに分身したのだ――――っ!
二人になった将軍の一体(以下、将軍bP)が、大暮の体を真下から蹴り上げ、共に上空に舞い上がる。
一方、福地を締め上げていた方の将軍(以下、将軍bQ)が、技を解き、今度は福地をベアーハッグに抱えあげる。
すると、なんとベアーハッグに抱えられた福地のすぐ真上から、両腕・両足を完全に将軍bPに捕らえられた大暮が降ってきた――――っ!!

「「 テディ――――クラッシャ――――――――!!!! 」」

           ド  ガ  ガ  ア  ン   !!!

大暮と福地の脳天が、上空と地上で激突し、両者の頭から噴水のように流血がほとばしった。
「(ンなっ・・・?バカな・・・・・・っ!!)」
「(ひとりで・・・ツープラトン技を・・・・仕掛けるなんて・・・・・・っ)」
流れる血が尾を引きながら、二人は同時にマットに沈んだ。
誰が見てももう二度と起き上がってくることはないだろう・・・と確信するダメージ。だが・・・・
「こやつ・・・呆れたしぶとさだな」
大暮が・・・立ち上がっていた。
「に・・・兄さん・・・・」
もう動けない福地が弱弱しい声で大暮を呼ぶ。
「立ってるだけだ・・・次の一撃で終わる」
永井は、非情に宣告した。
「わたしの攻撃をあれだけ喰らって、まだ立ち上がるタフネスだけは賞賛しよう」
将軍の左腕が光った。
「硬度10ダイヤモンド・アーム!!この一撃で、この試合に引導を渡してやる!!」
満身創痍の大暮に向かって、左腕を構えた将軍が猛然と走る。
494作者の都合により名無しです:2005/12/04(日) 20:38:43 ID:GISGyHZt0
世界五大恐怖━━━━━━≡゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━━━!!!!!
ひとり大災害ですよこの漫画家スゲー
495作者の都合により名無しです:2005/12/04(日) 20:54:29 ID:LmBHaov30
やはり相手が悪すぎたな…
できれば無事に試合を終えてもらいたいとこだが…
最近のゆでを相手にするのはマスクマンじゃなくても危ないからなあ
496作者の都合により名無しです:2005/12/05(月) 01:05:21 ID:UNQWfB3a0
この絶望的状況を切り抜ける手だてはあるのか、それともこのまま沈むのか、楽しみだ。
497作者の都合により名無しです:2005/12/05(月) 05:59:49 ID:9R4sp5dx0
ふと思ったがゆで将軍に火事場の馬鹿力はあるのか?
498作者の都合により名無しです:2005/12/05(月) 09:29:44 ID:2xUo00zL0
将軍が使うのは業火のクソ力(アタル兄さんが使ったやつね)
499作者の都合により名無しです:2005/12/05(月) 20:42:24 ID:3OYrxFKW0
表)将軍は悪役超人中心だから無いよ
裏)こんな強さに火事場の馬鹿力があったら反則だよ
500作者の都合により名無しです:2005/12/06(火) 00:24:28 ID:HDkOw2t50
将軍が業火使ってたのは荒木、車田コンビと闘ったときだっけ?
ゆでの方は火事場使用経験有り? どうも将軍に比べて活躍の印象が薄いな…
501作者の都合により名無しです:2005/12/06(火) 10:37:34 ID:v9RuIgpk0
業火は発動しただけでオーロラエクスキューション相殺したw
ブタマスクはヨクサル戦と神崎戦でそれぞれクソ力使ってる
こっちも相当に強いのだが、ド迫力の将軍に比べるといかんせん地味だな

あとどうでもいいが、「ゲェー!」とか言って狼狽えても大物感が全く損なわれない将軍は凄いと思うw
502作者の都合により名無しです:2005/12/06(火) 16:38:51 ID:oU6T1ZF20
それがゆでクオリティ
多少冷や汗かいたり隙を見せても、根底に圧倒的強さがあるので、なかなかヘタレにくい
それがゆで流の大物悪役
常人にはあのセンスは真似できんな
503超級危険人物列伝:2005/12/09(金) 03:28:15 ID:Iu3EwF4c0
(前スレ588 15部413他)


異空。見えない学校。

ここでは妖魔王配下・十二使徒が、神のエネルギー<遺産>を我が物にすべく、
遺産エネルギーの中核となるであろう【最後の三種の神器・炎魂】を自分たちで創り上げようとしていた。
いわゆる不死に等しいパワーを持つものの漫画家として心もとない存在・ギャグ作家を、
片っ端から集めて専用の拷問装置に放り込み、神の力に心身共に耐え切れる者を見つけ出す。
そいつが本物の神器持ちならそれで良し。
違っても耐えられるのだったらそいつが本物・・・に等しい。
神の走狗どもとの再戦が近いと見ている彼らの、これは勝利への切り札となるだろう。

もし本当に神の力を奪い取ることさえできれば。
敵側に比べて圧倒的に戦力の少ない、彼らにとって兵力の確保は死活問題であった。

学校の一室の壁にずらり配備された、特殊な冷凍睡眠装置。
使徒たちがあの手この手でかき集めたギャグ作家たちは騙されている事も知らず、
強制的な<悪夢>を見せられ続けている。直接脳波に送り込んでいるのだ。
常人なら数分で廃人になるだろう、恐ろしい夢を見る波動を。
この拷問で作家たちがどう変化の兆候を見せるか、
十二使徒副リーダー麻宮はおどろおどろしいデザインの計器類をチェックしながら、
この一見不毛な実験に成果が出るといいな嬉しいな、とちょっぴり胃を痛めていた。

同じく計器を担当する小林ゆきが定期報告を入れる。

ゆき「囚人ナンバー1・徳弘正也。こいつは相当強いのじゃろう。
 ミズキチ(河下)がお色気で誘惑していなかったら捕縛は不可能であった。
 どうやらエスパーの素質がありおる。現在睡眠レベル高で熟睡させじっくり様子見じゃ。
 囚人ナンバー2・古谷実。こやつワキガが臭いので完全に冷凍してやったわ」

麻宮「む、それでは夢のひとつも見させられないのではないか・・・?」
504超級危険人物列伝:2005/12/09(金) 03:29:15 ID:Iu3EwF4c0
ゆき「あやつに根性とやる気があれば自力で生還できるであろ。
 さて囚人ナンバー3・木多康昭。今ちょうど裁判中の夢を見てうなされておる。
 ナンバー4・うすた京介。なにやらボスケテやらなんかのサナギやら呟いてて不気味じゃ。
 ナンバー5・三上龍哉。なぜか4〜5人増殖してたんで別のカプセルに入れた。
 ナンバー6・新沢基栄。現在腰痛の中タイムマシンで無限ループする夢で苦しんでおる。
 ナンバー7・小栗かずまた。こやつ霊体ではないか・・・即座に灰になりおった」

麻宮「それは残念だ。わざわざ冥界まで足を伸ばしたのだがな」
ゆき「ああ、それが灰になった先から芽が出てちゃっかり生き返りよったでな」
麻宮「ははは」目は笑っていない。
ゆき「そして先程高田が持ち込んだ囚人ナンバー8・漫☆画太郎。こやつも凄まじき生命力よ。
 生首だけでも生きておるものじゃな・・・さすがはギャグ作家と言うべきかのう〜」

ぬるめのおしるこ缶ジュースを回して混ぜつつ飲みながら、
半分呆れたように鼻息を落とす小林。麻宮は彼女に無言無表情で頷いた。
現在名前が判明している囚人たちはこの8名。他には“木村夕日子”始め、
正確な名前がわからないまま装置に放り込まれたギャグ漫画家が何名かいる。

そしてその中に、麻宮が現在最も注目している<<最有力候補>>がいた。

               ***   ***   ***

そいつはたったひとりで矢吹艦Bブロックを壊滅させたのち、
ボロ雑巾のような姿で、何処かを彷徨っている所を偶然使徒のひとりに拾われた。
麻宮が直接睡眠装置の中に放り込もうとした時、この被験者第一号は発見時と同じく、
ベルト部分が壊れた傷々の黒ランドセルを抱きしめブツブツとうめいていた。
ランドセルを手放させようとすると、ものすごく嫌がり暴れ始めてしまい、
装置から脱兎の如く飛び出し、見えない学校の廊下を狂者のように走り回った。
505超級危険人物列伝:2005/12/09(金) 03:30:51 ID:Iu3EwF4c0

やっと落ち着いたと思ったらその部屋は黒板のある教室のひとつで、
ウキウキと嬉しそうな顔で学校の机や椅子やロッカーに頬擦りをし始める。
黒板消しや縦笛も持たせてようやく、被験者は他の者にかなり遅れて睡眠装置に入ってくれる事になった。
被験者は黒い水泳パンツの似合う丸刈りの坊主だった。

               ***   ***   ***

麻宮「“ナンバー0”の名前は判明したか?ゆき」
ゆき「ああ・・・あやつか。あやつについては騎亜どのに映像を見てもらわねばなるまい。これじゃ」

壁に内蔵された睡眠カプセルの中に一台ずつ積まれた監視用カメラ。
モニターのひとつに映されたそれは、確かにナンバー0の映像のはずだが、
そこにいた<もの>は坊主のそれではなく、眠りながら寒さに打ち震えている、
失敗したブルース・リーのような貧相な男であった。男を見て麻宮の表情が一変する。

麻宮「変形型漫画家か。さてもこの男、あの漫画家に関する資料の中に確かにいた。
 ・・・かつて、そうだ、秋田だ。そうかあの男か!
 秋田作家の多くを投入しても殺せず何処かへ封印したという伝説の・・・!動いていたのか!
 面白い。こいつは使えるかもしれない。他の漫画家のエネルギーを抜き出し、
 こいつに注入してみようか。これはよい拾い物だ・・・制御さえ、できればな」
ゆき「・・・騎亜どの、こやつは一体何者なのじゃ?」

麻宮「人間核弾頭・浜岡賢次。秋田の血を具現化した存在だ」
彼の闇色の肌に小さく流れた汗は、この先の波乱を予感していたのだろうか?

彼は拷問脳波のレベルを、全員一段階ずつ強目に上げた。
浜岡の精神が完全に屈して<空っぽ>となり遺産エネルギーの器となるのか。
逆に浜岡の大暴走が始まって取り返しのつかない事態が起こるのか。
今は麻宮にも、学校のどこかにいる妖魔王にすらもわからなかった。

―――魔の城に果たして鬼が出るか、蛇が出るか。 妖魔王陣営はこうして危険すぎるカードを入手した。
506傲りと誇り〜残喘劫掠〜:2005/12/11(日) 06:40:25 ID:euDNHnyg0
>>196
破壊意思の奔流が、巣田の全身を存分に打ちのめしていく。
吹き荒れる殺意に大気の組成そのものが改変され、鉛にでもなったのかと錯覚するような強烈な重圧が肌を刺した。
どれほど鈍感な常人であろうと、この光景に立ち会えば間違いなく精神に変調を来たす。
更にベッドの上に拘束されて、涎を垂らしたまま一日中半笑いで過ごすという愉快な人生がオマケで付いて来てしまう。
(実際にそうなっている自分を想像して、巣田はかなり落ち込んだ。)
それなりに修羅場を切り抜けてきた巣田にしても、凄まじい圧迫感で呼吸が乱れ、合わない歯の音を無理に押さえ付けるので手一杯だった。
いっそのこと発狂し、思考を放棄した方が幸せだったかもしれない。
己の精神の頑強さ故に、皮肉にも最悪の現実から目を逸らすこともできず、嬲り殺しにされるようなものなのだ。
彼女の眼前、数メートルをあけて対峙するのは、滅びを撒き散らす二つの存在。
一方は、神の使徒ゴッドハンド屈指の頭脳にして、数多の雑誌を崩壊させ、漫画家や編集達の夥しい数の慟哭と悲憤を喰らい尽くしてきた雑誌破壊者。
そしてもう一方は、世界に思うさま地獄を生み出すことができ、その気になれば星さえも塵以下の無へと消し去ることができる、最悪極まる滅びの獣。
東京上空数百メートルに位置する空間で、別府に発現した、伝説とまで謳われる恐怖が再びの顕現を果たしていた。
しかし。
一つだけ、たった一つだけ別府の時との違いがあった。
それ故に、巣田は足が竦み、過呼吸ギリギリまで呼気を荒げる程度で済んでいた。
逡巡、そして意を決し面を上げ、魔獣の眼をキッと見据える。
殺意の業火が煌々と輝く、射殺すかのごとき両の炯眼。それが不意にふっと揺らめき、まるで哭いているように見えた。声の無い、静謐な慟哭のようにも見えた。
不羈にして絶大無比なる最強の戦闘生命体は、誰よりも憎む傍らの魔人に頭を垂れ、無様にも跪かされるという酷烈なまでの汚辱に晒されていた。意思と力を掌握され、矜持を踏み躙られていた。
自分に、億に一つ近い活路を導くとすれば、まさにその一点。
怯えを払拭するように巣田は内心で喝を入れる。震え出せばもう止められそうに無い華奢な身体を、渾身の虚勢で拘束する。
互いの視線は拮抗し、見えざる火花を散らして――不意に、魔獣の姿が掻き消えた。
(空間転移!)
思ったときには、巣田は床を蹴っていた。身体を折りたたみ、低空を滑る様に地を駆ける。
寸前まで巣田のいた位置を、赤熱の五爪が走っていった。
爪が触れてもいなかったのに、背中の布には五本線がくっきりと残り、黒い焦げ跡となっていた。
「紅竜!」
振り返りざまに放った火炎が、尾を引いて魔獣に向かう。
大気を焦がして直進し、目標に喰いつくと同時に、周囲に光と熱波をばら撒く爆撃に変わり――
(えっ!?)
何も起こらない。
ただ火球の動きが止まり、空中に停止しているように見えた。
507傲りと誇り〜残喘劫掠〜:2005/12/11(日) 06:41:44 ID:euDNHnyg0
「まるで球遊びだな」
笑いを含んだ声が背後から投げかけられる。高屋である。
反駁するより先に、巣田はその言動の意味するところを察知していた。
半身に構えた魔獣の突き出した掌が火球を受け止め、それ以上の進行を阻んでいたのだ。
(それだけじゃなく……)
宙に留まる炎が急激に縮んでいく。周囲を照らす光が徐々に弱まり、炎の勢いが目に見えて衰えていった。その光景は、紙に水が吸われていく様に良く似ていた。
(吸収している!?)
やがて、掌がゆっくりと閉じられていく。
極限まで力を殺ぎ落とされた炎が握り潰されるようにして消えた。
そのとき既に、巣田は次撃を放っていた。

一閃!
空気の震えよりも速く虚空を走り、瞬き一つの間隙で魔獣に迫る、巣田最速の一撃。
緑竜自身の斬撃と、それに伴う真空切断波の同時攻撃。
火炎などのエネルギー系の攻撃では吸収されると判断し、物理系に切り換えたのだ。
果たして、疾風と化した人竜は魔獣の懐へと入り込む。
須臾の差で反応した右腕が、真空波を突き破って緑竜の胴体に叩き込まれた。
巣田の目が異変を捉える。
打撃を加えられた場合、通常人竜は強力な柔軟性を発揮し、胴体が大きく湾曲することで衝撃が受け流される。
しかし今回、人竜は大きくうねり、次いで激しく震えた後、体内に仕込まれた爆薬が起爆したように宙に四散した。
同時に、魔獣の周囲の床や壁に蜘蛛の巣にも似た緻密な罅が網を張り、細かな瓦礫へと変じて派手に崩れていく。
鼓膜から頭蓋へと走り抜ける強い痛みに頭を押さえ、全身に隈なく伝播する振動を味わいながら、巣田は一連の破壊現象の正体に思い当たった。
「超音波……振動破砕!」
ARMS “グリフォン”の兵装。全身を高出力の震動子(トランジューサー)に変えて超音波を放出し、分子レベルでの破壊を引き起こす。
迂闊に接触すれば、途端に致命傷を叩き込まれる厄介な兵装だった。
「惚けていて良いのかな?」
高屋の囁き。声は聞かず、声を紡ぐ気配だけを読み取って、巣田は身を翻していた。
後ろで束ねた髪が、鞭のように宙で跳ねる。
508傲りと誇り〜残喘劫掠〜:2005/12/11(日) 06:42:58 ID:euDNHnyg0

「――やれ」

ターンチェンジ。脱兎となって駆け出した巣田を見やり、高屋が命じた。
“是”の答えを咆哮で返し、攻撃態勢に魔獣は移る。顔を覆う両腕が十字に重なると、その表面に鳥肌のような粟立ちが生じ、途端に威嚇する山荒か針鼠を想起させる無数の鋭い棘となって伸長し、微細な浮塵子となって飛翔する。
その気配を感じ取っていた巣田は、後ろも見ずに迎撃を行う。
「紅――」
いや。

「――緑竜!」

咄嗟に指示を切り替える。それは殺到する浮塵子たち、その一匹一匹が纏う濃厚な死の臭気を察知したため。だが、決断は皮肉にもコンマの遅れを呼び込み、死神の更なる接近を許すことになった。
巣田までの距離はもはや幾分も無い。
華奢な背に突き刺さる、その紙一重の差で緑竜が走り、針状の浮塵子の群れへと斜線を刻む。
半ばから切断された棘が床に落ちるより速く、緑竜の次撃が更に走る。
刹那、轟音。
耳を聾する唸りと衝撃が、巣田の身体を貫いた。背中に叩きつけられる風の強さに、細身の体が軽く宙を舞う。
「一体、何が――!?」
さらに爆発が連鎖して起こり、巣田の叫びは掻き消えた。
再度襲撃してきた爆鳴と衝撃に吹き飛ばされ、己の内部を走り抜ける骨の軋音を聴きながら、巣田は辛うじて負荷に耐え、痛みを無視して即座に身を起こした。
三半規管に一生分の仕事をさせたのかと思う程の壮絶な眩暈に視界が歪み、ふらつく足をどうにか支える少女の瞳は、ようやく攻撃物体の姿を視認する。
たけなわの炎の宴を縫うように、落日色の炎光を浴びて駆け抜ける、針の姿の死神たち。
(これが……『魔弾タスラム』)
それは一本一本が爆轟を生み出すほどの強力な威力を有する針状のミサイル。
恐るべき魔弾の群れが、三度の飛翔を敢行する。

509傲りと誇り〜残喘劫掠〜:2005/12/11(日) 06:46:14 ID:euDNHnyg0
更なる追撃に、今度は迷い無く巣田は炎を叩き込む。
それと同時、背には翼が広がる。身を包み込むように人竜が展開し、巣田は地を蹴って跳躍する。
一拍遅れて魔弾の群れに火球が激突、爆発に大気が震え、背の翼が発生した衝撃波を捉えて移動する力に変換。
襲い掛かる圧力を、全身を包む人竜で緩和しながら、爆風に乗って出来る限り距離を稼ぐ。
宙を高速で吹き飛びながら、翼を操り軌道を曲げて巣田はどうにか角の一室へと雪崩れ込んだ。
床に這い蹲る姿勢で身体を横たえ、喘鳴に近い呼吸をする。
額に感じるぬるりとした肌触りが血であると悟った時、無視し続けていた痛みが神経を灼く。
肉を裂かれる様な激痛と、骨にゆっくりと釘を打ち付けられるような疼痛の二重奏だった。
(痛い痛い死ぬこれは死ぬ痛い畜生死ねるか見てろよ手前図に乗るなよ畜生絶対只じゃ済まさない)
黒モードの心中で吹き荒れる罵倒の嵐。無理矢理の鼓舞で治癒能力を発動、痛みが緩やかに消えていく。
恐怖と諦念の鎖を引き千切るように立ち上がり、額の血をぬぐう。既に傷口は塞がり、痕は残っていなかった。即座に身構える。
(……ん?)
そこでふと、異変を感じる。
音ではなかった。先の爆撃で耳は馬鹿になっている。
それは足元から伝わってきた微細な振動。その感覚には覚えがあった。先の最高執務室で感じたものと同一だが、重低音を伴っていないだけであった。
(どうやら……本気で皆川さんに私を殺させる心算らしいわね)
意図を推測する。
(隔壁を降ろしてこのセクションを隔離し、かつチェスの様に皆川さんを操り効果的にARMSを使用することで、クラウドゲート崩壊のリスクを最小限にする。
ここは元々特級の危険物や機密の実験体を扱う場所だから、周囲への影響が最小限の位置に作るのは道理。
実験体の暴走やバイオハザードへの対策に防衛機構が完備されているのも当然。
でもまさか、それを逆手にとって丸ごと兵器の性能試験場に使用するなんて――)
それは完全にARMSと皆川を支配していることが大前提。
そして総額が百億を容易く超える精密機器類を全て破棄しても一向に構わないという、底無しの財力をも暗示している。
「とはいえ、私一人の棺桶にしては豪華に過ぎますよ」
「いやいや、妥当だと思うがね。たった一人で私の城を掻き回した君には相応しいだろう。
それに、君の背負う業は余りにも深く、重い。
私が見過ごす筈が無いだろう? 更なる高みへと昇る事が出来る可能性を」
510傲りと誇り〜残喘劫掠〜:2005/12/11(日) 06:46:58 ID:euDNHnyg0
半ば回復してきた聴覚が捉えた、天井からの予期せぬ返答。
しかし声の主がここに留まっているというのは巣田の予想範囲内だった。
あわや矜持を貶められかけた相手をただ殺すという真似は、高屋良樹は絶対にしない。
この手の手合には、最悪の体験をさせて身の程を思い知らせ、絶望の淵で悶死させなければ気が済まないという性情をしているからだ。
「それはそれは、嬉しくて涙が出ます」
全く嬉しくないが、軽口だけは叩いてみせる巣田。泣きそうなのは本音だったが。
くすりという失笑が返る。
どん底に蹴落とされる気配に、少女の心象風景が激変。青空を抹殺した黒雲が、雷を降らせて大地を穿っていく。
「ならば、次の趣向は号泣ものだ。私は一切気にしないから、存分に泣くと良い」
「それは――」
会話はそこで途切れた。巣田が二の句を告げなかった為だ。
高屋の言う“趣向”が、顕著な異変となって目の前に出現していた。
向かいの通路の壁がまず犠牲になり、そこを起点に床・天井が、夜の戦場を思わせる場所へと変わっていく。眼前の風景が、蔦が壁や大地を急速に覆いつくすように侵蝕され、全く別の風景に“書き換え”られていく。
悪夢のような光景は巣田が絶句している間にも進行し、足元を通り過ぎて背後の壁までも完全に制圧する。
光学兵装『バロールの魔眼』が光を制御し、限りなく現実に近似した立体映像を作り出したのだ。
「でも……この風景は……」
今や巣田の周囲は無機質な光沢に濡れる天井や壁ではなく、赤と黒、王蟲の群れと破壊の残照に彩られた修羅の国と化していた。
そこは各人各様の悪意によって地獄に変えられた別府だった。
511傲りと誇り〜残喘劫掠〜:2005/12/11(日) 07:46:36 ID:euDNHnyg0
不意に巣田は目を見張った。
逃げ惑う人々に光の雨が降り注ぎ、頭や腹が打ち貫かれドミノ倒しの様に一斉に頓死していく。
左を見ると、暴風と化した魔獣の爪に藤原カムイが八つ裂きにされていた。
後ろを振り返ると、椎名高志が原形を止めない肉塊と化すまで破壊され、さらに荷電粒子の純白の本流が直撃し雷句誠が消滅、黒い影だけが地に焼き付く。
ゆでたまごと岡村賢二には夥しい数の魔弾が殺到し、一つ残らず突き刺さって生ける剣山と変えて爆砕、血と肉片の飛沫が周囲を濡らした。
高橋留美子に至っては、四肢を引き千切って腹を裂き、そのまま宙に放り上げて死光の豪雨を浴びせ灰にするという、何か怨みでも有るのかと思うほどの凄絶無惨な殺戮をされていた。
山本賢治が捏造した記憶が、『バロールの魔眼』のナノマシンのスクリーンに投影されているのだ。
「言っただろう、実にいい仕事をしてくれたと」
響く笑声。あまりのことに、激しい怒りを隠せず巣田が叫ぶ。
「貴方は最低です! たかが一人に此処までする必要がどこにあるんですか!」
「それは論点が違うな。この記憶は山本が造ったものだ。私を非難するのは筋違いだよ」
「命じたのは貴方でしょうが!」
「原因を紐解くなら、皆川の弱さも責めるべきではないかな? 
 奴の無力――心身の脆弱さが状況を悪化させた一因でもあるだろう。
 魔獣を御しきれぬ弱さは、私が手を加えずとも近いうちにこの光景を生んだだろう。
 哀れ仲間は墓の下、血涙流れる無残な屍。全ては己が無力のなせる業。
 ――よくある事だ、特に弱者にはな」
「手前……!」
可憐な唇が軋り出す、憎悪の毒。自称強者は更に煽る。
「弾劾は私を殺してからすればいい。尤も生き残ることが大前提だが。
 まあ死ぬにしても気に病むことは無い。
 幻影とはいえこれだけ死んでいるんだ。仲間がいると思えば、寂しくは無いだろう?」
薄笑いで紡がれる処刑宣告。

「ではさようなら。精々足掻いて、のたうって死に給え」
512傲りと誇り〜残喘劫掠〜:2005/12/11(日) 08:06:14 ID:euDNHnyg0
戦闘再開。
会話が途切れると同時に、風景が歪んだ。
刹那、まさに死を恵む雨となって、無数の輝線が空間を走る。灼熱の光針が人竜の少女を射抜き、磔刑に処そうと肉迫する。
咄嗟に右に転がり、両手を着いて四足獣の姿勢になったところで二条の光が少女を掠め、肩の肉が三ミリ焼けて炭化した。
更にそのまま横転し、身を起こした途端、巣田の瞼に火花が散った。
激突の痛みに反射的に頭を押さえて屈むと、寸前まで頭のあった位置に光が突き刺さり、
そこに有る金属棚を貫通した。
魔眼の立体映像のために遠近感が麻痺し、挙句障害物の位置が判別できなくなっていたのだ。棚の出っ張りに盛大に頭をぶつけてしまった。
涙目で状況の悪化を再認識する。自分は視界を潰された。分の悪さもここに極まる。
さらなる四条の光線を飛び越えるように前転して回避するも、追加の三条が脛と脹脛に三本の焦げ痕を残す。
倒れ込んだ場所では、身体の真下に光が収束、地から天に駆け上がる流星となって巣田を貫く。
必死に身体を捩るも、髪一房に鎖骨・二の腕・脇腹・大腿を掠め、或いは貫通し、血すら流れない黒点を穿つ。
更に前転し顔を上げると、魔獣の巨拳が迫っていた。
巣田は姿勢を地に伏すほど低くし、拳の方向へと床を蹴った。拳と床の小さな間隙を縫う様に、細身の身体が駆け抜ける。
だが。
(風も威圧も感じない――――ホログラフ!)
気付いても遅く、既に下段からの切り上げが放たれていた。
赤と黒の捏造された光の中で、鈍く輝く現実の刃が巣田を捉えた。単分子の刃の銀光が駆け抜ける!
「ぐっ!」
地を蹴って巣田が飛び退くより、僅かに――数十ミリ秒速く、銀刃が振り抜かれていた。
腹から何かが漏れ出すような感触を覚えて、巣田は死を覚悟する。
恐る恐る見やると、
「ッ!!」
臓腑が腹圧に押されて、桃色の顔を覗かせていた。遅れて、大腿部から鮮血がしぶく。
咄嗟に零れた内臓を押さえて、巣田は膝を付いた。
単分子刃は大腿から鼠蹊部を経て腹部を正中線上まで駆け抜けていた
明らかな即死コースだった斬撃を、胴が両断されない程度にまで緩和したのは、巣田よりも迅速に反応しその体勢を崩した人竜の手柄だった。
鮮血の海に蹲り、臓腑の熱を右の掌に感じながら、巣田は涙目で殺意を吐き出す。
「絶対に……殺す」
しかし、第二撃は鼻先に迫っていて――

513作者の都合により名無しです:2005/12/11(日) 13:14:09 ID:PVjfLYbM0
ぎゃあモツがー巣田さんのモツがー
ひでえよ高屋さま便利だねバロールの魔眼
514作者の都合により名無しです:2005/12/11(日) 21:39:31 ID:MADWSJp70
ARMSは超異能力のオンパレードだから
大暴れすると派手だね
515作者の都合により名無しです:2005/12/11(日) 22:03:19 ID:apYdwZCs0
いつも思うんだが、筆力とあいまって結構グロイな
まあそこが好きなんだが
516作者の都合により名無しです:2005/12/11(日) 22:49:08 ID:M1BkvbZq0
巣田ってこんなバトルキャラだっけ?と最初こそ思っていたが
もはやそんなんどうでもいいくらいだな
517作者の都合により名無しです:2005/12/13(火) 00:58:44 ID:/dPC7stv0
しかし、しかし、APC時代からのファンとしては
いーかげんギャグのタイミングではないかと!

そー主張したいわけであります。

# 一方で、ちみもりお的展開を期待したりして。
518作者の都合により名無しです:2005/12/13(火) 16:16:52 ID:77OAJBBa0
ツララかw
519ウォークライ・ウォーゲーム:2005/12/16(金) 16:13:09 ID:WTZKQ6380
>>424

克 『双方の総大将が今、コロッセオ中央に向かいます。果たして試合方法は何に決まるのかー!!』

さていよいよ準決勝第二試合。
バンチ大将原と裏御伽代表本宮が、コロッセオの中心部に置かれた正方形の武闘場に昇る。
固唾を飲んで見守る選手や観客たち。神聖な闘技場は奇妙な静けさに包まれる。
無言で向き合い、互いの瞳を見つめる大将二人。双方濁りも迷いも見えない澄んだ色であった。
彼らの視線がぶつかる位置に、第二試合の審判が立ち、高らかに宣言する。
??「これより準決勝第二試合を行うっ!審判は私こと安永航一郎っ!!」
えーという声がバンチ・裏御伽両陣営から漏れ出た。
矢吹さんサッカー観れたしあんど消えたしで、正直こっちの試合に力入れてないと見た。

安永「そう誉めるな。わしはまだ風邪も二日酔いも治っておらんので大人しゅうしとるわい」
ブツクサ言いながら安永、なぜかアンケート用紙とボールペンを持っている。
両チームの大将に6セットずつ手渡した。思わず眉をしかめる2人。
安永「一人一枚これの質問に答えい。試合形式の発表はそれからじゃい」


第二試合の運営担当に、23部で矢吹のもとに舞い戻ったほったゆみが任命されている。
ほった「失踪の罪がこれだけで済むのなら安いものですね。
 矢吹・・・彼も甘くなったものですね。自身に絶対の自信を持ったのでしょう。
 今しばらく場の流れに手を任せましょうか。
 それに私が任ぜられるという事は、今回もCブロックと同じく・・・」
520ウォークライ・ウォーゲーム:2005/12/16(金) 16:14:00 ID:WTZKQ6380
ほったに連れて来られた佐倉と、中の人が壊れている鈴木信也は、
身分の怪しさからかほったと引き離されコロッセオの一室に軟禁されている。
テレビがあり出前も取れるが佐倉のプレッシャーは重くなる一方だ。
佐倉「ううっ、なんでこんな事に・・・。私これからどうなるんだろう」
頭を抱え椅子にうなだれる佐倉の隣で、佐倉の竜に憑かれた鈴木が静かにモニターを見つめていた。
数分後。

克 『(段取り悪いなあ)お待たせしました!いよいよ試合形式の発表です』
テレビ実況の声と同時に再び舞台中央に集合する大将と審判。
安永「はっはっは、人数が偶数で半端っちゅー事で、
 今回もスペシャルルールを導入させていただこう!見よ!」
コロッセオに特設された、宙に浮かぶ四枚の巨大スクリーンパネルに、
東西南北各方向同時に安永の手と、手に持つ小さな塊が大きく映し出された。それは───3個のダイス。
安永「当大会特別版【ウォーゲーム】を始めさせていただこうっ!!」
どよどよ・・・と会場が不気味な声に包まれた。

ウォーゲーム。それは先日まで矢吹の部下だった安西信行が発案した“戦争ごっこ”。
2つの勢力が争う時、民間人などを巻き込まぬために、
その勢力の代表者たちで、一定のルールに則った<試合>を行うというもの。
試合は公開され、代表者たちの勝敗がそのまま勢力争いの勝敗とされる代物だ。
・・・だが肝心の発案者安西は、この企画を自作品でちっとも生かせない駄目漫画家であると噂される。
現在紆余曲折を経て隣のサッカースタジアム跡に戦士として立つ男の、黒歴史のひとつであった。
閑話休題。
521ウォークライ・ウォーゲーム:2005/12/16(金) 16:14:43 ID:WTZKQ6380
安永「ウォーゲームはおおさっばに言えば試合人数や舞台等をこのサイコロで決定し、
 互いに駒を潰し合うバトルを何セットも行うもの。先に大将が敗北したチームが負けである!
 セットを落としたチームで、同じセット内にて負け試合だった者は、
 次のセットには出られぬ。なお勝敗数が同点のバヤイは両チームとも選手は次に出られるぞ。
 1セットは6面ダイスで試合数1〜6回を決定する。1対1で武器魔法自由。敗北条件はノックアウト、
 またはギブアップ宣言。細部は審判のワシに従うがよい。セットごとにダイスを振って毎回変えるぞ。
 同時に多面サイコロのフィールドダイスも振り、舞台(ステージ)を氷上や火山口等の特殊地形に変えてもらおう。
 ──ちなみに1セット内で闘う総人数は自由。ひとりで複数試合こなす事も可能じゃ。ま、勝てればよいがな。
 例を挙げると、もし大将を出さずに5vs5バトルをやって、一方のチームが全員負けた場合、
 そのチームは次のセットぜーんぶ残り1名すなわち大将が闘うの事になる!恐ろしいのう〜。
 セット間に5分間治療タイム。で、大将が負けた時点でウォーゲームは終了・・・じゃが、
 大将が負けぬ限り延々とこの遊戯は続くのだっ!この大会の特別ルールでな。
 どちらのチームが先に戦力を潰しきってくたばるか・・・なにしろどちらもたったの6名。
 カッスカスになるまで無限の戦場で闘い続けるがよいわぁぁ!!」
ここまで息継ぎせずに一気に原稿を読む安永だった。

にわの「先生!セリフが長くて理解できないので三行以内にまとめてください!!」
澤井「というかさっきのアンケートは何だったのよオヤジー!!」
遠慮の無い連中の挙手や野次が飛ぶ。

安永「じゃかあしいわ!もうちょっと話を聞いておれ!!
 さっきのアンケは当大会オリジナルルール『特殊試合ダイス(多面体)』に使うものじゃ。
 ガチバトルばかりじゃ本っ当にカスカスになっちまうからの。あくまでゲーム、遊びも入れておいた。
 用紙にはいくつか設問が書いてあったな、例えば趣味や得意なスポーツ・ゲーム等を書く欄。
 好きなもの嫌いなもの、色々参考にしておいたからの。全員匿名だからプライバシーも安心じゃ。
 んでこのダイスは、毎試合の最初に振る。使うかどうかは相手選手と相談で決めい。
 どーあがいても戦力に差がある場合はダイスに勝機を賭けるのもよかろうて。
 だがどんな外れくじを引いても書いた奴を恨まぬよーに。タッグ戦なんてものや、
 多数参加の団体戦、ワシが書いたすんごいのも入っておるので楽しみにな!」
522ウォークライ・ウォーゲーム:2005/12/16(金) 16:16:18 ID:WTZKQ6380
これまた一息に説明を入れた。聞き手にとってはとても迷惑である。
話の要点をまとめると、この【ウォーゲーム特別版】は、

 <1>1セット内の試合回数(1〜6回)と地形フィールドを、審判安永がダイスを振って決定
 <2>試合に出る人間が舞台に上がる(基本は一対一バトル×出た目の回数闘う。ひとり何試合出てもいい)
 <3>ガチンコ勝負を避けたい人は、対戦相手と相談の上特殊試合ダイスを振る。何が出ても恨まない
 <4>各ルールに則り、規定回数分試合する→多く勝った方がセット奪取
 <5>セットを落としたチームで、試合に負けた人は次のセットに出られない
 <6><1>〜<5>を繰り返す。チームの大将が試合に出て負けた時点でウォーゲーム終了

といったルールであるらしい。
フィールドの種類には、自然地形の他にも隠しネタがあると思われる。

ほった「(やはり・・・私の空間転移の能力が必要なのですね。
 今回もCブロック決勝のように選手を僻地に飛ばすのでしょうか。
 それとも逆にダイスで決まるごとに、特殊な地形を舞台上に展開させるのでしょうか。
 あとで決めなければいけませんね・・・果たしてどちらが私的に楽でしょう)」



安永「まあこんなところじゃろ。何か質問があれば受け付けるぞ。
 なければ今からワシがダイスを振る。改定が必要な部分はあるかおぬしら?」
黄金色のジャージに再び身を包んだ安永は、両手に載せたダイスを両大将にぐいと見せつけた。
523作者の都合により名無しです:2005/12/16(金) 18:25:27 ID:Obq453Ad0
観戦モード♪
524作者の都合により名無しです:2005/12/16(金) 21:08:48 ID:rneecJYs0
地形変化は持ってくる型(B決勝)とお出かけ型(C決勝)とどっちがいいかな
525作者の都合により名無しです:2005/12/16(金) 23:14:51 ID:VUU4vEHk0
ルール説明乙
七面倒くさい説明シーンやってもらったから、これでやっと試合書けるよw
ところでこれって、タッグの場合は1試合としてカウントされるの?
526作者の都合により名無しです:2005/12/16(金) 23:17:52 ID:rneecJYs0
特殊ルールだから一試合なんじゃないかな
527作者の都合により名無しです:2005/12/16(金) 23:49:15 ID:VUU4vEHk0
なるほど
あとついでにもうひとつ
1セット内なら、負けた奴が続けて試合する事は可能?
528作者の都合により名無しです:2005/12/17(土) 00:10:34 ID:sm02VJkT0
原作でその設定があった気がしますが全く生かされてないのでわかりません
なので大会ルールで連続試合可能OKでいいかと。
嫌なステージに当たったら一人犠牲にしてやり過ごすこともできるし(逃亡せなんだら)
529作者の都合により名無しです:2005/12/17(土) 00:50:42 ID:D9U05T650
いや、敗者の連続試合を許可するとゲームルールが破綻するからダメだろ。

一試合目に大将以外のメンバーを出し、試合開始直後にギブアップ宣言して
敗北、次試合も同じく敗北、を繰り返せば絶対に決着がつかないことになるぞ?
530作者の都合により名無しです:2005/12/17(土) 00:57:04 ID:sm02VJkT0
なんて恐ろしい・・・!!というか安西絶対そこまで設定練ってない
じゃあ勝者のみ何度も出られるってのなら大丈夫?
531作者の都合により名無しです:2005/12/17(土) 01:03:13 ID:82QH6UCP0
安西の尻拭いだなw
532作者の都合により名無しです:2005/12/17(土) 01:21:49 ID:D9U05T650
問題はリスクなしで試合結果を操作できることにある。
ギブアップによる負けを認めず、KO必須にすれば良いのかも。

・・・嘘KOで敗北すると、勢い余った相手に殺されかねないし。
533作者の都合により名無しです:2005/12/17(土) 01:44:59 ID:sm02VJkT0
ギブ負けがないってのは考えた事がなかったなあ。色々詰めねばね

・・・原作はギブした相手を食い殺したり火口に投げ入れたりしちゃうのにね。主人公側が。
534作者の都合により名無しです:2005/12/17(土) 03:33:19 ID:KMa1gjMf0
>>529
ギブアップを繰り返したとしても、
「<5>セットを落としたチームで、試合に負けた人は次のセットに出られない」
があるわけだから1セットで必ず最低一人ずつはリタイヤしていくんじゃないか?
535作者の都合により名無しです:2005/12/17(土) 04:31:14 ID:r+BlBe1z0
ん?
出られないのは次セット、つまり次々セットでは復帰するんじゃ?
536作者の都合により名無しです:2005/12/17(土) 09:49:58 ID:JEFASlP70
>>534
「次のセットから」ではなく「次のセットに」なので次々回は出られます。
ギブ云々は原作では特に不備はなかったよ。敵側の駒が主役側の何倍もあり、
どいつも好戦的だから普通に闘ってくれたし。今回は、
「審判が戦闘不能と判断したら負け(KO/TKO)」でいいんじゃないかな?
ワゲームについてはこの辺りを参考に↓
http://etc4.2ch.net/test/read.cgi/wcomic/1134664789/13,16
537作者の都合により名無しです:2005/12/18(日) 01:02:21 ID:uTYwgTAC0
安永「では少々ルールを改定させるぞ!まだ何かあるか?なければ好きに試合を始めい」
ほった「皆さん、地形はC決勝型の僻地ワープ式にしようかと思うのですが、よろしいでしょうか?」


 【矢吹トーナメント特別版<ウォーゲーム>ルール一覧(改案)】

 <1>1セット内の試合回数(1〜6回)と地形フィールドを、審判安永がダイスを振って決定
 <2>試合に出る人間がs両陣営ひとりずつ舞台に上がる。基本は一対一バトル×出た目の回数闘う
 <3>ガチンコ勝負を避けたい人は、対戦相手と相談の上特殊試合ダイスを振る。
     何が出ても恨まない。タッグ戦や団体戦が出た場合も一試合一勝で計算する
 <4>各ルールに則り、規定回数分試合する。選手は同セット内で何度も試合に出られるが、
     一度敗北した選手は出られない。審判がKO/TKOの裁定を出して勝敗をつける。
     多く勝った方がセット奪取。両チームの勝ち数が同点の場合はドロー
 <5>セットを落としたチームで、4で試合に負けた人は次のセットには出られない。ドローはペナルティなし
 <6>1〜5を繰り返す。手駒が尽き、チームの大将が試合に出て負けた時点でウォーゲーム終了
538作者の都合により名無しです:2005/12/18(日) 01:03:03 ID:uTYwgTAC0
>>522の続きス
539悪魔対悪魔:2005/12/18(日) 18:43:11 ID:RMYLcygw0
>>436
矢吹軍の一般兵をあらかた片付け、みさきは再び梅澤の方に目を向けた。
そこで、みさきは瞠目する。
「はっ、はっ、はっ…」
「ハー……ハー……ハー……」
さっきまで、一方的な展開だった西森との勝負が、いつの間にか拮抗したものになっていた。
西森は頭から血を流しながら、その美しい顔に悪鬼のような凄絶な笑みを張り付かせていて。
方や梅澤も、顔中が打撲傷で腫れ上がっており、呼吸も荒い。
(なっ…あの梅澤さんと“タメ線”はってる…!?)
一体、自分が目を離したわずかな間に、何があったのか―みさきは困惑していた。

「へっへっ……ちったあ楽しくなってきたなあ?」
「強がりはよせヨ、ニーちゃん?ワカンだろ、流れ変わってんのが」
西森が言い終わる前に、梅澤のコブシが飛んだ。
左のフックを、西森が外側に身体を流してかわす。
(避け方がデカい……梅澤さんの右が入る!)
横で見ていたみさきが、そう確信する。しかし、その予想は次の瞬間、大きく裏切られた。
梅澤が右を出した刹那、西森の頭が大きく沈み、コブシが空を切ったのだ。
さらに左を繰り出すが、そのときすでに西森の姿は完全に梅澤の眼前から消失していた。
(バカな!!)
さらに次の刹那、がら空きの背中に衝撃。西森の肘が、めりこんでいた。
「このガキャ――!」
梅澤が怒涛のラッシュを仕掛けるが、西森は全ての攻撃を舞うような動きでかわしていく。

(あの女―梅澤さんの攻撃を全て読んでいるのか!?)
ただの我流の喧嘩殺法だとばかり思っていた西森が、実は格闘漫画家も驚愕のスキルを身につけていると知り、みさきは驚愕するしかなかった。
540悪魔対悪魔:2005/12/18(日) 18:43:57 ID:RMYLcygw0
梅澤が大振りのコブシを打つ。
西森は、入り身と同時にさばき、掌底で顎を打ち上げた。
(…な…)
脳を揺らされ、膝が落ちた、そのときには、西森は既に跳躍から右足を振りかぶっていた。
大砲のような蹴りが、梅澤の左半分の顔面をつぶし、吹っ飛ばした。
飛ばされながら、梅澤は見た。
西森の形相が一変し、攻撃の威力までが変わっていることを―。
華奢な左手が、梅澤の首にめりこんだ。
「…う…ぐあ…っ」
めきめきめきめきめきめきめきめき……
天使の姿をした悪魔の爪が、ロックな悪魔の喉を握りつぶさんばかりに力をこめる。
「テメーは俺たちにとって危険だ…肉片ひとつ残さずブッ殺す…!!」
次の瞬間、耳を覆いたくなるような壮絶な大合唱が始まった。
肉が千切れ、骨が砕けるほどの打撃が、梅澤の顔面ではじけつづける。
禍禍しい笑みをたたえ、返り血の化粧をまとわりつかせる西森の顔は、淫靡とさえ言えるほど凶悪だった。
「う…梅澤さん!!」
自分の頭の類まれなる劣勢に、みさきは蒼白になって叫んだ。
“タイマン”だということも忘れ、みさきは思わず加勢しようと駆け出すが―他ならぬ梅澤に止められた。
「…ま…まてよ……へへっ……やっと…面白くなってきたんじゃねーか!!」
吼えながら振り払うように腕をなぎ払うと、西森は俊敏に後ろにとび、間合いをあけた。
「けっけけけ……楽しくなってきたじゃねーか……“怨念”の悪魔核!!」
その瞬間、とてつもない圧力が一気に増長し、梅澤を中心に爆風と砂塵を巻き上げた。
そして―竜巻が終息したとき、そこに立っていたのは。
下半身は巨大な蛇、装甲のような外殻、五列の鋏のような爪、禍禍しい六枚の刃のような翼、そして男性器に酷似した醜悪にして凶悪な頭部を持った―それはまさに、正真正銘の化物だった。
「フフフフ…俺様こそは“最強”なり!!」
化物が、産声のような咆哮をあげた刹那。

西森の身体が切り裂かれ、おびただしい血が一気に噴出していた。
541作者の都合により名無しです:2005/12/18(日) 22:57:22 ID:3YXHfY/20
よく言われることだがキャラも口調も被ってしょうがねーなw


まあパクったのは梅さんのほ(ry
542作者の都合により名無しです:2005/12/18(日) 23:20:55 ID:lFyQ7SpN0
そう考えると、西森をめぐ仕様にしたのは正解だったかもな

しかし、サンデー側はどっちもこっちも、まるで光明が見えん逆境ぶりだな
543作者の都合により名無しです:2005/12/19(月) 04:24:34 ID:Xdv6+pks0
>>542
だが、それがおもしろい!
544冷たい方程式:2005/12/19(月) 18:25:19 ID:keyU8UOa0
>>469
「………強制、なんだろうな」
やる気無さそうに、それでも向かいに座り直す城平に、福本は喉の奥で楽しそうに笑う。
「ククク・・・・ そう言うな タダってのも気が引けるだろう?」
「別に、そんなことはないがね」
城平は頭を掻く。
「――――で、種目は? そもそもこっちは何を賭ければいい?」
面倒臭い、早いこと済ませたいという気持ちを、隠そうともしていない。
「誘ったのはこちらだ 種目は兄さんが決めてくれて構わんよ
 ・・・・そっちが負けた時は・・・・そうだな・・・・『貸し』・・・・ひとつでいい
 対等の賭け事というより まあ まずはの“試し”だしな」
失礼といえば失礼極まる台詞。だが、城平は気を悪くした風もない。どう虚勢を張っても、『格』は違うと、それは認めるが故。
そして二十秒ほどの、間。
のち、城平は懐に手を突っ込む。
周囲の『黒服』たちが僅かに身構える。
「――――ここに、こういうものがある」
取り出されたのは、二包みの粉薬。
怪訝そうな周囲を意にも介さず。手近な者に声をかけ、ガラスコップに水を満たしたものを二つ、用意させ
「ルールは簡単だ」
それぞれに一つずつを入れると、完全に溶けるまでマドラーで混ぜる。
「一方は砂糖。もう一方は、致死量のざっと二倍のストリキニーネ。
 ……ストリキニーネは知っているな? 摂取すると呼吸麻痺・循環傷害を引き起こす劇薬。
 舌の鋭敏な者は40万倍の希釈液でも苦みを感じるらしい。
 ――――こいつを『せーの』で飲み干し、毒の入った方を飲んだら負け、というのはどうだ?」

     ざわ・・             ざわ・・
              ざわ・・

城平の提案に、むしろ周囲がざわめきたつ。
透き通った無表情でコップを見つめていた福本はといえば、やがて顔を上げると、ニヤリと口の端を曲げ
「面白い」
545冷たい方程式:2005/12/19(月) 18:26:12 ID:keyU8UOa0
事からすればありえぬほどあっさりと、それを了承。
「・・・・唐突に訪れる“理不尽な死”・・・・これぞ“ギャンブル”だ なぁ? 兄さん」
それどころかそんなことまで言い、嬉しそうに同意を求める。
「………俺は至極まっとうに平穏が好きだからね。そういうのは分からないよ」
袖にされて
「そうかい?」
それでも、笑う。
「………どうぞ。当たり前だが、先に選ぶのはあんただ」
「・・・・まさか 両方毒 なんてんじゃあ無いよな?」
福本の疑いに、城平の片眉があがる。
「まさか。なんならあんたが選んだ後、残った方をこちらが先に飲もうか」
大げさな身振りに、福本が再び笑う。

そして、その表情もすぐに消えた。
目をコップに落とす。
運勢のゆらぎ。
不可視の評価軸。
神経を研ぎ澄ます、肌に刺さるような尖角の沈黙。
『鬼謀』と呼ばれた男の本領が、その闇の片鱗を、じわりと洩らしはじめる――――




一分……二分……

寸分たりとも動かなくなった福本につられ、静の結界が張られたように、辺りにはただ沈黙だけがわだかまる。
唾を飲む音すらはばかられるその中で。しばらくはただ待ち、しかしやがて居心地悪そうに襟を緩めた城平は、横顔で問うた。
「……そうしてじっと見ていれば、どっちが毒か、分かるもんなのか?」
「そうさ」
返ってきた即答は、まるで論理にそぐわねど、笑い飛ばすにはあまりにも真剣。
546冷たい方程式:2005/12/19(月) 18:26:53 ID:keyU8UOa0
「それくらいの感覚がないようでは・・・・とても生き残れなかった・・・・この漫画界・・・・」
ふい、と片方のグラスが掴み取られた。
「こちらだ」

ベットは、この時点で終了。
考えてみればおそろしくシンプルな『ゲーム』。
いや、『ゲーム』とすら呼べない。これでは、ただの運否天賦ではないか。
「お おやめください・・・・!」
黒服の一人が、今更ながら歩み出る。
「馬鹿げています・・・・! こんな・・・・何の意味も無い・・・・!
 “勝負”なら“ギャンブル”なら 他にも種目はいくらでもあるではありませんか・・・・!」
特に、福本側には殆ど『リターン』がなく『リスク』しかないのだ。
主のこうした酔狂を好む性質は重々承知しているが、いくらなんでもこれは―――

「・・・・狂気の沙汰ほど面白い・・・・!」

白い歯がズラリと平面に並んだ、とてつもなくイイ笑顔。
「・・・・・・・・」
もはや止められぬということを悟り。
奥歯を噛み締める黒服が、一礼して、下がる。


「では、お先に……」
黒服からすれば、こちらも狂っているとしか思えぬ城平京が、残された方の杯を、さりげなく持ち上げた。
淀みなく近付け、唇の前で傾けようとした、そこで

「・・・・おっと 待った」

制止の声。
福本の、顔が。
547冷たい方程式:2005/12/19(月) 18:27:35 ID:keyU8UOa0
狂熱に浮かされていたその表情が、見れば、唐突に、剃刀の鋭さを取り戻していた。
「・・・・フフ・・・・たいしたもんだよ兄さん その外見で頭は切れるし 肝も据わってる 
 相手の本質をたったこれだけの『付き合い』で見抜き それを瞬時に“ギャンブル”に転用するなんざ
 そこいらのぺーぺー漫画家にゃあできない芸当だ・・・・」
「……俺は、一応漫画原作者なんだがな」
「ああ ・・・・だが相手が悪かったな・・・・」
城平が、テーブルに水を戻すのを確認し、福本はうっそりと笑う。
「俺はたしかに 今言ったとおりの人間だ 
 馬鹿げた“ギャンブル”に命を無駄遣いすることは望むところだし
 実際に今も 楽しくって仕方がない ―――――だが」
錐のような視線が、城平を射抜く。
「あんたはどうかな・・・・?
 ・・・・俺と違って いかにもまともそうな 自分でも言うように 命懸けの『酔狂』になんざ興味のないあんたが
 5割の確率で自分も即死するような『勝負』を持ち出す・・・・・・・・おかしいなあ・・・・」
一度、言葉を切る。
「・・・・俺の側からなら おかしくない
 自分好みの勝負に 質を盾にして無理矢理付き合わせ
 相手の竦んだ足元を嘲笑い 自らは恐じぬ心をして悠々と勝利する ・・・・よくやるパターンだ」
クク、と俯いて笑い。それからまた顔をあげる。
「・・・・だが 今回の勝負の内容を決めたのは 『まとも』なあんたの方
 さっき部下が言ったとおり 本来 命を賭ける必要なんざ全く存在しないこの勝負で 何故そんな命懸けの“ギャンブル”を持ち出すか・・・・?

 ・・・・こう考えた方が自然だな この勝負 兄 さ ん が 100% 勝 つ 仕 掛 け が あ る 」

そう、これが、ただの運否天賦のゲームだなどと、勝負というものの本質を知らぬ、あまりに愚直な判断だ。
すこし慌てたように、城平が反論する。
548冷たい方程式:2005/12/19(月) 18:28:34 ID:keyU8UOa0
「先にコップを選んだのはあんただぜ。そんな仕掛けの入る余地がどこにある?」
 十分あるさ 兄さんは“先に水を飲もうとした” それで兄さんが死ななければ
 消去法で 俺のコップには間違いなく毒が入っていることになる
 勝負の帰趨がたゆたっていたさっきまでならともかく 毒が入っていると分かっている水を飲む馬鹿はいない
 兄さんは先に水を飲みさえすれば それで勝ち・・・・
 俺は入れられてもいない毒薬に怯え 負けを認めるしかない

 そう 毒 な ん ざ 最 初 か ら 存 在 し な い 水に入れた粉は 両 方 と も 砂 糖 だ 」

言うが早いか、一気に自分の杯を持ち上げ中身を飲み干そうとする福本―――

  し か し

「!?」

瞬間、コップの底を机に叩きつけ、福本は口を強く覆った。

( 馬鹿な!? この舌をえぐるような苦み ――― ス ト リ キ ニ ー ネ !?)

「―――福本様!?」
黒服の一人が、血相を変えて駆け寄ってゆく。
「……さすがは福本伸行。強気なことを言っていても、注意深くちょっぴりしか口をつけないな。致死量にはまるで足りていない」
城平は笑みを浮かべ、自分の持つ方のコップを、一気に飲み干して見せる。
「―――これで勝負は俺の勝ち。資料はありがたく頂いていきますよ」
台の書類入れを取り、立ち上がる城平を、ただ、見上げる福本。

(・・・・『本当』に“命を賭けていた”だと・・・・!? 馬鹿な・・・・!?)

背を向け、速やかに店の入り口に向かう、城平の思考。
549冷たい方程式:2005/12/19(月) 18:36:10 ID:keyU8UOa0
(……あんたの推理は当たっていたんだ。どっちのコップにも、毒は入っていない。
 ただ、コップに入れたのは両方砂糖じゃなく、猛烈に苦い風邪薬だった。
 毒は『ストリキニーネだ』と明言してある。
 ちょっとでも苦みを感じたら、それ以上飲めるはずがない。
 よっぽど自分を――――『自分の選択』を信じていなければ、な)

全くの無表情であれだけ苦い水を飲み干すのには、かなりの苦労をさせられたが。

(………さて、と。こいつをどう今後の策に利用するか、だな)
封筒を見つめながら、思考を切り替える。
(チームがサッカーに負けた場合。勝った場合。サンデーの連中をどうするか………『追撃者』を利用する手もある、か。
 ガンガンのメンバーだけで乗り込む場合でも、自分一人での隠密行動から全軍総がかりまでパターンは)

    ざ わ っ ・ ・ !!

と、背後で、驚愕の色濃いざわめき。
ドアノブに手をかけかけていた城平は、猛烈に嫌な予感とともに、それでも確認しないよりはマシであろうと、後ろを振り返る。

そこには、福本が、もうひとつの『苦いだけの水』を、一気に飲み干す光景が。

嘆息して、向き直る。

「……もう少し、持つと思ったんだがな………」

―――そう。こんな単純な心理トリックに、この漫画界最強のギャンブラーが、いつまでも騙されていてくれるわけも無いのだ。
心理トリックとしては、
優れているが故の『気付き』と、優劣明らか故の『驕り』が、ほんの一瞬、福本自身の目を眩ませたにすぎぬ。
ちょっとでも頭を冷やされればそれで終わりだし、何より類似のものが、二度と使える手ではない。
半即席にしては最高の一手だったという自負はあるが、逆を言えばその程度でしかない――――
550冷たい方程式:2005/12/19(月) 18:37:24 ID:keyU8UOa0
「ククク・・・・苦いな・・・・よくこんなものを 涼しい顔して飲めたもんだ」

福本が、空のコップを、逆さに振って見せつける。
いまだトリックに気付いていない、顔色を失った『黒服』に、コップを投げてネタ披露。

「両方『苦いだけのただの水』だ」

コップを受け取り。
一秒、二秒。
それからハッと立ち返った黒服は、目線の合図を送り、周囲の同僚達をいっせいに動かす。
「…………」
無言で迎え、考える城平。
この場から、単に逃げ出すだけなら、そう難しくは無い。
福本が喧嘩に弱いとは思わないが、それでもいわゆる『特殊能力』を持たないというのは、有名な話だからだ。
飛んで逃げれば、ひとまずは窮地を脱することができようし。
軽火器程度なら、簡単にあしらえる自信もある。
だが、今現在ただでさえ敵の多いガンガンチームに、これ以上の、それもこれほどまでに厄介な敵を増やすことは、
なんとしてでも避けねばならないことだとも思えた。
図式を極限まで単純化すれば、ガンガンチームにとって、城平京という構成員が失われるマイナスと、福本伸行という敵が増えるマイナス、
どちらのマイナスがより大きいかという問題。
(…………考えるまでもないな)
すこし情けないが、つまりはそういうことだ。
(売られるんだろうか、俺)
イカサマは、バレなければイカサマではない。
そして究極の話、『勝負』の終わったあとなら、証拠が出ても全く問題は無い。
そこに関しては、『この場からの退場』をもってして『勝負の完全終了』とすると、
勝手に一方的に決め付けさせてもらったそもそもの根幹もいい加減にアレだが
仮に、そこに問題があったとしても、今回に限って言えば、この資料をチームに送り届けたあとなら――――
「………ふむ」
二つのことに、気が付いた。
551冷たい方程式:2005/12/19(月) 18:39:04 ID:keyU8UOa0
ひとつめは、今は逃げて、資料の内容と夜麻のことをチームに伝え、それから改めて、福本にとっ捕まるという選択肢。
もうひとつは、福本自身がこの『勝負』の結果をどう捉えているかという、根幹―――― 一番重要な部分を、放置していたということ。
黒服連中がこうして実際じわじわと包囲してくるものだから、それが福本自身の意向なのだと勝手に先走り決め付けてしまったが
思い返せば、福本自身は、まだなんら裁定をくだしてはいない。
そう、この手のタイプは案外――――

「まあ 合格かな」
うすら笑いを浮かべる福本の言葉に、黒服達が怪訝そうな顔をして立ち止まる。
見つめてくる城平に、見つめ返し、テーブルに肘をつく福本。
「最初から“試し”だと言っていただろう? ――――まあ それくらいの器量があれば とりあえずは合格だ
 ――――“あそこ”へ行っても なんとかなるかもしれん」
福本が片手を挙げ、黒服達を下がらせる。
「――――ずいぶん、親切なんだな」
安堵のため息とともに、城平が繰り返す。
「なに こちらも楽しめた 気にする必要は無い」
――――また、その台詞。
おそらく、なにかあるのだろう。単なる親切で終わらない、終わらせない策謀がなにか。
隠す様子すら見せないことから、特に深く洞察するまでもなく、嫌になるくらい、よく、分かる。

しかし、今言えることはといえば、結局、この程度でしかないのだ。

「………ま、なら、その気が変わらない内に、退散させてもらいますよ」
552冷たい方程式:2005/12/19(月) 18:41:03 ID:keyU8UOa0






店から城平が出てゆき。ドアが閉まる。
黒服が尋ねた。
「・・・・よろしいのですか?」
「ああ」
簡潔に答える福本が、ノートパソコンを開き、再び起動させる。
「・・・・上手く いくのでしょうか?」
「・・・・なにが?」
興味の失せた、乾いた声色でモニターを注視する。
「その・・・・彼らの『救出作戦』ですか・・・・?」

「まあ・・・・無理だろうな・・・・」

「え・・・・?」
主の意外な返答に、黒服が驚く。
「・・・・当然だろ 奴らがこれまで渡ってきた『危ない橋』とはまるで違うのだ
 死ぬさ・・・・派手に・・・・たぶん一人も残るまい・・・・」
「は・・・・?」
馬鹿のように口を開けた黒服を見て、悪魔のように笑う福本。

「ククク・・・・100%無理だ と言ってるわけじゃない・・・・それはさっきも言ったとおりさ・・・・
 でなければ『試した』意味も無い・・・・
 だが・・・・奴らが何人で行くつもりかは知らんが・・・・『それでも』おそらく皆殺し・・・・

   全 員 星 に な る ・・・・! 」
553作者の都合により名無しです:2005/12/19(月) 21:46:24 ID:tMyxywqn0
うひょ〜一本取ったよポーカーフェイス
しかし先は相変わらず真っ暗だねガンサン
554作者の都合により名無しです:2005/12/19(月) 21:56:08 ID:RFabhm1z0
両方毒→城平吸血鬼だから毒が効かないとかいうオチかと思った自分は間抜けorz
読んでるこっちも一本とられました
555作者の都合により名無しです:2005/12/19(月) 22:28:28 ID:m9vfsUNe0
最初、福本がヘタレ歩と同じ方法でやられちまうのか?とヒヤヒヤしたが、なんとか威厳保ったなw

見えない学校に乗り込む展開になるのか?
まあ盟主が眠ってて、幹部が何人か不在の今が唯一のチャンスなのかも知れんが、無謀だな
556作者の都合により名無しです:2005/12/20(火) 00:34:42 ID:kbOMfPNY0
今の見えない学校にガンサン乗り込んだらギャグ長編始まるんじゃないか
いや、それが良いのか?
557戦火に咲く華:2005/12/20(火) 01:44:18 ID:UjpG5WFi0
>>330

伊藤「ハァ・・ハァ・・ハァ・・・・」
荒川と伊藤は焦っていた。
渡辺のレクイエムによって大幅に数を減らした吸血鬼たちだったが、未だ優に一個大隊を超える戦鬼が残ったままであった。
吸血鬼になって強化されたとは言え、元は凡百の同人作家やアシスタントたちである雑兵相手に後れを取る二人ではないが、如何せん数が多い。
倒しても倒してもキリがなく、体力精神力共にギリギリまで削り取られていた。
二人は、負傷して動けない内藤を庇いながら戦い続けなければいけない。
自然二人は周囲をすべて囲まれ、四方からの集中砲火を耐えねばならなかった。
なんとか、伊藤の炎が銃弾を焼き尽くし、荒川が練成した鉄の壁が砲弾を防いでいるが、この状況では脱出もままならず、じりじりと追い詰められていった。
一発の銃弾ごとに希望は削り取られ、1秒経過するごとに絶望が増大していた。
それでも二人は戦い続ける。
まだ、希望が絶望に喰い尽くされたわけではないから。
二人にとって希望は、渡辺と片倉が田口と黒田を倒し、こちらに駆けつけてくることであった。
対魔物戦において、滅法強い二人が加われば、この囲みを突破することも可能である。
一方、二人にとって絶望とは、痺れを切らした平野と伊藤明弘が戦線に復帰することであった。
彼らが一人でも闘いに加われば、吸血鬼を千人相手にするよりも死が近くなる。
希望も絶望も、彼女たちの手の外にある。
結局は、二人は耐え忍ぶだけでそれ以外は何も出来ないでいた。
だから二人は、自身の仕事を全うしようと、ただひたすら戦っていた。
558戦火に咲く華:2005/12/20(火) 01:46:35 ID:UjpG5WFi0
荒川「息が切れてるわよ、伊藤!」
荒川が目前まで迫った5対の吸血鬼を、床から壁を練成して弾き飛ばしながら言った。
伊藤「あんたこそ、詰めが甘いわよ!」
荒川が練成した壁を乗り越えて飛び掛ってきた数体の敵を、纏めてアルファクロスで焼き払いながら、伊藤は言い返した。
荒川「あんたもね!」
がら空きになった伊藤の背後に襲い掛かってきた兵士たちを、振り向きざま、手袋を嵌めた左手で指を弾くことによって練成した炎で焼き殺しながら、荒川も言い返した。
伊藤「うるさいわね!それよりもこの壁、前が見えなくて邪魔よ!どけなさい!」
壁の左右から回りこんできた吸血鬼を、アルファクロスを肩に立て掛け、両の手に嵌めた手袋の端を口に咥えて一気に脱ぎ、あふれ出た塩で左右同時に焼き尽くしながら彼女は言った。
荒川「ハイハイ!今どけたげるわよ!」
言うや否や、荒川は両の手の平を顔の前でパンと勢いよく合わせ、そして光が出る間に右手の拳を左手で包んで、義手を練成陣の描かれた無骨な手甲へと変えていた。
荒川「我が家に伝わる、この芸術的錬金法でねぇ!!」
叫ぶと同時に、彼女は練成陣の輝く手甲を、思い切り壁に叩きつけた。
ドゴオオオォォォォォォン!!
すると、壁は巨大な鉄杭となって轟音と共に幾十の吸血鬼を薙ぎ払いながら飛んでいった。
伊藤「ハァハァ・・・派手な割には、あんまり倒せてないわよ・・・あんたの技・・・」
息を切らせながらも、憎まれ口をやめない伊藤。
荒川「あなたこそ、もうちょっと気張りなさい・・・ケホッ」
息を詰まらせながら、荒川も言う。
二人は、まったく意識していなかったが、そのやり取りはお互いに励ましあっていることに他ならなかった。
そのことを誰かが指摘したら、彼女たちは向きなって否定しただろうが、疾うに限界を超えた二人が戦い続けていられるのも、今こうして支え合っているからである。
559戦火に咲く華:2005/12/20(火) 01:50:38 ID:UjpG5WFi0
パン!パン!パン!
突然、場違いなほどに調子の良い、拍手の音が聞こえてきた。
前方、荒川が鉄杭で薙ぎ払い、一角だけ吸血鬼の囲みが崩れて視界が開けた向こうからである。
二人が凝視すると、そこには手を叩きながら歩いてくる、黒衣をまとった平野がいた。
たまたま、杭の飛んでいった方角が、平野のいた先だったのだろう。
それが、平野の興味をこちらへ引く結果となってしまった。
荒川(まずった・・・)
伊藤(このバカ!)
心で舌打ちする荒川に、心で非難する伊藤。
彼一人の戦闘力は、ここにいる兵士たち全てより強大である。
希望への距離が一気に広がり、絶望への距離が一気に縮まってしまった。
560戦火に咲く華:2005/12/20(火) 01:51:15 ID:UjpG5WFi0
平野「素晴らしい、実に素晴らしい女性達だ!!」
滑稽なほど芝居がかった台詞だが、平野はごく自然に語っていた。
平野「強く、儚く、そして美しい!!」
顔では狂喜を、体では歓喜を、言葉では賞賛を、それそれ表現しながら、夜族の王は語る。
平野「まさしく、戦場で真紅に輝く大輪の華!」
一人呟く平野に、伊藤と荒川は油断なく槍を構える。
平野「だが、残念だ・・・いささか優雅さが足りない・・・少しだけ足りない・・・」
彼は、眼鏡にすらりと伸びた指を当て、僅かに首を左右に振る。
平野「それゆえに、私は庭師を用意しよう・・・」
パチンッと、指を鳴らしながら勢いよく前に腕を突き出す平野。
それを合図に、平野の左右を勢いよく二機のバイクが駆け抜けた。
平野の右を駆け抜けたのは、銀のBMWを駆る鬼の仮面をかぶった男。
左手には、日本刀をぶら下げている。
平野の左を駆け抜けたのは、紅いKATANAを駆る甲冑姿の男。
同じく、左手に刀をぶら下げている。
荒川「冗談!」
伊藤「やめてよね!」
同時に声を上げる伊藤と荒川。
平野「紹介しよう、我が同胞、藤島康介、そして、すぎむらしんいち」
平野が、ニヤリと狂気の笑みを浮かべる。
平野「我が大隊が誇る、最高の戦鬼だ!」
希望が狂気という名の絶望に喰い殺された瞬間であった。
561戦火に咲く華:2005/12/20(火) 01:53:37 ID:UjpG5WFi0
危機を察した荒川の行動は早かった。
即座に、床を練成して自分と伊藤と内藤を囲むように円形の壁を作り、防御体勢に入った。
そして、内藤を守るため伊藤と二人で彼の左右に立ち、いつでも迎撃できるように槍を油断なく構えた。
作った壁は、垂直でかなりの高さだ。
簡単には越えられない。
では、どう攻めてくるのか・・・
荒川「ねえ、伊藤真美。あなたならどうやってこの状況で攻めてくると思う?」
敵の出方を、伊藤に問いかける荒川。
伊藤「壁をぶち破って、直進する!」
以外に、豪快な答えが返ってきた。
荒川「そうね、私でもそうするわ・・・」
そして、その答えに賛同する荒川。
壁を飛んで乗り越えてくるという方法もある。
だが、越えた瞬間、当然無防備な姿をさらす事になる。
幾らでも迎撃する手段はある。
一方、壁は鉄で出来ているとは言え、彼らの力量から言えば、突破は可能であろう。
しかも、壁が破壊された瞬間、その場所を攻撃すればよいというものでもない。
穴が開いたからといって、そこから飛び出すとは限らないからだ。
慎重に姿を確認してから攻撃しないと、別の場所から突破されて、無防備なところを突かれる恐れがある。
無茶苦茶なようで、実はかなり現実的な戦法であった。
その証拠に、壁の向こうから2体のバイクが駆け抜ける音が、ぐるぐるとインディアンのように回っていた。
いつ、どこから攻め込まれてもおかしくない。
562戦火に咲く華:2005/12/20(火) 02:09:57 ID:UjpG5WFi0
内藤「藤島・・・やっぱり、君もなのか・・・」
ポツリと、内藤が呟いた。
荒川「なんだか知らないけど、落ち込んでる暇なんてないのよ、内藤!」
怪訝に思った荒川は、内藤を厳しく叱咤する。
伊藤「荒川!!」
何故か、伊藤から鋭い声がかけられる。
荒川「ん?」
伊藤「藤島慶介は、かつて内藤様の友だった人よ・・・」
荒川「そう・・・・」
かつて同じ釜の飯を食べた仲間と、酒を酌み交わした相手と殺しあう。
ラグナロクを経験した荒川は、内藤の心中を察し、歯噛みする。
何時でもどこでも、こんなことは繰り返されるのだろうか・・・
563戦火に咲く華:2005/12/20(火) 02:14:42 ID:UjpG5WFi0
ラグナロクを経験した荒川は、内藤の心中を察し、歯噛みする。
何時でもどこでも、こんなことは繰り返されるのだろうか・・・
伊藤「内藤様、私は、私だけは、あなたを守りきって見せます」
伊藤は、誓いの言葉を口にする。
伊藤「死んでも、守って見せます・・・」
悲壮な決意とともに。
内藤「ありがとう、真美。でも・・・」
突然、二人は後ろから羽のような物に抱えられ、そのまま引き寄せられ、内藤に背中から抱きすくめられた。
訳も分からす、彼女たちは内藤の顔を凝視した。
彼は、口に咥えていた細長い試験管を放しながら、にっこりと微笑んでいた。
内藤「でも今は、僕が守るから・・・」
それは、この上もなく優しい笑みであった。
だが、ふたりがそう感じた瞬間!!

??「   霊      妙      剣   !!  」

上空から現れた何者かによって、巨大な閃光が壁の内側に解き放たれ、壁ごと全てを暗い尽くした。

暖かい微笑みに包まれた二人の乙女と、金髪の一部を黒く染めた優しい死神を除いて。
564戦火に咲く華:2005/12/20(火) 02:15:56 ID:UjpG5WFi0
今、自分を救ってくれた人がいる。
今、自分を支えてくれる仲間がいる。
全てが、壊れた訳ではなかった。
失った絆もある。
助けられなかった命もある。
たけど、今ここにある温もりは幻じゃない。
だから、守ろう。
この温もりを。
だから、取り戻そう。
失った絆を。
そして、築こう。
新しい、FAMILYを・・・

十分に予測できたことであった。
黒田の持っていた銃、棺桶、そしてサイドカー。
それらは全て、黒田の物でも内藤の物でもなかった。
かつて、ガングレイブのメカデザインを担当した男、藤島慶介の物であった。
それを、黒田が所有していたと言うことは、当然、こうなっているはずである。
しかし・・・
内藤(ちくしょう・・・・)
五体を引き裂かんばかりの苦悩が、内藤の心を駆け巡っていた。
内藤「藤島・・・やっぱり、君もなのか・・・」
内藤は、思わず呟いていた。
荒川「なんだか知らないけど、落ち込んでる暇なんてないのよ、内藤!」
荒川から叱咤の声に、内藤は内心微笑んだ。
内藤(ありがとう、君はいつも僕を励ましてくれるね・・・)
内藤は、戦う決意を固めた。
565戦火に咲く華:2005/12/20(火) 02:17:17 ID:UjpG5WFi0
伊藤「荒川!!」
荒川「ん?」
伊藤「藤島慶介は、かつて内藤様の友だった人よ・・・」
荒川「そう・・・・」
最後の荒川の声には、同情でも哀れみでもない、ただ悲しみだけが込められていた。
伊藤「内藤様、私は、私だけは、あなたを守りきって見せます。死んでも、守って見せます・・・」
真美の言葉からは、悲しい決意が感じられた。
内藤には、それが苦しい。
内藤「ありがとう、真美。でも・・・」
でも、死ぬなんて悲しいことは言わないでくれ。
内藤「でも今は、僕が守るから・・・」
もう、誰一人失わない。死なせない。傷付けさせない。
優しい死神は、決意する。
全身に裂傷、32箇所。
骨折、13箇所。
打撲、21箇所。
内臓に損傷、有。

内藤(まだ、戦える!!)
566戦火に咲く華:2005/12/20(火) 02:18:59 ID:UjpG5WFi0
内藤は、震える手で懐から薬の入った試験管を取り出す。
蓋を外し、口に咥えて、顔ごと真上に向けて一気に飲み干す。
そして、そのまま上空から飛び掛ってくる人の姿を確認する。
内藤(やっぱり!!)
内藤は、この状況で、すぎむらと藤島が囮だという事に気づいていた。
伊藤も荒川も気づいていないが、この壁は檻のような物である。
上からミサイルでも降ってくれば退路もなく、しかも被害は周囲に及ばない。
二人には悪いが、この状況は当然予測してしかるべきであった。
だが今は、そんなことを言っている暇はない。
煙を上げつつも投薬によって急速に修復されつつある体を無理やり駆使して、内藤はエンジェルアームを二人に伸ばす。
そのまま自分のところまで引き寄せ、最小のバリアを張る。
びっくりした二人が、こちらを見つめてきたので、内藤は反射的に笑顔を作った。
内藤(そういや昔、黒田におまえの笑顔は空っぽだとか言われたっけ・・・)
そんなことを思いながらも、彼は微笑み続けた。

人にとって、笑顔が一番安心できる顔だから・・・
567作者の都合により名無しです:2005/12/20(火) 10:26:54 ID:KQe3H1Sb0
内藤がんばれ内藤
一部文章被りだけど、これは効果って事で良いのかな?
>>562前後の推敲ミスかも知れないけど)
降ってきた人は技から言って熱海から舞い戻ってきた苦労人かね
568作者の都合により名無しです:2005/12/20(火) 20:31:57 ID:e0BVRD8e0
伊藤と荒川が吸血鬼一個大隊相手に奮闘
      ↓
平野の方に攻撃がとんで、平野の興味がそちらに向く
      ↓
すぎむらと藤島が参戦
      ↓
荒川が防御壁を練成
      ↓
その周囲をグルグル回ってる藤島達は囮で、本命のもう一人が上空から攻撃
      ↓
内藤が薬で回復しつつ、バリアで荒川達を守る


と、いう流れでいいのかな?
あと、藤島「康」介ね
569作者の都合により名無しです:2005/12/21(水) 10:08:08 ID:Z9k/kIlt0
スレ終わり際になって急に加速しだしたな
今週中には次スレ行けるか?
570作者の都合により名無しです:2005/12/21(水) 10:28:51 ID:zM7CDaVz0
480KBまで?485まで行く?
571シングルvsタッグ 5:2005/12/22(木) 23:31:52 ID:w4HCIT4D0
>493

「喧嘩(クォーラル)ボンバー!!」
左腕を振りかざし、将軍の伝家の宝刀“喧嘩ボンバー”が抜き放たれた。
大暮は、気力で、これをかわすかに見えたが――
「ケッ・・・少しジャンプが足りないようだぜ!!」
すでに技(トリック)どころか、まともな跳躍力すら失われてしまったのか、大暮は中途半端に跳んだところ、将軍のラリアットを脇腹に喰らってしまう。

  ベキベキメキペキ・・・・

「が はっ」
アバラ骨が根刮ぎへし折られていく音を聴きながら、大暮が吐血する。だが・・・!!
「ようやく捕まえたぜ・・・地獄行きの相棒をなァ・・・!!」
突然、大暮に表情がよみがえり、ラリアットを喰らった瞬間の隙をついて、将軍の左腕を両腕で抱え込んだ。
そして、左腕を抱えながら、自身の右肘を将軍のこめかみにそえ、そのまま足を払って体重を浴びせかけた。

「(兄さん・・・始めから相打ちを狙って・・・!!)」
倒れたまま福地は、大暮の決死の反撃を見ていた。
確かに、あの状態のままマットに叩きつけられれば、いかに将軍がタフとはいえ――

         ピタッ・・

時が、止まっていた。
大暮も、福地も、驚愕と絶望がないまぜになった表情のまま絶句している。
将軍の頭は、マットからわずか数センチというところで、静止していた。
両足の指は根を張るがごとくマットに深く食い込み、頑強さと柔軟さを兼ね備えた上半身は華麗なブリッジを描き、漫画家2人分の体重を完璧に支え切っていた。
572?シングルvsタッグ 5:2005/12/22(木) 23:56:32 ID:w4HCIT4D0
「自分の死を覚悟してすら、この程度か。 弱 い な 」
死をかけた行為すら、将軍相手にはバンジージャンプ以下の余興にすぎなかった。
「がっかりしたぞ!ドリャ――っ!!」
気合いの叫びと同時に、2人分の体重を乗せた将軍の上半身が跳ね上がり、今度は反対に大暮にダブル・アーム・スープレックスの形でのしかかる。
そして、そのまま凄まじい速度で回転を始める!!

「ああ!あの体勢は・・・」
福地が絶望に満ちた声を発する。そう、このモーションこそは、将軍最大最強の必殺技(フェイバリット)――!!

   「 地獄の断頭台――――――――――――!!!!」

         ガ     ゴ     オ    ッ  ッ  !!!!!    

スピンダブルアームから宙高く放り投げられた大暮の首に、そのさらに上から落下してきた将軍の膝が喰い込み、マットと挟み合わせにして凄まじい破壊音を轟かせた。

「フッ・・・終わったか。あっけないものよ」
そう言って、興味が失せたように踵をかえす将軍。と――
そのとき、背後で気配が動くのを察知し、将軍が目の色を変えて振り返る。

そこには、あろうことか、大暮がまたも立ち上がっているではないか――!!
573シングルvsタッグ 5:2005/12/23(金) 00:20:15 ID:5kh7h5xl0
「に・・・兄さん・・・兄さんを一人では死なせねえっす・・・今、俺も行くっすよ・・・・」
虫の息の福地が、這うようにリングの中に戻ろうとする。
大暮の不屈の執念に応えるように――
「待てい、小僧!!あの大暮とかいう使徒は、もうお前と一緒には戦えん!!」
しかし、マグマのような熱量を秘めた声で、永井が福地を制していた。
「なっ!?」
「あいつの戦闘機能は、地獄の断頭台を喰らった時に、すでに失われている!」
「(お・・大暮兄さん・・・・)」
勝負への執念が、息絶えた状態の大暮を立ち上がらせたのか。
その気高い姿に、さしもの将軍も敬意を表していた。
「立ったまま息絶えるとは、今時の漫画家にしては見上げたものよ!つつしんで、勝利の儀式を行わせてもらうぜ!!」
次の瞬間、将軍の顔面に再び双子座の光が瞬き、将軍の肉体が2体に分身した。
「なっ、何をするつもりっすか!?もう勝負はついたはず・・・」
「フッ・・・甘いわ。わたしの勝利の儀式が、これから始まるのだ!!」
そのときだった。
将軍の左腕に無数に、規則正しい間隔で穴が空き、そこから光の管が伸び始めたのだ!
光の管は、立ったままの大暮の身体を通過し、ちょうど“将軍No.1”と大暮をはさみ真向かいに立つ“将軍No.2”の左腕と繋がった!!

   ギ ガ ァ   ギガ   ギガ   ギガ  ギガ

「あ、あれは――――!!?」
理解を超えた光景に、福地が絶叫する。

「これぞ、我が新機軸!!光ファイバーのパワーを利用した、ニュー・クロス・ボンバーだ――――――っ!!」
574シングルvsタッグ 5:2005/12/23(金) 00:38:21 ID:5kh7h5xl0
「(光ファイバー!??光ファイバーに磁力のように互いを引きつけあう性質がある等とは聞いた事がないのだが・・・!?)」
永井が心中で、恒例のゆで物理学に、律儀にツッコミを入れるが――
相棒が絶対の危機に瀕している局面の福地には、そんな余裕などない。
ただ声にならない叫びをあげるだけ―――そして、それは誰の耳にも届かない。

  「「 オプティカル・ファイバー・クロス・ボンバ――――――ッ!! 」」

将軍No.1と2。
お互いを結ぶ光の帯に引かれ合いながら、物凄いスピードで大暮に向かってダッシュしていく――っ!!


        ド  オ オ オ オ ン  ッ  !!!!!


一瞬、凄まじい光がリングにほとばしり、爆発したような轟音がこだました。
そして、リングの中央では――――
「あ、ああ・・・・」
福地が、震えながら呆然と見つめる、その先には――――

           ペリ・・・   ペリリ・・・・・・

顔の皮を剥がされ、力なく血の海に倒れ込んだ大暮の無惨な姿が――

  「 大 暮 に い さ あ あ あ ん っ !!! 」

福地の絶叫が夜空に吸い込まれ、大暮の顔皮は湿った音をたてて将軍のマントにコレクションされるように張りついた。

決着を告げるゴングの音は、今の福地には聴こえていなかった。
575作者の都合により名無しです:2005/12/23(金) 00:41:19 ID:I5zs0yi30
光ファイバーキタコレ!!
どうなる?どうなる?グレさん死んでしまったん?
そしてとうとう新スレの時期がやってきた!!
576作者の都合により名無しです:2005/12/23(金) 05:31:38 ID:pJRwyID50
しかしなんだかんだいってしぶといなこのスレ
577作者の都合により名無しです:2005/12/23(金) 16:27:42 ID:zEhOavmCO
確かにw
まだまだ行くよー?
578作者の都合により名無しです:2005/12/23(金) 20:46:44 ID:I5zs0yi30
あと1〜2個来たら新スレ行きますか。
まとめリンク作ってる人はいますか?
579作者の都合により名無しです:2005/12/23(金) 23:28:32 ID:ks4itzQx0
永井…ちゃんと声に出して突っ込めよ!!
580作者の都合により名無しです:2005/12/24(土) 21:47:58 ID:lpcNtxng0
実に痛そうだぜ生皮ハーガス
581作者の都合により名無しです:2005/12/25(日) 21:37:36 ID:AU7y7VVlO
今年中に新スレ行けるか?保守
582作者の都合により名無しです:2005/12/26(月) 21:45:03 ID:8M+eGuXN0
福地エリ8追放決定?
583作者の都合により名無しです:2005/12/27(火) 22:50:19 ID:DkIX0xn90
干す
584作者の都合により名無しです:2005/12/28(水) 13:04:49 ID:NkBagRkt0
明日新スレ行きます!
少々お待ち下さい
585作者の都合により名無しです:2005/12/29(木) 12:39:08 ID:PXY9Vfhg0
無理でした・・・
テンプレはここにありますのでヨロむぜ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/comic/31/1059562987/4062-4069
586作者の都合により名無しです:2005/12/29(木) 15:07:04 ID:Lnvhd7XF0
俺も無理だった、スマソ
587作者の都合により名無しです:2005/12/30(金) 04:07:32 ID:mjCnTxU+0
【リレー小説】えなりの奇妙な冒険〜冨樫の遺産編第27部
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1135882824/
588作者の都合により名無しです:2005/12/30(金) 08:55:35 ID:MFUwRm700
サンクス乙!

・・・いやー誰も立ててくれなかったらどうしようかと思った
589作者の都合により名無しです:2005/12/30(金) 20:08:27 ID:mE5vCsd30
平野と荒川ってリアルでも因縁浅からぬ関係だよね。
兄メカとかハガレングとか。その辺ネタになんないかな。
590作者の都合により名無しです:2005/12/30(金) 20:46:54 ID:jivVroQH0
どっちかというとネタ被りの多い和月と荒川のが気になるかな
まあ今はエリ8にいないけど和月。再戦はあるのかね
売れっ子さんは色々シンクロする事が多いなあ
591作者の都合により名無しです:2005/12/30(金) 20:58:42 ID:MFUwRm700
荒川は結構顔広いからな
サンデーだとモリタイシとかと仲良いみたいだし
最近、シャナの原作者ともデビュー前からの古い友人だと知って驚いた
592作者の都合により名無しです:2005/12/30(金) 21:09:12 ID:jivVroQH0
タイシ・・・完全に出すタイミングを失ったなあ
まあサンデー作家の大半はやられ役になってしまう宿命ですが

まとめ今から作りますので新スレ保守は頼みましたぞよ
593作者の都合により名無しです:2005/12/30(金) 23:39:46 ID:10EhPLPX0
>>589
どんな関係なの?
594作者の都合により名無しです:2005/12/30(金) 23:52:00 ID:jivVroQH0
パロ以外にも裏の関係があるのかもって事かねえ
それより新スレにも書き込みを・・・即死は嫌ですぞ勇者どの
595作者の都合により名無しです:2005/12/31(土) 01:02:39 ID:ZTsG2afL0
>>593-594
荒川は平野とネタが被ったことがあって
平野は荒川の漫画をパロってるわけで、
二人に親交がなかったとしても因縁と言っていいかなと。
裏の関係とかはわからないです。
596作者の都合により名無しです:2005/12/31(土) 01:05:31 ID:Zdu0WK0b0
時に漫画家たちは偶然同調し合いネタ被り現象を起こすのだby島本
597作者の都合により名無しです:2005/12/31(土) 07:30:11 ID:GOCUDm4W0
では皆よい年を!
598作者の都合により名無しです:2006/01/01(日) 01:43:52 ID:XZaq8SFO0
おめでとう
物語も佳境が近づいてきましたね
599作者の都合により名無しです:2006/01/01(日) 02:42:55 ID:A8lZYiIY0
なんとか今年中には決勝まで行きたいっすね
レポート終わったんで、明日には何か書けそうです
600作者の都合により名無しです:2006/01/01(日) 23:34:02 ID:XZaq8SFO0
お待ちしております
まとめ終わったら書きかけの奴を上げねば・・・
601作者の都合により名無しです:2006/01/02(月) 22:23:40 ID:eDZBNguzO
あけおめガッデム
ことよろデストローイ!
602作者の都合により名無しです:2006/01/03(火) 23:25:38 ID:5Rnyu2Ld0
克『大変お待たせしております。
  26部まとめ、現在もなお編集中でございます。
  もうしばらくお待ちください。チャンネルはそのまま!』
603作者の都合により名無しです:2006/01/04(水) 23:02:01 ID:AnaA7lB90
ヽ(`Д´)ノウォー!!
604作者の都合により名無しです:2006/01/05(木) 23:16:55 ID:GoUDWKYt0
克『はい、改めてこちら実況席の克・亜紀でございます!
 えなりスレ恒例の作品まとめ、26部編がいよいよ始まりました!
 今回も様々なストーリーが展開し、わたくし大変興奮しております。
 新年明けました今、新スレ27部のますますの発展を願うばかりでございます。
 今年も私たち漫画家たちとえなりスレ共々よろしくお願い致します。
 なおFAXでご意見募集しておりました「三位決定戦」については、
 当大会内では行われない事となりました。ご了承ください。それではどうぞ!』

        【専用ブラウザ用・26部のまとめリンク】

○黄金の双翼・サッカー編FINAL

鳳凰(170-172/180) ―――――― >28 >29 >30 >31
股間爆発(173/180)  ―――――― >37
巨砲爆発(174/180)  ―――――― >38
限界を超えろ(175-179/180)――― >92 >93 >94 >95 >96
最終局面(180/180〜ロスタイム) ― >114 >115 >116
天と地のはじまり(ロスタイム) ―― >129 >130 >131 >132 >133

カオスだもんね! ――――――― >140 >141 >142 >143 >144
勝利への虹  ――――――――― >150 >151 >152 >153 >154

監視者  ――――――――――― >159 >160 >161
道化と開拓者  ――――――――  >450 >451 >452

そして延長へ・・・  ――――――― >167
最後の闘い  ――――――――― >251 >252 >253
負けられない!負けたくない!  ― >254
風の中のすばる  ――――――― >255 >256 >257
執念の螺旋  ――――――――― >258

駆け抜ける閃光  ――――――― >259 >260 >261 (決着!えなりチームV)
605作者の都合により名無しです:2006/01/05(木) 23:17:45 ID:GoUDWKYt0
○年の瀬アクメツ祭・ガンサン狩りの宴

長き戦いの終わり  ―――――――― >298 >299
狩猟の時間 ――――――――――― >300 >301 >302

絡まる蔓(かずら)  ―――――――― >305 >306 >307 >308 >309
Sting Girls  ―――――――――――  >313 >314
愚連隊CYCLOPS ―――――――― >334 >335 >336
窮地の西森一行偏 ―――――――― >349 >350 >351
鬼畜な天女 ――――――――――― >436
悪魔対悪魔 ――――――――――― >539 >540

微笑みの爆弾 ―――――――――― >339 >340
鮮紅の狼 ―――――――――――― >347 >348
仕置きという名の宴  ―――――――  >365 >366 >367 >368
異形戦士たち ―――――――――― >406 >407
JINGI ―――――――――――――  >408 >409 >410
血と黄金と甘い罠 ――――――――  >448 >449


○魔城クラウドゲート・決死の脱出劇

傲りと誇り〜人竜闘舞〜 ―――――― >87 >88 >89 >90
      〜獣神解禁〜 ―――――― >191 >192 >193 >194 >195 >196
      〜残喘劫掠〜 ―――――― >506 >507 >508 >509 >510 >511 >512


○郷愁の宇宙墓場・訪れる転機と恐怖

サルガッ荘の長い日〜あの窓の向こうに ――― >222 >223 >224 >225 >226
             〜サイクロン&エレクトロン  >310 >311 >312
             〜苦しい時の神頼み  ―― >384 >385 >386
606作者の都合により名無しです:2006/01/05(木) 23:18:45 ID:GoUDWKYt0
○奇人軍団vs変人軍団・準決勝第二試合編

鬼が残したもの(前編)  ――――――― >270 >271 >272 >273
鬼が残したもの(後編)  ――――――― >276 >277 >278 >279 >280

たったそれだけの  ――――――――― >372 >373 >374 >375 >376

準決勝第二試合開始!! ―――――― >417 >418 >419 >420

裏御伽チーム議事録 ―――――――― >424
ウォークライ・ウォーゲーム  ―――――  >519 >520 >521 >522 >537


○Aブロック裏路地バトル・夢枕vs宮下

魁!!餓狼伝 ―剣と拳― ―――  >9 >10 >11 >12 >13 >14 >15
                        >16 >17 >18 >19 >20 >21 >22 >23
燃えよ剣 ――――――――――― >200 >201

魁!!餓狼伝 ―完全決着― ―― >213 >214 >215 >216 >217 >218 >219 >220


○Aブロック裏路地バトル・森川vsヨクサル他

怪物 ――――――――――――― >41 >42 >43 >44 >45

鷹の憂鬱 ――――――――――― >170 >171 >172 >173

行末 ――――――――――――― >175 >176 >177 >178 >179

本当の拳 ――――――――――― >318 >319 >320 >321 >322 >323
607作者の都合により名無しです:2006/01/05(木) 23:19:17 ID:GoUDWKYt0
○10年の重き因縁・矢吹とキユと私

午後の紅茶 ―――――――― >53 >54

妖精の歌は終わらない ――― >324 >325


○渡る世間は魔の者ばかり・魔女と魔人と旅景色

見えないいのち ―――――――― >59

二人の異形  ――――――――― >78 >79

ジンギスさん ――――――――― >110 >111 >112

なんでいるんだよ ――――――― >317

漆原の能力 ――――――――― >457
くぼたの憂鬱  ――――――――  >458


○妖魔王と三種の神器〜ギャグ作家の魔力で突き抜けろ!

ギャグ狩りへの反逆、その結末 ―― >205 >206 >207 >208

くめた100% ―――――――――― >356 >357 >358 >359 >360

Searchin' For New World  ―――― >466 >467 >468 >469
冷たい方程式 ――――――――― >544 >545 >546 >547 >548 >549 >550 >551 >552

超級危険人物列伝 ――――――― >503 >504 >505
608作者の都合により名無しです:2006/01/05(木) 23:21:31 ID:GoUDWKYt0
○エリ8風雲録・凸凹コンビvsゆで将軍+α

炎のファイター ―――――――― >68 >69
刻む獣 ――――――――――― >82
プロレスマッチ開始!! ―――― >288 >289 >290 >291 >292 >293 >294
シングルvsタッグ1 ―――――― >437 >438 >439
シングルvsタッグ2 ―――――― >462 >463 (訂正>464)
シングルvsタッグ3 ―――――― >478 >479 >480 >481
シングルvsタッグ4 ―――――― >491 >492 >493
シングルvsタッグ5 ―――――― >571 >572 >573 >574


○エリ8風雲録・戦場のオーケストラ

殺戮のセッション ―――――――― >121 >122 >123 >124
深く暗い絶望 ――――――――― (>143) >230 >231 >232 >233
まぶしく気高い希望 ――――――― >234
飢えた蛇竜  ―――――――――― >235 >236 >237 >238 >239
今そこにある希望  ―――――――  >240 >243 >244 >245

虎神vs竜王 ―――――――――― >282 >283 >284 >285 >286

敵と仲間と銃弾と・・・ ―――――― >327 >328 >329 >330
戦火に咲く華  ――――――――― >557 >558 >559 >560 >561
                        >562 >563 >564 >565 >566 (参考>568)

   【リンクポップアップ  >>604 >>605 >>606 >>607 >>608 】

克『さあ皆様お楽しみいただけましたでしょうか?物語の続きは27部
 (http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1135882824/)でどうぞ!
 リンク間違い等がありましたら教えてくださいね。残り容量は約7kbでございます。
 それでは新スレでお会いしましょう!実況の克でした!さようなら〜』
609作者の都合により名無しです:2006/01/06(金) 10:23:26 ID:XL5BJFTh0
訂正>>606

誤)○Aブロック裏路地バトル・夢枕vs宮下
正)○Dブロック空港地区バトル・夢枕vs宮下

すいません・・・
610作者の都合により名無しです:2006/01/06(金) 12:49:02 ID:CKs4pNXd0
まとめ、大変乙でした!
611作者の都合により名無しです:2006/01/06(金) 14:43:50 ID:avjSphi20
ありがとう
ところでもしアバウト年表作ったら貼っていい?
超テキトーになるだろうけど
612作者の都合により名無しです:2006/01/07(土) 08:30:55 ID:Dw5TcKeQ0

             ♪        ♪
♪  >>609ちゃん!        ♪   >>609ちゃん!

 ありがと!                ありがと!

今年も!               今年も!

 えなりスレを!            えなりスレを!
                           ♪
よろしくねえっ!          よろしくね!
       ♪          ♪     ♪
613作者の都合により名無しです:2006/01/08(日) 02:13:31 ID:SHCPICh20
(゚0 ゚*) 612、このありがとコールもらっていきます!
614作者の都合により名無しです:2006/01/08(日) 08:11:02 ID:amlKlmhO0
ああ、持ってけ!!
615作者の都合により名無しです:2006/01/09(月) 04:45:22 ID:1NJ/jJxJ0
<アバウト過去編(漏れがあったらごめん)>

数10年前〜 :ゴッドハンド軍と妖魔王軍の断続的な戦争(数回)
         GH軍・妖魔軍トップの人たちにはさらに古い因縁があるらしい
         :[正確な時期は不明]最後の戦争で妖魔王と神が相打ちに

10年以上前 :鳥嶋が五聖人を冷凍カプセルに封印し隠す
         :謎の子供キユが武井の仕事場に届けられ養育する事に

10年前   :5月――人間兵器キユ爆発(キユドライブ)集英社半径10kmが消滅。
(2002年)  同時に不当な扱いを受けていた「突き抜け作家」たちが覚醒。
        キユは鳥山と相打ちになり矢吹の一派が回収。のちの矢吹軍の基礎が生まれる。
        車田の相棒エックスが埋まった瓦礫は矢吹艦Aブロックの材料にされた。
        同日、小学館地下の『最終兵器漫画家・高橋しん』行方不明に?
        キユ暴走の裏には<MONSTER>の暗躍があるっぽい
       :夏――矢吹が台頭し多くの雑誌が矢吹勢に吸収または廃刊となる
       :11月末頃――高橋ツトムが怨みの門の門番になる(※16部452)

10年以内  :ガンガン隔週化政策に失敗し作家分裂、派閥戦争(ラグナロク)発生
        弱体化の際に、新体制側を中心に矢吹勢力へ吸収されたと思われる
        以降スクエニ系作家は矢吹配下となり、最近まで不遇の日々を送った
        矢吹は雑誌改革に着手。久米田を引き入れたり作家に緩い体制を打ち立てる

7〜8年前  :秋田書店が『神の遺産エネルギー』の解放及び利用計画を立てるが、
(2004〜5年)矢吹に機先を制され立ち消えに。しかし一部の者は研究を続けていた

数年前   :えなり一世「交通事故」により死亡。命日はのちの矢吹艦トナメ決勝戦の日である
        息子・二世は行方をくらます。姉は捕らえられ矢吹の「性奴隷」にされる

不明     :二世(以降えなりで統一)色々あってなぜかバンド『えなりん』結成

  ※評議会結成時期・十傑集結成時期・富野奪還計画時期等、時系列不明のものは数多い
616作者の都合により名無しです:2006/01/09(月) 04:53:30 ID:1NJ/jJxJ0
<2012年(冬)>

日本  :ある日コンサート終了後のえなりのもとに精神崩壊を装う冨樫が現れ、
     謎の財産(冨樫の遺産ディスクファイル)のありかを示すメモを託されエジプトに。
     矢吹が聞きつけ刺客を差し向ける。冨樫はアメリカの精神病院に監禁されるがのちに脱走

エジプト:えなりとディスクのピンチを荒木が救う。仲間増える。飛行機内でも刺客に襲われ、
     退けるが荒木突然自殺し死体暴走、墜落し戦艦エニッ糞に落下。艦は色々あって沈んだ

東京  :島袋のヘリで集英社新社屋に到着。つの丸おいたが過ぎて尾田に殺される。
     鳥嶋に忘年会に誘われ出席。矢吹は戦力復活のため奔走。浦沢を漫画奴隷にした

忘年会 :『少年ダッシュ』陣も含めた、毎年恒例のイベントにえなりもちゃっかり参加する。
     同時刻、鳥嶋が集英社(新社屋)地下の五聖人を復活させた際に殺される。
     矢吹の刺客の平野たちは五聖人と鉢合わせ戦うことに

会場外 :戦力補強のため板垣をスカウトする事に。タクシー運転手の鳥山が仲間に。
     ゾンビ化したつの丸やらなんやらに襲われ戦力を分散
     えなり、ディスクを北条に奪われる。原と車田は板垣と手合わせしたり色々
     講談社内でファイルの噂を知った真島軍団が動き出す

板垣の家:えなり、玄関で露伴形態になった荒木と再会。板垣vsえなり&荒木開始
     善戦するえなりに板垣『矢吹艦最強トーナメント(仮称)』の存在を示唆

忘年会 :鳥山たちは忘年会再開。隣の元エニッ糞組(矢吹軍辞めた)と仲良しになるが、
(12月?) エニクス狩りコンビや矢吹軍の傭兵戸田とバトルし遺恨を残す

3日後〜:矢吹の拠点ビルで大会0次予選・書類審査開始。三浦と岩明が暗殺しに来るが返り討ちに。
     一週間後、ちっとも参加希望者が減らず4000通以上の応募の内1000人が合格となる
     矢吹艦登場。選手が集まり予選開始。大会は団体戦に変更された  <容量あればつづく>
617 :2006/01/10(火) 22:02:23 ID:uq5uX8dU0
 
618イベント入りきらない〜 27部>>608
一次予選:書類審査を通った1000名を一週間ノールールで闘わせ500名まで減らす。
      えなり達はピンチの所を打倒矢吹繋がりのスプリガンに救われ修行に出るが潜伏先で危機に。
      サンデーの裏切り者が安西と判明。彼らの成り行きを見つつゴッドハンドが動き出す

二次予選:結局減りきらず団体戦になり、計32チームになるまで全チーム闘い続ける事に。
      死んだ戸田復活、色々あって矢吹から離れる。ガンガンチーム正式参加。
      えなりは武内直子に念を習う。板垣が木城に殺される。尾田はゾンビ和月を滅ぼし泣く。
      戸田と島本がマブダチに。なんとか32チーム出揃ったため予選終了(3部700〜)

三次予選:翌日朝9時開始。8チームずつ4ブロックに分ける。裏御伽チーム他数組が乱入参戦。
      木城がクローン戦士ボスチーム制作。キユ強奪事件発生、矢吹軍に離脱者大量発生。
      <A>バンチ大暴れでボンボン抹殺 変態チームの合併騒動 さいとう自殺?
      <B>スプリガンあっさり敗退 アクシデントによる死亡者が多いブロック
      <C>新チームの大量乱入と試合外の事件で混沌 裏御伽は殆ど運だけで勝ち上がる
      <D>えなりTを中心に熱戦揃い チャンピオンチーム vs 川三番地10万人!
      この日は各ブロックで2チームずつ代表を選出した。暗黒留美子が猫になる
      板垣vs夢枕戦は「餓狼伝シリーズ」として伝説に。板垣復活。梅さんの聖石が散在。
      サンライズで「蝕」発生。評議会の存在が明らかに。車田異次元へGO。矢吹がファイル獲得

      :安西は師・藤田と相打ちするも、首から下を師の肉体とすげ替えられて生き返る
      パクリでグレた内藤に「虚無の渦」の材料にされかけるが、村枝達のおかげで善化した

ブロック決勝:<A>バンチvs変態Tでタッグマッチ 原とあんどが恐竜時代に飛ばされる
       <B>ガンガンvsガンホーTでハンディマッチ市街戦 舞台は謎の因縁のある廃墟
       <C>裏御伽vsJスポーツvsチームタフの三つ巴島バトル 12時間+脱出に数時間
       <D>えなりvsチャンピオンTでバーリトゥード野球 なぜか10時間程かかった 
      :安西、雷句と組み藤田を救おうとして大変な目に。荒川の錬金術を借り藤田半蘇生。
       その後藤田が繭化したり触媒のえなり姉共々消えたりエニッ糞冒険編があったり、
       荒川がサービスしたり戦艦無礼ド来たり復活妖魔王やKIYUやYや吸血鬼やらに絡まれたりもう大変
      :荻野が過去でキバヤシを助ける。青山の活躍で車田帰還&留美子善化。評議会内紛勃発
温泉編〜:決勝9組で旅行へ行くが大騒動に。王蟲襲来で九州崩壊、別府分裂。27部現在は準決勝。
      トナメ最終日・蝕の存在を現在幽霊のえなりが知れたらいいなというお話。 ←TO BE CONTINUED...