【2次】漫画SS総合スレへようこそpart21【創作】
487 :
作者の都合により名無しです:04/12/30 20:52:43 ID:ItEomF5i
NBさんの戦闘シーンの達筆は知られたところだが、俺はそれより会話のやり取りが好きだ。
特にセフィリアとスベンの腹の探り合いみたいな駆け引きはよかった。
たぶんSSをまじめに書いておられる分、後書きとかで弾けちゃうんだろうなw
草薙さんお疲れです。のび太引っ張りまわされているな。お気の毒だw
安藤さんってもっとワイルドな話し方だった気がする。口臭がきつそうな感じの。
のび太、もう永田さんなら10秒で倒せる位強いだろwヒョードルより強いかも。
あと、よく同じミスするなw 慌てずに頑張ってな。
488 :
作者の都合により名無しです:04/12/30 20:57:10 ID:ItEomF5i
ていうか、あと50KBで次スレかよ。
職人さんたち年末なのに頑張りすぎだw俺としては嬉しいけど。
しかし、明らかに投げ出しくさい作品とかどうするの、テンプレ?
NB氏気長に頑張って下さい。来年も期待してます。
草薙氏、のび太振り回されてますね。来年もよろしくね。
それにしてもザクさん、ぽんさんはどうしたんだろう。
491 :
作者の都合により名無しです:04/12/30 21:33:23 ID:ItEomF5i
>>489 もうそのネタ秋田よ。
ザクさんやぽんさんの名前じゃなく、他の方の名を入れるべきだ。
ネタにマジレス我ながらカコ悪いが。
じゃあ、バキスレ住民のみんな、よいお年を。
年明け3日まで俺は2ちゃん見れないけど、年が明けてスレ開いたら
作品いっぱい立ったりすると嬉しいな。
しばらくご無沙汰のマルチやスチールやローマとかが着てるとなお嬉しい。
ユル氏は、進路問題で厳しいかな?
ではよいお年を。
492 :
虹のかなた:04/12/31 02:13:46 ID:MlD7xREP
ごきげんよう、皆様。
>>442の続きです。
それに気が付いたのは、祐巳だけではないようだった。
志摩子さんの言葉に、一瞬、ジュネさんの表情が曇ったのだ。
「確かに遅いですわね」
志摩子さんに答える形でそう言った瞳子の視線はジュネさんに向いている。
一方のジュネさんは、眉間に皺を寄せたまま口をつぐんだままだ。
「迷子になるはずはないんだけどなぁ」
校舎から薔薇の館まではいくつかのルートがあるけど、そのどれも迷子になりようがないほどにわかりやすい。
斗貴子さんは祐巳と違ってしっかりしてそうだし、あの道を間違うことはないような気がする。
「何かあったのかしら」
志摩子の問いかけは、その場にいる全員に向けられたモノ。志摩子さんの憂い顔につられるように、祐巳もだんだん不安が
増してくる。
「見てきましょうか?」
乃梨子ちゃんが椅子から腰を浮かせた。
「きっと、お友達にでもばったり会ってしまって話し込んでいるのだと思います」
妙な説得力を持った沙織ちゃんの言葉に、乃梨子ちゃんは浮かせた腰をもう一度椅子に落とした。
「そうかな?」
「ええ」
なぜそう言い切れるのかはわからないけど、沙織ちゃんは確信を持ってそう答えた。
ジュネさんの表情が今度は複雑に曇る。
それに気が付いたのは、今度は、祐巳だけだった。
493 :
虹のかなた:04/12/31 02:16:44 ID:MlD7xREP
斗貴子は、中庭で少女と対峙していた。
少女と言うよりは…元・少女。人外のモノへと姿を変えた彼女は、焦点の合わない瞳を斗貴子に向けたまま、抑揚なく笑い
続けている。
数分前、一年藤組の教室で彼女がホムンクルスへと変貌を遂げた瞬間、斗貴子は空いていた窓から外へと飛び出した。
待機モードのバルキリースカートを制服の下に隠したまま、彼女が追いかけてくるのを待つ。
――まだ、ただの人間だと思わせておいた方がいい。
教室の外には何人かの生徒がいた。この場で戦って、彼女たちを巻き込むわけにはいかない。
幸い外に人影はない。どこか戦いに適した場所まで誘い込まなくては。
少しの間をおいて、彼女が窓から現れる。
(…一体、何のホムンクルスだ)
彼女のウエストから制服を突き破って、大きな赤い花弁のようなモノが生えている。
三枚のそれが少女の胸元までを覆っていて、まるで花の中から上半身が生えているような感じだ。
辛うじて吊られているスカート中で何かが蠢いているのが確認でき、斗貴子は表情を険しくした。
元・少女が完全に追いついたのを待って、校舎に背を向けて走り出す。
ズルズルと重い物を引きずるような音をたて、彼女は斗貴子を追う。
一定の距離を保って走っていた斗貴子の背後を目掛け、何か鋭い物が風を切った。
散らされた数本の髪の毛を宙に残し、反射的に横に飛び退く。
そこで初めて、斗貴子は後ろを振り返った。――そこは、中庭だった。ちょうど薔薇の館の入口の真裏となる。
斗貴子と向い合った彼女は、途絶えることのない笑い声を発し続けたままだ。
彼女のスカートの中から、緑色の大きな葉が伸び、ゆらゆらと揺れている。
その様子から、斗貴子はようやく彼女のベースとなった生物に思い至った。…赤い、チューリップ。光沢を含んだ絹のような
花弁と大振りの葉。多分、間違いないだろう。
チューリップは斗貴子も知っているほどの有名な花だ。およそ戦闘や迫力などとは無縁の可愛らしい花だが…ホムンクルスと
なるとこうも気味が悪いモノになるとは…。
口元を歪ませたまま笑い続ける彼女の瞳は、食料を目前にし、暗く輝いている。
494 :
虹のかなた:04/12/31 02:17:37 ID:MlD7xREP
「…一つ、聞きたいのだが」
「なにかしら?私の邪魔をしたことを謝りたいの?」
「…オマエを造ったのは誰だ?」
ホムンクルスは自然発生するモノではない。チューリップをベースとしてホムンクルスの本体を造り、それをこの少女に寄生
させた人間がいるはずなのだ。
元凶はそいつだ。なんとしても探し出さなくては。
「まぁ。どうしてそのようなことを気にされるのかしら?あなたは今から私に食べられてしまうというのに」
クスクスと笑い続ける声が、ひどく耳に障る。制服のスカートを握りしめる斗貴子の両手に力がこもる。
「答えないのならば…」
斗貴子のスカートが、勢いよく翻った。
「…答えてもらうまでだ!!」
一気に戦闘モードとなった処刑鎌が、その刃を伸ばす。
広げられた四本の鎌と斗貴子の尋常ではない気迫に、少女の笑い声が止まる。
「それは何ですの…?」
「こちらの質問に答えてもらおうか」
斗貴子には、この少女の疑問に答える気は全くない。ホムンクルスを相手に会話など必要はない。
「…あなた、何者ですの?」
やっと斗貴子が“普通の人間”ではないと気が付いた少女の瞳が、暗い光を帯びる。
風を切って緑色の葉が斗貴子へ襲いかかる。“普通の人間”には、まず避けることが出来ない速さ。
地面と水平の角度で動くそれは、切れ味を確かめるまでもなく研ぎ澄まされた刃と化していた。
斗貴子は、少女を睨んだまま動かない。
食料を手に入れたことを確信し、少女は再び微笑んだ。が、次の瞬間、その微笑みは驚愕に凍り付く。
高い金属音を立てながら、葉が鎌に受け止められたのだ。
驚きに見開かれた少女の目を真っ直ぐに睨みながら、斗貴子は再度問いかける。
「オマエを造ったのは誰だ?素直に吐くのなら楽に殺してやる。…吐かないのなら…」
再び斗貴子を目指した葉が、一閃で両断される。
「……地獄の苦しみの中で殺してやる」
狂気と紙一重の殺気を含んだ斗貴子の瞳に、少女の身体は震え始めていた。ホムンクルスとなってから初めて体験する…恐怖。
獲物と捕獲者。その立場は完全に逆転していた。
495 :
虹のかなた:04/12/31 02:22:05 ID:MlD7xREP
「斗貴子さん…あなた…何者なの…?」
涙で滲んだ問いかけを無視し、斗貴子は地面を蹴った。真っ正面から少女へ向かう。
「来ないでえええええ――――っ!!!」
少女の悲鳴と同時に繰り出された数枚の葉が、斗貴子の行く手を阻もうとする。が、それらは全て、斗貴子に触れる前に両断される。
速すぎる鎌の閃きに、少女がそれを認識した時にはもう、斗貴子は彼女の目前にいた。
刃物が血肉を切る独特の音と共に、少女の上半身と下半身が切り離される。
地面に横倒しになりながら絶叫する少女の肩に、一本の鎌を突き刺す。溢れ出た血が、赤い花弁に深みを与える。
更に絶叫を高くした少女を、斗貴子は冷ややかに見下ろした。
「もう一度だけ聞く。オマエは誰に造られた?」
「わ…わたしは…」
涙と血を吐きながら少女が斗貴子を見上げる。その目が何かを捕らえ、再び少女の顔に笑みが戻る。
少女の視線を辿り、振り向いた斗貴子の鼻先を何かが掠めた。
(…弾丸?!)
小さな、目で捕らえきれない速さの何か。一発ではない。地面には少なくとも数個の弾痕がある。
間を置かずに襲う第二弾を、横に飛びかわす。
地面に横たわっていた少女が、くぐもった声を上げた。
(やられた…!)
一発の弾丸が少女の額を打ち抜いている。血で染まる額にわずかに残る、章印。――ホムンクルスの、致命傷である。
少女の身体が、塵となって消え始める。
(口封じか…)
ぐるりと辺りを見渡すも、敵の気配は感じられない。
(どこにいる…)
右側から空気を裂くわずかな音を感じ、斗貴子は後ろへと飛び退く。だが、その着地点にはすでに新たな弾丸が放たれていた。
(避けきれない…!!)
496 :
虹のかなた:04/12/31 02:23:10 ID:MlD7xREP
怪我を最小限に抑えようとする戦士としての習性から、バルキリースカートが鎌首をもたげ直撃を免れようとする。
不意に、斗貴子の視界に影が差した。
風を切ると言うよりも、空間を切り裂くような鋭い――――音。
一瞬のうちに弾き落とされた無数の弾丸が、パラパラと地面に落ちる。
斗貴子の視界を遮るのは、深い色の制服。
「…遅いから迎えに来た」
斗貴子を振り返りもせずにそう告げたのは、高等部で唯一の金色の髪の生徒――ジュネ、であった。
今回はここまでです。
それでは、ごきげんよう。よいお年を。
ミドリさんごきげんよう。
斗貴子さんと謎のホムンクルスとの戦い、いよいよスタートですか。
(謎の銃弾とジュネさんにより中断されましたが)
ついに何かが動き出しましたね。チューリップの元少女は少しかわいそう。
でも、>彼女のウエストから制服を突き破って〜 からの描写はなんかHだw
よいお年を。
499 :
作者の都合により名無しです:04/12/31 13:05:11 ID:6iKtvG1t
ミドリたんお疲れ様。
今回は萌えではなく燃え展開ですね。
ジュネとトキコはその内戦いそうな雰囲気。
来年までごきげんよう。
「カンパーイ!」
乾杯の音頭とともに、ドリンクの入ったグラスが高々と持ち上げられ、あちこちでグラスが触れ合う音がする。
ここは日の暮れかけた無人島―――のび太たちが遊びに行ったあの場所だった。
そこで今回の一件に関わった人々が集まり、ささやかながら賑やかしくパーティーを始めていた。
みんな楽しそうでいて、どこか寂しそうでもあった。
何故ならこのパーティーは祝勝会であると同時に―――のび太たちとのお別れ会でもあったから。
あの戦いから既に一週間以上が過ぎていた。その間の調査により、アザミの言葉が正しかったことが証明された。
いわく―――<サイバスターを使えば次元断層を作れる>。
すなわち、のび太たちは元の世界へと帰れるようになったということだった。だがそれは―――この世界から、
のび太たちがいなくなるということだった。
だからこそのこのパーティーである(無人島を選んだのは、サイバスターを人目のつく場所には置けないという
配慮であった)。
最後ということで、みんな無礼講に振舞っていた。
スネ夫は多少大げさに今回の一件の顛末を女性陣に自慢げに話していたし、神王は既に樽一つ分の酒を空にしていた。
のび太とドラえもん、そして稟は三人で何かと他愛のない話に興じている。
亜沙は一緒に呼ばれていた母親とぴったりと寄り添うようにしていた。
魔王とジャイアン、そしてプリムラは、何故か姿が見えなかった。
そして、しずかは―――
「よう。何暗い顔してるんだ?」
「あ・・・神王さま・・・」
神王に話し掛けられしずかは顔を上げたが、そのまま黙りこくってしまう。
「・・・アザミのことを考えてたのか?」
「・・・はい。結局、どうなるんでしょうか、あの人・・・」
神王は少し迷っているようだったが、答えた。
「あれだけの事をしたからな・・・。多分、生きてるうちに外には出られねえだろう。・・・というより、
後一年身体が持つかどうかもあやしい」
「それって、どういうことなんですか?」
「あいつは、自分の身体に魔力強化のための処置をムチャクチャに施しててな・・・そのせいで既にボロボロだ。
だからまあ・・・長くはねえ」
「・・・・・・」
しずかはまたしても黙り込んでしまう。そんなしずかに、神王は続ける。
「なあ・・・自分が余計な事をしちまった、なんて思ってるか?」
「・・・・・・」
神王は黙り込んだままのしずかを見てふっと笑い、言った。
「アザミの奴は、そう思ってないみたいだがな」
「え・・・?」
「あいつに会いに行ったらな・・・お前に伝言を頼まれた。自分で確かめてみな」
そう言って神王は胸元から手紙のようなものを取り出す。しずかはそれを読んだ。
<私はこれから先も、自分がしたことを後悔することは恐らくないでしょう。しかし、いつか―――ほんの少しの確立ですが、
後悔することがあるかもしれません。あの時死んでいたら、きっとその僅かな可能性も無くなっていました。
だから―――あなたたちが助けてくれたことを、感謝します。ほんの僅かでも―――可能性を示してくれた事に>
「・・・アザミ・・・」
「あいつはあれでも、お前らに感謝してる―――それでいいじゃねえか」
「・・・はい!」
しずかは暗さを吹っ切ったような顔で、元気良く答えた。
神王はニッと笑い―――
「さて・・・そろそろ奴らの準備が終わったかな・・・俺もちょっと行ってくらあ」
そう言って、どこかへ行ってしまった。
「・・・そう言えば、タケシさんたちはどこに行ったのかしら・・・?」
その答えは、じきに明かされることになった―――
「みんな!ちょっと聞いてほしい!」
突然の大声に皆がそちらの方を向く。そこに立っていたのは、ド派手な衣装に身を包んだジャイアンと魔王、
そして神王だった。ジャイアンと神王はマイクを持ち、魔王はギターを持っていた。
「俺たちはもう今日を最後にサヨナラしちまう―――そこで俺は考えた。俺に出来ること―――
それは歌うことだけだ!」
「「「「ドハアアアアアアアーーーーーーーーーっっっっ」」」」
のび太、ドラえもん、しずか、スネ夫の四人は、飲んでいたドリンクを盛大に吐き出した。
「そして今日はスペシャルゲストとして、神王のおっちゃんが俺と一緒に歌い、そして魔王のおっちゃんが
ギターをやってくれることになっている!」
その言葉に反応したのは、彼らの娘であるシアとネリネの二人であった。
「お・・・お父さんの歌・・・!?」
「お父様の・・・ギター!?」
そんな四人と二人の様子を見て、稟は底知れぬ悪寒を感じた。何か―――恐ろしい何かが、起ころうとしている。
「歌だって。楽しみだね、あーちゃん」
「そうだね、お母さん」
何も知らない亜沙と亜麻の母娘は、楽しそうに笑う。
「よおしいくぞ!俺たちの歌とギターを聴けエエエエエ―――――――!!!」
ジャイアン、神王、魔王。ある意味で人間、神族、魔族それぞれ最恐の三人のコンサートの幕が上がった―――
―――三十分後。
「ふう―――歌ったな」
神王が汗を拭きながら満足げに言った。
「そうだね。いや、気持ちのいい演奏が出来た」
魔王も楽しげに笑う。
「いやあ、おっちゃんたちがあんなに歌とギターが上手いなんて思わなかったぜ」
ジャイアンは二人を称える。そこでやっと三人は気付いた。
「ところでなんでみんな泡を吹いて身体を痙攣させながら倒れてるんだ?」
――――――――――――合掌。
投下完了。
そして開幕、最終章。あと三回の投下で終わる予定です。
ちなみに神王が音痴だったり、魔王のギターが凄まじいという設定はありませんが、
どう考えても神王は音痴だと思っています(笑)
それではごきげんよう。よいお年を。
504 :
作者の都合により名無しです:04/12/31 14:19:10 ID:6iKtvG1t
そうかあ。あと3回ですか。寂しいな。
賑やかで、それでいて儚げなパーティにふさわしい
歌声で締めましたかwサマサさん、よいお年を。
新年早々次スレっぽいなw
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!サマサ!
見事にジャイアンの歌に耐えたのか、凄いな魔王と神王。
>>453 砂と涙と鼻水にまみれ、土下座し懇願する本部。その姿は痛々しいの一言だが、
「わ、悪いけどオレ、そういうのは……ごめんっ!」
ぴゅう、と響子は逃げ出した。すかさず本部は立ち上がり、追いかけようとする。と、
「待たれい、本部さん」
聞き馴染んだ声に、呼び止められた。振り向けばそこに、渋川がいた。
「あの子に弟子入りする、とか言うとったが。やめられよ」
「な、なぜですかっ! 渋川老だってご覧になられたでしょう? あの子の技を!」
「ああ、見た。先に言うておくが、おそらくわしが本部さんと同じように投げ合っても、
勝ち目はないな。間違いなく、同じようにころころ投げられるじゃろ」
淡々と語る渋川の言葉に、本部の目がこれ以上ないほど大きく大きく、見開かれた。
「しかしな本部さん。あの子の技は、わしらの知る柔術ではない。おそらく仙術か何か、
そういった人外の力じゃ。教わってできるものではない。加えて、あの子の相じゃ」
渋川は空を見上げて、そこに響子の顔を思い出し、描いた。
「あの子の運命には、べったりと張り付いておる。深く暗い闇が。巨大……というより、
醜くおぞましい何かが、の。おそらく、わしらではどうにもできぬ遠い世界のこと。
酷なようじゃが、あの子には関わらぬ方が良い。じゃがな、案ずることはない」
渋川が、前に向き直りながら言った。
「あの子には、張り付いた闇の反対側に、光が寄り添っておる。深き闇に抗しうる、
強き輝きを持った光がな。おそらくはあの子の朋友という形で……って」
渋川の正面。そこには、もう本部はいなかった。
本部はその頃、既に響子を追って、駆けて駆けて駆けまくっていたのである。
『渋川老が、ご自身で認められた! 神余殿には勝てぬ、と! これはもう絶対に、
何が何でも神余殿の弟子となり、その技を学ばねばなら……ぬおっ!』
いた! 前方約二十メートル、標的・神余響子発見! 向こうもこちらに気づいた!
「も、本部さんっ!?」
「神余殿っっ! 逃がしませぬ、逃がしませぬぞおおおおぉぉ!」
壮絶な追いかけっこが、始まった。
紅い夕陽に照らされる、落書きだらけの刃牙ハウス。刃牙が、スーパーの袋をぶら下げて
帰ってきた。いつものスーパーの、閉店間際の割引セールで買い込んで来たところだ。
「いやぁ大漁大漁。こんなにコロッケが残ってたなんて、今日はいい日だ」
ホクホク顔の刃牙が、鍵を開けて家に入ろうとすると……
「あ〜もう、しつっっこいっ!」
作務衣姿の女の子が、長い髪をなびかせて、通りを全力疾走してきた。刃牙には
目もくれず、そのまま刃牙の後ろを駆け抜けて走り去っていく。直後、
「神余殿ぉ! 神余殿ぉぉ! か〜な〜ま〜り〜ど〜の〜おおおおぉぉっ!」
その女の子を追いかけて、本部が走ってきた。これまた刃牙には目もくれず、
神余とかいう女の子をただただ追いかけ、土煙を巻き上げて走り去っていく。
「な、何なんだ。何が起こってるんだ?」
刃牙が呆然と立ち尽くしていると、またあの女の子が走ってきた。どうやら
この辺りをグルグルと追いかけっこしているらしい。
とりあえず、刃牙は家のドアを開けた。そして手招きする。
「えと、神余さん? よくわかんないけど、一旦ここに隠れて。早くっ」
本部に追われている女の子は、一も二もなく刃牙の誘いに応じて家に跳び込んだ。
刃牙は素早くドアを閉めて、そしらぬ顔で口笛を吹く。
間もなく、本部が走ってきて、
「むぅ。見失っ……お、刃牙。今この辺に、作務衣を着た女の子が来なかったか?」
「その子ならあっちに行ったよ」
「そうか、かたじけないっ!」
刃牙の指したデタラメな方角へ、本部は疾走していった。
それをしかと見送ってから、刃牙は家に入る。先程の女の子は、律儀に玄関で立っていた。
「もう大丈夫だよ。ああ、上がって上がって。しばらくここにいた方がいいだろ」
「ありがとう」
女の子は一礼すると、カンフーシューズを脱いで上がり込んだ。刃牙もそれに続く。
「神余さん、でいいのかな。どうして本部さんに追いかけられてたの?」
「それは……」
言えない。チョーモンインのことは一般人には秘密だし、それを隠して喋ると、響子が
本部を実力で負かしたという話になってしまう。そういう噂を広めて、範馬勇次郎を
おびき出すのが任務ではあるのだが、あの本部の落ち込みぶりを見てしまうと。もう。
などと思い悩み、響子が返答に窮していると、刃牙が先に話しかけてきた。
「あのさ。君を追いかけてた人、本部さんっていうんだけど、その……悪い人じゃ
ないんだ。何があったか知らないけど、多分誤解とかすれ違いとか、そういう」
「いや」
響子が、力なく首を振った。
「誤解なんかじゃない。確かに、本部さんは悪くないよ。オレが悪いんだ」
特別ボーナスに釣られて、一もにもなく引き受けたこの任務。だが考えてみれば、
インチキ技で武術家の誇りを傷つけしまう、という展開は読めたはず。
なのに、そんなことも考えずに、自分は。軽々と。気軽に。軽率に。
「そうだよ、オレが悪いんだ。金に目が眩んで……うぅ、やるんじゃなかった」
だが今更帰れないし、けど任務続行も困難。響子は深刻に、本格的に落ち込み始めた。
で刃牙は刃牙でそんな響子に、何をどうしていいやら解らず、困る。脊髄反射で
匿ってはみたものの、悩める女の子を励ます術など、持ち合わせていないわけで。
「え〜と、その。とりあえずもう遅いし、家まで送ろうか? 家の人が心配してるだろ」
「家の……あ、定時連絡の時間だ! ごめん、ちょっと失礼」
響子は肩掛け鞄の中から、携帯電話のような機械を取り出した。
これもカンチョウキと同じくチョーモンインの道具、『モドキ』。超能力観測装置への
アクセスや、異世界との通話などが可能な通信機である。
「もしもし、神余です。あの、母さんの具合は? ……っ!? そ、それで? ……はい、
食事は冷蔵庫の……ええ、くれぐれもそれ以外は……ん? もしもし? もしもし!?」
モドキを耳から放して、見てみる響子。『圏外』と出ている。
「! く、くそっ。この世界ってそんなに辺鄙な空間だったのか?」
どうやら元の世界に戻らないと、通信はできなさそうだ。だが転送ブレスはまだ
使用不可。転送システムのエネルギーチャージに、おそらくあと二、三日はかかる。
響子が頭を抱えていると、今の通話を聞くともなしに聞いていた刃牙が、訊いた。
「母さんが、入院でもしてるの?」
「ああ。今、サナトリウム(療養所)に入ってるんだ。ちょっと特殊というか厄介な
病気でさ、介護をヘルパーさんに任せてる日は、こうして確認しないと不安なんだ。
できれば自分がずっと着いてていたいけど仕事が……って、ごめん。グチを聞かせたな」
響子は焦りを冷ましつつ、ばつの悪い顔をして、刃牙に向き直った。すると刃牙は、
「…………か、か、神余さんっっ!」
いきなり、がしっ! と響子の両肩を掴んだ。その両目は、うるうる潤んでいる。
「な、なんだよ。どうしたんだ、急に?」
「介護とか仕事とか、大変だろうけど……母さんのこと、大切にしてあげてねっっ!」
どっ、と刃牙の目から涙が溢れ出た。どうやら自身の体験というか経験上、
こういう母親絡みの話には弱いらしい。自分は何もできなかった、という思いか。
「そうだ神余さん、何か俺に手伝えること、ない? あったら遠慮なく、」
「い、いいよいいよ。あ、匿ってくれてありがと。オレそろそろ行かないと」
だったら送っていく、という刃牙の申し出を丁重に断って、響子は刃牙ハウスを出た。
刃牙は玄関先に立って、涙の向こうに響子の姿が見えなくなるまで、見送る。
「いるんだなあ、現実に。ああいう女の子が。そうか、それでお金も暇もないから、
あんなに地味というか飾りっ気のない服で。おしゃれなんかできなくて。うぅ、いい話だ」
と刃牙が、家に戻ろうして……ふと、足を止めた。
「ん? そういえばどうしてあの子、本部さんに追いかけられてたんだ?」
・神余さんは、母親の病気でお金に困っている。「金に目が眩んで」とか言っていた。
・改めて思い出すに、服装こそ地味だったが神余さんは結構、いやかなり、可愛かった。
・むしろ本部さんぐらいの歳になると、ハデな子より素朴な子を好むという傾向もあろう。
・重ねていうが神余さんはお金に困っている。で何かをした。だが後悔していた。深刻に。
・そしてその神余さんを、目ぇ血走らせて鼻息荒い本部さんが追いかけていた。
・ということは……もしや神余さん、お金目当てで本部さんに近づいて……
「っっっっ!」
刃牙の頭の中に、十八歳未満お断りなストーリーが、映像が音声が、浮かぶ。次の瞬間、
と、今度は刃牙が目ぇ血走らせてダッシュ! した。目標は本部以蔵、緊急レベル特A!
「ダメだ本部さん、絶対、絶対ダメっ! 格闘士として、いや人間として、
というか男として、やっちゃいけないことがあるっっ!」
>>サマサさん
どうなるかアザミ、どうなるか……とハラハラしてましたが。こうなりましたか。ドラに
してはなかなか、シビアな感じですね。手紙の中の、「感謝」の一言が微かに救いです。
そして。やっぱりこれも外せない、彼の歌。気持ち良さそうな三人の顔が目に浮かびます。
>>バレさん
伊達は本当に、塾長の言葉通り「お山の大将」したかったのか、あの生活で満足してた
のか、先代総長もあの鎧着てたのか、蛇徹槍はどこへ? などなど、謎は尽きませぬ。
で。確かにそういう存在ですね神龍。彼の気持ちなんて考えたことありませんでした。
>>草薙さん
「安藤さんや刃牙と対等に会話するのび太」という図に慣れつつある、というのは何だか。
勇次郎も刃牙も夜叉猿に勝っている、と聞かされた訳ですが、さすがにそれだけで対抗心
燃やすほどではないですね、のび太。けど刃牙が一緒では、戦えなさそうな気もします。
>>ミドリさん
一方的圧倒的そして高圧的、ですな斗貴子。戦闘力のみならず、吐いても吐かなくても
殺す、とか怖過ぎ。それが一転して、ピンチか? と思ったところで……ジュネが
カッコいい! 沙織に密かに命令されて嫌々、かもしれませんが、いよいよ共闘為るか?
>>NBさん
そこまで言われると、さすがにいい加減……原作に興味湧いてきました。いずれ
読んでみたいと思います。
では皆様、よいお年を!
現在423KB
それにしても
>そこまで言われると、さすがにいい加減……
「しつこい」とか「うざい」と続くかと思った。
513 :
【小吉】 :05/01/01 02:36:24 ID:6kb3M4tW
ミドリさん、サマサさん、ふらーりさんお疲れ様です。
そして住民職人の皆様方、あけましておめでとうございます。
去年はほとんどペース落ちずに作品が投稿されましたね。
今年もこの調子が続くといいですね。
514 :
うみにん:05/01/01 02:52:54 ID:a2CguIWx
新年あけましておめでとうございます。
しけい荘の復活おめでとうございます。
人魚姫、しけい荘、オートマティックレイバー、そしてサマサさんと
長編が続々完結していきますね。乗り遅れないよう頑張ります。
(ひょっとして、もう乗り遅れてる?)
バキスレの運勢と今年のお年玉
↑が微妙なんで大吉を狙ってみるテスツ
517 :
テンプレ1:05/01/01 19:00:08 ID:6kb3M4tW
518 :
テンプレ2:05/01/01 19:01:23 ID:6kb3M4tW
519 :
テンプレ3:05/01/01 19:02:06 ID:6kb3M4tW
520 :
テンプレ3:05/01/01 19:06:09 ID:6kb3M4tW
521 :
テンプレ5:05/01/01 19:07:03 ID:6kb3M4tW
522 :
テンプレ作った奴:05/01/01 19:13:41 ID:6kb3M4tW
間違いないかな?
正直、結構間が空いている作品もあるけど、
連載作品2レスで収まるので今回は入れました。
「だいらいたいさい」は続き物かどうかわからないので
今回は外しました。すみません。
蟲師は完結してるんじゃない?
確か3ヶ月くらい更新の無い4×5もはずしていいと思う
524 :
テンプレ作った奴 :05/01/01 20:49:57 ID:6kb3M4tW
蟲師完結かなあ?
ワンエピソード終わっただけだと思ったけど。
俺結構好きなんだよねこの作品。原作もSSも。
ユル氏の両作品(4×5とAoB)については、
確かに両方とも軽く2ヶ月以上たってるんだよね。俺も困った。
でも、「だいらいたいさい」が一ヶ月前に掲載されたからとりあえず。
まあいいや、次スレ立てる人に任せるよ。
俺が立ててみる。
立てられないときはよろしく。
すまん、なんか変な表示が出て立てられんかった・・・。
よろしく頼む。
じゃあ俺がチャレンジしてみる。
少し早い気がするが、元旦に立てるのは目出度いからな。
528 :
次スレ誘導:05/01/01 22:32:11 ID:gDTqOmMR
>>527 2並びですごいね>時刻
立てたはいいが、三が日は流石に作品来ないか?
少し焦ったか?まあいいや、正月だしな。
>うみにん氏
あけましておめでとうございます。
そんなに急がなくとも、長く楽しませて欲しいな。
保守
誤爆スマソ
馬鹿が見る
バキスレだらけだな下のほう
かち
ふむ